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梓母「本当に女の子と結婚するの…?」
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梓母「梓…」
ショックを受けて揺らぐお母さんの瞳を見ているのは辛かった。
梓母「本気なの?女子校という環境で、女の子しか周りにいなかったから、錯覚してるんじゃないの?」
梓母「あなたはまだ若いのよ。この先、本当に好きな男の人が出ないって言い切れる?」
梓父「母さん」
お父さんが隣から、お母さんをなだめるように声をかける。私は唯を好きな気持ちを否定されたくなくて、真っ直ぐ反論した。
梓「違うよ!私だって社会に出て、男の人の知り合いも沢山できたもん。素敵だなって思える人とも会った」
梓「だけど、やっぱり好きなのは、愛してるのは唯だけ。唯以上の人になんか、会えると思えない。唯だって、同じ気持ちだよ。だから…」
結婚を認めて、と言う前にお母さんが言葉を放つ。
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梓母「それじゃあ…私の、育て方が悪かったの…?」
その言葉が、深く深く私を抉って、耐えきれず私は俯いた。手が震える。
その手を、唯の温かい手が握った。
唯「違います。お母さんの育て方は、何も間違ってません」
梓母「唯ちゃん…」
唯「あずにゃんは、可愛くて真面目で一生懸命で優しくて…私の自慢の後輩であり恋人です。お母さんに愛されて育ったから、私の大好きなあずにゃんになってくれたんだと思ってます」
唯はお母さんの目を真っ直ぐ見て、はっきりと言葉を紡ぐ。
唯「だからお母さん、お父さん、あずにゃんを育ててくれて、私と出会わせてくれて、本当にありがとうございました!どうか、これからは私にあずにゃんをお任せください。絶対に幸せにしますから、お願いします」
唯が両親に向かって頭を下げる。続いて、私も。
お母さんは私達を呆然と見て、そして目を逸らした。
梓母「もう、行ってちょうだい…。お願い、私達だけで、考えさせて…」
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娘が、高校時代から一緒の、同性の先輩と結婚すると言いだした。
まさか二人がそんな関係だったなんて。仲のいい先輩後輩だとばかり思っていたのに。
裏切られた気分だった。
梓父「認めてやるしかないんじゃないか?唯ちゃんのご両親は、二人を認めていらっしゃるらしいし」
梓母「…だって、平沢さんとこには憂ちゃんもいるじゃない!梓は一人っ子なのよ!孫の顔を見るのを、楽しみにしていたのに…」
性的マイノリティの権利が叫ばれる世の中。私も今まで、そうした人達を応援していた。同性愛者が差別されない世の中になってほしいと。
だが、それはあくまで自分に関係なければという条件での話。
いざ、娘が同性愛者だと知った時、自分の口から出るのは差別的な言葉ばかり。
そんな自分に失望していた。
梓の為を思ってのことですらない。
娘に平凡な道を歩んでほしい、孫の顔を見たい、という私のエゴだ。
立ち上がった時、廊下にいる二人の話し声が聞こえた。近づいて耳をそばだてる。
梓「お母さんを悲しませちゃった…」
唯「大丈夫。お母さんはきっとそのうち認めてくれるよ。だって、あずにゃんの幸せを考えてくれてるはずだもん」
…ズルいわよ、それ。まるで私が、頑固なわからず屋で困らせてるみたいじゃない。
認めないわけにいかなくなるじゃない…。
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梓母「…」
梓父「ほら、梓の結婚式なんだから笑えよ」
結婚式…式は挙げられても、法的な結婚はできないのに。
それでも結局、渋々ながら認めてしまった。
式の曲は、梓の軽音部のお友達がオリジナル曲を演奏してくれている。平沢家のご家族も二人のお友達も、皆が祝福していて、私だけが取り残されている感じがした。
だけど、唯ちゃんとお揃いのウエディングドレスを着て、祝いの言葉を投げかけられながら本当に幸せそうに笑う梓を見た時。
思わず、涙が出た。
梓が私を見て、心配そうに駆け寄ってくる。
梓「お母さん…ごめんなさい、孫を見せてあげられなくて」
梓母「違うの、違うのよ…。大丈夫、嬉しくて泣いてるの。…私、娘のウエディングドレス姿を見るのが夢だったから…それだけでいいのよ」
梓「お母さん…」
そう。こんなに幸せそうな娘を見られた私は、充分幸せじゃないか。
梓母「ほら、行きなさい。唯ちゃんが待ってるわよ」
これからの梓を任せられる人が。
見渡すと、梓を心から祝う、律さん、紬さん、澪さん、憂ちゃん、純ちゃん、菫ちゃん、直ちゃん、山中先生…そして、他沢山のお友達。
これだけの人に愛される子に育ってくれた娘が、私は誇らしかった。
隣で夫が呟く。
梓父「懐かしいな…今の梓、そっくりだよ。私達の結婚式の時の君に」
fin.
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菫ノートの結婚企画のss読んでたら、当時いなかったけど自分ならどんなの書くだろうと考えてて、衝動的に書いてしまった
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>>1おつ
当時は唯梓結婚しろとか言ってたけど15年前から世間も啓蒙が進んだよなあと読みながらしみじみ思った
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