澪「お前に聞いてるんだよ！！」
律「私に言ってどうするんだ」
澪「お前が出すって言い張ってたんだろ！？」
律「講堂なんか貸し切って何をするっていうんだよ」
澪「ライブやるんだろ」
律「ライブ？」
澪「軽音部の」
律「軽音部」
澪「部長だろお前」
律「部長」
澪「単語を覚えて会話する人工知能かこいつは」
"
律「私だって単に忘れてたわけじゃない」
澪「ウソつけ」
律「ただ思い出せなかっただけだ！」
澪「そうか」
澪「２度と前髪が生えてこなければいいのに」
律「生えとるわ」
澪「ライブどうするんだよ」
律「何とかなるって」
澪「梓、あんなに楽しみにしてたのに」
律「………」
澪「唯だって、前にノドを痛めてちゃんと歌えなかったのを引きずってたし」
澪「ムギなんてアンコールの時のアドリブまで考えてたんだぞ」
律「それに引き換えお前は何をやってたんだ」
澪「そうか、そんなにカチューシャを叩き割られたいのか」
澪「非常に残念だ」
律「すいませんでした」
律「こうなったら生徒会に直談判してみるか」
澪「誠意を見せろとか言われたらどうする？」
律「えっ……金？土下座とか？」
澪「土下座で済めばいいんだけどな」
律「でも軽音部のためだし……」
澪「あの人……生徒会長なんだけどさ」
律「知り合いだっけ？」
澪「例のファンクラブに入ってたらしい」
律「例の？」
澪「例の」
澪「入ってたっていうか、あの人が創始者だった」
律「じゃあ澪が頼み込めば何でも聞いてくれるんじゃ……」
澪「逆だよ」
澪「そこらへんの事情を踏まえてよく考えて欲しいんだけど」
律「考えたくない」
澪「講堂の使用と引き換えに私を要求されたらどうする？」
律「そういうことを言うなよ……」
澪「言っちゃった」
律「考えすぎだって」
澪「可能性としてあり得るんだよ」
律「連絡先を教えるくらいならいいだろ？」
澪「毎晩電話されたり、卑猥なメールを送り付けられたらどうするんだ」
澪「相手は生徒会長なんだぞ」
律「お前の中の生徒会長像はどうなってんだ」
澪「生徒会の異常な権力を振りかざして、反抗的な生徒に圧力をかけて……」
律「漫画の読みすぎだって」
澪「目をつけられた子は更生と称して地下室で服を脱がされて……」
律「お前ムギに変な漫画借りなかった？」
澪「私があんな事やこんな事をされたらどうするんだ」
律「どんな事？」
澪「言えるか！！」
律「全裸で１曲演奏とか？」
澪「………」
律「それくらいだったら何とか……みたいな顔をするな」
律「どんな仕打ちを想像してたんだお前は」
澪「その演奏は律も一緒に？」
律「いや、澪のソロで」
律「ベースだったら上手く構えればギリギリ隠せるだろ？」
澪「お前も上手く構えたらいいだろ」
律「スティックだけでどうやって防御するんだよ」
澪「でも律のドラム、活きが良くてパワフルだし……」
律「ドラムがそれをやったらいろいろ全開になっちゃうだろ」
澪「いろいろって？」
律「言えるか！！」
"
律「私がそんな恰好しても需要がないだろ」
澪「誰も見てないなら問題ないだろ」
律「見向きされないんだから意味ないだろ」
澪「じゃあ私が見るから」
律「目を輝かせるな」
澪「元はといえばお前のせいでこんな事になったんだぞ！」
律「何でそんな事させられる前提なんだよ」
澪「お前は昔からそうだよな」
澪「私に何かやらせて、恥ずかしがってる姿を見るのが好きなんだ」
律「好……いやほら、澪は何やらせても需要があるだろ？」
澪「きっと生徒会長もそんな性癖の持ち主に違いない」
律「性癖じゃねーよ」
澪「曽我部恵さん、イニシャルもＳ・Ｍだし……」
律「偏見が失礼すぎる」
澪「きっとＳＭ会長にも何か恥ずかしい事をさせられるに違いない」
律「ＳＭ会長とか言うな」
律「何でそっち方向に話を進めるんだお前は」
澪「その様子を隠し撮りされてさらに脅されるんだ」
澪「それは日を追うごとにだんだんエスカレートしていって……」
律「お前、ムギにどういうエロ漫画借りたの？」
澪「表紙に騙されたんだよ」
律「本当に借りてんじゃねーよ」
澪「まさかあんな展開になるとは……」
律「こっちがビックリするわ」
律「影響されやすいんだからそういうの読むなよ」
澪「無理やり貸し付けられたんだよ」
律「何がしたいんだアイツは」
澪「最後がハッピーエンドで助かったけど」
律「がっつり読破してんじゃねーよ」
澪「まさか親友同士があんな関係になるとは思わなかった」
律「………」
澪「それで私の貞操と軽音部の存続、どっちを犠牲にするつもりなんだ」
律「選択肢が重すぎる」
澪「私と軽音部、どっちが大事なんだ」
律「人が浮気してるみたいな言い方をすんな」
澪「それは浮気じゃなくて本気だったみたいな意味？」
律「何ごっこなんだよこれ」
澪「私とは遊びだったのか」
律「お前は私をどうしたいんだよ」
律「澪のＭはメンヘラのＭなのか」
澪「うるさいよ、R指定が」
律「誰がＲ指定だ」
澪「いいから私の目を見て答えて」
律「澪も軽音部の一部だよ」
律「だからどっちも大事だ」
澪「上手く返したな」
澪「こういう時だけ部長ヅラしてなあ！？」
律「これはもしかして顧問の影響も受けてるな」
律「とにかく直談判に行こう」
澪「私も？」
律「お前の頼みなら聞いてくれるかも知れないだろ？」
澪「なるほど、野獣に生肉をチラつかせて手懐けようというわけか」
律「話がややこしくなりそうだから１人で行ってくる」
澪「とにかく平謝りして申請書を受け取って貰うんだぞ」
律「わーかってるって」
澪「勝手に変な交換条件を持ち出すなよ」
澪「間違っても私の名前を出すな」
律「それはわからん」
澪「もう土下座して靴でも舐めてこい」
律「私はどうなってもいいのかよ」
澪「ライブがどうなってもいいのか」
澪「だいたい、部長としての自覚が足りないからこんな事になるんだ」
律「急にマジ説教やめて」
律「冷静に考えて、生徒会長がそんなゲスな要求してくるわけないだろ」
澪「人のスカートの中を見た勢いで妙なファンクラブを立ち上げるような人だぞ？」
律「変態は思い切りがすごいからな」
澪「すでに何枚か隠し撮りされてるんだよ」
律「マジで？」
澪「マジで」
律「いいじゃん写真くらい」
澪「バカか！きっとメイドとかナース服とか妙なコスプレさせられるに決まってるだろ！」
律「すでに似たような事やってるだろ」
澪「そういう変態的な欲求はエスカレートしていくものなんだよ」
律「お前の妄想がエスカレートしすぎなんだよ」
澪「使用届が期限内に申請されなかった以上、
軽音部に講堂を使わせるわけにはいきません！」
律「あ？」
澪「しかし、生徒会長である私の権力で何とかしてあげる事も可能です」
律「ああ」
律「急にシミュレーションを始めんなよ」
澪「例えば、貴女のお気に入りの秋山さん」
澪「彼女を一晩私のものにするのなら、講堂を使わせてあげましょう」
律「生徒会長ってそんな口調だっけ？」
澪「条件を受け入れますか？」
律「はい」
澪「条件を受け入れますか？」
律「はい」
澪「条件を受け入れますか？」
律「はい」
澪「私がどうなってもいいのか」 ｷﾞﾛﾘ
律「……いいえ」
澪「正解 （エサクタ）！」
澪「それは軽音部のライブができなくなっても構わないという事ですね？」
律「まだ続けるのかよ」
澪「秋山さんがそこまで大切な存在だと」
律「えーと、今回の件は部長である私の責任でございまして」
澪「実際のところ、秋山さんとどういう関係ですか」
律「友達です」
澪「それ以上は？」
律「幼なじみです」
澪「肉体関係は？」
律「ありません」
澪「その予定は？」
律「ありません」
澪「本当は？」
律「必死すぎるだろ、生徒会長」
澪「お前が軽音部の事をどう思ってるかよくわかったよ」
律「大半の質問が軽音部に関係なかったじゃねーか」
澪「咄嗟の受け答えでうっかり本音が漏れてしまうものだからな」
律「唐突すぎてついていけなかったんですが」
ｶﾞﾁｬｯ
紬「そこは 『澪は誰にも渡さない！』 とか言ってあげるところでしょ！？」
律「お前ずっとそこにいたのかよ！？」
梓「澪先輩がどうなってもいいんですか！？」
律「どうにもなんねーよ」
紬「りっちゃん、女の子は問題の解決を求めてるんじゃないの」
紬「同じ悩みを共有して欲しいの」
律「私が一方的に悩まされてたんだけど」
紬「生徒会に身体を奪われるなら、一緒に恥辱を味わって欲しいの」
梓「そのまま生徒会長に寝取られても知りませんからね？」
律「お前らは生徒会をどういう集団だと思ってるんだよ」
梓「 『生徒会長に奪われるくらいなら……』 って
唇くらい奪ってみせたらいいじゃないですか！」
紬「ちゃんちゃら可笑しいわね！！」
梓「意気地なし！」
澪「バカ律！ バーカ！ バーカ！」
律「ちょっと待て、お前らグルか」
澪「講堂使えなかったらお前のせいだからな！！」
澪「この田井中野郎！」 ﾊﾞﾀﾝ
律「どこ行くんだよ！」
紬「りっちゃんのＡカップ！」 ﾊﾞﾀﾝ
律「Ｂだよ！！」
梓「ヘタレ！」 ﾊﾞﾀﾝ
律「中野！！」
恵「……学園祭の催し物についての確認は以上ね」
恵「他に連絡事項とかある人は？」
和「あの、軽音部のライブについてなんですけど」
恵「ああ、えっと……講堂の使用届がまだなんだっけ？」
和「それをネタに軽音部員に関係を迫ってる輩がいるそうですが」
恵「えっ」
律「生徒会長！！」
恵「！？」
律「講堂の使用届、遅れてすみません！」
恵「えっ、ちょっ、土下座しなくても……」
律「でも澪のことは勘弁してください！！」
恵「何が！？」
おわれ
澪の暴走っぷりたまらんな