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梓「唯先輩、ちょっと熱中症ってゆっくり言ってもらえます?」
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唯「暑いからちょっと離れてもらえます?」
梓「最近めっきり暑くなってきましたからね」
唯「だからちょっと離れて」
梓「暑くなってきたし、あれに気をつけないといけませんね」
梓「なんとか症っていうやつ」
唯「後輩の言動のほうが危険だけどね」
梓「もしかして、私にくっつかれて何か意識しちゃってるんですか?」
唯「すでに暑さにやられてるみたいだし」
梓「なに言ってるんですか、私は正気ですよ」
唯「なおさら離れてよ」
梓「汗で下着が透けて見えないかなって思ってただけですよ」
唯「離れろ!!」
"
"
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唯「だってそのネタ知ってるんだもん」
梓「私だって知ってますよ」
唯「よく聞くネタだし」
梓「私がネタにするんですよ」
唯「そのレコーダーみたいなのしまってくれる?」
梓「後で編集しますから、とりあえず熱中症って言ってみてください」
唯「絶対イヤだよ」
梓「ちょっと熱中症って言うだけじゃないですか」
梓「何を恥かしがる事があるんですか」
唯「今日はあれだね」
唯「なんか不快指数がすごいよね」
梓「もう夏ですからね」
唯「あといいかげん離れてくれない?」
梓「当ててるんですよ」
唯「当たってないけどね」
梓「………」
-
梓「私、唯先輩にくっついてないと死んでしまう病にかかったみたいなんですよ」
唯「それは私限定なの?」
梓「そうみたいです」
唯「病院いってきたほうがいいと思うよ」
唯「頭の」
梓「密着したまま病院に連れて行ってくれます?」
梓「途中で休んでいく事になると思いますけど」
梓「病院よりも唯先輩の部屋に連れ込まれたほうが快復するかも知れません」
唯「救急車呼んでおくから帰っていい?」
梓「密着してないと死ぬって言いましたよね?」
唯「じゃあちょっと試してみようよ」
梓「もの凄い奇声をあげて色んな体液を撒き散らかして発狂死するかもしれないですよ?」
唯「うわぁ」
梓「目の前でそんな気持ち悪い死なれ方したら嫌ですよね?」
唯「今この状況がすでに気持ち悪いんだけど」
梓「そう、これは恋という病なんですよ」
唯「死ねばいいのに」
-
梓「唯先輩って寒いの苦手なくせに暑いのも苦手なんですか?」
唯「デリケートだからね」
梓「感じやすいんですね」
唯「最近はなんかツインテールの子も苦手になってきたよ」
梓「そういう下心は抜きにして、唯先輩が熱中症になったら心配なんですよ」
唯「意識が朦朧としている隙に変なことされそう」
梓「私もそれが心配なんですよ」
唯「頭おかしいんじゃないの?」
-
梓「じゃあちょっと最大出力でエアコンつけていいですか?」
唯「ダメ」
梓「でもこの暑さじゃ熱中症になっちゃいますよ」
唯「だから離れてよ」
梓「他の方法を考えましょうよ」
唯「いや、だからどいてよ」
梓「抱いて?」
梓「痛っ!蹴ることないじゃないですか!」
唯「暑苦しさの原因を取り除こうと思って」
梓「脱げってことですか?」
唯「うっとうしいなぁ」
梓「服がですか?」
唯「あずにゃんが」
梓「二人きりの時は本名を呼びたいと」
唯「会話のキャッチボールで変化球ばっか投げるのやめてくれる?」
梓「セックス!」
唯「直球だったら何を言っても許されるわけじゃないんだよ」
"
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梓「こういうきっかけを作らないと言ってくれないじゃないですか」
唯「そういう真似をするから避けられてるんだよ?」
梓「熱中症をそれっぽく言うコツはですね」
唯「人の話聞いてる?」
梓「まず 『熱』 で区切って、『中』 を長く伸ばして、『症』 の後にハートマークを付ける感じで」
唯「それっぽくって何」
梓「チューを長く、ってもうそのままですよね」
梓「えへへ」
梓「あれっ、目が笑ってない」
唯「顔も笑ってないよ」
梓「まあとりあえず言ってください」
梓「さもなくば私が先に言っちゃいますよ?」
唯「それは好きにしたらいいけど」
梓「好きにしていいんですか?」
唯「ちょっ、顔が近いっ」
梓「でもあれですね」
梓「先にイっちゃうとか言ってるの聞かれたら、部室で変なことしてると思われそうですよね」
唯「今まさに変なことされてるんだけど」
-
梓「他の先輩たちは普通に熱中症って言ってくれたのに」
唯「じゃあもう満足でしょ?」
梓「なんでそんな拒否するんですか」
唯「なんでそこまで必死なの」
梓「こんなもん女子高生たちがキャッキャ言い合う程度のネタなんですよ」
梓「そこまで拒否するという事は私に特別な感情を抱いている証拠ですよね」
唯「ある意味ではね」
梓「唯先輩、学祭の直前に風邪ひいてダウンしたことあったじゃないですか」
唯「あの時はすいませんでした」
梓「アホのくせにバカみたいな理由で熱出して、
あり得ないタイミングでのこのこ部室に現れた時のことなんですけど」
唯「………」
梓「私が怒ってるオーラを出してた時、ドサクサに紛れて私の唇を奪おうとしたじゃないですか」
唯「それこそ冗談だったんだけど」
梓「もう大丈夫ですよ」
唯「なにが?」
梓「あの時の続きをしても大丈夫ですよ」
唯「じゃあちょっと目を閉じて?」
梓「はい」
唯「いまだ!!」 ダッ
梓「勝手に帰ろうたってそうはいかないんですよ!!」 バッ
唯「くそっ」
-
唯「なんで部室の扉にカギかかってたの?」
梓「気のせいですよ」
唯「なんでカギかけたの?」
梓「ついうっかり」
梓「うっかりといえば、ライブに間に合わせようとして休養をとってたのに、
どうやったらギターを忘れてこれるんですか」
唯「もういいでしょその話」
梓「私と会うのに勝負下着を忘れてきたみたいなものですよ」
唯「勝負しないけどね」
梓「はいてないんですか?」
唯「はいてるよ」
梓「本当ですか?」
ピラッ
ゴッ
梓「違うんですよ、この間みたいに下に水着つけてると思って」
唯「だとしてもアウトだよね」
梓「唯先輩、水色系好きですよね」
唯「………」
-
梓「でも身の危険を感じてるわりに本気で抵抗しないですよね」
唯「遠回しに拒否してあげてるのにこの言い草だよ」
梓「本当に私が嫌なら憂に助けを求めるなり、私を振り払って部室を飛び出すなり、
もっと死に物狂いで抵抗するはずなんですよ」
唯「いや、さっきわりと本気で逃げ出そうとしたんだけど」
梓「追いかけてきて欲しいみたいな乙女心が邪魔をしたんですね」
唯「実は私、憂
梓「残念でした!もうその手は通じませんよ!今日ずっと憂と一緒にいましたもん!」
トイレから体育の着替えからずっとガン見してましたもん!」
唯「本当に残念だよ」
梓「ちゃんと憂が帰ったのを見計らって唯先輩を美味しくいただくつもりでしたから」
唯「もうちょっと本音を隠してよ」
唯「でもさ、今朝家を出るときから入れ替わってたかも知れないよ?」
梓「ちゃんと平沢家から尾けてきましたから」
唯「なんか変なところで会うと思ったら……」
梓「だいたい、唯先輩が憂みたいな優等生を演じきれるわけないですもん」
梓「憂ですら唯先輩に変装してボロを出すのに、唯先輩がヘマをやらかさないわけないですもん」
梓「痛い!なんで蹴るんですか!!」
梓「そういう人として不完全なところが魅力だって 痛いっ!!」
唯「人として欠陥があるのはあずにゃんのほうだと思うよ?」
梓「私たち、気が合うかも知れないですね」
唯「合うもんか」
-
梓「仮に憂を呼んだとしても、今からじゃ間に合わないですよ」
唯「えっ、ちょっと前に呼んでたけど」
梓「えっ、何でですか」
唯「身の危険を感じて」
梓「ピンチはチャンスなんですよ」
唯「勝手なこと言わないで」
梓「しかし、いくら憂とはいえ部室の扉を破壊するには多少の
ガキンッ
時間を要するはず……なんですよ」
唯「みたいだね」
梓「いやいやいや、どういう事ですか、何やってんですか」
ガキンッ ガゴンッ
梓「なんで憂を呼んでるんですか!?なに考えてるんですか!?」
唯「あずにゃんがなに考えてたの」
-
梓「私がなにをしたって言うんですか」
唯「胸に手を当てて考えてみなよ」
梓「唯先輩の?」
唯「自分の」
梓「私、おっぱい無いですから」
唯「うん」
梓「ほっといてくださいよ!!」
ガゴッ ゴ゙ッ ゴッ バキッ
梓「ちょっと急用を思い出したので、今日は物置から音楽室を通って帰りますね」
唯「でも、フェイントかけてそっち側から来るかも知れないよ」
梓「………」
メキメキメキメキッ
唯「どうしたのあずにゃん、顔真っ青だよ」
唯「熱中症?」
-
陽の暮れた部室で、私は意識を取り戻しました。
頭がぼうっとして、なんだか記憶がはっきりしません。
梓「………」
憂「気がついた?」
梓「ひっ!?」
憂「熱中症で倒れてたみたいだよ、梓ちゃん」
梓「頭がガンガンする……」
憂「熱中症だよ」
梓「なんか身体のあちこちが痛い……」
憂「熱中症だよね?」
梓「はい」
憂「一人で帰れる?」
梓「なんか具合悪いし、学校からだと憂の家のほうが近いし、できれば今日は」
憂「帰れるよね?」
梓「はい」
憂「今回は私が通りがかったから良かったけど」
憂「下手したら命に関わる事もあるんだから」
憂「気をつけなきゃダメだよ?」
憂「ね?」
梓「はい」
熱中症ってこわい。
バキバキに破壊された部室を眺めながら思い知らされた、
夏の日の夕暮れでした。
おわれ
-
古き良きオチだ
乙やで
-
平和ですね、乙
"
"
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