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平成仮面ライダーバトルロワイアルスレ5

39覚醒 ◆JOKER/0r3g:2020/01/08(水) 16:04:31 ID:6aG2OzYo0




――王が、死んだ。
遂に青い炎を燃やす質量すら消え失せて、灰の山と化したかつて王だった残骸の前で、ローズは何度目かになる認識を重ねた。
もう彼には喉が枯れるほどに叫び、現実逃避をするだけの気力は残されていない。

もしまだ彼に人間としての姿が残されていれば一瞬で老け込んでもおかしくないほどのストレスが一気に襲い掛かり、彼に嫌でも現実を理解させる。
いっそ、彼が愚か者だったなら、こんな現実は嘘だと無意味な否定を吐き出すことが出来たのだろうか。
だが皮肉にも、こんな悲劇に見舞われてもなお彼は聡明で、有能で、そして理知的だった。

王は、死んだ。
短命という重大な欠陥を抱えた種を残して、それを覆すことのできるだけの力を持っていたはずの王が死んでしまったのである。
これでもう、全て終わりだ。スマートブレインも、限られた寿命で生きるオルフェノクも、そして何より……粉骨砕身の思いでオルフェノクの栄光を信じ続けてきた、自分自身のプライドも。

「終わりだ、村上峡児」

突如、ローズの耳に冷たい声が届く
どうやらこの声はフィリップのものかと、意識すらせず彼は認識してしまう。
ゆらりと焦点の定まらない視点で見上げれば、そこにはやはり自分の思った通り、フィリップの姿があった。

放っておいてくれと泣き言をいうことも出来なかったのは、自分ならそんな甘えは許さなかったからだ。
大ショッカー打倒にとって障害になる存在がいて、その存在を鎮圧できるとあれば、そうするのは当然のことだ。
無論、自分であればこんな風に声をかけることもせずその命を摘み取っていただろうことを思えば、随分優しい待遇だとすら言えるが。

喪失感に沈んでいた身体に、それでも少しの力が宿る。
情けないものだ、こんなことになってもなお、まだ生存本能は働いているらしい。
自分自身の浅ましさに呆れつつ、彼はそれでも震える喉で声を振り絞った。

「……私を、殺す気ですか」

漏れた言葉に、思わず笑ってしまう。
命乞いでもない、この状況で聞く意味もないそんな当たり前を問う質問が、それでもほぼ反射的に自分から発せられていた。
だが、その問いに対して返ってきたのは、少しの沈黙。

きっと彼はその答えを、まだ迷っているのだろう。
まだ自分と共に戦う事が出来るなどと、本気でそう想っているのだろうか。
どちらにせよ、今のローズにとってはそんな些末な事象はどうでもよかった。

「……正直、この戦いで生まれた犠牲を思えば、君をそうしてやりたい思いがないとは、言い切れない」

やはりか、とどことなく納得したように俯くローズに、フィリップはしかしそれで言葉を切ることはしない。

「でも、罪を憎んで人を憎まず……それが、僕の街の流儀だ」

言ってフィリップは、ローズに視線を合わせるようにしゃがみ込んだ。
まるで彼の心に、訴えかけるように。

「君の犯した罪は消えない。それでも……君がその罪を償おうと戦うなら、僕はそれを応援したい」

フィリップの胸に去来するのは、かつて同じように自分の罪を認め、しかしそれでもなお罪を償うことを教えてくれた鳴海壮吉の姿。
あの日彼は、悪魔と呼ばれた自分を救い変えてくれた。
だからそうして救われた自分も、村上のことも死で断罪ずるような非情は、犯したくなかったのだ。


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