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バーチャルリアリティバトルロワイアル Log.04

126宵闇 ◆k7RtnnRnf2:2020/07/03(金) 20:11:30 ID:mqM5Fyzc0


『……ジローさん! ジローさん! 聞こえていますか!?』

 レオの通信により、俺の意識は覚醒した。
 気が付くと、先程の光は収まっており、リコリスと名乗った少女が立っていた。

「ハルユキ君だ……」

 その一方で、黒雪姫は地面にへたり込みながら涙を流していた。

「ハルユキ君は彼女と会っていたんだ……シルバー・クロウとして戦いながら、彼女に自分の意思を示してくれたんだ。
 なのに、私は……何をやっていたんだ!? 私は、ハルユキ君のように戦えていないのに……!」
「黒雪姫……もしかして、あの子はハルユキのことを教えたかったんじゃないかな。
 ハルユキは強くあろうとしたから、黒雪姫にもそうあってほしかった……それを伝えるために、現れたんじゃないのか?」

 それは根拠のない楽観的思考だ。
 でも、先程の幻はリコリスが見せてくれたのだろう。
 だとすれば彼女は、悲しみに沈んだ黒雪姫を助けるため、俺達の前に現れたのかもしれない。

「【noitnetni.cyl】を、わたしにください」

 そして紡がれるのは静かな声。
 リコリスの優しい声を受けて、黒雪姫は顔を上げる。

『黒雪姫さん! 彼女の言葉に従って、【noitnetni.cyl】を渡してあげてください!
 覚えてますか? ネットスラムで行われていた、もう一つのクエストを。きっと、これはネットスラムで行われるはずだったミッションです!
 そのキーキャラクターである彼女もまた、ネットスラムの崩壊により、ジローさん達のようにこのエリアに流れ着いたのでしょう』

 レオの推測に、俺と黒雪姫は目を見開いた。
 また、俺は思い出す。ネットスラムにはプチグソレースの他にも、リコリスという少女の謎が秘められていたことを。
 シルバー・クロウが始めたという、過去を掘り起こすクエストのことを。
 だとすれば、やはり、この少女こそがリコリスなのか?

127宵闇 ◆k7RtnnRnf2:2020/07/03(金) 20:13:35 ID:mqM5Fyzc0

「【noitnetni.cyl】を探してくれると、彼は言ってくれた」
「【noitnetni.cyl】……これのことか?」

 少女に導かれるまま、黒雪姫はウインドウを操作して三つの拡張子をオブジェクト化した。
 ネットスラムで用意されたクエストで入手したアイテムであり、エリアが崩壊した今となっては用途がなくなったように思える。
 けれど、【noitnetni.cyl】をオブジェクト化させた瞬間、リコリスはようやく表情を動かしてくれた。

「ありがとう」

 【noitnetni.cyl】を見て、少女は笑みを浮かべる。陽の光のような暖かさが込められており、絶望に満ちた世界を照らしてくれそうだ。

「…………これで、いいのか?」

 少女に導かれるまま、黒雪姫はリコリスに3つの拡張子を渡そうとして。

「…………プレイヤーナンバー026、ジロー。
 そしてプレイヤーナンバー040、ブラック・ロータス。
 まさか、お前達がこのエリアに流れ着いていたとは」

 だけど、黒雪姫の善意を踏みにじるように、敵意に満ちた鋭い声が響き渡った。

「誰だ!?」

 俺は反射的に振り返る。
 見ると、金色の甲冑を纏った少女が、俺達のことを睨んでいた。いや、甲冑だけでなく腰にまで届く長髪も金色で、リコリスとは違う意味で、灰色の世界で存在感を放っていた。

『ジローさん! 彼女の名はアリス……GMの一人です!』
「GMだと!? じゃあ、あの榊の仲間か!」

 レオからアリスと呼ばれた少女を前に、俺は反射的に銃を構える。
 当然ながら、アリスは微塵も臆することはないが、露骨に不快感を露わにしていた。

「……確かに、表向きでは同盟を結んでいます。しかし、あの男と同類に見られるのは不本意ですね。
 もっとも、あなた達には関係のない話ですが」

 そう言いながら、アリスは剣を構える。
 殺意を乗せた刃の輝きを前に、俺は身震いする。彼女は俺達をここで殺そうとしていた。
 まともに戦っても勝てる訳がない。だけど、やるべきことは一つあった。

128宵闇 ◆k7RtnnRnf2:2020/07/03(金) 20:17:29 ID:mqM5Fyzc0

「黒雪姫、ここは俺が引き受ける! 彼女を連れて……」

 振り向きながら叫ぶが、途中で止まる。
 俺の後ろにいるのは黒雪姫だけで、リコリスはいつの間にか姿を消していた。しかも、【noitnetni.cyl】はそのままだ。

「あれ!? 彼女はどこに行ったんだ!?」
「わからない! いつの間にか、消えてしまったんだ……まるで煙のように!」
「なんだって!?」

 黒雪姫の叫びに絶句する。
 せっかくハルユキの遺志を受け継げると思ったのに、これでは台無しだ。ハルユキの無念だって晴らせる訳がない。

「……まさか、彼女までもがこのエリアにいるとは驚きです。
 ですが、今はまず、ジローとブラック・ロータスの二人に対処しなければ」

 そして、何か心当たりでもあるのか、アリスは口を開く。
 彼女の言葉は気になるけど、それどころじゃない。学内アバターの黒雪姫は戦えないし、レオの助けも期待できないからだ。
 でも、俺はここで諦める訳にはいかない。黒雪姫を連れて逃げようとしても、アリスに追いつかれるだけ。

「やれるものなら、やってみやがれ! 俺が、黒雪姫を守ってみせる!」
「威勢だけはいいですね。いいでしょう……あなたが私と戦うなら、やってごらんなさい」

 俺が闘志を燃やす一方、アリスは心底つまらなそうに俺達を睨みつけている。
 まさに、蛇に睨まれた蛙のように不利だけど、俺は一歩も引かない。黒雪姫やニコは命がけで戦ったのだから、ここで逃げる訳がなかった。
 そして、死に満ちた世界の中で、新しい戦いが始まった。


 やる気が 5上がった
 こころが 3上がった
 体力が 4下がった

129宵闇 ◆k7RtnnRnf2:2020/07/03(金) 20:18:50 ID:mqM5Fyzc0


     2◆◆


 ――――そうしてワタシは、彼等の戦いを俯瞰する。
 本来であれば、このエリアの管理はワタシの役割であり、つまり彼らに対応するのはワタシのはずだった。
 しかし彼らがこのタイミングでこのエリアへと落ちてきたのは、本当にイレギュラーな事態であり、そしてワタシには今、彼等と接触できない理由があった。
 故にワタシの代わりに、アリスに彼らの対応を頼んだ。

 ――――リコリス。
 彼女と彼らの接触は、今の状況ではタイミングが悪すぎたのだ。
 彼女のイベントをクリアすることで得られるモノを、今、■に知られるわけにはいかなかった。
 結果として彼等は窮地に陥ったが、この状況を切り抜けられないようでは、どのみち未来はないだろう。

 ……いずれにせよ、あの少年王にこの場所が知られた以上、遠からずこのエリアの役割――ひいてはこの『世界』の正体も明かされるだろう。
 そしてそうなれば、たとえ彼等の命運がどうなろうと、彼等の仲間は、遠からずここに訪れる。
 であれば、その時こそが、xxxxの始まりとなるだろう。

 なぜならここは、シークレットカテゴリ・オブジェクトナンバー003、ラベリング“黒牢樹”を擁する外層領域。
 そのエリア名をを、『電脳霊子監獄 黒牢樹の森』。
 通称『電子監獄』と呼ばれる、“モルガナ”、“堕天の檻”に続く、この電脳世界第三の中枢なのだから。


【?-?/電脳霊子監獄 黒牢樹の森/一日目・真夜中】

130宵闇 ◆k7RtnnRnf2:2020/07/03(金) 20:19:48 ID:mqM5Fyzc0

【Bチーム:ネットスラム攻略組】

【ブラック・ロータス@アクセル・ワールド】
[ステータス]:HP数%/学内アバター 、強い憎しみと悲しみと絶望、零化現象、『三爪痕』が刻まれている
[装備]:{サフラン・ハート、サフラン・ヘルム、サフラン・ガントレット、サフラン・アーマー、サフラン・ブーツ、ゲイル・スラスター}@アクセル・ワールド
[アイテム]:基本支給品一式、不明支給品1〜3、{エリアワード『選ばれし』、『絶望の』、『虚無』 、noitnetni.cyl_1-2-3 }@.hack//、パイル・ドライバー@アクセル・ワールド、{破邪刀、ヴォーパルの剣}@Fate/EXTRA、{蒸気バイク・狗王、死のタロット}@.hack//G.U.、アンダーシャツ@ロックマンエグゼ3、不明アイテム×1
[ポイント]:358ポイント/0kill(+1)
[思考]
基本:――――――――――――
0:私は……ハルユキ君の遺志を…………
[備考]
※時期は少なくとも9巻より後。
※共有インベントリにより、所有しているアイテムが表記とは異なる可能性があります。
※デュエルアバターに『三爪痕(サイン)』が刻まれました。『三爪痕』は学内アバターにも痣として浮き出ています。
※自分の無力感に絶望して零化現象が起きました。
※レオによって学内アバターに切り替えられたおかげで、行動自体は可能になりました。
 しかし、もしデュエルアバターになった場合、零化現象の影響で行動不能となります。


【ジロー@パワプロクンポケット12】
[ステータス]:HP100%、リアルアバター
[装備]:DG-0@.hack//G.U.(4/4、一丁のみ)、ピースメーカー@アクセル・ワールド
[アイテム]:基本支給品一式、インビンシブル(大破)@アクセル・ワールド、非ニ染マル翼@.hack//G.U.、治癒の雨×1@.hack//G.U. 、不明支給品0〜1(本人確認済み) 、不明アイテム×1
[ポイント]:0ポイント/1kill
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。
0:アリスから黒雪姫を守る。
1:今は黒雪姫を守りながら、レオ達の元に戻りたい。
2:ユイちゃんの事も、守りたかったけど……。
3:『オレ』の言葉が気になる…………。
4:レンのことを忘れない。
5:みんなの為にも絶対に生きる。
6:黒雪姫のことが心配。
[備考]
※主人公@パワプロクンポケット12です。
※「逃げるげるげる!」直前からの参加です。
※パカーディ恋人ルートです。
※使用アバターを、ゲーム内のものと現実世界のものとの二つに切り替えることができます。
※共有インベントリにより、所有しているアイテムが表記とは異なる可能性があります。


【アリス@ソードアート・オンライン】
[ステータス]:健康
[装備]:閲覧不可
[アイテム]:閲覧不可
[ポイント]:-/-
[思考]
基本:ゲームの中枢、モルガナの“盾”となる。
1:xxxxが訪れる前に、自身の“使命”を果たす。
2:榊らを監視し、場合によっては廃棄する。
3:ゲームに生じた問題を処断する。
4:ジローとブラック・ロータスに対処する。


【■■(■■■)@              】
[ステータス]:健康
[装備]:閲覧不可
[アイテム]:閲覧不可
[ポイント]:-/-
[思考]
基本:GMユニットとして“役割”を果たす。
0:―――堕天の玉座にて、アナタを待つ。
1:自身の目的を果たすために、モルガナの望みを叶える。
2:もしもの時のために、何かしらの手を打っておく。
3:まだ、彼らにリコリスの真実を知られる訳にはいかない。
[備考]
※■■の役割は『電子監獄』の管理、ひいてはこの■■■■の■■です。
※GMとしての役割とは別に、“表側”での役割も有しています。
※第?相の碑文@.hack//を所有しています。

131 ◆k7RtnnRnf2:2020/07/03(金) 20:21:48 ID:mqM5Fyzc0
以上で投下終了です。
また、今回の投下作も◆NZZhM9gmig氏との合作になることを報告させて頂きます。
前回に引き続き、今回の投下において様々なご意見を下さった◆NZZhM9gmig氏には、改めて感謝を申し上げます。
ご意見等がありましたら、よろしくお願いします。

132名無しさん:2020/07/04(土) 10:39:31 ID:pPUJnw5c0
投下乙です
二人が飛ばされた謎のエリア
そこで見つかった死んだはずのプレイヤーたちとリコリス
そして始まったアリスとの戦い
徐々にデスゲームの謎も明かされてきて、佳境が近づいてきたって感じですね

133名無しさん:2020/07/04(土) 14:25:12 ID:tc6efo9o0
投下乙でした
Quantum出展のの電子監獄だけでも驚きというのに、ハルユキがフラグを建てていたリコリスがここで再登場するとは…

134名無しさん:2020/07/15(水) 21:14:14 ID:ki7r04aA0
月報の時期なので集計します。
143話(+ 3) 15/55 (- 0) 27.3

135名無しさん:2023/01/01(日) 17:38:36 ID:VWxvByZM0
エタっちゃったか残念

136名無しさん:2023/10/23(月) 17:40:53 ID:tTFvefIs0
マダー?


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