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オリロワFOREVER

49禁断の合体 ◆1GoF/Ci/hk:2019/02/18(月) 22:52:11 ID:4XpC6S320

「恭忠…どうして…」

アンシャンジャー6人目の戦士、「白き恐鳥」ディアトリホワイトこと杉本貴美もまた動揺していた。
見せしめとして殺された杉本恭忠は単にアンシャンジャーの仲間というだけではなく、彼女の血を分けた実弟である。
彼女もまた恭忠動揺にJGHのヒーロー達に憧れ、故にアンシャンジャーとなった身であった。
だからこそ現状を受け止めることが出来ないでいた。
が、彼女には悩む時間さえ与えられなかった。

「VOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!!!!」
「!?フォールビースト!?」

唸り声を上げながら、サイを模ったような容貌の怪人が突っ込んできた。
何者か、と考えている暇はなかった。
明らかに怪人は自分に殺意を向けている。
となれば、取るべき行動は一つだ。

「チェンジ・アンシャン!」

スマートフォン型変身アイテム「アンシャンフォン」にアンシャンオーブをリードさせ、貴美はディアトリホワイトに変身した。
即座に怪人に対して戦闘態勢を取り、その手に武器を出現させる。

「ディアトリハンマー!」

ディアトリマのクチバシをモチーフにしたハンマーを構え、怪人目掛け振り下ろす。
怪人はそれに対抗するように、鼻先の角を突き出した。
ハンマーと角が激突し、力比べの形となる。
が、数刻後、弾き飛ばされたのはハンマーの方であった。

「ウ…強い!」

怪人は続けざまに打撃を放ってくる。
ディアトリホワイトも手足でガードし、応戦するもパワーの差は如何ともしがたい。
徐々に態勢は不利に傾きつつあった。

「クッ…!」

このままでは危うい、そう判断したディアトリホワイトは超高速移動で怪人から距離を取り、弾き飛ばされたディアトリハンマーを回収した。

「一気に決めるわ!」

ハンマーの頭へとエネルギーのチャージを開始する。
長期決戦は不利、ならば必殺の一撃にかけるしかない。
幾多のフォールビーストを屠ってきた必殺技ならばあの怪人も倒せる。貴美にはそういった自信があった。

「ディアトリブレ…!?」

必殺技を叩き込むべく駆けだそうとした瞬間、ディアトリホワイトは違和感を覚えた。
脚が動かないのだ。
視線を落とせば自分の脚は凍り付き、地面に固定されている事に気付いた。
脚先から氷の道は続いており、怪人の立つ足場へと到達していた。
冷気だ。
怪人の身体から発せられる冷気がこの氷の道を作り、ディアトリホワイトの脚を凍らせていたのだ。

(動きが読まれていた…?でも、どうして…!?)

怪人から発せられる冷気はより強められた。
脚先から膝、腰、腹とディアトリホワイトの身体は凍っていき、遂には全身が凍り付いた氷像と化した。

50禁断の合体 ◆1GoF/Ci/hk:2019/02/18(月) 22:52:27 ID:4XpC6S320
「エラスモ…ドリル…ブレイク…!」

怪人がくぐもった声を挙げると、鼻先の角がドリルのように回転し始めた。
そして怪人はディアトリホワイト目掛け突進する。
氷像と化したディアトリホワイトにこれを回避する手段は無かった。

そして怪人の角は氷像を貫き…ディアトリホワイトの、杉本貴美の身体は粉々に砕け散った。
後には氷の破片が飛び散り、元は人間の身体であったことを示すかのように赤い断面が覗かせられるだけであった。
ダメージで変身は解除され、ディアトリホワイトではなく杉本貴美の遺骸と化したようだ。

「まずは一人…」

物陰からその一部始終を見届けていた人物がいた。
すみれ色のショートカットの髪の少女…そう、田外零に助けを求めに来た少女、蓬つかさである。

「よくやったわ、えっと…エラスモブラックさん。今は怪人だからエラスモビーストって呼んだ方がいいのかな」

つかさは怪人へと近寄り、親しげに話す。
エラスモビーストと呼ばれた怪人はつかさに危害を加えようとする様子はなく、それどころか頭を垂れた。

これは一体どういう事なのであろうか?
それはこの怪人、エラスモビーストはまさしくつかさによって産み出されたからだ。
エラスモブラックと呼ばれた事から分かる通り、この怪人の正体は田外零である。
蓬つかさは怪物に襲われてなどいなかった。
彼女は演技によって田外零を騙し、隙を付いて支給品である「フュージョンシード」を植え付けていた。
これによって田外零はアンシャンオーブと融合して怪人エラスモビーストと化し、彼女の命令で動くマシーンへとなり下がってしまったというわけだ。

「ふみくん…私が悪だなんて、嘘だよね…」

つかさは恋慕の情を向ける少年の名を呟く。
主催の側に付いたヒーロー陽光戦士サンフェニックス…出向井文弥の名を。
彼女は文弥の力になろうとしてきた。
特訓メニューを考えたり、必殺技の名前を一緒に考えたり…とにかく彼と共にあろうとしてきた。
だからこそ、その過程で危機に晒される事もあった。
悪の怪人、ヴィラン、侵略者、そういった者によって命の危機を迎えた経験がある。
それを何とか掻い潜り生き延びてきたわけだが、今はその経験が役に立った。
怪物に襲われたという彼女の狂言は、アンシャンジャーである零でさえも騙せるものへと昇華されたというわけである。

「私は死なないよ。行こう、エラスモビースト」

杉本貴美の遺骸の傍に転がっていたアンシャンフォンとアンシャンオーブを拾い上げながらつかさはそう言った。
つかさはサンフェニックスの友である自分は特別なのだと頭の片隅で考えていた。
だから、死んではならない。
例え他人を陥れてでも。


【杉本貴美 死亡】

【C-2/公園/一日目 深夜】
【蓬つかさ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、不明支給品1〜2、アンシャンフォン、アンシャンオーブ(ディアトリホワイト)
[思考]
基本:生き残る。
1:次なる参加者を探す。

【田外零】
[状態]:健康、ビースト化
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、不明支給品1〜3
[思考]
基本:つかさに従う。
1:次なる参加者を探す。

【フュージョンシード】
蓬つかさに支給。
悪の組織「ドゥンケルハイト」が開発した怪人製造用のアイテムであり、無機物と有機物を融合させて一体の怪人を作り出す。
産まれた怪人はこれを植え付けた者の命令で動く操り人形となる。
今回は田外零とアンシャンオーブが融合させられ、エラスモビーストを産み出す結果となった。

51 ◆1GoF/Ci/hk:2019/02/18(月) 22:52:43 ID:4XpC6S320
投下終了します。

52 ◆ujD3wLD35k:2019/02/22(金) 21:29:24 ID:F6x5VS6w0
投下します

53母から子へ、愛をこめて ◆ujD3wLD35k:2019/02/22(金) 21:30:56 ID:F6x5VS6w0
スモーキーピンク髪が風に棚引く。
何もない夜の空を一人の青年が『飛行』していた。

正確には、それは跳躍である。
木々の頂点から頂点に飛び移るムササビの如き身のこなし。
余りに華麗な連続跳躍は、一繋ぎの飛行のようにすら見えるだろう。

天空を支配する青年の名はジヴ。
砂の惑星を切り開く探索者の一人。
もちろんただの探索者ではない。
探索者の中でも最高位にまで上り詰めた者にのみ与えられる二つ名を二つ与えられた前代未聞の大天才。
『自由』なる『天空』のジヴ。
砂の惑星で、彼はそう呼ばれていた。

ご自慢の飛行装置がなくとも彼が行くは空の道だ。
障害物の回避。視野の確保。
探索において制空権を取るアドヴァンテージは計り知れない。
警戒すべきは狙撃と言った不意打ちだが。人間にとって真上というのは死角であり、夜に紛れれば発見される危険性も少ない。

誰よりも早く砂の惑星を飛び回ったジヴにすら見覚えのない場所だった。
砂の惑星に置いて緑化指定都市でもない場所に、これほど木々が生い茂っているのは異常である
一刻も早く自分のまきこまれた事態を正確に把握する必要がある。

まずは状況の把握。
次に状況への対策。
最期に状況への勝利。
いつどこであろうと変わらない彼の行動方針である。

「ん?」

森の切れ間に、泣いている幼子の姿を捉えた。
ジヴは冷徹な男ではあるが、こんな危険な場所に子供を放置するほど情がない男でもない。
跳ぶ勢いを緩め、木々の頂点から音もなく着地すると、先ほど見かけた幼子がいた場所まで徒歩で引き返していった。

「嗚呼…………何という事でしょう」

少女は蹲るような体勢で顔を覆い大量の涙で頬を濡らしていた。
年の頃は10にも満たないように見える。
身に纏っているのは年に見合わぬ見るからに高級そうな着物なのだが、ジヴにとっては見慣れない衣服である。
どこぞの辺境集落の民族衣装か何かだろうという程度の認識だが、高級感というものは伝わっているのか、その集落の貴族か何かかもしれないなどと考えていた。

「お嬢ちゃん大丈夫かい?」

装着していたゴーグルを額に上げて出来る限り警戒させないよう声をかける。
その声に少女がゆっくりと顔を上げた。

「失礼いたしました。お見苦しい所をお見せしてしまったようで。どうかお忘れ下さい」

涙を拭い、照れたように身を起こす少女。
その妙に落ち着いた丁寧な物腰は、少女の外見には見合わわない。
ジヴはそのギャップに僅かに戸惑った。

「あ、ああ。大丈夫そうならいいんだが。
 まさか君の様な子供まで巻き込まれているとはな、全くあのJGHとやらも何を考えているのか」

呆れた様に漏らすジヴの言葉を少女がきょとんとした顔で見つめ返す。
その表情がこれまで以上に幼く見えた。

「私(わたくし)これでも子供もいる、30を超えたおばさんですのよ」
「……マジか」

信じ難い言葉ではあるのだが、女の纏う雰囲気と言うべきか。
完成された女を感じさせる仕草に妙に納得させるものがある。

「それは失礼をしたマダム」
「いえ、よく間違われますので。慣れていますわ」

着物の裾で口元を隠し上品に笑う。
童女そのものの外見でありながらその所作は貴婦人その物である。
敵意には敵意を、礼には礼をがジヴの主義である。
相手が貴婦人であるのならこちらも紳士としての礼を尽くすまでだ。

「それでマダム。いかがなされました。忘れろとおっしゃられた所で先ほどの涙見て見ぬふりなどできません。
 この物騒な催しに不安を覚えているのでしたらこの私が、」
「いえ…………いえ違うのです」

ジヴの言葉が遮られる。
再び、少女の――――否。女の頬を滴が伝った。

「――――我が子を、想っていたのです」
「お子様、ですか…………?」

先ほど子がいると言っていた。
最悪の展開がジヴの頭をよぎる。

「まさか、お子様も巻き込まれている、と?」

だが、その問いに女は頭を振った。
最悪の予測が否定されて、安堵の息を漏らす。
だが、事実は最悪の予測を下回っていた。

54母から子へ、愛をこめて ◆ujD3wLD35k:2019/02/22(金) 21:31:43 ID:F6x5VS6w0
「この殺し合いを始めたJGHの聖竜騎士クロスワイバーンと聖少女トゥインクル☆ゆかりは我が最愛の子、師朗とゆかりにございます」

壇上にて殺し合いを示唆した怪物。
それが彼女の子供だと言う。

「つまり、あんたは…………」
「はい。私こそ島原の母。はるかにございます。見紛うはずもありません、あれは我が子にございます」

偽物などであるはずがない
例え10年の差異があろうとも、変身した状態であろうとも、腹を痛めた母が我が子を見紛うはずもなかった。
彼女の家族愛全てに賭けて断言してもいい。
あれは間違いなく島原師朗、島原ゆかりである。

「…………それは」

流石のジヴもかける言葉が見当たらなかった。
身内がとち狂ったともなれば苦悩するのも仕方ない話である。
だが、最悪の下にはまだ下がある事を知る。

「あんなに立派になって。その姿が見られただけで母は嬉しく思います」
「な」

瞬間、女の手元が煌めいた。
月光を反射するそれは銀の刃だった。
振り抜かれる銀光を、咄嗟にジウは後方に跳躍して回避した。

「己が正義を貫く我が子たちの力にならずして何が母でしょう」
「なるほど、そういう輩か」

女が流していたのは慟哭の涙などではなく、随喜の涙であった。
狂った子供たちに振り回される不幸な母などではない。
むしろ元凶。
この女がそう育てた。
こいつらは一族郎党とち狂ってる。

「愛すべき我が子が望むのであれば喜んで贄を捧げましょう。最後にはこの命すら捧げる事も惜しくありません」

刃を手にした鬼母が迫る。
赤い鮮血が夜空に散った。

「なっ………………え?」
「――――生憎だが『俺』は『俺』の敵に対して容赦はしない」

ムーンサルト。
縦回転したジヴの足先の刃がはるかの胸元を深く切り裂いた。
紳士然とした皮を剥げばその下にいるのは獰猛な獣である。

何が起こるか予測不能な未開の地を切り開く砂の星の探索者たち。
一つの判断ミスが死へとつながる世界で生き抜き、最高位まで上り詰めた探索者に油断などあるはずもなかった。
必要があれば殺すし、外見が幼子であろうとも容赦などしない。

「げっ…………ごぷっ」

傷口は肺にまで到達しているのか、血の塊を吐いた。
喉に血を詰まらせながらそれでも女は言葉を口にした。

「……愛す、べき………………我が子……たち、よ。思う………………が侭の……正、義……を」

コマのように回って、鋭い鞭のような斬撃で喉を切り裂く。
命を奪う事に躊躇いなど無いが、あまり苦しませるのは趣味ではない。

「いつか悪になる者たちか。ここにいるのはこんなんばっかなのかね」

銀のナイフ拾い上げながらぼやく。
あの言葉はあながち嘘ではないのかもしれない。
そう少しだけ考えた。
だが、その場合、自分はどうなるのか。
自分も果たして悪なのか。

「ま、そう言う事もあるだろう」

ジヴ正義が他者の悪という事も往々にしてある。
だが、それはジヴの正義を否定するものではない事も理解している。

これはJGHと正義とジヴの正義が相容れないだけの話だ。
そうであるのならJGHを叩き潰す。
JGHにとってジヴが悪であるように、ジヴにとってJGHは悪なのだから。

【島原はるか 死亡】

【G-3/森/一日目 深夜】
【『自由』なる『天空』のジヴ】
[状態]:健康
[装備]:仕込みシューズ
[道具]:支給品一式、不明支給品0〜2、銀のナイフ
[思考]
基本:JGHを潰す
1:状況の把握
2:状況への対策
3:状況への勝利

55 ◆ujD3wLD35k:2019/02/22(金) 21:31:55 ID:F6x5VS6w0
投下終了です

56 ◆1GoF/Ci/hk:2019/02/22(金) 23:08:16 ID:3vTdmv5Y0
投下乙です。
見事に全員危険人物でしたね、島原家。
ジヴの相手によって口調変える話し方好き。


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