[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
オリロワ2014 part3
34
:
勇者
◆H3bky6/SCY
:2018/03/31(土) 17:54:33 ID:IGpGfdUc0
「失礼だな…………だがいや、その通りだ。
正直、魔王討伐に使えるのならばキミの事情など知っても知らなくてもどちらでもいいと思っていた。その考えは今も変わらない。
ただ、知っても知らなくてもいいのなら、知っておいてもいい。そう思っただけさ」
死を超えたからか、それとも命を救われた事によるものか。
それは些細なようで、大きな変化のようにも感じられた。
カウレスは魔族への復讐と関わりのない事には対して興味のない人間だった。
だからこそ、魔族であるオデットが取り入ることができたし、正体を詮索されることもなくここまでやってこれたのだ。
「…………私の事情なんて別段今の世の中では珍しい話でもありません。
魔王に父を殺され、このような悲劇をもう繰り返してはならないと、そう思っただけです」
曖昧に言葉を濁す。
多くを語ればボロが出る。
この魔族を恨む苛烈な勇者に正体を知られる事だけは何としても避けなければならない。
その言葉をどう受け取ったのか。
カウレスは正面からオデットを見た。
不思議な瞳だ、燃えて濁っているようで純粋で澄んでいる。
「……君は僕に似ている」
「それは…………喜ぶべき言葉なのでしょうか?」
どう受け取っていいものか判断に迷う。
彼に限ってまさか口説いている訳でもあるまい。
魔族であるオデットが勇者に似ているなどと笑えない冗談である。
「どうだろうね。他の勇者ならともかく僕の場合は褒め言葉にならないかもしれない」
歴代の他の勇者がどう在ったのかは分からないが、カウレスは勇者と言うよりも復讐者だ。
少なくとも本人はそう自覚している。
そんな相手に似ていると言われても名誉であるとは言えないだろう。
「ただ、君の同行を許したのは魔界の内情に詳しいという話を信じたからじゃない。君が僕と同じ目をしていたからだ。
僕と妹から全てを奪った魔族を僕は絶対に許せない。君はどうだオデット? 君は一体何を許せないでいる?」
「そんな、私は…………」
否定しようとして言葉に詰まる。
ミリアのように復讐は無意味だとまでは思わないけれど、それでも復讐など考えたこともない。
ただこの身を蝕む呪いを何とかしたいだけ。
それは嘘ではない。
だが、本当の事でもないのかもしれない。
果たして本当に、あの時何も恨まなかったのか?
復讐を考えなかったというのは、誰も恨まなかったという事ではないのではないか?
同類は同類を知る。カウレスはオデット自身すら理解してない昏い炎を見抜いていた。
「……そう、ですね。私は許せないでいるのかもしれません。
けれど、それでも復讐を望んでいる訳ではないのです」
オデットは戦いは嫌いだ。
身勝手に戦う魔族たち(あいつら)のようになりたくなどない。
復讐だと言うのならば、そう生きることこそが彼女の復讐なのだろう。
頑なに人を喰らわなかったのも、諦めて死を選ばなかったのもそれ故なのかもしれない。
闘争を好む魔族らしからぬ性格となったのは人間との共存を願った父に育てられたからこそである。
オデットの父は人族と魔族の共存を願い、オデットもその願いの助けとなってきた。
だがそれは父の願いだ、彼女の願いは父に支えになることであり共存ではない。
父はそのために働き処刑までされた。
何故父が人間を助けようとするのか、オデットには理解できなかった。
人間界に落ち延びてからは、辛いだけの日々だった。
その地獄のような日々の中で美しく咲き誇る花を見た。
穏やかな日々を生きる人々の暮らしを見た。
人間界に落ち延びてから辛いだけの日々だったけれど、この世界で確かに美しいモノを見た。
父の願いが、今なら少しだけ分かるような気がした。
「私が望むのはこの大地の平和。
そこに嘘はありません…………それだけは信じてもらえますか?」
「ああ、君を信じよう。オデット」
空を見上げる。
そこには丸い月が浮かび、冴え冴えとした光が二人を照らしていた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板