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オリロワ2014 part3

125THE END -Somebody To Love- ◆H3bky6/SCY:2019/02/17(日) 23:40:14 ID:yyQSrX5o0
ユキを信じて三人は背後を気にせず中央目指して一直線に進んでゆく。
空が白み始めたこともあり、程なくして目的地である中央の扉までたどり着くことができた。

「ついた!」
「けど穴しかねぇぞ!?」

開かれた扉の先には、相も変わらず何もない空間が広がるばかりである。
だが、亜理子は、すぐさまそれを否定する。

「いいえ。何かあるわ」

探偵の洞察力は、注意深く観察しなければ見落とすような小さな変化を見逃さなかった。
扉のすぐ横に、最初に調べた時には存在しなかった窪みがある。
亜理子が屈みこみ、その周辺の泥を払う。
蓋を開けば、現れたのは8つ並んだ小さなスリットだった。
それを前にして亜理子が僅かに考え込む。

「……九十九さん、一つ聞いていいかしら?」
「な、なんです!?」
「解体した森茂の首輪は今どうしてる?」
「え、えっと一応お父さんの遺品(?)だし、ユッキーに渡しましたけど……」
「そう。なら問題ないわ」

その返答を聞くや否や、亜理子はスリットに向かってポットから取り出した何かを差し込んでいった。
一つ、二つ、三つと、リズムよく三つのスリットを埋める。

すると、奈落に続くような暗闇に変化があった。
水中から浮き上がる様に所々色褪せたクリーム色の四角い箱が姿を見せる。
妙に浮いていたチンという音が到着を知らせ、四角い箱の両開きの扉が開かれた、

「何か出たぁ!?」

驚きの声を上げる九十九を尻目に、亜理子が開かれた扉を躊躇うことなく潜り抜ける。
ロープも重りもない、むき出しの籠だけであったが、確かにそれは古びたエレベーターだった。

内部に侵入した亜理子は警戒を怠らず、罠の類がないか、くまなく観察を始める。
天上からは淡いライトの光が照っていた。
窓なんて気の利いたものは一つもなく、行先を示す表示はどこにない。
階数を指定するボタンすらなく、ただシンプルな開閉ボタンが存在するだけであった。
異様な雰囲気はあるが、少なくとも今すぐ爆発するような罠はなさそうである。

「大丈夫よ、二人とも早く乗って!」

言われて九十九と拳正が飛び込む様に乗り込んだ。
同時に亜理子は閉ボタンをプッシュした。低い音を立てながら扉が閉まる。
窓一つない空間は完全な密室となり、妙な息苦しさが中の三人に圧し掛かった。
これで外部の様子を知るすべは失われた。

足止めに残ったユキは無事だろうか。
一瞬、そんな心配が頭をよぎるが、そんな思考は足元に生じた浮遊感に打ち消される。
自分たちを乗せたエレベータが動き始めた。
これでもう、後戻りはできない。

「って何ですこれ!? どこに向かってるんです!?」
「さぁね。それを確かめに行くのよ!」
「ホントに大丈夫かこれ!?」

四角く区切られた小さな世界と共に運命が動き始めた。
窓一つない箱の内側にいる彼らが気付くべくもないが、外側から見ているユキは確かに見た。
空に向かって伸びる光の柱を。

明るみ始めた薄墨の空。
柱の中をエレベーターがロケットのように昇ってゆく。
このエレベータは地に沈むための物ではなく、天に至るための翼だったのだ。

彼らが向かうは最後の敵(ワールドオーダー)が待つ、最終決戦の舞台。


すなわち――――――――月へと。


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