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オリロワアース

338それはそれとしてハンバーグが美味い ◆5Nom8feq1g:2015/07/05(日) 12:53:54 ID:DI5rAcGg0
 
 ヘイス・アーゴイルは武器を売った。自作の武器を売って売って売った。
 人間に売った、魔族に売った、勇者に旅人に、町人に武人に、
 光の者にも闇の者にも、分け隔てなく売った。
 安く売った。

 最初は自分の武器によって争いを起こすためだった。
 高村和花という魔法少女とマスコットの合いの子がどこかの世界でされていたように、
 人間と魔族の合いの子であるヘイス・アーゴイルはどちらの種族にも属せず、差別されたからだ。

 こんな世界は滅んでしまえと思った。
 だから作って、売った。命を奪うための剣を槍をメイスを鞭を爆弾を、売った。
 父は鍛冶屋で、母は商人だった。
 魔王軍のいわれなき殺戮でどちらも喪ったが、
 おかげでヘイス・アーゴイルは武器と防具の開発は得意分野であったから、良い武器はすぐ作れた。

 安く売った武器によって殺し合いが起こった報を聞くことが、彼の百年物の趣味だった。

 悪魔王は討たれたが、ヘイスの世界では今も争いが続いている。
 下等獣人による民族自決のテロ。悪魔王により抑制されていた魔族による人間への本格的な復讐。
 巨悪との一対一の戦争だった時代に比べると、散発的な戦闘しか起こらない今の環境は
 少しやり辛い側面もあるが、ヘイスのスタンスとしてはあまり変わらない。
 いつも通り戦闘のあるところに安く武器を送り届け、戦闘を誘発させるだけである。

 だがサン・ジェルミ伯爵――あの男についに感づかれたということだろうか。
 いつも殺し合いの引き金を引く手伝いをしていただけのヘイスは、
 ついに殺し合いの真っ只中に放り込まれることになったのだった――。


「それはそれとして、ハンバーグが美味い……」


 デパートの最上階、レストラン街の一角にあるハンバーグ専門店。
 カタギリハナコという少女と出会い、別れたヘイス・アーゴイルは、現在ここでハンバーグを食していた。
 その表情は喜色満面、どこからどうみても、のほほんとハンバーグを楽しむ気のいいおっさんにしか見えない。
 というか……実際ヘイスはしみじみとハンバーグの美味しさに酔いしれているのだった。

 いやだってしょうがないでしょう、美味しいんだもの。

「肉をミンチにし、卵などで繋いでナツメグを加え、鉄板で焼く……こんな簡単な料理だというのに……。
 火の通し方ひとつで虹色の味の変わり具合も魅せてくれるし、最高ではないか……。
 これが『異世界の料理』というやつか、素晴らしいな。いや本当に素晴らしい……5皿も食べてしまった」

 アースFでは肉料理といえばローストしたチキンか丸焼き、
 あるいはステーキ、たまに煮込みなどがほとんどで、
 わざわざ肉をミンチにしてからそれをこねて焼くという発想はなかった。
 ハンバーグという名の料理は、ヘイスにとっては初めての体験だったのである。

 幸いハンバーグ専門店のキッチンにあったレシピ表は見ることが出来たし、
 道具作りに適性のあるヘイスに異界の料理道具を扱うことは非常に容易かった。
 方針を考える前にまずは腹ごしらえから、と考え付いて直行したレストラン街だったが、
 予想以上、ある意味予想外にハンバーグの魅惑の味に嵌ってしまったヘイス・アーゴイル。

「とりあえず隣のうどん屋とやらにも行ってみよう」

 隣のうどん屋に行ってみようとするのを止められる者はいなかった。



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