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変身ロワイアルその6
249
:
探偵物語(涼村暁編)
◆gry038wOvE
:2014/11/03(月) 14:32:04 ID:3afmAm6s0
「誰だってそうだ。意志があってもできない事はある。俺も……」
「……あんたにもあるのか?」
「ああ。父のような人も、同僚も、師匠も、兄弟子も、仲間も、親友も、先輩たちも、未来の後輩も──俺にはこの手で守れなかった命がいくつもある」
一也は、スーパー1として戦った日々を少し回想した。そして、このバトルロワイアルで喪った仲間たちの事も浮かんだ。
あの無力の痛みが一也の拳にもまだ残っている。
仮面ライダーは、決してここで全ての人間を救えていない。しかし、一人でも多くの命を守るために彼らは戦った。本郷猛も、一文字隼人も、結城丈二も、村雨良も、五代雄介も、一条薫も、フィリップも、照井竜も──。風見志郎も、神敬介も、アマゾンも、城茂も、筑波洋も、門矢士も、鳴海壮吉も、火野映司も──。
その生き様に恥じぬよう、一也はこれからも仮面ライダーとして、一人でも助け出すために戦うだけである。
たとえ、誰も助ける事ができなくても、助ける為に戦い続ける──それが力を持った宿命である。
「良牙。……俺から言える事は何もねえ。
もしかしたら、俺よりもお前の方がずっと仮面ライダーらしいかもしれないからな」
翔太郎も、そう言った。少し前までしょげていた翔太郎とは顔色が違うと、良牙はすぐに見抜いた。
彼もまた、フィリップという仲間を失い、しばらく茫然自失の状態だったのだ。
「俺たちは、仮面ライダーである以前に人間だ。
Nobody’s perfect──完璧な人間なんていやしない」
翔太郎の胸の中に在るその言葉は今も、時として彼を慰める。
戦い疲れた仮面ライダーの心に、師匠から受け継いだその言葉は今も何よりの癒しになるのだ。
「たとえ誰かを守れなかったとしても、お前は立派に仮面ライダーだったさ」
◇
「……サラマンダー男爵によると、ここに永住しても問題なく食料に不便はないという話だ。
だけど、ここで永久に生活しようって思ってる奴はいるか?」
零が、他の全員に訊いた。この情報は既に全員に行き渡っているので、改めて確認の為にそう口にしたのだった。肯定する者はここにはいなかった。
勿論、いるはずはない。
ここにいる者には、ドウコクも含めて帰るべき世界、帰るべき場所があるはずなのだ。
「……じゃあ、決まりだな」
「異存はありません」
決意は胸にある。
恐怖も胸にある。
しかし、元の世界に帰るためには、そこへいかなければならない。
それに、ここで倒れた人間の為にも、これからこのように殺し合いに巻き込まれるかもしれない人間の為にも、戦わない時が近づいているのがわかった。
十五人。
兵力としては、あまりにも少ない。これで戦えるだろうか。
ほとんどの人間の胸には、焦りと不安が湧いていた。まるで特攻にでも向かうような心境である。手が震えているのは止まらない。言葉も零のように発せない物もいるかもしれない。
「行こう、みんな────ガイアセイバーズ、出動!」
孤門一輝が喉の奥の震えを押し殺して、そう叫んだ。
──そんな中、石堀光彦だけは内心、薄気味悪く笑っていた。
To be continued……
◇
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