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中学生バトルロワイアル part6

515スノードロップの花束を  ◆sRnD4f8YDA:2015/10/12(月) 17:20:40 ID:lhrTcDrE0
まるで落ちる光の残滓に染められた様に、積乱雲の輪郭は藤色にぼんやりと輝いている。
雲達はじっと見ていないとわからないくらいにゆっくりと、重なり合う様にして空を泳いでいた。
その向こう側には、鈍く白銀に光る小さな小さな一番星が見える。
闇が、宙から降りてこようとしていた。日が暮れようとしていた。血濡れた1日が、終わろうとしていた。
森が、廃墟が、街が、海が。暗く、質量のある静寂に沈んでゆく。息を吸うと、胸が詰まりそうだった。
吸い込まれそうなくらい漆黒に染まった影と、深海の様に暗い藍色の闇が満ち、世界は緩やかに夜に抱擁されてゆく。

―――夜が、来る。

少女は静かに、“瞼の裏側で”瞼を閉じる。闇に誘われる様に、黒い何かが二枚目の瞼の裏側で騒いでいた。
それはざわざわと草叢を蟒蛇が進む様な、百足が蠢動する様な、気味の悪い音。
言うなればある種の予感の様なものであり、別の名前を“不安”と言った。

不安は、化け物だ。
人の心を食う邪鬼だ。やがてそれは心から、じわじわと水が岩を浸食してゆく様に、表情と言葉に浮き上がる。
闇は恐怖の権化たり得て、転じて不安となる。そして何よりげに恐ろしきは――――――不安は“伝染”する、という一点に尽きた。
まさに、今の彼女達のように。


「どうしますか」


紫がかった黄昏色に染まったフードコートの中、キッズコーナーのソファにとりあえず逃げてきたものの、荒々しい息と共に浮かぶ一抹の不安。
縦の木ルーバーの入ったテラス席越しの窓ガラスを背に座り込み、誰も彼もがその顔に黒い影を落とし、口を噤む。
そこに水を打つ様に浮かんだ一言が、それだった。
杉浦綾乃はその声がする方を見る。口を開いたのは初春飾利だった。彼女が先ず、立ち込めていたその暗雲を振り払う為にそう切り出したのだ。
……いや、違う。違った。
何故って、それは明確な意思が裏に潜んでいる様な、僅かなしこりを感じさせる様な声色だったのだから。
その言の葉には、棘こそあれど疑問符が無かったのだ。
少なくとも飴玉を転がす様な、なんてメルヘンチックな例えはその声からは想像できないであろう事は、一度聞けば誰にでも理解できる。

「……確認するけど、それは“や”りたくないって意味?」

式波・アスカ・ラングレーは僅かに初春の言葉に口をへの字に曲げたが、やがて肩を竦めながらそう尋ねる。
それらの言葉が言わんとする意味は、ただ黙って聞いていた綾乃にも理解出来た。
詰まる所、問題は一つ。彼女達は明らかな殺意を持って此方を追う“敵”をどうするのか、その意思統一を計っていなかったのだ。
自分達ではあの水の異形には敵わない。だから逃げるか、助けを待つ必要がある。それが三人の共通の結論だった。
しかしそれでも“最悪”と、“これから”は考える必要があるのだ。
“もしも助けが来なかったら”。“もしも見つかったら”。“逃げられない状況で同じ事になったら”。
可能性だけ並べればそれこそ幾らでもあるうえ、仮に誰かが助けに来たとして、敵と戦って“どうするのか”。

とどのつまり、一言で言えば彼女、初春飾利は“敵を殺すのか”と二人に訊いているのだ。


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