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新西尾維新バトルロワイアルpart6

38かいきバード ◆wUZst.K6uE:2013/07/30(火) 22:22:28 ID:gkHsMIYk0
 幸いそれも、記録辿りによって用途を確認することに成功した。ただしその内容は、投与しただけで「天才」を「凡人」に改変してしまうという、実に眉唾くさい代物だったが。
 貝木の持ち物のうち、不要と思しきもの(地図や名簿など)を除いたすべて支給品を自分のデイパックへ移し変え、さらに今更ながら貝木の死体を検分する。しかし見つかったのは懐の中に入っていた紙幣と硬貨くらいで、めぼしいものは発見できなかった。
 地面に散らばっているスマートフォンの残骸にも少し目を向けたが、それは無視しておくことに決めた。あの状況で優先して破壊するほどのものだったのかと少し気にはなったが。
 念のため、貝木の身に着けている衣服などに対しても記録辿りを行使してみたが、得られた情報はデイパックを読んだときと大差なかった。
 ただひとつ、少しだけ不可解に思うことがあった。
 あの橙色の怪物と対峙する前、破壊される直前の建物と、その付近にあった自動車の記録を読み取ったときにも感じた違和感。
 と言うよりは、この殺し合いの中において忍法記録辿りを行使するたびに必ず、その違和感はあった。
 この場に用意されている物からは、すべて「新しい記録」しか読み取ることができない。
 デイパックを含めすべての支給品、建物、さらに衣服の類ですら、その性質や用途はおおまかに読み取ることはできるものの、ここ数日以前の記録がまったく存在しない。
 たった今読み取った誠刀・銓にしてもそうだ。それが本物の完成形変体刀であるということは理解できるのに、戦国の時代を渡り歩いたはずのその刀から、何の歴史も辿ることができない。
 まるで。
 まるでここに存在しているすべてのものが、例外なくこの殺し合いのためだけに作り出されたものであるかのように。

 「…………やめておこう。これ以上、余計なことを考えるのは」

 鳳凰はデイパックを静かに地面に置くと、瞑想するかのように両の目を閉じる。

 「いらぬ雑念に囚われているから、こんな口先だけの輩につけこまれるのだ――我はもうこの先、誰の虚言にも踊らされぬ。迷いも油断も慢心も、この場ですべて消して失せよう」

 そう言うと鳳凰は、右腕を天へと向けて高々と振り上げる。
 そして竹取山で匂宮出夢の死体にしたのと同じように、その右腕を貝木の死体めがけて力の限り振りかざした。
 《一喰い》(イーティングワン)。
 破壊というよりは、それは爆砕。
 力の制御が利くようになったはずのその右腕は、しかし出夢の死体のときより荒々しく、そして圧倒的に貝木泥舟の死体を爆砕した。
 血も肉も骨も、すべてを霧散させんばかりの一撃。
 デザートイーグルの威力など、まるで霞んでしまうような人外の破壊力。
 地面深くまでめり込んだ右腕を引き抜き、血振りをするようにぶん、と振るう。
 先ほどまで貝木がいたはずの場所には、千々に弾け飛んだ肉片と、申し訳程度に破壊を免れた貝木の身体、そして重機で掘削されたかのようにざっくりと抉られたアスファルトが残されていた。

 「――これより我に迷いなし。ここに存在する全ての者を皆殺しにし、我の悲願を成就させる。それこそが我の進むべき唯一の道」

 そのためなら我は、奈落にでも堕ちよう。
 そう宣言した鳳凰の目には、もはやこの世のものとは思えないほどの深い覚悟が宿っていた。
 闇のように深く、底知れない覚悟が。

 「随分と時間を食ってしまったな……まあ急ぐ道理もあるまい。ゆっくりと確実に、一人ずつ消していけばよいだけのこと。派手に動いて周りに警戒されるのも好ましくない」

 言いながらデイパックの中に手を差し入れる。
 すでに所持品の数が尋常ではなくなってきているが、それがマイナスになるような真庭鳳凰ではない。もたつく様子もなく、すぐに目的のものを中から取り出す。
 数刻前に西東天から鳳凰の手に渡った支給品、首輪探知機。
 現在の区域であるE-7内に反応はないが、ここからF-7までは目と鼻の先だ。境界をまたげば、また誰かの名前を見つけることができるやも知れぬ。ついでに図書館とかいう場所を探索しておくのもよいか――
 そんなふうに行動の指針を決め、首輪探知機を片手に歩き出そうとする鳳凰。
 が、そこで何かを思い出したようにはたと足を止める。


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