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一時投下・試験投下専用スレッド
1
:
◆rNn3lLuznA
:2011/07/07(木) 01:09:30 ID:RxAqN9RE
「少し危険な要素を含んでいるので、一度皆に見て欲しい」
「誤字や脱字などの修正箇所があるかもしれないから、試しにこっちに投下してみよう」
「放送案が完成したので見てください」
以上のような理由で、本スレに投下する予定の作品を一時的、試験的に投下するためのスレッドです。
2
:
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/07(木) 21:58:16 ID:o6mPU8Ew
ナナリー・ランペルージ、ロロ・ランペルージ仮投下します。
ちょっと制限等で気にかかる点があるので、まずは様子見です。
3
:
「弟/妹・得た者/失った者」
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/07(木) 21:59:18 ID:o6mPU8Ew
足場が決して良いとはいえない、歩行に難がある山間部。
ましてや車椅子の身において、それはこれ以上ない障害といえるだろう。
「酷い……こんな事って……!!」
そんな過酷な状況下で、ナナリーは一人静かに涙を流していた。
盲目なれども、先程の広場で起きた惨劇はしかと聞いた。
アカギの無慈悲な声を、オルフェノクと名乗った男の悲痛な叫びを。
目の前で、一つの命が無残にも奪われたのだ。
その残酷な所業に、ナナリーは心の底から涙していた。
そして……悲劇は、再び起ころうとしている。
『殺し合い』という名の、罪無き命の奪い合いが。
その事実に、ナナリーは悲しみ……怒りを感じていた。
『……どうするつもりだ、ナナリー?』
嘆きの声を漏らすナナリーへと、傍らに立つ騎士―――ネモが問いかけた。
彼女は、ナナリーが持つ負の感情を共有する、つまり分身とも言える存在。
故に、その悲痛な気持ちは十分に理解していた。
その上で……その上で、敢えて彼女は問いかけたのだ。
これより多くの地に染まるであろうこの戦場で、ナナリーは何を望むのか。
己は、ナナリーの騎士として何を叶えればよいのかを。
その覚悟を、確かめるために。
4
:
「弟/妹・得た者/失った者」
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/07(木) 21:59:55 ID:o6mPU8Ew
「……あなたはもう一人の私自身。
答えなんて、分かっているんでしょう……?」
主催者達への、反逆の狼煙をあげる為に。
『ああ……お前の望みは、戦場に赴き全ての暴力を排除すること。
その為に行使されるのが、ギアスの力だ……ならば』
「ええ……私は、この殺し合いを止めたい。
だから、ネモ……力を貸して……!!」
ナナリー・ランペルージ……ナナリー・ヴィ・ブリタニアは、今ここに誓った。
この殺し合いを、必ずや止めてみせると。
◇◆◇
(分からない……一体、何がどうなっているんだ?)
微かな風と小川の流れる音が支配する、静かな山間部。
ロロ・ランペルージは、剥き出しとなった岩肌に背を預けながら、この奇異な現状について思案していた。
彼はつい先ほどまで、兄ルルーシュの命により政庁へと侵入を果たしている筈だった。
そして……兄の唯一である家族となるべく、ナナリーをその手で殺害しようとしていた筈だった。
だが……現実はご覧の有様だ。
気がつけば自身は見知らぬ闇の中に立たされ、そしてあのホールに身を移されていた。
殺し合いを強要する謎の男―――アカギが支配する、あの異様な空間にだ。
(……自分でも気がつかない間に移動させられていた。
まさか……ギアス能力か?)
この摩訶不思議な現状を説明できるものがあるとすれば、ギアス能力ぐらいしか思いつかない。
つまり……あのアカギという男が、何かしらのギアスを用いて招集をかけたのではないだろうか。
そう考えれば、いつの間にか見知らぬ場所に立たされていたというのも……一応の説明は着けられる。
5
:
「弟/妹・得た者/失った者」
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/07(木) 22:00:23 ID:o6mPU8Ew
(でも……だったら、あの化け物は何だったんだ?)
しかし、ギアスの仕業として片付けるには、腑に落ちない点も幾らかあった。
その一つ目が、あのオルフェノクと言う異形だ。
あんな文字通りの『化け物』は、今までに見た事も聞いた事もない。
一応人にあらざる存在という意味であれば、C.C.やV.V.といった例もあるが……
少なくともロロには、オルフェノクはあの二人ともまた違う、もっと別の何かに見えていた。
そして、幾らギアスの力でも、あの様な姿に変身する事が出来るとも思えない。
(それに、あの男が言っていた言葉……)
そして、もう一つ。
アカギがホールで口にした、妙に意味深な言葉がある。
―――君たちはこれから行われる『儀式』を完遂するために、数多の時間、空間という可能性宇宙のひとつひとつから選び出された戦士たちなのだ。
(あれは……どういう意味なんだ?)
ロロには、あの言葉の意味がいまいち理解しきれていなかった。
己を大きく見せる為のハッタリ、虚飾だろうか……否。
それで片づけるには、あの男の言葉にはどこか凄味があった。
嘘は無いと、そう断言できるだけの何かが感じられたのだ。
そうなると、やはり何か……かなり大きな意味があるとしか思えない。
問題は、それがどういう事なのかだ。
(参ったな……こんな時、兄さんならパッと答えを出せるのだろうけど……)
ここに切れ者の兄がいてくれたなら、こんな難問もすぐに解いてくれるだろう。
いや、それどころかあのアカギという男の企みだって看破してくれるに違いない。
そう考え、ロロは思わず頬を緩めてしまうが……即座に、顔を引き締めた。
ある事実……自分以外の参加者という点に、気がついたからだ。
6
:
「弟/妹・得た者/失った者」
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/07(木) 22:00:43 ID:o6mPU8Ew
(そうだ……兄さんは?
まさか、兄さんまでこの殺し合いに参加させられているんじゃ……!!)
もしもアカギが、ロロの予想通りにギアス能力者だったとしたら。
あの時、すぐ近くで戦闘指揮を執っていたルルーシュが巻き込まれていたとしても、不思議はない。
だとしたら……これはロロにとって、由々しき事態となる。
何としても、兄を救わなければならない。
大切な兄を守り抜かなければいけない。
そんな焦燥に駆られながら、ロロはデイパックを開く。
見たところ、中には銃をはじめとする幾らかの品があるが、彼はそれらに目もくれずある物へと手を伸ばした。
それは、全参加者が記されているという名簿だ。
ここにルルーシュの名前があるかどうか。
すぐさま確認の為、開こうとした……その瞬間だった。
「……え……?」
ふと、警戒の為に視線を向けた、その先に……
「まさか、あれは……?
間違いない、ナナリー……!!」
これより殺害しようと目論んでいた標的―――ナナリーを見つけたのは。
◇◆◇
(……未来線が、読み取れないだと……?)
7
:
「弟/妹・得た者/失った者」
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/07(木) 22:01:10 ID:o6mPU8Ew
殺し合いを止めると決意をした、その少し後。
ネモは、自身の……否。
ナナリーの身に起きているギアスの異常に、眉を細めていた。
彼女のギアスとは、あらゆる事象の世界線を積分することによって、未来に起きる出来事、その結果を知る能力。
そして彼女達は、それによって戦場を未然に察知し、争いへの介入を果たしてきた。
だが……今、そのギアスに異常が起きている。
「ネモ……どうしたの?」
『……ナナリー、由々しき事態だ。
ギアスの力が、正常に行使できなくなっている……アカギの位置が見えない』
ネモはまずこの殺し合いを止める第一手段として、争いの源―――アカギの位置を探りにかかった。
クロヴィスの時と同じ様に、『戦場を支配する未来線の発生源』たる主催者の居場所をギアスで読もうとしたのだ。
しかし……試してみたところ、実に奇妙な現象が起きた。
まるで、ナナリーのギアスを拒絶するかのように……未来線が、一本たりとも現れなかったのである。
『それに、それだけじゃない……未来が鮮明に見えなくなっている。
まるで靄がかかったかの様に、ビジョンがぼやけている……やられた。
アカギめ……私達の力に何か細工をしたな……!!』
そして、未来の予知も正常な形で働かなくなっている。
見えることには見えるのだが、極めて断片的な、不鮮明な映像でしか見る事が出来なくなっているのだ。
これでは、一体未来に何が起ころうとするのかをはっきり把握することが不可能だ。
「ギアスに細工を……そんな事が出来るの?」
『現に、私達の力はこうして封じられているんだ。
そう判断するしかない……この儀式とやらを円滑に進める為だろうな』
確かにアカギの立場からすれば、ナナリーの持つギアスは極めて危険だ。
殺し合いを打破する最大の切り札足りうる力なのだから……力の封印・制限は当然の事といえる。
8
:
「弟/妹・得た者/失った者」
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/07(木) 22:01:42 ID:o6mPU8Ew
だが、だとしたら……アカギはとてつもなく恐るべき力を有する事になる。
ギアスとは即ち、万物の根源たるエデンバイタルへとアクセスし、世の持つ理を捻じ曲げる力だ。
それをこの様に、己が都合が良い様に制限できる……つまり。
(アカギは……エデンバイタルの力を自在に引き出せる。
世界の理すらも自在に操る力があると言うのか……?)
それはまさに、神の所業ではないか。
こんな馬鹿な話など、認めたくはないが……しかし、そう考えれば納得できる部分も多い。
―――自分達が僅か一瞬にしてあのホールに転移させられたことも。
―――オルフェノクという謎の化け物の存在も。
―――無限の可能性宇宙から、自分達を選び出したという言葉も。
(……だが……気がかりはまだ、もう一つある。
あの、オルフェノクという怪物が倒された瞬間……)
そして、アカギから感じる不気味さはそれだけではない。
あのオルフェノクという怪物が、吹き飛ばされた瞬間。
僅か一瞬、辛うじてというレベルだが……ネモは確かに見ていた。
(あの影……アレが、アカギの力の源か……?)
何か巨大な……『二つの影』が、アカギの背後にいたことを。
『…………』
「あの……ネモ?」
そんな考えを張り巡らせるネモに対し、ナナリーは思わず声をかけてしまった。
自分のすぐ横で、仏頂面でいきなり黙られたら、話すなという方が無理な話だから仕方ない。
9
:
「弟/妹・得た者/失った者」
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/07(木) 22:02:09 ID:o6mPU8Ew
『ん、ああ……すまない。
少し考え事をしていた……そうだ、ナナリー。
先程見えた未来線の事を告げなければならなかったな』
ネモもナナリーの言葉からそれを察し、謝罪をする。
そして、気持ちを切り替え……彼女へと口を開く。
先程見えた、断片的な未来線について話す為に。
『……気をつけろ。
どんな相手が来るか、どんな手段で来るかなど、はっきりとした形では見えなかったが……
すぐ近くに、お前を狙っている奴がいるようだぞ』
◇◆◇
(ナナリー……まさか、君までここにいるなんてね……)
不幸中の幸いとでも言えばいいのだろうか。
ロロは、ナナリーの姿を見つけられた事を心から喜んでいた。
一番……一番殺したい相手が、目の前に現れたのだから。
(……ナナリー……兄さんの家族は、僕だけでいいんだ)
ロロはゆっくりと、支給品の銃―――デザートイーグルを構えた。
幸い、まだ向こうはこちらに気づいていない……狙撃するには十分。
もっとも気づかれたところで、相手は車椅子のナナリーだ。
ここが荒地という事も手伝って、銃弾から逃れられる訳がない。
時を止めるギアスを使うまでも無い……全て一発で形がつく。
10
:
「弟/妹・得た者/失った者」
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/07(木) 22:02:36 ID:o6mPU8Ew
(兄さんと一緒にいられるのは……僕だけなんだ……!!)
その瞳に、強い殺意を漲らせて。
ロロは躊躇う事無く引き金を引いた。
銃弾は、ナナリー目掛けて真っ直ぐに突き進む。
そして、その脳天に風穴を……
――――――ゴオォォォォォッ……!!!
空けることは無かった。
「え……!?」
ロロは、我が目を疑った。
放たれた銃弾は、ナナリーへと命中するその寸前で……阻まれたのだ。
彼女を守るかのように、地より出現した……巨大な腕に。
『いたぞ、ナナリー……こいつだ。
こいつが、お前の命を奪おうとした男だ』
否、現れたのは腕だけではない。
巨大な頭部、胴体、両脚……全身を構造する全て。
11
:
「弟/妹・得た者/失った者」
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/07(木) 22:03:01 ID:o6mPU8Ew
「まさか、ナイトメアフレーム……!?」
異形の姿を持つ……ロロが知らぬ、謎のナイトメアだ。
「ッ!?
ナナリーが、あのナイトメアフレームに……!!」
次の瞬間、ナナリーの肉体はナイトメアフレームの内部に取り込まれていた。
否、ナナリーが乗り込んだといった方が正しいだろう。
彼女専用の機体にして、エデンバイタルの魔神―――マークネモに。
「そんな……何がどうなっているんだ?
どうしてナナリーが、ナイトメアフレームなんかに……!!」
ロロは、とにかく驚愕するしかなかった。
何も無い空間より、突如として異形のナイトメアフレームが出現したことに。
そのナイトメアに、ナナリーが乗り込んだことに。
何の力も無い、非力な筈のナナリーが……闘う力を手にしていることに。
『お前……殺し合いに乗ったのか?』
異形のナイトメアより、呼びかける声が聞こえてくる。
それは間違いなくナナリーの、しかし彼女とは思えぬ凛々しさが宿る声だった。
少なくとも、ロロにはそう感じられた。
(……いけない、落ち着くんだ。
想定外の事態だからこそ、慌てずに対処しないと……兄さんに怒られちゃう)
兎に角、ここは冷静に対処しなければならない。
慌てれば相手の思う壺ではないか。
少々失礼な言い方にはなるが、想定外の事態がどれだけ窮地を生むかは、兄を―――黒の騎士団を見てきて、分かっているのだから。
それこそ同じ失敗を繰り返してしまったら、兄にどやされてしまう。
12
:
「弟/妹・得た者/失った者」
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/07(木) 22:03:34 ID:o6mPU8Ew
「……違うよ……僕は、あんな男の言いなりになるつもりはない」
小さく深呼吸をして、気持ちをやや落ち着かせた後。
ロロは相手の問いかけに、静かに答えた。
殺し合いには乗らない……と。
その理由はただ一つ、兄の存在があるから。
兄は黒の騎士団総帥として、弱き者を助ける正義を行ってきた。
だからこの場においても、きっとアカギを討つべく動いているに違いない。
そして、必ずアカギの野望を打ち砕くだろうと信じている。
だから自分も、それを横で支え助けていく……殺し合いには、絶対に乗らない。
『だったら、何故私を……ナナリーを狙った!』
「そんなの……決まってるじゃないか」
だから……兄の隣には。
ルルーシュ・ランペルージの隣には、自分がいなければいけないのだ。
ナナリー・ランペルージじゃなく……ロロ・ランペルージがいなければならないのだ。
「兄さんの側にいていいのは……君じゃない、僕なんだから!!」
◇◆◇
『姿が……消えた!?』
瞬きを一回する程の、本当に僅かな一瞬だった。
あの男はつい今しがたまで、確かにマークネモの前にいた。
それが、いつの間にか姿を消しているのだ。
しかもネモには、その気配を……行動の未来線を、まるで読めなかった。
13
:
「弟/妹・得た者/失った者」
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/07(木) 22:04:04 ID:o6mPU8Ew
―――ズドンッ!!
直後、轟音と共にマークネモの全身を振動が駆け巡った。
発生源は、後方……右脚。
『後ろッ!?』
即座に視線を向け、状況を確認する。
するとそこには、右足の付け根―――装甲に覆われていない間接部に銃口をねじ込んでいるロロの姿があった。
如何に威力のある拳銃とはいえ、普通に撃ったのではナイトメア相手にダメージを与えることは出来ない。
しかし……防御の手薄な間接部ならば、可能性は見えてくる。
ロロはまさに、それを狙ったのだ。
『クソッ……舐めるな!!』
すぐさまマークネモは、足元目掛けてスラッシュハーケンを射出。
ロロを切り裂き貫かんと、刃の狙いを定め……そして。
刃は、空を切り地面に突き刺さった。
『こいつ、また……!?』
またしても、姿が消えている。
行動の未来線も、まるで見えなかった。
『まさかこいつ、河口湖の奴か……!?』
以前にも一度だけ、これとよく似た闘いを経験した事がある。
河口湖で遭遇した、ブリタニアのギアスユーザーとのナイトメアフレーム戦だ。
あの時の相手は、未来線を読むよりも更に速いスピードで攻撃を仕掛けるという離れ業を使い、マークネモを追い詰めてきた。
そして目の前にいる相手も、未来線を読む事もさせず、いつの間にか位置を移動している。
もしや、あのギアスユーザーは……この男ではないだろうか。
14
:
「弟/妹・得た者/失った者」
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/07(木) 22:04:42 ID:o6mPU8Ew
―――ドゴォンッ!!
『ッ……!?』
刹那。
マークネモの右脚ランドスピナーより、炎が上がった。
地面は捲れ、煙が巻き起こっている……爆発物、それもかなり威力があるモノによる攻撃だ。
ランドスピナーが、一部吹き飛ばされている……!!
『こいつ、何を……ハッ!?』
直後、ネモは己に向かう攻撃の未来線を読んだ。
それはマークネモの右側より、放物線を描き向かってくる。
『流体サクラダイトだと!?』
正体は、ロロが放り投げた流体サクラダイト。
そして、その中心目掛けて放たれる一発の銃弾だ。
『クッ……!!』
とっさに、マークネモは地を蹴り左へと跳躍。
それに僅かに遅れて、強烈な爆発が起こった。
先程右足を襲ったのも、これと同じもの……流体サクラダイトの爆発だ。
同じサイズの手榴弾よりも、数倍の威力はあるだろう。
もしまともに直撃していたなら、右脚のランドスピナー同様大きなダメージを受けていたに違いない。
『クソッ……舐めるなぁぁっ!!』
ナイトメアフレーム―――それも通常のソレより遥かに強力なマークネモに対して、相手は生身。
まともに戦えるわけが無いと思い、油断していた。
だが、実際に押されているのは寧ろ自分達の方ではないか。
15
:
「弟/妹・得た者/失った者」
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/07(木) 22:05:20 ID:o6mPU8Ew
その原因はひとえに、相性の悪さにある。
ナナリーとネモのギアスは、相手の未来線を読む力。
それにより、敵の次なる行動を予知して対処できる事こそが強みである。
しかし……ロロのギアスは、その未来線を彼女達に一切読ませる事無く、彼の行動を可能にするものなのだ。
ネモはロロこそが、河口湖でかつて戦ったギアスユーザー―――ザ・スピードのアリスと考えているが、それは違う。
ザ・スピードは、加重力により相対的に超加速を得る、まさしく名前通りのギアスだ。
しかしロロのギアスは、そもそも加速とは全く関係が無い別物である。
何故なら、彼のギアスは……
(もう一度……時を、奪う!!)
相手の体感時間を止める……時を奪うギアスなのだから。
◇◆◇
(いける……幾ら性能の高いナイトメアでも、乗ってるのは人間なんだ。
なら、僕のギアスで動きを止めて……攻撃を仕掛ける隙を作れば……!!)
ロロはここまで、マークネモに対し生身であるにも関わらず、優勢を保っていた。
ギアスを用い相手の時を奪う事で、翻弄し続ける事に成功しているからだ。
加えて、支給品が威力の高いデザートイーグルと、流体サクラダイトというのも大きかった。
ナイトメア相手でも、この二つならばダメージを与えることは可能だ。
そして彼自身は知らぬ事だが、このギアスはネモ達を相手取るには抜群に相性が良かった。
如何に未来線を読むギアスとはいえ、止められた時間の中ではそれも読めず、そこで起きた行動も察知できないのだから。
(……後は……間接部に攻撃を集中させて……流体サクラダイトの爆発で……ぐっ……!!)
しかし……ロロもまた、戦いの中で大きな負担を抱えていた。
時を奪うギアスが持つ欠陥……それは、ギアスの発動中にはロロ自身の心臓も停止するという代償だ。
その負担は、ギアスを広範囲で使ったり、長時間使う事によって度合いを増していく。
尤も、ここまでの使用頻度ならば、然程の負担にはならない筈なのだが……
16
:
「弟/妹・得た者/失った者」
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/07(木) 22:05:51 ID:o6mPU8Ew
(……おかしい……いつもより、体にかかる負担が……大きい……!?)
今、ロロが感じている負担はその倍以上だった。
まるで、何度も連続して時を止め続けたかの様な……そんな辛さが、彼の身を襲っていたのだ。
その原因は、ナナリー達と同じくアカギの介入―――ギアスの能力制限だ。
ロロのギアスもまた、殺し合いを優位に進められすぎる能力に他ならない。
そこで、体にかかる負担の倍増という形で制限が設けられているのだ。
『クソッ……舐めるなぁぁっ!!』
(……考えている暇は、無いか……!!)
ネモの咆哮が耳を劈くと共に、その手の刀が横薙ぎに振るわれようとする。
まともに人間が直撃を受ければ、即死は免れない一撃だ。
だが、ロロは臆せず……すかさずギアスを発動させ、回避にかかる。
(もう一度……時を、奪う!!)
ロロの右目より放たれる、赤い光の領域。
それに捕らわれた瞬間、マークネモの動きがピタリと止まった。
操縦者であるナナリーとネモの時が奪われた証拠だ。
その隙を狙い、ロロは素早く前方の股下へと転がり込む。
(ギアス解除!!)
そして、銃口を再び右脚の間接部へねじ込むと共にギアスを解除。
更に引き金を連射し、銃弾を叩き込んでいく……!!
―――バキィッ!!
『しまった……!?』
右脚部より聞こえた音―――破損音に、ネモは狼狽して声を上げた。
ここまでロロは、全ての攻撃を右脚部へと集中させてきた。
理由は二つある……一つは、ナイトメアフレームの硬い防御を突破するには、一点集中攻撃しかないと判断したから。
そしてもう一つが、その機動力を奪うためだ。
ランドスピナーとハーケンスラッシュによる高速機動が売りのナイトメアにとって、脚部の破損はかなりの深手になる。
それを今、ロロは成功させたのだ。
17
:
「弟/妹・得た者/失った者」
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/07(木) 22:07:00 ID:o6mPU8Ew
(これで、このナイトメアは自由に動けない……残っているサクラダイトの数は、後二つ。
狙いは左脚と、ナナリーが乗っているコックピットブロックだ……!!)
そして次の狙いは、残るもう一方の脚……そして、急所のコックピットブロックだ。
両脚を奪い完全に機動力を失わせたところに、流体サクラダイトの爆発を叩き込みナナリーを吹き飛ばす。
ここまで、状況は完全に思うがままに進んでいる。
もしもルルーシュがこの場にいたなら、確実にこう言っただろう。
条件は、クリアされた……と。
『この……!!』
負けじと、マークネモが刀を振り上げた。
しかし、大振りすぎる……隙だらけにも程がある攻撃態勢だ。
これでは「攻撃を避けてください」と言わんばかりのものではないか。
当然、ロロもそうする。
ギアスを発動させ、ネモの時を奪いマークネモの動きを停止させる。
そして、その隙に刃の外へと逃げ……
「無駄だよ。
何度攻撃したって、このギアスがあるかぎ……り……!?」
ギアスを解除し、刀が打ち下ろされた瞬間。
ロロの視界は、茶色の波一色に染まった。
大振りの一撃が巻き起こした、土砂の波に。
◇◆◇
『……ふぅ……冷や冷やさせられたな……』
18
:
「弟/妹・得た者/失った者」
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/07(木) 22:07:35 ID:o6mPU8Ew
マークネモの中で、ネモは小さくため息をついた。
悉く攻撃を回避してくるロロに対し、どうやったら攻撃を命中させられるのか。
そう考えた末にネモが出した結論とは、『回避しようの無い広範囲に攻撃をばらまく』というものだった。
そして実行したのが、大振りの一撃で土砂を巻き起こし、相手を襲うという策だ。
幸いにも、ロロはマークネモの攻撃を、焦りと怒りに任せたものだと錯覚してくれた。
そのおかげで真の狙いにも気づかれること無く、こうして攻撃を当てることに成功したのあった。
『しかし……悪運の強い奴だ。
まさか、あんな手段で逃げるとはな……』
ネモは、視線を下―――流れる川へと向けた。
迫る土砂の波に、巻き込まれる寸前。
ロロはそれから逃れるべく、全力で後方へと駆けた。
しかし、それでもサイズ差が違いすぎた……飲み込まれるのは、誰の目から見ても確実だった。
だが……ロロはその窮地を、思わぬ手を使って脱出した。
それは、切り札である流体サクラダイト。
彼は迫り来る土砂から逃げられぬと判断した瞬間、それを土砂へ向かい投函し、爆発させたのだ。
結果、土砂は吹き飛び直撃は免れたが……代わりに、爆発の余波をまともに受ける形となってしまった。
そして、吹っ飛ばされた先こそが、今まさにネモが見つめる川である。
ロロは命こそ助かったものの、そのまま流されていってしまったのだ。
「ネモ……あの人、助けられなかったの?」
そんな彼を、マークネモは救わなかった。
もし、急ぎ手を伸ばしていれば間に合ったのではないだろうか。
その事に対し、ナナリーは静かに……悲痛な顔をして、ネモへと問いかける。
『ああ……あの状況では、手を伸ばしても間に合わなかった。
もしもギアスの力が完全だったなら、事前に手を打てたかもしれないのにな』
流石のネモでも、あの状況でロロの落下を防ぐことは叶わなかった。
未来線を読むギアスが完全に発言されていたなら、或いは出来たかもしれないが……もはや意味の無い話だ。
19
:
「弟/妹・得た者/失った者」
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/07(木) 22:08:01 ID:o6mPU8Ew
「そう……」
その返答に対し、ナナリーは意気を消沈させた。
どうやら彼女としては、襲ってきたギアスユーザーをどうにかしてでも救いたかったらしい。
自らの命が狙われたのにも、関わらず……だ。
『ナナリー……下手をしたら、私達がやられていたんだぞ。
それでも、あいつを助けたかったって言うのか?』
「ええ、だってあの人は……」
ネモからすれば呆れるしかない話だ。
しかし、ナナリーは……どうしても、あの少年を見捨てることが出来なかった。
それは単に、人を殺したくないという優しさからだけではなかった。
彼女は、しかと聞いていたからだ。
――――――兄さんの側にいていいのは……君じゃない、僕なんだから!!
「大切な……お兄さんの為に、戦っているみたいなんだから……」
ロロが戦う理由を。
誰と間違えたのかは知らないが、事情こそまるで分からないが。
彼は、自分と同じく……兄を大切に思っているからこそ、こうして戦いに臨んだという事を。
『……あいつと自分とを重ねているのか。
まったく……だが、言われてみればあのギアスユーザーの言動は妙だったな。
この場に来た事で、軽く錯乱していたか……む……!?』
そこまで口にした、その瞬間だった。
突然、マークネモの全身より薄い光が放たれ始めたのだ。
特に変な操作はしていない筈……ならば、この現象は何か。
すぐさまネモは、マークネモの全身に目配らせ……それが何であるかを気づく。
20
:
「弟/妹・得た者/失った者」
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/07(木) 22:08:26 ID:o6mPU8Ew
『馬鹿な、これは……量子シフト!?
私やナナリーの意志とは別に、強制的に発動しているだと!?』
それは、彼女等の意思に反した量子シフトの反応。
マークネモが、搭乗者を無視してそれを行おうとしているのだ。
どうしてこんな事が起ころうとしているのか。
先程の戦闘で受けたダメージが原因か……いや、脚部の破損ではどう考えても原因に繋がらない。
しかし、他に理由があるとしたら……
『まさか……アカギの仕業か!!』
それは、アカギしか考えられない。
彼が制限したのは、ギアスだけではなかった。
このマークネモにも、殺し合いを公平とすべく仕掛けを施していたのだ。
出現させられる時間を定め、それが過ぎれば強制的に量子シフトが行われるように……!!
『クッ……!!』
「キャァッ!!」
そして、マークネモはその姿を完全に消し……残されたナナリーとネモは、外へ投げ出される形となった。
幸い、然程高くない位置からの落下なので、怪我はないようだ。
『大丈夫か、ナナリー?』
「ええ、何とか……」
『まさか、マークネモまで抑えられているとは思わなかった。
稼動時間の制限か……だとしたら、恐らく連続して呼び出せないようにもしているだろう。
これは、もしも奴の様な相手がまた出てきたら、厄介な事になるぞ』
ギアスだけなら兎も角、マークネモまで使えないとあれば、それはナナリーにとってかなりのハンデとなる。
もしも次に、好戦的な何者かと出会ったなら……最悪の事態をも覚悟しなければならない。
21
:
「弟/妹・得た者/失った者」
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/07(木) 22:08:53 ID:o6mPU8Ew
『……何か、頼れるモノを探さなければならないな。
マークネモまではいかなくても、身を守る力と……
私達の考えに賛同し、共に戦ってくれる仲間を』
それを避ける為には、マークネモに頼らずとも身を守れる武器と。
そして、強い仲間が必要だ。
同じくこの殺し合いを止めるために動いてくれ、且つ強い戦闘力を持った存在。
理想的な例を挙げるなら、そう……枢木スザクの様な。
『そうだ……ナナリー、支給品と名簿を確認してみよう。
もしかしたら、何かあるかもしれない』
ここでようやく、ネモは支給品と名簿の存在を思い出した。
先程の少年が持っていた拳銃や流体サクラダイトは、恐らく支給された武器だ。
ならば自分達のデイパックにも、同等か……或いはそれ以上の何かがあるかもしれない。
そして名簿を開ければ、参加者について把握できる事が出来る。
運がよければ―――殺し合いに参加させられている時点で、運が良いとは言えないが―――誰か、頼れる相手がいるかもしれない。
すぐさま、ナナリーに開けるよう指示を出すが……
「…………」
それに対し、ナナリーは言葉を発さなかった。
その代わり……実に神妙な面持ちで、何かを考えていた。
真剣に……ネモの言葉も、意に介さぬ程に。
『おい……ナナリー?』
「あ……ごめんなさい、ネモ。
うん、すぐに開けてみるけど……何が入ってるか、教えてくれる?」
もう一度呼びかけられ、ナナリーはようやく気が付いた。
急いでデイパックを開き、中のものをネモに見せる。
彼女自身は残念ながら盲目の為、自分一人ではそれを確認する事が出来ないからだ。
22
:
「弟/妹・得た者/失った者」
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/07(木) 22:09:16 ID:o6mPU8Ew
(……あの人……)
しかし、その作業の最中でもナナリーは続けて考えていた。
先程遭遇した、あの少年―――見知らぬギアスユーザーに。
自身と同じ……誰か、大切な兄を持つ存在に。
(……無事だといいな。
もし、また会えたら……今度は、ちゃんとお話してみたいな……)
【A−5/山間部/一日目 深夜】
【ナナリー・ランペルージ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:健康、マークネモ召還制限中
[装備]:ネモ(憑依中)
[道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本:この殺し合いを止める。
1:支給品と名簿を確認する
2:先程の少年(ロロ)ともう一度会って、出来たら話をしてみたい
[備考]
※参戦時期は、三巻のCODE13と14の間(マオ戦後、ナリタ攻防戦前です)
※ネモの姿と声はナナリーにしか認識できていません。
ただし参加者の中には、マオの様に例外的に認識できる者もいるかもしれません。
※未来線を読むギアスには、以下の制限がかけられています
1:争いの元である未来線を読み、アカギの居場所を特定する事は不可能
2:予知できる未来のビジョンは断片的なものであり、何が起こるかははっきりとは分からない。
3:相手の攻撃を未来線で読むことについても、何かしらの制限がかかっている恐れがあります。
※マークネモには、召還できる時間に制限があります。
一定時間を過ぎると強制的に量子シフトがかかりどこかへと転移します。
また、再度呼び出すのにもある程度間を置く必要があります。
(この時間の感覚については、次の書き手さんにお任せします)
※ロロ・ランペルージには、自分と同じで大切な兄がいると考えています。
ただしロロの名前は知らず、その兄がルルーシュである事には気づいていません。
【ネモ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:健康、ナナリーに憑依中
[装備]:無し
[道具]:無し
[思考・状況]
基本:ナナリーの意思に従い、この殺し合いを止める。
1:支給品と名簿を確認する。
2:先程のギアスユーザー(ロロ)を警戒。
[備考]
※ロロ・ランペルージを、河口湖で遭遇したギアスユーザーではないかと認識しています。
顔は覚えましたが、名前は知りません。
※アカギには、エデンバイタルへと自在にアクセスできる力があるのではないかと考えています。
※琢磨死亡時、アカギの後ろにいた『何か』の存在に気が付きました。
その何かがアカギの力の源ではないかと推測しています。
23
:
「弟/妹・得た者/失った者」
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/07(木) 22:10:51 ID:o6mPU8Ew
◇◆◇
(……僕は……)
川の流れに身を任せつつ、ロロはぼんやりと目を開けた。
マークネモとの戦闘後、彼はそのまま下流へと流されていた。
不幸中の幸いだったのは、目立った外傷を負わずにすんだ為、流血していない事にあった。
もし微かでも傷を負っていたなら、この川の中では最悪失血死していたかもしれない。
(そうだ……僕は、ナナリーを……殺せなかった……!!)
そして、自分が敗北した事実を思い出し、身を振るわせる。
ナナリーが操る謎のナイトメアに、全て阻まれてしまったのだ。
彼女を殺し、ルルーシュの唯一の家族になる筈だったのに。
彼女の戻るべき場所を、自分のものにする……その筈だったのに。
(……駄目だ……そんなの、駄目だ……!!)
ロロが、ナナリーを殺したいと思う理由……それは、恐れだった。
彼はルルーシュと出会うまで、ずっと教団の道具として生きてきた。
ただ命じられるままに……人間としてではなく、誰かの道具として生きてきた。
自分の意思で、何かを成そうとした事が無かった。
(僕は……兄さんのおかげで、人間になれたんだ……!!)
しかし……そんなロロを変えたのが、ルルーシュとの出会いだった。
短い期間とは言えども、彼には確かな思い出があった。
ルルーシュの弟として……ロロ・ランペルージとして彼と過ごした、楽しかった日々の思い出が。
もしかしたら、ルルーシュは自分もまた道具として扱っているのかもしれない。
そんな恐れはある……だが、それでも。
それでも……自分は、ルルーシュがいたからこそ人間になれたのだ。
24
:
「弟/妹・得た者/失った者」
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/07(木) 22:11:14 ID:o6mPU8Ew
だが……もし、そこにナナリーが現れたらどうなるか。
自分がいた立ち位置に、ナナリーが戻ってきたら……自分はどうなるのか。
また、あの頃の……道具としての自分に、戻らなくてはいけないのか。
ルルーシュの弟という、人間としての自分を……ナナリーに奪われてしまうのではないか。
(嫌だ……僕は……兄さんの家族なんだ……!!
ナナリー……僕の居場所を、奪わないでよ……!!)
兄を失った悲しみで、多くを得た妹ナナリー。
兄を得られた喜びで、多くを得た弟ロロ。
二人の道が再び交わるときは、果たして……
【B−5/川/一日目 深夜】
【ロロ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:全身に軽度の打撲、全身ずぶ濡れ。
[装備]:デザートイーグル@現実、流体サクラダイト@コードギアス 反逆のルルーシュ(残り2個)
[道具]:基本支給品、デザートイーグルの弾、不明ランダム支給品1個
[思考・状況]
基本:この殺し合いを止める。
1:ナナリーを殺害し、自分の居場所を守る。
2:もしルルーシュが参加者にいるなら、真っ先に合流する。
[備考]
※相手の体感時間を止めるギアスには制限がかかっています。
使用した場合、肉体に通常時よりも大きな負荷がかかる様になっており、その度合いは停止させる時間・範囲によって変わってきます。
※ナナリーが呼び出した謎のナイトメアを警戒しています。
※ナナリーに、自分の居場所を奪われるのではないかと恐怖しています。
※アカギはギアス能力者ではないかと考えています。
※まだ名簿を確認していません。
25
:
「弟/妹・得た者/失った者」
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/07(木) 22:11:44 ID:o6mPU8Ew
【デザートイーグル@現実】
44マグナム弾を利用するオートマチック拳銃。
ハンドガンとしては大きいサイズと、非常に強力な威力を秘めている。
【流体サクラダイト@コードギアス 反逆のルルーシュ】
極めて引火性の強い液体状のサクラダイトが入った容器。
サイズは手のひらサイズで内部のサクラダイトもごく少量だが、爆発した際には強力な威力を発揮する。
ちなみにコードギアスの最終回では、拳サイズで且つ内容量も豊富なそれを爆発させた場合、
「島を一つ吹き飛ばせるほどの威力がある」とルルーシュの口から語られている程の危険物である。
26
:
「弟/妹・得た者/失った者」
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/07(木) 22:12:11 ID:o6mPU8Ew
以上、仮投下終了です。
何か問題点等ありましたら、宜しくお願いいたします。
27
:
名無しさん
:2011/07/07(木) 22:24:35 ID:g7NkURSQ
投下乙です!
見た限り問題はないように思います
サクラダイトも続編を書く人のことを考えれば最小限だと思いますし
ただロロが流されてるのってひょっとして山の上の川?このまま滝壺真っ逆さま?w
28
:
名無しさん
:2011/07/07(木) 23:36:59 ID:Gx.DQTcg
投下乙です!
ナイトメア未読なので矛盾は指摘できませんが、ナイトメアVS生身の人間という一見無謀な面白かった。
相性の差でここまで一方的になるものなんだなぁ
そしてナイトメアの把握を始めたが、ルルーシュが1話で死んでて驚いた
そりゃ「兄さん=ルルーシュ」だと気付かんわw
29
:
名無しさん
:2011/07/07(木) 23:42:58 ID:LY66L49I
投下乙です
草加の話といいこのロワは、擦れ違いがテーマなんだな
個人的にはロロがナイトメア相手にギアスを連続で
使用した割にはあんまり消耗してないかなと思いましたが面白かったです
30
:
◆zYiky9KVqk
:2011/07/07(木) 23:52:17 ID:grlNI5ec
C.C.、ニャース仮投下します
ちょっとアニポケの把握がうろ覚えで不安な所があるので一旦ここで様子見を
31
:
◆zYiky9KVqk
:2011/07/07(木) 23:53:15 ID:grlNI5ec
「ギンガ団とは一体…」
深夜の暗闇の中、緑髪で拘束衣の少女は呟く。
もし本来であればそのような時間帯に歩いているのは危険なのだが彼女に限ってはそのような心配は不要だろう。
外見こそ20にも届きそうも無い少女だが、その実年齢は人間の寿命を遥かに超えた存在である。
ただの暴漢程度なら返り討ちにあうことだろう。
「完全なる消滅…、この私でも死ぬことができるとでもいうのか?」
体に刻まれた呪いの刻印に触れながら、少女、C.C.はかつて己が最も望んだ事象に近付くことができるであろう可能性を考える。
この不死の呪いすらも超えるほどの刻印。かつての彼女であればそれは願っても無いことだっただろう。
しかし、
「ああ、まだ死ぬわけにはいかないな。」
彼女の契約者、ルルーシュに己の本当の望みを諭されたから。
シャルルとマリアンヌの二人を拒絶したときからその気持ちも変わっていたのだ。
「だからといってどう動こうかとまでは思いつかないのだがな
とりあえず他の参加者を探してみるか…」
「にゃ〜、ちょっとそこのおみゃ〜…」
「ん?」
32
:
名無しさん
:2011/07/07(木) 23:53:49 ID:QptBlmmY
投下乙でした。
パラロワのお手本のようなすれ違い…お見事です。
制限はこんなものでよろしいかと。ロロの消耗と制限の釣り合いをもう少しだけ取れたらいうことなしかな。
ところでこれってもう一度本投下するものなのかな。
ネモ無双かと思いきや意外にも善戦した反逆ロロ。ナイトメアの有無が決定的な、ってやつですね!
……ん?これってひょっとして平成ライダー伝統の「川に落ちたら生存確定」のジンクスにならっているのか?
33
:
◆zYiky9KVqk
:2011/07/07(木) 23:55:05 ID:grlNI5ec
ふと声を掛けられ、振り返る。
しかし誰もいない。
「にゃ〜!こっちだにゃー!!」
声が聞こえる位置は低い。
顔を下にやる。そこにいたのは、
「猫?」
「にゃーはニャースだにゃー!!」
◆
「なるほど、お前はポケモンという生き物だというのか」
「そうだにゃ。ポケモンを知らないやつなんて初めてだにゃ」
その後はお互いに敵意がなかったのが幸いだったのか、スムーズに情報交換に入ることができた。
しかしそれは二人の会話が噛み合わないほど異なる世界観のためか、かなりの混乱を与えていた。
「だがそんな生き物聞いたこともないぞ」
「むむむ、おかしいにゃ…。にゃ!そういえばあの最初のところで灰になってた奴、にゃんだったかわかるかにゃ?」
「いや、知らんな。確かオルフェノクと言っていたが…」
「…もしかしたら、あの演説オヤジ凄い力を手に入れてしまったのかにゃ…?」
突如ニャースの呟いた主催者の名前にC.C.は食い付く。
「おいニャース、あの男を知っているのか?」
「にゃ。やつはギンガ団のボスでディアルガとパルキアの力を使って世界を作り変えようとした男なのにゃ
我らロケット団の力で壊滅させたはずにゃのにゃら」
「世界を…、作り変える…?」
34
:
◆zYiky9KVqk
:2011/07/07(木) 23:56:09 ID:grlNI5ec
そしてC.C.は聞いた。
時間と空間を操るポケモンの存在を。
アカギの起こした静かな世界を創造する計画を。
「まるでシャルルの望む世界だな。………いや、まさか…」
「もしかしたらディアルガとパルキアの力を手に入れてしまったのかもしれないにゃ」
「それで私とお前のような別世界の者が集められたと?」
「可能性としてはありにゃ。
ところでおみゃーの知り合いはここに連れてこられてるのかにゃ?」
そう言われてC.C.は名簿の存在を思い出す。
「ああ、今確かめるところだ」
「にゃーの知り合いというか知っているやつは結構いたにゃ」
ニャースの知り合いは彼(?)の宿敵ともいえる存在(らしい)サトシ、ヒカリ、タケシ。通称ジャリボーイとジャリガール。
シンオウ地方のチャンピオンを勤める凄腕のポケモントレーナー、シロナ。
ポケモン界の有名な研究者、オーキド博士。
そして、彼の所属するロケット団のボスであるサカキ。
ニャースは世界制服を目論む悪の秘密結社に所属するポケモンらしい。
…建前はともかくC.C.のいたギアス嚮団や黒の騎士団もあまり人のことを言えたものではなかったのであえてそこに深くは触れなかった。
よほど慕っているのかサカキの説明のときだけ妙に饒舌に話していた。
「この通り、サカキ様はすばらしいお方なのにゃ。あのお方の前ではにゃ「確認が終わった」おお、そうかにゃ」
さすがにうっとおしくなってきたC.Cはニャースの言葉に被せるように話を切り出した。
「知り合いはいたのかにゃ?」
「ああ、知り合いはいた。だがこれは…」
「にゃ?」
35
:
◆zYiky9KVqk
:2011/07/07(木) 23:57:54 ID:grlNI5ec
◆
C.C.の情報交換中、ルルーシュ、スザク、篠崎咲世子のことはすんなりと話を進められた。
そして、彼女にとって説明しづらい参加者の話に入った。
「ナナリー・ランペルージ、マオ、ユーフェミア・リ・ブリタニア、ロロ・ランペルージ。
こいつらは死んだはずの人間だ。
いや、ナナリーに限っては死体が見つかってなかったから実は生きていたということもあるかもしれん。
だが他の奴らは死んだことが確認された奴ばかりだ。この場にいるのはおかしい」
「にゃにゃあ…。おみゃーの知り合い、そんなに死んでるやつが多いのかにゃ?」
「私が生きてきた道自体屍だらけさ。」
「でもディアルガの力を使えばそれもできるんじゃないかにゃ?」
「過去から連れてきたとでもいうことか?
だがそれだけでは説明できない名前もある。
このゼロという名前だ。私とルルーシュがここに名前がある以上、こいつの存在は本来ならおかしい。
だがゼロというコードネーム自体は珍しいものでもないだろう。
全くの別人である可能性もある。いや、そうであって欲しい。
だがこの名前の存在はあまりにも不可解だ」
「にゃ?」
C.C.が示した名前。それは、
「ロロ・ヴィ・ブリタニア。このような皇族が存在した覚えはない。
それもルルーシュと同じ姓、しかも名はロロなどとは」
「隠し子でもいたんじゃないのかにゃ?」
「私はこいつらの親のことはよく知っている。あいつらに隠し子などあり得ない。いたとしても私が気付かないわけがない。
どうやらあいつを見つけるまでの間にやっておかないといけないことができたようだ」
ロロ・ヴィ・ブリタニアだけではない。ユ−フェミア、ロロ・ランペルージ、そしてマオ。もしかしたらナナリーも。
彼らについては調べておく必要がありそうだ。
「で、お前はどうする?」
「にゃーはサカキ様を探すにゃ。
邪魔じゃにゃければ一緒に行ってもいいかにゃ?」
「構わんぞ。こっちは武器が無くて困っていたところだ
そういえばお前は戦えるのか?」
「にゃーはこう見えても強いのにゃ。この爪だけでたくさんのポケモンを地に伏せてきたのにゃ〜」
36
:
◆zYiky9KVqk
:2011/07/08(金) 00:01:33 ID:whzCtfQs
あまり頼れそうにもなかったが、今の彼女にはそんな力でもあってくれたほうがありがたかった。
C.C.に支給されていたのはグリーフシードというよく分からない石が二つだけ。
説明書を読んだところによればこれは魔女の卵らしく、魔法少女なるものが魔力回復に使う道具だとか。
無論二人、もとい一人と一匹には使えないものだ。
(そういえばあのアカギという男、魔女の口付けとか言っていたな
しかし魔女の卵か…、この私にこんなものを支給するとは)
魔女の口付け、魔女、魔法少女。
暇があれば調べておくか。
「ところでお前、ピザは持っていないか?」
「ピザ?にゃーのカバンには入ってなかったにゃ」
「そうか」
【E-4/市街地/深夜】
【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、グリーフシード×2
[思考・状況]
基本:とりあえず生き残る
1:知り合いとの合流、ルルーシュ優先
2:ナナリーの保護、二人のロロ、マオ、ユーフェミアについて調べる
3:魔法少女とは…?
[備考]
※参戦時期は21話の皇帝との決戦以降です
※ポケモン世界の大まかな世界観を把握しました
※ディアルガ、パルキアというポケモンの存在を把握しました
※グリーフシード×2は支給品二つ扱いです
【ニャース@ポケットモンスター(アニメ)】
[状態]:健康
[装備]: なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3(確認済)
[思考・状況]
基本:サカキ様と共にこの会場を脱出
1:サカキ様を探し、指示をいただく
2:しばらくはC.C.と行動する
3:ジャリボーイ、ジャリガールとはできれば会いたくない
[備考]
※参戦時期はギンガ団との決着以降のどこかです
※ディアルガ、パルキアへの考察はあくまで仮説レベルです
※アニメ版コードギアスの大まかな世界観を把握しました
37
:
◆zYiky9KVqk
:2011/07/08(金) 00:04:05 ID:whzCtfQs
投下終了です
タイトルは本投下までに考えておきます
他の人が色々と凄そうな話考えてるような中でこんな登場話しか書けない自分が嫌だ
38
:
名無しさん
:2011/07/08(金) 00:07:16 ID:2KymuQ0U
投下乙。
こういう話も嫌いじゃないですよ。
あまり自分を卑下なさらないで。
39
:
名無しさん
:2011/07/08(金) 00:07:27 ID:PBtNgXO2
途中割り込み失礼しました。
噛み合ってるようで、噛み合ってない……そうか、C.C.から随分刺が抜けてるからか。
C.C.も魔女だったか…変なこといってまどか勢に狙われなきゃいいけど。
サカキに会っても「知らん」と言われ涙目になるニャースが浮か…あれ、アニメのまんま?
投下乙でした。
40
:
名無しさん
:2011/07/08(金) 00:09:19 ID:kFhA5U4.
投下乙です!
あーそうか、この組み合せならおおよそ主催について把握できるのか
グリーフシードも入手したし、案外最も主催に近いペアかもしれないなww
これでニャースが黒猫だったらガチで魔女なんだけどなぁw
41
:
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/08(金) 00:25:18 ID:tSrgcbmE
投下乙です。
何と言うか、マイペース同士で意外と良いコンビだなぁこの二人w
しかも主催の情報について把握した上に、グリーフシードを持っているっていうのは大きい。
良い話だと思いますから、そんな卑下しないで下さいな。
42
:
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/08(金) 00:32:28 ID:tSrgcbmE
さて、自分の仮投下についてレス返し。
>>27
地図で再度確認しましたが、よく見ると滝になってましたね……
一応下流に流されたという描写にはしましたが、ちょっとここについては加筆した方がいいみたいなんで、やってみます。
>>28
ナイトメアは設定上だと4m程度の大きさですから、生身でも立ち向かえなくはないと思いやらせていただきました。
特にロロの場合はギアスの能力が強力ですのでね。
>>29
一応は普段より負担がかかるとは書きましたが、実際には描写不足だったかもしれません。
もう少しばかり、つり合いが取れるように修正を行いたいと思います。
>>32
上述した通り、ギアスの負担について修正を行いたいと思います。
その上で、修正した完成品を本スレに投下するつもりです。
後、川ポチャは勿論狙ってやりましたw
43
:
名無しさん
:2011/07/08(金) 01:07:06 ID:e4kXcMtk
投下乙。
ニャース来たー!
動物ロワではポケモン勢唯一の生き残りになってしまったが、このロワではどうだろうな。
そういや、支給ポケモン含めたら動物ロワのポケモン勢全員出てきそうだな。
しかし、サカキがゲームに乗ってたらそれに従うつもりなのか…?
44
:
◆8nn53GQqtY
:2011/07/08(金) 23:35:48 ID:QvllRRbU
ゆま、メロ投下します
少々気になる部分もあったのでいったんこちらに
45
:
オンリー/ナンバー ワンを夢見た 少女/男
◆8nn53GQqtY
:2011/07/08(金) 23:37:37 ID:QvllRRbU
――わかり易く言うならば、最後の一人になるまで殺し合いをしてほしいのだ。
とても冷たい目をしたおじさんは、ゆまたちにそう言った。
殺し合いというのは、つまり、お互いに相手を殺そうと戦うということで、
魔法少女と魔女が命がけで戦っているように、
あの広い場所にいた人たち全員で、命を奪いあえということで、
メガネをかけたお兄さんが、そのアカギというおじさんをやっつけようと向かっていった。
侮辱した者は殺すとかぶっそうなことを言っていたけれど、
つまりあのお兄さんは、『殺し合い』を許せないと思って、おじさんを止めようとしたのだ。
けど、あのお兄さんの手首には『魔女の口づけ』がつけられていた。
お兄さんは、助けて、と叫びながら燃えて死んでいった。
思い出して、ゆまの体が少しだけ震える。
キョーコと出会い、『魔法少女』のことを知ったあの日から、命がけの戦いに立ち会い、
父や母を含めた人間たちの無残な『死』だって見て来た。
それでも人の『死』を見ることは嫌だし、怖いと思う。
それが他人の『死』であっても、ゆま自身の『死』であっても。
つまり、あのおじさんはわるい人だ。
人間でも魔法少女でもない(男の人だし)、魔法を使えない人に見えたけれど、
人間に『魔女の口づけ(“ジュジュツシキ”とは何のことだろう)』を点けられるのだから、
人間なのに魔法が使えるのか、それともわるい魔法少女の一味なのか、そのどちらかだと思う。
46
:
オンリー/ナンバー ワンを夢見た 少女/男
◆8nn53GQqtY
:2011/07/08(金) 23:38:35 ID:QvllRRbU
わるい魔法少女をやっつけるのも、魔法少女であるゆまのお仕事だ。
わるい魔法少女を探していたマミお姉ちゃんなら、あのおじさんだってきっと退治しようとするだろうし
キョーコもきっと、いつものように『オトシマエ』だと言って、あのおじさんと戦おうとするだろう。
(わるいことなんて、させないんだからね)
ゆまも、こんなところで死んでしまうのは嫌だ。
そして、キョーコが死んでしまうのも、同じくらいかそれ以上に恐ろしい。
それが、襲い来る『魔女』から逃げ出して、こうして生きている理由だから。
それが、ゆまが『魔法少女』として生きている理由だから。
だから、ゆまは殺し合いを止める為に、ゆまにできることをしたい。
幼いながらもしっかりと揺らがない心の強さで、小さなゆまは大きな決意を胸に抱いた。
しかし、
+ + +
「むらうえ……うぅ〜……下の名前はなんて読むんだろう」
ゆまはまず、参加者の確認で早くもつまづいた。
配られた名簿の名前は漢字ばかりで、義務教育の三分の一も終えていないゆまには、半分近くの名前が読めなかったのだ。
しかし、カタカナの『マミ』という名前があるのは見つけた。
マミ、というのは、以前キョーコと公園で話していた黄色い魔法少女のお姉さんだろう。
キョーコのことを『怪しい』という目で見ていたからゆまも仕返しにスカートをめくってやったりしたけれど、
二人はそんなに仲が悪くなさそうだった。
あのお姉さんも魔法少女なら、きっと味方になってくれるだろう。
それに、ゆまとマミお姉ちゃんの二人の魔法少女が呼ばれているなら、きっとキョーコだって一緒に呼ばれていると思う。
あの暗い場所に飛ばされるまで、一緒にホテルのお布団でおやすみしていたのだ。
きっとキョーコも連れて来られているはずだ。
キョーコがいるとなれば、がぜんゆまの心は強くなった。
早くキョーコと会いたい。
会ってキョーコを助けたい。キョーコの役に立ちたい。
ゆまは決して一人では何もできない役立たずじゃないけれど、
でも、一人でいるのはさびしい。
だから、まずはキョーコを探そう。
47
:
オンリー/ナンバー ワンを夢見た 少女/男
◆8nn53GQqtY
:2011/07/08(金) 23:39:18 ID:QvllRRbU
ゆまはそう決めたものの、しかし行くあてがあるわけではなかった。
魔法少女同士は離れた場所にいても頭の中でお話ができるのだけれど
(もっともゆまはいつもキョーコと一緒にいたからほとんど使ったことはない)
この場所に来てからその力が使えなくなっている。
これには魔法少女のゆまも、とほうにくれた。
とほうにくれたと言えば、ゆまの隣に置いてある『これ』もそうだ。
ゆまの飛ばされた場所に初めから落ちていた。
だからゆまが使っていいものだと思うけれど、しかしゆまには『これ』を使うことができない。
しょぼんとうなだれると『ぐぅ〜』とお腹が鳴った。
ゆまは顔を上げた。
ゆまの立っている大通りから建物二つほど離れた先に、夜中にも明るいコンビニエンスストアの看板が見えた。
万引き――もとい食料自給でよくお世話になる場所になじみを覚えて、
ゆまはそそくさと歩みを進め、自動ドアをくぐり、明るい店内に足を踏み入れる。
お店の中に人はいなかった。
好奇心が高じて、レジの裏から『関係者以外立ち入り禁止』の場所まで探索したけれど、本当に誰もいなかった。
いいことを思いついた。
さっきディパックを開けたところ、食べ物は給食に出て来るようなパンばかりだった。
別にパンは嫌いじゃないけれど、食生活に不自由していないゆまには、ちょっと飽きのくるメニューだ。
もちろんキョーコに教わったように、そのパンを粗末にするつもりはなかったけれど、それ以外のオカズやお菓子があればとても嬉しい。
いつもハンバーガーや菓子パンを食べているキョーコだって、きっと味気ない想いをしているはずだ。
そしてここは万引きをせよと言わんばかりにたくさんの食べ物があり、
にも関わらず店員は誰もいないのだ。
キョーコを探す前に、やることができた。
レジの裏からコンビニのレジ袋の中を持ちだすと、ゆまは目についた食料――特にキョーコの好きそうなジャンクフードやお菓子――を詰め込んで行く。
わるいひとを許さないことと、泥棒をすること。
この二つは、ゆまの中で何の矛盾もない行動だった。
(お菓子を持って行けば、きっと杏子も喜んでくれるよね……!)
板チョコを棚から何枚もつかみだしてディパックに入れながら、ゆまは杏子との再会を思って『にぱー』と笑った。
48
:
オンリー/ナンバー ワンを夢見た 少女/男
◆8nn53GQqtY
:2011/07/08(金) 23:39:54 ID:QvllRRbU
+ + +
メロは注意深く付近を観察しながら、深夜の大通りを闊歩していた。
何の前触れもなくあの広間に召喚され、
まず、彼の心に生まれたのは激しい怒り。
人生の全てを費やした“四年間”の決着を、妨害された怒り。
あと二日で、全てに決着がつくはずだった。最後の戦いが行われるはずだった。
ニアは、己の命と世界の命運を賭けて、夜神月の前に姿を現そうとしていた。
夜神月もまた、己の命と世界を支配する権利を賭けて、一対一でニアとの対決に臨もうとしていた。
そしてメロは、この二人の決闘を知り、双方の策略を推察し、覚悟を決め、
命を賭けて『ある状況』を作る為の『誘拐』を実行していたところだった。
そう、あともう少しで、二代目Lことキラと、ニアとメロ、この三者の対決に、全ての決着をつけられるところだった。
三人の宿敵が、それぞれの人生とプライドを賭けたひとつの決闘劇を、
いとも簡単に不条理に邪魔された。
その怒りは、激しやすいメロでさえ人生でそう何度も味わったことがないほどの、苦々しいものだった。
怒りで唇をかみしめて食い破った血の苦さの味だ。
そして、次に思い知らされたものは、驚愕と、納得。
そこで目にした、耳にした、常識を覆す数々の異様な光景と、謎のキーワード。
例えば、真っ先に反抗を試みて殺された青年の、異形の姿。そして『オルフェノク』という単語。
例えば、青年の体を突如として炎上させた、『魔女の口づけ』なる呪術式。
例えば、アカギが願い事として口にした『全ての時間軸から魔女を消し去る』、『人類の進化系が支配する世界』といった計画。
誰もが悪い夢を見たと思いかねないその異常な空間は、
しかし、受け入れなければ命に関わりかねないという現実だった。
『名前を描いただけで人を殺せるノート』が、実在したように。
持っていたノートが急に浮遊したと思ったら、死神と名乗るシドウが現れたように。
あまりに常識を覆すものを見た時は、逆にあっさりと受け入れた方が対応しやすいことをメロは経験から知っている。
ただ、今回ばかりは流石にファクターのバリエーション豊富さに、呆れかえりそうになったが。
49
:
オンリー/ナンバー ワンを夢見た 少女/男
◆8nn53GQqtY
:2011/07/08(金) 23:40:28 ID:QvllRRbU
そして提示された命令は『殺し合い』。
その目的も、『儀式』というオカルトじみた領域の産物だった。
しかし、メロは『命令に従って殺し合いに乗る』という選択をするつもりはない。
あのアカギという男は、『最後の一人』を『勝者』として願いを叶えると言っていたが、
しかしあの主催者の命令に忠実に従って『儀式』を実行したとして、それは『勝者』ではない。
その場合の勝者は、アカギという男、ただ一人だ。
主催者に怒りを抱き、可能なら報復したいと思っているメロにとって、それは決して望ましい形ではなかった。
また、皆殺しを実行するということは、あの決闘劇の相手だったニアと夜神月を殺害、もしくは見殺しにするということになる。
別に、このような状況下でも助けたいと思うほど、深い友誼を抱いているなんてことは全くない。むしろその逆だ。
この世でもっとも忌々しいと思っている二人が、彼らだと言っていい。
もしこの儀式に呼ばれたのが三カ月前のメロだったら、ニアと二代目Lを出しぬき、二人に勝利し、場合によっては殺害した上での生還を前提として行動しただろう。
その為ならば、ニアの悪評を振りまき、対主催陣営にヒビを入れることも厭わなかったはずだ。
ニアを倒し、Lを越えて“一番”の高みにのぼる。その為には手段を選ばないし、どんな悪事も辞さない。
それがメロの長年の悲願であり、行動方針だったのだから。
しかし、今のメロは、そこまで強引なことをして、ニアと競争しようとは思わない。
今のメロは、命がけで『ニアを夜神月に勝利させる』為の計画を実行していた最中だったのだから。
50
:
オンリー/ナンバー ワンを夢見た 少女/男
◆8nn53GQqtY
:2011/07/08(金) 23:41:07 ID:QvllRRbU
キラを止める為に命を捨てよう、などと正義感にかられたわけではなかった。
メロが生き残り、その上でニアと夜神月の二人を出しぬけるという勝算もあった暴走だった。
しかし『もし自分の誘拐計画が失敗しても、それが結果的にニアの勝率を挙げる行為になる』とまで見越して行動したことは、認めざるを得ない。
何より求め続けた“一番”の地位をニアに譲ることになったとしても、ニアに最後の最後の局面で
『メロのおかげです』とでも言わせることができれば、
『ニアの力だけでLを越えることはできないが、二人ならLを越えられる』と認めされることができれば、
そんな結末でも、まぁいいかと妥協して納得して、メロは『俺がやるしかない』と理解した。
だから、こんな運と不確定要素に大きく左右される殺し合いの場で、決着の形が違うものになってしまうことは、とてもではないが好ましくなかった。
『儀式』を中断させ、ニアや夜神月と共に決着の続きをつけられることができれば、それが最善。
しかし、夜神月は、殺し合いに乗る可能性があるだけでなく、メロの排除に動きかねない。
その場合は彼を打倒し、決着をニアとの一対一に持ち越す。それが次善。
そして、最悪の場合にせよ、主催者の思惑には乗りたくないので『勝者』を狙うつもりはない。
……まぁ、あくまで“ニアと積極的に争うつもりはない”というだけで、慣れ合うつもりはもうとうないが。
(第一、こちらに競争する意思がなくとも、向こうは未だにメロを警戒しているだろう)
一度、納得して捨てた命だ。
なら、最後に命がけの難題にチャレンジするのも悪くない。
死ぬ覚悟を決めた今のメロにとって、対主催行動を取るのは、それほど決断を要す事態でもなかった。
51
:
オンリー/ナンバー ワンを夢見た 少女/男
◆8nn53GQqtY
:2011/07/08(金) 23:41:42 ID:QvllRRbU
さて、『ニア』と『夜神月』に対する対応はそれで良いとして、名簿には他にもいくつか、看過できない名前が存在する。
夜神月の部下、松田桃太。夜神月の恋人、弥海砂。この二人に関しては、夜神月との繋がりで呼ばれたと考えて良いだろう。
おせじにも使える人材とは言えないが、夜神月の派閥にいる以上はメロのことを警戒しているだろうし(それでなくともメロは犯罪者なのだ)悪評を振りまかれる可能性はある。
警戒ぐらいはしておくべきだろう。
しかし、『L』という名前が名簿上に存在するのはどういうことか。
これまでにLを名乗った人間は三人いる。
言わずと知れた、世界最高の探偵、メロとニアの目標、初代L.
そのLを殺害し、まんまと二代目Lの座に居座っている夜神月。
そして、メロが引き起こしたノート強奪事件に際して、偽証からLだと申告した松田桃太。
初代Lは、既に故人となっている。
夜神月と松田桃太の名前は、既に名簿上に存在する。
これだけなら、名簿の誤表記を疑っていたところだ。
他にも『あり得ない名前』が存在しなければ。
夜神総一郎。
南空ナオミ。
どちらも既に死んだ人間の名前だ。
といっても、南空ナオミに関しては伝聞でしか聞いたことがない。
過去に、初代Lが話して聞かせてくれた『ロサンゼルスBB殺人事件』でLの協力者となった元FBI警官の名前だ。
どうも婚約者であるレイ・ペンバーがキラ事件で殉職して以来、
行方不明になったそうだから、メロとしても本当に死んだのかどうかの確信は持てない。
(たまたま同性同名の人間が名簿に載っている可能性もある)
問題は、夜神総一郎だ。
彼に関しては間違いなく死んだと断言できる。
彼を殺したのは、他ならぬメロだから。
否、直接に手を下したのはマフィア時代の仲間であるホセだが、殺す決断はメロがくだしたようなものだ。
息を引き取るところまでを見たわけではないが、
撃たれた総一郎からノートを取り上げようとした時の、あの負傷は充分に致命傷だった。
主催者は、願いを叶える権利の具体例として、死者の蘇生をも可能にすると言っていた。
死神の存在を受け入れたメロでさえも、死者蘇生というのはにわかに信じがたい。
しかし、仮にも“オカルト”を受け入れると決めた以上、その可能性も念頭に置いた方がベターだろう。
もちろん、『死者蘇生』が可能と見せかける餌を撒く為に、名簿にわざと故人の名前を混ぜたという可能性もあるが。
しかし、仮に、故人が参加者になり得るとしたら……。
(初代Lも、蘇生している……?)
52
:
オンリー/ナンバー ワンを夢見た 少女/男
◆8nn53GQqtY
:2011/07/08(金) 23:42:17 ID:QvllRRbU
その仮説は、流石のメロにも形容しがたい身震いを走らせる。
あの『L』だ。
ワイミーズハウスにいた者ならだれもが尊敬し、
そしてある者は叶うはずがないと諦め、
ある者はその『後継者』の座を得ようと夢見て研鑽を重ねて来た、あの『L』だ。
彼が蘇生しているかもしれないと言われ、動揺の走らぬはずがない。
胸が高鳴らないはずがない。
希望的観測に依りかかるのが危険だとは承知している。
しかし、仮にLが蘇生しているのだとすれば、名簿の表記に関する問題は解決する。
本当に死者が蘇生しているかはともかくとして、
名簿に故人の『夜神総一郎』が書かれているように、名簿の『L』が故人である『初代L』を指す可能性は大いにある。
どちらにせよ、今の段階で断定はできない。
だからこそ、今、何よりも必要なものは『情報』だ。
その為にこそ、メロは恐れることなく大通りの真ん中を歩いていた。
まずは何より、他の参加者との接触を――
黒いカラーリングの原付自転車が、路上に停車していた。
メロは駈けより、その車体を観察する。
鍵はささっているようだ。
特に故障も見当たらない。むしろその輝きは新車のそれだ。
アクティブさを強みとするメロにとって、そのバイクが利用できることは大きなアベレージになる。
しかし、こんな路上にぽつねんとバイクが駐車しているのも不自然な話だ。
もしや、これは誰かに支給品として配布された物ではないか。
だとすれば、この原付を支給された持ち主は、バイクの運転ができなかったか、
あるいはここに原付を停車させて、この近辺を徘徊しているか。
53
:
オンリー/ナンバー ワンを夢見た 少女/男
◆8nn53GQqtY
:2011/07/08(金) 23:42:52 ID:QvllRRbU
――ウィィィィン
十数メートル先の建物――深夜でも明るいコンビニエンスストア――の、自動ドアが開かれた。
コンビニのビニール袋をその手にぶら下げた少女が現れ、
あどけなく大きな瞳がメロをきょとんと見上げた。
+ + +
「お兄ちゃん……?」
ばっちりと目が合ってしまった。
襟もとと袖口を織り込んだぶかぶかのセーター。
鈴を模したような金色の髪飾りと、小さなふたつ結び。
年齢はおそらく、六歳前後。
こんな幼女まで殺し合いに放り込むとは。
子どもを巻き込むことに憤慨するほどメロは人道的ではなかったが、
しかしアカギ曰くの『選ばれた戦士たち』の基準を疑いたくはなってしまう。
まぁ、あのメガネの青年がそうだったように、一見して一般人だからといって、その正体もそうだとは限らないのだが。
しかし、
「なんだ、ガキか」
子どもという手ゴマは、正直なところ『微妙』だった。
使い道がないわけではない。
連れ歩くだけで他の参加者からの警戒を和らげるなど、メリットはある。
しかし、問答無用で『保護し守る義務』が発生する。
例えば、大人の参加者なら『仲たがいをして別れた』『相容れないから切り捨てた』だけの説明で済む要因でも、
その相手が子どもなら『子どもをこんな殺し合いで放置した血も涙もない男』という不和のタネになってしまう。
つまり、今後のことを思えば、見つけた時点で(道中の預け先を見つけない限り)ずっと連帯するしかなくなってしまう。
(まぁ、殺すという選択肢もあるな)
殺すという手段は、乱暴だが手っ取り早くもある。
ライダースーツの中に隠した支給品――ワルサーP38――をこっそりと確認した。
(もちろん、情報を聞きだしてからにはなるだろうが……しかし、一度協力関係を結んだら、切り捨てにくくはなる)
54
:
オンリー/ナンバー ワンを夢見た 少女/男
◆8nn53GQqtY
:2011/07/08(金) 23:43:29 ID:QvllRRbU
メロは決して善人ではない。
出来る限りの努力を積み、それでも敵わない差を埋める為に、メロは“手段を選ばない”という選択をした。
何の罪もないSPKのメンバーを『ニアを出しぬきたいから』という理由だけで殺した。
使えない手ゴマをデスノートの実験台として使ったこともあった。
(しかし……こんな状況じゃ協力者は必要になるだろうな。)
しかし、そんなメロにも惜しみなく協力してくれた仲間はいた。
メロを信頼し、トップの座を実質的に譲り渡すばかりでなく、資金を惜しみなく提供したロッド・ロス。
ワイミーズハウスの同郷であり、マフィア壊滅事件以来のただ一人の協力者、マット。
無償の尽力というわけではなく、打算あっての協力関係だった。
しかしそこには確かに、裏社会で生きる者なりの信頼があった。
どちらも、メロのキラ打倒計画に加担したからこそ、メロより先に死んでいった。
彼らの犠牲の上にメロは生き延び、そして、メロは一人になった。
感傷を抱くほどやわな人生を送って来たわけではない。
己の決めた道に、失敗はあっても後悔をしたことはない。
しかし、誠意をつくしてくれた『仲間』を、己のツメの甘さから死なせてしまったことは
『申し訳ない』と心から思う。
よくも悪くも、『感情』というものを制御できないし、制御する気もないのがメロなのだ。
だからこそ、少女を殺すかどうかの判断で迷ってしまう。
例えばキラなら、どんな相手でも『利用する』の一択であり、まずは味方につけるだろう。
しかしメロには『信頼をする』と『利用する』の二択が存在しているだけに、かえって味方の選抜にはシビアになってしまう。
「ガキ、何してるんだ、こんなところで」
そんなメロの迷いも露知らず、
少女はメロの言葉に、頬をむっと膨らませた。
「ゆまはガキだけど強いんだよ! 役に立つんだよ!」
「ゆまはガキじゃないよ!」というテンプレートな反論を返さないところに、少し好印象を受けた。
だからどうだというわけでもないが。
55
:
オンリー/ナンバー ワンを夢見た 少女/男
◆8nn53GQqtY
:2011/07/08(金) 23:44:01 ID:QvllRRbU
「そいつは悪かったな。それで何やってるんだ? コンビニなんかで」
「お店に人がいなかったから、食べ物と色んな道具をもらって来たの。あと、レジのお金も」
殺し合いに巻き込まれて最初にすることが食料調達とは……冷静だと見るべきか、事態を理解していないと見るべきか。
金品にまで気が回っていることから、メロは前者だと判断する・
こんな閉鎖環境で金がそこまで魅力を持つとも思えないが、しかしあって困るものではないだろう。何より、あまりかさばることがない。
こんな異常な状況下で、しかし即座に物資の調達を考えられる少女のことを、メロは少しだけ評価した。
「お前、親は……」
「え? 何?」
「いや、いい」
よくよく見ればぶかぶかのセーターには乱暴な補修の跡があり、ずいぶんと着古されている。
保護者が娘の身なりにさえ配慮しない環境にいたのか、あるいは保護者自体がいない環境にいたのか。
メロはその経歴がら、貧困街に住みつくストリート・チルドレンも見慣れて来たが、彼らは下手に甘やかされた大人よりよほど抜け目がなく、生きることに貪欲だ。
この少女も、その類の人種かもしれない。
少女は、臆することなくしげしげとメロの顔を見つめた。
「お兄ちゃん、けがしてるね……」
この顔を見ても全く怖がらないとは、あるいは大物かもしれないとメロは観察を続行し、
少女が、その手のひらに緑色の小さな宝石を取りだした。
宝石が発光し、少女の姿が一瞬にして変じた。
56
:
オンリー/ナンバー ワンを夢見た 少女/男
◆8nn53GQqtY
:2011/07/08(金) 23:44:31 ID:QvllRRbU
(変身……した……?)
猫耳のような突起物をつけた白いヘアバンドに、ミドリと白のドレス。
関節部をリボンできゅっとしぼったひらひらのブーツと、てぶくろ。
その姿はまるで、ジャパニーズ・アニメーションに登場する子ども向けアニメのキャラクターのようだ。
ファンシーな格好に変じた少女は、首に着いた鈴のようなチョーカーをりんと揺らしてメロをにっこりと見上げる。
ぱぁぁ……
メロの視界の左半分で、鮮やかな光の粒子が光り、メロは慌てて原付のサイドミラーで己の顔を見た。
「火傷が……」
メロの左頬に残る大きな火傷のただれが、みごとに修復されつつあった。
医者が日本の捜査本部に抑えられている可能性を考慮して、正規の治療を受けられず、メロ自身も諦めていた傷だった。
その傷跡が、みるみると目立たない色に変わり、小さくなり、そして『近づかなければ分からない』程度にまで元の皮膚と同化する。
「あれ? いつもより治りが遅いの……おかしいなぁ」
変身した少女は、ちょっと困ったように小首をかしげている。
「この治療は、お前がやったのか……?」
「そうだよ! ゆまの治療魔法なんだよ」
見違える間に修復された傷と、『魔法』という言葉。
そして、主催者が言っていた『魔女』という言葉。
……どうやら、メロが逡巡している間に、少女は己の価値を証明してしまった。
57
:
オンリー/ナンバー ワンを夢見た 少女/男
◆8nn53GQqtY
:2011/07/08(金) 23:45:02 ID:QvllRRbU
メロは片膝をついてすわり、ゆまと目線を合わせる。
大丈夫、メロはニアと違って、ワイミーズハウスでも社交性のある子どもだった。
だから、子どもの対応にだって慣れている、はずだ、おそらく。
「お前……ゆまと言ったな。ありがとう」
メロはヘアバンドの上から、ゆまの頭を撫でた。
ああ、ガラにもないことをしているな、と内心で苦笑。
「えへへ。どういたしまして」
「なぁ、ゆま。俺と一緒に来ないか?」
「お兄ちゃんと……?」
「『お兄ちゃん』じゃねえ……俺はメロだ。
俺の傷を治してくれたってことは、お前はこの殺し合いに乗るつもりはないんだろう。
俺も同じだ。あのアカギって奴の企みをぶっ潰したいと思ってる。
だからゆま、俺に力を貸してくれないか」
ゆまは驚いたように、そして、感動したように大きな瞳を見開いた。
「メロは、ゆまの力が必要なの?」
「あぁ、お前の治療魔法は頼りになることが分かった。それに『魔法』っていうのが何なのかも話して欲しい。
俺ばっかりが借りをつくるのも不公平なら、お前の知り合い探しぐらいは手伝っやるよ。
お前にだって知り合いはいるだろうし……」
「……うん! うんうん! じゃあ、メロお兄ちゃんはゆまの『仲間』だね」
こうして、“一番になりたかった男”と“必要とされたがった少女”は小さな同盟を結んだ。
58
:
オンリー/ナンバー ワンを夢見た 少女/男
◆8nn53GQqtY
:2011/07/08(金) 23:46:17 ID:QvllRRbU
【G−5/大通り、コンビニ前/一日目 深夜】
【メロ@DEATH NOTE】
[状態]健康(顔の火傷が、目立たない程度に治療されました)
[装備]ワルサーP38(8/8)@現実
[道具]基本支給品一式、不明支給品0〜2
[思考]
1・ゆまから『魔女』についての情報を得る。
2・死者(特に初代L)が蘇生している可能性も視野に入れる。
3・必要に応じて他の参加者と手を組むが、慣れ合うつもりはない。(特に夜神月を始めとした日本捜査本部の面々とは協力したくない)
[備考]
※参戦時期は12巻、高田清美を誘拐してから、ノートの切れ端に名前を書かれるまでの間です。
※協力するのにやぶさかでない度合いは、初代L(いれば)>>ニア>>日本捜査本部の面々>>>夜神月>弥海砂
【千歳ゆま@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]健康、変身後、魔力消費(小)
[装備]ソウルジェム
[道具]支給品一式、不明支給品0〜2、コンビニ調達の食料(板チョコあり)
[思考]基本・わるいおじさんをやっつける
1・メロお兄さんとお話する。
2・メロお兄さんと一緒にキョーコ、マミお姉ちゃんを探す(キョーコを最優先)
[備考]
※参戦時期は、少なくとも3話以降。
※原動機付自転車@現実が、コンビニの数十メートル手前で停車しています。
59
:
オンリー/ナンバー ワンを夢見た 少女/男
◆8nn53GQqtY
:2011/07/08(金) 23:49:13 ID:QvllRRbU
一時投下終了です
動きのない話なのにばか長くなってすみません;
現地調達ってどの程度大丈夫なの?とか気になるところあありますが、
個人的に意見が欲しいと思ったのは
「メロはLと面識があり、南空ナオミ(ロサンゼルスBB殺人事件)を知っている」という設定
これ、小説版(西尾先生が描いたやつ)の設定なんですよ……
原作者以外の人間が描いた外伝小説の設定を取り入れていいのか迷ったんですが
原作にこの設定を否定した部分がなかったので、一応反映させました
……突っ込みが来るようなら当該箇所の修正を考えています
60
:
名無しさん
:2011/07/09(土) 00:22:00 ID:vai3oVbQ
投下乙す。
小説設定は、まあどうしようもない矛盾でもないし。ナオミのことを知ってる左証程度であれば問題ないと言います。
むしろ気になるのは古傷(という程長くもなかろうが)の治療ですかね。ゆまの治癒力は一歩抜きん出てるから不思議でもないか。
…ていうか、メロさんなんかいい人っぽくね?
61
:
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 02:56:45 ID:XQV58tEw
衛宮士郎、セイバーオルタ、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンを投下します。
62
:
ディストレーションファンタズム
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 02:58:50 ID:XQV58tEw
轟ッ、と奔る閃光を紙一重で避ける。
そのまま立ち止まる事なく全力で駆け抜ける。
「きゃあああああ――――ッッッ!!!!」
腹の底から全力で悲鳴を上げながら。
と言うか、叫ばないとやってられなかった。
「なんでアレが居るのっていうかなんでいきなり遭遇してるのっていうかなんでこんな事に巻き込まれてるのよ――――――――!!!???」
背後から漆黒の鎧――黒化英霊のセイバーが剣を構え迫る。
顔はヘルムで覆われ、表情は見えない。だが、その固く閉じられた口元に、全身から放たれる威圧感が、対話という手段が通じない事を容易に理解させる。
彼女は以前私が――というかクロが倒した筈なのに、なんでまた現れているのかさっぱり理解できない。
もっとも、それを言ったらそもそも今の状況が理解できないのだが。
「――――」
「きゃあッ!」
再び放たれた黒い斬撃を辛うじて避ける。
今のは危なかった。今のはヤバかった。今のはギリギリだった。
強力な障壁を張れるルビーが居ない今、セイバーの攻撃を受ける選択肢はあり得ない。
「どうでもいい時には呼ばなくても出てくるくせに、どうしてこんな肝心な時にいないのよあのバカ杖は――ッ!!」
彼女さえいれば倒すとまではいかなくても、逃げ出す事くらいは出来たかも知れないのに。
63
:
ディストレーションファンタズム
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 03:00:39 ID:XQV58tEw
「ってそうだ、支給品!」
主催者によって支給された道具。それによってはこの事態を好転させる事も出来るかもしれない。
もしランサーのクラスカードがあれば、セイバーを倒すのも不可能ではないかもしれない。
カレイドステッキ無しで限定展開(インクルード)が出来るかはわからないが、一度はステッキ無しでより上位の夢幻召喚(インストール)をした事もあるし。………やっぱりクロが、だけど。
けれど、このまま逃げ続けるだけよりはずっとマシなはずだ。
そう思って支給品を取り出しやすいよう、背負っていたデイバックを抱え直そうとして、
「あっ!」
躓いた。
走りながらだったのがまずかったのか。走りっぱなしで疲れが足に出たのか。とにかく躓いて転んだ。
「った……ッ!」
その頭上すれすれを、黒い斬撃が通過した。
右に避けても、左に避けてもダメだった。跳んで避けたらいい的だった。
偶然にしろなんにしろ、転んでなければ斬られてた。
つまりは殺されていた――死んでいた。
「うひゃああぁぁ――ッ!!」
即座に立ち上がって駆け出す。
支給品の確認なんて後回し。安全確実な状況じゃなきゃそんな隙は命取りだ。
◆
64
:
ディストレーションファンタズム
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 03:01:54 ID:XQV58tEw
それから、十分ぐらいたっただろうか。
どうにか直感と幸運だけで逃げ続けられたけど、それももう終わりらしい。
息は荒く、脚は生まれたての小鹿みたいに震えていて、心臓の鼓動はバカみたいに早い。
それに何より―――
「そ、そんな…………」
逃げ場のない、袋小路に追い込まれた。
全く気が付かなかった。
カードの力で実体化した黒化英霊に理性はない筈なのに、いつの間にか追い詰められていた。
ガシャン、と後ろから金属の擦れる音がした。
恐る恐る振り返れば、そこにはやはり黒い騎士がいる。
「ぁ……う……」
堪らず後ずさるも、すぐに背中が壁にぶつかる。
右を向いても、左を向いても壁。もうどこにも逃げ場はなかった。
「……………………」
セイバーは無言で近づいてくる。
その右手に、鋼の刃を携えて。
その距離は、もう十メートルもない。
「……ミユ……クロ……凛さん……ルヴィアさん」
大切な人たちの名前が、口から零れていく。
逃れようのない絶望を前に、恐怖が心を押し潰す。
そして―――
セイバーが剣を振り上げる。
閃く剣には一切の慈悲も、容赦もない。
ただひたすらに冷徹な無感情だけがそこに在った。
65
:
ディストレーションファンタズム
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 03:02:35 ID:XQV58tEw
「助けて…………おにいちゃあぁぁあああん――――!!!!!」
そして気が付けば、誰よりも大好きな人の名前を呼んでいた。
「伏せろ! イリヤ!」
直後、どこからかその人の声が聞こえた。
それに従い咄嗟に伏せる。
その直後。
「――――“偽・螺旋剣(カラドボルグ)”!!」
その声と共に、壁を抉り飛ばしながらセイバーへと向かってくるモノがあった。
「ッ――――――――!!」
セイバーはそれを咄嗟に弾くが、大きく体制が崩れる。
そこに更に一対の剣が飛来するが、しかしそれは事もなげに躱された。
だがセイバーは続く攻撃を警戒して後方へと飛び退き、イリヤとの距離を大きく開ける。
それによって出来た間に、イリヤを庇うように一人の少年――衛宮士郎が立ちはだかった。
その声を知っている。
その後ろ姿も知っている。
その赤毛の髪だって知っている。
けれど―――
「……おにい、ちゃん?」
知らない。
その手には白と黒の短剣。
纏う空気は戦う者のソレ。
僅かに見えた目は鷹の様。
こんな衛宮士郎を、私は知らない。
66
:
ディストレーションファンタズム
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 03:03:47 ID:XQV58tEw
「お兄ちゃん、だよね?」
「……………………」
答えはない。
答えるつもりが無いのか、それともそんな余裕がないのか。
衛宮士郎はただ、眼前の黒い騎士だけを睨んでいた。
『大丈夫ですか、イリヤさん!!』
「ル……ルビー!」
いつの間に現れたのか、カレイドステッキのルビーが声をかけてきた。
たったそれだけの事に大きく安心した。
「ねえルビー。あの人って、お兄ちゃん……だよね」
『はい。彼は間違いなく、衛宮士郎その人です。ただ……』
「ただ?」
『ただ、あの士郎さんは恐らく、“平行世界”の衛宮士郎なのでしょう』
「平行世界の、お兄ちゃん?」
『“平行世界”とは、無限に広がる鏡合わせの世界。限り無き可能性の枝葉の事です。
その可能性世界においては、“魔術師の衛宮士郎”がどこかにいたとしても、何も不思議じゃありません』
「うう……頭グルグルする」
『まあ確かにこの手の話は、イリヤさんにはまだ早すぎますからね』
「よく解んないけど、あのお兄ちゃんがお兄ちゃんであることには変わらないんだよね」
『はい。あらゆる可能性といっても、人の本質はそう変わるモノではありませんからね』
それを聞いて、改めてお兄ちゃんを見る。
つまりこのお兄ちゃんは私のお兄ちゃんとは別人だけど、同時にまったく同じ人という事なのだろう。
「けどお兄ちゃんが魔術師だったとして、あのセイバーに勝てるの?
それに、さっきお兄ちゃんが使った魔術って………」
67
:
ディストレーションファンタズム
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 03:04:19 ID:XQV58tEw
クロと同じ投影魔術だった。
それに今衛宮士郎が握る双剣も、クロが使っていた物と同じだ。
『それはわたしにも判りません。
士郎さんはアーチャーのクラスカードを夢幻召喚(インストール)していませんので、あれは間違いなく士郎さん本人の能力です。
一体、あの士郎さんとクロさん――いえ、この場合はアーチャーのクラスカードに宿った英霊との間に、どのような関係があるのか………』
ルビーはそう言って言葉尻を濁した。
その様子は、衛宮士郎の能力に心当たりがあるようにも見えた。
『ですが、見た所あのセイバーはエクスカリバーを所有していませんし、士郎さんの能力が本当にアーチャーの能力と同一のモノであるのなら、或いは』
イリヤが以前そうしたように、倒せるかもしれないと。
だが、それでも心配は尽きないし、不安も拭えない。
「ねえルビー。私にも何か、出来るコトはない?」
『それは難しいですね。現在のイリヤさんの魔力出力は、前回のセイバー戦より遥かに落ちてます。今のイリヤさんでは、最悪、足手まといにしかなりません』
「うっ…………。それは、そうだけど…………。
でも、お兄ちゃんにセイバーの相手をさせて、このままじっとしているなんて出来ない」
『イリヤさん………』
「お願いルビー。私に力を貸して」
そう言ってイリヤは、まっすぐにルビーを見つめた。
◆
そうしている間も、衛宮士郎とセイバーの睨み合いは続いていた。
だがそれももう終わる。
重たい沈黙を破ったのは衛宮士郎からだった。
68
:
ディストレーションファンタズム
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 03:05:00 ID:XQV58tEw
「…………セイバー、どうして……」
「……………………」
剣士からは殺気も敵意も感じられない。
漆黒の鎧に身を包み、ヘルムで顔を覆い隠している彼女からは、いかなる感情も読み取れない。
それを信じられないと思い、同時に、悔しくて歯を噛んだ。
―――これは違う。
これじゃあ別人だ。
殺気と敵意だけじゃない。
……彼女には。
以前あれほど感じられた気高ささえ、皆無だった。
「それを知ってどうなると言うのです、シロウ。
既に気付いているのでしょう。貴方は既に私のマスターではなく、私はもう貴方のサーヴァントではない。貴方の質問に答える必要など、もうどこにもない」
「それ、は…………」
「―――この身は既に、貴方の剣ではないのです」
「ッ――――――――!」
その言葉に息を飲む。
後ろで「喋った!?」とか驚いている声も耳に入らない。
貴方の剣ではないと、そう言われただけで、心臓が鷲塚みにされた様に痛んだ。
それを堪えるために、ただ強く、唇を噛んだ。
「私は聖杯の器を必要としている。私の邪魔をするのであれば、誰であろうと容赦なく殺す。そこに話し合いの余地などありません」
「……………………」
セイバーが俺へと剣の切っ先を突き付ける。
セイバーも言ったように、対話の余地などどこにもない。
彼女はたとえ誰であれ、邪魔する者は躊躇いなく殺すだろう。
それでも……どうしてもセイバーを止めたければ、投影魔術を以ってセイバーを打ち負かすしかない。
69
:
ディストレーションファンタズム
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 03:05:38 ID:XQV58tEw
――――俺達はもう、どうしようもない程に敵同士だった。
「―――もっとも。この局面で、貴方が引き下がれる筈がない。
私が何を言うまでもなく、貴方は身命を賭してイリヤスフィールを護ろうとするでしょう」
セイバーの体が揺れる。
彼女は、音もなく選定の魔剣の柄を握り、
「行きます。イリヤスフィールを護りたいのであれば、剣を執りなさい」
静かに、今だ躊躇いを見せる俺へと肉薄した。
「……くそ。やるしかないのか」
干将莫邪を構える。
セイバーを止める。イリヤを助ける。
そのどちらを成すにしても、まずは彼女を倒さなければならない。
……もっとも。
衛宮士郎ではセイバーには敵わないと、とうに結論は出ているのだが。
―――振り抜かれる魔剣。
彼我の距離はまだ遠い。
だが剣に纏わせていた黒い魔力が、剣圧を伴って打ち出される。
小手調べとばかりに迫るそれを防ぐのではなく受け流すことで対処する。
背後のイリヤが気にはなるが、一人でここまで逃げて来れたのなら、自力で避ける事も出来るだろう。
―――再び同じ一撃が放たれる。
70
:
ディストレーションファンタズム
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 03:06:10 ID:XQV58tEw
魔力放出による遠距離斬撃とはいえ、セイバーの一撃である事には変わりない。まともに受ければ防御を容易く崩される。
故に防ぐなどと言う選択肢はあり得ない。先ほどと同様に受け流す。
そこにその二撃を囮にしたセイバーが、視認さえさせず俺の喉を突きに来る――――!
打ち合う鋼に火花が散る。
「っ……!?」
驚きはセイバーのものだ。
彼女の知る衛宮士郎では防げぬ一撃を俺は防ぎ、更には迎撃までして見せる。
その驚きによって生じた隙に陽剣干将を薙ぎ払い、追従するように陰剣莫耶を叩き込む。
しかし不発。
セイバーはその二刀を完全に受け流し、魔剣を振り抜いて反撃してくる。
「は――――」
防戦一方。
攻め手が許されたのは一度のみ、後はひたすらセイバーの剣を防ぐだけ。
セイバーの一撃は、それ単体で俺を確実に殺せる精度を持っている。
「は――――、ぁ、ぐっ――――」
それを防ぐ。
干将莫邪から経験を引きだし、アーチャーの戦闘技術を我が物とする。
完全じゃないが、今の衛宮士郎(おれ)の技量はアーチャーのソレに近い。
「は――――、あ――――」
だが、それだけではどうにもならない。
いかなる理由からか、セイバーの動きは精彩を欠いている。
それでもなお、セイバーは衛宮士郎より圧倒的に強い。
届かない。
このままではセイバーには勝てない。
衛宮士郎では、セイバーには遠く及ばない。
それでも勝とうと思うのなら、衛宮士郎の唯一の武器を最大限に活用しなければならない。
71
:
ディストレーションファンタズム
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 03:06:51 ID:XQV58tEw
「がぁ――――ッ!」
砕かれた。
今までセイバーの猛攻に耐えてきた夫婦剣が、遂に打ち砕かれた。
これで無手。今の衛宮士郎には、いかなる攻撃も防ぐ事が出来ない。
その絶対の隙に、セイバーが止めの一撃を叩き込んでくる。
―――それを防ぐ。
その手に握られた、王者の剣と謳われる“絶世の名剣(デュランダル)”がセイバーの剣を受け止める。
「は―――、あ――――!」
そこから返すようにセイバーに一撃を叩き込む。
だが、決して折れないという逸話を持つ「不滅の聖剣」は、セイバーの反撃によって破砕した。
「っあ――――!」
そこにセイバーが串刺しにせんと魔剣を突き出す。
その一撃を捻じれた一角剣で同様に迎撃する。
一角剣が砕かれる。
「このッ――――!」
ならばと眼前の剣。龍殺しの特性を持つ太陽剣グラムを投影し。
「風よ……吼え上がれ!!」
太陽の如き黒い極光を纏ったセイバーの一撃に、あっけなく粉砕された。
「あ――――」
黒き太陽のフレアは未だ収まらず、再びその顎門を開く。
干将莫邪ではだめだ。ディランダルでも足りない。カラドボルグは言うに及ばず。グラムの開放でやっと互角。
だが、それも崩された体勢では受けきれない。
72
:
ディストレーションファンタズム
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 03:07:30 ID:XQV58tEw
「――――ッ!!」
完全に体勢を崩されれば、その隙をセイバーに切り捨てられる。
故に、地面を転がってでもどうにか回避する。
だが。
「ふん……逃がさん!」
三度放たれる黒い旭光。
黒炎が地面を舐めるように焼き尽くす。
その射程は広く、何をした所で逃れられない。
「く、そぉ―――ッ!」
確約された敗北に、声を上げる。
諦めはしない。諦めはしないが、どうする事も出来ない。
せめてもの抵抗に、盾になる物を投影しようとするが、
「ッ――――――――!!」
そんな余裕すら与えられず、黒竜の顎門は俺の体を飲みこんだ。
◆
その光景を前に、セイバーは自らの勝利を理解した。
地面は大きく抉られ、焦がされて白煙を上げている。
ただの人間である衛宮士郎に、その膨大な魔力の炎を耐えられる道理はない。
今度こそイリヤスフィールを捕らえようと背を向ける。
抵抗しないのであればそれでいいが、そうでないなら四肢を切り落とす事も、あるいは殺す事も厭わない。
セイバーにとって、イリヤスフィールの生死などどうでもいい。必要なのはその心臓――聖杯の器、その核なのだ。
73
:
ディストレーションファンタズム
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 03:08:13 ID:XQV58tEw
周囲に目を巡らせ、標的を探す。
衛宮白との戦闘中は完全に野放しになっていたが、少女を逃がさぬ程度には気を張っていた。
イリヤスフィールがこの近辺にいるのは間違いない。
そうして、イリヤスフィールの気配を捉え、その方向へと向きなおろうとした、その時――――
「なッ――――!」
イリヤスフィールの気配を感じた場所。
いまだ白煙の立ちこめる地面から、死んだはずの衛宮士郎が飛びだしてきた。
「オオオォォォオオ――――!!!!」
どのような護りを敷いたのか、衛宮士郎に然したる怪我は見えない。
そしてその奥にはファンシーな衣装を身に纏い、プラスチックで出来ているかのようなポップな杖を握るイリヤスフィールの姿があった。
「限界まで魔力を籠めた五重の障壁。最後の一枚まで破られると思わなかったけど、それでも防ぎきった!」
『実剣の方で斬られてたらアウトでしたけどね。魔力による斬撃の部分だけで助かりました』
衛宮士郎が黒炎に飲まれたあの瞬間。多元転身(プリズムトランス)したイリヤは、全魔力を防御にまわし、衛宮士郎の盾となって彼を護ったのだ。
「投影、開始(トレース・オン)――――!!」
その間に衛宮士郎が距離を詰め、その手に新たなる剣を投影する。
魔力による光の筋が奔るその右手に、出来かけの剣が握られる。
「――――来るか、シロウ――――!」
刃は横に。
収束し、回転し、臨界に達する旭光の剣。
黒色の太陽は、そのフレアを両手に携え。
74
:
ディストレーションファンタズム
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 03:08:50 ID:XQV58tEw
「――――!」
セイバーの動きが止まる。
剣を振るう事が出来ない。
その両腕には、五芒星の魔力障壁が形成されている。
イリヤの支援だ。
彼女は物理保護壁をセイバーの両腕に展開することで拘束し、その動きを封じたのだ。
「この程度の足留めで……!」
セイバーの全身に魔力が奔る。
稲妻を帯びたセイバーは容易く障壁を粉砕する。
「――――卑王鉄鎚(ヴォーティガーン)!!!!!」
振り抜かれるセイバーの剣。
――――荒れ狂う黒い光。
風を巻いて、セイバーの剣が灼熱する。
衛宮士郎の担う黄金の光を断ち切らんと、最強の一撃を叩き込む。
「セイバァァァアア…………!!!!!」
黄金の剣を渾身の力で振り下ろす。
限界以上の魔力に、剣が稲妻を帯びる。
暴走する主を止める為か、剣の放つ光はより強く輝きを増す。
「あ…………」
――――瞬間。
何か信じられない様な物を見た声と共に、黒い太陽はその輝きを鈍らせた。
75
:
ディストレーションファンタズム
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 03:09:20 ID:XQV58tEw
一振りの剣が打ち上げられ、その手から弾き飛ばされる。
その隙を返す一刀で斬り上げる。
それを紙一重で避け、後方へと飛びずさりながら空中で剣を受け止める。
「私の……剣…………」
剣戟に打ち負けたセイバーは、茫然と衛宮士郎の手に握られた剣――“勝利すべき黄金の剣(カリバーン)”を見つめていた。
ヘルムが砕ける
カリバーンの一撃が掠めていたのだろう。
素顔を現した敵は、変わり果てていようと、紛れもなく彼女だった。
「……………………」
役目を終えたカリバーンが砂の様に散っていく。
それを見と溶けたセイバーは、表情を無に戻し、こちらへと向き直る。
「……………………」
セイバーは剣を構えない。
だが、いつ斬りかかられても応戦できるように、回路に設計図を流し込み、
「……いいでしょう。今回は貴方に免じて引きましょう」
セイバーのその言葉に堰き止められた。
その言葉に、思わず一歩、セイバーへと踏み出す。
「セイバー」
「ですが―――」
だが、それもやはりすぐに止められる。
セイバーは剣を納め、背を向ける。
そこには未練など微塵も感じられない。
76
:
ディストレーションファンタズム
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 03:10:06 ID:XQV58tEw
「次に会った時は必ず、聖杯の器を貰い受けます。
それまで、決してイリヤスフィールを死なせぬよう心しなさい」
そう言ってセイバーは去っていった。
後には何も残らなかった。
ただ、自分を最後まで守ってくれた少女が、敵になったという事実だけがあった。
周囲にはもう、セイバーの気配は感じない。
張り詰めていた糸を緩め、意識を戦闘状態から通常へと戻す。
「大丈夫か、イリヤ」
「……うん。大丈夫」
振り返り、イリヤに向かって手を伸ばすが、立ち上がる様子が無い。
「どうしたんだ? やっぱりどこか怪我したのか?」
「ううん……安心したら、腰が抜けちゃった」
そう言ってイリヤは、恥ずかしそうに赤くなった頬を掻いた。
◇
居間にイリヤを下ろし、台所でお茶を汲む。
勝手知ったるなんとやらと言わんばかりに、台所を物色する。
ここは【G-3】に在る和風建築の家。ぶっちゃけ衛宮邸(の模造品)だった。
最初にここを見つけた時は驚いた。
見ず知らずの町の中に、自分の家がどんと立っていたのだから。
もっとも、生活感がなかったのですぐによく出来た偽物だと気付いたが。
77
:
ディストレーションファンタズム
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 03:10:34 ID:XQV58tEw
ルビーには今、俺がこの会場に飛ばされてからイリヤを助けるまでのあらましを説明してもらってる。
この家は本物同様侵入者避けの結界まで張られているので、休息を取るにはうってつけなのだ。
俺はこの会場に飛ばされた後、支給品を確認してルビーと出会った。
その後に戦闘音とイリヤの声を聞き付けて、駆け付けたのだ。
話にすれば、これだけの事だ。
ただ、第二魔法だの平行世界だのと、魔術的な説明に関してはルビーの方が適任だろうと(非常に不安だったが)彼女に任せる事にしたのだ。
ちなみに俺はルビーとあった時点で説明を受けている。
……まあ、話の半分も理解できなかったわけだが。
お茶の乗ったお盆をテーブルに置く。
「イリヤ。話は終わったか?」
「うん、終わったよ」
「そっか。じゃあお茶入れたから、よければ飲んでくれ」
「ありがとう、お兄ちゃん」
その呼ばれ方が、どうもこそばゆく感じられる。
同時に、どこか胸を締め付けられるような感じを覚える。
それは、目の前の少女に自分が助けられなかった少女を重ねてしまっているからなのだろう。
「……なあイリヤ。そのお兄ちゃんって呼び方、出来れば変えてくれないか?」
「え? なんで?」
「いや、ちょっとな」
「……うん、わかった。じゃあ、シロウ、でいいかな?」
「ああ、それで構わない。
ごめんな、我が侭言っちまって」
「ううん、いいの。よくわかんないけど、お兄……じゃなくて、シロウ泣きそうな顔をしてた。
だから、いいの。理由も効かない」
「……ありがとう、イリヤ」
ただの自分の我が侭で、イリヤに哀しそうな顔をさせてしまった事に、少し後悔する。
78
:
ディストレーションファンタズム
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 03:11:11 ID:XQV58tEw
「ねえシロウ。シロウはあのセイバーの事、知ってるの?」
「え? ………ああ、知っている」
唐突な質問に驚いたが、隠す様な事でもないので答える。
「簡単に言うと、俺は聖杯戦争に参加したマスターで、セイバーは俺のサーヴァントだったんだ」
「聖杯……戦争……」
『……………………』
イリヤはそう呟くと、そのまま黙り込んでしまった。
その重い空気をどうにかしようと、気を取り直してイリヤにそう訊いてみる。
「取り合えず、イリヤはこれからどうしたい?」
「私は…………ミユたちに会いたい。
殺し合いなんてしたくない」
「ああ……そうだな」
こんな殺し合いは止める。
正義の味方として当然の事だろう。
たとえこの殺し合いで本当にどんな願いでも叶うのだとしても、誰かが犠牲とならなければならない時点で論外だ。
「取り合えず、当面の目標はみんなを探しだして、バトルロワイアルを止める事だな」
「それに、首の『術式』もどうにかしなきゃいけないしね」
確かにそれは急務だ。
このバトルロワイアルを止める上で、『術式』の解呪は絶対条件だ。
だがまあ。
79
:
ディストレーションファンタズム
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 03:11:47 ID:XQV58tEw
「一応、術式の解除の充てはあるんだけどな」
「え、本当!?」
「ああ、ホントだ。
既にルビーと確認した事なんだけど、一応イリヤにも見せておく」
そう言って右手に歪な短剣を投影する。
「それって、“破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)”?」
「ああ。これには魔術で作られたモノや契約を初期化する効果があるからな」
ルールブレイカーの刃先を首の術式に軽く突き刺し、その真名を解放すると、首にあった術式が薄くなり消えてなくなる。
「おお! これなら――!」
「いや。残念ながら、だ。
言っただろ。既にルビーと確認したって」
首から短剣を放せば、消えたはずの術式がまた刻まれていく。
その様子を見ていたイリヤが、どういう事なのかと聞いてくる。
それにはルビーが答えた。
『おそらく、この術式は端末みたいなものなんでしょう。
どこかに『呪術式の核』があって、それが参加者に術式を刻んだり、術式を通じて制限とかを掛けているのだと思われます』
「術式の、核?」
『はい。おそらくこの会場のどこかにあると思いますよ?
再び術式が刻まれる時間から推測して、人間業ではあり得ませんから』
「じゃあ、その『呪術式の核』を壊せば!」
「ああ、バトルロワイアルは止められる筈だ」
その希望的観測に、イリヤは顔を明るくした。
だが何故か怪訝そうな顔雄をする。
80
:
ディストレーションファンタズム
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 03:12:49 ID:XQV58tEw
「イリヤ?」
「そう言えば、いっつもボケ倒してるルビーが、今はとっても真面目なんだけど……なんで?」
『失礼な! 私はいつだって大真面目ですよ!』
大真面目にボケ倒しているのか、と。
イリヤがジト目でルビーを睨む。
『まあそれは置いといて。
私は単にこのバトルロワイアルが気に食わないだけです。
こんなシリアス一辺倒の、コメディーの欠片もない天界なんて認めません!』
「――――」
「…………」
『それに私は正義の魔法少女。
私の根底に刻まれた命令は“愛と正義(ラブアンドパワー)”なんです!
ああ、愛と正義(ラブアンドパワー)……なんと独善的な響きでしょう。
我ながら素晴らしい存在意義だと思います!』
「――――」
「…………」
……ホンモノだな。
そのルビの振り方は、封印指定クラスの危険物だ。
こんなトンデモないモノと契約させられたイリヤを哀れに思いながらも、どこかそのままでいて欲しいと思う自分が居た。
「それじゃあ改めて確認するけど、今後の行動方針は、
一、お互いの知り合いを探す。
二、『呪術式の核』を探しだして破壊する。
この二つでいいな」
その言葉にイリヤが頷く。
「よし。それじゃあ休憩も兼ねて出発は三十分後だ。
一応部屋に布団を敷いておいたから、仮眠を取ってもいいぞ」
「はい、わかりました。シロウ隊長!」
「うむ。では解散だ」
そう言うとイリヤは布団のある部屋へと走っていった。
まあ、あのセイバーに襲われて、命からがら逃げ延びたのだ。疲れもしているだろう。
俺は台所で冷蔵庫をあさり、出発前の軽食用にサンドウィッチなど作ることにした。
『あれ? イリヤさん? 士郎さん?
私の話、聞いてました?
……あのー。無視しないでくださぁい』
……………………。
『………ルビーちゃん、さみしい』
81
:
ディストレーションファンタズム
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 03:13:29 ID:XQV58tEw
◇
廊下の縁側に座り、空に輝く月を眺める。
参加者名簿に書かれていた、幾つか名前に想いを馳せる。
イリヤ。遠坂。桜。藤ねえ。バーサーカー。そして、セイバー。
右手を左肩に当てる。そこに刻まれた刻印は、遠坂との繋がりの証だった。
だがそれは今、輝きを失っていて、何の力も感じられない。
『術式』による制限からか、この会場に居る遠坂が“平行世界の遠坂凛”かもしれないからか、それは判らない。
どっちの遠坂だろうと、優秀な魔術師だと言う事には変わりないが、やはり心配になる。
桜や藤ねえの事も心配だ。
一般人である彼女達が、このバトルロワイヤルを生き残れるとは思えない。
今この瞬間にも、彼女達は命の危機に瀕しているかもしれないのだ。
それを思えば、今すぐにでも彼女達を探しに、飛び出したくなる。
だがそれは出来ない。
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。
俺が守る事の出来なかった少女。
今ここにいるのは平行世界から来た別人だが、それでも同じ少女だ。
彼女を二度も見殺しにするなんて事は、決してしたくなかった。
だから俺の我がままで、彼女を危険にさらす事は出来ない。
82
:
ディストレーションファンタズム
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 03:14:04 ID:XQV58tEw
バーサーカーもきっと、イリヤを護ろうとするだろう。
だが、理性のないバーサーカーに出来る事は、破壊だけだ。
きっとバーサーカーは、イリヤと出会うまでに何人もの人を殺していくんだろう。
そしてセイバー。
彼女が一体どんな理由でああなったのかは分からない。
ただ解る事は、彼女はもう、俺の言葉では止まらないと言う事だけだ。
セイバーがどんな理由で戦っているかは判らないが、優勝しようとしているのだとしたら、今の彼女はバーサーカー以上に人々を殺すだろう。
いずれにしろ、セイバーやバーサーカーを止めるにしても、桜達を助けるにしても遠坂達の助けが居る。
そのためにも、イリヤが回復し次第、行動を開始しなければ。
立ち上がって庭を抜け、土蔵の扉を開ける。
その光景は、今でも目に焼き付いている。
月の光に濡れた金砂の髪と、聖緑の瞳。
“―――問おう。貴方が、私のマスターか”
あの時、セイバーが俺の剣になると誓ったように、
同時に、俺も彼女の助けになると誓ったのだ。
だから―――
「――――セイバー。
俺は必ず、お前を止めてみせる」
【G-3/衛宮邸(和)/一日目-深夜】
【衛宮士郎@Fate/stay night】
[状態]:健康、疲労(小)、魔力消費(小)、遠坂凛とのライン(不通)
[装備]:
[道具]:基本支給品、お手製の軽食、不明支給品1〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本:この殺し合いを止める
1:今度こそイリヤを守る。
2:遠坂、桜、藤ねえ、イリヤの知り合いを探す
3:“呪術式の核”を探しだして、解呪または破壊する
4:セイバー…………
[備考]
※凛ルート(UBW)後より参戦(エピローグは迎えてない)。
※イリヤが、平行世界の人物であると認識しました。
【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:健康、疲労(大)
[装備]:カレイドステッキ(ルビー)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[道具]:基本支給品、不明支給品1〜3
[思考・状況]
基本:この殺し合いを止める
1:シロウについていく
2:ミユたちを探す
3:聖杯戦争…………
[備考]
※2wei!三巻終了後より参戦。
※衛宮士郎が、平行世界の人物であると認識しました 。
※カレイドステッキはマスター登録orゲスト登録した相手と10m以上離れられません。
[共通の備考(士郎、イリヤ)]
※『呪術式』はルールブレイカーで解呪可能。
ただし、会場のどこかにあるだろう『呪術式の核』を解呪または破壊しない限り、完全な解呪は不可能(その場で再び呪われる)。
【カレイドステッキ(ルビー)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
衛宮士郎に支給。
愉快型魔術礼装。マジカルルビーという名の人工天然精霊が宿っている。
機能は魔力を無制限に供給し、マスターの空想をもとに現実に奇跡を具現化させること。多元転身や障壁、治癒促進などのほか、魔力砲攻撃やクラスカードの限定展開なども可能。展開できる魔術障壁はランクA、規模は最大で半径2メートル程度。
制限により、カレイドステッキはマスター登録orゲスト登録した相手と10m以上離れられない。
83
:
ディストレーションファンタズム
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 03:14:46 ID:XQV58tEw
◇
冬木大橋と酷似した橋の前に立つ。
当面の目的はマスターであるマトウサクラを探すことだ。
魔術師として不安定な彼女は、いつ自滅するかも判らない。
そうなる前に見つけ出して安全を確保し、一刻も早く彼女を優勝させなければならない。
聖杯の器さえあれば、上手くすればある程度は安定するかもしれない。
先ほどイリヤスフィールを襲ったのもそのためだ。
次に、グラムに代わる剣を探しだす。
グラムは剣としての性能は高く、魔剣としての格も自分の宝具に匹敵する。
だが竜殺しの特性を持つため、竜の因子を持つ自分とは相性が悪いのだ。
こうしている今も竜殺しの魔剣による「重圧」が圧し掛かり、ステータスがワンランクほどダウンしている。
これではいざという時の行動が遅れてしまう。
それを防ぐ為にも代わりの剣――出来れば“約束された勝利の剣(エクスカリバー)”が欲しい。
後はただ、サクラのサーヴァントとしてサクラを優勝させる為に、出会った参加者全てを殺していくだけだ。
その過程で、遠坂凛や藤村大河など、衛宮士郎にとって親しい人物を殺すことになるだろう。
「……それまでに、貴方は私を止められますか。シロウ」
そう呟くと、黒き暴君は戦場に挑む様に橋を渡り始めた。
【H-4/冬樹大橋前/一日目-深夜】
【セイバー・オルタ@Fate/stay night】
[状態]:健康、黒化、魔力消費(微小)、グラムによる「重圧」
[装備]:グラム@Fate/stay night
[道具]:基本支給品、不明支給品×1(確認済み)
[思考・状況]
基本:間桐桜のサーヴァントとして、間桐桜を優勝させる
1:間桐桜を探して、安全を確保する
2:グラムに代わる剣、出来ればエクスカリバーを探す
3:間桐桜を除く参加者の殲滅
4:次に士郎たちに合った時は、聖杯の器(イリヤ)を貰い受ける(積極的には探さない)
[備考]
※間桐桜とのラインは途切れています。
【グラム@Fate/stay night】
セイバー・オルタに支給。
「最強の聖剣」に匹敵する「最強の魔剣」、太陽剣グラム。正確にはその原典の“原罪(メロダック)”。
北欧神話における選定の剣であり、北欧最大の英雄シグルドが所有した。
ドイツの叙事詩『ニーベルングの指輪』ではバルムンクの名で呼ばれる。
竜殺しの特性を備えており、竜の化身たる騎士王の天敵といえる武器。
84
:
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 03:16:29 ID:XQV58tEw
以上で投下を終了します。
何かご意見等がありましたら、よろしくお願いします。
85
:
名無しさん
:2011/07/09(土) 03:34:11 ID:bXCu5Uc6
>凛ルート後より参戦
残念!このロワは桜ルート限定なのです!
86
:
◆4EDMfWv86Q
:2011/07/09(土) 03:41:08 ID:vai3oVbQ
投下乙です……が、申し訳ないですが破棄提議をせざるを得ない内容です。
まず一つとして、士郎の、というよりFateキャラの参戦時期は桜ルート限定と予め決定されているので、凛ルート設定の士郎を出すことは認められません。
書き手用ルール欄にも記載されている事項です。
二つ目に、マップ上の衞宮邸はプリズマイリヤ仕様、即ち平凡な一軒家とされています。そのため衞宮邸の描写が根本から違っています。
上記に比べれば些細なものですが、グラムを持つことによる重圧などはオリジナルの設定ではないでしょうか。グラム自体も露出が少ない剣ですし。
二つ目はともかく、一つ目は話の根幹に大きく関わり、かつ代用不可で一からの書き直しとなるため、修正は困難と判断します。
ルール絶対至上とは言いませんが、前もって企画者達で決めた設定、ルールを真っ向から否定する内容ですので、こちら側としても厳正な処置をする必要性があると考えます。
時間を割いて執筆をしてくれた◆UOJEIq.Rysにとっては遺憾でしょうが、これらの理由から「ディストレーションファンタズム」については破棄の要求を提出します。
87
:
◆rNn3lLuznA
:2011/07/09(土) 03:43:07 ID:h9FRlpQU
投下乙
しかし、
>>85
さんもおっしゃってますが、原作ゲーム版のFate勢は桜ルート限定なんですよ
では、自身も一時投下します
88
:
Night of Knights
◆rNn3lLuznA
:2011/07/09(土) 03:44:23 ID:h9FRlpQU
「――どうなってんのよ、コレは?」
海風が程良く吹きつける深夜の冬木大橋。
その入り口で、一人の少女が支給された参加者名簿を手に驚愕の表情を浮かべていた。
彼女の名はアリス。アッシュフォード学園中等部に通う一人の女子生徒――というのは仮の姿。
その正体は、ブリタニア軍の『特殊名誉外人部隊(イレギュラーズ)』に所属する人造ギアスユーザーの一人、アリス・ザ・スピード。
プロの軍人にして、ヒトの摂理から外れた能力を与えられた少女――
そんなアリスが、先ほどのような表情を見せた原因は当然、彼女の手にある参加者名簿に載っていた名前にあった。
――『ナナリー・ランページ』。
アリスのクラスメイトにして、たった一人の親友。
そして、アリスが自らの力で、何としてでも守ると誓った存在――
そんなナナリーの名前が、名簿の中にハッキリと載せられていた。
――だが、アリスを驚かせたのは、それだけではなかった。
『ルルーシュ・ランペルージ』、『篠崎咲世子』、『枢木スザク』、『ユーフェミア・リ・ブリタニア』――
そして、『ゼロ』、『C.C.』、『マオ』と、どういうわけか、参加者名簿にはナナリーや自身に関係する者の名前が多く載っていたのである。
特に、マオの名を見た時は、アリスも己が目を疑った。
なぜなら、彼女は――
「死んだ……」
自分に言い聞かせるかのように、思わずそう呟くアリス。
89
:
Night of Knights
◆rNn3lLuznA
:2011/07/09(土) 03:44:57 ID:h9FRlpQU
彼女の記憶の中では、マオはつい先日シンジュクで死んだ。
いや、むしろアリス自身が彼女を殺したと言っても過言ではない。
数年ぶりに再開したかつての同僚にして、アリスと同じく人造ギアスユーザーであったマオ。
そんなのマオの目の前で、アリスは彼女の命そのものとも言える『C.C.細胞抑制剤』が入ったアタッシュケースを完膚なきまでに破壊した。
結果、マオはその身に宿した『C.C.細胞』の反作用を止めることができなくなり、その肉体を消滅させた――
『忘れるなアリス、これが“ボクたち”イレギュラーズの末路だ……!』
最期に自身に向けた呪詛ともとれるその言葉と、その際に見せた不気味な笑顔は、未だにアリスの脳裏から焼き付いて離れない。
――無論、同名の別人というケースも十分考えられる。
だが、考えて見れば、アリスはマオが自身の目の前で消滅するまでギアスユーザーの最期というものを見たことがなかった。
ギアスユーザーの力の根源とも言える『ブリタニアの魔女』ことC.C.は不老不死だ。
ならば、いくら造られたまがいものとはいえ、その力の一片を授かっている人造ギアスユーザーも実は不死で、マオもあの後、知らずうちに蘇っていたという可能性は十分ありえる。
――あくまでも本当に可能性、それも0に限りなく近いほどの低確率の可能性の話だが。
「……でも、よく考えてみたら、あのマオの一件で私は改めてナナリーを守ろうって決心が――! そうよ、ナナリー!」
はっと思い出したように、アリスは顔を上げる。
アリスの知るナナリー・ランページという少女は、目が見えず、足も不自由なか弱い女の子である。
そんな彼女が、自身と同じくこの『儀式』なるデスゲームの舞台に放りこまれている――
それはつまり、殺し合いに乗った者たちからすれば、恰好の標的に他ならないではないか!
90
:
Night of Knights
◆rNn3lLuznA
:2011/07/09(土) 03:45:45 ID:h9FRlpQU
「くっ……! 本当に何やってんのよ、私は!
ナナリーを守るって決心したのなら、名簿でナナリーの名前確認した時点で行動起こしなさいよッ!」
自分をそう叱咤しながらアリスは大急ぎで名簿をデイパックに戻すと、代わりに長いヒモを中から取り出した。
――『あなぬけのヒモ』。それがアリスに与えられた支給品であった。
付属していた説明書によると、『洞窟や建物などの内部で使うと、一瞬で外までワープできる道具』らしい。
正直胡散臭かったが、何も無いよりはマシだと、アリスはそれを強引にスカートのポケットに突っ込んだ。
「しかし、あのアカギとかいう男、本当に殺し合いをさせる気があるのかしら?
何も同じ道具を3つもよこすことないでしょうに……」
そう愚痴をこぼしながら、アリスはデイパックの中をチラリと覗き込む。
デイパックの中には、たった今アリスがポケットに突っ込んだものと同じ『あなぬけのヒモ』があと2つ入っていた。
「まぁ、ヒモだって使い方次第じゃ十分武器にもなるけど……」
はぁ、と一度軽くため息をつくと、アリスはデイパックの口を閉める。
それと同時に、『女子中学生としての自分』から、本来の姿とも言える『軍人としての自分』にスイッチを切り替えた。
「――待ってて、ナナリー。絶対に私が見つけ出して守ってあげるから!」
言葉と共に、アリスの額に刻印のようなものが瞬時に浮かび上がった。
アリスが自身の『本質』を形とした能力――ギアスを発現した証だ。
「ザ・スピード!」
自身の能力であると同時に、自身の名前でもあるその言葉を叫んだ瞬間、アリスの姿はその場から消え去った。
『ザ・スピード』――かつて最愛の妹を守りきれなかった少女が得た、加重力によって相対的に超高速を得る能力。
それは、過去の悲劇より生じた重圧に無意識下に苦しめられ続けているアリスにとって、皮肉過ぎる彼女の本質であった。
91
:
Night of Knights
◆rNn3lLuznA
:2011/07/09(土) 03:46:37 ID:h9FRlpQU
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「どうなっているのかしら、本当に――」
輝き続ける星の下、老舗クリーニング店『西洋洗濯舗菊池』の屋根の上で、一人の少女が支給された参加者名簿を手に険しい表情を浮かべていた。
彼女の名は暁美ほむら。見滝原中学校に通う一人の女子生徒――というのは仮の姿。
その正体は、人知れず世界に災いの源である呪いをばら撒く存在『魔女』を狩る『魔法少女』。
奇跡の体現者にして、ヒトの摂理から外れた存在とされてしまった少女――
そんなほむらが、先ほどのような表情を見せた原因は当然、彼女の手にある参加者名簿に載っていた名前にあった。
――『鹿目まどか』。
ほむらのクラスメイトにして、たった一人の親友。
そして、ほむらが自らの力で、何としてでも守ると誓った存在――
そんなまどかの名前が、名簿の中にハッキリと載せられていた。
――だが、名簿に載っていた名前は、それだけではなかった。
『巴マミ』、『美樹さやか』、『佐倉杏子』――
そして、『美国織莉子』、『呉キリカ』、『千歳ゆま』と、どういうわけか、参加者名簿にはまどかや自身に関係する者の名前が多く載っていたのである。
特に、前者三名の名を見た時は、ほむらも己が目を疑った。
なぜなら、彼女たちは――
「死んだはずよね……」
自分に言い聞かせるかのように、思わずそう呟くほむら。
彼女の記憶の中では、巴マミは『お菓子の魔女』に食われ、美樹さやかは魔女となり、佐倉杏子は“つい先ほど”魔女となった美樹さやか相手に捨て身の一撃を放って消滅したばかりだ。
「…………」
92
:
Night of Knights
◆rNn3lLuznA
:2011/07/09(土) 03:48:29 ID:h9FRlpQU
あさっての方向に目を向けながら、黙って思考するほむら。
佐倉杏子が消滅してから現在までに起きた出来事を振り返ってみる。
――まず、気を失っていたまどかを家まで送り届けた。
そして、自宅へと戻る途中にあの一面黒い謎の空間に迷い込んだ。
やがて、謎の空間から見知らぬ者たちが大勢いたホールへと場所は移り、アカギという男が自分たちの前に姿を現した。
『まずは、『おめでとう』と言わせてもらおう。君たちは選ばれたのだ』
『そうだ。君たちはこれから行われる『儀式』を完遂するために、数多の時間、空間という可能性宇宙のひとつひとつから選び出された戦士たちなのだ……!』
『これから君たちには、己が魂の存在を賭け、最後の一人になるまで戦ってもらいたい!』
アカギが自己紹介の後に言った話の内容が脳内で再生される。
ここでほむらは、ひとつ気になる言葉があったことを思い出した。
――『可能性宇宙』。
合わせ鏡に映し出される光景のように、無限に存在すると言われるif――
フィクションなどの世界においては、俗に『パラレルワールド』とも呼ばれるもの――
あのアカギという男は、ほむらたちをそんなifのひとつひとつから選出した者だと言っていた。
それはつまり――
「あの男は、時間軸と空間軸の両方に干渉できる力を――平行世界に干渉する能力を持っている?」
それがほむらが最初に思い至った結論であった。
というより、そうとしか考える他なかった。
93
:
Night of Knights
◆rNn3lLuznA
:2011/07/09(土) 03:49:52 ID:h9FRlpQU
自分がいた時間軸においては既に死んでいる者たちの名前が名簿に載っている。
最初のホールで、自らを『オルフェノク』と名乗り、灰色の異形に姿を変えた男の存在。
これが何よりの証拠だ。
特に、後者は明らかに自分の世界に存在した『魔法少女』や『魔女』とは性質が違って見えたし、何より変身したのが男だった。
また、思い返してみると、アカギはこうも言っていたではないか。
――この『儀式』なる殺し合いの『勝者』となった者は、『どのような願いでもひとつだけ叶えることができる』、と。
確かに、無限に存在する並行世界のひとつひとつに干渉することが可能ならば、その程度のことは造作も無いことだろう。
――だが、ひとつだけ気になることもある。
それは、『何故アカギはこのようなことをするのか』という点だ。
ただ己の力を知らしめたいだけならば、わざわざ別世界の者たちにまで干渉する意味は正直薄いとほむらは考える。
それこそ、よくある正義のヒーローやヒロインもののアニメや漫画に登場する悪の親玉が掲げる『全世界・全宇宙の制服』並に無駄な行為だ。最終的に徒労に終わる。
では、本当に何が目的なのか?
「……そういえば」
あの時――あのホールでアカギが姿を現した時、誰かがアカギに対して「お前は!?」と言っていたのを思い出す。
それはつまり、この場には『アカギのことを知っている者』か『アカギと同じ世界出身の者』が存在するということ。
もし、上記のような者たちと接触できれば、アカギが何故この『儀式』を開催したのか理由がわかるかもしれない。
「……まず必要なのは情報ね」
ほむらはそう決定づけると、名簿をデイパックに戻し、人がいないかと辺りを見回し始める。
94
:
Night of Knights
◆rNn3lLuznA
:2011/07/09(土) 03:50:53 ID:h9FRlpQU
現時点において、ほむらが最優先でやるべきことと判断したのは、先ほど自身が口にしたとおり『情報(特にアカギに関するもの)を集めること』であった。
無論、彼女が守りたい存在である鹿目まどかの早期発見も優先すべきことだが、アカギが言っていた『可能性宇宙のひとつひとつから選び出された』という点が、これを最優先とすべきか否かを左右することになった。
――要するに、ほむらは今この『儀式』の舞台に放りこまれている鹿目まどかが、『魔法少女である鹿目まどか』という可能性もあると考えているのである。
暁美ほむらが守りたい『鹿目まどか』という少女は、あくまでも『人間である鹿目まどか』であり、『魔法少女である鹿目まどか』は守ったところで意味が無いからである。
故に、ほむらの最終的な目的は、『自身のいた時間軸(もしくは世界)に帰還すること』となるのだが、かといって殺し合いに乗るつもりもない。
先述したとおり、アカギがこの『儀式』を行う理由――目的が判明しておらず、かつ「『儀式』の『勝者』となったところで、本当に自身いた時間軸(世界)に帰ることができるのか?」という疑問もあるからだ。
――(いくら違う可能性宇宙の存在とはいえ)たった一人の親友を自らの手にかけたくないという思いもある。
――さて、何故、暁美ほむらがこうも慎重なのかというと、実は彼女も『可能性宇宙』『パラレルワールド』という概念に、ある程度関わりがある存在だからである。
彼女は『時間遡行』――時間軸に干渉する能力を持った魔法少女であった。
親友である鹿目まどかを守るために、未来から過去の世界へと戻り、失敗してはまた戻るというループを延々と繰り返しているのである。
――言ってしまえば、それは、親友を守るために願い得た力でありながら、逆に最期は親友を守れずに終わるという皮肉過ぎる力であった。
最初は、親友でありと同時に、『魔法少女』として憧れの存在でもあったまどかを死なせないために行っていた行為であった。
しかし、時間遡行によるリセットを何度も繰り返していくうちに、『魔法少女』という存在と、その裏に隠された真実を知ってしまったのである。
ひとつ、『魔法少女』は厳密には人間ではなく、魂を『ソウルジェム』と呼ばれる宝石に変換され、それによって肉体を維持、操作されている一種のゾンビであること。
(おまけに、ソウルジェムと肉体がおよそ100メートル以上離れると肉体は活動できなくなる。要は死ぬ)
ひとつ、ソウルジェムが破壊されない限り、肉体はどのような損傷をしても(それこそ全ての血を失おうが、心臓を抉り取られようが)魔力を消費すれば修復できるということ。
(ただし、本体であり命そのものであるソウルジェムが、攻撃を受けると簡単に破壊されてしまうため『無敵』『不死身』とは程遠い)
そして、最後のひとつが、ソウルジェムが黒く濁り、浄化しきれなくなると、『グリーフシード』と呼ばれるものに姿を変え、『魔女』を生み出すということだ。
95
:
Night of Knights
◆rNn3lLuznA
:2011/07/09(土) 03:52:14 ID:h9FRlpQU
――そう。魔法少女が狩っていた『魔女』とは、かつては自分たちと同じ魔法少女だった者の成れの果てだったのである。
何故こんな恐ろしい事実が隠されていたかというと、魔法少女を生み出す存在・キュゥべえことインキュベーターが『聞かれなかったから黙っていた』ことにある。
彼(?)らは、人類よりも遥かに高度な文明を持つ地球外生命体が生み出した一種の生態端末兼プログラムであり、宇宙の寿命を延ばすために魔法少女が絶望して魔女になる際に生じる莫大な感情エネルギーを回収することが目的であった。
要は、彼らにとって地球人の少女とは『魔法少女の素材』であると同時に『消耗品』であり、エネルギーを搾取すること以外に対する配慮などというものは基本的に持ち合わない。
――そもそも、彼らには『倫理感』や『価値感』というものはおろか、『感情』というもの自体を持っていないのだから。
これは人間からすれば『騙す』という行為に当たるが、上記のとおり、彼らは感情を持たぬため、ソレを全く理解していないし、しようとも思わない。
彼らからすれば『騙す』という行為は『認識の相違により生じた判断ミス』であり、それを一方的に憎悪する人間の方が理不尽な存在なのだ。
――キュゥべえに騙される前の馬鹿な私を助けてほしい。
それが、ほむらが繰り返したある時間軸においてまどかから託された願いであり、決して忘れてはならない親友との約束であった。
故に、暁美ほむらという存在は、『人間である鹿目まどか』を守り続けるのである。
――それが結果的に、守るべき対象から拒絶されることになったとしてもだ。
「……ん?」
ほむらの左手の中指にはめられた指輪――形を変えたソウルジェムが僅かに反応した。
ソウルジェムには魔法少女や魔女の持つ『魔力』を感知する、一種の探知機としての役割も持っている。
それが反応したということは――
「近くに魔法少女がいる?」
96
:
Night of Knights
◆rNn3lLuznA
:2011/07/09(土) 03:55:58 ID:h9FRlpQU
そう判断すると、ほむらは瞬時に見滝原中学校の制服姿から、白と紫を中心とした色合いの魔法少女のコスチュームへと姿を変えた。
同時に、左腕に出現する円形の盾――
盾であると同時に、ほむらの持つ『時間遡行』を発動するための装置であり、自身の持つ様々な武器の収納スペースであるソレの裏側へとほむらは手を伸ばす。
(――!? 武器がない!?)
『儀式』の舞台に送り込まれてから初となる魔法少女への変身。
いつもどおり、武器を取り出そうとしたほむらの顔が一瞬だけ驚愕の色に染る。
――盾の中に収納されていたはずの銃火器や爆弾といった武器が一切無くなっていたのだ。
「何故――!? まさか……あの男!?」
瞬時に脳裏に浮かぶアカギの顔。
おそらく、自身と似た力を持つほむらに対して、アカギが仕組んだ一種の嫌がらせだとほむらは判断した。
「……覚えておきなさい……!」
ほむらは、今はこの場にいない『儀式』の主催者に対して、捨て台詞ともとれる言葉を呟くと、屋根の上から地上へと飛び降りた。
只人ならば大怪我をしてもおかしくはない高さだが、魔法少女であるほむらにとっては地上数階建ての建物程度の高さから飛び降りるなどなど全く問題はない。
そして、華麗にクリーニング屋の玄関前に着地すると、そこに駐車してあった一台のバイクへと目を向ける。
黒と黄色を中心としたメタリックなカラーリング。
バイク横に取り付けられた同色のサイドカー。
そして、バイク、サイドカー双方の車体横にプリントされた『スマートブレインモーターズ』のロゴマーク――
――『サイドバッシャー』。
スマートブレインモーターズ製の可変型バリアブルビークルにして、暁美ほむらに与えられた支給品のひとつである。
当然、コレはデイパックに入った状態で支給されたものではない。
ほむらがホールから彼女のスタート地点である、この『西洋洗濯舗菊池』の前に転移させられた際、彼女の横に説明書と共にでんと放置されていたのである。
バイクを支給されるということ自体、驚きたくもなることであったが、ほむらを驚かせたのは付属の説明書に載っていたその機体スペックであった。
97
:
Night of Knights
◆rNn3lLuznA
:2011/07/09(土) 03:57:03 ID:h9FRlpQU
『ビークルモード』と呼ばれる通常形態に加え、『バトルモード』と呼ばれる大型二足歩行型戦闘メカに変形――
変形後は、左腕に6連装ミサイル砲『エクザップバスター』、右腕に4連装バルカン砲『フォトンバルカン』を搭載。おまけに、格闘戦も可能――
これを支給されたのが、ほむらではなくまどかであったら――中学生にバイクを支給するということも含んで――「こんなの絶対おかしいよ!」と突っ込みを入れていたに違いないブッ飛んだ代物であった。
――ちなみに、支給されたほむらはというと、当初こそ驚きもしたが、「コレ、『ワルプルギスの夜』戦の切り札として私の世界に持って帰れないかしら?」などと気に入ったかのような反応をしていたと追記しておく。
反応があった魔力の持ち主が、魔法少女――それも『魔法少女となってしまった鹿目まどか』だったらどうしようか、などと思いながら、ほむらはサイドバッシャーを夜の街へと走らせた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「ど、どうなっているの? 『ザ・スピード』が強制的に打ち切られるなんて……!?」
肩で息をしながら、アリスは自身の身に起きた奇妙な事実に、頭を悩ませていた。
話は数十秒ほど前に遡る。
『ザ・スピード』を発動したアリスは、ナナリーを見つけ出すために夜の街を超高速で全力疾走していた。
だが、発動していたギアスが突然ぷっつりとその効果を止めてしまったのである。
何かの間違いだろうと思い、もう一度『ザ・スピード』を発動する。
――ギアスは問題なく発動した。
気をとり直して、再びかけ出す。
――特に問題はない。
だが、またしても、ある程度走ったところ――現実時間では10秒ほど経過したところ――で『ザ・スピード』の効果が強制的に止まってしまった。
どうしたんだと、三度ギアスを発動。
やはり、発動までは問題なかったが、結局は過去二回と同じ結果になった。
そして、今に至る。
「な、なに? ギアスの不調? それとも、移植されたC.C.細胞がおかしくなった? いや、抑制剤なら、ちゃんと定期的に投与しているハズだし……」
自身のギアスに起きた突然の異常――
それが一部の参加者に科せられた『能力制限』であることに、アリスはまだ気がついていない。
――そんな彼女の耳に、バイクのエンジン音が聞こえてきたのは、それから間もなくのことであった。
98
:
Night of Knights
◆rNn3lLuznA
:2011/07/09(土) 03:58:03 ID:h9FRlpQU
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「な、なによ、アンタ……?」
突然、自身の目の前に飛び出してきたサイドカー付きバイク。
それを操る、どこか可愛らしくもあり地味でもある装いをした長い黒髪の少女――肌の色や顔つきからして、おそらくは日本人だ――に対して、アリスは思わず声をかける。
それに対して、相手側はというと――
「……誰?」
と、投げかけられた質問と似た問いをアリスに返してきた。
「質問を質問で返すな!」
思わずそう言い返してしまう。
「……それは失礼したわね」
目の前の少女はそう言いながら、左手で自身の長い髪をふぁさりと一回掻き上げた。
「まぁ、いいケド……。それで、こんな夜中にそんなモノに乗って何やってんのよアンタ?」
「別に――貴女には関係ないわ」
――ちょっとカチンときた。
ブリタニア帝国の属領出身の戦災孤児であるアリスは、その経緯からブリタニア貴族のように、上から目線で偉そうな物言いをする者を嫌う。
特に、クラスメイトのエカテリーナのように、親の家柄や地位にすがり付く典型的な『貴族様』な輩が特に嫌いだった。
――目の前にいる少女の物言いからも、そういった者たちと似た『嫌な感じ』をアリスは感じ取った。
だからだろうか、「エカテリーナたちのように、ギアスの力でちょっと目の前の生意気な奴を懲らしめてやろう」と思いたったのは――
(――『ザ・スピード』!)
瞬時にギアスを発動させる。
自身と少女との間の距離は僅か数メートル。
先ほどから何故かギアスの調子が悪いが、これくらいの距離感での行動なら別に今までどおり、何の問題もないだろう。
アリスはまず、超高速で少女の背後に回り込んだ。
99
:
Night of Knights
◆rNn3lLuznA
:2011/07/09(土) 03:59:10 ID:h9FRlpQU
次に、両腕を少女のフリル付きのスカートへと伸ばす。
――ちなみに、ここまで現実で経過した時間はまだ一秒代の領域である。
(スカートひん剥いてやる!)
さすがに現時点の『ザ・スピード』では、少女のタイツまでひん剥いてパンツ丸見えにさせてやるほどの余裕はない。
それに、これはあくまでも驚かせるだけだ。
アリスはSでもなければ、ソッチ系の趣味を持ち合わせてもいない。
――だが、アリスの手が少女のスカートに触れる直前、異変は起こった。
「えっ!?」
――一瞬にして、少女がアリスの目の前から文字どおり『姿を消した』のである。
「消えた――!?」
「後ろよ」
「!?」
声がした方に振り返る。
そこには――
「……ヒモが二本だけ? 貴女、ろくな物貰ってないわね」
「な――!?」
『二つ』のデイパックを手にした少女が立っていた。
しかも、その内のひとつ――彼女が今中を物色しているデイパックは、間違いなくアリスの物だった。
100
:
Night of Knights
◆rNn3lLuznA
:2011/07/09(土) 04:01:05 ID:h9FRlpQU
(そんなバカな……!? デイパックはついさっきまで確かに肩に提げていたのに……!?)
「返すわ。勝手に中を見て悪かったわね」
そう言いながら、少女はアリスのデイパックを彼女に向かって放り投げた。
「――それと、貴女、『自身にかかる重力を操作する能力』を持っているわね?
それを応用してとんでもないスピードを得たみたいだけど――」
「!?」
少女の口から出た言葉に、思わずデイパックを落としてしまうアリス。
デイパックの中身が少しだけ外に顔を出した。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
暁美ほむらには『時間遡行』の他に、そこから派生した、もうひとつの時間操作能力がある。
それは『時間停止』。
盾に内蔵された、現実の時間に換算すると一ヶ月分に相当する砂が入った砂時計。
その砂の流れを遮断することによって、その名のとおり『世界の時間を止める』力だ。
「……少し凹んでいる」
いつの間にか自身の後ろに回り込んでいた外国人の少女の肩からデイパックをひったくりながら、ほむらは先程まで少女が立っていた場所を見た。
アスファルトにはっきりと残っている少女の足跡。
そこを中心に、周囲が――本当に数ミリ程度であるが――若干凹んでいた。
(――『重力操作』。それがこの子の魔法……)
少女から奪ったデイパックの口を開けながら、ほむらは少女の持つ『魔法』をそう予測する。
(でもおかしい。魔力は確かに感じるのに、ソウルジェムと思える宝石がどこにも見当たらない……。これは一体……)
どういうことなの、と言いかけたところで、ほむらの左腕からカチリと何か仕掛けが動き出したかのような音がした。
(!?)
これには、ほむら自身も驚いた。
少女が自身の視界から消えた瞬間とほぼ同時に発動していた『時間停止』――それが勝手に解除されたのである。
(そんな……! まだ砂は全然残っているのに、どうして……!?)
内心驚くほむらを前に、外国人の少女が驚きの声を上げた。
まぁ、自身が超スピードで後ろをとったはずの相手が、向こうから見たらいきなり消えたのだから、そりゃあ驚くだろう。
その様子から、スピードによっぽどの自信があったようだ。
「後ろよ」
実際は自分も別の理由で驚いてはいるのだが、それを悟られぬよう、ほむらは目の前の少女に声をかけた。
101
:
Night of Knights
◆rNn3lLuznA
:2011/07/09(土) 04:02:01 ID:h9FRlpQU
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ギアスユーザー・アリスは思考する。
(私の『ザ・スピード』よりも早く動ける!?
おまけに、こちらのギアスの性能を当ててみせた――!)
魔法少女・暁美ほむらは思考する。
(自身にかかる重力を操作する――
魔力も感じたし、これは間違いなく魔法の力に間違いはない――)
(まさかコイツ――!)
(だけどこの子――)
「ギアスユーザーか!?」
「本当に魔法少女なの?」
「――え?」
「……?」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「……えっと、つまり、アンタと私はそれぞれ違う世界の住人で――」
「この『儀式』の舞台に放りこまれた者たちは一人一人が違う世界から来た可能性がある。そういうコトよ……」
深夜の市街を二人の少女が乗ったバイクが疾走していた。
少女の名は暁美ほむら、そしてアリス。
互いが違う世界の存在でありながらも、年齢をはじめ、どこか色々なところが似た二人組。
そんな二人が、この『儀式』の舞台で出会ったのも、それは単なる偶然なのか、それは何者かによって仕組まれたものなのか――
102
:
Night of Knights
◆rNn3lLuznA
:2011/07/09(土) 04:03:30 ID:h9FRlpQU
「……でもさ、本当にありえるの?
さっきアンタが言ってた『ここにいるナナリーやゼロたちは私が知っているナナリーたちじゃないかもしれない』っていうのは?」
「あのアカギって男が実際に言っていたでしょう? 私たちは『可能性宇宙のひとつひとつから集められた存在』だと。
だから、ここにいるナナリー・ランページは貴女の言う『目と足が不自由な少女』ではない可能性だってある」
「……それでも、私はナナリーを見つけ出して守りたい。
例え、ここにいるナナリーが私の知っているナナリーではないとしても、その子はナナリーであることに代わりはないでしょう?」
「――そうね。確かにそれは貴女の言うとおりだわ」
そう呟きながら、ほむらは一度サイドバッシャーのブレーキをかけてスピードを落とす。
「でもね――」
やがて、サイドバッシャーがゆっくりと停車した。
「私たちが本当に守りたい人は、『私たちの世界』にしかいないの。
ここで私たちが死んでしまったら、『私たちの世界』にいるその子は誰が守るの?」
「あ――」
その言葉を聞いて、アリスもほむらが何を言いたいのかは大体理解した。
仮に、この『儀式』で『守りたい人』を最後まで守り、かつ自分たちの世界に戻る方法が見つかったとしても、それぞれが『自分たちの世界』に戻ってしまったら、結局それは『他人』でしかなくなる。
おまけに、『自分の世界』に戻っても、自分たちの世界にいる『守りたい人』は『違う世界の自分が助けられた』なんて事実を知るわけもないし、知る術もない。
――言ってしまえば、この『儀式』の舞台で行う『献身』は、どのような形であっても最終的に見返りは得られないし、求められないのだ。
「……じゃあ、私たちどうすればいいっていうのよ?」
103
:
Night of Knights
◆rNn3lLuznA
:2011/07/09(土) 04:05:41 ID:h9FRlpQU
「そんなの決まっているわ。『自分たちの世界』に帰る方法を見つけるのよ。
アカギの言うとおり、この『儀式』に最後まで勝ち残るというのも方法のひとつではあるけれど、あの男の目的が判明していない以上、これは得策ではないわ。
第一、『勝者』となったところで、本当に『自分の世界』に帰れるかどうかの保証はされていないわけだし……」
そう言いながら、ほむらは再びサイドバッシャーにアクセルを入れ走らせる。
「ともかく、今は情報を集めるしかない。
あのアカギという男が何者なのか、アカギがこの『儀式』を開催した目的は何なのか、あの最初のホールでアカギに殺された自身を『オルフェノク』と言っていた男が何者であったのか……
ここで知るべきことは山ほどあるわ」
「…………」
「それに、情報を集めているうちに、ここにいるナナリー・ランページや鹿目まどかとも出会えるかもしれない……
もし出会えることがあれば、その時はその時で考えて行動すればいい」
「うん……
ところでさ、このバイク何処へ向かっているの?」
「警視庁よ」
「ケーシチョー?」
思わず言われた名前を復唱するアリス。
別にアリスは『警視庁』という建物がどのような場所か知らないわけではない。
確かブリタニアの属領となる以前の日本の警察組織の本部となっていた建物の名前だとアリスは思い出していた。
「万が一のことも考えて、護身用の武器とかは必要でしょう?」
「ああ成程。確かに、ここなら銃や武器の一つや二つは見つかるかも知れないわね」
104
:
Night of Knights
◆rNn3lLuznA
:2011/07/09(土) 04:07:13 ID:h9FRlpQU
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
時間遡行者・暁美ほむら。
人造ギアスユーザー・アリス。
片や幾多の平行世界を経験し、自身が望む結末を求めて戦い続けてきた少女。
片や無限に存在する可能性宇宙のひとつにおいて、守りたい者を守るために戦うことを決心した少女。
そんな二人が突然放りこまれた、無限に存在する並行世界をまたにかけた『儀式』という名の殺し合い――
はたしてそれは、彼女たちという存在にとっては、『一時的なイレギュラー』に過ぎないのか――
それとも、彼女らの戦いに何らかの形で終わりを迎えさせるものなのか――
その問に、答えを出せるものは――今はまだいない。
105
:
Night of Knights
◆rNn3lLuznA
:2011/07/09(土) 04:10:51 ID:h9FRlpQU
【G-3/市街(北部)/一日目-深夜】
【『あの子』の最高のともだちーズ結成】
【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:魔法少女変身中、ソウルジェムの濁り(極少)、サイドバッシャー(ビークルモード)運転中
[装備]:盾(砂時計の砂残量:中)、サイドバッシャー@仮面ライダー555
[道具]:共通支給品一式、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本:『儀式』から脱出し、『自身の世界(時間軸)』へ帰る。そして、『自身の世界』のまどかを守る
1:警視庁に行き、武器になりそうなものを集める
2:情報を集める(特にアカギに関する情報を優先)
3:脱出のための協力者が得られるなら一人でも多く得たい。ただし、自身が「信用できない」と判断した者は除く
4:余裕があったら鹿目まどかを探す。もし出会えたら、その時の状況次第でその後どうするか考える
5:まどか以外の他の魔法少女や知人と遭遇した時は、その時の状況次第で対応
6:可能ならサイドバッシャーを『自身の世界』に持って帰りたい
7:『オルフェノク』という言葉が少々気になる
[備考]
※参戦時期は第9話・杏子死亡後、ラストに自宅でキュゥべえと会話する前
※アリスとは互いの世界について詳細な情報を提供しあってはいません。互いの名前と互いの知人を確認した程度です
※アリスを『違う世界の魔法少女』だと考えています
※ギアスについてはまだアリスから説明を聞いていません
※『ギアスユーザー』とは、アリスの世界における『魔法少女』のことだと考えています
※後述する考察をアリスに話しています
※『時間停止』で止められる時間は最長でも5秒程度までに制限されています
※ランダム支給品0〜2の中身は確認済みです(詳細は皇族の書き手に任せます。少なくとも銃火器や爆弾の類ではありません)
※ソウルジェムは近くでギアスユーザーがギアスを発動しても反応することを知りました
106
:
Night of Knights
◆rNn3lLuznA
:2011/07/09(土) 04:12:39 ID:h9FRlpQU
【アリス@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:服装はアッシュフォード学園中等部の女子制服、疲労(少)、サイドバッシャーのサイドカーに乗車中
[装備]:あなぬけのヒモ@ポケットモンスター(ゲーム)×1
[道具]:共通支給品一式、あなぬけのヒモ@ポケットモンスター(ゲーム)×2
[思考・状況]
基本:『儀式』から脱出し、『自身の世界(時間軸)』へ帰る。そして、『自身の世界』のナナリーを守る
1:暁美ほむらと行動を共にする
2:情報を集める(特にアカギに関する情報を優先)
3:脱出のための協力者が得られるなら一人でも多く得たい
4:余裕があったらナナリーを探す。もし出会えたら、その時の状況次第でその後どうするか考える
5:暁美ほむらのギアスが気になる
6:ナナリー以外の知人と遭遇した時は、その時の状況次第で対応
7:名簿に載っていた『マオ』『ゼロ』『C.C.』が気になる
[備考]
※参戦時期はCODE14・スザクと知り合った後、ナリタ戦前
※暁美ほむらとは互いの世界について詳細な情報を提供しあってはいません。互いの名前と互いの知人を確認した程度です
※暁美ほむらを『違う世界のギアスユーザー』だと考えています
※魔法についてはまだほむらから説明を聞いていません
※『魔法少女』とは、ほむらの世界における『ギアスユーザー』のことだと考えています
※後述する考察を暁美ほむらから聞きました
※『ザ・スピード』の一度の効果持続時間は最長でも10秒前後に制限されています。また、連続して使用すると体力を消耗します
【暁美ほむらの考察】
1:アカギは『時間軸と空間軸(パラレルワールド)に干渉する能力』を持っている
2:『儀式』に参加している『プレイヤー』は、アカギの能力によって一人一人違う世界から集められている
3:上記のため、この『儀式』の舞台にいる知人は『自分の知っている知人』ではない可能性が高い
4:アカギが『儀式』を開催した裏には何か明確な理由か目的がある
5:『儀式』の『勝者』になったとしても、『自身の世界』に帰ることができるという保証はない
【支給品解説】
【サイドバッシャー@仮面ライダー555】
スマートブレインモーターズ製の可変型バリアブルビークル。
通常はサイドカー付きバイクの『ビークルモード』であるが、『バトルモード』と呼ばれる大型二足歩行型戦闘メカに変形できる。
『バトルモード』時は、左腕の6連装ミサイル砲『エクザップバスター』と、右腕の4連装バルカン砲『フォトンバルカン』による砲撃戦、両腕を用いた格闘戦が可能。
本ロワでは、制限によりAIによる自律行動はできず、『ビークルモード』時、『バトルモード』時共に全て搭乗者による操縦が必要。ただし、変形はオートで行われる。
【あなぬけのヒモ@ポケットモンスター(ゲーム)】
洞窟や建物、ダンジョン内で使用すると、入り口(入ってきた場所)まで瞬時にワープできる、長くて丈夫なヒモ。
消耗品で、一度使用するとなくなってしまう。
107
:
◆rNn3lLuznA
:2011/07/09(土) 04:15:01 ID:h9FRlpQU
投下終了です
いきなり何か意味もなく長めな作品でスイマセン
誤字、脱字、疑問点などございましたら遠慮なくお願いします
108
:
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 09:13:12 ID:XQV58tEw
これより修正版を投下したいと思いますが、その前に
>>86
で◆4EDMfWv86Q氏が仰られた事に関して幾つか。
まず一つ目の参加ルート関して、皆様に謝罪をさせていただきます。
私の確認不足により、ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。
二つ目に、衛宮邸に関して。
>>86
さんが仰られた衛宮邸は【F-7】に在るもので、私が作中に描写した衛宮邸は【G-3】にある、マップに載ってない別の衛宮邸という心積もりでした。
これが問題となるようでしたら、また修正させていただきます。
グラムに関しては、確かに私の勝手な推測でしたので修正させていただきました。
では改めて、修正版を投下させていただきます。
その際、タイトルを「ディストレーションファンタズム」から「ヴァイス/シュヴァルツ」に変更させていただきます。
109
:
ヴァイス/シュヴァルツ
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 09:14:30 ID:XQV58tEw
轟ッ、と奔る閃光を紙一重で避ける。
そのまま立ち止まる事なく全力で駆け抜ける。
「きゃあああああ――――ッッッ!!!!」
腹の底から全力で悲鳴を上げながら。
と言うか、叫ばないとやってられなかった。
「なんでアレが居るのっていうかなんでいきなり遭遇してるのっていうかなんでこんな事に巻き込まれてるのよ――――――――!!!???」
背後から漆黒の鎧――黒化英霊のセイバーが剣を構え迫る。
顔はヘルムで覆われ、表情は見えない。だが、その固く閉じられた口元に、全身から放たれる威圧感が、対話という手段が通じない事を容易に理解させる。
彼女は以前私が――というかクロが倒した筈なのに、なんでまた現れているのかさっぱり理解できない。
もっとも、それを言ったらそもそも今の状況が理解できないのだが。
「――――」
「きゃあッ!」
再び放たれた黒い斬撃を辛うじて避ける。
今のは危なかった。今のはヤバかった。今のはギリギリだった。
強力な障壁を張れるルビーが居ない今、セイバーの攻撃を受ける選択肢はあり得ない。
「どうでもいい時には呼ばなくても出てくるくせに、どうしてこんな肝心な時にいないのよあのバカ杖は――ッ!!」
彼女さえいれば倒すとまではいかなくても、逃げ出す事くらいは出来たかも知れないのに。
「ってそうだ、支給品!」
主催者によって支給された道具。それによってはこの事態を好転させる事も出来るかもしれない。
もしランサーのクラスカードがあれば、セイバーを倒すのも不可能ではないかもしれない。
カレイドステッキ無しで限定展開(インクルード)が出来るかはわからないが、一度はステッキ無しでより上位の夢幻召喚(インストール)をした事もあるし。………やっぱりクロが、だけど。
けれど、このまま逃げ続けるだけよりはずっとマシなはずだ。
そう思って支給品を取り出しやすいよう、背負っていたデイバックを抱え直そうとして、
「あっ!」
躓いた。
走りながらだったのがまずかったのか。走りっぱなしで疲れが足に出たのか。とにかく躓いて転んだ。
「った……ッ!」
その頭上すれすれを、黒い斬撃が通過した。
右に避けても、左に避けてもダメだった。跳んで避けたらいい的だった。
偶然にしろなんにしろ、転んでなければ斬られてた。
つまりは殺されていた――死んでいた。
「うひゃああぁぁ――ッ!!」
即座に立ち上がって駆け出す。
支給品の確認なんて後回し。安全確実な状況じゃなきゃそんな隙は命取りだ。
◆
110
:
ヴァイス/シュヴァルツ
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 09:15:06 ID:XQV58tEw
それから、十分ぐらいたっただろうか。
どうにか直感と幸運だけで逃げ続けられたけど、それももう終わりらしい。
息は荒く、脚は生まれたての小鹿みたいに震えていて、心臓の鼓動はバカみたいに早い。
それに何より―――
「そ、そんな…………」
逃げ場のない、袋小路に追い込まれた。
全く気が付かなかった。
カードの力で実体化した黒化英霊に理性はない筈なのに、いつの間にか追い詰められていた。
ガシャン、と後ろから金属の擦れる音がした。
恐る恐る振り返れば、そこにはやはり黒い騎士がいる。
「ぁ……う……」
堪らず後ずさるも、すぐに背中が壁にぶつかる。
右を向いても、左を向いても壁。もうどこにも逃げ場はなかった。
「……………………」
セイバーは無言で近づいてくる。
その右手に、鋼の刃を携えて。
その距離は、もう十メートルもない。
「……ミユ……クロ……凛さん……ルヴィアさん」
大切な人たちの名前が、口から零れていく。
逃れようのない絶望を前に、恐怖が心を押し潰す。
そして―――
セイバーが剣を振り上げる。
閃く剣には一切の慈悲も、容赦もない。
ただひたすらに冷徹な無感情だけがそこに在った。
「助けて…………おにいちゃあぁぁあああん――――!!!!!」
そして気が付けば、誰よりも大好きな人の名前を呼んでいた。
「伏せろ! イリヤ!」
直後、どこからかその人の声が聞こえた。
それに従い咄嗟に伏せる。
その直後。
「――――“偽・螺旋剣(カラドボルグ)”!!」
その声と共に、壁を抉り飛ばしながらセイバーへと向かってくるモノがあった。
「ッ――――――――!!」
セイバーはそれを咄嗟に弾くが、大きく体制が崩れる。
そこに更に一対の剣が飛来するが、しかしそれは事もなげに躱された。
だがセイバーは続く攻撃を警戒して後方へと飛び退き、イリヤとの距離を大きく開ける。
それによって出来た間に、イリヤを庇うように一人の青年――衛宮士郎が立ちはだかった。
その声を知っている。
その後ろ姿も知っている。
その赤毛の髪だって知っている。
けれど―――
「……おにい、ちゃん?」
知らない。
その手には白と黒の短剣。
纏う空気は戦う者のソレ。
僅かに見えた目は鷹の様。
こんな衛宮士郎を、私は知らない。
111
:
ヴァイス/シュヴァルツ
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 09:15:40 ID:XQV58tEw
「お兄ちゃん、だよね?」
「……………………」
答えはない。
答えるつもりが無いのか、それともそんな余裕がないのか。
衛宮士郎はただ、眼前の黒い騎士だけを睨んでいた。
『大丈夫ですか、イリヤさん!!』
「ル……ルビー!」
いつの間に現れたのか、カレイドステッキのルビーが声をかけてきた。
たったそれだけの事に大きく安心した。
「ねえルビー。あの人って、お兄ちゃん……だよね」
『はい。彼は間違いなく、衛宮士郎その人です。ただ……』
「ただ?」
『ただ、あの士郎さんは恐らく、“平行世界”の衛宮士郎なのでしょう』
「平行世界の、お兄ちゃん?」
『“平行世界”とは、無限に広がる鏡合わせの世界。限り無き可能性の枝葉の事です。
その可能性世界においては、“魔術師の衛宮士郎”がどこかにいたとしても、何も不思議じゃありません』
「うう……頭グルグルする」
『まあ確かにこの手の話は、イリヤさんにはまだ早すぎますからね』
「よく解んないけど、あのお兄ちゃんがお兄ちゃんであることには変わらないんだよね」
『はい。あらゆる可能性といっても、人の本質はそう変わるモノではありませんからね』
それを聞いて、改めてお兄ちゃんを見る。
つまりこのお兄ちゃんは私のお兄ちゃんとは別人だけど、同時に同じ人という事なのだろう。
それに、よく見れば記憶にある兄ちゃんより少し背が高い。
「けどお兄ちゃんが魔術師だったとして、あのセイバーに勝てるの?
それに、さっきお兄ちゃんが使った魔術って………」
クロと同じ投影魔術だった。
それに今衛宮士郎が握る双剣も、クロが使っていた物と同じだ。
『それはわたしにも判りません。
士郎さんはアーチャーのクラスカードを夢幻召喚(インストール)していませんので、あれは間違いなく士郎さん本人の能力です。
一体、あの士郎さんとクロさん――いえ、この場合はアーチャーのクラスカードに宿った英霊との間に、どのような関係があるのか………』
ルビーはそう言って言葉尻を濁した。
その様子は、衛宮士郎の能力に心当たりがあるようにも見えた。
『ですが、見た所あのセイバーはエクスカリバーを所有していませんし、士郎さんの能力が本当にアーチャーの能力と同一のモノであるのなら、或いは』
イリヤが以前そうしたように、倒せるかもしれないと。
だが、それでも心配は尽きないし、不安も拭えない。
「ねえルビー。私にも何か、出来るコトはない?」
『それは難しいですね。現在のイリヤさんの魔力出力は、前回のセイバー戦より遥かに落ちてます。今のイリヤさんでは、最悪、足手まといにしかなりません』
「うっ…………。それは、そうだけど…………。
でも、お兄ちゃんにセイバーの相手をさせて、このままじっとしているなんて出来ない」
『イリヤさん………』
「お願いルビー。私に力を貸して」
そう言ってイリヤは、まっすぐにルビーを見つめた。
◆
112
:
ヴァイス/シュヴァルツ
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 09:16:15 ID:XQV58tEw
そうしている間も、衛宮士郎とセイバーの睨み合いは続いていた。
だがそれももう終わる。
重たい沈黙を破ったのは衛宮士郎からだった。
「…………セイバー」
「……………………」
剣士からは殺気も敵意も感じられない。
漆黒の鎧に身を包み、ヘルムで顔を覆い隠している彼女からは、いかなる感情も読み取れない。
「……成長しましたね、シロウ。
どうやら貴方は、私の呼ばれた時間軸より未来から呼ばれたらしい」
「……………………」
それでも、その姿を視界に収め続ける。
後ろで「喋った!?」とか驚いている声も耳に入らない。
俺は、俺がこの手で切り捨てた少女を、ただ茫然と見つめていた。
「……ですが、それは関係のない事ですね。関わりがあるのは、私は聖杯の器を必要とし、貴方はイリヤスフィールを護ろうとしているという一点のみ。
それが誰であろうと、私の邪魔をするのであれば容赦なく殺します」
「……………………」
セイバーの体が揺れる。
彼女は、音もなく選定の魔剣の柄を握り、
「構えなさい。イリヤスフィールを護りたいのであれば、私を斃す事です」
静かに、未だ戸惑いを見せる俺へと剣の切っ先を突き付けた。
「っ…………!」
セイバーを見た瞬間に乱れた心はまだ戻っていない。
だがセイバーの言った通り、イリヤを助けるためには彼女を倒さなければならない。
覚悟も定まらぬまま干将莫邪を構える。
それを戦闘の合図に、セイバーは大きく剣を振り上げる。
お互いの距離は十メートル以上開いている。
いかにセイバーと言えど、接近するには二歩必要とする距離だ。
普通なら剣を振ったところで、空を斬るだけだ。
だがあのセイバーが、そのような無駄をする筈がない。
―――振り抜かれる魔剣。
剣に纏わせていた黒い魔力が、剣圧を伴って打ち出される。
小手調べとばかりに迫るそれを防ぐのではなく受け流すことで対処する。
背後のイリヤが気にはなるが、一人でここまで逃げて来れたのなら、自力で避ける事も出来るだろう。
―――再び同じ一撃が放たれる。
魔力放出による遠距離斬撃とはいえ、セイバーの一撃である事には変わりない。まともに受ければ防御を容易く崩される。
故に防ぐなどと言う選択肢はあり得ない。先ほどと同様に受け流す。
そこにその二撃を囮にしたセイバーが、視認さえさせず俺の喉を突きに来る――――!
「っ……!?」
それを辛うじて防ぐ。
「ハァ――――!」
「っあ――――!」
翻すように振り抜かれる魔剣を弾き、返すように陽剣干将を薙ぎ払い、追従するように陰剣莫耶を叩き込む。
しかし不発。
セイバーはその二刀を完全に受け流し、魔剣を振り抜いて反撃してくる。
「は――――」
それを防ぐ。
干将莫邪から経験を引きだし、アーチャーの戦闘技術を我が物とする。
完全じゃないが、今の衛宮士郎(おれ)の技量はアーチャーのソレに近い。
113
:
ヴァイス/シュヴァルツ
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 09:16:54 ID:XQV58tEw
「は――――、ぁ、ぐっ――――!」
だが、それでもなおセイバーは衛宮士郎より圧倒的に強い。
いかに技量でアーチャーに迫ろうと、そもそも身体能力・魔力量の両面で衛宮士郎ではセイバーに敵わない。
力比べになれば、あっという間に押し潰される。
「は――――、っは――――」
届かない。
このままではセイバーには勝てない。
衛宮士郎では、セイバーには遠く及ばない。
それでも勝とうと思うのなら、衛宮士郎の唯一の武器を最大限に活用しなければならない。
「く――――!」
「っ…………!」
後退する体。
セイバーの一撃に大きく弾かれ、仕切り直す為に背後に跳んだ。
「は―――…………はあ、ふぅ、ふ――――」
乱れる息を、深呼吸をして落ち着かせる。
干将莫邪を握ったままセイバーを見据える。
話した間合いは十メートル。
距離的には初期値と同じだが、背後の壁に近づいた分こちらが不利になっている。
「――――――はっ」
呼吸はすぐに落ち着いた。
だが同時に、幽かに笑いが込み上げてきた。
こんな状況だと言うのに、俺は、セイバーとマトモに打ち合えている事が嬉しいらしい。
だがそれもここまでだ。
これ以上後ろへは下がれない。
立ち回りでセイバーの背後を取る事も出来ない。
そんな事をすれば、セイバーをよりイリヤに近付けさせてしまう。
そうなれば最悪、セイバーは俺ではなくイリヤを狙うだろう。
もとより彼女の目的はイリヤなのだから。
「――――投影、開始(トレース・オン)」
目を閉じて更なる投影をする。
が、作り上げるのはあくまで干将莫邪のみ。
基本的な剣技で、衛宮士郎はセイバーに劣っている。
いかにセイバーを上回る剣を作ろうと、それを使いこなすことが出来なければセイバーに勝つ事は出来ない。
ゆえに衛宮士郎だから出来る剣技、衛宮士郎だから出来る戦い方を以って、これ以上後方へと押し通される前に、セイバーに“必殺の一撃”を叩き込む――――!
こちらの覚悟を感じ取ったのか、セイバーはわずかに腰を落とす。
「――――鶴翼(しんぎ)、欠落ヲ知ラズ(むけつにしてばんじゃく)」
投げる。
左右から同時に、それぞれ最大の魔力を籠めて一投する。
それを、当然のようにセイバーは防いだ。
干渉と莫耶は軌道を狂わされ、その背後へと飛んでいく。
無手となった俺と、いまだ武器を持つセイバー。
お互いが申し合わせたように、相手に向かって突進する。
「―――凍結、解除(フリーズ・アウト)」
既に投影は済んでいる。
予め準備しておいた双剣で、セイバーの剣を受け止める。
114
:
ヴァイス/シュヴァルツ
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 09:17:24 ID:XQV58tEw
「無駄な事を……!
その剣諸共、打ち砕いてくれる……!」
膨大な魔力と共に振るわれる必殺の一撃。
その直前、
「――――心技(ちから) 泰山ニ至リ(やまをぬき)
心技(つるぎ) 黄河ヲ渡ル(みずをわかつ)」
有り得ない方角から奇襲があった。
「っ、は――――!」
セイバーの背後から時間差で飛来する二刀。
それにより生まれる隙に合わせるように干将莫邪を叩きつけ―――
「生憎だが、その技は既に知っている――――!」
その全てを、セイバーの剣の前に打ち砕かれた。
セイバーの全身から放たれた膨大な魔力の渦は、質量を伴って飛来した二刀を弾き飛ばし、俺の両手に握られた二刀は、セイバー自らの剣によって粉砕された。
「な――――ッ!?」
この技を既に知っているとセイバーは言った。
だが俺がこの技をセイバーに使ったのはこれが初めてだ。
その矛盾。その答えに辿り着く前に、
「終わりだ。微塵も残さん……!」
黒色の太陽から放たれるフレアのように、セイバーの持つ魔剣が極光を放つ。
あんなものを受ければ、ただの人間などひとたまりもない。
その一撃から逃れようと全力で回避をするが、
「ふん……逃がさん!」
それよりも早く、“必滅の一撃”が放たれた。
「このッ――――!」
止めの為に作り上げていた最後の干将莫邪を投影する。
双剣に限界まで魔力を籠め、渾身の力で迎撃する。
その最後の抵抗は、辛うじて成功した。
まだセイバーとの距離が近かったのが幸いしたのだ。
我武者羅に振り抜いた干将莫邪は、膨大な魔力による疑似的な刀身ではなく、ちゃんと実態を持った金属の刀身に接触し、その軌道を僅かに逸らしたのだ。
だが。
「――――ッ!!」
黒き太陽のフレアは未だ収まらず、再びその顎門を開く。
干将莫邪は既に砕けた。新たに投影している余裕はない。
そもそも、こんな崩された体勢では防御ごと押し潰される。
故に、地面を転がってでもどうにか回避する。
されどその抵抗もここで終わった。
「風よ……吼え上がれ!!」
三度放たれる黒い旭光。
黒炎が地面を舐めるように焼き尽くす。
その射程は広く、何をした所で逃れられない。
「く、そぉ―――ッ!」
確約された敗北に、声を上げる。
諦めはしない。諦めはしないが、どうする事も出来ない。
せめてもの抵抗に、盾になる物を投影しようとするが、
「ッ――――――――!!」
そんな余裕すら与えられず、黒竜の顎門は俺の体を飲みこんだ。
◆
115
:
ヴァイス/シュヴァルツ
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 09:18:07 ID:XQV58tEw
その光景を前に、セイバーは自らの勝利を理解した。
地面は大きく抉られ、焦がされて白煙を上げている。
ただの人間である衛宮士郎に、その膨大な魔力の炎を耐えられる道理はない。
今度こそイリヤスフィールを捕らえようと背を向ける。
抵抗しないのであればそれでいいが、そうでないなら四肢を切り落とす事も、あるいは殺す事も厭わない。
セイバーにとって、イリヤスフィールの生死などどうでもいい。必要なのはその心臓――聖杯の器、その核なのだ。
周囲に目を巡らせ、標的を探す。
衛宮白との戦闘中は完全に野放しになっていたが、少女を逃がさぬ程度には気を張っていた。
イリヤスフィールがこの近辺にいるのは間違いない。
そうして、イリヤスフィールの気配を捉え、その方向へと向きなおろうとした、その時――――
「なッ――――!」
イリヤスフィールの気配を感じた場所。
いまだ白煙の立ちこめる地面から、死んだはずの衛宮士郎が飛びだしてきた。
「オオオォォォオオ――――!!!!」
どのような護りを敷いたのか、衛宮士郎に然したる怪我は見えない。
そしてその奥にはファンシーな衣装を身に纏い、プラスチックで出来ているかのようなポップな杖を握るイリヤスフィールの姿があった。
「限界まで魔力を籠めた五重の障壁。最後の一枚まで破られると思わなかったけど、それでも防ぎきった!」
『実剣の方で斬られてたらアウトでしたけどね。魔力による斬撃の部分だけで助かりました』
衛宮士郎が黒炎に飲まれたあの瞬間。多元転身(プリズムトランス)したイリヤは、全魔力を防御にまわし、衛宮士郎の盾となって彼を護ったのだ。
「投影、開始(トレース・オン)――――!!」
衛宮士郎が距離を詰め、その手に新たなる剣を投影する。
魔力による光の筋が奔るその右手に、出来かけの剣が握られる。
「――――来るか、シロウ――――!」
刃は横に。
収束し、回転し、臨界に達する旭光の剣。
黒色の太陽は、そのフレアを両手に携え。
「――――!」
セイバーの動きが止まる。
剣を振るう事が出来ない。
その両腕には、五芒星の魔力障壁が形成されている。
イリヤの支援だ。
彼女は物理保護壁をセイバーの両腕に展開することで拘束し、その動きを封じたのだ。
「この程度の足留めで……!」
セイバーの全身に魔力が奔る。
稲妻を帯びたセイバーは容易く障壁を粉砕する。
「――――卑王鉄鎚(ヴォーティガーン)!!!!!」
116
:
ヴァイス/シュヴァルツ
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 09:18:35 ID:XQV58tEw
振り抜かれるセイバーの剣。
――――荒れ狂う黒い光。
風を巻いて、セイバーの剣が灼熱する。
衛宮士郎の担う黄金の光を断ち切らんと、最強の一撃を叩き込む。
「セイバァァァアア…………!!!!!」
黄金の剣を渾身の力で振り下ろす。
限界以上の魔力に、剣が稲妻を帯びる。
暴走する主を止める為か、剣の放つ光はより強く輝きを増す。
「あ…………」
――――瞬間。
何か信じられない様な物を見た声と共に、黒い太陽はその輝きを鈍らせた。
一振りの剣が打ち上げられ、その手から弾き飛ばされる。
その隙を返す一刀で斬り上げる。
それを紙一重で避け、後方へと飛び退きながら空中で剣を受け止める。
「私の……剣…………」
剣戟に打ち負けたセイバーは、茫然と衛宮士郎の手に握られた剣――“勝利すべき黄金の剣(カリバーン)”を見つめていた。
ヘルムが砕ける
カリバーンの一撃が掠めていたのだろう。
素顔を現した敵は、変わり果てていようと、紛れもなく彼女だった。
「……………………」
役目を終えたカリバーンが砂の様に散っていく。
それを見届けたセイバーは、表情を無に戻しこちらへと向き直る。
「……………………」
セイバーは剣を構えない。
だが、いつ斬りかかられても応戦できるように、回路に設計図を流し込み、
「……いいでしょう。今回は貴方に免じて引きましょう」
セイバーのその言葉に堰き止められた。
その言葉に、思わず一歩、セイバーへと踏み出す。
「セイバー」
「ですが―――」
だが、それもやはりすぐに止められる。
セイバーは剣を納め、背を向ける。
そこには未練など微塵も感じられない。
「次に会った時は必ず、聖杯の器を貰い受けます。
それまで、決してイリヤスフィールを死なせぬよう心しなさい」
そう言ってセイバーは去っていった。
後には何も残らなかった。
ただ、自分を最後まで守ってくれた少女が、敵になったという事実だけがあった。
周囲にはもう、セイバーの気配は感じない。
張り詰めていた糸を緩め、意識を戦闘状態から通常へと戻す。
「大丈夫か、イリヤ」
「……うん。大丈夫」
振り返り、イリヤに向かって手を伸ばすが、立ち上がる様子が無い。
「どうしたんだ? やっぱりどこか怪我したのか?」
「ううん……安心したら、腰が抜けちゃった」
そう言ってイリヤは、恥ずかしそうに赤くなった頬を掻いた。
◇
117
:
ヴァイス/シュヴァルツ
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 09:19:10 ID:XQV58tEw
居間にイリヤを下ろし、台所でお茶を汲む。
勝手知ったるなんとやらと言わんばかりに、台所を物色する。
ここは【G-3】に在る和風建築の家。ぶっちゃけ衛宮邸(の模造品)だった。
最初にここを見つけた時は驚いた。
見ず知らずの町の中に、自分の家がどんと立っていたのだから。
もっとも、生活感がなかったのですぐによく出来た偽物だと気付いたが。
ルビーには今、俺がこの会場に飛ばされてからイリヤを助けるまでのあらましを説明してもらってる。
この家は本物同様侵入者避けの結界まで張られているので、休息を取るにはうってつけなのだ。
俺はこの会場に飛ばされた後、支給品を確認してルビーと出会った。
その後に戦闘音とイリヤの声を聞き付けて、駆け付けたのだ。
話にすれば、これだけの事だ。
ただ、第二魔法だの平行世界だのと、魔術的な説明に関してはルビーの方が適任だろうと(非常に不安だったが)彼女に任せる事にしたのだ。
ちなみに俺はルビーとあった時点で説明を受けている。
……まあ、話の半分も理解できなかったわけだが。
お茶の乗ったお盆をテーブルに置く。
「イリヤ。話は終わったか?」
「うん、終わったよ」
「そっか。じゃあお茶入れたから、よければ飲んでくれ」
「ありがとう、お兄ちゃん」
お茶を口に含み、一息つく。
お互いのこと。これからのこと。
聞くべき順番を整理しながら、心身を落ち着かせる。
その途中、イリヤが唐突に在る質問をしてきた。
「……ねえお兄ちゃん。お兄ちゃんはあのセイバーの事、知ってるの?」
「え? ……ああ………、知っている」
その質問に少し驚いたが、隠す様な事でもないので答える。
「簡単に言うと、俺は二年前に起きた聖杯戦争に参加したマスターで、セイバーは俺のサーヴァントだったんだ。
もっとも、あのセイバーは“平行世界のセイバー”みたいだけどな」
「聖杯……戦争……」
『……………………』
イリヤはそう呟くと、そのまま黙り込んでしまった。
その重い空気をどうにかしようと、気を取り直してイリヤにそう訊いてみる。
「取り合えず、イリヤはこれからどうしたい?」
「私は…………ミユたちに会いたい。
殺し合いなんてしたくない」
「ああ……そうだな」
こんな殺し合いは止める。
たとえこの殺し合いで本当にどんな願いでも叶うのだとしても、誰かが犠牲とならなければならない時点で論外だ。
「取り合えず、当面の目標はみんなを探しだして、バトルロワイアルを止める事だな」
「それに、首の『術式』もどうにかしなきゃいけないしね」
確かにそれは急務だ。
118
:
ヴァイス/シュヴァルツ
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 09:19:37 ID:XQV58tEw
このバトルロワイアルを止める上で、『術式』の解呪は絶対条件だ。
だがまあ。
「一応、『術式』の解除の充てはあるんだけどな」
「え、本当!?」
「ああ、ホントだ。
既にルビーと確認した事なんだけど、一応イリヤにも見せておく」
そう言って右手に歪な短剣を投影する。
「それって、“破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)”?」
「ああ。これには魔術で作られたモノや契約を初期化する効果があるからな」
ルールブレイカーの刃先を首元の『術式』に軽く突き刺し、その真名を解放すると、首元にあった『術式』が薄くなり消えてなくなる。
「おお! これなら――!」
「いや。残念ながら、だ。
言っただろ。既にルビーと確認したって」
首元から短剣を放せば、消えたはずの『術式』がまた刻まれていく。
その様子を見ていたイリヤが、どういう事なのかと聞いてくる。
それにはルビーが答えた。
『おそらく、この『術式』は端末みたいなものなんでしょう。
どこかに『呪術式の核』があって、それが参加者に『術式』を刻んだり、術式を通じて制限とかを掛けているのだと思われます』
「術式の、核?」
『はい。おそらくこの会場のどこかにあると思いますよ?
再び『術式』が刻まれる時間から推測して、人間業ではあり得ませんから』
「じゃあ、その『呪術式の核』を壊せば!」
「ああ、バトルロワイアルは止められる筈だ」
その希望的観測に、イリヤは顔を明るくした。
だが何故か怪訝そうな顔雄をする。
「イリヤ?」
「そう言えば、いっつもボケ倒してるルビーが、今はとっても真面目なんだけど……なんで?」
『失礼な! 私はいつだって大真面目ですよ!』
大真面目にボケ倒しているのか、と。
イリヤがジト目でルビーを睨む。
『まあそれは置いといて。
私は単にこのバトルロワイアルが気に食わないだけです。
こんなシリアス一辺倒の、コメディーの欠片もない天界なんて認めません!』
「――――」
「…………」
『それに私は正義の魔法少女。
私の根底に刻まれた命令は“愛と正義(ラブアンドパワー)”なんです!
ああ、愛と正義(ラブアンドパワー)……なんと独善的な響きでしょう。
我ながら素晴らしい存在意義だと思います!』
「――――」
「…………」
……ホンモノだな。
そのルビの振り方は、封印指定クラスの危険物だ。
こんなトンデモないモノと契約させられたイリヤを哀れに思いながらも、何故か、どうかそのままでいて欲しいと思う自分が居た。
「それじゃあ改めて確認するけど、今後の行動方針は、
一、お互いの知り合いを探す。
二、『呪術式の核』を探しだして破壊する。
この二つでいいな」
その言葉にイリヤが頷く。
「よし。それじゃあ休憩も兼ねて出発は三十分後だ。
一応部屋に布団を敷いておいたから、仮眠を取ってもいいぞ」
「はい、わかりました。シロウ隊長!」
「うむ。では解散だ」
そう言うとイリヤは布団のある部屋へと走っていった。
まあ、あのセイバーに襲われて、命からがら逃げ延びたのだ。疲れもしているだろう。
俺は台所で冷蔵庫をあさり、出発前の軽食用にサンドウィッチなど作ることにした。
『あれ? イリヤさん? 士郎さん?
私の話、聞いてました?
……あのー。無視しないでくださぁい』
……………………。
『………ルビーちゃん、さみしい』
◇
119
:
ヴァイス/シュヴァルツ
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 09:21:05 ID:XQV58tEw
廊下の縁側に座り、空に輝く月を眺める。
そのまま参加者の一人である間桐桜を想う。
桜は俺の恋人で、掛け替えのない女の子だ。
この会場にいる桜が“平行世界の人物”かは判らないが、桜である事には変わりない。
今この瞬間にも、彼女達は命の危機に瀕しているかもしれないのだ。
それを思えば、今すぐにでも彼女達を探しに、飛び出したくなる。
だがそれは出来ない。
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。
衛宮切嗣の実の娘。
衛宮士郎の妹であり姉。
そして、俺を救って、俺の代わりに死んだ少女。
今ここにいるのは平行世界から来た別人だが、それでも同じ少女だ。
彼女を二度も見殺しにするなんて事は、決してしたくなかった。
だから俺の我がままで、彼女を危険にさらす事は出来ない。
もっとも、感情論以外の理由でも桜とは早急に合流する必要があるのだが。
二年前の聖杯戦争で体をダメにした俺は、精巧な人形に魂を移し、それを桜からの魔力供給で保っていた。
だがこの会場に飛ばされてから、そのラインは途切れてしまった。
『術式』による制限からか、この会場に居る桜が“平行世界の間桐桜”かもしれないからか、それは判らない。
本来なら魔力供給が切れた時点で、作り物である俺の体は安定を欠く。
それを押し留めているのは、ある宝具の力によってだ。
“全て遠き理想郷(アヴァロン)”。
セイバーの聖剣。エクスカリバーの鞘だ。
今はこの宝具の力によってどうにか安定を保っているが、魔力を使い過ぎればすぐに立ち行かなくなるだろう。
それを避ける意味でも、桜や遠坂達になるべく早く合流しなければならない。
そのためにも、イリヤが回復し次第行動を開始する。
―――そして最後に。
立ち上がって庭を抜け、土蔵の扉を開ける。
その光景は、今でも目に焼き付いている。
月の光に濡れた金砂の髪と、聖緑の瞳。
“―――問おう。貴方が、私のマスターか”
あの時、セイバーが俺の剣になると誓ったように、
同時に、俺も彼女の助けになると誓ったのだ。
それは、決して思い出さぬようにしていた光景であり、ずっと忘れたふりをし続けた記憶だ。
だが、こうして再びセイバーと出会った以上、見て見ぬふりは出来ない。
彼女はきっと間桐桜の為に、参加者を殺し尽くすだろう。
だから―――
「――――セイバー。
俺は必ず、お前を止めてみせる」
彼女のマスターだった者として、そう固く決意した。
120
:
ヴァイス/シュヴァルツ
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 09:21:34 ID:XQV58tEw
【G-3/衛宮邸(和)/一日目-深夜】
【衛宮士郎@Fate/stay night】
[状態]:健康、疲労(小)、魔力消費(小)
[装備]: アヴァロン@Fate/stay night
[道具]:基本支給品、お手製の軽食
[思考・状況]
基本:この殺し合いを止める
1:今度こそイリヤを守る
2:桜、遠坂、藤ねえ、イリヤの知り合いを探す(桜優先)
3:“呪術式の核”を探しだして、解呪または破壊する
4:セイバー…………
[備考]
※桜ルート・トゥルーエンド『春に帰る』後より参戦
※イリヤ、セイバーが、平行世界の人物であると認識しました。
【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:健康、疲労(大)
[装備]:カレイドステッキ(ルビー)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[道具]:基本支給品、不明支給品1〜3
[思考・状況]
基本:この殺し合いを止める
1:シロウについていく
2:ミユたちを探す
3:聖杯戦争…………
[備考]
※2wei!三巻終了後より参戦
※衛宮士郎が、平行世界の人物であると認識しました 。
※カレイドステッキはマスター登録orゲスト登録した相手と10m以上離れられません。
[共通の備考(士郎、イリヤ)]
※『呪術式』はルールブレイカーで解呪可能。
ただし、会場のどこかにあるだろう『呪術式の核』を解呪または破壊しない限り、完全な解呪は不可能(その場で再び呪われる)。
【カレイドステッキ(ルビー)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
衛宮士郎に支給。
愉快型魔術礼装。マジカルルビーという名の人工天然精霊が宿っている。
機能は魔力を無制限に供給し、マスターの空想をもとに現実に奇跡を具現化させること。多元転身や障壁、治癒促進などのほか、魔力砲攻撃やクラスカードの限定展開なども可能。展開できる魔術障壁はランクA、規模は最大で半径2メートル程度。
制限により、カレイドステッキはマスター登録orゲスト登録した相手と10m以上離れられない。
【全て遠き理想郷(アヴァロン)@Fate/stay night】
衛宮士郎に支給。
「不死の力」による“復元”レベルの治癒能力で、持ち主の傷を癒す力を持つ。
真名を以って解放すれば、あらゆる攻撃を“遮断”する究極の護りとなる。
◇
121
:
ヴァイス/シュヴァルツ
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 09:22:25 ID:XQV58tEw
冬木大橋と酷似した橋の前に立つ。
当面の目的はマスターであるマトウサクラを探すことだ。
魔術師として不安定な彼女は、いつ自滅するかも判らない。
そうなる前に見つけ出して安全を確保し、一刻も早く彼女を優勝させなければならない。
聖杯の器さえあれば、上手くすればある程度は安定するかもしれない。
先ほどイリヤスフィールを襲ったのもそのためだ。
次に、“約束された勝利の剣(エクスカリバー)”を探しだす。
グラムは剣としての性能は高く、魔剣としての格も自分の宝具に匹敵する。
だがその使い心地にはどこか違和感が残る。やはり自分の宝具はエクスカリバーなのだ。
後はただ、サクラのサーヴァントとしてサクラを優勝させる為に、出会った参加者全てを殺していくだけだ。
その過程で、遠坂凛や藤村大河など、衛宮士郎にとって親しい人物を殺すことになるだろう。
「……それまでに、貴方は私を止められますか。シロウ」
そう呟くと、黒き暴君は戦場に挑む様に橋を渡り始めた。
【H-4/冬樹大橋前/一日目-深夜】
【セイバー・オルタ@Fate/stay night】
[状態]:健康、黒化、魔力消費(微小) [装備]:グラム@Fate/stay night
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜1(確認済み)
[思考・状況]
基本:間桐桜のサーヴァントとして、間桐桜を優勝させる
1:間桐桜を探して、安全を確保する
2:エクスカリバーを探す
3:間桐桜を除く参加者の殲滅
4:次に士郎たちに合った時は、聖杯の器(イリヤ)を貰い受ける(積極的には探さない)
[備考]
※End38『スパークスライナーハイ』後より参戦
※間桐桜とのラインは途切れています
【グラム@Fate/stay night】
セイバー・オルタに支給。
「最強の聖剣」に匹敵する「最強の魔剣」、太陽剣グラム。正確にはその原典の“原罪(メロダック)”。
北欧神話における選定の剣であり、北欧最大の英雄シグルドが所有した。
ドイツの叙事詩『ニーベルングの指輪』ではバルムンクの名で呼ばれる。
竜殺しの特性を備えており、竜の化身たる騎士王の天敵といえる武器。
122
:
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/09(土) 09:23:59 ID:XQV58tEw
以上で、修正版の投下を終わります。
修正するべき点や、何か意見などがありましたら、よろしくお願いします。
123
:
名無しさん
:2011/07/09(土) 12:01:02 ID:7RjOKxdM
名無しが言うのもなんだが最初に凜ルートありと勘違いして書いた内容を桜ルートでも応用可能な様に強引に当て嵌めた様な…
桜ルート・トゥルーエンド『春に帰る』の士郎ならこう動いても不思議ではないかもしれないが…
124
:
名無しさん
:2011/07/09(土) 12:36:20 ID:/SvmnsC.
確かに、桜ルートの士郎としては…って感じ
無理やり修正したんだからこんなもんかとも思うが
125
:
名無しさん
:2011/07/09(土) 12:54:55 ID:7RjOKxdM
名無しがこれ以上言うのもなんだがこれなら開催前から桜ルートに限定しようと決めた意味が無くなる
後は書き手の意見待ちだけど
126
:
◆4EDMfWv86Q
:2011/07/09(土) 15:11:58 ID:vai3oVbQ
修正乙……ですけど、やはりちぐはぐな面は否めません。
桜ルートトゥルーエンドの士郎というのが能力的にどれほどのものか不明瞭というのが大きいです。
性能は落ちているそうなので、セイバーの成長云々の発言は矛盾となります。というよりアーチャーの腕がない状態で戦えるかはかなり微妙です。
正義の味方を捨て桜の味方になると決めた精神性、投影を使うたび肉体が削れていくというリスキーさがHF士郎のウリであったのに、
それらを全て殺してしまったというのも大きなマイナス面であると見受けます。(恐らく以上に主観が混じってる意見ですが)
ルート中の場合、話の構成上複数の投影をせざるを得ず士郎の崩壊は免れないため、内容を根本的に書き直さなくてはならなくなる。
先に破棄を要求したのはそういった理由からです。そして修正版でそれらが解消された様子はありません。
修正できるのであればそれが一番であるので、他の書き手の意見を求みます。問題なしとの意が多数であればそれに賛同します。
小さなものでは、士郎はイリヤが姉であると憶えてはなさそうだという点。記憶も飛んでた死にかけの状態でしたし。
127
:
◆8nn53GQqtY
:2011/07/09(土) 15:41:47 ID:/pDBsEaI
>>60
ご感想ありがとうございます
>小説設定は、まあどうしようもない矛盾でもないし。ナオミのことを知ってる左証程度であれば問題ないと言います。
確かに、ナオミを『話にきいたことがある』程度なら、そこまで展開に影響することはないかもしれませんね。
ご意見ありがとうございます
>むしろ気になるのは古傷(という程長くもなかろうが)の治療ですかね。ゆまの治癒力は一歩抜きん出てるから不思議でもないか。
顔の火傷の治療は「爆発により喪失した皮膚組織及び神経組織の修復(切断された四肢を繋げるならこういうことも)」と考えてました。
加えて、参加者(メロ以外)に「古傷の治療」が個性喪失に繋がるような(古傷を特徴とするような)キャラもいないことから
「傷を目立たないようにする(火傷のあと自体は残る)」程度の治療なら問題ないかと思い、使わせていただきました。
問題があるようでしたら
・治療の度合いの軽減(魔法の能力制限、もしくは、本来のゆまの治療魔法に古傷の治療が含まれないという解釈)
・古傷の治療シーン自体をなかったことにする
いずれかの案を取ろうと考えています。
>…ていうか、メロさんなんかいい人っぽくね?
「高田清美の誘拐直後(死亡直前)という参戦時期(『一番になる為には手段を選ばない』という行動原理が薄らいでいる)」に加え
「メロは、原作でも明確な敵の総一郎を殺す際にすまないと謝罪するなど、殺人に躊躇はないが、計画外の死人を出すことは嫌う」
「見せしめの死亡で、人外の能力者が参加者にいることは理解しており、それならば危険を冒して参加者を殺すより、情報集めと仲間づくりを優先するだろうという判断」
「ゆまが治療以外に何らかの能力を持っているか分からない以上、好意的に接した方が得策」
これらの判断で、ゆまに好意的に接したとしても不思議ではないと考えました
しかし、やはり親切すぎてメロっぽくはなかったかもしれません
こちらの描写不足とキャラ把握の甘さから、違和感を持たれるキャラにしてしまって申し訳ありません
もし修正の機会を与えていただけるようでしたら
・古傷の治療に関する描写を変更
・ゆまとメロの会話(メロの描写修正と行動方針に関する描写追加)
修正すべき箇所はこの二か所でしょうか?
登場話の議論でキャラを長く拘束してしまって申し訳ありませんが、
引き続きご意見を求めています。
これから外出するので、このレスに対するレスは日付が変わる直前になるかと思います。
128
:
名無しさん
:2011/07/09(土) 16:00:43 ID:7RjOKxdM
俺はその二か所修正でいいと思うが
129
:
名無しさん
:2011/07/09(土) 18:54:21 ID:vai3oVbQ
>>127
わざわざこれはどうも。
メロやさしいねは半分ネタですからそこまで深く考えなくてもいいですよwまあもうちょいツンツン入っててもいいですけど!
130
:
◆8nn53GQqtY
:2011/07/09(土) 23:59:19 ID:3AFQxAaw
>>128
>>129
ご意見ありがとうございます
では
>>127
の二点を中心にした修正版を本スレに投下したいと思います
(修正に2日ほどかかる見通しです)
修正中もご意見、突っ込みどころを見つけられた方は遠慮なくご指摘お願いします
131
:
◆Vj6e1anjAc
:2011/07/10(日) 17:11:40 ID:bxpDXSrs
支給品の数の概念を勘違いしていたので、拙作「私だけがいればいい」に、修正を加えさせていただきました。
両キャラの残りランダム支給品数を、0〜1→0〜2に変更してあります。
今後、投下後に発覚した箇所を修正する際にも、このスレを使えばいいんですかね?
132
:
名無しさん
:2011/07/10(日) 18:42:08 ID:uKLxDNE6
いいと思うけど
133
:
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/11(月) 00:24:08 ID:jyYkx2YM
◆4EDMfWv86Q氏の意見に、確かにと思う所があったので、再度修正をさせていただきました。
度重なる修正により、レスを無駄に消費して申し訳ありませんでした。
大きな修正は、これで最後にさせていただきます。
ではこれより、三回目となる投下をさせていただきます。
134
:
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/11(月) 00:24:55 ID:jyYkx2YM
「やっ……!!」
轟ッ、と奔る白い刃を、物理保護壁を張って阻む。
だが、五芒星の魔力結晶は、膨大な魔力を纏った一撃の前に容易く破られた。
そこに迫るもう一振りの黒い刃。
『いっっ…………!!』
杖を盾にして辛うじて防ぐ。その衝撃に大きく弾き飛ばされる。
傷こそついていないが、ルビーが悲鳴を上げる。
「この……ッ! 斬撃(シュナイデン)!!」
弾かれ開いた距離を利用し、魔力を薄く鋭く刃のように研ぎ澄まし放出する。
だがその刃は、黒い剣士の周囲に現れた黒い魔力の霧に阻まれる。
「――――――」
返すように同質の魔力斬撃が放たれる。しかも左右二つずつ、合わせて四連。
その威力、精度、魔力密度の全てがこちらを上回っている。
それを転げまわる様に回避する。
「ッ――――――!」
だが回避しきる事は敵わず、最後の一つを障壁を張って防ぐ。
肩に鋭い痛み。やはり障壁を超えて斬られた。
「いっ……! やっぱり、強い……!」
『いやー、当然と言えば当然ですけどね。しかもこっちは弱体化してますし』
「わかってたけどね!!」
『あちらさんも参加者扱いなのか、エクスカリバーを持ってませんので一撃必殺はありませんが、それでもすでに詰んでますねー』
「うう………」
ルビーの諦め感が漂う言葉に反論できず、涙目で小さく唸る。
そうやってちょっとしたコントをやっている間にも、黒い剣士は無言でこちらへと歩いてくる。
その両手に握られた白と黒の双剣――干将と莫邪には黒い魔力が渦巻き、いつでも斬撃を放てる状態にある。
こっちが何かすれば、いつでもその魔力を解き放つだろう。
『ここが鏡面界なら離界(ジャンプ)して逃げるんですけど、どうも違うみたいですし。
どちらかと言えば、以前別世界の魔法少女と出会った世界に近いでしょうか』
「そんな事は今はどうでもいい! それよりルビーこの状況どうにか出来ないの!?」
『あー……。クラスカードもないですし、せいぜい接近戦にならないよう気を付けてくださいとしか言えませんね。
上手く時間を稼げば、正義の味方が助けに来てくれるかもしれませんよ?』
諦め感が漂うどころじゃない。完全に諦めてた。
事実。黒い剣士――セイバーとの覆せない圧倒的な能力差を前に、白い少女――イリヤに出来る事は、殺されるその瞬間まで逃げ惑う事だけだった。
「ルビー―――ッッ!!!」
『ほらほら。早く逃げないと追いつかれちゃいますよ?』
「………………ッ!?」
ルビーの言葉に咄嗟に振り返れば、黒い剣士はもう十メートル程の距離にまで近づいていた。
「く……! 一体どうすれば………!」
砲撃は無駄。斬撃も効かない。逃げる事も難しい。ハッキリ言って打つ手なしだ。
ランサーのクラスカードでもあれば、一撃で倒せたかもしれないのに。
……ん? ……ランサー……槍……?
「……そうだ、これなら!」
撃ってもダメ、斬ってもダメなら、突き刺す。
魔力を圧縮する。
135
:
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/11(月) 00:25:31 ID:jyYkx2YM
「…………!」
こちらの動きに気付いた黒い剣士が双剣から斬撃を放つ。
それを飛び退くように回避し―――
“もっと”
細く、
“もっと――――”
鋭く、
「………刺し―――」
槍すらも越えて、
「―――穿つ―――!!」
針のように……!!
「…………っ!!」
レーザーのように放たれる魔力の槍。
針の如く収斂された一撃は黒い魔力の霧を貫き、初めて黒い剣士に防御を取らせた。
「よし! これならいける!」
『おお、流石はイリヤさん! この土壇場で新たな技を思いつくとは!
仮にも主人公なだけはありますね!』
「この調子で、もう一発――!」
再び放たれる魔力に槍。
それは稲妻のような早さで黒い剣士に迫り、
「………………」
「あ………」
『まあ、やっぱりこうなりますよね』
あっさりと、僅かに屈んだだけで躱された。
それこそが点による攻撃の欠点。
面や線の攻撃に比べ、非常に回避が容易いのだ。
故に槍による攻撃は基本が払いとなり、要所で突きを行う形になるのだ。
槍を躱した黒い剣士はそのままこちらへと駆け出す。
「このつ………!」
後方に飛びながらもなお放たれる魔力の槍。
砲撃も斬撃も足止めにすらならない状況では、当然の選択だった。
だがやはりそれは躱される。
回避を防ぐのなら、ショットガンかマシンガンのように打ちだす必要がある。
だがそれでは逆に威力が足りなくなってしまうのだ。
黒い剣士は槍を躱わした体制のまま、莫耶を投擲する。
咄嗟にそれをルビーで防ぎ、弾き飛ばす。
だがその衝撃に体勢を崩してしまう。
「………………」
「ッ――――!」
その間に黒い剣士はイリヤへと肉薄し、残った干将を叩きつけてくる。
それを障壁で辛うじて防ぐ。
だが。
『しまった、罠です! 受けてはいけません!!』
「え―――!?」
ルビーの警告に、背後からの奇襲に気付く。
飛来するのは黒い刃。
干将は回転し唸りを上げ、磁石のように莫耶の引き寄せられながらイリヤへと迫りくる。
「……ッ!」
それを即座に障壁で防ぐが、意識が後方へ逸れた瞬間、黒い剣士が障壁を破った。
咄嗟にルビーで受け止めるが、そのまま近くの民家へと叩きこまれる。
そうして一つの家屋は、一瞬にして廃屋となった。
136
:
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/11(月) 00:25:59 ID:jyYkx2YM
『大丈夫ですか、イリヤさん』
「……なんとか……大丈夫」
どうにか瓦礫を退かしながら廃屋から這い出る。
直後。
ガシャン、と眼前に黒い鎧の脚部が踏みしめられる。
恐る恐る見上げれば、月光を反す白刃と、やはり黒い騎士がいる。
「ぁ……う……」
『絶体絶命……ですね』
「……………………」
堪らずその場で尻餅をつく。
黒い剣士は無言で鋼の刃を振り上げる。
次の瞬間には、その白い剣は私の血で赤く染まるのだろう。
「……ミユ……クロ……凛さん……ルヴィアさん」
大切な人たちの名前が、口から零れていく。
逃れようのない絶望を前に、恐怖が心を押し潰す。
そして―――
黒い剣士はその懇願するような声に慈悲も容赦もなく、短剣を振り下ろそうと――――
「助けて…………おにいちゃぁぁぁあん――――――!!!」
そして気が付けば、誰よりも大好きな人の名前を呼んでいた。
「イリヤァァァア―――――――――!」
直後。どこからかその人の声が聞こえた。
「っ………………!」
奔る剣閃。少女を切り捨てようとしていた刃は、その迎撃に当てられた。
黒い剣士は続く一撃を後方へ飛んで躱し、イリヤとの距離を大きく開ける。
それによって出来た間に、イリヤを庇うように一人の少年――衛宮士郎が立ちはだかった。
◆
「――――――――」
白銀の月の下、黒い剣士が立っている。
背後にイリヤを庇ったまま、再び剣を構える剣士――セイバーを睨む。
漆黒の鎧に身を包み、ヘルムで顔を覆い隠している彼女からは、いかなる感情も読み取れない。
「…………セイバー、どうして……」
「……それを知ってどうすると言うのです、シロウ。
既に解っているでしょう。貴方は既に私のマスターではなく、私はもう貴方のサーヴァントではない。貴方の質問に答える必要など、もうどこにもない」
「それ、は…………」
「―――この身は既に、貴方の剣ではないのです」
「ッ――――――――!」
その言葉に息を飲む。
後ろで「喋った!?」とか驚いている声も耳に入らない。
貴方の剣ではないと、そう言われただけで、心臓が鷲塚みにされた様に痛んだ。
それを堪えるために、ただ強く、唇を噛んだ。
「私は聖杯の器を必要としている。私の邪魔をするのであれば、誰であろうと容赦なく殺す。そこに話し合いの余地などありません。
死にたくないのであれば、そこをどく事です」
「……………………」
137
:
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/11(月) 00:26:34 ID:jyYkx2YM
セイバーが俺へと剣の切っ先を突き付ける。
セイバーも言ったように、対話の余地などどこにもない。
彼女はたとえ誰であれ、邪魔する者は躊躇いなく殺すだろう。
それでも……どうしてもセイバーを止めたければ、セイバーを打ち負かすしかない。
――――俺達はもう、どうしようもない程に敵同士だった。
「―――もっとも。この局面で、貴方が引き下がれる筈がない。
私が何を言おうと、貴方は身命を賭してイリヤスフィールを護ろうとするでしょう」
セイバーの体が揺れる。
彼女は、音もなく双剣の柄を握り、
「行きます。イリヤスフィールを護りたいのであれば、剣を執りなさい」
静かに、未だ躊躇いを見せる俺へと肉薄した。
「……くそ。やるしかないのか」
剣を構える。
セイバーを止める。イリヤを助ける。
そのどちらを成すにしても、まずは彼女を倒さなければならない。
「ハァッ………!」
剣を振り抜く。手加減も容赦もない。
突進するセイバーに合わせて、カウンターの要領で渾身の一撃を炸裂させる。
「っ、…………!」
あっけなく弾かれた。
セイバーの黒刃は俺の全力を容易く防ぎきり、弾き飛ばす。
そのまま俺の体を両断しようと、残る白刃で俺の喉を突きに来る――――!
「ぐ…………!」
「っ……!?」
セイバーから驚きの声が上がる。
衛宮士郎では防げぬ一撃を俺が防いだからか、別の理由からかは判らない。
だが明らかに、セイバーは今の攻防に戸惑っていた。
「は――――」
防戦一方。
攻撃に意識を割く余裕はない。ひたすらにセイバーの剣を防ぎ続ける。
俺を確実に殺せる精度の一撃を、十を超えて防ぎきる。
「は――――、ぁ、ぐっ――――!」
慣れぬ双剣だからもあるだろう。
だが明らかにそれ以外の理由で、セイバーは動きに精彩を欠いていた。
だから持ち堪えられてる。
理由は定かではないが、これなら十分に耐えられる。
「は――――、っは――――」
だが、それでもなおセイバーは衛宮士郎より圧倒的に強い。
そもそも身体能力・魔力量の両面で衛宮士郎ではセイバーに敵わない。
セイバーの一撃毎に体は悲鳴を上げて、今にも剣を手放し膝を屈しそうになる。
―――だが勝機はあるかもしれない。
ギリギリだろうとセイバーの剣に耐えられるなら、まだ可能性はある。
セイバーが慣れぬ双剣を使い、不調をきたしている限り、いつか必ず隙が見えてくる……!
「く――――!」
「っ…………!」
後退する体。
セイバーの一撃に大きく弾かれ倒れは、仕切り直す為に背後に跳んだ。
138
:
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/11(月) 00:27:01 ID:jyYkx2YM
「は―――…………はあ、ふぅ、ふ――――」
肩を上下させ呼吸を整える。
剣を握ったままセイバーを見据える。
離した間合いは十メートル。
いかにセイバーと言えど、接近するには二歩必要とする距離だ。
「――――――はっ」
呼吸はすぐに落ち着いた。
だが替わりに笑いが込み上げてきた。
こんな状況だと言うのに、俺は、セイバーとマトモに打ち合えている事が嬉しいらしい。
「……その剣、竜殺しの魔剣か―――!」
不意にセイバーが呟いた。
俺がセイバーと打ち合えた理由。それに心当たりがあったらしい。
その言葉から察するに、どうやらこの剣はセイバーにとって天敵であるようだ。
―――だが、それは瑣末な事でしかない。
セイバーと打ち合えるのは有り難いが、一瞬でも気を抜けば殺される事に変わりはない。
「――――――」
対してセイバーは、俺の持つ剣に対する警戒を強めた。
たとえ俺自身の技量が大したことなくても、この剣が厄介である事には変わらない。
僅かでも傷つけられれば、そこから切り崩されるかもしれないのだ。
―――それは神話における、メデューサに対するハルペーのように。
だが。
「確かにその魔剣を相手にすれば、竜の因子を持つ私の能力は抑圧されます。ですが―――」
それは、セイバーが引き下がる理由にはならないのだ。
セイバーは双剣を構えなおすと、一歩、地面を強く踏みしめた。
「くっ…………」
セイバーの突撃に備え、剣を構える。
どれほどの一撃が来ようと耐えられるように、全力で歯を食いしばる。
応じるようにセイバーは勢いよく一歩を踏み出し、
二歩目で、一際高く跳び上がった――――!
「なッ――――!」
「それならば、その剣ごと砕き飛ばすだけだ!」
セイバーはそのまま全体重を乗せ、双剣を叩き落してくる。
剣を振り上げて迎撃するも、それだけで両手が麻痺した。
「ぎ………ッ!」
「終わりだ!」
地面へと着地したセイバーが、双剣を振り上げる。
セイバーの一撃をどうにか防ぐが、強く弾き飛ばされ、剣を取り落とす。
「しまった―――ッ!」
即座に回収しようと駆け出す。
だが、そこに俺に向かって双剣が一投され、それを転がるように回避する。
だが。
「くそっ!」
その僅かな隙に、セイバーが剣を回収した。
遅かった。
あの剣と“敵対”しなくなった以上、セイバーの能力に制限はなく、
武器を失くし、無手となった俺に戦う術はない。
139
:
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/11(月) 00:27:34 ID:jyYkx2YM
――――ただ一つの、切り札を除いて。
「止めだ。微塵も残さん……!」
「っ………………!」
黒色の太陽から放たれるフレアのように、セイバーの持つ魔剣が極光を放つ。
あんなものを受ければ、ただの人間などひとたまりもない。
その一撃から逃れようと全力で回避をするが、
「ふん……逃がさん!」
それよりも早く、軌道を変えた一撃が、回避しようとした先を斬り抉った。
その光景にたたらを踏み、思わず足を止める。
しまった、と思うがもう遅い。
「――――ッ!!」
黒き太陽のフレアは未だ収まらず、再びその顎門を開く。
それを地面を転がってでもどうにか回避する。
されどその抵抗もここで終わった。
「風よ……吼え上がれ!!」
三度放たれる黒い旭光。
黒炎が地面を舐めるように焼き尽くす。
その射程は広く、何をした所で逃れられない。
「く、そぉ―――ッ!」
確約された敗北に、声を上げる。
諦めはしない。諦めはしないが、どうする事も出来ない。
せめてもの抵抗として、左肩に手を当て最終手段の解放しようとするが、
「ッ――――――――!!」
そんな余裕すら与えられず、黒竜の顎門は俺の体を飲みこんだ。
◆
その光景を前に、セイバーは自らの勝利を理解した。
地面は大きく抉られ、焦がされて白煙を上げている。
ただの人間である衛宮士郎に、その膨大な魔力の炎を耐えられる道理はない。
今度こそイリヤスフィールを捕らえようと背を向ける。
抵抗しないのであればそれでいいが、そうでないなら四肢を切り落とす事も、あるいは殺す事も厭わない。
セイバーにとって、イリヤスフィールの生死などどうでもいい。必要なのはその心臓――聖杯の器、その核なのだ。
周囲に目を巡らせ、標的を探す。
衛宮白との戦闘中は完全に野放しになっていたが、少女を逃がさぬ程度には気を張っていた。
イリヤスフィールがこの近辺にいるのは間違いない。
そうして、イリヤスフィールの気配を捉え、その方向へと向きなおろうとした、その時――――
「なッ――――!」
イリヤスフィールの気配を感じた場所。
いまだ白煙の立ちこめる地面から、死んだはずの衛宮士郎が、飛びだしてきた。
その奥にはへたり込んだイリヤスフィールの姿が見えた。
140
:
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/11(月) 00:27:59 ID:jyYkx2YM
「限界まで魔力を籠めた五重の障壁。最後の一枚まで破られると思わなかったけど、それでも防ぎきった!」
『実剣の方で斬られてたらアウトでしたけどね。魔力による斬撃の部分だけで助かりました』
衛宮士郎が黒炎に飲まれたあの瞬間。イリヤは全魔力を防御にまわし、衛宮士郎の盾となって彼を護ったのだ。
「オオオォォォオオ――――!!!!」
衛宮士郎が黄金の剣を両手で握り、セイバーへと突撃する。
「――――来るか、シロウ――――!」
刃は横に。
収束し、回転し、臨界に達する旭光の剣。
黒色の太陽は、そのフレアを両手に携え。
「――――!」
セイバーの動きが止まる。
剣を振るう事が出来ない。
その両腕には、五芒星の魔力障壁が形成されている。
イリヤの支援だ。
彼女は物理保護壁をセイバーの両腕に展開することで拘束し、その動きを封じたのだ。
「この程度の足留めで……!」
セイバーの全身に魔力が奔る。
稲妻を帯びたセイバーは容易く障壁を粉砕する。
「消えされ――――!!」
――――荒れ狂う黒い光。
風を巻いて、セイバーの剣が灼熱する。
衛宮士郎の担う黄金の光を断ち切らんと、最強の一撃を叩き込む。
「セイバァァァアア…………!!!!!」
黄金の剣を渾身の力で振り下ろす。
暴走する主を止める為か、剣の放つ光はより強く輝きを増す。
「あ…………」
――――瞬間。
何か信じられない様な物を見た声と共に、黒い太陽はその輝きを鈍らせた。
一振りの剣が打ち上げられ、その手から弾き飛ばされる。
その隙を返す一刀で斬り上げる。
それを紙一重で避け、後方へと飛び退きながら空中で剣を受け止める。
「私の……剣…………」
剣戟に打ち負けたセイバーは、茫然と衛宮士郎の手に握られた剣――“勝利すべき黄金の剣(カリバーン)”を見つめていた。
ヘルムが砕ける
カリバーンの一撃が掠めていたのだろう。
素顔を現した敵は、変わり果てていようと、紛れもなく彼女だった。
「……………………」
セイバーは剣を構えない。
一瞬だけ見えた感情はもう見えず、既に表情は無に戻っている。
だが、いつ斬りかかられても応戦できるように正眼に剣を構え、
「……いいでしょう。今回は貴方に免じて引きましょう」
セイバーのその言葉に堰き止められた。
その言葉に、思わず一歩、セイバーへと踏み出す。
141
:
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/11(月) 00:28:58 ID:jyYkx2YM
「セイバー」
「ですが―――」
だが、それもやはりすぐに止められる。
セイバーは剣を納め、背を向ける。
そこには未練など微塵も感じられない。
「次に会った時は必ず、聖杯の器を貰い受けます。
それまで、決してイリヤスフィールを死なせぬよう心しなさい」
そう言ってセイバーは去っていった。
後には何も残らなかった。
周囲にはもう、セイバーの気配は感じない。
張り詰めていた糸を緩め、意識を戦闘状態から通常へと戻す。
疲労に膝を屈しそうになるが、それをどうにか堪える
「イリヤ……だよな。大丈夫か?」
「……うん、大丈夫だけど。
お兄ちゃんこそ…………」
振り返り、座り込んでいるイリヤに向かって手を伸ばす。
イリヤはその手を握るが、どこかぎこちなさがある。
俺達は二人とも、お互いに違和感を覚えていた。
「……まあ、詳しい話は後だ。今は早くここを離れよう」
戦闘音を聞き付けて誰かがやってくるかもしれない。
それが非好戦的な人物なら良いが、そうでないなら今の自分達には厳しい状況になる。
イリヤもそれに頷き。俺達は死闘の場を後にした。
◇
【H-4】から【H-5】へと掛る、冬木大橋と酷似した橋の前に立つ。
当面の目的はマスターである間桐桜を探すことだ。
魔術師として不安定な彼女は、いつ自滅するかも判らない。
そうなる前に見つけ出して安全を確保し、一刻も早く彼女を優勝させなければならない。
聖杯の器さえあれば、上手くすればある程度は安定するかもしれない。
先ほどイリヤスフィールを襲ったのもそのためだ。
次に、“約束された勝利の剣(エクスカリバー)”を探しだす。
グラムは剣としての性能は高く、魔剣としての格も自分の宝具に匹敵する。
だがその使い心地にはどこか違和感が残る。やはり自分の宝具はエクスカリバーなのだ。
後はただ、桜のサーヴァントとして桜を優勝させる為に、出会った参加者全てを殺していくだけだ。
その過程で、遠坂凛や藤村大河など、衛宮士郎にとって親しい人物を殺すことになるだろう。
「……それまでに、貴方は私を止められますか。シロウ」
そう呟くと、黒き暴君は戦場に挑む様に橋を渡り始めた。
【H-4/冬樹大橋前/一日目-深夜】
【セイバー・オルタ@Fate/stay night】
[状態]:健康、黒化、魔力消費(微小)
[装備]:グラム@Fate/stay night
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本:間桐桜のサーヴァントとして、間桐桜を優勝させる
1:間桐桜を探して、安全を確保する
2:エクスカリバーを探す
3:間桐桜を除く参加者全員の殲滅
4:次に士郎たちに合った時は、聖杯の器(イリヤ)を貰い受ける(積極的には探さない)
[備考]
※End38『スパークスライナーハイ』後より参戦
※間桐桜とのラインは途切れています
【グラム@Fate/stay night】
衛宮士郎に支給。
「最強の聖剣」に匹敵する「最強の魔剣」、太陽剣グラム。正確にはその原典の“原罪(メロダック)”。
北欧神話における選定の剣であり、北欧最大の英雄シグルドが所有した。
ドイツの叙事詩『ニーベルングの指輪』ではバルムンクの名で呼ばれる。
竜殺しの特性を備えており、竜の化身たる騎士王の天敵といえる武器。
◇
142
:
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/11(月) 00:29:45 ID:jyYkx2YM
「「平行世界?」」
和式の居間に、俺とイリヤの声が重なって響く。
ここは【G-3】に在る和風建築の家。ぶっちゃけ衛宮邸だった。
最初にここを見つけた時は驚いた。
見ず知らずの町の中に、自分の家がどんと立っていたのだから。
もっとも、生活感がなかったのですぐによく出来た偽物だと気付いたが。
本物同様侵入者避けの結界まで張られていたので、休息を取るにはうってつけだった。
『はい。お二人の話から察するに、イリヤさん士郎さんはそれぞれ違う可能性世界から集められたみたいですね』
「それって、私とお兄ちゃんは完全な赤の他人って事?」
『いえ、違います。
士郎さんの世界では聖杯戦争が起きたと言う事ですので、恐らくは十年前、衛宮切嗣さんとアイリスフィールさんの行動によって分岐した世界からそれぞれ集められたのでしょう』
――――十年前の分岐点。
衛宮切嗣が聖杯戦争に参加して聖杯を破壊し、その十年後に再び聖杯戦争が起きた世界。
アイリスフィールがアインツベルンを捨てた、二度と聖杯戦争の起こらない世界。
ルビーの話では、俺とイリヤはその二つの世界がら集められたらしい。
それから察するに、地図の【F-7】にある衛宮邸は、恐らくイリヤの住んでいる方の衛宮邸だろう。
「つまり、私とお兄ちゃんはやっぱり兄妹だって言う事だよね!」
『厳密には違いますが、その認識で間違ありません』
「俺とイリヤが兄妹、か…………」
思い出すのは、俺の世界のイリヤの事。
切嗣を殺しに来た、俺を兄と呼んだ少女。
可能性としては、あの少女と一緒に暮らしているかの知れなかったのだ。
「………………」
それを想うと、少し悔しくなった。
思い出してしまったのだ。
イリヤが俺の家に初めてきた時に見せた表情。
おいてかれた子供の様な、あの今にも泣きそうな顔を。
切嗣を悪く言うつもりはない。
けれど、もし切嗣が聖杯戦争なんかに参加せず、アインツベルンからイリヤを連れて逃げていれば、イリヤがあんな顔をする事はなかったのにと、もうどうしようもない事を思った。
「お兄ちゃん、どうしたの? 具合でも悪いの?」
「え? いや、何でもない。大丈夫だ」
「……そう。それならいいけど。お兄ちゃん、つらそうな顔してたよ?」
「あ…………」
143
:
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/11(月) 00:30:39 ID:jyYkx2YM
失敗した。
目の前にいるイリヤとは関係ない事で、彼女に心配をさせてしまった。
「本当に大丈夫だから、心配する必要はない」
『そうですよイリヤさん。おおかた、自分の世界で妹萌えが出来なかった事に悔しく思ってるんですって。
いやー、朴念仁かと思ってましたが、士郎さんも以外にエロいですねえ! このロリコン!!』
「ってちょ……おま……何を!?」
「〜〜〜ッ! ルビー! お兄ちゃんがそんな訳ないでしょ―――ッ!!」
『いだっ……ちょ、イタイ! 半端なくイタイですイリヤさん!! そんなに引っ張ったり捻じったり折り曲げたりしないでくださいって! あっ、そこはッ、止めて、アッ―――……!!!』
「あ〜…………」
そのイリヤとルビーのテンションにおいてけぼりにされる。
まあルビーのセリフはどうかと思うが、それによって助かった事には変わりない。
もしかしたら、彼女なりに助けてくれたのかもしれない。
もっとも、ロリコン呼ばわりされたので助ける事はしないが。
◇
「取り合えず、イリヤはこれからどうしたい?」
二人のテンションが落ち着いてきたところで、気を取り直してイリヤにそう訊いてみる。
「私は…………ミユたちに会いたい。
殺し合いなんてしたくない」
「ああ……そうだな」
こんな殺し合いは止める。
それはこれから行動する上での大前提だ。
たとえこの殺し合いで本当にどんな願いでも叶うのだとしても、誰かが犠牲とならなければならない時点で論外だ。
「なら、当面の目標はみんなを探しだして、バトルロワイアルを止める事だな」
『それに、『術式』もどうにかしないといけませんね。これがある限り、主催者には反抗できませんから』
「ああ、確かに」
確かにそれは急務だ。
このバトルロワイアルを止める上で、『術式』の解呪は絶対条件だ。
だがまあ。
「一応、『術式』の解除の充てはあるんだけどな」
「え、本当!?」
「ああ、ホントだ。
これって要は、呪い――魔術とかによる一方的な契約だろ?それなら、ルールブレイカーって短剣があれば、解呪出来るかもしれないんだ」
最初にセイバーと柳洞寺に行った時に、キャスターが持っていた短剣。
サーヴァントとの契約すら破壊できそうなアレなら、この『術式』もどうにか出来るかもしれないと思ったのだ。
「なるほど! 確かにあれならなんとか出来るかも!」
『さすが士郎さん。鈍いと思ってましたけど、意外に鋭いんですね!』
「お前な…………」
前言撤回。
コイツ絶対助けてくれようとなんてしてない。
そんなルビーに溜息を吐きつつ、話を続ける。
144
:
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/11(月) 00:31:07 ID:jyYkx2YM
「もっとも、ルールブレイカーが支給されてるどうかも判らないんだけどな」
「あ、そうか。私に支給されたのはルビーと今お兄ちゃんが持っている剣で最後だし」
「俺の方は、セイバーに取られた剣と変なカード一枚だけだしな。
一応干将と莫邪も回収したけど、あの双剣にはそんな効果はないし」
「……え? お兄ちゃん、今何て言ったの?」
「え? だから、干将と莫邪には魔術を打ち消すような効果はないって」
「その前! 変なカードを支給されたって言ったよね!」
「あ、ああ。ほら、このカードだ」
異様に迫ってくるイリヤに驚きつつ、デイバックからカードを取り出す。
「おお! キャスターのクラスカード!」
『ドンピシャです。ラッキーですね、イリヤさん!』
何が嬉しかったのか、イリヤ達はカードを受け取ると盛大に喜んだ。
そして俺には、何がなんだかさっぱり解らない。
「イリヤ。そろそろ俺にも説明してくれると助かるんだか」
「あ、ごめんなさいお兄ちゃん」
『説明するよりは見せた方が早いですし、さっさとやっちゃいましょう!』
「わかった! いくよ、ルビー!
コンパクト、フルオープン! 鏡界回廊、最大展開!
魔法少女プリズマイリヤ、推参!!」
イリヤはルビーを片手に呪文を唱えると、セイバーと戦っていた時の姿に変身した。
そうしてカードをルビーへと当て。
「クラスカード『キャスター』、限定展開(インクルード)!」
ルビーが歪な短剣――“破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)”へと変わった。
『このようにクラスカードを使う事で、わたしは一時的に英霊の宝具となる事が出来るんです』
「なるほどな」
確かにそれなら、イリヤ達のテンションがやたら上がっていたのも頷ける。
「ルビー。さっそく試してみようよ!」
『はい、それは構いませんが……イリヤさんと士郎さん。一体どっちが試すんですか?』
「あ…………」
「確かにな。こんな簡単な事を、主催者が気付いてないはずかないよな」
となれば誰で試すかが問題になるが、まさかイリヤで試すわけにもいかない。
だからと言って試しても良い相手など、そうそう見つかる訳もない。いたとしても、当然抵抗されるだろう。
それなら――――
「……よし。イリヤ、俺で試してくれ」
「へ? お兄ちゃん?」
『勇気ありますねー。どちらかといえば蛮勇ですけど』
ルビーの言葉は黙殺する。それは俺だってわかっている事だ。
だが。
「ここで躊躇って後回しにしている余裕もないだろ。
なら、出来る内にやれるだけの事はやっとくべきだ」
『そうですよイリヤさん。時間制限もあるんですから、早めに決断してくださいね』
そう言ってイリヤを見据える。
イリヤはしばらく視線を彷徨わせた後。
「…………わかった」
「そうか。なら一息にやってくれ」
「……うん」
『術式』のある首元を晒す。
イリヤはルビーが変じた短剣を構え、
「えい!」
“自分の”首元に突き刺した。
「ってイリヤ!?」
『あららー』
145
:
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/11(月) 00:31:36 ID:jyYkx2YM
止める間もなくイリヤはその真名を解放する。
すると一瞬の怪しい輝きと共に、イリヤの首元にあった『術式』が薄くなり消えてなくなる。
………だが、消えたはずの『術式』がまた刻まれていく。
イリヤの決死の行動は、無意味に終わったのだ。
だがイリヤ自身には何かが起こっている様子はない。
その事に、大きく安堵する。
「………どう?」
「いや。残念ながら、だ。一瞬だけ消えたけど、すぐにまた戻った」
「そうなんだ……」
「……けどな」
「あだッ!?」
鉄拳制裁。
イリヤの頭に、怒り心頭の拳を見舞う。
「いきなりあんなことするなんて危ないだろ!
今回は何も起きなかったからいいけど、何かあったらどうするんだ!」
「うう……。そんな事、真っ先に自分にやれって言ったお兄ちゃんに言われたくないもん!」
「ぐ……けど、それは―――!」
『まあまあ。お二人とも、落ち着いてください』
「………………」
「………………」
ルビーの言葉に、どうにか怒りを抑える。
イリヤも拗ねた顔をしているが、取り合えずは落ち着いたようだ。
『確かにイリヤさんの行動は無謀でしたけど、幾つかわかった事があります』
「わかった事?」
『はい。おそらく、この『術式』は端末みたいなものなんでしょう。
どこかに『呪術式の核』があって、それが参加者に『術式』を刻んだり、術式を通じて制限とかを掛けているのだと思われます』
「術式の、核?」
『はい。おそらくこの会場のどこかにあると思いますよ?
再び『術式』が刻まれる時間から推測して、人間業ではあり得ませんから』
「じゃあ、その『呪術式の核』を壊せば!」
「ああ、バトルロワイアルは止められる筈だ」
その希望的観測に、イリヤは顔を明るくする。
俺自身もこのバトルロワイアルを止められる可能性に気が逸る。
早くも光明が見えてきたのだ。当然と言えば当然だろう。
それからいくつか話し合い、これからの予定を決める。
「それじゃあ改めて確認するけど、今後の行動方針は、
一、お互いの知り合いを探す。
二、『呪術式の核』を探しだして破壊する。
この二つでいいな」
その言葉にイリヤが頷く。
「よし。それじゃあ休憩も兼ねて出発は三十分後だ。
一応部屋に布団を敷いておいたから、仮眠を取ってもいいぞ」
「はい、わかりました。シロウ隊長!」
「うむ。では解散だ」
「ルビー、行こう」
『はいはい』
そう言うとイリヤは布団のある部屋へと走っていった。
まあ、あのセイバーに襲われてどうにか逃げ延びたのだ。疲れもしているだろう。
俺は台所で冷蔵庫をあさり、出発前の軽食用にサンドウィッチなど作ることにした。
◇
シロウの言った部屋へと入り、敷かれた布団へとダイブする。
ベッドではないため少し痛かったが、それでも疲れた体には心地よかった。
そのまま訪れた睡魔に身を任せようとして、
146
:
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/11(月) 00:32:05 ID:jyYkx2YM
『イリヤさん。お話があります』
程良くウトウトしたところでルビーに邪魔された。
その事を不満に思いながらも、どこか真剣なルビーの声に顔を上げる。
「どんな話?」
『士郎さんの左腕の事です』
「ああ、アレ?」
赤い布で肩までグルグル巻きにされた、シロウの左腕。
ちょっと奇抜なファッションぐらいに思っていたのだが、ルビーの様子からすると違うのだろうか。
「お兄ちゃんの左腕が、どうかしたの?」
『あの赤い布を、決して解かせないでください』
「へ……?」
『アレを一度でも解いてしまえば、士郎さんは死にます』
……………………。
一体何を言っているのだろう、このボケ杖は。
「ルビー、そういう―――」
『先に言っておきますが、これは冗談でも何でもありません』
「………………それって、そういう事?」
『あの“魔力殺しの聖骸布”で気付くのが遅れましたが、あの布で拘束されているモノは、間違いなく英霊の腕です』
「英霊の……腕?」
それって、あのセイバーとかバーサーカーとか、そう言った人の腕の事だろうか。
『はい。どういう理由かは判りませんが、士郎さんはどこかの英霊の左腕を自分の左腕にしているのです』
「それと……お兄ちゃんが死ぬ事と、何の関係があるの?」
『英霊とはつまり、精霊の領域まで昇格した英雄の事。英霊と人間とでは、魂の格が違います。
そんな規格外の存在の腕なんて移植すれば、移植された人間の魂なんて簡単に消し跳んでしまいます』
その言葉に、眠気なんて頭の中と一緒に消し飛んだ。
ただ真っ白になった思考で、シロウの元へと駆け出そうとする。
「ッ……! お兄ちゃ――――!」
『落ち着いてください、イリヤさん!』
「でも!」
『今はまだ大丈夫です。あの赤い布が巻かれている限り、士郎さんが死ぬ事はありません』
「あ……よかった…………」
その言葉に一応は平常心を取り戻し、布団にへたり込む。
けどルビーの話は、まだ終わってなかった。
『ですが、一度でもあの布を解いてしまえば、士郎さんは間違いなく死にます。
一分後か、一日後かは判りませんけど、その死は、不可避なモノとなってしまいます』
「そんな………」
『ですので、イリヤさん。士郎さんの左腕を、解放させないでくださいね』
「………………」
『……さ、とにかく今は休みましょう。バトルロワイアルを止めるにしろ凛さん達を探すにしろ、いざという時に倒れてしまっては元も子もありません』
ルビーに言われるがままに布団を被る。
けれど、あれほどあった眠気は、二度と来てくれそうになかった。
「……お兄ちゃん」
小さく呼んだ名前に返事はなく、虚しく響いただけだった。
◇
廊下の縁側を超えて庭を抜け、土蔵の扉を開ける。
そこには幾つものガラクタと、床に刻まれた魔法陣だけがある。
147
:
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/11(月) 00:32:56 ID:jyYkx2YM
――――その光景は、今でも目に焼き付いている。
月の光に濡れた金砂の髪と、聖緑の瞳。
“―――問おう。貴方が、私のマスターか”
あの時、セイバーが俺の剣になると誓ったように、
同時に、俺も彼女の助けになると誓ったのだ。
だから―――
「――――セイバー。
俺は必ず、お前を止めてみせる」
彼女のマスターだった者として、そう固く決意した。
……だがその先にあるモノに、決意したばかりの心をふらつかせる。
「…………桜……俺は……」
間桐桜。
俺にとって一番大切な、失う事さえ思いつかなかった女の子。
そして、冬木の街を徘徊し、人々を丸飲みにしてきた影の正体。
人々を助けたいと思うなら、彼女は殺すべきだ。
だがそれは――――
「っ、くそ………」
その先の考えを、頭を振って追い出す。
それにここにいる桜がは、“平行世界の間桐桜”かもしれないのだ。
こんな物騒な考えは、まず桜を見つけ出してからの話だ。
だが、そう思っていても嫌な考えが頭から離れない。
「……イリヤ。俺は、どうしたら……」
ここにいる少女と同じ、ここにいない少女に問いかける。
当然答えなどない。
その様はまるで、迷子になった子供のようだった。
【G-3/衛宮邸(和)/一日目-深夜】
【衛宮士郎@Fate/stay night】
[状態]:健康、疲労(小)
[装備]: カリバーン@Fate/stay night、アーチャーの腕
[道具]:基本支給品、お手製の軽食、干将莫邪@Fate/stay night
[思考・状況]
基本:この殺し合いを止める
1:イリヤを守る
2:桜、遠坂、藤ねえ、イリヤの知り合いを探す(桜優先)
3:“呪術式の核”を探しだして、解呪または破壊する
4:桜…………セイバー…………
[備考]
※十三日目『春になったら』から『決断の時』までの間より参戦。
※アーチャーの腕は未開放です。投影回数、残り五回。
※イリヤが、平行世界の人物であると認識しました。
【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:健康、疲労(中)
[装備]:カレイドステッキ(ルビー)@プリズマ☆イリヤ、クラスカード(キャスター)@プリズマ☆イリヤ(二時間使用不可能)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:この殺し合いを止める
1:シロウについていく
2:ミユたちを探す
3:聖杯戦争…………
[備考]
※2wei!三巻終了後より参戦
※衛宮士郎が、平行世界の人物であると認識しました 。
※カレイドステッキはマスター登録orゲスト登録した相手と10m以上離れられません。
148
:
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/11(月) 00:33:22 ID:jyYkx2YM
[共通の備考(士郎、イリヤ)]
※『呪術式』はルールブレイカーで解呪可能。
ただし、会場のどこかにあるだろう『呪術式の核』を解呪または破壊しない限り、完全な解呪は不可能(その場で再び呪われる)。
【クラスカード(キャスター)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
衛宮士郎に支給。
キャスターのサーヴァントの姿が描かれたカード。
限定展開する事で、キャスターの宝具“破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)”を一定時間使用できる。
ルールブレイカーの効果は、あらゆる契約を破戒し、魔術効果の一切を初期化すること。
最強の対魔術宝具であるが、物理的な殺傷力は普通のナイフと同じ程度。
一度使用すると、二時間使用不可能。
【カレイドステッキ(ルビー)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
イリヤスフィール・フォン・アインツベルンに支給。
愉快型魔術礼装。マジカルルビーという名の人工天然精霊が宿っている。
機能は魔力を無制限に供給し、マスターの空想をもとに現実に奇跡を具現化させること。多元転身や障壁、治癒促進などのほか、魔力砲攻撃やクラスカードの限定展開なども可能。展開できる魔術障壁はランクA、規模は最大で半径2メートル程度。
制限により、カレイドステッキはマスター登録orゲスト登録した相手と10m以上離れられない。
【勝利すべき黄金の剣(カリバーン)@Fate/stay night】
イリヤスフィール・フォン・アインツベルンに支給。
少年だったアーサーが石から抜いた選定の剣
セイバーにとっては「約束された勝利の剣」よりもなじみが深いものだが、生前のある行動によって永遠に失われた。
「約束された勝利の剣」と比べ、より権力の象徴的で装飾もより華美。その分、武器としての精度は劣る。
【干将莫邪@Fate/stay night】
セイバー・オルタに支給。
中国のとある刀匠が、その妻を犠牲に作り上げた陰陽二振りの夫婦剣。
お互いが磁石のように弾き合う性質を持つ。
二つ揃いで装備すると対物理・対魔力が上昇する。
149
:
◆UOJEIq.Rys
:2011/07/11(月) 00:35:04 ID:jyYkx2YM
以上で投下を終了します。
何か修正すべき点、意見などがありましたら、お願い致します。
度重なる修正により、ご迷惑をお掛けしました。
150
:
◆4EDMfWv86Q
:2011/07/11(月) 01:00:18 ID:Qn19U9cg
度重なる修正乙でした。
問題点はほぼ解消されてると思います。お疲れ様でした。
ただ、修正してることは早期に報告していてくれていた方が助かりました。音沙汰なしで不安だったので。
151
:
名無しさん
:2011/07/11(月) 19:33:00 ID:rsfnZO9s
問題ありと言ってた書き手が修正はこれでいいと言って他の書き手から何も言われてないのならもうこれでいいんじゃないの
152
:
◆Vj6e1anjAc
:2011/07/11(月) 20:49:23 ID:DebiNUuI
サトシ、海砂分を仮投下します
153
:
そういうのじゃないのよね
◆Vj6e1anjAc
:2011/07/11(月) 20:50:51 ID:DebiNUuI
この世界に住む不思議な生き物。
動物図鑑には載っていない、ポケットモンスター……縮めて、ポケモン。
そのポケモンと絆を深め、共に戦う者達を、人はポケモントレーナーと呼ぶ。
マサラタウンの少年・サトシは、世界一のポケモントレーナー――ポケモンマスターになることを目指して、日々、旅を続けていた。
「――わあぁぁぁ〜っ!?」
そのサトシ少年はというと、たった今窮地に立たされていた。
走る、走る、疾走する。
情けない悲鳴を上げながら、一目散に駆け抜ける。
私立アッシュフォード学園の、西洋建築の廊下を走る、サトシの姿がそこにはあった。
「ギャオォォォォォンッ!」
そして現状の原因を作ったのが、背後から迫り来るこの雄叫びだ。
ずしん、ずしんと足音が響く。
ゆらゆらと床が振動する。
曲がり角から姿を現し、猛然と迫りくる影がある。
サイドン――身長1.9メートル・体重120キログラムのドリルポケモン。
鉄骨を軋ませ走るのは、灰色の甲冑を纏った巨体。
鼻先にその名の通りのドリルを付けた、大型のいわタイプポケモンだ。
怪獣めいたその巨躯は、ガタイ通りの重戦車である。まともに突撃を食らってしまえば、人間などひとたまりもないだろう。
「くっそー、何でいきなりこんな目に遭うんだよ!?」
悪態をつきながら、サトシは走った。
「こんな危険な儀式なんて認めるもんか! 俺があいつを捕まえてやる!」――そんな宣言をした矢先に、あのサイドンが現れたのである。
支給品のチェックどころか、名簿を読んでいる暇すらなかった。
それどころか逃げる拍子に、名簿を落としてしまった気もする。
とにかく、こんなカッコ悪い有り様で、いきなりゲームオーバーなんてのは御免だ。
「こうなったらやるしかない!」
標的へ向き直り身構えると、左手にデイパックを掴む。
空いた右手で中を探り、1つのボールを取りだした。赤と白の装飾は、ポケモンを収納するモンスターボールだ。
「……まさか、またお前と一緒に戦えるなんてな……」
手にしたボールの感触は、見覚えのあるものだった。
このポケモンは知っている。シンオウ地方に渡った今でも、共に戦った記憶を覚えている。
一瞬、感慨に浸ったサトシの、ツリ目が穏やかに細められた。
「いけっ、モンスターボール!」
次の刹那、表情が変わる。
気持ちを戦士へと切り替え、モンスターボールを正面へ投擲。
カッ――と2つに割れた紅白球から、眩い閃光がほとばしった。
白熱の中より現れるのは、炎に燃える巨大な翼。
丸太のごとき尻尾がしなった。先端に煌めく篝火が揺れた。
長大な首が振り上げられ、青き双眸が眼光を放つ。
「頼んだぞ――リザードンッ!」
「ヴォオオオオォォォォォォッ!!」
開く翼が爆風を起こす。
轟く声が大気を揺らす。
短いながらも太い両足が、がっしりとアッシュフォードの床を掴んだ。
唸りと共にほとばしるのは、鉄をも溶かす灼熱の業火だ。
その名はリザードン。
身長1.7メートル、体重90.5キログラム。
こと戦闘に関しては、相棒・ピカチュウ以上の信頼を寄せる、サトシの最強の切り札。
蒼翼を広げる紅蓮の竜が、灼熱のプレッシャーを振りまき顕現した。
154
:
そういうのじゃないのよね
◆Vj6e1anjAc
:2011/07/11(月) 20:51:45 ID:DebiNUuI
「今回はマジでピンチなんだ。かえんほうしゃはナシで頼むぜ!」
念のため釘をさしておいた。
かつての反抗期ぶりはどこへやら、今ではまともに友情を築いているリザードンだが、
どうにもこいつはかえんほうしゃを、挨拶か何かだと誤解しているようなフシがある。
こんな生きるか死ぬかの瀬戸際で、余計な怪我をするわけにはいかない。
故にそこだけはきっちりと、普段以上に念を押しておく。
肩越しにこちらを向くリザードンも、軽く頷いて了承した。
「よぅし、今回の相手はアイツだ! かえんほうしゃはアイツにぶつけてやれ!」
「ヴォオオオオッ!」
サトシの指先がサイドンを示す。
炎竜の顎が勢いよく開き、灼熱の炎が放たれる。
深夜の学校の暗黒を、一筋の赤熱が眩く照らした。
まさに必殺の熱量だ。
リザードンの炎は岩石をも焼き、山火事すら引き起こすと言われている。
いかに相手がサイドンと言えど、そう易々とは防げまい。
「ガアアァァァッ!」
その、はずだった。
「ヴゥゥッ!?」
瞬間、炎を掻き消し荒れるのは暴風。
重戦車の突撃が、熱を払い竜を突いたのだ。
かえんほうしゃを押しのけて、猛ダッシュで突っ込んできたサイドンの頭頂部が、リザードンの腹部に直撃する。
重さ90キロにも及ぶ体躯が、ぐいぐいと押し出されていった。
「リザードンッ!」
「グゥ、オオオッ!」
それでも、たかが一撃で倒れるほど、やわな鍛え方はしていない。
むしろこの程度で終わるのならば、サトシと別れた意味ない。
苦悶の表情をきっと引き締め、両足を踏ん張らせ、減速。
そのままちきゅうなげの要領で、後方へとサイドンを投げ飛ばす。
相手の勢いを利用した体さばきは、さながら柔道技のようだ。
リザフィックバレーでの修業の日々は、暴れん坊を更なる高みへと導いていた。
「ガウッ!」
ずぅん、と音を立てて激突。
廊下の向こうまで投げ飛ばされ、壁に背中から突っ込んだサイドン。
「グゥゥゥゥ……!」
さりとてその頑丈な巨体は、その程度ではびくともしないらしい。
パラパラと身に積もる破片を払い、瓦礫の山から難なく立ち上がる。
がん、がんと灰色の両腕を、威嚇するようにして打ち合わせた。
「相性が悪いからって、リザードンの炎がまるで通じてないなんて……こいつ、とんでもなく強いぞ……!」
伊達にカントー地方を踏破してはいない。
相手が生半可なポケモンならば、たとえこうかがいまひとつであっても、ある程度のダメージを与えられる自身はあった。
さりとてこのサイドンは、あのリザードンの炎を受けて、傷一つ負っていないのだ。
互いのレベルは同格か、あるいはこちらのリザードンを凌ぐか。
生半可な鍛え方ではない。こいつを育てたトレーナーは相当な手練れだ。
最強の相手に対峙する最強――久しく感じたことのないタイプの、独特なプレッシャーがサトシを襲った。
155
:
そういうのじゃないのよね
◆Vj6e1anjAc
:2011/07/11(月) 20:52:16 ID:DebiNUuI
「ヴォ」
先を促すようにリザードンが唸る。
次はどうする。俺はどう動けばいい。そう言わんばかりに視線を送る。
互いのレベルが拮抗しているなら、勝負を分けるのはタイプの相性だ。
それを覆すには、どのようにリザードンを立ち回らせれば――
「――ボサッとしてるんじゃないわよ! ほら、さっさと反撃しなさい!」
思考に割って入ったのは、聞き覚えのない女の声だった。
サトシがリザードンを動かす前に、相手のサイドンの方が先に動いた。
「ガァァァァァッ!」
絶叫。
そして急接近。
どすんどすんと足場を揺らして、サイドンが猛スピードで突っ込んでくる。
地鳴りの中に混ざるのは、ちゅぃぃぃん、と響く回転音。
あれは必殺つのドリル――まともに直撃を食らってしまえば、一撃必殺もあり得る凶悪な技だ。
あれを食らうのはまずい。
「っ……かわせ、リザードン! 続けてほのおのうずだ!」
判断してからの行動は素早かった。
即座に指示を出すサトシ。リザードンもまたそれに素早く従い、翼をはばたかせ上昇する。
炎竜の突風と怪獣の烈風――同時に巻き起こる風圧が、ばたばたと前髪を暴れさせた。
「ヴォオオオッ!」
渾身の突撃が空振りに終わり、無防備になったサイドンを襲ったのは、またしてもリザードンの炎熱だ。
口から放たれた炎の線が、着弾と同時に螺旋を描く。
あっという間に灰色の巨体は、赤熱の筒に飲み込まれてしまった。
ほのおのうずの性質は、かえんほうしゃのそれとは異なる。
細い炎を竜巻状に巻かせ、敵を閉じ込め身動きを封じるのが、このほのおのうずの持ち味だ。
「もうっ、火は効かないんでしょ!? だったらそんなの消しちゃいなさい!」
「グォオオオオンッ!」
またしても響いたその声は、このサイドンを支給されたトレーナーのものか。
若い女のヒステリックな声は、なかなかその主を現さない。
その女の曖昧な指示に応え、灰色の怪獣が唸りを上げた。
瞬間、足場が勢いよく揺れる。
がたがたと窓枠が音を立て、教室では物が倒れる音が鳴った。
じめんタイプの大技・じしんだ。
戦場全体の足場を揺らすこの技は、床から巻き上がるほのおのうずを、あっという間に霧散させた。
砕けた渦は火花をなし、サイドンの巨体を照らし出す。
「まだまだっ! リザードン、はがねのつばさ!」
しかし、ほのおのうずが破られるのは先刻承知だ。
これは本命を叩き込むための、足止めと牽制の技に過ぎない。
「ヴォオオオオオオーッ!」
きぃぃぃん、と音を立て、急降下。
風切り音を伴う竜が、天井から猛スピードで殺到する。
その翼は蒼ではなく、銀。
白銀色の鋭い光が、リザードンの巨大な翼を覆っていた。
はがねのつばさは剣の一閃。
推進装置を凶器へと変え、一直線に叩き下ろす。
「ギャアァァァァッ!」
がんっ――と轟く音と共に。
悲鳴のようなサイドンの声が、アッシュフォードの廊下に響いた。
これまであらゆる攻撃を、ノーダメージで防いできた巨体が、うってかわってもだえ苦しむ。
原因はやはりタイプの相性だ。
リザードンの攻撃・はがねのつばさは、その名の通りはがねタイプ。
岩より硬い鋼の一撃は、より脆い岩をことごとく砕く。
いわタイプのポケモンにとって、はがねタイプの攻撃は、まさにこうかばつぐんなのだ。
156
:
そういうのじゃないのよね
◆Vj6e1anjAc
:2011/07/11(月) 20:52:43 ID:DebiNUuI
「よぉし! リザードン、もう一度はがねのつばさだ!」
「ヴォオオッ!」
命令を受けた炎竜が、翼をはばたかせ距離を取る。
目一杯加速をつけた一撃を、再び叩き込むためだ。
ようやく見つけた攻略の糸口――そこにはタイプ差のみならず、互いの戦闘スタイルの差も織り込まれている。
重量とパワーに物を言わせた、サイドンの突撃戦法は確かに脅威だ。
しかしその体格差と、飛行能力の2点によって、リザードンはサイドンよりも、遥かに高い機動力を有していた。
当たらなければどうということはないということだ。
スピードで大いに勝るリザードンは、ヒット・アンド・アウェイの高速機動で、サイドンを翻弄することができるのだ。
「いけぇ、リザードンッ!」
蝶のように舞い、蜂のように刺す。
敵の攻撃をかわし続け、一方的に攻撃し続ければ、確実に勝利することができる。
一気呵成に攻め立てるべく、サトシはリザードンを突撃させた。
「ギャオオオオォォォォッ!!」
その、瞬間だった。
「!? しまった! よけろ、リザードンッ!」
突如サイドンを中心に、石の津波が巻き起こったのだ。
巨大な質量と重量が、轟然と唸りを上げて襲いかかる。
じしんで砕かれた床の破片が、壁となって立ちはだかる。
いわタイプの技・いわなだれだ。ひこうタイプを持つリザードンにとって、食らえば一大事になりうる。
「ヴォオオオオッ!?」
しかし、加速のついた竜の軌道は、そう簡単には曲げられない。
結果リザードンはいわなだれに、真っ向から突っ込む羽目になった。
「リ、リザードン!」
不安げな響きを宿したサトシの声を、岩の濁流が塗り潰す。
「いいわよサイドン! そのまま一気にやっちゃいなさい!」
謎のトレーナーの指示を受け、灰の両足でスタートダッシュ。
いわなだれを食らったリザードンの懐へ、サイドンが一直線に飛び込んでいく。
一撃、一撃、そして一撃。
鼻先から伸びた螺旋の角を、乱れ飛ぶように浴びせていく。
まさにみだれづきというわけだ。
「グォォォォ……!」
一気に体力を削られた竜は、弱々しい悲鳴と共に地に伏した。
ずん、と軽い振動を伴い、うつぶせの姿勢で床に倒れる。
いわなだれの強烈なダメージには、相手をひるませる効果がある。今のリザードンは、身動きを取ることすら困難なはずだ。
「よしっ、よしよし! さぁとどめよ! 一番強いのでやっちゃいなさい!」
ずしん、ずしんと音を立て、サイドンがじわじわとにじり寄る。
ちゅぃぃぃん、と凶悪な回転音が、サトシの鼓膜を揺さぶり続ける。
このままじゃ駄目だ。早く何とかしなければ、確実にあのつのドリルを食らってしまう。
ならば、どうする。どうすればいい。どうやってこの状況を打開する。
焦りが頬に汗を垂らした。
喉も唇もカラカラだ。
床に倒れ伏したリザードンと、そこに歩み寄るサイドンを、交互に余裕なく見回し続ける。
こんなところで死にたくない。
これ以上リザードンを傷つけたくない。
そのためにはどんな手を打つべきか。
この万事休すの戦況を、一挙に逆転できる必勝の策は――
157
:
そういうのじゃないのよね
◆Vj6e1anjAc
:2011/07/11(月) 20:53:11 ID:DebiNUuI
(……床?)
その時、不意に。
はっ、と目を見開くサトシの脳裏を、電撃的なひらめきを駆け巡った。
先ほどじしんを放ったおかげで、今サイドンが歩いているあたりは、床に亀裂が入っている。
それはその時生じた瓦礫が、いわなだれに混ざっていたことからも窺えるだろう。
ひび割れた床。
そこから欠けた瓦礫。
つまり今、その足場は――
「――リザードンッ! サイドンの足元にはがねのつばさだ!」
無我夢中で指示を叫んだ。一分一秒が惜しかった。
正直苦しい命令だということは分かっている。意味が分からないと言われても仕方がない。
だが、今は自分を信じてほしい。
疑問も懸念も後回しにして、今この瞬間に動いてほしい。
頼む、リザードン。
これが最後の賭けなのだ。
「ヴォウッ!」
かっ、と見開くは青き瞳。
ぐい、と突き出すは橙の両腕。
ほとんど条件反射だった。声なきサトシの祈りに応え、竜は即座に行動を起こした。
腕立ての姿勢で身体を浮かせ、再度翼を輝かせる。
銀に煌めく破壊の翼を、足元目掛けて叩きつける。
結果、命中。
渾身の力を込めたはがねのつばさは、見事サイドンの足元を叩いた。
「っはははは! なぁにそれ? そんな馬鹿みたいなこと……」
やはり、そうか。
未だ顔を見せない相手トレーナーは、この行動の意味を理解できていない。
ポケモンの強さとトレーナーの腕前が、全く釣り合っていないのだ。
これまでの戦いの様子から、何となく予測できた通りに、こちらの目論見に気付かずにいてくれた。
「グォォォッ!?」
その油断と愚かさこそが、こちらの付け入る最大の隙だ。
刹那――サイドンの足元が沈んだ。
轟々と音を立てながら、足を支える床が崩壊したのだ。
「え、えええっ!?」
戸惑いも露わな、相手トレーナーの声が上がった。だが、それも今となってはもう遅い。
細かなヒビはその幅を増し、大きな亀裂は穴へと変わる。
じしんによって脆くなった足場が、最後のとどめをその身に食らい、一挙に叩き崩される。
さながら蟻地獄のほうだ。
じわじわと口を開けていく大穴に、サイドンがずぶずぶと飲みこまれていく。
「リザードン! 外に向かって飛んでくれ!」
橙色の背に跨り、窓の方を指さし、言った。
このまま穴へと飛び込んで、はがねのつばさで追撃をかけてもいいだろう。
しかし、敵の頑丈さを考えれば、まともに食らってくれるのはよくて一発。
また反撃にいわなだれを放たれれば、今度こそリザードンは戦闘不能となってしまう。
故に、ここはもうひと押しが必要だ。
更なる連撃を叩き込むために。
着実に勝利をものにする、最強のコンボを叩き込むために。
158
:
そういうのじゃないのよね
◆Vj6e1anjAc
:2011/07/11(月) 20:53:39 ID:DebiNUuI
◆
「な、何よ!? 一体何がどうなってるのよ!?」
サイドンを操るトレーナー――弥海砂は混乱していた。
相手が攻撃を空振らせたかと思ったら、突然足場が崩壊し、サイドンが下の階へ落ちてしまったのだ。
これは一体どういうことだ。誰も答えるはずもない問いを、狼狽と共に連発する。
「リザードン! 外に向かって飛んでくれ!」
殺そうとした少年が、あの竜の背中に跨ったのは、ちょうどこの瞬間だった。
「ああっ、ちょっと待ちなさいよ!」
待てと言われて待つ者はいない。
すぐさまリザードンは離陸を開始し、程なくして廊下の奥へと到達。
ばりん、と破砕音が鳴った。
サイドンがへこませた壁の上の、大窓をかち割り外へと飛び出た。
奴め、このまま逃げるつもりか。
「アイツらが外に逃げたわ! さっさと追いかけなさい!」
そうは問屋が卸すものか。
床の大穴へと駆け寄り、窓の方向を指さして、言った。
「ガウッ!」
頷くと同時に、突進。
眼下のサイドンが指示を受け取り、その方向目掛けて猛ダッシュ。
このポケモンとやらは頑丈だ。そのまま地上2階の高さから飛び降りても、さして問題にはならないだろう。
この時はまだそう思っていた。故に海砂はその突撃を、咎めることなく見送った。
ばきばき、と鉄骨が軋む。
めりめり、とコンクリートが崩れる。
体当たりで壁を突き破り、漆黒の夜空へと躍り出る。
その、瞬間だ。
「――ちきゅうなげだ! 頭っから叩き落としてやれっ!」
逃げ出したはずの少年の声が、壁の向こうから響いてきたのは。
◆
俺はあくまでポケモンだ。
人間のように頭はよくないし、戦術も戦略も何もかも、難しいことはよく分からない。
だから人間の指示通りに動いたって、何がどうなるかなんて予測もできない。
それでも、俺はこいつを信じている。
考えることはこいつの仕事だ。俺に戦う力があれば、こいつはそれを活かす最高の策を、必ず俺に与えてくれる。
だから、疑うことなんてしない。
俺に理解できないからって、それは立ち止まる理由にはならない。
それがこいつの仕事なら、戦うことは俺の仕事だ。
こいつの策を実行し、こいつに勝利をくれてやる。
いいや、こいつだけの勝利じゃない。俺達2人で掴む勝利だ。
お前が俺を信じるのなら、俺もお前を信じてやるさ。
だから、俺は立ち止まらない。どんな無茶な指示だろうと、必ず実践してみせる。
「ちきゅうなげだ! 頭っから叩き落としてやれ!」
へぇ、なるほどそういうことか。
そういうことなら話は早い。一発お見舞いしてやろうじゃないか。
そのかわり、お前もしっかり掴まってろよ。
この程度の飛行で振り落とされたら、今度こそかえんほうしゃを食らわせてやるからな。
「ガウッ!?」
悪いな、サイドン……別にお前に恨みがあるわけじゃねえ。
だが、こいつは俺のトレーナーの頼みだ。文句はこいつに言ってくれ。
とにかくそういうわけだから、ここは遠慮なくいかせてもらう。
お前とはなかなか楽しかったからな。だから、せめてものお礼として、最後にフルパワーの一撃を見せてやるよ。
さぁ――いくぜっ!
「ヴォオオオオオオオォォォォ―――ッ!!!」
159
:
そういうのじゃないのよね
◆Vj6e1anjAc
:2011/07/11(月) 20:54:21 ID:DebiNUuI
◆
重さ120キロというサイドンの体格は、それ自体が強力な矛であり、同時に堅牢な盾でもある。
押し倒そうにも投げ飛ばそうにも、それだけの重量を持った相手の姿勢を、正攻法で崩すのは困難だ。
ならば、その攻略法は3つに1つ。
合気道や柔道のように、相手の勢いに乗りかかって倒すか。
足場や足そのものに攻撃を仕掛け、重量を支えるのを困難にするか。
あるいは足場のない空間に追い込み、無抵抗な状態から投げ落とすか。
「ヴォオオオオオオオォォォォ―――ッ!!!」
最後にリザードンが取ったのは、それらのうち3番目の戦法だった。
雄叫びと共に翼がはばたく。
逃げ出したはずの炎竜が、突如死角から姿を現す。
リザードンは逃げたのではない。
サイドンの視界から己を外し、海砂が視線を逸らした隙に、アッシュフォード学園の外壁に張りついていたのだ。
「ガウッ!?」
サイホーンよりはマシとはいえど、物忘れが酷いと言われるサイドンは、あまり頭のいいポケモンではない。
その上これまでの適当な指示を見るに、彼を使うトレーナーは素人だ。
具体的な内容を持たない、漠然とした命令を与えられるサイドンは、力任せに建物から飛び降りてくる。
そう判断したサトシは、そこにリザードンを隠れさせ、この瞬間を演出したのだった。
「ヴゥ、オオォォッ!」
がし、と灰色の巨体を掴む。
両手で標的をホールドし、地上の石畳を睨みつける。
空中はリザードンの独壇場だ。超重量を吸いつける地面は、この空間には存在しない。
むしろ重力加速がつくことによって、より強烈な「投げ」を放てるだろう。
狙うはサトシの指示通り。
いわタイプの敵にも通用する、リザードンのフェイバリット・アーツ――ちきゅうなげをお見舞いするのだ。
「ヴォォォォォンッ!!」
大きく振りかぶり、投擲。
円形回転を省略し、思いっきり下方目掛けてシンプルに投げる。
ぎゅん、と風切り音が耳に響いた。
剛腕轟く一撃が、大怪獣を地面へと叩き落とした。
がぁぁぁん、と鳴り響く落下音は、さながら地に落ちた隕石のようだ。
もうもうと立ち込める粉塵の中、クレーターを作ったサイドンは、狙い通り頭から地に突っ込んでいる。
これで条件はクリアーだ。
どんな頑丈なポケモンでも、頭は他の部位より弱いはずだ。これだけの勢いが乗った一撃で、平気でいられるはずもない。
「とどめだ、リザードン! はがねのつばさっ!!」
そこに真の勝機が見える。
こうして怯ませたこの瞬間にこそ、最大のチャンスが到来する。
あの床を崩した攻撃ですら、確実にプランを成功させるための布石でしかない。
「ヴォオオオオオォォォォッ!!!」
銀色の稲妻が駆け抜けた。
絶叫と共に落雷が襲った。
さながら電光石火のごとく、眼下へと急降下を仕掛けるリザードン。
持てるパワーとスピードを、このここ一番にこそ注ぎ込む。
地面に倒れたサイドンの懐に、こうかばつぐんの一撃を叩き込む。
「グギャアアアアアアアアッ!!?」
悲痛な叫びを上げた瞬間、サイドンの意識が急速に遠のいていく。
リザードンのはがねのつばさが、地に落ちたターゲットのきゅうしょ目掛けて、寸分の狂いなく命中したのだ。
「ヴォオオオオオオーッ!」
――10年早いんだよォッ!
そんな勝利の雄叫びが、ぼやけた脳裏に響いた気がした。
160
:
そういうのじゃないのよね
◆Vj6e1anjAc
:2011/07/11(月) 20:54:49 ID:DebiNUuI
◆
「どうだ! ポケモンバトルの極意は、ただ強い技を使うことだけじゃないのさ!」
眼下で目を回すサイドンを見下ろし、サトシがガッツポーズを取る。
少年を乗せたリザードンは、アッシュフォードの校庭を離れ、再び宙に戻っていた。
ポケモンバトルの勝敗を分けるファクターは、レベル差とタイプ差以外にももう1つある。
それはトレーナーとポケモン、両者の研鑽と信頼の間に成り立つ、完成されたタクティクスだ。
ただ適当に攻撃するのではなく、攻撃の効率、更には周囲の影響も計算して、最善の戦略を展開する。
場当たり的な指示を出し続ける素人のサイドンと、バトルフロンティアを制したサトシのリザードン。
両者のタクティクスの差がタイプ差をも凌駕し、この勝利へと導いたのだった。
「リザードンもよくやってくれたな。ありがとう」
強面の炎竜へと手を伸ばす。
サトシの手に応じ下げられた頭が、優しくゆっくりと撫でられた。
彼らのコンビネーションは、実にそのバトルフロンティア以来の御無沙汰である。
しかしそれでも、固い絆で結ばれた両者のコンビネーションは、微塵も揺らぐことはなかった。
これもひとえに、リザードンがサトシを信じ、サトシに応えてくれたおかげだ。
最大限の労いを込めて、サトシは竜の頭を撫でていた。
程なくしてリザードンは、先ほどの3階廊下へと戻る。
サイドンは戦闘不能になったものの、それを操っていたトレーナーは、まだこの3階にいるはずだ。
「よし……」
懐からモンスターボールを手に取る。
タイプの相性が悪い相手と、あれだけの戦いを演じたのだ。リザードンも、そろそろ疲れている頃だろう。
「戻れ、リザー――」
紅白色のボールをかざし、ポケモンを休ませようとした瞬間、
――ぱぁん。
「……え……」
破裂音と衝撃が、不意にサトシの身に襲いかかった。
ぐらり、と視界が歪んでいく。
程なくして苦痛が脳にせり上がり、怪我をしたのだと悟る。
痛みの源泉は、胸だった。
心臓を、貫かれていた。
耳鳴りに掻き消える聴覚と、霧散していく視覚の中、胸元を染める赤が目につく。
傍にいるはずのリザードンの声も、今はろくに聞こえない。
まっすぐに立っていられなくなり、遂には意識そのものが朦朧としていく。
霞がかった視界の中に、ゆらりと人影が現れた。
黒髪の若い女性の姿だ。すぐにその女の影が、サイドンのトレーナーだと悟った。
「どう、して……ポケモン、トレーナーが……トレー……ナー、を……」
何故、トレーナーが直接攻撃するのか。
何故、トレーナーを直接攻撃するのか。
考えが、上手くまとまらない。
疑問の先が、続かない。
思考も、視覚も、聴覚も。胸から上る痛覚すらも、何も感じなくなっていく。
何もかもが遠のいて、何もなくなってしまった瞬間。
「ざーんねん。あたし、そういうのじゃないのよね」
最期に響いてきた言葉だけは、不思議とハッキリと、聞こえていた。
161
:
そういうのじゃないのよね
◆Vj6e1anjAc
:2011/07/11(月) 20:55:11 ID:DebiNUuI
◆
かつ、かつ、かつんと音が鳴る。
小気味いいステップの靴音が、深夜の静寂に響き渡る。
「もー、全然駄目だったじゃない。次役に立たなかったら、承知しないからねっ」
半ば可愛い子ぶったような、わざとらしい響きの不平が挙がった。
女の手がモンスターボールを掴むと、その視線の先へと突き出される。
瞬間、妖しく光るは赤い色。
紅白の境界のスイッチから、真紅の光線が伸びていく。
その先に倒れていたものは、今だ目を覚まさぬサイドンだ。
やがて2メートル近い巨体が、光を浴びたかと思うと、それがあっさりとボールの中へ消えていった。
「でもこのポケモンとかいう生き物、不細工だけど強いわよねぇ……」
言いながら懐から取り出したのは、もう1つの同じデザインのボールだ。
いわの怪獣・サイドンのボールと、ほのおの飛竜・リザードンのボール。
これで手持ちは合計2匹。それも揃って上級ポケモン。
赤と白のモンスターボール越しに、その戦う姿を追想しながら、海砂はまじまじとそれらを見つめていた。
「……うん、こんなに強い手下がいたら、月もきっと喜ぶよね」
にっこり、と笑みを浮かべると、2つをデイパックへとしまった。
そうしてウキウキとした表情のまま、鼻歌交じりに歩を進める。
彼女の名は弥海砂。
新世界の神たらんと、超常の力を持って罪人を裁く、死神キラの盲信者。
愛する者を救うために、彼女は笑顔と共に武器を取り、笑顔と共に壁を壊す。
邪魔する者には、死あるのみ。
無邪気に笑う死神は、道筋に屍を残すのみ。
全ては神たる男の敵を、絶滅させんとするために。
【サトシ@ポケットモンスター(アニメ) 死亡】
【C−3/アッシュフォード学園・校庭/一日目 深夜】
【弥海砂@デスノート(映画)】
[状態]:健康
[装備]:コイルガン(5/6)@現実
[道具]:基本支給品、モンスターボール(サカキのサイドン・戦闘不能)、モンスターボール(サトシのリザードン・ダメージ大)、不明支給品0〜1
サトシのデイパック(中身:基本支給品、不明支給品0〜1)
[思考・状況]
基本:月を優勝させるために、他の参加者を殺す
1:月を探して合流する
2:ポケモンを回復させて、また武器にする
[備考]
※参戦時期は、月に会いに大学へ来る直前
【サトシのリザードン@ポケットモンスター(アニメ)】
サトシがカントー編でゲットしたポケモン。ほのお・ひこうタイプ。オス。
ドラゴンタイプは持っていないが、大きな羽や長い首は、まさにドラゴンそのものである。
そのパワーとタフネスはピカチュウをも上回る、サトシの切り札に当たるポケモン。
DP編時には手持ちに入っておらず、リザフィックバレーと呼ばれる場所で修業の日々を送っている。
【サカキのサイドン@ポケットモンスター】
赤緑青ピカチュウバージョンにて、サカキが用いていたポケモン。いわ・じめんタイプ。
全身を鎧のような皮膚で覆った、怪獣然とした容姿のポケモン。鼻先には小さなドリルがついている。
トキワジムリーダーのポケモンなだけあり、かなり高い能力を有している。
【コイルガン@コードギアス 反逆のルルーシュ】
ルルーシュがクロヴィス殺害の時に使用した拳銃。
この世界では火薬式ではなく、こうした電磁石による銃技術が普及している。
162
:
◆Vj6e1anjAc
:2011/07/11(月) 20:58:12 ID:DebiNUuI
仮投下は以上です。今回気になったのは3か所。
・リザードンを「サトシの手持ちのポケモン」の範疇に含めてよかったのか(リザードンは、今回のサトシの参戦元である、DP編には登場していない)
・サイドンの鳴き声はこれでもいいのか(アニメ版の鳴き声を失念。ゲームからのイメージで適当に捏造)
・◆vyNCf89vh2氏の予約と被っていないか(サカキにサイドンが支給されているかもしれない)
上記3点で問題がなかったら、そのまま本投下にいこうと思います。
他にも問題がありましたら、ご指摘をお願いします
163
:
名無しさん
:2011/07/11(月) 21:05:53 ID:PYlz4fl2
>>162
投下乙です。かっけえ!リザードンかっけえよ!!
そしてサトシ……orz
いつものノリでバトルしてたのが敗因だったな……
リザードン支給については問題ないかと思います。
ルビサファ編以降も、無印でのポケモンたちがゲスト出演で呼び寄せられてた回はありましたし
ピカチュウ以外で「サトシの主力ポケモン」っていったらリザードンのイメージが強いし…
(これは完全に自分の主観なので、他の方はどうか分かりませんが)
サイドンの鳴き声は……すみません。自分も思い出せない
164
:
名無しさん
:2011/07/11(月) 21:05:57 ID:oIddDgoM
手持ちであった時期があるならいいと思うよ
設定でポケモン図鑑を完成させてるから、使ってる描写がないポケモンを出すとかだと微妙だけど
165
:
名無しさん
:2011/07/11(月) 21:36:21 ID:YZLDDG9o
これって「参加者で登場するキャラクターの手持ちのうちの1匹のみランダム支給品として登場可能。」っていうルールに思いっきり引っかかるんじゃ…
166
:
◆Vj6e1anjAc
:2011/07/11(月) 21:51:09 ID:DebiNUuI
>>165
そこもよく分からないのですが、
「キャラクターの手持ちから、一匹だけ選んで支給(他のポケモンは出さない)」という意味なのか、
「キャラクターの手持ちから選んで、参加者一人に一匹だけ支給」という意味なのか、どっちなのでしょうか
167
:
名無しさん
:2011/07/11(月) 21:52:41 ID:rsfnZO9s
微妙だけどランダムの結果が偶々使用してた事があるポケモンだったで済む様な
168
:
名無しさん
:2011/07/11(月) 21:58:45 ID:YZLDDG9o
>>166
前者じゃないかな。後者だとやろうと思えばありえない数のポケモンが支給されることになるぞ。
それにたぶんこのルールは議論スレの>>6にあった「参加者毎のエース格一匹ずつ」を指してるんだと思うし。
169
:
名無しさん
:2011/07/11(月) 22:09:59 ID:oIddDgoM
603 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2011/07/07(木) 23:41:20 ID:lwtvpq7Y [3/3]
ベルト、ポケモン、ステッキは誰に支給してもOK
本来の持ち主に支給する場合はランダム支給品2個分とカウント
議論スレでの最終結論がこれで、異論も出てないからこれでいいんじゃね?
参加者の手持ちのポケモンだけ、ってルールさえ守ればチート級のポケモンも出ないだろうし
よく固まってないルールより書き手の自由度を優先しようよ、もう始まってるんだし
170
:
名無しさん
:2011/07/11(月) 23:05:31 ID:YZLDDG9o
うーん、誰も反対しないなら折れるけど、でもルールより書き手の自由度を優先しろってのはどうかと思うけどなあ。
ルールあっての自由だし。
それに議論スレ603のそれはほとんど今回のケースと無関係だと思うよ。
別にミサがサイドン持ってることにはまったく異を唱えてないし。
171
:
名無しさん
:2011/07/11(月) 23:15:02 ID:rsfnZO9s
完全にルール無視という訳でもないと思うけど
172
:
◆3.8PnK5/G2
:2011/07/11(月) 23:19:41 ID:jkc0ifwY
これは仮投下しても良い流れなのでしょうか?
173
:
名無しさん
:2011/07/11(月) 23:25:17 ID:tdcvoGYQ
どうぞどうぞ
174
:
◆3.8PnK5/G2
:2011/07/11(月) 23:28:48 ID:jkc0ifwY
それでは、不安が残るので先にこのスレで投下させてもらいます
175
:
「復活祭」
◆3.8PnK5/G2
:2011/07/11(月) 23:30:19 ID:jkc0ifwY
――――し……死ぬのか!?僕は死ぬのか!?
「そうだ。40秒で心臓麻痺。もう決まりだ」
――――し……死ぬ……いや……嫌だ……死にたくない。
――――死にたくない!ふざけるな!やめろ!死にたくない!
「みっともないぞ、ライト。いや、お前らしくない」
「最初に言ったはずだ。お前が死んだ時、俺がお前の名前を書く事になると」
「これはノートを人間界に持ち込んだ死神とそのノートを最初に手にした人間との間にできる掟だ」
「牢獄に入れられたんじゃいつ死ぬかわからない。待っているのも面倒だ」
「もうお前はここで終わりだ、ここで死ね」
――――い、嫌だ!死にたくない!牢獄も嫌だ!何とかしろ!何か手はあるんだろ、リューク!
「一度ノートに名前を書き込まれた者の死はどんな事をしても取り消せない」
「お前が一番よく知ってるはずだ」
「さよならだ、夜神月」
――――死ぬ……あと数秒で!!
――――いやだ……死にたくない!死にたくない!死にたくない!
――――嫌だ!逝きたくない!!
「うわぁぁあああぁああぁああっ!死にたくない!!逝きたくない――――――――――」
* * * * * *
176
:
「復活祭」
◆3.8PnK5/G2
:2011/07/11(月) 23:34:04 ID:jkc0ifwY
【1】
C−2、「夜神家」。
玄関の扉が開けられる音によって、夜神月の意識は「死亡直前の風景」から現実へと引き戻された。
自身の視界には、ノートに「夜神月」の名を刻み込んだ死神の姿は見えない。
今居る場所も薄汚れた倉庫ではなく、もう数ヶ月間足を踏み入れていなかった「夜神月」の部屋である。
(やはりあれは……夢ではない……)
最期の会話、心停止による激痛、堕ちていく意識、そして――『死』に対する恐怖。
あの場で感じたものが夢だとは、到底思えない。
「夜神月は心臓麻痺で死亡する」――それは決して嘘ではなく、この身で体感した事実であった筈。
だとしたら、何故自分はこの地で、止まった心臓を再び動かしているのだ?
(なにがなんだか分からない……一体どうなっている……?)
何から何まで、理解し難かった。
主催者に食いかかって、結果「みせしめ」として殺されたあの異形と言い、
名簿に書かれていた「既に死んだ人間達の名前」と言い、
常識を意図も容易く凌駕する出来事が連続して発生している。
(これが「死んだ者が行きつく所」……?いや、だとしたら何故ニアと松田まで参加しているんだ……?)
名簿には、自身を破滅へと追い込んだ者達の名も書かれていた。
「夜神月」=「キラ」である確固たる証拠を、本人の目の前で突きつけた「ニア」。
最後の最後で月を裏切った「松田桃太」。
どちらも思い出しただけで腸が煮えくり返る気分になる存在である。
キラに反抗し、結果勝利した側に付いていたあの2人は、まだ生きている筈。
生きている人間が参加されているということは、
この「儀式」は「死」とは無関係の位置にあるということを意味していた。
だとしたら――夜神月は、名簿に書かれた死者達は。
(「蘇り」……そんなものを認めろと言うのか!?)
「死」は誰にも覆すことの出来ない、絶対不変の摂理。
あの男は――アカギは、それをたった一人で覆してしまったと言うのか。
(有り得ない……だが……)
だが、月本人が「生き返り」という超常現象を体験してしまっている以上、受け入れるしかあるまい。
片意地を張って「非現実」を否定するよりも、柔軟な姿勢でそれらを認めるべきだろう。
それ以前に、自分は既に「デスノート」と言う最上級の「非現実」と遭遇してしまっている。
この程度の事を認めるのは、容易であった。
さて、主催についての情報――例えば、殺し合いを始めた理由、生き返りの原理――も集めたいし、
異形に変化した眼鏡の男性(「オルフェノク」と言っていたか)に関する事も気になる所だ。
だが、それらの調査に行動を移す前に、今の月にはやるべき事がある。
この家を訪れた二人の参加者の事だ。
聞こえてくる声からして、月の関係者ではないのは確か。
会話の内容から考えて、殺し合いに乗っている訳でもない。
警戒してこのまま身を隠したとしても、いずれは見つかってしまうのは目に見えている。
下手な事をして怪しまれるのは避けたい。
だとしたら――接触を試みるのが、最も利口な選択だろう。
177
:
「復活祭」
◆3.8PnK5/G2
:2011/07/11(月) 23:37:45 ID:jkc0ifwY
【2】
派手な服装をした長身の男は「ゲーチス」と、制服の少女は「美樹さやか」と名乗った。
2人はほんの数分程前に行動を共にし始めたばかりらしく、
どこか安全そうな場所で情報交換を行う予定だったらしい。
そう考えると、彼らが月の居る「夜神邸」にたどり着くのはごく自然な事だと言えるだろう。
情報交換は、月の部屋にて行われた。
その内容だが――予想の斜め上を行く話が続出したせいで、月も少々唖然としてしまった。
さやかの「魔法少女」の話はまだいい。
御伽噺の様な話ではあるが、一応「日本」で起こった話だ。
だが、ゲーチスの「ポケモン」についての話は、流石の月も一抹の疑念を抱かざるおえなかった。
何しろ、あらゆる物事が月達の世界とは根本的に違うのである。
「イッシュ」などと言う名前の地方、月の知る限りでは存在しない。
念のためさやかにも聞いてみたが、彼女も首を横に振った。
(アカギの言っていた「可能性宇宙」はこれの事を言っているのか?)
「数多の時間、空間という可能性宇宙」――すなわち、「平行世界」。
アカギの話が確かなら、「儀式」の参加者は複数の「平行世界」から選ばれているという事になる。
とすれば、地形、もしくは歴史が違う「世界」からも人間が連れて来られていてもおかしくはない。
「恐らく、ゲーチスさんと僕達の『世界』は全く別のもの……いわゆる『パラレルワールド』なのでしょう」
「平行世界」という単語一つだけで、此処で聞いた全ての話を肯定できる。
ポケモンも、魔法少女も、オルフェノクも、恐らくは全て別々の宇宙から来た存在なのだろう。
「一度死ぬ以前の自分」が聞いたら、無言のまま精神病院を紹介されかねない、突拍子も無い発想ではあるが、
今は非現実を受け入れざるおえない状況なのだ――この思想を貫くしかあるまい。
それにしても、まさか此処まで無茶苦茶なものだったとは。
アカギの「どんな願いでも叶える」という発言も、嘘ではないのかもしれない。
だとすれば、「デスノートを再び手にしたい」という願いすら容易く叶えてくれるのだろう。
この地に存在する参加者を全員殺害すれば、再びキラとして君臨できるのだ。
だが――本当に優勝してしまっていいものなのだろうか?
殺し合いに乗ってしまえば、月は本当に「クレイジーな大量殺人犯」になりかねない。
キラはあくまで社会的な「悪」を滅ぼす存在である。
犯罪とは、ましてや自身と無関係な一般人を手にかけていいものなのだろうか。
(……いや、何を今更)
今更抵抗感を感じて、どうすると言うのだ。
既に自分は、犯罪を犯していない者の名を――敵対していたとは言え――ノートに書き込んでいるではないか。
それを今になって、「殺していいものだろうか」だと?
それこそ、キラに駆逐されるべき偽善者と同レベルの思想だ。
月の目の前には、彼本人も含めた多くの戦士達の運命を劇的に変えかねない選択肢が存在している。
積極的に他者を蹴落とし、最終的には優勝する道を選ぶか、
二度目の死を回避するため、ひたすらに生存を優先する道を選ぶか。
――決断には、そう時間はかからなかった。
178
:
「復活祭」
◆3.8PnK5/G2
:2011/07/11(月) 23:41:04 ID:jkc0ifwY
【3】
さやかは激怒した。
怒りの矛先は、夜神月が話してくれた「殺人ノートを所持した殺人鬼」キラと、
それに協力する集団に向けられたものである。
殺人を犯すだけでも憤りを感じたというのに、
なんと彼らは、事件を追っていた月を嵌めて「偽のキラ」に仕立て上げたと言うのだ。
「奴らは『儀式』の最中でも僕を陥れる為に暗躍するでしょうね……」
月曰く、この地に呼ばれた「悪人」は――6人。
「ニア」、「メロ」、「松田桃太」、「南空ナオミ」、「L」、「夜神総一郎」。
いずれもキラに加担し、月を絶望に突き落とした紛れも無い邪悪達。
この地でも、彼らは罪の無い人を苦しめようとしているに違いない。
「そんなの……許せない!すぐにでも捕まえないと!」
巨悪を前にして、さやかの正義が燃え上がる。
聞けばその6人、普段は善人を装っており、その状態で人々に接触しているらしい。
見知らぬ誰かが彼らの毒牙にかかる前に、すぐに捕まえて悪事を止めさせなければ。
元より、さやかは正義感の強い少女である。
誰かの為に必死になれる勇気と、他人を思いやれる優しさを併せ持っていた。
彼女のその側面は、魔法少女になってからさらに強くなっていく。
絶望を振りまく「魔女」を狩らなければならない「魔法少女」としての義務と、
さやかが「魔法少女」を知るきっかけになった「巴マミ」の生き様が、
彼女の「他人を護る」という使命感の増幅を助長させるのだ。
「ああ、僕もそのつもりだ……あいつらの好きには決してさせない……!」
拳を握り締めながら宣言する月を見て、
さやかは「この人もマミさんと同じ『正義の味方』なんだ」という感想を持った。
自身の持つ力を最大限使用して、平和を脅かす「悪」に立ち向かう姿は、
さやかが目標としていた「理想の魔法少女像」と、正しく一致していたのである。
(マミさん……)
脳裏に浮かぶのは、さやかが理想とする「魔法少女」――「巴マミ」の姿。
目の前で死んだ筈の彼女が、何故殺し合いに参加しているのか。
恐らくは、彼女は「さやかの世界」とは違う「世界」から来たのだろう。
今のさやかには、その「巴マミ」がどんな人生を歩んでいたのかを知る術を持ってはいない。
だが、そんな彼女にも一つだけ言える事があった。
それは、マミは殺し合いには乗っていないという事。
損得を無視して人々を護っていた彼女である。
別の世界の出身でも、きっとその信念は変わってはいない筈だ。
殺し合いを止め、主催者を倒す為に既に行動を開始しているに違いない。
(マミさんだって頑張ってるんだ……!私だってこの力で……!)
「魔法少女」の力は、使いようではきっとたくさんの人を幸せにできるのだ。
まどかやゲーチスのような優しい者を護り通せる事だって、
月やマミのような「正義」の象徴のような者の手助けを行う事だって、
「絶望に彩られたストーリー」を「愛と勇気が勝つストーリー」に塗り変える事だって、不可能ではない。
さやかもまた、決心する。
この殺し合いを必ず止めてみせると。
まどかやマミを始めとする仲間を集め、そして最終的には主催者を打ち倒してみせると。
絶対に「悪人」達の思い通りにはさせはしない。
(みんなで……生きて帰ってみせる!)
179
:
「復活祭」
◆3.8PnK5/G2
:2011/07/11(月) 23:45:28 ID:jkc0ifwY
【4】
情報交換が終わった後は、それぞれの支給品の確認を行う。
月とさやかには武器が支給されていたが、
ゲーチスに支給されていたのはリストウォッチ一つだけだった。
「こんなものでどうしろと言うのですか」と嘆く彼に、
さやかは躊躇う事なく支給品――ベレッタM92F――を分け与える。
「魔法」という自衛手段を既に有している彼女にとって、銃など不要であった。
支給品の確認も終わり、特に何も無かったこの家から出発しようとした頃。
月は突然「単独行動をとりたい」と言いだした。
できるだけ早く、「悪人達」の情報を他人に伝えるのが目的のようだ。
さやかとゲーチスは、月を引き止めようとはしない。
例え何を言ったとしても、彼はきっと一人で夜神邸から立ち去るだろう。
それほどまでに、彼の信念は固いと分かっていたから。
最後に月は「二度目の放送が流れる時間に『病院』で合流しよう」と提案した。
それが、多くの「対主催」を集める為に必要であることは、説明しなくても理解できる。
2人はその提案を飲み込み、12時間後の再会を約束した。
「……では、僕はこれで」
月は夜神邸の横に置かれていた、
平凡な一軒家とはミスマッチな彩色がなされたバイクに跨る。
これは月に支給された「オートバジン」という名称のバイクらしく、
なんと人型に変形する事が可能らしい。
バイクは煙を吐き出しながら車輪を回転させ、月を運んでいった。
速度は段々と加速していき、それに比例するかのように、バイクと夜神邸の距離は開いていく。
数十秒もしない内に、月の姿は見えなくなっていた。
180
:
「復活祭」
◆3.8PnK5/G2
:2011/07/11(月) 23:47:36 ID:jkc0ifwY
【5】
バイクで走り去って行く月の姿を何時までも眺め続けるさやかの姿を見て、
ゲーチスは内心でほくそ笑んでいた。
先のやり取りを見ていれば、この娘が「正義の味方」を目指している事は誰にでも理解できるだろう。
そういう馬鹿げた理想を持っている者は大抵、少し精神面を追い詰めてみるとすぐに心を折らすのだ。
(せいぜい、駒として使わせてもらうとしますか……)
この言葉からも分かるように、ゲーチスにはさやかを思いやるつもりなど欠片も存在しない。
それどころか、この地で生きている全ての者達を、自身が勝ち残る為に必要な駒としか思っていないだろう。
これこそがゲーチスの本性。
人の善意を貪り尽くし、他者を蹴落とす事に至上の悦びを感じる真の「邪悪」。
さやか達の前の見せた表情は、一つ残らず捏造したものなのだ。
ゲーチスが目指すのは、「脱出」ではなく「優勝」である。
この場に居る57の命を犠牲にして、造りあげるのは新たな組織。
既に崩壊してしまったプラズマ団を超えた、絶対的な力を備えた最強の軍団。
自身が世界を牛耳る世界を創造する為ならば、ゲーチスは簡単に悪魔じみた行為を行えるのだ。
(サザンドラ……もしもの時はあなたが頼りですよ……)
支給品の確認の際、ゲーチスは一つ嘘をついている。
――彼には、支給品が「二つ」支給されていたのだ。
もう一つの支給品の名は「モンスターボール」。
その中に封じられているのは、
ゲーチスの手持ちの中で『最凶』のポケモン――「『きょうぼうポケモン』サザンドラ」。
このポケモンは、言わばゲーチスの「切り札」である。
使う前に存在を他者に知られてしまっては、もうそれは切り札ではない。
故に、この支給品は隠蔽する。
今の所は、あくまで「支給品に恵まれなかった善良な人間」として活動するのだ。
「こんな場所で立ち往生していても仕方がありません。他の参加者を探しましょうか」
「……そうですよね!こんな所で立ってるだけじゃ駄目ですもんね!」
さやかと共に、夜神邸を後にする。
この少女と行動するのには、彼女を駒と利用する以外にももう一つ理由がある。
「美樹さやかが絶望する瞬間が見てみたい」。
これはゲーチス自身の単純な趣味である。
せっかくの殺し合いだ。
この地で誕生するであろう最上級の「絶望」を、心行くまで楽しませてもらおうではないか。
(さて……美樹さやか。あなたはどんな絶望でその表情を歪ませてくれるのですか……?)
【C−2/夜神邸前/一日目深夜】
【外道親父と不遇少女】
【ゲーチス@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:健康
[装備]:普段着、ファイズアクセル@仮面ライダー555、ベレッタM92F@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]:基本支給品一式、モンスターボール(サザンドラ)@ポケットモンスター(ゲーム)
[思考・状況]
基本:組織の再建の為、優勝を狙う。
1:表向きは「善良な人間」として行動する。
2:切り札(サザンドラ)の存在は出来るだけ隠蔽する。
3:美樹さやかが絶望する瞬間が楽しみ
※本編終了後からの参戦
※「DEATH NOTE(漫画)」と「魔法少女まどか☆マギカ」の世界の情報を入手しました
※「DEATH NOTE」からの参加者に関する偏向された情報を月から聞きました
【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:健康
[装備]:北見原中学校の制服、ソウルジェム(濁り無し)
[道具]:基本支給品一式、不明支給品1〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない。主催者を倒す
1:ゲーチスさんと一緒に行動する
2:まどか、マミさんと合流したい
3:月さんが言っていた「悪人」を捕まえる
※7話、杏子の過去を聞いた後からの参戦
※「DEATH NOTE(漫画)」と「ポケットモンスター(ゲーム)」の世界の情報を聞きました
※「DEATH NOTE」からの参加者に関する偏向された情報を月から聞きました
181
:
「復活祭」
◆3.8PnK5/G2
:2011/07/11(月) 23:50:05 ID:jkc0ifwY
【7】
夜神月がバイクを運転するのは、これが初めてだ。
運転の方法は、昔見た映画やドラマの見様見真似である。
だと言うのに、彼はまるで「最初からそれの使用法を知っていた」かのようにそれを扱っていた。
普通の人間では、決してこうはいかないだろう。
これもまた、彼があらゆる面において圧倒的に優れているからこそ成せる芸当なのだ。
……流石にスピードは遅めだが。
深夜の街でバイクを疾走させながら、月は思考する。
情報交換の際、月が「悪人」だと断言した六人が、必ずしも「夜神月の存在した世界」の存在だとは限らない。
何しろ、幾つもの平行世界から人々が集められているのだ。
「夜神月の存在した世界」とほぼ同一の世界の住人までもが参加している可能性も否めないだろう。
そして、その者がキラを追っていない可能性もまた、存在している。
だが念の為だ。
危険要素は早めに摘み取っておかなければならない。
できるだけ多くの者に「彼らは邪悪である」という情報を流し、奴らを追い込まなければ。
あの2人はどうするべきか。
さやかは特に気にする必要はないだろう。
あの調子なら、月の思惑通り情報を撒き散らしてくれる筈だ。
だが、問題なのはゲーチスの方だ。
あの得体の知れなさの裏に、何か黒いものを潜ませている可能性は否定できない。
警戒しておいても、損はないだろう。
今の月は情報を欲している。
単独行動を行うのも、「病院」に参加者を集めるのも、より多くの情報を集める為。
あらゆる戦いにおいて「情報」が勝利の鍵となる事を、彼は知っていた。
それに、「病院に参加者を集める」という行為は、邪魔な「対主催」を駆逐できるというメリットも存在する。
勝利の前に立ち塞がる障壁は、何であろうが排除しなくては。
(僕は……勝たなくてはならない)
夜神月は優勝を目指す。
いや、今の地自身の境遇を考えると、それ以外に道は残っていなかった。
例え主催の目を掻い潜って脱出したとしても、
元の世界では月を追い詰めたメンバーが待ち構えているだろう。
丸腰の状態で戻っても、刑務所に入れられて最終的に処刑されるだけだ。
だが、優勝してデスノートを手に入れたのなら、話は変わってくる。
既に奴らの本名はこの手に握っているのだ。
ノートさえ手に入れられれば、すぐに敵を全員を始末できる。「裁き」も再開できる。
デスノートの力があれば、もう一度「キラ」になれるのだ。
そう――これは夜神月が再び神の座に君臨する為に必要な「儀式」。
57の生贄によって、キラはかの「イエス・キリスト」如く、現世に復活する。
【D−2/市街地/一日目深夜】
【夜神月@DEATH NOTE(漫画)】
[状態]:健康。オートバジン(バイクモード)乗車中
[装備]:スーツ、オートバジン@仮面ライダー555
[道具]:基本支給品一式、不明支給品1〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本:優勝し、キラとして元の世界に再臨する。
1:今は情報収集に専念。
2:元の世界で敵対していた者は早い段階で始末しておきたい。
3:ミサ以外の関係者の悪評を広める
※死亡後からの参戦
182
:
◆3.8PnK5/G2
:2011/07/11(月) 23:53:46 ID:jkc0ifwY
投下終了です
期待に応えれず、申し訳ない
183
:
◆vyNCf89vh2
:2011/07/12(火) 00:26:44 ID:6JR83Skw
サカキ、美国織莉子仮投下させて頂きます
ただ、内容(特に支給品)が……
184
:
白い魔法少女と黒い男と銀の機神
◆vyNCf89vh2
:2011/07/12(火) 00:30:29 ID:6JR83Skw
――美国織莉子は困っていた。
自身の能力である「未来視」の調子が悪い――というのも理由のひとつではあったが、目の前にいる『ソレ』とどう接すればいいのか分からないというのが、現時点においては最大の理由であった。
『ソレ』は人間と呼ぶには、あまりにも機械的過ぎた――
しかし、機械と呼ぶにしては、あまりにも人間的過ぎる――
織莉子の前で堂々と、その存在をアピールする『ソレ』。
全長約2メートル。
最高出力2500馬力を誇る、鋼の肉体を持つ銀色の機神。
スマートブレインモーターズが産み出した、まさに技術の結晶――
『ソレ』の名は――オートバジンといった。
◇
「最後の一人になるまで殺し合って欲しい――ね。やれやれ、困ったわ……」
話を十分ほど前に戻す。
美国織莉子は、自身のスタート地点である城の前で、一人佇んでいた。
彼女の足元には、ここに転移される直前にアカギという男から与えられたデイパックがひとつ、ぽつんと置かれていた。
185
:
白い魔法少女と黒い男と銀の機神
◆vyNCf89vh2
:2011/07/12(火) 00:32:57 ID:6JR83Skw
しばらくの間、ぼーっと目の前の光景を眺め続けた織莉子であったが、やがてあることを思い出し、視線を足元に持っていく。
「そういえば、中に地図が入っているんだったわね」
そう言いながら、いそいそとデイパックを開け、中身を確認する。
――一リットル入りペットボトルに入った水が二本。
――学校の購買部でも売られていそうなパンが六つ。
――ノートや鉛筆といった筆記用具。
――そして、手のひらサイズの平たくて丸い形をした赤と白のツートンカラーで彩られた機械が出てきた。
「これは……?」
よく見ると、その機械にはボタンのようなものが付いていた。
試しにそれを指でポチっと押して見ると、機械の真ん中に備え付けられていた液晶画面がパッと明るくなる。
そして次の瞬間には、その液晶画面に『G-7』という文字が表示された。
――アカギが言っていた『現在自身がいるエリアを示すデバイス』である。
「なるほど、これで私のいる場所は分かったわけだけど……」
地図がなきゃ意味が無いわ、と再びデイパックの中をあさり、地図を探す。
「あった!」
地図はすぐに見つかった。
見つけて取り出すと同時に、ばさりと広げて自身のいるエリアは、この殺し合いの会場のどの辺りに位置するのかを確認する。
が――
186
:
白い魔法少女と黒い男と銀の機神
◆vyNCf89vh2
:2011/07/12(火) 00:34:35 ID:6JR83Skw
「く、暗くてよく読めない……」
そう。現在の現地時刻は午前0時。
いくら空には月と星々が輝き、織莉子の背後に建つ城は所々がライトアップされているとはいえ、暗いことに変わりはないのだ。
美国織莉子。自身の世界においては、巴マミのような歴戦の魔法少女にすら恐怖を抱かせるほどの威圧感を持つ『白い魔法少女』――
――なのだが、日常面の彼女、どこか抜けている印象が否めない。
彼女の親友である呉キリカが、それ以上に色々とアレなせいで目立たないが……
「大変、大変。明かりになる物は入っていないかしら?」
デイパックの中をあさり始める織莉子。
その時――
「!」
デイパックを漁っていた手が突然ピタリと止まる。
「――誰かが近くにいる」
そして、ポツリとそう呟いた。
美国織莉子の魔法少女としての能力――それは「未来視」。
数秒から数分、一ヶ月、果てにはその先まで、とにかく未来に起こる光景を「視る」ことができるチカラ――
基本的には織莉子本人が「見たい」と望むことによって発現する能力であるが、今回のように無意識下に発動することもある。
187
:
白い魔法少女と黒い男と銀の機神
◆vyNCf89vh2
:2011/07/12(火) 00:35:42 ID:6JR83Skw
――だが、いつもどおり発動したはずのその能力に、織莉子は違和感を覚えた。
「視える」光景が、何故か濃い霧がかかったかのようにボヤケているのだ。
普段ならば、どんなに先の光景であっても、繊細に、はっきりと「視える」はずなのに――
(おかしい……)
そう思いながらも、「視える」光景をじっくりとその目に焼き付ける。
――自身よりも一回りほど背が高い人影。
――それが自身の前に立ちふさがっている。
――その人影が何者なのかまではボヤケているせいで分からない。
――だが、うっすらとだが「視えた」場所的に考えて、そう遠くない未来で起きる出来事のようだ。
「この場所は……」
すっと視界を背後の城へと向ける織莉子。
そこには、城の中に入るための大きな扉――と、その脇に停車されている一台のバイク。
「…………」
城門の横に駐車されているバイク。
それは、明らかに違和感がバリバリな光景であった。
城は中世ファンタジーなどに登場する典型的な構造のものではないが、それでも違和感がある。
――近づいてじっくりと見てみる。
(変わったデザインね……)
まだ中学生であり、かつ機械や乗り物に興味があるわけでもない織莉子でも、そのバイクは変わったデザインをしていると思った。
特に、ハンドルの部分が、ハンドルというよりも『何かの取っ手』のようにも見え――
「あら?」
よく見ると、そのバイクの座席にはそのバイクのマニュアルと思える薄い冊子が置かれていた。
188
:
白い魔法少女と黒い男と銀の機神
◆vyNCf89vh2
:2011/07/12(火) 00:37:37 ID:6JR83Skw
――早速手に取り、一枚目のページを開いてみる。
――が、やはり、暗くてよく読めない。
「え、えぇと……。ハンドルの……スイッチを、押し……スイッチ?」
バイクのハンドルの方へと目をやる。
ハンドルの手前、丁度座席との間に位置する部分――そこには確かに黄色い丸くてやや大きめのスイッチと思える部分が存在した。
「ここかしら?」
手を触れる。
しかし、触れただけでは何も反応しなかった。
次に、マニュアルに書いてあった(本当にそう書いてあったかは不明だが)ようにぐっと力を込めて押してみた。
すると――
『 Battle Mode 』
「あら?」
突然、バイクから電子音が鳴り響き、同時に黄色いランプが点灯する。
「も、もしかして、このボタンってエンジンのスイッチだったのかしら?」
急いで切らないと、と再びボタンへ手を伸ばす織莉子。
だが、彼女の手が再びボタンに触れるよりも先に――
――ガシャン!
「へっ?」
――ガシャン!
「え?」
――ガシャン!
「え? え?」
――ガシャン!
「え? え? え?」
――ガシャン!
「えぇーーーーっ!?」
バイクが突然動き出した――否、『変形』を始めた。
189
:
白い魔法少女と黒い男と銀の機神
◆vyNCf89vh2
:2011/07/12(火) 00:38:08 ID:6JR83Skw
そして、数秒ほどすると、そこにはバイクではなく――
『…………』
「…………」
左腕に盾――実際はバイクの前輪――を備えた銀色の人形ロボットが立っていた。
――そして、現在に至る。
◇
「えぇと……。あなた、魔女……ではないわね。どう見ても。うん……」
目の前の存在に言葉が通じるのかは分からないが、そう話しかける織莉子。
それに対してオートバジンは、ただ黙って織莉子の方を見つめたまま動かなかった。
「……も、もしかして、あなたもこの『儀式』とやらの参加者なのかしら?」
――ピロロロロ……
「!?」
オートバジンの人間で言うと顔と目に該当する黒い部分が電子音を発しながら僅かに光った。
織莉子が言った今の問に対して「いいえ、違います」とでも言っているかのように。
「…………」
『…………』
――黙って見つめ合う(?)二人もとい一人と一機。
190
:
白い魔法少女と黒い男と銀の機神
◆vyNCf89vh2
:2011/07/12(火) 00:38:57 ID:6JR83Skw
「――そ、そういえば、デイパックの中には一人一人ランダムで支給される道具が入っているってあの男は言っていたわね〜」
だが、数秒ほど経過したところで、織莉子がそのようなことを口にしながらくるりと後ろに振り返る。
――発言がかなり棒読みだったことはあえてここでは突っ込まない。いや、むしろ突っ込まないであげてほしい。
「もしかしたら何か武器とかが入っているかもしれないから確認しておかなくっちゃ〜……」
そして、そう――やはり棒読みで――口にしながらオートバジンの前から離れると、置きっぱなしにしていたデイパックの方へと戻っていった。
――いや、この場合『逃げた』と言ってもあながち間違いではなかった。
なぜなら、デイパックの方へと歩く織莉子は、誰がどう見ても早足であったから――
『…………』
――ピロロロロ……
そんな織莉子の様子を黙って見ながら、オートバジンまるで「寂しいです」とでも言っているかのように、顔を僅かに光らせるのであった。
――オートバジンが自身に支給された支給品のひとつであることを織莉子が知るのは、それから数分後。
デイパックから取り出した懐中電灯で照らしながら、オートバジンのマニュアルを一から読み直した時のことである。
◇
――サカキは怒っていた。
突然このような舞台に放りこまれ、殺し合いを強制されたからという理由もあるが、再び自身の組織が表舞台に立つ時が来たというのに、それを邪魔されたからという理由もある。
この舞台に放り込まれる直前、彼はある洞窟にいた。
191
:
白い魔法少女と黒い男と銀の機神
◆vyNCf89vh2
:2011/07/12(火) 00:39:28 ID:6JR83Skw
三年前、彼の組織はある一人の少年とそのポケモンたちによって解散に追い込まれた。
少年から『真の強さ』――『協力』や『団結』という概念が生み出す強大なチカラ――というものを見せつけられたサカキは、再び『強さ』というものは何なのかを知るため、一人修行の旅に出た。
――それが結果として、最愛の息子を孤独にしてしまったのだが、そこは別の話である。
それから三年が経ったある日、サカキが洞窟で偶然ラジオを聞いていると、突然ラジオからこのような声が聞こえてきた。
――こちらはコガネラジオ塔! こちらはコガネラジオ塔!
――三年間の努力が実り、今ここに、ロケット団の復活を宣言する!!
「!」
修行中の身となっていたサカキにとって、それはまさに青天の霹靂であった。
自身の組織――ロケット団の突然の復活宣言。
当然、ボスであるサカキには全くもって覚えのないことであった。
――ラジオからはさらに声が聞こえてくる。
――サカキ様ー、聞こえますか〜?
――我々、ついにやりましたよー!
それは、紛れもなくロケット団の構成員であった者たち――かつての部下たちの声であった。
三年前、部下たちに何の事前報告もなく、突然の解散宣言をした自分。
正直あの時は、もう二度と彼らの前に顔を出すことはできないだろうとサカキは思っていた。
192
:
白い魔法少女と黒い男と銀の機神
◆vyNCf89vh2
:2011/07/12(火) 00:40:24 ID:6JR83Skw
だが、現実は違った。
かつての部下たちは、自身が勝手に組織を解散させた後も、残党として社会の裏側に身を潜め、自身が帰って来る日を待っていてくれたのだ!
――行かなくてはならない!
かつての部下たちの所へ!
未だに自身という存在を必要としてくれる者たちの場所へ――!
気がつくと、ラジオの電源を切るのも忘れて、サカキは歩き出していた。
今度こそ、部下たちと世界を手にするため。
三年前は手にすることができなかった『真の強さ』を我がものとするために――
――サカキが謎の黒い空間に足を踏み入れてしまったのは、その直後であった。
◇
「…………」
サカキは無言で闇夜の中を歩き続ける。
その肩にはデイパック、腰にはモンスターボール、そして右手には彼に支給されたスマートフォンにも携帯ゲーム機にも見える、ある端末が握られていた。
その端末の名は高性能デバイス。
『儀式』の参加者全員に通常支給されるデバイスを一回りほど大きく、そして機能を拡張させたもの――
その液晶には、自身がいるエリアだけでなく、そのエリア全体の詳細なマップが表示されていた。
さらにこのデバイス、もうひとつ『とっておき』とも言える機能が搭載されている。
それは――『術式探知』。
そのエリアに存在する『プレイヤー』の呪術式を感知し、現在そのエリアに何名のプレイヤーがいるのかが表示されるというものだ。
――現在、サカキのいるエリアには二名のプレイヤーがいることが端末の液晶には表示されていた。
当然、そのうちの一名はサカキということになる。
――つまり、現在サカキがいるエリア『G-7』には彼以外にもう一人術式を持つ者――『プレイヤー』が存在するということになる。
「――いるとすれば、あそこか?」
サカキは前方にそびえ建つ、大きな城を睨む。
確か『ポケモン城』と言ったか、とサカキはスタート開始とほぼ同時に確認した地図の内容を思い出していた。
193
:
白い魔法少女と黒い男と銀の機神
◆vyNCf89vh2
:2011/07/12(火) 00:40:50 ID:6JR83Skw
「…………」
――サカキは無言で、腰のベルトに付けていたモンスターボールを取る。
そして、それを掴むと同時にひょいと前方に放り投げた。
――ポンと音をたてて開かれるモンスターボール。
中から出てきたのは、鎧のような強靭な肉体を持つ、大型のポケモンであった。
――ニドキング。
この『儀式』に放り込まれる直前までサカキが手持ちで連れていたポケモン。その一匹。
他にもニドクイン、ドンカラス、ガルーラがいたはずなのだが、何故か今はその三匹はサカキの手元にはいなかった。
――言葉には決して出さないが、サカキはこのニドキングに対して『思い入れ』というものを感じていた。
それは、このニドキングがロケット団のボスであるサカキとしても、かつてのトキワシティジムリーダーであったサカキとしても常に手元に置いていた一匹だからだ。
言ってしまえば、苦楽を共にしてきた存在――
故にこのニドキングは、三年前から一人修行の旅を続けてきたサカキにとって、唯一の仲間とも言える存在であった。
「――ッ!」
「――そうか、お前もこの茶番には怒り心頭のようだな……」
ニドキングの顔を見ながらサカキが呟く。
この『儀式』――サカキは、何としてでも生き残るつもりでいる。
当然だ。三年間という長い月日の果てに、再びロケット団が世界にその名を轟かせようとしているのだ。
自身の帰りを待っている部下たちのもとに行くまで死んでなるものか。
――だが、あのアカギという男に言われたとおり、ただ他の『プレイヤー』を潰し回って勝ち残る気もなかった。
自分はロケット団のボス・サカキ。いずれ世界を手中にする男だ。
そんな自分が、どこの馬の骨とも分からぬ輩の言いなりになるつもりなどない。
例えそれが、相手に自身の命を握られている状況だとしてもだ。
――利用できるものは、他の『プレイヤー』であろうと、道具であろうと、そしてポケモンであろうと全て利用する。
そして、最後は生き残る。
194
:
白い魔法少女と黒い男と銀の機神
◆vyNCf89vh2
:2011/07/12(火) 00:42:11 ID:6JR83Skw
どのような結果になろうとも、最終的に自身が生きていればそれでいい――
それがサカキのこの『儀式』におけるたったひとつの行動理念であった。
「――さて、このエリアにいるというもう一人の者は、いったいどんな奴なのだろうな?」
できるのなら有用な――利用できそうな奴がいいのだが、と思いながらサカキはニドキングを連れ、城を目指して再び歩き出した。
【G-7/海岸沿いの道/一日目 深夜】
【サカキ@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:健康
[装備]:高性能デバイス、ニドキングのモンスターボール@ポケットモンスター(ゲーム)
[道具]:共通支給品一式
[思考・状況]
基本:どのような手段を使ってでも生き残る。ただし、殺し合いに乗るつもりは今のところない
1:ポケモン城へ行く
2:同エリアにいる他の『プレイヤー』と接触したい。そして、『使えそうな者』ならば利用する
3:『強さ』とは……何だ?
[備考]
※『ハートゴールド・ソウルシルバー』のセレビィイベント発生直前の時間からの参戦です
※服装は黒のスーツ、その上に黒のコートを羽織り、黒い帽子を頭に被っています
※『ギンガ団』についての知識はどの程度持っているかは後続の書き手さんに任せます
◇
一方その頃、城の前では美国織莉子が自身のデイパック、そしてオートバジンの前でがっくりと項垂れていた。
「ま、まさか本当にコレが私の支給品だったなんて……」
――ピロロロロ……
そんな織莉子を見下ろしながら、オートバジンは電子音を発しながら顔を光らせていた。
その様子は、まるで織莉子に対して「『コレ』だなんて失礼な!」と言っているようにも「まぁ、気を落とすなよ」と言っているようにも見えた。
――織莉子はまだ気がつかない。
先ほど彼女が「視た」人影の正体は、オートバジンではなく、これから彼女のもとにやって来る、もう一人の『プレイヤー』であるということに。
195
:
白い魔法少女と黒い男と銀の機神
◆vyNCf89vh2
:2011/07/12(火) 00:50:20 ID:6JR83Skw
そして、織莉子はまだ知らない。
自身の目の前に立つ、一見イロモノな銀色の存在が、実はとんでもない性能――チカラ――を秘めているということに。
白い魔法少女と黒い男が出会う瞬間は、刻一刻と迫っていた――
【G-7/ポケモン城城門前/一日目 深夜】
【美国織莉子@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]:健康、白女の制服姿
[装備]:オートバジン@仮面ライダー555
[道具]:共通支給品一式、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本:(いろんな意味で)これから先、どうすればいい……orz
1:本当にどうしよう、コレ(オートバジン)……
2:そういえば、まだ地図と名簿も確認してない……
[備考]
※参加時期は第5話以前(詳細な参加時期は後続の書き手さんに任せます)
【「未来視」の制限について】
1:基本的に「視える」のは最長でも十数分後までの未来です
2:「視える」未来が先であるほど、「視える」光景が霧がかっているかのようにボヤけて見え辛くなります
3:上記制限は、本人が望んで発動した場合でも、無意識下で発動した場合でも同じです
【オートバジン(バトルモード)@仮面ライダー555】
現在の護衛対象:美国織莉子
現在の順護衛対象:なし
[備考]
※『バトルモード』時は、護衛対象の半径15メートルまでしか行動できません
【支給品解説】
【高性能デバイス】
通常支給されるデバイスの発展型。
自身がいるエリアだけでなく、そのエリア全体の詳細なマップが表示される。
さらに『術式探知』機能を持ち、そのエリアに存在する『プレイヤー』の呪術式を感知し、現在そのエリアに何名の『プレイヤー』がいるのかも表示される。
(ただし、分かるのは人数のみで、詳細な場所までは分からない)
【サカキのニドキング@ポケットモンスター(ゲーム)】
ドリルポケモン。タイプはどく/じめん。
わざマシンや教え技により習得できる技が幅広く、見ただけでは技構成や型が読み難いことが最大の強みであるポケモン。
通称「技のデパート」。
頭部を始め、身体のいたる所にトゲがあり、その全てに毒がある。
【オートバジン@仮面ライダー555】
スマートブレイン社の子会社であるスマートブレインモーターズ製の可変型バリアブルビークル。
左側のハンドルグリップは着脱可能で、ファイズのミッションメモリーをセットすることでファイズエッジになる。
高性能AIを搭載しており、『バトルモード』と呼ばれる人型のロボット形態へ自律変形する。変形後は独自にファイズのサポートを行う。
ハンドル手前(『バトルモード』時は胸部)にあるスイッチを押すことで、任意変形も可能。
本ロワでは、制限により通常形態である『ビークルモード』時は自律行動ができなくなっている。
また、護衛対象もファイズではなく、“『ビークルモード』時に変形ボタンを押した者”を護衛対象とする。
護衛対象の仲間も順護衛対象として守るようになっているが、護衛対象と順護衛対象が同時に敵の襲撃を受けた際は護衛対象を優先して守る。
ちなみに、順護衛対象はオートバジンのAIが独自に判断する。
196
:
◆vyNCf89vh2
:2011/07/12(火) 00:55:33 ID:6JR83Skw
投下終了です
織莉子がカリスマブレイクしてる?
しょうがないよ。バジンたんが一緒にいるんだもんw
197
:
名無しさん
:2011/07/12(火) 01:08:18 ID:KTgwYMPc
投下乙。織莉子かわいいwそしてさやかちゃんピンチ!
月さんそれ逆包囲フラグだよ!けどさやかあちゃんならきっとかき回してくれる……!あれ。
バジンたんがかぶってることについての提案。
基本先に出た話が優先されるべきですが、この場合時間差が僅差なため色々特例となると見受けます。
そのため互いの書き手で擦り合わせをすることが最上ではないでしょうか。
その上で提案。◆vyNCf89vh2氏の作品はオートバジンが大きく関わってるのに反し、◆3.8PnK5/G2氏の作品はほぼ名前だけの登場です。
そのため、月が乗っているバイクを適当なものに差し替えると円滑に進むのではないでしょうか。
……サカキのポケモンについては、少し時間がかかりそうですが。
198
:
◆3.8PnK5/G2
:2011/07/12(火) 01:14:19 ID:DbJpekzM
む、被ってしまいましたか
支給品被りについては「月のオートバジンを『パラダイス・ロスト』からの出典にする」というので解決できませんかね?
199
:
名無しさん
:2011/07/12(火) 01:16:42 ID:vP93k9Qg
それやると色んな支給品が増殖するような…
ライオトルーパーのバイクとかどうです?
200
:
名無しさん
:2011/07/12(火) 01:17:44 ID:5ceqst02
支給品被りは片方が適当に処理されそうでもありますからね・・・・・・
555のバイクは他にはジェットスライガーなるものがありますが、それは見た目からして化け物マシンなので、
月のオートバジンの代物としては少しきついし・・・・・・
201
:
名無しさん
:2011/07/12(火) 01:18:07 ID:mCU5oogA
『パラダイス・ロスト』からの出典でもいい…のかな?
出典違いでオートバジンを通すか別のバイクを出すか…
202
:
◆vyNCf89vh2
:2011/07/12(火) 01:20:09 ID:6JR83Skw
順意志持ち支給品ですから被りを通すのは難しいと思います>バジンたん
こっちはサカキのポケモンの件でも他の方と被っちゃってますが、バジンたん支給を修正するとなると、
それこそ話を根本からつくり直すことになるんで、最悪の場合破棄せざるを得ないんですよね……
203
:
名無しさん
:2011/07/12(火) 01:20:49 ID:mCU5oogA
連続スマンが最悪、バイクでなく別の支給品で徒歩って手もあるが
破棄は極力回避したいしな…
204
:
名無しさん
:2011/07/12(火) 01:23:52 ID:dhSdjXkI
パラレルなんだからかぶってもいいと思うけどなー
もちろん乱発は空気読んでほしいところだけど、せっかく似た世界観のやつから出してるんだからさ
特に今回は意図的にかぶせたわけではないからどっちかに折れてもらうというのも理不尽ではあるし
205
:
名無しさん
:2011/07/12(火) 01:34:08 ID:x.AcN3PA
月の方をバジンの量産型であるジャイロアタッカーにするって手もある
こっちは変形シーンがないし
劇場版555に登場するライオトルーパー用バイクだけど、啓太郎も普通に乗りこなしているシーンがあるから月でも乗れるかと
あと、パラレルだから被りOKにすると後々火種のもとになるかもしれないから今のうちに対策しておいたほうが良い気がする
特にバジンみたいに意思持ち支給品だったら尚更
ただでさえ、ジェットスラッガーはデルタのもののみ支給って支給品ルールにも載ってるくらいだし
206
:
名無しさん
:2011/07/12(火) 01:37:37 ID:5ceqst02
>>205
ジャイロアタッカーだとスマートバックルもあわせて支給もいいんじゃない?
207
:
名無しさん
:2011/07/12(火) 01:39:49 ID:KTgwYMPc
全く同一の、それも結構な高性能しかも意思有りの品が被るというのは割とマズイと思うのです。
一言二言替えるだけで手間がかからないという点では◆3.8PnK5/G2氏に修正してもらったほうがぐっとスムーズには進む。
展開に矛盾はなくどちらに責任があるというわけでもないが、空気読めで済ますのも問題ですので。
>>206
スマートバックル(ライオ)は禁止支給品でっす。
208
:
魔王は並び立ち、魔法少女は堕ちる
◆97SsGRff6g
:2011/07/12(火) 01:43:25 ID:okHySg..
とりあえず、素のままで仮投下してみます
209
:
魔王は並び立ち、魔法少女は堕ちる
◆97SsGRff6g
:2011/07/12(火) 01:44:22 ID:okHySg..
階段を駆け上がる。声は、未だついてくる。
振り返れば、"それ"は目の前にいるだろう。
追跡者の気配は、逃走者の息遣いを嘲笑う様に離れない。
追跡者が、語りかける。その口調は逃走者に向けているというよりは、むしろ。
「オレは魔王たる道を選び、世界に混沌をばら撒く存在となった……貴様は魔王として死に、世界に秩序を遺す」
追跡者の声が、段差に弾むように響く。逃走者は構わず駆ける。
「オレはC.C.を殺し、貴様はC.C.に生きる意志を与えた……オレは契約を履行し、貴様は契約を破棄させた」
逃走者の足がもつれ、転倒する。追跡者は足を止め、地に伏した逃走者を見下ろす。
「オレは未来を捨て、人を捨てた。お前は未来を望み、己を捨てた。
オレ達は、こうも違いながら……どうしようもなく、その本質が、同一だ」
逃走者が、床から上げた視線を追跡者に移す。その目に絶対遵守(ギアス)の光を灯して。
「お前は……一体、何者だ!?」
追跡者がその手に還零(ギアス)の光を宿し、告げる。
「オレは死人だ。お前もそうだろう」
210
:
魔王は並び立ち、魔法少女は堕ちる
◆97SsGRff6g
:2011/07/12(火) 01:45:46 ID:okHySg..
◇
俺の名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
黒の騎士団、神聖ブリタニア帝国、超合衆国の頂点に立ち、父以上の暴君として世界に君臨した呪われた皇子。
そしてゼロレクイエムによって友・スザクに討たれ、死にゆく運命めにあるはずの男だ。
「だが俺は生きている……生きていると実感する……」
頬に当たるビルの隙間風、肌をなぞる冷気。目に映る眠った街、どこからか聞こえてくるざわめきは鼓膜を揺らし。
そして、変わらず思考する俺の脳髄がこの状況を現実だと叫んでいる。
記憶の混乱もない。ナナリーを失い、スザクと共に父・シャルルを討ち倒した記憶はあれど、
ゼロ・レクイエムを成し遂げたという記憶はない。自分の呪われた人生には、いまだピリオドが打たれていないのだ。
「神様だって見たんだ、地獄があっても驚きはしなかったがな。これは一体どういうことだ?」
アカギという男の言葉に従うわけではないが、ディパックの中の名簿を確認してみる。
……しかし、俺の困惑が収まる事はなかった。名簿に載っている名前は、俺にとってあまりに不可解すぎた。
(スザク、C.C.、咲世子は生きている人間だ。この場にいることに納得はできないが理解はできる。だが、
死んだはずのマオやロロ……そして、ユフィとナナリーの名が何故記されている? ロロ・ヴィ・ブリタニアとは誰だ?)
「お前の疑問、この私が解いてやろう」
「!?」
思考にふける俺の隙に入り込むように響く声。
見通しの悪い市街地のどこから聞こえてくるのかは分からない。
だがその声は、不思議と俺の知っているそれに似ていた。
「死者を蘇らせるのは、実はそう難しいことではない。彼岸に渡る魂さえ固定する技術があれば、蘇るのは本人だ」
もっとも、周囲の人間にとって意味や価値があるのかは別だが……と嘯いて、声が近づく。
俺は、未だその声の位置を掴むことができない。まるで陽炎のように薄い存在感。まるで王のように重い威圧感。
「可能性宇宙……平行世界には、異なる出自と役割を与えられた同一の魂が混在する。
戦うナナリー……親殺しのスザク……薄汚い偽の家族としてのロロ……愚かにも魔王を僭称するロロ……
理想を汚されなかったユフィ……魔女を求め、そして拒絶したマオと、死を求め、そして拒絶したC.C。そして。」
声が消え、唐突にその主が姿を現す。
211
:
魔王は並び立ち、魔法少女は堕ちる
◆97SsGRff6g
:2011/07/12(火) 01:46:52 ID:okHySg..
「スザク!」
まず飛び出した頭部……仮面を見て、俺は二度ギアスの呪いをかけた友の名を呼んだ。
そう、その仮面の持主は英雄ゼロ。ゼロレクイエムによって世界の為に存在し続ける運命を背負った人格なき勇者。
そして俺を殺した後、ゼロの名と姿を継ぐのは、枢木スザクを置いて他にはいない。
思わず近づこうとして、しかし踏みとどまる。仮面に次いで現れたのは、筋骨隆々とした、怪人じみた巨体だった。
(ってこれスザクジャナーイ!)
「そうだ。私はゼロ……魔王、ゼロだ!」
心境で素っ頓狂な声を上げてしまった俺の思考が、崩壊寸前までカオスに飲み込まれる。
俺でもスザクでもないゼロ。名簿に載っているその名は全くの別人のものだと思っていたが、
確かに目の前にいるのはゼロの似姿だ。この怪人の口調だと、平行世界のゼロらしいが……。
「待て! それ以上近寄るな……来るなと言っている!」
「只人の言葉など聞かぬわ! ……ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア! 悪逆皇帝よ!
貴様に、真の虚無(ゼロ)を教えてやろう!」
「くっ……行け! キリキザン!」
俺の手から、一個のボールが放たれる。その名はモンスターボール。
超常的な力を持つ怪物を封じ込めたアイテムで、俺の支給品の一つだ。
名簿を見ながら同時に確認していたのだ、二つ以上の作業を同時にするゼロ(俺)としての激務が役に立ったといえる。
現れた怪物は全身にスーツとプロテクターを纏った人間状の姿で、雄叫びを上げながらゼロ(筋)に襲い掛かる。
同時に俺は逃走を開始する。最も手近で高そうなビルの中に飛び込み、一刻も早く屋上に向かわんとする。
「邪魔をするな!」
全力で駆ける俺の背後から、キリキザンが殴り飛ばされて目的地のビルの5〜6階の窓に突っ込んでいくのが見える。
薄々予感していたゼロ(筋)の怪物以上の戦闘力に歯噛みしながら、俺は振り向く事無くビルに飛び込んだ。
ゼロ(筋)は追いかけてくるが、積極的に追いつこう、追い抜こうとしている走りではない。
恐らくこちらを疲れさせてから捕えようと考えているのだろう。
ともかく、俺は階段を探して(エレベーターは止まっていた)、走り続けた。
212
:
魔王は並び立ち、魔法少女は堕ちる
◆97SsGRff6g
:2011/07/12(火) 01:48:06 ID:okHySg..
◇
階段の踊り場で、立ち上がったルルーシュとゼロが対峙している。
ルルーシュの目に光るギアスの光は、仮面をつけたゼロに届く事はない。
だが、仮にゼロが仮面を外していたとしても、効果がないのは同じことだろう。
ゼロの手に浮かぶギアスの紋章は、ルルーシュの絶対遵守のギアスを掻き消していた。
「く……」
「エデンバイタルの高次元にアクセスし、事象の本質を知る我が魔王の力は、平行世界の貴様の行いをも看破済みだ。
貴様はユーフェミアを殺し、スザクを憎み、罪もないシャーリーすらギアスの呪いに巻き込んだ。罪深い事だな」
「……どうやら平行世界云々の話は事実らしいな。だが、俺が罪人であることは俺自身がもっともよく知っている。
余所者にとやかく言われることではない。顔も見せない奴には特にな!」
ルルーシュは、目の前の男の正体を探るように睨みつけながら、再び階段を上り始めた。
突如現れたゼロを名乗る怪人の言葉は、不思議とそれが嘘であるとルルーシュに思わせない。
ごく限られた者しか知らないはずのルルーシュの罪を正確に言い当てたという表面上の理由もある、が。
先ほどと同じ、追う者と追われる者の関係を維持しながら、ゼロはルルーシュの後ろで言葉を発し続ける。
「では、貴様に問おう。もしもユーフェミア達が死なず、シャーリーも失わない選択肢があったとして、それを選んだか?
「黙れ魔王! そんな質問に意味はない! 全ては終わった事だ、選び直す事は出来ない!」
「だがユーフェミア達は確かにこの地で生きている。お前の知る者たちでないとはいえ、限りなく同一の命として」
「ぐっ……」
ルルーシュの脳裏に、自分によって不幸にならなかったロロ、ユフィ、ナナリーの幻想が浮かぶ。
それは、ルルーシュが心底から求めている、彼にとっての優しい世界であった。
213
:
魔王は並び立ち、魔法少女は堕ちる
◆97SsGRff6g
:2011/07/12(火) 01:49:39 ID:okHySg..
「やはり、迷うか。オレもそうだ……己の在り方を、迷い続けている」
どこか遠くを眺めるような眼差しでルルーシュを見ながら、ゼロがその挙動を変えた。
自分の中で何らかのケジメをつけたのだろうか、追跡から攻撃へと移る。
だが次の瞬間、それを待っていたかのように、階段のホールの壁を破って現れる影が一つ。
言うまでもなく、先ほどビルの中に殴り飛ばされたキリキザンである。
キリキザンは新たなるマスターを守る為、全力でゼロに突撃し、十数段ほどの距離を押し込んだ。
「キリキザン! あなをほるだ!」
「ギシャァァァァァァァ!」
ついに屋上に出るドアに到達したルルーシュの指示に従い、階段に穴を掘りながら、縦横無尽に移動するキリキザン。
その動きに翻弄されるゼロを尻目に、ルルーシュは屋上へと飛び出した。
空調機器と思しき物をすり抜けながら、屋上のフェンスに近づき、脱出する為の行為に移る。
しかし、二つ目のモンスターボールを取り出す前に、キリキザンが錐揉み回転しながら鉄柵に激突した。
「ポケモンから目を離すとは、トレーナー失格だな……さて、話の続きをしようではないか」
(役立たずが……)
舌打ちしてキリキザンをモンスターボールに戻し、新たにテッシードを召喚するルルーシュ。
トゲだらけの蛹、あえて言えばくっつき虫のようなポケモンは、見た目にそぐわぬ俊敏さでゼロに迫る。
だが、ルルーシュは焦りを隠せなかった。戦力的には、テッシードよりキリキザンの方が上のはずなのだ。
一対一では時間稼ぎすら難しい、このままでは逃げる前に追い詰められる……そう考えたルルーシュが、
捨て駒にする覚悟で傷ついたキリキザンを呼び出そうかと考慮し始めたそのとき、それは来た。
「ティロ……フィナーレ!」
「何!?」
214
:
魔王は並び立ち、魔法少女は堕ちる
◆97SsGRff6g
:2011/07/12(火) 01:50:24 ID:okHySg..
突如屋上の室外機の陰から飛び出した、巨大な銃。その使い手すら覆いつくす威容から、熱した弾丸が放たれる。
咄嗟に飛びのいたゼロの足元が爆ぜ、コンクリートの床に易々と穴が空く。
衝撃の余波を受けたテッシードがマミが立っているのとは別の室外機にめり込んで動きを封じられた。
巨銃は一射のみで掻き消え、使い手の矮躯だけが月夜に漂い、やがて室外機の上に舞い降りた。
闖入者の正体は、金髪の少女。両手に歩兵銃を持ち、魔王ゼロに殺意の視線を送っている。
「……貴様からは死臭を感じるぞ、無粋な小娘よ」
「魔女相手に"粋"なんて必要ないでしょう? いえ……魔王、だったかしら」
室外機から飛び降り、少女が更なる攻撃をゼロに加える。
両手に持った銃を、交互に発砲。単発式の銃を扱うにしては、あまりに無思慮な攻め手だ。
だが、この少女に限っては問題ない。魔法少女である彼女、巴マミに限っては、なんのデメリットもなかった。
何故ならば、マミの手には既に新たな武器(マスケット)が装填されている。超神速の弾込めなどではない。
完全に新調された銃器が、屋上の床に着地するまでに六丁、マミの背から手に移り、撃ち捨てられた。
総計8発の弾丸を、今度こそ過不足なくゼロに撃ち込み、巴マミはルルーシュの眼前に降り立つ。
両手両足、そして腹部に銃弾を雨霰と受けたゼロは崩れ落ち、黒い蒸気を噴出して動かなくなった。
「危ないところでしたね。あれは、私達にしか倒せない存在……あなたも使い魔のような物を持っているようだけど、
あまり無茶をして怪我でもしたら、お友達が悲しみますよ。」
「……何故俺の知り合いがここにいると知っている?」
「あら、やっぱりそうだったのね。私のお友達も何人かここに来ているから、もしかしたら、と思ったのだけど」
してやったり、と笑うマミに、ルルーシュの目が光る。
現状が把握しきれない今、情報源である他の参加者と悠長に情報交換などしている暇はない。
助けてもらった恩義を感じていないわけではないが……と逡巡しながらも、ギアスをかける事に抵抗はない。
だが、マミの余裕も、ルルーシュの思惑も、次の一瞬で水泡と帰した。
その一瞬を支配するのは音でもなく光でもない、しかし圧倒的な速度で飛来する――――拳だった。
215
:
魔王は並び立ち、魔法少女は堕ちる
◆97SsGRff6g
:2011/07/12(火) 01:51:22 ID:okHySg..
◇
「――――――ッッ!」
ひ弱そうな青年を、押しのける。
まず行動するのは他人の為、それが私が魔法少女である理由。
次いで、30本出した銃の9本目を腕に添えるように構えてガード、迫る拳を受け止める。
しかし、その威力は私の想像を超えていた。腕の骨が砕ける音と同時に、暴発した銃の弾が髪をかすめた。
ガードと同時にステップを踏み、その場を離れようとしていた足が真逆の方向へ擦れて体を回転させる。
5〜6m程吹き飛ばされ、体勢を整える前に10本目の銃の引鉄を絞り、追撃の拳に銃弾を撃ち込む。
「鉛玉では、我が一撃は止まらんよ」
「な……!?」
銃弾が、魔女の拳に飲み込まれ……薬莢となって床に落ちる。射撃の反動を利用して回避はできたが。
驚愕に、心が揺れる。流暢に人語を喋り、人型から大きく変化せず、結界すら張らないこの稀有な性質にも驚かされた。
しかしこの魔女、その能力すらもここまで逸脱していたとは……ソウルジェムが探知した反応に、
バカ正直に突っ込んできた自分をほんの一瞬だけ恨む。だが、私が駆けつけなければあのひ弱そうな青年は、
この魔女に食い殺されていただろう。ならば、この戦いは歓迎すべきだ、と言い聞かせ、11、12本目の銃を手に取る。
「何発撃とうが同じ事だ。なんなら手が尽きるまで待とうか?」
「銃だけが能ってわけじゃ……ないのよ!」
髪を結うリボンがひとりでに解け、長大化する。片端を銃に繋ぎ、片端で魔女を捕らえる。
この魔女は、人間だという前提で見るならかなりの巨体だが、魔女の常識に照らせば最軽量級。
魔法少女として身体能力を強化された今の私ならば、容易くその体をリボンで振り回すことができた。
屋上に点在する機器に魔女を激突させながら、回転速度を上げていく。
「このまま放り投げてあげる……結界を張られると、彼を逃がしにくくなるからね」
「……まさか、これで私を拘束しているつもりか?」
魔女が全身の筋肉を隆起させると、魔法で強化しているリボンが簡単に弾け飛んだ。
だがそれは予想通り……否、計画通り。先ほどの言葉も、魔女のこの行動を誘う為のもの。
拘束から解かれ、空中で一瞬静止した魔女が言葉を失う。そう……今度は、彼女が驚愕する番だった。
私がマスケット銃を大量に召喚し、使った銃を片っ端から捨てていく戦闘スタイルは効率を重視した正形。
それゆえに魔女は既に攻撃力を失い、うち捨てられた銃になど関心を残さない。
それこそが、私が仕込んだ心理的盲点だとも気付かずに。
216
:
魔王は並び立ち、魔法少女は堕ちる
◆97SsGRff6g
:2011/07/12(火) 01:52:27 ID:okHySg..
「……小細工が上手い。しかし、何をやろうが同じ事だ」
「そうかしら?」
そう、私が今までの戦闘で捨ててきた10本の歩兵銃は、使用済みの物と入れ替えた新品。
空の歩兵銃を背中から排除し、両手に構えた銃を発砲すると同時に、床に捨てられた10本の銃が独自に回転、
照準を魔女に合わせて、放火を噴いた。12発の弾丸が全方位から魔女を襲う――――しかしこれでは不十分。
この魔女を殺しきるには全くもって足りない。それどころか、ダメージを与える事すらできないだろう。
だから私は銃弾に込める魔力を調節し、12全てのの弾丸を炸裂弾と化した。
破壊力を拡散させた弾丸は、霧を思わせる硝煙を発生させて魔女を覆う。
だが、その霧の中からは、相変わらず余裕に満ちた言葉が響いていた。
「面積を増やせば効くと思ったのか?」
「いいえ。やっぱり、強敵には面より点の、大きな一撃よね」
「……!」
「食らってみる?大玉ッ!」
飛び上がる。炸裂弾で魔女を取り囲んだのは、ダメージを期待してのことではない。
その狙いは圧倒的な全方位からの制圧射撃で、一瞬でも一秒でもその思考を奪うことにあった。
そして、その目的は。この魔女が唯一回避を選んだ、逆に言えば唯一ダメージを恐れた私の必殺技を見舞う事。
私の正義の体現……数多の魔女を屠ってきた、最大最強の一撃。
「ティロ・フィナーレ!」
「……」
無言で、魔女が吹き飛ばされる。その体は一瞬で床にめり込み、恐らく数階層下まで押し込まれた。
手ごたえは、あった。私は魔女が舞い戻ってこないことを、床に空いた穴を数十秒ほど眺めて確認し、
穴に背を向けてひ弱そうな青年に視線を向ける。彼は、意外にも狼狽した様子は見せていなかった。
そう、狼狽してはいなかった。彼は、戦慄の表情を浮かべていたのだ。
彼の戦慄が私にではなく、私の背後の空間に向けられている事に気付いたのは、背中に衝撃が走った後だった。
217
:
魔王は並び立ち、魔法少女は堕ちる
◆97SsGRff6g
:2011/07/12(火) 01:53:43 ID:okHySg..
◇
「……化け物め!」
「私は魔王だよ? その言葉は貴様の想像力の欠如から来るものだと言わざるを得ないな」
魔王ゼロは、先ほどのマミとの戦闘の影響をなんら感じさせない、ルルーシュと出会ったままの態度で君臨していた。
ルルーシュの足元にはその戦闘の敗者……最後に油断して背後から殴り飛ばされた、マミの姿がある。
呼吸すらままならない状態であえぐ少女は、それでもなお1本だけ残った銃を右手に掴んでいる。
だが、それを撃つ事はもはやままなるまい……ルルーシュのその判断は正しかった。
マミがなんとか銃を構えられたとしても、それより早くゼロの拳はマミの頭を砕くだろう。
「邪魔が入ったが……貴様に聞きたい事の答えは、まだ返してもらっていなかったな」
ユーフェミア、ナナリー、ロロ。ルルーシュの大事な、そして己の所業の結果として殺した人間が、
彼の知る者としてではないとしても。平行世界の人間として、生きているのなら。ルルーシュは、どうするのか。
「例え一瞬だけの希望であっても、彼女たちに癒しを求めるか? "生きて"いる……彼女たちに」
「俺が殺したユフィは死んだ! 俺はシャルルや母さんとは違う、過去の幻影など望まない!」
吐き出すように叫んだルルーシュは、ここに到って遂に理解した。
ゼロの存在する平行世界が、自身の覚悟、悪逆皇帝として死に、
世界を壊し、世界を創るゼロレクイエムにとって、あまりに甘い毒であると。
その存在を認めてしまえば、悪行と惑いの果てに見出した確かな答えであるゼロレクイエムに、
己自身が疑問を抱いてしまうのだと。ゆえに、ルルーシュは決意する。
ロロ・ヴィ・ブリタニア、ユフィ。マオ。そして蘇ったというロロ・ランペルージ。最愛の妹であるナナリーでさえも。
自分の世界で、自分の所為で死んだ彼らを否定し、平行世界の他人という名の彼らを再び殺すことこそが、
自分に与えられた罰なのだと。エゴであっても。凶行であっても。死した者たちの影に浸る事だけは、許されない。
「そうだ……両親を殺し、腹違いの兄弟たちを殺し、最愛の妹すら殺した俺が、
死んだだけで罪を償えるはずがなかった……。俺は、未来を望む為に過去を殺し、現在に死んでいく。
それが、俺に相応しい終末だ。選択肢は、変わらない」
「……そうか。お前は、そういう選択をするんだな。聞きたい事は全て聞いた。ならば……」
ここで死ね、とゼロは言った。その言葉は自分がどんな選択をしていても同じだったのだろうと、ルルーシュは思った。
だが……ルルーシュは、死を容認しない。ここでは、死ねない。己の悪行を完遂するまでは。
ルルーシュの手が、目に伸びる。絶対遵守のギアスを下す、その構えは、王の威厳を備えていた。
218
:
魔王は並び立ち、魔法少女は堕ちる
◆97SsGRff6g
:2011/07/12(火) 01:55:36 ID:okHySg..
「……オレにはギアスは効かない。そこの死にぞこないを操っても無駄な事は知っているだろう」
「いるじゃないかもう一匹! お前の後ろにな! テッシード! ミサイルばり!」
「!?」
ゼロが振り向く。
それは、偶然だったのだろうか。
あるいは、これまでの展開は、これまでの位置取りは、全てルルーシュの掌の上だったのだろうか。
ともかく、そこには。室外機の一つに埋まり、片目だけを出しているテッシードがいた。
ルルーシュが最後のモンスターボールを放り投げ、同時にギアスを飛ばす。
ゼロが手にギアスの光を生み、ルルーシュのギアスを消そうとするが……テッシードから放たれた、
無数のトゲに阻まれる。そしてルルーシュが放ち、テッシードに届いたギアスは――――。
「全力で だいばくはつ しろ!」
無慈悲なる、だが抗えぬ命令。
テッシードは一瞬の躊躇もなく、己の体を爆発させた。
その威力はギアスによって制限の大半を逸脱した、強大なものだった。
ルルーシュは、支給された最後の一匹……ピジョットという名のポケモンの足を掴み、宙に浮いてほくそ笑む。
ゼロを中心に起こった大爆発は、それだけで終わることはない。条件は、全てクリアされていた。
キリキザンのあなをほるにより、構成する柱の一部を破壊され、僅かだが傾きつつあったビルが倒壊していく。
ティロ・フィナーレによる物の数倍の穴を空けた大爆発は、ゼロを再び階下に落としただけではなく、
大地震のような揺れを屋上にもたらし、地面に沈んでいく船といった様相を与えていた。
「……」
ルルーシュと、マミの目が合う。ピジョットが運べる人間は一名まで。
この地獄から逃げ出せるのは、ルルーシュだけなのだ。
ルルーシュにとってマミの登場は嬉しいハプニングだった。
キリキザンに命令した時から考えていた、いざとなればゼロを葬る為に起こせた作戦を実行させてくれたのだから。
いわば恩人を、見殺しにせざるを得ない状況。だがそれで決断が鈍るほど、もうルルーシュも子供ではなかった。
「……生きろ!」
だから、それは気休めだった。絶対に助からないと思うからこそできる呪い。
勇敢に戦った彼女に、せめて最後まで迫る死に立ち向かって欲しいという願い。
ルルーシュは知っている。これが、自分の甘さだと。もし彼女が生き延びても、自分が彼女を助ける事などないのに。
だが……そんな甘さを赤の他人に吐き出すことで、これから自分が行う所業に、それを介在させないと誓ってもいた。
陶然と自分を見上げるマミから目を切り、空中に飛び出す。
ルルーシュは、悪逆皇帝として、己の過去の幻影を殺す旅に出た。
そう……ナナリーすらも、殺す旅に。
219
:
魔王は並び立ち、魔法少女は堕ちる
◆97SsGRff6g
:2011/07/12(火) 01:57:34 ID:okHySg..
◇
完全に倒壊し、廃墟と化したビル。そのクズ鉄の山には、『スマートブレイン本社』と書かれた看板が転がっていた。
そして、その看板を足蹴に佇む魔王が一人。言うまでもなく、ゼロである。
ゼロは、テッシードの大爆発と、高層ビルの倒壊に巻き込まれていながら、未だ二本の足で立っていた。
ゼロの足元、看板の下に、ルルーシュに捨て駒にされた哀れなポケモンが転がっている。
大爆発を終え、瀕死状態となったテッシードの鋼のボディを拾い上げて握りつぶす。握力は、落ちていない。
無論無傷ではないが、すぐさま休養を必要とするほどでもない。悠々と歩き出そうとして、その足が止まる。
仮面に銃弾が撃ち込まれたのだ。ゼロがふと見れば、最後の銃を掲げた巴マミが息も絶え絶えに自分を睨んでいた。
「まだ生きていたのか……魔法少女というのはタフだな」
「ご……はっ」
ゼロの軽口に答えることもなく、マミが口から大量の血を吐き出す。
腹部からは内臓がはみ出していて、両足の機能はほとんど欠損している。
放っておけば再生するとはいえ、その速度も目に見えて低下していた。
ゼロとの戦闘で半分ほど濁ったソウルジェムが、不気味な光を放つ。
「トドメを刺してやろう。生かしておく理由もないのでな」
「死……ねな、いっ……! 私の力は……大切な友達から貰った、……人を、助ける、為のっ!」
ルルーシュから受けたギアスとは関係なく、天性の驚異的な精神力で、新たなマスケット銃を生み出そうとするマミ。
そんなマミを見て、否、その言葉を聞いて。彼女に無関心だった……冷ややかだった、ゼロの形相が変わる。
仮面に本来あるはずのない牙が生じ、攻撃的な、冒涜的なオーラが漏れ出る。
それは無知を許さない、無恥を許さない、善の対極に位置する魔王の感情の発露だった。
「人を助ける為の、力だと……? 搾取者の傀儡が、己の力の意味も理解せずに……放言するかっ!!」
「……!?」
「いいだろう。教えてやろう、魔法少女の真実を。円環(エデンバイタル)の理を、見せてやろう」
220
:
魔王は並び立ち、魔法少女は堕ちる
◆97SsGRff6g
:2011/07/12(火) 01:58:46 ID:okHySg..
ゼロが、マミの頭を掴む。数分後、マミに異変が生じた。
何か、見てはいけない物を見たような……知ってはいけない真実を知ったような、慄然とした表情を浮かべる。
ガタガタと震える彼女にダメ押しするように、ゼロがショックイメージだけでなく、言葉で真実を伝えた。
「魔法少女は、魔女になる。魔法少女は生まれた瞬間に、その用を終えている。魔法少女の戦いに、必要性などない」
お前達は、誰にも必要とされていない。だから、己の罪すらなき罪を自覚して死んでいけ、と言い残して。
そうして、ゼロは立ち去った。エデンバイタルより与えられた、魔王としての役割を成す為に旅立った。
混沌を振りまき、友・スザクや最愛の妹……ナナリーとすら敵対し、彼女達を殺す旅に。
「……魔法少女が、魔女を産むなら」
そして、残されたマミは、光を失った目で呟いていた。
ソウルジェムも黒ずみ、同様に光を失っていく。
「……魔女になる、くらいなら……ここで、」
『その思考』に到ったマミの目に、再び光が宿る。
だがその光は、彼女の正義の精神が燃やす光ではない。
それは、ギアスの光だった。
【E-2/上空/一日目 深夜】
【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:疲労(大)
[装備]:ピジョット@ポケットモンスター(アニメ)
[道具]:共通支給品一式、モンスターボール(キリキザン@ポケットモンスター(ゲーム):瀕死)、モンスターボール(空)、モンスターボール(ピジョット:使用中)
[思考・状況]
基本:スザクとともに生還し、ゼロ・レクイエムを完遂する
1:スザクと合流。
2:自分の世界で自分の所為で死んだ者たち(平行世界の存在も含む)を全て殺害する。(手段は問わない)
3:他の知り合いの事は保留。
4:ナナリー……。
[備考]
※参戦時期は21話の皇帝との決戦後です
※自分の世界と平行した世界があることを知りました
※テッシードが死んだ為、モンスターボールが空きましたが中に他の参加者に支給されたポケモンを入れることは出来ないようです。
【ギアスの制限について】
1:「死ね」など、直接対象を殺害する命令はできない。(「○○を殺せ」等は可)
221
:
魔王は並び立ち、魔法少女は堕ちる
◆97SsGRff6g
:2011/07/12(火) 02:00:21 ID:okHySg..
【E-2/スマートブレイン本社ビル跡/一日目 深夜】
【巴マミ@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]:両足損傷、消耗(大)、魔力消費(大)、ソウルジェム(汚染率83%)、絶対遵守のギアス(命令:生きろ)
[装備]:
[道具]:共通支給品一式、ランダム支給品0〜3(本人確認済み)
[思考・状況]
基本:……。
1:……。
[備考]
※参加時期は第4話終了時
※「魔法少女の真実」を知りました
【魔法の制限について】
1:銃を出せる数は完調時でも60〜80本程が限界。
【ゼロ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(小)
[装備]:
[道具]:共通支給品一式、ランダム支給品0〜3(本人確認済み)
[思考・状況]
基本:世界を混沌で活性化させる、魔王の役割を担う
1:参加者を全て殺害する
2:ナナリー……
[備考]
※参加時期はLAST CODE「ゼロの魔王」終了時
※エデンバイタルにより、参戦している全作品の世界の知識を得ています。
【能力制限について】
1:身体能力の低下
2:ガウェイン召喚の時間制限・間隔をあけなければ次の召喚が不可能(詳細は後の書き手氏の感覚に任せます)
3:ショックイメージの発動に、数分の接触が必要。
4:エデンバイタルとの接続の不安定化。また、正しい情報だけが得られるとは限らない。
5:ザ・ゼロによる森羅万象の消滅に制限。ある一定以上のエネルギー量は消せない。
他参加者の肉体や体力の類は直接消せない。
【支給品解説】
【キリキザン@ポケットモンスター(ゲーム)】
ゲーチスの手持ちのポケモンの一体。タイプはあく・はがね。
切断系の技を多く持つ、狂暴なポケモン。
【テッシード@ポケットモンスター(ゲーム)】
Nの手持ちのポケモンの一体。タイプはくさ・はがね。
防御に特に秀でる。
【ピジョット@ポケットモンスター(アニメ)】
サトシの手持ちのポケモンの一体。タイプはノーマル・ひこう。
オオスバメよりコイツの方が絶対可愛いと思う。
222
:
魔王は並び立ち、魔法少女は堕ちる
◆97SsGRff6g
:2011/07/12(火) 02:08:25 ID:okHySg..
以上で投下終了です
指摘などお願いします
>復活祭
きた!新生月きた!これでかつる!
ゲーチスといい、真性のゲス野郎が活躍しそうな雰囲気は胸が熱くなりますね
そしてさやかちゃんマジさやか
>白い魔法少女と黒い男と銀の機神
タイトルでワラタ
機神たんの献身に期待 そしてキリカに嫉妬されて刃傷沙汰(ry
サカキさんにも頑張ってほしいですね
223
:
名無しさん
:2011/07/12(火) 02:09:37 ID:KTgwYMPc
投下乙。作品がたくさん多いので指摘点についてかいつまんで一言。敬称略。
◆UOJEIq.Rys
これ以上意見がなければ本投下
◆Vj6e1anjAc
サイドンとかリザードンとか。現在議論中
◆3.8PnK5/G2
◆vyNCf89vh2
オートバジンはなんで被ってるんー?
サカキのニドキングとか。◆Vj6e1anjAc氏次第
◆97SsGRff6g
ポケモンのバーゲンセールだな……
エデンバイタル万能過ぎね?いや実際万能なんだろうけどさ。
224
:
名無しさん
:2011/07/12(火) 02:20:01 ID:KTgwYMPc
その上で◆97SsGRff6g氏の投下乙。
マミさーん!!初っ端からマジピンチ!
生きろギアスとはマミさんの過去的になんの因果か……ていうか超カワイソス状態!
ゼロについて。エデンバイタルは相手に触れて見せる・見るとかならともかく初めから全知というのは行き過ぎに思わなくもありません。
原作からしてそういう奴ですが尚更に。
ルルーシュについて。やっぱポケモンの数はいくらなんでも駄目過ぎるかと。現時点でキツキツなのもあって。
内容的に、代用したり削ったり出来ないわけでもないと思うので、考えてみて下さい。
225
:
名無しさん
:2011/07/12(火) 02:31:50 ID:mCU5oogA
代用したり削ったりしたらおkかな
エデンバイタルは原作でゼロはこれで好き勝手してたわなw
能力そのものの制限より回数の制限ぐらいは必要…かな?
数回使えるが休憩無しに連発は無理とか
226
:
名無しさん
:2011/07/12(火) 02:38:24 ID:mCU5oogA
代用したり削ったりしたらおkかなはポケモンの方だよ
227
:
名無しさん
:2011/07/12(火) 03:41:45 ID:dhSdjXkI
投下乙です。
ルルーシュとゼロは元は同じ存在でも違う道を行くか
マミさんはどの世界でも不幸な目にあうのが運命かw
ただ、エデンバイタルについては全作品世界の知識を得ているというのはどうかと思います。
ナナナ終了後のゼロはCCの次の魔王として確かにそういう事が出来るのかもしれませんが、それだと万能すぎてなんで参加者にさせられたの?という疑問が。
並行世界のことを知悉しているというのは戦闘能力以上に大きなアドバンテージになりますし、行動もまずそれに則ったものになるのでバランス崩しになるのではないでしょうか?
メタ的に言うと、並行世界のことを知っているなら同じキャラが出てる他ロワのことだって知ってる…ということにすらなりかねません。
それに終了後だとギアスもばらまけますし。
228
:
名無しさん
:2011/07/12(火) 04:12:36 ID:mCU5oogA
エデンバイタルがダメなら支給品で詳細名簿とかそういう支給品とかで代用するしかないかも
229
:
名無しさん
:2011/07/12(火) 05:05:21 ID:mJv8PFXI
目の前の相手に関わる知識だけ引き出せるとか。これでも強力すぎるかな?
現時点の「得られる情報が不安定&正確とは限らない」も書き手の手で縛れる制限ではあるし、
何が出来ないかを描写しないのは思わせぶりな魔王ゼロらしくもあるんだけど。
どんな線を引くか、割と主観的な話になりそう。
書き手意見待ちかな?
230
:
名無しさん
:2011/07/12(火) 12:54:09 ID:9UYJr7sc
はっきり言って、ルルーシュのポケモン三匹も
ゼロのエデンバイタル使い放題も「自重しなさすぎ」の一言に尽きると思う
231
:
名無しさん
:2011/07/12(火) 12:59:33 ID:cd9b1BbU
そうか?
ポケモンはあくまで道具としてしか使ってないし、エデンバイタルも可知なだけで全知じゃないと明言されてる
俺には十分自重してるように見えるよ
何より面白いし
232
:
◆LlyH3hWzUo
:2011/07/12(火) 14:02:42 ID:r7CNochI
マオ、一旦こちらに投下します。
233
:
◆LlyH3hWzUo
:2011/07/12(火) 14:03:25 ID:r7CNochI
唐突に現れた舞台。
怪物となった人間。
青い炎。
そして殺し合い。
名簿を開くと、そこには見知った連中の名前があった。
あの場にいた連中は何を思っていただろうか、考えがふと頭をよぎる。
このいけ好かない枢機卿は、いつもの不敵な笑みを浮かべながら今も何か企んでいるのだろうか。
アリスは、あの持ち前の正義感であの青髪の所業に憤ってるのだろうか。
ボクは―――
ボクはただ、このどこかで見たような光景にうんざりしていた。
突然得体の知れない場所へ連れてこられ、
命を牛耳られる改造を施され、
命のやり取りをする場所に放り出される。
こんなもの、イレギュラーズに入れられた時とまるで同じた。
あの青い炎も、怪物も、“ザ・リフレイン”を手に入れたときの衝撃には到底及ばない。
世界の主観と客観、あるいは空想と現実。
その境界線の曖昧さと確固さを同時に、無理やりに受け入れさせられたあの時には。
特殊名誉外国人部隊(イレギュラーズ)は、ブリタニアの属州から集められた非ブリタニア人、
通称ナンバーズの中から、魔女の適正があるものが選ばれる。
選ばれるのは難民、それも孤児であり人権はないに等しい。
ブリタニアに誘惑されるか、それとも無理やりに連行され手術を受けてしまえば、
ギアスの力――エデンバイタルに接続し、現実を改変する力――を得るのと引き換えに、移植された魔女細胞に取り殺されないよう
その抑制剤をブリタニアからもらわない限り生きていけない体となる。
自分の命を人質にされ、ブリタニアの奴隷になり下がる。
ボクもかつてはイレギュラーズの一員だった。
中華連邦の難民から選別され、魔女細胞を植え付けられた。
イレギュラーズを脱走した今も、この肉体は変わらない。
デイバッグを開け、ごそごそと中を漁る。
見慣れた道具からよくわからない代物までつまったバッグの奥底には、水や食料と一緒に並べて抑制剤が置いてあった。
その数は、たったの一本。
それはそうだろうと思いつつも、知らず知らずのうちに舌打つ音が口から洩れる。
あの場にいた人間が全員ギアスユーザーというわけでもないだろうし、
思いのままに使わせてしまうには殺し合いの舞台でギアスの力は強すぎる。
抑制剤の数を絞れば、魔女細胞に殺されるリスクを恐れてギアスユーザーはその力を存分に使えない。
この状況はそのまま、ギアスユーザー同士の殺し合いも誘発するだろう。
能力の制限と殺し合いの誘発の一石二鳥、殺し合わせたいのなら当たり前の定石だ。
実際にボクのこれからの行動指針にも抑制剤の収集は含まれるだろうから。
このゲームはおそらく、ギアスと――無関係ではないとしても――大きな関わりを持つものでない。
そう思う理由は特になく勘のようなもので、あえていうなら先ほどのデジャブだ。
怪物と青い炎の織り成すこの世のものとも思えない半ば幻想染みた光景を見せつけられた時、ボクは言い知れない違和感に襲われた。
これはギアスではない、という感覚。
もしこれが他のギアスユーザーなら、これがギアスの一種だと拘るかもしれなかった。
しかしボクのギアスである“ザ・リフレイン”は、
他者のシナプス・サーキットを認識・改変する能力――人の思考を乗っ取るギアスだ。
ナンバーズを見下すブリタニア貴族。
ギアスユーザーを無機質に観察する研究員たち。
戦場で親しい者や生活を失い嘆き怒り悲しむナンバーズ。
彼らの脳を犯すたびに、ボクは徒人からギアスユーザーになったときの同じように、
まるで違う常識が支配する世界を認識し、また自分の常識が崩壊する音を聞いた。
要するに――ボクは自分の世界に頓着しない。
あの怪物と青髪が、“ギアス”や“エデンバイタル”といった言葉を全く使わず(それどころか
オルなんちゃらとかお聞いたこともない単語が飛び交っていた)あの光景を見せたのもそういうものなのだと素直に受け入れられたし、
名簿を見て見知った名前やあのブリタニアの魔女の名前を見つけたときでさえ、ああやっぱり、と思っただけだった。
同時にボクのおかれた現状も冷静に把握できた。
234
:
◆LlyH3hWzUo
:2011/07/12(火) 14:03:55 ID:r7CNochI
さて、ボクはどうすべきだろう?
まず一つ目の目的は当然のものとして決まっている。
そもそもボクは、エデンバイタル教団の情報をもとにイレブンに向かっていたところを気づいたらここに連れてこられたのだ。
なら最大の目的はただ一つ――名簿にあるナナリー・ランペルージを見つけ出し、
その魔道器を奪うことだ。
魔道器を得れば、ボクは正真正銘の魔女になれる。
魔女そのものになってしまえば、もはや魔女細胞に取り殺される心配もなくなり、ボクは苦痛から解放される。
今も魔女細胞に浸食された腕が疼き、痛む。しかしこれも、あと少しの辛抱だ。
二つ目は抑制剤の集積になる。
もちろん、この目的は一つ目の目的が達成された時点で必要なくなる。
支給品としての所持する普通の人間ならともかく、他のギアスユーザーとの奪い合いになったときのリスクは大きい。
できることなら一つ目の目標を速やかに達成するのが望ましい。
最大目標さえ達成すれば、あとはこの会場から脱出すればいいのだから。
バカ正直に殺し合いに乗るつもりなど、ない。
以上、思考終了。
気が緩み、ボクは背後の樹木を背もたれにその場に座り込んだ。
やがて左手をかざして目を多い、感覚のうち視覚を遮断する。
夜の森に映る景色は闇に覆われた虚ろだったが、聴覚のみで感じる森の風景も風と木のざわめきだけで、
虫や鳥といった生き物の気配はなく、不気味な静謐に包まれていた。
まったく何の景色も映さなくなった視界にはかつての上司の顔や枢機卿の顔が浮かんでは消えた。
そして最後に、あの青髪の――アカギの顔だけが残った。
やがて手を目から鼻、口元へと下ろす。
目の間のしわは寄り、歯は真一文字に食いしばられ、頬の肉がひきつっているのがわかる。
ボクから命の手綱を奪い、人死を強いる、人間としての矜持や尊厳を弄ぶ連中。
その行為に怒り、憎悪する感情。
これはボクの行動を促す糧になる。
ここに連れてこられ、ゲームの趣旨と置かれた状況――檻の中に再び閉じ込められたような自分の姿――を理解し、最初浮かんだのは悲嘆だった。
それから、諦念が浮かんだ。
イレブンの諺でいう、二度あることは三度ある。
ボクはブリタニアから逃げても、魔女の呪いから抜けても、どうにもならないのではないか。
だが――同時に、僕は悲嘆や諦めの無意味さを知っている。
諦念や諦め以上にどす黒い感情の奔流を知っている。
悲嘆や諦めは、自分の感情を滞らせるものにすぎない。
感情は、幸福だろうと、達成感だろうと、悲嘆だろうと、諦めだろうと、それが自分の中で完結する限り、何ももたらさない。
それで幸せになれるのは自分以外の人間だけであり――感情の繰り手、“ザ・リフレイン”の使い手である自分は、
観測者として、魔女細胞に蝕まれるギアスユーザーとして、現実から逃げられない。
だからボクは行動を起こすしかない。
そして行動起こすのに有効な感情は、苦痛からの解放、自由への渇望と他者への憎悪だ。
ボクは自分の気持ちを確認し、その場を離れた。
やがて遠目に見えた建物から、ここが【C-3】地区、アッシュフォード学園近くの森なのだと把握する。
まずはナナリーを見つけ、この苦痛から脱する。
そしてあらゆる手段を使ってでも、ブリタニアや教団、あの青髪の檻を破って見せよう。
『己が魂の存在を賭け』ボクは“自分の”目的を完遂する。
【C-3/森の中/一日目 深夜】
【マオ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:魔女細胞の浸食(小)
[装備]:左目の眼帯
[道具]:共通支給品一式、魔女細胞の抑制剤、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本:ナナリーの魔道器を奪って魔女となり、この『儀式』から脱出する。
1:ナナリーを探し魔道器を奪う。
2:抑制剤を持つものを探す。
3:この『儀式』から脱出する術を探す。
[備考]
※参戦時期は日本に到着する前です。
235
:
◆LlyH3hWzUo
:2011/07/12(火) 14:09:54 ID:r7CNochI
以上投下終了します
3000字って短い……
236
:
名無しさん
:2011/07/12(火) 14:24:31 ID:ZNpUoMfg
>>182
遅くなったけど仮投下乙
これは…希望のある時期とはいえ、さやかちゃんマジドンマイ
少し気になったのが、ゲーチスってそんな他者を蹴落すのに喜びとか相手の絶望がどうこうってキャラだったっけ?
目的の為には外道で使えない奴はゴミ扱いだけど、そういった嗜好は無かったような
237
:
名無しさん
:2011/07/12(火) 14:39:25 ID:6JR83Skw
>>236
確か戦闘前に主人公に、「私は他人の顔が絶望に染まる瞬間を見るのが大好き」的なこと言ってた
238
:
名無しさん
:2011/07/12(火) 15:06:34 ID:ZNpUoMfg
あー、言われてみればそんな会話もあったような
サザンドラさんとBGMのインパクトが強すぎて忘れてた…
うろ覚えで言っちゃってスマンかった
239
:
名無しさん
:2011/07/12(火) 18:48:45 ID:ILISLXWg
期待を裏切らぬドSよ…
240
:
名無しさん
:2011/07/12(火) 19:17:00 ID:jHjs0lfE
書き手の修正関係の議論はこっちでいいと思う
どこまで修正可能でどこが修正不可かこっちに書いて貰った方がいいかもしれない
241
:
名無しさん
:2011/07/12(火) 19:21:08 ID:2cKcB3P2
ポケモン関連は議論スレに集中させたほうがいいんじゃないか?
こっちは、今日投下されたマオの意見待ちと
オートバジン被ってる件の調整しないといけないし
ゼロのエデンバイタル関連も話し合いが必要っぽいけど、それはポケモンの件の結論が出てからかな
242
:
名無しさん
:2011/07/12(火) 19:29:07 ID:5ceqst02
エデンバイタルについては、第2の詳細名簿でいいんじゃないかな?
参加者のプロフィールを知ることはできるけど、元いた世界やアイテム、主催に関することを知ることはできないみたいな。
243
:
名無しさん
:2011/07/12(火) 19:48:07 ID:KJEzrFXY
そうすっとマミさんは魔女化については知らんままだが、まあその方がいいか
主催者ならともかく参加者があんま万能すぎても困るしなあ
244
:
名無しさん
:2011/07/12(火) 19:51:35 ID:a5pbc92.
スパロワのジ・エーデルみたいな例もあるし
俺はそこまで気にすることじゃないと思ったけど
245
:
名無しさん
:2011/07/12(火) 19:53:32 ID:a5pbc92.
エデンバイタルについてね
246
:
名無しさん
:2011/07/12(火) 19:54:34 ID:cd9b1BbU
アイテムで安易に代用するより、能力制限で開始時に一つ、一回の放送毎に更に一つずつ他世界の知識が開示される、とかにしたほうがいいかも。最初はまどマギで
開示される知識に主催が混入した嘘情報が混ざったりしてたら主催関連の展開も広がるし万能感も薄れるし
247
:
名無しさん
:2011/07/12(火) 20:16:15 ID:jHjs0lfE
>>246
の制限でいい気がする
或いは別の制限とか
ただ、完全封印は無しかな
248
:
名無しさん
:2011/07/12(火) 21:42:59 ID:zLtb94lM
議論と関係ないが、ルルーシュの素っ頓狂な台詞と言えば「ほわぁああっ」なイメージがあるなw
>>235
投下乙です
ボクっ娘マオたんktkr
この魅力は反逆マオ以上、異論は認(ry
マオのギアスもなかなか強力そうだな
これからどうロワに関わるのか楽しみだ
249
:
名無しさん
:2011/07/12(火) 23:24:56 ID:jHjs0lfE
月のバイクの件はなんとか修正して欲しいかも
250
:
名無しさん
:2011/07/12(火) 23:50:44 ID:KTgwYMPc
ポケモンについては解決しそうだから、残るはバジンたんのみになるな
今んところ月のバイクをノーマルに替えようかという案が濃厚だが、◆3.8PnK5/G2氏はどうでしょう?
251
:
◆3.8PnK5/G2
:2011/07/13(水) 00:17:26 ID:uaADARzo
では、月に支給されたバイクをバジンたんから「ジャイロアタッカー@パラダイス・ロスト」に変更します
修正したものは本スレにて投下する予定です
252
:
名無しさん
:2011/07/13(水) 00:19:10 ID:TCBwyZ2.
わかりました、修正ありがとうございます
253
:
◆LMthJwSLQ.
:2011/07/13(水) 02:09:00 ID:Hd.EZieo
遅くなり申し訳ありません
ユーフェミア・リ・ブリタニア、枢木スザク 投下します
254
:
◆LMthJwSLQ.
:2011/07/13(水) 02:10:24 ID:Hd.EZieo
デイパックと一振りの長剣を抱えたまま、ユーフェミアは座り込み、震えていた。
青白い炎。助けを求める絶叫。灰となり消える身体――――
頭の中で繰り返し再生される惨劇を、身体の中を駆け巡る感情と一緒に、ユーフェミアはゆっくりと己の心に刻んでいく。
恐怖も。怒りも。不安も。悲しみも。
全てを等しく、忘れてはならないものとして。
どれだけの痛みを伴おうとも、起こった事実をありのまま受け入れる。
『現在』から目を背ける人間に、『現在』から繋がる『未来』を創っていくことはできない。
だからユーフェミアは、現実と正面から向かい合う。たとえそれが、悪夢よりも残酷な現実だとしても。
5分……10分……15分……
ようやく身体の震えが止まり、ユーフェミアは自分が今まず何をしなければならないかを考える。
やるべきことは、いくらでも思いついた。
最初にすべきは所持品の確認。だが、それに必要な灯りが無い。
ユーフェミアは立ち上がり、自分の周囲を見渡す。
足元の感触で、ここが室内だということはわかる。
だが、どの程度の広さの、何のための部屋なのかはわからない。
完全な暗闇というわけではないが、微かな光は周囲の状況を把握するには足りなかった。
それでも光は、部屋の状況は教えてくれずとも窓の位置は教えてくれている。
床に張り巡らされたケーブルに何度か足を取られながらも窓まで進み、
ユーフェミアは、下ろされていたブラインドの羽を一枚、指でそっと下げた。
眼下に見えたのは、トウキョウ租界とは明らかに違う町並み。
ブリタニアよりも、以前写真で見たことのある、かつてのエリア11――『日本』に近い。
窓から灯りの漏れている建物は見当たらないが、街灯は点いている。
自分のいる部屋と同じか、それ以上の高さの建築物は近くには無かった。
外から室内を覗かれる可能性は低い。が、ブラインドを上げることは躊躇われた。
羽を下げたまま、ユーフェミアは振り返り、光の差し込む隙間が大きくなった室内を改めて見渡す。
整然と並べられた長机。ホワイトボード。パソコン。何かの機材に、大量の紙の山……
どこに何があるかをおおまかに把握して、ユーフェミアは窓から離れると
手探りで近くにあった机の上に置かれたパソコンの電源ボタンを押した。
電気が止められている可能性も考えていたが、ボタンを押したパソコンは何事もなく動き出す。
念のためディスプレイが窓とは逆に向くようパソコンを動かしてから、ディスプレイの発する光を頼りにマウスを操作した。
ネットに繋がっていれば、救助を求めることができるかもしれない。
そう思っていたが、期待は1分と経たずに砕かれた。
今の状況を考えれば容易に外部と連絡が取れないことくらいは予想済みだが、
それでも、はっきりと「無理だ」という現実を突き付けられれば、落胆は隠せない。
もしかしたら何か情報が得られるかもしれないと開いたいくつかのファイルも、
ユーフェミアにとっては意味のわからないものだった。
知らない日本人の名前と罪状、死因がひたすら並べられたリスト。
その死因がすべて心臓麻痺となっていることに疑問を抱いたものの、
自分の巻き込まれた『儀式』に関係することだとは思えず、ユーフェミアはリストの意味を追求することはしなかった。
255
:
◆LMthJwSLQ.
:2011/07/13(水) 02:11:22 ID:Hd.EZieo
パソコンを確認し終え、ユーフェミアは支給品の確認に取りかかる。
部屋の電気を点けるのはさすがに危険だと考え、ディスプレイの光を使うことにした。
まず、抱えていた長剣――バスタードソードを鞘から抜き放つ。
刃は間違いなく本物だ。
試しに構えて振り下ろしてみる。
通常よりも長くて重い剣が、自分に使いこなせる物ではないと判断するには、それだけで十分だった。
鞘に戻し、傍らに置く。
デイパックの中の物はひとつずつ、慎重に取りだし確認していく。
水の入ったペットボトルが2本。パンが6個。数本のペンとノート。コンパス。
手のひらに乗る大きさの機械は、ボタンを押すと液晶部分に『E-3』という文字が表示された。
もう一度押すと、次は時刻が表示される。
ボタンを押すたびに液晶は『E-3』と時刻を交互に表示する。
何も押さずにいると、10秒ほどで表示は消えた。
機械が表示していた『E-3』が示しているのが自身の現在地だということは、地図を見て初めて理解できた。
同時にこの機械が、アカギの言っていたデバイスであることも理解する。
とはいえ、自分の正確な位置は掴めない。
ここがE-3の北なのか南なのかは、地図とデバイスだけではわからないのだ。
もっと詳しい位置を知りたい。
そう思いながら、ユーフェミアは支給品の確認を続ける。
懐中電灯は、窓から外に光が漏れることのないように、机の下でスイッチを入れ、
電球と電池が切れていないことと、明るさの程度を確かめた。
次に出てきたスタンガンと防犯ブザーには説明書がついていた。
それによると、スタンガンの威力は一般的な成人男性を気絶させることが可能な程度。
防犯ブザーは紐を引っ張って鳴らすタイプの物で、音量は半径500mの範囲に聞こえるように設定されているらしい。
いつでも鳴らせるよう、防犯ブザーは付属のストラップを使い、デイパックにぶら下げる。
そして、最後の支給品―――この『儀式』の参加者名簿を見て、ユーフェミアは息を呑んだ。
256
:
◆LMthJwSLQ.
:2011/07/13(水) 02:13:40 ID:Hd.EZieo
枢木スザク
ナナリー・ランペルージ
ルルーシュ・ランペルージ
名簿には、ユーフェミアにとって大切で特別な存在の名前が記されていた。
何故、彼らがこんな殺し合いに巻き込まれなければならないのか。
彼らは無事でいるのだろうか。
込み上げる、不安と怒り。
それをユーフェミアは必死に押さえつける。
冷静な思考と判断を欠くわけにはいかないと自分に言い聞かせながら、もう一度、名簿にゆっくりと目を通す。
比較的、日本人だと思われる名前が多い。
スザクたち以外にも何人か、知っている名前があった。
あの異端審問官と同じ名と、ルルーシュたちの名乗る偽りの姓をもつ「ロロ・ランペルージ」という気になる名前もある。
名簿に記された参加者の確認を終えたユーフェミアは、外に出した支給品をデイパックの中に戻し、それを肩にかけた。
鞘が腰から下げることも背中に背負うこともできるようになっていたので、バスタードソードは背負うことにする。
一刻も早くスザク達をみつけたいが、手掛かりが無い。
まずは先程考えた通り、ここを出て『警察庁』か『バークローバー』を探そうと歩きだす。
しかし、ほんの数歩だけ進んだところで、ユーフェミアは足を止めた。
そして、デイパックからペットボトル1本を取り出し、机の上に置く。
荷物を軽くする。それが、ユーフェミアの目的だった。
運べない重さの荷物ではないが、長時間持ち続け移動するとなると負担は大きい。
飲み水が貴重な物資となる可能性はもちろん考慮したが、所持品の中で何かを捨てるとしたら、水だった。
ペットボトル1本で、重さは約1キロ。
有ると無いとではかなり違う。
ショルダーベルトの位置を少し直し、外に出ようとユーフェミアが改めて一歩を踏み出そうとしたその時。
部屋の扉は、ユーフェミアではない誰かの手によって、開かれた。
257
:
◆LMthJwSLQ.
:2011/07/13(水) 02:15:47 ID:Hd.EZieo
廊下から溢れる光が室内を照らす。
蛍光灯の、人口の光。
今まで電気を点けずにいたユーフェミアの配慮は一瞬にして無駄になったが、彼女自身がそのことには気づかなかった。
光の中から現れたのは、黒。
名簿に記された参加者のうちの一人が身につけている物ととてもよく似た黒い仮面を被り、黒いマントを身に纏った人物。
ユーフェミアが知っていて、ユーフェミアの知らない人物だった。
「ユフィ……」
微かに聞こえた音に、ユーフェミアは驚きを隠せない。
ユフィ――それは、ごく限られた人間しか呼ばない、彼女の愛称。
「―――君は?」
全身を黒で覆った人物が、ユーフェミアに問いかける。
機械を通しているのであろう作られた声。
にも関わらず、ユーフェミアにはそれが、先程自分を「ユフィ」と呼んだ声とはまるで別人のように思われた。
「私は、ユーフェミア・リ・ブリタニアと申します。貴方のお名前を教えていただけますか?」
皇女として、毅然とした態度でユーフェミアは臨む。
「私は、ゼロ」
相手が名乗ったのは、ユーフェミアの知る名であり、名簿にも記載されていた名だ。
けど、違う。
少なくともユーフェミアにとっては、違うのだ。
仮面とマントがどれだけあの、黒の騎士団総帥を名乗る魔王に似ていようとも、今、目の前にいる相手は―――
「私の知るゼロは、貴方のような細マッチョではなく、もっとムキムキマッチョです」
―――ユーフェミアが知っていて、ユーフェミアの知らない人物だった。
258
:
◆LMthJwSLQ.
:2011/07/13(水) 02:18:46 ID:Hd.EZieo
◆ ◆ ◆
「ユーフェミア。君にひとつ、言っておきたいことがある」
「なんでしょうか?」
「私はゼロのコスプレをしているわけではない」
「あら、違うんですか?」
「違う」
「ですが、私の知るゼロはもっとムキムキマッチョなんです。スザクの話によると、生身でKMFの蹴りを受けても無事だったとか」
「それは私には無理だ」
「ええ。人間ならばそれが普通です。
スザクはゼロを『タダ者ではない』なんて言ってましたけど、そういう問題ではないと私は思います」
「……ああ。それには私も同意しよう」
ムキムキマッチョのゼロとはなんなのか。
そう訊ねた結果始まった会話を続けながら、細マッチョのゼロ―――かつては『枢木スザク』という個を持ち、
今は『ゼロ』という記号となった青年は、仮面の中で戸惑っていた。
出会って数分。
机を挟んで向かい合って座り会話している相手は、自分の知るユフィではないと、スザクは思っていた。
ユフィは既に死んでいる。
そして、ユーフェミアの話す『スザク』は自分ではない。
だが、スザクがユーフェミアをユフィとは違うと思うのは、そういった理屈で説明できる理由ではなく、もっと感覚的なものだ。
違う。
彼女はユフィじゃない。
違う。
違う。
違う――――
「ユーフェミア。君はこれからどうする?」
スザクは『ゼロ』として、ユーフェミアに問う。
「スザクと、参加者の中から協力することのできる仲間を捜します」
「何のために?」
「この『儀式』を止めるために」
「止められると思っているのか?」
「止めます」
ユーフェミアは、迷いなく、キッパリと言い放つ。
まるでユフィのように。
「既に死んでいる参加者もいるだろう。殺し合いに乗った参加者がいないとは思えない」
「わかっています」
「君の考えに賛同しない者もいるだろう。敵対し、君の命を奪おうとする者もいるかもしれない」
「その時は……」
「その時は?」
「戦います」
ユーフェミアは、迷いなく、キッパリと言い放つ。
それはユフィとは違う。
目の前の少女と想い出の中の少女を比べて、スザクは独り仮面の中、
悲しんで、喜んで、虚しさを感じ、傷ついて、懐かしみ、嫌悪して、愛おしみ、
そしてその全ての感情を自分の中へと押し込めて蓋をする。
『ゼロ』には必要のない、『ゼロ』が抱くないはずの感情が、仮面の外へと溢れてしまわないように。
259
:
◆LMthJwSLQ.
:2011/07/13(水) 02:24:19 ID:Hd.EZieo
「戦う、と言っても、私は力を持ちません。
けれど、この『儀式』を止めることも、生きて帰ることも、諦めるわけにはいきません」
ユーフェミアの纏う空気が変わる。
そこにいるのはユフィとは違う、気高き皇女。
「私に力を貸していただけませんか」
そう言ったユーフェミアの瞳に、スザクは射抜かれたような感覚を抱いた。
彼女からは自分の顔は見えていない。相手と目が合ったと感じてもそれは、自分だけの感覚だとわかっている。
それでも、心は落ち着かない。
「それは私に言っているのか。ユーフェミア」
「はい」
「私は、貴女の知るゼロではない」
「わかっています。私は、今私の目の前にいる貴方に、お願いをしています」
言葉が、出て来ない。
何も言えない自分に、スザクは慌てた。
答え自体はそれほど迷うことではなかった。
スザクの目的は、アカギを捜しだし、この『儀式』をやめされることだ。
ユーフェミアの目的と同じといって支障はない。
『生きろ』というギアスがかかっている以上、いざとなれば他人を犠牲にしてでも生き延びようとするであろうスザクにとって
いつ戦闘に発展するかもわからない状況下で他人と一緒にいることはできれば避けたいことだが、
かといって女性を一人にさせるわけにもいかないので、同行することは自分から提案しようと思っていた。
だから、ユーフェミアの願いを、断る理由は何もない。
それなのに何も答えられないのはきっと、ユーフェミアが自分の知るユフィではなく、
自分がユーフェミアの知るゼロでも、スザクでもないからだ。
どんな言葉で表せばいいのかわからない感情と感覚を、スザクはどうすればいいのかわからずにいる。
「……君が他の協力者をみつけることができるまでは同行しよう。ユーフェミア」
スザクは、『ゼロ』として答えたつもりだった。
だがそれは、『スザク』としての答えだった。
本人も自覚していないが、スザクは、ユーフェミアとずっと一緒にいることには耐えられないと感じていた。
スザクにとって目の前の少女は、ユフィへの想いを残酷に抉る存在でしかないのだから。
◆ ◆ ◆
260
:
◆LMthJwSLQ.
:2011/07/13(水) 02:25:02 ID:Hd.EZieo
他の協力者をみつけることができるまで。
条件付きの協力にユーフェミアは満足していなかったが、
これから真の協力者になれるよう努めればいいのだと気持ちを切り替えた。
「それでユーフェミア。君はこれからどう動くつもりだ?
『儀式』を止めると言っても、具体的に何か策があるわけではないのだろう?」
「デイパックに入っていた地図とデバイスだけでは、はっきりとした現在地を把握できなかったので
まずは、『警察庁』か『バークローバー』を探そうと思います」
「ここがその、『警察庁』だ」
「そうなんですか?」
「建物の入口に堂々と書かれていたが、見なかったのか?」
「私は、最初からここにいたので……」
「なるほど。それで?」
「え?」
「現在地の把握はできた。次は?」
「他の参加者を捜しながら、政庁に向かいたいと思います」
「人が集まる場所、というだけなら他にもあると思うが」
「政庁がいちばん、スザクが向かう可能性のある場所だと思うので」
そこで、会話が止まった。
変声機を通した声は抑揚が掴み難いが、それでも何かを話してくれていれば、感じるものはある。
だが、声と言葉という情報を断たれれば、表情がまったく見えない相手からは何も感じることはできない。
沈黙は怖かった。
「あの……ゼロ?」
おそるおそる、仮面の向こうにあるはずの顔を覗き込む。
目を合わせるつもりで。
細マッチョのゼロの目がどこにあるのかは、仮面の所為でユーフェミアには見えないが。
「―――君の知らないゼロが、こうしてここにいる。
名簿に記されている枢木スザクは、君の知らない枢木スザクかもしれない」
今度は、ユーフェミアが沈黙する番だった。
261
:
◆LMthJwSLQ.
:2011/07/13(水) 02:27:28 ID:Hd.EZieo
「ユーフェミア。あれは?」
沈黙を破りそう言った細マッチョのゼロが指で示しているのは、荷物を軽くするために置いて行くことにしたペットボトルだった。
「あれは、荷物を軽くしようと思って」
「水は置いて行くのに、その重そうな剣は持って行くのか?」
「はい。私の支給品には他に銃や剣の類はありませんし、こんなところに武器を放置するのも危険ですから」
「―――ユーフェミア。私と取引をしないか?」
突然の提案に、その意図を読めず、ユーフェミアは困惑する。
「そんなに堅苦しく考える必要はない。要は、物々交換だ」
言いながら、細マッチョのゼロはペットボトルを持ち上げる。
「これと、その剣を私がもらう」
「わかりました。それで構いません」
「物々交換だ。私が君に何を渡すか確認せず、そんな答えをしてもいいのか?」
「私にとっては、捨てた物と使いこなせない物ですから。貴方のお役に立つのなら差し上げます」
そこでまた、会話が途切れた。
だが、この沈黙は怖くないと、ユーフェミアは感じていた。
「どうぞ」
バスタードソードを差し出す。
細マッチョのゼロはそれを左手で受け取り、右手でユーフェミアに一丁の拳銃を渡した。
「いいんですか?」
「ああ」
「でも」
物々交換と言っていたが、これではあまりに自分に有利だと思ったユーフェミアは、一度は受け取った銃を返そうとする。
それを細マッチョのゼロはあっさりと断った。
「私に支給された武器はそれだけではない。それに、銃は私の専門外だ」
その言葉が本当なのかどうかは、ユーフェミアにはわからない。
確かめようもないと思った。
「―――しかし、君は大胆だな」
「え?」
「君にとって私は、顔も見せない得体の知れない相手だろう」
「あ……」
「何を驚いている?」
「あ、いえ。私、貴方のことを『得体が知れない』とは思ってなかったので……」
その言葉は、ユーフェミアの本心だった。
目の前にいる細マッチョのゼロは、言われてみればたしかに『得体の知れない相手』だった。
普通に考えれば、最大限の警戒心をもって臨まなければならなかっただろう。
だが、そんな気には全くならなかった。
どうして………
262
:
◆LMthJwSLQ.
:2011/07/13(水) 02:28:44 ID:Hd.EZieo
「ユーフェミア」
つい考え込んでしまっていたユーフェミアの思考を引き戻したのは、いつの間にか窓のそばまで移動していた
細マッチョのゼロの声だった。
「政庁に行くことに異論は無かったのだが、どうやら我々の選択肢はひとつ増えたらしい」
窓の外を見つめたままそう言った細マッチョのゼロに近づき、ユーフェミアも窓の外を見る。
遠くに、煙が見えた。
煙を下へと辿っていけば、そこには赤い炎。
ユーフェミアは、確認した地図を思い出し、見える範囲の地形と照らし合わせる。
火の手が上がっているのはおそらく『古びた教会』か、その周辺だろう。
「どうする? ユーフェミア・リ・ブリタニア」
問われる。
ユーフェミアは、選択を迫られていた。
【E-3/警察庁・凶悪犯連続殺人 特別捜査本部/一日目-深夜】
【ユーフェミア・リ・ブリタニア@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:健康
[装備]:防犯ブザー
[道具]:基本支給品一式(水はペットボトル1本)、ベレッタM92(16/15+1)、スタンガン
[思考・状況]
基本:この『儀式』を止める
1:細マッチョのゼロ(スザク)と共に行動する
2:スザク(髪がクルクルしてないほう)と合流したい
3:他の参加者と接触し、状況打開のための協力を取り付けたい
[備考]
※CODE19『魔女の系譜Ⅲ−コードギアス−』でゼロの乱入した戦場からロイドに連れられ避難したよりも後からの参戦
※名簿に書かれた『枢木スザク』が自分の知るスザク(私服のセンスが普通のほう)ではない可能性を指摘されました
【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:細マッチョのゼロ、「生きろ」ギアス継続中
[装備]:バスタードソード、ゼロの仮面と衣装@コードギアス 反逆のルルーシュ
[道具]:基本支給品一式(水はペットボトル3本)、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本:アカギを捜し出し、『儀式』をやめさせる
1:当面はユーフェミアと共に行動
2:なるべく早くユーフェミアと同行してくれる協力者を捜す
[備考]
※TURN25『Re;』でルルーシュを殺害したよりも後からの参戦
263
:
◆LMthJwSLQ.
:2011/07/13(水) 02:30:46 ID:Hd.EZieo
【ベレッタM92】
枢木スザクに支給。
イタリアのピエトロ・ベレッタ社が生産・販売している自動拳銃。
現在は、世界中の警察や軍隊で幅広く使われている。
対応弾薬は主に9mmパラベラム弾。装弾数は15+1発。
見た目のカッコよさから様々な映画・小説等で使用されており、『DEATH NOTE』『魔法少女まどか☆マギカ』にも登場している。
【スタンガン】
ユーフェミア・リ・ブリタニアに支給。
相手に電気ショックを与える器具。護身用であり、一般的に殺傷能力は無い。
支給された物は、携帯用のハンディタイプ。
ロワ仕様ということで、一般人なら気絶させることができるような威力に設定されている。
【防犯ブザー】
ユーフェミア・リ・ブリタニアに支給。
大音量を鳴らす事によって、周囲の人へ注意を促す防犯用品。
大きさは手のひらに収まる程度で、紐を引っ張ることで大音量を鳴らす。
ストラップ付きで支給。
【バスタードソード】
ユーフェミア・リ・ブリタニアに支給。
16世紀〜17世紀に西洋で使われていた両手、片手持ちの両用の剣。
斬撃と刺突、両方に優れており、片手半剣(Hand and a half Sword)と呼ばれる剣に含まれる。
長さは1.2m〜1.4mほど(両手で握れるだけの柄を含む)、重さは2.5kg〜3kgほどで、通常の剣よりも長くて重い。
独特の重心と使用法を持った剣であり、扱うには専用の訓練が必要。扱い難さのため、あまり普及しなかった。
264
:
◆LMthJwSLQ.
:2011/07/13(水) 02:46:04 ID:Hd.EZieo
以上で投下終了です。
まず、予約期限を超過し、他の書き手氏にご迷惑をおかけしたことをお詫びします。
本当にすみませんでした。
このSSの内容についてですが、いくつか意見を聞きたいことがあります。
まず、二人のいる建物について。
地図では『警視庁』になっているのですが、デスノの漫画を読み直したところ
総一郎や松田が所属し、初期に捜査本部が置かれているのは『警察庁』です。
なので、一応SS内の表記は『警察庁』にしたのですが、地図にあわせて『警視庁』としたほうがいいのでしょうか?
それとも、地図にある『警視庁』は別の建物ですか?
次に、デバイスについて。
wikiを確認したところ、基本支給品に時計が無かったので、デバイスで時間を確認できる描写を入れたのですが
問題無いでしょうか?
最後に、時間と周囲の状況について。
このSSの終了時点で、古びた教会の火災は現在進行形ということにしていますが、これは問題無いでしょうか?
また、仮投下済みの◆97SsGRff6g氏の作品が展開に大きな変更がないまま通った場合、
二人が建物崩壊の音を聞いていないと、時系列がおかしいことになるんでしょうか?
他にも何か、問題点等、あれば指摘をお願いします。
265
:
名無しさん
:2011/07/13(水) 13:52:02 ID:R0zel7f.
投下乙です
感想は本スレ投下の時に書くとして
俺は建物の名前は地図の『警視庁』とした方がいい
ただ、デスノの漫画と同じか別の建物かは最初に書いた書き手次第でいいと思う
時間を確認できるでいいと思う
微妙な時間のズレで古びた教会の火災が現在進行形でもいいと思う
ただ、◆97SsGRff6g氏の作品の建物崩壊の音はどうなるんだろう…
266
:
名無しさん
:2011/07/13(水) 14:30:50 ID:BRoqwXNk
投下乙
>>265
と同じく、感想は本スレ投下時にさせていただくとして
以下の点についての個人的見解を
・警視庁について
既に投下されている作品に「警視庁に向かう」と言動しているキャラがいるため、作品内での表記は「警視庁」にしておいたほうが無難と思われます
ただ、
>>265
も言っているように建物自体もデスノの警察庁と同じものにするか否かは書き手次第で良いかと
・デバイスの時計機能
特に問題ないかと
現時点でデバイスの機能について触れられている作品はおりこ登場話くらいだし
・教会の火災について
火災が発生した時間が、該当作品内で明確に記されているわけではないので、これも特に問題ないかと
◆97SsGRff6g氏の作品で生じたスマートブレイン本社ビル崩壊による騒音や振動については、
正直、◆97SsGRff6g氏の修正次第としか言いようがないような……
ただ、周辺エリアにいるキャラクター数名に既に後続の予約が入っているので、地理的にも「気付かなかった」で済まそうと思えば済ませる……か?
・ランダム支給品について
ランダム支給品の「ベレッタM92」ですが、既にさやかに支給されているので、別の銃に変更した方が良いかもしれません
使用弾丸が同じ9ミリで、装弾数が同じ15+1の「グロック19」、「シグザウエルP226」、「FN ハイパワー」あたりが銃自体の知名度、パロロワ登場頻度的にも選択肢でしょうか?
267
:
◆WiEGmmiZ1g
:2011/07/13(水) 14:58:55 ID:ncLWD1jQ
正式採用されてない話の周辺エリアの話なので、とりあえず一時投下スレに草加雅人、鹿目まどかを投下します。
268
:
相対的な『善』と『悪』
◆WiEGmmiZ1g
:2011/07/13(水) 15:01:11 ID:ncLWD1jQ
草加☆まどかの二人が今いるのは、人の気配もなく──よもや、猫、虫の音も聞こえないほど静まっていた民家であった。なるべく灯りと音が漏れないよう、この民家の中央の部屋で会話をしている。窓もなく、音も外へ行きにくい。木場の向かった方向からはある程度距離を置き、しかし少なくとも山岳や森林よりもここが有利な場所だと市街自体は離れずに。そんな位置にある一軒だ。
不法侵入云々でお巡りさんに職務質問を受けることを心配する心の余裕はない。そもそもここには誰もいないのだから、そんな小さな心配は不要。警察がいたら助けを求めたいくらいだ。──まあ、彼の場合は警察を頼ることもないだろう。むしろ軽蔑の対象であるかもしれない。
殺し合い、という合法殺人の最中で警察が動いているわけもなく、この場には当然誰もいない。実際の警官は、いかに正義感が溢れていても、彼ら彼女らがここで殺し合いをさせられている現実さえ知ることはない。
やはり所詮ただの人間でしかない警察は戦いの現実では利用価値のないものだと思いながら、草加は遠慮なく、壁に寄りかかった。
────この思考は現実逃避のものである。現実と向き合うことで、現実から逃げようとしているのだ。
溜息をすると声が漏れる。
まどかが今、この部屋で夢中になって見ているのは「魔法少女マジカル☆ブシドームサシ」。先ほど再生が始まったばかりだが、この茶番を早く終わらせてほしいという願望でいっぱいだった。
殺し合いの真っ最中に呑気にDVDを見る。……そんな馬鹿げた行動に出る人間がいるだろうか。
何故、彼がこんなものを見ているのかというと────
時は数十分ほど遡る。
「君の知り合いも、この殺し合いに参加させられていたのか」
巧のネガキャン当時、支給品を確認していたまどかは当然名簿も確認し、自分の名前の他、乾巧、草加雅人などの名前も確認した。……が、それよりも前には「暁美ほむら」の名前がある。彼女はまどかの知る中で唯一残った魔法少女である。ホールでは気が動転して全く気がつかなかったが、いないはずの友達がここに記されていた。
佐倉杏子、巴マミ、美樹さやか。
あの時──あの怪物に襲われたときに思い浮かべた三つの名前。そういえば、ホールでもマミの黄色のカールの面影をうっすらと見たような気がする。
だからといって、百パーセント生きているという保障はないかもしれない。実際にはっきりと彼女たちの姿を確認したわけじゃない。
269
:
相対的な『善』と『悪』
◆WiEGmmiZ1g
:2011/07/13(水) 15:02:25 ID:ncLWD1jQ
でも、じゃあなんで彼女たちの名前があるのだろう。
魔法の力? 誰かの契約の結果? あるいは、あのアカギという人には、本当にそれだけ特別な力があるのだろうか──。
だからといって、殺し合いをしようというものじゃない。願いを叶える代償はあまりに重い。ただ一人生き残って、仮に「全員を生き返らせて欲しい」と言おうにも、必ずどこかで失敗があったり、後悔があったり、破滅があったり──結果は、どうせ暗いものになる。
それは彼女たち三人の人生の末路を見れば、わかるものだ。とりあえず、名簿にある名前で、知る限りの情報は草加に話してある。まあ、彼女たちが死人である、という情報は伏せておこう。
この人が好青年に見えて、主催者を信用せず、打倒しようとする人であっても、人間はどう転ぶかわからない生物だ。もしかすれば、その正義感が災いして、後に起こる悲劇を想像もせずに何かの願いを叶えに行くかもしれない。それに、死んだ人が生きていると言っても、信じてくれるだろうか?
「……で、君の支給品は何だったのかなぁ? その友達を助けに行くにも、ファイズの力だけじゃあ心細い。君自身も何か力を持っていたほうがいい」
そう言われて、まどかはデイパックの中を物色する。
……が、一つ確認しておきたいことがあって、草加に提案した。
「あの……私、武器がないみたいなんです。それで、どれが全員に配られるもので、どれが私だけに配られたものなのかよくわからなくて……」
「そうか。なら、俺の支給品も全て開示するよ」
ファイズギアが一つ、とあらかじめ言ったうえで一つずつ支給品を合わせていく。ほとんどの支給品は偶数ずつ存在した。明らかに、行動のうえで必要なものばかりなので、これが全員に支給されたもの。草加もその判断はすぐにできたが、確かにまどかの視点に立つと支給品の判断が難しいかもしれない。
彼女には、ドライヤー、ヘアアイロン、「どくけし」という薬が支給されている。どくけしはともかく、そのほかの二つは明らかに美容に使うもの。ドライヤーはある程度髪が長ければ必須だ。少なくともわざわざ支給する武器には見えない。ヘアアイロンは、確かに相手に高温でダメージを与えることができるかもしれないが、どうであれコンセントが必要だ。使いようがない。
270
:
相対的な『善』と『悪』
◆WiEGmmiZ1g
:2011/07/13(水) 15:03:15 ID:ncLWD1jQ
毒性の強いものに効く「どくけし」という薬は多少魅力的だが、名前も胡散臭ければ、どくやもうどく状態を回復するという大雑把な効能も信憑性が薄く、効果のほどはわからない。まあ持っていて損はないだろう、という程度だ。こんなものが支給されるということは、やはり毒物が支給されている、あるいは毒を撒くオルフェノクや毒草が生えているとか、そんな危険も伺えるだろう。
まあ、とりあえず支給された「どくけし」は二つだ。先にまどかがどく状態になったとして、そこで効果を試して、自分がどく状態になったときの保険としても利用できる。
毒状態のことでなく、草加はある心配に陥ることになる。
ドライヤー、ヘアアイロン……考えすぎかもしれないが、これは明らかに「美容師」を連想させる。
美容師──それは草加の知る少女が思い描いていた夢。
(真理……)
冷静に考えれば、これは女性の参加者が多いために支給されたものだろう。まどかの知り合いは全員女だ。名簿を観ると女の名前も多い。しかし、草加は何となくこれが真理を連想させるためのものではないかという気持ちになる。
無事でいてくれ、と願うばかりだ。
「あの、……これは何ですか?」
と、そんな草加の思考はまどかによって打ちとめられた。
まどかが指差したのは───草加の支給品・『魔法少女マジカル☆ブシドームサシ』の全話DVD-BOXである。
草加とまどかのデイパックの中身全てが開示されている。机の上には、同じものが二つずつ置かれており、これは二人に共通して支給されたものだ。草加の前にあるもので、まどかのものと違うのは、ファイズギアとこのDVD-BOXの存在。
このDVD自体は武器ではないのだが、草加が『美容師』に反応したように、まどかはその『魔法少女』というキーワードに反応を示さずはいられない。
彼女の同年代の友達は四人ほど、この魔法少女という言葉の甘美な響きと、その条件に魅せられ、人生を狂わされているのだ。
271
:
相対的な『善』と『悪』
◆WiEGmmiZ1g
:2011/07/13(水) 15:03:38 ID:ncLWD1jQ
空想の中でなら、魔法少女は明るく楽しい物語なのに。
その物語では誰も死なないし、死んでも奇跡で蘇る────かっこよく、敵を倒して子供を守る。
それがかつての鹿目まどかの魔法少女のイメージであった。
実際は、大人が夢中で視聴していることも多いように、幅広い年齢の視聴に堪えうるものもある。まどかが小さい頃に見た魔法少女も、そういうものだったかもしれない。
だが、子供の頃のまばらな記憶は、『戦っているだけ』としか捉えておらず、両親とショーを見に行く子供の姿を見たり、食玩が置いてあったりというのも、子供向けという意識を強く駆り立てていた。
まどかの認識はこんな感じだが、草加はこのDVDの存在に好印象を受けてはいない。まどかの呟いた「服が可愛い」という感想にも理解できずいた。
当然だ。彼も何となく、こういうアニメと、それに夢中になる大人の存在を察知していた。それに現を抜かす大人たちがいることも知っていたし、そういう人間たちを激しく軽蔑していたのは、彼の性格から考えると違和感はない。
何せ、本当の戦いを知り、その結果として大切な人の死を経験したこともある彼には、戦いを軽視して子供のくだらない遊戯に使った(という内容なのも何となく知っていた)アニメが好きになれなかった。それは、平和への──偽りの平和への嫉妬でもあるかもしれない。
まどかも同じように、──『魔法少女』に関連して友人を失っている。実際に戦わずとも、戦いによって生み出される犠牲を知っていた。
それでも戦いをやめることを知らない草加と、戦いを止めたいまどかには大きな差があったが。
「あの、…………………私、そのアニメを少し見てみたいなって」
「……別に、構わないが、どうしてかなぁ?」
処分しようとしていたDVDだが、まどかはその視聴を求めた。なぜ今の今までデイパックに入れていたのかもわからない
趣味は人それぞれとはいえ、こんなもの草加にとっては「幼児趣味」。中学生にもなれば、こんなもの卒業するだろう……というのが草加の考え方だ。だが、草加にはこのまどかという少女がどの程度の年齢なのかもまだよく知らない。彼女の友人の話は中学生のようだが、彼女の友人としか聞いておらず、もしかすれば年上かもしれない。
外見を見るに、身長150cm未満の童顔。詳しい年齢や学年を全く聞いていなかったが、制服は着ていても小学生なのかもしれない──と、草加は思った。記憶の中の真理とだぶって、尚更そう見える────いや、記憶の中の真理が微笑んだ今、完全にそう見えるようになってしまった。
とはいえ、今この状況で何故これが見たくなったのかはわからなくいので、反射的に訊いてしまう。進んで訊きたい話ではないのだが。
272
:
相対的な『善』と『悪』
◆WiEGmmiZ1g
:2011/07/13(水) 15:04:21 ID:ncLWD1jQ
「見てみたい────本当に、ただそれだけなんです。魔法少女の戦いって、どんなものなのか。魔法少女って、空想の中だとどんなんだろうって。どういう思いを描いてるんだろうって……」
草加は元々訊きたくて訊いた質問でなかったことも含めて反応に困ったが、とりあえずは「そうか」と呟いて、DVD-BOXをまどかに手渡した。
ともかく、これで草加の道具は一つ、まどかの道具は四つになる。だが、草加はまどかに対して一切の不利を感じなかった。というのも、草加とまどかの支給品を比べると、まどかの道具は攻撃性に富まない。
それから、しばらくしてまどかは草加を民家に連れ込んでDVDを再生し始めたのだ。
今に至る。
これは、魔法少女の理想を知りたい、というまどかの純粋な興味から生まれた行為で、別に和もうとかそんな目的じゃなかった。最初の一話だけ見ればそれがわかるものだと思っていた。
が、娯楽としての面白さにも引き寄せられつつある。
この第一話で視聴を止めたいところだが、残り時間の少なさに対して内容は未消化のままだ。第一話なのだから、当然である。続きが気になって仕方が無いし、、「相対的な善と悪」が丁寧に描かれていく重厚なストーリーはまどかの心を掴んで離さない。
ほむら、マミ、杏子、さやか────親友たちの戦いがフラッシュバックしているかのような感覚だった。
まあ、さすがに戦死した友人のことをアニメと同等に扱うのは思しくないが、迫力はそれだけのものである。
まどかはこの興奮を共有していることを確かめるために、草加に話しかけた。
「凄かったね、草加さん!」
「ああ……だが、もう時間がない。君も友達を捜しに行きたいだろ?」
と、当の草加はあまり見てもいないが適当に相槌を打って捜索に誘導する。
先ほどまで、主催者のたくらみに反発していた少女の面影はどこに求めようもない。ただの普通の無邪気な少女の姿だ。
かなり不都合な話だが──
「あと、もう一話だけ!」
まどかの笑顔とウインク。だが、並の男を服従させるその仕草よりも、草加にはその声が──草加の記憶の中のずっと想い続けていた少女の声と何度だって重なる。
それは草加に静止する気を奪っていく。
「約束だ、あと一話見たら真理たちを捜しに行く」
「はい! 約束です」
273
:
相対的な『善』と『悪』
◆WiEGmmiZ1g
:2011/07/13(水) 15:04:49 ID:ncLWD1jQ
【D-4/民家/一日目 深夜】
【仮面少女・草加☆まどか】
【草加雅人@仮面ライダー555】
[状態]:健康
[装備]:ファイズギア@仮面ライダー555(変身解除中)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:園田真理の保護を最優先。儀式からの脱出
0:とりあえずまどかに付き合う
1:真理を探す。ついでにまどかに有る程度、協力してやっても良い
2:オルフェノクは優先的に殲滅する
3:乾巧へのネガティヴキャンペーンを忘れない
4:まどかの事が少しだけ気になる
[備考]
※明確な参戦時期は不明ですが、少なくとも木場の社長就任前です
※まどかの友人について知りました。死んだことについては触れられてません
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:擦り傷が少々
[装備]:見滝原中学校指定制服
[道具]:基本支給品、『魔法少女マジカル☆ブシドームサシ』のDVD-BOX@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ、どくけし×2@ポケットモンスター(ゲーム)、ドライヤー、ヘアアイロン
[思考・状況]
基本:儀式を終わらせる
0:とりあえずブシドームサシの2話を見る。見終わったら仲間の捜索
1:草加と行動を共にする
2:草加さんは信用できる人みたいだ
3:さやか、ほむら、杏子、マミと合流する
4:乾巧って人は…怖い人らしい
[備考]
※最終ループ時間軸における、杏子自爆〜ワルプルギスの夜出現の間からの参戦
※乾巧に関する偏向された情報を、草加より聞かされました
274
:
相対的な『善』と『悪』
◆WiEGmmiZ1g
:2011/07/13(水) 15:12:49 ID:ncLWD1jQ
アイテム紹介
【『魔法少女マジカル☆ブシドームサシ』のDVD-BOX@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
草加雅人に支給。
イリヤのお気に入りアニメであり、彼女の魔法少女のモデル(劇中劇)。
愛と正義と仁義の名の下にインファイト一辺倒で悪人と闘うムサシの活躍を描く作品。
「相対的な善と悪」を軸とした厚みのある作品として大きなお友達にも評価が高いらしい。
現在二期として「魔法少女マジカル☆ブシドームサシSLASH」が放送中。
【どくけし@ポケットモンスター(ゲーム)】
鹿目まどかに支給。
ポケモンの回復薬の一つで、どく状態を回復する。
【ドライヤー、ヘアアイロン@現実】
鹿目まどかに支給。
美容師の道具。ヘアアイロンにはストレート用とかカール用とか色々あるらしいが、現時点で詳しくは不明。
275
:
相対的な『善』と『悪』
◆WiEGmmiZ1g
:2011/07/13(水) 15:14:31 ID:ncLWD1jQ
以上です。
276
:
名無しさん
:2011/07/13(水) 16:12:39 ID:R0zel7f.
投下乙です
キャラ叩きになるがさすがにこの状況下でまどかは友人がいるのに(例え死んだはずなのに)アニメに夢中になるかな…
あんこちゃんの参戦時期からの燃え尽きに近い状況とは違うし…
いや、でもまどかならアニメの魔法少女に夢中になる?
草加も打算である程度はまどかに付き合うとしてもこのデスゲームに真理も放り込まれてるのに時間潰しにしかならないアニメ鑑賞に付き合うのかな?
完全に付き合う可能性は無いとも言い切れないけど…
277
:
名無しさん
:2011/07/13(水) 16:13:47 ID:8swXsJMM
>>275
乙です。感想は本投下の時に。
ただ、まどかって恋人(らしき相手)が心配で気が気じゃない男性相手に
(いくら魔法少女の話とはいえ)「もう一話だけ!」とかせがむようなキャラだったでしょうか?
(杏子さやか死亡後なら充分な危機意識も育っているはずですし)
…ビル倒壊音を「聞き逃したで」済むように舞台を室内にしたのは分かるのですが
278
:
名無しさん
:2011/07/13(水) 19:39:21 ID:BRoqwXNk
投下乙
感想は置いておいて、同じく指摘を
既に他の方もおっしゃってますが、
・草加は真理が危機に直面している際は、それこそ他の面々を捨て置くほど真理の救出を優先するスタンス
・まどかは(それこそどんな状況であっても)自身よりも他人の心配をする傾向が強い性格
なので、こんな状況で呑気にDVDを見たりすることはないと思います
あと、前回のラストと氏の投下された作品のラストのまどかのキャラがどう見ても別人にしか見えないくらい変わっちゃっているのも違和感があります
まどかが原作2話以前までからの時間軸の参戦だったら、まだ違和感はなかったでしょうが……
それと、まどかの支給品のドライヤーとヘアアイロン
おそらく、草加にまどかと真理の姿を重ねさせるための要素として支給させたものと思われますが
個人的には、パロロワ的には普通に民家で現地調達できそうなアイテムをわざわざランダム支給品で支給する意味は薄いかと思います
支給されたのが「美容師のハサミ」だったらまだ真理とも繋がりが深い品なので、違和感はありませんが……
それに、使い方次第ではハサミも十分武器になりますので、いわゆる「出落ち」にはならないかと
279
:
名無しさん
:2011/07/13(水) 20:06:19 ID:TCBwyZ2.
キャラが楽観的過ぎるのは同意ですが、支給品云々はいちゃもんもいいとこですよ。
そもアニメを一話だけ見て内容を判断することなどできません。まどか☆マギカのことですねわかってます。
280
:
名無しさん
:2011/07/13(水) 20:19:48 ID:R0zel7f.
支給品はドライヤーとヘアアイロンの2つも出さなくても真理の姿を重ねさせるためなら「美容師のハサミ」1つで事足りると思うが
これはそこまで修正して欲しいとは思わない
問題はやっぱりキャラ二人の行動のおかしさかな
281
:
名無しさん
:2011/07/13(水) 20:29:33 ID:tSbv6SpY
キャラの言動に違和感があるというのは同意
まどかの支給品に関しては別に修正する必要はないと思うけど、草加さんに真理を連想させるなら、確かに美容師のハサミの方がピンとくる気がする
282
:
◆8nn53GQqtY
:2011/07/13(水) 20:41:20 ID:lfNVVdzM
南空ナオミ かなり冒険した内容(これは有りなのか?)を含むので、こちらに一時投下します。
283
:
その南空ナオミをぶち殺す
◆8nn53GQqtY
:2011/07/13(水) 20:42:03 ID:lfNVVdzM
南空ナオミ
自殺
自分の婚約者を死に追いやったと
一番疑わしき犯人を
欧名美術館に呼びだすために
その犯人の恋人を人質にとって
2006年 4月15日 14時15分
電話をかけさせる
その後捜査本部に連絡をし
第三者の確認を取らせ
捜査本部監視のもと
その犯行の証拠を自白させようとするが
人質に逃げられそうになり
14時55分に阻止しようとするが
さらに精神錯乱となり
その場で銃を使い自殺
+ + +
『欧名美術館』。
それが、その建造物の名前だった。
美術館の二階に設えられた広いホール。
フローリングの床と、あたたかみのあるアイボリーの壁紙。
誰にとっても優しいその場所には、
しかし、死神が一人、存在した。
284
:
その南空ナオミをぶち殺す
◆8nn53GQqtY
:2011/07/13(水) 20:42:48 ID:lfNVVdzM
それは、とある画家の代表作品。
画家の名前はエクスーゾ・ケナック。
絵の題名は『仮面と死神』。
そこに描かれたのは、抽象の光景。
人間の断末魔を模したような形相の仮面が、無数にあつまって、髑髏の死神を磔刑に処していた。
磔にされた死神の胸を貫くのは、死刑囚の本来の得物であった、死神の鎌。
寄り集まった仮面が死神の武器を奪い取って死神にトドメを刺すその絵姿は、
まるで、死神に命を借り取られてきた犠牲者たちが、その無念をはらし死神に天誅をくだしているかのようで。
何かを暗示するようなその絵を、鑑賞するのはただ一人。
黒い革製のライダースーツに身を包んだ一人の女が、水色の封筒を抱きしめて嗚咽していた。
へたりこむようにして座り、絵画を見上げ、はらはらと泣いていた。
他ならぬ――この私、南空ナオミだった。
涙は、とうに枯れ果てたはずだった。
このように異常な状況下で、人目につきやすい場所で泣き崩れることが、どれほど危険なことかも、理解していた。
しかし、ディパックから出て来たその封筒は、癒えない記憶を呼び覚まさせるに十分なものだった。
『カトリック南青山教会』と印字がうたれた、『結婚』の為の書類の束。
そして、幸せな結婚式を約束する、結婚式場の紹介パンフレット。
285
:
その南空ナオミをぶち殺す
◆8nn53GQqtY
:2011/07/13(水) 20:43:30 ID:lfNVVdzM
それは、愛しいただ一人の人との、約束の証。
もう少しで手に入っていた、当たり前の幸福。
あの日、『彼』が死ななければ訪れていたはずの場所。
『創造の始めから、
神は人を男と女につくられたのです。
だから人は、その父と母を離れて、
二人のものが一心同体になるのです。
それでもはや、二人ではなく、一人なのです。』
聖書にしるされた言葉を、これほど深く理解し、噛みしめることができたその幸福。
しかし、その喪失はあっけなく訪れた。
二人が寄り添いあうことで一人と成るのなら、
今の私は半身の欠けた、ただの半身でしかない。
私の愛した婚約者は、既に欠けていた。
キラに、殺された。
誰も訪れない優しいその場所で、許される限りの涙を流し、
決して戻らない大切な人を偲んで、
そして私は、ようやく『目的』に立ちかえった。
すなわち、ここに来るまでにしていたことを思い出したのだ。
286
:
その南空ナオミをぶち殺す
◆8nn53GQqtY
:2011/07/13(水) 20:44:32 ID:lfNVVdzM
私は『自分の恋人を殺されたと一番疑わしき犯人を、欧名美術館に呼び出す』ところだったのだ。
キラである夜神月の罪を証明する為に、彼の恋人である少女を人質にとり、
彼女に拳銃を突きつけて、恋人の命惜しさに犯行を自白させるつもりだったのだ。
愛する者を失う恐怖を、キラにもまた、味あわせるために。
Lを始めとした『第三者の確認』が行われている眼の前で、夜神月を断罪するために。
私の心に、暗い復讐の情念が燃え上がる。
その復讐を支えるのは、何としてもそれを果たすという鋼の意思。
帰らなければならない。
あの時、あの場所、ここではない本物の欧名美術館に帰って『2006年 4月15日 14時15分』に戻って、
夜神月の『恋人を人質』にしなければならない。
名簿を見た限り、この殺し合いに夜神月の恋人は参加していないようだ。
つまり、私が突然に拉致された時点で、せっかく拉致した夜神の恋人は自由の身となり
今ごろは近所の交番にでも駈けこまれていることだろう。
それはとてもマズイ。
夜神の恋人を拉致できなければ、彼に私と同じ苦しみを味あわせることはできない。
つまり、たとえこの殺し合いを打倒して生還したとしても、私の復讐計画は破綻してしまうのだ。
それ以前に、この殺し合いの中で夜神月が死んでしまっても、私の復讐は達成されないのだ。
それではいけない、と私の狂気が大きく警鐘を鳴らした。
そう、それはもはや狂気と言ってよかった。
本来の私は、もっと冷静に行動ができていたはずなのに。
よく考えれば、私の計画には色々と穴もあるはずなのに、
なにより、何の関係もない少女を巻き込むなど許されていいはずがないのに、
頭の中は、『そうしなければ』という考えに取りつかれてしまっている。
287
:
その南空ナオミをぶち殺す
◆8nn53GQqtY
:2011/07/13(水) 20:45:22 ID:lfNVVdzM
ただ、元の世界に戻るのでは駄目だ。
どうしても、私は、あの時間に戻って、
『2006年 4月15日 14時15分』に『電話をかけさせる』という計画を遂行して、
夜神月を追い詰めなければいけない。
あの死神を、白日のもとに晒してみせる。
あの殺人鬼を、死刑台へと送り込んでやる。
もはや私は、己の存在意義をそこにしか見出せなくなっていた。
つまり、私の方針は『皆殺し』だ。
ただの生還ではない。
望んだ時間軸、望んだ場所に、任意で生還しなければならない。
その為には、『勝者』となるしかない。
あのように瞬間的に人間を拉致できる主催者なら、
帰る際にちょっと時間を合わせるぐらいの、サービスは効かせてくれるだろう。
それに、主催者は言っていたではないか。
『勝者』は、『今は亡き者の蘇生』をも可能となるのだと。
現代の日本にさえ、念じるだけで犯罪者を殺すような力が存在するのだ。
であるなら、『呪術』が当然に存在するような世界ならば、蘇生の秘術があったとしてもおかしくなないのではないか。
つまり、上手くいけば、皆殺しを達成した上で、夜神月を蘇生させて生還し、復讐を再開することができる。
ただ、殺すだけでは私の復讐心は満たされないのだ。
キラの『捜査穂部に連絡をし』、衆人環視の状況で屈服させなければ、復讐は達成されない。
『キラ』である夜神月は、人を操り殺す技術を持っているようだし、そんな人間が殺し合いに放り込まれれば、
バトルロワイアルを殺し扇動して引っかきまわすか、あるいは失敗して敵を多くつくることになるのは目に見えている。
私は本名が知られていないから、ひとまず殺される心配はないわけだが、当の夜神月が事態の中心として動くことが予想されるなら、こちらもうかうかしていては殺される。
仮に『死者の蘇生が可能』という前提を疑うにしても、どのみち積極的に殺し合いに乗っていた方が有利だろう。
288
:
その南空ナオミをぶち殺す
◆8nn53GQqtY
:2011/07/13(水) 20:46:06 ID:lfNVVdzM
――あれ?
私は首をひねった。
この殺し合いには、あの『L』も参加しているというのに、
にも関わらず、私はLを含めた55人全員を殺そうとしていた。
そのことが、本当に首をかしげたくなるほど、不思議だった。
私という人間は、Lを慕っていたのではなかったか?
私は、Lに絶対の信頼を置いていたのではなかったか?
Lを信じていれば、間違いはないはずだった。
Lの指令なら、どんな危険だって冒せるはずだった。
胸に手をあてて考える。
呵責はあった。
にもかかわらず私は、何の迷いも疑問もなく、目的の為にLを『不要』と断じていた
Lが見ていてくれなくとも、ワタリや『捜査本部』の人間が目撃される状況をつくれば、夜神月を公の前で糾弾することはできる。
私の復讐計画にLは必ずしも必要でない以上、殺しても支障はない――
そんな風に、容易くLを切り捨てる思考を働かせていた。
まるで、人を操る能力を持つ者に、『あの時間に、あの美術館で、夜神月を追い詰めなければならない』と命じられているかのように、
――いや、いくら何でもそれはないだろう。
例えばキラに人を操る力があったとしても、私は夜神月に名前を知られていないのだから、
キラの力を使われることはない。
私は己の執念で、復讐を成し遂げたがっているのだ。
――己の浅ましさに、吐き気がした。
これでは、まるで復讐鬼の所業ではないか。
私は、己の復讐の為に、55人の人間を皆殺しにしようと考えているのだ。
自らの保身の為にレイを殺そうとした夜神月と同じ所業を、私は行おうとしているのだ。
だが、そのことに自嘲はすれど、躊躇いはない。
そうせずにはいられないから、そうするのだ。
289
:
その南空ナオミをぶち殺す
◆8nn53GQqtY
:2011/07/13(水) 20:47:43 ID:lfNVVdzM
私は、あの時間に、あの場所で、『疑わしき犯人』に『犯行を自白』させなければならない。
そうしなければ、ならない。
そこに、『なぜ』という疑問が生まれる余地はない。
パンフレットを美術館の床に捨てた。
復讐鬼に堕ちた私に、思い出を懐かしむ資格はない。
支給武器であるナイフをライダースーツのベルトに刺しこみ、装備する。
雷マークのようにギザギザと歪んだ刃。
虹色に光輝く刀身。
FBIの捜査官とはいえ、ただの人間の、しかも女性である私が殺しの手段として用いるには、あまりにも頼りない装備と言わざるを得ない。
しかし、それは付属の説明書を読むまでの評価だった。
――その剣の真名は、『破壊すべき全ての符(ルールブレイカー)』。
あらゆる異能に対してその力を失わせると、説明書には書かれていた。
それだけで、意味は伝わる。
例えば、あの大広間で主催者に挑んで行った男は、明らかに人間ではなかった。
常識で考えていては、決して説明のつかない能力だ。
このナイフには、そのような『異能の力』を打ち消す効果があるのではないか。
とするならば、私にも勝機は見えて来る。
強大な力を持つものは、その性質が善であれ悪であれ己の力に酔うものだ。
あのキラがそうだったように。
その『力』をただの一般人の私に、突然に奪われれば、少なからぬ隙が生まれるだろう。
まずは異能の力を持った――それでいて明らかに油断させやすい――相手で試し刺ししてみたいところだが、流石にそれはご都合主義というものか。
しかしどちらせよ、油断を誘いやすい相手から、確実に殺していくことが良策だ。
+ + +
かくして、幻想を殺す刃を携えた女は闇を行く。
290
:
その南空ナオミをぶち殺す
◆8nn53GQqtY
:2011/07/13(水) 20:49:01 ID:lfNVVdzM
彼女は知らない。
その歪んだ復讐心が、己のものではなく
死神のノートによって植えつけられたものだということを。
夜神月は己自身の力ではなく死のノートによって人を殺している為に、
この会場では直接的な脅威となる力を持たないことを。
このバトルロワイアルに存在する夜神月が、
己の知る夜神月とは、似て非なる存在だということを。
そしてたとえ、彼女の望みが全て叶い、あの時間に戻れたとして、
その先に待つのは、己の死だということを。
【D−7/美術館/一日目 深夜】
【南空ナオミ@デスノート(実写)】
[状態]健康、デスノートに操られ中
[装備]ルールブレイカー@FATE/stay night
[道具]基本支給品一式、、不明支給品0〜1
[思考]基本・『夜神月を欧名美術館に呼び出す(デスノートの指令)』ために、何としても生還する。
1・ひとまずは皆殺しを狙う
2・死者の蘇生が可能かどうかを確かめる。可能なら夜神月を蘇生させる。
3・ルールブレイカーの効力を誰かで試したい。
[備考]
※参戦時期は、デスノートに操られて夜神月に電話をかけた直後です。
※思考が『2006年4月15日14時15分に欧名美術館に夜神月を呼びだす』ために誘導されています。
※ルールブレイカーの効果の範囲(仮面ライダーや魔法少女の変身、デスノートやギアスによる命令、
エスパーポケモンの超能力、などにも効くのか)は、次の書き手さんに任せます。
※南青山教会の水色の封筒が、美術館の『仮面と死神』の絵の前に放置されています。
【南青山教会の水色の封筒@デスノート(実写)】
南空ナオミとレイ・イワマツ(実写版ではレイ・ペンバーではない)が、結婚式場の予約をする為に取り寄せた書類。
劇場版にて、南空ナオミはレイ・イワマツの死にざまを目撃するという改変が行われているが、
彼女はその現場にいた時にこの封筒を持っていた。
(その為に夜神月に教会をつてに名前を調べられてしまい、デスノートに名前を書かれて操られることになった)
【ルールブレイカー@FATE/stay night】
キャスターのサーヴァントが使用する宝具。
あらゆる魔術による生成物を無効化する短剣
つまりあらゆる魔術効果を無効化する。
291
:
その南空ナオミをぶち殺す
◆8nn53GQqtY
:2011/07/13(水) 20:50:01 ID:lfNVVdzM
投下終了です。
果たして「この状態で出す」のは有りなのか…w
実写版を知らない人に補足。
映画版の南空ナオミは死に方が違う上にキャラも微妙に違います
292
:
◆8nn53GQqtY
:2011/07/13(水) 20:55:51 ID:lfNVVdzM
そして投下ついでに指摘を
現在、◆97SsGRff6g氏のSSによってスマートブレイン社が倒壊したことになっているため
本社付近でのキャラのリアクションがやや不透明な状況になっています。
◆97SsGRff6g氏のSSの修正された内容にもよりますが、SSの場所をスマートブレイン社以外の建物(見滝原中学校など)に
変更することはできませんでしょうか。
SSを読んだ限り、この戦いの場所がSB社でなければならない必然性はないように感じますし
既に黎明を舞台にした杏子総一郎のSS、木場村上らのSSが本採用されていますし、
SB社はけっこうな高層ビルなので「倒壊音を聴き逃した」というのはどう転んでも無理が出てしまうように思います
最終的な処置は◆97SsGRff6g氏しだいですが、一つ代案として提案してみました
293
:
名無しさん
:2011/07/13(水) 21:30:19 ID:qB0sx8yI
実写版からの参戦だからこそ出来たネタ、ってんで私的にはありかも。
変則的な洗脳マーダーになるのかな、この場合?w
294
:
◆WiEGmmiZ1g
:2011/07/13(水) 21:32:35 ID:ncLWD1jQ
自分のSSは意見も多いみたいですが、ネタ的な意味しかないシーンなのでカットして平気です。
前回のラストでは「まどかが友人の名前を確認してない」、「支給品を確認していない」という点が気になったので繋ぎ程度の話を書こうとしたら結局暴走してしまい…。
確かにこれでは次の書き手さんもやりにくいですので、該当部分は削除します。
支給品は変えなくていいという意見が出たのですが、変更を望む声もあるのでドライヤーのほうをハサミに買えておきます。
ヘアアイロンは市販のものでもかなりの熱を発し、コンセントがあって相手が動けなければ武器にはなるので一応このままにしておきます。
他にも何か意見があったら遠慮なくお願いします。
295
:
名無しさん
:2011/07/13(水) 21:42:59 ID:R0zel7f.
悪くは無いし面白いと思うけど続き書き難い?
書き手から異議が来たらどうかと思うが
296
:
◆4EDMfWv86Q
:2011/07/13(水) 22:47:14 ID:TCBwyZ2.
>>291
むつかしい所はありますが十分許容範囲だと思いますよ。面白いし
漫画だけで把握すると痛い目見るってとこぐらい
297
:
◆4EDMfWv86Q
:2011/07/13(水) 22:51:20 ID:TCBwyZ2.
追記するなら、ルールブレイカーは既にクラスカードとして出てるので被っちゃうかなってくらいです。
駄目というわけでもないのだろうが。
298
:
名無しさん
:2011/07/13(水) 23:38:12 ID:rXIF5MxI
確かFate出典の宝具は参加者の分のみだったはず
キャスターは参加してないのでルールブレイカーは支給不可能
299
:
◆8nn53GQqtY
:2011/07/13(水) 23:40:41 ID:lfNVVdzM
>>293
>>295
>>296
ご意見ありがとうございます
>>295
投下時にも少し言及したように、南空ナオミは他のデスノキャラと違って漫画版と実写でキャラクターが異なるため
漫画が把握の参考資料として全く成り立たず、また実写での登場も30分に満たないので、把握するための材料が少ないことから
ある程度オリキャラ化のリスクを冒しても、キャラとしての書き難さはそこまで変わらないと判断しました
(揺るぎようがない方針を立てることで、ある程度は動かしやすくならないかという独断もあります)
もちろん、他の書き手さんにとって「書きにくい」と見受けられたようでしたら、ご意見うかがいます
また、実写映画(前編)のクライマックスとして
「操られて錯乱した南空ナオミが、月の恋人(映画オリキャラ)を人質にとって月への恨みをぶちまける」
というシーンがあるので、完全なオリキャラ化にもならないという判断でした
>>296
クラスカード忘れてたああああ!!
……うーむ、プリズマイリヤを読む限り、クラスカードは
インストール方法が分からなければ使えないようだから、完全な被りでもない、のかな?
(以前の議論で出典の違う同じアイテムは禁止という結論だったかとは思いますが…)
……個人的な都合を言うと、ルルブレはあの話の「オチ」として持ってきたので、できれば変えたくないのですが…
他に反対意見が来ないようでしたら、2、3日中に本投下したいと思います。
300
:
◆8nn53GQqtY
:2011/07/13(水) 23:42:23 ID:lfNVVdzM
>>298
そうでしたか、こちらの手落ちでした。すみません
ではルルブレのところを何かほかの代替支給品に変えて投下します
301
:
名無しさん
:2011/07/13(水) 23:53:46 ID:K5GwdPlM
「デスノートに名前を書かれて死が確定した状態」を初期としてキャラを出すのは問題な気が……
仮にそれを認めるにしても、デスノートには「命令が達成不可能な場合は死因が心臓麻痺になる」って設定があるから、生還することが達成される運命ということになってそうならなければ矛盾になる
ロワに出て制限されたデスノートならともかく、ナオミを縛ってるのは本家のデスノートだから
後の展開が極端に制限されるのはちょっと
302
:
名無しさん
:2011/07/14(木) 00:06:33 ID:C.kPIj12
その「命令が達成不可能」ってのが曲者だなぁ
今のところナオミが優勝する可能性は0じゃないけど、0になったら心臓麻痺に死因が切り替わるとか?
0になるって要するに死ぬってことだから心臓麻痺に全く意味はないけど
なんか自分で言っててワケワカメになってきた
303
:
◆8nn53GQqtY
:2011/07/14(木) 00:14:12 ID:czVYxUIo
自分としては
>>302
氏と同様(ナオミが優勝する確率が0ではない以上、
『2006年4月15日』に戻ろうと試みるのでは)の解釈だったつもりですが…
……解釈が別れるものを持ちだして申し訳ありません。
304
:
名無しさん
:2011/07/14(木) 00:38:11 ID:V7wvRu3c
間違っていたらすいませんが、デスノートで操られた人物に他人を殺させる事はできないのではないですか?
305
:
◆8nn53GQqtY
:2011/07/14(木) 00:48:42 ID:czVYxUIo
>>304
劇場版を見る限り、月はノートに「14時55分に人質に逃げられそうになり阻止しようとする」
とだけ書くことで、人質にされた恋人を殺しています。
(その恋人に「14時55分に死亡。死因銃殺」とデスノートに書く複合ですが)
デスノートに「人を殺せ」という命令を書きこむことはできませんが
デスノートで「〇〇をしろ」と命令した場合、その目的を達成する為の手段は
操られた側も選べる(操られた側にもある程度の判断力が残る)ようになっているので
南空ナオミが「(ノートの指令を達成する為の)過程として選んだ」行動の結果で死人が出てもおかしくないと判断しました
ただし、漫画版には「人を巻き込む死に方はできない」と書かれていますが
306
:
◆LMthJwSLQ.
:2011/07/14(木) 04:07:07 ID:jsChk9zY
>>265-266
ご意見ありがとうございました
レスが遅くなりすみません
・警視庁について
本文内の『警察庁』はすべて『警視庁』に修正、
二人の現在地は『警察庁・凶悪犯連続殺人 特別捜査本部』から『警視庁の一室』に変更します。
それで、再度質問なんですけど、この場合室内にあった「心臓麻痺で死亡した犯罪者のリストが入ったPC」は
そのままで問題無いですか? 削除したほうがいいでしょうか?
・建物崩壊の音について
◆97SsGRff6g氏の作品の時間帯が黎明になるそうなので、
「古びた教会の火災を目撃、物音は聞いていない」という現状のままで本投下します
・ベレッタM92について
本投下時にはシグザウエルP226に差し替えます。
他に何か問題点はないでしょうか?
ユーフェミアがみつけたPCの描写に特に問題がないようであれば、
上記の修正を行い夜には本投下します。
307
:
名無しさん
:2011/07/14(木) 05:07:26 ID:8SSQ3pOE
こんがらがってる気がするので、傍から見てちょっと解釈。
1.地図の表記は警視庁だが、実際にはデスノに登場した警察庁が建っているとして良い(主催側の表記ミス?)
2.地図の表記は警視庁で、実際に有るのも警視庁(劇中ではあまり出ていない建物)である
3.地図の表記は警視庁で、実際に有るのも警視庁だが、中身を警察庁として描いても良い(中身が摩り替わっている?)
4.地図の表記は警視庁で、実際に有るのも警視庁であり、原作の舞台も警察庁ではなく警視庁だったとして扱っても良い
のどれになるのか、という事かな?
308
:
◆hDddafoU.A
:2011/07/14(木) 06:23:56 ID:C8pY2okg
あああ反応が遅れて事態が面倒な方向に……。
すみません、正しくは警察庁なのに警視庁となっているのは自分のミスです。勘違いしてました。
MAP上の名前の修正でこの問題が解決するのであれば、直します。
309
:
名無しさん
:2011/07/14(木) 08:18:17 ID:DgoaZKo.
今から警察庁に変更した場合に、すでに投下済みのSSで警視庁に触れているものに
名称の変更以外の修正点がでてこないかの確認が必要かな
視を察に変える以外に直さなきゃならないところがあるSSがひとつでもあるなら、MAP修正という選択肢は消えると思う
310
:
名無しさん
:2011/07/14(木) 18:38:42 ID:V7wvRu3c
>>305
丁寧な説明ありがとうございます。
事例としてあげられました劇場版はノートに操られた末の殺人というより
私見ながらやはりノートに書かれた事が主因と思います。
ただナオミのマーダー化が目的だという事は納得できますので強引な解釈であるものの進行の為に通しで構いません。
311
:
名無しさん
:2011/07/14(木) 18:43:03 ID:Z3Aon682
>>305
他の書き手から明確な破棄、修正要求が無いのなら通しでいいかも
312
:
◆8nn53GQqtY
:2011/07/14(木) 23:29:19 ID:6arkqpx.
>>310
>>311
今のところはっきりとした修正、破棄請求は来ていないので、ルルブレの部分だけを修正中です
明日明後日には本投下する見通しです。
313
:
名無しさん
:2011/07/14(木) 23:45:25 ID:q/YC8rVU
>>307
の1かな?
314
:
◆4EDMfWv86Q
:2011/07/15(金) 00:01:02 ID:OZ0PRAKI
>>◆WiEGmmiZ1g市
草加雅人、鹿目まどか に関しては指摘部分の修正中という認識でよいですか?
>>◆8nn53GQqtY
今の所ではルルブレのみに関してですね。ノートについては諸説あれどロワ運営不可能というほどでもないと認識してます。
地図は、本当は「警察庁」なのに間違えて「警視庁」と書いてしまったということですか?
他のSSも警察庁のつもりで書いていたのだとすれば、MAPの記載だけ修正すれば解決するのでしょうか。
315
:
◆4EDMfWv86Q
:2011/07/15(金) 00:06:23 ID:OZ0PRAKI
ああ、それと◆LMthJwSLQ氏のスザクユフィについては、地図の件が済めばそれでOKになるかと。
ビル倒壊はあちら側で時間が調節され、時間表示については問題ないと思うので。
316
:
◆LMthJwSLQ.
:2011/07/15(金) 00:50:26 ID:FyCxd0Kg
警視庁の件ですが、MAPや他のSSに修正を強いるような意図はなかったのですが
なんだか話が大きくなってしまい申し訳ないです
ただ、こうなってくると自分のSSだけの問題でもないのかなという気がするので
もう少し意見を待とうかと思います
もともと予約期限を超過しているうえ、本投下までも時間がかかってしまう結果になってすみません
317
:
◆LMthJwSLQ.
:2011/07/15(金) 01:00:10 ID:FyCxd0Kg
追記
別にあの建物がデスノ出典である必要がないのであれば
自分が
>>306
で提示した内容で修正するのがいちばん早いし妥当だと思ってます
警視庁をデスノ出典にしない場合、MAP画像の下にどの施設がどの作品のものか書いてあるのは
誤解を招きそうなので、どうにかしたほうがいいかもしれないけど
318
:
名無しさん
:2011/07/15(金) 01:16:10 ID:nRnzmIGM
加雅人、鹿目まどか に関してはほとんど展開を変えないといけないレベルだが件の書き手はどうするんだろう?
連絡もないし
319
:
名無しさん
:2011/07/15(金) 07:38:01 ID:aP.J5qQk
>>318
連絡あったぞ。予約スレを見るべし
320
:
名無しさん
:2011/07/15(金) 17:51:05 ID:3eahv62Q
>>317
とりあえず反論が無ければその修正案で書き始めたらいいと思う
321
:
◆4EDMfWv86Q
:2011/07/15(金) 22:06:54 ID:OZ0PRAKI
>>317
特に異論なし。本投下お待ちしてます
322
:
◆hDddafoU.A
:2011/07/15(金) 23:09:12 ID:zLnMMN.I
このたびは当方のミスが原因でご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ないです。
当方としては、自分の間違いなので警視庁を警察庁に変えたいのですが、そうなると既存のSSのチェックや書き手方への依頼となり時間がかかってしまうので、良策ではないのでしょう。
では自分はMAPを出典もとが付属していないものに作り替える形でしょうか。
重ね重ねですが、すみませんでした。
323
:
◆vyNCf89vh2
:2011/07/15(金) 23:19:37 ID:AjQyxUFM
園田真理、タケシ、美遊・エーデルフェルト、バーサーカー一時投下します
324
:
ばーさーかーとのそうぐう
◆vyNCf89vh2
:2011/07/15(金) 23:20:56 ID:AjQyxUFM
「うぅ……。ピンプク、ウソッキー、本当に何処へ行ってしまったんだ〜……」
近くの木にもたれかかりながら、がっくりと項垂れるタケシ。
彼の足元には、デイパックを始めとした支給品が、あちこちに散乱していた。
「えっと……。よくわからないけど、そいつ以外の仲間がいたはずなの?
その……ポケモンとか言う……?」
そんなタケシの様子を見ながら、呆れた感じで声をかけたのは園田真理。
ちなみに、今彼女が『そいつ』と言ったのは、先ほどからタケシのそばで黙って頬をぷく〜っと膨らませているグレッグルである。
「はい……。ピンプクとウソッキーという俺の大事なポケモンたちなんですけどね……
ここに来る直前までは確かに一緒にいたはずなのに……って、アレ?」
涙を流しながら真理の方へ振り返るタケシの目に、ふと、身に覚えのない奇妙なケースが映った。
「おや? なんだろう、コレは?」
「それ……タケシさんのデイパックから出てきたものですよ。気づいていなかったんですか?」
頭にハテナマークを浮かべながら、ケースを手に取るタケシに、未だその場に残っていた美遊・エーデルフェルトが問いかけた。
「俺のデイパックに? いやぁ、ピンプクとウソッキーを探すのに夢中で気がつかなかった……」
「……! ちょっと、ソレ見せて!」
「えっ?」
突然、真理が慌てたようにタケシに詰め寄ってくる。
彼女の両目は、タケシの手にあるケースに注がれていた。
「ど、どうしたんですか、マリさん? 突然……」
「いいから、早く見せて!」
「はっ、はいっ!!」
気圧される形で、タケシは真理にケースを手渡す。
引ったくるようにそれを受け取った真理は、すぐさまその中身を確認する。
「――やっぱり……」
325
:
ばーさーかーとのそうぐう
◆vyNCf89vh2
:2011/07/15(金) 23:22:18 ID:AjQyxUFM
ケースの中身を見た真理は、思わずそう呟いた。
一見普通の銀色のアタッシュケース。
しかし、その中心に堂々とプリントされていたスマートブレイン社のロゴマーク――
そのケースを目にした瞬間、真理は「まさか」と思ったが、実際に中身を――半ば強引に――確認させてもらったことで、それは確信に変わった。
「……真理さん。それが何なのかご存知なんですか?」
『見たところ、何かのパーツのように見えますが……?』
真理の背後に立っていた美遊と、彼女の側を浮遊しているサファイアも、そのケースの中身を確認しながら真理に尋ねる。
美遊のその問いに、真理は軽く頷くと、そのケースの中に入っていたものの名を口にした。
「カイザギア――『呪いのベルト』と呼ばれる代物よ……!」
そう。タケシのデイパックの中に入っていた謎のケースの正体――
それは、カイザのベルトと武器を収納したスマートブレイン社製のアタッシュケースであった。
◇
「――つまり、コレを使って『カイザ』という戦士に変身した人間は、オルフェノクという存在に対抗できる力を与えられる代わりに……」
「えぇ。変身を解除すると同時に身体が灰になって死んでしまうの……」
それから真理は、カイザギアの持つ強力であると同時に恐ろしい力――そして、自分の世界のことをタケシたちに簡単に説明した。
自分たちの世界は、既に人間から人類の進化系・『オルフェノク』に支配権を奪われているということ――
生き残っている僅か数千人の人間たちは、人間解放軍を結成し、オルフェノクによる絶対的な支配体制に抵抗を続けていること――
真理たちの養父は、オルフェノクの総本山であり、実質世界を支配している存在である世界的大企業・『スマートブレイン社』の前社長であること――
そして、オルフェノクの手から人間を守るためにファイズギアとカイザギアを開発し、義理の娘である真理たちにそれを託し行方不明になったこと――
カイザギアには欠陥があり、一部の者を除いて『カイザ』に変身した者は、変身後肉体が灰化して死亡してしまうこと――
――大雑把にまとめると、説明したことは以上の五つだ。
さすがに、人間との共存を望み、共に戦ってくれていたオルフェノク――木場たちのことや、『闇を切り裂き光をもたらす救世主』――『ファイズ』の変身者・乾巧もオルフェノクであることは伏せた。
前者を説明しなかったのは、木場はオルフェノクとして生きることを決め、人間の敵となったため――
そして、後者を説明しなかったのは――真理自身、まだ完全に気持ちの整理がついていないからだ。
326
:
ばーさーかーとのそうぐう
◆vyNCf89vh2
:2011/07/15(金) 23:24:21 ID:AjQyxUFM
人類とオルフェノクの戦いを、『共存』という形で終焉に導くため戦い続ける男・乾巧――
だが、そんな彼も実はオルフェノクだった――
それは最早変えようのない事実である。
――しかし、真理が巧に対して抱いている気持ちも本心であり、また事実である。
故に、自身が巧本人に直接そのことを口にするまで、真理は巧がオルフェノクであることを他者に伝えるのは控えておこうと思ったのだ。
「……にわかには信じられない話ではありますけど、大体のことはわかりました。
つまり、このベルトは本来の持ち主に返したほうがいいということですね?」
「うん。ただ――」
「ただ?」
「ただ、おかしいのよ。このベルトは啓太郎が変身した後、灰になって無くなっちゃったハズなのに……」
そう。真理の記憶で知る限りでは、カイザギアは既にこの世には存在しないものだ。
人間解放軍の武器開発担当である野村博士によって開発されたドリンク剤・『変身一発』――
それを服用した菊池啓太郎が『カイザ』に変身し、ライオンオルフェノクを撃破した後、灰となって消失した。
それなのに――
「――なんで、またここに……?」
『スマートブレインによって同じものが複製されたという可能性は?』
「確かに……。マリさんの言っていることが全て本当なら、一度自分たちの手で作ってる物をもう一度一から作り直すことは十分可能だろうな」
タケシはサファイアの仮説にうんと頷きながら、先ほど自分で散らかしてしまったデイパックの整理を終えた。
「では、マリさん。このベルトと武器はアタッシュケースごと先ほど言っていたケイタロウさんという方に渡せば良いわけですね?」
「うん……。私の知る限り、現状でカイザのベルトを使える人間は啓太郎だけだし……」
――真理は先ほどタケシたちに自身の世界を説明する際、一緒に確認した参加者名簿の内容を思い出す。
『乾巧』、『長田結花』、『海堂直也』、『菊池啓太郎』、そして『木場勇治』――真理の知る者たちの名前もそこには記載されていた。
――同時に、気がかりな名前もそこにはあった。
――『草加雅人』。
既に死んだはずの人間の名前。
真理の記憶の中では、草加はスマートブレインの開発した『帝王のベルト』のひとつ『天のベルト』の所有者であるレオによって殺害された――
それも、真理と啓太郎、そして木場たちの目の前で――
(なんで雅人の名前まで……?)
327
:
ばーさーかーとのそうぐう
◆vyNCf89vh2
:2011/07/15(金) 23:25:19 ID:AjQyxUFM
消失したはずのカイザのベルト。
そして、同じく自身の世界からは消えたはずの草加雅人――
何故これらの存在がこの『儀式』の場にあるのか――真理の頭の中は軽く混乱していた。
――後者はまだ『同名の別人』という可能性も否定できないが。
◇
「――では、私たちはこの辺りで失礼します」
『真理様とタケシ様たちもお気をつけて……』
その後、一行は一度森を抜け、その先にあった屋敷の前で別れることになった。
――屋敷の門に「美国」という表札がかかっていたため、地図に載っていた『美国邸』とはここで間違いないだろう、とは共通の談である。
「美遊ちゃんたちも気をつけてね」
「友達と無事に再会できることを祈ってるよ」
「はい……」
美遊は軽く頭を下げると、サファイアを連れて歩き始めた。
――彼女たちはこれから、先にある橋を渡って町村へ向かうという。
なんでも、町村に存在するという『衛宮邸』は彼女たちが探している友達――イリヤの実家と同じ名前らしい。
もしかしたら、この名前に釣られる形でイリヤたちがこの場所、もしくは町村に来ているかもしれない――美遊はそう考えたのだ。
去っていく美遊たちの姿をしばらくの間黙って見つめていた真理とタケシであったが、やがてその姿が見えなくなると、タケシが待ってましたとばかりに口を開いた。
「ではマリさん! 俺たちも早速行きましょうか!?」
「う、うん……。実は私も、みんなを探す前にちょっと行って確かめておきたい場所があるんだけど……」
「ほほう!? マリさんのような素敵な方が行ってみたい場所ですか!? さしずめ、マリさんのように美しく素敵な場所に違いない!
いや! むしろ、マリさんのいる場所は、全て! 常に! 美しいと言っても過言では――ぐはぁっ!?」
――暴走したタケシを止めたのは、またしてもグレッグルのどくづきであった。
◇
「『人間居住地』――ですか?」
「えぇ。もしここが私の知っている『人間居住地』と同じ場所だったら、そこには人間解放軍のアジトがあるはずなの。
人間解放軍のアジトなら何か武器があるかもしれないし、それに――」
「マリさんのお知り合いの方がいる可能性もある――ということですか?」
「うん……」
328
:
ばーさーかーとのそうぐう
◆vyNCf89vh2
:2011/07/15(金) 23:26:41 ID:AjQyxUFM
「なるほど! さすがはマリさん、見事な推測です!
美人なだけでなく頭も冴えているなんて……! このタケシ、ますます貴女の虜に……!」
「言いたいことはわかったから、さっさと先に進みなさい!」
「ハイ……」
真理とタケシは再び森に入ると、コンパスを頼りに北へと進んでいた。
先ほど真理が言っていたとおり、『人間居住地』へ向かうためである。
――ちなみに、現在タケシが先頭、その後ろを少し間を空けて真理、そして、そんな二人の間にグレッグルという形で一行は森を進んでいる。
ここまでの自分と美遊に対する反応の違いから、真理はタケシという男がどのような人間なのか大体理解した。
ズバリこの男――同年代もしくは年上の女性にとにかく目がない軟派者なのだ。
その点を除くと、料理もできるし、美遊のような年下の子に対する面倒見の良さもあるため、頼りになりそうな男なのだが――
啓太郎とは違う意味でしっかりしてほしい男――それが、真理のタケシに対する現時点での評価であった。
もしここにスマートブレインの現社長である村上がいたら、おそらく『中の下』か『下の上』あたりの評価をタケシに下していたことだろう。
「そういえばマリさん。『武器があるかもしれないと』おっしゃってましたが、マリさんのデイパックの中には何か役立ちそうなものは入っていなかったんですか?」
「う〜ん……。入ってなかったというわけじゃないんだけど……」
「?」
「正直言うと胡散臭くて、本当に使える物なのかどうかわからないの」
見た感じは武器っぽいんだけどね、と付け加えながら真理は自身のデイパックからソレを取り出そうとする
だが――
329
:
ばーさーかーとのそうぐう
◆vyNCf89vh2
:2011/07/15(金) 23:29:11 ID:AjQyxUFM
「――ッ!?」
「? どうしたの、タケシ?」
突然、真理の方へ目を向けていたタケシが、言葉にならないほどの驚きの声をあげた。
「ま、マリさん……。後ろ……」
「? 後ろがどうかし――」
ガクガクと右手を上げ、真理の背後を指さすタケシ。
それに釣られる形で真理も振り返る。
振り返った先――真理の数メートルほど後方。
そこには――
――『怪物』がいた。
「■■■■■■――――!!」
未だに闇からは完全に抜け出せない森に、その『怪物』の咆哮が響き渡った。
◇
「――!?」
町村へと繋がる橋を、もう少しで渡り切ろうとしたところで、美遊はその音を聞いた。
大量の木々がバキバキとなぎ倒されていく音を。
おそらく音の発信源は、自分たちが先ほどいた森からだろう。
「まさか――」
美遊の脳裏に一瞬、『嫌な予感』が駆け巡った。
――だが、顔を左右に二、三度振って、それを振り払う。
大丈夫。真理やタケシたちは自分たちと一緒に森の外まで来ていた。
あれからまた、森の中に戻ったとは限らないじゃないか――
『――気になりますか?』
「!?」
側で浮かんでいたサファイアがそう尋ねてきた。
330
:
ばーさーかーとのそうぐう
◆vyNCf89vh2
:2011/07/15(金) 23:32:52 ID:AjQyxUFM
『私は美遊様にお仕えするもの。それ故に、どちらの選択でも美遊様のお供をするだけです。
ですから美遊様。美遊様も自分が本当に正しいと思う選択をなさってください』
主の内心などとっくに見越しているとでも言うかのように、話を続けるサファイア。
それに対して美遊は――
(――あぁ、こういう時だけは自分はこいつに叶わないみたいだ)
などと思いながら、ひとつの決断をした。
彼女の選んだ選択は――
◇
周囲の木々を文字どおり「なぎ倒し」ながら迫る『怪物』――
そんな『怪物』からタケシと真理も文字どおり「全力」で逃げていた。
「な、なんなのよあの化け物は!?」
「ま、マリさんの言っていたオルフェノクという存在とはまた違うんですか!?」
「違うわよ! あんたが言ってたポケモンってやつじゃあないの!?」
「いくらポケモンでも、あそこまで人型で化け物染みたやつはいませんよ!」
真理の知るオルフェノクとも、タケシの知るポケモンともまた違う『怪物』。
その名は、サーヴァント・バーサーカー。
元の世界では、神話の時代において最強の英雄と評された存在であり、やがて現代に最凶の英霊として召喚された者――
言ってしまえば、人間はおろか、オルフェノクや並大抵のポケモンよりも高次の領域に位置する存在だった。
――もちろん、真理やタケシがそんなことを知るわけがない。
現時点の彼女たちからしてみれば、バーサーカーは自分たちの命を狙うただの『襲撃者』に過ぎなかった。
「――というか、なんであんたまで一緒に逃げてんの!? 命に変えても守ってくれるんじゃなかったの!?」
「そ、そうしたいところですけど、グレッグルが既に戦闘不能に追い込まれているんですよ!?
あんな怪物、僕一人じゃ足止めするどころか、どうしようもありませんよ!」
そう。時は数分ほど前に戻るが、バーサーカーと遭遇した直後、タケシは長い間旅を続けていたことで身についた勘から、バーサーカーを即座に危険な存在と判断した。
そして、グレッグルにバーサーカーを攻撃するように指示を出した。
――だが、そのグレッグルは、バーサーカーに向かっていった直後、彼がまるで虫でも払うかのように振った太い腕によって地面に叩きつけられ、一発でノックアウトしてしまったのだ。
当然、タケシもグレッグルをすぐさまモンスターボールに戻す。
そして、次の瞬間には真理と共に「逃走」という行動をとっていた。
331
:
ばーさーかーとのそうぐう
◆vyNCf89vh2
:2011/07/15(金) 23:36:58 ID:AjQyxUFM
「あぁ、もう! どうして私の周りに集まる男はどいつもこいつもろくでもないやつばっかりなのよ!」
「――! 真理さん、危ない!!」
「えっ? きゃっ!?」
突然、タケシが真理の腕を掴み、自身の方へ思いっきり引き寄せた。
こんな時に、この男はいきなり何をするんだ、と真理はその瞬間思ったが、その直後、一本の木が数秒前まで真理がいた場所を「通過」していった。
バーサーカーになぎ倒された木の一本が、真理の方へと飛んできたのである。
もし直撃でもしていたら、最悪の場合、真理の命は一瞬で失われていたかもしれない。
だが、直撃こそしなかったから良かったものの、飛んできた木の勢いに押される形で、真理とタケシは十数センチほどその場から吹き飛んでしまう。
「ま、マリさん! 大丈夫ですか!?」
「え、えぇ……
――!? タケシ!」
「!?」
真理の様子から、思わずタケシが後方に目を向けると、そこにはバーサーカーが今まさに彼に対して腕を振り下ろそうとしている姿が目に映った。
そして、その腕の先端が形作っているものは――間違いなく『拳』。
「うわああああああああああっ!?」
タケシは、無意識に絶叫の声をあげると同時に、肩に提げていたデイパックを、バーサーカーに向かってがむしゃらに放り投げた。
振り下ろされる拳。
それに真正面から当たったデイパック。
――バーサーカーのパンチを真っ向から受けたデイパックは、ぐしゃりという音をたてる間もなく、一瞬で四散した。
だがこの時、デイパックの中に入っていたペットボトルも同時に破裂し、タケシとバーサーカーの周囲に大量の水が飛び散った。
これが幸いとなり、バーサーカーの拳の軌道が若干反れ、タケシはギリギリ――それも本当にあと数ミリというところで――直撃を回避することができた。
「うわっ!?」
だが、バーサーカーの拳が地面に直撃した衝撃で、タケシはまたしても吹き飛ばされる。
その距離はおよそ数十センチ。
先ほど飛んできた木の勢いで飛ばされた時の距離よりも実に二倍以上――それだけでもバーサーカーの持つパワーの凄まじさを物語っていた。
「ぐっ……!」
すぐさま立ち上がる、タケシ。
吹き飛ばされた際に身体を打ったのか、彼の背中や脇腹の一部が少しばかりじんと痛みを発する。
「タケシ、大丈夫!?」
「は、はい。大丈夫――っ!?」
332
:
ばーさーかーとのそうぐう
◆vyNCf89vh2
:2011/07/15(金) 23:39:23 ID:AjQyxUFM
駆け寄ってきた真理に無事を伝えるタケシは、自身の足元に転がっていたあるものに気がついた。
――スマートブレインのロゴがプリントされたアタッシュケース。
すなわち、カイザギア。
どうやら、デイパックが先ほどのバーサーカーのパンチで四散した際に、ここまで飛んできていたようだ。
見たところ、アタッシュケース自体に特に目立った傷はなかった。
運良くバーサーカーのパンチから免れることができたのか、それとも――
「…………」
黙ってアタッシュケースを拾い上げるタケシ。
その時、彼にはそれが自身に対して「使え」と語りかけているように思えた。
カイザギア。
装着した人間をオルフェノクを滅する力を持つ戦士『カイザ』に変身させ、変身後その装着者の命を奪う『呪いのベルト』――
――これを使って自分が変身すれば、目の前の怪物を倒すことはできなくても、真理がこの場から離れるための時間稼ぎにはなるかもしれない!
タケシの脳裏に、ふとそのような考えが浮かぶ。
――だが、変身したら自分は間違いなく死ぬ。
正直に言うと、タケシも自分の命は惜しい。こんな所で死にたくはなかった。
真理から聞いた話では、一部の人間は変身後も死ぬことはなかったそうだが――
「…………」
タケシはアタッシュケースを開けると同時に、中に入っていたベルト――カイザドライバーを瞬時に取り出し、自身の腰に装着した!
「!? タケシ、駄目っ!!」
それを見た真理も、タケシが何をしようとしているのか瞬時に理解する。
すぐさまタケシの腰からベルトを外そうと手を伸ばすが、眼前に突き出された彼の手にそれを静止させられる。
――その手にはグレッグルが入ったモンスターボールがあった。
「グレッグルをお願いします。今はまだ戦うことはできませんが、休ませて元気になれば真理さんを守るために戦ってくれるはずです」
「タケシ、あんた死ぬ気なの!?」
「男にはやらなきゃならない時があるんですよ。それに、自分は命に変えても真理さんを守ると言いました!」
そう言いながら、タケシはアタッシュケースからカイザブレイガン、カイザショットを取り出し、ベルトに装着していく。
そして最後に、カイザフォンを手に取った。
333
:
ばーさーかーとのそうぐう
◆vyNCf89vh2
:2011/07/15(金) 23:40:37 ID:AjQyxUFM
「俺が時間を稼ぎます! その隙に、真理さんはここを離れてください! もし俺が生きていたら、『人間居住地』で合流しましょう!」
そう言い残し、真理の元から駆け出したタケシは、自分たちの方へゆっくりと近づいてくるバーサーカーの正面に立った。
――変身するための方法や、装備している武器の使い方は、真理の説明と付属していたマニュアルからある程度知っている。
後は、それを自分でもできるかどうかだが――
(いくぞ……!)
タケシは慣れぬ手つきでカイザフォンの番号を押し始める。
――9
――1
――3
そして番号を押し終わると、最後に数字の上にある『ENTER』のボタンを押した。
<< Standing By >>
カイザフォンから変身コードの入力完了を知らせる電子音が発せられ、同時に本体が黄色く発光する。
「…………」
無言のままカイザフォンをばっと掲げる。
――この時、タケシは自身の心臓が異常に高鳴っていること、全身が無意識に震えていることに気がついた。
(……まぁ、誰だって死ぬのは怖いもんな……)
そう思い、一瞬ふっと自嘲する。
しかし、考えてみたら大好きな綺麗なお姉さんを守って死ねるというのは自分的には本望かもしれない、とも思いながら。
そして――
「――変身!」
その言葉と同時に、タケシはカイザフォンをベルトのバックル部へ勢い良く下ろした。
――森に、一筋の光が瞬いた。
◇
美国邸の前を、一人の少女が駆け抜けていく。
美遊・エーデルフェルト。
彼女は町村へは行かず、森へ引き返す選択をとった。
真理たちの安否を確かめるため、そして森に存在する脅威を排除するために。
334
:
ばーさーかーとのそうぐう
◆vyNCf89vh2
:2011/07/15(金) 23:43:40 ID:AjQyxUFM
――未だに森の方からは木々が次々となぎ倒されていく音が聞こえてくる。
むしろ、森に戻るにつれ、それははっきりと聞こえてきた。
既に、多元変身(プリズムトランス)は完了している。
身体能力の向上により、思ったよりも早く森に戻ることができそうだ。
果たして、目の前の森にはどのような存在が自身を待ち構えているのか。
真理が言っていたオルフェノクという怪人か。
それとも、タケシが言っていたポケモンという存在か。
はたまた上記以外の別の何かか――
未知なる脅威との接触を前に、美遊は杖状に変化したサファイアを握る手の力を僅かに強くした。
【D-7/美国邸前/一日目 黎明】
【美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:健康、魔法少女変身中
[装備]:カレイドステッキサファイア
[道具]:基本支給品一式、支給品0〜1(確認済み)、タケシの弁当
[思考・状況]
基本:イリヤを探す
1:森にいる未知の脅威を排除する
2:園田真理、タケシの安否を確認したい
3:凛を始め、知り合いを探す
4:真理の知り合いと出会えたら、真理のことを伝える
5:『オルフェノク』には気をつける
6:町村にある『衛宮邸』が気になる。行けるなら行って確認してみたい
[備考]
※参戦時期はツヴァイ!の1話以降
※真理から『パラダイス・ロスト』の世界とカイザギア、オルフェノクについての簡単な説明を受けました
※真理から『乾巧』、『長田結花』、『海堂直也』、『菊池啓太郎』、『木場勇治』の名前を教えてもらいましたが、誰がオルフェノクかまでは教えてもらっていません
※カレイドステッキサファイアはマスター登録orゲスト登録した相手と10m以上離れられません
◇
――森に一筋の光が瞬いた。
光が止むと、そこに立っていたのは――
「……え?」
――タケシとバーサーカーだった。
タケシの手――そこに握られたカイザフォンは、ベルトのバックル部に装着される寸前のところで止まっていた。
そしてバーサーカーの方も、タケシの前方数十センチのところで立ったままピタリとその動きを止めていた。
――いや、止めているのではない。
バーサーカーはタケシの目の前で文字どおり『固まって』いた。
「な、なんで……?」
「タケシ!」
何が起きたのかわからず、頭の上でハテナを浮かべ呆けているタケシの背後から真理の声がした。
「あ、マリさん。いったいこれはどういう……」
「説明は後! それよりも急いでここから逃げるわよ!」
「え? あ、ハイ……」
突然の出来事に、タケシの頭はまだ状況が理解できなかった。
だが、バーサーカーが固まったのは真理の手によるもののようだ。
とりあえずタケシは、真理に言われるがまま、再び逃げることにした。
◇
それから二人は十分ほど全速力で森を走り続けた。
やがて、ある程度走ったところで足を止める。
335
:
ばーさーかーとのそうぐう
◆vyNCf89vh2
:2011/07/15(金) 23:45:25 ID:AjQyxUFM
「こ、ここまで来れば多分大丈夫……かな?」
「そ、そうですね……。
と、ところで、さっきの怪物はどうして固まっちゃったんでしょうかね?」
「コレよ」
先ほどから頭の中で浮かぶ疑問を口にしたタケシに対して、真理は持っていたソレをタケシに見せた。
一見、銃のようにも見える『ソレ』。
偶然にも、タケシはソレが何なのか知っていた。
「それって……確か、Jのハンティング道具……」
そう。真理の持っていたもの――それはタケシたちの世界に存在するポケモンハンター・Jが使うポケモン捕獲用の光線銃であった。
この銃から放たれる光線を浴びたものは、それこそポケモンであろうと人間であろうと、石のように固まって動けなくなってしまう。
先ほど森に瞬いた光の正体は、これから放たれた固化光線であった。
ポケモンハンターJ――タケシがサトシたちとシンオウ地方を旅をしている途中、幾度となく出会い戦った犯罪者である。
珍しいポケモンや強いポケモンを、それこそ野生であろうがトレーナーのものであろうが盗み去り、大金で売りさばくポケモンハンター。
そして、自身が不要と判断したら、狙った獲物であろうと、自身の部下であろうと簡単に切り捨てる冷酷非道な女――
そんなJの使うハンティング道具のひとつがタケシの目の前にあった。
「知っているの?」
「え、えぇ。俺の世界にいるポケモンハンターが使う犯罪道具のひとつです。
実際、俺も仲間たちと何度かそのポケモンハンターと戦ったことがあるんですが――まさかコイツに助けられるとは思いませんでした……」
呼吸を整えながら、簡単に真理の持つ光線銃のことを説明するタケシ。
それを聞いた真理も、なるほどとばかりに頷き、ある程度の理解を示した。
「そうだったんだ……。最初コレを見たときは何かのおもちゃかと思って半信半疑だったけど……
一緒に付いてた説明書にも『生き物に向けて撃つと、対象がしばらくの間石のように固まって動かなくなる』としか書いてなかったし……」
「なるほど……。でも、今回はマリさんのおかげで僕は死なずに済みました……」
そういうわけなので、と付け加えたタケシは真理の手を取ると――
「本当にありがとうございます、マリさん! このタケシ、このご恩は一生忘れません! いつか必ず恩返しをさせていただきます!
なんだったら、今すぐ先ほどの怪物の所に戻って、カイザの力で奴を叩きのめしても――ふごっ!?」
――真理のポケットに入っていたモンスターボールから飛び出したグレッグルのどくづきが、三度目タケシにヒットした。
「ぐ、グレッグル……。お前、復活するの早すぎ……」
グレッグルの毒で痺れながら、その場に崩れ落ちビクンビクンと悶絶するタケシ。
そんな彼を見下ろしながら、真理は呆れたようにため息をつく。
336
:
ばーさーかーとのそうぐう
◆vyNCf89vh2
:2011/07/15(金) 23:48:57 ID:AjQyxUFM
「はぁ……。まぁ、この借りはいずれ返してくれればいいけど、自分の命をあんまり粗末に扱わないで。
ただでさえ、あんたは貴重な仲間なんだから、そうあっさり死なれちゃ私としても迷惑なのよ」
◇
未だに薄暗い森の中、一人の『怪物』がその活動を再開していた。
「■■■■■■――――!!」
『怪物』は動き出すと同時に、せっかく見つけた獲物を取り逃がしたことを理解したのか、その場で一度咆哮をあげた。
それは、獲物を取り逃がしたことに対する悔しさの表れか、それとも単に狂化
そして、再び森の中を当てもなく歩き始める。
次なる獲物を求めて、今度こそ獲物をその手で仕留めるために――
サーヴァント・バーサーカー。
彼が複数保有する命のストックは、この殺し合いの舞台では未だ一度も失われてはいない。
【C-6/森林/一日目 黎明】
【バーサーカー@Fate/stay night】
[状態]:黒化、十二の試練(ゴッド・ハンド)残り9
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
1:■■■■■■
[備考]
※バーサーカーの支給品はデイパックごとエリア『C-7』のどこかに放置されてます
◇
「……ところで、これから先どうしましょう?」
カイザギアをアタッシュケースにしまいながら、タケシは真理に尋ねた。
「そうだね……。このまま『人間居住地』に向かってもいいかもしれないけど、またさっきの怪物と遭遇するかもしれないし……」
真理は先ほど自分たちが遭遇した怪物――バーサーカーのことを思い出す。
大きさ自体は真理がこの『儀式』に放り込まれる直前までいたスマートブレインアリーナの公開処刑場で見たエラスモテリウムオルフェノクほどではなかった。
――だが、その内に秘められたパワーと凶暴性は、間違いなくそれに匹敵、最悪それ以上ものだ。
正直言って、あんな怪物とは二度と鉢合わせたくない。
「――予定を変更して、このまま私たちは北上しましょう」
地図とコンパス、デバイスを一通り確認し終えた真理は、タケシにそう言い放った。
「北上……ですか?」
「うん。今もう一度地図を確認してみたんだけど、ここから北に行くと『人間居住地』とはまた別の調べてみたい場所があることを思い出したから……」
「……何があるんです?」
337
:
ばーさーかーとのそうぐう
◆vyNCf89vh2
:2011/07/15(金) 23:51:40 ID:AjQyxUFM
「……『流星塾』。私が幼少期を過ごした施設と同じ名前の場所」
【B-6/森林(南部)/一日目 黎明】
【園田真理@仮面ライダー555 パラダイス・ロスト】
[状態]:疲労(少)、身体の数カ所に掠り傷
[装備]:Jの光線銃(4/5)@ポケットモンスター(アニメ)
[道具]:基本支給品一式、支給品0〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本:巧を探す
1:『流星塾』へ行く
2:タケシと同行。とりあえず今は一緒に行動。無駄死にされても困るし……
3:怪物(バーサーカー)とはできれば二度と遭遇したくない
4:巧以外のオルフェノクと出会った時は……どうしよう?
5:名簿に載っていた『草加雅人』が気になる
6:イリヤと出会えたら美遊のことを伝える
7:並行世界?
[備考]
※参戦時期は巧がファイズブラスターフォームに変身する直前
※タケシと美遊、サファイアに『乾巧』、『長田結花』、『海堂直也』、『菊池啓太郎』、『木場勇治』の名前を教えましたが、誰がオルフェノクかまでは教えていません
※美遊とサファイアから並行世界の情報を手に入れましたが、よくわかっていません
【タケシ@ポケットモンスター(アニメ)】
[状態]:疲労(少)、背中や脇腹に軽い打撲、身体の数カ所に掠り傷
[装備]:グレッグルのモンスターボール@ポケットモンスター(アニメ)
[道具]:カイザギア@仮面ライダー555
[思考・状況]
基本:ピンプク、ウソッキーを探す
1:真理と同行。素敵です、マリさん!
2:ピンプクとウソッキーは何処にいるんだ?
3:サトシとヒカリもいるらしい。探さないと!
4:菊池啓太郎と出会えたらカイザギアを渡す
5:イリヤと出会えたら美遊のことを伝える
6:『オルフェノク』って奴には気をつけよう
7:万が一の時は、俺がカイザに変身するしかない?
8:並行世界?
[備考]
※参戦時期はDP編のいずれか。ピンプクがラッキーに進化する前
※真理から『パラダイス・ロスト』の世界とカイザギア、オルフェノクについての簡単な説明を受けました
※真理から『乾巧』、『長田結花』、『海堂直也』、『菊池啓太郎』、『木場勇治』の名前を教えてもらいましたが、誰がオルフェノクかまでは教えてもらっていません
※美遊とサファイアから並行世界の情報を手に入れましたが、よくわかっていません
※以下の基本支給品がエリア『C-6』の森の中に落ちています。ただし、何点かは壊れている可能性も高いです
パン×6、デバイス、コンパス、参加者名簿、地図、懐中電灯、筆記用具
【支給品解説】
【Jの光線銃@ポケットモンスター(アニメ)】
DP編に登場する敵キャラクター、ポケモンハンターJが劇中で使用した道具のひとつ。
外見は銃のようにも見える反面、ただのおもちゃのようにも見える。
劇中では主にターゲットとしたポケモンの捕獲用に使用していた。
これから放たれたレーザー状の光線を浴びたものは、石のように固まり動けなくなってしまう。
ポケモンだけでなく人間にも効果があり、劇中では第三世代フロンティアブレーンの一人であるジンダイが、これによって固められてしまった。
劇中では、これによって固められたものは、基本的に専用のカプセルに備え付けられている機能で解除する以外では元に戻せない。
本ロワでは、制限により光線を浴びた生物が固化する時間は5分までに制限されている。
また、固化中の生物は、いかなる方法でも傷つけたり、破壊することはできない。いわゆるアストロン状態。
338
:
ばーさーかーとのそうぐう
◆vyNCf89vh2
:2011/07/15(金) 23:52:14 ID:AjQyxUFM
【カイザギア@仮面ライダー555】
スマートブレインが開発した装着者に戦闘用特殊強化スーツを電送、形成する外部装置のひとつ。
これによって変身(実際は電送、形成された特殊強化スーツを装着)した者を『カイザ』と呼ぶ。
『カイザ』は、オルフェノクまたは『オルフェノクの記号』を埋め込まれた人間の一部(主に草加雅人)を除く『不適合者』が変身すると、変身後肉体が灰化して死亡してしまう。
ただし、変身時の身体能力の向上は、適合者・不適合者に関係なく発揮される。
以下のアイテムがスマートブレインのロゴがプリントされたアタッシュケースに収納されている。
・携帯電話型トランスジェネレーター「カイザフォン」
通常の携帯電話としても使用できる他、「フォンブラスター」と呼ばれる光線銃に変形可能。
フォンブラスターの性能はファイズのものと同様、コード番号「103」で光弾を単発発射する『Single Mode』、コード番号「106」で光弾を3連射する『Burst Mode』になる。
・ベルト型変身ツール「カイザドライバー」
変身コードを入力したカイザフォンをセットすることで、装着者の全身にフォトンストリームを放出。カイザに変身させる。
左右と後部に各種ツールを装着できるハードポイントが設置されており、右側にブレイガン、左側にショット、後部にポインターをセット可能。
・剣・銃一体型マルチウェポン「カイザブレイガン」
ギリシャ文字の「Χ(カイ)」を模した形状をしているカイザ専用装備。
手前にある『コッキングレバー』を引くことで「Burst Mode」の音声と共に濃縮フォトンブラッドの弾丸を放つ『ガンモード』。
カイザフォンのミッションメモリーを挿入すると「Ready」の音声と共に『ブレードモード』が起動、グリップ下部よりフォトンブラッドを帯びた刀身が生成される。
また、『ブレードモード』起動時でも『ガンモード』の射撃は使用可能。
その構造上、基本的に『ブレードモード』の際は逆手で構えることになる。
・デジタルカメラ型パンチングユニット「カイザショット」
カイザの手に装着するとで、パンチ力を強化できる。
通常のデジタルカメラとして、画像、動画を撮影・記録することも可能。
339
:
◆vyNCf89vh2
:2011/07/15(金) 23:57:40 ID:AjQyxUFM
投下終了です
誤字・脱字・ご指摘などがございましたら遠慮無くお願いいたします
・個人的に気になったこと
『パラダイス・ロスト』はキャラクターの基本設定などは一応TV版と同じらしいので、
真理の台詞などに一部TV版の設定も使用させていただきましたが、特に問題ないでしょうか?
それと、丁度今議論になっているカイザギアを登場させましたが、
今回のSSでは変身条件などは基本的に原作準拠の設定という解釈で書かせていただきました
340
:
名無しさん
:2011/07/16(土) 00:02:02 ID:c1LUadQQ
投下おつです。
タケシ……いい活躍だw
美遊にげてー。
>>330
誤字指摘。
>(――あぁ、こういう時だけは自分はこいつに『叶わない』みたいだ)
敵わない、ではないかと。
懸念事項は特に問題ないかと。
本投下たのしみにします
341
:
◆8nn53GQqtY
:2011/07/16(土) 00:02:52 ID:zLTZSDjY
>>339
投下乙です!
まさかこんな支給品があったとは……まさに「この発想はなかった」状態だった。
死ぬと分かっててベルトつけようとするタケシもかっこいいよ!さよならとか言ってすまなかった
他にももっと色々感想はあるけど、本当かの時にとっておきます。
議論中のベルトはいいんじゃないでしょうか
今のところ、実際に変身シーンが描かれたわけではなく、
真理(能力制限に気づいていない)が「装着したら死ぬ」と説明だけしてる状態なので、
後でどうとでもできると思います
342
:
◆LMthJwSLQ.
:2011/07/16(土) 00:25:48 ID:HM.EsOn6
ご意見ありがとうございました
ユフィとスザクの現在地は、
「キラに殺された犯罪者リストが入ったPCの置いてある『警視庁』という建物」ということで修正します
その他、指摘いただいた支給品と、自分で気になった数ヶ所を訂正して
できるだけ朝まで、どんなに遅くとも夕方までには本投下します
343
:
◆zYiky9KVqk
:2011/07/16(土) 14:30:29 ID:PyKQFceM
自分的に色々と不安要素が強いものになってしまった気がするので一旦仮投下してみます
344
:
探し物はなんですか?
◆zYiky9KVqk
:2011/07/16(土) 14:32:46 ID:PyKQFceM
薄暗い暗闇の市街地を走るバイク、サイドバッシャー。
走らせているのは魔法少女、暁美ほむら。
隣に乗っているのはギアスユーザー、アリス。
二人は武器を求めて警視庁に向かっているところだった。
「今どの辺りか確かめてくれる?」
「F-3ね。このまましばらく真っ直ぐ行けば警視庁に着くわ」
地図を見ると、近くにクローバーという施設があるようだが、何の施設なのかまでは分からない。
前を通り過ぎることもあるだろうしそのついでに確かめておけばいいだろうというところだった。
「それにしても日本が占領されてるなんていうのも驚いたものね。
ナイトメアフレームなんてロボット、こっちには存在しないもの」
「そっちのいう魔法少女ってのも大概じゃない?
どんな願いでも叶えてもらえるってかなり胡散臭いと思うけど」
走りながら軽くお互いの世界観についての情報交換も行っていた。
当然ほむらは魔法少女の真実まで話したわけではなかったが。
アリスはもしブリタニアが存在しない世界であればナナリーは皇族ではなく、普通の女の子として生きていけたのだろうかと思い。
ほむらはそんなに戦争による武力侵略の多い世界にインキュベーターがいたらどれだけの魔法少女が祈り、絶望していくことになったのだろうかと思っていた。
サイドバッシャーの時のようにKMFがあればワルプルギスもどうにかできるのではないかなどと考えていたのは内緒である。
そんなこんなでクローバーらしき看板が見えてきた。
「これね。この地図に書いてあるクローバーっていうのは」
「ただのバーよね?」
「特に武器になりそうな物はなさそうだけど…誰かいるみたいね」
「大声で喋って無用心じゃない?」
「まあ無用心なくらいなら危険人物ってこともなさそうね。少し行ってくるわ」
345
:
探し物はなんですか?
◆zYiky9KVqk
:2011/07/16(土) 14:33:56 ID:PyKQFceM
◆
「たっくん!お酒なんか飲んでる場合じゃないでしょ!
真理ちゃんがどれだけ心配してたか分かってるの?!」
「あーもう、うるさいぞ、少し静かにしろ。
てゆうかどうしたんだよ、そんな長い間行方不明になってた奴にでも会ったみたいな反応しやがって」
「たっくんこそ酔ってどうかしちゃったんじゃないの?!」
無用心に大声で会話している彼ら、乾巧と菊池啓太郎は
どちらかといえば巧に会えた事で興奮している啓太郎の声が響いているのだが。
「真理ちゃんを早く探しにいこうよ!
たっくんが生きてるって分かればきっと喜ぶから、ねえ!!」
「…今真理とは――だれかこっちに来てるな。ちょっと静かにしろ」
「え?たっくん?」
啓太郎には何も聞こえなかったが、オルフェノクとして覚醒した巧の聴覚はバイクの音と足音を捉えていた。
「おい、誰だ?」
「お邪魔するわ」
「うおっ?!」
入り口の方から気配を感じ、声を掛けた巧だったが、その返事は背後から聞こえてきた。
振り返ったところには長い黒髪の少女がいた。
◆
346
:
探し物はなんですか?
◆zYiky9KVqk
:2011/07/16(土) 14:35:35 ID:PyKQFceM
「あなた達無用心なのよ。もっと静かに会話できないの?」
「あっ、そ、そうだよね。こんなところで大声出してたら危ないよね…」
特に危険が無いことを確認した暁美ほむらはアリスも呼んで情報交換に入ったのだが、
「ほら、たっくん!たっくんも挨拶して」
「っせえな、出会い頭にいちいち後ろ取りに行くような奴を信用できるか」
乾巧は露骨に会話を避けようとしていた。
「ねぇ、一応謝ったほうがいいんじゃない?」
「………」
アリスはほむらに対し謝るように促すも、何故かほむらは謝ろうとはしなかった。
「……とりあえず話を進めましょうか」
「そうだね…」
アリスと啓太郎はこの何故か会話したがらない様子を見せる二人をおいて、情報交換に入った。
「え…?君たちオルフェノクを知らないの?」
「その口ぶりからするとどうやら当たりのようね。
あなたのいた世界について話してくれないかしら」
「え?うん」
そして啓太郎は話した。
オルフェノクとは人間から進化した新人類の呼び名であること。
彼らの多くは人間を襲うことで仲間を増やしていくこと。
その中にも人間の心を持った者も少ないがいるということ。
そしてそのオルフェノクが数を増やし、人間世界を支配したという話に入ったところでそれまで話に加わらなかった巧が反応した。
「おい、啓太郎。そりゃ何の話だ。
オルフェノクが人間を支配?夢でも見てたんじゃねえのか?」
「何言ってるんだよたっくん。たっくんだってスマートブレインの大部隊と戦っていたじゃん。
それで負けちゃって行方不明になってたでしょ?酔ってそんなことも忘れちゃったの?」
「ちょっといいかしら?」
347
:
探し物はなんですか?
◆zYiky9KVqk
:2011/07/16(土) 14:37:50 ID:PyKQFceM
「つまりあなた達はそれぞれ別の世界から来たということでいいのかしら?」
「え?別の世界?どういうこと?」
アリスとほむらは二人に自分達の仮説についてを話した。
アリスも説明に入った理由は、ほむら一人に任せると話が進まない、そんな気がしたからだった。
「えっと、つまりここにいるたっくんは僕よりも過去から来たたっくんってことになるの?」
「……いや、たぶん別世界ってやつの方だ」
「え?どうしてそう思うの?」
「なんとなくそんな気がするだけだ」
「どうしてそう思うのか私からも聞いてもいいかしら?」
「お前には関係ねえだろ」
「こっちとしても確証は欲しいのよ」
「だからなんで一々お前にまで言わなきゃいけねえんだよ」
「そう。じゃあもう聞かないわ」
引き下がるほむら。啓太郎とアリスはもしこの場にこの二人しかいなかったらどうなったのだろうかなどと考え始めていた。
「で、どうすんだ啓太郎。俺はお前の知ってる俺じゃないみたいだぞ」
「何言ってんのさ。たっくんはたっくんでしょ?
僕や真理ちゃんの仲間のたっくんだよ」
「………」
そう言われた巧は嬉しそうな顔をするわけでもなく、複雑そうにして顔を背けた。
そんな乾巧の様子を暁美ほむらは静かに見ていた。
「それで、一ついいかしら?」
「何?」
「今私たち警視庁まで武器を探しにいくんだけど
もし武器が余ってたら交換してもらえないかしら?
同じ物が三つも支給されてたから困ってるの」
「それはわたしの支給品なんだけどね」
「うーん、でもこっちはこの銃しか武器はなかったし…
たっくん、そっちには何かあった?」
「あ?俺のは…」
348
:
探し物はなんですか?
◆zYiky9KVqk
:2011/07/16(土) 14:40:21 ID:PyKQFceM
そう言ってデイパッグから出てきたのはトランクボックスの形をした何かだった。
スマートブレインのロゴが入ったそれの説明書には、これにファイズフォンをセットすることでファイズの強化形態へと変身することができると書いてあった。
ちなみに肝心のファイズフォンはここにはない。
「そういえばたっくんもファイズで戦ってるんだよね?」
「?ああ、そういう意味か。あれは木場に預けた。あいつが今持ってるかは分からねえけどな」
「そっか、木場さんに…。でもどうして?」
「色々あったんだよ」
「で、他にはないの?」
『ニャー』
「え?」
いきなり聞こえてきたネコの鳴き声。
「そいつだよ。もう一つの支給品ってやつは」
クローバーの椅子の影から出てきたのは一匹の黒猫。どうやらこれが巧の支給品の一つらしい。
今まで眠っていたらしく眠そうにしながらなぜかほむらの傍に寄ってきた。
「…暁美ちゃん?」
「このネコがどうかしたの?」
「…」
その時のほむらはまだ出会って間もないアリスや啓太郎から見ても様子がおかしいということが分かった。
まるでそのネコの存在に驚いているかのように。
「…この猫、連れて行かせてもらってもいいかしら?」
◆
「乾巧、一つ聞いてもいいかしら?」
「何だよ、一々呼び出して」
「たぶん菊池啓太郎の前では聞かれたくないことだと思って」
「……」
「あなた、オルフェノクでしょう?」
「……だったらどうする?」
「別にどうもしないわ。彼に言いつけたりもしない。
ただ、これだけは言わせて。
あなたはあなたであればいいの。人間でないのは私達魔法少女も一緒なのだから」
349
:
探し物はなんですか?
◆zYiky9KVqk
:2011/07/16(土) 14:41:58 ID:PyKQFceM
◆
「ねえたっくん、暁美ちゃんと何の話をしてたの?」
「いや、特に。もしまどかってやつとナナリーってやつに会ったら手助けしてやってくれって」
猫を渡したのち、お互いの参加者についての情報交換を行い、別れる時になってほむらは巧を呼び出した。
何の話なのか気になった啓太郎だったがほむらに付いてくるなと言われて待つこととなっていた。
二人が戻ってきてまもなく、ほむらとアリスはサイドバッシャーに乗り、去っていった。
その後巧と啓太郎もバークローバーから出て目的地も決まってないものの歩きだした。
「てか啓太郎、何だよそのひもは」
「あ、これはアリスちゃんがね。3本持ってるからって僕の持ってたよく分からない薬と交換ってことになって」
使い方の説明も聞いたらしいがなぜひもなのか分からない。
だがもしもの時啓太郎を逃がすのには使えそうであった。
(俺は俺であればいい、か…)
巧はデイパッグに入ったファイズブラスターを思い出しながら考える。
いずれまたファイズとして戦う時はくるのだろうか。
その時までに自分なりに答えを見つけられるのだろうか、と。
だが、もしそれが見つかったとしても、
(もしあの時真理達を襲ったのが俺なら…)
きっと真理に会う資格はないだろう。
それが例え別世界の真理であっても。
もしあれが真実なら、その時は草加か木場に殺してもらうのもいいかもしれない。
草加にはその権利があるし、オルフェノクが増えた世界でも人間として生きてくれているという木場なら後は任せられるだろう。
「あー、でもどうすんだよ。今の俺はファイズにはなれないんだぞ」
「そんなの気にしなくてもいいよ。たっくんと一緒にいられるってだけでも嬉しいし」
その言葉自体は巧にとって嬉しいはずのものだったが、ファイズになれない今、敵に襲われたらあの姿になるしかない。
そしてこの啓太郎は巧がオルフェノクであることを知らないのだ。
「なあ、啓太郎、ちょっといいか?」
「ん?どうしたのたっくん?」
「お前、もし俺が――いや、何でもない」
350
:
探し物はなんですか?
◆zYiky9KVqk
:2011/07/16(土) 14:43:17 ID:PyKQFceM
―もし俺がオルフェノクだとしたらどうする?―
その質問の答えを啓太郎から訊くことができるほどまだ巧の中の覚悟は固まっていなかった。
その時である。
彼らにとって関わりの深いスマートブレイン社、その本社そっくりな建造物の辺りから爆発音が響いたのは。
【乾巧@仮面ライダー555】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:共通支給品、ファイズブラスター@仮面ライダー555
[思考・状況]
基本:殺し合いに乗らずに自分がどうするべきなのかを見つけたい
0:何だ?!
1:自分なりの戦いをする
2:木場、草加達知り合いとの合流
3:ほむらの言ったことは一応気にしておく
4:真理には会いたくない
5:もしあの記憶が本当なら……?
[備考]
※参戦時期は36話〜38話の時期です
※パラダイス・ロストの世界観について把握、啓太郎が自分の世界の啓太郎ではないことを知りました
※暁美ほむら、アリスの知り合いについてだいたい把握しました
【菊池啓太郎@仮面ライダー555 パラダイス・ロスト】
[状態]:健康
[装備]:ニューナンブM60@DEATH NOTE
[道具]:共通支給品、ランダム支給品0〜1(武器類はなし)、あなぬけのひも@ポケットモンスター(ゲーム)
[思考・状況]
基本:巧と共に行動する
0:何?!何の音?!
1:真理ちゃんや木場さん達との合流
2:草加さんはどうしよう…?
[備考]
※ニューナンブM60の予備弾の有無、有していた場合の弾数などは後続の書き手にお任せします
※巧が自分の世界の巧ではないことを知りました
※暁美ほむら、アリスの知り合いについてだいたい把握しました
351
:
探し物はなんですか?
◆zYiky9KVqk
:2011/07/16(土) 14:47:18 ID:PyKQFceM
◆
「ねえアリス」
「何?」
「もし、ここにいるあなたの友達があなたと同じ場所から来ていたら、
その友達が殺されたとき、あなたはどうする?」
「突然何?あんたがその質問をするの?」
「…何でもないわ。今のは忘れて」
クローバーを出た二人は当初の予定通り警視庁へと向かっていた。
乾巧と菊池啓太郎との遭遇は武器こそ得られなかったもののかなり有益な情報を二人にもたらしていた。
オルフェノクの存在。別世界についての仮説のある程度の証明。
「でもあの乾巧って男、信用できるの?」
「恐らく彼が殺し合いに乗ることはないわ。
まどかやあなたの友達のナナリーの力になってくれるはずよ」
彼自身の迷いが収まれば、ではあるだろうが。
人間として生きようとするオルフェノクもいること、啓太郎のオルフェノクに対する思いへの巧の反応。
そしてクローバーに入ったときの人間離れしたように思えた五感。
確証はなく、ただそうではないかというくらいの考えで聞いてみた。
だが正直最初はそこまでのことを彼に言うつもりはなかった。
せいぜい乾巧という人物を確認するという程度のはずだった。
何が彼女をそこまでさせたのか。やはりあの子だろうか。
「で、この猫どうするのよ?」
アリスの腕に抱かれた黒猫。運転中は彼女に預かってもらうことにした。
「あなたが気にする必要はないわ。
面倒は私がみるから。あとその子にはエイミーって名前があるのよ」
一つの約束。
―もしもなんだけどね、私になにかあったらね、エイミーのこと、よろしくね――
暁美ほむらのルーツとも言える友達である、彼女との約束。
352
:
探し物はなんですか?
◆zYiky9KVqk
:2011/07/16(土) 14:49:24 ID:PyKQFceM
この黒猫が彼女が祈りで救ったあの子なのか、それとも別の世界のあの子なのかは分からない。
だがこの子がエイミーであることは間違いない。間違えたりはしない。
たとえ今から進む道が危険なものであったとしても、この子を放って行く事はできなかった。
エイミーに会ってからだろうか。この場でまどかのことがここまで気がかりになり始めたのは。
よく考えるとまどかが自分と同じ世界から連れてこられたという可能性も無くはないのだ。
もしまどかが同じ世界から来たまどかであったとき、そのまどかが死んでしまったとき、私はどうするのだろうか。
きっと、脱出後、また繰り返すことになるのだろう。
ではアリスはどうするのだろうか。
さっきの質問にはそれを聞いておきたいという意図もあった。
しかしもし繰り返すことになっても、せめて最善は尽くしておきたい。
だから味方と思える者はできるだけ確認しておきたかったのだった。
そしてエリアも変わろうかという辺りに差し掛かったころ、彼女達の耳に爆発音が届いた。
音の方に目をやると巨大なビルが倒壊していく光景が目に入った。
「ねえ、あれ」
「今私達がやることは変わらないわ。
少し急ぐべきではあるでしょうけど」
そう、当面の問題はそこから飛び立った憎たらしい仇敵の顔でサイドバッシャーに搭載されたミサイルの試し撃ちをすべきか否か、
――ではなく、武器の補充である。(というかあれはなんなのだろうか?)
暁美ほむら、アリスは能力こそ強力なものだが攻撃力に欠ける。このサイドバッシャーだけでは小回りが利きそうにない。
あのようなことを起こす力をもつ参加者と戦うには心もとないのだ。
「あれに引き寄せられて多くの参加者が集まってくるかもしれない。
危険だけど行ってみるべきでしょうね。それでいい?」
「まあ何かあっても逃げることはできると思うしそれでいいわ」
353
:
探し物はなんですか?
◆zYiky9KVqk
:2011/07/16(土) 14:51:36 ID:PyKQFceM
そう言ってサイドバッシャーを加速させる二人。
鹿目まどか、ナナリー・ランペルージ。
せめてあの場に二人の友達が巻き込まれていないことを願いながら。
『ミャァ…』
アリスの手に抱かれたエイミーの不安そうな鳴き声が響いた。
【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:魔法少女変身中、ソウルジェムの濁り(極少)、サイドバッシャー(ビークルモード)運転中
[装備]:盾(砂時計の砂残量:中)、サイドバッシャー@仮面ライダー555
[道具]:共通支給品一式、ランダム支給品0〜2(武器ではない)、エイミー@魔法少女まどか☆マギカ
[思考・状況]
基本:『儀式』から脱出し、『自身の世界(時間軸)』へ帰る。そして、『自身の世界』のまどかを守る
1:警視庁に行き、武器になりそうなものを集め、その後爆発音の方に向かう
2:情報を集める(特にアカギに関する情報を優先)
3:脱出のための協力者が得られるなら一人でも多く得たい。ただし、自身が「信用できない」と判断した者は除く
4:鹿目まどかを探す。もし出会えたら、その時の状況次第でその後どうするか考える
5:まどか以外の他の魔法少女や知人と遭遇した時は、その時の状況次第で対応
6:可能ならサイドバッシャーを『自身の世界』に持って帰りたい
[備考]
※参戦時期は第9話・杏子死亡後、ラストに自宅でキュゥべえと会話する前
※アリスと互いの世界について詳細な情報を得ました。
※『ギアスユーザー』とは、アリスの世界における『魔法少女』のことだと考えています
※後述する考察をアリスに話しています
※『時間停止』で止められる時間は最長でも5秒程度までに制限されています
※ソウルジェムは近くでギアスユーザーがギアスを発動しても反応することを知りました
※仮面ライダー555の世界観、オルフェノクについて把握しました
354
:
探し物はなんですか?
◆zYiky9KVqk
:2011/07/16(土) 14:52:58 ID:PyKQFceM
【アリス@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:服装はアッシュフォード学園中等部の女子制服、疲労(少)、サイドバッシャーのサイドカーに乗車中
[装備]:あなぬけのヒモ@ポケットモンスター(ゲーム)
[道具]:共通支給品一式、あなぬけのヒモ@ポケットモンスター(ゲーム)、ヨクアタール@ポケットモンスター(ゲーム)
[思考・状況]
基本:『儀式』から脱出し、『自身の世界(時間軸)』へ帰る。そして、『自身の世界』のナナリーを守る
1:暁美ほむらと行動を共にする
2:情報を集める(特にアカギに関する情報を優先)
3:脱出のための協力者が得られるなら一人でも多く得たい
4:余裕があったらナナリーを探す。もし出会えたら、その時の状況次第でその後どうするか考える
5:ナナリー以外の知人と遭遇した時は、その時の状況次第で対応
6:名簿に載っていた『マオ』『ゼロ』『C.C.』が気になる
[備考]
※参戦時期はCODE14・スザクと知り合った後、ナリタ戦前
※暁美ほむらとは互いの世界について詳細な情報を得ました
※暁美ほむらを『違う世界のギアスユーザー』だと考えています
※『魔法少女』とは、ほむらの世界における『ギアスユーザー』のことだと考えています
※後述する考察を暁美ほむらから聞きました
※『ザ・スピード』の一度の効果持続時間は最長でも10秒前後に制限されています。また、連続して使用すると体力を消耗します
※仮面ライダー555の世界観、オルフェノクについて把握しました
【暁美ほむらの考察】
1:アカギは『時間軸と空間軸(パラレルワールド)に干渉する能力』を持っている
2:『儀式』に参加している『プレイヤー』は、アカギの能力によって一人一人違う世界から集められている
3:上記のため、この『儀式』の舞台にいる知人は『自分の知っている知人』ではない可能性が高い
4:アカギが『儀式』を開催した裏には何か明確な理由か目的がある
5:『儀式』の『勝者』になったとしても、『自身の世界』に帰ることができるという保証はない
355
:
◆zYiky9KVqk
:2011/07/16(土) 14:57:51 ID:PyKQFceM
投下終了です
キャラの違いや矛盾がないかということや
エイミーを出してよかったのかという不安があるので問題あれば指摘をお願いします
あと警視庁の件ってどうなってましたっけ?
356
:
名無しさん
:2011/07/16(土) 16:08:38 ID:K4QGnv8k
とりあえずほむらの心のゆらぎについては……前の話への答えとしてはなんとも言えない気がする。
前の話で結構な難題として仕込まれているから尚更。
(ほむらにとっての「本来の自分の世界のまどか」って魔法少女になって死亡済みだから、アリスには嘘を吐いているはず?
あの場面の心理描写はアリス側だったから、ほむらが何を考えていたかは判らないので、どう転んでも有りとも取れる)
エイミーは何か問題有るかな。
・把握がちょっと心配(BD&DVD特典のドラマCD出展)
・自立行動しうる?
・なんで支給されたんだろう、これ
くらい?
357
:
◆zYiky9KVqk
:2011/07/16(土) 17:27:47 ID:PyKQFceM
エイミーに関しては一番気にしてるのは把握の方ですね
あとは一周目から持ってきていることでしょうか
自立行動の方はまあただの猫なのでよっぽどのことがなければ大丈夫だと思いますし
犬や猫自体の支給は他ロワでは割とよくあるみたいですし
358
:
◆8nn53GQqtY
:2011/07/16(土) 17:55:19 ID:cGb8Ruco
個人的に、まどかたちを一周目禁止としているのに、エイミ―を一周目から持ってくるのはちょっと……
本編ではなくドラマCD出典なのも微妙でしょうか
(前者と後者どちらかだけならまだありだと思いますけど、二つも重なっちゃうと……)
あと、警視庁はあくまで「警視庁」ということで決着したはずです
あと個人的には、魔法少女の身体能力アリとはいえ、夜中に気球が飛んでいることまで視認できるものでしょうか?
(いや、キュゥべえのネタを使いたかっただけなのは分かりますがw)
他の参加者のSSでも気球が見えていたことにするべきかという問題もありますし
359
:
◆4EDMfWv86Q
:2011/07/16(土) 18:45:47 ID:0mwGPfzw
気球は、キュゥべえデザインということは白いし、遠方のビルが崩れたのなら補足する可能性はなくはない、程度でしょうか。
エイミーはドラマCD(OPにも一瞬出てるけど)限定で、一週目のみからの登場なのだがどしたもんか。
あと、現在位置が書かれていませんよ。
360
:
◆zYiky9KVqk
:2011/07/17(日) 01:40:55 ID:TUcbNwIM
色々と指摘ありがとうございます
そういえば夜でしたね。その辺りを加筆しておきます
現在地も本投下の時に入れておきます
あとやはりエイミーの件ですね
この場合”エイミー”が支給されていることが問題となるのでしょうか?
修正に影響するかもしれないので聞いておきたいのですが
361
:
◆4EDMfWv86Q
:2011/07/17(日) 01:58:14 ID:Du4frhu6
話に大きな問題があるでもないが、まあない方が都合はいいだろう、ぐらいなものでしょうか>エイミー
スザクのアーサーとかポケモン以外なら代替も可能なのだろうが
362
:
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/17(日) 18:53:56 ID:Vvanpo.M
L、咲世子
仮投下します
363
:
命の長さ
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/17(日) 18:57:12 ID:Vvanpo.M
―――これが、デスノートに書かれる最後の名前です。
全世界を震撼させた最悪の連続殺人事件―――通称、キラ事件。
それは、類希なる二人の天才―――夜神月とLの、死神のノートを巡る戦いでもあった。
そして戦いは、キラの敗北……つまり、夜神月の敗北により終わりを告げた。
だが、その勝利を得る為にLが払った代償は……彼にとっては小さく。
しかし、世界にとってはあまりにも大きなものだった。
―――キラという大きな悪を、倒す為の、小さな犠牲です。
デスノートの効力は絶対であり、そこに書かれた死を覆す事は出来ない。
Lはこのルールを逆手にとり、月がキラである事を暴くべく、自らの頭脳を信じて一つの賭けに及んだ。
『自らの名前を先にノートに書き込み、後に書かれたノートの効果を無効化する』という……暴挙とも取られかねない賭けに。
そう……世界一の探偵L=Lawlietの命は、僅か23日間しかもはや残されていないのだ。
◇◆◇
(……殺し合いと言う名の儀式、ですか……)
364
:
命の長さ
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/17(日) 18:57:39 ID:Vvanpo.M
どこにでもありそうな、至って平凡な中学校―――見滝原中学校の校長室。
そこでLは、デイパックの中にある名簿と支給品を確認しつつ、己が置かれている立場について考えを巡らせていた。
この会場に来る直前。
夜神月がキラであるという事実を証明し、そして死神リュークの手により彼が死亡した後。
Lはキラ事件の終止符を打つべく、残されたデスノートの焼却処分を行おうとしていた。
ノートの消滅を以て、キラとの戦いに完全な決着が齎される……その筈だった。
だが、ノートに火を着ける寸前というところで、Lはあのホールに気がつけば呼び出されていた。
そして後は知っての通り、アカギによる殺し合いの強制だ。
(アカギ……彼の行動は、死神と同じぐらいに性質が悪い。
ある意味ではキラをも超える、最悪の犯罪者ですね)
何の罪もない者達を強制的に拉致し、殺し合いを強要する。
その行いを儀式と呼ぶ事で、己が所業を正当化し……あろうことかその様相を、楽しんでいる様にさえ見える。
それは地上にデスノートを落とし混乱を面白がっていた死神リュークと、同じぐらいに最悪の存在であり。
そして、その主たるキラをも超える犯罪者だ。
(アカギ、貴方にどういった意図があるかは知りませんが、貴方のやっている事は紛れもない『悪』です。
だから私は、貴方を必ず逮捕する……この事件を解決する為に)
ならば、Lがやる事は唯一つ。
一人の探偵として、この事件の主犯たるアカギを逮捕する事。
この馬鹿げた殺し合いを、自らの手でとめる事だ。
365
:
命の長さ
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/17(日) 18:58:05 ID:Vvanpo.M
(そうと決まれば、早速情報を集める必要がある。
一応、あのホールの出来事からだけでも推測できる事柄は幾つかあるが、それだけでは不十分だ)
その為にはまず、誰か参加者から話を聞かなければならない。
アカギと対等の土俵に上がる為の武器―――情報を得る為だ。
何分現状では、相手とこの儀式についての知識が少な過ぎる。
闘いを挑むにしても、敵の正体も目的も見えぬままというのは、不利を通り越してもはや無茶だ。
だから、どんな些細な事でも、荒唐無稽な事でもいい。
兎に角、推理材料を得たいのだ。
(誰か、この殺し合いに乗っていない友好的な人物と遭遇出来れば幸いだが……)
そう都合よく理想的な方向へと物事が運んでくれるなら、苦労はしない。
寧ろこの状況下では、殺し合いに乗った危険人物と遭遇する可能性の方がどちらかといえば高いのだ。
同じ参加者との接触は、極力注意を払いつつ行わねばならないだろう。
その様に、Lが身の振り方について考えていた……矢先だった。
―――ガチャッ。
不意に、何者かがドアノブを握る音が聞こえてきたのだ。
「む……?」
噂をすれば影とはよく言うものの、現実に起これば流石に驚かざるを得ない。
Lは素早くドアへと視線を向けると共に、己の支給品―――クナイを後ろ手に構える。
それと同時に、片足のつま先を目の前にある机の裏へと押し当てた。
もしもドアが開かれると同時に、何かしらの攻撃行為があった場合、机を蹴り上げて盾にする為だ。
理想は銃―――それも拳銃ではなく重火器の類をドアへと向けての開幕威嚇だが、生憎ながら手元にはない。
よって、これが今取れるベストな行動と言えるだろうが……それでも、ベストであって完全ではない。
例えば出てきたのが、ロケットランチャーや対戦車ライフルなんて物騒な代物を持っていた相手だったとしたら、こんな策程度は力ずくで突破されるだろうからだ。
366
:
命の長さ
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/17(日) 18:58:39 ID:Vvanpo.M
しかし……Lはそれを、己の頭脳で補いにかかる。
「そのドアを開けるのは、待っていただけませんか?」
ドアノブが回されようとした瞬間。
Lはすかさずドアの向こうにいる相手へと声をかけ、その動きを制止させる。
どうやら向こうも、この部屋に誰かがいるとは思っていなかったのだろうか、声に驚き動きを止めたようだ。
その様子を察するや否や、Lはすぐに口を開き、迎撃のプランを実行する。
「まずはじめに断っておきますが、私はこの儀式とやらには乗っていません。
ですが、この状況下で他人の言う事を素直に信じろというのは、恐らく無理な話です。
だから、例え貴方がドアを開けた瞬間に私に銃口を突き付けてきたとしても、文句は言いません。
警戒するのは当然の事ですから」
まずLは、自分が殺し合いに乗っていないという明確な意思を相手へと告げた。
それも、己の言葉を信じてもらえなくても結構だと、断言した上でだ。
その様な行動に出た理由は、相手もまた同じ立場であると理解させる事。
『自分もまた、お前を警戒している。
だから、例え武器を向けられたとしても仕方が無い事だ』と、前もって圧力をかける事だ。
こうしておけば、相手は少なからず自分との接触を警戒する。
ドアを開けた瞬間に、銃口を曝されたりするのではないか……と。
そうなれば、相手が殺し合いに乗っている人間であろうとなかろうと、少なくとも出会い頭にすぐさま撃たれるという可能性は低くなる。
もっとも、低くなるだけでゼロには出来ないのだが……
Lはそれを限りなくゼロへと近づけるべく、ここで最大の切り札を切った。
「しかし、私を殺すのは止めておいた方がいいです、お互いの為にも。
何故なら今、私は、私の心臓の鼓動が停止すると共に爆発する強力な爆弾を装備しているからです。
支給品の一つなのですが、説明書によると、この屋敷を一つ吹き飛ばす程に強力な威力を秘めているそうですよ」
367
:
命の長さ
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/17(日) 18:59:13 ID:Vvanpo.M
爆弾と言う名のブラフを。
実際には、そんな爆弾なんて支給も何もされていない。
その場を凌ぐ為だけの、出鱈目もいいとこ出鱈目なのだが……しかし。
ドアの向こうにいる相手には、それを確かめる手段が無い。
ハッタリであると、見抜く事が出来ないのだ。
こうなれば、相手が取るであろう行動は三つに絞られる。
爆発を恐れられてこのまま逃亡するか、逆に自滅覚悟のギャンブルに出てくるか。
―――ガチャッ
そして……接触を、素直に果たしてくるかだ。
「御安心ください、私もこの殺し合いには乗っておりません。
貴方と同じ目的を持つ者です」
ドアを開けて部屋に入ってきたのは、一人のメイド服を着た日本人女性だった。
それも、ただの女性ではない。
この状況下におきながら、非常に落ち着いた言動と物腰が出来ている……そう。
Lと同じく、修羅場というものを何度か経験している人間だ。
「私は、篠崎咲世子と申します。
貴方のお名前を、お聞きしてもよろしいでしょうか?」
彼女の名は、篠崎咲世子。
アシュフォード学園に仕えるメイドにして、SPを輩出する流派・篠崎流の37代目。
黒の騎士団が誇る、白兵戦闘のエキスパートだ。
◇◆◇
「……篠崎さん、本当なのですか?
あなたが、あのキラを一切知らないというのは……」
「はい……L様こそ、本当にブリタニアも黒の騎士団も知らないというのですか?」
368
:
命の長さ
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/17(日) 18:59:43 ID:Vvanpo.M
先の緊迫した出会いより、数分後。
二人は互いに敵意が無い事を確認すると、同じ卓について情報交換に入っていた。
まずLと咲世子は、それぞれの名前や立場、殺し合いに呼ばれた状況等を確かめようとしたのだが……
そこでかわされた話の内容は、両者にとって俄かには信じがたい事ばかりだった。
Lは咲世子に対し、自分がキラを追う探偵である事。
各国の警察組織と共に、キラ事件の解決を図る身であると説明したのだが……咲世子は、キラなど知らないという。
今や世界中が良い意味でも悪い意味でも注目している、あのキラをだ。
Lからすれば、それはあまりにもありえない話だった。
そして咲世子もまた、同様の気持ちを感じていた。
彼女はLに対し、自身がアシュフォード家に仕えるメイドであり、またランペルージ兄妹の世話役である事。
現在は黒の騎士団やブリタニアが広げる戦火より逃れるべく、エリア11から離れている事―――これは、自身が黒の騎士団のエージェントである事を隠す為の嘘なのだが―――を説明したのだが……
Lは、エリア11もブリタニアも、黒の騎士団も知らないというのだ。
咲世子からすれば、それはあまりにもありえない話だった。
己にとっては常識にも等しい事実を、まるで知らないという。
これはおかしい話だ。
その為にお互い、最初は相手にからかわれているのかとも考えたのだが……
流石にこの状況下では、そんな滅茶苦茶すぎる嘘をつく理由がない筈だ。
ならば、この認識の相違には何か原因があるに違いない。
「……なるほど、そういうことでしたか」
そして……Lはその原因を、いち早く察した。
「L様……何か分かったのですか?」
「はい、答えはあの時にアカギが口にしています。
『複数の可能性宇宙から、私達は選ばれた』……と。
つまり私達は、俗に言う異世界……パラレルワールドの住人ということです」
アカギが口にした、可能性宇宙という謎のキーワード。
Lは最初、その意味をいまいち掴みきれていなかったが……
こうして咲世子と話が出来たおかげで、全てはっきりした。
自分達が、異世界より呼び出されたという……俄かには信じがたい真実へと、辿り着くことが出来た。
369
:
命の長さ
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/17(日) 19:00:10 ID:Vvanpo.M
「異世界、ですか……?」
「はい、アカギの言う可能性宇宙とやらが何なのかを考えたところ、その確率が一番高いです。
キラ事件の渦中にあった私の世界と、ブリタニアをはじめとする大国同士が争う篠崎さんの世界。
それぞれより私達が呼び出されたと考えれば、全てに筋が通ります」
Lは己の推理が、限りなく正解に近いものであるという自信があった。
それは、互いの認識の違いを解消できるからだけではない。
他にも多々存在する不可解な点も、一気に無くす事が可能だからだ。
そして、何より……Lは既に、異世界という概念を知っている。
「何せ、篠崎さんには信じ難い事実かもしれませんが……そもそも私は、異世界の存在を知っているんです。
キラ事件の背後にいた、人間とは違う生き物……『死神』が生きる世界を」
死神界。
人間達が生きる人間界に対する、デスノートを使う死神達が生きる世界。
Lはキラ事件を通じ、その存在を知った。
故に今、自分達が違う世界の住人であると、あっさり断言できたのだ。
「他にも、異世界の概念を認めれば、片付けられる問題は多くあります。
第一があのオルフェノクと言う怪物です。
私はあんなものの存在は当然知りませんし、篠崎さんもそれは同様の筈。
一応、単に私達が知らないだけの、所謂社会の闇に紛れた存在と言う可能性も、否定はできませんが限りなく低いでしょう。
逆に一番考えられるのが、異世界に生きる人間とは別の生き物という説です」
その一つが、オルフェノクと呼ばれる異形の存在だ。
人間とも死神ともまた違う、人知を超えた生き物……あれが何なのか、少なくとも自分達の常識では説明が着けられない。
ならば現時点で有力な説は、彼等が死神と同様であるというもの。
『人間が生きる世界の外にいる存在』と言う考え方だ。
「そして第二が、この名簿にある名前です。
篠崎さん、貴方も恐らく確認している筈……正直に話してください。
ここに、おかしな名前はありませんか?」
だが、それ以上に決定的な物的証拠がある……それは参加者名簿だ。
Lはそのページを大きく開き、咲世子に見せつけながら問い詰めた。
もしも自分の推理が間違っていないのなら、ここには彼女にとって不可解な名前が恐らくある。
仮に無かったとしても、少なくともL自身にとっては、この名簿はおかしなものなのだ。
370
:
命の長さ
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/17(日) 19:01:00 ID:Vvanpo.M
「……流石です、L様。
正直、話していいものかを悩んでおりましたが……貴方の言うとおりです。
この名簿には二人程、どうしても気にかかる名前があるのです」
そして、咲世子もそれを認め返事をした。
彼女はLの推測通り、この名簿に目を通し、そして信じられない名前を見たのだ。
既に死亡している筈の人間が一人と……正体が分からぬ、得体の知れぬ名前が二人。
「ユーフェミア・リ・ブリタニア……この方はブリタニアの皇女なのですが、ある事件が切っ掛けで既に死亡しているのです。
ここにいる筈がありません」
一人目が、ユーフェミア・リ・ブリタニア。
彼女はゼロ―――ルルーシュの手によって、間違いなく銃殺された。
それも、死を偽装する事など出来ようも無い大々的な生放送の真っただ中でだ。
生きている筈が無い……だが、確かにこの名簿には名前がある。
「つまり……このユーフェミアという方は、貴方が知っているユーフェミアとは似て非なる人物。
異世界より来た、同一の存在といった可能性が考えられる……ということですね?」
「はい、そういう事になります」
考えられる可能性は、このユーフェミアは並行世界から来た別人という事だ。
恐らく彼女がいる理由は、この儀式場を混乱させることが目的だろう。
死亡した筈の人間がいるという事実……それを受け入れられる者など、まずいないだろうから。
「成る程……では、ついでにお聞きします。
その方はお名前の通り、ブリタニアの皇女と言う事ですが……同じくブリタニアの皇族らしい方が一人いますね。
この、ロロ・ヴィ・ブリタニアという方ですが……」
そう言うと、Lはロロ・ヴィ・ブリタニアの名前を指差し。
そのまま、少し離れた位置にある名前―――奇しくも同じ名を持つ者。
ロロ・ランペルージの位置へと、指を滑らせた。
371
:
命の長さ
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/17(日) 19:01:34 ID:Vvanpo.M
「同じロロと言う名前の方が、一人います。
そして、この方はランペルージと言う性……貴方が世話をしているという、ルルーシュさんとナナリーさんと同じ性です。
これはもはや、偶然として片付ける事は出来ない」
言い終わると共に、Lは視線を咲世子へと真っ直ぐに向けた。
そして、現状で最も正解だと考えられる答えを、はっきり口にする。
「篠崎さん。
ルルーシュ・ランペルージさんとナナリー・ランペルージさんのお二人は、名を偽ったブリタニアの皇族ではないのですか?」
ずばり、ロロ・ランペルージを除いたランペルージ性の人間は、ブリタニアの皇族ではないかと。
「…………」
正解を言い当てられ、流石の咲世子も言葉に困ってしまった。
Lの言うとおり、ルルーシュとナナリーはブリタニアの名を隠している。
だが、それはブリタニアから逃れる為だ……ここで、やたらに明かしていいものではない。
如何に証拠が揃っているとはいえ、「はい、そうです」と主の情報を漏らしては、従者として失格だ。
「……答えられない事情があるという事ですね。
分かりました、ここは敢えて聞かなかった事にします。
少なくとも現時点では、儀式の打破に必要と呼べる情報ではないですからね」
Lもそれを察したのか、深くは追求しなかった。
自身も危険から身を隠すため、多くの偽名を持つ身だ。
それを明かせというのは、確かに抵抗がある……
そして何より、強制をする事で折角できた味方が離れてしまうという事ばかりは避けたい。
だから……少なくとも、今はここまでだ。
「ただ、出来たらこのロロ・ランペルージという方と、ロロ・ヴィ・ブリタニアという方の素姓だけは話してもらえますか?
答えられる範囲で結構ですので」
しかし、二人のロロについてだけは把握をしておきたい。
咲世子がランペルージに仕えている立場である以上、彼女は間違いなくランペルージの保護を優先とする。
Lとて勿論、出来る限りそれに協力するつもりだが……ロロだけは、情報が無いままに接触するのは危険だ。
ロロ・ランペルージとロロ・ヴィ・ブリタニアとを間違えて接触し、その挙句に死亡する事になったりしたら……洒落にならない。
372
:
命の長さ
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/17(日) 19:02:03 ID:Vvanpo.M
「はい……ロロ・ランペルージ様は、ルルーシュ様の弟です。
ただ、少々複雑な事情がありまして、血の繋がりは無いですが……」
「では、ロロ・ヴィ・ブリタニアについては?」
「存じません。
私が知る限りではですが、その様な名前の皇族はいない筈なのです」
「……ふむ……」
咲世子の話を聞き、Lは少々考えた。
ロロ・ランペルージがルルーシュやナナリーの家族というのは、どうやら間違いが無い様だ。
だが、ロロ・ヴィ・ブリタニアの正体は咲世子も知らないという。
これも、異世界の人間として片付ける事は簡単だが……少々厄介な物だ。
仮に、もしこの二人の容姿が全く同じで、しかし片方は善人・片方は悪人だったりしたら……
(相当、場をかき乱されるでしょうね……)
現状では、判断材料が無い。
よって、咲世子には申し訳ないが……二人のロロは、どちらともに現時点では要注意人物として考えざるを得ない。
(この極限状態で、こんなややこしい状況だ。
最悪、人間不信に陥っても無理は無い。
アカギ……あの男、ここまで計算してやっているなら大したものです)
◇◆◇
(……ルルーシュ様と同じ……いや。
それ以上かもしれませんね)
咲世子がLに抱いた感想。
それは、彼が自身の主に匹敵するか……或いは超える頭脳の持ち主だろうという事だった。
ホールでの出来事や名簿からの僅かな情報で、彼はここまでの推理を展開させた。
そして、秘匿としていたルルーシュとナナリーの正体までも見抜いてみせた。
常人離れした、冷徹な観察眼と推理力がなければ出来ぬ芸当だ。
咲世子の知る限り、ここまで頭の切れる人間は精々一人……シュナイゼル・エル・ブリタニアぐらいだ。
それだけに、頼もしくもあり……同時に恐ろしくもある。
373
:
命の長さ
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/17(日) 19:03:58 ID:Vvanpo.M
(この方がルルーシュ様と協力してくれたなら、きっとアカギの企みは簡単に撃ち砕けるでしょう。
ですが、逆に……もしルルーシュ様の敵に回ってしまったら、この上ない強敵になってしまうかもしれません)
咲世子が危惧している事は、Lがルルーシュの敵に回ってしまった時の事だ。
Lは、世界各国の警察組織と協力してキラ事件の捜査に当たっている探偵であり……
そしてルルーシュ率いる黒の騎士団は、世間的にはテロリスト扱いときた。
彼等は、言わば対立関係に当たる者同士なのだ。
故に咲世子は、ルルーシュが皇族である事はばれても、黒の騎士団のゼロである事だけは隠しきった。
何せ彼は、現時点では黒の騎士団を是としてくれるかどうかが分からぬ相手なのだから。
(ただ……ゼロに関しては、ばれる可能性はあまりないかもしれませんね)
しかし……咲世子にとって一つ、思わぬ幸運があった。
それは、参加者名簿に乗っていた得体が知れぬもう一人の人物。
Lにはユーフェミアとロロの『二人』のみが怪しいと言ったが……正確には、もう一人だけいる。
(この、私が知らないゼロという方がいる限りは)
それこそが、他ならぬゼロ―――名簿に刻まれた、もう一人のゼロだ。
ルルーシュこそがゼロであるにもかかわらず、彼とは別にゼロの名前がある。
考えられる事としては、Lが言う様にルルーシュとは似て非なる別人ということだが……
ゼロという名前自体は、はっきり言えば然程凝った名前ではない。
黒の騎士団のインパクトがあるからこそ固定概念として定着してしまっているが、偽名としては寧ろ、十分ありえるありふれたものだ。
もっとも、どちらであろうとも咲世子にとってはあまり関係は無い。
重要なのは、ルルーシュ=ゼロであるという真実を、これで少なからず隠せる事だ。
(ですが……この方の頭脳は油断ならない。
万が一に真実に辿りつき、もしもルルーシュ様やナナリー様の身に何かが及ぼうものなら……)
だが、それでも油断はできない。
あってほしくは無いが、もしもLが何かしらのリアクションを見せたらその時は、この手で始末する事も考えねばならない。
以前、扇が懸命に訴える中であるにも関わらず、ヴィレッタを始末しようとした時の様に。
袂に忍ばせた支給品―――スペツナズナイフの刀身が持つ冷たさを感じつつ、そう咲世子は心に決めていた。
冷酷かもしれないが、それが自身の役目なのだ。
374
:
命の長さ
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/17(日) 19:04:24 ID:Vvanpo.M
「それにしても、篠崎さん」
そう考えていた最中。
不意に、Lより咲世子へと言葉が投げかけられた。
「貴方……随分あっさりと、私の説明を受け入れてくれましたよね?
異世界の事といい、死神の事といい。
普通、もっと驚いたりするものなのですが……一応、理由だけ聞いてもいいですか?」
それは、Lの説明を咲世子があっさりと受け入れた事への疑問。
確かに彼の言う通り、驚いたり拒否したりするのが普通の反応だ。
だが、咲世子はそれをあまりにも簡単に聞きいれてしまった。
その理由は、Lの推理が的を得ていた事も勿論あるが。
もう一つに、彼女もまた人知が及ばぬ力―――ギアスや、人有らざる存在―――C.C.を知っている事が大きかった。
知らぬ者からは『ありえない』と否定するしかない、非常識の領域を知っている。
だからこそ彼女は、同じ非常識の事実を十分に受け入れる事が出来た。
しかし……それを話す事は、出来るならしたくない。
ありのままに話せば、そこからLは間違いなく多くを追及してくる。
そうなれば、間違いなく事はルルーシュにまで及ぶだろう。
よってここは、当たり障りが無く、かつ違和感を持たれることの無い答えをするしかない。
「そうですね……職業柄、でしょうか?」
「職業柄、ですか?」
「ええ、私はルルーシュ様達に仕えるメイドであると同時に、SPでもあります。
篠崎流の37代目として、幼い頃からその術を学んで参りました。
如何なる事があっても動じることなく、冷静に主を守れる様にと……そう教えられてきたのです」
口にしたのは、彼女自身の出自だ。
如何なる状況でも冷静である様に教えられてきた、だから今回も何とか受け入れられる。
その答えは、事実こそ隠しているものの、一切の嘘も無い。
Lにも、否定する要素は無い筈だ。
そう思い、彼を真っ直ぐに見詰めるが……
375
:
命の長さ
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/17(日) 19:04:44 ID:Vvanpo.M
「……SP、ですか……」
「……L様?」
その言葉を聞いた途端。
Lの表情が、僅かながらに変化したのだ。
そこから感じられるのは、今までの様に自分を疑う物ではない。
何と言えばいいのだろうか。
そう……何か、哀愁に近いモノを感じているように見えるのだ。
「L様……どうかしましたか?」
「ああ……すみません、篠崎さん。
篠崎さんの話を聞いて、少し私のパートナー……ワタリの事を思い出したのです」
Lはこの時、咲世子の言葉からワタリの事を思い出していた。
彼は強大な事件に立ち向かう時、いつもパートナーとして側にあり、自身の身を守ってくれた。
またプライベートでも、お菓子や御茶の世話、チェスの相手など、大いに尽くしてくれた。
そんな彼に、Lは誰よりも感謝の意を寄せており……そして。
「そのワタリという方は……L様にとって、大切な人だったのですか?」
「ええ……ワタリは私にとって、最高の執事であり、SPであり。
そして、父親の様な存在でした」
紛れもなく、父と呼べる存在であった。
それだけに……Lは、彼の死を心から悔やんでいた。
キラ逮捕における最大にして唯一の誤算は、ワタリを死なせてしまった事だった。
非常に、申し訳ない事をしたと……それだけが、無念でならなかったのだ。
だからだろうか……こうして彼の事を思うと、無意識にではあるが、僅かながらに態度に顕れてしまうのは。
376
:
命の長さ
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/17(日) 19:05:38 ID:Vvanpo.M
(……L様……)
そんなLの様子を見て、一時とは言え彼に殺意を抱いてしまった事を。
彼が冷徹な人間であると決めつけてしまった事を、咲世子は少しばかり後悔した。
確かにLは、僅かな物事の隙間から、真実を追求するべく容赦なき問いかけをしてきた。
執拗なその仕打ちは一見、非情な様に見えるが……そうではない。
彼もまた、ルルーシュと同じなのだ。
目的の為ならば、手段を選ばない事こそあれど……心の底では、自分以外の誰かを思っている。
ちゃんとした、最も人間らしい『情』を持っているのだ。
ただ、それを上手く表現できないだけだ。
ルルーシュもLも、きっと不器用なだけなのだ。
「でしたら……その方の為にも、絶対に生きて帰らねばなりませんね」
「ええ、その通りです。
ここで私が死ねば、ワタリに申し訳がありません」
それが分かったから。
咲世子は、心の中に芽生えた刃をそっと収めた。
確かにまだ、黒の騎士団等といった不安な要素はある。
いざとなれば、主の為に容赦なく切り捨てる覚悟もある。
だが、今は……少なくともこの場においては、この探偵を信じてみよう。
どこか、主に似ている……この不器用な男を。
◇◆◇
(……これで、当面の行動方針は立てられましたね)
咲世子との情報交換を終えた後、Lは今後どう動くかを彼女に伝えた。
まず第一が、お互いの知り合い―――その中でも、殺し合いを是としない者達と合流する事だ。
特に咲世子は、ランペルージ兄弟達の保護を最優先にしたいと言っている。
彼女の立場を考えれば、それは当然の事だ……だからLも、この点については極力妥協するつもりでいた。
しかし……問題があるのは、寧ろLが知っている者達だ。
何せこちらには、約二人……殺し合いに乗っていてもおかしくない人物がいる。
377
:
命の長さ
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/17(日) 19:06:04 ID:Vvanpo.M
(月君……それに、弥海砂。
二人との合流には、最大限の注意を払わねば……)
それが、夜神月と弥海砂。
キラ事件の主犯たる、二人のキラだ。
彼等はこの殺し合いに乗っている可能性が高く……
加えて言えば、このドサクサに紛れて自分の命を狙う可能性がある。
(特に弥海砂。
彼女は月君を生き残らせる為に、殺し合いに乗る可能性が極めて高い。
それこそ、彼女がキラであるかないかは関係無しに)
Lが知る海砂は、キラ事件終了とともにノートに関する記憶を全て失った。
よって、自身がキラである事ですら忘れているが……それとは関係無しに、彼女は盲目的に月を愛している。
故にこの状況下では、月の為を思い積極的に他者へと危害を加える可能性があるのだ。
そして、もし彼女がLの知る彼女とは違う……キラとしての彼女だったなら、事態はより悪くなるかもしれない。
(一方で月君に関しては、彼がキラだったとしても、殺し合いに乗らない可能性も高い。
私を亡き者にしようと考えは、するかもしれないが……)
その一方、Lは月が殺し合いに乗る可能性は、そう高くは無いと踏んでいた。
歪んでいるとはいえ、彼は彼なりの意志に基づき、キラとしての裁きを行っていた。
しかしこの殺し合いに乗るという事は、その意志に反する行動だ。
そして何より、月は自分と同じく負けず嫌いな性格……殺し合いに乗れと言われて「はい、そうします」と答える筈もない。
寧ろ主催者を相手に、喧嘩を売るに違いない。
(それに……もしも。
もしもここにいる月君が……デスノートに出会わなかった月君だったとしたら……)
少なくとも、ここにいる月はLが知る月ではない。
何せ彼は、Lの目の前でリュークに殺されたのだ。
故にLは、淡い期待ではあるが……ここにいる月が、デスノートに出会わなかった月だったらとも考えてしまったのだ。
彼が歪んでしまったのは、デスノートを手にしてしまったからだ。
だから、もしもそうじゃなかったら……死神にさえ出会わなければ、きっと月は父親同様に立派な警察官となっていた筈だ。
それこそ、Lの名を譲ってもいいと思えるぐらいに。
378
:
命の長さ
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/17(日) 19:06:39 ID:Vvanpo.M
(……希望的観測なのは分かっていますが。
可能性の一つとして……ついつい、考えてしまいますね)
月は、Lにとってはじめて出来た友達だ。
はじめて、対等に語り合えた相手だ。
だから僅かな可能性とは言えど、そう考えたくなるのも、無理は無い話なのだ。
とにかく、全ては会って確認するしかない。
夜神月も弥海砂も……他にも、自分達が知る全ての知り合いが、果たして同じ人物なのかどうかは。
(出来ればその途中で、この刻印……魔女の口付けについても、どうにか謎を解きたい)
もう一つ、Lと咲世子が定めた行動方針。
それは、アカギに刻み込まれた『魔女の口付け』について知る者との接触だ。
アカギの言葉通りなら、この呪術式とやらを知る者が必ず会場のどこかにいる。
その者と出会い、情報を入手したい。
(これがある限り、私達の命はアカギに握られたままだ。
まずはこれを解除しなければ、奴に立ち向かう事は出来ない……)
アカギと闘う上で、呪術式の解除は絶対にクリアしなければならない条件だ。
問題は、呪術については素人である自分達に、それが出来るかだが……
呪術『式』という以上、きっと魔女の口付けは何かしらの法則に基づいて成り立っている。
だから、例え素人だとしても。
その法則さえどうにか崩す事が出来るならば、解除はなる筈だ。
(……この事件、考えなければならない要素はあまりにも多い。
ですが、必ず解決してみせましょう……それが、私の役目なのですから)
379
:
命の長さ
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/17(日) 19:07:18 ID:Vvanpo.M
Lは元より、余命である23日間の全てを、あらゆる事件の解決に捧げようと決めていた。
それがこの世を去るにあたっての、自身が果たすべき責任だ。
だから、このアカギが引き起こした事件も……必ずや、この手で解決してみせる。
(デスノートに書かれた死は絶対だ。
その上で、私がここに呼ばれたという事は……私の寿命は、ここで尽きてしまうのか。
それとも、無事に乗り切り23日目を迎えられるか……ワタリ。
どちらにせよ、私は貴方の元へと近い内に逝く事になります)
デスノートに書かれた死を覆す可能性は唯一、それよりも早く寿命で死亡してしまう事がある。
故に……Lに定められた運命は、二つに一つしかない。
ノートに記した23日間よりも早く、この殺し合いで果ててしまうか。
或いは、この事件を解決へと導き……予定通りの死を迎えるか。
残り僅かなその命を使い、何処まで足掻けるか。
(だからそれまでの間は、どうか私を……私達を、無事に見守っててください)
今は亡き、近々会いに行く大切なパートナーの為にも。
L=Lawlietは……この殺し合いを止めるべく、己の全てを賭ける覚悟にあった。
◇◆◇
「……ところで、咲世子さん。
何か甘いものってありますか?」
「甘いものですか?
それでしたら、私の支給品に『シャルロッテ印のお菓子詰め合わせ袋』というものがありますよ」
「それ、ください。
糖分はすぐにエネルギーに変わるから、考え事をするのには打ってつけなのです」
そして。
こんな時でも、甘い物の摂取を忘れないLであった。
380
:
命の長さ
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/17(日) 19:08:10 ID:Vvanpo.M
【E-7/見滝原中学校/一日目 深夜】
【L@デスノート(映画)】
[状態]:健康
[装備]:クナイ@コードギアス 反逆のルルーシュ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2(本人確認済み)、シャルロッテ印のお菓子詰め合わせ袋。
[思考・状況]
基本:この事件を止めるべく、アカギを逮捕する
1:咲世子と共に、お互いの知り合いを探す。
ただし、夜神月・弥海砂・ロロの三人については極力警戒する。
2:魔女の口付けについて、知っている人物を探す
3:ルルーシュとナナリーの事情については、深くは聞かない
[備考]
※参戦時期は、後編の月死亡直後からです。
※咲世子と、彼女の世界についての大まかな情報交換をしました。
※自分達が、所謂パラレルワールドから集められた存在であると推測しています。
※デスノートに自身の名前を既に書き込んでいる為、デスノートに名を書きこまれても効果がありません。
ただし無効化出来るのはあくまで「ノートに書かれた死」だけであり、致命的な傷を負ったりした場合は、
「ノートに書かれた期限より早く寿命を迎えた」と判断され、ルール通り普通に死亡します。
※ルルーシュとナナリーは、ブリタニアの皇族ではないかと咲世子の様子から推測しています。
※二人のロロに関しては、素姓が分からない為に警戒心を抱いています。
※月を第一のキラとして警戒していますが、同時に、デスノートに出会わなかった彼だったらという僅かな期待も持っています。
※海砂はキラであろうとなかろうと、月の為に殺し合いに乗る可能性があると考えています。
※死亡した筈の月とナオミについては、別世界の人間が呼ばれたと仮定して考えています。
【篠崎咲世子@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:健康
[装備]:スペツナズナイフ@現実
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1(本人確認済み)
[思考・状況]
基本:ルルーシュとナナリーを保護し、アカギを倒す。
1:Lと共に、お互いの知り合いを探す。
ただし、ロロについては極力・ゼロについてはなるべく警戒する。
2:魔女の口付けについて、知っている人物を探す
3:今のところ、Lにルルーシュやナナリーの素姓を明かすつもりはない。
[備考]
※参戦時期は、R2の12話終了後です。
※Lと、彼の世界についての大まかな情報交換をしました。
※自分達が、所謂パラレルワールドから集められた存在であると推測しています。
※ロロ・ヴィ・ブリタニアという見知らぬ皇族と、名簿にあるゼロについては、Lの推理より別世界の同一存在という可能性が一番高いと踏んでいます。
その為、接触する場合は極力注意を払うつもりでいます。
※Lがどこか、ルルーシュに似ている面があると捉えています。
※死亡した筈のユーフェミアについては、別世界の人間が呼ばれたと仮定して考えています。
【クナイ@コードギアス 反逆のルルーシュ】
咲世子が扱う忍び道具の一つ。
高い殺傷力を持ち、短刀としても投げナイフとしても使える万能の武器である。
【スペツナズナイフ@現実】
ソビエト連邦の特殊任務部隊『スペツナズ』で主に使われている、特殊なナイフ。
刀身の射出が可能であり、近接戦闘では勿論、中距離からの奇襲を仕掛ける際にも重宝される。
ただしその再装填は、内蔵されたスプリングの強力さから、極めて困難になる。
【シャルロッテ印のお菓子詰め合わせ袋@オリジナル】
アカギから支給された、魔女シャルロッテの絵柄がプリントされたお菓子の詰め合わせ袋。
中には和菓子洋菓子問わずに、大量のお菓子が詰まっている。
シャルロッテはお菓子を無限に生み出す力がある魔女である為、恐らくはそれに因んだ支給品なのだろう。
381
:
命の長さ
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/17(日) 19:09:00 ID:Vvanpo.M
以上、仮投下終了です。
問題点等ありましたら指摘お願いいたします
382
:
名無しさん
:2011/07/17(日) 22:01:26 ID:YTAOqE3M
投下お疲れ様です。早速読ませていただきました。
大きな問題点はないと思いました。あとは,参戦時期をR2の14話終了後にすればいいと思います。
(「ヴィレッタを始末しようとした」のがR2の14話ですので。)
383
:
◆F3/75Tw8mw
:2011/07/18(月) 00:54:49 ID:p2TbxUts
了解いたしました。
それでは、参戦時期に関して以外は特に問題もなさそうですので、修正したものを本投下致したいと思います。
384
:
◆3.8PnK5/G2
:2011/07/21(木) 00:16:17 ID:DJE0HqBE
ミュウツー、仮投下開始します
385
:
◆3.8PnK5/G2
:2011/07/21(木) 00:17:38 ID:DJE0HqBE
思考回路の深淵に、「人の形をしたもの」と交流した記憶がある。
しかしそれの内容はあまりにも曖昧で、私は一種の妄想ではないかと考えている。
「人の形をしたもの」はもう何体かの生物――恐らくポケモンだろう――と常に行動していた。
「人の形をしたもの」がどのような容姿であったか、引き連れていた生物が種類は何だったのかは、どうしても思い出せない。
記憶の内容からして、私がそれらに様々な知識を教わっていたようだ。
「何処か」を飛び回り、「何か」を学んでいた。
幼い頃の私は、その生物達を信頼し、仲間意識を持っていたらしい。
だがある時、それらは突如消滅する。
消える寸前でも、「人の形をしたもの」は私に知識を与えようとした。
最後に教わった知識とは――――何だったのだろうか。
386
:
◆3.8PnK5/G2
:2011/07/21(木) 00:18:46 ID:DJE0HqBE
* * *
大河と別れたミュウツーは、アッシュフォード学園を訪れていた。
まず目についたのは、学園に刻まれた戦いの痕跡。
コンクリートの壁は砕かれ、庭には大型のクレーターが出来上がっている。
人間にこのような所業が行えるとは、とても思えない。
(ポケモンによるものか?)
この地にてポケモンバトルが行われ、学園はその余波を受けた。
そう考えるのが妥当だが、ミュウツーにとってはどうにも腑に落ちない。
殺し合いの場で、何故ポケモン同士を戦わせたのか。
(もしや……)
ミュウツーに浮かび上がるのは、考えられる中でも最悪の可能性。
『ポケモンの殺し合いの道具として利用』するという、あのサカキの悪行と同レベルの行為。
相手の命を削る為に、ポケモンで襲撃する――認めたくないが、ありえる。
この島には(理由は不明だが)ポケモンの存在そのものを知らない者もいるのだ。
そういった者がポケモンの力を手にしてしまったとしたら、攻撃手段として使ってもおかしくはないだろう。
いや――ポケモンの存在を知っていても、武器として利用している可能性も考えられる。
「ポケモンは人を攻撃してはいけない」というのは、所詮「ルール」に過ぎない。
「ルール」は適用されないこの空間で、それを破る者がいないとは言い切れなかった。
クレーターからそう遠くない地点に、子供――まだ十代になって間もないであろう少年が横たわっているのを発見する。
微動だにしないそれが既に息絶えている事は、誰の目から見ても明白だろう。
戦闘に巻き込まれたのだろうか――いや、だとしたらあまりにも「綺麗」すぎる。
ポケモンバトルを行っている最中に隙を突かれて、銃で狙撃されたと考えるのが妥当だろう。
387
:
◆3.8PnK5/G2
:2011/07/21(木) 00:19:40 ID:DJE0HqBE
それにしてもあの少年の死体、体格や髪型といった特徴が「彼」と一致している。
「面影を感じる」なんて次元の話ではなく、寸分違わずそっくりなのだ。
――まさか。
遺体の着ている服と「彼」が着ていた服も、どことなく似通っている。
そういえば、「彼」も帽子を着用していたか。
死体の方もデザインこそ違うが、帽子を被っている。
――まさか。
ゆっくりと、死体に近づいていく。
その死体の正体を確かめる為に。
自身の「恐ろしい仮説」を否定する為に。
――まさか。
死体の、すぐ目の前に到達した。
少年の顔は、「彼」の顔とよく似ている。
いや、「似ていた」では語弊が生じるだろう。
「同一のものだった」という言い方が正しいと言えた。
間違いない、この死体の正体は――。
(…………サトシ)
目の前に横たわる亡骸は、紛れもなくサトシ本人だった。
自身に潜む「憎しみ」を取り除いたポケモントレーナー。
人間への認識を改めるきっかけになった存在。
そんな彼が、殺し合いの開幕から数時間も経たない内に、殺された。
こんな早くに、よりにもよってこんな形で再会するとは。
ミュウツー自身、思ってもみない事だった。
388
:
◆3.8PnK5/G2
:2011/07/21(木) 00:20:33 ID:DJE0HqBE
しかし、恩人の亡骸を発見したとしても、ミュウツーが激情することはない。
あまりにも唐突で、かつ衝撃的な出来事ではあるが、
それで復讐に走るほど彼は浅はかではないのだ。
だからと言って、彼は加害者を許している訳ではない。
彼の心中には加害者に対する怒りがこみ上げていたし、
殺人の動機によっては、その者に報復を加えなければならないとも考えている。
ミュウツーは問いたかった。
恩人の最期の姿と、殺害の理由を、加害者本人の口から聞き出したかった。
同族を殺した者の姿を通して、人間の「本質」を見抜く為に。
はたして、「人間」の根底にあるのは、
命を尊重し、憎しみを否定する「善」なのか、
命を踏みにじり、憎しみを肯定する「悪」なのか。
こんな殺伐とした場所でも答えを探そうとするのは、
その先に、「ミュウツー」というポケモンが誕生し、今もなお存在している理由があると確信していたから。
この「儀式」で自分はどう動くべきなのかも、その中に記されているだろう。
無論、一人の回答だけで結論を出すつもりは毛頭ない。
この地に呼び出された多くの人間と出会い、問い、思考し、その末に、自身の問いに答えを導き出すつもりだ。
人工的に造り出された「最強のポケモン」の力を誰に振るうべきなのか。
道を指し示すのは、この儀式に連れて来られた人間達。
示した方向次第で、最強の「いでんしポケモン」は更なる精神の進化を遂げるだろう。
尤も、それが人類にとって「最悪の脅威」となるか、はたまた「最良の盟友」となるかは、その過程によるのだが。
389
:
◆3.8PnK5/G2
:2011/07/21(木) 00:26:16 ID:DJE0HqBE
* * *
サトシの服に付着した血液は、大部分が乾いてしまっている。
この様子から考えると、加害者は既にかなり遠くへ逃げてしまっているのだろう。
例え今から追ったとしても、追いつけるとは思えない。
サトシの遺体に目を向ける。
瞳孔の拡大した瞳は、虚空を見上げているだけだ。
彼から帽子を取り、じっくりと見つめる。
そこら中に付けられた細かい傷からは、サトシのこれまでの旅での姿を想像できた。
ミュウツーと別れてからも、彼は多くの者との出会いと別れを繰り返してきたのだろう。
一瞬だけだが、目頭が熱くなるのを感じる。
恩人の最期の姿に、胸を打たれるものがあったのだろうか。
――ありがとう。あなたの涙
名も知らぬ誰かの声が、脳内に現れた。
ミュウツーは声の主を知らないし、それを何処かで聞いた覚えも無い。
にもかかわらず、その声は急に浮かび上がってきたのだ。
それにミュウツーには、泣いた覚えなど一切ない。
ポケモン城でのサトシとの邂逅までは、悲しみのほとんどは怒りに変化していたから、
そういった感情を持つことすらなかったのだ。
ただ、人間の死を悲しむ事は、恐らくこれが初めてだった。
仮にミュウツーが人間だったとするのなら、
科学によって造られたコピーではない、オリジナルのポケモンだったのなら、彼は涙を流していたのだろうか。
(……違う、だろうな……)
人間も、ポケモンも、コピーも、同じ「いきもの」なのだから。
「いきもの」である以上、喜怒哀楽が存在する。
喜怒哀楽があるのなら、「いきもの」は皆、涙を流せるのだ。
涙を流せないのは、ミュウツーがまだ自身の存在意義に悩んでいるから。
どんな形にせよその問題に決着がついたのなら、彼はどんな少量でも『涙』を流せる筈だ。
何故なら、彼もまた「いきもの」なのだから。
390
:
◆3.8PnK5/G2
:2011/07/21(木) 00:31:47 ID:DJE0HqBE
アッシュフォード学園に、一陣の風が吹く。
風はミュウツーから帽子をさらうと、何処かへと飛ばしてしまった。
ミュウツーはそれを取りに行こうとはしない。
風の冷たさを感じながら、「いきもの」の感覚に浸りながら、立ち尽くしていた。
【ミュウツー@ポケットモンスター(アニメ)】
[状態]:健康、頭部に軽い痣
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品1〜3(確認済み)
[思考・状況]
基本:人間とは、ポケモンとは何なのかを考えたい
1:相手を選びつつ接触していく
2:可能なら、サトシを殺した者と接触する。
3:サカキには要注意
[備考]
※映画『ミュウツーの逆襲』以降、『ミュウツー! 我ハココニ在リ』より前の時期に参加
※藤村大河から士郎、桜、セイバー、凛の名を聞きました。 出会えば隠し事についても聞くつもり
391
:
◆3.8PnK5/G2
:2011/07/21(木) 00:32:11 ID:DJE0HqBE
仮投下終了です
タイトルは後ほど
392
:
◆zYiky9KVqk
:2011/07/21(木) 01:08:21 ID:tczqGSGk
仮投下乙です
現在地、時間が記されていないようですが
どうもこちらのSSに関わりそうなので
こちらも一応完成したのですが
付近に与える影響もあるのでまず仮投下して様子を見ようかと
393
:
◆zYiky9KVqk
:2011/07/21(木) 01:10:30 ID:tczqGSGk
弥海砂はアッシュフォード学園を歩いていた。
先ほどの戦いにおいて、サトシ殺害に成功したもののサイドンは戦闘不能、奪ったリザードンも大ダメージを受けていた。
今はこの二匹を回復させなければこれ以上の行動は難しいだろう。
アッシュフォード学園という名は聞いたことのないものだったが、もしここが学校だというのならあるはずである。
怪我をした人が行く場所、保健室が。
ポケモンという生き物に効き目があるのかは分からない。
しかし何かしらの薬は置いてあるだろう。
そう考えて校内を探索中であった。
目当ての部屋を見つけるのにそこまで時間は掛からなかった。
そしてそこで予想外についているものを発見した。
保健室の中に不自然に置いてある機械。
彼女の知識の中にはこのような物が保健室にあるという事実はなかった。
機械の近くに使い方の書いてある紙が置いてあった。
どうやらこれはポケモンをボールにしまってからおくことで中のポケモンを回復させてくれるというものらしい。
今連れているポケモンは二匹。だがこの機械は一回一匹のみ、さらに一度使うと次に使えるのは放送を跨いでからになるらしい。
どちらを回復させるか。迷うべくもなかった。
◆
「さてと、あとはこいつね」
394
:
◆zYiky9KVqk
:2011/07/21(木) 01:11:44 ID:tczqGSGk
美砂は機械にサイドンの入ったモンスターボールを置き、今は屋上まで出ていた。
戦闘不能までダメージを受けたサイドンの全快にはある程度時間が掛かるらしく、その間にリザードンの方をどうにかしておこうと考えたのだ。
保健室にある薬のどれが怪我やダメージの回復になるのかよく分からなかったものの、その中で分かりやすくて使えそうな薬を見つけた。
いい傷薬。これを使うと怪我やダメージをある程度回復させてくれるらしい。
ある程度というのがどれくらいかは分からなかったので置いてあった三つ全部を持って屋上まで出た。
保健室でボールから出すにはリザードンは大きすぎたからである。
ボールからリザードンを出す美砂。
(うーん、やっぱり名前見えないな…)
死神の目をもつ彼女でも人間以外の者の名前を見るのは不可能ということだろうかな。
などと考えつつあの少年の呼んでいた名前を思い出す。
「えっと、リザードン、だっけ?」
―キッ
「グォォォアアアアアア!!!」
「きゃあ!」
話しかけた途端、リザードンは美砂にその鋭い牙で食らいつこうとしてきた。
間一髪で避けるが服の袖が破れた。
「ちょっと何なのよ?!」
かける声に構わず今度は爪で切り裂こうと腕を振り上げてきた。
「止めなさいよ!今あんたの持ち主は私なんだからね!!」
その声を発すると同時にリザードンの動きが止まる。
リザードン本人も戸惑っているようなのが美砂には分かった。
395
:
◆zYiky9KVqk
:2011/07/21(木) 01:14:43 ID:tczqGSGk
「…?
……お座り」
リザードンはその場に座る。
「伏せ」
リザードンは嫌々その場に伏せる。
「なるほど、今は私の持ち物だから言うこと聞くしかないってこと?」
そうと分かれば怖くはない。伏せ続けるリザードンに近付く美砂。
「今は私がご主人様なんだから、ちゃんと言うこと聞いてくれないと困るのよ。分かった?」
「グルルルル…」
リザードンは唸りながら睨みつける。
「今は私が持ち主だって言ってんの!分かったら首を縦に振りなさい!!」
このリザードンも貴重な戦力。肝心なときに言うことを聞いてくれなかったら話にならない。
リザードンを踏みつけながら服従するよう命令する美砂。
それでもこちらをにらみ続けるリザードンの目を見たとき、脳内に一つの出来事が思い浮かび踏みつけるのを止めさせた。
あれはさくらTV祭りの時。第二のキラとして表に出た日。
キラを批判する評論家を、警察官を殺したあの時。
――この人殺し!!
他の皆がキラを崇める中、一人キラを避難する少女がいた。
本来ならばあの場で殺していてもおかしくなかった。
だが、
――人殺し!――人殺し…!
殺せなかった。
あの家族を殺された日の記憶が蘇ってきたから。
(その少女こそ夜神月の妹、粧裕だったのだから結果オーライといったところだが)
396
:
◆zYiky9KVqk
:2011/07/21(木) 01:16:35 ID:tczqGSGk
リザードンの目はその時見た目によく似ていた。
人間ですらない生き物だというのになぜかそう感じた。
(だったら何だって言うのよ…)
もう戻れないのだ。
月のために罪もない警官をあの場で見せしめにし、今また一人の少年の命をこの手で奪った。
いかに非難されようと、月のためだけに人を利用し、殺す。
リザードンを無理やり服従させる気はどこかへいってしまった。
まあ言うことは聞かざるを得ないようだし使えないことはないだろう。
と、何かの音がした気がして外を見ると、ビルが倒壊していく様子が目に入った。
あれほどの事ができるということはよっぽど強い力を持っているかあるいは爆弾でも使った策か何かか。
あの慎重な月があの場にいることはないだろうし行くこともないだろうが、あれは多くの人の気を引くだろう。
(ん?人の気を引く?)
「そうだ!!」
◆
リザードンにおとなしくしているよう指示した後、いい傷薬全てを使い回復させておいた。
その間もリザードンの目つきは変わることはなかったが。
今からやる事の前に回復を済ませておくべきだろうと思い、リザードンのダメージを回復させておいたのだ。
397
:
◆zYiky9KVqk
:2011/07/21(木) 01:17:53 ID:tczqGSGk
「いい?私が合図を出したら大きく鳴くのよ。いいわね?」
「?」
さすがに怪訝そうな顔をするリザードン。
美砂はサトシのデイパッグを漁り、中から彼に支給されていた道具を取り出す。
出てきたのは拡声器。
それを外に向けて大声で叫ぶ。
「誰か助けて!!」
美砂が大声を上げて助けを呼ぶ演技を始めたとき、リザードンはようやくその意味を理解した。
殺し合いに乗った参加者に追われているふりをして人を集め、やって来た参加者をポケモンを使って殺す。
それが美砂の狙いであった。
「私…、こんな所で死にたくない!!
お願い、誰か…きゃああああああ!!」
ぱっ、と。
美砂が大声で叫ぶと同時に合図が出る。
「グオオオオオオオオオォォォォォォォォォ!!!」
美砂の声をかき消すこともできようかというほど大きな鳴き声を上げるリザードン。
それと同時に拡声器を取り落としてその音も響かせる。
「よし、これで大丈夫」
これで危険な何かに襲われている女の子が演じられただろう。
後は他の誰かが来るのを待ち、来たところでサイドンとリザードンで殺せばいい。
もし月が来たならば合流してこの場から去ればいい。
急いでそろそろ回復も終わったであろうサイドンの回収をしなければ。
リザードンをボールに戻す美砂。
(あれ?そういえばさっきの指示だけ妙に素直に従ってたわね…
ん〜、ま、いっか)
そのまま保健室へと戻っていく。
やってくる参加者を二匹のポケモンを使って一網打尽にするために。
398
:
◆zYiky9KVqk
:2011/07/21(木) 01:19:30 ID:tczqGSGk
◆
美砂はあまり頭がよくない。
月やLと比べるのも酷なことであるが、月自身も彼女のその点には気をつけていた。
もし月やLであればこう考えたかもしれない。
これまで反抗的だった生き物がなぜこうも素直に言うことを聞いたのか。
実際その時の鳴き声は美砂の想像していたものより遥かに大きなものであった。
だが、こんな生き物の考えることは分からないと、早々に考えることを彼女は止めてしまった。
だから美砂は気付かない。
ポケモンは彼女の思っている以上に賢いことを。
その鳴き声に含まれたリザードンの叫びの意味にも。
そして、美砂どころかリザードンすらも知らないことだが、
この会場にはその叫びの意味を理解できる者もいるのだということも。
【C-3/アッシュフォード学園 校内/一日目 黎明】
【弥海砂@デスノート(実写)】
[状態]:健康
[装備]:コイルガン(5/6)@コードギアス 反逆のルルーシュ
[道具]:基本支給品×2、モンスターボール(サトシのリザードン・ダメージ小)、不明支給品0〜1 、拡声器
[思考・状況]
基本:月を優勝させるために、他の参加者を殺す
1:サイドンを回収後他の参加者を待ち、月がくれば合流、それ以外は皆殺しにする
2:ポケモンを使っても勝てそうに無い相手からは逃げる
3:リザードンは気に入らないがどうにか戦わせる
[備考]
※参戦時期は、月に会いに大学へ来る直前
※サイドンのモンスターボールは保健室に置いてあります
※アッシュフォード学園を中心に美砂の演技の声とリザードンの鳴き声が響きました
399
:
◆zYiky9KVqk
:2011/07/21(木) 01:21:12 ID:tczqGSGk
仮投下終了です
400
:
名無しさん
:2011/07/21(木) 01:45:36 ID:UFr2SL.o
投下乙です
現在、アッシュフォード学園の周囲8マスにいるのが
・木場
・オーキド、村上
・まどか、草加、総一郎、杏子(予約済み)
・月(アリス、ほむらと予約済み)
・さやか、ゲーチス(予約済み)
・ミュウツー
・大河
・マオ
・ルヴィア海堂組
あと、Nとピカチュウが学園近くのフレンドリーショップに向かってる
個人的に、序盤から大きなフラグバーストはあんまり好きじゃないので
スマートブレイン跡地周辺の参加者に、どっちに行くか選択肢が増えたのは嬉しい
401
:
名無しさん
:2011/07/21(木) 01:48:37 ID:UFr2SL.o
追記
あと、海砂が「美砂」になってる部分がけっこうあるので、そこは修正なさった方が…
402
:
◆4EDMfWv86Q
:2011/07/21(木) 04:02:27 ID:s8tjsMXY
投下乙。なんというシンクロ二ティ。
これは、ミサ保健室に入る→ミュウツー学園に降りる→(ミュウツー去る?)→ミサ助けを呼ぶ という流れだろうか。
あれ、ミサ積んでね?
403
:
◆8nn53GQqtY
:2011/07/21(木) 09:25:19 ID:asLTUO.Q
しかも同じエリアじゃなくピンポイントで同じ施設だから、
他のキャラが助けにくる暇もないという積みっぷり…
いや、深夜〜黎明までの間に、学園に侵入してたキャラがもう一人以上いるかもしれないけどさ
…とりあえず、タイミングと時間帯的に、ミュウツーを描いた人の意見待ちですかね
404
:
名無しさん
:2011/07/21(木) 22:16:42 ID:tIbTwZHA
意見待ちの場合は上げてもいいと思う
重要な局面だし
405
:
◆3.8PnK5/G2
:2011/07/21(木) 22:45:16 ID:DJE0HqBE
時間帯を「一日目深夜」にする事で解決できないでしょうか?
406
:
◆4EDMfWv86Q
:2011/07/21(木) 22:55:30 ID:s8tjsMXY
「ミュウツーが学園に着いたのが深夜帯」ということですか?それなら大丈夫だと思いますが。
あとは、学園を飛び去ったと追記でもすれば大丈夫かと。あくまで余計な保険ですが。
それだと本文中の「サトシの血液は大部分が乾いてる」にちょっと無理が出る可能性も、ある?
……びっちり血が固まるのってどれくらいかかるんだろう。
407
:
◆zYiky9KVqk
:2011/07/21(木) 22:57:08 ID:tczqGSGk
周辺との兼ね合いもあり、
ビル倒壊後から海砂の行動までのタイムラグをもう少し追記しようかと思っているので
それで大丈夫だと思います
408
:
◆qbc1IKAIXA
:2011/07/22(金) 18:56:01 ID:6lnMhZrk
修正版投下します
409
:
名前のない人々
◆qbc1IKAIXA
:2011/07/22(金) 18:57:02 ID:6lnMhZrk
「こんなのありえない……」
草加は鹿目まどかのつぶやきを耳にした。
二つのふさにまとめられた髪型。幼く可愛らしい小顔。
背丈が低く、小動物のような印象を与えている。
昔から想っていた幼なじみを彷彿させる要素はどこにもない。しいて言えば声だろうか。
一瞬だけ真理を重ねたのは気のせいだろうと結論つける。
ここは休憩用に見つけた民家である。夜道に慣れていないまどかを休ませるため、というのは表向きの理由だ。
草加は真理を心配しているとはいえ、闇雲に探しに向かうほど愚かではない。
現状を把握し、周りを警戒して、効率よく真理にたどり着く道筋を探す。
現状はあまりにも情報が足りない。よって、自分のために息を潜める選択をしたのだ。
「杏子ちゃんも、さやかちゃんも、マミさんも……生きているはずはないのにッ!」
まどかは語気が荒くなり、余裕をなくしていく。もともと追い詰められていたが、名簿の確認によって拍車がかかったようだ。
放っておくのも面倒だ。草加の判断は早かった。
「まどかちゃん、落ち着いてゆっくり深呼吸をするんだ」
「で、でも……ッ!」
「いいから。まずは落ち着くことから始めないとね」
爽やかな笑顔を浮かべ、まどかを落ち着かせる。優等生の仮面はつけ慣れていた。
年下の少女を自分の都合のいい方へ誘導するなど、木場勇治を騙すことより簡単である。
彼女は素直に深呼吸をしていた。単純だが現状だと頼るべき相手は自分くらいしかいないのだろう。
ますます好都合だ。
五回目の深呼吸をまどかが済ませたころ、草加は優しげな声をかけた。
「落ち着いたかい?」
「はい、なんとか……。でも、マミさんも、さやかちゃんも、杏子ちゃんも本当は死んでいるはずなんです。
この儀式に巻き込まれただなんて、絶対おかしい……」
「死人が蘇るか。まどかちゃんはそういう噂を聞いたことはないかな?」
「噂?」とまどかは可愛らしく首をかしげた。
死人がよみがえる現象は、草加にとって好ましい現象ではない。
そう、それは――
「ここのところ、死人が怪物の能力と心を持って蘇る事件が発生しているんだ。
奴らは生前と変わらない生活を送りながらも、バケモノとして人を襲う薄汚い連中だ。
それがさっきも話したオルフェノクの正体。つまり、連中は死人がバケモノにされた存在なんだ」
「オルフェノク……待ってください! 草加さんはさやかちゃんたちがオルフェノクになったと言うんですか?」
「残念なことだが、その可能性が高い。生前と変わらないふりをするかもしれないが、騙されてはいけない。
奴らに人間の心は残っていないのだから」
草加が断言しても、彼女は納得しきれていない。
当然ではある。知り合いが自分を襲った怪物と同等の存在になったと聞かされたのだ。
だが、まどかが草加の話を否定するのは別の理由があった。
ゆえに、このときの会話を彼は後に感謝することになる。
「それは――ありえません。だって……だって……」
まどかは大きく息を飲み、瞳を揺らしながら草加を正面に捉えた。
「みんな、キュゥべぇに騙されて、死人同然の魔法少女にされたもの!
もう一回生き返って……バケモノにされるなんてそんなのないよ……」
草加は似つかわしくない単語の組み合わせに眉をひそめた。
魔法少女など馬鹿らしいが、彼女のような年頃で夢見がちなら口にしてもおかしくはない。
しかし、そこにオルフェノクのような『死人同然』という単語が絡んでいた。
興味ないし放っておくことも選択肢に入れたが、すぐに考えなおす。
情報が足りないと認識したばかりだ。それにこの刺青のこともある。
どんな些細な情報でも貴重であるため、流すわけにはいかない。涙をためる彼女に近寄り、白いハンカチを差し出す。
410
:
名前のない人々
◆qbc1IKAIXA
:2011/07/22(金) 18:57:29 ID:6lnMhZrk
「大丈夫、俺は味方だ。涙を拭いて、落ち着いたら話してくれないかな?」
「あ……ご、ごめんなさい……」
「気にすることはないさ。それに俺が年上だからってあらたまって話す必要はない。自然なままで構わないよ」
「はい、わかりまし……わかった」
まどかは感謝するようにハンカチを受け取り、涙を吹きながら身の上を語った。
魔女と魔法少女の戦いに巻き込まれたこと。
華やかな魔法少女の力と、影である魔女の成り立ち。
キュゥべえという理解不能な生物の理不尽な要求。
魔法少女たちが立ち向かわなければならない『ワルプルギスの夜』の絶望感。
すべてを聞いた草加はさすがに情報の処理に困った。
彼女の友人たちがオルフェノクである可能性はたしかに低くなる。
彼女はぼかしていたが、魔法少女はいわゆるゾンビに近い。
魂が遠隔操作するラジコンといったところか。
さすがのオルフェノクも、魂のない死体を怪物と化すのは不可能だろう。
ただし、彼女の話が本当なら。
草加としては貴重な情報だが、鵜呑みにするには危険なものだった。
まどかは少々夢見がちな少女に見える。
何かしら強いショックを受け、現実に耐えられず創りだした妄想、という可能性も捨てきれない。
少し思案し、乱暴でリスクがあるが確実にオルフェノクかどうか確かめる手段を使うことにした。
「そうか……君も苦労したようだ」
「いえ、辛かったのはわたしより、マミさんやほむらちゃんだから。
だから、もしみんな生き返っているなら……ちゃんと確かめたい」
「安心していい。まずは俺が対応する。オルフェノクかどうか確かめる手段があるからね。
それにオルフェノクになる以外で死者が蘇ることは心当たりあるんだ。
むしろそっちの可能性が高いかもしれない」
「本当!?」
まどかが目を輝かせてきた。
草加にとってあまりいい思い出がない方法だ。むしろ最悪だと言っていい。
不快感が込みあげるが表には出さない。ただ、手が気になってウェットティッシュで拭き始めた。
「ああ。そのことに関して今は詳しくは話せないが、可能性はある」
だから希望を持とう、と草加は締めくくった。
素直に従うまどかを観察しながら、地図に目を通した。
気になる施設が一つある。少し遠いが次の目的地としてちょうどいい。
そう結論つけたときだった。
建物が倒壊する轟音が聞こえ、スマートブレイン本社が崩れ去るのを目撃したのは。
□
周囲を警戒しながらも、草加はまどかを連れて外に出た。
街の中央にそびえていたスマートブレイン本社が跡形もなく崩れている。
憎いオルフェノクの象徴であるため、正直胸がスッとした。
だが、個人的感情に流されるわけにはいかない。
これはまずい状況である。スマートブレイン社はかなり大きい。
そのビルを破壊できるほどの力を持つものか、支給品を持った参加者がいるのだ。
さらに真理が巻き込まれているかどうかも心配だが、ここも安全ではない以上離れるのが常套手段となる。
411
:
名前のない人々
◆qbc1IKAIXA
:2011/07/22(金) 18:57:49 ID:6lnMhZrk
まどかという足手まといを伴って向かうのは危険だからだ。
しかし、あちらで真理の安否を確認はしたい。離れるか、向かうか、どちらかはすぐに決めねば。
ぐずぐすしている暇はない。草加は決断の時を迫られていた。
「おお……派手に壊れてんなー」
物見山な少女の声がやけに大きく響く。
イラッとくる態度だ。乱暴に草加が振り向いたとき、声は意外なところから上がる。
「杏子……ちゃん……?」
「おう。なんか死にぞこなったらしい」
タハハ、と引きつった笑顔で、杏子と呼ばれた少女は頬をかいている。
続けて現れた厳つい中年男性が杏子とまどかの談笑を目撃し、「知り合いか?」と訪ねていた。
年季を感じさせる佇まいから、鍛えていることを察する。
少なくとも一般人ではないだろう。しかし、人は良さそうだ。ちょろい。
それはさておき、まどかは彼女自身の知り合いにあったようだ。
当の本人は驚きのあまり、ぼーっと杏子を見つめているだけだったが。
約束もあるので、仕方ないと間に割って入る。
「なんだてめえ?」
「俺は草加雅人、通りすがりの大学生さ」
「杏子ちゃん、草加さんはわたしを助けてくれたの。だからいい人だよ」
「まどかちゃん、ちょっといいかな? 君、杏子ちゃんだっけ?」
「お前にちゃん付けで呼ばれたくねぇよ」
つんけんした態度に内心『使えない』と判断する。この手の人間は見たことがあった。
乾巧と同じく、自分を好きにならないタイプ。いつか始末したほうが無難だろう。
もっとも、今手を出すわけにはいかない。ひとまず、まどかの信頼をより深めたほうがいい。
そう判断して、草加はファイズドライバーを彼女に押し付けた。
「あん?」
「こいつを巻いて携帯電話の五を三回押してから、中央にセットしてくれないかな?」
「おい、なんでそんなことをする必要が……」
「杏子ちゃん、草加さんを信頼して。きっと、悪いようにはならないと思う」
まどかの後押しもあって、杏子が黙る。
草加は続けて後ろにいる中年男性へと指示を出すことにした。
「あの、すみませんがアナタはもう少し左に移動してくれませんか?」
「構わないが……なにをするつもりだね?」
「すぐにわかります」
短く切って、杏子へとさらに押し付ける。鬱陶しそうに杏子は受け取り、こちらの言うとおりにした。
草加は知らないが、普段の杏子なら意地でもこちらの指示に従わない。
まどかとの付き合いが短いというのもあるが、どこかほむらを思い出させる草加は敵対対象である。
しかし、今の彼女は意地を張る気力もない。
何も考えずにベルトを受け取り、腰に巻き付けた。
草加は相手が受け取ったのを確認して、悟られないように動く準備をする。
ボタンのプッシュ音が響き、彼女は面倒そうに中央へと差し込んだ。
412
:
名前のない人々
◆qbc1IKAIXA
:2011/07/22(金) 18:58:20 ID:6lnMhZrk
「これでいいの……うわっ!」
エラーの電子音が高らかに鳴り響く。杏子は悲鳴をあげて、ベルトが弾かれた。
草加は飛んでくるベルトを回収し、杏子は予め指示した位置にいた男が受け止めた。
唖然とするまどかをよそに、草加は相手がオルフェノクではないと理解した。
もっとも、納得しているのは草加ひとりのみ。杏子は立ち上がり姿を一瞬で変えた。
しかし、文字通り変身する彼にとっては、杏子のそれは変身というより着替えに近い。
「てめえ、なにしやがる!」
まどかが止める暇もなく、杏子はフリルのついたスカートを翻して槍を突き出してきた。
自分が「変身」とつぶやいたのは一瞬のこと。赤いブラッドラインを体に巡らせて、草加からファイズへと変わった。
杏子の槍をあっさりと受け止めて、力を流す。
もともと本気で突き殺すつもりはなかったのだろう。軽い。
「その姿はいったい? それに君もその力は……」
「おっさんは黙っていな。少しは楽しめそうじゃん!」
杏子が距離を取り、男が驚愕の表情でこちらを見る。
草加はまどかが静止の叫びを上げそうだと認識して、変身を解いた。
「なんのつもりだ、おい?」
「危険な目に遭わせたのは謝罪する。だけど、こちらにも事情があったんだ」
「うるせぇ! こっちは収まりがつかないんだ。さっさと変身しなお……」
「杏子ちゃん、お願いだから話を聞いてあげて! 草加さん、わたしもどういう事か知りたいです」
杏子は舌打ちをしながら、槍を下ろした。変身を解かないのは当然だろう。
草加は頷いて、一歩前に出る。
「まどかちゃん、これがオルフェノクかどうか確かめる手段なんだ」
「え……どういうことですか?」
杏子と中年男性がついていけず、疑問符を浮かべるがひとまずおいておく。
「このベルトで変身できるのはオルフェノクか……」
草加はわざと悲壮な表情を作った。
同情心を集めておくことに越したことはない。
それに、これから告げる話は心の底に深く突き刺さる事実でもある。
「俺のように改造された人間のどちらかしかいないんだ」
まどかがハッと表情を変える。
あまり他人に言いたくない事実だが、現状を丸く収めるにはこの話しかないだろう。
草加は多少怒りを覚えながら、オルフェノクについて杏子たちに簡単な説明をした。
真実は多少異なる。
正確にはオルフェノクの因子を植えつけられ、適応した人間が人のままベルトを使える。
改造人間と説明した理由は、『魔法少女』という物語に憧れるまどかがいたからだ。
魔法少女がいるのなら、『改造人間のヒーロー』がいても不思議ではない。
少なくとも、まどかはそう思うだろう。
「じゃあ、アタシがそのオルフェノクかどうかって試すためにああしたわけか」
「その通りさ。ファイズになったとしても、すぐに奪い返せるよう準備はしたしね」
「ケッ、気に入らねえ」
杏子はふてくされ、こちらを睨みつけた。
女子中学生の眼光など痛くも痒くもない。
華麗にスルーしたまま、夜神総一郎へ向き直る。
「俺が話した事情はこれですべてです。この儀式の名簿にも何人かオルフェノクが存在する。
あなた方も気をつけたほうがいい」
「ああ、理解した。こちらもキラ事件で超常現象を体験したばかりだ。
413
:
名前のない人々
◆qbc1IKAIXA
:2011/07/22(金) 18:58:44 ID:6lnMhZrk
オルフェノクなどという存在が影にいたとしても、何ら不思議ではない。
ただ、私は警察にいたが黄泉がえりなど聞いたことがない」
「俺もそこは不思議に思っていました。普通に証拠を持って警察に訴えても無視されます。
いや、無視ならまだいい。警察が俺たちを追い回し、敵に回った時もありました」
「……警察にも手を回している存在がいるということか。
『俺』たちは法の番人。その象徴である警察に手を出すなら、何としても追い出してやる」
自分の吐いた嘘を聞き、総一郎の声は怒りに震えていた。
草加は予想通りお人好しだと確認でき、しずかにほくそ笑む。
これまた草加が知らないことだが、夜神総一郎は超常現象を起こした殺人犯が対策本部に潜り込む、ということを経験している。
しかも犯人は彼の息子だった。その時に理不尽さ、無情さ、命が失っていくさまをこれでもかと突きつけられた。
だからだろう。警察を利用する何者かに怒りを燃やし、いつもの彼に戻るのは自然であった。
「ここから脱出したのなら、必ず手を打てるよう検討しよう」
対応は柔軟であったが、草加は警察らしい物言いに内心苦笑した。
さて、ここからが本題だ。
「ところで、園田真理という女性を見かけませんでしたか?」
「すまない。私は彼女とある映画を見ていてな」
「そうですか」
使えないな、と内心見下す。再びスマートブレイン社によるべきか判断に迷った。
もしも彼女になにかあったら、と思うと気が気でない。
河原で母を見失った草加にとって彼女は光なのだ。
安心すべき居場所。自分を理解してくれる女性。
彼女だけは何としても救う。手段を選ぶつもりはない。
結局、自分が動くしかない。
「まどかちゃん、夜神さんたちとしばらくここで隠れていてくれないか?」
「……真理さんを捜したいの?」
「ああ、彼女は俺が守らないといけない。多少危険でも、あそこの様子は見ておかないと」
草加は視線をスマートブレイン社跡地へ向けた。
囮としてまどかを使えないのはもったいないが、それはそれで別にいい。
なにより優先すべき存在が他にいるからだ。
「そういうことですので、まどかちゃんをしばらくお願いします。確かめしだい、こちらに戻りますので」
「そういう事情ならしかたな……」
「お断りだね」
草加の提案を却下したのは、まどかの知人であるはずの杏子だった。
少し前までの無気力はどこにやら。杏子は草加に吹っ飛ばされた怒りからか、いつもの調子に戻っていた。
「佐倉くん、鹿目くんは君の友人ではなかったのか?」
「それとこれは別だ。だいいち、まどかはアタシの目的のために協力してもらっただけだ。友だちってガラでもねぇ」
「杏子ちゃん!」
ひらひらと片手を振る杏子はシニカルな態度を崩さない。
そして、続けてでた言葉は聞き逃せるものではなかった。
「アタシはあんたと違って、草加を信用できない。キザっぽい態度が鼻につくんだよ」
414
:
名前のない人々
◆qbc1IKAIXA
:2011/07/22(金) 18:59:04 ID:6lnMhZrk
やはりこいつは始末しておくべき人間の一人だ。
乾巧といい、この少女といい馬の合わない連中は自分を排除しようとする。
それどころか真理に取り入り、彼女を自分から奪っていくのだ。
杏子と真理を会わせてはならない。優しい彼女は、きっと無粋な少女にも心を許すだろう。
「杏子ちゃん、そんな!」
「黙ってな。だいたい、まどかを最初に守ってくれたのはあんただろ? だから最後まで責任持てよ、ヒーロー」
「俺は最初からそのつもりだ。だが、その前に……」
「前も後もくそもあるか。とっととまどかを連れてこっから離れろって」
ニィ、っと彼女が生気に満ちた笑顔を見せる。
「あっちにはアタシが行ってやるよ。ヒーローとの戦いが中途半端でくすぶってんだ。
真理って奴を見かけたら、よろしくいってやる」
そう言って杏子は足取りを、ビルが存在していた場所へと向けた。
なるほど、まどかは彼女にとっても大切な存在のようだ。
しかし、もしも真理がいたら先に接触してしまう。それは好ましくないが、これはこれで合理的だ。
草加はしぶしぶ納得した。
「佐倉くん、待ちたまえ。合流場所を決めておかないと、真理という少女に接触できたとしても意味がないぞ」
「ああ……そういう面倒くさいことはおっさんに任せるよ。どうせ付いてくるんだろ? こっちで待っているからさ」
杏子は言葉通り、総一郎を待つことにしたようだ。
対して総一郎は気難しい娘を持った父親のように、ため息をついた。
「向こうは彼女と私が向かう。合流場所はどうする?」
「そうですね……」
草加は地図を開き、デバイスの現在位置と比べながらあたりをつけた。
最初にその施設を目にした時から決めていた場所だ。
「少し距離がありますが、流星塾を合流場所にしましょう。ここなら俺の仲間たちも向かうはずです。
なにもない、もしくは真理か俺の仲間を見つけたらここに向かってください。
俺の仲間は園田真理、菊地啓太郎、乾巧です。ただ、乾巧には気をつけてください。
奴は俺や仲間たちを利用しているかもしれない危険人物です。決して気を許しちゃいけない」
「了解した。しかし、期限はいつまでにする?」
「期限は二回目の放送まで。ただし俺とまどかちゃんのどちらかが呼ばれたら、近寄らないようにしてください。
もっとも、彼女は俺が命にかえても守りますが」
「……ああ」
総一郎は感慨深げに返事をした。
少し不審に思って顔を見つめていると、向こうも己の態度に気づいたらしい。
「心配かけてしまった。君と話をしていると息子を思い出してしまってな……。
年が近いだけなのに、まいったよ」
「息子さんですか?」
「良い息子だったよ。あんな事件で、あんなものさえ拾わなければ……いや、気にしないでくれ」
そう言って総一郎はすべての決定事項をこちらに復唱し、杏子の元へと向かっていった。
身の上話はあまりしたくないだろう。されても付き合う気はないが。
「それともう一つ。カイザギアに注意してください」
「カイザギア?」
「このファイズと同じ変身ツールです。こちらは誰でも変身できますが……俺やオルフェノク以外は死んでしまいます。
多くの仲間が命を落としました」
「なんと……」
「見つけたら俺に渡すまでは手を出さないでください。ファイズより付き合いの長いベルトですので、俺なら性能を引き出せます」
「えっ、草加さんはファイズとして戦っていたんじゃ……」
まどかの疑問に対し、用意していた回答をする。
「ああ、少し前にカイザベルトを手放してしまってね。ここ数日はファイズベルトを借りていたんだ」
「そうだったんですか……」
彼女はあっさりと納得した。確認後、草加は総一郎に向き直る。
これでお別れだ。生きて再会できるかは、別の話である。
「それでは草加くん、鹿目くん。お互いに生きて会おう」
415
:
名前のない人々
◆qbc1IKAIXA
:2011/07/22(金) 18:59:22 ID:6lnMhZrk
草加とまどかは総一郎の言葉に返事をする。
杏子はツンとそっぽを向いたままだ。正直どうでもいい。
後ろ髪を引かれる思いであろうまどかを連れて、草加はその場を離れようとした。
「おい、まどか」
杏子がまどかに振り向いて、とびっきりの笑顔を向ける。
「そっちが先にさやかに会ったら任せる!」
それっきり、総一郎を伴って杏子も離れ始めた。
どこか早足なのは気のせいではないだろう。
まどかは嬉しそうに小さな手をめいっぱい振った。
「杏子ちゃんもきをつけてー!」
ぴょんぴょん跳ねて返事をするまどかは、人によっては愛らしいと感じただろう。
口にするほど空気が読めないわけじゃないが、草加には余計な行動にしかみえない。
ふと、乾巧なら遠慮なく余計なことを言っただろう、と思った。
そういうところだけは羨ましい。
「草加さん、ひとついい?」
「構わないよ」
「真理さんって、草加さんとどういう関係なの?」
□
「オルフェノク……死者の復活……」
「おっさん、どうした?」
「いや」とだけ杏子に返し、総一郎は名簿を広げたまま彼女に並んだ。
杏子は最初怪訝に思っていたが、すぐに興味をなくして前を向く。
総一郎はオルフェノクの存在を知って、もう一つ不安要素が増えた。
もしかして、大量殺人犯であるキラ【息子】が復活したのではないか。
最愛であり、間違った道に進ませてしまった息子【キラ】がまた目の前に現れるのではないか。
しかも今度は、文字通り化け物となって。
もっとも、杏子のように人間のまま蘇生した可能性があるが、その場合はキラという大量殺人犯だ。
どの道、息子とは敵対する運命である。
失念していた、と後悔する。キラのことを草加たちに伝えなかったのは、こちらのミスだ。
ならば、と総一郎は静かに覚悟した。
今度はLの手で殺すのではなく、自分の手で息子を逮捕することを。
息子が彼らに出会う前に、決着をつけれるよう祈った。
416
:
名前のない人々
◆qbc1IKAIXA
:2011/07/22(金) 18:59:36 ID:6lnMhZrk
【D-3/住宅街/一日目 黎明】
【仮面少女・草加☆まどか】
【草加雅人@仮面ライダー555】
[状態]:健康
[装備]:ファイズギア@仮面ライダー555(変身解除中)
[道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0〜1(確認済み)
[思考・状況]
基本:園田真理の保護を最優先。儀式からの脱出
1:真理を探す。ついでにまどかに有る程度、協力してやっても良い
2:オルフェノクは優先的に殲滅する
3:流星塾に向かう
4:佐倉杏子はいずれ抹殺する
[備考]
※明確な参戦時期は不明ですが、少なくとも木場の社長就任前です
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:擦り傷が少々
[装備]:見滝原中学校指定制服
[道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0〜3(確認済み)
[思考・状況]
1:草加と行動を共にする
2:杏子、さやか、マミ、ほむらと再会したい
3:草加さんは信用できる人みたいだ
4:乾巧って人は…怖い人らしい
[備考]
※最終ループ時間軸における、杏子自爆〜ワルプルギスの夜出現の間からの参戦
【杏子ちゃんをあんあんし隊】
【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:健康、ストレス少々
[装備]:羊羹(1/2)印籠杉箱入 大棹羊羹 5本入
[道具]:印籠杉箱入 大棹羊羹 5本入×4、不明支給品1(本人未確認)
[思考・状況]
基本:とりあえずビルが崩れたところへ
1:気合入った。さやかを見つけたらなんとかする
2:真理を見つけたら草加たちのことを一応伝える
3:ストレス解消に暴れたい
[備考]
※参戦時期は9話終了後です
【夜神総一郎@DEATH NOTE(映画)】
[状態]:健康
[装備]:羊羹(2/3)羊羹切り
[道具]:天保十二年のシェイクスピア [DVD]、不明支給品1(本人未確認)
[思考・状況]
基本:休んでいる暇はない。ビルの跡地へ向かう。
1:警察官として民間人の保護。
2:真理を見つけ、保護する。
3:約束の時間に草加たちと合流する。
4:月が蘇ったのなら、犯罪者として対処する。
5:折を見て、杏子や草加たちにキラ=夜神月のことを伝える。
[備考]
※参戦時期は後編終了後です
417
:
◆qbc1IKAIXA
:2011/07/22(金) 19:00:14 ID:6lnMhZrk
投下終了。
指摘部分は対応したはずですが、抜けがある部分、対応しきれていない部分がありましたら、
再度指摘をお願いします。
418
:
名無しさん
:2011/07/22(金) 20:13:39 ID:njvFcdTk
>>417
投下乙です。修正された部分は直ってるし、良いと思いますよ
419
:
名無しさん
:2011/07/23(土) 20:43:34 ID:y0hIBxE.
>>「良い息子だったよ。あんな事件で、あんなものさえ拾わなければ……いや、気にしないでくれ」
修正&投下乙です。
指摘というか劇場版を見たことが無い上での疑問なのですが総一郎は月がデスノートを手に入れた経緯まで知っているのでしょうか?
420
:
名無しさん
:2011/07/23(土) 21:58:11 ID:jC6z/KCQ
知らなくても『拾う』と表現するかも
421
:
名無しさん
:2011/07/24(日) 22:25:15 ID:mtzLDw8Q
杏子って変身しなくても槍が出せるから
殺す気がないなら変身しなくても良かったんじゃないだろうか
422
:
◆H.Y.h6sins
:2011/07/25(月) 22:45:54 ID:z4TjbCzY
修正版をこちらに投下します。
修正点は最初の2レス分と最後の2レス分だけですが、一応全体を投下しておきます。
423
:
三者三様の準備期間(修正版)
◆H.Y.h6sins
:2011/07/25(月) 22:50:08 ID:z4TjbCzY
アリスは銃を手に、握り心地を確かめていた。
何時でも狙いを定めて引き金を引けるように。
警視庁の銃器保管室。
それもどうやら警視庁SATという……つまりは特殊部隊用の保管室である。
奥まった上に隔離されており、当然ながら来客用の案内図等にも記されておらず、存在を知る者しか辿り着けない場所だ。
部屋の鍵もすぐ近くには無く、別の偉いさんの個室の鍵の掛かった引き出しの中なんて場所に有った。
セキュリティーは万全だったと言える。
暁美ほむらはやたらと手際よく鍵を盗ってきてそんな部屋を開封して見せた。
どう見ても常習犯である。魔法少女とは一体どんな職業(?)なのか。
しかし開封してすぐ、ほむらの口からは溜息が漏れた。
「半ば予想できていたけれど、腹立たしいわね」
保管室は殆ど空っぽ。
ほむらに連れられてアリスも、他の有りそうな場所を見て回ったがやはり空っぽだった。
それでもここは完全に空っぽではなかっただけマシなのだろう。
「アリス」
「ありがと」
投げ渡された一丁の銃を受け取る。
普段スカート下に隠しているのと同じ位の小さな自動式拳銃で、グロック19というらしい。
カートリッジに十五発、薬室に一発の計十六発が装填されている。
それが合計二丁だけ、この保管室に残されていた。
ほむらとアリスに一丁ずつ、警視庁にあった銃器はそれで全てだった。
(ホルスターは無いから……このサイズならポケットに入れておけばいいか)
自前の足に付ける隠しホルスターは銃ごと没収されていたから、そのままポケットに仕舞い込む。
ほむらはもっと強力な銃器を求めていたようだが、アリスにとってはむしろ手頃なサイズだ。
(たくさん有っても重みが邪魔になるだけよ)
グロックは銃として非常に軽かったが、それでも銃と弾丸という物は大量に持つとかなりの重量になる。
軍人かつギアスユーザーとして相応に鍛えてはいるが、余計な装備を持たないに越した事はなかった。
それに大口径の銃が有ったところでそう差が有るようには思えなかった。
(どうせあのゼロみたいなのを相手にしたら、ライフルも拳銃もただの誤差だ)
なにせアリス自身、後ろ手に縛られ銃で撃たれて高層ビルから突き落とされても、まあどうにか軽傷で済ませた経験がある。
流石に撃たれ方によっては十分死んでいたと思うし、高層ビルからの落下分はザ・スピードを駆使して凌いだ物だが、
暁美ほむらも同程度の事が可能なようだ。
更に同程度の力を持っている者が自分と彼女ら魔法少女だけと考えるのも都合が良すぎる。
この儀式において、携行レベルの銃器では絶対的に火力不足なのだ。
(特にゼロと戦う羽目になったら、ナイトメアフレームが無いと話にもならない)
ナイトメアフレームは全長五m程もある搭乗型ロボットであり、戦争の様相を一変させた強力無比な兵器だ。
人が携行できる銃器など比較にもならない、圧倒的な力である。
魔王ゼロはその精鋭部隊を一人で、しかも生身で壊滅させたらしい。
出力も何もかも並外れている最新鋭の機体に蹴り飛ばされても全然平気だったとか。
挙句、アリスが仲間達とやっとの事で追い詰めた異形のKMF・マークネモを空間転移であっさりと救出した。
人造のギアスユーザーであるアリスとは桁が違う、次元が違う。
あれと戦う為にはギアスの力を増幅する専用機に搭乗するだけではまだ足りない。
もしもあれと戦う事になれば。
「……中和剤が要る、か」
「中和剤?」
自分の分の物色を終えたのか、戻ってきたほむらが聞き返してくる。
アリスは頷いて、答えた。
「そう。……そういえばあんたの支給品、バイクと双眼鏡で全部なの?」
「いいえ。もう一つ、薬らしい物が有ったわ」
「ほんと? それ、見せてくれない」
424
:
三者三様の準備期間(修正版)
◆H.Y.h6sins
:2011/07/25(月) 22:51:23 ID:z4TjbCzY
C.C.細胞抑制剤があれば、多少無茶なギアスの使い方をしても大丈夫だろう。
それに加えて中和剤が有れば、ゼロと戦う為の条件が一つ揃う。
「構わないけど」
果たしてほむらのデイパックから出てきたものは中和剤と注射用のキットだった。
アリスは幸運に感謝し……すぐに、嫌な予感がした。
ほむらに質問する。
「中和剤、ね。それとセットで別の薬はなかった? 細胞抑制剤と書いてあるやつ」
「いいえ、これで私の支給品は全部よ」
「……くそ」
無情にも首を振られて、思わず歯噛みした。
C.C.細胞抑制剤、そしてその中和剤。
前者は紛い物のギアスユーザーであるイレギュラーズが、生きるために摂取し続けている薬剤だ。
アリス達イレギュラーズ体内の魔女の細胞は強い力を与えてくれるが、それは身を蝕む諸刃の剣。
生きる為には細胞抑制剤でC.C.細胞を抑え続ける必要がある。
マオほど切羽詰った状態には無いが、抑制剤が無ければ遅かれ早かれ、アリスも何れ死に至る。
そして中和剤とは、普段投与しているC.C.細胞抑制剤を意図的に中和する為の薬剤だった。
抑制しているC.C.細胞を活性化させる事により、ギアスの力を爆発的に増大させるのだ。
言うまでもなくそれはアリスにとって猛毒である。
中和剤を使った場合、二分以内に細胞抑制剤を再投与する必要がある。
細胞抑制剤の投与が遅れればたちまちアリスは魔女の細胞に“取り殺されて”しまうだろう。
無論、細胞抑制剤無しでの中和剤使用など完全に自殺行為だ。
僅か二分間の神速の後に、アリスの体は醜い肉塊と化し朽ち果てる。
「単体じゃ使えないっていうのに。まあいいわ。私の穴抜けひも一本とそれ、交換してくれない?」
「ええ、構わないわ」
とはいえ細胞抑制剤を手に入れる事が出来れば有用だ。
アリスは穴抜けひもと交換で中和剤のキットを受け取り、デイパックに放りこんでおいた。
「それと、あなたにとって武器になる物が使えなかったみたいだけど、気に病む必要は無いかもしれないわ」
「どういう意味?」
「私達の能力が制限されているという事の、意味よ」
ほむらはそう言って、壁に向けて拳銃を構えてみせる。
蛍光灯に照らされた白い壁。窓の無いこの部屋では明かりをつけても外に漏れる心配は無い。
トリガーが引かれ、乾いた音と共に壁に穴が開いた。
硝煙の臭いがほのかに漂う。
火薬式の銃の煙にアリスは眉をしかめ、足元に居た黒猫は怯えて物陰に飛び込んだ。
「銃弾の火薬量は減らされていないようね」
「それがどういう」
聞き返そうとして気づく。
「そうか。もしこの『儀式』の参加者の特異能力が抑えられていて、銃器の威力が変わらないとしたら……」
「ええ。元の世界では銃が通用しなかった相手も、銃で殺せるかもしれない。
全体の制限が強ければ強いほど、銃で戦える私達は有利になるわ」
希望のある話だった。
要するにこの島でならゼロも、最新鋭のナイトメアフレームで蹴り飛ばせば倒せるかもしれないのだ。
だから何処から持ってくればいいんだ、そんなもの。
「……ちょっと弱体化されていても、携行火器じゃ勝てそうにないのが一人居るわ」
「危険な相手なのね」
「魔王よ」
「そう」
魔王ゼロは弱者救済を掲げる黒の騎士団の総帥なのだから、必ずしも危険とはいえない。
だが所属組織は敵対しているし、マークネモを救出に現れた時、ナイトメアフレームに搭乗していたとはいえ見られてもいる。
ザ・スピードの動きを見せれば気づかれてしまうかもしれない。
そして生身でゼロに狙われれば、逃げる他に選択肢は無い。
別世界のゼロのはずだからといって、もしも同じような能力で敵対して現れたらと思うととても楽観できない。
警戒するに越したことはなかった。
425
:
三者三様の準備期間(修正版)
◆H.Y.h6sins
:2011/07/25(月) 22:52:11 ID:z4TjbCzY
ほむらは物陰に飛び込んだ猫を宥めようとしているが、火薬の臭いが付いてしまったせいか怯えられている。
溜息を吐いて、代わりに猫を捕まえてやった。
右手で銃を握ったまま左腕で猫を抱いて、ふと尋ねる。
「そういえばあんたの知り合いでそういう厄介な相手って居るの?
確か美国織莉子と呉キリカは危険だって言ってたけど」
「そうね。未来視と加速能力の連携が脅威よ。
それ以上に闇討ちや、学校を標的にしたテロと、手段を選ばない事が危険だけれど」
「最低ね、それ」
警戒で胸がざわめく。
その二人も魔法少女で、見た目はほむらやアリスと同じく普通の少女だという。
そんな奴らがナナリーに近づいたらと思うと、怖気がした。
すぐに違う世界のナナリーだと思い直すが、やはり怖気は消えない。
(こいつはどう折り合いをつけてているんだろう)
並行世界に関してアリスは門外漢で、暁美ほむらの方が専門家だ。
それに加えて鹿目まどかについて語る時、アリスは彼女の中に自分を垣間見た。
ほむらの言葉を信じていいと判断したのだ。
だけど感情は別だった。
今だって何もかもかなぐり捨ててナナリーを捜しに走りたいと思っている。
(あんたも同じ気持ちのはず……なのよね)
並行世界という概念を知ったばかりで実感が追いついていないのかもしれない。
気持ちがざわざわと落ち着かない。
暁美ほむらは今、どんな気持ちでいるのだろう。
そんな気持ちを露知らず、ほむらは話の続きに、
「後は……ある意味では巴マミも、かしらね」
表情に明確な陰りを落としながら、付け足した。
「何か訳ありそうね」
アリスの言葉にほむらは頷き。
「ええ。でもこの話の続きはそこで立ち聞きしている男に話を聞いてからにしましょうか」
「ま、そうね」
二人で同時に振り返り、部屋の入り口へと銃を向けた。
「出てきなさい。居るのはわかってるんだ」
……ほんの少しだけ間があって。
ゆっくりと、両手を上げた青年が歩み出てきた。
「立ち聞きしてすまない。だけど話を聞いてもらえるのはありがたいよ」
申し訳なさそうな表情と、武器を持たない手に敵意は感じられなかった。
ただ、その瞳の奥には何か強い意志が秘められていた。
まるで世界すら変革しようという、強い意思が。
「僕の名は夜神月、警察官の息子だ。危険人物の情報を共有したいと思っている」
* * *
警視庁の、休憩室の一つで。
コポコポという音と共に、芳しい香りが広がる。
ひとまずは落ち着いて話をしようと、コーヒータイムが提案されたのだ。
アリスは「呑気すぎない?」と疑問を呈したが、情報交換の重要性は理解している。
それに銃器の調達に掛かった時間を考えると、今から西の爆発現場に向かっても間に合わないだろう。
戦闘が終了する程度の時間は経過していた。
426
:
三者三様の準備期間(修正版)
◆H.Y.h6sins
:2011/07/25(月) 22:53:01 ID:z4TjbCzY
「まずは冷静に、落ち着く事が肝要だよ。こんな時だからこそ、ね」
そう言うと月は、アリス達が用意したカップでコーヒーを飲んでみせた。
毒殺を疑ってはいないというアピールだろう。
それでもほむらはコーヒーに口をつける事なく、淡々と問を口にした。
「それで、あなたの側から得られる情報はどんな物なのかしら」
「ああ。殺人鬼キラと、それに協力する集団の話だ」
月の話によるとL、ニア、メロ、松田桃太、南空ナオミの五人。
この五人は殺人鬼キラに加担し、キラ事件を追っていた月に濡れ衣を着せ偽のキラに仕立て上げた悪人だという。
また、名前を書くだけで人を殺せるノート等も恐ろしく興味深い話だった。
しかしアリスは一つだけ、聞いておきたい事があった。
「この儀式に居る五人が、あなたの知る五人だという確証は有るの?」
「……どういう事だい?」
「私が説明するわ」
月の疑問に、ほむらが答えた。
暁美ほむらの考察……この『儀式』の参加者は一人一人が違う世界から集められている、という話を。
「つまりこの儀式に居るその五人は、あなたの知る物とは違う世界の者達という事よ」
「それは……まさか。いや、ならば少しだけ訂正させて貰えるかな」
思考が早い。
数瞬で思考を整理したらしく、月は訂正を口にした。
松田桃太は、他の者達に唆された可能性が有ると。
「僕の世界の彼は、無実の僕を裏切り嵌めた男だ。だけどそれまでは信頼関係に有ったはずなんだ。
それは僕の勘違いだったのかもしれない。
だけど彼に出会ったらそれぞれが別の世界の人物という話と共に、確認をしてみて欲しい。
例えば彼がもし僕をキラと言うならば……やはり彼は、同じ人物だ」
「他の人達は?」
「残念だけれど、世界が違ったとしても同じ名前を与えられ同じように育ったとすれば、分かり合える人間には思えない」
月は更に話を続ける。
ゲーチスという男と、美樹さやかという少女に出会ったという。
「そう。美樹さやかに出会ったのね」
暁美ほむらが、軽く目を細める。
「どういう風に言っていたかは予想が付くけど」
月は頷き、気まずげに口にする。
「ああ。彼女は君をひどく扱き下ろして、巴マミを賞賛していたけれど……」
「……美樹さやかとは反りが合わないし、誤解もあるけれど正す気も無いわ。
それと巴マミは基本的に善良な魔法少女よ。おかしな事ではないわ」
ほむらはあっさりとそう認めた。
だがそれならば、ある意味で危険というのはどういう事なのか。
ほむらの表情には憂いが見えた。
「彼女は正義の味方である事に依存しているのよ。それが場面によっては危険という事。
一度崩れれば、短絡的な行動に出てしまう程に」
「美樹さやかの話とは少し違うな」
「彼女は前しか見えないのよ。時折本質を見抜くけれど、大抵は表面上しか見えていない」
「彼女よりも巴マミについて詳しいのかい?」
「ええ。この世界の巴マミは全くの別人でしょうけど、かつて、私が居た世界の彼女は魔法少女としての、
先輩のようなものだったわ。……多分、本質は同じはずよ」
そこまで問答を繰り返してから、暁美ほむらは息を吐いた。
「話しすぎたわね。それより聞きたい事があるのだけれど」
そう言ってほむらは質問を投げかけた。
アカギに関して判る事は無いか?
427
:
三者三様の準備期間(修正版)
◆H.Y.h6sins
:2011/07/25(月) 22:54:13 ID:z4TjbCzY
これはほぼ空振りだった。
月の世界のデスノートによる死は参加者に刻まれた呪術式を思わせたが、確証には至らず。
むしろこれについては暁美ほむらが理解できるようだが、やはり解除は難しいようだ。
アカギという人物そのものに至っては完全に判らない。
ゲーチスという男は名簿の名前に六つ前後知っている物が有った(ただし殆どは一方的に知る有名人や一部種族の名前らしい)が、空振り。
月も前述の五名に加えて父親で六つ知っている名前が有ったが、やはりアカギという男など知らないという。
「あの男を知る者は殆ど居ないのかもしれないわね」
確かに、アリス達が出会った乾巧達もアカギを知らなかった。
彼らが知る名前を全て足し合わせれば全参加者の四分の三程に上るというのに、アカギに繋がる手がかりは無しだ。
無論、その中の誰かがアカギを知っている可能性は有るが……
あの会場で上がった、アカギを知っているらしい声は誰のものなのだろう。
「そもそもそれがその人の世界のアカギかも不明なのよね」
「ええ。あの声の人物の世界より、もっとずっと強大な力を手に入れたアカギかもしれないわ」
ますますお手上げだった。
ふと、アリスは一瞬違和感を覚えた。
これまでの暁美ほむらの言葉に、何か。
「それじゃ、情報交換の続きをしましょう」
(……気のせい?)
違和感が何かは分からなかった。
その後もアリスとほむらは、しばらく夜神月と情報を交換し、別れた。
夜神月は情報収集と拡散を少しでも早く行いたいらしい。
彼はすぐに出ていき、自分に支給されたバイクで走り去っていった。
アリスとほむらもこれから、既に戦闘は終わっているであろう爆発音の方向に向かい情報を集める事になる。
アリスは、気づいていない。
暁美ほむらが美国織莉子と呉キリカの危険度を、巴マミの危うさを語った言葉。
月が松田桃太だけを訂正した理由。
アカギの情報を、彼に見覚えのあった誰かから得ようとする行為。
元の世界での知り合いの情報を判断材料にするという事は、それが元とほぼ同じ存在だと考えているという事に。
無論、それは『何もかもまるっきり同じだけれど別々の並行世界から連れてこられた』と考えても良い。
説明がつかないわけではない。
明確に矛盾しているわけではない。だけど。
それはまるで、『並行世界は別々だけれどそれぞれの世界に居る人物は共通している』と考えているようではないか。
アリスは、違和感の正体に気づかない。
* * *
暁美ほむらは想い。
悩み。
考える。
鹿目まどかを救うために最も効果的な手段は何か。
ただそれだけを思い時間軸を渡り歩いてきた。
ただそれだけの為に本来の自分の世界と縁を切り歩き続けてきた。
何度挑んでも敵わなかった。
幾度抗っても朽ち果てた。
ただの一度の勝利さえも無く。
負けて。
負けて。
失い続けてきた。
428
:
三者三様の準備期間(修正版)
◆H.Y.h6sins
:2011/07/25(月) 22:55:13 ID:z4TjbCzY
暁美ほむらにとって、『自分の世界』という場所は存在しない。
暁美ほむらにとって、『自分の世界』とは繰り返し続けてきた全ての時間軸である。
暁美ほむらにとって、『鹿目まどか』とはありとあらゆる時間軸全ての鹿目まどかである。
暁美ほむらにとって、『鹿目まどか』とは全てである。
そう、考えていた。
だからこの島に連れて来られた時、最初は鹿目まどかの元に走ろうとして。
すぐに、アカギの言葉を思い出し取りやめたのは知っての通りだ。
(あの男は私達をこう呼んだ。『数多の時間、空間という可能性宇宙のひとつひとつから選び出された戦士たち』と」
それはおぞましい囁きだった。
暁美ほむらの根底を突き崩す程に禍々しく。
同時に染み入ってくる絶望を打ち払う程の、鮮烈な希望だった。
可能性宇宙の全てが同時に存在するという事。
それにより鹿目まどかがそれぞれの世界の鹿目まどかであると考える事は、暁美ほむらにとって非常に危険な発想である。
考え方としておかしな物ではなかったが、選ばないできた解釈だ。
暁美ほむらは、何処かの世界で一度でも鹿目まどかを救えればそれで良いと思い行動してきている。
全ての可能性世界における鹿目まどかを鹿目まどかだと認識しているからだ。
そうでなければ意味が無い。
鹿目まどかが個々の世界で別々の人物だと解釈してしまえば、暁美ほむらが守るべき鹿目まどかなど最早居ない。
とうの昔に死んでしまい、失われてしまっている。
鹿目まどかをそれぞれの世界の鹿目まどかと定義するのであれば、
暁美ほむらは、全ての世界において鹿目まどかを救わなければならなかったのだ。
もう手遅れだという言葉すらも否定して。
守る事に失敗し、死に絶えた世界すらも許容した上で、もう死んでしまった鹿目まどか達を救わねばならないのだ。
これまでただの一度も守り切る事が出来なかった全てを。
守りきれずに失われてしまった全てを。
無理だ。
不可能だ。
絶望的な条件だ。
そもそも暁美ほむらの魔法では一度干渉し失敗した時間軸に戻る事さえも出来ないのだ。
人を生き返らせる事も、魔法少女の契約を反故にする事も出来ない。
だがしかし。
『数多の時間、空間という可能性宇宙のひとつひとつから選び出された戦士たち』
この世界であれば。
全く別の要素を持ち別の歴史を辿った世界の力があれば。
この舞台を創りだしたアカギの力があれば。
これまで暁美ほむらが辿ってきた時間軸の全てに、辿っていない時間軸の全てにまで介入し。
如何なる可能性宇宙においても、須らく、そして永遠に、ありとあらゆる鹿目まどかを救う事が出来るのではないか。
暁美ほむらよりも遥かに、守る必要が無い程に強く。
なのにもはや何をどう足掻いても手遅れな。
契約を済ませてしまっていた場合も最後まで共に抗い、しかし当然のようにどうしようもなかった魔法少女のまどかさえも。
“守る”事すら無意味なまどかさえも、“救える”のではないか。
429
:
三者三様の準備期間(修正版)
◆H.Y.h6sins
:2011/07/25(月) 22:55:39 ID:z4TjbCzY
(まどか)
ほむらは心中でその名を呟き、想う。
鹿目まどかをそれぞれの世界で別の鹿目まどかと定義するならば、
ほむらの親友にまでなれたまどかは、魔法少女である鹿目まどかだけだった。
魔法少女でない鹿目まどかには一線を引いて、隠し事をして接しなければならなかったから。
あるいはほむらが近くに居る事により余計な危険までも招き、魔法少女にまどかが殺された事すら有ったから。
ほむらは人間である鹿目まどかを冷たく突き放さなければならなかった。
ほむらが守らねばならない人間の鹿目まどかにとって、ほむらは冷酷ですらある謎の少女でしかないだろう。
(まどか)
それでも暁美ほむらが挫ける事は決してない。
立ち止まれば全てが終わってしまう。
歩き続けるしかない。
走り続けるしかない。
どれほどに終わってしまっていても諦める事は出来ない。
ただ目的とそれを果たすための手段を考え続けるしか。
(まどか……!)
目的は全ての鹿目まどかの救済。
鹿目まどかをそれぞれの世界で別の鹿目まどかと解釈した以上、暁美ほむらは全ての鹿目まどかを救わなければならない。
その為にはこれまでほむらが辿ってきた全ての時間軸にも“帰還”する必要がある。
だがそれは意味のない“帰還”であってはならない。
もしただ帰還すれば、またあの一ヶ月を繰り返すだけだ。
それはもう、手詰まりだ。
繰り返し続ければ何時か活路を見いだせると信じ続けてきた。
だけど繰り返す度に出会い失われていくまどかを救おうなんて、絶望が積み立てられていくだけだ。
暁美ほむらは希望を掴んだ上で帰還しなければならない。
それは“奇跡”と言い換えても良かった。
一度きりの、既に使い果たした願いを、もう一度この手に掴む。
『“奇跡”を手に入れた上でこれまで辿ってきた全ての時間軸に“帰還”すること』
まるで夢物語だ。
だけどもそれが、今の暁美ほむらの最終的な目的だった。
(私は必ずあなたを救って見せる。“守る”事ができなかった全てのあなたまでも)
だから暁美ほむらは、考えたのだ。
その為に何を果たすかを。
(選択肢は二つ。あのアカギという男に従うか、あるいはあのアカギという男の力を奪う事。
前者は仮に勝ち残ってもアカギに裏切られるリスクが有るし、後者は前者よりも不可能に近い難題ね)
そして両方に共通する、手段を。
430
:
三者三様の準備期間(修正版)
◆H.Y.h6sins
:2011/07/25(月) 22:57:30 ID:z4TjbCzY
『この『儀式』の舞台に放りこまれた者たちは一人一人が違う世界から来た可能性がある。そういうコトよ……』
まずは味方が必要だ。
アカギから力を奪うのであれば一人でも多くの協力者が必要だし、優勝を目指すにしても損はない。
仲間だと信じている者の不意打ちに抗するのは難しい。
かつて、ほむら自身が経験したように。
本音を言えば最悪の苦手分野だ。
暁美ほむらは、自分にコミュニケーション能力が欠如している事を自覚していた。
腹芸の類も巴マミ辺りの方がこなせるだろう。
感情的な演技など出来るはずもない。
暁美ほむらに出来る詐術が有るとすればそれはただ一つ。
自らの感情を漏らしすぎず、ただ与える情報を制御する。
不器用者に出来るのはその位だった。
『私たちが本当に守りたい人は、『私たちの世界』にしかいないの。
ここで私たちが死んでしまったら、『私たちの世界』にいるその子は誰が守るの?』
暁美ほむらにとって、自らが訪れる全ての世界は『私の世界』だ。
この世界さえも。
それでもアリスにそう騙ったのは、彼女の優先順位において、友人の捜索を後回しにさせたかったからだ。
今のところ、それは効果的に作用している。
爆発という目立つ事件の現場に最優先で急行されては、いない。
もちろん武器が必要だという理性的な判断が有ったのは間違いないだろう。
だが行き先を決めるという判断において信頼されているのも確かだ。
特に理由が無ければ、アリスはほむらの行き先に従ってくれるだろう。
上手くいけば、彼女の行動をコントロールする事も可能だろう。
(そう、有用な手駒になるわ)
心の中で呟く。
それを確かめるように。
(その為に私は、彼女を引き込んだ)
それが目的なのだと、自らに言い聞かせるように。
奇跡を前に手を汚す事を恐れる理由なんて、もう無いはずだ。
だから、ほんとうは。
感傷に囚われて、あの想い出にすら関係の無い猫を拾っている場合ではなくて。
気まぐれな優しさで、乾巧に励ましの言葉などかける事も。
罪悪感から逡巡し、アリスを誘導する偽りの否定を求める事も。
ほんの少しだけ、かつての先輩であり、後に半ば障害と化した巴マミに想いを馳せる事も。
“奇跡”を手にして救うのならば、今この儀式にいる鹿目まどかも守りたいと思う事すら。
全ては余分で。
431
:
三者三様の準備期間(修正版)
◆H.Y.h6sins
:2011/07/25(月) 22:58:16 ID:z4TjbCzY
もしアカギの手がかりが見つからず力を奪えそうにないのなら、裏切られるリスク込みで優勝を目指さざるを得ないのだと。
判ってはいた。
理解しては、いた。
(……結論を出すには早いわ。まだ手がかりは有るはず)
アカギについて、少なくとも『魔女のくちづけを応用した呪術式』を使っている事は判明している。
繰り返しによりベテラン魔法少女の中でも一際長いキャリアを持つ暁美ほむらにとっては、有用な手がかりのはずだ。
しかしそれも決定的な手がかりにはならない。
魔法少女の魔法は技術ではなく能力であり、その仕組みを理解するわけではない。
殆どの魔法少女はソウルジェムが何なのか、魔女がどうやって生まれるのかも知らないのだ。
幾度も時間を繰り返したほむらと、契約時に未来視の力を持つ美国織莉子だけが例外であり、
その例外であるほむらをもってしても解除法は見えないのだ。
(もう少し情報を集めてからで良いはずよ)
それでもまだ、決断には至らない。
ほむらを信頼するアリスを手駒として使い、裏切り、この儀式の場の鹿目まどかを見殺しにして。
全てを殺し尽くす決断には。
暁美ほむらの中には躊躇いが有った。
* * *
夜神月はジャイロアタッカーを走らせながら、考える。
あの二人は上手く危険人物の情報を流してくれるだろうか?
(確信は持てないな。油断のならない二人だった)
結局、暁美ほむらはコーヒーに口をつけなかった。
それは彼女の警戒心の表れだろう。
二人とも銃の扱いにも手慣れた様子で、しかも月の来訪にすぐに気づいていたようだった。
さやか達の時と違いすぐに出ていかなかったのは、慎重さを見せた方が良い相手だと判断したからと、
彼女達の立ち話にも若干興味を抱いたからだ。
その後の情報交換の内容も興味深かった。
参加者が全て別の可能性宇宙から連れてこられたというのは月にはなかった発想だ。
自らが“死後から”連れてこられた事から、死後の人間はその手段で連れて来られた物で、
人間の世界と死神界の様に大きく違う世界から拉致されたのだと思っていた。
だが暁美ほむらから少し漏れた話によると、彼女の世界では美樹さやかも死んだ人物らしい。
あの場で出会った彼女はそんな様子を見せなかった。
隠していただけかもしれないが、どうも“生きている世界から連れてこられた”と見るのが正しいらしい。
(少し違う、殆ど同じ世界の存在……平行世界説か。量子論の波動関数の解釈の一つだったかな)
魔法のような、というよりはSF的な話だ。
全ての物質は可能性の波の様な物であり、人の見ている世界はその断面であるという説だったか。
現代科学はこの平行世界説をあまり重要視していない。
もっと分かりやすい数式の出せる説が有り、そちらでも同じ答えが出せるからだ。
干渉する事が不可能ならば、平行世界が存在していてもいなくても変わらない。
重要なのは『それが現実にどう関係有るか』なのだ。
432
:
三者三様の準備期間(修正版)
◆H.Y.h6sins
:2011/07/25(月) 23:04:56 ID:z4TjbCzY
(要点はL達がキラの正体を知らない、あるいはキラが居ない世界から来たかもしれない事だ。
松田の奴は単純だから、仮に僕と同じ世界でも『キラが別に居る平行世界の僕』と言われれば敵対は出来ないはずだ。
信じたい別の真実を用意してやればそちらを信じるだろう。
だけどLとニアはダメだ。
仮に僕がキラだと知らなかったとしても、この島での僕の動きに食いついてくる……脅威になる。
メロも『かもしれない』という疑惑があれば、僕を拷問にかける位はするだろう。
南空ナオミも『知っていた場合』は、別の世界の僕と言った所で止まるかどうか。
あいつらを利用するのは危険過ぎる)
やはり安全策は彼らを始末する事だ。
それは変わらない、だけど。
もし彼らと直接出会うことがあれば、どうする?
その場合は、この流言が裏目に出かねない。
キラとして嵌められたと言ってしまった以上、『キラなんて知らない、それは別の世界の出来事だ』という言い逃れが出来ない。
もちろんそんな物は苦しい言い訳にすぎないが、確実な証拠を求めるLやニアが相手なら少しは間を持たせられる。
(これまでに流した分は仕方がないとしても、内容を加工するか?
いや、そんな小細工より遭遇した時に確実にあいつらを始末する方が効果的だな)
そして考える。
もしそれぞれが別の世界から来たとすれば。
あるいはそれを言い訳にできるとすれば。
父である夜神総一郎と、今のところ情報交換で存在を伏せている弥海砂にはどんな影響をもたらすのだろうか。
(ミサの事は引き続き伏せておいた方が良いな。
僕の為に行動するミサなら、過激な行動を取る可能性が高い。
その場合は陰からサポートした方が効果的だし、そうでないミサはどう行動するか読めない。
父さんは……危険はあるが、一度接触してみるのも手か)
不安要素は有るが、月にとって利益となる可能性も低くはない。
優勝を狙うならば何れ敵対してしまうだろうが、それまでは殺人を陰に隠して行動出来るかもしれない。
思索と慎重さは有ったが、夜神月の歩みに迷いは無かった。
暁美ほむらの考察によるアカギへの不信も考慮はしたが、彼を止める理由にはならなかった。
夥しい数の世界に干渉できるアカギにとって、世界の一つにおける願いなど些細な事だろうと判断したのだ。
何かのキッカケで露呈して殺し合いを破綻させるより、本当に優勝者の願いを叶える方がリスクは少ない。
そんな悪人に縋る形で願いを叶えるのは甚だ不愉快だが、やはり背に腹は代えられない。
(銃器を手に入れられなかったのは少し残念だが、まあいい。どうせ本命は支給品の方だからな)
警察の知識とその優れた計算力によりあの銃器保管室に辿り着いたのは良いが、そこに有った僅かな銃は先客に取られていた。
とはいえ彼女達から得られた情報は銃器以上に有用だろう。
それに月の支給品には殺人に使えそうな物も入っていた。
何も嘆く事は無い。
(何れ彼女達も含めて全てを殺す。この儀式で優勝するのは、僕だ)
夜神月は殺意を胸に抱き、月明かりに照らされた夜の路を疾走していく。
再び神に返り咲く為に。
【E-3/市街/一日目-黎明】
【夜神月@DEATH NOTE(漫画)】
[状態]:健康、ジャイロアタッカー乗車中
[装備]:スーツ、ジャイロアタッカー@仮面ライダー555 パラダイス・ロスト
[道具]:基本支給品一式、不明支給品1〜2(確認済み、殺傷性の有る物が含まれている)
[思考・状況]
基本:優勝し、キラとして元の世界に再臨する
1:今は情報収集を優先
2:元の世界で敵対していた者は早い段階で始末しておきたい
3:ミサと父さん(総一郎)以外の関係者の悪評を広める
情報:ゲーチスの世界情報、暁美ほむらの世界情報、暁美ほむらの考察、アリスの世界情報、乾巧の世界情報(暁美ほむら経由)
※死亡後からの参戦
433
:
三者三様の準備期間(修正版)
◆H.Y.h6sins
:2011/07/25(月) 23:06:59 ID:z4TjbCzY
【E-3/警視庁/一日目-黎明】
【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:ソウルジェムの濁り(極少)
[服装]:魔法少女変身中
[装備]:盾(砂時計の砂残量:中)、グロック19(15発)@現実、(盾内に収納)、サイドバッシャー@仮面ライダー555
[道具]:共通支給品一式、双眼鏡、黒猫@???、あなぬけのヒモ@ポケットモンスター(ゲーム)
[思考・状況]
基本:アカギに関する情報収集とその力を奪う手段の模索、見つからなければ優勝狙いに。
1:爆発音が有った方に向かい、情報を収集する
2:情報を集める(特にアカギに関する情報を優先)
3:協力者が得られるなら一人でも多く得たい。ただし、自身が「信用できない」と判断した者は除く
最終目的:“奇跡”を手に入れた上で『自身の世界(これまで辿った全ての時間軸)』に帰還(手段は問わない)し、まどかを救う。
[情報]:アリスの世界情報(詳細)、ほむらの考察、乾巧の世界情報(詳細)、乾巧はオルフェノク、夜神月の世界情報、夜神月の流言
ゲーチスの世界情報(月経由)
[備考]
※参戦時期は第9話・杏子死亡後、ラストに自宅でキュゥべえと会話する前
※『時間停止』で止められる時間は最長でも5秒程度までに制限されています
※ソウルジェムはギアスユーザーのギアスにも反応します
【アリス@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:健康
[服装]:アッシュフォード学園中等部の女子制服、銃は内ポケット
[装備]:グロック19(15+1発)@現実、あなぬけのヒモ@ポケットモンスター(ゲーム)
[道具]:共通支給品一式、ヨクアタール@ポケットモンスター(ゲーム)
C.C.細胞抑制剤中和剤(2回分)@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー
[思考・状況]
基本:脱出手段と仲間を捜す。余裕があればこの世界のナナリーも捜索。
1:暁美ほむらと行動を共にする
2:情報を集める(特にアカギに関する情報を優先)
3:脱出のための協力者が得られるなら一人でも多く得たい
4:余裕があったらナナリーを探す。
最終目的:『儀式』から脱出し、『自身の世界(時間軸)』へ帰る。そして、『自身の世界』のナナリーを守る
[情報]:暁美ほむらの世界情報(詳細)、暁美ほむらの考察、乾巧の世界情報(詳細)、夜神月の世界情報、夜神月の流言、ゲーチスの世界情報(月経由)
[備考]
※参戦時期はCODE14・スザクと知り合った後、ナリタ戦前
※『ザ・スピード』の一度の効果持続時間は最長でも10秒前後に制限されています。また、連続して使用すると体力を消耗します
【グロック19@現実】
警視庁より現地調達。
警視庁SATに採用されている、全長174mm重量595g(本体のみ)の小さく軽い自動拳銃。
装弾数は9mm弾の15発カートリッジと薬室に1発で15+1発。
【C.C.細胞抑制剤中和剤@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
C.C.細胞抑制剤を中和する薬剤、二回分。
空圧式の注射器もセットになっている。
本来は専用機のコクピットに組み込まれており、首筋後ろから注入される。
注入後の作用はかなりの苦痛を伴うらしく、アリスをして悲鳴を上げて悶えるほど。
代償に一時的とはいえ、人造ではないギアスユーザーと互角に戦えるほどの力を得られる。
「ギアスをもたらす細胞を抑えている薬を中和する薬」である為、当然ながら人造ギアスユーザー以外には効果がない。
更に作中の説明通り劇薬であり、原作で使用した時は120秒が経過した時点で自動的に細胞抑制剤を再投与されていた。
その際に「もう一度」と発言していた事から細胞抑制剤さえあれば連続使用も可能なようだが、逆に細胞抑制剤が無ければ死ぬ。
434
:
◆H.Y.h6sins
:2011/07/25(月) 23:13:41 ID:z4TjbCzY
修正版の投下終了です。
修正点は以下の通り。
・[重要]銃器保管室についての変更(銃器はグロック19が二丁のみで予備カートリッジも無しに)
・月による別室での銃器調達を削除
・ナイトメアフレームが十メートルになっていたのを五メートルほどに修正
・最後の月の思考を少しだけ変更(悪評を加工するべきか? いやそれより殺す方法を(以下略))
・脱字や表現の微修正(これは全体に幾つか、話の流れには影響無し)
・中和剤の回数を3回分から2回分に(原作で使用した回数) しかし抑制剤が無いと一度で死ぬ。
435
:
名無しさん
:2011/07/25(月) 23:28:50 ID:RhB7HOXo
修正乙です。これで問題ないかと。
436
:
名無しさん
:2011/07/26(火) 12:27:59 ID:bQ0avEP6
問題ないと思う
437
:
名無しさん
:2011/07/27(水) 21:21:39 ID:LlTz6bM2
ところでまどから4人の仮投下のSSはまだ本投下されてないけど書いた本人はどうしたんだろう?
438
:
名無しさん
:2011/07/27(水) 21:32:01 ID:w4WLrh3c
これ自体は修正版で問題もないって言われてるんだしいいんじゃない?
439
:
◆qbc1IKAIXA
:2011/07/27(水) 21:34:29 ID:8gJy/rlI
ここでは修正版の投下のみでしたので、あらためて本スレでの投下は必要ないと思っていました。
全開所属していたロワがそうだったので。
本スレへの再投下が必要な行いますが、どうしましょうか?
440
:
◆qbc1IKAIXA
:2011/07/27(水) 21:34:53 ID:8gJy/rlI
全開→前回
441
:
名無しさん
:2011/07/27(水) 21:35:09 ID:LlTz6bM2
あ、修正版と言ってたわw;
勘違いしてた
ごめん
442
:
◆4EDMfWv86Q
:2011/07/27(水) 21:38:15 ID:arWtMdtg
このままでよしと思っていますが、どうでしょう。
443
:
名無しさん
:2011/07/27(水) 21:51:44 ID:LlTz6bM2
混乱させてすみません
修正版の本スレ投下は無くていいです
申し訳ない
444
:
◆Vj6e1anjAc
:2011/08/01(月) 11:55:14 ID:ShCbKxFM
こちらの意図しない改行がされていたので、
拙作「そういうのじゃないのよね」、「殺さねばならない相手がいます」を修正させていただきます。
個人的なこだわりとして、あまりああいう改行を多用するのが好みではないので、
今後Wiki収録される場合は、原文ままで収録していただけるとありがたいです。
445
:
◆LuuKRM2PEg
:2011/08/01(月) 13:14:53 ID:LNUzlHvs
先日投下した『Fate/kaleid night ハンバーガーころしあむ 』でイリヤの
クラスカードの制限に間違いがあったので
収録時に、一時間半使用不能と修正させて頂きます
446
:
◆7KTvmJPRwQ
:2011/08/06(土) 00:53:28 ID:gacRaatc
美国織莉子とサカキ。
割と問題ありそうなのでこちらに投下しますー。
447
:
◆7KTvmJPRwQ
:2011/08/06(土) 00:54:14 ID:gacRaatc
「すごい……」
ポケモン城と名付けられている城に足を踏み入れた織莉子は思わず言葉を発した。
美国織莉子はそれなりに知られた政治家の一人娘であり、なればこそ名家の子女に相応しい教育も感覚も備えている。
その彼女をして、いやだからこそ驚嘆の声を上げるほどに荘厳な造りであった。
外観からも荘厳な建造物であることは予感させてはいたが、内部の造りもそれを裏切らぬもの。
ギリシア・ゴシックの流れを汲む隔絶した空間を表現しながらも、華美な装飾とまでは取れないモダニズム様式を基本とする建造。
多くない窓にはキリスト教の流れを組むステンド・グラスが見るものの目を引き。
天井に目を向ければ大樹の枝のごとく張り出した柱が、組み合わされ、壮大な空間を作り出す。
そして、その殆どはコンクリートではなく、石とレンガを用いている。
西洋建築のさほど造詣があるわけではない織莉子でも、何かしら名のある建物であると理解させた。
「ふん、確かに良くできた建物ではあるな」
「あまり、お好きではなさそうですね」
「なに、そういう物には大して興味も無いのでね。 それよりも気を付けることだ、今の君はまるで無防備だったぞ」
「…………」
警告された事に押し黙る織莉子を余所に、サカキは悠然と城の内部へと歩みだす。
強大な建造物というものは権威として作るものであり、その持ち主、あるいは作り手の虚栄心という側面を持つ。
荘厳かつ巨大な建物という点には何の異論もないが、夢見がちな女子中学生のようにただ憧れを抱いたりもしない。
サカキにとって重要なのは見た目よりも中身であり、なおかつそれが自らの手に入るものかどうかだ。
いまのところ、この城はサカキには単なるビルの一棟と何ら変わらなかった。
「ところで、もし仮にこの城のどこにも移動手段が無いとしたらどうする?」
「……どう、とは?」
問われた織莉子は若干警戒した声を出す。
移動手段が無い場合、とり得る手は一つであり、そのことを織莉子は理解しているからだ。
「ククク、冗談だよ」
その織莉子の警戒を解くように、サカキは低く笑う。
それが最初から冗談なのか、それとも織莉子の警戒ゆえにかは、彼女には判断できなかったのだが。
そんな織莉子を余所に、サカキはモンスターボールからニドキングを呼び出す。
「このニドキングもそうだが、意思のあるものとは厄介だ。
言うことを聞かせるには力を用いるしかなく、仮に従ったとしても何かしらの反抗手段を講じる。
そういう相手を手下として使うのは容易いことではないよ」
「あのバイクも、そうだと?」
「さあな、ただ私ならその前提の上で行動する、ということだ」
ニドキングが織莉子に一瞥をした後、ボールに戻す。
少なくとも、ニドキングはサカキに忠実であることが織莉子には理解できただろう。
そこまでの心配をしている訳ではないが、織莉子がサカキからニドキングを奪う可能性は減少したと言っていいだろう。
逆に織莉子はオートバジンについて詳しく知らない以上、サカキに奪われた際の行動は予想できない。
仲間とは呼べない間柄であるために、自身の優位はある程度はっきりさせておく。
それはサカキ自身が己の力こそ頼れるものであると認識している証でもある。
「逆にお聞きしますが……、この城に移動手段があるとしたら、どんなものだと思いますか?」
「さて、船でも用意してあるか、はたまたワープ装置でもあるか」
「ワープ装置、ですか?」
「見たことがないのか? 特定の場所同士を行き来できる装置のことだ。」
448
:
◆7KTvmJPRwQ
:2011/08/06(土) 00:54:50 ID:gacRaatc
人が一人乗ることの出来る大きさの円形の床のことであり、その上に立つことでどこか別の場所にある同型の床の上へと移動できる装置。
ロケット団のアジトには導入されていなかったが、新たな本部として狙っていたシルフカンパニーには存在しており、ここ数年で普及したとも聞く。
細かい仕組みなど技術者が把握していればよいことなどでサカキは興味などないが、便利なものだとは理解していた。
基本的には同じ場所を行き来するだけのものだが、中には一方通行のものなども存在する、ということまで説明する。
この状況でそういった知識を隠すことは、最終的にはサカキにもマイナスにしかならないのだから。
「あるいはこの城に『空を飛ぶ』か『波乗り』を覚えたポケモン、または『波乗り』の秘伝マシンがあれば移動は可能になるな」
ニドキングの最大の特徴である多彩な取得技。
外見に似合わず、水タイプの秘伝技である波乗りすらも習得できるのだから、それがあれば問題は解決する。
そしてその事を抜きにしても、サカキはある程度技の変更も必要と考えていた。
多彩なタイプの使い手を相手することを考慮し、手持ちに役割を分担させていたがニドキング一体ではそうもいかない。
手持ちが増えるかも不明な以上、可能ならば現在より強化しておきたいところではある。
「その子が泳ぐのですか。 ポケモンというのは面白いものですね」
「フン……未だに信じられんな、ポケモンを知らんとは」
情報交換の結果、織莉子はポケモンの事を何も知らなかった。
それが、アカギの言っていた可能性宇宙ということだろうか。
織莉子の言う魔法少女というものは秘匿されているものであるが、ポケモンを知らないなどサカキの常識ではあり得ないのだから。
「ワープ装置が仮にあったとして、君はそれを使うわけにもいかない。 そう考えると可能なら船か水タイプのポケモンが欲しいか」
「そうですね、あの子を置いていくのはあまり得策とも思えませんし」
流石に城内の細々した場所までは入れないため、外に待機させている織莉子の支給品、オートバジン。
具体的な性能は把握できていないが、あの巨体をそのまま捨て置くというのは勿体無いと言える。
もっとも、その場合でも場所を決めておいて合流するという手段はあるのだが。
□
「ニドキング、シャドークロー!」
薄暗い地下に、サカキの声が響く。
やはり理想としては船が欲しいところであり、それがあるとすれば地下にしかあり得ない。
そうして地下へと降りてきた二人の目に映ったのは、これまでとはまるで異なる場所。
荘厳な城にまるで似合わぬ、薄暗い研究施設だった。
いくつもの透明なカプセルの並ぶその場所は、織莉子には不気味に、サカキにはどこと無く見慣れたものに映った。
その樹立する、と言っていいほどに並ぶカプセルの中を通り抜けようと進む中、突如襲い来る影。
織莉子が警告を発するよりも早く、サカキはニドキングに対応をさせていた。
突撃してくるオレンジ色の影に対して、カウンター気味に放たれた影の突き、現在持つ技の中では最も威力の高い、シャドークロー。
それを受け、襲撃者は吹き飛ばされる。 最も一致でもなければ弱点でもないその一撃では倒すことはできなかったようだが。
オレンジ色の身体と翼と持つ、直立したトカゲのような襲撃者は、戦闘態勢を解かない。
「リザードンか、この地下がそこまで広くないのが幸いだな」
空を飛べる相手には、攻撃できる手段は限られる。
そして今のニドキングの手持ち技ではその手段は無いのだが、この場ならその心配は不要なようだ。
最も、その口から吐き出される炎の射程を考えれば、最低もう一度は攻撃を受けることになるが。
(その際に火傷でも負えば手負いとはいえ一撃で削りきるのは厳しいか。
すでに与えたダメージからすれば最終的に負ける可能性は極めて低いが、それでもこの状況では損耗はなるべく避けたいところだな)
ニドキングはすでに最初の一撃――鋼の翼によって傷を負っている。
上手く対応したため傷薬でもあれば回復する程度のものだが、この状況ではそれが命取りにならないとも限らない。
そんなサカキの思考を余所に、リザードンが炎を吐こうとする。
危険を冒してでもニドキングを飛びこませようとした時。
449
:
◆7KTvmJPRwQ
:2011/08/06(土) 00:55:27 ID:gacRaatc
「渦のような炎を吐いてきます!」
「!?」
突如として響く織莉子の声。
その言葉に従い、とっさにニドキングを後方に下がらせるサカキ。
そして、次の瞬間にその付近一帯に巻き起こるのは、まさしく渦巻く炎、『炎の渦』
少なくない驚愕と共に織莉子の方を見れば、そこには白いドレスのような格好をした織莉子の姿。
「今度はまっすぐに炎を吐いてきます! 下がって!」
その格好をいぶかしむ間も無く、再び発せられる警告。
だが、その言葉を信じるならば……
「…………」
「えっ、あ、なるほど。 確かに横に逃げればいいのですね」
織莉子の言葉の通り、二度目にリザードンが吐いたのは真っ直ぐ伸びる炎、『火炎放射』
炎の渦よりも遠くに届く代わりに、この技は横の幅は狭い。
乱立するカプセルの陰に隠れれば、やり過ごすのは容易だ。
そうして二度の攻撃を避けたサカキは、改めて織莉子の姿を見る。
白いドレス姿の織莉子は最初にいた位置から動かず、モンスターボールよりも小さい銀色の球体を一つ投げつける。
それは爆発を起こし、サカキに注意が向いていたリザードンはまともに受けることになった。
倒れこそしないものの、最早体力は半分を切っているだろう。
そこに織莉子は再び球体を投げようとし、
「待て!」
「え?」
サカキはそれを声を上げて止める。
理屈は不明だが、織莉子は相手が出そうとしている技がわかるのだろう。
そして、威力は決して低くない爆発する攻撃。
なるほど、魔法少女という言葉は正しいようだ。
ただ、彼女はあくまで何をしようとしているのかが判るだけで、相手の事を理解しているわけではない。
だからこそ、サカキは織莉子を止めた。
「美国織莉子、悪いが渦を巻く炎を吐きそうな時は伝えてもらえるかな?」
「え、かまいませんけど、どうして」
有無を言わせぬ調子で、織莉子の行動を抑える。
であって間もないがこういうタイプの相手ならその言葉に嘘は混ぜまいと見越した上で。
(鋼の翼、火炎放射、炎の渦……最後の一つは不明だが問題ない)
織莉子の攻撃は悪くないものだが、恐らくリザードンを仕留め切るには足りないだろう。
そうなると、リザードンは確実に『猛火』の特性を発動させることになる。
威力が倍になった炎をかいくぐってリザードンを仕留めるには、かなりの損害を覚悟することになってしまう。
だが、織莉子が相手の攻撃を読めるなら、そんなことをしなくても簡単に倒せる。
「来ます!」
「おう、ニドキング! 乱れ突きだ!」
織莉子の合図に合わせて、サカキはニドキングに命令を下す。
無論リザードンの炎の中を掻い潜る事になってしまうが、炎の渦は技そのものの威力は極めて低く、火傷状態になることも無い。
『猛火』も発動していないその攻撃ならば、ダメージなど無いに等しく、ニドキングは炎を潜り抜ける。
そして、近寄ってしまえば最早手負いのリザードンなど敵ではない。
「きあいために、乱れ突き。 ここまで動きが読めていれば五発当てるのは容易いな」
急所に当たり易くなっている攻撃を、五発。
手負いのリザードンは悲鳴を上げて倒れるのみ。
450
:
◆7KTvmJPRwQ
:2011/08/06(土) 00:56:04 ID:gacRaatc
「お見事です」
「……フン」
見事、ではない。 あれだけお膳立てされれば誰でも出来るだろう。
もっとも織莉子自身はあまり理解していないようだが。
「君は、ポケモントレーナーとしての資質がありそうだな」
織莉子の賞賛に振り返りもせず、サカキは付近の探索を始める。
ポケモンの存在をさっき知ったばかりの小娘の指示に従う。
自発的に行ったことではあるし、それが効果的であったのも事実だが、それでも多少苦い感情は禁じえない。
それを振り払うように、どこかで見たことあるようなカプセルが乱立する中を歩く。
リザードンのボールは見当たらず、手持ちに加えるのは不可能なようだ。
あるいは野生ということも考えモンスターボールを捜すが、手近な机の上には技マシンが一つあるのみ。
目当ての波乗りでない事の落胆は見せずに、さらにボールを捜そうとした所で、
「ニドキング!」
横合いから響いてくる重い足音に、身構える。
近寄ってくるということは物理タイプなのだろうが、薄暗い為相手の姿が見えず、とっさに何を命じるか迷う。
「サカキさん! 岩のような身体の怪獣です!」
「……っニドキング! にどげり!」
コンマ数秒、織莉子のほうが早かった。
岩のような身体と聞こえた時点で、シャドークローではなく二度蹴りを使わせる。
その選択は正しかったらしく、襲撃してきたポケモンを僅かに後退させる。
シャドークローでは、こうはいかなかったかもしれない。
「……お前は」
だが、その事にサカキが苦い感情を抱く前に、別の感覚が彼を襲った。
たったいま襲撃してきたポケモン。
一致ではないとはいえ、弱点であるはずの攻撃を受けてあっさり立ち上がるという力量を感じさせるポケモン。
岩のような肌と鼻先のドリルが印象深い、直立した犀のような巨躯。
ドリルポケモン『サイドン』
彼自身が手持ちとして使っていたのと同じ……いや、まさしくその個体そのもの。
「サカキさん! 右からもう一体!
……っ、ニドキングです!」
一瞬呆然としていたサカキだが、織莉子の言葉に振り向く。
サイドンのように走ってはいないが、こちらにむかっているのは確かにニドキング。
その個体もまた、サカキの手持ちとして使っていたもの。
今まさに、サカキの隣にいるニドキングそのものに、他ならない。
「…………」
迫るサイドン、そしてニドキング。
どちらも見覚えがあり、そして無いもの。
いや、それだけではなく。
451
:
◆7KTvmJPRwQ
:2011/08/06(土) 00:57:22 ID:gacRaatc
「これは……」
ピカチュウ、ガブリアス、グレッグル、噂に聞いたのみの三つ首のドラゴンタイプや、鋼タイプよ思わしき人型ポケモン。
リザードンとの戦いを聞きつけたのであろう、沢山のポケモンがサカキ達を包囲しようとしていた。
「フ……ククク」
「サカキさん……?」
「いや、失礼。 フフ、ギンガ団とやら、噂以上にやるじゃあないか」
じりじりと後退する織莉子に構わず、サカキは愉快そうな声をあげる。
周囲の機械が何であるのか、理解できた。
いや、忘れていたというべきなのか? 何の目的で用意しようとしたのかわからないが、間違いない。
かつてロケット団でも研究していた、ポケモンのクローン装置。
研究を止めた理由は思い出せないが、どうやら彼らは完成させた。
なるほど、シンオウ地方を脅かす組織という評判は伊達ではないようだ。
「余裕がおありなのはいいですが、この場をどうにかしませんと」
「ああ、わかっているさ。 ニドキング」
そして、この場は引くしかない。
サイドンとニドキングを放置するのは屈辱ですらあるが、この場は甘んじて受けよう。
その全てが、後々の力をなるのだから。
「だいちの力」
□
「ふむ、あったのはこれだけか」
大地の力を用いたことで生じた揺れに際してから逃げる際、視界の端に見えたので持ち出したCD。 使い捨てである技マシン。
探査中に手に入れたものと併せて二枚。 片方はニドキングが使用することが出来るが、さし当たっては必要ではない。
そして何よりも、結局この島から出る手段は見つかっていない。
「あら、それでしたら」
そう言って、織莉子はデイパックから同じ形のディスクを取り出す。
水色をしたそれこそは、まさしく捜し求めていた秘伝マシン『波乗り』
「…………」
「ど、どんなものだか知らなかったのですから、仕方ないです!」
一応の収穫らしきものはあったとはいえ、最初からあったということは、城の探索に費やした時間は全くの徒労だったということだ。
サカキならずとも、文句の一言くらいは言いたくもなる。
「あ、えーとそれよりも、ポケモンが覚える技は4つまでではなかったのですか?」
「……まあいい。 それなら簡単なことだ、あの場で覚えたんだよ」
あの時、リザードンを倒したことでニドキングはレベルが上がった。
そして丁度『大地の力』という地面タイプの技を習得できたのだ。
特殊タイプではあるがニドキングは特殊も低くなく、そして何よりもタイプの一致した技。
乱れ突きの代わりに習得したのだが、予想以上に早く役に立った。
452
:
◆7KTvmJPRwQ
:2011/08/06(土) 00:58:13 ID:gacRaatc
「波乗りを習得させるとなると少し技が厳しいが仕方が無い。 ひとまずこの島から出るとするか」
「ええ、この城の探索にはもう少し準備が必要なようですしね」
コピーポケモンたちは地下からは出てこなかった。
とはいえ、地下の捜索は断念せざるをえず、こうなると上層の探索も何かしらの危険が無いとも限らない。
幸い移動手段は確保できたのだし、ここは引くことは共通した思考となる。
最も、サカキはこの場所には必ず戻ると決めていたが。
「…………」
「なんですか?」
「いや、なんでもないさ」
オートバジンに向かう織莉子に答えず、サカキは秘伝マシンを取り出す。
織莉子の能力があれば、あるいは可能なのではないか。
何十何百と最善手を選び続けられるなら、あるいはニドキングと二人であの場を突破できるのではないか。
そう、織莉子にサカキ並のポケモンの知識があるなら。
「……ニドキング」
若い才能に苦味をかみ締めつつ、ニドキングを呼び出す。
そんなもの、気の迷いだと断じながら。
【H-8/ポケモン城城門前/一日目 黎明】
【美国織莉子@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]:健康、SGの穢れ(極小)、白女の制服姿
[装備]:オートバジン@仮面ライダー555
[道具]:共通支給品一式、ひでんマシン3(なみのり)
[思考・状況]
基本:何としても生き残り、自分の使命を果たす
1:鹿目まどかを抹殺する。ただし、不用意に他の参加者にそれを伝えることはしない
2:キリカを探し、合流する。まずはそのために、市街地エリアへ向かう方法を探す
3:積極的に殺し合いに乗るつもりはない。ただし、邪魔をする者は排除する
4:サカキと行動を共にする
5:海を渡る。
[備考]
※参加時期は第4話終了直後。キリカの傷を治す前
※ポケモンについて少し知りました。
※ポケモン城の一階と地下の入り口付近を調査しました。
【サカキ@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:健康
[装備]:高性能デバイス、ニドキングのモンスターボール@ポケットモンスター(ゲーム)
[道具]:共通支給品一式 、技マシン×2(サカキ確認済)
[思考・状況]
基本:どのような手段を使ってでも生き残る。ただし、殺し合いに乗るつもりは今のところない
1:『使えそうな者』を探し、生き残るために利用する
2:織莉子に同行する
3:海を渡る。
4:力を蓄えた後ポケモン城に戻る(少なくともニドキングとサイドンはどうにかする)
5:『強さ』とは……何だ?
6:織莉子に対して苦い感情。
[備考]
※『ハートゴールド・ソウルシルバー』のセレビィイベント発生直前の時間からの参戦です
※服装は黒のスーツ、その上に黒のコートを羽織り、黒い帽子を頭に被っています
※魔法少女について少し知りました。 織莉子の予知能力について断片的に理解しました。
※ポケモン城の一階と地下の入り口付近を調査しました。
※『ギンガ団』についての知識はどの程度持っているかは後続の書き手さんに任せます
【オートバジン(バトルモード)@仮面ライダー555】
現在の護衛対象:美国織莉子
現在の順護衛対象:サカキ
[備考]
※『バトルモード』時は、護衛対象の半径15メートルまでしか行動できません
※『ビークルモード』への自律変形はできません
※順護衛対象はオートバジンのAIが独自に判断します
【サカキのニドキング♂@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:レベル43、ダメージ(小)
[備考]
※取得技はシャドークロー きあいだめ にどげり だいちのちから
※波乗りの代りに何を忘れさせるかは次の書き手さんにお任せします。
【ポケモン城@ポケットモンスター(アニメ)】
映画ミュウツーの逆襲に登場した城。 モデルはサグラダ・ファミリア。
上層は手付かず、地下にはポケモンの研究施設があり、この島に支給されたポケモンのコピーたちが行く手を阻む。
(サカキ達が確認した範囲ではコピーポケモンだけですが、他のポケモンもいるかも?)
453
:
◆7KTvmJPRwQ
:2011/08/06(土) 01:04:32 ID:gacRaatc
以上ですー。
織莉子の能力ってポケモンなら最強だと思うんだ。
あとサカキ様は何を考えてあんな技構成に。
とりあえず問題になりそうなのはコピーポケモンと奥に何かの地下部分ですな。
正直まずいようでしたら地下部分は研究施設のみとして、城の上層部含めて隅々まで探索させることにします。
あと上がよくてもレベルアップがややこしいからいらない、といわれたら変えます。
その場合だと技マシン消費して地震か織莉子がどうにかするかのどちらかかな?
遅刻した上に問題ありそうなの投下してすいませんー。
454
:
名無しさん
:2011/08/06(土) 01:10:50 ID:F7JYj/YA
投下乙
まずは指摘。
>ピカチュウ、ガブリアス、グレッグル、噂に聞いたのみの三つ首のドラゴンタイプや、鋼タイプ『よ』思わしき人型ポケモン。
と、の間違いでしょうか?
まさか本格的なポケモンバトルがみられるとはw
ポケクローンもポケモン城だし納得か
織莉子のうっかり……w
波乗りで脱出した二人はどこにむかうのかー
455
:
◆3.8PnK5/G2
:2011/08/06(土) 01:56:47 ID:HUCoR6Wc
完成したのですが、投下しても良いのでしょうか
456
:
名無しさん
:2011/08/06(土) 01:58:23 ID:rb9Zkuro
宜しくどうぞ。感想指摘はまとめてということで。
457
:
◆3.8PnK5/G2
:2011/08/06(土) 02:04:12 ID:HUCoR6Wc
ありがとうございます
では仮投下を開始します
458
:
◆3.8PnK5/G2
:2011/08/06(土) 02:05:17 ID:HUCoR6Wc
スマートブレイン社が、轟音と共に崩壊していく。
市街地の建造物の内で最も目立つであろう高層ビルは、
徐々に背を縮めていき、やがて完全に消失した。
スマートブレイン社は、この島の中でも群を抜いて巨大な施設だから、破壊によってもたらされる影響は大きい。
村上とオーキドも、それによって方針を決定した者である。
これだけ大規模な変化があれば、必ずや何人かの参加者がその地に足を運ぶだろう。
多くの参加者と接触できるチャンスではあるが、
それは殺し合いに乗った者と遭遇するかもしれないというリスクも背負っている。
例え徒党を組めたとしても、襲撃されて仲間を失ってしまっては本末転倒だ。
結果として、二人は「ビルから離れる」という選択肢を選んだのである。
ビルからの避難を決定した数分後、
今度は女性の声が二人の耳に飛び込んできた。
かなりの大音量である。拡声器で遠くまで聞こえるようにしたのだろう。
『私……、こんな所で死にたくない!! お願い、誰か……きゃああああああ!!』
内容からして、女性は何者かに襲われているようだ。
「死にたくない」と言っている事から、
既に彼女は死の危険に晒されている可能性が高い。
女性の懇願の直後に、獣の叫び声と、拡声器が地面と接触する音が響き渡る。
その後に、音が二人に降り注ぐことはなかった。
女性は獣に襲われ、拡声器は破壊――もしくは第三者に止められたと考えられるのが正解だろう。
今行っても、女性が生存している可能性は高くはない。
それどころか、加害者に攻撃される可能性の方が高いだろう。
しかし、どういう訳だろうか。
オーキドはスマートブレイン社の一件とは逆の道――すなわち、声のした方向にあえて向かう事を選択したのだ。
「あの娘の生死は分からんが……それでも行かねばならんのじゃ。行ってあのポケモンを保護せねば……」
オーキド曰く、あの猛々しい叫び声をあげた獣もポケモンの一種らしく、
自分はあのポケモンを操っているであろう者から、
ポケモンを奪還、そして保護しなければならないと村上に語った。
村上は彼を止めようとはしない――いや、止める必要性が無い。
既にオーキドからは十分な情報をもらっていたし、
本人の意思を無視して無理に引き留めようとするのは、
「下の下」の者がする恥ずべき行為だと、彼は考えていた。
六時間後に「政庁」で合流する事を約束した後、
村上と別れようとする際、オーキドは彼にある事を言い伝えた。
それの内容は、オーキドが持つ最後の情報である。
459
:
名無しさん
:2011/08/06(土) 02:07:21 ID:qXuGNTRk
読了。
ちょっと一点だけ気になる箇所が。設定ミスなのかどうかは不明なのですが、リメイク金銀の過去にあたる、
リメイク赤緑の方では、サカキの手持ちのサイホーンは、サイドンに進化していないんですよね……
そこのところはこれでOKなのか、他の方の意見も聞いてみたいところです。
460
:
名無しさん
:2011/08/06(土) 02:07:39 ID:qXuGNTRk
おっと、失礼しましたorz
461
:
◆3.8PnK5/G2
:2011/08/06(土) 02:08:51 ID:HUCoR6Wc
* * *
ほんの数分前までビルが存在していた場所を見つめながら、村上は一人、思い返す。
オーキドが去り際に伝えた情報は、「ミュウツー」なるポケモンについてであった。
曰く、人類が創り上げた唯一無二の新たなる生命体。
曰く、研究の末、凶暴かつ残虐な思考を得てしまった怪物。
曰く、技術の「進化」の過程で生み落とされた、最強にしての最悪の敵。
そして――オーキドが保護を不可能と判断しているポケモン。
それを聞いた村上が感じたのは、「恐怖」ではなく「興味」。
「間違った進化」の産物が、どれほどの可能性を秘めているのかを見てみたい。
人類が創り出した最強の生命体の力は、オルフェノクに匹敵しているのか、それとも――。
未知の力を有するポケモンという存在、そしてゼロから生命を創り上げる科学力。
これらの技術を応用すれば、オルフェノクに更なる「繁栄」を与える事が可能となるだろう。
そう、全ては同属への「愛」からなる行為。
永劫の繁栄と幸福の為に、彼は種の更なる発展への鍵を求める。
さて、先程はスマートブレイン社を訪れる事は諦めていたが、それはオーキドと行動していたからだ。
一般人の存在は、戦闘の際に大きなハンデとなりえる。
故に、確実に戦闘が起こるであろう場所には行かないほうが賢明だと考えた。
しかし、別行動をとっている今なら、スマートブレイン社に向かう事は何も問題ない。
スマートブレイン社跡地に向かうか、否か――村上峡児の選択や如何に。
【 D-3 / 市街地 / 一日目 黎明 】
【村上峡児@仮面ライダー555】
[状態]:健康、人間態
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本:オルフェノクという種の繁栄。その為にオルフェノクにする人間を選別する
1:SB社跡地に向かうか、それとも別所に向かうか
2:ミュウツーに興味
3:乾巧の後押し
4:選別を終えたら、使徒再生を行いオルフェノクになる機会を与える
5:出来れば元の世界にポケモンをいくらか持ち込み、研究させたい
[備考]
※参戦時期は巧がラッキークローバーに入った直後
【オーキド博士@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0〜3(確認済み)
[思考・状況]
基本:ポケモンの保護、ゲームからの脱出
1:声の方向に向かい、ポケモンを保護する
2:ミュウツーを警戒
3:オルフェノクに興味
462
:
◆3.8PnK5/G2
:2011/08/06(土) 02:09:41 ID:HUCoR6Wc
仮投下終了です
投下が遅れてしまってすみませんでした
463
:
名無しさん
:2011/08/06(土) 12:36:17 ID:5pda.FIE
仮投下乙です
感想は本投下後として自分的にはポケモン城関係は問題ないと思います
後は上で言われてる疑問ですか
464
:
名無しさん
:2011/08/06(土) 16:43:06 ID:sAtnU3u.
最悪ジム用とは別個体とかで説明…できない?
ここにいるサイドンの説明も何かしらつける必要ありそうだし
465
:
名無しさん
:2011/08/06(土) 17:24:51 ID:uGMAJZGY
>美国織莉子とサカキの話
野良ポケモン……というより主催と関係のある施設で警備に配備されてるって感じかな。
確かにこれはグレーだと思う。
何か有るにしても、参加者以外で参加者を殺せてしまう者達を出していいのかどうか。
あとポケモンがやられた後に空ボールで補給に来れば、強力な現地調達も可能だろうし。
ただ、やたらと僻地でポケモン絡みの施設であるポケモン城は主催絡みの何かを置くのにうってつけだとも思う。
二人の開始地点からしたらすぐそこだったけど、この二人も一度離れたその後は、
滅多な事じゃ誰も寄り付けないと思うのよね、ここ。蓬莱島(こっちはギアス絡みか)もそうだけど。
個人的には有りじゃないかなと思う。
今のところ、他も有りな意見が多い……のかな?
466
:
名無しさん
:2011/08/06(土) 19:42:35 ID:F7JYj/YA
>>459
そういや、ミサに支給されたのってサイドンなんだよねw
そのへんどうなんだろう? さかのぼって修正とか?
467
:
名無しさん
:2011/08/06(土) 20:09:42 ID:xD.phBvg
FRLGからHGSSまでの三年間の修行で進化してたんだよッ!って押し通してみる?
>>465
あまりバランスが崩れないよう作者さん達が配慮してくれれば有りにしてもいいんじゃないかなあ
あとポケモン死亡後の空ボールは使用不可能でいいんじゃない?
支給品に空ボールがあるかどうかは今後の作者の裁量次第で
468
:
◆7KTvmJPRwQ
:2011/08/06(土) 20:59:28 ID:6T13I.cA
ちょっとPCに水零してしまったので携帯で。
皆様指摘ありがとうございますー。
コピーポケモンの方は一応全く問題無しではないけど許容範囲くらいですかね。
そして問題なのはサイドンか…支給された子は初代であり、FRLGではサイホーンだったのですねー。
一応HGSSではサイドンに進化していたはずですし、パラレルではあるけど同じ個体なので見間違えた、ではダメですかね…?
469
:
◆7KTvmJPRwQ
:2011/08/06(土) 21:06:06 ID:6T13I.cA
と、勘違い。
HGSSはそもそもサイホーン系自体いなくなっているのですね、すいませんorz
そうなると、いっそサイドンの部分を削るか、あるいは何か手放した話を捏造するか、ですかね。
470
:
名無しさん
:2011/08/06(土) 21:09:10 ID:F7JYj/YA
まあ、ミサに支給されたのがサイホーンなら修正で安定だったのですが、
サイドン知らないならミサのサイドンは? ってなるのでそのままが一番矛盾が少ないかもしれません
自分はそのままが面倒少ないと思いますが、他の方はどうでしょう?
471
:
◆7KTvmJPRwQ
:2011/08/07(日) 10:25:42 ID:afT2gpU.
ふむー、では後でネカフェ行ってからの話になりますが、
サカキがサイドンを見た際に、
進化した後とある理由で一時期的に手放していた、
という感じでサイドンが手持ちにいない理由をごまかしつつ説明する文を入れ、
また、サカキの備考に
※サイドンはパラレルワールドでの手持ちですがそこまで気付いていません。
と書くということでどうでしょうか。
472
:
◆qbc1IKAIXA
:2011/08/12(金) 01:56:31 ID:qJkG/1jI
修正部分を投下します。
473
:
本スレ>>755差し替え
◆qbc1IKAIXA
:2011/08/12(金) 01:57:57 ID:qJkG/1jI
ピカチュウは「ピカー」と振り返りながら、声の方向に走っていく。
声の主は棚や保存庫の探索をやめ、屈んで左手を差し出していた。そのまま腕を走らせて、肩にピカチュウを安定させる。
「ふむ、道具探しはここまでにするか。あまり探せていないけどしかたないね、ピカチュウ。
ボクはN。君たちはポケモンの味方? それとも……敵?」
姿を見せたNは敵のアクセントに力を入れていた。
見た目はキザっぽいガキである。なのに最後の言葉は殺気がこもっていた。
こういうのはロクでもない環境にいたもんだ。大人を舐めているとしか思えない。
いつかこういう態度をあらためさせるため、お尻ペンペンが必要だな、と海堂は己の結論に満足した。
まあ、それはさておき、ポケモンなんて知らない。
ゆえに答えは決まっている。
「ボケモンだかデジモンなんだか知らねーよ。だいたい敵だの味方だの物騒な。俺様はそんな小さい器にはおさまんねーの」
「へえ、じゃあなんだっていうのかな?」
ふっ、と海堂は笑う。そんなことも知らないのか。
手近にあった机に登り、親指で自分を指す。
「俺様はただの天才さ」
決まった。
これ以上にないタイミングで、自分を表す言葉を発する男はそういないだろう。
海堂は満足気に笑った。
一方、Nはぽかんとこちらを見ている。状況を把握できていないか。自分が眩しすぎたのだろう。無理もない。
ピカチュウは半目で「ピ……カ〜?」と唸っている。ネズミには難しすぎたか。
ルヴィアは……
「いいかげん降りなさい。話が進まないでしょう」
机を蹴ってきた。足場を失った海堂は地面に転がり落ちる。
人を傷つけるなんて最低だ。さすがに温厚な(そう思っているのは本人だけ)海堂もぶち切れる。
「いって〜……てめ、なにしやがる!」
「鬱陶しい真似をするからですわ。この程度ですんで、ワタクシの人格者っぷりに感謝しなさい」
「鬱陶しい真似ってなんだ! この俺様、海堂直也が初対面のガキに最高の自己紹介をしていたっちゅーに……」
「気づきませんの? パラレルワールドの手がかりが目の前にありますのよ」
そう言ってルヴィアはピカチュウを指した。
Nが警戒したのを海堂は見逃さなかったが、疑問の解消が先だ。
「パラレルワールド……?」
そう、海堂は数時間前の己の発言を忘れていた。
「あ・な・たがそう推理したんでしょーが!」
ルヴィアのクロスチョップが喉元に炸裂する。
ぐえっ、と呻きながらそういえばそんなこともあったなー、と思いだしてきた。
海堂は(本人はそう思っていないが)頭が悪い。
天性の勘の良さでパラレルワールドと考えが及んだが、その先に続けようがない。
ルヴィアとは文字通り世界が違うので、最初のうちは覚えていたが、馴染んだ今はつい頭から追い出してしまったのだ。
「パラレルワールド? それはいったい……」
「ああ、自己紹介が遅れましたわね。ワタクシはルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトと申しますわ。覚えておきますように。
そこで倒れている愚か者は海堂直也。忘れてけっこう」
「おい、誰が愚かも……」
「お黙りなさい」
ピシャリと言い伏せられ、思わず口つむぐ。
「まっっっことに不本意ですが、その男のおかげでひとつの可能性に思い当たりましたの。
その仮説は耳にする価値があると思いますが、いかがいたしますの?」
「……取引ということかな?」
「そんな固いものではありませんわ。ちょっとした情報交換がしたいだけですし、あなたにも有益な情報だと思いますわよ?」
ルヴィアは少し間を置き、髪を軽くあげた。
474
:
◆qbc1IKAIXA
:2011/08/12(金) 01:59:35 ID:qJkG/1jI
2スレ目をこちらに。
主な追加部分は
> 声の主は棚や保存庫の探索をやめ、屈んで左手を差し出していた。そのまま腕を走らせて、肩にピカチュウを安定させる。
>「ふむ、道具探しはここまでにするか。あまり探せていないけどしかたないね、ピカチュウ。
>ボクはN。君たちはポケモンの味方? それとも……敵?」
こちらになります。
まだ不自然である、他に指摘部分を発見したなどありましたら、またお願いします。
475
:
名無しさん
:2011/08/12(金) 09:04:00 ID:U6ShvuIc
>>474
修正乙です
それで解決されてると思います
476
:
名無しさん
:2011/08/12(金) 21:41:30 ID:fjw5olPQ
了解しました、それでだいじょうぶですかと
477
:
<削除されたのは乾巧って奴の仕業なんだ>
:<削除されたのは乾巧って奴の仕業なんだ>
<削除されたのは乾巧って奴の仕業なんだ>
478
:
◆F3/75Tw8mw
:2011/08/25(木) 20:16:34 ID:d2l0At2Y
ニア、仮投下致します。
479
:
◆F3/75Tw8mw
:2011/08/25(木) 20:17:08 ID:d2l0At2Y
(……どうにも、腑に落ちないですね……)
斑鳩司令室。
そこに置かれた椅子の上で、ニアはある事実に頭を悩ませていた。
それは未だに把握しきれぬこの艦の操作方法でも無ければ、組み立てている最中にあるジグソーパズルでもない。
ずばり、彼の行動方針そのもの―――この殺し合いからの脱出についてだ。
(アカギは我々に、『魔女の口づけ』を元にした呪術式を組み込み、行動を制限した。
己に不利益となりえる場合は、即座に処断が下せるように……)
脱出の為にどうにかせねばならぬ問題。
その第一が、アカギにより組み込まれた呪術式だ。
どうやらこれは、『魔女の口づけ』という名のモノを元にしてある―――アカギの言葉を信じるならだが―――らしく。
そして、参加者の中にはその元を知る者が数名いるらしい。
(ならばまずは、その者と接触して内容の分析をするのが得策……か)
故にニアも、Lをはじめとした対主催派達と同様に、そう考える……が。
実はこの考えこそが、ニアの頭を悩ませていたのだった。
何故なら……
(……何故、アカギはそれを我々に教えた……?)
このヒントは、アカギ自身から与えられたものに他ならないのだから。
480
:
◆F3/75Tw8mw
:2011/08/25(木) 20:17:38 ID:d2l0At2Y
(儀式とやらを無事に遂行させる為にも、我々の反抗は絶対に抑えなければならない筈。
それにも関わらず、奴は我々に有利となる情報を態々提供してきた……)
アカギからすれば、己の打倒を図るニア達の存在は邪魔でしかない筈。
だが、彼は丁寧にも全ての参加者の前で与えてきたのだ。
魔女の口づけという名前と、それを知る者がこの会場にいるという、呪術式についての大きすぎるヒントを。
考えられるとするなら、それ自体が参加者を釣る為の罠という可能性か。
或いは、反抗など諸共しないという余裕の表れだろうか。
(いや……そもそも反抗という観点からいえば、人選そのものが明らかに不自然だ)
しかし、不可解な点はそれだけではない。
そもそもこの会場に集められた参加者の人選自体が異常なのだ。
参加者からの反抗を阻止するというなら、こんな呪術式なんて態々用意する必要が無い。
自分達の様な者を集めず、最初から殺し合いに積極的な者のみを集めればいい話じゃないのか。
(例えば、キラが優先して裁き続けた様な凶悪犯ばかり集めれば、殺し合いは積極的に進む。
儀式を円滑に進めたいなら、それが一番いい方法の筈……我々の様な人間を呼ぶ必要性がない)
ニアが知る限りでも、この殺し合いを良しとしない参加者は名簿に既に数名いる。
そしてその多くが、一筋縄ではいかない曲者ときたのだ。
やはり、分からない……儀式を止める側に回るであろう人間を、何故こうも集めたのか。
考えられるとするなら……そんな者達を諸共しない程に凶悪な殺人鬼がいる、ということだろうか?
481
:
◆F3/75Tw8mw
:2011/08/25(木) 20:19:15 ID:d2l0At2Y
事実、あのオルフェノクとかいう怪物が参加者の中にはいる。
あれは人の手で叶うような相手ではない、文字通りの化物だ。
(……待て……そう言えば、アカギは……)
そこまで考えて、ふとニアはある事に気付いた。
あの場で、アカギは確かこんな事を言ってはいなかっただろうか。
――――――君たちの中には他者を傷つけること、他者を殺めることなど出来ない者も大勢いるはずだ。
――――――故に、『儀式』中は君たちにはどのような行動をとることも許される。
(儀式中の行動は、何をしても自由……まさか……)
ここでニアの脳裏に浮かんだのは、ある一つの可能性。
アカギが態々、対主催にとって有益な情報を流してきた事。
自分達の様な対主催派の人間を招集した事。
そして、この行動の自由を主張する発言。
これら全てを統合した結果、考えられるのは……
(……儀式とは、単なる殺し合いではない。
私達の反抗という行動も含めてた上での勝者決め……つまり。
この会場で参加者が起こす全ての行動こそが、儀式という事なのか……?)
儀式の中には、自分達の反抗までもが組み込まれているのではないかという事だ。
482
:
◆F3/75Tw8mw
:2011/08/25(木) 20:20:01 ID:d2l0At2Y
そう考えると、納得がいくところも出てくる。
無論これ等は全て、確たる証拠が無い推論に過ぎない。
しかし……単なる妄言として捨て去るには、惜しい推論でもある。
(儀式の最終的な目標は、勝者たる最後の一人……奴の言葉を借りるなら、『最も価値のある魂をもつ者』を決める事にある。
つまり、殺し合いの過程こそが魂の価値を磨くとも言える。
命の危機を経験する事は勿論、こうして対主催の考えを持つ事も……その末に、主催打倒を挫折する事も)
もしもアカギが愉快犯だったとしたら、こうした自分達の一挙一動を見て楽しんでいると、そういう事で全ては解決する。
しかし、これはそうじゃない……はっきりとした目的がある儀式なのだ。
だとしたら、考えられる儀式の目的は。
(そうした多くを体験させる事で、奴はより価値のある魂を……作ろうとしている?)
そうした一挙一動で、価値をより高めた魂……それを手に入れる事ではなかろうか。
(……この推測が当たっていると仮定して、だとしたら何の為にアカギが動いているか……調べる必要がありますね。
奴の事を知っている参加者がいれば、幸いですが……)
現状で考えられるのは、ここまでだ。
これ以上は、推理しようにもその為の材料がどうしても足りない。
そうなると、他の参加者と接触して情報を集める必要が出てくるが……それをするには、問題が一つだけある。
(出来るなら、この斑鳩を離れたくはないのですよね……全てはバゼットさん次第、ですか)
現状ではバゼットが他の参加者を案内しない限り、この斑鳩から離れて自ら動くか。
或いは、早急に斑鳩を動かして人がいそうな場所へと艦ごと移動するかしかないという事だ。
出来るなら、前者は選びたくない。
先程バゼットにも告げた様に、斑鳩は対主催の拠点と考えている場所だ。
それを、離れている内に他者にでも占領されようものなら、厄介な事になる。
ならば必然的に、選ぶのは後者しかなくなる。
483
:
◆F3/75Tw8mw
:2011/08/25(木) 20:20:36 ID:d2l0At2Y
(出来るなら、次の放送……この海域が禁止エリアに指定されるまでには、移動したいものですが……)
しかし斑鳩を動かすには、機械の解析が終わるのを待つしかない。
そしてその間、パズル以外には特にやる事がないのも困ったものだ。
せめて何か、例えば携帯電話の様に外部と連絡が取れるモノがあれば大分状況は変わるのだが……
(生憎、バゼットさんに渡した砲丸も含めて……いまいち使い方の分からない支給品ばかりでしたしね)
残念ながらニアの支給品には、そこまで便利なものはなかった。
ただし、それは全く使い道が無いものではなく……使い道が分からないものだったから。
この斑鳩同様に、彼の見知らぬ……未知と呼べるものばかりだったが故だ。
(スナッチボール……ですか)
その一つが、スナッチボールと呼ばれる支給品。
説明書によると、これはモンスターボールと呼ばれる道具の一種らしく。
『一度だけ、他人の持っているポケモンを奪う事が出来る』効果があるらしい。
しかしニアには、そのポケモンが何なのかが分からない為、いまいち用途が分からないのだ。
だが、説明書を見るに、不要な品と断じる事も出来ないのもまた事実である。
例えば、ポケモンが強力な携帯兵器か何かだったとしたら、これ程強い道具はないからだ。
(そして……この薬剤も)
そしてもう一つが、注射器とセットになっている謎の薬剤。
ニアは知る由もないが、それはイレギュラーズのアリスが求め、そしてマオに支給されたのと同一のモノ。
C.C.細胞を体内に持つイレギュラーズにとっては、切り札にして延命剤とも言える逸品。
即ち、魔女細胞の抑制剤だ。
(……交渉材料として、使えなくはない、ですかね)
結局のところ、これらに現状を劇的に変えられる効果は見込めない。
よってニアは、一先ず効果が分かるまでは手元にそれらを置いておこうと考えた。
484
:
◆F3/75Tw8mw
:2011/08/25(木) 20:21:50 ID:d2l0At2Y
しかし……彼はこの時、思いもよらなかっただろう。
ポケモンを頼り戦う者達にとって、スナッチボールが如何に恐ろしい切り札となり得るかを。
そして、その手の抑制剤が……魔女を目指す凶悪なイレギュラーズの少女に、狙われている事を。
【H-2/斑鳩司令室/一日目 黎明】
【ニア@DEATH NOTE(漫画)】
[状態]:健康
[装備]:ジグソーパズル×n
[道具]:基本支給品、スナッチボール×1、魔女細胞抑制剤×1
[思考・状況]
基本:この会場より脱出し生還する
1:脱出のためのプランを練る。
2:その為に、魔女の口づけを知る者・アカギを知る者との接触を図る
3:スナッチボールと抑制剤の使い方を出来れば知りたい
4:死亡したはずの人物が気になる
5:夜神月は生かしたまま連れて帰りたい
[備考]
※メロの死亡より後、月との決着より前の参戦
※『儀式』の内容には、参加者による主催への反抗も含まれていると考えています。
そして、殺し合いの中でより多くの経験を『勝者』へ積ませる事が目的ではないかとも思っています。
【スナッチボール@ポケットモンスター(ゲーム)】
ゲーム『ポケモンコロシアム』及び続編の『ポケモンXD』にて登場した、特殊なモンスターボール。
通常ならば他人が持っているポケモンをモンスターボールで捕獲する事は出来ないのだが、
スナッチマシンという特殊な機械を用いて作成されたこのボールを使うと、既に他人の手持ちであるポケモンをも捕まえる事が可能になる。
これは当然ポケモンマスターからすれば重大な犯罪行為であり、事実このスナッチボールは、悪の組織シャドーによって悪用目的で作られた代物である。
このロワでも効果は同様であり、このボールで捕獲されたポケモンの支配は、ボールの持ち主に移る事になる。
485
:
◆F3/75Tw8mw
:2011/08/25(木) 20:25:06 ID:d2l0At2Y
仮投下終了です。
自分が意見が欲しいのは、スナッチボールについてです。
一応ポケモン自体はゲーム出展となっていますが、そこにポケモンコロシアムとXDを含めて良いかどうか、意見をお願いします。
ちなみに知らない方の為に簡単に解説すると。
コロシアムとXDはゲームキューブで発売された、GBAとゲームキューブを繋いで、テレビの大画面でポケモンの対戦を出来るようにしたゲームです。
スナッチボールは、そのストーリーで登場したボールになります。
486
:
名無しさん
:2011/08/25(木) 22:17:57 ID:S8bYPXbQ
出典は気になりますが、効果は瞭然としていてかつ魅力的なため大丈夫ではないでしょうか
487
:
名無しさん
:2011/08/25(木) 22:30:10 ID:LGH3jEWY
正直自分はあんまり出典をややこしくするべきではないと思うのですがねぇ…
効果の分かりやすさよりもそこが気になります
488
:
名無しさん
:2011/08/25(木) 22:35:35 ID:.lMMIxN2
問題ないと思う。
書けなくなるほど厄介な出展、ってわけじゃない上、今後の悪影響もあるとは思えないし。
489
:
名無しさん
:2011/08/25(木) 22:47:04 ID:SMRU31yM
効果がわかりやすいし、さほど出展も影響が出るものでもなさそうだから、ありだと思う。
確かにこのロワでなら、スナッチボールは魅力的すぎる支給品だしな
490
:
◆Z9iNYeY9a2
:2011/08/27(土) 15:45:20 ID:x0DDWZrs
様子見と少し気になるところがあるのでこちらに投下します
491
:
◆Z9iNYeY9a2
:2011/08/27(土) 15:51:39 ID:x0DDWZrs
ユーフェミアとゼロ(正確にはスザクだが流れ次第でこう呼んでおく)は警視庁の中を回ってみたが、特に目ぼしいものは見つけられなかった。
もしも何か使えるものがあればと思ったが武器保管庫らしきところには鍵が掛かっていたため開けることはできず、鍵探しの時間も惜しいので諦めた。
幸い武器ならある程度はどうにかなりそうな物もあり、何よりユーフェミアの荷物の軽量化も重要である。
政庁か教会か、ゼロは政庁へ行くことを進めたがユーフェミアは教会へ行くと言った。
どちらにしてもまず外へ出ないと始まらない。こうして今二人はD-3のエリアを歩いていた。
その最中、ゼロはユーフェミアとの情報交換をしていた。
彼女の言っていたゼロのこともあり、お互いの世界の微妙な違いについて把握しておきたかったのだ。
無論、己の正体を気付かれないように。
ユーフェミアの知り合いについてを先に聞いておくことでこちらから下手なところでボロを出さずにすむと考えたのだ。
ルルーシュ・ランペルージ。スザクの親友だった男。
彼はシンジュクでの掃討作戦の折、ミサイル攻撃に巻き込まれ生死不明になったらしい。
ナナリー・ランペルージ。ルルーシュの妹。
ルルーシュを失いながらもアッシュフォード学園で過ごしていたが、正体不明のKMFを操縦して戦場にいたことで囚われの身となったとか。
この二人との関わりについては言わない辺りは流石だろう。無論そこを突くことはしなかった。
枢木スザク。ユーフェミア・リ・ブリタニアの騎士。
そしてこれは枢木スザク、いや、ゼロの知らない存在。
ロロ・ヴィ・ブリタニア。
皇帝陛下直属のエデンバイタル教団という組織の審問官。
恐らく名前の表す通り、ルルーシュ、ナナリーの兄弟なのだろう。
魔女としてナナリーを処刑しようともした要注意人物ということだ。
仮の弟としてルルーシュの傍にいたロロと同じ名前であるということに皮肉を感じながらもその情報を頭に叩き込む。
対してスザク側はゼロとして行動していることもあり、特に彼女に正体を気付かれるわけにはいかない。
だからルルーシュやナナリーのことは極力伏せ、C.C.、篠崎咲世子、ロロ・ランペルージのことのみを詳しく伝えた。
そして移動中、隣のエリアで轟音と共に巨大なビルが倒壊していく光景が目に入った。
「ゼロ、あそこに」
「あそこは危険だ。君が近付くべき場所ではない」
「しかし」
「教会の方に向かうのだろう。あそこは君が向かうには不向きな場所だ」
492
:
◆Z9iNYeY9a2
:2011/08/27(土) 15:53:22 ID:x0DDWZrs
そこへ向かおうとするユーフェミアを少し強引ともいえるようにそこから離すゼロ。
スザクにはあれほど大胆なことをする人物に覚えがあった。その手で殺したかつての友、ルルーシュのやり方によく似ていた気がしたのだ。
それはただの憶測でしかないが、ルルーシュがいるかもしれないという考え。
しかし、ルルーシュのことは今のスザクには終わったことなのだ。
無論この殺し合いの脱出に必要な力をルルーシュは持っているのは事実で、いずれ協力することになるのは避けられないだろう。
でもいまのスザクにはルルーシュと会えるほど気持ちの整理はできていなかった。
今ルルーシュと会えば、ゼロとして生きることを決めた自分の中の何かが崩れてしまいそうで。
それがスザクには怖かった。
結果あの崩壊現場から離れるという選択肢を選んだ。
きっとユフィはあの場所で一人でも殺されそうな人を助けるための行動を起こそうとしたのだろう。
正直スザクにはユーフェミアと共にいることもルルーシュと会うこともそこまで変わらなかった。
それでも出会ってしまった以上無視していくこともできない。
彼自身、矛盾だらけだとは分かっていたが今はこれが最良の行動だと考えた。
後ろめたい思いのユーフェミアを連れ、教会を目指すゼロの目は、一組の男と少女の姿を捉えた。
◆
この殺し合いに呼ばれる前の私。
思い出すのは甲冑を着た人魚の姿になってしまったさやかちゃんが剣を振り下ろす姿でした。
そこから先はよく思い出すことはできません。
ただほむらちゃんに助けられたような気はするし、杏子ちゃんは死んだのだということはなんとなくわかりました。
その後のことはよく覚えていません。
そして気がつくとこんな場所に呼び出されていました。
最初に出会ったあの馬の怪人に襲われたとき、正直このまま死ぬことを望んでしまいました。
でも、いざとなったとき死ぬのが怖くて逃げ出し…そして草加さんに助けられました。
名簿を見たとき、マミさんが、杏子ちゃんが、そしてさやかちゃんがいると分かったとき、とても信じられませんでした。
でも、前に会ったときと寸分違わない杏子ちゃんに会い、杏子ちゃんにさやかちゃんを任されたときは本当に嬉しくて、
なのにあの時のさやかちゃんの苦しみを分かってあげられなかった私に本当に会う資格があるのか、そんなことを考えてしまうのでした。
◆
493
:
◆Z9iNYeY9a2
:2011/08/27(土) 15:57:39 ID:x0DDWZrs
「真理…、彼女は…俺の大事な人だ」
草加さんは言葉を少し考え、そう答えました。
「ああ、俺はずっと真理のために戦ってきたんだ」
その後にそう言葉を続けました。
なんとなくさやかちゃんを思い出しました。
「だが、乾巧…、奴は……!」
「く、草加さん…?」
「ああ、ごめん、なんでもないんだ」
どうやら無意識のうちに呟いていたようです。
乾巧。確かにそう言いました。
もしかして、その真理という人に思いを理解してもらえず、その乾巧という人に取られちゃったのではないかと。
なんとなくそんな気がしました。
もしかしてこの人もさやかちゃんと同じなのではないかと、そう思いました。
「失礼」
ふと声を掛けられました。
後ろを見た草加さんはなんとなく警戒しているのが分かりました。
「すこし話をしたいのだが。
ああ、こっちは殺し合いに乗ってはいない。
大丈夫かね?」
「ああ、少しなら別に構わないが…、その格好は何だ?」
私も後ろを見ると、まるでお姫様みたいに綺麗な女の人と、仮面にマントというなんというか…とても奇抜な格好をした、たぶん男の人がいました。
◆
「なるほど、ブリタニアが存在しない世界か…」
「つまり俺達と君達はその別世界の住人って言いたいのかな?」
「いえ、どうも私達の中でもなんだか食い違う部分があるようでして」
「え、それってどういうことですか…?」
ゼロの合図で出てきたユーフェミアは三人の会話に混じり、ゼロと自分の世界の微妙な違和感を説明した。
同じ世界の微妙な違い。それがあるということを。
494
:
◆Z9iNYeY9a2
:2011/08/27(土) 15:59:40 ID:x0DDWZrs
「ですから私たちの情報もどこまでアテになるかが分からないのです
なにしろここにいるゼロも私の知るゼロとは違う人物なのですから」
「なるほど、じゃああの木場勇治もそうだったかもしれないということか」
思い出すのは鹿目まどかを襲っていたあの木場。
本性を表しただけかと思っていたが、よく考えると以前戦ったときよりかなり手強かったような気がした。
もしかすると真理も…と一瞬考え、その可能性を否定する。
そんなことを考えていては真理を守ることはできない。
「でも杏子ちゃんは、私の…友達はそんな感じじゃなかったですけど」
「似て非なる世界から混ぜた者を入れておくことでお互いの認識を崩し、殺し合いを活性化させるということか」
「なるほど、なら両方の知り合いの情報を教えてくれ」
別世界の人間だと分かってもルルーシュとナナリーの情報が自分のときと変わらないのは自分がいるからだろうかとゼロは考える。
そしてスザクではなくゼロとして認識されている以上彼女がゼロのことを言わないのは当然だろう。
情報を言うまでも無く、ゼロは目の前にいるのだから。
草加とまどかも分かる限り、草加は自分の不利益にならない程度のことを言っていく。
無論乾巧のことを危険人物ということも忘れない。
「それで、真理には会っていないんだな」
「ああ、ここで会ったのは彼女と君達だけだ」
「なるほど、じゃあこれぐらいで…」
『誰か助けて!!』
その時であった。大きな声が辺りに響いたのは。
◆
やがて大きな鳴き声が響き、声が止む。
位置的に音源はアッシュフォード学園だろう。
495
:
◆Z9iNYeY9a2
:2011/08/27(土) 16:04:18 ID:x0DDWZrs
「…ゼロ」
「君はあの助けを呼ぶ者を助けに行くと?」
「はい」
「あの助けに間に合うとは限らない」
「それでもあの声で集まる人はいるでしょう。その中に殺し合いに乗った人がいないとは限りません」
「あれ自体が罠であったときは?
救難信号を出して集まった者を仕込んだ伏兵で叩く。
私の知り合いもよく使っていた手だ」
「それならばなおさら行くべきでしょう。
どちらにしてもあの場所はきっと戦いの場となります」
「ダメだ。あなたは行くべきではない。
私が行こう」
ユーフェミアは助けに行くべきと言ったが、ゼロは罠である可能性も考慮して自分だけで行くと言った。
「さし当たっては君をどうするかということだな…
草加雅人、君に彼女のことを預けたいのだが」
「いや、こっちとしてはあまり同行者が増えるのはな…
それに今まどかちゃんを連れているんだ。そこの君まで守りきれる保障はない」
ゼロが行くということでユーフェミアを妥協させるが、ユーフェミア自身をどうするかというのが問題であった。
草加としてはまどかと違ってあれほどに強い意志をもつ彼女を御しきれるか分からない以上、同行は避けたかった。
「…止むを得ないな。ではユーフェミア、君は政庁で待っているといい
あそこでの騒ぎを収めたら合流しよう。幸いすぐそこだ」
「…分かりました」
「とりあえず君にはこれを渡しておこう」
そう言ってゼロは赤と白のボールをユーフェミアに渡す。
ヒカリのポッチャマと書いてある紙がついていた。
「それにはポケモンというモンスターが入っているらしい。
いざというときはこれを使えば少しは身を守ることもできるだろう」
「一つ聞いてよろしいでしょうか。なぜあなたは私をここまで気にかけるのですか?」
「気にすることはない。ただ君は生きていなければならない者だからな」
「…ありがとうございます。ではご武運を」
そう言って政庁に向かうユーフェミア。
(あのゼロ、どこかで私と会ったのかしら…?)
自分を気にかける仮面の男に軽いデジャブを感じながら。
【D-3/住宅街/一日目 黎明】
【ユーフェミア・リ・ブリタニア@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:健康
[装備]:防犯ブザー
[道具]:基本支給品一式(水はペットボトル1本)、シグザウエルP226(16/15+1)、スタンガン、モンスターボール(ヒカリのポッチャマ)@ポケットモンスター(アニメ)
[思考・状況]
基本:この『儀式』を止める
1:今は政庁に行く
2:スザク(@ナイトメア・オブ・ナナリー)と合流したい
3:他の参加者と接触し、状況打開のための協力を取り付けたい
4:細マッチョのゼロ(スザク)は警戒しなくてもいい……?
[備考]
※CODE19『魔女の系譜�①櫂魁璽疋丯▲后檗戮妊璽蹐陵霪類靴神鐓譴ǂ薀蹈ぅ匹墨△譴蕕貳鯑颪靴燭茲蠅盡紊ǂ蕕了伽�
※名簿に書かれた『枢木スザク』が自分の知るスザクではない可能性を指摘されました
※『凶悪犯罪者連続殺人事件 被害者リスト』を見ました
496
:
◆Z9iNYeY9a2
:2011/08/27(土) 16:05:34 ID:x0DDWZrs
◆
「さて、一応伝えておきたいことがある」
ユーフェミアさんが行った後、ゼロさんは言いました。
「この場にはもう一人、私のような仮面をつけた者がいる可能性がある。
そいつは4mほどの戦闘兵器を生身で破壊し、その攻撃に耐えうる肉体を持つらしい。
もし会うことがあれば気をつけろ」
「そいつは何て名前なんだ?」
「…それは言うことができない」
「そうかい。まあいい。別に興味はないしな」
「感謝する。では私は行く」
「ああ、行こう、まどかちゃん」
ユーフェミアさんを見送った後、ゼロさんと別れていくことになりました。
ユーフェミアさんはすごいと思いました。
自分の意思をはっきりと伝え、ゼロさんをちゃんと説得していました。その姿に少し、憧れたような気がしました。
私だったら、同じ事をほむらちゃんにすることなんてたぶんできません。
そしてそんな姿を見て、私も自分のやることをみつけなきゃと考えていました。
思いついたことは二つです
一つはあの助け声のところに行くこと。
ユーフェミアさんを草加さんが断ったのは私という存在があるせいなのではないかと、そう思ってました。
それなら、足手まといな自分はいない方が草加さんはやりやすいかもしれない。
それにあそこへ行けば何かやる事が見つけられるかもしれないと、そう思いました。
でも、ゼロさんも言っていましたし、杏子ちゃんのときのように守られるだけになるかもしれず、それだけは嫌です。
もう一つは寄るべき場所があるということです。
ここから東にある私の家と通っている学校。
どうしてこんなところにあるのかは分かりませんが、さやかちゃんやほむらちゃんが行っているかもしれません。
学校まではちょっと遠いですが、家までなら草加さんに頼めば寄ってもらえるかもしれません。
でも、さやかちゃんに会うことにまだ決心がついていませんでした。今会うべきなのか、そんなことばっかり考えてしまいます。
「どうかしたのかい?まどかちゃん」
早く決めないとゼロさんは行ってしまい、このまま寄り道なしで流星塾に行くことになっていしまいます。
それもいいかなと思いながらも、それは逃げの選択肢みたいな気がして嫌です。
「えっと…」
私の答えは―――
497
:
◆Z9iNYeY9a2
:2011/08/27(土) 16:06:53 ID:x0DDWZrs
【D-3/住宅街/一日目 黎明】
【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:細マッチョのゼロ、「生きろ」ギアス継続中
[装備]:バスタードソード、ゼロの仮面と衣装@コードギアス 反逆のルルーシュ
[道具]:基本支給品一式(水はペットボトル3本)、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本:アカギを捜し出し、『儀式』を止めさせる
1:アッシュフォード学園に向かう
2:なるべく早くユーフェミアと同行してくれる協力者を捜し、政庁に行ってもらいたい
3:「生きろ」ギアスのことがあるのでなるべく集団での行動は避けたい
4:ルルーシュとはできれば会うことは避けたい
[備考]
※TURN25『Re;』でルルーシュを殺害したよりも後からの参戦
※ゼロがユーフェミアの世界のゼロである可能性を考えています
【草加雅人@仮面ライダー555】
[状態]:健康
[装備]:ファイズギア@仮面ライダー555(変身解除中)
[道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0〜1(確認済み)
[思考・状況]
基本:園田真理の保護を最優先。儀式からの脱出
1:真理を探す。ついでにまどかに有る程度、協力してやっても良い
2:オルフェノクは優先的に殲滅する
3:流星塾に向かう
4:佐倉杏子はいずれ抹殺する
[備考]
※明確な参戦時期は不明ですが、少なくとも木場の社長就任前です
※自分の知り合いが違う人物である可能性を聞きました
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:擦り傷が少々
[装備]:見滝原中学校指定制服
[道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0〜3(確認済み)
[思考・状況]
1:ゼロさんに付いていくか、家に行ってみるか、それとも…
2:さやか、マミ、ほむらと再会したい。特にさやかちゃんと。でも…
3:草加さんは信用できる人みたいだ
4:乾巧って人は…怖い人らしい
[備考]
※最終ループ時間軸における、杏子自爆〜ワルプルギスの夜出現の間からの参戦
※自分の知り合いが違う人物である可能性を聞きました
※草加雅人の真理への思いは、さやかが持っていたそれに近いものではないかと推測しています
【ヒカリのポッチャマ@ポケットモンスター(アニメ)】
ヒカリが最初に入手したポケモン。オス。かわらずの石持ち
青いペンギンのような外見をしている。プライドが高い。
498
:
名無しさん
:2011/08/27(土) 16:07:51 ID:sZ2wlhrM
乙です
>>495
※CODE19『魔女の系譜』〜
↑この行、途中から文章が文字化けして読めません。
499
:
◆Z9iNYeY9a2
:2011/08/27(土) 16:10:10 ID:x0DDWZrs
投下終了です
ヒカリに支給されていなかったようなのでここで出させてもらいましたが、ポケモンの支給が問題になっていた気がするので
そこも含めておかしなところがあれば指摘していただければ本投下までには修正したいと思います
500
:
◆Z9iNYeY9a2
:2011/08/27(土) 16:11:38 ID:x0DDWZrs
>>498
※CODE19『魔女の系譜�①櫂魁璽疋丯▲后檗戮妊璽蹐陵霪類靴神鐓譴ǂ薀蹈ぅ匹墨△譴蕕貳鯑颪靴燭茲蠅盡紊ǂ蕕了伽�
こうですね、なんで文字化けしたんだろう?
501
:
◆Z9iNYeY9a2
:2011/08/27(土) 16:12:17 ID:x0DDWZrs
あれ?また化けてる
502
:
名無しさん
:2011/08/27(土) 16:48:06 ID:L0omwRJc
乙です。特に問題はないかと。
感想は本投下時にでも
503
:
◆F3/75Tw8mw
:2011/08/29(月) 03:02:47 ID:tROxtD.E
意見ありがとうございます。
スナッチボールについては、一応は問題ないという意見が殆どではありますが、本投下して問題ないでしょうか?
もし問題がある場合は、問題の箇所を丸々カットして別のものに入れ替えは出来ますので。
よろしくお願いします。
504
:
名無しさん
:2011/08/29(月) 18:16:58 ID:iyg6unK2
スナッチボールの効果は面白いし、問題ないと思います。
そのまま投下しても大丈夫かと。
505
:
◆F3/75Tw8mw
:2011/08/29(月) 23:31:32 ID:tROxtD.E
分かりました。
それでは、本投下したいと思います。
506
:
◆bbcIbvVI2g
:2011/09/07(水) 13:59:46 ID:ZBXYpy2.
美国織莉子 サカキ仮投下します
507
:
◆bbcIbvVI2g
:2011/09/07(水) 14:04:40 ID:ZBXYpy2.
美国織莉子とサカキは現在海の上にいた
海の上といってもどこかの剣士よろしく水の上を歩いているなんてことはなく、小さな舟の上にいるということだが。
この舟は出掛けに沖で見つけたもので、この際だから使わせてもらおうということになった。
波乗りを習得したニドキングが縄でその舟をひき、その後ろをオートバシンが浮遊して追っていた。
その舟の上、織莉子は気になっていたことをサカキに問う。
「一つ聞いてもよろしいでしょうか?」
「何だ?」
「ギンガ団とは、アカギとはどのような人なのですか?」
この殺し合いを主催したアカギのことを知っているかのような発言を見せることがあったサカキ。
参加者にさせられた者としては気になるのは当然だろう。
「ふむ、私がまだ組織のボスだったころに少し報告を受けた程度だからな。そこまで詳しいことは分からん。
確か宇宙のエネルギーを利用する研究を表向きはしていたようだったな」
「表向きということは裏があるのですね」
「ああ、なにやら各地で色々と不穏な動きがあるという報告はあったな。
その中でもシンオウの伝説ポケモンについても色々と探っていたようだ」
「伝説のポケモン、というと?」
「神話などで語り継がれているような強力な力を持ったポケモンだ。
中でもやつらの活動していたシンオウの伝説はかなりの力を持つものがいてな。
時間と空間を作ったポケモンがいたと言われていたらしい。
もしその力を手に入れたというのならこの状況にも納得はいくな」
しかしサカキの中で気になることがあった。
あの空間でアカギはこう言った。
『かつて、ある世界で『ギンガ団』という組織の首領であった者だ』
かつて。つまりあのアカギは今はギンガ団の首領ではないということになる。
もしそうならアカギはギンガ団の首領を辞めたが、ギンガ団そのものが壊滅したということになる。
だがそのような話は聞いたことはない。そうならばいくら何でもサカキの耳に入らないような情報ではないはずだ。
そしてもう一つ。彼が今ギンガ団ではないなら、この殺し合いは組織ではなくアカギ個人での
だが、これほど大掛かりなこと、いくら伝説のポケモンの力を使ったと言っても個人でできることではないだろう。
個人でやったことであればそもそもこの殺し合いに選ばれた面子自体も謎だ。
つまり、
(やつに協力している者がいるかもしれないということか)
「君の世界でこのようなことをやりそうな者に心当たりはないか?」
「それはアカギに協力している者という意味でしょうか?
…心当たりはなくはないですが、それが協力しているのはあり得ないはずです」
508
:
◆bbcIbvVI2g
:2011/09/07(水) 14:05:54 ID:ZBXYpy2.
彼女がそう言われて思いついたのはあの白い生物。
あれの目的ははっきりとは分からない。何のために魔法少女を、魔女を生み出しているのか。
もし自分が知っている中であり得る存在としてはそいつくらいしか思いつかない。
だが、それはないはずだ。そうであればここに鹿目まどかがいるはずがない。
「ふむ、流石に情報が不足しているな。
可能ならばシロナという人物と接触しておきたいが」
「お知り合いですか?」
「一方的な知り合いだがな。もっとも向こうも私のことは知っているかもしれんが。
お互い良くも悪くも有名人なものでな」
ギンガ団の行動地域であったシンオウ地方のチャンピオンであるシロナ。
彼女であればアカギのことについて何かしら情報を持っているだろう。
だがロケット団を率いていた自分に彼女が安々と警戒を解くだろうか?
その場合は彼女、美国織莉子を使うのも有りだろうが。
(まあ会うことができればの話だが)
そして現在地。F-7の衛宮邸にいた。
ここに寄った理由の一つは、他の参加者の住む家ということで何かあるかもしれないと思ったからである。
実際に行ってみると何のことはなくただの一般的な家だったのだが。
特に何か見つけられたわけでもなかったのでこのまま出発しようと考えた。
「サカキ様はこれから向かいたい場所などはあるのですか?」
「一応あるにはあるがかなり遠いのだよ。君はあるのかね?」
織莉子が行っておきたい場所。
見滝原中学校と我が家である美国邸。
あの孤島から出てこちらに向かったのはこの二箇所に寄るためである。
理由は簡単。
キリカがもし来るとすればこの二箇所しかないからだ。
「なるほど、君の仲間が来るかもしれないと」
「ええ、ただ少し危険な子なのでもし見つけることができれば別行動したほうがよいかもしれませんが」
彼女自身嘘をついている以上、キリカを見つけた場合はサカキとは共に行動できなくなるだろうと思っていた。
それにキリカが三人で行動することにいい顔するとは思えない。
そしてもう一つ寄っておきたい場所が織莉子にはあった。
鹿目邸。見滝原中学校と並んで鹿目まどかが行く可能性が高い場所。
サカキには名前を伏せているため鹿目邸のことは言うことはできないが、幸いにも説明した二箇所からはそう遠くない。
問題は、キリカとの合流を急ぐかまどかの抹殺を優先するかだ。
どちらかに見滝原中学校で会うことができればそれで済む話だが、どちらにも会えなかった場合はどちらを優先するか選ばなければならない。
それに、もし鹿目邸に行っても鹿目まどか自体がいなければどうしようもないだろう。
「なるほど、分かった。ここには特に何もなかったようだしすぐにでも出発するか?」
「はい、それで構いません」
509
:
◆bbcIbvVI2g
:2011/09/07(水) 14:07:02 ID:ZBXYpy2.
鹿目まどか。
彼女を殺すのは私だ。
他の、彼女を殺す意味も分かっていない者に殺させるわけにはいかない。
彼女を殺し、あれの誕生を阻止することが自分の使命。
そして今まで殺してきた者たちへの贖罪でもあるのだから。
殺し合いに乗った者もいるであろうこの環境下、一刻も早く鹿目まどかを見つけなければいけない。
「サカキさんはバイクの運転は?」
「無理ではないな。だがこれの運転を任せて大丈夫なのかね?」
「ご心配には及びません。それにもし運転中に危険が迫れば私が知らせます」
未来視の能力はこの場ではかなり見えにくくなっていることは分かっている。
現にこの先鹿目まどかを見つけられるかなどは全く見えなくなっている。
それでも、数秒後程度であれば見えることはさっきの戦いで分かった。
もし危険が迫れば、ある程度は分かるはずだ。
「ほう、いいだろう。なら目の役割は任せたぞ」
「では、行きましょうか」
【F-7/衛宮邸付近/一日目 早朝】
【美国織莉子@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]:健康、SGの穢れ(極小)、白女の制服姿
[装備]:オートバジン@仮面ライダー555
[道具]:共通支給品一式、ひでんマシン3(なみのり)
[思考・状況]
基本:何としても生き残り、自分の使命を果たす
1:鹿目まどかを抹殺する。ただし、不用意に他の参加者にそれを伝えることはしない
2:キリカを探し、合流する。
3:積極的に殺し合いに乗るつもりはない。ただし、邪魔をする者は排除する
4:サカキと行動を共にする
5:まずは見滝原中学校へ行く。その後、美国邸へ行くか鹿目邸へ行くか考える。
[備考]
※参加時期は第4話終了直後。キリカの傷を治す前
※ポケモンについて少し知りました。
※ポケモン城の一階と地下の入り口付近を調査しました。
※アカギに協力している者がいる可能性を聞きました。キュゥべえが協力していることはないと考えています。
510
:
◆bbcIbvVI2g
:2011/09/07(水) 14:08:31 ID:ZBXYpy2.
【サカキ@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:健康
[装備]:高性能デバイス、ニドキングのモンスターボール(ダメージ(小)疲労中)@ポケットモンスター(ゲーム)
[道具]:共通支給品一式 、技マシン×2(サカキ確認済)
[思考・状況]
基本:どのような手段を使ってでも生き残る。ただし、殺し合いに乗るつもりは今のところない
1:『使えそうな者』を探し、生き残るために利用する
2:織莉子に同行する
3:見滝原中学校へ行く。
4:力を蓄えた後ポケモン城に戻る(少なくともニドキングとサイドンはどうにかする)
5:『強さ』とは……何だ?
6:織莉子に対して苦い感情。
[備考]
※『ハートゴールド・ソウルシルバー』のセレビィイベント発生直前の時間からの参戦です
※服装は黒のスーツ、その上に黒のコートを羽織り、黒い帽子を頭に被っています
※魔法少女について少し知りました。 織莉子の予知能力について断片的に理解しました。
※ポケモン城の一階と地下の入り口付近を調査しました。
※サイドンについてはパラレルワールドのものではなく、修行中に進化し後に手放した自身のサイドンのコピーだと思っています。
※アカギに協力している者がいると考察しています。
【オートバジン(バトルモード)@仮面ライダー555】
現在の護衛対象:美国織莉子
現在の順護衛対象:サカキ
[備考]
※『バトルモード』時は、護衛対象の半径15メートルまでしか行動できません
※『ビークルモード』への自律変形はできません
※順護衛対象はオートバジンのAIが独自に判断します
511
:
◆bbcIbvVI2g
:2011/09/07(水) 14:11:35 ID:ZBXYpy2.
仮投下終了です
ポケモンについて調べていると、HGSSで赤いギャラドスがいた時期がDPtのスタートした辺りという考察があったので
それを採用させてもらいました
問題点などあればお願いします
512
:
名無しさん
:2011/09/07(水) 16:03:09 ID:6/kX6vC.
投下乙です
特に問題点はないと思います
ただ、細かい事ですが
途中で織莉子が「サカキ様」と呼んでいましたよ!
513
:
名無しさん
:2011/09/07(水) 21:03:10 ID:8kpBvC1Q
上のとおり織莉子のサカキの呼び名が統一されてません。
それ以外なら大丈夫だと思います
514
:
◆vNS4zIhcRM
:2011/09/10(土) 22:16:55 ID:jGNElSs2
さて、書き直した部分を。
修正点多いので変えた部分だけですが投下しますー。
>>892
「あなたは月さんの言ってた海砂って人でしょ、あたしはいいから早く逃げて」
↓
「あ、あたしはいいから早く逃げて」
>>894
それどころか上手くやればミュウツーを倒すことさえ出来るかもしれない。 殺せるかは、わからないけれど。
そう思い動き出そうとしたところ、あまり気にしていなかった灰怪人が一人前に出た。
↓
それどころか上手くやればミュウツーを倒すことさえ出来るかもしれない。 殺せるかは、わからないけれど。
「あなたは、今のうちに下がってて……えーっと」
「あ、私は弥海砂、気をつけてね、美樹さやかさん」
(……あれ、私名乗ったっけ?)
そのような覚えはないが……もしかしたらは誰か知り合いにでも聞いたのだろうか。
そんなことを考えながら動き出そうとしたところで、あまり気にしていなかった灰怪人が一人前に出た。
>>895
「何を言ってるのよあんた、この人はあの時コイツに襲われてて、それで助けを求めたんでしょ!?」
↓
「何を言ってるのよあんた、海砂さんはあの時コイツに襲われてて、それで助けを求めたんでしょ!?」
>>896
「だって、あたしは、あの人は、」
人を襲う化け物と思っていたミュウツーは、危険な人間だからこそ戦っていたのか?
月によれば善良で、無力な人間であるはずの海砂は、その実他人を殺すような人間なのか?
↓
「だって、あたしは、危ないとおもったから、」
人を襲う化け物と思っていたミュウツーは、危険な人間だからこそ戦っていたのか?
無力で、奪われるだけな人間であるはずの海砂は、その実他人を殺すような人間なのか?
>>897
「だ、だって月さんは海砂さんはいい人だって!
も、もしかしたら何かどうしようもない理由みたいのがあって!」
↓
「も、もしかしたら何かどうしようもない理由みたいのがあって!」
>>898
その言葉に、ゲーチスは軽く頭を下げる。 口の端に浮かんだ笑みを、隠す為に。
↓
わずかな不安と、少なくない期待を込めて試すように問うた言葉の答えに、ゲーチスは軽く頭を下げる。
自分の想像以上の返答だったため口の端に浮かんだ笑みを、隠す為に。
515
:
◆vNS4zIhcRM
:2011/09/10(土) 22:18:28 ID:jGNElSs2
>>899
「彼女のことは今は置くべきでしょう。 残念ですが彼女が人を殺したのは事実。
そして、それを知られたと思っている直後では、話は通じないでしょう」
「で、でもあの人はたぶん、月さんの言ってた……」
「残念ながら、月さんもまた騙されていたという可能性もあります」
というよりは、恐らく夜神月自身がさやかを騙していたのだろうが、それを言うつもりは無い。
今のゲーチスには海砂などどうでもいい存在でしかない。
ただ、あくまで話し合うと、人間を傷付ける意思はないとして。
「そんな、それじゃあ……あたしは」
「そういうこともあると、見抜けなかった私にも、責任が無いとは言えません。
幸い、まだやり直せることです」
↓
「彼女のことは今は置くべきでしょう。 残念ですが彼女が人を殺したのは事実。
そして、それを知られたと思っている直後では、話は通じないでしょう」
「そんな、それじゃあ……あたしは」
「そういう人間もいるかもしれないとは申し上げましたが、そこにこのような要素が加わるとは……
さやかさんに覚悟を問うた、私にも責任が一端があります。 ……幸い、まだやり直せることです」
>>900
だが、上がった舞台はゲーチスの思い描いていたものとはまるで違う、彼にとっては最高と呼べる代物。
込み上げる笑みを悟られぬよう、そっと顔を伏せねばならないほどに。
↓
だが、上がった舞台はゲーチスの思い描いていたものとはまるで違う、彼にとっては最高と呼べる代物。
どういう理屈かは把握しきれないが、Nは道具だったころのままの言葉を述べ、ゲーチスに昔のままに接する。
込み上げる笑みを悟られぬよう、そっと顔を伏せねばならないほどに、すべてがゲーチスに味方していた。
こんな感じに修正しましたー。
金髪については収録時に消します。
516
:
◆UOJEIq.Rys
:2011/11/02(水) 23:48:01 ID:D6rPvXGU
qb氏の投下後の方がいいかなと思ってたんですが、
どうも普通に予約期限があるようなので、放送案を仮投下させていただきます。
517
:
《第一回放送》―システム01:円環の理―
◆UOJEIq.Rys
:2011/11/02(水) 23:49:30 ID:D6rPvXGU
『おはよう、みんな』
六時ジャスト。
正確な時計があったとすれば、秒針が十二の数字を刺したと同時に、その声は響いた。
殺し合いという『儀式』に呼ばれた参加者達が聞き漏らさぬよう、『念話』を使って脳内へと直接、強制的に、否応なしに響き渡った。
例外があるとすれば、狂っているか、眠っているか、気を失っている人物だけだ。
『初めまして、と言うべきかな。僕の名前はキュゥべえ。
この『儀式』において六時間毎の放送を担当しているんだ』
キュゥべえ―――インキュベーターは己の役割を忠実にこなす。
それはあたかも、彼、或いは彼女が、第二次成長期の少女たちに魔法少女の契約を持ちかけた時のように、悪意の欠片も感じられない声だった。
『僕の事を知っている人もいれば、知らない人もいるだろう。けどその事に大した意味はないね。
僕たちから君たちに言うべき事は、最初のアカギの説明で大体終わってるんだ。
あるとすれば、それは君たちの内の誰かが『勝者』になった時だけのはずだ。
だから君たちにとって意味があるのは、僕が六時間毎にする放送。つまり、『禁止領域』となるエリアの事と、そして、この六時間で死んでしまった『脱落者』の事だけだろう。
それじゃあ早速だけど、『禁止領域』の発表をさせてもらうよ。
今回の『禁止領域』となるエリアは、【】【】【】の三カ所だ。それぞれ2時間後、3時間後、4時間後の順に『禁止領域』となるから、間違えないで欲しい』
それも当然。
彼に感情はない。彼に個性はない。彼に自己はない。
彼は己が目的のために自らの役割を果たす、機械の如きシステム。
『超個体』とも言える性質を持つ、宇宙から来訪した生物の集団、その一端末なのだから。
『次に『脱落者』の発表だ。
今回の六時間以内に死んだ人は、
【松田桃田】
【遠坂凛】
【サトシ】
【ヒカリ】
【篠崎咲世子】
【菊池啓太郎】
【千歳ゆま】
【ルルーシュ・ランペルージ】
【弥海砂】
【南空ナオミ】
以上の十人だ。
みんな頑張ってくれているようで、僕たちとしてはとても嬉しい。
それだけ強い想いが、叶えたい願いがあるという事だからね。
うん。最初の放送としてはこんな所かな。
今回の放送で、僕から君たちに伝える事はこれで終りだ。
それじゃあまた、六時間後に放送を行うね』
そうして、“彼”の最初の仕事は終わった。
あとはまた、次の放送まで待機するだけだ。
だからこれは、彼らの一種の“癖”とも言えた。
『繰り返すようだけど、ここに呼ばれた誰かが死ねば、それだけ君たちの願いに近づくって事を忘れないで欲しい。
僕たちは君たちの内の誰かが生き残り、自分の願いを叶える『勝者』となるのを待っているよ』
自らの目的を知られ、拒絶を受けた後も変らずにそうしたように。
変わる事なく、繰り返し契約を迫ったように。
『儀式』に呼ばれた者たちへ、ただ一人の『勝者』となれと。
『願いを叶えられるのは一人きり。
奇跡を欲するのなら、汝。
自らの力を以って、最強を証明せよ―――ってね』
そうして『念話』による放送は終わった。
次に参加者たちが彼の声を聞くのは、六時間後にくる二回目の放送の時だろう。
518
:
《第一回放送》―システム01:円環の理―
◆UOJEIq.Rys
:2011/11/02(水) 23:51:03 ID:D6rPvXGU
◇
パチパチと小さな拍手が響く。
無機質な部屋の中、一匹佇むキュゥべえの後ろに、いつの間にか一人の男が立っていた。
「お疲れ様と言った方がいいかね?」
『いや。あれくらいなら僕たちにとっては負担にならないよ。
それより、君の方の仕事は良いのかい?』
「問題ない、一段落付けてきたところだ。
まあだからと言って、わざわざ君の所へ来る必要はないがな」
青い髪の男――アカギはそう言って、両手を後ろに組んだ。
キュゥべえの表情は変わらない。だがこれが他の人物であったのなら、怪訝な表情をしていただろう。
『ならなぜここに来たんだい?』
「なに。こうして無事、一回目の放送を迎えたのだし、一つ確認したい事があってな」
『確認したい事?
いいよ、僕に答えれる事なら何でも聞いてよ』
アカギへと向き直り、そう言ったキュゥべえに、彼は満足そうに頷いた。
そうしてアカギは、
「では聞こう。キュゥべえよ、『魔女』は間違いなく産まれないんだろうな」
この儀式の、根幹に関わる事の断片を問うた。
『魔女』
それは、参加者達を縛る『術式』を生み出した存在であり、
グリーフシードと呼ばれる黒い宝石から産まれる存在であり、
魔法少女がいずれ、絶望の果てに至る存在だ。
「アレが産まれてしまえば、心の弱った者が自殺をする可能性ある。
そうなると『儀式』が破綻してしまう恐れがあるからな」
この『儀式』の目的は、参加者達を殺し合わせ、最後の一人となった『勝者』に因果の糸を集中させる事にある。
だが参加者達が誰とも関わらず自殺してしまえば、その人物の因果の糸は途切れてしまう。
一人や二人ならまだいい。だが十人や二十人と自殺されてしまえば、目的を達するには因果の糸が足りなくなってしまうのだ。
そして魔女は、魔女の口付けによって心の弱った者を自殺へと導いてしまう。
故にアカギは、魔女が産まれることを危惧しているのだ。
だがそれは、キュゥべぇにとっては問題ではなかった。
『その心配は無用だよ、アカギ。『魔女』が産まれる事は絶対にないだろう』
「ほう。それは何故だ?」
『参加者達の居る会場は“円環の理”によって括られているからね。産まれ様がないんだ』
「なるほど。全ての魔女を産まれる前に消し去るというアレか」
とある平行世界において鹿目まどかが願い、宇宙の法則さえも再編した“奇跡”。
希望を信じた魔法少女を泣かせないための、最後まで笑顔でいてもらうための願い。
それがある限り、魔女は決して産まれ得ない。
「だがそれでは、『術式』や参加者に支給されたグリーフシードはどうなる。アレらは魔女によってもたらされたものだぞ?」
『その点は大丈夫さ。鹿目まどかの願いはあくまで“魔女を産まれる前に消し去る”ことだ。
魔女の口付けや魔女の卵は、魔女そのものじゃない。だからそれらは“円環の理”の範疇外なんだ』
「屁理屈だな」
『そうだね。けど、それで罷り通っているんだから、気にする必要はないと思うな』
「確かにその通りではあるが」
アカギはキュゥべえの言葉に苦笑する。
確かに気にする必要はない。
『儀式』が終わるまで問題なく機能してくれれば、その後どうなろうと知った事ではない。
519
:
《第一回放送》―システム01:円環の理―
◆UOJEIq.Rys
:2011/11/02(水) 23:52:02 ID:D6rPvXGU
「しかし、それならそれでもう一つ疑問が生まれる」
『なんだい?』
「“円環の理”とは、言わば鹿目まどかそのものだ。
しかしそうなると、今現在会場にいる鹿目まどかと合わせ、一つの世界に二人の鹿目まどかが存在することになる。
ドッペルゲンガーという例もある。因果律の点から見て、それは大丈夫なのか?」
『そのことに関してなら、前例はある。問題にはならないよ』
「前例?」
『第五次聖杯戦争において、アーチャーのクラスで呼ばれた存在のことさ。
彼はサーヴァントとして呼ばれた時点で、英霊となる前の自分と邂逅している。
けれど彼らにも世界にも、何の問題も起こっていないんだ。
それと同じように、“円環の理”となった鹿目まどかとただの人間である鹿目まどかは、世界的に見て別物なんだろう』
「なるほどな、合点がいった。いやむしろ、因果の糸という点から言えば推奨すべき事態でもあるか」
『そうだね。だから、出来れば彼も呼び寄せたかったところなんだけど』
「それはすまなかったな。こちらの都合で断念させてしまって」
『構わないさ。因果の糸自体はもう十分集まっているからね。
あとはそれを紡ぐだけで、僕らの目的は十分果たせる』
そう。準備は滞りなく終わり、既に『儀式』は始まっている。
第一階の放送を終えた今、なすべき事は『儀式』を円滑に進める事だけだ。
今更多少の差異に拘るのは、無意味でしかない。
そうしてアカギの懸念はなくなった。
あとは自分の仕事に戻り、自身の役割を果たすだけだ。
だからこれは、彼にとって蛇足でしかない疑問だった。
「そういえば。あのアーチャーは確か、“抑止の守護者(カウンターガーディアン)”と呼ばれる存在だったな。
人類全体を守るために、滅びの要因となるモノを殲滅する殺戮機構。
見方によっては、君たちに似ているとは思わないか?」
『そう言われればそうだね。確かに守護者と僕たちは似ている』
人類全体を守るために滅びの要因となる人間を抹殺する霊長の守護者。
宇宙の滅びを回避するために魔法少女を生み出したインキュベーター。
大局的に見れば、どちらも“大を生かすために小を犠牲にしている”。
『まあ、だからこそ理解出来ないんだけどね』
「ん? 何か言ったか?」
『何でもない。ただの独り言さ。
それよりアカギ、君もそろそろ仕事に戻った方がいいんじゃないかい?』
「確かにそうだな。こういう時、君のようにいくつも体があったらと思うよ。
それではまた、疑問が出来たらここに尋ねに来よう」
そう言ってアカギは、一歩も踏み出す事なく姿を消した。
後に残ったのはキュゥべえ一匹。“彼”は次の放送まで、ここに留まり続ける。
この一時の会合は、一つの事実を示していた。
アカギは疑問を投げかけ、キュゥべぇは答えた。
それだけならなんと言うことのない出来事。
だがそれは、“彼らはお互いに全てを話した訳ではない”、ということを示していた。
『英霊エミヤ。君は君の願い通り、立派に人類を救えているじゃないか。
それなのにどうして君は、自分を殺そうとする程に絶望しているんだい?』
己れ以外誰もいない空間で、彼は己と似た存在へと問いかける。
当然、答えはない。
当たり前の人間であれば理解できたかもしれないそれは、しかし。
人間を理解できない彼らだからこそ、理解する事が出来ない疑問だった。
『君自身に聞けばこの答えは判るのかな?
だから、その機会が来ることを待っているよ、衛宮士郎』
自ら会いに行くことはしない。それは『儀式』のルールに反するからだ。
だから彼は待ち続ける。その疑問の答えを与えてくれるだろう人物を。
彼らは役割を果たし続ける。その『目的』が果たされる、その時まで。
【第一回定時放送終了―――死者合計:十名/残り参加者:四十七名】
520
:
◆UOJEIq.Rys
:2011/11/02(水) 23:54:34 ID:D6rPvXGU
以上で放送案の仮投下を終了します。
禁止エリアについては、こちらで勝手に決めるのもどうかと思い、一先ず空欄とさせていただきました。
何か意見や、修正するべき点などがございましたら、お願いします。
vN氏の投下を待っています。
521
:
◆vNS4zIhcRM
:2011/11/03(木) 00:16:33 ID:./x6U.qg
投下乙ですー。
ではこちらも投下ー。
その声は、突然響き渡った。
山に、森に、町に、家々に、
そのどこにも僅かにすら響かず、しかしそこに居る者達の脳裏には確かに届いた。
「06:00、定刻通り死亡者、並びに禁止領域の発表を始めよう」
時刻が近づくにつれ、ある程度身構えていた者もいた。
そのような事象などとうに忘却の彼方な者もいた。
意識を失い、その声の意味が理解できぬ者もいた。
だが、その全てに対して等しく、その声は全ての参加者に確実に伝達された。
「死亡者は
菊池啓太郎
ルルーシュ・ランペルージ
篠崎咲世子
松田桃太
弥海砂
南空ナオミ
遠坂凛
サトシ
ヒカリ
千歳ゆま
以上の10名」
その言葉に呆然とする者もいたし、悲嘆に暮れるものもあっただろう。
だが、そのような事情などまるで気にせず、耳を塞ぐことも許さぬ無慈悲さを持って、声は紡ぐ。
「08:00よりB-3
09:00よりE-2
10:00よりG-7が禁止領域となる。
禁止後に領域に侵入したとして瞬時に死にはしないが、近寄りすぎて不意に死なれても興醒めだ。
よくよく考えて行動することを薦めよう、以上だ」
それきり、別れの挨拶も告げずに打ち切る。
単なる情報の伝達でしかなく、また好んで聞きたいものが居るわけでもないものを、長々と続ける意思などない。
互いにとって不要なことを行う理由など、アカギには無かった。
「お疲れ様、アカギ」
「なに、大した手間ではない、イン、いやキュゥべえ」
謙遜でも何でもなく、真にそう思いながらキュゥべえに応える。
この程度の放送が手間であると思うものなど居る筈もなく、キュゥべえの軽い挨拶のようなものだろう。
人間の感情というものが理解できないというこの生物は、時折そういった、感情のある生物のような仕草を見せる。
「禁止エリアの位置は大体あんな感じだろうね。
エリアも何も理解出来ないのが一人居るし、間違えてしなれても勿体ないしね」
「あるいはそれを用いて撃ち破るという方法を考えるかもしれないが、まあそういうことだ」
本来は一箇所に隠れ潜む者を燻りだすための仕組みではあるが、一人この仕組みとの組み合わせが最悪な人物がいる。
その人物が迂闊に踏み込む位置に配置してしまっては、折角集めた参加者が、無為に減ってしまうことになる。
元々はどこでも良い代物ではあるのだが、今回はある程度彼らの意向が働いた結果、こういう配置となった。
「さて、これでボクらはお役御免。
また6時間後までのんびり過ごすことにしようかな」
特に何らかの役割を為した訳ではないが、キュゥべえは一仕事終えたとばかりにアカギから離れ歩き出す。
姿が見えずとも、呼べばまたどこからとも無く現れるであろう後姿を見送って、アカギもその場から離れた。
522
:
◆vNS4zIhcRM
:2011/11/03(木) 00:17:11 ID:./x6U.qg
□
「あやつめ、死におったか」
ルルーシュ・ランペルージ
言葉の主、神聖ブリタニア帝国皇帝、シャルル・ジ・ブリタニアの実子であり、かつての第17位皇子。
公人である皇帝からすれば、無数にいる跡継ぎの予備程度の存在でしかないが、その中では特別な存在であった。
利害と策謀で結ばれた数多の婚姻とは異なり、彼の母たるマリアンヌはシャルル自身が、そしてマリアンヌも望んだものであった。
男と女として、皇帝と騎士として、そして理想の同志として。
その子たるルルーシュと妹のナナリーには子である以前に理想への道具という側面があった事は事実であるが、それでも彼は子としてルルーシュ達の事を愛してはいた。
後悔はない。
もとより、死んだルルーシュは彼の実の子ではない。
異なる可能性世界のシャルルとマリアンヌを拒絶し、否定した敵手と言ってもいい。
だが、だからと言ってルルーシュがシャルルに対して向けたような純然たる敵意など、抱きようのない相手ではあった。
「今は眠れ、いずれまたCの世界で見えようぞ」
異なる世界においては、真に分かり合う事が出来なかった息子。
未だに彼の実の子たる魔王ゼロとなったルルーシュとナナリーは健在ではあるが、それでもその死を僅かに悼む。
その死は無駄ではない。 この儀式が終わりを迎えたとき、真に判りあえる時が来る。
涙一つ流さぬまま、シャルル・ジ・ブリタニアの弔いは終了した。
523
:
◆vNS4zIhcRM
:2011/11/03(木) 00:19:28 ID:./x6U.qg
以上ですー。 遅れてすいません。
禁止エリアについても勝手に決めてしましました。
問題点としてはシャルルがナナナ出身と決めてしまったのでザ・デッドライズが使えるという点かな?
524
:
◆UOJEIq.Rys
:2011/11/03(木) 00:30:51 ID:ilTVfbWU
投下乙です。
“仕組みとの組み合わせが最悪な人物”とは誰でしょうね。
何人か候補はいるのですが、確証が持てません。
525
:
◆vNS4zIhcRM
:2011/11/03(木) 00:52:41 ID:./x6U.qg
ああ、失礼バーサーカーの事です。
禁止エリアとかあっても突っ込むだろうし。
526
:
◆4EDMfWv86Q
:2011/11/03(木) 13:07:55 ID:v4GPBCvk
双方投下乙です。
禁止エリアは難しく考えることもないです。シャルルについては別によいかと。そういえばOPもvN氏でしたね
……ところで、これどうやって決めるんでしょう。
自分の中では、投下済み書き手のみでの議論とか投票とかぐらいしか思い浮かびませんが、皆さんどうお考えでしょう
527
:
名無しさん
:2011/11/03(木) 21:45:09 ID:bWp84sXM
書き手投票か、日にち決めて名無し投票かのどちらかですかねー。
あと自分OP書いた方とは別ですよ?
528
:
◆qbc1IKAIXA
:2011/11/03(木) 22:38:21 ID:Y2CQi0.k
>>527
またトリップを忘れていますよw
両氏投下乙です。
どちらの放送案が採用されるか、投票日はなるべく早くしたいので、11月6日 日曜日いっぱい使うことを提案します。
ただ、書き手だけで投票するか、名無しを含めた投票かは意見が欲しいところ。
個人的には名無しありでの投票でいいのではないか、と思っています。
それでは他案、何かしら提案があるのでしたら、遠慮なくどうぞ。失礼します。
529
:
◆4EDMfWv86Q
:2011/11/04(金) 21:25:59 ID:xm6yo9hw
投票、がベターなのだろうか。ふたつだけだし票がばらけることはないのけれど。
まず管理人様にIPやらなんやらをなんやらして、土日のどっちかで短気集中、かな。
時間は多くないし、決定とするなら準備は急ぎたいですが、如何でしょうか。
530
:
◆vNS4zIhcRM
:2011/11/04(金) 23:01:21 ID:W1fXoJ/c
>>528
すいませんorz
IP確認するほど票も入らない気がしますがどうですかね。
土曜か日曜早いほうがいいなら土曜なのかな?
531
:
◆UOJEIq.Rys
:2011/11/04(金) 23:06:14 ID:8r0UuscA
そうですね。私も土曜日の方がいいと思います。
なるべく早い方がいい事は確かですし、個人的にも結果が待ち遠しいいので。。
532
:
◆qbc1IKAIXA
:2011/11/04(金) 23:12:39 ID:NT/iRg6Q
と、いうことは
11/5 00:00〜11/6 00:00 投票がいいということですかね?
IP関連は管理人さんから意見がないとなんとも
533
:
◆4EDMfWv86Q
:2011/11/04(金) 23:31:21 ID:xm6yo9hw
叩き台。24時間でなく6時間かそこらでもよいんじゃなかろうか?
今日から第一回放送投票が開始されます
投票期間は11月5日(土)00:00〜11月6日(日)00:00の24時間です。
No.1 《第一回放送》―システム01:円環の理― ◆UOJEIq.Rys死
No.2 無題 ◆vNS4zIhcRM氏
上記の二つのOPの内、一番良いと思ったものに投票してください
一人一票での投票となります
無効票でない限り、間違えて他の作品に投票してしまったとしても投票先の変更はできません
ご注意ください
534
:
◆UOJEIq.Rys
:2011/11/04(金) 23:34:37 ID:8r0UuscA
>No.1 《第一回放送》―システム01:円環の理― ◆UOJEIq.Rys死
死!?w
私死んでる!?w
535
:
◆4EDMfWv86Q
:2011/11/05(土) 00:07:26 ID:1fPflFQc
>>534
すいませんDEATHした!
…やっぱ、日曜でもギリかなー
536
:
◆qbc1IKAIXA
:2011/11/05(土) 00:26:50 ID:liJ3kJes
まあ一日は余裕置きたいかとー
自分も一日投票に費やさなくてもいいとは思いますが
537
:
名無しさん
:2011/11/05(土) 15:20:39 ID:hQ4g.u3E
結局、投票は何時するの?
日曜開始?
538
:
◆4EDMfWv86Q
:2011/11/05(土) 17:31:35 ID:1fPflFQc
バシっと決めちまうべきでしょうか。
>>533
準拠で。集計とかは他方に頼みたいですが
539
:
◆qbc1IKAIXA
:2011/11/05(土) 17:57:23 ID:liJ3kJes
日にちだけ変更して
>>533
で大丈夫だと思います
さすがに告知から1日は間を置きたいので、早くても11/7(月)00:00〜11/8(火)0:00がベストかと
今日の0時に告知をしたいと思いますが、日にちを変更したい、集計を行いたい、などありましたらそれまでに意見をお願いします
集計は他に立候補がいない場合、自分が勤めたいと思いますのでよろしくお願いします
540
:
◆4EDMfWv86Q
:2011/11/05(土) 22:07:33 ID:1fPflFQc
では、それでお願いします。他の方々もなにかあればどうぞ
541
:
◆vNS4zIhcRM
:2011/11/05(土) 22:09:19 ID:Cxwd535A
>>539
ふむ、自分は異存無いですー。
集計はしていただけるならありがたいです。
ところで◆UOJ氏の案が通った場合って禁止エリアはどうしましょうか?
氏に案があるなら任せるorどこでもいいなら自分が勝手に決めたのそのまま持ってくるor投票時に案ある人が適当に応募する、のどれかというところでしょうかね?
投票前に決めておかないと面倒になる可能性もないとも…
あと放送後の予約解禁もどうするか、ですね。
普通に考えるなら集計後1日置いて11/9(水)0:00辺りですかね?
542
:
◆4EDMfWv86Q
:2011/11/05(土) 22:38:27 ID:1fPflFQc
投票時にエリアも表記する、を推奨します。投票しなければ書かなくてよしなので。
予約解禁もそれぐらいでしょうか。余裕を置いてかつ早めに
543
:
◆Z9iNYeY9a2
:2011/11/05(土) 23:36:14 ID:4lnjtx.Q
>>542
それは禁止エリアは票数の多い場所から決めるということでしょうか?
投票日や解禁日については特に異論はありません
544
:
◆4EDMfWv86Q
:2011/11/05(土) 23:57:32 ID:1fPflFQc
>>543
ああ、みんな同じ場所を選ぶ保証もないのか…
やっぱUOJ氏に決めてもらうか。当選したらだけど
545
:
◆UOJEIq.Rys
:2011/11/06(日) 00:05:06 ID:RY0DqTlA
私は特に意見はありません。
禁止エリアも、いざとなったらvN氏と同じ場所にすればいいだけですし。
546
:
◆Z9iNYeY9a2
:2011/11/16(水) 15:57:09 ID:2jKDdzUs
えー、完成はしたのですが、正直自分の中で色々と不安要素が大きいですので
期限もあまりありませんが一端こちらに投下させてもらいます
547
:
◆Z9iNYeY9a2
:2011/11/16(水) 15:59:35 ID:2jKDdzUs
ゼロの言葉を信じ、政庁で待つことを決めたユーフェミア。
距離自体はそこまで離れてはいなかった。故にそこにたどり着いたのはゼロと離れて数分後のことだった。
そこは自分の知っている政庁とは何の違いもない建物であった。
自分や姉の執務室もあり、その部屋の中にあるものもユーフェミア自身の知っているものと全く同じだったように思う。
しかし本来あるはずのものの中にはないものもあった。
政庁の基地内を見て回ったが、格納庫にはナイトメアフレームは一機も配置されていなかった。
つまりKMFはこの会場には配置されていないということなのだろうか。
他にも武器の保管庫にも行ってみたが、当然のことながら鍵が掛かっていた。
いくら政庁で勤める皇族といっても流石に武器庫の鍵の場所までは分からない。
ありそうな場所くらいは想像がつくが自分が持っても使えるものではないだろう。
そうして一通り政庁内を見回った後、己の執務室にユーフェミアはいた。
ふとゼロから渡されたものを取り出す。ユーフェミアの身を守り得る物として渡されたものだ。確認しておく必要がある。
赤と白のボール。真ん中のボタンを押すことで使用するらしい。
ボタンを押すユーフェミア。
するとボールが開き、中から光が飛び出し――
「ポッチャマ〜〜〜!!」
水色の小さなペンギンが現れた。
「ポチャ?ポチャ!ポチャポチャー!!」
どうも状況が飲み込めていないらしい。
というかユーフェミアにとっても予想外であった。
身を守る武器というのがまさかこのような可愛らしい生き物だったとは。
「…えっと、私の言葉、分かる?」
「ポチャ…?ポチャ!」
水色のペンギンは頷く。何を言っているかは分からないがどうやら意思疎通は可能のようだ。
「あなた、ポッチャマという名前でよろしいのかしら?」
「ポチャ」
肯定のようだった。だがどうも警戒されている気がする。
もしかして今どのような状況に置かれているのか把握できていないのだろうか。
そうならまず警戒を解く必要がある。
「もしかしてあなたの飼い主って、ヒカリという名前ではないかしら?」
「ポチャチャ?ポーチャ、ポチャ!」
548
:
◆Z9iNYeY9a2
:2011/11/16(水) 16:01:53 ID:2jKDdzUs
ヒカリという名前はこのポッチャマのボールと共に渡された説明書に書いてあった名だ。
その名を出すと、ポッチャマは大きく反応した。
だがユーフェミアとしてはその後の説明はできればしたくはなかった。
それでも言わないわけにはいかない。
「あのね、今私達がおかれている環境なんだけど…」
そうして全てを説明した。
ここが殺し合いの会場であること。
それにヒカリも巻き込まれていること。
話していく度にその青い顔がますます青ざめている様子なのが分かった。
「ポ…ポチャ…」
「正直こんなことを言うのも厚かましいのかもしれないけど…、それでもあなたにお願いしたいの。
あなたは絶対にヒカリさんの元に返すわ。だから、それまでの間でいい。
あなたの力を私に貸して欲しいの」
ユーフェミアの中には自分の意思を持ち、人の持ち物であるポッチャマを使役するということに抵抗があった
しかし、だからといって迷っているわけにはいかない。こうしている間にも、きっとルルーシュやスザク、ナナリー達やあのゼロも戦っているのだ。
自分には戦う力がない。だからこそこの生き物に力を貸して欲しいと、そう思ったのだ。
「ポチャ…」
ユーフェミアは知らないことだが、もしこれが命令など強制力のあるものであったらポッチャマは逆らえなかっただろう。
しかしこれは命令ではなく懇願。ゆえにポッチャマにも選択の余地があった。
「ポチャー…、……、ポチャ!」
どうやら頷いてくれたようだった。
「ありがとう!私はユーフェミア、多分短い間だと思うけどよろしくね!」」
短い間。そう、ポッチャマはヒカリの元に届けるまで力を貸してくれるに過ぎないのだ。
ポッチャマもユーフェミアの真摯な言葉を信じることにした。
だが彼らは知らない。
その飼い主がもうこの世にはいないということを。
それを知ることになる放送の時間は、もうすぐそこまで迫っていた。
549
:
◆Z9iNYeY9a2
:2011/11/16(水) 16:03:36 ID:2jKDdzUs
◆
『最期くらい笑って死ね! 必ず俺が笑わせてやる!だから――』
『俺は知っているぞ!お前のギアスを、本当の願いを!!』
そんな声が聞こえた気がした。
あれは確か誰の声だっただろうか。
ああ、そうだ。ルルーシュ、お前だったか。
◆
「目が覚めたようだな」
「…ここは、政庁か」
C.C.が目を覚ましたとき、そこは机と椅子の並んだ会議室のような場所だった。
それがどこなのか一瞬分からなかったが、アッシュフォード学園から近くにあった場所といえば政庁しか思い当たらなかった。
ちなみにアッシュフォード学園という選択肢はない。C.C.はこれでもあの学園にはある程度は詳しいのだ。
「…ニャースはどこだ?」
「そこで眠っている」
そこ、といって指されたのはC.C.のすぐ傍。ニャースは丸くなって静かに寝息を立てていた。その表情はあまり安らかとは言い難い。
無理もないのかもしれない。敵だったとはいえ自分に近かった存在の死。ゲーチスの説法。さらに突然の襲撃から仮面の男から連れ去られたのだ。
緊張が解けたところで一気に精神的にきたのだろう。
「警戒が解けるまで随分と時間が掛かったぞ」
「ふん、突然現れた仮面の男に拉致されれば当然だろう、スザク」
「…ここでその名を呼ぶのは遠慮してもらいたい」
「あの名簿に書いてあった一人のゼロとはまさかお前の事ではあるまい」
「心当たりならある。私の同行者が教えてくれた」
そう話すスザクはずっとゼロの仮面を被ったままだ。いくらC.C.とて気になってしょうがない。
どういうつもりなのかを問おうとしたところで先に問いかけてきた。
「それにしてもなぜ君はあの時動かなかった?この猫を除くあの場の全員が何もしなかったのはおそらくそれが原因だぞ」
「なぜ、か。さあな。私にも分からん」
「……」
「正直あんなに面と向かってはっきりと魔女などど言われたのは久しぶりでな。どうも昔を思い出してしまったよ。
あいつが言っていた人を誑かす魔女。ああ、間違ってはいないな」
「だが君は生きようと思ったのではないのか?」
「確かにその通りだ。だがもしかしたら、今までの生き方のように、どこかで贖罪を求めていたのかもしれんな」
550
:
◆Z9iNYeY9a2
:2011/11/16(水) 16:05:19 ID:2jKDdzUs
多くの人間を誑かし、人の気持ちを弄んで、それで己の願いを叶えようとした自分への罰。
それからは結局逃げられなかったのだろうか。
「ふん、それにしても何が悲しくてお前とこんな話をしなければならんのだ」
「確かにな。本来その役目は私には役者不足だ」
「今度はこっちの質問に答えてもらうぞ。
その格好は何だ?ゼロの名が名簿に載っているこの場でその格好でいる意味が分かっているのか?」
「名簿のゼロのことについてはちゃんと説明している。これは外すわけにはいかない」
「なぜだ?」
そう問いかけ、スザクがマスクの中で口を開こうとしたとき。
「ポチャ?ポチャ!!」
会議室の扉が開き水色のペンギンと、
「あ、ゼロ。戻られていたのですか」
ユーフェミア・リ・ブリタニアが姿を見せた。
◆
「ここは確か…、D-2、じゃあこれが政庁…」
C.C.を攫った仮面の男を追うさやかはようやく政庁についたところだった。
仮面の男は人一人と猫(?)一匹を抱えているとは思えないスピードであったことと、ゲーチスという同行人を連れていたことがかなりの遅れを誘発していた。
最も同行人のゲーチスに対しては、
「はぁ、はぁ、さやかさん、もう少し、速さを落としてくれたらよかったんですが…」
「ご、ごめんなさい…。大丈夫ですか?」
あまり配慮できていなかったが。
置いて行ってしまわないように手を繋いでいたのだが、さやか自身もアッシュフォード学園での出来事が頭の中を占めており同行者への配慮まではあまり気が回せなかった。
ゲーチスも流石に魔法少女の身体能力に合わせるのはきつかった様子で、息を切らせていた。
「はぁ、さやかさん、私は少しここで休んでから中に入りますので先に行っていてください」
「でもそれじゃゲーチスさんが…」
「大丈夫ですよ。落ち着いたらすぐに追いますから。何か思うところがあってあの仮面の人を追ったのでしょう?ならばあなたは早く彼に追いつくべきです」
「……。分かりました。じゃあなるべく早いうちに来てください」
そう言ってさやかは政庁の中へと入っていった。
551
:
◆Z9iNYeY9a2
:2011/11/16(水) 16:06:46 ID:2jKDdzUs
………
「…行きましたか」
やがて一人になったゲーチス。
走ったことへの疲労があったことは事実だが、それだけが理由で一人になったわけではない。
ここは政庁らしい。つまりあと数時間もすればシロナがやって来るであろう場所だ。
なればこそここからは早いうちに出発しなければまずい。
だがせっかくだ。少し不安要素を減らしておくのもよいだろう。
「出なさい、サザンドラ」
◆
(なるほどな、それがこの仮面の理由か)
ユーフェミアと会話するスザクを見ながらさっきまでの疑問を解消するC.C.。
曰くこのユーフェミアは自分達の知るユーフェミアとは別の存在なのだという。
もしそれが本当なら様々な疑問に説明がつくかもしれない。
「えっと、C.C.さん、でいいのかしら?ユーフェミア・リ・ブリタニアです」
「ああ、知っている。お前とは違うユーフェミアだったがな」
確かに彼女相手であればスザクは顔を隠さざるを得ないだろう。
目や言葉の端々には意志の強さが見て取れる。
「時にお前は枢木スザクという男を知っているか?」
「あなたはスザクをご存知なのですか?彼は私の騎士ですが」
「やっぱりな。どんなやつだったか知りたくないか?」
「雑談はそれまでにしておけ。そろそろ時間のようだ」
そんなやり取りの一方でポッチャマはニャースに対して突っかかっていた。
「ポチャ!ポチャポチャ!ポッチャ!」
「おみゃーまでいたのかニャ…。
あのにゃー、そんな訳ないニャ。あと今はあんまり話しかけないでほしいニャ…」
安眠とは言いがたいものの眠っていたニャースはポッチャマの登場で目が覚めた。
この状況をあまりくわしく把握できていないポッチャマはこの状況がロケット団が関係したものではないかと思い、ニャースに責め立てていた。
だがニャースは憂鬱であった。ポッチャマに旅の仲間が死んだという事実をどう伝えればいいのか。それを改めて説明するとなると気が重かった。
「…あのニャ、落ち着いて聞いて欲しいニャ」
「ポチャ?」
「………ジャリボーイは―」
『06:00、定刻通り死亡者、並びに禁止領域の発表を始めよう』
その時だった。アカギの声がどこからともなく響いてきたのは。
552
:
◆Z9iNYeY9a2
:2011/11/16(水) 16:08:53 ID:2jKDdzUs
◆
ドン ドン
放送が終了したとき、苛立ち混じりにさやかは壁を殴りつけた。
その行為は主催者に対する怒りからの行動ではない。
死亡者の名前が読み上げられているとき、ドキドキしていた。まどかやマミさんの名が呼ばれるのではないか、と。
だが呼ばれた参加者の中には自分の友や先輩はいなかった。気にかけるわけではないが佐倉杏子や暁美ほむらの名もなかった。
その事実にほっとして、
(何で安心してるのよあたしは…!)
直後にその事実に安心してしまった自分の存在に気付いてしまったのだった。
マミさんのような正義の味方として生きるのではなかったのか。なぜその自分が知り合いが死ななかったというだけで安心などしているのか。
10人死んだのだ。その中にはC.C.やクロの仲間の名もあったではないか。
アッシュフォード学園でのあのポケモン達の悲しんでいる顔が頭の中をよぎる。
そんな者達の思いを無視してまどかやマミさんが死ななくてよかったなど――
「…あたしって最低だ」
Nやゲーチスに言われていたことを思い出す。
さやかにはポケモンがどうとかといったことは出会ったばかりということもありよく分からない。
だが、その中にあった言葉がさやかの心に残り続ける。
結局自分には己に近い物しか見ることはできないのではないかと。
「待つニャーー!」
ふと声が聞こえた。確かその声はニャースのものだ。
その方向を見ると、廊下の向こうを水色の小さな何かが横切り、それを追っているニャースがいた。
ニャースは何か慌てている様子に見えた。あのペンギンは何なのだろうか。ニャースの知り合いだろうか。
あっちから出てきたということはあの仮面やC.C.は向こうにいるということであろうか。
一刻も早くこの自己嫌悪を忘れたかった。だからニャースを追うことよりC.C.と話すことを優先した。
ガチャッ
「何だ。追ってきたのか」
巨大な机にその周りに規則的に並んだ椅子。会議室のようだった。
黒い仮面にマントの男と桃色の髪の女性、そしてC.C.がいた。
C.C.は座り込んで俯いており、女性は何か信じられない物を聞いたかのような顔をしている。仮面の男は分からない。
空気が明らかに暗いのだが今のさやかにはそこまで気が回せなかった。
「…何をしにきた?」
「あ、あの白い仮面が言っていたこと!あんたが人を惑わす魔女って…」
「ああ、その話か。――――本当だ」
「…え?」
「聞こえなかったのか?私は魔女だと言ったんだ。
まあグリーフシードは落とさないがな」
できれば嘘だと言って欲しかった。
もしそれが本当なら、
「ああ、正義の味方であるお前の敵ということになるんじゃないか?」
553
:
◆Z9iNYeY9a2
:2011/11/16(水) 16:12:04 ID:2jKDdzUs
◆
「どこへ行ったニャ…」
ニャースはポッチャマを探していた。
ポッチャマが走り出していったのはあの放送の直後だ。それも当然だろう。
問題はあの放送で呼ばれた名前だ。
(まさかヂャリガールまで死んでたニャンて…)
サトシに続き、ヒカリの名まで呼ばれてしまったのだ。
さすがにこれまでは想定していなかった。
だが自分ですらそれなりの衝撃があったのだ。主を失ったポッチャマのショックはニャースには計り知れない。
だからこそ早く見つけ出さなくてはいけない。
ふとゲーチスの言葉が脳裏をよぎる。
「あいつの言葉、やっぱりおかしいニャ…」
彼は人とポケモンは異なる場所に生きるべきだと言った。だが主を失ったポケモンは一体どうなるというのだろうか。
別れてよかったと思う者もいるかもしれない。だがあのポッチャマの様子を見て、それでも離すのが正解などとは考えられなかった。
「おや、あなたは…」
「ゲーチス…」
そうしてポッチャマを探すうちにそれを言った本人とバッタリ出会った。
◆
「ちょっとやめ――、ゼロ?!」
声をあげて駆け寄ろうとしたユーフェミアをゼロが止める。
「……」
「どうした、殺さないのか?」
さやかはすでに剣を取り出していた。が、まだそれは構えられてはいない。
「お前の仕事は人を惑わす魔女を倒してきたのだろう?なら今更何を躊躇うことがある?」
C.C.は何を考えているのかさやかに自分を殺すようにけしかけているかのような言動を繰り返す。
ユーフェミアにはその行動の意味が分からなかったが、スザクは何を考えているのかは分かっているのか静観を続けている。
「殺せばいいだろう。そうでなければおそらくこの場にいる多くの者を傷つけるだろうな。もしかしたらお前の友達を死なせるかもしれんな」
「…っ!」
「それともお前は他の人間を傷つけるような者であっても殺す覚悟もないのか?甘ちゃんだな。
お前のようなやつはそうやって戦う事自体が間違っているんじゃないのか」
そんな言葉を言い終えた瞬間に限界を迎えたのだろう。
さやかは手に持つ剣を振り上げ、そのまま勢いよく振り下ろした。
554
:
◆Z9iNYeY9a2
:2011/11/16(水) 16:14:09 ID:2jKDdzUs
ガァァァァァァッ
C.C.に向けられたその剣はC.C.の目の前で軌跡を変え、C.C.のすぐ横の壁を切り裂いた。
「…私はあんたと話をしに来たって言ったでしょ…!勝手に殺させようとしないでよ…!」
「お前と何を話せと?」
「何で魔女って呼ばれるようになったのかってことよ…。あんたが悪人かどうかはこっちで決めるわ」
「聞いてどうなる?倒すべきかもしれない敵のことなど知るだけ無駄だろう」
「それでも、相手のこと分かってから、その上であんたのことをどうするか決めたいの」
さやかの中で佐倉杏子という魔法少女のことが思い出される。彼女も初めは敵としかなりえない存在と思っていたのだ。
しかしあの教会で杏子が話した己の過去を聞いて、彼女はそれを背負って生きていることを知った。
目の前の少女が敵なのだとしても、ちゃんと自分で理解しておきたかった。
それはゲーチスやNとのやり取り、あの放送で己に感じた自己嫌悪がさやかの中で持たせた考えだ。
「……。いいだろう。おいス――ゼロ、ユーフェミアを外に連れ出しておけ。
「分かった。ユーフェミア、一端部屋から出よう」
「彼女は、大丈夫なのですか?」
「それはC.C.自身が決めることだ」
「…分かりました」
ユーフェミアはゼロに連れられて会議室から出て行った。
「まあこっちもお前から色々と聞かせてもらったからな。少しぐらいは話してやろう」
「………」
「そうだな、あれは今から―――」
◆
「…それにしても、あなたはお知り合いの方が亡くなられたというのに冷静なのですね」
「彼女とはあくまで仕事上の関係ほどしかなかったからな」
それは嘘だ。篠崎咲世子とはナナリーを通じてそれなりに関係もあった上、最後までルルーシュに仕えてくれた一人でもある。
ただ、彼女が死んだと言われてもスザクには実感が沸かなかった。あまりスザクには重要な存在ではなかったのだろうか。
ルルーシュが死んだと聞いたときもそこまで思うことはなかった。スザク自身まだルルーシュを刺したときの感覚を思い出すことができる。
ただ、この場でルルーシュはどう生き、どう死んだのだろうか。
あのビルの爆破がルルーシュの物であったのなら何かと戦っていたのかもしれない。
あるいはゼロレクイエムを成し遂げたことで己の生を否定して死んだのだろうか。
それはもう今となっては分からない。
「君こそ大丈夫なのか?ルルーシュという人は君の知り合いだったのだろう?」
「ええ、私にとって大切な人でした…。彼が生きていたという事実がとても嬉しかった。それなのに…!」
「……」
泣き崩れるユーフェミアを見るスザク。
それは慰めにはならないだろう。むしろ禁忌とも言うべき言葉かもしれない。それは自分にも分かった。
だがスザクはあえて、その問いを投げかけた。
「もしここにいるルルーシュが、君の知っているルルーシュでなければ」
「…え?」
「ここから抜け出すことができれば君の世界のルルーシュに会うことは可能なのではないか?」
555
:
◆Z9iNYeY9a2
:2011/11/16(水) 16:15:18 ID:2jKDdzUs
◆
「おみゃーが何でここにいるニャ?」
「さやかさんがあなた達を追ってこられましてね。
用事が済めばすぐに出発しますよ」
ニャースとしてはゲーチスに気を抜くことはできなかった。
ガブリアスの忠告もあったがそれ以上にアッシュフォード学園でのあの言葉がニャースの警戒を煽っていた。
だがあまり警戒心を見せるのも逆に不自然。あえて自然に、普通に振舞う。
「こっちにポッチャマが来なかったかニャ?」
「ポッチャマですか?いいえ、見ていませんね」
こちらに話しかけるゲーチスはあくまでにこやかだ。
ゆえに何を考えているのか読みづらい。
おかしなことをする様子がない以上普通に接するべきだろう。
「何かあったのですか?」
「さっきの放送で知り合いが呼ばれてニャ…」
「それは…、何と言葉をかけたらよいか…」
今はポッチャマを見つけなければいけない。主を失ったポケモンがどういう行動に出るのか、想像するのも嫌だ。
だがその前にゲーチスには聞いておかねばならないこともある。
「ニャー、おみゃーはポケモンを解放するためにあんな事言って回っているニャ?
ポケモンと人間は別々に
「ええ、その通りですね」
「何で人間のおみゃーがポケモンを代表するかの事言ってるのニャ?
ニャーはポケモンの立場として言わせて貰うにゃが、本当に一緒に過ごすことを嫌がってるポケモンにゃんて極一部にゃ」
たとえトレーナーから酷い扱いを受けているとしてもポケモンがトレーナーを嫌っているとは限らない。
あのシンジという少年にひどい扱いを受けていたヒコザルでもシンジに好かれようと必死だったのだ。
なのになぜそんなポケモンの思いを無視するかのようなことをしようとするのか。
ニャースにはそれが疑問だった。
「なるほど、あなたはポケモンの立場として意見を言うことができる者のようですね」
「だったらニャンにゃ」
「いえ、何でもありませんよ。今はあまり話しているときではないのでしょう?
長くなりそうですのでまた会ったときにでもゆっくり話しませんか?」
「…確かにそうだったニャ。じゃあニャ、そっちも気をつけるニャ」
そう言って走り去っていったニャース。
その後ろに飛ぶ黒い影に気付かぬまま。
556
:
◆Z9iNYeY9a2
:2011/11/16(水) 16:17:36 ID:2jKDdzUs
◆
「…」
「満足したか?」
知りたいというから全て聞かせてやったのだぞとでも言いたげな顔で言う。
なぜこんなことをしたのだろうか?自分でも何か自棄になっているようにC.C.は感じた。
C.C.の話した内容はさやかには思いもよらぬ話だった。
目の前の自分と少し年上にしか見えない少女が数百年生きているなどどうして思えようか。
あの白い生き物と似たような行為をしていたことなどどうして想像できようか。
「それで、こんな話を聞いた上でお前はどうするのかな?」
「…あんたはそれで寂しくなかったの?」
「さあな。ただひたすらに死にたいと願った。ただそれだけだった。
そんな私のことなど理解してくれた者などいなかった。いや、一人だけいたな。他の者が知りえなかった所までやつが」
あそこまでC.C.に踏み込んできた存在は後にも先にもおそらく奴だけだろう。
ただ利用するだけだったはずの男がこうも自分の中で大きな存在となっていた。
彼と関わったことでそれまでの自分とは大きく変わってしまったことは認めざるをえない。
だがそれほどの男も――
「さっき名前を呼ばれたよ。この私に笑わせてやるとまで言ったあいつも。
きっと私はこのまま今までのようにまた魔女として生きるしかない。だがお前はそんなことは許せないだろう?」
「…っ!ふざけないでよ!そんな顔をしたあんたを殺すことが正義だって言うの!?」
「正義など人それぞれだ。力こそが正義と言った男もいれば父親を殺せば国を救えるとか考えた首相の息子なんかもいたな。
では聞くが、お前の正義とは何だ?」
言われてさやかは考える。そう、自分の中の正義だ。
それは憧れたあの人のように皆を救うのだというものだったはずだ。
では誰と戦うのだ?
決まっている。魔女のような人を傷つける存在だ。
ならばこの場において魔女となるのは誰だ?人を傷つけるのは誰だ?
それは――
「もういいだろう?お前の答えを聞かせろ」
「……」
さやかはしばらく黙り込んだあと、意を決したように話しかけた。
557
:
◆Z9iNYeY9a2
:2011/11/16(水) 16:18:54 ID:2jKDdzUs
「クロちゃん…」
「?」
「さっきの学校に、クロちゃんの仲間だっていうルヴィアさんがいたわ」
「ああ、確かあの金髪ドリルだったか?」
「私はもうすぐここから出てまどかの家に向かうわ。
もう少しでここにクロちゃんが来るんでしょ?あんたにそれを伝えて欲しいの」
「…それを頼むということは私を生かしておくということか?」
「…」
「……くくく、いいだろう。伝えておこう」
それを聞いてさやかは会議室を出て行った。
最後にその背に向かってC.C.は、
「次に会うことがあれば答えを聞かせてもらいたいものだな」
と言った。
◆
「もしそうだとしても、ここにいたのはルルーシュなのでしょう?」
ユーフェミアの言葉に迷いはなかった。
「あなたのいた世界に、ブリタニアはあったのですか?」
「ああ、そうでなければ私が存在することはないだろうな」
「そうならきっと、あなたの世界のルルーシュもきっと私が想像しているように戦っていたのでしょう。
ならば彼が死んだことには変わりないでしょう…」
はっきりとそう言った。
やはり仮面は外せないなとスザクは思う。
もしこの仮面の中の顔を見たとき、彼女はどういう反応をするのだろうか。
きっとこんな自分であっても枢木スザクとして見てくれるのだろう。
この血と裏切りで穢れた自分であっても。それにはきっと耐えられないだろう。
「君を試すようなことを聞いてすまなかった」
だが質問の意味はあっただろう。
「…」
C.C.は何を話しているのだろうか。
物音が聞こえないところから判断してまだそれが起こっているわけではないはずだ。
ガチャッ
やがて扉が開き、青い髪の少女はこちらに目をくれることもなく去っていった。
558
:
◆Z9iNYeY9a2
:2011/11/16(水) 16:20:49 ID:2jKDdzUs
◆
「全く何をやっているんだろうな。あんな小娘相手に…」
美樹さやかにそこまで思い入れなどないはずなのにこうまで構ってしまった。
冷静になってみればやはりおかしな話だ。
ルルーシュが死んだという事実がそこまでショックだったのだろうか。
「どうやら終わったようだな」
「結局死に損ねたようだがな」
さやかが出て行ってまもなくゼロはユーフェミアを伴って部屋へと入ってきた。
「そういえば聞いてなかったな。ゼロ、お前はこの殺し合いでどう動く気だ?」
「決まっている。私はこの儀式を止めるために動く。君はどうなんだ?」
「私か…。さあ、どうだったかな。当面は預かった伝言を伝えなければならんしな。
そうそう、確か政庁には9時にここで出会ったやつと集合するという約束をしていたんだった」
「信用できるのか?」
「少なくとも約束した二人に関しては問題あるまい」
9時といえばまだ時間がある。だが来るのがユーフェミアを任せられる者が来るというならば待つのもいいかもしれない。
と、ふと窓の外で黒い煙が上がっているのが見えた。
「C.C.、彼女を頼む」
「行かれるのですね」
「何、すぐ戻ってくる」
「どうか気をつけてください。それと…、もし見かけられればあの…水色のペンギンのことをお願いしたいのですが」
「了解した」
そう言って窓から飛び降りた。
ここは何階だっただろうか…?
「あの、C.C.さん…でしたか?」
「ああ」
「あなたはルルーシュのことを知っているのですか?」
「ああ」
「もしよければ…、ルルーシュのことを教えてもらえませんか?
彼がどのような人間だったのか…」
ルルーシュの死を知りながらもそれを聞くのか、と関心するC.C.。
「まあいいだろう。待っている間の暇つぶしにはなりそうだ」
あいつが死んだ今、生きる意味を見つけることができるだろうか。
見つけられなかったらどうするのだろうか。
それを考えつつユーフェミアの知らないルルーシュのことを話し始めた。
559
:
◆Z9iNYeY9a2
:2011/11/16(水) 16:22:15 ID:2jKDdzUs
【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:魔力減少(中)、精神的ショック
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、病院で集めた道具
[思考・状況]
基本:これからどうしたいのかを考える
1:知り合いとの合流
2:ユーフェミアと話す
3:さやかの答えを聞きたいが、また会えることに期待はしない
4:プラズマ団に興味は無い。
5:ミュウツーは見た目に反して子供と認識。
6:9時まで政庁で待つ
[備考]
※参戦時期は21話の皇帝との決戦以降です
※ニャースの知り合い、ポケモン世界の世界観を大まかに把握しました
※ディアルガ、パルキアというポケモンの存在を把握しました
※桜とマオ以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)
【ユーフェミア・リ・ブリタニア@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:健康
[装備]:防犯ブザー
[道具]:基本支給品一式(水はペットボトル1本)、シグザウエルP226(16/15+1)、スタンガン、モンスターボール(空)(ヒカリのポッチャマ)@ポケットモンスター(アニメ)
[思考・状況]
基本:この『儀式』を止める
1:C.C.と話す
2:スザク(@ナイトメア・オブ・ナナリー)と合流したい
3:他の参加者と接触し、状況打開のための協力を取り付けたい
4:細マッチョのゼロ(スザク)は警戒しなくてもいい……?
5:ルルーシュ……
[備考]
※CODE19『魔女の系譜�①櫂魁璽疋丯▲后檗戮妊璽蹐陵霪類靴神鐓譴ǂ薀蹈ぅ匹墨△譴蕕貳鯑颪靴燭茲蠅盡紊ǂ蕕了伽�
※名簿に書かれた『枢木スザク』が自分の知るスザクではない可能性を指摘されました
※『凶悪犯罪者連続殺人事件 被害者リスト』を見ました
560
:
◆Z9iNYeY9a2
:2011/11/16(水) 16:23:44 ID:2jKDdzUs
◆
さやかの中では色々なことが一杯一杯だった。問いに対する答えなど出すどころではない。
結局また先延ばしにしたのだ。だが自分でどうにかできるようなことではなかった。
「マミさんなら…、何て言うんだろう…」
あの人ならもしかしたらこれに対して何かしらの解答を持っているだろうか。
もう一度、魔法少女として同じ立場となった今だからこそもう一度話をしたいと、そう考えるさやか。
「待たせてしまってすみません……、ってゲーチスさん?」
入るときに待っているように頼んだ場所にゲーチスはいなかった。
辺りを見回すと、裏手辺りで黒い煙が上がっているのが見えた。
「ゲーチスさん!!」
向かった先には、ボロボロになって倒れたニャースと腕に火傷を負ったゲーチス、そしてあの黒い仮面の男が立っていた。
「っ!!あんた――」
「私ではない。ここへ来たときにはすでに襲撃者は逃げていったようだ」
「そいつはどっちに行ったの!?」
「向こうの方に逃げていきました」
「分かりました。ゲーチスさん、付いてきてもらっていいですか?」
問いかけたことへの答えも聞かぬままに示された方へ走り出すさやか。
「すみません、では彼をお願いしても大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。後のことは私に任せてくれ」
「ゲーチスさん、早く!!」
「では失礼します!」
そうして残されたスザク。
ニャースを確かめると意識はないがまだ生きているようだった。
まだ息があったことに少し安心する。もしこのまま死なれてはC.C.に何と言われるか分からない。
だがニャースの処置も大事だがまだ問題は残っている。
さっき見た黒い煙は周囲に生えていた木を燃やしていた。
そこまで多くの木が生えているわけではないので燃え広がる可能性は薄い。
だが放置すると煙につられて危険人物が寄ってくる可能性もある。迅速に消火しなければならない。
「っ…、何処かに消火に使えるものはないのか…!」
561
:
◆Z9iNYeY9a2
:2011/11/16(水) 16:25:04 ID:2jKDdzUs
【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:細マッチョのゼロ、「生きろ」ギアス継続中、疲労(小)
[装備]:バスタードソード、ゼロの仮面と衣装@コードギアス 反逆のルルーシュ
[道具]:基本支給品一式(水はペットボトル3本)、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本:アカギを捜し出し、『儀式』を止めさせる
1:迅速に消火してニャースの手当てをする
2:なるべく早くユーフェミアと同行してくれる協力者を捜し、政庁に行ってもらいたい
3:「生きろ」ギアスのことがあるのでなるべく集団での行動は避けたい
4:9時に来る者を見極めてからその後の行動を決める
[備考]
※TURN25『Re;』でルルーシュを殺害したよりも後からの参戦
※ゼロがユーフェミアの世界のゼロである可能性を考えています
※学園にいたメンバーの事は顔しかわかっていません。
【ニャース@ポケットモンスター(アニメ)】
[状態]:瀕死(ポケモン的な意味で)、ダメージ(大)、気絶中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3(確認済)
[思考・状況]
基本:サカキ様と共にこの会場を脱出
0:気絶中
1:????
[備考]
※参戦時期はギンガ団との決着以降のどこかです
※C.C.の知り合い、アニメ版コードギアスの世界観を大まかに把握しました
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)
※D-2、政庁付近で小火が発生しました。同エリア内であれば煙を視認できる可能性があります。
562
:
◆Z9iNYeY9a2
:2011/11/16(水) 16:26:27 ID:2jKDdzUs
◆
さやかと別れた後、ゲーチスはサザンドラを放った。合図があったときに攻撃を仕掛けるように。
サザンドラの存在は隠さなければならない。
が、一人になった今であればボールからは出して自分と離れた場所から付いてくるようにしておいたほうが都合がよかった。
とはいえすぐに行動に起こすとは限らなかったのだが、政庁の周りを歩いていたときに遭遇したのはニャースだった。
あの短いやり取りの中でやはり邪魔な存在と確信したゲーチスは、ニャースをここで消しておくためになるべく姿を隠すようにして始末しろと支持を出したのだ。
万一のことを考え、自分の支持ではなくサザンドラの判断に任せて行動させておいた。
自分は離れた場所で隠れて見ているだけだったが、ニャース程度ならそれでも十分だろうと、戦いが始まるまではそう思っていた。
だがニャースは予想以上に粘っていた。
ゲーチスは知らないことだが、ニャースが未進化であるのは戦闘経験が不足しているためではなく言語能力の代償なのだ。
普段は機械に頼りきりとはいえ経験自体は並以上にはある。
それでも素の能力の差には埋めがたいものがあるのも事実。
問題は全ての判断をサザンドラに一任していたということだ。もしゲーチスの的確な指示の元で動いていれば違っただろう。
結果としてサザンドラは少ないながらも乱れ引っかきによるダメージを受け、ニャースは瀕死にこそなっているが未だに命は残っている。
だがそれだけならば自分の手で止めをさせばよかったのだ。さやかから貰った拳銃が手にあるのだ。
事はなるべく静かに済ませるつもりだったのだがサザンドラの大文字が小火を起こしてしまったのが最大の誤算だった。
確かにその煙がニャースの目くらましになったことでサザンドラの姿はまともに視認できてはいなかった様子に見えた。
だがもし仮面の男が窓から飛び降りてくるタイミングがもう少し早ければサザンドラをボールに戻すところを、遅ければニャースを殺すところを見られていただろう。
あえて申し訳程度に腕に火傷を負っていたのが幸いだった。
正直今回のことでトレーナーのいないポケモンの限界を垣間見た気がする。
美樹さやかに呼ばれた以上、付いて行かなければ不自然だろう。
仕留めそこなった以上、今回は諦めるしかない。小火で集まってくるかもしれない者に殺されてくれれば御の字だ。
あとは美樹さやかのことが問題である。
想定外のことが重なりすぎたことでどうも彼女への対応も疎かになってしまった気がする。
どうにか彼女を有用な手駒として持っていきたい身としてはこの先でどうにか挽回していかなければならない。
さやかの迷いは果たして己に答えを与えるのか、あるいは絶望を与えゲーチスの駒とさせるのか、また、それがこの先にあるのかは彼女次第になるだろう。
そのどちらに向かうことになるのかはさやかには、増してやゲーチスには分からない。
【D-2/市街地/一日目 早朝】
【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:健康、精神的に疲弊。
[装備]:魔法少女服、ソウルジェム(濁り小)
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0〜2(確認済み)、グリーフシード
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない。主催者を倒す
1:襲撃者を追う
2:ゲーチスさんと一緒に行動する
3:鹿目家や見滝原中学にも行ってみたい。
4:まどか、マミさんと合流したい
5:マミさんと話がしたい
※第7話、杏子の過去を聞いた後からの参戦
※「DEATH NOTE(漫画)」と「ポケットモンスター(ゲーム)」の世界の情報を聞きました
※「DEATH NOTE」からの参加者に関する偏向された情報を月から聞きました
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)
※どの方向に向かったかは後続の書き手さんにお任せします
563
:
◆Z9iNYeY9a2
:2011/11/16(水) 16:27:55 ID:2jKDdzUs
【ゲーチス@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:左腕に軽度の火傷
[装備]:普段着、きんのたま@ポケットモンスター(ゲーム)、ベレッタM92F@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]:基本支給品一式、モンスターボール(サザンドラ)@ポケットモンスター(ゲーム)、病院で集めた道具
[思考・状況]
基本:組織の再建の為、優勝を狙う
1:表向きは「善良な人間」として行動する
2:理屈は知らないがNが手駒と確信。
3:切り札(サザンドラ)の存在は出来るだけ隠蔽する
4:美樹さやかが絶望する瞬間が楽しみ
5:政庁からはなるべく離れる
※本編終了後からの参戦
※「DEATH NOTE(漫画)」と「魔法少女まどか☆マギカ」の世界の情報を入手しました
※「DEATH NOTE」からの参加者に関する偏向された情報を月から聞きました
※「まどか☆マギカ」の世界の情報を、美樹さやかの知っている範囲でさらに詳しく聞きだしました。
(ただし、魔法少女の魂がソウルジェムにされていることなど、さやかが話したくないと思ったことは聞かされていません)
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)
※どの方向に向かったかは後続の書き手さんにお任せします
◆
放送を聞いたポッチャマはそれが嘘であると信じたかった。
サトシが、それ以上にヒカリが死んだなどという事実を。
だが放送の主、アカギが嘘を言うとも思えなかった。
信じたくないという思いと信じるしかない現実から逃げるようにポッチャマは走った。
ユーファミアとの約束など忘れ、一人でヒカリを探しに行こうともしたのだがその途端体が動かなくなった。
その事実を受け入れることが怖かった。
もうどうしたらよいかなど全く分からなかった。
主を失ったポッチャマは彷徨う。かつて決意として持ったかわらずの石ももはや虚しさしか表さない。
※ポッチャマは政庁内、もしくは周辺にいます。おそらく政庁からそこまで離れることはないでしょう。
564
:
◆Z9iNYeY9a2
:2011/11/16(水) 16:30:12 ID:2jKDdzUs
仮投下終了です
もしおかしな所があれば指摘をお願いします
直せそうな範囲内であれば修正し、明日にでも本投下しようと思っています
565
:
名無しさん
:2011/11/16(水) 23:15:25 ID:4GorHW5o
投下おつー
感想は本投下時にでもー
特に問題はないかと
566
:
名無しさん
:2011/11/17(木) 00:18:09 ID:mAhmEqPg
おつでした。
内容上C.C.の時間軸は皇帝との決戦以降とゼロレクイエム計画前となるでしょうか。そこに問題がなければ他はよいかと
567
:
名無しさん
:2011/11/17(木) 00:18:27 ID:mAhmEqPg
いちおうあげます
568
:
名無しさん
:2011/11/17(木) 09:52:08 ID:e4Jrsg6I
乙です。
>>559
のユーフェミアの備考欄ですが、
>>498
で言われているのと全く同じ箇所が文字化けしています。
569
:
◆Vj6e1anjAc
:2011/12/25(日) 12:20:10 ID:sVvXMZd6
拙作「私の光が全てを照らすわ」より、
>>249
のセイバー状態表の修正。
Wiki収録の際は、こちらの方をお願いします。
【E-7/見滝原中学校前/一日目 午前】
【セイバー・オルタ@Fate/stay night】
[状態]:健康、疲労(小)、黒化、魔力消費(小)
[装備]:グラム@Fate/stay night
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜1(確認済み)
[思考・状況]
基本:間桐桜のサーヴァントとして、間桐桜を優勝させる
1:人の居そうな場所に向かう
2:間桐桜を探して、安全を確保する
3:エクスカリバーを探す
4:間桐桜を除く参加者全員の殲滅
5:クロエ・フォン・アインツベルンを探す
6:もし士郎たちに合った時は、イリヤスフィールが聖杯の器かどうかをはっきり確かめる(積極的には探さない)
[備考]
※間桐桜とのラインは途切れています
※プリズマ☆イリヤの世界の存在を知りました
クロエ・フォン・アインツベルンという存在が聖杯の器に関わっていると推測しています
570
:
◆Z9iNYeY9a2
:2011/12/28(水) 14:37:35 ID:fFN5XEzY
>>269
において
◇
「どうして…、そんな…」
「あ〜、そのだな、ちょっくら俺のほうに心当たりがあったりするかなーって」
あまりにも悲しそうな様子を見ていられなかったのか、海堂がフォローを入れ始めた。
考えながら言っているのか説明はあまりスムーズではなかったが。
「あのベルトみたいなやつあったろ?
あれな、似たようなやつがいくつかあるんだけどよ。
大体俺達みたいなオルフェノクにしか使えないんだよな。
一つは人間が使うと変身できずに弾かれちまうんだよな。
で、もう一つは人間でも変身できるけどその後で灰になっちまうんだよな
んで、ここまで言やぁ俺が何て言いたいのか、分かるか?」
「…つまりあなたは彼女があのベルトで変身したことで何かしらの異常を引き起こしたと?
例えば精神汚染や幻覚などの」
「まあ、かもしれねぇってことだけどよ」
「そ、そうよね、桜ちゃんそのなんとかってベルトを使ってちょっとおかしくなっただけなんだよね?」
フォローとしては割と苦しいものでもあったが、それでも少しは大河の気持ちを落ち着かせるのには役立ったようだ。
実際はそのフォローも外れではないのだが、それを知っているものはこの場にはいなかった。
◇
この部分を以下のように差し替えさせてください
◇
「どうして…、そんな…」
(…あー、正直こういうのあんま好きじゃねえんだがな…
それにしてもまさかあの女がただの人間だったってーのはなぁ。
………ただの人間、なんだよな?)
「あ〜、そのだな、ちょっくら俺のほうに心当たりがあったりするかなーって」
あまりにも悲しそうな様子を見ていられなかったのか、海堂がフォローを入れ始めた。
考えながら言っているのか説明はあまりスムーズではなかったが。
「あのベルトみたいなやつあったろ?
あれな、たぶん帝王のベルトってやつかもしれねぇんだよな。
一応オルフェノクのために作られたものだから人間が使ったらどうなるかは分かんねえんだよな。
もしかしたら何かの副作用っちゅーのがあったかもしれねえんだ」
帝王のベルト。それはオルフェノクのために作られたものである以上、人間が使うとどうなるかは分かっていない。
もしオルフェノクにしか使えないよう調整されていてもおかしくはないだろう、とたった今思いついた。
「…つまりあなたは彼女があのベルトで変身したことで何かしらの異常を引き起こしたと?
例えば精神汚染や幻覚などの」
「まあ、かもしれねぇってことだけどよ」
「そ、そうよね、桜ちゃんあれを使ってちょっとおかしくなっただけなんだよね?」
フォローとしては割と苦しいものでもあったが、それでも少しは大河の気持ちを落ち着かせるのには役立ったようだ。
実際はそのフォローも外れではないのだが、それを知っているものはこの場にはいなかった。
さらにいうと、もう一本の帝王のベルトは今海堂の仲間の木場勇治の持っているオーガギアのことなのだが。
571
:
◆Z9iNYeY9a2
:2012/06/09(土) 20:08:41 ID:kKO3XtGY
修正というか加筆が終わったのでこちらに
士郎たっくんイリヤパートのラスト以降を以下のようにしておきます
◆
「さて、これで邪魔は入りません」
確か彼女自身が魔法少女、といったか。
このような結界を瞬時に作り出す魔術師というとかなりの能力を持っていることになる。
仮にも魔術協会の人間として、それを惜しみもせずに人目にさらすような者を放置しておくわけにはいかない。
それに"魔法"少女などというものを自称されるのもあまり気のいいものではなかった。
それならば一人のほうがやりやすい。
襲撃に備えて一歩踏み出したところで声が聞こえた。
『よよよ、ひどいですよイリヤさん…。
このバーサーカー女とこんな中二病魔法少女もどきのところにおいていくなんて…』
見ると地面にはカレイドステッキが落ちていた。
「…何をやっているのですか?」
『イリヤさんを急に投げるから置いてきぼり喰らったんですよ!』
「いますぐでも追えばよいではないですか」
『それがですね、どうも行動に制限が加えられてるみたいで。私一人では移動範囲とかかなり狭められてるんですよね。
全く、道具は道具らしくしていろというのでしょうか、人権はどうなっているのです?!』
「片づけたら彼らを追います。今は静かにしていなさい」
『こんな人に頼らなければならないとは…、トホホ』
そんな会話をしているうちに、キリカは壁を壊しながらその姿をみせる。
「あはははは、意外とやるじゃないか大恩人!!」
「あなたは優勝を狙ってはいないのではなかったのですか?」
「そうだよ、私は愛しい人を生き残らせるためにみんな殺して回るつもりなんだからさ」
「なるほど、そういうことでしたか」
つまり、これは自分の認識の甘さが招いたことか。
おそらくニアはもう生きてはいないだろう。
彼の計画はそれなりに有用なものであり、可能かどうかは別として失うには惜しいものではあった。
そこにはバゼットも若干は責任を感じずにはいられなかった。
「それではあなたは私の敵か」
「あーあ、本当ならあの魔法少女から殺したかったんだけどね。
まあ君は大恩人だし特別だから先に殺してあげるよ!」
「そう簡単にいくとは思わないことだ」
あの速さ自体は脅威ではあるがかつて戦った英霊の影、そしてあのセイバーに比べれば劣る。対処できないほどではない。
腕のあの爪にさえ気をつければどうとでもなるだろう。
あとは一応支給品に脅威となるものがないかということにも注意しておかねばなるまい。
『バゼットさん、一応言っておきます。詳しくはわかりませんがこの結界、何やら厄介な代物のようです。
なるべく早めに倒すことをお勧めします』
「心配は無用です」
ルビーの注意を聞いて、バゼットは答える。
「なにしろ私の仕事は彼女のような存在を狩ることなのですから」
爪を振りかざして迫るキリカの前で、バゼットはルーンの刻まれた手袋をはめた。
###
ここから状態表につながるようにします
572
:
◆Z9iNYeY9a2
:2012/08/28(火) 17:39:08 ID:e/.0sJmE
昨日投下といいつつ遅れてしまい申し訳ありません
間桐桜、ナナリー・ランペルージ、園田真理、タケシ、ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト、N、藤村大河を投下します
色々と不安要素が多く、加えて長くなってしまったのでこちらで出させてもらいます
573
:
Tiger&Cherry
◆Z9iNYeY9a2
:2012/08/28(火) 17:42:15 ID:e/.0sJmE
藤村大河。
穂群原学園の英語教師。弓道部の顧問。剣道5段。
彼女のプロフィールとしてはこのくらいのものしかないだろう。少なくともこの場においては。
魔術師などではなく、当然のことながらオルフェノクでも魔法少女でもポケモントレーナーでもない。本当の意味で一般人である。
しかし、そんな彼女でも様々な人物と関わりがあった。
魔術師殺しの異名を持つ男、衛宮切嗣。
そんな男の息子、衛宮士郎。
間桐家の魔術師、刻印虫を植え付けられた少女、間桐桜。
他にもサーヴァントや元暗殺者といった存在にも関わりを持っている。
そのような正気の沙汰ではない環境にありながら、それらの異端と関わることもなく、なのに彼らに少なからず影響を与えていた。
衛宮士郎は赤い外套の英霊となり記憶を摩耗させた中においても彼女のことは大切に思っていた。
そして、間桐桜にとってもかけがえのない人間の一人だった。
◆
「ピカ、ピカ。
…ピカピ、ピカピ」
嫌な予感はあった。
突然ピカチュウが駆け出したときにはすでに止めることなどできなかった。
だがNは確かに聞いた。駆け出す直前、ピカチュウが”ヒカリ”と呟いたのを。
Nがその呟きの意味を理解したときには手遅れだった。
追いかけた三人が見たのは、もはや原型を留めていないほどボロボロにされた人間の死骸だった。
辛うじて見える帽子が、おそらく知った人間が見た際の判断材料になるかもしれないという程度のものだった。
ルヴィアも顔を顰め、大河は口を押えて立ち尽くしている。
ピンプクはゾロアークの体毛に入っていたので、これを見てすぐにボールに戻したことでピンプクには見られずに済んだ。
574
:
Tiger&Cherry
◆Z9iNYeY9a2
:2012/08/28(火) 17:44:11 ID:e/.0sJmE
「ピカピ、ピカピ」
ピカチュウはなおもヒカリだったものに呼びかけ続けている。
自分のマスターの死を直接知ることになったのはついさっきのことだ。立て続けに見てしまった仲間の無残な亡骸に大きなショックを受けているのは明白だった。
「N君、ピカちゃんをその子から離してあげて」
「…ピカチュウ」
Nはピカチュウに声を掛ける。
しかしあくまで掛けるだけだ。もしここで離れろと言うと、ピカチュウの意志を捻じ曲げることになるのだから。
「…ねえ、N君、この子の姿を隠してあげられる何か、持ってない?」
「今そういった者は持ってないけど、ゾロアーク」
「クシュウ」
ゾロアークに言うと、ヒカリの周囲の空間だけ景色が変わる。
次の瞬間にはヒカリには白い布がかぶせられていた。
当然これは幻影であり、実際にそこに布があるわけではない。しかし今、この場においての視覚的な気休めにはなるし、大河にとってはそれで充分だと思った。
「…?そういえばルヴィアさんは?」
「彼女なら、ちょっと離れるって。でもすぐに戻ってくるって言っていたよ」
◆
嫌な予感があった。
その少女の死体からそう離れていない場所、そこからどうしようもなく嫌なものをルヴィアは感じた。
そもそもここはあの女、間桐桜と戦った近くの場所だ。あの時あの女はこの方向に何があると言っていた?
そしてあのヒカリという少女の傍に落ちていた、血に染まった斧。
見てはいけない気がした。だが見なければいけない気もした。
予感はそれに近づくにつれて確信に近づいていき、そして、
「まったく無様ですわね。ミストオサカ」
そこには、あの時間桐桜の言ったように、頭の割られた遠坂凛の姿があった。
「あなた、どれくらいの借金を残しているか分かっているんですの?
まさかあなたが借りたものまで返せない人間だったなんて、つくづく見下げ果てましたわ」
その口調は普段の凛に接する彼女の口調と何ら変わりはない。傍から見れば死体と話しているとは思えないだろう。
「さて、そうなった場合、残りの借金はどうしましょうか…、そういえばあなたには妹がいるんでしたわね。
この際ですし、肩代わりしてもらいましょうか。そしてあなた方遠坂家は、まともに借りたものを返すこともできない情けない一族と末代まで語り継いであげますわ」
いつもであれば、ここで蹴りの一つでも飛んでくるのが普通といえるほどの暴言の数々。しかしそれが動くことなどなかった。
「あなたとの腐れ縁もここまでですわね。それでは、さようなら」
と、こうしてルヴィアと凛の別れは、ルヴィアにとっていつも通りのやり取りで終わりを遂げた。
575
:
Tiger&Cherry
◆Z9iNYeY9a2
:2012/08/28(火) 17:45:36 ID:e/.0sJmE
◆
ヒカリを弔ってあげたいと言ったのは大河だった。
「こんな女の子をこんな姿で放っておくなんてできない」
とのことだった。
ピカチュウは顔を涙で濡らしながら同意し、Nもピカチュウの友達を埋葬することを手伝うと申し出た。
「分かりましたわ。ただ、私は少し気になることがありますのでお先に行かせてもらいたいのですが、よろしいかしら?」
「あー、うん、そうよね。これは私の我儘なんだし。でも気を付けてね」
もし彼女がいない間に全てを終わらせられるならそれに越したことはない。
それにこっちにはNや複数のポケモンも共にいるのだ。過剰な期待はできないが何かあった時には逃げることは可能だろう。
「あ、あとね、桜ちゃんに会ったら―――」
「分かっていますわ。その辺りも心配せずともよいですから」
おそらく大河の期待とは正反対のことをしようとしているのだな、と思いつつ。
ルヴィアは北へ歩きだした。
◆
どうしてこんなことになってしまったのだろう。
私は、ただ先輩に死んでほしくなかった。先輩を守りたかった。
きっと先輩は私のためなら命を惜しまないだろう。
でもそんなのは嫌だった。
姉さんのように、一人でも戦える力が欲しかった。
そう思った矢先に、それを見つけてしまった。
デルタギア。
これを使えば一人でも戦うことはできる。先輩に守ってもらわなくても自分の身は守れる。
そう、守りたかっただけだった。
なのに、気がついたら目の前には男の人が倒れていた。正気を取り戻したときには遅かった。
でもそんな気持ちをどこかにやってしまうぐらいそれが楽しくて。それがおかしいことにも気付けなくて。
そんな時、血塗れの斧を持って走る少女を見つけた。
きっと人を殺したんだ。あの人は悪い人なんだ。そう思ったとき、とても自然にその人を撃った。
そして、自分がどうするべきなのかに気付いた。
悪い人を殺そう、と。それが先輩を守ることに繋がる、と。
そう言い訳をして、やってはいけないことを肯定してしまって。
そうして、自分がおかしくなっていることに気が付かないまま、こうしてみんなと行動していました。
576
:
Tiger&Cherry
◆Z9iNYeY9a2
:2012/08/28(火) 17:47:51 ID:e/.0sJmE
◆
「それはたぶんバーサーカーだと思います」
「バーサーカー…、狂戦士、ですか?」
合流を済ませた4人は、それまであったことについての情報交換を行っていた。
当初、タケシがグレッグルに殴られたり桜が頭痛を起こしたりと色々な意味でのトラブルもあったが今は落ち着いている。
「はい。でもごめんなさい、名前くらいはわかりますけど、あまり詳しいことは知らなくて…」
「ああいいのよ。名前が分かっただけでも今のところは十分だし。
でもちょっと気になるんだけど」
バーサーカーについての説明を受けた真理は新たな疑問を問いかける。
バーサーカー、そしてセイバーなる者。彼らの存在自体は美遊からも聞いていた。
聞いていた、と言っても外見や特徴を聞いたわけではなくただ注意するようにと言われたくらいだが。
それだけではなく、桜と美遊の知り合いには衛宮士郎以外にも被っている部分が見受けられた。
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、藤村大河。
だが桜は美遊の存在は知らないと言っていた。それだけならばそこまでおかしいとは感じなかっただろう。友達の友達に交友関係があるとも限らない。
問題は美遊の話したクロエ・フォン・アインツベルンについて話した時のことだ。
彼女からはその子はイリヤの双子の姉妹だと聞いていたのだが、そんな人は知らない。
桜自身、イリヤのことはよく知っているが双子の存在など初耳だ。
というより、知らないではなく、桜にとってはそんなものいないはずなのだ。
「本当に知らないのね?」
「はい…」
「そういえば真理さん、覚えてますか?美遊ちゃんが言ってたあの――」
「もしかして、平行世界がどうとか言う話?正直よく分からなかったけど」
『平行世界だと?』
その単語に反応したのはナナリーにしか見えない少女だった。
(ネモ?分かるの?)
『まあな。こいつらに今から言うことを伝えろ』
‐‐‐‐
「えっと、じゃあこの桜さんと美遊の知っている人たちとは違う可能性があるの?」
「ええ、そうらしいです」
ナナリーはネモが言うことを分からないなりに分かりやすく伝えた。と言ってもナナリー自身も分かってはいないのだが。
ただ、もしそうならゼロと兄であるルルーシュが同じ場所にいる説明もつくかもしれないとネモは言っていた。
「それにしても、すごいですねナナリーちゃんは。私の知らないようなことまで知ってて」
「いえ、たまたま知ってただけですから…」
ナナリーにはその言葉をただの感心と受け取りたかった。
しかし、そういった桜の言葉からは明らかに何か含みがあるような気がしてならなかった。
実際、傍にいるネモの警戒も解けてはいない。
情報交換をしながら、四人は一人を除いて特に不安を抱えることもなく歩いていく。
577
:
Tiger&Cherry
◆Z9iNYeY9a2
:2012/08/28(火) 17:49:05 ID:e/.0sJmE
そして、彼らが彼女と出会ったのはポケモンセンターを出てしばらく歩いたところにある橋の近く。
そこに、その少女はいた。
「また会いましたわね、マトウサクラ」
「……!」
目の前に立っていたのは金髪でドレスのような服を着た少女。彼女を見たときの桜の表情はすさまじいものだった。
「何で、あなたがこんなところにいるんですか?」
「それはこっちのセリフでしてよ。まさか集団に紛れ込むなんて思ってもいませんでしたもの」
知り合いなのか、とこの場で問いかけられるものはいなかった。
二人の表情や刺々しい会話、そして殺気はただ事ではないことはナナリー、真理、タケシにもすぐに察しがついたからだ。
しかしその後の会話の内容はその中の一人にはあまりにも大きな事実だった。
「一つ尋ねますわ。ヒカリという帽子の少女を殺したのはあなたですの?」
「名前は知らないですけど、帽子をかぶった女の子を殺したのは私ですね。それがどうかしたんですか?」
「なぜ殺したんですの?」
「だってあの人真っ赤に染まった斧を持って歩いてたんですよ?そんな危ない人、殺さないといけないじゃないですか。
まさかそれで死んだのが姉さんだとは思いもしませんでしたけど」
「嘘だ!!ヒカリはそんなことしない!!」
会話を聞いてタケシが声を荒げる。
三人は状況に付いていけていない。突如現れた少女に突然の罪を晒されることにも、その罪を何事もなかったかのように流す桜にも。
唯一その被害者かつ加害者(桜曰く)である少女の知り合いであったタケシが反射的に反応できただけだ。
「あら?タケシさん、もしかして人殺しを庇うんですか?」
「――っ!?」
その言葉に何を思ったのか、おもむろにバッグから取り出したデルタギアを構え、殺気を放ちながら近づいてくる桜。
さっきまでとのあまりの変わりように身動きを取ることができないタケシ。
だがそのタケシに近づく桜の目の前を黒い何かが通り過ぎた。
「お止めなさい。あなたの相手は私でしてよ」
少女が桜の目の前に向けて指から何かを放ったのがネモには視認できた。
そんな彼女の注意を自分に向けようとする金髪の少女。そして続けた言葉が桜の注意を向ける決定的な言葉となった。
「はぁ、全く、そんな女にはシェロ―エミヤシロウのことなんて任せられませんわね」
ピタリ、と桜の動きが止まる。
その時ナナリー以外の皆が見た桜の表情は忘れられないだろうほどのものだった。
「なんで、あなたまで先輩のこと知ってるんですか…!」
「気に障ったんですの?ならその方から離れなさい。
あなたの苛立ちなら私が押さえつけて差し上げますわ」
「――変なところばっかり姉さんを思い出させて。いいですよ、まずあなたから殺してあげます。
変身――」
『complete』
578
:
Tiger&Cherry
◆Z9iNYeY9a2
:2012/08/28(火) 17:50:49 ID:e/.0sJmE
今は桜には目の前の女しか目に入っていない。こいつを早くこの世から、目の前から消し去りたい。
デルタギアのデモンズスレートの影響に強く侵された精神は桜の意識を殺すことに向けさせていた。
そして、それは確実に桜を、そして桜の内を侵食していた。
ここに二人の少女によるリターンマッチが開幕した。
「ま、真理さん、どういうことなんですかこれ?!」
「知らないわよ、私に聞かないでよ!」
一方タケシと真理の二人は今だに混乱が解けない。この短時間に想定外な情報が色々と増えすぎた。
『だからあの女とは離れておけと言ったが、まあここで奴の正体を知る者と会えただけ幸運、か?』
「……」
そしてそんな彼らを尻目に桜を見つめるネモと、その傍にいるナナリーは冷静に状況を見守っていた。
◆
「ピカ…」
埋葬は終わり、ピカチュウは悲しそうな目をヒカリに向ける。
Nはその中に、ヒカリとの本当の別れの悲しみと同時に、自分が最も大切に思っていた存在を同じように弔えなかったことへの後悔を感じ取れていた。
しかしNにはピカチュウの思いが分かっても、それを汲み取ることはできない。
アッシュフォード学園での出来事の中ではそれに気付けなかったというのに。
「タイガさん、友達との別れとは、悲しいものなのかな?」
「うん、悲しいものよ。それがもう二度と会えない―なんてことになったら特に」
「……」
Nには実感することができなかった。
ポケモンをトモダチといったが、彼らの力を借りた後はすぐに野に返した。
人間の手で拘束したくないがための方針であったが、それゆえ深いつながりを持ったものとの別れというものはなかったのだ。
「僕は、本当にポケモン達とトモダチだったのかな?」
「うーん、よく分からないけどさ、そういうのって付き合いの長さだけで築けるものでもないのよねー。
案外出会って数日で仲良くなる、なんてことも少なくないのよ」
「でも、僕は彼らと別れるときに悲しいとは思わなかった。僕にとって彼らはトモダチじゃなかったのだろうか…」
もしかしたら、その悲しい、という感情があるからこそポケモントレーナー達はポケモンを手放さないのだろうか。
「タイガにとって、大事な人っているの?」
「うん、いるよ。そうねー、ここにいちゃう人でいうと二人、かな。
士郎っていう弟分みたいな男の子と、桜ちゃんって、こっちは言ったかな?妹分みたいな女の子」
その名前を出したときの彼女の顔は、あのトレーナーに付き従うポケモン達を連想させた。
ああ、そうだったのかと納得する。
今まで自分はポケモン達の、人間に対する怒りしか知らなかった。そのようなポケモンとばかりいさせられたから。
でも、そんな僕でも大切だと思える存在を作ることができるのだろうか。
あのトレーナーのポケモン達のように。藤村大河にとっての彼らのように。
「いつかそのシロウって人にも会ってみたいな」
「あははは、それいいかもね。でも気を付けてね。士郎ってパッと見じゃ分からないけど結構扱いづらいんだから」
と、その時だった。
「ピカ?」
ピカチュウの耳が動き、ルヴィアの歩いて行った方を向く。
二人が耳を澄ますと、何かがぶつかるような音が聞こえてきた。
「もしかしてルヴィアさんに何かあったんじゃ…。
急ごう、N君!!」
そしてNと大河は音の方向へ向けて走り出した。
579
:
Tiger&Cherry
◆Z9iNYeY9a2
:2012/08/28(火) 17:52:47 ID:e/.0sJmE
◆
先に近づいてきたのは桜の方だった。
怒りに任せて握った拳を叩きつける。シンプルだがそこにデルタのスペックが合わさるとそれだけでも洒落にならない。
するとルヴィアは懐から取り出したマッチにおもむろに火をつけ上に放り投げる。
突然の行動に気を取られそちらを警戒する桜。次の瞬間飛んできたのは頭に向けての飛び蹴りだった。
元々ダメージを負っていた場所に与えられた衝撃はデルタの鎧を通してでもそれなりのものであり、桜は足元をふらつかせる。
そしてふらついたところを至近距離からのガンドで吹き飛ばす。
朦朧とする意識の中吹き飛ぶ桜。しかし一度戦った相手か、あるいは侵食された精神が攻撃に比重をおいていたためかその後の対応は異常なほど早かった。
かろうじて受け身をとれた桜はいつの間にか手にしていたシャンパンのボトルを投げつける。
無論そのようなものをまともに受けるルヴィアではない。が、それが目の前で弾けては話が別だ。
破片や中のワインが飛び散る中でかろうじて防ぐことができたため大事に至る怪我はなかったが、驚いたまま桜をにらむルヴィア。
飛んでいくそれを桜はデルタムーバーの光線で撃ちぬいたのだ。
一見離れ業に見えるがよく見ると周囲には焦げた跡が見える。腹部には軽いものだが熱線による傷が、ドレスのスカートも数か所穴が開いている。
「今あなたがやってたこと、マネしてみたんですがどうですか?」
「生意気な小娘だこと」
桜はすでに起き上がっており、ルヴィアも傷自体は大したことはない。
ベルトの力はスペックこそ確かだが、桜にはそれを使いこなせてはいない。銃を使わせないようにして確実に体を抑えていけば勝つことはできる。
それはさっきの戦いの中でも気付いていたことだ。
だが、なぜだろうか。ルヴィアの中には妙に苛立ちがあった。
「全く、このような凶暴女をシェロの傍に置いておくなんて、周りの大人は何を考えているのでしょうか」
思い出すのは藤村大河から聞いた間桐桜、衛宮士郎の話。
あることを境に、士郎とは家族同然の生活をしているという桜。それを自然なものと受け入れる士郎。
そこにイリヤスフィールはいないのだから、自分の知る士郎とは違うことは分かっている。
それでも、士郎の近くにいられる彼女を羨ましく感じるところもあったのかもしれない。
だからふと呟いたその言葉自体は彼女に対する煽りだったのだろう。
「それはこっちのセリフです。せっかく先輩は私を守ってくれるって、ずっと傍にいてくれるって言ってくれたのに。
こんな体の私を受け入れてくれるって言ったのに。
なのに後から姉さんが私から先輩を盗ろうとする。私が欲しかったもの全部持ってるくせに、今度は先輩まで!」
「そんな人がせっかくいなくなったと思ったのに、なんであなたはそんなに姉さんにそっくりなんですか?
あなたも私から先輩を奪うんですか?」
桜の心中を聞いて彼女、そして士郎がどのような状況、関係にあるか大まかな把握はできた。こんな体、というのが何を指しているのかは分からなかったが。
そして言葉を終わらせた直後、デルタムーバーともう一つ、支給されていたらしき拳銃をこちらに向けてくる桜。
しかしただ撃つという行為の速さに限ってはルヴィアのほうが早い。ガンドにより両手のそれらは打ち払われて後ろに落ちる。
おそらく自分ではこの女を止めることはできないだろう。大河には悪いがここで殺すしかない
そう自分の中で確定させるが、その判断が少し遅かったことに気付いたのはすぐだった。
「桜ちゃん!!」
そう、その藤村大河がやってきたからだ。
580
:
Tiger&Cherry
◆Z9iNYeY9a2
:2012/08/28(火) 17:54:12 ID:e/.0sJmE
「―――え…、あれ…。藤村…先生?どうして――」
隙、というレベルではない。直前まで何をしていたかすら忘れてしまったとでもいうほどの動揺を見せる。
もし今なら仕留めるのは容易かっただろう。ガンドでベルトを撃ち、変身を解除させればあとはこちらのものだ。
それができなかったのは、桜に走り寄る大河に当たりかねないからだ。
「桜ちゃん、それ外して!桜ちゃんはそれのせいでおかしくなってるだけだから!
大丈夫、先生もちゃんと守ってあげるから!ね?」
デモンズスレートで凶暴化していたはずの精神さえも虚と化し、暴れたかった思いもどこかへ行ってしまう。
しかしベルトを外して変身を解こうとするのを見て、
「ダメ!!止めて!!」
大河を思い切り突き飛ばした。
ルヴィアは近くに倒れこんだ彼女を起こし、大河を庇うように前にでる。
「これは外さないで…、こんなに汚れた私を藤村先生には見られたくない…」
桜にとって、藤村大河は士郎に次ぐ大切な人だった。
間桐の家にいる間は蟲漬けの日々。学校に行っても偽りのようにしか感じられない日常。
そんな中でも衛宮士郎と、藤村大河と共にいる時間だけは心から笑うことができた。
そして士郎が桜の中で全てを受け入れた人であるなら、大河は日常、平穏の象徴だった。
故に、こんな人を殺した姿を、憎悪にまみれて汚れた顔を見られたくはなかった。
そもそも先生は一般人、魔術とは無縁の人間なのだ。
いつか自分が体に埋め込まれたものによって変貌していったとしても、彼女だけには無関係でいて欲しかった。
「何言ってるの!そんな辛そうな声出して私が放っとけると思ってるの?!」
そんな桜の思いとは裏腹に、大河は自分に関わってこようとする。
「桜ちゃんはそんなことする子じゃないんだから、だから、ね?そんなもの捨てて一緒に帰ろう?
罪を償っていくことは私もちゃんと支えてあげるから」
ああ、先生はまだ私があの日々に戻れると思っているんですね。
でもダメなんです。だって――
「駄目なんです、もう…。先生は私のこと先輩の家にいる時しか知らないじゃないですか…。
私は先生の思っているような人間じゃない、化物なんですよ…」
ここで殺した人数だけではない。それ以前にも既に人を死なせたことはあるのだ。
加えてデルタギアが自分によくない影響をもたらしていることはわかっている。もうあの生活に戻れるとは思わない。
なのにそんな私を、先生は助けようとする。そんなことには耐え切れなかった。
「私、ここでどんなことしてきたか知ってますか?もう三人も殺してるんですよ。
私の罪はそれだけじゃないんです。それに、私の体はもう化物になってるんです」
もう戻れないのならばいっそ突き放してほしかった。化物なんかと一緒にいられないと。
「……やっと本音話してくれたね」
なのに藤村先生はそんな私も受け入れようとする。その優しさがあまりに辛い。
「大丈夫、桜ちゃんがどんなになっても桜ちゃんなのは変わらないから。士郎だってそんなことじゃ絶対見捨てたりしないから。
だからそれを渡して」
それまで皆が何かを隠しており、肝心なところで支えになってあげられない。そう感じていた大河にとって、桜が自分の本音をぶちまけてくれたのは嬉しかった。
581
:
Tiger&Cherry
◆Z9iNYeY9a2
:2012/08/28(火) 17:56:11 ID:e/.0sJmE
そんな想いを受け入れて楽になりたいという思いと、それまでの行動ゆえに受け入れてはいけないという思い、そこにデルタギアを手放したくないという思いが重なり思考が混乱していく。
「だ、だってこれを無くしたら私は先輩を…、私は…、私は…!あああああああああああああああああ!!!」
これを手放したら先輩を守ることができない。それは怖い。
混乱する思考は、本来ではありえない、藤村大河に襲いかかるという暴挙をとらせる。
本人ですらわけが分かってない。しかし一般人に向けられたそれはとてつもない脅威なのだ。
「ミスフジムラ!!下がって!!」
「あ、ごめんルヴィアさん!これちょっと貸して!」
その様子を見て大河を庇おうとするルヴィアだが、大河は自分のバッグを渡す代わりにルヴィアのバッグに入っていた剣を取り出し桜の前に出てしまう。
「な…っ?!
マトウサクラ!!止まりなさい!!」
ルヴィアの声も届かず拳を振りかざす桜。
その場にいた誰もが大河の死を確信し、目を逸らす。
キーーーーン
しかし響いてきたのは大きな金属音だった。
目の前を見ると、桜の拳は大河の横を過ぎ、大河の両刃剣は刃のない側面でデルタの頭を打っていた。
「ほらね桜ちゃん、そんなになったって桜ちゃんはこんな私にも勝てないんだよ?
桜ちゃんは桜ちゃんなんだから」
ドサッ
完全に戦意を喪失したのか桜は座り込む。それと同時にデルタの変身が解除される。
焦点の合わない目を彷徨わせる桜を、大河は抱きしめる。
「ちゃんと私も面倒見てあげるから、士郎と一緒に帰ろ?また桜ちゃんの作るご飯食べたいな」
「藤村…せん…せ――」
◆
「とりあえずはこれで一件落着、といったところかしら?」
「そのようだね」
「あらN、いたんですの?」
Nの存在に気付いたのは、このいざこざに一段落ついた時だった。
今まで何も声を出さなかったこともあり気付くのが遅れてしまった。
「彼女、すごいね。あの人を止めるなんて」
「まあおそらく私には無理なことであるのは確かですわね」
話している間、ピカチュウは複雑そうな表情でNの足元にいた。
自身の主であり友であった人間の敵を殺した人。少なからず思うところもあるのだろうか。
「ミスフジムラにとってよっぽど大切な人だったのでしょうね。だからこそ命を賭けてでも助けようとしたのでしょう」
「大切な人、か」
そう呟いたNが何を考えているのか、ルヴィアには分からなかった。
◆
「…終わったの、よね?」
「きっと大丈夫です。彼女から殺気は感じられません」
真理とタケシの混乱はだいぶ前には収まっていた。
桜を止めるために戦いに割り込むことも考えてはいたものの、ナナリーがあのフジムラと名乗る女の人を信じて見守ろうという強い言葉に従って見ていた。
『…はぁ、人を見る目はやはりお前の方が上か』
ネモの呟きに何が含まれているのか、ナナリーには分からない。
ただ、あの桜の叫びはあまり他人事とは思えないようなところがあった気がする。
「もう大丈夫なんだから、タケシ、それ仕舞いなさいよ」
真理としてはタケシがカイザギアを使わざるを得ない局面に入らなかった安心が大きかった。
また、桜の言っていた自分が化物、という言葉が妙に気になりもした。
しかしそれ以上に思うこともあった。
(…私もあの人みたいに巧を受け入れることができるかな…?)
582
:
Tiger&Cherry
◆Z9iNYeY9a2
:2012/08/28(火) 17:57:54 ID:e/.0sJmE
「あ、あそこにいるのは…、お〜い、ピカチュウ!!」
「ピカ?!ピカピー!!」
帽子をかぶった男の傍に見えた黄色いのとピンク色の生き物。
どうやらタケシの探していたポケモンらしい。
ピカチュウ達は走り寄り、青年もその後ろにゆっくり続いている。タケシも駆け出そうとする。
ぞわっ
「…ピカ?!」
「ゲコッ?!」
「え?」
『ナナリー!!タケシを止めろ!!』
◆
藤村大河が、桜がどんなになっても受け入れるといったのは本心である。
彼女にとってもう桜は家族の一員に等しい存在であり、桜にとっても間桐の家族とは比べ物にならないほど大切に思っていた。
もしも化物が彼女の中にいるならそれを退治しても桜を助ける。そんな意気込みもあった。
なにより、そんなもののせいで泣いてほしくはなかった。
だから――
(士郎、ごめん)
桜を抱きしめる自身の背後に、こんな自分でもわかるほどのおぞましい存在を感じ取り、
それが体を切り刻む痛みを感じ取る瞬間があっても。
藤村大河は声を上げることもなく、また桜に恨みを抱くようなことは一瞬もなかった。
【藤村大河@Fate/stay night 死亡】
583
:
悪意と悪夢―聖杯と魔女
◆Z9iNYeY9a2
:2012/08/28(火) 17:59:19 ID:e/.0sJmE
あれ…、藤村先生…?どうしたんですか?
なんでこんなところで寝ているんですか?
あれ?これ…何?この赤い液体何なの?
だって、今先生は先輩とみんなで帰ろうって――
じゃあこの地面に転がっている手は何なの?
どうして先生にはお腹が、足が無いの?
こんなの、違う違う違う私じゃない。
違う、これをやったのは………私?
「いやああああぁぁぁぁぁ!!!!!」
◆
それは藤村大河が、ではなく間桐桜が不幸だったというべきだろう。
彼女自身が言った通り、桜の体には有り得てはならないはずのものが存在している。
間桐臓硯によって埋め込まれた聖杯の破片。
本来であれば(少なくとも他者にとっては)それ自体が大事になるはずはなかったが、彼女の属性、それに間桐の魔術属性が合わさったことで黒い影による惨劇が起きてしまった。
そして、ここで一つの要因が入り込む。
デルタギアの副作用、デモンズスレート。
不適合者の凶暴性をあげ、攻撃的な性格を植え付ける作用。
桜はここに来て半日も経たない間、何度それを使って変身しただろうか。
デルタの力に魅入られ、この短期間に既に6度変身している。
そしてその度に彼女の精神を侵していることに桜は気が付かなかった。
その結果、僅かに感じた力を失うことへの恐れが増幅され、そして放心した結果。
黒い影が顕現しうるほどの殺意に増幅されてしまったとしたら。
それだけでは終わらない。
間桐桜は既に4体の英霊を取り込んでいる。聖杯として完成するには程遠いものだが、普通に考えればそれは莫大な魔力である。
そして、冬木の聖杯である以上、その魔力のもたらすものは決まっている。
すなわち殺戮。
その意志が。桜が強固な意志で押しとどめていた呪いが。
彼女の感情爆発により、溢れ出した―――
584
:
悪意と悪夢―聖杯と魔女
◆Z9iNYeY9a2
:2012/08/28(火) 18:00:04 ID:e/.0sJmE
◆
それに対する確実な対応ができたものはいなかった。
グレッグルがタケシを殴り飛ばしたことでタケシは事なきを得たが。
藤村大河を助けられた者はこの場にはいなかった。
だがそれを責めるのも酷な話だ。
それを前にしては、ネモですら戦慄を覚える存在だったのだから。
「いやああああぁぁぁぁぁ!!!!!」
その桜の叫び声と共に、
「うわあ?!」
「な…!」
彼らの周囲には漆黒の影が覆っていた。
「何ですの…、これは…」
唯一、魔術師でありあれを見たルヴィアだからこそ分かることがあった。
これは異常なほどの濃度を持つ魔力の泥。おそらくはあの時の間桐桜の使った影の魔術に近い何か。
これに取り込まれたらおそらくは命はないということ。
しかし警告するまでもなかった。
この場にいる誰もが、生物としてその危険性を理解したからだ。
「タイガさん!!ルヴィアさん!!」
皆の周囲を侵食するように現れたその泥だが、唯一Nの周りには少量しか存在していなかった。
おそらく桜がNという存在をこの場において認識していなかったためであろう。
「N!早くここから離れなさい!!
いいですこと?後ろを向いて、絶対に振り向かずに走りなさい!」
今ここにNがいてもおそらくできることはない。ルヴィア自身自分の身を守るのが精いっぱいだ。
ピカチュウやゾロアークも泥に向けて攻撃しているが、成果が出てないことはNも分かっていた。
Nが一瞬、顔を歪めたように見えた後、ピカチュウ、ゾロアークを伴い後ろを向いて走り出した。
それを確認した後、ルヴィアは泥に向けてガンドを撃ち、泥を弾こうとする。が、魔力の量が違いすぎた。大海に小石を投じるようなものだ。
(せめて宝石でもあれば―――っ!)
その存在を肌で感じ取り振り返る。
背後に現れたのは最初に間桐桜と戦った時に現れた影。
そして振り向いた瞬間には、すでにその触手は目の前に迫っていた。
585
:
悪意と悪夢―聖杯と魔女
◆Z9iNYeY9a2
:2012/08/28(火) 18:01:28 ID:e/.0sJmE
「くそっ、こうなったら…」
グレッグルによって事なきを得たタケシはグレッグルをボールに戻し、カイザギアを取り出していた。
タケシにはこれに対する知識などない。が、もしあのベルトのせいでこうなったのならこれで対抗できると思ったのだ。
もうこれしか手段がないと判断しての彼なりの決意。
「タケシ駄目!それよりちょっと貸して!!」
と、真理がカイザフォンを取り上げ、携帯電話型のそれを銃のような形に折り曲げる。
『Single mode』
ボタンを押し、カイザフォンを向けた瞬間、それから光線が放たれる。
銃器でもなかなかダメージを与えられないオルフェノクにもダメージを与え、あわよくば倒しうる威力の武器。
確かにそれは当てた部位の泥を消し、地面を露出させた。しかしそれだけだ。周りがすぐにその隙間を覆っていく。
「駄目!これじゃカイザでもたぶん無理、変身してもこれじゃ勝てない!」
「でもマリさん、だったらどうしたら―――危ない!!」
そのまま隙間を覆い尽くそうとし泥の一部が跳ねあがり。
跳ねあがった黒い泥は真理に降り注いだ―――
『ナナリー、しっかりしろ!!』
「ネ、ネモ…、これは何なの…?」
『私にも分からん。だがこれはいわば悪意の塊だ。
解き放たれれば多くの人間を殺すぞ』
「これも、サクラさんが…?」
『少なくともあの女が関わっているのは確実だ。
……ナナリー、構わないな?』
「私なら大丈夫、大丈夫だから。だからお願い、みんなを助けて!」
◆
真理に降りかかろうとした泥。しかし真理をそれが冒すことはなかった。
ルヴィアに襲いかかる影の触手。だがルヴィアの肉体は健在だった。
地面から生えた別の触手のような何かが真理に飛び散った泥を、ルヴィアに襲いかかった多数の触手を全て斬り払ったのだ。
謎の触手は地面へと戻り視界から消える。と同時にルヴィアはまた別の大きな魔力に似た気配を感じ取る。
そこに立っていたのは、4メートルはあろうかという巨人。生物的であり鋼の巨人といったほうがいいだろう。
この状況で新手の敵かと警戒したとき、その巨人はルヴィアの傍に立つ影を手に持っていた太刀で切り裂いた。
影が形を失って崩れると同時、さらに振りかざした太刀で今度は周囲の木々を切り裂いた。
倒された木々は泥を押しとどめる防波堤と高台としての足場を形成していく。
巨人はルヴィア、真理、タケシをおもむろに掴み、倒された木々の上に運び上げる。
586
:
悪意と悪夢―聖杯と魔女
◆Z9iNYeY9a2
:2012/08/28(火) 18:02:50 ID:e/.0sJmE
(敵、ではないですの…?)
未だ警戒心は解けない。特に真理にはそれがかつて見た巨大オルフェノクや黒い巨人を連想させ、恐怖心を呼び起こさせる。
『お前たち、早くここから離れろ!!』
しかし、それらは巨人から発せられた声を聞いた瞬間消え、新たに困惑を生み出す。
「な、ナナリーちゃん?!」
『話はあとだ、今からこいつらから抜けられるように足場を作る。お前たちは急いでここから抜け出せ!!』
言うが早いか、巨人は木を切り倒していく。その先、橋を渡ったあたりにはこの泥は届いていないようだ。
しかし泥は防波堤として倒された木々を徐々に汚染、消滅させていっており、足場として倒している木々も長くは持ちそうにない。
「もう!!あとでちゃんと説明してよ!?」
そう言って三人は走り出した。
背後を警戒して、ルヴィアが殿を務めて再び現れた影を牽制しつつ進んでいく。
そして、抜け出すまでの足場を形成するまでもう少しといったところで、彼女は現れた。
「ふふふ、みなさん、どこへ行くんですか?」
三人の後ろに迫っていた影は消失、それと同時に光線が巨人を狙って放たれる。
間桐桜―仮面ライダーデルタ。黒い泥が蠢く中で彼女の放つ銀色のフォトンはこの場では何より異質であり、不気味だった。
「さく―――」
『振り返るな!早く行け!』
放たれた光線を太刀で弾いたナナリーは叫び、ルヴィアすらも残らせようとしない。
間桐桜はもう自分の手に負える存在ではなくなったのだと、いや、元々手に負えるようなものではなかったのだと。
ルヴィアは今更ながらに気付かされた。
◆
「へぇ、ナナリーちゃんもやっぱり普通の子じゃなかったんですねぇ」
『……』
ネモは無言で桜に向けてブロンドナイフを発射する。
「う…っ」
桜の体は吹き飛ばされるが、デルタを破壊することはできなかった。
しかし内側には相当のダメージが届いているはず。なのに彼女はゆっくりと、痛みなど感じていないかのように起き上がる。
同時に、マークネモの足元に黒い影が現れる。
587
:
悪意と悪夢―聖杯と魔女
◆Z9iNYeY9a2
:2012/08/28(火) 18:03:48 ID:e/.0sJmE
『ちぃっ…!!』
その触手がしなる前にネモは下がり、触手の攻撃範囲から逃れる。
間桐桜、いや、デルタを相手にするにはこの得体のしれない泥と神出鬼没の影はあまりにやっかいだった。
特に泥。もしマークネモが足を失い、自身の乗るここまで泥が侵食してきたら対処することはできない。
今はネモが全力でそれの侵攻を抑えている状態であり、ゆえに桜との戦闘に完全には専念できていなかった。
「ねえ、あなたのお兄さん、死んだんだっていってましたよね?
大切な大切なお兄さん、殺されちゃって。殺した人のこと憎くないですか?」
『…何が言いたい?』
「その人、一緒に殺しにいきませんか?今の私ならあなたのそんな気持ちを叶えてあげられると思うんです」
一瞬、ほんの僅かにナナリーの感情に乱れが生じたのをネモは感じ取る。
(やめろナナリー、こいつの言葉に耳を貸すな!)
さっきの会話の中で投げかけた言葉を、この時ばかりは後悔した。
もしナナリーがそれを望んでしまえば、ナナリーと契約している限りそれに抗う術はない。
「ふふふ、こんな泥人形さんなんかに嫌な感情全部押し付けて、ナナリーちゃんって本当に悪い子♪」
次の瞬間、デルタのいた場所に頭上から太刀が叩きつけられた。
しかし次の瞬間には桜はマークネモの背後に移動しており、そこから光線で撃たれ背から火花が散る。
(くそ、未来視が乱れた…。あんな言葉で心を乱されたか)
しかしある程度の行動のパターンは読めた。
この泥と影は桜を襲うことはない。彼女自身が出しているものなら当然だろう。しかし上手く連携が取れているわけでもなさそうだ。どうにも持て余しているようにも見える。
そして桜自身はあまり動いていない。ほとんどあの強化服の力に頼り切りだ。
加えてそれをもっても、ほとんどが射撃主体。マークネモを相手にするにはそれが最良なのかもしれないし、単純に彼女自身のセンスの問題かもしれない。
背後を振り返ると、さらに光線を放ってくる。
そういう未来が見えたネモは振り向かず飛び上がり、そこからブロンドナイフを飛ばし続ける。
避けることもできずまともに受けているようだったが、狙いは分かっているのかベルトには直撃することはなかった。
588
:
悪意と悪夢―聖杯と魔女
◆Z9iNYeY9a2
:2012/08/28(火) 18:05:37 ID:e/.0sJmE
地面に着地すると同時に、その場にいた影を踏み潰して行動を封じる。
そして態勢を崩したままの桜にナイフを射出。その腕、足を貫く。
痛みは壮絶なはずにも関わらず無言で動かない桜を、そのまま木に張り付けにする。
あとはベルトを外し、止めを刺せば終わる。生身状態の桜を斬りつければ、彼女とて殺せるはずだ。
(すまんなナナリー、もうこいつにはこれしか手はないんだよ)
ナナリーの中には殺すことへの抵抗を感じもした。
しかしこの女は生かしておけばもっと多くの人を殺す。それを防ぎたければここで終わらせるしかない。
マークネモは太刀を構えたまま、ベルトに手を伸ばした。
時間を掛ければナナリーに危険が迫る。だから迅速に、確実に殺せるようにしなければいけない。
ネモは焦っていた。この得体のしれないものにナナリーが侵されることを。
だから見過ごしてしまった。腕を貫いてもまだ、桜のその手はデルタムーバーを離していないことを。
早く決めたければそのままその太刀で首を落とせばよかったかもしれない。
しかし彼女は、そのスーツを過大評価してしまった。外さなければ倒すのは難しいと思ってしまった。
あるいは、ナナリーの優しさが踏み込ませることを躊躇わせてしまったのかもしれない。
そして、桜に意識を向けるネモは気付いていなかった。
桜のデルタギアを奪われることへの恐怖が、無意識のうちに先の影とは別の、影の使い魔を顕現させていることに。
小人ほどのそれが現れたことに、ネモは足元にそれが取りつくまで気付かなかった。
『な…!まだ、こんな――』
その一瞬、刺さったナイフの力がほんの少し緩み。
「チェック」≪exceed charge≫
『しまった―……!』
ようやく未来を見た時には手遅れだった。
目の前の銀の三角錐がマークネモを撃ちつけていたのだから。
この場においては戦闘中常に未来を見続けるには、そう意識していなければ見ることはできない。
最初に戦ったロロは相性的に不利であり、追い詰められていたこともあって気付けなかったのだ。
そうとは気付かず意識をそれから外してしまった。
589
:
悪意と悪夢―聖杯と魔女
◆Z9iNYeY9a2
:2012/08/28(火) 18:06:31 ID:e/.0sJmE
今更未来を見ても遅い。見えるのは、この三角錐を通しての必殺のキックを放つ桜。
そんなもの見えたところで動けなければ同じだ。
そして、そのキックはおそらくこのマークネモを持ってしても耐えきることはできない威力を持つと出ている。
(ここまでなのか…?)
マークネモが破壊されれば、ナナリーはこの泥に飲み込まれ、死ぬ。
こちらの拘束から既に解放された桜はこちらに向けてそれを放とうとしている。
(ここで、ナナリーは死ぬ、のか…?こんな女に殺されて…)
こうしている間も、ナナリーからは桜に対する怒りを感じることはできない。
いつもそうだ。この少女は己の怒りを殺し、常に優しい存在であることを心掛け、揚句優しい世界などという夢のような話を信じ続けている。
そして、そんな彼女の負の感情を背負ったのが私――
(…違う)
ならばこの、ナナリーを守りたいという感情は何なのだ?
そう、あの日契約した時から、ナナリーから負の感情を受け取りC.C.のコピーからネモへと変化したあの時から。
ナナリーを守り抜くと決めたはずだ。
(そう、こんな女に殺されるわけにはいかない――
私はナナリーを守る。私は――)
胸をポインタでロックされ動けないはずの体、その中で太刀を持っていた右腕がピクリと動く。
『泥人形じゃない!私は、ナイトメア・オブ・ナナリーだ!!』
そしてそのキックがマークネモを貫く寸前、
『あああああああ!!』
拘束された中で唯一動いた右腕、その持っていた太刀がデルタを切り裂いた―――
◆
590
:
悪意と悪夢―聖杯と魔女
◆Z9iNYeY9a2
:2012/08/28(火) 18:08:52 ID:e/.0sJmE
「急いで!早くしないとあの影が追っかけてくるんでしょ!?」
「落ち着いて、今はあの影は付いてきてませんわ。だから焦らないで!」
「でもナナリーちゃんは……うわっ!」
泥の上に倒れた木々を踏み台にして進んでいく三人。
例の影をナナリーが引き受けたと言ってもゆっくりはしていられない。
足元の木々はゆっくりと泥に溶かされて消滅していっているからだ。
「あ、やばい!向こうの木、もうほとんど残ってない!!」
「そういえばマリさん、あれ、あの道具!!」
「え!これ?!」
次の木に飛ぼうとした時、その木はほとんど溶け掛けており、人一人乗ることもできそうになかった。
そこで真理はバッグからJの光線銃を取り出し、その木に向かって発射。
すると木はあのときのタケシのように固まり、三人が飛び乗っても大丈夫なほどには頑丈になっていた。
しかし、
「あれ…、次は…?」
そう、それが限度だった。その先の足場は踏み場もないほどに崩れていた。硬化させる以前の問題だ。
ドドドド、ドン
「偶然木が倒れましたわ。行きましょう」
と思っていると、突如木が倒れ新たな足場ができる。
(根元がボロボロだったのが幸いでしたわ)
「あの木もそれで硬くできます?」
「え、ええ。大丈夫、まだ弾は残ってる」
そうしてどうにか次に移ったもののあと少しのところで届いていない。
さらに、ここにきてルヴィアが体の不調を訴え始めた。
「大丈夫ですか?!」
「ええ、大丈夫ですわ…。少し魔力を――いえ、なんでもありませんわ」
「俺に捕まってください。出てこい、グレッグル!!」
タケシはルヴィアの体を支えて歩き、真理の安全をグレッグルに任せる。
が、今迂闊に動くことはできない。先に進めないのだから。
ここはナナリーが追ってくるのを待つしかない。そう思った矢先だった。
「な…、まだ、追ってきますの…?」
泥の中からあの黒い影がまたしても現れる。
591
:
悪意と悪夢―聖杯と魔女
◆Z9iNYeY9a2
:2012/08/28(火) 18:11:33 ID:e/.0sJmE
「そんな…!じゃあナナリーちゃんは…」
「グ、グレッグル!毒針!!」
グレッグルはタケシの指示に従い口から紫色の針を吐き出すが、その進行を緩めることすらできない。
やがてそれの使役する無数の触手は彼らを捉える。
カイザの変身も間に合わない。
「うわあああ!!」
「リザードン、火炎放射!ピカチュウ、十万ボルト!ゾロアーク、気合玉!」
「グオオオオ!!」「チュウウウウウ!!]
諦めかけた時、影に向けて空から炎と電気と青白い球が降り注いだ。
その声を聴いた時、タケシは走馬灯でも見ているのかと思った。
その時に空を飛んでいたのは、帽子をかぶりリザードンに乗ってピカチュウを連れた、あれは――
「サト――いや、違う」
「N!どうして戻ってきましたの?!」
「この子達がそう願ったんだよ」
それはあの時離れだしてすぐのこと。
ピカチュウはタケシのことを助けたいと、そう言ったのだ。
これ以上仲間を失いたくないと。無理でも全力を尽くしたいと。
それはリザードンも同じだったようで、ボールを通してもその声が聞こえてきた。
だから、体にダメージの残っているリザードンに無理をいってポケモンセンターまで急いでもらったのだ。
そして皆の体力を回復させたのち、今に至る。
「そうだったのか…。ピカチュウ、すまなかったな」
「ピカ」
「それに僕も何だか嫌だったしね。見捨てるのは」
その後リザードンの手により泥から抜け出すことができた。しかし依然ナナリーは追ってこない。
どうしたことか、泥自体は少しずつ減りつつあるが彼女が戻らない以上油断はできない。
「マリさん、俺が行きます」
「タケシ?」
「これがあれば、サクラさんを止められるかもしれない。そうですよね?
三人は逃げてください。ここは俺がナナリーちゃんとサクラさんを助けてきます」
「そんな…!なら私が行くわよ!何であんたが行かなきゃいけないの?!」
「ピカ!」「グウウ!!」
「ハハハ…、ごめんな、お前たち。こんな辛いことばかり背負わせて。
でもこういうのは、男である俺がやるべきなんです」
その悲しそうな言葉の中には強い決意があるように見えた。
サトシやヒカリと会うこともできずに自分だけ生き延びてしまったことへの罪悪感もあったのだろう。
それに桜はヒカリに会ったということも気になっていたのだ。
592
:
悪意と悪夢―聖杯と魔女
◆Z9iNYeY9a2
:2012/08/28(火) 18:13:07 ID:e/.0sJmE
「なるほど、その気概、なかなか見上げたものですわ」
「あなたは――「でも」
と、ルヴィアはそんなタケシの腰を持ち上げ、
「ぐわぁ?!!!」
バックドロップの要領で地面に投げた。
「残念でしたわね。それは私の役割ですわ」
手加減はしたが意識は飛んだようだった。
こうでもしなければおそらく止めることはできないだろう。
「あなた達、早く行きなさい。その少女は私が助けますわ」
「待ってよ、何でそこであんたが残るのよ?一緒に行けばいいじゃない。
ナナリーもきっと戻ってくるから…」
「あれには少し因縁も残っていますし、何よりこうなったのは私の甘さが原因。
ここから南に下った辺りにカイドウという男と美遊、私の妹がいるはずですわ。詳しい場所はそこにいるキツネが知ってるはず。彼らと合流しなさい」
美遊、そして海堂直也、彼らならば力になってくれるだろう。
特に美遊、そしてカレイドステッキはこの状況を打破しうるかもしれない。もしもアカギ達が第二魔法を使えるというのならば。
「え…、海堂…?それに美遊ちゃんって…、あなたもしかしてルヴィアゼリッタさん?!」
「知ってるなら話は早いですわ。後のことはN、頼みましたわよ」
「―――分かった。あと最後に質問させて。
また、会えるかな?」
「少し厳しいですわね」
「分かったよ。じゃあ、気を付けて」
あるいはその時藤村大河のバッグを受け取った時には、Nにはその先の彼女の運命は分かっていたのかもしれない。
それでも、最後に掛けた言葉は再会を信じての言葉だった。
そうしてNは気絶したタケシを抱え、真理を無理に引っ張ってその場を離れていった。
(巧―――)
真理は、こんな状況で一人だけ何もできていないのが悔しかった。
そんな彼女が今望むことは一つ。巧に早く会いたい。それだけだった。
593
:
悪意と悪夢―聖杯と魔女
◆Z9iNYeY9a2
:2012/08/28(火) 18:13:45 ID:e/.0sJmE
【C-5/森林/一日目 午前】
【園田真理@仮面ライダー555 パラダイス・ロスト】
[状態]:疲労(中)、身体の数カ所に掠り傷
[装備]:Jの光線銃(2/5)@ポケットモンスター(アニメ)
[道具]:基本支給品一式、支給品0〜2(確認済み)、ファイズアクセル@仮面ライダー555、スマートバックル(失敗作)@仮面ライダー555
[思考・状況]
基本:巧とファイズギアを探す
1:ここから離れる
2:タケシたちと同行
3:南にいる美遊、海堂と合流?
4:巧以外のオルフェノクと出会った時は……どうしよう?
5:名簿に載っていた『草加雅人』が気になる
6:イリヤと出会えたら美遊のことを伝える
7:並行世界?
[備考]
※参戦時期は巧がファイズブラスターフォームに変身する直前
※タケシと美遊、サファイアに『乾巧』、『長田結花』、『海堂直也』、『菊池啓太郎』、『木場勇治』の名前を教えましたが、誰がオルフェノクかまでは教えていません
しかし機を見て話すつもりです
※美遊とサファイア、ネモ経由のナナリーから並行世界の情報を手に入れました。どこまで理解したかはお任せします
【タケシ@ポケットモンスター(アニメ)】
[状態]:疲労(中)、背中や脇腹に軽い打撲、身体の数カ所に掠り傷、気絶中
[装備]:グレッグルのモンスターボール@ポケットモンスター(アニメ)
[道具]:カイザギア@仮面ライダー555、プロテクター@ポケットモンスター(ゲーム)
[思考・状況]
基本:気絶中
1:しっかりマリたちを守る。
2:ピンプクとウソッキーは何処にいるんだ?
3:イリヤと出会えたら美遊のことを伝える
4:『オルフェノク』って奴には気をつけよう
5:万が一の時は、俺がカイザに変身するしかない?
6:サトシ、ヒカリの死を元の世界に伝える。
7:並行世界?
[備考]
※参戦時期はDP編のいずれか。ピンプクがラッキーに進化する前
※真理から『パラダイス・ロスト』の世界とカイザギア、オルフェノクについての簡単な説明を受けました
※真理から『乾巧』、『長田結花』、『海堂直也』、『菊池啓太郎』、『木場勇治』の名前を教えてもらいましたが、誰がオルフェノクかまでは教えてもらっていません
※美遊とサファイア、ネモ経由のナナリーから並行世界の情報を手に入れました。どこまで理解したかはお任せします
【N@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:疲労(小)
[装備]:サトシのピカチュウ(体力:満タン、精神不安定?)サトシのリザードン(健康、悲しみ)
ゾロアーク(体力:満タン、真理とタケシを警戒)、傷薬×6、いい傷薬×2、すごい傷薬×1
[道具]:基本支給品×2、カイザポインター@仮面ライダー555、タケシのピンプク@ポケットモンスター(アニメ)
変身一発@仮面ライダー555(パラダイスロスト)、不明支給品0〜1(未確認)
[思考・状況]
基本:アカギに捕らわれてるポケモンを救い出し、トモダチになる
1:この場から離れる
2:タイガの言葉が気になる
3:世界の秘密を解くための仲間を集める
4:タイガ、ルヴィアさん…
[備考]
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)
※並行世界の認識をしたが、他の世界の話は知らない。
594
:
悪意と悪夢―聖杯と魔女
◆Z9iNYeY9a2
:2012/08/28(火) 18:15:01 ID:e/.0sJmE
◆
『ぐ…くぅ、はぁ…、はぁ…』
それは真理達の元に影が現れる少し前のこと。
デルタのルシファーズハンマーを受けたネモは衝撃の後倒れるネモを起こして状況を確認していた。
一瞬意識が飛びかけたがどうにか持ち直して周囲を見回す。
まずマークネモの状態。胸部にあの攻撃が直撃したようで、大きな穴が開いて外が肉眼で見ることができてしまっている。
機体の汚染状態もまずい。が、これはこの場から離れ、量子シフトを行えば大丈夫だろう。
ナナリーには何度か呼びかけたが反応がない。さっきの衝撃で気を失ったのかもしれない。
そして自身のコンディションはかなりまずい。こうしているだけでも疲労が溜まり、意識が消えそうになる。
あの拘束を振り切るために力を使いすぎたのかもしれない。
だが、その甲斐はあったようだ。
間桐桜の姿は見えない。しかし足元には黒い強化スーツに覆われた右腕が転がっている。
そしてそれは今、目の前で変身が解除されたかのように桜のものであったそれに戻った。
あの時の太刀に手ごたえを感じたのは確かだ。すれ違うあの瞬間、確かに体を切り裂いた。
あれで死んでいるなら最良、生きていてもデルタの変身は解除され体のダメージを考えても戦闘続行は不可能のはず。
『…はぁ、ああ、まずはここから離れないとな…』
もし死んでいるなら、きっとナナリーは悲しむだろう。だが、それも生きているからこそ感じられることだ。
足元の泥はまだ減ってきているとはいえ広がったままだ。この森にはしばらく誰も近寄らないように他の者にも伝えないといけない。
やることはたくさんある。こんなところで休んではいられない―――
595
:
悪意と悪夢―聖杯と魔女
◆Z9iNYeY9a2
:2012/08/28(火) 18:16:20 ID:e/.0sJmE
「 み つ け ま し た 」
次の瞬間聞こえてきたのは桜の声。
それもかなり近い場所だ。今仕掛けられてはまずい。
『く…、何処だ…!』
周囲を見回すが桜の姿は見えない。
すぐ近くから声は聞こえてくるというのに。
すぐ近く、すぐ傍から。
『な…』
「こんなところにいたんですね」
そう、間桐桜はコックピットの中、ネモの背後に立っていた。
服はボロボロであり、肌が露出しているはずの場所からはあの影と同じ色の黒いドレスを纏っているのが見える。
右腕を失い、そこから胸にかけて大きな傷を作っているのは振るった太刀が無駄ではなかった証明だろう。
なのに、彼女はどうして平然と動けるのか。
もしあの瞬間、デルタギアがなければ桜とて死んでいただろう。
太刀は確かに彼女に大きなダメージを与えたが、あと一歩のところで心臓に届かなかったのだ。
そして、今の彼女はその傷は動きを阻害するものでこそあれ、行動不能になるほどではなかった。
いつ入り込んだのか分からない。ただ言えるのは、今の自分にはなす術がもうないということだ。
桜は片腕しかない体でネモに抱き着く。
『がっ…!離せ…』
「ねえナナリー、こんな体なんかに頼らずに、私ともっと楽しいことしない?」
桜の抱きついた部分の肌が徐々に黒に染まっていくのが分かる。
さっきの一撃に使った力、加えて核である自分を直接染められている状況。
そして、マークネモは泥に取り込まれつつある。
「ほら、堕ちてしまえば楽しいですよ」
『ぁ…っ、あああああああああ!!!』
そして叫び声を最後に、マークネモは泥の中に沈み、ネモの意識は黒く塗りつぶされていった。
596
:
悪意と悪夢―聖杯と魔女
◆Z9iNYeY9a2
:2012/08/28(火) 18:17:21 ID:e/.0sJmE
◆
「やっぱり生きてましたのね。本当にしつこいこと」
ルヴィアがその少女を確認したのはNや真理達と別れてすぐのことだった。
そう、間桐桜が目の前を歩いてくる姿を確認したのは。
最も、今の彼女をふつうの人間と呼ぶには大いに抵抗があったが。
右腕を失い、胸から左肩に掛けて大きな傷が見えている。にも関わらずそれを気にする素振りは見せない。
更に服はボロボロで、肌が見えるはずの場所は黒い魔力、あの影と同じ色のドレスに覆われている。
はっきり言ってしまえば、化物だ。
「あの少女、ナナリーという子はどうしましたの?」
「ナナリーなら、変な泥人形と一緒に食べちゃいました。結構魔力溜まったんですよ?
まあそれでもサーヴァントには敵いませんけど」
「そうですのね。もう戻る気はありませんのね」
こうなったのはあの時殺せなかった自分の甘さのせいだ。
タイガは死に、ナナリーも取り込まれたらしい。それらの責任は自分にもある。
今の桜はデルタに変身していない。よく見ると、腰に巻いているデルタギアは時折火花を散らしている。あの少女もただでは食われなかったということか。
確かに今の自分は魔力を消耗しすぎている。だが変身していないなら魔術抜きでも戦えるだろう。
――そんな言葉で自分を言い聞かせる。
地面の泥は大分引いているが、彼女の足元には僅かに残っている。
あの時感じた恐怖は未だに克服できていないのだから。
「ミストオサカの縁もあります。これ以上の犠牲を起こさせないために私が止めて差し上げますわ」
「怖いんですか?足が震えてますよ?」
そんな強がりも、この女は見抜いている。姉に似て嫌らしい女だ。
「ふふふふっ。私、いつも姉さんの影に隠れて、先輩まで取られそうになっても何もできなくて。
そんな私でもやっと、姉さんの上に立てるんですから」
やたら高めのテンションで話す彼女。だがルヴィアはもう話を聞く気はない。
気圧されていては負ける。速攻でやらなければ。
そう思い走って近づいていく。
「でも、残念です。もう、姉さんはいないんですから」
不意に声のトーンが下がる。
それと同時に背後から衝撃、ルヴィアの足も止まった。
597
:
悪意と悪夢―聖杯と魔女
◆Z9iNYeY9a2
:2012/08/28(火) 18:18:07 ID:e/.0sJmE
「あなたなら姉さんの代わりになるかもって思ったりもしましたが、それは無理でした。
似てるだけであなたは姉さんじゃないんだから。
だから―――さようなら」
ルヴィアは視線を下ろす。その腹部からは
――――――巨大な太刀が生えていた。
口から吹き出そうになる血を抑え、首を動かして後ろを見る。
背後の泥、いや、影に近い何かから黒く巨大なものが頭と腕らしきものを見せていた。
言うまでもない。あの時のナナリーという少女が変化した巨人だ。
だがその姿は元の色よりさらに暗く変色し、全身に赤い筋が這っている。
何よりその魔力、先ほど感じたものよりはるかに澱んでいた。
ルヴィアが思い出すのはあの最初の空間。
あの大勢の参加者が集められたあの場で、なお目立っていた存在があった。
バーサーカー。かつて最も手ごわかったと言えるクラスカードの英霊。
だがその姿は遠目から分かるほどの異常な姿をしていた。
そして、今背後にいるそれはまさしくそれと同じ様相をしている。
(この、娘は、一体何を体に…、宿してますの…?)
だが今更それに気づいても遅い。
さらに巨人は、頭についたワイヤー、その先のナイフをこちらに向けている。
ああ、こんな時でもあの女のことが頭をよぎってしまうのはなぜなんだろう。
「全く、こんな有様では…、ミストオサカのことを、笑えませんわね――」
次の瞬間、一斉に発射されたナイフがルヴィアの体を真っ二つに吹き飛ばした。
【ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 死亡】
◆
そう、どうでもよかったのだ。
いくらこの女が姉さんに似ていたとしても、それだけなのだ。
私の継げなかった遠坂の家を受け継ぎ、父にも愛された姉さんも。
ずっと蟲に犯され続ける私を助けてくれなかった姉さんも。
私の好意を知りながら先輩を奪おうとした姉さんも。
もういないのだから。
だから、こんなに虫けらのように殺せる。
598
:
悪意と悪夢―聖杯と魔女
◆Z9iNYeY9a2
:2012/08/28(火) 18:19:34 ID:e/.0sJmE
胸の辺りから真っ二つになった体を影の中に沈める。
人間を食べたにしてはそれなりに魔力を摂ることができた。しかしまだ足りない。
「あなたにはもっと働いて―――あれ?」
そうして、空腹を満たす走狗にしようと呼び出したマークネモだったが、それはたった今光となって消滅してしまった。
残ったのは黒いスーツを着たナナリー。しかし車椅子には座っておらずしっかり二足で立っており、目もはっきり開いている。
最もその姿は普通というには程遠いが。目には光がなく、全身にあの機体と同じ赤い筋が入っている。
桜は彼女達のことを何も知らない。
マークネモのこと。ギアスのこと。それらにかかった制限のこと。何一つ知らない。
「もう少し経ってから試してみようかしら?」
そして、彼女のことも使い勝手のいい人形を手に入れたくらいの認識しかしていなかった。
もしもそれらのことを知っていたら、彼女はまた別の利用方法を考えただろう。
だが、それでよかったのかもしれない。少なくとも他の参加者にとっては。そしてネモ本人にとっても。
今彼女にとっての他の参加者のほとんどは、空腹を満たすための餌と大して変わらない存在だ。
唯一そこから外れていた人は三人。
衛宮士郎、遠坂凛、そして、藤村大河。
「藤村先生」
その中で、たった今自分が殺してしまった存在に、一つの言葉を投げかける。
後ろ、今まで通った道に目をやる。今は見ることができないが、もう少し進めばそれは目に入ることだろう。
あの場において、唯一泥が侵さなかった場所に残された死骸。
藤村大河。自分に笑顔というものを教えてくれた存在。
薄まりつつある間桐桜の人格の中で、言っておかなければならないと感じた謝罪の言葉を口にする。
「ごめんなさい。私、やっぱり悪い子でした。先生までこんなことに巻き込んでしまって。
せめて先生には生きててほしかった。何も知らずにいて欲しかった。
でも安心してください。先生のところには行けないかもしれないけど、ちゃんと罰は受けます」
他の人間なら開き直れた。だが彼女だけは駄目だった。
だから、他のところで開き直ってしまった。
「先輩、待っててくださいね。
みんな、みんなみんなみんなみんなみんなみんな殺しますから。
真理さんもタケシさんも、イリヤさんもみんなきちんと殺して、思いっきり悪い子になりますから」
「だから先輩。ちゃんと、私を殺してくださいね」
それが間桐桜としての最後の願い。
正義の味方であり、自分にとってのヒーローであるエミヤシロウに殺されること。
そのために、己の体に溜まりかけているもの、この世全ての悪を受け入れたのだから。
「あはは、あっははははははははははは!!
あはははははははははははははははははははは!!!!」
笑い続ける間桐桜。そして彼女は気付かない。
その眼から一筋の涙が零れ落ちたことに。
そして、そんな彼女をナナリー、いや、ネモはじっと光のない瞳で見つめ続けた。
その体が泥に沈みゆく間、ずっと。
599
:
悪意と悪夢―聖杯と魔女
◆Z9iNYeY9a2
:2012/08/28(火) 18:20:57 ID:e/.0sJmE
【C-5/橋付近/一日目 午前】
【間桐桜@Fate/stay night】
[状態]:黒化(大)、『デモンズスレート』の影響による凶暴化状態、溜めこんだ悪意の噴出、喪失感と歓喜、強い饑餓
ダメージ(頭部に集中、手当済み)(右腕損失、胸部に大きな切り傷、回復中)、魔力消耗(大)、ジョーイさんの制服(ボロボロ)
[装備]:デルタギア@仮面ライダー555(戦闘のダメージにより不調)、コルト ポリスポジティブ(6/6)@DEATH NOTE(漫画)、黒い魔力のドレス
[道具]:基本支給品×2、呪術式探知機(バッテリー残量5割以上)、自分の右腕
[思考・状況]
基本:“悪い人”になる
0:いずれ先輩に会いたい
1:“悪い人”になるため他の参加者を殺す
2:先輩(衛宮士郎)に会ったら“悪い人”として先輩に殺される
3:空腹を満たしたい
[備考]
※『デモンズスレート』の影響で、精神の平衡を失っています
※学園に居た人間と出来事は既に頭の隅に追いやられています。平静な時に顔を見れば思い出すかも?
※ルヴィアの名前を把握してません
※アンリマユと同調し、黒化が進行しました。戦闘行為をするには十分な魔力を持っていますが知識、経験不足により意識して扱うのは難しいと思われます。
※精神の根幹は一旦安定したため、泥が漏れ出すことはしばらくはありません。影の顕現も自在に出すことはできないと思われます。
◆
『ナ…―リ―、ナナ……、ナナリー…』
「ん…、ね、ネモ…?ネモなの?」
『ナナリー、きっとお前とこうやって話せるのはこれが最後だ』
「え…?何を言ってるの?」
『全てはお前を守るためだ。お前が受ける呪いは、全て私が引き受けたからな』
『だが、この先は賭けのようなものだ。もしかしたら私の行動はただの時間稼ぎにしかならないのかもしれない』
「待って、そんな!じゃあ桜さんは?!」
『だが最後にこれだけは伝えておく。
ナナリー、何があっても―――あれを受け入れるな』
600
:
悪意と悪夢―聖杯と魔女
◆Z9iNYeY9a2
:2012/08/28(火) 18:21:34 ID:e/.0sJmE
◆
「ハッ…」
目が覚めた。
しかし分かったのはそこは気持ち悪いほどわけの分からない何かが辺りを埋め尽くす空間ということだけ。
気配だけでも吐き気のしそうな空間。そして吐き気の原因は辺りを埋め尽くす濃厚な悪意。
「こ…、ここは…何なの?
え…?ネ、ネモ!!」
手探りで周囲に触れると、地面に巨大なきのこのような形の柔らかい物体が手に当たった。
それはあの時新宿で出会った時のネモの姿そのものだった。
「ネモ!しっかりして、ネモ!!」
『全くバカな人形さん』
ネモに呼びかけると不意に背後から声が聞こえる。
視覚を失った代わりに他の感覚が優れているはずのナナリーが察知することができなかったその存在。
それは桜を模したかのような声で話しかける。
『全部を自分で受け止めるなんて。そのせいで自分の意志すらも失って本当に人形さんになっちゃうんですから』
優しいように聞こえるその声はまるで悪魔の誘惑のようだった。
『ねえナナリーちゃん、私たちを受け入れない?』
まるで深層心理に語りかけるように話しかけるそれ。
『あなたを捨てた父親が、国が憎くないの?
お兄さんを殺した人に復讐したくないの?
私なら全部やってあげること、できるんですよ?』
「そんなの…、私望んでません…!!」
『そう、でもいいのよ。すぐに決めなくても。
あなたが私たちを受け入れてくれるの、ずっと待ってますから』
そう言ったのをきっかけに声が遠ざかっていくのを感じる。
そして最後に―――
『でも忘れないでくださいね。あなたはもう、人を殺したんですから』
「え…?」
そう言い残した言葉が、ナナリーの中にずっと残り続けた。
(ネモ…、兄様…、…アリスちゃん…。私は……)
そうしてナナリーは、この得体のしれない空間の中で一人、答えを探し続ける。
周囲の悪意に流されることに耐えながら。
【C-5/橋付近(桜の泥内部)/一日目 午前】
【ナナリー・ランペルージ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:健康(精神)|黒化、自我希薄(肉体、ネモ)
[装備]:
[道具]:
[思考・状況]
1:私は………
[備考]
※ネモの黒化について
アンリマユに吸収されたことでネモは黒化しました。
その際、ナナリーの精神を肉体から隔離したため自我が薄く、ほとんど操り人形のようになっています。
ナナリーがアンリマユを受け入れた時を除き、アンリマユがナナリーの精神まで侵すことはないでしょう。
※マークネモの制限は黒化前と変わりません。
※B5〜6にかけての森の木々が消滅し、一部更地と化しました
601
:
◆Z9iNYeY9a2
:2012/08/28(火) 18:26:35 ID:e/.0sJmE
投下終了します
色々とはっちゃけすぎたように思い、不安なところが思いつくだけでも
・急すぎる展開
・桜の(特にアンリマユ関係での)設定における矛盾
・制限関係(限定こそしたが、制限を振り切って書いたように感じるので)
・その他色々(長文になったので煮詰まっていないところ、見逃した箇所、細かいミスなどがありそう)
思いつくだけでこんな感じです
指摘があれば可能なかぎり受けようと思うのでお願いします
602
:
名無しさん
:2012/08/28(火) 19:11:46 ID:babeoXyc
自分はそのままでもいいかと
型月関連は詳しい人にパス
603
:
名無しさん
:2012/08/28(火) 19:42:17 ID:wActNA3M
私も型月は詳しくないので設定の矛盾は何とも言えませんが
他は大丈夫だと思います
604
:
名無しさん
:2012/08/29(水) 17:27:23 ID:0zgvLCv.
仮投下乙です。
ストーリー展開には問題ないかと。ただ、“黒い影”に関して矛盾点らしきものが一つ。
“黒い影”はもともと、桜の無意識を媒介にして“アンリマユ”が断片的に顕現したものです。
そのため、影は桜の無意識にしたがって行動するので、桜がその人物に対して無意識に憎しみなどを持っていない場合、その人物を“殺そうと”することはありません。
士郎が初めて“黒い影”と遭遇し、襲われても生きていたのがその例ですね。
ただ、やはり無意識の感情や望みには従うので、それに順ずる行動はとります。
これは“空腹”を満たすために行った街の人々の“捕食”や、“衛宮士郎が外に出られないぐらいの大怪我をすれば、危険な目にあわないですむ”という願い+士郎がアインツベルンの森で影に襲われ、左腕を失ったときの“これでもう、先輩は戦えない”といった感情などがそうですね。
ですので大河が“黒い影”に殺された理由は、殺意とは別の理由にしてはどうでしょう。たとえば、「安心したらおなかが減った」など。
そこら辺がちゃんとしていれば、特に問題は無いと思います。
605
:
◆Z9iNYeY9a2
:2012/08/30(木) 13:18:14 ID:nNsPva/k
ご指摘ありがとうございます
正直その辺りは割と悩んだ部分だったのですがなるほど、そういう部分もありましたか
そういう方向に加筆、修正した後、早めに本投下させてもらいます
606
:
◆Z9iNYeY9a2
:2013/02/03(日) 16:32:02 ID:gtchlMJU
ちょっと気になるところがあるのでこちらに投下させてもらいます
607
:
ガブリアスが見てる
◆Z9iNYeY9a2
:2013/02/03(日) 16:35:26 ID:gtchlMJU
私はガブリアス。
NNは、特に無い。
主はシロナ。シンオウ地方のチャンピオンだ。
そして私は、そんな彼女の切り札をやっている。
自分で言うのも何だが、能力や経験にはかなりの自信がある。
それまで、私の役割は四天王を乗り越えてきたトレーナーの、最後の壁として立ちはだかることだった。
しかし、今この場においてはギンガ団のボス、アカギにより、主、シロナの支給品(というらしい)として戦うことを強いられている。
その相手はポケモンのみならず、人間、あるいはそれ以外の存在とも、である。
実際、この場に連れてこられたばかりの時に、オルフェノクなる存在と戦闘を行った。結果は負けはしなかったものの、むしろ痛み分けといったほうが適切だ。
無論シロナを守るために戦うことはやぶさかではない。現在は仲間である他の5体のポケモンはいないのだ。私が守らねばならない。
だからといって殺し合いという環境を許容することはできない。この体は誰かの命を奪うためのものではないのだから。
そしてそんな私達は現在、ある人物を探して駆けていた。
乾巧。聞いた話では心優しきオルフェノクであるという。
数時間前、彼を発見した私達は気絶した少女を連れているのを見て、その少女の安全を確保するために攻撃を行った。
しかしその判断が早計だったことを、先の情報交換でシロナは知った。
そうして、彼を探すためにシロナは単身飛び出したのだ。
進む方向は、待ち合わせの場所とは正反対に位置する南の市街地。
◆
宙を滑空するように高速で風を切り移動する私とシロナ。
しかしその速度はいつもと比べると若干の遅さを感じる。
シロナを乗せているとはいえ、ここまでではなかったはずなのだが。
最初に会ったあのオルフェノクと戦っていたときもこの違和感は存在した。
私の力が抑えられているのかもしれない。シロナは果たして気付いているのだろうか。
市街地を抜けるか抜けまいかという地点。
もう少し移動すれば足場は砂浜となるだろう。その先には浅瀬が広がっている。
ちなみにその更に東に進んだ場所には病院がある。
「この辺りね…、彼等を見つけたのは」
そして、あの二人を発見した場所。それもこの付近だ。
ここから西の方角に向かって去っていったはず。
故に浅瀬、砂浜の方には今は用はない。
608
:
ガブリアスが見てる
◆Z9iNYeY9a2
:2013/02/03(日) 16:36:29 ID:gtchlMJU
「…やっぱり血を追って、というのは無理ね…」
どうやら彼は建物の間を縫うように移動したようだ。
血痕は地面だけでなく建物の壁にも這っており、追っていくのは難しいだろう。もし人間であれば探すのはまだ容易かっただろう。人間はそんなにアクロバティックな動きはしないはずだ。
匂いを追う、という手段もこうなっては厳しいだろう。まあこれはむしろグラエナやウインディのようなポケモンの方が向いているが。ルカリオがいればよかったかもしれない。
「ガブリアス、あなたは上からお願い。私は下から探すわ」
ここで解説しておこう。
私、ガブリアスという種族は空を飛ぶことができる。
無論地面・ドラゴンタイプというこの体で鳥ポケモンのように自在に宙を舞うことはできない。
しかし直線を高速で移動することには長けており、空中にある程度滞在することもできる。
移動はともかく滞空を人間を乗せてするのは流石に厳しいが、私単体であれば何ということもない。
とりあえず建造物の多いこの場において、ある程度一望できる高さまで飛び上がる。
シロナはというと、地上で若干焦りつつ周囲を見回して走っている。
彼がこの付近にいる可能性は低い。あれからかなり時間が経ってしまっているのだ。
そしてそれはシロナも分かっているはずだ。
それでも万が一ということもあるかもしれない。あるいは彼のその後について何かしらの手がかりがあるかもしれない。
だからこそ無駄なことだと考えることもなくこうやって単身探しに来たのだ。
あの時の二人の判断を、私は間違っているとは思わない。
戦ったからこそ分かる。あのオルフェノクという生き物には驚異的な力を持つものがいると。
もし、あの時あの竜のオルフェノクに会わず、あの時少女を連れていたのが最初に会ったあいつだったらどうだっただろうか。
安全かどうかの確認をする前に襲い掛かられていただろう。
ただ、今回は互いの運が悪かっただけのこと。間違えてしまったとしても、今ならまだ取り返しはつくだろう。
かなりシロナ贔屓に考えてしまっているが、そこは仕方ない。私は彼女のポケモンなのだから。
しかし、シロナはそう割り切って考えてはいられないようだ。
初対面の人間には、シロナの外見、雰囲気からクールで尊大な印象を持つものも少なからずいるが、実際はそんなことはない。
むしろ心優しく、子供っぽい一面も持っている。責任感も強いが抜けている部分もある。
失敗があれば凹むし、楽しいことがあれば笑う。
ポケモントレーナーとしての実力が高くとも極端に頭がいいわけではない。策略に嵌ってしまうことも、駆け引きに負けることもある。ゲーチスの時のように。
自分のミスで人を傷つければ己を責める。今回のことで一人で出て行ったように。
だからこそ、今のような状況において冷静さだけは失って欲しくない。
一人で抱え込んで欲しくはない。
609
:
ガブリアスが見てる
◆Z9iNYeY9a2
:2013/02/03(日) 16:37:33 ID:gtchlMJU
空から見回しても特におかしなものは見えない。探している者も、他の参加者も、見渡す限りには見つからない。
シロナも一応警戒自体はしているようで、大声を上げて名前を呼んだりはしないし、曲がり角などを通る際も慎重に進んでいる。
もちろん、もし危険人物、例えばあの時のオルフェノクのような存在がいたなら、私が真っ先に知らせに戻るのだが。
しかし見開けた場所ならともかく、建造物の多い市街地ではあまり見通しが良くない。動くものがあれば分かりやすいが、何かが動く気配も薄い。
まあ逆に言えば他の参加者、危険人物もいないということなのだが。
一旦建物の上に着地し態勢を整える。今は早く移動することではなく周囲をじっくり観察することが重要なのだが、これは意外と速く飛ぶことより疲れる。
十数秒留まって呼吸を整えた後、再び体を折りたたんで飛び立つ。今度は若干移動速度を速める。
シロナの進行方向に先行しておけばある程度離れてもどうにかなるだろう。付近に気配がないことは確認済みだ。
風を切る感覚が全身を通り過ぎる。下では様々な色の屋根が、あるいはコンクリートの屋上が視界に現れ、消えていく。
しかし建物の、コンクリートの灰色が見えても、灰色の体をした男は見えない。私達は乾巧の人間の姿は知らないのだが、あるいは人間が倒れているのであれば見逃さないように目を配る。
と、周囲を見渡した視界に、刺激の強い色が広がっているのが見えた。
黒の混じった赤い液体が広範囲に渡って固まっている。よく見れば、その近くにまるで何者かが歩いた跡のように点々と同じ色をした斑が散らばっている。
凝固した血液だ。
地面に降り立ち、その匂いをかぐ。それまで所々に散らばっていた血と同じもののようだ。恐らくはここでこれほどの血が流れる何かしらの行動を起こしたのだろう。
さらに近くを見回すと、さらにある棒状のものを発見。
先端から中腹にかけて地面に落ちたそれと同じ色に染まった武器。クロがあの時放った矢。
つまりここに広がった血はおそらく刺さった矢を抜いたときに流れたものだろう。
「ガアゥ!!」
鳴き声を上げてシロナを呼ぶ。
周囲に人の気配がないことは確認済みだ。声が聞こえる範囲は大丈夫だろう。
「ガブリアス!何か見つけたの?!」
こちらに向かって走ってくるシロナ。
そして地面に固まった血溜りと矢に気付くと、顔色を変えて近寄る。
その表情を見てやはりか、と考える。シロナは血を見ることに慣れていない。
ポケモンバトルにおいて、相手が怪我をすることはよくあることだ。しかし生死にかかわるような傷をバトルの中で負うことはまずない。
私達もいくら強いとは言ってもそこまで大きなダメージを与えるようなバトルはしない。加減を忘れることもあるがそれは相手がそれを受けられる実力を持っているという時だけだ。
さらにいえばそんな相手であればむざむざ後遺症を残すようなダメージを受けることもない。
そこまでの血を見る機会など、それこそ自然の中での災害や争いかポケモンを虐待する者と会うことでもなければそうはない。
ましてや今回のように自分のミスから流れた血であるというのなら、そのショックも大きい。
610
:
ガブリアスが見てる
◆Z9iNYeY9a2
:2013/02/03(日) 16:38:01 ID:gtchlMJU
「っ…、周囲には、誰もいなかったのね?」
それでも、きっと私に余計な心配をかけまいとしているのだろうか。呼吸を整え、気持ちを落ち着かせるような仕草の後そう聞いてきた。
それに私は無言で頷く。
そう、と言った後、彼女は何かを考えるように矢を拾う。
「ここで矢を抜いた後で何があったのかは分からない。でもさっきの放送では名前を呼ばれてはいなかった。
誰かに保護された、と考えたいけど希望的観測にしかならないわね…」
探すとしてもきっとこれが限界だろう。体から流れたはずの血はこの地点を最後に途絶えている。
テレポートのような手段で血の跡を残さず離れたか、第三者によって移動させられたか、あるいはこの場で死に絶えたか。
手がかりも尽きた以上、まずは今後どう動くべきか、改めて考えなければならないだろう。
このままその彼を、手がかりも無しに探すか、あるいは一度クロ達との合流を目指すか。
あの黒い少女、クロやニャース達はこの場における協力者としては信用できると、私は感じている。
あるいは戻ることで何かしらの情報が入っている可能性もあるし、彼等に探索を協力してもらうのもありだろう。
まだ生きていて、なおかつ何処かへ移動したのであれば急務ということでもないはず。人間の間では急がば回れとも言われているという。
最も、その選択にシロナが後ろめたさを感じなければ、ではあるが。
「ねえ、ガブリアス…、私はどうするべきなのかしら…?」
そしてその不安も少なからず当たった様子だ。
確かにシロナのミスで傷つけた者がいるのであるなら、自分を責めてしまうのも多少は致し方ない。それでも、私はシロナがそれに押しつぶされるほど弱くは無いと信じている。
だから、自分の思うように、後悔しないと信じる方に進めばいいと思う。後悔や後ろめたさに流されず、自分の意思で選んだ方に。
私には人間の言葉は出せない。だからそんな思いも直接伝えることはできない。
あのニャースがいればどれほど助かっただろう。
「そうよね。私がしっかりしなくちゃいけないわね」
だが、それでも私が言わんとしたことはうっすらと感じ取ってくれたようだ。
「C.C.さん達の方も気がかりだし、クロちゃん達にも一言伝える必要もあるわね。
一旦政庁に向かいましょう。あまり待たせるのもまずいわ」
彼のことはそれから、と、そう言い足して。
私の考えとしてはそれで正解だと思う。一人で頭を巡らせて、答えが出ないなら仲間に頼ればいい。
バトルにおいてマニューラやマンムーが私の前に現れるようなら、ルカリオやミロカロスに任せて交代させるだろう。同じことだ。
そうして私に乗ったシロナは、政庁に向けて移動を開始した。
611
:
ガブリアスが見てる
◆Z9iNYeY9a2
:2013/02/03(日) 16:39:36 ID:gtchlMJU
◆
ここは殺し合いの場。
ポケモンバトルのつもりで戦っていてはいずれ生死にかかわることもあるかもしれない。
私に指示を出すシロナを後ろから―――ということも大いにあり得る。そしてそれはシロナも分かっているだろう。
そして、こうして私がシロナに支給された。それは私が、生き残るために必要な武器として働くことをアカギは期待しているのだろう。
確かに、私がポケモンバトルとしてではない、命のやり取りをするつもりで戦えば人を、ポケモンを殺すことも可能だろう。
だからといってそんな思惑に従うわけにはいかない。私はシロナの、誇り高きチャンピオンのポケモンだ。
それはきっとシロナも同じことだろう。私に殺しをさせることは無い。それをしたとき、彼女はチャンピオン、いや、ポケモントレーナーではなくなってしまう。
だから私に、人を殺せと命じることは、まずない。
では、もしその選択に迫られたときに、シロナは迷わずにそれを選べるのだろうか。
一瞬の迷いが命を失う瞬間に陥った場合。
その時は、私が自らの意思で相手の命を奪う判断を下すだろう。
もしそれで私が傷付き、シロナを傷つけたとしても、そうやってシロナの命を救えるのであれば、私にポケモンとして掛かった制約を破ってでも。
それでもそんな時が来ないことが決してくることはないように、私は願う。
私はガブリアス。
チャンピオン、シロナのポケモンだ。
私自身、その事実を誇りに思っているのだから。
【E-3/市街地/一日目 午前】
【シロナ@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:健康、小さな罪悪感
[装備]:モンスターボール(ガブリアス)@ポケットモンスター(ゲーム)、ガブリアス@ポケットモンスター(ゲーム)
[道具]:基本支給品、ピーピーリカバー×1、病院で集めた道具、クロの矢(血塗れ)
[思考・状況]
基本:殺し合いを止め、アカギを倒す
1:一旦政庁に向かい、皆との合流を図る
2:ゲームを止めるための仲間を集める
3:N、サカキを警戒 ゲーチスはいずれ必ず倒す
4:乾巧を探して謝りたい
[備考]
※ブラックホワイト版の時期からの参戦です
※ニャースの事はロケット団の手持ちで自分のことをどこかで見たと理解しています
612
:
◆Z9iNYeY9a2
:2013/02/03(日) 16:41:57 ID:gtchlMJU
投下終了です
おそらくポケモン中で語られることはないでしょうが、ガブリアスの視点で書いたため性格捏造が大丈夫か気になりこちらに投下しました
問題点があれば指摘お願いします
613
:
名無しさん
:2013/02/03(日) 19:10:16 ID:WOg4jnEQ
投下乙です。特に問題ないかと。
リザードンとかも内心描写がいくらかありましたし。
感想は本投下時に
614
:
名無しさん
:2013/02/03(日) 20:01:54 ID:KIZLzWQk
ドラゴン地面タイプのふゆう持ちは
ガブリアスじゃなくてフライゴンの方
アニメで飛んでたかどうか知らないけど一応
615
:
<削除されたのは乾巧って奴の仕業なんだ>
:<削除されたのは乾巧って奴の仕業なんだ>
<削除されたのは乾巧って奴の仕業なんだ>
616
:
美国織莉子、私の全て(修正版)
◆Vj6e1anjAc
:2013/07/18(木) 02:26:44 ID:DFhqkIUo
拙作「美国織莉子、私の全て」の内容を修正しましたので、こちらに投下させていただきます
(本スレ
>>220
)
◆
「あれは……」
長田結花なる少女の希望で、東の町村端の建物に入り、だいたいの主従関係を明確にして。
そろそろ移動するかと考え、建物の外へと出た頃のことだ。
おおよそ地図上の表記で言うなら、E-5・F-5の境目あたりだろうか。
開けた平地の先に広がる、波打ち際の砂浜に、結花が1つの人影を見つけた。
(どうするか)
セイバーはしばし思考する。
あれに攻めかかるということは、この町村を出るということと同義だ。
殲滅戦を望むセイバーにとって、人目を引く土地から離れることは、好ましいこととは言いがたい。
いっそ敢えてこの場で待ち、迎え撃った方がいいのではないか。
(いや)
そこまで巡らせた思考を、セイバーは首を振り、否定した。
そもそも東側の町では、白い魔術師や魔物使いと、あれほどの激戦を繰り広げたばかりではないか。
あの音に反応する者もなく、静まり返っていた以上、あの町に集まっていた者の数など、たかが知れているだろう。
であれば、徐々に近づきつつある影を攻めると同時に、西の町へ戻った方がいい。
既に通過した箇所ではあるが、時間も経過している以上、人の出入りが発生している可能性は高いはずだ。
「行くぞ、ユカ。あの者を叩く」
「っ……はい」
震える声の同意を聞くと、セイバーは小走りで移動を始める。
抜き身の魔剣に闇を纏わせ、迫る標的を睨み据える。
油断はしない。出会いがしらに殺す気の技だ。
これまでの不甲斐ない戦果とは、ここらで決別せねばなるまい。
かの英雄王ギルガメッシュではないが、どこかで慢心があったからこそ、これまでの敵達には逃げられてきたのだ。
「フッ――!」
短い呼吸と共に、一閃。
切っ先から黒の魔力を放ち、人影目掛けて狙い撃つ。
遅れて、どぉん、と炸裂音が鳴った。
漆黒は過たず目標地点を穿ち、土煙を伴い大地をひっくり返した。
死体を確認せねばなるまい。黒き霧を掻き分けて、なおもセイバーは歩みを進める。
「……はは。まさか、ここでまみえることになるとはね」
それ見ろ、油断は禁物だ。
闇と土煙の向こうから、生きていたターゲットの声がした。
「どこかで会ったか?」
「私の勝手な因縁だよ。キミが知らないのも無理はない」
まるで黒猫のような娘だ。
馴れ馴れしく語り掛けてくる、しかし全く見覚えのない、若い少女の姿がそこにあった。
恐らくは結花よりも年下だろう。背の高さはだいぶ違うが、白い魔術師と同じくらいだろうか。
黒髪黒ずくめの中で、片方を眼帯で覆われた金色の瞳が、野良猫のように光っている。
背筋を丸めた前傾姿勢は、まさに猫背というやつだ。
「さて。じゃあ早速、キミ達に質問させてもらおうかな」
静かに微笑を浮かべながら。
チェシャ猫が嘲笑うかのような。
余裕綽々といった態度で、黒ずくめはそう切り出してきた。
617
:
美国織莉子、私の全て(修正版)
◆Vj6e1anjAc
:2013/07/18(木) 02:27:30 ID:DFhqkIUo
(本スレ
>>224
)
「うぉおおおおおォォォォ―――ッ!!!」
吼え猛る魔力が刃を成した。
黒豹の咆哮に呼応し、十をも超える無数の爪が、続々と掌から展開された。
殺意の刃は縦に連なり、おぞましき姿へと変貌していく。
速度低下が消え去ろうと、ソウルジェムが濁ろうと、お構いなしに肥大する殺意が、禍々しき姿を顕現させる。
「啜れ――」
脳裏に思い描くのは、旧友・間宮えりかの思い出だ。
かつて彼女を救うため、一度だけ使った奥の手の記憶だ。
膨大な魔力を必要とするため、ついぞ一瞬前まで忘れていた。
速度低下の魔法とは、あまりに相性の悪い荒技であるが故に、意識の範疇外に置き去りにしていた。
「――その魂ごとッ!」
単純に原理として捉えるならば、先ほどバゼット達を前に披露した、あの円鋸攻撃と同じだ。
思えばあの攻撃自体、この技を実用レベルに改良――あるいは、節約した技だったような気もする。
それでもこの技の質量と威力は、速度低下との併用を考えた技とは、虚偽も誇張もなく桁が違う。
その封印を、今こそ解く。
魔法少女狩りの中で意識することを忘れ、あの金色の巨人相手にも使わなかった、最強の奥義をここに放つ。
全ては、織莉子の未来のために。
織莉子の行く手を阻む暗雲を、一刀のもとに断ち切るために。
鈍足のパワーファイター相手だからこそ、放つことのできるこの一撃に、全ての勝機を注ぎ込むために!
「ヴァンパイアファングッ!!!」
怒号と共に振り降ろされたのは、連鎖する爪が成す巨大な鞭だ。
鋸を思わせる無数の刃で、血肉も骨も魂さえも、微塵に引き千切る血啜りの太刀だ。
大蛇の体躯のごとく激烈に。
豹の尾のごとくしなやかに。
轟然と唸りを上げながら、見上げるほどの刃を降ろす。
風を大気を引き裂きながら、万感の想いを刃と連ね、騎士王目掛けて叩き込む。
(織莉子――――――ッ!)
渦を巻き唸り狂う魔力の中、キリカはひたすらにその名を叫んだ。
声に出すことはあらずとも、心の中で叫び続けた。
物言わぬ叫びは牙となって、暴力を伴い具現化し、セイバーを喰い殺すべく振り降ろされた。
◆
人の気配もないゴーストタウンでは、遠くの音すらも確かに響く。
オートバジンを停めていたサカキが、その音を聞いたのは必然であり。
同道する織莉子が聞いたのもまた、当然の帰結に他ならなかった。
「今のは……?」
美国織莉子の耳に届いたのは、南方から聞こえた爆音だ。
詳細を確かめようとそちらを向いたが、建物に遮られて何も見えない。
どうやら音の様子からして、町の外から聞こえたらしい。
「行ってみるか?」
気になることがあるのなら、行って確かめるのも手かもしれない。サカキは織莉子にそう提案する。
こんな状況では、一体何が、行動の手掛かりになるかも分からない。
あるいはこの音のする方で、キリカが戦っている可能性もある。
であれば、僅かな可能性も見捨てず、このままバイクで町を出て、音の主を見に行くべきだろうか。
そんな選択肢がよぎった瞬間、彼女の予知魔法は発動した。
来たるべき未来を見通す瞳が、行動の果ての結果を捉えた。
「……!」
瞬間、織莉子は息を呑む。
一瞬に垣間見た未来の気配に、その目を大きく丸く見開く。
「サカキさん、急いで! 音の方へ行きます!」
尋常ならざる様子だった。
既に目的の鹿目家は、すぐ近くにまで迫っていたが、それすらも意に介さぬ叫びだった。
ただならぬものを感じたサカキは、素直にエンジンを始動させる。
オートバジンのアクセルを唸らせ、南方へと方向転換する。
(今、未来予知が伝えたものは……)
美国織莉子の予知魔法には、大きな制限がかかっている。
予知の内容は近未来に限られ、それも遠くになればなるほど、ぼんやりとしたものになってしまう。
当然、これほど離れた場所だ。行き着くまでが遅くなる以上、ろくに認識できた情報などない。
それでもただ1つだけ、確かに分かっていたことがある。
618
:
美国織莉子、私の全て(修正版)
◆Vj6e1anjAc
:2013/07/18(木) 02:29:34 ID:DFhqkIUo
(本スレ
>>225
)
予知が告げた未来の世界――その時そこに立つ自分は、泣いていた。
固有魔法が告げた未来は、悲しみの感情を伴う未来だったのだ。
◆
吹き荒れる風に煽られて、塵が天へと飛んでいく。
黒々とした塵の数々が、黒い旋風に飛ばされていく。
騎士王セイバーの放つ瘴気は、漆黒の爪を吹き飛ばしていた。
宙に舞う無数の刃の中、声もなく風に煽られた人影が、静かにアーチを描いていた。
遅れて、ばしゃん、と音が聞こえる。
豹の苛烈さを削ぎ落され、野良猫のごとく無様な姿で。
血塗れの黒ずくめを纏った少女が、波打ち際へと落ちた音だ。
黒衣の狂王はその光景を、目で追うことすらしなかった。
降り注ぐ爪が粒子と消えて、黒い粉雪と変わる中、騎士もまた無言で佇んでいた。
「………」
恐るべきかな、漆黒の王。
悠然たる騎士王の姿を見て、結花は改めて痛感する。
今まさに眼帯娘が振るった、あの巨大な鋸の一撃は、さすがに凌げまいと思った。
しかしセイバーは、これまでの攻撃をも、遥かに凌ぐ威力をもって、それすらも真っ向から迎え撃った。
さながら竜退治の神話のように。
のたうつ大蛇を物ともせずに。
これまでの比にならぬオーラを放ち、真正面からぶつけることで、一刀の下に粉砕してみせたのだ。
「行くぞ、ユカ」
もう勝負は終わったと、騎士王はその従者へと告げる。
海水を血に染める少女を置き去りに、セイバーは西方へと歩みを進める。
一瞬の間を置くと、結花は慌てて、黒き王の後へと続いた。
これだけ派手にやったのだ。近くにいるファイズが、音を聞きつけ、こちらへ追いかけてくるかもしれない。
そう自分に言い聞かせながら、結花もまた後ろを振り返ることなく、セイバーの後ろ姿を追いかけた。
あるいは、哀れな反逆者の末路を、直視したくなかったのかもしれない。
【F-5/砂浜/一日目 昼】
【セイバー・オルタ@Fate/stay night】
[状態]:健康、疲労(小)、黒化、魔力消費(中)
[装備]:グラム@Fate/stay night
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:間桐桜のサーヴァントとして、間桐桜を優勝させる
1:人の居そうな場所に向かう。とりあえず西側の市街地を目指す
2:間桐桜を探して、安全を確保する
3:エクスカリバーを探す
4:間桐桜を除く参加者全員の殲滅。この人間(長田結花)は雑用係として使うが使えなくなったら殺す
5:クロエ・フォン・アインツベルンを探す
6:もし士郎たちに合った時は、イリヤスフィールが聖杯の器かどうかをはっきり確かめる(積極的には探さない)
[備考]
※間桐桜とのラインは途切れています
※プリズマ☆イリヤの世界の存在を知りました
クロエ・フォン・アインツベルンという存在が聖杯の器に関わっていると推測しています
619
:
美国織莉子、私の全て(修正版)
◆Vj6e1anjAc
:2013/07/18(木) 02:31:05 ID:DFhqkIUo
修正箇所は以上です
本スレで言及していない部分で、疲労を「中」から「小」と変更させていただきましたが、
これまでのやり取りから、こちらもそれくらいに抑えておいた方がいいだろうと判断し、修正させていただきました
他に問題点などありましたら、ご指摘お願いします
620
:
名無しさん
:2013/07/18(木) 02:38:45 ID:fhgKGkzo
修正乙です
これでおおよそ問題ないと思います。
ただ、今気づいたんですが、キリカの道具・支給品はどうなりました?
621
:
◆Vj6e1anjAc
:2013/07/18(木) 02:48:52 ID:DFhqkIUo
>>620
キリカがデイパックを持ち歩いた状態のまま死んだ、という体だったのですが……
その場合、死体を抱えている織莉子の持ち物になってる、という形にするのが、一番適切でしょうか
622
:
名無しさん
:2013/07/18(木) 02:56:32 ID:fhgKGkzo
セイバーも自分と同じようにキリカに道具が支給されているはずなのは知っているでしょうから、
彼女がキリカのデイバックを探さなかった理由の一文を添えて、織莉子の持ち物orキリカの死体の傍に落ちている
という風にするのが適切だと思います
623
:
◆Vj6e1anjAc
:2013/07/18(木) 03:16:09 ID:DFhqkIUo
よくよく考えてみると、セイバーはエクスカリバーを探してるわけですから、
持ち物に興味を持たないわけがないんですよね
発言が二転三転して申し訳ありませんが、やはり持ち物はセイバーが持ち去ったという体で、以下のように修正させていただきます
(本スレ
>>225
・該当部分)
◆
吹き荒れる風に煽られて、塵が天へと飛んでいく。
黒々とした塵の数々が、黒い旋風に飛ばされていく。
騎士王セイバーの放つ瘴気は、漆黒の爪を吹き飛ばしていた。
宙に舞う無数の刃の中、声もなく風に煽られた人影が、静かにアーチを描いていた。
遅れて、ばしゃん、と音が聞こえる。
豹の苛烈さを削ぎ落され、野良猫のごとく無様な姿で。
血塗れの黒ずくめを纏った少女が、波打ち際へと落ちた音だ。
黒衣の狂王はその光景を、目で追うことすらしなかった。
降り注ぐ爪が粒子と消えて、黒い粉雪と変わる中、騎士もまた無言で佇んでいた。
「………」
恐るべきかな、漆黒の王。
悠然たる騎士王の姿を見て、結花は改めて痛感する。
今まさに眼帯娘が振るった、あの巨大な鋸の一撃は、さすがに凌げまいと思った。
しかしセイバーは、これまでの攻撃をも、遥かに凌ぐ威力をもって、それすらも真っ向から迎え撃った。
さながら竜退治の神話のように。
のたうつ大蛇を物ともせずに。
これまでの比にならぬオーラを放ち、真正面からぶつけることで、一刀の下に粉砕してみせたのだ。
「………」
がちゃり、がちゃりと具足の音。
それがぱしゃぱしゃという水音に変わる。
どうやらセイバーは、何かを探しているらしい。
倒した娘の傍まで歩み、デイパックを剥ぎ取ると、そのままごそごそと漁り始めた。
「……行くぞ、ユカ」
しかしどうやら、探していたものは、そこからは見つからなかったようだ。
少しばかり苛立たしげに、デイパックを投げて寄越しながら、騎士王は従者へと告げた。
海水を血に染める少女を置き去りに、セイバーは西方へと歩みを進める。
一瞬の間を置くと、結花は慌てて、黒き王の後へと続いた。
これだけ派手にやったのだ。近くにいるファイズが、音を聞きつけ、こちらへ追いかけてくるかもしれない。
そう自分に言い聞かせながら、結花もまた後ろを振り返ることなく、セイバーの後ろ姿を追いかけた。
あるいは、哀れな反逆者の末路を、直視したくなかったのかもしれない。
624
:
◆Vj6e1anjAc
:2013/07/18(木) 03:16:47 ID:DFhqkIUo
(本スレ
>>226
・該当部分)
【長田結花@仮面ライダー555】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、翼にダメージ(オルフェノク態のダメージ)、仮面ライダー(間桐桜)に対する重度の恐怖
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×3、ゴージャスボール@ポケットモンスター(ゲーム) 、穂群原学園の制服@Fate/stay night、お菓子数点(きのこの山他)、
スナッチボール×1、魔女細胞抑制剤×1、ジグソーパズル×n、呉キリカのぬいぐるみ@魔法少女おりこ☆マギカ、不明支給品0〜3
[思考・状況]
基本:???
1:死にたくない
2:黒い剣士(セイバー)に、殺されないために従う
3:仮面ライダー(間桐桜)に言われた通り、“悪い人”を殺す?
4:木場さんの為に、木場さんを傷つける『人間』を殺す?
5:乾さんに裁かれるなら―――?
[備考]
※参戦時期は第42話冒頭(警官を吹き飛ばして走り去った後)です
※自分を襲ったファイズが乾巧だと思っています
625
:
名無しさん
:2013/07/18(木) 03:27:50 ID:fhgKGkzo
二度目の修正乙です
お疲れ様でした
626
:
◆Vj6e1anjAc
:2013/07/21(日) 01:19:20 ID:guBclzzo
拙作「美国織莉子、私の全て」におけるキリカの死因ですが、
正確にはSG破壊ではなく、傷の回復が原因で発生した魔力切れ→SG消滅という意図でしたので、
Wikiのデータをそのように修正させていただきました
紛らわしい表現で申し訳ありません
627
:
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:2013/08/10(土) 01:09:15 ID:GAgcmXbo
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628
:
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629
:
◆Z9iNYeY9a2
:2013/11/12(火) 00:04:19 ID:WdI9zJMU
期限の時間に間に合わなかった部分がありその後のことで少し相談があるため、こちらで一旦仮投下させてもらいます
630
:
Juggernaut-黒き零の魔人達
◆Z9iNYeY9a2
:2013/11/12(火) 00:10:24 ID:WdI9zJMU
「で、あんたは一体なんなのよ?
ポケモンって言ってもシロナさんのガブリアスとかニャースとかと比べるとかなり違って見えるんだけど」
「人間によって作られた唯一のポケモン、それが私だ。
ミュウというポケモンのクローンとして、最強の名を与えられた」
「へー。所謂禁断の好奇心ってやつかしらね」
「私を生み出した研究者は言った。生物を生み出せるのは神と人間だけ。
しかし試験管から生き物を作れるのは人間だけ、だと」
「うわっ、流石にその発言はエゴ丸出しで引くわ」
「もし神によって生み出されるのがポケモンであるとすれば、人間によって作られた私は何なのだ?
試験管から生まれた私は、世界にとって異常な存在ではないのか?
そんな考えから、人間に逆襲しようと、そんなことを考えて生きていたこともあった」
「ちなみにその方法って言うのは?」
「私は強きトレーナーたちを集め、そのポケモン達からクローンを作り出した。
そしてそのオリジナルとクローンを戦わせ、どちらが強いかということを確かめさせた」
「……、ねえ、それって」
「ああ、私を作った人間と同じことをした。これに関しては私も同罪だ。
だが、私は確かめたかったのだ。作られたポケモンがオリジナルに勝てるのなら、本物より優れているのなら。
それこそが我々の…、いや、私の存在の証明にならないか、とな」
政庁出発後、クロはゆっくりしすぎもせず、かと言って変に疲労が溜まることもないような速度での移動を続けていた。
下手に体力を使うと、クロに限っては魔力残数にも関わる。
そしてミュウツーもそれにあわせた速度でクロに付いてきていた。
地面から微かに浮いた位置からの浮遊は何というか、見ていて不思議なものではあったが。
そして、その最中、雑談にしては少々込み入ってはいないかという話を二人で移動と同時にしていたのだ。
「で、見つかったの?その存在の証明は」
「いや、見つからなかった。だがある一人の少年に身をもって教えられた。
その戦いの無意味さにも、そして私の過ちにも」
あの時の、多くのコピーポケモンがオリジナル達と同じく涙を流す姿。
それを見てはっきりと思い知らされたのだ。
その少年はもう既にこの世にいないが、と。
そう付け加えたミュウツーの心中はクロには察することはできなかった。
きっと彼自身も分かっていないのかもしれない。己の気持ちが。
「私には分からないのだ。私自身の居場所が。
私達は世界の理から外れてはいるが、世界に存在してはいけないものではない。
だが、我々は人間と共にあることが許されるのか?」
強い力を持ったものは人間が管理しようとする。もし管理できないならば、排除することを選ぶのが人間だ。
最強といわれるほどの力を持った自分が人と共にあるためには、人間の管理下になければならないかもしれない。
あのサカキの下にいた時のように。
だが、それはミュウツー自身望む形ではない。
では、私はどうすればいいのか。
「どこか一目に付かないところで静かに――っていうのは…ダメか」
「私もそうしようとしたところで、ここに呼ばれたのだ」
631
:
Juggernaut-黒き零の魔人達
◆Z9iNYeY9a2
:2013/11/12(火) 00:13:34 ID:WdI9zJMU
あの時の美樹さやかの攻撃もおそらくは自分が人間ではないからだというもの。
その事実は、ミュウツーの心を少なからず傷つけていたのだ。あの少女が、サトシやタイガのように善に位置する人間と判断できるからなおのこと。
それが多くの人間の下す判断であるとするなら、私はこの場でどうあればいいのか。
「で、それを人間じゃない私に聞きたい、と」
「……」
「案外聞かれても困るのよね、そういうの。
確かに私は人間じゃないけど、パッと見人間と変わらないから、別に人間の中に混じるのに何の不都合もないし。
うーん、でもあんたは納得しそうにないしなぁ、…まあいいか。ちょっとした身の上話なんだけどさ」
クロエ・フォン・アインツベルン。
そもそもこの名前自体、親につけられたという名前ではない。本当の名前は、自分もまたイリヤなのだ。
聖杯としての役割を与えられ、そして封印された記憶、人格が表出したもの。
本来ならば一般社会に生きるイリヤにとっては不要の知識、人格を揃えた存在、それがクロなのだ。
そんな自分が何故こんなところに存在しているのか。
生きたいと願ったからだ。
肉体を得た、大空洞でイリヤがアーチャーを夢幻召還したあの瞬間、そして自分の居場所がない現実に絶望したあの瞬間。
もし自分が生きたいと思わなければ、今ここに存在なんてしていなかった。
で、実際に自分の居場所そのものが見つけられたかと聞かれれば、別に見つかってはいない。
毎日イリヤと共に学校に行って、遊んで、食事して、お風呂入って、寝る。
まあ時々執行者が襲ってきたりする日常だけど、ぶっちゃけそれが本来のあり方ではないというのは自分自身分かっている。
「まあ、ぶっちゃけちゃえばさ、存在意義とか居場所とか、そんなの分かって生きてる人なんて人間でもそうはいないと思うのよ。
そんなの生きてりゃ後から付いてくるものだったりもするわけだし。
だからアンタはそんな小難しいこと考えずに自分のやりたいことやってればいいんじゃないの?」
「そういうものなのか?」
「そういうものよ」
正直、クロ自身ミュウツーに回答が示せるとは思っていない。
これはミュウツー自身が見つけ出さねばならない答えだろう。
だが答えを見つけられない=己の意義がないということについては否と言っておく必要はあるだろう。
作られたものであったとしても、その存在を否定することは神にだってしていいことではないのだから。
「ところでさ、さっきタイガって名前言ってたけど、もしかして藤村大河って人?」
と、ここで話を切り替える。
先の話の中で出てきたタイガという名前にふと心当たりがあったのだ。
「ああ、知り合いか?」
「知り合いってか私達の学校の先生よ。聞いてなかったの?」
「妙だな…、私は確かにタイガの知り合いについては聞いたが、クロエ、お前の名はなかったぞ?」
「ちなみにその聞いた知り合いの名前は?」
「確か――」
衛宮士郎、セイバー、間桐桜、遠坂凛。
士郎、桜は自分の舎弟みたいなもので、凛は自分の学校の生徒だと言っていたように思う。
セイバーは、ある日突然士郎の家に引っ越してきた衛宮士郎の父の親戚の人、と。
「セイバーって…、まさか…」
「心当たりがあるのか?タイガはその4人は何か隠し事をしていると言っていたが」
「そうね、もし私の想像が正しければ、かなり厄介なことになってるわよ。その藤村先生が来た世界って」
セイバー。それは剣士を意味するサーヴァントのクラス。
自分の知らないお兄ちゃんの話。そしてセイバー。偶然にしては出来過ぎている。
もし伊達や酔狂でそんな名を名乗っているのでないとすれば、間違いなくそのセイバーは聖杯戦争の参加者であるはず。
自分達の世界と対応した平行世界、それはまさか―――
「聖杯戦争の起きた…、世界…」
だとすればこの名簿に載っているバーサーカー、そしてセイバーは本当の意味で正規のサーヴァントということになる。
かつてのあの黒化英霊とは違う、正真正銘の。
特にバーサーカー。こいつが万が一にでもあの自動蘇生の宝具を持ったあいつであったなら。
「相当にまずいわよ…」
クロは焦る気持ちを抑えつつ、速やかに移動を続けた。
嫌な予感を心に残したまま。
◇
632
:
Juggernaut-黒き零の魔人達
◆Z9iNYeY9a2
:2013/11/12(火) 00:14:39 ID:WdI9zJMU
若干の時を遡る。
そんな二人の元からそう離れていない場所。
しばらく進んだ場所にはある世界を統べた組織の建造物、スマートブレイン社の跡地がある場所。
未だ市街地の体裁を保っているはずの場所。
そこに建っている建築物が一つ、轟音を立てて倒れた。
濛々と上がる土煙の中、一つの影が宙に飛び出した。
そこにいたのは人間よりも一回り巨大な、鮫のような竜。
その背には金髪の女性を背負い、空を飛びながらも振り落とすことがないように慎重にバランスを取っている。
さらにそれを追うように黒い影が布のようなものをたなびかせながらも竜に向かって飛び掛った。
高速で飛び掛るその何かを、竜はまるで飛行機がカーブを描くかのような軌跡を取りながら避け、着地する。
と、その着地した瞬間、今度はそこに灰色のケンタウルスのような魔人が大剣を振りかざして飛び掛った。
鮫竜はその持ち前の素早さで剣を紙一重で回避、後ろに下がって空中に作り出した岩の刃を飛ばしつつ、地面を踏みしめて咆哮。
降り注ぐ岩片と揺れ罅割れる地面に脚を取られてよろけるケンタウルスの魔人。
しかしもう一人の魔人、黒き仮面とマントを纏った男が光る手の平を地面に叩きつけた。
その瞬間、揺れていたはずの大地が一瞬にして静寂を取り戻す。
驚愕する竜の元に、仮面の魔人は先ほどの光を向ける。
直感的にまずいと感じた竜はその場を離れつつ、再度岩片を飛ばすもそれらは翻したマントに阻まれ魔人に到達することはない。
その後ろから馬の魔人が高速で突撃してくるのを視認した竜は、再度宙に浮き上がりそのまま二人の魔人に背を向けて飛び去っていった。
「中々に素早い。随分と戦い慣れしているようだな、あの竜は」
「言っている場合か。早く追うぞ。
幸いやつらの向かった先は俺たちの進行方向だ。目的に支障はない」
金髪の女と竜を襲った二人の魔人。
ゼロ、そしてホースオルフェノク。
互いの目的のために一時的な共闘を申し出た彼ら二人は休息後出発したところで空を往く竜を発見、襲撃をかけることにしたのだ。
その竜の飼い主が殺し合いに乗っている可能性も考えないではなかったが、こちらを視認した女の目には敵意、警戒心がはっきりと見えたのだ。
おそらくはあのスマートブレイン崩壊跡の戦いを生き残った者から情報を得た人間だろう。それを聞いて敵意を向ける相手ならば手を組めるはずもない。
二人の行動は迅速だった。
想定外だったのは、あの竜がかなりの手慣れであったことだろうか。
まさか二人がかりで逃がしてしまうとは。
「追うのはいいがな、ここには他にも何者かの一団が近寄ってきているようだぞ。そっちはいいのか?」
追おうとするホースオルフェノク、木場勇治。しかしゼロはふと、近くに他の参加者の気配があることに気付いていた。
「一団?何人だ?」
「数は人間のものが4つ。まあ中身まで人間とは限らないが」
つまりは最低4人を一度に相手することになるのかもしれない。
ゼロとてあの時乾巧、巴マミ、佐倉杏子、村上峡児、そして木場勇治という数の暴力には押されたのだ。
ダメージこそ大分治まったとはいえ油断できる相手ではない。
しかし、見逃すのもどうだろうかと考えてしまう。
と、ゼロの感覚が一つの動きを捉えた。
「どうやら一人、集団から離れたようだな。
向かっている先は…、あの女の向かった方だ」
集団から離れた一人分の存在。
あの竜を視認し、追ったのだろう。
633
:
Juggernaut-黒き零の魔人達
◆Z9iNYeY9a2
:2013/11/12(火) 00:18:32 ID:WdI9zJMU
「なら、俺がそっちに向かう。ゼロ、残った三人の相手は任せられるか?」
「問題などないな。お前こそ問題ないのか?
二人がかりで逃がしてしまった者にさらに一人追加して相手取るなど」
「大丈夫だ、今度こそ確実に仕留めてみせるさ」
「そうか、なら生きていたなら3時間後までにD-5の病院で合流としようか」
「分かった」
言うが早いか、疾走態へと変化した木場勇治は女の逃げた方に向かって駆けていった。
「では、私の今すべきことは―――」
木場を見送ると同時、ゼロもそのマントを翻し、その場を立ち去った。
◇
巧、士郎、イリヤ、バゼットの4人の進む先、ふと耳に届いたのは巨大な爆砕音だった。
建物一つ潰したような音、それは士郎の後ろで眠っていたイリヤが目を覚ますほどのものだった。
「な、何…?」
「どうやら、この付近で戦っている者がいるみたいですね。
それも建造物一つを壊すほどの力を持った者が」
建物をあのような衝撃を立てて壊すような存在。
実際巧は高層ビルを潰した相手と戦ったというのだ、不思議というほどのものではないのだろう。
だが、そんな相手が近くにいるというのは、イリヤを怯えさせるには十分だった。
と、ふと空を見上げた一同の視界に、飛行機のような何かが宙を滑空している姿が目に入った。
バゼット、イリヤの視力ではそうはっきり見えたものではなかったが、巧、士郎の二人にはそれが何なのか、はっきり視認することができた。
鮫のような竜の背に乗った一人の女性の姿だった。
それを認識した瞬間、巧の顔色が変わった。
「あれって、もしかして巧がさっき言ってた?」
「………」
士郎の問いかけに沈黙で返す巧。
巧にとっては人間に拒絶された(ように見えた)という苦い記憶。進んで語りたいものではなかった。
無論、そんな相手と顔を合わせることに消極的になるのも無理からぬこと。
そんな巧をじっと見つめ(たような動作をして)、辛辣な言葉をルビーは投げかけた。
『逃げられるのですか?』
「…!」
『まあ別に止めはしませんけど。ただ問題を後回しにしてばかりでは何も進歩しませんよ?』
「止せ」
巧の心中を察してか察せずかは分からないが、そう煽るルビーを士郎が止めた。
「俺が先に行って様子を見てくる。だから巧達は落ち着いたら追ってきてくれ」
「お兄ちゃん?!」
「待てよ、何でそこでお前が行くんだよ」
「何でって、この中じゃ一番怪我とか少なくて大丈夫なのは俺だろ?」
巧は夜中の連戦のダメージを未だに体に残し、さらにあの人と対面することに抵抗を覚えている。
イリヤは戦えるとはいってもまだ子供。先のキリカ戦の時にも状況判断力においては未熟な点も見られた。
そして、バゼットは腕の傷が深く、未だ癒えてはいない。
「心外ですね。この程度の傷があろうと、あなたよりは戦える自信はあります」
「でも怪我をしているのは事実だ」
『まあ確かにこの人にコミュニケーション取らせるとなると嫌な予感しかしないものではありますが――おっと、危ない』
ルビーの軽口に拳を唸らせているバゼットだが、ある意味ではその点もあのキリカとの情報交換で浮き彫りになってしまった欠点ではある。
確かに理には適っている。
634
:
Juggernaut-黒き零の魔人達
◆Z9iNYeY9a2
:2013/11/12(火) 00:19:21 ID:WdI9zJMU
「お兄ちゃん…、待ってよ。行くなら私もいっしょに行かせて!」
「ダメだ、もし万が一戦いにでもなったらイリヤのことは守りきれないかもしれない。
巧やバゼットと一緒に居てくれた方が俺も安心できるから、な」
「あ、あうう…」
そう優しい声で言いながら頭を撫でる士郎に、イリヤは閉口してしまう。
だが、黙るわけにはいかない理由もある。
『士郎さん、その腕のことですが、』
「大丈夫だよ、俺にはこれらの剣がある。こっちで作らなくてもどうにかなるさ」
勝利すべき黄金の剣。かつて最も信頼した少女が、己の聖剣を手にする以前に使っていた黄金の宝剣。
干将・莫耶。赤き弓兵が愛用した、扱いやすく汎用性の高い双剣。
武器としてはこれ以上のものはない。
「でも…」
それでも、イリヤにとっては不安なものは不安なのだ。
もしここで別れたら、もう戻ってこないのではないかという感覚を覚えるほどには。
しかし、こうしている間にも宙を飛ぶモノは視認できない場所に向かおうしとしている。
「じゃあ、急がないと見失っちゃうから、行くよ。大丈夫、すぐ戻るから!」
「お兄ちゃん!」
イリヤの声に一度振り返って手を挙げた士郎は、そのままあの女性を追って走り去った。
「…これで良かったのかよ?」
『そこは士郎さんを信じるしかありませんが、でも乾さんにも責任の一旦があることを忘れてはいけないですよ』
ここで彼らは、一つの事実を見落としていたことになる。
巧の遭遇した女性、クロと共に行動していた人がいたという事実に気を取られ、状況認識を遅らせてしまった。
そもそも、彼女達の逃げてきた方では何があったのか。
そう、戦闘から発生するであろう轟音。つまりは彼女らは戦闘行為を行っていたのだ。
戦闘をしていたということは、襲撃者がいたということ。
そして、逃げるものがいれば追うものがいる。
巧の耳に聞こえてきたのは、馬が地を蹴る嘶きにも似た音。
そう、巧はこの足音を知っている。
「…まさか…木場?!」
士郎はもう見えない。
もしあの女を追っているのが木場だとすれば、士郎の命が危ない。
どうして気付かなかったのか。
自分のことばかりに気を取られ、回りを見るのを遅らせてしまった。
万が一などではない。戦いが起こるのは必然なのだ。
「おい、士郎のやつを止めてくる!お前らは後から――」
『待ってください!何かが近づいてきています!…何ですかこの反応は…!?』
「数時間ぶり2度目の再会、かな。乾巧よ」
声がすると同時、地面を衝撃が抉り取った。
巧、イリヤは咄嗟に変身、転身し、バゼットも構える。
「てめぇ…、まだこの近くにいたのかよ…!」
「生憎連戦続きというのは私にとっても骨の折れるものでな。今しがた移動しようとしたところだ」
『乾さん、まさか彼が…』
今は既に禁止エリアとなった空間を廃墟へと変えるきっかけになった存在。
黒い魔王、ゼロ。
三人の前に立っていたのはまさしくその本人だった。
635
:
Juggernaut-黒き零の魔人達
◆Z9iNYeY9a2
:2013/11/12(火) 00:20:54 ID:WdI9zJMU
◇
「ガブリアス…、大丈夫?」
「グゥ…」
金髪の女、シロナは物陰に身を潜め、鮫竜、ガブリアスに薬を使いながら声をかける。
力を過信していたかといわれればもちろん否だが、心のどこかに僅かにでも油断があった可能性は否めない。
ガブリアスの受けたダメージは最初に出会ったあの竜のオルフェノクとの戦い以上のものが、あの二人との戦いで蓄積されていた。
政庁へと向かう途中、遭遇してしまった存在。
視界に映った黒い仮面の魔人と、そんな存在と共にいる男。
佐倉杏子という少女の話ではあの魔人はゼロという、恐ろしく強力な力を持った参加者であるという情報だった。
空から見えたそんな存在を、チャンピオンとして倒すべきなのか、それとも今は引いて戦う体勢を整えるべきか。
一瞬の迷いはきっとガブリアスにも伝わったのだろう。そして、それこそが命取りとなってしまった。
こちらを発見した彼らの反応は早かった。
二人は協力してこちらへと襲い掛かってきたのだ。
あるいは一人だけならば相手をすることもできたかもしれない。しかし二人がかりというのがまずかった。
仮にこちらにもう一人、あるいはもう一体のポケモンでもいればこうはならなかったかもしれない。
これがポケモンバトルであれば2対1であってもまだ戦えただろう。ドラゴンオルフェノクの時のようにシロナが少し離れた場所で指示を出せたのだから。
しかしこれだけの力量をもった相手を二人敵に回す際それを行ってしまうと、ガブリアスが一方を押さえている間にシロナを狙われる可能性が非常に高い。
だからこそ、ガブリアスはシロナを背負ったまま戦うこととなったのだ。
そして、背負った人間がいる状態でガブリアスは接触技を使うわけにはいかない。
鋭い牙によって相手を噛み砕く攻撃も、竜の闘気をまとっての突撃も封じられた状態での戦闘。
まともなものになるはずもなかった。それでも食らいつき続けられたのはガブリアスの戦闘経験故だろうか。
今ガブリアスの全身にはホースオルフェノクの魔剣が掠った傷が多く目立ち、左胸部付近にはゼロの攻撃によるダメージが残っている。
また、それ以外にも様々な攻撃を受け止めた腕のダメージ、あまりに密度の高い戦闘からの疲労もその体を蝕んでいる。
「ありがとう…、あとは大丈夫よ。ゆっくり休んで」
と、モンスターボールを取り出したシロナ。
しかしその手を押さえてボールに戻ることを拒否するガブリアス。
まだ大丈夫だという意思表示なのだろうが、シロナとしては心配でならない。
「ダメよ、今は戻って。ポケモンセンターまでは遠いわ…。無理はさせられないのよ…」
政庁からは離れてしまった。時間も過ぎているし合流は無理になってしまったが仕方ない。
とにかく、今はここから離れることを優先しなければならない。さすがにあれだけの距離を離せばそう追いつかれることもないだろう。
そう思った瞬間、ガブリアスが顔を上げた。
何かに気付き警戒するかのような態勢を見せたその瞬間、背後にあった建築物を飛び越えて現れたのは、先に戦ったホースオルフェノクだった。
蹄が地面を叩く音を響かせながらこちらを振り向き、その魔剣をこちらに向ける。
総合的にみればその戦闘力はドラゴンオルフェノクにも匹敵するものかもしれない。
そんな相手を前に、ガブリアスはシロナの前に立って威嚇するように吼える。
「ガァァァァァ!!」
「…何故だ。お前は何故そうまでしてその人間を守る?」
何か理解できないものを見るように、ガブリアスを見るホースオルフェノク。
やがてホースオルフェノクは下半身を人間のそれに近づけたものに戻し、高速の突きを繰り出した。
それをガブリアスは腕の力で受け止める。
白羽取りのような形となったが、それでも手が小さいガブリアスが押されつつあった。
「何故、そうまでしてその人間を守る?お前にはその人間がそんなに大事か?」
「ガァヴ!」
「ならば、お前も俺の敵だ」
剣を受け止めたことで空いた脇をホースオルフェノクは蹴りつける。
その勢いに吹き飛ばされるガブリアス。
「ガブリアス!」
「終わりだ」
636
:
Juggernaut-黒き零の魔人達
◆Z9iNYeY9a2
:2013/11/12(火) 00:24:27 ID:WdI9zJMU
と、その魔剣を引き、心臓を狙う一撃を突き出そうとしたところで。
横殴りの衝撃がホースオルフェノクを襲った。
吹き飛ばされたガブリアスがドラゴンダイブを放ったのだ。
組み合い縺れつつ地面を転がる一人と一匹。
至近距離で振られた剣は両腕のヒレで受け止め弾き、その腕に鋭い牙を突きたてる。
痛みに呻きつつもホースオルフェノクは腕を振り払い、ガブリアスに向けて頭部をぶつける。
頭に生えていた鋭い角がガブリアスの肩を貫き血を滴らせる。
「もう止めて!戻りなさいガブリアス!」
叫ぶシロナを見て、ホースオルフェノクはガブリアスを放り投げてそちらへと注意を向ける。
痛みからか動けず蹲るガブリアス。そんな彼にモンスターボールを向けるその手をホースオルフェノクは払う。
ボールは地面を転がりあらぬ方向へ飛んでいった。
「っ…!」
「終わりだ」
と、再度振りかざした剣で今度は斬り付けようと迫った。
その瞬間、彼の元に二振りの双剣が軌跡を描きながら飛び掛った。
「?!」
それらを盾と剣で弾いた瞬間、その向こうから黄金の西洋剣を振りかざしてくる赤髪の少年が映った。
振りかぶられた上段斬りを受け止め、オルフェノクの怪力をもって押し返す。
そのまま着地した少年は、シロナの近くに駆け寄り声をかけた。
「大丈夫か?」
「え、ええ。あなたは?」
「俺は衛宮士郎。乾巧って男に、聞き覚えはないか?」
「…!あなた、乾巧という人を知ってるの?!」
「ああ、だけど詳しい話は後だ」
と、意識をホースオルフェノクに向ける士郎。
「あんたもオルフェノク、なんだよな?」
「乾巧の仲間か」
「ああ。もしかしてあんた、木場勇治か?」
名前についてはカマ掛けのようなものだった。
巧の言っていた危険なオルフェノクに上げられた村上峡児、北崎、そして木場勇治。
しかし巧がこの中で木場勇治の名前を上げるときの顔が、どことなく悲しそうな表情だったのが印象深かったのだ。
だからこそ、もし相手がその木場勇治ならば確かめておきたいことがあったのだ。
「人間と話すことなど、何も無い」
「巧は、オルフェノクだったけど俺なんかよりずっと人間らしいやつだった。
優しくて強くて、でも傷付きやすくて脆い、そんなやつだった。
同じオルフェノクなのに、何であんたは殺し合いに乗ったんだ!」
「俺は殺し合いに乗ったわけじゃない。
薄汚い人間を抹殺する。そのために戦っているだけだ」
「何でそんな…!」
「言っただろう。人間と話すことなど何もないと。
俺は人間を…、いや」
と、そう言った木場は地面に伏せるガブリアスに一瞬視線を向け、剣を突きつけてこう言い放った。
「人間の味方をするなら、誰であろうと俺は倒す!」
言うが早いか、士郎に向けて刃を振り下ろす木場。
それを士郎はカリバーンで受け止める。
(くっ、…どうしてそんなにも、人間を憎めるんだ…!)
オルフェノクは人間の進化系。いくら魔術師であっても未熟な士郎にはその差は容易に埋められるものではない。
力に圧し負けギリギリと後退する士郎。
しかしその剣圧を受け流し、振り下ろされた剣を回避する。
咄嗟にカリバーンを仕舞い、干将・莫耶を取り出す。
僅かとはいえ底上げされた身体能力を持って、ホースオルフェノクに斬りかかる。
しかし同時に振り下ろされた双剣は片腕の大剣で受け止められ、もう片腕に装備された盾で殴られ吹き飛ばされる。
637
:
Juggernaut-黒き零の魔人達
◆Z9iNYeY9a2
:2013/11/12(火) 00:25:39 ID:WdI9zJMU
受身を取りつつ着地した士郎は、双剣を投擲。
同時に再度構えたカリバーンを向けて斬りかかる。
カリバーン―――勝利すべき黄金の剣。約束された勝利の剣には劣るとはいえ、その神秘性、宝具としての格は上位のもの。
たとえそれで斬られればオルフェノクとて無傷ではすまない。
振り下ろされた剣を受け止めつつも、ブーメランのようにこちらに迫る双剣を知覚する木場。
咄嗟に頭部の角を魔剣の下に支え、振り上げることで士郎を打ち上げる。
その瞬間迫ってきた双剣を、剣、盾の両方で弾き飛ばした。
そして宙を舞う士郎にトドメを刺そうとしたが、士郎の姿は既に空には無かった。
見回すと、地に伏せていたはずのガブリアスが士郎を受け止め地に下ろしていた。
「ありがとう…」
一言礼を告げた士郎。頷くと同時に傷が痛むのかよろめくガブリアス。
そして士郎は、木場を見据える。
(ああ、確かにアイツは強い…。だけど…)
その身体能力、耐久力はあるいはサーヴァントに匹敵するものかもしれない。
しかし、士郎は知っている。最優と言われたかつての己がサーヴァントの剣捌きを。
(剣の扱いなら、セイバーに比べたらそこまでじゃない!)
そう、そこを突けば隙ができる。
この腕は、あのセイバーに稽古されたものなのだ。剣の戦いで負けるわけにはいかない。
双剣に警戒しつつも、その手にされたのが西洋剣だけということを確認した木場は、一気に斬りかかる。
そして振り下ろされた剣を受け止めた士郎。
剣というのは力任せに振り下ろせばいいというものではない。
もし振り下ろして空振り、受け流されてしまうのでは大振りになった分隙が大きくなってしまう。
「はぁ――…は…!」
先ほどのような受け止めをされないように、相手の様子を見据える。
木場も同じ手を使おうとは思わないのか、今度は両腕で剣を押さえている。
つまりはこの聖剣ごと、叩き切るつもりなのだ。
だが、士郎は知っている。
この剣がただの剣ではないことを。かつて国を治めた王が愛用していた武器であることを。
それを容易く破壊することなど、オルフェノクであってもできることではない。
「はぁっ!」
剣を引き、力を一瞬抜くと同時に一気に引き抜いた。
それにより重心をずらされバランスを崩した木場は、そのまま振り下ろした剣を地面へとたたきつけてしまう。
「今だ――」
その一瞬で、木場の体に大きく振りかぶったカリバーンを横切りに切りつける。
が、しかし。
次の瞬間、士郎に見えたのは巨大な馬の脚が自分の体を蹴り飛ばす姿だった。
638
:
Juggernaut-黒き零の魔人達
◆Z9iNYeY9a2
:2013/11/12(火) 00:26:36 ID:WdI9zJMU
受身を取りつつ着地した士郎は、双剣を投擲。
同時に再度構えたカリバーンを向けて斬りかかる。
カリバーン―――勝利すべき黄金の剣。約束された勝利の剣には劣るとはいえ、その神秘性、宝具としての格は上位のもの。
たとえそれで斬られればオルフェノクとて無傷ではすまない。
振り下ろされた剣を受け止めつつも、ブーメランのようにこちらに迫る双剣を知覚する木場。
咄嗟に頭部の角を魔剣の下に支え、振り上げることで士郎を打ち上げる。
その瞬間迫ってきた双剣を、剣、盾の両方で弾き飛ばした。
そして宙を舞う士郎にトドメを刺そうとしたが、士郎の姿は既に空には無かった。
見回すと、地に伏せていたはずのガブリアスが士郎を受け止め地に下ろしていた。
「ありがとう…」
一言礼を告げた士郎。頷くと同時に傷が痛むのかよろめくガブリアス。
そして士郎は、木場を見据える。
(ああ、確かにアイツは強い…。だけど…)
その身体能力、耐久力はあるいはサーヴァントに匹敵するものかもしれない。
しかし、士郎は知っている。最優と言われたかつての己がサーヴァントの剣捌きを。
(剣の扱いなら、セイバーに比べたらそこまでじゃない!)
そう、そこを突けば隙ができる。
この腕は、あのセイバーに稽古されたものなのだ。剣の戦いで負けるわけにはいかない。
双剣に警戒しつつも、その手にされたのが西洋剣だけということを確認した木場は、一気に斬りかかる。
そして振り下ろされた剣を受け止めた士郎。
剣というのは力任せに振り下ろせばいいというものではない。
もし振り下ろして空振り、受け流されてしまうのでは大振りになった分隙が大きくなってしまう。
「はぁ――…は…!」
先ほどのような受け止めをされないように、相手の様子を見据える。
木場も同じ手を使おうとは思わないのか、今度は両腕で剣を押さえている。
つまりはこの聖剣ごと、叩き切るつもりなのだ。
だが、士郎は知っている。
この剣がただの剣ではないことを。かつて国を治めた王が愛用していた武器であることを。
それを容易く破壊することなど、オルフェノクであってもできることではない。
「はぁっ!」
剣を引き、力を一瞬抜くと同時に一気に引き抜いた。
それにより重心をずらされバランスを崩した木場は、そのまま振り下ろした剣を地面へとたたきつけてしまう。
「今だ――」
その一瞬で、木場の体に大きく振りかぶったカリバーンを横切りに切りつける。
が、しかし。
次の瞬間、士郎に見えたのは巨大な馬の脚が自分の体を蹴り飛ばす姿だった。
639
:
Juggernaut-黒き零の魔人達
◆Z9iNYeY9a2
:2013/11/12(火) 00:27:54 ID:WdI9zJMU
「ガハッ…」
一瞬で疾走態へと変化した木場は、カリバーンが体を切り裂く一瞬前に士郎の体を蹴り上げたのだ。
馬の脚力で蹴り上げ壁へとたたきつけられた士郎は、口から血を吐く。
そのまま通常形態へと戻った木場は静かに剣を構えて迫る。
起き上がりカリバーンを構えようとするも、内臓を若干やられたのか、うまく立つことができない。
「終わりだ」
そう死の宣告を告げた木場の目の前で、衛宮士郎の姿が消え去った。
「…」
人間にはそれが一瞬の出来事であり視認もできないことだっただろうが、木場には見えていた。
ガブリアスが背にシロナを乗せたまま、そのシロナが士郎の体を掴むと同時に飛び去っていくのが。
遠距離攻撃のないホースオルフェノクには、どうすることもできない。
それを分かった上で追跡してくると踏んだ上での逃走なのだろう。確かに速度は二人連れているせいか、先よりは遅い。
だが、こちらにはまだ手はある。
木場勇治は人間の姿へと戻り、携帯を取り出してコードを入力した。
「あなた、無茶しすぎよ!」
「ぐっ…」
士郎を連れたシロナは、ガブリアスに乗って逃走を図った。
傷付いたガブリアスは、無理をしてでも飛行すると言った。もしあのまま足で逃げても追いつかれるだけだろう。
同じ、いずれ追いつかれるにしても、せめて少しでも体勢を立て直す時間が欲しい、そう思っての逃走である。
「ちょっと苦しいかもしれないけど、しっかり掴まってて!
どこか降りられる場所を探すわ!」
「ぐ……―――あ」
と、前を向いていたシロナはそれに気付くのが遅れた。
それを最初から見ていたのは士郎だけだろう。
木場の体に閃光が走り、黒い装甲服のようなものを身に纏っていた。
さらに、その手の剣から巨大な光が発し、膨大なエネルギーを巨大な光の剣へと形作っていた。
「あ、危ない…」
「くっ、ガブリアスは…、ダメ…、避けきれない!」
二人の人間を乗せて飛ぶという行為自体が無茶なのだ。急激な回避行動など取れるはずもない。
そして光の大剣はこちらに狙いを定めている。
オーガへと変身した木場は、そのまま一気に剣をこちらに向け。
ガブリアスの離した距離を一気に詰めんという勢いで射出。
光――フォトンブラッドの刃、オーガストラッシュが放たれた。
◇
「十字斬撃(クロイツ)!!」
魔力で形成した十字の斬撃がルビーから射出、ゼロを捕らえる。
しかしそれが命中したと思った瞬間、ゼロの前面で掻き消えた。
「えっ、当たったの?!」
『いいえ、おそらく当たっていません!
何故か魔力反応が彼の前で消滅しました。これは一体…』
と、困惑するルビーとイリヤの前で、バゼットと巧が拳を振りかざして殴りかかる。
が、その腕をゼロのマントが絡め取り、後ろへと投げつけた。
成す術なく地面に叩きつけられる巧と、空中で体勢を立て直して起き上がるバゼット。
そんなバゼットの元にゼロの拳が迫っていた。
「どうやらこの中では貴様が最も手練のようだな」
「っ…!―――硬化(ARGZ)!」
ルーンを発動させ、拳を受け止める体勢を取る。
と、その時ゼロの拳が光り、まるで羽ばたく鳥をイメージするような紋様が浮かび。
次の瞬間、殴りつけられたバゼットの肉体が錐揉みしながら吹き飛んだ。
640
:
Juggernaut-黒き零の魔人達
◆Z9iNYeY9a2
:2013/11/12(火) 00:29:36 ID:WdI9zJMU
「バゼットさん!?」
「てめえ!」
吹き飛ばされるバゼットの姿を見て、巧が壁を蹴りながら空中へと跳び、そこから跳び蹴りを放つ。
しかしゼロは再度その手を光らせ、一瞬で移動した後オルフェノクとなっている巧の肉体を吹き飛ばした。
「収束放射(フォイア)!!!」
その後ろから、イリヤが魔力の砲撃を放ち狙い打つ。
が、その光も宙を静止したかと思えば一瞬で消滅した。
『イリヤさん!』
「はっ?!」
十数メートルはあったはずの距離を一瞬で詰め、その拳をまたも光らせるゼロ。
イリヤはそれを受け止めるために眼前防御壁を張り。
それは破壊されることもなく、拳の光に触れただけで掻き消えた。
『強制転移!』
それを見たルビーの瞬時の判断により、イリヤの肉体をその場から転移、ワープさせた。
「バゼットさん、巧さん!大丈夫?!」
「硬化のルーンが無効化されたとは…、一体何が…、ぐっ」
「ふん、やはりお前の心臓にこのギアスは効かないようだな」
「ちっ…」
血を口から滴らせるバゼットを尻目に、巧に向かってそう言葉を投げかけるゼロ。
対して巧は既に一度戦っていることである程度力量は把握しているのか、その能力にも戦闘力にも驚くことなく立ち上がっている。
『ゼロ、一つ伺わせて貰いたいことがあります』
「ほう、喋るステッキとはな。まるでファンタジーの国のアイテムのようだな」
『いえいえ、あなたほどファンタジー――幻想的な存在ではありませんよ。
あなた、その力どうやって手に入れました?』
「この力が何か、ではなくどうやって手に入れたか、と問うか」
『何かという点についてはある程度の分析は可能です。
それは光に触れたもののエネルギー、ないしは物質活動を停止、消滅させるものですね。
転移でも分散でもなく、質量保存の法則を完全に無視しての消滅、まさしく有から無を生み出すかのような』
有から無を生み出す。そのような非効率な魔術を研究する魔術師などそう存在するものでもなかったが、少なくとも目の前の魔人はそれをやってのけた。
魔術を、エネルギーを、のみならず生命活動すらも無へと帰しかねないその力。
おそらくそれは、まさしく神をも殺しうるほどのもの。
では、それほどの力をどうやって手に入れたというのか。その肉体は今だ生きている。人の身でどうやってそれほどまでの神秘を宿したというのか。
心当たりはある。とは言っても、それを魔術師の前で言うと失笑されかねないものであるが。
自分の製作者が、それを目指して魔法使いとなった、まさしくその到達点。
『まさかあなた、見たのですか?根源を』
全ての魔術師が、その血統をかけて到達しようとしている最終目的、根源。
究極の知識、最初にして最後を記したもの、アカシックレコード。
様々な呼び名が存在するものではあるが、まさかこの男はそのいずれかに何らかの手段で到達したというのか。
「根源―――なるほど、多くの神々の名を持つエデンバイタルのことをそう呼ぶ世界もある、ということか。
生憎だが違う。私は一人の魔女と契約をしただけだ」
641
:
Juggernaut-黒き零の魔人達
◆Z9iNYeY9a2
:2013/11/12(火) 00:32:13 ID:WdI9zJMU
と、ゼロは光をふわふわと浮かぶカレイドルビーに向ける。
その光を慌てて回避するルビーを黒いマントが捕える。
『は、離して下さい!セクハラですよ!』
「あの門に関わるかもしれないものの知識を持っている存在。
興味深いが今の私には特に必要なものでもないのでな。悪く思うな」
マントに手繰り寄せられ宙を舞うルビーを手の光が照らした。
その瞬間、巧がルビーを受け止め、それと同時にバゼットの拳がゼロのマスクを捉えた。
「…只人にしては悪くない拳だ」
「只人かどうかは試してみるといいでしょう。私はあなたのような存在を相手にすることを生業にしていますので」
そのまま地面に拳をたたきつけ、砂埃を巻き上げる。
周囲の視界を一斉に塞いだことで視認できなくなったバゼットを警戒していると、背後から巧の鋭い爪が襲い掛かった。
腕で受け止め、そのまま回し蹴りを放って吹き飛ばした。
しかし爪を受け止めた部分には傷跡が残る。
「――後より出て先に断つ者(アンサラー)」
視界を晴らそうとザ・ゼロを発動させようとしたところで、バゼットがいたであろう箇所から妙な光が発しているのを見て発動をとめる。
地面を蹴り土ぼこりの中から飛び出した先のバゼットの脇には小さく鋭い短剣が浮遊していた。
「ちっ!」
ネタに気付かれたかと言わんばかりの舌打ちをした瞬間、短剣を叩き落すと同時、ゼロにその素早い拳の連撃を繰り出し、ゼロもそれを掌底で受け止め続けた。
『イリヤさん、ここは逃げましょう。あの二人にもそう伝えなければ――』
イリヤの目の前で繰り広げられているのはかつての黒化英霊の時を思い出すような戦い。
そういえばあの時は本当に命がけで、幾度となく死にかけたなと、そんなことを思い出す。
目の前で戦っているバゼットさんにも、正直命の危機まで感じたこともある。クロと美遊と、凛さんやルヴィアさんもいたのに交渉に持ち込むのがやっとだった相手を。
そんなすごい人を、あの仮面の男は乾さんとの二人がかりで圧倒しているのだ。
きっと、今の自分の魔力砲や斬撃など片手で捌くだろう。
今の私にはそれくらいの力しかない。
「逃げるの…?」
『あの能力は危険です。我々だけではどうにもなりません。
もっと準備を整え、彼を倒しうる仲間を集めてからでなければ』
「……」
脳裏に、こんな男の存在を知らない兄の顔が思い浮かぶ。
優しく頭を撫でて笑顔でここから離れていった姿が。
もしここで逃げれば、きっと彼にも危険が及ぶだろう。
いや、もしかするともう危険が及んでいるかもしれない。
なら。私がここですべきことは何だろうか。
乾さんの灰色の体が膝をつき、バゼットも防戦一方だ。
今の私には、あの男と戦い得るような力はない。
―――本当に?
642
:
Juggernaut-黒き零の魔人達
◆Z9iNYeY9a2
:2013/11/12(火) 00:33:18 ID:WdI9zJMU
いや、持っている。
今はそのほとんどを持っていないが、最初に来たときに入手した、たった一枚のカード。
『?!イリヤさん!?それは無茶です!今までそれをやっていたのはクロさんなんですよ?!』
「ううん、できる。美遊だってできたんだから。私にだって―――」
人が空想できること全ては起こり得る魔法事象。
なら、イメージすればいい。己の姿を。
魔術師のクラスのサーヴァントの衣を纏う、己が姿を。
そうだ、あの日やったように。
カードの力を解き放つのだ―――
「―――――夢幻召喚(インストール)!」
◇
643
:
Juggernaut-黒き零の魔人達
◆Z9iNYeY9a2
:2013/11/12(火) 00:36:19 ID:WdI9zJMU
◇
全身が痛い。
視線の先には膨大なエネルギーで固められた巨大な剣。
あれが振り下ろされれば、俺たちなど一瞬で焼き尽くすだろう。
俺は、これで死ぬのだろうか。
こんなところで死ぬのだろうか。
死にかけたことはこれが初めてというわけではない。
なのに。
(俺は桜を、桜の笑顔を守りたいんだ)
(ならお前はその夢を叶えろよ)
ああ、こんなにも命が惜しい。
まだ何も成していない。
桜の元へも辿り着いていない。イリヤのことも放ってきてしまっている。
生きていなければいけない理由が、俺にはある。
そう、生きなければいけない理由が。
ならば、どうする?
あの巨大な剣をどうやり過ごす?
考えるのではない、イメージしろ。
必要なのは、あの剣を防ぐ盾。
俺はそれを、知っている。
どこが?
―――体が覚えている。
体のどこが、知っている?
―――知っているのは、この腕―――
己の中で、もう一人の自分が叫ぶ。
止めろ。
それを外せばイリヤが悲しむ。
己の命を縮める。
お前が死ねば、桜が悲しむ。
分かっている。
だが、この腕をつけられた時には己の命が、残り少ないことなど既に把握している。
そして、今使えば、今は生き伸びることができる。
迷いは無かった。
答えを見た士郎は、咄嗟に腕の聖骸布を剥ぎ取り。
目を開いたときには、既に剣先は差し迫っていた。
だが、大丈夫だ。
「――投影、開始」
全ては一瞬。
「I am the bone of my sword」
結果が分かっているのなら、焦らずとも間に合わせられる。
詠唱呪文を静かに口ずさみ。
迫る剣先の前、その盾の名を叫んだ。
「――――――熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)!!」
◇
644
:
Juggernaut-ジ・アルゴノウタイ
◆Z9iNYeY9a2
:2013/11/12(火) 00:37:28 ID:WdI9zJMU
「なっ?!」
木場勇治が驚くのも無理はなかった。
あのサイドバッシャーを駆る少女との戦いでは謎の能力により外してしまったオーガストランザーによる必殺の光。
今度こそは確実に仕留めるつもりで放ったその一撃が。
突如竜の背後に咲いた謎の花弁に絡め取られたのだから。
竜と人間二人を切り裂き焼き尽くすはずだったエネルギーは、その花弁により受け止められ。
咲いた4枚の花弁の盾は数秒ごとに一枚一枚その数を減らしていったものの、その光が見えなくなるころには既にその姿は完全に目視できる場所にはなくなっていた。
無限に伸びる刀身が、防がれたことで逆に後ろから押してしまった形になったのだろう。
剣を収め、オーガフォンを外し。
人間の姿へと戻り、瞬時の思考の末に彼らの去って行った方向に背を向けた。
追うか?と一瞬考えたが、見失った相手を再度探すという気にはなれなかった。
むしろ彼らを追うより先に、ファイズギアの奪還を優先したほうがいいだろう。
あの赤髪の少年は乾巧と出会った、と言っていた。つまりはあの付近にまだ乾巧はいた、ということだろう。
ファイズでない彼と戦う気にはならない。だが彼とてファイズギアがあれば自分と戦わざるを得なくなるはずだ。
唯一気がかりなことがあるとするなら、もしゼロと遭遇して戦ってでもいた場合の話だ。
戦うだけならまだしも、それでゼロにやられてしまうのではどうしようもない。
そこは彼自身の力量を信じるしかないだろう。あのゼロと戦っても生き延びることができる、と。
そうして木場は、一人静かにその場を立ち去る。
これから起こる嵐のような激闘に、一人のオルフェノクが混じることなく姿を消した。
それだけの話である。
【E-4/市街地/一日目 昼】
【木場勇治@仮面ライダー555 パラダイス・ロスト】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(中)、全身に打撲
[装備]:オーガドライバー一式
[道具]:基本支給品、グリーフシード、アヴェロンのカードキー、クラスカード(ランサー)、コンビニ調達の食料(板チョコあり)、コンビニの売上金
[思考・状況]
基本:オルフェノクの保護、人間の抹殺、ゲームからの脱出
1:ファイズギアを持っていた者を追うため、北か東に向かう
2:すべての人間を殺したあと、村上を殺す。
3:ベルトを手に入れた乾巧と決着をつけたい。
4:たとえ別世界の海堂や長田であっても、自分を止めるなら容赦はしない。
5:ゼロとは組むが、いずれ殺しあう。 3時間後までに病院で合流する。
[備考]
※コロシアムでの乾巧との決戦の途中からの参戦です
◇
突如発生した光に、一斉に振り向く一同。
光の元は後方支援に徹していたはずのイリヤ。
しかし、光の収まった先にイリヤの姿はない。
「イリヤスフィール…?」
あっけに取られるバゼットと巧の前で、そんな様子を気に留めることもなく距離を詰めて攻めかかるゼロ。
645
:
Juggernaut-ジ・アルゴノウタイ
◆Z9iNYeY9a2
:2013/11/12(火) 00:39:24 ID:WdI9zJMU
その時、空からゼロに向けて、ポインターのような光が点滅した。
「?!」
状況認識より早くその場から脱したゼロ。
次の瞬間、そのゼロがいた場所に大量の砲撃が浴びせられた。
「これは…、魔術…、にしてはあまりに高等すぎる…。まさか…!」
空を見上げたバゼットの目に入ったのは、宙を飛ぶ複数の魔方陣。
そしてその中心にいるのは、ローブのような服装を着込み、長い杖を持った少女。
『イリヤさん、まさか本当にやってのけるとは…』
「これが…」
そう、これこそがクラスカードの真の能力。
己の存在に英霊の記憶を上書きする能力。
そして、今イリヤが纏ったそれこそが。
「クラスカード『キャスター』!!!」
空を飛ぶイリヤに対し、ゼロは地を蹴り接近を図る。
十数メートルはあろうかという距離を飛び上がり、イリヤに拳の光を向ける。
「危ねえ、逃げろ!」
と、思わず叫ぶ巧。しかしイリヤの姿はゼロの目の前で消失した。
「!」
次の瞬間、イリヤの姿はゼロの背後に出現。
同時に魔方陣が魔力の砲撃を放ち空を浮くゼロを撃ち落とす。
後ろからの奇襲に、砲撃の直撃を受けるゼロ。
地面に受身を取りつつ着地したところで巧とバゼットの拳が迫る。
「何だか分からねえが…」
「イリヤスフィールが万全の状態である今が――」
ゼロはその拳を、マントで己の体を弾くことで回避。
しかし回避した先には先ほどにも増してゼロを狙う魔力の砲撃。
『慣れていますねイリヤさん、初めてとは思えないほどに』
「だって、以前はあそこにいたのが私だったから」
キャスターとの初戦はまさしく負け戦だった。
空中からの魔力砲撃をいきなり受け、地上からの攻撃は魔術壁に阻まれ。
転移魔法まで備えた強敵。
逆の立場をよく分かっているからこそ、何が脅威となるかはっきり分かったのだ。
しかし、さすがに初めてで大量の魔方陣を操ることには無理があるのか、イリヤの砲撃は増えれば増えるほどゼロから逸れつつあった。
だがそれがバゼットや巧を巻き込むことはない。
バゼットは攻撃の特性を瞬時に理解、ポインターの狙いからは避けてゼロに攻撃を仕掛けるようになり。
巧もどういう攻撃なのかおぼろげには把握したようで、その持ち前の感覚と素早さで的確に魔術砲を避けていた。
ゼロは空からの砲撃と地上からの接近戦に手を焼き、特にイリヤに狙いを絞ることが困難になっていた。
が、それでも一筋縄ではいかず一斉に放った魔力砲、巧とバゼットの攻撃共に、全身をマントで包み込むことで防ぎきったゼロ。
646
:
Juggernaut-ジ・アルゴノウタイ
◆Z9iNYeY9a2
:2013/11/12(火) 00:40:35 ID:WdI9zJMU
「それなら―――」
そう、大きな一撃を撃ち込めばいい。
あの時のような巨大な一撃を。
イリヤの前面に先ほどとは比べ物にならない巨大な魔方陣が展開する。
それは魔術の域を超えた、神代の時代に存在した、現代には失われた魔術。
空を見上げたゼロは光をイリヤに向けようとするもバゼットがそれを許さない。
無論、それでイリヤは撃つことを躊躇ったりなどしない。
彼女ならそれを避けるだろうと、信じているから。
(いける―――!)
そうして魔力の収束は完了し。
ゼロへとその砲撃が撃ち込まれんとしたその瞬間だった。
「■■■■■■■■■■■■■■■――――――!!!」
彼らの耳に異形の叫び声が届いたのは。
「―――!」
イリヤも、バゼットも、巧も、ゼロですらもそちらに注意を向けざるを得なかった。
そこにいたのは、かつて一人で戦う美遊に命の危機を感じさせた存在。
コンクリートで建てられた建築物を叩き潰して現れたそれ。
クラスカードによる英霊の現象でも、夢幻召還されたものでもない。
本物の英霊―――狂戦士が立っていたのだから。
その巨大な体はまぎれもなくかつて戦ったバーサーカーの英霊。
しかしその肉体は赤く黒く禍々しい魔力が流れており、さらにその手にあるのは巨大な岩の剣。
純粋な英霊とはとても思えぬその禍々しく恐ろしい姿に気圧されたイリヤ達の前。
「■■■■■■■■■■■■■■■――――――!!!」
バーサーカーはバゼットを、巧を、ゼロを無視してイリヤに向かって走り突っ込んできた。
『イ、イリヤさん!狙われてます!』
「な、何でこっちに?!ううん、や、やらなきゃ!」
幸いイリヤは今だに魔方陣を展開した状態。
ならば、これを持って迎え撃つしかない。
神言魔術式・灰の花嫁(ヘカティック・グライアー)。
大規模魔力砲で一気に追い払うのだ。
倒せなくとも、ダメージを与えて怯ませることはできるはずだ。
「砲門壊砲!!!」
この時イリヤは失念していた。
目の前にいるのは英霊の現象ではなく、英霊の記憶を、誇りを持ったサーヴァントそのものであるということを。
それは能力、宝具のランクだけではないということを。
だがそれはこの場の者に責めるには酷なことであったが。
647
:
Juggernaut-ジ・アルゴノウタイ
◆Z9iNYeY9a2
:2013/11/12(火) 00:41:41 ID:WdI9zJMU
バーサーカー。
真名・ヘラクレス。
本来令呪を持ってようやく言うことをきかせることのできるほどのクラスの、なおかつ大英霊のマスターを務めたイリヤ。
なぜそれが可能だったのか。
イリヤとヘラクレスの間に、深い絆があったからだ。
狂化してなお、バーサーカーの心に守る意思を植えつけるほどの絆が。
バーサーカーの意思。それは黒い剣士を撃退すること。
何故か。それがイリヤに危機を及ぼすからだ。
そう、全てはイリヤを守るための戦い。
そんなバーサーカーには、平行世界とはいえイリヤがキャスターを夢幻召喚している姿がどう映っただろうか。
思考すらまともにままならない彼にはこう感じ取ったはずだ。
主、イリヤスフィールがキャスターに囚われている、と。
ならば、何としても助けねばならない。
キャスターを撃退せねばならない。
狂化と黒化により思考力の低下したバーサーカーには、それがイリヤスフィールにも攻撃を当てかねないものであるということには気付かない。
それほどまでに強い意志を持ったバーサーカーの肉体は。
神言魔術式・灰の花嫁の直撃を受け、
「――――えっ」
驚愕に包まれたイリヤ。
焼け爛れ、焼け落ち、所々黒焦げになった肉体を晒しながらもバーサーカーはそんな彼女の目の前まで迫り。
その腕の斧剣を、その体に叩き付けた―――――
◇
「はぁ…はぁ…」
「大丈夫?!」
「ああ、だ、大丈夫だ…」
聖骸布を巻きなおし、朦朧とする意識の中、士郎は立ち上がる。
全身に謎の倦怠感、疲労感が包み込む。
おそらく聖骸布を解いたことによる魔力消費の影響だろう。
いや、それだけではないだろうが、今はそれは考えないことにした。
「…そういえば、あなた、衛宮士郎君って言ったわよね?」
「ああ…」
「私はシロナ。クロちゃんからあなたのことは聞いているわ。大分差異があるようにも感じるけど」
クロ。それはイリヤの言っていた、クロエ・フォン・アインツベルンのことだろうか。
彼女と知り合いというのなら、自分からも聞いておかねばならないことがある。
「ああ、それならイリヤから聞いている。違いについては後で説明する。
それと、乾巧って名前に心当たりはないか?」
「知ってるの?!」
「イリヤ達が合流してる。そう遠くはないところにいるはずだ…」
「そう…、良かった、無事だったのね…。
彼にはいきなりひどいことしてしまったから、謝らないといけないって思ってて…」
巧に何があったかは大まかには聞いている士郎は彼女の印象を心の中で書き換える。
どうやら目の前の女性、シロナはその鋭い印象を受ける外見に反して心優しい人のようだった。
きっと、皆と会わせても大丈夫だろう。
位置的には出てきた場所、巧やイリヤ達と別れてきた方に寄った向きに移動しているのも都合がいい。
「グゥ…」
「無理をさせてごめんなさい、ガブリアス。
もう大丈夫よ、ボールに戻って」
と、シロナが懐からボールを取り出した、その瞬間だった。
648
:
Juggernaut-ジ・アルゴノウタイ
◆Z9iNYeY9a2
:2013/11/12(火) 00:43:03 ID:WdI9zJMU
ジャリッ
地面を踏みしめる音が鳴る。
そこに立っていたのは、青い髪をした少女。
服装は若干露出度は高いがマントを羽織り剣を携えたその姿は騎士を連想させるものでもある。
うつむいているため顔は見えないが、その少女は病院で会った彼女で間違いはないだろう。
「さやかちゃん!良かった、大丈夫だったのね」
ゲーチスと共に行動していたこともあり、気にはなっていたが病院では何も言い出すことができなかった相手だ。
その彼女の無事を安堵したその時、士郎が鋭い頭痛を訴えた。
「が、あああああああ…」
「士郎君!」
頭を押さえて蹲る士郎に駆け寄るシロナ。
平常時を知っているわけではないため確信することはできないが、どうもあのオルフェノクからの逃走に成功してから彼の様子がおかしい気がする。
あの光の盾を出したことといい、彼に何が起きているというのか。
「さやかちゃん、お願い手を―――」
「ガッ!」
手助けを求めてさやかの方を向いたシロナの目に映ったのは。
こちらに向かってその剣を振り下ろすさやかの姿。
一瞬見えた彼女の目には。
狂気の空洞しか映っていなかった。
◇
痛い。
瓦礫の崩れる音が聞こえる。
一体何が起きたのか。
私は、確かバーサーカーを迎撃するために砲撃を放って。
それから……何だっけ?
頭には何だかぬめっとした液体が付いている。
思わずそれに手をやる。
赤い。
そこまで考えて、意識を取り戻してから一度も呼吸をしていなかったことに気付き、息を吸った。
「―!う…、ガッ…、ゴホッ、ゴホッ!」
瞬間、胸に、腹に激痛が走った。
まるで内側から殴りつけられ、シェイクされた後のような痛みに、呼吸すらも止まってしまう。
『イリヤさん!喋ってはいけません!今全魔力をリジェネレーションに回しています!今しばらくの辛抱を!』
目を開くと、そこにはルビーが慌てるように浮遊する姿。
そうだ、バーサーカーのあの一撃をまともに受けてしまったのだ。
とても大きく重そうなあの剣の一撃を。
そのまま勢いに任せて建築物に叩きつけられた体、すでに夢幻召喚は解除されている。
呼吸をできないまでも、どうにか体だけでも起こす。
おそらく体の骨が折れ、内臓も強い損傷を負っている様子。
もし生身で受ければ一撃でミンチと化していただろう。
まだ朝のはずなのに暗いななどと、そんなことを考えながら目を開いた、そのすぐ先。
バーサーカーが立っていた。
649
:
Juggernaut-ジ・アルゴノウタイ
◆Z9iNYeY9a2
:2013/11/12(火) 00:44:25 ID:WdI9zJMU
「っ!!!!?」
内臓のダメージも忘れて息を飲み込むイリヤ。
そんな彼女の目の前で、
「■■■■■■■■■■■■■――――――!!!」
声にすらならぬ咆哮を上げ、バーサーカーはその手をこちらに伸ばした。
まるで、殺し損ねた虫の息の根を止めようとするように。
(い、嫌、来ないで…!)
体はロクに動かず、しかし狂戦士の手は迫る。
思考が完全に恐慌状態に陥った、その時だった。
「“後より出でて先に断つもの(アンサラー)”」
バゼットの声が周囲に響き。
「―――“斬り抉る戦神の剣(フラガ・ラック)”!!!!」
バーサーカーの胸に向けて、一点の光がその身を貫いた。
赤く塗りつぶされた、爛々と光る瞳から光が消え、その体は地に崩れ落ちる。
そこへ巧が駆け寄り、イリヤの体を、衝撃を与えないように優しく抱き上げて連れ出す。
「おい、大丈夫かおい!」
『大丈夫です、どうにか命に別状はないくらいにはダメージを抑えました。
ただ、動揺されてるのは分かりますがもう少し静かにしていただけると…』
まだ声は出せないようだが、今のところ命に別状はない。
イリヤを安静にさせられる場所まで連れて行かなければ、と巧が宙を蹴った、その瞬間だった。
ゼロがバゼットを振り切って巧の下まで迫ってきた。
「ちっ、しつこいんだよお前は!」
両腕の塞がった巧はゼロから離れるため、疾走態へとその身を変化させ縦横に素早く移動する。
ゼロの拳が今に迫りそうになったその時、バゼットの投擲した瓦礫がゼロを捉える。
マントを翻してその砲撃ともいえるほどの威力を持った瓦礫を弾くが、その一瞬が巧をゼロから引き離す。
『ゼロだけではありません!おそらくあのバーサーカーの宝具―能力は自動蘇生、おそらくまだ終わってません!』
「■■■■■■■■■■■■■――――――!!!」
ルビーの警告が終わると同時、バーサーカーの咆哮が響き、その巨体からは想像もつかない俊敏さでゼロに拳を叩き付けた。
「!?」
完全に死んだものとして数えていた存在の介入に不意を突かれたゼロは十数メートルはあろうかという距離を吹き飛ぶ。
そのままイリヤを抱えた巧の元に食らい付いてきたバーサーカー、巧はその顎を脚で蹴り上げる。
「な、何だこいつ…!」
しかし、疾走態の脚力を持って蹴り上げたにもかかわらずビクともしない。
そのまま振るわれた斧剣、しかしルビーが物理障壁を張ったことでかろうじてかわすことに成功する。
が、その風圧だけで巧の肩の刃が嫌な音を立てる。
「―――硬化(ARGZ)―――強化(TIWZ)―――加速(RAD)――――相乗(INGZ)!!」
650
:
Juggernaut-ジ・アルゴノウタイ
◆Z9iNYeY9a2
:2013/11/12(火) 00:48:03 ID:WdI9zJMU
その時、最大限まで強化したバゼットの拳がバーサーカーの体を捉えた。
衝撃波を放出するほどの勢い、それはバーサーカーの体をも受け止めた。。
「今のですら通用しないとは…!」
しかしそれだけで殺しきることまではできなかったのか、バーサーカーはすぐさまバゼットへと意識を向ける。
が、そこでゼロがバーサーカーに急接近、例の光を至近距離からバーサーカーの体に叩き付けた。
苦しむかのように咆哮を上げるバーサーカーの体から力が抜け、地面に崩れ落ちる。
そのまますかさずゼロはこちらを向き、マントを飛ばしつつ攻撃を放つ。
が、そこで背後の気配に振り返り、その手を振りかぶられた斧剣にぶつける。
ゼロにその剣を受け止められたバーサーカーだったが、そんな事実に構うことなくイリヤに駆け寄ろうと迫る。
「自動蘇生宝具であるなら、もう一度――」
『ダメです!バーサーカーには一度倒した攻撃は通用しません!』
「くっ!」
後より出でて先に断つものを起動させかけたバゼットは、起動を止めて腕を振り上げ地面を言葉通りの意味でたたき上げ、バーサーカーに投げつけた。
コンクリートの土煙が発生し視界を塞ぐ。
そのままバーサーカーの進行方向から反れて逃走しようとしたその時、バーサーカーは正確に、真っ直ぐ向かうことなくこちらへと向かってきた。
「…ぁ……」
イリヤが治癒によって楽になった肺から声を絞り出し、死を覚悟した。
その時。
――――シュン
風を切る音と共に数百メートル先の建物から飛翔した何かが、爆発。
バーサーカーの肩から先を吹き飛ばした。
「何だよ!また敵かよおい!?」
「いえ、この攻撃は…」
「イリヤ、まさかバゼットに乾巧と合流してたなんてね。
こんなに近くにいて気付かなかったわ」
高所、彼らの戦いから離れたビルの上にて捩れた剣を矢として放ったクロは、今度は仮面の男に向けて黒い矢で狙いを定める。
が、その手に振るえが見え、体もかなりグラグラ揺れている。
「もう動いて大丈夫なのか?」
「――大丈夫よ…。
これはただの痛みだけで、実際の機能には何の影響もないんだから。
それに、”妹”が体痛めて倒れてるときに休んでなんていられないで、…しょ」
ここへ近づいた先ほどのこと、突如体を押さえて倒れこんだクロにはミュウツーも驚いた。
しかし、それで何かに気付いたのか、クロは明らかに無理を押してる風な様子で、この場まで辿り着き矢をはなったのだ。
「無理だけはするな。
それと一つ聞かせてもらうが、あの仮面の男と巨人は敵ということでいいのだな?
お前にとっても、私にとっても」
「ええ。仮面の男はゼロ。巴マミの言っていた化物ね。
あの巨人もかなりの相手よ―――っ…。
喋るだけで体が痛むわね…。ちょっとあいつらの相手、お願いできない?」
「良かろう。あのゼロと巨人を無力化すればいいのだな?」
「お願い…、私はイリヤの回復を待ったら戻るわ」
そう言ってクロは体を押さえつつビルから飛び降り。
ミュウツーもまた、バーサーカーとゼロへと向かって体を一直線に移動させた。
651
:
Juggernaut-ジ・アルゴノウタイ
◆Z9iNYeY9a2
:2013/11/12(火) 00:49:04 ID:WdI9zJMU
「何だあの白い生き物…?」
「ほう、異形の生物よ、貴様もまた私の邪魔をするか」
バリアと共にバーサーカーを跳ね飛ばしたミュウツーは、そのまま一気に急旋回してゼロにその手に集めたサイコパワーをぶつける。
が、ゼロも光をぶつけて対抗。相殺されたエネルギーは消滅、そのまま拳をぶつけようと殴りかかるも、ミュウツーの前面に張られたバリアがそれをガードする。
一方、ミュウツーに吹き飛ばされたバーサーカーはその身を起き上がらせるも、すぐさま接近したバゼットがその地面を叩き割った。
割れた地面に脚を取られたバーサーカーは転倒、起き上がろうとするも、地面に挟まった足を引き抜くことができない。
「イリヤスフィールを早く!私もあとから追います!」
バゼットの言葉を受け、一抹の不満を感じつつも巧とイリヤはクロに伴われてその場からの離脱を決める。
イリヤや巧も思うとことはあったが、それでもこの現状で残っていても仕方ないこともある。
彼女と、乱入してきた白い生き物を信じて逃げるしか、今は道がなかった。
「ク、クロ……」
「喋らないで。私の体まで痛むじゃない」
「お前…」
「あんた乾巧ね。でも話は後よ。まずはここから離れるわ。
ねえ、ちょっとイリヤを貸して」
痛みに耐えているかのように走りながら顔を顰めるクロ。
巧からイリヤを受け取ったクロは、その体を抱え上げ、ルビーに話しかける。
「イリヤの状態は?」
『骨の損傷はまだ完治に時間がかかりそうですが、内臓の方は急ピッチで治癒したため行動する上では支障はありません。
無論骨の治癒が完了するまでは自分で動くことは控えなければなりませんが―――』
「そう、なら少しは大丈夫そうね」
と、巧より先行したクロは、後ろからイリヤの顔が見えない位置まで移動し。
『おや』
「ちょっ!クロ、今はむぐっ―――」
そのまま少し体を前に屈めたと思ったその時、なにやら変な音が巧の耳にも届いた。
何か液体のようなものが絡まる音と、粘性のありそうな液体が混ざるような謎の効果音のようなもの。
一体何の音なのか、若干巧も気にはなった。イリヤの体の傷もあるし。
だが、何故だろうか。それを見てはいけないという直感のような何かが働いた気がして、それをすることは躊躇われた。
数十秒経過した後、クロはイリヤを巧に渡した。
「ちょっとお願い」
「あう…ぁうあぇあ…」
「………」
この白い少女の様子がさっきより何かおかしいような気がするのはきっと気のせいだろう。
そう思うことにした。
何より、今はそれよりも急がねばならないこともある。
「そういや、士郎のやつがまだ戻ってねえぞ」
「え、お兄ちゃんがいるの?!」
「ああ、さっきお前が一緒にいた、あの竜みたいなやつ連れた女追っていってその後をな…」
その彼女を追っていったのが木場だ、ということまで口にすることはできなかった。
ただ、その雰囲気からただならぬ状態にあるということは察してくれたようだ。
だが、今そちらを優先すると重傷のイリヤを連れまわすことになってしまう。
私が探しにいくべきか、とクロが思考したところで。
その耳に剣劇の繰り広げられているかのような音が聞こえた。
猛烈に嫌な予感に襲われたクロは、二人に先行して駆け抜けた。
「あ、おい!」
「お兄ちゃんはすぐ連れて戻るわ!気にしないで!」
嫌な予感。
何故か、クロにはその剣劇の音に、とても聞き覚えがあるような気がしてしまった。
652
:
◆Z9iNYeY9a2
:2013/11/12(火) 00:54:06 ID:WdI9zJMU
えー、一部未登場のキャラがいますが、これで前編とさせてください
残りの話はおそらくもう一度分の延長期間があれば完成させられると思うので、可能であればもうしばらくお待ちいただきたいのですが
もし無理であれば、これに少々手を加えて不明な部分や状態表を書いた後単品で本投下しますが、どうでしょうか…?
653
:
◆fGXsVEUN1A
:2013/11/12(火) 01:07:53 ID:UPLN3ybI
仮投下お疲れ様です
私はもう一度延長しても構わないと思います
654
:
名無しさん
:2013/11/12(火) 01:09:16 ID:UPLN3ybI
鳥が付いてましたね
失礼しました
655
:
名無しさん
:2013/11/12(火) 01:28:59 ID:qChbKtqY
仮投下乙です
自分の意見ですが、仮投下のパートを単品での本投下に賛成です
残りは今後予約が無ければ再予約で良いかと
656
:
名無しさん
:2013/11/12(火) 02:11:30 ID:NfnybcGU
仮投下乙です。お疲れ様でした
状態はさやか関連を除けば一段落してますし、今の分を調整の後投下が望ましいかと考えます
657
:
◆Z9iNYeY9a2
:2013/11/12(火) 20:28:20 ID:JR3whEQA
返答ありがとうございます
それでは今回はこれで一区切りつけて本投下させていただきます
658
:
◆Z9iNYeY9a2
:2013/12/12(木) 00:56:20 ID:Z6Prokww
ちょっと危険な要素が混じっている気がするので一旦こちらに仮投下します
659
:
◆Z9iNYeY9a2
:2013/12/12(木) 00:57:28 ID:Z6Prokww
爆音が鳴り響き、木々がへし折られ倒されていく。
もしこの場に自然の森に住む動物がいたなら、多くのそれが押しつぶされ、あるいは焼かれ、はたまた鳴き声を上げながら走り去ったであろうその光景。
その中心にいたのは、一機の2足歩行のバイクと黒き巨人。
そしてその足元を高速で滑る一人の少女。
頭部に備え付けられたワイヤーナイフを射出するマークネモ。
木々を穿つ威力を持ったそれらの攻撃を、バイクは紙一重で避けていく。
変幻自在の軌道で飛び交うナイフ、それを避けるバイクは一見瞬間移動にしか見えない動きを所どころで繰り出している。
ナイフによる攻撃が当たらないと見るや、その手の太刀を振りかざして木々ごと全てを薙ぎ払った。
バイクはそれを、巨大な脚で地を蹴ることで跳躍。
そのまま太刀を振りぬいた体勢を立て直す前に空中からその腕部に取り付けられた機関銃を放射した。
それを腕で庇ってガードしたとき、その足元、巨人の認識外の辺りから一人の少女が拳銃を放つ。
アリスの、関節を狙った銃撃を受けるネモ。それを受けて、火花を散らしながら一瞬その体を止める。
そこにサイドバッシャーに掴まったポッチャマから放たれた水の柱がネモを推し返した。
体勢を崩しつつも、さしてダメージもなさそうに起き上がるネモ。
ほむらはアリスに問いかける。
「アリス。あなたあれのこと知ってるんでしょ?何か弱点とかないの?」
「……ちょっと気になることがあるわね。どうも様子がおかしいのよ」
「様子がおかしい?」
「以前戦った時に比べて攻撃が大味すぎる。
それに、あの時のこいつなら今の私やアンタの攻撃くらいは避けられるはず。
こいつには未来予知、あるいはそれに近い能力が備わっているという考察がされてたから。
なのに、こいつはあれを避けなかったわ」
「未来予知…ね…」
思い出すのはかつてとあるループで守るべきものを殺した存在。
あの魔法少女もまた予知能力を持っていた。
魔女と化した魔法少女の援護もあったとはいえ、こちらの攻撃を読まれるというのはあまりに厄介な力だったことは記憶に残っている。
そして目の前にいる巨人もまた同じ能力を持っているという。
ほむら自身、攻撃が直線的なものにも感じた。
仮定するとすれば何だろうか。
「あの禍々しい魔力…、かしら?」
「そうね、あれだけは私の情報にもない。あれが何かしらの影響を与えているとすれば。
今ならあるいは…」
倒せるかもしれない。
660
:
◆Z9iNYeY9a2
:2013/12/12(木) 00:59:14 ID:Z6Prokww
そう思ったとき。フラフラと体をよろめかせながらも白髪、黒衣の少女が姿を見せる。
「…何を、やってるんですか…」
ネモの力を操っても殺すことにここまで時間をかけているのに業を煮やしたか。
まだ麻痺が解けていない桜は、木に手をつきとても緩慢な動きをしながら、巨人、マークネモに命じる。
「早く、そいつらを殺しなさい!”ナナリーさん”!!」
「――――!」
桜の言葉に動きを止めるアリス。
「ナナリー…?アンタ、何を言っているの…?」
「あら、知らないんですか?そのロボットみたいなものに乗ってるの、ナナリー・ランペルージさんっていうんですよ?」
「嘘をつくなっ!!そんな、そんなことが…」
あるはずがない。
このナイトメアフレームは、かつて河口湖やシンジュクで戦った正体不明のギアスユーザーのものだ。
それにナナリーが乗っているはずが―――
待て。
そういえば、初めて遭遇した河口湖。あそこに、ナナリーはいた。
いや、そんなことがあるはず――――
「車椅子に乗った女の子で、お兄さんがさっきの放送で名前を呼ばれたってことでとても悲しんでましたよ。
……ああ、そういえば、あなたのその服、ナナリーさんと同じですね」
「…!!」
嘘だと否定する材料が、次々と消えていくのを感じてしまった。
アリスの視界がぶれる。
自分が何を守ろうとしたのかすら分からなくなる。
「しっかりしなさい!」
「…――!」
そんなアリスに対し、ほむらは叱責の言葉をかけて持ち直させる。
「言ったでしょ!ここにいるあなたの友達は、あなたの知ってる彼女じゃない可能性だってあるって!」
「…で、でも、…ナナリーが……」
「…あなたは…。少しそこで休んでなさい!」
と、ほむらはアリスを置いたまま盾に触れる。
カチッ
ナイトメアの挙動、黒き女の息遣い、そしてこちらを見上げるアリス。
その全てが止まる。
動くのは暁美ほむらとサイドバッシャー。そして、
「ポ…、ポチャァ…」
その席の前に必死に掴まっている一匹のポケモンのみ。
そして彼女は、迷うことなくその大量のミサイルをマークネモに、黒き女に向けて発射した。
空中で静止した大量のミサイル。
そして、時は動き始める。
661
:
◆Z9iNYeY9a2
:2013/12/12(木) 01:01:32 ID:Z6Prokww
「!!」
驚愕する一同の前で、ミサイルが爆発していく。
マークネモの腕を、胴を破壊し、頭のブロンズナイフを吹き飛ばしていく。
その光景の中、ふとアリスの脳裏をよぎる過去。
それは、己の妹を助けられなかったあの記憶。
自分が力を求めるようになった、あのきっかけ。
また、あれと同じことを繰り返すのか?
また、大切な人を守れないのか?
私は―――
「ナナリー…、ナナリー!!!」
もはや理屈ではなかった。
気が付いたら体が動いていた。
爆発していくミサイルの中。吹き荒ぶ爆風の中。
友の名を叫びながら走ったアリス。
体を焼く熱を気に留めることもなくその中へと走り。
全身のあちこちをボロボロにしたマークネモに触れた瞬間。
アリスの意識は反転した。
◇
黒き泥に包まれた意識の中。
一人の少女は、そこに座り込んで耳を塞いでいた。
周りから聞こえるのは呪詛の声。
死を願う呪いの言葉。
この世のものとは思えないほどの、負の感情、想い。
ナナリーが受け止めるには、それはあまりにも大きすぎた。
662
:
◆Z9iNYeY9a2
:2013/12/12(木) 01:03:03 ID:Z6Prokww
『ナナリーちゃん、そろそろ苦しくなってきませんか?これを全部受け入れてしまえば、あなたは楽になれるんですよ?』
「………」
ナナリーには見えない、黒き少女が囁くように話しかける。
”これ”が自ら彼女を侵食することはない。
ネモがその身を張って泥の進行を受け止めているのだから。
しかし、ナナリーがそれを受け入れてしまった時はその限りではない。
「……桜さん、どうしてあなたは、こんなものを受け止めきることができるんですか…?」
ふと、桜の言葉を心で精一杯拒絶しつつにナナリーはそう問いかけた。
その呪いの重さは、ナナリーが受け止めれば押しつぶされかねないほどの膨大なもの。
この世のものとは思えないほどの呪詛にまみれていた。
自分自身が、人間に絶望しかねないほどの。
では、それを受け止めて平然としている目の前の存在は一体何者なのか。
『うふふ、それはね、ナナリーちゃん。
私自身のいた世界が、こんなものばっかりだったからですよ』
『私が間桐って名前になったのは小さい頃の話です。昔は、遠坂って家にいました。
でも、私が次女だったからって、お父様は養子に出して、そこが間桐って家でした』
『魔術師の跡取りがいなかった間桐家に送り出され、私はどうなったと思いますか?
来る日も来る日も、体を間桐の魔術に馴染ませる訓練を受ける日々』
そこまで語った桜の声色に、何か強い感情が篭っているのを感じたナナリー。
しかしそれでも、今の彼女にはその言葉に耳を背けることはできなかった。
言葉の中に、桜の本当の想いが篭っているような、そんな気がしたから。
『ねえナナリーちゃん、私がどんな訓練されてきたか、分かりますか?
間桐の魔術は、体に蟲を馴染ませることから始まるんです。
来る日も来る日も、沢山の蟲が放り込まれた蔵の中で、体を中から外から、全部弄り回されるんですよ?
分かりますか?気持ち悪い蟲に処女も奪われて体中ボロボロにされて、それでも死ぬことすら許されずに過ごしていく日々がどんなに辛いか』
『人間扱いすらされず、11年という年月をただただ道具として扱われてきた。それでも私には希望がありました。
だって、私には姉さんがいるって聞かされてたから』
それは、己の全てを吐露するかのように。
悪意すらも己の内に抱え込めるほどの、彼女の心の闇を明かす言葉であった。
『そうなら、いつか姉さんが助けにきてくれると信じてました。
もしかしたら、私をこんな闇の中から救い出してくれるんじゃないかって。
でも、来てくれなかった。
私のことなんか知らずに、いつも綺麗なままで笑ってて、私のいた本当の家で、幸せに暮らしてた。
そして、気が付いたらこの場で頭を割られて死んでたんですよ?』
『こんなになった私のことを気にした様子もなく!まるで虫けらのように!
私よりすごくて頭も良くて、大事な人まで持っていこうとしておいて!』
その叫びの中に、周囲の悪意が波立ったような気配を、ナナリーは感じた。
ナナリーへ向けたものでも、その姉自身へ向けたものでもない、彼女自身のやり場のない感情そのものが言葉の中にあった。
663
:
◆Z9iNYeY9a2
:2013/12/12(木) 01:04:14 ID:Z6Prokww
『あの金髪の人も、所詮姉さんの偽者でしかなかったんですよ。いくら似ていても、姉さんには絶対に成り得ない。もう、姉さんはいないんですから』
「………」
『姉さんの死体を見た時から、もう私はおかしくなってたのかもしれませんね。
あのベルトを使ったときでも、教会や森で人を殺したときでもなく』
『そして、大切な人さえも、この手で殺して』
『ナナリーちゃん、分かりますか?この気持ちが。この
己を助けてくれるかもしれない存在を永遠に失った悲しみ。
人として扱われることもなく、目的のための道具のように扱われる日々。
「―――桜さん」
それによって、受け止めきることができてしまった膨大な悪意。
そして暴走。
「桜さんがどれだけ辛い思いを持って生きてきたか、私には測ることはできません…」
親に捨てられ、全てを失くし。
まるで道具のように扱われ。
そんな彼女の想いが。なまじナナリーには理解できてしまったから。
「私も、同じです。お母様は殺され、体の自由も失って、お父様には戦争のための道具として追い出されて。
それでもどうにか手に入れた平穏すらも、ただ一人残ったお兄様すらも」
だからこそ。
「でも、桜さん。それでも、あなたにはまだ、残っているものがあるはずです。
あなたを想い、心から大切に思ってくれる人が。
目を、覚ましてください…!」
その絶望全てを肯定するわけにはいかなかった。
◇
「う…ぅ…、ここ、は…」
そこは真っ暗な空間だった。
何も見えず、何もなく。
ただ微かに聞こえてくる風のような音が、まるで呪詛の響きにも聞こえる、そんな空間。
周囲を見回すアリス。
しかし何も見えない。何も触れられるものがない。
人の死を望むその呪詛の中。
それが、アリスにはかつて妹を失ったあの戦場での絶望の声にも聞こえて。
「私は…、また大切なものを…、守ることもできないの…?」
膝を折るアリス。
もう二度と大切なものを失くさないように誓ったのに。
そのためにこの人の手に余る強大な力まで手に入れたというのに。
またあの時と同じことを繰り返すというのか。
664
:
◆Z9iNYeY9a2
:2013/12/12(木) 01:06:00 ID:Z6Prokww
――お姉ちゃん
「私は…、また守れなかった…!また駄目だったんだ…!」
気が付けばその瞳からは涙が溢れ出していた。
大切なものを失ったあの時のように。
こんな闇の中、激しい炎の中から救い出すことのできなかったナナリーを。
――お姉ちゃんはここで終わるの?
ふとそんな妹の声が耳に届いた。
いるはずのない妹の声。それが聞こえた時点で、もう自分は死んだのだと思い込んでいたアリス。
「もう…、私は……」
――まだ間に合うって知ったら、お姉ちゃんはどうする?ナナリーを助けるための力を求める?
まだ、ナナリーを助けられるなら?
もちろん求めるだろう。もっと力があれば、私にナナリーを守ることができたはずなのだから―――
「まだ間に合うさ」
「―――!」
と、それまでうっすらとしか聞こえてこなかった妹の声が、急に鮮明になってアリスの耳に届いた。
振り向いたアリスの目の前に立っていたのは、かつて守れなかった妹。
しかし、その姿は次の瞬間糸を解くように崩れ落ち、小さな泥人形のような物体へと変化した。
その頭部とも言える部位には、鳥の羽ばたくような紋様だけが描かれた、小さな人形。
「アンタは…」
「時間がない。お前が何者かは今問いている暇もない。しかしお前はナナリーの親友だ。
だから単刀直入に言う。この中からナナリーを救い出せ。これは、お前にしかできないことだ」
◇
まだ彼女が”間桐桜”であったとナナリーが思ったあの頃。
正確に言うなら、真理やタケシ達とも共に行動していた時の話。
ネモの警告もあって、ナナリーは桜の異常に気付いていた。
しかし、それでもナナリーは桜を拒絶しようとは、見捨てようとは思わなかった。
何故か。
後付となるが先に聞いたように彼女から自分に似たものがあると感じた。それも否定はしない。
しかしそれ以上に、ナナリーは桜との情報交換の中で気付いていたことがあった。
―――衛宮…、士郎…。私の先輩です。
―――世界で一番大切な、私の大切な人。
その名前を呟く彼女の声は、とても優しく心のこもったものだった。
ネモの言う通り、警戒は必要だっただろう。
確かに彼女の中には危険な何かが巣食っていた。それは紛れもない事実だったから。
しかし、だからと言って見捨てようとは、突き放していこうとは思わなかった。
彼女は、優しさというものを知っているはずなのだから。
665
:
◆Z9iNYeY9a2
:2013/12/12(木) 01:06:46 ID:Z6Prokww
「あなたのいた世界は辛いことばかりだったかもしれません。でも、それだけではなかったはずです。
辛く苦しい世界の中にも、光はあったはずです」
いつ命の危機に晒されるか分からない世界で、自分の傍にいてくれた兄のように。
そしてその兄を失った時にも、傍にいてくれた親友のように。
だからこそ、自分も優しい世界を信じられたのだ。
「…桜さん、もう止めましょう。あなたの大切に思っている人は、あなたがこんなことをするなんて望んでいないはずです」
『ふふふ……、あっはははははははははははは!!!
先輩は、私がどんな風になっても愛してくれるって、そう言いました!私がどんなになっても、私のことを受け入れてくれるって!』
「なぜ、そう言い切れるのですか?」
『だって、先輩が言ってくれたんですもの!いつだって私だけの、桜の味方をしてくれるって!
世界の全てを敵に回しても、私の味方でいてくれるって!』
「それは違います!
あなたの大切な人がどんな人なのかは存じません、でもその人はあなたが人殺しになることを望むような人ではないはずです!」
どんな風になっても愛する人を守ることと、その人がどのようになっても構わないことは違う。
ナナリー自身、同じ思いをしたことが、させたことがあるから分かる。
実の兄がゼロとして人を殺していると知ったときの悲しみ。
そして、彼が自分に言った、戦場に出てはいけないという言葉の意味。
その思いは、きっと彼女を大切に思っている彼も同じはずだ。
きっとその彼も、間桐桜という少女の幸福を望んでいるはずなのだから。
「あなたにまだ、大切な人を思う気持ちが残っているのなら、もうこんなことは止めましょう…。
あなたを止めようとしたあの人も、そんなことは望んでいないはずです」
『そう、そうです。私はあの人を殺してしまったんです。だからもう、戻れないんですよ。
間桐桜は、戻ることができない』
「桜さんは…?」
その言葉に引っかかりを覚えたナナリー。
大きくなる違和感。
今、私が話しているこれは、一体何なのだ―――?
「貴女は…間桐桜さんじゃありませんね…?誰なんですか?」
『ええ、”私”は間桐桜の器を得たこの悪意に過ぎません。
だけど、この絶望も感情も、全て彼女自身のものであることには代わりはありません』
『そうですね。彼女は己の死を望んでいます。他ならぬその大切な人の手にかかることで。
もし止めたいと思うのなら、私を受け入れなさい』
それの誘いの言葉は止まらない。
そう、ここから抜け出すには彼女を受け入れるしかない。
しかしネモを乗っ取られた様子から考えると、きっとこれを受け入れれば彼女の僕として多くの人を殺すことになるのは目に見えている。
『ほら、また一人この中に入ってきました。
あなたと同じくらいの歳の、同じ制服を着た子です』
「え…?」
自分と同じ服を着た、同じくらいの歳の子…?
確信はできないが、一人だけ心当たりがある人物が脳裏をよぎる。
「アリス…ちゃん…?」
『ふふふふふ、どうしますか、ナナリーさん。ずっとここに篭って友達を見捨てますか?それとも友達を、桜を助けるために私を受け入れますか?』
強い迷い。
2択のうちそのどちらもが、何かを失う選択。
「私は…」
しかし、迷っている時間がないこともナナリーには一目瞭然だった。
「私は―――!」
666
:
◆Z9iNYeY9a2
:2013/12/12(木) 01:07:24 ID:Z6Prokww
◇
「貴様は…、まさか魔導器、ネモか…!」
「ナナリーを助けたいというなら、私に力を貸せ。
お前の手を借りることさえできれば、ここからナナリーを、お前の友を救い出すことができる」
白い人形はそう、アリスへと問いかけた。
一見すればまるで悪魔の囁きのようにも聞こえるが、しかし人形の静かな口調の中にも大きな焦りがあるのをアリスは感じ取った。
「ふざけるな!貴様のせいでナナリーは…!」
「私はあくまでもナナリーの意志に、想いに従って彼女を守っていただけだ。
私がいなければ、ナナリーはこの泥に侵食されて、体も心も犯しつくされて死んでいただろう」
「っ…」
「そして、お前の元にこうして来ている今、ナナリーの守りは緩まっている。
なぜそうまでしてこんなところに来てお前にこうやって懇願しているか分かるか?」
そう、ナナリーを守るべき魔導器がこのようなところで自分と話していること自体、本来ならばおかしい。
ナナリーの守りをおろそかにしてまで、何故自分との会話などに興じているのか。
「お前が、ナナリーの友だからだ」
「ナナリーがこの中にいると聞いたお前は、あの攻撃の中ナナリーの元へと駆け寄った。
そのお前のナナリーを想う気持ちに、私はかけようと思ったのだ」
「私が…?」
「そうだとも。私に手を貸し、ナナリーを救いたいと願うのなら決断しろ。
だがやるというなら急げ!もう時間がない!」
そう急かすネモの声は、とても急いでいるかのようだった。
まるで今にも切れ掛かっている命綱を握っているかのような。
◇
ネモはナナリーへと侵食する泥を抑えることに全ての力を使っていた。
それゆえに、ナナリーへと語りかける存在に気付くのが遅れてしまった。
気付いたのはアリスがここへと侵入してくる僅か前だった。
だからこそ、その存在に手を打つには遅すぎたのだ。
もし、ナナリーが己の親友がこのようなところへと取り込まれたと知ったら一体どうするだろうか。
心優しいナナリーが、この悪意を受け入れるとは到底思えない。
ならば、きっと己の命を差し出してアリスを救おうとするだろう。
それはネモとしては何があっても避けなければならないことだった。
だからこそ、ナナリーがアリスの存在に気付く前にこちらで手を撃たなければいけないと判断した上で接触したのだ。
もしここでネモに誤算があったとすれば。
ナナリーが万一その事実に気付いても、決断から結果を出すまでの間にしばらく時間があると踏んだことだろう。
667
:
◆Z9iNYeY9a2
:2013/12/12(木) 01:09:02 ID:Z6Prokww
だが、それも無理からぬこと。
ネモ自身知らされていなかったことなのだから。
ナナリーに眠る本当の力。
それは、未来視すらも霞むほどの強大な力。
魔王・ゼロの持つそれと同質の能力。
森羅万象全てを無へと帰すギアス、ザ・ゼロ。
それが、親友を助けたいという思いに反応し、この間桐桜の中で発動した。
◇
「?!ナナリー!」
「え…、何…?」
ネモの様子がおかしくなると共に、周囲の様子が変わりつつあった。
あれほど満ち溢れていた悪意が、少しずつその量を減らしはじめたのだ。
しかし、何が起こっているのかはネモすらも把握できている様子ではない。
いや、そのネモすらも少しずつ体の形を崩しつつある。
「契約が…、…強制解除だと…?そうか…、この力…、このギアスがナナリーの…。
急げ!想定外の事態が起こった!もう時間がない!」
「―――!…私は……」
しかし、急かされて尚もアリスの迷いは晴れなかった。
アリスの中にあった一つの恐怖。
ナナリーを守りたいという思いの根源。
それが、彼女を立ち上がらせることを躊躇わせていた。
「私は…、怖いのよ…。
また大切な人を守れないかもしれない…。それが…」
「…ナナリーは、この悪意の中心という、おそらくは最も危険な場所にいる。
それでも今まで無事でいられたのは私が守っていたからだ。もし私がいなくなれば、ナナリーにこの悪意を受け止める術は無い」
ネモはその手の形すらも取ることができていない短い腕をアリスへと伸ばす。
「そしてナナリーもそのことは分かっているだろう。
それでも、ナナリーは私の守りを捨てた。何故だか分かるか?」
それはナナリーと繋がっていたからこそ分かる感情。
この悪意の中でも、ナナリーの暖かい思いだけははっきりと認識できたネモだからこそ、分かるものだった。
「お前を助けるためだ。
己の命と友の命を天秤にかけ、選んだのがお前だ、アリス」
「…!」
「このまま、お前の命を救ったナナリーを見捨てるか?!
妹を救えなかった後悔の念に怯えるか?!」
「………」
ネモの、その弱さを責め立てるかのような言葉。
そう、アリスにはもう分かっていた。自分には選択肢などないということを。
「妖言で人を惑わすなんて、まさしく魔女ね。
だけど、もう私には迷う資格なんてない――」
ナナリーを守ると誓ったはずの私が、ナナリーの命と引き換えに助かろうとしている。
そんなこと、許されるはずがない。
ナナリーに守られる私ではない、ナナリーを守ることができる私に変わらなければいけなかったのだ。
ただの友達ではない。
ナイトメア・オブ・ナナリー
ナナリー姫の騎士に。
「結ぶわネモ、その契約―――」
668
:
◆Z9iNYeY9a2
:2013/12/12(木) 01:10:06 ID:Z6Prokww
◇
その泥の中の中心地点。
周囲を蠢いていた膨大な魔力がその総量を急激に減らしつつあった。
『ナナリーさん…!あなた一体何を…!?』
驚く彼女に対し、ナナリーは答えることはできない。
一体何が起きたのか。
ナナリー自身にすらも、詳しいことは把握できていないのだから。
しかしそれでも分かることはあった。
自分とネモの中に僅かに残っていた繋がりが消えようとしている。
そして、ここにあった大量の恨みも、憎しみも、絶望も、その全てが無へと帰ろうとしている。
これを自分がやっている、というその事実。それだけは何となく認識できた。
本来ならば戸惑いが先にきたであろうナナリーだが、今はそうなることはなかった。
「桜さんの背負っているこの絶望と憎しみ。
背負える限り、私が受け止めます。もうこんなものに飲み込まれるのは、私で最後になるように」
『…っ!ここにあるのは人類が生み出した全ての悪意…、例えナナリーさんであっても、消し尽くせるものでは―――』
「ええ、ですから私が、受け止めきれる限りの呪いを受け止めます」
この能力を持ってしてどれだけ消すことができるかは分からないだろう。
だが、分かっていることはある。
それが成功するにしても失敗するにしても、ナナリーが生きられる可能性が低いということ。
『それじゃあ、あなたはここで死ぬということを選ぶんですね?
間桐桜を
「それは、違います。
私はここで死ぬかもしれません。でも、アリスさんがいます。真理さんやタケシさんも、そしてあなたの思っている人も。
彼らがきっと桜さんを助けるでしょう。私はそう信じてます」
『結局他人にすがるのですか?』
「ええ、皆は、世界は、あなたが知っているよりももっと優しいものだって、私は信じていますから」
ナナリーの、閉じられた目でありながら見据えられたその視線は真っ直ぐと、ゆるぎないものだった。
それは、心から皆の優しさを信じている、ナナリーの言葉だった。
『いいでしょう。ナナリーさんとはここでお別れですが、あなたの言うそれが迷い事や絵空事ではなく本当のことであるかどうか、見せてもらいましょう。
ナナリーさん、さようなら』
その言葉を最後に、ナナリーの感覚からそのドス黒い、桜を形取った何かは消滅していった。
残されたナナリーの体に、消滅しきれない泥が迫り。
黒い悪意の集合体がナナリーの体へと被さった。
669
:
◆Z9iNYeY9a2
:2013/12/12(木) 01:10:37 ID:Z6Prokww
呪いの声。
殺意の声。
死を願う呪詛。
様々なものが彼女へと入り込む。
あるいはこれを受け入れることができれば、例え己を見失うことになっただろうがナナリーに命はあったかもしれない。
しかし、ナナリーは優しい人間だった。
こんなものを受け入れ世界を憎むくらいならば死んだ方がいいと、そう思ってしまうほどに。
それによって生まれる斥力は、ナナリーの心を殺し、精神を殺し。
そしてその姿を溶かしつつあった。
(ごめんなさい、お兄様…、ネモ…、…アリスちゃん)
あの影に対してああ言ったのはせめてもの、ナナリーなりの強がりだった。
優しい世界を信じるナナリーは、だからこそ世界が優しさだけではないことも知っている。
友達を殺された人間が、殺した相手を恨まずにいられるかと言われれば自信はない。
結局は友達を助けるためだけに、自分の命を投げ出したに過ぎなかったのだ。
でも、後悔はしていない。
こんな命でも、友達を助けるくらいはできたのだから。
もしかしたら会うことになったかもしれない、兄を殺した何者かを顔も知らないまま憎むことなく死ねるのだから。
(ああ、でもやっぱり―――)
一人で死んでいくのは、悲しい。
同じ場所にいながら、それでもこんなに遠い。
自分がどうにかできるほどの近くにいながら、それでもその声を聞くこともできない、そんな距離。
アリスちゃん。
彼女との出会いが、走馬灯のように脳裏をよぎる。
苛められていた自分を助けてくれたこと。
学園の屋上でたい焼きをくれたこと。
生徒会で色々な服を、自分と一緒にさせられたこと。
ホテルジャックで巻き込み怪我をさせてしまったこと。
(――私、また巻き込んでしまったのね…、アリスちゃん)
友達といいつつ、いつも迷惑をかけてばかりだった。
もっと私がちゃんとできていれば、こんなことにもならなかっただろうに。
(せめて最後にもう一回、あなたに会って謝りたかった―――)
アリス、初めてできた、私の親友―――
670
:
◆Z9iNYeY9a2
:2013/12/12(木) 01:11:01 ID:Z6Prokww
―――――ナナリィィィィィ!!!!
◇
届け。
届け。
ナナリーはすぐそこにいる。
自分をも覆おうと迫るこの泥が鬱陶しい。
どこだ、ナナリー。
すぐ近くに存在を感じられるのに、どこにいるのか見えない。
体よ、もっと速く、もっと速く動け。
せめてナナリーを見つけ出せるくらいに速く。
速くだ。もっと速く。
こんな泥の邪魔をものともしない速度を。
ナナリーに手を伸ばせる速さを。
ほんの刹那の時間が、とてつもなく長く感じる。
だがその刹那の時間ですらも、ナナリーの命の鼓動が弱まっている、とネモは言う。
急げ。急げ――――
「ナナリィィィィィ!!!!」
思わず叫んだその時、
真っ黒な空間に、ほんの僅かに身動ぎする存在が見えた。
(―――そこか!)
「ナナリー!手を!」
ナナリーの元まであるその距離を、一瞬で詰めると同時。
弱弱しく伸ばされたその手を掴み。
「―――ザ・ ゴッドスピード!!!」
その体を抱きかかえた瞬間、己の手にした新たなギアスを発動させた。
671
:
◆Z9iNYeY9a2
:2013/12/12(木) 01:11:43 ID:Z6Prokww
◇
体から魔力が消滅していくのが分かった。
外側からではない、内側から。
満たされてこそいなかったとはいえ、人が持つには過ぎたといえるほどの容量の魔力が。
嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
このまま空っぽになってしまえば、私はもう誰も殺すことができない。
悪者になることができない。
そうなってしまえば、”彼”に殺してもらえない。
嫌だ。
それだけは嫌だ。
藤村先生を殺すような悪い子は、正義の味方によって滅ぼされなければいけないのに。
(――嫌…)
まだ死ねない。
まだ死にたくない。
ここから早く離れないと。
私が、消えちゃう――――
◇
「?!」
収まりつつある泥を確認したほむらが、黒い女の元に駆け寄った瞬間のこと。
どこからともなく、ソウルジェムが強く反応する何かの存在を捉えた。
魔力反応に驚くほむらの目の前で。
その一瞬の隙とでもいう間に。
黒き少女はいきなり周囲に蠢く泥の中に溶け込んだと思うと、魔力反応を完全に消滅させた。
魔法のような何かを使った反応自体はあることから、転移のようなものを使ったのだろうか。
「…何が起きたの?」
あれほど溢れそうだった魔力反応は既にここにはない。周囲に僅かに黒い魔力の残滓を残すのみだ。
脅威は去った、と考えてもいいのだろうか。
だとすればひとまず安心だろうか。
いや、
「アリス?」
彼女がいない。
まさか、あの中に飲まれて消滅したとでもいうのだろうか。
「ポチャ…」
「あなたも探すのを手伝って。もし腕の一本、髪の一房でも、見つけたら言いなさい。
いいわね?」
◇
672
:
◆Z9iNYeY9a2
:2013/12/12(木) 01:12:40 ID:Z6Prokww
ここがどこなのか、桜には判別できなかった。
自分の中を丸ごとごっそり消し去られるあの恐怖から逃げたくて、ただ夢中で願い、気がついたらこんな場所にいた。
間桐桜の中に埋め込まれた願望器。
曲りなりにも体の中に残っていた小聖杯としての役割が、彼女の強い想いに反応してその現象を引き起こし、その体を転移魔術で移動させたのだ。
しかしそれが、皮肉にも桜にあった魔力の多くを使い尽くしてしまい、結果的に彼女の望みに反するものになってしまったのだが。
体の求める強い飢え、そして全身に残った痺れが彼女の身動きを遅らせる。
デルタギア、ナナリー、魔力を失い。
さらに体に残ったダメージはその意識を遠のかせていた。
「ナナリーさん……、もういないのですね…」
彼女とはもっと仲良くなれるんじゃないかという思いもあった。
一人きりは寂しいから。
失ったものの代わりにはならないだろうが、それでもそれを埋める新しいものを求めたのだ。
だが、もういない。
今の自分に残ったのは、ほとんど魔力の残ってない空の器。
(おなかが…空きました…)
一人っきりになった虚無感、そして疲労を残したまま動き続けた影響による肉体の限界、そして強い飢え。
それらに襲われた桜は、今自分がどこにいるのかを把握することもなく、静かに意識を闇へと落とした。
【???/一日目 昼】
【間桐桜@Fate/stay night】
[状態]:意識無し、黒化(大)、『デモンズスレート』の影響による凶暴化状態、喪失感と歓喜、強い饑餓
ダメージ(頭部に集中、手当済み)(右腕欠損・止血)、魔力消耗(特大)、ジョーイさんの制服(ボロボロ)、麻痺状態
[装備]:コルト ポリスポジティブ(6/6)@DEATH NOTE(漫画)、黒い魔力のドレス
[道具]:基本支給品×2、呪術式探知機(バッテリー残量5割以上)、自分の右腕
[思考・状況]
基本:“悪い人”になる
0:いずれ先輩に会いたい
1:“悪い人”になるため他の参加者を殺す
2:先輩(衛宮士郎)に会ったら“悪い人”として先輩に殺される
3:くうくうおなかがすきました…
[備考]
※『デモンズスレート』の影響で、精神の平衡を失っています
※学園に居た人間と出来事は既に頭の隅に追いやられています。平静な時に顔を見れば思い出すかも?
※ルヴィアの名前を把握してません
※アンリマユと同調し、黒化が進行しました。魔力が補充されていくごとにさらに黒化も進行していくでしょう。
※精神の根幹は一旦安定したため、泥が漏れ出すことはしばらくはありません。黒い影も自在に出すことはできないと思われます。
※聖杯としての力を使い、会場のどこかへ転移しました。それにより何処へ着いたかは本人は今のところ把握できていません
673
:
◆Z9iNYeY9a2
:2013/12/12(木) 01:13:54 ID:Z6Prokww
「ナナリー!ナナリー!!」
アリスの発現した新たなギアスは、ナナリーの体を覆っていた泥を弾き飛ばし。
それを確認したアリスは即座にあなぬけのヒモを使用することで、あの空間からの脱出に成功した。
しかし。
ナナリーの体を覆う黒い泥を払いのける。
本来なら手で触れられるようなものではなかったが、今のアリスはそれどころではなかった。
「鼓動が…、ナナリー!」
「ア…リス…ちゃん…」
ナナリーの体が死に近づいているのが分かる。
体には傷一つないというのに。
彼女の体に、精神にかけられた呪いによる強い負荷が、その生命力を削り取っていたのだ。
「また、間に合わなかったの…!?」
「アリスちゃん…、大丈夫…?」
「私は大丈夫だ!そんなことよりナナリーが…」
「そう…、良かった…」
それでもなお、ナナリーは親友のことだけを思い、考えている。
何故こんな優しい子が死ななければならないのか。
「私ね…、怖かった…。一人であんな真っ黒な場所にいて、…そこで一人で死んでいくって思ったら…」
「大丈夫だ!ナナリーはまだ死なない!私が、絶対に―――。
ネモ!おい、ネモ!いるんだろう!お前なら、ナナリーを助けられるんじゃないのか!?」
魔導器の名前を呼ぶアリス。しかし返答はどこからも得られない。
全てを自分に任せた、ということなのだろうが、それにしてもあまりに無責任ではないか。
いや、これは、自分の選択に対するけじめをつけろ、とでもいうことなのだろうか。
「ナナリー…!私はまた……」
また、守れなかったのか。
また、目の前で大切なものを失ってしまうというのか。
私は、何のために力を手に入れたというのだろう。
「アリス…ちゃん…、ごめんね…、あなたのこと、傷つけちゃって……」
「………!―いや、いいの、いいのよナナリー…。
私は、ナナリーの騎士だから。辛いことも苦しいことも、全部受け入れてあげられる…」
それは、不意に口から出た、己を取り繕うかのような言葉。
己の悲しみをナナリーに悟られ、ナナリー自身への重荷にしてはいけない。
でも、ナナリーは鋭い。
そんな嘘に、気付かれなかったかどうかと言われれば厳しい。
だがナナリーはその嘘を気付いてか気付かずか、その顔に僅かに笑みを浮かべて、次の言葉を続けた。
「そう…アリスちゃんは、私の騎士…なのね?
それじゃあ…、最後に、お願いがあるの…」
「…何……?」
「桜さんを、助けてあげて…。…恨まないであげて……。
あの人も…、苦しんでいるから…。
アリスちゃんは、アリスちゃんのままでいて…」
「うん…分かった…」
ナナリーが伸ばした手を握りながら、アリスはそう答えた。
それが本当にアリスにできるかどうかなど、今は考えることはできなかった。
「それでね…、桜さんにも見せてあげて欲しいの…。
もっと優しい、悲しみや絶望に負けないくらいに、喜びに満ちた世界を……」
「ナナリーは…優しいね」
ナナリーのその言葉に、強く握り締めたままの手を支え、頷きながらそう答えた。
すると、ナナリーの残った左手がアリスの顔に優しく触れた。
674
:
◆Z9iNYeY9a2
:2013/12/12(木) 01:14:52 ID:Z6Prokww
「ナナリー…?」
「―――アリスちゃん、綺麗な顔…」
その言葉にハッとしてアリスはナナリーの顔を見る。
すると、閉じられていたはずの目がうっすらとだが開いているようにも見えた。
「ナナリー、もしかして目が―――ナナリー…?」
しかし、その言葉を最後にナナリーの伸ばされた手は地面に落ち。
その開きかけた瞳も、心臓の鼓動も、二度と動くことはなかった。
【ナナリー・ランペルージ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー 死亡】
◇
「悪いわね。こんなことにまで付き合せちゃって」
「それで、気は済んだの?」
ほむらがアリスを見つけるのに、そう時間はかからなかった。
森の中を走っていたときに唐突に聞こえたポッチャマの大きな鳴き声。
その先に行くと、いたのは一人の少女の骸を抱えたまま歩いてくるアリスがいた。
何があったのかは、その真っ赤に腫らした目を見れば想像はつく。
その後は、その亡骸を埋葬したいというアリスに付き合い、一通りのことを終わらせて今に至っている。
ナナリーが埋められた地面の前で、アリスはふと呟く。
「私は、ナナリーに昔の自分の罪を重ねていた。それで、また同じことを繰り返しそうになった時、決断することができなかった。
でも、私が守らなきゃいけないのは守れなかった妹の幻影じゃなくて、ナナリー自身だって気づいたの」
「それで、その守るべきだったものを守ることができなかったあなたはどうするのかしら、アリス?
そういえばアカギが言っていたわね。優勝すれば、脱落した参加者の蘇生をすることも可能だって」
これは聞いておかなければならないことだろう。
もしそれを望むのであれば、今から目の前の少女は敵となる。
「確かに、ナナリーが死んだ今、私には守るものは何も無いものね」
「……」
親友の埋葬まで頼んでおいてここですぐさま行動を起こすとは考えづらいが、念のためにいつでも時間を止められるように構えておく。
しかし、その警戒もやはり杞憂に終わることになったが。
「でも、ナナリーの言っていた、あの子が守りたかったものはまだ残っている」
「それがその子を守ることに繋がる、とでも言うのかしら?詭弁ね」
いくらその子が守ろうとしたものを守ったとしても、守ろうとした存在はもういない。
アカギのいう願いとやらに縋って生きるのも愚かではあるが、だからと言ってそのような綺麗事、自己満足に生きるのもまた、ほむらには受け入れ難かった。
「その通りね。私が妹の幻影にナナリーを重ねていたように、ナナリーの願いにナナリーを重ねるのも同じことかもしれない」
「でも、私はナナリーの騎士だから」
「…騎士?」
ふとアリスの口にした単語に首を傾げるほむら。
675
:
◆Z9iNYeY9a2
:2013/12/12(木) 01:16:12 ID:Z6Prokww
「うん、ナナリーの騎士。ナナリーのために生きて、あの子を、あの子が守りたかったものを守っていく、そんな存在。
私はそうあることに決めた。
だから、ナナリーが望んだのなら私は殺し合いには乗れない」
「ナナリーって子のために、見返りも求めずに戦うっていうのかしら?あなた自身の願いを度外視してでも」
「そういうことに、なるのかしらね」
「その選択が、決してあなた自身を救うことがなくても?」
「ナナリーを救えなかった以上、ナナリーの望みくらいは守っていきたいもの」
己の感情、己の望み、欲望よりもナナリーの思いを汲んで生きようというらしい。それが、彼女の言う騎士だと。
どこかの誰かさんみたいだとも一瞬思った。
その問いかけが、本当にアリスに向けられたものだったのかどうかは自分でも分かっていない。
それでも、何故か分からないが聞いておかなければならない気がした。
「ナナリーが救えなかった現実はちゃんと受け止めていかないといけないんだと思う」
「そう…」
その言葉に一呼吸置いて、少し考えた後それとなく呟く。
「それなら、せいぜい足元を掬われないようにね。
守りたいものを失って、そのまま理想に、その矛盾に溺れることがないように」
「むっ…」
そんな前例を知っているからこその、念のための警告だった。
一体いくつの世界で、あの青い魔法少女がそうやって自分の理想に殺されていったのかなどもう思い出せない。
と、そんなことを思っていたが、少し予想外の方に事が運んでいく。
「ねえ、前から思ってたんだけどさ。その喋り方どうにかならないの?
いちいち他の人に突っかかってるような話し方ばっかりしてるように見えるんだけど」
「…そういう性質なのよ。気に障ったなら謝るわ」
「ちょっと今のはカチンときたのよね」
…ちょっと厄介なことになってしまったみたいだ。
口は災いの元とでもいうことだろうか。これが元で彼女からの信頼が崩れるのは問題である。
「今の言葉は取り消すわ。本当にごめんなさい。
…そうね、気がすまないっていうなら、謝罪の意味で何か一つくらい言うこと聞いてあげるわ」
「何でもいいの?」
「私にできることならね」
「そう。それじゃあさ」
振り向いたアリスは言った。
「私の友達になってよ」
◇
正直カチンときたのは本当だった。
自分のことだけならまだしも、まるでナナリーのことまで言われているような、そんな気がして。
いっそ一発引っ叩いてやろうかとも思ったが、ふと思い返せばほむらは割とずっとこんな調子だったような気がしてきた。
初対面の時も上から目線っぽくてあんまりいい印象はなかったし。
ポッチャマに銃口を向けたときもやりすぎではないかと思ったし。
海堂直也の時も、もっと言いようというものもあっただろうと思うし。
ならいっそ、自分が手綱を取るのではなく、そういった部分を矯正してやってはどうだろう、などと思い付いた。
まあ若干意趣返しという意味もあった。何というか、友達が少なそうな気がしたし。
なのに。
その時のほむらの顔は、しばらくは忘れられそうになかった。
ずっと無表情だったはずの顔が、面白いようにキョトンとしていて。
そんな顔もできるんだと思ってしまった。
数秒の沈黙の後慌てるように咳込んで無表情に戻したものの、何というか、その表情自体も妙に意識しているように見えてきて。
この状況、心境なのに、思わず笑いそうになってしまった。
「…………」
676
:
◆Z9iNYeY9a2
:2013/12/12(木) 01:17:58 ID:Z6Prokww
「何でも言うこと聞くって言わなかった?」
「……。馴れ合いならお断りよ」
何か強い警戒心のようなものが見える気がする。
というか警戒されている気がする。
何だこの反応。
「というか、どうしてそこで友達なのよ?」
「だって、あんたそんなのじゃ世渡りとか人付き合いとか苦労しそうだし。
だから私が直してあげるって言ってるのよ」
「大きなお世話よ」
そのまままるで顔を見られることを避けるかのように後ろを向いて歩き出すほむら。
「大体何?そのナナリーって子はあなたの親友だったんじゃないの?」
「どうしてあんたとナナリーの間に関係ができるのよ?」
「質問を質問で返さないで」
「いつだったか私があんたに言った言葉ね」
「………」
言い合うことを諦めたのか、そっぽを向いて傍に停めてあったサイドバッシャーに近寄る。
「そんなことより、そろそろ放送も近いわ。次は何処に向かうか、終わるまでにちゃんと考えておきなさい」
まるで気を取り直すかのようにそう言って、ほむらは支給品に入っていた食料に口をつけた。
(ナナリー、ごめんね…。あなたを守ってあげられなくて…)
視線の先、即席の粗末な墓に埋められた愛しき友。
涙はもう流さない。流せない。それは彼女がその生を終えたとき流し尽くした。
今の私は、ナナリーの騎士。彼女のためにこの身を捧げた。
それは、ナナリーが死んだ今とて変わらない。
ただ、一つだけほむらには言っていない、自分の望みがあった。
アカギの言っていた、生き残れば如何なる願いも叶えるというあの言葉。
もし、あれが真実であるなら、ここで死んでしまったナナリーを生き返らせることも可能なのではないか、と。
だからと言って殺し合いに乗るわけはない。
それをしてしまえば、もう私はナナリーの騎士ではいられなくなる。
ならばどうするべきか。
その力をアカギから奪い、ナナリーを生き返らせるのだ。
この殺し合いから抜け出し、アカギの元に辿り着き、そしてその奇跡とやらを起こすのに必要な力をどうにかこの手にすることができれば。
ナナリーは怒るだろうか。こんなことを望んだ私を。
それでも、ナナリーにまだ未来を見せてあげたいという想いもまた強く心に残っていた。
この願い自体は、ナナリーの願いではない、あくまでアリスのためのものとなるのだろう。
小さな可能性だったが、ナナリーの騎士としてのアリスの中に残った、アリス自身の思い。
できれば、他の人に知られることは避けたい願い。
きっとネモがあの融合以降何も言ってこないのは、そんな自分の思いを認識しているからだろうか。
(ナナリー、もし叶うなら、私がまた、あなたに光を見せてあげるから。
だから、もう少しだけ待っていて)
あの時ゼロがふと発した言葉の意味が分かった。
きっと私がナナリーの騎士になることは定められた運命だったのかもしれない。
私は前に向かって進み続けよう。
いずれまたナナリーに会えた時に、胸を張ってナイトメア・オブ・ナナリーだと誇れるように。
677
:
◆Z9iNYeY9a2
:2013/12/12(木) 01:18:43 ID:Z6Prokww
【C-5/森林/一日目 昼】
【アリス@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:疲労(小)、ダメージ(小)、ネモと一体化
[服装]:アッシュフォード学園中等部の女子制服、銃は内ポケット
[装備]:グロック19(9+1発)@現実、ポッチャマ@ポケットモンスター
[道具]:共通支給品一式、 C.C.細胞抑制剤中和剤(2回分)@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー
[思考・状況]
基本:脱出手段と仲間を捜す。
1:ナナリーの騎士としてあり続ける
2:情報を集める(特にアカギに関する情報を優先)
3:脱出のための協力者が得られるなら一人でも多く得たい
4:ほむらが若干気になっている
最終目的:『儀式』からの脱出、その後可能であるならアカギから願いを叶えるという力を奪ってナナリーを生き返らせる
[備考]
※参戦時期はCODE14・スザクと知り合った後、ナリタ戦前
※アリスの『ザ・スピード』にかかった制限はネモと同化したことである程度緩和されています。
また、アリスのギアスは魔導器『コードギアス』が呼び出せるかどうかは不明です。
◇
――4
――3
―カチリ
――1
――0
◇
少しだけ時間を戻す。
あの爆撃の中、不意に飽和する魔力と消えるアリスの気配。
その中で私、暁美ほむらはその場から離れることを選んだ。
魔力の中に消え去るアリスの反応。
気になりはしても、魔法少女である自分であっても近寄ってはいけないものであることを、直感で察した以上どうしようもなかった。
「あの子もここまで…ということなのかしら」
ナナリー、彼女の友があの巨人であることを知った彼女の行動。
それに何か思うところがあっただろうか。
678
:
◆Z9iNYeY9a2
:2013/12/12(木) 01:19:24 ID:Z6Prokww
しかし、今は下の魔力の泥によって逃げることは叶わない。
サイドバッシャーが飲まれることがなかったのは幸いとはいえ、しばらくはこの木の上から様子を見るしかない。
ふと下の木の枝を見ると、ポッチャマが必死にしがみつきながら下の様子を伺っている。
どうやらギリギリのところで逃げ延びたようだ。
(随分と厄介なものに目をつけてしまったようね…)
―――そうだね。それには気をつけたほうがいいと僕から警告させてもらっておくよ
「?!」
不意に、脳内に声が聞こえた。
聴覚へではなく、脳内に直接語りかけるかのような声。
魔法少女が連絡や秘密の会話をするときに使う手段であるが今ここに魔法少女はいない。
そしてその声は、言ってしまえば長年の敵とでもいうべき存在の声。
(あ、そうそう。言いたいことがあったら、今は声を出さずにこっちの念話のほうで会話をして欲しい。
ここで話すと、そこにいるポケモンにも聞こえてしまうだろうからね)
(あれに聞かれることに不都合があるのかしら?)
(彼をただの生き物だとは思わないほうがいいよ。彼らの知能は犬やネコのような動物とは比較にならない。
そしてこの場には彼らとコミュニケーションを取ることができる存在もいることを考えると、僕としても推奨できるやり方じゃないね)
(………)
『それで、用件は何かしら、インキュベーター』
『君が無駄な争いを望むほど冷静さを失っていないようで助かったよ』
『…用件を言いなさい』
『ちょっと焦っているようだね。何か思いつめていることでもあるのかい?』
その言葉に一瞬銃弾を放ちそうになるその感情を抑え、冷静であることを装って言葉を続ける。
『あなたがここにいるということを、アカギは知っているの?』
『どうだろうね。知っているかもしれないけど、少なくとも彼に何かしらのアクションがある様子もないし、今のところ特に問題はないんじゃないかな?』
『そう、やっぱりあなた達も彼の協力者だったというわけね』
『まあ、そうなるね』
可能性としては、ほむら自身もそれを思うくらいはあった。
しかし、それを確信にまで持っていくには否定材料も多かった。
これまで渡ってきた多くの時間軸で魔法少女の契約を求めていたはずの鹿目まどかを、なぜこのようにいつ死んでもおかしくない状況に連れてきているのか。
それも、かつてその命を狙った魔法少女、美国織莉子と共に。
その事実があったからこそ、怪しいと感じても可能性レベルまで残しておいたのだ。
しかし、今ここにインキュベーターがいるということは考えられる可能性も絞られてくる。
連れてこられたまどかは過去の、そこまで大きな力を持っていなかったまどかであるか。
あるいは――
『まどかを失うことになってもなお、あなた達にそれに見合うだけの大きな見返りがあるか』
『その質問には答えられないね。
そもそも、君が聞きたいことはそんなことじゃないはずだよ。暁美ほむら』
679
:
◆Z9iNYeY9a2
:2013/12/12(木) 01:19:43 ID:Z6Prokww
『そうね。じゃあ話を変えて。
質問させてもらうわ。アカギの言っていた、どのような願い、奇跡も叶えるという言葉は本当かしら?』
『正直なところ僕にもどれほどのことができるのかまでは分からない。でもそうだね。並大抵の魔法少女の願いでは引き起こせない奇跡くらいなら起こせると僕は見ているよ』
『随分と正直に答えるのね』
『さっきこっちのペースで話しすぎて失敗したからね』
と、いつからそこにいたのか、足場こそあるとはいえ広いとはいえない木の上にインキュベーター、キュゥべえ。
その白い体と妙に人の気を引きそうなふわふわした毛並みの体、そして無表情な顔は相も変わらず憎らしい。
『それにしても、なるほどね。君はやはり欲している願いがあるのか。
まどかのために多くの世界を巡ってきた君が願うのは、やはりまどかのことかい?』
『…どこまで調べたの?』
『君の素性についてはほぼ、ってところだね』
そこまでばれているのならば、まどかのことについて隠す意味は薄いだろう。
隠したところでそれ以上の情報を、相手は持っているのだから。
『そんなあなたが、私に接触を測ってきた意味は何かしら?』
『君が僕、インキュベーターの言葉に耳を貸す可能性は低いだろう。
でも、そこに鹿目まどかを救うことができる可能性が関わってきたとしたら、君はどうするだろうね?』
『質問に答えなさい。質問で返さないで』
『じゃあ、単刀直入に言わせてもらおう。君に力を貸してほしいんだ』
『……。どういうこと?』
『言葉通りだよ。この殺し合いにはある目的がある。それは僕達インキュベーターにも大きな利益となるものだ。
でもそれをより大きな形で成し遂げるには、少し色々とこなさなければならないことがあるんだ。
もしよければ、君にはそれに力を貸してほしいんだよ』
奴のその目的が何かまでは分からない。
しかし、それは自分にとって愉快なものにはならないだろう。
『あなたを私が信じると思うの?』
『信じる信じないは君の自由さ』
『願いを持った者なら他にもいるでしょう。どうして私を選んだの?』
『それは、君の存在がこの会場の中でも特異なものだからだよ。時間遡行者、暁美ほむら』
『君はこれまで、過去の可能性を切り替えることで自分が望む結末を求めて、多くの時を繰り返してきた』
『その中で君は多くの平行世界を渡り、一定の期間とはいえそこで生きてきた』
『つまりは、君は平行世界の観測者でもある。そんな者は、この会場においてもそうはいない。
君の存在は貴重なんだよ』
『…説得力がないわね。人に殺し合いを命じたのはどこの誰のお仲間だったかしら?』
『条件は揃える必要があってね、開始段階で贔屓することはできなかったわけさ。君達の同行もまだ不明瞭だったしね。
そして君は、曲りなりにも一回目の放送を乗り越えて今ここに立っている。だからそろそろ頃合だと判断したわけだよ』
若干不服そうな仕草をしてそう答えるインキュベーター。
つまりはインキュベーターとアカギ、あるいはそれ以外の主催者。
彼らの意思、やり方が完全に一つになっているというわけではないようだ。
『こんな回りくどいことをして、一体何が目的なの?』
『僕の望みはいつだって一つだよ暁美ほむら。この宇宙のためにエントロピーを集める、それだけさ』
これまでの会話でこの催し、主催者についてある程度想像がついたことがある。
まずはこいつらの間にはおそらく利害の一致のような繋がりが存在する。
インキュベーターのように、宇宙がどうとかいうことを目的とした者か、あるいはそこから生まれる副産物を求めているか。
しかしそれは逆に言えば、互いの関係の中である程度の妥協、及第点を置いた上でこのような環境を作っているということだろう。
インキュベーターはその中に何かしらの不満を少なからず感じており、それが今この接触に繋がっているのではないか。
『さて、それじゃあこっちの質問にも答えてもらえるかな?
少なくとも僕達からは君を悪いようにはしない。あるいはこの儀式が成功した暁には君にも奇跡の一端に触れさせることもできるだろう。
暁美ほむら、僕と契約を結ぶつもりはあるかい?』
『――せめて具体的な内容を言いなさい。話はそれからよ』
『その受け答えということは、つまり君はこの話に興味を持っている、ということだね?』
「―――………」
考えの一部を読まれたことに若干の屈辱感を感じる。
だがそれを顔に出さないように気をつける。
別にこれくらいのことであれば不都合はない。
680
:
◆Z9iNYeY9a2
:2013/12/12(木) 01:20:45 ID:Z6Prokww
『内容を言いなさい』
『別に難しいことは言わないさ。この殺し合いをする上で少し不都合なことが発生しそうになった場合、それを解決してもらうために動いて欲しいんだ。
ああ、心配しなくても他の参加者を殺せ、なんて指示を僕達からは基本的に出さないよ。それは君達の選択だからね』
『受けなければどうなるのかしら?』
『話はこれまでとして僕はここから立ち去るだけだよ』
拳銃を下げる。
しばしの思考。
『ねえほむら。君は今まで疑問に思ったことはないかい?
どうしてまどかが、魔法少女としてあれほど破格の素質を備えていたのか』
『…?』
『魔法少女の素質は因果の量で決まってくるんだけどね。
この会場には様々な参加者がいる。いずれ救世主になりえる者、一国の王の血を引く者、英雄とでも呼ばれるだろう者、仮にも世界を変えた者。
魔法少女の素質はさておき、そういったもの達は大きな因果を背負っている。
でも、彼らと比べても一般人であるまどかの因果もまた劣らない。どうしてか分かるかい?』
『どういうこと…?』
『ねえ、ほむら。 ひょっとしてまどかは、君が同じ時間を繰り返す毎に、強力な魔法少女になっていったんじゃないのかい?』
『…!』
思い当たることはあった。
だが決して考えてはいけない可能性。
もしそれに気付いてしまえばやり直すことができなくなる。まどかを救うことができなくなってしまう。
『やっぱりね』
『………』
『もしここで君が失敗し、また繰り返すことになるなら、それによって積み上げられていくまどかの因果がさらにまどかを苦しめるんじゃないかな?』
『…っ、お前がそれを―――!』
『ほむら』
『もし全てのまどかを、その因果から救える可能性があるとしたら、君は乗るかい?』
◇
その後、インキュベーターは去り、下で泥が消えつつあることを確認、姿を見せた黒い女の元に迫ったところで女が消え去って。
そうして今へと至る。
――――まあ考える時間が欲しいというなら待つよ。頼みたいことは次の放送の後からお願いしたいからね。
うまく騙せただろうか。
少なくとも言葉の中に決定的なミスをしてはいなかったと思う。
正直なところ、向こうからの接触があったのは幸運だった。
主催者の情勢がある程度ながら察することができたのは収穫だ。
インキュベーターとてあくまで主催陣営のただの一人にすぎないということなのだろう。
インキュベーターの語った願い。
すべてのまどかを救うことができるという可能性。
おそらくはやつはその言葉からその可能性に気付いたと考えているだろう。
そこだけは悟られてはならない。あくまでキュゥべえの言葉でそこに気付いた、とやつには思わせなければならない。
そうすることで、あいつの手の平の上で踊っているのだと、そう見せなければならない。
681
:
◆Z9iNYeY9a2
:2013/12/12(木) 01:22:21 ID:Z6Prokww
いずれ近いうちに再び接触してくるであろうあの生き物に対してそうやって振る舞い。
可能な限りの多くの情報を引き出す。
そう、目標はインキュベーターではない。その後ろにいるアカギ、そして彼の持つ力。
奴の下へと辿り着く術、手段を探り出さなければならない。
無論、あいつが語らない、アカギの力の源も、この会場に知っている者がいる可能性がある。もしかすれば利害で繋がっているインキュベーター以上にアカギに詳しい者もいるかもしれない。
ならばそちらの情報も、こっちで得ればいい。
全てを隠すためには、幾重もの仮面を使い分けなければならない。
だがこの程度、それまでのまどかを守れなかった事実全てを精算できるならば易いものだ。
そうして待っている時、現れたのは一人の少女を抱えたアリス。
その少女こそがアリスの言っていたナナリーなのだろうと察するのは容易かった。
「それで、気は済んだの?」
守るべき存在を失ったその姿。
とうの昔に通り過ぎた、あの過去の自分に幻視した。
だがそんなことは些細なこと。
見極めねばならない。これから主催者をも騙すためのスタンスを選ぶ上で、彼女が使える者かどうか。
守るべき者を失ったこの少女は、己の路をどう定めるのか。
それでも、アリスは優勝による蘇生を否定し、愛しき友の望む姿であろうと、ほむらの問いかけに答えた。
それでいい、と思った。
まだ、目の前の存在には使用価値がある、と。
(――騎士…、私には眩しい言葉ね)
私にはきっと、まどかの騎士になることなどできなかったし、これからもできないだろう。
まどかの傍に、ずっといられる存在となることは、今の自分には叶わないことなのだから。
自分の望みは、ある意味ではまどかの思いを踏み躙るものでもあるのだから。
この子はきっと、真っ直ぐに、強く、騎士としてあり続けるのだろう。
(―――ええ、だからこそ、彼女を利用するのはそう難しくはない)
己の中の本当の目的も、願いも悟られることなく、自分と似た存在であると勘違いさせられる。
彼女のように、想いや願いではなく、まどかの安否だけを守ろうとしているということを。
もしかすれば、この子はいずれ自分の敵となるかもしれない。
だから、今のうちに利用し尽くしてやればいい。
彼女の存在は、まどかにとって何の関わりもないのだから。
そう、彼女はこの場で最初に出会って、目的のために手を組んだ。
それだけのはず。
682
:
◆Z9iNYeY9a2
:2013/12/12(木) 01:22:47 ID:Z6Prokww
「それじゃあさ、私の友達になってよ」
そういわれたときの自分は、一体どんな顔をしていたのだろうか。
よっぽど変な顔をしていることはないと信じたいし、特に追求はなかった以上仮面の下を見せてしまったことはないと思いたい。
どう答えていいのか分からず変な受け答えをしてしまった気がするが、よく覚えていない。まあ、大丈夫だろう。
そこまでしてしまうほど、何に動揺したのかは自分でも分からない。
いや、分からないのは自分自身でもある。
何故、私は彼女のその懇願を保留したのか。
もし彼女が使えないならば断った後で置いて去ればいいし。
使えるのであればそれを受け入れた上で利用すればいい。
考える意味などないはずだ。
(………)
これまで、特にあのまどかを救う決意をし己の三つ編を解いたとき以降、基本的にほとんどの馴れ合いは避けてきた。
巴マミとはキュゥべえのことで敵対し、美樹さやかとはその繋がりで敵視され、同じく馴れ合いを好まない佐倉杏子とはワルプルギスとの戦いのための同盟程度は組むことができ。
時にはまどかすらも、自分から遠ざけて。
近くで見守るために一時的な友情ごっこに興じた結果が、あのイレギュラーな世界だ。
新しい世界に渡るたびにリセットされる関係など、あの時のように必要でもない限り求めはしない。
ましてや、今はそんな関係を作ったところでいずれ切り捨てることになるだけ。
(まだ、迷っているとでも言うのかしらね。私は―――)
ただ、一つ何となく思ったこと。
第一印象で似てると感じなくもなかった目の前の少女は、自分とはこんなに違うのだなと。
放送も近い。
目の前の少女の大切な存在の名が呼ばれることになるだろう、その放送。
もし、まどかの名がその中にあったら、私はどうするのだろうか?
いや、それ以前に私は、ここにいるまどかをどうするのか―――
(―――今考えるのは止めましょう。いずれまた接触してくるであろうインキュベーターに備えて次の放送を待たないと)
ちらりと、サイドバッシャーの後部で丸まっている黒猫に視線をやる。
あの状況でどこにいたのか分からないが、全てが終わって気が付いたらそこにいた生き物。
(ねえ、そうなんでしょう?インキュベーター)
「ニャー」
黒猫は口を開いて一言、そう鳴いた。
683
:
◆Z9iNYeY9a2
:2013/12/12(木) 01:23:14 ID:Z6Prokww
【C-5/森林/一日目 昼】
【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:ソウルジェムの濁り(少) 、疲労(小)
[服装]:見滝原中学の制服
[装備]:盾(砂時計の砂残量:中)、グロック19(15発)@現実、(盾内に収納)、ニューナンブM60@DEATH NOTE(盾内に収納)、サイドバッシャー(サイドカー半壊、魔力で補強)@仮面ライダー555
[道具]:共通支給品一式、双眼鏡、黒猫@???、あなぬけのヒモ×2@ポケットモンスター(ゲーム)、ドライアイス(残り50%)
[思考・状況]
基本:アカギに関する情報収集とその力を奪う手段の模索、見つからなければ優勝狙いに。
1:全てを欺き、情報を集める(特にアカギに関する情報を優先)
2:協力者が得られるなら一人でも多く得たい。ただし、自身が「信用できない」と判断した者は除く
3:ポッチャマを警戒(?)。ミュウツーは保留。ただし利用できるなら利用する
4:サカキ、バーサーカー(仮)は警戒。
5:あるならグリーフシードを探しておきたい
6:放送後インキュベーターの接触を待つ。
最終目的:“奇跡”を手に入れた上で『自身の世界(これまで辿った全ての時間軸)』に帰還(手段は問わない)し、まどかを救う。
[備考]
※参戦時期は第9話・杏子死亡後、ラストに自宅でキュゥべえと会話する前
※『時間停止』で止められる時間は最長でも5秒程度までに制限されています
※ソウルジェムはギアスユーザーのギアスにも反応します
※サイドバッシャーの破損部は魔力によって補強されましたが、物理的には壊れています
「ポチャ〜」
黒猫が横たわるその近くで、ポッチャマは特に何をするでもなく、座り込んでいた。
何をするわけでもとはいったものの、ポッチャマなりにこれからどうするかということを考えているところだったのだが。
できることなら、さっき去っていったタケシやピカチュウを追いたいが、それを伝える術は自分にはない。
どうしたものか。とその短い手を組んで首を傾げていた。
その時。
「ポチャ?」
一瞬、視界に入ったその黒猫。
ネコらしくゴロゴロ転がっているその尻尾にあたる部分に。
ふんわりもこもこした白い尾が揺れているように見えた。
「ポチャ…?」
首を振って再度目を凝らすも、そこで揺れているのは黒くて細長い尾のみ。
「………?ポッチャマ…?」
何となく気にはなったが、疲れからきた見間違いかと考え、それ以上深く考えることなくまた自分の思考に浸ることにした。
ポッチャマは気付かなかった。
そこでゴロゴロとしているときも、毛繕いをしている間も。
その視線の先には常に暁美ほむらがいたということに。
「ニャー」
684
:
◆Z9iNYeY9a2
:2013/12/12(木) 01:25:19 ID:Z6Prokww
投下終了です
気になる箇所は多数ありますが、特に気になっているのは後半のQBがほむらに接触するところです
問題があるようであれば指摘お願いします
685
:
名無しさん
:2013/12/12(木) 07:45:05 ID:FgtyeAC2
仮投下お疲れ様でした
特に問題は無いと思いますよ
686
:
◆Z9iNYeY9a2
:2014/02/07(金) 00:22:54 ID:LSMic/hg
本スレの
>>397
の
>「もうこれじゃ魔法、使えないと思うんだ…。グリーフシードもどこか行っちゃったしさ。
> どうせ魔法使えない私なんて足手まといにしかならない」
>「世話のかかる魔法少女ね全く」
ここより後から前編最後までを以下のように差し替えます
687
:
◆Z9iNYeY9a2
:2014/02/07(金) 00:24:14 ID:LSMic/hg
と、しばらく何かを思案するかのように考え込み。
「はぁ、仕方ない」
そう言ってバッグから取り出したソウルジェム。
しかしそれは真っ黒に濁った魔力を発し続けており、素人目から見ても使えそうには見えなかった。
そうなると、残った手段は、
「……あれしかないか」
果たしてそのやり方がさやかの魔力回復に通用するのかどうかは分からない。
だが、まあ、うん。
ガシッ
「えっ?」
両手を押さえ、両足の上に体重をかけて身動きを封じる。
さらにその体を壁に押しつけ、退路を断ち切る。
間違いなく抵抗するだろうから、念には念を入れておくのだ。
「ちょ、何を―――」
「じっとしてなさい」
しっかりと押さえつけた両腕を片手で押さえられる形に持ち替え、もう片方の手で顔を押さえる。
「顎の力は抜いておきなさい、そうすればすぐ終わるわ」
「ま…!うむっ――」
そのまま、クロはさやかの口に己の唇を重ねる。
体に力を入れて暴れるさやかの体を押さえつけながら、その口腔内に舌を入れる。
己の口を蹂躙するかのような異物感に呻くような声を上げようとするさやか。
しかし侵入したクロの舌が、さやかのその口を解放することを許さない。
口の中で、クロの舌がさやかのものを絡め取り、生じた唾液が絡まりあって粘っこい音を立てる。
「んぁ…!ちょ…、タンマ…!」
688
:
◆Z9iNYeY9a2
:2014/02/07(金) 00:25:40 ID:LSMic/hg
ほんの一瞬口が離れたところでどうにか声を出すことができた。
しかしクロは止めてはくれない。
「まだよ。ちゃんと唾液を飲み込んで…」
「だかrむぐっ…」
数秒の息継ぎの時間の後、クロはさらに舌を動かし、さやかの口内に刺激を与えて唾液を送り込む。
その容赦ない攻め立てに、最初は抵抗こそしていたものの。
不慣れな体に送り込まれた未知の感覚に少しずつ脱力してゆき。
ピチャッ チュルッ
チュルルルル チュポッ
ピクッ ピクッ
「はぁ…、これくらいかしらね」
額から滲む汗を拭き取りながら、クロは起き上がる。
これまでは魔力を奪うことばかりで、相手に与えたことなどなかったこともあり勝手もよく分からなかった。
しかしそのソウルジェムの濁りの中には、微かに色が戻っているような気がする。
とりあえずはうまくいったと見てもいいだろう。
「……あれ?」
「――――――――」
と、立ち上がりさやかを見たクロ。
真っ赤に蒸気しているように見える顔はトロンとして虚ろで。
半分ほど開いた口からはあふれ出た涎が糸を引いている。
「おーい、生きてるー?」
ポケーッと惚けた表情のさやかに声をかけるが全く反応がない。
指でツンツン突いてもピクリともしない。
「―――――――――――」
「おーい起きろー。死ぬには早いぞー」
声をかけても体を揺らしても、全く反応を見せないさやか。
ダメ元で、その目と鼻の先といった位置に両手を翳し。
思いっきり手を鳴らした。
パンッ
「はっ?!」
聴覚、あるいは視覚への刺激かそれとも衝撃ゆえか。
それまで全く動かなかったさやかの顔に意識が戻る。
「あ、起きた?」
「…あ…、う…う、うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
689
:
◆Z9iNYeY9a2
:2014/02/07(金) 00:26:15 ID:LSMic/hg
後ろに下がろうとして壁に後頭部をぶつけ。
壁から跳ね返った衝撃で地面に転がり。
縺れる足で走ろうとして力が入らずさらに地面へと衝突し。
それでも腰を落としたままの体勢でこちらへ向いてズズズズと音を立てながら虫のような速さでクロから離れる。
「あ、あん、あんた!!!」
「それくらい元気なら大丈夫ね」
「大丈夫なわけあるかああああああああああ!!!」
そして顔を真っ赤にしたまま絶叫するさやか。
まるで魂の叫びだ。
「わ、私のファーストキスが!初めては恭介にってずっと思ってたファーストキスがぁ!!」
「あー、そういえば初めてはまだだとか何か気になってる相手がいるとか言ってたわね」
「よ、よくもあんたは!」
目に涙を浮かべて指をさす。
真っ赤な顔は羞恥心のせいか怒りのせいか、それともその両方か。
「てゆうかあんた、さっきはあんなに殺せだの何だの言ってたじゃない。それなのにそんなこといちいち気にしてるとか、ちょっと現金すぎない?」
「う…」
「結局のところ、それがあんたの本音なのよ。やりたいことも沢山あるのに、それを全部押し込んで自分を押さえつけて。
もうちょっと自分に正直になってもいいんじゃない?」
地面においたままのソウルジェムを拾い上げ、さやかへと投げ渡す。
穢れは未だ消えないが、その中にはまだかつての宝石の色の青が見えている。
「ちょっと行き過ぎた感はあるけど、これくらい医療行為って割り切れるようになりなさい。
ちゃんと生き残ってここから出れば、あんたはまたその好きな子と好きなだけやりたいようにできるでしょ?」
「………」
「だから、そのためにまずアンタがしないといけないこと、分かるかしら?」
と、クロは道の傍で倒れている一人の女性に目をやる。
依然地面に倒れるシロナは意識がなく、彼女に寄り添っている竜は袈裟懸けに斬られた傷から少しずつ血が滴り落ちており未だ止まる気配がない。
「シロナさん、しっかり」
近寄ってシロナの体を揺さぶるクロ。
怪我自体は重いわけではない。気絶したのは少し打ち所が悪かっただけだろう。
「う…クロちゃん…、士郎君は…?」
「お兄ちゃんなら大丈夫、もう行ったわ」
「そう、よかった…」
意識を取り戻し、士郎の安全を確認したシロナは安心したように息をつく。
そこでさやかが、クロの後ろからシロナの視界に入る位置へと動く。
「あ、の…、シロナさん…、私…」
「さやかちゃん…?あなた、その目は…」
「あ、こ、これは別に…。私の自業自得っていうかその…。
そんなことより、私、その…ごごめんなさい!」
震えながらも頭を下げるさやか。
そんな彼女の頭を、シロナは優しく撫でる。
「いいのよ…。あなたも私もこうやって無事だったんだから…」
「し、シロナさん…私…」
「さっきあんなこと言った後で言うのもあれだけど、今はゆっくりしてる暇はないっぽいわ。
この子の傷、ちょっとやばいわよ」
と、クロが示したのはシロナの横に蹲っていたガブリアスの傷。
体中傷だらけで、特に片腕、肩から腹部にかけて袈裟懸けに斬られた傷が深い。
今ある薬では間に合わせ程度しかできないだろう。
「ガブリアス!」
起き上がり傍に駆け寄るシロナ。
それにうっすら目を開いたガブリアスは、傷の痛みに顔を歪めている。
「シロナさん、この傷直す方法、ある?」
「ポケモンセンターまで連れて行ければ…!でもここからじゃ少し遠い…。
とにかく急ぎましょう!急いでモンスターボールに―――」
そう言って、ガブリアスを戻すためにボールを取り出し構えた、その瞬間だった。
轟音と共に、傍のコンクリート製の建築物が吹き飛んだのは。
690
:
◆Z9iNYeY9a2
:2014/02/07(金) 00:28:52 ID:LSMic/hg
最初に言った箇所からここまでで前編分とさせてください
また、修正に伴う他のGS投影に触れた箇所はwikiにおいて修正しておきます
691
:
名無しさん
:2014/02/07(金) 02:18:14 ID:fHtuonI6
修正乙です。理屈上はこれで大丈夫だと思いますよ
しかしさやか……その……ドンマイ
692
:
名無しさん
:2014/02/07(金) 07:10:09 ID:zQoqcs9U
修正乙です
原理と結果はともかくまあその…なんだ、うんw
693
:
◆Z9iNYeY9a2
:2014/04/16(水) 23:25:54 ID:NvBWGra6
放送案投下します
694
:
◆Z9iNYeY9a2
:2014/04/16(水) 23:26:59 ID:NvBWGra6
カタカタカタカタ
明かりも最低限にしかつけられていない、薄暗い空間に。
高速でキーボードを叩く音が響き渡った。
カタカタカタカタ
その音を鳴らす主は、部屋の暗さにも殺風景な様子にも全く気を払うこともなく。
ただ一心不乱にコンピュータの前でキーボードを叩き続けていた。
薄暗い部屋の中で、コンピュータから漏れる光の反射する眼鏡と汚れのない真っ白な白衣が異様な存在感を放っている。
その眼鏡の反射による光のせいで、奥の瞳の様子を窺い知ることはできない。
が、もとより今この部屋にいるのは彼一人だけ。たとえそうであっても彼の顔を気にするものは一人として存在していなかった。
たった今、そこに一つの侵入者が現れるまでは。
真っ暗に近い空間に、ほんの少し濃い影が形成されたかと思うと、そこから真っ赤な瞳と白衣にも劣らぬ純白な体毛を持つ一匹の生物が、姿を現した。
インキュベーター。多くの者はキュゥべえと呼ぶ存在。
黒き猫に擬態していないということを除けばロワ会場にいるそれと全く同一な存在の一端。
それが、その空間で作業を続けるその男に静かに話しかけた。
「さて、作業の調子はどうだい?ドクター・アクロマ」
「おや、インキュベーター、…いえ、キュゥべえ君ですか。何か御用ですか?」
問いかけるキュゥべえに、眼鏡と白衣の男、アクロマはキーボードから目を離すこともなく答えた。
「いや、そろそろ放送だからね。作業はどうかなと思って声をかけさせてもらったよ。ちょうど君に聞きたいこともあったし」
「ほう、聞きたいこと、ですか」
「うん。作業の調子はどうだい?」
ピョン、とアクロマのいじるキーボード近くの机の上に乗りながらキュゥべえは再度問いかける。
無感情な顔とピョコピョコ動く尻尾がかなりの鬱陶しさを感じさせるはずだがそんなことを気にも留めずアクロマは答えた。
695
:
◆Z9iNYeY9a2
:2014/04/16(水) 23:29:28 ID:NvBWGra6
「ええ、ポケモン強制制御装置、そして例のものも全て滞りなく動いています。
この前のテッシードに続きこの放送までの間に幾匹かのポケモンが散ったようですが、それらに大きな影響を与えるものはありません」
「そうかい、それはよかった。じゃあ、君自身の目的のデータは集められたのかな?」
「それはもう!散っていったポケモン達の多くは特に大きな影響を与えるものがいません。
しかし一匹、チャンピオン・シロナの持つガブリアス、彼は素晴らしい!まさしく奇跡としか呼び様のないデータを私にもたらしてくださいました!」
「なるほど、じゃあやっぱりあれを支給したのは君だったんだね」
「ええ、正直私自身あれの情報を収集しきれたわけではありませんでしたが、あれ、メガストーン自体はガブリアスのものに限らなければ他にも資料としては所持していますしね」
キュゥべえが問いたかったのはまさしくそれだった。
この殺し合いのために各世界の情報を集めた際、一つ一つの世界の大まかな情報は一様に把握したはずだった。
しかし、完全に進化しきったポケモンがあのように形態変化を引き起こす現象など、キュゥべえは知らなかった。
「あれはポケモンと人間の絆に反応し、絆を持った者が何かしらの信号をメガストーンに送ることでポケモンに対して一時的な進化を与えるものなのですよ。
本来であればメガリングという道具が最も使われているものなのですが、まさかあの偽の聖剣を介してメガストーンを反応させるとは、いやはや」
「まあすごいものだったとは思うよ。そのせいであのバーサーカーが一度に3回も命を失ったんだからね」
「ええ!それですよ!
ポケモンの主を守りたいという思いが、あの一瞬の命の素晴らしい輝きへと変換され、あのバーサーカーを打ち破るほどの戦闘能力を引き出したのです!
惜しむらくは、その結果ガブリアス自身が消滅してしまい再度あのデータを得ることは不可能になってしまったことですかね。もう少しであの力の源に気づけそうだったのですが、残念です」
元々彼が協力者に選ばれたのは、ポケモンに対する各方面での様々な知識を買われてのものだった。
ポケモンに詳しい研究者の中で、彼ほどポケモンに対し純粋で、だからこそ狂気に満ちた扱いをすることができる者はいない。
自分の欲望に正直であり、そのためならばポケモンを慈しむことも傷つけることも同時に行う。
その内面はどこまでも度し難く、しかしそれ故に利害さえ一致するならば協力させるのも容易い、とはアカギの談だった。
「はぁ…、まあいいや。ポケモンに関しての扱いは完全に君に一任していたからね、仕方ない」
「それを言うなら、君のあの行動も問題ないと言えるのですか?」
「おや、気付いていたんだね」
「ええ。あの場所にはポッチャマがいましたからね。監視装置を通してあなたの存在を確認させてもらいました。何を話したか、まではこちらから聞き取ることはできませんでしたが」
それは失念だった、とキュゥべえは思った。ポケモン自身が認識することに関しては一応警戒しておいたが、ポケモン自体についていた監視装置までは盲点だった。
興味のあることに関しての探究はつくづく尽きない男だ、ある意味では油断ならない。
参加者自体の監視は自分が担っていることが救いになったというところだろうか。
「まあ私の仕事はあくまでもこの殺し合いを通じてポケモンの可能性を研究することです。あなた達の思惑には特に興味がありませんので。
無論、アカギさんに伝えるつもりもないのでご安心を」
「そうかい。それは助かったよ。ところでアクロマ、君はこの殺し合いの中で気になる存在はいるかい?」
「気になる存在、ですか。そうですね…、やはり多くのポケモン達の存在が気になっていますが、今気になっているのはポッチャマでしょうかね?」
「どうしてだい?」
「彼は今、誰の支配下にもおかれていないからですよ。あのモンスターボールはユーフェミア・リ・ブリタニアの持っているものでした。
しかし彼女はポッチャマに何を命じることもなく、その結果ポッチャマは彼女の元を離れ、今は暁美ほむら、アリスの両名と行動を共にしている。
そしてその間にユーフェミアは死亡した。では今彼を縛っているものは、一体何なんでしょうかね?」
「僕に聞かれても困るよ」
「あとは参加者であるミュウツー、彼もまた興味深い状況にありますね。
ポケモンの中でも上位に君臨するほどの潜在能力を備えていながら、今の彼の力は過去のものに遠く及ばない。
もしその迷いを振り切ることができれば、彼もまた新たな段階へと進むことができるのではないかとも思うのですよ」
696
:
◆Z9iNYeY9a2
:2014/04/16(水) 23:30:15 ID:NvBWGra6
彼の研究に対する興味が大きすぎるというのも考え物だ、とキュゥべえは思っていた。
殺し合い当初はポケモンでありながら参加者でもあるニャース、ミュウツーに対して大きな興味を持っていた。
しかしニャースが人間とのコミュニケーション能力を得ることと引き換えに進化する力、ポケモンとして新たな技を得る学習能力を失ったと知って以降そうニャースに対して大きな興味を持つことはなくなったようだった。
好奇心というほどでもないが、キュゥべえが少し気になったのは、彼がNに対して如何なる思いを持っているかだった。
人間でありながらあまりにポケモンに偏った思考を持ち、ポケモンとコミュニケーションを取ることができる存在。
アクロマならば放っておく存在ではないはずだが、彼に対する思いがキュゥべえから見て表に出てこないというのが若干気にはなっていた。
「まあ何事もなく進行するなら君に一任するけどさ、何にしてもあまりイレギュラーなことは困るよ?」
そう告げて、キュゥべえはアクロマの作業する部屋から退出しようとして、一度振り返った。
「そういえば、あの時にポケモンに進化を引き起こしたあの石、他にも支給しているのかい?」
「フフフ、どうでしょうかね?それは教えられません。まあ、これからの進行でのお楽しみですね」
「全く、彼にも困ったものだよ。一応こっちでも手を打っておく必要があるかな。っと、そろそろ時間か」
こちらとも特に何か話をすることもなく一人静かに篭っているアカギが唯一表に現れる定時放送。
それが今、鳴り始めていた。
◇
「12:00、定刻通り死亡者、並びに禁止領域の発表を始めよう」
その言葉はとても無感情に、そして事務的に始まった。
正午ぴったりの時間。アカギの声が、殺し合いの会場に平等に鳴り響く。
「死亡者は
ナナリー・ランペルージ
ロロ・ヴィ・ブリタニア
ユーフェミア・リ・ブリタニア
ニア
藤村大河
クロエ・フォン・アインツベルン
ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト
バゼット・フラガ・マクレミッツ
オーキド博士
佐倉杏子
呉キリカ
以上の11名」
人数は先より一人多い11人。しかしそのことに特に感慨をもらすこともなく、アカギは淡々と、事務的に放送を続ける。
「次に禁止エリアだ。
13:00よりA-6、
15:00よりF-2、
17:00よりD-7が禁止領域となる。以上だ」
そう告げるのを最後に、短く、しかし参加者にとっては大切な放送が終了した。
死者に関しては特に思うところはない。
禁止エリアに関しては先はとある参加者にも一応気を配った配置にしたはいいが、にも関わらず彼は今その禁止エリアのすぐ近くにいる。
そのような小さな気遣いをしたところであの大英雄には無駄に働くと分かってしまった以上、配置に気を使うこともしなくなったのだ。
まあ2時間もあればさすがに移動はするだろうし、もしそれで死ぬようならばその時はその時だ。
「それで問題はないのだろう、キュゥべえ?」
「そうだね、先のことを想定しておいてもそれがその通りにいくとは限らないのははっきり分かったからね」
「お前としてはそのようなイレギュラーも起こってくれたほうが助かるのではないか?」
「確かに、エントロピーを回収する上である程度の刺激はあったほうがいいけど、今の僕は静観寄りさ。特に何か大きなことをしようとも思わないよ」
「そうか」
去っていくアカギ。
次に彼が出てくるときは6時間後の放送か、あるいは何かよほどのイレギュラーが起きたときだけだろう。
そう、彼は静かに時を過ごす。
無感情で静寂な時を好んでいる。
「人間でありながら、人間の感情を否定する。じゃあ、それを願う君自身の感情は、一体何なのかな、アカギ?」
ふと呟いたそんな問いかけを、答えるものも聞き届けるものもその場にはいなかった。
697
:
◆Z9iNYeY9a2
:2014/04/16(水) 23:30:42 ID:NvBWGra6
◇
アクロマのいる部屋ともアカギの篭る空間ともまた違う場所に一人佇む男。
その背からは歳から想像することはできないほどの威厳を発し続けている。
そんな背に、声をかける者が一人。
「ねえ、シャルル」
桃色の髪をした14、5くらいの少女。
しかし彼女の彼、シャルル・ジ・ブリタニアの呼び方は、もし彼の世界であったならば不敬罪で殺されてもおかしくないだろうもの。
そんな言葉に顔色一つ変えることなくシャルルは応える。
「アーニャか。何用だ?」
「今は誰もいないわ。マリアンヌで大丈夫よ」
シャルルが振り返ると同時に、如何なる魔法か少女の外見は黒髪の美女へと変化する。
ドレスのような服に身を包んだその女の名をマリアンヌ・ヴィ・ブリタニア。
シャルルの妻であり同士でもあり、そして魂を加工するギアス、ザ・ソウルを備えたギアスユーザーでもあった。
しかし彼女は、瞳を悲しそうに伏せてシャルルに問いかけた。
「ねえ、これでよかったのかしら…?私達のやってること、本当にこれで…」
それは、この殺し合いに力を貸す自分たちに対するものだった。
「もうその質問には答えたはずだ。今の我々にできるのはこれくらいのことしかないのだと。それが我々の目的に繋がるものだというのは既に言ったはずだ」
「ええ、私も一度は納得したわ。だからこそ、今更こんなことを言う刺客はないのかもしれないわ。
でも、あの子達の最期を見ていたら、本当に私達が今こんなところに存在してこんなことに協力しているのが正しいのか、分からなくなってしまったのよ」
一度の放送前に10人、その中には別世界の存在とはいえ己の息子であったルルーシュの名が呼ばれた。
そして今度。11人の名が呼ばれた放送の中には、本当の娘が、そして偽りの記憶を植えつけて利用した偽者の、しかし彼もまた大切な息子であった者の名が呼ばれることとなった。
本来ならば自分が看取るはずだった彼は全てを呪い、力に蝕まれながらもなお魔女の力を欲しながら死んでいった。
そして未来を望み生きるはずだった娘も、この世全ての悪に蝕まれ衰弱して死んでいった。
今更言うようなことではないのだろう。そもそもアカギ達に力を貸すと決めたときから覚悟しておくことだった。
しかし、実際に彼らの最後を目の当たりにして。
本当に彼らに協力するのが正しいことなのか、マリアンヌは己の心に迷いを感じてしまった。
「全ては覚悟していたことだ。エデンバイタルに消えた我らが、悲願を叶えるための希望を得たあの時から。
今更戻ることなどできぬ」
「でも、本当はシャルルも――――」
「話はこれまでだ。もし嫌だというならばマリアンヌ、お前だけでもここから去るがよい。
もはや我らにとっては余生のようなもの、引き留めはしない」
その言葉を最期に、シャルルは振り返ることなくマリアンヌの前から歩き去っていく。
まるでもう過去を振り返ることはしない、という意志を示しているかのように。
「シャルル、あなたは…」
マリアンヌには、彼の心を窺い知ることはできない。
だからこそ、今この状況から離れることなど、選択することはできなかった。
◇
様々な思惑を入り交えたまま、殺し合いというゲームは続いていく。
一つの節目を通ったこの殺し合いが新しい段階へと進んでいくのか、それともこれまで通り予定調和を歩んでいくのか。
それはインキュベーターにも、シャルル・ジ・ブリタニアにも、アクロマにも、そしてアカギにも分からない。
698
:
◆Z9iNYeY9a2
:2014/04/16(水) 23:31:27 ID:NvBWGra6
投下終わります。問題があれば指摘お願いします
699
:
名無しさん
:2014/04/17(木) 02:31:47 ID:Ps9bOmAI
投下乙です。
アクロマとは予想外のキャラ。BW2のキャラだから当然なのだが。それでいてキャラ的にもマッチしている不思議。
マリアンヌとシャルルは複雑な事情の模様。それにしてもこっちのシャルルはきれいなシャルルだなw
それと誤字、というか本文中の表現方法に関して。
>>694
での「ロワ会場」という呼称は本編中には適さないよう見受けられます。ありえるとすれば「バトルロワイヤルの会場」かと
付け加えるに、主催側がバトルロワイヤルという呼称を使ったことはありません
次に、
>>696
での死亡者の放送のオーキドに「博士」をつける必要はないと思います。ただの称号ですし
以上です。揚げ足取りに見られてしまうかもしれませんが、気になる箇所ではあったので指摘をさせて頂きました
700
:
◆HOMU.DM5Ns
:2014/04/30(水) 13:27:33 ID:2PczfVrs
少し設定、制限部分に突っ込んだ部分が出てくるため、仮投下しておきます
701
:
私の世界を守るため
◆HOMU.DM5Ns
:2014/04/30(水) 13:29:55 ID:2PczfVrs
☬ ☬
「私が生きる意味を知りたい」
願ったのは、多くの人は考える事もなく終わるような、取るに足らない希求。
今までの人生が誰かの一部、服飾のひとつとしてしか他者に見られてないと知った時。
私はそれを見失った。
自分が何の為に生きていたのかが、分からなくなった。
魂を代価として知った、新たな意味。
世界の滅亡を食い止め、救う為にひとりの少女を探し出し、殺すこと。
使命を受け入れた。
命を奪う覚悟を決めた。
瞳に映って見えた未来の中に、意味はあるのだと信じていた。
目指した未来をひた走る中、見向きもしなかった方向から、ある少女がやって来た。
何も残ってないと思っていた自分に、手を貸すと約束してくれた。
障害を切り屠る爪牙として血を流す事を厭わず、常に惜しみない献身を捧げ。
年が近いとは思えないぐらいに気紛れで、日頃から甘えてきて。
初めて、名前を呼んでくれた。
一人の個人(ひと)として、曇りない思いで自分の全てを肯定してくれた。
私が生きる意味。
それは世界を守る為。
けどひょっとしたら、守りたいと願ったのは今立っている大きな惑星(ほし)の話ではなくて。
もっと小さな、すぐそこに感じられる―――
702
:
私の世界を守るため
◆HOMU.DM5Ns
:2014/04/30(水) 13:30:34 ID:2PczfVrs
■ R ■
機械のアナウンスと大差のない声が止み、サカキはメモを書き留めていたペンを置く。
時刻までの死者の公開、追加された禁止領域の提示。
一度目と同様、流れされた放送の内容は実に簡素なものだった。
殺し合う者を嘲るでもない、只々整然と並びたてられた文字の波。
あるのは、実験の成果のみに注視している科学者のそれだ。
多様な化合物が詰められたフラスコの変化を無感動に眺める気分で、アカギはこの儀式を見ている。
確信する。アカギは、この儀式に娯楽性を見出してはいない。
過程に起きる惨劇ではなく、最終的に残る成果のみに着目している。
「それ」は最後に一人残った優勝者―――「最も価値のある魂をもつ者」を意味するのか。
儀式の完遂そのものによって得られる「何か」を見ているのか。
奴の求める結果とはどのようなものなのか。
知ることが出来れば、状況の打開への一石を投じられる見込みは高い。
そして自分は少なからずそこに指がかかっていると、サカキは判断していた。
ポケモンすら知らないようなプレイヤーもいる中で、アカギと同等の世界の出身である己のアドヴァンテージは決して軽くはない。
加えて、体に刻まれた呪術式なる印についての知識も、同行者が掴んでいる。
真実の一端にまで至る材料は揃っている。後はピースを並べるだけだ。
「弔いは、済んだのかね?」
サカキの前に姿を見せたその同行者、美国織莉子を確認して、サカキの思考は彼女へと向かれる。
「はい。時間を取らせて、申し訳ありません」
「気にするな。友人の死に部外者がとやかく言うつもりはない。
無理に干渉したところで不利益しか生みはしないからな」
「……ありがとうございます」
腕の中で命を落とした少女、呉キリカの死にさんざ泣きはらした後、
彼女を弔いたいという織莉子の申し出をサカキは許可した。
恩を売っておくに越したことはないし、どうせ放送で得た情報の咀嚼にも時間を使う。
「あなたにもお礼を言わなくちゃね。ありがとう」
背後に立つニドキングに対しても織莉子は謝意を述べた。
埋葬の穴を掘るのに少女の手を煩わせさせるのもいちいち面倒と思い、サカキが自分から貸し与えたのだ。
砂浜から少し離れた地面に僅かに離れていた木々の下。
そこに空いた人間大の穴に身を清めた遺体を寝かせて祈りの手を握る少女は、一葉の聖画のようでもあった。
改めて、織莉子の様子を窺う。
翡翠の瞳には、さっきまで号泣していた少女と同じとは思えない、大人びた理性の光が宿っている。
既に元の冷静さを取り戻し、一見では前とは変わりない怜悧な顔立ちのように見える。
だが短くはない時間を共にしたサカキは、織莉子の纏う雰囲気の変化を見逃さない。
長年組織の長の座を治めていた者にこそ分かる、触れる大気を凍りつかせる張り詰めた空気。
亡骸との関係を知り、末路の場面に居合わせたのなら、尚更にだ。
703
:
私の世界を守るため
◆HOMU.DM5Ns
:2014/04/30(水) 13:31:07 ID:2PczfVrs
「さて、美国織莉子。
仮初とはいえ我々はこれまで目的を共通とし、行動してきた間柄だ。
共同している以上は、ここで君の意志を確認する必要がある。」
見極める必要があった。
話のさわりだけを聞かせられても解かった、相当に心を寄せていた友人の死に、織莉子はどう動くかを。
「固めた思いに揺らぎはないか?
未だ己の使命、目的を為し遂げんとする心は残っているか?
その時までに、如何なる障害が待ち構えていようとも突き進み、粉砕するだけの覚悟が残っているのか。
今ここで、君に問いたい」
サカキには、己の意志を曲げるという気は皆無だ。
誰の死を聞かされようと、前回を凌ぐ十一名の死者を知ろうとも。
自らでは及ばない数々の敵と見えても、宿した信念に罅が入る事は決してない。
己の死さえも、我が道を往く果てにある結末ならば受けれて見せる。
そうでなければ、ポケモンマフィアの頭目など務まるわけもない。
そう在ったからこそ、多くの部下に恵まれ、自分抜きでロケット団の再興を叶えるまでに至ったのだ。
織莉子の決断。それはこの組の行方を直接左右することになる。
折れるようならば、切り捨てる。
時と人が限られる環境で、使えない人材を排除するのに躊躇はない。
最悪の想定として、ここで殺し合う未来も織り込んである。
織莉子の背に控えるニドキングに密かに目配せする。
疎意、殺意を見せるようならば、即座に腕を振り下ろせる準備に入っている。
「……私は――――――」
瞼を閉じ、黙考していた織莉子が口を開く。
開かれた目に映るのは、迷いの失せた、毅然とした碧い焔。
「―――進みます。
傷も痛みも、全てこの使命を背負った時から覚悟は決めていました。
どれだけのを失おうとも、それが変わることはありません
何より、あの子が信じた私が自らを疑ってしまえば、あの子そのものが無為と消えてしまう。
だから私は、戦い続ける。この道の先に世界に救いの光が降る、その時まで」
虚偽も傲慢も感じられない、譲れない芯の通った声。
予想通りだった答えに、サカキも杞憂を振り払う。
704
:
私の世界を守るため
◆HOMU.DM5Ns
:2014/04/30(水) 13:31:49 ID:2PczfVrs
やはり、美国織莉子は使える娘だ。
拠り所を失った人間がその欠落に耐えられなかった場合は、生存の意欲をも失うのは往々にしてある。
だが織莉子は独力でそれを乗り切った。
自らの中に喪失した穴を自覚しつつも、それを埋め合わせられる整然性と論理的な思考を働かせられる。
こうした経験を積んだ人間は強い向上心を持つようになる。より強く在ろうとする気持ちを抱くようになる。
それはサカキにとってプラスにこそなれ、マイナスには働かない変化だ。
「そうか。ならば、この協力関係は続けられると了解していいのだな?」
「ええ。異存はありません。互いの道が交差し衝突するまでは、私達は協力し合えるものと思っています。
……それで、早速なのですが」
言葉を途中で切り首を虚空へと向け、常人には届かない遠い場所を眺める。
その時にわかに、織莉子の表情から普段見せていた優雅さがかき消えた。
代わりに表層に出るのは、凄烈さを纏わせる貌―――。
「ここよりさほど離れてない場所に、誰かがいます。
数は単独。性別は男性。顔は仔細に読み取れませんが、恐らくは高校生から大学生ほどの年齢。
差支えがないようなら、接触をしてみたいのですが」
視線だけをこちらに向けて、これからの指針の提案した織莉子。
近くにプレイヤーがいるのは、実はサカキも知っていたことだ。
自分に支給された高性能デバイスに備わった術式探知の機能。
織莉子が呉キリカを埋葬している傍ら、サカキは密かにこれを使って周囲に誰かいないかを検知していたのだ。
安定した精神状況とは言い難い織莉子に危険予知を託すのも浅慮と断じたが為の、当然の自衛行動といえた。
サカキは織莉子へこのデバイスの情報を口外していない。
織莉子の能力があれば危険への対応も他者の接近も図れるし、織莉子自身からも言質を取っている。
ならば、デバイスは予知の裏付けとして個人で密かに使用すればよく、共有する利益はない。
これは場面によっては戦局をも左右する切り札だ。
織莉子と離れた時、織莉子の予知の届かない情報を入手した時、その効果は発揮されるだろう。
向こう側から言及されない限り、このデバイスの存在は極力隠匿するつもりだ。
その時点でのエリアにあった反応は三つ。
二つはサカキと織莉子、そしてここから遠ざかっていく第三の反応。
別のエリアへと移ったことで反応は消えたが、移動速度は徒歩と大差ないもの。
今からバイクを利用すれば接触も可能だろう。
そして、積極的に接触を図る理由についても、とうに当たりはついている。
「成る程な。しかし、そうまでして急ぐものなのか?」
しかしそれは伏せた上で会話を進める。
今はまだ、織莉子に主導権を握らせておくべきだ。
705
:
私の世界を守るため
◆HOMU.DM5Ns
:2014/04/30(水) 13:32:26 ID:2PczfVrs
「これまでの私達の道のりを考慮すれば分かっていただける筈です。
この儀式の始まりから今までの十二時間、私達が直接見えたプレイヤーはただ一人しかいません。
魔女のくちづけを知る私。ポケモンとアカギについて知るあなた。何かを守らせるようにポケモンが揃えられたポケモン城。
肝心要になる儀式の主催者についてこそ情報を持ちますが、会場での人物については全くと言っていいほど無いのです。
アカギと、恐らくはいるであろう協力者の狙いも重要ですが、上ばかりを見えていればいつか足元を掬われかねません」
「だから、迅速かつ早急に他のプレイヤーとの接触を行うべきと?
多少の危険を犯すリスクを踏まえてでも」
「ええ。いつまでも臆病に命のみを守るだけでは何も変えられない。
失うものも少ないけど、得るものもまた微少なもの。
むしろ時の浪費は取り返しの利かない負債を背負う羽目にもなるでしょう。
私の力を以てすれば、最悪の状況に至る前に対処も出来ます。
―――何よりも、あなたがそんな安寧な生き方に傾倒するお方だとは私には思えません」
こちらを挑発しているかのような、優艶な微笑み。
淫靡にすら見えてしまう仕草も、この少女が持てば即座に雅な淑女のそれへと早変わりしてしまう。
織莉子の論理は、なるほど理に適っている。
時間経過と共に減っていくプレイヤーは貴重な情報源でもある。
時間的にもプレイヤー間での交流、施設の調査、主催者達や儀式の構造についての考察も一通り済んでいると見ていい。
可能な限り取れるものは取っておきたいのは同意するところだ。方針そのものに異議を唱えることはない。
「随分と強気に出るな。
その心意気は買うが……私には君こそ、下を疎かにしかねないように見えるがね」
だがやはり、弱みを握られまいと饒舌に語り出すあたりは、まだ青い。
わざわざ自分から必要以上に得た情報を喋り、自分の優位を見せつける。
利口で互いの領分を弁えていた織莉子の、らしくもない真似は、行動の主導権を握る為に他ならない。
「……自覚はあります。ご心配は無用です」
織莉子は焦っている。
己の目的を早急に達成しようと、躍起になりつつある。
予知にしても、これまで全く付近に範囲に「引っかかる」人物がいなかったのとは考えにくい。
現に呉キリカの死を察知した時は、倒れていた場所までかなりの距離があったのだ。
恐らくは、意図して未来を知るには、何らかの消耗があるのだろう。
ポケモンの持つ技にも使用できる回数がある。それは総じて、強大な技であるほど消耗が大きい。
常時能力のチャンネルを開いているには相当の負担がかかるから、積極的な未来視は戦闘に限定していたのだ。
その戒めを払い、「当たり」に含むかも分からない対象に片っ端から接触しようとする意味。
それは瞭然としている。
大切な友人を、共犯者として巻き込んでまで殺さねばらないと執心している者の居場所の特定。
そしてもうひとつ。闇組織を率いていれば当然目にする、あるいはサカキ自身が火種を生み出してもいる相貌。
その共犯者を死に至らしめた者への、然るべき報復。
口に出しはしないものの、織莉子が内に秘める感情は手に取るように読み取れる。
憎悪に振り回されないだけの克己心は、向けるべき相手に解放するまでのトリガーでしかない。
これまでの二人は、意思を確認し、共闘を重ね、情報を共有しながらも、互いに一線を引いた関係を貫いてきた。
力量を認める「信頼」はしても、仲間意識を抱く「信用」に至ろうとは考えもしなかった。
サカキがロケット団の元ボスという立場を隠しているように、織莉子もまた他者に打ち明けられない秘密を持っている。
公にすれば、主催の目的が明らかになるかもしれない。儀式の根幹が明かされるかもしれない。
だが重要な秘密であればあるほど、それは自らの弱みを見せる諸刃の剣となる。
弱所を晒すに値する見返りが本当にあるか。その相手は信任するに足るか。
そもそも明かすことに後悔はないか。
単なる情報の遣り取りでは済まされない、難解な心理の鍵が幾重にもかけられている。
706
:
私の世界を守るため
◆HOMU.DM5Ns
:2014/04/30(水) 13:32:46 ID:2PczfVrs
だがここでも、織莉子はその枷を破った。
守るものを失ったためだろう、身を守る消極的姿勢を放棄して積極的な行動に移っている。
保身を捨てた人間は、普段なら二の足を踏むような決断にも、損得を顧みず実行に移す強さがある。
自己保存を切り捨てて得られる収支は、他の者よりも遥かに大きいものとなる。
「だが―――言う事はもっともだ。敵にしろ味方にしろ会えずじまいであれば戦略の立てようもない。
構わん、その相手に連れて行ってもらおうじゃないか」
戦力を失ったのは痛かったという、先の感想をサカキは取り下げる。
呉キリカの死は実に有用だった。戦力の代価として余りあるほどに。
今はいい。好きに動かさせておく。
使命と定めた何者かの抹殺にサカキは邪魔も干渉もしない。自由にすればいい。
これから先、織莉子は頼まれずとも儀式攻略に必要となる情報をサカキに提供するだろう。
展開を前倒しにし、順序を省略して、目的遂行に最短の道を進み続けるだろう。
その度に、自らの背を丸裸にさせるのを厭わずに。
如何に織莉子に才覚があろうとも、サカキにはこれまで培ってきた膨大な経験がある。
それは地層のように時を重ねて積み上げなければ絶対に手に入らない、特権を超える主権だ。
小娘一人に体よく扱われるほど、築かれた礎は脆くはない。
利用しようとするならば、こちらが先だ。
「なら急ぐとするか。
―――この先にいる者が、君の望む人物であればいいな」
果たして、その事実に本人は気づいているのか。
織莉子は柳眉をほんの少し苦々しげに潜ませて
「……ええ、そう願いたいです」
一瞬、暗い貌を滲ませて、そう答えた。
707
:
私の世界を守るため
◆HOMU.DM5Ns
:2014/04/30(水) 13:33:25 ID:2PczfVrs
Χ Ⅸ Ⅰ Ⅲ Χ
草加雅人は苛立っていた。
最近の彼にとっては特段珍しくもないが、今回のそれは中でも特に機嫌が悪い部類に入っていた。
こうした気分に草加がなるのには、大別して二通りの理由がある。
ひとつは、オルフェノクが関わってくるもの全てに関してだ。
自分と、流星塾の仲間―――仲がいいといえるのはごく僅かだが―――の未来を灰色の地獄に変えた亡者まがいの化物共。
奴らの報いに相応しいのは徹底した根絶のみ。
人類の進化系という、烏滸がましい妄想ごと砂塵にし、この世から跡形もなく消し去る以外にあり得ない。
ここで見えた長田結花についても例外はない。
ファイズ―――乾巧の真似をしていたからなのか碌に抵抗もせず、一方的にこちらの攻撃を享受する姿は草加を逆に苛立たせた。
そうじゃないだろう。貴様は、貴様らはもっと怯えなくてはならない。
苦しめられた俺達の分の、その何十倍も苦しむべきだ。
痛みに震え、死に恐怖し、絶望の中で火にくるまれて死ななければならない。
そうした鬱屈した感情が、逃げた長田結花の後を追走させた。
先ほど翼に痛手を与えて遠くへ逃げられはしない。実際に補足は容易く済んだ。
問題だったのは、居合わせていたのは長田結花だけではないことだった。
黒と黒の輪舞。
嵐が巻き起こり、砂浜に斬裂の轍を残す。
それを生み出す二人の少女の戦いは、ファイズに変身していなければ残像しか捉えられないほどだった。
やがて決着が着き、ひとり立つ勝者は、結花を伴い西の方角へ消えて行った。
敗北した眼帯をつけた少女は、鹿目まどかの話にあった魔法少女であろうか。
彼女から聞いた仲間の情報とは一致しない部分が多い。
海面に漂着し、それきり動かないことから既に死亡している判断して、こちらは無視することにした。
では勝ち残った騎士甲冑を着込んだ少女もまた同類か。
直感的に違うと、草加は断定する。
あの矮躯から放たれる、遠目から眺めても分かるほどに凄絶で殺気に満ちた気配はむしろオルフェノクに類する類だ。
粗暴な振る舞いの見られた佐倉杏子でさえ最低限の義侠心は持ち合わせていた。
あれにはそれさえ備わっていない。目に映るものは有象無象の区別なく破壊していく、大型台風のような意思持つ災害だ。
708
:
私の世界を守るため
◆HOMU.DM5Ns
:2014/04/30(水) 13:34:00 ID:2PczfVrs
与り知らぬ場所で関係のないプレイヤー同士で潰し合った。
それだけなら草加をここまで不快にさせはしなかっただろう。むしろ邪魔が勝手に消えて清々しくすらあった。
草加がこの戦いを観察して最も気に喰わなかったのは、長田結花が棒立ちになって何一つ行動しないままでいたことだ。
援護など必要なかったといえばそれで終いだ。
だがその後の行動から、結花があの騎士に恭順の姿勢を取っていると理解した時、草加の内に激情が雪崩れ込んだ。
長田結花が、オルフェノクが、死人の化物が―――更なる化物に庇護されようと尻尾を振っている。
衝動に任せて背後から飛びかかろうとした体を、まだ冷静さを残していた理性が必死に止めた。
敵の実力の程は今知ったばかりだ。
驚異的なスピードを誇る眼帯の少女を歯牙にもかけない圧倒的なパワーと耐久力。
かの怨敵北崎にすら抗し得る、あるいは凌駕するかもしれない強大な存在。
自分と黒騎士との戦力分析は、オルフェノクへの偏執的狂気を抑えるだけの結果をもたらしていた。
あの騎士が付いている限り長田結花には手を出せない。オルフェノクを滅ぼせない。
ここは引くしかないという適格な選択肢を、草加は屈辱と共に受け入れねばならなかったのだ。
"真理は呼ばれていない。無事ていてくれたんだな……"
放送を聞いたのは、ひとまずは鹿目家へと戻る帰路についていた時期だった。
冷めやらぬ激情のまま、しかし死者や禁止領域などの重要事項だけはメモに纏めていく。
死者の中に特に思い入れのある人物はいなかった。
強いてあげれば佐倉杏子が死んでくれたのが僥倖といえば僥倖だが、喜び勇むには値しない。
乾巧を始め、自分が知る限りのオルフェノクの名が呼ばれなかったのは、この手で引導を渡したい相手も少なからずいるため微妙な気分だ。
だが何においても、園田真理が生存していることだけは、心を解きほぐす一因だった。
客観的に見るなら、厄介ごとを招きやすい勝気な性格な為そこだけは心配だったが、この様子では杞憂に終わってくれたらしい。
草加にとって真理という女の存在は唯一、最優先で守るべき対象だ。
この際オルフェノクの殲滅は棚上げにして、彼女の捜索を進めていく頃合いなのかもしれない。
その過程であの騎士に対抗できる戦力を確保する機会も得られるだろう。
ただひとつ気がかりなのは、向かう予定だった流星塾が禁止エリアとして指定されてしまったことだ。
当てもなく真理を探すしかない現状で、数少ない互いに向かう可能性のあった場所が封じられたのは痛い。
しかし……自分から用意した施設を近寄れないようにするのは解せない。
完全に倒壊したスマートブレイン社なら解かるが、どれもこれも同じ惨状になっているとは思えない。
考えられる仮説は幾つかある。
例えば、主催にとって立ち寄られたくない場所を締め出す意味で指定されている場合。
そして、こちらの行動をコントロールする意図で仕組まれている場合。
いずれも可能性として候補に挙げられても、確定にまで導ける物証が欠けている。
望む結果を得たいというのに、手が届かないのがもどかしい。
709
:
私の世界を守るため
◆HOMU.DM5Ns
:2014/04/30(水) 13:34:29 ID:2PczfVrs
"もう、俺への信頼も十分に高まっている。少し押せば簡単に教えてくれるだろう"
一度、鹿目まどかから深い事情について聞きだす必要があるか。
今一番魔女や魔法について詳しいのは彼女だ。利用しない手はない。
思いがけないところで、これまでの行為が実を結んできたのに草加はほくそ笑む。
そうと決めれば、早速鹿目家へと戻るとしよう。
名前も呼ばれてない以上、自分の家で引き籠ってそれっきりのはずだ。
足早に踵を返し道を歩き始めた頃、耳に聞き覚えのある排気音が聞こえてきた。
近付いてくるバイクのエンジン音。明らかに、自分を目指して進んでくる。
ファイズの変身コードを入力してバックルに倒さないまま挿し、いつでも変身可能な状況に備える。
丁度こちらの進行方向、つまり鹿目家への道を塞ぐようにしてバイクに跨った二人組が姿を現した。
メットを外した壮年の男が、草加を阻むように対峙する。
「……何か用かな?
見ての通り独り身でね。咄嗟に何をするか自分でも確証がないんだけどな」
「恐がることはない。ちょっとした話をしに来ただけさ。
無論、そちらの対応次第で話の内容は変わってくるだろうがな」
口調には敵意こそないものの、隠す気のないとしか思えない威圧的な空気を纏わせている。
はっきり言ってこの時点で気に喰わない部類であり、男への警戒の念は強まる。
剣呑さが取り巻く中、仲裁するように前に躍り出たのは、同行していた銀髪の少女だった。
「驚かせてしまったのならすみません。
ですが私も、そして彼もあなたを害為す意思はありません」
いずこかの学生服に身を包んだ少女。
鹿目まどかより少し年上ぐらいだろうが、醸し出す気品のせいかそれよりも年かさに感じる。
「そしてそれはあなたも同じ筈……なら共有できる情報(もの)は分かち合うべきではないでしょうか。
知るという事自体、それがあなたにとっても新たな道標となることもあるでしょう」
「……ああ、 分かった。話し合いに応じよう」
どうやら、向こうの望みは情報交換らしい。
それはこちらにとっても願ったりだ。丁度、新しい情報源も欲しかったところだ。
敵対の意思がないのは確かだし、ここで突っぱねるのは上手い手ではない。
だがどちらも、自分に素直に靡く人間ではないだろう。男の方は見るからに油断ならない。
搾り取れるだけ搾って、後は放置するのが吉だろう。
710
:
私の世界を守るため
◆HOMU.DM5Ns
:2014/04/30(水) 13:35:00 ID:2PczfVrs
「つまり、会場の何処かにいる魔女を倒せばこの呪術式―――魔女の口づけとやらも消える。
と、いうことでいいのかな?」
「はい。草加さんのおっしゃった灰化……オルフェノクの死因のように多少の加工は施されてるようですが、
わざわざ『参考にした』と明言してる以上、最低限のシステムは模倣されて然るべきです。
この会場そのものも魔女の結界であれば、魔女の消滅と同時に解放される見込みもあります」
あくまで希望的観測ですが、と付け加えて少女、美国織莉子は自己の推論を説明した。
罠の可能性も見越して草加から指定した路地裏に移動し、まずは互いの簡略的な自己紹介をする。
魔法少女の美国織莉子に、ポケモントレーナーのサカキ。
今は共に進んで殺し合う気はないという。
言い方に含みがあるものを感じるが、今それを気にしても話は先に進まない。
出会った人物、経験した出来事。危険と思われる、実際に襲われた人物。
互いに情報を持ち込み検証を重ねた結果、収穫は草加にとって予想以上のものといえた。
中でも重要だったのは、厄介な呪術式の詳細が憶測混じりとはいえ判明したことだ。
人を限定空間に隔離してその身を食らう魔女なる存在。自殺衝動を植え付ける魔女の口づけ。
まどかからの証言と一致するし、この殺し合いの儀式そのものと符号する部分も多い。
これらが全て事実だった場合、魔女さえどうにかできれば事態が一挙に解決する事が出来る。
無論、鵜呑みにするのは危険だ。思い込みは視野を狭める温床に変わりやすい。
「……けど、全てを魔女に結び付けるのは早計だな。
君も言ったようにオルフェノクの能力、いや生態が組み込まれているし、スマートブレインの手も伸びているかもしれない。
奴らオルフェノクなら、こんな非道な真似も容赦なくやるからな」
その場合、社長である村上峡児も参加しているのが疑問となるが、奴らの社会構造など知りもしない。
いざこざに巻き込まれて切り捨てられたとしても、別に不思議ではあるまい。
アカギが強硬に技術のみを奪ったという線も捨てがたい。
その末路は大いに痛快である一方、与り知らぬ余所の手で復讐がご破算になったというのには忸怩たる感情も抱いていた。
「それは承知しています。
サカキさんの知るポケモンのように、私達魔法少女とは別の世界の要素がここにはある。
ですが、魔女あるいはそれに相当する存在が、式の構成の根源を担っているという確率は高いと見ていいでしょう」
「別の世界、ね。
確かにアカギもそんな事を言っていたが、まさか本当にそんなものがあるとはな」
アカギの発言に、サカキの話した神とも形容されるポケモン。
荒唐無稽な話だが、ニドキングというポケモンも見せられた上では無視するわけにもいかない。
願いを叶える対価に、魔女と戦う使命を背負う魔法少女。
オルフェノクに魔女。考えて見るとこの二要素にも類似した点は多い。
これらが同じ場所にひしめき合うというのも流石に無理がある。
なら別々に区切られた同士ということにすれば、草加にも折り合いが付けられた。
711
:
私の世界を守るため
◆HOMU.DM5Ns
:2014/04/30(水) 13:35:55 ID:2PczfVrs
「となると、次は魔女の潜む場所か。
そっちに心当たりはないのかい?」
「おおよその見当は。
もっともこの仮説が正しい場合、我々は八方塞がりとなってしまうわけですが」
「……やはり禁止領域か。連中の都合の悪いものを隠すにはうってつけだからな」
会場の行動範囲を狭めさせ、殺し合いというシステムを滞りなく進行させる措置である呪術式。
しかしそこに魔女という『儀式の核』が紛れ込んでいるとすれば、また別の意味を加えることが出来る。
つまり、禁止領域には核を守る障壁としての役割もあるということ。
織莉子の言う通り、この説を完全に認めるとほぼ詰みの形に入ってしまう。
最悪のパターンも想定しつつ、別の切り口を探していくのが懸命だろう。
「織莉子。君は既に魔女が会場内にいると断定しているようだが、その根拠は何だ?
魔女がこの儀式の核であるなら、安全な場所に隔離していた方が奴らにとって万全だろうに」
合議の結論を待ったをかけるような、重く低い声が耳に届いた。
このように、サカキは普段会話に参加せず傍観の立場を取っているのに、時折こうして声を挟んでくる。
それも決まって、こちらの意見が出揃い煮詰まった頃にまるで計ったようなタイミングにだ。
ここぞという時に、婉曲的にこちらの求めている答えを差しに来る。
もし正面きって話していたとしたら、上手いように誘導されていたかもしれない。
織莉子よりもよっぽどやりにくい相手だ。会話の主導を彼女に任せているのもその自覚があるからなのか。
「それは―――先程も伝えたように、結界とは魔女が効率よく人を襲う為の狩場のようなものです。
人が多く行き交う場所の隙間から獲物を誘い込み、外からの邪魔もなく逃げ場もない空間に閉鎖する。
だから魔女は、基本的に自分のテリトリーから出る事はない。
といより、結界そのものが魔女の一部ともいえるものです」
結界の維持に魔女の力が使用されているのなら、外部と切り離す事は出来ないのではないか。
直に魔女と戦ってきた経緯を持つ魔法少女としての見地だけに、否とは言い切れない。
それを抜きにしても、理屈は筋が通っているものだ。
「魔女は人を喰らうもの。絶望を糧とし肥え太る負の化身。
そんな人外の物の怪を、完全に支配下に置けることが果たして本当に出来たとして―――
この式などの維持にも必要なエネルギー、即ち餌が必要となる」
「つまり―――。
核が魔女の性質を備えているのなら、人間への食欲という本能も残っているかもしれない。
自らの領土内で死者が出れば、そいつが空腹に耐えかねて暴れ出すリスクも減ると」
締めくくるサカキの言葉に織莉子も頷く。
つまりは、魔女による「自殺死」を「他者同士の殺し合い」の形に置換しているわけだ。
そしてこの説は、アカギは魔女の全てを制御してるわけではない事実を示すものだ。
「……これ以上は仮定の上塗りです。
私の偏見に寄る部分も多くなりますし、ひとまずの結論はこれでいいでしょう」
712
:
私の世界を守るため
◆HOMU.DM5Ns
:2014/04/30(水) 13:36:45 ID:2PczfVrs
『呪術式』は、『魔女、あるいはそれに相当する存在(以下、魔女と呼称する)』によって作用している。
『呪術式』は、オルフェノクの灰化等、多数異世界の技術によって加工されている。
また、会場の構築も『魔女の結界』に分類される可能性がある。
その場合、『魔女』を倒す事でそれらを全て消失できる見込みがある。
『魔女』は、この会場のいずれかに潜んでいる可能性が高い。
『禁止領域』は、それを隠匿する意味も込められている。
アカギは、『魔女を操る術』を備えている。
アカギは、『時間と空間を操るポケモン』を捕獲、所持している可能性がある。
『魔女』とは、このポケモンである可能性もある。
それ以外に、オルフェノクに関する技術も保有している事から、『技術、資金的な協力者』を抱えている。
「こうして揃えてみると……殆どが憶測だな」
「想像できた、という時点で十分な進歩だ。
こうなれば後は、そこから何が真実かを見極める検証の時間になる。
そうやって虱潰しに選択肢を絞り、残った事実を法則として定める。人間の歴史はそうやって続いている」
サカキの言う通り、不確かといえど、何の手がかりも得られなかった以前からすれば比べ物にならない前進といえる。
なら次は、推論を如何に正論に変えていくかの行程に進んでいく。
「判明している時点で、この儀式の根幹を成しているのは三つ。
魔女。
シンオウ地方に伝わる、時間と空間を操るポケモン。
オルフェノク、ひいてはスマートブレインの技術。
これらについてより深く知悉している者と接触するのが、目下の課題となるだろうな」
奇しくも、この場に集った三人は主催の保有する力とそれぞれに関係のある世界の人間だ。
この短時間に一定の仮説を揃えられたのもそれが理由だ。
同じことを、より広い範囲、広い関係で行えば、自ずと見えてくる答えがあるに違いない。
「オルフェノクの秘密、癪だが村上という男なら何か知ってるかもしれません。
しかし決して隙は見せないように。奴も卑劣なオルフェノクだ。
倒すという前提の元、あくまで機会があれば聞いてみるようにして下さい。」
草加が提示するのは、現スマートブレイン社長の村上峡児。
素直に情報を渡してくれるとは思えないが、どうせ殺すべき敵だ。
さんざん痛めつけた上で白状させるのには何の抵抗もない。
「シロナというトレーナー……アカギと同じ同じシンオウ地方出身でポケモンの歴史にも詳しい人物だ。
彼女なら詳しい話を聞けるかもしれないが……私の名は出さないでいた方がいい。
あまり良い関係とは言えないものでな」
サカキからは、アカギと直接関わりがあるかもしれないトレーナーが挙げられた。
この中では一番に会いたい相手といえる。
名を出さないよう忠告しているのは敵対した過去があるのかもしれないが、むしろ草加にとっては都合がいい。
やり用次第では、この男を追い詰める口実にも使える材料だ。
713
:
私の世界を守るため
◆HOMU.DM5Ns
:2014/04/30(水) 13:37:14 ID:2PczfVrs
「織莉子ちゃん、君の他に魔女について詳しい人はいるのかい?」
「……残念ながら、他の魔法少女が知るのは、私が知るそれと似たり寄ったりでしょう。
私達以外に魔女を感知できる者がおらず、戦いにのみ専心するので精一杯、
なのでそういった核心に迫る事は難しいのです」
目を伏せて、申し訳なさげになる織莉子。
その仕草を見て、草加ははっきりと胡散臭いものを覚えた。
草加は魔法少女の秘密の一端を知っている。
自らの魂を肉体と切り離してソウルジェムなる宝石に加工する。
そして、契約と称してその処置を執り行うキュゥべえなる使者。
この秘密を聞いたのは鹿目まどかからもたらされたもの。
美国織莉子は、この話題について一切触れることはなかったのだ。
ここにきて情報を渋むつもりか?だが事態解決に対しての織莉子の対応は積極的だ。
にも拘らず出し惜しみをするのは、弱みを見せて出し抜かれる懸念を抱いているからか。
それとも、本当に何も知らないのか。キュゥべえに騙された、とまどかは嘆いていた。
つまりキュゥべえは始めからその真実を隠したまま契約を迫ったことになる。
とんだ詐欺まがいの行為だが、今責めるべきは別の点にある。
織莉子は魔法少女について、どこまで知っているのか。
如何によっては、自分の中での彼女の評価を決めざるを得なくなる分水嶺だ。
全てをまとめて暴露してもいい。そうすれば結果ははっきりとする。
しかしまどかの友人はこの事実を知った時大層ショックを受けたと聞いている。
織莉子が知らなかった場合、自分が騙された事を知り同じ状態に陥る危険性もあった。
まかり間違って錯乱でもされようものなら被害を受けるのはこっちだ。
始末するのならともかく、今されても要らぬ手間が増えるだけだ。
「織莉子ちゃん。少し聞きたいんだけど―――」
密やかに算段を立てる草加の前で、織莉子が突如、あらぬ方向へと首を向けその先を食い入るように見つめた。
周囲に物音はしない。誰かそば耳を立てている者を見つけたと思ったが、そうでもないらしい。
「草加さん。
あなたが捜していると仰っていた、園田真理さんですが―――」
そういえば、と彼女が言っていた事を思い出す。
魔法少女はその願いに応じて固有の魔法が使えるようになると。
織莉子自ら申告してきた、その魔法は確か―――
「今、その人と思しき女性の姿が視えました。
場所は、施設から見てこの先、D-5の病院内に立ち入っているようです」
714
:
私の世界を守るため
◆HOMU.DM5Ns
:2014/04/30(水) 13:37:46 ID:2PczfVrs
予見と予知の魔法少女の発した言葉は、草加の思考を染め上げるのに十分な衝撃だった。
今まで考えてた全てが頭から吹き飛んで、織莉子に激しく食ってかかった。
「なに……!?本当なのか、それは!?」
「ええ。あなたからの外見特徴が正しければ、それと一致した方の顔が映りました。
ですがどうやら……彼女は今危険な状況に置かれているようです」
目を伏せて申し訳なさげの織莉子だが、草加に渦巻くのは信用ならないという疑念だ。
予知のタイミングは突発的だと聞いていても、このタイミングは都合がよすぎる。
真に受けるにはあまりに危険と勘繰るのも無理からぬことだった。
「……私の言葉が疑わしいと思うのは当然でしょう。
奸計に陥れんとしてるのかと見做されるのも仕方のないことです。
ですが―――」
細い指に嵌められた指輪から出現した、装飾の施された宝玉を草加へと見せる。
美しい銀色の内部には、澱むような濁りが混ざっていた。
「魔法には、対価がある。
魔力を使う度ソウルジェムには濁りが生じ、疲労のように蓄積され、私達の負担となる。
私の魔法は範囲が広い反面、常時機能させておくには消耗が激しすぎる。
それをあなたのご友人のために使用した―――この意味をもって、今は納得して頂けないでしょうか」
しかし、何よりも守るべき相手と誓った人が目に見え、手に届く場所にまでいると知れば。
避けれる危険を冒してまで、急ぐ意味がある。
草加雅人にとっての園田真理こそ、その価値を求めるだけの愛の姿だ。
「―――ッ!済まない、そのバイクを借りるぞ!」
返事を待つことなく、停めてあったバイクに駆け走る。
キーは奇襲を想定してか、繋がったままなのが幸いした。エンジンをかけグリップを握り締める。
元々このオートバジンはファイズのために宛がわれたサポートメカ。
ファイズを所持している自分こそが、一番の性能を引き出せる。手元を離れた所有物を取り戻すのは当然のことだ。
路地裏の出口に振り向きざま、持っていた最後の支給品を置いていく。
まどかから聞いたこれの用途が、魔法少女に必要なものであるのは分かっている。運賃代には十分釣り合うものだ。
アクセルを上げ、路面を疾駆する。
真理がいるとされる病院とはせいぜい2キロもない。バイクという高速で移動する手段がある今ならば僅かな時間で到着できる。
715
:
私の世界を守るため
◆HOMU.DM5Ns
:2014/04/30(水) 13:40:52 ID:2PczfVrs
予言が真実であるならば、いい。
真理の救出に繋がり、織莉子自身にも利用価値を見いだせる。
心から善意で援助をしてくれたとすれば、役に立つ駒として協力してもらいたいものだ。
だがもし自分を利用するために真理の名を出汁に使い、偽の情報を渡したとすれば……。
そうなればあの二人は草加にとってただの障害だ。オルフェノク同様始末する対象に決定される。
悪評を広め、孤立させ、当て馬をぶつけてじわじわと嬲り殺す。
自分を好きにならない人間は、全て邪魔でしかないのだから。
真理―――。
今すぐ会いたい。笑顔を見たい。声を聞きたい。
優しく甘美な手で、子をあやす母親のように触れて欲しい。
その為に―――君を害する奴は全て滅する。
人も化物も区別なく、謂われなく死に目に会わせる。
全ては、君という存在を護る為。
俺という存在を守る為。
己の内を占める我心(エゴ)を膨らませ、銀の車体は直進を続けていく―――
716
:
私の世界を守るため
◆HOMU.DM5Ns
:2014/04/30(水) 13:41:35 ID:2PczfVrs
☬ ☬
止める声をかける暇もなく、草加雅人はこちらの所有していたバイクに乗り込んで路地の影に消えて行った。
尤も、始めから止める意思など美国織莉子は持ち合わせていなかったが。
運賃代わりとばかりに置き捨てられていったグリーフシードを拾い、自らのソウルジェムに重ねる。
度重なる予知魔法と感情の濁りで、穢れは五割に達しようとしていた。
その溜まった穢れを吸収させ、制服のポケットに仕舞う。
もたらされた情報のおかげで、検証の余地がある推論も立てられた。
……まあ、一部の方に随分偏見的な意見も見られたが、差し引いてもお釣りが出るほどに価値はあっただろう。
サカキは勿論、織莉子にも、特に。
「行かせてしまって、よかったのか?」
問いただすサカキは、今まで移動に使ってきたバイクを横取りされて、些か不機嫌そうに見える。
「替わりのない大切な人を救わんとする……彼のその思いだけは本物だと思いましたから。
彼が間に合い、犠牲が出ないのであればそれが一番望ましい形です」
「ほう、するとあの予知は本当だったわけか。
私はてっきり、あの男を余所に飛ばす為の方便かと思ったが」
「……サカキさんは、人が悪いのですね」
言外の意味を込めたのでもない、率直な感想だった。
なのにそれを聞いたサカキは堪え切れないとばかりに吹き出し、愉快そうに忍び笑いをした。
「……クハッ!いや失礼。馬鹿にしたつもりはないんだ。
しかし、そうだな……仮に私が悪い人だったとして、君は私をどうする。
正義の名を立てて罰するかね?」
「いえ。それには及びません。
法の裁きとは、それが機能しない場でない限り効力は持ちません。
ここはアカギ個人が支配する無法の地。まして次元の異なる世界に住まう人同士が邂逅している。
あなたの過去の罪業に対して、私が裁く権利は持ち合わせておりません。
あり得るのは、この場において私に害をもたらす行為をあなたが起こした時になるでしょう」
「ありがたい限りだな、それは。では慎ましく自重してるとしようか」
この男は、少なからず犯罪に手を染めているのだと織莉子は直感した。
汚職を犯した父、本家の傲慢で冷徹な叔父達とは隔絶たる違いのある、より大きな野望を掲げる大志。
それは、初めて対峙し、言葉を交わした頃から察していたものだ。
相互に協力し合える「味方」ではあっても、背を預けられる「仲間」には、決してなれない。
717
:
私の世界を守るため
◆HOMU.DM5Ns
:2014/04/30(水) 13:42:11 ID:2PczfVrs
「それより、元より了解は得ていましたが、私が先導する形で本当に宜しかったのでしょうか」
「寂れた中年より、可憐な少女に頼まれた方が色よい返事も貰えるというものだろう?」
「お上手な事を」
この関係を、不満とは思わない。
むしろ現環境では最上と言ってもよいだろう。
ポケモンの知識を持ち、サカキ自身にも優れた判断力、統率力がある。
直に草加と話して中心に立っているつもりでも、その実背中から手綱を取られている気すらある。
裏を取られるのは危険。本当ならもう少しの間、腹の探り合いに終始していたかもしれない。
けれど、その結果もたらしたのが、彼女―――呉キリカの死だ。
因果関係はないものだとしても、消極的に動いていたのが恨めしい。
キリカの死を、その直前まで予知出来なかった自身が許せないでいた。
この自責に押し潰されてはいけない。故に、為すべきは使命の完遂だ。
焦りはあるだろう。
心に気づかぬ隙が生まれ、油断ならない同行者につけこまれるのかもしれない。
リスクを承知し、危険があるのは予知せずとも考え付く。
それでもなお、手にする未来が視えているのなら。
伸ばして指にかかる所まで、近付いているのなら。
「遅れましたが、ここからは予定通り鹿目邸へと向かいます。
幸いバイクがなくとも近い距離です。徒歩でも時間はかからないでしょう」
「―――仇を討ちには、いかないのか」
断層で生まれたばかりの亀裂の隙間に差し込むような、サカキの鋭利な一言が胸を刺した。
脳裏に浮かぶ黒い騎士。
自分とサカキを圧倒した魔女を凌ぐ魔王。
草加からの目撃で判明した、呉キリカを殺した者。
湧きあがる黒々とした情感。
煮えたぎる溶岩のような気持ちを、決然とした意思で掻き消した。
「………………いずれ、打倒しなければならない相手なのは変わりません。
ですが今は、その時には遠い。斃すと決めた限り、万全を期さなければ意味がないのですから」
ここで我を忘れ躍起になり、勝算のない復讐を優先するのは、キリカの望む私ではない。
自惚れでなく、彼女を深奥まで理解しているからこその、感情値への折り合いだった。
「確実に始末するのに十分な戦力を確保するか。
冷静な判断だな、実に結構」
……やはりこの男は、人が悪い。
少しばかりの不満を溜め込みつつ、サカキの後を追い暗い路地裏を出ていく。
陽は天上に昇り、燦々と照らしている地上を、白と黒の男女は緩やかな足取りで歩いて行った。
718
:
私の世界を守るため
◆HOMU.DM5Ns
:2014/04/30(水) 13:42:36 ID:2PczfVrs
美国織莉子は抱えている。
呉キリカへの愛を。
それを奪った黒い騎士への殺意を。
それらを制御できるほど強靭な、自己の存在の意義を。
そして自分だけが秘め持つ、真実に辿り着く一片を。
ソウルジェムの秘密。
魔女を生み出す孵卵器という本来の役割。
それを仕組んだ全ての元凶、インキュベーター。
これらの公開に踏み切るのはまだ早い。
鹿目まどかという極上の魔女がいるためその可能性を否定してきたが、
儀式の構築に魔女が大きく関わってるとなると、その考えにも迷いが出てくる。
その疑念を決定的にしたのが、キリカの死を目にした瞬間だ。
魔力を浪費し、感情を疲弊させ、ソウルジェムの濁りが臨界に達した瞬間。
ソウルジェムという卵の殻を破って、魔女という雛は誕生する。
あの時のキリカのジェムの濁りは、魔女が生まれる直前まで溜まり切っていた。
なのに魔女は生まれず、宝石が砕けてキリカが絶命するだけに終わった。
これだけなら、単に制限の一環と見落としていただろう。
殺し合いをさせる隔離させた場所で、更に隔離させる結界が出来るのは許すわけがないと。
だが間近で砕け散る瞬間に立ち会った織莉子は、それだけでは説明できない現象を見つけていた。
罅割れ、亀裂を深めるキリカのソウルジェム。
完全に割れる直前、それは姿を変じ、グリーフシードへとなろうとしていた。
つまり、正確には割れたのはソウルジェムではなく、グリーフシードなのだ。
ソウルジェムのまま砕けるのとでは、これは雲泥の差がある。
そして新たな疑問が出てくる。その際に生まれた筈の魔女は、いったい何処に消えたのか。
そのヒントこそが、草加とサカキとによって練られた考察だった。
呪術式、それに結界が魔女を源として機能しているという仮説。
この説を正解と取るならば、プレイヤーと魔女は式を媒介にリンクしているのを意味している。
719
:
私の世界を守るため
◆HOMU.DM5Ns
:2014/04/30(水) 13:42:58 ID:2PczfVrs
だとすれば、だ。
グリーフシードから漏れ出た魔女を、外界に現出するよりも前に、その魔女が式を通じて吸収したという説は成り立たないだろうか。
グリーフシードが支給されるにおける問題点も、これなら解決できるのだ。
穢れを取り込んだグリーフシードはまた新たな魔女を生み出す。
アカギが望むのはあくまでプレイヤー間による殺し合いだ。
参加者ですらない、自律的に暴走した支給品が介入するのは避けたいに違いない。
それも会場が魔女の結界の範囲内だとすれば、グリーフシードごと魔女を取り込むという芸当も可能かもしれないのだ。
魔女を喰う魔女など聞いたこともないが、もし可能ならこれほど強大な結界を築けるのにも理屈が立つ。
この仮説は、儀式の核心に迫る真実であると同時に、魔法少女にとっては災厄になりかねない諸刃の剣だ。
最悪、敵意を向けてくる者もいないとは限らない。
あの草加雅人も、人外のものへの異常な敵愾心を見せていた。
味方になり得るかもしれない人をも敵に回す仲間割れは、可能な限りは避けたいものだ。
だから、この考えはまだ公にするべきではない。
参考に編まれた考察自体、穴の多い不十分な出来だ。
ありもしない空想に不安を抱き、迷走の果て自滅するなど、それこそキリカに向ける顔がない。
それに考えが正しく、本当にインキュベーターが関わってるとすれば、絶対に知られてはいけない。
以上の思考は、織莉子が殺し合いの儀式を破る為に巡らせているもの。
それとは別の、織莉子自身が果たさなければならない使命。
全ては、その使命を果たす方にこそ優先すべきだ。
邪魔の入りづらい特殊極まるこの環境を利用して、己が大望を叶えてみせる。
砕けた魂の欠片を握り締める。
掌に伝わるのは心の温もりではなく、硬く冷えた肉に食い込む感触。
こんな小さなカケラの中に、かつて自分に全てを奉じてくれた少女がいた。
人格すらも投棄して変換して、何もかもを捨ててでも守ると誓った、傍から見れば哀れにも見られる命。
無意味な犠牲になるなど、無価値な石くれになるなど、絶対に赦さない。
歩く先にあるのは、遠からず見えてくるだろう一件の家。
千里を透かす未来(め)に映った、幼い一人の少女。
破滅の引き金。
悲劇の温床。
絶望を救済に変える路は、あと僅かで終着を迎えようとしていた。
720
:
私の世界を守るため
◆HOMU.DM5Ns
:2014/04/30(水) 13:44:14 ID:2PczfVrs
☬☬
"織莉子の魔法少女の衣装ってさ。可愛いよね。
白くてヒラヒラしてて、まるで蝶々みたいだ"
汚れを払い清め終わった顔は、膝の下を占拠して眠っているのと変わりない、安らかな寝顔。
頬を撫で、腕を通して急速に胸まで迫ってくる冷たさを感じなければ、これが死体とは思えないほど、綺麗な有様だった。
"そのままでも十分、有り余るほど綺麗で可愛らしくて美しいけど、月夜で踊る様なんかは、それはもう輝くほど素敵なんだろうな"
少し待てば唐突に瞼を開き、跳ねるように飛び起きてお茶とお菓子を催促してきそうな、そんな夢想をしてしまう。
砂糖三個にジャム三杯の、甘い甘い、シロップの思い出。
"ねえ織莉子。君の使命が終わったらさ。
そうじゃなくても、魔女の出ない夜があったらさ、二人で一緒に公園にでも出かけない?"
あなたは知っているだろうか。
共に過ごした生活に、あなたという友達がいてくれたことに、私がどれだけ救われていたか。
"ん?何をするかって?月の光だけに照らされて、夜の公園で踊るのさ。
そこらの有象無象のアイドルなんかとは比べ物にならない、ヲタクとやらが視たら腰砕けものだよ。私が保証する"
あなたは私(おりこ)を見てくれた。
私を個人(おりこ)として扱って、とても大切な人だと言ってくれた。
無邪気にじゃれ合うあなたと同じくらい、私もあなたに甘えられていた。
721
:
私の世界を守るため
◆HOMU.DM5Ns
:2014/04/30(水) 13:44:34 ID:2PczfVrs
"―――え?踊るなら私も?
む、無理無理無理無理!私、踊ったことなんかないし―――え、織莉子もないの?ホントに?
ブルジョワって休日は夜な夜な社交パーティーとかしてるもんじゃないの?"
あなたと過ごした時間は、短い人生においてさらに短い秒針に過ぎないけれど。
あなたがくれた思い出は、装飾だった私の人生と比べてもより重く、光り輝いた宝石のようだった。
"う……君からの頼み、ときたか。
困った。それは、断れない。
ええい、こうなりゃヤケだっ、誘ったのは私なんだし腹はくくる!
だからその―――ヘンテコな動きでも、笑わないでくれよ?"
あなたが―――私の、希望(ひかり)だった。
呉キリカという希望が持っていた思い。叶えたい願い。
最後まで信じてくれた美国織莉子こそが、その結晶だ。
それを忘れない限り、私の中には希望が生き続ける。
あの頃のように絶望するコトなんて、ない。
"約束だよ、織莉子"
キリカ。たったひとりの、私の友達。
わたし(あなた)の世界を救うためなら、私はどんな罪を背負う事になろうとも、構わない。
722
:
私の世界を守るため
◆HOMU.DM5Ns
:2014/04/30(水) 13:45:53 ID:2PczfVrs
【E-6/市街地東部/一日目 昼】
【美国織莉子@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]:ソウルジェムの穢れ(0割)、白女の制服姿、深い悲しみと揺るがぬ決意
[装備]:グリーフシード(濁り:5割)、砕けたソウルジェム(キリカ)
[道具]:共通支給品一式、ひでんマシン3(なみのり)
[思考・状況]
基本:何としても生き残り、自分の使命を果たす
0:鹿目邸に向かい―――
1:鹿目まどかを抹殺する。ただし、不用意に他の参加者にそれを伝えることはしない
2:優先するのは自分の使命。そのために必要な手は選ばない。
3:キリカを殺した者(セイバー)を必ず討つ。そのために必要となる力を集める。
4:ポケモン、オルフェノクに詳しい人物から詳しく情報を聞き出す。
5:積極的に殺し合いに乗るつもりはない。ただし、邪魔をする者は排除する
6:サカキと行動を共にする。隙は見せないが、事態打開に必要であれば情報手助けもする。
[備考]
※参加時期は第4話終了直後。キリカの傷を治す前
※ポケモン、オルフェノクについて少し知りました。
※ポケモン城の一階と地下の入り口付近を調査しました。
※アカギに協力している者がいる可能性を聞きました。
キュゥべえが協力していることはないと考えていましたが、少し懐疑的になっています。
【サカキ@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:左腕に裂傷(軽度)
[装備]:高性能デバイス、ニドキングのモンスターボール(ダメージ(小)疲労(小))@ポケットモンスター(ゲーム)
[道具]:共通支給品一式 、技マシン×2(サカキ確認済)
[思考・状況]
基本:どのような手段を使ってでも生き残る。ただし、殺し合いに乗るつもりは今のところない
1:『使えそうな者』を探し、生き残るために利用する
2:織莉子に同行する。暫くは自由にさせるが主導権は渡さない。
3:織莉子の提案通り、鹿目邸を調査。その後市街地を巡回した後病院へ向かう。
4:ポケモン、オルフェノク、魔女に詳しい人物から詳しく情報を聞き出す。
5:力を蓄えた後ポケモン城に戻る(少なくともニドキングとサイドンはどうにかする)
6:『強さ』とは……何だ?
7:織莉子に対して苦い感情。
[備考]
※『ハートゴールド・ソウルシルバー』のセレビィイベント発生直前の時間からの参戦です
※服装は黒のスーツ、その上に黒のコートを羽織り、黒い帽子を頭に被っています
※魔法少女について少し知りました。 織莉子の予知能力について大凡明確に理解しました。
※ポケモン城の一階と地下の入り口付近を調査しました。
※サイドンについてはパラレルワールドのものではなく、修行中に進化し後に手放した自身のサイドンのコピーだと思っています。
【草加雅人@仮面ライダー555】
[状態]:負傷(中)
[装備]:ファイズギア@仮面ライダー555(変身中)、オートバジン@仮面ライダー555
[道具]:基本支給品、
[思考・状況]
基本:園田真理の保護を最優先。儀式からの脱出
0:病院に急ぎ、真理を助ける。
1:ついでだがまどかに有る程度、協力してやっても良い
2:オルフェノクは優先的に殲滅する。そのためにLと組む
3:織莉子とサカキは今の所信用する。だが織莉子が嘘言を弄していた場合は……
4:ポケモン、オルフェノク、魔女に詳しい人物から詳しく情報を聞き出す。
5:Lとの約束のため病院か遊園地へ
3:長田結花は殺しておく。……が、今は手出し出来ない。
6:地図の『○○家』と関係あるだろう参加者とは、できれば会っておきたい
[備考]
※参戦時期は北崎が敵と知った直後〜木場の社長就任前です
※自分の知り合いが違う人物である可能性を聞きました
【オートバジン(ビークルモード)@仮面ライダー555】
現在の護衛対象:草加雅人
現在の順護衛対象:
[備考]
※『バトルモード』時は、護衛対象の半径15メートルまでしか行動できません
※『ビークルモード』への自律変形はできません
※順護衛対象はオートバジンのAIが独自に判断します
723
:
私の世界を守るため
◆HOMU.DM5Ns
:2014/04/30(水) 13:47:55 ID:2PczfVrs
[情報(織莉子、サカキ、草加)]
考察(織莉子、サカキ、草加)
ポケモン、オルフェノク、魔法少女と魔女について基本的な情報
危険人物の開示(バーサーカー、黒い騎士(セイバー)、乾巧、北崎、木場、結花、海堂)
(織莉子、サカキは一部人物情報に懐疑的)
[考察(織莉子、サカキ、草加)]
『呪術式』は、『魔女、あるいはそれに相当する存在(以下、魔女と呼称する)』によって作用している。
『呪術式』は、オルフェノクの灰化等、多数異世界の技術によって加工されている。
また、会場の構築も『魔女の結界』に分類される可能性がある。
その場合、『魔女』を倒す事でそれらを全て消失できる見込みがある。
『魔女』は、この会場のいずれかに潜んでいる可能性が高い。
『禁止領域』は、それを隠匿する意味も込められている。
アカギは、『魔女を操る術』を備えている。
アカギは、『時間と空間を操るポケモン』を捕獲、所持している可能性がある。
『魔女』は、このポケモンである可能性もある。
それ以外に、オルフェノクに関する技術も保有している事から、『技術、資金的な協力者』を抱えている。
以上の説の検証の為、ポケモン、オルフェノク、魔女に詳しい人物から詳しい事情を聞き出す。
オルフェノクについて:村上峡児(強硬手段も視野に入れる)
ポケモンについて:シロナ(比較的穏健に接触可)
魔女について:?
[考察(織莉子のみ)]
ソウルジェムから生まれる魔女は、この儀式を構成している『魔女』に吸収されている。
グリーフシードから生まれる魔女も同様である。
裏付けが取れるまで、この考察はなるべく秘匿しておく。
724
:
◆HOMU.DM5Ns
:2014/04/30(水) 13:53:29 ID:2PczfVrs
以上で、仮投下終了します
やや長いですが、
>>710
以降と
>>719
内の内容が許容範囲かを見て頂きたいです
確定情報でなく個人の考察によるものですが、念のために
問題なければ今夜中にでも本投下を始めたいです
最後に、連絡等の遅延について申し訳ありませんでした
今後はこのようなことがないよう精進します
725
:
名無しさん
:2014/04/30(水) 14:55:08 ID:XDR1wtN6
仮投下お疲れ様です
特に問題は無いと思いますよ
726
:
名無しさん
:2014/04/30(水) 15:22:43 ID:YAIDBLvA
仮投下乙です。
自分も特に問題はないと思います。
それと、新トリを使っているのなら、前は何のトリップを使っていたかも説明した方がいいかな? と個人的に思います。
ただ、これは自分の考えなので不必要だと思ったらしなくても大丈夫ですので。
727
:
名無しさん
:2014/04/30(水) 15:24:57 ID:YAIDBLvA
すみません、下の部分は余計だと書いた後に気付いてしまいました。
余計な発言をして、失礼いたしました。
728
:
◆HOMU.DM5Ns
:2014/05/01(木) 01:08:51 ID:Uovp.9Ac
考えて見れば本スレじゃ出したことないですね
とりあえず1レス目だけは前トリ出しておくことにします
それじゃあ了解も得られたようなので本投下してきます
729
:
◆Z9iNYeY9a2
:2014/06/17(火) 22:59:19 ID:CXoCq6.U
本スレ
>>651
を以下の内容に差し替えます
ここまで来れば、サカキには織莉子の狙う者が誰であるのか、推測は立っていた。
(鹿目邸、そういえば名簿には鹿目まどかという名前があったな)
ポケモン城やポケモンセンターのように何かしら役に立つであろう施設でなさそうな、まるで参加者との関わりを持っているということで載せられたのではないかと思えるような。
名前からは民家としてしか推測できない施設。
先に立ち寄った衛宮邸も特に何かあるわけではなかった。鹿目邸とて同じである可能性は高い。
ではそこへ行く確率の高い参加者といえば誰か。
件の鹿目まどか、あるいはその関係者だろう。
無論、それを敢えて問うような真似はしない。
彼女が狙っている者が何であるかについて、そこまで踏み込もうとは思わない。元より彼女のその目的とこの殺し合いからの脱出は別の問題だ。
やがて、一つの家が目に入る。
表札を確かめるとそこにあるのは鹿目という文字。彼女の探しものはここにあるようだ。
「…私の探す人物と、もう一人の何者かがこの中にいるようですね」
「それは、君の見た未来か?」
「それもあります。先に見た未来はこの家に一人の参加者の存在を見せました。
ただ、それとは別に私のソウルジェムが僅かに反応を示しています。私達のような魔法少女か、あるいはそれに近しい存在がもう一人、ということになります」
「まるでその見たという人物にはそういった力が何もないと確信しているかのようだな」
そう言うと、織莉子の顔に僅かな動揺が走った。
探りを入れたかったわけではない。
だが、ここまでくれば隠しきれるようなものでもない。気付いていないようなら、一応指摘しておくべきかという小さな親切心だ。
「何も言わないでください。これは可能な限り内密に行わなければならないことなのです」
「ああ、私も何も聞きはしないさ。それで、私はどうすればいいのかな?」
「………」
どうするべきか、と織莉子は考えるように無言になる。
おそらくは彼女にとってイレギュラーとなるのは、今この中にいる、その彼女の抹殺対象の同行者。
抹殺対象だけならば手を煩わせることもなく終わらせられたのかもしれない。
そしてそれは、彼女にとっては失敗を許されないことなのだろう。
こうなってくると、彼女としてはあのバイクを手放したことを後悔しているのかもしれない。
「何、私にそう負担のかかるものでないのならば、少しくらいの手助け程度なら構わん」
織莉子の瞳に、迷いのようなものが見える。
おそらくは葛藤しているのだろう。己の手で成し遂げねばならないという使命感に近い何かと、決して失敗することができないという責任感か何か。
しかし、迷っている時間も惜しいと思ったのだろう。数秒の沈黙の後、織莉子は口を開く。
「…これは私の問題です。この私の手で成し遂げなければならないこと。
ですから、サカキさん。この家から離れた場所で待機していてください。そう時間は取らせません」
「手助けはいらない、と?」
「ただ、それにあたって、一つだけお願いしたいことがあります」
「ほう」
「あのわざマシンという道具の力を、この家の周囲に巡らせていただきたいのです」
失敗は許されない。
決して逃がすわけにはいかない。
挑むならば、後顧の憂いは可能な限り断っておかねばならない。
730
:
名無しさん
:2014/06/18(水) 02:00:53 ID:8Y7MK3Gg
ありがとうございます。これなら大丈夫だと思いますよ。
731
:
◆Z9iNYeY9a2
:2014/06/26(木) 23:45:33 ID:6UXuojpU
期限過ぎた後で何ですが推敲に不安があるのと少し気になるところがあるので一旦こちらに投下します
732
:
◆Z9iNYeY9a2
:2014/06/26(木) 23:46:33 ID:6UXuojpU
さっきから謎のざわめきを感じていた。
最初は体のダメージが体調に影響を及ぼしているのかと思っていた。
だが、あまりにざわつきは続いている。
少なくともあの戦いの後からのものだというのは何となくだが感じ取っている。
ゼロ、そしてバーサーカーとの戦い。
未知なる進化を果たしたポケモンの姿を見たこと。
いや、おそらく原因はそれではない。
そういった類の興奮、動揺ではない。
この感覚は、まるで己の元となったポケモン、ミュウと会った時のような―――――
□
道を往く3人、いや、2人と1匹。
各々に少なくない傷を負っているが歩みに支障をきたしている者はいない。
先頭を行くシロナはただの人間ながらダメージ自体は最も少なく。
ミュウツーはダメージが最も大きいがサイコパワーで移動するため痛みさえ耐えるならば移動に支障はなく。
さやかはダメージもあり片目の傷は治っていないため移動に支障がないわけではないが、それでも魔法少女という肉体、そして自身への嫌悪感は彼女を休ませはしなかった。
そんな時、ほんの少しだけ、シロナがまるで何かに呼びかけられたかのように顔を上げて足を止めた。
そのまま振り返ろうとして、しかしシロナは振り向くことなく前を向いたまま歩いていた。
偶然かどうかは分からない。
ただ、その時シロナが何かを感じ取ったその瞬間。
ガブリアスは金色の光の中、狂戦士に最後の一撃を放ち消滅していったこと。
それを知る者は、知ることができた者は、この中にはいなかった。
それから間もなくだろうか。
どこからともなく響いた声が、まるでアラームのように一つの事実を知らせた。
定時放送の時間が来たのだ。
『12:00、定刻通り死亡者、並びに禁止領域の発表を始めよう』
全く感情のこもらぬ冷たい声。
ここへ来て3度目になるだろうアカギの声が、周囲に響き渡る。
思わず足を止める3人。
例えそこから名前が呼ばれることがないと願いたくとも、彼ら自身がすでに誰の名が呼ばれるのかをある程度は知ってしまっている。
その知りたくもない確認、そして未だ知らぬ死者の名を聞かねばならぬという事実もまた受け入れねばならないのだ。
733
:
◆Z9iNYeY9a2
:2014/06/26(木) 23:47:00 ID:6UXuojpU
「死亡者は
ナナリー・ランペルージ
ロロ・ヴィ・ブリタニア
ユーフェミア・リ・ブリタニア――――」
ユーフェミアの名に、さやかが僅かに反応した。
「ニア
藤村大河
クロエ・フォン・アインツベルン―――」
クロエ・フォン・アインツベルンの名に、その場にいる一同が息を飲み込む。
分かっていたはずだ、覚悟していたはずだと。
あの場に残していった時点で、バーサーカーか彼女とガブリアス、どちらかが倒れることになるのだ、と。
「ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト
バゼット・フラガ・マクレミッツ
オーキド・ユキナリ――――」
さやかが政庁で会った、クロの知り合い。
ミュウツーが一時的に共闘した、かなりの力を秘めた人間。
そして、シロナにとっても名の知れた存在であり、ミュウツーにとっては若干苦い思いもあった博士。
殺し合いで出会った者達が、そしてそれ以前から存在を知っていた者達が、次々と名前を呼ばれていく。
そして。
「 佐倉杏子 」
その名前が呼ばれることは、美樹さやかにとっての罪の象徴。
「呉キリカ
以上の11名――――」
そして、佐倉杏子の名を耳にした辺りから、さやかの様子に変化が生じる。
体をふらつかせながら膝をつく。
一見するとその様子はまるであの放送で呼ばれた名前に悲しみを感じているようにも見える姿。
だからこそ、シロナもミュウツーも、気付くのが遅れてしまった。
その様子が本格的におかしくなりはじめたのは、放送が終わって間もなくだった。
頭を掻きむしるように抱え、呻きながら体を小さく丸め始めたさやか。
明らかに何かおかしいその様子に気付いたシロナは、さやかに駆け寄り。
「さやかちゃん?だいじょう―――」
大丈夫?と声をかけようとして気付く。
さやかの上げた顔。その瞳にさっきまであったはずの光が無く、虚ろな目の中に真っ暗な闇を映し出していることに。
そしてシロナはその瞳を知っている。先に彼女が自分達を襲った時、気絶するほんの一瞬前に見た表情。
それが、今目の前にいる彼女の顔とあまりに似ていた。
さやかの中に入り込んだ異物、彼女を狂気に落とさせるきっかけとなったもの。
破壊の遺伝子。
確かにそれは美樹さやかの精神を狂わせるきっかけとなった物質ではある。
しかし、それだけが原因ではない。
もしもさやか自身に強い意志さえあれば、破壊願望に任せたまま狂気の道に堕ちることはなかったかもしれない。
ゲーチスの言葉に耳を傾けていた時のさやかは、強い自己嫌悪と破滅願望を身に宿していた。
そんな弱った心に破壊願望を植え付ければ、その隙間に入り込み意識を奪うのは容易だった。
今のさやかはクロによって注入された精神安定剤によりどうにか安定を保っていた状況。
その効果も少しずつ切れ始めていた時に、あの放送によりさやかの思い出したくない記憶が脳裏に浮かび上がってしまった。
佐倉杏子を殺した、そしてそれを巴マミに責められ撃たれたという事実。自身にとっての最大のトラウマ。
それは、精神安定剤が効果を切らしつつあった美樹さやかの体を、少しずつ狂気の道へと誘いつつあったのだ。
「どうした」
「さやかちゃんの様子が。何か薬のようなものを使われたみたいで、放送を聞いてから様子がまた…!」
そのまま腕を振り上げシロナに拳をぶつけようとしたさやかの体を、ミュウツーはサイコキネシスで取り押さえた。
しかし、予想外の力を出してそれすらも振り解こうとしている。明らかに生き物の限界を超えた力を発揮しようとしている。
ここでさらに魔法少女に変身されたら取り押さえることはできない。
ソウルジェムが光を放ちかけたその瞬間、ミュウツーはさやかの頭に強いサイコパワーをぶつけた。
734
:
◆Z9iNYeY9a2
:2014/06/26(木) 23:47:20 ID:6UXuojpU
「―――――」
脳に強い衝撃を受けたさやかは体をふらつかせて地面に倒れこんだ。
一応物理的なダメージは残らないようにしたはず。
しかし油断はできない。
このままの状態で目が覚めれば、彼女はまた暴れ出し人を襲うだろう。
ならばどうするべきか。
ここで殺す。
一番楽な手段ではある。しかしそれではここに来るまでの自分と何も変わらない。
そもそも殺すだけならばクロにも可能だったはずだ。それを生かしておいたというのならば、彼女の生にも何か意味があるのかもしれない。
ならばどうするか。
もし彼女の体にサイコパワーを送り込み、体のどこに異常があるのかを確かめることができれば、何故彼女がこうなったのかを調べ、あるいはその原因を取り除くことも可能――――
(それが私にできるのか…?)
これまで、最強のポケモンと謳われたこの力を、破壊や強奪、他者を傷つけることにしか使ってこなかったミュウツー。
そんな自分に、そのような真似ができるのか?と疑問と不安を覚える。
もしその結果彼女を死なせることになれば、結局はこの力がただの暴力でしかないということの証明にもなってしまうのではないか。
そう、例えばあの時ぶつかった、黒い狂戦士のように。
「うっ……あああああああああああああああああああ!!!」
叫んださやかに、一瞬迷いをもったミュウツーのサイコキネシスが押し返されかけた。
(迷っている場合ではない、か)
例え上手くいくものでなくとも、それをせねば美樹さやかを殺さねばならなくなる。そうなれば結局は同じだ。
ならば殺さずに済む可能性のあるやり方を選ぶしかない。
何、全ての責任を背負うのは自分だ。
「退いていろ、私に考えがある」
シロナを後ろに下がらせ、そのさやかの体に触れる。
「……何だこの感覚は…」
先ほどから感じていた違和感、謎のざわつき。
それが、美樹さやかに触れた時強くなり始めた。
彼女に植え付けられた何かとやらの影響なのか。一体何をされたのか?
疑問を持ちつつも、その体に触れたその瞬間。
ゾワリ
体の中に何かが侵食してくるような、不気味な感覚が悪寒となって全身を駆け巡り。
そして次の瞬間、ミュウツーの意識が反転して闇に包まれた。
◇
ここはどこだ?
今私は美樹さやかの体に残った異常を探すためにその体に触れたはず。
何故、このようなところにいるのだ?
――――シリタイカ?
頭の中にテレパシーのように流れこんでくる声。
何だ貴様は。何故私にテレパシーを送ることができる?
何故貴様を前にすると、ここまでざわめきが止まらない?
何故、お前の存在にあいつの時のような感覚を感じている?
――――オマエハ、ワタシダ
何?
735
:
◆Z9iNYeY9a2
:2014/06/26(木) 23:48:22 ID:6UXuojpU
――――ワタシハカツテミュウツートヨバレタモノノイチブ。ミュウカラウマレタポケモンノナレノハテダ。
――――ワタシノナカニアルノハハカイノイシノミ。ソレガオンナノノゾミニハンノウシテウゴキダシタダケ。
貴様がミュウツー、私だと?
―――アア、ダカラワタシニハワカル。キサマノウエガ、カワキガ。
―――ワタシヲウケイレロ。ソノチカラヲカイホウシロ
―――キサマノカワキハ、ハカイデシカウメラレナイ!
◇
「グ…あっ…!」
美樹さやかに触れた瞬間、ミュウツーが膝を付くと同時に小さく唸った。
その手は、まるで何か異物が侵入したかのように血管が蠢いている。
それと同時にさやかの体はパタリと地面に倒れ伏せ動かなくなる。
一瞬ヒヤリともしたが、呼吸をしているように胸が動いているのを見て安心するシロナ。
しかし、それとは対照的に今度はミュウツーが何かに耐えるように呻いている。
ミュウツー。
その存在はシロナも風の噂には聞いたことがあった。
幻のポケモン、ミュウの細胞から生み出された最強の存在であり。
しかし有り余る力を制御することができず凶暴化し消えていったといわれるポケモン。
シロナとしては信じたい存在ではなかった。
実在するかどうかということをではない。そこまでの業を人が犯したということをだった。
人が好奇心から生命を生み出してしまうなどということがどれほど自然の摂理に反した罪深いものなのか、考古学者であり多くの生命の歴史に触れてきた彼女はよく知っている。
その罪の象徴が目の前にいる。
さっきまではガブリアスのこともあり深く意識することはなかったが、こうして目の前でその姿を間近に見るとそういったことも考えてしまっていた。
だが、目の前にいる彼は伝え聞くような凶悪なポケモンには見えない。
さっきはクロと協力しあのバーサーカーとも戦っていたらしいし他者と協力することができるほどには知性を持っているようだ。
そしてそれ以上に、このポケモンからは悲しみと迷いのようなものを感じる。
美樹さやかに対して傷つける手段でないやり方を選ぼうとしている辺りからもそういった感情を伺える。
だからこそ、そんな彼が今目の前であの時のさやかのような状態に陥っている様子を放っておくことができなかった。
しかし、そう思って傍に駆け寄ろうとしたミュウツーの体から、突如膨大なエネルギーが放出された。
彼の体を中心として放物線を描くように放たれるそれは、エスパーポケモンの持つサイコパワーだ。
だが最強のポケモンであるミュウツーから溢れるそれらのエネルギーは、並のポケモンのものではない。
シロナには近寄ることすらもできなくなっていた。
「一体…、何が起こっているの…?!」
◇
止めろ…!私の中に入ってくるな!
――――ナニヲアラガウ?キサマトテオナジダロウ。
――――カツテコノチカラニミヲマカセスベテヲホロボシタノデハナイノカ?
それは、私が誕生してすぐの時。私を生み出した研究者達を施設ごと抹殺した時のことか?
だとしたら違う。私はそんなものが欲しいのではない!
――――チガワヌサ。ソレガモットモチカラヲチカラトシテツカウコトガデキルシュダン。
――――オマエモ、モトメテイタノデハナイノカ?オノレノイバショヲ。
――――ナラバアラガウナ。コワセ、コロセ、ハカイシロ。ワタシヲウケイレレバ、アノキョジンニカツコトモフカノウデハナイ。
その拒絶したいほどの声。
なのに、何故かそんな提案に、力に魅せられかけている自分がいた。
力………。
736
:
◆Z9iNYeY9a2
:2014/06/26(木) 23:48:38 ID:6UXuojpU
私にはそれ以外の何もなかった。
心も、友も、他のポケモンが持つトレーナー――人間との絆も、自身の生きる理由さえも。
そんなもの、あの己を作った施設を破壊した時からすでになかったのかもしれない。
だからこそ、サトシに憎しみを取り除かれ、力を向けるべき先を見失った時。
そこに残ったのは大きな虚無感だったのかもしれない。
「私には……力でしか己を見出すことはできないのか……?」
――――アア、ソノトオリダ。
「私の居場所は、力でしか示せないのか……?」
―――ソウダ。
体の中に強い破壊衝動が沸き上がってくる。
なのに、不思議と嫌な心地はしなかった。
破壊でしか己を見出すことができなかったもう一つの私。
私もその道しか歩むことができないのならば、いっそその力に身を委ねてしまうのも――――
そこまで思考した時だった。
自分の体に触れる何者かの存在に気付いたのは。
◇
ミュウツーの暴走。
周囲に撒き散らされたサイコキネシス。
それは彼の意図したものではなく、純粋な力としてのみならず様々なものが入り混じった力として発されていた。
例えば、その時のミュウツーの思念、テレパシー。
破壊の遺伝子の囁く声と、それに魅せられかけている自身の思いが知らず知らずのうちに周囲に投げられていた。
そして、それを受け取ったのは、そのすぐ傍にいたシロナ。
ミュウツーが破壊の遺伝子との交信で感じてしまった己への疑問、生きる意味の問いかけ。
それらの思いが全て彼女の中に流れ込んできたのだ。
(―――それは、いけない!)
自分が受け取ったのは、彼の持つ迷いのほんの一部にすぎないのだろう。
だから彼の持つ思いの全てを理解できたなどとはいえない。
だがそれでも、今ミュウツーが選ぼうとしているものが彼に不幸と破滅しか及ぼさないことに思い至るくらいは分かった。
力を力として、破壊のみに活かして証明するなど。
それを選んでしまってはもはやそれはポケモンですらない。
兵器、いや、人間にすら管理することができない以上、もはや災害と同じだ。
だからこそ、シロナは彼を止めなければならないと、吹き荒れる念力の中を無理やりにでもミュウツーに近づいていったのだ。
せめてこの声が届く距離まで。
まるで暴風のように吹き荒れるそれは、まるで風が数倍にも密度を増幅させて吹き荒れているかのようなもの。
生身の人間であるシロナには、一歩進むだけでも大きな負担をかけていた。
だが、そんなことで立ち止まってはいられない。
目の前には、大きな迷いをもったポケモンがいるのだから。
手を差し伸べてなければならない。
道を示してやらねばならない。
ポケモントレーナーとして、チャンピオンとして。
737
:
◆Z9iNYeY9a2
:2014/06/26(木) 23:48:58 ID:6UXuojpU
そんな想いの元、やがてミュウツーに手が届く距離まで接近を果たしたシロナの耳に聞こえてきた声。
「私には……力でしか己を見出すことはできないのか……?」
ミュウツーの最後の問いかけのような声。
「私の居場所は、力でしか示せないのか……?」
「違う!!」
その声に思わず叫び、そしてミュウツーの手に触れた。
◇
確かに作られたことは間違いなのだろう。
人間の業であり罪。一つの迷いを持った命を生み出してしまったこと。
だが、生まれたその生物には何の罪もない。
例え作られた命であっても、その居場所を否定するほど世界は残酷ではない。
「あなたは強い力を持っている。だけどそれが人を傷つけるためだけにしかないなんてことはないのよ。
あなたの生にも、きっと意味はあるわ」
「ならば、それはどうやって示せばいいのだ」
「それは私にも分からないわ。でもみんなそうよ。人もポケモンも、みんなそれを探して生きているのよ」
「クロエ・フォン・アインツベルンにも同じことを言われた。だが、ならばもう一つの私は何故それができなかったのだ」
それが今彼を強い迷いに陥らせている理由なのだろう。
いずれは自分も彼と同じ道をたどるのではないのかと。
ならば、今行きていることにどんな意味があるのだろうと。
「みんなで生きればいいのよ。
人もポケモンも、それ以外のみんなも一人じゃ生きてはいけない。みんなと繋がって支え合って競い合って、そうやって生きているんだから」
「私に、できるのだろうか?力しか持たない、この私に」
「ええ、できるわ。いえ、もうしてるじゃない。
クロちゃん達と協力してあの巨人に立ち向かって、彼女やガブリアスに助けられたあなたが一人ぼっちだなんて言わせない」
あなたは一人ぼっちじゃない。
たったそれだけの言葉が、自分の心の中に溶け込んでいくような感覚を感じていた。
そしてその心の意味を理解した時。
自分の中で疑問が氷解するように溶けていくのをミュウツーは感じていた。
そうだったのか。
私が探し求めていたものはそういうものだったのか。
一時とはいえサカキに仕えていたことも。
人間の思考を奪い、己の手駒としたことも。
コピーポケモンを生み出し、己と同じ境遇のポケモン達を生み出してしまったことも。
全ては、己の居場所が欲しかったのだ。
「私にも、居場所はあるのか?偽物の私が、世界にいてもいいのか?」
「生まれたものに本物も偽物もない。あなたの居場所は、きっと作れるわ」
――――ソンナモノハマヤカシダ。ワタシタチノチカラハヒトヲオソレサセ、ニクシミヤネタミヲウムコトシカナイ
あいつの声が聞こえる。
それは彼自身がそういう経験をしてきたということなのだろうか。
「そうかもしれない。だけど、それでもいつかはきっと居場所は見つかるわ。
だって、彼には心があるんだから」
――――ココロ……
そうか、もう一人の私は、破壊の意志しか持っていなかったあいつには、心がなかったのか。
だからこそ、己の存在意義に迷うことも疑問を投げかけることもなく、その身にはただただ破壊しかなかった。
738
:
◆Z9iNYeY9a2
:2014/06/26(木) 23:49:23 ID:6UXuojpU
―――ワタシニハココロナドナカッタ。ダカラコソハカイノミヲモトメタ。ソウデアレトイウコエニギモンモモタズニ。
「……」
―――ナラバ、ソノココロヲソナエタオマエニハワタシハヒツヨウナイトイウコトカ
「そうなるな」
―――ダッタライクガイイ。モウヒトリノワタシヨ。オマエニハワタシノヨウナハメツトハチガウミチガアルダロウ。
「いや、お前も連れて行く」
―――ナニ?
「お前は私なのだろう?なら私に受け入れられないものではない。
かつてのお前は己の居場所への疑問すらも持つことができなかった。だが今のお前はそれを持っている。
ならばそれを導くのも、私の役割だ。お前の居場所は、私がなってやろう」
―――……ホンキカ?ハカイノイシニノマレルカモシレナイノダゾ?
「今の私なら、耐える覚悟はある。
お前のかつての苦しみを、私も受け入れてやろう」
―――ク、ククク、ハハハハハハハハ!
笑い声が脳裏に響く。
高く反響するその声、しかし嘲笑ではなくまるで面白いものを見つけた子供のような笑い声だ。
そうだ、こいつの中にあるのも邪悪な意志などではない。破壊衝動しかなかったのだ。
だからこそ、己に示された路から外れたものを歪めることもしない。
―――ナラバミセテミロ。オマエノコタエヲ。
「ああ、そのつもりだ」
そう言ってこの存在を受け入れる。
体の中に強い力とそれを振り回さんとする衝動が生まれる。
が、それもさっきに比べれば遥かに御しやすくなっている。
路を見つけたことで、示したことで破壊衝動が薄れたのかもしれない。
「これでよかったのだよな?」
「ええ」
意識が浮き上がる感覚。
目覚めの時だろう。
だが、恐れることはない。
自分の居場所はどこにでもあるのだから。自分にはそれを探していける足があり、受け入れてくれる者も、きっといるのだから。
――――頑張って
そうして目覚めの時を迎えようとしたほんの一瞬前。
どこからともなくそんな声が聞こえた気がした。
聞き覚えのない、小さな少女のような声。
なのに、その声に何故か懐かしさを感じていた。
◇
739
:
◆Z9iNYeY9a2
:2014/06/26(木) 23:49:38 ID:6UXuojpU
美樹さやかが目を覚ました時、周囲には謎の力が覆っていた。
ミュウツーを中心として発するそのエネルギーに、シロナが近寄っているところまでを視界に収めることができた。
「シロナさん…!?」
思わず駆け寄ろうとした時、シロナの手がミュウツーの体に触れ。
その瞬間これまでとは比べ物にならないほどの力が一瞬で彼の周囲を覆い尽くしていた。
軽々と吹き飛ばされるさやかの体。
それでもどうにか受け身を取り、前を向いたさやか。
そこには意識を取り戻したミュウツーが立っていた。
その手に抱きかかえているのは意識を失ったシロナ。
「あんた、何をしてたのよ…!?」
嫌な想像が脳裏をよぎり、思わずそう問いかけるさやか。
「案じるな。すぐに目を覚ます。
お前の体に巣食っていた破壊の意志も取り除いた。もう暴れることはないだろう」
それに対するミュウツーの返答。
おそらく自分の不安を読み取ったのだろうが、その声はこれまでの彼のそれとは違ったもののようにも感じ取れた。
それまで虚無的なものとも感じ取れた彼の声を何かが埋めているような。
「お前が何を思ってこいつを受け入れたのかは知らん。
だがお前はまだ生きている。私のように全てを捨てるにはまだ早い。それだけは言っておこう」
「…な、何を……?」
シロナをさやかに預けたミュウツーは立ち上がる。
フワリと浮き上がる体。よく見ると先までは大きなダメージを受けていたはずの箇所が綺麗な状態に修復されているように見える。
かつての自分が癒やしの願いを己にかけることでその肉体を維持していたように。
「って、あんたどこ行くのよ?」
「どうしても確かめたいものがある。私はここで離れさせてもらおう。
何、生きていればいずれ会えるだろう」
そう告げたのを最後に、ミュウツーは空へと浮かび上がりそのまま飛翔。
光の軌跡を残しながら遠くへと飛んでいった。
わけも分からぬまま、視界から完全に見えなくなるまでその姿を見送っていたさやか。
シロナが目を覚ましたのは、その軌跡が視界から消えていった頃だった。
「…ミュウツーは?」
「何か、確かめたいことがあるって言って飛んでいったんですけど…」
「そう…」
確かめたいことというのもきっと彼にとって必要なことなのだろう。
ならば、自分に止める術はない。
シロナは立ち上がりながら、さやかの傍でミュウツーの去っていったらしき方を見送る。
(――――頑張りなさい)
心の中で静かにエールを送って。
740
:
◆Z9iNYeY9a2
:2014/06/26(木) 23:50:13 ID:6UXuojpU
破壊の遺伝子を受け入れたあの時以降、あいつの声はもう聞こえない。
すでにこの体に一つの細胞として取り込まれたということだろうか。
その作用かどうかは分からなかったが、体にあったあの戦闘におけるダメージはほぼ治癒されていた。
肉体の足りない部分をあいつが補ったということなのだろうか。
ミュウツーが確かめたいと思ったこと。
それはあの狂戦士。自分を負かし、おそらくはクロとあのドラゴンポケモンを葬ったであろう黒き巨人。
己の意志を持たず、暴れまわるだけに見えたあの怪物。
あいつが、まるでもう一つの自分の存在そのもののようにも思えたのだ。
だからこそまだ生きているのならば、確かめねばならないと。
そう思ったのだ。
勝てるのか、と言われれば分からない。
だが、それでも確かめたかったのだ。
あの巨人が何を求めて戦い、暴れているのかを。
それが、破壊しか持たなかったもう一つの自分を受け入れた自分がしなければならないことのようにも感じたから。
バチッ
「ん?」
ふと体の中で何かが変わったような、そんな感覚が走ったような気がした。
しかし依然として何も変わったところは見られない。
気のせいだろうと考え、そのままミュウツーはあの巨人、バーサーカーを探して飛び去った。
その体に少しずつ起きている変化に気付くことなく。
【E-3/市街地上空/一日目 日中】
【ミュウツー@ポケットモンスター(アニメ)】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(小)、肉体に変化(?)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜1(確認済み)
[思考・状況]
基本:己の居場所を見つけるために、できることをする
1:バーサーカーを探す
2:プラズマ団の言葉と、Nという少年のことが少し引っかかってる。
3:できれば海堂、ルヴィア、アリスとほむらとはもう一度会いたいが……
4:プラズマ団はどこか引っかかる。
5:サカキには要注意
[備考]
※映画『ミュウツーの逆襲』以降、『ミュウツー! 我ハココニ在リ』より前の時期に参加
※藤村大河から士郎、桜、セイバー、凛の名を聞きました。 出会えば隠し事についても聞くつもり
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)
※破壊の遺伝子を受け入れましたが破壊衝動は起こっていません。しかし肉体に謎の変化が生じているようです。
【D-4/市街地/一日目 日中】
【シロナ@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:ダメージ(中)
[装備]:ガブリアスのモンスターボール(空)@ポケットモンスター(ゲーム)
[道具]:基本支給品、ピーピーリカバー×1、病院で集めた道具、クロの矢(血塗れ)
[思考・状況]
基本:殺し合いを止め、アカギを倒す
0:ミュウツー、頑張りなさい…
1:どうするべきか考える
2:ゲームを止めるための仲間を集める
3:N、サカキを警戒 ゲーチスはいずれ必ず倒す
4:乾巧を探して謝りたい
[備考]
※ブラックホワイト版の時期からの参戦です
※ニャースの事はロケット団の手持ちで自分のことをどこかで見たと理解しています
【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:疲労(大)、左目に傷(治癒不可)
[装備]:ソウルジェム(濁り65%)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:私は…
1:何がどうなっているのか分からない
※第7話、杏子の過去を聞いた後からの参戦
※「DEATH NOTE」からの参加者に関する偏向された情報を月から聞きました
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)
741
:
◆Z9iNYeY9a2
:2014/06/26(木) 23:52:18 ID:6UXuojpU
投下終了です
破壊の遺伝子に対する解釈とかその他もろもろで気になったのでこちらに投下させてもらいました
また他のところでもおかしな点などありましたら指摘お願いします
742
:
名無しさん
:2014/06/28(土) 00:05:41 ID:V6HpktVA
遅れました。仮投下乙です。
ゲーム世界でのミュウツーの扱い、同質(であろう)の存在からによる干渉、思念を扱う系統であるエスパータイプ、どれも突飛な解釈ではないと見受けられます。
重大な問題点はないものと自分は判断します。本投下をお待ちしています。
743
:
◆Z9iNYeY9a2
:2015/03/08(日) 13:25:49 ID:ix4MXXiE
後半部投下させていただきます
744
:
◆Z9iNYeY9a2
:2015/03/08(日) 13:26:04 ID:ix4MXXiE
どこからともなく声が聞こえた。
既に視界には何も映らず、聴覚も何も捉えないはずの無の中。
これが死というものなのだろうかということを考えたその時だった。
――――君は、ここで本当に終わるつもりなのかい?
終わりたくなどない。
だが今更何ができるというのだろう?
まどかを守ることも救うこともできず、美国織莉子に敗北したまま命を終えた。
だが、生物である限りは死は絶対に覆ることはない。
魔女となった魔法少女達が決して元に戻ることがなかったように。
――――もし、それが叶うと言ったら、君は願うかい?
…………
きっと願うだろう。
自身の生を。
いや、その先にある、自分の望みを、希望を。
――――――だったら願うといい。君の希望が、願いが、エントロピーを凌駕するものであるなら、きっと奇跡は起こるはずだ。
奇跡。
まだそんなものに縋れるというのなら。
ならばそれでも構わない。
奇跡だろうと、魔法だろうと何でもいい。
私はまだ何も成してはいない。
約束も、自分の願いも、何も。
だから。
私はまどかを救わなければならない。
これまで私が続けてきた戦いを無意味に終わらせないためにも、そして助けられなかったまどか達のためにも。
まどかを救いたい。
その願いのためなら、どんな罪だろうと背負える。
例えどんな存在に成り果てるとしても、その願いさえ叶うなら構わない。
私は、まだ。
――――――――――死んでなんかいられない―――――――――――――!!!
◇
745
:
◆Z9iNYeY9a2
:2015/03/08(日) 13:28:01 ID:ix4MXXiE
「アクロマ、来るよ!」
「準備はできています」
それはバトルロワイヤルの会場ではないどこか。
あるいはあの結界の外、とでも言うべき場所。
その一角に、インキュベーターとアクロマはいた。
見つめる先にあるのは、不安定になり歪みを生じさせる空間に少しずつ開いていく巨大な穴。
そしてその奥から見える、ギラリとこちらを覗く瞳。
戦意を露わに、それは開いた穴へと向かって一直線に入り込み。
――――ピシェアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
轟く咆哮と共に、キュウべえとアクロマの目の前の空間に潜り込んできたその巨体。
灰色の体に長い体、6本の足、そして巨大な漆黒の翼を持った異形の生命体。
それはディアルガ、パルキアの伝説が伝えられしシンオウ地方においてもほぼ伝承が残っていないとされたいわば記録から封印されたポケモン。
はんこつポケモン、ギラティナ。
「ゴガァ!!」
ギラティナは敵意はそのままに、その口に透き通った、しかしひとたび吐き出されれば多くのものを焼き払うだろう波動を放出せんと構え。
「今だよ!」
「赤い鎖、発射」
しかしそんなギラティナを前にして尚も焦ることなくアクロマは冷静に自分の成すべきことをする。
手に持った機器を操作したその途端、ギラティナの立っていた地面から赤い色の鎖が顕現。
その体をがんじがらめに縛り上げる。
その口腔から吐き出そうとしていた竜の波動はあらぬ方向に吐き出され壁を打ち崩す。
しかしその身に絡みついた鎖は解けることはない。
暴れまわる度に地響きが鳴り、それだけ鎖はギラティナの体を無力化するかのように締め上げる。
「―――――――ギィァアアアアアアアア」
それでも最後の抵抗とでも言うかのように、その体に闇を纏わせて姿を消そうとする。
シャドーダイブをもって鎖を抜け出す、ないし破壊しようとしているのだろう。
だが。
―――――ォォォォォォ
その体が消え去る寸前、遠くから轟くような鳴き声と共にギラティナに向けて膨大なエネルギーが衝突した。
時間が歪んで感じられるようなものと、空間を引き裂かんとするようなものの二つの力。
シャドーダイブを使うために無防備に近い状態を晒していたギラティナにそれを受け止めるだけの態勢を取ることはできず。
そのまま抵抗するように一度吠えた後、地に蹲り沈黙した。
「うまくいって助かったよ。アカギ、感謝するよ」
この場にはいないはずの相手に向けて感謝を述べるキュウべえ。
そしてアクロマは動かぬギラティナへと駆け寄り、あらかじめ設置してあったらしい多くの機材のケーブルを繋いでいく。
「では、後のことは私がやっておきましょう。キュウべえ君はさっきのあの少女のところへ行ってみては?」
「うん、そうするつもりだよ。これで不安要素が一つ消え去った、どころかむしろあの力をさらに利用することができるようになったんだからね。
僕なりの誠意は見せるつもりさ」
◇
746
:
◆Z9iNYeY9a2
:2015/03/08(日) 13:28:45 ID:ix4MXXiE
さて、ほむら。その様子じゃ何が起きたのか把握できていないみたいだね。僕から説明させてもらうよ。
そもそもこのバトルロワイヤルはね、君たち選別した参加者を一箇所に纏めて、さらにいくつかの手順を踏んでいくことで発生するエントロピーを回収するためのものなんだ。
まあ君ならある程度の予想は立っていたかもしれないけどね。
その基板となる装置には、とある世界で「最終兵器」と呼ばれたものを使わせてもらったんだ。
ポケモンという生き物の生体エネルギーを集めることで、永遠に近い命を与えることも世界を滅ぼすことも可能な兵器。まさに名前の通りだよね。
それを僕達インキュベーターが改良して、この殺し合いの舞台装置の一つとしたんだ。
あの殺し合いの中で死んだ人間の命を集め、そこからエントロピーを抽出して集める装置としてね。
だけど殺し合いによって発生するエントロピーは一つの現象を引き起こすことが分かった。
そのエネルギー総量が一定以上を超えると、時としてワームホールを繋げることがあるんだよ。
それが明らかになったのは、あの場でガブリアスがメガシンカなる事象を引き起こした時かな。
繋がる先はどこかの並行世界に、概念的なケーブルを繋ぐもの程度の役割しか果たさなかったものだし、それが起こること自体は別に問題にはならないんだ。
だけどね、最終兵器を管理する僕達にはそれを調整することは容易いものなんだ。
どこに繋がるかは繋がってみないと分からない。だけどこっちで調整すれば、あらかじめ繋がってほしい場所を指定することは可能なんだ。
そして、ここからは別の話になるんだけど。
ギラティナ。あれはアカギの持っている力に対するカウンターのような存在だ。
世界のバランスを崩すようなことになった際、それを元に戻す役割を持っている。
今回のアカギの力、あれはその世界のバランスに抵触するんだ。だからギラティナはこの殺し合いを食い止めようとしていたのかもしれないね。
まあそれは僕の生み出した干渉遮断フィールドのおかげでこれまで攻めあぐねていたみたいで特に問題はなかったし放っておく予定ではあったんだけど。
だけどその遮断フィールドに対して例外のようにワームホールを繋げる方法が分かった。
ギラティナの力は絶対に必要なものというわけじゃないんだけど、でもあって困るものじゃない。むしろ今後のことを考えればあったほうが便利なものなんだ。
ちょうどギラティナ自身もかなり焦れて冷静さを失っていたみたいだし、どうにかおびき寄せて捕まえられないかって考えていた。
そこで君を利用させてもらった。
肉体から、ソウルジェムからの縛りを解放された――まあ端的に言えば死んだってことだけど――だけど君の持っている因果は生半可なものではなかった。
殺し合いの中では貴重な、並行世界を認識し観測した者であるということが影響してるのかな?まあ、それは今はいいや。
だから、君の魂に向けて強い願いを持つように語りかけてみたんだ。
結果、君は見事にエントロピーを凌駕させてくれた。ギラティナを呼び寄せるほどの大きさのワームホールを生み出すほどのね。
これに関してはとても感謝してるよ。
ただ一つ想定外だったことがあるとするなら。
まさか君が支給品として持たせておいたはっきんだま、あれはギラティナの持つ力の一端が収められた特別な道具なんだ。
あれの回収を頼んだのが結果としてこの結果に繋げられたわけだし特にそれ自体に問題はないんだけど。
まさか君自身の因果から生まれたエントロピーが、赤い鎖の拘束に反応して君の命をその中に繋ぎ止めるなんてね。
文字通り奇跡としかいいようがないよ。
さて、大まかなことは話させてもらったし分からないことがあればまた聞いてくれればいいんだけど。
差し当たって聞かなければならないようなことは何かあるかい?
◇
747
:
◆Z9iNYeY9a2
:2015/03/08(日) 13:29:07 ID:ix4MXXiE
私をどうするつもりなのか。
それが言葉を発せるようになったほむらの最初の問いかけだった。
肉体はどこから持ってきたのか、暁美ほむらとして今までの肉体と何ら変化のないものが用意された。
多少の違和感はあったが、肉体自体は勝手知ったる己のものと同一といっていいほどのもの。体をそれまでどおりに動かせるようになるにはそう時間はかからなかった。
「どうするつもり、というのはどういう意味だい?」
「とぼけないで。あなたの行動そのものはさておいても、私がこうしてここに存在していることはイレギュラーなんでしょう?
なら、あなたに私を生かしておく理由はないはずよ」
そう、今のほむらは殺し合いから脱落したはずの者。こうしてここに存在すること自体が許されるものではないはずだ。
「それじゃあほむら、一つもう一度聞かせて欲しいんだけど。君はまだ生きたいと思うかい?」
「……決まってるわ」
「君のその生命は今、あかいくさりがギラティナを押さえつけていることで効果を発揮されているんだ。それが君の願った、自身の命を繋ぐ、という願いから生まれたものだからね。
だからもしあのくさりに僕達が調整を加えれば君の命はそれこそ霧散して消滅する可能性がある」
「なるほど、つまりは私はあなた達の手駒ということね」
生きることを願っている以上、インキュベーターの言うことには従わざるをえない。
もし彼らの思いに反することをしてもこちらの命を終わらせることなど虫を殺すようにできるのだろう。
故に、今の私はインキュベーター達に従わざるをえない。
「それと、もう一つ、一応聞いておきたいんだ」
「何をよ?」
「君は二人の人間を殺したね。一人はマオ、もう一人は美国織莉子と共に行動していたサカキ。
マオのことはまあ仕方ないんだろうね。
じゃあほむら、君はサカキを殺したとき何かを感じたかい?」
「それは……」
あの男も巻き込むだろうことを確信した上でサイドバッシャーを起動させたあの時。
確かに殺す寸前には僅かな躊躇があったような気がする。
では、殺した後で何か感じるところはあっただろうか。
例えば、美国織莉子に彼を殺したことを糾弾された時。
返答に無表情、無感情を貫く際どれだけの意識を裂いただろうか。
あの時、既にそれが自然体になっていたのではないか?
「もし何も感じていない、というのならば、それは今ここにいる君は目的のためなら他のものを切り捨てることができるということだ。
それならば僕達に手を貸してもらうことには何の問題もなくなる」
「……、いいわ、私にできる限りなら何でも言うことを聞いてあげる」
「君ならそう言ってくれると思ったよ」
「不本意だけど仕方ないわ」
「助かるよ。もしこの儀式が完成された暁にはその一端を君にも分け与えてあげられるだろう」
だが、今はこれでいい。
どのような形であれ、生を繋ぐことができたのだ。
加えて大きな情報を得ることができた。
748
:
◆Z9iNYeY9a2
:2015/03/08(日) 13:29:50 ID:ix4MXXiE
最終兵器。
殺し合いの中で得られたエントロピーをエネルギーとして起動する装置。
あれを使うことができれば、あるいは――――――
(だけど、それは今じゃない)
まだ殺し合いの参加者の人数は多い。
これから如何なるペースで他の参加者が脱落していくかによって変わってくるだろうが、今すぐ動くのは早計すぎる。
「とりあえず、もし君に動いてもらうことがあるとするならば次の放送以降になるだろうね。
そう時間があるわけでもないけど、それまではある程度の制限をつけた上でにはなるけど自由にしてもらっても構わないよ」
「そう」
「一応見張りはつけさせてもらうだろうから、それだけは留意しておいてほしいな」
それだけを言い残して、インキュベーターは視界から去っていった。
後に残ったのは何もない空間に残された暁美ほむら。
そしてその手元にある、白金色の球。今の自分のソウルジェムを代用するもの。
「ええ、ここからよ」
今あるのはこの身体と命のみ。
武器はない。魔法は使えるかもしれないが、インキュベーターの話、ディアルガなる者の存在を考慮すれば少なくとも出し抜くことは不可能だろう。
だが、それでも今私はここにいる。
それだけで十分だ。
だからこの状況に追い込んでくれた美国織莉子には、それだけは感謝しておいてやろう。
ほむらの見る先にあるもの。
鹿目まどかの救済、そして幸福。
しかしその対象は今殺し合いに参加させられている鹿目まどかだけではない。
これまで救えなかった全てのまどかのために。
他の全てを犠牲にする。
かつて読心能力を持ったものに言われたように。
自分自身が滅ぶことがあったとしても。
【?????/一日目 夕方】
【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:健康?
[服装]:
[装備]:はっきんだま(ほむらのソウルジェムの代用品)@ポケットモンスター(ゲーム)
[思考・状況]
基本:???????
1:今はインキュベーターに協力する素振りを見せて時を待つ
最終目的:“奇跡”を手に入れた上で『自身の世界(これまで辿った全ての時間軸)』に帰還(手段は問わない)し、まどかを救う。
[備考]
※はっきんだまにほむらの魂が収められており、現状彼女のソウルジェムの代用品とされています。
ギラティナを制御しているあかいくさりによってその生命が間接的に繋ぎ止められている状態です。
※バトルロワイヤル上においては死亡扱いとなっているため次の放送では名前を呼ばれます
749
:
◆Z9iNYeY9a2
:2015/03/08(日) 13:30:16 ID:ix4MXXiE
「で、アクロマ。ギラティナの調子はどうだい?」
「特に問題なくその力の解析は終わりそうですね。
しかしそれとは別に一つ問題が起きているようです」
「問題?」
「ええ。ギラティナという強大な存在を場に取り込んだことで、会場の一部装置に不具合が生じてしまったみたいですね。
最終兵器には特に問題はないですが、その周辺装置に不調が生じています」
「その装置っていうのは?」
「制限装置ですね。会場内でかけられた参加者の能力の一部に対して、制限が機能しなくなってしまうようです」
「その制限の中に、儀式の進行そのものに支障をきたすようなものはあるかい?」
「見た限りではそう問題のなさそうなものが多いですが…私からは何とも言えませんね」
「仕方ない、じゃあ早いうちにその修復をお願いするよ。僕も可能な限りは手を尽くすから。
できれば次の放送までには修理は終わらせたいところだし」
「ふむ、了解です」
キュウべえはそんな会話をアクロマとしつつ、ふと現在の殺し合いの会場内に意識を向ける。
今、自分の分体はアリスと共にいる。
他の情勢は。
「バーサーカーが落ちたのか」
意外、というほどのものでもない。
確かにその戦闘能力は制限下においても高いものだった。
しかし先の放送時点で既にその生命は残り1つのストックまで減らされていたのだ。ここで落ちてしまう事自体は問題ではない。
ただ。
「殺したのはイリヤスフィール・フォン・アインツベルンか。なるほどね」
その事実だけが妙に興味深いものにも感じられていた。
※バトルロワイヤルの装置には最終兵器@ポケットモンスター(ゲーム)をインキュベーターが改良したものが使われています。
※アクロマがギラティナを捕獲しその力を解析しています。
※現在ロワ会場での一部制限が機能しなくなっている可能性があります。
750
:
◆Z9iNYeY9a2
:2015/03/08(日) 13:31:03 ID:ix4MXXiE
投下終了です
仮投下した理由は、まあ読んでいただければ分かると思うのですがこれを通しとしてよいかどうかの意見を聞かせてください
751
:
名無しさん
:2015/03/08(日) 19:23:34 ID:FGtEuxrw
悪くはないと思いますが一名無しの発言ではなあ…
書き手が何人か賛同するか数日置いても何も意見無ければ投下でいいかと
しかし状況が動くなあ…
でもこのぐらいいいかなあ
752
:
名無しさん
:2015/03/08(日) 21:34:03 ID:YIdFcM9Q
仮投下乙です
自分も通しでいいと思いますが、
>>751
さんの言うように他の書き手の方の意見を暫し待っても良いかと
753
:
◆HOMU.DM5Ns
:2015/03/08(日) 22:12:28 ID:Kjx1LxK6
感想は本スレに置いておくとして、通していいか否かについての意見を
1話内でキャラ死亡から復活のギミックを使うのはそう珍しいことではありません。なので問題となるかどうかはその過程。
ほむらとキュウべえの関係は原作でもこのロワでも因縁あるものだし、利用しようと考えるぐらいは不自然な展開とならないでしょう。
ただ現象自体はともかく、主催陣地で一定の安全を確保され肉体をわざわざ新しく与えられるなら、会場内のほむら自身がその場で復活する展開の方でも良いのではないでしょうか。
この点は唯一、過大な対応かと引っ掛かりを覚えました。
ほむら復活はキュウべえにとっても想定外とありますし、そもそもソウルジェムに代わる魂の触媒になったはっきんだまは会場ほむらの荷物内です。
説明が必要なら黒猫キュウべえもいることですし。会場内で命を刻印と二重にかけられてるのも復活のリスクとしては妥当と見受けられます。
補足しておくなら、キュウべえが最終兵器についてほむらに説明してしまうのは蛇足だと感じました。叛逆してみろと言ってるもんです。
ほむら死亡前後、ひいては織莉子戦後の描写に大きな修正を強いてしまいますが、一書き手の意見としてご参考にして下さい。
最後にこのスレ内での誤字指摘を
>>746
>まさか君が支給品として持たせておいたはっきんだま、あれはギラティナの持つ力の一端が収められた特別な道具なんだ。
文法がややおかしいです。
754
:
名無しさん
:2015/03/09(月) 00:06:46 ID:bxL6PW4M
前半だけでも話はちゃんと成立するし後は書き手さん次第になるかな
755
:
◆Z9iNYeY9a2
:2015/03/10(火) 00:17:14 ID:CfPW2SfQ
>>753
ご指摘ありがとうございます
指摘された箇所については確かに展開に問題があったようです
氏の指摘を反映させていただき
・ほむら蘇生自体は会場内で行う
・キュウべえがほむらに対して説明するところは別の文章に差し替え(ほむらに対する最終兵器の説明自体は完全カット)
を行うことで対応させていただきます
前半部分にもある程度の修正が必要となりそうなので今しばらくの時間をいただきたいと思います
756
:
◆Z9iNYeY9a2
:2015/03/18(水) 20:34:46 ID:Vw6BQJfI
修正完了しましたので仮投下します
757
:
投下スレ>>50からの修正です
◆Z9iNYeY9a2
:2015/03/18(水) 20:36:26 ID:Vw6BQJfI
◇
民家の中に眠るように横たえられた少女の姿。
ベッドの上で手を組んで横たえられたその死体の頭にはまるで死化粧のように赤いリボンが結ばれている。
ボロボロの体で放置することに強い抵抗を覚えたアリスがほむらのバッグから取り出したせめてもの気遣いだった。
「墓は作ってあげられないわ、ごめん」
穴を一人で掘ることができるほどの力はない。
時間をかければ可能ではあるだろうが、しかしこの殺し合いの場でそれだけのために体力と時間を取られるのは自殺行為だろう。
ナナリーの時には手伝ってもらったというのに、ほむら自身には何もできない、そんな選択を選ばざるを得ない自分が嫌だった。
「…何でみんな私の目の前でなんだろうなぁ」
「ポチャ…」
物言わぬ躯となったほむらの死体の前で静かに鳴き声を漏らすポッチャマ。
出会いこそ最悪だったものの、そこからの色んな出来事をほむらと共に過ごしたポッチャマにも思うところは多いのだろう。
アリスはバッグから一本のあなぬけのヒモを取り出し、ほむらの傍に備える。
花代わり、とするにはあまりに粗末ではあるが、それは出会ったばかりの頃にほむらに渡しそのまま使う機会に恵まれなかったものの一つだ。
2本あるうちの片方をほむらに残していく。
そしてアリスは握りしめた手の内にあるものに目をやる。
割れた宝石の破片。
ほむらの命の形を示していた宝石の成れの果てだ。
あの瞬間、結局自分はほむらのソウルジェムを撃てなかった。
なのにソウルジェムは自然に自壊し砕け散ったのだ。
ほむらが死にかけのあの瞬間にまで嘘を言うとは思えない。第一嘘とするにはあまりにも不自然な類のものだ。
少なくともほむらが言っていたことは事実ではあるのだろう。
だが、それは少なくともこの殺し合いの場で適応されるものではなかった。ただそれだけのことなのだろう。
かつて自分がギアス使用に強い制限を感じた時のようなことがほむらにも適応されていた。そう考えるのが自然だ。
問題は美国織莉子だ。
彼女はこの事実を果たして知っていたのだろうか。
知らなかったのならばいい。しかし知っていたのならば、ほむらの命をこの手で終わらせるように仕向けたということになる。
確かめるために追う必要はあるだろう。
そしてもう一つ。
ほむらがその身を賭して守ろうとした少女、鹿目まどかのこと。
放送で名前は呼ばれていない。まだ生きていると信じたい。
758
:
◆Z9iNYeY9a2
:2015/03/18(水) 20:36:57 ID:Vw6BQJfI
「いいわ、守ってやるわよ、あんたの守りたかったものも」
ほむらの想いがどれほどのものだったのか想像もつかない。
しかしそれほどまでの強い想いを持った友達の守りたかったもの。
それくらいは自分にも守れるはずだ。
「だから、あんたは安心して休みなさい」
それだけを言い残して、部屋の出口へと体を向け。
「ニャア」
その時、それまでどこにいたのかほむらの連れていた黒猫が姿を現した。
猫はほむらの傍に擦り寄り、ゴロゴロと喉を鳴らしている。
ほむらが死んでいることに気付いていないかのような仕草を見せて。
「…ほむらはもう動かないのよ、だから行くわよ」
胸を締め付けられるような感覚に囚われながらもそう黒猫に言い放つアリス。
しかし猫は動こうとはしない。
ただただいつか動くことを待っているかのように身動ぎし続けるだけだ。
「………先に行くわ。後で追い付いて来なさい」
時間が経てばやがて気付くだろう。それから迎えにくるなりすればいい。
無理にほむらから引き離すことにも抵抗がある。
「行くわよポッチャマ」
「ポ、ポチャ」
当面の目的は織莉子を探すこと。
新たに生まれたもう一つの目的は鹿目まどかを守ること。
この場において二度目の友の喪失。
しかしアリスは決して折れない。
大切な友との約束―――彼女の騎士であり続けるために。
もう一人の友の想い―――彼女の守りたかった友。
その二つを背負っているのだから。
そうしてアリスは瞳に流れた一筋の雫に気づかぬふりをして、ほむらの元を立ち去った。
【D-6/一日目 夕方】
【アリス@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(小)、ネモと一体化、喪失感
[服装]:アッシュフォード学園中等部の女子制服、銃は内ポケット
[装備]:グロック19(9+1発)@現実、ポッチャマ@ポケットモンスター 、双眼鏡、 あなぬけのヒモ@ポケットモンスター(ゲーム)
[道具]:共通支給品一式、
[思考・状況]
基本:脱出手段と仲間を捜す。
1:ナナリーの騎士としてあり続ける
2:情報を集める(特にアカギに関する情報を優先)
3:脱出のための協力者が得られるなら一人でも多く得たい
4:ほむら……
最終目的:『儀式』からの脱出、その後可能であるならアカギから願いを叶えるという力を奪ってナナリーを生き返らせる
[備考]
※参戦時期はCODE14・スザクと知り合った後、ナリタ戦前
※アリスのギアスにかかった制限はネモと同化したことである程度緩和されています。
魔導器『コードギアス』が呼び出せるかどうかは現状不明です。
※サイドバッシャーは完全に破壊されました
※ニドキングは死亡しました
※ほむらの死体の傍にはあなぬけのヒモ@ポケットモンスター(ゲーム)、まどかのリボン@魔法少女まどか☆マギカが供えられています。
「行ったようだね、アリスは」
759
:
◆Z9iNYeY9a2
:2015/03/18(水) 20:37:56 ID:Vw6BQJfI
◇
既に視界には何も映らず、聴覚も何も捉えないはずの無の中。
これが死というものなのだろうかということを考えた。
―――これでいいの?
終わりたくなどない。
だが今更何ができるというのだろう?
まどかを守ることも救うこともできず、美国織莉子に敗北したまま命を終えた。
だが、死は絶対に覆ることはない。
魔女となった魔法少女達が決して元に戻ることがなかったように。
――――諦めていいの?
………
いいはずが、ない。
たとえそれが、如何に世界の理に反した想いであったとしても。
それでも、決して諦めることはできない。
だから、ふわふわとした意識の中強く願う。
奇跡。
そんなものにでも縋ってやる。
どれだけ醜悪な想いであっても、どれほど重い罪であったとしても。
まどかのためなら全て背負える。
だから。
(もう少しだけ―――もう少しだけでいい)
この身に、生が欲しい―――――――――!!
己の内に、強く熱い何かが生まれ出て。
その瞬間だった。
右も左も、自分の形すらも分からぬ闇の中で、二つの輝く瞳が映った。
人ではない生物。
巨大な翼と6本の足を持った、まるで魔女のような姿の何か。
醜悪にも思える外見だったのに、その時の私にはとても神々しいものに見えた。
その巨体に、静かに手を伸ばす―――ように感じられる動きをして。
昏い闇の中で、自分すらも保つことができなかったほむらを、さらに深い闇色の何かが包み込んだ。
◇
アリスは去り、生者は一人としていなくなった室内。
黒猫は静かにその体毛を白く変化させる。
瞳は赤く輝き、耳からは別の耳と思しき物体が現れる。
そして背中の円状の模様がパカリと開き、中から取り出されたのはしろがね色に輝く球。
「ふぅ、さすがに窮屈だったよ」
ほむらの死体の傍で球をかざす黒猫、もといキュウべえ。
「少し時間を取られすぎたかな。今からこれを転送するのは間に合いそうにないね。
仕方ない、ここでやるしかないか」
と、キュウべえは球をかざし。
「あとは頼んだよ、アクロマ」
ここではないどこかにいる一人の人間に向けて、そう呟いた。
◇
760
:
◆Z9iNYeY9a2
:2015/03/18(水) 20:38:25 ID:Vw6BQJfI
はっきんだま。
それはディアルガ、パルキアに続くもう一匹の伝説の竜、ギラティナの力の一端が収められたもの。
元々ギラティナの力は世界に歪みが生じた時にそれを世界の裏側から修正する役割を担っている。
その力の断片を会場に配置しておくことで、会場の結界の安定化を促せるというアクロマの仮説の元で参加者の支給品に混ぜられたものだ。
この仮説が問われた段階では、ギラティナ自身を捕獲する術がなかったため、あくまでもその力ははっきんだまを利用することで代用してきたのだ。
しかし。
アクロマの手によって再現された、神々の力をも御する拘束具、あかいくさりが完成し。
そして数時間前に判明した一つの要素によって、ギラティナを捕獲する術が整った。
あとはタイミング。
それを引き起こすために必要な、膨大なエントロピーが発生する瞬間。
ほむらの死によって、それが成り立った。
「アクロマ、来るよ!」
「準備はできています」
バトルロワイヤルの会場ではないどこか。
あるいはあの結界の外、とでも言うべき場所。
その一角に、インキュベーターとアクロマはいた。
見つめる先にあるのは、不安定になり歪みを生じさせる空間に少しずつ開いていく巨大な穴。
そしてその奥から見える、ギラリとこちらを覗く瞳。
戦意を露わに、それは開いた穴へと向かって一直線に入り込み。
――――ピシェアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
轟く咆哮と共に、キュウべえとアクロマの目の前の空間に潜り込んできたその巨体。
灰色の体に長い体、6本の足、そして巨大な漆黒の翼を持った異形の生命体。
それはディアルガ、パルキアの伝説が伝えられしシンオウ地方においてもほぼ伝承が残っていないとされたいわば記録から封印されたポケモン。
はんこつポケモン、ギラティナ。
「ゴガァ!!」
ギラティナは敵意はそのままに、その口に透き通った、しかしひとたび吐き出されれば多くのものを焼き払うだろう波動を放出せんと構え。
「今だよ!」
「赤い鎖、発射」
しかしそんなギラティナを前にして尚も焦ることなくアクロマは冷静に自分の成すべきことをする。
手に持った機器を操作したその途端、ギラティナの立っていた地面から赤い色の鎖が顕現。
その体をがんじがらめに縛り上げる。
その口腔から吐き出そうとしていた竜の波動はあらぬ方向に吐き出され壁を打ち崩す。
しかしその身に絡みついた鎖は解けることはない。
暴れまわる度に地響きが鳴り、それだけ鎖はギラティナの体を無力化するかのように締め上げる。
「―――――――ギィァアアアアアアアア」
それでも最後の抵抗とでも言うかのように、その体に闇を纏わせて姿を消そうとする。
シャドーダイブをもって鎖を抜け出す、ないし破壊しようとしているのだろう。
だが。
―――――ォォォォォォ
その体が消え去る寸前、遠くから轟くような鳴き声と共にギラティナに向けて膨大なエネルギーが衝突した。
時間が歪んで感じられるようなものと、空間を引き裂かんとするようなものの二つの力。
シャドーダイブを使うために無防備に近い状態を晒していたギラティナにそれを受け止めるだけの態勢を取ることはできず。
そのまま抵抗するように一度吠えた後、地に蹲り沈黙した。
「うまくいって助かったよ。アカギ、感謝するよ」
この場にはいないはずの相手に向けて感謝を述べるキュウべえ。
そしてアクロマは動かぬギラティナへと駆け寄り、あらかじめ設置してあったらしい多くの機材のケーブルを繋いでいく。
「では、後のことは私がやっておきましょう」
「そうだね、それじゃあはっきんだまを回収するとしよう。転移装置、起動頼むよ」
「了解しました」
◇
761
:
◆Z9iNYeY9a2
:2015/03/18(水) 20:38:54 ID:Vw6BQJfI
ギラティナを捕獲する術がなかった理由。
それはインキュベーターが貼った干渉遮断フィールドによるものだった。
このフィールドに守られている間は如何なる干渉も遮断する。
それは例え神のごとき力を備えたギラティナであっても例外ではない。
もしこれを力技で破ろうとするならば、それを遥かに超える力が必要となる。
故にディアルガ、パルキア、そしてはっきんだまの存在を感知したギラティナであっても手出しできない状況にあったのだ。
しかし、これはこちらがわからの干渉も遮断してしまうという不都合があった。
それは回収したエントロピーを分散させないための術であったのだが、もしこれを解除してしまった場合、会場の結界そのものを消すことになってしまう。
結果、ギラティナの干渉を弾く一方でこちらがわからも手出しできないという拮抗した状態が続いていた。
だが、あのガブリアス達の発生させたエントロピーでワームホールを発生させるという現象が発覚したおかげで、会場の結界を消すことなくギラティナをこちら側に呼びこむ術を見出すことができた。
すなわち、ギラティナを通すことができるだけのワームホール。
それを作りうる程の因果を備えた参加者の死と同時に、こちら側にギラティナを呼び寄せる。
それを起こせる者の一人はキュウべえ自身が目をつけていた参加者、暁美ほむら。
あとは彼女が死ぬまで気長に待つつもりだったが、ここで美国織莉子に敗れてくれたのは幸いだった。
全てが順調に進んでいた。
「…私たちを差し置いて何をやってるのかしら?」
そんなキュウべえとアクロマのいる室内に現れたのは一人の少女。
桃色の髪を左右に縛った、中学生くらいの年の女の子。しかし纏っている衣装はまるでどこかの騎士のような姿。
「おや、アーニャかい。どうしたんだい?」
アーニャ・アールストレイム。
シャルルの直接の部下にしてこの殺し合いの儀式の協力者の一人。
「シャルルや私達には何の連絡もなく大きなことをしてるみたいだから、少し様子を見に来ただけよ」
「すまないね。ことは急だったものだから、連絡する暇がなかったんだ」
「少しは互いの連携も意識してくれないと困るわよ。
あなた達の世界の最終兵器にエントロピーの回収機能を結びつけたのは誰だと思ってるの?」
「そのことには感謝してるよ。だから今回のような時も今後は気を付けるさ。本当だよ」
無表情なまま、悪びれているのか分からぬ表情でそう告げるキュウべえ。
「正直なところ、シャルルは全面的にあなた達の話を信用してるみたいだけど、私としてはまだ懐疑的なのよね。
あなたの言うエントロピーなんてものが本当に存在してるのかってところとか」
「そこは視覚的に観測できるものじゃないからね、仕方ないよ。
それでもこの殺し合いで参加者達の行動、そして死を通して回収されていくエントロピーは最終兵器を通して認識できるはずだよ」
最終兵器。
それはかつてカロス地方という場所で王が作り上げたもの。
本来は命を落とした一匹のポケモンを蘇らせるために作られたはずのそれは他の誰でもない王自身の手で全てを滅ぼす最悪の兵器へと形を変えていた。
王の悲しみを怒りへと変貌させる。
まるで希望を絶望に変異させるかのように、その想いを移り変わらせて。
762
:
◆Z9iNYeY9a2
:2015/03/18(水) 20:39:37 ID:Vw6BQJfI
ここにあるのはそれと同じ機能を持ったものだ。
動力を多くのポケモンの生体エネルギーとして起動するそれは、曲がりなりにも死者を蘇らせるという奇跡を成し遂げている。
では、ここにさらに純度の高いエネルギーを注ぎ込めば、一体どのような奇跡が起こせるだろうか。
例えばエントロピー。インキュベーター自身が回収することを目的としている、宇宙の熱力学的死を回避するために不可欠なもの。
本来ならばそのようなものを回収する機能など最終兵器にはもたらされてはいない。
だが、ポケモンのいない世界には他にも様々な奇跡を起こしうるものは存在している。
その一つに聖杯、というものがあった。
万能の願望機。如何なる望みも叶えうると言われる奇跡の釜。
セイバーやバーサーカーのようなサーヴァント、そしてイリヤスフィール達のいたような世界にあるものだ。
無論それも本物ではない。あくまでも限りなく本物に近い機能を持った贋作の一つだ。
それを解析し、その魔術的な作りをエデンバイタルの力をもって再現、最終兵器に転用することで今のエントロピー回収装置とすることができたのだ。
「こればっかりは信じられない、というならシャルルのことを疑うのと同義になってしまうけど、それでも君は信用できないかい?」
「…確かにそれもそうね。私が悪かったわ」
「大丈夫さ。最終兵器がエントロピーの回収さえ終えれば、僕達の目的は完遂される。
今僕達にできるのは、それを確実にするためにこの殺し合いの儀式を達成させることさ」
ピョコ、とアーニャの肩に乗り上がるキュウべえ。
それを特に何の反応をすることもなく、アーニャはただじっと無表情で見つめるだけ。
「回収準備、整いました」
そんな時、アクロマがキュウべえに呼びかける。
はっきんだまを回収する準備が整ったということだ。
肩に乗っていたキュウべえは、反対側から飛び降りてアクロマの足元まで駆け寄る。
「よし、それじゃあ座標を合わせて――――ちょっと待って」
と、アクロマが装置を起動させようとしたその時、何かに気付いたキュウべえが待ったをかけた。
◇
「…まさか、こんなことが起こり得るなんてね」
それは会場内、黒猫に擬態していたキュウべえの目の前。
暁美ほむらの物言わぬはずの躯の胸が、静かに上下している光景があった。
「ソウルジェムを砕かれたはずの彼女がどうして」
そう、暁美ほむらは息を吹き返している。
未だ意識こそないものの、その生命はまだ終わりを告げてはいなかった。
死んだことは紛れもない事実。しかし生き返るような要素が暁美ほむらにあっただろうか――――
「まさか、はっきんだまと暁美ほむらのエントロピーを通したことで、何かしらの現象が起きた、ということなのか?」
原理も何も分からない。ただ分かるのは、これが自分たちにとってイレギュラーな事態であるということ。
「一応彼女も回収して何が起こったのか調べる必要がありそうだ。
もしはっきんだまが原因で起こった現象だとするなら、何か重要な存在にもなるかもしれない」
もしかすれば彼女自身もっと有用な使い方があるかもしれない。
彼女自身、あるいは彼女に起こった現象自体に。
「アクロマ、はっきんだまと一緒に暁美ほむらの回収もお願いしたい。頼んだよ」
キュウべえの、何もない虚空に対する呟きに反応するかのように空間に小さな歪が生まれ。
やがて暁美ほむらとはっきんだまの姿はその中に掻き消えていった。
「さて、それじゃあこっちはこっちで適当に動くとしようか」
その数分後、一軒の民家から黒猫が一匹飛び出していく。
飛び出した部屋には何もない。
ただ、ほんの僅かに汚れたベッドが残っているだけ。
763
:
◆Z9iNYeY9a2
:2015/03/18(水) 20:40:06 ID:Vw6BQJfI
◇
「はっきんだまからキュウべえ君の作る魔法少女達の持つソウルジェムと同じ反応が検出されています。
どうやらはっきんだまにこの少女の命とでも呼ぶべきものが収められているようですね」
「さすがにこれは僕にも想定できなかったよ」
「それで、どうされるのですか?」
「とりあえず念のため拘束しておいた上で、目が覚めるまで待って話を聞いてみようと思う。
もしかしたら彼女自身に何か使い道があるかもしれない」
「了解しました。では念のためあかいくさりを一部預けておきましょう」
「頼むよ。
そういえば、ギラティナを呼び寄せた時に何か変わったことはなかったかい?」
「…それがですね。やはりあれほどのポケモンを降臨させたことで会場に張り巡らせた調整機器に強い負荷がかかってしまいまして。
特に制限装置が一部故障してしまったようなのはまずいですね」
「ふむ…。直せそうかい?」
「次の放送までには予備の装置に切り替えられるはずです」
「じゃあ頼んだよ。儀式の進行に支障をきたす事態が起こらないようにはこっちでも調整しておくから」
「分かりました。お願いしますね」
◇
暁美ほむらに起こった現象。
キュウべえ達はほむらの持つ膨大なエントロピーを媒介として、ギラティナを招き入れ捕獲した。
その存在を文字通り縛り上げることで。
それがほむらとギラティナの間に小さからぬ繋がりを作り出してしまったのだ。
そしてその繋がりを元にあかいくさりがほむらの霧散しかけていた魂そのものも繋ぎ止めた。
今、ほむらの魂ははっきんだまに収められている。ギラティナの力の一端が収まった球はほむらのソウルジェムの代用品となったのだ。
インキュベーターであってもその発生を読むことができなかったのは仕方のないことだろう。
彼自身もエントロピーによって発生しうる奇跡の可能性を全て認識しきれているわけではないのだから。
しかしここで一つ、誰も気付いていないことがある。
ギラティナと深層的な部分において繋がりを持ったほむら。
魂をも留めたそれは、また別の部分においても繋がりをもたらしていた。
それは、ギラティナとの感覚。
視覚、聴覚といった感覚の一部がはっきんだまとの繋がりを通して共有されたこと。
意識を失った彼女の感覚が、ギラティナとも共有されてしまっていたことに誰も気付いていない。
無論意識のないほむらにそれらを認識することがあったかどうかは怪しい。
あるいは目が覚めた時にはほとんどのことを忘れている可能性すらあるだろう。
ただ一つ言えること。
それはじっと地面に横たわるギラティナは、アクロマとキュウべえ、そしてアーニャの会話の一部始終を聞いていたということ。
最終兵器のこと、制限装置の不調のこと、それ以外にも、ギラティナがあかいくさりに拘束されて以降の会話の全てを。
薄く目を開くギラティナの瞳の奥に、一瞬闇色の何かがドクリ、と通り過ぎていったことに、誰も気付いていない。
【?????/一日目 夕方】
【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:健康?、あかいくさりによる拘束
[服装]:見滝原中学校の制服、まどかのリボン
[装備]:はっきんだま(ほむらのソウルジェムの代用品)@ポケットモンスター(ゲーム)、あなぬけのヒモ
[思考・状況]
基本:???????
最終目的:“奇跡”を手に入れた上で『自身の世界(これまで辿った全ての時間軸)』に帰還(手段は問わない)し、まどかを救う。
[備考]
※はっきんだまにほむらの魂が収められており、現状彼女のソウルジェムの代用品とされています。
ギラティナを制御しているあかいくさりによってその生命が間接的に繋ぎ止められている状態です。
※バトルロワイヤル上においては死亡扱いとなっているため次の放送では名前を呼ばれます。
※ギラティナと感覚が共有されており、キュウべえ達の会話を聞いていた可能性があります。
※バトルロワイヤルの装置には最終兵器@ポケットモンスター(ゲーム)をインキュベーターが改良したものが使われています。
※アクロマがギラティナを捕獲しその力を解析しています。
※現在ロワ会場での一部制限が機能しなくなっている可能性があります。
※会場のどこかを黒猫(キュウべえ)が徘徊しています。
764
:
◆Z9iNYeY9a2
:2015/03/18(水) 20:40:46 ID:Vw6BQJfI
投下終わります
まだ問題があるようであれば指摘お願いします
765
:
名無しさん
:2015/03/18(水) 22:44:07 ID:T9wEYZH.
修正お疲れ様です
これなら大丈夫だと思います
766
:
◆HOMU.DM5Ns
:2015/03/19(木) 23:17:39 ID:tg0Oy/ww
修正お疲れ様です。ほむらは一時退場扱い、ということですかね?
認識に間違いなければ、この形でお願いします。
767
:
◆Z9iNYeY9a2
:2015/05/03(日) 00:07:11 ID:7X7A2MDo
今回は制限関係に引っかかる展開となっているので問題ないかの判断を仰ぐためにこちらに一旦投下させていただきます
768
:
◆Z9iNYeY9a2
:2015/05/03(日) 00:08:01 ID:7X7A2MDo
―――――――――Intrude
「そういや」
まだ目的の場所にまで辿り着かないといった辺りだろうか。
ふと巧は思い出したかのようにさやかに問いかけた。
「暁美ほむらのやつが言ってたことなんだけどよ、『魔法少女は人間じゃない』みたいなこと言ってたんだが、あれってどういう意味なんだ?」
「………」
聞いた瞬間、さやかの表情が強張ったように感じられた。
少しいきなりすぎたか、と後悔する巧。
しかしさやかは、静かに口を開いて話し始めた。
「…私達魔法少女はさ、どんな願い事も叶えてもらう代わりに魔法少女として戦うことを背負わされるんだけどさ。
その時私達の命は、人間の体からこのソウルジェムに移し替えられるんだ」
と、さやかはソウルジェムを取り出す。
濁りを残した、掌に乗るほどの大きさの青い宝石。
「命を移し替える?どういうことだよ?」
「これが壊されない限り、私達は死なない。例え心臓を潰されても頭を壊されても、魔力さえあれば回復させることができる。
でも、逆にこれが壊されれば私達魔法少女は命を落とすの」
「……それで、その魔女とかいうのとずっと戦い続けなきゃいけないってことか?」
「うん、それって人間っていうより、戦うためだけに存在するゾンビみたいでしょ?」
さやかのまるで自嘲するかのような言葉に、巧は頷くことも否定することもできなかった。
ただ、一つだけ気になっていたことだけを聞く。
「…マミのやつはそのこと知ってんのか?」
あの言葉から推測するに、ほむらは知っていたのだろう。
だがマミはそんな様子をおくびにも出さなかった。
こちらに心配をかけないように隠していたのか、それとも何も知らなかったというのか。
「キュウべえは最後まで気付くことなかったって言ってたから、私の知ってるマミさんは知らないはず。もしかしたら、こっちのマミさんも……」
「………そう、か」
知らず知らずのうちにマミが背負わされていたものに思いを馳せる巧。
「…お前は、大丈夫なのかよ?」
今隣にいる、それを知った少女は一体何を思っているのか。それを知ればマミの気持ちに近づけるのだろうかと思い、巧はそう問いかける。
「私は…、もう大丈夫。色々…あったけど振り返るよりもやらなきゃいけないことが、今はあるから」
「そうか」
少女の決意を、そうして受け止め話を終わらせた巧。
――――もしこの時、もう少し踏み込んだところまで考えていれば。
あるいは、この先に待ち受ける運命を受け入れる覚悟ができたかもしれない。
そう後悔することになるのは、もう少し先の話。
―――――――――Intrude out
◇
769
:
◆Z9iNYeY9a2
:2015/05/03(日) 00:08:25 ID:7X7A2MDo
タイミングで言うならば、放送が始まって間もない辺りだろうか。
それは突然訪れた。
ドクン
「――――――」
「さて、どこに繋がっているのか分からないが、L、もしくはこの殺し合いに抗おうと考えている者達がいるのならば聞いてほしい」
「え、あれ?…バーサーカーさん……?
あ、そっか。死んだんだ……」
「桜さん?」
「あははは、あはははははははははハハハハハ!!」」
桜が突如笑い始めるのとマミが付近に魔力の気配を感じ取ったのはほぼ同時だった。
それもただの魔力ではない。魔法少女のものではない、むしろ魔女のそれに近いドス黒い気配。
「…まさか……!」
「おい、どうした!」
「何があったニャ!」
「みんな!離れて!」
理解するよりも自身の経験が発した警告を頼りに、皆に向けて声を上げるマミ。
地面を真っ黒な影が覆い尽くす寸前、マミは咄嗟の判断でニャースと総一郎に向けてリボンを飛ばし宙へと持ち上げた。
「うおっ!」
「ニャッ!?」
桜の周囲数メートルの範囲をどす黒い質量を持った影が覆う。
マミはバックステップで距離を取りながら、マスケット銃を展開。影に向けて銃口を向ける。
「…桜、さんよね?」
恐る恐る問いかけるマミ。
対応はしたとはいっても何が起きたのか把握などできてはいない。
ただ、彼女から湧き出るその黒い気配はどう見ても人間のものではない。
もしかしたら何かが彼女に取り付いていて、そのせいで桜がおかしくなってしまった。マミはそう思いたかった。
だから、この問いかけも否定、あるいは返答無しであってほしかった。
「―――ええ、そうですよ巴さん」
なのに、ゆったりと顔を上げた桜は、さっきまでの不安定でたどたどしい口調と同じと思えないほどにはっきりとそう返答した。
紫と白の交じり合っていた長髪は完全に真っ白に染まり、その瞳には底の見えない闇がうごめいているようにも見えた。
「それは、何?」
「それってどれのことですか?」
「とぼけないで!あなたから出てくるその黒い影よ!」
動揺がマミの声を荒げさせる。
ついさっきまで一緒にいた少女の突然の豹変。
そしてそこから生み出されている闇色の何か。
もしマミの常識で考えた場合、魔女のような何かに取り憑かれていて、ついさっきまでは平常であったのが何かの弾みで魔女の口づけに該当する呪いが発動してしまったか。
だからマミは確かめる必要があった。
彼女がまだ正気であるのか。もう手遅れなのか。
助けられるのであれば、見捨てるわけにはいかないのだから。
「……ねえ、巴さん。あなたには感謝してるんです。
あんなにボロボロで一人ぼっちだった私に優しくしてくれて」
「………」
「だけど、今の私はやらなきゃいけないことができる力を取り戻したの。さっきまでの何もできない私じゃない。
先輩に殺してもらうために悪い子になる、そんな私に。
だから、どこにいるのか分からないけど、聞いているならお礼を言わせて。バーサーカーを倒した誰かさん?」
770
:
◆Z9iNYeY9a2
:2015/05/03(日) 00:09:07 ID:7X7A2MDo
まだカメラが回っていることを意識してかそんなことを語り出す桜。
「だからもしみんなじっとしててくれるなら、優しく殺してあげる。
ねえ、巴さん。あなたも一緒に逝きましょう?」
「っ…!」
マスケット銃を撃ち出すマミ。
しかしその銃弾は桜の前面に現れた影が弾き飛ばす。
別に難しいことなどしていない。撃ち出されることが決まっている弾丸など、手の動きを注視していれば対応できる。
だからマミは自身の後方に5丁のマスケットを展開。引き金を自身の指にかざすことなく魔力による自動発射で迎撃。
鬱陶しそうに顔を歪めつつも、桜はその弾丸をリボンのような漆黒の魔力帯で弾く。
うち一発の対応が間に合わず、桜の肩を銃弾が掠めていった。
赤茶色のパーカーに一本の線が走り露出した腕からは血が流れ出る。
しかし。
「ニャニャッ!!」
ニャースの叫ぶ声がマミの耳に届き思わず上を見上げる。
見ると、ニャースを釣り上げていたリボンを弾いた銃弾が掠めていったようで、支えていた布が切れかかっていた。
狙ってやったのかそれとも偶然なのかは測れない。ただ、銃弾を放ち続けていればいずれあのリボンやあるいは宙の二人に命中する可能性だってある。
反撃のように放たれた黒い影をかわし、マミは桜に向けて大量のリボンを放つ。
両手から放たれた黄色のリボンの束は幾重にも結び上がり、頑丈な縄のごとき太さへと形を変える。
魔力帯が迫るリボンの束を切り払おうとするも、それらの攻撃に対抗するために編み上げられたそのリボンの束を切り刻むことができない。
「――ん…、くぅっ…!」
そのまま桜の体を縛り上げ地面へと繋げて拘束するマミ。
さらには泥から少し浮かせた地面には網目にリボンが張られており、地面から浮き上がる影に対する防波堤となっていた。
素早くマスケット銃を向けるマミ。
照準は、彼女の心臓。
何故彼女がそうなってしまったのかは分からない。だが、人の形がベースの魔女ならば、弱点は人の急所に近い場所のはず――――
(――人…)
そう、そこに立っているのは間桐桜その人の姿をしたものだ。
もし彼女がまだ間桐桜でいるのだとしたら、これは果たして正しいやり方なのだろうか。
奇しくもこれまで戦った魔女がほとんど人型とはかけ離れた異形の存在ばかりであり。
魔法少女と戦うことはあっても命を奪うまではたどり着くことがなかったこと。加えて――
(……桜、さん)
彼女自身が、短い時間とはいえ心を通わせ、守ると決めた存在であったこと。
それらの事実が銃口を向けたマミの覚悟を鈍らせた。
771
:
◆Z9iNYeY9a2
:2015/05/03(日) 00:10:37 ID:7X7A2MDo
「フフフ」
その一瞬。
それだけで桜は自身の魔力で体を覆ったリボンを黒く塗り潰し魔力を侵食。
マミの魔力で編まれた強靭なリボンは魔力を食い尽くされてボロボロになって消滅した。
「優しいんですね、巴さん」
「…っ」
そのまま自身を覆う魔力帯をマミへと伸ばし両腕を、足を拘束する桜。
振り解こうと抗うも、縛られた箇所から魔力を吸い上げられているかのような脱力感が襲い、力を込めることすらも困難。
「何…、この力は……」
それでも必死で抗おうとするも、魔力消耗が異常なほどに激しく。
「ニャア!」
「うおっ!」
やがてニャース、総一郎の二人を釣り上げていたリボンすらも維持できなくなり、切れたリボンは二人の体を地面に叩き落とした。
「巴さんの魔力、とてもおいしい…」
「桜…さん、ダメ…!目を覚まして……」
迫りより、マミの頬をスッとなぞりながら体に手をやる桜。
その間にも徐々に吸い取られていく魔力。
マミのソウルジェムの濁りがそれに合わせるように表出化していく。
このまま魔力を吸い尽くされては、彼女を止めることすらもできなくなる。
「さぁ、一緒に堕ちて、一緒に悪い子になりましょう……」
「…あああっ!!」
「止めろ!!」
そんな二人の元に、走って駆け寄る者が一人。
影の中に足を踏み入れて思わず脱力感に体をよろけさせつつも二人の元に走り寄った夜神総一郎は。
グイ、とマミと桜を引き離す。
拘束帯こそ引きちぎれなかったものの特に力を入れて踏ん張ることもしていなかったためあっさり桜はマミから体を離し。
「夜神さん!」
―――パシン
桜の頬を、思い切り平手で叩いた。
乾いた音と共に横を向く桜の顔。
その顔には何が起こったのか理解できていないかのように唖然とした表情が浮かんでいた。
「君は、自分が何を言っているのか分かっているのか!!」
驚きで力が弱まったのか、拘束帯はマミの体をあっさり離す。
地面に跪いて息を整えるマミ。
ニャースが駆け寄ってその身を心配する。
「何があったかは知らないが、自分から人を殺して裁いてもらいたいなどと…」
「―――――――」
772
:
◆Z9iNYeY9a2
:2015/05/03(日) 00:11:37 ID:7X7A2MDo
それが桜にとってあまりに予想外のものだったのか、叩かれたままの態勢で止まっている。
「どうしてそんなに自分を捨てたがる!君はまだ若い、まだ未来があるだろう!!」
彼女が何を背負っているのかは彼には分からない。
しかし総一郎、親であり警察官である彼にしてみれば、先の言葉、殺してもらうためにもっと悪い子になりたい、などという言葉は到底受け入れられるものではなかった。
高校生くらいの少女が、何故そうまでして死にたがっているのか。
「そんなになって人を殺して、君の親御さんは何て思うんだ!」
しかし、その言葉を受けた桜は、まるで何かを突かれたかのように歯軋りして総一郎を睨みつけた。
「―――あなたに、何が分かるんですか」
総一郎は知らなかった。それらの言葉の一つ一つが桜にとっては地雷に等しいものだったことに。
未来があるだろう?
そんなものはない。自分の体のことは自分がよく分かっている。
聖杯の器として多くの命を取り込んだ自分の体に、どれほどの未来があるというのか。
親が何と思うか?
家族は自分のことなど少しも案じてはいない。案じているとするならばせいぜい聖杯としての機能だけだろう。
その瞬間、桜の怒りの矛先が総一郎へと向いてしまった。
それだけが、彼にとっての不幸だろう。
「ダメ!逃げて夜神さん!!」
マミが必死でリボンを伸ばして助けようとする、その目の前で。
「…!間桐さく――――――」
桜の足元から膨れ上がった影が、一瞬で夜神総一郎の体を飲み込んだ。
マミのリボンはその体には届かず。
ただ、黒い影の中に飲み込まれて消えていった。
【夜神総一郎@デスノート(実写) 死亡】
「………」
地面に落ちるリボンを前に、マミは膝を着き。
そんな彼女に駆け寄るニャース。
773
:
◆Z9iNYeY9a2
:2015/05/03(日) 00:12:04 ID:7X7A2MDo
「に、逃げるニャ…」
「これで邪魔者はいなくなりましたね。もっと遊びましょう、巴さん?」
「……ニャース、ここから、逃げて」
「おみゃーも逃げるんニャ!」
「私が、ここで彼女を足止めするから、だからあなただけでも逃げて」
「何でおみゃーが…ニャニャッ!?」
喋る途中と言ったところでニャースの体を覆っていく黄色いリボン。
まるで球のように黄色いリボンをぐるぐる巻きに包むニャースの体。
飛来してきた黒い泥を回避するマミ。外した泥は壁に着弾し、まるで溶かすかのようにジュッと大きな穴を開けた。
大きな穴は地上10数メートルといった場所にいる街並みを映し出している。
マミはそのままグルグル巻きにしたリボンの端を持って、思い切りニャースの体をそこから放り投げる。
「ニャ、ニャあああああああああああああああああああああああ!!!!」
絶叫するニャースの前。
マミは桜の姿を見据える。
「まだ、足りないなぁ…。ねえ巴さん、あなたも食べさせてくれないかしら?」
「…どうして、こんなことをするの…?さっきまでのあなたは嘘だったの…?」
「嘘なんかじゃありませんよ。たださっきまでは調子が出なかったから静かにさせてもらっていただけです」
桜の隣に、2メートルほどはあろうかという黒い影が顕現する。
ドス黒い魔力で編まれたのっぺりとした巨人はこちらへとその両腕に当たるだろう魔力帯を伸ばしてくる。
ゆっくりとした動きのそれをマミがかわすことは難しいことではない。
しかしその力はかなりのものであったようで、叩き付けられた瞬間地面を抉り大きな穴を穿った。
マミは宙を舞った状態で顕現させた銃を着地と同時に発砲。
それは巨人の体を貫通して穴を空ける。しかしすぐさまその穴は修復。
再度振り上げた腕がマミへと襲いかかる。
パパパパパパパパ
再度生成したマスケット銃を、一斉に射出してその腕を牽制。
のみならず、多方向に渡って放たれた銃弾は一部が命中し、一部が弾かれ壁へと跳ね返り。
機関銃のごとき数の銃弾が壁を穿ち続ける中、天井の照明を吊るす電線を切断。
轟音を立てて、巨大な照明機器が放送場へと墜落。
衝撃でマミと桜の間で視界を失わせるほどの煙幕が打ち上がった。
バシン
その照明機器を、巨人は一叩きで広場の隅に追いやり。
「無駄ですよ、そんなものではこの子は―――――」
照明を失って薄暗くなった空間、桜はマミを捕らえんと周囲の気配へと気を配り。
「…いない?一体どこに――――」
広場に巴マミの気配がないことに気付く。
その時だった。
まるで巨大な砲撃が放たれるような音が響くと共に。
彼女のいる場所へと放たれた何かが壁を突き破り大爆発を引き起こしたのは。
774
:
◆Z9iNYeY9a2
:2015/05/03(日) 00:12:24 ID:7X7A2MDo
(…ここで、止めなきゃ……)
自分に戦う力がなかったばかりに守れなかった。
佐倉杏子。千歳ゆま。C.C.。そして今、夜神総一郎も目の前で命を落とした。
今のマミはそれら守れなかったことに対する後悔から表出した贖罪の気持ちで桜と相対していた。
「私が止めなきゃ…、みんなが……」
みんな。
杏子も、ゆまも、C.C.も。夜神総一郎も、親しかった、この場で親しくなった者はほとんど死んでいった。
だからこそ、止められなかった。
例え目の前にいる少女が、自分が守ろうと決めた者であっても、他者の命を奪う者であるならば倒さねばならない。
その思考の矛盾にすら気付かないほどに、マミの心は憔悴していた。
例えこの先、自分が魔法を使えず戦いに支障をきたすことがあっても、まず目の前の彼女を止めなければ未来などないのだ。
そんな思いの中で、彼女はニャースを放った壁の穴から飛び出し。
自分の魔力のほとんどを使い尽くすだろう勢いで、その一撃を放とうと構えていた。
それはもはや銃と呼べるサイズではない。さながら列車砲とでも呼ぶべき巨体の砲身。
さくらTVビルのそばで佇むその物体の上で、マミはそこを見据えていた。
(もう、誰も死なせたくない…!)
目を見開いたマミは、覚悟を決めたように振り上げた手を下ろし。
「――――ティロ……、フィナーレ!!!!!!!!!!」
巨大な砲身から放たれた弾丸は、さくらTVの間桐桜がいるであろう場所目掛けて射出され。
命中と同時に大爆発を起こしてさくらTVビルを崩落させた。
◇
政庁に辿り着いたさやかと巧。
しかしそこにあったのは瓦礫の山になったその施設の成れの果てだけ。
以前さやかが来た時にあった建物の面影はどこにもなかった。
見つかったのは、巨大な剣に貫かれて息絶えたユーフェミアの躯だけだった。
彼女の死自体は先の放送で名前を呼ばれたこともあって全く想定していなかったことではない。
今は他の皆の消息を確かめることが優先、と政庁を立ち去り周囲の市街地を二人は駆け回っていた。
幸い、巨大な車のようなものが何かを引きずるように移動したようなタイヤの跡が地面に残っていたこともあってそれを追えば皆の現在地に辿り着けるのではないかという推測は立てられていた。
そして。
「……何で死んでんのよ、あんた」
見つけたものは、緑髪の少女が胸に穴を開けて息絶えている姿。
自分のことを不死身だと言っていた魔女は、しかし心臓を引きぬかれたかのような傷を再生させることもなく目を閉じていた。
その顔があまりにも安らかなように見えることが、さやかの感情を逆撫でさせた。
「あんだけ人に偉そうなこと言っておいて、何でそんな顔で死ねるのよあんた…!!」
やりきれなさに近い感情がさやかの中で燻り始める。
「…他のやつらは、マミ達はどこにいるんだ?」
そんなさやかを横で見つめつつ、しかしその緑髪の少女以外の存在がないことの意味を考える巧。
嫌な予感が脳裏をよぎるが、この場にある死体はこの少女のものだけ。
マミ達はまたどこかに移動したということなのだろうか。
775
:
◆Z9iNYeY9a2
:2015/05/03(日) 00:13:01 ID:7X7A2MDo
―――――――――――にゃあああああああああああああああ!!!
そう考えた時だった。
叫ぶような声がすごい勢いで近づいてきていることに気付いたのは。
「え、ニャース?どこから―――」
「おい、上だ!」
と、空を見上げる巧とさやか。
そこには黄色いリボンでグルグル巻きになったニャースが空から放物線を描いて落ちてくる様子だった。
このまま落ちれば無事では済まないだろう。
受け止めなければ、と走りだす二人。しかし墜落場所が遠く、走っても間に合わない。
「ぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああ!!!!」
叫び声と共にニャースの体が地面に近づき。
その先にあるだろう無残な光景を想像して思わずさやかが顔を背けた時だった。
ビョーン
体をグルグル巻きにしていたリボンがニャースの周囲を覆うように展開、球状のトランポリンのように広がって地面から跳ね上がった。
そのまま地面に再度墜落してきたそれを受け止めるさやか。
「このリボン…、マミさんの…。ニャース、一体何が――」
「ブクブクブクブク」
さやかはニャースに問いかけるが、ニャースは墜落の時の恐怖のあまりか泡を吹いて気絶していた。
「向こうの方から飛んできたぞ」
「向こう……山にあるあの大きなビルから?」
そこにあったのはさくらTVという名前のビルのはず。
記憶を掘り返してそう思った次の瞬間だった。
ビルへと閃光が奔り、轟音と共に巨大な爆発を引き起こしたのは。
思わず光に目を背ける二人。
次に目を開いた時には、ビルの上半分ほどがえぐられたかのように消滅していた。
「もしかして、マミさん?!」
「…おい、急ぐが大丈夫か?」
爆発の元の場所を見ながら、巧はさやかに問う。
あそこまで、人の足で急いでも数十分はかかるだろう。
だが、人の足でないのならばあるいは数分というところまで短縮できるかもしれない。
さやかは自身のソウルジェムを見る。
あれから特に魔法を使う局面には遭遇していないこともあり、ソウルジェムの濁り自体はそこまで致命的なほどではない様子だ。
今ここで移動のために魔法を使ったとしても、あそこでおそらく起こっているだろう戦闘に加わり彼女を助けることはできるはずだ。
「大丈夫!急ごう!」
コクリと頷いてさやかは身にまとう衣装を魔法少女のそれへと変化させる。
同時に巧もまた、自分の姿を灰色の異形の姿へと変える。
一瞬その姿、巧のオルフェノク形態に驚くさやか。
「―――行くぞ」
しかしその影が巧の顔を映し出してさやかへと語りかけてきたのを見て、目の前のそれが乾巧であることを受け入れる。
そうして、一組のオルフェノクと魔法少女はさくらTVのあった場所へと向けて駆け抜け始めた。
魔法少女は自身の罪を受け止め、傷付けてしまった人の力になるために。
オルフェノクは前に進み己の弱さを受け入れる一歩として、あの強くか弱い少女を守るため。
◇
776
:
◆Z9iNYeY9a2
:2015/05/03(日) 00:14:16 ID:7X7A2MDo
「驚きました。まさかあんな攻撃までできるなんて……」
巴マミが死力を尽くす勢いで放った一撃。
それを受けた間桐桜は、しかし未だ原型をとどめていた。
あの砲撃はさすがに直撃を受けていれば桜とてひとたまりもないほどの威力だった。
間一髪のところで巨人を盾にして威力を軽減させ、短距離転移を駆使してどうにか爆風の少ない場所まで回避した。
しかしそれでもまだ間に合わず、魔力を全力で防御に用いて壁を作った上で敢えて後ろに吹き飛ばされることで衝撃を軽減させることに成功した。
結果マミのいた場所からは離れた位置に飛ばされてしまったが、その辺りは止むを得ない。
あれだけの爆風から生き延びたのだ。墜落の衝撃で全身の骨を折ってしまったことくらい我慢しなければならないだろう。
コキリ、コキリ
立ち上がろうとすると、体の骨が何かおかしな音を立てる。
どうにか立ち上がるものの、体のバランスが取れずうまく動けない。
もしもう少し”間桐桜”の成分が強ければ、全身の痛みに呻いただろうが、今の彼女には痛みを感じる感覚がかなり消えていた。
「仕方ないなぁ。もう少し休んで体が動かせるようになってから出発しようかなぁ」
地面に仰向けに寝転がって、全身の骨の修復を待つ桜。
傷が治るのと放送が始まるの、どっちが早いだろうなぁ、と思いながら、少女は休み始めた。
その放送で彼女が探す人物、衛宮士郎の名が呼ばれるということなど全く視野に入れることなく。
【???/一日目 夕方】
【間桐桜@Fate/stay night】
[状態]:黒化、ダメージ(右腕欠損・止血)(全身骨折・回復中)、魔力消耗(中)
[装備]:マグマ団幹部・カガリの服
[道具]:基本支給品×2、呪術式探知機(バッテリー残量5割以上)、自分の右腕
[思考・状況]
基本:先輩に殺されるためにもっと悪い子になる
1:全身骨折が治るまでは休息
2:その後は先輩を探して回る
[備考]
※アンリマユと同調し、黒化が進行しました。魔力が補充されていくごとにさらに黒化も進行していくでしょう。
※さくらTVにて放送が流れました。最大でティロ・フィナーレが放たれるまでのどこかまで放送されていたと思われます。
◇
777
:
◆Z9iNYeY9a2
:2015/05/03(日) 00:14:35 ID:7X7A2MDo
その時の巴マミは冷静ではなかった。
自分の命に替えても桜を止めなければならない、という強い使命感の元で行動していた。
命に替えても。
すなわち、魔力消耗が激しく以降の行動に支障をきたすことがあったとしても、というくらいには。
彼女は知らなかった。
魔法少女がソウルジェムを濁らせきった時の真実を。
もし知っていたら、彼女は果たしてその攻撃を行っただろうか。
しかしこの殺し合いの場においてはその限りではない。
千歳ゆま、佐倉杏子は魔力を使い果たすより前に、ソウルジェムを砕かれて命を落とした。
しかし呉キリカ、暁美ほむらは魔力を使い果たしソウルジェムを自壊させた。
そこには主催者・アカギやアクロマ、インキュベーター達による何かしらの力が働いていたことが原因。
理由は分からないが、その力は魔女の誕生を抑制しているものであった。
だが。
彼らが暁美ほむらを利用してギラティナを降臨させた時、彼らにとっても想定外の事態が発生していた。
制限装置の不調。
例えば、この場においてはサーヴァントは受肉し肉体を得る。カレイドステッキは平行世界のアクセスに制限を受ける。
オルフェノクは使徒再生による同族を増やす行為を成功させることができない。
その中には、魔女の誕生を抑制するものも存在していた。
巴マミのソウルジェム、本来ならば自壊するはずだったもの。
しかし、制限装置の不調によって効果が発揮されなくなってしまっていた。
その結果――――――
◇
泣くことができればよかった。
失ったものを悼むことができたならば、ここまで絶望はしなかったかもしれない。
しかし、彼女は自責の念があまりにも強すぎた。
彼女にとっての始まりは、両親の死。その時に自身の生を願ったことにあった。
だから救われた命を、せめて一人でも多くの人を救うために使いたいと思って戦い続けていた。
なのに。
(――守れなかった……誰も……)
もしもあの時自分が千歳ゆまの元から逃げなければ。
もしもあの時もう少し冷静でいて佐倉杏子達の元から離れなければ。
もしもあの時ユーフェミアを置いて離れることさえなければ。
もしもあの時C.C.を一人にせず常に一緒にいれば。
もしもあの時間桐桜を撃ちぬいていれば。
全ては仮定にすぎない。
彼女が行動したとしても結局同じ結末は迎えてしまったかもしれない。
だが、巴マミにとってそんな事実は関係ない。
救えなかった、助けられなかった事実だけが残り続ける。
間桐桜を撃退した今、その想いをぶつける相手も存在しない。
敢えていうならば、自分自身にその絶望をぶつけることしかできない。
曲がりなりにもニャースを逃がすことには成功している。しかしその事実よりも助けられなかったものへの意識が強すぎた。
778
:
◆Z9iNYeY9a2
:2015/05/03(日) 00:15:15 ID:7X7A2MDo
「私、どうしてこうなのかな…?
どうして誰も助けられずに、一人だけで助かっちゃうのかな…?」
―――どうしてあの時、もっとみんなを助けられなかったのかな?
自分だけ。
いつだって自分だけが死にたくないと助かってきた。
こんな私が、正義の魔法少女なんて――――
「マミ!!」
「マミさん!!」
ああ、こんなにも自分が恨めしい、自分を消してしまいたい。
そんな気持ちの時に。
どうして、彼と会っちゃうのかな?
「たっくん…」
駆け寄ってくる灰色の体はほんの短い間共に行動した人。
その隣にいるのは魔法少女だろうか、どこかで会ったような気がするが思い出せない。
「おい、何があったんだマミ!」
その体は人間の姿になってこちらに走ってくる。
あの時と変わらぬ、優しい顔だ。
こんな私とは、全然違う。
「…ねえ、たっくん。私、ただ寂しかった。
いつも一人ぼっちだった…。だから戦いに逃げて忘れようとしてたの」
「マミ…?」
目の前で足を止めるたっくん。
「誰かのために戦うなんて嘘…、私はいつも自分のことばっかり…」
「な、何言ってるのマミさん……」
「私どうしてこうなのかな?いつも誰も守れなくて、自分ばっかり。」
「おい!しっかりしろ!」
「―――どうして、あの時もっとみんなを助けられなかったのかな?」
ゾワリ
マミは気付かない。
ただでさえ限界状態であったソウルジェムの濁りが、絶望を吐き出す度にその色を濃くしていっていることに。
「自分だけ。そう、自分だけが死にたくないって、そんな我侭で自分勝手な想いだけで戦って。
あの時、ゆまちゃんを見捨てずにいたら、こんな寂しい想いなんて…。
そんなことを考えてたんだもん。私、魔法少女失格ね…」
「違う!マミ、それは違う!!それを言ったら、俺だって――――」
「マミさんは立派な魔法少女です!私の憧れの……」
肩を掴み話しかける巧。
その傍で励ますように声をかけるさやか。
しかし、二人の言葉はマミに届くことはなく。
「そっか…そういうことになっちゃうのね……」
絶望した瞳は何かを悟ったように虚空を向いて話し始め。
「―――――――たっくん、ごめんね」
パキリ
やがてソウルジェムの濁りが飽和したその時。
巧とさやか、二人の目の前で、巴マミの命の結晶は絶望の種へとその形を変化させた。
【巴マミ@魔法少女おりこ☆マギカ 魔女化】
779
:
◆Z9iNYeY9a2
:2015/05/03(日) 00:17:04 ID:7X7A2MDo
一旦ここまでで仮投下終わります
今回仮投下した理由は制限:魔法少女の魔女化禁止に抵触しているためです
そこに問題がなければ期限までに続きを投下させていただこうと思っていますのでご意見お願いします
780
:
◆HOMU.DM5Ns
:2015/05/03(日) 01:34:23 ID:tsDwkJoo
仮投下乙でした。
魔女化の件は、可とするかは複雑なとこです。前作にて制御の不調が起きているとは伝えられていますが。
この場合参加者以外、主催者とも違う存在が自由に動いて参加者を殺害して回るというのが魔女化の最も問題とされることです。
同時に現在投下を続けていらしてるのは氏おひとりなのを鑑みれば相応に自由は利くとも考えています。
統括すると、展開自体はギミックとして面白いと思うのが個人的意見、実質魔女に参加者を殺害させるわけにはいかないというのがロワ的意見です。
他の意見も参考にして、最終的には氏の判断に委ねられる形になるでしょう。
781
:
名無しさん
:2015/05/03(日) 02:06:36 ID:hpqKISIE
仮投下お疲れ様です
制限に不調が生じたと前話であるので魔女化の理由としては大丈夫だとは思いますが
もし魔女化を通しにするなら今回の投下分内で処理するのが良いかなぁと個人的な意見です
782
:
◆Z9iNYeY9a2
:2015/05/03(日) 02:13:38 ID:7X7A2MDo
ご意見ありがとうございます
では今回はとりあえずこのまま最後まで完成させたものを投下した後問題があるようならば、という対応にさせてもらってよろしいでしょうか?
783
:
名無しさん
:2015/05/03(日) 02:16:59 ID:hpqKISIE
分かりました。本投下も頑張って下さい
784
:
◆HOMU.DM5Ns
:2015/05/03(日) 11:35:17 ID:tsDwkJoo
書きそびれましたが、修正指摘です。
>>769
での桜の発言で「バーサーカーさん」はさん付けいらないですね。次の台詞じゃ呼び捨てになってるのでなおさら。
それと原作の表現を見るにバーサーカーを桜が取り込む際はかなりの苦痛が生じてるようです。桜が現時点で取り込んでるサーヴァントの数にもよるのですが。
これに付随する箇所として、実は桜の参戦時期は明確ではありません。中盤以降、黒化前であるのは確かのようなのですが。
つまり黒化バーサーカーの存在を認知してない可能性があるので、桜の最初の台詞に微妙な変更が必要になってくるかもしれません。
隅をつついてるのは承知の上ですがお許しください。以上指摘でした。
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