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Schwarzer Kater 6 *SA
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「Schwarzer Kater 5」の続きです。
SAオンリーほぼ初期メンバーのみ。
そしてリアルよりパラレルが多くAさん猫可愛がりなお話達。
とうとう6になりました。
流石に更新頻度が落ちてきましたが、あの頃の6人の雰囲気が残ったお話をまったり続けていきたいと思います。
今スレもどうかよろしくお願いします☆彡
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神主と神様
ある田舎に境内は広いが世間的に……もういい加減この説明はいらないと思うので中略……このお話はそんな神主と神様達のお話である。
神社へと続く階段。
その両脇から境内にかけて緑濃い葉をつけた木が立ち並んでいる。
それらは全て桜の木だった。
もう季節は過ぎてしまったが実はこの神社、近所で有名な桜の名所だ。
桜の季節には祭りの時のように多くの人がここを訪れていた。
「ヒロさーん」
「アツシおはよう」
「おはよう。ほうき、ほうき」
「わかったわかった。ほら」
「わーい」
いつものようにこの神社の神様の片割れであるアツシが神主らしくない神主のヒロの前に姿を現す。
待ちきれず手を伸ばして箒を催促する姿はどうみても無邪気な子供にしか見えない。
まあいくら無邪気でも宙に浮いている子供はいないから一応神様の威厳は保って…いるのだろうか?
「ヒロさん、はよ」
「俊、おはよう」
「ええ天気やなぁ」
「だな。今日は結構暑くなりそうだ」
「この間花見したのにあっちゅうまに夏か?」
「夏にはまだ早いだろ」
「暑いのは苦手じゃ」
「へえ」
嫌そうに顔をゆがめる俊に神様も苦手な季節なんてあるのかと呟くヒロ。
その間にもアツシは楽しそうに境内をさかさかと掃き清めている。
「この間まで花びら一杯だったのにもうないね」
「そりゃそうじゃろ」
「綺麗だったのにー」
境内の掃除は花びらも落ち葉もない今が一番楽な時期だった。
「お前桜好きじゃもんな」
「うん!だって、ここにいて一番季節を感じられるから」
「ああ」
今でこそヒロという神主のおかげで外に出ることもできるようになったアツシだが、今までは境内の景色しか自分の目で見ることは叶わなかった。
俊がその目を通して外の景色を見せてくれたとしてもやっぱり自分の目で見るのとは違うのだろう。
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ぽすん。
頭に手を置かれたアツシはその手の持ち主を見る。
「これからはいくらでも連れ出してやるから行きたいとこがあったら言えよ」
「ありがとー」
何百年もの間毎日が退屈で苦痛で、俊が傍にいなければきっと耐えられなかった。
けれど今はここに縛られていることを忘れてしまうぐらい毎日が楽しくて…。
アツシは笑顔を見せながら礼を言ってふわりとヒロに抱きついた。
放り出された箒はと言えば…後ろで俊が受け止めている。
「アッシもう掃除はすんだんか?」
「まだやるっ」
「はえーな」
かじりついていたヒロからすぐに離れ、箒を持った俊の元へとあっという間に戻ってきたのには俊もヒロも苦笑気味だ。
「ふふーん♪」
いつもよりもさらにご機嫌な様子のアツシはまたほとんど何もない境内をそれでも綺麗に綺麗に掃き清めていく。
濃い緑の葉に朝日が降り注ぎ、穏やかな風の吹く気持ちのいい朝。
今日は本殿に雑巾がけでもするか。
そうヒロが考えていた時。
「っきゃー!」
「アツシ?!」
箒を放り出してすっ飛んでくる神様の姿。
おおよそ神様らしくない…いつものことだが…慌てぶりにヒロも何事かと身構える。
「あー…」
が、俊にはどうやら心当たりがあるらしく飛びついてきたアツシを受け止めぽんぽんと背中を叩いた。
「ふえーん、俊ちゃーん」
「今年もか」
「だってぇ」
「アツシどうした?」
半泣き状態の神様にヒロが心配そうに問い掛ける。
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「けっ…」
「け?」
「け、けけけけむしっ」
「は?」
「ほらそこっ!」
俊にしがみついたまま小さな片手を伸ばし指差した方向には…ぷらんと桜の木から垂れてきた虫の姿。
確かに毛虫だなとヒロは頷いた。
「もうそんな時期か」
この神社には桜が多いからヒロにとっては見慣れたものだ。
「アツシ苦手なのか?」
「そ、そそそそっそんなことないもん!」
「苦手なんだな」
明らかに嘘だとわかるビクビクしながらの必死の否定に思わず笑ってしまうヒロ。
「毎年この時期はお参りに来る人も少ないし、幸い俺が知る限り大発生したこともねえからそのままにしてあるんだが…消毒した方がいいか」
「わしの力なら一瞬で退治できるんやけどな」
「ダメー!」
「アツシ?」
ヒロの言葉に珍しいぐらい大きな声でアツシが叫ぶ。
「毛っ、けけけ、毛虫さんだって生きてるんだから、ダメっ」
「ぷ…」
さっきからしがみつかれたままの俊が吹きだした。
「アッシはそういう性質やから」
「そうだったな」
片方は柔、もう片方は剛。
または赦しと怒り。
静と動。
すっかり忘れ去られていたかもしれないが、この神様達はそんな正反対の性質を持っている(はず)。
基本なんにでも優しく生を大事にするアツシだから、今までどんなにアツシが怖がっても俊は力を使ったことがない。
まあ毛虫を退治する為に神様が力を使うのも何か間違っているとは思うが…。
ヒロはいまだ俊にしがみついたアツシの頭をなでる。
「それじゃしばらく境内の掃除は止めといた方がいいかもな」
「…え」
「そのかわり手伝いたいなら別のこと頼むから」
「っうん!」
どれだけが掃除がしたいのか、神様であるはずのアツシはヒロの提案にぱあっと顔を輝かせた。
「ヒロさんありがとー」
「はは」
さっきよりは落ち着いたのか俊から漸く離れ笑顔でまたお礼を言うアツシ。
神様に感謝される機会なんて普通はないだろうなと普通でない神主が苦笑していた頃…俊の顔がにやりと笑みを作った。
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「アッシー」
「俊ちゃん?」
「ほれ」
「ぎゃー!」
楽しそうな顔をして目の前にぴろんと差し出されたのはアツシの苦手な(嫌いと言っても間違いではないと思うが)毛虫だ。
すぐさまヒロにかじりついて叫ぶアツシに俊はイタズラめいた表情で続ける。
「毛虫も生きとるんやからあんまり嫌うと悲しむで?」
「うっ」
「ほれ」
「いやー!」
アツシはヒロから離れかなりの速さで逃げ出した。
ガキか。
ヒロはその2人の神様のやり取りを見て思わず胸中で呟く。
「ほれほれ」
「きゃー!」
逃げているアツシと楽しそうに追いかけている俊の姿は神様のはずなのにそこらの子供と何の変わりもない。
どちらも浮いていると言うことを覗けばだが。
「あーけど神様ってのは結構イタズラ好きなのも多かったか」
普通その対象は人間のはずだけどな…。
そう思いながらきゃーきゃーと追いかけっこをする神様達を楽しそうに眺めていたヒロだが、次第にその顔が険しく変化していく。
「俊ちゃんの意地悪ー!」
どこん!
「ちょ、あぶねーやろうが!なにすんじゃ!」
どがん!
「俊ちゃんが悪いんだもん!」
べこん!
「あほか、少しでもお前が慣れる様に間近で見せちゃっただけやろうが!」
ばきっ!
「嘘だっ楽しんでたくせに、俊ちゃんのばかー!」
ぼこん!
叫びながらの追いかけっこに、いつしか神様達の桁外れな力が加わっていた。
見る見るうちに灯篭が崩れ大穴が空き石畳が割れ、いつもの綺麗な境内が様変わりしていく。
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「お前ら!」
「「うわっ」」
元々神主らしくない神主であるヒロは更にとてもじゃないが神主とは思えない怖い形相で
荒れ狂う力をものともせず傍へと寄るとむんずと2人の後ろ襟を掴みあげた。
夢中になっていた2人は一瞬驚いたが、ヒロの顔を見てぴたりと動きを止める。
そして冷や汗をだらだらと流し始めた。
「唯でさえ貧乏神社なんだから、境内のものを痴話喧嘩で壊すんじゃねえ!」
「「ごめんなさーい!」」
声を揃えて謝る神様達。
痴話喧嘩にはつっこまなくていいのか?と思うがここにそれを言える人はいない。
「すっ、すぐ直すけぇ」
焦って言う俊にアツシは言葉にならずこくこくと必死で頷いている。
それを見たヒロは掴みあげていた手をぱっと離した。
「「わっ!」」
人間ではないのだからそのまま落下するなんてことはなかったが、流石にバランスを崩して慌てる2人。
そして体勢を立て直した2人がそーっとヒロを振り返ると…そこには腕を組んで鋭い視線で神様達を見ているヒロがいた。
「アッシ」
「俊ちゃん」
2人は手に手をとって慌てて境内を直していく。
壊す時も一瞬だったが、さすが神様直すのも一瞬である。
しかし…こんなことに力を使ってもいいものか?
「神様より強い神主ってどうよ?」
「ま、まあヒロ君だし」
「その一言で納得できるから怖いよね」
大きな物音がしたので何事が起きたのかと様子を見に母屋から出てきたマキ、マツ、ウサは揃ってため息をつきながらそんな神様達と神主を眺めていた。
こうしてほんの少し近所に有名で2人の神様と神主らしくない神主がいる神社は、いつもの平和?な時間を過ごすのでした。
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