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about us 【MKAK】
1
:
ヤマダ
:2013/09/30(月) 16:59:54 ID:lvc7dln6
自前MKAKサイト「並行に逆走」にログインできない状態になってしまったため
誠に勝手ながら、こちらにお引っ越しさせていただく事を決意いたしました。
ご迷惑をおかけし大変申し訳ありません。
サイト同様、ここではAK右推奨でおもにMKAKの長編〜短編を扱わせていただきます。
よろしくお願いいたします。
397
:
ヤマダ
:2014/01/31(金) 23:13:53 ID:???
横ではサンドイッチが出来たと、さっきの店員がなにか言ってるけど
その声なんて耳を通り抜けていく。
もうサンドイッチなんてどうだっていい。腹なんて減ってない。
…胸が、いっぱいで、きっともうそのサンドイッチは食べられない。
「 マキさんちょっとそこから動かないでください 」
いつまでも店の前で話している訳にもいかず、自分がさっき落とした財布に手を伸ばした。
手を繋いだままの俺に
「 離したっていなくなったりしないよ 」
おかしそうに目を細めてマキさんは言うけど、俺はやっと掴んだその手を離すことは出来なくて。
財布を拾い、マキさんに抜き取ってもらった紙幣を店員に渡してサンドイッチを受け取った。
.
398
:
ヤマダ
:2014/01/31(金) 23:15:18 ID:???
地面に散らばったままの小銭たちは、この寒空のした
ダンボールにくるまって眠るホームレスたちの肥やしになりますように。
「 This is for you 」
ふと横を通りかかった青い目をした小さな男の子に、買ったばかりのサンドイッチを手渡した。
その目がくるりと丸くなったのを見てからマキさんの手を引っ張り歩きだす。
するとすぐ後ろから
「 oh thank you〜 」
幼い響きのお礼か聞こえてきて、胸がじわじわ温かくなっていくのを感じた。
強く握ってた手は、歩く速度が緩くなるのに合わせて優しい恋人繋ぎに変わっていく。
「 二人だけで、話したいです…」
そこらへんのカフェとかじゃなくて、二人きりになれる場所。
俺の部屋に来てくれと言えば、うんて頷いたマキさんと
さっき出たきり、テレビもつけっぱなしでズボンも脱ぎっぱなしのホテルの部屋に帰った。
.
399
:
ヤマダ
:2014/01/31(金) 23:17:04 ID:???
「 あれからどうしてたんですか……? 」
ソファに並んで座って、相変わらず俺は彼の手を握ったまま。
「 心配かけてごめんね。本当は連絡したかった、けど 」
そこで言葉を濁したマキさんに続きを促すと
彼の口から出たのは、ヒロさんの名前だった。
あの事件があった日、重傷を追いながら逃げ出した後
搬送された病院にヒロさんが訪ねてきたそうだ。
『 もうアキラを危険な目に合わせたくない。だから…あの子にもう近づかないでやってくれ 』
マキさんがそばにいる限り、俺の身の安全が保障されないと判断したヒロさんは
マキさんにそう約束させた影で、彼の組織に彼の手柄としてデータを引き渡したらしい。
「 おかげで俺は、綺麗に足を洗うことがでた。」
「 ヒロさんが……… 」
あの日俺に何も語らなかったヒロさんは、俺やマキさんのために
組織の大切なデータを相手に………?
だって、そんな事 俺には一言も……
.
400
:
ヤマダ
:2014/01/31(金) 23:18:23 ID:???
「 すげぇ人だね あの人は 」
こんな形で、またひとつヒロさんの凄さを感じるなんて。
マキさんがデータを盗んだスパイだから、見捨てたんじゃなかった。
ヒロさんは彼をスパイとしてだけじゃなくて、俺が愛した人として情をかけてくれたんだ。
「 ヒロさんがいなかったら、あの日は生き延びれても今きっと俺はここにいなかっただろうね 」
生きていたのに、連絡が取れなかった訳。
ヒロさんが俺たちのために動いてくれてた事。
何一つしらずに、俺はマキさんが死んだものだとおもって
今の今まで……
自分の殻に閉じ籠って、ナオキやタカヒロにも迷惑をかけた。
バカ、みたいだ。
.
401
:
ヤマダ
:2014/01/31(金) 23:21:34 ID:???
あの日から今まで抜け落ちていた物が、一つ一つ自分の中に戻ってきたような感覚がした。
俺の時間が、息を吹き返し始める。
「 無事…だったんだ…、ょ よか った、」
現実に起こってる事実に思考が追い付いた途端、再会の奇跡に目頭が熱くなって
拭う間もなく涙が零れた。
ごめんねって抱き寄せられたら、もっと涙は止まらなくなる。
固まっていた心がじわじわと溶けていく。
四年前のあの病院でヒロさんにしがみついて泣いた時以来
はじめて自分の感情を誤魔化さずに表面に出せた様な気がした。
嬉しくて笑うとか、悲しいから泣くとか、腹が立つから怒るとか
そういう普通の事がいつの間にか俺にはできなくなっていたのかもしれない。
俺はマキさんがいないと、そんな当たり前の事すらうまく出来ないんだ。
.
402
:
ヤマダ
:2014/01/31(金) 23:23:35 ID:???
「 あいたかったです ずっと 逢いたかった…」
「 俺も……逢いたかった…… 」
ごめんね。
またマキさんはその言葉を口にして
俺の背中を慰めるように優しく撫でてくれる。
「 俺ね 今は古着屋やってんです。マキさんは…? どうしてるんですか?」
「 昔住んでたって言ったでしょうここに。だからその時の知り合いの伝で、そいつの会社で働いてるよ 」
「 なんの会社ですか?大変じゃありませんか?どこに住んでるんです? 」
「 パコソンかちゃかちゃしてるだーけ。 この近くのマンションに今は住んでる。」
「……ひとり、で? 」
「 もちろん。」
俺の質問攻めに一つ一つ答えながら最後にそう言ってニコリと笑ったマキさんに、ほっとしてというか
離れてた間の事を色々知れて嬉しくなって、涙で濡れたままの頬がふにゃりと緩んでしまう。
「 アキラはどうしてここに? 」
「 バイヤーから古着仕入れるために月に二回こっちに。」
「 そうなんだ。昔から好きだったもんね古着 」
「 はい!」
ただの思い出じゃなく、昔の事もちゃんと彼の中に存在してる。
またひとつ嬉しさが心に積もった。
.
403
:
ヤマダ
:2014/01/31(金) 23:26:05 ID:???
今日は仕事が休みで、さっきは昼飯を買いにサンドイッチ屋にいったのだと
優しく笑いながら言う彼と、募る話を夕方まで続けた。
壁に掛けられた時計の針をみた瞬間
俺にとっちゃ夢みたいなその空間から一気に現実へと引き戻される。
「 やっばい マキさん俺、ちょっともう出なきゃ…ど、どうしよう えっと 」
「 バイヤーとこ? ん、なら俺もう帰るよ 」
長居して悪かったねと傍らのコートに腕を通し、マキさんはソファから腰を上げた。
「 えっ、ま、まって すぐ戻ってくるからここでまっててくれませんか 」
「 え。いやだって… 」
「 ダメ…ですか?」
「 …や そういうんじゃない、けど 」
「 じゃあいてくださいっ 一時間以内に帰ってきます絶対! ルームサービスとっていいから!」
マキさんの返事を聞いてる間もなく部屋を飛び出して、詰まっていた息を吐き出したタクシーの中
もしかして…いや、もしかしなくても
俺、だいぶ自分勝手な行動を取っちゃったな、と少し心配になった。
それからバイヤーの店を時間ギリギリに訪問して、ホテルの部屋に帰ることができたのはきっかり一時間後。
「 ただいま マキさん! 」
鍵を開け、革の手袋を外しながらマキさんの名前を呼んだ。
だけど姿が見当たらなくて
「 ………マキ、さん? 」
足元を不安で掬われたように、体がひやりとした。
.
404
:
ヤマダ
:2014/01/31(金) 23:27:28 ID:???
静まり返った部屋に立ち尽くす。
怖くて、怖くて、怖くて、動くことができない。
「 マキさん、 マキさ ん!」
ドクドク嫌な音を立て出した胸を押さえる手は、冷えきって少しだけ震えてる。
マキさん、ともう一度呼ぼうとした時
「 あ、おかえり はやかったね 」
「 ?! 」
正面の窓が開き、カーテンが揺れて
その小さなベランダから何食わぬ様子でマキさんが姿を現した。
.
405
:
ヤマダ
:2014/01/31(金) 23:29:58 ID:???
「 ッッま、マキさん! なんだもうっ びっくりした! 」
大股で歩み寄り、まだ半分向こう側にいる彼の体を室内に引っ張り込んで抱きしめる。
本当に本当にびっくりした。
また…居なくなったのかとおもった
「 え、何 アキラ 泣いてんの? どした?いい服なかった?」
「 ぅ、ッ う そんな訳ないっしょっ マキさんって よ、呼んでも 返事…ないから、っ 」
「 あ〜あ〜もうごめんごめん びっくりしちゃったの?」
「 も、イヤです ほんとにいやだ……」
「 ん? 」
「 もうマキさんと離れんのは嫌です… 」
ぎゅって抱きつく俺の丸まった背中を、マキさんの優しい手が撫でていく。
「 俺と、一緒に日本に帰ってくれませんか…… 」
うまく言えたかどうかわからない。
背中で動いていた手が、ぴたりと動きを止めた。
To be.........
406
:
ヤマダ
:2014/01/31(金) 23:33:11 ID:HG.bXGys
コメントお返事
>>394
【 peacock blue 】-Meeting again-
>>395-405
ありがとうございました!
407
:
名無しさん
:2014/02/01(土) 20:55:28 ID:OROoCa82
ヤマダさま更新ありがとうございます!!あーーー!よかった!!もんのすごい幸せな気分になれました!
そしてHさんカッコよすぎます>_<
続きが楽しみです!
408
:
名無しさん
:2014/02/02(日) 15:50:41 ID:???
ヤマダさま、二人を再会させてくださってありがとうございます!
あ、その前に更新ありがとうございますm(..)m
運命の愛で結ばれている二人は絶対に会えるんですよね
ただ、まだMKさんのほうに屈託がありそうで…ちょっと心配です
AKちゃんにこれ以上の涙はなしにしてください〜(祈)
とはいうものの、かわいそAKちゃん萌えの矛盾した私
続きを楽しみにしています
409
:
名無しさん
:2014/02/10(月) 01:24:40 ID:???
ヤマダ様!
更新ありがとうございます!
最高です。このお話に巡り会えて本当に嬉しいです。
今後も楽しみにしています!
410
:
名無しさん
:2014/02/14(金) 23:39:15 ID:???
私もこちらのお話大好きで毎回楽しみに拝見しております。
とうとう再会できた2人に嬉しくなりました!ありがとうございます!
AKの望み通り2人一緒に日本に帰れますように…!
そして2人仲良く暮らせますようにと願いながら続きを楽しみにお待ちしてます。
411
:
ヤマダ
:2014/02/18(火) 14:23:29 ID:???
>>407
さま
コメントありがとうございます!
幸せのおすそわけできたようでよかったです!笑
更新がんばります^^
>>408
さま
コメントありがとうございます♪
私もかわいそAK萌えする人なので、AKの笑顔が見たい反面
いぢわるしちゃいます。ついつい!笑
更新がんばりまーす!
>>409
さま
コメントありがとうございます^^
えええそんなそんな嬉しすぎます恐縮です><!
更新がんばります!
>>410
さま
コメントありがとうございます!
毎回楽しみにしていただけてるなんて、本当に嬉しすぎます!感謝です。
お話はまだ続きますので、お付き合いよろしくおねがいします!
412
:
ヤマダ
:2014/02/18(火) 14:25:20 ID:???
■peacock blue■MKAK
-dearest heart-
俺が少しベランダに出て返事ができなかっただけで、目を潤ませてしまうアキラを見て
自分が彼に残してしまった傷の深さ思い知らされた気がした。
初めはスパイとして近付いてアキラを取り込もうとした。
話術には自信があったし、こんな単細胞な人間すぐに騙せると思っていた。
なのにいざアキラと話してると話の展開から何もかも予想外で
俺が用意していた計算ずくの会話は、なに1つ役に立たなかった。
頭で考えることをやめて、はじめて素の自分で彼と会話をした時
無意識に笑った俺を見て
“やっと本気で笑ってくれましたね”なんて、はにかんだアキラに
俺は恋をしたのかもしれない。
.
413
:
ヤマダ
:2014/02/18(火) 14:26:54 ID:???
一緒にいると楽しくて、彼は純粋で真っ直ぐで優しくて、すこし馬鹿で。
俺とは違って嘘が下手くそで、だから騙されやすい人。
友達になってデータの情報を探るのが目的だったはずなのに
いつのまにか恋人同士になって
愛を囁き、キスして、彼と愛し合ってしまった俺は
ただの一人の男に戻っていた。
アキラと過ごした時間は夢みたいに幸せで
だけど夢はいつか覚めるものだということも、組織への言い訳がもう長くは続かないだろう事も頭の端っこでは分かっていた。
彼と特別な関係になったのは計算通りで、すべてうまくいっています。
もう少し時間を下さい。
そんな風に誤魔化し続けたある日、焦れた組織の奴等はついにアキラを標的にするという案を持ち上げ始めた。
『 自分がデータを回収します 』
そうすれば、アキラが危険な目にあう事はないのだとおもった。
俺は彼に黙って姿を消し、部下たちにデータの回収を強行させた。
それで、うまくいったはずだった。
.
414
:
ヤマダ
:2014/02/18(火) 14:28:32 ID:???
それなのに
『 データが?』
数日後、盗んだデータが盗まれた。
あろうことかアキラ本人が、事務所に忍び込み、それを奪い取っていったのだ。
監視カメラで人物を特定することはできなくても、少し調べれば誰が犯人かなんてわかってしまうのに。
憤慨したトップはついに俺が一番避けたかった作戦を実行し
悲劇は幕を開けた。
あの日の絶望的な気持ちを忘れた事なんてない。
部屋に監禁された恋人の姿。
何よりも大切な愛しい人が鎖に繋がれて涙を流しながら助けを求めてるというのに
俺はどうすることもできなくて、助けるどころか冷たく、突き放した。
マキさん 助けて
今でも鮮明に思い出すあの時のアキラの叫び声。
酷いことをしたのに、最後まで彼は俺を心のどこかで信じてくれていた。
逃げ出した後のホテルで襲撃された時
俺は自分もいくから先にいけと彼に嘘をついた。
きっと自分だけ逃げてしまったとアキラが自分を責めるだろう事も分かっていながら。
それでも、アキラを守りたかった。
.
415
:
ヤマダ
:2014/02/18(火) 14:30:12 ID:???
あの窓を閉める直前にみたアキラの後ろ姿が、俺が見れる最後の彼なのだろうと思っていたのに
生へのしぶとさは自分でも驚くほどに強く、血だらけになりながら銃をぶっ放して転げ落ちるように降りた階段
叫び声にも似た悲鳴をあげる街の人々の中にアキラの姿がない事だけが救いだった。
襲いかかってくる奴に連発した銃弾は、目標だけでなく後ろにいた野次馬たちにも命中して
罪のない人が血を滲ませて地面へ倒れて行くのを視界の端で見ていた。
妻らしき女性の悲しんでる声がする
子どもの泣いてる声がする。
父親が打たれ、泣きじゃくる母親と女の子のすぐ横で、俺を悔しそうに睨み付けていた小さな男の子の目は
少しだけ、アキラに似ていた。
その子だけがスローモーションで再生されて、俺は相変わらず銃を乱射しながら呑気に思う
( 俺のこんな姿をみたら、きっとアキラもあんな目をするんだろうか )
愛しい彼に蔑まれる自分を想像して、悲しくなった。
もう会えない もう話す事も、一目見る事もきっとできない
硝煙の中を駆け抜け、感覚のない足を引きずりながら逃げて
民家の間のごみ置き場に倒れ込み、見上げた青空。
体を銃で撃ち抜かれたって、父親を殺されて泣く子どもの姿をみたって
涙は出なかったのに
( アキラに、会いたい… )
ただそれだけの事で、俺は泣いた。
.
416
:
ヤマダ
:2014/02/18(火) 14:31:34 ID:???
意識が戻った時そこは病室で、それが何月何日なのかすらも分からなかった。
数日して俺のもとを訪れたアキラの組織のトップは、俺のとこの偉そうなだけのそいつとは全然違って
ああ俺は、この人にもっと早く出会っていればこんな事にならずにすんだのかもしれないと思った。
彼に言われるまでもなく、もうアキラと会う気は無かったから
約束を了承して
それから俺は組織から足を洗い、昔の友人の伝手で今の仕事をしながら今まで暮らしてきた。
このニューヨークで、ただただアキラの事を胸のずっと奥にしまいこんだまま
静かに歳をとっていくのだろうと思っていた。
.
417
:
ヤマダ
:2014/02/18(火) 14:33:29 ID:???
髪を風になびかせて、白い椅子に座ってる寂しそうな様子の彼を見つけた時
まさか、と自分の目を疑った。
ブロンドヘアーの店員に声をかけられ、慌てたようにコートのポケットから財布を出してるその姿は
もう紛れもなく、アキラに間違いなくて
本当は声をかけずに去ろうと思った。そうするべきだった。
だけど、気付いたら彼の方向に足が進んで、愛しい名前をこぼしていた。
俺を見つけた目は驚いたように少しずつ見開かれていき、黒目がちな瞳はどんどん涙を溜める。
次の瞬間には体当たり並みの勢いで、手に持ってた財布まで投げ捨ててアキラは俺に抱き付いてきた。
今さらなんだと拒絶されなかった事に安心した。
少し話をして、またお別れするつもりだったのに
離れられなくなって、そしたらその分どんどん辛さが増していった。
.
418
:
ヤマダ
:2014/02/18(火) 14:35:30 ID:???
「 俺と一緒に、日本にかえってくれませんか 」
絞り出したような声に耳元でそういわれて、嬉しさももちろんあったけど
「 一緒には帰れない 」
そうはできない現実に、心が張り裂けそうになった。
「 今はこっちで仕事にもついて落ち着いてるし、仕事を投げ出すわけにもいかない 」
アキラにはそういったけど、ほんとはそんなのが理由じゃない。
たしかに仕事を紹介してれた友人には悪いけど、俺の仕事の代わりなんていくらでもいる。
俺一人がやめたところで、たいした事じゃない。
ほんとは、ヒロさんと約束したことや
何より散々彼を振り回して傷つけてしまった自分が 、アキラのそばにいて幸せな生活を送るなんて
とても罰当たりな気がしたからだ。
あの時、俺の撃った弾にあたって死んだ男の家族の事が
今でも頭から離れない。
.
419
:
ヤマダ
:2014/02/18(火) 14:43:01 ID:???
>>411
コメントお返事
>>412-418
【peacock blue】MKAK
-dearest heart-
ありがとうございました!
420
:
名無しさん
:2014/02/18(火) 20:53:06 ID:xA0rBGVg
ヤマダさま更新ありがとうございます!!
あ〜MKさん切ないT^T
お願いだから素直になってAKちゃんを幸せにしてあげてー!!
ほんとに素敵な話でいつも癒されています!
421
:
名無しさん
:2014/02/18(火) 23:17:57 ID:???
ヤマダさま、更新待っておりました!
MKさんの語るAKちゃんとの出会いからのすべてが
もうホントに微笑ましくて、そして切なく悲しいです(涙)
こんな風なお話を生み出してくださるヤマダさま、すごい!
最高に素敵なお話で、萌えまくっています
MKさんの罪悪感も理解できるけど、やっぱりここで別れたら
ダメだよ、兄さん!
続きも楽しみにしています♪
422
:
ヤマダ
:2014/02/18(火) 23:58:43 ID:VoCc98yo
すいません!
1スレですが更新漏れがっ!
あったので追加更新します。。←
423
:
ヤマダ
:2014/02/18(火) 23:59:46 ID:???
「 だから、あきら 」
「 いますぐなんて言わないです 俺が、日本で待ってたっていい」
「 できないよ…」
「 なんでできないっていうの?じゃあ俺がこっちに……」
「 簡単に言うな お店はどうすんのさ 」
「 やりたいっていってる後輩がいます だからそいつにまかせて俺はこっちに来ます 」
「 ダメだって。……ダメ、なんだよ そんなの 」
「 俺とは一緒にいたくないですか、もう…」
「 そんな事言ってない 」
「 っじゃあ 何がダメなんすかッ…、」
少し強めに張られた声のすぐあとで、アキラはしまったって顔をして
かとおもえばごめんなさいとハの字に眉を下げた。
謝らなければいけないのは俺の方なのに。
「 俺…あと五日ここにいます。もし一緒に来てくれるなら、五日目の朝10時に空港で待ってます 」
俺の手を握りながら
「 ずっと愛してます 」
ぎゅっと肩を抱かれて、いつになく真剣な瞳にドキドキした。
さっきまでなんでなんでって駄々をこねてたアキラは昔とちっとも変わってないとおもったけど、そうじゃなかった。
( 随分 大人になったんだね、離れてる間に )
「 俺はたぶん行かないよ じゃあ、ね… 」
これ以上一緒にいると、もう戻れなくなるから
わざとそっけなくお別れをした。
口では俺に答えを委ねた彼は名残惜しそうに繋いでいた手をゆっくりほどいて
寂しさを隠さずに俯く。
「 そんな顔しないで 」
「 マキさん 」
「 なあに 」
「 俺に会うなってヒロさんと約束したから空港にこないなんて、やめてね、ぜったい。」
そういうので俺との事、決めないでください。
そういった彼はやっぱり普段バカなくせに、無意識に人の心を察知してる。
ズバリそう言われた俺は、わかった。としか言えずにアキラのホテル後にした。
to be..........
424
:
ヤマダ
:2014/02/19(水) 00:00:39 ID:lSOhtyik
追加更新以上です
いただいたコメントは次回お返事させてきただきます!
ありがとうございました!
425
:
名無しさん
:2014/02/19(水) 02:55:01 ID:???
せつなくて涙出ちゃう(泣)…。あきチャンがこんなに大人な恋心持ってるなんて〜。マキさんどうするーっ?
426
:
ヤマダ
:2014/02/27(木) 17:17:42 ID:???
>>420
さま
コメントありがとうございます!
素敵なんてー!照れます!←
この言葉を励みに本当がんばれますっ
>>421
さま
コメントありがとうございます!
もうそんなそんなありがたすぎるお言葉たち
恐縮すぎて縮み上がっております><
更新がんばります!
>>425
さま
コメントありがとうございます!
んふふ二人はどうなっていくでしょうか!←
是非最後まで見守っていてください〜^^
427
:
ヤマダ
:2014/02/27(木) 17:24:43 ID:???
■peacock blue■MKAK
毎日、アキラのいるホテルがある道を通って仕事に向かう。
デスクの上にある卓上カレンダー見ながら、夜にはベッドで天井を見上げながら
ずっとずっと、俺はアキラの事を考えていた。
“俺と一緒に日本に帰ってくれませんか”
“ずっと愛してます”
あんな事言われて、嬉しくない訳がない。
「……明日か 」
一人、ベッドの上でぽつりと呟いた。
明日だ。
明日の朝、アキラはもう日本に帰ってしまう。
「 時間とまんねーかな 」
一緒にはいられないと言ったくせに、自分の手の届くところにはいて欲しいなんて矛盾してる。
そんなのはダメだってわかってんのに
許されるなら、アキラに言ってしまいたい。
“俺の傍にいて”って。
ぐるぐる沢山考えすぎて、俺はその夜眠ることができなかった。
.
428
:
ヤマダ
:2014/02/27(木) 17:27:49 ID:???
side AK
大好きな仕入れの仕事なのに全然上の空状態で
バイヤーの元を訪れた日、ホテルに帰って見た領収書にため息をついた。
俺の店はメンズしかおいてないのに
「 なんでワンピースかってんだよ……はぁ 」
ぜってぇ売れねぇじゃん。
ここにいる間、なんの根拠もなしにあと一回くらいはマキさんと会えるだろうって思ってたのに
彼が会いに来てくれることは一度もなくて、だから俺も変な意地で連絡をとったりはしなかった。
そしたらあっという間に明日は帰国。
途端、強がってた心が一気に緩んで、もう男らしくないからとかそんなの関係なしに
マキさんのマンションに押し掛けて、お願いだから一緒に帰ってくれって泣き付いてやろうかと思った。
でも、
四年も離れて暮らして、その間マキさんと俺が歩いてきた道は違うし
当時の状況とはお互いの立場も、考え方も何もかもが変わってる。
もしかしたら、マキさんの気持ちだってあの頃の俺に対するそれとは違うものになってるかもしれないし
俺のわがままで、マキさんに関係を戻して欲しいなんて頼むのは少し違う気がしたから、そんな事はできなかった。
あの日サンドイッチ屋で会えた時、俺たちはやっぱり運命なのだと思った。
だから明日の朝、彼が来てくれなくても
それはそれで運命なのだ。
っていうのはただの強がりだけど、そう思って俺は俺なりの人生を歩んでいこうと思う。
しばらくはマキさんの事を引きずってしまうだろうけど
一緒にいなくても、俺の心に刻まれた彼の存在は一生薄れないし変わったりしないんだから。
.
429
:
ヤマダ
:2014/02/27(木) 17:30:32 ID:???
翌朝、こんなに緊張して空港に向かうのははじめての事だった。
手続きを済ませて、ゲートの近くにある窓際のラウンジに突っ立って彼を待つ事にした。
1時間が経過し、約束の10時が近付くにつれて時計を見る頻度が増えていく。
辺りを見回しても探してる姿は一向に見つからなくて、視線をさ迷わせてはため息を漏らした。
やがて、予定していた便の搭乗アナウンスが流れ始める。
沢山の人が行き交う中で、マキさんの姿は見つからない。
( 行かないってはっきり言っていた。)
( わかってたはずだろ )
彼が来ないなんて分かってたのに、心のどこかで俺は期待していた。
期待がおおきければ大きいほど、外れた時のダメージはデカい。
やがて、時計の針が10時5分をまわったの見て、ただ静かに目を瞑った。
ゆっくり息を吸いこんだ唇が震えた。
( マキさん… )
ため息をついたら、涙も一緒に零れてしまいそうで唇を噛んだまま搭乗ゲートに向かって歩く。
また一歩また一歩と彼から遠退いていくような気がした。
.
430
:
ヤマダ
:2014/02/27(木) 17:32:22 ID:???
靴に鉛でも入ってるんじゃないかってくらい、重い足取り。
このまま歩けなくなったらマキさんと離れてなくてすむかもしれないのに、なんて。
バカな事を考えて歩いてると、慌ただしそうに俺の逆を行く白人の警備員と肩がぶつかった。
そんな小さな事でさえ、今の自分が世界一ついてない男になった様にさえ感じてしまって
被害妄想も甚だしいと少しだけ笑えた。
「 ぁ 」
ふいにポケットに突っ込んだ片手に、携帯の不在に気が付く。
さっきのラウンジに忘れたのだと踵を返した。
その途中、やけに人だかりのできている場所があって、そこにはさっき肩がぶつかった警備員の姿もあり
一目でただ事ではない雰囲気だとわかった。
「 あの、なにかあったんですか 」
携帯をとった後で、近くにいたアジア顔の人が日本語を理解できる事を願ってそう聞けば
「 人が刺されたらしいよ 」
「 ………さ、された?」
願い通り日本語で返ってきた物騒な答えに、背筋がゾッとした。
怖くなって、人だかりから目を背けると
その中から警備員に連行されていく若い男の横顔がみえて、そいつが人を指した犯人なのだろうと思った。
なんの、根拠もないのに
さっきからばくばくうるさい心臓が嫌で嫌でたまらない。
( そんなわけ、ないだろ )
マキさんは来ないって言ってた。
実際来なかったし、だから、今自分が感じてる予感なんて外れてるに決まってる。
そんなわけない。マキさんな訳がない。
こわれたラジオみたいに同じ言葉を自分に言い聞かせるように頭の中で繰り返す。
反比例しながら心臓の鼓動は早くなり、頬を嫌な汗が伝った。
すくむ足で人だかりに近づき、野次馬に紛れて中心を覗き込んだ。
「 」
おれは
いき、が できなくなった
.
431
:
ヤマダ
:2014/02/27(木) 17:34:36 ID:???
人だかりをわけて覗き込んだその先
床に広がった血が、俺の靴のすぐ近くまで来ていた。
ピクリとも動かない負傷者の止血をしながら、救急隊員が何かを懸命に呼び掛けている。
( なんだ、これ )
意味が、わからなかった。
どうして、
「 うそ、だろ…こんな、 」
どうして、いないはずのあなたが血を流して動かなくなってるの?
今、目の前で広がってる出来事を頭で理解した途端
立っていられなくて、俺はその場に膝から崩れ落ちた。
「 なんで……っ なんで、っ マキさんッ マキさ、 っ……」
いきなり叫び出した俺に周囲からの視線が突き刺さる。
血を流して倒れたまま、眠った様な表情でそこにいる彼の傍に座り込んだ。
「 Do you know him personally? 」
取り乱す俺の傍にきて、彼とお知り合いですかと聞いてきた救急隊員に何度も頷いていると
運ばれてきたタンカへマキさんがのせられた。
あまりの事に呆然とする俺の腕を引き、一緒に来てくれという彼に言われるがまま
空港の外に到着していた救急車に乗り込んだ。
サイレンが鳴り響く。
意識不明のままのマキさんを見てる間、ずっと生きた心地がしなかった。
なんで、ってそればっかり。
俺が、10時に空港に来てくれなんて言わなければ
彼はんな目に合わずに済んだのに
「 マキさん…ごめん、 俺のせいだ… 」
To be.........
432
:
ヤマダ
:2014/02/27(木) 17:38:29 ID:ulD02BMI
コメントお返事
>>426
【peacock blue】MKAK
>>427-431
ありがとうございました!
433
:
名無しさん
:2014/02/27(木) 22:53:07 ID:???
いやーどうなっちゃうの(涙)
アキラがかわいそう過ぎます〜続きが気になりまくります〜
また更新楽しみにしていますね♪
434
:
名無しさん
:2014/02/28(金) 01:06:14 ID:4OxHc0ME
更新ありがとうございます!
心待ちにしていました!
マキさん!!マキさんが!!
続きが気になりすぎます。
世界観、最高です。
今後も更新、楽しみにしています!
435
:
名無しさん
:2014/02/28(金) 09:59:17 ID:???
マキさん来てくれた!来てくれたんだ!(涙)
なのになのに〜(涙)
どうなっちゃうのおおお!
どきどきでございます!
436
:
ヤマダ
:2014/03/01(土) 19:12:43 ID:???
>>433
さま
コメントありがとうございます!
かわいそAKが大好きなもんで///すいません笑
更新がんばります^^
>>434
さま
コメントありがとうございます!
少し間が空いてしまったのですが、心待ちにしていたなんて
言ってくださる読み手さまに感謝です。
せっ世界観?!°∀°
そんな素晴らしいものがうちのお話にあったとは……
嬉しすぎます!
更新がんばりますね!
>>435
さま
コメントありがとうございます^^
マキさん来たんですがねー。
そう簡単に会わせてやらないぜ°∀°にやり!です。笑
更新がんばりますっ!
437
:
ヤマダ
:2014/03/01(土) 19:14:51 ID:???
■peacock blue■MKAK
side MK
悩んで、悩んで、悩んで
口では行かないなんて言いながら、時間ギリギリになって鞄に荷物を詰め込み、俺は部屋を飛び出した。
行かないって言ったし、もうこんな時間だからアキラはもう待っていないだろうか
俺が行ったら喜んでくれるんだろうか
また愛してるって、柔らかい笑顔を見せてくれるんだろうか
期待と不安に胸を膨らませながら約束の時間間際にターミナルへ駆け込んだ。
辺りを見回して、そして俺は見つけた。
時計を何度も見ながら、きょろきょろ周りを見回しては寂しそうに下を向くアキラを。
俺を待ってる、その横顔が愛しすぎて
ずっと見ていたくなった。
彼とは離れたその場所から、その姿を目に焼き付けるように少しの間だけアキラを見つめた。
.
438
:
ヤマダ
:2014/03/01(土) 19:16:30 ID:???
そして、彼のとびきりの笑顔を期待しながら一歩踏み出した時
ドン……ッ
前方からやってきた男と正面からぶつかった。
初めはただぶつかっただけなのだと思った。
だけど
「 ぇ… 」
腹部に言い様の無い違和感と生温かさを感じ、その男の目を見た瞬間
初めて自分が刺されたのだと気が付いた。
( あの、時の………)
じわり、じわり、服に血が広がっていくきもちわるさ。
自覚した途端、激しい痛みが身体を襲う。
「 是父*的仇* 」
ゆっくりと倒れていく俺を見下ろしながら、父の仇だと呟いた彼は紛れもなく
四年前、俺が乱射した銃のこぼれ弾に倒れた男の……すぐそばで俺を睨み付けていたあの時の子どもだった。
( あの人…亡くなったのか……)
悪かったと一言だけでも謝りたいのにまるで声が出ない。
.
439
:
ヤマダ
:2014/03/01(土) 19:18:29 ID:???
彼の腕にすがり付いていた手にも力は入らなくなり、膝をつき、地面に倒れ込んだ。
横向きになった視界には、俺を覗き込む知らない顔ばかりが埋め尽くされていく。
一気に意識が遠退いていく怖さを感じた。
「 ぁ ぁき…… 」
首でも絞められてるみたいに息苦しい。
アキラ アキラ アキラ
すぐそこにいるのに……届かない。
掴みかけた幸せが、すり抜けていく。
たくさんの人を傷付けて、裏切ってきた俺だから
こんな終わり方しかできないのか。
すぐそこで愛する人が、寂しそうに俺の事を待ってるのに
ありがとうって頭を撫でて、愛してたって抱きしめて
ごめんって、さよならって、手を離してやる事もできない。
( やっぱり、俺なんかが幸せになることは許されなかった )
To be........
440
:
ヤマダ
:2014/03/01(土) 19:21:37 ID:y6Tzv7EU
コメントお返事
>>436
【peacock blue】side MK
>>437-439
短いですがm(__)m
いつもほんっとにコメントありがとうございます!
441
:
名無しさん
:2014/03/04(火) 06:48:15 ID:pxZ0KA6g
ヤマダ様更新ありがとうございます!
毎回毎回切なさにキュンキュンさせられてます(ノ_<)MKさんどうなっちゃうの〜
442
:
ヤマダ
:2014/03/06(木) 23:23:49 ID:???
>>441
さま
コメントありがとうございますっ!
いやいやもうそんな。
ちゃんときゅんきゅんさせられてるのか
一抹の不安はずっとありますが
そういってくださる方がいるのでがんばれます^^
これからもよろしくおねがいします!
443
:
ヤマダ
:2014/03/06(木) 23:25:20 ID:???
■peacock blue■MKAK
side AK
手術は成功したが油断は許されない状況です、と担当の医師から告げられた。
普通なら絶望的なその台詞さえ、彼を失うかもしれないと怯えていた俺にとっては希望の光だった。
瞼を閉じたままベッドで横たわってるマキさんがちゃんと息をしているか
その胸が上下しているのを確認しては安心してを繰り返す。
握り返してはくれない彼と、一晩中手を繋ぎながら朝を迎えた。
.
444
:
ヤマダ
:2014/03/06(木) 23:26:57 ID:???
未だに目覚めない彼に おはようございますと口にして、寂しさに胸が張り裂けそうになる。
「 はやく起きて、くださぃ……」
昨日、空港に来てくれたってことは
一緒に日本に帰ってもいいよって、そういう事でしょ?
だったら寝てないで早く起きてよマキさん…
「 お願い… 」
綺麗に整えられた白いシーツにすがりついて呟いた。
.
445
:
ヤマダ
:2014/03/06(木) 23:28:58 ID:???
side MK
真っ白な世界の中で、俺は何故か裸足でそこにいた。
ここはどこだ?俺はなにをしている?
思考を巡らせていると、どこからともなく誰かの悲しい声が聞こえてきて
その涙の音を辿るように足を進めれば
そこには子どもみたいに膝を抱え、そこへ顔を埋めて泣いてるアキラがいた。
「 アキラ? おい、どうしたの…?」
嗚咽で震えてる肩に手をやって傍らにしゃがみこむと、アキラははっとしたように顔を上げた。
その口が、マキさん と声を出さずに呟く。
「 大丈夫か?なんで泣いてんの なんかあった? 」
「 …マキさんが、俺を置いてくから……」
「 俺が?アキラを? なに言ってんだよ俺はいっつもお前と一緒に…」
いるだろ?
言おうとして場面が切り替わった。
.
446
:
ヤマダ
:2014/03/06(木) 23:30:49 ID:???
あの日、あの部屋の窓からみたアキラの後ろ姿
音が割れるぐらいに響く俺を呼ぶ声
体を切り裂く縦断の音、硝煙の匂い。
逃げた先で見上げた青空には色んな表情をした彼が映っていた。
街で再開して泣きついてきた頼りない顔。愛してますといってくれた声。
( ああ、いつだって俺は…お前を…)
「 そっか、俺は…いっつも置き去りにしてきたんだね 」
付き合っていたときだって、勝手にいなくなって
「ごめん」
「もう居なくなったりしないですか。」
「 うん。しない」
「 おいていきませんか?」
「 うん。ずっと一緒にいるよ… 」
手を引き上げて、立ち上がらせたアキラをぎゅっと抱きしめた。
.
447
:
ヤマダ
:2014/03/06(木) 23:32:18 ID:???
俺の肩に顔を埋めながら、大好きって言うくぐもった声が愛しくてたまらなかった。
俺も。って言おうとしたその時ふいに顔を上げたアキラが、マキさんと震えた声を出す。
ただ事ではない様子にどうしたと聞く前に、ふっと影が落ちたように視界が暗くなった。
斜め上を見上げてる彼の視線を辿り振り返ると、俺たちの上には真っ黒い羽を広げてる大きな鳥。
「 逃げなきゃ…ッ マキさんはやく! 」
「 っえ… 」
立ち尽くす俺の手をアキラがそういいながら引っ張った。
彼にぐいぐい引っ張られながら、縺れそうになる脚で駆け出す、、
二人で逃げても逃げても、黒い鳥は大きな大きな羽をばたつかせて
俺たちを闇の中に取り込もうと追いかけてきた。
.
448
:
ヤマダ
:2014/03/06(木) 23:33:14 ID:???
絶対に、もう離れ離れにはならない。
一人にはさせない。
俺たちはもう一度やり直すんだ。
それだけを胸に彼の手を握り走り続けた。
( 邪魔されてたまるか )
必死に走って、走って、そしたらひたすら暗かった視界の先に現れた白く光るひとつのドア。
あそこに逃げ込むしかないと俺たちはそのドアを開け放ち、中へ雪崩こんだ。
衝撃に備えて強く閉じた瞼を開けると
「 え……?」
そこはふたりで暮らしてたマンションの寝室。
ベッドの上でまだ髪の短い頃のアキラが横にいた。
.
449
:
ヤマダ
:2014/03/06(木) 23:34:55 ID:???
「 マキさん? 悪い夢でも見ましたか?すごい汗っすよ 」
薬指に指輪をはめた左手がこっちにのびてきて、俺の額を優しく拭う。
変なのってけらけら笑ってるアキラに伸ばした俺の左手にも彼と同じ指輪が光っていた。
その柔らかい笑顔をみると、何がどうだったとかもうどうでもよくなって
「 すっげぇ好きだよ、ホントに。世界で一番。」
腕を手繰り寄せ、優しく彼を腕の中に閉じ込めた。
寄り添ってくれる体温がここちよくて愛しさが胸に溢れていく。
( もう離さない )
.
450
:
ヤマダ
:2014/03/06(木) 23:36:18 ID:???
side AK
ベッドにいる彼にすがる様にしてシーツに頭を乗せてると
確かに動いてる心臓の音がとくとく優しく聞こえてくる。
規則正しいその音に安心して目を閉じてる内に俺は寝てしまったらしい。
うつうつとした意識の中で誰かに頭を撫でられた。
それが誰なのか、ぼんやり考えてる内にはっとして
「 っ マキさ 」
すごい勢いで俺は飛び起きた。
「 マキさん! マキさん…?」
頭を撫でてくれたのは、夢じゃな現実で
声をかければ薄く開いていた目が僅かに反応てくれた。
.
451
:
ヤマダ
:2014/03/06(木) 23:47:56 ID:CwI6L3HE
>>442
コメントお返事。
>>443-450
「Peacock blue」
次回でこのお話は
終了です〜
452
:
名無しさん
:2014/03/12(水) 00:00:21 ID:Vi5vjY1g
更新ありがとうございます!
次回で今のお話終了なんですね。
毎回楽しみに拝見していたのでとてもさみしいですが、最後どうなるのか今からドキドキしています。
2人が幸せにずっと一緒にいられますように…!
453
:
名無しさん
:2014/03/15(土) 20:59:36 ID:???
MKさん、AKちゃんが待ってるよ!
早く起きてあげて〜(><)
とはいうもののHAPPYENDが待っているようで、本当によかったです(T T)
ヤマダさま、本当に素敵なお話をありがとうございました
最後まで楽しみにしています
最後は思いっきり甘くしちゃってもOKです!!
てか、してください!!
454
:
ヤマダ
:2014/03/30(日) 04:05:32 ID:EEXq95uY
「 今っ 医者呼びますから、ッ 」
片手では彼の手を握りながら、もう片方の手を伸ばしてナースコールを押した。
人工呼吸器の中でアキラって確かに動いた唇。
虚ろに開いていた茶色い目には俺の情けない面が映っていた。
「 よかった……よか、った…マキさん……」
それから病室を訪れた医師にもう大丈夫だと言われた時には
立っていられなくなって思わずベッドのそばにあった椅子に座り込んだ。
張り詰めていた糸が急に緩んで、嬉しくて仕方ないのに上手く笑えなかった。
「 アキラ、ごめんな…… 」
再び二人きりになった病室で、意識がしっかりしだしたらしい彼がそういって俺の手をさするように握り返す。
たまらなくなって、まだ起き上がれないままのマキさんに乗し掛かるように抱きついた。
耳元で小さく聞こえた笑い声か嬉しくて、鼻の奥かツンとしてしまう。
「 まだ痛みますか… 」
涙まじりの声が恥ずかしい。
マキさんは、大丈夫だよって背中に手を回してくれた。
彼の体温を感じる。息遣いを感じる。
「 よくなったら…、ちゃんとよくなったら、ね マキさん ……今度こそ一緒に、日本に……」
「 …うん 帰ろう、一緒に。」
それからマキさんが無事退院した三週間後。
俺たちは今度こそ本当に日本へ帰国した。
.
455
:
ヤマダ
:2014/03/30(日) 04:07:12 ID:???
まず三週間も予定がずれてしまって迷惑をかけたタカヒロたちに平謝り、帰国したその日にヒロさんの所へ挨拶しにいった。
言い出したのはマキさんだ。
色々積もる話をして、結局最後は
“足洗ったんだから、もういいんじゃない”
よかったね、ってヒロさんは肩を叩いてくれた。
「 なあ、勢いでこっち来ちゃったけどさ 」
俺まだ部屋もそのままだし手続きとかも済んでないしなんも整理できてないんだよねって
帰宅した俺の家のソファで昔見たいにマキさんが笑う。
「 だから一回戻って、全部ちゃんとしてから帰ってくるよ 」
帰ってくるよって言葉がふいに嬉しくて胸の辺りがあたたかくなる。
これから、この人が帰ってくるのは俺のところなんだ…。
「 俺も一緒にいく。」
「 え?店は 」
「 タカヒロに任せます 」
「 公私混同〜 」
「 だって!離れたくないっすもん…」
そうやって、日本と向こうを行き来して
無事に全てが落ち着きだしたのは、何だかんだで一ヶ月後の事だった。
456
:
ヤマダ
:2014/03/30(日) 04:08:46 ID:???
マキさんはヒロさんの知人の会社で働く事になって
二人で住む家も少し探したりしたけど、やっぱり今のままでいいと思って
結局俺が住んでたマンションで二人、生活するようになった。
「 まだ指輪持っててくれたんだね 」
リビングで夕飯を食べながらテレビを見てると、すぐ横の写真立ての側にあるそれをみて
マキさんが嬉しそうに目を細めて言った。
その指輪は付き合いだして二年目にマキさんがプレゼントしてくれたもので
離れてしまってからも、俺はそれをチェーンに通してマキさんとの写真の横に置いていたのだ。
「 そりゃ捨てるわけないでしょ?ずっと、お守りみたいにしてました。」
「 俺もずっと持ってるよ。」
そう言って立ち上がった彼はリビングを出て、にこにこしながらすぐに戻ってきた。
ほらって開かれた手の中にはあの頃と変わらず光ってるお揃いの指輪。
「 はめあいっこする?」
「 え〜、なんすかそれ恥ず…」
「 んふふ、いいじゃん いいじゃん 」
言いながら俺の指輪に手を伸ばしてチェーンからそれを抜き取ったマキさんに
ほらって手を取られて
さっきまで笑って見てたテレビの音さえ耳を通り抜けていく。
再び彼によってはめられた指輪に、嬉しさとか悲しさとかなつかしさとか、色んな想いが込み上げた。
「 じゃあ俺も… マキさん、手。」
「 はい 」
あの頃の様に左手の薬指にはめられた誓いの指輪は、再び輝き始める。
( ああやっと、 )
俺たちは、戻ってこられたのだ。
end
457
:
ヤマダ
:2014/03/30(日) 04:13:21 ID:???
本日更新分
【peacock blue】MKAK 終
>>454-456
なんとか三月終わるまでに
更新しにこれましたー!
無事peacock blue完結いたしました!
いただいてるコメントへのお返事は次回の更新時に返させていただきます><!
本当にありがとうございましたー!
これから次なに始めるか
にやにや考えております!
合間に短篇とか更新したりするかもなので
そのときは是非〜!
458
:
名無しさん
:2014/03/30(日) 07:36:45 ID:eAnNJ06M
ヤマダさま、更新ありがとうございます!終わるのはさみしいですが、ハッピーエンドに涙涙です
お疲れ様でした!新作も楽しみにしています
459
:
名無しさん
:2014/04/03(木) 00:19:55 ID:???
完結お疲れ様でした!
更新待ちわびておりました(笑)
ハッピーエンドでよかったです!ありがとうございます!
ほんと2人が幸せになってくれて嬉しいです。
またこの2人(^^)会いたいのでこちらの短編や続編などもお書きいただけたら嬉しいです。
本当にお疲れ様でした。
次回の新作楽しみにお待ちしております(^^)
460
:
名無しさん
:2014/04/03(木) 21:41:00 ID:???
ヤマダさま、完結お疲れ様でした&ありがとうございました
最初からずぅぅっと追いかけていました
ハッピーエンドになってホントによかったです
また、素敵なMKAKのお話を待っています
461
:
名無しさん
:2014/04/13(日) 05:51:03 ID:???
遅ればせながら、完結おめでとうございます!
とってもとっても、面白かったです!更新ありがとうございました!
ハッピーエンドはやっぱりしあわせな気分になれますね^ ^
これからも更新楽しみにしていますー!!
462
:
ヤマダ
:2017/01/06(金) 15:33:22 ID:L25IJrHU
約2.3年ぶりにこんにちわです(´°ω°`)
すごい長い間更新できずにすいません!
ここからは離れていた間も頂いたコメントは読ませていただいておりました。
>>458
さま
コメントありがとうございます
いまこれを見てくださっているかわかりませんが
またMKAK更新していくのでよければ覗いてください!
>>459
さま
コメントありがとうございます〜!
この2人にまた会いたいと言っていただけて嬉しいです!是非!
>>460
さま
コメントありがとうございます
最初から見てくださったいたとかなんとも嬉しい限りです!
長い間放置ごめんなさい。。
>>461
さま
コメントありがとうございます!
お返事遅れてしまって申し訳ないです
また更新した日には是非!!
463
:
ヤマダ
:2017/02/12(日) 00:21:53 ID:???
■starlight night■MKAK
息をするのに鼻がつんと痛くなるほどの寒い夜。
仕事を終え、1人の家に帰宅した瞬間
あの人の声が聞きたくなった。
ふと見た腕時計が示す時刻は夜中の2時過ぎ。
いくら仲間以上の関係だと言っても、他人に電話をかけるのは遅すぎる時間帯
ましてや相手は年上で、先輩で…
「 う〜 」
声が聞きたい。話をしたい。
でも寝てるかもしれない。
起こすのは悪いなぁ。
そんな風に頭の隅でぐるぐる考えながら着ていた上着をソファの背に投げて
暖房と特に見るわけでもないテレビのスイッチをつける。
かけよう、やめよう
ソファでクッションを胸に抱えながら
何度か頭の中で繰り返した葛藤に勝ったのは前者で、
一回だけだ。出なかったらすぐに切ろう。
そう決めて彼に電話をかけることにした。
.
464
:
ヤマダ
:2017/02/12(日) 00:23:36 ID:???
( ………… )
数回のコールのあと
「 もしも〜し 」
聞こえてきた柔らかくて、優しくて、のんびりしていて
でもいつもより少し鼻声気味の声に、あ。と思った。
( 寝てたかな? )
と、同時に こんな真夜中にかけても 嫌な声色を出さずに電話に出てくれた彼が愛しくて
電話の向こうで優しい笑顔をしてるであろうマキさんを想像して頬が緩んだ。
「 マキさん、おつかれさまで〜す 」
「 うん〜 アキラもおつかれぇ 」
うん〜だって。かわいい。会いたい。
「 すいません、寝てましたか?」
「 ねてた〜けど 全然大丈夫だよ 」
「 へへ 」
「 なぁに どしたの 」
「 大好きすぎてかけちゃいました 」
向こう側で、ははは、とかすれ気味の聞き慣れた笑い声が聞こえる。
照れくさくて釣られて笑うと
マキさんは少し息を整えるように間を空けてから
「そうなんだ、ありがとぉ」と色で例えるならオレンジ色をしていそうな温かい声で言った。
仕事が終わって寝てる所にいきなり電話がかかってきたのにもか変わらず、ありがとうって。
どれだけ優しいんだ。
「 マキさん、今すげー会いたいです。会いに行っていい…、すか?」
言いながら、さすがにわがままがすぎるかなと思ったけど
「 うんー いいよぉ〜 」
聞こえてきた嬉しそうな彼の「いいよ」に、俺はさっき脱いだばかりの上着を羽織って家を出た。
その後すぐ「あーでも寒いから俺が行くよ」といつものように言ってくれた優しさに胸の奥がじんわりあたたかくなる。
外に出て白くなった息が暗闇に吸い込まれるのをなんとなく見上げた時
さっきまでなんとも思ってなかった夜空に点々と光る星が綺麗だと思った。
.
465
:
ヤマダ
:2017/02/12(日) 00:24:46 ID:???
タクシーを降りて 目的のマンションに着いた時も
電話を切りたくなくて、繋いだままドアの前まできた。
着きました。と伝えた後、ドアを開けてくれた部屋着姿のマキさんは、俺と同じように耳に携帯を当てながら
「 おかえりぃ 寒かったでしょ〜 」
にぃ〜 と白い歯をのぞかせて笑った。
おかえり。って地味に嬉しいこと、マキさんわかってんのかな?
「 ちょー寒いっす 」
自分の肩を両手でさするような仕草をしてみせながら、通い慣れた玄関で靴を脱ぎ、間接照明以外付いていない廊下を歩いて当たり前のようにそのまま寝室に入っていく背中に続いた。
「 シャワーは? 」
大きい窓からの月明かりが俺たちの影を浮かび上がらせている。
彼はさっきまで寝ていたらしいベッドの縁に座ると
後ろをついてきていた俺の手を引くように冷えた指を意味もなく握って、下から見上げた。
「 ジムで、浴びてきました 」
言いながら手を繋ぎ返し、腰を曲げて抱きついた俺の耳の横でマキさんがふは、と笑う
「 甘えん坊だなぁアキラは 」
大好きな手が、子どもにするみたいに俺の頭をポンポンと優しくたたいて
首の後ろに回されたかと思えば
「 っ え、あ ゎ 」
服の裾から入り込んで素肌を撫でるから、かっこ悪い声が出てしまった。
「 な。なんすかァ 」
いつまでたっても、こういうことは照れる。
恥ずかしくてたまらない。
「 アキラかわいいから触りたくなっちゃった 」
ドギマギしてる俺の背中の形を確かめるように動いていた手が出て行ったあと
彼に抱きついていた腕を解いて、そのまま2人でベットへ横たわった。
かわいい?
そんな要素今のところ一つもなかったと思うけど。
つーか。むしろかわいいのはマキさんだ。
隣で言う彼にそう思いながらやはり俺は横になったまま上着を脱ぎ
布団の中で足をすり合わせるように横着をして靴下を脱いだ。
.
466
:
ヤマダ
:2017/02/12(日) 00:25:57 ID:???
「 あ、そだ。さっき起こしちゃってごめんなさい 」
「 はは、いいよ 会えるの嬉しいし ありがと 」
垂れ下がる目尻、へにゃりと笑う顔。
窓を背にした彼の顔には薄く影が落ちていて、その表情はわかりづらいけど。
クソ寒いせいなのかなんなのか、いつも優しいマキさんを今日はいつもの倍は優しく感じて
「 マキさん優しすぎます 」
そういえば、出会ってからからも付き合いだしてからも
一度も彼にマジギレされたというか、怒られた記憶がないことに気がついた。
「 えーなに そんなことないょ 」
言いながら、伸びてきた手はいやらしい意味をもった動きとはまた別のそれで。
俺が仕事終わりで疲れて体力がないことも、今日はそっちより甘えたい気分だっていうことも
目の前の年上の彼は言わなくても全て理解してくれているのだ。
撫でられる気持ちよさに瞼が少し重くなって、キツめに瞬きをした。
鼻先を擦り付けるみたいにマキさんの胸に顔をつけ
羨ましいほど綺麗に筋肉がついた背中に手をまわすと
より強くなった彼の匂いに先ほどより増したまどろみを感じる。
「 怒ったとこ、みたこと ない、す… 」
「 俺の? 」
「 うん 」
「 おれ怒られた事ないもん。」
「 ん〜?怒られたいの?笑 」
楽しそうな声に、「怒られたいわけではないですけどぉ」とごにょごにょ曖昧な否定を返す。
そんな俺の髪をマキさんは自分の指へくるくると巻きつけて遊んでいた。
「 なにしたら怒んのかなーって。」
怒ったマキさんもちょっと見てみたいなぁ
なんて。そんな事本人には言わないけど。
いろんな顔をした彼を見たいと思った。
あと俺がわがままなせいで彼に我慢ばかりさせてるんじゃないかとか。
俺の問いかけに髪の毛を遊んでいた手が止まり
動くのを忘れたかのようにぽすん、と頭に落ちてきた。
.
467
:
ヤマダ
:2017/02/12(日) 00:26:59 ID:???
マキさんは、う〜ん とか 言いながら答えを探しているようだったけど
そのあとですぐ「わかんねぇ」と苦笑した。
「 えー。じゃあ、、、うーん あ、浮気したら怒ります?」
恋人が怒る事といえばそれ以外に思いつかなくて
なにも考えずにそう口にした俺に、彼は少し目を丸くさせてから
「 …怒るっていうか、別れる〜 」
いつもよりすこしだけ冷たく感じる様な笑顔で言い切った。
自分で聞いておいてあのマキさんから 別れる なんて笑顔ながらもマジっぽく言われて悲しく、というか怖くなって
「 ごめ、ごめんなさぃ ぅ う、浮気なんて絶対しないし… わかれるとか ゆわないで…! 」
動揺が前面に出た情けない声で彼に回した腕の力を強くした。
マキさんは「知ってる〜 」とちょっと弾んだような声を出して笑う。
ぎゅ、と抱きしめられて その静かな笑い声は膜を張ったみたいに遠くに感じた。
そんな俺が夢の世界へ片足をつけ出してる事も見透かしたように
おやすみ、と唇の端にキスされて、重かった瞼が完全に閉じた。
( 寝てたのを起こしたのは俺なのに、先に寝ちゃう…かも… )
なのに、嫌な顔一つしないマキさんはやっぱり優しいな、とか
さっきまでなんの話をしてたっけ、とか
俺もまきさんにキスしたい。とかとりとめもなく思いながら眠りについた。
( 歯ブラシにいちごの歯磨き粉付けて渡したら、怒るのかなぁ )
なんちゃってね。
おしまい
468
:
ヤマダ
:2017/02/12(日) 00:30:06 ID:???
■starlight night■MKAK
>>463-467
週間の2人の電話があまりに可愛らしかったので。
久しぶりすぎる更新でした!
ありがとうございました
469
:
ヤマダ
:2017/02/12(日) 00:34:14 ID:y/8a7kms
あ!ご挨拶遅れました。
お久しぶりです。ヤマダです
久々の浮上で、これからもほぼ自給自足の亀更新となりますが
読んでくださる方がもしいらっしゃれば幸いです
mkakらぶな方まだいらっしゃるかなぁ〜…
ではまた!!!
470
:
名無しさん
:2017/02/13(月) 14:06:45 ID:???
ヤマダ様、更新ありがとうございます!!
mkakらぶはここにおります〜
次回作も楽しみにしております!
471
:
ヤマダ
:2017/02/20(月) 20:56:10 ID:???
>>470
さん
わー!mkak好きさんと出会えて嬉しいです!
自給自足の亀更新となりますが
よかったらまた覗きにきてください
コメントありがとうございました!
472
:
ヤマダ
:2017/02/20(月) 20:57:59 ID:???
■ 2月14日 ■ mkak
「 アキラ〜 」
収録待ちの楽屋。
衣装にも着替え終わって、座りながら振り付けの確認を軽くしていた。
名前を呼ばれて視線をあげれば、両手に小さいチョコをたくさんのせたアツシくんがいた。
「 ? 」
「 あげる 」
「 あ〜 バレンタインすね あざーす 」
一瞬だけ意味がわかんなかったけど、すぐに合点がいった。
お礼を言いながらいくつか貰ったチョコに改めて
今日がバレンタインなんだとぼんやり思った。
なんとなく目で追っていたアツシくんは、さっき俺にしてたみたいに
スタッフと喋っていたマキさんにもチョコをプレゼントしてる。
マキさんは、あんま甘いものは食わないけど
「 ありがと アツシ 」
そう言って少し髪が伸びた彼の小さい頭を撫でていた。
.
473
:
ヤマダ
:2017/02/20(月) 20:59:14 ID:???
「 ……… 」
バレンタイン、意識してなかったわけじゃない。
だけど男同士にバレンタインなんて関係あるのかとか
マキさんはそもそも甘いもの好きじゃないしとか
どうしていいのかわかんなくて
それでも一緒に過ごしたいなと思って
とりあえずマキさんを誘ってみたりはした。
けど
『 マキさん 14日て空いてますか? 』
『 14日〜? あーごめんその日仕事終わったらケンチと飲みに行くんだ アキラも来る〜? 』
14日がバレンタインだって気付いてるのか気付いてないのか。はたまたどうでもいいのか
そんなマキさんによって俺の思い描いたバレンタインデートは泡と化した。
よりによってバレンタインにケンチと2人で飯ってどういう事だよとか思わないでもないけど
メンバー相手にそんな、意味のないヤキモチはみないフリ。
2人きりにさせるのも癪だったけど、恋人の遊びについて行くのもなんかかっこ悪い気がして
やっぱその日は用事があったんだとはぐらかした。
バレンタインを意識してる自分に反して、当日に他のやつとの予定を入れちゃうマキさんとの温度差を感じてしまった俺は
それ以来なんとなく沈んでる気持ちのまま今日まで来てしまった。
.
474
:
ヤマダ
:2017/02/20(月) 21:00:15 ID:???
「 どしたんすか?チョコ見つめて 」
向かい側に座ってたタカヒロの声にハッとしてとっさになんでもないよと誤魔化しながら
考えにふけってるあいだ、手の中で暖められていたせいで
少し溶けてしまったチョコを口に放り込んだ。
甘い。
甘いけど、
甘くない。俺のバレンタイン……
.
475
:
ヤマダ
:2017/02/20(月) 21:01:50 ID:???
手作りのチョコ渡すほど、手先が器用でもないし
男同士なのにチョコとか渡して引かれたら嫌だから渡す勇気もないし、恥ずかしいし、どうしていいのかわかんないし
いざ始まった収録中もダンスしてる時以外ほとんどそんなことばっか考えてて
腑抜けた顔をテレビに晒してしまった。
「 アキラ おつかれ! 本当に今日来ないの?もし用事早く終わったらまた連絡して 」
マネージャーの車に乗り込もうとした時、後ろからマキさんに声をかけられて本当は用事なんかないし
俺も行きたい!って言いそうになるけど
けど今更そんなんかっこ悪くて意地を張ってしまう。
「 多分時間的に余裕ないと思いますけど、もし行けたら連絡します!おつかれした!」
スタッフがいる前だから仕方ないけど
付き合ってるとは思えない、なんてさっぱりな会話だろうかと
マキさんとさよならした後の車の中で切なくなった。
.
476
:
ヤマダ
:2017/02/20(月) 21:02:33 ID:???
帰り際、手渡された持ちきれない紙袋の中には共演した女優さんや知り合いが
事務所に送ってくれた山ほどのチョコレートが詰まってる。
残りは事務所に置いてるからまた引き取ってくれと言い残したマネージャーにため息をついて帰宅した。
適当に飯くって、風呂に入って、みたいテレビもないしすぐに寝室で眠りについた。
そしたらマキさんの夢をみて、会いたくなって
もう一回瞼を閉じてみても全然眠れないし
「 あーもう 」
ジャージに上着だけ羽織った姿で家を出た。
.
477
:
ヤマダ
:2017/02/20(月) 21:03:46 ID:???
前の通りでタクシーを拾い、告げた行き先はマキさんち。
連絡もしてないし、飲みに行くって言ってたからまだ帰ってないかもしれないけど
もう出てきちゃったからどうしようもない。
もしいなかったら帰ってくるまで待ってよう。
でもできれば家に帰って来てくれてますように、と願いながら
オートロックの前でマキさんを呼び出してみる。
そしたら
『 はーい、あきら〜 どしたぁ 』
機械の向こう側でマキさんの声がして、よかった、となぜか泣きそうになった。
「会いに来ちゃいました」
『ははっ 開けるよ〜 』
「うぃ〜す」
オートロックを解除してもらって部屋に向かう。
すでに開けられてた鍵にお邪魔しますと言いながら中に入ると
ソファで最近ハマってる漫画を読んでたマキさんが眠そうな顔を上げた。
.
478
:
ヤマダ
:2017/02/20(月) 21:04:37 ID:???
「 俺もちょうど会いたかったんだぁー 」
ヘラリと笑う彼の傍、というかリビングの隅っこやら棚の上には
俺と同じように、マキさんが貰ったらしい高級チョコが山盛りになってる。
「 マキさぁん 今年もモテモテすっねぇ 」
俺も他人から山ほど貰ってるから文句は言えないけど
付き合ってるのは俺なのに、他の人からチョコを貰ってるなんていい気はしない。
「 アキラには敵わないけどね 」
「 うわ〜超余裕発言じゃないっすかぁ 」
笑いながらソファに座って、テーブルの上にあった小ぶりの箱を手に取った。
なんでこれだけここに置いてあるんだろ?
「 マキさんこれ、」
言った瞬間、マキさんが あっ、て顔をした。
その他大勢の人から貰ったやつならそんな反応しないわけで、ということは
なんか多少の気持ちがある人から貰ってまんざらでもないって感じ?
.
479
:
ヤマダ
:2017/02/20(月) 21:05:38 ID:???
「 あ、それは… 」
「 あー!これ超高いやつだ!でもあんまり高いのって貰う側からしたら超重いっすよね」
チョコとか全然詳しくないけど、そのチョコが超高い有名な店のやつだってことは俺だってわかった。
箱とリボンの間には小さなカードが挟んであって
これはいよいよ義理とは思えない。
他のチョコとは隔離して置いてあることも、マキさんの反応もひっかかって
俺が1人でいる間、ケンチくんと飲みに言った先かあるいはその後で
綺麗な女の人からもしかして告白とかされたりしたんだろうかと、嫌な想像が頭を埋め尽くした。
「 アキラ、それは 」
大事なやつだから返して。
とか言われるんじゃないかと思ったら怖くて
「 これ食っていっすか?マキさん甘いもの嫌いでしょ」
失礼極まりない事を口走ってしまった。
無理やり笑ってるせいで頬がぴくぴくして痛い。
.
480
:
ヤマダ
:2017/02/20(月) 21:06:35 ID:???
「 うん、いいけど、でも それはさ本命だから 」
真剣な表情でそう言われて、予感が当たってしまったことに心臓が嫌な音を立てた。
俺と付き合ってるはずなのに、平気な顔でそんなことを言うマキさんにも意味がわかんないし
本命ってなに、本命だからなに
誰から貰ったの
「 あー…誰からっすか?」
なんとも思ってないような平気なふりをした。
本当は息が止まりそうなぐらい焦っていた。
マキさんはそりゃもうモテるし、今更なんだ。
だけどいざそういう事態を突きつけられるとどうしていいのかわからなくなる。
そう思って泣きそうになっていたけど
「 俺から、アキラに」
困ったように笑うマキさんが言った言葉に
「 へぇそうなん…す、か?!!」
むせ返るほど驚いて、内容を理解するのに少し時間がかかってしまった
いまなんつった?
マキさんが、俺に?
まじで?
.
481
:
ヤマダ
:2017/02/20(月) 21:08:44 ID:???
「 食っていいよお前に買って来たやつだから。あー重くてごめんねぇ〜 」
さっき俺が苦し紛れに言った「高級チョコは重い」ってやつを嫌味たっぷりに謝ったマキさんがいたずらっ子みたいに笑ってるけど
俺は全然笑えなくて
まさかマキさんがチョコを俺に用意してくれるなんて夢にも思ってなかったからもうなんかむしろ泣きそう
「 ほ、本当に俺にっすか 、バレンタイン? でもっ今日ケンチくんと、えっ、あれ、えっと…」
「 用意してたんだけど アキラがバレンタインどうすんのかわかんなかったからさ 恥ずいじゃん チョコどうぞみたいなの 」
それから聞いた話によると、マキさんも俺とおんなじように悩んでたらしく
今日ケンチくんと飲みに行くってのは少し前から入っていた予定で、俺が誘うとは思ってなかったからオッケーしてしまったらしいと知り
なんだそうだったのか
つーか、マキさんが俺のためにチョコ買いに行ってくれたとか嬉しすぎて嬉しすぎてもうどうしたらいいのかわかんない
「 ありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しいまじで食えねぇっすよぉ 」
「 チョコ一個でそんな喜んでもらえたら俺もウレシーわ 」
チョコの箱を手に持ったまま、ぎゅうぎゅう抱きついた所である事に気がついた。
俺、なんも、用意 して、ない !
「 あっ、あ、えっと、マキさんごめんなさい…俺、マキさんバレンタインとか興味ないのかと思ったからなんも用意してない…っす…」
あげて、引かれても嫌だったし。
「 え?酷いじゃんアキラ…俺はアキラのこと思ってちゃんと用意したのに… 」
全然いーよ、なんつっていつもの軽い調子で許してくれるだろうと想ってたマキさんは
180度逆のなんかガチでヘコんでるっぽい声色をくぐもらせた。
.
482
:
ヤマダ
:2017/02/20(月) 21:09:44 ID:???
「 ごっ 、ごごっ ごめっ すいませ…ッ 俺もマキさんのこと想ってますよ?!でも、そんなつもりじゃなくて、、俺ら男同士だし、どうしたらいいのかわかんなくて、それで、だから、っ」
背中をさするように抱きしめてそう言っても、返事ともため息ともつかない声しか聞こえてこない。
マキさんを傷つけてしまったのかと
抱きしめていた肩を掴んで体を離し、顔を覗き込んで見れば
しょんぼり、眉毛を下げて すねている。
いっつも飄々としてて大人で余裕たっぷりな彼のそんな表情見たことなくて、正直可愛いと思ったけど
それよりもローな感情にさせてしまった事に焦って
「 今から買ってきます!もしくは作ります! 待っててください!」
もうこの時間じゃコンビニぐらいしか開いてないだろうけど、と立ち上がろうとした。
そしたら、俺の腕を掴んできたマキさんはなぜか楽しそうに笑ってて
「 チョコはいーからさ、アキラが欲しいなー 」
言いながら引き寄せられて、マキさんの足の間に膝をついた。
.
483
:
ヤマダ
:2017/02/20(月) 21:10:38 ID:???
あ。その笑顔はよく知ってる。
彼が、俺にいたずらした後によくするしてやったりの顔だ。
「 もーマキさん!嘘泣きですかっ 」
「 泣いてねーよ笑 いいじゃん楽しいんだからなんでもさ 」
「 んふ、でもさっきのマキさんちょっと可愛かったすよ 」
「 うっそ まじで?ウケる〜 」
笑いながらキスをして、マキさんにもらったチョコの箱を潰してしまわないようにそっとテーブルの上に避難させた。
.
484
:
ヤマダ
:2017/02/20(月) 21:12:03 ID:???
その次の次の日、俺は忙しい合間をぬってせっせと既製品のチョコを溶かし、再度ハート形に固めただけの
人生初、アキラの愛情たっぷり手作りチョコをマキさんにプレゼントした。
「 うん。すげー嬉しいけど、すげーデカイね 」
人の顔ぐらいあるチョコを見たマキさんは苦笑いだったけど
後でこっそり写メって、甘いの苦手なのに結局全部食べてくれた事を俺は知っているのだ。
.
ハッピー バレンタイン !
485
:
ヤマダ
:2017/02/20(月) 21:16:42 ID:oaLu5l9g
■ 2月14日 ■ mkak
>>472-484
コメントお返事
>>471
おっそいバレンタインの小話。笑
486
:
名無しさん
:2017/03/15(水) 18:44:16 ID:dWW6PYNM
うわーーーかわいいmkak!!!!
今までROM専だったのですが
たまらずコメしてしまいました 笑
これからもヤマダさんのお話楽しみにしてます!
487
:
ヤマダ
:2017/03/24(金) 21:19:55 ID:???
>>486
さん
コメント有難うございます〜!
まきあきのかわいさ表現できてる自信はないですが
そういっていただけてたいへんうれしいです
更新めちゃめちゃ遅いですが
またタイミング合えば是非あそびにきてくださいっ
488
:
ヤマダ
:2017/03/24(金) 21:21:05 ID:???
■ Dearest ■
深夜の四時過ぎ、川沿いの桜並木の下をアキラと二人で歩いて帰っていた。
飲み会の後、俺を送るためにタクシーを拾いに行くと言いながら外に出ておいて
桜が綺麗だから歩いて帰りませんか?なんて一体どこのロマンチストだよ。
散々仕事した後にアルコールの入った身体に徒歩帰宅は正直キツイし、、、と思ったけど
しぶしぶ歩き始めてみれば案外悪くなくて。
仕事柄、ゆっくり桜なんて見る時間もなかったし
たまにはいいかもしれない。
隣をちらりと見やれば、酒で鼻と頬を赤くしたアキラは舞い落ちる桜の花びらを雪みたいだとけらけら笑っていた。
「 あんまフラフラすんなって 危ないよ 」
「 へーきっすよ そんな酔ってないし!」
確かにそこまで酔ってるわけではないんだろうけど
それでも酔ってる事に違いはないし、怪我されても困るから
若干だけどヨタついて歩いてるアキラの腕をなんとなく自分の方に引き寄せた。
「、わ っ 」
そんなに強くしたつもりはなかったのに、不意だったからか
ぐらっとこっちに揺れて肩同士がぶつかった。
.
489
:
ヤマダ
:2017/03/24(金) 21:22:04 ID:???
「 ごめんごめん、」
びっくりした?って声をかけようと思ったら
さっきまでご機嫌そうに桜を楽しんでた顔はなんだか雲行きが怪しげで
あれ?どうしたの?
上着のポケットに両手を突っ込んだまんま、自分の足元を見つめて俯いてる彼につられて
その場に足を止めた。
「 マキさん 」
「 ん?吐きそう?きもちわるいの?」
そうじゃないとゆるく首を振る。
眉間にはわずかなシワが寄せられ
みたことない様な思いつめた表情でゆっくりと俺をみた。
まだ肌寒い風がザァっと俺たちの間を吹き抜けたのと
いきなりテンションの下がったアキラが重い口を開いたのはほぼ同時で
「 ……え? 」
聞こえなかったわけじゃない。
聞こえなくて聞き直したんじゃないけど、でもそれは長い間俺たちの間で守ってきた暗黙の了解を破る言葉で
思わず、聞き返してしまった。
そして、そんな俺にアキラはもう一度真剣な顔をして言ったんだ。
俺のことが、好きだと。
.
490
:
ヤマダ
:2017/03/24(金) 21:22:54 ID:???
どっちが先に好意をもったかとか、いつからかとか
そういうことは全然わからないけど
気付けばお互いの気持ちを俺たちは認識しあっていた。
一つ一つの視線や仕草や態度から
言葉にしなくても伝わってしまう。
だけど俺たちは大人で、それなりに人気のあるグループの一員で
自分たちのことだけでなにがアクションを起こすには何もかもを持ち過ぎていた。
これはあくまでも俺の予想だけど
元々は普通に女と付き合っていたアキラがこうなったのは
プライベートの無い芸能界に入って、多方面からのプレッシャーやいつも誰かの目を気にして行動しなければならない環境に置かれたせいだと思う。
心を許せる相手が限られる中で
普段からいろんな相談を受けて、たまたま1番近くにいた俺が
アキラの心の拠り所だったのかもしれない
俺がアキラのことをそう思ってるみたいに。
「 それ言っちゃう…?」
今まで何度も言おうとして俺が飲み込んだ言葉。
言ったところでどうなる、困らせるだけだろ。
そう思って胸に閉じ込め続けた言葉。
.
491
:
ヤマダ
:2017/03/24(金) 21:23:49 ID:???
全然笑えないけど笑うしかない状況に俺が無理やり笑ってみても
アキラはなにを言うでも無くぎゅっと下唇を噛んでいた。
そんな顔されたら何も言えなくなって
死ぬほど重い沈黙が落ちてくる。
道の真ん中で無言のまま突っ立ってる俺たちを気にする人はいないけど
この際においてはいてくれた方がよかった様な気さえする。
そしたら人目もあるしってどうにか話を動かせたのに。
そりゃ俺も好きだけどとか、でもどうしようもないしとか
溢れ出す気持ちは空気の重さに負けて一つも言葉にできない。
そしたらそれまで黙っていたアキラが急に笑い出すから、頭がおかしくなったのかと思った。
「、すいません。変なこと言って困らせて。でも…」
笑ったと思ったら、今度は崩れ落ちるみたいにその場にしゃがみ込んで膝を抱えて蹲る。
でもの後の全然聞き取れなかった声を追って俺も同じ目線になるようにしゃがんだ。
って言ってもアキラは膝に顔を埋めていて視線は合わないんだけど
「 でも、なに?」
「 …本当に好きなんです。わかって、ましたよね、俺の気持ち 」
「 んん…」
「 マキさんは 」
「 え?」
「マキさんはどうなんすか 俺のことどう思ってますか」
ずっと暗黙の了解で守ってきた沈黙を破ったアキラは
この際はっきりさせましょうってちょっと震えてる声でこっちに手を伸ばした。
相変わらず顔は伏せているくせに、まるで俺を捕まえとくみたいにぎゅっと腕を掴まれて
わずかに崩れた体のバランスに二人の距離が近づく。
.
492
:
ヤマダ
:2017/03/24(金) 21:24:46 ID:???
「 俺は…… 」
俺も好きだよ。ずっと好きだった。
ありきたりな愛の告白の言葉が浮かんでは言えないまま消えていく。
俺は正直なにをどういえばいいのかわからなかった。
なにが正解なのか、そもそも正解ってなんなんのか
自分のこと、アキラのこと、自分の家族のこと。
グループの事、メンバーのこと、将来のこと。
アキラを好きになってから死ぬほど悩んで悩んで、何回も何回も同じことを考えてはまた苦しくて
だからもう見ないふりをしていた。
スキャンダルを起こして仲間としてさえいられなくなるなら、いっそいまのままでよかった。
それに俺には長くつきあっている恋人だっている。
どう考えたって俺と彼が踏み出してしまうにはリスクが高すぎる。
そうわかっているくせに、アキラに「ごめん」の一言が言えない。
掴まれた手を解くことができない。
アキラがこんな風に先輩である俺に迫るなんて、普段は絶対にないのに
それぐらい追い詰められていたのだと思うと、ついさっきまで一緒にふざけて呑んでた笑顔に胸が苦しくなった。
「 とりあえず、違うとこで話そっか アキラん家いける? 」
うん、と子供みたいに頷いたアキラの腕を今度は俺が掴みながら立ち上がらせて
タクシーで彼の家まで向かった。
何度かきたことのあるエントランスをぬけ、エレベーターが上昇する。
鍵を開けた背中に続いて中に入ると、後ろでガチャリとドアの閉まる音がした。
.
493
:
ヤマダ
:2017/03/24(金) 21:25:52 ID:???
靴を脱いで、リビングに行って、なんとなくソファでも座りながらゆっくり話をしたら
ちょっと暴走気味のアキラも少しは落ち着くだろう。
そんな風にこれからのことを頭に浮かべていたのは俺だけだったようで
「 マキさん、俺と付き合ってください 」
まだリビングにすらついてないのに
前を歩いてたアキラが振り返り、今度はしっかりと俺の目を見つめて言った。
それでもどこか怯えてるような、迷っているような色を添えて。
アキラの、こういうの真っ直ぐで ど直球な空気の読めない所を好きになった。
歳を重ねた俺が言えないような一言すら、人懐こい笑顔でさらっと言ってしまうところとか。
悪いことをしたら素直にごめんなさいと謝ることができて、嬉しい時は全力で喜ぶ素直さとか
あげれば、キリがないけど。
「 …シカトっすか 」
ほらまた、一人で勘違いしてむくれてる。
「 ちがうちがう なんて答えようか考えてんの。」
「 なんだ、そだったんすか シカトされたかとおもっちゃいました 」
こんなシビアな話をしてる時なのに、えへへって笑うアキラが可笑しくて
おかしくて、かわいくて
「、あきら 」
向かいの壁にもたれて俺の返事を待ってる彼を引き寄せた。
仲間としてハグをすることはあったけど
こんな風に抱きしめたことは無くて
少しぎこちない自分がバカみたいで恥ずかしい。
肩に乗っかった彼の頭の重みが、幸せだった。
「 ぅう…俺も抱きしめていいっすか…?」
「ん、」
変なうめき声の後でそんなことを聞いてくるアキラに吹き出しそうになったけど
痛いぐらいに抱きしめられて、俺は丸まった細い背中をゆっくりと撫でた。
( あぁ、アキラとならタブーの一つや二つどうってことないのかもしれない。 )
.
Dearest なれそめ編 END
494
:
ヤマダ
:2017/03/24(金) 21:32:34 ID:InLqeAPc
■ Dearest ■なれそめ編
>>488-493
コメントお返事
>>487
ディアレストのこの二人で〇〇編〜とかって書いて行ければなぁと思います。
ちょいちょい設定違う短編のお話も挟むと思いますが〜。
せかんどのライブ
みんな男らしさむんむんえろいけど
絡みのダンスなんでakだけちょっとオカマみたいなの?指先常に反っててかわいいね
と思いました。(悪口ではありませんよ)
495
:
名無しさん
:2017/03/26(日) 13:24:12 ID:???
スゴーく久しぶりにここに来たのですが
なんて素敵なお話が!
MKAKも過疎ってしまったなぁと思っていましたが
これからも足を運ぶことにします
○○編楽しみにしています
496
:
ヤマダ
:2017/03/28(火) 17:19:49 ID:???
>>495
さん
私もmkak自給自足なので寂しいですが
ここに帰ってくると同志さんがいらっしゃるので元気出ます!
またmkakもりあがったらいいな〜と思いながら
更新頑張ります!
コメントありがとうございました。
また是非いらしてくださいっ
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