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君のまなざし ×A その2
1
:
M.C
:2012/01/04(水) 12:46:17 ID:???
拙いTAを書かせていただいておりますM.Cと申します。
いつもお世話になっております。
『君のまなざし』が900レス間近となり、また、次の話が時代パロで中編を予定している為、新しいスレを『その2』として立ち上げさせていただきます。
もしかしたらTAだけでなく、他のメンバーとの話もあるかもしれませんので、『×A』とさせていただきました。
一応、R18指定といたします。
相変わらずののろのろ更新ですが、頑張りますので宜しくお願いいたします。
2
:
M.C
:2012/01/04(水) 13:14:14 ID:???
皆様、こんにちは。
書き手です。
以前何度かお話(?)しておりました、TAで時代パロを書かせていただきます。
ですが、Aちゃんが女の子設定です!
たた様の子どもが欲しいとあんまり駄々をこねるので、思いきって書いてみました。
もし無理な方がいらっしゃいましたら、申し訳ありませんがスルーしてください。
きっと、いつも通りののろのろ更新だと思いますが、どうぞ宜しくお願いします!
君のまなざし TA 江戸時代編
時は江戸時代後期。
徳川様がおさめられる江戸の町の片隅に、篤と将吉という姉弟が暮らしていた。
両親は小さな小間物屋を営んでいた。
このほど売り出した、ヘチマの化粧水が大層な評判を呼び、店を大きくしようと話していたある日、得意先からの帰り道、父親が辻斬りに遭って命を落としてしまった。
これに落胆した母親は、風邪をこじらせて、父のあとを追うように亡くなった。
残されたのは、篤と将吉姉弟と店だけ。
この時、篤11歳、将吉6歳。
幼い二人ではどうすることも出来ず、繁盛間違い無しの店は伯父夫婦に乗っ取られてしまった。
伯父のものとなった、両親の残した店。
篤と将吉は、そこで使用人以下の扱いを受けた。
食事は誰よりも遅く、質素で。
時には、麦飯が一口だけの日もあった。
まだ幼い弟のため、篤は自分の分も将吉に食べさせた。
満足に食事も与えられず、目が回る位こき使われて、篤は自分も死んでしまいたいと思っていた。
でも、幼い将吉を残しては死ねない。
3
:
M.C
:2012/01/04(水) 13:33:16 ID:???
そんなつらい毎日だったが、安らぎもあった。
篤は小さい頃から歌が好きだった。
とても柔らかい綺麗な声で、篤が唄えば忙しく歩く商人でさえも足を止め、聞き入ったものだ。
時には病人の枕元に呼ばれ、唄ってくれと請われた。
病が癒えるからと。
死への恐怖が薄れ、安らかにあの世へ旅立てるからと。
篤に歌を頼んだ者は、その小さな手に、そっと幾ばくかの金を握らせた。
金の無い者は少しの食べ物を。
皆、篤と将吉の境遇を知っており、なんとかしてやりたいと思っているのだ。
皆の気持ちを有り難く受け取り、将吉と二人で大事にいただいた。
ある日、また病人の元に呼ばれた。
伯父夫婦はいい顔をしないが、店にも少しばかり御礼をする者が多いので、しぶしぶ許していた。
小さい頃から二人を可愛がってくれた近所のおじいちゃん。
もう長くないとは聞いていたが、その時は突然訪れた。
「おじいちゃん、篤だよ。 歌を唄うから元気を出して? 死んじゃ嫌だよ!」
声を掛け、篤が唄い出す。
同席した者ばかりか、傍を歩いていた者までが立ち止まり、涙を流している。
心に染み入る、優しい暖かい声。
4
:
M.C
:2012/01/04(水) 13:44:38 ID:???
ちょうど道場帰りに通りかかった、さる旗本の次男坊、敬浩、この時10歳。
透き通った綺麗な歌声に、思わず足を止め聞き入ってしまった。
まわりの大人達はみんな泣いている。
ふいに歌声が途切れ、
「おじいちゃん、死んじゃ嫌だ!!」
あの歌声の持ち主が大きな声で叫んだ。
良く通る声。
しばらくすると、
「あっちゃん、ありがとうね。 あっちゃんの歌のおかげで、じいちゃんも安らかにあの世へ行けたよ。 本当にありがとう。」
という声に送られて、女の子がその家から出てきた。
痩せた、小さな女の子。
とりたてて人目を引く顔でもない。
ただ、今は真っ赤に泣きはらしているが、くりっとした目が可愛い。
興味を覚え、ズカズカと近寄った。
5
:
M.C
:2012/01/04(水) 14:34:10 ID:???
「今の歌はお前が唄ったのか?」
急に見知らぬ武家の子どもから話し掛けられ、篤は驚いた。
見ればとても綺麗な顔立ち。
女の子かと思うほど整っている。
だが、言葉遣いは横柄で、気持ちが沈んでいる今は答えたくない。
無視して歩き出すと、追いかけてきた。
「おい、私が聞いているのに答えないのか?」
ちらっと見れば、整った顔が悔しそう。
幼い将吉を思い出し、思わず笑顔になった。
「わたしはお前なんて名前じゃありません。 それに、それが人にものを尋ねる態度ですか?」
おっとりしていた篤だったが、苦労している今は、見た目よりずっとしっかりしている。
6
:
M.C
:2012/01/04(水) 14:46:28 ID:???
小さい女の子に思わぬ反撃をくらい、また可愛い笑顔に驚き、敬浩はいつもの素直な地を出した。
「そうか、それは悪いことをした。 私は敬浩、10歳だ。 今は見ての通り道場の帰りだ。 そこを通りかかってお前、いや、そなたの歌を聴いたのだ。 良かったら名前を教えてくれないか?」
敬浩の真面目な物言いと、ぺこりと頭を下げた仕草が可愛く思えて、篤はぷっと吹き出してしまった。
少しムッとする敬浩。
「ごめんなさい。 別に怒っている訳じゃありません。 わたしは篤といいます。 11歳です。 家はそこの小間物屋です。 歌は小さい頃から好きで、よく頼まれたりします。 でも今日は大好きなおじいちゃんが死んじゃって…」
せっかくの可愛い笑顔だったのに、また泣き出してしまった篤を、敬浩は思わず抱きしめた。
7
:
M.C
:2012/01/04(水) 15:01:29 ID:???
驚く篤。
しかし篤が言葉を発する前に、様子を見ていた伯母が飛んできた。
「何やってんだい、篤! こんな道の真ん中で。 まったくお前は恥ずかしい子だよ! 何でわたしらが育てなきゃならないんだよ。 早く帰って台所の手伝いでもしな! お坊っちゃんごめんなさいね。 うちの篤がご迷惑をお掛けしました。」
みるからに高圧的な態度で篤を叱り飛ばすと、今度は途端に猫なで声で、敬浩のご機嫌を伺う。
「いえ、私は何も。 では失礼します。」
伯母にくるりと背を向けると、店に戻って行く篤の後ろ姿を心配気に見送る敬浩。
家って篤さんは言ったけど、あのおばさんの態度から考えると、本当の親ではないんだな。
篤が気になり、でもどうすることも出来ずに、家に戻った敬浩だった。
これが二人の出会いである。
8
:
M.C
:2012/01/04(水) 15:30:57 ID:???
幼い日の出会いから7年経ち、篤は18歳、敬浩は元服をとうに済ませ17歳になっていた。
敬浩は武術もさることながら、学問の面でも秀でており、見目麗しいことも手伝い、あちらこちらの大名家や旗本からの、婿入りや養子の話が絶え間なく持ち込まれていた。
しかし、本人が乗り気でなく、また両親も手元に置いておきたいと、まだ考えておらぬ との返事を返すのみだった。
篤はと言えば、相変わらず伯父夫婦にこき使われていた。
相変わらずの痩せっぽちで、しかし生来の優しく穏やかな性格は変わっておらず、また、持って生まれた気品のようなものは、成長するとともにますます輝きを増し、凛とした姿に、すれ違う人が振り返るほどであった。
これを快く思っていないのが、伯父夫婦。
一人娘のお由美は、器量も気立ても悪くないのに、なにしろワガママ放題に育ったので、思いやりに欠けていた。
13歳になった将吉のことなど、まるで自分の召使いのように、顎で使う。
もう9歳の頃から、店の小僧として働いている将吉は、しょっちゅうお由美から呼び出されるので、小僧達から仲間外れにされ虐められていた。
篤と話がしたくても、お互いに忙しく働く身、ちらっと顔を見るのが精一杯だった。
9
:
M.C
:2012/01/04(水) 15:49:49 ID:???
7年の間、敬浩と篤が再会することはなかった。
道場や学問所への行き帰りに、どこか遠くから聞こえて来る篤の歌を耳にすることは、幾度かあった。
相変わらず綺麗な声だと思いこそすれ、あの小さな切ない後ろ姿を思い出すと、何もしてあげられない自分に無力さを感じ、結局はその声に背を向けてしまうのだった。
そんなある日、運命が二人を引き合わせた。
敬浩の家、田崎家は、いわゆる上級旗本で、先代は、遠国奉行の首座とされる、長崎奉行まで務めた家柄であった。
当然、多くの奉公人を抱え、数多の商人が出入りし、またその資格が欲しい商人も数多くいた。
篤の伯父の店、つた屋 も、そのひとつ。
今、都で評判のヘチマ化粧水を売りに行けたら、大儲け出来る。
田崎家を足掛かりに、ゆくゆくは大奥まで手を広げられたら…
伯父の野望は留まるところを知らない。
10
:
M.C
:2012/01/04(水) 16:10:39 ID:???
ある日、知り合いの呉服屋が、田崎家の奥向き女中から、つた屋の化粧水を使ってみたいから屋敷に来てくれ との伝言を持って来てくれた。
伯父は嬉々として馳せ参じた。
この時伯父は、お由美を連れて行こうと思っていた。
運が良ければ、行儀見習いとして田崎家に奉公出来るかも知れない。
今は、篤ばかりに縁談が持ち込まれ、お由美にはさっぱりだ。
2・3年行儀見習いをして箔をつけ、どこぞの大商人からの縁談でもあれば、と考えていたのだ。
しかし、指定された日、お由美は母親と芝居見物を予定していて、どうしても同行したくないと言い張り、仕方なく篤を同行した。
手代ひとりと篤に重い荷物を背負わせ、田崎家へ行った。
さすがに奉行まで務めた家、女中の数だけでも大変なものだった。
評判の化粧水ということで、皆仕事を放り出して、奥の台所の板間に集まった。
わいわい言いながら商品を試す女中達。
一生懸命、商品の説明をし、世話をする篤。
そこへ、奥の賑やかな声を聞きつけ、奥方がやって来た。
「いったい何の騒ぎです? 皆、仕事はどうしたのですか?」
奥方の叱責に、女中達は慌てて仕事に戻って行った。
11
:
M.C
:2012/01/04(水) 16:24:54 ID:???
書き手です。
本日はこれで終了です。
いかがだったでしょうか?
運命が二人を引き合わせた なーんて書きながら、まだまだです…
時代小説が好きで、読みあさっていた時期がありまして、今回の話を書いてみようと思った次第です。
ですが、いつもの通り、ペンではサラサラなのに、書き込むのに時間が掛かり、ちょっとだけ後悔も…
しかも、いつも以上に説明っぽい!
おまけに、エロは当分出てきません!!
女の子設定でもいいと思われる方がいらっしゃったら、ちょっとだけよしよししてくださいませんか?
そうしたら頑張れると思います。
なんて、甘えたことを言わずに、下書きがある限り、時間の許す限り頑張ります。
とりあえずは明後日、更新いたします。
ここまでお付き合いいただいて、ありがとうございました!!
12
:
たま
:2012/01/04(水) 17:09:00 ID:???
M.C様 更新ありがとうございます!!
今年も素敵なお話で萌えさせてください。
さっそく にょたAに悶えました。さぞかしかわゆいんだろうなぁ。
時代モノいいですねぇ〜ちっとも説明くさくないですよ。むしろ情景がわかりやすく世界観に入りやすいです。
自分も書いてみたいけど、M.C様のような文才がないのでできません。
次回の更新をワクワクしながらお待ちいたしております。
13
:
珈琲
:2012/01/04(水) 17:15:02 ID:???
M.C様
こんばんは、珈琲です。
本日、こちらもお伺いさせて頂きました。
時代劇、そして、Aさん女体…。
全然、いいです!Aさん、素直で、可愛いです。
時代もの、私も好きなのですが、設定が、非常に、難しくて、
前も、結構、いい加減だったのですが、M.C 様のお話は、
凄く、設定が、しかっり組み込まれていて、冒頭部分から、
のめりこんでしまいました。
叔父夫婦…嫌な感じですね…(苦笑)
終わってしまいましたが、副将軍だったら、速攻、こらしめられそうです。
この後、二人の運命が、どう絡まっていくのか、とても楽しみです!
14
:
kumaco
:2012/01/05(木) 02:14:58 ID:???
M.Cさま新スレありがとうございます!!
時代物いいですね!
しかも、出会いから…☆
ぜんぜん女体OKです!
私は時代物なぞ造詣が全く深くないので
(あ、造詣が深いものはないんですけど キリッ
尊敬です。
化粧水、使いてぇー!!てか、篤ちゃん買い取りてぇー!
あ、エロは当分ないんですね。
いいです…いいんです…ガクリ
おとなしく待っておりますので。
M.Cさまってばよしよしして欲しいなんて…
なんてかわゆすなんですからっ(///)
続きを楽しみにしております!!
15
:
M.C
:2012/01/06(金) 12:55:29 ID:???
皆さん、こんにちは!
書き手です。
ドキドキしながら立ち上げた新しいスレに、コメントをいただいて本当に嬉しいです。
女の子設定ですので、もしかしたら誰も読んでくれないかも と思っていましたので、感激しながらコメント読ませていただきました。
今日も頑張りますので、どうぞ宜しくお願いします!
余談ですが、昨日スーパーに買い物に行きましたら、駐車場の隣の車が、佐世〇ナンバーでした。
二人はちゃんと休めているかなぁと、思いを馳せながら帰りました。
ちゃんと休めて、気持ちいいエッチをしていてほしいと、心底思った自分に、笑ってしまいました。
お返事です。
たま様
新しいスレに、一番始めにいただいたコメントがたま様からだなんて!!
本当に嬉しいです(感涙)
女体Aちゃん、受け入れてくださってありがとうございます。
誰も読んでくれなかったらどうしようと思っていましたので、すごく嬉しかったです!!
説明くさくないですか?
設定を作り込みすぎて、全然進みません。
少しでも伝わってくれたらと思って、ついつい長ーーくなっちゃうんですよ。
私の悪い癖です。
文才!?
たま様ほどの方が、何をおっしゃいますか!!
本当に尊敬しています!
私など穴を掘って身を隠したいくらいです。
……縦も横も大きいので、掘ってる途中でへばってしまいそうです。
今日も頑張りますので、宜しくお願いします!
16
:
M.C
:2012/01/06(金) 13:16:32 ID:???
珈琲様
こちらへもコメントありがとうございます!!
女体Aちゃん、いいですか? 嬉しいです!
私は設定を作りすぎて、説明ばっかりになっちゃうんですよ。
パロの難しいところですよね。
つくづく痛感しています(早すぎ)
副将軍がいらしたら… 笑ってしまいました。
珈琲様って、意外にテレビっ子なんですね?
なんか、可愛いです!
これからも宜しくお願いします!
kumaco様
こちらへもコメントありがとうございます!!
女体Aちゃん、OK貰えて嬉しいです。
たた様の子どもを産ませてあげたかったんですよ!
でも、設定を作りすぎてしまって、長ーーい説明文に…
よしよしして欲しかったのは、実は心が折れそうだったから…
でも、kumaco様にしていただいた気になったので、今日も頑張ります!
ヘチマ化粧水、昔々、若かりし頃に ヘチマ水 なる物を使ったことがありまして、良かったんですよ、これが。
現代でもあるのかな?
エロは本当にずっと出てきません。
それでも読んでくれるかな?
17
:
M.C
:2012/01/06(金) 14:07:47 ID:???
「どちらのお店の方ですか?」
威厳のある奥方の前で、伯父は何も言えずただ頭を下げるのみだった。
主人を差し置いてと、手代も何も言わない。
そこで篤が申し出た。
「奥方様、お騒がせしまして申し訳ございません。 手前どもは〇〇町で小間物屋を営んでおります、つた屋と申します。 おかげさまで評判になっております、手前どもの化粧水を、こちらのお女中の方が使ってみたいとおっしゃられ、本日お持ちいたしました次第でございます。 また日を改めまして参上いたしますので、どうぞお許しください。」
篤の立派な物言いに驚いたのが、伯父と手代。
「篤、お前どこでこのような言い方を?」
これに答える前に、奥方が篤に尋ねた。
「篤とやら、〇〇町のつた屋と申したが、もしやそなたの母御はお咲殿ではござらぬか?」
「はい。 わたしの母はお咲と申します。 7年前に亡くなりましたが… ご存知なのですか?」
「なんと、亡くなられたと? おいたわしや… 篤、本日は少し残れぬか?」
「それは伯父に聞いてみませんと…」
「そちらが主殿か? 篤を少し借り受けたいと思いますが、よろしいか?」
「お、奥方様、こいつは、いえ、篤は右も左も分からぬ小娘でございます。 失礼があっては…」
18
:
M.C
:2012/01/06(金) 14:21:35 ID:???
「先ほどの物言いを聞いておれば、とてもこのような若い町娘のそれではない。 きっと立派な教育を受けてきたのであろう。 失礼などあるはずがない。」
「いいえ、奥方様。 これは歌ばかり唄っておる極楽とんぼでございます。 教育など、何ひとつ身についておりません。」
「主殿、極楽とんぼとは篤のこの手を見て言うたのか? よほどのことをしなければ、こんなに荒れた手にはならぬ。」
咄嗟に手を隠す篤。
奥方はその手を優しく握り、厳かに伯父に告げた。
「つた屋よ、よく聞け。 明日より10日毎に品物を持って当家に参れ。 こちらも女中を3つに分け品物を買わせる。 品が良ければ、いずれは大奥へも紹介してやろう。」
「えっ、大奥ですか? なんと有り難きお言葉。」
「こちらへは、小僧一人と篤に参らせよ。 今日ほど荷物はないだろうから、篤も大丈夫じゃな?」
「それは…」
19
:
M.C
:2012/01/06(金) 14:31:57 ID:???
「女中と小僧だからといって、当家が金を払わぬとでも言うのか!」
「いえ、滅相もございません。」
「では、それで良いな? それから、その日は朝一番で参ること。 夕餉をこちらでとらせてから帰らせる。 何、心配は要らぬ。 きちんと送らせるからの。 どうじゃ?」
「何から何まで、まことにありがとうございます。 では本日はこれで失礼いたします。 篤、粗相のないようにな?」
「はい、旦那様。」
こうして屋敷に残った篤を、奥方は家族の居室に連れて行った。
廊下を進みながらも、装飾の素晴らしさ、調度の素晴らしさに、篤はただただ驚いていた。
20
:
M.C
:2012/01/06(金) 14:44:18 ID:???
座敷に座り、改めて向かい合うと、奥方はとても綺麗な慈悲深い顔で、観音様のような優しい方だった。
「そなたの身の上を聞かせておくれ? さぞ苦労をしたのであろう?」
奥方の柔らかい声に、篤はたまらず泣き出してしまった。
そして、これまでのことを、誇張せず淡々と話した。
最後に、聞きたかったことを口にした。
「わたしの母をどうしてご存知なのですか?」
「篤は母御から、若い頃に屋敷奉公したと、聞いておらぬか?」
「はい、聞いております。 お屋敷の名前は忘れてしまいましたが、3年ほどお勤めさせていただいて、父と祝言を挙げる為にお暇したそうです。 …もしかしたら」
「そう、この田崎家なのです。 私が嫁いできた頃におられたのだ。 慣れない生活に泣いてばかりの私を、お咲殿はいつも慰めてくれました。 身分こそ違えど、私は親友だと思うておりました。」
21
:
M.C
:2012/01/06(金) 14:58:19 ID:???
「母から聞いたことがあります。 とても綺麗なお姫様がお嫁入りされたと。 初めは泣かれることも多かったけれど、聡明でお優しい方だったから、屋敷中の者から慕われておられたと。 親友などと… 勿体無いことです。」
「そうでしたか。 またお会いしたかった… そなたの言葉は母御から教わったのか?」
「はい。 とても厳しい母でしたが、今はどちらに伺っても困りません。 感謝しております。」
「……篤、さぞつらい日々であったでしょうね。」
慈愛に満ちた奥方の言葉に、また篤は涙を堪えることが出来なかった。
「母上。」
そこへ、田崎家の二男、敬浩がやって来た。
「失礼、お客様でしたか。」
「御用があるなら、まずお客様にご挨拶なさってからになさい。」
「はい。 失礼いたしました。 敬浩と申します。 宜しくお見知りおきを、って、篤殿!?」
22
:
M.C
:2012/01/06(金) 15:23:49 ID:???
「……敬浩様?」
「篤殿、どうしてここへ?」
「お知り合いでしたか?」
「はい。 と申しましても、7年前に二言三言、話をしただけですが。」
「敬浩様、お久しぶりです。 ご立派になられて…」
「篤殿は変わりませんね。 相変わらず痩せっぽちだ。」
「……すみません。」
「謝られることなど… そうだ、歌は? まだ唄っておられますか?」
「はい、時々ですが。」
「そなたの母御もお上手でした。 お咲殿の歌に、随分慰められましたよ。」
「母上、お知り合いでしたか?」
「篤とは今日が初めてです。 母御と親友だったのです。」
「そうでしたか。 篤殿、久しぶりに篤殿の歌を聴きたいのですが、唄ってはくれませんか?」
「……それでは、お恥ずかしいですが少しだけ。」
23
:
M.C
:2012/01/06(金) 15:36:51 ID:???
篤が唄ったのは子守歌だった。
久しぶりに幼い日の自分と弟を思い出し、過去のつらかった自分達を癒やしてあげたかったのだ。
良く通る透き通った篤の歌声は、田崎の屋敷中に響き、男衆も女中も、皆仕事の手を止めて聞きほれた。
そればかりか、主人である敬浩の父まで、居室に顔を出した。
「今の歌は誰が唄ったのだ?」
「これはお前様、お仕事のお邪魔をいたしまして申し訳ございません。」
「構わぬ。 優しい歌声に、私も癒やされた。 誰なのじゃ?」
「父上、この方です。 篤殿とおっしゃる、母上のお知り合いの娘さんです。」
「そうであったか。 篤よ、もう一度唄ってはくれぬか?」
長崎奉行まで務めた家の主が、自分のような者に歌を唄ってくれという。
あまりのことに怖じ気づき、尻込みする篤だったが、敬浩が助け舟を出した。
24
:
M.C
:2012/01/06(金) 15:48:00 ID:???
「父上の前でいきなり唄えと言われても、恐縮して唄えませんよ。 ですから、篤殿、私と一緒に唄いましょう。 先ほどの子守歌でしたら私も存じております。」
恐縮しきりの篤だったが、敬浩の申し出を有り難く思い、一緒に唄うことにした。
初めこそ声が震えていたが、だんだん不思議な気持ちになっていた。
初めて合わせた声なのに、敬浩の声は相性がいいのか、ぴたりと合って、良く響く対の楽器のようであった。
とても心地よい敬浩の声。
目を合わせ呼吸を合わせ、二人が唄い終わると、その場にいた全員が涙を流していた。
もちろん、敬浩の父も母も。
「素晴らしい歌だった。 篤よ。 敬浩も。」
「ええ、本当に。」
25
:
M.C
:2012/01/06(金) 16:06:57 ID:???
その晩、夕餉をご馳走になり、一人で大丈夫だからと帰路についた篤を、送ると申し出たのは、敬浩だった。
敬浩は、篤の声の素晴らしさ、いや、そればかりでなく、篤の人柄や優しい話し方に、なんともいえない可愛い笑顔に、離れがたい思いでいたのだ。
篤は、といえば。
久しぶりに会った、あまりにも立派に成長した敬浩に、すっかり心を奪われていた。
ふいに抱きしめられた幼かったあの日。
両親を失ってからは、将吉と二人頼る人も無く、ただ生きるのに必死だった。
誰にも甘えることも出来ずにいた、つらい日々。
ぎゅっと抱きしめられた敬浩の腕に、安らぎを感じたのだった。
7年の間、自分のことなど覚えている筈がない、もう忘れてしまおう と思っても、敬浩の腕の感触が忘れられずにいた。
そして、再会した今日、自分のことを覚えていてくれたことに感激し、歌声の素晴らしさにびっくりした。
しかし、いくら思っても、これほどの身分の違い。
まして、こんなにも素晴らしい敬浩が、自分を気に掛けてくれるわけがないと、悲しい気持ちになっていた。
だから、送ると言ってくれた敬浩の言葉が、嬉しくもあり、つらくもあって。
26
:
M.C
:2012/01/06(金) 16:27:36 ID:???
「敬浩様、本当に一人で帰れますから。 もう子どもじゃありませんし。」
「いいえ、送ります。 こんな遅くに若い女性が一人で歩くなど、とんでもないことです。」
「あら、相変わらず痩せっぽちだっておっしゃったのは敬浩様ですよ。 おかげさまで背は伸びましたけど、確かに痩せっぽちで、色気のかけらもございません。 ですから危なくなんて
「篤殿! 篤殿は自分をわかっていない。 篤殿はとても可愛くて、凛としていて優しくて、そこはかとなく色気がある。 十分男をその気にさせます。 げんに私だって…」
「えっ、…敬浩様…?」
「これは失礼しました。 さあ、参りましょう。」
敬浩は、後ろを歩く篤を感じながら、自分の言動を思い返していた。
篤殿は十分男をその気にさせる。
げんに私だって
私は篤殿に惚れているのか?
今まで色んな娘と見合いをした。
皆、どこぞのお姫様やお嬢様で、確かに品があって綺麗な娘ばかりだった。
でも、それだけ。
まわりのことはおろか自分のことすら他人任せで、話すことと言ったら芝居のことや噂話、自慢話。
とてもじゃないが好きにはなれない。
その点、篤はどうだろう。
27
:
M.C
:2012/01/06(金) 16:39:01 ID:???
小さな頃から苦労のし通しで、自分のことなど構っていられる筈もない。
小さい弟も居る。
着物だって、店のお仕着せ(制服)だ。
しかし、あの聡明さはどうだ?
凛とした美しさはどうだ?
篤こそ、人として優れているのではないか。
でも、自分の後ろを歩く篤は、そんな苦労に耐えてこられたとは思えぬほど、華奢で儚くて…
誰かが守ってやらなければ折れてしまいそうだ。
敬浩は、振り向きざまに篤を抱きしめていた。
驚いて身を捩り、なんとか離れようとする篤。
しかし、篤の細い腕では敬浩に叶うはずもない。
敬浩が離してくれるのを、身を固くしてじっと待つしかない。
しかし、そのうちに敬浩が邪な気持ちで篤を抱きしめているのではないと気づいた。
篤は、幼いあの日と同じ安らぎを感じていたのだ。
28
:
M.C
:2012/01/06(金) 16:42:19 ID:???
書き手です。
もうこんな時間!!
タイムアップです。
もしかしたら、明日から3日連続で更新できるかもしれません。
頑張ります!
まどろっこしい、説明ばかりの話を読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!!
29
:
marie
:2012/01/06(金) 16:49:59 ID:???
わあああい!!!たくさんの更新ありがとうございます。
興奮してしまい、失礼しました。「仲間」のmarieです。
ぜんぜんまどろっこしくないし、説明ばかりという感じはないです。
むしろ、わかりやすくて、お話の中に入りやすいですよー。
ものすごーーーーーくいいです!!!
ど
連続更新、めちゃくちゃ楽しみです。が、無理をなさらないでくださいね。
楽しみにしています☆彡
30
:
marie
:2012/01/06(金) 16:57:58 ID:???
レスの消費すみません。marieです。
興奮してまい、変な文字が入ってしまい、すみません。
重ねてお詫び致します…
M.C様の書かれるTKさんは男前で大好きです!
可愛いAさんとTKさんの行く末が楽しみです。
31
:
M.C
:2012/01/07(土) 12:49:16 ID:???
皆さん、こんにちは。
書き手です。
今日からの三連休、なんとうちのダンナは ゴルフ、ゴルフ、仕事で、ずっと家に居ないので、思いっきりEX三昧なんですよ!
とりあえず今日は、今まで寝てました(もちろんダンナを送り出してからですよ)!!
これから更新頑張ります!
よろしければお読みください。
marie様
いつも応援、コメントありがとうございます!
女の子AちゃんOKですか?
良かったです。
読みやすくて伝わりやすい文章を目指しているのですが、文才がない為、長ーーーくなっちゃいます。
お読みくださる方々の読解力と想像力に助けていただいて、なんとか続けてこられたようなものです。
これからも宜しくお願いしますね!
玉椎は15日からでしたよね?
早くリアル萌が見たいですね!
32
:
kumaco
:2012/01/07(土) 13:05:08 ID:???
M.Cさま更新ありがとうございました♪
再会しましたね〜TA。
TKさっそくソノ気にならないでwww
レッツ・手籠め!!とかダメーッ
ゼッタイダメーッ!!ハァハァ
ダ、ダメなんだから…っ
壁|///)←見張っている
更新、お待ちしております☆彡←marie様パクリ
33
:
M.C
:2012/01/07(土) 13:11:20 ID:???
「敬浩様、ありがとうございます。 7年前もこうやって抱きしめてくださいましたね。 死んでしまった方が楽だと思っていた幼い日々、敬浩様の腕の感触を思い出して頑張れたんですよ。 だって、抱きしめてくれる人なんて、もう居ませんでしたから。 げんに、あれから今まで誰も抱きしめてくれませんでした。 だから両親の他は敬浩様だけ。 今日のことを思い出して、また7年間頑張れます。 ですから、もう離していただいて大丈夫ですよ?」
篤の言葉に体を離した敬浩。
提灯の仄かな灯りでも、篤の柔らかい笑顔と穏やかな口調で、自分を怖がってはいないとわかり、ホッとする。
「篤殿、これから我が家へ度々参るのでしょう? そうしたら、その度に抱きしめてあげますからね。 7年なんて言わずに。」
照れくさくて本心を言えない敬浩。
「ありがとうございます。 なぜか元気が出て参りました。 遅くなりましたら叱られますので参りましょう。」
明るく談笑しながらの帰り道。
しかし篤は、敬浩とはもう会ってはならないと決心していた。
34
:
M.C
:2012/01/07(土) 13:51:15 ID:???
翌日から10日毎に田崎家へ通う篤。
しかし、引き止める奥方をなんとか宥めて、昼時分にはお暇していた。
敬浩は剣術の稽古や学問所に行っている為、午前中ならば顔を合わせることは無かったからだ。
自分の恋心を自覚してしまった篤は、敬浩と会わずになんとか諦めようとしていたのだ。
店でも篤が早く帰って来た方が助かる。
お由美と比べて何かと評判のいい篤。
伯父夫婦は面白くないが、店の為なら篤を置いている方がいい。
だから、押し寄せる縁談にも
嫁に出すには恥ずかしい娘で
と、断っていたのだ。
そんなこととは露ほども知らない篤は、年頃になっても縁談が無いのは、自分に魅力が無いからだと思い、仕事に精を出していた。
忙しく働いている間は敬浩を忘れられる。
そんな日々がふた月も続いただろうか。
店に敬浩が尋ねて来て、篤を呼び出した。
光輝くような敬浩の姿を、その場にいた者は勿論奥から伯母やお由美も出て来て、息をのんで見ている。
35
:
M.C
:2012/01/07(土) 14:07:02 ID:???
表に呼ばれて、台所から手を拭きながら出て来た篤は、そこに立つ敬浩に驚いた。
「敬浩様、どうなさったのですか?」
「篤殿、こちらへ。 主殿、暫し篤殿をお借りしますがよろしいですか?」
「は、はい。 篤でよろしければいくらでも。」
伯父の返事ににっこり頷いて、敬浩は篤の手を取り店を出て行った。
後に残された者達は、口々に敬浩を褒め称えた。
お由美ばかりが、なんで篤なの? と、面白くない。
篤の手を握りずんずん歩く敬浩。
向かうは近くの神社。
篤は転びそうになりながらも、小走りで付いて行く。
すれ違う人は皆、見目麗しい若者と、粗末なお仕着せの女中の取り合わせに、首を傾げて見送った。
神社に着き、篤の手を離して問い詰める敬浩。
「なぜ私を避けるのですか?」
36
:
M.C
:2012/01/07(土) 14:36:52 ID:???
「そんな… 避けてなどおりません。」
「いいえ、避けている。 私が帰る頃にはもう居ないではありませんか。 母上に聞いても、店で大事な用がある としか聞いていないと。」
「それは本当にそうなんです。 ですから決して避けてなどおりません。」
「……私は今日こそ篤殿に会えると喜び勇んで帰るのに、いつも居ない。 …正直に言います。 私はあなたに恋をしています。 愛しいのです。 …嫁に欲しいと思っている。」
敬浩の告白に驚く篤。
しかし、身分違いの恋など上手くいく筈がない。
ぎゅっと拳を握り答えた。
「それは恋などではありませんよ。 私を可哀想に思ってくださっているだけです。 敬浩様はお優しいから、私に同情してくださっているのです。 だから抱きしめてくださったのでしょう? わたし、本当に忙しいんです。 ですから早く帰らせていただいているのです。 敬浩様を避けるなんて、そんなことはいたしません。」
にっこり笑ってそう告げる篤だったが、細い体は震え、その瞳は潤んでいた。
「篤殿…」
「落ち着いてもう一度よくお考えください。 第一、わたしのような者は敬浩様に相応しくありませんよ。 せっかく許しを得て店を出て来たのですから、わたしはもう少しこちらに居ります。 変な噂を立てられては敬浩様のご迷惑になります。 どうぞお先に。」
篤に見送られ、考えを巡らせながら帰る敬浩。
37
:
M.C
:2012/01/07(土) 15:14:43 ID:???
その頃、篤は境内の木にすがりつくようにして泣いていた。
声を殺して泣くのは慣れている。
好きだと言ってくれた敬浩。
それは本心かもしれない。
でも、その気持ちに答えることなど出来ない。
誰にも見向きもされない自分がそばに居ては、敬浩に恥をかかせることになる。
第一、身分違いも甚だしい。
夢を見ているだけで十分なのだ。
涙を拭き、なんとか気持ちを落ち着けて、篤は店に戻った。
いったい何事かと尋ねる伯父夫婦に、奥方様からの伝言でした と、濁す篤。
そこへお由美がやって来た。
「ねえ篤、さっきの方、どなた? すっごく美形よね。」
「田崎家の若様で、敬浩様とおっしゃいます。」
「あんたがよく訪ねるお屋敷ね。 次はわたしが行くから、あんたは店に居ていいわよ。」
「……はい、わかりました。 では慣れた小僧を付けましょうね。」
「お願いね。 楽しみだわ。」
38
:
M.C
:2012/01/07(土) 15:26:02 ID:???
次に顔を合わせた時、敬浩はなんと言うだろうか。
やっぱり諦められない、好きなんだ。
などと言われたら、困ってしまうが嬉しいのは確か。
よく考えたら篤の言う通りだった、同情だったのだ
などと言われたら、ホッとする反面とても悲しいだろう。
それこそ、世界が真っ暗になってしまうだろう。
どちらにしても怖い。
お由美が行ってくれるのならば、かえってありがたい。
「お嬢様、もし、篤はどうした? と聞かれたら、少し体を壊して休んでいるとおっしゃってくださいね。」
「ふーん、わかったわ。 任せなさいって。 うふふ、敬浩様!」
さて当日。
ウキウキしながら出掛けたお由美だったが、いくらもしないうちに、籠を飛ばして帰って来た。
なんと、篤の病気を知り、奥方と敬浩が見舞いにやって来ると言う。
39
:
M.C
:2012/01/07(土) 15:57:17 ID:???
驚く一同だったが、こうなったら二人を迎える準備をしなければならない。
皆てんてこ舞いの中、伯父夫婦は篤の着物の心配をしていた。
今や、奥でも店でも、篤はなくてはならない存在だったが、待遇は相変わらずで。
着古した茶色いお仕着せを纏い、雀の涙ほどの給金。
小僧よりも少ないのだ。
お屋敷に伺う時には、他の者の新しいお仕着せを借りて行く。
娘らしい見栄えのする着物など、持っているわけがない。
あまりにもみすぼらしい、いつもの篤。
せめて新しいお仕着せを と言っているそばから、小僧が二人の到着を告げた。
自分の部屋である、二畳ほどの薄暗い板の間に薄い布団を敷き、急いでその上に座り頭を下げる篤。
自分が言ったこととはいえ、まさかお二人が見舞いに来るなんて、思いもしなかった。
「篤や、具合はいかがですか?」
奥方の慈愛に満ちた声。
仮病の篤は、申し訳なくて顔を上げられなかった。
「篤殿、具合が悪ければ遠慮せずに布団に入ってください。 しかし此処は寒いな。 これでは治るものも治らない。 せめて火鉢でもあれば。」
「これ、敬浩殿。 よそ様のことに口を出すものではありません。」
「はい。 つた屋殿、申し訳ありません。」
40
:
M.C
:2012/01/07(土) 16:12:42 ID:???
「いえいえ、そんな勿体無い。 奥方様、若様、本日は篤ごときの為にわざわざ足をお運びいただいて、申し訳ありません。 この通り本日は伏せておりますが、次回はまた篤が参りますので、宜しくお願いいたします。」
「そうですね。 篤の優しい笑顔美しい歌声を、屋敷中の者が待っています。 もちろん主人もです。 早く病を治して元気な顔を見せてくださいね。」
「はい。 ありがとうございます、奥方様。」
「ここは寒いですから、どうぞ座敷の方へ。」
伯父に促され、奥方が部屋を出て行く気配がした。
ホッと息をつき顔を上げると、閉まった戸のそばに座った敬浩が、じっと篤を見ていた。
「たっ、敬浩様…」
「篤殿、先日言われたことをずっと考えております。 しかし、同情なんかではないのです。 いくら考えまいとしても、篤殿の笑顔や泣き顔ばかりが浮かんできて、剣術の稽古にも身が入りません。 師範にしこたまやられてしまいました。」
「まあ、お怪我は?」
41
:
M.C
:2012/01/07(土) 16:27:58 ID:???
「たんこぶが少しだけ。 これほど心を占めているこの気持ちが、同情のわけがありません。 篤殿はどうですか? 神社の境内で泣いておられたのではないですか? 篤殿も私のことを
「いいえ! いいえ、泣いてなどおりません。 そりゃあ敬浩様は素晴らしい方です。 きっと、好きにならない人はいないでしょう。 ですがわたしは違います。 将吉と同じ、かわいい弟といったところでしょうか。」
うつむいて唇を噛み締める篤。
これ以上しゃべったら涙が零れてしまいそう。
「本当に? 篤殿、本心ですか?」
重ねて聞かれて、もう口が開けない。
懸命に頷くと、
「私の顔を見て、篤殿の口でもう一度言ってください。」
と、敬浩。
ぐっと唇を噛んで、血の滲むほど噛んで、やっと顔を上げて答えた。
「私は敬浩様のことなど好きではありません。 どうぞお帰りください。」
今にも零れんばかりに涙をためた篤。
その目を見て、敬浩はたまらなくなって篤をきつく抱きしめた。
42
:
M.C
:2012/01/07(土) 16:44:00 ID:???
「……篤殿…」
「いけません。 お離しください。」
「同情ならよくて愛情はいけないのですか? 同じ抱きしめるという行為なのに。」
「それは…」
「篤殿、どうか素直になって。 口にすることが出来ないのなら頷くだけでいい。 ……私のこと、好きですか?」
優しい声で尋ねる敬浩。
暖かい手で背中をさすってくれる。
緊張していた全身からふっと力が抜けた篤は、思わずコクンと頷いていた。
零れた涙は、もう止めることが出来ない。
体の離して、篤の薄い肩を掴み、じっと篤の目を見る敬浩。
「やっぱり同じ気持ちだと思っていました。 ありがとう、篤殿。」
一旦心のうちを晒してしまったからには、もう篤は言わずにはいられなかった。
「敬浩様、ずっとずっと、あの幼い日からずっとお慕いしておりました。 でも、わたしのような誰からも見向きもされない者がおそばに居ては、あなた様の恥になります。 どうかわたしのことはお忘れください。 あなた様に相応しいお姫様と、どうぞお幸せに。」
43
:
M.C
:2012/01/07(土) 16:59:21 ID:???
「篤殿は自分をわかっていない。 いったいどれほどの男があなたを欲しいと思っているか。 縁談の数を聞いたことはありませんか? 10や20じゃない。」
「……わたしには縁談など一つも来ておりません。」
「では伯父御が伝えていないだけだ。 二年ほど前からものすごい数が来ているようです。 皆、断られたと落胆していたそうです。」
「なぜご存知なのですか?」
「家の者に調べさせました。 こんなにつらい思いをしているのに、どんな人にも優しく、笑顔を絶やさないあなたを、嫌う人などおりませんよ。」
「そんな……」
「篤殿、決して悪いようにはしません。 準備が整うまでは、今まで通りにしてください。」
「……敬浩様、いったい何を…?」
「その時が来たらわかります。 今日はお会いできて本当に良かった。」
そう言うと、またぎゅっと抱きしめて、頬に零れた涙を吸い、敬浩は出て行った。
ひとり部屋に残された篤。
体の震えが止まらない。
敬浩の唇が触れた頬が、焼けるように熱い。
その夜、篤は本当に熱を出して寝込んでしまった。
44
:
M.C
:2012/01/07(土) 17:18:46 ID:???
書き手です。
やっぱりノロノロ更新で、しかも、長ったらしい七面倒くさい文章…
読んでくださる方の想像力や読解力の他に、忍耐力をもお借りしないといけないような気がします……
こんな話で申し訳ありません!!
ですが、なんとか END まで、いきたいと思います。
拙い話ですが、読んでいただけたら幸せです。
ありがとうございました。
kumaco様
コメントありがとうございます!
落ち込んでいるところに、kumaco様からの楽しいコメントをいただくと、気持ちが上がってきます。
貴重な存在!
再会した二人ですが、やはり武家と町人ですから、いろいろ障害がある訳ですよ。
もちろん押し倒したいたた様ですけど、一応17歳の少年設定ですし、素晴らしいお家柄の素晴らしい人柄設定ですから、我慢してもらいます。
まあ、そのうちにね。
もしや、我慢出来ないのはkumaco様では?
つた屋の周りに機動隊でも派遣してもらいましょう。
また読んでいただけたら嬉しいです。
ありがとうございました!!
45
:
名無しさん
:2012/01/07(土) 17:34:59 ID:???
M,C様☆
長い時間 更新お疲れ様でした〃
リアルタイムで 追わせていただきました…〃
ありがとうございました*
拙いなんて とんでも ありませんよ;
情景が 良く浮かんできます!…Aちゃんの儚い顔とか T君の男前な姿とか (物陰から 覗く輩とか…あっ居なかったかな〃)
Aちゃんの人を虜にしてしまう 雰囲気がよ〜く 分かりますν
私も 見習わないと…;
M.C様 !
ファイトー!
明日も?お待ちしています♪
46
:
marie
:2012/01/07(土) 22:15:09 ID:???
M.C様、更新ありがとうございます。marieです。
Aっちゃんの慎ましいヤマト撫子的な性格がとても好きです。
可愛い。そして、その苦しい気持がよく伝わる素敵なお話です。
また、TKさんが男前で、「光輝くような」という表現が、本当にTKさんに似合っていて、
表現力が素晴らしいと思います。
玉椎、15日なんですね。寂しい。
でも、今日、オカ○イルで、で二人がいつもお隣同士にいたのが萌えでした。
次の更新を首をながーーーーーくしてお待ちしております☆彡←また出してみました。
47
:
M.C
:2012/01/08(日) 10:53:38 ID:tJuCkJPA
こんにちは、書き手です。
昨日のオカ〇イル、良かったですねー!
ずっと二人一緒で…… と、私も書きたかったーーーーー!!
……例のごとく見ていません。
つべに早速アップしてくださっていましたが、ライブ部分だけで、語りスレで話題の表を見ながらくっついている(?)のとか、とにかく全部見たい!!
きっと四年前のオカ〇イルみたいに、そのうちにどなたかアップしてくれるでしょう。
それを楽しみに待つことにします。
でも、マイクを取られるAちゃんがヨロヨロしちゃって、たた様が少し手を伸ばしたり、心配そうに何度も見ているのに、萌えてしまいました。
いいんだよ、たたくん。 あっちゃん大丈夫? って腰を支えてあげても。
うん、たたくんありがとう って見上げたAちゃんの甘い唇に吸い付いても。
と、ついつい妄想してしまう、お似合いの二人でした。
さて、うちの二人はやっと思いを伝え合ったところですが、やっぱりいろんなことに阻まれて… どうなることやら…
今日頑張って更新したら、多分明日にはエッチに突入できそうですが、何分初めての二人、全然エロくないです!
もう今日のうちに謝っておきます。
ごめんなさい!!
今日も絶対ノロノロですので、いらいらさせてしまう事必至ですが、お読みいただけたら幸せです。
48
:
M.C
:2012/01/08(日) 11:16:13 ID:???
お返事です。
45様
コメントありがとうございます!
書き込むのが遅いので、今回は文字数も多いので、本当に時間がかかります。
リアルタイム…… 申し訳ない!!
おっ、更新しているな と気付かれたら、それから四時間ほど経ってから読まれることをお薦めします。
ここのAちゃんは芯が強くてしっかりしている女の子設定ですが、やっぱり無理して頑張っているのが、たた様にも45様にもわかるんですね。
嬉しいです。
はっ、もしや物陰からの視線は45様!?
応援していただいて、本当に嬉しいです。
今日も頑張りますよーー!!
もし違っていたらごめんなさい。
もしや、あちらのスレの33様ではないですか?
〃や☆など… ニヤリ
marie様
いつもコメントありがとうございます!
ヤマト撫子Aちゃん、今回は特に可哀想な設定なので、『耐える女』になっていると思います。
そこを見て、たた様が守ってあげたいと思うと…… (しめしめ)
たた様は、こちらでも男前で素晴らしい人に書いています。
でも、リアルでも光り輝いていると思うんですよ。
凄い人だと思います。
昨日のオカ〇イル…
大丈夫、きっと誰かが全部アップしてくれます。
それまで強く生きてゆきます!
今日も頑張りますので、どうぞ宜しくお願いします!
49
:
M.C
:2012/01/08(日) 11:38:21 ID:???
10日後、田崎家に伺った篤は、またしても敬浩に会うことなく屋敷を出た。
お互いの思いは一緒だと、嬉しい反面、いざ敬浩を前にして、今まで通りに振る舞う自信がない。
わざわざお運びいただいたお見舞いのお礼を述べる篤を、優しく見守る奥方はまだ二人の関係を知らないようだった。
奥方に変に思われないかと、そればかりが気になっていたのだ。
店への道を小僧と二人、急ぐ篤。
その篤の手を、誰かが不意に握って引き止めた。
飛び上がる篤。
すれ違いざまに篤の手を握ったのは、見も知らぬ中年の男だった。
「よう姉ちゃん、ちょっと俺の相手をしてくれよ。 なあ、俺といいことしようよ。」
昼間から酒臭い息を吐き、黄色く濁った目。
「どなた様が存じませんが、わたしどもは急いで店に戻らないと叱られます。 どうかお離しください。」
「何を気取ってやがる。 そんなに痩せぎすで、どうせ誰にも相手にされないんだろう? 俺が慰めてやるって言ってんだろ?」
50
:
M.C
:2012/01/08(日) 11:57:53 ID:???
「困ります、お離しください。」
周りの大人は見てみぬ振りで、誰も助けてくれない。
ガタガタ震える篤の危機に、小僧は田崎家に走った。
まだ入ったばかりの小僧ではあったが、店より田崎家の方が頼りになりそうな気がしたのだ。
ちょうど帰宅した敬浩、小僧の話を聞き、韋駄天のように駆け出した。
あっという間に到着すると、今や篤は男に肩を抱かれ腕を掴まれ、逃げられないでいた。
「その汚い手を離せ!!」
いきなり現れた若者に怒鳴られてびっくりしながらも、酒に酔った男はフンと鼻を鳴らす。
「関係ねえ奴は引っ込んでろい! 俺は今からこの姉ちゃんと宜しくやるところなんだよ。 邪魔しやがったらただじゃ置かねえぞ!」
「…た、敬浩様…」
篤の震える声に頷くと、あっという間に男を倒してしまった敬浩。
「知らせてくれて本当にありがとう。 機転がきくね。 これはご褒美だよ。 半刻(一時間)ほど、どこかで遊んでおいで?」
息を切らせてやっと追いついた小僧に小遣いを渡すと、喜び勇んで駆けて行った。
51
:
M.C
:2012/01/08(日) 12:19:27 ID:???
「篤殿、大丈夫ですか? こちらへ。」
震える細い肩を抱き、近くの川端に置かれた床机に座らせた。
隣に腰をおろし、色を無くした篤の顔を覗き込む。
「怪我はしていませんか? 全く酷い奴が居たものです。 機転の利く小僧で良かったですよ。」
「敬浩様、本当にありがとうございました。 あのままでしたらわたし…」
また震えだした篤に、敬浩は近くの茶屋から茶を貰い、手渡した。
本当は抱きしめて背中を撫でてあげたいが、まだ明るい昼間のこと、茶碗を持つ篤の手に、自分の手を重ねることが精一杯だった。
「何も無くて良かったです。 本当に慌てましたよ、篤殿。 また私に会わずに帰るからです。」
敬浩の手の温もりに心底安堵して、篤はだんだん震えが収まっていった。
「申し訳ありません。 ですが、敬浩様にお会いしたら、とても今まで通りになんて出来そうに無くて… 奥方様に変に思われないかと心配で…」
「なるほど。 では、私の計画を早めなければなりませんね。」
「…敬浩様? 何を…?」
52
:
M.C
:2012/01/08(日) 12:35:05 ID:???
「ふふふ、今はまだ言わないでおきます。 ですが楽しみにしていてください。」
実は、敬浩は重大な決心をしていた。
武士である自分と町人の篤。
今のままでは一緒になることはかなわない。
だが、篤を諦めることなど、どうしても出来ない。
幸いにも自分は二男で、父の跡は兄が継いでくれる。
また、自分には絵の才能がある。
全くの独学ではあるが、先日版元(出版社)に見てもらったら、十分絵師としてやっていけると、太鼓判を押してくれた。
絵師が駄目でも、剣術や、さっき篤を助けた柔術の道場、寺子屋など、仕事はいくらでもある。
そう、敬浩は武士を辞める気でいたのだ。
53
:
M.C
:2012/01/08(日) 12:46:30 ID:???
篤に話せばきっと止められる。
身を引き、どこかへ行ってしまうかもしれない。
そういう気性の女なのだ。
だから、まずは外堀を埋めて周りを固めて、逃げられないようにしてから話をするつもりだ。
今夜にも両親に打ち明けて、許しを貰おう。
さぞかし驚くだろう。
若干17歳の、若い自分の決意を、本物だと信じてくれるだろうか。
しかし、篤を気に入っている両親なら、案外簡単に許してくれるかもしれない。
満足気な顔で戻った小僧を伴って、敬浩は篤を送っていった。
別れ際、ぎゅっと抱きしめたい衝動に駆られたが、ぐっと我慢して屋敷に帰った。
そこで敬浩を待っていたのは、なんとも皮肉な運命だった。
54
:
M.C
:2012/01/08(日) 13:22:27 ID:???
屋敷中が浮き足立ったように騒がしい。
いったい何事かと家臣を捕まえると、なんと敬浩の兄、浩之進が病に倒れたというのだ。
いつものように父と二人で登城し、上様にご挨拶申し上げた直後に、意識を失って倒れたという。
医師の見立てでは、どうも腹に悪いできものがあるようで、随分前から具合が悪いのを我慢していたらしい。
3歳上の兄は、敬浩にとって自慢の兄だ。
優しくて穏やかで頭が良くて、今は自分が上だが、柔術も強い。
きかん坊だった自分、小さい頃悪戯をしては叱られて、泣いていると慰めてくれるのは、いつも兄だった。
兄には、小さい頃に出会った篤のことも話していた。
このほど再会し、どうも自分は篤を好きらしいと、この兄にだけは打ち明けていた。
上手くいくといいな
つい先日、笑顔で言ってくれた兄。
大好きな兄。
どうか死なないでくれ!!
55
:
M.C
:2012/01/08(日) 13:48:54 ID:???
医師は、もう永くないだろうと告げた。
まだ二十歳。
だが、その若さが災いして病の進行を早めたという。
打ちひしがれる両親に、敬浩は武士を辞めるなど、とても言い出せない。
いや。
もし兄が亡くなってしまったら、跡を継ぐのは自分しか居ない。
武士を辞めるなど、到底無理な話だ。
そうなると、篤とは一緒になれない。
どうか助かってくれ。
そう祈るしかなかった。
その頃篤はといえば、少しぼーっとすることが多くなった。
酔っ払いから助けてくれた敬浩の、逞しい腕。
あっという間に男をたたき伏せてしまった見事な動き、技。
そして、自分を見つめる熱いまなざし。
頬には、まだ敬浩の唇の感触が残っている。
知らず知らずのうちに体が熱くなり、頬を赤らめる篤。
56
:
M.C
:2012/01/08(日) 14:03:16 ID:???
「あっちゃん、まるで恋をしているみたいだね。 誰なのよ?」
女中仲間から冷やかされ、はっと我に帰る。
「そんな、恋なんて…」
本当のことなど言えない。
言ったところで、そんな夢みたいなことと、笑われるだけだ。
そう、まさしく夢のような話だ。
敬浩は、待っていてくれと言った。
その言葉が心の底から嬉しいと思う。
だが、
きっとかなわない
心のどこかでそう思う自分がいる。
それから2・3日すると、つた屋に田崎家から遣いがやって来た。
長男であり嫡男の浩之進の具合が悪いので、しばらく商売には来ないでくれ とのことだった。
浩之進の病気を思えば、女中達もわいわいと品物を楽しむ気持ちになれないという。
もっともな話だ。
篤も、どうか助かりますようにと祈った。
ただただ、敬浩が悲しい思いをしないようにと。
57
:
M.C
:2012/01/08(日) 14:14:30 ID:???
それから一月後、壮絶な闘病も虚しく、浩之進は還らぬ人となった。
田崎家は、主、奥方とも心労のあまり、寝込んでしまった。
敬浩は、父の代わりを務めるのに必死だった。
慣れない仕事をなんとかこなし自分の部屋に戻ると、無性に篤に会いたくなる。
優しい歌声を聞きたくなる。
穏やかなまなざしで笑ってほしい。
折れそうな体を抱きしめて、まだ誰にも言ったことのない言葉を言いたい。
篤、そばに居てほしい。
浩之進の訃報を受け、つた屋からも主と番頭が弔問に駆け付けた。
ひとしきり泣いた篤だったが、そのうちに前のように戻った。
物思いに沈んだり、頬を赤らめることも無くなった。
篤はわかっていた。
58
:
M.C
:2012/01/08(日) 14:25:24 ID:???
敬浩とは一緒になれない。
あの立派な、光輝くような敬浩と、両親も居ないみすぼらしい自分。
誰もが首を傾げる組み合わせ。
敬浩には、綺麗なお姫様が似合う。
大丈夫。
諦めることには慣れている。
小さい頃から、苦労と我慢と諦めの毎日だったのだ。
今更傷付いたりしない。
頭ではそうわかっていた。
しかし日が経つにつれて、敬浩に会いたい気持ちは募るばかりだった。
1日の仕事を終えて、布団に入る頃にはもう切なくて…
自分を慰めるように、小さな声で歌を唄った。
恋しい敬浩。
会いたい。
会って抱きしめてほしい。
そう思いながら眠りにつく夜。
59
:
M.C
:2012/01/08(日) 14:43:48 ID:???
そんなある日、小僧が篤に手紙を持って来た。
顔馴染みの田崎家の者が、篤にと託していったという。
急いで読んでみると、敬浩から。
自分は、今、父の代わりに務めをしていること。
毎日忙しいが、篤を忘れたことはないということ。
出来たら、半日でも時間を取ってほしい。
会いたい、話したいとのことだった。
篤は主に頼み込み、敬浩の休みに合わせて、1日休みを貰った。
得意先からの帰り道、田崎家へ行き、門番に手紙を預けた。
指折り数えて、その日を心待ちにする篤。
しかし、その日を最後に、敬浩とはもう会わない、会ってはならないと、固く決心していた。
「篤殿。」
待ち合わせ場所に現れた敬浩を、眩しそうに見つめる篤。
はにかんだような笑顔で、自分に頭を下げる篤を見つめる敬浩。
お互い頷き、敬浩が先に歩き出した。
向かうは船宿。
若い男女が一緒にいるだけで人目を引くこの時代。
二人っきりになるには、そういう場所しか無かった。
店の者は、客にお茶を出したあとは、呼ばれない限り二階の座敷には顔を出さない。
二人っきりになり、敬浩が篤を呼ぶ。
熱っぽい声にたまらなくなり、篤は敬浩の胸に飛び込んだ。
60
:
M.C
:2012/01/08(日) 14:49:34 ID:???
思わせぶりなところで切ってしまいました、書き手です。
はあ、なんとか目標としていたところまで終わりました。
字数が多くて、書き込むのも大変なんですが、読んでいただいた方も大変だったと思います。
お疲れ様でした!!
そして、本当にありがとうございました。
また明日頑張ります!!
61
:
名無しさん
:2012/01/08(日) 15:51:39 ID:???
M.C様☆
45ですν
M.C様〜…
ピンポンピンポ〜ン♪です〃
私 M.C様の お話しも 大好きなんです〃
家事を こなしながら隙を見つけて?の 更新
ありがとうございます☆
きっと時間の使い方が上手なんでしょうね〃
今回も なんとも ドキドキでした;
けど…〃…これからどうなるのか楽しみでしかたがありません〃
連日 更新していただけるなんて プレゼント頂いちゃったみたいです♪
では またまた明日も頑張って下さい☆
楽しみにお待ちしてます♪
私も頑張ろ!
また あちらでも お逢いしましょν
62
:
名無しさん
:2012/01/08(日) 20:20:27 ID:???
M.C様
あけましてです~!
昨年は素敵な物語を読ませて頂いて幸せでした。
今年もよろしくお願いしますっ☆
そして新スレも!わーい
たくさん更新して下さってありがとうございます!
今回時代モノなんですね。時代物なんて憧れるけど自分には絶対無理
なんで、すごいなあと思いました!
女体な篤…にょったにょたバッチコ~イ!
おしとやかで清楚で色気もある、こんな人になりてえっすw
それにしても、お兄ちゃん…!
なんで死んじゃったんだよう(涙)運命が動いてますね
実は途中までリアルで読ませて頂いてました。
出掛けなきゃいけなくて泣く泣くパソコン閉じたんですけど、
スマホでちらちら覗いてました~
どうなっていくのか、続きお待ちしてます☆
honeyでした(^-^)/"**
63
:
M.C
:2012/01/09(月) 11:32:37 ID:???
皆さん、こんにちは。
書き手です。
オカ〇イルですが、早速アップしてくださっていました!!
とても鮮明で、感謝感激です!!
朝から堪能させて頂いて、更新が遅くなりました。
今日で連続更新は終わりますが、続きもなるべく早く更新していきたいと思いますので、宜しくお願いします。
今からエッチシーンなんですが、なにしろ二人とも初めてですので、まっっっっったくエロくありません。
ごめんなさい!!
今日ものろのろ更新ですが、お読みいただけたら嬉しいです。
お返事です。
61様
45様、いえ33様とお呼びしたらいいでしょうか?
こちらにもおいでくださって嬉しいです!!
私もAちゃん溺愛で、TA最高と思っていますので、きっとあちこちでお会いしているんでしょうね。
これからも宜しくお願いします。
家事をこなしながら… はっはっはっ、家事も仕事もないがしろです!!(威張るな!)
連日更新は今日までです。
下書きがあるうちは書き込んでしまわないと、うずうずするんですよ。
書き上げてスッキリしたいんです。
連休のおかげで進みました!
今日も頑張りますので、宜しくお願いします!
honey様
明けましておめでとうございます!
私の方こそ、超素敵なお話や可愛いAちゃんを、沢山堪能させて頂いて、ありがとうございました!!
今年も早速…… うーん、続きが気になる!!
時代物は、時代小説が好きで、ついつい思いついて書き始めましたが、ちょっと後悔も…
なにしろ字数が多い、言葉遣いが面倒臭い!
初日は心が折れそうでした。
今は少し慣れて、面白さも出てきました。
運命が動いている さすが尊敬するhoney様! 素敵な言い回し!
見習いたいです!!
リアルタイムで読んでいただいたことはすごく嬉しいんですが、のろのろで申し訳ないっす!
今日も頑張りますので、また読んでくださったら幸せです。
64
:
M.C
:2012/01/09(月) 11:55:34 ID:???
「…敬浩様…」
「篤殿…」
見つめ合い、互いの名前を呼べば、もう言葉はいらない。
そっと唇を重ねた。
抱きしめて、抱きしめられたことはあっても、異性の体に触れるのは初めての二人。
ぎこちなく重ねた篤の甘い唇に夢中になり、貪るように唇を吸い舌を絡め、苦しがる篤に胸を叩かれるまで敬浩は離れられなかった。
ぎゅっと抱きしめて、篤をそっと押し倒した。
お互い初めてで、もちろん誰かに教わったわけではない。
しかし、相手を求める気持ちは一緒で。
篤に触れたい
敬浩に触れたい
ひとつになりたい
その思いが二人を動かした。
篤は指が震えて、なかなか帯が解けない。
敬浩に手伝ってもらって着物を脱いでゆく。
痩せっぽちの自分の体。
他の娘のように、ふっくらした胸の膨らみも柔らかな曲線もない。
敬浩はがっかりしてしまうかもしれない。
でも、今しかないのだ。
この先、敬浩とは会ってはならない。
思いを伝えるのは今しかない。
恥ずかしいが、意を決して篤は体を開いた。
65
:
M.C
:2012/01/09(月) 12:03:14 ID:???
だんだん露わになる篤の裸身。
なめらかな、艶のある肌。
しかし、その体は可哀想なくらい痩せている。
これが今まで苦労のし通しだった篤の体なのだ。
愛しくて愛しくて、自分も着物を脱ぎ捨てて下帯ひとつになり、抱きしめた。
「子どものような体で恥ずかしいです。」
小さな篤の声。
「何を言うのです。 こんなに綺麗なのに。」
66
:
M.C
:2012/01/09(月) 12:13:02 ID:???
敬浩がそっと小さな胸の膨らみに手を触れると、篤の体がビクンと揺れた。
小さな小さな乳首を指で転がすと、だんだん熱い吐息を漏らす篤。
口に含むと、
「あっ」
と、甘い声。
自分でも驚いたのか、慌てて口を押さえる。
「なんて可愛い声。 もっと聞かせてください。」
「…恥ずかしいです。」
「恥ずかしくなんてないですよ。 私しか聞いてません。」
「でも…」
「可愛い。 篤殿。」
「どうぞ、篤とお呼びください。」
「わかりました。 では篤さん、恥ずかしがらずに感じてください。」
67
:
M.C
:2012/01/09(月) 12:24:23 ID:???
「はい。 あの… …敬浩様?」
「何でしょう? 怖いですか?」
「いえ、怖くなどありません。 あの…私の体で… その…」
「何?」
「………その気になっていただけているのでしょうか?」
「篤さん、ちょっと手を貸してください。」
篤の手を取り、自分の下帯で隠された場所に導く敬浩。
そこは大きく熱く、固くなっていた。
篤を求めているそこは、篤の手が触れた途端、ドクンと脈打った。
びっくりした篤だが、自分にそんな風になってくれていることが、嬉しかった。
68
:
M.C
:2012/01/09(月) 12:38:26 ID:???
敬浩を見上げると、
「わかりましたか? 私はもう苦しいくらいです。 ……あなたが欲しい。」
ぎゅっと抱きしめる敬浩。
「篤、可愛い篤。 早くあなたを私のものにしたい。」
耳に熱い息を吹き込まれるように囁かれ、篤もたまらなくなってきた。
「敬浩様、私をどうぞ敬浩様のものにしてください。」
潤んだ瞳でそう告げる篤。
しっかり頷いて下帯を外し、開かせた篤の足の間に体を入れた敬浩。
急に怖くなり震え出した篤だったが、啄むような口付けを顔中に降らせて何度も髪を撫でてくれる敬浩に、だんだん震えが収まってきた。
「もう大丈夫です。」
69
:
M.C
:2012/01/09(月) 12:50:27 ID:???
その声を合図に体を進めていく。
痛くて怖くてずり上がる体を押さえて、ゆっくり挿入する。
「痛い?」
「いえ、大丈夫です。」
健気に答える篤だったが、初めて受け入れる男根、本当は痛いに決まっている。
だが、耐えるしかない。
「篤さん、全部入りました。」
「はい。」
痛みから、つい言葉が少なくなってしまう。
「本当は痛いですよね。 ごめんなさい。 でも、篤さんの中、すごく気持ちいいです。」
素直な敬浩の言葉に、ふふっと笑ってしまった篤。
すると、痛みが少し和らいだ。
「男の方に失礼ですけど、敬浩様、可愛いです。」
「篤さんこそ可愛くてたまらない。 お願いですから、そんなに可愛いのは私の前だけにしてください。」
「可愛いなんて、そんなことをおっしゃるのは敬浩様だけです。」
70
:
M.C
:2012/01/09(月) 12:53:03 ID:???
書き手です。
一時間半ほど外出します。
戻り次第、再開します。
ごめんなさい!!
71
:
M.C
:2012/01/09(月) 15:20:02 ID:???
「良かった。 あなたはもう私のものですからね? この言葉、生涯あなただけにしか言いません。 篤さん、愛しています。」
「……敬浩…さ…ま…」
「泣かないでください。 篤さんは?」
「…わたしも… わたしも敬浩様だけ… 愛しています…」
お互いに涙を流し、思いを込めて口付けをする。
そのうちに、敬浩は射精感が高まってきた。
「少し動いていいですか?」
「はい。 ………動く…って?」
「ごめんなさい、痛いかもしれない。」
少しづつ腰を動かす敬浩。
「あっ!」
小さな悲鳴を上げ、眉を寄せて、痛みに耐える篤。
だが、そのうちに痛みばかりでなく、むず痒いようななんともいえない、変な気がしてきた。
だんだん吐息が抑えられなくなってくる。
72
:
M.C
:2012/01/09(月) 15:34:53 ID:???
「あっ… あっ…」
敬浩の動きに合わせて上がる声を止められない。
「たっ、たかひろ…さまっ! あっ…」
篤の甘い声に、もう我慢出来ない敬浩。
強く腰を打ちつけて、篤の中に精を放った。
「うっ、……あつ…さん…」
体の奥に敬浩の熱いものが放たれたのを感じ、篤はとても幸せだった。
「…たかひろさま… わたし…幸せです。 このまま…死んでしまいたい…」
篤の言葉に、吐精したばかりの自身がまた大きくなった。
「幸せなのはいいけど、死ぬなんて言わないでください。 私と一緒に、これからもっともっと、今までの分も幸せになるんですから。」
「……ありがとうございます。」
「篤さん、また大きくなってしまいました。 もっとしてもいい?」
「どうぞ、思う通りにしてくださいませ。 わたしはもう、敬浩様のものなんでしょう?」
「ありがとう。」
73
:
M.C
:2012/01/09(月) 16:00:32 ID:???
敬浩は篤を離したくない。
篤は、もう二度と会うことはない、今この時が永遠に続くことを願いながら、敬浩に抱かれた。
もう何度目の吐精だろうか、荒い息をつき、やっと自身を抜いた敬浩が、篤の隣に転がった。
すると、篤の中からごぷっと敬浩の精が溢れてきた。
慌てて手拭いで抑える篤。
敬浩のものなら何もかもをしまっておきたいのだ。
優しい言葉も輝くような笑顔も心の中に…
「ごめんなさい。 つい夢中になってしまいました。 初めてなのにこんなに長い時間。 体は大丈夫ですか? 動ける?」
「謝らないでください。 わたし、とても幸せです。 ……ちょっと動けませんけど。」
クスッと笑って篤を抱きしめる敬浩。
窓から差し込む日の光は、もう残照のそれだった。
「でしたら、ずっとこのまま抱き合っていましょう。 ……篤… いつまでもこうしていたい。」
74
:
M.C
:2012/01/09(月) 16:29:27 ID:???
「…何故泣くのですか?」
「……幸せ過ぎて… …怖い…」
胸が震え、声が震え、涙が溢れる。
本当のことは言えない。
……別れがつらくて涙が溢れるのだ。
「なんて可愛い。 篤さん? 私はあなたを離しませんからね?」
「嬉しいです、敬浩様。」
初めての行為に疲れきってしまった篤。
囁くように唄う、敬浩の甘い声を聞きながら、いつしかまどろみの中に落ちていった。
敬浩の腕に抱かれたまま、ふと目を覚ますと、外はもうとっぷり日が暮れていた。
川面に満月が映って、それは明るい夜だった。
「はっ、申し訳ありません。 つい眠ってしまいました。 もうお帰りになりませんと、お屋敷の方が心配なさいます。」
軋む体を無理やり起こし、急いで着物を身に着ける。
「私は大丈夫です。 篤さんは?」
のんびり起き上がって着物を着始めた敬浩を、身支度を終えた篤が手伝う。
「わたしもそろそろ帰りませんと変に思われます。 残念ですが…」
「また会えますね?」
身支度が終わり、二人正座して向かい合う。
75
:
M.C
:2012/01/09(月) 16:44:32 ID:???
「……お勤めは?」
「父上も大分しっかりして参りましたから、そろそろ私はお役御免でしょう。」
「ですが、跡をお継ぎになられるのですよね?」
「まだ先の話です。 父上が登城できるようになったら、私はまた道場通いです。 またご連絡してもよろしいですか?」
「もちろんです。 お待ちしています。」
こう言いながらも、もう会わないと決めている篤。
知らず知らずのうちに、涙が零れていた。
「今度は何の涙ですか?」
「…わたし…」
「何?」
優しく微笑んで篤の顔を覗き込む敬浩。
別れがつらくて、その顔を真っすぐ見ることができない。
「わたし、今日のことを…一生忘れません。」
「はい。」
意を決して、真っ赤な目で敬浩を見つめる篤。
「もう一度抱きしめてくださいませんか?」
「一度と言わず、何度でも。」
強く、強く抱きしめる敬浩。
「愛しています。 愛しています、敬浩様。」
「私も愛しています。 …可愛い篤。」
固く抱きしめあって口付けを交わし、二人の逢瀬は終わった。
76
:
M.C
:2012/01/09(月) 16:53:15 ID:???
書き手です。
途中、不具合発生で、なかなか思うようにできませんでしたが、なんとか目標までは終わりました。
スマホ(RE〇ZA)は、いきなり電源が落ちたり、漢字の変換が変だったり、イライラします。
ですが、これが無いと更新できないので、なんとかご機嫌を取っていかないと……
お読みくださった方も、さぞイライラされたことと思います。
すみませんでした。
ですが、ありがとうございました!!
次回は水曜日の予定です。
77
:
みなつき
:2012/01/09(月) 19:04:14 ID:???
M.C様 新スレおめでとうございます!
連日の素晴らしい更新に
すっかり出遅れ感満載ですが
シャンパンにてカンパーイ///
時代物よいですね〜
私は超雑食なので、にょたもOKです
いじらしく儚げな篤
心惹かれます
大河的長編の始まりにドキドキしています
長崎奉行…
あったんですよね〜
特殊な地域
緩い設定の私の時代物はそれでちょっと困ってます…
(ま、それはおいといて)
きちんと進んでゆく端正なお話に
若く輝くふたりの恋が絡んで
素敵なスレがまた増えて幸せです////
悲恋な匂いもしてきているお話に、既に虜になっています!
初めて同士、なんか逆に清らかでした…
オカ○イルがリアタイで見れないという
中々ハードな環境のようですが
今年も萌々頑張ってください。
78
:
名無しさん
:2012/01/09(月) 23:12:08 ID:???
MC様
このパロ大好きです。
Aちゃんが可愛い。
TKは、強くて、カッコ良くて、誠実で
そままリアルTKのようで、私には刺さりまくりです。
初々しい2人が結ばれるところは、本当にステキです
ドキドキしながらも、何故か暖かい気持ちになりました。
MC様の文才に感動しています。
本当にステキなお話しを書いてくださってありがとうございます。
今後の2人がとても楽しみです。
無理なさらず、MC様のお時間のある時に
お話し書いてくださいね。
楽しみに待ってます。
79
:
marie
:2012/01/10(火) 13:58:57 ID:???
M.C様、大量更新ありがとうございます。marieです。
昨日、一気に読みました!!
2人が初々しくて、ドキドキして読んでいました!
表現力に臨場感があって、もう、ドラマを観ているようです。
Aっちゃんが私好みのヤマト撫子ぶりが萌えました。
そして、TKさんったら、初めてなのに何回やっているの??
若いからしょうがないか…(笑)
お忙しいと思いますが、更新お待ちしています。
ところで、三連休にライブ後に収録した番組が二つ放映されていました。
二つとも、TKさん、KCさん、TEさんが出演されていました。
一つは、ランキング番組(失礼ながら、私、これ全国版と思っていました。)と
私の県で有名な、昔、ド○ーモにもでられていた、山○華○さんの番組。
TKさんのS的発言がありましたので、報告します。
長文になりますが…ご興味おありでしたら、お読みください。
ランキング番組では…
ずっと休んでいないけど、恋人と一緒に過ごす時間も欲しい。(恋人)募集中です。
というTEさんに、司会者が、
「いいんですか?そんなこと言って。」
というと、TKさんが、TEさんに向かって、
「およし!」
と、どS発言しました。それが似合っていたんですよ。
TKさんは、Sが似合いますね(笑)
後、もう一つではお○らネタと恋愛トークしていました。
ツアー中はみんな同じものを食べるので、出す○ならの臭いが同じ。
あるとき、TEさんが出した時に臭った香りが自分が前日出したものと同じで、
臭いというよりは、懐かしくて、「ただいま」って感じでした。
という綺麗な顔なのに、面白いトークでした。
恋愛トークでは、
1.自分の携帯を(恋人に)見られるのはありかなしか。
TKさんの答え:なし。見ていいことはない。恋愛にある程度の距離が大事
2.男友達と二人っきりで食事に行くのはありかなしか。
TKさんの答え:あり。嫌だけど、嫌というのがかっこ悪い(Q州男児っぽいですね)
「なし」というと、自分もできなくなるし、自分が女性と行くことに
下心があると思われそうなので。
KCさんは「なし」にしていましたが、その答えに感心して、
「あり」に変えていました(笑)
3.元彼に貰ったプレゼントを持っているのはありかなしか。
TKさんの答え:なし。持つのはいいけど、身につけるのはなし。
身につけると思い出すから。
山○さん:でも高価なものとかもらったら捨てられない。
TKさんの答え:それ以上に高価なものを買ってあげたい。
それ以上高価なものを買うことで(元彼に)勝った気がする。
KCさんもTEさんも感心していました。
やはり男前ですね!TKさん。
長文になりすみません。
喜んでいただけたら嬉しいです。
では、次の更新をお待ちしています。
80
:
名無しさん
:2012/01/10(火) 21:33:14 ID:???
M.C様、新しい君のまなざし、連載、うれしいです。Aの「TKさま」呼びが
新鮮です!
そして、marie様、詳しいレポありがとうございます。
後半の方の番組は、ようつべに上がってたので、みれました。
ランキング番組の方は、どんなタイトルなんでしょうか?
81
:
marie
:2012/01/10(火) 22:17:04 ID:???
80様。marieです。
取り急ぎ。。
題名はチ/ャ/ー/ト/バ/ス/タ/ー/ズ/R!という番組です。
今思い出したのですが、そのランキング番組で、TEさんが、
いつもPVはTKさんのイケメンカットがあって、それを探すのが好きだと言っていて、
「あ/な/た/へ」の最後のTKさんのカットがものすごくかっこいい。
と言っていました。
後、踊りをTKさんに見てもらえるように頑張ります、とTEさんが言うと、
TKさんは、「いつも見てます。」と答えました。
Aっちゃん、気を付けないと、TKさん、TEさんに狙われてるかも?
でも、恋愛トークでは、KCさんとTEさんが結構いちゃいちゃというか仲良しで
安心しました(?)
82
:
名無しさん
:2012/01/11(水) 08:33:16 ID:???
M.C様☆
おはようございますν
33.45.61です!
…どれがいいでしょ…〃
M.C様!
初々しい二人〃
…良い!!!!!〃
何度も読み返して
ニヤついております〃
今日の頭の中は特に
トロケテいるので
ちょっと気を付けないと〃;
運命の出逢いをした2人に辛い別れが 来ないことを涙眼;になりながら 願います……
では☆ν
83
:
M.C
:2012/01/11(水) 11:02:39 ID:LzflqLMc
皆さん、おはようございます。
書き手です。
オカ〇イル、良かったですねー!
やっと書けます!
良かったですー!
リハ中のTAの声も素晴らしかったですが、Aちゃんのセクシーなこと!!
あの生き物は実在しているんでしょうか!?
白ジャージのユルユル加減、特にファスナーの加減が絶妙で、鎖骨の奥(ジャージの陰になっているところ)に顔を埋めたい衝動に駆られました!! はあはあ…
たた様は、あんなAちゃんがそばに居て平気なの? と思いましたが、収録前日かその朝にたっぷり味わったんでしょう。
だから余裕で、少しなら視聴者に俺のエロい奥さんを見せてもいいよ ってなところでしょう!
オカ〇ラさんにもS発言、素敵です。
やっぱり絵になる二人でした。
今から更新します。
頑張りますので、どうぞよろしくお願いします。
お返事です。
みなつき様
こちらにもお越しいただいてありがとうございます!
女体OKですか?
恐る恐る始めた話なので、とっても嬉しいです!
悲恋… そうなんです。
そろそろ切ない恋を書きたくて。
思い合っていても結ばれない… しぢわるな私です。
今回は時代背景や身分のせいで、より一途で控えめなAちゃんですが、たた様はたた様、大分後になりますが、Sな顔も…
私の場合は設定を作り過ぎて、説明ばっかりです。
読んでくださる方もウザくないか、心配です。
もしやみなつき様も、花魁の他の時代物を?
もしそうなら、めちゃくちゃ楽しみです!
既に期待しちゃってます!
今年も萌萌… 笑っちゃいました。
今日も頑張りますので、よろしくお願いします。
84
:
M.C
:2012/01/11(水) 11:38:32 ID:???
78様
コメントありがとうございます!
大好きなパロ、最高に嬉しいです!!
なにしろ自信がなくて…
うちのたた様は私の理想像なんですが、リアルたた様と言っていただいて、刺さっていただいて、嬉しいです。
でも、本当に素晴らしい人だと心底思っています。
あんなに完璧な人っていないですよね?
初エッチのシーン、全くエロくなかったですが、78様の言葉にホッとしました。
文才などと言われると穴を掘って隠れたくなりますが、湧き上がる妄想を皆さんに読んでいただけて、最高に幸せです。
今日も頑張ります!
marie様
コメントもTVレポもありがとうございます!!
たた様は本当にSが似合いますね! 下ネタも。
あんなに綺麗な顔してるのに、キラースマイルでする発言が…
でも、そこがいいんですよね?
しかも、アリナシの答え、さすがたた様、私も感心しちゃいました。
頭もいいなんて!
おしとやかなAちゃんと気取りのないたた様、まさにベストカップル!!
初エッチのたた様、初めてだからこそ止まれません。
なにしろ次のエッチは、一年以上後ですから、ここぞとばかりに。
でも全くエロくない! 何故??
ドラマとか臨場感とか、なんと嬉しいことを!
調子に乗って、今日も頑張ります!
80様
コメントありがとうございます!
80様はTKがお好きなんですね?
うちのたた様はいかがですか?
80様のイメージが崩れていなければいいんですが…
その後、動画は見つかりました?
今日も頑張りますので、よろしくお願いします!
82様
コメントありがとうございます!
もう33様にしちゃいましょう!
その方がずっと前からの顔馴染みのような気がします!(嫌なら言ってね?)
初エッチ、良かったですか?
全然エロくなかったですが、そのうちに山花様のようなエロ~~~いエロを書きたいです。 精進します。
もしや頭の中がとろけているのは、私の話で?
もしそうなら最高に山花嬉しいです!!
運命の出会いをした二人は、これから…
今日も頑張ります!!
85
:
M.C
:2012/01/11(水) 12:02:35 ID:???
あの逢瀬からひと月経ち、浩之進が亡くなってからはふた月程だろうか、つた屋に田崎家から、また来てほしい旨の連絡があった。
今度は大奥へも紹介してくださるという。
喜び勇んで出掛けた伯父。
同行したのは、田崎家の希望でまたもや篤。
大奥へ伺う際の打ち合わせを終えて、伯父は帰って行った。
小僧と二人残った篤は、請われるままに歌を唄った。
愛息子を、大事な跡取りを失った親の気持ちを、反対の経験をした篤は痛いほどわかっている。
少しでも慰めになればと、心を込めて唄った。
もう一度、もう一度と、促されるままに唄う篤。
早くお暇しなければ、敬浩様が帰って来てしまう
焦る気持ちを隠しながら、優しく唄いあげる。
そこへ、敬浩が道場から帰って来てしまった。
なんとも嬉しそうな顔で篤を見つめる敬浩。
そして、赤くなった顔を隠すように、俯いて唄う篤。
この時、奥方は二人の気持ちに気づいてしまった。
篤は確かにいい娘だ。
気立てが良くて優しくて。
敬浩を大切にしてくれるだろう。
しかし、この田崎家の跡継ぎとなった、敬浩の嫁としては相応しくない。
今のうちに引き離してしまわないと。
86
:
M.C
:2012/01/11(水) 12:17:17 ID:???
「篤や、そなたの歌のおかげで、主人も私もずいぶん元気になりました。 これから大奥との商売も始まり、つた屋もそなたもさぞ忙しくなるでしょう。 こちらへはひと月に一度でよい、誰か他の者を寄越しなさい。」
奥方の心を敏感に察した篤。
寂しさと安堵が入り混じった気持ちだったが、
「これまでのご親切、本当にありがとうございました。 この御恩は一生忘れません。 どうぞお元気で。」
こう挨拶して、田崎家を出た。
門の前で、屋敷に向かって深々と頭を下げる。
優しくしてくれた奥方に対して、敬浩と関係を持ってしまったことを、後ろめたく思っていた篤。
もう、これで奥方とも愛する敬浩とも、二度と会うことはないのだ。
店への帰り道、鼻を啜りながら歩く篤を、小僧が不思議そうに見ていた。
87
:
M.C
:2012/01/11(水) 12:32:09 ID:???
つた屋に戻れば、猫の手も借りたいほどの忙しさ。
なにしろ二千名を超える女人が暮らす大奥へ、商売に行くのだ。
工場も店も、人を増員してもてんてこ舞いだ。
更に忙しくなった篤。
その忙しさに紛れ、いつしか敬浩のことも頭から消えていた。
仕事に追われる毎日だったが、体調の良くない日が続いた。
働き過ぎだと皆に言われ、早めに床についても、吐き気が収まらない。
ある夜、眠りに落ちようかとした時、はっと気づいた。
……月のものが遅れている。
敬浩との逢瀬から、数えてみればふた月半ほど経っていた。
赤子が出来たと確信した篤。
二人とも何の準備も無く契ってしまったのだ。
赤子が出来ても不思議ではない。
堕ろすべきか?
しかし、愛する敬浩の子ども。
もう二度と会うことがかなわなくても、この子さえ居てくれたら。
敬浩の分身が、今、自分の中に居るのだ。
そう思ったら、なんとも幸せな気持ちになった。
88
:
M.C
:2012/01/11(水) 12:48:50 ID:???
今のまま忙しくしていては、流れてしまうかもしれない。
篤は、店を出る覚悟で、赤子が出来たことを伯父に話した。
どこの誰の子どもだと問い詰める伯父夫婦。
しかし、頑として口を割らない篤を、そんなふしだらな娘は出ていけ と、店を追い出した。
ただ、店を我が物とした事に、少しは懺悔の気持ちがあったのか、伯父がそっと10両包んでくれた。
伯父の気持ちを有り難く受け取り、篤は長年住み慣れた店を出た。
更に、外分が悪いので、出羽の国の紅花農家に嫁に行ったことにするからと、伯父はありがたい提案もしてくれた。
篤も、これはいい考えだとそのままを手紙にしたためて、田崎家の門番に預けた。
口紅の原料である紅花、小間物屋のつた屋と生産農家の付き合いは、創業以来ずっとである。
成長した篤が嫁に行くという話を、疑う者などいないだろう。
心配なのは、店に残す将吉だけ。
89
:
M.C
:2012/01/11(水) 13:03:47 ID:???
その将吉は、もう13歳になった。
「何としてでも、つた屋をオイラの手に取り戻すって、チビの頃から決めていたんだ。 姉ちゃんのことはすごく心配だけど、一緒には行かないよ。 時々は遊びに行くから、元気で居てくれよ?」
なんとも頼もしい少年に成長してくれた。
「姉ちゃんなら大丈夫よ。 苦労は慣れてるからね。 あんたのことが心配だったけど、もう平気ね。 体に気をつけて。 藪入りの時は姉ちゃんのところにおいで。」
この時代、商家の奉公人は年に二度、盆と正月に、1日から2日の休みが貰えた。
だが、店が実家である篤と将吉は、行く宛など無く金も無い。
店でじっとしているしかなかったのだ。
「そうだね。 楽しみで今からワクワクするよ。 姉ちゃん? オイラ、ぜってぇ負けねえ!」
明るい笑顔の将吉と別れ、身の回りのものを詰めた風呂敷包みひとつを持って、篤は店を出た。
90
:
M.C
:2012/01/11(水) 13:19:45 ID:???
小間物屋に生まれ育ち、その後もずっと勤めていたのに、自分では化粧水ひとつ使ったことが無い。
小さな包みひとつに、全部入ってしまう荷物。
これが、篤の今までの人生だった。
これからは腹の中の赤子と二人、今までの何倍も、何百倍もの充実した人生を送るのだ。
その為には、伯父から貰った10両を、出来るだけ使わずに大事にとっておかなくてはならない。
篤は、どんな仕事でも出来る自信があった。
しかし、お腹が目立ってきたら、また赤子を産んだ後しばらくは、どうしたって働けない。
それまでに少しでも働いて、お金を貯めなければ。
住むところは、運良く小さな長屋を借りられた。
仕事は、呉服屋のお針子の口を見つけた。
これなら家で出来る。
具合が悪くても、他人の迷惑にならない。
家と仕事を決めた篤は、将吉にだけそれを教えた。
他の誰に聞かれても内緒にしてほしいと、それも忘れずに伝えた。
91
:
M.C
:2012/01/11(水) 14:33:10 ID:???
その頃、敬浩はがっくりと肩を落としていた。
愛しい篤。
自分の腕の中で幸せだと泣いた篤が、嫁に行ってしまった。
もっと早く両親に話していれば…
しかし、兄、浩之進が亡くなったばかりのあの頃、武士を辞めるなどとはとてもじゃないが言えなかった。
もう、心を癒やしてくれる優しい歌は、聞けないのだ。
強く抱きしめたら折れてしまいそうな、華奢な篤をこの腕に抱くことはかなわない。
あの逢瀬の日、篤は決めていたのかもしれない。
田崎家の跡継ぎとなった自分の為に、身を引くことを。
だから次の約束をせずに別れたのだ。
篤… 愛している。
この気持ちは永遠に変わらない。
どうか幸せになってほしい。
篤の幸せを祈りながら、しかし、どこか諦め切れない思いを抱えて、敬浩は日々を過ごした。
自分と契ってしまった篤。
もしや嫁入り先で、他の男が居たと疑われて、離縁されたりしないだろうか?
もしそうなれば、また江戸に戻って来はしないだろうか?
仄かな希望を捨てきれない。
92
:
M.C
:2012/01/11(水) 14:46:53 ID:???
道場や学問所への行き帰り、篤に似た背格好の娘を見かけると、つい声を掛けてしまう。
声を掛けられた娘は、あまりに眩い若者に、頬を赤らめもじもじするが、敬浩は落胆して、詫びを言い足早に離れた。
こんな日が半年ほども続いただろうか。
父と一緒に登城し、上様に挨拶をするようになった敬浩に、それこそ降るように縁談が舞い込むようになった。
しかし、篤を諦め切れない敬浩は、首を横に振るばかり。
まだ若いからと、両親もそれを受け入れていた。
父の仕事を覚え、それを手伝うようになり、道場から遠のいていた敬浩だったが、しばらく暇な月があった。
なまった体を鍛え直そうと、また道場に通った。
何日目かの帰り道、懐かしい声を耳にした敬浩、雷に打たれたように、その場から動けなくなった。
93
:
M.C
:2012/01/11(水) 14:58:55 ID:???
篤の声だ!!
自分が間違えるはずがない。
全身全霊で愛を伝えあった篤が唄っている。
あの子守歌。
敬浩が、再会した日のように声を合わせて歌い出すと、篤の声がぴたりと止んだ。
代わりに聞こえてきた、赤子の泣き声。
もしかしたら!
契りを交わした日から一年が経とうとしている。
自分の子どもだと確信した敬浩は篤を探し歩いた。
子どもを産んだばかりの、歌の上手な若い母親。
もしかしたら、他の男と一緒になっているかもしれない。
それでも構わない。
篤が幸せなら、陰から姿を見るだけでいい。
そんな思いで探してから7日後、小さい路地裏の小さな小さな長屋で、篤を見つけた。
赤子は寝ているのか、篤は井戸端で洗濯をしていた。
そっと近寄り声を掛けた。
94
:
M.C
:2012/01/11(水) 15:13:40 ID:???
「篤殿。」
はっと顔を上げた篤。
また苦労をしているのか、小さい顔は更に小さくなっている。
パッと立ち上がり、身を翻して自分の家に駆け込み、心張り棒をかった。
「篤殿、開けてください。」
戸をドンドン叩く敬浩。
何事かと長屋のかみさん連中が顔を出すと、見たこともないほど綺麗な若者が、およそ似つかわしくない長屋で、戸を開けろと叩いている。
まるで、掃き溜めに鶴 誰もがそう思った。
叩かれているのは、去年ここに来た若い娘。
痩せてはいるが品があり、優しくて歌も上手で、あっという間にみんなから好かれた。
今年になってからお腹が大きく目立つようになり、ふた月程前に赤ん坊を産んだ。
父親になるはずだった人は死んでしまった。
こう説明した篤に皆同情して、何かと世話をしてあげていた。
95
:
M.C
:2012/01/11(水) 15:26:46 ID:???
生まれた赤ん坊は、それはそれは輝くような男の子で、ニコッと微笑むとこちらが照れてしまうほど、整った顔をしていた。
あの若者が父親なら頷ける。
きっと身分違いのつらい恋をしたのだろう。
誰もが敬浩を見てそう思った。
頑として戸を開けない篤。
見かねた隣の大工の女房が声を掛けた。
「あっちゃん、開けておやりよ。 たかちゃんの父親なんだろう? そっくりだねぇ。 どんな事情かは知らないよ。 でも、何かあったらあたしらが守ってやる。 ねえ、みんな。」
大工の女房の声に、長屋中の女達がそうだと声を上げた。
「あっちゃん、ひと目だけでもたかちゃんを会わせてやりな?」
女房の声に、心張り棒を外す篤。
その途端に、吹っ飛ばすような勢いで戸を開けた敬浩。
戸口で篤を固く抱きしめた。
96
:
M.C
:2012/01/11(水) 15:39:36 ID:???
「篤殿……」
肩を震わせ、声を震わせ、しかし強く抱く腕は緩まない。
「…敬浩様…」
堪えきれない涙が篤の目から溢れた。
泣きながらお互いを抱きしめる二人を、女房達も涙ながらに見守っている。
「篤殿、ありがとう。」
「……申し訳ありませんでした。」
「何を謝るのですか?」
「…勝手に赤ん坊を産んでしまいました。」
「あの時の子でしょう? 私は嬉しいのですよ。」
「でも…」
「紅花農家の方と離縁されたのは、この子が原因ですか? だとしたら申し訳ないです。」
「……嫁入りなどしてはおりません。 外分が悪いからと、伯父が考えた作り話です。」
驚いて体を離し、更に薄くなった篤の肩を掴む敬浩。
97
:
M.C
:2012/01/11(水) 15:55:29 ID:???
「では、はじめから私に知らせずに一人で産もうと…? 一人で育てるつもりで?」
「はい。 敬浩様には決してご迷惑はお掛けしません。 どうかこのままお帰りください。 そしてわたし達のことはお忘れください。」
「そんなことは出来ません。 こんなにあなたを愛しているのに。」
「今の言葉、わたし一生忘れません。 心から嬉しく思います。 ですが、わたしと子どもの存在が敬浩様の妨げになったら、もう生きてはいられません。 一生敬浩様とお会いすることはないと、覚悟して産んだのです。」
その時、寝ていた赤ん坊が泣き出した。
「……元気な泣き声だ。 顔を見せてはくださらぬか?」
観念する篤。
「ほら、たか坊、泣かないで? あなたのお父様ですよ。 抱っこしていただきましょうね?」
板間に座った敬浩の腕に、赤子を手渡す篤。
「……壊れそうだ。 でも、なんと可愛い… 篤殿、名は何と?」
98
:
M.C
:2012/01/11(水) 16:15:01 ID:???
「敬浩様から一字いただいて、敬将 と、つけました。 もう一字は将吉の将の字です。」
「敬将(たかまさ)か。 いい名を貰ったな? たか坊。 この頼りない父に教えておくれ。 母上は泣いておらぬか? つらい思いをしてはおらぬか?」
二人の経緯を耳にし、今は篤の家の入り口でこの成り行きを見守っていた女房達から、すすり泣きが聞こえた。
皆、篤のことを自分のことのように感じているのだ。
爪に灯をともすような、質素な篤の暮らし。
藪入りの時に来る弟以外は、誰一人訪ねてこない長屋で、赤ん坊と二人ひっそり暮らしている。
こんなところは不似合いなほどの気品を感じる篤。
何か、よほどの事情があるのだと、皆思っていた。
敬浩の言葉に、堪えきれず篤も涙を零した。
「今はたか坊を育てるのに精一杯で、泣く暇もありません。 もう少ししたら、また仕事も始めます。 何もご心配いただくことは無いんですよ。 ですから、敬浩様は敬浩様の道を歩んでください。」
「篤殿… 私と一緒に屋敷に参りましょう。 両親に孫を抱かせてあげたい。 そして、是非私と一緒になってください。」
99
:
M.C
:2012/01/11(水) 16:20:34 ID:???
書き手です。
……目標まで行きませんでしたorz
中途半端で申し訳ありませんが、今日はこれで終了です。
ほんっっっとうにノロノロで、自分でも嫌になります……
次回は金曜日を予定しております。
ここまでお読みくださって、ありがとうございました!!
100
:
名無しさん
:2012/01/11(水) 16:52:44 ID:???
M.C様〜☆
更新ありがとうございました…(涙)
こちらでも33と名乗らせて頂きます(グス)〃
はぁぁ〜(涙)グス…〃
たた君 再会できて良かったね〃
あっちゃん…甘えても良いんだよ〜〜(涙)
……きっと 認めて貰えますよね?
あぁぁ 長屋のおばちゃま達に混ざって 支えてあげたい……
グス…母は強しですね
はっ!
暗くてすみません;
では お疲れ様でしたν
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