＼ｖヽ丶 ＼ 丶 ＼ヽ ヽ 丶＼ ヽ 丶 ＼ヾ 丶ヽゝヾ 、丶 、
ヽ 丶 ヽ ヾ丶ヽ ヾヽ、丶＼ 、 丶、 ＼.、ヾ ヽﾟ ゞ ヽ＼ ＼ ヽ
＿/__/＿ // ヽ＼、ヽ 丶ヾ＼ ヽ ゝ 丶丶 ヽ ヾゝ ゞヾ ヽ丶
/ / ーーーーーーーーーーーーーー ＼ 、ヽ 丶ヾ＼ ヽ
/ ヽ＼、ヽ 丶ヾ＼ ヽ ゝ 丶丶 ヽ ヾゝ ゞヾ ＼
＼ 丶 ヾ 丶ｖ ＼ ヽ ＼丶丶、 丶＼ ヾ 丶丶＼、 ヽ ＼ ＼. 丶
ヾ丶＼ 、＼ヽ 、丶＼ ＼ ＼ ヾ 丶 ヽ丶 丶 ＼ヾ ヽ丶丶 ＼、＼
ヽ 、ヾ 、ゞ ヾ丶 ゝ丶＼ ＼ 丶 ＼ 丶 ヾ丶＼ ＼ヽ ゝヽ丶＼丶┏━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
ヽ ＼ 丶＼丶ヽ＼ 丶 ヾ丶 丶丶 ＼丶 ヽ ＼ ＼丶 ヽ ヾ ゞ. ┃ できない夫は潜りさまだったようです ┃
＼丶 丶＼ ＼.ヽ，丶＼丶, -―- 、...ヽヾ ＼ 丶 ヽヾ＼ ＼丶＼ ＼ヾ. ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
＼ ヽ ＼ 、丶 ＼ ｖ.ﾞl::::: l.ﾞ丶丶 ＼ 、丶 ＼ ＼ ヾ 丶 ｖ ＼
＼ 丶 ヾ 丶ｖ ＼ ヽ |:::::::::: | 丶＼ ヾ 丶丶＼、 ヽ ＼ ＼. 丶
ヾ丶＼ 、＼ヽ 、丶＼ ヽ .ノ......丶 ヽ丶 丶 ＼ヾ ヽ丶丶 ＼、＼
ヽ 、ヾ 、ゞ ヾ丶 ゝ....../ .ヽ...... ＼ 丶 ヾ丶＼ ＼ヽ ゝヽ丶＼丶
ヽ ＼ 丶＼丶ヽ＼. （ | | |....丶 ＼丶 ヽ ＼ ＼丶 ヽ ヾ ゞ 丶
＼丶 丶＼ ＼.ヽ，丶＼丶..ゝl |' 丶ヽヾ ＼ 丶 ヽヾ＼ ＼丶＼ ＼ヾ ゝ
＼ ヽ ＼ 、丶 ＼ ｖ.. ｀.|＿） 丶丶 ＼ 、丶 ＼ ＼ ヾ 丶 ｖ ＼
ﾄｳﾔﾏﾙ
●熊谷達也氏の洞爺丸事故を扱った短編小説「潜りさま」が原作です。
●一部の方言は、現地の方は違和感を感じるかと思いますが、
そのときはご容赦下さい。
.
本編は本日、26日20時から投下予定です。
期待して待つ
酉で検索したところ、池波スレやマイナスゼロの作者様ですね
去年、まとめサイトで一通り読ませて頂きました
┌─────┐
│ 津軽海峡 │
└─────┘
＼ ＼
＼ ＼
＼ 北海道. ＼､
} ＼
| ＼_
/ ｀---､_
/ ____ :＼
¨´ / 函館港. ,,,__ノ
/ ,ノ. ☆⌒-‐-_ ／
// ,,,___／. / `ｰ‐'´
| ||. │
/ || │
| }. │
∨ __ノ │ ∧_
｛ ,ｧ‐‐´ │ ﾉ `ｰ--､_
＼＿__ // │ / ＼ _,
¨'′ │ / ＼_ ,,／ }
↑ ◆. / ｀`--‐´ /
│. | /
,,__ │ / / ＼ |
| ＼_ ／ヘ、 │./ _／ ＼ |
/ ｀¨' ＼ │ | __,-‐'￣¨¨´ ｀} ｜
=彳 | │ `‐´ // ｜
日 ヽ | │ { | 太
本. | | │ | |. 平
海. | | │ ,/＼､ | ｜ 洋
/ | │. 〈| ＼ ,/ ||
| ‘| │ } ｀￢､ ノ |
/ ＼` ／ ｀ー´ ｜
/ ☆´ ｜
,＿ ,-‐′ 青森港 ｜
// ｀¨´ |
,/ ｜
_,-‐′ 青森県 ‘，
{: ＼_＿＿,
.
／ ｀ヽ
! 弋.ノ ﾋﾞｭｩｰｯ
ゝ... _＿＿＿_
l=ﾆ二三γ了三ﾆ=l , ', ' ,'| ::| ', ' ,
｀]｣＿ ,．' ,' | ::| ', ' ,. ／ ｀ヽ
n /丁ｌ／ -‐ ' ４ ,' _| ::| ', ' ,. ! 弋.ノ ﾋﾞｭｩｰｯ
／ ｀ヽ || ｀丁| , ' ｣| ,' ｜::! |{, ' ,. ゝ... _＿＿＿_
! 弋.ノ ﾋﾞｭｩｰｯ. ,┌='_ﾆ二二三三 , '三三二ﾆ=ｭ｜::! || ', ' ,
ゝ... _＿＿＿_. |/｀ｴ,Τ_丁_丁_丁_丁_丁_丁Τｴ｜::! || ', ' ,
/lﾆ二二二三三三三三三三三二二| ::| ｚ TｌΤ￣Τ￣ΤT､
ﾚ|| _.Ｚ]ﾆ冖ﾆ冖ﾆ冖ﾆ冖ﾆ冖ﾆ冖ﾆ[｀|_Z. -┴┴―┴―┴ ' - .._
｢|￣￣. ／ ｀ヽﾞ￣￣￣ -‐ '''"´ , ､ ／
|l| 囗 . ! 弋.ノ ﾋﾞｭｩｰｯ. rャ rゃ ｰ' rゃ rｬ／
|,| , ゝ... _＿＿＿_...-‐ ´ ／
|l| ,．'´ _ -‐ / ／ ｀ヽ
Z zｧ _ /_ ! 弋.ノ ﾋﾞｭｩｰｯ
r／ /' ∨r ､ ,/∨ ゝ... _＿＿＿_
｢ / ∨_| ,/∨
| l| / ､ ∨ /∨
＝＝＝＝= = ‐ ｌ、 / /―――――――――――――‐
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::: :::::::::::::::
::::::::::::::: :::::::::::::::
:::::::::::::::. がぶるな、今日は……. :::::::::::::::
::::::::::::::: :::::::::::::::
::::::::::::::: :::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
畠山できない夫はそう胸の中で呟き、
麻布製の背嚢とずだ袋を手元に引き寄せると、
三等船室の畳に体を横たえた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
┌──────┐
│船内 │
│三等船室 │
└──────┘
∧∧ . . . . . ||
: . : , (ﾟ－ﾟ ；) ... ; .||
;::: ; ; : ; , , : : : /ー-ヽ ; ;.||
冫、; : . :: . ; : . :. . ; /( / ) : .:; ||
`;, , .;; . ,, . ; ; ; ; (_iつとi)_/ . , ..:||
= ＝=＝ =＝= = = ＝＝＝ (＿＿＿ﾉつ＝=.＼
〃
〃 ∧＿∧
/ ∩´A､｀ *)＿＿＿
/. i^Yヽ_/~''^ヽ ⌒ヽ＿＿
〃 ,しと二二iノ――──､＿＿_ilつ
=＝＝＝===＝＝＝=＝＝＝===＝＝＝＝==＝
ｺﾞﾛﾝ ,, -─- ､._
／ ヽ
| |
| ノ ヽ､ .|
| （●）（●） | （まあ、この程度で船酔いなどしねが……）
ｌ^l^lｎ. ｜ |
ヽ. L __´___ ﾉ ／￣＼
ゝ ﾉ.,＿,, ' ⌒''ｰr─､_／ ＼
／ /. ｀￣| < ／''＼ ＼
.／ / <|,,,,,ﾉ ￣￣ ── ＿＿
人＿＿ﾉ＼,,＿＿＿＿＿＿,,,＿＿＿＿,,＿＿＿＿ 二}
.
八 頭 身 ワッショイ ！！
ﾟ ＼＼ 八 頭 身 ワ ッ シ ョ イ ！！ ／／
。 + + ＼＼ 八 頭 身 ワ ッ シ ョ イ ！！ ／+
＊ + . ＼＼ + 。. . ／ + *
,,,,, ＊ 。 o
o ｍ (っｌｌ)＼ ,,,,,＿＿＿_
）| | ＼＼ (ｍｎ)＿＿ ヽ ＊
+ （ _ｌ ∧＿∧ ｎｍ 〉 .〉 ∧＿∧ / / 。 ﾟ
＼ ＼_（´∀｀ ） / ノ ∧＿∧ / ./ （´∀｀ ）/ / 。
。 * ＼＿￣_￣ ）/ / （´∀｀ )/ ./ （~⌒＼ ﾄ/ ） ＊
／￣ ＼ /＼ ￣￣ ~ / ＼＼ ＼_／ / ・
,⊂二二／〉 / ￣￣| イ./ ＼＼__／| + *
/ / ヽ | ,) ﾉ
。ﾟ （ <./ ＼ ＼／⌒＼ ﾉ、 * 。
＼ ＼ 〉 ／＼ ＼ γヽ 。 +
* / ＼ ＼ ／ ＿／~ / ＼ V _ノ
/ / > / ／ ／＾ / | ＼__）| + ﾟ 。
＊ 。ﾟ ／ ／ | / ＼ ＼ ／ ／ ＼ ＼ 。 +
/ ／ | / ＼ ＼ ／ ／ ＼ ＼ 。 o
< 〈 / /__ __> _><_ <_ _> _>
* + ＼_） 〈_ __＿） （__／ ＼__） （__／ + ＊
＊ + 。 + 。 + ＊ 。 。 +
* o + 。 +＊ + 。 +
+ 。 o
／￣￣＼
／ ─' ＼
| （ ●）（●）
| ｜ | ……
| Ｕ __´___ﾉ
| }
ヽ }
ヽ ノ
/ く
| |
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
それでも50に届いてしまった身だ。
20代、30代という、
他の「かつぎ屋」連中のような盛りはとうに過ぎている。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
∧∧ . . . . . ||
: . : , (ﾟ－ﾟ ；) ... ; .||
;::: ; ; : ; , , : : : /ー-ヽ ; ;.||
冫、; : . :: . ; : . :. . ; /( / ) : .:; ||
`;, , .;; . ,, . ; ; ; ; (_iつとi)_/ . , ..:||
= ＝=＝ =＝= = = ＝＝＝ (＿＿＿ﾉつ＝=.＼
〃
〃 ∧＿∧
/ ∩´A､｀ *)＿＿＿
/. i^Yヽ_/~''^ヽ ⌒ヽ＿＿
〃 ,しと二二iノ――──､＿＿_ilつ
=＝＝＝===＝＝＝=＝＝＝===＝＝＝＝==＝
,, -─- ､._
／ ヽ
| |
| ノ ヽ､ .|
| （＝）（＝） | 休める時には少しでも休んでおかねど……
ｌ^l^lｎ. ｜ |
ヽ. L __´___ ﾉ ／￣＼
ゝ ﾉ.,＿,, ' ⌒''ｰr─､_／ ＼
／ /. ｀￣| < ／''＼ ＼
.／ / <|,,,,,ﾉ ￣￣ ── ＿＿
人＿＿ﾉ＼,,＿＿＿＿＿＿,,,＿＿＿＿,,＿＿＿＿ 二}
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
これがこれまでの仕事と軍隊生活で
長年培ってきた習い性となっていた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
できない夫がいる三等の雑居室は、
船底部のボイラー室や機関室のすぐ上にあり、
畳敷きの床面は喫水線より下になる。
したがって、両舷の上部に明かり取りの丸窓があるものの、
外の景色はまったく見えない。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
ｾｲｶﾝ
【青函連絡船の構造】
┌────┐
│ 船橋 │
┌───┴────┴───┐
│ 一・二等船室 │ ← 上部遊歩甲板
┌─┴────────────┴─┐ ← いわゆる甲板のライン
│ 食堂・ホール・事務室 │ ← 下部遊歩甲板
├────────────────┤
│ 車輌甲板 │
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ├────────────────┤ ← 喫水線のライン 〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【今ここ】 → │ 三等船室 │
└┬──────────────┬┘
│ 機械室・ボイラー室・船倉など │
└──────────────┘
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
観光のために乗るのであれば、
下部遊歩甲板の三等椅子席に陣取るところだが、
できない夫にはその必要は無かった。
この青函連絡船には、
いつも商売のために乗っているからだ。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
幾度となく津軽海峡を往復していれば、
海の景色など見飽きてくる。
ましてや、今日のように風が強くて船ががぶる時は、
船底に近い雑居室の方が揺れも少なく、
畳敷きなので、横になって体を休めることも出来る。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
_∧_ _∧_ _∧_ _∧_ _∧_
（・◎・） （・△・） （・ |: ・） （=・◎・=） （＇◎＇）
∧
肉
∩´◎｀)
ﾉ つ
（ ⌒lノ 米 中〜
し' (ﾟ∀ﾟ∩ (`ハ´)
/// ( ノ | |
、. ,
. , ,.┘ ､ 〜 。
. l （● ─）
. | ! |
ヽ ´ノ
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
周りを見回すと、4、50名の同業者たちが、
思い思いの姿勢でくつろいでいた。
仲間同士で雑談をしたり、
トランプをしている者もいるにはいたが、
ほとんどの者は、できない夫と同じように身を横たえ、
むっつりと口を閉ざしている。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
一方、普通の観光客や旅の者は、
「かつぎ屋」たちと同じ区画に席を取るのを嫌ってか、
少し離れた位置に固まっていた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
, -― 、
／ ｀ヽﾊ
」〈
, -‐''¨￣7 ￣￣ ≧ﾐ 、
／ ／´￣｀ ＼＼
/. / ,个, ｌ:|ヽ、 ﾑ ヽ
/ / ./|::|::ﾄ ||::|::|ヽ l
l ./ M::|::|:::|', /|::|:::|::|ヾ ヽ、
| ｲ|, ―-J /::|（ ） l ト-
. ｌ Ⅳ l .〔＿＿ノﾚ:|::|::|｀::|::´И| |
l.ﾄ ∨ .Vﾍｌ::l:::l:::l::! ,、 /〃
./¨l:::ヽ.∨∧ ヾ￣￣´ ｵｲ ﾑ'
ヾ::::ヽ::::｀ヽ ゝ-..＿__｀||≦´| |
｀ヾ:::::/ >、ﾊ ≧、 ﾊヽ .| |
｀∨|___ヽ ﾊ /〈 | ヾ〉 Ⅵ.|
,ｲ/ ヽ ヾﾊ ヽﾔ ﾄ Ｗ
.ヾ/ ∧ .∧ﾊー-｀ 〈 ヽ、 , -‐- 、
./. | ∨ .∧ﾊ ﾟ。ヽヽ ,.- ''¨´￣｀ヽ、 ヽ、
/ | ∨ ∨ ,.- '´ .＼ ヽ、
| | ∨ .∧ ／ ,⊥ .＼ ヽ、
| i | ∨ .∧ ／ ヽ、 ＼ ヽ、
| | ヽ ∨ .∧ ／ ヽ、 >＜二ニ)
', ', ', ∨ 〉=＜ o ＼ ／ ｿ
以 ｀ー--ヾ-≦＿__> ｀´｀ー――‐´
ヽ｀ヽ--------、ヽ、
） ）
ー―=彡'´
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
揺れが激しいためだろう。
どの客も口数は少なく、
中には青い顔で戻している者もいる。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
「かつぎ屋」といっても、
決して胸を張れるような仕事ではなかった。
できない夫が運んでいるのは、
青森で仕入れてきたヤミ米――、
寿司屋や料亭などで使われる秋田米で、
それだけよい金になる。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
_, _ ,､
, - ´ ｀ ‐- 、
ノ 丶
／ ｀ ､_
, ´ 、
, ' 丶
ﾉ ヽ
＿,'＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿_',＿
ヽ三三三三三三三三三三三三三三三三三三ﾉ
ヽ /
ヽ三三三三三三三三三三三三三三三/
＼ ／
＼三三三三三三三三三三三／
｀ ＜ ＞ ´
｀丁三三三三丁´
＿ ｀ ｰ----‐ ´
／: :冫＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿_
（;_;_;ﾌ ｰ─‐ ---＝＝ === ニニニ 二二二 三三三｣
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
「かつぎ屋」商売が食糧管理法に違反していることなど百も承知だ。
戦争が終わってからはや9年になるというのに、
北海道では相変わらず米不足が続いている。
一方、内地での働き口不足も、未だに解消しきっていない。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
【北海道】. '。〈＼ ｨｧ-' γ´￣￣￣￣｀ヽ
l ＼ ,_ r'" | コメ求む！ |
ﾉ ￣-イr" ｭ. ゝ＿＿＿＿__,ノ
r-J ＿ゝ'ﾞ
r' r､ - ._ /~
ﾟ l ﾆ> ｀'
~
│ ↑
金・海産物 │ │ 米
↓ │
【内地】 ,iｰ-、. γ´￣￣￣￣￣￣￣￣｀ヽ
lﾞ ﾞ''"ﾞ>. | 金、仕事クレクレ〜 |
iﾞ´"< .lﾞ _,,ノﾞ| ,!. | コメならある！ |
lﾞ ｌ ｀,,、 lﾞ ! ゝ＿＿＿＿＿＿＿＿___,ノ
! ﾞ‐' ｀''" | ＿/＼／＼／＼／＼／＼／＼／＼／＼／＼／＼/＼／|＿
,-'''" ｌ ＼ ／
. ! _. ﾞ''- ＜ ──. ｜ ＞
｝ "''''"｀ﾞ'''" ﾞl _ ... / ﾞ'､ ＜ ／＼ ／＼て | ＞
! l-'"゛ ﾞl, ＜ |（●）（●）| そ｜ 食糧管理法違反だろ、 . ＞
＜ . | （__人__）；| ｜ 常識的に！ ＞
＜ ! \\\ / ｜ ＞
＜ ヽ｀⌒´ ﾉ | ＞
＜ / ニニ⊃彡 ＞
＜ 【警察】 | | ｜ ＞
／ ＼
￣|／＼/＼/＼/＼/＼/＼/＼/＼/＼/＼/＼/＼/＼/＼/￣
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
特に、零細農家の次男坊や三男坊ともなると、
青函連絡船を使って北海道にヤミ米を運ぶ「かつぎ屋」が、
依然として手っとり早く現金を稼げる手段の一つであった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
天井を縦横に走っている様々なパイプに目を向けながら、
青森市内の姉夫婦の家に残してきた
妻のことをぼんやりと思う。
恵子は、今回も一緒に荷をかついで函館に行きたがった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
≧s｡:::::::::::＞＜ﾆﾆﾆ≧s｡_‐_‐_‐_‐＞.，: : : : : : : : : : : : : : :＼＼: : : : :＼_‐_‐_‐_‐＼======ﾍ::::::: ∧∧:::∨∧::::::∨ / : : : : :
｀' ＜ZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZ_: : : : : : : : : :＼＼: : : : : 寸ZZZZZZZZZZZム:::::: ∧∧::∨:∧::::::∨ / : : : :
s｡., ≧s｡.,＿__＞＜ニ≧s｡.,_‐_‐_‐_‐_‐_‐_`ヽ､: : : : : : : : ＼＼: : : : : ＼_‐_‐_‐ ＼====ﾍ::::::: ∧∧::∨:∧::::::∨ / : : :
i:i:i:i:i:≧s｡., ≧s｡.,＿＞ ,ィ升≧s｡.,_‐_‐_‐_‐_‐_ `ヽ､: : : : : : : ＼＼: : : : ::＼_‐_‐_‐ ＼===ﾍ::::::: ∧∧::∨:∧::::::∨ / : :
｀`' ＜i:i:i:i:i:≧s｡=======彡'´＿＞＜ﾆﾆ≧s｡_‐_‐_‐_‐_‐ `ヽ､: : : : : : ＼＼: : : : :＼_‐_‐_‐_,＼=={＼::::∧∧::∨:∧::::::∨ / :
: : : : : : :｀`'＜i:i:i:i:≧s｡., ≧s｡.,＿＞＜ﾆﾆ≧s｡_‐_‐_‐_‐_‐`ヽ､: : : : : ＼＼: : : : :＼_‐_‐_‐ ＼ ﾍ::∨:∧∧ ∨ ∧:::::∨: : :
: : : : : : : : : : : ｀`' ＜i:i:i:i:≧s｡., ≧s｡.,__`'' ＜ﾆﾆ≧s｡.,_‐_‐_‐_‐`ヽ､:_:_:_:::＼＼: : ::::::＼_‐_‐_‐_＼|:|==:∧∧:∨::∧___〉: : : :
: : : : : : : : : : : : : : : : :｀`'' ＜i:i:i:≧s｡: : : : : : ￣￣`'＜ﾆﾆ≧s｡＿,.｡o≦ |::::::::＼＼: : : : ＼_‐_‐_‐ |:|∨: :∧∧:∨::/::/: : : : :
ｒ'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'ヽ
（ ＿＿＿ ）
） , ´:::::::::::::::::::::::｀ ､ （
（ ／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ . ）
） ／/:::::::::::::::::::ハ::::::::ハ:::::::::::丶 （
（ ∠___{:::::::::::::::|:ﾉ.ノ |从|ヽ|:::::::::ハl .）
） l::::::::::(| |（ ●） .(●::ﾉﾚ´ （
（ l:::::::::::ﾍ| ,, r-ｧ .ﾘ:ﾉ ）
） l:::::::::::::l.ヽ .￣ノ:::::::} （
（ l:::::::::::::l .ﾍ い::::::} ）
） l:::::::/"`￣／⌒)^ヽヽ （
（ l::::::| Y / ∠ }' ! ）
） l::::::.|. V r＜ 〈 | .（
（ |ﾙ:l ', /:::. ..ヽ ヽ ）
） ゝｰ' ＼ノ .（
丶〜'⌒'〇'⌒'〜⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'´
Ｏ
o
ﾟ
／￣￣＼
／ -‐' ＼
| （ ＝）（＝）
. | | l ……
| ___´__ﾉ
. ｌ^l^lｎ }
. ヽ L }
ゝ ﾉ ノ
／ / ＼
／ / ＼
. / /
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
合わせて二俵分にもなる米を
. ﾖﾜｲ
五十齢の人間が一人で運ぶのは流石にきつい。
それもあって、
二人分の船賃を払わなければならないことには目をつぶり、
以前は恵子と二人で海峡を渡ったことも多かった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
，，＿＿＿ ，，
； , ´:::::::::::::::::::::::｀ ､ ； ﾌﾟﾙﾌﾟﾙ
. ； ／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ ；
／/:::::::::::::::::::ハ::::::::ハ:::::::::::丶
∠___{:::::::::::::::|:ﾉ.ノ |从|ヽ|:::::::::ハl
l::::::::::(| |（ ＞） .(＜::ﾉﾚ´ ；
. ； l:::::::::::ﾍ| ,, __ ﾘ:ﾉ ；
l:::::::::::::l.ヽ .ノ::::}
l:::::::::::::l .ﾍ い::::::} ，，，，，，
. ； |:::::::::/"`|￣￣￣￣Τ￣￣￣￣| ；
. ； |:::::::::ヽ ヽ .| | ；
|ルﾍﾊ|ヽ ヽ | |
； | |ヽ＿ヽ | | ；
； |_L弋__ノ＿＿|＿＿＿＿_| ； ／￣￣＼
. | : : : : : : : : : | ／ _ノ ＼
| : : : : : : : : : | （●）（● ） u. |
； |: : : : : : : : : : :| ； | ｜ u | よ……ッ
. ； |: : : : : : : : : : : :| ； | __｀__ |
. |: : : : : : : : : : : : :| /＿＿ヽ |
. ^^^|^^^|^|^^^|^^＾ { u. /
. | |..| | ゝ <
. |＿_|_」＿_|＿_ 〃￣￣〃￣￣〃￣￣〃 ヽ ｨ'⌒ヽ
{＿＿＿)＿＿). ll/////.ll/////ll///.（⌒´￣￣ ￣ 〉
{{.////.{{/////{{////.{{.TT ''ー─ i
ll/////.ll/////ll/////ll////_} |
ヾ､ ＿＿､＿＿＿､＿__ヾ､_ノ | ) )
┌────────────────────────────┐
│ │
│ 〃￣￣〃￣￣〃￣￣〃 ヽ │
│ ll/////.ll/////ll/////lｌ////! │
│ {{.////.{{/////{{////.{{/////} 一俵＝約60kg * 2 で120kg。 │
│ ll/////.ll/////ll/////ll////_} │
│ ヾ､ ＿＿､＿＿＿､＿__ヾ､_ノ │
│ │
│. │
└────────────────────────────┘
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
函館の駅裏にある闇市で米を売ったあとは、
そのころになってようやく元気を取り戻しはじめた恵子と一緒に、
函館山に登ったり、五稜郭へ遊びに行ったりした。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
＞≦三ﾑ
＿＿＿＿＿＿＿＿}{ ＞≦ﾆ＜ 寸ﾑ
|三三三三三三三三}{三＞ ＞＜ハ Vﾑ
|三| r──ｧ＿＿＿＿＿/ .V Vﾑ
|三| | r ' Vﾑ
|三| ｀7 V Vﾑ
|三艾 / V ＜≧ｭ，
ﾉ三圦 ./ 仝仝仝仝 V ‘＜≧ｭ，
／三艾 / 巛巛巛]仝 ｰ── ､ ‘＜≧ｭ｡
／三／ __/ 乂 寸ﾆ}
／三／ ／ ／⌒寸＞' r≦ﾆノ
／三／ ∠＿＿彡 ￣￣￣ ＼ ／ rｭ｡_ ,r≦三＞‘
ｲ三∠＿ ＼ ／ /三三＞‘
人三三三三≧=ー─≦..//____ / ∧ r≦三＞‘
｀¨''＜三三三三//ﾆﾆ7 .| | }三V
|三| 寸三＼ ＼ ／ .／三7
|三| 寸三＼ ＼／ .／三／
|三| _｡＜三＼三＼ ／三／
＿＿＿＿ |三|＜三＞‘ ＼三＼／三／
／:::::::::::::::::::::::＞:.、 ＼＞‘ ＼三三／
_,/:::::::::::::辷三/二＼:ヽ ＼／
／/::::::::ｌ:ﾉ-‐ﾚ⊂三乂__ヽl
／ |::::::::::|（ ●） (●|::|ヽ ヽ
￣￣|:::::(|::| ,, r‐ｧ .,|::| ヽ ヽ. （⊃￣￣＼
|:::::::ﾍ|、 ￣ ノ:iﾍ|/ / （⊃ 「 ＼
|:::::::::::::ﾍ＿__Yﾞ:::少 /. （⊃ （ ●）（●）
|:::, -─ヽ／ヽ|‐'ﾞ ／. | ｜ |
|:/ ｖ'´. | __´___ﾉ
| `ー'´ } ＼
／ヽ }. ＼
／ ヽ､.,＿＿__ノ ）
／ . | ＿／
| ／￣￣（＿)
＼ ＼ ／| ＪＪＪ （
＼ ／ ／⊂＿）
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━┓
たまには奮発して、
湯の川温泉に泊まることもあった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ※湯の川温泉：函館市内にある温泉
,..:-:::´￣｀‐-.、
／:::::::::::::::::::::::::::::ヽ
／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
. /:::::::::::::::::::/ﾏ:::::::::::/ﾏ:::::::::::::i __
ｌﾊ:::::::::::i::/-‐ﾏ::::::/‐-ﾏ:i:::::::::レ':::::ゝ
. ﾏﾏ::::|/,.:-ﾐ|ﾊﾊ| ,.-.､'|:::::::::i:::::∠
. (|::::|´ﾏ:::! ´ﾏ:::!｀:::::|):|:Y´￣
. |::::| ｘｘｘ , ｘｘｘ |:::::|:ﾉ::}
. |／ヽ /＼|:::ノ
ヽ ‐ ／ー一´
三三三三三三三三三三=∧｀ ´ iﾆ´三三三三三三三三三三
三三三三三三三三＞－ ノ l¨ ＜三三三三三三三三三
三三三三三三_／ ｰ- ､ ＿ , ｀ .､三三三三三三三
: : : : : : : : : : : :.:′ ` ´ ‘: : : : : : : : : : : : :
: : : : : : : : : : : :.! }: : : : : : : : : : : :
: : : : : : : : : : :.∧ ヽ / ,: : : : : : : : : : : : :
: : : : : : : : : : / : '. ' ， ; .,′ ,′: : : : : : : : : : : :
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.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
そんな時は、何か新婚当時に戻ったような
照れくささを感じながらも、
戦争に負けてしまったとはいえ、
やはり平和な世の中はよいと思ったものだ。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
_ | || | =‐- _|ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニ
';ヽ￣三二ﾆ=‐-- | || | ‐- |‐- |‐-｜ : : |
';'; '; | | || | ‐- |‐- |‐-｜ : : |
';';';';∨⌒ヽ,, ,,, | | || | ‐- |‐- |‐-｜ : : |
';'; ';';'; ';';'; '; '; ; | | || | ‐- |‐- |‐-｜ : : |
'; ';';'; ';'; ';';'; ' ;' | | || | ‐- |‐- |‐-｜ : : |
,, ,, ,, ,, ,, ,, ,, , , | | || | ‐- |‐- |‐-｜ : : |
,,:',,:',,:',,:',,:',,:',,:',,:| | || | ‐- |‐- |‐-｜ : : |
,,:',,:',,:' ,,:' ,,:' ,,:','| | || |=‐- _| |
,,:' ,,:' ,,:' ,,:',,: ' : | | || |: : : : : : : :| | | |
爻x ,,:' ,,:' ,,:' ,,: | | || |: : : : : : : :| | | |
爻爻⌒ﾝ⌒v^ | | || |＿＿_________| |
淡淡爻爻Xxx | | || |///////// | |
￢┘冖⌒´ | | || |///////// | | γ ⌒ ヽ
| | || |///////// | _ -= r┐_r┐ 人 人
_ -‐ ￣| || |/////////_|二＞ '"¨”￣￣￣￣￣ (ヒ|__|__|＞Y＿竺／￣三二ﾆ=‐-- _
_| -‐= 乂〕ト ＿＿＿＿＿＿＿＿___彡'---=ﾆ二三＿三二ﾆ=---
_ -‐= |/|‐--=ﾆ二三＿＿|/|ﾆ=- |/| ￣ ‐-
_ |/| |_| |/| |/| ＿＿＿＿＿＿＿
＿＿＿ ￣三二ﾆ=-- |/| ／: : : : メ: : : : : : : :/ ／
_ ＼＿＿＼ ＜: : : : : : : メ: : : : : : : ＞ ~ 三二ﾆ=‐- : : :_/／
￣三二ﾆ=---
＿＿_
／ ＼
／ 「 へ ヾ
| （●） （●） |
| ｘｘｘ | ｘｘｘ |
| __｀__ |
| u. ノ⌒⌒ヾ
ヽ γ ）） ﾌｷ
ヽ ヽ (( ﾌｷ
/´￣ヾ ） ヽ
ｧ､ヽ｀ﾝ （
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
できない夫が恵子を伴わなくなったのは、
ちょうど1年ばかり前――
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
. ＼ ＼ ＼ | ,,,--'''''￣ | //＿,,,,,,--┐ ..| ／ ＿,,,...---
. ||￣ /l‐|、-/l...＼┌'￣| ＿,,,,-ゥ/i｀ヽ、 .|ｨ-ｧ| | 「￣ .|
. || ./,' | | |、|￣''''ー-____,,--''''',,,-'''~/ ＼|.. .／／ | | | |
. || //==| |=|/ー-＜￣__,--'' ￣ /. ／／.| | | | |
―--,,,___||_// ┌| |‐---,,,,__￣| | | . ／／ | | | | |
＿＿＿ .||l /| | 'l | | | | ／'''~. | | | |＿,,,,--|--''''
====┐ .||/ .| | |l. | | | | | | | |
|| ||/ .| | '! .| | | | | | | |
|| || | | | | | | | | | |
――||―|| | | | | | |'.―|‐.| |-,,,,,__ |＿,,,,
|| || | | | | | | | | |--''''￣|'''''--
|| || | | | | | | | | |‐-,_____|
|| ﾛ(()==| .| | | ＼| | | | |｀''--
|| || | |. ／ .| | | |＼..| | | |
|| || | |.／ ／ .| | | ＼| ＼ |,,,,....--- |----
|| || |／ ／.. .| | | |＼..| ＼ ＿__|,,,,,,,,,,
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
函館港に連絡船が接岸するや、
どかどかと乗り込んできた警官隊によって
摘発を受けてからだった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
＿＿ ＼:::::::::::::::::ヽ、 ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
───....ヽ、::::::::::::: ＞ 、.. ───────────────────────────────────────
￣￣￣￣ . ｀ ＜::::::::::::: ＞‐- r..‐..、..ﾞ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
＿＿＿＿＿＿＿.｀ ＜:::::::::::::::::::::::::::＼ ＿ﾞ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
￣￣￣￣￣￣￣￣.....｀ ＜:::::::::::::::::::::／ ＼ _ノ ＿/＼／＼／＼／＼/＼／|＿..ﾞ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿.....〉:::::::::::::::..| （ ● ●）. ＼ ／.. ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣../::::::::::::::::,, | （_人_）_ ＜ 食糧管理法違反だろ、 ＞￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ﾞl:::::::::::::／/ | ￣ |:::::｀ヽ ＜ 常識的に！. ＞￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
＿＿＿＿＿.ﾞﾀﾞ r'::::´￣´:::::::::::::| フ丶＿＿ノ:::::::::/. ／ ＼.....＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
＿＿＿＿ ﾀﾞ /::::::::::::::::::::::::::::::::l／ /└ フ':::::::::／ ￣|／＼/＼/＼/＼/＼/＼/￣ ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
────.ﾀﾞ /:::::::::::::::::::::::::::::::::::l__∠, イ:::::::::／.. ──────────────────────────────
───── . ＼＿::::::::::::::::::::::::::::::::::::_::::-‐::l . ────────────────────────────────
────── . /::::￣ヽ:::::::::::::::::::::::/. |:::::::::| ────────────────────────────────
＿＿＿＿＿＿ /::::::::::::::::|:::::::::::::::::::/ l::::, -ヽ、. ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
￣￣￣￣￣￣/:::::::::::::::: l:::::::::::::::::/ k,ｨ ´｀丶、...￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
＿＿＿＿＿..ﾞ/:::::::::::::: /:｀,. -― ' ヽ_, yノ,....＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
─────,/:::::::::::::: /／ ｀'ﾄ_'／.. ──────────────────────────────
────.ﾞ/|:::::::::::::: /..─────────────────────────────────────────
＿＿＿ . /;;;∨:::::::::/.....＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
￣￣￣./;;;;;;;;;｀;,- ´.ﾞ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
＿.. ／'、;;;;;;;;;/. ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
￣／:::::::::￣ ´. ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
＼ ☆
| ☆
(⌒ ⌒ヽ /
＼ （´⌒ ⌒ ⌒ヾ ／
ﾎﾟｶﾎﾟｶ （'⌒ ; ⌒ ::⌒ ）
（´ ） ::: ） ／ ﾎﾟｶﾎﾟｶ
☆─ （´⌒;: ::⌒`） :; ）
（⌒:: :: ::⌒ ）
／ （ ゝ ヾ 丶 ソ ─
ヽ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
.
／￣￣＼
／ ＼ _ノ
| （ ●）（●）
| （__人__）. ヤミ米は没収だろ、
| ｀ ⌒´ﾉ 常識的ッ！
| }
ヽ }
ヽ､.,＿＿ __ノ
_, ､ -― ''"::l:::::::＼ｰ-..,ノ,､.ﾞ,i ､
/;;;;;;::ﾞ:':､::::::::::::|＿:::;､>､／⌒_i|ﾞ!:ﾞ､-､_
;;;;;;;;;;;:::::i::::::::::::::／:::_∠＿ノU,-'＼> ））ｰ､
;;;;;;;;;;;;;;;;;|::::::::::::::l::::/;;;;;:::::::::7.<` ヽ:::::::|:::ヽ
;;;;;;;;;;;;;;;;;;!:::::::::::::::/;;;;;;;;:::::::∧|||ゝ／;;;;＼:i::::::>
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|;;;;:::::::/;;;;;;;;;;;;::::/:ﾞ､|||:::ヽ;;;;;;;;::::ヽ::_::＼
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼;;/;;;;;;;;;;;;;;:::/:＼:V::/:-＼;;;;;;:::::＼::::i
. l l u r:､／∠ゝ{, } } r=i〉＜_a >l''K_a フ,||=;､ | ﾚ' ,r=;vィ三､! |´u ﾚ1 j N｀
| L_j~／,､くﾆﾆ´,ヘ l { {ｈ||u.三三1 lv三彡lｈ'/ | | //y'/{{ ｅ ヾv u∠ﾆﾚ1 / .N干
. l r:／,ｨ＝ヾ u 'ｨ｡ラﾚﾍヽ ヾ_ﾘ r-ｰr〈 }_ﾊﾆヽ|Lﾘ .l l.〈〈,'/ vUゞ＝ﾞ//l{'e￣ﾗi,､/+.十
ﾚ' ,イ|.r≡ﾟ{ j v ド'´イ´ヽ＼ ｛ {f.ﾃェゞｭ'ｪェﾃ!}ﾄ､ j ｌ Y ,く.>､~r //vヾv彡'l'ﾊ}＋十
.／,イに|l r'ｴｴ＞'´∠!ﾆヽ. ＼＼__, ﾍヾェェｪｪｪェ〃ﾊ ＼// ｌ.{ヽ`く_>Yj'_ '-‐ij'´/'ﾝ/＋十
／ l.冫ｰ|にン ,∠t'ｴﾃヲ {.＿ ＼＼ .ト､v￣三´~ 〈∧ .// /luくゝ､`┴⊥ｴj ノi イ-＋十
,ﾊ} u レ' ／ u === v/::::::::::￣:ヽ.＼l＼＼.u_＿_.丿 ﾚ'/ ./＋! ~ﾐ'-ｴェｪﾝ／ /ﾅ/-＋十
／::::|ゝ' ／`ｰ--- ､._,.イ::::::::r'⌒ ｰ-ゝ `‐-ゝ-‐-〜'⌒′! /±土! v ｀ u イ /ﾅ7_,土±
:::／ ／＼ u /|::::ノ ヽ ‘ｰ '´ / /￣ ＿＿＿_
/ /::|. ＼_,,. -‐'_,.ﾆﾆ ぐにゃ〜 の {.__,. _-‐..''ﾆニ二¨__￣
二二ニニ´ -‐ '"￣ ） _ノ´ _ノ´ __ ￣¨T'' ‐-
ﾉ ﾉ ＿___ { 予感っ……！！ (´ /r-､__,. ‐''７n ＼ ヽ
. ／∠_¨--‐￢,＞ｧ、 ゝ、 ） ﾚ＼ヽﾆ'ノ/ノ ｆ v }__ l
/,.イ＝=ﾐuｰ '〃 ＿ >〉ｧ',.ﾍ.._ __,.. -─- ､__,.ｨ'⌒ヽ、( lu(ﾞヽV /(a j}!v(.〈ｎヽ:|__
ノ/｣ | v ＿ヾ ,ﾙ'a _/ﾚ',ｨヽ │|.l l ,. -─-､＼ ＼＼ l. (. 9f u Y彡', -ヽ.!j } :| ＼
,.ｲ ﾍヽく. eﾌﾞl'ド三ｧ'∠ヾ;ﾘ､.__! l. l l. /／⌒`ｰ-ゝ.＼- ､＼＼ ＼ﾉ ﾊ u _うﾆ-''"_uY ＼
ヾ'<ヽ r,三=＝'ﾃイj‐',ﾆ、! │l | |r=j,' u ﾄ#､_ ,. -＼＼! ヽヽ (_,ｨﾆﾞUｰ'_,ﾆﾞ-rく_ハ `iｰ- ゝ、
. `ｰ7/r‐ r._l. Lヽ,ィ>'´,| | ﾉﾉ l ﾚﾗ' r‐ ､ﾘ v r,三u､>､ヽ ｉ ｌ__とｔ┬'T⊥┴'＾´,.ィj } / |
／ハ rｴｴﾞｪ'ｴン_,.ｨ夕ﾚ'／ l ﾚ' u' ,ゝﾟ‐ 〃-､ /-､! { ｌ l ￣ゝ''工エ´ゝ'´／ / |
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
むしろ、それまでが運がよすぎたのかもしれない。
次の仕入れの為に、
せっかくの貯金をはたかなければならなくなった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
だが、できない夫にとっては、金のことよりも、
自分が警察に捕まる姿を妻の目に晒してしまったことへの恥辱の方が、
大きな問題だった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
ﾜｰ
ﾜｰ
／ Ｙ) 〕iト､､、 〕:::::|
〉ｰ─ ､i:i:i:i:i:i〉 ￣￣￣￣￣￣￣￣￣| ＿ - 〕:::::|
¨7t￣芍〉､､く──── ＿__ ‐───┼‐ ￣ |!￣ ﾜｰ
＿＿ } _'__ ﾚr)ノ＿＿＿__くi:i:i:ィL ＿＿＿＿ _＿ ＿＿_|! ﾜｰ
ゝ- 弋 从{､_} ＿__ 〈_､/ﾍ､
｡s≦弭癶 /ハ≧s｡､ /⌒ﾄ､〉 7‐ァ ゝ-く ＼
/ `i:i:i:i:i:}／Ｙ｀ヽ}:i:i:| | ∨ | | ﾘ ＿/`¨´И { |i:i:i:i:|i………… 、
}i:i:i:i:乂＿ ノi:i:i:i| | ∨ | ｀ヽ＿ て下＞‐ 〉 | |i:i:i:i:|::::::::::::::::::::::::::∨
ﾘｰ-ki:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ｉ| | Γ|丐〕iトっﾌ 辷彡} 7フ三刈ニニニニニﾆ∨
/i:i:i:i:|{i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i| | }k|─‐ } | | | ら'´ _, |!::::::::::::::::::::::::::::::l
j!ﾊ____}i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:| | М | | | | | j} |!::::::::::::::::::::::::::::::|
. 厂i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ｉ:ｉ| | |!〕 { | | | | ﾊ `､二二二二二}!
∧i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ｉ:| | |! | | 」,,」 { | { 'y { ｀`〜､、
_∧ ＼＿＿＿＿＿ソﾉ |! | | 〈__と___}r=ﾍｿ 」'"/ ｀`〜､
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
恵子が自分と一緒に来たがる理由はわかっている。
二人は、できない夫がかつぎ屋を始めてから、
できない夫の一番上の姉が嫁いだ網元の家に、
居候の形でやっかいになっていた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
ｒ'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'ヽ
（ ＿ _, ）
） ＿__,＞ Ｙ´'ー-､ （
（ ／￣＼. ＿>ｚ二_ ＿__`ー≧＿_ ）
） 【義兄】. | | ＞┴'´￣｀ ‐-､￣ ７ ＜ （
（ ＼＿／. ／ ヽ ｀Ｙ′之＞ 【長姉】 .）
） | / , l、 、 , ､ | ヽ }< （
（ l^ヽ /^l ／ ￣ ￣ ＼. ｌ ,ｨ {７Tハ T寸寸 | }ノﾍ ）） ）
） ヽ ｀_/ / .／ ＼ ／ ＼ （（ ,ﾍ, |（⌒） （⌒） / / ,/ / （
（ r'ヽ ヽ ／ ⌒ ⌒ ＼. '､ `| ヽ 「)'/|/ / ）
） ゝ、 r'ヽi| （__人__） |. ＼ヽ､_ ― _,.ィT/=/ （
（ `ヽｰ､ノ ＼ ｀ ⌒´ ／ < l 7Eニ::ィ1 〉 ）
丶〜'⌒'〇'⌒'〜⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'´
Ｏ
o
ﾟ
,, -─- ､._
／ ヽ
| |
| ノ ヽ､ .|
| （＝）（＝） | ……
ｌ^l^lｎ. ｜ |
ヽ. L __´___ ﾉ ／￣＼
ゝ ﾉ.,＿,, ' ⌒''ｰr─､_／ ＼
／ /. ｀￣| < ／''＼ ＼
. ／ / <|,,,,,ﾉ ￣￣ ── ＿＿
人＿＿ﾉ＼,,＿＿＿＿＿＿,,,＿＿＿＿,,＿＿＿＿ 二}
.
ｒ'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'ヽ
（ ＿ _, ）
） ＿__,＞ Ｙ´'ー-､ （
（ ＿>ｚ二_ ＿__`ー≧＿_ ）
） ＞┴'´￣｀ ‐-､￣ ７ ＜ （
（ ／ ヽ ｀Ｙ′之＞ ）
） / , l、 、 , ､ | ヽ }< （
（ ｌ ,ｨ {７Tハ::::T寸寸 | }ノ | ）
） ／￣＼ |ハ |《;･;》::::::《;･;》 / / ,/ﾚ′ （
（ | | `| ヽ 「)'/|/ ）
） ＼＿／.. ヽ､_ ―' _,.ィT/ （
（ |. l 7Eニ::ィ1│ ）
） ／￣￣￣.＼ 'ｲ／ヽ::::｀l┘ （
（ ／ ::＼:::／::＼. i´￣ ｀|::::| ）
） ／ ,<●>::::<●>.＼ ＿＿＿ （
（ | /// （__人__）/// | , ´:::::::::::::::::::::::｀ ､ ）
） ＼ ｀ ヽ_ノ ／ ,r'´∧ :::::::::::::::::::::::::::::＼ .（
（ ヽ , ＿_ , イ ／, ' :::::廴）::::ハ:::::::ハ::::::::::｀,＼ .）
） ／ |＿"＿＿__ ∠ ヽﾙ:::::::::::|ノノ.|从|ヽヽ|::::::::| ＼ .（
（ | ｌ.. ／l´. `l. ￣￣.ﾚ:::(|::|（＝） （＝）|::|)::l￣￣ ）
） ヽ 丶-.,／ |________________| |::::ﾍ| |/:::::| .（
（ /`ー､＿ﾉ ／ ／ |::::::::ゝ 〜〜 ﾉ:::::::::| ）
） |:::::::::::＞,ｧ-ｬ､＜::::::::::| .（
（ l:::ｨ"´ ｀`､::l .）
丶〜'⌒'〇'⌒'〜⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'´
Ｏ
o
ﾟ ξ
／￣￣＼
／ ＼
| -‐' へ |
| （ー ) （ー ） |
| u. ｜ | （俺だって居心地がいい訳じゃねえしな）
l __´___ ｌ
ヽ !
ヽ ノ
/ く
/ ヽ
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
血を分けた姉の嫁ぎ先ではあったが、
恵子が感じている肩身の狭さは、自分の比ではないだろう。
それは重々わかるのだが、手入れにあった瞬間の、
あのなんともやるせないばつの悪さといったらなかった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
,,;;;;;;;;,,,, ...:::::::: '';;;:::::::::::''';;;:'' ''''';;,,,,
"""""""'''''
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::::::::::::::::::::::::::::::::::::'';;;::::: ''"""
:::::::::::::::;;;: ' ''"""''… .....,,,,::::::::::'' :::::::::: ......,,,,,,,,....
''''"""´
⌒V⌒
＿＿＿:::＿＿___＿＿::＿＿_．--‐‐=_＿＿__
．／.:.:.::ｭ::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:Y゛.:.:.:.:゛.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:,,,.:.:.:.:.:.:.:￣¨≧=､_
＿___ｚ≦竺彡.:.:__｀＿___--￢.:.:_.:.:.:.:___.:.:.:.:.:.:.:zｚ≦迂三三三三三爻_
｀¨￣￣￣￣¨~~¨¨￣￣¨￣---┴┴-┴------┴-┴---^^^-^^^--~~┴-------…-‐
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~ 〜〜 ~~ 〜〜... ~ 〜〜 ~~ 〜〜 ~~ 〜〜~~~ ~~ 〜〜〜
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,..:´:::::::::::::::::::::::｀ヽ
,ｨ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
／￣只￣＼::::::::::::::::ﾊｌ
. ∠＿__,ハ＿＿＼::::|ﾙ'
l::::::::::::::::::::::::::::::::::::|
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|::::::::::::::::::::::::::::::::::::|
|::::::::::::::::::::::::::::::::::::|ヽ
───|::::::::::::::::::::::::::::::::::::| ＼──────
|ﾉﾚﾍﾊ从ﾙﾍﾊﾙﾍﾘヽ､__二ｌつ
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
あの時、幸いにも恵子は上部甲板に出て
函館山を眺めていたので手入れからは逃れられた。
しかし、もし妻も一緒に警察に捕まってしまったらと思うと、
どうしても「一緒にかつぐべ」とは言えなかった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
∧∧ . . . . . ||
: . : , (ﾟ－ﾟ ；) ... ; .||
;::: ; ; : ; , , : : : /ー-ヽ ; ;.||
冫、; : . :: . ; : . :. . ; /( / ) : .:; ||
`;, , .;; . ,, . ; ; ; ; (_iつとi)_/ . , ..:||
= ＝=＝ =＝= = = ＝＝＝ (＿＿＿ﾉつ＝=.＼
〃
〃 ∧＿∧
/ ∩´A､｀ *)＿＿＿
/. i^Yヽ_/~''^ヽ ⌒ヽ＿＿
〃 ,しと二二iノ――──､＿＿_ilつ
=＝＝＝===＝＝＝=＝＝＝===＝＝＝＝==＝
＿/＼／＼／＼/＼／|＿
＼ ／
＜ ――っさん！ ＞
／ ＼
′' ￣|／＼/＼/＼/＼/￣
´
／￣￣＼
／ -‐' ＼
| （ ＝）（●）
| u. | | ……？
. | ___´__ﾉ
| ∩フ´⊃
／ .／ ＿ノ
(. ＼ ／ .／_ノ │
＼ “ ／_＿_| |
. ＼／ ＿＿＿ /
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
そんなことを考えながら
うとうとしかけていたところへ、
誰かが自分を呼んでいるような気がした。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
｀' ＜ZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZ_: : : : : : : : : :＼＼: : : : : 寸ZZZZZZZZZZZム:::::: ∧∧::∨:∧::::::∨ / : : : :
s｡., ≧s｡.,＿__＞＜ニ≧s｡.,_‐_‐_‐_‐_‐_‐_`ヽ､: : : : : : : : ＼＼: : : : : ＼_‐_‐_‐ ＼====ﾍ::::::: ∧∧::∨:∧::::::∨ / : : :
i:i:i:i:i:≧s｡., ≧s｡.,＿＞ ,ィ升≧s｡.,_‐_‐_‐_‐_‐_ `ヽ､: : : : : : : ＼＼: : : : ::＼_‐_‐_‐ ＼===ﾍ::::::: ∧∧::∨:∧::::::∨ / : :
｀`' ＜i:i:i:i:i:≧s｡=======彡'´＿＞＜ﾆﾆ≧s｡_‐_‐_‐_‐_‐ `ヽ､: : : : : : ＼＼: : : : :＼_‐_‐_‐_,＼=={＼::::∧∧::∨:∧::::::∨ / :
: : : : : : :｀`'＜i:i:i:i:≧s｡., ≧s｡.,＿＞＜ﾆﾆ≧s｡_‐_‐_‐_‐_‐`ヽ､: : : : : ＼＼: : : : :＼_‐_‐_‐ ＼ ﾍ::∨:∧∧ ∨ ∧:::::∨: : :
: : : : : : : : : : : ｀`' ＜i:i:i:i:≧s｡., ≧s｡.,__`'' ＜ﾆﾆ≧s｡.,_‐_‐_‐_‐`ヽ､:_:_:_:::＼＼: : ::::::＼_‐_‐_‐_＼|:|==:∧∧:∨::∧___〉: : : :
: : : : : : : : : : : : : : : : :｀`'' ＜i:i:i:≧s｡: : : : : : ￣￣`'＜ﾆﾆ≧s｡＿,.｡o≦ |::::::::＼＼: : : : ＼_‐_‐_‐ |:|∨: :∧∧:∨::/::/: : : : :
――- 、
／ ＼
／ ⌒ ⌒ ＿/＼／＼／＼/＼／|＿
ｌ （●） （●） } ＼ ｵﾔ ／
! ___｀__ } ＜ 親父っさん！ ＞
＼_ ｀ー ´ ／. ／ ＼
_ ∧! ￣ }ヽ. ￣|／＼/＼/＼/＼/￣
__. - ‐ ´〈 ＼ / }_
/ヽ ,へ / l ｀ _
/ ∨ ヽ〈 ⌒ヽ! ｀ 、
/ ∧ / j{|
/ ∧ | j{！
/ | j{.！
i ｜ j{ ！
／l | j{ ！
／ 〈 | j{ ！
/ :. | j{. ！
/ :. | j{ ！
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
声がした方向へ体をねじると、
白いシャツに綿のズボンという小ぎれいな格好をした青年が、
通路にたたずんだまま、
できない夫に向けて赤胴色の顔をほころばせていた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
_∧_ _∧_ _∧_ _∧_ _∧_
（・◎・） （・△・） （・ |: ・） （=・◎・=） （＇◎＇）
∧
肉
∩´◎｀)
ﾉ つ 中〜
（ ⌒lノ 米. (`ハ´)
し' (ﾟ∀ﾟ∩ | |
/// ( ノ
、 ノ 、 /￣￣￣￣￣￣￣￣ヽ
Ｇ / (● ●）ヽ | 親父っさん、 |
､ヽ ､_'ｧ *ノ ＜ 何してるんですか、 |
∨ .○ | こんな所で |
. , ,.┘ ､ | | ヽ＿＿＿＿＿＿＿＿/
. l （● ●） し Ｊ
. |.u ! |
ヽ. ﾟノ
/ ヽ、
| .ﾆつ
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
そう言いながら通路で靴を脱いだ青年は、
人ごみをかき分けてくると、
できない夫の隣に正座して深々と頭を下げた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
／ ＼
／ ⌒ ⌒ お久しぶりです、
| （ ●） （●） 本当にご無沙汰してました。
人 ___´__ |
, -‐'´ヽ ヾ ｀ー ´ ／ まさかここで
. / ___ i ヽ ヽ､ ／ 親父っさんと会うなんて思ってもいなかったんで、
/ ;'´ ｀ | r;〉'´ﾍ｀丁ヽ ほんとに驚きましたよ
. /,:' レ'´>___/ ,ｨﾍ ｀!
i'Y , /"ア_〈｀`" |
. | ! :. / !'"´ y'~´ |
,! ,! ∨ ／ ヽ
〈 ! ﾞ! ;'｀７ﾞト 〈
／￣￣＼
／ ｢ ＼
| （ ●）（●） ﾈﾏ
| ｜ | まあ、いいから座らい
| __´___ﾉ
| `ー'´}
ヽ }
ヽ ノ
／⌒ ヽ
. / ＼ Y´￣了
/ ＼|＼＿／
| ヽ、__) ┌────────────┐
. │ │
. │. /￣￣￣￣ ￣∧ │
. │ / / '. │ ｽﾞ
. │. / / | │ ｽﾞ. 、
. │ /' ./ .| │ ｽﾞ. ヽ ヽ ヽ
. │. ' { ./ | │. l l l
. │ | ￣￣￣￣ | │. ﾉ ﾉ ﾉ
. │ { ノ .│ ´
. │ ｀ﾆ=---- ―― = .│
. │ │
. └────────────┘
┏━━━━━━━━━━━━━━━┓
できない夫は尻をずらして
ｱｸﾞﾗ
リュックサックを背に胡坐をかき、
空いたスペースを指さした。
┗━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
昔の仕事仲間――
自分の弟子だった小野寺できる夫という名の若者は、
できない夫と同郷でもあった。
年齢は、確かまだ30前のはずだ。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
／￣￣＼
／ 「 ＼ : :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. :
| （ ●）（●） : : 役人の類じゃなくて : :
| ｜ |. : : よかった…… : :
| __´＿ﾉ. : : :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. : :
| `ー'´}
ヽ } ＼ -､
ヽ ノ. （__丿
/ く
| |
＿＿＿_
／ ＼
／ ⌒ ⌒＼
／ （ ●） （●）ヽ んでは、失礼して
| ＿´__ |
＼ ｀'ー` ／
/⌒ヽ ｨ､
/ ､ V
/ / l ', ─ヘ
/ /l ゝ / ヽ
/ / ヽ ,＿＿__ ｀ ,ヽ ヽ
-─ヽ ｲ_ ヽ / ￣￣￣￣`ヽ Ｙ ゝ‐-､. ､
( _i _i＿ﾄ､__) ヽ､＿＿_⊥＿＿＿＿ﾉ 「＿＿＿ﾉ. ノ､ ｽｽｯ
,ノ
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
ぺこりと頭を下げ、できる夫は胡坐になると、
できない夫の後ろにある荷物に目を向けて、
思案深げな顔をした。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
＿_＿__ ━┓
／ ― ＼ ┏┛
／ノ ( ●) ＼ ・
.｜ ( ●) , |
.｜ /
.｜ '~ /
＼＿ ⊂ヽ∩＼
/´ (,＿ ＼.＼
| / ＼＿ﾉ
┌────────────┐
│ │
│. /￣￣￣￣ ￣∧ │
│ / / '. │
│. / / | │
│ /' ./ .| │ ′'
│. ' { ./ | │ ／￣￣＼ ´
│ | ￣￣￣￣ | │ ／ ｀ヽ ＼
│ { ノ .│ （●）（● ) |
│ ｀ﾆ=---- ―― = .│ | | | こいづは、
│ │ l __｀___ | かつぎ屋の荷物っしゃ
└────────────┘. { `ー'´ ｌ
{ ./
ヽ ノ
ﾉ ヽ
/ |
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
問われる前にできない夫が言うと、
できる夫はたちまち表情を曇らせた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
――- 、
／ ＼
. ／ ノ ヽ
ｌ （ ●） (● 何も、そんなことしなくても、
! u ' } 親父っさんなら……
＼_ ´｀ ／
/＼ ￣ lﾍ
_ -‐ 〈 ＼__ ___ﾉ iｰ- _
_ ´ ＼ / / ）. | ｀ 、
´ ヽ ∨ 〉 ヽﾉ ∧
| ∧ | ∧
| ∧ | l ∧
| | l ∧
| ∧ | ∧
| / )／)／）
∨ {-― - _ /／／ ／ ∧
∨ ∧ ヽ¨¨¨¨l¨¨ ￣￣￣ }
. ∨ ﾉ~｀ ､ _ ＿ 〈 l j{
∨ ￣ ｀ ― ＿ j{
. }∨ | ｊ ´ ¨¨¨¨¨￣
| ｀ ---- ――― ┴― ´ |
￣ ､
´ ＼
／ ヽ
/ ヽ
':::::::::::::: ヽ
l::::::::::::::::: ヽ
. l::::::::::::::::::: l
. l:::::::::::::::::::::::: |
l:::::::::::::::::::::::::: !
l:::::::::::::::::::::::::::: ﾉ いいんだ、
l:::::::::::::::::::::::::::::: /. 好ぎでやってることだがら
!:::::::::::::::::::::::::::::: __/
,'::::::::::::::::::::::::::::::. /
￣ ｀ー -:::::::::::::::::::. / /￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ヽ
｀ ､ / | , , 、 |
:.:.:.:.:.:... ､ ／ | / （● ● でも…… |
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.. .:.:ヽ _ ´ | ゝu rっ' ﾉ |
ー- :.:.:.:.:.:.:.:.. ..:.:.:.:.:.:ヽ ヽ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿/
｀ ､:.:.:.:.:.:.:...:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼
. :.｀:.:､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
. :.:.:.:.:.:.:.｀:.:､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./
.
／￣￣＼
／ 「 へ ＼
| （●）（●） | おめえだって、
. | ｜ | 何で俺が潜るのをやめだがはわがってるはずだ。
| __´___ ｊ
| } 心配するこたあねえ。
ヽ }
ヽ ノ
i⌒＼ ,__(‐- ､
l ＼ 巛ー─;＼
| ｀ヽ-‐ーく＿）
. | l
／￣￣＼
／ 「 へ＼
| （ ●） （●）| おめえなんかに心配されるほど、
| ｜ .| 俺は歳ば食ってるわけでもねえしな。
| __´___ |
| `ー'´ |
ヽ /
（⌒`:::: ⌒ヽ
ヽ:::: ~~⌒γ⌒）
ヽー―'^ー-'
／￣￣＼
／ 「 ＼ ﾅｼﾞｮ
| （ ●）（●） ところで、おめえの方こそ、如何なのや。
| ｜ |
| __´＿ﾉ 会社では上手くやってっか
| `ー'´}
> ∩ノ ⊃
( ＼ ／ ＿ノ |
＼. ” ／_| |
＼_／＿＿ /
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
ため息をついて、頭を掻きながら、
できる夫は自分の近況を話し始めた。
就職したサルベージ会社の潜水夫として忙しい日々を送っており、
今は函館の支社に勤めているという。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
( ヽ、
／.:.￣￣＿＿＼ ＼
／: : : <＿＿ ＼ ＼
／: : : ＿ <＿＿ ＼ ＼ ﾍ /⌒/
／: : : : ´ , ｀└--ﾐ ヽ、＼ - ＼ |
: : : : :／´ ｀ヽ 丶 - 〉 はあ……、
: : : :.（ ー‐ l ( ＼ !. かくかくしかじかで――
: : : : ヽ_ ｀ _ノ ＼_ヽ {
: : : : : : ´"''" ' "''ﾍ > 、
: : : : : : . . ` ＼ ∠／ヽヘ
＼: : : : : : :. ⊂ﾆニつ ＼(⌒) ﾉ ＼
／ヽ: : : : : : : : : : : ヾ、 ／ ＼
／: : : :｀`ｰ- -‐'"´ ＼／ ＼(
,'⌒ ゝ
ヽ＿ノ
☆
／
／￣￣＼ : :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. :
／ へ ＼ : : : :
（－）（● ） | : : こいつは見込みがあると思った : :
| | | : : 俺の目は確かだったな : :
| ___｀___ |. : : : :
{ ｜ : : :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. : :
⊂ ヽ∩ く
| '､＿ ＼ ／ )
| |_＼ “ .／
ヽ､ ＿_＼_／
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
東京で開催された潜水講習会からの帰りで、
乗船の時に、できない夫に似た姿を目にし、
気になって三等室まで探しに降りてきたとのことだった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
──────────────────────────────────────────────────
l=ﾆ二三γ了三ﾆ=l , ', ' ,'| ::| ', ' ,
｀]｣＿ ,．' ,' | ::| ', ' ,
n /丁ｌ／ -‐ ' ４ ,' _| ::| ', ' ,
|| ｀丁| , ' ｣| ,' ｜::! |{, ' ,
,┌='_ﾆ二二三三 , '三三二ﾆ=ｭ｜::! || ', ' ,
|/｀ｴ,Τ_丁_丁_丁_丁_丁_丁Τｴ｜::! || ', ' ,
/lﾆ二二二三三三三三三三三二二| ::| ｚ TｌΤ￣Τ￣ΤT､
ﾚ|| _.Ｚ]ﾆ冖ﾆ冖ﾆ冖ﾆ冖ﾆ冖ﾆ冖ﾆ[｀|_Z. -┴┴―┴―┴ ' - .._
｢|￣￣￣￣ , ' ￣￣￣ -‐ '''"´ , ､ ／
|l| 囗 ﾛ ' -‐ '''"´ rャ rゃ ｰ' rゃ rｬ／
|,| ,．'´ _ -‐ ´ ', ', ／
|l| ,．'´ _ -‐ ', / ',
Z zｧ _ ', /_', ',
r／ /' ∨r ､ ',. /∨ ', ',
｢ / ∨_| '/∨ ', ',
,ｨT工} / ､ ∨ /∨ ', ',
――――‐ f／ ｌ、 / /---',.-----',--',------------
. λ......｀ ‐- _ / ‐- ', ', -‐
. Λ ‐- _:::::::::::::::::::::::::::....................................l′ ',
/￣￣￣￣￣ ￣￣￣ヽ.. ‐- _::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| ￣ ',
|. ヽ.― 、 | ‐- _-―-―ｰ―-┘ 〜 _
| ●） l ..| ‐- _ -‐
|.. ! .| |
|. ヽ ノ ..|
|. r へ、 ...|
| GL _ィ^ ○ .|
| . (___/｀ー' |
ヽ＿＿＿＿＿＿＿＿＿/ ′'
,っ - －、 ´
i {● ●） ヽ あれはもしかして……
ヽ. ､-'- ノ
ヽ ＼_
〉 |-'
ιー Ｊ
──────────────────────────────────────────────────
.
／ ＼
／ ― ― ＼ ――まあ、それで二年前に函館出身の娘と結婚して、
／ （●） （●） ＼
| '' ' '' | 娘も産まれて……
＼ ￣ ／
ノ ＼
x‐ ‐x
X X
／￣￣＼
rヽ ／ ⌒ ⌒ ＼
i ! | （⌒）（⌒） | おっ、小僧だったおめえも一丁前に……
r;r‐r/ | | ｜ |
〈_L (｀ヽ .} |. __´___ ﾉ それはよかったよかった、おめでどーごし
l｀ （ ｀`/ . | `ー'´ }
ヽ l . ヽ }
|,. l /⌒ ー‐ ｨ ヽ
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
そして、できる夫の話の中で何より嬉しかったのは、
結婚して娘が生まれ、
ﾎｳﾗｲﾁｮｳ
今は函館山の麓にある 宝来町 の市営住宅で親子三人、
つつましく暮らしているということだった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
／￣￣＼
／ 「 ＼
| （ ●）（●）
. | │ │ 戦後のごたごたが続いているとはいえ、
| ___´___ﾉ
,| } 全く知らずにご祝儀もやれないで
／ ヽ } すまながったな
く く ヽ ノ
＼ `' く
ヽ、 |
| .|
_＿＿＿
／ノ ヽ､.＼
／（●) （●） ＼ いや、そんな、とんでもない……
／ __'___ u. ＼
| ｀ー` | こちらこそ何の連絡もせずに申し訳ないです。
(⌒(⌒(⌒ﾞｉ＼ (⌒(⌒(⌒ﾞｉ ／
ﾞｉ ﾞｉ ﾞｉ ﾞｉ (⌒) ﾞｉ ﾞｉ ﾞｉ | !､
ﾞｉ::::::::::: ゝ (⌒)::::::::::: | ﾞｉ
ﾞｉ （ ﾞｉ !､ | ｌ |
＼ ｉ ﾞｉ ,r'_,／ /
＼ ｉ ＼ ＿＿ ／
.
―- 、
／ ＼
. ／ ⌒ ⌒. 上の二等室に一人分よけいに席があるので
ｌ （● ） ） せっかくだから来てくださいよ
! __'__ }
ヽ （ ﾉ／
_/ ｀ヽ､ ￣l .,､∩ ｸｨｯ
_´ ＼ 〉､/|ヽ、 / / |ヽ ｸｨｯ
／ ヽ ヽ./ |} ﾚ' ＼./ ' ' ' !
. / | i j
| ,⊥., ／
| ／ く
. ∨ ∧ ／ ／ヽ
. ∨ ∧ ／ ／/ |
∨ ／ ／ γ _ |
／￣￣＼
／ 「 ＼
| （ ●）（●）
| ｜ | いや、それは、
| __´___ﾉ おめえの仲間に気をつかわせらはんで遠慮しておぐ
| `ー'´}
ヽ } /￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ヽ
ヽ ノ ｍm ﾋﾗ | , -‐ノ 、 .|
/ ￣￣￣ つﾉ ﾋﾗ |. / （● ● ふむぅ… |
| |￣￣￣ |. ゝ -'-ノ |
ヽ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿/
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
できない夫が丁寧に断ると、
できる夫は取り出したメモ帳に何かを書き付け――
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
＿＿＿
／ ＼
／ ノ ヽ＼. これ、私の住所です。
／. （●） （●）＼ 手狭なところ何のもてなしも出来んですが、
| __´__ | . __
＼ `ー'´ ／./ / ぜひ今夜、うちに泊まっていってください
ヽ <.. /r‐ﾍ
| ⌒ヽ i | . } ﾌ′
| ヽ ＼. ∨. /
／￣￣＼
／ _ノ ヽ､_ ＼
.| （ ●）（● ） | いや、今日は米さ売ったら、
.| | │ 折り返しこの船で青森へ帰っからっしゃ。
| __´___ .|
.| `ー'´ .| なんも気にせんでいい
r､ r､ヽ /
ヽヾ 三 |:l1.ヽ /
＼>ヽ |｀ ｝ > <
ﾍ lノ `'ｿ ヽ
/´ /,1 | |
＼ ノ .｜ | |
.
／￣￣＼
／ ｢ ＼
| （ ●）（●） そのうち、暇になった時にでも、
. | ｜ |. 寄ってみるがらや
| __´___ﾉ __
. | } / /
. ヽ. /r‐ﾍ
ヽ. } ﾌ′
/.. ∨ イ
| /
＿＿＿_
／ ＼ そうですか、残念だなあ……。
／ _,ﾉ ＼ ＼ でも気が変わったらいつでも来てください。
／ （●） （●） ＼
| ' |. 遠慮なんかいらんですから
＼ ⌒ ／
ノ. ＼
.
／￣￣＼
／ ＼
| -‐' へ |
| （ ●) ( ●） | わがった、
| ｜ │ そのうちな
| ､__´___ ｌ
ヽ ! /￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ヽ
ヽ ノ |. ､ ノ 、 |
/ く | ● ●） ヽ 必ずですよ |
/ ヽ |. （^ ､-'- ノ |
|. ＼ と） |
ヽ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿/
――- 、
／ ＼
ス ／ _ノ ヽ
ッ ｌ （●） （●） } じゃあそろそろ戻りますから
ク ! ___｀__ }
＼_ ｀ー ´ ／
_ ∧! ￣ }ヽ
__. - ‐ ´〈 ＼ / }_
/ヽ ,へ / l ｀ _
/ ∨ ヽ〈 ⌒ヽ! ｀ 、
/ ∧ / j{|
/ ∧ | j{！
/ | j{.！
i ｜ j{ ！
／l | j{ ！
／ 〈 | j{ ！
/ :. | j{. ！
/ :. | j{ ！
.
────────────────────────────────────────────
, -- 、
/ ヽ
ゝ ノ
（| /）
/ （_ﾉ
(（（ 〈_／ ヽノ
────────────────────────────────────────────
￣ ､
´ ＼
／ ヽ
/ ヽ
':::::::::::::: ヽ
l::::::::::::::::: ヽ
. l::::::::::::::::::: l
. l:::::::::::::::::::::::: |
l:::::::::::::::::::::::::: !
l:::::::::::::::::::::::::::: ﾉ ………………
l:::::::::::::::::::::::::::::: /. ………………
!:::::::::::::::::::::::::::::: __/
,'::::::::::::::::::::::::::::::. /
￣ ｀ー -:::::::::::::::::::. /
｀ ､ /
:.:.:.:.:.:... ､ ／
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.. .:.:ヽ _ ´
ー- :.:.:.:.:.:.:.:.. ..:.:.:.:.:.:ヽ
｀ ､:.:.:.:.:.:.:...:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼
. :.｀:.:､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
. :.:.:.:.:.:.:.｀:.:､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
通路の奥に消えていくできる夫の後ろ姿を眺めながら、
できない夫は鈍い痛みを伴った記憶を反芻していた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┌──────────────────────────────────────┐
│ │
│ │
└──────────────────────────────────────┘
┌───────────────────┐
│ │
└───────────────────┘
┌──────┐
└──────┘
┌──┐
└──┘
□
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
できない夫が潜水夫になることを夢見て親方の下へ弟子入りしたのは、
大正7年（西暦1918年）の春のことで、
ちょうど14歳になったばかりだった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
＿__＿
／ ＼
／ ﾍﾆヾﾞﾘン ＼(;;;;;(. 潜りは一人前になれば、
／＝▲▼--▼▲＝) ;;;;) ｵｶ
| /（__人__）ヽ ;;;／|. お天道様まかせの陸と違って、
＼ ｀⌒┃ｌ;;;; ／. 気張れば気張る分だけ稼げっからな
/´`''" '"´｀`Y'・"｀`'j⌒ ヽ
{ ,ﾉ' i| ,. ,､ ,,|,,. ､_/´ ,-,,.;;l
'､ ヾ ,`''-‐‐'''"￣_{ ,ﾉi,､;;;ﾉ
ヽ､, ,.- ,.,'／`''｀,,_ ,,/
`''ゞ-‐'" `'ヽ､,,､,､,,r'
,ﾉ ヾ ,, ''";l
/=====､ ....====i、
ｒ'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'ヽ
（ ）
） ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿__ （
（ |100 百 | ）
） | 行銀供子 ∧＿∧ | .（
（ | 團百 （´∀｀ ）| ）
） | ◎ | （
（ ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ ）
） （
丶〜'⌒'〜'⌒'〜⌒'〜'⌒'〇'⌒'〜'⌒'〜'´
Ｏ
o
ﾟ
＿＿
／ ─ ＼
● ● | へえ……
( !_ ⊂⊃|
/⌒l |
/. / /
| l ＞ ィ
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
理由は簡単だ。
陸で稼ぐ何倍もの収入が得られたからである。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
ｵﾅｶﾞﾜ
できない夫は宮城県 女川 村に、
漁民の村としては珍しい農家の、
男女取り混ぜて五人兄弟の末っ子として生まれた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ r､_____
＿＿ 〈 ￣ヽ
ﾉ´ ｀ヽ‐ 、 〈 }
i､_r-､_ノ´ ヽ＿＿＿_ ／ r､}
ヽ __〉 〉 〈{_} ﾘ
｀} ｀ヽ __{ヽ‐､_ ,> __／
｀ 7 ｀ ‐､ ﾉ μ {
/ ｀´ ヾ‐,
'ｯ ___ノヽﾉ
r､_/ 〉＿_ 太
. ', /. 平
', 宮城県 r '´ 洋
〈 ｀‐‐、
ﾄ､ ヽ i_i
_〉 石巻 _〈 o
/ ＿_ ・ ★ 女川
. _〉 z-､ , ´ '‐'ヽ = ´
{´ r'´ _ノ { ＜、 ヽ
／ '‐'ヽ￣｀ O 'ｰ､ }< ､
{ 仙台. r‐ ´ ヾ}｀ ' ¨
| ◎ /
. } /
／ /
. { ,
＿＿r‐' l ※女川村：大正15年より町制に変更され、現在に至る。
.{ l
. 〉 _ l
｀ ‐‐' ‐‐┐ l
{＿＿r､＿__ l
｀{ i´￣
〈 {
ヽ、_ i=‐‐'
￣
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
農家の三男坊ともなると、
田畑は全て長男が家督として受け継ぐことになるので、
どこかへ婿養子にでも入らない限り、
地元で暮らしていくのは難しい。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
|￣|
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿_＿ __ r──‐‐┐＿__ /三三三三三三三三三三三/＼
-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_.／＼￣＼￣＼ ..| |三三|¨:ﾄ､l￣|| 丁ＴＴT.┐/三三三三三三三三三三三三三ﾑ
￣￣￣￣￣￣￣￣￣||￣￣￣￣ｌ|ｌ￣￣￣￣￣::|＼＼ | |--‐‐| |__|___||__廴|二lﾆl |¨| __|_||──── l__／￣:|￣..|
田 田田 田田 ||「」 「」 「」ｌ|ｌ─────┴‐ ＼＼-─ ￣＿ -=ﾆ二三三三 l￣￣ |丁二二二二匕ィｧ…|￣..|
|￣￣￣| ..|| ＿＿__ｌ|二二二二二二二二二|-=ﾆﾆ二二三三三三三三三|＿＿__|‐|┴┴┴┴┴／／丁￣|
￣￣￣￣二二二ﾆ=-..|l｡o≦＿＿＿＿斗rf .| | || || l|. ｌ| ∩ XXXXXXX|￣￣|^＼fzzzzzzｭ二二二二二二二二二二
￣￣￣￣| ||三||三||;;;||;;;||;;ｌ||;;;|;;|..│ |/⌒||-┴┘| | /‐‐‐‐／{二|二二廴___＼二入斗rヤ¨¨￣ ／´´´´´´´´´
| ||三||三||;;;||;;;||__||_ﾉﾉ‐┴ノXX八 厂￣|‐‐‐/￣￣丁￣＼ ‐─斗ｬヤて／ ／ {:.:.:.:...... 〜
|厂￣7T'''7__||三||三廴匸コｌ‐┐___ _,.斗弌￣￣￣|--'￣￣￣|斗t≦ ／ / /────':.:.:.... 〜〜
二二二二|三三|-r彡 .l |XXXミx‐┘ 斗t≦ ＞匕 ￣￣￣￣￣￣￣￣ {-----'￣￣:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:
x^x^x^Y=- ¨´ |＿__|ＸＸＸＸ＞＜ ＞''“´ ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.〜〜〜 ~~~ 〜〜 〜
x^x^x''´￣ ＿＿＿＿＿＿,.ィ⌒＞＜⌒ :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:
￣￣￣￣￣￣ ＿＿＿_彡''´ ~~ 〜〜 〜〜 ~~~ 〜〜〜 ~~ 〜〜〜 ~~ 〜
──── ￣￣￣
〜〜〜 ~~ 〜〜 ~~~ 〜〜〜 ~~~ 〜〜 ~~~ 〜〜 ~~~ 〜〜〜 ~~~ 〜〜 ~~
. ＿＿ : :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. :
／ ─ ＼ : : : :
. | ● ●. : : . ｺｺ : :
. |⊂⊃ _! | : : 女川を離れるにしても、. : :
. | l⌒ﾞｉ. : : 海の生活はしたいなあ……. : :
. ヽ ﾞｉ ﾞｉ : : : :
ィ ＜ l |. : : :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. : :
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（. , ´ ―‐＜ |i:i:i:i:ｉ:ｉ:∧!^´ ｰ､ , ‐′ ＾｀ ゞ=f く./ ,...}i:i:i:i:i:i:i:/ / ／. ）
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Ｏ
o
ﾟ
, ──.、 : :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. :
／ _ノ ＼ : : : :
| ● ●). : : 近所の人の船にでも : :
. ⊂⊃ ! ⊂l. : : 乗せてもらおうか…… .: :
! 〜 / : : : :
ヽ ﾉ : : :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. : :
/ ヽ、
| ﾆつ
.
ｒ'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'ヽ
（ ／ ／ ｀丶、 ‐- | ）
） ／-―- ／ o 丶、 ‐- 丶 l （
（ 〃l | | l／l l i＼ ＼ ｀ / ）
） /l／´￣￣￣￣｀ ‐- 、 ＼ / （
（ :i´ l ヽ ＼ 丶 ｀丶 ＼ o ｡ / ）
） :| | ヽ ＼ 丶 ｀ ､ 丶 , -‐=￢ ｀/ 、 ﾟ _xa::.、 （
（ :.。 、 ＼ 丶 ｀ 、 ｀丶 ＼ ／ ニ二.ヽ/ ｡ ． ´ ヾli .）
） % ヽ ＼ 丶 ｀ 、 ＼ ＼ ―――／┘ ． ´ i|! （
（ ・ ＼ 丶 ｀ 丶 ＼ ＼ ｛ ', ． ´ l|! ）
） ＼ 丶、 ｀ 、 ｀ 、 ＼ ヽ 丶 ､_丶-‐・ ´ ： 〃 （
（ 。 丶. ｀ . ｀丶、 丶 o ヽ 丶 ・ 、 ￣｀i:. ノﾟ 〃 .）
） (( ＞ 。 ｀丶 ＼ ＼ ﾟ。 ', ', ＼__ノ:.％ ／ ' （
（ ∠、 /‘Ｊ >､ 、 丶 。 % ／ ： 。 :. li x〆″ ）
） )／ ,ｘく.__{-ｕ、_ ： ／ | / i| xｆ⌒Y′ （
（ u ／ l| o ノヽ ￣￣ il |l !〃 ﾘ )ﾉ'ｧｲ ）
） il´￣ i! 丶 ｀￣‘, i! i ﾉ / / i| ∠ _厂 （
（ o 。 l i ＼ jﾟli j j!｡_彡イ / /' ﾉ ﾘﾉ / Ａ〈 _ －＝ニ二 . ）
） 。 丶＼ 从 ) ﾉ l| j 。 ￣乂// ／／ レ ﾟ＿rｆ匕ﾆ二三三三三三三 .（
（ _,､_,､_,､_,､_,､_,､_丶ヾ ＼ 丶 Ｗv人从乂 ノﾊ/ｗV从 ＿ﾆ二三三三三三三三三三三三三 ....）
） . :,､ .:,､ .:,､ .:,､ .:,､ .:,､ .:,､ ＼ヾ / _二三三三三三三三三三三三三三三三 . （
丶〜'⌒'〇'⌒'〜⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'´
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, ──.、. : :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. :
／ _ノ ＼. : : : :
| ● ●) : : 捕鯨船もいいかも…… .: :
. ⊂⊃ ! ⊂l : : : :
! 〜 / : : :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. : :
ヽ ﾉ
/ ヽ、
| ﾆつ
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
子供ながらに色々思い描いていた時、
潜水夫の本場、房州の勝浦から仕事に来ていた
『潜りさま』たちの仕事ぶりを見てたちまち虜になった。
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| ./
＿＿＿_ |/
/＿,-―-､_ヽ[]
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〃￣ヽ| |￣ヽ￣ ﾟ´￣/.￣| |/´￣ヾ
i i| | 〓 ￣￣ | |i i
ヽi―j"|└────‐.─┘|ヽi─j"
|￣| ｀i￣ ./￣￣ヽ￣ i´ |￣| ,..-――- ､ヽヽ
__,,,,,-‐‐‐-,,,,,__.〕 .iヽ､二二二二 /i 〔||＿||〕...... ,ｨ":::: ヽ ﾉ`ヾi)
,,,-‐i''i i~i‐-,,, ┘..| ∥,.l`'ｰ--- ､_ ||. r":::: ,,.ｨ''""ﾐヽ､ _ヾ_
／ | | | | ＼ |￣|i |,-‐i"ﾄー--''" /!;(○r:;:l : : ト, |
. ／ | | _____ | | ＼ | || |i,､ `'`ｰ-､....,r',,_;《＋）_:,,.-‐'" |ﾄ;|
,; .__,,,,,‐‐〃⌒ヾ ￣''''‐‐､,,,,__ ;,| |l |;;;lヽ : : : : : : : : : l:|:::i
l ´i .￣ （( (,〜')）､_,,--､ ￣''''i ｀ l ヽ_.,,,_ ノ`i;|::ヽ l::|-
| .l ､====ヾ､__,,ソo（(,,;;;;)）====､ l. | ,-くヽ,-'^ゝ |:::::::ヽ l:::|
___. |: | ￣￣￣ ,;-i-､,;ﾞ~=''＾￣￣ |: |ヾ;::ヽヽ _;;l |:::::::::;i------―――――|r''
〃О｀,,-‐‐‐‐-､ ｀‐ i─,,,,, (-○-) ,,,,,─'i"´ ,,-‐‐‐‐-'､℃ヾ::i r,=======il !､|!
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.r-､ ／￣￣＼
／て ) ／ ⌒ ⌒ ＼
（ _ﾉ ﾌ. | (⌒) (⌒） |
ゝ、 〈. |/// │ ///| これだっ！
/ ハ ヽ | __´___ |
/〃 ﾍ ＼ . | |r┬ | !
ｉ ！ ＼ ｀. ヽ ﾞー′ }
丶丶 _ ＞ ⌒ヽ ノヽ
ゝ'´- ､_ y-､ ＼
〈 ￣ う /､ ヽ
`ー― ￢､__ノ | > /
| r'＾ヽ'´ _／
| `く__ノ´
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
ｱｶｶﾞﾈ
赤金 のヘルメットを被り、
陸と海を自在に行き来する潜水夫の姿は、いかにも格好良かった。
しかも聞くところによると、
陸の労働者の稼ぎの五倍から十倍もの稼ぎがあるということだった。
※昔の潜水服など： ttp://karapaia.com/archives/52127446.html
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. // /′￣｀ヽ′ ￣ . -‐== ﾐ ヽ
.ﾑ 〃 L ___ ／ ) 「|
.′ l.l | l r‐ ´ l !,
. ヽィﾞ | ｌ l | ハ',
l | | l＿j_ ___ _ ∟. / . .-､
l l l _イ_- ､ ｀ ｀ヽ----ヽ _/V / ',
レ__｀ー‐ ｒ. -､､ヽ ヽ ヽ ', ′. .' '⌒ ',
, .-､ヽ ヽ 杙_ｿ ! !.ﾉ } 廴 ′ .' i } } !
. 杙_ﾉ } } } _`ー_' '′ ___ ノ ノ ｀i i 人.ﾉﾉ j
`ｰr ﾞ ﾞ ´ｨ7´-- ミ≧‐---- ´ { l イ､ . ´
. 7/千〃 ｀ .〕iト . _ . イ｀ー ｀´ // ヽァ´ ￣ ／
. {{ ∨ ｀ ＜￣､ ／// / , ﾞ
ヽ.′ﾆミ 、 ｀ヽ ', ／／ｨ' / /
r/ ,′/ ｀>､＼ }_j 才´／'ﾞ ／ /
-‐i, － '､／ >.ヽ ´＝≦t才´ ／ /
. ´ / ⌒ヽ ヽ. イ } ｉx≦三三斗: ´ ／′ l
. ／ ../ ⌒ヽ ', j. ィ´三三斗: ´ ／ / |
. ／ / ⌒ヽ/ . 」 l:l . ´ / .|
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*:.｡..｡.
*:.｡..｡. ｷﾗｷﾗ･･･
／￣￣＼ ..｡.:.*･゜
「 へ ＼ ..｡.:.*･゜
. （ ｔ:ｸ）（ ｔ:ｸ） |
| | | いい……！
. | ___｀___ |
. | `ー '´ |
. ヽ / ..｡.:.*･゜
> ＜＿ r ､ ..｡.:.*･゜
.,''''つ／）/ i ヽ ! !(,ヽ
/ /／／ノ´) / ）ﾄ .| | | | i
〈 Y ∠／／,' ) 〈 〈 .| | | |/ ./
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
これしかないと一途に思い込んだできない夫は、
翌年には見習いとして弟子入りしていた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
潜水夫には二つの種類がある。
海胆や鮑、海鼠といった
海産物を捕獲する『海産潜り』と――
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
,、 ,. ,_,
Ⅵ{Ｖ}V }/|／（,
≧ｘ::Ⅵ:.:// .l ／彡
＿≧ｘ :..＼Ｖ 孑≦三=-
孑 ≧／小-=≦.::=-三- ,⊆) ｎ _＿_
Ｚ=-／ Ⅵ `'<ミ= ≦-Ｚ .└っ ） | |└‐ｔ,ﾉ
７／ ./:}/Ｖ:.ト ＼ ミ≧ｘ . └‐' Ｕ につ
^ｱｲ K:.Λ:. ⅥＷ iﾄ､ｘ
}/} ､ ‘、Ｖ Ⅵ{⌒
. }Λ|Ｖ１ﾍ「⌒ ,､-'´￣ﾉ
,､_ _,､-'´´ ,-'´
､`ー-､＿ ,､ｌ'|´`ヽl | `ヽ､_ ,| ,､-'´
ヽ、 `､_`ヽ､_ ヽ,ヽ､ -'´ ,-ヽ''
`ヽ,_ ,､ノﾉヽ、￣ヾ､`ヾ,ヾ ＿ヽ
ｌ´l'´ ﾉﾉゝ-－､､| | 、 'l `ヾヽ
＿＿_ ＿___ ｎ.____00 ,ｲ| /／,l'´;;;;;;;;;／ｌヾ､ ヽ'´ _l__(＿＿
└ ﾏノ Ｌr┐ ! |┌‐┘ ヽ | l l l'`ゝ,;;;;;<' _ﾉ,l'ヽヽ 、 ＿＿,､)
くノ くノ Ｌ.二ｺ ,､-'１/ `l､l,`´､-i-i-, ヾﾉﾉ ` -,'´ l
`ーゝ,l､_ | |ヾ､;;￣´;;;;ﾉ'ノ ヽ、､」 ,l'´
`i ､ヽ,ヽ-、￣´´,'ｌ｜＿_ﾉ/ゝ′
ヽゝ､l､￣ヽ,､ﾉ゜ﾉノ i ヽ、
/`ヽ,､-, l'l'´ ﾉヽ, `ゝ
ヽ-'´ ヽヽ'´ヽ,i_ノ´ `ｰ'
＿ｎ＿ ┌―‐┐ ＿＿
└┐ｒ┘ └Fマノ └‐┐ |
く.ﾉ ` ┘ ┌‐┘ |
￣￣
(・大・)
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┏━━━━━━━━━━━━━━━┓
港湾工事、
あるいは沈没船の引き上げや
解体に携わる『工事潜り』だ。
┗━━━━━━━━━━━━━━━┛
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:;.:,:;.:,:;.:,:;.:,:;.:,:;.:,:;.:,:;.:, 鸞i, W洲洲洲洲洲洲＼＼ji| ﾄ､＼_/＼>>:, :, :, :, :, :, :, :, :, :, :, :, :, :, :, :, :, :, :, :, :, :, :, :, :, :, :, :, :, :, :/ :, :, :, :,
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;:;:;:;:;:;:;:;:;:;::;.:,:;.:,:;.:,:;.:,:;.:,: 鸞}ik;:;:;:;:＼＿,,,...⌒└圸j|_|j//爻;';';';'.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／:>.:.:.:＼>へ :, :, :, :, :, :, :, :, :, :, :, :, :, :, :, :/:, :, :, :, :, :, :,
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:;.:: : : : : : : : : : : : :;.:,:;.:,:;.:鸞欒ぅﾆ__｢」￣＼>￣＜｢｣＞""""""7_7く＞'ﾟ￣:､.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. ｀'㍉ｒ┐ : : : : : : : : : /: : : :, :, :, :, :, :,
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┏━━━━━━━━━━━━━━━━┓
できない夫が弟子入りした親方は、
工事潜りのベテランだった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━┛
＼ ヽ | / ／
＼ ヽ | / ／
＼ ヽ | / ／
＼ ヽ | /.... ,.へ ／
___ ﾑ i ／
‐､、.. 「 ﾋ_i〉 ミ ミ ＿＿ ゝ 〈. _,,－''
｀－. ﾄ ノ ミミミ iニ((). _,,－''
i { ＿＿＿__ | ヽ. _,,－''
i ヽヽ （ﾐ彡 ／ﾍﾆヾﾘﾝ ＼ i ﾉ }
| :;:;:;:; i ／=▲▼--▼▲=＼ {､:;:;:;:;:;λ
───..ト－ー┤. ／ ／（__人__）ヽ ＼ ,ノ )...──────‐
ヽ ｀` ､,_ | ´￣｀ | '´ ﾊ / ﾊﾟｰﾝ
ノ ﾉ ､´､,_＼ ／" ／ ／
；､ ￣｀ﾞﾞﾞﾞ｀Ｙ´"""´￣ ／ ;′ 彡）
_,,－''.. ヽ､~ ヽ :;:;:;:;:;|:::: ノ / ~ノ. ｀－､、
ヾ ト ........人........ / ｒ´′:;
／￣二二二二二二二二二二二二二二二二ヽ
| 答 | 工事潜り. │|
＼＿二二二二二二二二二二二二二二二二ノ
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
命を賭した仕事であるから当たり前なのだが、
修行の厳しさは想像を絶するものだった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
／￣￣￣＼
（● ）ｏ / 「 ヽ ノ ＿ 三ー二
ﾟ _）_） （◎）...／´ ヽ三ー―――
| / /⌒/ ',::::::::::::::::::::::::
。 ｏ。 ｀, （... { }:::::::::::::::::::::::
ﾋﾃﾞﾌﾞｯ | （__ン ､ /::::::::::::::::::::::::
|. ヽ､＿ ／―――――
ヽ / ＝＝
ヽ く
γ⌒´ ⌒＼
. ミ
<:i:i:i廴=================================ミ
||／.く:i:ｉ:> ||
t>ｉ゜ ´ おやかた の ばくれつパンチ！ ||
|| こうかは ばつぐんだ！ ||
ゞ==================================== 彳
＼＼/⌒) | |｜ !| |
＼＼ ､,､-' / | |｜ || | ! .／
＿,､-' （ ! |｜ || | | ／ /￣ ~/ ＿＿ ＿＿
(￣_ ヽ、 | l ! || | | ／ / /_＿_./ // /
. ￣ ~¨'' ､ ヽ､,_ |｜ !| | //￣￣ / // /
ヽ、 _,､―--､,__) ! | || .| //＿＿ ＿_ / // /
＼＼ .ヽ ／ ＼ ＼＼ |｜ || | / / / / /._Ｍ//_Ｍ/
＼ / .f | ＼ ! | || | / / / / /
し ヽ ﾉ | | ! ! / / / /
＼＿,､-'´ .＼ ! ! ./ / / /
＼＼ ¨¨･･， | | / /μM/ / / ＿ ＿ ＿
＼ ＼ ；， し'/ ./μM/ / // // /
て_ ./M//M// /
て / /
〜 /M/
.
┏━━━━━━━━━━━━━┓
何度も音を上げそうになり、
一度は逃げ出しもした。
┗━━━━━━━━━━━━━┛. | ￣ ヽ-､ .／￣￣＼ -
.''ｰ..,、 . ＼ ヽ ." / / ,／゛ _,, ｰ'' l i ､ .／ 「 ＼ ./ i ／ ヽ ..＿_
. ﾞﾞ'' . ＼ . ″ ." / : ／゛ ._,, ｰ''"゛ ._,,,.. |.│ / | （ ＠）（＠） r- ､ ./ / ｝ . ´゛
┏━┓┃┃ ┃. -‐;;;;,ﾞ,ﾞ＿.......} ヽ/ | ｜ | .i ／ ／ y' -､
＿＿＿＿┣━┫ ┃ ＿＿＿＿＿ .i / | Ｕ __´___ﾉ..＿/＼／＼／＼／＼/＼／|＿
_. ┃ ┃┃┃. / .| |llｉｉｉｉl|}..ﾞ＼ ／
. -‐''"´.. ━┛ ━┛ ● ﾞ''ー ..,,,ﾞﾞﾞ''''―-..i ヽ. └‐ ┘. ＜ くぁwせdrftgyふじこlp！ ＞
,／ 、 .､ ｀''ｰ､,、.｀ﾞ'''ー l .ヽ ＿ノ ／ ＼
. ／ 、 / .! ｌ ｀'-、.-､ ｀''ｰ .._/ i ￣|／＼/＼/＼/＼/＼/＼/￣
／ .／ ,i"/ ｌ ， ! : ､ ﾞ'-、ﾞ''-,, .｛ .､ ./ i ノ.,,,_
,／ / / / ,! ,! .! .ヽ. ﾞ'-、 ﾞ／ i .ヽ ／ .／ ｀ﾞﾞ''''―
″ . / /゛,i′ .,! ! . ! .､ .ヽ. ./ i K _ ィ ／ ...,,、
/ ./ / l .,! ｌ .__ / ヽ , - '' ´ __ ィ .｀ﾞﾞ'''ｰ ..,,、
. / ,i′/ ! ! !../ i / ヽ .／￣
.″ ./ / ! ,! .l .ｌl λ', / ／.＼ .／.、 .｀ﾞ'ｰ ､、
. / / ! ! │ " .', ヽ / ／ ヽ ／＼..｀''ｰ､、 ｀''ｰ ..、
. / ./ .l .,! .! ! .', y ／ .＼ ＞ ' ´ ＼ .｀''-､,、 .｀''ｰ ,,_
./ / .l | ｝ ! .', ／ ` ´ ` ､_ ヽ ...｀''ｰ..、 ｀''ｰ
ﾞ ./ .lﾞ | .l l, ヽ _ ィ ＼ ＼ ｀''ｰ..,、
/￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ヽ... ヽ. .＼ `-、 ｀'-、’ ` ､ .｀''ｰ..、
. /| 、! , | ヽ .＼ ＼, ’, ヽ､
/. | ＿＿＿＿ | ＼ .＼ ﾞ'-、 . ＼ ヽ '-､
| ／ ﾍﾆヾﾞﾘン＼ |. ヽ ＼ . ＼ .ヽ、 ＼..｀'-､
| ／ ＝▲▼--▼▲＼ | ヽ ヽ, ＼ ' , ＼ ＜ ｀
| ／ /（__人__）ヽ ＼. フン…… | ＼ ＼ ＼ .＼ ＼ _ ィ ´ 丿
＜ | ｀⌒┃ | |..ヽ ヽ ＼ ＼ ＼ ヽ ´ .／
| ＼ ・ / .|... ｌ ヽ ＼ ＼, .｀､ .／
ヽ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿/. ヽ ヽ, .＼ ＼ ヽ ／
.
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しかし、陸に上がって少し経つと――
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
. ･ . . . . .
.+ . . . °. . 。
. . ｡ . . . . +
' ‘ . . . . . ･ . . . . .
. . ｡ . . .
+ . . ゜ ゜ .
。 +
' ‘ . . . . . 。 . ･ . .
. 。 . 。 。
. . ゜ ゜ . . .
. ＿＿＿＿＿＿__
. //////////////_ヽ
. |ﾉジ|ﾉエ|ﾉン| | |
. | |┻: (･∀･| | | ｵｲｼｲﾖｰ｡
. ┌┴――――::┬┴┐
. └┬l￣￣l―┬┴┬┘
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ξ
, ,.┘ ､
l （ー ─）
|u. ! |
ヽ ´ノ
ﾎﾟﾃ (っ ヽ
ﾎﾟﾃ... / |)
((( ( /￣∪
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│ l .i ; i l |
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┏━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
自分が海底での仕事に
骨の髄まで取りつかれていることを
否が応にも知らされる事になった。
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. .; : ’ ' ，:‘.
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| .ﾊ ; ﾊ .|
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│ l .i ; i l |
| l i i .l |
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┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
それまでは海面から覗き込むだけだった海底の世界の、
飽くことのない美しさや不思議さは、
一度経験すると、
そうそう簡単に忘れられるものではなかった。
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（ : : : . . . . --=ﾆ=--- . . . . . . __ ＿ ＿＿＿ ）
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（ : : : --=- . . . . . . : : : . . . . ----==ﾆ::..... ＿＿ζ￣￣ -=---- .）
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（ ::::::::::.............. --=- --==ﾆ::... .,___ ´/ __,. ￣: :., __ ,.. . .--= ___ ﾆ==--- .....::::: .）
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（ 三三三三ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ:::::::::::.................... . . . : : ／ /::. :.:=--.i i:::::::. ..........＼ ` .......::::ﾆﾆﾆﾆ三三三 ）
） 三三三三三ニニニニﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ:.:.:.／ /:.:. :.:.:.:.:.:.l l::::::::. :::: o :::＼ :.:.:.:.ニニニ三三 （
（ 三三三三三三三三ニニニﾆﾆﾆﾆﾆﾆ.:.:.／ /:.:.: ::::::::::::' :::。::::. ::::::::::::::::` :.:.:.ニニニ三 ）
） 三三三三三三三三三三ニニﾆﾆﾆ: :. ´ rつ: .:.:.:.:. |::::::::::: o ::::::::. 。 ::::::::::::::::::.:.: : : . . .ニニ三 .（
（ 三三三三三三三三三三三三／. ..:. : : . . . : : .:.:.:.:.:.. . . :::::::::::: . . . . ..:::::::::::::. :::::::::::::::::.: rつ .:.ﾆニ三 .）
） 三三三三三三三三三三 ／. . ..:.:. : : : : : : : .:.:.:.:.:..: : : . . :::::::::::. . . つ :.:::::::::::::::.:.:. . . :.:.:.:.::::::::::::::.:.:.:.:.:.:.:.:.: （
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Ｏ
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／ ￣￣＼
／ -‐'ヽ
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. ヽ:::::::::::::: }
ヽ:::::::::: ノ
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.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
結局、できない夫は、
平身低頭詫びを入れて親方の下へ戻った。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
＿__＿
／ ＼
／ ﾍﾆヾﾞﾘン ＼(;;;;;(
／＝▲▼--▼▲＝) ;;;;)
| /（__人__）ヽ ;;;／|
＼ ｀⌒┃ｌ;;;; ／
/´`''" '"´｀`Y'・"｀`'j⌒ ヽ
{ ,ﾉ' i| ,. ,､ ,,|,,. ､_/´ ,-,,.;;l
'､ ヾ ,`''-‐‐'''"￣_{ ,ﾉi,､;;;ﾉ
ヽ､, ,.- ,.,'／`''｀,,_ ,,/
`''ゞ-‐'" `'ヽ､,,､,､,,r'
,ﾉ ヾ ,, ''";l
/=====､ ....====i、
,, ＜ ￣￣￣￣￣＞ 、
／ ＼
,. -ｰ─､ｲ ミ_〉
i ﾘ ､ ー＜／ ＿|／ ／}
! } ／ッ 三ﾞｉ､＜.＿＿＿,､＜ }人
｀ -─＜(,<／ ﾞｉY _,;ミト ヾヽ
_ ＼ | ゝ ￣￣ ! ヾ V
ミ_ッ-／｛ン |''─----──┴'｀､ﾉ
´'''ー(,＿＿_ ,.ッ
.
── ＿/::::/＿ |::::| |::::|──|:::::::::::::::::::::::::::::::|──────＿_────
──|:::::::::::::::::::::::| |::::| |::::|──￣￣￣￣|::::::::|── ＿＿＿|:::::|＿───
──￣/:::/￣|:::::| ￣ ￣──‐__＿＿＿_|::::::::|──‐|:::::::::::::::::::::::::::::|───
── /:::/ |:::::|─────‐|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|──￣￣／::::::::|￣───
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──────――――――――――――――――――───────
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――――――――――――／ ;,,,, ＼―――――――――
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────────―――/ ＿_ ＼──────
＿ ──────―― ,l ＼_ _／ ／ |──────
￣─ ＿ ――/ |ゝ|.,ヾ_ノ┰┰､ ∧∧ |￣＼ |￣|───
~~￣￣＼ | ￣ﾉ `~､￣￣" ＿＿| ＼| ∨ |／|／
ｌ､ (_人______ﾉ､ |
ヽ､ |i!i!i!i!i＼ ＼
──_______ ヽ＼!i!!!i!i!＼ ｌ二
─── ￣ヽ ＼ ＼ﾄェェア ／＼
───── ＼ ＼ ＼____--‐ ／
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┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
それ以後、決して弱音を吐くことなく修行を積み――
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
＼＼ ,-､ | |｜ !| |
＼ ,/ ﾉ | |｜ || | ! .／
＼＼ ､ ' ﾉ / ! |｜ || | | ／ /￣ ~/ ＿＿ ＿＿
ﾐ＿,＿､-'⌒ （ | l ! || | | ／ / /_＿_./ // /
(_ ヽ、 |｜ !| | //￣￣ / // /
. ￣ ¨ ''､ ヽ､,_＿ ! | || .| //＿＿ ＿_ / // /
ヽ、 _,､―--､,__ミ) |｜ || | / / / / /._Ｍ//_Ｍ/
＼＼ . ヽ ／ ヽ＼ ＼ ! | || | / / / / /
＼ │ f ＼ | | ! ! / / / /
＼ │ } ＼ ) ＼＼ ! ! ./ / / /
し ＼ ﾉ ＼＼ | | / /μM/ / / ＿ ＿ ＿
. ＼ゝ__＿-'´ し'/ ./μM/ / // // /
＼＼ ¨¨･･，＼＼ 。 て_ /M//M// /
＼ ＼ ；， て_ / /
〜 /M/
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
気がついた時には
「三陸一の潜りさま」と呼ばれるまでになっていた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
＼ ＼ ／ ／
＼ ＼. ／ ／
＼ ＼ ／ ／ _,...-
＿__ }} / ＿,.. -
- _ ´ ｀ 、 |￣} _
／ ＿_ ＼| ﾉ _ -‐…‐-ミｯ ＿＿＿＿
＿＿ /⌒ヽ-‐‐- ､r‐{__ ／,.－ 、｀丶､____} { } r'{ ヽ.. ￣￣
〈 }＾′ ノ{ =={ ( ）ｉい}== ⌒}-‐}∧ '， ＿＿＿＿
{ ′ハ 辷彡 √ . イ:〃 ':ハ }.￣￣￣￣
八 { / ≧=‐-弋+ﾉ-‐=≦／ i{ {ﾑ 廴 ＿ -‐′..... ＿＿＿
＿＿. ＼ ∨ｉ 冖 / 八_ﾉ｢、 ＞-〈
￣. ＞‐-{ {＿＿＿＿＿＿＿__/ ___ Y ＼／ '，... ＿＿
＿＿＿＿. ／ 廴 ＿＿＿＿＿＿_ 〔＿_} | ｀V ⌒ヽ }.. ￣￣￣
／／ﾉ i| ∧ .ﾉ r‐:}＿＿}￢ __
／ く／ i| r──‐ ､ / '， -‐ i { ！ 〕 | ┐}
_へ } ／∧＿__￣￣｀＿___/ { │ _}‐ｧ､_｢ | |｣
,ｨｧ⌒i ヽ∠.イ_i∧ ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ＼＿ 」__∠斗､ 〔_{ﾆニ) } |.ノ ＼ ＼
にし ´} ｢’ Y´/ ー‐ｧ──ｧ‐‐冖‐-t:{ {＼ _》， {ﾆニ) {___｣. ＼ ＼
}ﾆﾆン / 介/ /{＿ / ＿＿ ハ ､ ヽ 》，{ﾆﾆ) } 〉
￣＼_/／ / ＿ /:{＾ / 三三} /⌒ 、 ＼:ﾑ￣ /
〈 {└一 . ′| { ￣￣ .′│ ＼ 〉￣￣
く｀ヽ ｀冖¨´ |: ＼＿__／-‐￢ |＾ヽ--‐′
r￢{＼ ／ ＼ _ 小、 ﾍ∨ _∧ ﾉ
ｰ-{ ＼ヽ{f⌒ くｰ＜ ｰ--‐≦､}／ ⌒ヽ _
〉 〉:｢￣⌒ヽ. ﾑ { ∨ヽ
. / /．| ／ Ⅵ} _} { '，
/ /． .| ／／ / 八 f三} 八 '，
- ｝ /． 人 ／ ′ ';个ｰ-‐ 〈 ':∧'，
/ く/ ≧=／} Ⅵ{ ∨:∧ ∧〉
. ′ 〉=ｰ-----く / Ⅵ ∨:∧ ∧
＼ .／＼ ＼ __ .′ ｀マ , 〉⌒ヽｉ 〉
/ ヽイ／ ＼ ／fぅ＼ ∨{ }⌒ヽ
./ ／ ／ い r 〈 ｰ一＜ |7＿r‐､
.＼ .′ （こ__ -‐ ′ | |ﾍ． ．|￢| | }
｀￣￣￣￣￣ | | ＼． _.」、.| | |
〔 {:＿ ヽ-‐＜ ,' | |┐|
| ￣￣￣| {リ一'
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そういった実績が認められ、20代の後半には、
全国から優れた潜水夫を集めて、
伊東（※）の水産試験場で行なわれる
『深海潜水講習会』へも参加することが出来た。
※伊東：現在の静岡県伊東市（当時は田方郡伊東町）
当時の写真など： ttp://fish-exp.pref.shizuoka.jp/06information/ito-his.html
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,;ミ | .--i .--i .|┌―┐|:::Ｔ:: .--i .--i |;:::::::::|
ミゞ | i___| i___| .|..| :: :;;;|..|:::.|;... . i___| i___| |::::::::::|
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ミゞゞミゝ ,,, ,, __ ￣￣￣￣ __ ,,,
ｿミゝﾐゞ;;;; | |i | |i ,,
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,.┘ ､
l （● ●
| !
ヽ -ノ
. ﾎﾟﾃ (っ ヽ
. ﾎﾟﾃ... / |)
((( ( /￣∪
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
やがて日中戦争が始まると、
陸軍の潜水部隊に配属されて
満州鉄道の橋梁工事や沈没船の引き揚げ作業に従事した。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
／´￣￣￣￣ ｀＼
／ ＼ . . . .―=ミ
/ '. ,. : : : : : : : : : : : : . ,
| |￣゛ /｀ヽ、 | ／: : : : :／^＾⌒ｿVヽ: ＼
____. | .| : : : : : :/ ⌒ }ﾊ: ヽ
___＿.. . . -―:. :. :. :. :. :.＼ | ;;;（ ● ） （ ● ） | : : : : : / ー=ミ }/V
＼:. :. :. :. :, :.'ﾞ:. :. ;,__:. :. :. :.ヽ | .´"''",. '| "''"´ | ; : : : : :/ rtぅ ､＼_ ,___ {
___／:. :. :.／:. :. :. :. :. :⌒＼. :. :. |.. J l }:/⌒V 、 ｀¨¨ fぅﾐ｀〉
＞:.／^＾⌒〉 :. :. :. :. :. :. :. :. :. : | /... ノ{ ﾝ〈 〉 r {｀ ,′
／⌒7 / ___ ＼:. :.／ ヽ:. :. :. :..}. 丶 ｰ-‐ ｰ-‐ /. |ヽ __/| / 、 ⌒ﾌ j
. 〉_／rtfｱ V:.}〈 ﾊ }:. :. :. :.{. ヽ / 〈: / /: | こ‐- /
. 〉 } ｀ / }/ ﾉ_/ /:. :. :. :. ＼ ヽ / ＼ __,/ { : { /:{ /
| / 〉 r=彳:. :. :. :. :. :..〉. ゝ ＿ ／ﾞ|ヽ ∧ ／ / 八: :＼___／: ∧_/{
{_∠ | }/＾＼:. :ﾊ/{ | / :{／ ] /{／ l ヽ: : : : ／: : : : ﾊ
Lー- ／ ∨ ／＼ -=ﾆ二／| ヽ{ ／ ∠＼ ＼ ｌ ＼: : : : : :/}/
} ／ | ／ ∠-=ﾆ二/ /:{ .. -____/}／￣￣｀ 、=- ｀¨¨¨ﾌ
└‐ ヘ l ／ ∠二二ﾆ／[ヽ{____ ... -=ﾆ ／ ＼ ﾆ=- {＼___
ヽ ／ ∠二二二 ///＼____________ ∠ ヽ ﾆ=- _〉 ＼ﾆ=-
/∧ . . . -――=ミ 二///{ ／ 、 ￣ /二二＼
/〈 . : ／}/V{ﾊ/＾ヽ}＼ /// ヽ / / ＼ _______／|＼二二
-=二〈／:／ ⌒ 一 ヽ/{ __... ´/; ,:} / ＼ |//ヽ二
∠二二/ .: :/ -‐一' / r-=≦ ＼ //} ／}/ | / :| / / / :} ＼} /|///
∠二二ﾆ//.: :ｌ ,ｨぅﾐ rtぅ､ { ､ .//ノｲ /-- ､ |／/ 从{‐{７} ∧ / ／ :|//
/二二二 // { : | ､___ノ/ { ヽ ノ ∨〉 _／ / //＾ヽ| / rtzｧﾐｘ/ ／tﾃ ｧ / / },′ j}/
. /二二二 ///⌒ヾ ⌒ﾌ ﾞ; / {〈（ |:/ ｰ一'／ { ー' / / / /′
〈二二二 {/八 {〈 _ } _j{ﾊ ＼__{ ､_ 〉 .:}/
＼__ ´ _, /|＼ ∧V从/ _ ／
|＼ _／ -=ニ=- { ＼ ＼ ´ｰ ,
/{ ｀ ..,_＿___／ 二二二二二＼ ＼ ＞ ..__／=-
-=ﾆ二{八 ／ 二二二二二二＼ ＼ / }ﾆ二二＼
. ∠二二二八 ＼＿＿＿＿__,／ ／二二二二二二 ヽ ﾆ=- ..___/ 〉二二二ヽ
∠二二二ﾆ///＼＿＿＿＿＿_____,／//二二二二二二二‘， _____＿,／{∧二二二
. /二二二二/// { ／////二二二二二二二二‘， V∧二二
{二二二二/// ﾞ ､ _.. 'ﾞ ////{二二二二二二二二二} _/ V∧二
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
そして、同期の潜水夫たちのほとんどが戦死した中で、
なぜかできない夫は生き残った。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
／´￣￣￣￣ ｀＼
／ ＼ . . . .―=ミ
/ '. ,. : : : : : : : : : : : : . ,
| -―''" "''―- |. ／: : : : :／^＾⌒ｿVヽ: ＼
____. | ＿＿＿ ＿＿＿ |. /: : : : : :/ ⌒ }ﾊ: ヽ
___＿.. . . -―:. :. :. :. :. :.＼ | ;( |:::::| | | |:::::| ﾉ | . : : : : : / ー=ミ }/V
＼:. :. :. :. :, :.'ﾞ:. :. ;,__:. :. :. :.ヽ | ｀ミ三彡 '| ミ三彡 |. ; : : : : :/.::::::::::::::::::::::::::::::::::{
___／:. :. :.／:. :. :. :. :. :⌒＼. :. :. |.. J l }:/⌒V 、 ::::::::::::::::::::::::::::::: 〉
＞:.／^＾⌒〉 :. :. :. :. :. :. :. :. :. : | / ノ{ ﾝ〈 〉 :::::::::::::::::::::::::::::,′
／⌒7 / ::::::::: ＼:. :.／ ヽ:. :. :. :..}. 丶 ― ― /. |ヽ __/| / 、 ⌒ﾌ j
. 〉_／ ::::::::::::: V:.}〈 ﾊ }:. :. :. :.{. ヽ / 〈: / /: | こ‐- /
. 〉 } .:::::::::::: / }/ ﾉ_/ /:. :. :. :. ＼ ヽ / ＼ __,/ { : { /:{ /
| / 〉:::: r=彳:. :. :. :. :. :..〉. ゝ ＿ ／ﾞ|ヽ ∧ ／ / 八: :＼___／: ∧_/{
{_∠ | }/＾＼:. :ﾊ/{ | / :{／ ] /{／ l ヽ: : : : ／: : : : ﾊ
Lー- ／ ∨ ／＼ -=ﾆ二／| ヽ{ ／ ∠＼ ＼ ｌ ＼: : : : : :/}/
} ／ | ／ ∠-=ﾆ二/ /:{ .. -____/}／￣￣｀ 、=- ｀¨¨¨ﾌ
└‐ ヘ l ／ ∠二二ﾆ／[ヽ{____ ... -=ﾆ ／ ＼ ﾆ=- {＼___
ヽ ／ ∠二二二 ///＼____________ ∠ ヽ ﾆ=- _〉 ＼ﾆ=-
/∧ . . . -――=ミ 二///{ ／ 、 ￣ /二二＼
/〈 . : ／}/V{ﾊ/＾ヽ}＼ /// ヽ / / ＼ _______／|＼二二
-=二〈／:／::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ/{ __... ´/; ,:} / ＼ |//ヽ二
∠二二/ .: :/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ＼ //} ／}/ | / :| / / / :} ＼} /|///
∠二二ﾆ//.: :ｌ.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::{ ､ .//ノｲ /:::::::::::|／/ 从{‐{７} ∧ / ／ :|//
/二二二 // { : |::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::∨〉 _／ / //＾ヽ| / :::::::::::::::::/ ／ :::::::::: / / },′ j}/
. /二二二 ///⌒ヾ ⌒ﾌ ﾞ; / {〈（ |:/ ::::::::::::::::::／ ::::::::::::: / / / /′
〈二二二 {/八 {〈 _ } _j{ﾊ ＼__{ ､_ 〉 .:}/
＼__ ´ _, /|＼ ∧V从/ _ ／
|＼ _／ -=ニ=- { ＼ ＼ ´ｰ ,
/{ ｀ ..,_＿___／ 二二二二二＼ ＼ ＞ ..__／=-
-=ﾆ二{八 ／ 二二二二二二＼ ＼ / }ﾆ二二＼
. ∠二二二八 ＼＿＿＿＿__,／ ／二二二二二二 ヽ ﾆ=- ..___/ 〉二二二ヽ
∠二二二ﾆ///＼＿＿＿＿＿_____,／//二二二二二二二‘， _____＿,／{∧二二二
. /二二二二/// { ／////二二二二二二二二‘， V∧二二
{二二二二/// ﾞ ､ _.. 'ﾞ ////{二二二二二二二二二} _/ V∧二
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
足に負った怪我で終戦を待たずに除隊したからではあるが、
潜水中の事故ではなく、
爆撃を受けた火薬庫の爆発に巻き込まれてのものだった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
,,､ -''／
イ ／,r ''了 ／ 了
/ /,/ /／ ,／,r､- _,,,､ -ｰ ―
/ /:/ // _/'. /ﾚ '' " ,､ ／
ｲ / / __/: l／ / z- "/ ／
|. / /／＿_, /,､-''" / /
. l /.. | レ '''" / ,,､-' /., , / ,/ ′,)ﾞｉ /(,′
. ﾚ′ /(,.ﾞ| ,､-ｰｰ' ,､-'' " ,,､z.,.,,' ,, / / / / ' ﾞｉ, ﾞｉ , , , / ,/
' ,, / / /.... | r' l" ,､- '.ﾞ,; ;, ', , ' , ／ _,, ﾞｉ.,' .,-` ,. ',./ , ' ／
` ,. ',./ , '. | | / ,､ ''"ﾞ' , ';,_,', ,',_,;' , ' ／ ´ r" ／ ;, ', , ' , ／ _,,
;, ', , ' , | | /／. ＼,( , ′ ),／ ／ .-´ _,-´_,', ,',_,;' , ' ／ ´ r" ／
,',_,;' , ' ／. / | /√. ﾞｉ r / _,."_,..) `-"_,,.-´ ／ -" ),／ ／ .-´ _,-´
′ ),／.....| ／.´ _,-´,i| ,;,＼ ﾞｉﾞｉ |ﾞ// ／,;, |i,:"／ ) _,,.-´ ,_ r / _,."_,..) `-"_,,.-´ ／
゛-/ |／..,..) `-"_,,.-´ ／ -" ﾞｉ / ;, ';,／_,,.-´ ",.- ´ ヽ ,-",;, |i,:"／ ) _,,.-´ ,_
|ﾞ// ／,;, |i,:"／ ) _,,.-´ ,_;、 ,;' V ';, ,.;'/ _,.-´ _,-" ﾞｉ.. ｬ――z ';,／_,,.-´ ",.- ´ ヽ
/ ;, ';,／_,,.-´ ",.- ´ ヽ ,-" /,／`;"' ,/_,.-´ ,.-" ,_,,._ ノ..../ ／....';, ,.;'/ _,.-´ _,-"
V ';, ,.;'/ _,.-´ _,-" ゛-.,) , (,.-" .-´ lｰ ''''"￣￣" ￣￣｀'､..ﾞ,/_,.-´ ,.-" ,_,,._ ノ
/,／`;"' ,/_,.-´ ,.-" ,_,,._ ノ ,-´ _,..ﾞ∠,,､ -z ,r――― ''".ﾞ" .-´ _,._,,.-´
, (,.-" .-´ _,._,,.-´ _,.-´ ∴∴ , ′ (,..´_,-",::...､ '"´,､ィ /.... ,-" ,-´ _,-"_,,.-´ _,,
'-., ,-´ _,-"_,,.-´ _,,.. -´. - - ､ '" ,､ '":ﾂ / ／ﾞ '' ､ (,..´_,-",::.)_,,.-_,,.-´
∴∴ , ′ (,..´_,-",::.)_,,.-_,,.-´ .,-" ` , ､-' ,､ '´ / / ／＿ ／ ,､-'"/ _,,..-´
- . _,,..-´ ,.-' , , | ,､ '´ / / ｀',,､- ''" ,,,/..-" ヽ `､
` , -" ヽ `､ _,,.- "" ' '. '´ / ／l/ ／ ／. -＝― ） _,,..=
/／ ／ __／
∠ ／
| ／
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ｒ'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'ヽ
（ ／￣￣＼ .）
） ／# ヘ.:,：;'：＼ （
（ （○）（＜ ) u. | ）
） | | | （
（ l __｀___ # | .）
） { ｀¨┘ .ｌ （
（ { ,;；;#． / .）
） ヽ ノ （
（ ξ i ､＼： ; . ）
） | ! ／__｝ ； . （
（ _,,:;;#圭#;; ,-| . |ー-､/ ゞノヽ .）
） ;;;#圭｛_ i､___,l | | ； （
（ :;;;#圭圭圭）ｿ(___i）---| | ）
） ::;;;圭圭#;;: ゝ-i--i´ ； .（
（ ｀-ﾞ ）
丶〜'⌒'〇'⌒'〜⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'´
Ｏ
o
ﾟ
／ ￣￣ ＼
／ -‐' ＼
| （ ー）（ー）
| ｜ | 死ぬなら海の底でと覚悟していたのになあ
| ´ |
| ―― |
ヽ }
.-‐'"'ヽ.ヽヽ ', ､ ヽ;;､ /
.:.:.:.:.:.:.ヽ:.:.:.ヽ､ヽヽ､ ,ｲヽ -‐‐- ､
:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ:.:.:.:'.,､｀ ｀' , ､. ' ﾍ ',',＼:.:.:.:.:.:｀ヽ、
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ:.:.:.ヽヽ､ ｀` ﾆ､-_' 'ｨ:.:.ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
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人の運命とは、つくづくわからないものである。
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故郷に戻ったできない夫が直面したのは、
戦後の混乱と貧困だった。
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:::::: : : :: __,|_.,_|.| ..,- ''｀/ ｌｌ ヽ｀|.[＿|＿＿|,,.:::::::::::
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ｉ-‐‐::i┐＿_.,,|:|,;i~i#;;;-;i':~ ｀Ｊ . | | . |.|,_|,;_＿_:: ::: ::::: ::::
|l旦l;;|z|＿|＿|:|＼|;_;､_;;;__;#y! ..:Ｕ´Ｊ .|'|＿__i;;＿_,,i＿:::::::
|l丱l;:|lI|_＿___|.| ::: ::: ::: ::: ::: ::: :: ::: :: :: |.|_,|＿＿|,_;;::__::::::::
|l爿l::|k|＿|＿|」 : :: ::: ::: ::: ::: : : ::: :: :::. .ｌ,|;､＿|＿＿|_;_::::::::
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ヽ::: ﾉ
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┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
唯一の幸せは、妻とひとり息子が、
戦地から帰った自分を無事に待っていてくれたことだ。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
＿＿＿_
／ ＼
／ ― ―＼
／ （● ） （● ）ヽ
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＼ ｀ ⌒´ ／
／ ヽ ／￣￣＼
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∠___{:::::::::::::::|:ﾉ.ノ |从|ヽ|:::::::::ハl { `ー'´ ｌ
l::::::::::(| |（ ⌒） .(⌒::ﾉﾚ´ { ./
l:::::::::::ﾍ| ,, ､__, ﾘ:ﾉ ヽ ノ
l:::::::::::::l.ヽ .ノ:::::} ﾉ ヽ
l:::::::::::::l .ﾍ い::::::} / |
|:::::::::/"`￣7, へ「￣ヽ
|:::::::::| ｿ ヾ .|
|ルﾍ| .ﾊ ﾉ.|
. | | | .|
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
23歳で恵子と一緒になってから、
しばらくは子宝に恵まれなかった。
結婚してから5年が過ぎ、諦めかけていたところへ、
ようやく長男のやる夫が生まれた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
､i;:;:;l: : :.l l: : : : : : : : : : : : : : : :.r'／: :./;:;:;
,. -‐― 》 . ヽ;:;l: : //: : : : : : : : : : : : : : : :.l |: : :/;:;:;:;
/ ﾉ ｀､:.//-､: : : : : : : : : : : : : : //: : /:;:;:;:/ ...
', ＿＿＿＿＿＿＿＿ ',/ ￣~ ~￣//: : /:;:;／: :
. ∨ ／ ＼ i i i: : /／: : : :
∨ ／ .《 l l:／: : : : : : :
∨l ／ l ',: : ‐-. . . . . . . . . . . .l l: : : : : : : : : :
iﾊ | ´￣｀ ´￣｀ l ∧::::::::.... : :.:.:.::::::::::::::::l l: : : : : : : : : :
l ∨ | ,_ _ ､,,__.､ lﾊ ｀ヽ、::::::::::::::::::::::::::::l l: : : : : : : : : : .
∧ ヽ、_ | ｀¨¨´ ',､ ヽ::::::::::::::::::::::::::l l: : : : : : : : : :
/ ∨ ￣｀ ' ー- ､ ⊂つ ⊂つハ ヽ: : : ::::::::::::::l l: : : : : : : : :/:
/ , '´:∨ ｀ヽ （__人__） ／´｀ヽ ﾄ､: : : : : : :.l l: : : : : : : /: : ..
. //: : :／ヽ、 ', ／´｀ヽ、 ,.ゝ'," i^ti ｀ー- ､: :l l: : : : : :./: : : ..
. 《: : : / /: : ヽ、 '＞i_,.....,_ ﾄ,´o_,<.ﾄ'"ﾉ､ / ｀ ^' ヽ、::/: : : :
＼/ i:.:.: : : /｀ヽ、 ゝ ｀ﾞ'ー-- --y' / ｀ﾞ
＼ i::::::::::::i /｀ ー- ､ / r-'´¨
ー-､:i .l ｀ 'ー-- .,,__ ./ /: : ｀ヽ、
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
その後、下の子供には恵まれなかったものの、
終戦の年、やる夫は13歳のたくましい少年になっていた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
＼＼＼ | | // ／／
＼＼....__＿＿＿__ | | // ／／
_,./ ヽ. | / ／
/ ─､,,＿ _ヽ､-ｰ ､. / ／
〉 ｀Y(,＿ ） ）
(´ ─､,,＿ 入__＿__ク
｝ ＼_/ / ＿＿＿
｛ ─､,＿ ! ､! ／ ＼
ヽ ヽ／ ／（／ ＼ , , ／＼
＿ ＿ ヽ ￢─-ｰ" ／ ﾉ （●） （●） ＼. ＿ ＿
＿ ＿ ＿ ＿ ＿ ＿ _. ゝ､_ _Ｌ / ヽ （__人__） |. ─ ─ ─ ─ ─
─ ─ ─ ─ ｀゛ｰ＜ ／ ヽ |r┬-| ,／ ￣ ￣ ￣
∨ ヘ `ー'´ r'.二ヽ、
∨ ｉ＾Yﾞ r─ ゝ、
ヽ ヽ._Ｈﾞ ｆﾞﾆ、|
＼ ＼｀7ｰ┘!.....＼
/. ヽ ｢:ト ｲ.... ＼
/ | ＼＼
／ / | | ＼＼
. ／ / | | ＼
／ / | | |
／／ // | | |
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┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
長兄の田圃を手伝いながら、
さて親子三人でどうして食っていったものか、
と考えあぐねる日々がしばらく続いていたが――
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／￣￣＼
／ -‐' ＼
| （ ●）（―）
. | │ │ やっぱり潜り、だな
| ___´___ﾉ
. | }
ヽ !
. ヽ ノ
i⌒＼ ,__(‐- ､
l ＼ 巛ー─;＼
| ｀ヽ-‐ーく＿）
. | l
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
潜水夫として海に潜ることしか取り柄がない、
と考えたできない夫は、
漁業組合のみならず、
親戚や知り合いの家を一軒一軒訪ねては頭を下げ――
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
∧＿∧
（´Д｀ ）
/´ ⌒ヽ、
＿ | 1 へ、＼
〈 ,々ヽ | | / /
（⌒ヽ_ノ ι、 ヽ 曰
ヽ ＼/⌒'―― `ｰ'） ﾉ__ヽ
＼ ヽr――― '. ||酒||
(⌒ ） （＜二：彡）
￣￣ ｀ー‐‐‐´
／￣￣＼
／ .ノ ＼
| （ ●）（●）
. | U ｜ |
| __´___ﾉ
. | u. }
. ヽ }
ヽ ノ
／ ⌒ﾟ '"'"´
/ ,＿ ＼ ＼＼ ＼
と_＿＿）_ヽ＿つ_ヾ_つ
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
かなりの借金を抱えて一隻の中古の漁船と潜水道具一式を揃え、
今度は、海産潜りで生計を立てる道を選んだ。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
-‐-ﾐ
／ γ''ヽ } i!
{ { ,}厶ミ ||
|∨ ＼/ ｀` , ||
/二∨二二二≧s｡ |｀` . Ｏ ||
＼ ＼ / ｀`〜､、 ｀` ., ｏ＿＿|＿__,ｏ | |:
＼＿／ ｀`〜､、 | ｀ヽ, ￣￣||￣ | | l
＼｀ . ｀` ､、 ＼ ＿嵒,,＿＿_ | | .l
丶､ `ヽ､ `丶＼ |＿| |＿_||＼＼| l
`ヽ ＼ ｀丶､|＿|_|＿_||__ {〔 ,∧
＼ ＼ ｀'＜＿_/ ｀`'弌=A
＼ ′ ｀'く トミｚｚｭ
∨∧ ｀丶､| |匚[i|'，
∨∧ ｀'弌＿|∧
＿＿＿＿＿＿＿＿＿_.∨∧ ￣￣7＿＿＿＿＿＿＿
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::∨∧ ノ｀`'ﾆﾆ^ｉ __ {::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::γ⌒⌒⌒ ∨∧ __ノノ｀´: : : : 乂_, ｰｰ┐ √⌒.:.:.:⌒丶､､､..,,: : : : : :
.::.::.::.::.:::::::::::::::::::::::::::乂 ⌒丶，V∧ ,;' ノ: : : : : : :ノ⌒' ´´⌒ 丶＜⌒.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ノ´:::::::::::::::::::::::
''"~::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀~^丶､ ⌒ヽ､､//´: : : : : : : ′: : : :／: : : : : : ノ⌒ 〜〜〜〜'′::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::／⌒ヽ )＾V. . . . . . . ／: : :_:_: -‐〜'^~::::::::::::::::::.:.:.:.:.:.:.:.::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:., --'´. . . . . ｀｀''ﾆﾆ〜〜'''""~~^~´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ノ´: : : : : : :::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::.::.::.::ｒｰ'´. . . ^⌒_彡'´.:.:.:ノ´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::⌒´: : : : : : ::::::::::::::::ノ:::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::)シ〜''^~⌒.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::〜⌒::::::::::::::::::::::::::::::::
ﾁｬｯﾎﾟｰ
┌───────┐
│ ＿＿ │
│ γ / ヽ|/ │
│ (8o=- ◎ │
│ <--⊂|_ ) │
│ ヽ_ ヽ_) │
└───────┘
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
幸いにもこの目論見はうまくいった。
食糧難が続く中、
鮑や海胆が、獲れば獲っただけいくらでも売れたからだ。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
┌─────────────┐
│ ,、 ,. ,_, .│
│ Ⅵ{Ｖ}V }/|／（, │
│ ≧ｘ::Ⅵ:.:// .l ／彡 . │
│ ＿≧ｘ :..＼Ｖ 孑≦三=- .│
│ 孑 ≧／小-=≦.::=-三- .│ ／￣￣＼
│ Ｚ=-／ Ⅵ `'<ミ= ≦-Ｚ .│. ⌒ ⌒ ＼
│ ７／ ./:}/Ｖ:.ト ＼ ミ≧ｘ ....│ （⌒ ）（⌒ ） | ぬれてにうに
│ ^ｱｲ K:.Λ:. ⅥＷ iﾄ､ｘ ..│ | | | ぬれてにうに
│ }/} ､ ‘、Ｖ Ⅵ{⌒ │ | ___｀___ |
│ }Λ|Ｖ１ﾍ「⌒ │ | `ー '´ |
└─────────────┘. ヽ /
> ＜＿ r ､
,''''つ／）/ i ヽ ! !(,ヽ
/ /／／ノ´) / ）ﾄ .| | | | i
〈 Y ∠／／,' ) 〈 〈 .| | | |/ ./
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
小野寺できる夫はその時に集めた一人で、
弟子の中でも最も優秀な潜水夫となった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
/￣￣￣￣￣￣ヽ
| , － - |
| / （● ●） |
| ゝ -'- ﾉ |
ヽ＿ ＿＿＿＿/ | ./
Ｖ . ＿＿＿_ |/
/＿,-―-､_ヽ[]
,、 _ |￣━ ◎o━￣| _ ,、
〃￣ヽ| |￣ヽ￣ ﾟ´￣/.￣| |/´￣ヾ
i i| | 〓 ￣￣ | |i i
ヽi―j"|└────‐.─┘|ヽi─j"
|￣| ｀i￣ ./￣￣ヽ￣ i´ |￣|
／￣￣＼. 〔||＿||〕 .iヽ､二二二二 /i 〔||＿||〕
／ 「 へ ＼. ||Π|| |]|└┘||─||└┘|[| ||Π||
| （●）（●） | [二]. L| ＿ || |l |三|.|｣ [二]
. | ｜ |. [|@i |｀i￣i´|￣|｀i￣i´| i@|]
| __´___ ｊ ｀" . | ,‐‐､ | .| ,‐‐､ | ゛´
| } ┷､___/ヽ ,‐､___/ヽ
ヽ }. | | | | | | | |
ヽ ノ |_ | | _|. |_ | | _|
i⌒＼ ,__(‐- ､ |_|二|_| |_|二|_|
l ＼ 巛ー─;＼ []〈＿_〉ヽ /〈＿_〉[]
| ｀ヽ-‐ーく＿） l|[ニ二ニ] [ニ二ニ]|l
. | l
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
息子のやる夫は、15歳になった年に、
潜水夫になると言い出したが、できない夫は猛反対した。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
＿/＼／＼／＼／＼／＼/＼／|＿
＼ ／
＜ やる夫も潜水夫になって ＞
＜ 親父の跡を継ぐお！ ＞
／ ＼
￣|／＼/＼/＼/＼/＼/＼/＼/￣
∩＿
〈〈〈 ヽ
＿＿＿_ 〈⊃ }
／⌒ ⌒＼ | |
／（ ●） （●）＼ ! !
／ :::::⌒（__人__）⌒:::::＼| l
| |r┬-| | ／
＼ ｀ ー'´ ／／
/ ＿＿ /
(＿＿＿） /
＿＿. ＿/＼／＼/＼／|＿
／ ＼. ＼ ／
／._ノ三ﾆヽ、＼ ＜ 駄目だ！ ＞
| （⑪）（⑪) │. ／ ＼
| | |「ｒ ￣|／＼/＼/＼/￣
| ´ | .＼ ＼┌ｰｚ＿_ ┐７
ヽ , ィ==‐､/ /￣￣乙/ ／
ヽ ﾉ⌒) ∨/ ／￣￣／|
/ (_￣__／￣`く.＿ __∠ -┘｣
| /〃 ＼ '" ＼ -┘
| ./¨＼ ＼,_ ｀`ヾ}
人''" ＼ ､__ ｀ ､_/ ﾉﾉ
〈 " ＼ __.ヽ ヾ､._,)'´
／,ﾊ. ヽ. ､__｀ン{ 〃 グシャ！
く / ∧ !､_ ｀'_,／
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
自分は好きでやってきた仕事だからいい。
しかし、可愛い息子がやるとなると話は別である。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
／￣￣＼
／ ヽ､. _ノ ＼
| （●）（●） | 潜りってのは、
| | ｜. おめぇの考えてるようなのじゃねえ！
. │ ___｀___ |
| }. 潜水夫になると言うのは――
ヽ }
人＿__＿_ノ"⌒ヽ
／ ＼
/ へ ＼
（ ヽγ⌒) | ＼ ＼
￣￣￣＼＿＿／￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
｛;;;;;;;｝
L;;;;」 _＿＿＿┘(
／＼ ／ ⌒
／（○） （○.） ＼ やると言ったらやるお！
／ （__人__） ＼
| |::::::| |
＼ l;;;;;;l ,／
／ヽ `ｰ´ ｨ⌒ヽ
rｰ'ゝ 〆ヽ .)
ﾉヾ ,> ヾ_ノ,ヽ}
ヽ ヽ| ヽ_ノ
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
潜水夫になるということは特攻隊に行くようなもので、
どれだけ危険な仕事かを口が酸っぱくなるほど言い聞かせたが、
息子は聞く耳を持たなかった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
,r'ﾆﾆﾆヾヽ、 ＼/〈 //ﾆﾆﾆヽ、
（"´￣￣ヾ）） ＿＿〉,ヘ （（/￣￣｀ﾞ`） ＿/＼／＼／＼／＼／＼/＼／|＿
| 、ィ_ﾉと)' ／"＼三／"＼ (つ（_,,ｱ |! ＼ ／
i| ｀ ｲ_／ .／(（○）)三(（○）)＼ _Y |!. ＜ 親父が許さないのなら、 ＞
.ヽ、 ' （ ／ ｀ﾞ（__人__）'" ＼ / ` / ＜ ＞
＼ ＼l i| |! l／ ／. ＜ 家を出て他の親方に. ＞
l|l ＼ ＼ ､i|,/⌒ヾ､|!;, ／ ／ |l ＜ 弟子入りするお！ ＞
＼ ヾ `ー一'´ ｨ ／ i. ／ ＼
ヾ、 ｀`"´ ／ ￣|／＼/＼/＼/＼/＼/＼/＼/￣
ﾟ |! Ｙ ｨ |! ｡
,. ' ､/ ヾ ´ ’ ｀
ﾟ, i! `| ゜､l! i|!; ﾟ ゜ ｡
／￣￣＼
／ノ（ ＼
| ⌒ -‐' へ l
| u（○ ）（○ ) ! ぐぬ〜〜っ
| ｜ u |
| .U __´___ !
ヽ !
ヽ ノ
/ く
/ ヽ
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
結局、できない夫はしぶしぶながら承知した。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
それから4年、
やる夫もようやく一人前の潜水夫になってきたかと思っていた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
: :┌────────────────┐ , . 'ヽﾞ. : . ､. : : : : : : ﾞ.､.ﾞ､: : : -
､ﾞ│ ＿＿＿ │ , ' . . . : . : ,. ',: , . : . :',. : . : . : ﾞ ､. : ﾞ､. : . : . : .ﾞ､: ﾞ､. :
│ ／ ＼ │.... : . : . : ,.'. : . : . : . ',: . : ', ',. : .',. : . : . : . :ﾞ､. : ﾞ､: : : : : : : ﾞ､: ﾞ､:
. :│ ／ ＼ , , ／＼ .│. : . ; ,.' . : . : . : : , ': ,' ;. : . : . ;:',. : . : ',. : . ', ',. : .',: : : : : : : : .ﾞ､. : ﾞ､: : : : : : : ﾞ､:
. :│ ／ （●） （●） ＼ .│..ﾞ'. : .,' ,':' . : ; . : . : , : ,':, . : ;. : . : ..;.',. : . : ',. : . ', ',. : ..',: : : : : : : : : ﾞ､. : ﾞ､:: : : : : : : ﾞ
､ﾞ│ | （__人__） | . │ﾞ: . :,'.,' . : . : . : . :. :,. :,'. : . : ;. : . : . ; ',. : . : ',. : . ', ',. : : '; : : : : : : : : :.ﾞ､. : ゛､: : : : : : :
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／ < Y.| i l ! | | | | ,: l lﾊ
{ ヽ/｜.! i .| | ! i: :l l }
＼ ∠ >-' | i | | .i |＞'´
ゝ====辷ｿ'´ j=ニﾆｔ___{ ｜
/７ {＿ } Y=r'x=个 ､
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r{ ｛ ー-====彳 T_{ .|-k.ﾘ-'
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三三三三三三三三三二ミヽ、ニニニﾆﾆﾆニニニニ二二二ニﾆ ｀ｰ - _.: .: .: .:.:.:.:.:`弋ﾆク ＼） ::::::::::::::::::::::::::::::::::
三三三三三三三三三三三三`ミxニﾆﾆニニニ二二二二二二二二二 ｀ _.:.:.:.::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
三三三三三三三三⌒ヽ三三三三≧xニニニ二二二二二二二二二二二ニ ｀ゝ__:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
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三三三三三三三三三三三三 ｀==‐⌒ヽ、二二二二二二二二二二二二二二二二ﾆﾆ ｀ー､:::::::::::::::::::::
三三三三三三三三三三三三三三三三三ー‐ｭ､二二二二二二二二二二ニニニニニﾆﾆ ≧:::::::::::::
三三三｀ヽ三三三三三三三三三三三三三三三ﾄ､三三三二二二二二二二二二ミxニﾆ＝＝＝==(⌒ー
三三三三 }三三三三三三三三三三三三三三三） ）三三三三二二二二ﾉ⌒二二ニニﾆﾆﾆ＝＝＝＝＝==ミｰ ､
三三三三 ｀ｰ-､ へ三三三三ミx三三三三三三三三ミx三三三三三｀ー'二二ヽー-､ニﾆﾆﾆﾆﾆ＝＝＝＝＝===ミx
三三三三三三三三｀⌒ヽ三三三｀ヽ三三三三三三三三三三三三三二二二二二二ミxﾆﾆﾆﾆﾆﾆ＝＝＝＝＝=== ⌒ｰ ､
三三三三三三三三三三三ー-三三三三三三二二三三三三三三三三三三三二二二ニヽﾆﾆﾆﾆﾆ＝＝＝＝＝（
三三三三三三三三三三三三三三ヽ、三三三三二三三三三三三三三三三三三三三三三三三二二二二ﾆﾆﾆ ｀ー ｀ー＝＝===
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二二二二三三三三三三三三三三三三三三三｀ヽ三三三二三三三三三三三三）三三三三≧ー-‐へミ ﾆニ二二二二ニニニﾆﾆﾆ＝＝
二二三三三三三三三三三三三三三三三三三三｀ー､三三三三三三二二二＜三三三ノ´ ﾆﾆニニニ二二二二ニニﾆﾆ
二三三三三三三三三三三三｀ヽ三三三三三三三三三三三三三三ヽ三三三三｀ー二ﾆミ __ ⌒ー-､__ -イ ｀ーへ二二二二ニニﾆﾆ
三三三三三三三三ヽ、三三三三｀ー-ミ三三三三三三三三三三三三｀三三二二二γ⌒｀ヽ __ツ ヽ γ´ ﾆ二ﾆ`ヽ二二二ニニニﾆ
三三三三三三三三三｀ー三三三三三三｀ー三三三三三三三三三三三三三r―‐ 'ニ二二ﾆﾆヽ （ ﾆﾆ二二二二｀ー-､二ニニニ
三三三三三三三三三三三三三三三三三三｀三三三三三三三三三三三γ ﾆﾆ二r‐ ､二二ﾆノﾆ ﾆﾆニニ二二二二二二二ニニ
三三三三三三三三三｀ミ三三三三三三三三三ヽ三三三三三三三三三ノ三三ノ´ﾆ二 ヽ二 （二ﾆﾆ ﾆﾆﾆニニニ二二γ⌒ー二二二二
三三三三三三三三三三三ー､三三三三三三三三三｀ヽ三三⌒ー-､γ三三三三三三三三三ヽ二ニニﾆヽﾆニニニニ二二ノ二二二二二二二
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
その矢先に、あの取り返しのつかない事故が起きた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
その時、できない夫は漁船を改造した作業船の上で、
海底のやる夫がつけている命綱を握っていた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
-‐-ﾐ ┌───────────────────┐
／ γ''ヽ } │ ／￣￣＼ │
{ { ,}厶ミ │ ／ ＼ │
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＼＿／ ｀`〜､、 | ｀ヽ, ￣￣||￣. │. |:::::::::::::: } │
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丶､ `ヽ､ `丶＼ |＿| |＿_||＼＼.│ ヽ:::::::::: ノ │
`ヽ ＼ ｀丶､|＿|_|＿_|.○ │ /:::::::::::: く │
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∨∧ ┃.'弌＿|∧
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.::.::.::.::.:::::::::::::::::::::::::::乂 ⌒丶，V∧ ,;' ノ: : : : : : :ノ⌒' ´´⌒ 丶┃⌒.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ノ´:::::::::::::::::::::::
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┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
この綱の引き具合で、
海底で作業をしている潜水夫と連絡を取り合うことになる。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
綱が4回引かれ、上がるぞの合図が来たあと、
籠いっぱいになった鮑と一緒に、やる夫が浮上してきた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
. ／￣￣＼
. ／ ＼ : :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. :
. | ┌ ヽ : : : :
. | ( ●) (●） : : 上がってくるのが .: :
. | ｜ | : : : :
. | _´___ﾉ : : 少しばかり速いな…… : :
. ヽ } : : : :
> ノ : : :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. : :
/ ＼
（ ヽ ゝ i
￣￣￣￣ ＼__(⌒)(⌒)ノ￣￣￣￣￣ ＿,,,,,,,,,,､.----―ｰ'''''''"
＿,,,,,,,,,,､.----―ｰ''''''''''""ﾞ￣
＿,,,,,,,,,,､.----―ｰ''''''''''""ﾞ￣
--―￢'''''''""ﾞ￣ ＼＼ ｲ / // ＼_
／ ＼＼ . /￣/ // ,∧
,ｉ］ .||..|| .lﾞ ./ヽ,,,ﾒﾞ‐─,,,,- 、 ,ﾘ゜ \ ／／
. _ ._ lﾞ,! .ﾞ＼＼,//｀‐ｲ. 〃⌒ヾ ｀ ､,/″ ﾞl,べ
. ＿//＿//＿[][]....| | `''ﾆヽッ|i ヽヽハ (,〜')) ﾞく .,〔 / ＼＿
. /＿ .＿ .＿/ /八 ,/ｿ′.i (-○) ~=二 i Ｖ Ｖ゜ ／/
// / /..... _,,イ,八 .＼ .／／ .ゝ ヾ （(,,;;;;)） ﾞﾞl ん,,,／. /
. l/ /./. ,,／_,,,l|′ ＼,, ﾞ'''ヽ. ／／ ヾ ~=''＾ _,,,,,lヽ,,ﾚﾞ／ ,,,l―-ｘｉi,,_
_, // /７Г|ﾛﾛ.... ,/＼,ド/ ｀''ｰﾆ 二ﾆﾞ‐'" ／ ／ ｀
. ~. / / | |..... |;､ ﾉ ^ヽ､ ,.,ゝλ,v ,r', .;l, ,r' 〈 .,; ,l
~^'""~~~, . ､<､../_/ |_|..ヽﾉ ＼r,∧,､. ﾉl,/ .ﾚゝ, ／ ., ,:ゝ､ , . ;,i~^'""~~~~^'""~~~~^'""~~~~^'""~~~~^'"^~
〜〜~ 〜〜 ~〜 ﾛﾛ┐.....〜~~ 〜〜 〜~ 〜〜 〜〜~ 〜~~ 〜〜~ 〜〜 ~〜〜〜 〜~
~ 〜〜 ~~ 〜〜.ﾞ/_/ ~~ 〜〜~~~ ~~ ~ 〜〜 ~~ 〜〜 ~~ 〜〜~~~ ~~ 〜〜〜
〜 ~~~〜〜 ~~ 〜〜~~ 〜〜 ~ 〜〜 〜 ~~~〜〜 ~~ 〜〜~~ 〜〜 ~ 〜〜 〜〜 ~ 〜〜
〜〜~ 〜〜 ~〜〜〜 〜~~ 〜〜 〜~ 〜〜 〜〜~ 〜~~ 〜〜~ 〜〜 ~〜〜〜 〜~
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~~~〜〜 ~~ 〜〜~~ 〜〜 ~ 〜〜 〜 ~~~〜〜 ~~ 〜〜~~ 〜〜 ~ 〜〜 〜〜 ~ 〜〜
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
ちらりと思ったことを今でも鮮明に覚えている。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
昼飯のためにヘルメットだけを脱ぎ、
船べりに腰掛けて――
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
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.:.:.::::. .: . :. :. :) .: .: . . . .乂 .: .:.:::: :::.....:::: .:...... .: .:.::::..ノ ⌒ ㍉ .: .: .: . :. :. : .: .: :⌒二ﾆ=---- .: .: .: .: .: .: :⌒ .: .: .: ;; ,; ,; . :. :. :.:( .:
.:.:.:::::::::::.......... .... .. ..... . .: .: ⌒ ¨¨¨¨¨ )´ ⌒ ー彡 . . . . . . :) .,,, ,; ,;.⌒).: .: ...::::::::::::::::::::::::::::::::::::........... .: .:. ; .... .: .: .: .:. :. :.: .:.:(⌒ ,,, .::::
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. :.: .: .:. : .: ) ....:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::). :. . ..' ( ,; ,; .: .: . .... .............::::::::::::::::. . .. . :::::::::::::: . . .--=ﾆﾆ⌒ .: .: :::: ⌒ー
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⌒ヽ .:.:.:.:.::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::....⌒㍉ . . . .. .: .: . :: . ..... .. .. ⌒㍉.: .:. :. :. : .: .:.: .:. :. :.: ノ ⌒ --==ニニニニニ=- .: .:.:::::::::
...:.ノ .:.........).:: ::::::..ノ⌒) .::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.... ⌒ ｰ===--- __ . . ...... .: :. :⌒ ¨¨¨¨¨ 二ﾆﾆ=- --- .: .: . :: :ノ. :. :. : . :: 二ﾆ=---
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♀
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｜
ｒ―┴,ｫ -ｭ
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￣￣￣￣￣￣￣. ￣￣￣ | │. - - 、 │
＿＿＿＿_ | , -_= i │ / ( ・ ・ ）ヽ │
||8 ﾟ ﾟ_゜゜：! .! .// :::i_ │ ,、 _. ゝ（_人_） ノ.. _ ,、 .│
||8 〃.〃 ヽ r(X）二ﾆﾍ :!_{ │ 〃￣ヽ| |￣ヽ /.￣| |/´￣ヾ │
||8 {{ {{ }-'.ﾉ|＼ ､_j ｆ.｜x │ i i| | 〓 ￣￣ | |i i ..│
||8 {{ {{ 「 :| ＞‐＞ｉ │ ヽi―j"|└────‐.─┘|ヽi─j" ..│
||8 、 ゞ._,ﾉ :! |￣|（）||＿|＿_l＿_.|｛＿. │ |￣| ｀i￣ ./￣￣ヽ￣ i´ |￣| ....│
||8 ｡ ㌻ ! |＿|／￣￣￣￣￣￣＼、 │ 〔||＿||〕 .iヽ､二二二二 /i 〔||＿||〕 │
´ イ} i／ 'XXXXXXXXXXXXXX＼ ○. │. ||Π|| |]|└┘||─||└┘|[| ||Π|| . │
イ }レ' ／. 'XXXXXXXXXXXXXXXX.ﾞ（Vヽ..ﾞ＜. [二]. L| ＿ || |l |三|.|｣ [二] │
. イ .｝レ' ／. 'XXXXXXXXXXXXXXXXX ＜＞.....､.│ [|@i |｀i￣i´|￣|｀i￣i´| i@|] .│
| ｝ レ' ／. 'XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX......│ ｀" . | ,‐‐､ | .| ,‐‐､ | ゛´ │
レ' ／／XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX└────────────────┘
.
──────────────────────────────────────
/ i 人 ノ
,' ' ,_,,ノ `─-‐' ヽ l
. ぴ i ∴;;;;｀､ l ∴ /
. た ,: ' " `丶. | .ノ;;;;;=-´ .l. ;;;;;; ／
, :´ . ｀､ ^::;;;;;;;;;; l ::::゜j /
' . ; .丶､__. l ∴ ／
__.,:´ . ' ' ｀､ ＼......‐ l. ヽ
__/´ ヽ. 簍鸙鶸鑼 ; `V´ )..ﾞ＿ '. ヽ
-v´ ＼ Yヾ.ﾞ駲刪櫑躪 . ' ';....' ヽ
＼ ヽ ヾ ヽ 順棚斷. ' , ;..._
､ ヽ ヽ ヾ､ 鬱蹠撫.,,__,.,..ノ
──────────────────────────────────────
┏━━━━━━━━━━━━━━━┓
握り飯を頬張っていたやる夫が、
運んでいた手を休めて呟いた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
,,,;;;'''''' '''';;;;;;,,,, '''';;;;,,,, ''';;;, ,,,,;;;;'''' ''';;;;,, '''''';;;;;;,,,,,;;;;;;;;''''''
''''''''' ''''''';;;;;;,,,, ''';;;; ;;'' ,,,;;;;;''''' '''';;;;,,, '''';;; ''''';;;;;;;,,,,,,
''''''''';;;;;;;;,,,, ; ;' ,,,,,,,,,,;;;;;'''' '; ''''';;;;;,,,
''''';;;;;;;,,,,,,, ''';;, ＿＿＿ ''' ' ''';
'''''''''''';;;;;;;,,,,,,, ,,,;;;,,,. ／ ＼ ,,,
,,,,,,;;;;;;;;;''''';;;;;;;;,,,,,,;;;''''' ''''';;;;;;;,,,,,.. ／ .＼ ,,,;;'''''';;;,,, ,,,,,;;;;''''''
,,,;;;;''' ''';;;''. ／ _ノ ― ＼ 親父、まずいお、ﾞ,, ,,,;;''
,,,,;;;;;;''''''' ;' ,,,,;;;,;ﾞ| （ー）:::::（ー） | しびれがきてる. ''';;;;;;;,,,,,,,;;;'''''
' ,,,;;;''''''.. ＼ （__人__） ｲ... '';;' ';, '''';;;;;''
''';;;,,,,, ,,;;;;''' ／´￣ .ｨヽ| ;, '';,,,;';,,;''
''';;, ,,,,,,,,,,;;;;;;;''''''''.. 〈 ￣ ‐- 、 i
'';;;;;;;'''';;;;;,,,,,,,,;;;;;;'''''''''''' ｀ ｰi‐ -、_ ヽ | l. ';, ,;
|| ヽ.て 〉 ..| l. ''''';;;; ,,,;;;''';;'
＿_/´ ヽ /⌒::| ＼_ '''';;;;; ,,,,;'';,
,;,, ,,,,,,,;;;;;;;''''''';;;,,,,,;'. ||三l |ノ-‐-‐-| |｀ー´ ,;''';,;' ;'''';;;,,,;''' ';,;'
,,,,;;;;'''''';;;;;,,,,;;;;'''''',,,,;;'' ￣ ヽ _,l- ､￣￣| .| ,;'' ;' ''';;;;,,,
;;;;;'' ''';;;;;''';,,,,;;;'''; ヽl´ | 〉 〈 ,,,;;; '''''';;,,,,
;;;''; `-‐´ ヽ_＿ｿ ''''';;;;,,,,,, ''';;,
.
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
| , |
iｊ ,,..イ |
l _,,,...イ´ | |
ヽ、ヽ ＿_,,..-t''"´:::::::::::| l |＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿∧,､＿__
| ヽ:::::::::::::ノ / .| ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣V｀´￣￣
ヽ、 ￣ ／ |
｀ |
| |
U iｊ |
|
|
.｜ |
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┏━━━━━━━━━━┓
明らかに潜水病、
つまり減圧症だった。
┗━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
浮上速度が速すぎると、
それまで水圧によって血液に溶けていた窒素ガスが気泡化して、
毛細血管の先に詰まってしまうのが原因だ。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
__
／ x ＼
〈 Ｏ. .Ｏ 〉
|ﾄﾄﾄﾄl|
｀￣´
／＼
／:::::::::::＼
／|::::::::::::::::::::|＼
|::::::::::::::::::::|
|::::::::::::::::::::|
|::::::::::::::::::::|
ソ災爻イ : : : : : : |::::::::::::::::::::| : : : : : : : :
淡淡淡淡ｙ : : : : : |::::::::::::::::::::| : : : : : :
攣戀淡爻ﾙ ｒっ : : : . . . . : : : : : : : :
攣彎鬱爻;';';';';'; : : : ＿＿ : : : : : : : : : : :
鑾戀彎攣i淡;';';' .: .: .: : : : : : : : :. γ / ヽ|/...: : : : : : : : : : : : .: .: :
戀彎戀彎淡;';';';';';', .: .: .: .: .: . : : : : (8o=- ◎ : : : : .: .: .: .: .: .: . : . :
八箋蘂箋蘂淡爻;';';';', .: .: .: : : : : : : <--⊂|_ ) . : : .: .: .: .: .: .: . : . : . : . : : :
⌒≫洲从灸炎￢ｨ(ノ(＿ .: _ .: .: .:. :. ヽ_ ヽ_) ..ﾞ: .: .: . : . : . : . : . : . : . : . : : : : : : :
ノＸ《《从 ＞<⌒Ｘ⌒＞<ｒﾍノ く : : : : : : : : .: .: .: .: .: .: .: . : . : . : . : . : . : : : : : : : : : : : : :
xXﾉノ⌒Ｙ ﾙ'⌒}h､イ__/´ ﾄ-‐` : : : : : : : : ＞-‐┐. : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : : : : : : : : : : : : : : : : .:.:.:
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洲洲⌒ ノ_ノイ⌒Ｘ⌒ヽ＜ﾟ)二><i. : : :イﾉﾉ((乂乂ﾉﾉﾙｲﾉﾉ(ｎ㍉: : : : : : : : : : : : .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::::::::::::::::::::::::
乂辷し'⌒シイ(乂__乂_ 乂__)ノｨシﾉ乂乂_从ﾉﾉ((比此乢圸ﾉﾉノ.:.:.:ｎｎｎ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::::::::::::::
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悪くすると、脳障害を起こした上に、
ｻｲﾅ
体中を襲う激痛に 苛 まされながら、あっけなく死にいたる。
潜水作業に付随する多くの危険の中で、
最も怖いのが減圧症だった。
※減圧症について：ttp://www.sugipro.co.jp/kouza/contents/genatusyo.html
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
ほんのちょっとした関節の痛みやかゆみ程度であれば、
その後の潜水を休めば、数日で体は元に戻る。
しかし、症状の程度がそれをはるかに超えていることは、
. ﾏﾌﾞﾀ
瞼が半分閉じ、
蒼白に変わりはじめた息子の顔を見てすぐにわかった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
＿＿＿
／ ＼
／ .＼
／ ＿ ＿ ＼
| ::::::::::::::::::::: |
＼ （__人__） ｲ
. ／´￣ .ｨヽ|
. 〈 ￣ ‐- 、 i
:｀ ｰi‐ -、_ ヽ | l
|| ヽ.て 〉 ..| l
. ＿_/´ ヽ /⌒::| ＼_
. ||三l |ノ-‐-‐-| |｀ー´
. ￣ ヽ _,l- ､￣￣| .|
ヽl´ | 〉 〈
`-‐´ ...ヽ_＿ｿ
_ -‐- ､
/´ ヽ
ｉ ｉ
|ヽ:::::::::::::ノ |
（●)::::(●) | やる夫！
| | u. |. ふかすからな！！
ｶﾞ __｀___ /ｉ
ｼ ﾍ ｀‐‐′ ／ ｲｰ-._
ｬ ,=≠‐/￣ゝ―≦ﾞ￣;;;;;;;;;／`ｰy､__
ｨ;;´;;;;;├|､ヽ;;;;;､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ノ┐ｰ'´;;;;;;;;;｀ヽ
|;;;;;;;;;;;;;;ｉ┤;;;;;;;;;;;;;ｌi;;;;;;;;;;;;;;;/ヽ/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i
.ﾉ;;;;;;;;､ヾi |;;;;;;;;;;;;;;;ｉl;;;;;;;;;;;;;;i 丿;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ﾉ
ﾑ-‐-､;;;ヾ!;;;;;;;;;;;;;;;ｌｌ;;;;;;;;;;;;;ﾄy"-‐―-､;;;;;;丿
}′: ヽ/;;;;;;;;;;;;;;;ﾊ;;;;;;;;;;;;;;/ ﾉ . ﾚ;′ ｶﾞ
ﾉ' .::. ノ ﾉ;;;ー‐一';;;;;ー‐∨ ./´ ﾉ;;;| ｼ
〈, ヽ､i/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ゝ'"..ノ ∠;;;/ ｬ
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
こうなると、もう一度ヘルメットを被せて元の深度まで戻し、
別の潜水夫が付き添いながら、
長時間かけてゆっくりと浮上をやり直す、
いわゆる『ふかし』をするしかない。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
できない夫は、すぐさま自分も潜水服を着込むと、
息子の体を抱きかかえて海に潜った。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
i! /
i! / _,ｨ＞}.}
＿ 〈:::7 ／´ | l ＞>
,へ r＝=-≠￣ ＜ﾑﾏvf C＜ ｀ ,
／' _ヾ.、､_ ⅵ'´ j ヽい! |
ヾ.､ ／, ,' .ﾏ j ﾑ寸 ノ
f´ヾ ' r.{ゝ ﾏ .-=-j___ﾉ｀! ﾏ、 ／:::ﾑ
ヽ !.... { ムvﾍ_____／ ,｛ﾐ7Oヽj !:::ゝ-イ:::::::::::::ム‐-- ...,,_
ヽ |..... 弋 i {::ﾑヽ ､＿＿___」rﾑﾆ◯., !ﾑ::::::::::::::::::::::::::7￣ ‐-≧zｭｭｭ
ヽ !.... ＞- _____ﾏ:::ﾑ ＜＿＿弋ゝ'-＜ l .l ｀::::::::::::::,r'二 ‐-､ 7二ニヽ
|-┐ ______', □ - ‐z !__ ﾏ::::/ ￣.ヽﾘ ゝ ミノ
l l , -'´ ___ ｀丶､､-- ‐‐コf¨j} .! .Ⅳﾑヽ ゝ幺 ゝリ---ゝﾆ彡′
l＿l ／ 凵 ＼. ゝ'__.l !Ⅵﾑ ヽ, ｀＞＝=‐彡
ﾞ|ﾞト-‐‐--------─-──ｰl ﾞｉ _,___
__ ,＿|,| .| | i二二二二二i | . |. |‐- , -.￣ ''‐|_|ゝ＼
. /|_ト-──‐‐‐ﾆ>| ! | |/_＿_____＿_＿_ヽ| . l | :| | :l ｀'く
. /:/-'゛ | ! .! !__＿___,____＿___,___＿__| |.' :| l ! ヽ
/ ! | .|＿___＿____＿＿____＿________.| | !. ! ﾉ .ﾉ
! │ .! l | |.! ! ___,,,,／／
. 'l＼ | ､.! .! ＿＿__ .＿＿__ :| | ! ゝ--''´＿ ／l
ゝ ＼ ﾉ lｉ :! | ﾆﾆﾆ l. ! ﾆﾆﾆ l | | ゝ-, -‐i'´ ￣ .!
Tヽ二二二_ ノ .! .| .! ﾆﾆﾆ | ! ﾆﾆﾆ | ! | ヽ ヽ _|
. l ! .! .! ! ﾆﾆﾆ | | ﾆﾆﾆ | | | ヽ _ ／ ､
〈｀ヽ､ .,∠､ .! ! ! ﾆﾆﾆ | ! ﾆﾆﾆ | | ! , = ､ _| i
/ ､_｀ｰ ､|ﾞ/゛,／＼.! | .! ﾆﾆﾆ | .￣ .! ﾆﾆﾆ | |, -''／,∠‐' ´''/､_, ‐':-､
＼, ヘ､ .| │ ~'´し- | ﾆﾆﾆ | ---.| ﾆﾆﾆ | ---l─/ﾞ./ /, -‐'／
ヘ ､／.ヽ l ＼_ ￣ ￣゛＿___ ￣ ￣゛ ./ .!l ,ノ _,／
,_j::::::::::: ﾞ‐‐ｧ~'7 ￣‐‐ ￣| l、 l、|￣￣￣￣ .'l、.!ヽ , -‐'´｀￣
＼ ｀ミzr:/ / .! .T !! .! ! ヽ
‐- __／＜
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┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
あの日、別な要因が重ならなければ、
やる夫を死なせることはなかったかもしれない。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
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:'/ /' / / ,:'/。っつっっつっつﾟﾞ'/,。 。 /' / / ,:'/,: ' / ' / . ' / ' /
/,: ' / ' / __っﾟー＝＝っ。つ つ。っっつ.ﾞつっつﾟ/ / ,:' / / ,:'/,: ' / ' /ﾞ/ ,:'/,: ' / ' /
/ / ,,,ｒ'"~ __。っつっっつつﾟっっつ。. 。 。 / ,:'/,: ,:'/,: '.. / ,:'/,: ,:'/,: '
/' / ／ ,,ｒ'"彡三三。ヽ っ。つ っ。つ.. 。っつっっつっつﾟ....' / ' / / ' / ' / /
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.／ ／／／／／ ヾヾヾ っ。.,,ｒ'"~ __。っつっっつつﾟっっつ。.: : :::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
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...//////////彡彡ミ...。 。.....／／／／／／ ヾヾヾヾっっ。っ。っ彡彡ミミ彡彡ミミ....
ﾞi i i i i i i i i 彡..ﾞ。っつっっつっつﾟ..//／／／ i i i彡っっ。つﾟっ. ミミ彡彡ミミ彡ミ.:
ヾヾヾ。 __っﾟー＝＝っ。つ つ。っっつ/ / 彡彡ミミ===彡彡っ。。つ っ。彡彡ミミ彡彡ミミ彡
彡彡ﾞ,,ｒ'"~ __。っつっっつつﾟっっつ。////彡彡ミミ ≡≡≡彡。つ っ。≡≡彡彡ミミ≡彡彡
. ／ ,,ｒ'"彡三三。ヽ っ。つ っ。つ . 彡彡ミミ彡彡ミミ⊂彡。彡ミ≡彡彡ミミ≡≡ﾟ彡。ミミ
.／ ／／彡≡≡≡ミミ っ。つ。っつつ つっっ。三彡彡ミミ三.....: : : : :::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;....
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ﾞ/////// / 彡彡ミミ===彡彡っ。。つ っ。彡彡ミミ彡彡ミミ彡彡ミミ彡彡ミミ彡彡ミミ彡ミミ
...////////彡彡ミミ ≡≡≡彡。つ っ。≡≡彡彡ミミ≡彡彡ミミ彡ミミ≡彡彡ミミ彡彡ミミ
ﾞi i i i i i i 彡彡ミミ彡彡ミミ⊂彡。彡ミ≡彡彡ミミ≡≡ﾟ彡。ミミ≡≡≡彡彡ミミ彡彡ミミ彡ミミ
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それを思うと、歯ぎしりしたいほど運命が呪わしくなる。
潜ってからいくらも経たないうちに、
急に天候が荒れだしたのだ。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
無線もついていない小さな船では、助けも呼べなかった。
息子を抱いてやむなく浮上し、
高いうねりに弄ばれながらようやく船を桟橋につけたが、
「しびれがきてる」という船上でのつぶやきが、
できる夫が聞いた息子の最後の言葉となった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
,｡─ ､ ｡─ ､
（｡｡ ｡/｀= = =.'//（.｡ ｡ ｡）
,〃⌒ヽ._//=__ // _［ i ］
.＿＿＿ （┌┐ノ_((⌒＼三/ヾ《/◯）((＾)
|| l_l | i ヾ__../ / / //⌒ヽ ＼＼》二i ﾛ ll l
||__l-l__|_|_ _ill/ / / // ミ ） ヾ-i,,-ii|＝||=|＿
| i三|.||i０/ / / //ヾ==〃 ||：|,!｀!《：：〉
|≡ l三|.|||<：￣＝￣：》//i＾〉_〉＼ ヾ：.ヾ):,,,,:）
|￣￣￣|〔￣￣￣￣〔iﾛi/!/V/> ＼__／ヾ===
.::.::.:.:.:.:.: .:.:. .:. .. . ,.ィ┬ 、 . . . .: .:.:. .:.:.:.::.::.::.::.::.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.::.::.::.::.::.::.:.:.: .:.:. .:. .. .
_,r{ ll~「r'⊆ヽ､
.:. .:. .. . ,. -＜フ´ {‘ {`弋ﾆ {
, `､Λ}､_ ﾉ:::::::ﾌ ﾉ
/ } ､} {:::イi {
,' ﾍ ｀''V.,' i´_Ｔ ｌ
,' ヽ ｿ ; /ｌ V
} ` ’､ / ,／::| ',
i ゞ、 ∧ '´ / へy ', . . .. .: .:.:. .:.:.:.:.:.::.::.::.::::::::.::.::.:.: .:.:.:. .:.:. .:. .. .
} ／ ￣`; ノ´⌒`、 ﾊ、_ . . .. .: .:.:. .:.:.:.:.:.::.:::::::.::.:.:.: .:.:. .:. .. .
} ／ : : : : : :｀ - '´V: : : : : : :-'´ : : : :ヽ . . .. .: .:.:. .:.:.:.:.:.::.::.::.:::::::::::::::::::::::::::::.::.::.:.: .:.:.:. .:.:. .:. .. .
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{/ : : : : : : : : : : : : : : : : : :＼ : : : : : : : : ／: : : : : : ヽ
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
その日を境にできない夫は潜水の仕事をやめた。
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.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
無線もついていない小さな船では、助けも呼べなかった。
息子を抱いてやむなく浮上し、
高いうねりに弄ばれながらようやく船を桟橋につけたが、
「しびれがきてる」という船上でのつぶやきが、
できない夫が聞いた息子の最後の言葉となった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
,｡─ ､ ｡─ ､
（｡｡ ｡/｀= = =.'//（.｡ ｡ ｡）
,〃⌒ヽ._//=__ // _［ i ］
.＿＿＿ （┌┐ノ_((⌒＼三/ヾ《/◯）((＾)
|| l_l | i ヾ__../ / / //⌒ヽ ＼＼》二i ﾛ ll l
||__l-l__|_|_ _ill/ / / // ミ ） ヾ-i,,-ii|＝||=|＿
| i三|.||i０/ / / //ヾ==〃 ||：|,!｀!《：：〉
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|￣￣￣|〔￣￣￣￣〔iﾛi/!/V/> ＼__／ヾ===
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_,r{ ll~「r'⊆ヽ､
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, `､Λ}､_ ﾉ:::::::ﾌ ﾉ
/ } ､} {:::イi {
,' ﾍ ｀''V.,' i´_Ｔ ｌ
,' ヽ ｿ ; /ｌ V
} ` ’､ / ,／::| ',
i ゞ、 ∧ '´ / へy ', . . .. .: .:.:. .:.:.:.:.:.::.::.::.::::::::.::.::.:.: .:.:.:. .:.:. .:. .. .
} ／ ￣`; ノ´⌒`、 ﾊ、_ . . .. .: .:.:. .:.:.:.:.:.::.:::::::.::.:.:.: .:.:. .:. .. .
} ／ : : : : : :｀ - '´V: : : : : : :-'´ : : : :ヽ . . .. .: .:.:. .:.:.:.:.:.::.::.::.:::::::::::::::::::::::::::::.::.::.:.: .:.:.:. .:.:. .:. .. .
/／ : : : : : : : : : : : : : :ヽ:_:_:_: ノ／: : : : : : ＞-、_
{/ : : : : : : : : : : : : : : : : : :＼ : : : : : : : : ／: : : : : : ヽ
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
その日を境にできない夫は潜水の仕事をやめた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
船と道具を売り払って手にした現金のほとんどは、
それまでの借金の返済で消えた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
／￣￣＼
／ -‐' ＼
| （ ー）（ー）
| ｜ |
| __´___ﾉ
| }
ヽ }
ヽ ノ
／⌒ ヽ
. / ＼ Y´￣)
/ ＼|＼＿／
| ヽ、__)| ／￣￣￣＼
| ヽ￣⌒Ｙ￣￣⌒ヽ . ／ ノ ヽ ＼
＼＿＿＿y ﾞ|＿__ｨ.. ／ （ー）:::::（ー） ＼
￣￣￣￣￣￣| | |.. | ´ u. |
￣￣￣￣￣￣| | ￣ |. ＼ ⌒ ／
{＿__ﾞ) {＿__ﾞ／ ゝ ィ'ヽ
／ ＼
/ ｨ r ＼
| `|| |ヽ ヽ
/⌒ヾ| | |, |
ヾ___,ｿl │（､__,ﾉ
| |
l Y´ /
ヽ, （ ,/
ヾ | |
≒;| |
(.（"＿｀ﾞ_）
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
ﾌ
その後、やる夫が死んでから半年あまりも臥せっていた恵子が
ようやく床から上がれるようになると、
世話になっていた長兄の家を出て青森に移り、
できない夫はかつぎ屋の商売を始めた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
＿＿＿
,..:´:::::::::::::::::::::｀:.､
,r'´:::::::::::::::::::::::::::::::::::＼_
,:':::::::::::::ハ:::::::ハ::::::::::::::::ﾍ＼
lハ:::::::::|ノ|从|ヽ､ﾏ|:::::::::::::| ＼
ﾚﾍ::●) （● ）|::|)::::::::|￣￣
|:::i ＿ .,,. |/:::::::::::|
|::ゝ. ｵ:::::::::::::|
|::::::｀i＿__{´:::::::::::::::::|
／￣￣＼. |, -‐|,.へ／─- ､:::::|
／ ＼. / y v .∧::|
| -‐' ヽ､ |..... / .( .) ∧|
| （ー）（ー） │. / ｌ .|V ∧
| ｜ │..ノ /|＿＿＿＿__| | |
l __´___ │ {_２__//: :/: :|: :ﾊ: : : : lrｪﾘ
ヽ /.... /: :/: : | : : ﾊ: : : :ﾑ
／:ヽ .ノ,'ヽ､--､/: :/: : :|: : : : ﾊ: : : :ﾑ
,.-‐,ｨ‐"/ゝ.ヽ.＿__ノゝ::::::::ヽ､:::ヽ ^^/^^^/^^∨^^^^
/／::_,､/,';;;;;;;ﾞ;;;;;;;;;;;;;";;;;;|:ﾞ､::::_::ゝ､ヽ/ ∧ ∨
ﾉ:::i￣／/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l::::/::::::::::::l:::ﾞi. / .＼__∨
/::::/::::｀ヽ,';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|／:::::::::::::::l:::ﾞ,.ﾞ/ ご_ノ
|:::::|::/::,ｨ'";;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ﾞ､::::::::::::::::/::::､
l:::::;/:/: :|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|::::::::::::::::::l::::::ﾞ,
i::::/,': : |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;lﾞ,::::::::::::::::ﾄ::::::}
〉/,': : :/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|ヽ.::::::::::::::::ゞｲ
/::/ﾄ: : : ヾ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ﾞ､ヽ::::::::ｲ::::::|
. ',::::ﾞ､ヾ: : :l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ:ヾ::::l::::::|
',:::::l /: : :|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|: :ヽ:::::|
',:://: : .ィ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|: : : ＼
}/ }: : /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|: : : : 〉
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
かつぎ屋稼業もそろそろ3年になろうとしていた。
いつまでも姉の嫁ぎ先でやっかいになっている訳にもいかなかった。
なんとかして、この商売で、
恵子と二人で独立出来るだけの銭を作らなければならない。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
肉体的にはひどく辛い仕事だったが、
体以外の元手なしに、
まとまった現金収入が得られる唯一の商売だった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
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:::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾞ／￣￣＼ﾞ:::::::::::::::::
:::::::::::::::::::: ／ _ノ ＼
:::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::::（ー）（ー ） u. | ::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::: | ｜ u. | :::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::: l __｀___ |ﾞ:::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::: :::::::::::::::::: { ｌ:::::::::::::::
:::::::::::::::::::: :::::::: :::::::::::::::::..ﾞ{ u. /
:::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::::::::::::: :::::::::: :::::::::::::. ゝ <
::::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::::::: 〃￣￣〃￣￣〃￣￣〃 ヽ ｨ'⌒ヽ
::::::::::::::::: :::::::::::::::::::::::...... ll/////.ll/////ll///.（⌒´￣￣ ￣ 〉
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::::::::::::::::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::::::::. ヾ､ ＿＿､＿＿＿､＿__ヾ､_ノ | ) )
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
いや、それにも増して、
ｲｼﾞ
自分の体を酷使して苛めつづけることが、
19歳という若さで死なせてしまった息子に対する
ｱｶﾞﾅ
できない夫なりの 贖 い であった……。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
□
┌──┐
└──┘
┌──────┐
└──────┘
┌───────────────────┐
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└───────────────────┘
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│ │
│ │
└──────────────────────────────────────┘
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
辛い過去に思いを馳せている間に、
閉じた瞼にうっすらと涙を滲ませたまま、
できない夫は眠りに落ち始めた。
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＿__. { " _____,ィ' '.,. ';, '''';;;;;''
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／ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ＼ニﾆ/. ...:::::: :,''';;;;;,,,,;;;;''''''';;,, ,,,;;''
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ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ＼ :::::::::::::::::::::::::|. ,. --― …… ´―-- .,. ' ''';
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ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ＞ ´ : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ: ハ ''
ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ｀ヽ ;''''''
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
そして、徐々に眠りが深くなるにつれ、
ｲﾀﾞ
自分をかき抱くようににしているできない夫の体が、
畳の上でさらに丸まり、小さくなっていった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
・
・
・
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・
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┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
それからおよそ2時間後、
青森港を午前6時30分の定刻に出航した
青函連絡船下り三便『洞爺丸』は、
定刻より5分遅れで函館桟橋第一岸壁に接岸した。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
Ⅵi, | | |｜ Ⅵ | |
∧ Ⅵi, | | |｜ Ⅵ | |
＿_,| |＿＿＿_Ⅵｉ | |￣Ⅵ Ⅵｉ | |
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昭和29年（西暦1954年）9月26日、午前11時5分のことだった。
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┌─────┐ﾞ丶＼ ＼ヽ丶丶 ＼ ＼ ＼ ヾ 丶 ヽ丶 丶 ＼ヾ
│ 函館市内 │ ゝ丶＼ヽ ゝヽ丶丶＼ ＼ 丶 ＼ 丶 ヾ丶＼ ＼
└─────┘.＼ 丶 丶 ヽ ヾ ゞ 丶 丶丶 ＼丶 ヽ ＼ ＼丶＼
＼ 丶 ヾ 丶ｖ ＼ ヽ ＼＼ ＼. 丶 丶丶 ＼丶 ヽ ＼ ＼丶. .、 ヽ
ヾ丶＼ 、＼ヽ 、丶＼ ＼丶丶 丶丶 ＼丶 ヽ ＼ ＼丶／,,;;;;／ ,,,
ヽ 、ヾ 、ゞ ヾ丶 ゝ丶＼ ゝヽ丶ヽ ゝヽ 、ゞ ヾ丶 ゝ／,,,;;;／ 册册
ヽ ＼ 丶＼丶ヽ＼ 丶 ヽ ヾ ゞ＼ヽ ゝヽ丶丶 、／___／ _,. 册册
＼ 丶 ＼ ヾ 丶丶＼、 丶丶ヽ ＼ ＼丶 ヽ ＼／ ／| _,.-r'| | 册册
ヾ丶＼ 丶 ヽ丶 丶 ＼ヾ ＼ヽ ＼ ＼丶 ヽ／ ／ ,..| | | | | | 册册
ヽ 、ヾ ＼ 丶 ヾ丶＼ ＼ ＼ ヽ＼＼丶ヽ/'~T.,.／|川 j_l,.r-'¨ 卅卅i_,
ヽ ＼ ＼丶 ヽ ＼ ＼ヾ丶 丶丶丶 /,.T¨il i l l l川__,,... -‐ ￢¨
＼ 丶 ＼ ヾ 丶丶＼、 ヽ ＼ ＼. ,l:lj|川_'¨三.ノ____,,,,,
,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ＼ ｌ j|:il|‐/jlllllllllll/|＼ ＼ ヾ ＼
__,,.. ．-‐ '''""~" ．;",:;".;．.;．,:;"．;．"．;"=='-i,jl| jj| ﾛｺ | ﾛｺﾖ ∠二∠ 」
．;．;"．;．;";"．;．;"．．;．;";．;．,: ;．;"． 三三 ' -f, .i田l| |目田|
．;．;"．;．;"．;．;"．;． ,:. ;;: ;．;"．;．;"．;．;"．二二二' -|.,_.j| |l.l.l l.l.|
"．; ;"．;．;" "．;．．; ．;"．;．．;"．;．;"． -------------' - .,_ j! ﾆ二|
．;．;"．;．;";"．;．;",:．;．;"．;． ;．;"．;．-------------------'' - .,_j|
"．; ;"．;．;"．;．;"．;．．;"．;．;"．; ;"．;．; _______________________________________￢
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
横殴りの風が戸板をガタガタいわせはじめた。
夕方5時ごろ、一時は嘘のように穏やかになった天候が、
それから30分もしないうちに再び荒れだし、
午後の6時を回ったあたりから、
かなりの強風になってきた。
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ィﾞ ヽ
ゝ、 ,,イ
└'￣￣ﾞ┘
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／ ＼ : :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. :
／ ノ ヽ､＼. : : : :
／ （ ＝） （＝）＼. : : やっぱり、 : :
| _' | : : これから吹き返しが来るな―― : :
/ ∩ノ ⊃ ／. : : : :
( ＼ ／ ＿ノ | |. : : :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. : :
.＼ " ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
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自宅の茶の間で夕食後の茶を啜りながら、
小野寺できる夫は
窓枠に補強の板を打ちつけた方がいいだろうかと考えた。
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六畳間と四畳半に台所だけという質素な造りの住宅ではあるが、
できる夫にとっては、
親子三人が水入らずで暮らせるかけがえのない城だった。
寝部屋に使っている四畳半では、
妻の節子が満1歳をすぎたばかりの長女を口ずさみながら寝かしつけている。
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｡o≦ ｀ .
-＜ __ ＼
__∠ 斗 _ ヽ
'⌒ ／ / ヽ '，
. _／, ′ / / ｉ ｌ V:ﾊ
⌒ｱ { ' ｨ ｨ | ┼‐{- | : | i
. ' V { 斗-ｫ ﾄ ﾄ､{ ハ | : | }
ｉ ' Ⅵ／/ { /ﾊ{ ＼{ｨﾁ示ﾐ | : |
|i ｉ: ｉ l ,ｨぅ笊㍉ 乂ツﾒ| : | { ♪〜
|l |: { 八 Ⅳ Vツ , ,| : | {
. И八 { } 乂, , , ﾊ: :| '，
. }' )八 |: :込、 、 ノ .ｲ^ }: | : : : .
. }) | : :}「 ≧s｡ _ ィｉ〔 } {: :{s｡ __ : :∨)=ｧ､_
}.｡|: : |:「V 「⌒ｉ } } ｨV:{^Y 「r</ｨ / }^y
. ィ / | : :| } v V { ,ｨ⌒「{ V:ﾊ{ i } ゝﾚしｲノY
{ { j: :/ノ / ≧=-=≦ } { '，}: }{ lﾉ { { },ﾉ
. V: / { / 〈 _」L ___j } 八: {.v〈^＼_i__j_ ィ^y
. v /: / ﾉ ,厶´￣ Y ￣ ｀ ＜〈iト､ }/ / { /
. ﾉ ,ｲ : : : : :: : : : :: : : : : :: : : V / ｉ } {
/:{ / ' / ' ｀⌒´ '，. . . . '，:v' , } ,ﾉ
. /: :V / ' . . . . . :i: : : : : : : : : i: : :}: :} / / {
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. /: : : : ﾄ､:.、'，ｉ : : l: :i : : |: : |: :|: : : : ,: :/ ｲ / , ﾉ､
/: /: : : } 个o｡.乂 _j_ L: :_j_:_」_.j: :ﾉ: /: イ/ / /: : : .
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／ 八: : / : :〉' / j | ｌ | ｌ l { V: : : : : : : : : : : : : /
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台風15号のせいで戸外は荒れ模様だが、
この小さな家には確かな温もりがある。
そう思うと、なんといえない幸福感に浸らずにはいられなかった。
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／ ⌒ ⌒ ヽ
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／ ー‐ ヽ ( ::)
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それにしても、ひどい風雨になってきた。
こうして物思いにふけっている間にも、
ますますひどくなってきたような気がする。
風向きも変わってきているようだ。
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/ / ,:'/, '/ / ,:'/, '/ / ,: /' / ,: ' / ' / :' /.. /´ ／ ｀ヽ/, // / ,:
/ / ,:'/, '/ / ,:'. :'/ /' / / ,:'/,: ' / ' / :'/ /' / / ,:'/,: ' / ' / / ! 弋.ノ ﾋﾞｭｩｰｯ,:'/, ' /
/ / , :'/, ' ﾞ, :'/ /' / / ,:'/,: ' / ' / :'/ /' / / ,:'/,: ' / ' / / ゝ... _＿＿＿_/ / ,:'/,
:'/ /' / / ,:'//,: ' / ' / / , , :'/ /' / , :'/ /' /
/,: ' / ' / / ,:'/, :'/ . . ,ｲ ,ｲ ,ｲ,ｲ ,ｲ ,ｲ ,ｲ,ｲ ,: ' / ' / / ,:' : ' / ' / / ,:'
/' / / ,:'/,: ' / ' / / ＿_/.ﾑ_/./ ﾚ'ﾚ' ＿_/.ﾑ_/./ ﾚ'ﾚ' ./' / / ,:'/,: ' / ' ' / / ,:'/,: '
:'/ /' / / ,:'//,: ' / . ヽ=, ,.--., .二7 ヽ=, ,.--., .二7 ､＿＿＿＿＿ / / /
/,: ' / ' / / ,:'/, :'/ . /″ .// /″ .// ,ｲﾆﾆﾆ Z ｀￣￣￣￣￣ ./ / i
/ / ,:'/,: ' / ' / /.il/,. // // /´ ,ｲ Z/ /' / / ,:'/ , | '
/' / / ,:'／ ｀ヽ.. iｌ// .|/' ./´ ./´ // / / ,:'/, ' / ' / /i il_
:'/ /' ! 弋.ノ ﾋﾞｭｩｰｯ,: /' / ,: ' / ' / :' /.. /´ / / ,:'/, // / ,:
,: ' / ' ゝ... _＿＿＿_ /' / / ,:'/,: ' / ' / :'/ /' / / ,:'/,: ' / ' / / ,:'/, ' / ' / / ,:'/,
:'/ /' / / ,:. / / ,: /' / ,: ' / ' / :' /.ﾞ／ ｀ヽﾞ´ / / ,:'/, // / ,:
,: ' / ' / / ,:'/, :'/ /' / / ,:'/,: ' / ' / :'/ /' / /....! 弋.ノ ﾋﾞｭｩｰｯ./ ,:'/, ' / ' / / ,:'/,
＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼.:.::::::.:.:.:.:.:..........:.:ﾞゝ... _＿＿＿_.ﾞ,: ' / ' / / ,:'/, ' /
＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ .:.:::::.:... ' / :' /.. /´ / / ,:'/,
＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼. ／ ｀ヽ. ＼ ＼ ＼ ＼:::::::::::::.:.:.:... /' / / ,:'/,: ' / ' / / ,:'/, ' /
＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ . ! 弋.ノ ﾋﾞｭｩｰｯ ＼ ＼' / / ,:'/,: ' / ' / / ,:'/, ' / ' / / ,:'/
＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼......ゝ... _＿＿＿_. ＼ ＼ ＼ ＼ .:....... ...:.:.:.::::::::::.:..... / / ,:'/, // / ,:
＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼.ﾞ/ ,:'/,: ' / ' / / ,:'/, ' / ' / / ,:'/
ﾆﾆﾆﾆ.ﾞ／ ｀ヽ....ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ7.ﾞ,: ' / ' / / ,:'/, ' / ' / / ,:'/,. ,:'/,
. ! 弋.ノ ﾋﾞｭｩｰｯ. ': |.:.:..... ......:.:.:..::::::::.: / / ,:'/, // / ,:..../ /
. ゝ... _＿＿＿_ |/' / / ,:'/,: ' / ' / / ,:'/, ' / ' / / ,:'/,. ,:'/,
;' ／ ｀ヽ |...,:'/,: ' / ' / :'/ /' / / ,:'/,: ' / ' / / ,:'/,
. ! 弋.ノ ﾋﾞｭｩｰｯ | ,: ' / ' / :' ／ ｀ヽ...´ / /
===============.ﾞゝ... _＿＿＿_ |....,:'/,: ' / ' / :'/ /' / /..! 弋.ノ ﾋﾞｭｩｰｯ.../ ,:'/,
／ || .;.|. ,: ' / ' / :' /ﾞゝ... _＿＿＿_. / /
/￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ヽ..../' / / ,:'/,: ' / ' / / ,:'/,
| ＿＿＿ |
| ／ ヽ､_ ＼ |
| ／（● ） （● ） ＼ 上野から |
| ／::: __´__ :::::: ＼ 夜行列車で無理してよかった…… |
| | ｌ^l^lｎー'´ | |
| ＼ヽ L ／ |
| ゝ ﾉ |
| ／ / |
ヽ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿/
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ｒ'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'ヽ
（ l=ﾆ二三γ了三ﾆ=l , ', ' ,'| ::| ', ' , ）
） ｀]｣＿ ,．' ,' | ::| ', ' , （
（ n /丁ｌ／ -‐ ' ４ ,' _| ::| ', ' , ）
） || ｀丁| , ' ｣| ,' ｜::! |{, ' , （
（ ,┌='_ﾆ二二三三 , '三三二ﾆ=ｭ｜::! || ', ' , ）
） |/｀ｴ,Τ_丁_丁_丁_丁_丁_丁Τｴ｜::! || ', ' , （
（ /lﾆ二二二三三三三三三三三二二| ::| ｚ TｌΤ￣Τ￣ΤT､ ）
） ﾚ|| _.Ｚ]ﾆ冖ﾆ冖ﾆ冖ﾆ冖ﾆ冖ﾆ冖ﾆ[｀|_Z. -┴┴―┴―┴ ' - .._ .（
（ ｢|￣￣￣￣ , ' ￣￣￣ -‐ '''"´ , ､ ／ ）
） |l| 囗 ﾛ ' -‐ '''"´ rャ rゃ ｰ' rゃ rｬ／ （
（ |,| ,．'´ _ -‐ ´ ', ', ／ ）
） |l| ,．'´ _ -‐ ', / ', （
（ Z zｧ _ ', /_', ', ）
） r／ /' ∨r ､ ',. /∨ ', ', （
（ ｢ / ∨_| '/∨ ', ', ）
） ,ｨT工} / ､ ∨ /∨ ', ', （
（ ――――‐ f／ ｌ、 / /---',.-----',--',------------ . ）
） . λ......｀ ‐- _ / ‐- ', ', -‐ （
（ ‐- _:::::::::::::::::::::::::::....................................l′ ', ）
） ‐- _::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| ￣ ', （
（ ‐- _-―-―ｰ―-┘ 〜 _ ）
） ‐- _ -‐ （
丶〜'⌒'〇'⌒'〜⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'´
Ｏ
o
ﾟ
. ／￣￣￣ ＼
（ ／ ノ ヽ ＼ ` ､ そうでなきゃ、
（ ﾞ''ｰ-- ／ （ー） （ー） .___,,..) ). 今頃、青森で足留めくってたぞ
ﾞ''ｰ-- | __´ _ | --‐''´
＼ ￣ ／
. ノ ＼
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
今朝の洞爺丸に乗れなかったら、
日曜日の夜にこうして
ﾋﾄﾄｷ
家族と一緒にすごすという貴重な一時を、
危うく逸してしまうところだった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
′'
＿＿＿ ´
／ ＼
／ ノ ヽ ＼
／ （●） （●） ＼ 親父っさん、どうしたべな――
| ´ |
＼ ⌒ ／
ノ ＼
ｒ'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'ヽ
（ ／￣￣＼ ）
） ／ _ノ ヽ､_ ＼ （
（ .| （ ●）（● ） | いや、今日は米さ売ったら、 ）
） .| | │ 折り返しこの船で青森へ帰っからっしゃ。 .（
（ | __´___ .| ）
） .| `ー'´ .| なんも気にせんでいい （
（ r､ r､ヽ / ）
） ヽヾ 三 |:l1.ヽ / （
（ ＼>ヽ |｀ ｝ > < ）
） ﾍ lノ `'ｿ ヽ （
（ /´ /,1 | | ）
） ＼ ノ .｜ | | （
丶〜'⌒'〇'⌒'〜⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'´
Ｏ
o
ﾟ
＿＿__ ξ
／ ＼
. ／ ノ ' ヽ＼
. ／ ／）（ー） （ー） ＼ 同じ船でとんぼ帰りするって言っていたから――
| ／ .ｲ ' |
∨,'才.ﾐ). -‐‐- ／
. | ≧ｼ' ＼
／＼ ヽ ヽ
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
同じ船ということは
今は上りの洞爺丸の船内にいることになる。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
5時のラジオのニュースでは、
出航を見合わせていると伝えていた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
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＼＼====||===/===========================================／／
／／ ＼＼
| | . [］ | |
| | ||. / | |
| | || /ヾ/ | |
| | || /ヾ/ | |
| | || ／ | |
| | || /ヾ／ヾ／ | |
| | || | |
| | || | |
| | || | |
| | ,．-‐rｪｪｌEｪｭ=========================ェュ=―-．、 ..| |
| | r'-―======================================―-ｷ ..| |
| | | ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ | . | |
| | ｜ ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿ ┌┬‐┬‐┬‐┐ ｜ ....| |
| | | |:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.| ト ／ ｧ| ｜ ....| |
| | | [ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ] |=＿rl工lｭ＿=| ｜ ....| |
| | | |:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.| ｀￣￣ ￣￣´ ｜ ....| |
| | | [ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ] =蕊= ｜ ....| |
| | | |:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.| ,r'｢lヽ | . | |
| | | [ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ] ヽ|｣ノ {ロﾆ} | . | |
| | | |:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.| ,r'｢lヽ | . | |
| | | ｀￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣´ ヽ|｣ノ | . | |
| | [{三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三}] . | |
＼＼ ／／
／／==============================================||=====＼＼
＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─＼ ・ ・ ・
／ （●） （●） ＼ 船長はこのままテケミするつもりだろうな
| ' |
＼ ⌒ ／ ・ ・ ・
. /⌒ヽ ｨヽ ※テケミ：天候険悪のため出航見合わせ の略語
/ ,⊆ニ_ヽ、 |
./ ／ r─--⊃、 |
| ヽ,.ｲ ｀二ﾆﾆうヽ. |
────────────────────────────────────────────
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
三等船室の雑居部屋に
長時間閉じ込められているだろうできない夫が、
気の毒というよりは哀れになってきた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
ｒ'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'ヽ
（ ∧∧ . . . . . || ）
） : . : , (ﾟ－ﾟ ；) ... ; .|| （
（ ;::: ; ; : ; , , : : : /ー-ヽ ; ;.|| ）
） 冫、; : . :: . ; : . :. . ; /( / ) : .:; || （
（ `;, , .;; . ,, . ; ; ; ; (_iつとi)_/ . , ..:|| ）
） = ＝=＝ =＝= = = ＝＝＝ (＿＿＿ﾉつ＝=.＼ （
（ 〃 ）
） 〃 ∧＿∧ （
（ / ∩´A､｀ *)＿＿＿ ）
） /. i^Yヽ_/~''^ヽ ⌒ヽ＿＿ （
（ 〃 ,しと二二iノ――──､＿＿_ilつ ）
） =＝＝＝===＝＝＝=＝＝＝===＝＝＝＝==＝ （
（ ）
） （
（ ）
） ,, -─- ､._ （
（ ／ ヽ ）
） | | （
（ | ノ ヽ､ .| ）
） | （＝）（＝） | （
（ ｌ^l^lｎ. ｜ | ）
） ヽ. L __´___ ﾉ ／￣＼ （
（ ゝ ﾉ.,＿,, ' ⌒''ｰr─､_／ ＼ ）
） ／ /. ｀￣| < ／''＼ ＼ （
（ .／ / <|,,,,,ﾉ ￣￣ ── ＿＿ .）
） 人＿＿ﾉ＼,,＿＿＿＿＿＿,,,＿＿＿＿,,＿＿＿＿ 二} . （
（ ）
丶〜'⌒'〇'⌒'〜⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'´
Ｏ
o
ﾟ
＿＿＿_
／ ＼
／ ノ ヽ､＼
／ （ ＝） （＝）＼ やっぱり無理にでも
| _' |. 家に泊まってもらうべきだったな……
/ ∩ノ ⊃ ／
( ＼ ／ ＿ノ | |
.＼ " ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
.
／ ＼
. ／ ＼
. ／ ― ー ＼ それにしても
| （●） （●） | 何でかつぎ屋なんかを……
. ＼ __'__ ／
/ ヽ
ｒ'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'ヽ
（ ／￣￣＼ ）
） ／ ｢ ＼ （
（ | （ ●）（●） ）
） | ｜ | （
（ | __´___ﾉ ）
） | `ー'´} ∧＿∧. （
（ ヽ } （｀； ） ）
） ヽ ノ ／ ヽ. （
（ ／⌒ ヽ / , ハ |. ）
） . / ＼ Y´￣了. / /i |. （
（ / ＼|＼＿／ / / | | ）
） | ヽ、__) / / ﾉ 〈.. （
（ (_,ノ´￣ ○ ） ）
） （ ￣￣￣⌒ヽ^ヽ.. （
（ ｀ ー――＼＿,)＿) .）
丶〜'⌒'○'⌒'〜⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'´
Ｏ
o
ﾟ
. ／￣￣￣＼
. ／ ＼
. / ─ ─ ヽ 今まで、
. | （●） （●） |. 親父っさん以上の潜水夫に会ったことがない
. ＼ ∩ __'__/777／
. ／ （丶＿//// ＼
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できない夫が海産潜りの親方をしていた時も、
何か問題が起きると、
工事潜りの連中が意見を求めにしょっちゅう来ていたものだ。
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ｒ'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'ヽ
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（ .:. .:. .. . ,. -＜フ´ {‘ {`弋ﾆ { ）
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） ,' ﾍ ｀''V.,' i´_Ｔ ｌ （
（ ,' ヽ ｿ ; /ｌ V ）
） } ` ’､ / ,／::| ', （
（ i ゞ、 ∧ '´ / へy ', . . .. .: .:.:. .:.:.:.:.:.::.::.::.::::::::.::.::.:.: .:.:.:. .:.:. .）
） } ／ ￣`; ノ´⌒`、 ﾊ、_ . . .. .: .:.:. .:.:.:.:.:.::.:::::::.::.:.:.: .（
（ } ／ : : : : : :｀ - '´V: : : : : : :-'´ : : : :ヽ . . .. .: .:.:. .:.: ）
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Ｏ
o
ﾟ
＿＿＿
／ ＼
／ ノ ' ー‐ ＼
／ （●） （●） ヽ 潜ろうとしない理由もわかりはする……
| ' |
ヽ、. ⌒ ／
／ ＼
＿＿__
／ ＼
. ／ ノ ' ヽ＼
. ／ ／）（ー） （ー） ＼ でも、あの知識と経験を腐らせるのは……
| ／ .ｲ ' |
∨,'才.ﾐ). -‐‐- ／
. | ≧ｼ' ＼
／＼ ヽ ヽ
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自分で潜らないとしても、
どのサルベージ会社でも諸手を挙げて作業長に迎えるはずだ。
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. ／￣￣￣￣￣￣＼
. ／:. ＼
/: : : ＼
. / : : : ヽ
| : : : : ,.r-====' ヾ＝⌒ l
|: : : ::; （ ー ） （ ー ）.. .;: | 死んだヤル坊を弔うためにも――
|: : : : : ´"''" "''"´ l
,＿ ヽ___ ゝ ／＿_
／:::::r' | r'￣二ﾕ --､__ u ／:::::::::::::`:､＿_
:::::::::::| .| | / ) ｀) ／::::::::::::::::::::::::::::::::＼＿_
:::::::::::|.ﾉ. ﾉ / ⌒ヽニニ’ニ7イ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ハ
::::::::::::＼ `i:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾍ
:::::::::::::::::｀ー─-､ |:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾍ
::::::::::::::::::::::::::::::::::::）__ ./:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}
::::::::::::::::::::::::::::::::√::::＞､＜:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::Ｖ::::::::::::::::::!
::::::::::::::::::::::::::::ﾊ:::::::::::::::v":::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|:::::::::::::::::::|
( ヽ、
／.:.￣￣＿＿＼ ＼
／: : : <＿＿ ＼ ＼
／: : :＼ <＿＿ ＼ ＼ ﾍ /⌒/
／: : : : ＼└--ﾐ ヽ、＼ - ＼ |
: : : : :／´ ｀ヽ 丶 - 〉 生意気と思われるかもしれないけど、
: : : :.（ 〔:::〕 l ( ＼ ! 今度会ったら――
: : : : ヽ_ ｀ _ノ ＼_ヽ {
: : : : : : ´"''" ' "''ﾍ > 、
: : : : : : . . ` ＼ ∠／ヽヘ
＼: : : : : : :. －―― - ＼(⌒) ﾉ ＼
／ヽ: : : : : : : : : : : ヾ、 ／ ＼
: : : :｀`ｰ- -‐'"´ ＼／ ＼(
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
どう考えてもかつぎ屋をやっていてよい人ではない。
できる夫は親父っさんに進言しようと心に決めた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
＿＿＿_
／ ＼
／ ⌒ ⌒＼
／ （ ●） （●）ヽ 雪子は、もう寝たかい？
| ＿´__ |
＼. ｀'ー` ／
/⌒ヽ ｨ､
/ ､ V
/ / l ', ─ヘ
/ /l ゝ / ヽ
/ / ヽ ,＿＿__ ｀ ,ヽ ヽ
-─ヽ ｲ_ ヽ / ￣￣￣￣`ヽ Ｙ ゝ‐-､
( _i _i＿ﾄ､__) ヽ､＿＿_⊥＿＿＿＿ﾉ 「＿＿＿ﾉ
/￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ヽ
| - ､ |
| - ‐-- ､,ｲ ,´_｀_ |
| . ／ ` ､ |
| ／ /¨／ ﾍ` ､'; |
| / / ､ ヾ ;' |
| / i l / //iﾊ ; l∧ |
| ,' l! ﾊ ;' ,ｲ_jﾉ .ｌ ﾘﾄゝｰ |
| : i! |ノﾍｌ i! :i!ゞ´｀_､ｲ ﾘ｀ .|
| . Yヽヾ / |l ｀.| ﾍ ! ｲでi ヽ､ |
| _j ）ノ .ﾉゝ､j ｌヾｰ. / ええ、やっと |
| ／.:j_.ノ,.ｲ／ / i j i '; ｰ; |
| ／.:::::r ＜ jノノ ,ｲ( ﾉ人 ;､ _ / |
| ＞f.:ﾉ_フ´二彡ｲ.ﾉУ´ li ﾄ､_j T¨ ＞
| ,ｲｲ :／ ` .´ ∧ '; ヾi |
| ／./´ / 人｀ｰ´i lｲN!:NZ, |
| i/ / rfｲfｲNイﾊ≦≧ﾁ天ｌ i!//| |/j |
| ﾉ i ｒ/7777777/////>介 ;'i//| ﾄ( |
| ｆ /,.ハ V////////////(/ j i:|/∧!)i> |
| _j// ,ｲ )////////////∧i! i!i//∧i/j, |
ヽ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿/
┏━━━━━━━━━━━┓
奥の節子に尋ねると、
答えが返ってきた。
┗━━━━━━━━━━━┛
.
-‐ー-ミ
ｽ. ／ ヽ それじゃあ、
ｯ ′ ⌒ ⌒ :, 家の周りをちょっと見てくるよ
ｸ { （ ●) （ ●)i
_,.. -‐ '".从 ､__'_, /´ ￣｀ヽ
｛ ≫ ..,_ ＿_ _,,. ｲ. ,: 〉
＼ ー- ..,_ ,≠ァ゛ ′
. ＼ ＼ .｝ /_／ ／
. ヽ ｀ヽ ^「 / .//}
〈 : ヽ」 乂_//り
｛ L}Lj」┘ ___ :} {
. ヽ ∧'"´￣ ￣7. ﾉ
ヽ .ハ } ./
∨ ∧ / ,
／ ﾊ .′ ＼ γ´￣￣￣｀ヽ
｛ } } { | が |
ー＝'"´ ｀ー- -‐' | さ |
| っ ＞
ゝ＿＿＿__,ノ
′'
＿＿＿_ ´
／ ＼
／ ⌒ ⌒＼
／ （●） （●） ＼ あっ、ちょっとだから――
| __´___ | ぐっすり寝入るまで添い寝しておいた方がいい
＼ `ー'´ ,／
/⌒ヽ ｨヽ
/ rｰ'ゝ 〆ヽ
/,ﾉヾ ,> ヾ_ノ,|
| ヽ〆 |´ |
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
節子が身を起こそうとする気配がしたので、
声をかけてから、
懐中電灯を手にしてできる夫は表へと出た。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
暗闇の中、遠く岸壁の方角から、
ひどい風音にも負けず、
波が砕けるドオンという音が轟いてくる。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
＼ 丶 丶ヾ丶 ＼ヾ丶 丶 丶 丶＼ 丶 丶 ＼丶 丶 ＼ 丶ヽ
＼ｖヽ丶 ＼ 丶 ＼ヽ ヽ 丶＼ ヽ 丶 ＼ヾ 丶ヽゝヾ 、丶 、
ヽ 丶 ヽ ヾ丶ヽ ヾヽ、丶＼ 、 丶、 ＼.、ヾ ヽﾟ ゞ ヽ＼ ＼ ヽ
＿/__/＿ // ヽ＼、ヽ 丶ヾ＼ ヽ ゝ 丶丶 ヽ ヾゝ ゞヾ ヽ丶
/ / ーーーーーーーーーーーーーー ＼ 、ヽ 丶ヾ＼ ヽ
/ ヽ＼、ヽ 丶ヾ＼ ヽ ゝ 丶丶 ヽ ヾゝ ゞヾ ＼
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. /
/ ＿/ ＿/
. /＼ |
/ ＼/ ＿/ /
` ヾ ､ ' , ' ` _＿/ ￣ / | ＿＿/ /
` ヾ ､ ' , ' ` 、. ＼/ ＿| /
､ ` ヾ ､ ` ヾ ､ ' , ' ` 、′。 ` ' 、 ． 、 ′ 。 ． , ' ./
' ' ヾ ､ ヾ､ `､ ． '`、′。．・`； '、．・． '`、′。．、′。．・`； '、． ` ' 、 ＿＿ノ
。 ． ` ； ' 、 '、′' ． '、′' ・． '、ヾ ､` ;人. /;′。．・"； '、．・" 、 ′。 ` '、．
' 、 ′'、′' 、`' ． 'ヾ `､ヾ ､`､,, ',． '`、′。．・`； '、．`； '、．・" 、 ′" 。 ． `
． '`、′。．・`； '、．、ヾ ､` ヾ・、 ', : : :,' , ', ,' '`、′。．・`； '、．・。 ` '、．
'、′' ． '、′' ・． ' ､,, ',` : :: : : :: : /;′。．・"； '、．・" ` '、．
'、′' 、`' ． 'ヾ `､ヾ ､` : : : : : :, : ／． '`、′。．・`； '、．・
、′' ・．'、ヾ ､` .＼ ､ ` ," ´, ′( ／:′。．・"； '
． '・．． '・､`ヽ `､ ､ , ,' ', _,. - '． '`、′。．
`ヾ＼'i, ` ､ , ', ,ｉ '／,′",／／
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＼ 丶 ヾ 丶ｖ ＼ ヽ ＼丶丶、 丶＼ ヾ 丶丶＼、 ヽ ＼ ＼. 丶
ヾ丶＼ 、＼ヽ 、丶＼ ＼ ＼ ヾ 丶 ヽ丶 丶 ＼ヾ ヽ丶丶 ＼、＼
ヽ 、ヾ 、ゞ ヾ丶 ゝ丶＼ ＼ 丶 ＼ 丶 ヾ丶＼ ＼ヽ ゝヽ丶＼丶
ヽ ＼ 丶＼丶ヽ＼ 丶 ヾ丶 丶丶 ＼丶 ヽ ＼ ＼丶 ヽ ヾ ゞ 丶
＼丶 丶＼ ＼.ヽ，丶＼丶ヽ＼ ＼丶ヽヾ ＼ 丶 ヽヾ＼ ＼丶＼ ＼ヾ ゝ
l＿
_＿＿＿ ／
／ ＼ ＞
, ´ ⌒ ‐ ＼
. l （ ○） )
', u. ´ l これは尋常じゃないぞ……
ヽ ｲ
,ｲ:. ヽ､＜ヽ,、___ ﾉ
,. -ｰｰ -‐ ´:::::::::::::::::::::::::::::7
／..:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: く'、
. ｛ :::::::::::::::::::::.ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::.. ､_
'| ::::::::::::::::::::::..｀、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::..｀ヽ
'| ::::::::::::::::::::::::::::i_::::::::::::::::::::::::::::::::::::.ヽ::ゝ
ﾄ､:::/ ／￣｀` ﾊ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::!:::::::.ヽ
`,ﾍ ´:::::::::::::::::. ﾊ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|:::_,rｰ'､
}:,∨ :::::::::::::::::: ﾄ､:::::::::::::::::::::::::＞＜￣＼::..＼
. }:::∨::::::::::::::::､-''ﾞ~￣￣￣￣:::::::::...＼ ム:::::ヽ
l::::∨ :::: ／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,.､／...:::::::::ヽ}
＿＿＿
／ ＼
／ ノ ヽ＼ こんな時化だと
／ （ ●） （●）＼ 陸に揚がってない小型の船は沈没してしまうな
| u. ' |
ヽ、 ⌒ ／
ノ ＼
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
サルベージの仕事が
忙しくなるような事態にならなけばよいのだが……。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
| ｉ l. ／＼ ＼ ! ||. ＼
| ｉ | ／ ＼ ＼ ＼. || ＼ ＼
ｉ ｉ |. ／＼ ＼ | ＼ ＼ || ＼. | ＼
ｉ ! | ／ ＼ ＼ l| ＼ || ＼ | ＼
ｉ ｉ | ／＼ ＼ l|. ＼ ＼ ＼ |
ｉ | ＼ ! | ＼ ＼ ＼. |
| |. ＼ !. ＼ ＼ ＼ ＼ | ＼
| | ＼ ＼. ! ＼ ＼ i. ＼ ＼ ＼
| ＼ ＼ｉ. ＼. { i ＼ ＼
|! | |＼ ｉ. ＼ i{ ＼ ＼ ＼
|i |! | ｉ!..l ヽ ヽ ヽ.}} ヽ ヽ. {
|ｉ l |! | /￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ヽ ＼ {{. ＼ ＼ {
|} l |! ／´￣￣ ｀ヽ | 思ったより、 |. ＼. }} ＼ ＼ ＼ {
|} l |! ／ -― ＼ ＜ 家の方は大丈夫そうだ | ＼ {{ ＼ ＼ ＼. {
| i ／ （●） ｝. ヽ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿/.＼ ＼ ＼ ＼ {
| | （●） ､ ム ｉ!..|. l ＼ ＼ ＼ ＼ {
| ヽ ／ ／ ⌒ヽ. |. l ＼ ＼ ＼ ＼. {
| ｀=ｚ- ´ ﾍ 〉 | l＼ l. ＼ ＼ ＼ ＼.. {
| ｛ ､ （＿,ｲ. | ｜ ＼. l ＼ ＼ ＼. {
| ＼ ヽ 人. || | | | ＼ ＼ ＼. {
| ｀¨＼＿＿_,／＾ｰ'.. || l ＼ | ＼. | ＼ ＼
| （_/. || l ヽ| |＼ ＼ |!
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できる夫は特に手を加える必要はなかろうと判断し、
そろそろ始まる七時のニュースを聞くために
家の中へと戻った。
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／／ ＼＼
| | . [］ | |
| | ||. / | |
| | || /ヾ/ | |
| | || /ヾ/ | |
| | || ／ | |
| | || /ヾ／ヾ／ | |
| | || | |
| | || | |
| | || | |
| | ,．-‐rｪｪｌEｪｭ=========================ェュ=―-．、 ..| |
| | r'-―======================================―-ｷ ..| |
| | | ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ | . | |
| | ｜ ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿ ┌┬‐┬‐┬‐┐ ｜ ....| |
| | | |:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.| ト ／ ｧ| ｜ ....| |
| | | [ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ] |=＿rl工lｭ＿=| ｜ ....| |
| | | |:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.| ｀￣￣ ￣￣´ ｜ ....| |
| | | [ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ] =蕊= ｜ ....| |
| | | |:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.| ,r'｢lヽ | . | |
| | | [ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ] ヽ|｣ノ {ロﾆ} | . | |
| | | |:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.| ,r'｢lヽ | . | |
| | | ｀￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣´ ヽ|｣ノ | . | |
| | [{三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三}] . | |
＼＼ ／／
／／==============================================||=====＼＼
∧＿_
, - ―――― - 、 ￣1i
／ ＼ 《
／ u. ＼ ≫
／ ＼
/ ヽ
| ´￣` 、 '`ー―- |
| （ ◯ ） （ ◯ ） | は？
| ´" " ´" " |
＼ ＿´＿ ／
＼ f ー ヽ ／
／ヽ イ＼
／ ＼
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
全国版のニュースのあとで、
札幌からのローカルニュースを耳にした時、できる夫は慄然とした。
テケミしていたはずの洞爺丸が、
6時39分に出航したというではないか。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
＿＿
__ - ´´￣ ｀¨ ‐ ､
, -'"´: 丿 ヽ
／. : : : : ＿／ 、 丶
,,.'. : : : : / /::::::ヽ ｌ ヽ、
/. : : : : : { {:::::::::ﾉ ! ヽ
/. : : : : : 丶 ｀ ´ ノ ヽ _ 台風は過ぎていったと判断した……？
/. : : : : : ｀ー‐ ´ |
./. : : : : : i
/. : : : : : Ｕ ｀i｀ ﾆ二-- i
/. : : : : : ｀´ l
,'. : : : : : : /
i : : : : : : : /
i : : : : : : : /
', : : : : : : : ／
', : : : : : : : ／
ヽ、: : : : : : . ／
ヽ､:_: : : : . ／
｀¨i : : : : : ヽ
／.:￣￣￣￣￣＼
／: : : ＼
／: : : ＼
／: : : : -一' ﾞー- ＼
: : : : :／´ ｀ヽ r´ ｀ヽ ヽ いや、風に煽られて
: : : :（ f;;;;j l, ｌ f;;;;j } l 岸壁にぶつからないように――
: : : : ヽ_ ｀ _ノ ヽ_ ´_ ノ;;:: |
: : : : : : ´"''" ' "''"´ u. l
: : : : : : . . ／
＼: : : : : : :. ー -- - - ／
／ヽ: : : : : : : : : : イ＼
: : : : : : : : : : ＼
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
どう考えても、これからもう一荒れ来そうだ。
だとすれば、湾内の安全な位置まで移動し、
投錨してテケミを続けることにしたのだとも考えられる。
いずれにしても、ニュースだけでは詳しいことはわからなかった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
＿＿＿
／ ＼
／ ＼
／ ノ:::::::ヽ､_ ヽ 親父っさんはやっぱり船の――
| （ ●）:::::（● ） u. |
＼ ｌ^l^lｎ ｀ ／
／ヽ L
ゝ ﾉ
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇...../´￣￣￣7...闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇. ´￣￣7 /.....闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇..／／..ﾞ闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇 ／／ 闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇￣ ,ｲ,ｲ ,ｲ.ﾞ闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇....ﾚﾚ // . 闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇..../'...闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
できない夫はやっぱり洞爺丸の船室にいるのだろうかと思った時、
電灯がふつりと消え、部屋が真っ暗になった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇 ＿_＿__..闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇 ／ ― ＼.....闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
／ノ ( ●) ＼ /￣￣￣ヽ..闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
.｜ ( ●) , |. ＜ …… |ﾞ闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
.｜ /. ヽ＿＿＿/..闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
.｜ υ. '~ /.. 闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
＼＿ ⊂ヽ∩＼.闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇.. /´ (,＿ ＼.＼ﾞ闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇| / ＼＿ﾉ.....闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
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闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
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闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
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そのまましばらく待ってみたが、
今回の停電はすぐには復旧しそうにないと感じた。
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闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇.ﾞjI- ' ¨ ￣ ¨ ' - _.ﾞ闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
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闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇..〃 ／し'. シ. ∨ﾞ闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇 Ｗ /::::ﾄ（ ュ. Ｗ 闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇.i lJ:::::::)｀ｽ ッ. i.闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇}!. ヽ::/´ ;ﾞ闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇/, |:l、. 从 闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇ﾞ∧.. ＿,.ｨ ｀ﾞﾞ ｀ヾ /..ﾞ闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇......ﾍ,.... ⌒)ノ ,ｲ......闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇. }is.,...（＿ ,.ｨi{. 闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇.えn。., ＿＿ ,.。rsi{｢闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
＿
ﾄ、 ＾)ﾉrｧ
|し'!､_ﾉ |＿ノし! ﾘ
し-‐１ r―‐'´ :ト､ｨ___＿ ﾍ
,イ | |! |! :| ｨ――''ｲ | ト､＿＿,ｨ ト､
）ﾉ_j l| :八,ｨ し' / / し‐ ニ!:/ イ ,ｨｲ ム l
￣ ) _ノ:（__ノ _.／ / // ﾚ' し' (ノrイ ） |
/'´ /'´￣ /´ _,.ノ / ＾)/
/´￣ ＿,
⌒)ノ
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
奥の部屋でマッチを擦る音が聞こえ、
蝋燭を手にした節子が居間に入ってきた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇;'''"´ ' / i |ﾞ｀`ﾞ''｀ﾞ闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇.;.;..;.;. i .! i { | | } 斗....｀ﾞ'闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇".;j.ｲ...... { { | ﾄ､__{ヽ! j/ィ芋ミ､ﾚ”闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇".;j/ { i ﾊ ', {ヽ,.ｨfｆミ､ ′ んハ 》}.. ‘闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇;.;.;.;.;.;.;.;, | .∧ヽ |:. 《 iJハ ゞ ツ ! .| {ﾞﾟi闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;ヽ.{ .ﾊ ∧ ゞツ ､ | | ',....ﾟ闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇ﾞ.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;＼∧ ､. __ .::| ! :,..;.;闇i闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;',.. | ＞ ｲ{ ! ﾊ ,.;.;.;闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;i. ,:,. r＜≧ = ≦ { / / ', . 闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇 ;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;__}..:. jﾞ＿〕 {`ー--r‐'/ /､＿＿',..ﾞ闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇. ;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;／....:r'¨!......ヾ } { .′.! 闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.}ﾐ､ /ﾞl.ｉj.' ......ヾミ=- { { .;闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇:.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;!／ /| | | :､.. ;闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;／,ﾞ,.z -| |=ｚ､ ﾒ､.. ､ ヽ..イ.,;;闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇:..;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;/ / {i///| |////}....ー ＼ ,;闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇..;.;.;.;.;.;.;.;.;{ , /.ﾞヽ///¨´//ノ.､__ 彡.... ｀i:,,:闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇:.;.;.;.;.;人 {.;.;.;.;,.ﾞ￣.;￣.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;}..;.;.;.;,;.;.;闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇｡.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;,.;；闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇ゎ｡.._.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;_..｡:；闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
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闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
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闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
蝋燭を立てた燭台を食卓用のテーブルの上に置いて、
節子が心配そうに顔を曇らせた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
──────────────────────────────────────────────────
/
,..、 ｨ/
丶 / V/
｀Y i′
ｨｹ ﾄ、
／{'⌒'} ｀丶
／ ヽiノ
／ ,r'┴'ヽ
,ｲ::''n::::,f'
!:: :l:: : :l
──────────..ﾞl::l l:: l ll...───────────────
{i l:: . l! ヽ／
|j:i:::::li l,. （＿
}i::::::::ll !
（!..:::::..lll. /
l...::::::..ll /⌒し
:.:. --―ﾘ..::::::ﾊl―--:::.:.,_＿
r''"´:;:;:;:;:;' ,ｸ.::::::::i::ll..,, '';:;:''" ｀丶
｀丶､:.:_ .:;:;:;ム;:;＿:;:;_ゞ､:;:_,, _ ,,. ノ
. :.:.｀ヾ" '' :.:.―---―.:.: '' ７"´
. :.:.:.:.:.:::::::::::::丶､::::::::::::::::::::::::::::::ノ:::::.:.:.:
: : : :.:.:.:.:.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.:.:.:.:.:.:
──────────────────────────────────────────────────
／ / ＼ ／ 二ﾆ=‐―
/ / / ￣ ヽ、
i / / / / ､ ヽ､＿＿__
,′ | / / / / /ヽ‘， ヽ＿＿＿_／
′ / r ､ | i/ ≧ｭ､___/ / . ﾍ
i / { :! || 《えｭ､/ / } l l ﾍ
|: / ﾍ :| | ら / r､/ / }', i
| / :l | | ゞ/ ん' / } i i |
|: / / :l | |: {/ / i ! リ あなたのお知り合いの方、
| / / : ｜ ! ゝ/ :| / 洞爺丸に乗っているのでしょう？
|: / / / :| | ｰ,ｲ / | /
|/ / / | | ／И И 大丈夫かしら
| / ノ | | ___/ |
|: / ／＼ :| || :!
|/‐=7: :{ ＼ !: ｜ |
,x≦ |: : ﾍ / | | { :|
,x≦ ＞ ´:.:.:.:|: : :.ﾍ /ゞ !: ｜i :|
.
＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─＼
／ （●） （●） ＼ ラジオ、聞いていたの？
| ___'___ |
/ ∩ノ ⊃ ／ γ´￣￣￣￣￣￣￣￣￣｀ヽ
( ＼ ／ ＿ノ | | | ,､,､ﾍ. |
.＼ " ／＿＿| | | ,' ~´ ﾊﾊヾ. |
＼ ／＿＿＿ ／ | | ﾉﾘﾉﾊ）)）. |
| ..ﾉ. l| ﾟ -ﾟﾉlﾊ ええ |
| （ ( /´<y>}つ |
ヽ＿＿＿＿＿＿＿＿＿__,ノ
＿＿＿_
／ ＼
／ ＼ ／ ＼ なに、大丈夫さ。
／ （●） （●） ＼
| ´ | あの船が沈むとしたら、
＼ ⌒ ／. 他の船が全部沈んでからだ、心配することはない
／￣￣ヽ ＼
（｢ ｀rﾉ ＼
ヽ ノ ＼
| | ｢＼ ＼
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
オレンジ色の蝋燭の明かりの中で節子が小さく頷く。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
──────────────────────────────────────
／ / / }ﾍ ', ', ', ', V
彡 / ' .′ i ! ヽ ', i! ', ', ',
＜ ./ i | { i! ',.ｰ|‐.|--从- ', i i
―-/ | | ﾊノﾄ.! }/| },ｨf== ｧ i | }
| .斗 _.´ ==ミ､ | 〃_):::ﾊ } .ハ { }
i/| | ﾏ _):::ﾊ }/ ゞ::ツ j/ ﾍ!
, !ﾊi＼ ﾊ ゞ::ソ .| ｜ }
( （ ＼{ |! |＼!',. ｀ u ./| ｜ }
､丶 |! | | ゝ. - .ｲ{i ! | ,
}!__ | i!__|__≧=- __ .イ ／/| | ',
:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;: ／ ＼__ - ´ ./ | |乂＿ミ､__
:;:;:;:;:;:;:;:;:;:.:;:..;:.:..:;:.:;:;:;:;:;:;:;:;:;:... ／Vﾍ. / .| | ／｀ヽ
,:;:;:;:;:;:;:;:;:.:.:.:.:.. .:. .:. .:. ..:.:.:.:.:;:;:;:;:;:;:;:;:
. :;:;:;:;:;:;:.:.:.:.:.:... .. .. . . .. .. .. ...:.:.:.:.:.:;:;:;:;:;:;:
. :;:;:;:;:;:.:.:.:.:.:.:. ,:,. :.:.:.:.:.:.:;:;:;:;:;:
. :;:;:;:;:;:.:.:.:. :. j :.:.:.:;:;:;:;:;
. :;:;:;:;:.:.:.: :r'¨! :.:.:.:;:;:;:;:
. :;:;:;:;.:.:.: l.ｉj.' :.:.:;:;:
. :;:;:;:;.:.:.: | | :.:.:;:;:
. :;:;:;:;:.:.:.: ,.z -| |=ｚ､. :.:.:.:;:;:;:;:
{i///| |////}
. ヽ///¨´//ノ
──────────────────────────────────────
＼ヽ l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l /／
＼ ／ ＿＿＿
― そうさ、 ―. ／ ＼
二 洞爺丸が沈むなんてありえない 二. ／ ＼
／/ ＼ ／ ＼
// l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l ヽ＼.. | |
＼ ／
/⌒ "'' ''"ヽ
ｒ-、＿ / i
( , ￣─ / |
￣ ￣──＿/ |
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
テーブルの上で妻の手を握りながら、
できる夫は自分に言い聞かせるように、
胸中で繰り返した。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
二二ニﾆﾆﾆﾆ＝＝＝―---ｰ―ｰ ¨¨¨¨¨¨¨´ ￣￣ﾞﾞ''''''―- ..,,,,_ .｀ﾞ''ｰ二― ,,_ .｀ﾞ'''ｰ ,,、
＿__,,,,,,,,.............. -----―＝ﾆﾆ二二ﾆ＝― .二ﾆﾆ￢-． .｀ﾞ'''ｰ ..,,、 ｀'''ｰ..,,,
_,,,.... -―''''''''"ﾞ￣＿＿ --―ｰ二二二二二ﾆﾆﾆ＝＝＝――――---≧s｡＿ ⌒ﾞ'''''―- ..,,,,_ ｀ﾞ''ｰ ,,、
._,,.. -ｰ''''"ﾞ´ ″ . __,,.... -―''''''"ﾞﾞﾞ_＿,,,..........--――＝＝ﾆﾆﾆニニﾆ＝―――--- ｀ﾞ''''ｰ-..,,,、 ｀''＼
´ _,,,.. -‐''''ﾞﾞ´ _,,,.. -ｰ'''''''ﾞﾞ￣゛ ＿＿＿＿＿＿ ＿＿ ..,,,_ .｀ﾞ''ｰ
._,, -‐''"゛ ‐'"´ .__,,,.... ． _,, - ￣二ニﾆ＝―'''¨~―＝ﾆ二ﾆ＝―￣ﾞﾞﾞ"''≧s｡_. ￣ﾞﾞ"''― ..,,_ .｀ﾞ"'≧s｡、
,..-‐"゛ ._,,.. -ｰ''''"ﾞ´,, ‐'''"゛ _..-'''ﾞ,,.. -''''ﾞ”´ _,,,.. --‐;;;;二ニﾆ＝―--zｭ ｀ﾞ'''〟 ｀ﾞ'''ｰ ,,
. _,, ‐''"゛ ._.. ‐'"゛ _..-''ン‐'″.,.. ''"´ .／´ .,i',.. -―ｰ三ﾆ= ﾐj ., -彡|! . ｀'''-、 ＼
._..-'"゛ .,..-'″ .,..‐'ン'"゛ .／ .、 |! l|､, `‐-=ニ二ニﾆ'彡_,,, ‐ _,,,.. 彡゛ |!
._／゛ .,..‐ﾝ'" ,／ ／ / ./ ， .ヽ、 ｀ﾞﾞﾞ¨¨¨¨¨¨¨¨￣´ : ー'''''''^ﾞﾞﾞ_,,,.. -ｰ''''"／／
,／ ／／ ／ .゛ / / │ .ヽ ﾐs｡＿＿￣￣￣ ＿,,,,.... --ｰ'''''ﾞﾞ´ ｡s彡∠＿＿
/゛ .,, / / / ./ ! .＼,,. ｀'-､,_ .-------―ｰ'''''''''"ﾞ￣´ ¨¨¨´￣￣￣￣￣＿,,,,,
./ / ! 、 ./ ! ! : .,,, ｀'''ｰ ..,,_. ｀ﾞ''''―--z＿＿＿＿＿＿＿＿ｪ----―ｰ￢'''''''^ﾞ￣´
./ ! / │ ! ! .! .ヽ ｀''ｰ ..,_ ｀ﾞﾞ"''''――---―＝＝ﾆ 二二二二二二ニﾆ＝―
/ il| i! ! ｌ, .ｌ. ..ヽ ＼, ｀''-､、 .｀ﾞ'''ｰ-..,,,,_ ｀ﾞﾞﾞﾞﾞﾞ¨¨¨¨¨¨¨´￣￣￣￣￣￣￣
/ i! ｌ .ヽ .＼ ＼, `' ｀ﾞ''ｰ-..,,,_ . ￣'''''―-- ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
.{! , i!│ .ヽ ヽ, ＼. ｀'-､、 : 'ｰ-..,,,_ .｀゛ ―――＝＝ﾆﾆﾆニニニニ二二二二----―ｰ…
i| ｌ l i| ＼ ＼. ｀'-..、 ｀''ｰ ..,_ ､. ´ﾞ'''ー ..,,,_ ￣ﾞﾞﾞﾞ''''''￢―--―――
| ,! ! .! 、 ﾞ'-､. ＼ .｀''ｰ､,、 . ｀ﾞ'''＝ﾆﾆニ_, . ´ﾞ"'''―- ....,,＿_、
! ｌ iｌ '!li、 ｀''-､、 .｀''-､ ｀''ｰ ..,,, ｀ﾞ''''｀-､,,,￣"''''―-- ......,,,,,,___￣ﾞﾞ''''''￢―――＝＝ﾆﾆﾆニニニニ二二二二
i| .ｌi ｌ ｀'.ｌｯ､ ｀'‐ .゛ ｀ﾞ'''ｰ ,,_ ´ﾞ'''― ..,,,_ ￣￣ﾞﾞﾞﾞ^''''''''''''''￢―――----------z＿＿_
i| ､ . |i.ｌ, ｀'ﾐ≧s｡ -､, ｀ﾞ'''― ..,,,_、 ｀ﾞﾞ''''―- ....,,,_
│ .ヽ .ヽiｌ ＼,｀''-..、 ｀'''ｰ 二'ｰ ..,,_, . ⌒"''''―-- ......,,,,,＿_￣ﾞﾞ"'''''―---z＿＿＿＿＿＿＿＿
il ヽ, ヽヽ .､ .｀'-､ ｀''ｰ..,, ｀ﾞ'''ｰ ,,_´ﾞ"''― ....,,,_ ￣￣￣ニ二二二二二
ｌ ヽ ﾞ' !､. ..＼, ｀'-､ ｀''ｰ ..,、 ｀ﾞ'''ｰ- ..,,,_ .｀ﾞﾞﾞ''''''―-- ......,,,,＿__ ￣―＝＝ﾆﾆﾆニニ二二
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
夜半まで台風は吹き荒れていた。
一向に停電が復旧する様子がなかったので、
できる夫は早めに布団にもぐり込み、
親子三人で川の字になって床についた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
風が家を震わせ、
それに怯えた雪子が目を覚ましてぐずりだし、
なかなか寝つけなかった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
ｨ彡三ﾐヽ /｀ ｨ彡三ﾐヽ
彡'⌒ヾﾐヽ , -―‐- ..,_ ー彡'⌒ヾﾐヽ
ヾ､ , . : : : : : : : : : : : : ｀丶._ /
＿ ｀ー―' ／: : : : : : : : :／: : : : : : : : : :＼ ｀ー―'
彡三ミﾐヽ ,: : : : : : : : ::／: : : :／: : : : : : : : :ヽ. 彡三ミﾐヽ
彡' ヾ､ ＿ノ /: : :/: : : :〃: : : :／: : : :／: :ﾊ: : ! : ',... ＼＿ ヾ´ ´ミ
｀ー ' ,': : :/: : : :/: : : ／: : : :／/ ／ l: :|: : :',. ｀ー ´
,ｨ彡三ﾆﾐヽ ＿_ノ. {: : :;: : : :/: : 〃: -‐ '´ /' |:/l:. : :l ,ｨ彡三ﾆﾐヽ
彡' ',: : {: : : l: : /´ 丶 ＿, ､＿ /' |:.:. :| ミ'
＿ ＿＿ ノ ',: :', i: ::|: / ＿ ＿ | : : |. ＿
,ｨ彡' >‐从:.:j/y', ‐=ﾐ ｨ=‐ ､Y_!/.:/ ,ｨミ'
ﾐ三彡' ／⌒ { ヘ ヘ{‐{ {乂_ﾉ) {乂_ﾊ}}/／ ﾐ三ミ'
ｨﾆﾆ=- '. 人_ ⊂⊃ .:.:.:.:.:.:. ⊂⊃） ｨﾆﾆ=- '
,ｨ彡' ／￣ ゝ、 ／ヽへ ノ ｀ミｨ,
/ ｀T冖￢=ー一ｧ￢ﾌ´
〃 | ＼ / /
/ -､ ', | ／ '
/ ＼ |丶--‐' | /
_ﾉ´｛ } 、 _| ／ | _ /
(__／` ー----‐'~｀(__,､うｰ---'し､_)
／ ￣￣￣＼
／ ＼
i ―‐ | あばば〜
| ／ （●） ι/
| （●） ､ ／⌒ヽ
＼ - ' ´ ィ 〉
｀ 7､ （_＿,ｲ
｛ ヽ 人
｀￣＼_＿＿_,／＾ｰ'
（_/
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
それでも長旅の疲れが溜まっていたのだろう、
いつの間にかぐっすり寝てしまっていた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
＿＿
／
／
￣￣ ＿ ／￣￣￣ ＼
／ ／ ノ ヽ ＼
￣. ／ （ー） （ー） ＼
Ｚ. | ´ |
･. ＼ ー-u' ／
･ ⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒/^）
・ ＃＃＃＃＃＃＃＃＃＃＃＃/ /
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└─────┘
┌───┐
└───┘
┌─┐
└─┘
□
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┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
翌27日は出張の振り替えで非番だった。
しかし外の様子が気になり、
できる夫はいつもの時刻に起き出すと、
寝間着姿のまま下駄をつっかけて表に出てみた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
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;;;;;;;;;||..二二二二..| し Ｊ....!!
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
昨日の風雨が嘘のように去り、
まだすっきりとは晴れあがっていないものの、
秋の気配が色濃く漂う
清々しい空気ができる夫を迎えた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
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/⌒''''´: :.:.:.:. :.:.:.｀'''''´ :.:.:.:.r'⌒ー-:.':.. :.:.:.:.:.::::::::::::::::::::.... :::::::ヽ､;;;;;;:::::-‐
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: . : : : ―- 、 : . : : : : : : : :
／ ＼ :
／ ―' ー
ｌ （ ●） （ ●）
! ' }
＼ _ ￣ _／
_ ﾍ __／ 〉_
_. . : : ´〈 （ヽ _lヽ //｀: : . _
/´ : : : : ',‘，）ｰﾉ レ '/ /: : : ｀:
l : : : : : : : ',‘， | ／／:: : : : : :l:‘，
！: : : : : : : : ',‘，_!／／: : : : : : : :/: :‘，
！: : : : : : : : : :ヽ ／ : : : : : : : : : : : : ‘，
！: : : : : : : : : : ::| | : : : : : : : : : : : : : : : :
！: : : ヽ: : : : : : :|o : : : : : : : : : :l∨ : : : :
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┏━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
ぐるりと家の周りを点検したが、
幸いにも目立った被害は無かった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
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┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
表の通りも見てみようと路上に出た時、
そこでできる夫の足がぎくりと止まった。
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.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
家の前の電柱に貼られている
一枚のビラに視線が釘付けになる。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
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| .|..:::::| |
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|.└‐┤ |
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|._／|_| |
|::| .::| | ／
|::|／.ﾞ| ／
| | ／
| |／ . , -- 、
| | / ヽ
| | ゝ ノ
.. ／| |. （| 三|）
／ " ^~ "" | 三三|
し Ｊ
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fー‐‐-一v――r――一￢―-―――――-―‐‐-､rｰ―一┐
| o o |
|;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:|
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|￣;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:|
l |
! 洞爺丸以下四隻の連絡船沈没。 .{
| |
|. 九百余名絶望―― ,!
} i
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| o o |
└ｰ―'^ー――一―ー‐-―-――一-―'ー―〜'｀ー―-'ｰ‐┘
──────────────────────────────────────────────────
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━┓
洞爺丸以下四隻の連絡船沈没。
九百余名絶望――
確かにそう書かれている。
＿三二ﾆ=-
┗━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ＿三二ﾆ=-=＝ﾆ二三￣
＿三二ﾆ=-=＝ﾆ二三￣
＿三二ﾆ=-=＝ﾆ二三￣
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； __ - ´´￣ ｀¨ ‐ ､ ;
； , -'"´: 丿 ヽ ;
／. : : : : ＿／ 、 丶 ；
； ,,.'. : : : : / /::::::ヽ ｌ ヽ、 ；
； /. : : : : : { {:::::::::ﾉ ! ヽ ;
； /. : : : : : 丶 ｀ ´ ノ ヽ _
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； ヽ、: : : : : : . ／
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｀¨i : : : : : ヽ
￣三二ﾆ=-=＝ﾆ二三＿
￣三二ﾆ=-=＝ﾆ二三＿
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┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ￣三二ﾆ=-=＝ﾆ二三＿
￣三二ﾆ=-
足元が揺れた。
穴のあくほどビラを見つめているうちに、
体の芯がかあっと熱くなってきた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
家の中へと取って返し、
手早く洋服に着替え、再び表へ飛び出した。
通勤用に使っている自転車にまたがり、
全力でペダルを漕ぐ。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ,
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￣￣￣￣.ﾞ};;! |;;ﾚ;;;;;.￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣..,, - '".／ ＼:::::::／ ヽﾞ'ﾚヽ､￣￣￣￣￣￣￣..ﾞ};;ﾚ;;／!;;ﾆ;;;￣￣￣￣￣
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￣￣￣￣.ﾞ};;ﾚ;;／!;;ﾆ;;;.￣￣￣￣￣￣￣ . ／-､ i......＼. ' ／ i !.. ￣￣￣￣￣ﾞ/;;／!;;;;／V |;;.....￣￣￣￣
￣￣￣....／;;;;;i／;;;;| |;;.￣￣￣￣￣￣ . ／ ヽ |＿. ＼＿. ´￣｀. イ､.....／/ﾞ￣￣￣￣￣.／／／,;;;| .／;;/..￣￣
＿＿.. /;;／!;;;;／V |;;......＿＿＿＿ﾞ／" ! ￣ ヽ＼. ./ /／ . ＿＿＿＿.／¨´／'"´|;;| ／;i / . ＿＿
＿＿／／／,;;;| .／;;/...＿ ﾉ￣￣ ''' l ＼__／-､ / / /. ＿＿＿＿＿＿＿＿＿...!;;! /;; i i /.＿＿＿
─／¨´／'"´|;;| ／;i /─ﾞ／ | "~ ｀´ / ' >..─────────..ﾞl;;| ／;;/l;;|.────
─────..!;;! /;; i i /.ﾞ／ ＝ ､ ! /_ -‐<-,......────────. |;!/; ' i;;i.────
─────.ﾞl;;| ／;;/l;;|. { ニ＼ /､ ヽ- ／/ {.. ──────── ハ .ﾊ. ─────
＿＿＿＿＿ |;!/; ' i;;i..＿ヽ_, -'"￣ ` ´} ＿ ＿,-‐-=ｩ‐- イ > r ' ￣ ﾄ......＿＿＿＿＿＿＿＿ |;;;i .|;;;i. ＿＿＿＿＿
￣￣￣￣......ハ .ﾊ.. ￣￣. <_ ＿,, ｨｺ ￣ ､ -ﾉ_, / ＼/＼ l,-､,,-､_ ￣￣￣￣￣￣. |;;;i |;;;i. ￣￣￣￣￣
＿＿＿＿......|;;;i .|;;;i ＿＿＿.ﾞヽ_ ヶ､'~ ＼,_, -,‐_T`‐--イ／ ､ _,, - +‐ti;;;;,､ ヽ , `､...＿＿＿＿＿ . i;;i i;;;i. ＿＿＿＿＿
───── |;;;i |;;;i ────. `''t‐t＼ r ' ' i >;}~ ）ニ-i─ t'", -─| |-'┴/_l_/ﾉ....──────l;; l;;;|.ﾞ─────
─────..ﾞi;;i i;;;i ─────ﾞ||/::::::::`{;;;i i i__i__/''ヽ |::￣:l￣l~:::ヽ |＿ ===--､__..ﾞ─────── i;; ./i /i.i;;、....─
＿＿＿＿＿ . l;; l;;;|..ﾞ＿＿＿＿＿.{|:､:::::::::::::::`イ‐i=-_‐, -ー!:::::::::| |:::::::::::ヽ ` ＿＿＿＿＿＿＿ |/ V V i;;;;i. ＿
￣￣￣￣￣￣￣. i;; ./i /i.i;;、.....￣ i|::::::::::::::::::,,-'T~ :_ -|_:::::::::::::i＝＝i:::::::::::::ヽﾞ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣......／;./￣￣
＿＿＿＿＿＿＿. |/ V V i;;;;i.. ＿. ||::::::::::::::::''::::::|'" _,... ＞-‐'"| |:::::::::::::::/ﾞ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
￣￣￣￣￣￣￣￣￣.....／;./.￣￣.. ||::::::::::::::::::::::| "~_,, -フ'":::::| |:::::::::／ ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ ||::::::::::::::::::::| ノ::::::::::r ヽ／....￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
道行く人々に尋ねると、
沖に転覆した洞爺丸が見え、
浜には数え切れないほどの
遺体が打ち上げられているという。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
γ´￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣｀ヽ
| |
| ∧__,,∧ ﾅﾅｴﾊﾏ |
|. （´・ω・`） 七重浜の方で……、. |
|. (つ と） ひどいことになってるよ. |
|. ｀ｕ―ｕ´ |
| |
ゝ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿__,ノ
＿＿＿_
／ ＼
＿ ／ ＼
,, - '".／ ＼:::::::／ ヽﾞ'ﾚヽ､
／ / | ι. （ ○）:::::（○） |" l ・・・・・・
／-､ i......＼. ' ／ i !
／ ヽ |＿. ＼＿. ´￣｀. イ､.....／/
／" ! ￣ ヽ＼. ./ /／
ﾉ￣￣ ''' l ＼__／-､ / / /
／ | "~ ｀´ / ' >
／ ＝ ､ ! /_ -‐<-,
{ ニ＼ /､ ヽ- ／/ {
ヽ_, -'"￣ ` ´} ＿ ＿,-‐-=ｩ‐- イ > r ' ￣ ﾄ
<_ ＿,, ｨｺ ￣ ､ -ﾉ_, / ＼/＼ l,-､,,-､_
ヽ_ ヶ､'~ ＼,_, -,‐_T`‐--イ／ ､ _,, - +‐ti;;;;,､ ヽ , `､
`''t‐t＼ r ' ' i >;}~ ）ニ-i─ t'", -─| |-'┴/_l_/ﾉ
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
会社の事務所に行く前にそちらの様子を見ておこうと決め、
できる夫はさらに力を込めてペダルを漕いだ。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━┓ ::::::::::::::::::::::: :::::::::::::: :::::::::::::::::.... :::::::::::::: :::::::::::::::::
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文字通り七重浜は地獄だった。 :::::::::::::::::::: ::::: :::::::::::::. ::::: :::::::::::::
::::::::::: ::::::::::::: ::::::::::
:: ┗━━━━━━━━━━━━━━┛ :::::::: :::::::: ::::::: ::::::::
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:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::: ::::::: :::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::...... :::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::: ::::::: ::::::::::::::: :::::::::::::::
::::::::::::::::::. ＿_ﾞ:::::::::: ::::: ::::::::::::::::::::::: :::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::. ／｀´: : : :＼ ＿ ........._ r- '⌒ヽ ::::::::::::::::::::::::
, -ｲ:.:.:/{{｀ヽ-: : :ヽ .ア:__,.へ:::｀ヾ _ノﾞヾ、 .j ,___ぅ^′ :::::::::::::::::
＿＿ ／:.:.:.:ゞ/rx__r廾>ヽ: }ｱ::ﾉ,zz __ヽ<, -へ__ , --- 、-{:.:.:; -'ー ､ / l
: : : : :＞-- '´_:.:.:.:.:.:.:.:.| 。_._ﾟ !／}:_/ ﾟ- ﾟ ' ﾊ:.:.:.:.:.:.:.:ゞ´￣>´::::::::::::::::::::ヽ／:.:.:.:.:.:.:.:.:＼__l ＿＿::::::::::::::::
:: }:.:, ´: : :｀丶: : : ＼ 0 ,. イ:.:il:.:ゝ! [二l ハi:.i:.:.:.:.:.／/＜__::::::::,､::::::ヽ:::l:.:.:.:i:.:.:.:.:.ﾄ､:.:.:l ア￣r---ﾞ:::::::::::::::
^~｀ヽレ′: : : : : : :厂｀Lア二,イ:V ヾ__ヽ .._ ｲlr．ヽ＞｀. . . . . . .く/V xz-↑L:.:.:ﾄ，__/二_/ /::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::l: : : : : : : : : ／ <／ヽ／｀ヽ／ ゝ..__/. . . . ,､. ,､_ト. .ﾐ __ﾟ- .r '::::}:.:「 x． -ﾟｲ＿ / ::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::ハi,､,､i: : : / .l i Ⅵ. . ノ-イ r． Lト'ｰ 'イ⌒ヽヽ-＜ rっ':.:.:.:.ド､
Aﾍ::::j__Lヽ_r-ァ' ./ j i ヽVr┘・｀ _ｰ ﾚﾍ V⌒′'. ﾄ､!:.:.:ト¨´:.:.:.:.:.ヾ:.:.｀ｌ
:ﾟ ' r ':::::} ア ／} Y⌒ヽl ＞- ､.ｰ'イ´｀ヽ L＿.ノ! ! ハ:.:':.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ゝ┴- 、
-‐'´:::/:::| ∠_ ∠、 丁] .厂 r ⌒7:.:/:.｀¨´:.:.:.:.:.:｀ヽ＿_l .l 厂ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: :
::::::::::）:::／ 丶__ j. ヽ !/ ,l ヽ !V:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.'.:,/l｀＼! l /r‐┴ ､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: :::::::::::::
:::::::＞ ': V- ､ './ / ! , -= ￣￣^＼ ｀!:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ ヽ-l ./／ノ:.:.:.:.:.:.:.￣｀ヽ- ....＿:::::::::::::::
::／ ／ { ヽ l ./| }／ ヽ ｀ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.L_ヽL) /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.}: : : :/: . :::::::::::::
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
夏には海水浴客でにぎわう浜の一面が瓦礫の山と化している。
海藻が絡みついた救命ボートや折れたオール。
救命ブイや救命具。
もとが何なのか判別もつかない、大小さまざまな木片。
さらには、乗客のものだろう鞄や靴、
引きちぎられた衣類。
それらのものがごちゃちゃに絡み合って打ち上げられている。
そしてひとかたまりに集められた30体以上の遺体の山。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
遺体の多くは衣服がはぎ取られて下半身が裸だった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
_ ＿ ,, - ― ─- ,＿ , - ―- ､ _
r,;^ｰ'´::,二´ '´ ヽ、 ｀ ‐ ,,＿ ＿_
ﾄ^;;;;;;;:, '´ j_ '､ﾉ＿ ￣｀ ‐- ― ''´ ｀''ｰ- _ r - ､
r';;ｒ''´ l ｀ヽ:::. ', ´ ｀ヽ ､_ ｀f ;:;:, ｀ｰ- ､_
f;;;;;k i _,ゝ l::::::... _＿＿ '､ rf´j ｀ヽ-‐-､ _,, -―-────-､ ":;:; ': ｀fj
｀ ー -- ―─‐ ''´ ￣´ ｀￣￣ ｀ ー--― ''ー──E_fl- ＿＿,ﾉ´ ｀ヽ､_ 、;: _ｿ
｀￣ __,,、
__,,,,,.､--―'''''"ﾞﾞﾞ゛
__,,...__,,,,,.､--―'''''"ﾞﾞﾞ゛
__,,,,,.､--―'''''"ﾞﾞﾞ゛
_,,,,,,,､--―''''''"ﾞﾞ＾
__,,,,,.._,,,,,,,..---ｰ''''''"ﾞﾞ｀
_,,,,,,,､--―''''ーｰ''''"ﾞﾞ｀
. _,,,,,,,..---ｰ''''''"ﾞﾞ｀
ーｰ''''"ﾞﾞ｀
-―――‐- 、
--´-､ ／￣ ＼＼
. ／: ∠￣ /| :,________________ ―‐ 、
/／￣ {::| / :,ヽ＿ ｀ヽ ｀ ／ }
r ミ 丶 ＿／ :, ＼＼ ＼ ＼ｲ {
{ .:.:.::.′.:.: ′ }＼ ＼ ＼ / ヽ
乂炒' .:::.:.:.:.:.:.:.:::..__ ﾄ､│ ヽ│ } ＼＞ ､./ ﾉ
＼:: ｀¨.::.:.:.:.:.:.:.:. ⌒' |: ‘ﾄ､ }| 、 ヽ ヽ |＿＿__
ヽ .:::.:.:.:.:.::::j{__炒 ﾉ ∧ |: : | } 入__, ――＜二二二＞､ ヽ__,,.. --.､
. :.:.:::::.:.:. ｀¨¨¨¨´ /:..:}./: :..|_ﾉ ,， ´￣ /⌒: /¨Y ヽ 、 , ,
、 ⌒¨¨ ー-- / : : } : : ,:′／ ′ｰ'} .′ , } 丶 } }―.、
:.＼＿_____,ノ⌒7⌒¨７: : : :/: : / {＿___,.イ /⌒':, | | | | | | | | }
／ノ: : :／: : : : : : ／ : : : /: : /＼ |:.:.:.:| | |ー‐ l | | | | | | | | /
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
どれもが両眼をかっと見開いたまま絶命している。
激しい波が無理やり瞼をこじ開け、
静かに目を閉じて息絶えることを許さなかったのだ。
仕事がら、幾度も水死体は見ていたし、
引き揚げ作業をしたこともある。
しかし、これだけ大量に、
ﾏ
凄惨な顔で死んでいる人間を目の当たりにしたのは初めてだった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
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,,｡≦iiliilii,ll::;;liii|≧。
───ーー────ｰ-"───ｰ-─’──ｰ──ーー─────ーー─
.... :::..:.............:::::.:.::.::.::::::: ... :::..:.............:::::.:.::.::.::::::: ::: ..:: .:.::
..... ::::: .:.::.::. :::::::.. ...:::::.:.::.::. ::::::: .....:::::.:.::.::.:::::::
.... :::..:.............:::::.:.::.::.::::::: ... :::..:.............:::::.:.::.::.::::::: ::: ..:: .:.::
..... :::::.:.::.::.:::::::.....:::::.:.....:::::.:.::.::.:: :::::.....::::: .:.::.::.:::::::.::.::.:::::::.....:::::.:.::.::.:::::::
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:::..:.............:::::.:.::.::.::::::; .::.:::::::.::.:: :::::.::.:::::: :
" '”・' '.......:::::.:...,。,･'"" ””" 'ﾟﾟ ' ,.,,....:::::.:...,。,'""”:..., ,'""’’ﾟﾟ" ' ' ' ,.,,....:::::.:..., ,
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,,, ..,.,., ,,. .,,, ..,.,., ,,
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, -‐ ´￣｀ ‐-
,. ‐´ ｀ヽ､
／: : : : : : : : : : : : : : : : : 'ﾊ
/: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ﾊ
/ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ﾊ
/: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ﾍ
ｉ: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ﾍ
| : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : .}
ｉ : : : : : : : : : : : : : : : ､. : : : : ＿ /
,.-'´￣￣｀''' : : : : : : : : : : : ｀￣ ￣｀'ヽ'
／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ,
/: : : : : , : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ﾊ
,ｉ: : : : : |: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 、: : : : ﾊ
／´: : : : : : }: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ: : : ﾊ
/: : : : : : : : ｉ': : : : : : : 〃: : : : : : : : : : : : ヽ､: : : ｉ､
/': : : : : : : ｉ: : : : : : : '": : : : : : : : : : : : : ﾍ: : : : ﾊ
/ : : : : : : ｉ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ﾍ : : : : ﾊ
ノ' : : : : : : ／ｉ : : : : : : : : : : : : : : : : : : ﾍ: : : : : : ﾊ
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
しばらく感覚が麻痺していたのだろう。
静寂が支配しているとばかり思っていた浜は、
実際には喧騒に包まれていた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
NHKアーカイブ：
ttp://www2.nhk.or.jp/archives/tv60bin/detail/index.cgi?das_id=D0009030005_00000
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
野次馬ばかりではない。
物言わぬ遺体にしがみついて号泣している者がいる。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
, -―- ､
／: : : : : : : :＼
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',: ＼: : : : : : : : : : : : :.＼
Vヘ.)>､: : : : : : : : : : : : ＼
ノ⌒＾/ ヽ:ヽ: : : : : : : : : : :ヽ
/´: :_: :{ ',: ',: : : :＼: : : :.ヽ:ヽ
j: : : : :_j }: :',',: : : : ヽ: : : :}: |
｛: : :トﾉ｣ ハ_｣レ-―'⌒ ーr'
乂ゝ- / / / !
/`厂￣｀ / / イ
L｛＿＿＿／.／ |
/⌒＼ /::::::/::::::o／ ヽ 〉
/⌒ ! .l ＼:::::::::::o／{ { }
/. | | } ヽ::／ ヽ ヽ /
| :| | ノ ／{ ＼＼ ／
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
救助に繰り出した無数の船舶が海上を動き回る中、
手が届きそうなほど近い所に
船底を晒して転覆している洞爺丸に向け、
夫の名を叫びつづける女がいる。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
, - 、
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〃::::::|:::::::::::::::ヽ
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巛〈ヽ:::|::::::::::/ ヽ |
|} }丶ヽ::::::::;' / ヽ
ヽ |:ﾊ::// l / ',
l ＼/ V // ',
ヽ〈 l / 〃 |
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ヽ / _∠ |
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ヽイ ／ / /
j／ / / ,'
ｧ' / / |
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／ }
7￢=､ |
/ ＼ |
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┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
一体一体の遺体の顔を覗き込んでは、
ｻﾏﾖ
次の遺体へとふらふら彷徨い歩く者がいる。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
＿＿＿ ＿, --- r_，
'ー-へ＿￣￣￣ ゝ-- 、
￣｀ヽ ／￣｀ヽ ￣￣｀丶_
/ ＜{_､＿_.ノ＾ー-- .__ _＞- ､
`ー-- .＿/二､ヽ ｀ー^┴’
￣
ｨミｘ
〃⌒Y
ﾊ、_.ｲ
ｨ{ ./| }-､
// ｊ {
/y^Ｙ^ﾄ､ ./
乂_ﾌ ^ヽ _ｊ
| /:|
| / |
ｌ / :|
| / l
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｝.1 `r::1
_,rz_ }:::| .|:::|
/:::::::r≦､_ |:::| :|:::|
. ヽ／: : : : : :＼ }-j }::j
/: : : :ｰ-､__: :_) Ｙ_1 ｒ_ｿ
. ∨: : : : : : : :＼ _,r‐―‐-､_
∨: : : : : : : : : ￣＼ ＼
ヽ: : : : : : : : : : ／ ｰ-､ ＼_,／>
＼: : : : : :／_, ,'⌒ヽ、 ／
＼__／￣/ / ￣｀′
/ /
〈＿＿{、
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
遺体を担架や戸板に載せ、
あるいは背におぶって、
浜沿いの道路に横付けされた
トラックへ運んでいる男たちの怒声が飛び交っている。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
三三三三三三三三三三三三三ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニ＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝───────
ミﾐ:::;,! u ｀ﾞ"~´ ヾ彡::l／VvVw、 ,yvヾNヽ ゞヾ ,. ,. ,. 、､ヾゝヽr＝ヾ
ﾐ::::;/ ￣ﾞ`ｰ-.､ u ;,,; j ヾk'! ' l / 'ﾚ ^ヽﾍ＼ ,rﾞゞﾞ-"､ノ / l! !ヽ ､､ |
ミ/ J ﾞ`ｰ､ " ;, ;;; ,;; ﾞ u ヾi ,,./ , ,､ヾヾ | '-- ､..,,ヽ j ! | Nヾ|
'" _,,.. -─ゝ.､ ;, " ;; _,,..._ゞｲ__／/〃 i.! ilヾゞヽ | ､ .r． ヾ-､;;ﾉ,.:-一'"i
j ／ ,.- ､ ヾヽ、 ;; ;; _,-＜ /／_,,＼' "' !| :l ﾞi !_,,ヽ.l `ー─-- ｴｨ' (． 7 /
: ' ・丿 ￣≠Ξｲ´,-､ ヽ /ｲ´ r． `ー-'ﾒ ,.-´､ i u ヾ｀`ー' ｲ
＼_ _,,......:: ´ﾞi､ `¨ / i ヽ.__,,... ' u ﾞl´.i･j.冫,ｲﾞl ／ ｀`-､..- ノ :u l
u ￣￣ 彡" 、ヾ￣｀`ﾐ::.l u j i､｀ー' .i / /､._ ｀'y /
u ｀ヽ ﾞ:l ,.::- ､,, ,. ノ ﾞ u ! /_ ￣ ー/ u /
_,,..,,_ ,.ｨ､ ／ | /__ ｀`- ､_ l l ｀`ｰt､_ / ／
ﾞ u ,.／´ " ｀`- ､_Ｊ r'´ u 丿 .l,... ｀ー一''/ ノ ﾄ ､,,_____ ﾞ/ ／
./＿_ ｰ７ /、 l 'ﾞ ヽ/ ,. '" ＼｀ｰ--- ",.::く､
/;;;''" ￣￣ ───/ ﾞ ,::' ＼ヾﾆ==＝'"／ ｀- ､ ﾞー┬ '´ / ＼..,,__
、 .i:⌒`─-､_,.... l ／ ｀ー┬一' ヽ :l ／ , ' ｀ソヽ
ヾヽ l ` ｀ヽ、 l .／ ヽ l ） ,; ／ ,' '^i
三三三三三三三三三三三三三ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニ＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝───────
───────＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニ三三三三三三三三三三三三三
. .:.:.:－――ー-ミ
, .:.".:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀:.
／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::'.
_ ／.:.:,..-‐-ﾐ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.'.
≧:.:.:.:.≠ｰ-ﾐ v:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.i
￣ {_j. f｀ヾ:.:>ゞえ:.:.:.f⌒ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:
}:.:才--､ ∨:.{ fヽ V.:.:.:.:.:.:./
}ジえ_.ノ Vﾊ ﾙﾘ }.:.:.:.:才v､ _
.ｲ r-､ } ヾ ._/≧≠ /. :＼二ﾆ
∨_,..-ｲ , ;才=ミ ヽ ./. : : : :}: : : :
∨, ;/_才//} } ./. : : : :, . : : : :
｀￣r-‐ '" / ／.: : : : :/. : : : : :
. ｲ .ｨ /. : : : : : /. : : : : : :
_f´￣.rえ＞-＜ハ .ｲ. __: : : : :{. : : : : : : :
／｀V´: :{: : :{{{i: : : :}: : :.∨ー}}: {: :＞ _:ﾉ. : : : : : : :
,.毛才" / {: : ｲ}: : {{{i: : : :{: /⌒ヾ./. :才. : : : : : : : : : : : :
/ }: : {乂: }}}!: : : {え: : : f 彳. : : : : : : : : : : : : : :
───────＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニ三三三三三三三三三三三三三
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
ﾂ
そして、ひとりの男が、腰まで海に浸かり、
流れ着こうとしている遺体を引き寄せようと、
必死になって手を差し伸べていた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
-=＝三三三三三三三三三三三三三三三≧e_
― ―― ― ――――――― ―.._,.｡e≦三三三三三三三三三三三三三三三三三三三≧e｡.,_ ―――― ― ―――
＿ _ - ― =ﾆニ=ー - － ― =＝＝=≡ー― = ≡ ≡＝ = ― ==≡ニ≡ =ー= = ニ≡=' － ― ＿
＿_ _ - =＝ ＝ ≡ ≡ ー＝＝≡≡ ＝－＝＝≡＝－- ＿ ￣_ ＿-＝ニ= - ＿ ,，≦ー ≧x、＿ ＿ ￣ ＿
＿ ￣ ＿ － ＿ ￣ －
― ＿ ￣ － ￣ －
― ￣ ＿ ￣ - ＿ ￣ － － ￣
￣ ＿ － ￣ ＿ － ＿ ￣ － ＿ － ￣ ＿ － ＿ ￣ ＿
― ＿ ￣ － ￣ －
―......┘ ノ 、 ＿ ￣ - ＿ ￣ － － ￣
￣ ⑪ ⑪） l. ￣ ＿ － ＿ ￣ － ＿ － ￣ ＿ － ＿ ￣ ＿
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―....ヽ ´ .ノ ＿ ￣ - ＿ ￣ － － ￣
￣ /-､r―'〉...￣ ＿ － ＿ ￣ － ＿ － ￣ ＿ － ＿ ￣ ＿
― └‐' ｀ ＿ ￣ － ￣ －
＿ ￣ ＿ － ＿ ￣ －
― ＿ ￣ － ￣ －
― ￣ ＿ ￣ - ＿ ￣ － － ￣
￣ ＿ － ￣ ＿ － ＿ ￣ － ＿ － ￣ ＿ － ＿ ￣ ＿
― ￣ ＿ ￣ - ＿ ￣ － － ￣
￣ ＿ － ￣ ＿ － ＿ ￣ － ＿ － ￣ ＿ － ＿ ￣ ＿
― ￣ ＿ ― - _ ￣ － ＿ - = ≡ = 三 ≡ = ≡ － - ＿ ー - ＝ 三 － ＿ ￣
－ ＿ ￣ ― ￣ ＿ ー = ≡ 三 三 ≡= ≡三 ≡ ＝ = ミ ｰ＝ ≡= ミー 、 ＿ ― = ＿ － ￣
￣ = _ ー ￣ - = － = － 三 = ー = ＝ ≡ = = ミ 、ー 三 ≡ ､ ＿ ー ＿ 二ニ ＝ー ‐ ― ´ ￣
ー = ＿ － ￣ ＝ - ,，ー = ≡ミ 、＿ , - _ ＿ , ＝ 三 ≡ = , － = 二 = -,，'´ﾞ ﾟ ﾞ ﾟ ￣´: : : : : : : : : : :
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ﾞ ﾟﾞ ﾟﾞﾟ ﾞ ﾟ ￣ ﾞ ﾟ ￣ ﾞ ﾟ｀￣ ￣￣ ｀ ー=' ´￣｀￣ ￣ ﾞ ﾟ ´ ￣: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
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′'
, -- 、 ´
/ ヽ
ゝ ノ
と 〉
| .〈
し Ｊ
.
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￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
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￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣..._＿＿＿＿......￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿|＼ /＼ / | ／/ /..ﾞ＿...／三 ＼ ―― [] ].. ＿＿＿＿＿＿＿＿＿
￣￣￣￣￣￣￣￣￣＿| ＼/＼/ ＼／＼/ |∧／ /／/.....￣. ＼三 ／ 三 | ｌ￣ | |.ﾞ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
￣￣￣￣￣￣￣￣￣＼ /.ﾞ￣. '（○） （○ ） 三. |_| 匚. |. ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
＿＿＿＿＿＿＿＿＿∠ 親父っさん！！ ＞...... | __´___ u. 三 | |...＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
＿＿＿＿＿＿＿＿＿／＿ ＿ ＼＿. ＼. `-.，./ゝ /⌒ヽ |_| [] [] ,-.....＿＿＿＿＿＿＿
─────────￣ / ／∨| /Ｗ＼ /＼|＼ .| ￣.ﾞ──.../ | ＼| 三 ／／ . ───────
──────────../／ |/ ＼/ ＼|.───.≡( ヽ 三 三 匚／─────────
────────────────────────── ≡＼ ＼ 三 三ﾞ──────────────
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿. (⌒､＼ ＼.__､≡二.ﾞ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣.￣ ／ 三 ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿...／ ／ヽ 三.＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
──────────────────────────. 三 三 / ﾆ ヽ 三. ────────────
───────────────────────────...＼＿＿二_ﾆ ヽ 三..────────────
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿..＼ ≡ﾞ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣.ﾞ＼ ≡. ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿ ｀ ､_三......＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
海中の遺体を手繰り寄せようとしているのは、
紛れも無くできない夫だった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
--ｔ‐ ﾞ
（＿
> ﾞ
/､）ヽ
＿
--ｔ‐ ﾞ / ヽ｀ ＜ ＿
（＿ ＞─{ .＼ ｀ ヽ ＿ｨ´__ ｀ ＜
> ﾞ ／ ＼ ＼ ｀ ＞､,､ゝ ＼ヽ
/､）ヽ. / ヽ ヽ.／ ィヽヽ （ ●) V
/ ｀ヽ { イ｀ ｀}
,’ ｀ヽ._ ノｲ u / ￣ ´
i ＿＿＿＿ .. t ─ ．_ ｰ-／
〜〜〜〜〜〜トi / ｀ヽ､ ヽ ｀ヽー ´. 〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ノｿｿy ー' 〜〜〜〜〜〜〜〜 ヽ〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
できる夫は海に分け入り、
両眼を見開いたまま右手で虚空を摑んでいる男の遺体を、
できない夫とともに砂浜の上に引き揚げた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
海中の遺体を手繰り寄せようとしているのは、
紛れも無くできない夫だった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
--ｔ‐ ﾞ
（＿
> ﾞ
/､）ヽ
＿
--ｔ‐ ﾞ / ヽ｀ ＜ ＿
（＿ ＞─{ .＼ ｀ ヽ ＿ｨ´__ ｀ ＜
> ﾞ ／ ＼ ＼ ｀ ＞､,､ゝ ＼ヽ
/､）ヽ. / ヽ ヽ.／ ィヽヽ （ ●) V
/ ｀ヽ { イ｀ ｀}
,’ ｀ヽ._ ノｲ u / ￣ ´
i ＿＿＿＿ .. t ─ ．_ ｰ-／
〜〜〜〜〜〜トi / ｀ヽ､ ヽ ｀ヽー ´. 〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ノｿｿy ー' 〜〜〜〜〜〜〜〜 ヽ〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
できる夫は海に分け入り、
両眼を見開いたまま右手で虚空を掴んでいる男の遺体を、
できない夫とともに砂浜の上に引き揚げた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
＿＿＿＿＿
／ ＼
／ ＼
／ ＼
／ ―― - - ―― ＼
/￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ヽ. ／ ヽ
| | | ィ=＝ミ ィ＝=ミ |
| よかった、親父っさん―― | | , , , , , , , , |
| | | ｀ |
| とにかく、無事でよかった―― ＞ ＼ （｀ ‐_―__‐ ´） ／
| | ＼ ｀ ‐ ―― ´ ／
ヽ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿/. ／ヽ イ＼
／ ＼
￣ ､
´ ＼
／ ヽ
/ ヽ
':::::::::::::: ヽ
l::::::::::::::::: ヽ
. l::::::::::::::::::: l
. l:::::::::::::::::::::::: |
l:::::::::::::::::::::::::: !
l:::::::::::::::::::::::::::: ﾉ
l:::::::::::::::::::::::::::::: /
!:::::::::::::::::::::::::::::: __/ なんもよくねえ
,'::::::::::::::::::::::::::::::. /
￣ ｀ー -:::::::::::::::::::. /
｀ ､ /
:.:.:.:.:.:... ､ ／
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.. .:.:ヽ _ ´
ー- :.:.:.:.:.:.:.:.. ..:.:.:.:.:.:ヽ
｀ ､:.:.:.:.:.:.:...:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼
. :.｀:.:､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
. :.:.:.:.:.:.:.｀:.:､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
暗い顔で首を横に振るできない夫に面喰らいつつも、
できる夫は尋ねた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
＿＿＿_
／ ＼
／ _,ﾉ ー ＼
／ （●） （●） ヽ. ……船に、
| u. ' | 洞爺丸には乗らなかったんですか
＼ - ― ／
／ ＼
／￣￣＼
／ _ノ＼
| （●）
. | | 乗りはした。
| __ ´
. | } 乗りはしたばって――
. ヽ }
ヽ ノ
/ く
| ヽ
.
-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=--=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-
⌒ ノ ）ノ
( ⌒ ヽ・ ﾉ ノ ’
ﾉノ；’･ ’
ノ´ ’ ／／
／ ヽ ／ ／
／| ／ __________
／ |￣￣￣￣￣ヽ ________ ヽ／ ０ ／
| __________ ヽ／ ０ ／ ／|,
| __________ ヽ／ ０ ／ ／|／ |
／.. __________ ヽ／ ０ ／ ／|／ |
／ _________ ヽ／ ０ ／ ／|／. |
__________ ヽ／ ０ ／ ／|／ ／|. ／ 〃. ／:::::::
__________ ヽ／ ／｜ ／ ／|／ ／ ｜ ／ 〃. ／:::::::::::
________ ヽ／ ｜０ | ／ ／|／ ／ |／ 〃〜〜....／::::::::::
____ ヽ／. | | ／ ／|／.|: ／ 〃〜. ／::::::::::::::
ヽ／ ０ | ／ ／|／ |: ／ 〃〜〜. ／::::::::::::
ヽ ／. ０ |／ ／|／ |／: 〃〜〜.ﾞ／::::::::::::::::
／ ０ ／ ／|／ |: 〃〜. ／:::::::::::::::::::
０ ／ ／|／ ／|: 〃〜〜.／:::::::::::::::::
０ ／ ∧∧. ／|／ ／ ｜ 〃〜. ／::::::::::::::::::::::
／ ( ﾟДﾟ)っ~|／ , ,.┘ ノ.|:〃〜. ／:::::::::::::::::::::::
／ 〈, У/ |／.|:. l （○ ○.ﾞ〜. ／:::::::::::::::::::::::
／ くﾉ／|／ |: ／. | u. ! |.ﾞ〜...／::::::::::::::::::::::
／ ／|／ ／|: ⊂ﾆ ヽ дノ..ﾞ／..:::::::::::::::::::::::
／|／ ／ |／. ヽ つ:::::::::::::::::::::::::
／|／ ／ |: 〃.....〉 ,＿)::::::::::::::::::::
／|／ ／ |: 〃..=t(（_／:::::::::::::::::::::
／|／ ／ 〃〜 ／:::::::::::::::::::
／|／|: ／ 〃〜. ／::::::::::::::::::
-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=--=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
乗りはしたのだが、これはまずいと思い、
出航前に何人かのかつぎ屋連中と一緒に
甲板から飛び降りたのだと説明したあとで、
できない夫は低く呻いた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
￣ ､
´ ＼
／ ヽ
/ ヽ
':::::::::::::: ヽ
l::::::::::::::::: ヽ
. l::::::::::::::::::: l
. l:::::::::::::::::::::::: |
l:::::::::::::::::::::::::: !
l:::::::::::::::::::::::::::: ﾉ あの時と一緒だったのっさ。
l:::::::::::::::::::::::::::::: /
!:::::::::::::::::::::::::::::: __/ 何か嫌な感じがした
,'::::::::::::::::::::::::::::::. /
￣ ｀ー -:::::::::::::::::::. /
｀ ､ /
:.:.:.:.:.:... ､ ／
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.. .:.:ヽ _ ´
ー- :.:.:.:.:.:.:.:.. ..:.:.:.:.:.:ヽ
｀ ､:.:.:.:.:.:.:...:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼
. :.｀:.:､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
. :.:.:.:.:.:.:.｀:.:､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./
＿＿＿_
／ ＼. : :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. :
／ _,ﾉ ＼ ＼. : : : :
／ （●） （●） ヽ. : : あの時？何の…… : :
| u. ' | : : : :
＼ - ― ／ : : :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. : :
／ ＼
────────────────────────────────────────────
|
,,..イ |
l _,,,...イ´ | |
ヽ、ヽ ＿_,,..-t''"´:::::::::::| l |
| ヽ:::::::::::::ノ / .| あの日も、朝から嫌な感じがしてた。
ヽ、 ￣ ／ |
｀ |. それを無視して、
| 俺は船を出してしまったんだ
|
| ―― 畜生め ――
|
.｜ |
────────────────────────────────────────────
′'
＿＿＿_. ´
／ ＼
／ ＼ ＼ヽ l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l /／
／ ＼ ／ ＼ ＼ ／
| （●） （●） | ― ヤル坊のことか！ ―
＼ ´ u ／ ／/ ＼
／ ⌒ ＼ // l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l ヽ＼
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
何のことを言っているのか最初はわからなかったが、
充血したできない夫の目を覗き込んでいるうちに合点がいった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
:::::::::::::: ::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::: :::::::::::::: :::::::::::::::::
:::::::::::::: :::::::::::: ::::::::::::::::::::: ::::::::::: :::::::::::::::::
::::::: ::::::: :::::::::::::: :::::::::::::::::::: ::::: :::::::::::::
:::::::::::: :::::::: :::::::::::: ::::::::::: ::::::::::
::::::::::::::: :::::::: :::::::: ::::::::
::::::::::::::::::::::: :::::::: ::::::: ::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: :::ﾞ＿＿. ::: :::::::: :::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::__ - ´´￣ ｀¨ ‐ ､:: :::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾞ, -'"´: 丿 ヽ.. :::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::: . ／. : : : : ＿／ 、 丶 :::::::::::::::
:::::::::::::::::: ,,.'. : : : : / /::::::ヽ ｌ ヽ、 ::::::::::::::::
:::::::::::::::::: /. : : : : : { {:::::::::ﾉ ! ヽ. ::::::::::::::::::::::::::::
/. : : : : : 丶 ｀ ´ ノ ヽ _
/. : : : : : ｀ー‐ ´ |
. /. : : : : : i ―――――
/. : : : : : Ｕ ｀i｀ ﾆ二-- i
::::ﾞ/. : : : : : ｀´ l
:: ,'. : : : : : : /
i : : : : : : : /
:: i : : : : : : : /
:: ', : : : : : : : ／ :::::::::::
', : : : : : : : ／ ::::::::::::::::::::::::::::::
::::ﾞヽ、: : : : : : . ／.. :::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::ヽ､:_: : : : . ／ﾞ: :::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::｀¨i : : : : : ヽﾞ::::::::::::: :::::::::::::
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ヤル坊が死んだのは親父っさんのせいじゃない、
そう言おうとしたが、何の慰めにもならないことを悟り、
できる夫は開きかけた口を閉じた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
-=＝三三三三三三三三三三三三三三三≧e_
― ―― ― ――――――― ―.._,.｡e≦三三三三三三三三三三三三三三三三三三三≧e｡.,_ ―――― ― ―――
＿ _ - ― =ﾆニ=ー - － ― =＝＝=≡ー― = ≡ ≡＝ = ― ==≡ニ≡ =ー= = ニ≡=' － ― ＿
＿_ _ - =＝ ＝ ≡ ≡ ー＝＝≡≡ ＝－＝＝≡＝－- ＿ ￣_ ＿-＝ニ= - ＿ ,，≦ー ≧x、＿ ＿ ￣ ＿
＿ ￣ ＿ － ＿ ￣ －
― ＿ ￣ － ￣ －
― ￣ ＿ ￣ - ＿ ￣ － － ￣
￣ ＿ － ￣ ＿ － ＿ ￣ － ＿ － ￣ ＿ － ＿ ￣ ＿
― ＿ ￣ － ￣ －
＿ ￣ ＿ － ＿ ￣ －
― ＿ ￣ － ￣ －
― ￣ ＿ ￣ - ＿ ￣ － － ￣
￣ ＿ － ￣ ＿ － ＿ ￣ － ＿ － ￣ ＿ － ＿ ￣ ＿
― ￣ ＿ ￣ - ＿ ￣ － － ￣
￣ ＿ － ￣ ＿ － ＿ ￣ － ＿ － ￣ ＿ － ＿ ￣ ＿
― ￣ ＿ ― - _ ￣ － ＿ - = ≡ = 三 ≡ = ≡ － - ＿ ー - ＝ 三 － ＿ ￣
－ ＿ ￣ ― ￣ ＿ ー = ≡ 三 三 ≡= ≡三 ≡ ＝ = ミ ｰ＝ ≡= ミー 、 ＿ ― = ＿ － ￣
￣ = _ ー ￣ - = － = － 三 = ー = ＝ ≡ = = ミ 、ー 三 ≡ ､ ＿ ー ＿ 二ニ ＝ー ‐ ― ´ ￣
ー = ＿ － ￣ ＝ - ,，ー = ≡ミ 、＿ , - _ ＿ , ＝ 三 ≡ = , － = 二 = -,，'´ﾞ ﾟ ﾞ ﾟ ￣´: : : : : : : : : : :
,、 ＿ ,，､ ＿,，、 ,，= '´ 三 - = ≡三 ミー = 、 ＿,，- ＝≡＝≡ _三＞= - '’ ￣: : : : : : : : : : : : : : : : : :
ﾞ ﾟﾞ ﾟﾞﾟ ﾞ ﾟ ￣ ﾞ ﾟ ￣ ﾞ ﾟ｀￣ ￣￣ ｀ ー=' ´￣｀￣ ￣ ﾞ ﾟ ´ ￣: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
, -―- 、
. l::::: l
. …… |:::::::::: |.. , -- 、
ヽ .ノ. / ヽ ……
/ .ヽ ゝ ノ
. （ | | | （| |）
ゝl |' | |
｀.|＿） し Ｊ
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
しばらくできない夫と肩を並べて
沖合いに目を向けていたできる夫は、はっと我に返った。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
、! ,
――- 、
／ ＼
‐ ―
（ (● ） }
! _｀__ u ＼ヽ l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l /／
｀ｰ´ _ ／_.＼ ／
_ ヽ￣ ／ . ― このまま、 ―
_ / } __ ／. 二 こうしてはいられない！ 二
´ /／ ヽ } ヽ_/......／/ ＼
l ｊ{. // l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l ヽ＼
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〈 ！ j{ ‘， ！
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｜ ！ j{ l ＞- }
l___！ j{ | l ﾉ
| ！ { | / {
| ！ { | / |
｜！ l / ‐- _l
| ！ { 〈/ /
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
すぐに桟橋に駆けつけなければ……。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
＿＿＿
／ ＼
／ノ ヽ ＼
／（● ） （● ） ヽ …………
| ´ u. |
＼ ⌒ ／
/ ＼
＿＿＿ ｷｯ!
／ ＼ ＿＿∧,､
／＼ ／ ＼￣￣`'`
／（● ） （● ） ヽ
| ´ |
＼ ⌒ ／
/ ＼
────────────────────────────────────────────
ヽ
ﾍヽ ＼ ｶﾞｼｯ
／ ／ ヽ ′ | i
| ｀ヽ´ ｀ ヽ ﾚ'、 |; ',─‐----、
│ l l、 | | } |｀{ ',
! i l | l. | | ﾍ ',
| |. l │ |. i l ｀ ー'
.!､ | | | |. i l
.|. ｌ | | | l
., --´ ! l ｀--´
｀--´
────────────────────────────────────────────
┏━━━━━━━━━━━━━━━┓
. ﾁｭｳﾁｮ
少しだけ 躊躇 したあと、
放心したように立ち尽くしている
できない夫の肩に手をかけた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
――- 、
／ ＼ 親父っさん、お願いです、
／ ＼ ／ 俺と一緒に来てください。
ｌ （●） (●） }
! __'__ } 船内の遺体の捜索と引き揚げを手伝ってください。
ｎ .＼_ └‐┘ ／ この事故じゃ潜水夫が足りないのは目に見えている
ｎl^l |＾! /＼ ￣ !ﾍ、
| |｜| | _ -‐〈 ＼ _／ >ｰ- _
{ ヽ／） ´ ＼ /i ヽ ／ ｀
、 _／/ ∨〈/ ∨ l
} { ./ ｜ |
} {/ l | l |
| | ヽ| | | ！
〈| | ヽ| | ！
| | /| ! ____,,,,,..... --－一'''''' ""~~￣
ヽ ／ /.____,,,,,..... --－一'''''' ""~~￣
____,,,,,..... --－一'''''' ""~~￣. ／￣￣＼
／ ＼
| -‐' ヽ､ | ﾊﾞｶﾞ ｶﾀﾞ
| （ー）（ー） │ 馬鹿語るな、俺はもう潜らねえ、
| ｜ │
l __´___ │ 何でかはわがっているべや
ヽ /
／:ヽ .ノ,'ヽ､--､
,.-‐,ｨ‐"/ゝ.ヽ.＿__ノゝ::::::::ヽ､:::ヽ
/／::_,､/,';;;;;;;ﾞ;;;;;;;;;;;;;";;;;;|:ﾞ､::::_::ゝ､ヽ
ﾉ:::i￣／/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l::::/::::::::::::l:::ﾞi
/::::/::::｀ヽ,';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|／:::::::::::::::l:::ﾞ,
|:::::|::/::,ｨ'";;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ﾞ､::::::::::::::::/::::､
l:::::;/:/: :|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|::::::::::::::::::l::::::ﾞ,
i::::/,': : |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;lﾞ,::::::::::::::::ﾄ::::::}
〉/,': : :/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|ヽ.::::::::::::::::ゞｲ
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
子供がぐずっているような声を返したできない夫に、
できる夫は強い口調で迫った。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
三三三三三三三三三三三三三ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニ＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝───────
ﾍ
＼ ﾍ
＼ ×
, - ＼ ／´ ‘,
〃 γ ｀ ＜ > ´', | i.. ＿/＼／＼／＼／＼／＼／＼／＼／＼/＼／|＿
{i { ● } ヽｪｰ ,.} .}=ッ{● } i |. ＼ ／
ﾍ !､.＿.ノ､ ﾉ ﾄ !､_ソ__,／ .i. ＜ わかっています、わかっていますが、 .＞
゛'''──ー ' i. ＜ そんなことを言ってる場合じゃない ＞
, ハ. ／ ＼
/. ￣|／＼/＼/＼/＼/＼/＼/＼/＼/＼/＼/＼/￣
＿＿＿＿＿＿＿ ／
／ ∨/////ｲ .／
/ }////ッ /
{ ヽ .}///／ ／
＼ ヽ､_＿二ﾆ ー´_. イ
三三三三三三三三三三三三三ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニ＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝───────
.
＿＿＿_
／::::::::: u＼
／.:::::::::＼,三_ノ＼. いいですか、親父っさん、
／::::::::::（ ●）三（●）＼ 生意気なのは承知で言います。
|.:::::::::::::::: ＿'__ ｜
＼::::::::: ´-―-' ,／ かつぎ屋なんかをしてたって、
ヽ ,ィヽ、. ヤル坊の弔いになりはせんのです
/(⌒) , ゝ､
/ ／ ト/.＼＼
──────────────────────────────────────────────────
-=＝三三三三三三三三三三三三三三三≧e_
― ―― ― ――――――― ―.._,.｡e≦三三三三三三三三三三三三三三三三三三三≧e｡.,_ ―――― ― ―――
＿ _ - ― =ﾆニ=ー - － ― =＝＝=≡ー― = ≡ ≡＝ = ― ==≡ニ≡ =ー= = ニ≡=' － ― ＿
＿_ _ - =＝ ＝ ≡ ≡ ー＝＝≡≡ ＝－＝＝≡＝－- ＿ ￣_ ＿-＝ニ= - ＿ ,，≦ー ≧x、＿ ＿ ￣ ＿
＿ ￣ ＿ － ＿ ￣ －
― ＿ ￣ － ￣ －
― ￣ ＿ ￣ - ＿ ￣ － － ￣
￣ ＿ － ￣ ＿ － ＿ ￣ － ＿ － ￣ ＿ － ＿ ￣ ＿
― ＿ ￣ － ￣ －
＿ ￣ ＿ － ＿ ￣ －
― ＿ ￣ － ￣ －
― ￣ ＿ ￣ - ＿ ￣ － － ￣
￣ ＿ － ￣ ＿ － ＿ ￣ － ＿ － ￣ ＿ － ＿ ￣ ＿
― ￣. /￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ヽ. － ￣
￣ ＿ － ￣. | | ＿ ￣ ＿
― ￣ ＿ ― - | あの船の中にはまだ生きている者がいるかもしれない。 |... 三 － ＿ ￣
－ ＿ ￣ ―. | |.ー 、 ＿ ― = ＿ － ￣
￣ = _ ー ￣ -ﾞ| たとえ全部が死んでいたとしても、 |..二ニ ＝ー ‐ ― ´ ￣
ー = ＿ － ￣ ＝ - | |..ﾟ ￣´: : : : : : : : : : :
,、 ＿ ,，､ ＿,，、 ,，= '´...| ひとりでも多く、 |.....: : : : : : : : : : : : :
ﾞ ﾟﾞ ﾟﾞﾟ ﾞ ﾟ ￣ ﾞ ﾟﾞ| |. : : : : : : : : : : : : :
: : : : : : : : : : : :.| 日が当たる場所まで引き揚げてやらなければ可哀想です |ﾞ: : : : : : : : : : : : : :
| |
ヽ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿/
──────────────────────────────────────────────────
.
──────────────────────────────────────────────────
/￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ヽ
| |
| それができるのは俺たち潜水夫だけなんだ |
| |
ヽ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿/
| ./
＿＿＿_ |/
/＿,-―-､_ヽ[]
,、 _ |￣━ ◎o━￣| _ ,、
〃￣ヽ| |￣ヽ￣ ﾟ´￣/.￣| |/´￣ヾ
i i| | 〓 ￣￣ | |i i
ヽi―j"|└────‐.─┘|ヽi─j"
|￣| ｀i￣ ./￣￣ヽ￣ i´ |￣| ,..-――- ､ヽヽ
__,,,,,-‐‐‐-,,,,,__.〕 .iヽ､二二二二 /i 〔||＿||〕...... ,ｨ":::: ヽ ﾉ`ヾi)
,,,-‐i''i i~i‐-,,, ┘..| ∥,.l`'ｰ--- ､_ ||. r":::: ,,.ｨ''""ﾐヽ､ _ヾ_
／ | | | | ＼ |￣|i |,-‐i"ﾄー--''" /!;(○r:;:l : : ト, |
. ／ | | _____ | | ＼ | || |i,､ `'`ｰ-､....,r',,_;《＋）_:,,.-‐'" |ﾄ;|
,; .__,,,,,‐‐〃⌒ヾ ￣''''‐‐､,,,,__ ;,| |l |;;;lヽ : : : : : : : : : l:|:::i
l ´i .￣ （( (,〜')）､_,,--､ ￣''''i ｀ l ヽ_.,,,_ ノ`i;|::ヽ l::|-
| .l ､====ヾ､__,,ソo（(,,;;;;)）====､ l. | ,-くヽ,-'^ゝ |:::::::ヽ l:::|
___. |: | ￣￣￣ ,;-i-､,;ﾞ~=''＾￣￣ |: |ヾ;::ヽヽ _;;l |:::::::::;i------―――――|r''
〃О｀,,-‐‐‐‐-､ ｀‐ i─,,,,, (-○-) ,,,,,─'i"´ ,,-‐‐‐‐-'､℃ヾ::i r,=======il !､|!
──────────────────────────────────────────────────
.
＿＿＿_
／ ＼
／ ＼:::::::::::／ ＼. それに親父っさんに潜ってもらおうってことじゃないんです。
／ （●）:::::::（●） ＼
| u. ´ | 作業船の上で俺たちに指示を与えてくれるだけでいい、
＼ ⌒ ／ それだけでどんなに心強いか
／￣￣ヽ ＼
（｢ ｀rﾉ ＼
ヽ ノ ＼
| | ｢＼ ＼
＿＿＿_
／ ＼
／ ＼
／ ＼:::::::::::::::／ ＼ どうか、俺たちの力になってください、
| （●）:::::::::（●） | お願いします
＼ u. ´ ／
／ ￣￣ ＼
,,..-─-..,,_
／ ヽ
/ (＿＿ ',
i:) ヽ::::::: i. …………
. < |
|‐‐-､ |
|ｰ j l,...、
ヽ-..,,_::::::／,,-''"::::／｀ヽ
ヽ ヽ::::::::::/::::::
_,,-''"| l＼/::::::::::
/:::::::::/-‐''"/:::::::::::::::::
./'"ヽ./ ./:::::l:::::::::::::::
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
そこまで一息に喋り、言葉を切ったが、
できない夫の瞳はどんよりと曇ったままだ。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
────────────────────────────────────────────
＿
γﾋﾞ Y
＿＿＿＿＿_ / ｷｯ /
／ ＼ ゝ !! /
／ ＼ ￣
／ ―― ―― ＼
／ ,.-‐-､ ,.-‐-､ .＼
／ (・) (・) ＼
| `ｰ一 、 ー一′ |
| |
＼ ─ ー - ／
＼ ／
────────────────────────────────────────────
＿＿＿_
／:::::::::: ＼ 親父っさん、しっかりしてくださいよ。
／::::::::: ＼,三_ノ＼
／:::::::::（ ●）三（●）＼ 長年一緒に潜ってきたんだ。
|:::::::::::::::: ＿'__ ｜. 親父っさんが、何を考えているかは俺にはわかります。
＼::::::::: ´-―-' ,／
ヽ i （￣｝
/(⌒) ハ_ﾉ }
/ ／ /::... /
＿＿＿_
／:::::::::: ＼
／::::::::: ＼,三_ノ＼ ,∩__ 戦争で俺だけ生き残った、
／:::::::::（ ●）三（●）＼ fつuu 息子を死なせて俺だけ生き残った、
| ___'___ ｜ | | そしてまた今度も生き残った。
＼ |il!|!il| ／__ | |
／ `ｰ' i 丿
／ /￣￣´
（ 丶- 、 /
`ー､＿ﾉ
.
─￣─_─￣─＿─ ￣─_─￣─￣─_─￣─＿ ─￣─_─￣─￣─_─￣─＿─￣─_─￣─
─_￣─_─ ￣─＿─￣─_─ ￣─￣─_─￣─＿─￣─_─￣─￣─_─￣─＿─￣─_─￣─
─￣─￣_─￣＿￣─_ ─￣─￣─_─￣─＿─ ￣─_─￣─￣─_─￣─＿─￣─_─￣─
─￣─_─￣─＿─￣─_─ ￣ ─￣ ─_─￣─＿─￣─_─￣─￣─_─￣─＿─￣─_─￣─
-─── ミ
／. 八. ｀ ､
/ ⌒ ヽ そうやって親父っさんは自分を責めている。
/ ＼::::::::::::::::::::／
. ′ （ ○ヽ:::::::::イ○ ） i 生き残ったのなら、
| 〃 .′ 自分が出来ることを精一杯全うするのが
ヽ v─‐= ヽ. ／. 人の務めってもんじゃありませんか
＞ト ゝ-=-‐ ' x≦､
, -‐く:.:.:.:.:.:.:「ﾆ=‐=ﾆく´/.:.:.:.:.≫x
/ V.:.:.:.:∧ {:{:./ 7/ 7.:.:.:.:.:.:./ ｀ヽ
{ ＼. V{｀ヽ;:ﾍ// // /.:.:.:.:.:.:./ }ﾄ､
', ヽ.Vﾊ ｀´ 〈／ }､.:/ / '
} ハ 〉 r'´ Y !
| V ヽ ＿二⊃ / |
i /.:.:.:.:｀ニ彡} | ハ ,}
. i /､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/ .| ' ヽ ハ
', ／:／.:ー=彡' i ! ', }
V/.:／.:.:.:.:.:.:.:./ | { V '
/.:.:ﾄ､.:.:.:.:.:.:.:./ { { ヽ }
{.:.:.:.:.:.:｀:ｰ=彡' / ', } }
/.:ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:.:/ { ヽ V ハ
─_￣─_─ ￣─＿─￣─_─ ￣─￣─_─￣─＿─￣─_─￣─￣─_─￣─＿─￣─_─￣─
─￣ ─_─￣ ─＿ ─￣─_─ ￣─￣─_─ ￣─＿─￣─_─￣─￣─_─￣─＿─￣─_─
─￣─_─￣─＿─ ￣─_─￣─￣─_─￣─＿ ─￣─_─￣─￣─_─￣─＿─￣─_─￣─
─￣─￣_─￣＿￣─_ ─￣─￣─_─￣─＿─ ￣─_─￣─￣─_─￣─＿─￣─_─￣─
─￣─_─￣─＿─￣─_─ ￣ ─￣ ─_─￣─＿─￣─_─￣─￣─_─￣─＿─￣─_─￣─
.
／￣￣￣ ＼
ﾉし ﾞ＼, .,､,／"u＼. ここで親父っさんが逃げ出したら、
／ ⌒ （◎）ヾ'（◎）u ＼
| u ⌒ﾞ ___'___"⌒ u | 天国のヤル坊がどれだけ悲しむか、
＼ u `ヾ,┬､/` ,／. さっぱりわかっちゃいない。
. /⌒/＾ヽ､ ）__（ ,ィヽ、
/ ,ゞ ,ノ ﾞ⌒" , ゝ､
l ／ / ト/.＼＼
__ __
/ / / /
,-‐7 , -i"l_,-‐､ / / / /
/:::::/ l_:::::!:::и:::i' r-‐-､ /_/ /_/
. /::::"‐-, /::/l:::l└┘ ｀￢,_/ /_7 /_7
｀｀‐-' ~ '´. ＿＿
＞_´___八___ ` ＜
／==- }川!{ -== ヽ
/ .ミ==ィ ヽ==彡 , 三国一の潜りさまは、
. / ＿__｀＿__ ', いったいどこに行っちまったんですか！
. , |VVVVﾊ{ ',
. { |i|i|i|i|i|i|i|i! }
. 八 .!|i|i|i|i|i|i|i|| ,
ﾍ ||i|i|i|i|i|i|i|i| /
ゝ..__ jVVVVVV{ __ ィ
. / ´ ￣￣￣ ｀ ', __
／ヽ__/ __,r-' ',
{ レ、 i }
. ゝ / ゝ .ｲ
,ｲ ,ｲ
,.ｲ ,, ﾚ .ﾚ
| |／ .!
／ ,／! |
ﾚ'.| | .| |
| | .|/
|/ ,ｲ,ｲ ,ｲ
. ＿＿ ﾚﾚ //
. :／. 丶; /'
;/ ､_ 丶; ＿＿＿
;ｌ::.ﾉ (◎) ＼; ／ ;u ノしヾ
;ヽ（◎）丶 ヽ;. ／ ⌒ ＼ そんな意気地なしの親父を見たんじゃ、
｀ ;＼ ／ ７l ／ ＾ ヽ
. ｀ ;＼｀ヽ（／. | | ヤル坊は親父っさんに向かって
,ヾ／´ ｎ^^-＼ , ／. 唾を吐くに決まってます。
;/ ∠＿;i ￣丶／￣ ＼
;（ ⌒） ´ ノ ＼
. ＿/＼／＼／＼／＼／＼／＼／＼／＼／＼／＼／＼/＼／|＿
. ＼ ／
. ＜ ＿＿＿_ ＞
. ＜ ／:::::::::: ＼ ＞
. ＜ ／::::::::: ＼,三_ノ＼ ＞
. ＜ ／:::::::::（ ⑪）三（⑪）＼ あれを見てください、 .＞
. ＜ |:::::::::::::::: ___'___ | あの人を！ ＞
. ＜ ＼:::::::::. |il!|!il| ／ ＞
. ＜ /⌒〜"￣,￣￣〆⌒,ﾆつ ＞
. ＜ . | ,＿_＿ﾞ＿__､rヾｲｿ⊃ ＞
. ＜ . | ｀l￣ ＞
. ／ ＼
￣|／＼/＼/＼/＼/＼/＼/＼/＼/＼/＼/＼/＼/＼/＼/＼/￣
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
できる夫は、
泣き崩れながら拳で砂浜を打っている女の姿を指さし、
目を背けようとしているできない夫の襟を掴んで、
無理やり顔を向けさせた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
,. -''",.=＝｀ヽ、
,.'::..//ﾊi l || i L!l,,ゝ___,,,,,_
/::::://;.-‐ﾆヾヽヽヾヽヽ ヾヽ
{::／:::｀ヾ:::::::::il |l || i | l|ﾄ､ ヾヽ
ﾊト､:::::::::::ヾ:::::ll || || | | || i| ヾ ｀、
〃i|:::::｀ヽ::::::::ヾ:|| |l ||l il| |i ﾘ ヾ ヽ
/ |::::::::::::｀ヽﾉ::::ヾ. ﾘ lﾘ ,,,.ゞ=j
i li|::::::::::::::::::｀i::::::::ヾ__,,.-==＝''''" i::｀、
l il i::::::::::::::::::::l::::::::::::::::::::::::::::i | ',::｀、
ll |i;;;;;;;;;;;;=＝j;::::::::::::::::::::: ',::｀,
ﾘ ll￣i';::::::::::::',｀ゝ;::::::::::::::. ｀i }
l ﾘ lll';:::::::: ', li li｀ヽ:::::::::. ヾ
' ﾘl';:::::. ',ll ,ﾘ ヾ;:::::... ... ｀ヽ
}:::.. } ,.-､i::::::::::::::::::.--‐' ｀、
_,i:::: i-'''""__j-j:::::;;;;;;;;;;;;;;,,.-‐ ,.ゝ
,.'" l::: ,' ヾヽ＼::: ,.=='"">
/ l::: ,' ヾ;;;;;;;;;;;;;;;,,,,,,,,,,,,,,,.-=" ｀ヽ
/ j:: ,' ￣￣￣￣￣ 〉
> .j::: ,' / j
＼____ﾉ:::. ,' _＼
_,.-''"ヽ/::::::: ,' ,.-'"├'
､ j:::::;::::::::::::::::::/---､ _,,,.-、 li:::::::::i'
. ）､_ヽへ＿＿_ノ く＿＿＿＿（( >､｀ｰ--‐'''"ll:: ｀、
. ／＾Ｙ´ ｀ｰ-<;;;:::::゛ｰ--､ ll i
. | ｀ﾞ､;::: ｀ヽjl j
｀ﾞｰ､______人___ノ （~ﾞ＼
＼ ＼
＼ ＼
＼. ＼
＼ ＼ ,.--､
ヽ, ヾ ;'⌒ー-、
γi i
,,--┤i i
（ ､ソ ﾞi,
＼,, ヽ
＼ ＼
ゝ,,
.
│ /
′／
――- 、
／ ＼
ノ ヽ_
（ (○ ） } ――――
l_'__ u. }
ヽ_ ） _／
ﾍT _,／ヽ
_〈/丶 /ヽ ／‐- _
_ ´ ヽ i,/ ∨ / ｀ ､
´ | ∧
{ |
{ { | ｜
{ { | ヽ !
{ { ｜ | |
ﾊﾟ { { | | ！
ｯ { { | | ！
{ { | ！
（＼ ／ | ｜ ,､r∩ｎ _|
ｎ_) ＼_,／、 ヽ| ｜ l | | || |ﾉ 〉
ーｎ_ ヽ_ヽ／| ｜ ゝ、 ＿/
ーｎ_,n/_／ | ｜ |
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
さすがに言い過ぎたとはっとし、
できる夫はできない夫の襟から手を離した。
手取り足取り自分を仕込んでくれた
親方に対する振る舞いではなかった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
＿＿＿_
／ ＼ : :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. :
／ ／ ＼＼. : : : :
／ （●） （●） ＼. : : これは殴られても仕方がない。 : :
| u. ' | : : : :
＼ ⌒ ／. : : :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. : :
ノ ＼
＿＿＿＿＿
. ／ ＼
. ／ ＼. ＼ヽ l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l /／
. ／ __ノ ヽ__ ＼. ＼ ／
／ ＼. 二 いっそ、 二
| （ ＿ ） （ ＿ ） | ― 昔のように一発張り倒してくれ―― ―
| u. | ／/ ＼
. ＼ ´ ／ // l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l ヽ＼
. ＼ - ─‐‐-. ／
／ヽ イ＼
／ ＼
／￣￣＼
／ ＼
| -‐' ヽ､ |
| （ー）（ー） │ …………
| ｜ │
l ､__｀___ │
ヽ /
／:ヽ .ノ,'ヽ､--､
,.-‐,ｨ‐"/ゝ.ヽ.＿__ノゝ::::::::ヽ､:::ヽ.
/／::_,､/,';;;;;;;ﾞ;;;;;;;;;;;;;";;;;;|:ﾞ､::::_::ゝ､ヽ.
ﾉ:::i￣／/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l::::/::::::::::::l:::ﾞi
┏━━━━━━━━━━━━━━━┓
視線を足元に落とし、
できる夫は歯を食いしばった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
期待した拳骨は飛んでこなかった。
そのかわり、意外なほど穏やかな声が返ってきた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
, ´ ￣
／ ＼
/ ヽ
. /
/ i
. / /｀
/ / おめえもずいぶん立派になったもんだなあ。
_./ （ ●） /
「:::::∧ i おめえから説教される日が来るなんて、
ノ::::::::::::::.、 | 思ってもいながったど
::::::::::::::::::::::., { |
::::::::::::::::::::::∧ 、 , - ┘
:::::::::::::::::::::::::::::., ヽ ｀ ｰ /￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ヽ
:::::::::::::::::::::::::::::::::..､ ＼ /´ | , , 、 |
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ / ヽ __ ./ |. / （● ● え？ |
|. ゝ rっ' ﾉ |
ヽ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿/
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━┓
恐る恐る顔を上げると、
そこには憑き物が落ちたような
できない夫の顔があった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━┛
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ,, -‐ ､
/' ヽ
／￣￣＼ ./ i
／ ＼ _ノ ＼ / ...........i
| （●）（●） | / ..:::::::::::::::| まずは、船の図面と乗船名簿を手に入れろ。
|. l .| / ..::::::::::::::::::l
| __｀__ } / ..::::::::::::::::::::!. それがら直接米軍に連絡しろ。
|. ｀ ⌒´ }./ .::::::::::::::::::::/ 米軍なら性能がいい切断機を持っているはずだ
ヽ ./ .:::::::::::::::::::/
ヽ . .／ .:::::::::::::::::::/
,. ‐'"´ `'‐,r''"~ .:::::::::::::::::／
. :.／,. -‐‐- ､ l′ ..:::::::::::::／|
:,' ／ !.:::::::／:i..:..l
r ､ / !::::::::::: i..:..i
l .......`:i i !:::::::::: ﾞ､:.i
! ::::::::::/ i i:::::::::: ヽ:i
! ::::::::/ i .....i::::::::::: ヽ
ヽ ::::::| `､ `､ .....::::::::::::l:::::::::::: `,
/ ＼:::l. `､ ヽ::::::::::::::::::::l::::::::::: /'''ー─----､
`ヽ `､ .::::＼:::::::::::::::|::::::::: /,, ,. ‐;''
て
＿＿＿ そ
／ ＼
／ ⌒ ⌒＼
／ （ ●） （●）＼ それじゃあ、親父っさん
| ___´__ |
ヽ、 `ー '´ ／
ノ ＼
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
できない夫は右手でぽんと できる夫の肩を叩き、
頬をゆるめてみせた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
──────────────────────────────────────────────────
__
:`､｀ヽ､,,,
:::::＼:::::::｀￣:゛゛ｒ-､ ｒ- ー､ ﾎﾟﾝｯ
:::::::::::|::::::::::::::::::::ヽ ｀ヽ-.､ ヽ _
:::::::::::|:::::::::(⌒'彡'::ヽ ヽヽ ヽ｀ヽ､
:::::::::::|::::(⌒ ｀):::::::::', `'' ｀ﾞ ｀ ー､
::::::::::i:::::::`ｰ〜′:::::::::} ',
:::::::::i::::::::::::::,- 、:::::: ｜ ',
::::::::i:::::::::::::::', ',_ :::: ｌ ',
:::::::i::::::::::::::::::{ ` -' ,.-‐――┴- ､
::::::i::::::::::::::::::::｀ヽ. ／ ＼
:::::i::::::::::::::::::::::::::::ヽ ／ ヽ
::::i::::::::::::::::::::::::::::::::::＼ / ヽ
:::i:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ､/ ＼
::i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ ＼
:i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::{ ＼
i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ ＼
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼ ﾞ
──────────────────────────────────────────────────
.
／￣￣＼
／ -┘ へ. ＼
| （●）（●） |. 何してっけや、
|. ｜ ｜ しばらくの間は寝れなぐなるぞ
| ___´＿ |
|. ｀ ー ´ }
ヽ ,ｨ{
| ｀ｰ-‐ ' }｀iー -- ､
,! i / ノ l _,シ ム
〃ﾄ､＿,,,. ;i'ﾒ ｜/ ,／ ＼
／/lliiiiiiiiiiiiiiiill/{r―‐^ i〃/ ヽ
／ ,ｲllliiiiiiiiiiiiillll/´ ／r- ゝ ' l
. ／ ／´ﾌliiiiiiiiiilllll/ , ／ |/ ｜
. / ir' |liiiiiiiilllllli' ／ | ーイ、
ﾊ |, /iiiiillllllllll| / | i
. / ｌj /llllllllllllllllll{／ l |.
. ｌ ｜ /llllliillllllllllllll| | |
| ヽ| /lliiiiiiiiiillllllllllll} | |
〉 l |iiiiiiiiiiiiiiilllllllllll| | 、 |
. / ｜|iiiiiiiiiiiiiiiiiillllllll!、 | 二 |
.／ | |iiiiiiiiiiiiiiiiiiiiillllllヽ、 | ｀ |
、 ,
｀ ′ ′
｀ ヽ ｖ_ ' , ´
丶 ´(ﾒ｀ __x
o ､ ´ ﾞサ "
X ｀ ′
＼,〈ﾌ´ 、 ' , ／ , ´
、 ﾞ ＿＿＿_ _ ‐
＼ ／ ＼. , 、
／ ＼ ／
／ （ ●） （●）＼ はい！
| ___｀__ |
＼ `ー'´ ／
. /⌒ヽ ｨヽ
. / rｰ'ゝ 〆ヽ
. /,ﾉヾ ,> ヾ_ノ,|
. | ヽ〆 |´ |
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
できる夫は一声あげ、
ｺｳﾍﾞ
できない夫に向かって深々と 頭 を垂れた。
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.
─────────────────────────────────────
・
・
・
─────────────────────────────────────
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
できる夫が所属するサルベージ会社の
函館事務所は混乱を極めていた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
c､ ,っ
∧,,∧((ｎ∧,,∧ ヾ. ＿ / r‐ ､ヽ. c､ , っ
∧ (´・ω・) |(・ω・｀)∧∧. r‐､ヽ {__{__ 〈 （. ∧,,∧ ∧,,∧o
( ´・ω) Ｕ) ヽ o (・｀ ) ! { { ／ ＿_｀∨､ ∧ (´・ω・)ｎ('・ω・`ii∧,,∧
｜ Ｕ ( ´・) (・｀ ) と ﾉ 〉 ヽ. {_／ }○}. ( ´・ω) Ｕ) ﾐっ o(・｀ )
ｕ-ｕ （l ) ( ﾉu-ｕ O ﾉ ﾉ ｜ Ｕ ( ´・) (・｀ ) と ﾉ
`ｕ-ｕ'. `ｕ-u' ＿./.／. ｕ-ｕ （l ) ( ﾉu-ｕ
/ r‐ ､ヽ `ｕ-ｕ'. `ｕ-u'
∧,,∧ ∧,,∧ ヾ _ {_j }. {
∧ (´・ω・)ｃ-(ω・｀；)∧∧ ､ヽ、 ○ヽ{ ∧,,∧ ∧,,∧=,∧
( ´・ω) Ｕ) ﾐヽc-' (・｀ ) ｰ' O ○. ∧ (´・ω・)(ω・`='・ω)∧
｜ Ｕ ( ´・) (・｀ ) と ﾉ ____ ( ´・ω) Ｕ) ( o o (・｀ )
ｕ-ｕ （l ) ( ﾉu-ｕ / r‐ ､`ｰ､ O ｜ Ｕ ( ´・) (・｀ ) と ﾉ
`ｕ-ｕ'. `ｕ-u' __{ .{ ｀¨¨ ＿. ｕ-ｕ （l ) ( ﾉu-ｕ
(r‐､ヽ二ﾌ ((⌒j). `ｕ-ｕ'. `ｕ-u'
c ､ , っ. /ノ ＿ （(
∧,,∧((ｎ ∧,,∧ o′ (＿_ ｀ヽ o_ o
∧ (´・ω・) |(・ω・｀；)っ∧ ） } ∧,,∧ ∧,,∧=,,∧i!i
( ´・ω) Ｕ) ヽ c彡・｀ ) （ /⌒ヽヽ Σ(´ω(;;o=(ω； =；ω)o从
｜ Ｕ ( ´・) (・｀ ) と ﾉ ￣ ﾉ ﾉ ( ´・ω) Ｕ)ﾐヽ, o=∠´ )ｎ
ｕ-ｕ （l ) ( ﾉu-ｕ r__..´イ. ｜ ＵΣ´・(;;(0ﾐo从o=0 と、 <__
`ｕ-ｕ'. `ｕ-u' ○ ｕ-ｕ (, っ<￣￣)ｎｎ `ｕ一'
`ｕ-ｕ' `c , -一'
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
国鉄の青函局（※）との連絡さえ
まともにつかない状態で、
数百メートル離れた二つの事務所間を、
若い職員が何度となく走って往復していた。
※青函連絡船は国鉄が運航していた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
| |i:::ll. :|| |:::
| |l;::ll ::!|_|::
| |i:: ／ '::
| i／::'
| ~
|::
| _
,,;| ,,.. - ' / _, -ー,
ヽ ___. ;;:;|/,,. - '''|| _,. - '~.,, -|| |::
:: ヽ;,,､ /ヽﾆ ゞ;;| |.:::::;;||:: .|i :.::::|| ::: ;;|| |:::
:: ;;i ..i...... ..... ......... .......... ..;;:::,, i !. ; ;;';;;| |.::.:::,||::: || ::: :|l ;;;::::|| |::::
'' " ,, ;:'':: :: :: :::: ::::::: ::::;'::: :: ::.'';,i .i::￣￣| |.:::::;;||::: .:||;==.| =＝|| |:::
,,. ;:''':: ::. ..::. .. ::;':: . ::: :: ''､:: :. .,| |.::::;;;||.. ..:|| : :::|l ;;;::;;|| |::
. : : . : . : /. : . : . ,::.＼. : .| | ::():|| , :.|| :;, :|| :::: :|| |:::
,, , : / ＼.| |.::::'';|| .|.i::‐-!',,__..;|| |::
; ,, . / ＼.|:.::::;;|| ~ﾞ'' -..､_.|| |::
: ,/ ､―＼:::::|| ~"::
/ `.＼＿＼||
/ `'――＼
/ . . ＼
/ ,,ﾞ((;;;;゜;;:::(;;: ∧__,∧ '';:;;;):;:::))゜)) ::))). ゞ;;ﾉ
/ (((; ;;:: ;:::;;⊂(｀・ω・´) ;:;;;,,))...)))))) ::::). ヽ;;i/
/ ;:ﾞ((;;;:;;;:,,,." ヽ ⊂ ） ;:;;))):...,),)):;:::::)))) ＼
. ("((;:;;; （⌒） ｜どどどどど……
三 `Ｊ
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
できる夫は一刻も早く海中に降りたかったが、
じゃあすぐにと簡単にいくものでもない。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
＿||＿＿＿＿＿||＿＿＿＿＿||＿＿＿＿＿||＿＿＿＿＿||＿＿＿＿||
＿＿＿＿＿ |＼
|| ......::::::::::::::::::|| |￣￣￣￣| .| ＼||
|| .....::::::::::|| ______ |＿＿＿＿| .| ＼
|| ....::|| iヽ＼/￣￣|「］ ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿.! ＼
|| ....::|| |, |二二二二| |＼＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿ ＼ ＼||
|| .....::::::::::|| |, |＿＿＿LI.| |. | ＝ || ＝ || ＝ || ＝ | ＼
＿|| ......::::::::::::::::::||＿_|, |＿＿＿LI.|＿＿＿| .| || || || | ＼
ヽ|＿＿＿＿| ..＼| ＝ || ＝ || ＝ || ＝ | ＼||
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣＼
____ ＿ ＿ . ＼
|＼ ￣￣￣￣ ＼ ￣￣￣ 旦 ＼ l＼ .＼
|＼ヽ ＼三＼. ＼. ＼ il ＼
| i、＼＿＿＿_____＼ ＼ ＼
/＼|_ ＼|＼ ＼￣￣￣￣ ＼ l＼ ＼
/ i i..|＼＼. ＼ ＼ il ＼
.| i、＼ ＼ . ＼ ＼
./＼|_ ＼||￣￣￣￣￣|||￣￣￣￣￣||
/ |. ||￣￣￣￣￣|||￣￣￣￣￣||
ξ
――- 、
ｲﾗｲﾗ ／ ＼
／ ― ―
ｌ （ ー） (ー …………
! u ' }
＼_ ´｀ ／
/＼ ￣ lﾍ
_ -‐ 〈 ＼__ ___ﾉ iｰ- _
_ ´ ＼ / / ）. | ｀ 、
´ ヽ ∨ 〉 ヽﾉ ∧
| ∧ | ∧
| ∧ | l ∧
| | l ∧
| ∧ | ∧
| / )／)／）
∨ {-― - _ /／／ ／ ∧
∨ ∧ ヽ¨¨¨¨l¨¨ ￣￣￣ }
∨ ﾉ~｀ ､ _ ＿ 〈 l j{
∨ ￣ ｀ ― ＿ j{
}∨ | ｊ ´ ¨¨¨¨¨￣
| ｀ ---- ――― ┴― ´ |
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
青函局に設置された対策本部から
協議を終えた作業長とできない夫が戻って来た時には、
既に昼近くになっていた。
その間にも、
海上捜索に出ている船が続々と遺体を揚げていた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
／￣￣＼
／ -‐' ＼
| （ 一）（●） やれやれ、
| ｜ | 話ばつけるだけで、もう昼だ
| __´___ﾉ
| ,.<))／´二⊃
ヽ / ／ '‐､ﾆ⊃
ヽ､ｌ ´ヽ〉
／ / __人〉＼
,.-''"￣｀¨`ー--､
,r'ﾞ ,v┴,
iﾞ( ､_,.ｨ ,, ,ｨﾞ ） ﾞi
ﾅ ﾐ≡`'ﾃｧ'ﾜﾞ′'ﾍ､`!、
(f ｯﾝ`ﾆ´.,_ _,..､｢ｿ｀
ﾞf r‐'ﾐ!´ tr`7 ('tr 〈′
ﾞi|.iﾝi;!, ﾞ ′i ,i′ 朝のうちに終わっただけ、
ヾｰﾋ!ヽ ' -ﾉ' i′ 良しとしましょうや
ﾈ!i祇 ﾞ ｰ─ /、
,､┴;|`＼ ｀´ _/_!)!,
＿,,...｣ |fﾞ´ﾉ､＿＞─f"i,／!:ﾄ､_
／｀/￣_,／;;ﾉrﾞ /／/ / /|／ ; ﾞ'`,=-､,_
／ ,/￣/'"´/;! ゝ､＿_,､-‐''7 ':'ﾞ , ノ `'-､_ `''-､,_
／ /..:::/ /;;;;! ,;;:'''/ ''`'-､l_ ,､-''"￣ ﾞi
上ー､∩:::/ iﾞ;;;ﾂ '' ／〃 ,,;;;/ >'" ﾞi
,上ﾆ`ゝ､`:ﾞ! |!'′ ／./Aヽ,,;;;;;f ,r'ﾞ,,,,,,,,,／￣＼ |
/ど三` ﾞ!;;,,＿!__,,,､､､,＿ ｆﾞ 〃 ;;;;;;;;;V_;;;;;=ｨ┘ ヽ/
,/-ｧ=─`…'''"￣ 才三r"ﾞ''ｰ-､,,_ _,ｨﾁ- i i i ,イﾞ/
,／ i三 i ,､-''~ ＼＼ニニ'ﾞノ:/
ﾞ!三ﾞi､:;'ｰr'ﾞ `'ｰ￣┘ /
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
できない夫を事務所に連れてきたことでは、
作業長からいたく感謝された。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
::::○ﾟo:::::::｡:::ﾟ::::o○:::゜:::｡:::oﾟ:::::::o:::ﾟ:::::｡::::ﾟ::::｡○｡ o゜::::::o゜::ﾟ:::::o｡::::::::::::::::゜::::o:::::::○:::::ﾟ::::゜ o::｡:::::::o::｡ ::::::::::::::::::::
:::::｡::::::::::o:::::::::::::::::::::ﾟ::::o:::::::::::::o::::::::::::::::::ﾟ:::::::::::::::o::ﾟ:::::::::::::::::o::::::::::::ﾟ::::::::::｡::::｡:::::::｡::::::::::o:::::::::::::::::::::ﾟ:::::::::o::::::::::::::
,．''"´ ｀`ヽ
,r'´ ,ミjﾐ ＼
/ ,〃 ,ｲ 1い´^^ﾊ、 ﾞi
i.:.ゞj ﾉｿ ,ィ彡jﾘ ! `ﾄ､ ヽ.;:;!
ﾉ,ｨﾂ;;;;:;:;ミ三ｨｲｿ' ,,､､､_ヾﾐ､.:.:;:!
/ゞ;:;:;:､;:;:;:;::ﾌ"´ _,ィﾞ,．-ｰ-ゞﾞi;:;:;:;ﾄ､
i;:;ｨﾂ;;;;;ｨ三二ﾆj ゞ‐''´r,=,､、 ﾞﾄ､;:j.ﾄ,
ﾞゞ;:ﾀ;:'´ ､_,ｨ6j〉ﾞ i ヽ ｰﾞｰ'‐ 1,ﾍ;;;;| 私は海軍でしたが、海の方でも噂を耳にしていた
`ヾ;:j , "´,ｲ | ｀ー- ､ ,j ﾘ{<!;:;;!
Yk ヾ ,! /^ﾘ /;;;;′ 畠山さんの加勢があれば、まさに百人力ですよ
',;:ﾄ､ ゝr ^ ' ,' V;:;;:{
`ﾄj､ ､,,z= =＝,'´ ′j ;;i;;;N
!;;! ｀ニニ´ /;:;;ｲ;从
`ヾﾄ､ , -ー ,/. . .:;;|.`ヽ
／! ヽ､ ／,．-‐'"´.:.:i
／:::::;|_. `ー─‐''´ /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.L＿
,ｨ∧:::::ﾚﾞ´￣｀y'´￣ヽ<ﾊ.:.:.:::::::::::::.:.:／_.: .`''‐- ､
_／:::/::::「7′ ,ﾞ , /.:.」:::::::::::::::／:::::::::::::..｀ｰ-
（⊃￣￣＼
（⊃ 「 ＼
（⊃ （ ー）（●）
| ｜ | あー、戦争の話は……
| u. __´___ﾉ : :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. :
| `ー'´ } ＼ : : _＿＿＿ : :
／ヽ }. ＼ : : ／ ＼ : :
／ ヽ､.,＿＿__ノ ） : : ／＼ ／ ＼ : :
／ . | ＿／ : : ／ （○） （○） ＼. 陸軍に居たぐらいしか .: :
: : . | ___'___ | 話は聞いてなかったけど… .: :
: : . ＼ ⊂ ヽ∩ / : :
: : | | !､＿ ＼ ／ ) : :
: : | |＿＿＼ ゛ ／ : :
: : ＼ ＿＿＿＼ ／ : :
: : :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. : :
:::::｡::::::::::o:::::::::::::::::::::ﾟ::::o:::::::::::::o::::::::::::::::::ﾟ:::::::::::::::o::ﾟ:::::::::::::::::o::::::::::::ﾟ::::::::::｡::::｡:::::::｡::::::::::o:::::::::::::::::::::ﾟ:::::::::o::::::::::::::
::::○ﾟo:::::::｡:::ﾟ::::o○:::゜:::｡:::oﾟ:::::::o:::ﾟ:::::｡::::ﾟ::::｡○｡ o゜::::::o゜::ﾟ:::::o｡::::::::::::::::゜::::o:::::::○:::::ﾟ::::゜ o::｡:::::::o::｡ ::::::::::::::::::::
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互いに直接の面識はないということだったが、
陸軍時代のできない夫の働きは半ば伝説化していたらしく、
詳しい話を自分からするような人ではなかったので、
これにはできる夫も驚いた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━┓
しかし、状況はきわめて悪かった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━┛
＿＿_,,,.､､,,
,r''''´ ﾐ｀''丶、
／ ﾐ ﾊ
ﾗ ｆ⌒ヽ ヽ
r'´ 彡 ﾘ 彳 }
ﾊ;;;ﾐ二彡:ﾉー'´ﾉ ヽ シ |
〉;;;;;;「刀_ _,,,､-ｰ､ゞ ｌ
{ﾊ::〈ri"-ｒn`"冫'ﾆﾛ~' {ｒ＾ｉ:::::::ｊ
＼ﾍ ￣ｉ l ヽ ゞﾉ ｊ::::,' いずれは全国から応援が来るだろうが、
`1 | r' ﾐ_ノ:::,'. いますぐ潜れるのはウチの三人しかいないとのことだ
ｌ `'' ` ﾉ ﾐＬ :::F
ヽ ｰ ‥, 乂ﾉﾉトj
ヽ ¨ ／, -''";;;;;;`、
,.‐;;';;´ >＿_,.-' ｆ´;;;;;;;;;;;;;__;;;;;`、
|;;;ヽ;;;;;;/`''ァ－ァ|;;;;;;;;ｒ'ｏ~0_};;;;;＼
ｒ,,ー,┘;;;;;`;;;;ｌ /イ / ﾉ ;;;;;'-'";;;;;;;;;;;;;;;;;;`''ー－、，;;
， －''";;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;{ ! ／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
/￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ヽ
| 米軍に頼んだ切断機、 |. ∧__∧≡=-
| 到着は早くて三日かかると、 ＞ (´･ω･`)┐≡=-
| 返事がありました。 |. と´_,ノﾞヾ.≡=-
ヽ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿/.. (´ ヽ、 ＼≡=-
｀ｰ' ＼__）≡=-
ξ
＿＿＿
／ ＼
／ ノ ヽ＼
／ （ ●） （●）＼ 三日……、
| u. ' |. それまでどうします？
ヽ、 ⌒ ／
ノ ＼
.
／￣￣＼
／ -‐' ＼
| （ ー）（ー） 無い物は仕方ね。
| | |
. | ___´__ﾉ. 入れそうな箇所ば探そう
| ∩フ´⊃
／ .／ ＿ノ
(. ＼ ／ .／_ノ │
＼ “ ／_＿_| |
. ＼／ ＿＿＿ /
,ｲ .,､､, .: .:. :..:.:.:::::.ヽ
〈 :,､ｨｲ .::;;/ ）ﾊ .:.:. :. ｀`',:;`､
l/ｲ,:;:;;:ｲｿ′ ｲｲ! . :.: .:::l.:;:::ﾞ,
ヾﾘﾉ , -ー- ',ﾄﾄ､ミﾐﾆﾆ三ﾐヾ､ ﾄ､j!
ﾉ z''ﾆ三ﾐ;､,, `ヾ.:.:.:.:::::ミ三;ﾐﾐヾV!
/ .:::､:1ｿヽ ﾞ!.:.:.:.:::;:;:;:;;;;;ﾐヾ;;ｲ
/ ,'.:::.:. ￣｀ 1ミ,へ.;:;:;;;;;;;;;;;;;,′
ヾ.::､, ,! jミ! い,!;:;:;:;;;;;;;;/ 座して待つだけではいかんですしな
〈 , ' 彳ソｲ:;:;:;;;;;;;;ｲ
了''ｰ- '′ / 斤:;:;::;;;;;;;;;;;;;;;i
,「 ` / ,′ヾ;:;:;;:;;;;;;〈
／.::､ ,､‐'´ / ﾘ)ﾉ.:.:::::i
/.:.::::::::::.:フ二´ ＿/,,､-‐'´.:.:.::::::::::::ヽ
/.:.::::::::::,.ｲ 7´￣`v.:.:.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i
_」.:.:::::::::〈 / ,.イ.:.:::::: 「￣ | ::::::::::::::::::::l
／.:.:::::::::::::::V /.: /.:.:.::::::::::::::::::::::::::;:;:;:;;;;;;;;;;;
／:.:.:.::::::::::::::.:..ヽ /.: ノ.:.:::::::::::::::::::::::;:;:;:;:;;;;;;;;;;;;;;;;
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
まずは船内に入れそうな箇所はないか探索するために、
午後から一回目の作業を開始することになり、
とりあえずできる夫が最初に潜ってみる事になった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
─────────────────────────────────────
・
・
・
─────────────────────────────────────
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┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
慌ただしく昼飯をかきこみ、
排水量7トンの作業船に乗り組んだできる夫は、
潜水服に身を包んで潜降の時を待っていた。
目の前では、巨大な鯨の一部のような
洞爺丸の船底が波に洗われている。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
──────────────────────────────────────────────────
-=＝三三三三三三三三三三三三三三三≧e_
_｡e≦三三三三三三三三三三三三三三三三三三三≧e｡.,_
,＞≦三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三＞､
― ―― ― ―...-=≦二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二|ﾆﾆﾆニ|二二＞､ ―――― ― ―――
＿ _ - ― =ﾆニ=ー - － ― =＝＝=≡ー― = ≡ ≡＝ = ― ==≡ニ≡ =ー= = ニ≡=' － ― ＿
＿_ _ - =＝ ＝ ≡ ≡ ー＝＝≡≡ ＝－＝＝≡＝－- ＿ ￣_ ＿-＝ニ= - ＿ ,，≦ー ≧x、＿ ＿ ￣ ＿
──────────────────────────────────────────────────
___,,.｡ ┼‐‐rハ ｌ口口| (__) | ＿,,,,... -─ T
(__) l :|-‐┼ T￣ _,,|-‐ ¨∧￣ ＼ ＼ :|
┤￣￣ | |_,,.L斗t≦ :| /∧ ::::/￣￣| |
_jI┬‐= Ｔ￣ | |‐┤ | / ∧ / .:| ./|
┤|| (__)二二○ |‐┘ | / ∧ / |/.::|≧s｡
┤||─==γ_γ(__)|77￣:| / ∧ / __,,../-=:| ≧s｡
┼廴 (__)-‐ ￣_」(__)‐ } / _∨-=ﾆ二 ﾉ / ⌒≧s｡
┼=:T￣__⊥ (__)_,,.. -‐ 7 /_ -=ﾆ二ﾆ=- (＿) (＿) / /__∨≧s｡
┼ T￣__⊥ T￣_ -=ﾆ二ﾆ=- ｡o＜⌒ ｡o＜⌒ ＿.≧s｡
(_)┬ T 「_ -=ﾆ二ﾆ=- ｡o＜⌒ ｡o＜⌒ - －、. ≧:
__ -=ﾆ二ﾆ=- ｡o＜⌒ ｡o＜⌒ ● ●） ヽ
二ﾆ=- ｡o＜⌒ ｡o＜⌒ ､-'- ノ
｡o＜⌒ ｡o＜ <--⊂|_ )
＜⌒ ｡o＜⌒ ヽ_ ヽ_)
｡o＜⌒
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
位置としては、
ｶｼ
右舷側に傾ぎながら転覆した洞爺丸の左舷船尾寄り、
二等船室付近にあたる。
海底までは17、8メートルというところだが、
こちら側から出入りできるのなら10メートルも潜ればすむため、
最初の潜降箇所として選ばれた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
沖 ← → 七重浜
/￣￣￣￣￣￣ヽ
| , － - |
| / （● ●） |
海面に突き出した船底 | ゝ -'- ﾉ |
↓ ヽ＿ ＿＿＿＿/
海面 ,_,.｡e≦三三≧e｡.,. ＿ Ｖ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜''‐'≦''''¨¨'''''¨¨¨''¨¨''''｀＼〜〜〜〜ヽ￣￣￣＼〜〜ﾞ〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ｰ''''´´ ＼__. ~~~~~~~~~~
| 左舷側 ＼ ↓
| ＼ ↓
| ＼ ←
j ＼ ＿＿,,rzﾁﾁﾁ
,′ ＼ ___,,r,ァrrrrｧｧ''',,r炒／＾ﾟ'ﾟ¨''''
{ ＼//(-'"'^'^^'^'''''''´＾¨¨´´
| ＼
＼ ／
＼ ／
＼ ／＼
＼ 右舷側 ＼／
＼ ／＼ ＼ ← 煙突
＼ ／ ＼,／
__,＿_,,rz,,,y,,,xｧ//＼ ／
. __,,＿＿,,,zz≦≦~¨¨~｀＾^''''''''''＾^⌒＼ ＼
. _,,,,,,,rzｧｧｧう《]=冖¨¨´'´ ´ ＼. ／＼ ＼ ← 煙突
///''~~''''´ ｀' ＼ ／＼／＼,／
＼／
海底
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
点検を終えたヘルメットを膝に載せ、
休憩用の椅子に腰掛けて待機していたところへ、
作業長と話をしていたできない夫がやってきた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
|
|￣￣＼
| 「 ＼
| （ ●）（●） よし、そろそろ降りるど。
| ｜ |
| __´＿ﾉ いいか、
| `ー'´} 今日は絶対に船内には入るなよ。
| }
| ノ
| ヽ
(⌒ー─' ）
／￣￣＼
／ ノ ヘ ＼
| （●）（●) | たとえ手が届きそうな所に仏さんを見つけても、
l | | 入ってはだめだ。
, っ __´__ .!
/ ミ） /. わかってるな
./ ノゝ /
i ﾚ'´ ヽ
| |／| | |
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
念を押すように、できる夫の目を覗き込む。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
＿＿_
_,. '´ ￣｀､
／ ― ― ＼
| （●） （●） | 大丈夫、わかっています
､ __´___ /
＿__ノ,"ヽ､ `ー'´ '´ `､―＜
／:.:.:.:.:.:.:|::::::i|: ヽ､ニニ彡'ハ:::ﾚへ､:::::::::::ヽ
,.ｲ:.:.:.:.:.:.:.:.:|::::::|:|＼: :､＿_／: /!:r'´ヽ Y::::::::::::i
/:.:.|:.:.:.:.:._,.イ!___j:.:.|: :ヽ:＿＿／ |:.{,.ﾆ ト､:::::::::!
/:.〃!:.:.／_／i⌒||:.:.:.|: : : : : : : : : :|:.:｀Ti |: :::::::::!
. /:.:||:.:.ゝ'´: : : :L=」!.:.:.:.|: : : : : : : : : |:.:.:.L| X::::／
|:.:.||:.:/: : : : : ｲ:.:..|＼:.:.:|r､: : : : : : : V:.:∧ヽ./::::/
!:_jj:V: : : : :/:.ﾄ-ｲ`ーr=ﾍ`＜: :＿,.fri|,. ｲ::::X.r/
｀Vｲ､＿__/:..:/:.:.∧`ｰ!{_}rヽ ,.'^＜: {{_j:.:::/|｀‐´
冫,.―-､ L:/:.:./:r1: : ::「|: : ::::::::.:.::.::.:「|:.::::|
〃|!: : : : :V⌒￣/7ヽ___」」 ,.――:.:::.:.」」::.::|＿
iK |: : : : / _乂/:.､二:.| |´( ￣ ) |｀i| | 二､:.:＼
||ヽ!: : : i' /:__ノ／｀ ーLL_`ー'_,.┴'￣｀ヽ:`ｰ-」
ヽ|: : : :| |/:.:./: : : : : : : : :く: : : : :ﾌ´: : : : :L＿」
「￣_] ||:.:.:|: : : : : : : : : : :ヽ: イ: : : : : : : 「:.:.:.V
「￣ ヽ. |j.:.:|: : : ｀ヽ : : : : : :i: : |: : : : : : : : |.:.:.:.|
| i r'|. |:.:.:|: : : : : : :＼ : : : !: :!: ／／: : : ∧.:.:|
. `┤ ∪ |:.:.:|:,. --､: : : : :＼ｰＶ〃: : : : : : : : ∧:|
｀ヽ┘ ＼!:i. ∩ !: : : : : : :ヽv´: : : : : : : : : :|.V
|:{｡∪ﾘ: : : : : : : : ||: : : :: : : :: : : ::|
|: ゞ-': : : : : : : : : ||: : :: ::.:.::.::.:::.::::|
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
今日の作業の目的は、
船内へ入れそうな箇所を一ヵ所でも多く確認することだった。
できない夫が言うように、
無理をして目的以外のことを試みようとすると、
事故を起こす可能性が高くなる。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
水中では何があるかわからない。
しかも沈没船からの遺体の引き揚げともなると、
自分では冷静なつもりでいても、
ちょっとしたことでパニックを起こしてしまうことがある。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
,, ii､ i;; |;' ;;;','','|i ;;;; /ヽ":ヽ/;;;;・,’・,’／・,’
ii 'ii､ ';;,’',;|;'・',' |;;','''|i ;;;; ',';',';ﾘ|:::::/;;;,・,・,’／/,､-'
ii､',''・ヽ,.’';;;,’, |;;',.’',''|i','',|i ;;;;;'・,’',';/','/;;;;ヽｰ）ヽ―'"
,'iii､'・,’ヽ',';;;',,’|;;,.'・,’i|.'・,|i ;;;ii~'ｰ､/',/;;;;;;;;､）
iii､'・,.’ヽ;;;;t.|;;',';',';'|.|.'・,|i;;;丸ミ"ヽ/;"','・ヽ う
ヽ ;ヽ'・,､i,,从ii|;;ヽr-| |;','〉;;;;井ミﾐイ/ ,､-'"ﾉ
;iiiヽ ヽ };;;t(();;;;）ﾉ | |;≧iiii;ヽ从||-从从ヽ わ
' iiiヽ;; ''（;;;;;;)~）从⌒~'ｰ､~'ｰ､;;;_,､-'"~~'ﾂ )
'iiii i〉~'-､;;;;tﾋ从从~''ｰ ､~';;;;;ノ;;;,,ヽﾞ~~'''〈 ら
､ﾐ､シ ;;;;;;;ﾒ彡-､ﾚ ﾌ ,r",､-'"''ヽﾟ､)彡ﾘｿ;;;;）
ミ','て iii､;､''iiｧ-､r､";;;;;r",,､-ｰｰ､ ヽ彡'",,ﾉ ば
・'了"i､i人;;V''ﾟ'"t)t';;;;;､-ｰ''彡彡~''ｰ ''"/,､z-､
,':,'(（ii|ii|ii､;;;"'t､,,/,r''"彡彡'彡"､',､-'":/'"ノ彡）_
,':,':;了ﾘ|;;;;''';;;;;;ヽ" 't;r'~'ｰ-'"彡''"彡::/: j川ｿ/'i ＿,,,
,':'"（ Yit､ii､;;ii;;;;;ヽ'､ ミ三ii彡";;;;"::::::iq, |;;;;;;,/. i| ＿＿,／ ／i
／ ﾘ;;;;iﾚ|i､;;ii;;;;;;;;;;ｪ;､~"'､~,､-'"/ノﾉﾉ |;;;j |ji"ﾂ,､-'/／|r" ﾘ
,':’r"､r-;;､;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ ｀~'ﾐ";;;;rｰ''ノ-ir-ﾉ~;;| |､-'" ,/:| || /
／"ヽ'"~'-､;;)､;;;;rii;;;;ﾉ￣::'"''-ii､~,､'"r":::::;;| ,,､- '"ﾆ| r' |/";;;;
/"::::: ´｀" ´" ''" ''"":::i;;;／ ,､-'" ii ;;;;／.|ii|／ ／|ﾂ
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事実、突然死体が動き出して自分に掴みかかってきたという錯覚に襲われ、
潜水墜落を引き起こして海底にへばりつき、
そのまま窒息してしまった者、
あるいは逆に吹き上げを起こして一気に海面に浮上し、
減圧症で命を落としたものなど、
そういった悲運の潜水夫の話は嫌というほど耳にしている。
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1950年代に空気を詰めたタンクを背負って潜る
「スキューバダイビング」が普及しはじめたものの、
作中では水上からホースでヘルメット内に空気を送って潜る
「ヘルメット潜水」という方法が使用されています。
「ヘルメット潜水」ではダイバーは、
送られてくる空気量と自分の呼吸した息を排気する量を調整することで浮力を得ているのですが、
この操作を誤ると、浮力を失いドンドン沈んでいってしまう「潜水墜落」、
逆に過剰な浮力を得てしまい猛スピードで海面へ浮上する「吹き上げ」が起こってしまいます。
減圧症で画像検索すると、うわらば寸前のような割とグロい画像も……（´∀｀；）
なお浮力を調整する仕組みは違えど、スキューバダイビングでも起こりえます。
このため、スキューバダイビングをするには、
講習を受けて一連の仕組みを理解する必要があります。
: : : : : : : : : : : : : : : : : : : イ￣￣γﾍ : : : : : : : : :＜⌒ｼ⌒ノ三三三三
: : : : : : : : : : : : : : : : _ - ¨ {:::{ 乂乂>へ : : : : : : ／⌒ヽ ＿三三三三
: : : : : : : : : : : : : _ - ⌒ ⊥⊥-=彡⌒＞ ￣ヽ : : : : 〉＿xヘ′ 〉三三三
: : : : : -ミ : : : ／＼|＿ -= ￣:::::::/ /::{ {__/〔 〔 '. : : : : 〈 〈 ノ ノ ）￣‐‐‐‐
: : : ,､:::´＿::::〉 Lj< _〕_}＿＿ノ＿::::::::｛ ｛::::乂_{ Υ__ } /＼ノ⌒ノ´ヽ／￣/ ‐‐‐
─‐'":::::＿＿￣｀ヽ ﾉノ´ ｡s≦::::∨∧::::::￣＼＼:::八 |」ﾆ_ヽノ { ７⌒＼／<＿ノ( --
＜⌒￣＿＿｀ヽ:::::::＼｡s≦:::::::::∨::::∨∧::::::::／:::ゞ≠=迄z＜-廴／)┐7´〉 >／ ＼>-二二
::/￣￣::::::::::::｀`ヽｙ'":::::::::::::::::::::::::∨:::∨∧／:::／￣{レ'/∧:::::::::::( ﾉく=/＾>'⌒爻 ‐‐‐‐‐二二二
,'──-- __:::::::::::::::＼:::::::::::::::::::::::∨＿＼〉￣:::::／/:::/ ≧=‐=⌒／__/∨;';';';';'---二二三三三
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: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ゝ'’: : <;';';';';';'淡淡;';';';';';';';' ,､xX淡淡戀攣戀攣
: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ハ⌒∨＾Ｙ⌒Ｖ⌒>〉 ｎへｘX淡戀攣戀攣彩'＾^㍉
: : : : : : : : : : : : : : : : : :(⌒V⌒<＾∨ヽ<＾YＹ {iリし' 乂)＾Ｘ⌒Ｘﾍ戀攣'”
: : : : : : : : : :: : : :ノ) (⌒√ＹＹＹ＾> )ヽ { j }｜|_) 山‐Ｙ＾Ｙ }＾i/／／〉'"
: : : : : : : : : : : ハ爪⌒ｎ√(ノﾉ八 し(ヽ| |⌒Υ {_|乂｢〔__八ﾉノノ ＞ ∧
: : : : : : : : : と_⌒ヽ(＼(｀Ｙ⌒乂乂ﾉﾉ } }乂 ﾉ{ { }/ / } ｢ }´ ／ヽ-- ＿_/ ﾟ｡＿
: : : : : : : : : :＜＼ く＼＼厂厂ヽ(＼(ノ∨{ { { } ^>'ﾟ／__/´ノ／ ／｡s个=- ＼ ／
: : ／⌒￣＼ ｒ─＼＼─) しへノ厂＼＼//ノノ/ ／／／／(／-=彡三三二ﾆ=‐ 〈／＼〉
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.
／￣￣＼
／ ＼
| へ. ⌒ |
| （ ●） （●）| 命綱、
ﾆｯ | | | 俺が持ってやるから心配ねえ
| ､__´___, }
ヽ }
,､ヽ ノ-､
／;;;i/ '､!＼
_,､-／;;;;;;;;| i i i;;;;;ﾞ､-､_
,-‐'''";;;;;<;;;;;;;;;;;;;!､_｀ヽ ､-'_／!;;;;;;ヽ;;;;;｀'';;ｰ;;-,
. !;;;|;;;;;;;;;;;;;;;＼;;;;;;|'ｰニ_ー_ニﾞ／.|;;;／;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;!
|;;;;;i;;;;;;;;;;;;／´;;;;;;|::::::::::::::::::::::::::::::|;;;＼;;;;;;;;;;;;;;/;;;;;|
. |;;;;;;;ﾞi;;;;;;;;;'､;;;;;;;;;;;;!:::::::::::::::::::::::::::::.|;;;;;;;;;ヽ;;;;;;;/;;;;;;;;i
/;;;;;;;;;;;i;;;;;;;;;;;ﾞ､;;;;;;;;;!:::::::::::::::::::::::::::::l;;;;;;;;;;/;;;;;;ﾉ;;;;;;;;;;|
＿＿＿
／ ＼
／⌒ ⌒ ＼
／ （●） （● ） ヽ はい
| ､＿`＿, |
＼ .r―-､ ／
/ r⊆し-(_ ＼ ,, ヽ
| / う ＼ ＼/ }
l / ﾉ...＿＿. ＼ /
γ / ヽ|/
(8o=- ◎
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
できない夫がにっと笑った。
その笑顔で肩の力がすうっと抜けていくのがわかった。
やはり、自分で気づかなくても、
かなり緊張していたらしい。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
-‐‐- ､
＿＿ / ‐-、‐-、ヽ
γ / ヽ|/r={ ( ● ●) ｝ じゃあ行ってきます
(8o=- ◎ｲ 八 _｀__, ﾑ
（ ,へ≧zz r≦⌒ ﾍﾑ
｛｛__{7ミ､／ ｝｣）
`ｰ={ ( イ／
_＿}＼＿__ ,,＜ }{
r==＝/7 ￣￣７≠┴＜＼9)
｛＿ｷﾍ { { Ｖ＾
￣「￣￣Ｖ＿_∧ ｝
| /|-一＼＼__＿／
Ｖ / ￣￣
r=､≧= ｛
（＿＿___ォ}
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, ,
＿ / ／
ｶﾁｯ ,.イ ! ￣冫､. 〃〃
/ | |＿ ＿/ / ＼ /卅冫
＿ ,-,ｰ.（(()）､__`---､ ソ-／
/ ,匀ｰ-.､ |[:===テ-（(.)） ==| ： （)）
ﾊ〃'´ `i.､ニ¨(()))二ニニヽ_Ｔ｡￣ ＼
/~ﾞ´ |q＿＼ lニｺ ＼.｡ `,
|｡-｡ ,｡/曰| l.冫ニﾆﾆﾆ‐‐‐‐ ､ヽ ﾉ
ﾞ⌒l＼＼__／,.' l曰| ﾚ / _／／￣｣ | |ﾟ_ﾟ.〈
,|／¨テ,K´ ￣/ /へ 〉二=====二ヽ イ
,--､ヽ |_』_{T￣￣!.,'へ.//⊂ニニニ⊃ | |
| l ﾚ l》||《|_| |! ￣/ | |
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┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
できる夫はヘルメットを持ち上げ、
ｼｺﾛ
できない夫の助けを借りて肩金にはめこみ、軽く右にひねった。
8分の1回ったところで顔の前に面ガラスがきて、ぴたりと収まる。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
天秤型の手押しポンプから送られてくる空気も正常だ。
むろん、ヘルメットを被った瞬間から、
外にいる者の声はまったく聞こえない。
ここから先、海中に入れば、
船上で支援している作業員たちとの信頼関係と、
マニラロープの信号索だけが、
潜水夫の命を握る文字通りの命綱となる。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
∧＿∧
. （ ´∀｀ ）
( )
_／ | | | | ＼_
（＿／.∪∪＼＿）
┳ ｼｭｺｼｭｺ
■
│
│
│
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））
ノノ r――――┬┐
くく ﾉﾉ￣￣~~,,.. ．-‐‐- ..,
ヽ二ニニニ二二二二二二二二二ノノ..... , -'" .｀ ､
＿ / ヽ
／／ヽ＿ ＿＿ 〃⌒ヽ _,.．-─- ．., -- ､
〃〃'''" ~ ＼ ゝ ））"'''- ．., -'"-'" ￣￣~ヽ .＼
／ ＼ ＼ -'" 〃ヾ,- ､| .ヽ
/, - "'- ､ ﾐ ＼ "'''- ．. ヾ 〃 .））＼ / ./
ｌ ｌ ヾ ､ / ＼ "''' ．._ 〃〃ゝ彡 ヽ､ ＿, -'
ヽ|..．-'''"ヽ ヾゝ,,, 丿 ヾ ~""''' ヾゝ., ' ヽ ／ ヽ
/￣￣ /＼＼ / ヽヾ ヾ ゝ＿＿
/ / ヽ '､ '､ '､ ／ ~""ヽ─
. 〃 ￣ヽヽ / //＼ ､ ､ ＿ __,,.. ．ｿ､── - ．／ ／ 冫 ＼
──────────────────────────────────────────────────
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
十六貫目を超える装備の重さを全身に感じながら船べりに歩き、
梯子を伝って海面へと降りて行く。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
/ ／
,.-‐- ,.、/／
. r',.-‐-､,,ｨ｡_
K⌒〈ﾄ'.ｏ８=__ノ.f'⌒｀ﾍ
/入／ ￣￣／ﾍヾ､_,ン´
/ //======〈彡 Yへ＼
/__//ヽ二二 ノ＼＿_/|丶.r0l
〃=ヽ |三三＼.|＿_/ | II | | 16貫目 ＝ 60kg
(((○.))//￣ |〃 |￣ 《.]|口|ロ|
ヽ=彡〈〈 几 ハヽL且 ハ/n〈__〉
l ﾘ￣i、 リ.k彡’
/⌒丶 /⌒丶
人日ノ|丶人日ノ|丶
| | || | | | | || | |
ヽ| || |/ ヽ| || |/
(〈_＿_〉] )(〈_＿_〉] ) ﾄﾞｽｯ
. ﾄﾞｽｯ <[＿＿」」> <| |」>
└─┘
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
ヘルメットの面ガラスが海水に浸りだしたところで、
ケレップと呼ばれる排気弁を押し、
潜水服の中に溜まった空気を抜いてゆく。
それに伴い、ゆっくりと体が沈みはじめた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
・
i。
。 'i;i ．
! |’i¨ ・。
i | l ． ・ ． ﾁｬｯﾌﾟｰ
iﾘ ',° , °
. ．・ | ,' | °
. ・ ¨° ’．:, .ivi , , .| o
. ’ ° ・;:',、___! ! , 」__ ・
. ≦二=-j__, ,、≧二弐ﾗｭ,_ _ ：
〜〜〜〜〜〜〜〜..ﾞ― ´' －---__－ﾆ-=＝ﾆニ´...〜〜〜〜〜〜〜〜〜
l |.￣ ￣ ― ￣
l」 ,ー――‐、 ＿＿
_ ＿|-／ [ﾛ] ヽ.ヽヽア´ ヽ
久:ヾ:::::У￣乞___¨丈'丿 γ⌒ヽ ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
ヽ:::::::::_/ /こ | |_ ヽ / r─廴, 、 ＼
{:r ､i.代 ￣ ヽj ー<__/γ¨ヽ ヽヽ __ ＼
r‐‐ｼ′jｌ.L{｀ーr─､r ＝ΓΤヽ r:｀〈_ >､｀Y_ｯﾊ. ＼ ＿＿＿
ヽｆ＿_/((_))j__γ==ﾐ-─└:┘‐-ヾl f｀ ｰ'、く_>′ヾ. ＼ ／ ＼
廴_j￣/// 辷 .ノ ト ＼｀ ‐ﾞ, ｀ ｰ`'ー〈＿／. ＼ ／― ― ＼
// '､ .ィ ´ ＼`ｰ‐ヽ ＼ ／（● ） （● ） ヽ
｀_{_＿_ー‐＜_ヽヽ ヽ_____ﾌユ=ﾞ ＼. ｸｲｯ | ´ |
/ / ｀7V ￣｀ァ´－ ´〃 ヽi ＼. ＼ ）－ ／
__ {Ｙ__－- ./ | {___ ___ _{ ミ } ＼ / ＼
/ /‐ ! ￣/__rく / ==ｰ ､ヽ r‐〈 ＼
fﾛ7 「 二´￣l|_ｌj ⊥ ∠ -ｱ | tｭ!、 ＼
｀¨｀ ー' ─`－'´ /_r_‐､______/_fﾛ「|_j_〉 ＼
￣ ＼
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ＼
＼
深度に合わせて耳抜きをする。 ＼
＼
新米の頃は、 ＼
いちいち唾を飲み下さないとうまくいかなかったが、 ＼
今は軽く顎を動かすだけで
簡単に耳抜きが出来るようになっていた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
左手で持つ潜降索を
手のひらの中で滑らせるようにして潜降を続けてゆくと、
3メートル毎についている結び目を三つ数えたところで、
靴底が固いものに当たった。
洞爺丸の船体に触れたのだ。
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ｲ '´ l.! ! .!, ---､:| .! | ヽ
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l|ッ./l、 | .!三| !三! :|゛ /＼' ／;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:
|_ l ／|└───┘ .ニ'／
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||. / ! | .!,ｒ､-‐-､ ヽ
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||..!八＿__ﾉ ニ＿__-/ ゝ、;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:
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_ノて
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信号索を長めに一度引き、
船に達したことを作業船に報せる。
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まだ陽光が届く深度のはずなのだが、
視界は5メートル前後と極端に悪い。
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l〔二/ ＼ ィニ=､_/! ＼.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;
.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;/ iヽ|｣ i{,==､ ヽ／ ィﾆ=､_}! !.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;
二ヽⅦⅣ ヽr====´ {{ニ( )´|. ` ､ {.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;
.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;／ ｀ヽ }!。ヽ ━━}i{r }‐'／ ___,,..) )
/ }! ニ==､＿＿_｀ﾆ´. --‐''´.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;
i{ ＿_, ==､＿i!ヽ ￣ r_､
.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;i! ィ升Ⅳ{!三i}ｨ二刈ﾏニニ=､¨´ {刎{.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;
.;.;.;.;.;/￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ヽ. =--ヽ ＿ 。-=ニ∧_
| , -‐ノ 、 |ﾞニ¨´=´￣, ───∧ヽ
|. / （● ● 思ってたより |.ﾞ寸´ヽ｀二=´￣￣｀ }!^}!.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;
.;.;.;.;. |. ゝ -'-ノ 濁ってる…… |.. ∨ / ＿＿ /ﾆ '
ヽ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿/. ∨｀ ニニニニ´/.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;
| | | | |! ニニ〉ニ=====ニ､ 〉´二二二´≦==､.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;
.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;､ | |∧. |{_i／{ニ=- - ､ ==､ヽ ニ=´ i{ヽ ヽニﾆ ＼.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
ケレップをこまめに操作して浮力を調整しながら、
さらにデッキ付近まで潜降し、
逆さまになった船体にへばりつくようにして移動していく。
ひとつひとつの窓を確認してゆくが、
船内は真っ暗で、遺体らしきものは目に入ってこない。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
やがて割れている丸窓を発見した。
ﾂ
腰にぶら下げていた海中用の電灯を点け、
送気ホースを傷つけないように注意を払いながら
ヘルメットを窓の中に突っ込んで、
耳元に構えた電灯で内部を照らしてみる。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
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三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三,,ｰ..`...Ｙ＾ ~~~`..-''三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三ﾞゝ、.＿）ﾞﾒ;;:;:;:...／. ~＼三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
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三三三三三三三三三三三三三三三三三＼;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:シ、三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三~..‐'";:;:;:;:;:;:;:;:;:,.ﾞﾞ‐ ´三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三~~......-....`~~三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
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│ ／ （ ●） ） / / ＼ .│
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しばらくは何も見えなかった。
だが、目が慣れてくるにつれ、
徐々に物の判別がつくようになってきた。
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┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
今は上になっている床のあたりに、
船内の備品やら何やらが一緒くたになって漂っている。
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＜ ＜⌒::::::::::::::ゝ .＞
＜ イ:::::::::::::::::::::::ﾊ ＞
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＜ _ノ￢‐‐-ミx ＞
＜. ｒｰ'´ ｀＞､ ＞
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（￣ |
￣￣￣| |
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それに埋もれるようにして、
伸ばせば手が届きそうなくらい近いところで、
白っぽいワイシャツの男がこちらに背を向け浮遊していた。
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┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
思わず息を呑んだ。
何度も経験していることとはいえ、
最初に水死体を発見した時の衝撃は大きい。
こればかりは、いくら慣れようとしても無理だ。
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最初の衝撃が去ると、
どうしても遺体を引き揚げてやらなければという、
潜水夫の本能のようなものに襲われ、
漂う死体へ近づこうとしてしまう。
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決して気持ち良い仕事ではないのに、
なぜなのかはわからない。
早く陸の上に揚げてくれと、
死者の方が自分を招き寄せるのだろうか……。
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、! ,
＿＿＿ ﾌﾞﾝ
／ ＼ ﾌﾞﾝ
／ノ:::::::＼::: u. ＼
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(´ (´. | __´___ u. | ｀) ｀)
｀''ｰ-｀''‐-- ＼ u. ／. --‐''´-‐''´
ノ ＼
＿＿＿_
／ ＼
／ ＼
／ :::＼:::::::::::::::／:::: ＼
| （●）:::::::::（●） |
＼ ´ u ／
／ ⌒ ＼
＼ヽ l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l /／
＼ ／
二 ――悪いけど、 二
― 今はまだ揚げてやれねえんだ。 ―
二 二
― 必ずまた来るから、 ―
二 それまで我慢しててくれ。 二
／/ ＼
// l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l ヽ＼
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胸中で繰り返し呟き、
できる夫は窓から身を離そうとした。
たぶん、その動きによって、
船室内の海水がわずかに動いたのだろう。
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.
／"/./
／' ./ /
/ﾊ.!
,,､､､､ /" ﾘ
,ィ ´; :;: . ..:;｀ﾞ;;､ / /!
〃 ´`ﾞﾞﾞﾞﾞ´´ ;:;:ミ;;､. /!=＝￣/
jji;: ,, .;, .:ﾞ,;,;ﾞﾞ,;ﾞﾞ} '.; l/ /／
jii!､､､,, ,ｨｲ‐ｯ､,,,} ;:;:i /'
';;;:｀''''~; .´￣｀ }; :{ 〈〉
ji;;', ,ゝ‐''´ .:;' ,ﾊ;.}
',', ;;; ==- ､ ; jﾘ 〈〉
',;', ヾ;;;;;;;;;;;;j .j i'´
;;;;, ｀こﾞﾞ´ j ﾊ 〈〉
;:;;;;;､､,,,.....,.ｲ ﾄ､;:;:､
,..ィ´::::::ヽ＼;:;:､ ...::/ / ヽヾ＼､､
,.: .:.:.:::::::ﾞ､.::::::::.ヽ＼ V / ｀`ヾヽ､
,,.:.:ﾞﾞ´ ｀ﾞﾞ ﾞ"" ｀;､ / ｀ヽ､ ミﾐヽ
/;;;:; ｀;､ /´''''' ｀ヾ / ｀ヽ､ミﾐﾐヾ
/;:;; .: ; ii ;,. ´ ￣ ﾆﾆﾆﾆｭ ；：；｀ヾ､
,,j;:;:,､ jﾘ .:; li .. ;:;ヾ､､
/;:;:;:;:､ j ;;; ,ｿ : ; i ;: ; ; :; :;′ ; :;: ;;:;/〉ヽ
/.:;:;:;:;､ ,′;::;;:ﾚ′ . : ; j.｡ ; :; :;′ .: ;: ; :; ;;;;;// ヽ
/.:;:;:;;､ j . :;::;ﾚ′ .: ; ; ; j j! ; :; ; ji! ; :; :;/:;//､､､
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
背を向けていた男の死体がゆっくりと回転し、
|l! できる夫に恨みがましそうな顔を向けた。
|l!1!｜!l
|l!1!｜!l...┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
|l!1!｜!l |l!1!｜!l｜!l! |
|l!1!｜!l |l!1! ＞ 一 … ー ＜ |l!1!
|l!1!｜!l ＞´ ｀ ＜ |l!1!｜!l
|l!1!｜!l. ／ ＼ |l!1!｜!l |
|l!1!｜!l ／ ＼､ Ｕ ,;'／ ＼ |l!1!｜!l |
|l!1!｜!l. / ヾﾐ,､ ／;"==､､ ヽ. |l!1!｜!l |!
|l!1!｜!l / ,,===､､ミ彡〉 ｉヾ彡〃 ,-‐ ､ヾヽ |l!1!｜!l |!
|l!1!｜!l 〃 ,-‐ ､ヾ { ･ } }l} ', |l!1!｜!l |!
|l!1!｜!l ,' {{ { ・ } u ゝ - ' |l!1!｜!l |!,
|l!1!｜!ｌ ゞ ゝ - ' ヽミ二≠"" l|l|l ',. .|l!1!｜!l |!i
|l!1!｜!l. ,' . l|l =≠彡"´. l|l |l!1!｜!l |!l
|l!1!｜!l | . l|l. ヽ l |l!1!｜!l |!l
|l!1!｜!l | l l|l| }. .|l!1!｜!l |!l
|l!1!｜!l |... { Ｊ ＿＿＿＿＿ し /. |l!1!｜!l |!|.ｉ
|l!1!｜!l |!. ヽ | / ／ |l!i. |l!1!｜!l |!|.|
|l!1!｜!l |! .ゝ | / ／ |l!1|.....|l!1!｜!l |!|l|
|l!1!｜!l |!, ＞ ､ し ゝ-──-' ., ＜ ,＞ |l!1!‐- ､,,!｜!l |!|l|
|l!1!｜!l |!i i. 〉 ｜!l! ."￣￣ﾞ / 〈／ﾞ} ／.:::::::|l!1:::::::::.ハ . !l |!|l|
|l!1!｜!l |!l l . ／/ ｜!l! .／ ／:::::〈_/::::::::::::::::::::::::::::::::::::∧.l |!|l|
|l!1!｜!l |!l ／::::/ ＼ ／ ／:::::::::::〃::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::',l |!|l|
|l!1!｜!l |!l ／:::::::/ ヽ ." ／::::::::::::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::∧ |!|l|
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┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
目と口をあらんかぎり開いた凄まじい形相に一瞬たじろぎ、
パニックを起こしそうになった。
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―― --- ． ､....__::::::::::::::::::::::: :::::::::: ::::: :::::::::::::::::
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{! ヽ__ -― ￣ ｀. ::::::!
｀ !
,,== ＝＝､、 |
〃 , -‐ ､ ヾ .|
{ ・ } }〉 ..ｌ
ゝ - ' // ....ｌ
ヾミ==二== "" ....|
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i 〉 ::::::::::!
::::::::::ｌ
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__ _ ____ ＿＿__,ｘ-- ､ .:／
---―＝ ￣￣⌒ー- ヽ ／ｌ
＾＾￣￣ ￣￣￣｀¨¨ ’ ィ ｌ
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
実際、ケレップの操作を忘れ、
危うく吹き上げをするところだった。
潜水服の中で、
脇の下を脂汗がつうーっと伝い落ちる。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
＼＼ ｲ / // ＼_
／ ＼＼ . /￣/ // ,∧
,ｉ］ .||..|| .lﾞ ./ヽ,,,ﾒﾞ‐─,,,,- 、 ,ﾘ゜ \ ／／
lﾞ,! .ﾞ＼＼,//｀‐ｲ. 〃⌒ヾ ｀ ､,/″ ﾞl,べ
| | `''ﾆヽッ|i ヽヽハ (,〜')) ﾞく .,〔 / ＼＿
/八 ,/ｿ′.i (-○) ~=二 i Ｖ Ｖ゜ ／/
_,,イ,八 .＼ .／／ .ゝ ヾ （(,,;;;;)） ﾞﾞl ん,,,／. /
,,／_,,,l|′ ＼,, ﾞ'''ヽ. ／／ ヾ ~=''＾ _,,,,,lヽ,,ﾚﾞ／ ,,,l―-ｘｉi,,_
_,,,,_ ._／ ／ ＼ ,/＼,ド/ ｀''ｰﾆ 二ﾆﾞ‐'" ／ ／ ｀
. ,,ｒ'"ﾞﾞi `l,,／ . --ﾞls / ./'l,.く_ ／ ／
┌──────────────┐ﾞヘ､ ./ / /
│ て │ﾞ`'' .ﾐ ､, ./ ./ /
│ ＿＿＿_. そ │...,!-､,,ﾞ''ｰ,,,へ､,、 ./ /.j|
│ ／ ｕ ＼. │. `ﾞ'''ミヽ,,,`''- 'へ､_ / ,/,/ﾞlﾐﾆ￢― - 、
│ ／ ＼ ／ ＼. │.ﾞﾞ ｰ,,_ ｀ﾞ'''ミヽ,,,｀''ｰ,,,,〜".,/,ﾒ､,,、 ｀ﾞﾞﾞァ-,、 ｀' 、
│. ／ Ｕ （●） （●） ＼ │｀ﾞ''ｰ､,,"'-､,、`'‐ﾐヽ,,、｀ﾞ''xｼ'゛ ~''''ｯ,,／｀' 、 ｀ ､
│. | ｕ __´,_ Ｕ | │. ｀У￣￣￣＼ >' ／／ヽ ＼ i
│. ＼ｕ ./__/ ／. │ ──―＝ﾆﾆﾆﾆ＝x ／／ .ヽ l l
│ ノ / ）ヽ ＼.. │アﾞﾞ"ﾞﾞ￣￣ ﾞl ／／ ヽ 丿,ノ
│. ( ＼ ／__ノi ） ) │....__,,,―''''"ﾞ二二,,,￢-ﾞl,／／ ┴'=“￣
│ ＼ ﾞ ／ ヽ ヽ / /. │. iﾞ￣"'ｒ'"゛ ｀ﾞﾞ'''-ﾐi､ ／
│. ＼_／ ＼＿ ﾉ. │. l i ｀'| ／
└──────────────┘... i i イ | .／
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
しばらくじっとして気持ちを落ちつけていると、
信号索が短く四度引かれた。
作業船からの「上がれ」の合図だ。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
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| ＿＿＿ |
| ／ ＼ |
| ／ ⌒ ⌒＼ |
| ／ （ ー） （ー） ＼ 案外、 |
| | u ___´__ | 時間かかっていたんだな…… |
| ヽ、 `ー '´ ／ |
| ノ ＼ |
ヽ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿/
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（（ 《. ! , -'ﾆ‐-、
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ｲ '´ l.! ! .!, ---､:| .! | ヽ
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l|ッ./l、 | .!三| !三! :|゛ /＼' ／;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:
|_ l ／|└───┘ .ニ'／
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||.. /二ﾆミｉ .!_二_ヽ
||. / ! | .!,ｒ､-‐-､ ヽ
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|| |、 /_ヽゝ-- ＜
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できる夫は「これから上がる」の合図を送り返し、
今度は慎重にケレップを操作しながら、
ゆっくりと浮上しはじめた。
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└───┘
┌─┐
└─┘
□
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冷たい雨が横殴りに吹きつける中で、
ヘルメットだけを脱いだ潜水服姿のできる夫は、
作業船の船上で、
できない夫が潜っている暗い水面をじっと見つめていた。
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i i| ! i i |! i ! ! i i
i| ! i i ! ! i |! i| ! i|
!| i| |i !| i ! i
i i| ! i i |! i ! ! i i
i| ! i i ＿＿＿＿＿ i |! i| !
|i l ! l ／ ! ＼ i i !| i
!| i| ／ i| |i ＼ !| i ! i
i i| ! ／ i |! i ＼. ! ! i i
i| ! i ／ i ! ! i ＼|! i| !
!| ／ - ―― !| ―― - ヽ . ! i
i i| i | i ＿＿＿ i |!＿＿＿ | ! ! i i
i| |i. ､ （::::） , i! ､（::::） ﾉ i |!| !
|i l. | ! . ｀ミ三彡 !ミ三彡. i | i !| i
i ! ＼ |! i ´ |i ／. i| i!
i! i! ＼ - ――- i ／ ! i! i!
!i i| ／ヽ !| i!. イ＼ i!
!| i i ／ |! i! ＼ i!
i i ! i|! | i!
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洞爺丸沈没から二日目の九月二十八日、
早朝から引き揚げ作業に取りかかったにも関わらず、
午後の二時をすぎても、
未だに遺体を揚げられずにいた。
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.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
昨日一度は回復した天候が、未明から再び崩れ出し、
季節外れのヤマセ（※）を伴い、風も出てきた。
それでなくとも、台風通過直後の海中は、
海底の泥が舞いあがり、視界を悪くする。
※ヤマセ：主に東北地方太平洋側で6月から8月に吹く
冷たく湿った北東寄りの風のこと。
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.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;r =ニ/¨ ､ }!}!ヽ,二ニ= r= ､.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;
l〔二/ ＼ ィニ=､_/! ＼.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;
.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;/ iヽ|｣ i{,==､ ヽ／ ィﾆ=､_}! !.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;
二ヽⅦⅣ ヽr====´ {{ニ( )´|. ` ､ {.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;
.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;／ ｀ヽ }!。ヽ ━━}i{r }‐'／ ___,,..) )
.;.;.;.;.;.;.. / }! ニ==､＿＿_｀ﾆ´. --‐''´.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;
.;.;.;.;.;.; i{ ＿_, ==､＿i!ヽ ￣ r_､
.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;i! ィ升Ⅳ{!三i}ｨ二刈ﾏニニ=､¨´ {刎{.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;
.;.;.;.;.;/￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ヽ. =--ヽ ＿ 。-=ニ∧_
| , -‐ノ 、 |ﾞニ¨´=´￣, ───∧ヽ.;.;.;.;.;.;..;.;.;.;.;.;.
|. / （● ● 今日はさらに |.ﾞ寸´ヽ｀二=´￣￣｀ }!^}!.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;
.;.;.;.;. |. ゝ -'-ノ 濁ってる…… |.. ∨ / ＿＿ /ﾆ '
ヽ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿/. ∨｀ ニニニニ´/.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;
| | | | |! ニニ〉ニ=====ニ､ 〉´二二二´≦==､.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;
.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;､ | |∧. |{_i／{ニ=- - ､ ==､ヽ ニ=´ i{ヽ ヽニﾆ ＼.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
ﾅ
穏やかに凪いでくれれば徐々に透明度が増すものの、
洞爺丸の周囲は昨日よりも濁りがひどく、
2m先がかろうじて見えるかという程度まで条件が悪くしていた。
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.
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多くの漁船が底引き網を使って漂流遺体を捜索していることも、
濁りを強くする原因を作っていた。
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_丶 丶 ＼ 丶ヽ ＼ 丶 丶ヾ丶 ＼ヾ丶 丶 丶 丶＼ 丶 丶 ＼丶 丶 ＼ 丶ヽ
. ゝヾ 、丶 、. ＼ｖヽ丶 ＼ 丶 ＼ヽ ヽ 丶＼ ヽ 丶 ＼ヾ 丶ヽゝヾ 、丶 、
_ゞ ヽ＼ ＼ ヽ.. ヽ 丶 ヽ ヾ丶ヽ ヾヽ、丶＼ 、 丶、 ＼.、ヾ ヽﾟ ゞ ヽ＼ ＼ ヽ
ﾞヾゝ ゞヾ ヽ丶 ＿/__/＿ // ヽ＼、ヽ 丶ヾ＼ ヽ ゝ 丶丶 ヽ ヾゝ ゞヾ ヽ丶
＼ 、ヽ 丶ヾ＼ ヽ.. / / ーーーーーーーーーーーーーー ＼ 、ヽ 丶ヾ＼ ヽ
... ヽ ヾゝ ゞヾ ＼ / ヽ＼、ヽ 丶ヾ＼ ヽ ゝ 丶丶 ヽ ヾゝ ゞヾ ＼
ﾞ、 ヽ ＼ ＼. 丶..＼ 丶 ヾ 丶ｖ ＼ ヽ ＼丶丶、 丶＼ ヾ 丶丶＼、 ヽ ＼ ＼. 丶
.ヾ ヽ丶丶 ＼、＼..ﾞ丶＼ 、＼ヽ 、丶＼ ＼ ＼ ヾ 丶 ヽ丶.＿r┬┬r＿..ﾞ丶丶 ＼、＼
ノ ;幵幵幵＿ ＿人─────|＿＿＿＿ノ───────
￣￣￣￣￣二TTTTT￣￣工＿＿＿__ノ￣￣￣￣ ￣￣￣ ｰｰ ￣￣ー.＿
＿＿ ___＼二二二¨フ___ ーー＿ ＿___ ー ￣二＝≡
￣￣ ￣￣ ーｰ ￣─＿＿ ｰ二__ ＿
‐‐ ＿二二一 ___ 一ｰ 二二 ＿＿ーー￣ ─＿＿__ ￣
ｰ- ー ＿＿ --‐ 二二＿ ー─ ＿___
＿＿二 ＝__ ＿＿ ー一 i~
ー一 ￣￣ ーー-. | ＿＿
＿＿＿ ---=二二一 {＼|＿＿∧ ヽ＿
二二一 ￣￣￣ ＿＿＿二￣￣ ー-__ 人 ー─────
＿＿＿＿──── ー ￣￣￣￣──二＿＿＿ ￣￣￣￣￣￣
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
そして作業が遅々としてはかどらない
もうひとつの要因は、潜水夫の不足だった。
全国に手配している応援の潜水夫や
サルベージ会社の作業船は、まだ函館に到着していなかった。
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___,,.｡ ┼‐‐rハ ｌ口口| (__) | ＿,,,,... -─ T
(__) l :|-‐┼ T￣ _,,|-‐ ¨∧￣ ＼ ＼ :|
┤￣￣ | |_,,.L斗t≦ :| /∧ ::::/￣￣| |
_jI┬‐= Ｔ￣ | |‐┤ | / ∧ / .:| ./|
┤|| (__)二二○ |‐┘ | / ∧ / |/.::|≧s｡
┤||─==γ_γ(__)|77￣:| / ∧ / __,,../-=:| ≧s｡
┼廴 (__)-‐ ￣_」(__)‐ } / _∨-=ﾆ二 ﾉ / ⌒≧s｡
┼=:T￣__⊥ (__)_,,.. -‐ 7 /_ -=ﾆ二ﾆ=- (＿) (＿) / /__∨≧s｡
┼ T￣__⊥ T￣_ -=ﾆ二ﾆ=- ｡o＜⌒ ｡o＜⌒ ＿.≧s｡
(_)┬ T 「_ -=ﾆ二ﾆ=- ｡o＜⌒ ｡o＜⌒ ≧:
__ -=ﾆ二ﾆ=- ｡o＜⌒ ｡o＜⌒ ∧＿∧ ＿＿
二ﾆ=- ｡o＜⌒ ｡o＜⌒ （´∀｀ ） γ / ヽ|/
｡o＜⌒ ｡o＜ （ つつ (8o=- ◎
＜⌒ ｡o＜⌒ ∧__,,∧ （￣__）__） <--⊂|_ )
｡o＜⌒. （´・ω・`） ヽ_ ヽ_)
(つ と） , -‐ノ 、 ＿＿
｀ｕ―ｕ´. / （● ● γ / ヽ|/
ゝ -'-ノ (8o=- ◎
| ､/ ) ヽ <--⊂|_ )
`ー ′ .|) ヽ_ ヽ_)
し' Ｊ
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
明日、29日には10組以上の潜水夫が函館入りするという
情報は伝わっていたが、
それまでは、できる夫たちわずか3名の潜水夫で
頑張らなければならない。
それにしたって、装備の関係から、
一度に潜れるのは2名までである。
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.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
昨日の潜水で目星をつけておいた進入経路は、
実際に試してみると、
ことごとく駄目なことがわかった。
かさばる潜水服では、
安全にできるだけの空間が無かったのだ。
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, ' ⌒ヽ
( ∧ )
二二二＼ __,,,,,-‐‐‐-,,,,,__ ヽ廴) ノ
● | |ﾞ､/ ｺ ヽ. |／
|. _）(´ ﾝ | |＼ i ||
|. ｀Ｙ＾. __,___ | | ＼| ||
| |-〃⌒ヾ ￣''''‐‐､,__ || /￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ヽ
| |（( (,〜')）､_,,--､ .￣'i.｀￤ | くそっ、 |
| |..ヾ､__,,ソo（(,,;;;;)）====､l |. ＜ こっちは駄目か…… |
| |￣ ,;-i-､,;ﾞ~=''＾￣￣￣|. |..... ヽ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿/
| | (-○-) ,,,,,─'i,,i´ _,,,,,,,,"ﾞﾞﾞ'''-、 ヽ
| |`ｰ‐｀‐!‐''---‐‐'''￣ ,／.ﾞl--‐'ﾞ~ﾞﾞ /彳 ヽ l
| |_ .,,ry,,,,、 .,,,／゛.,,┴-----,l〆 .ﾞl l |
| |ﾞ[￣￣{、 ﾞl ｀ﾞ''''''ﾆ､,,,,／｀ _,,-'"゛│ ﾞl. | |
| |...i i、│ ~ﾞ'''ｰｲ″ │ ﾞl. / /
| |ﾞ-ﾍi､、...i .ﾞl .i l .ﾞl 丿 丿
| |..,、 `'''ﾞl,,,,,,L i、 |,,,,,┴ﾞ ,,／
| |....7ﾞ'-,_,／ ノ￣'''ｰ-､,,,,_ │. ／ ﾞ'ｰ-ｰ'ﾞ
| | 'ﾆﾆﾆﾞlｭ,,./′ ,,,,,,,,_ ~ﾞ"'ー｝／
| |...ﾞ_,ﾞl､＿＿,,￢'イﾞ_〕 ｀ﾞﾞ'''ヽ. ,/
| |.ﾞ゛ .,ｒ'"ﾞ⌒ﾞﾞﾞl｀ ヽ ｀く、
| |ﾞ'''―-､ﾑ‐''"ﾞ^''''|i､ ヽ、 |
| | ｀ﾞﾞ''''''''″ヽ .ヽ |
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軽装備のマスク式潜水器ならば上手く入れるかも知れないということで、
ﾄｲﾁｮｳ
戸井町で海産潜りをしている漁師から機材一式を借りてきて、午前中に試してもみた。
だが、10月も間近い函館湾の海中は、
10分間も潜っていると唇まで真っ青になる冷たさで、
とてもまともに作業できるものではなく、一度試みただけで断念した。
戸井町：当時、函館市に隣接していた自治体。
2004年に周辺自治体と一緒に函館市に編入された。
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rっ rっ
＼ ＿＿ /
ｶﾞﾁ. ＼／ 回V
ｶﾞﾁ /'"⌒ヽ＿ﾊ
ハY √::::::::::j┐ し、しばれる〜〜
弋ﾉﾉ __`ｰ1￣Yj_
|_| |__| |＿.j|｜
； _,. -.ﾞ`ｰr个ー‐个＜ ；
； ,.-‐ '"￣_ ＼ ／' ＼__ ；. ﾌﾞﾙ
. ; / ｀丶､ ￣ __,,.. - ＾ヽ、 ； ﾌﾞﾙ
; ,.ｲ -‐'´ - "´ .ヽ ；
／ -､ | 、 `' 、 { ;
7｢ ＼ ＼ ﾍ ;
/ ', ` _,,. -‐''"￣` .._ __／ ﾏ ヽ ', ;
-ァ'⌒ヽ' ..___ヽ ,ｲ ヽ._ ,ハ }. i ;
丨 i ＼ ￣¨¨`く! } ｀ ｖ' ヽ . ！
＿} ', ＼ｰ-t- ＼ | ｒ′ | ', jﾉ ', ；
.. ； ! 丶 ヽい ヽ.! ! ! ／ ヽ ；
. ； ！ ', V} _j' j ｉ,' / ／ ノ ;
. ； ! i 〈＾´ {_ ／ ノ , '´ ;
. ; ', ! ぃ‐､-t‐､_r‐vﾍ-'r >' .／
. ; ヽ | } | :i！ : ::ﾚ'´ , '´ ￣~¨¨`ヽ､
＼ l l | i :!:./ r'´. ┌────────────────────────────┐
ぃ i !:....ｌ｜ .:::/ l. │ ※資料が見つからなかったので裸ですが、 │
； ヽ', ! j::::::/⌒ー-- ―‐ ''"...│ ウェットスーツが普及しだしたのが1961年頃だそうなので、 .│
； i ', /::;ノ. │ │
； ! ﾏ:/ ｧ……―‐‐-..ﾞ│ 海女さんの服のようなものを着て、 │
; } }' ／ │ 潜っていたのではないかと思われます。 │
│ │
│ なおヘルメット式の場合は厚手のセーターなどを着た上で ..│
│ 潜水服を装備していたようです。 │
└────────────────────────────┘
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
この間にも海上保安庁の巡視船や海上自衛隊の掃海艇、
そして地元の漁船が総出で行なっている海上捜索と底引き捜索によって、
次々と遺体の回収が進み、
七重浜に揚げられた遺体の数は400体近くにもなっているという話だった。
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,ィ!´￣｀`i''ー─- ､､､,,_ ,ィ!´￣｀`i''ー─- ､､､,,_
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( j〉 」´￣￣｀`ー-､ヽ ( j〉 」´￣￣｀`ー-､ヽ
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,ィ!´￣｀`i''ー─- ､､､,,_ ,ィ!´￣｀`i''ー─- ､､､,,_
( j〉 」´￣￣｀`ー-､ヽ ( j〉 」´￣￣｀`ー-､ヽ
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( j〉 」´￣￣｀`ー-､ヽ ( j〉 」´￣￣｀`ー-､ヽ
｀`ｰ─'"´ ￣￣￣ ｀`ｰ─'"´ ￣￣￣
,ィ!´￣｀`i''ー─- ､､､,,_ ,ィ!´￣｀`i''ー─- ､､､,,_
( j〉 」´￣￣｀`ー-､ヽ ( j〉 」´￣￣｀`ー-､ヽ
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しかし、少なくとも800余名は取り残されていると見られる
洞爺丸船内からは、一体も揚がっていない。
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続々と函館に駆けつけている遺族のことを思えば、
何としても今日中に、
ひとりでもよいから引き揚げてやらなければ申し訳が立たない。
作業船に乗り組んだ誰もがそれを望み、
しかし思うに任せない状況に焦燥をつのらせていた。
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_'' ＼） ７ ./ ,;'' ;' ''';;;;,,,
＼ ./ ,,,;;; '''''';;,,,,
￣＼ ''''';;;;,,,,,, ''';;,
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午後の作業が始まってからすぐ、できない夫の提案により、
潜水の場所を変えてみようということになった。
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／￣￣＼
／ へ ＼
. | （ ●）（●）
. | ｜ | 右舷側から行ぐべ
. | __´___ﾉ
. | `ー'´}
. ヽ ﾉ
／⌒ ヽ
. / ＼. ＼＿＿ｨ〜っ
/ ＼. ﾄ､_"＿＿冫く;'三｝
| ヽ、__)| `ー‐"
| ヽ￣⌒Ｙ￣￣⌒ヽ
＼＿＿＿y ﾞ|＿__ｨ |＿
￣￣￣￣￣￣| | | |＿|
￣￣￣￣￣￣| | ￣ | |
{＿__ﾞ) {＿__ﾞ)
∧＿∧
(´･ω･｀) n ､ ノ 、
￣ ＼ （ E） ● ●） ヽ
ﾌ /ヽ ヽ_／／ （^ ､-'- ノ ∧＿∧
＼ と） （´∀｀ ）
〈 ﾉ (∽´ ）
` l_ノ ｜ ｌ ｜
（__（＿__）
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
これまでより海底に近い右舷側船首寄り、
三等食堂デッキ付近に潜れば
遺体の発見の可能性が高くなるのでは、とできない夫は言った。
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.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
理由は二つあった。
沈没してから二日、
まだ遺体の浮揚時期にはなっていない。
つまり、より海底に近い右舷側へと、
沈んだ遺体が溜まっている可能性が高いということが一つ。
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沖 ← → 七重浜
/￣￣￣￣￣￣ヽ
| , － - |
| / （● ●） |
| ゝ -'- ﾉ | 海面に突き出した船底
ヽ＿ ＿＿＿＿/ ↓
＿ Ｖ ,_,.｡e≦三三≧e｡., 海面
〜〜〜〜〜ヽ￣￣￣＼ﾞ〜〜〜〜〜''‐'≦''''¨¨'''''¨¨¨''¨¨''''｀＼〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
. ~~~~~~~~~~ ｰ''''´´ ＼__
↓. | 左舷側 ＼
↓. | ＼
↓.. | ＼
↓. j ＼ ＿＿,,rzﾁﾁﾁ
↓. ,′ ＼ ___,,r,ァrrrrｧｧ''',,r炒／＾ﾟ'ﾟ¨''''
↓. { ＼//(-'"'^'^^'^'''''''´＾¨¨´´
↓. | ＼
↓ ＼ ／
↓ ＼ ／
→→→→→→ . ＼ ／＼
＼ 右舷側 ＼／
＼ xxxxxxxxx. ／＼ ＼
＼ xxxxxxxxx ／ ＼,／
__,＿_,,rz,,,y,,,xｧ//＼ xxxxxxxxx ／
. __,,＿＿,,,zz≦≦~¨¨~｀＾^''''''''''＾^⌒＼ ＼
. _,,,,,,,rzｧｧｧう《]=冖¨¨´'´ ´ ＼. ／＼ ＼
///''~~''''´ ｀' ＼ ／＼／＼,／
＼／
海底
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
そして食堂デッキの窓ならば、
それを割ることによって、
潜水服のまま船内へ入れる空間が確保できるはずだ
というのが二つ目の理由である。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
ただし、左舷側と比べると、
潜水夫の頭上に船体が覆いかぶさる状態での作業になるので、
危険度ははるかに大きくなる。
しかし、このまま手をこまねいているよりは、
少しでも見込みがありそうな方法を試してみようということになった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
＿＿＿__ ||
／ ／⌒＼ , ||
. / ／ ＼. ヽ' |. ||
| | .> .|. ||
| | '───┘ ||......＿,....-‐‐"´￣ ~｀ﾞ二-､
| | __,. -‐‐"´ ＿,......-‐"´￣ }
| | _,..-‐"´ ＿,..-‐"´ |
| | _,.-‐"´ _,...-‐"´ ┆ |
. ￣￣ r＜ _,..-‐"´. ┆ |
| ｀{" ┆ |
| | ┆ |
｜ |. ┆ |
| | ┆ |
| | ┆ |
| .| ┆ |
| | ┆ |
| | ┆ |
| .|. ┌────────┐ |
| .|. │ ＿＿ │. |
| |. │ ヽ|γヽ ヽ │ |
| |. │ ◎ -=8o) │. |
| .| │ ( 」⊃.> -⊃ │ |
| |. │. し――J │ 」
| |.... └────────┘..... ___,..-‐"
｜ |. （うらがわにいる） -‐"´
｜ .| __,.....-‐"´
｀＼ | __,.....-‐"´
￣
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
そして、もう一度海中に入るために
できる夫が準備していると、
できない夫が潜水服を身につけ始めたのだ。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
────────────────────────────────────────────
_ -‐- ､
/´ ヽ
ｉ ｉ
| ヽ _ノ |
（●) (●) | 俺が潜る
| | |
ｶﾞ __｀___ /ｉ
ｼ ﾍ ｀‐‐′ ／ ｲｰ-._
ｬ ,=≠‐/￣ゝ―≦ﾞ￣;;;;;;;;;／`ｰy､__
ｨ;;´;;;;;├|､ヽ;;;;;､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ノ┐ｰ'´;;;;;;;;;｀ヽ
|;;;;;;;;;;;;;;ｉ┤;;;;;;;;;;;;;ｌi;;;;;;;;;;;;;;;/ヽ/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i
.ﾉ;;;;;;;;､ヾi |;;;;;;;;;;;;;;;ｉl;;;;;;;;;;;;;;i 丿;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ﾉ
ﾑ-‐-､;;;ヾ!;;;;;;;;;;;;;;;ｌｌ;;;;;;;;;;;;;ﾄy"-‐―-､;;;;;;丿
}′: ヽ/;;;;;;;;;;;;;;;ﾊ;;;;;;;;;;;;;;/ ﾉ . ﾚ;′ ｶﾞ
ﾉ' .::. ノ ﾉ;;;ー‐一';;;;;ー‐∨ ./´ ﾉ;;;| ｼ
〈, ヽ､i/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ゝ'"..ノ ∠;;;/ ｬ
────────────────────────────────────────────
＿＿＿
／⌒ ⌒＼ ━━┓┃┃
／（ ￣） （＿）＼ ┃ ━━━━━━━━
／::::::⌒ __´___ ⌒:::: ＼ ┃ ┃┃┃
| ゝ'ﾟ ≦ 三 ﾟ｡ ﾟ ┛
＼ ｡≧ 三 ＝=-
-ｧ, ≧=- 。
ｲﾚ,､ ＞三 ｡ﾟ ･ ﾟ
≦｀Vヾ ヾ ≧
｡ﾟ /｡･ｲﾊ ､､ ｀ミ ｡ ﾟ ｡
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
できない夫の潜水技術について不安は抱かなかったが、
できる夫の頭をよぎったのは、
できない夫が潜りをやめた理由だった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
ｒ'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'ヽ
（ ＿＿＿ ）
） ／ ＼ （
（ ／ ＼ ）
） ／ ノ ヽ､_ ヽ. やっぱり （
（ | （ ●） （● ） u. | 死に場所を探しているんじゃ…… .）
） ＼ ｌ^l^lｎ ｀ ／ （
（ ／ヽ L ）
） ゝ ﾉ （
丶〜'⌒'〇'⌒'〜⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'´
Ｏ
o
ﾟ
＿＿＿
／ ＼
／ ノ ヽ＼
／ u （●） （●）＼ 何年も潜っていないのに
| U __´__ u | それは無茶ですよ
＼ `ー'´ ／
ヽ < ∩ノ ⊃
| ⌒ヽ i |／ ＿ノ
| ヽ ＼ ／ ／
.
＼＼ | | /'! ／
＼＼.. | | ./ ! ／／
__.. ＼ |＼ | //| |＿＿＿
| | ＼ | ＼ | .// .l＿ ／
. <＼<＼ | | ＿＿＿＿| |＼＼／＼// ／ ／
<＼＼>＼> |_| ＼ ＿＿__| ＼／＼/ ／ ／ ＿＿＿＿＿＿＿
<＼<＼＼＼／＼ __. ＼ ＼ ／ ￣￣ ＿＿ ／
＼>＼> > <＼＼ |_| ＼ ＼ __lV ､＿ ￣￣￣￣￣― "" ／ ―――
<＼／> <／＼.＼＼,> / / , > へ´ ｀ ､￣￣ ／ ――
> < <＼ ＼,> / /／/ Y l＼ ＼ く ――――――
<／＼＼ ＼> / ／./ ! ＼ |￣ ＼
l''| ＼,> / ／ // ／! .! l＼ ＼l !￣￣￣￣￣
|_| /／ ..// ／ ...! l l ＼ | ＼
/ //／／ | .l l ｌ ＼ | ＼
/ / / ／ ｌ ∥ｌ ＼ | ＼＼
／＾｀､ ｸﾞﾊｯ
( ,,.---]_
l 〈ヾ。
/-^]r ＾ ヽ _
l ／＾ヽ 7 ／ ヽ￣`ヽ
lr゜ " l ｀iｰ´／￣｀ヽ
・′、 | ヽ_| ／￣｀ヽ
’、 ∧ ヽ! ／ ヽ !
ヽ ｀ ヽ_ィ' l
＼ 〈 ∥
| {
| |
／￣￣＼ | |
／ ｢ へ ＼ i |. ﾊﾞｶﾞ
| （●）（●） | | | 馬鹿野郎め、
| ｜ | i /. 疲れ切ったおめえより、
| __´___ j / ./
ヽ `ー'´ /／ .／ 俺の方がよっぽど上手く潜れるでや。
ヽ ´ ／
/ ／
| l´
| . |
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
何とか思い止まらせようとして押し問答を繰り返していると、
久しぶりに親父っさんの拳骨をくらってしまった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
＿＿
／ ヽ
／「 へ ヽ
| （●）（●） | いいがら体を休めてろ。
| l |
| 、_`__ |. 引き揚げが始まったら、
', |. またすぐに忙しくなるんだがらよ
Λ､___ ィ┴=._
,.=≠‐/￣ゝ―≦ﾞ￣;;;;;;;;;／`ｰy､__
ｨ;;´;;;;;├|､ヽ;;;;;､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ノ┐ｰ'´;;;;;;;;;｀ヽ
|;;;;;;;;;;;;;;ｉ┤;;;;;;;;;;;;;ｌi;;;;;;;;;;;;;;;/ヽ/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i
.ﾉ;;;;;;;;､ヾi |;;;;;;;;;;;;;;;ｉl;;;;;;;;;;;;;;i 丿;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ﾉ
ﾑ-‐-､;;;ヾ!;;;;;;;;;;;;;;;ｌｌ;;;;;;;;;;;;;ﾄy"-‐―-､;;;;;;丿
}′: ヽ/;;;;;;;;;;;;;;;ﾊ;;;;;;;;;;;;;;/ ﾉ . ﾚ;′
ﾉ' .::. ノ ﾉ;;;ー‐一';;;;;ー‐∨ ./´ ﾉ;;;|
_＿＿＿
／ノ ヽ､.＼
／（●) （●） ＼ はぁ……
／ __'___ u ＼
| ｀ー` |
(⌒(⌒(⌒ﾞｉ＼ (⌒(⌒(⌒ﾞｉ ／
ﾞｉ ﾞｉ ﾞｉ ﾞｉ (⌒) ﾞｉ ﾞｉ ﾞｉ | !､
ﾞｉ::::::::::: ゝ (⌒)::::::::::: | ﾞｉ
ﾞｉ （ ﾞｉ !､ | ｌ |
＼ ｉ ﾞｉ ,r'_,／ /
＼ ｉ ＼ ＿＿ ／
.
─────────────────────────────────────
・
・
・
─────────────────────────────────────
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
そうして濁った海の底へとできない夫が降りてから、
すでに一時間近くが経過していた。
箱メガネを使っても、海中の様子はまったくわからない。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
────────────────────────────────────────────
┌─────────────────────┐
│;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:; :;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:│ __,ｎ__, _ｎ..,n_ ｎ
│;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;: ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:│ ,.ｺ lﾆ, └i ｒっ_) に二二l . /厶__
│;:;:;:;:; :;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:; ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:│ `弋ﾆク U └'＾ｰ┘
│;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:│
│ :;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;. ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:│
│;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;: ;:;:;:│
│;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;: ;:;:;:;:;:;:;:;: :;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:│
│;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:│
└─────────────────────┘
────────────────────────────────────────────
＿＿＿_ ξ
／ ＼
┌──────┐
／│┌────┐│ うーん……
| ││( ・ ） ( ・ ）││
＼│└────. （￣｝
/(⌒)────ハﾉ }
/ ／ /::. /
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
たぶん進入口の障害物を取り除いているのだろう。
時折、大小の板切れや海藻が浮いてくるだけで、
他には何の変化も無かった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
信号索を通じての連絡では、
下で問題が起きていないことはわかるのだが、
時間が経つにつれ、
不安の塊が胸の奥で次第に膨れ上がってくる。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::: ::::::: :::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::: ::::::::::::: ::::::: :::::::::::::::
:::::::::::::::::: ::::::::::::::::: ::::: :::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::: :::::::::::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::: _＿＿＿. ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::: ／ ＼ ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::: , ´ _ノ ‐ ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::.. l （ ●） )..ﾞ:::::::::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::::
', u. ´ l. :::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::. ヽ ｲ: :::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::. ／:::::::::⌒ヽ三≦〉ﾞ::::::: ::::::::::::::::::
::::::::::::::::: __/::::::::::::::::::::::::::::}/|.... :::::::::::: ::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::: /_/::::::::::::::::::::::::::::::}:::{ |...... ::::::::::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::: /::::::::::::::::::::::::::::::::::V二ヽ. :::::::::::::::::: :::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::. _/::::::::::::丁 ー-rｲ:こﾍ L_ :::::::::::::::::::: :::::::::::::
-―――――「=≠::::::::::〈 |ー こﾚ へ ﾍ-―.,――,――
r'￣|::::::::::::::::! 〉r''⌒^1 〉人
|-= |≠===.ﾊ V_j_, イL,イ:::::::ヽ
ヽ_ｨ::::==≠┴-へ_ヽ::::::::::::::::::::::::::/
|:::::::::::::::::::::::::::::::｀丶::::::::::::::::::/
}:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼:::::::/
｀ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヾ/
＿＿＿_
／ ＼. ＼ヽ l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l /／
／ ＼ ／ ＼ ＼ ／
／ （●） （●） ＼ ― やっぱり俺も潜って ―
| ´ |. 二 親父っさんの補助をしよう！ 二
＼ ⌒ ／. ／/ ＼
／￣￣ヽ ＼. // l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l｜l ヽ＼
（｢ ｀rﾉ ＼
ヽ ノ ＼
| | ｢＼ ＼
.
｢| ｢|
|:| |:|
|:| |:|
|:| |:|
|:| |:|
|:| |:|
__ - ―‐ - __ ｌ｣ ｌ｣
,, ''ｉｉ" ﾞ'''ii...,, l｜,l,,|
／! !! |l iヽ. l￣￣!
／ .|l || ＿＿＿＿ || .|l. ＼. l .|
/ |l └ ￣ ＿ ￣ '┘､.l| ヽ| ｜
. ＿＿ / |l／ ,. ' ｀ヽ ＼ ∧＿_,!_
| |/ ,. '¨ / γ ⌒丶 ', ヽ､ ∧ ::|
｜┌― ''' ¨ ! :ｉ ｉ l ＿, ゛''―┐::|
｜｜ ＿＿＿＿＿.、ゝ _＿ノ ,' ,,,,,, ヽ＿＿＿, |::::l
|..｜ （（.三三三三三ヽ _＿_,,.ノ:ｉ ｌ;;;;;;;;ｌ i三三三）） |::::l,. i⌒ヽ /⌒Y
￣! ￣￣￣￣￣γ' ｉ ヽ ゝ ''''' ノ￣￣￣ l￣ / ,
ヽ ｌ - O -:l_／ ￣ / ｉ i
゛'' ..,,, 人 ! ノ ,,.. ''". ! ! ; i. /⌒i
＼｀゛¨ '' ‐- , ＿ ￣ ＿_ ,... -‐ '' "´／. | 乂 ﾉ l / ,
｀゛¨ '' ‐- ...,, _.￣＿ ,... -‐ '' " ´. ｉ ′ /
; ,
/ 乂
／ ￣）
i´￣￣¨ ｰ一 ´ r ´
人 i
｀ ヽ
｀ 、 ＼
` `
｀ _ ｀
＼
ヽ
＼
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
ヘルメットに手を伸ばしかけたところで、
信号索を握っていた作業員が叫んだ。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
＼＿_人＿人从＿人＿人从／
＿） （＿＿
） 上がってくるぞ！ （
￣￣） (￣￣
／⌒Y⌒Y⌒⌒Y⌒Y⌒Y⌒＼
__ ∧＿∧
!i 〈っ))（ ）
| |／. ヽ
-――――.. |. ハ , i-――┏,――
ヽ.ﾞ/ /| | ┃
∧＿∧ ﾉ 〈 | |.━━┛
. （ ´∀｀；） （ ○ ￣｀ヽ
( ) /＾/⌒￣￣￣ﾞ ）
_／ | | | | ＼_ (__(＿_,ノ───‐ ' ∧__∧≡=-
（＿／.∪∪＼＿） (´･ω･`)┐≡=-
┳ ｼｭｺｼｭｺ と´_,ノﾞヾ.≡=-
■ (´ ヽ、 ＼≡=-
│ ｀ｰ' ＼__）≡=-
│
│
-=≡∧＿∧
-=≡┌（ ´∀）
-=≡し, ｀)
-=≡／ ⌒)
-=≡(＿／└一
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
その声にポンプを押し続けている作業員以外の全員が船べりに走った。
できる夫も彼らと一緒になって、
冷たい雨が無数の波紋を作っている暗い海面を凝視した。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
やがて、排気バルブから昇ってくる気泡が一ヶ所に集まりだした。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
／￣￣￣＼
／ ＼
/ ＼ ノ ヽ
| （●） （●） | …… ……
＼ ∩ __'__/777／
／ （丶＿//// ＼
──────────────────────────────────────
ﾌﾞｸﾌﾞｸﾌﾞｸ……
- o -
- ─⌒ ─ o ﾟ - ⌒ o
≦二=-j_ o - ﾟ -⌒ ﾟ-o ≧二弐ﾗｭ,_ _
― ´' －---ﾟ__－oﾆ-=＝ﾆニ´
￣ ￣ ― ￣
──────────────────────────────────────
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
じっと息を殺して目を凝らし続ける。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
ｶﾀｽﾞ
固唾を呑んで見守っていると、
肩のシコロが見えるまでに浮上したできない夫の腕の中に、
濡れそぼった髪の毛が見えた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
, -‐ ､ ､
／ ヽ `ヽ
/ ,/" l`ﾍ ヽ
,; ,, " , l ヽ
,;' / il l
______ ,;' /'l l ヽ≧、
, -'´ ___ ｀丶､ /,ｨ.l l ヽ､ ＼
／ 凵 ＼....ヽ=l i ヽ`l ヽ
|ﾞト-‐‐--------─-──ｰl ﾞｉ..ヽ l i _,___ゝ' ,∧
__ ,＿|,| .| | i二二二二二i | . |. |‐- , -.￣ ''‐|_|ゝ＼ . ヽl＼' /､､ _
. /|_ト-──‐‐‐ﾆ>| ! | |/_＿_____＿_＿_ヽ| . l | :| | :l ｀'く...＼l ﾘ'/＞､ヽ ＞ ､
. /:/-'゛ | ! .! !__＿___,____＿___,___＿__| |.' :| l ! ヽ..ﾞ＼≦彡 ﾍ l lヽ ハ‐-､､
/ ! | .|＿___＿____＿＿____＿________.| | !. ! ﾉ .ﾉ.ﾘヽ＼` ソィ ﾒ＞〉'/メ lハ
! │ .! l | |.! ! ___,,,,／／ ＞'､ ヽ＼イ‐彡// / / /
. 'l＼ | ､.! .! ＿＿__ .＿＿__ :| | ! ゝ--''´＿ ／l ＞- _ ﾍ テ７" / / ／
ゝ ＼ ﾉ lｉ :! | ﾆﾆﾆ l. ! ﾆﾆﾆ l | | ゝ-, -‐i'´ ￣ .! ヽ＼ｌ_ l/イ=ニ/／
Tヽ二二二_ ノ .! .| .! ﾆﾆﾆ | ! ﾆﾆﾆ | ! | ヽ ヽ _|..` l ィ'"
. l ! .! .! ! ﾆﾆﾆ | | ﾆﾆﾆ | | | ヽ _ ／ ､ ,, ｨ ／
──────────────────────────────────────
／ 八{ ミ::::::::::..､ｊ〃.::_,_, ＼::::::::;=ミ::ヽ ヽ､__ ノ
〃 ＞‐ _ . ニ=＝-‐ﾍ{:::::>､::::::::｣j{_(9_,ﾉ ° ';::::' うハ:::i _ノ
{／,x≦::::::::::::::::.:.,∠、ヽ:i{ (9ｨ^-‐‐.::::::::::7 u / V{ し' }:::!＞ や や
ヽ⊆{ ,ﾆミ:::::::j八(9 ） u:::｢l:::} -､ ｀ヽ::; ' ｒ ﾉ:ﾉ＞ っ っ
( ﾊ'（ (9｀Y＾ヽ{::::::, , ﾍヽ:::ｰ-=' u ' , { ┌彡 '⌒ヽ た
ゝい:::７(:::ﾄ､ｒ‐､ ' u ',ハ /ｆこフ丶、 ｕ |::: ﾉ ッ
ヽ}',{__ｊヾ'＾_,. -‐, 、 '. , V.:::::::／＼ l::: ／ ！！
八ヽ:::{ く_,>'^＾ _} ｕハ ヽ::;' ﾉ} /.:: ／⌒ヽ
＼' ;.、ゝ'"´_ノ ∧ 込. _彡'′ ｕ /.::: ）
＼ ヽ~｢:::( .ｲ ＼ヽーｧ ／.:::.:/
／＞ -=≦ﾆﾌ }::＼::( ／.:::: : /
──────────────────────────────────────
┏━━━━━━━━━━━━┓
歓声が口々にあがった。
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.
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''''''''' ''''''';;;;;;,,,, ''';;;; ;;'' ,,,;;;;;''''' '''';;;;,,, '''';;; ''''';;;;;;;,,,,,,
''''''''';;;;;;;;,,,, ; ;' ,,,,,,,,,,;;;;;'''' '; ''''';;;;;,,,
''''';;;;;;;,,,,,,, ''';;, ''' ' ''';
'''''''''''';;;;;;;,,,,,,, ,,,;;;,,, ,,,
,,,,,,;;;;;;;;;''''';;;;;;;;,,,,,,;;;''''' ''''';;;;;;;,,,,, ,,,;;'''''';;;,,, ,,,,,;;;;''''''
,,,;;;;''' ''';;;'' ,, ' '''''';;;;;,,,,;;;;''''''';;,, ,,,;;''
,,,,;;;;;;''''''' ;' ,,,,;;;,;''' ,,,,;;;'''' '';;,, ''';;;;;;;,,,,,,,;;;'''''
' ,,,;;;'''''' '';;' ';, '''';;;;;''
''';;;,,,,, ,,;;;;''' ;, '';,,,;';,,;''
''';;, ,,,,,,,,,,;;;;;;;''''''''
'';;;;ﾞ/ﾐヽ,,,〃ヽ. ヽ ／´￣￣￣￣￣｀ﾞヽ、.....,;
/|/ u ヽﾄ､│ /／`'ｰ---‐''´⌒ヽ. ヽﾞ';;'
＝=ｯ r=＝=:|ヽ! __ ＿ ＿ /' u ヽ !
'';;;;;;;'''';;;;;,,,,,,,,;;;;;;'│ ､-‐ヽ｀`v'´ ／-‐z ＜.⌒ヽr'´／-‐;z.._ |r=＝= r＝＝= / | '
─‐- -─ | ∠⌒ ＞ ,. -───‐- ､ ＜⌒｀ ＜. r＝＝=＿_r==＝＝t=r‐ ､ |
;;;;;''.. ! l | / NヽＮヽl＼l＼N ､ヽ / ,r‐-､_ ,. -‐､ヽ. ∠,. , ,ｲ. lヽ. . ヽ ｌ (´_･ [二{ __･_） l || r､.! !
u | | | i ゞ -─‐- -─-ト! ｉ / ￣ u ヽ ! ∠-ｧ ∠|/u ヽ!-ゝl＼ ! ! ｰ--ｲ ￣ ト---‐'´ || ﾚ,ﾘ |ﾞ,
,r一' ｰ-‐' ｰ-､ | | .r‐;、＝＝= ==＝.| |〈. -─‐ ─‐- .〉| /イ´,:== ==､ | r‐､| | l ｌ u |!_ン |
二二二二二) l ! ! {６|| `‐ﾟ-1 ﾄﾟ-‐' | i⌒!|. ( ￣｡ ｡￣ ） |i⌒! |.（ 9 9 } !|f',ﾘ| |...........`ｰ-‐' .................|ヽ |
＿＿_ / :| ヽ_|!L._ L.___」 u ｲ ヽ_|! ￣ / ヽ ￣ lLノ | ｰ l | ｰ ' u |!ン | l:::::(二ニニニ二）::::::|. ヽ !
￣￣ /､ | /| r;ﾆﾆﾆﾆﾆつ | | u ｰ-‐' | | u' ( ) |ヽ.│ !:::::::::::ー一:::::::::::::::::l ヽ|
─────' l ／ヽ/ !. ヽﾆﾆﾆﾆﾆｿ | ／l. ⊂ﾆﾆﾆﾆ⊃ l＼ ! ⊂ニニニ⊃ l ヽ|＼. ヽ､:::::::::::::::::::::::::::;ノ ／ヽ
/ │ |`''ｰ-､ ＼. ＼ ｰ一 ／,.. -‐'! | |＼ ー .／1 |`'ｰ- ､＼ ｰ一 ／ / |`ｰ-／￣l￣￣￣ _,,. ‐''´ ,,.ゝ
`ｰ---ｲ /＼ |. |ヽ.ヽ＼ ` ｰ--イV〔. |. │ﾄ､ ` ｰ-‐ ' /| │ ,, -‐1｀i ｰ-‐ ' ／| | |ヽ │r‐'''"´ ,. ‐''´ ＼
ヽ. ! / ＼| | ヽ. ＼＼､..＿/| ヽ`''n │ |. ヽ:`:ｰ---‐:::7 | !. ∧ |. ! ヽ / |. | | 〉、 N∧ ／ ＼
ヽ !/ | ｌ ,..へヽ::::/,へ、.l |.l. | l ヽ;::::::::::::／ | |. | l. |. | ﾄ､.＿,/ :| ! |/ ヽ|│ ヽ. / ＼
`y' ＿＿＿_| ,|´ o |::i´ == ヽ!│| ! ／｀ヽ、ヽ;:::::/ ／´＼ ! | l. |／＼ | / -‐'''＾''‐ ､| | 0 | | ==V ,. -─ゝ､
. / f|| o | ,/ | |:! l !´ o＼.∨´__ ｀' | i o.l /__ │ | | ／
l |ヾ=====| / | |! | | `{ |ヽ. ヽ V |. | | /
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
しかし、ついに引き揚げに成功したという喜びは、
船上に揚げられた遺体を目の当たりにしたことで、
一瞬にして立ち消えになった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
救命胴衣をしっかりと身につけた女性だった。
空を掴もうとするかのように
曲がったまま硬直している傷だらけの指は、
完全にふやけて無数の皺に覆われている。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
_＿＿
＜ﾆﾆヽ ＞ｰ ､ , -‐ ､ ､
,/,ィ ｫ:::::::::::/ l ／ ヽ `ヽ
//´ヽ::::_:::::/; ヽ / ,/" l`ﾍ ヽ
´ ヽ:::::::＼ ,; ,, " , l ヽ
ﾍ:::::::::::＼ ,;' / il l
ﾍ:::::::::::::::` ､ ,,,＿ ,;' /'l l ヽ≧、
ヽ:::::::::::::::;:::::＼ ヽ｀ ´￣l /,ｨ.l l ヽ､ ＼
＼:::::::::':::::::::::ヽ i l ﾒ ヽ=l i ヽ`l ヽ
｀ｰ-:::::::::::＿ヽ. へ l ／.:::::::::::l i ゝ' ,∧
,ィ'" , イヽ´ l`` ＼ ＼ ７∨ ｨ,- ､:::::::::::l !. '" ／ヽl＼
〈 ≧､ﾄ､ヽ ≧ｰ-ゝ,,_, ィ/ /ハ ﾉｰi‐〉 ヽ '''"´ ヽ ＼l ﾘ'/＞､ヽ ＞ ､
ゝ-＜二二二＞‐"／/ / /l`liヽィ' / l ヽ ＼ lヽ ＼≦彡 ﾍ l lヽ ハ‐-､､
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
乱れた衣服から覗いている皮膚は
どこもかしこも紫色に変色していた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
やっと日の目を見られたというのに、
ｸﾏﾄﾞ
青黒く隈取られた中にある見開かれた両眼は、
どんよりと曇っているだけだ。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
──────────────────────────────────────
_＼ ＼ 、 ／ ／_ -── -
⌒＞,‐=====ミト、ヽj 〃,ｨ ======ミトく⌒
イi／ .ィ:i:i:i:ヽ ヾﾄ ﾊ| {iV' .ィ:i:i:i:ヽ ヾ抃、
〃从, , {i:i:i:i:i:ｉ:ﾘ , ,〉} ﾘ { V{, {i:i:i:i:i:i:ﾘ , ,从ハ
{ { {i込、, == _,. ｨ炒' ＼ﾄ , , == , ,ノ「/ i}
＼寸;三三三彡' 气￢=‐==≦イ/
＼｀￣￣ --- ‐=彡'
──────────────────────────────────────
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
あまりにも醜く変わり果てた姿だった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
∧__,,∧
（´・ω・`） 冷たくて、暗くて、
(つ と） 今まで辛かったべなあ――
｀ｕ―ｕ´
┏━━━━━━━━━━━━━━━┓
誰かが震える声でつぶやいた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
沈痛な空気が重く立ち込める中、
ﾃﾝﾏｾﾝ
やがて女の遺体は作業船に横づけされていた伝馬船に移され、
遺族が待つ七重浜へと運ばれていった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
_丶 丶 ＼ 丶ヽ ＼ 丶 丶ヾ丶 ＼ヾ丶 丶 丶 丶＼ 丶 丶 ＼丶 丶 ＼ 丶ヽ
. ゝヾ 、丶 、. ＼ｖヽ丶 ＼ 丶 ＼ヽ ヽ 丶＼ ヽ 丶 ＼ヾ 丶ヽゝヾ 、丶 、
_ゞ ヽ＼ ＼ ヽ.. ヽ 丶 ヽ ヾ丶ヽ ヾヽ、丶＼ 、 丶、 ＼.、ヾ ヽﾟ ゞ ヽ＼ ＼ ヽ
ﾞヾゝ ゞヾ ヽ丶 ＿/__/＿ // ヽ＼、ヽ 丶ヾ＼ ヽ ゝ 丶丶 ヽ ヾゝ ゞヾ ヽ丶
＼ 、ヽ 丶ヾ＼ ヽ.. / / ーーーーーーーーーーーーーー ＼ 、ヽ 丶ヾ＼ ヽ
... ヽ ヾゝ ゞヾ ＼ / ヽ＼、ヽ 丶ヾ＼ ヽ ゝ 丶丶 ヽ ヾゝ ゞヾ ＼
ﾞ、 ヽ ＼ ＼. 丶..＼ 丶 ヾ 丶ｖ ＼ ヽ ＼丶丶、 丶＼ ヾ 丶丶＼、 ヽ ＼ ＼. 丶
.ヾ ヽ丶丶 ＼、＼..ﾞ丶＼ 、＼ヽ 、丶＼ ＼ ＼ ヾ 丶 ヽ丶. ＼ヽ 、丶＼.ﾞ丶丶 ＼、＼
ノ 人── ＿人──────────── ──＿ノ
￣￣￣￣￣二TTTTT￣￣ー─￣￣￣￣ ￣￣￣ ｰｰ ￣￣ー.＿￣￣ー
＿＿ ___＼二二二¨フ___ ーー＿ ＿___ ー ￣二＝≡
￣￣ ￣￣ ーｰ ￣─＿＿ ｰ二__ ＿
‐‐ ＿二二一 ___ 一ｰ 二二 ＿＿ーー￣ ─＿＿__ ￣
ｰ- ー ＿＿ --‐ 二二＿ ー─ ＿___
＿＿二 ＝__ ＿＿ ー一
, -- 、
/ ヽ
ゝ ノ
（| 三|）
| 三三|
し Ｊ三
三三三三三
三三三三三
｀丶､..ﾞ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
｀丶､..──────────────────────────────────────
ヽ ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
l.. ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
＼ l . ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
＼ l...＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
ｘ ＼ k.￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
〃 γ ＼ ／ l......￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
{i { ● }>､ﾉﾘ xく●} l!....＿＿＿..ﾞ＿/＼／＼／＼／＼／＼／＼／＼／＼/＼／|＿......＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
ﾍ、`ｰ‐'′/ | | ﾍﾞｰ'ノ:!....＿＿＿..ﾞ＼ ／. ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
￣ ／ | | ￣ l ＜ ぼさっとしてんな、どんどん揚げるぞ！ ＞ . ──────────
| | / ───..ﾞ＜ ＞ . ──────────
＿|_| /.. ───..ﾞ＜ おめえも手伝え！ ＞ . ──────────
｀¨´ / ＿＿＿＿..ﾞ／ ＼. ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
∠ニニニﾆ7 /.￣￣￣￣￣.....￣|／＼/＼/＼/＼/＼/＼/＼/＼/＼/＼/＼/￣ ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
. / l// /...＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
｜ l/ /──────────────────────────────────────
| ! ′....─────────────────────────────────────
| ! i..ﾞ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
､ ！ / l. ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
丶、 ｀ ｰ---" !.....＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
丶、 ｀￣´ ノﾞ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
＞－----－''"
──────────────────────────────────────────────────
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
小さくなっていく伝馬船の船影を
ぼうっとして眺めていたできる夫の耳に、
ヘルメットを取って波間に漂っていたできない夫から、
鋭い声が叩きつけられた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
我に返ったできる夫は、急いで装備を整えて船縁から梯子を伝い降り、
できない夫に続いて潜降を開始した。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
|:.:.:.:|:. ! :! !! // /― ､＿＿」_j＿＿_/// }} }}
＼/〉､|=| |「 ! 》|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.! |:.:.:.:.:..:! ||レ'ノﾉ
. // 〃 》/__|∠ |:.:.:.:.:.:.:.:.＿|__」＿＿|_」レ'´
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ヽイ〈/:.:.:|:.:.:.:.:|: : : : : : : : : : : : : : : : : : |
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ｶﾞ |:.:.:.:.:..!:.:.:.:.:!: : : : : : : : : : | : : : : : : : |
ｼ |:.:.:.:.::.!:.:.:.:.,': :＿＿＿: : /: : : : : : : :/
ｬ. ヽ＿/＿_/: : : : : : : :＞'――: : : : |
|:.:.|::::::::|: : : : :: : :／:/ ヽ: : : : : : : |
|:.:.|::::::::|: : : : : : : : : i: : :i: : : : : : : :|
ヽ」::::::::|: : : : : : : : : !: : :|: : : : : : : :|
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|＿_」: : : : :/: : :| |: : :!: : : : : : : :|. ｶﾞ
/: : : : : : : /: : : | !: : : : : : : : : : :| ｼ
|: : : : : : : : : : : :| |: : : : : : : : : : : ! ｬ
|ヽ: : : : : : : : : / 〈ヽ: : : : : : : : : :|
ﾄ、}_,.------〈 {ヽ`ー―――/
| } r―――‐/ ヽ} 厂￣￣￣|
|//: : : : : : : :| :|: : : : : : : : :|
j/: : : : : : : : : ! |: : : : : : : : :!
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/: : : : : : : : : : : | :,': : : : : : : : : : ::
〈: : : : : : : : : : : : :| / : : : : : : : : : : : 〉
＼: : : : : : : : : : / ＼: : : : : :／: :／
.
,..-――- ､ヽヽ
__,,,,,-‐‐‐-,,,,,__ ,ｨ":::: ヽ ﾉ`ヾi)
,,,-‐i''i i~i‐-,,, | ∥,.l`'ｰ--- ､_ r":::: ,,.ｨ''""ﾐヽ､ _ヾ_
／ | | | | ＼ |￣|i |,-‐i"ﾄー--''" /!;(○r:;:l : : ト, |
. ／ | | _____ | | ＼ | || |i,､ `'`ｰ-､....,r',,_;《＋）_:,,.-‐'" |ﾄ;|
,; .__,,,,,‐‐〃⌒ヾ ￣''''‐‐､,,,,__ ;,| |l |;;;lヽ : : : : : : : : : l:|:::i
l ´i .￣ （( (,〜')）､_,,--､ ￣''''i ｀ l ヽ_.,,,_ ノ`i;|::ヽ l::|-
| .l ､====ヾ､__,,ソo（(,,;;;;)）====､ l. | ,-くヽ,-'^ゝ |:::::::ヽ l:::|
___. |: | ￣￣￣ ,;-i-､,;ﾞ~=''＾￣￣ |: |ヾ;::ヽヽ _;;l |:::::::::;i------―――――|r''
〃О｀,,-‐‐‐‐-､ ｀‐ i─,,,,, (-○-) ,,,,,─'i"´ ,,-‐‐‐‐-'､℃ヾ::i r,=======il !､|!
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
一刻も早く揚げてくれ、
そう懇願しつづけている人々が待っている洞爺丸の船内へと。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
─────────────────────────────────────
・
・
・
─────────────────────────────────────
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
その日、夕刻になって暗くなり、
潜水が不可能となるまで続けられた作業で、
合計20体の遺体が引き揚げられた。
桟橋へと向かう作業船の船縁に腰をのせ、
できる夫は疲れきった体を休めていた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
＿
＞ ´ ｀ ＜
／ ＼
./ ＼
/ V
| Ｖ
_＿| ＼ |
__ ｝ ヽ ｀＞‐＜ ｀ヾ､ ´/
} ,.,,丶´ 丶´::.. ,.A. ｀¨ /
ノ -=‐- ､_ ｀丶､ヽ. ヽ ､ 〉
{ ／ _ｰ-__｀丶､ ゝ Vヽ ´フ''´
Ｖ ´￣ ;;:; ｀`丶､ ﾄ､} ー ´
/／ :;;:;,, ::.:. ::.. ｀ヽﾍ{
,′/／......'''' : ､ ::..｀!
, 〃.::::::: ヽ | :: ::;. {〉
! / :::: .. ヽ | :::. :;;: ゝ
,i!{ ::: :::::.. l | ! | :: ::.. :;: 〉
!/! ::: ::::::... | ! | !{ ::::.. |ﾄ
!! { ::... :::::::.../ | l|;/ ::::.. l、
' ヽ 丶 / |:: ハ :::::: {
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
ﾖﾄﾞ
体の芯に残っている重く澱んだような疲弊は、
肉体的な疲れからくるものではなかった。
わけもわからず、無念のうちに死んでいった人々が
海の底に残したこの世への未練が、
怨念となってまとわりついているような、
形容しがたい感触が皮膚にはりついている。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
.
┏━━━━━━━━━━━━━┓
隣で煙草をくゆらせていた
できない夫が訊いてきた。
┗━━━━━━━━━━━━━┛
/￣￣￣￣￣￣ヽ
| 疲れだが |
ヽ＿＿＿＿ ＿/
)ノ
─ ＿ ) (
/ ┌ ＼ （⊂ﾆﾆ⊃)
ｌ （● ｀二⊃ﾉ
ゝ （(
＼ - _., ' /￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ヽ
＼ ! _ // | | |
/､ ｀ ー ﾃ ´ l i/./ ﾘ7 | ＿＿＿_ |
/＿ ￣ ｀ヽ ﾉ.ﾉ './7 | ／ ＼ |
/ ｒ ￣ ｀＼ ' / | ／ ノ ' ヽ＼ |
/ ヽ 〉 .ノ | ／ （ ー） （ー）＼ ええ、まあ―― |
/ i /"' ､/ | | ' | |
ヽ ヽ i /｀ヽ _ / | ＼ -‐‐- ／ |
’, X ヽ ./ / | . / ／￣彡ﾐヽ、 |
， ヽ、 ヽ l , 、. | / ヽ / / ヽ ヽ |
i ヘ ｀ i! ,. : : : : :. | ヽ. Ｙ / | | |
〉 ＼ ./ ,. : : : : : : : : ; : : :.| ヽ ノ ヽ ノ |
/ i ＼ ./､ ,､. : : : : : : : : : :i:/: : : :.ﾞ| |
/ ヽ ヽ __ ｨ 〉- -:､:´: : : : : : : : : : : / : : : : :ﾞヽ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿/
,' >､ リ /: : : : : ヽ: : : : : : : : : : i!: : : : : : : :|
ﾊ _ ／ ＼ / =--y-- ": : :/: : : : ヽ ＿: : : : : :i: : : : : : : : :ｌ
i ./ ＼/三／: : : : : : :ﾐ: : : : : : : : : : :￣: ￣ :￣: ￣: ￣: ￣: `:､
_ -＝ ''"ヽ _/ ー"、: : :ﾐ: : : :: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : i
- ─ - ´ i: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : l
ヽ : _: : : : : : : : : : : : : :: : : : : : : : : : : : : : : : : : : ／
￣ ─ ￣ ￣
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
できる夫が頷くと、
探照灯を照らして今も海上捜索を続けている船舶に
目を向けながら、できない夫が言った。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
／￣￣＼
／ ＼.........:::::::::::.... ....... ヽ ,
|::::::: : | .... .........::::::::::.....r‐' _ノ 明日っからが本番だ。
. |::::::::::::: | .... .........::::::::＿ ) (_
|::::::::::::: |.. ..... ......:::（⊂ﾆﾆ⊃) 全部揚げてやるまでは、
. |::::::::::::::: } ..... ......: ::::｀二⊃ﾉ. 俺たちの仕事は終わりにならねえ。
. ヽ＿＿__ } ..... ......: :::: （( ￣ ｶﾀﾞ
r'ﾆﾆヽ._＼. ﾉ.. ..... ......: :::::: ;;. 疲れだなんて語ってられねえぞ
r':ﾆニ:_`ｰ三`:く._ [l、
／: : : : : : :｀,ニ､: :_:_;＞ ／,ｨつ
. /: : : : : : : : / : : : ヽ＼ ,∠∠Z'_つ
| : :.:.:.:.:.: . :/: : : : : : l : ヽ. / .r─-'-っ
. |:.:.:.:.:.:.:.:.:.,' ''"￣: : :l: : : :l / ）:::厂 ´
|:.:.:.:.::.:.:.:ｌ -─-: : /:_:_:_:_l /￣｀Y´
. |:.:.::.:.::.::l._＿: : : :/::: : : : :l/⌒ヽ: :
|::.:::.::.::l: : : : : : /:::: : : : : |: : : : ﾞ/
＿＿＿
／ ＼
／ ＼
／ ノ ヽ､_ ヽ それは、わかってます――
| （ ●） （● ） |. けど――
＼ ｌ^l^lｎ ｀ ／
／ヽ L
ゝ ﾉ
.
┏━━━━━━━━━━━━━┓
言葉を濁したできる夫に、
できない夫は顔を向けた。
┗━━━━━━━━━━━━━┛
／￣￣＼
／ へ ＼
. | （ ●）（●） 海の人たちが、
. | ｜ | 俺たちのことを潜りさまって呼ぶのは何でだか、
. | __´___ﾉ
. | `ー'´}. おめえだって知ってるべ。
. ヽ ﾉ
／⌒ ヽ
. / ＼. ＼＿＿ｨ〜っ
/ ＼. ﾄ､_"＿＿冫く;'三｝
| ヽ、__)| `ー‐"
| ヽ￣⌒Ｙ￣￣⌒ヽ
＼＿＿＿y ﾞ|＿__ｨ |＿
￣￣￣￣￣￣| | | |＿|
￣￣￣￣￣￣| | ￣ | |
{＿__ﾞ) {＿__ﾞ)
／￣￣＼
／ 「 ヘ ＼
.| （ ●）（● ） | いくら潜るのが上手くたって、
.| | │
| __´___ .|. それだけじゃあ、
.| `ー'´ .| 潜りさまなんて呼んではくれねえ。
r､ r､ヽ /
ヽヾ 三 |:l1.ヽ / そんなのは、ただの潜水夫だ。
＼>ヽ |｀ ｝ > <
ﾍ lノ `'ｿ ヽ
/´ /,1 | |
＼ ノ .｜ | |
.
/￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ヽ
| |
| 揚がりたがってる仏さんがひとりでも残っている限り、 |
| |
| 最後まで諦めねえで、 |
| 暗い海の中さ入ればこその潜りさまだ。 |
| |
ヽ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿/
＿__ }} /
´ ｀ 、 |￣} _
／ ＿_ ＼| ﾉ _ -‐…‐-ミｯ
/⌒ヽ-‐‐- ､r‐{__ ／,.－ 、｀丶､____} { } r'{ ヽ
〈 }＾′ ノ{ =={ ( ）ｉい}== ⌒}-‐}∧ '，
{ ′ハ 辷彡 √ . イ:〃 ':ハ }
八 { / ≧=‐-弋+ﾉ-‐=≦／ i{ {ﾑ 廴 ＿ -‐′
＼ ∨ｉ 冖 / 八_ﾉ｢、 ＞-〈
＞‐-{ {＿＿＿＿＿＿＿__/ ___ Y ＼／ '，
／ 廴 ＿＿＿＿＿＿_ 〔＿_} | ｀V ⌒ヽ }
／／ﾉ i| ∧ .ﾉ r‐:}＿＿}￢ __
／ く／ i| r──‐ ､ / '， -‐ i { ！ 〕 | ┐}
_へ } ／∧＿__￣￣｀＿___/ { │ _}‐ｧ､_｢ | |｣
,ｨｧ⌒i ヽ∠.イ_i∧ ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ＼＿ 」__∠斗､ 〔_{ﾆニ) } |.ノ
にし ´} ｢’ Y´/ ー‐ｧ──ｧ‐‐冖‐-t:{ {＼ _》， {ﾆニ) {___｣
}ﾆﾆン / 介/ /{＿ / ＿＿ ハ ､ ヽ 》，{ﾆﾆ) } 〉
￣＼_/／ / ＿ /:{＾ / 三三} /⌒ 、 ＼:ﾑ￣ /
〈 {└一 . ′| { ￣￣ .′│ ＼ 〉￣￣
く｀ヽ ｀冖¨´ |: ＼＿__／-‐￢ |＾ヽ--‐′
r￢{＼ ／ ＼ _ 小、 ﾍ∨ _∧ ﾉ
ｰ-{ ＼ヽ{f⌒ くｰ＜ ｰ--‐≦､}／ ⌒ヽ _
〉 〉:｢￣⌒ヽ. ﾑ { ∨ヽ
. / /．| ／ Ⅵ} _} { '，
/ /． .| ／／ / 八 f三} 八 '，
- ｝ /． 人 ／ ′ ';个ｰ-‐ 〈 ':∧'，
/ く/ ≧=／} Ⅵ{ ∨:∧ ∧〉
. ′ 〉=ｰ-----く / Ⅵ ∨:∧ ∧
＼ .／＼ ＼ __ .′ ｀マ , 〉⌒ヽｉ 〉
/ ヽイ／ ＼ ／fぅ＼ ∨{ }⌒ヽ
./ ／ ／ い r 〈 ｰ一＜ |7＿r‐､
.＼ .′ （こ__ -‐ ′ | |ﾍ． ．|￢| | }
｀￣￣￣￣￣ | | ＼． _.」、.| | |
〔 {:＿ ヽ-‐＜ ,' | |┐|
| ￣￣￣| {リ一'
{＿＿＿＿＿j_／
.
／￣￣＼
／ 「 ＼
| （ ●）（●）
| ｜ | 何があっても、
| __´___ﾉ そいづだけは忘れだらわがんねのっしゃ
| `ー'´}
ヽ }
ヽ ノ
/ く
| ＼
| |ヽ、二⌒)､
＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─ ＼
／ （●） （●） ＼ そうですよね、確かにそうだ。
| ___'___ |
＼ `ー'´ ,／ 親父っさんの言う通りです
/⌒ヽ ー‐ ｨヽ
/ ,⊆ニ_ヽ、 |
/ ／ r─--⊃、 |
| ヽ,.ｲ ｀二ﾆﾆうヽ. |
.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
できる夫が生真面目な口調で答えると、
薄暗がりの中で
できない夫が静かに言った。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
／￣￣＼
／ -┘ へ. ＼. ｶﾀﾞ
| （●）（●） | なに語ってっけやあ、
|. ｜ ｜
| ___´＿ |. そいつば俺に思い出させてくれたのは、
|. ｀ ー ´ } おめえだど
ヽ ,ｨ{
| ｀ｰ-‐ ' }｀iー -- ､
,! i / ノ l _,シ ム
〃ﾄ､＿,,,. ;i'ﾒ ｜/ ,／ ＼
／/lliiiiiiiiiiiiiiiill/{r―‐^ i〃/ ヽ
／ ,ｲllliiiiiiiiiiiiillll/´ ／r- ゝ ' l
. ／ ／´ﾌliiiiiiiiiilllll/ , ／ |/ ｜
. / ir' |liiiiiiiilllllli' ／ | ーイ、
ﾊ |, /iiiiillllllllll| / | i
. / ｌj /llllllllllllllllll{／ l |
. ｌ ｜ /llllliillllllllllllll| | |
| ヽ| /lliiiiiiiiiillllllllllll} | |
〉 l |iiiiiiiiiiiiiiilllllllllll| | 、 |
. / ｜|iiiiiiiiiiiiiiiiiillllllll!、 | 二 |
. ／ | |iiiiiiiiiiiiiiiiiiiiillllllヽ、 | ｀ |
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
その言葉が、できる夫の胸の底に、
どこまでも深く、ゆっくりと沈んでいった。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
― 終 ―
.
熊谷サンはこの短編とは別に、
函館の潜水夫の親方を主人公にした、
戦前の函館大火・戦争中の函館空襲・戦後の洞爺丸事故 の三つの大事件を扱った
長編「烈風のレクイエム」も描かれています。
（→文春文庫から「海峡の鎮魂歌」に改題されて再版）
三つの大事件全部に遭遇するだけにお話的に盛り過ぎという感想も目にするのですが、
「そうかい、俺は好きだぜ（ニタリ」という一冊でした。
スレは一週間ほどおいて過去ログ化申請する予定です、ではでは ﾉｼ
.
面白かったです
とてもよかったです
人命救助の話かと思ったら大変な仕事だなぁ
こういう、どっしりした骨太の話はいいですね
異世界転生なんてもうお腹いっぱい
乙乙
漢が立ち上がる話しはいいもんだ
ゆっくりと回転する死体の描写は真に迫って怖かった
わかりやすい、面白い！
二人ともかっこいいなぁ
やっぱ昭和モノは面白い
今の日本が失った何かを思い出させてくれる
この一件の後は人が変わったように塞ぎこんでしまったそうな
事故の事はほとんど喋らなかったみたいで子供の頃の俺に一度だけぼそっと話したのが最初で最後だった
こんなレベルの大惨事ならそりゃそーだわ
乙ありがとうございます。
過去ログ化申請を出してきました。
またどこかで会えればと思います、ではでは ﾉｼ
面白かった 待ってるよ
すごい丁寧だった
登場人物の感情が伝わってきた
いい作品だった
とても面白かった！