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【R‐18】 ポケモン異聞【SS】

1 ◆sDUAeVowUo:2016/10/27(木) 17:04:02 ID:14V4fRjs


  ・このスレはやる夫系スレと同じく、既存のキャラを出演させたSS(ショートストーリー)スレです。

  ・残酷、過激、性的描写が含まれます。
  
  ・主人公はやる夫では有りません。既存のキャラの姿で描写していますが、中身は全く別物です。

  ・独自解釈の為に、キャラ崩壊も多々ありますが、予めご了承下さい。

  ・上記の事が許容出来る方へ。SSスレではありますが、どうぞよろしくお願い致します。


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2 ◆sDUAeVowUo:2016/10/27(木) 17:05:52 ID:14V4fRjs



    この世界には、不思議な命が息付いている。

    尾に生命の炎を灯し、火炎を吐く翼龍の姿のもの。硬固で巨大な甲羅を持ち、そこから
   伸びる銃身に似た筒から、強烈な水圧噴射をなすもの。揚々と太陽に比肩するかに咲き誇
   った自身の大きさとさして変わらぬ花を背にし、そこから漂わせる香りに周囲を和ませる
   もの。
    そんな不思議な生き物達が、人間と共に犇めき合い、命を煌めかせて幾星霜。
    数多の命を抱えた星の大地は、その時々に合わせて断絶し、何者かの指先に圧される様
   に移り。海も満ち満ちる時もあれば、干す時もあった。
    時の流れにあって、元々が精強であった不思議な生き物達は、多岐に渡る種の発現を見せ
   る。中には更なる強靭さを得るものや、命を記す情報が環境に適応する為に調整され行く
   中で、人間達と酷似したものまで出現した。
   
    そうあれども、遥かな過去より尚一層の多様さを見せる命達は、睦み合い、生存に鎬を
   削り合い、譲れぬものの為に全てを賭す様は、何一つ遥かな過去と変わりはなかった。



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3 ◆sDUAeVowUo:2016/10/27(木) 17:07:23 ID:14V4fRjs



    人も惜し 人も恨めし あぢきなく


           世を思ふゆゑに もの思ふ身は



                             後鳥羽院




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4 ◆sDUAeVowUo:2016/10/27(木) 17:08:45 ID:14V4fRjs


     ポケットモンスター異聞 【白衣のトレーナー】


       Ⅰ


    夏の生温い夜気に、その先の季節を逸早く想起させる涼やかな風が、地上の喧騒と、大
   小幾つもの灯火が眩い都会に吹き渡った。
    人間と、様々種々のポケモン、ポケモンの要素を発現し切るに到らぬハーフ達が、混沌
   と都会の喧騒を構成し、日々の営みを繰り返して行く。
    その都会の一角。この街の一等地に建つ瀟洒な外観を誇るホテル、そのダブルルームの
   一室に、ガラス越しに人々の行き交いを見下ろす姿があった。
    茫然として居る様に見えて、その実、ただただ無表情に見下ろした先の営みへと視線を
   向けて居るのは、三十路に脚を踏み入れる前程度には若い女性。
    背は黒のハイヒールを履いて、高くもなく低くもない。言ってしまえば丁度良い程度の
   背丈。暗い色の髪は緩かにウェーブし、それが肩に掛かる。白のドクターコートを着た姿
   は、女医そのもの。
    しかし、その医師と見える女性の顔色は、さながら幽鬼のもので。両目の下には、濃い
   疲労と寝不足が露呈し、隈に縁取られている。無表情に、蒼白い顔色と、濃い隈の三つ
   が無ければ、整った顔立ち故に、十分に美しいと言えるものだった。



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5 ◆sDUAeVowUo:2016/10/27(木) 17:10:25 ID:14V4fRjs



    白衣の女性に、音も無く近付く人影が一つ。
    挙動の為に起こる足音と、衣ずれの音さえ抑えている。女性への深い配慮が窺える。
    近付いた人影の主が、白衣の女性の頬に、そっと指の背をやった。
   「……これでは以前、僕の傍らに居た猫と同じ、か」
    頬の温みを指に感じる人物が、自嘲を露に顔を苦笑に歪める。
    その苦笑に歪んだ顔は、触れている女性から比べれば、酷く不釣り合いなもので。
    そもそも、服装からして不似合いだった。
    一方はドクターコート、白衣を着込んだ医療従事者のもの。一方は、頭頂から足の爪先
   まで黒の軍装。
    六枚花弁の桜が光る星章が付いた軍帽、そこから伸びる目庇から覗く、小さな三白眼は
   金壺眼。鼻と口は、目と反目する様に大きければ、その目鼻立ちが、ごつい骨格の三十路
   半ばの顔に無作為に在った。狂相と言ってしまって良い。
   「千早、でしたか。その猫も、こうして父さんに気遣いを?」
   「あぁ。何くれとなく、僕の面倒を見ようとしてくれていたものだった」
   二人は親子であるらしい。しかし、それではあまりに外見の計算が合わない。



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6 ◆sDUAeVowUo:2016/10/27(木) 17:11:28 ID:14V4fRjs



   「三百余年も経ったが、その猫は産まれたての子猫からの付き合いだったからね。今で
   も、懐かしく思われる」
    三百余は生きる長命な人間ではないものの言葉。噛み締める様な余韻が有った。
    この会話の間も、白衣の女性の頬には軍装の父の指がある。
    その武張った指に、慕わし気に白く細い指が重ねられた。
    部屋の内と外を隔てる大きなガラス窓。それに映った白衣の女性の顔は、幾らかぎこ
   ちなくはあるが、微笑んでいた。しかし、春に爛漫と咲く花の笑みでは無く、冬桜にも似
   た儚さのものであった。
    互いの指が、互いから離れる。
    互いの顔が、互いに情を寄せるものから離れて行く。
   「もう程無く……か。では、新城、新城直衛。私の最も信頼を置くポケモン。仕事と行こ
   うか」
   「はい。我がトレーナー。指揮官殿」
    白衣のポケモントレーナーの表情は、ただ冷然としたものに。黒の軍装、新城直衛の
   表情は、この上無く冷厳なものへと変わっている。



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7 ◆sDUAeVowUo:2016/10/27(木) 17:12:38 ID:14V4fRjs



    二人は過ごしていた部屋から出ると、足早に、しかし踏み締める様にして、ホテルの無
   機質で、洒落た廊下を歩いていくのだった。


       Ⅱ


    同じ頃、瀟洒なホテルに相応しい、直線と曲線を優美に調和させたアールデコ様式のエ
   ントランスホールでは、何かホテルで催しものでも有るのか、人でも待たせているのか
   足早に歩く、利用客であろう四十代程度、作りの良いテーラーメードだろうスーツの男性
   が、前方不注意でか、白いものにぶつかった。
   「これは、失礼。お怪我などありませんか?」
    どうやら、ぶつかった白いものは人であったらしく、慮られたのか、声の主の大きな二
   つの手が、男性客の両肩に置かれる。




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8 ◆sDUAeVowUo:2016/10/27(木) 17:15:03 ID:14V4fRjs



    実に紳士的な声を男性客に掛けた人物は、鍛え上げているのだろう、厚みの有る身体を
   月白色のスリーピーススーツにピシリと包んだ三十代に入っているだろう男性だった。
    上背もしっかりとあり、黒い総髪に前髪を何本かゆらりゆらりと垂らした姿は、威圧感
   十二分である。だが、その顔は誠実さに溢れた笑みに彩られていて。
   「こちらこそ失礼した。では、急いでいるので」
    と、ぶつかった相手の威圧感に多少気圧されながらも、男性客は自身の両肩に置かれた
   手から身体を引くと、目礼する。それを受けて白いスーツの人物も目礼を返し、ホテルの
   ラウンジへと向かって行った。もう一方の男性客は、ホテルの利用目的の為にだろう、
   エントランスから人々が賑わうロビーへと、ロビーから暖かな光を灯した、やはりアール
   デコの吊り金シャンデリアが主役と言わんばかりの、エレベーターホールへと歩を進ませ
   る様であった。
    その忙しく歩く、男性客の背中を注視するものが居た。
   「そう、そわそわとするな。落ち着け、準」
    男性客が目もくれずに通り過ぎたロビーの一角、開放的でいて、ラグジュアリーなラ
   ウンジ・カフェで、そわそわと注視していたものに、落ち着き払って声を掛けた人物。
    鮮やかに人目を惹く薔薇色のボブヘア、称賛すら躊躇われる高潔さの美貌に、矢車菊の



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9 ◆sDUAeVowUo:2016/10/27(木) 17:17:24 ID:14V4fRjs



    青の双瞳が怜悧に輝く。ドレープの優雅な黒のショートドレスも美しい、二十代半ばと
   見られる女性が紅茶のカップに口を付けている。
   「は、はい。……ハマーン様」
    声を掛けた女性を様付けで呼んで答えたのは、準と名を呼ばれた相手である。
    この準と呼ばれた相手も、また美しい。美しいと言うよりも、大変に可憐なのだ。
    藤色の真っ直ぐなロングヘア、その藤色の睫毛が楚々と飾る紫水晶の大きく円らな瞳が
   潤み、男性のみならず、女性でさえも溜め息が漏れる。そんな匠が精緻に作り上げた少女
   人形の様な姿に、リボンのタイを付け、プリーツスカートの女学生服を着て、そわそわと
   エレベーターホールへ行き去った背中を注視していたのだ。
   「落ち着いて、あれに首尾を聞けば良い。……良いダージリンだ。飲んでおけ」
   「はい。……美味しいです」
    二人が相対し、腰を降ろしている椅子と、間に有るテーブルは、洗練されたラグジュア
   リーなラウンジに良く良く調和しているもの。それに二人が寛いでいると、また端麗さが
   際立つ。
    そこに、闖入した訳では無いが、異質な人物が加わる。
   「ダージリンですか?良い香りですね。私も一杯。と、行きたい所では有りますが……。
    ハマーン、準。首尾は上々です」



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10 ◆sDUAeVowUo:2016/10/27(木) 17:18:26 ID:14V4fRjs



    青の双瞳が怜悧に輝く。ドレープの優雅な黒のショートドレスも美しい、二十代半ばと
   見られる女性が紅茶のカップに口を付けている。
   「は、はい。……ハマーン様」
    声を掛けた女性を様付けで呼んで答えたのは、準と名を呼ばれた相手である。
    この準と呼ばれた相手も、また美しい。美しいと言うよりも、大変に可憐なのだ。
    藤色の真っ直ぐなロングヘア、その藤色の睫毛が楚々と飾る紫水晶の大きく円らな瞳が
   潤み、男性のみならず、女性でさえも溜め息が漏れる。そんな匠が精緻に作り上げた少女
   人形の様な姿に、リボンのタイを付け、プリーツスカートの女学生服を着て、そわそわと
   エレベーターホールへ行き去った背中を注視していたのだ。
   「落ち着いて、あれに首尾を聞けば良い。……良いダージリンだ。飲んでおけ」
   「はい。……美味しいです」
    二人が相対し、腰を降ろしている椅子と、間に有るテーブルは、洗練されたラグジュア
   リーなラウンジに良く良く調和しているもの。それに二人が寛いでいると、また端麗さが
   際立つ。
    そこに、闖入した訳では無いが、異質な人物が加わる。
   「ダージリンですか?良い香りですね。私も一杯。と、行きたい所では有りますが……。
    ハマーン、準。首尾は上々です」



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11 ◆sDUAeVowUo:2016/10/27(木) 17:20:23 ID:14V4fRjs



    青の双瞳が怜悧に輝く。ドレープの優雅な黒のショートドレスも美しい、二十代半ばと
   見られる女性が紅茶のカップに口を付けている。
   「は、はい。……ハマーン様」
    声を掛けた女性を様付けで呼んで答えたのは、準と名を呼ばれた相手である。
    この準と呼ばれた相手も、また美しい。美しいと言うよりも、大変に可憐なのだ。
    藤色の真っ直ぐなロングヘア、その藤色の睫毛が楚々と飾る紫水晶の大きく円らな瞳が
   潤み、男性のみならず、女性でさえも溜め息が漏れる。そんな匠が精緻に作り上げた少女
   人形の様な姿に、リボンのタイを付け、プリーツスカートの女学生服を着て、そわそわと
   エレベーターホールへ行き去った背中を注視していたのだ。
   「落ち着いて、あれに首尾を聞けば良い。……良いダージリンだ。飲んでおけ」
   「はい。……美味しいです」
    二人が相対し、腰を降ろしている椅子と、間に有るテーブルは、洗練されたラグジュア
   リーなラウンジに良く良く調和しているもの。それに二人が寛いでいると、また端麗さが
   際立つ。
    そこに、闖入した訳では無いが、異質な人物が加わる。
   「ダージリンですか?良い香りですね。私も一杯。と、行きたい所では有りますが……。
    ハマーン、準。首尾は上々です」



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12 ◆sDUAeVowUo:2016/10/27(木) 17:23:18 ID:14V4fRjs
多重投稿ミス失礼しました。

13 ◆sDUAeVowUo:2016/10/27(木) 17:24:15 ID:14V4fRjs



    総髪に白のスーツの男が、細く吊り上がった眼を細めながら、紳士的な態度を乱さず二
   人に報告する様に声を掛けた。
   「ふん……、身から出た錆だが、尋常では無い灸になるな」
   「我等が頂く白衣のトレーナーは、人間、ポケモンの区別無く命を踏み躙る者達に対し、
   一切の容赦は有りません」
    今、このラウンジでダージリンの香りを囲む三人、そして白衣のトレーナーを娘とする
   新城は、同じ人物をトレーナーとする、人の姿形をしたポケモンである。
    人との区別が容易に付かない程、酷似するものも多いが、種の根源からして違う。
    人間が自らを人類と呼称するに対し、彼等は人と似て全く異なる相似した身体的性質か
   ら、相似体類と呼ばれる。
    そして、ポケモンである相似体類は、人類と全く同じ感情と頭脳、意思を持つ。
    その証左が、今の準の様子にありありと見える。
    白いスーツの男の言葉に、準は可憐な顔の眦をきっと上げ、大きく頷いたと同時に、プ
   リーツスカートの上に握られた両手が、ぶるぶると震えている。怒りに身を震わせて居る
   のだ。
   「準。気が逸るのでしょうが、行動前から力んで居ては、成るものもなりませんよ」
    優しく、宥める様に準の頭が一つ撫でられた。



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14 ◆sDUAeVowUo:2016/10/27(木) 17:25:55 ID:14V4fRjs



   「……有難うございます。キンブリーさん」
   「いえ。こうした事が得意な新城の真似をしたまでです」
   「違いない。……良い頃合いだ。準、出るぞ」
    テーブルに紅茶の代金とチップを置き、ハマーンが立ち上がる。と、つられる様に準も
   立ち上がる。
   「あの、すぐに装纏されて機動を?」
   「目標の部屋で動きが有ってからだ。準、誰の耳が有るかも分からない。以後、口を噤ん
   でいろ」
   「は、はい」
    そんな会話を歩きながら交わす、見目麗しい二人。
    藤色の髪を揺らし、準が振り向く。キンブリーへと、ぴょこりと礼をすると、直ぐ様ハ
   マーンの後を追う。ラウンジからエントランス、エントランスから人々の出入りに賑わう
   ホテルの玄関へと歩み、二人はホテルから出て行った。
    キンブリーと言う名の男はと言えば、薔薇色と藤色の髪の後ろ姿がエントランスまで歩
   き去ったのを見送ると、ラウンジからエレベーターホールへと、長い脚で悠然と歩を進め
   る。エントランスホールで自身に接触した男性客の後を追う為に。



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15 ◆sDUAeVowUo:2016/10/27(木) 17:27:27 ID:14V4fRjs



    悠然と歩むキンブリーの顔は、先程作った誠実さに溢れた笑顔とは甚だしい差異の笑み
   が、幽かだが、滲んでいた。


       Ⅲ


    幾年も幾年も前、この世界に人間と姿形に然したる区別が無い種が地表を闊歩する遥か
   以前。ロケット団と言う、ポケモンの不思議で人を圧する力を利用したマフィアが存在し
   た。人間の人間たる所以、欲望の発露として、自分達に無い超常の力をポケモンを介して
   間接的にでも得たなら、そうした組織の存在は当然の結果の一つである。
    他を自らの足下に置き、思うままにしたい。そんな利己的な欲望は、ロケット団が跳梁
   していた時代と変わらず、今にも当然に蠢いていた。その利己的な欲望の中で、金銭と肉
   欲が絡まり合うものとなると、一際に汚穢なものだ。
    瀟洒なホテルの一室、内装から調度品の一つ一つが豪奢な最上階のスイートルーム。
   柔らかなシャンデリアとランプの光が照らす応接間に、六人、スーツを着た男達が不穏の
   中に顔と顔を突き合わせている。



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16 ◆sDUAeVowUo:2016/10/27(木) 17:28:38 ID:14V4fRjs



   男達が突き合わせた顔の中心、応接間のテーブルに置かれ、開かれたアタッシュケース
   の中には、頭にゴム栓が付いたガラスの小さな薬液瓶、バイアル瓶が、未開封を示すアル
   ミが巻かれた状態で二ダース整列していた。
    バイアル瓶に群がる様にして、男達の内、二、三人が何やら単語を発するのみで意思疎
   通を行っている。
    スイートルームには、その男達の他に豪奢な寝室の片隅で息を潜める者が居た。服を
   剥ぎ取られたのか、破れた下着姿の少女と思しき年代の二人が、痛め付けられもしたのだ
   ろう、蹲り、ガタガタと震えていた。
    その少女二人には、純粋な人間には無い、犬のものだろうか?フサフサとした毛に覆わ
   れた尖った耳と、尾が生えている。ポケモン。相似体類の二人だ。
    恐怖に震える少女二人の耳に、応接間で交わされる単語の声が入り続ける。二人の思考
   は、先程から一つの悲惨な予測に占められ、恐慌に陥っている状態だ。そして、大変に憐
   れな事に、少女達の予測は的中していたのだ。
    このスイートルームで行われているのは、麻薬の取引で、その麻薬を使われて、私達
   は散々に、惨たらしく犯されるのだ。その後の命の保障なんてものは、無い。と言う予測
   が。



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17 ◆sDUAeVowUo:2016/10/27(木) 17:29:41 ID:14V4fRjs



    二人の少女へと、足音が迫る。商談が終わったのだろう。
    少女達に、真っ黒な絶望が降り掛かる。
    次に起きた事は、余りにも脈絡が無く、滑稽ですらあった。
    少女達へと、寝室に向かった男達の内、一人の右肩から右腕が、火球が炸裂したかの様に
   爆ぜた。榴弾が爆発したと同じく、血液と骨片が豪奢なスイートルームの室内と、男達に
   撒き散らされる。
    阿鼻叫喚が上がる。それを上げたのは、勿論右腕を失った男。エントランスホールで、
   白いスーツの男、キンブリーにぶつかった男である。この麻薬取引に関わる一人だったの
   だ。
    その苦悶の叫びを間近にし、血と肉とを浴びた他の男、五人の内に一人、傭兵としてで
   も雇われていたのか、相似体類であろう一人が、逸早く他の男達を背に庇い、状況判断の
   為に、忙しなく両目を左右に配らせる。
   「遅えよ」  
    背に庇ったスーツの男達の一人に因って、傭兵の仕事を全うせんとしている男の膝裏、
   そこの骨が砕けた。とても人間のものでは有り得ない強度の一撃が見舞われたのである。
    このスイートルームに、いま一人、傭兵と同様に相似体類のポケモンが居たのだ。但し
   麻薬取引の男達を警護する為のものでは無い事は、明らかであるが。



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18 ◆sDUAeVowUo:2016/10/27(木) 17:30:51 ID:14V4fRjs



    愕然と振り返り、頽れながらも傭兵が自身の網膜に焼き付けたのは、全身を血と肉片に
   塗れさせたサングラスの男の、歪んだ嗤いだった。
    瞬間。サングラスを掛けた血塗れの男が、高い叫声を上げ、他の男達の頭上へと凄まじ
   い跳躍力で跳び上がった。空中で身を翻させ放たれたのは、砲撃にも似た前方への蹴り。
   上等なホールカットの革靴の爪先が、傭兵の顳�莵(こめかみ)へと激突。呻きすら無く、
   傭兵の意識は叩き落とされ、片腕を爆発で失った男と丁度同時に、床に倒れ伏した。
    スイートルーム内は、サングラスの男一人を除いて凄惨と驚愕で混沌となり、まともな
   言葉を吐ける口も無い。
    その混沌から乖離した一人、剽悍極まる体術で傭兵を昏倒させた男は、自身の腰に掛か
   る程の黒髪と、同じく黒いモッズテーラードのダブルスーツに浴びた血と肉片を見ると、
   心底嫌そうに独り言ちる。
   「一張羅とは言わないが、台無しだ……」
    呟いた男を震えながらも寝室から覗いて居た、被害者である少女の一人は、奇妙な感懐
   を抱く。「なんて綺麗なんだろう。真っ赤な血が、似合って。……恐ろしい。けれど、な
   んて……」そう淡く思いながら、呆然ともしていた。
    一人を除いて凍り付いたスイートルームの面々に、更なる猛打が加えられる。



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19 ◆sDUAeVowUo:2016/10/27(木) 17:32:08 ID:14V4fRjs



    何時の間にやら面々の耳に入って来たのは、強烈な機械音。鈴が鳴り響く様な澄んだ高
   音に、空気を切り裂く轟音が追従する航空機のエンジン音にも似た音が、スイートルーム
   の街を展望する巨大な窓ガラスを、家具を大きく震わせた。
    次に麻薬取引の男達と、少女二人の視界が認識したものは、窓の外に突然表れた、白い
   四枚の翼を両肩に生やした、一つ目の巨人である。いや、それは巨人などでは無い。流線
   型の頭部に、四つに分かたれ横に大きく張り出した翼の様な肩部、硬質に輝く薔薇色の胸
   部、曲線を描く装甲パーツを付けた腕、脚部、そこから覗く装甲内部の黒い骨格フレーム
   が、窓の外のものが生体と掛け離れた機械存在である事を示している。
    サングラスの男が、機械存在を歓迎する様に不敵な笑みを向けた。
   「流石はハマーン。キュベレイを寄せるタイミングも、完璧だ」
    ホテルの最上階、その室内に視線、カメラアイを合わせる白い機体。不敵に笑うサング
   ラスの男にキュベレイと呼ばれた存在は、機動兵器と呼ばれるもの。数多くある相似体類
   ポケモンの種の一つ、特定の血統と、更には強力なサイキック能力を持つ者のみが纏う、
   広範囲殲滅も可能な有人操縦人型兵器である。
    キュベレイの耳を叩く駆動音が治まり、スイートルームを前にして夜空に静止飛行、ホ
   バリングの状態となる。と、胸部装甲の一部が頭部に掛かる様に上がって行き。キュベレ
   イの操縦部、コクピットが露わとなったのだ。



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20 ◆sDUAeVowUo:2016/10/27(木) 17:33:10 ID:14V4fRjs



    コンソールライトが光るコクピットに居たのは、ラウンジで紅茶を飲んでいた二人。ハ
   マーンと準である。
    スイートルーム内に居るサングラスの男が、キュベレイのコクピットに向かい、指先で
   寝室を示す。少女二人の存在を伝えているのだ。
    コクピットでハマーンの側に控えた準が、それを受け、兔か何かの小動物の様な印象を
   受ける跳躍で、キュベレイのコクピットから胸部、胸部から少女達が居る寝室側の肩部へ
   と飛び移ると、勢いを付け、スイートルームの窓ガラスに向けて一切の躊躇無しの飛び蹴
   りを喰らわせた。
    大きな窓のガラスが、激しい抗議の音を立てて割り砕かれると、大変に乱暴な手段でス
   イートルームの寝室と応接間の中間、リビングスペースに侵入した可憐な女学生姿の相似
   体類ポケモンは、急かす様にサングラスの男に問う。
   「塞さんっ、被害者は無事ですか!?」
    塞と呼ばれた男は、白衣のトレーナーの手持ちポケモンであった。準の問いに、少しば
   かり戯けた様に答える。
   「多少殴られちゃいるが、薬を射たれる前。五体満足だよ。まぁ、グロテスクなモンは見
   ちまったが」



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21 ◆sDUAeVowUo:2016/10/27(木) 17:34:26 ID:14V4fRjs



    それを受けて、準は大きく頷くと、少女達の元へと寝室に急ぎ向かう。
   「もう大丈夫! 助けに来たわ!」
    可憐ではあるが、自分達を拐い、薬を射とうとしていた男達より明らかに豪胆でいて強
   さを見せ付けてくれた準の言葉と、自分達へと心を痛めて居る表情に、少女二人は助けが
   来たのだと理解すると、準に縋り付いて泣き始めた。
    その泣き声が合図にでもなったのか、唐突に、血飛沫とガラスの破片で彩られ、散々
   なスイートルームの、ホテルの廊下へと続く重厚な両開きドアが開け放たれる。
    入って来たのは、白いスリーピーススーツのキンブリーに、軍装の新城、白衣のトレー
   ナー。それに白髪初老で、苦り切った顔の紳士が続いた。
   「当ホテルが麻薬売買、乱暴の場に選ばれたとは。痛恨の極みです」
    どうやら初老の紳士は、ホテルの支配人である様で。苦い表情は、室内の有り様に対し
   ても、向けられて嘆いて居るのだろう。
   「これも威力偵察の一環なのでな。そこで腰を抜かしている男共の麻薬カルテルは、今頃
   連盟の号令一下、警察の突貫捜査を受けている。暫くは、こうした連中も大人しくするだ
   ろう……」
    支配人に対して慰めになる様な、ならない様な答えを口にしたのは白衣の人物。



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22 ◆sDUAeVowUo:2016/10/27(木) 17:35:16 ID:14V4fRjs



   そう答えたは良いが、顔で動かしたのは口のみであり、室内の惨状を目の当たりにしても
   全くの無表情。
    反対に動揺が広がったのは、先程まで茫然とするしか能の無かったスイートルームで麻
   薬取引を行っていた、麻薬カルテル構成員と、麻薬売買の顧客である。警察のみならず、
   連盟が動いたと聞いて、自分達をこんな目に遭わせた者達が、警察を通した連盟の委任を
   受けたポケモントレーナーであり、取引に手持ちの一体を潜入させ、襲撃を行ったのだと
   悟り、震えが来たのだ。
    この室内の出来事なぞ、塞と呼ばれたサングラスの男に因って、全てがトレーナーと、
   そのパーティである、他の手持ち達に筒抜けだったのである。
    白衣の人物に麻薬取引の急襲、威力偵察を警察を通して委任した、連盟。それは、この
   人とポケモンとが、あらゆる意味で交ざり合い、分かち難く生きる世界には、人々が営む
   日々を支え、管理、統治する国家が数多く存在する。その国家全てが例外も無く加盟して
   いる国際組織が、世界連盟であり、連盟の言葉が指すものとしては、この組織を言う。
    世界政府では無い為、命令を発する権限は持たないが、要請を行い、全ての国家のポケ
   モンの治療、回復を主とする施設であるポケモンセンターでの、ポケモンの医療費を国家
   の税金を充てる事で、一部無料化する音頭を取った事から、その影響力は計り知れない。



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23 ◆sDUAeVowUo:2016/10/27(木) 17:36:27 ID:14V4fRjs



    麻薬カルテルの作製した薬は、連盟に目を付けられる程に性質が悪かったのか、それと
   も、カルテルが何処ぞの国家利益に反する間抜けを晒したのか、どんな虎の尾を踏んだの
   かは、その辺りは白衣のトレーナーの与り知らぬ所だが、突貫捜査を受けているカルテル
   は壊滅の道を用意され、似た様な悪事に手を染めている連中は、身を潜めるだろう。白衣
   のトレーナーの言う通りに。
    しかし、麻薬カルテルの道行きは決まったが、この場、スイートルーム内での成り行き
   が決していない。構成員、顧客に対する警察の取り調べには、喋る口が多ければ多い程に
   良く、必要なのだ。自死されてもいけない……。
   「全員、警察が来るまで下手を考えるなよ。一人でも余計な事すれば、そこの白いスーツ
   の男が、また爆発を起こす」 
    血塗れの顔の嗤いを深め、無事でいる男達に警告する塞。
   「私としては、爆発させてしまいたいのですが」
    そう言ったキンブリーの顔は、心底からの愉悦の笑顔に歪み、悍ましいとしか言い様が
   無い。この月白色のスーツを着た男が、人体を爆発物に変じる能力を振るい、エントラ
   ンスで両肩に触れた男の右腕を爆発させたのだ。
    キンブリーの両手は、拍手をする寸前で止めた形。その掌の内側から漏れる、特殊技、
   魔術行使に因る光が見える。



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24 ◆sDUAeVowUo:2016/10/27(木) 17:37:23 ID:14V4fRjs



    最早、進退窮まり、戦慄きから諦念へと思考が移行するのが見て取れる男達。片腕をキ
   ンブリーに爆破された男は、痛みと失血のショックで気絶しているが、自分もそうして気
   を失えていたなら、どんなに気が楽であったか。と羨む者すら居る。
    恐怖と言う、巨大な掌に頭から押さえ付けられた状況。
    そんな極限状態に耐えられる者は、そう居るものでは無く。麻薬取引の為に集った男達
   の内には、それに該当する者は存在しなかった。
   「うあ、ああああっ!!」
    恐慌に陥った男の一人が、懐から黒く小型の、シグP224 SASにも似た拳銃を取り出し、
   この場で一番非力と見える白衣のトレーナーへと、照準を合わせようとした。
    人間とポケモンが生きる世界。トレーナーと、その手持ちポケモンと言う関係が存在す
   る世界で、一番の禁忌を犯そうとした。
    ポケモンが慕う、トレーナーの命を害そうとした。
    一閃。
    新城直衛の帯びていた軍刀は、スイートルームに吊られている奢侈なシャンデリアの光
   と血液とで、その刀身を白く紅く煌めかせている。
    宙を舞う拳銃を握る片腕が、血液を撒き散らしながら驕奢なカーペット床に落ちる、そ
   の寸前。新たに利き腕を失った男が、床に崩れ落ちた。



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25 ◆sDUAeVowUo:2016/10/27(木) 17:38:23 ID:14V4fRjs



    新城の左の掌底が、発砲しようとしていた男の水落の下、右脇腹急所、月影に突き入れ
   られていたのだ。相似体類の急襲を受けた男は、全くの人間である様だ。頑健なハーフや、
   ポケモンであれば、まだ膝を突き、酷い痛苦を味わっただけで済んだかも知れない。
    一見して人間と姿形に差異は見られずとも、人間を遥かに上回る速さと膂力を持つ相似
   体類であるポケモンの当て身を受けたのだ。倒れ、口から赤い吐瀉物を零しながら痙攣す
   る様から、内臓破裂の度合と、背骨、脊髄への影響を考えるだに恐ろしい。
    絶え間無く痙攣する男を見下す新城の顔は、激しい怒りが噴き出していた。狂相は、地
   獄の悪鬼が怒り狂うものとなっていて。
    軍刀を握る右手が、トレーナーを害そうとした男を細切れに、滅多打ちにせんと動く。
   が、毛の先程のみ動いて、止まる。
    ならば、あらん限りの罵声をと、口を開けるも、押し止まる。
    開いた口から一つ、息を肺臓へと入れ込むと、踵を巡らせ、刀身を拭い、自身のトレー
   ナーの側へと戻る。
    既に新城の顔は、何事も無かったと言う様に、喪とに戻っていた。
   「余計な手間を掛けさせた。有難う。匙加減も更に勘案しよう」
    何の加減かと言えば、旗下のポケモンが対象に与える恐怖に対してだ。白衣の人物は、
   この場では手持ちの行動を統率する指揮官としての立場で居る。



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26 ◆sDUAeVowUo:2016/10/27(木) 17:39:35 ID:14V4fRjs



   「ご無事で何よりです」
    そう答えた新城が、他の誰より速く対処に動けたのは、トレーナーの護衛を務めていた
   からと言うだけでは無い。彼も指揮官としての目で、状況を把握していた為だ。この場の
   誰よりも。
    麻薬取引に集った男達はと言えば、仲間の一人の片腕爆発から始まる、ここまでの心理的
   衝撃の連続に因って、とうとう抵抗や錯乱の余地無く完膚無きまでに喪心の境地へと追い
   込まれて居る。
    そこに、足音を響かせて警察が踏み込んで来た。幾人かの警官が、部屋の有り様を見て
   顔を強張らせたが、そこは慣れたもの。白衣のトレーナーに非難の目をやる者も居ない。
   こうした事は、生体兵器の面を持つポケモン達と共生する世界では無い事ではないのだ。
   犯罪を取り締まる立場だったなら尚更の事。手際良く、警官達は己の本文に取り掛かる。
   麻薬取引に集った男で無傷な者は連行し、負傷者の応急処置と並行してポケモンセンター
   併設の病院へと救急搬送の手配連絡、寝室では、準に泣き付いて居た少女二人を速やかに
   保護して行った。
    そんな中、恰幅の良い身体を紺色の制服に詰め込んだ印象の中年警官が、白衣のトレー
   ナーへと、進み出る。



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27 ◆sDUAeVowUo:2016/10/27(木) 17:40:29 ID:14V4fRjs



   「いやはや、派手ではありますが、こちらの依頼通り、何とか死人を出さずにして頂けま
   したな。これでしたら、連行された者の取り調べも確度が上がります」
    相手に対し、にこやかに話し掛けるのは、こうした警察組織の中でも職務質問や聴取が
   上手い者であると言う。白衣のトレーナーに、依頼遂行内容を聞き、捜査内容と照らし合
   わせる為に、ホテルの別室にでも同行させたいのだ。
   「依頼の達成を確認して頂けたのなら、私は次の仕事に取り掛かりたいのですが」
    はたと、白衣のトレーナーの答えを受けた中年警官の表情が、虚を衝かれたものに変わ
   る。
   「この白衣の通り、私は医者でもあります。応急処置に加わりますので」
   「あ、ちょっと!」
    自分の手持ちに負傷させた、麻薬取引に関わる男達の元へと歩もうとした白衣の人物を
   慌てて中年警官は呼び止めるも、相手は駆け付けたホテルの医務室に詰めていた同業者と
   共に忙しく手を動かし始めた。と、同時に。
   「依頼に関しての聴取は、明日に。私は病室に向かいますので朝にでも、この街のポケモ
   ンセンターで、新城恵(けい)の名前で呼び出して下さい」
    それも仕方無しか、と、中年警官は肩をすくめた。



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28 ◆sDUAeVowUo:2016/10/27(木) 17:41:25 ID:14V4fRjs



   「では、明朝に病院へお迎えに上がりますよ。新城さん」
   「えぇ。では、明朝に」
    そう白衣のトレーナー、新城恵が返事をした時に、応急処置は終わった。救急車のサ
   イレンの音が、スイートルームに居る者の耳に遠く聞こえる。
    そんな中、白衣のトレーナーがすっくと立ち。自身の手持ちポケモン達に視線をやり。
   「作戦終了。各自解散」
    トレーナーの一言を受けたポケモン達は、思い思いに行動を始める。窓の外のキュベレ
   イは上空へと飛び去り、キンブリーは言葉の後に直ぐ様、スイートルームから姿を消して
   いた。血と肉片を被ったままの塞の元へは、準が血塗れのスーツに付着した肉片におっか
   なびっくりながらも、濡らした自身のハンカチを手渡している。
   「ここのバスルームで、洗い落とさせて貰いなさい。支配人には、許可を取った」
    白衣の新城が、塞と準に声を掛ける。バスルームの利用を指示しながらも、トレーナー
   の足は、夜風が激しく吹き込むガラスの蹴り破られた窓へと向かっている。
   「無事で、安心しました」
    僅かに、沈痛な低い声。躊躇いが多く含まれた、呼び止めの声だった。
    その声に振り返ったトレーナーの目には、心痛も露わな顔の準と、血が拭われ、サング
   ラスの下に表情が見えない塞が映る。



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29 ◆sDUAeVowUo:2016/10/27(木) 17:42:24 ID:14V4fRjs



   「何、君達が気に病む様な事は一つとして無い。銃を向けさせてしまった、私の采配、甘
   さが招いた事。余計な危惧をさせてしまったな」
    悠然とした、しかし口許のみの笑みと共に、自らの手持ちに返した言葉は、指揮官とし
   ての領分に配慮はさせられぬと含められていた。トレーナーの視線の先に居る二人は、二
   の句を継げずに居る。いや、一人は継げる気も無かったのだが。
    その視線が、黒いものに遮られた。軍装の新城が、先程の中年警官との会話もそこそこ
   に、自身のトレーナーの前に進み出たのだった。
   「案の定、ホテル周辺の道路が混乱している為、救急車の到着が少しばかり遅れると聞い
   た。予定通り、僕が君を病院まで連れて行こう」
   「はい、予定通りに。お願いします」
    医師でもある白衣のトレーナーは、先行して病院へと赴き、準備を行う事も予定してい
   た様だ。トレーナーを連れて行くと言った新城は無惨な窓に着くと、内側にではあるが、
   更に窓ガラスを砕き広げ始める。
   「君達も、後はホテルのバーに行くなり、この街のセーフハウスに戻るなりすると良い」
    未だに自身を見詰めるままの二人に、今夜の選択肢を提示してやるトレーナー。
   「はい……」



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30 ◆sDUAeVowUo:2016/10/27(木) 17:43:59 ID:14V4fRjs



    納得し切らぬ様な顔で、渋々とそれを受け入れた準は、それならば、と。
   「手術、頑張って下さい!」
    せめてもの気持ちが溢れた激励をトレーナーに掛けるのだった。
    ふ、と口許に薄く笑みを浮かべ、それに応えた白衣のトレーナーは、ガラスの隔てが取
   り払われた、夜空が両腕を広げる窓際へと向かう。
    迎えたのは、無言のままに待って居た、夜空に黒の軍装が溶けた新城。その詰襟、首に
   白衣の片腕が巻かれる。すると、慣れた所作でトレーナーは横抱きにされた。
    そして、トレーナーを抱えた新城は、ホテル最上階、スイートルームの窓から身を躍らせる。
    地上の喧騒と、眩い灯火を足下に、都会の建造物を足掛かりとしてポケモンセンター併
   設の病院まで駆け跳んで行くのだ。飛鳥の様に。
    吹き込んで来る夜風を全身に浴び、藤色の髪を揺らしながら夜に紛れたトレーナーと新
   城を見送った準が、スイートルーム室内を振り返ると、そこには所属するパーティの者は
   誰も居なかった。
    ふう、と一息吐き、トレーナーの言った通りに準は、この街に在るセーフハウスに帰る
   事にする。
    今夜の様な荒事から、束の間ではあるが解放されるパーティの者達を自身の料理で温か
   く迎える為にであった……。

       了



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31 ◆sDUAeVowUo:2016/10/27(木) 17:45:18 ID:14V4fRjs
不備も有りましたが、今回の投下は以上です。
有難うございました。

32小さな名無しさん@この板は300レスまで:2016/10/27(木) 19:18:27 ID:4ldtM0qg

ポケモンSSなんて珍しいと思ったらアメリカの特殊部隊ドラマみたいな話で戸惑ったよw
面白いけど読みづらいかな?スマホからだどスペースがあきすぎだから少し整えて欲しいかも

33小さな名無しさん@この板は300レスまで:2016/10/27(木) 21:39:34 ID:4ldtM0qg
乙でした
新城さんが強い、てか出てくるキャラがポケモンらしくない、怖いキャラ満載すぎる!
ポケモンじゃないとして読むと面白かったです

34小さな名無しさん@この板は300レスまで:2016/10/27(木) 21:40:15 ID:4ldtM0qg
あと何回読み返してもやはり読み辛いです

35小さな名無しさん@この板は300レスまで:2016/10/27(木) 21:56:54 ID:Wk4oOhOI
前もSSスレあったけど同じ作者?

36 ◆sDUAeVowUo:2016/10/27(木) 22:12:52 ID:2WzYyWvk
>>34
乙有難うございます。
今回の投下はPCか専ブラで閲覧した場合に
ズレが無く文章が揃って見える様にしてあります。
スマホでの閲覧に関しても、今後考慮して行きます。

>>35
その方とは無関係です。

37小さな名無しさん@この板は300レスまで:2016/10/27(木) 23:47:17 ID:4ldtM0qg
>>35
違うと思う
話が空中分解してないし


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