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一時投下・修正用スレッド

1 1/ ◆CFbjQX2oDg :2010/12/13(月) 20:23:45 ID:5FqpaYJs
このスレッドは、一時投下、又は作品の修正案の投下用スレッドです。

予約した作品内容に自信が無かったりした場合は一度こちらに投下して他の方に意見をお願いしたりしてみてください。

あと、本スレが規制中で書き込めない方もこちらのスレを投下用にご利用ください。

109 未知との遭遇  ◆1yqnHVqBO6 :2011/02/12(土) 20:44:06 ID:6LOMGELs

「あのぅ、この扉はどやって開けたらよいのでしょう?」

「昔の日本にその手の物はなかったんだったか。見てな」

そう言うとカントリーマンは朧の前でドアノブを回し、ドアを引くという一連の動作を見せた。
彼女はそれに礼を言った後、改めておっかなびっくりドアノブに指を伸ばすが

「あ、あれ?」

目の前で開け方を教えられてもやはり文化の違いというものは如何ともしがたいのか、
朧は慣れぬ手つきでドアを開けようと奮闘する。
回しながら引くんだぞと教えると、カントリーマンは先程まで診断していたベッドに横たわる城戸真司という男に目を向けた。

彼がこの二人に会ったのは爆発音が聞こえた場所に身を潜めながら向かった時である。
懸命に負傷し気を失った男性を運ぼうとする少女を見つけ、声をかけようかどうか迷ったが
二人の前に結局は姿を見せることにした。
やけに前時代的な服装をした少女は現れた老人に対して警戒心を見せることもなく助けを求めた。
曰く、自分を守るためにこの男は戦い傷ついたから助けたいと。

その訴えを得られる情報と戦力目当てに承諾したカントリーマンは
朧という着物を纏った少女から男を受け取ると担いだまま来た道を戻り民家へ入った。
傷を調べたところ腹部に軽い火傷と打撲を負っていたが命に別状はなく戦闘するにも異常はないだろう。

断定はさすがにできないがこの男と手を組むだけで
チャン右頭に対抗出来る戦力を手に入れられると考えるのは無謀というよりただの馬鹿だが
いないよりはマシである。
カントリーマンの所有戦力とハッキリ言えるのは
自身と近くの地中に潜ませている元精力家のジジイゾンビのみだ。
これであの化物を超える化物に挑むのは阿呆どころか白痴者の謗りをうけるだろう。

それに朧から話を聞いたところによると彼女たちを襲った者もかなりの実力者であったらしい。
50を越える数がこの会場にいる以上、戦力の確保は急務だ。
それにどうしても気になることが一つある。

「なあ、朧とやら。聞きたいことがあるんだが」

「なんでしょう?」

ようやく開けることに成功したドアを押したり引いたりしながら
しげしげと見つめていた朧は振り返る。

「お前さんは何者だ?」

110 未知との遭遇  ◆1yqnHVqBO6 :2011/02/12(土) 20:46:42 ID:6LOMGELs

未だ目を覚まさない男の脈拍を測りながらカントリーマンはそう問いかける。
違和感を抱いたのは男の怪我の処置が終わり、
念のためと朧の服を脱がせどこかに異常がないか診察した際のことだ。
口に出さないようではあるがどうやらよほど白人である彼の容貌が珍しいのだろう。
診察を受けている間、朧はじっと彼を凝視していた。
身をおかす病から奇異の目で見られることに慣れるとまではいかないが
仕方ないことだと受け入れてはいたので
見つめられることに対して不快感を抱くことはなかった。
だがカントリーマンが妙に思ったのは診察をしていた彼自身の体調である。
妙に体が気怠いのだ。最初は気のせいだと思ったがもはや体の不調はその範囲を越えている。
そう、まるで旅人の戦力を左右する想波そのものを封じられているような感触を受けるのである。
そもそも朧に城戸真司の怪我の理由を尋ねた際も魔人のような少年に襲われて負傷したと言っていたが
彼女に詳しく聞こうとすると口を濁らせたのだ。
隠し事をしていることを強く咎める気はない。
彼も最終的には手を差し伸べた者達を殺すつもりでいることを隠しているのだからお互い様だ。
だが朧の能力が予想通りのものだとしたのなら
対チャン右頭において欠かせない戦力になる可能性が高い。

「答えるわけにはいけねえってことかい?」

「わたしは……忍者です」

「OH……NINJAか。こんな所で目にするたあ思わなんだ」

なるほどNINJAならばしょうがないとカントリーマンは思った。
日本で古来より活躍してきた闇に生きる者達。
アメリカでポピュラーな忍者といえば偉大なネズミであるスプリンター老師や
日本の戦国時代に活躍したとされる忍者マスターキリギ等がいるが
目の前の少女も彼等と同類ということなのだろう。
チャンのような根っからの戦闘のプロに接触ができたのは彼にとって何よりの朗報と言えた。

「それで、何ができるんだ?」

「破幻の瞳という瞳術を。あらゆる忍法を打ち消す生得の術でございます」

朧の返答を聞き、試しに旅人としての能力を発動しようとしたが上手くはいかない。
ならば彼女のいう破幻の瞳はNINPOUどころか旅人の力すら封じるのだろう。
いや、それとも旅人とはNINJAとしての力を得ることができるものなのか。
そんなことはどうでもいいがやはり朧は打倒チャンにおける超有力な駒、
それどころかこの戦いを根底から覆すジョーカーと見て良い。
彼女が言っていた他の仲間も同じような能力を持っているのなら
少しでもまだ見ぬ彼等の情報を得るべきだとカントリーマンは判断した。

111 未知との遭遇  ◆1yqnHVqBO6 :2011/02/12(土) 20:48:38 ID:6LOMGELs

「他のNINJAはどんなことができるんだ?」

「もうしわけございませぬ。さすがにみなを教えるというわけには……」

「ああ、秘伝というヤツか。
 そりゃ仕方ねえが……みんなお前さんみたいな能力の持ち主なのかい?」

「いえ。お婆さまが言うにはわたしの瞳は特殊だそうで」

「なら他はまあ、何だ。普通の能力ってことか?」

「甲賀忍のことは存じあげませぬが恐らくは……
 ええっと、か、かんとりぃまん殿はお医者様なのですよね?」

「呼びやすいように呼んでかまわんぜ。そのとおり医者だがどうかしたのかい?」

「ならばか……か……かとり殿。
 隠しておきながら図々しい願いであることは百も承知なのですが
 薬師寺天膳という者に会うことができたら
 例えその者が殺められていたとしても見捨てず看病するようお願いできませぬか?」

朧の言葉にはさすがのカントリーマンも怪訝な表情を隠しきれない。

「すまん。言っている意味がよくわからんのだが」

「薬師寺天膳という男は不死の妙術を持つ男なのです」

カントリーマン、絶句。
正にそうとしか表現しようのない顔になったカントリーマン年齢二十代。

「ま、待て待て。それはあれか。何かの比喩か?」

「いえ、言葉のとおりです。天膳は決して死なぬ体を持っております。
 お婆様が言うには百年以上は生きているそうで」
 
朧が告げる薬師寺天膳という男の存在。
それはカントリーマンを苦悩に追い込む。
不死。それは彼が追い求めていた物であり、医学が目指す到達点である。
ウェルナー症候群という奇病を持ち、
自分や同じ病に苦しむ人々を救うために旅人となり医学の壁を壊そうと
奮闘してきた彼にとって当然のように不死を体質として持つ男の存在は衝撃的に過ぎた。

今はまだ予断を許さないが、もしも薬師寺天膳という
男の体をサンプルとして入手することができれば医学の壁を
自らの力だけで壊すことができるのかもしれないとカントリーマンは考える。
それが本当だとすれば彼は…………

微かな呻き声がカントリーマンの隣りから聞こえてくる。
城戸真司が目覚めるのはもうすぐだろう。
あのまま放っておいたら恐らく自分と同じように
爆発音を聞いてやってきた参加者に殺されていた。
自分が助け、治療をした命。
医者としてソレを嫌いになれるはずがない。憎むことができるはずがない。
殺さないですむのなら、命を足蹴にせずにすむのならと思わないでもない。

112 未知との遭遇  ◆1yqnHVqBO6 :2011/02/12(土) 20:49:29 ID:6LOMGELs

だが殺さなくてはならない。
今この瞬間を生きる一人、ないしは数十名の命のためではなく
未来に生きる大勢の命を救うために殺さなくてはならない。
人の身でできることには限りがある。
そもそも薬師寺天膳は過去に生きる者とは言え不死の存在。
そしてウェルナー症候群を発症する者が最も多い日本に生きる人間。
そんな存在がいる国でも治療法を確立するには至らないのだ。

例えカントリーマンが薬師寺天膳を説得するか檻にでも入れるかしても
治療法を見つけることが絶対にできるとは言えない。
そもそも持ち帰ったところで自分に残された研究に費やす時間自体が多くない。
ウェルナー症候群の症状として代表的なものが両側性白内障である。
本来は老化に伴い発症、進行する目の病ではあるが
遺伝性早老症によりその進行は絶望的なほどに速まる。
いくら良いサンプルを見つけたところでマイナーに過ぎない病例。
研究を継ぐ者すらどれほどいるかもわからないのだ。
彼が欲しいのは絶対の確信が持てる物。
たった一つの光明に惑わされるわけにはいかないのだ。

「どうかなさいましたか。かとり殿?」

「なんでもないさ。天膳……だったか。 
 いいぜ。そいつにもしもの事があったら面倒みてやる。
 それより寝坊助さんがようやく目を覚ますみたいだぜ。
 ねぎらいの言葉でもかけてやんな」

113 未知との遭遇  ◆1yqnHVqBO6 :2011/02/12(土) 20:50:01 ID:6LOMGELs

【C-4・民家/1日目/黎明】

【カントリーマン@ブレイブ・ストーリー〜新説〜】
[状態]:健康
[装備]:奇跡の執刀(ハイブリッド・メス)@ブレイブ・ストーリー〜新説〜
[道具]:基本支給品、不明支給品×1、首輪(是方昭吾)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝する。
1:城戸真司、朧を利用する。
2:チャンに勝ち得る方策を模索する。
3:薬師寺天膳の体に強い興味。
[備考]
※是方昭吾の死体をアンデッドとして従えました。
※陽炎、相馬光子の武器を毒と判断しました。

【奇跡の執刀(ハイブリッド・メス)@ブレイブ・ストーリー〜新説〜】
カントリーマンの専用武器。非常に鋭利な刃物。
凄まじい速さの外科手術を可能とする。


【城戸真司@仮面ライダー龍騎】
[状態]:全身打撲(処置済み)、軽度の火傷(処置済み)、気絶
[装備]:カードデッキ(龍騎)
[道具]:基本支給品一式、桜田ジュンの裁縫道具セット@ローゼンメイデン
[思考・状況]
基本行動方針:戦いを止める 
1:???
2:朧と共に動く
3:神崎は焦ってる…?

[備考]
バジリスク勢は六名全員が味方だと認識しています

※参戦時期は後の書き手の方にお任せします

【朧@バジリスク〜甲賀忍法帖〜】
[状態]:良好
[装備]:鉈@バトルロワイアル
[道具]:基本支給品一式、、BIM(クラッカー型)×6@BTOOOM!
[思考・状況]
基本行動方針:弦之介達と合流する(その後のことはまだ考えていない) 
1:真司、カントリーマンと行動を共にする
2:弦之介様に会いたい……

[備考]
破幻の瞳の効果について:防人や仮面ライダーが技を発動時には技を消失させ、しばらく見つめることで変身も解除される。
旅人の場合はしばらく見つめていることで戦力の低下と魔法の使用が不可となる。
他の世界の参加者についてどのように作用するかは不明 朧は制限を正確には認識できていません。

※参戦時期:漫画版1巻、不戦の条約が解かれたことを知る前から参戦

114 未知との遭遇  ◆1yqnHVqBO6 :2011/02/12(土) 20:50:56 ID:6LOMGELs
以上、投下終了です

115 ◆VD1a3KzNnI :2011/02/14(月) 23:51:56 ID:9IzGllac
規制されてるのでこちらで投下します。

116 ◆VD1a3KzNnI :2011/02/14(月) 23:54:12 ID:9IzGllac
薔薇乙女が長女、第一ドール水銀燈が知る名はこの殺し合いの場において五つあった。

第二ドール、金糸雀。
第三ドール、翠星石。
第四ドール、蒼星石。
第五ドール、真紅。
第六ドール、雛苺。

水銀燈の妹たち。彼女らもまたこの場に招かれ、同じ満月の光を浴びている。
この戦いはアリスゲームではない。水銀燈自身、この戦いにそこまで積極的に関わろうとは思っていない。
だが、姉妹たちはどうだろうか。

金糸雀、雛苺はまあ警戒する必要はないだろう。
力はそれなりに強くとも、この二人は他の姉妹に比べると戦意が旺盛というタイプではない。
あえて言うなら金糸雀はやる気だけはあるものの空回りする悪癖を持っているし、雛苺の意識は末の妹だけあって姉妹でも随一に幼い。
どんな出会い方をしようが、水銀燈の方から手を出さず対話を求めればまあ応じてくるだろうという確信はある。

問題は残る三人。
翠星石、蒼星石の双子は双子だけあってその結び付きは強く、片方の行動にもう片方が引きずられることは往々にして有り得る。
つまり片方と敵対してしまえば自動的に片割れも敵となるのだが、問題は両方ともが水銀燈と良好な関係ではないということだ。
特に翠星石がまずい。水銀燈が『アリスゲームは一時休戦して手を組みましょう』などと言ったところで、あの天邪鬼は絶対に信用などしないだろう。
むしろ裏があるのかと疑ってかかり、状況によってはそのまま敵対・あるいは戦闘に突入することは想像に難くない。
蒼星石にしても、水銀燈を警戒こそすれ易々と気を許すことはないと思っていい。

そして真紅。
水銀燈と真紅は自他ともに認める犬猿の仲。
通常なら真紅と手を組むことなど到底認められることではない。そんなことをするくらいならまだ金糸雀と組む方がマシだとすら思える。
しかし、真紅は姉妹の中では一番理知的と言えるパーソナリティの持ち主でもある。
この状況で薔薇乙女同士が戦うことの無益さを、水銀燈以上に深く理解していることだろう。
ならばこそ、水銀燈が協力を申し出たとしても無碍に切って捨てることはないはず。最悪でも、いきなり敵対するということは考えにくい。
水銀燈と最も険悪な関係である真紅が、皮肉なことに最も与しやすく頼りになりそうだというこの状況。

「笑っちゃうわねぇ……」

独り言を聞き咎め、何がだ、と聞いてくるしもべ――桐山和雄に、何でもないと言葉を返す。
そう、笑えるといえばこの人間もそうだ。
出会ったとたんに自分から隷属を申し出てきた人間。水銀燈の長い生の中でもトップクラスのイレギュラー。
この数時間話した限りでは、裏がなさそうだということは何となくわかった。
柿崎めぐのように生きる気力を無くしたのか、と最初は思ったが、話していくうちにそうでないことはすぐ理解した。
桐山和雄にはこれといって明確な指針、生きる目的というものは無い。
生きているのなら、ただ生きるのみ。そこには希望も絶望もなく、人を人たらしめる想いや感情、そういったものも希薄である。
ある意味ではドール以上に無機質で、熱の感じられない人形のような人間。
彼が本物のドールである水銀燈と出会い隷属を誓ったのは、気まぐれな神な悪戯のように思える。

117 ◆VD1a3KzNnI :2011/02/14(月) 23:55:24 ID:9IzGllac
閑話休題。
とにもかくにも、彼の知り合いは四人いるとのこと。
七原秋也、三村信史、杉村弘樹、相馬光子。
この内、七原なる少年以外すべてを桐山が殺害したということを聞いた時は心底驚いたものだ。
死んだ人間が生き返る(これは桐山自身もそうであるらしいのだが)こともだが、それを大したことではないように語る桐山の表情は平静そのもの。
彼の弁を信じるなら『自らを殺した』人物である七原秋也に対しても、恨み辛み一つぶつける素振りを見せないでいる。

「七原は信用してもいい。杉村もだ。俺の姿を見れば動揺はするだろうが、少なくとも一方的に敵対されるということはないはずだ」

自分や他人の生き死にをまるで他人事のように語る桐山は、人外の存在である水銀燈にすら理解しかねるものだった。
が、その氷のような精神はこの状況では有用なものではある。
動揺せず、必要以上に自己主張することもなく、ただ水銀燈の意志のままに動く桐山は駒としては文句のつけどころがない。

「他の二人は駄目だな。三村は俺を許さないだろうし、相馬はそもそも手を組むに値する女ではない」
「まあ、自分を殺したやつを許せるかって言ったらねぇ」
「俺は七原を恨んではいないが」
「それはあなたがおかしいのよぉ……」

当面の目標として、協力者の確保が第一だろう。
戦える者、参加者を縛る首輪を外せそうな者、そしてあの影のような人物を知る者。
戦力、技術、そして情報。この三つを揃えることが現況を打破する唯一の道。

戦力面においては水銀燈とてそこらの人間などに後れを取る気はしないが、万が一ということもある。自分が矢面に立つことはできる限り避けたい。
そのためしもべである桐山にそこを期待したいところだが、桐山自身は特にさしたる能力を持たないただの中学生である。
桐山の身体能力や機転は単なる中学生の域を軽く凌駕しているのであるが、桐山は自身を過大評価してはいない。
よって自己申告は多分に控えめなものになり、強力な武器でもない限り当面はさして役に立てないということだった。

「そして、nのフィールドへの出入りも制限されている……」

そう呟く水銀燈は水面に立っている。
翼をはためかせているわけではなく、両の足でしっかりと。
水面には揺らぎ一つなく、まるで鏡のように満月を映し出している。
桐山が試しに自分も水に足を踏み入れると、鏡は瞬間に崩れ波紋が広がっていった。

「あなた、鏡を持ってないかしら?」
「手鏡でいいのならある」

桐山に手渡された小さな手鏡を受取り、水銀燈は指先を鏡面に押し当てる。
すると、本来であれば鏡面に留まり指紋を残すはずの指先は、先ほど水面がそうあるべきだったように鏡の中へと沈みこんでいく。
淡く発光する鏡をじっと眺め、水銀燈はおもむろに指先を抜く。

「……駄目ね。一時的に侵入することはできてもすぐに弾かれる。無理に押し入ろうとすれば身体がバラバラになってしまいそうだわ」

118 ◆VD1a3KzNnI :2011/02/14(月) 23:56:18 ID:9IzGllac
集中すれば片手くらいは突っ込めそうだが、指を突き入れただけでも身体がどっと疲労を訴えてくる。
指先でさえこうなのだから、全身を侵入させようとすればその瞬間に砕け散ってしまってもおかしくはない。

「緊急避難としてnのフィールドに逃げ込むことはできないと考えた方がよさそうね」
「鏡や水のあるところに自由に出入りできるのならば、逃亡や暗殺を防ぐことはおよそ不可能だ。当然の処置だろう」
「まあそれもそうね。どうやって干渉しているのか、って点は気になるけれど……」

それを言うならローゼンメイデン全員をこの殺し合いに放り込んだことからして異常なのだが。
あの影のような人物の途方もない力について、やはり情報は必要となる。

「まあ、今考えても仕方ないことね。それよりあなたの持ち物を……」
「水銀燈」

手慰みに鏡に指先を出し入れさせながら支給された道具を確認しようとしたとき、静かながらも僅かに硬い声が水銀燈を遮る。
桐山は音もなく立ち上がり、水銀燈の背後を見て――睨んでいた。
夜の暗闇に溶け込むように一人の男が立っている。
黒いロングコートから伸びてきた手には、四角い箱らしきものが握られていた。
気を抜いていたつもりはないが、やはり桐山の存在に少なからず安堵している自分がいたのだろうか?
男の接近に気付けなかった自分を内心で叱咤し、水銀燈は慌てて桐山の背後に回る。
現状では自分より劣る桐山を盾にするのも情けない話だが、剣呑な雰囲気を漂わせる他者を前にすれば多少の恥など何ほどのことでもない。

「今、鏡から呼び出したな。それがおまえの契約したモンスターか」
「……?」

水銀燈を一瞥し、すぐに桐山に視線を戻した男がそう吐き捨てる。
しかし、『それ』が何を意味するかを当の二人は理解できはしない。
何も言うつもりがないらしい桐山――水銀燈に従うのだから、対応は任せるということだろう――の背中から水銀燈は慎重に男に話しかけた。

「何を言ってるのかよくわからないのだけど。私たちに何か御用なのかしら」
「……ミラーモンスターが喋る? 新種だというのか……?」
「だから、モンスターって一体何の話なのよ」

水銀燈が喋ったことに驚愕したらしい男は、左手に握った箱を水面へと突き出す。
男は一度俯く。次に顔を上げた時には、鋭い眼差しが戦意を湛えて水銀燈を貫いた。

「ライダーが相手ならちょうどいい。何より……おまえのモンスターは、気に障る。嫌なものを思い出す」
「水銀燈、下がれ!」

張り詰めた男の声に反応し、桐山が水銀燈を突き飛ばす。
直後、空いた空間を瞬時に何かが走り抜ける――それは異形の蝙蝠だった。
力強く構えられる男の右腕。

119 ◆VD1a3KzNnI :2011/02/14(月) 23:57:33 ID:9IzGllac

「変身」

見れば、いつの間にか男の腰に金属の環――ベルトが出現している。
男はそのベルトの中心、空いたバックルの部分に手にしていた箱を叩き込んだ。
閃光が闇を払い、水銀燈は思わず手を翳し目を保護する。
光が収まったとき、男は消えて代わりに西洋の甲冑を纏った騎士の影が佇んでいた。

「な……」
「はぁっ!」

騎士は柄頭に装飾の施された細剣を手の中で一回転させると、瞬く間に水銀燈たちの眼前へと踏み込んできた。
人間の脚力では望み得ない速度。事情は分からないが状況はわかった。
つまり今この瞬間、水銀燈と桐山和雄は『敵に襲われている』ということが。
一も二もなく水銀燈は翼を打って上空へと逃れる。

(しまった……!)

だが、安全を確保した喜びよりも先に、桐山の安否が思考の大半を奪う。
自分が離脱することしか考えられず、貴重なしもべのことまで頭が回っていなかった。
が、責められることでもない。アリスゲームという戦いの中にあって、このような敵と遭遇したことはさすがに初めてである。
些か以上に動揺している自分を自覚し、水銀燈は眼下へと目を凝らす。
が、心配は杞憂に終わった。
水銀燈が背後から安全地へと脱出したのを確認した桐山は、即座に自分のバッグから硬貨の入った袋を取り出していた。
容量限度いっぱいまで硬貨が詰められた袋は鈍器としてもそれなりに使えるだろうが、あくまでそれは尋常な人間相手のことだ。
見るからに堅そうな鎧を纏う男に対して有効打は望めないだろう。
それを瞬時に判断した桐山は、袋で殴るのではなく袋を放り投げる。騎士の仮面のすぐ前に。
細剣が一閃し、袋が切り裂かれる。途端、風船が割れたかのように放逐される硬貨の群れ。
騎士の踏み込みによって舞い上がった水飛沫が硬貨に付着し、月光を乱反射させる。
視界を埋め尽くす光に幻惑され騎士は立ち尽くす。
その隙を逃さず桐山は後退。その機転と度胸に水銀燈は密かに舌を巻いた。

「……ただの人間って、嘘っぱちじゃない」

淡々と状況に対処した桐山の横顔は鉄仮面のように動き一つない。
次々に落下していくコインを一枚掴み、騎士は何故か憤った声を吐き出した。

「……金を粗末に扱うな」
「斬ったのはおまえだ」
「チィッ……!」

しかし桐山に即座に反論され、騎士は苛立たしげに舌打ちした。
兜の奥で逡巡する瞳が桐山を捉える。

「どうした、なぜ変身しない!」
「変身……?」
「おまえもライダーだろう! ライダーならば俺と戦え!」

120 ◆VD1a3KzNnI :2011/02/14(月) 23:58:06 ID:9IzGllac
よくよく考えれば先の攻撃は桐山ではなく自分を狙った一撃だった、と水銀燈は頭上から二人を眺める。
騎士は桐山を前にしているものの、意識の大半は水銀燈へ向けている。
迂闊な動きをすればすぐにでもあの細剣が飛んできそうに思える。

「おまえは何か誤解をしているようだ。そもそも俺たちは殺し合いをする気はない」
「そっちになくても……!」

言い含めるような桐山の言葉にさらに激昂したか、男は剣を持たない手で桐山へと殴りかかっていく。
やはり人間の運動速度を遥かに超越したその拳は、当たれば桐山の頭蓋など木端に砕けそうなほどの迫力を有していたが、

「……? さっきより遅い……」

俯瞰していた水銀燈から見れば、先ほどの剣戟にあった殺気が今回の拳には見られなかった。
その感覚を裏付けるように桐山は左右に身体を振って易々と回避する。
小細工も何もない、純粋に人間の成し得るレベルでの動きを持ってして、騎士の攻撃は次々と避けられていく。
騎士の連撃を竜巻とすれば、桐山は風に舞い踊る木の葉か。
桐山は瞬きの間にするっと騎士の懐へと潜り込み、ぽん、と騎士の胸に右の掌を置いた。
直後、桐山の足下が破裂する。水面が爆発し、上空にいる水銀燈にまで飛沫が届く。
翼が濡れるのを嫌った水銀燈が滑空しながら地面へと降りていくと、示し合わせたように桐山が後退してきて水銀燈を受け止めた。

「ちょっとあなた、今何をしたのよ。あいつを倒したの?」
「大したことじゃない。効いてもいない」

やはり平然とそう答える桐山に反駁する間もなく、水柱の中から騎士が歩み出てきた。
拳を解いて胸に手を当てているが、それは痛みや傷を気にしている風ではなく、純粋に何をされたか理解できない戸惑いのようなものが感じられた。

「ライダーではない生身の攻撃で、ライダーに衝撃を通すか。おまえ、只者ではないな」

桐山の一撃は、本人の言葉通り痛撃にはならず。どうやら騎士を本気にさせただけに終わったようだ。
俄かに緊張感を増した騎士の声にただならぬものを感じたのは水銀燈だけではなかったようで、

「水銀燈、俺が残って時間を稼ぐ。おまえは逃げろ」

桐山は盛大に水を蹴って騎士の視界を塞ぎ、水銀燈を抱えて後方へと疾走する。
その一方で小声で切り出された言葉に、ローゼンメイデンの矜持は大いに刺激された。

「逃げるって……この私に尻尾を巻いて逃げ出せと言うの?」
「奴の狙いはおまえだ。適当に相手をしたらおれも逃げる」
「そうじゃないわ! あなた、誰に向かって!」
「今までのやつは力の半分も出していない。本気で来られたら、二人とも殺されるだけだ」

相変わらず焦った感じはしないものの、桐山は状況を甚だ不利だと見ているのは水銀燈にも伝わってきた。
未だ水銀燈自身は騎士と手を合わせてはいないものの、姉妹の誰とも違う力を見せる敵を相手に勝てると言い切れはしないのが実情だ。
しかし強力な力を行使するとはいえ、たかが人間相手に遁走するというのはそれだけでローゼンメイデンの誇りに泥を浴びせる行為でもある。
殺し合いに加担する気が薄いとはいえ、襲われて無抵抗を貫けるはずもない。
身にかかる火の粉は振り払わねばならない。相手の生死はそれこそ成り行き次第だ。

121 ◆VD1a3KzNnI :2011/02/15(火) 00:00:37 ID:oBpMSnEo
誇りが逃走を許さないのならば、戦って勝てばいい。
しかし勝つためには純然たる力が足りない。
ならば――どうすればいいか?

決まっている。
現状で勝てないのならば、新たなカードをヒットするだけだ。

「――あなた、私に従うのよねぇ?」
「そう言った。だから逃げろと言っている」
「それは私を死なせないため?」
「そうだ。おまえが死を望むなら別だが」
「お断りよ、そんなの。いい? 私のしもべになりたいというのなら」

水銀燈が自らのバッグから取り出したものを見て、桐山は目を細める。掌に収まるサイズの四角い箱。
先ほどまでは無用の長物と落胆していたが、本当の使い方は相対している敵が教えてくれた。
箱の表面には黒く染め上げられた竜を象ったしるし。
騎士の男が持っていたものと細部が異なる、しかし秘める力はほぼ同一の。
解放の時を待っている――力。

「私を害そうとする者がいるのなら、誰が相手だろうとそいつを倒して私を護って見せなさい。それがただ一つ、私があなたに望むこと」

水銀燈の手にある箱を、桐山はじっと見つめる。
これは言葉以上のもの。隷属の証を意味する、契約の儀式。
その手を取るかどうか――桐山和雄は、一瞬たりとも迷いはしなかった。

「いいだろう。敵を倒せ――それが二つ目の命令だな」
「ええ……認めましょう、桐山和雄。あなたは今この時を以て、この私、ローゼンメイデン第一ドール水銀燈の、唯一無二の『剣』となる――」

運命を変える切り札――箱、カードデッキを、桐山は掴み取った。
振り向く。水銀燈が桐山の腕を離れ、自らの翼で優雅に飛翔する。
視線の先、そこには敵がいる。
水銀燈が倒せと指し示した、桐山和雄の敵が。

「ようやく、その気になったか」

答える騎士の声には、ようやくという感慨。生身の中学生を甚振るのは本意ではなかったというような。
閃いた思考を切って捨て、桐山は男がそうやって見せたように箱を水面に――腰を締め付けるベルトの感覚。

戦う力は手に入れた。
戦う理由は水銀燈が指し示してくれる。
そして、戦って勝利すべき敵は目の前にいる。

122 ◆VD1a3KzNnI :2011/02/15(火) 00:02:46 ID:oBpMSnEo
何も、迷うことは、ない。
桐山和雄はただそうあるべきであり、そう生きるのみ。
息を強く、強く吸い――止める。


「変身」


鍵となる言葉が虚空に解けて、契約は履行された。
全身を覆う、力強き脈動を感じる。
見開いた瞳に移る新たな世界。
騎士が瞠目する――城戸のデッキか、という呟き。
漆黒の天使を主と掲げ、黒き龍の戦士が戦場へと降り立った。




【G-2/水辺/一日目・深夜】

【秋山蓮@仮面ライダー龍騎】
[状態]:健康、仮面ライダーナイトに変身中
[装備]:カードデッキ(ナイト)
[道具]:基本支給品、不明支給品×1
[思考・状況]
基本行動方針:戦いに乗るかどうか決めかねている 
1:俺は、どうしたらいい……
2:ライダーが相手なら、戦える
3:水銀燈が気に入らない
[備考]
・参戦時期:少なくとも恵理が目覚めるより前、手塚との出会い以降からの参戦
・水銀燈を新種のミラーモンスターだと認識しています。
[共通備考]
F-2の墓場には、参加者の元いた世界の脱落者、関係者の墓が多数存在。(※死者に限る)


【水銀燈@ローゼンメイデン】
[状態]:健康
[装備]:桐山和雄(隷属させている)
[道具]:基本支給品、不明支給品1
[思考・状況]
基本行動方針:アリスゲームを元の世界で続けるために主催に反逆する。
1:騎士(秋山蓮)に対処する
2:桐山和雄以外の参加者との接触。とりあえず姉妹たちを優先してみる(真紅を優先)
【備考】
※参戦時期はローゼンメイデン4巻終了時です。

【桐山和雄@バトル・ロワイアル】
[状態]:健康、仮面ライダーリュウガに変身中
[装備]:カードデッキ(リュウガ)
[道具]:基本支給品、たくさん百円硬貨が入った袋(破れて中身が散乱している)、手鏡
[思考・状況]
基本行動方針:水銀燈の仰せのままに。
1:水銀燈に付き従う。
【備考】
※参戦時期は死亡後です。

123 ◆VD1a3KzNnI :2011/02/15(火) 00:04:18 ID:oBpMSnEo
以上です。題は「CONTRACT」で
どなたかよろしければ代理投下をお願いします。

124 ◆CFbjQX2oDg :2011/03/26(土) 17:38:47 ID:yVQh0FKo
昨夜に投下とか言ったのに遅れて申し訳ありません
寄生虫のためこちらに投下します

125 ◆CFbjQX2oDg :2011/03/26(土) 17:42:20 ID:yVQh0FKo


“あの”ガッシュが殺し合いに乗った。



オレとガッシュは魔界の王様を決める戦いで戦ってきた敵同士だ。
ガッシュと初めて出会ったのは遊園地だ。
弱そうな外見と裏腹に中々強いやつだった。
でも、オレとゾロボンのコンビに手も足も出なかったぜ。

…………ティオが助けにきてそのときは負けちまったけどな。

次にあいつに会ったのは東南アジアでオレがレインってやつを勧誘しようとしていたときだ。
オレの名前を間違えるし、関係無いといったのに邪魔してくるし、オレの最強呪文をあっさりと打ち破るし。
ロデュウ様が助けに来てくれなかったら危うく魔界に送還されるところだったぜ。

ガッシュはいつだって『ともだち』のために自分を犠牲に出来るやつだと思っていた。
だから、あいつにはオレにもいない『ともだち』を持っているんだ。
あまり認めたくないけどな。

ガッシュとティオの二人を見たとき、本当は羨ましかったんだろうな。
ゾロボンとはコンビを組んだけど、あいつは全然しゃべらない。
あいつのパートナーは意地悪だしで楽しくは無く、ゾロボンたちが攻撃を受けそうなときに助けるどころか互いに盾にしあった。
オレのは自分が王様になるために、魔物の子の闘いを勝ち抜くというためだけのコンビだった。

リオウの命令でロデュウ様ともコンビを組んだけど、ロデュウ様は怒ると怖いし子分だったし。
やっぱりガッシュたちとは違った。

ティオがいて、レインがいて、きっとオレの知らない魔物の子の『ともだち』が大勢いて
みんなで楽しく遊んだりしていたんだろうな。
そんな楽しそうな世界にオレは憧れていた。

ガッシュが人を殺したのを目撃した時に、オレの憧れていた、オレが心の奥底で求めていた『世界』は崩れ去った。

突然放り込まれたこのバトルロワイアルという場は、あの『ガッシュ』ですら殺すことを躊躇わない場だ。
何十発も電撃を放つなど、明確な殺意がないと出来ない。
信じられないがガッシュが人を殺したのは事実だ。
オレはこの事実をティオに、『以前のガッシュの友達』に知らせなければならない。
震える体に鞭を打ってでもやらなければならない使命感に襲われた。

ガッシュには気づかれていない。怖いからこのまま隠れていればいい。
頭の中でそういう声も聞こえる。
何でだろうな。自分でも不思議だけど、『ともだち』というものを汚して欲しくないのかもしれない。
とにかくオレはタワーを降りて走り出した。

126 ◆CFbjQX2oDg :2011/03/26(土) 17:43:09 ID:yVQh0FKo
数十分か、それとも数十秒か
しばらく走ると前方に人間の男と、その頭に乗る赤い服を着た金髪ツインテールの少女が見えた。
初めて見るけどあいつも魔物の子だな。
ガッシュのことを伝えようとして、脳裏にガッシュが人を殺す映像が蘇る。
さらに、こっちはパートナー不在。
魔界にいたときみたいに何故だか呪文は使えるみたいだけど、ルーパーに唱えてもらうよりもなんだか弱い。
万一あの魔物が殺し合いに乗っていたら唯でさえ攻撃呪文が少ないオレがパートナー無しで勝てるわけが無い。

殺されてしまう。

とりあえず見知らぬ魔物からは逃げよう。ティオに伝えてからにしよう。
気の小さいパピプリオが見知らぬ相手から逃げを選択したのは当然のことだった。
そして術を発動する。この術ならあいつらは“かゆみ”で隙だらけになるはずだ。

煙を浴びたツインテールの魔物は地面を転がっている。
これで逃げられる。あいつは術を使えない。そう思っていた。

パァッン!

人間の方から大きな音がした。
右腕から火を噴出すような熱を感じた。
転げた拍子に砂が口の中に入る。
けれど、その不快感以上の何かを右腕から感じる。
蹲って熱さを主張する自分の右腕を見ると右腕が文字通り無くなっていた。
確認すると麻痺していた痛みが我先にと襲い掛かってくる。

魔界の王を決める戦いでは人間のパートナーは本を読むことに徹していた。
一部のパートナーは積極的に戦いに参加しているが、パピプリオが知る限りではそうだった。
だからこそ、魔物の子の方を無力化できれば逃げられると思ってしまった。
人間の方にもう少しだけ注意を払っていれば、こうはならなかったのかもしれない。
だが、現実にはパピプリオの右腕はショットガンをくらい、喪失した。

(あいつらに殺されてしまう!)
必死の脳内に浮かんだのは、銃声によって停止状態にあったままの逃げろという信号だ。

そこから先はよく覚えていない。無我夢中で走り回った。
何回も転んだり、ふら付いたりもしたけれど、立ち止まったらあの二人が、ガッシュが襲いに来る気がして止まれなかった。

もう限界、そう思ったときに空から黒い翼の持ち主が飛来する。

「……ロデ、ュウ…様? ティオに、伝え、ないと…。ガ、ガッシュが人を殺した……」

そこでパピプリオは意識を失った。




◇ ◆ ◇

127 ◆CFbjQX2oDg :2011/03/26(土) 17:46:11 ID:yVQh0FKo
時は少し遡る


参加者以外の生物の存在が確認できないこの会場の大空を自由に飛びまわるものがいる。

あれは何だ?

鳥だ!

飛行機だ!

いや、白髪鬼だ!!


清明院大学から飛び続けること約2時間
彼は誰も見付けることができないままD-5市街地にたどり着いてしまった。

シルバーバトルでは死の苦しみを味わうために、町内でも数少ない自分の認めたご隠居こと宇谷九一郎との戦い、そして死んだ。
自分の想像以上の苦痛を味わい、自分の本懐である死があのようなものとは。
あれをもう一度達成したところで、自分の生は満足しない。
どのような因果か二度も殺し合いに参加できるのだ。
前回の余興でやった志多梅子にやった怯える弱者の恐怖を煽るのでなく、怯える弱者の恐怖の源を排除してみよう。
そう意気込んで出発したのに誰にも出会うことはできなかった。

市街地なら他の参加者がいるだろう、もしかしたらどこかの民家で就寝しているのかもしれない。
どこかの民家に押し入ってみるか? 考えを巡らせていると町外れから煙が昇る。
誰かがいることは間違いない。すぐさま煙の方角へと飛翔する。

煙に到達するよりも早く、彼の目的を果たせそうなことに気づく。
煙の方から走ってくる少年の姿が見えた。
しかも少年はふら付きながら、自分の走ってきた道に血の道標を残している。
間違いない。少年は助けるべき弱者だ。

少年の前に降り立つと少年の怪我は自分が思っていた以上に酷い。
右腕が無くなり、傷口がグチャグチャに潰れている。
意識があるのが不思議なくらいだ。

「……ロデ、ュウ…様? ティオに、伝え、ないと…。ガ、ガッシュが人を殺した……」

誰かと勘違いしているのだろうか。ロデュウという名に心当たりは無い。
だがティオとガッシュの二人の名は名簿にも記載されていた。

おそらくこの少年はガッシュが人を殺す現場に居合わせ、口封じのために襲われた。
そして煙幕弾か何かで命からがら逃げ出したということだな。

まだ息はあるようなので病院まで運んでみるか。
あいにくこのような大怪我を治療できる術は持ち合わせていないが、この場にいるよりはマシだろう。
死の直前の苦しみというのは存外気分が悪いものだ。
この少年には出来るなら早くその苦しみから解放してあげたい。

少年を抱きかかえて、病院のあるD-3エリアまで急いで向かうことにした。

128 ◆CFbjQX2oDg :2011/03/26(土) 17:47:47 ID:yVQh0FKo
【D-5/市街地/1日目・黎明】

【津幡共仁@銀齢の果て】
[状態]:健康
[装備]:クシャスラ@waqwaq、コルト・シングル・アクション・アーミー(6/6)@現実
[道具]:基本支給品、簡易工具セット
[思考・状況]
基本行動方針:英雄として行動する
1:少年(パピプリオ)を病院まで連れて行き、出来るだけの治療をする。
2:万一の場合はティオという名の参加者に少年の最後を伝える。
3:ガッシュという名のものを危険視

[備考]
※香川教授のミラーワールド研究レポートは研究室にそのまま放置されています
※工具は現地調達品です


【レオパルドン・パピプリオ@金色のガッシュ!!】
[状態]:右腕喪失、恐慌状態 、気絶
[装備]:魔本@金色のガッシュ!!
[道具]:基本支給品一式、不明支給品1〜2
[思考・状況]
基本行動方針:死にたくない、ルーパーの所に帰りたい
1:……(気絶中)
2:ティオを探してガッシュのことを伝える。あと守ってもらいたい

[備考]
※19巻、レインと戦った直後から参加。

129 ◆CFbjQX2oDg :2011/03/26(土) 17:49:29 ID:yVQh0FKo
以上で投下を終了します。

誤字脱字、おかしな点、その他ご不明なところがございましたら指摘してください
よろしければどなたか代理投下をお願いします

タイトルは『歪む世界!? 空から飛来する黒い影!』 でお願いします

130 ◆W91cP0oKww :2011/04/26(火) 00:21:12 ID:UENBF.fw
さるったんでこちらに。投下終了です。
タイトルは「絆を結び/憎しみを放つ」です。

131 ◆1yqnHVqBO6 :2011/05/08(日) 21:25:30 ID:ecnvM1lo
投下します

132 対主催  ◆1yqnHVqBO6 :2011/05/08(日) 21:26:59 ID:ecnvM1lo


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「俺は絶対に死ねない。
一つでも命を奪ったら、お前はもう後戻りできなくなる」

「………………俺はそれを望んでいる」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「変身しろ」

そう七原秋也と真紅の前で言い放つ青年は秋山蓮。

七原達は秋山の言葉に困惑する。

先程の少年を探しながらなにか役に立つものを
調達しようと思ったがどこの家にも碌なものがおかれていない。
電器店すら見つけることはできず。

少し遠くなってしまうが大学で機材を調達することを
視野に入れ始めた二人は秋山に出会った。

「ヘン……シン? なんのことだかわからないなあ。
 妙な勘違いしてんじゃないか?」

おどけたように言いながらも
七原はいつでも戦闘へ移れるように、足を少しだけ開く。

「とぼけるな。お前の頭に座っている
 ソレは間違いなくミラーモンスターだ。
 ……ミラーモンスターのはずだ」

言葉の端に噛み締めるような
苦悩を感じさせながら秋山は言う。

「なら変身しろ。俺と戦え。俺と殺し合え!
 お前にも願いがあるのだろう!!」

それは激高か。それは懇願か。

どちらにせよ七原は首を振り。
その動きに追従し頭の上でゆっさゆっさと揺られながら
真紅は憤慨する。

「失礼ね。私はモンスターじゃないわ」

「それに俺達は戦う気なんてないぜ」

キッパリと告げる二人を見て
秋山は唇を強く強く噛みしめる。

「なら。こうなってもそう言い続けることができるか」

133 対主催  ◆1yqnHVqBO6 :2011/05/08(日) 21:29:28 ID:ecnvM1lo

秋山はデッキを掲げる。
腰にベルトが浮き出るかのように現れる。

「変身!」

そして秋山は鋼の鎧を纏う”騎士”へと変わる。

「おおっ、ファンタジーだよ真紅。
 アレ何だか知ってる?」

「シュウヤ。私をファンタジーなら
 何でも知っているみたいに言わないでちょうだい」

頭から降りた真紅と軽口をたたきあう七原を見て
秋山はさらに苛立ちを強くする。

「これでもまだ変身する気がないというのなら。
 斬る!」

秋山が地面を蹴ることで道が抉れる。
十分にあった距離を消されたのは七原秋也。

超常のスピードに七原は反応できない。

秋山は剣をもって一刀の煌きにより首を獲ろうとする。

それを防ぐのは舞うバラの花弁の奔流。
吹き飛ばされた秋山は空中で身を捻り着地する。
そこを追撃するのは七原秋也の銃撃。

その狙いは正確無比。
その胆力はまさに豪傑。

仮面ライダーの力を目の当たりにしても
七原秋也の心は恐怖を乗り越え。武器を離さない。

体勢を崩していたところへ空気を貫く弾丸が襲う。
着弾点は足。散弾特有の複数箇所同時攻撃が秋山の足を払い転倒させる。

「サンキュー真紅!」

「気を抜かないでシュウヤ。
 彼の意志はまだ折れていないわ」

無様と称することができる形で尻餅をついていた
秋山はすぐに立ち上がる。

「何故だ……どうして追い打ちをかけない。
 お前は仮面ライダーだろう?
 “願い”のためなら殺しを躊躇う理由なんてないはずだ!」

秋山の叫びに七原は応える。

「俺は。
 誰かを生きかえらせるためだろうと何のためだろうと。
 殺し合いをする気はないよ」

七原の言葉に秋山は剣を構える。

134 対主催  ◆1yqnHVqBO6 :2011/05/08(日) 21:31:04 ID:ecnvM1lo


「お前は大切なモノを奪われたことがないのか?」

「あるさ」

「あるわね」

七原の肯定に真紅も続く。

「どうしようもない現実を変えたいとは思わないのか?」

「思うよ」

「思うわね」

肯定はまた。

「秋也といったか。
 ならお前も……そうなはずだ。
 人を殺してでも願いを叶えるしか未来はないはずだ。
 そんな奴らが集まっているこの“闘い”で」

秋山は腰を落とし再度の攻撃を繰りだす構えを取る。

「“闘い”を否定するお前たちは間違っている!」

その言葉と共に秋山の懐が光り輝く。

「あれはローザミスティカ?!」

その光を見て真紅は知る。
目の前の男が何をしたのかを。
姉妹の一人が既に脱落したことを。

ローザミスティカの輝きが速さを押し上げる。
輝きが剣を振るう腕へ新たな神経束のように行き渡る。

黒き翼の天使の魂が“騎士”を強くする。

踏み込みは音速。

七原の本能が。
殺し合いを生き延びてきた経験が。
本能に警鐘を鳴らし、剣が体を両断する寸前に大きく後退させるに至る。

そして七原は撃つ。
先の子供を撃ったような理想に敗北した形ではなく。
七原の。七原と真紅の理想を貫くために撃つ。

だが今の秋山には体のどこを狙おうとも効くことはない。
強化された仮面ライダーに人の兵器は敵わない。

不利を感じ取った真紅は花びら一つ一つに
全力で秋山へと放つ。
だがそれを秋山のマントが変化した蝙蝠の超音波が
全てを防ぐとまではいかなくとも軌道を逸らす。

135 対主催  ◆1yqnHVqBO6 :2011/05/08(日) 21:32:30 ID:ecnvM1lo

秋山が秋也を切り裂こうと剣を振り下ろす。

だが七原はわかっていた。
秋山の動きに迷いがあることを。

例え音にまで昇華された攻撃であろうと。
迷いのある攻撃を予測するのは
数年間血尿を流すほど拳法に打ち込んだ秋也には容易い。
手に持つ銃を大剣に持ちかえて斬撃を受け止める。

秋山と対峙しているのが桐山だったなら
斬撃を見切った上で一撃与えることができただろう。

秋山と対峙しているのが杉村だったなら
斬撃を見切った上で相手を打倒することさえできただろう。

だが七原にはこれが限界。
相手の迷いという思いをこめた一撃を受け止めるだけ。

ともすれば受け止めた腕が砕けるだろうと思われた
一撃の威力は予想以上に弱い。

七原は慣れぬ大剣をもって、
元天才エース兼ショートの再来と言わんばかりに
秋山を横薙ぎに斬りかかる。

だが秋山は仮面ライダーナイト。
“騎士”に剣で張り合うには分が悪すぎる。
たとえ七原の得物が相手の力を奪い、蓄える魔界の剣であってもだ。

秋山は大剣が来るのを構わずに剣先を地面へ向ける。
そして限界まで大剣を引きつけると、
上体を大きく逸らし柄頭を渾身の力で
大剣の先へ打ち当てることにより秋也の手から武器を弾き飛ばす。

予想外の秋山の行動に秋也は目を見開く。
だがさらなる驚愕が待っていることを
腹にめり込む秋山の足が教える。

秋也は大きく蹴り飛ばされ数メートル転がる。

「シュウヤ!」

真紅がローザミスティカにより強化された
ダークウィングを退け。
七原へと走る。

「さあ、これで生身では殺されるとわかっただろう。
さあ、変身しろ。俺と戦え。
アレはミラーモンスターだろう。
お前は仮面ライダーだろう!」

秋山の前に真紅が立ちふさがる。

「だ……めだ真紅。逃げろ」

腹部を襲う地獄の苦しみに耐えながら、秋也は真紅に言う。

136 対主催  ◆1yqnHVqBO6 :2011/05/08(日) 21:33:58 ID:ecnvM1lo

「馬鹿ね」

真紅は少しだけ秋也に眼をむけて、
口元にほんの少しの笑みを形作る。

「私達は仲間でしょう?」

真紅と秋也を秋山は困惑したように見つめる。

「何故だ? お前は何だ?
ミラーモンスターだろう!?
化物だろう!?
なのに……どうしてそんな眼をする!
 お前までそんな眼をする!!」

事実からは必死に目をそむけ。秋山は叫ぶ。

「貴方が何を勘違いしているのかわからないけれども」

「お前が何を勘違いしているのか知らないけどさ」

真紅と七原は誇りをこめて言う。

「私は誇り高きローゼンメイデンの第5ドール。
 そして幸せな……ここにはいないマスターのお人形」

「コイツは俺の大切な友達なんだ。
 辛くて心が折れそうだったとき。支えてくれたすごく良い友達なんだ」

二人は続ける。

「だから私はモンスターなんかじゃないわ」

「だからコイツは化物なんかじゃない」

二人の言葉は。秋山蓮へと届いた。
届いて。そして掻き乱した。

仮面ライダーナイトを包む光が捩れる。
散乱する。濁りきったものへと変わる。
ダークウィングが苦鳴の声をあげる。
仮面ライダーナイトが頭に手をやり苦しみで体を折り曲げる。

ダメージから立ち直った七原が真紅のそばに立つ。

「ローザミスティカが彼を蝕み、苛んでいるのだわ」

真紅が悲しそうに呟く。

「あの輝きは……この地獄の底からでも執念深く相手を苦しめようとする
 性根の悪さが滲みでているようなローザミスティカは。あの子の…………」

真紅は目を閉じ。
宿敵とも言えた姉妹との思い出に心を馳せる。
だがそれも少しの間だけ。

137 対主催  ◆1yqnHVqBO6 :2011/05/08(日) 21:34:52 ID:ecnvM1lo

「どうするのシュウヤ? 
 今なら簡単に逃げられると思うけれども。
 いえ……逃げるべきかもしれないわね。今すぐに」

提案にも似た真紅の言葉に秋也はニカリと笑う。

「よくわからないけどさ。
 ローザミスティカって大切なモノなんだろ?
 じゃあ、取り返してやらないとさ」

真紅は秋也を見上げる。
秋也は笑みを絶やさず言う。

「もっと頼れよ。抱え込むなよ。
 せっかく友達になれたってのにそれじゃあ寂しすぎるぜ?」

真紅の表情はほんの少しだけ震えていて。
友の言葉が真紅の魂――ローザミスティカ――を
より美しく咲き誇らせる。

「貴方は……馬鹿ね。それに生意気だわ」

七原はその言葉に笑いながらも肩を竦め。
苦しむ秋山へ対峙する。

「お前が言うとおり。
 この殺し合いはみんなが必要としているものかもしれない。
 けれど。それでもいいんだ。
 俺は言い続ける。貫き続ける。
 世界中のみんながそれを肯定したとしても。
 殺し合いなんて間違っているって」


七原秋也は宣言する。


「人も世界も変える。
 俺は。俺達は。
 “革命家” なんだからさ」

138 対主催  ◆1yqnHVqBO6 :2011/05/08(日) 21:35:45 ID:ecnvM1lo


【E-4/市街地/一日目・早朝】

【七原秋也@バトルロワイアル】
[状態]:強い決意 、腹部に中ダメージ(ヴァルセーレの剣が吸い取った力で僅かに回復)
[装備]:レミントンM870(8/8) 、レミントンM870(8/8)、ヴァルセーレの剣@金色のガッシュ、信史のピアス@バトルロワイアル
[道具]:基本支給品、レミントンM870の弾(22発)
[思考・状況]
基本行動方針:真紅と共にプログラムの打倒
1:秋山からローザミスティカを奪う
2:脱出の為の情報収集、工具等の道具集め。 大学に向かうことも視野に入れる。
3:次にあの子に会ったら……
4:仲間を頼る。そして一緒に強くなる。
※本編終了後から参戦。

【真紅@ローゼンメイデン】
[状態]:健康。左足からアンモニア臭。 疲労(中)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ホーリエ、ハリセン@現実
[思考・状況]
基本行動方針:七原秋也と行動をともにし、脱出する 。
1:秋山から水銀燈のローザミスティカを奪う
2:秋也が苦しい時は側にいる。

【秋山蓮@仮面ライダー龍騎】
[状態]:健康、ダメージ(小)、疲労(中)、ローザミスティカにより強化、暴走
[装備]:カードデッキ(ナイト) 、ローザミスティカ(水銀燈)(暴走中)
[道具]:基本支給品、不明支給品×1、
[思考・状況]
基本行動方針:?????? 
1:俺は。俺は! 俺はっ!!

[備考]
参戦時期:少なくとも恵理が目覚めるより前、手塚との出会い以降からの参戦
水銀燈を新種のミラーモンスターだと認識?
アリスゲーム等の正規の形でローザミスティカを手に入れたわけではないので
ローザミスティカは所有者に力を与えますが同時に心身を蝕みます。
同意のもとで手に入れたらどうなるかは後続の書き手にお任せします。
あと人工精霊も。
[共通備考]
F-2の墓場には、参加者の元いた世界の脱落者、関係者の墓が多数存在。(※死者に限る)

139 ◆1yqnHVqBO6 :2011/05/08(日) 21:37:56 ID:ecnvM1lo
以上で投下終了です
どなたか代理投下をお願いします。

(注)
七原の支給品は
レミントンM870×2、レミントンM870の弾(30発)
の三つです
一つダブっているのは仕様のようです

140 ◆1yqnHVqBO6 :2011/05/14(土) 23:22:39 ID:GqJVl/Tc
投下します

141 ◆1yqnHVqBO6 :2011/05/14(土) 23:26:30 ID:GqJVl/Tc

躱す。躱す。

坂本は必死にボルキャンサーの攻撃を避ける。
無様であろうとも坂本には確信があった。

逃げ続けることで理解したものがあった。
この蟹の化物は生き物と言うよりは
何らかのプログラムに基づき行動している
ゲームの敵モンスターに近いのだということを。

ならば坂本にとっては相性の良い化物と言える。

ゲーマーが強敵に勝つのに必要なのは繰り返し。
そしてそこから導き出す攻撃への対処法を
脳ではなく条件反射のレベルで体に叩き込むこと。
それに成功したら凄腕ゲーマーの反射速度は対プラウザ限定で光速をも上回る。

だから躱す。躱す。

そして必死に相手の攻撃パターンを
坂本の脳内でチャートとして組み立てていく。

「よし。
 来い。来い。来いよ化物! 
 俺はこう見えて蟹好みの味だぜ!?」

言葉が通じるかは不明。
だがボルキャンサーの狙いを
向こうで気絶している少女から離すため。
坂本は挑発をする。

そしてついにボルキャンサーの行動パターンを掴み、
それに対する行動プランを構築した。

重要なのは一発で状況を覆せる一手。

蟹の化物をゲームのモンスターと仮定すると
体力を無為に削るのは愚策。
ここまで複雑で高度なAIを持つモンスターならば
体力の消費により行動パターンを大きく変えることはザラだからだ。

1、ボルキャンサーが一直線に突っこんでくる。
2、鋏を坂本の首に突き刺そうとする。
3、距離をとって坂本の出方をうかがう。

その全てを1フレーム単位の精密さで坂本は避ける。

「攻略するぜ。蟹野郎」

つたう汗はそのまま。
拭うのはクリア後のリザルト画面を見てからでいい。

難易度は最高。
設定は当然ノーコンティニュー。
坂本は己のフィールドを構築したことへの快感に
口をわずかに笑みへと歪める。

142 ◆1yqnHVqBO6 :2011/05/14(土) 23:29:27 ID:GqJVl/Tc

――攻略開始――

坂本はボルキャンサーから目を離さず、大きく後ろへ下がる。
蟹の速度は横歩きではないのにとてつもなく速い。
蟹の突進を横転することでかわした坂本は欄干を背に立ち上がる。

蟹の次の攻撃はもはや決まっている。
坂本の行動が蟹の攻撃を決めている。
蟹は欄干を背に立つ坂本へ鋏を持って突き刺さんとする。
それを首の皮をかすらせながらも辛うじて避けた坂本は蟹の背後へ回りこむ。

そして倒れている少女。蒼星石へと走る。
蒼星石との距離は坂本の身体能力と照らし合わせると遠すぎる。
まず蟹に追いつかれ、背後から鋏で貫かれGAME OVERを迎えるのがオチだろう。

だがそれは坂本が何も手を打っていないのならばの話。

蟹の足元を二つのBIMのカウントが小鳥のような小さな声で囀る。

「蟹は川に帰れ!」

爆発が橋を揺らす。
二つのBIMの威力で蟹が橋の上から川へと飛ばし、落とす。

川への落下は計画通り。

少女。
抱え上げてようやく彼女が
人形だと知った女性との交流経験が皆無な坂本は
桜見タワーへ向かおうと走りだす。

――だが待って欲しい。

――何かおかしな音が聴こえないか?

坂本は水を弾く音に走ろうとした足を止めてしまう。
そして、音の元を確かめようと川に眼を向ける。

唖然とした。呆然とした。
言葉を失った。

それはありえない光景だった。
明らかにおかしいモノだった。

音はもはや小型船が駆動音に匹敵するまでになっている。

船。
いや、それは船ではない。
それは蟹であった。
バタフライで華麗にスウィミングする蟹の姿であった。

それは蟹というにはあまりにも優雅すぎた。
美しく、猛々しく、重く、そしてありえなさすぎた。
だがその様はやはり蟹そのものだった。

143 ◆1yqnHVqBO6 :2011/05/14(土) 23:30:51 ID:GqJVl/Tc

「蟹がバタフライだとぉ!?」

驚愕からようやく立ちなおった
坂本は少しでも遠くへ逃げようと足を動かす。

だが遅すぎる。
泳ぐ蟹にはそのタイムロスは永遠に等しい。
追いつかれる。
絶望と敗北感が坂本の心を潰そうとする。

「こっちに来るんだ!」

坂本の逃げる先に男、ブックが立っていた。

「ここは僕に任せて先に行くんだ」

ブックの両手にはいつの間に拾っていたのか
蒼星石の大鋏と帽子がある。
ならば、どう考えても先程の闘いを見ていたはず。
不審に思った坂本だが今は疑う意味が無い。

ブックも敵ならば蒼星石を抱えている坂本が生き延びる道は皆無。
つまり、敵だろうと味方だろうと坂本はブックを信じるしかない。

「信じるぞ! 絶対に死ぬな!!」

ブックから蒼星石の鋏と帽子を受け取った坂本は桜見タワーへと走る。

144 ◆1yqnHVqBO6 :2011/05/14(土) 23:31:27 ID:GqJVl/Tc

……………………………………………………………………………………………。


ボルキャンサーがブックの仲間になった!

【D-2/一日目/早朝】

【ブック@ブレイブ・ストーリー〜新説〜】
[状態]:ダメージ小 、心の力消費小、
[装備]:契約の玉@ブレスト、ジュリー(銀嶺)@ブレスト 、 双眼鏡@現実、
    ボルキャンサー(フルボッコ)@(仮面ライダー龍騎)
[道具]:基本支給品、青酸カリ@バトルロワイアル、魔本(ティオ)@金色のガッシュ!!、
[思考・状況]
基本行動方針:
1:さて、ティオちゃんのところへ行こう。
2:ティオに狂戦士の術をかけて、人間を殺す。
3:ガッシュ達魔物の子に興味
4:ボルキャンサーは鉄砲玉として利用したい。

[備考]
※参戦時期はワタル戦前のどこか、ミツルやワタルを知っているかについては後の書き手にお任せします。
※魔物の子の王を決める戦いの概略のみ知りました。
※魔本を読めることを知りました。
※ブックが力づくでボルキャンサーを従えたのか
契約の玉を使って契約したのかは
  後続にお任せします。

[共通備考]
シザースのデッキは破壊されました。
ボルキャンサーが解放されました。

145 ◆1yqnHVqBO6 :2011/05/14(土) 23:34:32 ID:GqJVl/Tc


……………………………………………………………………………………………。

「宇谷さん!」

声のした方へ振り返ると蒼星石を抱えた坂本が駆け寄ってくる。

「おお、無事だったか」

坂本と蒼星石を見て九一郎は顔を綻ばせる。

「その子は大丈夫ですか?」

坂本が九一郎に背負われているティオに目をやり。
尋ねる。

「どうじゃろうなあ。蒼星石がどうにかするとは言ってはいたが」

九一郎が首だけを動かしてティオの方を見る。
そしてそのまま固まる。

「九一郎さん?」

坂本は突然動きを止めた九一郎を見て何かあったかと声をかける。

そう。何かが起きた。
九一郎の首が文字通り”真後ろ”へ向いている。

坂本の顔が再び驚愕で歪む。
九一郎の首には年端もいかないであろう少女の指がかかっている。

首を締められ。折られ。曲がっている。

少しの間を置いてから。
命を無くした九一郎は膝をつき。倒れる。


「男」

ティオはすでに気絶から目を醒ましていた。
そしてとっくに九一郎の背から降りている。
九一郎の死体には眼もくれていない。

そして次の狙いがそこにいると言わんばかりの眼で
坂本を見つめている。

「男」

その眼は狂っている。
その顔は狂っている。
その指は狂っている。

まだティオが完全に壊れていないのは偶然か。
それとも何かがティオの心の防波堤となっているのか。

146 ◆1yqnHVqBO6 :2011/05/14(土) 23:38:42 ID:GqJVl/Tc

「男」

壊れてはいなくとも殺意が無いわけではなく。
坂本へとゆっくりと歩を進める。

坂本は先ほどとは違う意味での非現実的な光景に
またも呆然として、唖然とする。

「男」

何だコレは。
何なんだ目の前の少女は。

「やっぱり、男は殺さなきゃ」

笑みを浮かべてティオは歩く。

「ガッシュの代わりに。王さまとして。ね?」

ただの子供にしか見えない少女が
あんな簡単に人の首を曲げ折ることができるのか。
人を殺した後で笑うことができるものなのか。

ネットでよく見るロリコンはこんな生き物に欲情しているのか。
ありえない。ありえない。
この少女を見てもなおロリコンを名乗るには睾丸がいくつあっても足りない。

坂本はただ生存本能に突き動かされるようにして
ポシェットからBIMをとりだす。
残る全てのBIMをとりだす。

投擲。
そして爆発。
だが結果を坂本が確かめることはできない。

坂本は逃げた。
九一郎を殺した化物に背を向けてみっともなく逃げたのだ。

蒼星石を見捨てていなかったのがせめてもの救いか。
いや、坂本はただ惰性として抱えていただけだろう。

坂本は走る。走る。

そして時間はただ過ぎる。
ニートに相応しいだろうと嘲笑うかのようにただ、ただ、無為に過ぎる。

放送と最狂の男の殺気が坂本の心を襲う時はすぐそこまで来ている。


【宇谷九一郎@銀齢の果て 死亡確認】
【残り 42名】

147 ◆1yqnHVqBO6 :2011/05/14(土) 23:40:06 ID:GqJVl/Tc

【E-2/一日目/早朝】

【ティオ@金色のガッシュ!!】
[状態]:不明
[装備]:
[道具]:基本支給品、ヨキの弓矢(9/10)@waqwaq
[思考・状況]
基本行動方針:???
1:???

【坂本竜太@BTOOOM!】
[状態]:後頭部に痛み、現実感の喪失? 圧倒的恐怖
[装備]:BIM(タイマー式)@BTOOOM!(0/8)、デリンジャー(2/2)@現実、レーダー@BTOOOM!
[道具]:基本支給品、予備弾薬12発、
[思考・状況]
基本行動方針:バトルロワイアルからの脱出
1:桜美タワーに行く ?
2:平さんに癒されたい

[参戦時期]ヒミコの名前を認識する前から参戦。
 ヒミコと合流しているかどうかは後の書き手にお任せします

【蒼星石@ローゼンメイデン】
[状態]:疲労(中)、気絶
[装備]:庭師の鋏@ローゼンメイデン 、神業級の職人の本@ローゼンメイデン、
     葬いのボサ・ノバ@銀齢の果て
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:元の世界に戻る。
1:……(気絶中)
2:少女(ティオ)の夢の世界に入りたい
3:九一郎と行動を共にする。
3:ドールズと合流する。
4:雛苺を警戒。
5:水銀燈にローゼミスティカを返すよう言われたら……?

[備考]
※参戦時期は原作4巻終了時
※雛苺が雪華綺晶である可能性を考えています
※シルバー・バトルの概略のみ知りました
※雪華綺晶のコスチューム@ローゼンメイデンと柱時計@ローゼンメイデンは
 水上コロシアムにおいてきました。
※水上コロシアムの凡その構造は把握しました。

148 ◆1yqnHVqBO6 :2011/05/14(土) 23:42:29 ID:GqJVl/Tc
以上で投下終了です

色々と危険玉を投げてる気もするので
指摘があったらお願いします

タイトルは

『ニートの異常な恐怖〜また俺は如何にして働きたくねえと思うようになったか〜』

です

149 ◆1yqnHVqBO6 :2011/05/14(土) 23:55:19 ID:GqJVl/Tc
ああ、あと申し訳ありません
規制中ですので
大丈夫なようでしたらどなたか代理投下お願いします

150 ◆W91cP0oKww :2011/06/04(土) 01:28:55 ID:P/n.kLHM
【B-4/1日目/午前】

【カントリーマン@ブレイブ・ストーリー〜新説〜】
[状態]:全身ダメージ(大)、龍騎に変身中
[装備]:奇跡の執刀(ハイブリッド・メス)@ブレイブ・ストーリー〜新説〜 、カードデッキ(龍騎)
[道具]:基本支給品×2、不明支給品×2、首輪(是方昭吾) 、首輪(相馬光子)、
桜田ジュンの裁縫道具セット@ローゼンメイデン
[思考・状況]
基本行動方針:生きる。
1:チャンを殺す。
2:城戸が伝えてくれた「生きろ!!」という言葉を忘れない。
3:薬師寺天膳の体に強い興味。
[備考]
※是方昭吾、相馬光子の死体をアンデッドとして従えました。
※陽炎、相馬光子の武器を毒と判断しました。

【朧@バジリスク〜甲賀忍法帖〜】
[状態]:気絶
[装備]:
[道具]:
[思考・状況]
基本行動方針:??? 
1:???

【ゼオン・ベル@金色のガッシュ!!】
[状態]:腹部ダメージ(極大)、全身ダメージ(大)、心の力消費(大)
[装備]:魔本@金色のガッシュ!!、ゼオンのマント@金色のガッシュ!!
[道具]:基本支給品×2、不明支給品×2〜4(ゼオン、三村(武器ではない))
[思考・状況]
基本行動方針:何としてもガッシュを生きかえらせる。
1:チャンを殺す。
2:陽炎やカントリーマン達と手を組む(裏切る行為を見せたら容赦はしない)

[備考]
※自身にかけられた制限をほぼ完璧に把握しました。
※魔界に帰った後からの参加。

【ミツル@ブレイブ・ストーリー〜新説〜】
[状態]:健康
[装備]:ミツルの杖@ブレイブ・ストーリー〜新説〜
[道具]:基本支給品、不明支給品×1、BIM(爆縮型)@BTOOOM (7/8)
[思考・状況]
基本行動方針:妹を生き返らせる。手段は選ばない
1:チャンが弱っている今だからこそ……戦う。
2:チャン以外の旅人と同盟を結ぶ(カントリーマンとも?)。猿谷とは?
3:このモヤモヤする気持ちは……。
[備考]
参戦時期:ゾフィが虚になった後。
魔法を使うと体力消耗。

151 ◆W91cP0oKww :2011/06/04(土) 01:29:25 ID:P/n.kLHM
【猿谷甚一@銀齢の果て】
[状態]:健康
[装備]:ニューナンブM60(3/5)@現実、ウォフ・マナフ@Wāqwāq
[道具]:基本支給品×2、不明支給品×0〜1(本人確認済)勇者の剣(ブレイブレード)@ブレイブ・ストーリー〜新説〜、ノコギリ@現実、救急箱@現実
[思考・状況]
基本行動方針:優勝を狙う。
1:憂さ晴らしに戦う。
2:協力者を探す。 津幡共仁には用心する。ミツルとは?
3:ご隠居……
[備考]
※ワタルから幻界の知識をある程度得ました。

【チャン@ブレイブ・ストーリー〜新説〜】
[状態]:所々衣服が破れて裂傷有り、右手重傷(使いものにならない)、脇腹に深い刺し傷、全身ダメージ(大)
[装備]:八卦鏡(フォーチュンテリング・ミラー)@ブレイブ・ストーリー〜新説〜
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:戦いを求める。
1:戦う。
[備考]
※B-4に基本支給品×6、捕鯨砲の残骸@銀齢の果て、壊れた鉈@バトルロワイアル、BIM(クラッカー型)×5@BTOOOM!、
 仮面ライダーファムのカードデッキ@仮面ライダー龍騎、不明支給品×4〜7 (是方0〜1、相馬2〜3)、オルタナティブ・ゼロのカードデッキ@仮面ライダー龍騎が落ちています。

【捕鯨砲@銀齢の果て】
 火薬の爆発力によって銛を発射し、クジラを捕獲する道具。
 ちなみに当ロワロワでは火薬は何割か多めに使われております。
 これで憎いあの子のハートも刺しちゃおう!

【ウォフ・マナフ@Wāqwāq】
 護神像No.2。アランの護神像。
 縞模様の獣のような外見をしている。角を取り外し、ブーメランとして飛ばすことができる。

152 ◆W91cP0oKww :2011/06/04(土) 01:30:03 ID:P/n.kLHM
投下終了です。多くの支援、ありがとうございました。

153 ◆CFbjQX2oDg :2011/06/08(水) 01:23:02 ID:jzauV8Z.
連絡も入れずに大幅に遅れて申し訳ありません。
マルコ、小四郎、浅倉を投下します。

154 SNOW STORM ◆CFbjQX2oDg :2011/06/08(水) 01:25:23 ID:jzauV8Z.

唯一人を残して皆が去っていった刑務所内だが、破壊の音は依然変わりなく響いている。
コンクリート片が付いた鉄パイプで
爆風でひしゃげたスコップで
己の拳と足で
心の奥底から湧き出る苛立ちを発散させるべく、周囲の物に対してぶつけている。

折れた右腕は先ほど添え木を付けて固く縛る応急処置をした。
そのため何かを握るくらいは出来るようになった。
所々の壁に穴があき、机や椅子は既に本来の用途で使用することは不可能になって転がっている。
見えない何かと戦っているが如く男は暴れ続ける。

不意に男の動きが止まる。
そして、あるモノの前まで歩いてしゃがみこむ。
霞刑部だったものだ。

四肢は有り得ない方に曲がり、爆風に煽られて焼け焦げていて異臭を放っている。
男はその死体に手を伸ばすと躊躇なく肉を引きちぎって口に入れた。
数回咀嚼した後ににやりと微笑みを浮かべると何度も手を伸ばした。

血抜きもしていない、先程まで確かに生きていた人肉を男は貪るように食す。
忍者として引き締まった筋肉は柔らかさの中に筋がしっかりとあり
そのコリコリとした食感が浅倉の食欲をさらに増幅させる。
表面はしっかり焼けているが、傷の裂け目から無理やり引きちぎると、まだまだピンク色をした肉部分が顔を覗かせる。

戦闘前に厨房から拝借していた香辛料をかけ、まだ死体の周囲に残っていた火種で炙ってみる。
如何に筋肉質な大男と云えども多少なりとも脂肪分はある。
火で炙ることにより脂が滴り火力が増進させる。
パキッパキッと音を立てながら収縮していく。
内部にも程よく火が通ったことを確認すると、そのまま口の中へと入れる。
先ほどとはまた違った香ばしさがあり浅倉の食欲を満足させていく。

支給品の水を豪快に飲み干しボトルを投げ捨てる。
腹が膨らみ幾分気持ちが落ち着いた浅倉。
この刑務所内に自分以外いないことは先ほど暴れたのに誰も戦いに来ないことからほぼ間違いない。
入口の瓦礫をどうにかして外に出ないことには、浅倉の望む闘争は得られない。

“食べ残し”から引きちぎった首輪にカードデッキをかざす。
聞きなれた金属音が耳に響きベルトが腰に装着される。
腕の力を抜き、深く深呼吸をする。
ゆっくりと右肘を曲げながら胸の前へ運び、左腕は腰の辺りに移動させ、正拳突きを繰り出すかの構えになる。
挙げられた右手が獲物を狙う蛇に見立てるかのように眼前の空間に喰らい付き、引き戻す。
その動作と同時に紡がれられる言葉は

「変身!」

合わせ鏡の鏡像のように、幾重にも浮かび上がる仮面を被った戦士が浅倉威と一つに重なる。
ダラリと首を回し、声に出しながら快楽に溺れる溜息のように息を吐き出す。
仮面ライダー王蛇、ここに現る。

155 SNOW STORM ◆CFbjQX2oDg :2011/06/08(水) 01:26:13 ID:jzauV8Z.
腰のデッキから一枚のカードを取り出し、セットする。

――ADVENT――

電子音と共に現れたモンスターは彼を象徴する蛇……ではなく、サイ型モンスター『メタルゲラス』。
浅倉とは異なる本物の野生の唸り声を上げると刑務所入口の瓦礫に突進する。

しかし、ミラーモンスターの中でもトップクラスの突進力を誇るメタルゲラスの体当たりをもってしても
入口を塞ぐ瓦礫を撤去するにはもの足りない。
続けて浅倉はカードをセットする。

――FAINALVENT――

再び瓦礫に突進するメタルゲラスの肩に乗り、その勢いに乗った王蛇。
カードの力が付与され、先ほどとは比較にならないほど加速するメタルゲラス。
空気が摩擦により火花を散らし、黄金色の弾丸となった王蛇がそこに突っ込む。
猛々しい音と共に、蛇は閉じ込められた巣穴から脱出した。

「さて、祭りの会場はどこだ?」

蛇は只々闘争を求めて歩み出す。
行く先に誰がいるのかなどわからない。
自らの勘を頼りに進むだけだ。
その先に闘争があることを疑いもしない、しっかりとした足取りで。



◇ ◆ ◇



――また会おう。我が子らよ。


「そんな……有り得ねぇ…」

首輪から発した音声は戦場マルコの足を止めさせる。

「俺たちの愛(LOVE)パワーはこんな簡単に終わっちまうもんなのか?」

地面に拳を叩きつける。
鍛え上げられたマルコの腕が放った拳は雪のコーティングを軽々と突き破り大地に突き刺さる。
何度も何度も拳を打ち付ける。
雪が朱に染まっていく。

「何がDEAD ENDを回避するだよ……愛、俺は……」


14年前、孤児院の皆で桜見タワーに行った。
そこで、愛と出会った。
一目見て自分たちと同じ境遇だってことはわかった。
最悪だと呟いた愛に俺は言った。

『良かったじゃねえか。明日は今日よりいい日にしかならねえってわけだ』

これが愛と俺との出会いだ。

156 SNOW STORM ◆CFbjQX2oDg :2011/06/08(水) 01:28:23 ID:jzauV8Z.
俺は愛に約束したんじゃないのか?
俺と二人でいることで最高にしてやると。

高校を卒業するのが決まった時は二人で桜見タワーに行った。
俺たちは孤児院の仲間でなく、男女としての交際をしていた。
ガキなりに一生懸命だった俺のプロポーズに対して愛はこう返した。

『マルは最悪を最高に変えてくれた。だから桜見タワー(ここ)で式を挙げたいの』

バカやろう。
俺のいないところで一人で死んで最高なわけがあるかよ……
俺はお前を再び最悪に突き落としてしまう男なんだ……

拳から流れる血液とは違う液体が雪に染みる。

――…ザザッ
ここに連れてこられる前から何度も聴いたノイズ音。
条件反射のように体が動く。
いいぜ、ちょうど一暴れしたいと思っていたんだ。
どこの馬鹿だか知らねぇがボコってやる。

ポケットから取り出した携帯電話をチラリと見て、時計と時間を見比べる。
後ろを振り返ることなく横に数歩移動する。
先ほどまでいた場所に鎌を振り下ろしていた男が驚愕の眼差しでこちらを見ている。

いいねぇ。その顔最高だねぇ。
そういう顔した連中を逆にぶん殴ってやるのが快感なんだよ。

『マルったら、また喧嘩して帰ってきたの? 危ないことはやめてよね』

もう二度と聞くことは出来ない愛の言葉。

脳裏に浮かんだ他愛の無い日常を振り切るかのように大地を蹴り、男の顔面に向かって強烈な右ストレートを繰り出す。
決まった。いつものタイミング通りだ。
しかし、マルコの拳は男の顔面を捉えることなく空を切る。

常人を遥かに超えたバネで無理やり跳び間合いの外に離脱したのだ。

「なんだあ、手前は? いい年して忍者のコスプレか? 12thみたいにヒーロー気取りかよ」

「霞刑部だけでない。甲賀の弦之介も死んだ。天膳殿が討ち取ったに違いない
 ならば、天膳殿が動いたなら俺も動くが道理。伊賀の者以外は皆討ち取ってくれよう」

ひゅるるるるる

男は言い終わると同時に唇を窄めて独特の音を発する。
山中や集落で発生した場合は空気の歪みがどうにか見ることはできる。
だが、この白銀の世界ではそれを確認するのは不可能と言えよう。

#######
コスプレ野郎(モサモサ頭)
見えない何かで攻撃してくる。
ギリギリまで引きつけたが
カウンターは取れなかった

 DEAD END
#######

157 SNOW STORM ◆CFbjQX2oDg :2011/06/08(水) 01:29:17 ID:jzauV8Z.

突きつけられた未来は死の宣告。
最愛の女性、美神愛には既に確定した過去の宣告。
覆したかった。デウスに覆すことは奇跡だと言われても自分たちの愛(LOVE)なら出来ると信じていた。

(ふざけんな! 俺の未来は俺が決めるんだよ!!)

それはまったくの直感だった。
相手が口笛のような仕草をしたことが見えない攻撃のトリガーなら、風か空気のようなものではないのかと。
確かに風や空気なら見えない。
なら色を付けてやればいい。
先ほど殴りつけ朱に染まった雪のように。

腕を大きく奮って拳から滴る血液を辺りに散らす。
既に血液が染みている雪を毎降らすように天高く投げる。
何も無い空間に雪と血液が吸い込まれていく。

「見えたぜ! お前の攻撃の正体!」

見えない何かが吸引力を持っているならそれから離れればいい。
マルコは大きく後ろに跳び、即座にアムルタートと合体する。
触手の半分を謎の攻撃に伸ばし吸い込まれ切り刻まれながらも無理やり進路を変えて防ぐ。
残りの半分を小四郎めがけて伸ばす。

小四郎は思惑が外れたことに舌打ちをしながら迫り来る触手に鍛え上げられた身体能力のみでかわしていく。
屈み、飛んで、身を捻って、紙一重の所で全て交わす。
交わすだけでなく、腰に差していた鎌を抜き出し迫る触手数本を切り刻む反撃まで見せた。

「見たことも無い忍術だ。先程の者といい、伊賀と甲賀以外にも忍びの里があったのか?」

どうにかDEAD ENDを回避したマルコ。
だが、生き延びたという安堵の感情は一向に湧いてこない。
頬を濡らす汗ではない液体。

何でなんだよ……
俺には今みたいにDEAD ENDを回避する奇跡が起こすだけの力があるじゃないか。
なのに、何で……
何で俺は愛を守ってやれなかったんだ……

持てる力を発揮して危機を乗り越えたはずなのに
心に吹き荒れるのは無力感の嵐。

「祭りの場所はここか?」

二人が同時に声の方を観る。
視線が交差していた状態から三角形を描くように変化する。

「ん? お前もライダーなのか? まぁいい、俺と戦えよ」

「何だぁ手前は……? とりあえずお前もボコッてやるよ」

「さっきの……ここで二人とも討ち取ってくれる!」

雪原に吹き荒れる嵐はまだまだ止まない。

158 SNOW STORM ◆CFbjQX2oDg :2011/06/08(水) 01:31:50 ID:jzauV8Z.
【B-2 雪原/1日目・朝】

【浅倉威@仮面ライダー龍騎】
[状態]:興奮状態、極度の苛立ち、右腕骨折(応急処置済)、ダメージ(小)、満腹
[装備]:スコップ
[道具]:基本支給品×2、カードデッキ(王蛇)、不明支給品3〜4、首輪(霞刑部)
[思考・状況]
基本行動方針:戦いを楽しむ
1:目の前の二人と戦う

[備考]
※浅倉は名簿をよく確認していません。
※刑務所の入り口が爆発で崩れました。
[参戦時期]
不明 後の書き手にお任せします。


【筑摩小四郎@バジリスク〜甲賀忍法帖〜】
[状態]:健康
[装備]:鎌@バトルロワイアル 、人別帖@バジリスク〜甲賀忍法帳〜
[道具]:基本支給品、不明支給品1〜2
[思考・状況]
基本行動方針:天膳様と姫様(朧)を守る。その為にも一刻も早く合流したいが……。
1:二人の首を手土産に天膳に届ける。
2:坂本に対する僅かな不信感
※香川英行の名前を知りません

【戦場マルコ@未来日記】
[状態]:疲労(小)、かなりの焦り
[装備]:交換日記のレプリカ・戦場マルコ用@未来日記、常勝無敗のケンカ日記のレプリカ@未来日記、
     アムルタート@waqwaq
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:とりあえずボコる
1: 愛……
2:ゴメンな、金糸雀におっさん……

159 SNOW STORM ◆CFbjQX2oDg :2011/06/08(水) 01:32:27 ID:jzauV8Z.
以上で投下を終了いたします。
本当に申し訳ありませんでした。
ご指摘、矛盾点等ありましたらご指摘ください。

160 ◆1yqnHVqBO6 :2011/06/17(金) 19:13:19 ID:tqRZjrQo
再投下します

161 レボリューション  ◆1yqnHVqBO6 :2011/06/17(金) 19:14:44 ID:tqRZjrQo


【来栖圭吾・E-4.市街地のカフェにて】

当初の予定通り市街地に到着できた来栖とノールは
椅子に体の重みを全て預け、心身を休めている。

「俺の“願い”?
どうしてそんなことを訊く?」

「刑事ってようは防人みたいなものなんでしょ?
 なんでなったのかなあって。
 僕達防人は殺した機械の“願い”、防人達の“願い”を
 護神像を通して受け取らなきゃから余計気になっちゃって」

「じゃあ、お前に殺されたら俺の“願い”は
 お前が受け取ってくれるってわけか」

「それがわからないんだ。なにせ君は赤き血の神だからね。
 神の願いを受け継ぐ人なんて前例がない。
 どうして言ってくれなかったのさ?」

「殺されたくなかったからな」

「いやだなあ。
 まだ防人全てを殺していないから心配いらないよ。
 蜘蛛の糸だって今となってはどこにあるかわからないしね。
 まあ、ともかくさ」

わずかに身を乗り出して。
ノールは真っ直ぐ来栖の瞳を見る。

「闘った相手の“願い”を背負い、進む。
 これは防人の務めだよ。
 だから君を殺しても“願い”を受け継げないなんて事態は。
 なんだかちょっとねえ…………………。
 ああ! 考えたら悲しくなってきた。
 君も殺さなければいけないなんて、この闘いはなんと業が深いのだろう!!」

「泣くな欝陶しい」

もう呆れることすら疲れた来栖は視線をノールから外し、
窓の外を見る。

少しの沈黙のあと。
来須圭悟は静かに口を開く。

162 レボリューション  ◆1yqnHVqBO6 :2011/06/17(金) 19:17:00 ID:tqRZjrQo

「ガキの頃、偵察用ザクのプラモが欲しくてな。
 おい、人が話してる時にキョロキョロすんなよ」

「いや、回想に入らないのかなあって思って」

「回送? ここは駅じゃないぞ」

「あれ、わからない? 
 うーん。じゃあカメラ目線とかも通じないのか。
 異文化交流だねえ」

「とにかく続けるぞ。
 それでとりあえず万引きして手に入れたんだが」

「悪い子どもだったんだね」

「おかげさまで親父にバレてこっぴどくボコボコにされた」

「それが君が防人。
 じゃないや、刑事を志したきっかけかい?」

「いや、違うな」

来栖の眼が移すのは人気のない街並み。
ここが彼のいた世界なら
もう少し時間が過ぎると多くの人が活動を始めるだろう。
休日なら家族サービスに勤しむ父親の姿も見られるのかもしれない。

「親父もそのころ空き巣に手を出しててな」

「衝撃の展開だね」

「定職に就かない親父は蒸発して。
 最後は体壊してのたれ死んだんだ。
 おい、号泣するなよ」

「切ない過去話だね。
 巻末のおまけに載せておくにはもったいないクオリティだよ。
 BDには特典でついてきそうだよね、この話」

「もう異世界語にはツッコまないぞ。
 とにかく今でも思うのさ」

163 レボリューション  ◆1yqnHVqBO6 :2011/06/17(金) 19:17:45 ID:tqRZjrQo

窓の外を見ながら来栖は頬杖をつく。
その様は彼がもっともっと若く、少年と継承される外見だったのなら
世を拗ねたポーズにも見えたかもしれない。
だが子を持つ親である来栖の瞳は思慮深さを持ち。
わりきれない現実を静かに見つめる大人のものであった。

「…………何で親父をボコる奴がいなかったんだろうってな」

爆発音が聞こえた。
近くで戦いが始まっているということだろう。
ノールはすぐさま席から立ち上がり店の外へと出る。

反応が遅れた来栖は未来日記の記述に目を通す。
ゴンゴンと窓を叩く音が聞こえた。
ノールが来栖へ叫んでいる。
ガラス越しの、くぐもった声。

「つまり君の“願い”は○×△ってことでいいんだよね!?」

少しだけ予想外の言葉に来栖は言葉を失う。

そして口元にあるかないかの笑みを浮かべると来栖もまた席を立ちあがり。
店から出て、ノールとともに走る。


……………………………………………………………………………………………………。

164 レボリューション  ◆1yqnHVqBO6 :2011/06/17(金) 19:18:53 ID:tqRZjrQo

【秋山蓮・目覚める】

「アリスゲームにプログラムか」

首元から流れる不快な声で眼を醒ました秋山は
七原と真紅と少しだけ元いた世界の戦いについて話す。

胸がチクリと痛むのは城戸真司のことを考えているせいではないと
秋山は自らに言い聞かせ…………る気力も起きなかった。

秋山は確実に憔悴している。
殺し合いに苦しむ友を想い。
その友を抗いがたいほどに強く思い起こさせる二人と闘ったことで。

「姉妹同士の殺し合いか。
 反吐の出るような話だな」

「そう言う人もいるでしょうね。けれど」

胸に宿る。
死した姉のローザミスティカに想いを馳せるように
真紅は眼を閉じる。

「生きるって。闘うことでしょう?」

闘わなければ生き残れない。
秋山自身も言いきったソレをただ返されただけなのに、
顔が意図せず痛みを覚えたように歪む。

「あの娘が言っていたわ」

真紅は眼を静かに開ける。

「私たちは絶望するために生まれてきたのかもしれないと」

それはきっと誰もが眼を逸らしたい事実だ。
殺し合いに望むような者達ならばなおさらの。

それでも、その言葉を受け止めた上で真紅は言う。

「だけど私は絶望したままで歩くよりも。
少しでも大きな希望で脚を動かしたいの」

165 レボリューション  ◆1yqnHVqBO6 :2011/06/17(金) 19:20:18 ID:tqRZjrQo

真紅の肩に手を置き。
会話を見守っていた七原が微笑んで言う。
その微笑みは、
どうしようもないほど癒しがたい痛みを背負った末のモノのように見えた。

「俺は。
 陽のあたる道を少しでも増やしたいんだ。
 そこを歩く人達が毎日、楽しくいられるようなさ」

七原の言葉は、優しく諭すような真紅のものとは違い。
力強さに満ちていて。
眩しすぎるほどに秋山の心を照らす。

「だから俺達は。諦めたくないんだ」

七原は秋山にカードをさしだす。
仮面ライダーナイトのカードデッキを。

「闘いをやめるには闘いすぎた。
 そんな風にお前は思うのかもしれない」

ならさ。

そう続けると七原は口元をニイッと笑みに変える。

「俺達と一緒に“闘う”ってのもアリなんじゃないか?」



……………………………………………………………………………………………………。

166 レボリューション  ◆1yqnHVqBO6 :2011/06/17(金) 19:23:07 ID:tqRZjrQo

【戦場となった地獄】


最強退治が始まる。

最強は人。
旅をする人。
心に虚を抱えながらも願いを賭けた殺し合いに身を投じた狂人。

対するは仮面ライダーとなった旅人が一人。
防人となった老人が一人。
そしてただの旅人が独り。

それでも彼らは諦めることなく構える。

そして、駆ける。
最強、チャンへと向かって。

闘志を震わす歓喜を隠そうともせず。
迎え打とうとチャンは拳を振り上げ、
想波を練り上げる。


――SWORD VENT――


龍騎へと姿を変えたカントリーマン。
彼の左手には旅人の武器、奇跡の執刀があり。
彼の右手には仮面ライダー龍騎の武器、ドラグセイバーがある。

二本の武器。
それでも目の前の片腕しか使えない男を倒すには足りなさすぎる。

カントリーマンの背後から角が投げられチャンを襲う。
攻撃は右と左からの同時。
退路は限られている。

チャンが選ぶのは当然前進。
標的を見失ったブーメランには目もくれず。
チャンはカントリーマンへ攻撃を繰り出す。

カントリーマンとチャンとの距離は目測半歩。
しかも誘い込んだ結果ではなく、
反応を遥かに上回る速度で踏み込まれた結果のもの。

右からの鈎のような軌道を持つ肘鉄を
右手の武器で受け流すことをせず。
カントリーマンは左手にあるメスを以て体ごと突撃する。

167 レボリューション  ◆1yqnHVqBO6 :2011/06/17(金) 19:24:22 ID:tqRZjrQo

捨て身。
特攻。
この攻撃を形容するにはどれも足らない。
強いて言うなら愚行。
チャンの武器は腕だけではなく“チャン”という1生命体そのもの。

チャンは軸足となった左足を地面に据えたまま右足を浮かせ。
肘鉄の威力に身を任せくるりと回転する。
回転。それによる対象の喪失。
ならばカントリーマンの突進は数歩のダッシュに終わったはず。

だが相手は繰り返すもチャンだ。
右足を軸に体を旋回した彼の左足はカントリーマンのすぐ後ろ。
カントリーマンとチャンはちょうど背中合わせの形になる。

突撃を上回るその速度すら驚嘆すら生温い武神の技。

だがチャンの回避は回避だけにとどまらない。
全身全てが凶器ならば。
背面すら凶器。

チャンの体が豪速でカントリーマンへと倒れこむ。
チャンの体がカントリーマンの全身を地面で挟む。

苦鳴の音がチャンの背中、正確には地面から漏れる。
そしてチャンの眼に映るのはカントリーマンごと
チャンの首を刈り取ろうとするミツルの姿。

三又槍が首に触れる。
否。触れたのはチャンの歯。
チャンの顎がミツルの武器をがちりと固定し。
ミツルは首の力だけで数十m先へと投げ飛ばされる。

倒れる戦士達を文字通り背にし。
チャンは悠然と起き上がる。

「さあ、もっとだ。まだ私を倒すには程遠い」

チャンは唯一立っている猿谷へと走る。

踏み出す足が大地を砕いた音がしたころには
既にチャンの貫手が猿谷の腹を貫いていた。

猿谷の融合が解かれる。
防人がただの老人へと戻る。

「呆気ないなあ」

まあ、こんなこともあるだろうという体で猿谷は笑みを浮かべる。

「殺気は見事だった。
中々に愉しませてもらったぞ、ご老体」

賞賛。そして。

168 レボリューション  ◆1yqnHVqBO6 :2011/06/17(金) 19:25:35 ID:tqRZjrQo

「しかし、それだけだ」

たむけに贈るのは興味を失ったような言葉。

引き継ぎのために猿谷を食おうとしたウォフマナフを
猿谷から抜いた左手で掴み。
起き上がったカントリーマンへ渾身の力で投擲する。

チャンの背中潰しをドラグセイバーを間に挟むことでダメージを軽減させていた。
だがそれでもカントリーマンが受けたダメージは大きい。
飛んでくるウォフ・マナフ。

「黒医伝術(ブラックジャック)」

已むを得ず、
カントリーマンは奥の手の一つである最強の魔法を護神像へ行使する。
護神像№2ウォフ・マナフ爆散。

「ああ。護神像が!
なんということだろう。
上手いことパワーアップしようと思ってたのに!」

戦場を少女のような悲鳴が響き渡る。

「緊張を削ぐような声を出すな!」

涙を滝のように流しながら
取り乱す少女のような風貌をした少年、ノール。
そしてそんな彼を怒鳴りつける来須圭悟。

新たに二人が地獄にやって来た。

「俺の名前は来須圭悟!
 先に言っておくがこの殺し合いでどう動くかはまだ保留している!
 コイツはノール! ハッキリ言ってこの殺し合いには乗る気満々だ!
 気をつけろ!!」

乱入者の一人、来栖が一息に叫ぶ。
そして。

「アンタらの名前は?」

明らかに何か裏があるだろう問い。
だがこの手の問いには
答えが誠名でなければならないという大原則がある。
カントリーマンもミツルも魔法には慣れ親しんだ身だからこそ
それを瞬時に理解する。

「ミツル」
「カントリーマン」

それぞれの名前を告げる。
それを聞いて頷いた来栖は共闘を申し出る。

「この闘気を身に当てられながらもやって来た戦士だ。
 拒む理由などあるまいよ。そうだろう?」

169 レボリューション  ◆1yqnHVqBO6 :2011/06/17(金) 19:28:21 ID:tqRZjrQo

それに返事をしたのは当の敵であるチャン。
カントリーマンとミツルにまさか追い返しはしないだろうなと釘をさすように
同意を求める。

「ああ。歓迎するぜ。
 ちょうど敵の手も欲しいと思っていたところだ」

ミツルは無言だったが彼も拒む気は無いようだ。

ノールも手加減する気はないようで、
この殺し合いで初めての護神像との合体を行う。
そして改めて闘いが始まろうとして。

「まあ、待て」

それを制したのはチャン。

臆したかという希望的観測をする過ぎた楽観主義者はいない。
この男の求めるものは一目瞭然。
ならば。
来るのは当然。

「ヒーロー登場! いや、革命家か。
 じゃあ革命家、七原秋也でヨロシク!!」
「ちょっと、下品な大声を出さないでちょうだい。
 それに恥ずかしいのだけれどそういう行動」

「おいおい、ノリが悪いな真紅。
 今の俺達。けっこうロックンロールだぜ?
 俺達が立っているのが採石場だったら、
 まさに先輩ヒーロー助太刀って感じで
 さらにイカしたCOOLだったのは認めるけどね」

つれない真紅の態度に七原は頭を掻く。

「私は貴方みたいに馬鹿じゃないの。そもそもなんなの、採石場って?
 ………………ローゼンメイデン第五ドール、真紅。
 ここに参上」

「って結局、名乗りはすんのかよ!」

ズッコケる七原を尻目に
秋山は我関せずと一歩前へ出る。

「なんだろうといい。俺は闘うだけだ」

仮面ライダーナイト、秋山蓮。
ローゼンメイデン第五ドール、真紅。
そして革命家、七原秋也。

170 レボリューション  ◆1yqnHVqBO6 :2011/06/17(金) 19:29:49 ID:tqRZjrQo

秋山の眼に真っ先に飛び込むのは当然。

「お前、秋山蓮だな」

秋山が仮面ライダー龍騎の姿をした男を問い詰める前に、
カントリーマンは秋山に問う。

「……城戸はどうした?」

秋山は問いに問いで返す。

「私達を守って。死んだ」

秋山は予想通り過ぎる答えを得る。
だからこそやるせない想いを抱く。

「生きろ。
 たぶん、アイツの最期の言葉は
 お前さんにも向けられているんじゃねえかな」

得られる城戸真司の死についての情報は。
知れば知るほど切なくまざまざと、鮮明に頭の中で再生できて。

そんな。どこにもぶつけられない想いを胸に
秋山はチャンへと眼を向ける。

チャンが出す闘気を、作り出した戦場を前に
秋山蓮は七原に言う。

「ヤツは見ての通り規格外の化物だ。
 闘う気はあるか?」

「当然!!」

七原は応える。
大剣を構え、亡き親友の得物をベルトに挟み。
戦場へ飛び込まんとする。

新たな乱入者により、地獄が更に賑わう。
幹事たるチャンは参戦者をぐるりと見渡し。
手招きするかのような手の形を取る。

「さあ、さあ。
戦場だ。地獄だ。素晴らしき哉。素晴らしき哉。
ようこそ勇者たちよ。私にさらなる歓喜をくれ。
闘わなければ殺されることもできない!!」

男の空虚なる狂気。
それを受けても戦慄し、足を止めることは許されていない。
闘わなければ生き残ることができないのだから。

戦場の幕が再び開く。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――。

171 レボリューション  ◆1yqnHVqBO6 :2011/06/17(金) 19:32:40 ID:tqRZjrQo


闘争という名の絶望は終わることがない。
新たな参戦者がいくら来ようとも。
チャンとの差は大きすぎる。

圧倒的水量により浮かび上がるのは
地面と称して差し支えないほどの岩石。
ノールは来栖の指示通りに水を操り。それら全てを細切れにして丸くする。

そして放たれるはマシンガンすら超える水の連射。
連射、連射、連射。
それをチャンはいとも簡単に防いでいる。

誰もがわかっている。
これでチャンを倒すことなど決してできない。
ノールの狙いは戦士達が斬り込む隙を少しでもつくること。

裂帛の気合と共に七原が走る速度が持つエネルギーを
そのまま魔界の大剣にこめて、振りかぶる。
それをチャンは左手を腰に据え、
腰のひねりと共に弾丸などおはじきにすら思える速度で拳打で迎えうつ。

岩が瞬間、チャンへと飛来するがそれはたやすく頭突きで叩き割る。

蠅を叩くような行い。だがそれも隙とし。
カントリーマンの右腕がチャンの首筋を狙う、
向かうはチャンの右側。
左腕の位置から考えるならば最適と言っていい角度。
そう考えるのは武術を知らない素人だ。
前に出された右足の位置を僅かにずらすだけで。
腰のひねりと共に打ち出される拳の破壊が剣を真っ向から打ち払う。

打ち出され、伸びきった腕。
またもその瞬間に。
岩が飛来し、チャンの肘を逆方向へ曲げようとする。
だがそれもすぐざま肘打ちに転じて壊す。

その刹那のあと、仮面ライダーナイトがチャンの左側へ襲いかかる。
真に迎え打つのに難い方角はそこだ。
全身のバネと捻りを武器にするには相手を対角線上に置くのが最も適している。
だからこそ、
それを活かせない左腕が据えられている場所は弱点となるが武の道理。

そしてチャンは肘打ちを終えたすぐあと。
体勢を戻すには容易だが僅かな時間を産んでくれるのも確かだ。

ナイトはチャンの目の前で高く飛び、
頭上へと高く飛び、チャンの頭を真上から突き刺す。

腕が使えないなら。脚を使って防ぐしかない。
空中それも地面に直角な所からの攻撃を防ぐことはほぼ不可能なはず。

だが相手はやはりチャン。
武の頂点を極めた者にとっては容易い攻撃。
先人の知識を全て受け継ぎ、昇華するに至った武人に弱点と言える攻撃は存在しない。

172 レボリューション  ◆1yqnHVqBO6 :2011/06/17(金) 19:35:14 ID:tqRZjrQo

それが不利な角度からの攻撃ならば移動すればよいだけのこと。
そう、『移動』しながら『攻撃』すればよいだけのこと。
後ろに置いていた左脚を右足の遙か先の方まで滑らせる。
滑る。それは慣性に従って移動するということだがチャンの移動先は空中。
そして左脚に付き従うかのように左脚も空へ投げる。
足場を無くしたのなら必然。チャンの頭は地面へと落ちる。

愚策。チャンには似付かわない愚策。

チャンは今、片腕を使えない。
つまりは防御できる場所に限りがあるということ。
空中からの一撃は強烈なれどその分、
地に脚つけているものからの攻撃も容易。

だがこれは攻撃だ。
地面に落ちて行くチャンの頭を突き刺そうとナイトはさらに腕を伸ばす。
さらに。さらに。
そしてのびきって、戻すのに一番エネルギーを必要とする瞬間。
チャンの両脚が仮面ライダーナイトを打った。

なんてことはない、
サッカーの試合ならばオーバーヘッドキックなどと呼び。
点を入れていたら歓声を浴びていただろうそんな1アクション。

雑技団じみた技。

なのに、チャンが行うだけでそれはあらゆるモノを破壊する一撃と化す。
その攻撃を受け、苦痛に身を悶えさせながら彼方へと飛ばされる。

そして、後方からは魔法により姿を消していたミツルが刺突と共に現れる。
だがそれもまたチャンには予測する必要すらない未熟な一撃。
チャンは限界にまで腰を落とし、頭の位置を限りなく低くする。
そして、下から突き上げるように背後のミツルへロケット頭突きをする。

飛ばされた者達はノールと真紅が衝撃を和らげるように
それぞれの力で受け止める。

そして、七原が真紅の花弁により作られた足場に乗り。
空中で大きく体を回転させ、叩き潰すように剣の腹を振り降ろす。
だがそれは地面に垂直に上げられたチャンの脚が受け止める。
ほんの一瞬だけ、力が拮抗する。
ヴァルセーレの剣を通じ。七原がチャンから力を得る。
それをそのままチャンへの攻撃に変換する。
だがそれすらチャンを倒すには至らず。
七原は大きく距離を取る。

倒れている者達への追撃をチャンがしないのは遠くからノールと真紅が
花弁と水の壁で行く手を塞いでいるから。

そして今、戦闘可能な状態にいるのは七原秋也ただひとり。
後退して真紅とノールを前線に出すことも考えたが、
相手は風水の力で異能殺しの結界を張っており相性が悪すぎる。

必然、勝負の行く末は
体術に長けた者に任せなければならないのが現状。

173 レボリューション  ◆1yqnHVqBO6 :2011/06/17(金) 19:38:15 ID:tqRZjrQo

速くして。強くして、そのままに練ることができる。
それがどんなに恐ろしいか一番痛感しているのは
この場で唯一攻撃をくらってもなお、立ったままを維持している七原。
彼が薙ぎ払われずにいられたのは一重にチャンによる攻撃を受け止め。
ぶつかり合うことで力を吸い取ることができたから。

普通ならばそれでここまでの力は得られないだろう。
例えそれが魔界の錬鉄によるものとしてもだ。

だが吸い取るのは無尽蔵なチャンの力。
チャンの周囲を纏う想波。
吸い取る量も源が無尽蔵ならば膨大となるのが道理。
だからこそ、驚異なのだ。

これほどに力を与えても平然としているチャンが。
与えられた絶大な量の想波が
七原に拳法を極めた果てにある想波の闘法への扉すら開かせようとしている。
なのに泰然と、悠然としているチャンの力はどれほどか。
測ることすら馬鹿馬鹿しくなってしまう。

そう。

的確な指示を来栖が急場凌ぎの協力者達にくだそうとも。
異能が効かないことを知らされた真紅とノールがいくら工夫を凝らそうとも。

あらゆる強者が手を尽くそうとも。
無双の絶対者の優位は揺るがない。

「何でだよ!?」

闘い。
魔界の大剣でチャンの力をいくら削ぎ落とそうとしても
源が文字通り無尽蔵であることを悟り。七原が叫ぶ。

「どうしてアンタみたいな人が殺し合いをするんだよ!?
 アンタが自力で叶えられなかった願いって何なんだよ!?」

先の秋山との闘い。
そして、七原の心を徹底的に変える契機となった殺し合い。
それらを経験したからこそ七原は知っている。

例え現実を諦めても、未来に期待しなければ
殺し合いを生き抜くことは不可能なのだと。

「私が闘うのはただ、ただ、闘争の為だ。
 “願い”を持つ純心など遠き過去。
 強いて言うなら闘争こそ“願い”か」

「嘘だ! 
 アンタは。アンタの力は。技は。
 そんなことのために振るうものじゃない!」

闘うことで気づいた。
チャンの武術は杉村のものと、とても近い場所にあるものだと。
七原の杉村への信頼は揺るぎない。
彼自身、殺し合いから脱出した後、死に物狂いで同じ流派を探し、学んだ。

だからこそわかる。

174 レボリューション  ◆1yqnHVqBO6 :2011/06/17(金) 19:38:59 ID:tqRZjrQo

「アンタの力は。
 みんなを守るための」
「ならば聞こう。」

七原の叫びに何かを感じたのか。
チャンは七原へと眼を向け問う。

「お前は何故“闘う”?
 何を“願う”?」

その言葉に七原は少しだけ口を閉じる。
突然の問答。
それが戦局をまるで一時停止したビデオのような様にしていた。
七原は口を開く。

「それが国だろうと何だろうと。
俺は。俺はかつて俺たちを殺し合わせた全てのモノを許さない」

その言葉を聞き。
チャンは七原に失望したかのような声で嘲る。

「吼えていても望むは復讐か」

「違う。俺は変えるんだ」

大剣を握る手に力をこめる。
それを合図に全員があらん限りの力を振り絞り。
最強に挑まんとする。

「世界も。人も。変えてみせる」

「笑止」

チャンは七原秋也へと言葉を叩きつける。

「恨みある革命は復讐と同義と知れ!!」

チャンは掌底を虚空へと突き出す。
遠当て。空気の塊。
拳をまとわぬ一撃が持つ威力、砲弾など比べ物にもならない。
想波の塊が七原を、構えた大剣ごと大きく宙を舞わせる。

七原を受け止めるのは真紅。

「助けてもらってばっかりだなホント」

「お互い様よ」

秋山がそんな二人を見て。
決心したような表情で七原にデッキを投げる。

175 レボリューション  ◆1yqnHVqBO6 :2011/06/17(金) 19:39:55 ID:tqRZjrQo

「七原。闘いを肯定し、殺し合いを否定する“お前達”が正しいかどうか。
 俺は共に戦うことで見極めると決めた。
       だから       」

七原は受け止めたデッキを見つめる。

「さらなる力を求めるなら。それを使え」

力強く頷き。
七原はデッキをかざす。

「お前が」

腰にベルトが現れる。

「まだ」

叫ぶ。

「諦めていないのなら」

永遠の闘いへの切符を手にするために。
ベルトへデッキを挿し込む。

「変 身 ! !」

176 レボリューション  ◆1yqnHVqBO6 :2011/06/17(金) 19:40:56 ID:tqRZjrQo

薔薇乙女を背にして
オルタナティブ・ゼロがナイトと並び立つ。

「これで仮面ライダーが3人。
 碌でなしどもがまあよくも雁首揃えたもんだぜ」

少し離れたところで龍騎の姿をしたカントリーマンが肩をすくめる。

「いや、違うな」

チャンの背後から、
何も無い場所から現れる“速”のライダー。
仮面ライダーファムとなったミツルが駆ける。
そして斬りかかる。

「旅人も新たな力を望むか。
己の“願い” がために」

それを予測していたチャンは宙へと飛び
離れたところへ着地する。

そして彼の手にあるのは。

「おい。いや。
 ウソ。嘘だろ?」

引き攣った声で誰もが思ったことを
誰かが言う。

チャンの手にあるのは紛れもなく仮面ライダーのカードデッキ。
仮面ライダーインペラーになるための媒体。
陽炎との闘いによる戦利品。

「いいや、現実だ」

さも当然とチャンは左手をかざし、
宣言する。

「私もさらなる孤独たる無双へとなろう」

ベルトが。
現れる。
魔神すら超えるモノへの道が、最強の前に開かれる。


――変身――

177 レボリューション  ◆1yqnHVqBO6 :2011/06/17(金) 19:42:53 ID:tqRZjrQo


「これで5人だ」

絶望、
そのさらに先の虚無。闇。
それを目の当たりにしても心が折れぬ人間など――――

咆哮。それは王というよりも野獣に似ていた。
今の今まで倒れ伏していた幼き雷帝、
ゼオンが身体中の力を掻き集め、立ち上がる。

「ノール、水流をあの子とミツルの周りに展開させるんだ!」

来栖がゼオンの復活を予測していたかのような自然さで
ノールに指示を出す。

「オーケー!」

水がゼオン達の周りを龍のようにとぐろ巻く。

「少年。ミツル、ありったけの電撃をソレに流すんだ!」

意味を理解したいたのはミツルだけ。
だが、復讐に突き動かされている
ゼオンの意識は本能でそれが正しい道だとわかった。

まだだ、まだ。
誰も諦めていない。

ありったけの電撃を受けた水流が電磁石となり、
それをノールがチャンの周囲へと動かし。体内磁石を狂わせる。

風水によって築かれた異能を弾く結界は解かれ。
チャンの身体能力もまた、半減する。

針の穴よりも小さい勝機が見え始めた。

「ハハッ」

来栖が朗らかにカラカラ笑う。

――つまり君の“願い”は正義の味方になりたいってことでいいんだよね!?

短い間の同行者の言葉が来栖の脳裏をよぎる。
それに今ならなんと応えるだろうか。
決まっている。
未来日記所有者4thたる来須圭悟は確信できる。

「俺の“願い”はやっぱ」

そしてチャンは気づいている。
誰の指示でこれを成したのか。

「ああいう奴をボコることなんだよな」

178 レボリューション  ◆1yqnHVqBO6 :2011/06/17(金) 19:44:06 ID:tqRZjrQo

来須圭悟は。
仮面ライダーナイトにカードを――
仮面ライダーオルタナティブ・ゼロに意志を――

「なんで俺が会うまともな奴はいつもテロ系なんだろうなあ」

大地を。チャンが蹴る。
重点的に強化された脚力。
それが産み出す速度は誰であろうと反応はできない。

「まあいいさ。やっちまえ、“革命家ども”」

――託す。

チャンの残る左腕が手刀の形を取り、
来須圭悟を両断する。

そして、攻撃地点が誰にでも読めていたのなら。
後手での対応は可能。

残る戦士。
仮面ライダーナイトサバイブ、龍騎、ローゼンメイデン、オルタナティブ・ゼロが
チャンを打倒せんと雪崩のように攻撃を繰り出す。

先陣を切るのは予期せぬだろう大幅な強化を果たした秋山蓮。
まだそのスペックはチャンに悟られてはいない。
闘いの決着を遅らせる理由はない。
己が分身を幾つも作り出し、チャンへと斬りかかる。

「着地点を観測した。その程度のことで私を倒せると?」

今の状況は互角にも程遠い。
魔神、魔王、魔怪、そのどれもが彼を形容するには慎ましすぎるのだから。

数多くの分身による全ての攻撃を
チャンはただ一つの動作で薙ぎ払う。

それはただの回し蹴り。
だが、仮面ライダーの力すら付与された
その足が産み出す威力と余波はいかなるものをも寄せ付けない。

秋山の後に続くのは七原とカントリーマン。

魔界の大剣を完全に使いこなすに足るスペックを得た七原が
天高く飛び上がり、天空ごと突き刺すかのように
チャンの頭頂へ落下速度を乗せて突き刺そうとする。
チャンの脚はまだ回し蹴りから戻されていない。

ならば必然、揚げられた脚は踏みしめるように勢いよく降ろし。
開いた左拳を大剣に沿えて、急激に回転させることで
接地えネールギーを分散。剣の軌道を逸らす。

179 レボリューション  ◆1yqnHVqBO6 :2011/06/17(金) 19:45:15 ID:tqRZjrQo

「馬鹿の一つ覚えのように上からの攻撃か。温すぎる」

そして背後からはカントリーマンが新たに斬りかかる。

それにも対応しようとチャンが
足を動かそうとして。
動かない。

正確には動きが鈍い。
脚が深く埋まる地中は泥濘を超えて沼のようなネバつきを持っている。
何故、一箇所だけ土がこのようになっているのかとチャンは眉を上げる。

「来栖がただ殺されるためだけにそこにいると思ったのかい?」

膨大な電気を込められ続けた水流を周囲に蠢かせ。
ノールが我が意を得たりと大粒の汗を浮かべつつも
彼には似合わない獰猛さを秘めた表情で微笑む。


「始めから来栖に誘導されていたんだよ。
 ボクが細工した場所へね」

チャンの反応が。ついに遅れる。
如何なる力を持つ脚であろうとも、いやだからこそ。
足場の悪さが決定的な要因となる

城戸真司に託された龍騎の力と、
霧島美穂によって生かされた命を携え。

ドラグセイバーはついにチャンの右腕を切り飛ばし。
奇跡の執刀、ついにチャンの体に致命傷を負わせる。

そして、
喪った命への悲しみを堪え、
七原は叫ぶ。闘いをともにした戦友に。

「場は整ったぜ」

周囲に散乱していた支給品。
真紅はそこから彼女の持ち物を見つけた。

懐中時計。
真紅の力を元に物の持つ時間を
ほんの少し巻き戻せることができる時計。

「右ストレートパンチだ。やってやれ」

ソレを用いて、
真紅は英雄になろうとしていた男が使った銃を復元させる。

「相棒!!」

180 レボリューション  ◆1yqnHVqBO6 :2011/06/17(金) 19:46:41 ID:tqRZjrQo

狙いを定めて。
真紅は捕鯨銃を撃つ。

右腕は先ほど切り飛ばされた右半身のまま、カントリーマンを退けるには時間が足りない。
左腕は残っているが地面に突き刺さった大剣が進路を邪魔している。
どけるにはこれも時間がない。
ならば、いっそ両方向をこの両脚で。却下だ。
着地したところを狙われるが必然。

チャンに残された防御手段は左腕のみ。
左腕に想波をコーティングしてもなお、
強大な一撃を防ぎきるには能わず。
左の掌を突き破り、腕の中。深く深くへと銛がうたれる。

好機。
ついに好機がやってきた。

七原はすぐさま距離を取り、真紅の側へ戻り。
秋山、カントリーマンも最大の一撃を繰り出すためのカードを取り出す。


――FINAL VENT――
――FINAL VENT――


チャンの今の武器はその両脚のみと言っていい。
ならば、狙うべきは上空からの圧倒的な攻撃。

同じ高さからの攻撃は片脚をスイッチすることで、いくらでも対応できるだろう。
だが高高度からの攻撃にはどうしても脚だけで迎えうつには限度がある。
引き脚。引き手。
伸ばされた手脚は威力を放った後、改めて元の位置に戻さなければ
再び十全の威力を発揮することができないのは人体の理。
頂点をも超えた武ですらそれから完全に逃れること、叶わない。


龍騎は空高く飛び。
ミラーモンスターの火炎を推進力に
チャンへと一個の槍のように突撃する。


カードの効果が明確に現れる直前。
ナイトサバイブもまた空高く飛び。
バイクへと変形したミラーモンスターと共に
マントに漆黒のミサイルへと姿を変える。

181 レボリューション  ◆1yqnHVqBO6 :2011/06/17(金) 19:47:55 ID:tqRZjrQo

「準備は。聞かなくてもOKだよな!?」

空高く飛び上がるのは仮面ライダーオルタナティブ・ゼロとて同じ。
背に負うのは宿敵のローザミスティカの力を借りた真紅。

「当然。だから」

七原からそっと離れて。
真紅はあらん限りの薔薇の花弁の嵐を七原の背へと送り。
推進力とする。

「やりとげなさい……相棒!!」

本来なら持たぬはずのオルタナティブ・ゼロの蹴り技。
だが今、友の力を借りてここに成されるのならば。
付けるべき名はただ一つ。


――RIDER KICK――


三方向からの同時攻撃。

これを迎え討つには今のチャンには些か心もとないか。
いや、これはただの“劣勢”。
乗り越えようと奮起するに相応しい障害が
最強の前にようやく現れただけに過ぎない。

「楽しい。楽しいぞ諸君!!」

チャンは渾身の力をこめた蹴り技でそれら
全てを一度に退けんとする。

瞬間。チャンの身体中に雷を伴った水龍が巻きつかれる。
チャンの動きが止まる。

「もう、限界なんだ」

ノールが、ミツルが、ゼオンが膝を付きながらも。
チャンを睨みつける。

「全力をくらえ」

そして三人のライダーの攻撃が、
チャンを。


「見事也!
 戯れではなしに私の本気を真っ向から引き出すとは。
 無双の孤独を耐え忍び続けた甲斐があったというもの!」


両の手が使えなくなろうとも。
奥の手が使えないことには決してならない。
言葉遊びにすらならない道理。


――天地開闢 有為転変――

182 レボリューション  ◆1yqnHVqBO6 :2011/06/17(金) 19:49:14 ID:tqRZjrQo

封印魔法、発動。
ありとあらゆる周囲の想波がチャンへと集められていく。
八卦鏡の助けがないとしても、
産み出される威力は会場丸ごと滅ぼすことすら可能だろう。

破壊が、周囲のエリアごと彼らを包み。
断とうとする。

それでも退かない防人の全力攻撃。
三人の仮面ライダーの同時攻撃。
余波が周囲一帯を吹き飛ばして彼らはまだ攻撃を打ち砕かれてはいない。


「膝を屈することを良しとはせず。
立ち向かい続けるか勇者達よ!」


チャンは喝采する。
まだ誰も諦めてはいない。
最強を倒すことを。
“願い”へ、未来へ進むことを彼らは諦めてはいない。

だから、

「受けて死ね」

力を使い果たしたミツルは既に変身が解かれ。
普段の姿に戻っている。
それでも。
彼は闘い続ける。


――エターナル・エンド――


ミツルの封印魔法も加わり。
エネルギーのせめぎ合いはさらに激化する。

チャンのベルトにあるデッキはとうに壊れ。
仮面ライダーの意匠は消え失せている。

残るは己の鍛錬のみで辿りついた想波の闘法たる悟りのみ。
そして、チャンの攻撃はついに破られ。

仮面ライダー達の攻撃がチャンを打ち砕く。


ハズだったのに。


カントリーマンが手駒にした不死人達に守られていた朧が。
度重なる精神への負担に耐え切れず心を無くした者が。
あまりの衝撃に眼を醒まし。

起き上がり、戦場を破幻の瞳で見つめる。

183 レボリューション  ◆1yqnHVqBO6 :2011/06/17(金) 19:50:14 ID:tqRZjrQo

破幻の瞳があらゆる異能から身を守り。
彼女の諦めが全てを台無しにする。

諦めが。
勇者達を殺す。

変身が解かれた仮面ライダー達はそのまま落下し地面を転がる。
立っているのはぶつかり合いにより、
インペラーのデッキを壊されていたチャンのみ。

だが仮面ライダーの運命であるミラーモンスターの襲来はない。
ミラーモンスターの乱入ごと消し飛ばす苛烈なる激突。決闘。

それを最悪の形で邪魔されたチャンは特に動じることもなく
一足飛び出朧の眼の前へと現れる。

「やめろ!」

カントリーマンの懇願にも似た制止の声も虚しく。
チャンはあっさりと朧を蹴り飛ばす。

全ての水を使い果たしてしまい。
合体すら解かれてしまったノールに
内蔵の全てが壊された朧が肉の弾丸となり。
体内からから突き出た骨がノールの身体中を突き刺す。

死体となって崩れ落ちるノールと朧を尻目に
異能殺しの軛から解放されたゼオンが真っ先にチャンへと突進する。

魔本を用いての術ブースト。
それに頼ることはできない。
側にいたノールは死に、
ミツルも疲弊で動くこともできずただチャンを睨みつけている。

心の力をありったけ振り絞った術で己の体を強化し、
チャンへと殴りかかる。

だが、消耗が。ダメージが大きすぎた。

「まだだ。俺は! 俺はガッシュを殺した貴様を必ず殺す!」

復讐の念すべてをこめての攻撃をチャンは足裏で受け止める。

「ガッシュ?」

チャンがゼオンの怒りを目の当たりにして言う。

「誰だそれは?」

それはただの言葉。
ブラフである可能性も十分にあった。
だが、ゼオンは。
王の素質と資質を十二分に兼ね備えたゼオンは理解してしまう。

その言葉に、嘘はないと。

ゼオンの眼から光が喪われる。
己の徒労を知り。力が抜ける。

184 レボリューション  ◆1yqnHVqBO6 :2011/06/17(金) 19:52:21 ID:tqRZjrQo

そして、
諦めてしまったゼオンの体をチャンの足裏が拳ごと押し返し。
踏み潰す。

真っ赤な血の塊となった三人。

地面を転がっていた七原達はようやく立ち上がる。
疲労の影を隠しきれなくとも。七原は憤り、叫ぶ。

「どうしてだ!
 どうしてそんなことができる!?」

七原に眼を向けたチャンは先の中断された
問答の続きであるかのように嘲笑う。

「無意味だからだ。
 幾億の“願い”も、信念も。
 その全てが虚でしかないだからだ。
 死ねば、裏切られれば全てが無へと変わる」

チャンは七原達の方へと歩き出す。
握る拳がなくとも溢れんばかりの闘気が対峙する者達へ突き刺さる。

「だから私は想うのだよ。
 闘争だけが実。
 “願い”のためであろうと復讐のためだろうと、
 それによって突き動かされた戦士の織り成す闘争は」

そこにあるのは空虚な最強に残されたほんの少しの郷愁か。
チャンは続ける。

「闘争だけは。真実で在り続けると」

恐らくは、これがチャンの心。
これに真っ向から触れた者は既に死した勇者ワタルだけだろう。

たしかな重みを持った言葉。
受け止めるには殺意もなく、真摯過ぎて、灼かれそうなその想い。
ある意味で潰されそうな純粋さ。常人は触れることすら厭うであろうソレ。

だが、今の彼らは違う。
カントリーマンは言う。

「『私』の中には生きている。
 医師としての『私』が救った命が、『私』達を救おうとした際の言葉を憶えている。
 『生きろ』。
 旅人として殺し合うことしかしてこなかった『俺』はその言葉で、
 医者として行動してきたこの世界での『私』が救われたように想えた」

 秋山は言う。

「アンタの願うソレは。求めるソレは。
 真実じゃない。ただの地獄だ。
 闘い続けなければ生き残れない。
それは確かだ。だが…………」

185 レボリューション  ◆1yqnHVqBO6 :2011/06/17(金) 19:54:06 ID:tqRZjrQo

秋山は確信をこめて告げる。

「殺しあい続けなければ生き残れない“願い”は。
 きっとそんなに多くないんだ。
 殺し合いを産むほどの“願い”は。
 そんなにあっていいものじゃない」

何を言われようともチャンは動じない。
ただ自らと闘ってくれるだろう者達へ歩み寄るだけ。

「良い意志を感じる」

そして、間合いに入り。
チャンは攻撃へと移る。

「だが。意味はないがね」

最大の好機を逃したがゆえの脱力は
秋山とカントリーマンの力を、意志を疲労以上に奪っている。
体が。チャンに立ち向かう力を与えてくれない。

「お前達もまた、諦め。ここで死ぬのだから」

前蹴りが秋山へ繰り出される。
それを七原が前に出て庇う。
ただ一人、欠片たりとも諦めておらず。
体を動かす力を持っていた七原が大剣で受け止める。

受け止めきれなかった衝撃が。
オルタナティブ・ゼロのデッキをついに壊す。

仮面ライダーの運命が七原を襲う。
ミラーモンスター、サイコローグが現れ、七原へと襲いかかる。

七原が、喰われようとする。

「お前は本当に諦めないんだな。七原」

それを阻むのは、
七原と真紅の生き様を短い間だが共有した
仮面ライダーナイト、秋山蓮。
サイコローグの腕が、秋山蓮を貫く。

「一度殺したらもう戻れない、か」

清々しい顔で
秋山は、最期の言葉を遺そうとする。

「それでも、同じ道を歩むことはできるんだな」

そして、渾身の力でサイコローグの首を跳ね飛ばし。

秋山蓮が最後にその眼に映すのは。
親友のデッキを受け継いだ男の姿。

「願わくば……俺のナイトを受け継ぐ者も。
 いや、これは俺には過ぎた――」

186 レボリューション  ◆1yqnHVqBO6 :2011/06/17(金) 19:54:57 ID:tqRZjrQo

羨望混じりの言葉。最後までは述べられず。
カードデッキを握り締めたまま、膝をつき。
秋山蓮もまた、死ぬ。

倒れ伏していく者達の命が。
意志が、“願い”が、七原の心を震わせて。
人知れず引き継ぎを終えていたハルワタートを呼び寄せ。
ハルワタートに選ばれ。
闘志が“願い”のインストールを終わらせ。

破裂しそうな程の数多の“願い”が七原の脚を、更に前へと動かす。
生身で。一振りの大剣を手に。
チャンへと挑む。

「愚行なり。革命家、七原秋也よ」

けれども。
どれほどの意志が宿ろうと、“願い”が宿ろうとも。

それはチャンの攻撃が
七原の胴体を突き破る妨げにはなってくれない。

だが。だが、それでも。

「アンタは死んだら意味がないって言うけどさ」

七原は大量の血を吐き出しながら、
力の抜けた手から大剣を落としながらもチャンを見つめる。

「俺は知っているんだ。
 短い間しか一緒にはいられなかったけど。
 悲しい別れもたくさんあったけど。
 少ししかわかり合うことが出来なかったとしても。
 俺は知っている」

187 レボリューション  ◆1yqnHVqBO6 :2011/06/17(金) 19:56:50 ID:tqRZjrQo

意志が七原の手に銃を握らせ。
チャンの顔へと狙いを定める。
零れ落ちる命を。必死に繋ぎとめながら。
震える手で。

「死んだんじゃない。
 みんな生きていたんだ!
 ここでも! どこでも! 命が続くまで、必死に!!
 未来の為に生きてきたんだ!!」

だから。
七原は血まみれの顔で笑みを浮かべる。

「アンタもたしかにここで生きていたって憶えてやる。
 背負ってやる。そして、一緒に死んでやる。
 けど未来に繋げてやる」

震える手を鼓舞して七原は引き金を振り絞る。
チャンは動くことができない。
七原の胴体を貫いている脚を抜くことも。
地面に置かれている脚を動かすこともできない。
彼の体を渾身の力でカントリーマンが羽交い締めにしているから。


「さようならだ。最強」


虚闇のような銃口を目の前にし、
チャンは笑みを浮かべた。

銃声が虚無に響く。

その笑みの意味を知ることは誰にもできないだろう。



………………………………………………………………………………………………。

188 レボリューション  ◆1yqnHVqBO6 :2011/06/17(金) 19:57:39 ID:tqRZjrQo

暗い。寒い。砂のように生命が零れていくのを七原は感じていた。
視界は闇で覆われて。体の先から熱が喪われていって。

側にいるハルワタートが教える。
次の防人を。

――いや、俺1分も防人やった気が全くしないんだけども。
   まあ、いっか。チクショウ。いや、チクショウじゃないか。
   ああ、でもやっぱりやっぱりコンチクショウ。
チャンにはカッコつけたけどまだまだ生きてえよ俺――

けれども、
自分の頭が小さな小さな膝の上にあることだけはわかった。

――よかった。
   どこに吹き飛ばされたんだと思ってたけど無事だったんだな――

友の無事を知り、七原は安堵する。
押し寄せる悲しみと無念を抱きながら。

――ごめん。ごめんな典子。俺、帰ることできないみたいだ。
   すまない、すまないノブ。俺、約束破っちまったよ。
   川田。俺、俺。お前みたいに戦えたのかな?――

顔に雨があたる。
温かい。そしてとても優しい雨が。
大粒で、なのに、不思議なほどにささやかな雨が。

――悲しませちゃったよな。
   でも、でもさ。俺は伝えたいんだ。お前に――

必死に七原が真紅の顔があるであろう所へ手を伸ばす。
小さな手がそれを強く強く握りしめる。

「俺、最期に――――」

言葉が出ない。
出るのはもう、血だけで。
ヒュウヒュウとした呼吸音だけが七原の口から流れる。

引き継ぎの時間がやってくる。
七原の体を雨ではない水が包み、砕き、溶かす。
そして、ハルワタートの口へと吸い込まれる。

七原秋也もまた、革命の志半ばで死ぬ。

だが。

新たな防人、真紅が彼の“願い”、知識を全て受け継ぐ。
“願い”は、七原の意志はローザミスティカに刻まれた。

189 レボリューション  ◆1yqnHVqBO6 :2011/06/17(金) 19:58:25 ID:tqRZjrQo









――俺、最期にさ。
   良い友だちを守ることができて。
   本当に良かった――






七原秋也との消えない絆とともに。

190 レボリューション  ◆1yqnHVqBO6 :2011/06/17(金) 19:59:08 ID:tqRZjrQo

【猿谷甚一@銀齢の果て】
【来須圭悟@未来日記 死亡確認】
【朧@バジリスク〜甲賀忍法帖〜 死亡確認】
【ノール@waqwaq 死亡確認】
【ゼオン・ベル@金色のガッシュ!! 死亡確認】
【秋山蓮@仮面ライダー龍騎 死亡確認】
【チャン@ブレイブ・ストーリー〜新説〜 死亡確認】
【七原秋也@バトルロワイアル 死亡確認】
【残り 28名】


【B-4/1日目/午前】

【真紅@ローゼンメイデン】
[状態]: 疲労(極大)、“願い”インストール、七原の戦闘技術と知識継承
[装備]: ハルワタート@waqwaq、真紅の懐中時計@ローゼンメイデン
[道具]:基本支給品、ホーリエ、ハリセン@現実 、ローザミスティカ(水銀燈)、
     レミントンM870(8/8) 、レミントンM870(8/8)、
     ヴァルセーレの剣@金色のガッシュ、レミントンM870の弾(16発)
    カードデッキ(ナイト)、不明支給品×1
[思考・状況]
基本行動方針:七原秋也の意志と共に 。
1:???

【カントリーマン@ブレイブ・ストーリー〜新説〜】
[状態]:全身ダメージ(極大)疲労(極大)
[装備]:奇跡の執刀(ハイブリッド・メス)@ブレイブ・ストーリー〜新説〜 、カードデッキ(龍騎)
[道具]:基本支給品×2、不明支給品×2、首輪(是方昭吾) 、首輪(相馬光子)、
     桜田ジュンの裁縫道具セット@ローゼンメイデン
[思考・状況]
基本行動方針:生きる。
1:???
[備考]
※是方昭吾、相馬光子の死体をアンデッドとして従えました。
※陽炎、相馬光子の武器を毒と判断しました。

【ミツル@ブレイブ・ストーリー〜新説〜】
[状態]:疲労(極大)
[装備]:ミツルの杖@ブレイブ・ストーリー〜新説〜、 
     仮面ライダーファムのカードデッキ@仮面ライダー龍騎
[道具]:基本支給品、不明支給品×1、BIM(爆縮型)@BTOOOM (7/8)
[思考・状況]
基本行動方針:妹を生き返らせる。手段は選ばない
1:???
[備考]
参戦時期:ゾフィが虚になった後。
魔法を使うと体力消耗。

※B-4に落ちてた基本支給品×6、捕鯨砲の残骸@銀齢の果て、
壊れた鉈@バトルロワイアル、BIM(クラッカー型)×5@BTOOOM!、
は放置されて消し飛ばされました。BIMくらいなら無事かもしれません。
カードデッキ(ナイト)、サバイブ(疾風)@仮面ライダー龍騎
由乃の日本刀@未来日記、不明支給品(ノールの)、勇者の剣(ブレイブレード)@ブレイブ・ストーリー〜新説〜、ノコギリ@現実、救急箱@現実、ニューナンブM60(3/5)@現実、
不明支給品×2〜4(ゼオン、三村(武器ではない)が落ちています

191 レボリューション  ◆1yqnHVqBO6 :2011/06/17(金) 20:00:05 ID:tqRZjrQo


……………………………………………………………………………………………………。
……………………………………………………………………………………………………。
……………………………………………………………………………………………………。




〜〜誰だって世の中を変えたいと思ってる。
   だけど、殺し合いに頼ろうというなら。
   悪いが俺は加担する気はない。
   そんなことするまでもなく、今に何とかなるさ。
   大丈夫。何とかするよ〜〜

  お、拍手をくれるのかい。ありがとう。
  けどこれ。盗作なんだけどね。いやはや。

歌い終わった後、そう言って彼は恥ずかしそうに笑った。
その姿も、私はきっと忘れない。

192 ◆1yqnHVqBO6 :2011/06/17(金) 20:01:09 ID:tqRZjrQo
以上で再投下終了です
なにかあるようでしたら議論スレにてお願いします

193 ◆1yqnHVqBO6 :2011/06/18(土) 00:02:58 ID:mwaOlYys
追加したのは
・来栖とノールが闘いに至る過程
・秋山の目覚めたあとの描写
・龍騎を見た秋山の反応

その他にも色々ありますが本筋に関わるものはこれくらいです

194 ◆1yqnHVqBO6 :2011/06/18(土) 19:52:49 ID:mwaOlYys
指摘を受けて考えた結果。



>>177

> 「少年。ミツル、ありったけの電撃をソレに流すんだ!」
>
> 意味を理解したいたのはミツルだけ。
> だが、復讐に突き動かされている
> ゼオンの意識は本能でそれが正しい道だとわかった。



「魔本をよこせ少年!」

高ぶった心はそのままに。
王として相応しい修羅の心を十二分に備える
ゼオンはそれが正しい指示として来栖に魔本を投げ渡す。

その速度。まさに豪速球。

だがそれを空中で見事にキャッチした七原が来栖へとそのまま放る。

魔本を手に持った来須圭悟。

叫ぶ。ゼオンと同じように。
咆哮する。

最高の。雷の術を。

ミツルの電撃と同じタイミングで。


――ジガディラス・ウル・ザケルガ ――

水流が。水龍へと変わる。
まるで、ゼオンの弟である彼の『あの術』のような強大さを持って。

まだだ、まだ。
誰も諦めていない。

ありったけの巨大な龍が一つの電磁石となり。
それをノールがチャンの周囲へと動かし。体内磁石を狂わせる。



に変更します。
ご指摘ありがとうございました!!

195 ◆1yqnHVqBO6 :2011/07/27(水) 01:55:46 ID:MgNh.C8k
投下します

196 金色の彼に花束を  ◆1yqnHVqBO6 :2011/07/27(水) 01:58:24 ID:MgNh.C8k


そこは遊園地の待合室。
けれど置かれた質素な備品はそこをまるで監獄かのように見せていた。
あるのはベンチとテーブルと安物のパイプ椅子。
そして鏡だけ。
普通ならばありそうな
子供のための着ぐるみや人形、おもちゃのたぐいは一切ない。

窓からさす陽が少しでも
部屋を明るく見せるのではないかと思っていたが、
現実はただ四隅を照らし、物品の少なさを際だたせるだけだった。

放送が流れるまで。
光が入ってくる窓から、
杉村は何度も外を見渡しあの少年を待っていた。

仮面ライダーの力を調べ、
カードなるものの効果を知ることができたのは大きな収穫だった。

それでも幾度となく火の海へと飛び込み探しに行こうか迷ったが、
ここには気絶したままの少女の形をした人形がいる。
逃げる場合、キャンチョメが彼女を抱えて逃げるのは
彼の術を見ても少し酷だろう。

それでも杉村弘樹は少年とまた会いたかった。
親友であるキャンチョメと会わせてやりたいというのももちろんある。

少年の死を知らされてもまだ。
火の中に飛び込み。
友を、命を、
助けに行こうとした彼の姿が瞼に焼きつき離れない。
あの迷いのない眼。小さくても力強い背中。

ガッシュ・ベル。
もう二度と会えないと放送により知らされた少年。
ほんの短い出会い。
彼が杉村に伝えた言葉は杉村の心から離れることはなく。

「牙でも、爪でもない武器。か」

同時に知らされた親友の再度の死。
どちらも杉村にたしかな衝撃を与え。
けれども我を忘れるほど悲嘆にくれるということもなかった。

つくづく薄情になったものだと杉村はため息をつく。
ガッシュ・ベルの死に悲しみ大声をあげて泣いていた
キャンチョメを見つめながら思う。

「それで。これからどうするヒロキ?」

赤い眼をこすりながらもキャンチョメは杉村にそう聞く。
鼻水だらけだった顔で、涙を流しきって乾いた眼でキャンチョメはそう聞く。

「お前はどうすればいいと思う?」

パイプ椅子にだらしなく背を預けながら
杉村は質問に質問で返す。

197 金色の彼に花束を  ◆1yqnHVqBO6 :2011/07/27(水) 02:00:14 ID:MgNh.C8k

杉村の中で何度もリピートされるのは
先程の乱入したあとに起こった一部始終。
己の心に背くことをしたとは思わない。

けれども、あの馬、ウマゴンもまたキャンチョメの親友であり、
生きてはいるようだが詳しい状態を知ることはできない現状にしてしまった。
キャンチョメはそのことを教えられても杉村を怒り、憎むことはしなかった。

いや、こんな今だからかもしれない。
共にいる杉村を否定するのはこの殺し合いに独りで立ち向かうのと同義だから。
唯一の同行者を突き放すのはこの糞ったれなゲームでは大きく死に近づく。

俺は何をしたいんだろうか。
杉村は繰りかえし己の心に問う。
キャンチョメの友を攻撃し。見殺しにして。心に傷を負わせ。
俺が得たものはなんなのだろうかと。

杉村の脚は動こうとしてくれない。
杉村の心は挫折から奮い立とうとはしてくれない。

「考えたんだけどさ」

そこにあるのはどこか杉村を勇気づけようとするような。
気遣うような響き。

キャンチョメも同じくパイプ椅子に座っているが
そもそも背の高さからして違う。
向かい合う杉村からはテーブルに
アヒルのクチバシが乗っているだけのように見えてしまう。

その愛らしく、幼い姿。杉村はあらためて認識する。
目の前の奇妙な姿をしたアヒルの彼も間違いなく子供だ。

子供から親友を奪う原因の一つと自分はなってしまった。
その思いは罪悪感となって
茨のようにじくぅりじくぅりと杉村の心を苛む。

「聞いてる?」

キャンチョメの言葉で弱く堕ちそうな心を立て直し、
だらしなく崩れていた姿勢も改める。

「すまない。えっと、どこへ行くかという話だっけ?」

「うん。さっきの放送を見て思ったんだけどさ」

キャンチョメは待合室に置かれている鏡を指さす。

「当然と言えば当然なんだろうけどさ。
 放送のとき、鏡に写るのと首輪とか小さなものに映る影じゃあ。
 映すものが大きい方が大きく見えたんだよね。
 鏡だとほとんど全身が映ってたりさ」

杉村はキャンチョメの言葉に放送の時を思いだす。
そうだったろうか?
いや、あのときは三村達の死の衝撃でそこまで
注意してみることなんて自分にはできなかった。

198 金色の彼に花束を  ◆1yqnHVqBO6 :2011/07/27(水) 02:01:45 ID:MgNh.C8k


「すごいな。キャンチョメは」

心から感心して杉村は賞賛する。

「え、えへへへへ。やめてよ照れるから!」

涙にかすれた声でキャンチョメは胸を張って笑みを浮かべる。

ああ、この子は強い。
少なくとも俺よりはずっと。
杉村は無力な結果しか産まなかったデッキを知らずに握りしめる。

「でさ。地図をよく見なおして見たんだけども。
 砂漠にはオアシスがあるみたいなんだよね」

そこまで言われて杉村もようやく合点がいく。

「なるほど。鏡としての広大な水か。
映すものが大きければ大きいほど
こちらからも相手が見えるんだもんな」

「どう思う?」

杉村は微笑みながらキャンチョメの提案を首肯する。

キャンチョメは手を上げて喜ぶ。
その手にあるのはガッシュの形見とも言える紙粘土が握られていて。
まだなんの形にもなっていないソレが
キャンチョメとガッシュの絆の強さを教えてくれる。

それと共に渡されたガッシュの言葉。

きっと、ガッシュとはまた会うことができる。
そう思って、信じていた杉村は
キャンチョメにまだその言葉を伝えていない。

「とりあえずは」

杉村はベンチに横たわる少女人形を見る。
気休め程度に布団替わりに調達してきたカーテンを敷いてその上に寝かせた少女。
安らかに眠ることができているように見える少女。

「この子が目を覚ましてからだな」

199 金色の彼に花束を  ◆1yqnHVqBO6 :2011/07/27(水) 02:03:13 ID:MgNh.C8k


………………………………………………………………………………………………………。


ここは雛苺の世界。
第82633世界。
お菓子と、おもちゃ。
たくさんの楽しいものにあふれた世界。

だからみんな楽しく遊んでいる。
ここでは何も辛いことはない。
真紅達と殺しあわなければいけない絶望も。
全てを焼き、喰らい尽くす恐ろしく巨大な龍も。

なにもかもがいない。

「だってここは夢だもの」

たくさんの大好きな人に囲まれながら雛苺は独りつぶやく。

「だって夢は楽しいものだもの。
 明るくきれいなものだもの」

ほんの僅かに目を伏せ、睫毛に影を宿す。

「いつかヒナの眼が醒めて。
 みんなはまた殺し合いを強制されるの」

けれど。
せめて。どうかせめて。
時が経ち。瞼が開かれるその瞬間までは。
この安らかな世界で――――

暗転。焼失。消失。
そのどれかであり、そのどれもである現象が雛苺の世界を覆う。

目覚めの時が来たのだろうか。
そう雛苺は思ったのだけれど。
闇と呼べそうなほどの暗がりに光が射す。

そこは、広いお屋敷の中。
ほんの少し昔。
一緒に遊んでいたマスターが雛苺の前にいる。

悲しそうな顔。
憐れむような顔。

ああ、この顔は知っている。

「かくれんぼしましょう。雛苺。
 静かに。見つかるまで。
 鞄の中で待っていてね」

かつてのマスター、コリンヌは雛苺に諭すように言う。

「わかったわ。
 ずっと待っているわ」

200 金色の彼に花束を  ◆1yqnHVqBO6 :2011/07/27(水) 02:04:00 ID:MgNh.C8k

だめ。これはだめ。
知っているの。あなたがどういうつもりでいるのか。
これが決して終わることのないかくれんぼになるって。
あなたは決して見つけてくれることはないんだって。

そう、雛苺はコリンヌに言おうとして。
ここは夢のなかでも、この過去を今、見せられるのは苦しくて。

雛苺は、手を前に伸ばす。
コリンヌを引きとめようと手を、ただ前に。

けれども手は動いてくれず。
口は少し開いても音を出してはくれず。

雛苺が今いるのは楽しかった夢のなかではなく。
苦しかった過去の幻影。

知らぬ間に横たわっていたのは鞄。
寝心地のよいそこは。
これから起きる……起きたことを知っていると
棺にしか思えず。

雛苺は懸命に声をだそうと。手を伸ばそうと。

コリンヌはゆっくりと鞄を閉める。
降りてくる暗がり。
狭くなっていく光。

だめ。お願いやめて。
独りにしないで。
もう開くことのない暗闇にいるのは嫌。
雛苺はただそれだけを願って。
それでも、体は動いてくれなくて。

閉じられる瞬間。
ようやく雛苺の手はほんの少し動き。
コリンヌを引きとめようとして――――

なのに、どうしてか。
雛苺の小さい手。指先。
そこから白い白い茨が、肉を突き破るかのように飛び出し。

「さようなら。雛苺」

閉じられる瞬間。
コリンヌの顔は巴へと変わり。
無情な顔で、光を閉ざす。

「いや。いや。嫌。」

違う。この茨は違うの。
あの白薔薇はもう離れているのだから。
だからこれも夢。夢。
みんな、夢なの。

指を突き破り、蠢く触手めいた茨のソレ。
引き抜こうとしても掴む指を傷つけるだけで動きはせず。

201 金色の彼に花束を  ◆1yqnHVqBO6 :2011/07/27(水) 02:05:57 ID:MgNh.C8k

「出して」

雛苺は叫ぶ。
鞄の裏を必死に叩きながら。
体内から己を食い破ろうとする触手の脈動に意識を犯されながら。

「おねがい! だして!
 ここからだして! こわい! いたい!」

雛苺。ローゼンメイデン第6ドール。
最も幼い少女の形に作られたドール。
触れることすら躊躇われる。
笑顔ふりまくのが相応しい彼女。

その雛苺の胎を陵辱する白薔薇の棘、白薔薇の蔓。
雛苺の胎内でゆっくりと収縮しながらそれは動き出し。

「……ぁ。
 痛っ! …………いや! いや!
 ひとりにしないで! のり! 真紅! 翠星石! かな!」

白薔薇はここにはいない。
これはかつて起きた出来事の再生にすぎないのだから。

夢。夢。
なのに、触手はゆっくりと内側で領土を広げ。

「いやっ…………!」

202 金色の彼に花束を  ◆1yqnHVqBO6 :2011/07/27(水) 02:06:33 ID:MgNh.C8k


――雛苺はもうずっと鞄にしまっとこう。
――そうしましょう。
――いらないものね。
――おまえなんかいらない。
――だれがおまえを必要とするものか。

大切な人達の声が、否定の言葉をかたどって。

「あ、あぁ。あああああああああ!!」

茨は突き破りながらも皮膚の下を食い進み。
次第に顔へとそれは伸びて。

ついには右眼へと。

「助けて! 助けて!!」

鞄をいくら叩いても。声を張りあげても。
応えてくれるものは誰もいなくて。

茨はゆっくりと、静かに雛苺のアイボールを抉り、摘出して。
アイホールに白い薔薇が咲く。

「トモエ!」

夢のなかでも。
雛苺の精神は確実に壊されていく。

「ジュン!!」

残る左眼が茨に包まれていく彼女の右眼を捉える。

それでも。
鞄が開けられることはなく。

203 金色の彼に花束を  ◆1yqnHVqBO6 :2011/07/27(水) 02:07:45 ID:MgNh.C8k

…………………………………………………………………………………………………………。


「これは!?」

部屋を埋め尽くすかのように発生した茨を見て
杉村は驚愕の声を上げる。

決して広くはない。
10歩も歩けば壁についてしまうようなそんな部屋。
その中で嵐のように茨が暴れる。

「キャンチョメ!」

よく見ればところどころに苺を実らせている棘の鞭が
キャンチョメに襲いかかる瞬間。
杉村は茨を背中で受け止め、キャンチョメを抱え大きく跳ぶ。
体内の肉が弾けるような衝撃が杉村の意識を揺らす。

「大丈夫かい弘樹!?」

身を案じるキャンチョメの言葉に杉村は頷くと
茨の海へと眼を向ける。

その動きはそう、渦に似ていて。
周囲のテーブル、椅子、鏡を粉砕し。
壁に深い傷をつける。

全てを壊すような茨。
その中心にいるのはガッシュから託された人形の少女。
その顔はよく見えず。
何か悲鳴のような苦鳴のような声が
聞こえるような気がしなくもないが
部屋を満たす破砕音が判別を困難にさせている。

「あの子に何が起こってるんだ!?」

困惑しながら破砕音の中、杉村は叫ぶ。

「わからない!
 けど…………」

震える脚を抑えつけるかのようにキャンチョメは
大きく足を踏み鳴らす。
その手にある紙粘土はまだどんな形をとってもいないが
確かな勇気をキャンチョメに与えている、

「とめないと。
 ガッシュみたいに……死んじゃう前に」

204 金色の彼に花束を  ◆1yqnHVqBO6 :2011/07/27(水) 02:09:34 ID:MgNh.C8k

その声は震えていて。
今にもその場から逃げ出しそうな弱々しさを持っていて。
けれども奥底にあるのは強い勇気。

「もう、怖いことから逃げるのはいやだ」

杉村はその言葉に応える代わりに
キャンチョメの隣に並び、魔本を受けとる。

ガッシュとの出来事から知ったこと。
パートナーでなくとも行使可能な魔本を通じての術。

「フォウ・スプポルク!」

魔本を開き、
異世界の言語を心で解読した杉村は高らかに
読み上げる。

相手へダイレクトに術の停止を命じる新たな術。
ガッシュの死が新たな扉を開けたのか。
少女を止めようとする意志がキャンチョメを奮い立たせたのか。
初めて発動した彼らが正しい効果を知らなかったとしても
動かない相手ならこれ以上ないほど有効な一手。

だが茨はさらに勢いを増し、壁に大穴を開け。
杉村達の皮膚を傷つけていく。

「外したのかキャンチョメ!?」

「たぶん違う!」

己の直感に確信を持ったキャンチョメは強く拳を苦悩に握りしめる。

「あの子の力が暴走しているんだ」

暴走。
ならこれは彼女の意志を超えたものなのか。
それとも彼女の意志が壊れた証なのか。
杉村には判断がつかない。
ならばどうするのか。
いや、どうにかできる選択肢があるのか。

眼に浮かぶ火の海に飛び込んだ
ガッシュはこんな時どうするのだろうか。
誰よりもCOOLな三村はこんな時、どんな手を打つか。

鋼の鎧を纏い、白銀の爪を生やし、牙を持つ化物を従えて
少女を討つしかないのか。

わからない。
なにもかもが。
無力感がまた杉村の心に重くのしかかる。

205 金色の彼に花束を  ◆1yqnHVqBO6 :2011/07/27(水) 02:13:09 ID:MgNh.C8k

「……あれ?」

眼が眩みはじめ、天と地の区別がつかなくなるような大渦の中。
キャンチョメの声が杉村を現実に呼び戻す。

「なんでボクたちは無事なんだろう」

杉村はその言葉に眼を見開く。

そうだ。
こんなに狭い部屋の中で、
こんなにも荒れ狂う茨に打ちつけられ、
そんな中、当然のようにあらゆる物が破壊されているのに。
なぜ杉村とキャンチョメは無事でいられるのか。

「キャンチョメ。
道をつくってくれ」

「だ、ダメだよ弘樹!
ここは僕が」

「俺たちの武器は牙でも爪でもない。
 君の親友はそう伝えて欲しいと俺に言った。
 ……本当にそうだって心から信じられるか?」


杉村の言葉にキャンチョメは瞳を揺らがせる。

「俺はきっとそこまで強くはいられない。
 けれど、せめてそれが答えの一つになれるって証明したいんだ」

二人同時に気づいたありえる事実。
だがまだ一つの可能性でしかないもの。
それに賭けるには無手で望まなければいけない。
命を死地にさらさなければいけない。

だが。

「君の親友ならきっと諦めなかったと思う。
 思いたい。だから、キャンチョメ。
 俺に力を貸してほしい」

「……わかった!
 やってやろうぜ弘樹」

キャンチョメは親指を立てながら杉村に応える。
何度も茨に打たれ。
それでも死なぬ二人の男の眼。
その先にあるのは、何か。

「目指すは茨の海の中心だ」

魔本を片手に、ライダーデッキはキャンチョメに預け。
クラウチングスタートに近い前傾姿勢をとる。

206 金色の彼に花束を  ◆1yqnHVqBO6 :2011/07/27(水) 02:15:09 ID:MgNh.C8k

「ディマ・ブルク!!」

再度、術を高らかに読み上げると杉村は魔本を
キャンチョメに放り、走る。

その前を行くのは8体のキャンチョメの分身。
だがそれは全てはっきりと実体を持っており。
身を呈して杉村を茨から守る。

走る。走る。
茨の与えるダメージが大きくなろうとも
杉村は決して足を止めない。

3歩。
筋肉がちぎれかける音がその耳に聞こえても
進んだ距離はまだそれだけ。

だが止まってはいない。
四歩目、五歩目。
さらに、さらに!

「くっ……ううおぉ!!」

視界は既に棘の鞭が作った傷と血で埋まっている。
何も見えない。

それでも杉村は駆ける。賭ける!
少女が己の絶望に抗っているからこそ
自分たちは死なずにいられるのだと信じる。

あらゆる物を砕く茨が杉村達を破壊できないはずがない。
生身はそれほど強いものではない。

ならば、答えはきっと。
少女が懸命に傷つけまいとしているからだと
杉村とキャンチョメは信じる。
ガッシュはそう信じただろうと信じる。

目を閉じ。
あらゆる痛みが五感を叩いても、
杉村はただ前を見て。

閉じた瞼の先にも宝石のように尊く美しく輝くような光にむけて。
ただ前へ、両手を伸ばして――

手を伸ばし、脚を動かし。
全身で海を掻きわける。
ガッシュ・ベルが命を救うために炎の海に飛び込んでいったように。

そして、ついにソレを掴む。
守ってくれていたはずのキャンチョメの分身は全て消え。
剥き出しの攻撃が手加減なしかのように襲いかかる。

爪が剥がれ、体中が押し潰されるように悲鳴をあげる。
そして、その光が杉村の内にと直接触れて。
感情が濁流のように流れこむ。

207 金色の彼に花束を  ◆1yqnHVqBO6 :2011/07/27(水) 02:16:48 ID:MgNh.C8k

それは内に蠢く食い破る者への恐れ。
それは殺し合いへの強い忌避感。
あの遊園地を喰らった火の海が、混沌が、
彼女の中の何かを呼び起こしたのだろう。

だがその感情はきっとまだ対処できる。
懸命に抗おうと淡く輝くそれを感じることができるから。

彼女の恐れの元は、内に蠢く者は今はいないのだから。

茨の棘が体中を傷つけても杉村は構わず
人形の少女、雛苺を抱きしめる。
爪をもって引き裂かぬよう優しく、
爪に恐れを抱かぬようそっと。

そして、牙を剥かぬ口で力強く、
牙をもたない口だからこそ穏やかに言葉を伝える。

「俺達は」

感情の奔流が杉村の心までも壊そうとする。

だが、彼の瞼には炎の中で煌めく金色が色褪せず残り。

「君の味方だ」

その言葉、水面を伝う波のように雛苺へと送り。
波紋するかのように彼女の心を震わせる。

208 金色の彼に花束を  ◆1yqnHVqBO6 :2011/07/27(水) 02:17:42 ID:MgNh.C8k


天井を埋め尽くしていた茨は幻だったかのように消え失せ。
雛苺を抱きしめたままの杉村は力が抜けたのか床へと仰向けに倒れこむ。

キャンチョメが歓声をあげながら杉村へ駆け寄ってくる。

「やったよ弘樹!!」

全身に傷を作ったキャンチョメは
同じく傷だらけの杉村に笑顔をむける。

「何やったか全然覚えてないんだけどな」

疲れきった顔の中に達成感を浮かべて杉村は応える。

「いや、もう凄かったんだよ!」

「どんな風に?」

ぼやける頭を起こすように頭を大きく振って、
杉村は尋ねる。

「ええっとねえ……」

顎に手を当ててキャンチョメは相応しい言葉を探す。

「足を動かして。
 両手を前に伸ばした……かんじ」

苦心してひねり出したキャンチョメの表現に
杉村は苦笑する。

「それ、誰でもできることなんじゃないか?」

「いや、違うんだよ!
ああ、もうなんて言えばいいかなあ!」

もどかしそうに手を振るキャンチョメを微笑ましそうに見ながら。
杉村はほんの一瞬の邂逅だった少年の姿に想いを馳せる。

――きっと君との出会いがなかったらこうすることはできなかった。
   だからこれは君への手向けだ。

眼に浮かぶのは誇り高き金色の眼差し。
暴火に負けない眩しき金色の髪。

「牙も爪も。
俺たちの武器じゃないんだよなやっぱり」

静かに、杉村は独り呟き。

――さようなら。
   やさしい少年王ガッシュ・ベル。


そして、雛苺の瞼が開く。


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