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SRPGバトルロワイヤル8
102
:
騎士の誕生
◆j893VYBPfU
:2011/05/28(土) 23:58:39 ID:???
わたしはニヤニヤと笑いながら、アルガスをからかい続ける。
ラムザの名を出され、若干顔が硬くなり始めるも。
そっぽを向きながら、ぶつぶつと言い訳を始める。
「…そりゃそうさ。オレだって命は惜しいッ。物凄く惜しいッ。
いくら一度経験してるにしてもな、もう一度死ぬのは嫌に決まっているッ。
だがな、これまでに自分が名家であるが故に受け続けた恩恵も忘れて、
貴族の義務も誇りも放棄してベオルブの家から逃げたラムザ相手に、
引くなんて貴族としてありえないね。それを許したら、身分が曖昧になる。
それにあいつに媚び諂って命乞いする位なら、殺された方がまだマシだッ。
ベオルブ家の面汚しを、同じ貴族だなんてオレは認めんッ」
――なるほどの。
意地や誇りのかけ方が少しばかりズレておる。
あと口調がいつの間にか敬語ではなく対等になっておるが、それはまあよい。
あるべき貴族主義が誤ったまま固定化され、それで道を誤ったということか。
ラムザの事にせよ、なんらかの誤解か勘違いじゃろ。目が曇り過ぎというものじゃ。
だがまあ義務や誇りという言葉が出る分、まだ更生の余地はありそうじゃの。
ただ単に、身分に拘り過ぎで意固地に過ぎるという事か。
わたしはそう得心すると、視線でアルガスに部屋からの退出を促す。
「早くここから消え失せろ」と。
「もうお前は見逃してやる」と。
アルガスはその反応にぽかんとした顔でこのわたしを眺め。
唐突に得られた自由に戸惑い、そして警戒し。
躊躇いがちに、ぼそりと口を開く。
103
:
騎士の誕生
◆j893VYBPfU
:2011/05/28(土) 23:59:24 ID:???
「なあ、なんでこのオレをわざわざ助けるんだ?
あんた自身が言ってただろ?オレは役に立たないって。
それにオレが死ななきゃ、あんたが代わりに殺されるかもしれないんだぜ?
今の放送聞いてりゃ、それ位はあんただってわかるよな?
ここじゃ皇帝だの貴族だのって地位は、平民の家畜どもには通用しないッ。
それに――。」
アルガスはそう言うと、猫背で弛緩した姿勢を取り。
わたしはそれを最初から予期しており、杖の末端と半ばを握り構える。
「――そなたがわたしを襲わぬとも限らぬ、とでも言いたいのじゃろ?
ならば…、試してみるかの?」
アルガスは不敵に挑発するわたしの様子を、しげしげとしばらく眺め。
「そこまでわかっていて、一体何故なんだ?」と心底理解に苦しんだ表情を見せ。
わたしは答える。真なる貴種の生き様というものを。
「…阿呆。目の前で殺されそうになっておる生命を前にな。
己の保身の為に見殺しにする輩など、誰も皇帝などとは呼ばんじゃろ?
それこそ、そなたの言った『貴族の義務』という奴じゃ。
わたしは、わたしの誇りの為にそなたを助ける。そなたの価値など関係あるか。
それにの、護身の心得なら多少はあるでの。そなたの裏切りなど計算の内じゃ。
貴族とは、民草とは生き様の格の違いを見せつけてこそ貴族というものじゃろ?
わたしを単なるお人好しか、地位を笠に着るだけの小娘だとでも思うたか?
この第三十七代ベグニオン皇帝を、あまり見くびるでないわ」
わたしはニヤリと笑いながら、それを奴に教える。
わたしの在り方を。わたし自身の矜持というものを。
眼前の誇りのかけ方を誤った没落貴族にも分かるよう、
はっきりと宣告する。
その言葉に――。
104
:
騎士の誕生
◆j893VYBPfU
:2011/05/29(日) 00:00:27 ID:???
アルガスが身に纏う、空気が変じた。
アルガスは唐突にその目を見開き、大きくその身体を震わせて。
あたかも女神からの天啓でも受けたかのように。
自ら片膝を折り、わたしに頭を垂れ――。
恭しく厳かな声で、騎士の礼を取った。
「これまでに渡る数々の無礼…、どうか、どうかお許し下さいッ。
貴方様には、真の貴族の誇りを見た気がいたしました。
ただ、願わくば。それが許されるのであれば。
この私めを、是非貴方の配下に加えて頂きたく存じ上げます。
未だ騎士見習いの身なれど、己が未熟は熱意で補いますが故に」
それは、あの傲慢極まりなかったアルガスの口から初めて聞かれる。
一切の混じり気のない、偽り無きわたしへの敬意に満ちた言葉。
それは、「相互利用」といった契約関係を望むのでは決してなく。
わたしを本当の意味で主として認め、己を臣下とするよう願い出た。
――わたし自身想像すらしなかった、唐突なるアルガスの改心。
当然を語ったに過ぎない積もりが、ここまでの影響を与えるとは。
…この男、まだ芯までは腐り切ってはいなかったという事か。
その反応にわたしこそが驚き、反応に少々こそばゆいものを感じはしたものの。
だが、わたしはアルガスの懇願に――。
「その申し出は、今はまだ受け入れられんの」
拒絶にて、それを返す。
びくり、とアルガスが悲嘆に肩を震わせるも。
105
:
騎士の誕生
◆j893VYBPfU
:2011/05/29(日) 00:01:06 ID:???
「…今はまだ、と言ったんじゃ。つまりは保留という事じゃ」
「そなたが貴族に相応しい振舞いを身に付けたと、わたしが認めた時。
その時は改めてそなたをわたしの騎士として認めよう。
人の性根など簡単に変わる。今はまだまだ信頼できん」
わたしは、アルガスに優しく諭す。
道を違えぬ限り、少なくともわたしはアルガスを認めると。
良き方向に人が変わるのであれば、わたしはその切っ掛けとなりたい。
わたしは人を導くのが責務であるが故に。
「じゃからの、わたしがそなたを直で見届けるとしよう。」
「どうせ、ここにい続ければそなたはラムザ達に殺されるんじゃ。
じゃが、そなたを野放しにするのも危なっかしいしの。
…仕方あるまい。ようは監視も兼ねて、という事じゃ。
一緒に出るぞ?元より、その積もりじゃったしの。
その代わりに、わたしの護衛でもしてくれると助かるがの?」
そして、事実上の承認にも等しい言葉を与える。
その思いがけぬ言葉に、アルガスは再び顔を上げ――。
「…このアルガス、身命を賭して貴方をお守りいたします」
わたしの腕を取り、騎士の礼を取る。
その瞳には、僅かながらも涙が溜まっていた。
おそらくは、初めてなのだろう。他人に必要とされ、認められたという事が。
経緯はどうあれ、他人に損得抜きで命を救われ、受け入れられたという事が。
それが、たとえどのような形であろうとも。
だからこそ、これほどまでに心震わせたのだ。
106
:
騎士の誕生
◆j893VYBPfU
:2011/05/29(日) 00:01:58 ID:???
そして、あれが最期を覚悟した時に出た「かあさん」という言葉。
それも、あの者が「誰かに認められたいという」渇望を持つ事を裏付ける。
世に生まれ落ちて、最初に己を全肯定するのが「母親」という存在であるが故に。
実はこの男、これまで「貴族」という地位に殊更に拘泥しているのも、
周りが己を認める唯一のよすがが、その血筋のみだったが故なのか?
ならば、まだ変わりゆく余地は充分にある。
そして、その切っ掛けを与えてやる事はわたしにも出来るかもしれない。
「うむ、苦しゅうない。
ならば、護衛代といってはなんじゃがこれをやろう」
わたしは膝を折るアルガスの首筋に。
剣の平で叩く代わりに、あるものを巻き付ける。
わたし自身が、それまで身に着けていたものを。
「これは…?」
それは、貴族が巻き付けるには質素に過ぎる、
むしろ違和感を醸し出すものではあるのだが。
何よりも柔らかく、暖かく。作り手の優しさが伝わるものを。
それが同時にわたしの気持ちでもあると、伝わるように。
「誰かが人の為に編んだ、手編みのマフラーじゃ。
陳腐なもの言いじゃが、作った者の想いまで伝わってきよる。
…わたしのお気に入りだったんじゃがの。
己を見失いそうになったら、これを見て思い出せ。
先程の、わたしへの誓いをの。」
107
:
騎士の誕生
◆j893VYBPfU
:2011/05/29(日) 00:02:28 ID:???
わたしはそう言い含める。
「人に認められたい」という気持ちが強いのであれば。
「人の思いやり」の篭もったものは金品より価値あるものとなるだろう。
それが、主と認めた者からの賜りものなら尚更に。
そして、アルガスはわたしから報酬に。
「…ありがたき、幸せ」
恭しくマフラーに手を当て、再び頭を下げた。
様子を見る限り、しばらくは翻意を抱く事はないだろうと判断する。
とはいえ、楽観は禁物だろう。
人はそう、簡単に変われる訳ではないのだから。
問題は、むしろこれからなのだ。
「さて、長居は無用じゃ。さっさと出掛けるぞ。」
わたしはアルガスに準備を促し、怪我の治療を杖魔法で行ってやると。
鋸を用意する際にあらかじめ書いておいた手紙を部屋の中央に置き、
二人で城を後にした。
『アルガスがこのままでは危険過ぎるので、拘束から解放する事。
アルガスを一人にすれば不安が残るので、わたしが監視する事。
そして自分から言い出しておきながら、皆でこの城を出る事が出来ず、
皆に申し訳ないと。ホームズには後ほど自分から詫びておくと。』
手紙にはこう記してはおいたが、不安ではある。
経緯はどうあれ、わたし達の離反はラムザ達への不審を意味するのだから。
何より、今の合流はアルガスが危険過ぎる。
108
:
騎士の誕生
◆j893VYBPfU
:2011/05/29(日) 00:03:51 ID:???
――ま、理解してくれるとありがたいんじゃがの。
そして、後はアルガスのお守か。
わたし自身が決めた事とはいえ、少々気が滅入る。
わたしの騎士となろうとする以上、私怨はひとまず置くよう命じてはいるのだが。
――どうしても、不安が残るのぅ。
私怨を捨てろとまでは言わぬが、自重位はしてくれると有り難いのだが。
それが出来ぬようであれば、責任を以てわたし自身の手で阻止せねばならない。
たとえその結果、アルガスの生命を奪う事になろうとも。
――そういう事態だけはないよう、女神に祈りたいものじゃがの。
わたしは将来における数々の不安に頭を悩ませながら。
何度ともなく溜息を吐き、もう一度だけ城を振り返ると。
頼りない従者とともに、暗闇の野原へとその足を進めた。
【E-2/城の正門前/1日目・夜中】
【サナキ@FE暁の女神】
[状態]:精神的疲労(軽度)
[装備]:リブローの杖@FE、真新しい鋸
[道具]:支給品一式
[思考]1:アルガスを監視しつつ、その行く末を見守る。場合によっては…
2:帝国が心配
3:皆で脱出
4:アイクや姉上が心配
5:魔道書等の充分に力を出せるアイテムが欲しい、切実に。
[備考]:二人で編成を組むに伴い、支給品一式を二人分アルガスに預けてます。
アルガスや自分に使ったリブローで、若干の消耗が起こってます。
109
:
騎士の誕生
◆j893VYBPfU
:2011/05/29(日) 00:05:33 ID:???
【アルガス@FFT】
[状態]:ラムザに対する憎悪(重度)、サナキに対する忠誠心
[装備]:手編みのマフラー@サモンナイト3
[道具]:支給品一式×2
[思考]1:サナキに相応しい騎士となるよう務める。
2:戦力、アイテムを必ず確保する。
3:サナキが望まないので、とりあえず私怨は抑えてみる
4:…オレ、どうすりゃいいかな?
[備考]:アルガスの怪我はサナキがリブローの杖で治療しました。
[共通備考]:アルガス達のいた部屋の中央に、サナキの置手紙が置いてあります。
鋸の刃は薄いので、戦闘には一切使用できるようなものではありません。
サナキとアルガスがどの方角へと向かったのかは
他の書き手様が自由に決めて下さい。
110
:
◆j893VYBPfU
:2011/05/29(日) 00:06:17 ID:???
以上で投下完了です。
矛盾点やご指摘等ございましたら遠慮なく下さい。
111
:
源罪な名無しさん
:2011/05/29(日) 00:33:36 ID:???
おぉ、アルガス改心(?)かぁ……
不安しかねぇから不思議w
位置的にホームズと再会出来るかが分かれ目だなぁ。
別行動が吉と出るか凶と出るか……
投下乙でした!w
112
:
<ディエルゴに喰われました>
:<ディエルゴに喰われました>
<ディエルゴに喰われました>
113
:
◆jEaHSufpKg
:2011/05/31(火) 22:48:14 ID:???
アイク、投下させていただきます。
114
:
蒼炎の勇者、立つ
◆jEaHSufpKg
:2011/05/31(火) 22:50:59 ID:???
後悔の瞬間、失望の瞬間、絶望の瞬間。
その瞬間は近付いている。
刻一刻と、近付いているのだ。
この場で会った者の死、元の世界の仲間の死を知らせる放送が。
すぐそこに、今まさに始まろうとしている。
『――諸君、これから第一回目の放送を始める』
アイクはその声を聞き、閉じていた目を開く。
その声はヴォルマルフ当人の声だった。
間違えようもない。
流れてくる声に感情はまったくと言っていいほど感じ取れなかった。
そしてすぐ、その無感情な声が流れる。
『まずは禁止エリアを発表する。
――B-4、E-4、F-8
以上の三箇所だ。現在地が該当エリアの者は速やかに移動をせよ。
ゲームを盛り上げるためにも、つまらん死に様は曝さなぬようにしてもらいたいのでな』
「…どれも遠い…か」
115
:
蒼炎の勇者、立つ
◆jEaHSufpKg
:2011/05/31(火) 22:52:04 ID:???
あえて注意するなら、F-8だろう。
地図に何か印を書こうにも何もない。
アイクは少し考える。
少しだけ時間を置き、アイクが何かを考え付いた素振を見せる。
そこでアイクが取った行動は…。
「穴を開ければいいか」
指で禁止エリアの部分に穴をあけた。
ちなみにここは宿舎なので探せば筆記具はあるはずなのだ。
しかし、そこまで頭が回らなかったのだろう。
『続いて、ゲーム開始からこれまでの死者の発表をする。』
その声を聞いて、アイクは再び放送に耳を傾ける。
自分の仲間、そしてリチャードの安否を知るため。
『――アメル、オイゲン、シーダ』
『シノン』
呼ばれた、これにはさすがのアイクも動揺を隠せなかった。
シノン、彼がどう死んだかは分からない。
自分から挑発して殺されたのか、武器もなく追い詰められ殺されたのか、分からない。
アイクは、シノンを殺した奴に対して少なからず怒りが芽生えてしまう。
放送は続く、名前が続けて呼ばれる。
『ティーエ、ナバール、ビジュ、ベルフラウ、マルス、ムスタディオ』
『リチャード』
その名前が出た時、アイクは一瞬後悔した。
もしも、あの時折れずに無理をしてでも戦えばリチャードは助かったかもしれない。
そんな事を考えてしまう。
だが、この考えはリチャードの勇気への冒涜だ。
あいつは俺を助けてくれた。
俺の大事な仲間なのだ。
116
:
蒼炎の勇者、立つ
◆jEaHSufpKg
:2011/05/31(火) 22:52:36 ID:???
『以上、11名。開始から12時間で約1/5の死者――なかなかだ。このペースでゲームに努めてもらいたい』
アイクはその言葉を聞いて無言だった。
それは、仲間を殺した者への怒りか。
リチャードを助けられなかった非力さを痛感しているのか。
今まで無感情に話していたヴォルマルフが笑った事による違和感か。
『失ったものは戻ってこない、と思っている者に一つ教えてやろう。ゲーム開始前に言ったことは覚えているな?
優勝者には望むままの褒賞が与えられる、と。それに例外はない――たとえ死した者を蘇らせることでも、だ』
アイクは眼を閉じ、考える。
他の奴をリチャードの二の舞にさせたくない。
自分のために死んでいった、彼。
もう、油断はしない。
俺は……。
『これにて第一回放送を終了する。さあ――殺し合いを再開せよ』
この声と共に、彼は歩き始めた。
放送が終わり、決意を改めた彼に一つ雑念が浮かぶ。
(ああ―――――肉が食いたいな…)
【H-7/城内の兵宿舎/一日目/夕方(放送直後)】
【アイク@暁の女神】
[状態]:全身にかすり傷・左肩にえぐれた刺し傷・右腕に切り傷(全て応急処置済み)
貧血(軽度)。
[装備]:エタルド@暁の女神
[道具]:支給品一式(アイテム不明、ペットボトルの水一本消費、地図は禁止エリアに穴が開いている)、応急措置用の救急道具一式
[思考] 1:『蒼炎の勇者』として、この場で為すべきことを為す。
(テリウスの未来の為、仲間と合流しゲームを完全に破壊する)。
2:主催と因縁がありそうな者達(ラムザ・アティ)と合流し、協力者と情報を得たい。
3:リチャードとシノンの死体を見つけ次第埋めてやる。
4:漆黒の騎士に出会ったら?
5:今度ネサラに出会った場合は、詳しく事情を問い詰める。
6:あの石化した少女は余裕があれば対処する。
7:出来れば、肉が欲しい。
117
:
◆jEaHSufpKg
:2011/05/31(火) 22:53:27 ID:???
投下を終了させていただきます。
118
:
源罪な名無しさん
:2011/06/01(水) 08:30:52 ID:???
投下乙。
どこまで行っても肉かあんたはw
119
:
源罪な名無しさん
:2011/06/01(水) 13:00:45 ID:???
投下乙です!
仲間や短い付き合いでも認めた
男の死を乗り越え……って、おいw
120
:
源罪な名無しさん
:2011/06/03(金) 09:52:53 ID:???
あ、忘れてた。一か所指摘。
第一回放送が六時だから、時間帯はそれ以降なので夜になります。
wiki収録時にそこ直しておきますね。(夕方→夜)
121
:
◆imaTwclStk
:2011/06/04(土) 21:02:06 ID:???
「open youra eyes」内で矛盾が見つかりましたので、
修正したものを修正スレに投下しました。
申し訳ないorz
122
:
源罪な名無しさん
:2011/06/04(土) 21:08:06 ID:???
了解、確かに時間的にアズリア達には会いそうにないですからな。
では、wikiもそれに合わせて修正かけますね。
124
:
源罪な名無しさん
:2011/07/25(月) 17:53:22 ID:???
先生…。殺陣が、書きたいです…。
でも先に繋ぎ進めないと時間的に被るからなあ…
130
:
◆j893VYBPfU
:2011/07/31(日) 23:00:20 ID:???
アルガス、サナキ、レンツェン、チキ、ホームズ、カトリ、ヴァイスで予約。
135
:
◆j893VYBPfU
:2011/08/13(土) 23:49:56 ID:???
すいません。予約延長で。
145
:
◆j893VYBPfU
:2011/08/20(土) 18:49:10 ID:???
諸事情により予約を破棄します。
165
:
◆imaTwclStk
:2011/10/23(日) 20:01:18 ID:???
デニム、カチュア、オグマ、アズリア、イスラで予約します。
166
:
源罪な名無しさん
:2011/10/24(月) 09:51:24 ID:???
予約キター
167
:
◆imaTwclStk
:2011/11/01(火) 13:33:42 ID:???
すいません、予約延長します
168
:
◆imaTwclStk
:2011/11/18(金) 00:08:07 ID:???
予約を再延長します
169
:
◆imaTwclStk
:2011/11/23(水) 23:32:20 ID:???
投下します!
170
:
Wrath
◆imaTwclStk
:2011/11/23(水) 23:33:16 ID:???
静寂なる闇夜の中を黙々と歩を進める。
だが、それは張り詰めた空気というのとは若干異なる。
言うなれば、切っ掛けがないだけで
それ故に結果的に皆が押し黙って歩を進めているだけであり、
そこには以前の様な猜疑心や不信感と言ったものは最早存在しない。
純然たる信頼がその場にいる三人には芽生え始めていた。
暗がりの中、イスラが目を凝らして周りの風景と地図とを見比べ、
続いていた沈黙を破る事になる。
「うん、そろそろ目的地ですね」
「そうか」
一言だけの簡単な相槌。
本来なら、それだけで再び沈黙が再開される筈だったのだが、
少し何かを思案した表情のイスラが口を開いた。
「オグマさん、一つ聞いてもいいですか?」
「イスラ?」
アズリアが唐突なイスラの行動に首を傾げる。
「あぁ、大した事じゃないよ姉さん。
いえ、僕達は結構自分の事を話したと思うんですけど、
そういえばオグマさんからは
殆ど何も聞かされてなかったなと思って…」
ニコリと子供の様な彼特有の笑顔を浮かべて
イスラがオグマに対して初めて今までの経緯とは無関係な
言うなれば友好的な質問をしてくる。
今までの刺々しい態度が抜けたイスラの様子に
オグマは少々驚いた様で一度アズリアに視線を向け、
アズリアの困った様な表情を見て、
仕方が無いなと溜息をつく。
「別に黙っていた訳じゃないが、
聞いた所で面白い話でもないが
それでも構わないのか?」
「えぇ、構いませんよ」
即座にイスラが返答し、
オグマは改めて自分の過去を思い浮かべる。
171
:
Wrath
◆imaTwclStk
:2011/11/23(水) 23:33:53 ID:???
「…産まれた場所の事は覚えていない。
憶えているのは血と臓物と興奮と蔑みの視線の中で
剣を振るっていた日々だった」
「それって…」
「あぁ、俺は所謂剣奴と呼ばれる奴隷だった。
己の命を自分の為ではなく他人の金の為に賭ける。
……最低な日々だった」
オグマの言葉の端に遣り切れない怒りが込められる。
アズリアが思わす口を開こうとするがオグマがそれを止める。
「気にするな、思わず気持ちが昂ぶったがもう過ぎた事だ。
……そう過ぎた事だ。
俺自身、そんな状況に納得していた訳じゃない。
俺は反乱を起こし、あっさりと鎮圧されたよ」
「…………」
最初に質問したイスラも相槌を打つ事すら止め、
黙ってオグマの話に耳を傾ける。
「奴隷の常などいつも同じだ。
衆人の様々な視線の中で処刑されるだけの筈だった
俺の前にあいつが現れたのはそんな時だったな…」
「あいつ?」
「前に名前だけは話していただろう?
シーダ王女だ。
年端もいかない少女がただの奴隷の為に
大勢の観衆のど真ん中で無闇に命を奪う、
その行為を諌めた。
…そして俺は命拾いしたと言う訳だ」
「……それは」
アズリアが顔を顰め、俯く。
「……安易な質問でした。
すみません……」
イスラも又、同様に自分のした
悪気は無かった行為の結果に
表情を曇らせる。
172
:
Wrath
◆imaTwclStk
:2011/11/23(水) 23:34:32 ID:???
「いや、良いんだ。
むしろ、今なら聞いていて貰いたかった。
これは既に過去の事だ。
俺は先の為に動かなければならない。
その為に振り切るべき事もある」
チャリっと彼のデイバックの中で微かな金属音が鳴る。
そう、既に引き返すことなど出来はしない。
その為に死者の尊厳を、かつて自分の命を預けた相手を辱めた。
「下らない話をしたな。
さぁ、そろそろ目的地だ。
気を引き締めてくれ」
オグマがこれ以上は話す気は無いと言う様に話を切り止めて、
視線を前に向ける。
彼の心中を察し、黙って頷き
アズリアも同様に足を踏み出す。
そのアズリアの横にイスラはそっと近寄り、
アズリアにだけ聞こえるようにぼそりと呟いた。
「あの人は強いね、姉さん。
僕は馬鹿だった……」
「イスラ?」
「行こう、姉さん!」
アズリアがイスラの言葉に振り向いた時には
既に彼はいつもの調子に戻っていた。
だが、そんな弟の様子に一抹の不安が過ぎる。
それを払拭するように首を振り、
アズリアも先を行く彼らに続いた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
173
:
Wrath
◆imaTwclStk
:2011/11/23(水) 23:35:05 ID:???
先程の会話から幾許かの時間の後、
3人は目的の場所へと辿り着いた。
だが、
「……おかしい」
アズリアが周囲を見渡し、口を開く。
閉じられた城門。
だが、灯りが燈され周囲を爛々と照らしている。
「……居るな」
今までの建物にはこれほどの光源は存在しなかった。
誰かが意図的にでも行わない限りはこれは有り得ない。
3人が其々に目配せし、警戒しながら城門へと近づく。
罠や待ち伏せの気配は感じられない。
オグマが扉に手を当て、力を込めて少しだけ扉を開く。
重々しい音を立て、軋みながら扉が動く。
その隙間をアズリアが覗き、イスラがその背面をカバーする。
「大丈夫だ、隠れている気配はない」
アズリアの言葉に呼応する様にオグマが一気に扉を開く。
開いた空間に飛び込むようにアズリアとイスラが突入し、
周辺をぐるりと確認する。
アズリアがオグマに手で合図を送り、
オグマも内部へと侵入する。
「……相手の意図が読めんな」
あまりにも簡単に踏み込めた事に3人は困惑する。
罠を張るならば幾らでも仕掛ける事が出来たにも関わらず、である。
「遊んでいる…のかも?」
「若しくは愚か者のどちらかだな」
姉弟の言葉にオグマも頷きを返すしかない。
「進んでみるしかない…という事だな」
城内の探索は彼らをより困惑させた。
明らかに人の居た様子のある光景が所々に見られたが
肝心の人は見当たらない。
一つだけ、明らかに仕掛けられていた事と言えば
地下室へと通じる扉が厳重に施錠されていたという事だ。
これでは武器庫とやらを確認する事ができない。
「どうやら、無視する訳にはいかない相手と言う訳だ」
174
:
Wrath
◆imaTwclStk
:2011/11/23(水) 23:35:39 ID:???
目的が武器庫であった以上、
このままでは此処に来た意味を失くしてしまう。
探索していない場所といえば、
目立つ大広間と其処を経由して行く事になる城主の間くらい。
相手の思惑は分からないが、
潜む所といえば、もう其処しか残されてはいない。
大広間の扉の前にはあっさりと着く事が出来た。
やはり、これまで通り罠も何も無く、
拍子抜けするほどにあっさりとである。
「さて、蛇が出るか鬼が出るか?」
扉の前で3人は足を止める。
これまでは罠らしき罠は一切無かった。
が、残る場所が此処しかない以上は
之まで通りとは行かないかもしれない。
考えあぐねる二人を置いてイスラが一歩前へと進み出る。
「開けます!」
「おい、待てイスラ!」
アズリアの呼び止めも聞き入れず、
イスラが一気に扉を押し開く。
罠は、無かった。
それでも突然のイスラの無謀な行為に
アズリアにしてみれば心臓が止まるような思いがした。
「無茶をするな、イスラ!」
「いや、核心はいってたんだ姉さん。
この相手は直接僕達に会いに来るって…
そうなんでしょう?」
パチパチパチと拍手が鳴る。
自然、3人の目は音の出所へと向けられる。
其処に王座に腰掛ける煌びやかな衣装で
飾り立てられた女性とその横で手を鳴らす青年がいた。
「よく来れました、といった所ですね。
折角、僕が丁重に御もてなししてあげようと
思っていたのに随分と待たせてくれましたけれどね」
青年が嘲笑うような表情で3人へと声を掛ける。
玉座に座る女性には変化は見られない。
いや、それ所か微動だにすらしない。
175
:
Wrath
◆imaTwclStk
:2011/11/23(水) 23:36:14 ID:???
「あなたは!」
イスラには青年に見覚えがあった。
森の中で襲撃してきた青年である事は間違いがない。
だが、何かがあの時とは違う。
「あぁ、君はあの時の?
そうか、どうやら無事に逃げ切れていたようだね。
それでこそ楽しみ甲斐があるというものだよ」
あの時の青年はこれほどの邪悪な気を発してはいなかった。
それが、今ではオルドレイクかそれ以上に濃密な気を放っている。
「あいつが以前言っていた襲撃者か、イスラ?」
既に身構えていたアズリアがイスラに問い質す。
「うん…だけど、あの時とは何かが違う…」
あの青年にこの短時間で何があったのかは理解できないが
これだけははっきりとしている事がある。
「あれは既に別物だ……いや、人ですらあるのか」
困惑するイスラを余所に青年が3人に視線を送り、
値踏みするように確認する。
「楽しませてはくれそうではあるね……」
口元を邪悪に歪めて、青年が嗤う。
その表情にぞくりとアズリアの背筋に悪寒が走る。
「呑まれるな…死ぬぞ…」
沈黙を守っていたオグマがアズリアに声を掛ける。
「クッ……すまない、私とした事が…」
オグマの言葉で正気に返ったアズリアが唇を噛み締める。
その様子を愉快そうに眺めていた青年が急に表情を引き締める。
「さて……
此処はヴァレリア王妃ベルサリア・オヴェリス・ヴァレリア陛下の御前である!
早々に跪け!」
青年が厳かに3人へと命令する。
だが、無論3人が従う道理はない。
176
:
Wrath
◆imaTwclStk
:2011/11/23(水) 23:36:53 ID:???
「そういうお前は如何なのだ?
その陛下とやらに従っているといった様子ではないが?」
一度、気後れをした事を恥ずかしむ様に青年を睨みつけながら
アズリアは青年に対して問いかける。
「…従う?
僕が? 姉さんに?
フ…フフフ…アーハハハハ!!」
先程の厳かな態度は何だったのか、
今度は狂った様に青年は嗤いだす。
「何故!? 何故、僕が従わなくちゃいけない!?
血筋? 正統な後継者?
僕がいなければ何も出来はしない、
この愚かな姉さんの癖に!?」
嗤いが収まったかと思えば今度は突然に喚き出す。
完全に行動が読めない。
喚き立てていた青年がピタリと止まり、
玉座に座り続ける女性へと向き直る。
「ゴメンよ、姉さん。
姉さんを傷つける者はもういない。
僕が姉さんの為に王国を立て直すから。
そう、『僕達の為の』王国に」
青年は恭しく、頭を下げ玉座の女性へと口づけする。
だが、女性はその間も何一つ動く事が無い。
「……生きているのか、その女は?」
アズリアが思わず疑問を口にする。
その言葉に青年が反応し、アズリア達に向き直る。
「当然、生きているさ。
ただ何も考えず、動かず、僕の愛を受けるだけだけどね」
青年は至って当たり前といった様子で
人形と化した女性の髪をなでる。
「もう苦しむ事も悩む事もない。
姉さんを脅かす者は僕が全て排除する。
どうだい? これ以上の幸せはないだろう?」
「……下らんな」
「……何だって?」
オグマの言葉に青年から笑みが消える。
177
:
Wrath
◆imaTwclStk
:2011/11/23(水) 23:37:26 ID:???
「下らんといったんだ。
誰かに隷属する人生ならば死んだ方がマシだ」
「……」
「己で選び取った結果で死のうが生きようが、
それこそが自由というものだ。
貴様の言っている事は高みから見下ろしているだけの
屑のような話に過ぎんな」
オグマの過去はそれをまざまざと理解させてくれる。
例え、あの時に死んでいたとしてもオグマは
己の心の中に自由を勝ち得ているのである。
「力で縛られる貴様の言う『王国』とやらはさぞ地獄だろうな。
いや、天国か? 貴様のような愚か者にとってだけはな!」
皮肉を込めたオグマの言葉に青年の身体が震えだす。
「ク…ククク…たかが人間風情の身でよくもぬけぬけと…」
青年が携えていた剣を投げ捨てる。
「良いだろう、本気で相手してあげよう。
貴様が蔑んだ、僕の真なる力を持ってね!」
空気が一変する。
寒々とした冷気が辺りに立ち込め、
禍々しい気配が青年の周囲に集まる。
青年は懐から一つの光石を取り出すと
それを高々と翳す。
その瞬間、光が爆発した。
轟音と爆風が周囲を襲い、
3人は思わず顔を庇う。
「…クッ! 何が起きた!?」
顔を上げて青年が立っていた場所を覗き、息を呑む。
黒い波動の中心に“其れ”は立っていた。
先程までの青年の面影などは微塵も無く、
巨大な化け物が鎮座している。
178
:
Wrath
◆imaTwclStk
:2011/11/23(水) 23:38:06 ID:???
『僕(我)は憤怒の霊帝アドラメルク。
この世に於ける矛盾に対する怒りの顕現だ!!』
雄山羊の様な頭部を持った怪物が吼える。
魂まで凍てつく様な禍々しさを放ち、怪物が迫る。
「姉さんは下がって!
その装備じゃ棄権だッ!」
「だ、だが…クソッ!」
庇う様に前に進み出る。
アズリアも反論しようとするが、
イスラの言う事が軍人としても
剣士としても正しい判断である以上、
歯噛みをする思いで素直に受け入れる。
それを横目で眺め、オグマがイスラに呟く。
「死ぬなよ」
「貴方こそ」
イスラの返答に少しだけオグマが笑い、剣を構える。
3人が其々に構え、其れを迎え撃つ。
濃密なる死の気配の中で。
179
:
Wrath
◆imaTwclStk
:2011/11/23(水) 23:38:38 ID:???
【C-6/城(謁見の間)/未明】
【オグマ@紋章の謎】
[状態]:健康
[装備]:ライトセイバー@魔界戦記ディスガイア
[道具]:万能薬@FFT、ナバールの首輪、マルスの首輪、
基本支給品一式(水を多少消費)
[思考]
0:主催陣の殲滅と、死者蘇生法の入手。手段・犠牲の一切を問わない。
1:信じるべきは己の剣の腕のみ。
2:アズリアやイスラと共に、主催の潜伏場所・首輪解除の方法を探す。
3:ナバールの首輪を宝物庫に持って行き、武器を入手。
その後、イスラの案内のもと、少女(ティーエ)の首輪を回収。
4:ゲームに乗る者や自分を阻害する者は躊躇せず殺す。
5:ネサラはしばらく泳がせておく。
6:マルスの首輪は解析用に所持、武器には換えない。
[備考]
※ネサラについては、マムクートのような存在ではないかと推測しています。
鳥のような姿に変身することが出来るのではないかと考えています。
【アズリア@サモンナイト3】
[状態]:健康
[装備]:ハマーンの杖@紋章の謎
[道具]:傷薬@紋章の謎、基本支給品一式(水を多少消費)
[思考]
0:主催を倒し、イスラと共に生還する。
1:オグマ、イスラと協力し合う。
2:サモナイト石を探し、ここがリインバウムであるかを確かめる。
3:自分やオグマの仲間達と合流したい。(放送の内容によって、接触には用心する)
4:自衛のための殺人は容認。
【イスラ@サモンナイト3】
[状態]:健康
[装備]:チェンソウ@サモンナイト2、メイメイの手紙@サモンナイト3
[道具]:支給品一式(水を多少消費)、筆記用具(日記帳とペン)、
ゾディアックストーン・ジェミニ、ネサラの羽根
[思考]
1:アズリアを守る。
2:ディエルゴが主催側にいるなら、その確証を得たい。
3:サモナイト石を探し、ここがリインバウムであるかを確かめる。
4:ティーエの首輪を回収する。
5:対主催者or参加拒否者と協力する。(接触には知り合いであっても細心の注意を払う)
6:自分や仲間を害する者、ゲームに乗る者は躊躇せず殺す。
[備考]
※拾った羽根がネサラのものであることは知りません。
聖石と羽根の持ち主には関係があるのではないかと疑っています。
※羽根の出所については、オグマが知っているのではないかと考えています。
※オグマが自分たち姉弟に隠し事をしていることに気付いていますが、不信感はありません。
180
:
Wrath
◆imaTwclStk
:2011/11/23(水) 23:39:30 ID:???
【デニム=モウン@タクティクスオウガ】
[状態]:アドラメレク融合率100%、憤怒の霊帝化
[装備]:ゾディアックストーン・カプリコーン@FFT
[道具]:支給品一式×3、壊れた槍、鋼の槍、シノンの首輪、スカルマスク@タクティクスオウガ
:血塗れのカレーキャンディ×1、支給品一式×2(食料を1食分、ペットボトル2本消費)
ベルフラウの首輪、エレキギター弦x6、スタングレネードx5
[思考]:1:「弟」として、「姉(カチュア)」を守る。
2:アドラメレクとして、いずれは聖天使の器(カチュア)を覚醒へと導く。
3:3人(特にオグマ)を殺す
4:シノンの首輪を、地下の武器庫で交換しておきたい。
5:久しぶりの現界を楽しむ。
[備考]:武器庫には鍵を掛けただけでまだ行っていません。
セイブザクィーン@FFT 炎竜の剣@タクティクスオウガを近くに投げ捨てています。
【カチュア@タクティクスオウガ】
[状態]:失血による貧血、チャーム
[装備]:魔月の短剣@サモンナイト3
[道具]:支給品一式、ガラスのカボチャ@タクティクスオウガ
[思考]:*チャームによる自己喪失につき思考不可
181
:
◆imaTwclStk
:2011/11/23(水) 23:40:16 ID:???
以上で投下完了です。
誤字、脱字、矛盾などありましたら指摘お願いします。
182
:
源罪な名無しさん
:2011/11/28(月) 15:39:03 ID:???
感想遅れましたが、久々の投下乙です。
ただ一つ気になる点が。地下武器庫の扉は支給品の鍵でないと開閉出来ないと百話目の臨時放送で明記されているので
その辺りが矛盾してしまいます。あと、前々話でデニムが首輪とアイテムの交換を考えていたので、交換しなかった理由の補完も欲しい所かと。
まあ少し修正すればなんとかはなりますよ
183
:
◆j893VYBPfU
:2011/12/10(土) 21:07:16 ID:???
では、一度予約キャンセルしているのでゲリラ投下になりますが。
アルガス、サナキ、ホームズ、カトリ、ヴァイスの五名で投下致します。
184
:
Desperado
◆j893VYBPfU
:2011/12/10(土) 21:10:11 ID:???
「陛下、これからどこへ向かわれるご予定ですか?」
「うーむ。それをずっと考えてながら歩いてたのじゃが…」
城門をくぐり、暗闇の世界に足を踏み入れながら。
騎士見習いは、月明かりを頼りに先導しながら、
異世界の皇帝へ慇懃に問いかけた。
これまでの傲岸不遜な態度からは想像も付かぬ、その豹変ぶりに。
サナキは内心の驚きを禁じ得ずも――。
「とりあえずは、ホームズのいそうな所じゃ。
このままじゃと、ラムザの顔を完璧に潰す事にもなるしの。
…お主、見当はつくかの?」
――表向きは平静を装い、その問いを返す。
手元に照明はあるが、付ける訳にはいかない。
ラムザ達の追跡があれば、すぐに所在を気付かれるだろうから。
そして、今見つかれば捕虜のアルガスの処遇で論争となるだろう。
ラムザとアルガスの仲の険悪さは、充分過ぎるほどに理解している。
アルガスを殺す事による利益は大きく、一方で生かしておく危険は高い。
先程の臨時放送により、そう判断されかない状況に陥っているが故に。
ラムザはアルガスをあえて生かそうとまでは考えないだろう。
殺し合いの場において、他者の生命の価値は限りなく暴落する。
それが元の世界で不倶戴天の関係にあった者なら、なおさらだ。
それに、もしラムザがこちらの説得により納得した所で。
「凶暴」という文字に手足が生えたような傍らの少年が
一体何をしでかすか、到底知れたものではないのだ。
185
:
Desperado
◆j893VYBPfU
:2011/12/10(土) 21:11:33 ID:???
残念だが、ラハールがさほど良心的な人間性の持ち主ではない事を、
これまでの行いからサナキも充分に理解していた。
そして、彼が取るであろう様々な暴挙に対して。
あのラムザも、今度ばかりは本気で止めようとはしないだろう。
むしろ、「静観」と言う名の見殺しを決め込むかも知れない。
つまり今二人に見つかれば、アルガスはどの道おしまいという事なのだ。
――人望がないというのも、色々と大変じゃのう…。
サナキは現状を思い、心中で溜息を付きながら。
アルガスの意見を待つ。
「ホームズ達はあの茶…リュナンを追いかけていました。
ならば、リュナンが取るべきであろう行動を予測して、
向かうと思われる場所へと向かうのでないかと」
少しして、待ち望んだ返事があり。
復讐相手にはやはりまだ感情的にもなるのか、と。
口調の訂正に、サナキは僅かな安堵と落胆を感じ。
「じゃとすると、やはり…。」
「リュナンは丸腰で、なおかつホームズとの遭遇を恐れています。
隠れるものが多く、間に合わせでも装備を整え易い施設があり。
なおかつ、先程の場所から最も近い場所。そうなれば…。」
二人は手元の地図を広げながら、身近な施設を指し示す。
「C−3…、北東の村か。そうなるかの」
「…仰せの通りかと」
186
:
Desperado
◆j893VYBPfU
:2011/12/10(土) 21:13:11 ID:???
サナキは鷹揚に答えながらも、その場にいた場合の最悪の事態を連想する。
臨時放送をリュナンが聞いた事も考慮に入れれば、彼が「装備を整える為に」
村中で「他の参加者達の死体」や、ともすれば「生ける弱者」までもを血眼で
探し回っている可能性も充分に考えられるのだ。だが、それにもかかわらず。
アルガスはその危険性については、一切触れる事はなかった。
主君をも危険に晒す可能性に、気が付かぬ程の愚鈍なのだろうか?
――否、さにあらず。
意見を語るアルガスは、明らかに緊張に満ちた顔付きであり。
沈黙は決して彼の愚鈍や保身が原因ではなく、
主への配慮が理由なのだとサナキは見なした。
錯乱者にしてみれば、サナキもまた「この上なく美味しい獲物」になりかねないが故に。
主に余計な不安を与えぬよう、黙して危険に備える覚悟であるらしい。
――こやつ、全く筋がない訳ではないらしいの。
サナキはアルガスの配慮に胸の内では関心しながらも。
その美点に気付かぬ振りをして、騎士見習いに下知を下す。
「では、決まりじゃ。そちらにむかうぞ」
「…お望みのままに」
そうして、奇しくも先のマグナ達と同じ結論に達し。
アルガスの相槌に鷹揚に頷くと、サナキ達は慎重に東進を開始した。
◇ ◇ ◇
「…ところでの、アルガスよ。
話は変わるが、一つ話しておきたい事がある」
「何でしょうか?」
187
:
源罪な名無しさん
:2011/12/10(土) 21:14:17 ID:???
何処までも続く、暗闇の草原をしばらくの間歩みながら。
唐突にサナキはアルガスにその顔を向け。
「ここにはアイク、ミカヤ、ネサラ…と、
わたしの知り合いもそれなりに呼び出されておる。
曲者ぞろいではあるが、皆信用に値する者達じゃ。
ただな…」
どこか悲しげに。それでいて嬉しげに。
皇帝はここに呼び出された、知己の名を語り出す。
己が誇りと、心の拠り所として。
だが、その顔がにわかに曇り――。
「わたしの勘が正しければな、ここに危険人物も一人おる」
「…その者の名は?」
皇帝は、唯一の忌み名を口にする。
「元ベグニオン帝国中央軍総司令官ゼルギウス。
ようはわたしの、かつて臣下じゃった男じゃ。
名簿には“漆黒の騎士”と書かれておるがの。
人違いの可能性もあるのじゃが、一応は話しておこうかの?」
サナキは“一応”と念を押し、他愛もない世間話であるかのように振舞う。
だが、その態度はどこかしら強張りを感じさせるものであり――
「そいつはの、我が国ベグニオンで非の打ち所のない最優の騎士での。
前線に出れば負け知らずで、知略に長け、礼節を弁え、誰にも尊敬され。
一時は大陸一の剣士とまで評された傑物とまで来た。
あやつがいた当時はな、中枢まで腐りきったベグニオンにおいてもの。
わが親衛隊さえ除けば、ほぼ唯一の信頼できる男じゃったが…」
188
:
Desperado
◆j893VYBPfU
:2011/12/10(土) 21:15:07 ID:???
サナキはかつて重用した一人の騎士を褒め称える。
だが、その貌はどこかしら引き攣ったものであり――
「…わたしを、ベグニオンを、裏切り破壊し尽くしおったわ」
サナキが最後に口にした言葉には――
明らかな嫌悪と不快に満ち溢れていた。
皇帝は一つ大きな溜息を吐き、肩を竦める。
それはゼルギウスを責めるというよりは、自虐するようであり。
それは悲しげに、己が不明を恥じるように――
暗く沈んだ告白は始まる。
「じゃがな。それを未然に防げなかったは、わたしの不明の証明に他ならん。
あやつにした所で、最初から裏切ったという意識すらないのじゃろうな。
そもそも、あやつが仕えていた対象は、わたしでもベグニオンでもなく。
最初から直属の主、宰相セフェランのみだったのじゃろう。
言うなれば、“セフェランの騎士”だったのじゃ。
わたしはな、それを完全に見誤っておった…」
己が恥辱をゆっくりと、存分に噛み締めるように。
苦々しげにその言葉は続き。
「“漆黒の騎士”はな。大陸の破壊を企てた、宰相セフェランの右腕としての。
己の地位を利用して大陸に二度も戦乱を引き起こした、言うなれば梟雄じゃ。
ベグニオンはおろか、大陸の全ての国々に恐るべき惨禍を撒き散らしおった。
我が国で信用を築いたのもセフェランの目的…。人類滅亡の野望の為じゃった。
おそらくは主の為に、周囲の敵全てを欺き利用した程度の認識じゃろうの。
戦場で“敵”を欺き策に陥れるは、むしろ軍功ものじゃしな」
189
:
Desperado
◆j893VYBPfU
:2011/12/10(土) 21:15:46 ID:???
サナキは自嘲に、その愛らしく小さい唇を歪ませる。
彼女自身がこれまでに歩んだ道が、そうさせるのか?
その暗い哂いは、年相応の少女のそれとは完全に掛け離れた、
老獪な政治家のそれであった。
「主の望みを言わずとも読み取り、その期待に答えるため最適の行動を取る。
そういう意味ではの、まさにあやつは最も優秀な“騎士の鑑”やもしれん」
「じゃがの。あやつが生涯にやり抜いた事は、全て破壊のみじゃ。
あやつは主を含めての。誰一人…、何一つ…、守り、救いなどせなんだわ。
あやつはただ、盲目的に主の破滅への願いを叶えようとするのみ。
そして、最後は宿敵との私闘に走り、勝手に先に逝きおったわ。
主を一人、残しての…」
主、という言葉を殊更に、皮肉げに語る幼き皇帝。
だが、その主と呼ぶ響きにはどこか死を悼むような、悲しげな色が混ざっていた。
おそらくは、そのセフェランという名の主に特別な感情でも抱いていたのだろう。
これまでの中で、同罪である筈のセフェランだけは悪く言わなかったのだから。
アルガスにもその程度の機微は理解に至っていた。
そして、だからこそ、最もセフェランの傍にありながら
ただ破滅を幇助したのみであるゼルギウスという騎士を
嫌悪するのかもしれない。…あるいは、嫉妬が故か。
だが、アルガスにそれを聞く権利はなく、その資格もまたない。
無粋も極まる問いであると同時に、皇帝の内面に踏み込むものだから。
だが、皇帝の独白を聞く権利だけは、光栄にも与えられている。
だからこそ、アルガスは黙して聞き届ける。
全ては、己が主の意を汲む為に。
190
:
Desperado
◆j893VYBPfU
:2011/12/10(土) 21:16:26 ID:???
「わたしはな、あのような者をもはや騎士とは認めぬ。
真の騎士とはの、ただ殺す事にのみ長じれば良いというものではない。
そのような騎士は猟犬か、さもなくば凶器じゃ。
その存在が持て囃されるのは、戦場においてのみ。
獲物を狩り尽くせば、もはや誰にも必要とされぬ。
むしろ存在自体が持て余される、傷付けるしか能のない害悪というものじゃ」
「騎士の鎧とはの。国の為、あるいは人の為…。いや、どちらでも構わぬ。
誰かの代わりに身を挺する為にこそ、身に纏うべきものではないのかの?
そして、仕えるべき主が道を違えておるというならな。
己の身を顧みず過ちを諌めてこそ、真の忠道ではないのかの?
それこそが真に主を守る忠義であり、騎士道というものではないのかの?」
サナキは語る。騎士とは何たるかを。
サナキは問う。騎士の歩むべき道を。
眼前の騎士見習いに、己が理想の騎士像を語る。
最も騎士の資質に恵まれながら、最期まで真に騎士足りえなかった
紛い物の騎士の、どうしようもなく愚かな生き様を通じて。
「もしかするとな。あやつもお主と同じく蘇って、ここにおるかもしれん。
ただな。わたしはゼルギウスがいようと、いなかろうとどちらでもよい。
そんな些事より、わたしは何を言いたいのかと言うとじゃの。
お主が私の騎士になりたいならな。あやつのようには、決してなるな。
誰かを救え。何かを守る存在となれ。その為に強くなれ。
…そう言いたいのじゃ」
「…畏まりました」
191
:
Desperado
◆j893VYBPfU
:2011/12/10(土) 21:17:48 ID:???
――ベグニオン最優の騎士にして、叛乱者ゼルギウス。
もしその男がこの場にいれば、存在自体が危険であるにもかかわらず。
あえてサナキは些事と言う。なにより、彼女とは敵対する立場にあるというのに。
過去の亡霊の驚異を語るより、むしろ未来の騎士の在り方を問うことにこそ
この会話の意義があると言わんばかりに。
サナキはアルガスのみを、ただ見据える。
ただそれは、裏を返せばそれだけ成長を期待されているという事実であり。
アルガスはその言葉に込められた、皇帝の思いに胸が熱くなり。
ただ一言、了承の意を漏らすのみであった。
だがサナキはアルガスの引き締めた顔を覗き込み。
これまでの様子から一転、底意地が悪そうに頬を歪ませ――
「まあ、お主じゃあやつのようになろうにも無理じゃがのう?」
「お言葉ながら、それは少々侮りが過ぎるのでは?」
年頃の少女の顔で、アルガスをからかう。
流石に、叛乱者にも劣るという言葉だけは聞き捨てならぬと反論するも。
「ほーう。それは期待してよいのじゃな?
仮にも“大陸一の剣の使い手”と呼ばれ、軍事大国二つを謀略で手玉に取り。
紛い物でも“英雄”を演じた人間に能で並び立つと、そう抜かすのじゃな?」
「………努力は、してみる………」
紛い物といえど、その経歴たるや聞くだけで壮絶な騎士と改めて比較され。
見る間に顔色を蒼くしたアルガスに、サナキは悪戯っぽく笑いかけた。
だが、アルガスは、途轍もない重圧をかけられながらも。
その少女の笑顔に、これまでに一度も感じたことのない親しみと安らぎを感じ。
――まあ、こういうのも悪くはないかな?
知らずに、己もまた顔を綻ばせた。
192
:
Desperado
◆j893VYBPfU
:2011/12/10(土) 21:19:23 ID:???
イヴァリースでは、絶えず自らの立場を周囲から脅かされ続けていた。
平民には生命を狙われ、上官には顎で使われ、役立たずと見倣されれば切り捨てられる。
貴族というにはあまりにも没落が過ぎ、そして平民からは悪魔のように目の敵とされる。
誰からも相手にはされず、誰からも見下される。
アルガスは取るに足りずと。その存在が邪魔であると。
世界はただ残酷であり、全てが敵という他なかった。
周囲はただ酷薄であり、全てを利用せねば生きていけなかった。
だが、年若い未熟なアルガスには、何もかもが足りなさ過ぎた。
ゆえに憎悪を心の糧として、血筋と家の再興を心の拠り所として。
貧弱な己を、捻じれながらも必死に保ち続けた。
そう、それこそが彼の心を形成する全てであり。
常にその心に緊張を強いられ、心休まる時など一時もなかった。
――だが、心の何処かでは。
母親のように、無条件でその存在を認めてくれるものを求めていた。
その事実を、近い年頃でありながら、真に貴族たりえるサナキと口を交わすことで認識し。
心のどこかが満たされたような、不思議な感覚に戸惑いを覚えた、
その時に――
「まあ精進するがよい。…っと、あれはなんじゃ?」
「あれは…ホームズ?あとは…」
こちらへと向かう、何かを背負う人影らしきもの達を見つけ。
二人はほぼ同時に、緊張にその身を構えた。
193
:
Desperado
◆j893VYBPfU
:2011/12/10(土) 21:21:01 ID:???
◇ ◇ ◇
視界の悪い暗闇の草原を、恋人を背負いどこまでも疾走する中で。
「あーっ!七三の馬鹿発見!馬鹿発見ッス!
もう一人は、サナキのお嬢ちゃんッス!」
唐突に甲高い大声を上げたプリニーの声が、いつになく緊張に満ちている事を疑問に思い。
暗闇の草原を疾走し続けていたホームズは、それが指し示した、南の方角と振り向く。
「いや、何も見えねえが、ってあれか…?お前、真っ暗なのによくわかったな?」
「プリニーの目をもってすれば、造作もない事ッスよ!」
重労働の疲労により、空気を貪る荒い息をどうにか抑え。
深夜の海洋を眺めるように、遠くに目を凝らしてみれば。
確かに人影らしきものが二つ、並んでいるようにも見えた。
普段より暗闇には目を慣らしている、海の男をしてかろうじてといった塩梅だが。
だが、プリニーは発見した二人を、一目で特定していた。
しかも、相手は明かりさえ付けてなどいないというのに。
そもそも、こんな深夜の草原の、注意しなければ直ぐ側にいようと
見落としかねないこの視界の悪さの中で、普通気がつくものなのか?
だが、ひどい焦燥の中でホームズはそれ以上疑問を抱いている余裕はなく。
むしろ、サナキが傷を癒す杖を支給されている事を知っているが故に、
すぐこの場でカトリの癒す事にのみ注意が傾いてしまい。
ただその言葉が真実である事に縋り、二つの人影に近付いた所――。
ホームズは無事、アルガス達と遭遇を果たす。
194
:
Desperado
◆j893VYBPfU
:2011/12/10(土) 21:24:46 ID:???
「サナキ、どうして今ここにいる!ラムザと一緒にいるんじゃなかったのか?
それに、七三まで解放しちまってどういう積もりなんだ一体!」
「あー、それはじゃの…。話せばちと長くなるんだが…」
「いえ、私からお話しいたします」
何故、二人は今ここにいる?
ラムザは今どうしている?何をしている?
嫌に気まずそうなサナキの理由はなんだ?
それにアルガスの態度も言葉使いも、奇妙極まりない。
一体、俺達と別れた間に何が起こった?
だが、仲間を見つけて少しは気が落ち着いたのか。
その足を止めたホームズに、様々な疑問が沸き上がり。
混乱は加速する。いや、それらは今は差し置いてでも。
早急にしなければいけないことがある。
それは――。
「…いや、ぐちゃぐちゃ話している暇はねえ!
俺達は今、タルタロスの野郎に襲われて城へ逃げている!
一緒にいたマグナもどうなったか、全く見当も付かねえ!
ようやく見つけた俺の女も、金髪の糞女に射たれて相当マズイ!
サナキ、カトリをそのリブローの杖って奴で癒してやってくれ!
で、あとは七三。信用していいってんなら、てめえは見張りを頼む!
誰かやって来やがったら、すぐに知らせろ!」
ホームズは要件のみを簡潔に述べる。
二人は戸惑いをその顔に浮かべるも、事態が尋常ではない事だけはその態度から察し。
緩慢な動きながらも、その指示に従う。ホームズはカトリをその背から丁寧に降ろし。
サナキは杖を掲げて彼女の治療に、アルガスは周囲の見張りに付こうとするも。
195
:
Desperado
◆j893VYBPfU
:2011/12/10(土) 21:25:42 ID:???
「…ま、そろそろッスかね?」
プリニーが、聞こえるか聞こえないか程度の。
僅かなつぶやきを口に漏らしたのと同時に。
ぐっ、とホームズが呻き声を漏らし。
唐突に、俯せに膝から崩れ落ちた。
「…ホームズ?しっかりするのじゃ!」
サナキはホームズに駆け寄り、その様子を見る。意識はかろうじて、ある。
見れば背中に一本、黒光りする何かが深々と突き刺さっていた。
その傷の深さは、一見した所で分かるようなものではないが、危険であるのは確実だ。
出来れば早急にホームズ達を癒したいのだが、
今杖魔法を使い無防備を晒して良い状態ではない。
「…出てこい、卑怯者ッ!それとも今更臆したかッ!」
アルガスは身構えて襲撃者を挑発し。
一方プリニーは何の躊躇いもなく彼の後ろに隠れると。
やがて、暗闇の草原から滲み出るように。
ゆっくりと、一人の年若い男が足音も無く現れた。
「おー、おー。このオレが卑怯者ォ?…卑怯者だってよッ?!
よりによってお前が、このオレにねぇ?ハッ、笑わせてくれるねッ!」
「…お前はッ!」
それは、確かにアルガスが一度出会った男であったが。
その人相は昼間とはもはや別人のように、どす黒い悪意のみに染め抜かれていた。
196
:
Desperado
◆j893VYBPfU
:2011/12/10(土) 21:26:52 ID:???
――野に解き放たれた、人型の獣。
それを一言で喩えるなら、そういうべき者なのだろう。
それは凶の気配を撒き散らし、その本性を今や剥き出しにしていた。
彼が欲する事など、今更考えるまでもない。
わざわざ、ホームズを不意討ちで仕留めて置きながら。
今更になって姿を現した理由も、ただ一つ。
ほぼ丸腰に近い、年端もいかぬ少年少女二人ならどう遊んでも勝てると、
その男は確信しているからだ。
故に、その凶相が今や狂喜一色に染まり。
舌舐めずりの代わりに、二人を言葉で嬲り始める。
その尊厳を破壊し、殺す前に屈辱を与えんとすべく。
「よっ、半日ぶりだな。七三のガキッ。
相変わらずマヌケそうな顔してやがんなぁ、おい?
だがま、てめえもメスガキ捕まえて今は忠義の騎士気取りかぁ?
黒騎士どももそうだが、しっかりしてやがんなてめえもよッ」
黒騎士ども、という言葉に二人は引っ掛かりを感じはしたが。
問い質した所で、まともな返答など到底期待出来ないだろう。
その口調が、全てを侮蔑する事のみを目的としたものだから。
傷つけ、奪い、殺し尽くす事こそが己が喜び。
その眼光は、その言葉よりも雄弁に嗜虐と殺意を語っていた。
そして、その対象はその瞳に映る四人も当然例外ではなく――。
「それにその金髪もそいつが俺の女だってよ、笑わせてくれるねッ!
昼間は別の黒騎士と乳繰りあってた、只の雌犬だってのによッ!
なんだここはぁ?殺し合う場じゃなくて、春を売る場ってかッ?」
197
:
Desperado
◆j893VYBPfU
:2011/12/10(土) 21:27:59 ID:???
嘲笑、嗤笑、憫笑、冷笑、失笑――。
人間獣の嗤いは、あらゆる負の感情に満ち溢れ。
この世全ての存在を、その根底から貶めて抜いていた。
「なんだとッ?!」
「それよりも二人を、二人をどうにかせんと!」
侮辱による憤激に声を荒らげるアルガスと、
盟友の負傷に焦りを見せるサナキの狼狽に、
ヴァイスはさも満足げに、獰猛に笑いかけ――。
「…安心しな、傷は深いがこんなんじゃ死なねえよ。
あとのお楽しみの為に、わざわざ女も急所も避けてやったんだ。
涙流して感謝して貰いたいくらいだね?
とはいえ、金髪の男はもう動けねえだろうがね。
…で、残るはてめえら二人だけってことだ」
優しく、静かにホームズの傷の程度と。
サナキ達の処刑を宣言する。
「逃げたきゃ逃げてもいいぜ?…逃げ切れりゃあなあ。
その分、オレは二人で楽しむって事にもなるがねッ。
仲間なんだろ、てめえらは?だったら、見捨てられねえよなあ?」
ヴァイスは嘲笑う。彼は分かりきっているのだ。
「仲間を気遣う」ような甘過ぎる二人に、見殺しなど出来る筈がないと。
無論、二人がその背中を見せれば即座に斬り捨てるつもりではあるが、
ヴァイスは抵抗を心より期待する。
悪足掻きが無様であればあるほど、それを踏みにじる事に悦を覚えるが故に。
己以外の全てを貶め、辱める――。
それこそが、己が奪われた誇りを取り戻す唯一の道。
ヴァイスはその凶念一色に取り憑かれていた。
198
:
Desperado
◆j893VYBPfU
:2011/12/10(土) 21:28:34 ID:???
だが、それで理性までもを失ったわけではなく。
むしろ性根が小物であるが故に、更に姑息な戦術を打つ。
全ては己がより安全に、楽しめる狩りに興じたいが故に。
それは悪魔のように甘く囁き、二人の絆に楔を打ち込まんとする。
「ああ、そうだ七三。なんなら昼間オレにやろうとしたみたいに、
そのメスガキ突き飛ばしてその隙にてめえ一人だけ逃げるってのもアリだな?
それならより確実だ。どうする、七三のガキッ?」
小物はアルガスとの、昼間の会合を暴露する。
ヴァイスは満足げに嗤い――。
「アルガス、お主…」
「…くっ」
サナキは怪訝に、アルガスを振り返り――。
アルガスは硬直する。それはまさに事実であるが故に。
それはまさに過去の汚点であるが故に。
彼の心に、深く突き刺さる。
「このオレが気付かないとでも思ったか?…甘過ぎるんだよ、ガキッ。
ま、だからこそ逆手に取れたんだがな。そういう奴こそ隙が出るッ。
って、訳でだ。そいつは使えねえし、何一つ信用に値しねえよメスガキ。
せいぜいが仲間の振りをして身代わりに使う程度だ。
ならお前もそうすりゃいい。因果応報ってやつだ」
――アルガスへの嘲笑は続く。
さも得意げに喋り続けるが、それはサナキへの忠告ではなく、
ただ己が狡智を誇示するものであり。
199
:
Desperado
◆j893VYBPfU
:2011/12/10(土) 21:29:08 ID:???
「七三、てめえも今更騎士気取りたいなら、今ここで時間稼ぎにオレに殺されるんだなッ。
だったらさっきの言葉も撤回してやるよ。『馬鹿が無駄死にしやがった』ってね?
で、そのメスガキも後であの世に送ってやるから、この俺に感謝するこったな?」
――アルガスへの侮蔑は続く。
お前がどう足掻こうとも、それは全て無駄なものでしかない、と。
その能力も、心構えも、全てを嘲笑う。
この人間獣は心得ているのだ。己とアルガスとの彼我の実力差を。
だからこその、この余裕。
だが、サナキはその得意げな嗤いに、ただ深く溜息を付き。
ヴァイスのその在り方を、ただ哀れみ蔑んだ。
「…馬鹿はおぬしじゃよ。そして哀れなのものよのう」
「…なんだと?」
サナキは、これまでのヴァイスの罵倒の中で。
彼の本質を充分過ぎる程に理解していた。
弱者にしか強気に出られぬ、そしてそれを嬲り抜く事によってしか
己の存在意義を取り戻せない、救いようのない愚物。
そこには優雅さや尊厳など、欠片も有りはしない。
――だが、だからこそこちらも助かるというもの。
絶えず他人を見下す事を喜びとする卑しい性格というのであれば?
余裕を見せようとして有頂天となる分、足元を掬い易いという事でもある。
“漆黒の騎士”が敵に見せるような、強者が持つ余裕とは似て非なるもの。
200
:
Desperado
◆j893VYBPfU
:2011/12/10(土) 21:29:39 ID:???
サナキはこの絶望的な状況の中で、ヴァイスの性格に恐怖する事なく。
むしろ矮小な人物である事に、僅かながらも勝機を見出し――。
サナキは不敵に口元を歪め、笑いながら言い放った。
「……アルガスを見てみい。おぬしにすっかり怯えておる。
足腰が震え過ぎて、まともに戦えるかどうかすら怪しいわ」
言葉の内容とは裏腹に、自信に満ちた口調でもって。
その態度に、騎士見習いはおろか眼前の獣すら驚きの目で彼女を見る。
「…おいおい。それが分かってて、どうしてオレの方が馬鹿なんだ?」
人間獣はその笑みにむしろ毒を抜かれ、ただ呆然と疑問を口にする。
現実を認識しているにも関わらず、何故貴様は心が折れぬのかと?
「じゃがの、目は死んではおらん。むしろ燃え盛っておる。怒りにの。
たとえ己が恐怖しようとも、主を守るために前に出る。命賭けでの。
その心構え、実に天晴れな騎士のものだとは思わぬか?」
サナキは哂う。貴様ごとき愚物には、永久に理解出来ぬ美徳だろうと。
確信をもってその問いに答える。
「貴様も一見騎士のようじゃが、そうしたくなる他人は、果たしておるのか?
他人に庇われた事は果たしてあるのか?そんなもの、一切ないじゃろ?
人はどれだけ他人に為に尽くし尽くされるかで、その価値がわかる。
確かに己は大事じゃ。じゃがそれしかないのは獣にすら劣る屑じゃ。
犬畜生とて、その家族だけは人間以上に育み大事にするからの」
サナキは嗤う。貴様ごとき芥屑には、永久に縁無き世界だろうと。
侮蔑をもってその愚かさをなじる。
201
:
Desperado
◆j893VYBPfU
:2011/12/10(土) 21:30:13 ID:???
「命惜しくば、疾く失せるがよい。この騎士の面汚しめが。
お主のその目、わたしが始末してきた元老院の下衆どもそっくりじゃわ。
濁り切った上に、欲と見栄しか在りはせぬ。実につまらぬ。
身分を問わず、真に卑しきものは皆同じ目をするもんじゃの」
サナキは嘲笑う。その身分ではなく、ヴァイスという存在の卑しさを。
アルガスは、己に向けられたその信頼に、感動に打ち振るえ。
ヴァイスは――。
「黙れッ!黙って聞いてりゃいい気になりやがってッ!
何様のつもりか知らねぇが、てめえこそ身の程って奴を教えてやるよッ!
そして舐めた口を聞きやがった事を、後悔して殺してやるからなッ!」
激昂と更なる殺意をもって、対峙する。
これ以上の言葉は要らぬと、その態度で雄に語る。
「…アルガス」
「…はっ」
サナキはこの人間獣に向けた言葉とは対照的に。
労りの言葉を、アルガスに向ける。
「頼むぞ」
「承知いたしました。この生命に代えましても」
アルガスは決意をもって前に出る。
主の信頼には、勇気でもって。
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