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0さん以外の人が萌えを投下するスレ

1名無しさん:2010/05/07(金) 11:07:21
リロッたら既に0さんが!
0さんがいるのはわかってるけど書きたい!
過去にこんなお題が?!うおぉ書きてぇ!!

そんな方はここに投下を。

2「馬鹿だなぁ(頭なでなで)」:2010/05/15(土) 05:19:37 ID:Xaa4.f1.
 三日降り続いた雨が漸く止んだ。
 久しぶりの太陽は目に眩しく、その光に浅い緑がきらきらと光っている。心地のいい風を受けながら、俺は坂道をゆっくりと上って行く。
 海沿いの田舎の街。こんな街は来た事もなかった。あんたが居なけりゃ、これからだって来る事はなかった。
 坂を上りきった所で振り向くと、眼下に海が見えた。坂道だらけの小さな街。あんたが以前話してくれた事があった、その通りの光景だ。
 覚えのある匂いに教えられて、突き当たりを右に曲がった。人のツテを頼って頼って手に入れたメモを見ながら、目的の場所へとたどり着く。

「---久しぶり」
 何を話していいのか分からない。あんたからの返事は無い。
「ここ、すっげ遠いんだな。この間やったバイト代がパァだ」
「場所もさ、あんたの親に聞いても教えてくんねーし。苦労したんだぜ。あんた、俺以外にほとんど友達も居なかったからな、ここ知ってる奴も居なくてさ」
「あぁ、そうだ。あんたの荷物さ、どうすりゃいいの。もう戻って来ねーんなら、あれ、どうにかしてくんない?邪魔で仕方ないんだけど」
 俺の後ろを通り過ぎた家族連れが、怪訝そうな顔で俺を振り返った。
「…………ほら見ろ、変な奴って思われたじゃねーか。早く何か言えよ」
 さわさわと梢の間を風が吹き抜ける。
「なんで黙ってんだよ。あんたいっつもそうだよな。俺が何言っても、我が侭言ってもさ、いっつもニコニコ笑ってさ、嫌とか絶対言わねーの」
「嫌って、言えば良かったんだよ。あん時もさ…徹夜明けだから、眠いから嫌って、言えば良かったんだよ…!」
 黒く綺麗に磨かれた石に、俺はとりとめもなく喋りかけた。馬鹿みたいに。
「嫌だって、そう言って迎えになんか来なけりゃ、事故ったりもしなかったし、こんな狭くて暗い所に入らなくて済んだんだ。今だって、笑って俺の隣に居れたんだ!」
 膝をついて、砂利をかき分けた。土を毟った。
「出てッ…こいよ…!何が永遠の眠りだよ…!狭いとこじゃ寝られないって…俺の隣じゃないと寝られないって、あんた前に言っただろ!…俺のっ、俺の言うこと、何でも聞いてくれたじゃん………なんで…出て来てくんねーんだよ!」
 握りこぶしを地面に叩き付けた。鈍い痛みに気がつけば、爪先が赤く滲んでいる。ぽたぽたと落ちた雫が、泥と赤を溶かして流した。
「なんで、出てきてくんないの……俺の言う事、もう、聞いてくんないの…」
 あんたが、我が侭きいてくれると安心できた。あぁ、まだ愛されてる、大丈夫って。
 俺が言えば無理するの知ってて、でも愛されたくて、沢山無茶を言った。そんな自分が嫌で、それを隠したくて、わざと酷く当たったりもした。そうしては後で酷く落ち込んだ。
 『ごめん』、謝る度、『馬鹿だなぁ』って笑って、あんた、俺の頭をくしゃくしゃと撫でたっけ。不器用だけど優しい、あの大きな手が好きだった。
 謝るからさ、もう一度撫でてよ。我が侭、言っていいんだよって、笑って撫でてよ。前みたいに。

「お願いだから…!」

 明るい日差しの中、何も言わない石の前で、何度も「ごめん」と呟く俺の頭を、初夏の風が優しく撫でて行った。

3「目を覚まさないで」:2010/05/18(火) 01:10:21 ID:3i2kAZAg
目を覚まさないでほしい。
そう思ったのは雪の降るある日のことだった。
可愛い寛和。このまま目を覚まさずに眠り続けてほしい。
そう思って生まれた時から彼が眠り続ける部屋に入って髪を撫でた。

弟の寛和は良く分からない子だ。なにせずっと眠り続けているのだから当たり前だ。
生まれたとき頭を打ったわけでもなく健康そのものだというのにずっと眠り続けている。
けれども他の同じような子供とは違って栄養もほとんど必要とせず、美しく成長し続けて現在に至る。
そして俺はその傍ら、寛和を心配し続ける両親とともにその過程を見続けてきた。
美しく伸びてゆく髪。白い項から覘く、年々すべらかになってゆく肌。その鼻梁。その足その肌その顔その腕その首その唇。すべてすべてすべてすべて。すべて、俺は見続けてきた。
それを不思議がりながら、それならば目を覚ましてくれと祈りながら、両親と俺はずっと過ごしてきたのだ。
決して開かない閉じられた瞳。その瞳が開いたら、どんな色だろう?
決して動かない閉じられた唇。それが動いて揺れたなら、どんな声が降るのだろう?
俺はそれが分からなくてもどかしかった。ずっとそれを祈っていた。

けれどある日、親父が死んだ。寛和に触ろうとして、そして母さんに刺されて死んだ。
母さんは叫んでいた。寛和にこの人は厭らしい事をしようとしたの、と。
そして母さんはいなくなった。刑務所に行った後、実家に帰るといって飛び出していって、後は知らない。
幸い財産は残っていた。それを大切に使いながら、俺は寛和と共にいた。寛和の成長は止まっていたけれど、でも年々美しくなっていった。刻々と美しくなる、その足その肌その顔その腕その首その唇。そのすべてすべて、すべて。俺はずっと眺めていた。寛和の体を拭きながら、寛和にたまの食事を与えながら、寛和を着替えさせながら、ずっとずっと眺めていた。
夏が幾度も過ぎた。蝉が幾度も庭で死んだ。
秋が幾度も過ぎた。紅葉が幾度も庭で朽ちた。
春も幾度も過ぎた。花が幾度も庭で枯れた。
冬だって幾度も過ぎた。鳥が幾度も庭で凍えた。

その間俺はずっと、寛和を眺め続けていた。

たまに話しかける。返事はない。けれど話す。それしかない。
たまに抱きしめる。動きはない。けれど抱きしめる。それしかない。
それを繰り返す。繰り返しては繰り返す。日々ずっと。仕事に出かける前、帰った後、ずっとずっと繰り返したのだ。
そしてある朝、雪が降って、そして思った。寛和の首に手をかけながら。
目を覚まさないでほしい、と。

美しい美しい、可愛い可愛い寛和。その声は、その瞳は、どんなものだろう? どんな色だろう?
それは熱情だった。まるで焦げ付くようなそれは俺を簡単に焼き尽くした。その瞳もその声も俺のものにしたくて、何度も寛和に話しかけて抱きしめた。
でも、寛和は目覚めない。まるで何かを拒むかのように、何かを待っているように目覚めない。
俺はいつまでも熱いのに。熱にやかれてつま先から手のひらの先、視線の前頭の底、全部寛和のものなのに。
俺はいつも熱かった。ずっと内にこもった熱が、それでも答えてくれない寛和が憎かった。

それが弾けて捻じ曲がるには、そう時間はかからなかった。
俺は寛和の声を想像していた。それは鶯よりも美しい声で、到底人のものではなかった。
俺は寛和の瞳を想像していた。それは虹より鮮やかで、到底現のものではなかった。
けれどそれは俺の寛和だった。それこそが俺の寛和だった。
だから。
俺は人であって現である、寛和がこのままでいてほしかった。
寛和がこのまま目をつぶっていればいい。そうしたら寛和の瞳は俺の思う色だ。
寛和がこのまま何もしゃべらなければいい。そうしたら寛和の声は俺の思う響きのままだ。
その考えは俺をひどく甘美に惹きつけた。

だから俺は寛和の髪を撫で、首に手をかけた。このまま目を覚まさずにいればいい。そう思いながら手をかけて、そして少し力を込めた。
寛和は動かない。俺はもっと力を込める。
寛和は動かない。俺はさらに力を込める。すると、

寛和が動いた。

俺は仰け反った。


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