(ふわり、と花の甘い香りが広がる城の近くの庭の中を彼は歩いていた。外とは違いガラスケースのような建物は暖房が効いていてとても暖かかった。ここで育てているのは冬には咲かない花、例を挙げれば薔薇やチューリップや向日葵などだ。外で育てている百合の花も好きだけど、自分はこの国では咲かないこの花達も好きだった。しばらく歩いているとある場所で立ち止まった。薔薇を育てている所だ、そこには赤、白、黄、ピンクと同じみの物と青、紫、オレンジと品種改良によって作られた物が綺麗に咲き乱れていた。その中でも気になったのが一際綺麗なピンク。それを見ながら思い出したのはQueen of Heartsの支配者であるハートの女王と呼ばれる人の事だ。…あげたら喜ぶかな?、と王冠奪略戦中にも関わらずふと思ってしまった。でも、あげるだけだし…良いよね。と思えばピンクの薔薇を何本か切り取り花束を作るとハートの女王のいる城へと向かって…。ーしかし、城のへと繋がる薔薇に囲まれた小道に来た所で思ったのが“敵の自分を城に入れてくれるだろうか?“と言うことだ。入れて貰えなかったらどうしようかと悩んでいると向こうにベンチにぐでーっと座っているこの国の軍事隊長さんが…。良い所に!と言うように目を輝かせればにこりと笑顔で相手に近付き声をかけて…。)
…うーん…どうしよ…。…あ、ウサギさ…じゃなくて、クリストフさんちょうど良い所に!あの、女王様は居られますか…?綺麗なピンクの薔薇が咲いたのであげたいなと思ったんだけど…あ、白じゃないと駄目だったかな…?
備考:一人称「オレ、チェシャ」二人称「アンタ、お前、おにーさん、おねーさん、呼捨て、通り名」
母親は遊女、父親は元々母親の客だった。だが彼が生まれた事で父親の消息は絶たれ、母親に疎まれて幼い頃に捨てられた。その後、生きる為に身体を売る仕事を繰り返し、今に至る。現在は金に困る事は無いので、表向きは情報屋として危険な事からどうでも良い事までやってのける住民。ただ、家と呼ぶべき場所がない為、その日の寝床を探して未だ身体を売る真似をする事も度々。基本的に何処の国に住んでいる、と言う訳ではないが、生まれがQueen of Heartsの為、建前上はQueen of Heartsの住人と言う事になっている。本人の性格が性格なので、一つの場所に留まる事が少ない。
裏切り・引き抜き:何処かに属していると言う訳ではないので、裏切りも引き抜きも基本は無し。ただ、本人の気紛れや仕事を依頼されて一時的に何処かに属し、情報を提供する事はある。その際に他国から依頼され、偽の情報を流すなど裏切る可能性は否めない。
(/ただの変態な気g(ry >>17でチェシャ猫で住民を予約した者ですが、建前上Queen of Heartsと言う事になっているにも関わらず、国に尽くさない奴で申し訳ないです(´;ω;`)← また、募集事項としてルアによく仕事を依頼する人物を年齢、性別、役柄問わずに結んでも良いよ!と言ってくれる方を数名募集したいと思います。どうでも良い依頼から危険な仕事まで、何でも受け付けております!どうぞ誘惑のチェシャ猫、ルアをご贔屓に!←)
>>21気弱な時計ウサギ(Christophe)
(―――眩暈でも起こしてしまいそうだ。元よりSnowWhite出身である己にとって現在属国しているBlueMermaid独特の海の香りやパステルカラーにすら慣れていない身でありながらこの様にQueen of Haertsに充満する華やかで甘ったる過ぎる程の薔薇の香りは強く鼻腔を擽り、身体の内側から拒否反応が溢れ返りそうで堪らない。王冠を巡る三つ巴の闘いを成す劣悪な環境ながら、敵国とは言え、否、敵国であるからこそ訪れて済ませねばならぬ用件があるらしく世話役を担う己は言わばお供といったところ。その様な意味合いで踏み入れたこの地、触れる事の許されぬ純白の薔薇は母国の雪を思わせ、そう遠くない距離に見据える鮮血を思わせる赤を基調とした城は実兄の如く慕っていた人物を彷彿とさせた。陰鬱と安らぎ、二つの相俟えぬ複雑な感情で胸と頭をいっぱいにしながら脇に薔薇の花々を携えた小道を一歩、また一歩と進んで行く。用件を終えるまでは外で待機なんて、なんてお手軽で無意味な"お供"だろうと自嘲気味な笑みを浮かべた辺りで広場と思しき空間へ辿り着き、それと同時に視界には人影を捉える。僅かに高台になっていると先程とは目線の異なる景色から感じ取りつつ捉えた人物の特徴から誰かを割り出す事は意図も容易く、国の三役を担う重責者という思いも寄らぬ正体に僅かな緊張や不安を織り交ぜ、当たり障り無く尚且つ礼儀も踏まえた言葉を掛けるべく口を開いた。思わず出てしまった通り名には直ぐに口を噤み役職へ言い換え、数メートルという個人的見解の許で適度な距離感を保って続いた言葉は疑問を投げ掛けて終了する。言い終えた後で聞かなくとも良い事を聞いてしまった様な気がして、碧と翠の瞳をそっと地面へと伏せた。ああ、日光が眩しい。それ以上に、他国の重役と言葉を交わすのは気が重たいものだと、再認識しながら)
お邪魔致しております、気弱な――…いえ、軍事隊長様。このような所で貴方様にお会いするとは思いも寄りませんでした、その様子ですと次の国事まで時間がおありな様で?
>>44異世界のアリス(A-Zwolf)
(どうやら置いてけぼりを食らったらしい。先程迄Queen of Heartsに足を運んでいた属国の者達はその"お供"の存在も忘れさっさと帰国してしまった様だ、漸く見慣れて来た姿が一つとて見当たらない辺りからその事実を汲み取ると世話役として肩に乗せていた重荷を振り払う様に軽く伸びをして、鼻腔に広がる薔薇の香りを思い切り吸い込んで噎せながら、待機という名のサボり中に見付けた絶好の場所――広場へと再び足を運ぶ。如何せん薔薇の花壇が広がっている事に変わりは無いが、小道の脇に携えられたそれよりは広場と言う空間の面積の広さがあって余程開放的である。しかし二度目の来訪には既に先客が居たようで、ベンチに座り恐らく猫か何かを膝に乗せて愛でる様な仕種を見せる人影を近からず遠からずの距離でじっと眺めながら、ついつい素丸出しの侭で小声とはいえ悪態付いた言葉を零してしまう。そして気付いた時には既に遅しと言わんばかりに脳味噌は急激に冷静になって人影の正体を知らしめた。この国の三役でありながら、その中でも一番厄介といわれている人物。やってしまったと口を噤みつつ、逃げ出しては余計にマイナスな行動だろうとその場に佇んでみるものの、先程の不躾な発言が聞こえているのか否か相手の反応を待つしかなく両の瞳は珍しく伏せられる事も無くベンチに座る彼の姿を真っ直ぐに捉えて)
――猫にまで物騒な声掛けてんじゃねぇよ、ビビんだろーが。――――――、やべ
(ふわふわと雪が舞っては地に落ちる。そんな様子を咳き込みながらぼんやりと見ていた…。あぁ、折角採った林檎が傷んでしまったかもしれないとか、誰かと一緒に来れば良かったなぁとか、どうでも良いことを思いつつ、頭ぼーっとするしそろそろ危ない気がすると思うが体が思うように動かないのでどうしようも無い。…このまま、死んでしまうのかな、なんていつになく弱気になってしまうのは発作のせいか、はたまたどこか寂しげに降り続ける雪のせいか…そう思いながら、こんなんじゃ駄目だなと自嘲するような笑みを浮かべた…その時だ、背後から突然喉元に小さくも鋭い小型のナイフを充てられたのは。反応が遅れてしまい、腰の剣に伸ばしていた手を止める。…気付かなかった、いつからそこに、と問いたかったが咳き込んでいたせいで喉が掠れて上手く声が出なかった。相手の顔を確認しようにも動かないで貰おうかと低い声で言われ、更には刃を充てられているため逆らう事は出来なかった。病を患っていることを知られた上に背後を取られるなんて…自分の不注意に悔しさでぎりっと歯をくいしばった。しかし、後悔してばかりではいられない今はこの状況をどうするか考えなければ…少しの間頭をフル回転させ今まで勉強してきた様々な知識を使い…出来た、この状況を変える方法が。発作を少しでも落ち着かせるように深呼吸をすれば冷静を装い相手に話し掛けた。内容はどうでもいい、この一瞬の相手の本の少しの気の緩みが大事なのだから。そして、話し掛けた瞬間ナイフを持っている相手の手を掴み喉元から退かすと上体を捻り相手の方を向きながら腹に一発蹴りを入れる、少し怯んだ隙に腰から剣を抜けば素早く相手の首筋に充てた。…形勢逆転、と言う奴だ。正面に向き合った事で相手が誰かはっきり分かるQueen of Heartsの“異世界のアリス“と呼ばれる相手だ。浅く呼吸を繰り返しながらも淡々と相手に話し掛けて…。)
…貴方は何故、私が身長が低い事を気に入っているか分かりますか…?…それはですね…こういう戦い方がしやすいからですよ。…アーツヴェルフさん、単刀直入に聞きます…貴方が此処に来た目的は何ですか…?
(母国Queen of Hearts。軍人でも無い誘惑のチェシャ猫──ルアは国に忠誠心を抱いてはいない。そもそも忠誠心を抱く様な質では無いのだから、仕方が無いとも言えるだろう。かと言って、それが国に立ち入らない理由にはなら無い。気紛れで訪れる事もあれば、仕事の為に城内へ足を運ぶ事も、その時々によって変化する。今回は一週間程前から仕事の関係でQueen of Heartsに居座っていたが、無事依頼を完遂し、暇を持て余していた。仕事続きだった所為で他国に行く気にはなれず、もう少し此処に滞在し様と本日の寝床を求め、人の集う広場へと足を運んでいた。大抵此処等で寝床を確保する。その為の対価は様々だが、大抵は男女問わずに身体だ。それは既に慣れた行為であり、自ら好んで行う事なのだから嫌悪や不快感を抱く事はない。派手な格好では人一倍目立つ為、人々に紛れる為ローブに身を包んで品定めをしながら声を掛ける人物を選ぶ。そこで目に留まったのは、Queen of Hearts支配者の相方、アーツヴェルフ=リリー本人。まさかこんな所で会おうとは。こうして偶然出会える機会も少ない為、良い機会だろう。最も、利己主義者と言われている人物が寝床を与える事などするだろうか。それとも、意外にあっさりと受け入れてくれるだろうか。フードを深く被り、観察をしながら様子を見ていると、仔猫を拾い上げ、膝に乗せる姿に彼はクスクスと笑みを零した。そして声を掛けると意思を固めると、彼は下手な芝居はせずに相手に近付いてフードを抜ぎ、派手な髪と笑顔を見せた。)
利己主義者のアンタには随分と似合わない行動だねぇ?異世界のアリス。アハッ、アンタなら知ってるかなぁ──チェシャのコト。ま、どっちでもいいんだケド。これからオレのコト、知ってくれればいいからね。
76:Luer( Queen of Hearts / 誘惑のチェシャ猫 ) ◆i9Nf8biD3.:2014/01/24(金) 10:37:23
(Queen of Hearts、母国の白い薔薇は何度見ても美しいと思う。ただ触れる事が出来ないのは、非常に惜しい。美しいものは散り際こそ一番美しく、儚く、尊きものだと感じられる。毟り取る気は無いけれど、それでも花を摘んでみる、なんて事はしてみたいものだ──と、広場の花壇に植えられた白薔薇を見つめ、彼は思った。仕事も無く、平和な日に彼は大抵ぼんやりとどうでも良い事を考えている。それは自分の事から他人の事、動植物など様々なジャンルである事に変わりは無いが、結果的にはどうでも良い事に繋がってゆく。物思いに耽っていると、不意にザァとのどかな風が通り抜け、白薔薇の花弁を奪って行った。何となくその花弁を追いかけると、視線の先にはQueen of Hearts軍事隊長、Christophe=Rode。仕事の常連客の一人だ。何処までも自愛国主義者で、お国の為に忙し無く働いていると思っていたのだが──こんな場所で会うなんて。元々、仕事上の関係以外で会う機会など無いので、声を掛けようと一歩踏み出したが、彼はフードを被って踵を返し、態々相手の背後に在る木の後ろ迄回り込んだ。普通に声を掛けるのではつまらない。そう判断した結果、実に子供っぽい作戦だが、後ろから脅かそうと決めたのだ。ゆっくりと気配を殺して近付いて行き、一定の距離迄来たところで彼はバッ、と背後から飛び付いて相手の首に手を回し、抱き着いた。この程度どうと言う事は無い。ニヤニヤと笑みを浮かべながらそっと耳に囁きかる。)
──ね、おにーさん。チェシャと遊ばない?……なーんてねっ。うさぴょんにこんなところで会うとは思わなかったよ。プライベートで会うのって初めてだよね?いっつも仕事ばっかでチェシャの相手してくれないしぃ。
備考:一人称「オレ、チェシャ」二人称「アンタ、お前、おにーさん、おねーさん、呼捨て、通り名」
母親は遊女、父親は元々母親の客だった。だが彼が生まれた事で父親の消息は絶たれ、母親に疎まれて幼い頃に捨てられた。その後、生きる為に身体を売る仕事を繰り返し、今に至る。現在は金に困る事は無いので、表向きは情報屋として危険な事からどうでも良い事までやってのける住民。ただ、家と呼ぶべき場所がない為、その日の寝床を探して未だ身体を売る真似をする事も度々。基本的に何処の国に住んでいる、と言う訳ではないが、生まれがQueen of Heartsの為、建前上はQueen of Heartsの住人と言う事になっている。本人の性格が性格なので、一つの場所に留まる事が少ない。
裏切り・引き抜き:何処かに属していると言う訳ではないので、裏切りも引き抜きも基本は無し。ただ、本人の気紛れや仕事を依頼されて一時的に何処かに属し、情報を提供する事はある。その際に他国から依頼され、偽の情報を流すなど裏切る可能性は否めない。
>>スレ主様
(/レス失礼します。Queen of Heartsの支配者を予約させて頂いた者です。PFの提出が大分遅れてしまっており申し訳御座いません。PF完成間近なのですがここで一つご質問させて頂きます。「自分の元の顔を嫌って顔を整えた(整形した)」という設定は大丈夫でしょうか?宜しければご返答お願いします。)
100:Luer( Queen of Hearts / 誘惑のチェシャ猫 ) ◆i9Nf8biD3.:2014/01/26(日) 01:47:05
(見渡せば真っ赤な林檎が転がっているのが目に入る。当然と言えば当然だろう、自分が木から落ちてぶちまけたのだから。発作は治まらなくて苦しいし、風や雪は冷たいし…このまま凍死するか発作が酷くなって死ぬか…そんな事ばかり考えてしまう…自分はこの国を…大好きな人達を守らなきゃいけないのに…。はぁ、と溜め息を吐くとそれは白い煙となり空に溶けた。ー自分に両親はいない…いや、“もう“いないと言うべきだろう。ぼんやりと昔の事を思い出していればふと遠くから此方に近付いてくる足音が聞こえた。誰だろう…と朦朧とする意識の中で考える。誰かが自分の目の前で止まった。チラリと上目で相手を確認するとまず目がいったのは毒々しい、けど綺麗なバイオレッドに所々ショッキングピンクのメッシュが入っている凄く目立つ髪。次に顔全体、綺麗な顔立ちは一見女の人にも見えるけど自分も時々間違えられる時があるので分かる、相手が男だと。それから全身、と順に目を動かして。やはり、ここの住民では無さそうだ…だとしたら敵か、と冷静に判断していると相手が突然話し掛けてきた。チェシャと名乗る相手…それで思い出した、国の誰かがQueen of Heartsに凄い情報屋がいると。だから知らないかと言う相手に対して小さく首を振り、名前と仕事の事は知ってると答えた。大丈夫?なんて言う相手に大丈夫、と答えようとしたが相手の次に放った言葉によってそれは途切れた。平和主義者の事ならまだしも、どうして誰にも言っていない病弱と言う事が初対面の相手に知られているんだ。驚きに目を見開くと咳き込みながらも尋ねて。…他国に持ち帰れば、と楽しそうに話す相手にほんの一瞬だけ恐怖した。だけど、自分はそんなに柔じゃない、キッと少しだけ相手を睨むようにして見ると言葉を紡いだ。しかし、助けて欲しい?なんて言われれば睨むように見ていた表情から一変、キョトンとした表情に変わる。助ける?他国の自分を?自分なんか助けても相手にメリットは無いだろうにとか助けるにしてもどうやって助けるのだろうなんて疑問を持ちながらも今の自分じゃ城に戻る事も出来そうに無い、一瞬考える様にうつ向くも相手の方を見れば助けて欲しいと小さく呟いて…。)
…?チェシャ、さん…?…名前は知ってます、後凄い情報屋さんって事は…。…!…ど、どうして病弱って事を…?…っ!?…こんな私なんて売っても使い物になりませんよ…それに、良いように利用されて国の皆に迷惑をかける位なら…私は自らこの命を絶ちますよ…。…ぇ?で、でも………え、と…た、助けて欲しい、です…。
>>150強欲な切り札(Joker)
(しゃがみ込んでいた姿が気になってしまいランプの光を翳してよく見ようとした瞬間勢いよく立ち上がった相手は開口一番に縋る様に、それでいて捲くし立てる様に状況説明を成した。その勢いのよさに思わず瞳を丸く見開いて呆気に取られたが、直ぐに先程に比べ劣りはしつつも変わらず拒否の言葉を放つ。声や口調から女性だとは把握していたものの思いの外目線が合わない事に気付き、白と赤のペイントが施された派手な顔を半分とオレンジ色の髪を確認すると直ぐに視線を逸らして太腿に収まりランプの光を反射しながら存在感を知らせる拳銃を捉えた。肩には散弾銃も窺える。本人の口からも出たが顔のペイントからしてQueen of Heartsの、そしてその装いからして備兵等々の軍事関係者に違いない。迷子であるという話自体作り物、または確認しきれぬ場所に所持した武器で攻撃を仕掛けてくる等の可能性も否めない。眉を顰めながら整った拒否の理由を固め改めて城内への出入りを禁じたが、最後の一押しと言わんばかりに頼み込まれてしまうと頼み事を断れない身としては無情にもその場から去るなんて事は出来ず、思えば合わせられた手の奥に潜む顔はひどく情けなく歪められており疑った様に作り話や演技ではない事がひしひしと伝わって来る。悩んだ末に少し待っているよう命じれば急ぎ足で城へ、そして部屋へ戻り、毛布一枚に小さなパンが二つ入った紙袋、それから飲料水を両手に抱え僅かに息を弾ませながら再び姿を現した。紙袋と飲料水、ランプを一旦地面に置き門の錠を外して表に出れば毛布を差し出しながら申し訳無さそうに告げた)
…っだ、めだ!他国の者を招き入れる事は出来ない。…――少しそこで待っていろ。――――――これしかないけど我慢してくれ、…空腹ならパンも持って来た、から。
>>171異世界のアリス(A-Zwolf)
…少しでも私に関する情報を掌握されているのは意外でしたが、まあ…話は早い。私は貴方様の国、――恐らく貴方様自身にとっても、充分に利用価値のある人間だという情報も付随して覚えておいて下さい。
(言った矢先、風に乗って鼻腔を擽る様に香る薔薇の匂いに眉を顰める事で、彼が己の存在をある程度認識してるらしい事実への驚きを隠そうとした。その驚きも一人の人物、己とも関係性がある名の知れた情報屋のいつもの笑みが脳裏に過ぎり直ぐに萎んで行って、眉を顰め嫌悪を表していた顔を僅かな呆れへと変化させる。その間にもぽつりぽつりと言葉は唇から零れ落ち相手に抱いた一つの意志を告げるべく跪いた体制から再び立ち上がって、背後に広がるQueen of Heartsの景色へと顔だけを向けて横目で見遣った。たかが下っ端の世話役であろうと城内に仕え三役の傍に身を寄せる立場、国の情勢や心髄を把握するには事足りる上にその立場は二つの国に渡って担っているのだ。必要があれば自国を象徴とする薔薇の香りを嫌いになれるという言葉は愛国心の無さは勿論の事、それと同時に今現在その必要は無いと捉える事も可能。相手が王冠の奪い合いに関してどう考えているかまでは不明だが、いずれにせよ他国の情報を握るに損は無い。BlueMermaidは兎も角SnowWhiteの情報まで伝えるのは気が引けるがこの際背に腹は変えられない、ある程度なら虚偽を交えたって良いだろう。早く母国へ、SnowWhiteへ戻りたい。その糸口になれば。そんな焦燥感から情けなくなってしまった表情を見られまいと顔は背けたまま、しかし凛とした声色は保って彼へと告げた。細かい説明は追々でも構わないだろうし、極端な言い方をすれば彼は馬鹿じゃない。ある程度自主的に把握してくれるだろうと期待を孕ませて。)
(──助けが来ない。その恐怖からチラリと過去の自分が脳裏に過ったのは、彼にしか分からない事。強く目を閉じて歯を食いしばると、彼に掛かっていた力が緩む。驚いて目を見開くと、そこには無様に転がる男の姿。そしてもう一人。Queen of Heartsの傭兵、ジョーカー本人の姿がそこには在った。まさかこんな所で出会う事になろうとは。驚きを隠せない表情ではあったが、頭は冷静に対処し、状況を把握。一言で纏めれば女に助けられた──と言う事になる。仮にも男である彼にとって、それは些か癪に触った。とは言え、あくまでも助けられた身。躊躇いながらも差し出されたポンチョを素直に受け取って羽織る。男女の差が感じられない程服のサイズはピッタリ。妙な対抗心を抱いてしまうのは、彼が男であり、精神が幼い故だろう。服の汚れを払って立ち上がり、お礼の前に彼はベルトに付けられたホルスターから拳銃を抜き、相手の額に突き付けた。そう簡単にやられはしない、と子供っぽい意地を張っているのだろう。そして引き金に手を掛け、銃口から飛び出るのは色取り取りの紙吹雪。あくまでもホルスターに入っているものは見せ掛けだ。満足したところで笑みを浮かべて拳銃を納め、彼はお礼と共に冗談混じりの言葉を掛ける。)
チェシャはこれでいーの。それに、全く抵抗出来ない訳でもないからね。──なーんて。助けてくれたのは感謝してるよ、ジョーカー。噂通り、強くて格好良いねぇ?チェシャも惚れちゃうかも。
…あ、御免なさい!
(今日は朝から会議が入って居ない為、護衛を2人付けてハートの女王の国Queen of Heartsに出向いていた。支配者の証としていつも付けているティアラを外し、たまには気分を変えてみるのも良いだろうと普段下ろしている髪を巻いて後頭部上に上げ結び白い大きなリボンで留めた。淡いピンク色が基調のフリルやリボンがあしらわれた膝丈のドレスに編み上げの茶色いブーツを履いて。護衛も軍服等では無く用意した燕尾服を身に纏い、3人並べば「何処かの高貴なお嬢様と執事」という様な感じで変装は完璧。馬車に数十分揺られ昼前に到着した其処で、白い日傘を片手に買い物を楽しんでいた。街の中に咲き乱れる薔薇の花に活気溢れる街の中、護衛が後ろで眼を光らせて居るのも知らず足取りは軽やかに眼を輝かせながら辺りを見て回る。赤、白や黒が目立つ其の国の中で其の姿は住民達の視線を引くもので。そんな事は気にせず良さげな店を見付けては覗き買い物をし、見付けたカフェでアイスを食べたりと支配者という肩書きを捨て1人の少女として楽しんで居た。護衛に買った物を持たせ次に向かう先は――、とふと目に留まったのは小さい雑貨店。店先には装飾品がずらりと並んでおり、近付けば目移りしてしまう。其の中でふと見つけたのは羽と宝石のチャームがついたペンダント。どうやら手作りらしいが凝った作りで細かく装飾が施されている。他のものも見てみたものの其れが脳裏に焼き付いて居た、言わば一目惚れ。まだまだお金は有るし――、と其れを手にすれば購入しようと店内へ入ろうとし、近くに立っていた人物にぶつかって振り向き)