>>75 Eve
そこ、座ってて。今…、お茶持って来るね。
(屋敷の間取りを記憶しているかのように、迷いもなくリビングへと入って行くイヴを小走りで追いかけて行く。広いリビングに置かれたソファーを指差して座って良いと言うが、許可なんて出さなくてもイヴは座ってそうだった。それから一人キッチンへと向かい、アンティークでお洒落なティーポットやティーカップを用意し、ドーナツをハイティースタンドに綺麗に並べて行く。紅茶を淹れるのはエルクの仕事の一つだった為、テキパキと素早くこなした。それを全てプレートに乗せれば、ゆっくりと歩き出し落とさないように慎重に運んで行く。ソファーに腰を掛けると、テーブルに食器を広げて行き、ティーカップに良く色の出た紅茶を注いだ。メイプルシロップで味付けられたドーナツや、シナモンが降りかかったドーナツ、チョコレートでコーティングされたドーナツ等と、他にも色々な種類のドーナツが目の前に広がる。一つだけと言ったイヴにどれが食べたいかを問う。青年が吸血鬼のことは知っていたが、まさかドーナツを食べたことがないとは思ってもいなかった。屋敷のソファーにウィリー以外の人と腰を掛けるなんて、初めてのことで少し気が張った。ダージリンの葉の匂いが部屋を漂った。)
──お待たせ。…何食べたい?