>>27 (Mr.ZERO)
Ademas estoy el fantasma en el principio(初めまして、幽霊さん). ――どうして、初対面の方に僕の悩んでいることを言わなければならないのですか?…逆にお聞きしますが、貴方は初対面である筈の僕に「何を悩んでいるのか」と訊かれれば簡単に答えるのですか?
(酷く滑稽で、おかしな光景だ。ベンチが男性の身体を突き抜けているのかのように、男性の身体は鎖骨から下を見ることが叶わない。赤ん坊が見たら泣き出してしまいそうですね、なんて場にそぐわないことを考えながら、彼の口から発せられた何語かわからない言語に言葉を返す。きっと「こんにちは」とか、「初めまして」とか、「良い天気だね」などと言ったのだと思うから、とりあえず初めまして、と。男性の言った言葉が自分の予想と違っていても、自分と男性は初対面であるから言っていることは間違いではない、と踏んで。笑みを見せることもなく、非常に抑揚のない、淡々とした声色で。事務的な言葉に過ぎない。ただの久し振りに会った哀れな住人に対する挨拶に過ぎない。――決して、男性のことが嫌いなどと、そういう理由からの言動ではないのだ。ただ、少しばかり動揺しているのだと思う。百年以上の時を過ごしてきた自分でも、゛彼のような存在゛を見るのは書物意外では初めてであったし、初対面の人物に何を悩んでいるのかを訊かれたのも初めてで。余りに人と会話をするのが久し振りで。…否、彼は書物に書いてあったことが真実ならば゛幽霊゛という何とも現実味を帯びていないカテゴリに属しているのだろうから、人ではないと思うのだが。けれども、それならば、自分も人間というカテゴリには属していないように思える。日々進化を遂げ成長して行くのが人間だ。自分は進化するどころか退化するばかりだし、成長しない時の止まった人間など正常な人物の目から見ればただの゛化け物゛でしかない。小さく溜め息を吐けば、長々しい台詞を、思っていることを素直に吐き出す。そのときの自分は相手のことを思いやるなどの感情に欠けていて、言うのならば精神状態は゛子供゛だったのだろう。子供故に、無邪気。普段は話さない所為か奇妙に掠れた声色から紡がれる言葉は子供ではなく、純粋に疑問を持ったときに尋ねるような口調だが、表情は相変わらずの無表情で、声色さえも抑揚のない淡々とした声で。どこか歪んだその光景を頭に思い浮かべると、不思議と口元は綻んだ)