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ボツSS投下スレ

70IF CODE:上条inギャンブル船:2011/07/30(土) 19:56:27 ID:VUZF4kXo
 真宵は小首をかしげる。
「そういえばついさっきカイ・イイジさんがここで大勝してましたけど、あの人パチンコも得意なんでしょうか」
「マジか! そ、その人は今何処に!?」
「船の何処かに居ると思いますが、あの人がやったのはカードゲームとかでしたよ」
「あーもう何でもいい! その人勝ったってんなら金、っつーかペリカ持ってんだろ!」
「ええ、一億幾ら勝ったみたいです」
 思わず噴出す当麻。
「億て!? よ、よし! この際土下座でも何でもするからその人に助けてもらおう! 悪いが呼んで来てくれるか」
 真宵は、お互いのおかれた状況を踏まえ、冷静に判断を下した。
「アイスが食べたいです」
「お前ここでそういう事言うかあああああああ!」
「出来ればハーゲンダッツで」
「足元見すぎでしょお嬢さあああああああん!」
 結局、ハーゲンダッツを何とかして手に入れる約束をさせられる当麻であった。
 ちなみに、当麻がこれは来るという予感の元選んだ台は、斜めってる目が印象的な『沼』と呼ばれる台であった。オリジナル版であるので、彼の勝利は不可能と思われる。

71IF CODE:上条inギャンブル船:2011/07/30(土) 19:57:19 ID:VUZF4kXo
 緊急事態という事で、当麻のパチンコ台の回りにエスポワールに居た九人が集まる。
「愚か極まれり、ですわね」
 とは白井黒子の言。
「騙されたってんなら仕方無いさ」
 と善人衛宮士郎はのたもーた。
「騙された、か。それすら疑わしいものだ。欲に目が眩んだのを誤魔化しているだけだろう」
 実にクールな反応は利根川幸雄だ。
「困っている人を前に平然とそういう事口にする所が、俺は気に食わないって言ってるんだ」
 こちらも善人伊藤開司が食ってかかる。
「ふむ、迷者不問とならず、人を頼ったのは良い判断であろう」
 偉そうな口調を幼女ボイスで発する天江衣。
「そうだな、辛うじてだがまだ間に合ってはいる。……このライフマイナス四十というのなんだ?」
 グラハム・エーカーは誰にともなく問いかける。
「えっと、一ライフが命一つ分みたいだから……四十死分? そんなのあるのか?」
 台の横にある説明書きを見ながら秋山澪。
「遊戯に命を賭けるとは……未来の人生はそんなにも退屈で満ち溢れているのですか?」
 しげしげとこれを眺める明智光秀。
 彼らを前に、当麻は超下手にへりくだって言った。
「お説御尤もでございますが、何卒、この愚かで哀れな子羊をお救い下さいませ……いやホント、こんな馬鹿な事で俺まだ死にたくないって……」
 ルール説明を読み返していた真宵は、ふむふむと頷きながら皆に告げる。
「一ライフ当たり一千万ペリカ相当らしいですから、マイナス四十ですと四億ペリカになります」
 全員一瞬の無言。
 黒子は、んー、と大きく伸びをする。
「さて、では今後の行動方針ですが。情報収集と仲間を増やす、この二つを分散して行なうというのはどうでしょう」
 利根川はうーむと首を捻る。
「それは船に残るチーム含め、最低三つのチームに分かれるという事か? 賛同しかねるな。第一……」
 カイジが二人を窘める動きを見せると、当麻はほっと安堵の息を。
「おいおい利根川、お前は慎重すぎだ。仲間を集めるんなら急ぐ必要がある。手遅れの仲間と出くわすハメになっちまったらどうすんだ」
「手遅れの仲間って誰だ! 誰の事だあああああああ!」
 ぎろっと黒子と利根川が当麻を睨む。
「貴方の事ですわ」
「貴様の事だ」
「すんません。マジすんませんでした」
 カイジがうむーと首を傾げる。
「いやさ、それでも四億ってのは、なあ。他のギャンブルも鉄骨渡りは絶対にやっちゃ駄目だしさ、あ、このEカードってのはどうなんだ?」
 利根川は憮然とした顔である。
「……止めておけ。同じ手は二度通じんし、相手も相応の用意をしてあるだろう」
 説得力があるんだかないんだかな発言を他所に、光秀は鉄骨渡りに興味を示している。
「説明を見る限りでは、コレ随分と簡単に思えるのですが……っと、こちらの扉ですか」
 扉を開くと、そこは船とはまるで別の場所と繋がっていた。

72IF CODE:上条inギャンブル船:2011/07/30(土) 19:57:50 ID:VUZF4kXo
 がらがらぴしゃーんと鳴り響く雷鳴。
 此方と彼方を結ぶは二本の鉄骨。
 そこがビルの屋上だとわかるのは、彼方のビルまでの距離が広すぎるせいであろう。
 しかし、出てすぐの場所から、ビルの底を見出す事は出来ない。
 そう、これが、これこそが、鉄骨渡りである。
 衛宮士郎が至極当然な感想を漏らす。
「船の中? これが魔法って話か? いやそれ以前に、これを渡れと? 正気……か?」
 何処か揶揄するような顔で利根川は笑う。
「カイジは渡ったがな。どうだ、もう一度やってみるか?」
「ふざけんな! こんなもの! 出来れば二度と見たくなかった!」
 秋山の澪さんは、扉を出るのすら躊躇する始末。
 真宵は訳知り顔でそんな澪の後ろに居る。
「うーむ、正に怪異」
「だ、大丈夫、か、な? その、扉を潜ったら二度と戻って来れないとか……」
「ありえますね」
「ひいいいいいいい!」
 グラハムはビルの下を覗きこみながら呟く。
「ふむ、落ちたら命が無いのはまあ、当然だろうな」
 光秀もまた同じく下を覗きこんでいる。
「高所に相応しく風も強いですね。うっかりバランスを崩す人も、確かにこれなら居るかもしれません」
 二人は、鉄骨の上から下を覗きこんでいた。
 カイジの口が、顎が外れんばかりの勢いで開く。
「おいいいいいいいい! 何さっさと渡りにかかってんだ! そいつは洒落じゃ済まないんだぞ!」
 ものっそい驚いた衣は、鉄骨の端まで走り寄る。
「グラハム!」
「衣、君はそこで待っているんだ。何、すぐに戻るから心配するな」
「し、しかし! 余りに軽佻浮薄過ぎぬか!?」
「並みの人間ならばそうだろう。だが! 私は誰か! そう! グラハム・エーカーにとってと前置きがあるのなら! この程度の困難、フラッグを用いるまでもない雑事であると断言出来よう!」
 恐る恐るだが、澪は扉の中に入り、光秀に向け声をかける。
「あ、危ないですよ。そ、そそそその、えっと、落ちたりしたら……落ちたり……」
 自分で想像して怖くなったらしい。ビルの端から下を見る事すら出来ない澪だ、想像するだけで足の震えが止まらなくなっている。
「ふふふっ、澪さんはお優しいですねぇ。まあ見ていてくださ……いえ、見るのも恐ろしい御様子ですし、扉の内でゆっくりしていて下さい」
「ででででもっ」
「こんな矢も弾も飛んで来ない場所で、倒れる私ではありませんよ」
 心配顔の面々を他所に、光秀もグラハムもすいすいと鉄骨を渡っていく。
「光秀、君も軍属か?」
 下の名前で呼ばれた事に少し驚くも、光秀は笑顔で返す。
「ええ。やはり戦場を知らぬ者の仕掛けでしょうね、これは。修羅場を演出しているようですが、遊戯の域を出ていませんよ」
「まったくだ。しかし光秀、君も随分と戦場が似合いそうだな」
「お嫌いですか? 戦場」
「いや、好ましいと言ったのさ。かの地こそ、男子の本懐、その巣窟。死を賭してこそ、命は輝きを増すものだ」
「素晴らしい、実に素晴らしいですよ……グラハム、そう呼んでも?」
「構わんよ、それが私の名だ。さて、後ろで待つ者をこれ以上やきもきさせるのも何だ。そろそろ本気で行くか?」
「そうですね。はらはらが背なより感じられて、何やらくすぐったい気がする現状も捨てがたいですが、正直、このままでは退屈に過ぎます」
 二人は、鉄骨の上を猛然と走り出した。
 背後より悲鳴やら絶叫やらが聞こえるのが、何とも愉快で二人は笑い出してしまう。
「はははっ! 早いな光秀! 私が追いつけないなどと、一体どんな鍛え方をしてきたんだ!」
「ふふっ、ではこういうのは如何で?」
 後ろで澪が気を失い、残る一同蒼白になってしまったのは、光秀が鉄骨の上を手をつかず前転側転後転を繰り返しながら渡り出したせいだ。
『何してんだああああああああああああ!』
 皆の声がハモる中、光秀の芸当に大笑いしているグラハムと、くるくる回っている光秀は、あっという間に鉄骨を渡り、渡りきった先にある最後の罠、扉を開けた瞬間の気圧差からの突風も、くるりと後ろに宙返りする事で何なくクリアしてしまう。
 常在戦場メンタルを装備した軍人の恐ろしさを、これでもかと思い知らされる一行であった。

73IF CODE:上条inギャンブル船:2011/07/30(土) 19:58:21 ID:VUZF4kXo

「ふむ、一回で得られるペリカは一千万のみですか」
 寿命がダース単位で縮んだ気分の常識能力メンツは、つかれきった顔で二人の帰還を出迎えた。
 グラハムはふう、と一息漏らす。
「手間ではあるが仕方あるまい。一人二十往復といった所か」
「いえ、これどうも向こう岸に行ければいいだけみたいですし、私一人でやりますよ」
「いいのか?」
 そこで、常識能力メンツからちょびっとだけ外れたもう一人が口を出す。
「……わかりました。そういう事ならわたくしも手を貸しますわ。正直、そこの同じ人間と認めるのに多大な労苦を必要とするよーな進化しそこねた猿の為に手間をかけるのは剛腹極まりないのですが」
 白井黒子さんである。
 士郎はちょっぴり冷や汗を垂らしていたり。
「お前、彼には容赦無いな」
「アレとは面識がありまして。このような場でなければ、問答無用で退治する類の輩ですわ」
 黒子のやっていた事を聞いていた士郎は、何となく犯罪者絡みなのかなぁとか考えたのだが、黒子基準でいう所の許しがたき違反行為を行なっていただけとは流石に察せずである。
「でも、どうすんだ? あの鉄骨、軽々と渡ってたけどまともに行ったらかなりキツイと思うぞ」
「それこそ、どうとでもなりますわ」
 すたすたと鉄骨の端まで歩いて行き、次の瞬間、黒子の姿は向こうのビルの中へと移動していた。
 眼を見張る一行を他所に、さっさと向こう岸よりペリカを手に入れ戻って来る黒子。
「次のペリカを用意するのに少し時間がかかるみたいですわね。怠慢ですわ、さっさと次を用意してくださいまし」
 士郎が隣を見ると、光秀はもう走って渡る事すらせず、ぴょーんと一っ飛びで向こう岸に渡ってしまっている。
 大したものだと笑っているグラハム以外は、世の中って不公平なんだなーとしみじみ思うのであった。
 いやまあ、一人だけ、地獄のようにヘコんでいる者もいるのだが。
 利根川がぽんとその肩を叩く。
「まあ、あれだ。気にしたら負けだぞ」
「……お、俺達の苦労は……命賭けの勝負が……」
 無論これは、鉄骨渡り最初の達成者、伊藤開司君であった。

74IF CODE:上条inギャンブル船:2011/07/30(土) 19:58:54 ID:VUZF4kXo


 まずは土下座だろう、そう考えていた当麻は人目を憚らずへへーと頭を下げる。
「わたくしめのような愚かで哀れな者を、良くぞ救い出してくださいました。感謝感激でわたくし前が見えませぬ」
 ほう、と利根川。
「では、その感謝を態度で示してもらおうか」
「は?」
 余ったペリカで、利根川はこんなものを購入していた。
「感謝の心が留まる事を知らぬなら、どんな事でも出来るはずだな。それが例え『焼き土下座』であろうと!」
 自分がやられてキツかったことを平然と他人にも強要出来る辺り、帝愛所属の経歴は伊達ではないのだ。
 っつーかこんな無駄遣いすなと。
「出来るかあああああああああ!」
 黒子曰く。
「やってくださいまし」
 真宵さんも。
「是非やるべきです」
 光秀殿は。
「いいですねぇ、苦労が報われる気がいたします」
 そしてこれをとめるべき面々の内、まずはグラハム。
「凄いなグラハム! やっぱりグラハムは凄いぞ!」
「ははは、軍人ならばこの程度、ましてや私はグラハム・エーカーなのだからな!」
 衣とじゃれている。
 人の尊厳、その守護者たらんとするカイジ君は。
「……人が、平等でないのは……知っていた……っ! それでも、心の奥底が憎悪に沸き立つこれは……っ! 紛れも無く嫉妬心……っ! ああ、俺は今嫉妬している……っ! 何より、あの時何故こいつらが居なかったのだと……っ! 意味の無い事を考えずにはいられない……っ!」
 心の葛藤を抑えるのに必死な模様。
 澪は気絶中。例え起きていたとしても、焼き土下座ましーんを見れば結果は一緒であろう。
 唯一残った希望の光、衛宮士郎は、おずおずと皆に申し出る。
「……せめて、この説明書きの十秒だかじゃなくて、一瞬でも額ついたらオーケーにしてやろうよ」
 その程度を主張するのが限界であるようだった。

「ぎゃあああああああああああ!」

 実に楽しそうな、バトルロワイアルの一こまであった。

75IF CODE:上条inギャンブル船:2011/07/30(土) 19:59:51 ID:VUZF4kXo
以上です。意味とか、無いんだ。うん。ただ単に上条さんが素敵な目に遭うところがみたかっただけなんだっ

76名無しさんなんだじぇ:2011/11/26(土) 04:01:31 ID:vNrXrlt2
age

77名無しさんなんだじぇ:2012/01/01(日) 01:43:02 ID:g/Y.uqFY
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78名無しさんなんだじぇ:2012/02/14(火) 01:00:50 ID:yys6.qc6

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三二ニ= 彡′/:::::ハ ヘ. `ー‐   、   一´ /〈:::i:.:.. /.:∧     ほんとは……つくってたの。
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79名無しさんなんだじぇ:2012/02/14(火) 01:01:12 ID:yys6.qc6

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                   O モワモワ
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