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ボツSS投下スレ

1管理人◆4Ma8s9VAx2:2010/05/14(金) 23:28:43 ID:???
何らかの理由でボツになってしまった作品を公開する場です

2 ◆LJ21nQDqcs:2010/06/04(金) 09:09:17 ID:nLqdDD9Q

 「どうした阿良々木少年。ぼうっとして」
 「グラハムさん、僕はおっぱいの神かも知れません」

橋の上を歩きながら、阿良々木暦は右手をわきわきと動かして大きさを確かめているかのようだ。

 「福路のバストは浅上に勝るとも劣りませんでしたよ!憂ちゃんや東横もなかなかの大きさでした!」
 「まさか、君は出会った女性全てのバストを触っているのか!?」

その声に多少の怒気が混ざっていることに、グラハム自身も気づいてはいない。

 「いえ、そんなことはしませんよ。ただ僕は運命を感じているんです。この先、どのような大きさのおっぱいが待ち受けているのかと!」

薬局での説得でも見せなかった崇高な表情を、阿良々木暦はしてみせた。
台詞さえなければその表情は予言を受けた巡礼者にも匹敵する、敬々しさに満ち溢れている。
おそらくはこれから先に待ち受ける危機に対してリラックスさせてくれているのだろう。
グラハムは無理矢理好意的に解釈した。

3名無しさんなんだじぇ:2010/06/04(金) 09:11:17 ID:nLqdDD9Q
上は「奈落」ラストの一コマとして書いたもの。
ボツにした理由:ラストに予定していたタルタロスに持っていけそうに無かったから

お、俺は悪くない!おっぱいの神にそそのかされただけ!

4名無しさんなんだじぇ:2010/07/15(木) 11:57:46 ID:aVwPu6Dw
死者スレネタ注意。

5名無しさんなんだじぇ:2010/07/15(木) 11:58:13 ID:aVwPu6Dw
黒服「腹パン!」
アステカー「ごふっ!」
黒服「ふう…ようやく静かになったか」
黒服「今の腹パンは…」
黒服「あぁ…今は亡き黒人黒服シンプソンさんの得意技さ…いい人だった…」
黒服「分け前をちゃんと残してくれる、気前のいい人だったな…」
遠藤「よし、では『撮影』に入る!」

ザワッ‥‥

黒服「遠藤様!?その、その双頭ディルドーは‥‥?!」
遠藤「まだ分からんのか‥‥今回のコンセプトは『先輩、ずっと好きでした‥‥私の処女捧げます』だ!」
黒服・池田「 な ん だ っ て え え え ? ! 」
黒服「そ、そんな!聞いてません、遠藤様!」
黒服「そうだ!こんなにたぎったマイサンをどうしてくれるんですか?!」
遠藤「えぇい、黙れ!咲キャラ二人を連れてきた段階で悟れ!痴れ者たちが!」

アステカー「狂ってる…!華菜、私の最後の力を使ってなんとか食い止めるから、あなたは早く…」

むにゅ

アステカー「ひゃん?!」
池田「その体で無理しないでください、キャプテン。…私のことはいいんです…もう諦めましょう…」
アステカー「か、華菜?」
池田「力を抜いてください、キャプテン…。さぁ!ピンクBBS沙汰にしましょう!百合板でSSにするし!」
アステカー「(池田さんのどこにこんな力が…)うわっ!?」どさっ
遠藤「あれは…マウントポジション!」
池田「にゅああああ!にゃああああああああああああ!にゃにゃああああああああああああああああああ!!」


池田、咆号吶喊!アステカー、処女喪失のピンチ!
一方その頃、我らのヒーロー超電磁砲は…?!


小十郎「お、俺の竹が…一本消えている…だと…?!この足跡はあーにゃ殿?!くっ…許せん…!」
ビリビリ「あ、丁度いいところに居た!片倉さん!」
小十郎「御坂殿?息を切らして一体…?」
ビリビリ「福路さん、いいえ、海原君と池田さんが黒服の奴らに捕らえられて乙女のピンチなのよ!」
小十郎「〜〜〜〜〜っ!福路殿が?!」

『にゅああああ!にゃああああああああああああ!にゃにゃああああああああああああああああああ!!』

ビリビリ「あれは…池田さんの声…?!間に合わなかった…!」
小十郎「いや、まだ手はありやすぜ…!御坂殿!俺をレールガンであそこへ飛ばしてくだせい!フルパワーで!」
ビリビリ「えぇ?!無理よ!人間をレールガンで飛ばすだなんて?!マッハを軽く超えてるのよ?!」
小十郎「"仁吼義侠"片倉小十郎を舐めないでくだせい!それに俺も稲妻を使う身だ!耐えてみせる!」

仮面アステカー第五十一話【咆号】 完

6 ◆xliXXBID4M:2010/08/15(日) 07:37:39 ID:6NHp0kxk
test

7test ◆rYjxwQv32U:2010/08/24(火) 11:21:21 ID:6FZZsxsc
test

8 ◆rYjxwQv32U:2010/08/24(火) 11:27:32 ID:6FZZsxsc
どうも、死者スレpart3 >>426です。予告通り死者スレ専用のSSを投下します。なお、以下の点にご注意を……

※これはフィクションのフィクションです。アニメの劇場版のように死者スレ本編とは絡まない話です。
※ただし、ゼクスが正式死亡してから8/24に仮投下された「おわりのはじまり」までの間に死者スレに起きたお話です。
※それと、制作途中に告知した予告編の内容と実際の作品の内容は違う場合があります。

それでは、事の始まり「依頼編」を投下します。

9◇依頼編 〜平穏〜  ◆rYjxwQv32U:2010/08/24(火) 11:33:00 ID:6FZZsxsc
ズズズ、ハァ っ旦~
小萌「最近は騒動もありませんし、とても平穏ですぅ」
透華「…ええ、本当に平和ですわ…そして、退屈ですわ…」
リリーナ「あの、たまり場風紀委員のトップが平和を退屈と仰るのもいかがなものかと…」
カイジ「しかし、特攻野郎Sチームもここ最近は大人しいし、たまり場にはDVDが流布されていないから、確かに今やる事もない俺達は暇だな」
美琴「ライブやラジオ、その他行事もしばらくはないのよねー。でもたまにはいいんじゃない?緊張感ない日々をダラダラと過ごすのも」
透華「私とて平穏なたまり場は喜ばしいですし、何より心も安らかになりますが…」
透華「今 の 私 は 全 然 目 立 っ て い ま せ ん わ !!」
((((またか始まったよ…))))
ディート「ふむ、お困りのようですね」
カイジ「うぉ!?ディートハルト!!」
美琴「おっさんいつからいたの!?」
透華「只今会議中なので関係者以外は立ち入り禁止ですわ」
小萌「という訳で今すぐ帰れですぅ」
リリーナ(これが会議ですか?それに、私も風紀委員ではないのですが…)
ディート「まあまあそう言わずに、本日はあなた方にクエストを依頼しに来たのだよ」
美琴「クエストの依頼?」
ディート「その話の前にちょっとしたニュースだ。実は、つい最近死者スレの隅の山中に謎の山荘が存在するのを発見した」
透華「山荘?そんなの全然知りませんわ」
カイジ「死者スレにいる俺達すら知らないものをどうやって発見した?」
ディート「それについては企業秘密です。ただ、わかっていることは山荘の位置と周辺を森で囲まれていること、
     それと近くに湖と渓流があることぐらいで、それ以上の詳細は掴めていない」
ディート「しかし、保養地として最適な環境である気がしてね、ちょうど帝愛専用の保養所が欲しいと思っていたところだ。
     なので本来なら我々が調査するところだが、今の主催陣はゴタゴタで人手が回らない。
     そこで、ちょうど暇を持て余していたあなた方にこのようなクエストを頼むことにしたのだよ」ペラ
カイジ「?ナニナニ…」

10◇依頼編 〜受諾〜  ◆rYjxwQv32U:2010/08/24(火) 11:34:08 ID:6FZZsxsc
●クエスト〜〜秘境にある謎の山荘周辺を調査せよ!〜〜
●クエスト内容『死者スレ辺境の森の中にある謎の山荘を調査、及び周辺を探索せよ!』
1.謎の山荘の内装と設備を調査せよ!
2.周辺を探索し何かあれば調査せよ!
3.アウトドアで楽しめ!
※参加者は、◆龍門渕透華◆刹那・F・セイエイ◆キャスター◆田井中律◆伊達政宗◆プリシラ
◆千石撫子◆ゼクス・マーキス◆アーニャ・アールストレイム◆海原光貴◆玄霧皐月◆船井譲次、の十二名です。

小萌「ええっと、さっきの説明でクエスト1.と2.はわかりましたけど、3.はどういう事ですか?」
ディート「それも調査の一環ですよ。福利厚生は利用者の日々の疲れを癒す他に余暇を満喫させなければなりません。
     そして自然に囲まれた山荘での余暇の過ごし方といえば、そう、アウトドアスポーツだ。
     我々が山荘を管理する時にはアウトドアの紹介をして、利用者の心も身も共にリフレッシュしてもらうつもりだ。
     しかし実地を見ていない現状では山荘周辺でどのようなアウトドアが出来るか分からない」
ディート「そこであなた方には未知の土地で調査してもらうついでに様々な場所で色々なアウトドアスポーツを試してもらいたい。
     水浴やフィッシングにラフティング、登山やハンティングにロッククライミング、その他なんでも。
     それらが出来そうであるか否か、どこなら最適で安全か不向きで危険か、それらを調べてもらいたい。
     そして後日、あなた方から聞いた体験談や感想や意見を今後の山荘運用にフィードバックさせていただきます。以上でよろしいかな」
リリーナ「では、次は私から質問があります。何故参加人数が十二人なのですか?しかもご指名で」
ディート「調査費用は限られているからね。加えて人選は忍野メメだ。彼の性格からすれば何故十二名になったのもわかるだろう。」
美琴「ああ、各作品から一人が選ばれているのね」
ディート(それにただ単に筆者が捌ききれないという理由もあるのだが)
カイジ「……クエストってことは当然報酬があるんだろ?」
ディート「当然。しかし報酬内容はまだ考えていないのでね、クエスト完了時に話し合おう」
ディート「…質問は以上でよろしいかな?それでは、このクエスト、引き受けてくれますか」
透華「……いいでしょう、このクエスト、受理いたしますわ!」
ディート「ありがとうございます」チラ
ディート「おっと、もうこんな時間だ。私は今から用事がありますので、本日はこれにて失礼します」
小萌「……いいんですか?あの人の話は正直胡散臭いですぅ。何か裏があるんじゃないんですか?」
透華「確かに胡散臭さプンプンな人物ですが、正式な依頼を申し込んできたからには引き受けるしかないですわ。
   それに話を聞く限り、騒動を対処するよりは面倒な事にはなりませんし、私としても興味をそそる面白そうな依頼でしたわ。
   なにより、私 が と て も 目 立 て そ う な イ ベ ン ト を見逃すわけにはいきませんわ!!」
((((結局それかよ…))))

【死者スレメンバー クエスト受諾を確認】





ディート「…それでは、後の事は宜しくお願いします。素晴らしい舞台劇を期待していますよ」
???「………」

11◇依頼編  ◆rYjxwQv32U:2010/08/24(火) 11:35:13 ID:6FZZsxsc
本日の投下はここまで。次回は「出発編」を投下します。もう少しで仕上がります、少々間があきますのでご了承ください。

12 ◆rYjxwQv32U:2010/08/26(木) 12:47:04 ID:dvUdn0Qo
おお、二日連続で大作が投下された。どちらも素晴らしい熱欝な傑作でとても感動しました。
なにより期限までにあのような長編を書き綴れる能力がうらやましいです。
それに比べて私は遅筆で……orz。しかも今の流れとは違いすぎる……隔離しといてよかった。
まあともかく勝手に続編を投下しようと思いますが、今一度注意を、

※これは、美穂子、C.C.、戦場ヶ原、ファサリナ、ユフィ、上条さんが死亡する前の話です。
 上記の6人はこの話に登場しませんし影響を与えませんのでご理解ください。

では「出発編」を投下します。

13◇出発編 〜安全確認〜 ◆rYjxwQv32U:2010/08/26(木) 12:47:43 ID:dvUdn0Qo
◆透華、撫子、筆頭、船井のパート◆

透華「それでは皆さん、留守の間たまり場の事を宜しくお願いしますわ」
小萌「任せて下さい。留守の間は私やトレーズさん、リリーナさんと一緒に指揮を執りますから、思う存分楽しんできて下さい」
カイジ「俺と黒桐で逐一情報を収集する。何が起きても早急に解決しといておくから安心してくれ」
セイバー「また、我々実働部隊も全員留守番していますのでご安心してください。騒動の一つや二つ問題なく対処します」
アーチャー「まあ、騒動の大半はお前をどうにかすればいいがな」
セイバー「!?だ、だから今後は暴れないように自制心を強く働かせているから、た、たぶん大丈夫だ」
幸村「まあ、せいばあ殿の暴走にも慣れましたから、そちらの対処も問題ないでござる」
セイバー「な、ユキムラまでそんなこと言わないで下さい!」
船井「まあ、ワイとしちゃーセイバーが騒動を起こしても起こさなくても酷い目に遭わずに済むからええけどな」
セイバー「…その口を聞けなくしてあげましょうか」
船井「おいちょとまてやつあたりだろその剣はやめギャァァァァァァァァァァム!」
筆頭「おう、騒動といえばあの変態野郎はどうした?」
小十郎「光秀ですか?それなら面倒事が起こる前にアニロワ3rd仕様のMUGENに没頭させておきました」
筆頭「God Jobだ、小十郎。念のため、俺が出陣している間も奴が徘徊しないように監視しとけよ」
小十郎「承知いたしました、政宗様!」
カイジ「よし、騒動対策はほぼ大丈夫だ。後は特攻野郎だが…」
??「それでしたら問題ありませんよ」
撫子「あっ、真宵ちゃん」
透華「真宵さん…それはどういう事ですか」
真宵「組織間の不毛な争いは起きないという事です。…正直言いますと、風紀委員の方々の破壊工作でDVD工場がなくなってしまいました。
   ですので、こちらはほぼ活動中止状態、よくて新作の製作を行うぐらいです。まったくもって、ソクトーさんの能力は強力すぎます」
透華「あら、真相はともかく、いい事を聞きましたわ」
小十郎(なっ!?八九寺殿、噂で聞いていた美穂子殿の次回作もなくなってしまったのか!)
真宵(安心してください、確かに大半の工場は潰れてしましましたが、
   小十郎さんのリークのおかげでマスターテープは回収済み、極秘工場で少数量産済みです。後でご褒美として差しあげましょう)
小十郎(本当ですか!ありがとうございます、八九寺殿!!)
筆頭(小十郎…おめえ本当にどうしたんだ…)
真宵「それと天国さん」
撫子「ん?なに、真宵ちゃん?」
真宵「ふ な い さ ん には気をつけて下さい。パイジさんと同じ世界の男です。きっと幼女に興味津々ですから、船井さんの傍には近寄らないようにしてください」
船井「んなわけあるかー!!」
カイジ「だから俺はロリコンじゃねー!!」
真宵「では船井さん、このカメラは何ですか?」
船井「なっ!なんでワイの荷物を持っとるんや!?」
カイジ「おい…確かアーニャが専属カメラマンで…男のカメラ持ち込みは厳禁だぞ…」
幸村「くえすとに関する会議の時に船井殿も聞いておられたはず…」
筆頭「だが、こいつがcameraを持っているという事は…」
小十郎「つまり盗撮するつもりだったと…」
セイバー「まだ制裁が足りないようですね…」
アーチャー「このたわけ者が…」
船井「なっ、まてこれには深い事情が「大車輪」「WAR DANCE」「無月極殺」「約束された勝利の剣」「Unlimited Blade Works」ぎにゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
撫子「あっ、ホームラン」
真宵「自業自得ですね」
透華「あら、そろそろ時間ですわ。では伊達さんに千石さん、他の皆さんと合流しましょうか」
筆頭「OK」撫子「わかりました」

14◇出発編 〜似たもの同志〜 ◆rYjxwQv32U:2010/08/26(木) 12:49:38 ID:dvUdn0Qo
◆刹那、ゼクス、海原、玄霧のパート◆ ※話の流れが少し悪い……orz

ヒイロ「刹那、ゼクス、これを持っていけ」
刹那「なんだ…この荷物は…」
ゼクス「大量のトラップ…ヒイロ、こんな物どこから手に入れた?」
ヒイロ「とある傭兵から極秘ルートで送られてきた。俺には使い道がないから、お前達に渡そうと思う」
海原「それにしても、この量は度を越えていませんか?」
ヒイロ「アイツの性格上仕方がないことだ。俺達より長く戦場の世界に身で生きてきたからな」
部長「へえ、どうやらあなた達以上の戦争オタクもいたんだ」
ヒイロ「ああ、その通りだ。だから今回の調査について語ったらこれら全てをよこしてきた」
美琴「……あんたの周りには本当にまともな人間がいないようね」
ヒイロ「…それと『俺の戦いは終わった。だからもう武器はいらんない』とも言っていた」
リリーナ「そうですか。彼の戦いだけの人生も終わったのですね、やっと」
刹那「…わかった。その男のオモイ、俺達が貰い受けよう」
ヒイロ「刹那、もうひとつ渡すものがある」
刹那「…カロリーフレンド?」
ヒイロ「それも送られてきた。俺達のお気に入りのフルーツ味だ。」
刹那「そうか、俺もフルーツ派だ。ありがたく頂いておこう」



ゼクス「…ところで五飛はどうした?ここで私の空気脱却を妬みつつ登場するはずだが」
リリーナ「さあ、空気ですからわかりませんわ」
黒桐「そういえば、空気脱却の為とか言って何処かに修業しに行ったようですよ」
ゼクス「…ついに空気も読めなくなったか」

15◇出発編 〜あれ、なんでだろう?〜 ◆rYjxwQv32U:2010/08/26(木) 12:50:50 ID:dvUdn0Qo
黒桐「玄霧さん、不用意な発言で能力を発動しないでくださいよ」
部長「そうよ、あなたの能力でいくつかの騒動は起こったから、気をつけなさい」
玄霧「はい、注意しておきましょう」
海原(その原因の一つは竹井さんですよ…)
玄霧「そういえば海原さん、どうして男なのですか」
海原「いや僕は健全な男の子ですよ。何ですかその今更な発言は」
部長「つい最近まで女の子やっていたくせにどこが健全な男子なのかしら」
海原「ぐっ!確かにさっきまで美穂子さんの姿になっていましたが、今は海原光貴の護符で男に戻りましたよ!」

玄霧「でもどうやって見つけたのですか?隠し場所には結構自身があったのですが」
美琴「海原君に頼まれて私から黒桐さんに依頼したの」
黒桐「まさか海原さんの部屋に隠されているとは思ってもいませんでしたよ」
部長「あら、案外うまくいくと思っていたけど、そういえば黒桐君がいたわね。やっぱり自分で持っていた方がよかったかしら」
美琴「なにはともあれ海原君、男に戻れて良かったわね」
海原「あ、ええ、まあ」
海原(確かにあの胸だと非常に肩が疲れるし色々な目に遭わされますけど、その分活躍の場が増えたし、竹井さんの傍にいられるのはとても嬉しいですが…)

部長「あら、私がそう易々と許す訳ないでしょう。美穂子の護符ならもう用意してあるわよ」
海原「…今回は止めにしてもらえませんか」
美琴「そうよ、たまには休暇を取らせなさいよ」
刹那「いや、それでは(オーナーの依頼をこなせないため)俺が困る。この調査の間も福路のままでいてくれ。
   (アーニャの撮影の時に)福路の姿でいろいろとやりたいことがあるからな」
海原、美琴、黒桐、リリーナ「えっ!!?(操のピンチやアブナイ発言に対する驚き)」
ヒイロ、ゼクス、玄霧「…(意味が仕事だと理解、そして地雷を踏んだと心の中で思う)」

 瞬 極 殺 !!!

部長「せ・つ・な・くぅ〜ん?どうして私の美穂子を奪おうとしているのかな?」
ヒイロ「待て、竹井久、お前は勘違いをしている」
ゼクス「彼は“かくかくしかじか”な話をしているのだ」
刹那「そう、だ、…それ…に…他の…異性に…興味…はない…俺は…お前…しか…見ていな

 ギ ャ ラ ク テ ィ ッ カ フ ァ ン ト ム !!!

刹那「…」プスプス
美琴「あ〜、刹那君大丈夫?」
ゼクス「もうすぐ時間だが…回復が間に合うか?」
玄霧「人格が変革していなければいいですが」
海原(……なんで心がむかむかとざらついているのだろうか)
部長「ふぅ、本当にこの馬鹿は……なんか調子狂っちゃったし、美穂子化は海原君が帰ってからにするわ」
海原「え、あ、はい……(竹井さんと刹那さんはとても仲がいい、でもそれを見ているのが辛い…?)」
美琴「?海原君、どうかしたの?」
海原「あ、いえなんでもありません(…考えるのはやめよう、出発すればこんなことも起きないだろうし)」
ゼクス「ほら刹那、肩を貸すから行くぞ」
玄霧「仕方ありませんね、私も手伝いましょう」

16◇出発編 〜妄想は止まらない〜 ◆rYjxwQv32U:2010/08/26(木) 12:51:55 ID:dvUdn0Qo
◆律、キャス子、プリシラ、アーニャのパート◆ ※このパートが一番暴走しています。それと最初がgdgdです……スミマセンorz

プリシラ「バンドの全体練習が入っていたのに、急なクエストとダブルブッキングしちゃった!どうしよう!!」
唯「あんまり気にしないでいいよ、プリシラちゃん」
かじゅ「なに、プリシラと律がいない間は個別練習でもしているさ」
あずにゃん「プリシラさん、私達は私達で練習を頑張りますから、クエスト中はバンドの事を忘れて思いっきり楽しんできて下さい」
唯「後で旅行の話を聞かせてね」
プリシラ「みんな…ありがとう。帰ってきたらお土産たくさんもってお礼するね」
唯「おー、宜しくお願いします。…あ、ムギちゃん発見」
ゆみ「神原も一緒にいるな」
プリシラ「アーニャちゃんもいるね」
あずにゃん「三人で何か話していますね」

ムギ「アーニャちゃん、向こうでもお仕事手抜かりないようにね!!」
神原「うら若きギャルのあられもない水着姿やキャス×律の最高の撮影を期待しているぞ!!」
アーニャ「任せて」
唯「ムギちゃんに駿河さんにアーニャちゃん」
ムギ「あら、唯ちゃんに梓ちゃん」
アーニャ「それにプリシラとゆみ」
あずにゃん「先輩、何の話をしていたのですか?」
ムギ「ただの仕事の話よ。私達の中で唯一アーニャちゃんだけが出張するから、いろいろと話をしていたのよ」
神原「本来なら私かオーナーが付いていきたいところだが、どうやら需要と供給が許さないようだ」
プリシラ「ゆみちゃん、需要と供給ってなんのことですか?」
ゆみ「プリシラ、首を突っ込まなくていいぞ」

律「おーい、みんなー!」
唯「あっ、りっちゃん」
あずにゃん「キャスターさんも」
かじゅ「二人とも、今まで何をしていたんだ」
プリシラ「あとちょっとしたら出発の時間ですよ」
律「いやー、キャスターさんの部屋で水着選びが始まってな」
キャス子「律ちゃんに着せたい水着が沢山あって迷ってたの〜」
あずにゃん「また惚気ですか」
かじゅ「ん?その荷物、もしかして中身は…」
キャス子「そう、中は全て水着よ♪結局全種類持ってきちゃった♪」

神原「という事は、キャスター殿は旅行先で“田中井律のみ水着替えファッションショー”を催すつもりだな!
   なんてことだ!私もその生着替え付きショーの観客に加わりたいぞ!」
ムギ「あら、生で見られないのはとっても残念だわ。アーニャちゃん、それも録画しといてね。あとで私達も鑑賞したいから」
アーニャ「了解。任せて」
キャスター「アーニャちゃんなら大歓迎だわ。あ、ついでにアーニャちゃんの水着も選んであげようか」
アーニャ「自分のを持っている。…でも、考えておく」

ムギ「キャスターさん、どうせなら女性参加者全員の水着ショーを始めてみませんか!?今水着を用意しますので持ってってください!」
神原「そうだ、このクエストが終わったら我々でショーを催せばいいではないか!
   “男性厳禁!死者スレ女性メンバー水着ファッションショー ドキ☆ポロリもあるよ!?”だ。
   麗しい女性達の夢の花園!ああ、思い浮かべただけでワクワクするぞ!」
キャスター「それいいわ!人数が多いから、それぞれ数人選んで自慢の水着を着せて競わせてみない!勿論、私の律ちゃんがだんとつでしょうね!」

ワイワイ ガヤガヤ ワクワク テカテカ ハァハァ キャーキャー ブハッ! タラタラ オーナー、ダイジョウブ? ホワ〜

律「だれか、この変態どもを止めてくれ〜(涙」
あずにゃん「私も将来に身の危険を感じますが、律先輩は……ご愁傷様です……」

17◇出発編 〜説得包囲網〜 ◆rYjxwQv32U:2010/08/26(木) 12:53:21 ID:dvUdn0Qo
かじゅ「…途中で脱線したが、つまり時間がかかった理由はキャスターが律の水着選びに夢中になっていたからと」
律「まあ大半はそれなんだけとなー」
かじゅ「ん?他にも何かしていたのか?」
律「実はさ、キャスターさん自分の水着を持っていなかったんだ。だから一緒に探しに行こうって誘ってみたんだけど…」
キャス子「ちょっと律ちゃん、私は泳がないから水着はいいって言っているでしょう!」
律「とまあこんな風にキャスターさんが嫌がるんだ」
キャス子「だって、私が水着を着たって可愛くないし…」

唯「えー、キャスターさん十分可愛いよー」
あずにゃん「私もキャスターさんの水着姿は可愛いと思います」
キャス子「そ、それに私は水遊びに興味をもつような年齢ではありません!」
かじゅ「だが、律と一緒に水遊びしたり泳いだりしたら楽しいと思うだろ。……私だってモモと一緒にプールや海で……あんなことや……こんなことを……」ブツブツ
プリシラ「あはは、ゆみちゃん自分の世界にはいちゃった。…キャスターさん、私も律ちゃんやキャスターさんと一緒に泳いだり遊びたいですよ。
     それに年齢なんて、キャスターさんのような綺麗な恋する乙女には無縁ですよ」
キャス子「お、おとめ!?…うー、たしかに水着姿で律ちゃんと冷たい水の中であんなことやこんなことして見たいとは思うけど…」
律「キャスターさん何を想像したんですか…まあ、それでもキャスターさんと一緒ならあたしはなんだって楽しいですよ」
唯(りっちゃん、キャスターさんにベタ惚れだねぇ)

キャス子「律ちゃん…わかったわ、私も水着を持っていくわ」
律「よし、やっとその気になってくれたぜ。それじゃあ
唯「あっ、りっちゃんもうすぐ出発の時間だよ!」
律「なっ!せっかくいいところまで話を持ってきたのに!キャスターさん、急いで水着を

神原「ああ、それなら今ちょうどキャスター殿にぴったりな水着を持っているぞ」
ムギ「あら、私もお似合いの水着を用意してあるわよ」
律「って、何ごく自然に水着なんか携帯しているんだおまえらーーーーー!!!」ビシッビシッ!!
ムギ「あっ、りっちゃんが素でつっこんでくれた、やったー♪」
神原「我々の目的は女性隊員全員の水着姿を写真に残す事だ。ゆえに、万が一に備えて全員分の水着を用意してあったのだ」
アーニャ「スリーサイズのデータは私が完全に記録している。もちろん、キャスターのデータもある」
律「……だめだミオ、あたし、もうつっこむきりょくがないよ……」
神原「律殿、そんなのでは阿良々木先輩には遠く及ばないぞ」
律「いや、とどきたくないし」

ムギ「それで、私が用意した水着はこれよ」

っ(ノーマルで可愛い水着の数々)

唯「わぁ、どれもすっごくかわいいよー」
キャス子「なっ!ちょっとこれ派手すぎじゃない!?こっちは、フリフリ!!?もっとまともなのはないの!!!」
神原「よし、次は私のターンだ」

っ(想像にお任せします)

神原以外「………」

キャス子「…うん、紬ちゃんの水着を持っていくね」
あずにゃん「…あっ、向こうで透華さんが呼んでいますよ」
アーニャ「もう時間」
プリシラ「みんなー、そろそろ他の人と合流しよう」

18◇出発編 〜全員集合!〜 ◆rYjxwQv32U:2010/08/26(木) 12:54:35 ID:dvUdn0Qo
透華「全員集合していますわね?」

撫子「刹那お兄ちゃん、大丈夫?」
ゼクス「アーニャ、すまないがなんとかならないか」
アーニャ「大丈夫、荒治療で治る」
船井「なんで誰もワイの心配せーへんのや!」
律「いつものことですからどーでもいいです」
筆頭「それにオメーの自業自得だからな」
刹那「はっ!俺は一体…」
玄霧「おや、もう復帰しましたか」
プリシラ「…アーニャちゃん、凄い名医だね」
キャス子「もう、あなた達出発前に何しているのよ」
透華「もっと穏やかにいてほしいですわ!」
海原「それは無理だと思います…」

透華「まあ、とにかく全員いますわね。それでは…いってきますわ!」
一同「いってきます!」
居残り組「いってらっしゃい!」

【調査隊 出発確認】

19◇出発編 ◆rYjxwQv32U:2010/08/26(木) 12:58:08 ID:dvUdn0Qo
以上で「出発編」を終了します。次回は山荘の探索する、略して「荘索編」です。
まだ書き途中ですが、簡素な内容に仕上げるつもりなので近々投下予定です。

20名無しさんなんだじぇ:2010/08/26(木) 13:04:09 ID:dvUdn0Qo
しまった!第一と第二パートの改行をし忘れた!段落がなくて読みづらい……orz

21◇荘索編 〜不明瞭描写〜 ◆rYjxwQv32U:2010/08/28(土) 00:55:43 ID:RWwEKJFc
◇荘索編 〜不明瞭描写〜
「…情報だとこの辺りだな」
「…こんなaboutな情報で大丈夫か」
「さっきからずっと見渡す限りの緑ばかりやで」
「…あっ、透華お姉ちゃん、あれ」
「あら、どうやら見つかりましたわね。でかしましたわ、千石さん」

「到着♪」
「立派な山荘ですね」
「中はどうなっているのかしら」
「とりあえず入ってみましょうか」

「広々としているねー」
「…それと随分と真新しい」
「人がいた痕跡もない」
「不思議な建物」

「フロア兼休憩室、食堂及び調理室、入浴施設にトイレ、そして備蓄倉庫を確認した」
「左の通路の先に一人用の個室が七部屋あったで」
「右も同様です」
「もしかして個人が持つような山荘でしょうか?」
「では、左側は女性、右側は男性で使いましょう。余った部屋は荷物置き場として使いましょう」

【山荘 全室一人部屋を確認】
※山荘の他の設備や構造については各人の想像に任せますが、金田一少年の事件簿のような個室しかない建物のイメージです。

22 ◆rYjxwQv32U:2010/08/28(土) 00:57:04 ID:RWwEKJFc
以上で終了。……ただ全室一人部屋であることを明記したかっただけです。そして手を抜きました。すみません
これ以後は事件部分を書く作業に入りますので長期間投下はありません。
できれば他の書き手にクエストの2.と3.の内容を描いて欲しいです。
ともあれ就寝前から始まる事件内容をそのうち投下します。では、また

23名無しさんなんだじぇ:2010/09/05(日) 13:49:13 ID:styn8IcI
おぉ!投下始まってたのか
楽しみにしてたのに気がつかなかった…
ゆっくりでも構わないんで、頑張ってください

24 ◆IVe4KztJwQ:2010/09/09(木) 02:37:59 ID:54TY/TGQ
いざ没スレに投下しようと思ったら何かに使えるかもしれないネタだらけだったので
こんな話だったかもというようなものをちょっとだけですが・・。

25 ◆IVe4KztJwQ:2010/09/09(木) 02:45:35 ID:54TY/TGQ

序章

視界が重く暗い。

どの程度、血を流したのかも分からない。

全身を蝕む痛みは、既に限界を通り越して、指先の感触さえも覚束ない。

空を仰ぐ、薄闇に支配された夜空には一切の光明さえ見えず。

「僕は…此処までか…」

──遠くから、四回目の放送が響き、死者の名が読み上げられていく。

「…ルルーシュ……ユフィ……」

終ぞ──そのどちら共に再会は叶わなかったけれど。     ゲーム
世界の明日を願い、共に手を取り合った彼は、今も何処かでこの遊戯を壊す反逆の機会を窺っているに違いない。
そして、彼女の優しい微笑みを思い出して、彼女が本当に生きているのなら──。
変わってしまった僕が──たとえ騎士失格だったとしても。
やはり彼女に逢いたかった、死の際でそう思ってしまう。


「──どこまでいっても…僕は中途半端だな…」


故郷を裏切り、ブリタニアを裏切り、そんな事を繰り返してきた果ての結末がこの有様か。

ふっ、と苦笑いを浮かべてしまう。


「まぁ…お似合い…なのかな…」

路地裏の片隅で、枢木スザクはただ静かに瞳を閉じた。

26 ◆IVe4KztJwQ:2010/09/09(木) 02:55:52 ID:54TY/TGQ
 ☆

一章 再会

黒髪の少女と翠髪の女、戦場ヶ原ひたぎの背中からC.C.がゆっくりと地に足を降ろす。

「すまない戦場ヶ原、ちょっと人助けをしていたんだ」

ひたぎは一呼吸を置くと暦を見つめて話しかける。

「──遅いのよ」
「ああ、お待たせ」

暦はひたぎの身体をぎゅっと抱きしめる。

 ☆

二章 アラガウ者

枢木スザクの命の灯が尽きようとして──。

そして、ソレを繋ぎ留める事は誰にも出来ず、死に逝く様を静かに見守る事しか出来なかった。

──否。

「死ぬな、スザクッ」

こんな最低最悪の結末は──絶対にダメだッ。

その瞳は宙を彷徨い。

「阿良々木君、彼はもう…」
「黙ってろ、戦場ヶ原ッ!」

脳裏をかすめるモノは──。

だから、諦める訳にはいかなかった。

そして、僕は覚悟を決めて。



三章 薬局崩壊

暦の瞳が紅く輝き、その瞳孔が縦に開く。

「うおおおおおおおおおおおおおおお」

爆砕粉砕した瓦礫を押しのけながら立ち上がり。
連結を解除した二刀を掲げたグラハム・エーカーが地を駆ける。

「──これはっ」

その胸の奥底に、彼の者との戦いの記憶と、その最後の残滓が湧き上がり。

魔王の剣を受け止める。だが、魔王と拮抗するには余りに小さな力でしかなく。

グラハムの刃は届かず魔王が猛る。


その瞬間、不死鳥が跳ぶ。



四章 すざくフェニックス

鋭い痛みと、それを取り巻く鈍い疼きとが身体中を這い登り、苦悶の声が喉を震わせる。

それでも……。

冷たく硬い空気の中に足音が響き、信長が笑う。

「羽虫共が──」

「魔王、織田信長──お前は僕が此処で倒す」

その瞳の中で、両翼を左右に広げた鳳の紋章が輝き。

赤く、紅く、不死鳥のように舞い。

枢木スザク、最後の戦いが始まった。

27 ◆IVe4KztJwQ:2010/09/09(木) 02:58:35 ID:54TY/TGQ
以上です。
はたして終了までに再び本編を書けるかどうか・・、書けたらいいな。

28 ◆C8THitgZTg:2010/09/14(火) 00:15:42 ID:4c18Whb6
ここ最近、戦闘や長編をとんと書いていなかったので、
没ネタの消化も兼ねてリハビリ執筆

29 ◆C8THitgZTg:2010/09/14(火) 00:16:49 ID:4c18Whb6
――――叫びの意味を、理解できない。



高層ビルの壁面が砕け散った。
瓦礫とガラスの瀑布を貫いて紫衣の女が宙を舞い、反対側の建造物の壁に着地する。
僅かに遅れ、砲弾の如き黒い塊が女を追って飛翔した。
崩れ落ちるビルを眼下に、二つの影が銀と金の刃を交える。
咆哮とともに銀の刀を振るう黒衣の少女。
冷徹に金の剣を繰り出す紫衣の女。
夜天を背景に繰り広げられる戦いは、もはや人知の及ぶところではない。
垂直の壁を足場に虚空を駆け、認識の限界に迫る速度の剣戟を交わし続けている。

その光景を、地上から見上げる誰かがいた。

刃が少女の柔肌を引き裂き、赤い血飛沫を空に飛び散らせた。
甘ったるい血の匂いを引き連れて、一振りの刀が地面に突き刺さる。
しかしその誰かは、眼前に突き立つ刀ではなく、数歩先に墜落した少女の姿に目を奪われていた。
―――無残な光景だ。
黒衣は既にぼろぼろで、裂け目から覗く肌も裂傷と血糊に染まっている。
色違いの双眸はまるで焦点が合わず、杖にされたもう一振りの刀も小刻みに震えている。
叫ぶように、喘ぐように開かれた口からは不明瞭な雑音が漏れているだけだ。
■くて、■しくて、■■てしまいたいと。
■■に、■■叫んでいた。
今の俺には少女の叫びが理解できない。
何かとても大切なコトを訴えている気がするけれど、分からないものは分からない。
脳を振るわせる怨嗟の声に、鼓膜が麻痺させられてしまっているのだろう。
けれど『俺ではない誰か』には理解できたらしい。
決して果たすことのできない約束を口にして、跳び去った少女を追って駆け出していく。

刀の柄を握り締めた手が、鈍く痛んだ。




   ◇  ◇  ◇



両断されたカリバーンの刀身が宙を舞い、ひび割れた道路に突き刺さる。
士郎は残った柄を即座に投げ棄て、無手のままで大きく踏み込んだ。
迎え撃つ式の斬撃を投影された日本刀が受け止める。
刀が切断されるまでの一瞬に、右手の指が三本の刀を握り締める。

「――――っ」

三爪の刺突を、式は後方に飛び退いて回避した。
一跳びで七歩分の間合いが開く。
尋常ならば接近に一秒強を要する距離である。
だが、今の士郎は尋常とは程遠い。
殺され霧散する刀を放棄し、対となる三爪の投影を詠唱する。

30 ◆C8THitgZTg:2010/09/14(火) 00:17:53 ID:4c18Whb6
「おおおっ!」

右手に三爪、左手に三爪。
神速の踏み込みを以って彼我の間合いを制圧する。
しかし、それをも上回る速度で式の両腕が跳ね上がった。
下段から抉るが如く繰り出された一撃を、士郎は左の三爪を犠牲に押し留める。
片腕の腕力と渾身の膂力の差は著しく、三本の爪が弾かれるまで半秒と掛からない。
その僅かな猶予を突き、右の三爪が横薙ぎに式へと襲い掛かる。
三つの刃が式の細身に達する刹那、振り上げられた斬撃が、上段からの一撃と化して肩口を裂いた。

「ぐっ……!」

鮮血が飛び散る。
今度は士郎が間合いを離す番だった。
傷自体は肉を裂いたのみで骨までは達していない。
それでも猛攻を取り止めるには充分過ぎる斬撃であったはずだ。
士郎が一手を打つ間に、式は下段と上段の二手を繰り出してみせたのだ。
この事実は決して小さくはない。

「…………」

式は引き離された間合いを維持したまま、刀をそっと構え直した。
血液が鎬を伝ってゆっくり滴り落ちていく。
重心は微かに低く、刀の柄は腹の前で固定し、刀身を敵に向けて傾かせる。
正眼の構え。基本にして最強の型。
僅か数秒の攻防であったが、式は対峙する敵の戦いの異常性を把握した。
先ほどの動きと黄金の剣を用いていたときの動きが全く違う。
それはどちらか一方が優れていたという意味ではない。
武器を変えるごとに、戦い方の質が『切り替わっている』のだ。
複数の使い手が入れ替わり立ち替わり挑んでくる感覚といえばいいだろうか。
刀剣を生み出すらしいあの魔術は、きっとそういうものなのだろう。

「投影、開始」

士郎が左の三爪を補充した。
肌を焼くほどの殺意が、黎明の冷たい大気を塗り潰す。
幾千もの刃を突きつけられたかのような殺気を、式は正面から受け止める。
その殺気を貫いて、式の殺意が士郎を射抜く。

「――――!」

式が一歩を踏み込む。
空間を歪めるかのように白い影が加速する。
残像も残らぬ速度が古の刀に必殺の威力を宿らせる。
風斬り音すら置き去りにした斬撃は、しかし士郎が翳した六爪の格子に阻まれた。
六爪に走る死の線は一振りごとに位置が異なる。
翳された六振りの線が、一撃で断ち切れるように並ぶことはまずありえない。
士郎が盾とした六爪のうち、一振りは死の線を断たれ、一振りは純粋な斬撃の威力で切断され、一振りは拵えが軋み刀としての機能を失った。
残された三爪が衝撃を受け止め、斬撃を辛うじて受け流す。

船着場に激しい金属音が響き渡ったとき、式は既に第二撃を繰り出していた。

斜め下方より逆流する返し刃を、欠けた六爪が紙一重で受け止める。
一撃の重みに耐えかねて、士郎の片腕が跳ね上がった。
指の間から二振りの刀が弾け飛ぶ。
残された刀を士郎が握り直した瞬間、九字兼定の切っ先が無防備な脇腹を突き破った。

31 ◆C8THitgZTg:2010/09/14(火) 00:18:28 ID:4c18Whb6
「が――――――っ」

士郎の貌が苦痛に歪む。
鋭い刃先に裂かれた背中から、赤黒い液体が塊になって溢れ出す。
あの体勢で狙える位置に線はなかった。
しかし、この一撃は充分に致命的だ。
このまま横向きに薙げば、腹部に詰まった臓物は丸ごと両断される。
式は九字兼定の柄に力を込め――――

「――――ちっ!」

突如、式は柄から手を離して後方に飛び退いた。
強引な跳躍で大幅に距離を取り、両手足を路面に突いて停止する。
士郎は自ら優位を捨てた式に、追撃を加えようとはしなかった。
腹部に突き刺さった刀を見下ろし、呆然としたまま、その柄に手をかける。

「なんだ……何が……」

士郎は柄を握り、刀を引き抜こうとした。
僅かに刀身を引いた途端、肉体に突き刺さっていた部分が跡形もなく崩れ去る。
背中から露出していた切っ先が、ぼろりと抜け落ちて落下した。
腹と背の傷口から、溶けた刀身を排出するように、黒い液体が止め処なく流れ出す。
式は目を細め、その異様を見据えた。
あのまま刀を薙いでいたら、刀は式の手元で崩壊していただろう。
懐に潜り込んだ状態で晒すには危険すぎる隙だ。
しかし張本人である士郎自身、己の身に起きた異変を把握し切れていないらしい。
式は士郎に対する警戒を維持したまま、己のデイパックへにじり寄り、片手を差し入れた。

「やっぱり普通のやり方じゃ死なないのか」

魔眼が士郎の死を浮かび上がらせる。
どれだけ異形に成り果てようと、生きているなら死から逃れることはできない。
手探りで握った鞘は陸奥守吉行のものだった。
もう同じ轍は踏まない。
次は線を断ち切って、確実に殺す。

「…………」

刀を引き抜こうとした手が鈍る。
不意に、心の底から平和そうな男の顔が頭に浮かんできた。
もしもあいつがここにいたら、どんなことを言うのだろうか。
……そんなこと、問うまでもない。
式は白刃を煌かせた。

32 ◆C8THitgZTg:2010/09/14(火) 00:19:15 ID:4c18Whb6
 



   ◇  ◇  ◇




――――大切な約束を、思い出せない。



薄暗い林道の片隅で、俺ではない誰かが、小さな少女に胸倉を掴まれていた。
カーキ色の制服の上着を掴む少女の手はとても華奢で、強く握れば折れてしまいそうだ。
少女の叫びが林道に響き渡る。
白い木漏れ日の陰影が、泣き出しそうな少女の顔を照らしている。
もしかしたら、本当に泣いているのかもしれない。
けれど、俺はそれを確かめることができない。
少女は叫ぶ。
同じコトを何度も何度も。
何度も何度も。
何度も、何度も。
地面に涙の雫を落とし、俺ではない誰かの肩を揺すりながら。
とても大切なことなのだと、とても悲しいことなのだと、何度も繰り返す。

だけど、俺はその言葉を理解できない。

少女の涙を指先が拭う。
目に映るその指は、黒い泥に薄汚れてなどいなかった。
綺麗とはお世辞にも言いがたいが、確かにこれは人間の指だ。
短い会話の後、彼女はとある約束を口にする。
だが、沸騰するほどに加熱する脳髄が理解を拒む。
何故なら■■と約束を交わしたのは、■■■■■という理想を目指していた大馬鹿野郎なのだから。
こんな殺意に塗れた怪物には、彼女の叫びを理解する資格などあるはずがない。
思い出すことなど許されるわけがない。




   ◇  ◇  ◇




澪は路面に腰を落とし、力なく顔を上げていた。
数十メートル先で、制服の男と和服の女が刃を打ち鳴らしている。
打ち合うたびに裂帛の気合が炸裂し、剃刀のような殺意が澪の肌を焼き焦がす。
明け方の肌寒さなど微塵も感じられない。
遠方から戦いを見ているだけだというのに、澪は剣戟の最中にいるような錯覚すら覚えていた。

「あ……う……」

33 ◆C8THitgZTg:2010/09/14(火) 00:19:58 ID:4c18Whb6
思考が言葉にならない。
知らず涙が浮かび、心臓を鷲掴みにされたような痛みが走る。
刃がぶつかり合う音がするたびに、恐怖が骨の髄を貫いて、澪をこの場に釘付けにする。
両者の戦いは、それほどまでに凄まじかった。

式の腕がぶれる。
それに呼応するように、士郎もまた同様の動きを見せる。

―――それが『刀を振るう』行為だと分かったのは、刃のぶつかり合う音が聞こえてからだった。

澪にとって、二人の剣戟はあまりにも速過ぎた。
玉鋼の輝きが暗闇を割り、静かな船着場に甲高い音を響かせる。
一歩で数メートルもの間合いを取り、それを一瞬にして詰め返す。
わずか千分の一秒で振り抜かれる斬撃を、同等の速度を以って打ち落とす。
鉛玉が飛び交う銃撃戦のごとき様相で、鋼の刃が宙を裂く。
もはや人間同士の戦いだとは到底思えない光景だ。

「嫌、だ……」

澪は尻餅を突いた格好のまま、はいずるように退いた。
殺される。
ここにいたら殺される。
間違いなく殺される。
刃の音がするたびに精神が鑢で削られていくのが分かる。
式が現れたときの安心感はとっくに消え失せていた。
せめぎ合う二人の殺気は、それが澪に向けられたものでないとしても、彼女の精神を圧迫し続けていた。

士郎の刀が天高く弾き飛ばされる。
だが士郎は、そんなことお構い無しに別の刀を取り出して、式の一撃を迎え撃った。

この戦いを異様足らしめているもの。
それは常人の域を超えた速度の攻防だけではない。
弾かれようと壊されようと際限なく剣―――士郎の武器。
初めて目の当たりにしたときは、士郎が逐一デイパックから取り出しているのだと思っていた。
しかしあれだけ目の当たりにすれば、否応なく思い違いに気付かされる。
黄金の剣や無数の日本刀は、文字通り何もないところから現れていたのだ。
不意に、切断された銀色の刀身がくるくると宙を舞い、澪の眼前に突き刺さる。

「ひっ……!」

澪は手足をばたつかせるようにして後ろに逃れた。
式と士郎が織り成す地獄の淵からは、既に二十メートル以上の距離が開いている。
普通なら安全圏だと思えるようなこの距離も、澪にとっては無いも同然の至近距離だった。
瞬く間に近付かれ、首を切り落とされる想像に肌が粟立つ。
人外の戦いに出くわしたことは初めてではない。
だが、政庁の時は大勢の人がいた。
今のように、一人きりで辺獄に取り残されたかのような状況ではなかった。
似ているのはコロッセウムでの殺し合いだ。
けれど、それとも確実に違う点がある。
あのとき、光秀は澪のことを眼中に収めていなかった。
澪は殺しがいのある得物を釣り上げる『餌』に過ぎなかったのだ。

34 ◆C8THitgZTg:2010/09/14(火) 00:20:43 ID:4c18Whb6
今は、違う。

二振りの刀がぶつかり合い、互いの刃を押し潰す。
素人である澪から見ても、優位に立っているのは式の方だ。
士郎は数合の打ち合いで刀を失い、辛うじて次の刀を手に取っている状態である。
それでも、この状況が続けばどうなるのか。
数に限りのある刀を磨り潰しながら戦う式と、刀剣を湯水の如く使える士郎。
この違いは、いずれ目に見える形で表面化するに違いない。
金属が歪む音がして、士郎の刀が刃物としての機能を喪失した。
次の瞬間には新たな刀が出現し、追撃を紙一重で防ぎ止める。

直後、式が白刃を振るい間合いを取った。

傍から見れば、何度目かの仕切り直しとしか思えない行為である。
しかしこの瞬間、澪の理解が及ばない領域で戦いに変化が起こっていた。
式は打ち合い傷ついた名刀を構え、士郎は新たに取り出した古刀の柄を握る。
もしも澪に武術の心得があったなら、士郎が取った正眼の構えに著しい既視感を覚えたことだろう。
両者の違いは数センチ分の体格差と手にした得物。
二人はほぼ同時に踏み込んで、鏡写しの斬撃をぶつけ合った。

「どうしよう……早く逃げないと……」

頭では分かっていても、竦んだ身体は自由にならない。
這ってでも逃げようとした手の先に、何か硬いものがぶつかった。
咄嗟に手繰り寄せようとしたが、予想外の重さに引っ掛けた爪が剥がれそうになる。
――ミニミ軽機関銃。
サザーランドから脱出したときに落としてしまったものだ。
澪はどうにか引き寄せた軽機関銃を抱え、尚も斬り合う二人に向き直った。
無骨な銃身を握り締める。
手の平に伝わる冷たい痛みが、今だけは快かった。




   ◇  ◇  ◇




――――記憶が、逆流する。



夜空を断つ黄金の光。


雄々しく翼を広げる天馬。


淡雪のように白い少女。


紅い槍と陰陽の双剣。


凛と佇む誇り高き騎士の姿。



そして――――

35 ◆C8THitgZTg:2010/09/14(火) 00:21:31 ID:4c18Whb6




   ◇  ◇  ◇




「――――!」

そう吐き捨てたのは、これで何回目だろうか。
何と言う意味の言葉だったのか、記憶が曖昧で思い出せない。
刀の切っ先が血肉を抉り取るたびに、頭の中身がシェイクされる。
まるで、脳味噌が直火で加熱されてどろどろに蕩けてしまったかのようだ。
湧き上がる衝動は苛烈過ぎて、頭が感情を処理しきれない。
目の前のモノを■さなければならないという思いだけが、俺の身体を突き動かしている。

「――――――」

和装の女が何か言っている。
けれど、耳鳴りが酷くて聞き取れない。
絶え間なく繰り出される斬撃を、投影していた九字兼定で迎撃する。
相手は強い。
経験に共感し、魔力で体のスペックを水増しして、ようやく食い下がることができる。
だが、それで充分だ。
こちらの魔力が尽きるまでに、相手の刀を全て使い潰させればそれで終わる。

「……っ!?」

受け止めたと思った一撃が、こちらの刀身をバターのように両断した。
貫通した刃が俺の肉を浅く切り裂く。
この現象だけは、どうしても防ぎようがない。
奴が見ている『何か』を理解できない以上、俺に出来るのは最悪を想定して戦うことだけだ。

「投影、開始―――」

同じ刀を再び投影する。
相手の刀は損傷が限界を超えつつある。
俺の肉体も、かねてからの斬り合いで何箇所も負傷している。
だが致命的な傷はまだ受けていない。
脇腹に開いた穴も、刺さった刃が溶けて解けて融けて熔けてトケテ鎔けて―――――――――

「が、あ……っ!」

強烈なノイズが神経を逆流する。
炭酸を血管にブチ込まれたような激痛が脳を駆け巡り、視界が一瞬だけブラックアウトした。
気付いたときには、俺は路面に両膝を突いていた。
右手の九字兼定が輪郭を失い、形のない魔力になって霧散する。
喉が焼けるように熱い。
肺臓が跡形も無く燃えてしまいそうだ。
酸素を求めて口を開くと、奴らを  すという言葉を吐きそうになる。
どうにか顔を上げると、女が冷めた顔で俺を見下ろしていた。
使い物にならない刀から片手を離して、聞き取れない声で  っている。

36 ◆C8THitgZTg:2010/09/14(火) 00:22:28 ID:4c18Whb6
「――――、――」

聞き  なくても、言いたいことは何となく分かる。
俺がもう限界だと言いたいのだろう。
ああ、そんなの知って

だからせめて、     だけは      ないと

無防備に立ち上がる俺を、
女はただ眺めていた。
片足を引きずりながら真横を通り過ぎ、
背中を向けたまま歩き続ける。
行く先には、
銃を抱え怯える一人の少女。

アイツは殺した
だから殺す
殺す殺したから殺す殺さなければならない
アレは悪だ故に殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ
殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ
殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺

「―――ぐ、」

どさりと、またも膝を突く。
あの少女まで十数歩もの距離がある。
けれど、もう立ち上がることはできないと、おぼろげながらに理解する。
肉体ではなく、精神が終わる。
渦巻く怨嗟に飲み込まれ、汚濁の一片に成り果てる。
首を傾けて空を仰ぐ。
黎明の空は、朝と夜が混ざり合った色をしていた。

「殺さ、ないと―――」

もう多くは望まない。
せめて最期に、コイツだけは。
侵食された理性のヒトカケラを搾り出して、銀色のペーパーナイフを投影する。
これが限界。マトモな剣をイメージする力なんて残っちゃいない。
手が届かないほど遠くから、少女が何か叫んでいる。

「――――! ――!」

理解できなくなっていた。
汚染され、血に塗れた■■■■■が叫んでいた理由を。

「――! ――――――!」

思い出せなくなっていた。
衛宮士郎の在り方を知り慟哭する■■■■に誓った約束を。

「――――――――――――!」

分からなくなってしまったのは、当たり前のことだ。
何故なら、どちらの記憶も衛宮士郎が体験したことなのだから。
こんな怪物が理解できてはいけない。
思い出せていいはずがない。

「……ははっ……」

このまま死ぬのは裏切りだ。
だからせめて、最期くらいは衛宮士郎として振舞わないと。
彼女達が信じた男が、この怪物にするであろうことは唯一つ。
せめてこれくらいはしなければ、

37 ◆C8THitgZTg:2010/09/14(火) 00:23:10 ID:4c18Whb6
「あいつに、顔向け……できない……よな」


正義のために悪を殺す。


「―――――――――――ぁ!」


正義の味方を目指した『衛宮士郎』が、悪に染まった『俺』を殺す。


「―――――――――る―ぁ!」


俺は銀色のナイフを逆手に持ち替え、自らの首へと


「―――――――近寄るなぁ!」






銃声。






―――胸に孔が開いていた。
心臓のあるべきところに、指先ほどの穴が開いていた。
銀のナイフが、感覚の薄れた手から滑り落ちる。
ぱしゃん、という鈍い水音がした。
これは当然の報いなのだろうか。
己自身の在り方を見失った男には、最期を選ぶ権利などない、と。
うつ伏せに倒れる瞬間、少女の銃が煙を上げているのが見えた。
そして、涙でぐしゃぐしゃになった顔も。





   ◇  ◇  ◇





「ばかなやつ」

式はぽつりと呟いた。
陸奥守吉行を鞘に収めようとして、半分ほど入れたところで手が止まる。
刀身が歪んでしまったせいで、鞘の穴の形に合わなくなったようだ。
名刀を二振りも使い潰した結果を悔いる様子もなく、式は静かに踵を返す。

38 ◆C8THitgZTg:2010/09/14(火) 00:23:45 ID:4c18Whb6
「……ばかな、やつ」

もう一度、同じことを繰り返す。
それは誰に向けられた言葉なのだろうか。
自らの血溜まりに倒れ付した衛宮士郎を一瞥し、今も震え続ける澪を見やる。
澪はまるでお守りか何かのように機関銃を抱えていた。
銃身を抱き締め、焦点の合わない目で、衛宮士郎だったモノから視線を逸らしている。

「あ……ああ……」

助けられたという安堵から一転、常人の域を超えた死闘に晒されたのだ。
この強烈な落差は、澪に多大な恐怖心を与えたに違いない。
それこそ、物理的には安全圏にいたというのに、まるで死の一歩手前にいるかのような錯覚を覚えるほどに。
一度や二度の経験で慣れることができるほど、死への恐怖は軽くないのだから。
あんな状態では、近付いてくる男の状態を見分けることなどできなかったはずだ。
式から見れば子猫一匹すら殺す余力もない半死半生の有様でも、澪にとっては強大極まりない怪物だった。
恐怖に駆り立てられて発砲に及んだのは、むしろ必然と言えるだろう。

「行くぞ、秋山」

式はあっさりとした口調で澪に告げた。
この戦場に対する一切の興味を失ったかのように、単調な歩幅で澪の横を通り過ぎていく。

「で、でも、サザーランドが……」

澪は擱座した機体と式の間で目線を左右させた。
この機体は澪にとって戦うための力であり、身を護る合金の揺り篭だ。
機体を失うことは、無力な自分に逆戻りしてしまうことを意味する。
それはとても耐え難いことなのだろう。
かといって、澪をここに置いて帰るわけにはいかない。
式は瞼をきつく閉じて、それらしく聞こえる理由付けを考えた。

「オレ達だけであのデカブツを引き上げるのか?
 他の連中を連れてきて手伝わせないと無理だろ」
「あ……そうか、そうだな」

その場凌ぎの言い分だったが、それなりに説得力はあったらしい。
澪は仕掛け人形のようにこくこくと頷いて、式の背中を追いかけた。
まるで二度目の殺人を犯したという事実から逃避するように。
船着場を後にしようとした瞬間、式が後ろに鋭い視線を向けた。
睨まれたと思った澪がびくんと震える。

「な、なんだよ」
「……悪い、気のせいだ」

そして何事も無かったかのように歩き出す。
一瞬だけ感じた違和感―――あまりにも歪な気配に警戒を抱いたままで。





   ◇  ◇  ◇

39 ◆C8THitgZTg:2010/09/14(火) 00:24:25 ID:4c18Whb6
―――月の綺麗な夜だった。
彼の傍らには、何かに疲れ果て、年齢以上に老いさらばえた男がいた。
少しだけ肌寒い縁側で月を眺めながら、男は不意にこんなことを口にした。

「……子供の頃、僕は正義の味方に憧れてた」

その一言に込められた思いに、彼は気付かない。
ただ、尊敬する男が自らを否定するのが嫌なのだと、不機嫌に表情を変える。

「なんだよそれ。憧れてたって、諦めたのかよ」

彼は何も知らない。
男の抱く感情を。
男が犯した罪を。
男を苛む後悔を。

男―――衛宮切嗣は、遠い月を眺める振りをして、
彼―――衛宮士郎への悲痛な思いを苦笑で誤魔化した。

「うん、残念ながらね。
 ヒーローは期間限定で、オトナになると名乗るのが難しくなるんだ。
 そんなコト、もっと早くに気が付けば良かった」

切嗣は自らに言い聞かせるように、士郎の問いに答えた。
もっと早く気付いていれば、もっと早く諦めていれば。
士郎はしばらく考え込んだ後、神妙な顔で頷いた。

「そっか。それじゃしょうがないな」
「そうだね。本当に、しょうがない」

悼みを込めた相槌を返す。
こんな単純なことに気付いていれば、あれほどの人々を犠牲にすることはなかったのに。
失うばかりの人生を送ることはなかったのに。
だからこそ、切嗣は士郎に自分と同じ道を辿って欲しくないと願っていた。
もしも士郎が、自分と同じように絶望し、壊れていくとしたら、それは自らがもたらした呪いではないか。
けれど、士郎は―――

「うん、しょうがないから俺が代わりになってやるよ」

ごくさりげない口調で、そんな誓いを立てた。

「爺さんはオトナだからもう無理だけど、俺なら大丈夫だろ。
 まかせろって、爺さんの夢は――」

士郎は今この瞬間を、美しい月夜とともに、心の奥深くに刻み込んでいく。
それが衛宮士郎の始まりの想い。
貴く無垢な祈りのカタチ。
衛宮切嗣がかつて抱き、そして忘れてしまった、眩いばかりの誓い。
彼はきっと、今夜の思い出を忘れまい。
数多の嘆きを知り、数限りない絶望を味わってもなお、必ずこの瞬間の自分に立ち戻れる。
切嗣は胸の内に広がる安らぎを感じながら、そっと目を閉じた。

「そうか。ああ――安心した」

それは生涯を理想に捧げ、何も成し得ることなく、喪失と絶望に打ちのめされた男に与えられた、最期の救済。
そして、衛宮士郎という男の原風景。

40 ◆C8THitgZTg:2010/09/14(火) 00:25:10 ID:4c18Whb6
 








――それなのに、あんな声に負けちまうなんてな――


暗いセカイを堕ちていく。
どちらが上でどちらが下かも分からない。
ただ、堕ちていくという感覚だけは理解できる。

無くして、失くして、亡くして。
何一つ救えないまま堕ちていく。

きっとここで目を閉じれば、二度と開くことは叶うまい。
絶望からも哀しみからも顔を背け、暗いセカイに堕ちていく。
そうすることができればどれほど楽だろう。


――結局俺は、何も――――

――そんなこと、ないよ――


不意に、優しい声がした。
いつの間にか堕ちていく感覚が消えていた。
柔らかいものに抱き止められたような暖かさが、胸のうちから湧き上がってくる。


――あのとき掛けてくれた言葉、すごく嬉しかった――

――……――

――だから、衛宮君――――


誰かが軽く背中を押した。
たったそれだけで、彼の身体は嘘のように浮き上がっていく。
セカイが白んでいくを自覚しながら、士郎は身体を捩って振り返った。
慈しむように微笑む二色の綺麗な瞳に向けて、磨耗しかけていた名前を叫ぶ。


「――――福路――――っ!」

41 ◆C8THitgZTg:2010/09/14(火) 00:26:25 ID:4c18Whb6





   ◇  ◇  ◇





口腔に入った砂の不快感と共に、衛宮士郎の意識は覚醒した。
全身が鉛のように重い。
四肢の関節は錆びた蝶番のようで、動かそうとすること自体が億劫だ。

「やはり時期を見誤ったか」

どこからか、聞き覚えのある声がした。
しかし胡乱なままの頭では、女の言葉を把握しきれない。
女は士郎が目覚めていることに気付いていない様子で、よく分からないことを語り続ける。

「狂気に歪んだ思考で大魔術を行使できるほどの実力はなかったとみえる」
「だが、そのお陰で楽しみがいのある状況になった」

唐突に別の声が割って入ってきた。
やたらと低音の目立つ男の声だ。
――どうしてだろう。
あの声を聞いていると、不思議と心がざわつく。
今すぐ立ち上がれという衝動が湧き上がってくるほどに。

「ふむ、もう目覚めるとはな」

男が感心したように言う。
その落ち着き払った声が神経を逆撫でし、強張った腕を動かす原動力になる。
せめて上体を起こそうとする士郎の抗いをよそに、彼らは身勝手な会話を続けていた。
しかし脳の半分がまだ夢から醒め切っていないようで、それが誰の声なのかも釈然としない。

「ところで、まだこの男を使うのか」
「一度敗北したとはいえ、二度目も通用しないとは限るまい。
 それにおまえにとっては好ましい情勢だろう」
「ああ、確かに期待できる展開だ。なにせ―――」

ぐるんと上下感覚が反転し、目蓋越しに淡い光が瞳孔を照らす。
姿勢を仰向けに出来たところで、士郎の意識は再び闇に吸い込まれていった。
今度は致命的な暗黒ではなく、一時のまどろみ。
男が何事か呟いていたが、それを解読する余裕もないままに、士郎は意識を手放した。





しばらくして目を覚ますと、空がうっすらと明らんでいた。
眠っていた時間はそう長くないようだが、肉体のコンディションは随分マシになっている。
士郎は脇腹の痛みを堪えながら上体を起こした。

「痛っ……」
「まだ動くな。治療を施したとはいえ、まだ完全には塞がっていない」

42 ◆C8THitgZTg:2010/09/14(火) 00:26:48 ID:4c18Whb6
視線を上げると、数メートル先の路上に蒼崎橙子が立っていた。
その他の人影は見当たらない。
秋山澪も、和装の女も、あの不愉快な声の主も。
廃墟と化した船着場には、蒼崎と士郎以外の人間は存在しなかった。

「すまない、私が駆けつけたときには全て終わっていた」

どこか白々しい謝罪の弁を述べる蒼崎。
士郎は蒼崎の忠告を無視して無理矢理立ち上がり、港にそびえる構造物を仰いだ。
ギャンブル船、エスポワール号。
この地における始まりの場所。
ところどころが焼け焦げたそれは、延焼による損壊を負ってなお、不気味なまでの威容を保っていた。

「その顔、迷いはないようだな」
「ああ、早く白井のところに行かないと……それに……」

死に瀕したときに見た光景を思い浮かべる。
あれは瀕死の脳髄に浮かんだ幻覚なのか、それとも黒い泥を通じて伝わった現実の想いなのか。
正体が何であれ、あの邂逅が士郎の背中を押したのは本当だ。
手放しかけていた理想を取り戻させて、もう一度頑張れと後押しをしてくれた。
その想いを裏切ることは、もう二度としない。
決意を新たにする士郎の後ろで、蒼崎は何やら意味深な表情をしていた。

「―――衛宮士郎、心臓のことはまだ気付いていないのか」
「心臓……?」

士郎は自分の胸に目を向けた。
着衣には明確な銃創が残っているにも関わらず、胸板には僅かなへこみすら付いていない。
背筋が粟立つような不安を抱きながら、胸の中心に手を重ねる。




鼓動が、消えていた。

















――――――なにせ、あの男が私と同じ有様で蘇ったのだからな――――――

43 ◆C8THitgZTg:2010/09/14(火) 00:27:55 ID:4c18Whb6
以上、書きたい戦闘やら、普段は使いにくい演出やらを気ままにつぎ込んだ没ネタでした

44 ◆0zvBiGoI0k:2011/05/23(月) 00:46:05 ID:Mdv63T9g
☆☆☆☆☆首輪換金額一覧★★★★★

※戦闘能力よりは生存能力を重視して金額をつけている。
殺し合いに乗るか否かでも幾らか変動がある。
なお、このネタは本編には反映されておりません。個人で考えたお楽しみ用です。



平沢唯(5万)
秋山澪(5万)
田井中律(5万)
琴吹紬(5万)
中野梓(5万)
平沢憂(10万)

竹井久(20万)
天江衣(100万)
福路美穂子(30万)
池田華菜(1万)
加治木ゆみ(10万)
東横桃子(50万)

ヒイロ・ユイ(5000万)
デュオ・マックスウェル(4500万)
張五飛(4000万)
ゼクス・、アーキス(4000万)
トレーズ・クシュリナーダ(4200万)
リリーナ・ドーリアン(1万)

伊達政宗(1億8000万)
真田幸村(1億6000万)
織田信長(5億)
明智光秀(1億5000万)
本多忠勝(3億)
片倉小十郎(1億1000万)

上条当麻(2000万)
御坂美琴(8500万)
白井黒子(4600万)
一方通行(4億)
月詠小萌(21)0万)
海原光貴(21)00万)

衛宮士郎(2000万)
セイバー(2億5000万)
アーチャー(2億)
バーサーカー(8億)
ライダー(1億6000万)
キャスター(1億8000万)

ヴァン(7200万)
レイ・ラングレン(7500万)
カギ爪の男(50万)
ファサリナ(6500万)
プリシラ(2200万)

伊藤開司(1500万)
利根川幸雄(1000万)
兵藤和尊(1200万)
安藤守(1000)
船井譲次(100万)

ルルーシュ・ランペルージ(5000万)
枢木スザク(9000万)
C.C.(2000万)
ユーフェミア・リ・ブリタニア(1500万)
アーニャ・アールストレイム(2500万)

両儀式(1億)
黒桐幹也(400万)
浅上藤乃(8000万)
荒耶宗蓮(0)※ジョーカー
玄霧皐月(500万)

阿良々木暦(1500万)
戦場ヶ原ひたぎ(300万)
八九寺真宵(10万)
神原駿河(900万)
千石撫子(10万)

刹那・F・セイエイ(5000万)
グラハム・エーカー(4000万)
アリー・アル・サーシェス(4200万)→(0)※蘇生

45 ◆0zvBiGoI0k:2011/05/23(月) 00:47:04 ID:Mdv63T9g
おまけ

ライダー「私とフジノがペアを組み、1億6000万ペリカ+8000万ペリカで2億4000万ペリカ!!
     いつもの2倍の魔眼が加わり、2億4000万x2の4億8000万ペリカ!!
     そして、いつもの3倍の力で天馬を召喚すれば、4億8000万x3の
     バーサーカー!貴方をうわまわる14億4000万ペリカだーっ!!」

※2倍x3倍にする必要性がないとはいってはいけない。ゴッドハンドがあるしオーバーキルする位が丁度いいんです。



(^U^)申し訳ございません。このような(2ヶ月ぶりの)投下で。

46 ◆hqt46RawAo:2011/06/15(水) 11:12:09 ID:/50MAQqo
ボツSS、投下します。

47 ◆hqt46RawAo:2011/06/15(水) 11:12:44 ID:/50MAQqo


※ ※ ※ ※ ※ ※


※お読みください※


ここから先は没ネタ投下です。
昔書き溜めていたネタとかを軽く弄って晒し上げです。
なので整合性とか無茶苦茶、違和感ありまくり。
未練と懐かしさの入り混じった蛇足。
カオス風味のフリーダム。
なので嫌いな人は回避推奨。
それでもイイって人は続きをお読みください。
本編再開までの暇つぶしになれば幸いです。


※ ※ ※ ※ ※ ※

48 ◆hqt46RawAo:2011/06/15(水) 11:14:10 ID:/50MAQqo


進行期間
『第五回放送までのSSにおける、深夜〜黎明』より

49 ◆hqt46RawAo:2011/06/15(水) 11:14:44 ID:/50MAQqo


↑ ↑ ↑

幕間:寸劇

↓ ↓ ↓

――――――ねえ、イリヤ・スフィール?

――――――何かしら?

――――――……いや、なんというか。

――――――何かしら?

――――――遅い、ね。

――――――ええ、遅いわね。

――――――……。

――――――……。

――――――退屈だね。

――――――ええ、退屈ね。

――――――…。

――――――……。

――――――ねえ、イリヤ・スフィール?

――――――リボンズ。あなた暇なの?

――――――そりゃあ暇さ。いくら総集編が投下されたって、本編が動かないと僕はやる事がないじゃないか。

――――――いや、まあそうだけど。

――――――だから少し、暇つぶしをしないかい?

――――――……ふうん、まぁ、私も正直言って退屈だから、いいわよ。で、なにするの?

――――――大した事じゃない。軽いお喋りをするだけさ。

――――――お喋りって……だから何を話すのよ?

――――――ふむ……。

――――――考えてなかったの?

――――――いや、今考えてるんだ。

――――――てきとーねぇ……。

――――――そうだな、じゃあ、IFの話をしようか。

――――――イフ?

――――――そう、もしもの――『畏怖(イフ)』の話、さ。




↑ ↑ ↑

50『IF(畏怖)』の話 ◆hqt46RawAo:2011/06/15(水) 11:17:15 ID:/50MAQqo

ep.if:1

『kimagure no sokuseki』


↓ ↓ ↓


月。

満月を描くには少し足りない、中途半端な円形の。
そんな月が光を放つ。
地上へと、眩い月光が降り注ぐ。

夜の帳の中心で、それを浴びる者がいた。
かのものは、傭兵。
雇われの戦争屋が荒野に一人、月を見上げている。

「あーあ、逃しちまったかぁ……」

心の底から残念そうに、傭兵はほくそ笑んでいた。
そこには誰も、いない。見渡す限り誰もいない。
荒野。
此処に立つものは、笑う傭兵ただ一人。

「よっこいせ、とっ」

傭兵の腕はすっと地表へと伸び、ザラザラとした硬い表面を指先が軽く撫でた。
罅割れた大地から、砂にまみれた己の武器を拾い上げる。
掴んだそれは、巨大な鉄。鉄塊だった。

「よっぉし、なんとかまだ使えるみてぇだな」

満足そうに頷き、鉄塊を担ぎ上げ、傭兵は前を見る。
今はもう静まり返った、けれどつい先ほどまでは確かに、戦場だった筈の荒野を見た。

「そんじゃ……行こうかねぇ……」

傭兵は決定する。

逃がした獲物の数は三匹。

内一匹に致命傷を与えた。
内一匹には打倒可能の確信を抱いた。
内一匹には打倒困難の予感を得た。

そして、襤褸屑のように罅割れた自らの五体を鑑みれば。

「しばらく戦争はお預けか」

戦争屋の進む足は、自然と南を向いていた。
必ず追いつき、喰らいつく。
それを前提とし、傭兵は歩む。

茶色がかったセミショートの髪を乱れさせたまま、
まだ幼さの残る少女の身体に巨大な鉄塊を背負い、
砕けそうな四肢を引きずって、行く。

しかしその眼光だけは、輝きを失わず。
喜悦の笑みを、頬に貼り付けて進む。

愉快に、痛快に、戦地を往く影。
そこにのみ残るものが、
傭兵、アリー・アル・サーシェスの足跡だった。


↑ ↑ ↑

51『IF(畏怖)』の話 ◆hqt46RawAo:2011/06/15(水) 11:19:48 ID:/50MAQqo


ep.if:2

『kimi ha boku ni niteiru』


↓ ↓ ↓


赤い。

全てが紅い。
目に映るもの全てが赤く、紅く、血のように燃えている。
そんな、紅蓮の世界を見ていた。
灼熱の地獄を、私は歩んでいた。

――……あ。

声が、聞こえる。
かすかな、消えそうな、だけど聞こえていたのだ。

――たす……けて……。

悲哀の声が呼んでいる。

――くるしい……。

苦痛の呻きが聞こえている。

――いやだ……どうして。

嘆きの呟きが幾重にも聞こえる。

――たすけて。

私の体はそれでも、足を止めない。
止めなかった。

――たすけてよ。

歩む地獄の全てから、声は聞こえていた。
炎に霞む背後から。
燃え上がる左右の建造物から。
歩み続ける前方から。
これまで踏み越え続けてきた、積み上げられし屍の山々から。
幾重にも、幾重にも、幾重にも、救いを求める声が聞こえ続ける。
なのに、ただひたすらに、地獄の中を歩み続けていた。

ここは夢なのか。
それとも、現か。
どちらでも無いんだと、理解はしていた。

夢という物は全て、夢を見る者の記憶のみによって成り立つという。
既知のビジョン、忘却のビジョン、組み合わせて解される、記憶の再構成作業。それが夢というもの。
ならば私が見る夢は、それがどれだけ不可思議な光景だとしても、かつて見たビジョンということになる。

ならば、この世界は、この赤は、この地獄は、きっと夢なんかじゃない。
こんな鮮烈な光景を、私は経験した事が無い。
あったとすれば、忘れる筈が無いだろうから。

52『IF(畏怖)』の話 ◆hqt46RawAo:2011/06/15(水) 11:20:49 ID:/50MAQqo

だけど、現実でもない。
感情の伴う現実などありえない。
私の感情ならともかく。
『私以外の感情』が伴う現実なんて、私は知らない。

ああ、それならきっと。
夢でもなくて、現実でもなくて、
そして私ですらないならば、きっと。
これは――『彼』――なのかもしれない。

――たすけて、たすけて、たすけて。

幾つもの声を振り切って、私は、『彼』は歩き続けた。
彼の中の私は歩き続けた。

横たわる幾つもの骸の声を、
救いを求める苦悶の声を、
怨嗟に呻く苦痛の声を、
泣く事も怒ることもない、ただただ助けを呼ぶ声を、確かに聞きながら。
まるで聞こえていないかのように、たった一人で歩き続ける。

だけど声は、彼の中へと確かに沈殿していった。
聞こえる一言一言が、忘れえぬ、消せぬ罪であるというように、彼の身に刻みついていく。
そこに希望など一片も無い。
きっともう彼自身に助かる望みも、助かりたいという意志すらなくて。
だからこれは一つの命が、負った責務を、負う事になる罪科を、一身に背負うだけの、『彼』の業だった。

どこに行こうとしてるのかも、無い。
生きてどうしようと考えることも、無い。
何もかもを、声を無視して、一歩一歩進むにつれて、無くしてしまった。

そうして削れて、生きる意味すら擦り切れた時、緩やかに、彼は沈むのだ。
身体が限界を迎えたことで、燃え朽ちた地へと倒れふす。
一面に転がる死体と同じように、終わりを迎える。

どのくらいの時間が経過していたのか、炎はその勢いを失っていて。
紅蓮の空は赤みのなくし、灰色の曇り空。
真っ赤な地獄はいつの間にか、くすんだ終末の風景に変わっていた。
ああ、そんな事にすら、彼は気がつかず、歩んでいたのか。

原型を留めるモノが自分ひとりの世界で、
彼は手を伸ばす。
一面に広がる、遠い遠い、灰色の空に。
何を請うでもなく、求めるでもなく、探るでもなく。
ただ、「空が遠い」と、彼は思った。

そのとき私は、『彼』の見た景色を見る。

落ちる、手。
誰かが、掴む。
地獄の赤ではなく、絶望の灰色ではなく、瞳の黒が視界に映った。
これが、彼の見た、始まりの景色だった。

誰も救えない。
誰も守れない。
正義の味方の、その始まり。

赤と、熱と、灰と、空と、終わりの。
そして、彼を救い、なのに救われたような表情で見下ろした男の。
男に救われ、救った彼の。


――ありがとう。


ここは、生まれた場所だった。


◇ ◇ ◇

53『IF(畏怖)』の話 ◆hqt46RawAo:2011/06/15(水) 11:21:44 ID:/50MAQqo

黒い。

全てが暗い。
目に映るもの全てが黒く、暗く、闇のように、深く沈んでいる。
そんな、深淵の世界を見た。
永久の地獄を、一人、俺は歩んでいた。


――たす……けて……。

悲哀の声が呼ぶ。
けれど、俺は答えられない。

――いやだ……どうしてみんなが……。

嘆きの呟きが幾重にも、聞こえる。
俺はそれでも、何も出来ない。

――たすけて。

歩む地獄の奥底から、聞こえる。
闇に霞む背後から。
閉ざされた左右の黒壁から。
歩み続ける前方から。
幾重にも、幾重にも、幾重にも、救いを求める声が聞こえ続ける。
なのに、ただひたすらに、地獄の中を歩み続けていた。

ここは幻か。
現実か。
なんとなく、どちらでもないと、理解はしている。

幻、作られた模造品。
そんなもので、この絶望は体現できない。
誰よりも■■の俺ならば、それが分る。

だけど、現実でもない。
感情の伴う現実などありえない。
俺の感情ならともかく。
俺以外の感情が伴う現実なんて、それこそ酷く現実感が無い。

ああ、それならもしかすると。
幻でもなく、俺の現実じゃないとするならば。
これは――『彼女』――かもしれない。


――私のせい……私なんかがいたから……私さえいなければ……。


『彼女』はたった一人で歩き続けた。
彼女の中の俺は歩き続けた。


――私にもっと力があれば……私がもっと強ければ……こんな事にはならなかったのに……。


打ちひしがれて泣く声を、
痛みに震える苦悶の声を、
己の非力さに打ちひしがれる声を、
ただただ内に閉じた声を、確かに聞きながら、叫びながら。
誰にも、聞かせないようにしながら、彼女はたった一人で歩き続ける。

望んだ幸福は、遠く彼方に消えた。
目に映るものは、後悔と後悔と後悔と後悔と絶望。
それでも何かを諦められない。
そんな絶望のカタチ。破片。砕け散った心の一欠けら。

54『IF(畏怖)』の話 ◆hqt46RawAo:2011/06/15(水) 11:22:10 ID:/50MAQqo


ガラスのピースを手に、彼女は歩む。
そこに希望など一片も無い。
失い、失い、失って、失いつくした彼女は一人、何かを求めて彷徨っていて。

けれど終わりの無いように思えた闇にも、やがて終わりは訪れる。
肉体の限界、闇が輪郭を失っていく。
漆黒が解かれ、満天の星空が視界を覆う。
彼女が失ってきた者達と同じように、終わりを迎える。
奪われるだけの結末を迎える、その瞬間に。

――ごめんなさい。

彼女は小さく詫びたのだ。

――ごめんなさい……何も出来なくて……何一つ……出来なくて……ごめんなさい……。

誰かに、失くしてきた何かに、涙交じりの声をかけた。
下方から彼女を貫くであろう罰に、身を委ねようとしていた。

――さよなら……大好きでした……。

今の俺には、言葉を伝えることが出来ない。
『彼女』の内側に在る今の俺には。

だけど落ちる、からだ。
誰かの声が聞こえた。
『死ぬな!』と。
どっかの馬鹿野郎の声が、その時の俺の声は、彼女に届いていたのだ。

『必ず助ける』と。
これはきっと、告げられた彼女の出発地点。

誰も救えなかった。
誰も守れなかった。
彼女の、戦いの始まり。

――勝ちたいよ……こんなところで……終わりたくなんか……負けたくなんか、ないよ。

零し続けた涙を拭う。
弱音を吐き続けていた唇を引き結ぶ。
拳を、もう一度握り締める。

――最後に一つ、みんなの思いを無駄にしない生き方ができれば、それでいいから……。

絶望の淵で彼女は再び目的を、夢を掴んだ。
如何なる穢れも撃ち払う、
この世全ての悪すら捻じ伏せる意志。
もう二度と、彼女は迷うことも、絶望することも無い。
だからここが、彼女の再出発。


――どうかもう一度だけ、頑張らせて。


ああ、なんて、馬鹿野郎だ。
俺は救いようの無い俺と、哀しすぎる『彼女』に、そう思った。

そんなモノが、そんな強くて哀しい生き方が、彼女の幸せだった筈がないのに。
どうして、彼女はそれで幸せだって、十分だって、笑わなくちゃいけないのか。

彼女が本当に望んだものは、ただ一つ心から望んでいたものは、
ごくありきたりな、
日向の下で、大切な誰かに微笑むような、


そんな、ささやかな幸福だったはずなのに――。





◇ ◇ ◇

55『IF(畏怖)』の話 ◆hqt46RawAo:2011/06/15(水) 11:23:27 ID:/50MAQqo

特段、きっかけという物は無く、俺は目を開いた。
現実の風景が目に飛び込んでくる。

岩の天井。
砂の壁。
石の床。

自分の体に酷く違和感を感じて、身体を横たえたまま、俺は胸に手を当てる。
あるはずの銃創が消えていた。
確かに撃たれたはずのそこに、傷一つありはしない。

「……」

『目を開いた』などと言っても、別にいままで眠っていた訳でもないらしい。
見ていたものは夢じゃない。
目を閉じて、意識を閉じてはいても、眠りとはまた違うものだったと思う。

その証拠……になるほど根拠が在る訳じゃないが、身体の疲れがとれたような感覚は一切無い。
寧ろ虚脱感みたいなものが全身に染み渡っている。
イヤな感触だ、胸の奥底から寒気が無限に溢れ出して、気持ちが悪い。

だから、そんな中で、唯一暖かな感触を与えてくれる部位は、酷く浮いてさえ思えた。
左の、手の平。
何かに、包み込まれている。

俺は岩の天井を見るのを止めて、首を動かして隣を見た。
果たして予想通り、そこには『彼女』がいた。
彼女もまた俺の隣で、最後に見た姿で、
黒のドレスに、俺の制服を羽織った姿のままで、横たわっていた。
俺の手を、しっかりと握ったまま目を閉じていた。

「…………」

塞がっている胸の傷とか、
流れ込んでくる黒い魔力とか、いろいろ聞きたいことはあるけれど。
ことの推移はひとまずおいといて、俺は彼女の名を呼ぶことにした。

「なあ、福路」

目を閉じたままの福路に言った。

「福路はやっぱり間違ってる、なんてもう言わない」

きっと福路は耳を貸さないだろうから。
それを俺は知っているから、だからこれから言う事は、俺自身への宣誓だった。

「だけどやっぱり、正しくは無いんだ。そんな生き方するのは、俺だけで十分だよ。
 そんな生き方で満足していいのは、俺くらいなんだ。
 お前は……駄目だ」

俺への宣告、だった。
の、だけど……。

「……わかってたよ」

福路は答えた。
うっすらと瞳を開いて、どこか震えたような声で言いながら、俺を見た。

56『IF(畏怖)』の話 ◆hqt46RawAo:2011/06/15(水) 11:23:53 ID:/50MAQqo


「衛宮くんは、やっぱりそう言うんだって……」

けれど一つ、首を振って。

「ううん、今やっと分った」

福路は、俺から顔を背ける。

「私の内側を知っても、貴方はそう言う。
 あなたは、あんな世界を生きたから……だから……」

福路の声は徐々に小さくなっていって、やがて聞こえなくなってしまった。
そんな彼女へと、俺はなんとなく思い浮かんだ言葉を投げてみる。

「悪い。俺は福路が思っていたよりも、ずっと図々しい奴なんだよ」

その言い草が、何かおかしかったのか。
少し肩を震わせて、福路はくすりと笑った。

「そう……みたい……」

けれど、こちらを向いてはくれなかった。
相変わらずの涙声で、こう呟くだけだった。

「ほんとうに。思いを……知らされちゃったな……」

もしかすると、あの夢が、やっぱり夢じゃないならば。
彼女の内側の光景であるとするならば。
福路もまた、俺の何かを見たのかもしれない。

だとするならば俺達は、本当に似た者同士で、
すると、やっぱり、決定的に間違えているのだろう。


結局、アオザキがここに戻ってくるまで、
福路は振り向かなかった。
俺に顔を見せてはくれなかったけれど。

それでも、手は繋がれたままだった。
いっそう力が込められた手の平の、暖かさを感じながら。
俺も、福路も、握り返して、互いの存在を確かめていた。



↑ ↑ ↑

57『IF(畏怖)』の話 ◆hqt46RawAo:2011/06/15(水) 11:25:04 ID:/50MAQqo
ep.if:3a

『kibou no hune』


↓ ↓ ↓


その頃、ノートパソコンを抱えた浅上藤乃は爆心地の真っ只中にいた。

彼女は唐突に、しかし猛烈に悔いた。
心のそこから悔いていた。
どこかで、致命的に選択肢を謝ったのだ。
そんな風に思えていた。

彼女がやったことと言えば、それほど複雑でもない。
天江衣が命を賭けた大局に勝利したことと『ある出来事』を、船の甲板で周囲の見張りをしていた白井黒子へと伝えるために。
ただそれだけのために、階段を登ってきた。それだけである。

「く……くくくくッ!!」
「…………」

にも拘らず、いま。
藤乃は燃え盛る炎の濁流に飲まれそうになっている。
目前に存在する、たった一人の少女の吹き荒らす感情の爆炎に、芯まで焦がされそうになっていた。
人の感情など彼女には見えない。藤乃の魔眼をもってしても、そんなものは見えない。
にも拘らず、今目の前に立ち、あらぬ方向を――具体的には北西、遺跡の方角――を向いている少女。
白井黒子の感情は、誰の目にも分るものだった。

「は……ははははははッ!」

怒り、だ。
白井黒子は今、怒りに燃えている。

「あ……あの……白井、さん?」

藤乃の選択ミスとは、そんな状態の白井黒子に声をかけたことに他ならない。

「…………はい? なぁん、でぇす、のぉぉぉぉ? 浅上さん?」

一発で、一言で、大後悔だった。
ああ、止めとけばよかった。三秒くらいでいい、時間よ戻れ。
どうか神様、この一言を無かったことにして、何も見なかったことにして階段を下りる機会を与えてください。
そんな事を願うも、彼女の精一杯に底上げした信仰パワーは天に届かず。
藤乃は、振り返った白井黒子の面相を拝むことになった。

「い、いいいい、いえ、どうしてそんなに怒ってらっしゃるのかなぁー……なんて、思ったり、しまし、てぇっ……」
「ぉぉぉぉおお怒ってなんていませんのよぉ? 浅上さん。わたくし、この通り、すっこぶる上機嫌ですわっ!(破顔)」
「(し、白井さん、破顔は破顔でも、笑顔じゃなくて破壊的な形相になってますよぉ……!)」

実に朗らかな表情だった。
背景に煉獄の炎が幻視できるほどに照り輝いた白井黒子の笑顔。
その笑顔が、恐ろしい。目がこれっぽっちも笑っていない。

「ちょぉぉっっとだけ、嫌な空気というか、なにやら不愉快な気配というか、泥棒猫の予感というかを感じ取っただけですの。
 おほほほほ……否。 これは猫どころではありませんわね。 悪魔。 策士。 ラスボスの気配ですわ。
 ふ、ふふ、ふふふ、うふふ、うふふふのふ……! 誑かされているのは一体全体、果たしてどちらの殿方でしょうかねぇ浅上さん?
 もしかして、わたくしの前で散々カッコいいことをほざき倒した挙句に、こうしてわたくしをほったからかしにしている誰かさんじゃぁないですのよねぇ?
 どうしましょうか、もしそうだとしたら、たぁっぷりと分らせて差し上げなくてはなりませんの。
 困りましたわ、悩ましいですのよ、士ィィィィ郎ォさァァァァァァンッ!!!!」
「(……こ、怖いっ!)」

戦慄すら感じさせる狂態に、藤乃は軽く三歩は引いた。
彼女でなくてもこれは引く。
燃え上がる白井黒子を前に、誰もが、ちょっと引くことか出来ないだろう。

「し、ししし、し、白井さんっ!」

それでも、藤乃は踏みとどまった。
がんばれ藤乃、負けるな藤乃、行くんだ藤乃!
と、自らを鼓舞し、
藤乃はすぅぅっっと、大きく息を吸って、

(ライダーさん、あららぎさん、先輩……見ていてください!)

星になった人たちを、夜空の彼方に見つめながら、藤乃は前へと進んだのだ!

「落ち着いてぇっ――くださーいッ!」

ゴッ、と。
痛快な音が、どこからか鳴り響く。
それは紛れも無く、
藤乃の持っていたノートパソコンが、白井黒子の側頭部をフルスイングで殴打した音だった。

58『IF(畏怖)』の話 ◆hqt46RawAo:2011/06/15(水) 11:27:25 ID:/50MAQqo

「――」

その一瞬、時が止まった。

「――うぎゃぐはぁっ!!」


だが残酷にも、時は動き出す。
白井黒子は、
そんな、異様な悲鳴を上げつつ、
しかし、笑顔を満面に貼り付けたまま、
そして、エスポワール号のデッキを軽く三メートルほど滑っていった。

「…………」

蹲ったまま黒子はピクリとも動かない。
藤乃もまた、フルスイングの体勢のまま、暫し固まった。
両者、なにも語らず。というか片方は語れず。
再び、時が止まったような静寂が流れていた。
今度はさっきよりも若干長めだった。

「あ、あ、い、いーだだだだッ、いだいですのぉ!」

ややあって、そして時は動き出す。
うめき声と咽び声が夜空に響き渡った。
両手で頭部を押えて転げまわる白井黒子。
浅上藤乃はノートパソコンを小脇に抱えつつ、それを見下ろした。

「ふぅー……」

そして、一息吐いて、笑いかけた。

「落ち着きましたか? 白井さん」

やりきった女の顔。
菩薩の笑み。
邪気の欠片も無い。
誰もが軽く、十歩は引くであろう。ドン引きするであろう。
凄まじい無邪気が滲み渡るようなそれは、これ以上無いほどに、ナチュラルな嗜虐の微笑みだった。

「それでですね、ちょっとこれを見てもらいたいのですけど……」

未だに床に転がったままで痛みにビクビク痙攣している黒子の様態には一切頓着せず、藤乃はノートパソコンを開く。
淡々と、飄々と、話を進行させていく。

「メールが何件か届いていて、それで気になるのが……」
「あがががががが」
「聞いてますか? 白井さん。しらいさーん? ってきゃああ! 白目むいてるッ!」


この少女、元来より、割とバイオレンスな性質(タチ)である。


↑ ↑ ↑

59『IF(畏怖)』の話 ◆hqt46RawAo:2011/06/15(水) 11:29:12 ID:/50MAQqo

ep.if:3b

『zetubou no hune』


↓ ↓ ↓



「痛いッたたた。まだちょっと染みますのよ……」
「ホントにごめんなさい。私、なにやってるんだろう……」

甲板の上、潮風の中、二人の少女が向かい合わせに座っていた。
頭に氷袋を当てた制服姿の少女、白井黒子。
黒髪、長髪を一つにまとめ、浴衣に身を包んだ少女、浅上藤乃。

「もういいですのよ。やり方は兎も角、わたくしのキャラを修正してくださったのは事実ですし……」

しゅんとする藤乃へと黒子は微笑みかけていた。
彼女の素性、経緯、能力は聞いている。
それを鑑みて今の動作を見れば、もしかすると、浅上藤乃は直接暴力を行使することに慣れていなかった。
の……かもしれない。
黒子は、そう思わなければいけない気がした。

「そんなことより、なるほど、救援要請のメールですの……?」
「あ、はい、さっきPCを弄っていたらメールが着てました」

黒子はツインテールの髪を解きながら、
浅上藤乃が膝元で開いたノートパソコンのモニターを覗き込んだ。
それなりに長い髪が肩にかかるのを感じながら、そこに表示される文字を読む。

「『一斉送信。こちら薬局。救援も求む。僕の名前h』だそうです」

読み上げる藤乃の声を聞きつつ、短文を反芻する。
メールの文章は、明らかに途中で途切れていた。

「ふむ、動くなら早急に、ですわね」
「動くん……ですか……?」
「罠か、と。疑ってますの?」
「それも……ありますけど……」
「分ってますのよ。だから『動くのなら』ですの。
 少なくとも貴女の同意なくして、わたくしはここを離れたりしませんわ」
「でも、行きたいって、白井さんは思ってるんですね……」

申し訳無さそうに、目を伏せながら言う藤乃に、黒子は苦笑い混じりに言った。

「否定は、しません。
 ここに助けを求めている人がいるなら。
 助けに行くのがジャッジメントであるわたくしの使命ですもの」
「…………」

黒子から見て、藤乃は迷っているようにも見えた。
だが口では選択を藤乃に委ねながらも、黒子には分っていた。
黒子が行くと言い張れば、藤乃は同意することだろう、と。

「なんて、それは建前かもしれませんわね」
「えっ?」
「我が侭かもしれませんの。わたくしの、何も出来ない現実へのあがき」

守りたい人を目指して、飛びたいという想い。

「ごめんなさい。
 こんなのは現実的ではありませんわね。
 残りましょう、ここに。ここで待ちましょう、彼らを」

黒子は想う。
彼を救いに行きたいと。
だけど同時に目の前の彼女もまた、想っているはずだから。
目の前の藤乃も、似た思いに囚われているはずだから。

黒子とは違うヒトに。似ているけれど違う思いを抱いてる。
だけど出来るなら今すぐその人のもとに行きたいと、助けになりたいと願っていることだけは、きっと同じだ。
それをぐっと耐えているはずだ。
ならば黒子だけが、我が侭を言うわけにもいかない。

60『IF(畏怖)』の話 ◆hqt46RawAo:2011/06/15(水) 11:31:57 ID:/50MAQqo

感情で動くことだけは出来ないと、黒子は自分を律していた。

「戦っているのは、彼らだけではありませんものね……」
「……で、でもっ、白井さんっ!」

今度は逆に、止めるように口を開いた藤乃を、黒子が制止する。

「そ・れ・に、彼女だって、戦っていますもの。
 私達や彼らとは違う戦場で、だけど今も、ずっと戦場に立っている」

黒子はデッキの床を指す。
正確には、その更に下にいる一人の少女を。

「天江さんを残して、ここを離れるわけにはいきませんわ。
 彼女を守り、ここを守ることが、私達に任された戦場」
「……そう、ですよね。それで良いんですよね。私達は」
「ええ、まずは出来ることからやらなければ」

けれど、そう言う黒子の手の平は、硬く握り締められていた。
何もつかめず、何の助けにもなれない自らの非力を握りつぶしたいと言うように。

「ささ、見張り交代ですの。わたくしはいったん降ります。
 天江さんを一人にしすぎるとまた寂しがってしまいますわ」
「……ふふふっ。そんな風に言うと、また子供扱いするなって言われちゃいますよ」
「そうですわねぇ」

私の方が年下であることを忘れてしまいそうで、困りますわ。
そんな事をいいながら、解いていた髪を一つに纏め上げ、黒子はポニーテールの髪型を形作った。

「ころで、おそろ、ですの」
「白井さん……」
「頑張りましょう、生きるために。
 わたくし達が信じる人の為に、わたくし達を信じてくれた人たちの為に……」

髪をまとめながら、黒子は監視のために使っていた暗視ゴーグルを、藤乃へと手渡す。

「……」

しかし、藤乃は受け取ったそれを、不安そうに見つめていた。

「どうかしましたの?」

その黒子の問いに、
藤乃は俯いて、痛みに耐えるような声で言った。

「たまに、何もかも投げ出したいなって、思う時があるんです」

その言葉に、黙す。
黒子とて、藤乃の心の影に気がつかなかったわけでは無い。
元々は殺し合いに乗っていたという彼女。
だが、触れられない傷口というものは、誰にでもある。

「私が犯した罪は決して消えなくて、償うべき罰があるのならそれはきっと……だから私がここにいたって……」

罪を抱える。
間違いがあって、だからこれからは正しく生きる。
それで何かが変わるわけではないのだ。
一生の傷になる事だってあるだろう。

61『IF(畏怖)』の話 ◆hqt46RawAo:2011/06/15(水) 11:32:30 ID:/50MAQqo

「浅上さん」

おずおずと顔を上げた藤乃に、けれど黒子は微笑んで、肩にぽんと手を乗せた。
傷口を見せてくれたのなら、癒す手伝いをしたいと思う。
同じような傷を持つものとして。

「それでも貴女が生きることを、望んでくれる人がいる」
「でも私に、そんなふうに願われる価値は……」
「願われたことに、意味がある。わたくしはそう思いますの」

きっと今ここにいることには意味がある。
そう信じて、だから少なくとも先に進めるのだ。

「わたくしはきっと、望まれたからここにいる。
 貴女にもいるのでしょう?
 貴女が生きることを、望んでくれる人が……」

藤乃の答えは、少し俯いいて少しばかり紅潮した、そんな表情だった。

「じゃあきっと大丈夫。あなたは乗り越えられますの。
 貴女が信じる人を信じてあげれば、きっといつか、自分を信じられる時もきますわよ」

そこまで言って、しかし黒子は、藤乃から目を逸らした。

(何をえらそうに、自分自身の心すら、未だ分らないくせに)

自分に対する怒りが、巡ったからだ。

「……白井さん」

呼ばれた声に視線を戻せば、再び藤乃と目があった。
藤乃はまっすぐに、黒子を見ていた。

「ありがとう、ございます」

礼を言う藤乃の表情はやはり晴れておらず。
しかし声は、どこか先程よりも澄んでいた。

「頑張りましょう。一緒に」

少し、嬉しかった。
支えることは出来ずとも、支えあうことは出来るのではないか。
そう思えたから。

「では、連絡は決まり通り十五分後にお願いします」
「はい」

調子を取り戻した返事に、少しほっとしながら。
黒子は床においていた氷を拾い上げ、藤乃に背をむけて歩きだす。

62『IF(畏怖)』の話 ◆hqt46RawAo:2011/06/15(水) 11:33:43 ID:/50MAQqo

安息の時は短い。これからまた忙しくなるだろう。
のんびりしている余裕は無い。
そう考えながら、船内への階段を下りようとして――

「――ちょ、ちょっと待ってください白井さんッ!」

切羽詰ったような藤乃の声が、背中に突き刺さった。

「どうかしましたの?」

ただならぬ声色に振り返る。
藤乃は今かけたばかりのゴーグル越しに、夜明け前の景色を覗き込んでいた。
ある一方を指差してして、黒子へと叫ぶ。

「人がいます! 船の近くで……人が……倒れてます!」
「どこですのっ?」

裸眼では船の周囲がよく見えない。
まだ夜明け前の空は暗すぎる。
藤乃からゴーグルを受け取り、そこでやっと指差された方向をしっかりと見ることが出来た。
暗視ゴーグル越しの、緑色がかった世界、そこに映りこんだものは――

「…………」

ゴーグルを、下ろす。

「見えましたか……?」

藤乃の声が聞こえる。

「…………そんな」

けれどその意味を理解することが、黒子にはできなくなっていた。
一瞬にして、一見にして、頭の中が漂白されたようだった。
見えたかと聞かれれば、もちろん見えた。
しかし、それは在り得ない。受け入れがたい光景だった。

「そん、な……嘘……ですわ……」

黒子はゴーグルが壊れているのだと思った。
そうでなければ、己の目がイカレたのだろう。
だが同時に、見間違える事など在り得ない光景だった。

「そんなことが……ッ!」
「白井さん?」

黒子は一歩後ずさる。
ただならぬ黒子の様子に、いよいよ藤乃も心配そうな様相を見せる。

「あの女の子を知ってるんですか?」

けれど、藤乃の声は届くことはなく。
白井黒子は目前に現れた信じがたい光景を見つめ、握り締めた拳を、僅かに開き。

「お……ねぇさま……?」
「えっ?」

一言。

「お姉さまッ!!」

そう叫んで、藤乃の前から、姿を消した。



◇ ◇ ◇

63『IF(畏怖)』の話 ◆hqt46RawAo:2011/06/15(水) 11:35:15 ID:/50MAQqo

「遅いな……白井黒子」

ギャンブルルームという名の闘技場。
そこで少女は一人、佇む。
人形相手とは言えど、命を賭けた戦いを終えた直後。
気が緩んで当たり前だろう。

「お前、次は、なんだ?」

けれど少女はまるで気後れした風も、一息すらつく事もなく、おもむろに聞いた。
背後にいた男に、問いかけた。
次の催しは何だ。次の戦いは何だ、と。

「……怖くはないのか?」

男は、黒服にサングラスのその男は、今確かに、少女に驚嘆していた。
先ほどの戦いをずっと見守っていたこの男は、天江衣のなんたるかを知ったのだ。
それはただ運が良い、ギャンブルが強い、といった次元ではない。
運を運では無くする力。戦いにおいて神が誰に微笑むか、ではなく。
幸運を何か別の『モノ』に置き換えて戦いを開始した。この者の力を見せ付けられた。
それは、侵食。運否天賦、本来神にしか御し得ないそれを支配する、天への挑戦。
格を、教えられていた。

「怖い……か」

しかし男が最も驚嘆したのはその強さではない。
その強さを行使した存在が、己の年の半分にも満たないただの少女だったといういことだ。

「衣は……怖い。うん、怖いな」

男の問いに、少女はあっさりと頷いた。
怖い、そう言った。

「ならば何故、お前はそんな顔をしていられる?」

心底楽しそうな顔で、言ったのだ。

「衣は戦っているからな」
「戦って、いる?」
「そうだ。確かにいま、衣は怖い、死ぬのは怖い。だけど衣はいま、衣の戦場にいる。
 衣はいま、衣自身のために、戦えているのだ。ならば自然、これが愉快でなくて何だと言う?」
「お前は、戦うことが愉快だと言うのか?」
「うん!楽しいな!怖くて痛くて辛いけど、そんなもの全て吹き飛ばしてしまうくらい、楽しい!
 戦う楽しさ。これは教えられたものだけど、衣はいま確かに、衣の物にしているぞ!」
「そう、か」

黒服は喉を鳴らした。
そして今度こそ認める。この子は天才だ。
戦うことの意味、それが娯楽であると、悦であると、本能的に気づいているならば。
それが分っていれば、それは完成された、いっぱしのギャンブラー(闘士)だ。
容姿など関係ない。
この少女は能力の上でも、心構えの上でも、認められるべきなのだ。
ならばもう、何も言うまい。なにも思うまい。
この戦いの行く末を、最後まで見送ろう。

「衣は諦めたりしない。衣は生き残る。
 そして、このままお前らてーあいをぶっ飛ばして、衣は、グラハムに胸を張って言うのだ!
 『衣は頑張ったぞ』とな!」
「そうかならば、次の趣向を教えよう」
「いいぞ、しかし遅かったな。またこれ以上のギャンブルは禁止だ、等と言って逃げるのかと思っていたぞ?」
「まさか。こんな面白い見世物、俺だって見逃すつもりは無いさ」

男の声は、もう先ほどまでのように揺れてはいなかった。
冷たく、突き放し、楽しむような口調になる。
これよりは少女を少女としてではなく、一人のギャンブラーとして見なす。
そう決めたのだから、失礼な態度は見せられない。
男は帝愛の黒服として、最大級のおもてなしを遂行すると決めたのだ。

「次の戦いはお前と、ある人物の一対一。二人麻雀。サシの真剣勝負だ。
 麻雀としては少々趣が異なってくるかもしれないが、お前と奴ならば関係無いだろう」
「…………」

いよいよ、か。
と、天江衣は覚悟を決めるかのように、目を閉じた。
折れぬ意志、それを満足げに見下ろして、男は告げる。

「では教えよう。次の戦局は――」


◇ ◇ ◇

64『IF(畏怖)』の話 ◆hqt46RawAo:2011/06/15(水) 11:36:02 ID:/50MAQqo

「…………っ! …………ッ!!」

……ん?
あ……?
なんだこりゃ?
何で揺れてんだ、俺。

「お姉さまッ! お姉さまッッ!!」

っ……うっせえな。
なんだこいつ、耳元でガミガミと。
ああ、俺を揺らしてんのも……ってか抱きついて来てんのもコイツか。
ったく、こちとら怪我人だってのによぉ。

「ああ、お姉さまッ! わたくしは……わたくしはっ……!」
「白井さん! 白井さん! 落ち着いてくださいッ!」

あーちくしょ。
やっぱ動かねぇな、身体。
ちょいと無理しすぎたか。
まあ賭けっちゃ賭けだったしなぁ。
目的地目前でぶっ倒れたのも、しょうがねえんだけど……。
てか、うるせえよこいつら。いつの間にか女の声がも一つ増えてやがるしよ。

「浅上……さん?」
「揺り動かしてもその人の害になるだけです。貴女ならそのくらい分るはずじゃないですか。
 お願いですから落ち着いてください!」

黒髪の女が制止に入る。
喚いてやがった女は、それでどうやら納まったようだ。
やれやれこれから俺はどうなるんだかねぇ。
なんて考え始めていた時だ。

「…………」

俺にしがみついたまま、女は俺の顔を覗き込んできやがった。
なんだよ?
今の俺に返事する体力なんざ残ってねえぞ。

「……やっぱり、お姉さまですわ」

女は俺の顔をじろじろと見ながら言い放った。
というか、あーあー。
そんなに涙を溜めた目で見つめてきやがって。

「知ってる人、なんですか?」

そして女の背後で、黒髪の(これまた美人の若い)女も俺の顔を覗き込んでいた。
なんだってんだろうな。
そろいも揃って人の顔をジロジロと。
いや俺の顔じゃねえけども。

「……ええ」

65『IF(畏怖)』の話 ◆hqt46RawAo:2011/06/15(水) 11:36:40 ID:/50MAQqo



頷き、濡れた声。
いやいや。
俺はお前なんか知らねえっての。
そもそも俺は『お姉さま』なんて柄じゃ……ああ、そういうことか。
なるほどねぇ……。
こいつ、あのガキの妹かなにか、か?

「とりあえず、この人を運んで手当てしないと……。ずっとここにいたって、何も出来ませんし。
 船の中で話を聞かせてもらえませんか?」
「そう……ですわね……」

黒髪の女も周囲を警戒しながら、目前の船を指す。
俺を『お姉さま』呼ばわりの女が、俺をおぶる。
何だ知らねえが、事の風向きはそう悪くねえみたいだ。
女の背中の上で、拡散していた意識をかき集め、思考する。

結局、そこから船にたどり着くまでの間、俺は一言しか言えなかった。
情けの無い有様だが。いや十分十分。
楽しくなりそうだねぇ。

今はまだ浅い、微かに香る程度だが……。

確かに匂った。
血の臭い。
戦場の気配。
近い。そう遠くない内に、ここに戦争がやってくる。

その確信を得て、俺は。

「……ははっ」

堪えきれずに、零すように、小さく哂った。

66 ◆hqt46RawAo:2011/06/15(水) 11:39:33 ID:/50MAQqo
以上で、投下を終わります。

67名無しさんなんだじぇ:2011/07/30(土) 19:54:26 ID:VUZF4kXo
もし、のお話で一つ書いてみました。いやまあ、ネタなんですけどね。
もしよければ見てやって下さい。

68IF CODE:上条inギャンブル船:2011/07/30(土) 19:55:13 ID:VUZF4kXo
(このお話は、もし上条さんが序盤のギャンブル船メンバーに加わっていたらという話です)



 上条当麻がギャンブル船ギャンブルルームの扉を開く。
 そこに居るのは妙に項垂れた顔の黒服が一人のみ。
「……ギャンブル船、エスポワールへようこそ」
「は、はぁ……っていうか、こんな所でギャンブルなんてする奴居るのかよ」
 黒服は無言のまま。
 彼はつい先程、カイジ、利根川の二人組に完膚なきまでに敗北したばかりであった。
 当麻は思いつく限りの事を黒服に訊ねるのだが、彼からまともな返答が得られる事は無かった。
 それでも彼を殺し合いをさせている連中の仲間と見なしていた当麻は、引き下がる事なく強い口調で問い詰める。
 とうとう根負けしたのか、黒服は項垂れた顔を上げる。
「俺に何を言っても無駄だ。どうせ俺は……」
 そこで黒服ははたと気付く。
 眼前に居る小僧の間抜け面に。
『この小僧を上手くしとめられれば、先の失策を埋める事が出来るかもしれない』
 いや、最早これがラストチャンス。是が非でもコイツをギャンブルにて仕留めるしかない。
 俄然息を吹き返す黒服。
 彼は頭脳をフル回転させ、如何にして当麻を誘い込むかにその全霊を傾ける。
 手段を選んでいる余裕なぞ、彼には残っていなかった。

「俺こんなカジノみたいな所で遊んだ事ねえんだって。そもそも金も持ってねえしな」
「そこでコレだ」
 黒服が懐より取り出したのは一枚のプラスチックカード。
「ライフパッキー。もし君が望むなら、今手持ちの道具と交換してやろう」
 パッキーカードと言えばパチンカーならすぐにぴんと来るのであろうが、生憎未成年の当麻はすぐにはこれが何だかわからない。
 道具ねえ、とバッグを漁る当麻。
 そこで、黒服は突然大声を上げる。
「そ! それは……その地図を見せてもらっていいか?」
 しげしげと地図を眺めると、大きく頷く黒服。
「うん、これならパッキー一枚分になる」
 余りに興味津々である事、そもそも地図が無いと困る事から当麻は地図をひったくって取り返す。
「ま、まだ交換するなんて言ってないだろ!」
 黒服は片眉を潜めながら、事務所にあるコピー機を用いて地図のコピーを用意する旨伝え、何とか交換してもらえないかと頼む。
「い、一枚じゃ嫌だぜ」
「わかった。なら二枚、これでどうだ?」
「五枚! これ以上ビタ一文まかんねえぞ」
「それは多すぎだ! せめて三枚で……」
「じゃあ四枚! 地図のコピーは絶対取ってくれよ」
「…………仕方無い。それで手を打とう」
 交渉成立。実にちょろい相手であると当麻に見えぬ所でほくそ笑む黒服。
 渋々といった顔で、黒服はこのパッキーを使用出来るパチンコ台の説明を行ない始めた。

69IF CODE:上条inギャンブル船:2011/07/30(土) 19:55:55 ID:VUZF4kXo

「せっかくだから俺はこの台にするぜ!」
 内の一台に目をつけた当麻は、パッキーの使い方を教えてもらいパチンコを開始する。
「一応、説明書きが書いてある説明書はここに置いておくぞ」
「あー、色々サンキューな。これで勝てば便利な道具とかもらえんだよな」
「もちろんだ。上手くすれば機動兵器すら入手可能だろうし、劇的な効果が望める治療薬も手に入る」
「おっし! パチンコの鬼と呼ばれた上条さんの絶技、見せてやるぜ!」
 ちんちんじゃらじゃら、パチンコ特有の音が鳴り響く。
 黒服は邪魔にならぬよう席を外し、当麻一人がパチンコ台を食い入るように見つめている。
「貴方は何をしているのですか?」
「あ? 見てわかんねえのかよ。パチンコだパチンコ」
「……そうではなく、こんな所で何故パチンコをしてるのかと聞いているのですが」
「それがな、運良くパッキーっての手に入れられたんで……」
 そこではたと気付いて振り向く当麻。
 体の半分以上ある巨大なリュックを背負った少女がそこに居た。
「……誰?」
「レディを相手にそんな失礼な聞き方がありますか」
「…………ごめんなさい。上条当麻と申しますが、そちらはどちらさまで?」
「見ず知らずの人に名前を教える程、不用意ではありません」
 このクソガキ、といった感想が露骨に顔に出る当麻。
 そ知らぬフリで少女、八九寺真宵はパチンコ台に目をやる。
「パチンコ、得意なんですか?」
「いや、そもそも始めてだし。ま、タダ同然で手に入ったカード使ってるだけだしな。負けても損は無いって話だ」
 ふーん、と真宵は側にある小冊子を手に取る。
 しばらくの間、無言の時間が過ぎるが、とりあえず小冊子に目を通したらしい真宵が当麻に問う。
「カードってこれですか?」
 真宵が開いたページを覗き込む当麻。そこには、ライフパッキーの詳細な説明が書かれていた。

『ライフパッキー:使用者の命をパチンコ玉に換算したもの。表示量全てを使い切った時、使用者は死亡します』

 二人は無言で顔を見合わせる。
 少しぎこちない表情で当麻は笑う。
「い、いやこんな危ないのじゃないって。俺のは……えっと……」
 小冊子を穴が空くほど覗き込む当麻は、しかし、そこに救いを見出す事が出来なかった。
「…………」
「…………つまり、この出てる数字がゼロになったら貴方は死ぬと」
 ガタンと席を立つ当麻。
「ふざけんなあああああああ! あの黒服騙しやがったなちくしょおおおおおおおお!」
 真宵は至極冷静なまま小冊子に目を落とす。
「あ、でもこれ、席を立たなければゼロになっても続行出来るみたいですよ」
 即座に着席する当麻。
「あれ、でも、ゼロになる前だったら退席出来ます?」
 椅子を蹴って立ち上がる当麻。
「ああ、意味ありませんね。一度使い始めたら数字は自動で減っていくみたいですし。ゼロになるか一枚目を一杯にするしかないみたいです」
 おずおずと席に着く当麻。
「しかし、凄いルールですね。これ、打ち続ける限り、マイナスは幾らでも計算されるみたいです」
「……いやマイナスだと席立った瞬間死んじまうんじゃねえの?」
「試してみます? ほら、後少しでマイナス突入ですよ」
「へ? …………うおおおおおおお! マジだあああああああ!」

70IF CODE:上条inギャンブル船:2011/07/30(土) 19:56:27 ID:VUZF4kXo
 真宵は小首をかしげる。
「そういえばついさっきカイ・イイジさんがここで大勝してましたけど、あの人パチンコも得意なんでしょうか」
「マジか! そ、その人は今何処に!?」
「船の何処かに居ると思いますが、あの人がやったのはカードゲームとかでしたよ」
「あーもう何でもいい! その人勝ったってんなら金、っつーかペリカ持ってんだろ!」
「ええ、一億幾ら勝ったみたいです」
 思わず噴出す当麻。
「億て!? よ、よし! この際土下座でも何でもするからその人に助けてもらおう! 悪いが呼んで来てくれるか」
 真宵は、お互いのおかれた状況を踏まえ、冷静に判断を下した。
「アイスが食べたいです」
「お前ここでそういう事言うかあああああああ!」
「出来ればハーゲンダッツで」
「足元見すぎでしょお嬢さあああああああん!」
 結局、ハーゲンダッツを何とかして手に入れる約束をさせられる当麻であった。
 ちなみに、当麻がこれは来るという予感の元選んだ台は、斜めってる目が印象的な『沼』と呼ばれる台であった。オリジナル版であるので、彼の勝利は不可能と思われる。

71IF CODE:上条inギャンブル船:2011/07/30(土) 19:57:19 ID:VUZF4kXo
 緊急事態という事で、当麻のパチンコ台の回りにエスポワールに居た九人が集まる。
「愚か極まれり、ですわね」
 とは白井黒子の言。
「騙されたってんなら仕方無いさ」
 と善人衛宮士郎はのたもーた。
「騙された、か。それすら疑わしいものだ。欲に目が眩んだのを誤魔化しているだけだろう」
 実にクールな反応は利根川幸雄だ。
「困っている人を前に平然とそういう事口にする所が、俺は気に食わないって言ってるんだ」
 こちらも善人伊藤開司が食ってかかる。
「ふむ、迷者不問とならず、人を頼ったのは良い判断であろう」
 偉そうな口調を幼女ボイスで発する天江衣。
「そうだな、辛うじてだがまだ間に合ってはいる。……このライフマイナス四十というのなんだ?」
 グラハム・エーカーは誰にともなく問いかける。
「えっと、一ライフが命一つ分みたいだから……四十死分? そんなのあるのか?」
 台の横にある説明書きを見ながら秋山澪。
「遊戯に命を賭けるとは……未来の人生はそんなにも退屈で満ち溢れているのですか?」
 しげしげとこれを眺める明智光秀。
 彼らを前に、当麻は超下手にへりくだって言った。
「お説御尤もでございますが、何卒、この愚かで哀れな子羊をお救い下さいませ……いやホント、こんな馬鹿な事で俺まだ死にたくないって……」
 ルール説明を読み返していた真宵は、ふむふむと頷きながら皆に告げる。
「一ライフ当たり一千万ペリカ相当らしいですから、マイナス四十ですと四億ペリカになります」
 全員一瞬の無言。
 黒子は、んー、と大きく伸びをする。
「さて、では今後の行動方針ですが。情報収集と仲間を増やす、この二つを分散して行なうというのはどうでしょう」
 利根川はうーむと首を捻る。
「それは船に残るチーム含め、最低三つのチームに分かれるという事か? 賛同しかねるな。第一……」
 カイジが二人を窘める動きを見せると、当麻はほっと安堵の息を。
「おいおい利根川、お前は慎重すぎだ。仲間を集めるんなら急ぐ必要がある。手遅れの仲間と出くわすハメになっちまったらどうすんだ」
「手遅れの仲間って誰だ! 誰の事だあああああああ!」
 ぎろっと黒子と利根川が当麻を睨む。
「貴方の事ですわ」
「貴様の事だ」
「すんません。マジすんませんでした」
 カイジがうむーと首を傾げる。
「いやさ、それでも四億ってのは、なあ。他のギャンブルも鉄骨渡りは絶対にやっちゃ駄目だしさ、あ、このEカードってのはどうなんだ?」
 利根川は憮然とした顔である。
「……止めておけ。同じ手は二度通じんし、相手も相応の用意をしてあるだろう」
 説得力があるんだかないんだかな発言を他所に、光秀は鉄骨渡りに興味を示している。
「説明を見る限りでは、コレ随分と簡単に思えるのですが……っと、こちらの扉ですか」
 扉を開くと、そこは船とはまるで別の場所と繋がっていた。

72IF CODE:上条inギャンブル船:2011/07/30(土) 19:57:50 ID:VUZF4kXo
 がらがらぴしゃーんと鳴り響く雷鳴。
 此方と彼方を結ぶは二本の鉄骨。
 そこがビルの屋上だとわかるのは、彼方のビルまでの距離が広すぎるせいであろう。
 しかし、出てすぐの場所から、ビルの底を見出す事は出来ない。
 そう、これが、これこそが、鉄骨渡りである。
 衛宮士郎が至極当然な感想を漏らす。
「船の中? これが魔法って話か? いやそれ以前に、これを渡れと? 正気……か?」
 何処か揶揄するような顔で利根川は笑う。
「カイジは渡ったがな。どうだ、もう一度やってみるか?」
「ふざけんな! こんなもの! 出来れば二度と見たくなかった!」
 秋山の澪さんは、扉を出るのすら躊躇する始末。
 真宵は訳知り顔でそんな澪の後ろに居る。
「うーむ、正に怪異」
「だ、大丈夫、か、な? その、扉を潜ったら二度と戻って来れないとか……」
「ありえますね」
「ひいいいいいいい!」
 グラハムはビルの下を覗きこみながら呟く。
「ふむ、落ちたら命が無いのはまあ、当然だろうな」
 光秀もまた同じく下を覗きこんでいる。
「高所に相応しく風も強いですね。うっかりバランスを崩す人も、確かにこれなら居るかもしれません」
 二人は、鉄骨の上から下を覗きこんでいた。
 カイジの口が、顎が外れんばかりの勢いで開く。
「おいいいいいいいい! 何さっさと渡りにかかってんだ! そいつは洒落じゃ済まないんだぞ!」
 ものっそい驚いた衣は、鉄骨の端まで走り寄る。
「グラハム!」
「衣、君はそこで待っているんだ。何、すぐに戻るから心配するな」
「し、しかし! 余りに軽佻浮薄過ぎぬか!?」
「並みの人間ならばそうだろう。だが! 私は誰か! そう! グラハム・エーカーにとってと前置きがあるのなら! この程度の困難、フラッグを用いるまでもない雑事であると断言出来よう!」
 恐る恐るだが、澪は扉の中に入り、光秀に向け声をかける。
「あ、危ないですよ。そ、そそそその、えっと、落ちたりしたら……落ちたり……」
 自分で想像して怖くなったらしい。ビルの端から下を見る事すら出来ない澪だ、想像するだけで足の震えが止まらなくなっている。
「ふふふっ、澪さんはお優しいですねぇ。まあ見ていてくださ……いえ、見るのも恐ろしい御様子ですし、扉の内でゆっくりしていて下さい」
「ででででもっ」
「こんな矢も弾も飛んで来ない場所で、倒れる私ではありませんよ」
 心配顔の面々を他所に、光秀もグラハムもすいすいと鉄骨を渡っていく。
「光秀、君も軍属か?」
 下の名前で呼ばれた事に少し驚くも、光秀は笑顔で返す。
「ええ。やはり戦場を知らぬ者の仕掛けでしょうね、これは。修羅場を演出しているようですが、遊戯の域を出ていませんよ」
「まったくだ。しかし光秀、君も随分と戦場が似合いそうだな」
「お嫌いですか? 戦場」
「いや、好ましいと言ったのさ。かの地こそ、男子の本懐、その巣窟。死を賭してこそ、命は輝きを増すものだ」
「素晴らしい、実に素晴らしいですよ……グラハム、そう呼んでも?」
「構わんよ、それが私の名だ。さて、後ろで待つ者をこれ以上やきもきさせるのも何だ。そろそろ本気で行くか?」
「そうですね。はらはらが背なより感じられて、何やらくすぐったい気がする現状も捨てがたいですが、正直、このままでは退屈に過ぎます」
 二人は、鉄骨の上を猛然と走り出した。
 背後より悲鳴やら絶叫やらが聞こえるのが、何とも愉快で二人は笑い出してしまう。
「はははっ! 早いな光秀! 私が追いつけないなどと、一体どんな鍛え方をしてきたんだ!」
「ふふっ、ではこういうのは如何で?」
 後ろで澪が気を失い、残る一同蒼白になってしまったのは、光秀が鉄骨の上を手をつかず前転側転後転を繰り返しながら渡り出したせいだ。
『何してんだああああああああああああ!』
 皆の声がハモる中、光秀の芸当に大笑いしているグラハムと、くるくる回っている光秀は、あっという間に鉄骨を渡り、渡りきった先にある最後の罠、扉を開けた瞬間の気圧差からの突風も、くるりと後ろに宙返りする事で何なくクリアしてしまう。
 常在戦場メンタルを装備した軍人の恐ろしさを、これでもかと思い知らされる一行であった。

73IF CODE:上条inギャンブル船:2011/07/30(土) 19:58:21 ID:VUZF4kXo

「ふむ、一回で得られるペリカは一千万のみですか」
 寿命がダース単位で縮んだ気分の常識能力メンツは、つかれきった顔で二人の帰還を出迎えた。
 グラハムはふう、と一息漏らす。
「手間ではあるが仕方あるまい。一人二十往復といった所か」
「いえ、これどうも向こう岸に行ければいいだけみたいですし、私一人でやりますよ」
「いいのか?」
 そこで、常識能力メンツからちょびっとだけ外れたもう一人が口を出す。
「……わかりました。そういう事ならわたくしも手を貸しますわ。正直、そこの同じ人間と認めるのに多大な労苦を必要とするよーな進化しそこねた猿の為に手間をかけるのは剛腹極まりないのですが」
 白井黒子さんである。
 士郎はちょっぴり冷や汗を垂らしていたり。
「お前、彼には容赦無いな」
「アレとは面識がありまして。このような場でなければ、問答無用で退治する類の輩ですわ」
 黒子のやっていた事を聞いていた士郎は、何となく犯罪者絡みなのかなぁとか考えたのだが、黒子基準でいう所の許しがたき違反行為を行なっていただけとは流石に察せずである。
「でも、どうすんだ? あの鉄骨、軽々と渡ってたけどまともに行ったらかなりキツイと思うぞ」
「それこそ、どうとでもなりますわ」
 すたすたと鉄骨の端まで歩いて行き、次の瞬間、黒子の姿は向こうのビルの中へと移動していた。
 眼を見張る一行を他所に、さっさと向こう岸よりペリカを手に入れ戻って来る黒子。
「次のペリカを用意するのに少し時間がかかるみたいですわね。怠慢ですわ、さっさと次を用意してくださいまし」
 士郎が隣を見ると、光秀はもう走って渡る事すらせず、ぴょーんと一っ飛びで向こう岸に渡ってしまっている。
 大したものだと笑っているグラハム以外は、世の中って不公平なんだなーとしみじみ思うのであった。
 いやまあ、一人だけ、地獄のようにヘコんでいる者もいるのだが。
 利根川がぽんとその肩を叩く。
「まあ、あれだ。気にしたら負けだぞ」
「……お、俺達の苦労は……命賭けの勝負が……」
 無論これは、鉄骨渡り最初の達成者、伊藤開司君であった。

74IF CODE:上条inギャンブル船:2011/07/30(土) 19:58:54 ID:VUZF4kXo


 まずは土下座だろう、そう考えていた当麻は人目を憚らずへへーと頭を下げる。
「わたくしめのような愚かで哀れな者を、良くぞ救い出してくださいました。感謝感激でわたくし前が見えませぬ」
 ほう、と利根川。
「では、その感謝を態度で示してもらおうか」
「は?」
 余ったペリカで、利根川はこんなものを購入していた。
「感謝の心が留まる事を知らぬなら、どんな事でも出来るはずだな。それが例え『焼き土下座』であろうと!」
 自分がやられてキツかったことを平然と他人にも強要出来る辺り、帝愛所属の経歴は伊達ではないのだ。
 っつーかこんな無駄遣いすなと。
「出来るかあああああああああ!」
 黒子曰く。
「やってくださいまし」
 真宵さんも。
「是非やるべきです」
 光秀殿は。
「いいですねぇ、苦労が報われる気がいたします」
 そしてこれをとめるべき面々の内、まずはグラハム。
「凄いなグラハム! やっぱりグラハムは凄いぞ!」
「ははは、軍人ならばこの程度、ましてや私はグラハム・エーカーなのだからな!」
 衣とじゃれている。
 人の尊厳、その守護者たらんとするカイジ君は。
「……人が、平等でないのは……知っていた……っ! それでも、心の奥底が憎悪に沸き立つこれは……っ! 紛れも無く嫉妬心……っ! ああ、俺は今嫉妬している……っ! 何より、あの時何故こいつらが居なかったのだと……っ! 意味の無い事を考えずにはいられない……っ!」
 心の葛藤を抑えるのに必死な模様。
 澪は気絶中。例え起きていたとしても、焼き土下座ましーんを見れば結果は一緒であろう。
 唯一残った希望の光、衛宮士郎は、おずおずと皆に申し出る。
「……せめて、この説明書きの十秒だかじゃなくて、一瞬でも額ついたらオーケーにしてやろうよ」
 その程度を主張するのが限界であるようだった。

「ぎゃあああああああああああ!」

 実に楽しそうな、バトルロワイアルの一こまであった。

75IF CODE:上条inギャンブル船:2011/07/30(土) 19:59:51 ID:VUZF4kXo
以上です。意味とか、無いんだ。うん。ただ単に上条さんが素敵な目に遭うところがみたかっただけなんだっ

76名無しさんなんだじぇ:2011/11/26(土) 04:01:31 ID:vNrXrlt2
age

77名無しさんなんだじぇ:2012/01/01(日) 01:43:02 ID:g/Y.uqFY
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78名無しさんなんだじぇ:2012/02/14(火) 01:00:50 ID:yys6.qc6

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三二ニ= :彡′/   ://ー十ト//  ノ升 ̄!/ ノ /リ .:∧
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三二ニ= 彡′/:::::ハ ヘ. `ー‐   、   一´ /〈:::i:.:.. /.:∧     ほんとは……つくってたの。
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