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【オリスタ】メゾン・ド・スタンドは埋まらない【SS】

111話前編 ◆PprwU3zDn2:2016/08/10(水) 23:17:10 ID:vIyspCZI0
『次は【門北町】、【門北町】でございます。』

「……!!」

夢の中の人物の言葉を聞いた直後、天はバスのアナウンスに起こされる形で目を覚ました。
腕時計を見るとあれから30分経ったようで、バスは予定通りの時刻に目的地に着いたようだ。

「……またこの夢か」

天が『銃で撃たれる夢』を見たのは今回が初めてではない。
最初に見たのが1ヶ月前。目を覚ました時、彼の体は恐怖で大量の汗をかいていたという。
それからというもの、週に一度のペースで全く同じ内容の夢を見るようになった。
深夜に響く銃声、公園の死体、直後に撃たれる自分、謎の人物からの賛辞。
自分の死を見せられる奇妙で不快な夢を見続け天の精神は疲弊していた。
先程の少女程ではないが、彼の目にもクマが出来ている、少々寝不足気味であった。

眠い目をこすりながらバスを見渡すと、先程の少女の姿はなかった。
どうやら寝ている間に別の停留所で降りたようだ。天はもう会う事はないであろう
少女の姿を思い出す。眠る直前、天に話かけてきた声は少女の物で間違いないだろう。
少女の言葉に返事をしないまま眠ってしまったが、折角お近づきになった手前、
会話の一つでもしたほうが良かったのだろうかと天は少し後悔した。


(まあいっか……ようやく門北に到着か、どんな場所かな……って何だコレ!?)


バスの窓から町の景色を見ようとした天が見たものは、文字通りの「何も無い町」であった。
彼が思う何も無い町とは家やマンションばかりで店や遊ぶ所が少ない、所謂『住宅街』なのだが
門北町は違った。店はおろか、家もマンションも無い…というか建物が全く無い『無の世界』。
アスファルトの道路と平行して流れる大きな川以外に存在するものは遠くを見ても無い。
いや、よーく見ると遥か遠くの方に小さく四角い建物が数個建ってるが、
それでもあまりに寂しすぎる。

寝ている間に異世界にバスごと飛ばされたのだろうか?
目を白黒させている天に気付いたのか運転手が話しかけてきた。

「どーよ兄ちゃん、本当に何も無いだろ!よく言われるよガハハハハ!」

「運転手さん……何スかココ!元の世界に帰りたいんですけど!?」

「ところがドッコイここが現実なんだな!バブルの頃はビルとかがアホみたいに建ってたけど、
バブルが弾けて全部キレイに無くなって、ついでに店や家も殆ど無くなったらしいぜ!
今あるのは僅かな家と商店街だけさ、ガハハハハ!」

ネットで見たネガティブな情報は、恋人の言ってた事は正しかったのだ。町は寂れ、人はいない。
こんな場所が現代にあるのか。超が付く程の楽天家の天も流石に頭がクラクラしてきていた。


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