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奥さまは魔王��

1名無しのごんべへ:2015/02/14(土) 00:05:30 ID:RqJTO5XE0
奥さまの名前はアルドラ。
そして、だんな様の名前はダイヤ。
ごく普通の二人は、ごく普通の恋をし、ごく普通の結婚をしました。
でも、ただひとつ違っていたのは……

「行くぞ魔王!今日こそ決着をつけてやる!」
「フハハハハ!貴様ごときにわらわは倒せるかな?」

そう、奥さまは魔王だったのです!

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アルドラ(???歳)(外見年齢20代後半)
母親から魔王の座を譲って数年目の新人魔王。人間界とは不可侵の条約を結ぼうと思っている。
魔王は基本的には世襲制で、女の魔族しかなれない。男が世継ぎの場合は王妃が魔王を継承する。
一人称はわらわ。金色の瞳と赤い髪、2本の角を持つ。

ダイヤ(19歳)
人間界から派遣された元勇者。アルドラの話を聞き感銘を受け、
自分は魔王との戦いで死んだことにしてアルドラの軍師になる。
だが、それをよく思わない魔族も少なくはない。
凄まじい剣技と知識の持ち主。

2名無しのごんべへ:2015/03/18(水) 08:27:16 ID:TjeMzykI0
 蒼く光る剣を構え、いかにもといった勇者の前に立ちはだかるのは、
ビロードの臙脂色をしたドレスを纏った妙齢の美女。
そのドレスの胸元はざっくりと開いており、今にも豊満なおっぱいが零れ落ちんばかりになっていた。
その燃える炎のような赤い髪の間からは羊のような角がにょっきりと顔を出し、開いた口元には牙が光る。
構えた両手の間からは、鬼火のような青白い光がふよふよと浮いていた。
「ふむ。やっぱり、魔力は落ちている気がするな……」
 残念そうにつぶやく魔王。
「……アルドラ。もう、気が済んだだろ。それに、魔力は消費するな。お腹の子に何かあったらどうするんだ」
「大丈夫だって。これでも、魔王だぞ。魔力は無限大にある」
 構えを解き、愛おしげにお腹に両の手を這わす。
臙脂色をしたドレスに包まれたそのお腹は、今にもはち切れそうなほどに前に突き出している。
そう、魔王は身ごもっていた。勇者の子を。そして、産み月に差し掛かろうとしていた。

 事の起こりは、今から一年ほど前。
人間界のとある王に乞われ、魔界へ魔王退治にやってきた勇者・ダイヤ。
迫り狂う魔物をバッタバッタとなぎ倒し、魔王の住む神殿にたどり着いた。
そこで見た魔王こそ、今や子を身ごもり、妻となった魔王・アルドラだった。
 人型をしてない、如何にもといった魔王を想像していたダイヤは戸惑った。
魔王と名乗ったのは、スタイルのいい品がありそうな妙齢の美女だったからだ。
それでも、人間界の平和のため、魔王を倒さなくてはいけない。
 切りあうこと数回、
和睦を申し入れ、人間界とは不可侵の条約を結ぼうと思っていると聞かされ、
それに協力することを了承したダイヤ。
もちろん、アルドラへの恋愛感情もあった。
軍師として、アルドラの傍へ侍るうち、子を成すほどになったのである。

3名無しのごんべへ:2015/03/18(水) 13:59:46 ID:NRpti5CA0
「ダイヤ…いつもすまないな。わらわが人間界との和平を望んでいると知ってから、魔族の風当たりが強くなった…
わらわも命を狙われるようになった。その度にダイヤには救ってもらったな…」
そう。アルドラが人間界との和平を望むことと、ダイヤとの婚姻を宣言してから。
多数の魔族からの支持は受けていたが、一部の急進派の魔族からは激しい反発を受けていた。
暗殺未遂も多々起きたが、その度にダイヤが阻止して来たのだ。
「構いませんよ。俺は気にしてないです。だって、人間と和平しようなんて魔王、アルドラしか知りませんからね。
それに、もうすぐ国王との和平交渉があるのでしょう?」

そう、ダイヤがいうとおり。
数日後には人間界の国王との和平交渉が控えている。
もちろんダイヤもフードを被り護衛する予定だ。
顔を見られたらまずいからだ。

「ああ。この子が産まれる前には平和な世の中を作りたいものだ…」
アルドラはお腹を撫でながら呟いていた。

4名無しのごんべへ:2015/05/29(金) 07:16:25 ID:dIlyg9pE0

 その日の晩。
いつもの様にベッドに入り、眠りにつこうとしたダイヤは、アルドラのとある異変に気づいた。
しきりにお腹を撫で擦り、時折顔をしかめているようだった。
シルクの夜着のサラサラという衣擦れの音がやけに大きく響く。
 ま、まさか……、産まれるのか……?
「アルドラ。大丈夫?」
 おずおずといった感じでダイヤが切り出す。
「……ぅうんんっ。ああ、大丈夫だ」
 答えたアルドラの表情は険しく、とても大丈夫そうには見えない。
「ねえ、ダイヤ。わらわのことが嫌いになったのか?」
 産まれるのか?とダイヤが聞こうと口を開きかけた時、アルドラが先に口を開いた。
「なんでだよ。そんなわけないだろ。いまでも、愛してるよ。な?」
 はち切れんばかりに膨らんだお腹を撫で擦っているアルドラの手に自分の手を重ねる。
「……んんっ。だったら、何故、私の身体に触れようとしない」
 身体を反転させ、向かい合わせになってから、アルドラが意外と強い口調で攻め立てる。
その金色の瞳は怒りでキラキラと輝いているようにも見える。
「こうやって、触れてるでしょ。今も」
「そうじゃない! こういう事だ!」
 声を荒げながら、アルドラはダイヤの手を握り、その手をお腹からもっと上、胸の方へ移動させた。
元々文旦ぐらいあったアルドラの爆乳は、妊娠により小ぶりのスイカサイズまで成長していた。
手に力を入れ、自分のおっぱいを揉み込むアルドラ。呆然となすがままにされているダイヤ。
 しばらくそのまま、なすがままにされていたダイヤだったが、一体何をしているのかと問うた。
アルドラの答えはこうだ。
妊娠してお腹は大きく膨れ、前のように機敏に動けなくなっている。
そんな醜い体になった自分を嫌いになったのではないか。だから、触れようとはしないのではないかと。
ダイヤは首を振り、アルドラのことが心配なだけだとつぶやく。
 今度は自分の力で、アルドラのおっぱいをこねくり回すダイヤ。
両手に余るそのボリュームを堪能してから、手をお腹よりもさらに下、秘所へと持っていった。

5六道:2015/05/29(金) 21:53:07 ID:v0iWsSfc0
くちゅり…
ダイヤがアルドラの秘部を触ると水で濡れたような音がする。
「ああ…私も女盛りなのだ…好きな人に触れられれば発情してしまう…」
甘い吐息を出しながらアルドラは身悶えする。
ダイヤは優しくキスをした。
あまりにアルドラに魅力を感じたからだ。
そのままダイヤは抱き締め押し倒していた。

6名無しのごんべへ:2015/06/10(水) 07:17:06 ID:5RCSGjJY0
 アルドラのシルクの夜着をはだけさせ、服越しではなく直接アルドラの乳房を、秘所を愛撫する。
うっとりとして恍惚の表情を浮かべるアルドラに、たまらなく愛おしく感じ、ダイヤはキスをした。
ショーツをずりさげ、いざ挿れようとした時、ある事に気づいた。
「なあ。影響ないのかな?お腹の子に」
 ダイヤの手は産み月にかかり、はち切れんばかりに大きく膨らんだアルドラのお腹にあてられていた。
「あるわけないだろ。人間だったら、あるらしいがな。我々魔族の子は丈夫に出来ておる」
 さも当然といったふうに答えるアルドラ。
その返事にホッとしたダイヤは、いくぞ。と短く声をかけてから、ゆっくりと腰を落とし始めた。

7名無しのごんべへ:2015/06/22(月) 06:17:57 ID:uayay6j.0
 その日ふたりは、夜が明けてもなお愛を交わしていた。

 そして、人間の王と和平交渉をする当日。
朝から魔王・アルドラはそわそわと落ち着きがなかった。
不安そうに顔をしかめながら、産み月に入った大きなお腹を撫で擦る。
ダイヤがそれを見て、アルドラをなだめにかかる。
朝からその繰り返しだった。
「人間の王が到着されました!」
 物見からの報告が入る。
玉座から跳ね上がるように立ち上がったアルドラは、粛々と正門扉へ向かう。
後ろからフードをかぶったダイヤが影のように後ろに続く。
途中、顔にサッと手をやると、羊のような角と口元の牙は姿を消した。魔法で消したのだ。
金色の瞳と燃える炎のような真っ赤な髪はそのままである。
はち切れんばかりに膨らんだお腹もそのままだった。
 あからさまに魔族を思わすような角や牙を隠し、誰が見ても妊婦だとわかるお腹を隠さずにいる。
魔物魔物していない外見を晒し、まず相手を油断させてから、交渉を有利に進める。
さらに、人間と魔族の子が宿った大きなお腹を隠さずにいる事によって、
外見的にも、遺伝子的にも近い存在だとアピールするがためであった。
いつものビロードのドレスではなく、わざとお腹を強調するような身体にフィットしたドレスを着ているのもそのためである。
「ようこそ。長旅ご苦労じゃったな」
アルドラは鷹揚に人間の王に挨拶する。それは、内心の不安を必死で隠しながらの虚勢だった。

8舒龍:2015/11/10(火) 15:32:30 ID:MTZ0MH.A0
「アルドラ殿直々の出迎え、痛み入る」
 心持ち頭を下げた人間の王は、鷹揚な仕草でそのねぎらいを受けた。
ダイヤと同じく、魔物魔物した外見を想像していただけに、妙齢の女性、しかも孕んでいるとあって、
驚きを隠せないでいる。先程から、その濁った灰色の瞳でアルドラの膨らんだお腹を凝視していた。
王冠についたものか、ビロードのマントについたものか、宝石がジャラジャラと耳障りな音を立てる。
意外にも、お供を数人連れただけの、旅装とも言える軽装だ。腰に佩いている剣はイミテーションらしい。
 しかし、内心の不安と虚勢をさとられないためにも、素早く身を翻し、先へと歩き出すアルドラ。
謁見の間ではなく、手前の部屋で和平交渉を行うこととなっていた。
 魔界側は、魔王・アルドラとその軍師・ダイヤ。
人間界側は、人間界最大の領土を持つ王国の王と、その側近。おそらく警護役なのだろう。屈強な武人。
20人は軽く収容できる大会議室に5人が座り、和平交渉が始まった。
アルドラから、遠路はるばるやって来た王たちへねぎらいの言葉から始まり、
人間界が思っているほど、自分たちは理性もあり、獰猛な獣ではないということ。
自分の代で、人間界への侵攻を止め、互いに不可侵の条約を結びたい旨が告げられた。
 人間の王は、数百年に渡る歴史を紐解き、にわかには信じられないとニベもない。
そこまでは予想された反応だ。
「そなたが言っていることは理解できる。だが、妾の腹を見て欲しい。子を身ごもっておる。それも人間の、な」
 立ち上がり、身体のラインが見て取れるドレスのお腹のあたりに手をやり、その膨らみをさらに強調させた。
「妾と、そなたたち人間の間にさほど差はない。妾が人間の子を身ごもっているのが何よりの証拠じゃ」
 肯定とも否定とも言えぬうめき声のような声を発し、考えこんでしまった人間の王。
「今までが重要なのではなく、これからが重要なのだと思う。この子らに、平和な世を歩ませたいとは思わんかの」
 腹を撫で擦り、畳み掛けるアルドラ。その姿は、血も涙もない獰猛な魔物ではなく、慈悲溢れる優しげな母のものだった。
 予想だにしなかった切り口から攻められ、人間たちの間に動揺が走る。
しばし小声で相談しあってから、王が顔を上げ、口を開いた。

9六道:2015/11/10(火) 18:35:30 ID:tV8sQRfI0
「了解した、アルドラ殿。ワシからは、構わないと返事をしよう。
他の国へも交渉は成功したと話しても構わない。
だが…」
「だが、なんです?なにか懸念でも…?」
アルドラが不安そうに語りかける。
「そちら側にも、強硬派があるだろう。もちろんこちらがわにもだ。
こちらがわは長きの戦いにより疲弊してきている故に、意見の刷り寄せはしやすいだろう。
だが、そちらは…」
「うむ。力がありあまっている強硬派もあるはずだ。それはわらわも懸念している。
だが、わらわにはこの、お腹の赤子と、私の夫という説得材料がある。
故に、必ず意見の統一をさせてみせる…!」
アルドラは決意を秘めた目で人間界の王に語りかけていた。

「分かり申した。そなたのその瞳には曇りがない。その瞳に、賭けてみたくなった。」
人間界の王は、アルドラに歩みより、右手を差し出していたのだった。

10舒龍:2016/02/21(日) 14:21:06 ID:HpZ/w09M0
「ふぁあ〜……。疲れた〜……」
 自室へと戻ったアルドラは王座にへたり込んだ。
人間界へと帰る王を正門扉まで見送るまで、毅然とした態度を装っていたために、
王座へと戻る頃には精神的疲労で肩で息をするほどだった。
「お〜、よしよし……。すまなかったな。こんな母で許しておくれ」
 見るからにぐったりと王座に座り、その膨れた腹に宥めるかのように手を這わす。
アルドラが触れた腹部はまるで岩のように固く張っていた。
「お疲れ。大丈夫か?」
 アルドラより少し遅れて玉座の間に入ってきたダイヤが優しく声をかける。
「あぁ、大丈夫じゃ。ちょっと張っておる。緊張が伝わったのかもしれんがな」
 ひとしきり腹を撫でていたアルドラが事も無げに答える。
「もうすぐだろ。ゆっくり休めばいい」
 優しいダイヤの瞳は、小山のように盛り上がったアルドラの腹部に注がれていた。
もう誰がどこから見ても産み月である。詳しい予定日などは知らないが、もうすぐなのだろう。
「いいや。強硬派の説得に当たらなければならない。それに、この子ならまだ当分産まれんぞ」
 魔王というより、慈悲深い聖母のような眼差しでアルドラが答える。
「な!? なんだと……。いや、今すぐにでも産まれそうに見えるけど……?」
「それは、お主ら人間の場合、じゃろ? 妾ら魔族は長命ゆえ、妊娠期間も長いのじゃ。あと、二、三年といったところかの?」
 驚いて目を見張るダイヤと対照的に、カラカラと笑うアルドラ。
「それよりも、じゃ。妾は今日、大役を成し遂げた。何かご褒美を来れんか、ダイヤ殿?」
 スッと表情を消し、どこかサキュバスのような表情を瞳に浮かべ、その眼はまっすぐにダイヤを射抜いた。
こうなると、ダイヤもいうことを聞かざるを得なくなる。

11名無しのごんべへ:2016/02/22(月) 01:46:04 ID:LNwlX3qU0
「全く…仕方のない魔王様だ。こんなにお腹を大きくして、それでもなお体を求めるとはな。」
ニヤリと笑いながらダイヤは笑う。
「仕方ないだろう…わらわはもう、主なしでは生きて行けぬのだから…」
甘いキスを交わしながらアルドラは体を重ねていた。

翌日からアルドラは、強硬派の説得に魔界を回ることになっている。
ダイヤもそれに追従することになっていた。

だが、彼女達はしらない。
アルドラのお腹の赤子が人間との混血故に1年半で埋まれること。
強硬派の説得の最中に陣痛が起きてしまうこと。
そして、それがもとでアルドラの命の危機が起きようとすることを……

だが、今はなにも知らず、彼女達は体を重ねていた。

12舒龍:2016/07/25(月) 10:56:34 ID:2I1DTfis0
 人間側との交渉は成功したと言っても、王が言ったとおり、
魔族側には強硬派も多い。元より好戦的で人間を毛嫌いしている魔族たちだ。
ただの暇つぶし的に人間と戦っている奴らは説得が簡単だろう。
コロッセオのような施設を建設し、互いに戦わせればいい。
アルドラは魔族の長として一つのお触れを出した。
・人間界との停戦により、人間界に侵攻することを禁止。
・いかなる人間も傷つけてはならぬ。
・異論あるものは申し出よ。必要あれば直接赴く。

 翌日。
魔王と玉座に座るアルドラはポキポキと肩を鳴らした。
「だいたい穏健派は大丈夫なようだ。しかし、一番厄介のはやはりコイツじゃな」
 アルドラは反対の意を唱えた者達のリストの中から一枚の紙を取り出してダイヤに見せた。
ゴルゴーンと名前が書かれたその紙には、髪の毛全部が緑色の蛇で出来た美女が描かれている。
日本ではメデューサが有名だが、彼女と同じ声質を持った姉である。
「よし、行くか」
 自らに気合を入れるような声を出し、アルドラはお腹を下から抱えながら一歩前に出て、空間移動の詠唱を始めた。

13名無しのごんべへ:2016/10/04(火) 15:45:27 ID:sUR6i8rk0
 アルドラが空間移動の魔法を詠唱し始めると、バチバチッという音がし始め、
雷のような蒼い光が辺りに集まり始めた。
詠唱が佳境に差し掛かると、蒼い光が一ヶ所に集まり始めた。
楕円形のゲートのような形に収束すると、アルドラは詠唱を止めた。
ふぅ……。と一息ついてから、蒼い光のゲートの方へ歩みを進めた。
 ゲートをくぐり終えると、そこはアルドラの居城の一室ではなかった。
赤茶けた荒れ果てた土地だった。
アクスというこの地方は、強硬派の中でも一番厄介だとアルドラが思う、ゴルゴーンが治める土地だ。
ゴルゴーンの妹のメデューサや、魔物の母として名高いエキドナなど蛇族が中心になって生活している。
狡猾な彼女らは、まさに一筋縄ではいかない存在だった。
 目の前の豪邸を見上げるアルドラ。
自分の居城から比べると、まるで物置のような小ささだったが、見上げた豪邸はその何倍もの大きさでアルドラに迫っていた。
アルドラ自身の感情の動きを悟ったのか、お腹の中の赤子が不安そうに胎動を返す。
「大丈夫だ」
それをなだめるように、また自分自身を奮起させるように、短く、強く言葉をはいたアルドラは、
自分の身長より大きな扉をノックした。

14D.D.:2017/01/07(土) 22:06:38 ID:WVWEZANc0
 蛇と人間の合いの子のような獣人に案内され、ゴルゴーンが待つ玉座の間へと着いた。

「ふん、魔王ともあろうお方が無様なものだな」
 王座に座ったゴルゴーンが鼻を鳴らす。
青銅色の籠手を付けたような色の手で髪を梳く。
手で梳かれた紫の髪の先は生きた蛇の頭のようになっており、それぞれ思い思いに蠢いている。
「お前もな。無様な格好は互様だ」
 ゴルゴーンの強烈な皮肉に、アルドラも小馬鹿にしたような笑みを浮かべた。
黒い下着のような露出の高い服装に包まれたお腹の辺りが、アルドラよりもはっきりと前に突き出ていたからだった。
そう。ゴルゴーンも妊娠しており、しかも産み月を迎えていたのだった。
「ま、そうだな……。で、何の用だ?」
 ゴルゴーンはニヤリと笑い、すぐさまその笑いを消した。
もし臆病な人間なら魂が消し飛びそうな冷徹な表情だ。
「私は、人間と仲良くしようと思っている。この子も人間との子だ。強制はしないが、立ちはだかるなら容赦はしない」
 臆することなく、正面からゴルゴーンの目を見据えて語るアルドラ。その両手は豊かなお腹の膨らみに添えられていた。

15六道:2017/01/11(水) 18:18:58 ID:nuQvublE0
アルドラを睨むゴルゴーンだったが、その目が優しくなる。
「変わったな、アルドラ。恋をしたからか?
ああ、かまわないぞ。私もお前に刃向かうつもりはない。
それに、強硬派には内緒だがな、この腹の子はお前の子と同じ人間の子だ。
私は強硬派を束ねてはいるが、そこまで頭が硬い訳でもないぞ。」
ゴルゴーンはそう語るのだった。
「ほう?ゴルゴーン、お前もなのか?良ければ話を聞かせて欲しいのだが…」
「良かろう。話は長くなるだろうから、私の部屋で話すとしよう。」
そう言うとゴルゴーンは立ち上がり、アルドラを案内するのだった。

16蓬莱:2017/05/24(水) 19:37:52 ID:n1hK.VrU0
 ゴルゴーンの部屋に着き、話し始めた二人だったが、
太陽が赤茶けた大地に隠れても話は終わりそうになかった。
「して……。そういえばアルドラ、そなたが宿しているのは一人か?」
「ああ。そうだが……?」
 今後の魔界について話をしていたゴルゴーンだったが、ふと口調を変えてきた。
アルドラの大きくなった腹部にやった目は、意外にも優しいものだった。
「ふん。やっぱりそうか。こっちはな、ふたつの命が宿っているのだよ。双子というやつだな」
 勝ち誇った顔でお腹を両手で撫でるゴルゴーン。
アルドラとは違い、正真正銘産み月を迎えたゴルゴーンのお腹は、アルドラのお腹が可愛く思えるほど限界近くまで膨らんでいた。
「まあ。この子らに免じて、人間界には侵攻しないでやるよ。しばらくは、な……。……っ!」
 ニヤリと笑ったゴルゴーンの顔が引きつる。しきりにお腹を撫でている。
「おい! まさか……、生まれるんじゃないよな!?」
 慌てて問いかけるアルドラ。同じ妊婦として、人間の子を宿す魔物としてピンとくるものがあった。

17名無しのごんべへ:2017/05/24(水) 23:35:17 ID:1beJijGQ0
「大丈夫、だ。直ぐには産まれぬ。
魔族と人間の混血故に早く産まれやすいのかも知れないな。
アルドラ。お前も気に留めておいた方が良いかもな。」
ゴルゴーンはそう言いながら腹を撫でていた。
「ふぅ、収まったようだ。まだ本格的ではないだろう。
痛みも強くないからな。そうだ、私の馴れ初めについても話しておこう。
今後の人間との付き合いの参考になるかもしれないからな。」
そう言ってゴルゴーンは腹を気にしながら語り始めた。
ゴルゴーンによると、彼女と腹の子供の父は、アルドラのように討伐にきた人間のパーティらしい。
その強い意志を秘めた目に、ゴルゴーンは惚れたようだ。
子供の父だけを残し転移魔法を使うと、ゴルゴーンはその男を生け捕りにした。
そして、周りの魔族には拷問をすると言って牢屋に入れ人払いをし、無理矢理逆レイプをしたそうだ。
その後、その父も仲間と同じく転移魔法で逃したらしい。
魔族にはゴルゴーンが油断したすきに逃げられたと話して。

ゴルゴーンは、時折顔を時折陣痛で歪めさせながら、そうアルドラに話したのだ。

「ふむ、と言うことは子の父はこの事を…?」
「ああ、知らないだろう。この子供は、私の私生児として扱われるだろう。
大っぴらに蔑むやつはいないだろうが、蔑まれるかもしれないな…」
ゴルゴーンは悲しそうに、腹を撫でるのだった。

18熊猫:2017/12/19(火) 16:18:59 ID:PBQiVxeU0

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当掲示板管理者の熊猫です。
直近書き込みである「2017/05/24」から約7ヶ月が経過しておりますが、
その後の投稿がない状態が続いております。
一週間後の、12/26 0:00まで待ちます。
それまでに投稿がないようでしたら、「落ちた」ということで、過去スレに移動させていただきます。

各位よろしくお願いします。

 くまねこ
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19名無しのごんべへ:2017/12/25(月) 21:32:50 ID:8HPNkydQ0
すると、ゴルゴーンが撫でたことに反応し、またも動き出す双子。
流石に双子になると、お腹が動く様子もよくわかるようだ。
「しかし、双子も妊娠すると流石にお腹の中がきつくなっておらぬのか?」
「心配するな。こやつら元気そうに腹をポコポコと蹴ったりしとるからな」
と、おへそがかなりビンビンに突き出てて正中線も綺麗なお腹をペチペチ叩きながらゴルゴーンは答える。
魔族は人間よりも皮膚が分厚く伸びも良いので、双子以上を妊娠しても妊娠線ができることはほぼないのだという。

20熊猫:2018/08/10(金) 12:48:10 ID:tPInOq7c0

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当掲示板管理者の熊猫です。
直近書き込みである「2017/12/25」から7ヶ月以上が経過しておりますが、
その後の投稿がない状態が続いております。
来週末、08/18 0:00まで待ちます。
それまでに投稿がないようでしたら、「落ちた」ということで、過去スレに移動させていただきます。

各位よろしくお願いします。

 くまねこ
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21名無しのごんべへ:2018/08/18(土) 13:06:50 ID:ixuTmrAU0
「しかし、な……。ちと元気すぎるかもしれんな」
 ゴルゴーンはせわしなく大きく膨らんだお腹を撫で擦る。
その顔は痛みに歪んでいたが、ほのかに幸せの色をも宿していた。
一時間ほどそうしていろいろな話をしていたが、ゴルゴーンの陣痛は進む気配がなかった。
心配したアルドラの提言により、御典医が呼ばれ診察が始まったが、
どうやら陣痛が始まったわけではなく、ただ単に胎動が激しすぎたようだった。
しかし、前駆陣痛と言って陣痛の予行練習のようなものの可能性もあるので安静にしておくべきと御典医に言われたので、
アルドラたちは帰ることにした。
反対派の急先鋒とも言えるゴルゴーンが反対しない意志を表明したので、反対派の説得も容易だと思えた。
それが過ちだったと気づくのは、彼女の母であり、エキドナやセイレーンの母でもあるとされるケトの説得に赴いたときだった。

22名無しのごんべへ:2018/11/12(月) 16:32:23 ID:DNGCwB2A0
 転移魔法は以外にも魔力を消費する。
一旦居城へと帰ったアルドラだったが、体の調子を整えるのに一月もかかってしまった。
再び転移魔法を使い、ケトのいる近くまで移動する。
ケトが反乱軍を率い、人間界に侵攻する準備を進めているという情報が入ったからだった。
その情報は意外にもゴルゴーンからもたらされた。
ちなみにゴルゴーンは臨月に入ったにもかかわらず、一向に出産する兆しが見えないらしい。
 ゴルゴーンの説得には単独で赴いたアルドラだったが、今回は危険な目に遭う可能性が高いということで、ダイヤも同行することにした。
しかし人間だと知られてはマズイため、即席で魔物の姿に変身させていた。
 転移魔法でゴルゴーンの居室に直接つなぐ。
翌朝、ゴルゴーンの案内でケトが住む城まで案内してくれることになっていた。

23名無しのごんべへ:2018/11/16(金) 01:15:26 ID:7wdMcIbE0
「久しぶりだな、ゴルゴーン。息災か?」
「ああ、なんとかな。双子である上に人間の血を引いてるからか、もうすでに産まれていてもおかしくはない、と御典医は言っていた。
まあ産まれそうかと言うとまだわからん。腹が気になる事は増えたが。
正直、あまりこの家を離れたくは無い、が…母さ…ケト様を説得するのはかなり難しいだろうからな。
私が付いていくのさ。」

「難しい…なに故だ?強硬派を束ねているお前が一声かければケト殿の反乱軍など解散できるのでは…」
「私が強硬派を束ねていたのはケト様が後ろ盾に居たからだ。
そのケト様が反乱軍を起こしたのだ、強硬派の中でもケト派とやや大人しくなったゴルゴーン派に分かれている感じか。」
「なるほど。しかし、今になって反乱軍を起こしたのだ…」
「ケト様は純血派だからな。どこからか私の子供が人間の血を引いていると聞かされたのか、烈火の如く怒っていてな。私の話を聞かないと宣言している。
だが、アルドラ。お前の言葉なら可能性はあるのではないかと…そう思ったんだ」

「そうですよアルドラ!あなたの言葉なら彼女を説得できるはずです!」
「アルドラ…なんだこの魔物は?急に会話に入ってきて」
「こいつが私の旦那だ。魔物に化けさせてある。」
「なるほど、たしかにここでは人間の姿だと不味かろう。
わかった、お前も行けるようにケト様に伝えておく。
では今日までに準備をして明朝ケトの布陣してるところまでいくぞ」

そう言いながらゴルゴーンは2人が泊まる部屋に案内した。
ゴルゴーンが時折お腹をなで、顔をしかめるのをダイヤは気にしていた。

24舒龍:2019/01/03(木) 16:25:13 ID:kmO5fYKk0
 翌朝。
三人はゴルゴーンが用意した馬車の乗り込み、ケトの布陣へと向かった。
ケトは反乱軍を束ね、居城からすでに打って出ているらしい。
「ゴルゴーン。大丈夫なのか?」
 ゴトゴトと不規則に揺れる馬車の中、アルドラが不安そうにゴルゴーンに尋ねた。
馬車に乗ってからというもの、ゴルゴーンが幾度となく顔をしかめ、お腹を撫で擦っているのを目にしたからだった。
「ああ、大丈夫だ。ちと腹が痛むがな。こいつの父に似て、暴れん坊らしい」
 事もなげに笑ったゴルゴーンだったが、大丈夫でなさそうなのは明らかだった。
かといって馬車の行軍スピードを緩めることはできない。ケトが本格的に軍を動かす前に説得に行かないと、手遅れになってしまう。
 しばらく進み、あと少しでケトの布陣という所。海の潮の香りがしてきた頃だった。
馬車が急ブレーキをかけ、止まった。アルドラたちは嵐に翻弄される小舟のようにあちこちに身体をぶつけてしまった。
「敵襲です! ケト傘下セイレーン軍。その数およそ数百!」
 御者がなんとか体制を立て直し、現状を叫ぶ。
「くぅう……。なんと……。セイレーンが……」
 痛む身体を擦りながら何とか起き上がったゴルゴーンがため息とともにつぶやく。
顔をしかめ、両手は守るようにお腹に置いている。そのお腹が不気味にボコボコと動いている。

25名無しのごんべへ:2019/01/03(木) 21:25:31 ID:ITaaxV1Q0
「くっ…ケト殿は本気で戦をするつもりか!?人間と魔族が争えば、犠牲が出るというのに!?」

アルドラが焦りを帯びた声で叫ぶ。

「…セイレーン姉様とは争いたくはないが…ここは、私の『邪眼』で…ぐぅぅ」

『邪眼』。相手を見つめることで石に変えるというゴルゴーンの最終兵器。
海上を少しずつ進軍してくるセイレーン軍を睨みつけたゴルゴーン。
だが、すぐにお腹を抱えてうずくまってしまう。
額や体からは大粒の汗が流れていた。

「無茶だ、そんな身体で『邪眼』を使うのは!?」

思わず自分の身も顧みず、アルドラは叫んだ。

魔族と人間との混血故の産み月の前倒し、双子を宿した腹。
無理な馬車の行軍スピードによる振動で揺さぶられた子宮と胎児、急ブレーキによる身体のうちつけ。
そんな身体で『邪眼』を使おうとしたゴルゴーンに、ついに本格的な陣痛が起きてしまったのだ。
急に起きた子宮の収縮に驚いたのか、先程よりも激しく動くゴルゴーンの胎児。
そのせいか、ゴルゴーンはただひたすら唸り続けるしかなかった。

「無様ね、ゴルゴーン。母様に刃向かおうとした報いよ」

気付くと、セイレーン軍は進軍を止め、一人の女性が岩に座っていた。
下半身は魚のようになっており、身体には鎧を纏っている。

「セイレーン…姉、様…」

顔を歪めて体を丸めていたゴルゴーンがゆっくり顔を上げ、そう呟く。
だが、すぐにまたお腹を抱え丸まってしまうのだった。

26名無しのごんべへ:2019/06/02(日) 17:29:39 ID:Y/sHmBYE0
 ゴルゴーンの陣痛は、かなり強いようだ。
ただ、あまり間隔が狭まっていないし、馬車の床に水はない。という事は、まだ破水はしていないようだ。
 アルドラの妊娠がわかってから、妊娠や出産に関する書物を読み漁って勉強した。
まず陣痛が始まった後、羊膜が破れて羊水が出てくる破水というものが起こる。
破水したら本格的な陣痛の開始と言って良い。まず赤ちゃんの頭が出てきて、すぐに引っ込む。
しばらくそれを繰り返した後、頭が引っ込まなくなる。そして身体も出てくる。
最後に胎盤が出てきて、出産終了となる。
 出産の流れを頭の中で復習してみる。
ゴルゴーンは、まだ破水していないとすると、まだまだ本格的とはいい難い。
ただ、セトの元に辿り着くのを待っているわけにもいかないようだ。
それに、なかなか好戦的に見える姉のセイレーンを説得するほうが先だ。
「大丈夫だ。すぐには産まれたりしないよ。でもさ……」
 心配そうに顔を歪めるアルドラに、安心するよう力強く頷いてみせる。
ただ気になることが一つ。
鎧に包まれたセイレーンの上半身。かなりこんもりとしているように見える。
それは、胸が大きいからなのか、お腹が大きいのか、この距離では判断がつかなかった……。

27名無しのごんべへ:2019/06/19(水) 23:00:15 ID:yt.d9BYU0
陣痛で歪むゴルゴーンの顔。兜から僅かに見える、それを見たセイレーンの少し動揺した目。
ダイヤは、セイレーンの様子を確認して、一つカマをかけながら賭けに出ることにした。

「セイレーン殿!侵攻は一時中止していただきたい!」

「…アルドラ様の従者ね。それは出来ないわ。ケト母さまからはキツくここを通すなと言われているの。
引き返してもらえないかしら」

「引き返していきたいのはやまやまだが、ゴルゴーンが産気付いている。戻るにも戻れない。
せめて、産まれるまで休ませてもらえる場所を貸していただきたい」

「そうしてケト様の怒りが少し収まった所で対話をするという魂胆でしょう?その手には…」

「頼む、お前も腹に子供を宿しているのではないのか…?ゴルゴーンの辛そうな顔を見て何も思わないのか?
ここの近くの古い家を借りるだけでもいいんだ、今は対話のことよりそれを最優先に考えたい。」

そう言ってダイヤは内心祈っていた。
もし、鎧の上からわかるほどふくよかな身体のセイレーンが妊娠していなかったら。
もし、ゴルゴーンに姉妹の情を感じていないなら。
アルドラやゴルゴーンをこのまま返すだろう。

いや、下手をしたら禍根を残さぬよう倒しに来るかもしれない。
内心ドキドキしながら、フードを深く被り顔を見せていないダイヤは頭を下げた。

「…仕方ないわね。この近くに私が昔使っていた砦があるわ。
清潔とは言えないかもしれないけど、そこを貸しましょう。
そこから先、ケト様との対話の場を設けるか開戦するかは産まれてから話し合いましょう。ついてきなさい。」

そう言ってセイレーンは武器を部下に渡し、背を向け一行を先導するように海を泳ぎ始めた。

28舒龍:2019/12/17(火) 15:17:35 ID:kNdnFg7U0
セイレーンが先導する砦に一刻も早く付きたいところだが、
あまり早く馬車を進めると、既に陣痛が始まっているゴルゴーンの体に障りがあってはいけない。
並足とも言えるゆっくりとしたスピードで、しばらく馬車を進めると、目の前に砦が見えてきた。あれが、セイレーンが言う砦だろう。
天然の大きな岩のような要塞で、陸から海へと続いている。
半人半魚のセイレーンにとっては、またとない自然の要塞と言えるだろう。
 中に馬車を隠し、元医務室だった所へとゴルゴーンを連れて行く。
すでに医療器具などは運び出されているが、基本的な医療行為は出来そうに見える。
部屋の半分は海へとつながっており、すべての部屋がこのような作りになっているらしい。
「どうだ? 今にも生まれそうなのか?」
 一番キレイな椅子にゴルゴーンを座らせて、陣痛の進み具合を診ていると、セイレーンが様子を見に来た。
セイレーンは、先程の軍装をといて簡素な服装に着替えていた。
声のした方を自然に見やったダイヤだが、ギョッとした。
セイレーンもまた妊娠しているらしく、水の中に隠れた腹部がこんもりと盛り上がっていたからだ。

29名無しのごんべへ:2020/01/13(月) 23:18:17 ID:I8GYKfOY0
「…陣痛はかなり強いけど、破水はしてないみたい…だし。
まだ…かなり時間はかかるかもしれない」

ダイヤがゴルゴーンの硬いお腹や股座を確認してそうセイレーンに伝える。

「へえ…詳しいのね。…奥さんの、アルドラのせいかしら?」

そうセイレーンが話し、首を絞めるように魔法で作った海水の縄をダイヤの首に回す。

「ダイヤ!?」

慌てるアルドラに、セイレーンが手で制す。

「大丈夫。今すぐ殺しはしないわ。知識が豊富な以上、コイツに任せるしかないもの。
…けど、覚えておきなさい。妙な真似をしたり、ゴルゴーンと赤ちゃんの命に危険が及べば…わからないわね」

そう低い声で話すとセイレーンはパチンと指を鳴らして縄を海水に戻した。

「ありがとう。…しかし驚いたな。アルドラの魔法で魔物の姿に化けているのに。」
「フン、それくらいは私にお見通しよ。仕草が魔物と違うから怪しかったし、妊娠しているアルドラが危険なところに行くのに、夫が心配して一緒に行かないわけがないもの。」

ダイヤの驚いた顔で話す言葉に、少し嬉しそうに答えた。


それから暫く、ゴルゴーンの出産はこう着状態が続いた。
陣痛は少しずつ強くなっているものの、破水はまだしていない。
ダイヤやアルドラが、ゴルゴーンの汗を拭いたり、腰の痛みを軽減する場所を押したり。
セイレーンは水辺の場所に座り、薪でお湯を沸かしている。
陸に上がるとお腹の重さを感じ苦しくなるのか、時折海に戻りながらもお湯を沸かし続けていた。
ダイヤやアルドラはゴルゴーンの介助をしていて気付いていなかったが、セイレーンは少しお腹を気にする仕草をしていた。

30舒龍:2020/02/22(土) 16:15:30 ID:y.jflAgI0
 何となく視界がぼんやりとする。砦の中が少し暗いなと思い始め、それが次第に夜が近づいてきているのだと思いついた。
 砦の中の暗さがかなり顕著になり、セイレーンの部下たちが灯りに火を灯すようになる頃には、
ゴルゴーンのお産はかなり進んでいて、破水が確認された。
「よしっ。思いっきり息んでいいぞ。よくがんばったな」
 ゴルゴーンのお腹を撫で擦りながら、励ましていたダイヤが叫んだ。
破水する前に息んだとしても、胎児が娩出される力にはならない。ただ力を消耗するだけだ。
なので、ダイヤは陣痛の波が来ても息まないよう、ゴルゴーンに指示していたのだ。
「んっ……、来たっ。……んんっ、ぅうんん〜〜っ!」
 すぐに次の陣痛が来たらしい。短くその事を告げたゴルゴーンは、顔が真っ赤になるほど息み始めた。
砦にも、それぞれの身にも時間を測る道具は持っていないため詳細は分からないが、陣痛の間隔は15分ほどになっているようだった。
そろそろ胎児の頭が見え隠れしてもおかしくなかったが、実は双子が産道でつっかえてしまっているのをまだ誰も知らない。

31名無しのごんべへ:2020/08/14(金) 15:13:32 ID:mZPgUpeQ0
「くぅ……、ぅんんっ! 何故だ……。何故まだ産まれん……?」
 陣痛の波が来た時、精一杯息んだゴルゴーンは苦痛に顔を歪めた。
専門医もいなければ、助産に関する道具もない。
そんな状況の中で、ゴルゴーンの産道に双子が支えてしまっていると分かる者はいなかった。

そんな時、背後でバシャーンッと大きな水音がした。
後ろを振り返ってみると、水に入っていたセイレーンが苦しそうに顔を歪めている。
「すまない……。私も始まってしまったようだ。私に構うな。ゴルゴーンに着いてやってくれ」
 セイレーンの身体の大部分は水の中なのでよく分からないが、両手でお腹を抑えてかなり苦しそうだ。
 ダイヤは悩んだ。
ゴルゴーンについてやるべきか。
セイレーンだって安産だとは限らない。セイレーンの様子を見たほうがいいのではないか。

32名無しのごんべへ:2020/08/14(金) 16:48:01 ID:BxiaeCSQ0
「セイレーンには私が付き添おう。まだいきみ逃しの段階だと考えると、私が腹に力をかけそうになることも少ないだろうからな」

 悩むダイヤにそうアルドラが話しかけた。

「すみません、無理はしないでくださいね。」
「ああ、わかってる。代わりにゴルゴーンは任せるからな」

そういうとアルドラは水の中に入った。

「落ち着いて深呼吸しろ。まだそう早く生まれはしないだろうからな」
「…わかって、るわよ。ふーっ…ふーっ……
 ふ、フン…私とゴルゴーンを無事に出産させたら、ケト様に会わせるのも考えてあげるわ。
『考える』だけかもしれないけどね…ン、ふぅぅ…」

そんなアルドラとセイレーンの会話を余所に、ダイヤはゴルゴーンの出産が停滞している理由を探るため、
おもむろにゴルゴーンの秘部に指を入れた。

「ンふっ」

 ゴルゴーンがびっくりしたような息をしたのも気づかないほどにダイヤは指先に全神経を集中した。
 すぐに違和感を覚えた。頭には触れるのだが、その隣に柔らかい小さなものがある。

「これは…ひょっとして双子が我先に産まれたいとつっかえてしまったのかな?」

 ダイヤは頭に触れた隣にある柔らかいものをもう1人の足の裏と判断した。
 正常に産まれようとする赤ちゃんと、逆子で産まれようとする赤ちゃんが同時に産まれようとしていると表現すると分かりやすいだろうか。
 1人しか進めないはずの産道を2人が一気に通ろうとするから停滞した、ダイヤはそう判断したのだ。

 ダイヤはまずつかえている双子の赤ちゃんを1人ずつ産まれさせようと考え、逆子の方の赤ちゃんの足の裏に手を添えた。

「ごめんなさい、ゴルゴーン…辛い思いをさせますが、耐えてください」

 そう話したダイヤは、覚悟を決めたように逆子の方の赤ちゃんを子宮側へと押し戻しはじめた。

33名無しのごんべへ:2021/01/23(土) 17:35:19 ID:3ZuOJjk20
「ぎゃぁあああ……っ!!」
 ゴルゴーンは地獄の底から響くような咆哮を響かせた。
通常胎児が逆行する事はない。その尋常ではない、自然ではありえない動きに、身体がついて行かない。
ダイヤが胎児を押し戻した事により、ゴルゴーンのお腹が不気味にボコンと波打った。
とりあえず、二人の胎児が一斉に産道に殺到していた現状は打破できたようだ。
しかし、ゴルゴーンの体力の消耗が気にかかる。破水はしているので息んでもいいのだが、
これまでの行程でかなり体力を消耗してしまっている。
双子だけにかなりの体力が必要となるのは明らかだ。ゴルゴーンがそれまで持つのだろうか。
いや、なんとかして持たさなければいけない。魔族と人間の平和のために……。

34名無しのごんべへ:2021/01/23(土) 21:42:09 ID:qWUtVlYQ0
「魔族を舐めるな…1人は無事に産むほどの体力は残っている。
 だが…2人目はわからない。厳しいと思ったら無理矢理にでも産ませてくれ。
 余程のことが無ければ私は死なないが、人の血を引く子供はわからないからな。
 最悪、腹を切ってでも…」

ゴルゴーンが険しい顔のダイヤにそう伝え、再びいきみ始める。
ダイヤも覚悟を決めた。

「分かりました。しかし腹を切るのは流石に行いません。
 2人目の方はお腹の上から気をつけながら押し出します。
 まずは1人目を産んでしまいましょう」

ダイヤがゴルゴーンに伝える。
ゴルゴーンもいきみながら頷く。

ゴルゴーンのいきみに合わせ、ようやく頭が姿を表し始めた…

35舒龍:2021/11/06(土) 18:29:19 ID:jJAMm7/s0
 ようやく姿を現した児頭は、見た限りでは普通の人間のように思われた。
しかしその大きさは、かなり大きいように思える。
産まれたばかりの赤ちゃんがどのぐらいの大きさなのか、ダイヤは見たことはないと言えど、何となくそう思った。
「んっ、ぐぅぁあああ〜……!!」
 人間ではありえないような絶叫が、ゴルゴーンの口から漏れる。
感覚では、その陣痛の間隔は5分ほどになっているように感じる。
力いっぱい息むようにゴルゴーンに指示を出しながら、ダイヤは迷っていた。
ゴルゴーン自身が言うように、体力の消耗が激しい。第一子を出産する体力は残っていそうだが、第二子の出産まで体力が持つだろうか。
 ダイヤが迷っている間に、いくつかの陣痛がゴルゴーンを襲う。
いよいよ児頭が下がっていかない発露という段階にまで来たようだ。あと一息だ。
その事をゴルゴーンに伝えると、満足したように一つ頷いた。
ゴルゴーンの青銅色の肌にびっしりと玉のような汗が張り付いている。クタッとなった緑色の毛先の蛇も心なしか元気がないように見える。
しかし、ゴルゴーンには無事に第二子まで出産してもらわなくてはいけない。
そして、アルドラが付いてくれているセイレーンの出産も気になるところだ。

36名無しのごんべへ:2021/11/10(水) 21:42:43 ID:2hy8x1tc0
「もう少しで、赤ちゃんの頭が出てきますよ!頑張ってください!」

ダイヤがゴルゴーンを励ます声が辺りに響く。
セイレーンは時折そちらを気にするそぶりを見せながら、アルドラに背中を預けて
水面を漂いながら呼吸を整えていた。

「…凄いだろう、うちの旦那は」
「…そうね。少しは、認めてやって、もぉぉぉぉ!!」

アルドラにダイヤの事を訊かれ、人間も魔族も関係ないように助産に注力している姿を見ていたからか、
少し心を許したようにセイレーンは話していた。
しかし、その語尾は陣痛に襲われてか叫びに変わる。

同時に、周りの水が少し赤茶色く濁る。
アルドラが慌てて様子を伺うと、セイレーンの魚のような下半身から少し尾ひれが現れていた。

「逆子に見えるが、大丈夫か」
「んっ、ふぅっ、ふぅ…大丈夫よ、私にとってはこれは普通。
 …でも、赤ちゃんが出たらすぐに水面に出して。まだ、呼吸する力が弱いから」

セイレーンの言葉に強く頷くアルドラ。
セイレーンのいきみに合わせて、少しづつ尾ひれ、身体と姿を現していく。


「ぐぅあぁぁぁぁ!」
「んぅぅぅう!!!」

ゴルゴーンとセイレーンの叫び声が響く。

「んぎゃあ!んぎゃあ!」
「ふみゃあ!ふみゃあ!」

数秒置いて、ゴルゴーンの赤ちゃんが力強く泣き、セイレーンの赤ちゃんは少し弱そうに泣く。

「はぁ、はぁ…ふふ、かわいいな」
「何よ、私の赤ちゃんの方がかわいいじゃない」

ゴルゴーンが疲労困憊ながらも嬉しそうに語り、セイレーンは余裕を見せながらゴルゴーンの言葉に対抗する。

「ふぅ、ふぅ……あぁ、アァァァ!!!」

優しく赤ちゃんを抱いて呼吸を整えていたゴルゴーンが再び叫び声を上げる。
2人目を産むために、少し休んでいた子宮がまた強く収縮し始めているようだ。

「ゴルゴーンと旦那さんを助けてあげて。私なら大丈夫だし。
 ゴルゴーンと赤ちゃん、1人でも死なせたらタダじゃおかないから」

セイレーンの言葉に背中を押され、アルドラは陸に上がる。
しばらく水中に居たからか、ズンとした重力がお腹にかかるような感覚をアルドラは覚えてしまう。

(これは、セト殿と謁見出来る頃には産気づいて、陣痛も強くなっているかもしれない)

少しため息をした後、それを顔に出さないように気をつけながら
お腹を軽くひとなでしてアルドラはゴルゴーンの出産の手伝いを行うためダイヤの近くまで歩み寄った。

37名無しのごんべへ:2021/12/25(土) 19:02:36 ID:KRRVcNac0
「ダイヤ、どういう状況か?」
 近くまで歩み寄ったアルドラは、ダイヤに状況を聞いた。
「ぁあ。まあ……。んんっ……?」
 アルドラの声に振り向いたダイヤは、驚きに眼を見開いた。
お腹が大きくなってからゆったりとした服装をしていたアルドラだったが、水に入っていた事により、身体にピッタリと張り付いている。
元々小さくはなかったおっぱいの形がくっきりと浮かび上がり、そのすぐ下から二人の子を宿したお腹のラインが続いている。
人間界との和平交渉の結果、魔物たちの強硬派を説得するために東奔西走していたから、身体を重ねた事がなかった。
身体のラインがハッキリと分かる状態になって、その事にふと思い当たったからだった。

 もっとも、そんな事はすぐに頭の片隅に追いやり、ゴルゴーンの出産に集中し始めた。
「ええっと……。第二子の出産だけれど、体力の消耗が心配だね」
 息も絶え絶えのゴルゴーンを見やったアルドラは頷く。
「お腹を上から押して助けるから、アルドラは、押さえておいて。暴れないように」
 ダイヤの的確な指示に、アルドラは素早く動いた。自ら上がったセイレーンも両足を抑える。

38名無しのごんべへ:2022/01/08(土) 10:06:00 ID:lW1yVd320
「今から、2人目の赤ちゃんを産ませるためにお腹を押していきます。覚悟は出来てますか」
「ええ…私なら大丈夫。私のことより、赤ちゃんを」

ダイヤがゴルゴーンに語りかけ、ゴルゴーンも弱々しくながらも首を振りながらそう答える。
ダイヤは、一瞬ためらいを見せながらもゴルゴーンのお腹を押した。

「    」

一瞬の間。ヒュ、と呼吸音が響き、ゴルゴーンが目を見開く。

「あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ァァァ!!!」

直後、ゴルゴーンが大きく叫ぶ。
自分の意思に関わらず、無理矢理出産を強いられたからだ。

「赤ちゃんも苦しいんです!ゴルゴーンさんは呼吸を整える事に専念してください!」

ダイヤの語りかけに、ゴルゴーンはコクコクと首を縦に振り、呼吸をする事に集中し始めた。

「頑張れ…もう少しだ、頑張れ…」

暴れないように両腕を押さえていたアルドラ。
ゴルゴーンがお腹を撫でながら必死に呼吸を整えようとする姿を見ながら、
違和感を覚え始めた自分のお腹を気にする様子を時折見せ始めていた。

アルドラの身体も、現時点では僅かな変化ではあるものの、出産に向けた準備を少しずつ始めようとしていた…

39ジャック:2022/03/29(火) 15:55:25 ID:wX7Hw.1o0
「くっ……、はぁはぁ……。んんっ……、ん゛ん゛……ッ。ぁああ゛あ゛あ゛〜〜……!!」
 次の陣痛の波がゴルゴーンを襲い、自然と腹に力が入る。
タイミングを見てダイヤが、ゴルゴーンの腹を力強く押し出す。
今までにない激痛にゴルゴーンの顔は歪み、大きく開いた口からは絶叫が迸る。
ダイヤの助けもあってか、第二子の頭が見え隠れし始めた。
「頭が見えたよ! もうすぐだ。がんばれっ!」
 様子を見ていたダイヤがゴルゴーンを励ますため、力強い声を投げかける。
陣痛の合間に荒い息を整えているゴルゴーンが力なく頷く。
ようやく排臨までこぎつけたものの、ゴルゴーンの体力の消耗が激しい。
「くっ……」
 その様子を見ていたアルドラは、ゴルゴーンの腕を抑えていた片手を自分の腹に置いて短く呻いた。
手を置いたお腹は、固く岩のように張っていて、だいぶと下がってきているように感じた。
自分の出産も始まってしまうのか……。
ゴルゴーンの出産があとどれくらい掛かるのかも分からない。
セトがいる場所までいって、セトを説得する時間は残されているだろうか。
考え抜いたアルドラは、お腹に置いた手に魔力を込めた。
対象の時間をゆっくりにする魔法。それを胎内に眠る出産の準備をし始めたであろう胎児に向けて放ったのだ。
これにより、アルドラの出産がかなりの難産になってしまう事を、この時は誰も知らない……。

40名無しのごんべへ:2022/03/30(水) 23:37:17 ID:PkQIDNfs0
「…大丈夫?アルドラ」

ゴルゴーンの陣痛の合間、アルドラがお腹に手を当てている事に気付いたダイヤが話しかける。

「…あぁ、大丈夫だ。」

アルドラは柔らかな笑みでダイヤにそう伝える。
鈍い張りは赤ちゃんにかけた魔法の影響か長く続いている。
だが、張りの強さはまだまだ我慢できるほど。
それを踏まえてアルドラはダイヤに『大丈夫』と伝えたのだ。

「そう、アルドラがいうなら。でも…」

「ん゛ん゛ァ゛ァ゛ア゛ァァァ!!!」

ダイヤがアルドラに何か伝えようとしたが、苦しそうに叫ぶゴルゴーンの声でそちらに顔を向けた。

(アルドラ…君はセトの説得に向けて赤ちゃんの時間の進みを遅くしているように見えた。
 それは…アルドラにとって相当な負担になるのでは)

元勇者として、アルドラの夫として、彼女を見続けていたダイヤは、
アルドラの手に走る魔力を感じた瞬間、ダイヤはアルドラの覚悟に気付いてしまった。
だが、それを胸にしまいダイヤはゴルゴーンの助産を続ける。

「あぁ…アァァァ…ッう、うぅ…」

体力の消耗が激しく、なかなかうまくゴルゴーンはいきめない。
ダイヤは必死にゴルゴーンと赤ちゃんを助けるためにお腹を押す。

そして、ようやく…ようやく、ゴルゴーンの赤ちゃんは排臨までいたったのだった。

41名無しのごんべへ:2022/05/19(木) 01:11:13 ID:lm6wkqY60
「あと少しだ!頑張って!」

ダイヤの叫びに奮起したのか、最後の力を振り絞るようにゴルゴーンはいきむ。
アルドラもゴルゴーンに指示するように、自分の出産の練習をするように少しだけ腹筋に力を入れる。

ようやくゴルゴーンの発露に至ったころ、再びアルドラはお腹に手を当てた。
魔力を使い再び自らの出産を遅れさせようというのだろうか。
……いや、違う。
アルドラに、再び強いお腹の張りが襲ったのだ。
そのお腹の張りは、まだそこまで気にならない程度。
だが、胎児や子宮に対象の時間の進みを遅らせる…いわゆる『スロウ』がかかっていて、どうしても時間が長くなる。

今の状態でこれなら、本格的に陣痛が起きたら…

頭を抱えるような仕草を一瞬行い、ゴルゴーンの手を再び押さえようとした。


ゴルゴーンの出産。それは、ようやく最終盤へと突入したのである。

42ジャック:2022/07/17(日) 09:04:44 ID:MSP7WOwQ0
「くっ……、ぐぅわぁああ゛あ゛〜〜ッ!」
 体力の限界に近づきながら、やって来た陣痛の激痛にゴルゴーンは、まるで獣の咆哮にも似た叫び声を上げた。
それに合わせるようにダイヤもゴルゴーンの腹に置いた手に力を込める。
ミチミチと音を響かせながら、胎児の頭がゆっくりとだがその全貌を表し始めた。
羊水に包まれていたせいか、水に濡れたかのようにベッタリと頭に張り付いたその髪は緑色をしていたが、
その先端は蛇のようではなく、普通の髪先をしている。
どうやら髪の色は母親であるゴルゴーンに。髪質は父親である人間に似たようだった。
「んっ……、ん゛ん゛ん゛っ! ぅうがぁあ゛あ゛あ゛あ゛〜ッ!!」
 文字に起こしてみればすべての文字に濁点がついたかのようなゴルゴーンの凄まじい叫び声に、一瞬腹に置いた手の力が弱まる。
出産とはこれほどまでに激痛で、凄まじいものなのか……。
ゴルゴーンが魔族だからか、人間との混血児の出産だからかわからないが、アルドラの出産もこんな感じなのだろうか……。
暗澹たる気持ちがよぎりながら、ダイヤはゴルゴーンの出産に集中しようとした。
胎児の頭はすでに殆ど出ていて、ゴルゴーンの出産は佳境に差し掛かっていた。

43名無しのごんべへ:2022/07/18(月) 22:58:13 ID:0SeqtWk.0
「ハァッ…はぁっ、はぁ…」

ゴルゴーンが呼吸を整えて次の陣痛を待つ。

「ぐあ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ア゛ァ゛」

ゴルゴーンが叫んだと同時にダイヤがお腹を押す。
引っかかっていた部分が抜けたのか、ズル、と胎児の頭が顔まで全て見えるほどになった。

「はひぃ…はひぃ…」

渾身の力を出し切ったようにゴルゴーンは呼吸を繰り返す。
ダイヤはゴルゴーンの腹部の辺りから股の方へと動く。
これだけの赤ちゃんの大きさなのだからすこしでもお産を楽にしたい。そのため、ダイヤは会陰を広げるように手を添えようと考えたのだ。

赤ちゃんの頭、肩、腕を支えるように優しく持ち、ゆっくりと体を抜き出す。


数分後、ゴルゴーンの2人目の赤ちゃんはオギャア、と元気な産声をあげたのだった

44名無しのごんべへ:2022/09/09(金) 08:59:35 ID:ltFnjsyI0
 二人の出産を終えたゴルゴーンの体力の消耗は激しかった。結局二晩体力の回復に費やした。
その間、いち早く体力の回復したセイレーンがセトの軍隊へと戻り、状況を報告していた。
セトは進軍ととりあえず止めて、ゴルゴーンの到着を待つという。
 出産から三日目。
体力が回復したゴルゴーンは再び馬車に乗りセトが率いる軍を目指す。
 しかし、馬車内の雰囲気は一変した。
馬車内は常に母乳の甘ったるい匂いが包み、赤ちゃんの元気な泣き声が響く。
どこか牧歌的な空気になっていた。
とても魔族と人間の行末を占う重要な局面にあるとは思えなかった。
 馬車は海沿いを進む。
海にはセイレーンの隊列がまるで道案内をするかのように先を進む。
馬車が進むこと一週間、ついにセト軍が駐留する場所までたどり着いた。

45名無しのごんべへ:2022/09/19(月) 18:22:03 ID:rb1twR6U0
「久しいな、セト」
「ええ…先代魔王が存命でしたから…128年ぶり…くらいかしら?随分と立派に育ちましたね、アルドラ。」
「ああ…プライベートでは幼い言葉を使うこともあるが。公では威厳を保てるよう気をつけているよ」

セト軍が駐留している古い砦に案内された一行は、比較的快くセトに迎えられた。
ゴルゴーンとセイレーンの親らしくふくよかな体のセト。
しかしながら、その全身は鎧に包まれている。
『人払いをして欲しい』とセトが配下に話し、部屋にはセトとダイヤ、アルドラのみが残っている。
「貴方が旦那様ね。お噂はかねがね聞いております。『勇者様』」
「…気付かれてましたか。ダイヤ、と申します」

ダイヤが軽く会釈をする。

「…さて、アルドラ様。貴方が言いたいことはわかります。矛を納めてほしい、と。ですが」
「ああ。貴方は『純血派』…そうやすやすと兵を引かないでしょう。」
「ええ、その通り。ですが、先代魔王様には恩義があり、『アルドラを頼む』と言われたこともあります。
 ですから、私が納得出来る話、交渉次第では兵を引いて構いません」
「分かった。…だが、これは少々難儀な会談になりそうだな…時間もかかりそうだ」

セトと会話を交わしたアルドラはお腹に手を当てる。
『スロウ』をかけた子宮と赤子は、セト軍の砦に向かうまでの一週間という時間でもまだ解除されていない。
張り、違和感…というよりはっきりした痛みに変わりつつある陣痛も、その影響か長く続いてしまう。
魔王らしい体力、精神力に満ちていたアルドラですら、少しずつ辛いと感じ始めている。

(だが、やるしかあるまい。お腹の中の我が子のためにな)

そう考えたアルドラにセトが声を掛ける。

「まずはここまで来た労をねぎらわさせてください。食事を用意しました。その席でも色々話を聞きたいわね」

その言葉にアルドラは「わかった」と答え、ダイヤと共に案内されながら食堂へと足を向けるのだった。

47名無しのごんべへ:2023/03/09(木) 22:25:46 ID:LY86JGsE0
 セイレーンとゴルゴーン姉妹の母・ケトは、海の危険性や恐怖、海の未知の生物を神格化した女神だ。
ケト自身は、両足がある人間の外観をしているものの、古い砦の中は海に関係している装飾が多く施されている。
セイレーンの砦のように、半分が海中に面している部屋も多い。
案内された食堂のテーブルにセットされたご馳走も、海の幸が多い。
「さあ、食べながらという無作法には目を瞑ってもらおう。アルドラよ。どういった考えなのだ?」
 アルドラを見つめるケトの瞳は冷たく、敵意に満ちている。
これは確かに長引きそうだなと思ったダイヤは、横目でアルドラの様子を見つめた。
先程からアルドラはしきりに両手でお腹を撫で擦っている。時折、痛みに耐えるような仕草を見せている。
明確にそうとはいえないが、ひょっとすると、陣痛が始まってしまったのではないかと思った。

48名無しのごんべへ:2023/03/16(木) 00:22:48 ID:JVHvYVCk0
「私からの基本的な条件は2つ。1つは、ケト様が兵を引く事。そして、不可侵の条約を結んでいただく事です。
 こちらが今考えている条約は、相互の不可侵条約…つまり、魔族は人間界に攻め入らず、逆に人間も魔界には干渉しない…と言った感じでしょうか。」

スラスラとアルドラは条件を口にする。しかし、その手は幾度となくお腹を摩り続けていた。

「なるほど、こちらとしても想定内ですね。では、こちらから条件を追加します。
 『純血派』の身としては、純粋な魔族を増やしたいわね。つまりは、封印されたり捕虜になった魔族の解放をお願いするわ。

もう一つは、魔界に人間が攻め入らないように、また人間界に魔族が侵攻しないように人質交換のようなものをお願いしたい。

そうね、例えば…ゴルゴーンの双子の赤ちゃんの片方をあなたのお腹の赤ちゃんと婚約させてあなたや人間の人質のようにする、
その代わりにあなたたちも知り合いの赤ちゃんをゴルゴーンのもう片方の双子と婚約させて私たちの人質にする…みたいな」

ケトはそう提案をする。続けて口を開く。

「あなたの知り合いになら相談出来るのでは?『勇者』様」
「確かに僕のパーティの元メンバーは結婚して子供を授かっています。ですが、納得してくれるか」
「そこは貴方達が交渉するべきね。それに、あなたたちの第二子って手段もある」

そう伝えられ、ダイヤはチラリとアルドラの様子を伺う。
眉間に皺がよっているが、それは陣痛の影響か考え込むからか。
しばしの時間を置いてアルドラは返答する。

「わかった。魔族の解放は再び人間側と交渉する必要があるが、人質交換は私たちが何とかしよう」
「そう、であるなら私たちも兵を引きましょう。但し、不可侵条約は魔族の解放が決まってからです」

アルドラとケトはそう言葉を交わし交渉は成立したようだ。

「大軍を率いてきたから、時間がかかりそうね。この砦にしばらく滞在して、兵を引く様子を確認してから人間界に行くべきだと思うわ。それに…」

ケトはそう言葉を切りアルドラのお腹を指差す。

「もう、近日中に産まれそうな状態なんでしょう?苦しそうにお腹を撫でているし。
 無理をせず砦に滞在しているうちに出産を終えた方がいいわね」

ケトが続けた言葉に、アルドラは苦笑いする。

「あぁ、そうさせてもらう、よ…うぅ」

翌日。
少しずつ兵が引いていくのを砦の客間の窓から見ながら、アルドラは苦しげにお腹を撫でていた。
アルドラの出産が、すぐそこまで近付いていた。

49熊猫:2023/09/18(月) 07:37:19 ID:IDhRITQo0
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当掲示板管理者の熊猫です。
直近書き込みである「2023/03/16」から約6ヶ月が経過しておりますが、
その後の投稿がない状態が続いております。
一週間後の09/25 24:00まで待ちます。
それまでに投稿がないようでしたら、「落ちた」ということで、過去スレに移動させていただきます。
(3行以上のストーリー的に何か進展があるような投稿のみとし、それに当たらない投稿はノーカンとします)

各位よろしくお願いします。

 くまねこ
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50名無しのごんべへ:2023/09/25(月) 22:09:57 ID:f0OiqxvY0
ケト軍は少しずつ兵を減らし、ケトの護衛をする直属の部隊が残されるのみになった。

その間もアルドラは客間をせわしなく動き、時折苦しげに近くの机に手をつきながら腰をゆらめかせる。
陣痛が強まっているように見える…が『スロウ』の影響がまだあるのかダイヤが触診しても首を横に振る。

「まだまだ子宮の開きが鈍いです。いきんじゃダメだからね、アルドラ」
「ま、まだまだ耐えなければいけないのか…くぅぅっ…」

机の上に手を置き、ググッと背を伸ばしたり腰をグルグルと動かしながらダイヤに声をかけられたアルドラは呟く。

それからどれほどの時間が過ぎただろうか。
『いきんでいいか』と尋ねるアルドラに、ダイヤは首を振る。
未だに子宮口の開きが鈍いということを察したアルドラは、ついに決意した。

「頼む…『スロウ』の魔法を解除してくれ」
「いいんですか?…アルドラに負担がかかるかもしれないですが」
「あぁっ…早く、してくれっ…赤子のためでもあるし、これ以上耐えられない…」

『スロウ』の魔法の強制解除…勇者であるダイヤには容易である…が、陣痛が加速しアルドラの負担にならないかとワザと解除をしなかった。
だが…停滞気味の出産、解除される様子がない『スロウ』の魔法に痺れを切らし、アルドラがとうとう根を上げた。
ダイヤは首を縦に振り、小さな声で詠唱する。

一瞬、魔法陣のような紋様が腹に浮かび、赤く点滅した後…消滅した。

「おお゛お゛おぉぉぉぉ…ふぅぅぅぅ…ふぅぅっっ…」

アルドラの声が一際大きくなり、苦しげな呼吸を繰り返す。
『スロウ』の効果が切れ、堰を切ったように陣痛が一挙に激しくなったようだ。

ようやく、ようやくアルドラの出産は佳境を迎えていた。

51名無しのごんべへ:2023/12/08(金) 18:40:25 ID:Fe0otmlQ0
 通常、子宮の収縮で胎児の頭が子宮口をだんだん押しひろげていき、子宮口が開いていく。
子宮口が10cmと全開大に至り、胎胞の卵膜が破れ破水となる。
破水するまでは息んでも胎児が下がることはないため、余計な体力消耗を避けるために破水までは息まないようにする必要がある。
スロウの魔法で子宮が収縮するのを遅らせていたため、陣痛が起こっても子宮口は開かなかった。
魔法を解除した事により、アルドラの腹の中で子宮が収縮を始める。それと同時に、胎児の頭が子宮口を押し広げ始めていた。
「うぐぅうッ! ううッ! んん……ッ!」
 机の上に両手を置いた格好のまま、アルドラは迫りくるう陣痛の痛みに喘いだ。
しかし、まだ息んではダメだと言われているので、お腹に力を入れないように必死だった。
「だ、ダイヤ……。ま、まだなのか……?」
 スカートをたくし上げ、その中に顔を突っ込んで様子を見ていたダイヤに、アルドラが苦しそうに問いかける。
「うん、まだだ。開いてきたけど、まだ破水してない。もうちょっとだよ、頑張って、アルドラ!」
 すまなさそうに顔を歪めて報告したダイヤに、アルドラは絶望の面持ちとなった。

52名無しのごんべへ:2024/02/19(月) 22:10:46 ID:I729DDK60
それからどれくらいの時間が過ぎただろう。
アルドラは客間のドレッサーに手を置き、必死にいきみの衝動に耐えていた。

「おぉぉぉぉ…っ…まだ…耐えなければいけない…のかっ…!?」

唸り声が徐々に大きく、長くなる。
陣痛が少しでも楽にならないか…そう考えるのか、あるいは無意識にか。
アルドラは時折腰を伸ばしたり、上下左右、または円を描くよう腰、尻が動く。

「んうぅぅぅぅぅっ!?むりだっ!?いきんでっ」

一際激しい陣痛が襲ったのか、腰がビクン、と跳ねる。
それに合わせて、アルドラは衝動に合わせていきんでしまったらしい。
客間の床にパシャリと水たまりが広がる。

「破水!?いきむのは少しだけ我慢してください、アルドラ」

慌ててダイヤはアルドラのショーツを下ろし、膣内を確認する。

「おそらく全開まで広がってます!いきんでいいですよ、アルドラ!」

いきんでいい…という言葉より先。
いきみの衝動に耐えていたアルドラは『全開』という単語を聞くと同時にいきんでいた。

アルドラの出産は、いよいよ終盤に差し掛かろうとしていた…

53ステマ:2024/04/14(日) 13:07:27 ID:qJPmjv.w0
【巨漢】華原朋美(50)「めっちゃ痩せましたね」

無反応

コメントしづらい
この添付した画像w
トコトン馬鹿にしてるな
そういうジャンルの人
大山のぶ代

華原朋美(50)、2chでアンチと何年にもわたりバトルを繰り広げた挙げ句、住んでいたマンションにバレて退去させられていた

70代ナマポステマ老婆老害風俗店員が
アラカン以上の高齢者を絶賛し
孫,曾孫世代を叩く構図と一緒

息子、娘の彼女・彼氏に敵意剥き出し
息子、娘と彼女・彼氏の邪魔している高齢者老害スレ

寿 リリカ
最愛なる運命の人、いつもたくさんのHAPPYをありがとう “幸せが連鎖する家"の女性が大切にしていること

スカウトはヤリサー、サンキューは18歳前後しか紹介しないからアラサー親世代は入れても稼げない、話題にもならない

姉agehaモデル・寿リリカ(36)、小学生姫ギャルの娘・りりぴ(9)を初顔出し「小学生姫ギャル」

2011/05/19(木) 15:53:25
サンキューは
俺の知り合いの息子16さいが働いてる
違法店 だぞ


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