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【SS】もしアムロがジオンに亡命してたら part6
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1 ◆FjeYwjbNh61のSSを読みながら語らいましょう。
今までどおり感想などもこちらへどうぞ。
必要とあらば、別スレを立てます。
荒らしは問答無用で削除します。sage進行の必要はありませんw
なお、このSSは機動戦士ガンダムにおける正史、公式設定とは無関係の2次的創作物です。
実在の人物、架空の人物、MS等、団体等とは一切関係ありません。
まとめサイト(要修正)
http://www27.atwiki.jp/amuroinzion/
前スレ
【SS】もしアムロがジオンに亡命してたら part5別館
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12849/1246495352/
パー速スレ
【SS】もしアムロがジオンに亡命してたら part5
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1244461642/
【SS】もしアムロがジオンに亡命してたら part4
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1238134482/
【SS】もしアムロがジオンに亡命してたら part3
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1231986146/
過去スレ
【SS】もしアムロがジオンに亡命してたら part2
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/x3/1231018976/
何!?脱走したアムロがジオンに亡命しただと!?
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/x3/1228835968/
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スレ建て乙です
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管理人さん
乙です〜
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管理人さん乙
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乙
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乙です。
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ただいま戻りました。スレたて乙です!
それでは、投下しますー
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「全員、手はきれいに洗って来たね?それじゃあ晩ご飯にしよう!」
清潔な白いケットをエプロン代わりに腰に巻き、タオルをふんわり頭に被り後ろで縛った「姉さんかぶり」の出で立ちのミハルは、両手を腰に胸を張り、テーブルに着席した一同に笑顔でそう宣言した。
ミハルの横で彼女と同じスタイルをして立つハマーンも、何やら緊張した顔で頷いている。
このミハル・ラトキエという17歳の少女には、こういう家庭的で少々レトロなスタイルが実に良く似合うのだなとシャア・アズナブルはぼんやり考えていた。
どちらかというと痩身気味の彼女だが、むくつけき男達を前に物怖じせず、堂に入ったその態度は貫禄十分である。
恐らく調理場を仕切った時からここはミハルのフィールドとなったのだ。すべからくここにいる男達は、母親を前にした幼い子供の様に、彼女に逆らう事は許されない何かを感じてしまっている。
もちろんそれはこの場限りのものではあるだろうが、部隊指揮官の目から見ても「見事な人心掌握術」と言えない事もなかった。
士官学校時代から何かと女性に不自由しなかったシャアではあるが、こういった雰囲気を醸し出す女性は今まで彼の周りにはおらず、彼女の一挙手一投足が実に新鮮に映り、目が離せない。
サムソンの車内ではあえて彼女と離れた場所に座り一言も彼女とは会話しなかったシャアだが、やはり無意識に視線は彼女に向いていた。
その眼差しを隠すのに、彼の仮面はこの上なく役に立っていたのである。
普段は会議用に使用される楕円形のテーブルに着席している一同の前にミハルとハマーンの手によって置かれたのは、3つの大ぶりな平皿にそれぞれ積み上げられたサンドイッチの山だった。
この人数にこの量はさすがに多すぎるのではないだろうかと、まず誰もがそう思った。
やや厚めに切られたパンの中には、得体の知れない桃色の物体がたっぷりとはさみ込まれている。
3皿のサンドイッチ全てがそれなので、えり好みは不可能だ。
薄気味悪そうにこのパンには一体何が挟んであるんだと目で問うクランプに、判りませんやと小さく肩を竦めるコズン。
ちゃんと今夜の糧を神様に感謝するんだよと言いながら一同を見回し終えると、ミハルとハマーンの二人は忙しそうにそのまま部屋を出て、再びキッチンへと消えてしまった。
後には、目の前のサンドイッチを凝視する一同の醸し出す何とも言えない空気が残された。が―――
「お、お待ち下さいシャア大佐!」
慌てた様なアンディの声で、シャアは手袋を脱いでサンドイッチに伸ばし掛けていた手を止めざるを得なかった。
「何だ」
「あ、いえ、大佐は大事なお体なのです!オデッサも控える今、得体の知れないモノを食して体調でも崩されたら一大事!!」
少しばかり不満そうなシャアに小声で答えたアンディの言い分に、ピンク色のサンドイッチを見ながら確かにそうだとその場の全員が頷く。
こういう場合、リトマス試験紙、悪く言えば毒見役的な役割を担うのは、やはり一番立場の弱い者になるのは世の常であろう。
うず高く積み上げられた正体不明なサンドイッチを前に、場の空気を読んだ一人が、実に消極的な挙手をした。
「・・・まずは自分が」
「判ってるじゃねえかバーニィ!お前も使えるオトコになったモンだぜ!!」
悲壮な決意をその顔色に滲ませながら名乗り出たバーニィの背中をコズンが嬉しそうにバンバンと叩いている。
「あはははh・・・それ程でもありませんよ・・・」
その衝撃に指で摘んだサンドイッチを取り落としそうになりながらも周囲が固唾を呑んで見つめる中、バーニィは思い切ってソレをぱくりと口に入れ、数回咀嚼し・・・飲み込んだ。
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「ど、どうだ!?」
まん丸に見開かれたバーニィの瞳を見たコズンが今更な心配声をかける。
が、上気した顔で、バーニィは勢い良く頷いた。
手には既に二つ目のサンドイッチが摘まれている。
「コレ美味いです!もの凄く美味い!!」
「何だとお!?お前、俺達を地獄の道連れにしようってんじゃないだろうなっ!?」
「そう思われるのでしたら、コズン中尉の分は自分が頂きますが宜しいですか?」
「!」
瞬く間にバーニィが手にした二つ目を食べ終えたその途端、再び伸ばした彼の手を跳ね除けたコズンを含め、サンドイッチの山に一同はわらわらと一斉に手を伸ばした。
正味の話、もういい加減に全員腹が減っていたのだ。
見てくれは悪いサンドイッチだが、食えるとなれば話は別だ。
しかしその味は、遙かに皆の想像を越えていたのである。
「うお美味ぇ!なんだコリャ!?」
「確かに良い味だ、いやこれは金が取れるぞ。酒にも合いそうだ」
光の早さで一切れを食べ終えたコズンはすかさず2つ目を手にし、クランプはしきりと関心した様に食べかけのサンドイッチを見つめている。
こう見えてクランプは料理もやる。開戦前までサイド3でバーテンをしていた事もあり、彼の舌は確かである。
「このパンの中身は・・・ポテトサラダだな。
それに生のタラコをレッドチリソースに漬け込んでほぐした物を混ぜてあるらしい。
だから全体がこの様な色になっているんだ。
なるほど、辛さのアクセントがジャガイモのコクを引き出していて実に旨い。ビネガーの効き具合も、絶妙だ」
まじめな顔でサンドイッチの分析をしているクランプの横でシャアは満足そうに口を動かし、2つ目を喉に詰めたコズンが慌ててミネラルウオーターで流し込んでいる。
確かにこれがビールだったら最高だろう。
「タラコって何です?」
「魚の卵ですよ准尉。コロニーでは高級品ですが地球では割と安価で手に入る食材です」
こちらでは夢中でサンドイッチを頬張るアムロの問いに、彼の右隣に座ったニムバスが丁寧に答えている。
サイド7に移り住むまでは地球で育ったというアムロでも良く覚えていない様な事を、すらすらと話せるニムバスの知識は結構凄いなと考えていたバーニィは、再び部屋に入って来たハマーンの姿を目に留めた。
「あ、アムロ、あのその、こ、これも食べてmてくr」
後半のセリフを噛みながらも思い切って差し出されたモノにアムロは驚きつつ絶句した。
ハマーンの名誉のためにもここは敢えて、そのモノの描写を避ける。
「こ、これは・・・」
「ハマーンはあんたの為に生まれて初めて料理をして、一生懸命これを作ったんだよ。気持ちを酌んでおやりよ」
恥ずかしそうに顔を伏せるハマーンの後からやって来たミハルが、苦笑いしながらアムロにそう進言した。
彼女の手には熱々のシチューが入った大きな煮込み鍋の乗ったキャスターが押されている。
「ほう・・・!」
香ばしく食欲をそそる香りに皆が思わず唸った。
その魚介類がふんだんに入ったブイヤベースの深皿が各人の前に一つずつ行きわたってゆくのを見たシャアとアンディは、通信室で微かに香っていたのはこれだったのだと得心したのである。
「おおお!これまたべらぼうに美味いぜ!」
「これは凄い。よくこの短時間でこんなに深みのある味を出せたものだ」
「食材の中にぶどう酒があったからね、それも使ってみたんだよ」
またも一同から巻き起こった賞賛の嵐に面映ゆそうにミハルが答えているその横で、問題のブツを前にして固まってしまったアムロは、だらだらと汗を流し、密かに助けを乞う視線をちらりと隣のバーニィに送ったが
「准尉!ハマーン嬢の気持ちに答えるためにも、これは、覚悟を決めるしかありませんよ?」
自分は美味そうにブイヤベースをかき込みつつ、バーニィはニヤニヤしながらアムロの恨めしそうな視線を断ち切ってしまったのである。
驚いたアムロは一縷の望みを込めて反対隣に座るニムバスに視線を向けた。しかし・・・
「騎士たるものの心得として、女性に恥をかかせる事など言語道断。
・・・骨は拾って差し上げます」
ぴしゃりとニムバスにもそう言われてしまった。
ここに、アムロの退路は完全に断たれたのである。
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「ミ、ミハルは心を込めて料理を作れば失敗はないと言ったぞ?」
「あり、がとう、ハマーン、失敗なん、てあるは、ずないさ」
自らが作ったモノを必死にアピールするハマーンにスタッカートで答えながら、アムロは震える手で、パッと見●●●にしか見えない件のブツをつまみ上げ、ぱくりと口に入れた。
「・・・・・・・・・・・・こっっっ」
瞬間、口の中の水分を全部持っていかれてしまったアムロは、パッサパサ言いながらラインダンスを踊るウサギ達の幻影を垣間見た。
何かを求めるように中空をヒラつくアムロの手にしっかりとミネラルウォーターのボトルを握らせてやるニムバス。
ものすごい勢いでブツを飲み下しているアムロの背中を気の毒そうにさするバーニィ。
何だかんだでこの三人、チームワーク抜群である。
ぜえぜえ言いながら顔を上げたアムロの目に、ぎゅっと両手を握り込み自分を凝視しているハマーンの顔が映った。彼女は、アムロの言葉をじっと待っている。
「・・・准尉」
小声でニムバスに促されたアムロは息を整え、少々引きつった顔でハマーンに笑顔を向けた。
「ありがとうハマーン。とても美味しかった」
その瞬間、自信なさげだったハマーンの顔が、ぱあっと喜びに輝いた。
「ミハル!ミハル!やった!アムロがおいしいって!!」
「良かったねハマーン。だから言っただろう?心配ないってさ」
「うん!うん!」
ぴょんぴょん跳び跳ねながら喜んでいるハマーンにバレない様にミハルはアムロに感謝の視線を送って来、アムロはこっそりと溜息を吐き出した。
「ご立派です」
再びアムロに顔を近付けて小声で囁いたニムバスは何だかやけに嬉しげであった。バーニィも安堵したように胸をなで下ろしている。
が、漏れ聞こえてきたハマーンの次の言葉に、三人はびくりと身を竦めたのである。
「そうだ!今後はずっと、アムロの食事は私が作ろう!」
まるで超音波の様にか細く甲高いアムロの悲鳴を、顔を近付けていたニムバスだけが聞く事ができた。
「だめだよハマーン。過ぎたエコヒイキはグループの和を乱す原因になるのさ。
ハマーンだって、もし自分だけが毎回食べる食事にデザートが付いていたりしたら、気まずいだろ?
アムロにそんな思いをさせたいのかい?」
「・・・そうか、そうだな。うん。それはだめだ」
ミハル、ナイスフォロー!
納得して頷くハマーンの肩越しに微笑むミハルに今度はアムロ、ニムバス、バーニィが感謝の視線を送る番だった。
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あれほど量が多すぎると思われていたミハルのサンドイッチはいつの間にか全て一同の腹に収まってしまい、ブイヤベースが入っていた大鍋は空になった。
ミハルの出してくれた食後のコーヒーを飲みながら、一同は満ちたりた様子で女性陣を交えて談笑している。
自分は会話に加わらず部屋の奥からその光景を眺めていたシャアは、一同のミハルを見る視線と態度がこれまでとは大きく変わっているのを実感していた。
戦場において、有り合わせの食材でうまいメシを作れる人員は、それだけで皆から大事に扱われるものなのである。
それは今も昔も変わらない現象だが、ミハルは実力で自らの居場所を勝ち取ったのだった。
今後のミハルの処遇に少なからず頭を悩ませていたシャアは、肩の荷が少しだけ降りた事を密かに喜んでいた。
「大佐、それではそろそろ」
「うん」
アンディに促されたシャアは、全員に着席する様に命じた。
これからすべき議題と確認事項は山ほどある。長い会議になりそうだ。
しかし、皆、気力が漲っている。まるでこれまでの疲れがどこかに吹き飛んでしまったかの様だ。
これもミハルのお陰かなと考えながら、シャアは作戦会議の開始を宣言した。
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おっと、トリ付け忘れてますね・・・!
>>8->>11は間違いなく私の投稿です or2
オデッサになかなか辿り着かなくて申し訳ないです
今回の投下は、ここまでです。
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>>1乙!!
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乙だぜ
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乙!
ニムバスいい味出してるね
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乙なんだぜ!
しかしシャアめ…
「母を感じさせる雰囲気と装い」
「今まで周りに居なかったタイプ」
どうみても陥落寸前だなw
そしてハマーン様可愛い!
アムロは男を見せたなw
まあ、ミハルの手伝いしてたら料理スキルも上がるさ。多分。
料理は心や!
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乙!!
登場キャラ全員が良い人過ぎて読んでて幸せになれる
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wwwww
いやいや、1乙
おもろかった、笑ってしまいました
ホルバインの死に様みたいな泣かせる場面もいいがこういうのも好きだ
オデッサ、期待してます
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ニムバス骨拾うってww
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仮面を利用して視姦するなシャアw
アムロをフォローするニムバスとバーニィがステキすぎる!
しかし食い物が美味そうで仕方ないっw
ハマーン様のも、アレだが、頑張って欲しいな
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>>1乙乙
たまにこういう日常の風景も描いてくれた方が個人的には嬉しいね。
特にアムロとハマーンのやり取りは、ベタだけどニヤニヤが止まらんかったw
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乙〜
ワロタわ
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前スレでハマーンの脳内声優決めやってる
埋めにもなるし参加してくれ
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乙!
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脳内にミハルの尻にひかれている駄目旦那シャアが
浮かんだw
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なぜかニムバスがオレンジに見えてきた
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乙です!
まさかのミハルルートとはw
これは良い展開だ
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なかなか投下がこないねえ
連休中もおあずけかな?
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まぁ、作者が普通のリーマンなひとだったりしたら、期末年度末で忙しい最中かもしれんし
かく言うオレも今週は死にそうだった・・・
気長に待つし、待つ価値のある作品だ
焦れる心はギレン暗殺計画でも読んで鎮めようっとw来週最終巻発売だったけかな?
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遅いですねぇ・・・
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携帯か…
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ただいま戻りました
リアルが忙しく、なかなか思う様に執筆できませんが
創作意欲は衰えておりませんので、まったりとお付き合い頂ければ幸いです
前スレのご意見も真摯に拝聴させて戴いておりますー
それでは、投下します!
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クレタ島の東に位置する【ロドス】はエーゲ海南部ドデカネス諸島に属する島である。
ベドウィン作戦発動中、ランバ・ラルはオデッサにおいてシャアと合流する計画を立て、事情を知るシーマ・ガラハウ中佐を通じサイド3に密使を送り、父ジンバ・ラルの同士であったアンリ・シュレッサー准将にこれまでの経緯を説明すると共に協力を仰ぎ、その際補給をも要請していた。
そして『速やかに全ての準備を整える』というシュレッサーの力強い返答を携えて、アンディはシャアの元に赴いたのである。
この補給ラインが確保されていたからこそ、シャアはマ・クベと思うさまに渡り合う事ができた。
補給受領の地点は、地理的にもクレタ島に近くジオン軍の大規模集積基地のある、このロドス島が最適だった。
ロドス島港湾内にあるジオン軍物資集積基地に、クレタ島ザクロスから飛来した輸送機が到着したのは正午近くの事だった。
輸送機に乗り込んでいたシャア達一行は現在、滑走路の中央に位置したポートから兵員輸送用の大型エレカに乗り換え、大型格納庫を兼ねた基地施設のメインビルに向かって移動している。
「おっと姐御・・・どうやら奴っこさん達が到着したようだぜ。ちっとばかり、予定より早い到着だったな」
メインビル最上階にある士官専用スイートルームの窓に、立ったまま背中を預け、肩越しに外へ目をやっていたジョニー・ライデンはそう言って苦笑する。
低い位置からライデンの顔を妖艶な眼差しで見上げていたシーマ・ガラハウは、名残惜しそうに彼から身を離すとスカーフで唇の端を拭い、床に着いていた両膝を払って立ち上がった。
「久々に二人きりになれたってのに全く・・・気の利かない連中だねぇ。おや」
ライデンと同じ様に窓から地上を見下ろしたシーマは、施設前に止まったエレカを降り立ち、こちらを見上げた赤毛の少年兵と目が合った。
いや、常識的に考えれば「目が合った気がした」というのが正しいのかも知れない。
地中海の強い日差しを避ける為マジックミラーとなっている地上4階にあるこの窓の中が、外から見える筈が無いからである。
が、シーマはその少年の相変わらずのカンの良さを常識に当て嵌め「見くびって」やるつもりは微塵も無かった。
「あのボウヤも一緒じゃないか。ふふふ、相変わらず食えない子だねぇ。アタシらがここにいる事、見抜かれたよ」
「楽しそうだな、姐御」
「何言ってんだいジョニー。アンタの方がよっぽど楽しそうな顔してるくせにさ」
呆れ顔でそう言いながら頬を小突くシーマにライデンは違いないと陽気に笑う。
「楽しくない訳が無いだろう。見ろ、今出て来たのが赤い彗星だ」
ライデンの鋭い眼光は、一行の最後にエレカから地上に降り立った仮面の男をまるで値踏みする様に捉えていた。
「さあて・・・噂のシャア・アズナブルが俺達のボスにふさわしい野郎かどうか、じっくり見極めさせて貰うぜ」
「あんまり突っかかるんじゃないよ?御輿ってのは見栄えと権威さえあれば良いんだ。後は担ぎ手次第でどうにでもなるもんなんだからね」
「姐御に逆らう訳じゃないが、そいつは聞けない相談だな」
そう言いながら、きらきらした少年の眼でライデンはシーマを見つめて来る。
ああまたこの男の悪い癖が出てしまったと頭を抱えたくなるシーマだったが、その邪気のない瞳に彼女は、弱い。
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「せっかく同じ【赤】の通り名を持つ者同士が出会えたんだ。どちらがその色にふさわしいか、勝負だ」
「ジョニー・・・」
「おごっ!」
いきなりシーマは、ライデンの腹部(※下腹部ではない)に鉄拳を打ち込んだのである。
・・・しかしシーマの拳は瞬時に鋼と化したライデンの腹筋に阻まれ、めり込ませる事ができていない。
逆にシーマの手首の方が痛かった程だ。が、彼女は構わず彼の腹にグリグリと拳を押し付けている。
「くだらない対抗心を起こすんじゃないよ?いいかい、アタシらにはもう乗り換える船は無いんだ!」
「いてててて姐御、冗談だ冗談!」
「アンタが言うと、冗談に聞こえないんだよ!いいかい、くれぐれも・・・」
眉間に深い縦皺を刻み込み、噛み付きそうな勢いで顔を寄せたシーマにライデンは何と素早くキスをしてから逃げる様に身を離したのである。その軽薄な行動が、シーマの頭に瞬時に血を上らせる。
「このっ!!誤魔化すんじゃないっ!!」
その言葉とは裏腹に若干顔を赤らめながらも、ライデンの顔面とボディに向けて次々と本気のパンチと蹴りを繰り出すシーマ。
当たり所が悪ければ脳震盪では済まない海兵隊仕込みの実戦的なマーシャルアーツである。
しかし彼女のそんな洒落にならない攻撃を、姐御は受けに回ると滅法弱いんだよなあと笑いながら、軽いフットワークでライデンは見事に全て躱し切って見せた。
やがて呆れつつ楽しげに笑いだしたシーマに釣られてライデンも笑う。打ちも打ったり、避けも避けたり、体術の教本にしたい程レベルの高い格闘術の応酬の末、ウヤムヤのうちに今回の痴話喧嘩モドキは終了となった。
過激すぎる2人の蜜月的な関係は、この数分間のやり取りに集約されていた。
常人には到底理解し得ない、これが何人も立ち入る事のできない彼等だけのスタイルなのであった。
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シーマの部下に先導されるまま、格納庫内に足を踏み入れたシャア達一行は、簡易MSハンガーに所狭しと屹立している『サイド3からの補給物資』であるという6機のMS-06を見て、それぞれに微妙な表情を浮かべていた。
ビームライフルを標準装備し、量産機として正式採用されたばかりだというMS-14【ゲルググ】は高望み過ぎるにしても、少なくとも【グフ】や【ドム】ぐらいは欲しかった所だ。
連邦軍の高性能MS配備が着実に進んでいる今、既に旧式となってしまった感のあるMS-06【ザク】で激戦が予想されるオデッサに挑むのは、心もとない・・・と、いうのが一同の正直な感想だった。
もちろん贅沢など言えるものではないが、ザクの標準兵装である120㎜マシンガンでは連邦MSの装甲を抜けない、のは実証済みなのである。
ザクで編成した部隊では敵のMSを含む主力と対した場合、恐らく苦戦は免れないだろう。
「お?おお!?良く見りゃこいつはすげえぞ・・・!」
しかしMSの一体を間近で見た途端、一行の先頭を歩いていたコズンが口笛を吹いた。
「シャア大佐!コイツは只のザクじゃありませんぜ!噂に聞いていた新型でさあ!」
「ふむ、どうやらその様だな」
シャアもコズンと共にMSを見上げて確信した。艶消しのボディに鈍く採光を照り返すザクは通常のMS-06よりも頭部が扁平形であり胸板が厚い。
随分と足周りも頑丈になっている様に見える。装甲の内側にちらりと覗く大型のバーニアは、もしかしたら宇宙での使用に限定されたものでは無いのかも知れない。
ずらりと壁面のラックに並んでいるMS専用マシンガンも通常のものとは明らかに形が違う。
「そのザクは統合整備計画の産物さね」
「シーマ中佐!ライデン曹長!」
一行の背後から掛けられた声にいち早く振り向いたアムロが、ライデンを従えてこちらに歩き来るシーマに敬礼する。
彼等と共に酒を酌み交わした仲であるクランプとコズンは親しげに、バーニィは少々緊張気味に、そしてこれが初対面となるニムバスは儀礼的な敬礼をそれぞれ振り向けている。
答礼を返すシーマの顔に疲れは見えたが、その血色は以前よりも随分良くなっている事にアムロは気付き、それが何より嬉しかった。
ミハルとハマーンを除いた全ての人員が互いに敬礼を交わしたのを確認すると、シャアは改めてシーマに向けて口を開いた。
「シーマ・ガラハウ中佐。バイコヌールからの輸送任務ご苦労だった。これが例のMSだな」
「は。サイド3から非正規のルートで届いた新型のMS-06FZ【ザク改】であります。
本来はズム・シティの首都防衛大隊に配備が予定されていたシロモノらしいのですが、大隊指令アンリ・シュレッサー准将の計らいで急遽こちらに・・・!?」
その時突然、シーマの後ろに控えていたライデンがズカズカと前に出て来てシャアと会話中である彼女の横に並んだのである。
シャアに対して敬語で接していたシーマはライデンの無作法にぎょっと息を呑んだが、ライデンは涼しい顔で馴れ馴れしく初対面のシャアに話し掛けた。
「軽く慣らし操縦してみたが、かなりいい。見てくれはザクだが、こいつはグフやドムにも引けは取らないぜ。
マ・クベの野朗はいけ好かないが、統合整備計画の手腕だけは認めてやっても良いかな」
ブン殴ってでもこのバカの軽口を閉じさせてやるべきだろうかと物凄い目つきで横から睨み付けて来るシーマを尻目に、さあどう出ると挑戦的な目をシャアに向けるライデン。
しかしシャアはライデンの予想に反し、にこりと口元を綻ばせたのである。
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「なるほど。それが【真紅の稲妻】の見立てなら、間違いは無いだろう」
「おっと・・・俺の事を知っているのか?」
「【真紅の稲妻】ジョニー・ライデン。開戦時は曹長だったがルウムにおいて戦艦3隻を撃沈し大尉に昇進。その後直属の上司を病院送りにした懲罰人事により再び曹長に降格され海兵隊に転属、現在に至る・・・だったかな?」
「あらら」
おどけて首を竦めるライデン。挑発したつもりが見事にカウンターパンチを食らった格好だ。
シーマもライデンに対する怒りを忘れ、目を丸くしてシャアを見ている。
「シーマ中佐、ライデン曹長、こちらの事情は知っての通りだ。
細かい事はいい。今後とも宜しく頼む」
「・・・あーあ。青い巨星といい赤い彗星といい、どいつもこいつも一筋縄ではいかねえってか・・・参ったねこりゃ。大人しく軍門に下っちまうか姐御・・・痛てぇっ!!」
シャアが差し出した右手を渋々握ったライデンの脛を、コメカミに青筋を立てたシーマが何食わぬ顔で横から蹴飛ばしたのである。
「馬鹿部下の無礼をお許し下さい。バイコヌールを空にする訳にも行かず残念ながら全員がここに控えてはおりませんが・・・マハル出身の我ら海兵隊一同、一丸となって大佐の尖兵となる事、シーマ・ガラハウの名においてお約束致します」
片足で飛び跳ねているライデンを完全無視してシーマはシャアに深く頭を下げた。
マハルはサイド3にありながら貧困層を集住させたコロニーであり、ザビ家による徴兵後の扱いも劣悪であった。
シャアと同等かそれ以上に自分達のザビ家に対する恨みは骨髄なのだと、シーマは暗に言っているのである。
「感謝する。精鋭で鳴らす海兵隊の噂は聞いている。これほど心強い事は無い」
「は。荒事の露払いは我らにお任せ下さい」
きっちりと敬礼しているシーマの横で、向こう脛を押さえ片足立ちのライデンも観念してシャアに向け奇妙な敬礼を向け、それを見たハマーンとミハルは同時に吹き出した。
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「それにしても、バイコヌールの指令代理が、よくもこの地まで駆け付けてくれたものだ」
「それなのですが、いち早く大佐のお耳に入れておきたい事があり、不肖シーマ、この地にまかり来しました」
「む、何か」
シーマの緊迫した雰囲気を感じ取り、シャアも姿勢を正す。
「実は・・・アサクラ大佐の動向が妙なのです」
アサクラ大佐とは名目上は海兵隊の長であり、シーマの直属の上司にあたる人物である。
しかし実態は名ばかりの司令官であり、実務と責任をシーマに押し付ける形で自身を遙任している。
「現在ジオン本国では、まるでオデッサでの会戦準備に隠れる様に・・・アサクラ大佐指揮の元、地球の静止軌道やサイド5などから大型発電衛星の奪取作戦が次々と執り行われている模様です」
「発電衛星?どういう事か」
「詳しい事は残念ながら・・・ただ時を同じくして我が故郷であるマハルコロニー住民の強制疎開が行われた事と、何か関係があるのかも知れません」
「フム・・・」
顎に手をやって考え込んだシャアの背中を見ながら、アムロはシーマの言葉に漠然とした不安を覚えた。
一瞬、膨大な光と共に何もかもを焼き尽くさんとする凶悪な意思がイメージされたのは、偶然ではないと思えるのだ。
「ど、どうしたんだいハマーン?」
背後から小さく聞こえたミハルの声に振り返ると、真っ青な顔をしたハマーンがミハルにもたれ掛かる所だった。
恐らく、ハマーンも何らかの不安を感じ取ったのであろう。
しかし自分達ですら良く判らないこの感覚を、他人に上手く説明する事はできそうもない。
何より、確証のない情報で、無闇に周囲の人間を不安がらせる訳にはいかないだろう。
爪を噛みしめたくなる欲求を無理矢理押さえつけたアムロは、今の自分の顔色も、きっとハマーンと同じ様に青ざめているに違いない事を確信していた。
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今回の投下は、ここまでですー
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乙でした〜
不意打ちうれしす
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乙です
しかしジオン側も一筋縄ではいかない模様ですなぁ
ザク改の実力が早く見てみたいぜ
-
乙
前スレは真摯に答えないといけませんねw
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乙!
早くもザクFZ。
アムロの発言が統合整備計画を早めたワケか。
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乙!
まさか『ロードス島攻防記』のロードス島とは。
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乙
ザク改がここできましたか
このライデンとシーマはホントいいキャラですな
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おお、きてたか!乙
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乙です!
役者が揃ってきましたねw
FZの補給といい、オデッサが楽しみだ。
それにしても、それぞれのキャラがオリジナルを損なわずに良い味付けされてるな。
>>1のセンスに脱帽w
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乙、ザク改の活躍に期待
-
ザク改の性能ってどんなもんなの?
ザク改≧ジムスナイパー
このくらい?
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>>48
テストパイロットが操るピーキーな新型ガンダムを腕と戦術によっては撃破可能な程度の性能。
もしくは、集団戦で量産型ガンキャノン部隊を撃破可能な程度の性能。
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カタログスペックはゲルググ
実際の性能はリックドム
って聞いた
-
リックドムは言い過ぎじゃないかね
-
じゃあ、イフリートあたりで
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シーマ様w膝立ちでナニしてるんだかw
-
ザク改か・・・
バーニィ死ぬなよ!!
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アンリ・シュレッサーktkr!
ダイクン派が旗印を見つけて本格的に動き始めてるわけだから当然といえば当然か
しかし、ライデンとシーマがコンビででてくるとどーしてもR18になるなw
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来てたのか、乙
ザク改かー・・・これはやはりバーニィが乗るしかないな
発電施設は・・・あれか。シーマ・・・
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あれってシーマ逹のコロニーだったんだ・・・
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>>57
シーマの出身コロニーってサイド2じゃなかったっけ?
故郷の住人をG3ガス皆殺し、その上地球に落としたことで自分を責めてたような・・・
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あれ、なんか思い出してきた
ってか変に記憶がごっちゃになってるぞ
シーマの出身コロニーがコロニーレーザーに使われたんだっけ
サイド3で間違いないんだよね
地球に落としたのはサイド2でG3ガスで住人皆殺しにした実行犯がシーマだったんだっけ?
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これはパラレルワールドという事で
そっとしておこう
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>>59が正解
シーマの故郷で、コロニーレーザーに改造されるのがサイド3のマハル
コロニー落としで使用されたのがサイド2のコロニー
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シーマ艦隊はアサクラ以外は全員マハル出身者らしいね
それで帰る故郷もなくなっちゃったって
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そのシーマ様の心を救ったのがライデンな訳だな。男前過ぎる。
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ただいま戻りました。
>>61
私の認識もそうでした。ただ、もしかしたらガンダムの世界には諸説あったりするのかも知れません。
一応このSSではそういう背景ですので、皆様宜しくお見知りおきを・・・
投下しますー
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「いようアムロ!いろいろ大変だったそうだが、こうしてまた合えて何よりだったな!」
「は、はい。ライデン曹長もお元気そうで」
「おう元気だぜえ!死線をくぐり抜けて仲間達と再会できたんだ、これ以上嬉しい事はねえだろう!」
深い不安の闇に押し潰されそうになっていたアムロは、片手を挙げて笑いながら陽気な声を掛けてくれたライデンに救われた気がした。
シーマを筆頭に深刻な顔をしていた一同も、ライデンの言葉に我に返った様に見える。
「ん、どうした、お嬢さん達も顔色が悪いが何か心配事でもあるのか?」
アムロのそばに歩み寄りながらミハルとハマーンの顔も見て、暢気な顔でそう聞いて来るライデン。
しかし逆に、アムロはこの局面で出た彼の言葉の方が意外だった。心配事は、山盛りにあるはずだ。
「ライデン曹長はその・・・心配じゃないんですか?」
「心配って、何がだ」
「え、その、さっきのシーマ中佐のお話の事とか、これから僕達が向かうオデッサの事とか・・・」
数え上げたらそれこそ不安要素はキリが無い。
しかしそんなアムロを見てライデンはからからと笑い出したのである。
「やめとけやめとけ!心配なんざするだけ無駄だ!」
「む、無駄って事は無いでしょう・・・」
自分は果たしてライデンにからかわれているのだろうかと、少しばかりムッとしかけたアムロだったが、突然横にいたニムバスから爆発的な殺気が立ち上ったのを感じ、うなじの毛が逆立った。
「貴様・・・それ以上准尉を愚弄すると、この私が許さんぞ!!」
アムロはもとよりバーニィやコズンら先の騒動を目の当たりにしている周囲の人間は、ニムバスの怒りに思わず慄いた。
そう言えばバーニィを一喝した件を鑑みるに、ニムバスは規律に厳しい男だった。
ライデンの様に奔放な人間を厳格なニムバスという人間が、決して受け入れる筈が無かったのである。
こちらの焦燥を知ってか知らずか、一瞬の後ライデンは、わざとらしくニムバスに向けて妙にゆっくりと首を廻らせた。
「・・・俺は別にアムロを愚弄なんざしてねえがな」
「ま、待って下さいニムバス大尉!この方は、ジョニー・ライデン曹長・・・」
新たな目的の為に仲間がまとまり掛けている今、内部での揉め事は非常にまずいとアムロは焦った。
しかし、アムロとライデン2人が、まるで口裏を合わせるかの如く反論して来るさまは、ニムバスの苛立ちに更に拍車を掛ける結果となった。
「アムロ准尉は貴様の上官だぞライデン!相変わらず・・・その言葉遣いは何だ!?」
「久し振りだってのにご挨拶だなニムバス。俺は相手が誰だろうがこの口調を変えるつもりはねえぜ?
今はお前の方が階級が遥かに上なんだ、懲罰したいってんなら好きにしなよ」
「え・・・ニムバス大尉は、ライデン曹長とお知り合いだったんですか!?」
アムロは意外な成り行きに目を見開いて対峙する2人を交互に仰ぎ見る。
しかしニムバスはアムロの問いには答えず、更にライデンへの眼光を強めた。
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「気に食わん奴だと思っていたが、いい機会だ・・・貴様の腐った性根はこの場で修正してやる!」
「おっと懲罰房行きとかじゃねえのかよ!」
素早く一歩前に踏み込んだニムバスの歩幅と全く同じ距離をライデンは跳び下がった。
「悪いがデカイ戦が控える今はコンディションを崩せねえ。タダで殴られてやる訳にはいかねえな」
「面白い。ならば実力で私と准尉の前にひざまずかせてやるとしよう」
「御免こうむるぜ。俺は色んな意味でひざまずかせる専門だ」
「・・・バカだねっ!」
「えっ?」
「な、何でもないよ!アンタら!シャア大佐の前で、勝手なマネは許さないよ!」
赤い顔でクランプの疑問を遮ったシーマは今にも殴り合いを始めそうな二人を叱責する、が、意外にも彼女を制したのはシャアであった。
「二人共、私に気兼ねせずに続けたまえ」
「大佐!?」
「我々は寄せ集めの軍団、軋轢は当然だ。
火の点いた爆弾をフトコロに隠し持っていると、それはいずれ最悪なタイミングで炸裂してしまうものだ。
爆弾などというものは、大っぴらな場所で処理してしまうに限る。リクリェーションとしてな」
へぇ、判っているじゃないかと内心瞠目しながらシーマはシャアの横顔を見直した。
流石は赤い彗星。若さに似合わずこの男、動じないのである。
喜んだのはライデンであった。
「話が判るぜ大佐ァ!正式に私闘許可が出たがどうするニムバス大尉!?」
しかしニムバスから一瞬目を切ったライデンには油断があった。ニムバスは既に臨戦態勢だったのである。
「余所見をするな!」
ステップを変化させ、トップスピードで間を詰めながらニムバスの放ってきたパンチは牽制であった。
咄嗟にガードを固めたライデンは、迂闊にもニムバスの密着を許してしまう。
ニムバスは両手でそのままライデンの頭を抱え込むと、タイミングをズラした膝蹴りを抉り込む様にライデンの脇腹に見舞う。
これがまともに決まれば恐らくアバラの4・5本は砕け散っていたに違いない。
しかしライデンは辛うじて自らの膝をカウンター気味にニムバスの内腿に合わせ膝蹴りの威力を相殺させると、両腕の拘束を振り払い、軽快なフットワークでニムバスの射程圏内から逃れた。
睨み合って対峙する2人。
軽いボクシングスタイルのステップワークで間合いを取るライデンに対し、ニムバスはアップライトに構え、足で威嚇するムエタイ風である。
「あんたにあの後何があったか知らねえが、雰囲気が変わったなニムバス。
明らかに付け入る隙が・・・減っていやがるぜ」
ベッと口中の血を吐き出したライデンにシーマはどきりとした。
離れ際に何らかの一撃を受けたものであろうが、ケンカ慣れしたシーマにもニムバスの放ったその攻撃は見えていなかった。
-
「グラナダ攻略部隊、降下強襲群・・・あの激戦地で俺達は出会い、あんたが第一中隊、俺が第二中隊と、互いに部隊を率いて戦った。
階級はあんたが少佐、俺は特務付きの大尉で・・・戦場では同格だったな」
言いながら今度はライデンが前に出た。
迎撃に動いたニムバスの蹴り足をフェイントでいなすと強烈な左フックをボディに見舞う。が、ニムバスは肘を下げこれをブロックした後、がら空きになったライデンの顎にそのままエルボーを叩き衝ける。
しかしその時には既にライデンの身体はスウェーを絡めて後退していた為、ニムバスの肘は空を切った。だがその軌跡は、ライデンの前髪を数本斬り飛ばす程の鋭さだった。
「ライデン!!何から何まで癇に障る奴だったよ貴様は!」
「お互い様だニムバス!何かってーとキリシア様キシリア様ってな!テメーは壊れたレコーダーかっての!」
「言うな!昔の話だ!!」
僅かに動揺したニムバスの動きを見逃さず再度踏み込んだライデンは、左右のジャブを放ちながら唐突に足払いを仕掛けると、態勢を崩したニムバスに組み付き、ごろりと転がりざまに肩の関節を決めに入った。
ボクシングスタイルから密着した関節技への極めてスムーズな移行はライデンの格闘技術の高さを物語り、その変幻自在な攻撃は、固唾を呑んで見守る周囲のギャラリー達をどよめかせた。
「甘いな!」「おっと!」
しかし分の悪そうに見えたニムバスは逆関節に逆らわず一瞬にして態勢を入れ替えると、ライデンの拘束を抜け出し、腰を落として後ずさった。
ライデンの関節技のレベルの高さを肌で感じ、グランドでの攻防を嫌ったのである。
しばらく様子を見ていたライデンだったが、追撃は無しと判断するとゆっくり立ち上がり、再びボクシングの構えを取った。
「ゲイツ大佐・・・・・・結局あんたがトドメ刺したんだってなニムバス」
「フッ、貴様が生温かったせいで、私が後始末をするハメになっただけだ」
「ランス中佐はどうなった?ひどい怪我をされていたが」
じりじりと間合いを取りながら、探る様に言葉を交わす2人を見てアムロはハッと気が付いた。
ニムバスが規律に厳しくなったのには明らかにライデンが関係している。
そして2人は恐ろしく不器用なやり方で、二人共が降格する原因となった戦場の思い出話をしているのだ。
「ランス・ガーフィールド中佐は退役された。私がゲイツの敵前逃亡未遂を聞かされたのは、全てが終わった後だった・・・!」
眉根をぎゅっと寄せたライデンは辛そうにそうだったのかと呟いた。
威張り腐った上官が多い中で、ランスは腕が立つ上気さくで男気があり、敬愛するに足る数少ない武人だった。
「あの時ランス教官・・・いやランス中佐がおられなかったなら孤立した我々は、恐らく全滅していた事だろう」
「だがな、ニムバス、俺がぶちのめして病院送りにしたゲイツの病室に押し掛けて・・・射殺したのはやりすぎだ」
ざっとその場の全員が息を呑むのが判った。
対峙する2人の間に、ただ静かに空調の音だけが響く。
「黙れ!貴様に何が判る!私の中隊の生存者はたったの3名だったのだぞ!!
あの無能な指揮官が援軍を出すのを遅らせ、我らを死地に追いやったのだ!」
「ニムバス!」
やはりこいつの根底は何も変わっていないのかと絶望に似たライデンの眼差しを、しかしニムバスはするりと受け流す様に瞳の険を解いた。
「・・・以前の私ならば、そう言っただろう」
「!?」
「可笑しければ笑えライデン。今の私には、何故だかランス教官の気持ちが判る気がするのだ」
ランス中佐のザクは孤立したMS部隊の囮として単身敵陣に切り込み、多くの敵を粉砕しながらも集中攻撃を受けて沈んだと聞く。
部下の未来を救う為、自ら身を捨て礎となったのだ。そんな決意は生半可な覚悟で共感できるものではない。
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「確かあんたは、やたらとキシリア・ザビを崇拝していたな?だが、今のあんたからはあのイビツな熱狂が感じられない。
その分、何だか研ぎ澄まされた感じがするぜ。一体何があんたを変えたんだ?」
「ふふふ、貴様などに教えてやるものか」
笑えと言っておきながら愉快そうに自分が笑うニムバス。
彼のそんな屈託のない笑顔はライデンが初めて見るものだった。こんな顔は、あの頃のニムバスからは想像もできない。
「さあて、そろそろ決着を付けるぞライデン、ランス教官直々に鍛えられた私の技、果たして受け切れるかな?」
「あまり受けたくないってのが本音だが・・・仕方ねえだろうなあ」
シーマは身じろぎもせず、ずっと心配そうな顔でライデンを見つめ両の拳を握り締めていた。
2人の間にある空間に緊張感が凝縮してゆくのが判る。
それはまるで、ピリピリと触れれば弾ける電光の塊りの様だ。
「えーとすいませんがお2人さん、ランス・ガーフィールド中佐なら、アンリ准将の首都防衛大隊に復帰されましたよー」
・・・・・・・
「なに!?」「本当か!?」
一同に遅れてやって来たアンディが、間延びした声で後方から掛けた言葉に2人は一拍置いて劇的に反応した。
「本当です。首都防衛大隊は『慰労隊』の側面もあるんですよ。
ランス中佐は片腕を失くされるという重傷を負われたものの、このたび戦傷兵として大隊に配属され教官を務めておいでです。
ちなみに私も、MS戦術で中佐の教えを受けた一人です」
「そうだったのか・・・」
「アンリ准将の隊に・・・」
2人の間にあれほど張り詰めていた空気が、一気に霧散したかの様だった。
ニムバス、ライデン共にシンミリ俯いた目線で、それぞれの感慨に浸っている。
「二人共、気は済んだか」
頃合だと判断したシャアが声を掛けると、2人は気まずそうに構えを解いた。確かにもうバチバチやり合う雰囲気ではない。
ギャラリーもほっとした顔で互いに顔を見交わしている。物騒な場面はあったにせよ、結果的に怪我人が出なくて本当に良かったという処だ。
「丁度良い。ここで2人に辞令を言い渡しておこう」
「は!」「辞令?」
自らの降格を申し出ていたニムバスはその顔にさっと緊張感を滲ませ、ライデンは怪訝な表情を浮かべている。
-
「戦場任官なので簡潔に伝える。ニムバス・シュターゼン大尉、貴官を申請通り降格し、以後は中尉に任命する」
「は、しかし、それでは・・・」
「聞け。これによりMS小隊を組む際、アムロ准尉に隊長位と特務権限を持たせれば、中尉はアムロの下に身を置く事が出来る。十分に補佐をしてやれ」
「慎んで・・・拝命致します!」
降格されたくせに嬉しそうに敬礼しているニムバスを見てライデンは思い当たった。そうか、ニムバスの奴は多分・・・
「ジョニー・ライデン曹長」
「は、は?」
思わず素っ頓狂な声を上げてしまったライデンを見て、シーマが目をつぶったまま軽く額を押さえた。
「シーマ中佐の下での数々の戦功は聞いている。よって、ジョニー・ライデン曹長を本日只今をもって中尉に昇進させる事とする」
「へ?イキナリ二階級特進?なんで?」
「バカだね本当に!くれるっつーモンは貰っときゃいいんだよ!」
慌てた口調で会話に割り込んで来たシーマに全員の視線が集中する。
「あ、姐御、皆の前だ」
「・・・・・・・・・・・・っっ!!」
今度こそ誤魔化しきれない程に顔を赤らめたシーマは、口をぱくぱくさせた後にトマトの様な顔を横に向け、そのうちに堪え切れなくなり後ろを向いて俯き、押し黙ってしまった。小刻みに肩が震えている。
コズンはごくりと唾を飲んだ。あのシーマをここまで変えてしまうとは、ジョニー・ライデン恐るべし。
「・・・こほん。これで【真紅の稲妻】も、もう少し動きやすくなるだろう。
貴様の場合、肩書きなど無意味なのかも知れんが持っていて腐る物でもない。シーマ中佐の言う通り、ここは素直に受け取っておけ」
「了解であります」
観念した敬礼を向けるライデンに、シャアは軽く頷いた。
ライデンはニムバスにニヤリと笑って向き直る。
「これで俺達は同じ階級になったなニムバス。アムロよりも上だし、もう規律がどうとか言わせねえぞ」
「良いだろう。だが准尉を愚弄する様な真似をしたら、命が無いものと思え」
物騒な物言いは健在のようだ。
苦笑しながらもライデンは小声でニムバスに聞かねばならない事があった。
「ところでなニムバス、お前、なんで俺がシャア大佐にタメグチきいた時には怒らなかったんだ?」
「・・・決まっている。私の忠誠はアムロ准尉にのみ向けられているからだ」
済ました顔でぶっちゃけるニムバスに、ガラにも無くそれはどうなんだよと突っ込みたくなるライデンだったが・・・
やけに幸せそうなニムバスの顔を見ていたら、何だか全てがそれで良い様な気がして来て、結局口を噤んでしまったのだった。
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今回の投下は、ここまでです
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うわーいきなり一行目に間違い発見 or2
>>65
× 「いようアムロ!いろいろ大変だったそうだが、こうしてまた合えて何よりだったな!」
○ 「いようアムロ!いろいろ大変だったそうだが、こうしてまた会えて何よりだったな!」
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乙です!
ニムバスw
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ランス・ガーフィールド中佐ってどの作品に出てくる人ですか?
首都防衛大隊ってことはギレン連暗殺計画だっけ?
三国志なみに登場人物多くてわからねえw
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乙!
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乙!
いやーいいなー
今回もワクワクするような展開でした。
紙芝居MADでもいいから誰か作ってくれないかな。
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乙。
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乙だ
この二人がつながるとは思わなかったんだが・・・
何かそういう設定あったっけ?
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乙!
私的な認識ではガンプラでシャアもどきとしか認識できなかったライデンだったけど
筆者の力もあってすごい良キャラ化してますねw
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1乙
MS戦記に出てきた、あんなやつにドムは必要ない、の糞野郎のゲイツとは別人ですか?
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乙〜
おかげで幸せな日曜日です
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>>1乙乙
相変わらずニムバスで吹いてしまうw
いいキャラになったなあw
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勝手に補足
ランス中佐はギレン暗殺計画の人物
史実ではオデッサ戦で負傷、片腕を失う
ニムバスの教官っていう設定は>>1のオリジナルじゃないかな
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アムロも昇進させてやればいいのにと思ったけど、やっぱ目立ったらまずいのか?
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>>1乙
アムロは今回昇進は無理でしょ。
テロ首謀者は逃げたし、評価の対象になるような功績は挙げてない。
ゾックでの手柄はどうなるのかわからんけどね。
ランス・ガーフィールド中佐調べてみたが、グフカス受領してるんだなw
しかもパーソナルカラー持ちで中佐ってのは相当な腕前だ。
片腕操縦でドム2機に完勝ってのは凄いな。
教官って設定自体は有るから、それの応用かな?
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ゾックの戦果はホルバインのスコアってことでケリつけたんじゃね?
ブランのガンキャノンとジム部隊とかシーマ、ライデン、ラルとで討ったバックマイヤーなんかの陸ガン、ガンタンク量とかさ、あんなんみんな公にしたらすぐにキシリアのNT部隊に引っ張られちまうよ
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イチさん、今日は投下がありますか?
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携帯は待てない奴が多いな
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HGUCスタークジェガンでもパチ組みしながらゆっくり待つとするか……
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じゃあおれもGジェネモバイルでもやってゆったり待とー
かとおもってたのに>>87が悪口いって煽ってきたから>>87のせいで書き込むハメになっちゃった
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携帯って何処ででも見られるからつい気になるのですよ
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わざわざ悪口言わなくてもいいのにな
こんだけ面白かったら、誰だって待ちきれんよ
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だからといって読者が作者を急かすような事いうなんてマナー違反にもほどがあるだろ
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まあ落ち着け
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んだ、んだ
ゆっくり待つべ
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んだ、んだ。
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んだ、んだ。
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ふんが、ふんが
なんか今日9時から怪物くんがやるんだって
それでもみてがまんしようぜ
てことでいいですか?
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レスが増えてるから投下来たかと思ったらこれだよ
怪物?
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お晩です。
皆様の援護射撃に感謝しております。
ちょっと間が空いてしまいましたが、皆様如何お過ごしでしょうか。
実は当方、体調を崩すとかいろいろあったりで結構大変だったりしましたが
何とか戻って来れました。皆様もお体にはくれぐれもご注意を・・・
さて、実は私個人の仕事に関してやこのSSに関する元ネタ&内容につきましては例えバレバレな事であっても
極力「私から」はバラさない方が良いかなあと考えています。
旧シャア板(初期)からお付き合いの方はご存知でしょうが、私、基本的に喋りたがりなもので
カンの良い方は私の発言からポロポロと全てのストーリーを読み取ってしまう可能性がありそうなんですよね。
今後想定している物語の展開上、迂闊な事は書けなくなって参りました。
そんな訳で私に向けた個人的な質問レスになかなか返答できなくていつも申し訳ないです。
(もちろん皆様の間で情報をやり取りして頂くのは無問題です。というか非常に助かります)
あと、結構な投下間隔が空いた場合でも巷のSSスレに溢れる【投下予告】も私にはできそうもありませんすいません。
例えば「今月末までに投下する」とか宣言するのは私には絶対に無理です。
もし何らかの理由でその約束を破ってしまったら・・・もう二度と顔を出せない気がしますので。
私の想定しているストーリーはまだまだ続きます。
書きたいシーンが多いので端折らずにじわじわ行く所存です。
投下間隔は不定期ですが、皆様今後とも何卒よろしくお願いします。
皆様からの乙の一言とSSの感想は非常にありがたく読ませて頂いています。
何だかんだでその2つがSSを書き続けていられる原動力です。
大げさではなく人生の宝です。リアル生活にも非常に効いております。
感謝を込めて、投下しますー
-
「うわあ・・・これ、凄く良いですねえ・・・!」
感嘆ではなく驚嘆である。
初めて乗ったMS-06FZのコックピットシートでバーニィは、座席調整をSに設定しながら笑顔を見せた。
メイン、サブ両モニターの位置、フットペダルの固さと踏み込み角度が絶妙にいい。
何よりJ型では少々確認し辛かった後方視界モニターの位置がデフォルトで改善されているのが嬉しい。
ロールアウトされたばかりのMSの筈なのに、まるで使い込まれた愛機のごとく2本のレバーグリップが吸い付くように手に馴染む。
実質的にはMS-06Cなどのコックピットに比べると、オーバーヘッド・コンソールが前方にせり出しているぶん若干狭くなっている筈なのだが、妙な閉塞感は微塵も感じられない。
広すぎず、狭すぎないスペースの中に、全ての計器類が見やすくコンパクトに収まっているのだ。
そこにはある種のデザイン的な美しさが発生しており、兵士にとって命を預ける相棒たるMSの心臓部に相応しい威厳があった。
あの、地球に下りてバーニィが初めて搭乗した(現地改修で執拗にいじり倒された感のある)06Jのごちゃついた操縦席とは雲泥の差である。
この恐ろしく機能的なコックピットレイアウトは、長年の試行錯誤を積み重ね、血と汗と命を代償にMSと携わって来たジオンだからこそ完成したものなのだと思える。
元々機械いじりが嫌いではないバーニィは、コックピットの端々から滲み出ている「職人技」が醸し出す迫力に、静かに感動してしまうのだった。
『こいつの開発には俺たち首都防衛大隊も協力したんだぜ。
コックピット周りは特にランス中佐の意見が反映されてる』
正面モニターには、資料を挟んだバインダーを手にしたアンディ中尉が、ハンガーの床からこちらを見上げている姿が映し出されている。
外部用モニターとスピーカー、集音マイク等の動作にも問題は無い様だ。
傍目から見ると奇妙な光景だが、この機能が正常であればこそ通常サイズの人間と17・5メートルの巨人とが普通に会話できているのである。
「何だか・・・皆さんのお話をお聞きしているだけで、ランス中佐という方の凄さが判りますね。
それに、短期間でこんなMSの開発を完了させたマ・クベ大佐という人も」
『ランス中佐とはお前もいずれ会えるさ。それとな・・・』
バーニィの口から出たのは先人に対する素直な賞賛だったのだが、ランスとマ・クベを同列に扱われた事が気に食わなかったのか、アンディの顔が険しいものになった。
『言わせて貰えばこの機体がここまでスピーディに完成したのは、現場勤務の名も無きメカマンから訴上されて来た統合整備計画の試案が、抜群に優れていたからなんだ。
マ・クベはまずそれを意見書としてサイド3のMSメーカー最大手のジオニック社に提示し、意見を求めた。
そしてそれがとてつもない価値を秘めた革新的意見書だという事を確認した上で、次期国家プロジェクトとしてザビ家に提出し、それをそのまま自分の手柄として通しただけに過ぎない』
「名も無きメカマン・・・ですか」
『こんな紙資料にしたら優に五百枚以上に相当する分量の計画試案を上げて来た奴がいるんだよ』
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