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コンペ・ロワイアル【本編】

1 : ◆SvmnTdZSsU :2020/09/04(金) 01:46:19 W8Pl4NDw0



ーー心は特殊な領域である。地獄から天国を創り出すことも、天国から地獄を創り出すこともできる。



【当企画について】
・コンペ形式で参加者を募集し、最終的に>>1が名簿を決めたロワです。
・初心者から経験者まで誰でも歓迎。
・自由度の高いロワを目指します。

【基本ルール】
・誰も人を殺さずに一定時間経過すると首輪爆破。
・優勝賞品は『何でも願いを叶える権利』
・会場からの脱出は不可能。
・首輪が爆発すると絶対に死亡不可避。
・能力制限は書き手一任。
・優勝すると『願いを叶える権利』が与えられる。
・参加前に所持していた武装は解除・没収済み。

【放送について】
・放送は6時間ごとに行われる。(初回放送のみ例外。ロワ開始から1時間前後を想定)
・放送毎に、過去六時間の死者の名前、残り人数、次に増える禁止エリアが発表される。
・参加者の割合的な理由により、禁止エリアの増加割合は放送毎にランダム。

【MAP】
ttps://gamewith.akamaized.net/img/original_b7ee9b5606dac7fdbde04617a1766f00.jpg
・マップにはNPCが居ます。どう扱うかは書き手の自由。

【デイパック】
・全ての参加者はゲーム開始後「デイパック」を渡される。以下中身。

・地図:マップを印刷した安っぽい地図。
・食料:インスタントラーメンと缶チューハイ(ストロングゼロ)×3個だけ。お湯は現地調達。
・ルールブック:基本ルールが書かれている紙。A4用紙。初回放送にて裏側に全参加者の氏名のみ浮き上がる。
・ランダム支給品:現実出展かフィクションのアイテム。最大3つ。

【書き手ルール】
・予約期間は1週間。延長宣言無しでそれ以上経過すると予約は解除扱いになります。
・予約期間中に書ききれない場合はさらにもう1週間の延長が可能です。
・ゲリラ投下もアリです。
・参加者の追加はNG。

【主催者について】
・主催者がどの程度参加者に干渉できるのかや、監視の度合いは書き手一任。

【NPCについて】
・書き手一任。

【参加者の現在地について】
・誰がどこに居るか登場話で明記されていない場合、描写と矛盾しない範囲で好きに設置可能。
・地図にない施設を追加する場合は詳細を書いていただくと助かります。

【追記】
・「書きたいものを書く」というコンセプトなので、基本的に上記のルールに記載されていない事は大抵許されます。

【キャラクターテンプレート】

【現在地/時間(日数、未明・早朝・午前など)】
【名前@出典】
[状態]:健康状態とか精神状態とか
[装備]:手に持ってたりすぐ使えるアイテム
[道具]:基本支給品、ランダム支給品など
[思考・状況]:基本行動方針:
1.
2.
3.
行動・思考の優先順位など
[備考]参戦時期、その他、SS内でのアイテム放置、施設の崩壊など。

【支給品の名前@出典】
ここに↑の支給品の詳細を書く。

【時間表記について】
未明(0〜4)
早朝(4〜8)
午前(8〜12)
午後(12〜16)
夕方(16〜20)
夜中(20〜24)

【開始時刻について】
・開始時刻は夜中の0時からです。

【その他について】
・疑問点とか他に何かあればWikiの雑談コメントの活用か、あるいはTwitterのアドレスを載せておくのでこちらにご連絡ください。
Twitter ⇒卵かけご飯@TBsj0EUw3tykDyc


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2 : 開幕、バトルロワイアル! ◆SvmnTdZSsU :2020/09/04(金) 01:49:20 W8Pl4NDw0

『聞け! この地に集いし全てのものたちよ!
 喜ばしい事に、総勢108名、現時点を持って全ての参加者が確定した!』

『貴様たちはこの地に放り込まれて、大なり小なり、既に自らと同じ境遇の者と出会い、語り合い、或いは矛を交え、血を流しただろう。
 しかし、それはまだ序章に過ぎない』

『これより真のバトル・ロワイアル開幕を宣言する!』

『支給したデイパック、そこにルールブックが入っていただろう? 白紙だった場所を確認しておけ。名簿が浮き上がる手筈になっている』

『……確認したか? それでは、ルールの補足と追加説明を行う』

『まず、地図と禁止エリアについて報せておこう。既に地図は確認していると思うが、マップはかなり広い。移動手段の確保されていない者では参加者を探すだけで一苦労だろう。よって、放送ごとに我々が禁止エリアを指定させてもらう。
 禁止エリアに立ち入ると、警告の後に首輪が爆発する。
 当然禁止エリアが解除される事は無いので、実質この催し自体の制限時間だ。指定したエリアは放送終了から2時間前後に禁止エリアとなる』

『首輪について、もうひとつ補足しておくと……態々言わなくとも賢しい者なら理解しているだろうが、貴様らが殺し合いを放棄し、一定時間、状況に進展が見られないようであれば……参加者全員の首輪を爆破させる。その旨をしかと理解しておけ!』

『そしてNPCについて。既に遭遇した者も居るだろうが、この場には首輪の無い存在が蔓延っている。
 彼らは最初の説明の通りただの舞台装置、扱いは自由だ。
 初期物資が乏しいなら、奴らから奪うなり、利用するなり好きに活用するといい。ただ、危険なNPCも多いので返り討ちに合わないように気を付ける事だ』



『さて……最後に、私の名を告げておこうか。


 私は”ミルドラース”。魔界の王にして王の中の王である。
 願わくば最後に私の前に立つものが、勇者に相応しい者である事を望む』

ーーー


 会場の地下にある薄暗い洞窟。
 怪物たちの息遣いが暗闇に木霊する空間の奥に、一匹の小鬼が居た。

「GRB…」

 ふん、やっと始まったか。
 王冠を被った小鬼は、見聞きした放送に笑みを浮かべる。

 ゴブリンにとって他人の不幸は最高の娯楽であり、偉そうに富を独占する人間どもが苦しむ姿を想像するだけで愉快だった。
 しかし、手から伝わる振動に、すぐにその醜い顔は忌々しげに歪んだ。

 ロードの手にした端末に、複数の参加者の映像と現在地が表示される。
 座標と位置を示すアイコンは、それらを襲えという指示を示していた。

 この地に目覚めたとき、ゴブリンロードは主催者から役割を与えられた。
 それは、この地に放たれたNPCの管理と指揮。
 尤も、大半は同族のゴブリンが占めていたが、中には普通なら従わないような強力な魔物も含まれていた。

 どうやら主催者によって手を加えられているらしいそれらに、彼は適当な参加者を襲わせるよう指示されていた。

 この地に招かれる以前よりも、ずっとずっと膨大な数の手駒を与えられたロードであったが、その脳裏を占めるのは苛立ちと怒りだった。
 折角生き返ったというのに、こうもこき使われるなど理不尽だ。そんな感情がふつふつと沸き上がる。

 ロードは一度死を経験した。首に食い込む折れた刃の感触は未だに鮮明であり、思い出すだけで虫酸が走る。

 聞けばこの地にもあの忌々しい冒険者が居るというではないか!
 憎い憎い憎い!自分は何も悪いことはしていないというのに、自分を殺したあの男はのうのうと生きている!なんという理不尽、赦せない!
 今すぐにでも八つ裂きにしてやりたいが、連中は駄目だという!
 それだけでも度しがたいというのに、ただ指示を出すだけの偉そうで生意気な奴らときたら!
 あの気味の悪い目をした女、ゴミを見るように見下してくる小娘、元人間の癖にやたら偉そうに振る舞う魔王と吸血鬼も、あの連中の何もかもが気にくわない!

 まったく、奉仕したいのなら、ただ黙って全てを差し出せば良いものを。何故そんな当然のことが解らないのか。
 きっと奴らはバカだからこんな回りくどいことをするのだ。
 まぁ強そうだから従っておいてやるが。


「GBRGBB!!」

 脳裏に渦巻く不平不満を終えると、ロードは周囲の手駒に号令を出す。

 捉えた参加者は好きにして良いと言われている。女なら犯して孕み袋に、男ならなぶって食ってやろう。

 なあに、折角生き返ったのだ。生きていれば次がある。次があるなら上手くいく。己はそうして勝ち続けてきたのだ。なら、ここでも必ず己だけは上手くやれる。我にはその知恵がある。

「GBRR…!!」

 NPCの群れを従えた小鬼王は、指定された地に進撃を開始するのだった。


3 : 開幕、バトルロワイアル! ◆SvmnTdZSsU :2020/09/04(金) 01:50:45 W8Pl4NDw0
ーーー

 照明も疎らな薄暗い空間。そこは、全ての参加者が哀れな見せしめを目撃し、死のゲームの宣告を受けた場所だった。
 
「……始まったか」

 そこに立つ軍服の姫君は、ミルドラースの宣告に一言だけ呟いた。

「そうだね、始まったね」

 言葉が虚空から掛けられる。
 何時からそこに居たのか、まるで暗闇から突如染み出たかのように、アルタイルの側に女が立っていた。

「すごいね。さすが大魔王、初めてにしては上出来だよ」

 赤毛の三つ編みの女性は、暗闇でもはっきりとわかる柔和な笑みを浮かべていた。
 語られる口調や込められた感情は親しみであるが、しかし底知れぬ異質さも同時に感じさせる声だった。

「……あの男はどうした?」

「あぁ『彼』ね。友達の様子が気になるみたいだったから、私の目を貸してあげたよ」

 吸血鬼も友情を大切にするんだね。そう呟くと、女ーー”マキマ”はくすりと笑う。
 
「……」

 アルタイルは答えない。一切の沈黙が女への返答であった。
 その顔は、筆舌に尽くしがたい複雑な感情で歪んでいる。
 そんなアルタイルの内心は分かっているだろうに、女は涼しげな笑みを崩さない。

 バトル・ロワイアルーーこの盤上を成立させるために、彼女はアルタイルが必要だったし、アルタイルも彼女の力が必要だった。ただそれだけの関係なのだ。ミルドラースも、あの男でさえも。

「心を痛める必要はないよ。君の夢も、彼らの願いも、ついでに私の目的も、等しく叶う。私たちはただ待っているだけで良いんだ」

「それが私たちの役割(ロール)だからね」、そう呟きながら、女ーー”マキマ”は、天上を見上げる。
 その目はどこか遠くを視ていた。此処ではない場所。より上位の■■を。
 ■■の悪魔は、ただ観ているものを見ているだけだった。


【判明している主催陣営】

【アルタイル@Re:CREATORS】
【マキマ@チェンソーマン】
【ミルドラース@ドラゴンクエスト5】
【小鬼王@ゴブリンスレイヤー】
【???】


ーーーー


 骰子の音が鳴った。
 出た目は■■■■

 骰子の音が成った。
 出た目は■■■■

 骰子の音が為った。
 出た目は■■■■

 骰子の音が綯った。
 出た目は■■■■

 骰■の■■■った。
 出た目は■■■■■■■

 ■■??■が■った??
 ??出た■は????????


4 : 開幕、バトルロワイアル! ◆SvmnTdZSsU :2020/09/04(金) 01:51:19 W8Pl4NDw0
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■■■が■■■■なバ■■・ロ■■ア■、■抜け■■■■はーじまーるよー!


はい、よーいスタート!








【黒幕???】


5 : 参加者名簿 ◆SvmnTdZSsU :2020/09/04(金) 01:56:38 W8Pl4NDw0
参加者一覧
5【アイドルマスターシンデレラガールズ】◯夢見りあむ/◯高垣楓/◯千川ちひろ/◯島村卯月/◯新田美波
5【ジョジョの奇妙な冒険】◯エンリコ・プッチ/◯豆銑礼/◯空条徐倫/◯岸辺露伴/◯ディアボロ
4【ゴブリンスレイヤー】◯ゴブリンスレイヤー/◯牛飼い娘/◯令嬢剣士/◯勇者
4【Re:ゼロから始める異世界生活】◯ナツキ・スバル/◯レム/◯レグルス・コルニアス/◯ペテルギウス・ロマネコンティ
4【Fate/Grand Order】◯藤丸立香/◯マシュ・キリエライト/◯ラヴィニア・ウェイトリー/◯沖田総司
3【グラブルーファンタジー】◯コルワ/◯ナルメア/◯カリオストロ
3【銀魂】◯坂田銀時/◯志村新八/◯沖田総吾
3【この素晴らしい世界に祝福を!】◯佐藤和真/◯アクア/◯ウィズ
3【スーパーマリオくん】◯マリオ/◯ヨッシー/◯ピーチ姫
3【クレヨンしんちゃん】◯野原しんのすけ/◯佐藤マサオ/◯ロボひろし
2【タイムパラドクスゴーストライター】◯佐々木哲平/◯藍野伊月
2【大帝国】◯グレシア・ゲッベルス/◯レーティア・アドルフ
2【とある科学の超電磁砲】◯白井黒子/◯美山写影
2【進撃の巨人】◯エレン・イェーガー/◯ライナー・ブラウン
2【魔法娼女理愛 獣欲に嵌まる母娘】◯有栖川理愛/◯清良トキ
2【ファイナルソード】◯ぉ姫様/◯勇者(主人公)
2【チェンソーマン】◯デンジ/◯パワー
2【ドラえもん】◯野比のび太/◯ドラえもん
2【東方project】◯レミリア・スカーレット/◯八雲紫
2【ドラゴンクエスト3】◯アルス(男勇者)/◯アリス(女勇者)
1【ONE PIECE】◯シャーロット・リンリン
1【ドキドキ!プリキュア】◯菱川六花/キュアダイヤモンド
1【モンスター烈伝オレカバトル】◯聖帝エーリュシオン/◯老将エンキ
1【黒衣の少女探偵 月読百合奈】◯月読百合奈
1【青鬼】◯ひろし
1【鬼滅の刃】◯甘露寺蜜璃
1【ドラえもん のび太と鉄人兵団】◯リルル
1【刀使ノ巫女(アニメ版)】◯燕結芽
1【アカツキ電光戦記】◯アカツキ
1【大阪万博2025】◯命の輝き
1【ペーパーマリオ オリガミキング】◯ハサミ
1【こじらせ百鬼ドマイナー】◯飴宮初夏
1【Akinator】◯アキネーター
1【からかい上手の高木さん】◯西片
1【オーバーロード】◯クレマンティーヌ
1【IT それが見えたら、終わり】◯ペニーワイズ
1【呪術廻戦】◯真人
1【BACCANO バッカーノ!】◯ラッド・ルッソ
1【血界戦線】◯ザメドル・ルル・ジアズ・ナザムサンドリカ
1【UNITIA ユニティア 神託の使徒×終焉の女神】◯サーニャ
1【魔法少女リリカルなのはA's】◯ヴィータ
1【野原ひろし 昼飯の流儀】◯野原ひろし?
1【コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜】◯星野輝子
1【Twitter】◯クッパ姫
1【13日の金曜日】◯ジェイソン・ボーヒーズ
1【ペルソナ5 スクランブル ザ ファントム ストライカーズ】◯シャドウ茜
1【魔法少女リリカルなのはPORTABLE-THE GEARS OF マテリアル娘-】◯レヴィ・ザ・スラッシャー
1【志村けんのだいじょうぶだぁ】◯変なおじさん
1【バトルロワイアル(実写版)】◯桐山和雄
1【うしおととら】◯シャガクシャ
1【ワールドウィッチーズシリーズ】◯シャーロット・E・イェーガー
1【Re:CREATORS】◯煌樹まみか
1【ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド】◯コーガ様
1【クッキー☆BB】◯RRM姉貴
1【艦隊これくしょん】◯足柄
1【刀剣乱舞】◯和泉守兼定
1【リベリオンズ Secret Game 2nd Stage】◯粕谷瞳
1【水曜日のダウンタウン】◯クロちゃん
1【輝光翼戦記 天空のユミナ】◯翠下弓那
1【11eyes -罪と罰と贖いの少女-】◯リーゼロッテ・ヴェルクマイスター
1【最悪なる災厄人間に捧ぐ】◯クロ(リーダー)
1【Caligula Overdose-カリギュラ オーバードーズ-】◯神楽鈴奈
1【真夏の夜の淫夢】◯平野源五郎
1【ウマ娘 シンデレラグレイ】◯オグリキャップ
1【ドリフターズ】◯土方歳三
1【ミスミソウ】◯野崎春花
1【例のアレ】◯Syamu-game
1【そんな未来はウソである】◯佐藤アカネ
1【刀語】◯とがめ
1【大番長 -big bang Age-】◯斬真狼牙
1【meme】●絶叫するビーバー1

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6 : ◆SvmnTdZSsU :2020/09/04(金) 02:02:04 W8Pl4NDw0
以上で放送及び名簿発表は終了です。同時に只今をもって予約解禁となります。

コンペに参加してくださった皆様、本当にありがとうございます!未知の作品に触れる機会が非常に多く、皆様の発想にワクワクさせられっぱなしでした。

最短5年を完結の目安に、楽しみながら頑張っていこうと思います。


7 : ◆SvmnTdZSsU :2020/09/04(金) 03:14:59 W8Pl4NDw0
名簿からホル・ホース@ジョジョの奇妙な冒険が抜けていましたのでWikiで修正致しました。申し訳ないです。


8 : ◆EPyDv9DKJs :2020/09/04(金) 08:07:22 dzWQDvsc0
投下します


9 : ◆EPyDv9DKJs :2020/09/04(金) 08:09:13 dzWQDvsc0
「知り合いはいたか?」

「んー、有名人はいるけど直接はいないかなぁ。
 あ、紫様…じゃあなかった。これは八雲だった。
 それにしても変な名前の人もいるんだね。刀まであるよ?」

「コードネームかもしれないな。ひろしに勇者にハサミ…謎が多い。」

「ま、誰もいないならいないでいいんじゃない?」

 北へと歩む中ミルドラースの宣言を聞いて名簿を流し読みする二人。
 見知った名前で反応があるとすれば著名人の名前ぐらいではあった。
 勇者とひろしが多いなど奇妙な名簿であること以外は、特筆するべき部分はない。
 最早名前ですらないビーバーもいたが、もう突っ込んではきりがないことだ。
 ある意味それならそれで気は楽だ。誰かを優先する目的を変えなくていいのだから。
 このまま北のタワーへ向かうことは変わらなかったものの、

「!」

 あくまで何事もなければの話。
 少なくとも遠くではない場所からの爆発音。
 戦いが始まってるようで、この場合なら話は別だ。

「派手な音だ。今の音は銃器ではないな…大砲か?」

「高いところ登れるけど、様子見てあげよっか?」

「頼む。」

 写シからの迅移で勢いよく飛び上がる結芽。
 近くの中でも高めの木を軽快に登っていき、見晴らしのいい場所で辺りを見渡す。

「おー。」

 遠目であったので姿は分からないが、
 人影らしきものが何処かへと跳ねるように飛んでいく姿が見える。
 あれだけ高くては常人は死ぬのではと思わなくもないが、
 そもそも電気を放つ人間と刀使がいるのだ。丈夫な人間もいるのだろう。
 生死についてはさほど気にしなかった。

 一部始終を終えると、すぐに飛び降りる。
 高所からの落下だが、ダメージは写シで誤魔化す。
 この程度ならば解除されるほどのダメージではなく、
 時間短縮も兼ねており中々に便利だ。

「結果は?」

「人が遠くへ飛んで行ったね。」

「人か…穏やかではないな。」

 人が飛ぶ等普通の状況では見られない。
 危険な参加者か、或いは何かしらの要因か。

「どっちにする? 飛んでった人の場所か、飛んだ人がいた場所。」

 双方の場所を指しつつ尋ねるが、
 飛んだ具体的な位置が分かっていると言うわけではない。
 向かって徒労に終わると言う可能性はありえるのだから、

「飛んで行った方角を調べる。
 乗った参加者から逃げた可能性、
 あるいは乗った参加者の仕業かもしれん。」

 確実で、さほど遠くもないのであれば、
 本来の目的を維持しながらの方がいいだろう。
 一先ず最初は人との確実な接触、今のところ濃いのは敵の排除。
 確実に状況をよくしていくのが大切だと思うが、

「じゃあ、先に行って様子見てくるね!」

 彼女の好戦的な性格を理解しきれなかった。
 そのまま迅移で目的地へと向かってしまう。
 出会ったばかりなのでこれは仕方ないのではあるが、
 そもそも結芽は親衛隊でも独断行動が非常に多い。
 と言うより、独断行動しないと彼女は余り戦えないのだ。
 このような性格では連携が重要視される仕事には出せない。
 主である折神紫もそのことを理解して暴れすぎないように、
 同時に暴れられる場面ではしっかり出撃させると言うスタイルを取っていた。

「な、待て! ツバク…」

 迅移で加速した速度は、
 電光機関を使わなければ追いつかない。
 あっという間に彼女の姿は遠くなっていく。
 様子を見ると言ったが、あれは絶対に手を出す。
 使えば使うほど空腹になりかねないのだから、
 嘗ての欲しがりません勝つまでは理論は通用しない。
 特に、今はカップ麺だけとあまり備蓄がないのだから。

「七難八苦を与え給えとは言ったが、こういうことではないんだがな。」


10 : ◆EPyDv9DKJs :2020/09/04(金) 08:10:01 dzWQDvsc0
「とりあえずどうします? 俺知り合いいるんすけど。」

「あちゃー、困りましたね。知り合いこっちにもいました。」

 整地された道を歩く沖田の名を持つ参加者。
 名簿の中にはマスター達や万事屋メンバー。
 どちらも見知った名前がこの場に存在している。
 元々もう一方の沖田に付き合うことにしてたので、
 優勝を目指してもよかった考えは薄れてたものの、
 マスターがいてはどの道無理な話だと気づかされる。

「じゃあそっち優先で。最悪万事屋は殺しても死なないんで。」

 無茶苦茶な死線を何度見たか。
 あれだけ戦い抜いた彼らをよく知っている。
 自分の助けが必要なほど、無辜の民より弱くもないだろう。
 本音は居場所知らないからほっとくだけだが。

「と言っても広いですし…」

「見ーつけた!」

 周辺に施設も多いから、どこから手を付けたものか。
 そう答えようとするが会話を遮るように姿を現す結芽。

「ガキまで参加してるって、
 ミュルグレスも節操ないですね。」

「それどっかで聞いたような武器の名前ですね。
 なんだっけ、アストルフォがなんか言ってたような…」

 名簿をしまいながらも、
 参加者のエンカウントに平常運転な二人。
 なお、名前を間違えてると言う自覚はない。
 あってもこんな殺し合いに招いた奴の名前を、
 いちいち覚えたいかと言われると…ないだろう。

「ねえねえ、お兄さんとおねーさんどっちが強い?」

 二人が平常運転であれば結芽の方も平常運転である。
 見た目だけで相手の力量を判断できる彼女からすれば、
 少なくともどちらもお眼鏡にかなってはいるのだが。

「こっち。」

 質問に即答と共に片方の沖田を指を指すのは、
 バズーカを背負ってる方の沖田だ。

「即答でこっちにするんですか。」

「ガキにバズーカぶっ放すお巡りさんいねえですぜ。」

 そもそもバズーカをぶっ放すお巡りさんはそうはいないぞ。
 と言う突っ込みはもう面倒なのでしないことにする。

「まあでも確かに私は最強でしたから───」

 会話を遮るような甲高い音が周囲に響く。
 千鳥と浅打がぶつかり合う音だ。
 互いに臨戦態勢ではなかったものの、
 一瞬の間で互いに武器を手に刃を振るっていた。

「人の話は最後まで聞くもんですよ!」

 後退して鍔ぜり合いを終わらせつつの刺突。
 かなりの素早さだが、それでもサイドステップで回避される。

「やっぱり強いんだね! 私とあーそぼ!」

 迅移を使った素早い攻撃を、
 またしても刀使以外が対処する。
 やはり此処は強者の宝庫とも言うべき理想郷。
 叶えられなかった強者との戦いに目を輝かせる。
 この人を倒せれば、より自分の強さの証明になるのだから。

「ジャンキーっすねー。処します?」

「ガキにバズーカぶっ放すお巡りさんとか言ってませんでしたっけ?」

 子供でも遠慮はしない素早い袈裟斬り。
 仮にも自動車を真っ二つに斬る出鱈目な一撃。
 しかし球鋼を用いられた御刀は折れることはない。

「バズーカもただじゃないんで。」

「っと。」

 とは言え小柄な彼女では完全に抑えられるのではなく、
 威力に耐え切れず大きく後退させられてしまう。

「お兄さんもやるねぇ。二対一でもいいよ。」


11 : ◆EPyDv9DKJs :2020/09/04(金) 08:10:53 dzWQDvsc0
 人が吹っ飛ぶような一撃でも臆することはない。
 寧ろ高揚。病の恨みつらみなんか忘れるぐらいに。
 ミルドラースには感謝さえしたくなってしまうほどだ。
 三人連続で強者と当たるなんて、彼女にとってはラッキーなのだから。

「手助けはありがたいんですけど、
 ちょっと気になることがあるので私一人でいいですか?」

「まあ、そういうんであれば。」

 なんの意図があるかは知らない。
 あれは恐らく神威と同じタイプの存在だ。
 神威ほど致命的なレベルではないだろうが、
 戦いの中じゃなきゃ自分を見いだせないタイプ。
 そんな彼女に一体もう一人の沖田は何を思ったのか。
 よくは分からないが従って二人から軽く距離を取っておく。

「じゃ、行くよぉ!」

 背後に回り込んでの袈裟斬り。
 瞬時に振り返って防ぐと、そこから続く剣劇。
 互いにスピードが人間離れしてるのもあってか、
 端から見れば何をやってるのか分からない速度だ。

 その剣劇を止めるのは結芽の足払い。
 咄嗟に後退しながら再び突きの構え。
 小手調べではない、所謂左片手一本突き。
 比喩ではない、弾丸のような速度で剣が迫る。
 流石の結芽もこれは除けが間に合わず受けてしまうが、

「え?」

 今の状況に驚かされる。今、突いたはずの刃が身体を通らなかった。
 刀使の使える技の一つ『金剛身』。効果は名前通り、身体が異様に硬くなる。
 一瞬しか固くできないのでタイミングを誤ると非常に危険な技なのだが、
 体術も含む結芽にとって敵により接近することもあるのだから使い方は理解している。
 刃物は通すことはできなかった一方で、あくまで刃が通らないだけ。
 衝撃自体は残るので、当たった結芽は距離を取らされて反撃は出来ない。

「色々隠し持ってるようで。」

「お姉さんも手加減してないで、本気でやろうよ。」

「では遠慮なく。」

 会話を終えると同時に沖田は消える。
 本来は消えたに等しい程の速度ではある縮地、
 落ちたところで消えたと同時に既に相手の背後の上空と言う、
 常識外れの位置に到達しつつの獲物で脳天へと叩き込む。
 まさに実戦用の流派。当たれば即死を免れない攻撃性を持つ。

「そこ!」

 だがマスターのいないサーヴァント。魔力供給がないため、
 過剰な速度は出すことはできないので縮地に限らずランクは落ちている。
 ある意味それが結芽でもある程度の余裕をもって対処できる差か。
 見事に反応して刀で弾かれてしまい、着地した傍から狙っていく。
 縮地で距離を取っては互いに背後や死角へと回り込んでの剣劇。
 目まぐるしくあちらこちらへと飛んで行きながら感がぶつかり合う様は、
 最早剣の戦いに見えない。

(これドラゴンボールじゃねえんですけどねぇ。)

 ビシュンビシュン消えるとかどこのヤムチャ視点だよ。
 端から見たらそう突っ込みたくなるような戦いだ。
 もっとも、目で追えてるこの男も大概なのだが。

 互いに殺しに特化させた殺人剣法…そういう意味だとあれは自分と似ていた。
 戦い方こそ違う…と言うよりも、此方の沖田は戦えば相手がグロイことになってしまう。
 具体的に言えば彼の戦いの跡を見た人曰くレバーとかが食えなくなったとか、
 そんな苦情が出るレベルな程で、少年誌では見せられずモザイクされてしまう。
 剣術の形を保ちながらも、殺人剣法としての形を失ってはいないところは、
 同じ『新選組』の名を背負った沖田同士であることがよくわかる。

(やっぱり…)

 剣劇の最中、沖田は思う。
 彼女のどこかで見覚えのある動き。
 剣術以外にも居合術、蹴りなどの体術に平晴眼の構え。
 この混ぜ合わせた動きは覚えがある。と言うよりこれは───

「南無三!!」

 頭上から降り立つ影。
 それに反応し互いに距離を取る。
 大地に軽くクレーターを作りながら、
 雷神の如き青い雷を飛ばすアカツキが姿を現す。

「先行するから嫌な予感がしてみれば、案の定の独断行動。
 勝手な行動はあらぬ誤解を招く…故に、今後は控えてくれ。」

 新手の敵かと警戒して構えるも、
 相手を諭すような発言に、すぐに攻撃を仕掛けるには至らない。

「邪魔しないでよ!
 このお姉さんとっても強いんだよ!? 少しぐらい相手したって…」


12 : ◆EPyDv9DKJs :2020/09/04(金) 08:12:35 dzWQDvsc0
 こんなに強い人滅多にいないのに。
 また邪魔をされたと思うと不満しかない。
 彼女の怒号が周囲の静かな空間に響くが、
 会話を遮るように鳴り響く、空腹を報せる腹の虫。
 気が抜けるような音は、アカツキから流れていた。

「電光機関は使いすぎると腹が減る。
 食糧難の今は無暗な行動は控えてくれ。
 ある程度の余裕ができれば少しぐらいは自由にしても構わん。」

 適合率は高いので一応寿命は減らないものの、
 下手をすればとんでもない量の食事が必要になる。
 一時はざるそばを十枚をすらいける程の状態だったのもある程。

「すまない、彼女は好戦的なだけで悪意はない。
 此方は話し合いで穏便に解決を望みたいのだが。」

 振り返りながら警戒を解かない二人へと振り向く。
 穏便に、とアカツキは言うが彼も油断してる様子はない。
 少なくとも消耗は避けられない相手の類だ。
 結芽自身は納得は出来てない様子だが、
 必要以上に戦うような状況でもない。

「そっちは?」

「楽できりゃそれでいいんで。」

 先ほどの一撃もどちらかと言えば結芽を狙った位置。
 疑うほどのようでもないので、話し合いに応じる。

「私はあの子に話あるんでそっちは任せますね。」

「了解。」

 アカツキの対応をもう一方の沖田に任せ、
 戦えず不貞腐れて座り込む結芽に近づく。

「何? おねーさん。」

 さっきまで楽しそうだった表情はご機嫌斜めの様子。
 当然だ。満足できる相手との戦いに横やりを入れられて、
 結果二度とその相手と戦えなかった生前の記憶があるのだ。
 同じようなことをされて気分がいいわけがなかった。

「ちょっと聞きたいことがありまして。
 貴方の剣術なんですけど、ひょっとして…」

「結芽は天然理心流なんだ。すごいでしょ?」

 やっぱり。
 見覚えがあるどうこう以前ではない。
 天然理心流は新選組の剣術なのだから、
 彼女が知ってて当然である。

「おねーさんも同じだよね?」

 戦ってみれば動きや構えは殆ど似ているのだから、
 当然彼女だってそのことにも気付く。

「そりゃ沖田さんが使えなかったらだめですって。
 近藤さんから譲るとまで言われちゃったんですから。」

 思慕する近藤勇から受け継いだ流派。
 できなければ受け継いだものとしての名折れだろう。
 …それだけに最後まで戦えなかったことを悔やむのだが。

「え? 沖田総司って男だよね?」

 改めて視線を上下するも、
 どう見ても女性にしか見えない。
 男性である沖田総司が女だった話は、
 ネットの与太話ならあったかもしれないが、
 彼女はあまり興味はなかったのでよくは知らない。
 と言うより彼女はまだ子供。歴史の与太話を深く知る程、
 そこまで学んでいるとこではないのだ。

「男装して誤魔化してましたからねー。
 フリー素材のごとく扱われてるようなので、
 性別もノッブ程ではないにしても変わってるかと。
 どうやら、其方が知っている沖田総司は男のようで…」

「ってことは───本物の沖田総司!?」

 ただの同姓同名かと思ってた名簿。
 ゆえに大して気にしてはいなかったものの、
 なりきりであそこまでの剣術は出来るはずがなく。
 なので、既に彼女がただの同姓同名ではない、
 本物の沖田総司だと言う事実をすぐに理解した。

 本物の沖田総司に出会えて、
 強い相手を求めてたら源流の人と相対する事実。
 人生で偉人と戦えるなんて一度だってない経験をしている上で、
 相手が同じ流派では彼女が喜ばない理由はない一方、


13 : ◆EPyDv9DKJs :2020/09/04(金) 08:13:04 dzWQDvsc0
「だったら本気で戦いたかったなぁ…」

 中断させられた上にこの様子だと殺し合いには乗ってないので、
 アカツキには絶対戦うことをストップされてしまうだろう。
 理想的な相手なだけに、妨害された事実に不満は募る。

(こういう時、どう相手すればいいんでしょう。)

 子供を相手する方法など、彼女が分かるはずがなく。
 カルデアに子供のサーヴァントもいたが、特別接してた経験も多くはない
 どうしたものかと悩みだす壬生の狼の姿が見れるのは、此処ぐらいだろう。
【D-6/未明】

【沖田総吾@銀魂】
[状態]健康
[装備]どうたぬき@風来のシレン、パズーのバズーカ(残弾2)@天空の城ラピュタ
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜1(ある場合確認済み)
[思考]基本行動方針:お巡りさんが殺し合いに乗るわけにはいかねえなあ。
1:万事屋のメンバーがいるようなら合流…はまあ余裕があればで。
2:神威レベル1だな、あれ(結芽)。
3:堅物そうな男(アカツキ)と話しとく。
[備考]
参戦時期は最終回後。

【沖田総司@Fateシリーズ】
[状態]健康
[装備]浅打@BLEACH
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済み)
[思考]基本行動方針:マスターいたら優勝どころじゃないでしょうて。
1:まさか同じ流派の人がいるとは…というかこれどうしよう
2:とりあえず悪即斬で。
3:北海道で金塊探してる土方さんもいるんですかね
[備考]
経験値成分が強めです。
カルデアの方の沖田さんです。

【燕結芽@刀使ノ巫女(アニメ版)】
[状態]:不治の病、沖田総司への興味(大)、アカツキへの不満(大)、疲労(小)
[装備]:千鳥@刀使ノ巫女
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜2(確認済、ペン類ではない)
[思考・状況]基本行動方針:強さの証明。殺し合いは知らない。
1:本物の沖田総司!?
2:北の街へ向かう。お兄さん(アカツキ)と行動はするけど、群れるのは好きじゃない。
3:弱い人には強さを見てもらう、強い人には挑みたい。
4:やること終わったらお兄さんとか沖田のおねーさんとかと戦いたい。
5:何処かにあるかな? にっかり青江。

[備考]
参戦時期はアニメ版の死亡後から。
写シのダメージによる強制解除後の連続使用は、
短時間では多くても二回、それ以上はある程度時間が必要です。
本来は刀使でもその御刀に選ばれないと写シ等はできませんが、
この場では御刀を持てば種類を問わずに使用可能です。
また、瀕死になるとノロが表面化は自力で抑えられるものの、
死亡後は時間経過で荒魂に変化するかもしれません。

【アカツキ@アカツキ電光戦記】
[状態]:電光機関の使用による空腹(中)、心労(小)
[装備]:試作型電光機関+電光被服
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1(確認済・ペンの類ではない)、ゴブリンの槍@現地調達
[思考・状況]基本行動方針:日本への帰還。
1:話し合いで解決。大事に至る前でよかったが…
2:北のティルデット・タワーへと向かう。
3:首輪の解除が当面の問題。道具が欲しい。
4:すべての電光機関を破壊する。この場にあっても例外ではない。
5:腹が減る。流石にそろそろ食わねばならぬか。

[備考]
参戦時期は少なくともアカツキ編ED後以降です。
電光機関が没収されない代わりに、ランダム支給品を減らされてます。
槍は筆談用に持ってるだけなので基本使いません…が、案外使えるのかも。


14 : ◆EPyDv9DKJs :2020/09/04(金) 08:13:42 dzWQDvsc0
以上で『夢なら醒めないで桃源郷』投下終了です
コンペからの自己リレーになってしまうので
まずかったら破棄してください


15 : ◆4kMBNI9QkE :2020/09/04(金) 09:19:05 lRe//vnc0
本編開始乙です。
自分の作品がろくにかすりもしなかったのは少し悔しいですが、中々素晴らしい参加者がそろった気がします。


16 : ◆SvmnTdZSsU :2020/09/04(金) 16:34:29 W8Pl4NDw0
投下乙です。

天然理心流繋りの伏線を最速で活用していて嬉しい!そして各地で目撃される土方さん…。
マスター不在とは言え、鯖沖田さんに拮抗できる結芽凄い。沖田さんも沖田さんの剣術に思うところがあるようですが、実際二人は性別以外根は同じ沖田ですからね…。
結芽はアカツキさんの仲裁がなければマーダーと勘違いされかねないスタンスですが、うまく取り直してもらってて良かった。首輪解除要員もこなせるし、やはり彼は頼りになる男です。

報告ですが、コピペミスで>>5の名簿に採用予定だったキャラの抜け(ホル・ホース、鳥月日和、ブースカ)があったので修正いたしました。最終的に111名となります。


17 : ◆oUF53W6sMM :2020/09/04(金) 18:27:08 AradMNO20
投下させていただきます
自己リレーが入っていますのでご了承ください


18 : 一般人でもたくさん集まれば超人に対抗出来る説 ◆oUF53W6sMM :2020/09/04(金) 18:29:24 AradMNO20
「…では、お2人はこの殺し合いに乗るつもりはない、という事でよろしいですか?」
「勿論よ! 鬼殺隊として、何よりも柱として、鬼ならともかく、無関係の人を巻き込むなんて許せないわ…!」
「うんうん、いきなりこんな所に呼ばれて何も分からないけど、人を殺しちゃいけないことは分かるからね!」

森林エリア、ゴブリンから逃れた3人は、開けた場所で腰を下ろし、情報共有をしていた。

まずはお互いの自己紹介、次に自分たちがどうするべきか。結果、3人が出した結論はこの殺し合いを止める、という事だった。

その時である。

カサカサ、と木を揺らす音がし、またゴブリンがやって来たのか? と3人が身構えると、坊主頭の男と赤毛の少女が恐る恐ると木陰から現れた。

「あれ? 先客がいるよ?」
「あー、もしかして、貴方たちもこんな殺し合いに巻き込まれてるの? 大丈夫! あたしはこんな殺し合いに乗るつもりは無いから!」

赤毛の少女がそう告げると、3人は警戒を解き、ひろしは良ければ一緒に休まないか、と提案し、それを快諾されたので、5人で改めて情報共有をすることにした。

「僕はひろし。この殺し合いを止めたいと思っています。このピンクの髪の人は甘露寺蜜璃さん。化け物に襲われた僕を助けてくれたんです。それで…彼は…」
「変なおじさんは変なおじさんだぁ」
「ねぇ、ちょっと待って!」

クロちゃんがそう叫ぶと、甘露寺が「どうしたんですか?」と尋ねる。すると、

「みんなはこの殺し合い…止めたいと思ってるの? これってあの番組の企画じゃなくて?」
「テレビ番組の企画が何かは分かりませんが、これは恐らく、正真正銘の殺し合いです。現に僕も、見せしめに殺された人を見ましたから」
「えっ、ええ!? サバゲーかなんかじゃなくて!? じゃあ、僕たちここで殺されちゃうの…?」
「大丈夫。殺し合いを止めたいと思っている人は、きっと私たち以外にもいます。だからまずは、その人たちを探していきましょう?」

恐怖に怯えるクロちゃんを励ますように甘露寺がそう提案すると、4人はそれに賛成。戦闘力の高い甘露寺を先頭にし、残りの4人は周囲を警戒しつつ、自分たちと同じ考えを持つ人たちを集めることを第一目標に、行動を始めることにした。

果たして、5人の行く先には何が待ち構えているのだろうか…?

【C-3/深夜】

【ひろし@青鬼】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない
1:たけし君達も殺し合いに呼ばれているのでしょうか……?
2:5人いれば何だか心強いです!
[備考]
参戦時期は館から脱出した後です

【甘露寺蜜璃@鬼滅の刃】
[状態]:健康
[装備]:甘露寺蜜璃の日輪刀@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない
1:とりあえずこの5人で行動する
2:戦えるのは私しかいないけど、頑張るぞぉ〜!
[備考]
参戦時期は刀鍛冶の里編終了後から無限城に落とされるまでの間です

【変なおじさん@志村けんのだいじょうぶだぁ】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いはしたくないねぇ
1:だっふんだ!

【クロちゃん@水曜日のダウンタウン】
[状態]:健康、上機嫌
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、キャッスルロストフルボトル@仮面ライダービルド、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]:基本行動方針:殺し合いが企画じゃなくて本当ならそんな事はしたくない
1:可愛い娘が2人も! 仲良くなりたいしんよ〜
2:殺し合いが本当? 怖いよ…
[備考]
殺し合いを芸人が持ち寄った「説」による企画と思っていましたが、正真正銘の殺し合いだと認識しました
フルボトルをただの玩具と思っています。


【牛飼い娘@ゴブリンスレイヤー】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]:基本行動方針:殺し合いはしない
1:彼(ゴブリンスレイヤー)も居るのかな…?
2:とりあえずこの5人で行動
[備考]
参戦時期は原作9巻終了後。


19 : ◆oUF53W6sMM :2020/09/04(金) 18:29:52 AradMNO20
投下完了です
もし何か不備があれば破棄してください


20 : ◆L9WpoKNfy2 :2020/09/04(金) 23:26:55 TZv.f3ug0
お疲れ様です。

私からも一作品投下させていただきます。


21 : 毎度おさわがせします ◆L9WpoKNfy2 :2020/09/04(金) 23:28:49 TZv.f3ug0
「さてと……意気揚々と出発したはいいが、どこに人がいそうか分かんねえな。地図を見ながら適当な場所を探すしかねえか?」

そうして先ほど人殺しのために動き出したコーガ様だったが、早速一つ目の壁にぶち当たった。

まず、どのあたりに人がいそうかといった部分について深く考えずに出発していたため、何処を目指すべきか分からなかったのだ。

そんなわけで地図を見ながらあてどなくさまよっていた彼だったが、ついに人がいそうな寺を発見した。

そしてその寺の近くにある小屋からなにかうめき声がしていたので、絶好の機会だと思い彼は足音も立てずにそこへと向かった。

そしてそこの窓からのぞいた光景にコーガ様は驚愕した。何故ならば……

「あっぐうぅぅぅぅん!あひゅっ!イクッ、イクぅぅぅっ!理愛イクぅぅぅっ💛とまんにゃいよおおぉぉぉっ!もっと、もっとおぉぉぉぉ!」

まだ成人もしていないような少女がトイレの中で『一人遊び』をしていたからだ。しかも結構激しめのを。

「……変な奴がいるぞ!」

そしてその光景を見て思わず、自分の格好を棚に上げた発言を大声で出してしまった。

その結果……。

「あなた誰!ここで何をしているの!!」

寺の方にいたまみかに、盛大にバレてしまった。

しかも彼の手には小刀が握られている上に変な仮面、そして全身タイツと怪しくない点がどこにもない恰好をしていたので
「怪しいものではない」と言っても信じてもらえないことが確定している状態だった。

「……怪しいものではありません」

しかし彼は「怪しいものではない」と言った。どう考えても信じてもらえないはずなのにあえてその言葉を言ったのだ。

「じゃあその手に握っている小刀は何ですか?」
「これはアクセサリーです」

案の定その手に握られている小刀について突っ込まれたが、「ただのアクセサリー」と言って誤魔化そうとした。

「……それを信じると思いますか?」
「……やっぱり?じゃあ仕方ねえ、お前から倒してやるぜーっ!!」

……やっぱり誤魔化せるはずもなく、そのまま戦闘へと突入することになったのである。

「お前は今から俺様に倒されるんだ!冥土の土産に俺様のイカした名を教えてやろう!」
「イーガ団の…総長…、強く!たくましい男!それがこの俺っ!コーガ様だっ!」

……こうして自信満々に戦闘へと突入することになったのだが………

「マジカル・スプラッシュ・フレアァァァッッッ!!!」
「ぎにゃああぁぁぁ〜っ!!!」

煌樹まみかの必殺技を受けて、コーガ様はあっさりやられてしまった。


22 : 毎度おさわがせします ◆L9WpoKNfy2 :2020/09/04(金) 23:31:09 TZv.f3ug0
------------------------
そうして数分後……

コーガ様は身動きが取れないボロボロの状態で、二人の魔法少女に尋問されていた。

「で、え〜と……コーガ団の、イーガ様でしたっけ?」
「逆だ逆!イーガ団の、コーガ様だっ!」

まみかが、彼の名前と彼が率いる組織の名前を盛大に間違えながら質問をしていた。

「ではコーガ様、あなたの先ほどの行動を見る限り、殺し合いに乗っているということで間違いないですよね?」

先ほどまで快楽をむさぼっていた理愛が、彼にそう尋ねた。

「お前みたいな変態女に話すことなど「私の方からも一発お見舞いしますよ?」……ごめんちゃい」

「話すことなどない」と言おうとしたコーガ様だったが、顔に青筋を浮かべた彼女からもキツイ一撃を食らうと思った瞬間あっさりと撤回した。

「ではもう一度質問します。あなたは殺し合いに乗っているということで間違いないんですよね?」

「ああ……俺様の願いをアンテン様に叶えるためには、参加者の死体がたくさんいるんでな!」

そして彼女たちが再度同じ質問をしたが、コーガ様は自分が殺し合いに乗っていることをあっさりと白状した。

「……『アンテン様』?それはいったい何者ですか?詳しく教えてください」

「おおっと、これ以上は話せねえなあ。どうしても話してもらいたいなら、もらうもん貰わねえとなぁ?」

「なるほど、分かりました。では私から『もう一発』お送りしますね?」
「ちょ、冗談はよして……「アエーロソル・ドュラ……ルミエール!」アーッ!」

……そうして彼女らは、コーガ様から『アンテン様』に関する話を聞きだすことに成功するのだった……。


【F-10/深夜】
【コーガ様@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド】
[状態]:ボロボロ
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(ストロングゼロ2個消費)、ランダム支給品0〜2 
[思考・状況]:基本行動方針:願いを叶えるために死体を集める。
1:アンテン様に願いを叶えてもらって、脱出したい。
2:誰かをイーガ団のメンバーに加えたい。
3:いつか隙を見て逃げ出してやる……!
[備考]
本編死亡後の参戦です。
首狩り刀はまみかによって没収されました。


【煌樹まみか@Re:CREATORS】
[状態]:健康
[服装]:魔法少女姿
[装備]:マジカルステッキ@Re:CREATORS
[道具]:基本支給品、ランダム支給品2つ、首狩り刀@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド
[思考]
基本:こんな殺し合いなんて止めないと
1:理愛ちゃんの身体が心配。無理をしてないといいけど
2:『アンテン様』……?いったい何者でしょう……。
[備考]
※本編第九話「花咲く乙女よ穴を掘れ」で、死亡後からの参戦です
コーガ様を、『別の物語の登場人物』だと思っています。
コーガ様から、アンテン様に関する情報を得ました。



【有栖川理愛@魔法娼女理愛 獣欲に嵌まる母娘】
[状態]:発情(小)、快楽中毒(中)
[服装]:魔法少女姿
[装備]:魔法の杖(変身前はペンダントの形態)@魔法娼女理愛 獣欲に嵌まる母娘
[道具]:基本支給品、ランダム支給品2つ
[思考]
基本:殺し合いを止めたい
1:身体の疼きが……
2:もしトキくんと出会ったら、その時は……
3:『アンテン様』……もしかして魔罪人……?
[備考]
※本編第五章『砕ける心、隷属の刻』終了後からの参戦です
※トキによって仕掛けられた『道具』は解除されています
コーガ様から、アンテン様に関する情報を得ました。


23 : ◆L9WpoKNfy2 :2020/09/04(金) 23:35:01 TZv.f3ug0
投下終了です

投下した後に修正依頼を出すのもどうかと思いますが、>>21について以下の部分の修正をお願いいたします
(環境文字が、ほかの環境でうまく表示できていないか心配なので)

「あっぐうぅぅぅぅん!あひゅっ!イクッ、イクぅぅぅっ!理愛イクぅぅぅっ💛とまんにゃいよおおぉぉぉっ!もっと、もっとおぉぉぉぉ!」
 ↓
「あっぐうぅぅぅぅん!あひゅっ!イクッ、イクぅぅぅっ!理愛イクぅぅぅっ♥とまんにゃいよおおぉぉぉっ!もっと、もっとおぉぉぉぉ!」

以上、ありがとうございました。


24 : ◆SvmnTdZSsU :2020/09/05(土) 06:12:51 HUgVvFlo0
投下乙です。

>一般人でもたくさん集まれば超人に対抗出来る説
ひろし、年少なのにまとめ役として実際有能ですよね。
変なおじさんは良い人で変なおじさんですが、クロちゃんが中の人に触れない点を考慮すると参戦時期の考察ができそう。
五人の中で戦闘がこなせるのは甘露寺だけですが、巧く纏まればタイトル通りに対抗……できるんですかね?(不安)
ただクロちゃんが無自覚に色々やらかしそうと感じるのは偏見でしょうかね。

>毎度おさわがせします 
流石のコーガ様も、まさかバトロワ中に激しく自慰をかましている少女を発見するとは思いもよらなかったでしょうね。
「……変な奴がいるぞ!」
不審者の塊みたいなコーガ様にこれ言われちゃってるの草。
方針も物騒なのにコーガ様何故か危険性も感じないし憎めないキャラですよね。適当すぎる言い訳も腹筋に直撃しました。
案の定墓穴掘って捕まってるし、これからどうなってしまうのでしょう。
アンテン様システムの存在を知ったまみかと理愛もどう動くのか気になる引きでした。


25 : ◆AOUE2X07qI :2020/09/05(土) 12:28:18 IJnwAD/s0
ザメドル・ルル・ジアズ・ナザムサンドリカ、レミリア・スカーレット、ドラえもん
予約します


26 : ◆SvmnTdZSsU :2020/09/05(土) 14:59:53 l3eucuLE0
投下します。


27 : 届かぬ場所に手を伸ばして ◆SvmnTdZSsU :2020/09/05(土) 15:01:59 l3eucuLE0

「……」

 『星の白銀』を得て、優勝を決意してから半時も経たない内に、野崎はとある参加者と市街地にて対峙していた。

「おや?おやおやおやぁ?これは僥倖!こうも早く参加者に出会えるとは、実に勤!勉!なのデス!」

 緑髪のおかっぱ頭の怪人は、警戒する野崎に構うこと無く捲し立てる。
 
「お嬢さん、暫しお聞きしたい事があるのですが…貴女の支給品に『福音』はありますでしょうか?」

「……」

 野崎は答えない。『福音』が何なのか知らないし、知っていたとしても答える気は沸かなかった。
 ただ、直ぐにでもスタープラチナを出せるように警戒を続ける。

「お答え頂けないようデスねぇ〜」

 野崎の沈黙に男は溜め息をつくと、人差し指を口に含み、そのまま力を込めて齧る。血が滲む様子にも構わず、スナックを齧るように。滴る血が指を伝わりポツリ、ポツリと地面を濡らす。

「……ああ!そうデスねぇ!私としたことが挨拶を忘れておりました」

 やがて合点がいったとばかりに背中を仰け反らせながら叫ぶと、男は過剰に腰を曲げて礼をする。

「私は魔女教大罪司教『怠惰』担当、ペテルギウス・ロマネコンティ…デス!」

 狂信者の鋭い眼が、野崎春花を観察している。

「……ッ」

 まともではないペテルギウスの様子に、野崎は少しだけ気圧されていた。
 その異様な感情は、一部を除き野崎のクラスメート達が抱いていた物と、どこか共通するものがあった。
 それは『狂気』。野崎の目から見ても、この男は完全に、完璧に狂っていた。


「……福音、って何?」

 一先ず野崎は、この変質者から情報を引き出すことを選択した。スタープラチナの射程は短い。この男は始末するにしろ、不用意に接近するのは躊躇われた。
 ようやく会話を行った野崎に、ペテルギウスは機嫌を良くしたのか、にこやかに口を開いた。

「福音とは、黒い表紙の本なのデス。私の持ち物なのデスが、どうやら主催者に没収されてしまっているようでして……ああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 突然の絶叫。道路に轟く奇声。ペテルギウスは怒りに身を捩らせる。

「理不尽!不条理!不合理!私にとって何よりも、そう!命よりも尊き魔女の愛の道しるべを!奪うことなど何者も許されないし許してはならない行為なのデス!
 なのに!事実!今!私の手元に福音は無いのデス!ああ脳が震える震えるッ!!!」

「あぁぁぁぁあ〜〜…そして、そしてそしてそして…福音を奪われるという我が身の怠惰も度しがたい!怠惰怠惰怠惰ァ〜〜……未熟な怠惰をお許しくださぃぃぃ〜
 愛に、愛に報いなければぁぁ〜〜」

 憤怒から一転、ペテルギウスは大粒の涙を流しながら懺悔を叫ぶ。
 両手を顔に添え、悲観するその様はまるでムンクの叫びのようだった。

「なので、なのでなのでなので!私は即座に!迅速に!急速に!勤勉に!福音を取り戻さなければならないのデス!」

 かと思えば、その表情は瞬時に一転し、決意に漲ったものになる。
 両目をカッと見開いたペテルギウスは、再び野崎に視点を戻した。




「さしあたって、どうやら主催者は参加者の私物を無差別に支給しているようなのデス。再びお聞きしますが……貴方、福音はお持ちですか?」


28 : 届かぬ場所に手を伸ばして ◆SvmnTdZSsU :2020/09/05(土) 15:02:43 l3eucuLE0

「……持ってない」

 返答を待つペテルギウスの様子に暫しの沈黙の末、野崎は正直に回答することを選択した。

「……そうですか、残念デス」

 野崎の返答を聞き、一呼吸おいて。
 ペテルギウスの背中から、複数の黒い腕が出現した。
 視認した不可思議な魔手に、野崎は目を見開く。

(嘘……あれって……スタンド?)

 まさかこの変質者もスタンドDISCを支給されていたのか。
 そんな疑問を解消する間もなく、ゆらゆらと揺れる黒い魔手は、野崎に向かって襲いかかる!

『オラオラオラオラァ!』

 一つ一つが人体など紙のように容易く引き裂く魔手。
 しかし、野崎の持つより力強いスタンドの拳が手を打ち砕いた。

「……は?」

 信じがたいものを見たと言わんばかりに固まったペテルギウスは、やがてぽつりと呟いた。

「ーーおかしい!間違っている!誤っている!これは、見えざる手は!私の!私だけに与えられた権能!私だけの寵愛の証!それを、福音も持たない小娘ごときが見ることなどあり得ない!あまつさえ抵抗するなどあり得てはならないイイイイ!!!!」

 凄まじい剣幕で怒鳴り散らし、両手の指を噛み千切る勢いで自傷行為に走るペテルギウス。その眼は間違いようもない殺意に溢れていた。

「……」

 その殺意を、野崎もまた漆黒の意思で受け止める。
 相手もスタンドを持っている。それがどうした?

 元々こういう展開になることは確定していた。優勝を目指すのなら、対立は必須。ここで歩みを止める程度の覚悟ならば、そもそも復讐など行わなかった。

 野崎もまた、一線を越えた狂人。愛のためにあらゆる犠牲を強要するこの男と、ある意味同類なのだ。

「脳が、脳が震えるぅぅぅ!!!!」

 怒りのボルテージを振り切ったペテルギウスから続々と放たれる魔手。
 星の白銀を携えた野崎は、漆黒の意思をもってそれを迎え撃つのだった。



【8-I パラダイス・パームズ/深夜】
【ペテルギウス・ロマネコンティ@Re:ゼロから始める異世界生活】
[状態]:健康、興奮(大)、盗人(主催者)への怒り(大)、寵愛を汚した野崎への怒り(大)
[装備]:ー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]基本行動方針:脱出優先。必要なら勤勉に優勝を目指す。
1:我が福音書を取り戻すのデス!
2:『見えざる手』を私以外が見ることが叶うなど、あってはならないのデス!
3:あぁ脳が震える震える震えるぅっ!!!
[備考]
野崎春花が『見えざる手』を視認できることを認識しました。
不可視の『見えざる手』は、少なくともスタンド使いなら視認できるようです。
憑依に関する制限は後続の書き手に任せます。

【野崎春花@ミスミソウ】
[状態]:健康
[装備]:スタープラチナのスタンドDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本行動方針:優勝して、過去を改変する。
1:ペテルギウスを殺す
2:『見えざる手』?スタンドなの?
3:NPCってなんだろう……?
[備考]
参戦時期は死亡後です。
スタープラチナのDISCを装備しています。
スタンド使いになった影響か、ペテルギウスの『見えざる手』を視認できるようです。


29 : ◆SvmnTdZSsU :2020/09/05(土) 15:03:06 l3eucuLE0
投下終了です


30 : ◆.EKyuDaHEo :2020/09/05(土) 17:46:16 AUHP8KBE0
投下します


31 : うさぎ好きの人はうさぎのぬいぐるみを殴る...? ◆.EKyuDaHEo :2020/09/05(土) 17:46:55 AUHP8KBE0
「よし、やっと言うこと聞くようになったな」
「これ以上抵抗しても意味ないと思ったからね...」

ヴィータに無理矢理連れて行かれ仕方なく言うことを聞くマサオ

「とりあえずどっか家でも何でもいいから入れるところに行ってみるかな...お!こことかいいんじゃねぇか?」
「あれ?ここってしんちゃんの家だ...」

マサオは見覚えがある家、野原家を見て疑問に思った

「お前の知り合いの家なのか?」
「うん、この家は僕の友達の家なんだ、でも何でこんなところにあるんだろう...」

本来こんなところにあるはずのない野原家が何故こんなところにあるのかはマサオには分からなかった...するとヴィータはドアを開けて中に入ろうとする

「ちょ、ちょっと!勝手に入っていいの?」
「こんな状況で何言ってんだよ、少しでも安全なところで様子を見たり作戦を立てたほうがいいだろ?それに何か武器もあるかもしれないしな」
「も、もう...」

ヴィータの対応にマサオは呆れながらもついていった、そしてリビングで一休みついでにデイパックを確認した

「そういえばデイパック渡されてたよね?ヴィータちゃんは何が入ってたの?ちなみに僕はまだ一つしか見てないけどこのひらりマントってやつが入ってたよ」
「あたしか?そういえばあたしもまだこのアイゼンしか見てねぇな...他は何があるんだ?」

ヴィータはデイパックを漁ると目を見開いてあるぬいぐるみを取り出した

「うさぎのぬいぐるみだ!役には立たねぇかもしれないけどあたしはうさぎが大好きだから嬉しいな♪」
「ヴィ、ヴィータちゃんうさぎ大好きなの...?」
「あぁ!好きだぜ!...何でそんなに怯えてるんだよ?」

マサオはヴィータがうさぎ好きだと聞いて怯えていた...その理由はマサオの友達の一人に桜田ネネという女の子がいる、彼女もまたヴィータと同じくうさぎ好きだ、しかし彼女がよくイライラするとうさぎのぬいぐるみを出し、ぬいぐるみのお腹の部分を殴ってストレスを解消している...マサオは何度もその光景を見ている、そしてネネとヴィータの性格が似ているところからヴィータもうさぎのぬいぐるみを殴るのではと怯えていたのだ...

「へ、変なこと聞くかもしれないけど...イライラした時にそのうさぎのぬいぐるみを殴ったり...する?」

マサオは怯えながらもヴィータに聞いた、するとヴィータは

「はぁ!?あたしはうさぎが大好きなんだぞ!?いくらイライラしてるからって殴るわけねぇだろ!」
「そ、そうだよね!変なこと聞いてごめんね!」

マサオは圧に押され当たり前だよねと言わんばかりに苦笑いした、しかし内心は

(うさぎ好きの人はみんなうさぎのぬいぐるみを殴ってるのかと思ってたけど...ネネちゃんが変わってるだけだったんだね...)

と思っていた、しかしマサオは念のためヴィータを怒らせないようにしようと思ったのであった


32 : うさぎ好きの人はうさぎのぬいぐるみを殴る...? ◆.EKyuDaHEo :2020/09/05(土) 17:47:17 AUHP8KBE0
【G-8 野原家/未明】

【佐藤マサオ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:健康
[装備]:ひらりマント@ドラえもん
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考・状況]:基本行動方針:抵抗を諦めてヴィータについていく
1、何でしんちゃん家が...?
2、ネネちゃんが変わってるだけだったんだね...
[備考]
ひらりマント以外にランダム支給品があと2つありますがまだ確認していません

【ヴィータ@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:健康、興奮(中)
[装備]:グラーフアイゼン@魔法少女リリカルなのはA's、うさぎのぬいぐるみ@クレヨンしんちゃん
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1
[思考・状況]:基本行動方針:主催をぶっとばす
1、うさぎのぬいぐるみは嬉しいな♪
2、うさぎのぬいぐるみを殴る?なに言ってんだミャサオは
[備考]
グラーフアイゼンとうさぎのぬいぐるみ以外にランダム支給品があと1つありますがまだ確認していません

【支給品】

【ひらりマント@ドラえもん】
目の前に迫ってくる物に対してこのマントを振りかざすと、闘牛士のマントの如く、どんな標的でも回避したり跳ね返すことができる。
佐藤マサオに支給。

【うさぎのぬいぐるみ@クレヨンしんちゃん】
ネネちゃんが持っているうさぎのぬいぐるみの1つ(殴られうさぎではなく別のぬいぐるみ)ストレスが溜まるとうさぎのぬいぐるみを取り出し殴ったりする
ヴィータに支給。

【施設】

【G-8 野原家@クレヨンしんちゃん】
野原一家が住んでいる家。赤い屋根に白い壁の一軒家。ちなみにローンが後35年残っている。


33 : ◆.EKyuDaHEo :2020/09/05(土) 17:47:48 AUHP8KBE0
投下終了です


34 : 名無しさん :2020/09/05(土) 19:49:27 Ksuzo7Q60
投下乙です
ああそうか、ヴィータとネネちゃん、うさぎのぬいぐるみ好きって共通点もあったんだ
個人的には、のろいウサギよりなぐられウサギの方がかわいいと思う

ちなみに割とどうでもいい指摘になりますが、野原家の残りローンは35-3=32年だったかと


35 : ◆.EKyuDaHEo :2020/09/05(土) 19:52:40 AUHP8KBE0
>>34
あ、本当ですね!わざわざ指摘ありがとうございます!m(_ _)m修正しておきます

【G-8 野原家@クレヨンしんちゃん】
野原一家が住んでいる家。赤い屋根に白い壁の一軒家。ちなみにローンが後32年残っている。


36 : ◆L9WpoKNfy2 :2020/09/05(土) 22:39:09 lXeL05ZM0
勇者(主人公)、千川ちひろ、レム
予約します


37 : ◆NIKUcB1AGw :2020/09/05(土) 22:40:44 vfxQRz9A0
西片、予約します


38 : ◆7PJBZrstcc :2020/09/05(土) 22:47:57 qa8FVw4Q0
佐藤和真、マリオ、ヨッシー


39 : ◆7PJBZrstcc :2020/09/05(土) 22:48:44 qa8FVw4Q0
>>38
で予約しますってつけるの忘れました。すみません


40 : ◆SvmnTdZSsU :2020/09/06(日) 06:44:57 uhn2sJmM0
投下乙です。
マサオくん…ウサギ好きの女子にミーム汚染レベルで偏見持ってて草。
まぁ普段からネネちゃんに尻に引かれてるからね、しょうがないね。
野原家を移転させる主催を想像したら草。ローンも30年単位で残ってるのに本物ひろし可哀想……。


41 : ◆L9WpoKNfy2 :2020/09/06(日) 15:30:47 xv1OKba.0
投下いたします。


42 : キャベツはどうしたァァァッ!?!? ◆L9WpoKNfy2 :2020/09/06(日) 15:32:32 xv1OKba.0
勇者は走っていた。先ほど聞こえた悲鳴の元へと急ぐために。

「確かこのあたりでしたね」

そして彼が辺りを見回すと、そこには無数のキャベツとそれに追いかけられる二人の女性の姿があった。

「はい!?!?!?!?!?!?!?!」

彼もこれにはさすがに面食らった。何故キャベツが空を飛んでいるのかなど、明らかにおかしいと思える箇所が多すぎたからだ。

ひとまず目の前にいる緑色の女性とメイドさんがピンチであることは分かったので、彼は魔法を使って彼女たちを助けることにした。

「マジックミサイル〜!!」

彼がそう叫ぶと、彼の手のひらから紫色の玉が飛んでいき空を飛んでいたキャベツの何体かを打ち落とすことに成功した。

そうして彼が何回か魔法を使うと、キャベツの群れはどこかへと飛んで行った。

そして彼はいつもの調子で彼女たちに話しかけた。

「大丈夫ですか?大丈夫みたいですね」

自分が助けた人たちに対し大丈夫かと尋ね、そのまま不自然な自問自答をした。

それに対して彼女たちは、ひそひそと話し始めた。

(不自然な自問自答してますけど、大丈夫なんですかねこの人は?)
(きっと変人なんですよ、少なくとも私たちを助けてくれたのですがあまり関わらないほうが良さそうですね)

それは彼の明らかにおかしい言動についてだった。

自分で言った心配の言葉に対し相手の言葉も聞かずに自己完結をしていることについて、アブない感じの人だと彼女たちはそう解釈したのだ。

まあともかく、彼によって当面の脅威を乗り越えられた女性たちはそのことについてまずは感謝することにした。

「危ないところを助けていただき感謝します。私は千川ちひろと言います」

緑色の服を着た女性が感謝の言葉を言った後自己紹介をした。

「私はレムと申します。……すみませんが貴方は?」

青い髪をしたメイドが自己紹介をした後彼に名前を尋ねた。

「私は勇者と言います」

そして彼が自己紹介をすると、彼女たちはまたひそひそと話し始めた。

(自分のことを"勇者"って言ってますよ。そういうキャラなんですかね?)
(やっぱり関わらないほうが良さそうな方ですよ。あの手の人は迷惑かけまくるのが目に見えてます)

彼の自己紹介から更に、彼がアブない人であるという印象を深めたのだ。


43 : キャベツはどうしたァァァッ!?!? ◆L9WpoKNfy2 :2020/09/06(日) 15:33:39 xv1OKba.0
そんなわけで、森を脱出した後何かしらの理由を付けて彼から離れようと考えていたが、突如として開けた場所へと出てきた。

そしてそこには、一軒のログハウスが立っていた。

「ともかく、ひとまず避難できそうな場所がありましたので入ってみましょうか」

ちひろがそう言うと、彼女たちは森の中心にあったログハウスへと向かっていった。

こうして彼女たちがログハウスに入ろうとドアノブに手をかけた瞬間だった。

「ここに住んでいる人は会場内にいないし、カギがかかっていないから入っていいよ」

突然ログハウスから顔が浮かび上がって、彼女たちに話しかけたのだ。

当然のことながら彼女たちは仰天した。目の前の建物がいきなり話しかけてきたからだ。

「ああ、僕のことは気にしなくていいよ。気が付いたらいきなりこんな場所に連れてこられてきただけだから」
「それに自分の意志では一切動けないからね。今の僕はログハウスだし、そもそも木だから動けないことには変わらないけど」

そのログハウスは時折ブラックジョークをかましながら、自分が危険な存在ではないことを彼女たちに伝えていた。

「えっと……じゃあ入ってもいいんですよね?あと、変な事したら……分かってますよね?」

レムは目の前のログハウスに釘を刺しながら入っていった。

そしてそれに続いてほかの人たちもログハウスの中に入っていった。

こうしてひとまず落ち着ける場所を見つけることができた彼らは、自分たちの支給品を確認することにした。

そしてレムのデイバッグからは、彼女が普段使っている武器によく似たものが飛び出してきた。

それは……。

「……どうやらこの子は主催者たちによって勝手に連れてこられ、そしてこのカバンの中に詰め込まれたらしく、とても不機嫌なようです」

犬の魂が宿ったトゲ付き鉄球だった。それはどうやら『トゲワンワン』というらしく、主催者たちに勝手に連れてこられてとてもストレスが溜まっているようだった。

そしてそのトゲワンワンに対しレムは自分たちの目的などについて話しかけていた。

「私たちは主催者に対抗するつもりですので、もしよろしければこのまま私の武器になってくれませんか?」

そしてトゲワンワンはレムのこの提案に頭を縦に振り、そのまま彼女の武器として一緒に戦ってくれることを了承してくれた。

そして千川ちひろには……。

「あら、コロッケが入っていました。せっかくキャベツも何玉かあることですし、まずは皆さんで腹ごしらえでもしませんか?」

丁度支給品の中に料理が入っていたので、彼らはそれを食べた後今後どのような行動をとるかを話し合うことにした。

しかしそのコロッケを食べた瞬間、ちひろは驚くことになる。何故ならば……

(これ、コロッケじゃなくて……カニクリームコロッケでした……)

実は自分に支給されていたのが「コロッケ」じゃなくて「カニクリームコロッケ」だったからだ。

(キャベツがあって、コロッケではなくカニクリームコロッケ……何でしょうこの釈然としない感じは…)

それによりちひろは食事中、今後の方針ではなく別のことを考えることになった……。


44 : キャベツはどうしたァァァッ!?!? ◆L9WpoKNfy2 :2020/09/06(日) 15:34:11 xv1OKba.0
【I-3 デクの山ログハウス/深夜】
【勇者(主人公)@ファイナルソード】
[状態]:健康、カニクリームコロッケとキャベツを食べている
[装備]:令嬢剣士の家宝の宝剣と盾@ゴブリンスレイヤー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1、キャベツ(3玉)@この素晴らしい世界に祝福を!
[思考・状況]基本行動方針:勇者として主催者を倒します。
1:襲われている人を助けます。
2:主催者はどこに居ますか? この会場のどこかにいますよ
3:この催しは神聖な木の試練ですか?
[備考]
 支給品は確認済み。
 参戦時期は神聖な木と会話した直後。
 レムの話から、鬼族の女性(パワー)に関する情報を得ました。


【千川ちひろ@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]:健康、疲労(中)、カニクリームコロッケとキャベツを食べている
[装備]:ー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1(確認済)、カニクリームコロッケ(13/25個)@現実
[思考・状況]基本行動方針:死にたくないが、人も殺したくない。
1:ひとまず助かった……?
2:あ……このキャベツって普通に食べれるんですね。
3:自問自答してますけど、大丈夫ですかこの人(勇者)は……?
[備考]
 勇者(主人公)のことを、ちょっとおかしい人だと思っています。

【レム@Re:ゼロから始める異世界生活】
[状態]:健康、カニクリームコロッケとキャベツを食べている
[装備]:トゲワンワン@スーパーマリオくん
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2(確認済)
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いには乗らず、脱出方法を探る。
1:スバル君は無事でしょうか……
2:あの女(パワー)は鬼族の生き残りなの?
3:この人(勇者)は明らかにアブない人みたいですし、早めに離れるべきですね……。
[備考]
 参戦時期は『イタダキマス』の後。
 パワーを危険人物と認識。彼女を鬼族と勘違いしています。
 勇者(主人公)のことを、パワーとは別の意味で危険な人物だと思っています。


【ランダム支給品】

【カニクリームコロッケ@現実】
 カニの身をほぐしたものをホワイトソースに混ぜて俵形に成形し、そのあと凍らせて衣をつけてから油で揚げた料理。

 この殺し合いでは25個支給されており、当然ながら付け合わせは付いていない。


【トゲワンワン@スーパーマリオくん】
 その名の通り全身にトゲのついたワンワンで、振り回したり投げつけたりして攻撃する。
 本来はクッパ専用の武器だが調整などにより(彼を振り回せるだけの腕力があれば)誰でも使えるようになっている。

 なお本家ゲームである『スーパーマリオRPG』では顔が付いておらず身体から飛び出すトゲのみで攻撃をするが、
 『スーパーマリオくん』に出た個体にはおなじみのあの顔が付いており、上記のほかに相手にかみつく攻撃も追加されている。
 (※スーパーマリオくん51巻に登場)


【施設】

【I-3 デクの山ログハウス@ペーパーマリオ オリガミキング】
 デクの山のふもとにある、キャンプ場の管理人が生活しているログハウス。

 山の長老である「デクじい」を切り倒して作られたためか自我を持っており、管理人の不在などを連絡してくれる。

 なお中には暖炉と簡易的な棚、あとデクじいのフィギュアが入った宝箱(現在は空っぽ)くらいしかない。


45 : ◆L9WpoKNfy2 :2020/09/06(日) 15:34:39 xv1OKba.0
投下終了です

ありがとうございました。


46 : ◆L9WpoKNfy2 :2020/09/06(日) 15:42:16 xv1OKba.0
申し訳ございません。

>>44に書かれていた千川ちひろの支給品の数に誤りがありました。


[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1(確認済)、カニクリームコロッケ(13/25個)@現実



[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2(確認済)、カニクリームコロッケ(13/25個)@現実

に修正をお願いします。


47 : ◆SvmnTdZSsU :2020/09/06(日) 18:42:44 uhn2sJmM0
投下乙です。
飛んだり襲ってきたりするキャベツを普通に食べるのか…(困惑)
勇者、魔物に追い詰められた女性二人を助けた事実は素晴らしいのですが、自問自答のせいで不審者感が増してて普通にヤベー奴ですね。
普段の武器との共通点もあり、ワンワンとレムの相性は抜群。
ちひろさんのカニクリームコロッケへの釈然としなさに草生えました。
デクの山ログハウス、意思持ちの建物というのはまた独特。安全な拠点になり得るのか興味深いです。


48 : ◆SvmnTdZSsU :2020/09/06(日) 18:44:10 uhn2sJmM0
投下します


49 : 明かされる真実 ◆SvmnTdZSsU :2020/09/06(日) 18:45:02 uhn2sJmM0
 人類を守るか、否か。
 その決断を下すため、とりあえずは伊月の護衛を決心したリルルは、伊月と情報交換を行っていた。

「そういえばあなた、支給品の確認はしたの?」

 リルルの言葉に、伊月は罰が悪そうに苦笑する。
 バトロワという最高のネタになる環境と、宇宙人でアンドロイドなリルルという未知の取材相手に興奮するあまり、肝心の支給品に関してはすっかり頭から抜け落ちていたようだ。

「はい!えっと……私の支給品はーー」

 慌ててデイパックを確認する伊月。彼女の鞄から転がり落ちるアイテム。
 中身は分厚い雑誌、奇妙なDISC一枚、一枚のカードだった。

「この円盤は……『ヘブンズ・ドアーのDISC』? うわ凄い! 適合する人の頭に指すと超能力?が使えるようになるって書いてます!」

 同封されていたメモ書きを読んだ伊月は、超能力というワードに興奮を押さえきれないようだ。

「能力は……『人の記憶や能力を本にして読んだり、書き換えることが出来る』らしいですよ!あ、でも自分で描いた漫画を見せて、かつ波長が合わないと発動できないみたいです……」

「……私には使いこなせないアイテムね。あなたなら使えるんじゃない?」

 リルルの言葉に、伊月はおっかなびっくりといった様子でDISCを頭に差し込んでみる。
 DISCが伊月に適合するかは賭けだったが、弾かれるような事もなく、問題なく装備できた。

「うわぁ! 本当に入った! 凄いですね!」

 目を輝かせた伊月は、次はなんだと期待を胸に、もうひとつの支給品であるカードを手に取った。

「このカードは……防御スペルカードっていうらしいですね。一定時間攻撃力を10%あげてくれる、って書いてます!」

「……?まって、おかしくない?防御スペルカードなのよねそれ?」

 どこか食い違う説明文にツッコミをいれるリルル。

「? でも説明書にはそう書いてますよ」

 まるでファンタジーみたいですね!そう未知のアイテムにはしゃぐ伊月は、矛盾を特に気にしていないようだった。
 好奇心の赴くままな伊月に呆れるリリムだったが、本人が気にしていないのなら構わない。
 最後に残ったのは一冊の雑誌だったが、リルルは困惑したように伊月に訪ねる。

「この雑誌は……あなたの言っていたジャンプ、よね」

「ええ、ごく普通の週刊少年ジャンプですね! あっホワイトナイトも載ってますよ!」

 是非リルルさんも読んでみてください!そう言われ、差し出された雑誌を手に取るリルル。パラパラと読み進めていくと、件の作品のページに到達する。
 何かを期待するかのような伊月の視線を感じながら、ページを読み進めていく。


50 : 明かされる真実 ◆SvmnTdZSsU :2020/09/06(日) 18:46:42 uhn2sJmM0

ーーー

 やがてホワイトナイトを読み終えたリルルは、期待を良い意味で裏切られた。

(これは……)

 これは凄い。漫画など殆ど読んだことはないが、『ホワイトナイト』からは、そんなリルルでさえも感じる未知の迫力があった。

「……漫画は良くわからないけど、この作品はかなりの傑作だと思う」

「ーーっ! ええ、ええ! そうでしょう! ホワイトナイトは、私と佐々木先生の目指す作品そのものなんです!」

 自身の同類が世に出した作品を誉められ、無邪気に喜ぶ伊月。対するリルルの表情はどこか痛ましげである。
 やがてリルルは、伊月の見落としていた情報を開示する。

「でもこの雑誌、日付がおかしいわよ?」

「え?」

 戸惑う伊月に対し、リルルが指差すのは雑誌の年号であった。
 慌てて確認すると、確かに日付がおかしい。リルルが伊月から聞いていた年代と10年ほどずれている。
 それ自体は普通だ。宇宙人でアンドロイドのリルルを参加者として招くような存在なら、未来のアイテムを支給品として配るくらいはするかもしれない。

 問題なのは、10年後の雑誌にホワイトナイトの一話が掲載されている点だ。
 少なくとも、ホワイトナイトが世に出たのはこの日付の10年前だ。
 困惑する伊月に、リルルは無自覚ながらもさらなる追い討ちをかけた。
 
「それに…作者も佐々木という男ではなく、貴女の名前なのだけれど…」

 週刊少年ジャンプに掲載されているホワイトナイト、その作者は『佐々木哲平』ではなく『アイノイツキ』だった。
 ハッキリと印刷された文字に、伊月は盛大に動揺する。

「え?え?あれ?……」

 困惑する伊月を他所に、リリムはとある仮説を思い付いた。
 恐らく、佐々木哲平はタイムマシンを使ったのだ。何らかの手段で時を遡る手段を得た佐々木は、未来のジャンプからホワイトナイトを盗作した。
 しかも本来の作者の伊月をアシスタントとして雇用するとは、どれだけ性格が捻じ曲がっているのか、リルルには想像もつかない。

(……酷いわね)

 あの少年達と違い、悪意ある手法で歴史を歪めた男、佐々木。リリムの心にはっきりと嫌悪感が芽生えた。


51 : 明かされる真実 ◆SvmnTdZSsU :2020/09/06(日) 18:47:24 uhn2sJmM0
【2-H/市街地 未明】
【藍野伊月@タイムパラドックスゴーストライター】
[状態]健康 好奇心 混乱(大)
[装備]ヘブンズ・ドアーのスタンドDISC
[道具]基本支給品、防御スペルカード@ファイナルソード、10年後の週刊少年ジャンプ@タイムパラドックスゴーストライター
[思考・状況]
基本行動方針:リルルと共に、この世界で漫画の題材になりそうなものを探す
1:リルルさんってすごい人?ですね
2:え?え?え?
3:スタンド! すっごくネタになります!
[備考]6話終了後。
ヘブンズ・ドアーのスタンドDISCを装備しています。

【リルル@ドラえもん のび太と鉄人兵団】
[状態]健康 佐々木哲平への嫌悪感(大)
[装備]なし
[道具]基本支給品 ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本行動方針:藍野伊月を守りながら、人間を守るべきか否か決める。もし守るべきでないなら……?
1:佐々木哲平……相当な悪人ね
2:スタンド……ひみつ道具かしら?
[備考]
アイノイツキとの会話で、彼女の過去、現在を知りました。
処刑されそうになっていた所を、ドラえもん達に助けられた直後からの参戦です。
原作版、羽ばたけ天使たち版どちらを参考にしても問題ありません。
佐々木哲平をタイムマシンを悪用した犯罪者だと認識しました。ホワイトナイトを盗作したと判断しています。

【防御スペルカード@ファイナルソード】
 ファイナルソードのアイテムの一つ。
 説明文には『攻撃力を一時的に10%上げる』とある。
 同種のアイテムとして「攻撃スペルカード」があり、そちらの説明文も『攻撃力を一時的に10%上げる』となっている。どういうこっちゃ。
 あくまでテキストのミスのようで、使用するとちゃんと防御力が10%アップする。

【ヘブンズ・ドアーのスタンドDISC@ジョジョの奇妙な冒険】
【破壊力 - D / スピード - B / 射程距離 - B / 持続力 - B / 精密動作性 - C / 成長性 - A 】
 第4部「ダイヤモンドは砕けない」に登場する漫画家、岸辺露伴のスタンド。
 人の記憶や能力を本(辞書)にして読んだり、書き換えることが出来る。
 対象の身体のどこかの部位が薄く剥がれるような形で「本」のページになる。  
 「本」には対象の肉体や精神が記憶している「人生の体験」が記されており、記述を読むことで相手や相手の知っている情報を知ったり、ページに書き込むことで相手の行動・記憶を本体の思うとおりに制御することも可能となる。
 初期状態では自分で描いた漫画を相手に見せ、なおかつ相手と波長が合わないと発動できないが、成長すればその限りではない。

【10年後の週刊少年ジャンプ@タイムパラドックスゴーストライター】
 佐々木哲平の家に落ちた雷によって、タイムマシンと化した電子レンジから出現した10年後の週刊少年ジャンプ。
 新連載・アイノイツキ作ホワイトナイトが掲載されている。


52 : ◆SvmnTdZSsU :2020/09/06(日) 18:48:30 uhn2sJmM0
投下終了です


53 : 名無しさん :2020/09/06(日) 21:29:55 7bhJiRuc0
投下乙です!…ってとんでもねえネタバラシされてるう!
これアイノさんどうなるんだ…


54 : 名無しさん :2020/09/06(日) 22:06:31 7bhJiRuc0
地図、地名が読みにくい(拡大してもつぶれぎみ)のとそこがどういう場所なのかの簡単な情報がほしい


55 : ◆L9WpoKNfy2 :2020/09/06(日) 22:36:25 xv1OKba.0
投下いたします。

先に言いますと、島村卯月のプロデューサーやファンの方々に対して残酷な描写を含んでおり、
またキャラクターの性格改変等を含んでおりますので、問題があれば破棄をお願いいたします。


56 : 雪の女王の微笑 ◆L9WpoKNfy2 :2020/09/06(日) 22:37:48 xv1OKba.0
島村卯月は走り続けていた。先ほどのゴブリンたちや奇妙な言葉を話し続ける女性から逃げるために走り続けていた。

(怖い……怖い……怖い!)

今の彼女は恐怖におびえており、その顔にはいつもの笑顔はどこにもなかった。

そうして走り続けたことにより彼女の足は限界を迎え、そのまま転んでしまった。

そしてその時、彼女のデイバッグから氷を思わせるデザインをしたビンが飛び出してきた。

卯月は転がり落ちたそのビンと、それに付属していた説明書を読んだ。

その説明書の中には「飲んだ人の身体を、理想のボディに作り変える」と書かれていた。

正常な判断力があればおかしいと思い絶対に飲まないはずなのだが、彼女はこの異常な状態に疲弊しておりそんな判断力は残っていなかった。

そして彼女は折れてしまった鼻を直したいと思ってその怪しい薬を飲んだ。飲んでしまったのだ。

彼女が怪しい薬を飲みほした後、その身体には大きな変化が現れた。

まず彼女の髪が次第に白くなっていき、茶色がかった銀髪へと変化した。

そしてそのあと、彼女の肌が雪のように白くなっていった。

そうやって身体の変化が終わった後、彼女は突然頭を押さえ始めた。

「あ、頭が割れるように痛い!………わたしは……わたしはだれなんですか!?」

なんと、先ほどの怪しい薬の副作用として彼女は記憶を失ってしまったのだ。

そして彼女の叫び声とともに、再び彼女の周りにはゴブリンたちが集まってしまった。

彼らは頭を押さえている卯月に対して舌なめずりをしていた。

彼らは逃げ続ける彼女をずっと見ていた。そして、彼女が動けなくなる絶好の機会を待っていたのだ。

そうして絶好の機会が現れたので、彼らは卯月の前に姿を現したのだ。

しかしそんな彼らに対し、頭を押さえるのをやめた彼女は冷ややかな目でそれを見つめていた。

まるで相手を凍てつかせるような冷たい目だった。

そして彼女は自分のデイバッグから、先端が雪の結晶のようになっている杖を取り出して彼らへと向けた。

そしてその瞬間、彼女の周りに集まっていたゴブリンたちの身体が凍り付いた。

彼らは凍り付いた自分の身体に驚いていると、突如として彼らの頭上に巨大な氷が降ってきて彼らはそのまま砕け散ってしまった。

そうして砕け散ったゴブリンたちの身体を、彼女は見下ろしていた。

いや、厳密には彼女は死んだゴブリンたちに何の関心も寄せておらず、その死体たちを見下していたのだ。

「ふんっ……全く、汚らわしいですね。なんでこのような生き物が存在するのか不思議です」

彼女は吐き捨てるかのようにそう言った。その姿に彼女が持っていたはずの優しさなど、どこにも存在しなかった。

「しかし……わたしはだれなんでしょうね?……確か、ここは殺し合いの会場で……ここにいるみんなを殺せばどんな願いも叶えてくれるんでしたよね?」

そして卯月は、自分の失われた記憶についてたどりながら、ここがどのような場所でどのような状況にあるかを整理していた。

「では……優勝して自分の記憶を取り戻しましょう。……今はそれしか方法がありませんし」

自分がたどった記憶からこの殺し合いと優勝した際の報酬のことを思い出し、彼女は失われた記憶を取り戻すべく殺し合いに乗ることにしたのだ。


―― こうして太陽のような笑顔をした『シンデレラ』は消え去り、代わりに氷のように冷酷な『雪の女王』がこの地に誕生したのだった……。


57 : 雪の女王の微笑 ◆L9WpoKNfy2 :2020/09/06(日) 22:38:57 xv1OKba.0
【7-H 砂浜/深夜】
【島村卯月@アイドルマスター シンデレラガールズ】
[状態]:『禁断の薬』による記憶喪失および性格・容姿の変化
[装備]:フリーズロッド@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1
[思考・状況]基本行動方針:自分の記憶を取り戻すべく、優勝する。
1:頭が…痛い…。わたしは……わたしはだれなんですか!?
2:ここにいるみんなを殺せば……わたしの記憶は戻るんでしょうか……?
[備考]
『禁断の薬』を飲んだことにより記憶喪失となっています。またそれに伴い冷酷な性格に変化しています。
そして薬の効果により全身が"氷の魔法使い"として作り替えられたため傷が完治しております。


【ランダム支給品】

【禁断の薬@モンスター烈伝オレカバトル】
 ある人魚が「愛する人と一緒にいたい」と思い、母である『氷の魔皇』から盗んだ薬。

 しかし人間になる代償として『愛する人との記憶』と『優しい心』を奪われ、そのまま母に洗脳され人類の敵となる結果を招いた。

 そして最終的に「愛する人」が彼女たちを倒すために怪物となり『氷の魔皇』ともども彼女を殺した後、
 怪物となった代償として次第に人の心を失っていき、その結果新たな魔王として君臨するなどありとあらゆる悲劇の引き金となった。

 なお原作では死ぬ間際に『記憶』と『優しさ』を取り戻したが、今回の殺し合いではどうなるか不明(後続の書き手にお任せします)。


【フリーズロッド@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド】
 ヘブラ山山頂の氷を精錬して作られたといわれる超低温の冷気を広範囲に発射する魔法の杖。

 本来は込められた冷気が尽きると砕け散り使用不能となるのだが、"氷の魔法使い"となった卯月は自在に冷気を生み出すことができるため
 実質無制限に使用可能となっている。


58 : ◆L9WpoKNfy2 :2020/09/06(日) 22:39:33 xv1OKba.0
投下終了です

ありがとうございました。


59 : ◆OmtW54r7Tc :2020/09/07(月) 09:27:40 kiICj82o0
投下します…が、その前に
時間表記について、この調子だとルール上示された未明と、ルール外の深夜が入り乱れるので、統一した認識を周知した方がいいかと思います
後、今更気づいたことなんですが、放送6時間ごとに対して時間表記が4時間ごとというのは、時間の進め方としてややこしいのではと思います

とりあえず今回の投下作はルール表記にあるように未明とします


60 : いつまでも男の子じゃいられない ◆OmtW54r7Tc :2020/09/07(月) 09:29:17 kiICj82o0
「ミルドラース…これが新たな闇……新たな魔王か」

バラモス、ゾーマ。
かつて倒した2人の魔王に続く第3の魔王。
その存在に、アリアハンの勇者アルスは闘志を高める。

「ねえアルス、ちょっと」

そんなアルスに声をかけるのは、彼にそっくりな女の子。
もう一人のアリアハンの勇者、アリスだ。

「どうかしたのか、アリス?それは…放送で言ってた名簿か」
「うん、そうなんだけど…ちょっと気になる名前があって」
「知り合いの名前でもあったか?」

アルスとアリスは同一人物であり、ほとんど同じ経験をしているのだが、違うところもあった。
それは、旅の仲間。
ほとんど同じ旅路を経験しながら、旅をしたメンバーについては全く違っていたのだ。

「ううん、知り合いらしい名前はなかったんだけど…これ」
「なになに…」

アリスが指さした先に会った名前、それは…


勇者
勇者


「…え?同じ名前…それも『勇者』が二人?これってまさか、僕とアリスの名簿上の名前なのか?」
「いや、私とアルスの名前は上の方にちゃんとあるよ」
「ほんとだ。じゃあこれはいったい…」

別に自分たち以外に勇者がいることはそんなに驚きはしない。
アルスたちの時代において、勇者という存在は決して唯一無二の存在ではないのだから。
しかし、名簿上の名前が『勇者』、それも二人とは、一体どういうことなのだろう。

「…まさか僕たちと同じく同一人物なのか?」
「…かもね。『沖田総司』『沖田総悟』みたいに私たちと同じく似た名前の参加者もいるし、あのミルドラースって奴、そういう人たちを意図的に集めたのかも」
「どうしてそんなことを…」
「それは分からないけど…ま、そんなことどうだっていいじゃない」
「どうでもいいって…そんなあっさりと」
「分からないことを考えたって仕方ないわよ!つまりは、あのミルドラースって魔王を倒せば全て解決なんだから」
「脳筋思考だなあ…」
「むっ、なによ、腕相撲負けたこと根に持ってんの?」
「…そこは触れないでくれ。まあでも、確かにアリスの言う通りかもな。ここでいつまでも悩むよりも、動いた方がいい」
「そうそう、それじゃ出発しましょう!」


61 : いつまでも男の子じゃいられない ◆OmtW54r7Tc :2020/09/07(月) 09:30:02 kiICj82o0
そう言ってアリスは、意気揚々と出発しようとする。
が、それに待ったをかけたのはアルスだ。

「なによ、早く行きましょう」
「…どこに?全く知らない未知の場所で、目的地も決めずに歩くのはどうかと思う」
「うっ……し、知らない場所なら、なおのこと歩いて覚えたほうがいいじゃない」
「ほんとに脳筋思考だな…」
「む〜、それならアルスはどっか当てはあるの!?」

ムキになって尋ねるアリスに対し、アルスは少し腕を組んで考え込むと、答えた。

「…ミルドラースを倒すにしても、まずは仲間が必要だ。幸か不幸か、僕もアリスも元の世界の仲間はいないみたいだけど…それでも、この場所にも打倒主催を志す参加者はいるはずだ」
「そうね、さっき名簿で見た二人の勇者とか」

アルスもアリスも、魔王を倒した勇者ではあるが、それは決して一人で成し遂げたことではない。
頼りになる仲間の存在があったからこそ、彼らは世界を救うことができたのだ。

「でも、仲間を探すにしたって、当てはあるの?」
「…正直言うと、ない。参加者は、この会場全体に、散り散りになってるだろうしね。だけど…僕らが『仲間探し』をする場所といったら…あそこしかないだろう」
「!…ああ、なるほどね」

勿論、この会場のそれがそういう役割を果たしてるわけではないだろう。
だが、この二人にとって、仲間を探す場所といえば…あそこしかない。

「幸い、ここは建物がいくつか見えるし、探せば、それらしい場所が見つかるかもしれない」
「そうね…行きましょう。私たちの旅の始まり…『酒場』へ!」


62 : いつまでも男の子じゃいられない ◆OmtW54r7Tc :2020/09/07(月) 09:30:51 kiICj82o0
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

『私はこの日のために勇敢な男の子の様に育てたつもりです』

それが、母の言葉だった。
その言葉通り、アリスは男の子の様に育てられた。
小さい頃から男の子とばかり遊んで、女の子の輪に入るようなことはなかった。
冒険の旅に出てきてからも、アリスは自分のことを女だとは思わず、奔放な男の子のように振る舞っていた。
そのことに、何の疑問も問題も、ないはずだった。

しかし、ゾーマは言った。
再び闇は現れると。
その頃には自分は、年老いていきてはいないだろうと。

そんなことがあってから、周囲の自分への態度は大きく変わった。
ラダトームの王様や仲間たちは、勇者の血を残すためだと、自分に見合い話を持ち込んでくるようになった。
それがアリスには、たまらなく嫌だった。
まるで、自分が女扱いされてるようで。

世界の為に、血を残すことが重要だということは、少しおつむの足りないところがあるアリスにだって、分かっていた。
それでもアリスは、自分のことを女として認めたくなかった。
そして彼女は、アルスが指摘したように脳筋だった。
故にアリスは、見合い相手が現れると、ことごとくボコボコにしてやった。
そしてこう言うのだ。

『私は、私より強い…私より男らしい人じゃないと、認めないから。出直してきて』


63 : いつまでも男の子じゃいられない ◆OmtW54r7Tc :2020/09/07(月) 09:31:38 kiICj82o0
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

アリスは、チラリと隣を歩くアルスの横顔を見る。
腕相撲でこそ負けたものの…自分の同一存在である以上、やはり自分と同じくらいに強いのだろう。
それに、同じ勇者同士ということは、勇者の血を残すという意味においても、非常に有用で…

(……いやいやいやいや!何考えてるの!自分だよ!?そんなの正気の沙汰じゃないわ!)

「…アリス?どうしたんだ?」
「うひゃ!?い、いきなり顔近づけないでよ!」
「いや、なんか様子がおかしかったから…」
「な、なんでもないから!」
「それならいいんだが…」

アルスは不思議そうな顔をしつつ、再び前を向いて歩き出した。
そんなアルスに対し、アリスは顔を赤くしつつ…尋ねた。

「ねえアルス。あなた、恋人とかいるの?」
「へ!?い、いきなりなんだ」
「いや、世界を救った勇者様だし、さぞかしモテるんだろうなって」
「そっちも勇者だろ…うーん、いないな。告白されたことはあるけど、よく知らない人だから断ってるし。仲間内でも…特にそういう関係にはならなかったし」
「ふーん」

アルスの言葉を聞いて何故かホッとしてしまった自分に、アリスは内心で戸惑った。


64 : いつまでも男の子じゃいられない ◆OmtW54r7Tc :2020/09/07(月) 09:32:35 kiICj82o0
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

程なくして二人は、酒場…かは分からないが、それらしい建物を見つけたので、中に入った。
そこには…

「…あら?こんばんは」

少し顔を赤くしたほろ酔いの女性と。

「う〜、頭いてえ…」

二日酔いで頭を抱えるダメ人間と。

「う〜、むにゃむにゃ…」

泥酔して眠っている少女がいた。


殺し合いとは全く違う方向に凄惨なその光景を前に、アルスとアリスはしばらく唖然としていた。


65 : いつまでも男の子じゃいられない ◆OmtW54r7Tc :2020/09/07(月) 09:33:20 kiICj82o0
【G-8 酒場/未明】

【アルス(男勇者)@ドラゴンクエスト3】
[状態]:健康
[装備]:王者の剣@DQ3
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]基本行動方針:勇者として、殺し合いを止める
1:これはひどい…
2:アリスと行動する
[備考]
性格は不明ですが少なくともアリスよりは力が下です
名簿上の二人の勇者や沖田などの存在から、同一人物を意図的に集めたのではと考えています


【アリス(女勇者)@ドラゴンクエスト3】
[状態]:健康
[装備]:ロトの剣@DQ1
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]基本行動方針:勇者として、殺し合いを止める
1:なんなのこの人たち…
2:アルスと行動する
[備考]
性格は【おとこまさり】です。
名簿上の二人の勇者や沖田などの存在から、同一人物を意図的に集めたのではと考えています。

【坂田銀時@銀魂(アニメ版)】
[状態]:二日酔い
[装備]:洞爺湖@銀魂
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考・状況]基本行動方針:主催者の打倒。殺し合いには乗らない。
1:あ゛〜、頭痛ぇ。完全に二日酔いだよオイ。
2:新八や神楽、呼ばれてねえだろうな?
3:女神だぁ?お前よりこっちの人(高垣楓)のほうがよっぽど女神に見えるぞ。
[備考]
二日酔いによる頭痛に悩まされております。
アクアを女神だと信じていません、というか痛い人だと思っています。

【アクア@この素晴らしい世界に祝福を!(アニメ版)】
[状態]:酒の飲みすぎによる悪酔い、熟睡
[装備]:―
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]基本行動方針:主催者を一発ぶん殴る。殺し合いには乗らない。
1:むにゃむにゃ…
2:主催者を一発ぶん殴って、元の世界に帰る。
3:カズマ達も呼ばれてるか、少し気になる。
[備考]
施設内にあった大量の酒を飲みまくったせいで悪酔いしています。

【高垣楓@アイドルマスター シンデレラガールズ】
[状態]:ほろ酔い
[装備]:―
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いには乗らない。死にたくない。
1:あら、また誰か来たわね。
2:他に呼ばれている子たちがいないか心配。
3:飲みすぎたのか、少し頭がクラクラします。
4:この子(アクア)、蘭子ちゃんみたい。
[備考]
施設内にあった酒を少し飲んだため、若干酔っています。
アクアのことを、そういう設定のアイドルだと思っています。


66 : ◆OmtW54r7Tc :2020/09/07(月) 09:35:08 kiICj82o0
投下終了です


67 : ◆SvmnTdZSsU :2020/09/07(月) 12:11:07 kCPifrxY0
・時刻についての調整について
>>59で指摘されましたので、時刻について修正・調整を行います。ご不便をお掛けして申し訳ないです。

【ゲームスタートの時刻】
深夜0:00

【放送について】
初回放送(深夜1:30)
以下は通常ルーチンの放送時刻。

深夜0:00

朝6:00

昼12:00

夜18:00

以上の時間に主催陣営が禁止エリアと死亡者の告知を行います。
初回放送の次は朝6:00となります。

【時間表記について】
深夜:0〜2
黎明:2〜4
早朝:4〜6
朝:6〜8
午前:8〜10
昼:10〜12
日中:12〜14
午後:14〜16
夕方:16〜18
夜:18〜20
夜中:20〜22
真夜中:22〜24


68 : ◆OmtW54r7Tc :2020/09/07(月) 12:30:18 kiICj82o0
了解です
それでは、自作は深夜にしておきます


69 : ◆.EKyuDaHEo :2020/09/07(月) 12:41:26 wwsdJpiM0
自分も変えておきます
「うさぎ好きの人はうさぎのぬいぐるみを殴る...?」の時刻を【未明】から【黎明2:00】に変更します
時刻:変更前【未明】
変更後【黎明2:00】


70 : ◆oUF53W6sMM :2020/09/07(月) 15:31:50 d1J8NqSw0
ではこちらの投下話も時間帯を黎明にします


71 : ◆L9WpoKNfy2 :2020/09/07(月) 18:17:02 ZXRT8WqM0
>>67
時間表記の件、かしこまりました。

それでは私が今まで投下してきた作品の時刻を以下の形に修正いたします。

「毎度おさわがせします」:
 【深夜】 ⇒ 【深夜 1:00】

「キャベツはどうしたァァァッ!?!?」:
 【深夜】 ⇒ 【黎明 3:00】
「雪の女王の微笑」:
 【深夜】 ⇒ 【黎明 2:30】

以上、お手数おかけしますがお願いいたします。


72 : ◆OmtW54r7Tc :2020/09/07(月) 19:19:41 kiICj82o0
度々すみません
「いつまでも男の子じゃいられない」、他の作品に合わせる形で深夜にしたのですが、どうも黎明で問題なさそうな流れなので黎明にします


73 : ◆vV5.jnbCYw :2020/09/07(月) 22:32:46 rmfyI3Ig0
投下します。


74 : 震激の巨人 ◆vV5.jnbCYw :2020/09/07(月) 22:33:50 rmfyI3Ig0
持たざる者にも2種類いる。


さらに取り上げられるか、誰かから奪うか。

大半は前者だが、一部は強い力を手に入れて、後者になる。


(あり得ない……あり得ないあり得ないあり得ないあり得ない……!!)
全力でクレマンティーヌは、「剛田商店」と看板がある建物の中へと逃げた。
逃げてから半時間以上経つ今でさえ、震えが止まらない。


闇に浮かぶ、眼光輝く骸骨。
自分を締め殺した時と変わらない表情。

今でも、その瞳がすぐ近くで自分を見つめているのではないかと、疑り深くなってしまう。
建物内に隠れても、居ても立っても居られなくなる。
何かないのかと暗い建物の中、壁を手探りで進むと、どこか出っ張りがあった。


それを押すと、部屋に明かりが付く。
どういうからくりなのかは知らないが、近くに敵がいることを恐れながら暗闇を歩くよりかはマシだと判断した。

建物の中には誰もいないことを確認して、辺りを見渡す。
雑貨屋だからか、明日には店頭に並ぶはずの品物が段ボール詰めされて、部屋の端に置いてある。

一番奥の、趣味の悪い衣装を纏った小太りの小学生のポスターがある部屋に入り、そこに座った。


ひとまず、まだ開けていない支給品を確認することにした。
ひょっとすればまだ何か強い武器があり、あの男に逆転の術が残されているかもしれないという望みを胸に、袋を探る。


(ひとまず……これさえあれば……。)
支給品からレイピアを手に取り、2,3度突きの動作を取る。
最低限の身を守る程度の武器が支給されていたことにひとまず安堵した。
彼女が生前に愛用していたスティレットと同じ、突きに特化したデザインだったのでなおさらだ。
他にはあまり使えそうな物はなかったので、説明書を見ることなく袋に仕舞った。


支給品を調べ終わると、辺りに敵がいないことを確認して、廊下の段ボールを一つずつ物色していこうとした。
だが、彼女は自分を殺した相手ばかり気になっていたため、存在を忘れていた。
明かりの外側の、別の敵の存在に。


「なッ!?」
地面が大きく揺れる。
(何よこれ!?冗談じゃない!!)
早くも天井が崩れ始める。もたもたしていると、あっという間に家の下敷きになってしまう。

慌てて店の外へ出るが、店を出たところに、底が見えないほど深く大きな穴が開いていた。
それは、まさに人を飲み込まんとする巨人の口。

(っっッ!?)
それは店を出た直後のクレマンティーヌを飲み込み、すぐに口を閉じて咀嚼しようとする。


「ざっけんな馬鹿野郎!!『流水加速』!!」
しかし、彼女はタダで巨人に喰われることはなかった。
誰かに殺されるならまだしも、地割れに飲まれてお陀仏なんてシャレにならない。
慌てて自らにスピード向上の武技をかけ、地割れの両端を蹴飛ばしながら、地上へと駆け昇る。

口が閉じられる直前に、彼女は脱出に成功する。
地上に出て顔を上げると、目の前には一人の男が立っていた。


75 : 震激の巨人 ◆vV5.jnbCYw :2020/09/07(月) 22:35:01 rmfyI3Ig0
「へえ……そこにいたのか……。」
命からがら地割れから脱出した彼女を、黒髪のオールバックの男が鋭い目で見つめる。


立体起動装置で空から観察をして、不自然に一つだけ灯りの付いている家をエレン・イェーガーが見つけたのは、クレマンティーヌが家の中を物色していた時のことだった。
自分の場所を知らせるなんて罠なのか、はたまた二進も三進も行かなくなった馬鹿なのかわからないが、地震で家ごと崩せばいいと回答を出した。


案の定、中から人が出てきたが、地割れというトラップを家の前に張っておいた。
最も、エレンが意図してやったことではなく、家を崩した地震を起こした余波であったが。


(コイツが地震を起こした?どう見ても人間にしか思えないコイツが?)
家一つ容易に破壊し、地割れまで引き起こしたことをタダの人間がやったという事実を、どうしても受け入れられなかった。


「そう何度も何度も殺されてたまるかよ!!『疾風走破!!』」
クレマンティーヌは猛然とエレンに向かって疾走を始めた。
それに対しエレンは蹴りを打ち込もうとするも、体をひねって躱し、レイピアを首めがけて突き付ける。


(殺す!!コイツだけでも、殺してやる!!)


致命傷こそは与えられなかったが、エレンの首から一滴、赤い液体が流れた。



「どうした!!守ってばかりかよ!!」
勢いに乗る彼女は、突きを繰り返す。
(コイツ……中々素早いな……。)

エレンも訓練学校時代に培った対人戦を活かし、一閃一閃をいなしていくが、その速さは、刃物の数が二倍三倍に増えているかのようだった。


とうとう剣の一撃が、エレンの額にヒットしそうなその瞬間。
エレンの背中に着けてあった立体起動装置からワイヤー放たれ、壊れていない家の上に昇った。

そしてエレンは、立体起動装置を逃げるためだけに使ったわけではない。
もう一本のワイヤーを、クレマンティーヌの額めがけて飛ばした。


人間ならワイヤーが刺さっただけで致命傷だ。
(上等じゃねえか!!このクレマンティーヌ様をそんな風に殺そうとするなんて、ムカつくにも程があんぞ!!)

予想通り、ワイヤーは彼女がいた辺りの場所に放たれる。

「『能力向上!!』、『能力超向上!!』」
(!!)
クレマンティーヌは自分の身のこなしや筋力が向上する武技をかけ、ワイヤーを躱しただけではなく、そのワイヤーを伝ってエレンに襲い掛かった。


対してそのままエレンは、拳を突き出し、彼女を迎撃する。
(拳を!?上等だ……!?)


拳でレイピアに抵抗するか、ならばお望み通り腕を切り裂いてやろう、そう思った瞬間、拳に触れたレイピアが粉微塵に砕けた。

一瞬だが、修羅場をくぐってきた彼女も凍り付く。
どんなに硬い拳でも、刃物なら折れるか曲がるかだ。
文字通り粉のごとく砕けるなど、ありえない。


しかし、その凍り付いた一瞬が、致命的なまでの隙を作った。
レイピアを砕き、そのまま突き進む悪魔の実の力を纏った拳は、今度はクレマンティーヌの顔面を砕いた。

顔を失った彼女は、ワイヤーから足を踏み外し、地面へと堕ちる。


あっさりと、こともなげに彼女の二度目の人生は終了した。


(初戦にしては、中々手強かったな……。)
彼女の支給品を回収し、そのまま歩き始める。
地震を起こす能力は、地面以外にも効くのかどうか、あくまで賭けだった。
賭けに成功し、武器や人体も破壊できることが分かったが、もし賭けに失敗していたら、少なくとも指の何本かは犠牲になっていた。
失った体を巨人化で治せない今は、それは致命的だった。


76 : 震激の巨人 ◆vV5.jnbCYw :2020/09/07(月) 22:35:38 rmfyI3Ig0
まだ彼にとって戦いは始まったばかり。

(しかし、アイツの術は何だったんだ……!?)
戦いの途中で、あの金髪の女性は速さを上げた。
一体何だったのか分からない。
彼が分かるのは、パラディ島を救うための戦いは、予想以上に熾烈を極めるということだけだった。


クレマンティーヌ@オーバーロード(アニメ版) 死亡
残り109名


【黎明2:30】
【C-7 市街地 剛田商店前】

【エレン・イェーガー@進撃の巨人】
[状態]:進撃の巨人(脳内のみ) 首に切り傷
[装備]:グラグラの実、立体起動装置(ガス残り2/3)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(クレマンティーヌの支給品)
[思考・状況]:基本行動方針:パラディ島を救うために、この場の全ての命を駆逐する。
1:全ての命を駆逐する。
[備考]
30巻で座標に辿り着く直前より参戦です



【レイピア@ドラゴンクエストシリーズ】
クレマンティーヌに支給された、細身で鋭くとがったデザインをしている片手剣。
グラグラの実の衝撃波を受け、既に崩壊している。

【剛田商店@ドラえもん】
ドラえもんの登場人物、ジャイアンの実家。
八百屋だったり雑貨屋だったりしている。母が切り盛りしているようだが、ジャイアンもしばしば手伝いをさせられている。
作中では既に倒壊している。


77 : 震激の巨人 ◆vV5.jnbCYw :2020/09/07(月) 22:35:53 rmfyI3Ig0
投下終了です。


78 : ◆SvmnTdZSsU :2020/09/08(火) 01:55:46 bMKOgg1c0
皆様、投下乙です。

>雪の女王の微笑
骰子の目が悪かったばかりに、安易な選択肢に飛び付いちゃいましたね。
陵辱されかけたり、淫語連呼の変なのに変わった記憶を失ったのは、彼女にとってプラスなのかマイナスなのか…
戦う力は得たものの、代わりにシンデレラ足らしめるものを失った卯月がどこに向かうのか大変興味深いです。

>いつまでも男の子じゃいられない
並行世界とは言え、自分自身に惚れかけるアリス、普通にやべー奴では…?
同一人物と言っても、性別の違いが結構な境遇や反応の変化をもたらしているようで非常に面白いです。
そして名簿のダブル勇者、もう顔中草まみれや。これもうどっちがどっちかわからねぇなぁ。
そして初っ端の遭遇相手がまさかのよっぱらい組で草。

>震激の進撃
クレマンティーヌ……人類最強と言っても相手が悪かったですね。
グラグラの力を得たエレン、巨人化が制限されているとはいえ、得たばかりの能力を使いこなし、最速でキルスコアを稼ぐとは、実に素晴らしいマーダーです。残り109名、優勝は過酷な道のりですが、このエレンなら結構な位置までいけそうな感じがビンビンします。
そしてさりげなく倒壊する剛田商店に南無三。


79 : ◆EPyDv9DKJs :2020/09/08(火) 02:54:42 NY.1.YUc0
佐々木、露伴予約します


80 : ◆EPyDv9DKJs :2020/09/08(火) 07:33:06 NY.1.YUc0
投下します


81 : ◆EPyDv9DKJs :2020/09/08(火) 07:33:57 NY.1.YUc0
 代筆と言い張る佐々木を前に、過去の自分を思い出す露伴。
 似たような部分があったからではない…いやあってたまるか。
 こんな盗作を正当化しようとする奴と同類など死んでもごめんだ。

(以前の僕のスタンドなら、通用はしない…いや、通用してほしくはないな。)

 嘗てのヘブンズ・ドアーは自分と波長が合わなければ通用しないスタンド。
 今、目の前にいるこの男とは、間違いなく波長が合うはずがないのだ。
 否、寧ろ通用すると言うことは波長が合ってしまっていると言うことであり、
 彼と波長が合ってしまったらと思うと、仗助に通用したときの想像に匹敵する。
 どうしようもないなと呆れたその時、

『聞け! この地に集いし全てのものたちよ!』

 主催者たるミルドラースからの真の始まりの宣言がされる。


「ミルドラースか…できるなら取材したいな。
 これほど大規模なことをできる奴の人生は興味がある。
 魔界の王の中の王。魔界の住人のリアリティも追及できそうだ。」

 こんな状況なのに笑ってミルドラースの宣言をどこか楽しむ露伴。
 魔王なんてゲームや漫画の中でしか出会えなかった存在。
 それがもしかしたら出会えるかもしれないと言う可能性は、
 狂人に等しい漫画家である彼からすれば、漫画の素材の宝庫だ。

「いやそんなことを言ってる場合ですか!?」

 対照的に、こんな状況を冷静でいられない佐々木。
 いや、どちらかと言えば彼の方が正しい反応ではある。
 特殊な経緯で漫画を描いてるとは言え彼はただの一般人。
 スタンドや修羅場の有無を抜きにしたって、当然ともいえるだろう。

「それにこんな殺し合いをする奴に取材って───」

「悪いが、君と話すことはもう何もない。と言うより話したくないんだ。」

 そんな彼の言葉を遮るように、冷ややかに告げた。
 慌てふためく彼を、その言葉だけで黙らせてくる。
 小学生でもわかることを彼は認めようとはしなかった。

「…いや、最後に一つだけ話すとしよう。」

 無駄だろうとは思いつつも、
 デイバックの中身を漁りつつ、思いついた疑問をぶつけてみる。

「君は、読者が嫌いになりそうなキャラクターは何か知ってるかね?」

「はい?」

 自分の素性を知られ、
 今の境遇を笑って過ごし、
 またもや漫画の話で状況が彼の行動に理解が追いつかない。
 本格的に始まった今この場でしなければならないことなのか。
 露伴ははっきり言えば奇人。ついてこれる方がおかしいので、
 ある意味佐々木の反応はいたって普通の反応で、余り責められない。
 一番ついてこれる広瀬康一でさえ、強引さに悩まされてるのだから。
 困惑する彼をそのまま放っておいて、露伴は答える。

「それは…だ。中途半端な奴だよ。」

 露伴はたとえ話として、るろうに剣心の話を始めた。
 何故それを? と思われるだろうが、単行本を持ってるからだ。
 彼は志々雄真実の名前を挙げて、軽くだが彼の人物像を説明する。
 現代から見ても紛れもない悪役ではあるが、非常に人気のあるキャラだと。
 理由は単純だ。彼が最初から最後までカリスマのある悪役を貫いたが故に。
 哀しき悪役としての突然の路線変更も伏線もなく、最期まで剣心の敵てあり続けた。
 作者すら負けるところが想像できず勝ち逃げと言う形になってしまったのは、
 彼としては少し複雑でもあるが。

「だからこそ人気がある人物なんだよ。
 女性向け漫画だから、投票では美少年の宗次郎に負けてたがね。
 …さて、では君はどうだろうか佐々木哲平。盗作すると決めたくせに、
 いつまでも自分の背負った十字架に苛まれながら、何度も正当化を続ける。
 君の長々とした自己弁護を漫画だったら、それが読者に好かれると思うのか?
 いいや、はっきり言おう、その可能性はない。好かれる前に閉じて、別の漫画を読むさ。」

 まだ使えんと捨てた間田の方が愛嬌が出てくると言うものだ。
 終わらぬ葛藤をいつまでも続け自己を正当化し続けるだけのキャラに、
 いったいどれだけの読者がついてこられるだろうか。

 余談だが、中途半端さが伺えるのであれば雪代縁を挙げるべきでは。
 とは思われるかもしれないが、残念ながらるろうに剣心の完結は九十九年の九月。
 彼のいた時代ではクライマックスの途中であり、評価が曖昧になるがゆえに除外された。


82 : ◆EPyDv9DKJs :2020/09/08(火) 07:35:41 NY.1.YUc0
「漫画のキャラクターと比較しないで───」

「何よりもだ。君、本当に漫画が好きで描いてるのかい?」

「…は?」

 何を、言ってるんですかこの人は。
 漫画家に漫画が好きなのかと尋ねる意味は今まで以上に分からない。
 好きでもなければ、あんな過酷な戦いはできるわけがないのだから。
 一週間と言うタイムリミットの中で、十数ページの物語を生み出すなど。

「皆か楽しめるような漫画を求めてると言ったな。
 未だ形にできていない時点で、一度は別の視点で学ぶべきだ。
 それこそ、菊瀬編集が言ったように君が思う『マイナー路線』をね。」

 どこまでもお見通しなのか。
 盗み聞きしてたとしても、彼みたいな人はジャンプにはいなかった。
 どこからそれを知ったのかと言う疑念の中、黙って露伴の話を聞く。

「だが君はそれを描こうと言う考えすらしなかった。
 ただ単に君は『大成』と言う結果だけを求めたんだ。
 『ジャンプの看板タイトルを得た名声』が欲しいだけであり、
 君自身の、漫画そのものに対する愛着と言うものが見られないんだよ。
 勿論、不純な動機で成功する奴はいるさ。それは漫画だけに限らない。
 ミュージシャンやアイドル…どこにでもそういう存在は必ずいるものだ。
 だから、仮に名声が目当てだとしても僕は完全な否定をするつもりはない。
 もう一度聞こう、佐々木哲平…君は、本当に漫画が好きで描いているのが?」

 露伴の漫画を描く行動原理は純粋にただ一つ。
 自分の作品を読んでもらいたいからこそにある。
 富や名声なんてものはっきり言ってどうだっていい。
 描いたものが読まれる、それが彼にとってのすべてであり、
 そこに愛着云々など最早語るまでもないことだ。
 だからこそ、彼の漫画に対する愛着が見受けられないように感じた。

「好きでもなければ、小学生の頃から描いていませんよ!!」

 確かに最初は酷かった。
 継ぎ接ぎだらけだったし、
 個性に乏しい、自分の作風を見つけろ。
 何度も何度も、高校時代からずっと言われて今に至っている。
 確かに一度本当に諦めようとしたこともあったが、
 それでも自分のしてきたことは間違いだとは思わない。
 …無論、代筆と言ってる『今』も含めてなのだが。

「それだけ言えるなら君曰く『代筆』せずとも、
 いずれは君が描きたいと思えるものが描けただろうに。」

 無駄に代筆を強調するあたり、
 皮肉たっぷりで言ってるのは分かり切ったことだ。
 認めているわけではないし、認めるわけがないのだが。
 別に露伴は根負けしたわけではない。いや、してても認めないか。
 今の彼に何を言っても、自分を正当化して代筆と言い張るからだ。
 同じことを何度も言うのは無駄である。

「…ところで、何故そこまで知ってるんですか?」

 まるで自分で見てきたかのような物言い。
 普通では絶対得られない情報をいい加減彼は尋ねる。

「いつまでも隠し通す理由もないから教えるさ。」

 此処で漸く種明かしとなる。
 ヘブンズ・ドアーで佐々木の経験を見ただけ。
 それだけの話であり、説明に時間を要することはなかった。

「プライバシーの侵害じゃあないですか!?」

「侵害? オイオイオイオイオイオイオイオイオイ。
 アイノイツキの作品を侵害した、君がそれを言うのか?
 そうやって自分のしたことを棚に上げるのが君の悪い所だよ。」

 これについてはお前が言えた立場じゃないだろ。
 彼を知る人間だったら口を揃えて言うと思われる程に、
 岸辺露伴も大概自己中心的な男ではあったりする。

「一応、乘ってるかの確認が必要だった保険ついでさ…さて。
 長話になったな。もう君に話すことは何もない。僕は…ん?」

 ミルドラースが名簿がどうとか言ってたのを思い出し、
 片手間に適当に流し読みしていると、ある名前を見て留まる。

「どうしました?」

「…藍野伊月。」


83 : ◆EPyDv9DKJs :2020/09/08(火) 07:37:06 NY.1.YUc0
「…藍野伊月。」

「!?」

 露伴が呟いた一人の名前に、
 名簿を奪うような形で手にして名簿を見逃さないように読む。
 紛れもない、ホワイトナイトの作者の本名が彼のすぐそばに刻まれている。

「嘘、だろ…!? いや、同姓同名の可能性も…」

 都合のいい解釈を何度もしてきた彼は、
 この場でも都合のいい解釈をしようとするが、

「知ってるか? 日本の『藍野』の苗字は四百人もいるか怪しい苗字だ。
 ましてや、この乱雑に置かれた名前の中で、君のすぐ隣にあるぞ。
 君と無関係の人間である可能性の方が、ありえないんじゃあないのか?」

 当然ながらその解釈は露伴によって簡単に打ち砕かれる。
 膝をついてうなだれていると、露伴は名簿を取り返し玄関へと向かう。

「…何処へ、行くんですか?」

「これ以上参加者と接触しないわけにはいかないからな。
 特に『本物のホワイトナイト』が読めなくなるのは僕も困る。
 NPCなんてのもいるのなら、なおさら探したほうがいいからな。」

 此処まで二時間以上。露伴は情報のアドバンテージが乏しかった。
 佐々木以外は藍野伊月の情報を断片的に得られただけだ。
 つまり残り百九名の参加者は、殆ど理解してないに等しい。
 誰が乗って誰が乗ってないか、NPCはどれほどいるのか。
 その辺が未だ分からずじまいだ。

「ま、待ってください! 俺も───」

「言っただろ。僕は君と同じ空気すら吸いたくないんだ。
 盗作の告げ口の心配なら、出会っても君のことは言わないさ。
 教師に告げ口されたクソガキが、誠心誠意の謝罪を言うわけがない。
 それと同じだからな。告げ口した奴を酷い目に遭わせるのが落ちさ。
 もっとも、君はそういうことをしない性格なのは本にして理解してるし、
 同時に向こうが君の作品が盗作だと気付いてた場合は、その限りではないがな。」

 心底許しがたい相手ではあるものの、
 彼はスタンド使いと言っても多勢には弱い。
 NPCが多い中彼を守りながら戦うのは辛いのもある。
 彼を守ること自体が嫌だと言えば、嫌ではあるが。
 一方で、別にそのまま死ねとは思っているわけでもない。

「じゃあな、佐々木哲平。
 此処は住宅街。身を隠せば案外やり過ごせるだろう。
 少し離れた場所に店もある。食料や武器もあるかもしれん。
 次君に会うときは、自分の描きたいものを見つけてることを願うさ。
 そうすれば、僕は盗作は水に流さないが、成長を祝福してやるつもりだ。」

 結局互いに互いを理解することがないまま、露伴は一人家を出て行ってしまう。
 返す言葉が見つからないし、そもそも自分がいても露伴のようなスタンドもない。
 足を引っ張るだけなのは自覚し、佐々木は閉じつつある扉に手を掛けることはできなかった。

「岸辺露伴…聞いたこともない漫画家だが、一体どんな漫画を描いてたんだ…」

 漫画家としては職業病を通り越したレベルの人物。
 そんな飛んでもない人物が聞いたこともない名前と言うのは、
 正直奇妙だと思いながら、デイバックに手を突っ込んで適当に取り出す。
 身を守れるものぐらいはないものかと漁ってみると、出てきたのは一冊の本。

「これは…漫画?」

 殺し合いに置いては全く役に立たないであろう、
 間違いなく外れとなってしまうような代物だ。
 ある意味では彼にとっては当たりなのかもしれない。

 デスクランプに照らされた本の名前は『ピンクダークの少年』、
 彼が知る男の名前が刻まれた本が、そこにあった。





 外へ出てから支給品に手を付けた露伴。
 先程確認してた中バイクのハンドルがあって、
 それが気になったのもあって外へ出たのもある。
 出てきたのは、明らかに入りきらないであろうバイク。
 紙になんでも収納できるスタンドもあったらしいので、
 もう今更質量無視とか思うことは何もない。

「随分手入れされたバイクだな…」

 傷は多いものの綺麗に磨かれている姿は、
 持ち主がいかにこれを大事に、長く使ってるかが伺える。
 どんな持ち主か興味はあるが、今はバイクを用いて参加者を探す。
 目的地は地図上にもある施設ロンリー・ロッジを目指して走り出す。
 最寄りの場所にダスティ・ディボットがあるが、地形的にバイクは難しい。
 そこを考慮すると、最寄りなのはロンリー・ロッジと言うわけだ。
 バイクと言う目立ちやすいリスクを背負うことになるが、
 時間を要した以上早いところ新しい参加者と接触したい。


84 : ◆EPyDv9DKJs :2020/09/08(火) 07:37:39 NY.1.YUc0
(流石にこれは当てになるかは分からないが、探しておくか。)

 殆ど情報がないとは言ったが、
 実は見覚えのある名前があったのだ。
 偉人や刀の名前よりも印象に残った名前。

 空条徐倫。
 承太郎と会話した際に、聞いた娘の名前がジョリーンだった。
 字的にも読めなくはないし、名簿の位置も自分と非常に近い。
 佐々木と藍野伊月が近しい間柄から、何人かは近しい間柄の可能性はある。
 名前ですらない連中や、偉人と似た名前の面子もお互い近い位置にあったので、
 おそらく一部参加者は関係者で固めている可能性があると露伴は踏んでいた。
 佐々木のジャンプの記録から別々の時代から参加者が来ている可能性は出ているし、
 ひょっとしたらスタンド使いになっている、年を取った彼女もありえなくはないのだ。
 面識はないが、承太郎の娘であった場合頼れる存在なのは間違いない。
 当てにしすぎないが、一先ず調べておきたい要因でもあった。

 未来を考える露伴と、過去の作品に触れる佐々木。
 世界は異なれど同じジャンプの漫画家の次の物語は…

 To be continued

【G-6 リテイル・ロー市街地/黎明】

【佐々木哲平@タイムパラドクスゴーストライター】
[状態]:健康、岸辺露伴への反抗心(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2(未確認)、ピンクダークの少年@ジョジョの奇妙な冒険
[思考・状況]基本行動方針:死にたくはないが、人殺しもしたくはない。
1:この漫画、まさか…!?
2:『盗作』じゃなく、『代筆』という点を露伴に理解させたいが、どうしようもないのか…?
3:藍野伊月が、此処にいるのか!?
[備考]
※参戦時期は少なくとも四話以降です。
※露伴からスタンド、及び能力を説明されました。

【岸辺露伴@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康、佐々木哲平への不快感(大)
[装備]:スタンド『ヘブンズ・ドアー』、Z750(燃料100%)@大番長
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考・状況]基本行動方針:様々な参加者を取材しつつ、主催者の打倒を狙う。
1:ロンリー・ロッジへ向かう。
2:危険人物は取材のついでに無力化を狙う。ただし無理はしない。
3:奴(佐々木)は本当に漫画が描きたいのか?
4:藍野伊月に出会っても、僕からは何も言わない。知ってたら別だが。
5:空条徐倫、まさかとは思うが会っておきたい。
[備考]
 参戦時期は四部終了後。
 佐々木哲平を本にしたため、ホワイトナイトの盗作などを把握済みです。

【ピンクダークの少年@ジョジョの奇妙な冒険】
岸辺露伴デビュー作の漫画。ジャンルはサスペンス・ホラー
内容はホワイトアウトばりに明かされてはいないものの、
作中の人物の反応と当時で三部まで連載されている発言もあわせて、
概ねジョジョの奇妙な冒険のような内容と言うことはうかがえる作品
何冊で支給品一枠分か、本の内容は後続の方にお任せします

【Z750@大番長】
暴走族獄煉のリーダー『韋駄川煉』がスクラップからくみ上げたバイク
廃品から作ったのに全国の数々の走り屋を追い抜くだけのスペックを持っており、
更に元PGGである篠田勘助による更なる改造が施されてるため、
大番長の走り屋では間違いなくトップのスピードを持つ

以上で『身勝手なくらいに結ばれるDestiny』投下終了です
後、事後報告ですが拙作『夢なら醒めないで桃源郷』の時間や、
ティルテッド・タワー(エーリュシオン組)の描写等の修正しました
(根本的な話の内容に変化はありません)


85 : ◆EPyDv9DKJs :2020/09/08(火) 07:38:29 NY.1.YUc0
以上で『身勝手なくらいに結ばれるDestiny』投下終了です
露伴らしくかけてるか、少し不安です

事後報告ですが拙作『夢なら醒めないで桃源郷』の時間や、
ティルテッド・タワー(エーリュシオン組)の描写等の修正しました
(根本的な話の内容に変化はありません)


86 : ◆7PJBZrstcc :2020/09/08(火) 18:56:46 snFv7KYo0
投下します


87 : 特別面 この大ボケな英雄と共に殺し合いを! ◆7PJBZrstcc :2020/09/08(火) 18:57:27 snFv7KYo0
 ここはキノコ王国。
 突如いなくなってしまったマリオ達を探すため、ルイージは冒険の旅に出ます。

「よーし、ぼくが主役になって兄さんを見つけるぞ」

 が、この話とは特に関係なく……

「関係ないの――っ!?」

 殺し合いに巻き込まれたマリオ達から、物語は始まります。

「え、ぼくの出番これで終わり!?」





 殺し合いの主催者を倒すため、マリオ達はとりあえず仲間を探すことにした。
 が、特に目的地があるわけでもないので、あてもなく彷徨うだったが。

 そしてしばらくした頃。

「お――い!!」

 誰かの叫び声が聞こえた。
 二人が声のする方を見ると、そこには巨大な看板みたいなモンスターから逃げる少年の姿があった。

「モンスタートレインして悪いけど、助けてくれ!」
「マリオさん!」

 少年の叫びを聞いてマリオに呼びかけるヨッシー。
 しかし

「コソコソ」

 当のマリオは逃げる気まんまんだった。

「何してるんですか! 主人公でしょ!!」
「分かった分かった」

 怒るヨッシーを必死に宥めるマリオ。

「気合い入れていくぜ――――っ!!」

 そしてその言葉と共に、マリオはモンスターへと走っていく。


88 : 特別面 この大ボケな英雄と共に殺し合いを! ◆7PJBZrstcc :2020/09/08(火) 18:57:59 snFv7KYo0
























「あの〜、ご趣味は?」
「絵を描くことを、少々……」

 そしてマリオとモンスターは向かい合って座り、話し始めた。

「それは見合いでしょ――――――っ!!」
「何で敵も乗ってるんだよ!?」

 思わずツッコミを入れるヨッシーと少年。
 二人はどちらともなく顔を見合わせるが、慌てていて気付かなかったけどヨッシーが恐竜っぽいので少年はちょっとビビった。

「うおっ!? 恐竜!?」
「初めまして。私はヨッシーです」
「あ、どうもカズマです」

 そしてそのままなぜか自己紹介。
 それはそれとして、カズマは不安げな表情でマリオを見る。

「つーか、あのヒゲのおっさんなんなんだ? 助けてくれるのかと思ったらいきなりボケるし」
「おや、マリオさんを知りませんか? アホでバカで間抜けで大ボケなことがキノコ王国では有名なんですけど」
「変な紹介すな――っ!!」
「どこだよキノコ王国って……」


89 : 特別面 この大ボケな英雄と共に殺し合いを! ◆7PJBZrstcc :2020/09/08(火) 18:58:30 snFv7KYo0

 疑問を浮かべるカズマだったが、モンスターはそんなことを勘定してくれない。
 インクを飛ばしてマリオ達三人に向けて飛ばし、炎や氷で攻撃を仕掛けてくる。

「うわあ!!」
「ぎゃあ!!」

 必死に躱すカズマ。普通に炎が命中するヨッシー。

「よっ! ほっ!」

 一方、マリオは流石の貫禄。ジャンプで巧みに攻撃を躱していく。
 更に余裕の表れか、そのままクルクルと、まるでバレリーナの如く回転する様を見せつけた。

「はにゃほらへにゃ〜」

 そしてフラフラになっていた。

「目ぇ回してんじゃねーよ!!」

 ツッコむカズマだが、彼がモンスターから目を離した隙にそいつは絵を浮かび上がらせた。
 それに気づいた彼は慌ててマリオとヨッシーに注意した。

「気をつけろ! そいつは女の知り合いの裸の絵を見せてから不意打ちしてくるぞ!!」
「何だって!?」

 カズマの忠告を聞いたマリオは慌てて目を背けようとするが時すでに遅し。
 モンスターの書いた絵はすでにマリオの視界に入ってしまう。
 そう、彼の知人の女性である――

「イヤーン」

 カメックババの裸婦画が!


 ずこ――っ!!

「なんでやねんっ!?」

 思わずズッコケるヨッシーとカズマに、我を忘れツッコミを入れてしまうマリオ。

 ちなみにマリオとカメックババは確かに顔見知りだが、別に仲良くはない。
 というか、マリオから見れば敵対している者の部下である。


90 : 特別面 この大ボケな英雄と共に殺し合いを! ◆7PJBZrstcc :2020/09/08(火) 18:59:07 snFv7KYo0

 だが想定されている状況とは違うものの、とにかく気を引くということに関しては十分だった。
 カメックババの裸婦画はマリオの目の前で爆発する。
 しかし――

「危ないマリオさん!」

 咄嗟にヨッシーがマリオを舌で絡めとり、自身の元へ引き寄せる。
 こうしてマリオは爆弾攻撃を回避した。
 そしてそのまま彼はヨッシーの口の中へ。

「俺を食うな――っ!!」
「すいません、つい……」

 慌ててマリオを吐き出すヨッシー。
 しかし口に何か入れたショックなのか、尻からタマゴが出てくる。
 それを見たマリオは言った。

「ヨッシー。そのタマゴをあいつにぶつけるんだ!」
「え、でも……」
「いいから早くしろ!」

 マリオに詰め寄られ、ヨッシーは渋々タマゴをモンスターに投げつける。
 幸い避けられることもなく普通に命中した。

 ベチャ

 しかしダメージは与えられず、それどころか単に怒らせるだけで終わってしまったが。

「あのタマゴ中身はウンコなんです――っ!!」
「何やってんだよヨッシー!!」
「アンタがぶつけろって言ったんだろ!?」

 責任の所在で揉めそうになる三人だったが、すぐにそんな場合じゃないと気付く。
 そのままカズマは集団から一人逸れ、隙を見て自身のデイバッグから取り出しておいた弓矢でモンスター攻撃する。

「狙撃! 狙撃!」

 矢を受けたモンスターは、怒りの矛先を今度はカズマに変える。
 ヨッシーはその隙に、自分のデイバッグから取り出したアイテムをマリオに渡した。

「マリオさん! これを!!」
「おう!」

 それはマリオにとっても馴染みのある武器、ハンマーだ。
 ただしマリオが今まで持ったどのハンマーよりも厳つく、そして重い。

「どりゃあああああ――――っ!!」

 マリオは勢いよくハンマーを振り下ろし、モンスターの足先を狙い撃つ。
 攻撃されたモンスターは、痛みのあまり怒りすら忘れて思わず呻くが、マリオはその隙にハンマーでタコ殴りにし、抵抗すら許さずモンスターを倒した。
 その光景を見ていたカズマは思わず呟く。

「うわ〜、痛そ〜……」


91 : 特別面 この大ボケな英雄と共に殺し合いを! ◆7PJBZrstcc :2020/09/08(火) 18:59:53 snFv7KYo0





 モンスターを倒して一段落ついた三人は、とりあえず情報交換を始めるも今一つ話がかみ合わない。
 マリオ達はカズマの住むアクセルという街を知らず、カズマはマリオ達が住むキノコ王国を知らない。
 ここで異世界転生経験があるカズマが、自分とマリオ達は異世界人であると考えた。
 それを聞いた二人も、異世界転移した経験が何度かあったので割とあっさり受け入れた。

「俺の知らない異世界か……。この殺し合い、想像以上にヤバいかもな」
「知り合い以外は異世界人、かもしれませんからね」

『聞け! この地に集いし全てのものたちよ!』

 そしてミルドラースの放送が届き、マリオ達は知り合いがいるかもしれないと思い慌てて名簿を読む。
 すると確かに知っている名前があった。

 殺し合いの直前に、やっと助けたはずのピーチ姫の名前が。
 これを見て、マリオは大慌てだ。

「えらいこっちゃえらいこっちゃたいへんだたいへんだたいへんだ……」
「落ち着いてくださいよマリオさん!」
「変態だ!!」
「誰が変態ですか!!」

 それでもボケる余裕はあった。
 スーパーマリオくん出展マリオの習性みたいなものである。

「あ」

 ここでまだ名簿を見ていたヨッシーがあることに気付く。

「見てくださいマリオさん。よく見るとクッパの名前もありますよ」
「あいつも殺し合いに呼ばれてたのか」

 クッパ。
 そいつはマリオ達にとって直前まで敵対していた宿敵ではあるものの、過去には協力したこともある間柄だ。
 彼らにとっては一時的に協力できるかもしれない知り合いであり、ピーチ姫と遭遇したら守ってくれそうな人材だ。
 しかし――

「でもクッパの名前の後ろに姫ってついてますね」
「姫……?」

 そう、知り合いの名前の後ろにはなぜか姫とついていた。
 それを聞いたマリオはまずクッパの普段の姿を想像する。
 次に、そのクッパにピーチ姫のドレスと金髪のカツラを追加した。

「おえ――――っ!!」

 その結果、マリオは猛烈な吐き気に襲われた。

「変なものイメージさせるなよ―――っ!!」
「マリオさんが勝手にしたんでしょうが!!」


92 : 特別面 この大ボケな英雄と共に殺し合いを! ◆7PJBZrstcc :2020/09/08(火) 19:00:16 snFv7KYo0

 一方、カズマは名簿を見つめ一人硬直していた。

「マジかよ……」

 目線の先にある名前はアクアとウィズ。
 他にも名簿には沖田総司や土方歳三など、日本人なら知っている名前があったが、彼はあまり深く考えていなかった。
 異世界転生なんて経験をすると、ひょっとしてタイムマシンくらいならあるかも? と思ってしまう。
 そして別に繋がりがあるわけでもないので、正直主催者には時間移動が可能と分かる位だ。
 んなこと分かったところで俺に何ができるんだよ、というのがカズマの本音だった。
 そう考えれば、一旦脇に追いやるのも妥当であろう。

 それよりもカズマは二人を心配していた。
 アクアは彼の仲間でアークプリーストという回復役にして、水の女神。
 ウィズは彼の知り合いで、魔道具屋を務めるアンデッドの王、リッチー。

 とはいっても命の心配はしていない。
 二人とも高ステータスの持ち主で、自分とは違ってそう簡単に戦闘で死ぬことはないと思っている。
 だがアクアはトラブルメーカーの上、学習能力がない。それで人に迷惑をかけていないか心配だ。
 一方、ウィズは性格に問題はないが、殺し合いという状況だと悪い誰かに騙されていそうで心配だ。

 ここでカズマはなるだけ早急に合流したい、と思った。
 それはマリオ達も同じだ。ただし彼らの方が切羽詰まっているが。

 とりあえず仲間達の情報を交換する三人。
 この時、カズマは主催者が時間移動できる可能性を言わなかった。
 言ったら話がややこしくなりそう、というのがカズマの言い分である。

 実のところ、マリオ達には時間移動の経験もあるので言えばあっさり受け入れただろうが、それは余談だ。
 

 とにかく一刻も早く仲間と合流するため、彼らは早速出発することにした。
 彼らの戦いが今、本格的に始まろうしている。

「で、どっちに行けばいいのかな?」

 ずこ――っ!!

 マリオの言葉に、ヨッシーとカズマは再びズッコケた。


93 : 特別面 この大ボケな英雄と共に殺し合いを! ◆7PJBZrstcc :2020/09/08(火) 19:00:45 snFv7KYo0


【G-3/黎明】

【マリオ@スーパーマリオくん(コロコロ版)】
[状態]:健康
[装備]:ウォーハンマー@ドラゴンクエスト3
[道具]:基本支給品、沢田ユキオのポスター、ランダム支給品×2
[思考・状況]基本行動方針:主催者を倒す。
1:ピーチ姫を最優先で探す。後クッパもついでに。
2:主催者を何としても倒す。そのために会場内を探索する。
3:ともに戦う仲間を探す。
[備考]
参戦時期は、オデッセイ編終了後(単行本55巻)。
クッパ姫を女装したクッパ@スーパーマリオくん だと思っています。
カズマと情報交換しました。

【ヨッシー@スーパーマリオくん(コロコロ版)】
[状態]:ちょっと火傷
[装備]:振動パック@スーパーマリオくん
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1
[思考・状況]基本行動方針:主催者を倒す。
1:おなかの痛みは引きました。
2:マリオさんに付いていきます。
3:異世界ですか……。
[備考]
基本支給品の食料を、すべて食べつくしました。
制限により、食欲および消化能力が低下してます。
カズマと情報交換しました。

【佐藤和真@この素晴らしい世界に祝福を!(アニメ版)】
[状態]:健康、精神的疲労(小)
[装備]:妖精弓主の弓と矢@ゴブリンスレイヤー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考・状況]基本行動方針:とりあえず生き残る。仲間がいれば合流したい。
1:アクアとウィズが心配。
2:二人(マリオ、ヨッシー)と一緒に行動する。
3:この二人といて、大丈夫か俺?
[備考]
参戦時期は第二期最終回後。
主催者は時間移動できると考えています。
マリオ達と情報交換しました。そのせいでクッパ姫を女装したクッパ@スーパーマリオくん だと思っています。


【ウォーハンマー@ドラゴンクエスト3】
ヨッシーに支給。
攻撃力70だが、特殊な効果は一切ない普通のハンマー。
原作では戦士専用の装備だが、本ロワでは一定以上の筋力の持ち主ならだれでも扱える。

【妖精弓主の弓と矢@ゴブリンスレイヤー】
佐藤和真に支給。
作りはいいが、特殊な力はない普通の弓矢。
矢の数は数十本。


94 : ◆7PJBZrstcc :2020/09/08(火) 19:01:17 snFv7KYo0
投下終了です。


95 : 名無しさん :2020/09/08(火) 19:33:33 9r7FG5.w0
投下乙です
登場話もそうだったけど、マリオとヨッシーの漫才のようなやりとり、懐かしい漫画のイラストで脳内に浮かんでくるわ
カズマも二人のノリに順応してるというか取り込まれてるというか、いいツッコミ役だ


96 : ◆NIKUcB1AGw :2020/09/08(火) 22:23:51 wC/4CXpM0
皆様、投下乙です

西片、投下します


97 : その声のさだめ ◆NIKUcB1AGw :2020/09/08(火) 22:25:05 wC/4CXpM0
「なんか、こっちの方で呼ばれた気がしたんだけど……。
 もうどっか行っちゃったのかな。それとも、本当に気のせいだったか……」

周囲をキョロキョロと見回しながら、学生服姿の少年が呟く。
彼の名は西片。別に特殊能力もなければ世界の運命を背負ってもいない、ごく平凡な中学生である。

「どうしようかなあ……」

西片は困惑していた。
殺し合いなど、彼の日常からは大きくかけ離れた状況だ。
生き残るためには、努力が必要だというのは理解できる。
だが、具体的に何をやればいいのかがさっぱりわからない。
ゆえに彼はとりあえず、他者との接触を目指した。
だがそれも空振りに終わってしまい、現在に至っている。
そんなこんなで西片が何をするでもなくたたずんでいると、突如周囲に不気味な声が響き渡った。
ミルドラースによる放送が始まったのだ。


◆ ◆ ◆


「これか……」

放送を受けた西片は、さっそく名簿を確認すべくルールブックを手に取っていた。
知人の名前がないことを祈りながら、丁寧に一人ずつ名前をチェックしていく。
結果として、彼と親しい人物と思われる名前は見つからなかった。
別の意味で気になる名前はいくつかあったが。

(『勇者』って何!? ゲームの世界から出てきたわけじゃないだろうに!
 まあこれはいいにしても、『変なおじさん』って! 悪口じゃん!
 それに『命の輝き』って、もはや人間に対する呼び方じゃないし!)

一通りツッコんだところで、西片は落ち着いて考える。

「とりあえず、知り合いがいないのは喜ぶべきかな……。
 これ……なんとしても生き残って返さないと……」

西片の手には、1枚のハンカチが握られていた。
彼のランダム支給品の一つだ。
それは何ら特別な効果を持たない、普通の日用品である。
だが西片にとっては、このハンカチはなんとしても守らなければならない物だった。
彼がよく知る少女の持ち物であり、彼自身とも縁のある代物なのだから。

「けど、生き残るっていったって……。
 ろくなものが入ってないんだよなあ」

改めてカバンの中身を確認し、西片はため息をつく。
彼には、三つのランダム支給品が与えられていた。
一つ目はハンカチ。そして二つ目は、ギター。
殺し合いの場でギターなど、どう使えというのだ。
いちおう鈍器として使えなくはないが、鍛えているとはいえ中学生の西片では俊敏に振るうなどできそうもない。
それに解説書には、「中野梓」と本来の所有者の名前が明記されている。
持ち主がいるとわかっていると、なんとなく無碍に扱いづらい。
そして三つ目。これが一番の曲者だ。
頭に差し込むと、超能力が使えるようになるDISC。
そんな漫画みたいな話、とうてい信じられるわけがない。
決して、頭に異物を入れるのが怖いわけではない。断じてない。

「かといって、単なる悪質な冗談にしては妙な存在感が……」

DISCを顔のすぐ近くまで持ってきて、まじまじと見つめる西片。
その時……。

「クェェェェェ!!」
「うわああああああ!!」

NPCのおおがらすが、ふいを突いて西片に襲いかかってきた。
不測の事態に気が動転した西片は、バランスを崩し……手にしたDISCを頭に突っ込んでしまった。

「うええーっ!? 入っちゃった!
 本当に大丈夫なの、これ!」

思わずやってしまったおのれの行為に、激しく動揺する西片。
だが、いつまでもそうしてはいられない。
目の前には、殺意に満ちた「敵」がいるのだから。

「なんとか、なんとかしなくちゃ……。
 俺は、生きて帰るんだーっ!」

叫ぶ西片。その感情に呼応するように、彼の体から何かが飛び出す。
それはロボットじみた少年の姿を取り、西片の側に立った。
「エコーズACT3」。それが、西片に与えられた能力……スタンドの名だ。


98 : その声のさだめ ◆NIKUcB1AGw :2020/09/08(火) 22:26:23 wC/4CXpM0

「こ、これは……。これが、あのDISCに入ってた超能力ってことなの!?」

驚きを隠せない西片の姿を、エコーズが一瞥する。

「やはり……康一ではない……。ほんの少しだけ似てはいるが……」
「しゃ、しゃべれるの!? え、コーイチ……何?」
「お気になさらず。それよりも、指示を」
「え、あ、はい! あのカラスをやっつけて!」

エコーズに促され、西片はおおがらすを指さす。
おおがらすは警戒しているのか、耳障りな声を上げて威嚇するだけで襲ってくる様子はない。

「了解しました。あの程度のザコ、私の敵ではありません。
 FREEZE!!」
「ギッ……!」

エコーズACT3の能力、それは「重力操作」。
その能力の対象となったおおがらすは重力に押しつぶされ、まともな悲鳴をあげる余裕すらなくぐしゃぐしゃの肉塊と化した。

「うえっ……」

グロテスクな光景を目の当たりにしてしまった西片は、吐き気を催してうずくまる。
すると、エコーズの体も徐々に薄くなっていく。

「え、あれ? 消えちゃうの?」
「スタンドとは心の力。心が弱っては、使いこなすことはできません。
 私の力を借りたければ、心を強く持つことです。
 また会えることを期待します」

そう言い残すと、エコーズは完全に消えてしまった。

「心を強くか……。簡単に言ってくれるなあ……。
 でも、やるしかないか……」

西片は、ポケットの中でハンカチを握りしめた。
少しだけ、勇気が湧いてくる気がした。


【D-8/深夜】
【西片@からかい上手の高木さん】
[状態]:吐き気
[装備]:エコーズのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、高木さんのハンカチ@からかい上手の高木さん、むったん@けいおん!
[思考]基本行動方針:生還する
1:生還のための具体的な方法を見つける。そのために、他の参加者に接触する。


【高木さんのハンカチ@からかい上手の高木さん】
高木さんと西片が親密になるきっかけとなった代物。
ごく普通のハンカチだが、刺繍で「Takagi」と名前が刻まれている。


【むったん@けいおん!】
中野梓が愛用するギター。
正式名称は「フェンダームスタング」。


【エコーズのDISC@ジョジョの奇妙な冒険】
破壊力 - B / スピード - B / 射程距離 - C / 持続力 - B / 精密動作性 - C / 成長性 - A(ACT3のステータス)

広瀬康一のスタンド「エコーズ」が宿るDISC。
成長によって姿と能力が大きく変化していくという珍しいスタンドであり、このロワでは重力操作の能力を持つACT3が基本形態に設定されている。
スタンドになじみ使いこなせるようになれば、ACT1、ACT2に変化させることも可能。


【おおがらす@ドラゴンクエストシリーズ】
NPC。
頭蓋骨の上に乗る、不気味なカラス。
デビュー作である3では、スタート地点のアリアハン周辺に出現。
相応の強さしかないが同じ場所に出現するモンスターの中では手強い方であり、
一人で旅立った無知な勇者やひねくれ者の勇者がこいつに葬り去られることも少なくないという。


99 : ◆NIKUcB1AGw :2020/09/08(火) 22:27:30 wC/4CXpM0
投下終了です
参戦作品外から支給品を出してますが、それがNGでしたら差し替えます


100 : ◆5qNTbURcuU :2020/09/08(火) 22:36:08 YQi8SuxI0
投下します


101 : 君の名は ◆5qNTbURcuU :2020/09/08(火) 22:37:01 YQi8SuxI0


悪魔が静かに嗤いながら歩いてくる。
けれども全知の魔人は逃げなかった。
元より、ランプに縛られた自身が勝てる相手でも、逃げ切れる相手ではなかった。
しかしそれ以上に。
意思を持つ存在であれば、神すらその正体を暴いて見せる。
それこそが逃げるよりも戦うよりも重要な、サバイバーの精神干渉すら押しのける魔人の意思だった。

「貴方は、男性?」

彼我の距離は既に二十メートルを切り、月明かりを反射するパーマがよく見えた。
一本の槍を肩に掛けながら、ゆっくりと歩を進める少年。
二人まとめて言い当てる事ができないのは口惜しいが、自分の全知は一度に一人までしか効果を発揮しない。
だからこそ、これで最後となるであろう問答に全力を捧ぐ。

「兄弟/姉妹がいる?」

パーマの少年は何も答えない。
けれど魔人は構わなかった。元より、パーマの少年とは問答をしていないのだから。
背を向けることはしない。そんな事をすれば、相手は自分を遥かに凌ぐスピードで追いすがり、問答を完遂する時間はなくなってしまうだろう。

「外国に住んでいますか?」

彼我の距離が十メートルを切る。
時間はもうあまりない。
まだ情報が足りないが、質問をするにしてもあと、一度か二度が限度。
待ってくれるような手合いでもない。

「―――既に、死んでいますか?」

遂に、二人の距離が槍が届く範囲まで近づく。
不思議と恐れはなかった。そして、この問答から逃げなくてよかったと魔人は思う。
全知たる自分にとって、知るという事は勝利と並ぶ最上の喜びなのだから。
知るという事が、魔人にとっての全てであり、誇りだった。

「貴方は今、何かを憎んでいますか?」

ずぶ、と魔人の胸元を槍の切っ先が貫く。
直後、槍の切っ先からをその身を焦がす様な憎悪の炎が流れ込んでくる。
けれど、魔人は不敵に微笑んだ。
ここまでくれば、最早外す心配もない。
魔人最後の勝負が敗北では片手落ちだ。だから。


「貴方は、最強の対魔の霊槍……Spear of the Beast。獣の槍、ですね?」

ご明察。
誰に言われるでもなく、それを認識し。
ごふりと口の端から鮮血を垂らして。
それでも魔人の表情は満足げだった。
叶うならば、もう少し他の者とも勝負をしたかったが、致し方ないだろう。
この勝利を、冥途の土産とする。
「だ、が…口惜しい、な…今、この世界、で、貴方を持っているのが
蒼月(ツァンユエ)で、ない事が―――――」

全知の魔人だからこそ感じる口惜しさ。
何故、この槍を握っているのがあの少年でないのか。
魔人はそんな事を想いながら自身を貫く槍に書かれた「我屬在蒼月胸中到誅白面者」の文字を一瞥し、霧散した。

【アキネーター@Akinator 死亡】
残り108名


102 : 君の名は ◆5qNTbURcuU :2020/09/08(火) 22:39:11 YQi8SuxI0




パーマの少年、桐山和雄は今しがた倒した魔人の首輪とディパックを拾い上げ、中身を物色していた。
ごそごそと中身を漁り…目当てのものを見つけてにんまりと笑みを浮かべる。
黒光りする銃口。手に馴染む感覚。
マイクロウージー。
奇しくも、桐山が優勝を逃した殺し合いで使っていた、優に十人以上の中学生の命を奪った銃だった。

しかし、何故こんな当たりの武器が支給されていながら今しがた殺した男は使わなかったのか。
桐山にはよく分からなかったが、あえて推察をするのなら。
きっと、今しがた殺した男にとっては命の有無より優先されるのがあの問答だった、という事なのだろう。
自分にとって、命よりも優先されるのが殺戮であるのと同じように。

だが、まぁ…もうどうでもいい事だ。
殺した相手の事よりこれから殺す相手の事の方が重要だと、認識を切り替えて。
楽しみだと、再び微笑む。
槍で突き殺すのも楽しいが、やはり銃がいい。
マシンガンの連射で血飛沫と断末魔を上げて地へと沈む獲物の姿は堪らない。
生きていて一番幸福を感じられる瞬間だ。

まだまだ殺したりないし、獲物もまだまだ残っている。
次の獲物は美しい悲鳴を上げてくれるといいな。
そんな事を考えながら、桐山和雄は更なる殺戮を求めて歩み出した。


【D-8/深夜】
【桐山和雄@実写版バトルロワイアル】
[状態]:健康
[装備]:獣の槍@うしおととら、サバイバーのスタンドDISC、
マイクロUZI@実写版バトルロワイアル、ランダム支給品0〜2(アキネイターの物)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本行動方針:バトルロワイアルを楽しむ
1:快楽のままに殺し続ける。
2:殺し合いサイコー!
3:褐色の男(シャガクシャ)は次に会ったら殺す。


古代中国に、促影という男がいた。
男は元は農夫だったが兵士となり、後に盗人となった。
彼は血を見るのが好きだった。
だから幼子も、死にかけの兵士も、子の命だけはと縋る女も区別なく殺して殺しまくり、金目の物を奪った。
だが、悪事は続かず、当時の役人に追い詰められる事となる。

そんな時に出会ったのが獣の槍だった。
槍はするりと促影の手に収まり、役人を食い殺ながら現れた化け物を紙の様に屠った。

それから彼は盗人を止め、化け物退治の専門家となった。
どんなバケモノも、獣の槍を使えば勝てない相手はいなかった。
最初は村人からの羨望と報酬の金品目当てだったが、妖を打ちのめしていくうちにその甘美な感覚こそ、彼の目的となった。

そして、殺して、殺して、殺しまくった。
欲望の赴くままに。人も、化け物も。
獣の槍がその身を喰らい、字伏という化け物になり果てるまで。

獣の槍は素質さえあれば担い手を選ばない。
魂を代償に、白面の者を倒すために必要な力だけを与え続ける。


103 : ◆5qNTbURcuU :2020/09/08(火) 22:40:00 YQi8SuxI0
投下終了です


104 : 名無しさん :2020/09/10(木) 17:09:55 j3XljgQo0
投下乙です
いやあアキネーターの死にグッとくるなんて最初の話からは想像できませんでした
実写桐山はお馴染み?のマイクロウージーを手に入れて順調にロワ充してますね


105 : ◆.EKyuDaHEo :2020/09/11(金) 00:30:49 lrXn2YCs0
投下します


106 : 大切な人へ、今どうしていますか...? ◆.EKyuDaHEo :2020/09/11(金) 00:31:20 lrXn2YCs0
「へぇ〜、レヴィちゃんは魔法少女なんだね〜」
「うん!今はデバイスがないから変身できないけどね、支給品ってやつに入ってればいいんだけどな〜」

レヴィはそう呟いて支給品を確認しようとしたが...

『聞け! この地に集いし全てのものたちよ!』

放送から声が聞こえロボひろしとレヴィは耳を傾ける

『これより真のバトル・ロワイアル開幕を宣言する!』



......



『さて……最後に、私の名を告げておこうか。
 私は”ミルドラース”。魔界の王にして王の中の王である。
 願わくば最後に私の前に立つものが、勇者に相応しい者である事を望む』

「...あのミルドラースとかいうやつ...本当に何考えていやがんだ...」

ロボひろしはミルドラースの言っていたことを一部始終全部聞いていたが、再び怒りが込み上げていた

「殺し合い...僕達も殺されちゃうのかな...」
「大丈夫さ、俺が必ずレヴィちゃんを守ってあげるから...安心してくれ...」
「うん...」

ロボひろしはレヴィの頭を撫でながら咄嗟に言葉にしたが正直自信がなかった...このロワには色んな参加者がいる...もし自分より強い者、ましてや殺し合いにのってる者に遭遇してもし自分が殺されてしまったら...レヴィちゃんは...

(...何弱気になってんだ俺!レヴィちゃんを守れるのは俺しかいないんだ!もう幼い子供に辛い思いはさせたくねぇ...たとえこの体がどうなろうと...レヴィちゃんは俺が!守る!)

ロボひろしはネガティブな考えを捨て、改めて強い決意を心の中で誓った...そしてロボひろしは名簿を見ようとレヴィに提案し二人は名簿に目をやった

「...マサオくんも連れてこられたのか...後は......え?」

ロボひろしは1人の参加者の名前を見て思わず驚きの声が出た、その参加者は自分の知っている人...ロボットの自分にも大切な父親と言ってくれた心優しい少年...

「...しんのすけ?」

『野原しんのすけ』

名簿にははっきりそう書かれていた...自分の息子までこの場に連れてこられている...ロボひろしは色んな感情が出ていた...息子をこんなところに連れてきた主催者に対しての怒り、そして息子がこの殺し合いの中でどうしているのかという焦り...様々な感情が出ていた

「?ロボひろしどうかしたの...?」

レヴィから心配そうな声が聞こえロボひろしはハッと我に帰った

「あ、大丈夫だよ!そういえばレヴィちゃんは知り合いとか友達はいた?」
「う〜ん...王様もシュテルんもいなかった〜...」

レヴィちゃんは寂しそうに答える、どうやらレヴィちゃんの知り合いはここにはいないようだ...だとしたら尚更守ってあげないとな...レヴィちゃんはまだ小学生ぐらいだ、これから友達と楽しく遊んだり色んな人生を歩んでいくだろう...絶対にここで死なせるわけにはいかない...レヴィちゃんを守ることを最優先に考えなくちゃいけない...しかし...

「しんのすけ...」


107 : 大切な人へ、今どうしていますか...? ◆.EKyuDaHEo :2020/09/11(金) 00:32:16 lrXn2YCs0
どうしても息子のことが気になってしまう...すると聞こえていたのかレヴィが質問する

「しんのすけ?ひょっとしてロボひろしの知り合い?」
「...あぁ、俺の息子なんだ...」

ロボひろしは寂しそうに呟く...するとレヴィは

「じゃあそのしんのすけっていう子探しに行こうよ!その子もきっとここに連れてこられて困ってるかもしれないよ!」
「レヴィちゃん...」

まだ知り合ってもない息子のことをレヴィちゃんは必死に気にかけてくれた...何だか似てるな...きっとしんのすけも知り合ってない人でも困ってたら助けるだろうな...本当にしんのすけもレヴィちゃんも心優しい子だな...っとロボひろしは思った

「ありがとう...レヴィちゃん...」
「えへへ〜♪」

レヴィは撫でられると嬉しそうに微笑む...レヴィの提案にのってロボひろしとレヴィはしんのすけを探し始めた...そのときにロボひろしはふと思った

(しんのすけ...お前は今...どうしてるんだ...?)

と悲しそうに心の中で呟いた


◆◆◆


(やっぱりロボひろしも大切な人は守りたいんだね...)

レヴィはロボひろしがあまりの落ち込みかたに心配だった...だからしんのすけを探しにいくことを提案した...自分だって同じ立場だったら気になって仕方がないと思ったから...

(王様...シュテルん...今どうしてるんだろう...)

レヴィは心の中で自分の大切な人、ロードとシュテルがどうしてるのか気になった

(待っててね...必ず生きて帰るから...)

レヴィもまた心の中で強い決意を決めた...

【H-6 市街地/黎明1:45】

【ロボひろし@クレヨンしんちゃん嵐を呼ぶガチンコ逆襲のロボとーちゃん】
[状態]:健康、悲しみ(中)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]:基本行動方針:しんのすけを探す
1:レヴィちゃんは俺が守る!
2:しんのすけ...
[備考]
レヴィが魔法少女だということを知りました

【レヴィ・ザ・スラッシャー@魔法少女リリカルなのはPORTABLE-THE GEARS OF DESTINY-マテリアル娘。】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]:基本行動方針:しんのすけという子を探す
1:ロボひろしも辛いんだね...
2:王様やシュテルんは今どうしてるのかな...
[備考]
ロボひろしのことについて色々知りました


108 : ◆.EKyuDaHEo :2020/09/11(金) 00:32:41 lrXn2YCs0
投下終了です


109 : ◆AOUE2X07qI :2020/09/12(土) 12:04:54 E9He10H60
予約の延長を申請します


110 : ◆L9WpoKNfy2 :2020/09/12(土) 22:49:17 if5iacYM0
コンペからの自己リレーを含んでしまいますが、

新田美波、志村新八、空条徐倫、ウィズ、菱川六花、聖帝エーリュシオン

を予約します。


111 : ◆NIKUcB1AGw :2020/09/13(日) 15:18:19 K9ycP8Ng0
夢見りあむ、ディアボロ、土方歳三、予約します


112 : ◆vV5.jnbCYw :2020/09/13(日) 21:28:25 LxIumdy.0
アイノイツキ、リルル、レグルスコルニアス、ぉ姫様予約します。


113 : ◆7PJBZrstcc :2020/09/13(日) 22:57:32 IDYhZQNM0
Syamu-game、野原ひろし? 予約します。


114 : ◆L9WpoKNfy2 :2020/09/13(日) 23:04:15 lbva5XsQ0
誠に申し訳ございませんが、わたくしの予約から「聖帝エーリュシオン」を外しまして、以下のように変更いたします。

新田美波、志村新八、空条徐倫、ウィズ、菱川六花

以上、お手数おかけしますがよろしくお願いいたします。


115 : ◆NIKUcB1AGw :2020/09/14(月) 22:36:14 XC75HZZQ0
投下します


116 : クレイジー・ノイジー ◆NIKUcB1AGw :2020/09/14(月) 22:37:38 XC75HZZQ0
「ふむ……。今回の殺し合いは、なかなか大人数のようだな……」

物陰に身を隠しながら、ディアボロは名簿のチェックを行っていた。
過去に幾度か同じような殺し合いに参加させられている彼にとって、これもすでに慣れた作業である。
とはいえ、100人以上の名前をチェックするのはさすがに楽なことではなかったが。

(パッショーネに関係する者の名前はないか……。
 ホル・ホースという名前はずいぶん前に、裏社会のスタンド使いとして聞いたことがある気がするが……。
 その程度の情報しかないのでは、見知らぬ人間とほぼ変わらん。
 俺と関わったことのあるものは誰もいない、という認識でいいだろう)

この事実は、ディアボロにとって幸運と言える。
彼の行動指針は、本性を隠し善良な人間の中に紛れ込むこと。
ここにブチャラティチームの誰かでもいようものなら、過去の自分の悪行が広まりかねない。
そうなっては、他の参加者からの信頼を得ることなどほぼ不可能だろう。

(さて、名簿のチェックも終わったことだし、そろそろ本格的に動くか。
 とはいえ……ここはどこだ?
 目印になるものが周囲になくては、地図はあっても現在位置が……)

ディアボロが頭を抱えかけたその時、彼は気づく。
自分の上空を、何かが通過していくのを。

(なんだ、あれは……。人影のように見えたが……)

興味を惹かれ、ディアボロは謎の飛行物の後を追うことにした。


◆ ◆ ◆


「うわあ……そうそうたるメンツ……」

名簿を確認したりあむは、そこに並ぶ既知の名前に激しく動揺していた。
所属する事務所におけるアイドルの頂点である「シンデレラガール」に選出された経験のある、高垣楓と島村卯月。
加えて健康的な色気で高い人気を誇る、新田美波。
アイドルであると同時にドルオタでもあるりあむにとっては、名前が並ぶだけでも恐れ多い顔ぶれだ。

「でも、これだけアイドルがいるってことは……。やっぱりテレビの撮影なのかな。
 いっぱいある変な名前は、きっと芸人さんとかだよね……」

必死に、自分に都合のいい可能性にすがろうとするりあむ。
だが心の奥では、すでにそんな可能性はほぼあり得ないということも理解していた。
これが撮影だとしたら、事務員である千川ちひろが参加者に含まれているはずがないのだから。

「これは撮影、これは撮影……。
 殺し合いなんて嘘っぱち……」

それでも彼女はおのれの精神を守るために、必死で幻想にすがる。
だがそのあがきも、あっけなく粉砕される。
空から降ってきた侍によって。


117 : クレイジー・ノイジー ◆NIKUcB1AGw :2020/09/14(月) 22:38:30 XC75HZZQ0


◆ ◆ ◆


「む……」

長い跳躍の果てに再び地面を踏みしめた土方は、おのれの状態を確認する。
かなりの高さから落下したというのに、痛みもなければ負傷もない。
どうやら単純な物理現象ではなく、超常の力によって飛ばされたということらしい。
まあ、何も成し遂げないまま転落死という無様な結果にならなかったのだからよしとしよう。
周囲を確認すると、十数メートル離れたところに女が一人座り込んでいた。
魂の抜けたような表情で、こちらを見ている。
まあ突然人が空から降ってくれば、そのような反応になってもおかしくない。
こちらから歩み寄っても、全くの無反応だ。
完全に思考が停止しているらしい。
無抵抗の相手を殺すのはあまりいい気分ではないが、この様子ではどのみち長くは生き残れないだろう。
すっぱり引導を渡してやるのも情けだ。
土方は首輪の下に狙いを定め、横一文字に毒濁刀を振り抜いた。
だが彼の思惑に反し、首は落ちない。
まるで刃が、女の首をすり抜けたように。

「……?」

思わぬ結果に、さすがに困惑を隠せない土方。
その直後、絶叫が周囲に響き渡った。

「うわあああああああ!!」


◆ ◆ ◆


刃を振るわれた瞬間、りあむは無意識のうちに自分の首を炎に変化させていた。
彼女の生存本能が、未だ把握しきれていない能力から最適解を導き出したのだ。
そしてこの瞬間、彼女の中で最後の砦が崩壊した。
叩きつけられた、明確な殺意。これは決して、演技などではない。
自分が参加させられているのは、本物の殺し合いだ。
そう確信すると同時に、りあむは叫んでいた。
そして、おのれの両腕を炎に変化させる。

(やらなきゃ! やらなきゃ! やらなきゃ!
 やらなきゃやられるぅぅぅぅぅ!!)

りあむの腕から炎が伸び、がむしゃらに眼前の敵へと襲いかかる。
そもそもが戦いのド素人、それも錯乱状態であるがゆえに、狙いはめちゃくちゃ。
土方にとって、それを避けるのは造作もない。
ただしそれは、単発の攻撃であればの話。
矢継ぎ早に飛んでくる炎に、土方は全力での回避を余儀なくされる。

(ジャンヌと同じ、炎を操る能力……。
 いや、さっきの刃がすり抜けた現象と合わせて考えれば……。
 体を炎に変化させる能力か!)

絶え間なく足を動かしながらも、土方は冷静にりあむの能力を分析する。

「燃えちゃえ! 燃えちゃえよぉぉぉぉぉ!!」

半狂乱で叫びながら、りあむは炎を振りまき続ける。
もはやその体は両腕だけでなく、虫食いのようにあちこちが炎に変化している。

(刀で炎は殺せんが……。幸い対抗策はある!)

一度大きく距離を取ると、土方は手早く荷物から支給品の一つを取り出す。
それは、厳つい顔が彫られた盾だった。

(炎ならば……風で散らせる!)

土方が、盾を正面に構える。すると盾は猛烈な回転を始め、突風を生み出す。

「え……? うわああああああ!!」

体の大部分が炎と化していたりあむは、もろに風の影響を受け大きく吹き飛ぶ。
そしてそのまま、近くの森に突っ込んでいった。

(炎を吹き飛ばすことはできても、消すことは出来なかった……。
 まだ生きている可能性も十分にあるが……。
 これで殺せていないのであれば、もう俺に打つ手はない。
 負けてはいないが、これ以上は勝てんか……。
 ふん、ここに来る前の戦のようだ)

漂流者(ドリフターズ)たちとの戦いを思い浮かべ、苦い表情を浮かべながら土方はその場を去った。


118 : クレイジー・ノイジー ◆NIKUcB1AGw :2020/09/14(月) 22:39:30 XC75HZZQ0


◆ ◆ ◆


(あ、危なかった……。この指輪がなければ、大やけどをしていたところだった……)

森の中、ディアボロは汗を拭いながら安堵のため息を漏らしていた。
飛ばされた人影、すなわち土方を追っていた彼は、土方とりあむが戦っている場面に遭遇することになった。
そのまま森の中から様子をうかがっていたディアボロだったが、偶然にも飛ばされたりあむがまっすぐ彼に突っ込み、激突してしまったのである。
りあむの体にはまだ炎が残っていたため本来なら少なからず火傷をするところだったが、
たまたまディアボロが炎に強い耐性をつける指輪を身につけていたため無傷で済んだのであった。

(半信半疑だったが、念のために身につけておいてよかった……。
 もっとも、服までは守ってくれなかったが……。
 仕方ない、マントを羽織っておくか。
 奇妙な格好になるが、上半身裸で行動するよりはましだろう)

半分以上焼け焦げてしまった上半身の衣服を脱ぎ捨て、ディアボロは二つ目の支給品であるマントを羽織る。

(まあ、服一枚でこいつと接触できたのなら安い犠牲だ……。
 おそらく目覚めたばかりで、まだ使いこなせていないのだろうが……。
 あの能力は、大きな戦力になり得る。
 しばらくの間、私を守る武器となってもらうぞ……)

目を回して地べたに倒れ込んでいるりあむを見下ろしながら、ディアボロはにたりと笑った。


【D-3/深夜】

【土方歳三@ドリフターズ】
[状態]疲労(小)
[装備]毒濁刀@トクサツガガガ
[道具]基本支給品、風神の盾@ドラゴンクエストシリーズ、ランダム支給品0〜1
[思考]基本行動方針:優勝し、新撰組を復活させる
[備考]
・参戦時期は単行本4巻終了時点。
・召喚した亡霊は物理攻撃でもダメージを受けますが、倒されても一定時間経過すると再召喚できます。
 また、土方本人と一定距離以上離れた場合も召喚解除されます。


【夢見りあむ@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]:混乱(大)、気絶、悪魔の実の能力者(メラメラの実)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いとか……やむ。
1:怖い、死にたくない
[備考]
 メラメラの実@ONEPIECEを食べたことで能力者になっています。
 参戦時期は第8回シンデレラガール総選挙の後。


【ディアボロ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康、上半身裸
[装備]:完全耐火リング(試作品)@異種族レビュアーズ、ミステリアスパートナーのマント@キン肉マン
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本行動方針:ゴールドエクスペリエンス・レクイエムの能力を打ち破る。
1:対主催派を装い、能力を無効化できないか探る。
2:人数が減ってきたら優勝狙いに切り替える。
3:りあむが目を覚ましたら説得し、仲間に加える。
[備考]
参戦時期はゴールドエクスペリエンス・レクイエムの能力によって死に続けた後。
殺し合いに何度か参戦した経験あり。
スタンドやドッピオは現在使用不可。何かのきっかけで使えるようになるかも知れません。


119 : クレイジー・ノイジー ◆NIKUcB1AGw :2020/09/14(月) 22:40:46 XC75HZZQ0


【風神の盾@ドラゴンクエストシリーズ】
厳つい風神の顔がデザインされた盾。
道具として使うと突風を巻き起こし、敵1体を吹き飛ばして戦闘から離脱させる。
このロワでも突風を起こすことができるが、戦闘から離脱させられるかどうかは相手と状況次第。


【完全耐火リング(試作品)@異種族レビュアーズ】
大魔道士デミアが、天使の持つ完璧な耐性を研究して開発した魔導具。
身につけると、炎や熱に対する強い耐性を得られる。
まだ研究中であるため100%無効とまではいかないが、
普通は触っただけで火傷するサラマンダーの肌に触れても風呂程度の熱さを感じる程度まで耐性が上昇する。
ただし衣服までには効果が及ばないため、普通に燃える。


【ミステリアスパートナーのマント@キン肉マン】
知性チームのメンバーが、正体を隠すために着用していたフード付きマント。
これを着ていると正体がばれにくくなるかもしれないし、ならないかもしれない。


120 : ◆NIKUcB1AGw :2020/09/14(月) 22:41:31 XC75HZZQ0
投下終了です


121 : ◆7PJBZrstcc :2020/09/15(火) 18:47:56 oazMAs3.0
投下します


122 : 悪魔の飼い方、しつけ方 ◆7PJBZrstcc :2020/09/15(火) 18:48:33 oazMAs3.0
 絶叫するビーバーを殺害したひろし? は、商店街からそそくさと去る。
 彼が待ちの戦法を放棄した理由は一つ。より多くの参加者と出会うためだ。
 ここが商店街である以上、待っていた方が参加者に会えそうだと思うかもしれないが、彼はそう考えなかった。

 なぜなら、地図を見る限りこの殺し合いの会場は結構広い。
 故に他の参加者がここにたどり着く前に死んだり、生きていても傷を負って弱くなっている可能性が高い。
 ひろし? としてはそれは少しつまらない。
 加えて言うなら、さっきのビーバーの絶叫を聞いて逃げた参加者もいるかもしれないので、そいつを追うという理由もなくはない。
 だが今のところ他の参加者は見つからないので、あの絶叫を聞いていた者はいないのだろう、と彼は判断していた。

 色々言ったが、要約するとひろし? の趣味みたいなものである。


 そうして商店街を抜け、町を出たひろし? はとりあえず道なりに沿って歩いていく。
 安全性を考えるなら道から外れたところを歩くという方法もあり、実行可能ではあるが彼は現在一般人を装っている。
 故に、道なき道を歩きなれているという不審な部分を周りに見せたくはなかった。
 いくら周りに気配がなくても、双眼鏡みたく気配が分からないほど遠くから見る手段などいくらでもあるのだから。

 しかしひろし? は他の参加者に中々出会えない。
 途中でゴブリン数匹と遭遇したが、ゴブリン達がひろし? に気付くより先に彼はデザートイーグルで頭を撃ちぬいてしまった。

「いい加減にしてくれよ〜」

 手ごたえがない。あまりにも手ごたえが無さすぎる。
 そんな虚無感がひろし? を襲い始める中、どこからか声が聞こえてきた。
 彼が声のする方を見るとそこには――

「いや〜、暗いですね〜。これは暗い。
 こんな中で誰かに襲われたら一溜りもありませんね。でもわたくしはおふざけのあるバトロワ実況をしていきますよ。
 殺し合いは危ないですが、苦しい時も悲しい時も笑っちゃえばプラスになりますから。
 笑いにはそんな不思議な力があるからその、不思議な力を信じて、俺は、この、バトロワで何をするかというのを考えてます」

 顔にオーバーグラスを掛けた、ひろし? と同年代位の男がビデオカメラを片手に一人で喋っている姿があった。
 怪しい。あまりにも怪しい。
 歴戦の殺し屋たるひろし? ですら一瞬戸惑うほどだ。
 だが彼は慌てない。己の流儀に従い、ポケットの中で握っていたデザートイーグルを引き抜き、発砲。
 これで目の前の男は終わり、のはずだ。
 しかし次の瞬間、ひろし? にとって信じられないことが起こる。

「オ゛イ! いきなりYO! 銃を撃ってるんじゃねえぞ〜! ウォゥウォゥウォゥ! アウォゥウォゥウォゥ! アランラカランラランラッラッラッ! ウォウ↑」

 なんと、銃弾が男をすり抜けそのまま飛んでいくではないか。
 これには流石のひろし? も動揺を隠せない。
 一方、男はオーバーグラスを半端にずらして目を見せ、背後から幽霊のようなものを出現させながらひろし? に言う。

「それでは、殺し合いに乗った男とわたくしのバトロワ! 始めていきましょう!!」


123 : 悪魔の飼い方、しつけ方 ◆7PJBZrstcc :2020/09/15(火) 18:49:03 oazMAs3.0





 さて野原ひろし? とオーバーグラスの男、もといSyamu-game(以下シャムと称す)の戦いの前に、どうやってひろし? の銃弾をシャムが回避したか解説しよう。
 回避した方法はシャムに支給されたスタンド、キング・クリムゾンの能力を使用したのだ。
 キング・クリムゾンの能力解説はここでは省略させていただく。
 ご存じの方も多いと思われるし、そもそもシャムの登場話にて支給品解説で書いてある。

 しかしこれだけは解説しよう。シャムはどうやってエピタフを見ていたのか。
 アニメ版黄金の風にて、ディアボロは自身の長髪のをスクリーン代わりに未来の映像を見ていた。
 だがシャムは短髪で、髪の毛をスクリーン代わりにはできない。ならばどうしたか。
 答えは簡単、オーバーグラスに映像を映したのだ。そうでなければ深夜にも関わらずオーバーグラスなど掛けるわけがない。
 こうして、戦闘経験ゼロのYoutuberシャムは殺し屋ひろし? を精神的に気圧した状態で戦いは始まった。

「ちっ」

 ひろし? は舌打ちをしながら、もはや隠す必要がなくなったデザートイーグルを二発撃つ。
 その銃弾をシャムはキング・クリムゾンで弾きながらビデオカメラを地面に置き、デイバッグからポンプアクションショットガン取り出し手に持つ。
 そしてポンプアクションショットガンを発砲した。
 だがポンプアクションショットガンの弾は当たらない。
 いくら銃が他の武器に比べて訓練が少なくて済むとはいえ、ポンプアクションショットガンを撃つのが初めてで弾が当たるものではない。

「あれ? 丘people!?」

 当たらないことに苛立ちシャムが叫ぶが、ひろし? は構わずシャムの元へ走る。
 あの幽霊みたいなのが銃弾をはじくなら、逆に懐に潜り込んでしまえばいい。というのがひろし? の考えだ。
 無論、一直線には走らない。体を左右に移動させ、シャムにポンプアクションショットガンを狙わせないようにする。
 しかしその刹那、またしてもひろし? に信じられない出来事が襲い掛かる。

 いつの間にか、自身が数歩進んでいるのだ。
 しかも目の前には拳を振りあげるキング・クリムゾンが。


 これはキング・クリムゾンの能力で時間を消し去り、その間の意識がないひろし? が走っていただけなのだがその事実を彼は知らない。


 そうしている間にも、キング・クリムゾンの拳はひろし? に向かって振り下ろされる。

「でぇやっ!!」

 しかしひろし? は咄嗟に横へ飛び攻撃を躱した。
 シャムがオーバーグラスをずらし目を見せていたことで、目線の方向に攻撃が来ると分かっていたのだ。
 そして――

(横から、かぶりつく!!)

 デザートイーグルを発砲。
 シャムの眉間に弾丸を撃ちこみ、ひろし? の殺し屋としての流儀を見事貫いた。

【Syamu-game@例のアレ 死亡】
【残り107名】


124 : 悪魔の飼い方、しつけ方 ◆7PJBZrstcc :2020/09/15(火) 18:49:33 oazMAs3.0

「なんだ、こんなもんか」

 非スタンド使いによるキング・クリムゾンの撃破という、能力の強大さを知る人が聞けば驚愕する行いを終えたひろし? の言動はあっさりしたものだった。
 しかしあの幽霊みたいなものはなんだったのか、とひろし? が考えながらシャムの方を見ると、彼の頭にさっきまでなかったはずのディスクのようなものがある。
 気になったひろしがディスクを拾い、ひょっとしたらと思いシャムのデイバッグを漁ると、ディスクの説明書きが出てきた。
 これを読んだひろし? はさっきの幽霊みたいなものはスタンド、キング・クリムゾンであることと、DISCを差せば自分でも使えると理解した。
 彼は早速DISCを頭に差し、キング・クリムゾンを試しに出す。

「おっ、出た出た」

 そのまま試しとばかりに、シャムが地面に置いたカメラをキング・クリムゾンに殴ってみた。
 当然の如く粉々となり、それを見たひろし? は満足げな表情を見せる。

「よし、次行くか」

 そしてついでとばかりにポンプアクションショットガンも拾い、自身のデイバッグに入れてから野原ひろし? は出発する。
 殺し屋の流儀は、未だ終わらない。


【I-7/深夜】

【野原ひろし?@野原ひろし 昼めしの流儀】
[状態]:健康、ちょっと楽しくなってきた
[装備]:右手にデザートイーグル、キング・クリムゾンのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2個、ポンプアクションショットガン@ゾット帝国
[思考・状況]基本方針:他参加者の殺害
1:テーマパークに来たみたいだぜ
2:こいつ(Syamu-game)は大したことなかったが、支給品は面白い
[備考]原作とは性格が大きく掛け離れてます。「自分を野原ひろしと思い込んでる一般人」「殺し屋ひろし」の両要素を含んでます。


絶叫するビーバー@memu の死体はI-8 パラダイス・バームズにあります。


125 : ◆7PJBZrstcc :2020/09/15(火) 18:50:03 oazMAs3.0
投下終了です


126 : ◆L9WpoKNfy2 :2020/09/15(火) 21:49:40 vYO4z6l60
投下いたします。


127 : 異世界にまつわるあれやこれや ◆L9WpoKNfy2 :2020/09/15(火) 21:50:38 vYO4z6l60
とある草原地帯で、黒い車が走っていた。

「ヘンタイジジイの後は大量の小鬼たちかよォォォォッ!どうなってんのコレェェェッ!」
「まったく!先ほどのあの爺さんから何とか逃げ切ったと思ったら、今度はこんな奴らと出くわすとはね!」

運転席にいた新八の叫びに対し、後部座席にいた徐倫が同意していた。

そう、今の彼らは無数の小鬼たちに追いかけられていたのだ。

そして彼らの中には馬にまたがったものや全身が白骨化したもの、それに加えてガイコツの馬にまたがったものなどさまざまな種類がいた。

またその小鬼たちは新八たちが乗っている車に矢を射かけたり自分が持っている様々な武器で殴り掛かろうとするなど、
彼らをしとめようとしているのだ。

そしてそれに対し新八がハンドルテクニックを駆使してそれを躱したり、弓を手にした美波が窓から身を乗り出して矢を放ったり、
自分の体の一部を糸状にした徐倫が飛んできた矢を打ち落としたり、小鬼たちを馬から引きずり落としたりして車が傷つくのを防ぎ続けていた。

しかしいくら倒してもすぐにどこからか沸いてくる上にガイコツたちは自分の身体を拾い集めてすぐに復活してしまうなど、いくら倒してもきりがない状態になっていたのだ。

「今は何とか躱せていますが、このままでは時間の問題です!徐倫さん、すみませんが何か方法はありますか!?」

そして徐倫とともに後部座席に座っている美波が、矢が尽きた状態で彼女にそう尋ねていた。

「すまないけども今は飛び道具もないし、車を停めて迎撃するしかなさそうね」
「……しかし奴らも馬鹿じゃない。そうした場合は距離を置いて矢を射かけ続ける戦法をとるはずよ」
「つまり……今できるのは奴らの矢が尽きるまで逃げ続けるか、どうにかしてやつらの動きをとめるかの二つになるわ」

それに対し徐倫は、現在できるベストについて答えた。
相手の飛び道具がなくなるまで逃げ続けるか、それとも彼らが乗っている馬の動きを止めるかの二つしかないと、そう答えた。

「つまり……今は逃げ続けるしかないってことですよね、徐倫さぁぁぁん!」
「すまないけど、そういうことになるわね」

そしてハンドルを握っている新八がそう叫び、徐倫はそれに申し訳なさそうにうなづいた。

そうしてしばらく逃げ続けたところで、新八は車の前方に誰かいるのに気付いた。

それは犬のような謎の生き物を連れた少女と、ぽわぽわした雰囲気をまとった髪の長い女性だった。

「そこのお二人さん!今こっちに怪物たちが来ていますから、早く逃げてください!」

新八は目の前に現れた彼女たちに怪物から逃げるように促した。

出来ることなら先ほど美波を助けたときのように彼女たちを車の中に引き寄せたかったのだが、思いのほか怪物たちの攻撃が激しいことと
後は助手席くらいしかスペースがないため二人とも乗せることが出来ず、警告することしかできなかったのだ。

しかし彼女たちは迫りくる怪物の群れから逃げようとせず、むしろそれらに立ち向かおうと歩を進めていた。

「何をやってるんですか!早く逃げてください!」

美波が彼女たちにそう言った。なぜ怪物たちに向かっていくのかを理解できなかったからだ。

しかしすぐさまその理由が判明した。何故ならば……

『ラケル!』
「プリキュア、LOVEリンク!」
『L・O・V・E!』

少女が連れていた犬のような生き物が携帯のような姿に変化した後、少女がそれを操作すると彼女の身体が光に包まれ始めたのだ。

そして……

「英知の光!キュアダイヤモンド!!」

そこには、水色の髪の魔法少女がいたのだ。

「人の心を踏みにじるなんて許せない! このキュアダイヤモンドが、あなたの頭を冷やしてあげる!」

そして変身を終えた彼女は、迫りくる怪物たちに決め台詞を放つとともに悠然と立ち向かった。

「リッカさん、ちょっと待ってくださいよ〜!」

それに続いて、彼女と一緒にいた女性も魔法使いが持っているような杖を片手に怪物たちへと立ち向かっていった。

そしてそれはまさに、日曜の朝にやっている女の子向けアニメの登場人物のようだった。


128 : 異世界にまつわるあれやこれや ◆L9WpoKNfy2 :2020/09/15(火) 21:51:08 vYO4z6l60
「まさかの本家プ〇キュアァァァァッ!?大丈夫なのコレ!またお偉いさんに怒られたりしないよね!?」

それらの光景に対し、思わず車を停めてしまった新八が全身から脂汗を出しながらツッコミを入れていた。

彼が驚愕したのも無理はない。原作漫画の方はともかく、アニメ版はプ〇キュア関係で「イロイロ」あったのだから。

「…いきなり車を停めたことについていろいろと言いたいことはあるけれども、まずは彼女たちに加勢しないといけないわね!」
「新八!あなたはその子を守るためにも車を走らせなさい!」

そして徐倫も、今まさに怪物たちと戦っている彼女たちを手助けするべく車を降りて走り出した。

「……えっと、新八さんは彼女たちが何者か知っているんですか?」

再び車を発進させた新八に対し、美波が質問をしていた。

先ほど彼が「プ〇キュア」と叫んだことについて、彼女たちが新八の知り合いなのか気になったからだ。

「……ええっと…実際には僕じゃない僕が、彼女たちに関することでいろいろとあったというか…まあ僕が一方的に知っているだけなんだけどね」

その質問に対し新八は、噴き出した脂汗をぬぐおうともせずにあいまいな回答を返していた。

「……そうですか。つまり、『テレビで見たことがある人』みたいなことでしょうか?」

そして新八の回答に対し美波は、彼がテレビなどを通して知っている人だと解釈をした。

「…まあそんなところだね……」

やっと脂汗が引いてきた新八が、複雑そうな顔をしながら答えた。

そうしてしばらく徐倫達から離れないように走り続けていた彼らは、彼女たちの戦いを見続けていた。

「煌めきなさい! トゥインクルダイヤモンド!」

先ほど「キュアダイヤモンド」と名乗った少女は、指先から氷の結晶を放って馬の上に乗っている小鬼を吹き飛ばし、

「ライト・オブ・セイバー!」

彼女と一緒にいた女性は、杖を片手に呪文を唱えたかと思うともう片方の手から剣状の光を出して怪物たちを切り裂き、

「オ―ラオラオラオラオラァァァ――――!!」

徐倫は先ほどの老人を倒した時と同じように、スタンドの両拳を叩きつけて怪物たちを薙ぎ払っていった。

そして彼女たちは、自分たちに襲い掛かった小鬼の群れを一掃したのだった。


129 : 異世界にまつわるあれやこれや ◆L9WpoKNfy2 :2020/09/15(火) 21:51:34 vYO4z6l60
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そうしてしばらくした後……

先ほどと同様に、草原地帯を黒い車が走っていた。

しかし先ほどとは違い、後部座席には徐倫と美波のほかに先ほどの少女が乗っており、助手席には彼女に同行していた女性が乗っていた。

更に言うと先ほどまで武器らしいものを持っていなかった美波と新八がそれぞれ、中心に穴が空いた両刃の剣やスタンダードなデザインの剣を持っていた。

それらは徐倫たちが倒した小鬼たちが持っていた武器であり、現状武器に乏しい状況であることを考えて回収したものである。

またそれに対し徐倫たちも今後のことを考えて、散らばっていた武器の中から使えそうなものをいくつか回収していったのだ。

…なおウィズの提案により一部は、ガイコツや巻き込まれてしまった馬たちの亡骸を供養するための墓標代わりにするなどアフターケアも行っていたのだが。

「……そういうわけで、六花はプリキュアとして戦ってきたのだケル」

そして後部座席では、六花のパートナーである妖精『ラケル』がプリキュアのことや今までの戦いのことについて徐倫と美波に説明していた。

「なるほど、六花ちゃんは『プリキュア』という戦士で、人々の心を闇に染め上げる怪物『ジコチュー』達と戦っているのね」
「……驚きました、まるで漫画やアニメみたいですね。……実は私も似たような経験をしたことがありますからちょっと反応に困りますが」

徐倫たちはラケルの説明に対して、少し驚いた様子だった。

「しかしこれが私たちにとっての現実で、私たちは戦い続けているんです」

彼女たちの反応に対し六花がそう返していた。

そしてそれらを前方の座席から聞いていた新八とウィズは、それぞれ違う反応を示していた。

(リッカさんは、勇者だったのですね!道理であれだけの強さを秘めているわけです!)

ウィズは彼女のことを『伝説の勇者の一人』だと思い込み、新八はというと……

(そっくりさんかと思って誤魔化してたのに、マジモンのプ〇キュアじゃないですかこの人!これ以上ネタにすると訴えられるんですよウチら!)

アニメ銀魂の製作に関する裏事情から凄まじく焦っていたのだった。

しかしそんな中新八はあることがふと気になった。

「……あれ?そうなると六花ちゃんと一緒にいたウィズさんも、実は『プリキュア』なんですか?」

それは六花とともに行動していたウィズも実はプリキュアなのか、ということだった。

思えば先ほどの戦いの中で、彼女は変身こそしていないものの光の剣を出したり大量の水を浴びせるなどで怪物たちを倒していた。

それはどう考えても彼女が普通の人ではなく、何か特別な力を持っている人間だと考えるには十分すぎる証拠だった。

…ちなみに新八のセリフから伏字がなくなっているのは、もういちいち隠す理由もなくなったからである。

そして新八のその質問に対し、ウィズは少し困った顔をしながら答えた。

「いえ、昔は魔法使いとして名を上げていたのですが、今の私はただの魔道具屋の店長でして……リッカさんのような『伝説になるほどの存在』ではないんです、すみません」

自分はただの、魔道具屋の店長をやっている元・魔法使いだと、そう答えたのだ。

そしてそれに対し、新八は少し安堵した様子だった。

「そ、そうですか…あはははは…(やっべ〜、これでこの人もプリキュアだったらもうシャレになっていませんでしたよ……)」

何故ならば、もしプリキュアが二人そろっていたらもう言い逃れも不可能だと思ったからだった。


130 : 異世界にまつわるあれやこれや ◆L9WpoKNfy2 :2020/09/15(火) 21:52:02 vYO4z6l60
そんな中、美波があることに気が付いて口を開いた。

「しかしそれにしても『魔法使い』に『スタンド』、そして『プリキュア』だなんて、まるでそれぞれ別の世界から来たみたいですよね」

それは今まで様々な人の話を聞いたうえでの、彼女の率直な感想だった。

しかしその言葉に反応したものがいた。

「実際そうだと思いますよ。現に僕のいた世界に魔法はありませんし、『プリキュア』って確か、僕のいた世界とは別の世界の人々ですから」

それは新八だった。

「もしそうであれば、名簿の中に【勇者】が二人いたり、【命の輝き】や【ハサミ】など明らかに人の名前じゃないのが載っているのも説明が付くんですよ」
「それに、先ほどの怪物たちについても別の世界から呼ばれたのだとしたらなんとなくつじつまが合う気がしませんか?」

そして彼は、名簿に載っている名前について不自然な点があることや先ほどの怪物たちの存在を例に挙げてその仮説を話したのだった。

「……確かにラケルも元々は『トランプ王国』という地球とは別の世界から来たのですから、その仮説については一理あると思います」

新八が立てたその仮説を、六花は受け入れた。

ラケルのことや、彼が住んでいた『トランプ王国』という別世界のこともあってすんなりと受け入れられたのだ。

そして彼の仮説を信じた人がもう一人。

「私も、それについては同意します。……実を言うと私も、自分のいる世界とは別の世界に飛ばされたことが二回ほどありましたから」

それは先ほど『それぞれ別の世界から来たみたい』という感想を述べた美波だった。

そしてそれらを受けて、他の人々もなんとなくではあるが納得はしたようだ。

「そうね……あたしも、ちょっと違うけれども『別の世界の住人』を呼び出すスタンド使いと戦ったことがあるし、こういったこともあり得ると思うわ」

徐倫が、以前戦ったスタンド使いのことから可能性はあると答え、

「また聞きではありますけども、アクシズ教徒の方が異世界のことについて話していた気がしますし、私もこれに同意します」

ウィズも(自分にとっては天敵である)ある宗教の信者たちの会話からこれに納得した。

しかしそれらの仮説を受けて、別のことについてラケルが言及をした。

「……ちょっと待ってほしいケル。そうなると、六花たちがさっき戦ったあの天使は何者だケル?」
「あの天使はキュアダイヤモンドの姿を見て、明らかに顔をしかめていたケル。反応を見る限り、彼はプリキュアのことを知っている様子だったケル」
「彼は、僕たちや六花たちとは顔を合わせたこともないし、ほかのプリキュアや妖精たちの話でも彼のような存在はいなかったケル」
「なのに、なぜあの天使はプリキュアのことを知っていたんだケル?」

それは、六花とウィズがティルテッド・タワーで戦ったあの天使のことだった。

彼はキュアダイヤモンドの姿を見た瞬間、顔をしかめていたのだ。そして彼は、明らかに彼女に似た『何者か』を知っている様子だったのだ。

ラケルは、そのことがどうしても気になっていたのだ。

確かに彼は他の妖精たちやプリキュアたちと知り合っており、自分たちとは別の世界にもプリキュアの伝説があることは知っていた。

しかし彼らの話の中には先ほど戦った天使のような存在はいなかった。そのためラケルは、あれもまた別世界の存在なのかが気になったのだ。


131 : 異世界にまつわるあれやこれや ◆L9WpoKNfy2 :2020/09/15(火) 21:53:11 vYO4z6l60
そして彼の疑問に答えたのもまた、新八だった。

「……僕の知る限りでも、『プリキュア』が彼のような存在と戦った話なんてなかったんですよね」
「確証があるわけではないんですけど……その天使も六花ちゃんたちとは別の世界で『プリキュア』と戦っていた存在か、もしくはこの先六花ちゃんたちが戦うことになる存在だと思います」

新八は、ラケルの疑問に対し「別の世界か、未来から現れた存在ではないか」と答えた。

そしてその仮説に対して、徐倫が反応をした。

「もしその存在が未来から来たのだとすれば、主催者たちは時間移動もできることになるわね……」

それは主催者たちが時間移動もできるのではないか、ということだった。

「そうであれば、話はまたややこしいことになりますね……」

六花は彼らが時間移動もできると仮定していろいろと考え始めた。

こうして彼らは草原を走り続けていく、主催者に立ち向かう仲間たちを集めるために。

―― そんな彼らの後ろには、どんな困難の中でも燃え続ける光がうつっていた。


132 : 異世界にまつわるあれやこれや ◆L9WpoKNfy2 :2020/09/15(火) 21:54:25 vYO4z6l60
【C-6/黎明】

【新田美波@アイドルマスター シンデレラガールズ】
[状態]:疲労(中)、怪物への嫌悪感
[装備]:風切羽の剣、森人の弓&木の矢(20本)@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2(確認済み、重火器の類は無し)、
[思考・状況]:基本行動方針:殺し合いなんてしたくない
1:ちひろさんやほかのアイドル達と合流したい。特にりあむちゃんはあの性格だから心配。
2:今は新八さんや徐倫さんに付いていく。
3:六花ちゃんのいう天使(聖帝エーリュシオン)についても、注意しないといけない。
[備考]
新八の仮説により、この会場には別の世界の人間が集められたのではと考えています。
六花たちが戦った天使(聖帝エーリュシオン)について、「別の世界か未来で、プリキュアと戦っていた存在」だと思っています。
ボコブリンたちからいくつか武器を回収しています(内容については後続の書き手に任せます)。


【志村新八@銀魂】
[状態]:健康
[装備]:狩猟用の剣@ファイナルソード
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2(確認済み、重火器の類は無し)
[思考・状況]:基本行動方針:殺し合いから脱出する
1:ともかく、この殺し合いを脱出するための仲間を集めたい。
2:できるなら銀さんや沖田さんと合流したい。
3:まさか本家プ〇キュアとともに行動することになるとは……。
4:六花ちゃんのいう天使(聖帝エーリュシオン)についても、注意しないといけない。
[備考]
参戦時期は将軍暗殺篇以降。
新田美波の何気ない一言により、この会場には別の世界の人間が集められたのではという仮説を立てました。
六花たちが戦った天使(聖帝エーリュシオン)について、「別の世界か未来で、プリキュアと戦っていた存在」だと思っています。
ボコブリンたちからいくつか武器を回収しています(内容については後続の書き手に任せます)。

【空条徐倫@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2(確認済み、重火器の類は無し)、ボコブリンから拝借した武器
[思考・状況]:基本行動方針:主催者をブチのめす
1:新八や六花たちとともに、この殺し合いを打倒する仲間を集める。
2:プッチは何としても倒さなければならない。
3:六花のいう天使(聖帝エーリュシオン)についても、注意しないといけない。
[備考]
参戦時期はリキエルを倒した後。
新八の仮説により、この会場には別の世界の人間が集められたのではと考えています。
六花たちが戦った天使(聖帝エーリュシオン)について、「別の世界か未来で、プリキュアと戦っていた存在」だと思っています。
ボコブリンたちからいくつか武器を回収しています(内容については後続の書き手に任せます)。

【ウィズ@この素晴らしい世界に祝福を!(アニメ版)】
[状態]:身体に無数の火傷、服に破れ
[装備]:めぐみんの持っている杖@この素晴らしい世界に祝福を!
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2、ボコブリンから拝借した武器
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いに乗るつもりはない。あの天使を倒すための仲間を集める。
1:あの天使を倒すための仲間たちを集める。
2:リッカさん、実は勇者だったんですね!
3:あの天使(聖帝エーリュシオン)は、一刻も早く倒さなければ大変なことになります!
[備考]
参戦時期は第二期最終回後。
また菱川六花のことを、『異世界に伝わる、伝説の勇者の一人』だと思っています。
新八の仮説により、この会場には別の世界の人間が集められたのではと考えています。
自分たちが戦った天使(聖帝エーリュシオン)について、「別の世界か未来で、プリキュアと戦っていた存在」だと思っています。
ボコブリンたちからいくつか武器を回収しています(内容については後続の書き手に任せます)。


133 : 異世界にまつわるあれやこれや ◆L9WpoKNfy2 :2020/09/15(火) 21:54:46 vYO4z6l60
【菱川六花/キュアダイヤモンド@ドキドキ!プリキュア】
[状態]:健康、聖帝エーリュシオンに対する激しい怒り(大)
[装備]:ラケル&変身用キュアラビーズ、ラブハートアロー@ドキドキ!プリキュア
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1、ボコブリンから拝借した武器
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いを止める。そのために仲間になってくれる人を探す。
1:ウィズさんや徐倫さんたちとともに、この殺し合いを打倒する仲間を集める。
2:あの天使(聖帝エーリュシオン)は何としても倒さないといけない。
[備考]
参戦時期は少なくとも円亜久里/キュアエースが加入した後です。あと、オールスターズの出来事も経験してます。
新八の仮説により、この会場には別の世界の人間が集められたのではと考えています。
自分たちが戦った天使(聖帝エーリュシオン)について、「別の世界か未来で、プリキュアと戦っていた存在」だと思っています。
変身できなくなった時に備えて、ボコブリンたちからいくつか武器を回収しています(内容については後続の書き手に任せます)。


【ランダム支給品】

【森人の弓&木の矢(20本)@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド】
 森の中に住む、植物そっくりの姿をした小人『コログ族』が人間のために作ったといわれる弓で、美波に支給されていたアイテム。

 良くしなる木材と丈夫な草のツルで作られており、簡素な見た目に反して一度に複数射る事ができる。

 また素材の関係上とても軽く、そして通常の弓と比べて引きやすいなど非力な人でも扱えるようになっている。

 なお矢束については怪物たちとの戦いで一旦尽きてしまったので、今持っている矢はボコブリンたちから拝借したものである。


【会場内のアイテム】

【狩猟用の剣@ファイナルソード】
 新八がボコブリンたちから拝借した武器の一つ。
 その名の通り狩猟用に作られた剣で、原作では主人公(勇者)の初期装備である。


【風切羽の剣@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド】
 美波がボコブリンたちから拝借した武器の一つ。
 鳥が人間そっくりになったような姿の種族『リト族』が使う両刃の片手剣。

 空を飛んだ状態でも戦えるよう、空中でも素早い動きができるように軽量化する工夫がされている。


【NPC】

【ボコブリン@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド】
 NPC。豚とゴブリンを混ぜたような姿の魔物。

 ハイラル地方の至る所に集落や砦を作って山賊化しており、地域によっては他の魔物達と集団生活をしている。
 知能はそれほど高くはないが、肉や魚を焼いて食べたり、馬を使役して狩りや騎馬戦を行い、上位種は武器に骨を組み合わせて威力や耐久性を上げるなど、
 それなりではあるが技術は保有している。

 また種族全体の特徴として、上記の通り大抵は有り合わせの素材を継ぎ接ぎしたような棍棒や盾、木を削っただけの粗末な槍などで武装しているのだが、
 中にはどこからか拾ってきた錆びた剣や盾、木のモップや畑のクワをも武器にして襲ってくることがあり、
 木製の武器を持っているときには、近くに火があると武器に点火して襲い掛かってくる。


【スタルボコブリン@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド】
 NPC。豚とゴブリンを混ぜたような姿の魔物「ボコブリン」の亡骸が闇夜とともに復活したもの。

 一撃加えるだけでバラバラになる程もろいが、その半面頭蓋骨さえあれば何度でも立ち直ってしまう厄介さを持っている。

 なお仲間たちと頭蓋骨を取り違えることがたまにあるが、そのまま動けているあたり彼らにとってはたいした問題ではないらしい。


【馬@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド】
 NPC。主に草原に生息し、移動手段として昔から人間にも親しまれているあの動物で、
 基本的には二色のまだら模様の「ブチ種」や、体の色が一色で模様などがない「単色種」がいる。

 ただ野生の馬は人間が近づいたらすぐ逃げてしまうので、捕まえる時は静かに忍び寄らなければならない。

 なお、緋色のたてがみと黒い身体、そして他の馬より一回り大きな身体をした「巨大馬」や
 全身が白く、高貴な雰囲気を漂わせる「白馬」が会場内にいるかは不明。


【スタルホース@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド】
 NPC。魔物が乗る骨の馬。

 生きている時は普通の馬だったのだが厄災ガノンの力で魔物としてよみがえった馬で、
 夜の闇しかその姿を維持する事ができず朝日とともに消滅し、夜が訪れるとともに再び蘇る。

 なお普段は他の魔物を乗せて襲い掛かってくるが、騎乗している魔物が死んだ場合は人間も普通に乗せてくれる。


134 : ◆L9WpoKNfy2 :2020/09/15(火) 21:55:17 vYO4z6l60
投下終了です

ありがとうございました。


135 : 名無しさん :2020/09/18(金) 07:11:22 VmITKBR20
投下乙です!
確かに原作でプ○キュアに関するトラブルが起きたから、新八がパニックになるのも無理はない……


136 : ◆AOUE2X07qI :2020/09/19(土) 07:55:33 L6Ec0gK.0
予約を破棄します


137 : ◆vV5.jnbCYw :2020/09/20(日) 21:36:09 7JCz1cas0
予約延長します


138 : ◆5qNTbURcuU :2020/09/21(月) 10:22:38 On0KP/Og0
投下します


139 : 反魂人形 ◆5qNTbURcuU :2020/09/21(月) 10:25:44 On0KP/Og0

つまらない。
人が人を畏れ憎む心から生まれた呪霊
その中でも爆撃機に匹敵すると呼ばれる『特級』の冠位に位置する呪霊である真人がその女に出会って最初に抱いた感想は、その一言だった。


「サンプルボイスを聞いていただき、ありがとうございます。
るりまでオナろう。淫語ロイドでキャラクターボイスを担当した、るりまです」


夜闇にも目立つ紅白の装束に身を包み、支離滅裂な言動を繰り返す女。
しかしこの世で唯一、魂の形を正確に認識できる真人にとって、目の前の女性の魂は特にあれふれた、見慣れた形をしていた。
確かに言動は普通の人間とは一線を画すものがある。
刺々しい形を取ったり、或いは弱々しく萎んだり、弾むように揺れたり、魂の代謝の動きは普通の人間の女性から外れてはいなかった。
真人の知識の中で一番近い存在と言えば…この前見た映画の役者だろうか。
そう、彼女の言動は、何か別の人間を演じている印象を抱く。

この殺し合いという異常な状況下で何かを演じる、という要素だけを抜き出せば、若干興味を惹かれる物がある筈なのだが…
真人は我の事ながら、なぜこんなにも彼女に惹かれないかを考え、そして一つの答えに行きつく。


「あ、そうか。君の演技があんまりにも下手すぎるからだ。何て言うんだっけな…そう、大根役者」


ぴしり、と空気が凍る。
クッソー☆
迫真の演技。
にんじんしりしり。
混ぜと化した先輩。
ゆうさくとトレードされた女。
覚悟浣腸。

初対面の男から受けた150キロを超える直球の指摘は彼女の地雷を見事に踏み抜いた。
ホモガキ達から名付けられた様々な不名誉な称号がRRM姉貴の脳内に溢れ出し、彼女の思考を一つの意思に染め上げる。

「―――さて、もうサービス期間は終了しても良いでしょう?」

先程から支離滅裂にして正体不明な言動だった彼女の言葉が初めて指向性を得た瞬間だった。
怒り。憎み。黒い衝動のままに他者を排除しようとする。
それは真人を生んだ、魂の代謝そのもの。
何故彼女がここまで怒っているのかまでは真人には分からないし、どうでも良かった。
ただ彼は両手を鳥の様に広げて、その殺意の到来を歓迎する。

「いいよ、戦ろうか」

デイパックから取り出した一振りの刀を腰だめに構えるRRM姉貴。
そんな彼女を目前にしてなお、真人は余裕を示すように、悠然と佇む。


「お客様ぁ??
―――お覚悟を」

直後、白刃が煌めき、大気を裂く。
先程ゴブリンを鏖殺したときの様に、非の打ちどころのない、見事な動きだった。
本来ただの声優でしかない彼女が常人離れした一閃を放てるのは、皮肉にも彼女が何より憎悪したホモガキ達のミーム汚染の賜物なのだが。

「へぇ、呪術師でもないのに大したもんだ」

対する呪いはニィと笑みを深め…あろうことか刃の前に手を晒して見せる。
すぱり。当然のごとく、肘から上の腕が泣き別れとなる。
しかし、それでも真人は笑ったままだった。
血をダボダボとホースの様に垂らしながら、残された腕をRRM姉貴の方へと突き出す。
プロボクサーのジャブの数倍の速度だ、振り切った体勢の彼女が回避するには困難を極めた。
それでも素早く後退しつつ咄嗟にデイパックに手を入れ、バズーカを取り出そうとする判断力は称賛されるべきものだろう。
通常の人間ならば片手の間合いの外。しかし。
ぐにィ。
真人の腕が蛇の様に、人ではありえない伸び方をしてRRM姉貴の腕をつかむ。


140 : 反魂人形 ◆5qNTbURcuU :2020/09/21(月) 10:28:33 On0KP/Og0

「ンヒィッ!(絶望)」

真人の腕に掴まれた瞬間、怯えたような声を上げる姉貴。
猛烈に嫌な予感が背筋を駆け抜ける。
自分は将棋やチェスでいう詰み(チェックメイト)に嵌ったのだと、本能が告げていて。

「ま、待って…私がおまんこしてやろうか? おまんこだよ! おまんこ中出しOKだし、本当だよ。コンドームなんか、しなくていいんだよ。生ちんぽこ、おまんこにぶっさせるんだよ! からかってないよ。本当に本当―――」
「ごめん、興味ないんだ」

迫真の声で必死に説得しようとする姉貴の説得(アジテーション)。
しかし真人は冷めた薄笑いでそれを切って捨てる。
真人にとって、愛も性欲も猫が毛布に執着する事と如何ほどの違いがあるのか分からないためだ。
無為転変。真人の手の中に術式が奔り、

「壊れちゃった…私……」

ぐにぃ。ぱぁん。

【RRM姉貴@クッキー☆BB 死亡】
【残り106名】

紅白の衣装に身を包んだその身体がはじけ飛ぶ。
びちゃびちゃと地面に彼女の臓物が降り注ぎ、真人の足元を赤く染めた。
魂を操る真人の術式は、触れさえすれば対象の防御力を無視して自在にゆがめる事ができる。
それを利用して、RRM姉貴の五体を弾き飛ばしたのだ。

「ちょっと加減を間違えたかな?まぁいいか、改造人間のストックは十分だし」

独り言ちながら、切られた腕を拾い上げ、切断面に付着する真人。
すると斬られたはずの腕は一瞬で癒着し、元通りに動くようになる。
呪霊は生命力が強い。特に特級ともなれば、首だけの状態ですら生存を可能とする。
更に呪霊の中でも魂の形を唯一知覚できる真人にとって、物理的攻撃は勿論、呪力を伴った攻撃すら致命傷にはなり得ない。
魂への直接攻撃だけが、彼にとっての有効打となる。

「最初に思ったより面白い女だったかな。呪術師でもないのにあれだけ動けるなんてね」

一仕事終えた後の様に軽く伸びをしてから、真人は地面に転がるRRM姉貴のデイパックを拾い上げ、中身を確認する。

「おぉッ、バズーカだ。初めて見たな。この刀も…立派な呪物だ。漏瑚にあげたら喜ぶかな」

突然自分が消え、今頃頭の富士山を噴火させて怒り狂っているであろう仲間の呪霊の顔を想像して、笑みを漏らしながら、落ちた刀も拾い上げる。
呪霊は基本的に武器を用いないのだが、折角手に入れた玩具だ。
それにバズーカは一度派手に撃ってみたいかもしれない。
そんな事を考えながら真人は粛々とデイパックに戦利品を納めていく。

「うん、まぁこんなもんか。アレみたいなお宝は無かったけど、最初の戦果としてはまぁまぁだね」

そう言ってRRM姉貴のデイパックを投げ捨てながら、真人は自分が背負うデイパックに入っている『お宝』を一瞥する。
それは指だった。乾ききっているのに何処までも禍々しい生命力に満ちた指。
当然、常人の指ではない。
その指の持ち主は両面宿儺といった。
真人と同じ特級に位置しながら、隔絶する力を持った呪いの王。
宿儺さえ復活すれば、呪いの時代が来ると言われるほどの魔神。
その顕現に必要な指の大半が今、真人の手の中にある。

「何だか宿儺の器や呪術高専が持ってるのと数が合わない気がするけど…まぁどうでもいいか。
それよりも…これをどう使ったら面白くなるかを考えた方が有益だよね」

特級呪物に位置する宿儺の指。
真人は既にこれを適当な参加者に、改造人間を使って食べさせようと考えていた。
猛毒の宿儺の指を食べて絶命するようならそれはそれで構わないし、もし生き残って宿儺が顕現したならばうれしい誤算だ。

「その時は改造人間に適当に離れた所まで運ばせてからかな〜宿儺に殺されてもいいけど
できるなら、俺もまだまだこの殺し合いを楽しみたいしね」

呪いの王、と言っても宿儺は呪霊の純粋な味方ではない。
天上天下唯我独尊。己の快・不快のみが生きる指針の宿儺なら、下手に甦らせれば次の瞬間真人は粉みじんになっている恐れすらある。
呪霊は死を恐れない。例え滅びたとしても人が人を憎む限り、真人は数百年後にまた現れる事ができるからだ。
だが、この殺し合いという極上のパーティーを途中で降りるつもりは、真人にはさらさら無かった。
この殺し合いはとても良い。怒り、悲しみ、憎悪…呪いが満ちる島の大気は、真人にとって心地よかたし、呪力を消費した端から与え続けている。
出来るなら最後までプレイヤーとして楽しみたい。
それが呪霊の中でも宿儺に対する執着の薄い真人にとっての結論。


141 : 反魂人形 ◆5qNTbURcuU :2020/09/21(月) 10:29:02 On0KP/Og0



――さぁ、次へ行こう。できるなら、宿儺の器になり得る人間に会いたいな
真人はそう言って再び不吉な笑みを浮かべて歩み出す。
彼がRRM姉貴を殺した理由は、特にない。
降りかかった火の粉を払っただけとも言えるし、彼女の方から手を出さずともきっと殺していただろう。
ミルドラースに命じられたから殺すわけでも、願いを叶えたいから殺すわけでもない。
何故なら、彼は呪いだから。
呪いは人の心から生じるが、呪いは人を殺す。だから共存の道はあり得ない。
そうやって、呪い呪われ、世界は廻っていく。

【真人@呪術廻戦】
[状態]健康 
[装備]三代鬼徹@ONE PIECE、沖田のバズーカ@銀魂
[道具]基本支給品、両面宿儺の指15本セット
[思考・状況]
基本行動方針:呪霊として殺し合いに参加する。
1:皆殺し、その過程で領域展開を取得したい。
2:宿儺の器を探す。
[備考]原作16話より参戦です
【両面宿儺の指15本セット@呪術廻戦】
特級呪霊・両面宿儺の20本の指の屍蝋のうちの十五本、特級呪物。通称「宿儺の指」。
1000年前の呪術全盛の時代に宿儺を封印した物。
最強の呪物の一つであり、宿儺の指を取り込んだ一般呪霊を特級に進化させるほどの力を持つ。
人間が取り込むことで宿儺をその身に受肉させることもできるが、指自体が猛毒のため、取り込んだ人間はほぼ確実に死亡する。また肉体が耐えられたとしても精神が宿儺に支配される。
残りの五本の指も会場の何処かにあるかもしれない。


142 : ◆5qNTbURcuU :2020/09/21(月) 10:29:23 On0KP/Og0
投下終了です


143 : ◆5qNTbURcuU :2020/09/21(月) 10:56:39 On0KP/Og0
現在位置と装備に抜けがあったので追記します。

【H-6 /深夜】
【真人@呪術廻戦】
[状態]健康 
[装備]三代鬼徹@ONE PIECE、沖田のバズーカ@銀魂、大量の改造人間@呪術廻戦
[道具]基本支給品、両面宿儺の指15本セット
[思考・状況]
基本行動方針:呪霊として殺し合いに参加する。
1:皆殺し、その過程で領域展開を取得したい。
2:宿儺の器を探す。
[備考]原作16話より参戦です
【両面宿儺の指15本セット@呪術廻戦】
特級呪霊・両面宿儺の20本の指の屍蝋のうちの十五本、特級呪物。通称「宿儺の指」。
1000年前の呪術全盛の時代に宿儺を封印した物。
最強の呪物の一つであり、宿儺の指を取り込んだ一般呪霊を特級に進化させるほどの力を持つ。
人間が取り込むことで宿儺をその身に受肉させることもできるが、
指自体が猛毒のため、取り込んだ人間はほぼ確実に死亡する。また肉体が耐えられたとしても精神が宿儺に支配される。
残りの五本の指も会場の何処かにあるかもしれない。

【改造人間@呪術廻戦】
真人の能力である無為転変により魂の形ごと肉体を変質させられた人間。
魂を弄られた人間は真人の手駒となり、真人の命令に従って動く。
一度魂を弄られた人間は元には戻らず、僅かな時間で死亡する。
また、真人の意思で剣や射出武器など応用性は多岐にわたる。
NPCなのか、元の世界で作ったストックなのかは不明(後続の書き手にお任せします)


144 : 名無しさん :2020/09/21(月) 17:34:17 7G310ZlQ0
投下乙です
真人恐ええ…RRMさんもクッキー☆特有の狂人っぷりをみせたものの、凶悪な呪霊には敵わなかったか


145 : ◆vV5.jnbCYw :2020/09/22(火) 00:34:27 FVjxe9G60
投下します。


146 : 心に生まれた破れ目(前) ◆vV5.jnbCYw :2020/09/22(火) 00:35:24 FVjxe9G60
自分がいた時代から10年先の週刊誌を手に入れた伊月。
しかも、そこには自分がアシスタントをしている漫画が、なぜか自分名義で掲載されていたのだ。
傍から見れば、なんとも奇妙な出来事に戸惑いながらも、伊月は言葉を発した。


「あ………あはは……奇妙なことってあるものですね。
怪物にアンドロイドの宇宙人に私と同じ名前の人が描いた漫画、見たことのないことだらけですよ!!」

しどろもどろになりながらも、言葉を紡いだ伊月に対し、リルルは冷静に切り返す。

「違うわ。それはあなたの漫画よ。」
「流石にそれはあり得ませんよ。10年後のジャンプがあるのはおかしいです。」

頑なにその漫画を自分のものだと認めない伊月。
それに対し、リルルはその事実を肯定するための、カードを切る。


「じゃあ、その漫画をもう一度私に見せてみて。」

藍野伊月に支給された、「ヘブンズ・ドアー」のDISC。
この説明書が正しく、なおかつこの『ホワイトナイト』がアイノイツキが描いた漫画なら、リルルがその漫画を見た際に、スタンドは発動するはずだ。

言われた通り、中身を見せる伊月。
絵を見るだけでも、凄まじいインパクトを受ける。
まるで中のキャラクターが、本当に出てくるかのようだ。
いや、例え話ではなく、本当に彼女が描いた主人公が出てきている。
その瞬間、漫画が光に包まれ、リルルの顔は本のようになってしまった。


「すごい!すごい!すごい!!」
伊月が興奮したのは、ホワイトナイトの持ち主が、彼女自身であったということではない。


本と化したリルルに、彼女を作ってきたことが、一つ一つ詳細に載っていたからだ。
元々、この戦いを取材と認識していた彼女にとって、嬉しいことこの上ない結果だった。


先ほどリルルと行った情報交換は、最低限な物だけ。
しかし、彼女という本には、メカトピアの歴史や社会から、彼女が出会った人間まで、顔にびっしりと書き込まれていた。

「野比のび太……ドラえもん……剛田武……源静香……骨川スネ夫……ジュド……エトセトラエトセトラ………。」
興奮しながら、ページをめくっていく。


「ねえ。」
「あっ、すみません!こんなことして、プライバシーの侵害ですよね!!」


えらく常識的なことで謝る伊月に対し、リルルはこう語る。
本のようになったまま口の部分のみがパクパク動くのは、どこかシュールだ。


「どうでもいいわ。それより何か書いてみない?」

ヘブンズ・ドアーの相手の情報を読み取る以外の、もう一つの能力。
それは本にした相手のページに書き込むことで、相手の行動・記憶を本体の思うとおりに制御することが出来る。

「私、ありのままのリルルさんが知りたいから、こんなことしたくないんですよね。」
リルルの提案に対し、これまたズレた回答で、拒否する伊月。

「そんなこと言ってる場合じゃないわ。この能力、ヘタすればこのゲームからの脱出も可能になるかもしれないのよ。
『この会場から脱出できる』とか、マーダーを全員倒せる力が手に入るとか書けば、それで解決じゃない?」

「あっ、確かにそうですね。でももしそれが出来るなら、こんなものが支給されていない気が……。」

漫画でも、物語が一瞬で破綻してしまうような道具、能力などは導入されないのが普通だ。
この戦いが一つの物語になるというなら、そのようなバランスブレイカーは混ざってないはずだ。

そう思いながら、『リルルがいた世界へ戻れる』と書き込む伊月。


147 : 心に生まれた破れ目(前) ◆vV5.jnbCYw :2020/09/22(火) 00:35:52 FVjxe9G60
「やはり、ダメみたいです。」
その他にもあれこれ書いてみるが、結局このゲームを盤上から引っ繰り返せそうな内容は、ほとんど消えてしまった。


「やはり、その対策はしてあるみたいね。」
「これはこれでいいんじゃないですか?あっさり終わってしまったら、面白くないですよ。
それに書きたいことは一つだけ書き込めたんで。」

嬉しそうに笑う伊月。
何が嬉しいのか面白くないのか、言ってることがさっぱりわからないと思っていた瞬間、放送が流れた。


『聞け! この地に集いし全てのものたちよ!』

ミルドラースの放送が会場全土に響き渡る。





『さて……最後に、私の名を告げておこうか。私は”ミルドラース”。魔界の王にして王の中の王である。願わくば最後に私の前に立つものが、勇者に相応しい者である事を望む』



「ミルドラース……ですか。是非ともゲームや漫画でしか見たことのなかった魔界がどういう世界か、ぜひ知りたいですね!!」
「無事に生き残れたらね。あと、ミルドラースが漫画を読んでくれるような人ならいいけれど。」

元の顔に戻ったリルルが、興奮しすぎて辺りが見えなくなっていた伊月に声をかける。
どうやら、集中力が別の方に向くと、スタンド効果は途切れるようだ。


「それと、早速転送されたって言ってた名簿見てみない?
誰が参加させられているか、気になるわ。」

「うわ!名前からして、凄い人がいますよこれ!!」
伊月がそう言うのも、納得できる話だった。

「印刷ミス?同じ勇者って名前の人が二人いるわね……!?」

リルルは『勇者』、『勇者』と書かれた箇所を怪訝に見つめるが、その後すぐに重要なことに気づいた。


「この人って……。」
「そんな……佐々木先生まで!?」
一番最初に目を引いたのは、伊月から聞いた名前。
佐々木哲平という随分とありふれた名前だが、『藍野伊月』のすぐ上にあるので、彼だと断定して間違いないだろう。
伊月のためにも是非とも会って、真相を問い詰めたい相手だ。

「佐々木先生はこんな所で死んでいい人ではありません!!
一刻も早く見つけないと……。」


盗作された決定的な証拠を突き止めてなお、佐々木哲平を先生と呼ぶ藍野伊月。
それを傍で見たリルルは、実は彼女がヘブンズ・ドアーで、『佐々木哲平を咎めることは出来ない』と書いてあるのではないかと疑ってしまうくらいだった。

「ねえ。あなた本当に、佐々木哲平を信頼しているの?」
「リルルさんは知らないから疑っているだけです、佐々木先生に、一度会ってみれば私と同じ考えを持つ、素晴らしい人だってわかりますよ。」

伊月の言葉をなおも釈然としない表情で受け止めるリルル。
彼女はどうにも、悪意に疎すぎると思った。
先ほど彼女と会話した際に、伊月は漫画を破られるようないじめを受けて、引きこもりになったのだと聞いた。
伊月自身はいじめより面白いものがあれば誰もそのようなことはしなくなると言っていたが、リルルは全く思わなかった。


たとえホワイトナイトのような面白いものがあったとしても、誰かに対して自らの悪意をぶつける者はいる。
健康で文化的な生活を送ることが出来る資本を持ちながらも、その生活に満たされず、他者から何かを奪おうとする者だっている。
そのような悪意を知らないことは、日常ではもちろん、このような殺し合いの場では、致命的な欠点ではないのかと疑った。


しかし、彼女にとって佐々木哲平以上に見つけなければならない人物が、名簿に二名掲載されていた。
自分の敵であり、そして命の恩人でもある存在。
ドラえもん、野比のび太。


彼の仲間たちやジュドはどうしているのか分からないが、彼らはこんな所で失われていい命ではない。
たとえ人間を守るにせよ、殺すにせよ、彼女にとって重要な人物になりうるはずだ。
一刻も早く、彼らを見つけて、この戦いから脱出しなければならない。


148 : 心に生まれた破れ目(前) ◆vV5.jnbCYw :2020/09/22(火) 00:36:20 FVjxe9G60

「伊月さん。ここから先は、私の行きたい場所へ向かっていい?」
これまでは伊月に先導を任せておいたリルルが、急に目的地を提案する。
「え?良いですが、どこのことですか?」


リルルは地図の北東部分を指さす。

「この『ジャンク・ジャンクション』よ。工場地帯というなら、何か……。」
『首輪解除の部品』

リルルは言葉を発しながら、支給品の紙を一枚取り出し、真に必要なことを書く。

「え!?リルルさんってくb………。」
首輪のことを言おうとした伊月の口を、慌ててふさぐ。

「ロボットに簡易的な修理を施す技術くらいならあるわ。」
『首輪 設計 シンプル』

「え!?」
彼女の技術力は、既に伊月のスタンドで見抜いていた。
だが、首輪の解除まで取り掛かると告げられれば、驚いてしまう。

『盗聴 〇 盗撮 ×』
『音しかこちらの方には聞こえないということですか?』
『カメラ レンズ ない』

リルルの言う通り、首輪には外側も内側も、それらしきものはなかった。
ただし、内側をなぞってみると、首輪に小さな穴があることに気づいた。
流石に監視機器を設置する位置にしては、首しか見えなくなってしまう以上、それがカメラだという可能性は極めて低い。
恐らくそこから音を取り入れているのだろうと、伊月も断定した。


『工具 欲しい』
逆に、必要な道具さえあれば、解除の可能性が出てくる。

「じゃあ、行きましょう!!」
「ええ。私の飛行能力を使えば、そこまで大変でもないと思うわ。」
「え……?飛行能力!?」
「メカトピアのロボットなら多くが持っている機能よ。さっきスタンドで私のこと、よく知ったんじゃなかったの?」
飛行能力に疑問を抱きながらも、伊月は筆談の紙を破き、出発しようとする。





しかし、他者ばかりを心配している場合ではないことに、すぐに気付くことになる。


彼女らがいた市街地に、一人の危険な男が入ってきた。


149 : 心に生まれた破れ目(後) ◆vV5.jnbCYw :2020/09/22(火) 00:37:34 FVjxe9G60


「あれ?リルルさ……。」
目的地へ向けて歩き始めたと思いきや、すぐに止まったリルルに対し、声をかけようとするが、またもその口を塞がれる。

リルルの眼に、遠くからの来訪者が映った。


来訪者は、二人。
一人は細身の体つきに、長くも短くもなければ奇天烈に整えられたわけでもない白髪の男性。黒を基調とした服装は特別華美でも貧相でもなく、面貌も目を引く特徴はない。
もう一人はミニスカートにワンピースの女性。高貴な身なりなのかありふれた身分なのか今一つ判断が出来ないが、むしろこちらの方が目立つ外見をしている。


「止まりなさい!!私たちはゲームに乗ってない!!」

リルルは指を二人に向ける。
ジジジ……と音が鳴り、ボブゴブリンを一撃で黒焦げにした熱線のエネルギーが指に溜まる。

「あのさあ……。会うが否やいきなり人に命令するって、どんな教育受けてるの?おまけに見ず知らずの人に対して指差す?そりゃ人差し指っていうからには、そういう役割も持っているかもしれないけど、その使い方は僕はお勧めしないなあ。こんな腐りきった状況だから気が立っているかもしれないけど、それをいいことに何でもしていいわけじゃないんだよ。むしろこういう戦いだからこそ、日ごろ大事にしているマナーを守るってことが……。」


てんで中身のない言葉を発しながら、白髪の男、レグルス・コルニアスはリルルの警告を無視し、ゆっくりと近づいてくる。


「止まらないと撃つといったはずよ。」

リルルの指から、警告通り熱線が放たれた。
ボブゴブリンさえ黒焦げにするから、その3分の1ほどの体格すらない彼がまともに受ければ、ただでは済まないはず。


「人が気持ちよく喋ってる最中に攻撃だなんて、どんな教育を受けたの?いや、もしかして、教育そのものを受けてないんじゃない?それぐらい知性というものを全く君から感じられないんだけど。」

しかし、レグルスは熱線を受けた様子は全くなかった。
火傷はおろか、服の焦げや破れ、飛び散る埃による汚れすらない。


(外れた様子もないけど、避けた様にも見えない……一体どんな手品でしょうか?)
この世界なら、現実なら決して起こりえないことも普通にあり得る。
結界を張る魔法を使っているのか、そもそも効いていないのか、あるいは自分のダメージを誰かに肩代わりさせているのか。


ヘブンズ・ドアーのディスクを除けば、アイノイツキの唯一の武器は、「想像力」だ。
誰も読んだことのないほど面白い漫画を作るために、家にこもって何百冊、何千冊読んだ物語。
そこから目の前の男に熱線が効かない理由をひねり出す。


(そして隣の女性は何者?同じ殺し合いに乗った仲間か……それとも操り人形のような役割……?それともあの男が好きで保有しているとか?)


伊月にとっては、レグルスの隣にいたぉ姫様も、気になる相手だった。
隣についてくるだけで、口調もレグルスとは対照的に無口。
表情も能面のように動かない。


「言葉が通じないなら、こうしても良いよね?罰を与えて言うことを聞かせないといけない獣と同じだよ。そもそも僕は争いなんか嫌いだし、ましてや嗜虐性なんかとは無縁の寛大な人としての、清く正しく勇ましく人生を歩んでいるから、出来るだけ穏便に話し合いたいんだけど、話している最中に攻撃されれば、こっちも反撃せざるを得ないよね?」
レグルスは足を振り上げる。二人にはとても届かない距離だ。


150 : 心に生まれた破れ目(後) ◆vV5.jnbCYw :2020/09/22(火) 00:38:33 FVjxe9G60

「!!」
しかし、足を振り上げただけで、凄まじい衝撃波が地面を走った。
慌ててリルルは、伊月を抱えて、空へと逃げる。


『強欲』の権能を持つレグルス・コルニアスは、自身が触れた物の時間を止める能力を持っている。
肉体の時間を停止させることで、肉体をこの世から「拒絶された」歪みにすることが出来る。
自らを拒絶された存在にすることで、外部からの干渉や衝撃の、一切合切を断つことが出来る。



また、自らが触れた石や飛ばした空気は、あらゆる物理法則から拒絶されて吹き飛び、あらゆるものを貫通して破壊する最強の武器になる。

しかし、その攻撃の違和感に、レグルスはすぐに気付いた。
右足から時放たれた力が及ぶ範囲が、いつもより狭い。
いつもなら数百メートルは届くはずの衝撃波が、今はせいぜい数十メートルといったところだ。
スピードもいつもより遅い。
本来なら計4本の脚が千切れ飛んでいたはずだった。

従って、レグルスの無効化出来る物理法則に、制限がかかっているのだ。


「力が……いつもより出ない!?ちくしょう!!あのミルドラースとかいう奴、どこまで僕に不快な思いをさせれば気が済むんだ!!いくら僕が素晴らしい力の持ち主だからって、そこまでするか普通!?」

あれこれと喋っている間に、リルルは飛行能力で空へと逃げる。

「ありがとうございますリルルさん!助かりました!!」
「まだ助かったとは決まってないけどね。」


一先ず二人は五体満足で、レグルスの攻撃を凌いだ。
上から見ると、先ほど衝撃波が走った辺りの場所に、大蛇のように太く長い溝が出来ている。




「あーあ。空に逃げたねえ。こんな諺知らないの?馬鹿と煙は高いところが好きって。あーだめかあ。知らないよなあ。君たち、人が話している最中に前触れもなく熱線打ち込んでくる、権利の強姦魔だからねえ。そういう奴等って、概して義務教育レベルの常識も知らないはずだよ。」

レグルスは地面に落ちてあった石畳の破片を広い、投げつける。


「来ますよ!!」
伊月の合図と共に、リルルは空中で旋回する。
すぐ近くを、竜巻か何かのような強風を纏ったアスファルトの欠片が飛んでいった。


「ちっ、避けたか。でもね、弾は無限にあるんだよ。こんな無駄な事もうやめてよね。僕は君たち二人だけのために、時間を使ってあげるほど暇じゃないんだ。君たちが自分たちの世界中心で生きていて、他人の世界なんか知ったこっちゃないという態度を取っているから、どうせ分からないだろうけどね。」
レグルスはさらに新手の弾を拾い上げ、投擲する。

プロ野球選手を優に上回る球速を纏った破片が、二人まとめて貫かんと飛んでくる。
しかし、そのコントロールは野球を始めた子供にも劣る。

二球でそれを察したリルルは、空へ逃げて振り切ることを決め、さらに上昇する。


151 : 心に生まれた破れ目(後) ◆vV5.jnbCYw :2020/09/22(火) 00:39:28 FVjxe9G60


このまま行ける、と思っていたリルル達だが、そうは問屋が卸さないことに気づく。


「リルルさん!!降りてください!!」
「!?」
伊月の声で、首輪から点滅音が鳴っていることにリルルも気づく。


リルルが飛行能力でジャンク・ジャンクションへ向かうと言っていた時点で、伊月は疑問に思っていた。
飛行能力があれば、一部のマーダーを除いてほとんどの脅威を無力化出来るのではないかという伊月は予想していた。
逆に、主催者たちがそのようなアドバンテージを見逃すのかという疑問にも思っていた。


そして、何のことなのかは分からないが、白髪の男が、「力が出せない」と憤っているのを見て、その予想はほぼ確実なものとなっていた。


案の定、一定時間空中にいると、首輪が作動する仕掛けが仕込んであったのだ。


(説明書に書いていないなんて、悪趣味ね……。)
リルルは明かされたルールに対し心の中で悪態をつきながらも、どうにかして地面に降りようとする。

しかし、地上に近づくと、それに従って、レグルスからの攻撃の距離も短くなる。
投擲された弾から生じる風圧が、リルルと伊月の髪の毛を何本か持っていった。


(このままでは……)
「いつきさん!スタンドで『すごいスピードで吹っ飛ぶ』って私に書いて!!」
リルルは指示を出すが、それに対し伊月は断る。

「ダメです!!リルルさんがそんなスピードで飛んだら私が……。」
「そうだった……。」
リルルがすごいスピードで飛べば、確かにレグルスからは逃げられる。
だが、その上にいた伊月は、どうなるか。
生身の人間ではとても耐えられない空気抵抗により吹き飛ばされ、地面にたたきつけられる。
あるいは、空気抵抗そのものに耐えられず、バラバラになるかもしれない。


「何だか分からないけど、どうやら状況は僕に味方しているみたいだね、まあ当たり前だけど。君たち満たされない奴らは、空へ逃げようと地上へ逃げようと追い回されるだけしかないんだよ。何故だか分かるかい?君たちは自分のことしか考えず、他者を攻撃することしか考えていないからだ。他者のことを考えてこそ自分自身も満たされ、完結した人物になり、周りも味方してくれる。そうじゃない人は他人は言わずもがな、自分でさえも満たされない。世の中上手く出来てるよね……」

幸いなことに、今4人がいる、リスキー・リールズは影になる建物が多い。
近くにある屋敷を影にし、地表に降りようとする二人。
しかしレグルスの吐息、吐息とも思えないつむじ風のような何かが、屋敷めがけて飛んできた。

2階に当たる部分が吹き飛ばされ、その残骸が二人に襲い掛かる。
「振り落とされないで!しっかりつかまって!!」
「分かってます!!でも、本当に降りられるのでしょうか?」

段々と大きくなっていく首輪の点滅音に、伊月は不安を示す。
リルルは躱すだけではなく、抵抗もするが、熱線は相変わらずダメージを与える様子がない。


152 : 心に生まれた破れ目(後) ◆vV5.jnbCYw :2020/09/22(火) 00:39:53 FVjxe9G60

「しつこい奴らだね。そもそも当たってさえいないし……え!?」
リルル達に近づこうとしたレグルスが、急に地面の穴に躓いて転んだ。
指から放たれた熱線は、『強欲』の大罪司教ではなく、即席の罠作りのために石畳を狙っていたのだ。
それに気づかず、上ばかり見ていたレグルスは地面に出来ていた穴ぼこに足をすくわれた。


出来た隙を無駄にせず、ようやく地面に降りた二人。


「よくも僕に恥をかかせてくれたな。確かに僕への攻撃が効かないからと言って、地面に攻撃して、僕をハメようとしたのは見事だ。無い頭でよく考えたことだけは見事だと思うよ。けどね。自分の考えを、人を貶めるのに使うのは良くないと思うな。考えだけじゃない。自分の力ってのは常に世のため人のために使うものだよ!」
そこへ、最初にリルルと伊月を襲った、地面を走る衝撃波が来る。


地面を走る空気のヘビは、まだ無事な屋敷の1階部分を真っ二つに裂く。

しかし、家を支える柱は壊されていなかったため、倒壊こそは免れた。
伊月を屋敷の裏に隠した後、屋敷の裂け目からレグルス達がいる場所に躍り出る。


そのまま突撃すると思いきや、頭上を飛び越え、さらにその先へ進む。
レグルスは固めた手刀を水平に振り、チェーンソーのような鋭さを持つ鎌鼬を発生させる。


しかし、リルルは飛行方向、そして飛行速度をわずかにずらすことで、鎌鼬は当たることなく飛んでいく。
とにかくレグルスのターゲットから伊月を逸らそうと、リルルは伊月が隠れている屋敷の裏とは反対の方向に移動した。


「バラバラに隠れて逃げるつもりかな?そんなことするわけないだろ。自分から攻撃しておいてそれが効かないと分かったらはいさよならって、いくら何でも都合がよすぎない?それは人なんて僕みたいな満たされた存在じゃない限り、自分に都合が良い方向へと考えて動くのは良くあることだけど、こんな状況でやるべきことじゃないと思うよ。ねえ、ちょっと聞いてる?さっきから僕の話にだんまりだけど、僕の言葉が理解できない訳じゃないんでしょ?せめて何か反応くらいは示した方がいいよ。いくら人の話が自分に都合が良くないからって、無視ばかりしていると、誰からも相手にされない人生を送ることになるよ。」

レグルスは居場所を少しだけ変え、攻撃をリルルに当てやすい場所へと移動する。

「あなたと話すことなんて、何もないわ。」


上空で石畳を攻撃して以来、ずっと攻撃の回避に専念していたリルルが、ここだとばかりに熱線を打つ。
しかし、その熱線は大きく外れ、歪な夫婦の頭上を飛んでいった。
否。リルルは彼らの近くの建物のガラスを撃ったのだ。


破片が氷柱のように二人を突き刺さんとする。
「!!」
レグルスは近くのぉ姫様を抱きかかえる。


ガラスの雨はレグルスの前で消え、裂傷を与えることはなかった。

「僕の妻になんてことをするんだ!人のものを傷つけようとするなんて!!この権利の強姦魔め!!下町のそのまた汚れた場所にいる薄汚れたドブネズミでもやらないことをよくもやってくれるな!!」

怒りに任せて攻撃をレグルスは打つが、既に見切っていたためリルルは躱した。

「どんなに熱線を撃ってもへらへら笑っていたあなたが、そっちの人が傷つきそうになった瞬間、やけに焦るわね。」

そして、ある事に気づいたリルルはレグルスに対し、回答を突きつける。

「当たり前だろ!!誰だって自分の嫁を傷つけられそうになったら動揺する!!そして、傷つけようとした相手を絶対に殺したくなるはずだ!!そうじゃなかったら、人として、夫として失格だろ!?何を思い出したかのように当たり前の……。」

またしても一般論で取り繕おうとするレグルスに対し、今度はリルルが言葉で畳みかけた。

「あなたは他者を想う心なんてないわ。あったとしても、それはあなたに帰結するものでしかない。だとすると、そっちの女性はあなたの生命にかかわる何かなんでしょ?」

「はい。」
それまで話をしていなかった派手な格好の女性が、短く、単純に答えを出した。


153 : 心に生まれた破れ目(後) ◆vV5.jnbCYw :2020/09/22(火) 00:40:21 FVjxe9G60

キングダム王国の姫が、なぜあっさり肯定したのかは分からない。
だが、その答えは真であった。


レグルスの「小さな王」と名付けた疑似心臓は、ぉ姫様の心臓に寄生させてある。
従って、ぉ姫様自身を無力化、あるいは殺害してしまえば、彼の能力は無力化出来る。


これは、リルル自身が見つけた回答ではない。
彼女の同行者、アイノイツキが書いたホワイトナイトにヒントがあった。
ホワイトナイトに出てきたゴーストは、普通に攻撃するだけでは殺せない。
その殺し方の一つに、彼らの媒体になっている箱やガラス瓶、宝石を壊すものにあった。


「どういうことだ!?どういうことだ!?妻が夫の情報を話す!?そんなことあるわけないだろ!?くそ……ふざけるな!ふざけるなよ!!どうして何もかも僕の思い通りにならないんだああああぁぁあぁぁ!!」

それまで余裕綽々だったレグルスは地面を何度も蹴る。
しかし、既に見切られていた攻撃を、飛行能力があるリルルには容易に躱されてしまう。


「僕の妻をどうするかは後で決めるとして、まずはお前が先だ!くたばれ!!二度と生まれ変わらないように、くたばれ!!」

我慢できなくなったレグルスは、命綱となっている姫を地面に置き、自由になった両手も自らの武器に加えようとする。

「馬鹿じゃないの。」
しかし、リルルはためらいなく指をレグルスではなく、ぉ姫様へと向ける。
なぜあの時彼女自身の質問に白い男の隣の女性答えたのかは、なおも分からないままだ。


だが、指示を出されるまで男の動きをトレースするように歩くだけである点、極めて無表情である点、質問者を問わず質問を肯定する点から、ロボットの遠い子孫、ヒトにとってのチンパンジーにあたる、極めて低スペックなからくり人形だと判断した。
地球人がかつて共通点を多く持つ玩具を持っていたため、連想することが出来た。


「え!?」
リルルの眼のすぐ前にレグルスが現れ、熱線を撃とうとしていた手は、瞬時に切断された。

「ねえ。散々勝ち誇ったかのようなご高説垂れて、こんな結果で終わってどうするんだよ。まあ、人間なんてこんなものだよねえ。大体口ばっかりの奴って、終わるときは本当にあっさり終わるんだよ。」

(触れた物を加速させるだけじゃなく、自分自身も加速させることが出来るの!?)

リルルが驚いてからすぐに、レグルスの手刀が身体を上下に両断した。




「そんな、リルルさん!?」
彼女の異変を遠くから見て、伊月が駆け寄ってくる。

「逃げて……。」
そもそもリルルは、伊月を地面に降ろした時に、勝手にレグルスの眼を盗んで逃げると思っていた。
しかし、アイセンサーから出る光も弱くなり、ロボットは活動を停止した。


【リルル@のび太と鉄人兵団 死亡】
【残り105名】


154 : 心に生まれた破れ目(後) ◆vV5.jnbCYw :2020/09/22(火) 00:40:48 FVjxe9G60


リルルの言葉も他所に、レグルスは伊月に近づく。
「ねえ君。可愛い顔しているね。僕のお嫁さんにならない?」
「あなたは、私の漫画を面白いと思ってくれま……。」

伊月がすべて話を終わる前に、レグルスの振った腕が伊月の少年ジャンプを開かれる前に引き裂く。
ヘブンズ・ドアーという、頼みの綱は一瞬で千切られた。

「………!!」
「質問を質問で返すのはやめてよね。僕はただお嫁さんにならないかって質問をしているんだ。君の本なんてどうでもいい。僕が気になるのは君が承諾してくれるか否かなんだ。改めて聞くよ。僕のお嫁さんになってくれるかな?」

ずっと中身のない言葉をつらつらと述べるレグルス。
その雰囲気を、伊月はかつて見たことがあった。


自分を引きこもりに追い込んだ、いじめっ子達。
彼、彼女らは身勝手に自分の意見だけを押し通そうとし、それにそぐわない者がいれば、相手自身も、その持ち物も、破って、汚して、壊そうとする。

しかも、今いる相手は、そいつらより遥かに強い力を持っている。
はっきり言って、彼女は逃げ出したかった。


「私の漫画を、破いて、よくそんなことを言えますね!!」
でも彼女は負けなかった。
逃げ出したい気持ちを他所に、レグルスに立ち向かう。

「おいおい。そんな怖い顔するなよ。可愛い顔が台無しだよ。君が何をしたか、これまでどんな奴だったのか、何を作ったかなんて全くと言っていいほど重要じゃない。顔だよ。可愛い顔で、君が処女であるかどうかが重要なんだ。あの本が君のものだったら後で謝るから、今はそんなことより僕と結婚……」

伊月はレグルスが話し終わる前に、右頬にビンタした。
当然、その一撃は全く通用しない。


「ふざけるな!!この売女があああ!!この僕の話をする権利を侵害した挙句、暴力を振るうってどんな了見だよ!?」

その報復か、右手が見る暇もなく切り飛ばされる。
漫画を描くために、何より大切な体の部分が無くなり、それでも伊月は負けることはなかった。

「あなたは私の漫画を破いた。大切な人を殺した。それだけであなたを嫌う理由になる。」
「やめろ……そんな顔するな……怒りも笑いも泣きもするな……ただその顔のままでいろってそれだけしか言ってないのに、なんで分からないんだよこの愚者が!!売女が!!権利の侵害者があああぁぁぁ!!!」

レグルスは怒りのまま、リルルを蹴飛ばす。
ただの蹴りではない。物理法則を無視し、どんなものでも破壊する一撃だ。


そのままリルルと同様、体の上下が生き別れになり、石畳に叩きつけられる。


「力もないし、満たされてもないくせに、僕に歯向かった罰だ。キミ達ばかりに構うほど僕は暇じゃない。だから、残された時間を全て自分の愚かさの反省に費やせ。さあ、行こう。誰にでも簡単に、自分のことを話ししちゃダメだよ。僕は君のことを妻として信頼しているんだ……。」

ずっと中身のない言葉を言い続けながら、レグルスは妻を連れて去った。


【H-2/市街地 黎明 3:00】

【レグルス・コルニアス@】
[状態]:健康、『獅子の心臓』発動中 苛立ち
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]基本行動方針:主催者を被害者の正当な権利として殺す。
1:とりあえず優勝を目指す。
2:夫として妻(姫)を守る。
[備考]
参戦時期は5章直前。
現在「小さな王」を姫に寄生させています。
自分のデイパックを姫に預けています。
※『獅子の心臓』で無効化出来る物理法則に、一定の制限がかかっています。

【姫@ファイナルソード】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3、レグルスのデイパック
[思考・状況]基本行動方針:キングダムに生還する
1:勇者様(レグルス)に従う
[備考]
主人公に救出される前からの参戦。
「小さな王」の効果により、レグルスの疑似心臓に寄生されています。姫に自覚はありません。
レグルスのデイパックを持たされています


155 : 心に生まれた破れ目(後) ◆vV5.jnbCYw :2020/09/22(火) 00:41:11 FVjxe9G60

「ああ……良かったですね。」
それを見て、途切れそうな意識で伊月はほほ笑む。
傍から見れば、仲間は殺され、彼女自身も出血多量で死を待つばかりで、何が良かったのかは全く分からない。


しかし、頭だけになったリルルの顔が、再び本のようになる。
彼女の支給品袋が輝き、それと同時に、伊月の書いた白の騎士がリルルの部品をかき集める。

「え!?これは……どうして……」
リルルは気が付いた時は、五体満足で立っていた。
あの男と戦って、バラバラにされたはずなのに、どういうことだ。


「良かったです……スタンド……成功したみたいですね。」
本にされたリルルには、『アイノイツキが強く想った時、一度だけ復活できる』と書いてあった。
スタンドに「射程距離」が書いてあったから、リルルから離れすぎればその力を発揮できないと思い、伊月は逃げようとしなかった。
勿論、スタンド能力だけで、致命的なまでの損傷を負った彼女を、完全復活できるわけはない。
彼女の支給品である「復活の玉」の力のあってのものだ。


「良かったじゃないわ!!早く治療を……!!」
そう答えて、すぐにリルルはハッとする。
余りにも出血が多すぎて、とてもじゃないが治せない。メカトピアの技術を総動員しても、難しいくらいだ。

でも、まだ希望はあった。
大爆発に巻き込まれ自分を故障寸前の時から救ったドラえもん達がいれば、彼女だって救えるかもしれない。


「いいですよ……。別に。」
「そんなわけないじゃない!」
彼女が書いた漫画は、世界中、いやひょっとすればメカトピアのロボットでさえも喜ばせる出来だ。
彼女が、こんな所で死ぬなんて許されない。


「あなた……なんで私を助けようとしたの?」
これ以上言葉を話すのは、彼女の死期を早める。
だが、彼女は聞かずにはいられなかった。


「それは……リルルさんが、悩んでいたからですよ。」
確かに、自分は悩んでいる。
人間の味方をするか、敵になるか。
だがそれは伊月が命を張ってまで守る筋合いにはならないはず。

「みんながどんな悩みを抱えているか、それを知らないと、誰かを楽しませる漫画なんて書けませんからね……。」

彼女は、最後の最後まで漫画家だった。
漫画をタイムマシンで奪われ、殺し合いに巻き込まれ、挙句の果てに漫画を破かれ、漫画を描くための手も失って。
どんな理不尽にも負けずに、漫画家としての生を全うした。


「あ、そうだ。佐々木先生に……会ってあげてください。きっと、悪い人じゃ………。」

それきり彼女は言葉を発さなくなった。


(あーあ。もう少し、リルルさんとは話しておきたいことがあったのに。
言われた通り、私は悪意に疎いのかもしれません。でも、本当に面白い漫画を見せれば、誰かを墜とそうなんて思い、無くなるはずです。)


(じゃあ、佐々木先生、ホワイトナイトの続き、お願いしますね。)



【藍野伊月@タイムパラドクスゴーストライター 死亡】
【残り105名】


156 : 心に生まれた破れ目(後) ◆vV5.jnbCYw :2020/09/22(火) 00:41:36 FVjxe9G60


(本当に……どうすればいいのかしら……)
伊月を町の隅に埋葬し、当初の予定通り、ジャンク・ジャンクションへ向かうことにする。


誰かのことを考え、素晴らしい才能を持った伊月が死に、佐々木哲平や白髪の男のような自分のことしか考えない空っぽの人物がのうのうと生きる。

伊月との約束は、反故にする訳にはいかない。

(でもあいつらは……絶対に許さない……。)
ロボットらしからぬ怒りを胸に、伊月を殺した存在や、マーダーは許さない。

(特にあの男は……絶対に仕留める……。)


彼女の心には小さいが、はっきりとした破れ目が出来ていた。


【H-2/市街地 黎明 3:15】


【リルル@ドラえもん のび太と鉄人兵団】
[状態]健康 怒り レグルス、佐々木哲平への嫌悪感(大)
[装備]なし
[道具]基本支給品 ランダム支給品1〜3、ヘブンズ・ドアーのスタンドDISC、藍野伊月の基本支給品、防御スペルカード@ファイナルソード、
[思考・状況]
基本行動方針:ジャンク・ジャンクションへ向かい、首輪解除の品を入手する
1:佐々木哲平に会えば、藍野伊月のことを話す。
2:レグルスはまた会ったら確実に殺す
3:ドラえもん、のび太と合流する
[備考]
アイノイツキとの会話で、彼女の過去、現在を知りました。
処刑されそうになっていた所を、ドラえもん達に助けられた直後からの参戦です。
原作版、羽ばたけ天使たち版どちらを参考にしても問題ありません。
佐々木哲平をタイムマシンを悪用した犯罪者だと認識しました。ホワイトナイトを盗作したと判断しています。
※飛行能力に制限があり、一定時間以上飛び続けると、首輪が点滅し始めます。


157 : 心に生まれた破れ目(後) ◆vV5.jnbCYw :2020/09/22(火) 00:41:51 FVjxe9G60
投下終了です。


158 : 名無しさん :2020/09/22(火) 10:55:39 NoqCf2yY0
投下乙です
ノミ以下もといレグルスがめちゃくちゃ喧しいし再現度も高くて草しか生えない、控えめに言って良い意味でめちゃくちゃ気色悪かった
あっさり肯定しちゃうぉ姫さまから滲み出る得体の知れなさ…
伊月のレグルスへの啖呵はカッコ良かったと思う、確かに彼女は悪意に疎かったかも知れないけど、マーダーに転んでもおかしくなかったリルルが対主催(方針的には頭に危険が付きそうだが)になったのは彼女がそうだったからってのと、最後まで漫画家で在ったから…が理由な気がしてならない
地味に飛び続けると首輪が爆発するって事が明かされたのには驚かされた、まあ制限が無いと範囲攻撃持ちの強マーダーが立体機動装置@進撃の巨人やストライカーユニット@スト魔女を着けて飛ぶだけでヤバい事になりそうだから仕方ないか(エレンから目を逸らしつつ)(多分後者は魔法力の有無とか関係なく使用可能になってそう、男がやると絵面が酷いことになるのは置いといて)
後知らないところで勝手にヘイトが溜まり続けてる佐々木ェ…


159 : ◆vV5.jnbCYw :2020/09/22(火) 11:43:36 FVjxe9G60
支給品紹介を忘れていました。

【支給品紹介】

復活の玉@ドラゴンクエストV

リルルに支給された宝玉。
HPが一度ゼロになった際に、宝玉が壊れてその持ち主を一度だけ復活させる。

wiki編集の際に、修正しておきます。


160 : ◆vV5.jnbCYw :2020/09/22(火) 18:10:07 FVjxe9G60
>>158
感想ありがとうございます。
私はこのロワを知るまでリゼロ読んだこともアニメ見たこともなかったので、
再限度が高いと書いてくださって嬉しい限りです。
リゼロ5章のレグルスとの戦いは面白かったので、アニメ版のプリステラ編も楽しみです。

空を自由に飛べたら明らかにバランスブレイカーになりそうなので、制限を設けました。
エレンの場合は立体起動装置という道具あってのものなのと、立体起動装置は原作の時点でそこまで長く飛べそうにないことで、
その制限は付けないままにしておきました。


161 : 名無しさん :2020/09/25(金) 10:24:18 VszIF3fg0
すでに停滞気味で草


162 : 名無しさん :2020/09/25(金) 18:35:23 wLmgRt1g0
>>161
まぁロワはそんなもんでしょ


163 : 名無しさん :2020/09/25(金) 22:28:53 25CRrf3E0
>>161
>>162
書きもせずに愚痴と煽りしか言えない役立たずとか必要ないんで一生来ないでください


164 : ◆L9WpoKNfy2 :2020/09/26(土) 00:26:42 jPlhhGAQ0
またも自己リレーを含んで誠に申し訳ございませんが、

神楽鈴奈、クロ(リーダー)、聖帝エーリュシオン

を予約します。


165 : ◆L9WpoKNfy2 :2020/09/29(火) 00:17:47 xyqMY5ys0
予約した内容について、投下させていただきます。


166 : 高貴なる腐敗 〜ネメシ・ロトゥハダーシュ〜 ◆L9WpoKNfy2 :2020/09/29(火) 00:18:38 xyqMY5ys0
ここは会場内のとある場所、巨大なクレーターができた場所。

そこには怒りに顔をゆがませている天使がいた。

彼が顔をゆがませているのは先ほど流れた、主催者たる"ミルドラース"からの真の開催宣言が理由だった。

「"ミルドラース"……また新たな『魔皇』か……!やはり、あの泥人形どもに期待するだけ無駄だったか……!」

彼は、先ほどの放送で現れた"ミルドラース"について並々ならぬ怒りを燃やしていた。

それは彼がこの会場に呼ばれる前、『光の戦士』と『天命ではなく、人間を選んだ天使たち』によって打ち滅ぼされる前までさかのぼる。

彼はかつて、地上を救うための英雄『光の戦士』を選定し、見事彼の目にかなった少女に自らの力を分け与えていたのだ。

そしてその少女に世界を救うために、『魔皇』という「魔王を従えし真の魔王」を打ち滅ぼすよう神託を授けていた。

しかし彼女は、『魔皇』を倒した後『天命ではなく、人間を選んだ天使たち』から自身の計画を聞いてしまった。

そして彼女はそれを受けて、地上にいる『救う価値もない、穢れに満ちた存在たち』のために彼に剣を向けてきたのだ。

……そうして自らもまた彼女らに打ち滅ぼされ、世界を浄化するものがいなくなり、そして世界が汚毒に塗れる未来を幻視することになったのだから。

それ故に彼は怒りを燃やしていたのだ。自らが滅ぼされた後、新たな『魔皇』が現れた。

それはすなわち、『天を捨てた者達が、魔皇の脅威に対抗できぬまま世界が完全に穢された』ことを意味しているのだから。

「やはりこの世界は浄化せねばならぬ……!未来永劫、命など宿らぬ砂漠にせねばならぬ……!!」
「……が、その前にやらねばならぬことがある……。ミルドラースとやら、貴様は我がチリひとつ残らず消滅させてやろう!首を洗って待っているがいい!!」

そうして彼は姿を消した"ミルドラース"に聞こえるかのように、天に向かって宣戦布告をした。

そんなさなか、彼は近くで何者かが動く気配を感じた。

「……何者だ、姿を見せよ」

そう言って彼が気配を感じたほうに剣を向けると、そこから二人の少女が現れた。

片方はまるで魔女を思わせる黒く大きな帽子で顔を隠した少女。

そしてもう片方は、まるで全身を影で覆い隠したような少女だった。

「……ほう、若き魔女と自殺者の霊か…。我の姿を見て恐れおののく様子がないことを見るに、貴様らは我に救いを求めているのか?浄化を求めているのか?」

そうして彼が剣を彼女たちに向けたまま炎を放とうとすると、帽子をかぶったほうの少女が慌てた様子で話し始めた。

「ち、違います!私たちはあなたと戦う気はありません!!まずは話を聞いてください!!」

それはあまりにも大きな声だった。そしてそれにより彼は思わず耳をふさぎそうになり、先ほどとは違った意味で顔をしかめてしまった。

「ふむ……聞くだけ聞いてやろう。……それと、もうろくした老人でもあるまいし、あまり大声で叫ぶな、みっともない」

そして彼は、彼女たちの方針や彼女たちが持っている情報について聞くことにしたのだった……。


167 : 高貴なる腐敗 〜ネメシ・ロトゥハダーシュ〜 ◆L9WpoKNfy2 :2020/09/29(火) 00:19:22 xyqMY5ys0
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少し時をさかのぼって……

ある市街地を、二人の少女が歩いていた。

「先ほどの爆発、それもクロさんの力によるものでしょうか?」
「残念ながら違うよ〜。…でも、あんなことができる存在ならきっと殺し合いを進めていくうえで邪魔になるだろうし、早めにつぶしておかないとね〜」

それは鈴奈とクロの二人だった。彼女たちは、先ほどまで自分たちがいた場所のすぐ近くで発生した爆発が何なのかを確認するために移動していた。

もし爆発で誰かが倒されていたら御の字、倒されていなくてもおそらく満身創痍になっているだろうからすぐに殺せるだろう、
そして万が一そのどちらでなかったとしたら今後自分たちの障害になるだろうから早めにつぶしておこうと、クロはそう考えたのだ。

しかしそれに待ったをかけたものがいた、それは鈴奈だった。

「……確かにこの戦いを勝ち抜くためにはそういった手段も必要かもしれませんけど、このような早い段階でつぶして回るのは早計ではないでしょうか?」
「クロさんの力が有限である以上は早い段階で使い続けると必要な時に使えなくなる危険がありますし、私の能力で見れる未来についても限界があります」
「……ですからまずは『仲間に引き入れて私たちを守ってもらう』か、『あえて放置することで他の参加者たちとつぶし合わせる』というのも必要になると思いますが……どうでしょうか……?」

彼女はクロに、「もしかしたら自分たちにとって有力な存在になるかもしれない」と話したのだ。

現状ではクロができることに限りはあるし、また『世界を改変する力』が有限である以上それを早い段階で行使し続けるわけにはいかないからだ。

そして自分は能力によりある程度の未来を予測することは可能だが、戦闘能力についてはこれといった有効打に欠ける状況であるからだ。

そのため彼女は、「仲間にすることで状況を有利に進められるようにする」、または「つぶし合わせるためにあえてそのままにしておく」ことを提案したのだ。

「……確かに、ここから脱出したときに『豹馬君』のために力を使えなくなったら困るし、その方がいいかもしれないね」

どうやらクロも、彼女の言うとおり「いざという時に力が使えなくなる危険性」について納得したらしい。

そうして彼女たちが巨大なクレーターの方に到着すると、そこには天に向かって何かを叫んでいる天使がいた。

『――とやら、貴様は我がチリひとつ残らず消滅させてやろう!首を洗って待っているがいい!!』

それを見た彼女たちは、ひとまずビルの陰に隠れて様子を見ることにした。

(誰かに宣戦布告しているようですが、何があったんでしょうか?)
(さあ?……まあ、ともかく無事そうだから接触してみて、様子を見てみようか)

そうして二人でひそひそ話をしていると、相手は彼女たちの存在に気づいたらしく自分たちに向けて攻撃を仕掛けてくることを鈴奈は予知した。

そのため彼女たちは攻撃を止めさせるために、彼の前に姿を現すこととなった……。

そして舞台は現在へと戻る…………。


168 : 高貴なる腐敗 〜ネメシ・ロトゥハダーシュ〜 ◆L9WpoKNfy2 :2020/09/29(火) 00:19:55 xyqMY5ys0
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そうして鈴奈とクロは、目の前にいる天使に対して「大切な人のために死ぬわけにはいかないこと」と「この会場から脱出するために仲間を探していること」を説明していた。

そういった話をすることで自分たちの仲間になってくれるかもしれないし、そうでなくても自分たちの目的を理解してもらうことで何らかの協力を申し出てくれると考えたからだ。

「……まるで理解できぬな、何故そうまでして『そんなもの』に尽くそうとする?何故そうまで信じようとする?」

しかし彼が紡いだ言葉は、彼女らにとってとても不愉快なものだった。

「所詮そいつらも、貴様らと同じ『泥人形』に過ぎぬだろう?」
「貴様らと同じく自分勝手で、おぞましい欲望にまみれ、己を顧みることもなく、いつまでも進歩することもない、愚かな存在に過ぎぬ」
「何故貴様らは、そんな醜い存在を『天上の存在』のように思っているのだ?何故そんな存在に哀れな希望など寄せておるのだ?」

彼は言った。お前らが大切に思っている存在もまた、『お前と同じ、汚らわしい存在』であると、そう言ったのだ。

「違う………ちがうちがうちがう!先輩は、先輩はそんな人じゃない!あれはただの悪い夢なんです!あれは…あれは現実じゃないんです!」
「き…聞きたくない!あなたの話は……聞きたくないです!!」

その言葉に強く反応したのは、鈴奈だった。何故ならば、彼女はここに来る前に、「信じていた存在」に手ひどい裏切りを受けたのだから。

そしてそれを『悪い夢』だと思い込もうとしていたのだから、それ故に彼女は彼のその言葉を受け入れるわけにはいかなかったのである。

「………どうして見ず知らずのあなたが『豹馬君』のことを侮辱するの?『豹馬君』はあなたの言うような存在じゃないよ?」
「『豹馬君』はお前より凄いんだよ!『豹馬君』はお前より格好良いんだよ!『豹馬君』はお前より素敵なんだよ!」
「何も知らないお前が、『豹馬君』のことを侮辱するなあぁぁぁー!!」

それはクロも同じだった。見ず知らずの男に、自分と『豹馬君』の絆を『汚らわしい』と侮辱されたのだから。

自分たちのことを何も知らないヤツに、自分と『豹馬君』の何が分かるのか、それ故に彼女は激怒したのだ。

「……色に溺れたとはいえ、ここまで狂うものなのか?それとも……貴様らが救いようのない愚か者なのか…」
「穢れの権化共よ……どんなに貴様らが吠えようとも、貴様らの慕う存在の価値など変わりはしない」

しかしエーリュシオンは彼女らの怒りに震える声を聞いてなお、涼しい顔をして言葉を紡ぎ続けていた。

彼女らと、彼女らが慕っている存在がいかに価値のないものなのかと見下し続けたのだ。

そうすると突如として、彼の頭上から無数のガラス片が降り注ぎ、またそれとともに電柱が倒れだして彼を襲ったのだ。

そして彼がそれらすべてを自身が持つ剣やそれにまとわせた炎を飛ばして薙ぎ払うと、その影から槍を持った鈴奈が突進をしてきた。

彼はその一撃を交わし切ることができず、わずかにではあるが頬を切り裂かれてしまった。

「……言ったはずですよ、あなたの話は聞きたくないと!!」

鈴奈は彼に対して、吐き捨てるようにそう言った。

彼女は怒り狂っていた。それは自分に対して「ずっと一緒にいる」と約束してくれた先輩を、彼がさんざん侮辱し続けたのだから。

そして彼女が彼の攻撃をかわすかのように飛びのくと、またもエーリュシオンの頭上から何かが降ってきた。

それは、近くにあったビルの壁の一部だった。そしてそれとともに彼の動きを封じるがごとく、先ほど彼が薙ぎ払った電柱についていた電線が彼の身体に絡まり始めたのだ。

その結果、高圧電流により感電し身動きが取れなくなった彼は、崩落したビル壁の下敷きとなった。

「さっきまでさんざん『豹馬君』のことをバカにし続けた罰だよ、一生そこに埋まっていなよ」

それを引き起こしたのはクロだった。当然、彼女もまた自分にとって大切な人をさんざん侮辱され続けていたので、その怒りは頂点に達していたのだ。

しかしそれでも彼を倒すには至らず、エーリュシオンは自分にのしかかっている鉄筋コンクリートの塊を破壊すると何事もなかったかのように立ち上がってきたのだ。

「自らの愚かさから目を背け続けるか……よかろう!その愚行を冥府で悔み続けるがよい!!」

そしてエーリュシオンは剣を天に掲げた後、怒り狂っている彼女たちに剣を向けて大量の炎を放ち始めた。

その攻撃を彼女たちはすべてかわし切った後、彼を倒すべく再び立ち向かっていったのである……。


169 : 高貴なる腐敗 〜ネメシ・ロトゥハダーシュ〜 ◆L9WpoKNfy2 :2020/09/29(火) 00:21:03 xyqMY5ys0
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こうして、愛に狂った少女たちと傲慢なる天使との戦いの火ぶたは切って落とされることになった。

……しかし彼は気づいていない。彼女たちの「誰かを強く愛し、慈しむ心」を否定してあざ笑った今の自分の姿が…


―― 彼自身が忌み嫌っている、世界のみならず人の心までも蝕んだ『魔皇』と同じであることを……。


【D-5/深夜】

【聖帝エーリュシオン@モンスター烈伝オレカバトル】
[状態]:度重なる戦闘により蓄積したダメージ(中)、目の前の狂信者たち(神楽鈴奈、クロ)に対する強い嫌悪感、ミルドラースに対する激しい怒り
[装備]:原罪(メロダック)@Fate/stay night
[道具]:なし
[思考・状況]基本行動方針:優勝して"ミルドラース"を打ち滅ぼす。その後、穢れた世界を浄化すべく地上にいる全ての命を消し去り、不毛の砂漠にする。
1:救われない世界は消し去るのが最善、それが天命だ。
2:一刻も早く優勝し、"ミルドラース"およびそれに組する者たちすべてを未来永劫消滅させる。
3:キュアダイヤモンドは、再会しだい跡形もなく消し去る。
4:貴様ら(神楽鈴奈、クロ)は、たかが泥人形ごときに何を期待しているのだ?所詮そいつらも、貴様らと同じ『泥人形』に過ぎぬだろうに。
[備考]
ウィズの爆裂魔法により、デイバッグ及びその中の支給品が消滅しています。
本来『七つの大罪』にまつわる様々な特攻効果を持っているが、制限により以下の2つの効果のみ発動しています。
【色欲の罰】:女性と戦う際、攻撃力が2.75倍に上昇する。
【傲慢の罰】:彼に最もダメージを与えたものに対して、攻撃力が約2.5倍近く上昇する(現在はウィズが対象となっている)。
クロ(リーダー)の姿を『黒い影』という形で視認しています。
ミルドラースを、「魔王を従えし真の魔王」である『魔皇』だと認識しています。

【神楽鈴奈@Caligula Overdose-カリギュラ オーバードーズ-】
[状態]:健康、聖帝エーリュシオンに対する怒り(極大)
[装備]:ー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]基本行動方針:先輩と一緒にいる、ずっと
1:先輩のもとに帰る
2:これは夢、早く覚めないと
3:先輩は、私とずっと一緒に居てくれると言ってました……なのに、なんでこの天使は私と先輩の仲を否定するんですか…?
※参戦時期は楽士ルート最終決戦で主人公に裏切られ敗北した直後です。
※キャラエピソードは完遂済みです
※この殺し合いと元世界での主人公の裏切りを夢だと思い込んでいます。

【クロ(リーダー)@最悪なる災厄人間に捧ぐ】
[状態]:健康、聖帝エーリュシオンに対する怒り(極大)
[装備]:ー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]基本行動方針:『豹馬君』と一緒にいる、ずっと
1:『豹馬君』のもとに帰る
2:『豹馬君』のそばにいる
3:『豹馬君』と生きる
4:『豹馬君』は、泥人形なんかじゃない……!『豹馬君』を侮辱するなら、跡形もなく消し去ってやる!!
※参戦時期は少なくても「災厄に捧ぐ」にて後追い自殺した以降です。
※透明人間であるため普通の生物から彼女の声や姿を認識することは出来ません。
ただしこのロワでは「見えないものが見える」キャラであれば彼女を認識することが可能です。
※このロワでは世界改変の力で直接人を攻撃することが出来ません、結果的に攻撃を受ける形であれば可能です。(倒した電柱がたまたま当たった等)


170 : ◆L9WpoKNfy2 :2020/09/29(火) 00:21:40 xyqMY5ys0
投下終了です

ありがとうございました。


171 : ◆vV5.jnbCYw :2020/10/01(木) 00:16:04 GRLrTy6A0
投下します


172 : 炎と氷 ◆vV5.jnbCYw :2020/10/01(木) 00:16:33 GRLrTy6A0
『聞け! この地に集いし全てのものたちよ!
 喜ばしい事に、総勢111名、現時点を持って全ての参加者が確定した!』


のび太たち三人が、誰とも会わないまま、30分ほど経過した後に、その放送が流れた。


「111名!?」
ピーチ、平野以外の参加者に未だ出会っていないのび太は、予想外なまでの参加者の多さに驚く。
他の二人も言葉には出さなかったが、表情で同じことを物語っていた。


そして、名簿が転送されたという言葉に従って、三人は名簿を開けてみることにした。

「マリオ?ヨッシー?それにクッパまで!?」
自分の知り合いが予想以上に多く連れてこられたことで、今度は驚きを隠せなかったピーチ。
クッパの後ろには、「姫」と書いてあったが、ピーチは見間違いだということにした。


「のび太君は誰か知り合いはいたかな?」
平野源五郎が、浮かない表情をしているのび太に声をかける。
「うん。このドラえもんとリルルって人。どっちも僕の友達だから、ピーチ姫や平野さんとも仲良くなれるよ。」
「そうか。それは一刻も早く、見つけてあげないと大変じゃな。」


ドラえもん
どんなに喧嘩をしても、すぐに仲直りできた、絶対の友達。
二人なら、この殺し合いだって無事に終わらせることが出来るという自身さえあった。


リルル
かつて、自分がいたという事実と引き換えに、時間を改変してロボットの軍団を消した少女。
消えてしまったはずの彼女がどうしてこの世界にいるかは分からないが、今度は仲間として彼女とも協力できると確信していた。

「平野さんは友達とかいなかったの?」
「私の仲間、タクヤや葛城はいなかったようだ。まあこんな戦いに巻き込まれなくて、ほっとしたよ。」

仲間の不在に安堵を覚える平野。
こんな状況でさえ、仲間が参加させられていなかったことに喜ぶ彼を見て、のび太は尊敬の念を覚えた。


173 : 炎と氷 ◆vV5.jnbCYw :2020/10/01(木) 00:17:45 GRLrTy6A0

「ここからは台車では行けそうにない。降りて進むしかないぞ。」


そして、南下していた三人の舞台は草原地帯から一転、ほとんど草が生えていない砂浜地帯へと移る。
台車のタイヤは粒子の細かい砂に取られて、上手く動かない。
そのため二人も上から降りて、歩くことを決定した、
白くて大きな満月に照らされた、一面に広がる砂は魅力的だった。
こんな状況でなければ、見入ってしまっただろう。
ひとまず、三人は遠くに見える施設、パラダイス・パームズを目指すことにした。


しかし、歩き始めて早速、地平線の彼方へ見える建物以外に、新たな異物が映りこんだ。


「アレは……何じゃろうな……。」
一番最初に平野が、月光を反射しキラキラと輝く謎の物体に気づく。


「つめた!これ、氷だよ!!」
「氷像!?けれど……何のために……。」

のび太とピーチも、それが砕かれたゴブリンの氷像だったということに、驚きを覚える。

「元々戦いの会場のオブジェなのか……それとも誰かが置いたのか……。」
平野はいぶかしげに、頭だけになったゴブリンの氷像を掴む。
勿論、和服の袖で手を覆いながら。

氷漬けにされながらも、その恐怖に満ちた表情はうかがい知れた。

「まるで、生きているかのようなデザインね。」
「そ、そんな怖いことを言わないでよ!これがかつて、生き物だったみたいじゃないか!!」
「ふふ、勇敢そうに見えても、これで怖がるなんて、年相応の男の子じゃな。」


怖がるのび太を、平野がからかう。
それからも歩き続ける3人に、同じように砕けたゴブリンの氷像が目に入った。
まるで誰かが氷像を壊しながら歩いているかのように、破片だけで道が装飾されていた。


どれくらい歩いたか分からないが、やがて3人の目の先に、白髪の少女が映る。


「おーーーい!!」
のび太は一人で歩いていたその少女に声をかける。

氷の杖を持った少女は振り向き、3人に近づく。

「私達は殺し合いに乗っていないわ。」
「君は誰かに会わなかったか?」

ピーチと平野も、少女に声をかける。

「あなた、私の記憶を知りませんか?」
平野の質問を返す前に、少女は質問を仕掛けた。

「記憶!?知らないよ……。」
「記憶喪失……なのか?」

突飛な質問に、疑問を覚える二人。

「私達と一緒に行かない、もしかしたら、あなたの記憶も見つけ……」

「ならば、死になさい。氷漬けになって。」
ピーチの提案もよそに、雪の女王と化した島村卯月は、フリーズロッドを3人に振りかざした。


174 : 炎と氷 ◆vV5.jnbCYw :2020/10/01(木) 00:18:11 GRLrTy6A0


「危ない!」
慌てて平野は台車を取り出した。
それを縦に向けて、吹雪を防ぐ大楯代わりにしたのだ。


「私の記憶を取り戻すために、死んでくれませんか?」
再びフリーズロッドが振るわれる。

「冷たい!!」
盾があっても、直接の吹雪を防げるだけで、気温変化は防げない。
既に気温はマイナスになっていた。
三人は口に出さなかったが、あのゴブリンの氷像は、この少女によって作られたのだとすぐに理解した。


「守ってばかりじゃ埒が開かん!!」
平野は鞘から鋼の剣を出す。たとえ吹雪そのものを防いでも、辺りの気温変化で、遅かれ早かれ凍死してしまう。
それを止めたのは、のび太だった。

「ダメだよ!!あの子、誰かに操られているんだ!!」

のび太は、かつての冒険で今の島村卯月と似ている状況になった仲間を見たことがある。
宇宙の寄生生命体、ヤドリに体を乗っ取られ、操られたスネ夫。
口調のおぼつかなさ、焦点の合わない瞳など、あの時のスネ夫とどこか通ずるものがある。

「じゃあどうすればいいの?」
「分からないよ……でも、殺しちゃダメなんだ!!」
しかし、打開策は全く見当たらない。
本当なら彼女を殺さず助けたいのは、のび太だけじゃなく、他の二人も同じなのだが、このままでは助けるどころか逆に殺されてしまう。


「助ける?何をおかしなことを言っているのですか?本当に助けたければ、私を優勝させればいいだけじゃないですか。」

今度は卯月は、上に向けてロッドを振りかざした。
夜の闇が輝く氷に照らされ、氷塊が氷柱のように三人に降り注ぐ。


「何これ!?」
「イタタタタ!!雹だ!!」
「バラバラになれ!固まるな!!」

横からの攻撃ばかり気にしていた平野は、突然の上からの攻撃に台車を使うことも出来ず、散開することを提案する。
細かい豹に混じって、頭に当たれば命に関わる大きさの氷が降り注ぐ。
目の前に飛んできた氷を、のび太は慌てて銃で砕いた。


(そうだ!!)
のび太は敵の攻撃の直前に必ず、杖が白く光っていることに気づき、銃を敵に向ける。

「え?」
攻撃することを止めようとしたのび太が、銃を向けたことにピーチ達は驚くも、狙ったのは卯月自身ではなかった。


散弾銃が発砲される。
狙いは彼女の急所ではなく、フリーズロッドの先端。

(ヤドリのように、体内に入っているんじゃなく、杖に取り憑かれているのかもしれない……!!)

そうでなかったとしても、杖さえ破壊できれば危険度は大きく下がるはずだ。
吹雪で視界は悪くなっているが、彼の射撃の腕はそんなものでは鈍らない。


「無駄だということが、分からないんですか?」
しかし、銃弾は、杖に届く寸前で止められた。
彼女は即座にフリーズロッドの使い方を、攻撃から防御へとシフトさせた。


卯月の目の前に、氷の盾が現れ、銃弾は止められてしまった。

「く、くそぉ!!」
今度はのび太のもう一つの武器、レイガンから光線が放たれる。

「しまった!」
しかし、キラキラと光る、作られた氷の盾は、光線を跳ね返してしまった。
慌ててのび太も躱すも、どちらも通じないことが分かり、状況はさらに絶望的になってしまう。


175 : 炎と氷 ◆vV5.jnbCYw :2020/10/01(木) 00:18:30 GRLrTy6A0

「決めました。まずはあなたから氷漬けにしましょう。」
ターゲットを決め、卯月は吹雪をのび太に浴びせた。

「ドラ……え……も………。」
目の前が、白一色で覆いつくされる。
普通の人間なら、感じることはないはずの超低温に、ただの人間は生命活動が停められるのを待つしかない。


ただし、特別な力を手に入れた人間なら、話は別だが。



「え!?」
自分は生きていて、しかも凍傷ひとつないことにのび太は驚く。
むしろ、あべこべクリームでも塗ったかのように、暑いくらいだ。

「無事か。危ない所だったな。」
「な、何あれ……。」
「大きい……。」

のび太の目の前に立っていたのは平野源五郎。
しかし、のび太はもちろん、ピーチ姫まで、彼の横にいる異形の存在に目を奪われてしまう。
平野の後ろには、真っ赤な鳥の頭を持った筋肉質な魔人がいた。
両手には、激しく燃え盛る炎を持っている。


「詳しい説明は後だ。どうやら私は、魔法使いになってしまったようじゃな……。」
平野に支給されていた3つめの道具は「魔法使いの赤(マジシャンズ・レッド)のDISC」。
かつてエジプトの占い師が使っていた、炎を自由自在に操ることが出来るスタンドだ。

最初は平野も半信半疑だったが、ここで使っても使わなくても全滅するなら、使ってみようと思った。


「今度は固まれ。私の後ろにいろ。」
「流石平野さん!これがあれば百人力だね!!」

二人を後ろに下がらせ、先頭の指揮を平野が取ることになった。

「コイツを食らうがよい。」
平野が新たに手に入れたスタンド、魔法使いの赤の両手から炎が放たれ、卯月に襲い掛かる。

「無駄ですよ。」

またも卯月は2,3度ロッドを振り、炎を全て消してしまう。

「ならば!!」
炎を纏った、筋肉質な両腕が、襲い掛かる。
しかし、のび太の銃弾も止めた、巨大な氷の盾でそれも止められる。

今度は卯月が反撃に転じ、平野と魔術師の赤に向けて、ありったけの氷弾が放たれる。
それを時には融解させ、時には殴り砕き、時には躱すことでどうにか全て凌ぎきる平野。
先ほどまでは吹雪で悪くなった視界は、炎と氷のぶつかり合いで生まれた水蒸気で覆われている。


「そんな……これで、やっと互角なの!?」
新たな力、しかも、氷に対して優位を取れる力を手に入れてなお、勝てる様子が見られない相手に、のび太は恐怖を覚える。


「これはあのミルドラースと戦うまで取っておこうと思ったが……今使うのもやむを得ないようだな。」
しかし、平野もまだ隠し玉を残していた。

「な、何ですかこれは……。」
スタンドの鳥人が嘶き、卯月の周囲に、ロープのように細長い炎が現れる。

「少女を調教する趣味はないのだがな。」
炎のロープで作られた囲いが、段々と狭くなり、瞬く間に雪の女王を二重三重にと縛り上げた。

それは、かつてのスタンドの持ち主が使っていた、「赤い荒縄(レッド・バインド)」にそっくりであった。
スタンドを手に入れたばかりの平野が、即興でこの技を覚えたわけではない。
だが、平野の緊縛師という従来の職業で培った技術が、炎の拘束技へとつなげることになったのだ。


176 : 炎と氷 ◆vV5.jnbCYw :2020/10/01(木) 00:18:47 GRLrTy6A0

「くそ……くそぉ!!」
紅蓮の縄で雁字搦めにされ、氷を飛ばす技だけではなく動きまで封じられた卯月。
それでも卯月は、自身の周りに氷の壁を作りながら体をよじり、炎の縄に抵抗する。
「無駄だよ。その縄は、私の特別なほどき方じゃなければ、解けないのだ。」

縄が追加され、さらに卯月の自由は狭まる。


「負けない……あなたたちなんかに、記憶がなくたって!!」

しかし、彼女の周囲は更に温度が下がる。

「何だと!?」
勢いを増した吹雪の鎧は、魔術師の赤のレッドバインドを、完全に打ち消した。


風もより強くなり、三人は近づくことさえ難しくなる。

「どうやら、想定外のようじゃな……。」
平野も魔術師の赤を攻撃用ではなく、守りにシフトさせる。
炎で三人を囲わないと、すぐに凍死してしまいそうだ。
そうでなくとも、超低温の影響でこの先身体に問題が生じるのは、どうにも厳しいことになる。

遠くから見れば、半径数10mを白が覆いつくしており、そのうち数mの範囲だけ、赤い光が灯っている図になっている。
氷と炎の戦いは、まだ始まったばかりだ。



【H-7砂浜/黎明】
【島村卯月@アイドルマスター シンデレラガールズ】
[状態]:『禁断の薬』による記憶喪失および性格・容姿の変化
[装備]:フリーズロッド@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1
[思考・状況]基本行動方針:自分の記憶を取り戻すべく、優勝する。
1:全員殺して、記憶を取り戻す。
[備考]
『禁断の薬』を飲んだことにより記憶喪失となっています。またそれに伴い冷酷な性格に変化しています。
そして薬の効果により全身が"氷の魔法使い"として作り替えられたため傷が完治しております。


【野比のび太@ドラえもんシリーズ】
[状態]:健康 疲労(小) 大長編補正
[装備]:不死川玄也の散弾銃@鬼滅の刃(弾数11/20) レイガン@大乱闘スマッシュブラザーズX (エネルギー4/5)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]:ドラえもんやリルル、ピーチの知り合いを探す
1:少女(島村卯月をどうにかして救う)
[備考]
少なくとも大長編16巻 「のび太と銀河超特急」完結後です。
卯月は持っている杖が原因でおかしくなっていると思っています。

【ピーチ姫@スーパーマリオくん(コロコロ版)】
[状態]:健康
[装備]サバイバルナイフ@バトルロワイヤル
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1(確認済み)
[思考・状況]:基本行動方針:殺し合いから脱出する、マリオ達を探す
1:平野やのび太と共に少女(島村卯月)を救う

[備考]
参戦時期はオデッセイ編終了後(単行本55巻)



【平野源五郎@真夏の夜の淫夢シリーズ】
[状態]:健康 
[装備]: 鋼の剣@ドラゴンクエストシリーズ マジシャンズ・レッドのDISC@ジョジョの奇妙な冒険シリーズ
[道具]:基本支給品、台車@現実 
[思考・状況]基本行動方針:主催者には正義の鉄槌で、その腐った心を強制してやろう。
1:スタンド……中々面白い能力じゃな。
2:のび太とピーチ姫を守る
3:スタンドを使って、少女を守る
4:のび太やピーチ姫の知り合いを探す
5:か”わ“い”い“な”あ“の”び“太”く“ん”
[備考]
参戦時期は、悶絶少年 其の伍で「今日は逆さ吊り、鞭責めをしよう(提案)」と言った辺り


【マジシャンズ・レッドのスタンドDISC@ジョジョの奇妙な冒険】
【破壊力:B/ スピード:B/ 射程距離:C/ 持続力:B/ 精密動作性:C/ 成長性:D】
 第3部「スターダストクルセイダース」に登場する、モハメド・アブドゥルのスタンド
炎と熱を操る能力を持つ。アヴドゥル曰く「鉄柵くらいなら空中で溶かすのは訳ない」とのこと。また、炎そのものもスタンドなので物体の下半分だけを燃やすといった、普通の炎では出来ない芸当も可能である。ただし、普通の水や氷でも消える。
必殺技として十字架状にした炎を撃ち出す「クロスファイヤーハリケーン(C・F・H)」、さらにそれを分裂させて大量に放つ「クロスファイヤーハリケーンスペシャル(C・F・H・S)」がある。
作中では他に縄状の炎を作り出して束縛する「赤い荒縄(レッド・バインド)」、細かい原理は説明されなかったが炎=生命エネルギーということで、一定範囲内における生物の生命エネルギーを探知するといった芸当も可能。
本編ではレッド・バインド以外は平野に出来るか不明。


177 : 炎と氷 ◆vV5.jnbCYw :2020/10/01(木) 00:19:05 GRLrTy6A0
投下終了です。


178 : ◆EPyDv9DKJs :2020/10/03(土) 20:59:03 UztO/Uag0
投下します


179 : ◆EPyDv9DKJs :2020/10/03(土) 21:00:29 UztO/Uag0
 ターバンの人はなんだったのだろう。
 飴宮は彼と別れた後、一人考えつつ歩く。
 あれだけ自信ありげであったところを見るに、
 恐らくいろんなものをよく知っているのだろう。
 思い返すと足はなかったし、新手の妖怪の類か。
 西洋の妖怪、或いは怪異なんてのもいくらでもいるし、
 それらをすべて網羅してると豪語はできるもでもない。
 自分が嘗女のように、人を当てるのが彼としての本能。
 とりあえずはそう思いながら北の方角で大きな音がした気がしたので、
 様子見がてら軽く北上していく。

『願わくば最後に私の前に立つものが、勇者に相応しい者である事を望む。』

 道中、
 ミルドラースによるバトルロワイアル開始の宣言。
 百名以上と言う大人数による催しではあったが、
 幸いなことに彼女にとっての知り合いは名簿にはいない。

(何これ。)

 いないのだが、やはり目を引くのはその名前のリスト。
 当然ながら、名前ですらない連中が多数な所に惹かれた。
 妖怪は種族で名が知れる。故に多少抽象的でもおかしくない。
 だが勇者の場合抽象的にしたって、何故こんなにもいるのか。
 似た妖怪はいくらでもいると言えども、名前は被ることは稀だ。
 雪女と雪婆辺りは勘違いで混同する…なんてこともありえなくはないが。

(強そうなのもいる…?)

 他に気になった名前の一つは、ハサミ。
 日ごろ使う道具である名前がそこにある理由。
 コードネームとかそんな風に考えるような環境ではなく、
 寧ろ飴宮の場合は妖怪であるが故の特殊な結論が出される。
 ───付喪神。妖怪に詳しくない人でも耳にする名前だ。
 長い年月を経たことによって誕生する妖怪の一つであり、
 唐傘お化けや鈴彦姫等、有名どころは結構存在する。
 学校では飼育されてる付喪神もいるにはいたが、
 ものによっては話は変わってくるかもしれない。
 場合によっては、網切の妖怪の別名の可能性とか。
 …なお、彼女のあずかり知らぬことではあるのだが、
 刀剣男子と言う付喪神に類する存在がいたりもする。

 気になったもう一人の名前はディアボロ。
 何処の言葉だったかは忘れたが、確か悪魔なのは記憶してる。
 妖怪とは別物ではあるものの、メジャーな存在なのは確かだ。
 とりわけこの両名が今の彼女が行動するにあたっての壁と言う認識は強い。
 他にも歴史上の人物がいて、これらも亡霊の類でいるのだろうか。

 名前だけでも不安要素は多いが、あくまで名前だけ。
 此処には知名度等関係なく強い参加者だっているだろう。
 参加者の一部面々も合わせ本気の殺し合いを望んでると改めて理解した。
 いくら妖怪と言えども嘗女は、別段こういう時は驚異的な存在ではなく、
 どういう選択肢を取るにしても、このままでは生き残るのは茨の道。
 知り合いもいない以上安易に誰かと組むと言うこともできない。
 と言うより、秘密主義者(しかも無自覚に口を滑らせる)の彼女と組んだら、
 優勝狙いではその口を滑らせる行動、主催者の打倒を志す側では秘密主義と、
 組んだ相手は苦労するのが目に見えるのだが。

「!」

 北上していると、
 誰かが倒れているを見つけて咄嗟に身を隠す。
 血等の不快な臭いと微動だにしない姿から、遺体だと察する。
 近づいてみれば、首輪がない…所謂NPCの類だろう。
 一般的にはゴブリンだが、彼女にとってこれは小鬼の死体だ。

(此処にいた参加者は…もうどこかへ行ったのかしら。)

 生命を感じさせない程に此処は静かだ。
 辺りを見渡せば他にも遺体はそこら中に転がっており、
 参加者による蹂躙があったのは、想像するに難くない。
 相手がどんな存在かをまだ理解していない初夏にとって、
 同じ妖怪だと思っており、彼らの死に少しばかり悲しく思う。
 妖怪の多くは人を喰らうもの…鬼もまたそれに類する存在。
 つまり、人も自分の命を守るために必死になるのは当然の帰結。
 同級生の人間である渡海も、もしそうなったら抵抗するはずだ。
 だから相手を悪いとは思わないし、仇を討とうなんて考えもない。
 それに、小さいとはいえ武装した小鬼を倒している以上、
 今の自分では無理だと言うことも分かっている。

(流石にちょっときついかも。)


180 : ◆EPyDv9DKJs :2020/10/03(土) 21:01:21 UztO/Uag0
 中には腹を掻っ捌かれた死体も存在しており、
 この数でやられてしまえば異臭は外と言えども充満する。
 長居したくなく離れようとすると、近くに転がっていた剣を蹴とばしてしまう。
 それに反応して足を止めてしまったが、そのおかげで見落としそうな存在に気付く。

『くびわ どうする とうちょうのかのうせい くちにするな』
『きをつける』
『かいせき てつだえる』
『こうぐ さがす?』
『だが 一人ではこんなん 人をさがす』

 誰かの会話と思しき筆談が地面に記されている。
 暗がりでは気づきにくいそれは、彼女にとって重要な存在。
 会話の内容を改めて確認して、彼女にとっては朗報だ。

(首輪…!)

 現状特別精通うしてない自分で解決できることではないし、
 筆談をしてた相手もどうやら機械に精通してる節がある。
 この筆談をしていた主を追えば、状況の改善できる可能性も高い。
 殺し合いに否定的かどうかまではこれだけでは判断できないし、
 小鬼の死体もこの筆談をした人たちと考えると、リスクはあった。
 一方で人を探すことから、どちらであってもすぐに殺しはしないはず。

(でも、行き先がわからない…)

 問題は当人は今どこにいるのか。
 マップを確認してみれば、余りに広すぎる。
 完全な海の部分を覗いても、一エリア二人いればいい方。
 ミルドラースの言ってたように既にチームを組んだり、
 既に死亡者だって出ている可能性は高い現状を考えれば、
 出会う確率はさらに低くなるだろう。

(何か移動手段になるものはないの?)

 これでは夜が明けても出会える気がしない。
 そう思って、まだ調べてもなかったデイバックを漁る。
 酒やインスタントラーメンと突っ込みたいところは色々あったが、
 今はそういう状況ではないのでそれらについてはスルー。

「何これ?」

 出てきたのは液晶画面の付いた小さな機械。
 スマートフォン程薄くはなく、昔の通信機のような少し分厚めの。
 付属の説明書には『簡易レーダー』と記されており、
 同じエリアの参加者を表示してくれるというもの。
 移動手段ではないが、非常にありがたい支給品だ。
 厄介な相手からは逃げられるし、徒党を組んでる人も探しやすい。
 レーダーだけでは相手が誰かの把握は出来ないにしても、
 知り合いが一人もいない初夏にとってこれで得られる情報は大きい。
 早速使ってみると、二つの点が画面に表示される。
 まだ遠くに行ってないと言うことで、すぐにデイバックを拾い上げ、
 レーダーを片手に急いで動き出そうとしたが、忘れてたことに気付いた。

「───これ、私も含まれてるんじゃ…」

 何を以ってレーダーに表示されるのか。
 最も手っ取り早い手段と言ったら一つしかない…そう、首輪。
 このレーダー、自分もカウントされているのだと。
 つまり此処にある二つの点は一つは自分であり───

 もう一人このエリアにいる。
 その事実に気づき、辺りを見渡す。
 申し訳程度に剣も拾って、できる範囲で自衛の準備をしておく。
 レーダーを見れば距離はかなり近いので、慎重に辺りを歩き回った。
 此処はシフティ・シャフト。採掘場らしき場所であって、高低差が激しい。
 レーダーは高低差を表示しない。暗い地下通路もあわせで具体的な位置は把握できず、
 距離は自分から近づいてるのもあったが、かなり近くになって流石に気付く。

(地下?)

 上空や周りを見てもそれらしい姿はなく、
 足を止めて耳を澄ますと、何かが下の方から聞こえる。
 足音はしないが動いてる音はすると言う奇妙な状況。
 何がいるのだろうか、とりあえず出てくるのを少し遠目に待ってみると、

「…妖怪?」

 出てきたのは、赤いドーナツ状の何か。
 同級生の紅坂に負けず劣らずの真っ赤である。
 複数の目玉が辺りを見渡している、端から見れば不気味。
 妖怪である初夏の視点から見れば同じ妖怪の一種なので、
 気にするほどのことでもなく、形と色で火車の類なのかと思っていた。
 相手の引きずるように持っているデイバックにはローラーがついていて、
 どうやらその音が先程から聞こえていた音の元凶だったらしい。

「ちょっといい?」

 明らかに異質なそれではあるが、
 自分達と同じ妖怪と言う認識をしてる彼女にとって、
 普段通り、挨拶のような感覚で声をかけてみる。
 声をかけると複数の目玉が彼女の方へと向く。

「隱ー縺??」

「へ?」

 向くとともに何処から声が出てきたのか、
 言葉で表現すら難しい声が複数の目による凝視と同時に飛び交う。
 英語とかそんなものでは断じてない、もっと何か別次元のような言葉だ。


181 : ◆EPyDv9DKJs :2020/10/03(土) 21:02:09 UztO/Uag0
「えっと、貴方も参加者…?」

「縺輔s縺九@繧?▲縺ヲ縺ェ繧薙□?」

(何を言ってるのか分からない…)

 こっちの言葉が通じているのか、通じていないのか。
 はっきり言ってこれではまったくわからない…が、
 とりあえず参加者なのは首輪を見て察した。

「…一緒に行く?」

 行くなら付いてきて、行かないなら付いてこない。
 行動で会話が通じてるかどうかを試しにして、歩いてみる。
 少し歩いてみてから振り返ってみると、

「縺、縺?※陦後¥」

 謎の物体は相変わらず何を言ってるのか分からないが、
 彼女について行く形で歩いた場所を追いかけてくる。
 試しに右寄りに歩けば右寄りに、戻せば同じように戻して。

(一緒に来るってことで認識していいよね。)

 見知らぬ相手に背後と言うのは少々怖いが、
 一緒に並行して歩けるほどまだ早くは動けない様子だ。
 まるで生まれたての小鹿とも言うべき、拙い動き。
 どこか愛嬌も感じながら、飴宮は次の目的地へ向かう。
 今のところ次の目的地自体は、とくに決めてはいなかった。

 北から音がしたと言っても、あくまで気がしただけであって拘る理由はない。
 此処からなら西も北も東も地図上に施設が存在しているのも、拘らない理由だ。
 筆談の主ならいずれかの場所で人探しをするだろうし、
 距離もエリア的にほとんど変わらないので、好きに選べる。
 どの方角が最適解か、嘗女の決断やいかに。

【D-6 シフティ・シャウト/黎明】

【飴宮初夏@こじらせ百鬼ドマイナー】
[状態]:健康
[装備]:簡易レーダー@バトル・ロワイアル、ゴブリンの剣@ゴブリンスレイヤー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考・状況]基本行動方針:ひみつ
1:筆談してた人を追う…どの方角に行ったの?
2:この子(いのちの輝き)は大丈夫なのかしら。
3:ターバンの人(アキネーター)は変質者だったのか、妖怪だったのか。
[備考]
※44話以降からの参戦です。
※ハサミを付喪神(または網切の妖怪)、ディアボロを悪魔、偉人を霊と認識してます。
※いのちの輝き、ゴブリンを妖怪と認識してます。





 いのちの輝きはあれから、この会場を適当に彷徨った。
 ミルドラースの宣言も、生まれたての彼では意味を理解してない。
 だから殺し合いが何かは、余り分かっているわけではない状態だ。
 最早二の次で、ドーナツ状の身体を縦にしてタイヤの如く転がる。
 移動が楽だ、なんて思っていたものの採掘場の穴に転がり落ちたりもした。
 急ぐときでもなければ使わないようにしよう…なんて地下通路を歩きながら思う。
 再び暗い穴の道を抜け出して一息ついていると、声をかける存在。

 最初は身構えて目が一斉に彼女へと向いた。
 出会って早々ゴブリンに襲われた恐怖心が残っている。
 ある意味当然の反応だったが、相手は攻撃を仕掛けてくる様子がない。
 会話をしようと声もかけてくれたりと、ゴブリンとは違うことばかり。
 だから興味を持った。攻撃してこなかった理由やゴブリンとの違いを。
 さんかしゃが何かは知らないが、彼女についていこうと思った理由だ。
 得られるものを得ていく。今の彼(?)は非常に好奇心旺盛だ。
 なんにでも興味を持ってしまう、子供のような性格をしていた。
 だが誰かと話す機会を得たことでひょっとしたらよりよい成長を、
 同時にまずい成長をしてしまうのかもしれない可能性もある。
 人知れず、一つの生命の行く末を彼女は握ってしまった。

【いのちの輝き@大阪万博2025】
[状態]:健康 疲労(小) 好奇心(今は特に飴宮) 成長中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本行動方針:とりあえず飴宮についていく。
1:隱ー縺??
2:縺輔s縺九@繧?▲縺ヲ縺ェ繧薙□?
3:縺、縺?※陦後¥
[備考]
※参戦時期は産まれたて。
※特技は今のところ「目から眩しい光を出す」、「大して威力はないがビームを出す」です。
 今後の成長によって何か新しい技を覚えるかもしれません
※デイパックは少しだけ細工されてローラーがあります
※縦になって転がるを覚えました

【簡易レーダー@バトル・ロワイアル(実写版)】
原作においては杉村に支給された、所謂首輪探知機。一応実写版出典
昨日は以下の通り
①:参加者が画面内に点で表示される。数に上限はない
②:死亡者、NPCは表示されない
③:範囲は原作と違い、対象のいるエリアのみ(現在はD-7)


182 : ◆EPyDv9DKJs :2020/10/03(土) 21:03:04 UztO/Uag0
以上で『奇・紹・点・潔』投下終了です
輝きの状態表や台詞は個人の気分でやったので、
同じようにやらなくても大丈夫です、はい


183 : ◆EPyDv9DKJs :2020/10/09(金) 02:50:39 ZVtYNcwI0
ハサミ、ホル・ホース、足柄、藤丸立香、オグリキャップ、和泉守兼定
で予約します


184 : ◆OmtW54r7Tc :2020/10/10(土) 23:45:24 gVkBNW0c0
野原しんのすけ、星野輝子、岸辺露伴で予約します


185 : ◆OmtW54r7Tc :2020/10/11(日) 01:30:16 Pb1Jirm.0
投下します


186 : 野原ひろし ◆OmtW54r7Tc :2020/10/11(日) 01:31:08 Pb1Jirm.0
「う〜ん、私の知り合いはいないみたい。しんちゃんはどう?」
「マサオくんととーちゃん、ロボとーちゃんの名前があったゾ」
「ロボとーちゃん?」
「うん、オラのもう一人のとーちゃん」
(ロボひろし…名簿にもあるこの野原ひろしって人がロボット化したってこと?)

しんちゃんの話を聞いて、輝子は考える。
彼から話を聞いて、しんちゃんの世界は自分たちとは全く違う別世界の住人だということは推測がついている。
そこではヒーローも魔女っ子もテレビの中だけの話で、実在はしないと思っていたのだが…

(悪の科学者に改造人間にされた、とか?平和な世界だと思ってたけど…想像よりもヤバい世界なのかも。あれ、でもそれなら名簿にある「野原ひろし」はどうなるんだろう?)

そういえばしんちゃんは、ロボひろしのことを「もう一人のとーちゃん」と呼んでいた。
つまり、人間とロボットのとーちゃん…野原ひろしとロボひろしは共存するということなのだろうか。
とりあえず、もう少ししんちゃんから話を聞きたいところだ。

「ねえしんちゃん…って、あれ?」

気がつけば、しんちゃんが目の前にいない。

「キッコお姉さん、早く早く〜!ブリブリ〜、ブリブリ〜!」

少し離れたところにいつの間にか移動していたしんちゃんは、尻を丸出しにした奇妙な格好で、一人先へと進んでいった。

「って、速っ!?ちょっと待ってよしんちゃん〜!」

奇妙な格好のまま、普通に走るよりも速いのではないかと思うほどの高速移動で先へと進むしんちゃんを、輝子は慌てて追いかける。


187 : 野原ひろし ◆OmtW54r7Tc :2020/10/11(日) 01:32:22 Pb1Jirm.0
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

「待ってー!しんちゃん!」
「あは〜ん!私を捕まえて〜ん♪」

追いかける輝子に対して、しんのすけは恋人の追いかけっこごっこをしているつもりらしく、輝子の方に視線をやりながら逃げる。
当然、前方など見ておらず、その結果…

「おう!?」

前方にいた人…いやバイクに気づかず、ぶつかった。
幸い、バイクはこちらに気づいて停車していたので、怪我はなかったが。

「ふう、やっと追いついた!…あ、すみません、この子がぶつかっちゃったみたいで…」

バイクにぶつかり動きの止まったしんのすけに、輝子が追いつく。
そしてしんのすけに追いついたことに安堵しつつ、目の前の人物に対して謝る。

「いや、気にしてないさ。怪我がなくてなによりだ」

謝られた人物は、穏やかな物腰でそう答えてくれた。
そのことに輝子は安堵し…しかし続けて放たれた言葉に、呆気にとられることになる。

「それよりも…そこの少年、さっきの奇妙な動き、漫画の参考にしたい。スケッチするからもう一度やってみてくれないか」

おまわりさん、こいつです。


188 : 野原ひろし ◆OmtW54r7Tc :2020/10/11(日) 01:33:03 Pb1Jirm.0
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

「ブリブリ〜!」

結局しんのすけは、ぶつかった人物――岸辺露伴という漫画家の頼みで、ケツだけ星人を披露していた。
そんなしんのすけを露伴は、真剣な表情でスケッチしている。(ちなみに紙はルールブックの紙の余白を利用している)
そして輝子はというと、そんな光景を直視する気になれるわけもなく、そっぽを向いていた。

「いやあしんのすけ君、実にいいものを見せてもらった」
「おじさんもやってみる?」
(いやいやしんちゃん、さすがにそれは…)
「ふむ、確かに実際に自分で動きを試してみるのもいいかもしれないな」
「え゛」

露伴の言葉にギョッとする輝子。
5歳児のしんちゃんがやるならまだ可愛げがあるが、大の大人である露伴がそれをやるのは…絵面としてあまりにも酷い。
思わず想像してしまって、青ざめる。

「ちょ、ちょっと待…」
「…とはいえまあ、僕も社会的立場のある大人だ。さすがに路上で、しかも女性もいる中であんなマネをするのはまずい。今は遠慮しておこう」
「…で、ですよね!」

断る露伴に、輝子はホッとする。
なんだ、非常識な人だと思ったけど、その辺はしっかりしてるんだ。
…いや待て、『今は』?

「どこか建物に入ったときにでも、教えてくれ」
「ほいほ〜い」
「やめてください!」


189 : 野原ひろし ◆OmtW54r7Tc :2020/10/11(日) 01:34:00 Pb1Jirm.0
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

…とまあ、なんとも最悪な出会いをした3人だったが、お互い敵意はないということで、露伴のスケッチが終わると情報交換を行うこととなった。

「空条徐倫という女性なんだが、心当たりはあるか?」
「いえ…私もしんちゃんも、お互い以外に出会った人はいないです」
「そうか…」
「露伴さんは誰かに会いましたか?」
「一人会ったが…そっちも誰か探しているのか?」
「はい…私は誰も知り合いはいなかったんですが、しんちゃんが」
「マサオくんと、とーちゃんと、ロボとーちゃんだゾ」
「ロボとーちゃん?父親がロボットだというのか!?」

露伴の瞳が、興味深そうに怪しく光った。
その様子に嫌な予感を感じた輝子は強引に話を進める。

「ち、父親の名前は野原ひろしっていうそうで、ロボのお父さんは名簿にはロボひろしって書かれているそうです!何か知りませんか?」
「ふむ、『佐藤マサオ』、『ロボひろし』、そして『野原ひろし』が、しんのすけ君の顔見知りということか…」

露伴は事実を確かめるようにそういうと、名簿を見ながらなにか考え込んでいる。

「あの…何か気になることが?」
「…ああ、だから確かめさせてもらう」


「ヘブンズドアー!」


190 : 野原ひろし ◆OmtW54r7Tc :2020/10/11(日) 01:34:54 Pb1Jirm.0
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

「しんちゃん!?」

輝子は、しんのすけを見て驚愕する。
しんのすけの顔が…まるで新聞みたいになっている!

「しんちゃん!しんちゃん!」

呼びかけるも、反応しない。
焦燥に駆られつつ、輝子は露伴の方へ向き直ると、彼を睨む。

「露伴さん!しんちゃんに何を…」
「うろたえるな、意識を失っているだけだ。危害を加えるつもりはない」
「なんでこんなことを…」
「…理由は二つある。一つは、今からする話をしんのすけ君に聞かせるのはあまり良くないと思ったからだ」

そういうと露伴は、輝子に見えるように名簿を広げる。

「僕の名前はここ。そしてさっき話を聞いた空条徐倫は、知人の娘なんだが…ここだ」
「…隣同士、ですね」
「次に、僕はこの場所で佐々木哲平という男と出会った。そして彼には、藍野伊月という知り合いがいた」
「また隣同士…つまりこの名簿は」
「そして野原しんのすけ。彼には佐藤マサオという友人、ロボひろし、そして野原ひろしという父親が呼ばれている」
「……え?」

名簿を見て、輝子はキョトンとする。
流れ的に、『そういうこと』だと思ったのに、しかしこれは…

「奇妙だろう?この名簿は基本的に『知り合いの名前を近くに配置している』。そして野原しんのすけも、マサオ、ロボひろしまでは近くに名前が配置されている。それならば…この『野原ひろし』は…なんだ?」
「たまたまってことは…」
「確かに例外はあるさ。何故か同時代の同組織所属の昔の偉人が離れた場所に書いてあったりするしな。だが…4人いて1人だけ遠く離れてるというのは…違和感がある。しかもロボットの父親が近くに書かれていて、人間の父親の方が離れているのも妙だ」
「同姓同名の別人ってことは…」
「佐々木哲平みたいなことを言うんだな。いやまあ、今回はその可能性もあるわけだが…仮にそうだとして、しんのすけ君の父親と同姓同名の人物が、全く無関係の別人だと思えるか?」
「それじゃあ…偽物だって、言うんですか?」
「もちろん杞憂だという可能性もある。だが…なにか不穏なものを感じるだろう?そこで二つ目の理由だ。彼…しんのすけ君の記憶を探る」

露伴は輝子に、ヘブンズドアーの能力について簡単に説明する。
説明を聞いた輝子は驚き、そして人の記憶を盗み見るという行為に不満があるようだったが、「しんのすけ君のためだ」という露伴の言葉に、結局折れた。


191 : 野原ひろし ◆OmtW54r7Tc :2020/10/11(日) 01:35:42 Pb1Jirm.0
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

(なんだこの記憶は!?ネタの宝庫じゃあないか!?)

しんのすけの記憶をざっと流し読みした露伴は、驚愕する。
彼、野原しんのすけは…5歳という幼さからは到底想像できないほどの、濃い経験をいくつもしている。
ハイグレ魔王、ヘンダーランド、戦国時代へのタイムスリップ、etc、etc…
正直一晩かけて読みたいところだが、あいにくそんな時間はないし、あんまり時間をかけると輝子から不審がられそうなので、真面目に当初の目的のための情報探しをする。

「ふむ…ロボひろしについての情報がある。どうやら彼は、野原ひろしの記憶や人格をコピーしてロボットに移植させた存在らしい」
「ああ、それでしんちゃん、もう一人のとーちゃんって言ってたんだ。人間のお父さんとは、別に存在してるのね」
「その人間の父親、野原ひろしだが…双葉商事の係長、35歳。まあ、いわゆる冴えないサラリーマンなわけだが…家族想いの父親だったようだ」
「いいお父さんだったんですね」
「…ま、家族想いの父親が全て善良だとは限らないがね」
「それでどうですか、露伴さん?何か有益な情報はありましたか?」
「…いくつかそれらしい情報はある。人形とすり替わられたり、クローンが現れたり」
「…しんちゃんの世界、思った以上に物騒なんですね」
「…名簿の野原ひろしがこれらの偽物なのか、あるいはしんのすけ君の記憶にないところで別の事件があるかもしれないが…ともかく、『野原ひろし』と遭遇しても、警戒をしておいた方がいいだろうな」
「…はい」


192 : 野原ひろし ◆OmtW54r7Tc :2020/10/11(日) 01:36:34 Pb1Jirm.0
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

結局露伴とはその後、別れた。
彼は元々市街地から外へ出たので、また戻るつもりはないということだ。
再び二人になり、町へと歩きながら輝子は、しんのすけを見つめる。
先ほどの露伴の話には、続きがあった。

『ああそれと、『ロボひろし』だが…彼も一応警戒しておいた方がいいかもしれない』
『な、なんでですか!?ロボットでも、しんちゃんの…』
『確かに人格は善良な父親野原ひろしと同一のようだが…しかし、彼はどうやらつけひげ型のアタッチメントによって暴走したことがあるらしい。ここに呼ばれてるロボひろしがそうならないという保証はない』

(しんちゃん…)

この無邪気な少年を、父親や友人に会わせてあげたい…と思う。
しかし、その父親が危険かもしれないという。
もしも露伴の懸念が当たっていて、しんちゃんに襲い掛かるような事態になったら…

(もしそうだとしても…私が守って見せる)

「キッコお姉さん、もう〜、また遅いぞ〜」
「ごめんごめん、それじゃあ、行こっか」

しんのすけに呼ばれ、輝子は彼のもとへと駆けていく。
不安と、決意を胸に。

【G-5/黎明】

【岸辺露伴@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康、佐々木哲平への不快感(大)
[装備]:スタンド『ヘブンズ・ドアー』、Z750(燃料100%)@大番長
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考・状況]基本行動方針:様々な参加者を取材しつつ、主催者の打倒を狙う。
1:ロンリー・ロッジへ向かう。
2:危険人物は取材のついでに無力化を狙う。ただし無理はしない。
3:奴(佐々木)は本当に漫画が描きたいのか?
4:藍野伊月に出会っても、僕からは何も言わない。知ってたら別だが。
5:空条徐倫、まさかとは思うが会っておきたい。
6:野原ひろしとロボひろしには一応警戒
[備考]
※参戦時期は四部終了後。
※佐々木哲平を本にしたため、ホワイトナイトの盗作などを把握済みです。
※佐々木哲平が別の世界の人間だとは気づいていません。
 参加者の一部は別々の時代から参加させられてると思ってます。
※野原しんのすけの劇場版についての情報を複数持っていますが、全て同一の年の、露伴から見て未来の出来事として認識しています。

【G-6 リテイル・ロー市街地付近/黎明】

【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本:おねいさん(輝子)とデートする
1:ほっほーい!
[備考]:殺し合いについてはよく理解していません。

【星野輝子@コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない
1:いざとなったら、『超人』としてしんのすけを守る
2:野原ひろしとロボひろしには一応警戒
[備考]
2期(THE LAST SONG)中盤からの参戦


193 : ◆OmtW54r7Tc :2020/10/11(日) 01:37:11 Pb1Jirm.0
投下終了です


194 : ◆EPyDv9DKJs :2020/10/11(日) 03:17:18 .7Jdm8tk0
投下します


195 : ◆EPyDv9DKJs :2020/10/11(日) 03:18:35 .7Jdm8tk0
「ちょっと困ったかも。」

 名簿に目を通して、顔をしかめる立香。
 兼定は名簿には目を通さずに窓から周囲を哨戒中だ。
 焚火をした以上、煙は煙突から出ていくのだから、
 この家には人がいると周りに示してるようなもの。
 窓のカーテンを閉めつつ周囲の状況を窺っており、
 その間に三人で名簿や地図に目を通すことになっている。
 人数の多さについては島の広さから、なんとなく察してはいた。
 寧ろ、この広さに対して百十一名は逆に少ないとさえ感じてしまう。
 出会う確率が低くなる一方、仲間になりうる人物が敵と出会わない可能性もある。
 なのでメリット、デメリット双方が生じて一概に悪いとも言えない状況か。
 問題なのはやはり名簿。奇妙なものは多数だがこの際優先するべきは、身内の方。
 艦娘と思しき名前はなく、刀剣男士もそれらしい名前はない。
 オグリキャップに尋ねても知り合いはいないとのことであり、
 残るは立香だけだが…

「知り合いは恐らく四人いるかも。」

 恐らく、かも。
 かなり曖昧な返事に、足柄は首を傾げたが先の話を思い出す。
 平行世界、つまり別の世界の人間であるため知り合いではないと言う可能性。
 なので完全な過信はしないでほしい、と言う建前を置いて話を聞く。
 二人の名前を伝えた後、三人目からは少し間を置いて。

「兼定さん。」

「何だ?」

 彼の方を見やる。
 この会話の流れで自分を呼ぶ理由があるのか。
 刀剣男士と思しき名前はないようだし、今は彼女の話。
 立香の世界に刀剣男士はいない以上関係はないはず。
 何故呼ばれたのか疑問に思うが、

「…土方歳三も参加してる。」

 その名前を聞いて、流石に名簿を取り出さざるをえない。
 当然だ。和泉守兼定と言う刀は土方歳三の愛刀であり、
 彼が浅葱色の羽織を着ているのも、持ち主が新選組の所以から来ている。
 今思えばカルデアにも土方がいたので、彼の名前も立香に憶えがあったのだ。
 名簿には前の主以外にも、加州清光達の元の主である沖田の名前もあった。

「どの土方歳三かはわからないけどね。沖田さんも。
 もしかしたらカルデアの土方さんの場合もあるし…探してみる?」

 バーサーカーのクラスの土方歳三か、
 別のクラス…カルデアにもいない場合もあれば、
 或いはサーヴァントの概念さえない彼だってありうる。
 これだけいくつもの平行世界の住人がいる状態で、
 『どの土方歳三か』を確定させるなんて要素はなかった。
 それでも。彼は土方歳三の用いた刀と言うことは事実。

「どの土方によるか、でもあるが…できれば沖田総司と共に優先したいな。」

 多数の世界が入り乱れたこの場所だと、
 此処で土方歳三が何らかの死を迎えても、
 歴史修正主義者達のような歴史の改変にはならないはずだ。
 そもそも此処にいる土方が、生前の土方と言う確証がないのだから。
 一方で、万が一生前の土方で影響があるなら、歴史修正主義者の思惑通りの展開。
 歴史が大きく変わる可能性は、刀剣男士としては避けたいこと。
 同じ理由で沖田とも会うべきとして、個人的に優先順位は高い。

(もっとも、生前だったときは覚悟しないといけねえけどな。)

 生前と言うことは、いずれは歴史通りの理由で死ぬということ。
 此処で生かしても『歴史通り死んでもらうため』とも言えるのだ。
 前の主に死んでもらう為に守る、複雑な気持ちにならないはずがない。
 他の刀剣男士も元の主を想って、歴史修正主義者を否定できない者も多い。
 兼定もこれについては余り否定はできない考えではあったのだが、今は違う。
 此処へ来る以前のことだ、修行として審神者の元を離れ、幕末の時代へ行った時。
 土方の死を見た。歴史通りの死…驚くほどあっさりと兼定の目の前で、その刀を抜けずに。
 名刀であっても活躍できなかったが、今の自分は違う。土方の死で核を見つけた今では、
 それをすると言うことは、極に至った自分さえも否定してしまうことになる。
 核を見つけて、今の審神者たる主の為に振るうと決めた以上は、
 そのことを曲げるつもりはない。

「分かった。当面の目的はお互い共通の知り合いになりそうな人物の、
 土方さんと沖田さん…そして、私の知り合いのマシュの三人…でいいよね?」

 沖田や土方が、カルデアにいる二人でない可能性は高い。
 ラヴィニアも自分が出会った彼女の確証もない現状は、
 知り合いの中で最も自分を知らない可能性が低い人物。
 となれば必然的に、マシュが彼女にとって一番の優先だ。
 三人を探しつつ戦力も確保していく。その目的に全員賛成がする。

「ところで、今ってどこにいるの?」


196 : ◆EPyDv9DKJs :2020/10/11(日) 03:20:03 .7Jdm8tk0
「さっきのゴリラみたいなのを止めた場所と街の位置から考えると、
 大体この『ソルティ・スプリングス』になるんじゃないかしら。」

 地図上ではF-7、中央よりやや南に位置する。
 比較的なのある施設が遠からず存在しており、
 向かうならばやはり地図上に名前のある場所か。
 北のダスティ・ディボット周辺はあの怪物がいる以上なし。
 西のシフティ・シャウトは橋の移動が必要で、待ち伏せされやすい場所。
 となれば南東にあるフェイタル・フィールドになるのもまた必然だ。
 目的地も決まったことで四人は軽く物色と消化の後、鳥が開けた穴から外へ出る。
 玄関口から出るべきなのだが、足柄の艤装の都合でそちらからだ。

「艤装のせいで出にくいのは…」

 翼のように展開された艤装では、
 正面を向いたままでは穴からは出られない。
 蟹歩きのように横になって進んで、ようやく出られる。
 他の三人はそのまま素通りで問題ないので、
 珍しく艦娘と言う部分に不便さを感じていた。

「厄介よね───」



「な!?」
「え?」
「ん?」

 愚痴をこぼしていた足柄が、突如として姿を消してしまう。
 何の前触れもなかった。敵や彼女の姿も、音も、動作すらないまま。
 視界を遮る程の巨大な艤装を含め、その場から忽然と姿を消したのだ。

「足柄さん!?」

 敵が襲い掛かってきたと言う雰囲気もない。
 アサシンの気配遮断があったとしてもあれだけの質量を、
 目にも映らぬ速度で捕まえて移動などまず不可能だ。
 状況の理解が追いついてない中銃声が何処かから響き、

「材料発見〜!」

 突如としてハサミが錐揉み回転と共に襲来する。



 ◆ ◆ ◆



 遡ること数十分前。
 彼女達が食事を摂っている間の出来事だ。
 ソルティ・スプリングスからほんの少しだけ離れたG-7、
 高所に鎮座している木製の建築物にて、二人の参加者がいる。

「んじゃ、此処らで待機としやしょうぜー、ハサミの旦那。」

 木製らしい心地良い音や匂いを堪能しつつホル・ホースは階段を登り終えて、
 そこに座り込んで見晴らしのいい場所からすぐそこの街並みを眺める。
 サンドイッチでも食いながら眺めたいような、悪くない景色だ。

「えー、動かないの?」

 ハサミの体躯ではとても入れそうにもないし、
 入ったところで座れる(?)スペースなど一切なく、
 外で刃の部分を近くの木に立て掛けた状態でいる。
 オモチャ作りに協力してくれるならもっと動いてほしいと、
 不満が隠せていない様子だ。

「待ちなってハサミの旦那。
 こういう殺し合いって言うのはだな、
 徒党を組むにしても優勝したい奴にしろだ。
 必ず人が集まるところを目指すってもんなのさ。」

 殺し合いを忌避するならその仲間を集める。
 殺し合いをしたいなら人がいる場所を狙う。
 となれば必然的に名前のある施設こそ現在位置の確認も兼ねて、
 足を運ぶことになるのは当然の帰結である。

 正直なところ彼の言うオモチャ作りが何かは分からいが、
 少なくとも自分をオモチャにしようとしていたところを見るに、
 参加者と言った生き物が必要だって言うのはなんとなくわかる。
 人間をオモチャ…正直なところ、余り想像したくはないものだ。
 人が餌であるDIOを彷彿とさせるおぞましいことは察してるが、
 組んだ相手の趣味に関して口出しはしないのが、彼の主義でもあった。
 でなければ女の扱いが真逆であるJ・ガイルとは普通組めたものではない。
 人格よりも相性。相性がいいならそこに言及なんてしないということだ。
 自分はナンバー1の引き立て役であるナンバー2と言うスタンスは崩せない。
 …とは言えこのままだと優勝しなければ死ぬしかないので、
 最終的に出し抜くほかないのだが。

「此処で待っておけば、
 向こうから来てくれるってーわけさ。
 俺も支給品が見たいのが本音だけどな。」


197 : ◆EPyDv9DKJs :2020/10/11(日) 03:22:14 .7Jdm8tk0
「一理あるからよしってことにするよ。」

 彼に言い分は十分に納得できるものだ。
 自分だって折り紙のおかげで戦力を確保。
 ホル・ホースも隙を見て殺す算段もできている。
 そこを考えれば、彼だって武器の確認は必要だろう。
 説得もできたことだし、ホル・ホースは支給品を調べていく。
 武器はエンペラーがある以上そこまで問題ではなく、
 どちらかと言えば徒党を組んだ相手用の備えが必要だ。
 戦えると言えども自衛手段の乏しいスタンドな以上、
 複数を相手するには滅法苦手である。

「…なんだか安っぽい奴だな。」

 出てきたのは赤色を基調とした望遠鏡。
 片手で持てるタイプのものだが、汎用性はいまいちだ。
 エンペラーの射程は長いと言っても威力は落ちてしまう。
 遠距離の相手を見れたとしても、狙っても致命傷はまず無理だからだ。
 はずれか思っていたが、付属の説明書に目を通すと笑みを浮かべる。
 逆だ。これは寧ろ自分にとって大いに助かる有益な支給品だと。
 ついでなのでこれを普通の使い方で周囲の状況を探ってみれば、

「お、旦那。参加者発見したぜ。」

「どこどこ?」

「左の方に穴が開いてる家見えるか?」

「んー、多分あれかな。」

 どこで見ているのかは知らないが、
 とりあえずギリギリ見えてはいるようだ。
 人間とは違うから暗くても見えるだけの視力があるのか。
 彼の生態について、興味があるわけでもないが少しだけ気になった。

「その家に煙突があんだけどよ、そっから煙が出てる。
 暖を取ってるか…或いは飯か? これだけじゃ殆どわかんねえけど。」

 煙突から上り行く煙を見て、既に参加者が近くにいたことに気付く。
 しかも距離的にそう遠くはない場所で、体力的にも困らない。

「んじゃ、早速いくとするよ〜。」

「待て待て旦那。」

「ん、何?」

「相手はいるってだけで、戦力が不明だ。
 それに突入したら罠でしたなんてこともある。
 お互い相手を知らなかったから追い込まれた…だろ?」

 勝敗的にはきりえへいに一杯喰わされたホル・ホースの負けではあったが、
 動く弾丸と言う未知の存在に先に翻弄されたハサミにも言えることだ。
 舐めて本気を出さなかった結果、マリオに敗北してしまったのも事実。
 それに此処の相手の多くは肉厚。マリオを即死させるファイナルアタックも、
 此処では確実に仕留められない可能性だってありうることだ。

「じゃあどうするの?」

 これについては事実であり、
 ハサミも素直に忠告を聞き入れて尋ねる。

「そこでちょいと今思いついたことがあんだ。」

 彼は言うほど知的とではないので、
 正直自分でも作戦と呼べるほどでもないのだが、

「へー、そりゃ便利だ。」

 作戦の内容を聞くと、
 顔があれば笑みを浮かべてそうな声色で返す。

「でも、もうちょっとアレンジして…」

 そこにハサミの監修も混ぜる。
 作戦をより確実にすると言うよりは、
 どちらかと言えばハサミの趣味趣向が入り混じったものだが。

「…とかなんだけど、どう?」

「けどよ、これでいくとハサミの旦那負担大きくねえか?」

 はっきり言うとこれではホル・ホースだけが楽をする仕事だ。
 相手が一人なら別にいいが、三人や四人だと話が変わってくる。

「そこに複数人いるなら、僕は全員オモチャに欲しいからね。
 それに、きりえへいも作れるんだから僕が負けるわけないし?」

 全員って、人数も把握できてないのにちょっと無茶あるぜ。
 とは思うが、相方の引き立て役こそがナンバー2のポジション。
 彼の意見を尊重していくべきなので、口にはしない。
 死んだら死んだで、それはそれで構わないのもあるが。
 組む割に薄情。この男の本質は皇帝の暗示を持つ通り、
 皇帝の逆位置『移り気のある』男なのだから。


198 : ◆EPyDv9DKJs :2020/10/11(日) 03:22:45 .7Jdm8tk0
「じゃあ俺がエンペラーで一発だけ撃ったら攻撃の合図だ。
 いつまでもなかったら問題ありってことで戻ってきてくれ。」

「りょーかい。」

 作戦の為、ホル・ホースは高台で待機。
 別行動のハサミはすぐに攻撃できるように接近しつつ身を隠す。
 暗がりと自然の豊富さの景色により、ハサミの色は殆ど保護色の状態に等しく、
 同時にそこまで詰めたわけでもないため、兼定の哨戒にも気づかれなかった。

(名簿か、後で見ておくとすっかな。)

 宣言は始まったが名簿を見る暇はない。
 今はハサミの旦那に従っておくだけだ。
 もしDIOとか承太郎がいた時を考えたら、
 少しぞっとするが今は後回しにする。
 人数が多いので、いないと否定はできないが。

(ん!?)

 漸く中から姿を見せた相手を前に目を張るホル・ホース。
 出てきた面子は美女が揃い踏み…と言うのもあるが、
 問題はやはりと言うべきか重装備の女性───足柄だ。

(いやいや、なんだありゃ…スタンドか?)

 あんな武装する人間はまずいないし、
 ハサミみたいな例外がそう何度もあってたまるか。
 とは言えインパクトは抜群。他がどんなスタンド使いか、
 或いはスタンド使いですらない可能性もあわせると、
 今のところ一番厄介なのは間違いなく彼女だと見た目が教える。
 世界一女にやさしいと自負する以上自分から殺すのは気が引けるものの、

(一番旦那に厄介そうなのを選ぶってことで。)

 あれはハサミじゃあ切れないだろうと言う判断で選ぶ。
 殺さずとも行動不能にすればいい、そう思いながら彼女を『掴んだ』。
 ホル・ホースが持っている望遠鏡は『手にとり望遠鏡』と言う普通の道具ではない。
 望遠鏡の中の相手をその手で引き寄せると、そのまま自分の手元に引っ張ってこれる。
 これで一人を孤立させて、ハサミが三人に奇襲をかけると言うのが二人の作戦。
 正直引き寄せた相手を倒せば確実に一人は仕留められて彼もこれを最初に提案した。
 ハサミは複数人いれば全員オモチャにしたいと言う要望…と言うよりは、
 わがままにより仕方なく方針を変えて、今の形を選ぶことにした。
 一度引き寄せると再度引き寄せるには数時間要求されるので、
 彼としては待ちたくない気持ちは分からなくはないが。

「え───」

 ホルホースが掴んだ手に、足柄の手が引っ張られる。
 これによってハサミにとって一番厄介な人を引き離すことは成功。
 だが、一方で一つのピンチに陥ってしまう。

「な、なにぃ〜〜〜!?」

 彼女の着地と同時に、ミシリと悲鳴を上げる高台。
 ホル・ホースは彼女の装備がスタンドだと思っていたが、
 艤装はスタンドではない…すなわち質量と同時に重量があると言うこと。
 バギーに乘せれると言えども、この装備の重量が一キロや二キロではすまない。
 しかも引き寄せた足柄は浮いた状態からの着地で、重力も合わさってしまう。
 これにより彼女の着地ど同時に高台が悲鳴を上げ、形を保てずに崩れだす。

(スタンドじゃあねえ! これは本物の大砲を装備していやがった!?
 これを装備だと!? どんな筋肉と骨してりゃあできんだよこいつぁ!!)

 引き寄せた瞬間にその事実に気付いて即座に判断。
 急いで階段を少しだけ駆け下りて高さを多少調整しながら身を投げ出す。
 それと忘れずにエンペラーの銃弾をハサミのいる方へ向けて放つ。
 この崩れる音で聞こえにくいと思って、弾丸は近くに撃っておく。

「まず…!!」

 何が起きたかわからない足柄だったが、
 此方も艦娘と言う修羅場をくぐってきた存在。
 今の状態でいることは危険だと察知した。
 このまま艤装を装備して落下は足がまず砕ける。
 咄嗟に艤装を外しながら此方も建物から飛び降りた。
 綺麗に転がりながら着地し、崩れる高台を見やり、

「艤装は───」

 木材に埋もれた艤装を見つけて走り出すも、

「おっと待ちな。」

 アクシデントはあったが、
 足柄の方が状況や場所を完全に把握できていない。
 その点でホル・ホースの方がどうあっても優位なのだ。
 エンペラーの銃口を向けられ、彼女も止まらざるを得なかった。

「妙な動きすると、流石に俺も撃たなくちゃあいけなくてな。」


199 : ◆EPyDv9DKJs :2020/10/11(日) 03:24:21 .7Jdm8tk0
 俺は女には世界一優しい男でいたいんでな、
 なんて歯の浮くようなセリフに、足柄は少し呆れ気味だ。
 どうやったかは分からないが此処まで追い込んでおいて、
 すぐに撃たないと言うちぐはぐな行動をしている。

「なら、そこは男性の兼さんを選ぶのが得策じゃあないかしら?」

 女に優しいから撃てないなら、
 男性である兼定を引き寄せればいいだけ。
 長髪で美形だが、女性と間違えるとも思えない。
 余りに矛盾した行動に疑問を持たざるを得なかった。

「刀持った奴相手に、間合いに引き込むガンマンはいねーだろ?」
 
 手にとり望遠鏡は致命的な欠点として、
 片手は望遠鏡、片手は引き寄せた相手で両手が塞がってしまう。
 引き寄せると同時にエンペラーを撃って、はいおしまいはできない。
 ハサミのことを想定で足柄だったが、この都合兼定は選択肢から外れている。
 引き寄せた瞬間有利なのは、既に間合いである刀を持った相手なのは間違いない。
 『銃は剣よりも強し』とは彼の言葉だが、射程内だと流石に話は変わってしまう。
 ポルナレフは甘く見てたお陰で(アヴドゥルがいなければ)仕留められたが、
 両手が塞がった状態からの開始で同じことが言えるか…と言われると別だ。
 だから主砲と言う、接近ではとてもできない彼女を狙ったのもある。
 …スタンドではなく本物だったので想定外も多かったが。

「…そうね、その通りよ!」

 足柄は忠告はされたものの、
 最後の支給品を取り出そうと背負ったデイバックに手を伸ばす。
 同時に発射される弾丸だが、足柄は容易く回避した。
 普段砲雷撃戦と言うもっと派手な戦いをしているのだ、
 銃口さえ見ていれば先に動作しておけば回避は難しくない。
 回避と共にそのまま走って、高台の残骸を盾に身を隠そうとする。

「そうはいかねえんだよな。」

 もっとも、それはただの銃弾であればの話。
 エンペラーの弾丸操作の前では小手先の回避は意味をなさない。
 弾丸はすぐに旋回して、背後から彼女の左足を貫く。

「ッ…!!」

 流石に今の状態は維持できず、
 受け身を取って余計なダメージを減らすだけ。
 満足に走ることもできない状態にされ、
 白いタイツに鮮血の染みが広がっていく。

「俺のスタンド、エンペラーはただの銃じゃあねえ。
 そこんとこを判断できなかったあんさんの命とりなのさ。
 これ以上抵抗するってーなら、俺も流石に眉間に風穴を開けるぜ?」

 状況は最悪だ。足と言う機動力を奪われ、
 艤装と言う武器はなく、最後の手段もその前に終わる。
 足柄一人ではどうあがいても解決できない劣勢だ。

「確かに、敵を知らなかった結果ね。とてもいい教訓かもしれないわ。
 でも、それについては貴方も同じことじゃあないかしら?」

「ん?」

「あれだけ派手なことやったのだから、
 私の仲間が駆け付ける可能性は考えなかったの?
 此処、暗くて分かってないけどそう遠くない場所のはずよ。
 すぐに仕留めないでいるこの状況を、少しは焦ってもいいんじゃあない?」

 少し視線を他へ向ければ、ソルティ・スプリングスの街並みが見える。
 大型の建物ではないとは言え、結構な悲鳴と共に崩れた高台だ。
 少なくともこの静かな夜には余りに派手な音。
 自分の位置を教えているようなものでもある。
 エリアを視認できない程移動しているわけではないので、
 仲間が気付くには十分な距離とも言えた。

「だとしても、すぐにはこれねえだろうさ。
 遠くないと言っても走るには時間も食うし、
 こっちも一人で戦ってるわけじゃあないからな。」

「なるほど。でもやっぱり貴方は私達を知らない…勉強不足よ。」

「あん?」

「此処には貴方の言うスタンド以外もあるってことよ。
 サーヴァント、刀剣男士、艦娘、そしてこの状況を打開できる───」

 足柄の言葉に重なるように、耳に届くほどの足音。
 何事かと思って音の発端となる場所を見やれば、
 凄まじい勢いで此方へと接近する何かがあった。
 しかも音の方角は、あの家四人がいた方角から。

「な、なんじゃぁありゃぁ〜〜〜!?」

 流石に驚嘆せざるを得ない。
 あんな脚力アメフトやラグビーだって見ないレベルだ。
 流石にこれはまずいと判断してエンペラーを足柄へ撃とうとするが、

「───ウマ娘がね。」

「それ以上動くと───撃つ。」


200 : ◆EPyDv9DKJs :2020/10/11(日) 03:25:53 .7Jdm8tk0
 オグリキャップの爪弾の射程内に入る速度の方が一手早かった。




「材料発見〜!」

 ドリルのように錐揉み回転して迫るハサミ。
 インパクトとタイミングは完璧だったが、正面のストレート。
 無駄なくとまではいかないが三者共に散開する形で回避され、
 そのままハサミは旋回しながら屋根の上に刃を下に降り立つ。

「お、少しはやるね〜。」

 気づかれないように距離は取ってたし、
 当たらなくても仕方ないよねと言ったところだ。
 だからファイナルアタック程の衝撃はない。

「ハサミって、名前のままってもう何でもありかよ!」

 色んな世界が交わってるのは承知したものの、
 刀剣男士も付喪神と言う本来の刀があってこそ形を成しているとはいえ、
 相手は所謂『刀の部分だけ』で自律行動ができてるとは流石に思わない。
 声でさえどこから出してるのか判断がつかない程だ。

「足柄さんが消えたのも、貴方の仕業?」

「僕は知らないよ? まあ、今頃は始末されてるかもだけどね。」

「そうかい、ならテメエをぶっ潰してもいいってことだな!」

 問答は早々に切り上げて、真っ先に動いたのは兼定。
 優男な雰囲気のある彼だが、前の主の性格が移って意外と短気だ。
 仲間を陥れた以上許すかどうかと言われたら、完全にノーである。
 敵であると分かれば容赦する理由もなく、跳躍して兜割の如く刀を振るう。

「おっとぉ!」

 ハサミが開くと同時に閉じ、
 一太刀は白刃取りの要領で持ち手に挟まれ止められる。
 このまま刀を折られると、刀剣男士として非常にまずい。
 元々刀剣男士と言うのは、元となる刀剣が人の形となった付喪神。
 今手に握る本来の姿である刀が破壊されてしまえば、同時に消滅に直結してしまう。
 相手はまだ気づいてないので、すぐさま手放すように鉸めの部分へと蹴りを叩きこむ。

「それは困るんだよねぇ!」

 意図せずして、そこが今の彼の急所。
 鉸めの部分が首輪の役割をしてる以上、
 此処に強い衝撃を与えられるのはよくない。
 すぐさま開くと同時に倒れることで回避しつつ、
 ファイナルアタックのように足を切断しにかかるも、
 すぐさま受け身と同時に屋根から飛び降りて負傷には至らない。

「どうやら、一筋縄にはいかねえみてえだな。」

「ブンボ―軍団最高戦力だからねぇ。当然さ。」

「また別の世界の住人ってわけだね…」

 一体いくつの世界が入り乱れているのかこの場所は。
 既に参加者のうち五人は別の世界であるのは確かなこと。
 いくつもの世界と通じてるミルドラースは一体何者なのか。
 あるいは、それ以上の黒幕が背後にいるのかもしれない。
 この先友好的な人物がどれだけいるのか。そして出会えるのか。
 人理修復の時のサーヴァントと違って、相手が戦えるかどうかも不明だ。
 オグリキャップもスタンドDISCなしでは戦闘能力はあるわけではない。
 人理修復も幸運なくしては到達できなかった前人未踏の領域だったが、
 ある意味それに負けず劣らずの事態だと、立香は改めて理解する。

「オグリキャップ! 仲間がいる可能性が高い以上そっちは頼むぞ!」

「…分かった。」

「それじゃ、あ〜そびましょっと!」

 先ほどからタスクで狙おうと指を構えてはいたものの、
 双方の激しい攻防で狙いは定めることはできないし、
 場合によっては兼定に被弾する可能性があって狙えない。
 一撃で首を斬り落とせるだけの威力、躊躇うのは当然だ。
 そもそも人体を切断できる威力が無機物に通じるのかと言う、
 疑問もなくはなかったのだが。

 戦闘は兼定が、哨戒はオグリキャップが行う。
 となれば立香ができるのは当然ながら状況の把握。
 監獄塔を思い出すかのように、状況や相手を分析する。
 まず最初に思ったのが、何故相手の仲間がまだ来ないのか。
 人数が多い方が圧倒的優位なのにもかかわらずだ。

(違う。相手はそもそも二人しかいない。)

 ハサミの行動から察するに彼は優勝狙い。
 となれば相方もそれに賛同、或いは同じ優勝を狙うはず。
 つまるところ最終的に敵同士になる利害関係に過ぎない。
 いくら利害が一致すると言っても出会ったばかりの相手、
 それも優勝狙いをこの短時間で何人もかき集めるのは至難。
 敵が一人だけなのは、単純に他に仲間がいないからだ。
 ハサミの口ぶりから、別々の勢力の可能性はまずない。
 ではなぜ足柄が消えて、仲間が来れないのか。


201 : ◆EPyDv9DKJs :2020/10/11(日) 03:26:40 .7Jdm8tk0
(足柄さんが消えたのは恐らく装備が理由だよね。)

 あの装備でかつ複数人、相手したいとは思わない。
 余程高速でなければ、まず接近する前に常人は肉塊待ったなし。
 特に兼定の存在で前衛もしっかりしてる状態なのだから、
 この状況を崩すにはやはり足柄を移動させるのが一番納得できる。

(でも、消えたならなぜもう一人の仲間は来ないの?)

 相手を何処か遠くへ飛ばす支給品の類なら、
 直ぐに加勢しに向かう方が戦局的に優位だ。
 仮にすぐに仕留めた支給品でもそれはおなじこと。
 相方を切り捨てるにはまだ早すぎるはず。
 では来れない理由があるとするのであれば、

(相手は身動きできない…ひょっとして───)

 もう一人が足柄を食い止めてるのではないか。
 或いはその逆。奇襲を仕掛けたが足柄に食い止められたか。
 正直、後者である可能性は低いと言わざるを得ないだろう。
 あの艤装の派手な音で近隣にいるのであれば気付くものだ。
 それがまだないのは、それすらできない程接近されたか、撃てない状況下の二択。

(そういえばさっき───)

 ハサミの襲来時、余りに突然の展開で息を吐く暇もなかったが、
 微かだが何かが倒壊するような音や銃声が、前方の方角から聞こえた気がする。
 気になって視線を向ければ、先程建物があったと思しき場所が一つ消えていた。
 ひょっとして、あそこに足柄…ひいては敵がいるのではないか。

「オグリキャップ! あの高いところに足柄さんがいるかもしれないから向かって!」

「行って大丈夫なのか?」

 この場で一番戦えないのは立香。
 兼定がハサミと交戦中の現状を考えると、
 此処で彼女を守れる立場がいないのは危険ではないか。
 そんな可能性があって、離れていいものなのかと少しためらう。

「私は大丈夫だから!」

 人理修復の旅路の間に、色んなサーヴァントから何かしらを教わってきた。
 勿論できないことの方が多い。相手は英霊と言うプロ中のプロの存在なのだから、
 優れた才覚や人間離れした技術ありきな部分もあり、真似すらできないものばかりだ。
 だが一方でプロ中のプロから教わった以上は、ある程度の技術は勿論備わっている。
 …アサシンのエミヤから銃と弾丸をお返しに寄越された時はひきつった顔になったりもしたが。

「…行ってくる!」

 彼女の言葉を信じて、オグリキャップは走り出す。

「させないよ〜!」

 彼のスタンドの性質上一人での相手はとてもできない。
 此処で二人にさせるわけにはいかないと、
 ファイナルアタックが背後に迫る。

「させてくれよ!」

 横槍ならぬ横刀。
 持ち手の部分を強打され、ファイナルアタックは文字通りに空を切る。
 その衝撃で動きが鈍ったのもあり、そのまま疾走に追いつくことができない。

「マジマジ? あんなに速いの見たことないや!」

 余りの速さに、敵ながら関心を抱いてしまうほどだ。
 状況が劣勢になってるとは思えないような口ぶりで。
 …いや、実際のところ劣勢と言うほどでもないのだ。

「ま、二人だったら出し惜しむ理由はないもんね〜!」

 そう、折り紙と言う戦力があるハサミにとっては。
 立香を囲むように黄色の人型の紙と、簡素な人型をした大大柄なのが姿をさらす。
 通常ののきりえへい六体と、のっぽのきりえへいが二体ほど茂みから姿を現す。
 突入前に、あらかじめ黄色の折り紙を用いて既に伏兵として隠して置いてた。
 本来なら逃げようとしたところを掴まえる予定だったが、あれでは追い付けない。
 数が減ったのであれば、残った一人を仕留めるにはこれでよかった。
 相手は戦闘に参加してないところを見るにオリビアと同じ、
 戦闘に関わることのない弱者ならば仕留めるのはたやすい。

「な、伏兵───」

 首輪がないことから参加者ではない。
 NPCかハサミ自身の力で量産されたか。
 どちらにせよ敵対する存在が増えた。
 立香の防衛に回りたいものの、

「余所見するなんて随分余裕だね!」

 ハサミの持ち手のスイングをすんでのところで屈んで回避。
 反撃の切り上げが刃とぶつかり合い、重い衝撃が兼定にも跳ね返る。
 何処を殴っても、兼定の視点からは通じてるのかは一切不明だ。
 お陰で自分だけが消耗してる気がしてならず舌打ちをする。


202 : ◆EPyDv9DKJs :2020/10/11(日) 03:27:24 .7Jdm8tk0
「兼定さんはそっちに集中して!
 私も、少しぐらいならいけるから。」

 そう言いながら、支給品である白亜の短剣を取り出す。
 美しい曲線を描いた、何処か羽のようにも見える短剣だ。
 構えた立香へ、きりえへいののっぽが機敏な動きで手を振るいながら迫る。
 紙とはいえハサミによって作られたきりえへいは相応の力を持つ。
 紙とは思えないような動きで迫る姿は最早ホラー映画の類だ。

(見える!)

 機敏な動きだったが、それ以上に立香が鮮やかに回避。
 手に握った短剣によって両足が容易く切断される。
 立て続けにきりえへいも襲い掛かるが、跳躍や前転で回避しつつ更に人たちを浴びせた。
 余りに良い動きに、少しだけ見た兼定でさえも驚かされた。
 彼女は自分たちの世界でいう審神者に相当する立場であり、
 戦闘が特別得意ではないとは聞いていたが、話とは随分違っているではないか。

 いや、ある意味その通りだ。いくら何度も修羅場をくぐってると言えども、
 ヘラクレスから逃げたあの時のような魔術による補助もなしに、
 今のような優れた動きをするのは流石にそのままでは無理がある。
 それには立香の最後の支給品である『悪魔』が関係していた。
 …悪魔とはなんだ? と尋ねる人がいるかもしれないが、本当にただの悪魔だ。
 悪魔を装備してることで、自身の能力が普段よりも高い状態にあった。
 デメリットもあるのではないかと少し不安ではあったが、
 この状況を一人で切り抜けることができていることについて、助かっている。
 因みに、デメリットは本当にない。

「次は、右!」

 ハサミのファイナルアタックが即死級の威力だったのは、
 マリオたちが紙だからと言うのも一つの理由である。
 逆に言えばきりえへいも同じ。斬撃には滅法弱く、
 能力が向上した立香に次々と倒されてしまう。

「え、マジ? てっきり戦えない奴だと思ったのに?」

「余所見するたぁ、随分余裕だな!」

 動きを止めたハサミの刃に横薙ぎに兼定の攻撃が側面に叩き込まれる。
 これで何度目かわからない、甲高い音が町中に響く。

(いっそ手を作る? いや短剣に刀。どっちも不利だよね。)

 相手からは目に見えないが、ハサミもそこそこに消耗していた。
 なんせ彼はどこを殴ってもダメージが通っているのだから、
 どこをやられて消耗してることについては変わりはなかったのだ。
 おりがみも相手の得物で思うようにはいかないのも目に見えている。
 だから兼定が思ってる以上に、彼はこの状況に焦っていた。

「どうした! さっきよりも大人しいじゃあねえか!」

「!」

 防戦に入っていると、
 更に兼定の袈裟斬りが叩き込まれる。
 刃を開いて、全身でスイングする形で刀と打ち合う。
 刀の相手が浮いたハサミと言う奇抜な光景ではあるものの、
 火花散らしながら打ち合う様は、剣劇と言ってもいいものだ。
 

 ◆ ◆ ◆


「動くと撃つ…だが、私は撃ちたくない。武器を捨ててほしい。」

 指を構えて狙いを定めるオグリキャップ。
 銃の真似事かと思うが、恐らくそういうスタンドか、
 何かしらの能力のトリガーなのだとホル・ホースは気づく。
 まさか車以上のスピードを一瞬で出せる相手がいるとは。
 やはり敵のことを知らないで突入は危険だったようだ。
 自分の判断は正しかったものの、相手は予想以上の力の持ち主。
 作戦はグダグダな結果に終わりかけていた。

(どうやら、ジョースター達以上に甘ちゃんらしいが。)

 一方で、敵を知ると言うのはこういう形でもいい。
 敵の能力だけではない。敵の人格を知ると言うこと。
 既に足柄を撃った後だ。やり返されても文句は言えないのに、
 未だ問答無用で攻撃を仕掛けてこないところから、
 場数は全く踏んでいない、一般人と言ったところだ。
 …あんな速度で走る一般人がいてたまるかだが、
 此処でいう一般人は倫理観のほうにある。


203 : ◆EPyDv9DKJs :2020/10/11(日) 03:29:04 .7Jdm8tk0
「仕方ねえ、戦況でもちょいと見てるか。」

 自分が決して詰んでるわけでない状況だが、
 意外にもあっさりと素直に銃を捨ててしまう。
 敵意を感じられないものの、オグリキャップは指を構えたままだ。
 とは言え撃たないと言う、一つの確信が彼にはある。
 どんなモンスターマシンだろうと、持ち主がビビってれば扱えない。
 ヘタレに銃を渡したって結局引き金は引けない。彼女はまだその領域。
 どうせなのでと、状況を見やるように望遠鏡で様子をうかがう。
 撃たれないと言う、確証があるからこその行動だ。

「五分五分ってところかねぇありゃ。」

 こっちにハサミを手にとり望遠鏡で引き寄せれば状況は解決できるが、
 残念ながら手にとり望遠鏡で『引き寄せる』のは数時間に一回のみ。
 此処でハサミを引き寄せることはできないし、此処で抵抗しても生存は不可能。
 素直に彼女達に降伏し、彼を見捨てるほうがまだ生存しやすいというものだろう。
 問題は、それがうまくいくほどハサミの旦那が弱いとは思えないからできないのだが。

「そっちの白い嬢ちゃん。名前はなんだ?」

「? オグリキャップ。」

 此処で名前を尋ねるものなのか。
 少し疑問ではあるが、素直に名前を名乗る。

「お? 日本の競馬でそんな名前の奴がいたな。
 ある意味、その名に違わぬいい走りっぷりだったぜ?
 敵の筈の俺を問答無用で撃たなかった礼に、一つだけ忠告しとくか。」

 なんとなくで忠告しておく。
 本当に気まぐれだ。この行動に深い意味はない。
 あるとするなら…女に優しいからか。

「こういう場所で躊躇はよくねえ。躊躇一つで戦況が変わっちまう可能性は高い。
 嬢ちゃんが殺し合いに反対だとしても、目的の為には殺す必要もあるってことだ。」

 彼の言いたいことは分かる。
 優勝を目指してる相手を説得できない相手もいるはずだ。
 ハサミ以外にも、きっと何人もいることは間違いない。

「俺はまだしも、ハサミの旦那には話し合いなんか通じねえだろ?
 全員仲良く殺し合いを終わらせるなんてのは不可能ってーわけだ。
 絶対に相容れない、殺さなくちゃあいけない場面ってのは必ず来る。
 目的を達成するためには、殺人すら厭わねえ『意思』ってーのがいる。分かるか?」

「…分かってはいるつもりだ。」

 分かっていない。難しいことだから分からないわけではない。
 だがタスクを撃てば相手は確実に痛いだけでは済まないだろう。
 それでも、撃たなければならない時があるのは先の鳥の件でもあった。
 今度はそれを人に向けることができるか。ハサミと言う無機物もあったので、
 先ほどは構えられたが、人であるホル・ホースを前にするとまだ撃てる気がしない。

「そうかい。じゃあ、忠告は終わりだ。
 …はー、作戦つっても付け焼刃だよなぁ。
 出会ったばかりじゃあ、こうなって当然だが。」

 いいとこどりをしようとした作戦だが、
 結果は大変お粗末。このままだとハサミも勝つのは難しいだろう。
 タバコがあるなら吸いたくなるものの、没収されてる以上はない。

「なら、諦めてくれるの?」

 俺ならまだしもと口にしていたところから、
 相手はまだある程度話し合える間柄ではあるらしい。
 ハサミに無理矢理従ってるようでもあるのならば、
 左足の傷ぐらいは見逃す考えはしておこうと、足柄は考える。

「ああ、諦めるさ。」

 この状況で彼は二人に勝つことはできない。
 勝ったとしても自分の死は免れない状態だ。
 諦めるほかないだろう。

「───あんさんらは、だけどな。」

 言うことを終えると同時にホル・ホースが消えた。
 足柄が消えたときと同じ現象が起きたのだ。

「消えた!?」

 彼女達にとって誤算はたった一つ。
 手にとり望遠鏡は引き寄せるだけではなく、
 逆に『自分が引き寄せられること』も可能だと言うこと。
 固定されてるものは引き寄せることができず、
 逆に使用者が掴んだものに引っ張られてしまうのだ。
 此方も数時間に一回しか使用できない代物だが、
 このような機能があると想定できる人はそうはいない。
 つまり、ホル・ホースが何をしたのかと言うと───

「まさか…」

 同時に、ソルティ・スプリングスに銃声が轟いた。



「新手…ッ!!」


204 : ◆EPyDv9DKJs :2020/10/11(日) 03:29:53 .7Jdm8tk0
「兼定さんッ!!」

「助けに来た…ってーよりは、逃げてきたぜ旦那。」

 銃声と共に狙われたのは、兼定。
 横槍のように銃弾が両足を抉ったのだ。
 続けざまにハサミのファイナルアタックだが、
 辛うじて防ぎつつ、その反動できりえへいを全員倒した立香の横へと膝を折りながら降りる。

 ホル・ホースは適当な家の屋根を望遠鏡でつかんだのだ。
 当然家は固定されてるので持ってはこれないので、そのまま移動。
 後は単純。エンペラーで兼定を撃っただけである。
 ハサミも射線にいたので、足を狙うだけにとどめたものの、
 戦場で足の負傷は致命的なのは誰が見ても明らかなことだ。

「始末できなかったってことでいいわけ?」

「あー、そうなるんだよな。言い損ねて悪いんだが、
 俺は敵対してない女には、相手が殺しにこねー限りは手ぇ出しづらくてよぉ。」

「ちょっとちょっと、話と違うんどころか聞いてないんだけどぉ?」

「まあ片方は足の負傷でまともに動けないってことで勘弁してくれや。」

「残りの追いかけた方はどうしたの?」

「そっちはだな…」



「立香、車の運転できるか?」

 二人が少し揉めている間、
 兼定も立香と小声で会話を続ける。

「か、軽くならできると思うけど…」

 免許なんて当然持ち合わせてない。
 車の捜査はほぼ見様見真似と言っていいだろう。

「そうかい。じゃあ…俺の支給品全部持って逃げな。
 後、やばいと思ったら中の石を使っとけ。防御に使える。」

 返事も待たずに自分のデイバックの紐を切って、
 手早くアイテムを丸ごと立香へと刀ごと渡す。

「ちょ、ちょっと刀までって、兼定さんはどうするの?」

「悪いな…両足やられて、走るも飛ぶもできそうにねえんだ。」

 つまりは、此処に置いていけ。
 それを意味する言葉なのは、すぐに理解する。
 勿論背負ったりしてつれて行く暇なんて与えてくれない。
 バギーまで遠くはないが、近い距離と言うほどでもなかった。
 二人で離脱は不可能だ。しようとすれば全滅の危険がある。
 人理修復の旅路の最中で、数々の人の死を見てきた。
 慣れたと言えど、死とは受け入れたくないものばかりだ。
 職員にも昔と比べ勇ましくなったとか言われたりもするが、
 それでも藤丸立香は人間だ。悼みもする、涙も流れる…人間のマスターだ。

「…分かった…」

「元より俺は刀、誰かの為に刃を振るう道具だ。
 誰かを守って死ねるだけまだ幸せってもんさ…後のことは頼んだぜ!」

「うん。絶対に、この戦いを終わらせるから!」

 死地へ向かうには、余りにも清々しい顔をする兼定。
 生存を目指すには、余りにも苦しい顔をする立香。
 二人は最期の言葉を交わし、バギーへと走り出す。

「悪いがそうは───」

 エンペラーを構え、バギーへと狙いを定める。
 此処で移動の足となるものさえ何とかすればそれでいいのだ。
 態々彼女を狙う必要はないのだが、殺気を前に狙いを定めた腕を引っ込めてしまう。
 ひっこめると同時に、ほぼ同時に腕のあった場所へ何かが飛んでいく。
 暗さと速さで何かは分からないが、

「言ったはずだ、動くと撃つと。」

 それがオグリキャップが放ったものだと言うのは分かっていた。
 来た道を逆走して、ホル・ホースへとその指を構えている。
 人に向けて撃つのはまだ躊躇いはある様子だったが、
 少なくとも撃つことはできている様子だ。

「少しはいい面構えになったじゃあないか。
 そういう冷徹な目も、俺としちゃあ悪くねえな。」


205 : ◆EPyDv9DKJs :2020/10/11(日) 03:30:29 .7Jdm8tk0
 余所見して撃たれたらかなわんぜ。
 エンペラーの弱点として、自分の視認が必要なこと。
 弾丸は自分の意思で往査できるが、弾丸の状況は把握できない。
 だから自分の目で見なければ、下手を撃てば自滅に繋がってしまう。
 故に余所見しながらの射撃なんてすることはできない。した瞬間撃たれる。
 エンペラーは其方へと構えて、にらみ合うことしかできなかった。

「えっと確か此処を…」

 車の運転なんクラスがライダーの一部見様見真似と、
 いつだったかやったゲーセンのレースゲームぐらいだ。
 ぶっつけ本番すぎて果たして動かせるのか不安しかないが、
 後戻りはできない。今やるしかないことだ。

「次から次へと、逃げないでほしいんだけどなぁ!」

 思うようにうまくいかない戦況、
 ホル・ホースが口にしてなかったこと、
 その上逃げ出す屋からの連続でハサミも怒り心頭だ。
 遊びも何もない、首を狙ったファイナルアタックを狙う。

「確かこの石を───!?」

 赤い石を取り出した瞬間、石は眩く輝きだす。
 輝きの中、ハサミの前に一人の女性が降り立つ。
 白と赤を基調とした、鎧風のワンピース姿に身を包む赤毛の美女。
 戦場に立つには美しすぎると同時に、勇ましさが溢れる出で立ち。
 さながら、美神と呼んでも差し支えがないだろう。

『我が障壁を以って、汝を守ろう───刃鏡、展開!』

 彼女の周囲に浮かぶガラスのような破片が、
 一つの障壁となってハサミのファイナルアタックをはじく。
 避けられたりカウンターこそされてきたものの、
 自分の一撃必殺が欠片も通じないことに驚きが隠せない。

「え? マジマジ!? それずるくない!?」

 簡単に弾かれるのも当然だ。
 この支給品『召喚石』に眠っていたのはゴッドガード・ブローディア。
 守護神と呼ばれる星晶獣であり、この力の前ではほぼすべての攻撃が通らない。
 準備をしつつも、その勇ましい姿に立香も少し見とれてしまう。

『…どうやら特異点でも、蒼の少女でもないようだな。』

「あ、あお? 特異点って…え?」

 まさかの語りかけてくる。
 意思を持った支給品、と言ったところだろうか。
 いきなり会話してくるとは思わず、手の動きが止まる。

『暢気してる暇はないぞ。我の不可侵神域は全てを阻むが、時期に終わる。』

「っと、急がないと!」

 これだけ強力な防御壁、逆に言えば長持ちするとは思えない。
 急いで確認を終えて、車を走りださせる。

『もう少し話をしたかったが、どうやら時間らしいな。また時が来た時に会おう…緋の少女よ。』

 ブローディアの姿が薄れゆく中、バギーが走り出す。
 その間に何度もハサミが壁に突撃するも、文字通り刃が通らない。
 多少無茶な運転なのは誰が見ても明らかだが、意外と事故は起こさなかった。

「オグリキャップ! 足柄さんはいた!?」

 同時に彼女も連れ出そうと声をかける。
 オグリキャップなら自身の脚力で追いつけるので、
 声さえかければ後は問題なく、にらみ合いをやめて走り出す。
 逃走を図った二人へエンペラーを向けるが、距離が遠くなりすぎてる。
 まだ赤毛の盾が有効もある以上、無駄に動く理由もなく銃をしまう。

「アシガラはいたが、カネサダはどうするんだ。」

「…兼定さんは…」

 並走をしながら、兼定のことを尋ねるも、
 言葉に詰まる彼女を前に、言葉にせずとも察した。
 既に手遅れなのだと。

「…そう、か…」

 躊躇せずホル・ホースを撃てば助かったのか。
 その場合は足柄が犠牲になっていたかもしれない。
 このときの躊躇が果たして正しかったのかどうか。
 今の彼女には答えは出せないままだ。



「あーあ。逃げられちゃった。
 残ったのは君だけになっちゃったね。」

 車に追いつけるような速度は持ち合わせてなく、
 完全に逃げられたことに残念そうな声色のハサミ。
 残念ではあるものの、もう両足が封じられた彼は逃げようがない。
 武器も手放した。今更どうしようもなく、余裕をもって立ちはだかる。


206 : ◆EPyDv9DKJs :2020/10/11(日) 03:31:49 .7Jdm8tk0
「一人で三人離脱できたなら、上々さ。だがな───」

 重い衝撃音が街に響く。
 ギリギリのところで一歩(?)退いたとはいえ、
 刃の部分を強打されて軽くよろめく。

「刀がねえから素直に死ぬと本気で思ってたか?」

 彼にはもう刀はない。
 では一体何が起きたと言うのか。
 彼が手に握っているのは───鞘。
 自分の写し身を納めていた鞘で攻撃を加えたのだ。
 勿論刀で殴るよりもずっと威力は低くなるが、
 少しでも消耗と時間稼ぎが、彼の最期の役割。

「イッタタ…まさか鞘で殴るなんてね。」

 ケースで殴る自分も似たようなもので、
 ある意味それに気付けたから一歩引くのが早かった。
 下手をすれば鉸めを殴られてたかもしれないと、
 少し焦ったりもしてたが言葉にはしない。

「新選組の剣術は泥臭いんだよ。
 確かに刀は見た目の恰好は必要だがな、
 新選組の天然理心流は相打ち上等の実践剣術だ。
 勝ち方に拘るようじゃあ勝てねえって…」

 言葉を遮るような、斬撃音。
 減らず口を黙らせるかのように、
 ハサミの両刃が切腹の如く彼の腹部に赤い線を残す。
 元々赤い派手な装いに、赤黒いものが染み込む。

「そういう話、どうでもいいんだよね。」

 欲しいのはオモチャだけだし。
 今死ぬ奴の剣術がどーのこーのだとか、
 そんな話には微塵の興味もなかった。

「そう…かよ…だがな、一つ言っておくぜ。」





「これが! 新選組の刀だッ!!」

 此処で潰えることになったが、自分の意志は託した。
 だがただでは潰えない。最後まで刀として敵を倒すために全うする。
 最早死までカウントダウンが始まってる中でも、尚鞘をハサミへ振るう。
 口にしたはずだ。新選組の剣術は、相打ち上等だと。

「な、まだ動け───!?」

 胴体を両断ではないにしても、
 ざっくり切ったはずなのにまだその身体は弱った雰囲気を感じない。
 死にかけている人間ができるような動きではない。まさに狼が如き形相。
 狙うは鉸めの首輪。ハサミは最初の一太刀の際にこの言葉を呟いていた。

『それは困るんだよねぇ!』

 単純に急所なのかと思ったが、違う。
 今近くで見れば、これは首輪なのだと気付いたのだ。
 どこを殴っても手ごたえが感じられないかった彼にとって、
 確実に彼を殺せる場面を見出し、その鞘を全力で振るった。
 


 鞘は当たった。ハサミの鉸めに。



 だが、その音は酷く寂しいものだ。
 コツン。攻撃と呼ぶには余りにも弱弱しい。
 首輪が起爆するなんてことは、当然ない威力で。





【和泉守兼定@刀剣乱舞 破壊】 【残り105名】





「…なんだ、力尽きたのか。」

 十分致命傷で、限界を迎えていたのだろう。
 一瞬だけ、本当にヒヤッとしたものの終わってみればなんてことはない。
 大したことのない悪あがきと言ったところだ。

「連中は大砲を置いて三人で逃げちまったみてえだな。」

 望遠鏡で高台の様子を伺いながらハサミの下へと戻るホル・ホース。
 方角的に南東だが、相手はバギー。足で追いつけるレベルではない。
 追跡は諦めざるを得ないだろう。


207 : ◆EPyDv9DKJs :2020/10/11(日) 03:32:28 .7Jdm8tk0
「あーあ。思ったより上手くいかないなぁ。
 四人もいたのに一人だけしか手に入らなかったし。」

 優位な立場だったものの、
 最終的に結局一人しか仕留められなかった
 足柄の装備、オグリキャップの脚力などの未知の可能性。
 スタンド使い同士の、所謂初見殺しの部分は何処も変わらないと言うことだ。

「それはそれとして…」

 ハサミを開きながら、ホル・ホースの首に当てられる刃。
 左右から刃が伸びており、今の状況はよくわかっている。
 心当たりは当然ある…自分のポリシー、それ一つに尽きた。

「君さ、今後もこれだとちょっと困るんだけど。」

 女は攻撃してこない限り撃たない。
 そのポリシーを伝え忘れてたのもあるが、
 これがなければ足柄も仕留めきれてたのは事実。
 もっとも、オグリキャップに撃たれてた可能性もあったので、
 彼自身としてはこれで良かったと言われると別かもしれないが。
 ハサミ自身にとっては関係のないことだ。

「今回はオモチャが手に入ったからいいけど、女は撃てないところは考え直してよ。」

「お、おう。」

 距離も取ってたせいで報連相ができなかったとは言え、
 私情によって戦況がぐだぐだになってしまったのは事実。
 これについては自分に非があるとは思うので、
 少なくとも今後は折り合いをつけなければならない。
 エンヤ婆みたいに殺しに来たからやり返すスタイルでは、
 この先もやっていけるかと言われると厳しいと言わざるを得ない。

「じゃ、僕これで遊んでくるから〜。」

 兼定の死体を持って、何処かへとハサミは行ってしまう。
 エンヤの時のジャスティスのゾンビも大概だったのを思うに、
 彼の場合はもっと想像したくないようなものなのは想像するに難くない。
 故に後のことは想像しない。想像するだけまともなものは思い浮かばないのだから。

「…飯でも漁るついでに、名簿でも見るか。」

 やることもないし、腹ごしらえに飯かお湯でも探す。
 そのついでで名簿にでも目を通すことにする。
 DIOの名前もなく、見知った名前も存在しない。
 なら何もないで普段通りの行動をすればいいな。
 そう思っていた。ある名前を見るまでは。

「ん!?」

 空条徐倫。
 一瞬承太郎がいるのかと危惧したが、違う名前。
 どうやら赤の他人───

(いやんなわきゃねえだろ!)

 なわけがあるか。
 空条なんて珍しい苗字、ホイホイとあってたまるか。
 しかも名前の位置は近い。無関係じゃない可能性は低い。
 承太郎の家族構成はDIO達が既に調査済みだ。
 一応、スタンド使いはジョースター家のみの血筋であり、
 空条の血筋にはスタンドの発現は一切見られてない。
 だから仮に承太郎の関係者だとしてもスタンド使いではないはず。
 それに先程の彼女の艦娘や刀剣男士と聞いたこともないワード。
 ハサミだってスタンドでも何でもない様子から見るに、
 ひょっとして別の世界とかそういう概念があるのではと思えて来る。

(って言いてえけどよぉ〜〜〜…)

 スタンド使いはスタンド使いと惹かれ合う。
 承太郎と敵対した自分と、同じ空条の苗字を持つ者。
 全く関係がないと、言い切れる自信は今の彼にはなかった。
 悩める皇帝は人知れず、名簿を閉じで悩んだ。


208 : ◆EPyDv9DKJs :2020/10/11(日) 03:32:50 .7Jdm8tk0
【F-7 ソルティ・スプリングス/黎明】

【ホル・ホース@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダーズ】
[状態]:健康 疲労(小)、空条徐倫への不安(中)
[装備]:手にとり望遠鏡(『引き寄せる』『引き寄せられる』ともに現在使用不可)@ドラえもん
[道具]:基本支給品×2(自分とハサミの分)、ランダム支給品1〜2(確認済み?)
[思考]基本行動方針:とりあえず生き延びるが、今はハサミの旦那に従う。
1:空条って、まさか…?
2:今はハサミの旦那に協力。ハサミの旦那がやられたら…どうすっか。
3:女に手を出さないのも、此処では考え直すべきか、
[備考]
※最低でもエンヤ婆戦後からの参戦です。
※なんとなく参加者は多くが異なる世界から来ているとは思ってますが、まだ確証はありません。
※空条徐倫を承太郎の関係者と言う可能性を考察してますが、
 上の異なる世界がより多いと考えた場合解消されるかも…本人に出会うまでは。

【ハサミ@ペーパーマリオ オリガミキング】
[状態]:ダメージ(中)、ホル・ホースへの不満(中)、オモチャの材料入手でハイ
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、折り紙セット(3/5 黒、黄使用済み)、睡眠薬入りアイスティー ランダム支給品0〜1(ある場合確認済み)、和泉守兼定の死体
[思考]基本行動方針:この世界で新しいオモチャを作る。
1:試しに肉厚な素材(和泉守兼定)でオモチャを作る。
2:ホル・ホースと協力し、会場を荒らし回る。
3:もしも自分を殺した相手(マリオ)がいれば復讐する。
4:ちょっと不満…まあ隙を見てホル・ホースも殺すけどね。
5:最終的には優勝。

[備考]
※本編死亡後からの参戦です。
※ハサミの支点になるネジの鉸めが、首輪代わりになっています。
※まだ名簿を見ていません。





「足柄さん!!」

 兼定が足止めする中、
 何とかバギーを運転して足柄のもとへ到着する。

「兼さん…いや、聞くまでもないわよね…」

 此処にいないと言うことは、そういうこと。
 撤退をするときにも殿を務めたことがある以上、
 彼が何故残ったかも、なんとなくは理解している。

「急いで逃げるので、乗ってください!」

 足止めできてると言っても、距離的にはそこまで遠くはない。
 このまま追撃される前に逃げ切って、態勢を立て直すことのほうが先決だ。
 できることなら艤装は持っていきたいが、この木材の撤去を女性三人、
 それを撤去したうえで偽装を回収する時間は、恐らくないだろう。

「諦めるしかないか…ところで、運転大丈夫?
 足がこれだから、流石に運転はもう無理なんだけど。」

 えっ、なんて間抜けな声が漏れる。
 足柄さんに交代して運転を任せたかったのだが、
 足に怪我をしてることに初めて気づいた。
 まさかのこの先も自分が運転しなければならない事実。

「え…た、多分できます!」

 先は後戻りが一切できないぎりぎりだったので、
 そんなことを考えてる暇はなかったものの、
 改めて無免許運転と言う立場に、少し肩が震える。

「…私も教えるから、安全運転で行ってね。」



 三人を乗せて、バギーは道なき道を走る。
 足柄の指示もあってか、マシな走行を保っている状態だ。
 敵は追ってくる様子はなく、一先ず一息ついてもいいだろう。
 NPCについては、まだ油断してはならないかもしれないが。

 あれから三人は沈黙を貫く。
 始まって間もなく出会えた一人。
 頼りがいがある人物だったのは間違いない。
 そんな重い空気が漂う中、

「あのガンマンについて話すことがあるわ。」

 足柄はホル・ホースについて話があった。
 何かわかることでもあるのかと、黙って話を聞き続ける。
 と言うより、相槌を打てるほどの余裕がないのもあるが。

「二人には酷な話だと思うけど、
 あっちは最悪説得して引き入れない?」

「え。」


209 : ◆EPyDv9DKJs :2020/10/11(日) 03:33:53 .7Jdm8tk0
「え。」

 思いっきり仲間を撃ってた人が、
 説得できるかもとはどういうことか。
 驚きの余り助手席の足柄を凝視してしまう。

「前見る!」

「あ、はい!」

 わき見運転などもってのほか。
 強めの口調で正気に戻され、すぐに前を見て運転をする。

「あいつ、いやいや従ってるって印象はないみたいだけど、
 同時に勝てる見込みがなければ簡単に下ると思うのよ…見た感じ。」

 話し合いの通じない深海棲艦ばかりを見てると、
 ああいう奴ですら十分通じるように感じてしまうのは一種の感覚麻痺とは思う。
 一方で狂気に満ちても、殺意にも満ちてない。十分自制心を持ったようにも伺える。
 でなければ世界一女にやさしい男など、自称はしないだろう。

「状況次第で仲間に引き込めるって…私は思うんだけど。二人の意見は?」

 仮にも兼定が逃げられなくなったのは彼が原因だ。
 足柄とて納得できるものではない。溝は決して浅くはない。
 だが、いちいち相手にして消耗するよりはまだましともいえる。
 目先の敵ではない。目指す場所はそれよりもはるか遠いところだ。
 そこを履き違えてはならなかった。

「私はあれ以上にやばい人たちと一緒にいたから多少は…」

 悪や混沌と言った属性を持ったサーヴァントは何人もいる。
 何より藤丸立香はそんなサーヴァントであろうと交流を深められるのだ。
 コロンブス、清姫、ティーチ…何人やばいサーヴァントと出会い、共にしたか。
 だからそういうどっちにだって転がれるタイプの人物でもあまり気にはしない。
 完全とまではいかないが、いたずらに消耗するよりはいいのは事実。
 だが、やはり問題なのは───

「…すぐに答えは出せそうにない。」

 自分の躊躇が招いた結果でもあるオグリキャップは難しい所だ。
 人の死とは四人の中で最も無縁の立場にいたのだから、無理からぬことではある。
 一方で、彼から送られた忠告が頭の中から離れない。

『絶対に相容れない、殺さなくちゃあいけない場面ってのは必ず来る。
 目的を達成するためには、殺人すら厭わねえ『意思』ってーのがいる。分かるか?』

 目的のために引き金を引けるかどうか。
 だが、躊躇しなくなった時。自分は果たして今を維持していられるのだろうか。
 走るのが好きだっただけの彼女から、どこへ向かってしまうのか。
 真っ暗な道を歩いて、ゴールが何処にもないレースを走っている。
 そんな恐怖が、どこかにあった。



【F-7とG-7の境界線/黎明】

【足柄@艦隊これくしょん】
[状態]:左足銃弾貫通(歩くのに支障あり)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1(確認済み)
[思考・状況]基本行動方針:戦闘、救出優先。
1:兼さん…
2:殺し合いをする気は無い。
3:化物退治なら大歓迎!
4:ガンマン(ホル・ホース)は説得可能?
  手放しで出迎えられるほどの関係ではないけど。
[備考]
※足柄改二に改装済み。

【オグリキャップ@ウマ娘 シンデレラグレイ】
[状態]:疲労(小)、複雑な心境
[装備]:スタンドDISC『タスク』(現在ACT1のみ)、特別製蹄鉄付シューズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2(確認済み)
[思考・状況]基本行動方針:とにかく生き残ろう。
1:カネサダ…
2:目的のために殺す『意思』…それを覚えて大丈夫なのだろうか。
3:いったいここはどこだろう……。
4:ヘイコウセカイって何だろう……?
5:あの男が説得された場合、受け入れられるか?
[備考]
※参戦時期は西京盃後。


210 : ◆EPyDv9DKJs :2020/10/11(日) 03:34:19 .7Jdm8tk0

【藤丸立香@Fate/Grand Order】
[状態]:悪魔による能力向上状態(支障なし)
[装備]:魔術礼装・カルデア、支援礼装、レター@グランブルーファンタジー、悪魔@大番長、、召喚石『ゴッドガード・ブローディア』(現在使用不可)@グランブルーファンタジー、バギー#9
[道具]:基本支給品×2(自分、兼定)、クレイジーソルト、ランダム支給品0〜1(兼定のもの、あっても未確認)、和泉守兼定
[思考・状況]基本行動方針:仲間を集めて殺し合いを止め、推測される儀式を防ぐ。
1:兼定さんの分も背負う。
2:ここから殺し合いに反対の人たちを説得する。
3:恐らく、これは何らかの儀式では?
4:マシュ、沖田さん、土方さんを探す。ラヴィニアも確認はしたい。
5:ガンマン(ホル・ホース)の説得の考えは分かる。けど…オグリキャップは大丈夫かな。
[備考]
※参戦時期は少なくともセイレム経験済みです。
※漫画版『英霊剣豪七番勝負』の女性主人公をベースにしてます。
 (が、バレー部とかその辺の設定すべてを踏襲はしていません。)
※このバトルロワイアルを英霊剣豪の時のような儀式だと推測しています。
※彼女のカルデアに誰がいるかは後続の書き手にお任せしますが、大抵はいるかと。


※もしかしたら三人は家屋で他にも何か物色してるかもしれません。
 なにを持って行ったかは、後続の書き手にお任せします。
※G-7の高台に艤装(20.3cm(2号)連装砲×3)@艦隊これくしょんが高台の残骸に埋もれてます。
※F-7ソルティ・スプリングスに和泉守兼定の鞘@刀剣乱舞が落ちてます。


【手にとり望遠鏡@ドラえもん】
ホル・ホースの支給品。
望遠鏡型の秘密道具で、通常の望遠鏡としても使えるが、
覗いた対象に手を伸ばすとそれを掴んで自分の方へ引き寄せられる。
使用の描写から壁に隔たれてる状態で引き寄せることはできないと思われる。
固定されてる場合逆につかむ側が向こうへ行ってしまうものの、
固定されてなければ星さえも引き寄せられてしまうさり気にやばい代物。
制限として『引き寄せる』と『引き寄せられる』の双方に一定時間のクールタイムが必要。
また、クールタイム終了後の使用回数はそれぞれ一回ずつのみ使用可能。
(具体的な時間は後続の書き手にお任せしますが、少なくとも数時間以上)
これを応用して殴る等の行為は、制限により完全に使用不可能。
あくまでできるのは掴んで引き寄せるか、引っ張られるかだけ。

【レター@グランブルーファンタジー】
立香の支給品。水着のハールート&マールートの解放武器で、彼女らが使う白亜の短剣。
ゲーム中のスキルである光属性大将の雷電の攻刃&雷電の克己までも再現かは不明だが、
仮にあれば立香は人類最後のマスターと言うこともあり、光属性で充分に適応可能のはず。
指教とは言え天司が使う武器である以上、少なくともそこらの武器の耐久度ではない。

【悪魔@大番長】
同じく立香の支給品。死魔根(誤字ではない)の黄泉平坂(誤字ではない)と言うダンジョン、
その奥深くに眠っているアイテムの一つ。生物っぽいけどアイテムですってば。
装備中属性(大番長は通常、機械、白魔、黒魔、超常、魔族の六属性)全てに有利が取れる。
有利が取れると回避率、命中率、反撃率が向上するものの、あくまでその三つのみ。
火力が上がったり、ダメージが軽減できるわけではないので過信は出来ない。
因みにデメリットは、まじでない…冗談抜きで。

【召喚石『ゴッドガード・ブローディア』@グランブルーファンタジー】
兼定の支給品。赤い石に込められた星晶獣で四大天司の一人、ウリエルに仕える使徒。
本来は召喚石はルリア、及びリンクしてる団長の存在が必要だが、此処では誰でも使用可能。
召喚中ほぼすべてのダメージを100%カットし、一定時間防御力を大幅に上昇させる。
端的に言えば少しの間ほぼほぼ無敵だが、召喚する場合六時間に一回のみ使用可能。
何らかの手段で強引に回復させれば、早い間隔で使えるかも。
なお、中にいるのは特異点と旅をした記憶のあるブローディア。

【和泉守兼定の鞘@刀剣乱舞】
和泉守兼定の支給品である和泉守兼定の鞘。別段どこにでもある鞘。
木材なので打撲には使えるが、耐久性の限度は考えよう。


211 : ◆EPyDv9DKJs :2020/10/11(日) 03:35:39 .7Jdm8tk0
以上で『皇帝×時間』投下終了です
・艤装の重量についての解釈なんですが、
 劇場版の艦これでは睦月の手から離れた艤装は海面に浮きましたが、
 原作の北上、扶桑、愛宕のボイスから察するに軽量ではない様子なので、
 異常な重さとまではいかずとも相応の重量はあると言う形にしています
 (伊勢は重くないとも言ってたが)

・和泉守兼定の支給品について
 刀の支給の代わりに支給品を減らした解釈してます(アカツキの電光機関と同じ原理)
 その為彼の支給品を最初の表記から減らしてます(なので立香に渡された彼の分のランダム支給品は残り0〜1)

ちょっと色々個人の解釈してるので、何かありましたら言ってください


212 : ◆OmtW54r7Tc :2020/10/11(日) 07:27:58 Pb1Jirm.0
すみません、>>192の状態表、現在地のとこ修正します

【I-6/黎明】

【岸辺露伴@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康、佐々木哲平への不快感(大)
[装備]:スタンド『ヘブンズ・ドアー』、Z750(燃料100%)@大番長
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考・状況]基本行動方針:様々な参加者を取材しつつ、主催者の打倒を狙う。
1:ロンリー・ロッジへ向かう。
2:危険人物は取材のついでに無力化を狙う。ただし無理はしない。
3:奴(佐々木)は本当に漫画が描きたいのか?
4:藍野伊月に出会っても、僕からは何も言わない。知ってたら別だが。
5:空条徐倫、まさかとは思うが会っておきたい。
6:野原ひろしとロボひろしには一応警戒
[備考]
※参戦時期は四部終了後。
※佐々木哲平を本にしたため、ホワイトナイトの盗作などを把握済みです。
※佐々木哲平が別の世界の人間だとは気づいていません。
 参加者の一部は別々の時代から参加させられてると思ってます。
※野原しんのすけの劇場版についての情報を複数持っていますが、全て同一の年の、露伴から見て未来の出来事として認識しています。

【H-6 リテイル・ロー市街地付近/黎明】

【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本:おねいさん(輝子)とデートする
1:ほっほーい!
[備考]:殺し合いについてはよく理解していません。

【星野輝子@コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない
1:いざとなったら、『超人』としてしんのすけを守る
2:野原ひろしとロボひろしには一応警戒
[備考]
2期(THE LAST SONG)中盤からの参戦


213 : ◆.EKyuDaHEo :2020/10/11(日) 12:19:40 xXWQMCsI0
ドラえもん、レミリア・スカーレット、西片を予約します


214 : ◆.EKyuDaHEo :2020/10/12(月) 19:42:59 GUB4PYpc0
投下します


215 : 人間、吸血鬼、そして...狸? ◆.EKyuDaHEo :2020/10/12(月) 19:43:27 GUB4PYpc0
「紅魔館...幻想郷っていう世界...だいたい分かったよ、簡単に言えば僕たちが住んでる世界とは違う幻想郷という世界が存在してそこの建物の一つの紅魔館って館の主なんだね?」
「あら?飲みこみが早いのね、普通ならそんなのあるはずがないと信じないと思ってたけど」
「僕も色んな世界を冒険してたからね」

ドラえもんはレミリアから幻想郷のこと、紅魔館のこと、そしてレミリアが吸血鬼であることを聞いた

「でも吸血鬼ってことは人の血を吸ったりするの...?」
「まぁ吸血鬼だからそうなるわね、でも心配はいらないわ、私は少食であまり血が吸えないから例え吸ったとしてもその人間は貧血だけで治まるわ」
「そうなんだね」

とりあえず人間の血を吸っても死ぬことはないと聞いてドラえもんは安心した

「あ、でも日に当たったら危ないんじゃ...」
「それも心配いらないわ、さっきこのデイパックっていうのを見たら折り畳みができる傘があったからそれで日に当たるのを回避できるから」
「そっか、それなら安心したよ」

ドラえもんが安堵していると放送が鳴り響いた


◆◆◆


「ミルドラース...ね、聞いたこともない名前ね」
「魔界の王だか何だかしらないけど...許せない...!」

ドラえもんは放送を聞いて怒りをあらわにしていた

「落ち着きなさいドラえもん、今はこれからどうするか考えるしかないわ、首輪っていうのも外さないといけないわね...」
「こういう時に四次元ポケットがあれば首輪も外せたのに...」

ドラえもんは四次元ポケットを取られたことを悔やんだ

「クヨクヨしてても仕方ないわ、とりあえず名簿を見て知り合いがいるか確認しましょ」

そして二人は名簿を確認する

「紫も連れてこられてるのね...」
「知り合い?」
「まぁ...そうね、ドラえもんは誰か知り合いはいたのかしら?」
「えっと...」

ドラえもんは名簿を見て目を見開いた

「の、のび太くんも連れてこられてる...あと...リルルも!?」
「どうやら知り合いが居たようね」
「う、うん、二人とも僕の大切な友達なんだ...でもリルルは確かあの時消滅したはず...僕たちのために...」

そう、リルルは改造作業によってメカトピアの歴史が変わったためタイムパラドックスが起き、それによりリルルも消滅してしまった、しかし何故か彼女はこの場にいる...ドラえもんは不思議で仕方がなかった

「きっとミルドラースが何らかの力でリルルって子を蘇らせてこの場に連れてきたのかもしれないわね」
「で、でもそんなことできるわけ...」
「ミルドラースは私達をここに連れてこられることができる、それも様々な世界の人をね、生き物を蘇らせることだって可能かもしれないわよ?」
「た、確かに...」

普通なら様々な世界の人達を連れてこられるわけがない...でもミルドラースはそれができる...どんな力を持ってるかも分からないし蘇らせる力を持っててもおかしくはないとドラえもんも納得する、そしてドラえもんはもう一つ心配なことがあった、それは

「のび太くんは大丈夫かな...」

野比のび太、泣き虫で勉強も運動もダメで両親や先生から怒られることも多くジャイアンやスネ夫からはいつも馬鹿にされている...いつもならすぐ自分に駆けつけて何とかしてほしいと頼まれ助ける、しかし今はどこにいるのかお互いわからない状況だ、のび太が無事かドラえもんは心配で仕方がないのだ

「もう一人の友達ね」
「うん...無事か心配でしょうがないんだ...」
「なら...探しに行くしかないわね」
「え?探すの手伝ってくれるの?」
「仲間は多い方がいいでしょう?」
「...うん!ありがとう!」

ドラえもんはレミリアに感謝の言葉を告げる、すると...

「...そこにいるのは誰かしら?」

突然レミリアは一本の木の方を見て呼び掛ける、すると木に隠れていた者が姿を表す、その人物は...西片だった


◆◆◆


216 : 人間、吸血鬼、そして...狸? ◆.EKyuDaHEo :2020/10/12(月) 19:43:55 GUB4PYpc0
西片は木がまり生えていない草原に来ていた、彼は生還するための方法を探し、そのために他の参加者を探していた、しかし...

「全然見つからない...結構歩いてるはずなのにな〜...」

と思ってたのもつかの間、近くで話し声が聞こえた

「あ!誰かいる!いやいや落ち着け俺、ひょっとしたら殺し合いに乗ってる人かもしれないから...様子を見よう...」

そして一本だけ生えている木に隠れながら話している人物を見ると軽く空を飛んでいる幼女と青い狸みたいな者がいた

(え!?何あれ!?何か女の子の方低くだけど飛んでるし!そんなのありなの!?
後...青い狸?青い狸なんて存在するの!?)

見たこともない者達を見て西片は心の中でツッコミまくった、すると...

「...そこにいるのは誰かしら?」

女の子の方がこっちに目をやり呼び掛ける、西片は慌てて隠れるが時既に遅し

(や、ヤバいバレちゃった...もし殺し合いに乗ってる人だったらどうしよう...で、でも俺にはスタンドっていう強い味方がいるからいざとなれば...)

そして西片は深呼吸をして二人の前にでてきた


◆◆◆


(...のび太くんと同じくらい...いや、のび太くんよりかは年上かな?)

ドラえもんは出てきた少年を見て中学生ぐらいだと考える

「あなたは殺し合いに乗ってるのかしら?」
「え?い、いえ!俺は殺し合いなんて乗ってません!」
「そう、なら良かったわ、私達も殺し合いには乗ってないから安心しなさい」
「そ、そうなんですか...良かった〜...」

少年はホッとする、そして自己紹介を始めた

「あ、俺西片って言います!」
「そう、私はレミリア・スカーレットよ」
「僕は猫型ロボットのドラえもんだよ」

ドラえもんが自己紹介し終わると少年はドラえもんを見て何やら困惑していた

「どうかしたの?」
「猫...?狸じゃないんですか!?」
「なっ!僕は狸じゃな〜い!猫型ロボットだよ!レミリアさんはちゃんと分かってたよね!」

とドラえもんがレミリアの方に目をやって聞くと、レミリアは申し訳なさそうな顔をして

「ごめんなさい...私も狸だと思ってたわ...」

と答えた

「もう!僕は狸じゃなくて猫型ロボットなの!分かった!?」
「は、はい!」
「わ、分かったから落ち着きなさい...」

ドラえもんは怒りながらレミリアと西片に自分が猫型ロボットだと伝えた

【E-8 草原/深夜】
【ドラえもん@ドラえもん】
[状態]:健康、ミルドラースに対する怒り
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]:基本行動方針:殺し合いには乗らない
1:レミリア、西片と行動する
2:のび太くん大丈夫かな...
3:僕は狸じゃな〜い!
[備考]
レミリアのこと、幻想郷のこと、紅魔館のことを知りました

【レミリア・スカーレット@東方project】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、折り畳み傘@現実、ランダム支給品×2
[思考・状況]:基本行動方針:主催をぶちのめす
1:ドラえもん、西片と行動する
2:のび太という少年を探す
3:ドラえもん、狸じゃなかったのね...

【西片@からかい上手の高木さん】
[状態]:
[装備]:エコーズのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、高木さんのハンカチ@からかい上手の高木さん、むったん@けいおん
[思考・状況]:基本行動方針:生還する
1:ドラえもん、レミリアと行動する
2:生還の方法を見つける
3:狸じゃなくて猫なの!?


217 : ◆.EKyuDaHEo :2020/10/12(月) 19:44:22 GUB4PYpc0
投下終了です


218 : ◆.EKyuDaHEo :2020/10/12(月) 19:48:50 GUB4PYpc0
すみません、時間表記を「深夜」から「黎明2:10」に変更します


219 : ◆7PJBZrstcc :2020/10/13(火) 22:38:03 a.IxzQf20
ゴブリンスレイヤー、豆銑礼、白井黒子、美山写影 予約します


220 : ◆7PJBZrstcc :2020/10/15(木) 18:53:36 PB1N34tw0
投下します


221 : 小鬼殺し、超能力者と出会う ◆7PJBZrstcc :2020/10/15(木) 18:54:20 PB1N34tw0
 黒子が写影と出発する前に軽くデイバッグを漁ると、見慣れたアイテムが現れた。

「これは……」

 それは彼女愛用の鉄矢が十本と、矢をしまう用のホルスター。
 なぜ自分の私物をいったん没収してから再び支給したのか、と思わなくもないが今は黙って装備する。

 それから黒子と写影の二人は他の参加者との合流を考え、まずは森林地帯を抜けて地図に名前のある施設を目標に移動していた。
 真っ当な考えの持ち主なら、殺し合いに乗るであれ反るであれ人の集まる場所を目指すのが王道だろう。
 その辺りは二人とも特にぶつかり合うことなく一致していた。

 そうしてしばらく歩くが、他の参加者にもNPCにもあうこともなく進み続けていると、二人の視界に人型の何かが倒れているのが目に入る。

「大丈夫ですの!?」
「黒子!!」

 心配した黒子が倒れている影に向かってテレポートし、写影がそれを慌てて追いかける。
 そこまで距離がなかったのであっさり追いつけたが、黒子は倒れている影を見て茫然としていた。
 気になった写影は黒子と同じ方向に目を向ける。

「……モンスター?」

 目線の先にあるものについて、思わず写影が言葉を零した。
 体格は人間の子供程、ちょうど写影と同じくらいだろうか。
 されど似ているのは体格だけで、それ以外のなにもかもが倒れているものを人間と判別することを許さない。
 まさしくモンスター、RPGやファンタジー小説でおなじみのゴブリンである。
 そのゴブリンが、頭を潰されて死んでいた。

「学園都市のマッドサイエンティストが、遺伝子工学か何かでくみ上げたのでしょうか……」

 黒子はゴブリンが現実に姿を見せる可能性を考察するが、自分で言っていて違う気がしてならない。
 なぜ違うのか問われると彼女自身も困ってしまうが、あえていうなら『匂い』がしないのだ。

 『匂い』とは。
 それは学園都市に住む彼女達が感じ取れる、学園都市産のものか、科学の産物かどうかを理解する感覚のようなものだ。
 言ってしまえば単なる何となくでしかないのだが、しかし黒子も写影も目の前のゴブリンが学園都市製ではないと確信していた。

 じゃあなんだ、と問われれば二人とも固まってしまうが。
 遥か地底に住む謎の生物か、それともまだ見ぬ宇宙生物か。
 荒唐無稽な仮説ばかり浮かび、それらを今までの常識が肯定しない。
 そんな堂々巡りが二人の頭の中で続く中、新たな人影が現れる。

 その人影は目の前のゴブリンよりも大きい。成人男性くらいだろうか。
 血に濡れた鎧兜を身に纏い、ナイフを構え闇の中から現れる姿はまさしく幽鬼。
 黒子は咄嗟に写影をかばって一歩前に出るが、それより先に向こうがナイフを下ろしてこう言った。


222 : 小鬼殺し、超能力者と出会う ◆7PJBZrstcc :2020/10/15(木) 18:54:53 PB1N34tw0

「……ゴブリンではないようだな」
「ご挨拶ですわね」

 声からして男だろうか。だがいきなりの言葉に思わず皮肉気に返答してしまう黒子。
 しかし彼は気にすることなく話を進める。

「どうやら殺し合いの参加者のようだが、お前たちは殺し合いに乗っているのか?」
「乗ってないよ。僕も黒子も」
「そうか」

 男の問いに写影が答える。
 それに簡素に返しながら男が振り向くと、新たな人影が木の陰から出てきた。

「この二人は大丈夫そうだな」
「ああ」
「……どういうことですの?」

 目の前の男と新手が示し合わせたような会話をするのを見て、思わず問いかける黒子。
 それに対し目の前の男が律義に返答した。

「もしお前たちが殺し合いに乗っていたのなら、俺を前衛、マメズクを後衛にしてお前たちを無力化するつもりだった」
「それは、まあなんといいますか……」
「頼もしい、でいいと思うけど」

 男たちの言葉に思わず少し慄く黒子に対し、写影は彼らを頼もしいと感じた。
 平時ならいざ知らず、デスゲームの真っただ中という異常事態ならこれくらい抜け目のないほうがいい。
 この人たちと一緒なら、黒子が死ぬ可能性もグッと下がるはずだ。と写影は考える。

 だがまあそれはそれとして。

「あなた方も殺し合いに乗っていないのであれば、同行させていだたいてもよろしくて?」
「俺は構わん」
「私も異を唱えるつもりはない」

 黒子の言葉を了承する、ゴブリンスレイヤーと呼ばれた鎧の男。
 彼女としては、その簡素すぎるセリフはもう少しどうにかならないのか、と言いたくもなるが堪えた。
 もしこれが、いきなり街中で下着姿になる位の奇行であれば、初対面の人間相手でも容赦なくツッコミを入れられる。
 しかし現状は、言葉が簡素すぎるだけで別に無視しているわけでも、嘘を吐いているわけでもない。
 ここは飲み込むのがベストだろう。
 そして円滑なコミュニケーションをしたいのなら、まずは自分から動くべきだ。

 そこで黒子たちはまず自己紹介することにした。

「自己紹介させてもらいますわ。私は白井黒子。学園都市の常盤台中学一年にして、風紀委員(ジャッジメント)ですの!」
「美山写影。学園都市の小学四年生だ」

 黒子たちの自己紹介に対し、今度は男たちが自己紹介をする。

「私は豆銑礼。名前はレイではなくライと読む。職業は専属の果樹栽培士……」
「ゴブリンスレイヤー。冒険者だ」

 全員の自己紹介を終え、ゴブリンスレイヤー以外の三人が抱いたものは

「冒険者?」
「学園都市?」

 相手の言葉に対する疑問だった。


223 : 小鬼殺し、超能力者と出会う ◆7PJBZrstcc :2020/10/15(木) 18:56:56 PB1N34tw0





 自己紹介が発端となり沸き立つ疑問を解消するために、彼らはその場にとどまり互いに知らないワードを質問しあっていく。
 学園都市、冒険者。
 それに連なりスタンド能力と学園都市の能力の違いや、ゴブリンなどについても問い続ける。
 最終的には、もはや質問というより認識のすり合わせに近くなっていた。

 まるで違う常識。異なる認識。
 ここから導き出されるのは、学園都市の住人である二人にとって受け入れがたいものであった。

「異世界……としか考えられませんわね」
「正直、僕にはちょっと受け入れがたい」
「気持ちは分からんでもないがな」

 異世界というものにいささか抵抗のある二人。
 その気持ちに礼は理解こそ示せるものの、それ以上は何もしない。

 そしてゴブリンスレイヤーは、異世界というものを一切抵抗なく受け入れていた。
 その姿勢が、一番異世界を受け入れられない写影には気にかかり、つい尋ねてしまう。

「ゴブリンスレイヤーさんはどうして、そんなに抵抗なく別の世界とか受け入れられるんだ?」

 この時、黒子は写影に対し「なぜこの殿方にはさん付けで、私は呼び捨てですの?」と言いたげな目を向けていたが、彼は黙殺する。
 一方、尋ねられたゴブリンスレイヤーの返事は、想像を超えるものだった。

「俺は世界を知り尽くした識者ではない」

 故に知らないものがあってもおかしくない、と後ろに付け足して彼の返答は終わる。
 そのあっさりとした態度が写影には信じがたい。

 写影のデイバッグの中には、まだ誰にも話していないがスタンドDISCという自分の常識の外側にあるものが眠っている。
 彼がそれを使っていないのは、こんな得体のしれないものを頭に入れたくないというのが半分だ。ちなみにもう半分は、使う前に黒子に出会い思わず声をかけてしまったからである。
 そんな常識はずれな物体があってなお、彼は異世界を受け入れ切れていなかった。

 だがゴブリンスレイヤーはその壁をいともたやすく乗り越えている。
 そこに写影は『強さ』を見た。
 能力ではなく、黒子とも違う意思の強さを。
 だから写影はなんとかゴブリンスレイヤーと二人きりになり、今自分が成し遂げたい『黒子を守る』というワガママについて話し、協力してもらえないかと考えた。
 しかしそれについて行動を起こすより先に――

『聞け! この地に集いし全てのものたちよ!』

 ミルドラースの放送が流れてしまった。
 そのまま話の流れは名簿を確認し、知人がいないか調べる方向になる。

 幸い、気になる名前は沢山あるものの知人は黒子以外いない。
 それは黒子も同じで、礼も知り合いはいなかった。


224 : 小鬼殺し、超能力者と出会う ◆7PJBZrstcc :2020/10/15(木) 18:57:26 PB1N34tw0

 だがゴブリンスレイヤーにはいた。
 しかし、名簿を見たときに生まれた感情は焦りではなく困惑だ。

「どういうことだ?」

 ゴブリンスレイヤ-の名前はすぐに見つかった。
 だがその隣にある文字が問題だ。そこにはこう書かれている。

〇牛飼い娘

 彼の幼馴染である少女だと推測はできるものの、到底名前とはいえない、最低限の識別記号のようなものだった。

「……一応聞いておきますけど、ゴブリンスレイヤーって本名ではありませんわよね?」
「違う」

 遠慮がちに尋ねる黒子に対し、ゴブリンスレイヤーの返事は最低限だ。
 そう、ゴブリンスレイヤーは本名ではない。
 ゴブリン退治の依頼ばかり受ける故に周りから付けられた、いわゆる二つ名である。
 通りがいいので自分から名乗ることも多いが、それでも本名は別にある。

「よく見ると、到底本名とは思えない名前は他にもあるけど」

 そんな中、写影は改めて名簿を見返していた。
 すると出るわ出るわ、どう見ても人の名前とは思えないものがたくさん。

 ディアボロ、ぉ姫様に二人の勇者の牛飼い娘と同じく役職のみ。
 ハサミ、足柄、和泉守兼定という物の名前。
 それ以外にもRRM姉貴やクロちゃん、Syamu-gameのHNか何かとしか思えないもの。
 そして命の輝き、変なおじさんや絶叫するビーバーなど、もはや名前以前の問題だ。
 更に言うなら、野原ひろし? みたいに後ろに疑問符がついていたり、コーガ様みたく様付けされているものまである。

 あえて砕けた言い方をするなら、ツッコミどころ満載だった。

 更に言うなら、やたらと名簿が縦長なのも疑問だ。
 上の方は横に六人名前があるにも関わらず、下の方は一行につき一つしか名前がない。

 名前が横に連なっているのは、ゴブリンスレイヤー、礼、黒子達と話を合わせて考えると世界ごとに区切っている、と結論が出た。
 だがそれだと、大半の人間が知り合いもいない中、単独で殺し合いに放り込まれていることになる。
 まあ、土方歳三と沖田総司という同じ組織に所属しているものもいるが、別の世界同士と考えるなら実質他人と言ってもいいだろう。

 一体どういう基準で参加者を選んだのか、そこも疑問だった。


「情報が足りんな」

 頭を悩ませている三人を尻目に、ゴブリンスレイヤーは一人出発支度を整える。

「情報の大切さは俺も理解している。だがこれ以上名簿を睨んだとてどうにもならんだろう」
「そう、ですわね」

 それにつられる様に、黒子たちも同じく出発の準備を整えた。

「俺は探し人を優先する。お前たちはどうする」
「同行させてもらう。そのつもりだが」
「わたくしたちもそのつもりですわ」

 写影も無言だが頷く。
 こうして、四人はゴブリンスレイヤーの幼馴染である牛飼い娘を探す傍ら、殺し合いの打破の為情報を探ることになるのだった。


225 : 小鬼殺し、超能力者と出会う ◆7PJBZrstcc :2020/10/15(木) 18:57:53 PB1N34tw0





(言いそびれてしまった)

 出発してから、写影は一人考えを巡らせる。
 内容は、自身のデイバッグにあるスタンドDISCと、黒子を守るという自分自身の心についてだ。

 最初はゴブリンスレイヤーに協力を頼もうかと思ったが、彼にも守りたい人がいると聞いてしまえばそれもできない。
 ならせめて、有用そうなスタンドDISCについて豆銑さんから聞きたかったのだが、黒子が傍にいる中では到底できない。

(まあ、タイミング次第では二人きりになれるだろう。その時でいい)




(何か隠しているな)

 一方、礼は写影の態度に疑問を覚えていた。
 思えば、自身がスタンドについて説明しているとき、黒子は初耳だと言わんばかりの態度だったが、写影の態度はどこか不自然だった気もする。
 無理矢理聞き出してもいいのだが、ゴブリンスレイヤーの幼馴染について考えるとどうもそんな気になれない。

 彼は普段ならここまで気を使うタイプではないのだが、敬意を払っている相手の足を引っ張るような真似はしたくなかった。
 だがこちらに牙を向けるわけではなく、更にいうなら自分も東方家や岩人間については話していないのだ。お互い様と言えるだろう。

(だが折を見て聞き出すとしよう)

 とはいえ、警戒は忘れないしいずれは問い詰めるつもりではあるが。


【E-5/黎明】

【豆銑礼@ジョジョリオン】
[状態]:健康、疲労(小)
[装備]:スタンド『ドギー・スタイル』
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]基本行動方針:生存優先
1:ゴブリンスレイヤー達と行動する。
2:美山写影は何か隠している。折を見て聞き出す
[備考]
時間軸はプアー・トム撃破後。

【ゴブリンスレイヤー@ゴブリンスレイヤー】
[状態]:健康
[装備]:ゴブリンスレイヤーの装備@ゴブリンスレイヤー、小鬼から奪った装備(粗末な棍棒や短剣)、並行世界のディエゴのナイフ@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品
[思考・状況]基本行動方針:ゴブリンを殺す。首魁であるミルドラースも殺す。
1:あいつ(牛飼い娘)との合流を優先する。
2:なぜ俺たちは本名で名簿に載っていない?
3:異世界か……スタンド以外にもゴブリン退治に役立つものはあるのか?
[備考]
時間軸はゴブリンロードを討伐した後。

【白井黒子@とある科学の超電磁砲】
[状態]:健康
[装備]:鉄矢×10とホルスター@とある科学の超電磁砲
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(未確認)
[思考・状況]:基本行動方針:殺し合いを止める。
1:美山や無力な参加者の保護。殺し合いに乗った参加者の制圧。
2:当面は牛飼い娘さんの捜索を中心にする。
3:抜け目のない殿方達ですわね。
4:随分とおかしな名簿ですこと
[備考]
※美山写影と出会った後、ペロ救出後より参戦です。

【美山写影@とある科学の超電磁砲】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、インスタントカメラとスマートフォン@とある科学の超電磁砲、イエロー・テンパランスのスタンドDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[思考・状況]:基本行動方針:黒子を守る。
1:黒子を守る。自分の持つ能力の全ては、友達の彼女のために使う。
2:とりあえずはゴブリンスレイヤーさん達と行動する。
3:折を見て豆銑さんからスタンドについて話を聞きたい。


【鉄矢×10とホルスター@とある科学の超電磁砲】
白井黒子に支給。
彼女愛用の鉄矢とそれをしまう用のホルスター。
彼女は主に鉄矢をテレポートさせ、服に縫い付けて拘束するという使い方をする。
ホルスターの位置は太もも。


226 : ◆7PJBZrstcc :2020/10/15(木) 18:58:22 PB1N34tw0
投下終了です


227 : ◆OmtW54r7Tc :2020/10/15(木) 19:53:13 7FbhcZ720
投下乙…ですがちょっと指摘というか相談したいことが
自分が前に投下した『野原ひろし』ですが、この話、名簿の野原ひろし?が『野原ひろし』表記という前提で作った話です
もしも名簿表記が今回の話の様に『野原ひろし?』表記だとすると露伴があの考察をするまでもなく怪しいので、あの話は破棄するつもりなのですが、どうするべきでしょうか


228 : ◆7PJBZrstcc :2020/10/15(木) 20:03:44 PB1N34tw0
>>227
すみません、そのあたりをあまり考えず書いてしまいました。
リレー小説ですし、やはり先に出た設定を優先するべきだと思いますので、>>224の文章を以下の様に修正したいと思います。

修正前
更に言うなら、野原ひろし? みたいに後ろに疑問符がついていたり、コーガ様みたく様付けされているものまである。

修正後
他にもコーガ様みたく様付けされているものまである。


229 : ◆OmtW54r7Tc :2020/10/15(木) 20:07:02 7FbhcZ720
>>228
修正乙です
お気遣い、ありがとうございます


230 : ◆OmtW54r7Tc :2020/10/15(木) 20:19:06 7FbhcZ720
今回のこと踏まえて、自作『野原ひろし』の最後に野原ひろし?の名簿上の表記について追記しました


231 : 名無しさん :2020/10/15(木) 23:34:46 VvIZ5euA0
投下乙です。
ゴブリンスレイヤーは読み始めたばかりだし、ジョジョリオンも八木山夜露の所までしか読んでないけど、
めっちゃかっこいい対主催コンビって雰囲気で好きです。
このグループに美山写映という不穏分子がどう影響するのか、続きが気になりますね。


232 : ◆SvmnTdZSsU :2020/10/31(土) 01:06:22 meOCcrL20
マシュ・キリエライト、エンキ、ラヴィニア・ウェイトリー、清良トキ 予約します


233 : ◆SvmnTdZSsU :2020/10/31(土) 04:30:04 0BHXOvEw0
投下します


234 : 下半身さえあればいい ◆SvmnTdZSsU :2020/10/31(土) 04:31:31 0BHXOvEw0
『私は”ミルドラース”。魔界の王にして王の中の王である。
 願わくば最後に私の前に立つものが、勇者に相応しい者である事を望む』

ーーー

 魔王の放送が終わり、それを聞き届けた三者の反応は様々だった。
 名刀を携えた老将エンキは、まだ見ぬミルドラースの驚異を認識し、義憤に染まる。
 アルビノの少女ラヴィニアは、放送越しにも感じる威圧に震えている。
 そして、シールダーのデミ・サーヴァント、マシュはーー

「そんな…先輩も居るなんて」

 暫の沈黙の末、一言呟いた。名簿を持つ手は微かに震えていた。
 100人を越える参加者名簿の内、"沖田総司"や"土方歳三"という偉人は勿論、"変なおじさん"や"命の輝き"といったどう考えても人名とは思いがたい羅列も気になるが、先輩……もとい藤丸立夏が参加者として此の特異点にいるというのは、心強いと思う反面、不安も沸き上がる。
 数々の特異点を修復し、人理修復を完了するという偉業を成し遂げた先輩と言えど、ここは未知の殺し合いの場。
 恐らく先輩の側にサーヴァントは控えていない。カルデアからのサポートも無い。孤立無援の中、もしも、万が一、先輩を失えば。そんな恐ろしい想像がマシュの脳裏に過る。
 大切な人が危機に巻き込まれて狼狽えるなと言うのは酷だ。

「……マシュお姉ちゃん、大丈夫だよ。座長さんはそんな簡単にやられちゃう人じゃないよ」

 その様子を見かねたのか、ラヴィニアはそっとマシュに寄り添う。
 NPCの群れに囲まれたとき、彼女はマシュに助けられた。その恩返しもかねた真摯な感情が、マシュには痛いほど伝わった。

「ラヴィニアさん…」

 彼女も怖いはずなのに、他人を思いやれる姿勢は尊いものである。

「然り。マシュよ、藤丸立夏がお主の言っていた偉業を成し遂げた人物ならば、そう易々と死にはすまい」

 力強いエンキの言葉に、マシュに燻っていた不安は消えた。

「……ありがとうございます。エンキさん、ラヴィニアさん」

「幸か不幸か、わしの知り合いは此の地に居ないようだ。当面は藤丸立夏との合流を目指せば良かろう」






「……とはいえ、簡単にはいかないようだがな」

 不穏なエンキの言葉に、怪訝な顔をする両者。その理由は即座に判明した。
 ヒュン、と空気を切り裂く音。同時に抜刀された剣が一本の矢を両断した。

「GBRGBBY!!!」

 

「そんな……!増援!?」

 夜闇に紛れ、聞こえる足音。荒い息遣い。その全てに悪意が見え透いている。

「GBGY…」「GBGBG!!」

 マシュたちの視線の先には、化物が居た。先程蹴散らされたNPCの同胞、毒々しい緑の肌の小人たちが、彼女たちを取り囲む。

「GBGYRRR…!」

 矮小な小鬼はそれぞれ威嚇するように武器を振り回す。下卑た劣情を隠そうともせず、怒張させた逸物がこれでもかと腰布の下から主張していた。

「……お主たちはさがっておれ。わしが相手をしよう」

 顔をしかめたエンキは、二人を庇うように先頭に立つ。途端に放たれた静かな闘気が場を満たした。


235 : 下半身さえあればいい ◆SvmnTdZSsU :2020/10/31(土) 04:32:25 0BHXOvEw0
「GBRGBBGBYYYY!!!」

 そんな老人を嘲笑うかのように、小鬼たちは欲望に身を任せ、粗末な武器を片手に飛びかかる。

「愚かな」
 
 案の定、愚直な突撃は一撃で小鬼ごと両断されるが、彼らは怯まない。

「GBGYRRRR…!」

 眼前の老いぼれが強いのは確かだ。しかし、自分達の方が多い。肉壁(なかま)が死のうが知ったことか。
 自分が損をするのは嫌だ。死ぬのなんてもっての他だ。しかし、その先に心踊る肉欲を味わえるのなら、話は別だ。
目先の欲望のためなら、後先考えず命をかけられる。それがゴブリンという種族の性だ。

「GBGY!!」

 しかし、運命が彼らに微笑むことはあり得ない。
 老いていると言えど、エンキの歴戦の戦士としての実力は健在。薄暗い洞窟なら兎も角、広い平野でエンキが小鬼風情に遅れをとることはない。連戦と言えど、その実力(キャリア)を覆せる程小鬼たちは強くは無かった。
 続々と切り捨てられ、積み上げられていく小鬼の骸。
 元より小鬼なぞより遥かに強いギガンテスやハエ男が混ざっていた群れすらも破れたのだ。ただの小鬼が束になった所で、先ほどと同じように破れるのは道理。
 加えて、支給品の確認やお互いの情報交換を終えていた三人は、先程と違い一党(パーティー)として纏まっていた。
 マシュとラヴィニアも、ただエンキに守られるだけではなく、それを良しとする弱者ではない。

「GBGY!?」

 背後から不意打ちを狙った賢しい小鬼は、マシュの盾によりその凶器を防がれる。

「え…えい!」

「GBG!?」

 一方では、ラヴィニアの持つあやしい触手が打ち洩らした小鬼を締め上げている。 
 開幕から怪しいところに潜り込み、全員からシメられた経験が活きたのか、それともラヴィニア自体に素質があったのか、初めて持ったアイテムとは思えないほど勤勉に働いていた。
 徐々に駆逐されていく小鬼の群れ。先の展開をなぞるのは当然と言える。
 ただ一点、違う点があるとすれば……

「……お主が頭目か」

 大多数の小鬼を撃ち取った老将エンキ。その視線の先に、暗がりからのそりと現れた巨体。
 人間の肥満体を思わせる体格、小鬼らしからぬ腕力を携えたゴブリン。
 それはこの群れを率いていた一匹の田舎小鬼(ホブゴブリン)であった。

「……?」

 そのまま一刀両断しようとしたエンキの手が止まる。
 理由は、眼前のホブが持つ違和感にあった。

「……」

 群れを蹂躙され、怒りに震えている筈の田舎者は、しかし不気味なほど沈黙を保っていた。
 その目は焦点が会っておらず、エンキすらも見ていない。明らかに正気を(小鬼にそんなものがあればだが)失っていた。
 その様子にこれまでの小鬼と比べ違和感を覚えたエンキは、じっとホブを観察する。
 やがて、ホブの視線はエンキの背後の少女たちを捉えた。
 途端に、痴呆のようであった眼が息を吹き替えしたかのようにギラリと光り、ただ暴力的なまでのとある欲望で染め上げられた。

 「GB、GB…GBRYYYRB!!!!」

 それはーー性欲。
 汚ならしく唾液を溢れさせたホブは、咆哮しながら異常な変化を遂げる。
 下半身を中心に、毒々しい緑の肌を突き破り出現する触手。うねうねと蠢く様は卑猥そのものであった。
 うねる触手はどこか淫靡な香りを放ち、雌を犯すことにのみ特化した形相をこれでもかと主張していた。

「!?」

 異様な変貌に驚く三者。そのホブは、小鬼でありながらまた別の魔性を宿した変異種。
 名付けるなら、罪魔小鬼(ゴブリンギルティナ)。

「GRBBBRYYY!!!!」

 轟く咆哮を合図に、脳髄が痺れるような甘い香りに当てられたのか、より性欲を昂らせた生き残りの小鬼たちが、仲間の屍を踏みつけながら突進する。
 開花を終えた罪魔小鬼は、群れと共に三人に襲いかかるのだった。


236 : 下半身さえあればいい ◆SvmnTdZSsU :2020/10/31(土) 04:33:24 0BHXOvEw0
【Iー9/深夜】

【老将エンキ@モンスター烈伝オレカバトル】
[状態]:健康、マシュたちの話に対する困惑(小)
[装備]:風斬り刀@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考・状況]基本行動方針:一刻も早く元の世界に戻りたいが、そのために無辜の人々を傷つけるつもりはない。
1:一刻も早く元の世界に戻り、王子を止めねば……!
2:これも"ネルガル"や"エンリル"の企みなのか……?
3:このゴブリン、何と面妖な……
[備考]
参戦時期は、"エンリル"の策略により王子"マルドク"が狂王になってしまった後。
マシュの話から、今後訪れる未来について暫定的な内容を知りました
(人間関係などに細かい違いがあるため、心に留めておく程度です)。

【マシュ・キリエライト@Fate/Grand Order】
[状態]:体に無数の傷(中)、疲労(小)
[装備]:いまは遙か理想の城(ロード・キャメロット)@Fate/Grand Order
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いを止める。
1:先輩や他のサーヴァントの皆さんと合流したい……
2:『エンキ』って確か、メソポタミアの神様ですよね……?
3:"ネルガル"と"エンリル"……これが今回の黒幕でしょうか?
[備考]
参戦時期は少なくとも、第1部第六章「神聖円卓領域キャメロット」以降です。そのため自身の宝具などについて把握しています。
目の前の老人(老将エンキ)をその特徴から、メソポタミア神話の主神『エンキ(エア)』ではないかと推測しています。
老将エンキから、"ネルガル"と"エンリル"、"マルドク"に関する情報を得ました。
"藤丸立夏"が殺し合いに参加していることを把握しました。

【ラヴィニア・ウェイトリー@Fate/Grand Order】
[状態]:健康、変なところをまさぐられたことによる動揺(中)
[装備]:あやしい触手@魔界戦記ディスガイア
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いに乗るつもりはない。元凶に立ち向かう。
1:これも、魔神柱の仕業なの……?
2:ま、また触手!?
[備考]
参戦時期は死亡後。そのためカルデアや魔神柱、アビゲイルの正体などを知っています。

ーーーー

 小鬼と三者の戦い。それを巧妙に気配を消して伺う一人の少年がいる。
 夜闇でも一目で美しいとわかる美貌は、邪悪な笑みで染められていた。

「……さて、お手並み拝見と行こうか」

 清良トキ、もとい魔罪人ヨトギ。彼こそゴブリンたちを三人にけしかけた張本人であった。
 彼が最も得意とする魔法は性欲である。こと欲望を満たすことしか脳にないゴブリンを支配下に置くことなど、彼にとっては造作もない事だった。
 戯れに少し調整を施した木偶をけしかけたのは、彼らの力量を確かめるため。しかしその理由の大半を閉めるのは好奇心と愉悦である。
 買ったばかりの玩具を与えられた子供が無邪気に遊ぶように、トキにとって此の催しもまた遊戯にすぎない。
 木偶が倒されても良し。即席の手駒にすぎない木偶が倒されても問題はない。
 その時は純粋無垢なトキとして接触し、懐に入り込むのは容易い。
 仮に木偶が彼らを打ち倒せば、あの少女二人を調教し遊ぶのもまた一興。盾を構えた少女は程好く熟れかけた果樹のような色気があり、良い声で鳴いてくれそうだ。アルビノの少女もまた別種の魅力がある。
 あの爺は……警戒に値するが、魔法少女を騙しきった己の手腕ならばどうとでもできる。そのための手段もまた、トキの懐に存在した。

(ミリアも居るみたいだし……ふふ、愉しいな。ここは)


【清良トキ@魔法少女理愛 獣欲に嵌まる母娘】
[状態]:健康
[服装]:いつもの服装
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ホモコロリ@真夏の夜の淫夢、スーパークラウン@New スーパーマリオブラザーズUデラックス、ランダム支給品1
[思考]
基本:せっかくだから楽しませてもらう
1:ミリカさん以外にいい女がいるかもしれない
2:ミリアは…見つけたら手伝ってもらうかな
3:これ(スーパークラウン)をお爺さんに使うのも面白そうだね

[備考]
※本編第五章『砕ける心、隷属の刻』終了後からの参戦です
※ゴブリンを配下にしています。今のところホブ一体のみ。
※支給品は確認済みです。


237 : 下半身さえあればいい ◆SvmnTdZSsU :2020/10/31(土) 04:33:56 0BHXOvEw0
【ホモコロリ@真夏の夜の淫夢】
 母壷呂利(ホモコロリ)とは、古代朝鮮半島で用いられた薬のことである。ホモコロリの歴史は古く、高句麗の高都(こうと)出身で密偵であった李田所(イ・ジョンス)が男色家としてその名が知られていた北魏の兵士遠野(ユアン・チャウ)の暗殺を指示された時、李はまず彼の上官に変装し「空が澄み渡っていて綺麗だから、一緒に雲を見ないか」と兵舎の屋上に誘い出した。そして遠をしばらく真夏の日光に当てた後「喉が渇いただろう、よく冷えた茶があるから飲むといい」と薬を混入した茶を飲ませ、遠が昏睡・失神したところを股間に隠し持っていた小刀で刺し殺し見事任務を遂行した、という文献が残っている。
 その時に用いられたのが歩母壷呂利だと言われており、特殊な毒草と薬草を絶妙な加減で配合したこの薬は現在で言う麻酔薬のようなもので、薄味無臭であり、摂取すると脳幹網様体と大脳皮質に作用し状況によって差はあるが数十秒〜数分で対象の意識を失わせるというすさまじく強力な薬となっている。
歩=効きが早く、飲んだ人間はまともに歩くことが出来ずに倒れる
母=脳に直接作用するため、母の腕に抱かれるように安らかに眠る
壷呂=水に溶けやすく、小さな壺に入ったこの薬を呂(当時使われていた大きめの四角い洗い桶)に入れるだけで水全体が薬になるという経済性(勿論、これは噂が広まる段階である程度の尾ヒレがついたものと思われる)
利=飲み物、食べ物に仕込んでも味が殆ど変わらず、相手に悟られず便利である
という特徴から「歩母壷呂利(ほもころり)」と言われ、古代朝鮮半島に留まらす中国、日本にも渡り数多くの政治的暗殺に用いられ、当時の権力者はこの薬を恐ていたという。(ニコニコ大百科より抜粋)

【スーパークラウン@New スーパーマリオブラザーズUデラックス】
 『NewスーパーマリオブラザーズUデラックス』に新登場するアイテム。
 使用するとピーチ姫に似た美しい姿に変身できる。主催の調整によりキノピオ以外にも有効。

【罪魔小鬼(ゴブリンギルティナ)】
 トキが魔法で改造を施したホブゴブリン。魔罪人ではなく擬きだが、媚薬効果のある粘液と触手を備えている。


238 : ◆SvmnTdZSsU :2020/10/31(土) 04:34:28 0BHXOvEw0
投下終了です


239 : ◆vV5.jnbCYw :2020/11/03(火) 21:32:16 QBE7W0kU0
投下します。


240 : ◆vV5.jnbCYw :2020/11/03(火) 21:33:03 QBE7W0kU0
5人の行く先に待ち構えていたのは、一つの大きな町だった。
辺りには何件かの家や、畑、さらにはサッカーグラウンドまである。
どの家もかつてひろしが迷い込んだ洋館や、クロちゃんが働いていたテレビ局、鬼殺隊のお館様の屋敷ほどではないが、それなりな大きさを持っている。


「誰か……いるのでしょうか……。」
ひろしが同じようにゲームに反対する参加者が、この街に隠れているという期待を言葉に出す。

「おーーーい!!誰かあーーーー……!!」
突然甲高い声で、後ろにいたクロちゃんが叫ぼうとした。
それを、ひろしがあわてて大きな口に自らの拳を突っ込むことで、無理やり止める。

「あいややや、チミ、何危ないことよしなさいよ、窒息死しちゃうよ、窒息死!」
それをクロちゃんの隣にいた変なおじさんが、ひろしの肩をもみながらひろしの手を外そうとする。

「誰か悪い人がいたら、大変じゃない?」
「はい。僕はそれがあったから、こうしました。クロちゃん?さん。乱暴して申し訳ありません。」

牛飼い娘が意図を説明し、ひろしが懇切丁寧に謝る。

「そしてどうやら、僕の予想は正しいようです。」
ひろしは背筋をじんわりとせりあがってくる感覚を覚えた。
この感じは、初めて知るものではない。
かつて青い怪物のいた、洋館で幾度となく味わったものだ。
人間ではない、捕食者の視線。


「GOBBBBB!!」
窓ガラスが割れ、5人に一番近い家から、ゴブリンが襲い掛かる。
一匹の鳴き声に反応したからか、他の建物からもゴブリンが現れた。

「うわああああ!!」
「ひいいいいいいいいいい!!」

怪物というものを架空の存在でしかないと見なしていなかった、クロちゃんと変なおじさんの二人は、さっき以上の大声を上げる。


しかし、その怪物をも上回る存在、鬼の討伐を生業とした甘露寺はそうではなかった。
「恋の呼吸 弐の型 懊悩巡る恋!!」

独特な軌道を持つ桃色の刀が、まずは自身に飛び掛かろうとしていたゴブリンの首を、瞬く間に飛ばす。

「参の型 恋猫しぐれ!!」
それから重力を無視したかのように縦横無尽に地面から壁へ、壁から窓へ、窓から天井へと飛び回り、持ち主と同じように空間全体を支配する刀で、ゴブリン達を狩っていく。
鞭のようにしなる刀も、一見適当に振り回しているようだが、一太刀でゴブリンの急所を斬りつけている。


一般人視点では、とても目で追い切れず、ただ桃色の風のような何かが、ゴブリン達を切り刻んでいるようにしか見えないのだが。

「つ……強い……。」
「ブラボー!!ブラボー!!」

何が起こったのかは分からないが、おじさん二人組は思わず拍手をしてしまった。


241 : ◆vV5.jnbCYw :2020/11/03(火) 21:33:28 QBE7W0kU0

しかし、過去に怪物の襲撃を経験したひろしと牛飼い娘は、警戒を解かない。
「皆さん、建物から離れましょう!特に窓には警戒するように!!」
「はい!!」

その指示を聞いてようやく、クロちゃんと変なおじさんも、建物から離れた位置に移動する。
しかし、彼が逃げた先がまずかった。


この街で参加者を狙っていたのは、ゴブリンだけではない。
「ひゃっ!?何これ!?」

畑の方に逃げたクロちゃんを、地面からモグラ型の怪物、チョロプーが襲い掛かる。
予想外の相手に加えて、畑から離れた場所でゴブリンを倒していたため、甘露寺の攻撃も間に合わない。

「危ない!」
地面からの視線を察知していたひろしが、チョロプーとクロちゃんの間に割り込む。
ひろしは肩を爪で引っかかれるも、クロちゃんに傷が負わされることはなかった。


「遅れてごめん!大丈夫!?」
慌てて戻った甘露寺の一撃で、小賢しいモグラも両断される。

「ひえー……怖い怖い……。」
「痛………。」
怪物の爪は服と、肩の肉を裂いていた。

「ごめん!私が逃げる方向を間違えたせいで……。」
自分のせいで傷つくことになった彼に対し、牛飼い娘は謝る。
「いえいえ。構いません。それより、どこか建物内に入りましょう。」

痛む肩を押さえながら、建物の中へ行くことを提案する。


これだけ広い町なら、後々に来訪する者も多いはずだし、拠点としてはこの上ないアドバンテージになる。
ひろしの怪我を治すための道具だって見つかるかもしれない。

一先ず5人は、町を形成している建物の中で、特に大きな一つに入る。
中は、先ほどゴブリンが割ったガラスが散乱しているが、それ以外には荒らされた様子はない。

部屋の様相は、大きな会議室のようになっており、一番奥の真ん中に大きな机と座椅子がでんと構え、両脇にイスと縦長の机が並ぶ。
そして奥には二階へと続く階段があり、昇った先は個室がある。
個室の中は、簡易ホテルのようにベッドと白い小さな机が置いてある。

「この建物を僕らの拠点にするのはどうでしょうか。」
適当な板でも持ってきて窓さえ塞ぎ、ガラスの破片を掃除すれば、1階の部屋を会議室代わりに出来る。
敵が攻めてきても、2階を使って籠城まで出来そうだ。

4人もそれに反対している様子はないようだ。
クロちゃんは1階の大きな椅子に座って、「ボクは社長だしん」など言っているが、問題は無いようである。

拠点を決め、今度は別の家も見回りに行こうとした。
当の目的として、ひろしの怪我の治療用の包帯と、カップラーメンのためのお湯の調達である。


「次はひろし君の手当てを……」
「その必要はありません。」
甘露寺の提案は、見知らぬ声に遮られた。

「わ!?誰だね?チミは!?そんな格好して??」
ブーメランとも言える変なおじさんの発言の対象になったのは、いつの間にか近くにいたメイドの格好をした女だった。

「私、粕谷瞳と申します。」
「メイド!?」
「メイドさんだしん!!」
「その恰好って……。」

突然現れた、甘露寺や変なおじさんとは別ベクトルでおかしな格好をしている女性に、牛飼い娘やクロちゃん、甘露寺も驚く。

「ひろし様。怪我を治すのに、こちらをお召し上がりください。」
粕谷瞳と名乗るメイドは、ザックから赤いキノコを取り出し、ひろしに渡す。


242 : ◆vV5.jnbCYw :2020/11/03(火) 21:33:46 QBE7W0kU0
「ちょっとひろし君!!それ、毒かもしれないよ!?」
「ありがとうございます。いただきます。」
甘露寺の警告も他所に、ひろしはそれを頬張る。
赤いキノコの治癒力は本当らしく、すぐに痛みも傷もなくなった。


目の前のメイドが敵で、自分が食べたキノコが毒だとしたら、自分一人ではなく、何らかの方法で5人全員に食べさせる。
自分が食べなければ、他の誰かが毒味をすることになるし、ここは自分が食べるべきだ。
もしも自分に毒が現れたら、他の誰かが怪しんでこのメイドを追い払うか退治するはず。
そのような前提の下で、キノコを頬張ったのだが、メイドの言う通りの治療薬だったようだ。

「おかわりもありますので、まだ怪我が治らなければ、いつでも仰ってください。」
「結構です。傷は治りました。ありがとうございます。粕谷さん。」

ひろしも粕谷瞳に負けず劣らず、礼儀正しく感謝を告げる。

「瞳とお呼びくださいませ。敬語等も不必要です。」


突然現れ、突然自分を主とみなす瞳に、ひろしは驚きを隠せずにいる。


「ひろし様……何か、問題でもありませんか?先ほどから、顔色がよろしくないようですが……。」
言葉を発さないひろしを、その原因であった瞳が気遣う。
明らかに場違いな雰囲気を醸し出す瞳に、それまでうるさかった他の4人も、黙りこんでしまった。

「なんでもありません……瞳……さん。ただ、なぜあなたが僕をご主人と呼ぶのかが気になっただけです。」

ひろしは至極まっとうな疑問を瞳に投げかける。

「なぜって……この町でのひろし様の、華麗なる立ち回りを見れば、何も感じないメイドなどおりません。」

(!??)
全く持ってひろしが納得しうる回答ではなかった。
むしろ、輝かしい活躍と言えば、瞬く間にこの町の怪物たちを一掃した甘露寺蜜璃の方にあるとひろしは考える。

「同伴者を身を挺して守り、広い町で何をすべきかいち早く提案する。あなたこそ、あらゆる人々の先を行く、ご主人様に相違ありません。」

言われてみれば、甘露寺が怪物と戦っている間に、少しでも迷惑にならないように立ち回ったのは自分だ。
だが、それが崇拝する主人とみなすには、いささか少なすぎる要素にも感じた。
それと同時に、ゴブリンやチョロプーの視線もあったとはいえ、誰にも知られずに観察されていたことに、ひろしは瞳を怪訝に見つめる。

「とりあえず、新しい仲間が出来て、よかったわね!」
「クロちゃんだしん!よろしく……」

ずっとダンマリだった4人のうち、牛飼娘とクロちゃん、2人がようやく声を出す。

「さて、続きまして、ひろし様のために、武器を持参いたしました。」
二人の言葉はまるで聞こえなかったかのように、瞳は自分の話のみを続ける。


ザックから取り出したのは、銃のような何かだった。

「引き金を引くと、相手を気絶させる電磁波が打ち出せる、『ショックガン』というものだそうです。今はこれしかないので、申し訳ありません。」

いくら敵が襲ってきても、殺すことを望まないひろしには、うってつけの武器だった。
「ありがたいですが、瞳さんは武器は必要ないのですか?」
「私は、これで十分です。」


瞳がそう言うと取り出したのは、巨大なチェーンソーだった。


243 : ◆vV5.jnbCYw :2020/11/03(火) 21:34:06 QBE7W0kU0

「「「「ええ!?」」」」
ひろしのみならず、後ろの4人も驚く。
「なぜ……チェーンソー!?」
「ええ。メイドと言えば、チェーンソーですから。」

これまた真っ当なひろしの疑問に、納得に苦しむ回答で返す。


しかし、ひろしが疑問に感じたのは、瞳がチェーンソーを使い慣れた武器のように持っていたことだけではなかった。

「そのチェーンソー……。血が……。」
よく見れば、チェーンソーの刃先にべっとりと血が付いていた。

「ここへ来る途中、怪物に襲われたので、彼奴らの血のようです。見苦しいものをお見せして、大変申し訳ありません。」
ふと観察してみると、その色は赤血球の詰まった色ではなく、赤みがかかった紫だった。
明らかに人間や他の哺乳類の物ではない。


「ひろし君、さっきから警戒しすぎじゃな〜い〜!?」
変なおじさんが後ろから肩を叩き、揉み始める。

あなたが警戒しなさすぎじゃないか、という返答を抑え、瞳に話しかける。

「僕の方こそ、疑って申し訳ありません。では僕たちの仲間として、よろしくお願いします。」
少なくとも自分には好意を示しているようだし、今のところは自分が嫌疑をかけていたことを瞳に謝罪した。

「仲間など、とんでもありません。これからもずっと、メイドとしてひろし様にお仕えいたします。」

どうにも回答の一つ一つが、的を得ていない彼女に対し、疑問を感じながらも、瞳をメンバーの一員に迎え入れることになった。


『聞け! この地に集いし全てのものたちよ!』

そこへ、ミルドラースの放送が、町の中にも響いた。


「み、みると……らーす?浜田さんと松本さんじゃなくて?」
魔界の王という、フィクションでしかなかった存在に、ふざけていたクロちゃんも驚きを隠せない。

「とりあえず、皆さんにも配られた名簿を見てみましょう。どなたか知り合いがいらっしゃるかもしれません。」
ひろしの提案通り、中身をめくってみる。


ひろしは名簿を見ると、そこはツッコミどころが出るわ出るわという状態だった。
変なおじさんとしか名乗っていなかった男は、やはり変なおじさんとしか書かれておらず、自分は名前だけ、と思いきや瞳や甘露寺さんはフルネーム。
挙句の果てに、クロちゃんがクロと呼び捨てにされていると思いきや、名簿の別の箇所にクロちゃんという名前があった


(これ……名簿として体を成しているのでしょうか……。)
偽名やペンネーム、役職らしきもの、漢字のみで書かれたりはたまた平仮名だけで書かれたりと、主催者は参加者全員の名前を知らないのではという気にさえなった。

ひとまず、自分が考えていた、屋敷で離ればなれになったたけしや美香は参加していないことだけは分かった。
甘露寺さんや変なおじさんも様子からして、同じらしい。
だが、牛飼娘だけは違っていた。


「みんな聞いて!この戦い、あたしの幼馴染がいるの!」
「どのような方ですか?」

興奮しているような赤髪の彼女は、名簿の『ゴブリンスレイヤー』という箇所を指さす。
「探しに行こうよ!きっと協力すれば、このゲームも勝てるよ!」

彼女曰く、自分たちの世界で脅威となっているゴブリンを狩りまわっているとのことだった。
歴戦の戦士なら、この戦いでも活躍するだろう。
しかし、最後の一人、クロちゃんから吐き出されたのは、さらに意外な言葉だった。


244 : ◆vV5.jnbCYw :2020/11/03(火) 21:34:29 QBE7W0kU0

「この名簿、ボクが読んだ漫画のキャラクターがいるしん!!」

珍しく真顔で発せられたそのセリフから、瞳を除いた4人は驚く。
確かにひろしだって、あの青鬼やゴブリンなど、漫画のキャラクターとしか思っていなかった。

「誰の事よ!?」
現実にはあり得ないような力を持つ鬼と戦い続けていた甘露寺も、その話に耳を傾ける。


ホル・ホース
岸辺露伴
ディアボロ
空条徐倫
プッチ神父
豆鉄礼

彼曰く、この6人は、「ジョジョの奇妙な冒険」という漫画からの登場人物らしい。
その中で、空条徐倫はある章での主人公で、もし会えたら、頼れる存在になるという。
逆に、ホル・ホース、ディアボロ、プッチの3人は、作中での危険人物だという。

「同姓同名ってことはないの?」
牛飼娘が訪ねるが、流石にありふれた名前でもない以上は、そうでもないだろう。

(では、ここは漫画の世界ということでしょうか?)
ひろしも考えるが、その人物が目の前にいない以上は、どうしても考察にしかならなかった。
結局、この場で話をしていても、疑問が深まるばかりで進展はなさそうだった。


そのため、ひろしは新たな仲間の勧誘と、牛飼娘とクロちゃんの知っている人物の捜索を兼ねて、探索に出ることを提案した。
よしんば誰も見つからなかったとしても、この町が襲われた時の退路作りにもなる。
とにもかくにも、5人の友好的な参加者と、拠点を見つけたのはひろしにとっても僥倖だと感じた。
従って、このアドバンテージを活かして行こうと彼は考えた。

「いいけど、ここはどうするの?」
「ここに残ってもらいます。」
「えええ?」

ひろしがにべもなく留守番を頼んだことに、甘露寺は目玉を大きくする。

「僕ら6人のうち、何人かはここで見張っていてください。
僕らが出張っている時に力のある人がいないと、ここが襲われた時保ちません。」


そして話し合いの中、提案者であるひろしの他に、ゴブリンスレイヤーをすぐにでも見つけたい牛飼娘と、いつ何時でもひろしの傍で仕えたいという瞳が、探索に出ることになった。


ひろしとしては、瞳の実力、本心、目的といったことを調べたいので、その意味で理想のメンバーだった。
少なくとも、この時の彼はそう思っていた。




【C-3/プレザント・パーク 黎明】

【甘露寺蜜璃@鬼滅の刃】
[状態]:健康
[装備]:甘露寺蜜璃の日輪刀@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない
1:とりあえず町と残りの二人を守る
2:戦えるのは私しかいないけど、頑張るぞぉ〜!
3:あのメイドさん……何者なのかしら……。
[備考]
参戦時期は刀鍛冶の里編終了後から無限城に落とされるまでの間です
※「ジョジョの奇妙な冒険」の参加者について、一定の情報を得ました。

【変なおじさん@志村けんのだいじょうぶだぁ】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いはしたくないねぇ
1:だっふんだ!
※「ジョジョの奇妙な冒険」の参加者について、一定の情報を得ました。


【クロちゃん@水曜日のダウンタウン】
[状態]:健康、上機嫌
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、キャッスルロストフルボトル@仮面ライダービルド、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]:基本行動方針:殺し合いが企画じゃなくて本当ならそんな事はしたくない
1:可愛い娘が2人も! 仲良くなりたいしんよ〜
2:殺し合いが本当? 怖いよ…
3:あのメイドさん、無視してばかりで悲しいよ〜。
4:呼んだ漫画のキャラがいるって、どういうこと?
[備考]
・殺し合いを芸人が持ち寄った「説」による企画と思っていましたが、正真正銘の殺し合いだと認識しました
・フルボトルをただの玩具と思っています。
・「ジョジョの奇妙な冒険」を読んだ経験があるため、ホル・ホース、岸辺露伴、ディアボロ、空条徐倫、プッチ、豆鉄礼に関しては、一定の情報があります。


245 : ◆vV5.jnbCYw :2020/11/03(火) 21:35:07 QBE7W0kU0
(先程……ひろし様がお仲間を庇ったため、ひろし様はケガをしてしまいました……。)


チェーンソーを抱えた瞳は、あることを考えていた。

(こちらの少女も、足手まといになるかもしれません……。
敵であれ味方であれ、ひろし様を惑わす者、危機を与える可能性のある者は、排除せねば……。)
常にひろしを見つめつつ、たまに牛飼娘を見つめる。
しかしその視線の種類は、全く異なっていた。


(彼女は私に奉仕しようとして、何が目的なのでしょうか……?)

そして上手く瞳を3人から離せたひろしもあることを考える。
どう考えてもスジが通らない、瞳の行動方針についてだ。


(本当に誰かのためになりたくて動いているのか、ひたすら誰かに隷属すれば殺されることはないと思うのか……あるいはこの世界で誰かに仕えることでリターンを狙っているのか………。)


どれもいまひとつはっきりしない。
自分の挙げた仮定のいずれかが真ならば、自分のみならず、他の四人の世話もすればよいし、全員の世話がキャパシティーをオーバーするとしても、扱いに差がありすぎる。


本当ならば自分と瞳の二人だけで行きたかった。
だが、牛飼娘は一刻も早く幼馴染に会うことを希望するあまり、同行を許してしまった。
最初の時こそ見知らぬ状況でヘタを打ってしまったが、逃げることだけは自身があった。


ただし、知っておかねばならない。
彼、そして、近くを歩いている牛飼娘には、共通していたことがあった。
それは未知の生物から襲われた経験があるため、人ならざる者の殺意には平和に暮らしていた人間に比べて敏感であることだ。
逆に、人間から向けられる、それらとは異なる殺意には多少鈍感であった。



どうにも不穏な空気が、辺りを漂っていた。
だが、それの正体は掴めなかった。




【C-4/ 黎明】


【ひろし@青鬼】
[状態]:健康
[装備]:ショックガン@ドラえもん
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない、瞳、牛飼娘と共にゴブリンスレイヤー、空条徐倫を探す
1:6人もいれば心強い……はずですが?
2:瞳への疑惑
3:ホル・ホース、プッチ、ディアボロへの警戒
[備考]
参戦時期は館から脱出した後です
※「ジョジョの奇妙な冒険」の参加者について、一定の情報を得ました。



【牛飼い娘@ゴブリンスレイヤー】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]:基本行動方針:殺し合いはしない
1:彼(ゴブリンスレイヤー)を探す
2:とりあえず瞳、ひろしと行動
[備考]
参戦時期は原作9巻終了後。
※「ジョジョの奇妙な冒険」の参加者について、一定の情報を得ました。



【粕谷瞳@リベリオンズ Secret Game 2nd Stage】
[状態]:健康
[装備]:チェーンソー@リベリオンズ Secret Game 2nd Stage 回復用キノコ×4@ペーパーマリオ オリガミキング
[道具]:基本支給品
[思考]
基本:ひろしを『ご主人様』として奉仕する 牛飼娘や他の仲間は隙を見て殺害する。
1:偶然であれ必然であれ、ひろしを惑わせる、あるいは危害を及ぼす可能性がある者をこっそりと排除する
2:先程の男(ラッド)はまた会うようなことがあれば排除する
[備考]
※参戦時期は本編開始前となります。
※「ジョジョの奇妙な冒険」の参加者について、一定の情報を得ました。


246 : ◆vV5.jnbCYw :2020/11/03(火) 21:35:24 QBE7W0kU0
【チョロプー@マリオシリーズ】
 普段は地面に潜っているモグラの姿をした雑魚モンスター
誰かが近づくと地面から飛び出し、攻撃を加える。


【ショックガン@大長編ドラえもんシリーズ】
 SFチックなデザインをした銃で、傷つけることは出来ないが、マンモス程度なら気絶させることのできる電磁波を放つことが出来る。
また、生物じゃなくても、ロボットの動きを止めたり、手錠の鎖を切ったりと、様々な使い方が出来る。
ただし、エネルギーは有限。何発打てば切れるかは不明。


【回復用キノコ@ペーパーマリオ オリガミキング】
赤い傘と白い軸で有名なデザインのキノコ。
食べると大きくなるアレではなく、キズを癒すのに使われる


247 : ◆vV5.jnbCYw :2020/11/03(火) 21:36:17 QBE7W0kU0
投下終了です。
タイトルは、「メンバーが増えたからといって良いことばかりではない説」です


248 : ◆vV5.jnbCYw :2020/11/03(火) 21:39:30 QBE7W0kU0
それと、今回の作品で、クロちゃんがジョジョの登場人物を知っているという設定を出しました
(現実のクロちゃんがジョジョについて知っているので)
この設定に対して、何か不都合がありましたら指摘お願いします。


249 : ◆vV5.jnbCYw :2020/11/03(火) 21:57:40 QBE7W0kU0
(連投すいません)
「日本の芸能人ならドラえもんやクレしんなども知っているのじゃないか」
と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、このクロちゃんは「水曜日のダウンタウン」のキャラクターであり、
「水曜日のダウンタウン」で、ジョジョの奇妙な冒険に関する企画(数珠つなぎ企画で一番過酷なのジョジョの鉄塔システム説)
をやったことがあるので、あくまでこのクロちゃんが知っている作品はジョジョのみということにします。


私は全て水曜日のダウンタウンの企画を見たわけではないので、番組内でこのロワの参戦作品が使われていれば、指摘お願いします。


250 : ◆vV5.jnbCYw :2020/11/03(火) 22:55:41 QBE7W0kU0
何度もすいません。
間違えた箇所があったので訂正


>>242
誤:自分が食べなければ、他の誰かが毒味をすることになるし、ここは自分が食べるべきだ。
もしも自分に毒が現れたら、他の誰かが怪しんでこのメイドを追い払うか退治するはず。

正:自分が食べなければ、他の誰かが毒味をすることになるし、ここは自分が食べるべきだ。
まだ始まったばかりなので、食べる食べないで不必要に事を荒立てたくない。
もしも自分に毒が現れたら、他の誰かが怪しんでこのメイドを追い払うか退治するはず。

>>245
誤:ひろしとしては、瞳の実力、本心、目的といったことを調べたいので、その意味で理想のメンバーだった。
少なくとも、この時の彼はそう思っていた。

正:ひろしとしては、瞳の実力、本心、目的といったことを調べたいので、その意味で理想のメンバーだった。
牛飼娘が付いてきたことを除けば。


>>243
誤:だが、牛飼娘だけは違っていた。
正:だが、牛飼娘とクロちゃんだけは違う反応を示していた。


251 : ◆vV5.jnbCYw :2020/11/11(水) 22:04:26 DusLa3aA0
デンジ、クッパ姫、野崎春香、ペテルギウス予約します


252 : ◆NIKUcB1AGw :2020/11/12(木) 23:29:28 t5/iQbYQ0
シャーロット・リンリン予約します


253 : ◆NIKUcB1AGw :2020/11/15(日) 15:18:12 B4Z7yZ8o0
投下します


254 : 勃発!グルメレース ◆NIKUcB1AGw :2020/11/15(日) 15:19:32 B4Z7yZ8o0
無人の平原を、大質量の物体がすさまじい勢いで走って行く。
ぶつかればその勢いで異世界転生できそうな迫力で走るその物体は、恐るべきことに生身の人間である。
シャーロット・リンリン。本来の歴史では、世界最高峰の海賊に上り詰める女傑。
幼い乙女である現在の彼女でも、普通の人間を遙かに上回る体格と身体能力を持っている。

「さっきから走り回ってるのに……誰もいないなあ〜」

リンリンが走り回っていたのは、他の参加者を探すためだった。
先ほど流れた放送も、自らの意志で殺戮を決意したリンリンにはさほど意味はなかった。
名簿に関しても、シスターカルメルや共に育った仲間たちの名前がないのであればどうでもいい。
いい人間は従え、悪い人間は殺す。リンリンの思考は、いたってシンプルである。
だが、肝心の人間と遭遇しないのではどうしようもない。

「うーん、ちょっとおなか減ってきたかな……」

半ば無意識に、リンリンの口から愚痴がこぼれる。
大量のセムラを食べたとはいえ、映画館を半壊させた大暴れとここまでの全力疾走でそれなりにカロリーを使ってしまっている。
まだ腹ぺこというほどではないが、多少の空腹感はあるという塩梅だ。
そろそろ、何か食べ物を探そうか。
リンリンがそんなことを考え始めたその時。
彼女の前に、3体の異形が飛び出してきた。
それは、人間に近い姿をしていた。だが、明らかに人間ではなかった。
なぜなら、体のパーツが立方体や四角錐で構成されているからだ。
「おどるポリゴン」。彼らはそう呼ばれる魔物だった。

「何だ、おまえたち。おれの邪魔をするなら、容赦しねえぞ」

目つきを険しくし、リンリンが言い放つ。
人間でないなら、野生の獣と同じ。攻撃してくるようならば叩きのめす。
リンリンが放つ殺気は、並の人間ならそれだけで戦意を喪失するようなものだった。
だが、ポリゴンたちはまるで意に介さない。名前の通り踊るように回転しながら、奇妙な呪文を唱え始める。

「あぁ? 何をブツブツ……」

リンリンの言葉は、途中で途絶える。
彼女の体に、異変が起こったからだ。

「あれ? 急に、腹が……」

ポリゴンが唱えた呪文は、「ハラヘリー」。
ストレートなネーミングでわかるように、対象の腹を空かせる呪文である。
動きが止まったリンリンに対し、ポリゴンたちは続けざまにハラヘリーを浴びせる。
たちまち、まだ余裕のあったリンリンの胃袋は、空っぽになってしまった。
うずくまり動かなくなったリンリンを見て、ポリゴンたちは自分たちの勝利を確信する。だが次の瞬間、彼らは思い知ることになる。自分たちが、虎の尾を踏んでしまったことに。

「ぐおおおおおお!!」

獣じみた雄叫びと共に、リンリンの腕が振るわれる。
その圧倒的な力は、ポリゴンたちを3体まとめて木っ端微塵に粉砕した。

「こいつらはダメだ……。硬くて食えたもんじゃない……。
 食い物……。食い物ぉぉぉぉぉぉ!!」

理性のかけらも見られない目つきで叫ぶリンリン。
その時、不幸にも彼女の視界に入ってしまったNPCがいた。
タマゴのような見た目の魔物、ぴーたんだ。

「タマゴなら……食えるよなぁぁぁぁ!!」

悪鬼のごとき笑みを浮かべ、リンリンはぴーたんに突撃する。
それに対し、ぴーたんは一目散に逃げ出した。
元々臆病な魔物であるぴーたんが、こんな恐ろしい相手に迫られて逃げないはずがないのだ。

俊足の魔物であるぴーたんだが、リンリンのスピードもすさまじい。
互いに譲れないレースが、ここに始まった。


255 : 勃発!グルメレース ◆NIKUcB1AGw :2020/11/15(日) 15:20:41 B4Z7yZ8o0


【G-6/黎明】
【シャーロット・リンリン@ONE PIECE】
[状態]:空腹による暴走
[装備]:天逆鉾@呪術廻戦
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0?2
[思考・状況]基本行動方針:人間は殺す。マザーの夢を叶える。
0:何か食い物!
1:人間は殺しつくす。
2:お菓子が欲しい。
[備考]参戦時期は六歳の誕生日直後、シュトロイゼンに出会う直前より参戦です。


【おどるポリゴン@風来のシレン】
NPC。
全身がポリゴンでできたモンスター。
常に相手の進行方向に立ちはだかり、満腹度を低下させる呪文「ハラヘリー」をかけてくる嫌がらせ特化モンスターである。


【ぴーたん@風来のシレン】
NPC。
全身がタマゴの殻(のようなもの)で覆われ、片目と爬虫類のような両足及び尻尾だけがのぞいているモンスター。
倍速移動の能力を持ち、プレイヤー(このロワの場合は参加者)から逃げるように移動する。
倒すと、必ずおにぎりを落とす。


256 : ◆NIKUcB1AGw :2020/11/15(日) 15:21:45 B4Z7yZ8o0
投下終了です


257 : ◆vV5.jnbCYw :2020/11/19(木) 16:04:37 Z65QA70Y0
すいません。予約破棄します。


258 : ◆EPyDv9DKJs :2020/11/20(金) 16:45:39 BCvFUCUc0
投下します


259 : ◆EPyDv9DKJs :2020/11/20(金) 16:45:57 BCvFUCUc0
「これは、何とも派手な…」

 多数の廃車があるので構造を知る手段はあるにはあったとはいえ、
 技師ではないカリオストロが作り上げるのは結構な時間がかかる。
 開始の放送を跨ぎ、次の放送も待つ可能性もあったがその前に完成させた。
 錬金術の開祖と呼ばれるだけあって本当に常識はずれだと百合奈は悟る。
 デザインはファンシーさ溢れる色と共に彼女のウインク姿が側面に描かれ、
 所謂痛車のキャンピングカーが鎮座しており、強烈なビジュアルに何とも言えぬ表情だ。
 お嬢様の百合奈にとっての車とは送迎の時に使う高級車が当たり前なので、
 こういうサブカルチャー全開なのとは正直縁遠いのもある。

「ライフスタイルにあったものを選ぶとは言いますが、これは…」

「ライフスターゲーム? 何の話だ?」

「…なんでもありませんわ。」

「さっきの魔物みたいな連中もいることだからな、
 耐久性をある程度重視した都合速度とか不便も多いが、
 ある程度殴られてもいいようなレベルには仕上がってるはずだ。」

 言われてみると窓ガラスは数枚重なった構造だったり、
 見た目のファンシーさとは裏腹に分厚さのあるフレーム。
 数々のNPCがいる中でそこまで期待できるかは別にしても、
 通常の車よりは遥かにこの場においては適した車とも言えるだろう。
 ある意味彼女の言うライフスタイルに合った乗り物そのものだ。
 (因みにライフスターゲームは、空の世界における人生ゲームである)

「と言っても、これは車の形をした魔力で動かすものであって、
 厳密には車じゃあない。俺様は技師でもないし、半日動けばいい程度だ。」

「それ以上は?」

「一例として前半分と後ろ半分が分離して大事故になる。」

 こういうのはシロウやラカムと言った方が適しており、
 故にこれは動かせるものの本物よりもずっと劣化したもの。
 過信しすぎて無茶なことをされればあっという間にお陀仏するだろう。
 あくまで歩いて誰かを探すよりかはまし、そんな気休めである。
 廃材から動かせるものを用意できただけでも十分すぎる成果で、
 二人ともそこに不満など欠片もなかった

「不良品の次元を超えてますわ…」

 …不安はあるが。
 そりゃそうだ。車が半日動くだけで分離するなど、
 こんな車彼女の世界であれば間違いなく車検は通らない。
 専門ではないカリオストロが、かなり無理して作った涙ぐましい努力が伺える。

「ところで、これ動力源は?」

「本来ならガソリンですけど…」

「安心しな。ツバサ達が使ってたタービンリアクターが入ってる。」

 二人の疑問に小悪魔めいた笑みを浮かべるカリオストロ。
 ケッタギアには火の魔力を込めた『タービンリアクター』と言う動力装置があり、
 これを用いて爆発的な推進力が得られるのだが、これに近しいものを組み込んだ。
 しかし、ツバサやダヴィーナと違ってケッタギアも専門外。ほぼ知識だけを頼りにしている。
 かなり魔術よりの継ぎ接ぎな代物ではあり、車もどきな性能も合わせてかなりのキメラ的乗り物。
 一応彼女の理論上は半日は動かすには問題はないし、歩くよりは消耗しないのは一つの強みだ。

「団長ちゃんのナイトサイファー…走艇を参考は無理だったの?」

「廃車と言うばらせるもんがあったから今回はできただけだ。」

 所謂レース用の為のマシンとも言うべき走艇。
 飛行能力は騎空艇程ではないにしても速度は騎空艇以上。
 ケッタギアの比にはならない速度で移動できるものの、
 見様見真似すらできない中での作業は開祖でも流石にできない。
 ケッタギアもどきを組み込んだのは、一種の妥協案に近いものだ。
 妥協、と呼ぶには十分すぎるスピードは期待できる辺りは、
 やはり並々ならぬ実力を持った彼女だからこそでもある。

「にしても、参加者は随分面白えことになってるじゃねえか。」


260 : ◆EPyDv9DKJs :2020/11/20(金) 16:47:14 BCvFUCUc0
 作業で手一杯だったため今しがた名簿に目を通したが、
 内容を見たことで今までで一番嬉しそうな表情をしている。
 悪魔のような笑みは、少女らしからぬ悪い顔だ。
 二人は先に目を通したものの正直困惑するしかない。
 ミルドラースは珍妙な面子を集めて何を考えてるのか。
 逆にこんな名簿あり得るのかとさえ疑問に思うも、
 そもそもカリオストロの実力は団でも指折りだ。
 ベルゼバブに対して彼女は半ば必須の存在でもあった。
 その彼女が手玉にとられてる時点であり得ないは通らない。
 一応、過去にパラケルススに手玉にとられたことはあったが、
 あれは自分の身体が人体練成の身体による所謂特効に等しい。
 何の抵抗もなく拉致られた以上、この名簿も真実なのだろう。
 一方で名簿を見て笑みを浮かべたのはその興味だけではなく。

「それに意外と悪くない状況だな。」

 単純に面識のある人物が思いのほか多い。
 楓、卯月、美波、コルワ、エレン、兼定。
 一時を共に旅した存在や、今も同行している団員達。
 十二分に戦闘はこなせるし疑心暗鬼になりがちな場面で、
 信頼を置くことができる人物が多いと言うのは中々にありがたい。
 (勿論、参加してない方がいいと思う部分も存在している)
 参加者の一割近くが味方だと判断できただけでも情報戦において有利だ。
 加えて名前の偏り方。恐らくは身内か知人で分けられてるのもあるはず。
 となれば卯月達の左右に並ぶ、百合奈曰く日本人の名前も関係者の可能性は高い。
 全員を信じるのは早計が過ぎるが、一つの目安としては十分なものになった。

(だがどういうことだ?)

 アイドルと刀剣男子は別の世界の人間。
 だから名前に距離があることはおかしくない。
 それぞれの世界を想定して名簿分けしているのはなんとなく察する。
 しかし、だ。エレン・イェーガーだけ離れた位置にいるのはどういうことか。
 彼は暗黒大陸エスティオス島にいた調査兵団の一人…立派な空の民である。
 あの島に国があったことも驚かされる程に情報がない閉鎖的な島だとしても、
 身辺調査はある程度しているだろうに、何故こんなに離れているのだろう。
 ひょっとしたら同姓同名で別人の可能性は想定しておきたい。
 シャーロット・E・イェーガーのように同じイェーガーもいることだ。
 可能性は無きにしも非ずと言ったところで少し気を付けておく。

「後は、いくつか規則性のある人に出会えれば御の字よね。」

 百合奈の世界における偉人と似た名前を持った銀時達や、
 ゴブリンスレイヤーあたりの名前ではなく肩書きのような人達。
 この辺りは名前のまとまりから、関係を持った人物であると推測できる。
 出会えばそれだけで連鎖的に情報が増えていく。

「情報の整理は程々にしてさっさと運転をやるぞ百合奈。」

 問題はないだろうけど車を知ってる百合奈の理解は必要不可欠。
 それに此処での怪我は洒落にならないことも理解している。
 ぶっつけ本番で事故が起きても困るので指示を仰ぐも、

「え?」

 『私が運転するんですの?』とでもいいだけな表情で自分を指す。
 百合奈は運転免許なんてないし、運転の経験なんて更にない。
 レーシングゲームなどの類すらお嬢様学校にいた彼女には無縁だ。

「え? じゃねえだろ。お前以外に誰が運転するんだよ。」

「カリオストロさんがするのではなくて…?」

「俺様は万が一のタービンリアクターの燃料タンク役だ。
 ナルメアでもいいんだが、安定性を考えると俺様になる。
 第一、俺様の身体で運転できるような設計にもしてねえしな。」

 カリオストロは子供の体躯。ハンドルもアクセルも届きにくく前も見づらい。
 ナルメアも種族の都合、年齢とは裏腹に彼女とほぼ変わらない身長。
 となれば消去法で百合奈が運転すると言う結果に至るのは必然である。
 車の送迎の際にちらりと見た程度の知識で、果たして大丈夫なのか。





「運転って思ってるよりは普通なのね…」

 不安の中運転してみるも、思いのほか操作は普通ではあった。
 安全運転を心がけたから…と言うのは少々否定できなことだが、
 思ってるよりはましに操作できてるだけ今は及第点だ。
 とは言え運転の緊張で試運転後は居住スペースのベッドに寝転がる。

「大分遅れちゃったけど、これで動けるわね。」

 放送を跨いでのことなので朝も近くなってしまっている。
 周囲には何も起きてないが、他の場所では起きてるに違いない。
 確かに一割近い参加者が味方だと保障できるのは一つの強みだ。
 一方で『現在における情報戦』では三人は遅れを取っていた。
 誰が活きているのか、誰が敵なのかの現在を把握しきれていない。
 早々に誰かと出会えることを、叶うならエレンやコルワ達団員に出会いたい。


261 : ◆EPyDv9DKJs :2020/11/20(金) 16:48:05 BCvFUCUc0
「他の連中にも早いとこ会うことを願いたいもんだな…」

 口にはしないが、その可能性は高くないと結論が出ていた。
 人が増えれば増えるほど、その割合は必ず増えてしまうものだ。
 グランサイファーだって同じだ。基本的には善側ではあるものの、
 大量殺人を事故とは言え引き起こしてしまったミレイユ等傷持ちは多い。
 と言うより、カリオストロも出会いがしら団長達を消すつもりだったので、
 あまり人のことは言える立場でもなかった。

 多ければ多い程何かしらの問題を抱えた人物がいるように、
 殺し合いに乘りたがるタイプの人物はきっと存在するのだろう。
 いなければミルドラースが危惧した停滞に陥ってしまうのだから当然か。
 カリオストロの推測では乗っている人物を想定するとよそ二十人前後。
 円滑に、となれば必ず自分ともいい勝負ができる人物も何人かいるはず。
 同じ団に身を置いた以上皆それぞれの力は理解してるし、頼もしいとも思える。
 だが不安要素は捨てきれない。エレンは巨人化の暴走、コルワは本領は支援能力。
 ベルゼバブのような相手をポンと出されたらカリオストロだってきついものがあり、
 奴のような最強クラスの実力者と他が出会えば勝敗は…考えたくないことだ。

「さて…百合奈、休憩時間は終わりだ。
 ナルメアが助手席で俺は後ろの方で待機だ。」

『例の奴できたのか?』

「ええ、分かってますわ。」

『できましたが、まだこうかはためせてないのでなんとも。』

 建前と筆談をこなしながら、百合奈は筆談の紙と共にカリオストロに渡す。
 少々歪だが、アンテナの付いた小型のジャマーと言われれば、
 分かる人には十分通じるであろう見た目をしている。

『ま、ぶっつけ本番で首輪じゃ危険だろうな。』

 できるかどうかも分からない中首輪での実験は危険だ。
 何かしらの保障があるまでは、これを試すのはしばらく後になる。

「目的地はどちらでして?」

 運転席へと乗り込んで、エンジンをかける。
 ナルメアは助手席で敵影や見落としてるものをサポートしていき、
 カリオストロは後ろの席でナルメアが見た敵を天窓を開けて牽制する、
 と言うスタイルを取っており、理想的な役割分担だ。

「C-1。」

「B-4じゃないの?」

 急ピッチで出来がいいとは言えない、
 高い天井に届く為強引に融合させた脚立の強度を確かめつつ答える。
 二人は人を探すならは名前のある場所…現在地からすれば南下して、
 ホーンテッド・ヒルズを目指していくのがセオリーだと思っていた。
 彼女の指定は名もない場所。地図の荒い画像だけでは、
 駐車場のような整地された場所があるだけ。
 特別な意味をあまり感じさせない。

「籠城する奴を探すんだよ。」

「…見つけてどうするんですの?
 失礼ながら、保護しつつ戦う余裕があるとは余り思えませんわ。」

 ゆっくりと車が動き出しながら、百合奈は怪訝な顔をする。
 はっきり言って戦力は充実しすぎている。前衛後衛もしっかりしていて、
 自分以上にバリバリ戦闘ができるエキスパートがいるのだから。
 それでも、誰かを守りながらの戦いと言うのは非常につらいものだ。
 親友である撫子が広沢に人質として取られた時のことのように、
 本来ならばどうとでもできた相手でさえ人質がそれをさせてくれない。
 籠城してるなら戦えない筈。自分でさえ足手まといになりかねないのに、
 これ以上自分以上に庇う存在が出てきて対応しきれるのか怪しくなってしまう。
 何より自分たちは充実してるだけあって、乗った参加者との衝突は多くなるはず。
 乗せた方が寧ろ危険を冒すことになるから、そういう意味でも気乗りはしなかった。

「いや、できれば優勝狙いの奴だな。」

「? 優勝狙いの相手を探すならなおのこと名のある場所を狙うのでは?」

「百合奈ちゃん曲がって!」

 空を見上げながら思案する百合奈だったが、
 壁が迫ってることをナルメアに言われ急カーブ。
 大事には至らないままジャンク・ジャンクションを出る。

「流石に頭の回転させる余裕はないってか。」

「本来運転中に気を逸らす話は危険と言うことが、
 改めて身に沁みましたわ…それで、何故そちらの相手を?」

 本来ならばすぐに答えが出せそうではあるが、
 人生初の、しかも無免許運転と来ている。
 心に余裕がないのは当然でもあった。

「籠城する奴の中には漁夫の利を狙う奴もいる。」

「なるほど。」


262 : ◆EPyDv9DKJs :2020/11/20(金) 16:48:53 BCvFUCUc0
 言われてみれば確かにそうだ。
 積極的に動くだけが優勝ではない。
 戦局を見極めて奇襲をかけてくる。
 何時の時代だってそういう戦術はあるものだ。

「しかし出会って何を…」

「決まってんだろうが───」










「殺す。」

「!」

 静かな周囲に響き渡る急ブレーキ。
 二人とも唐突ではあったがその辺の対策はしてたので、
 余計な怪我は負ってはいないが、百合奈が一番問題でもあった。

「失礼…少々甘い考えをしていましたわ。」

 頭に手を当てながら、冷静になるよう促す。
 ナルメアやカリオストロは戦いに身を置く存在。
 誰かを手に掛けることへの倫理観は大分違うはずだ。
 理解していたつもりだったし、恐らく意図的に表現を避けていた。
 今言ったのは、自分がそれに対する反応を確認するための発言だ。
 反応さえ分かれば行為に対する忌避感がどれだけの物かわかる。

(正当防衛と言えども、することはそういうことですものね。)

 一般的な教養がある彼女にとって、当然殺人なんて忌避するものだ。
 先ほどのNPC蹂躙はまだ現実離れしてた状況に理解が追いつかなかったが、
 今度はそうはいかない。次相手するのは自分と同じ人間かもしれない。
 相容れぬ存在を止めることはできないし、生かしたまま放置も危険。
 此処では当たり前の行為だ。殺されないためにするには相手を殺す。
 それが手っ取り早いものであり、同時に此処には法も秩序もない。
 だとしても殺人と言う行為に対してはどうしても抵抗は出てきてしまう。
 学園へ仇名した広沢や、自分をはめた学長にもその技術を以って組み伏せたが、
 別に双方ともに殺さず法的措置によって解決させるつもりだったわけだ。
 (その過程で男性の股間を蹴り飛ばしたが、あれも一応命には別条はない…多分)
 この場では甘いとは分かってる。だからこればかりは受け入れなければならない。
 自分がこの先行うであろう行為は、決して明るいものではないのだと。

「汚れ仕事なんてのはこっちじゃ慣れっこだ。
 そういうのは俺様達に任せておけばいいんだ。さっきみてーにな。」

 魔物との戦いも、戦果は概ね二人による蹂躙。
 この先頼りになる…と言うよりは頼らざるを得ないだろう。
 自分の剣術は優れたものであると言ってもあくまで常人のそれ。
 常人の次元を超えたこの舞台において通用するとは言い切れない。
 親切心に溢れた発言に、余計に申し訳なく思ってしまう。

「いいえ。私達は運命共同体…一人だけ泥をかぶらない。
 そんなムシのいい話はありませんわ。理由をお聞かせくださる?」

 先ほども彼女達に助けられて、どこまで甘えれば気が済むのか。
 自分は二人の足を引っ張るために同行しているわけではない。
 自分の正義感に基づいてミルドラース達へと立ち向かう。
 今一度自分に喝を入れて、理由を再度尋ねた。

「敵対する奴の芽を摘むってのはあるが、
 首輪が殺し合いを強制させるだけのものとは思ってない。」

「と言うと?」

「首輪にも使い道があるんじゃあないかってことだよ。」

『首輪の内側が知りたいんだよ。
 内側を確認しようにも、どの程度力を入れると爆発するかもわからない現状、 
 無理に内側を調べようとしてお陀仏…なんてことになったらシャレにならない。』

「優勝するために首輪を武器と交換してくれたり、
 何かしらメリットを与えてる場所があると思っている。
 持ってる奴のほとんどは、殺し合いに乘ってるだろうしな。」

 首輪はどうやっても外すことができないが、
 首を斬り落とせばそれも不可能ではないだろう。
 当然、首を切り落とす奴がまともな奴の可能性は低い。

「確かにもしそういうのがあれば、
 弱い人でも勝てる可能性があるって思わせられるわ。」

『サンプルってわけね。』

 突然星晶獣等の強力なものがあれば、
 戦闘が不得手な存在でも勝てる見込みは十分。
 充実させれば上位の参加者とも渡り合えるはず。


263 : ◆EPyDv9DKJs :2020/11/20(金) 16:49:55 BCvFUCUc0
「つっても、これは損得の概念で行った場合の理想さ。
 最悪のケースだが、死体を見つければそれでいいって話もある。」

 首輪の使い道を明言してないことから、
 死体を野ざらしにしてる参加者は多いはず。
 となればその可能性に気付いたか戦闘を忌避する参加者が、
 死体から首輪だけを持っていくと言う漁夫の利もありうる。

「とは言え、首輪を多く持つのはリスクもありますわ。」

『たしかに、それはひつようですわ。』

 先ほどカリオストロが言ったように、
 多く持てばそれだけ非道徳的な行為をしてることへの証左。
 最悪猟奇的な殺人鬼と誤解されてしまう可能性だってある。
 カリオストロを知ってる人物ならまだしも残りの九割の参加者に、
 信用を置ける人物だと言う証明をするには少々難しくなるだろう。

「ついでに、死んだ奴の首輪が爆発しないとも限らないしな。
 リスクはあるが、集めておくに越したことはないと思うがどうだ?」

 表向きは首輪を集めて有事に備える。
 実際は首輪のサンプルでジャマーの精度や構造を調べていく。
 リスクは否めないものの、どちらとしても気を付けたいことだ。
 もしかしたら次の放送でそのことを口にする可能性だってあり、
 そうなればサンプルを探すことが叶わなくなるかもしれない。

「私は問題ないけど、百合奈ちゃんは?」

 カリオストロも言ったが、
 生きるためとは言え死者の首を斬り落とす。
 これも彼女にとっては倫理観から大分離れた行為になる。

「…言ったはずですわ。私達は運命共同体。
 人道から外れた行為であれど、一人だけ汚れないなんてできませんわ。」

 完璧な断言は状況を前にするまでは少し断言できないような気はしているが、
 決めた以上は貫くつもりで、筆談は不要と判断してアクセルを踏み込む。
 先ほどまでの安全運転重視の速度はもうやめる。
 日本の公道であればスピード違反になる程度の速さで舞台を駆け抜けていく。
 最低限判断できる程度には速度は出さないので理性のブレーキはある。

「まあそういう奴がいないならいないで、
 他の参加者と接触していけばいいだけだ。
 対象が動くか動かないかってだけの話さ。」

 籠城を決め込む理由に、
 自分がそんなに強くないからと言うのもある。
 そういう手練れなら別段苦戦もしないだろうから、
 目的を果たす意味合いでも楽だから考えただけだ。
 そこまでの問題でもない。

「カリオストロちゃん。右前方に敵影…NPCね。」

「あれだけ派手にやったのに残党がいたのか…了解だ。」

 殺し合いに余りに似合わない、
 痛車のキャンピングカーが会場を駆け抜ける。
 場違い極まりない姿こそしているものの、
 搭乗者の三人は殺し合いに反旗を翻す者達だ。
 知識と武力を兼ね備えし華やかな三人組は、
 ようやくスタートを開始する。

【B-2 ジャンク・ジャンクション周辺/早朝】

【月読百合奈@黒衣の少女探偵 月読百合奈】
[状態]:健康、無免許運転による緊張と精神疲労(中)、
[装備]:小烏丸天国、カリオストロ製作痛車@現地調達?
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2(確認済み)
[思考]基本行動方針:この殺し合いを止めて、主催には報いを受けてもらう。
1:参加者を探す。一先ずはC-1へ。
2:ナルメアさんのことが少しだけ理解できた気がする。
3:不道徳の行為がこの先にあれど、覚悟は決めた。
4:派手なのは何とかならなかったのかしら…
[備考]
※原作終了後からの参戦です。
※空の世界を軽くですが理解しました。

【ナルメア@グランブルーファンタジー】
[状態]:健康
[装備]:閻魔
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考]基本行動方針:この殺し合いを止めるために主催は倒す。
1:参加者との接触。できれば情報が得られるタイプの人。
2:助手席から敵を視認してカリオストロちゃんへ知らせる。
3:コルワさんや他のみんなは無事かしら。
[備考]
※最低でも100フェイトエピソードが終わった後からの参戦です。




(さて、奴ら何を考えてるかだ。)


264 : ◆EPyDv9DKJs :2020/11/20(金) 16:51:59 BCvFUCUc0
 まだ判断材料がなさすぎて何とも言えない、主催者の目的。
 心当たりはいくつかあり、一先ず三つほど軽く考えた。
 情報が揃えば新しいのも出てくるので、気休め程度だ。

 一つ目は分かりやすく生贄。サラやコウのように典型的な儀式の供物。
 至ってシンプルであり、人数をかき集めるには丁度いいものではある。
 疑問点は主に二つあり、一つは態々蟲毒のように殺し合わせる必要性の有無。
 殺し合いにして殺意や憎悪と言った負の感情を蔓延させるのが必要なのか。
 もう一つは自分は当然でナルメアも全空一の最強集団十天衆を相手に、
 ある程度戦うことができているのでわかるものの、百合奈は剣術こそ卓越されてるが一般人。
 彼女を過小評価するつもりはないが、生贄の質は余り求められてない風に受け取れることだ。
 正直典型的過ぎて、これだけの規模でやるにしては少々地味すぎる計画であり、
 可能性は低いと思っていた。

 二つ目に彼女が知る敵対組織『敵』の可能性。
 元々は月へ行くと言う理想を持った集団ではあったが、
 それを知る人はカリオストロ含め誰もいなくなっている。
 今では『敵』と呼ばれる空の世界で紛争をばらまいては空の民を武装させ、
 結果的に戦力を強化させて月の民へと対抗すると言う方針を取っている集団。
 その組織から離れたゼタやバザラガ達とは同じ団員なので相応に理解している。
 ミルドラース達はそんな風に自分たちが用意した武装を此処で試しているのではないか。
 ご丁寧に便利な支給品をよこしたのも、使い手の立ち回りを見たいからだろう。
 NPCがいるのも、データ不足に陥った時の為の保険と思えばこの扱いの悪さも頷けた。
 単純にミルドラースの魔王は自称で『敵』であるのならばある意味わかりやすい。
 と言うより、空の世界で身近な魔王ことコンスタンツィアの存在がちらついており、
 彼女が魔都シャロームの王とは思えぬ振る舞いをしているのもあってか、
 どうにも魔王と言う印象が軽いものに見えてしまってるのは否めない。
 それと、これだけの行為ができるのなら今更月の民の何を恐れるのだろうか。
 目に見えないだけで、彼らも涙ぐましい努力をしている可能性は否定できないが。

 三つ目は二つ目とどっこいどっこいなものだが、
 ある意味これが現状において一番あり得そうなこと。
 ミルドラースの魔王が自分の知る魔王と違う意味合いであれば納得もしやすい。
 アーカルムシリーズ。星晶獣『ザ・ワールド』によって誕生した十体の星晶獣。
 星の民と空の民による覇空戦争の記憶を只管にシュミレートし続けることで、
 空の民に勝てるだけのデータを集め終えたら顕現。ワールドの目的新世界創造の為に動く傀儡。
 ある意味この舞台はそれなのではないだろうか。自分たちはアーカルムシリーズのデータ収集要因と。
 空の民だけでは限界を感じて、数多の世界から参加者を募らせて更なるデータ収集をする。
 それを考えると殺し合い以前に、一般人では対抗できないNPCの存在は大きいものだ。
 参加者と出会わずともデータ収集が可能だし、首輪を用いることで自分達のような反逆者も、
 否が応でも戦いに身を投じなければならないので強制的なデータ収集をすることができる。
 つまり生死は最早関係がなく、戦った時点で相手の思惑通りと言うことでもあるのだ。
 アーカルムシリーズを従えた賢者の多くは団長の実力を利用したデータ収集を行ったが、
 此方なら善意も悪意も関係ない。必要に迫られては剣を抜かざるを得ないのだ。
 百合奈のような一般人も支給品による立ち回りでのデータ収集が得られるし、
 当然自分やナルメアのような実力者のデータも得られて一石二鳥どころではない。
 いくつもの世界へとアクセスできる力も理由も、十分に納得できるものだ。
 問題はアーカルムシリーズは伝承に残る覇空戦争をシュミレートし続けた星晶獣。
 異なる世界が入り乱れてる可能性が高いとは言え、こっちのデータが勝るのかは疑問が残る。

 そう思ってるのに二人へ言わなかったのは、
 これを言ったからと言ってどうにかなるかと言われたら…ない。
 特に後半二つは戦闘をすること自体が相手の思惑に繋がってしまうので、
 変な雑念を入れて戦闘に支障をきたしてしまう可能性だってありうる。

(しかも、これはあくまで俺様達がいた世界ってだけだしな。)

 他の世界にこれ以外の明確な理由があるのかもしれない。
 その辺と照らし合わせてようやくまともな考察が始められる。
 それまでは考えてはいるものの、口にはしないだろう。
 簡単な考察でしかないもので惑わすわけにもいかない。

 天才が故に頭を悩ませる。
 しかし身体はちゃんと仕事を果たすべく、
 まだ生き残っていた周辺のNPCを蹴散らし始める。


265 : ◆EPyDv9DKJs :2020/11/20(金) 16:54:23 BCvFUCUc0
【カリオストロ@グランブルーファンタジー】
[状態]:魔力消費(中)、疲労(中)
[装備]:シンフォーザベルゼ
[道具〕:基本支給品、ランダム支給品×2、百合奈作即席ジャマー@現地調達?
[思考]基本行動方針:殺し合い? 下らん。
1:名前のない建造物を調べていくが、何もなさそうなら普通に人探し。
2:天窓から邪魔なNPCは先に蹴散らしておく。
3:首輪解除のための材料集め、基首輪を集める。
4:↑乗ってるが引きこもってる奴ができれば理想だがな。
5:首輪集めるメリットは他にもあるかもだから気を付けておくか。
6:命の輝き…少し興味があるな。
7:ミルドラースはなにをかんがえてるんだか…考察材料が欲しい。
[備考]
※参戦時期は少なくともイベント『アルケミスト・デザイア』以降
※兼定、美波、楓、卯月、エレンとの面識はあるものの
 兼定   :アニメ『活撃刀剣乱舞』の世界の兼。即ち本家とは面識がない
 エレン  :空の世界の住人。つまり平行世界の人間なので当然面識はない
 デレマス勢:夢落ちと思ってる。ただ二人と違い面識がある可能性はある

※首輪には何かしらの使い道があると推測してます
 しかし、首輪の解除もしないうちに消費するつもりはありません
※簡潔な程度に主催者の考察として
①:典型的な儀式の供物(可能性:低)
 ・百合奈と言った一般人も巻き込んでて質を問わない?
 ・憎悪や殺意を混ぜ込んだ蟲毒のような類か?
 ・NPCだけでやり合えばいいようにも感じる
 ・疑問:規模の割にやることが地味すぎる
②:ミルドラースは『敵』でありその為の戦力強化(可能性:中)
 ・一般人や支給品の存在意義が確立される
 ・支給品に自分たちが調整した武器を試すことができる
 ・NPCの存在意義も出てくる
 ・疑問:こんなことできるなら月の民も余裕で過剰
③:アーカルムシリーズに使う戦闘データのシュミレート(可能性:大)
 ・一般人や支給品は勿論、NPCにもばらつきはあるが意味がある
 ・別の世界の人間を呼び込むことで更なるシュミレートを重ねられる
 ・首輪の存在理由もこれにょって乗る、乗らない関係なしにデータが集めやすい
 ・疑問:こっちの方が質のいいデータ収集になるのかと言う疑問


266 : ◆EPyDv9DKJs :2020/11/20(金) 16:57:12 BCvFUCUc0
【カリオストロ作自動車@現地調達?】
ファンシーさと自己主張が大変激しい痛車キャピングカー
廃車からそれっぽいものを作った魔術要素全開の産物
天窓から上半身を出せるように脚立が強引に融合されてる
装甲や窓は分厚いので外部からの攻撃に対する耐久性は(見た目の割に)高い
ガソリンの代わりに火の魔力を燃料、タービンリアクターで動かしている
同時に車にはできないブーストができるので瞬間速度はかなりの代物
ただ、所詮は技師ではなく錬金術師による製作。それっぽいだけのもので、
少なくとも長持ちは期待できない。半日動かせればおつりが出る程度の即席
あくまで何なければ半日動くだけなので、何かしらの要因で寿命は一気に縮む
ガス欠基魔力切れ想定で居住スペースの方に燃料に繋がってる回路があるので、
最悪カリオストロが本当に燃料タンクとなって動かすこともできる

【百合奈作即席ジャマー@現地調達?】
同じく廃材を用いて、趣味で推理小説を大量に読んだ結果、
そういう知識も手にした百合奈による携帯電話ぐらいのサイズのジャマー
手先はピッキングなどを含めてかなり器用なものだが、
それでも知識ありきで作ったものなので性能は未知数
一応何の役にも立たないと言う程のものではないだろう
(効果の精度は後続の書き手にお任せします)


267 : ◆EPyDv9DKJs :2020/11/20(金) 16:59:11 BCvFUCUc0
以上で『蒼空の縁』投下終了です
補足になりますがグラブルはプリキュア、ペルソナ5ともコラボしていますが
前者は初代、後者は最初の5なので両者ともに面識はありません
ただペルソナやプリキュアなどの専門用語はある程度通じるかと
(近日来る鬼滅コラボによって日輪刀などへの理解もあるかも)

またカリオストロは現在火属性がないので、
タービンリアクター周りについては少し独断になります
カリオストロが火の魔法ができないとは思えないのと、
ケッタギア使用者が火属性だけとも限らないようなので、
一応理由はあります問題がありましたら修正・または破棄します


268 : ◆EPyDv9DKJs :2020/11/20(金) 17:05:09 BCvFUCUc0
あ、すいません。細かすぎることですが『蒼空のエニシ』です、失礼しました…


269 : ◆vV5.jnbCYw :2020/11/21(土) 22:05:27 dS5JfZCU0
投下乙です。
コラボ作品のネタを出せるのも、コンペロワならではですね。
どちらも未把握の作品ですが、このロワの重要なポジションになりそうです。

では、予約を破棄した作品、投下しますね。


270 : ◆vV5.jnbCYw :2020/11/21(土) 22:07:04 dS5JfZCU0
投下乙です。
コラボ作品のネタを出せるのも、コンペロワならではですね。
どちらも未把握の作品ですが、このロワの重要なポジションになりそうです。

では、予約を破棄した作品、投下しますね。


271 : ◆vV5.jnbCYw :2020/11/21(土) 22:08:36 dS5JfZCU0
ここは、バトルロワイヤルの会場の中でも、大きな湖の東岸。


「ギャハハハハ!この湖、ウマそうな魚がいっぱいいるぜ!!」
「おいデンジ!!魚を食いたいなら、これを使えばいいだろう!!」


金髪で鋭い目つきの少年、デンジは子供のように湖で手足をバタつかせている。
チェンソーの悪魔、ポチタと心臓の取引をしたデビルハンターである。
そのデンジに対し、釣竿を使うことを提案したのは、クッパ姫。
キノコ王国を何度も騒がせた大魔王……がスーパークラウンによって、女体化した姿だ。


「なんだそりゃ?ま、オレならこんな風に取れるけどねー!!」
ザブンと水中に潜ったデンジは、新鮮な魚を見せつける魚屋か漁師のように、魚を掴んでいた。

「何だか分からないがスゴイな!よし、ワガハイが焼いてやろう!」
「え?クッパちゃん、火なんて支給されていた?」

デンジはクッパ姫の提案に疑問を感じつつも、湖から魚をぽーんと投げる。


クッパ姫の大きな口から、バーナーのように炎が吐き出された。
「おお!すげえ!!そうやって火を吐き続ければ、永久機関の完成じゃねーか!!」
オレンジ色の炎に、デンジは見とれている。


「ガハハハハハ!こんな所で採れた魚だから、マズイと思っていたら、意外といい味しているな!!」
こんがりと焼けて、いい匂いを出し始めると、デンジが湖から上がるのを待たずに、魚に大きな牙で噛り付いた。


「あー!!クッパちゃん、ズルイぜ!!とったのオレ!!オレにも喰わせろよ!!」
デンジは湖から上がり、口を開けて全裸のまま魚を見つめる。

「焼いたのはワガハイだぞ!!部下の貴様は、食い終わるまで待ってろ!!」
クッパ姫は魚をデンジの届かない高さに掲げる。



「くっそー!部下にも食わせるのが、上司の仕事だろ!
つーかクッパさん、そっちのヤツにデカイ引きが来ていますよ!」

ほんとか、とばかりに食べかけの魚を放り出し、ほったらかしにしていた釣竿を見に行く

「おっとと……あぶねえあぶねえ。」
実はそれはデンジが魚を取り返すためについた嘘だったのだが、こうも簡単に引っかかったことに、笑みを浮かべる。

「デンジ!!キサマも手伝え!!」

(え?ホントに当たり引いてたのかよ!!)


首尾よくキャッチした焼き魚を、可食部のほとんどを食べつくしたデンジが、クッパの方を見る。
嘘からでたマコトを体現したかのように、クッパが大きな獲物と格闘している。
クッパが援助を呼びかけ、デンジも釣竿を引っ張ろうとする。


殺し合いとは思えないほど、平和な時間だった。
このままクッパ姫の部下として釣りをするのも悪くはない。わずかな時間だが、デンジはそう思っていた。


272 : 掴む者、離す者、離れる者 ◆vV5.jnbCYw :2020/11/21(土) 22:09:48 dS5JfZCU0
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



場所は変わって、荒野の中心にある町、パラダイス・パームズ。

「オラオラオラオラオラオラオラオラ!!」
「愛に!愛に愛に愛に愛に愛に愛に愛に愛に愛に愛愛愛愛愛愛愛!!」

少女、野崎春花に渡されたスタンド、スタープラチナと、大罪司教、ペテルギウスの権能、「見えざる手」がぶつかり合う。
叫びながら放たれる拳が当たった黒い「見えざる手」は、紙切れのように千切れ飛ぶ。

乾いた空気で、闘気が辺りに充満した、デンジ達がいた場所とは、全く違う場所だった。


「見えざる手」は、スピード自体はそれほどでもない。
何らかの力で見ることさえ出来れば、スタープラチナのスピードも相まって当たる前に砕くことなど容易である。
しかし、見えてなお厄介なのは、文字通り「手数」だ。
砕いても砕いても、新手が次々に現れ、一向に手の内が無くなる様子がない。


さらにスタープラチナは、パワーとスピードこそ文句の付け所がないが、攻撃できる範囲は限られている。
従って、「見えざる手」が現れてからすぐに砕くことは出来ず、野崎の近くに襲い掛かるまで待つしかないのだ。


パワーとスピードで優るスタープラチナと、手数と攻撃範囲で優る「見えざる手」の拮抗状態は、意外と簡単に崩れる。

「オラオラオラオラオラ!オォオオラアアァア!!」
スタンドから雄たけびと共に放たれるとんでもない速さのラッシュが、見えざる手を5,6本まとめて破砕する。


砕いてもすぐ次が来ると予想し、身構える野崎の前で、ペテルギウスが怪しく笑った。

「アナタ、『怠惰』デスね。」
顔を90度傾け、妙に並びの良い歯を見せながら笑う。
その笑顔を視線がとらえた時、少女の背に悪寒が走った。


その顔は、毎朝学校へ来たとき、彼女をよそ者扱いするクラスメイトが、今日はどんな手段でいじめてやろうかと話し合っている時の目だったからだ。
しかも、その顔から放たれる威圧感はクラスメイトとは比べ物にならない。


だが、彼女はそのクラスメイトを、何人も殺した。
今更後には引けるかと、ペテルギウスに向かって足を踏み出す。
一体なぜ急に手を引っ込めたのか分からないが、チャンスは今だと躊躇いなく飛び込む。


「オラアァ!!」
スタープラチナの拳がまっすぐにペテルギウスの痩せこけた顔面に刺さる……はずだった。
砕けたのは彼の後ろの建物の壁だけ。


「アナタの能力はじつに、じつに勤勉な様デスが……肝心のアナタ自身は『怠惰』デスね。」
野崎の上から、声が聞こえる。
「見えざる手」が彼を上空へと運んでいるのだ。
「なかなかなかなかにぃ〜。良い景色デスね。」

「オラオラオラオラ!!」
ペテルギウスの居場所が分かるや否や、すぐにラッシュを当てようとするも、すでにその腕が届かない高さにいた。


273 : 掴む者、離す者、離れる者 ◆vV5.jnbCYw :2020/11/21(土) 22:10:30 dS5JfZCU0

「見えざる手」に運ばれながら、突然野崎に背を向けたと思うと、急に上体をそらし、その形で下にいる彼女に顔を向けた。

「それにその力、使い慣れていないようデスね……強い勤勉なる力を手に入れたことに胡坐をかき、使い方を考慮しない……まさにぃ、怠惰!怠惰!!『怠惰』という言葉、あなたに相応しいデスねッ!!」

ペテルギウス・ロマネコンティの指摘は正しかった。
彼女がこの能力を手に入れたのは、ほんの数時間ほど前。
しかも、自分が発現したスタンドではなく、あくまで支給された力だ。
これがもとのスタンドの持ち主、空条承太郎なら、指を伸ばして刺し殺す「星の刺突」で対抗出来たかもしれない。
しかし、いくら修羅場をくぐった経験がある彼女とは言え、使いこなせと言うのが無理な話だろう。


「オラァ!!」
スタンドで地面に落ちた石をペテルギウスにめがけて投げつけるが、上空に届く前に「見えざる手」で作られた壁に阻まれる。
剛速球はその壁をも打ち破るが、結局ペテルギウスには当たらない。

「油断!!怠慢!!すなわち怠惰!!」
上空で黒い手に運ばれながら、さらに4本の手を野崎へと向ける。


前からの攻撃だけだったこれまでとは違い、前後上左右の5方向から手が襲い来る。
「オラオラオラ!」

瞬く間に左右、前、そして上から来る手を粉砕する。
しかし、最後の一本、後ろから来た手は破れなかった。

「!!」
スタープラチナで咄嗟に身を守ったため、背から腹にかけて貫かれることこそ免れるが、それでも背中を刺され、厚着の服に大きな黒い染みが出来る。


だが、それでも彼女は怖気づくことなく、スタンドで男に殴りかかろうとする。
その時、野崎の視界に靄が走った。


「なるほど、なるほどなるほどなるほどぉ。その怪我でなお戦おうとする姿勢は認めるのデスが、自分の状態を分からないまま働くのは、『怠惰』と同じデス。」

半分ほど、野崎は高みの見物を決め込んでいる男が言っていることが聞き取れなかった。
半分以上、彼の自己満足の体現でしかない言葉を、聞き取れなくてもさほど問題はないのだが。

再び迫りくる見えざる手と、ラッシュの戦いが始まる。

しかしすぐに、野崎の呼吸が、それまで以上に荒くなった。
彼女の五感への突然の不調。これは男の権能……という訳ではない。
「見えざる手」に背中を刺され、血を多く失った状態で、なおも戦おうとしたからだ。

それでも、彼女の漆黒の意思は、黒い手を砕き続ける。
砕ききれない手は、姿勢を下げたり、時には立ち位置を変えたりして、直撃を避ける。
しかし、激しい運動したことも合わさって、ひゅうひゅうとその場の命の繋ぐのも苦しそうな呼吸になってくる。


274 : 掴む者、離す者、離れる者 ◆vV5.jnbCYw :2020/11/21(土) 22:10:54 dS5JfZCU0

そこへ、ペテルギウスの首輪が、突然点滅をし始める。
「おや?おやおやおやあぁ?どうやらこの首輪は、ワタシが空を飛ぶのを快く思っていないようデス。こんな小さなデザインでありながら、仕事を果たそうとするとは、なんという勤勉!!まあどの道勝敗は見えたようなものデスので、その勤勉さに敬意を払うのデス。」

けたけた、けたけたと笑い口の両端を大きく吊り上げながら、地面に降りるペテルギウス。

「オラァ!」
立っているのもやっとな状態で、なおもその拳を当てようとする。
「アナタの攻撃の範囲は、既に知っているのデスよ。」
しかし、ギリギリでその攻撃は届かない。
拳を当てることは出来ない、が、その深い闇を抱えた瞳で、ペテルギウスを睨みつける。

「アナタは、とても頑張った。何をしたいのかはしれませんが、アナタは自分の使命に殉じ、力の限り戦った。そして、その使命は果たされることなく、虚空に消える。
ああ、アナタは、実に『怠惰』デスねぇ〜。」
かたかた、かたかたと歯を震わせながら、彼女の生き様を侮辱して行く。

野崎の心には、どす黒い怒りが高まっていく。
しかし、血を多く失った体は、言うことを聞かない。


「おやぁ?」
突然、ペテルギウスの視線の方向が、野崎から外れる。


「アレは……まさか………。」
その視線の先にあったのは、壁が壊れた建物の中にある、本棚だ。

「福音!!福音書!!ワタシが奪われた大切な福音書が、あんな所にあったとはああああぁぁぁぁあああ!!脳が!脳が震えるぅ!!」

野崎を突き飛ばし、真っすぐにその本棚目掛けて見えざる手で回りを薙ぎ払いながら猛スピードで走っていく。
本棚で唯一、表紙が黒い本に、ペテルギウスは手を伸ばす。


「ああ!ワタシの愛しき福音書!!ワタシの愛に殉じるために絶対に大切な大切な大切な書を、ついに見つけ………。」
その瞬間、黒い本は、司教の緑の髪の毛に噛みついた。

「は!?」

その本は、魔女教の福音書でなく、本のモンスター、エビルバイブル。
この会場に設置されたNPCの一体で、本棚に身を潜め、油断した参加者を襲うのを待っていたのだ。

「許すまじ!!福音書の姿を借りる行為自体が、ワタシの愛を冒涜した、侮辱した、凌辱した、実に、実に実に実に許されざる行為!!」
福音書に意図してなり替わったわけではなく、ペテルギウスが勝手に勘違いしただけなのだが、権能の手と自身の手で怒りに任せて本の魔物を強引に破る。


「さて……さてさてさてさてさてさてさて……って、アレ?怠惰なる彼女は何処へ行ったのデスか?」

ふと気が付くと、少女の姿は何処にも無かった。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


(頭が……クラクラする………うまく……はたらかない……。)

突き飛ばされた先で、野崎は蹲っていた。
反撃して、目の前の狂人を殺さないといけない。
自分の未来は、その先にしかない。
だというのに、突き飛ばされて地面に頭をぶつけた時と、刺された時の失血で、視界も思考も常時より全く働かず、立ち上がることさえ出来ない。
今が反撃のチャンスかもしれないが、そこまで行くことが出来ず、スタンドも攻撃の範囲に入らない。


スタンドとは、精神の具現化である。
当然スタンドに攻撃を食らえば一部を除いて本人も傷つくし、酷使すれば使用者も同様に疲労する。
DISCという道具を使った、支給スタンドとて、同じである。

言ってしまえば、貧血や脳震盪のみならず、慣れないスタンドを過剰に使ったことによる、精神的疲労もあった。


突き飛ばされた際に、支給品が零れている。
一つは石、もう一つは草だ。

残念ながら、狂人を倒すのに役立ちそうな道具ではない。
だが、その草に縛られてある説明書には、あることが書いてあった。


ペテルギウスと福音書に化けた本の怪物が戦っている今がチャンスと思い、草を口に含む。
独特の苦みと、過度の疲労のせいで吐きそうになるが、無理やり噛み砕いて飲み込む。


そのまま周囲から、重力が消えたかのように、彼女は空高く飛んでいった。

(いつかは……殺す。でも、今は奴から遠い所へ……。)


275 : 掴む者、離す者、離れる者 ◆vV5.jnbCYw :2020/11/21(土) 22:11:11 dS5JfZCU0

彼女が口にした草は、「高飛び草」。
咄嗟に使ったそれで、難を逃れることが出来た。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

パラダイス・パームズから大きく離れた、ルート・レイクの東岸。

「クッパちゃん!!空から女の子が!!」
ミルドラースからの放送を聞き終わったその瞬間、少女は空から降ってきた。
クッパ姫が、楽しげに釣りをしていた所、野崎は上から湖へと落ちてきた。


釣りを放棄して、湖に飛び込み、少女を助けるクッパ姫。

「スゲエなクッパちゃん!!」
その咄嗟の動きに、デンジも驚く。
「ワガハイの名に懸けて、女の子をこんな戦いの犠牲にする訳にはイカン!!」
「アレ?クッパちゃん、ソッチの趣味?」


デンジはギザギザの歯を見せて、ニヤニヤと笑う。
(そうか……、コイツ、ワガハイのこと知らないのだな……。)

「そ、そういやデンジ、コイツ、怪我をしているぞ!!手伝え!!」
「はいはーい。」


野崎春花はかつて大切な家族の手を掴むことが出来ず、クッパ姫はケガをした彼女の手を掴むことが出来た。
ただし、掴むことが出来たのは良いことなのか、そうでないのかは、誰もわからない。


【I-6 ルート・レイク東/深夜(放送直後)】
【野崎春花@ミスミソウ】
[状態]:疲労(大) 背中に刺し傷、貧血、びしょ濡れ
[装備]:スタープラチナのスタンドDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、何かの石@出展不明
[思考・状況]基本行動方針:優勝して、過去を改変する。
1:今は体力を回復する

[備考]
参戦時期は死亡後です。
スタープラチナのDISCを装備しています。
スタンド使いになった影響か、ペテルギウスの『見えざる手』を視認できるようです。


【クッパ姫@Twitter(スーパーマリオシリーズの二次創作)】
[状態]:健康 びしょ濡れ 
[装備]:スーパークラウン(解除不可)
[道具]:基本支給品、釣竿@ゼルダの伝説時のオカリナ、ランダム支給品×2
[思考・状況]基本行動方針:主催者を倒し、ワガハイが優勝する!
1:部下(デンジ)と行動する。
2:この姿は慣れんが……ワガハイは強いからな!丁度良いハンデだ!
3:少女(野崎春花)の手当てをする。
4:転送されたという名簿を読む。
[備考]
性格はマリオ&ルイージRPGシリーズを基準としています。
スーパークラウンの効果は解除できないようになっています。

【デンジ@チェンソーマン】
[状態]:健康、貧血(小)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3 ツルギゴイ@ブレスオブザワイルド、ヨロイゴイ@ブレスオブザワイルド(大量)
[思考・状況]基本行動方針:とりあえず主催者をぶっ殺せば解決だぜー!
1:クッパ姫と一緒に行動する。
2:知り合いがいたら合流したい。
3:転送されたらしい本を読む。
[備考]
時間軸は永遠の悪魔の後。


※ルート・レイクにはツルギゴイや、ヨロイゴイなど、様々な魚がいます。
他にも魚がいるかどうかは、他の書き手にお任せします。


276 : 掴む者、離す者、離れる者 ◆vV5.jnbCYw :2020/11/21(土) 22:11:28 dS5JfZCU0


「ああああああああああああああああああああ!!!」

一人を除いて、誰も居なくなった、パラダイス・パームズ。
そこに響き渡るかのように、彼は絶叫していた。

「よりにもよって福音を偽物と間違え、挙句の果てに敵を見逃してしまったワタシを、お許しを!!お許しを!!お許しを!!お許しを!!お許しを!!お許しを!!お許しを!!お許しを!!お許しを!!お許しを!!お許しを!!お許しを!!お許しを!!お許しを!!」


そのまま、ガンガンガンと頭を壁にぶつける。
彼の顔はエビルバイブルにかまれた傷と、自分でぶつけた傷、そして自らの涙でぐちゃぐちゃになっていたが、それでも彼は止めずに続けた。


【I-8 パラダイス・パームズ/深夜(放送直後)】
【ペテルギウス・ロマネコンティ@Re:ゼロから始める異世界生活】
[状態]:健康、興奮(大)、盗人(主催者)への怒り(大)、自分の不甲斐なさに対する怒り
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]基本行動方針:脱出優先。必要なら勤勉に優勝を目指す。
1:怠惰なるワタシを、お許しください!!
2:我が福音書を取り戻すのデス!
3:『見えざる手』を私以外が見ることが叶うなど、あってはならないのデス!
[備考]
野崎春花が『見えざる手』を視認できることを認識しました。
不可視の『見えざる手』は、少なくともスタンド使いなら視認できるようです。
憑依に関する制限は後続の書き手に任せます。


【支給品紹介】
高飛び草@風来のシレン2
飲むか、敵に投げると、同じフロアのどこかにワープできる。
このロワでは、会場のどこかにワープできる(その先が陸地とは言っていない)


釣竿@ゼルダの伝説 時のオカリナ
魚を釣ることが出来る、何の変哲もない釣り堀でレンタルできる釣竿である。
ハートのかけらや釣り堀の親父の帽子も釣ったりできる。

【NPC紹介】

エビルバイブル@ドラゴンクエストシリーズ
黒い表紙の本の魔物で、本棚に潜んで、迂闊に本を手に取った人に襲い掛かる。
噛みついてきたり、炎や吹雪を吐いたりする。
なお、原作で使ってくる即死魔法は、本ロワでは使ってこない


ツルギゴイ@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド
ルート・レイクで泳いでいる、本ロワで敵意を持たないNPC.
そのまま食べても少し回復するが、調理して食べると、攻撃力が一定時間上がる

ヨロイゴイ@ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド
ルート・レイクで泳いでいる、本ロワで敵意を持たないNPC.
そのまま食べても少し回復するが、調理して食べると、防御力が一定時間上がる


277 : 掴む者、離す者、離れる者 ◆vV5.jnbCYw :2020/11/21(土) 22:11:53 dS5JfZCU0
投下終了です。


278 : 掴む者、離す者、離れる者 ◆vV5.jnbCYw :2020/11/22(日) 12:01:02 VlkLkEYw0
すいません。一つ訂正を。
誤:【I-6 ルート・レイク東/深夜(放送直後)】
正:【E-4 ルート・レイク東/深夜(放送直後)】


279 : ◆EPyDv9DKJs :2020/12/14(月) 16:55:06 WWKx8l9M0
投下します


280 : ◆EPyDv9DKJs :2020/12/14(月) 16:56:56 WWKx8l9M0
「僕も彼は詳しく知らないんだ。」

 申し訳なさそうな顔で勇者は答える。
 出会ったばかりで、少なくとも危険な奴。
 何より自分の実力でも勝つのは至難と言う二つだけ。
 この殺し合いにおいても上位に存在するだろうことぐらいか。
 紫が求めているような情報は特に持ち合わせてはいなかった。

「あら、そう。」

 意外とあっさりと流す。
 正直なところ、紫もあまり期待はしていなかった。
 サーニャと勇者にあの化け物。少なくとも幻想郷で見覚えがない。
 外の世界があんな戦いをしてるなんてことは余計にあり得ないことだ。
 レリックについても初めて聞いた用語でもあったので、なんとなく察してはいた。
 ある意味その確信を持つために助けた、と言うのも僅かながらにもある。
 隠すほどのことでもないのでそのことを告げると、

「なんとなくは思ってましたけど、やはりそうなんですね。」

「だよね。」

 二人の理解は早かった。
 魔法と言った不思議な力に縁深いのもあるが、
 幻想郷と言う地名は二人とも聞いたことがない。
 勇者にとってはさっきの敵が自分の知る世界にいれば、
 まず名が知れ渡るような強さを持っているのに見覚えがない。
 サーニャに至っては、別の世界と言うのは三人の中で一番身近だ。
 クロスインパクトによって二つの世界が融合したネオラントの住人で、
 この状況もそれに類似したものだと思えば理解は容易になる。

「さて、私は少し出かけてくるわ。」

 聞くこともなくなったことだしと、
 あっさりとした態度で紫は席を立つ。
 助けた理由が彼の存在を知る為と彼女は言ったが、
 全く情報源になってない割に残念そうには感じられない。

「何処に行くの?」

「ちょっとした野暮用よ。
 ああ、別に彼に取り入ろうとは思ってないから安心しなさいな。」

 何処から出したのか、緋色の扇を広げて口元を覆う。
 中華よりの服装も相まって妖美な雰囲気を醸し出す様は絵になる姿だが、
 同時にどこか嘘っぽさを感じさせながら、スキマで床に穴をあけて下へと降りる。

「何処か不安だ…」

 助けてくれたし、情報源にもなれなかった自分を殺さなかった。
 このことから先程の相手よりもずっと信用できる人物なのだろうが、
 よく言えばミステリアス、悪く言えば胡散臭い印象が拭えない。

「多分あちらへ向かったのかと。」

「あちら?」

「あのお店ですよ。」

 窓から見える、年季の入った家屋がある。
 店からは明かりが漏れており、誰かがいることが伺える状態だ。
 蔵と、雑多に転がる何に使うのか分からないような道具が出されており、
 何かの雑貨屋の類なのだとは推察できる。

「紫さんが知り合いがいるかもと言ってましたね。
 ただ、それどころではなくなって後回しにしましたが。」

 知り合い。
 参加者なら連れてくるか同行してるはず。
 連れてこれないのか、そもそも施設に覚えがあるだけなのか。
 疑問は思いつくも、向かってみればわかること。
 歩けるようになるまでの間、勇者は回復に専念する。
 回復したと言っても元々血反吐を出し続けてたほどの負傷。
 もう少し休まなければ、歩くこともまともにできない。




「見事な再現度と思えば、
 店主もセットなんて随分大がかりのようね。」

 店の中も骨董品から何に使うかわからないガラクタまで、
 多種多様の品が揃っている雑貨屋のような狭い空間。
 彼女にとっては酷く見覚えのある場所だ。
 何度通ったかはとうに忘れたぐらいに。

「いやはや、なんでこんなことになってるんだか。
 僕も正直驚きだよ。君まで此処にいるんだから。」

 カウンターには白髪の男性が安楽椅子に腰かけている。
 眼鏡をかけた黒と青のツートンカラーな和服の男は、
 彼女もよく知っている人物…香霖堂の店主『森近霖之助』だ。
 普段店には置いてなさそうな、新品の品を物珍し気に眺める。
 元々此処へ寄る予定だったがサーニャが勇者の戦いに気付き、
 やむなく優先順位を変更して今に至る。

「こんなところで何をしてらして?
 支店を出すほど売り上げ好調には見えなかったけど。」

「出張、ってことにしておいてくれると嬉しいな。」


281 : ◆EPyDv9DKJs :2020/12/14(月) 17:02:13 WWKx8l9M0
 物騒な場所で店を出すわけがないのは分かっている。
 彼は妖怪と人間のハーフだが、その力は弱い部類だ。
 極めて危険とされる無縁塚に物を漁りに行く割には、
 生還できることから自衛のできる人物であるようだ。
 しかし此処は幻想郷以上の無法地帯であることは事実。
 勇者と戦ったあの怪物なら、問答無用の瞬殺だってありうる場所。
 同じく拉致された立場のはずだが、首輪は存在していないことに疑問を持つ。

「霖之助さんは参加者とは違う立場なの?」

「…その説明は、答えなくてもよさそうだ。」

「? どういう意味───」

 時計を一瞥した彼に質問しようとする紫だが、
 その答えは言葉を遮る放送と言う形ですぐにわかった。
 ミルドラースによるバトルロワイアルの開幕の宣言や開示された情報。
 軽く名簿を見たが、レミリアがいたことに気付いただけで反応はかなり薄い。
 土方歳三などの偉人も幻想郷には聖徳太子がいるわけだから驚くこともなく。
 ハサミも幻想郷には付喪神がいる、肩書きだけの名前に至っては勇者と出会った。
 RRM姉貴については何か関わってはいけない危機感を感じた気もするし、
 勇者もやたら多いのでどれが彼女を示しているのか分からないと一応あるにはある。
 それでも所詮はその程度。驚きも疑問も大してない。
 幻想郷で奇怪なものはいくらでもあるのだから今更な話だ。

「それで、僕は支給品で店の商品…まあ、
 ある人に余り物の支給品予定のものを渡されてね。
 参加者に縁のある道具も混ざった、物々交換を目的としたNPCだ。
 交換するものにある程度見合ったもの以外の交換は、君であっても贔屓はできない。
 後できることは、いつも通り僕の能力による鑑定ぐらいだね。こっちは無料でやれるよ。」

 彼の言う鑑定とは、道具の名前と用途が判る程度の能力のことだ。
 見ればそれだけで名前と、使い道が分かると言う便利な能力…に見せかけて、
 肝心な使い方は分からない、彼の知り合いからは生かすも殺すもできない能力とされる。
 彼としては用途が分かればいいんだよ精神で不満を持ったことはない。
 なおそれで使えた試しは…あんまりない。

「ツケは?」

「贔屓は出来ないって言ったよね? それと、
 マジックアイテムの製作、遠出も禁止されている。
 破れば僕もどうなるかは分からないから、素直に従ってるよ。」

 思ってるより不便な立場だ。
 首輪がない彼の助力が得られるならばありがたかったが、
 此処まで制限されてるとなれば余り頼れるものでもない様子。
 とは言え信用のおけるNPCの立場としてはありがたい。

「では早速だけど鑑定をお願いするわ。」

 紫が取り出したのは数枚の紙きれ。
 折り紙程度の正方形の紙であり、
 そのうち一枚の裏には『斬真狼牙』と記されてるだけ。
 それ以外には何の変哲もなさそうな紙である。
 狼牙は今しがた手に入った名簿に記されていた。
 他の紙にも名前が書いてあり、いずれも参加者の名前。
 何の意味があるかはよく分からないのでしまってはいたが、
 どうせなので彼に調べてもらうことにする。

「ああ、これはビブルカード。紙に混ぜた爪の持ち主である人のいる方角へと進む紙だ。」

 流石店主の能力か。
 見ただけで図鑑のような説明が出る。
 試しにその紙をテーブルに置いてみれば、
 ほんのちょっとだけではあるが机の上で紙が動いた。
 方角的に言えば東北。彼の鑑定内容と照らし合わせるに、
 狼牙と言う人物は東北の方角にいると言ったところだ。

「面白いわねこれ。ちぎっても機能するのかしら。」

 彼女としてはこの紙の評価は『そこそこ』になる。
 互いの間にある距離は不明。参加者の素性も不明では、
 これで必死に探してみたら敵でした、では全く笑えない。
 元々レミリア以外の知人がいない今ギャンブルみたいなものなので、
 参加者のいる場所がわかると言うだけでも十分利益はある。
 これを含めて四枚もあれば、暫く行動の目的としては困らない。
 機能がなくなるのか、試しに軽く少しだけちぎっておけば、
 どちらも性質が失われていない状態のままだ。

「これをまともなものに変えることはできる?」


282 : ◆EPyDv9DKJs :2020/12/14(月) 17:06:29 WWKx8l9M0

 彼は支給品であれば物々交換ができると言っていた。
 となれば、インスタントラーメンや酒も交換できるはず。
 正直これで戦うにしては、初期の物資が偏りすぎている。
 ましなものに変えられるのであれば越したことはないが、
 問題は道具屋である此処にそれができるのかどうかだ。
 種族の都合、彼は食事が不要になっている。
 だからまともなものが残っているのかは分からない。
 お茶ぐらいは期待してもよさそうだが。

「一応は許されてるよ。お酒や乾麺も立派な支給品だからね。
 初めてのお客さんだし、多少色を付けても文句は言われないかな。」

 インスタントラーメンは菓子類の詰め合わせ。
 酒は交換した分より一本分増えた水に交換される。
 水はともかく食料は余りいいものとは言えないものの、
 少なくとも現状よりはずっとましなものへと変わった。

「十分すぎるぐらいのものよ。
 それにしても、見かけないものもあるわね。」

 飴といったものからチョコビと言った、
 外の世界にありそうなものも散見される。

「嗜好品をくれっていったらもらったよ。」

 食事は不要ではあるものの、
 店から殆ど出られない現状を考えると、
 何かしらの楽しみと言うものは必要になるだろう。
 運営サイドとは言い難い人物に対しては、偉く気前がいい様子だ。

「意外と好待遇ね…ついでなんだけど、この扇って何かわかる?」
「それは緋舞扇、拳に装備する『格闘武器』でメリケンサック風に殴るものだ。」

「…格闘武器?」

 鉄扇と言う武器であれば分かるが、
 この扇は格闘武器と言う謎の鑑定。
 しかもメリケンサック風に殴ると言うことは、
 開いた状態の扇で殴れと言うことなのか。
 彼の一言に首をかしげてしまう。
 しかし彼の能力はそういうものなので、
 そういうことでいいんだととりあえず納得しておく。
 武器に耐えうるだけの性能はしていると言う証左でもある。

「まあいいわ。後は二人も来るだろうから、待つと…」

「残念だけどそれは無理だよ。」

 適当な椅子に腰掛けようとするも、
 霖之助から静止の言葉がかけられる。
 声のトーンが先程までとは明らかに違う。
 顔も真剣な眼差しで、彼らしからぬものだ。

「と言うよりされると死ぬかも。」

「…そう。」

 ストレートに死ぬと言う発言。
 死ぬのであれば仕方ないと店の外へ出る。
 正直、店に入ってからずっと違和感があった。
 この店までの道中でもゴブリンを筆頭に色んなNPCはいた。
 紫にとっては大した敵ではない。弾幕一発で沈む程度の敵。
 だが全滅させた覚えはない。でもなぜかここには来ない。
 知性や理性もなさそうな連中がこの店を気に掛けるわけもない。
 来ないのではなく来れない…意図的に遠ざけられているのだ。
 つまり此処はNPCが来れない施設、と言うことになっている。
 違和感はそういうことだ。NPCを気にすることなく籠城できてしまう、
 それを防ぐために長時間の滞在をトリガーに何かが起きるようだ。

「どこまで出ればいいのかしら?」

「一先ず外へ出れば十分だね。」


283 : ◆EPyDv9DKJs :2020/12/14(月) 17:12:35 WWKx8l9M0
 特に何も変化は起きていない。
 時間通りに出たから問題はないと言うことか。

「後、次の放送までは再来店もお断りなんだ。
 これがこの店の仕様、回りくどすぎるだろう?」

「…ええ、とても回りくどいものですわ。」

 互いに幻想郷にいたときのような会話のようだが、これは地味に困る。
 五分から十分程度の時間。外であれば会話はできると言ってもNPCが集まっており、
 屋外で戦いながら会話すると言うのは、楽に倒せる紫でも正直面倒なことではあった。
 会話してる今もゴブリンが襲ってきたところを、緋舞扇を説明通りに使って殴り飛ばす。
 彼の能力による鑑定通り、格闘武器として使うには一切の問題はない代物だ。

「人も妖怪も寄り付かない店を、
 こんな形で再現してくれなくてもいいと言うのに。
 これじゃあ『寄り付かない』じゃなくて『たどり着けない』だよ。
 まあ、店内での暴力行為も禁止されてるし、割と気にせずともいいけど。」

 そう言いながら倒れていた看板を起こす。
 何らかの原因で倒れていたようで、そこには注意書きが記されている。
 霖之助が言っていた内容のほぼすべてが書かれており、
 これを見れば一発で話が解決していたことに気付く。

「看板があれば、喋る必要はなかった気がするのだけど。」

 自分が出れば再来店はできないが、
 霖之助自身は出られるのは今証明された。
 ペナルティの恐れもあった中、雑談に興じた真意とは。

「僕の性格、知ってるだろ?」

 なんてものは全くない。それは紫も知っている。
 知識を語るときは饒舌に、実に楽しそうに語るのが霖之助と言う人物。
 正直なところ彼は紫を苦手な相手だとしてはいるもののこの状況だ。
 初めての来客が知人であっては安堵して語りたくなるものである。
 時間には注意を払っていたし、看板については普通に事故だ。

「…そうね、霖之助さんはそういう人よね。」

 普段は温厚で一人を好むけど、誰かに知識を語るときは熱くなる。
 今のように一歩間違えれば危険なことになるのに自分本位なところ。
 幻想郷の住人の殆どに見受けられる性格を持ち合わせている様は、
 紛れもない幻想郷の住人の一人であり、変わらない様子に安心した。
 単純な意味ではない。『主催者側』ではなく『幻想郷の住人』と言う意味、
 『僕は味方でいるつもり』、暗にそう言ってるのだと。
 彼も彼なりにこの場で抗っているようだ。

「お、閑古鳥と思ったら千客万来だ。出張した甲斐がある。」

 先程置いてきた二人も姿を見せる。
 勇者は本を、サーニャは槍に似た十字架を構えた状態で。
 先ほど戦ってる間にも音が聞こえたことから、
 NPCと戦っていたことは容易に想像できる。

「身体の方は大丈夫?」

「全開、とは言えないけど十分動けるよ。ところで何のお店?」

「店主さんと看板に聞きなさいな。」

 二人とも同じような説明を受けた後、
 多少足早に店で支給品を交換、或いは鑑定をしてもらう。
 使い方がよく分からないものもあったり相性のいいものなど、
 その辺も理解できたことで充実した戦力へと変わっていく。

「意外と交換するものは少なかったですね。」

 やることを終えて、二人は店を出る。
 紫と同じように食料を交換した以外は、
 勇者の本と盾を、店に飾ってあった剣を交換しただけ。
 変えただけと言っても彼女としてはその差は大きく、
 特に交換材料全ての豪華さに霖之助も驚かされたが。
 なお、紫の三つ目の支給品についても入る前に二人に渡したので、
 これも霖之助の能力で名前と用途だけは理解しておいた。

「サーニャちゃんは生きること優先するべきだから、
 守備的なものを揃えた現状を超える意味がないからね。」

 武器は自前で出現させることができる。
 であれば、質のいい武器を求める意味は薄い。
 多くの参加者の生命線となりうる彼女は生きることが大事。
 そちらを重視するのは当然の帰結でもあった。

「ただ用途が分かるだけでも便利ですね。この学聖ボタンとか。」


284 : ◆EPyDv9DKJs :2020/12/14(月) 17:14:51 WWKx8l9M0
 襟元につけたボタンをサーニャは見やる。
 『学』の文字が刻まれた薄紫色のボタン。
 魔族に対して有利行動がとれると言う支給品で、
 それ抜きにしても命中や回避に補正が入るのは、
 いざと言うときの底上げになるかもしれない。

「でも使用方法が合ってるかは分からないから、
 気を付けなさいな。貴女なら大丈夫でしょうけど。」

「そうですね。過信せずに行きます。」

 サーニャも理解している。
 本当にこれでいいのかと言うのもあるが、
 補正が入ると言う効果はかなり曖昧なものだ。
 どれだけの恩恵を受けているのかがさっぱりわからない。
 過信しすぎて足元をすくわれないようにしておく。

「さて、と…やることも終えたし、
 此処でサーニャに一つ理解してもらうことがあるの。」

「なんですか?」

「───私と同行するつもりがあるなら、
 さっきのような行動はもう取れないと思った方がいいわ。」

 紫はこの殺し合いは良しとはしない。
 スペルカードルールと言う決闘方式のように、
 なるべく共存できる道を選んでいることからわかることだ。
 だがイコール殺さないわけではない。必要なら遠慮はしない。
 そこで、サーニャとの摩擦が起きるところが問題だ。

 勇者を助けたときの行動にも、少しばかりの不安要素があった。
 彼女も優勝狙いであれば、あの戦いは互いに優勝争いをしてただけ、
 と言う可能性もゼロとは言い切れない程度には確定は出来なかった。
 サーニャは傷ついた人がいれば相手の素性を知らずとも手を伸ばす。
 今回はよかったものの、次も同じ仲間になれるかどうかは分からない。
 最悪、危険な敵を治してしまう可能性もある。
 そういう意味もあって放っておくのも視野に入れていた。

「貴女の善性は賞賛しましょう。
 幻想郷でも中々お目にかかれないタイプの信念の強さ。
 ですが、ここではそれが美徳となりうるわけではありません。
 右手で握手を交わした相手が、左手で殺す可能性は無きにしも非ず。
 これから私は、乗った参加者を優先的に探すことにする予定です。
 命を平等にみることを今は捨ててもらわない限り、私は困るので。」

 扇を広げ、慎ましい女性のような雰囲気を出す。
 慎ましいはずなのに、何処か威圧感も感じられる。
 妖しく、奇怪な様子はまさに『妖怪』と言ったところだ。

 出会ったときや勇者の治療中に、ある程度身の上は知っている。
 災害地域を訪れては怪我人を、報酬を一切貰わずに治しては去っていく。
 組織にも属さず、ただ一人でそれを延々と繰り返して旅をしてたと。
 猶更やめた方がいい。幻想郷と言う不安定なバランスの住人と、
 価値観を合わせるなどまず無理な話なのだから。
 幻想郷が隔絶された世界なのもそういうことである。

 此処で別れても、彼女はそうしてしまうだろう。
 自分の見える範囲でやるかやらないか…その程度の違いしかない。
 それでも『敵同士の戦い』が起きる可能性を考えると、
 一緒に行動した際のリスクが紫にとっては大きい。
 幸いサーニャはダストとも戦ってる身ではあることに加え、
 勇者も戦える今なら、自分がいなくてもそう簡単には負けないだろう。
 自分がいないと危険になる状況はそうは訪れない筈。
 …先程の相手が出たなら別かもしれないが。

「平等を、捨てる…」

 助けられる命があれば命を平等に扱い、見限るということはしない。
 テロリストであろうと、傷が深い人から優先的に手を差し伸べる。
 善性に満ちた行動ができるのが、奇蹟の手と呼ばれたサーニャの性。
 今までそれでやってきた。誰に言われても曲げなかったその信念。

「…納得するのは、難しいかもしれません。」

 まあ、そうよね。
 この答えが当然だと。
 素直に別れようと後にするが、

「ですが、言い方が悪くなってしまうんですけど、
 紫さんについていく方が、私にとっていいのかもしれません。」

 まだ話は続いてるようで踵を返す。
 打算的な物言い、随分彼女らしからぬ言葉だ。
 故に『言い方が悪い』と言うことになるのだろう。

「紫さんと一緒なら、助けられる人も多いはずです。」

 そう返してくるかと紫は思う。
 確かに障害となる敵を倒しに行くのであれば、
 怪我をしてる人が近くにいる可能性はある。
 考えが合わなくとも助けられる可能性は高い。
 特に状況次第で戦線離脱も容易な自分の能力があれば、
 より多く助けられる…つまりそういうことだ。


285 : ◆EPyDv9DKJs :2020/12/14(月) 17:18:26 WWKx8l9M0
「勇者ちゃんは?」

 敵を優先と言うことは、
 先の男とも相対することになる。
 彼女の性格は短い問答で理解しており、
 恐怖で戦えない…なんてことはないだろう。
 それでも一応は確認しておく。

「僕はサーニャちゃんに何もできてないから、
 一緒に行動するつもりだったし決まってるよ。」

 迷うことはない。
 と言うより迷うはずがないのだ。
 でなければ、勇者と呼ばれないのだから。

「…とんだ善人ですこと。」

 底抜けのお人よしと底抜けのお人よし。
 幻想郷でも外の世界でも、こんなこと言える人間そうはいない。
 正直呆れている。最初に出会ったのがこの二人はわざとなのか。

「もう一度言うわ。命を平等に見れないけどそれでもいい?」

「平等に見るのであれば、紫さんも助けるべき人になります。
 紫さんが傷つく道を行くのであれば、私は貴女も助けたいんです。」

 サーニャの言葉に少し面食らう。
 一人で行動すると言う選択肢を取った以上は、
 自分に実力が相応にあると言うことは分かってるはず。
 それなのに、自分でさえ助けたいと彼女は言っているのだ。

「でもねぇ…」

 価値観が合わないままを維持して、
 人が集まった時亀裂が入りかねない。
 それで何かあってからでは崩壊してしまう危険。
 素直についてきなさいとは言えるものではなかったが、

「いいんじゃあないか? たまにはこういう面子でも。」

 蚊帳の外…と言うより参加者ですらない、
 霖之助が外に出てきて、二人の会話へと割り込む。

「それとも異変解決の時の霊夢みたいに、
 自分がセーブする役割でないと不服かい?」

 永遠亭や地霊殿の時の異変の際は、
 霊夢とコンビを組んで異変解決に臨んだことはある。
 だが霊夢と言う人物は異変解決中においては遠慮はしない。
 人も神も、ついでに通りすがりの妖怪であっても邪魔をするなら、
 等しく敵であり蹴散らしていく。容赦と言う言葉は仕事中は封印される。

「私が、彼女のセーブをした覚えはないのだけど。」

 胡散臭い自分を信用している霊夢を気に入ってる節がある。
 紫もそういう時はノリのいい性格で戯れたりもするので、
 セーブしてるかと言われると違う。寧ろアクセルを全力で踏む。
 永夜異変のときなんて、終始漫才をしていたぐらいだ。

「あれ、違ったか…とりあえず、
 たまにはこんな善人と異変解決でも僕は良いと思うよ。
 特に君、胡散臭いと言われて信用得られなさそうだから。」

 自他ともに八雲紫の評価は基本的に信用ならない。
 そういう風に立ち回っているからと言うのもある。
 ある意味人から恐れられる、魅力的な妖怪としての性。
 こればかりは妖怪としての在り方みたいなものなので、
 おそらくこの場においてだけやめるのは難しいだろう。

「はぁ…どうなっても知らないわよ。」

 彼の言うことはごもっともであり、
 必要以上に敵を増やすよりかはましだし楽だ。
 そう思うとなし崩しの形ではあるが受け入れることにする。
 ただサーニャの考えを認めたわけではないので、
 釘を刺すように言っておく。

「それにしてもいいのかしら? こんな助言をして。」

「店の前で口論されて客が寄り付くと?」

「…それもそうね。」

 営業妨害を止めるための行動。
 と言えばある意味では間違いではないか。
 もっとも、他の客はいないが。

「ついでだから、助言にならない言葉を一つ贈るよ。
 君のビブルカード、危険な人物がいるから気を付けた方がいい。」

「…それも助言ではなくて?」

「誰が、とまでは言ってないからね。
 危険じゃない相手を疑う可能性もある。
 疑心暗鬼になりうるだろうし、助言ではないさ。」


286 : ◆EPyDv9DKJs :2020/12/14(月) 17:21:34 WWKx8l9M0
 ビブルカードは四枚所持している。
 そのうち、何人がその危険な人物か。
 そもそもどういう意味で危険なのかもわからない。
 単純な優勝狙い、ただ殺しを楽しむシリアルキラー、
 ステルス決め込んでるのか、性格に難ありの人物。
 いずれにせよ抽象的過ぎてまともなアドバイスではない。
 普通に考えればノイズのような存在になってしまう

 とは言え『助言にならない』と言うのは建前だ。
 初対面のサーニャや勇者ならそうなるかもしれないが、
 変わらず幻想郷の住人であると理解している紫には、
 その意味は『気を付けてくれ』と言いたいのだろう。

「参考にとどめておこうかしら?」

 デイバックの中からビブルカードを一枚取り出す。
 取り出した人物の方角へと進むことが三人の方針となる。
 さて、選んだ紙は敵か味方か…或いはまともなのか。
 賽子を振るうときだ。

【A-6 香霖堂前/黎明】

【勇者@ゴブリンスレイヤー】
[状態]:負傷(小・自然治癒中)、魔力消費(中)
[装備]:約束された勝利の剣@Fateシリーズ、包帯(ところどころに巻いてる)
[道具]:基本支給品(食料は菓子類と水に交換)
[思考]基本行動方針:こんな殺し合いを許してはおけない。
1:助けが欲しい人はなるべく助けたい。
2:彼(ザメドル)は倒さないといけない。
3:紫さん、サーニャちゃんと同行。

[備考]
※最低でも魔王を撃破した後からの参戦です。
※約束された勝利の剣の性能は知ってはいますが、
 現状は切れ味のいい剣程度で扱っています
※ランダム支給品の二つはエクスカリバーと交換されました

【サーニャ@UNITIA ユニティア 神託の使徒×終焉の女神】
[状態]:幻惑の学聖ボタンの強化効果(回避率、命中率上昇、魔族属性に有利)
[装備]:幻惑の学聖ボタン@大番長、サーニャの十字架@UNITIA ユニティア 神託の使徒×終焉の女神
[道具]:基本支給品(食料は菓子類と水に交換)、ランダム支給品×1(武器ではない)
[思考]基本行動方針:出来るだけ生命を救う。
1:紫さんと勇者さんと同行。
2:傷ついた人は助けたいけど…

[備考]
※参戦時期は少なくとも固有のストーリー経験済みです。
※幻惑の学聖ボタンの効果で魔族属性に該当する敵に対して強化効果を得てます。
 (魔族属性に関することは後述)
※治癒能力は低下していますが、元々役割がヒーラーなのでそれなりに回復できます。

【八雲紫@東方Projectシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:緋舞扇@グランブルーファンタジー、ビブルカード@ONEPEACE
[道具]:基本支給品(食料は菓子類と水に交換)、ビブルカード×4(狼牙のだけ少し破れてる、ランダム支給品×1(東方project出展ではない)
[思考]基本行動方針:一先ずは異変解決
1:勇者ちゃんとサーニャと共にビブルカードの示す先へ向かう。
2:霖之助さんは変わらないようで安心した。
3:レミリアは…ほっといても大丈夫でしょ。
4:ミルドラースの目論見とか、その辺考察しておきたいかも。

[備考]
※参戦時期は少なくとも緋想天以降です。
※境界を操る程度の能力にある程度の制限が掛けられています。
 制限の度合いは後続の書き手にお任せします。
※ビブルカードは斬真狼牙 シャーロット・E・イェーガー 粕谷瞳 土方歳三の四人です。
 誰のビブルカードを選んだかは後続の書き手にお任せします。

※サーニャ、紫、勇者のランダム支給品は森近霖之助の能力、
 『道具の名前と用途がわかる程度の能力』で鑑定済みです。
 ただし使用方法は分かっていません










 紫たちの行き先をどうするか決めてる間に、店内へと戻る霖之助。


287 : ◆EPyDv9DKJs :2020/12/14(月) 17:22:22 WWKx8l9M0
 まさか、こんなに早く紫と出会うことになるとは思わなかった。
 レミリアは従者が常連客ではあるものの、当人とは面識が余りない。
 この会場で最も信用できる人物は、胡散臭いとは言ったが彼女になる。
 幸先がいいのか、少し露骨に手助けをしすぎてしまった気もしてしまう。

 運営があの面々では自分ができることなんてたかが知れている。
 正直最初は諦めていた。と言うより抗う理由が自分以外にないから。
 だったが、幻想郷の賢者がいては流石に別だ。幻想郷の危機に繋がる。
 幻想郷に特別思い入れがあるわけではないが、縁ある人も多い。
 それなら少しぐらいは抗ってみようか、なんて考えを持って今に至る。
 安楽椅子へ腰掛けながら、ある書類へと目を通す。

(粕谷瞳に土方歳三…厄介な相手だな。)

 書類の束は参加者の詳細な情報の書かれた資料。
 参加者には危険な人物もいるし、場合によっては出合い頭の攻撃もある。
 そういう人達に先に警告できるように事前に知っておく必要があるからと、
 あらかじめ上の人から貰っておいたものだが、予想の斜め上の活躍をした。
 彼女が持つビブルカードには二人ほど危険な人物の名前が書かれている。
 あの紫ならそう遅れは取らないとは思うが、首輪と言う誰でも死ぬ可能性。
 それがある以上は彼女だからと、たかをくくるわけにはいかないだろう。
 特に瞳の方はその主人次第で立ち位置が変わってくるようなので、
 単純に乗っている土方とは別ベクトルで厄介な存在になる。
 シャーロットの方は別方向に問題ありのライナーを抱えてる為不安で、
 できれば一番安定してそうな状態である狼牙が一番のあたりか。
 心労が増える中、近くに置いていたパソコンがひとりでに起動し始める。

「やあ、お客さんが来たようで何よりだ。」

 一仕事終えた彼を労うように、
 赤髪の女性───マキマの顔が映される。

「…こんな感じでよかったのかい?」

 苦手だなぁ、この人。
 霖之助にとってマキマの印象はその一つに尽きる。
 何を考えてるか分からない、底の知れない人柄。
 酷く見覚えがある…と言うより、先程出会ったばかりだ。

「少しやりすぎなところはあると思うけど、いいんじゃあないかな。
 私だってそこまで鬼でもないさ。君にはそれなりに自由にさせてる。
 やりすぎなら警告はするから、余り気負わず過ごしてくれて構わないよ。」

「こんな誓約せずとも君なら従順なのを選ぶなり、
 僕を従順にしておくだろうに…変わった人だねホント。」

 店から離れるな、滞在は十分までだ。
 此処まで制限をかけなきゃいけないのは信用のなさの表れ。
 もっと適任が他にいたのではないかと思っている。

「言っただろう? 私はそこまで鬼でもないさ。
 アンテン様とは違って気軽さが欲しかったのと、
 使用方法を教えてくれない君の能力なら面白いと思ってね。」

 鬼じゃなくて悪魔な気はするけどね…なんて軽口が出そうになる。
 彼女は人ではない。マキマのことは出会ったばかりでわからないものの、
 それだけは出会ってからずっと感じ取っている。
 得体の知れなさも、そういうことだと。

「それにしても戯れに置いたアレ、
 もう交換されるとは思わなかったよ。」

 香霖堂由来の物以外の品は、
 ランダム支給品で出し損ねたものを並べている。
 何人集まるか想定してなくてそれこそ多種多様に。
 なんとなくで余った支給品を並べてみたが、
 その中でもトップクラスのものをお遊び感覚で置いてみた。
 『ゲームでやたら高くなんでか序盤や中盤に売ってる高価な奴』そんな感覚で。
 だと言うのに、彼女は交換できるだけの相場を自分の支給品だけで持ち合わせていた。

「僕も驚いたよ。彼女はかなりの幸運を持っているようだ。」

「賽子に愛された子だからね。」

 天空の剣以外の支給品も極めて当たりを引いている。
 ランクA+相当の宝具、勇者が装備する最強の盾。
 どちらも普通に考えて大当たりのものだ。
 それらを捨ててまで得た聖剣もまた大当たりな部類になる。

「賽子は振りたくないね。
 今の僕じゃあ、赤い一しかでないよ。」

「皮肉かい?」

 態々『赤い』と表現するのは、
 今目の前に映ってる相手への比喩か。
 そんな風にも受け取れる発言だ。

「僕にそんな度胸はないよ。
 ただ人より長く生きられるだけの、
 収集癖を暴走させただけの変人さ。」

「意外と粘れるかもしれないけどね。
 さて、私は戻るがこの調子で頼むよ。
 仕事をしてくれたら、飴はちゃんとあげるよ。」

 小悪魔めいた笑みを浮かべながら、電源が落ちる。
 どっと疲れが飛び出し、力が抜けたかのように椅子にもたれた。
 敵に回したくない相手との会話はしたくはない。


288 : ◆EPyDv9DKJs :2020/12/14(月) 17:23:48 WWKx8l9M0
「…やっぱり、嗜好品頼んでおいてよかったな。」

 この状況では食だけがある意味彼の唯一の楽しみだ。
 それ以外にやることがないままたべっこどうぶつを手にとる。
 次の客もまともでありますように…そんな風に願いながら。

「…ラクダは先に食べたほうがいいって言われたっけ?」

 マキマに言われた、心底どうでもいいことを思い出しつつ。

【ビブルカード@ONEPEACE】
紫の支給品。別名命の紙。爪の切れ端を混ぜたことでできる特殊な紙で、
燃えないし濡れることもなく、混ぜた爪の元となる対象の方角へと動く
本当に僅かで力もないので紙がひとりでに逃げる、なんてことはない
この性質を利用して対象を探すことができ、ちぎっても性質は残る
対象が弱まると縮んでいき、死亡すると燃え尽きるように消滅
一応紙としても使えて、裏には混ぜた対象の名前が書かれている

【緋舞扇@グランブルーファンタジー】
紫の支給品。水属性のソシエの加入武器
実は格闘武器。開いた状態で突くタイプのメリケンサック風で、
この用途の為耐久性は普通の扇を遥かに凌ぐぐらいに優れている
ソシエの純粋な魔力を込めた扇で、雅かな紋章が刻まれた扇面は大気を凍らせ、空を白に染め上げる
とのことなので、魔力で氷に関する能力も使える

【幻惑の学聖ボタン@大番長】
サーニャの支給品。九州地方のホーリーフレイム、またはスカルサーペント
ルート次第で片方の勢力に神威が渡すことになる学聖ボタン
(学聖ボタンは特待生の力を引き上げるもの。このロワでは全員使用可能)
魔界孔封印とかその辺にも関わる意外と重要アイテムでもあるのだが、
その辺については五種類すべてがないと効果を発揮しないので割愛とする
これを手にした蛇王院空也は触手がだせるようになったりしたものの、
このボタンは狼牙たちが手にしてからの性能の扱いになる
装備中は命中率と回避率が上がり、魔族属性を持った敵に有利(反撃、回避、命中アップ)が取れる
魔族属性は大番長基準で言えば悪魔、吸血鬼と言った人外の部類であって、
かつエルフ等の超常(所謂光)属性に該当しない人物が基本的に多い
参加者で一例を挙げる場合トキ デンジ レム レミリア ペニーワイズ等
他の該当者については後続の書き手にお任せします
なお大番長における属性は通常、白魔、黒魔、機械、超常、魔族の六属性

【約束された勝利の剣@Fateシリーズ】
Fateでおなじみ、セイバーアルトリアの宝具エクスカリバー
人々の想念が星の内部で結晶・精製された神造兵装にして、
聖剣というカテゴリーの中において頂点に立つ最強の聖剣
ビームは出ないが、魔力を使ったそれっぽいことは勇者ならできそう
マキマが『どうせ誰も交換できない非売品』ポジションで香霖堂に置いてみたが、
まさか一人の支給品だけで交換されるとは霖之助含めて想定していなかった

【螺湮城教本@Fateシリーズ】
勇者に支給されたキャスタージルの宝具プレラーティーズ・スペルブック
独自の魔力炉を持つため、魔術に素養がない人物でも魔術を行使できる宝具
魔導書が大魔術・儀礼呪法を代行し、深海系の水魔の召喚を行うことができる
水魔は強くないが対軍宝具ともあって数で勝るNPCの軍勢も優位に立てるだろう
色々応用ができるが勇者としては剣が必要で、エクスカリバーの交換材料となり店に残ってる
なお宝具のランクの差がある為、これだけでは相場が見合わなかったのだが…

【勇者の盾@ドラゴンクエスト3】
勇者の支給品。ラダトーム北の洞窟で手に入る盾
炎、氷ダメージを三分の二減少させ、作中最高の防御力の盾になる
勇者(職業)にしか装備できない盾であるため彼女も装備可能だったが、
エクスカリバーの交換材料にされて店に飾られてる


289 : ◆EPyDv9DKJs :2020/12/14(月) 17:27:57 WWKx8l9M0
【菓子詰め合わせ&水@よろず】
基本支給品のインスタントラーメンとストロングゼロを交換した産物
水自体はペットボトルであること以外は特筆することは何もないが、
菓子の内容は参戦作品のものが色々混ざっている混沌仕様
一例に初夏の飴、しんのすけのチョコビ、ドラえもんのどら焼き等
紫は初回来店特典のおまけで二人より少し多めに貰っている

【香霖堂@東方project】
森近霖之助が経営する古道具屋
彼の収集癖によりいろんなものが集まっているが、
大体が非売品かガラクタばかりで売る気が全くない
もっとも店主は人間と違い食事は一切不要とされるので、
売れようと売れなかろうと構いはしなかったりする
一応店としては機能しており咲夜や紫と常連客は少なくない
とにかくがらくたが多いので狭くて歩きにくいので
体格が大きいと難儀…と言うより約一名は入れないかも

【森近霖之助@東方project】
香霖堂店主にして戦闘を行わないNPCの一人
支給品(基本含む)同士の物々交換をすることができる
霖之助自身は雑談や助言に細かい制限はないものの、
参加者による施設の対応は平等であるようにされている
交換の際は相場が見合ってる必要あり。相場は霖之助の感性次第
放送ごとに香霖堂由来と嗜好品以外が更新され品揃えが変わっていく
現在店には螺湮城教本、勇者の盾等が存在する
誓約は以下の通り
・店内の暴力行為、店への過剰な攻撃の禁止
・店内での滞在は十分以上を禁止
・一度出た人は次の放送までの間再来店禁止
・マジックアイテムの生成、霖之助自身の遠出
現時点では基本&ランダム支給品のみで現地調達はお断りだが、
ゲームの進行次第で支給品が枯渇する可能性もあるので変わるかも

また霖之助はハニージッポ@大番長と参加者の詳細名簿を所持
ハニージッポは死亡時全開で蘇生する(出会い頭に死亡するのを防ぐために渡されてる)
詳細名簿は、メタ的に言えば候補作の時点まで纏められている(そこからどうなったかは書いてない)


※禁止行為に抵触した場合について
 完全ランダムに別のエリアへ飛ばされる
 転移先を中心に小鬼禍(ゴブリンハザード)が発生
 参加者が強い程強力なNPCも送り込まれる
 エリア内のNPC全員が優先順位を対象に変更


290 : ◆EPyDv9DKJs :2020/12/14(月) 17:28:33 WWKx8l9M0
以上で『紫さんは異変解決がしたい』投下終了です
それとサーニャについてですがオールエントを見るに、
武器である十字架の出し入れが自由みたいなので、
兼定同様にランダム支給品の枠を一つ減らす形を取っています


291 : ◆vV5.jnbCYw :2020/12/19(土) 12:47:44 TieRh0T.0
投下します。


292 : 張りぼての同盟 ◆vV5.jnbCYw :2020/12/19(土) 12:48:16 TieRh0T.0
静かな空間だった。
それこそつい先刻までの乱闘が嘘のように、シンと静まり返っている。
音があるとすれば、一人の男が支給品袋を確認するゴソゴソという音くらいだった。


「湯はねえのか……。」
自分デイパックの中身を完全に探り終わると、男、ホル・ホースは少し残念そうな顔をする。
パンのようなシンプルな食料ではなく、インスタントラーメンのような回りくどい食べ物を支給しているのなら、湯もより簡単に調達させて欲しかった。


(それこそ、湯を放出するスタンド……なんてな。)
そんな微妙なスタンドなんて本当にあるのかと、自分の妄想を勝手に笑う。

(まあ、食いモノは見つかったから、文句はねえけどな。)
兼定のデイパックからは、蒸かした芋が見つかった。
この鞄の保温状態はどうなのかサッパリだが、ホカホカと湯気を放っている。


芋は一人で食べるには少し大きいサイズで、誰かに分け与えれば、丁度食べごろの大きさになると思った。
とはいえ、現在相手はハサミだけ。
彼はモノを食べないし、仮に食べるとしても、一緒に食べていて楽しい相手だとも思わなかった。

流石に湯を入れずにインスタントラーメンを食べるほど追い詰められている状況ではないし、ハサミから貰った方なんて毒でも入っているかもしれない。
そんなわけで、彼は切り株に腰掛け、その芋を食べることにした。


(………。)
いまひとつ味気ねえな、と思いながらそれを齧る。
決してまずいものではないが、他のことなど忘れてしまうほど旨いものでもなかった
そんな時に耳を澄ませると、僅かながら音が聞こえてくる。
先程ハサミが、殺害した相手を連れて行った場所のあたりからだ。


それはジャキ、ジャキと、ハサミが動くときの音だ。

(まあ、何にせよ、飯中に見るモンじゃねえだろうな。)
同行者の行動を意に関せず、食事を続ける。


丁度芋の尻尾だけが残った辺りで、辺りから別の音が聞こえてきた。

(おいでなすったか。)
澄んだ緑色の茂みから、濁った緑色の小鬼が2匹現れる。


(メシ中に邪魔するとはねえ、ま、そこまで旨い飯でもねえからいいけど。)
芋が無くなって空いた掌から、再び銃を出し、ゴブリンを狙撃する。
頭を打ち抜かれて一匹は倒れるが、同時にもう一匹は無傷でホル・ホースに飛び掛かろうとする。

(弾だってスタンドなんだよ。)
しかし、伊達男の整った顔に爪で傷を入れる前に、戻ってきた弾が2匹目の頭を突き抜けた。


「ソイツらが誰なのか分からないけど、殺さずに適度に傷つけてくれない?」
茂みの声から既に聴きなれた同行者の声がした。

もう遅いぜ、と言いたい所だったが、都合よく新手のゴブリンが木の上から飛び掛かってくる。

「アイ、アイ、サー!」
ハサミに何の意図があるのかガンマンには知ったことじゃないが、取りあえず言われた通りにすることにした。


293 : 張りぼての同盟 ◆vV5.jnbCYw :2020/12/19(土) 12:48:43 TieRh0T.0
降ってくるゴブリン達の手や体が、地面やホル・ホースに届く前に、脚だけを打ち抜いていく。

不時着して、動けないまま手をばたつかせている哀れな小鬼を、ハサミがいる辺りまでボールのように一匹ずつ蹴飛ばす。
ゴブリンの脂肪の適度な弾力が、ホル・ホースに申し訳程度の快楽を与えた。


「ありがとう!これでさっきの失態はナシにしてあげるよ!!」
まるで質の悪い大人のような上から目線の態度と、無邪気な子供のような口調で、彼に感謝を告げる。


ハサミが刃を動かす音に加え、ゴブリンの甲高いが濁った悲鳴が何度か聞こえてくる。


「なむあみだぶつ……と。」
恐らく普通に死ぬより哀れな目に遭っているであろうゴブリンに、心にもない念仏を唱えた。
ゴブリンの悲鳴が聞こえなくなった頃に、ひと際大きな足音が聞こえたと思うと、今度はそれまでの3倍はある大きさの、ボブゴブリンがホル・ホースの目の前に立ちはだかった。


「デカけりゃいいってモンじゃないぜ。杓子は耳かきにならずって言葉、知ってるかい?」

その図体を恐れもせずに、銃を構える。


「お待たせーー!!」
さっさとデカブツを撃ち殺そうと思った所で、甲高い声が響いた。
そこにいるのは、ゴブリンの青い血で汚れたハサミ。
そして、隣には、異様な存在が鎮座していた。


「おい……それって……。」
「ああ、待って待って。コイツは敵じゃない、ぼくの作った玩具さ。」


見た目は、ゴブリンを象った人形だった。
そのゴブリンが、剣士であったかのように、剣を構えている。
しかし、そんなものは全く問題ではない。
人形の周囲に、恐怖と痛み、血で歪んだゴブリンの顔面や肉片がこびり付いているのだ。
名づけるなら、ヒャクメンハリボテゴブリン、とでも言うべきだろうか。


森の木の枝で骨組みを造り、そして支給品の折り紙で、ゴブリンの形を模した人形を作る。
そして、ゴブリンの肉片や顔面をそれらの体に張り付けて、仕上げとばかりに手の部分に兼定の指を張り付けたのだ。



「スゴイだろ?支給品の剣と、折り紙を一つ使ったけど、それでも良いオモチャが出来たよ!!
ここの世界のイキモノは、肉厚だけどチやニクが接着剤代わりになりやすくてね!!」

「あ、ああ。」

その姿は、ホル・ホースはもちろん、ボブゴブリンでさえ顔に恐怖を見せていた。
だが、首輪の持ち主を見つけたら襲う命令には逆らえず、太った怪獣は顔を引き攣らせて、二人に突撃する。


しかし、二人への攻撃が当たる前に、ヒャクメンハリボテゴブリンが振りかざす剣によってボブゴブリンは両断される。

「おい……それって……。」

よく見れば、その振りは先ほど戦った兼定のそれと酷似していた。
勿論、人形である以上、動きこそはぎごちなく、例えるなら「超一流の剣士の型のみを真似た二流の剣士」と言ったところだが。

「このために、指はあの剣士のものを使ったんだ。やっぱり、剣士の力は素晴らしいね。」


刃物にとって、血糊で汚れるのは一大事だろう。
だが、オリー王の力を貰ったハサミの刃は、錆びず、鈍らない。
そして、もし彼に人間の顔が付いていれば、さぞかし良い笑顔を浮かべていただろう。


上っ面だけの同盟に、新たなメンバーが参加した。
それが持たらすものは、見栄えだけの結果か、それとも本当の惨劇か、まだ誰も知らない。



「さあ、行こうか。体も洗いたいし、どうやらこの世界にいるらしい僕を殺した奴の復讐もしたいしね。」
「お、おう。」

自分を殺した相手、という言葉を今一つ捉えられなかった。
実は彼、ホル・ホースはここへ来る前に、主であるDIOを殺害しようとしていた。
その時にエンペラーの引き金を引こうとした瞬間、この世界に飛ばされた。

(もしかすると、この世界は死者の集まり……?)
反抗に失敗し、気づかぬ間に殺されてこの世界に飛ばされた。

自分が生きているか、その問いには余程頭がおかしくない限り、はいと答えるだろう。
しかし、その根拠を提示しろと言われれば、困ってしまう。


(まあ、そうじゃねえことにしておくか。)
自分が想像しうる最悪の状況を、頭の片隅に置いて、人ならざる者達と先へ進むことにした。


294 : 張りぼての同盟 ◆vV5.jnbCYw :2020/12/19(土) 12:49:02 TieRh0T.0

【F-7 ソルティ・スプリングス/3:30 黎明】

【ホル・ホース@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダーズ】
[状態]:健康 空条徐倫への不安(中) 
[装備]:手にとり望遠鏡(『引き寄せる』『引き寄せられる』ともに現在使用不可)@ドラえもん
[道具]:基本支給品×2(自分とハサミの分)、ランダム支給品0〜1(確認済み?)
[思考]基本行動方針:とりあえず生き延びるが、今はハサミの旦那に従う。
1:空条って、まさか…?
2:今はハサミの旦那に協力。ハサミの旦那がやられたら…どうすっか。
3:女に手を出さないのも、此処では考え直すべきか、
[備考]
※最低でもエンヤ婆戦後からの参戦です。
※なんとなく参加者は多くが異なる世界から来ているとは思ってますが、まだ確証はありません。
※空条徐倫を承太郎の関係者と言う可能性を考察してますが、
 上の異なる世界がより多いと考えた場合解消されるかも…本人に出会うまでは。

【ハサミ@ペーパーマリオ オリガミキング】
[状態]:ダメージ(小)、ホル・ホースへの不満(小)、良いオモチャを造れてハイ ゴブリンの血で汚れ
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、折り紙セット(2/5 黒、黄、青使用済み)、睡眠薬入りアイスティー 
[思考]基本行動方針:この世界で新しいオモチャを作る。
1:ヒャクメンハリボテゴブリンを使ってみる
2: 体を洗いに行く
3:ホル・ホースと協力し、会場を荒らし回る。
4:もしも自分を殺した相手(マリオ)に復讐する。
5:ちょっと不満…まあ隙を見てホル・ホースも殺すけどね。
6:最終的には優勝。

[備考]
※本編死亡後からの参戦です。
※ハサミの支点になるネジの鉸めが、首輪代わりになっています。


支給品紹介

【蒸かした芋@進撃の巨人】
ホル・ホースに支給されていた食べ物。
原作では登場人物の一人が、調査兵団の入団式の最中に食べていた。
そこそこ大きいサイズで、半分こして食べることもできる。


【幸運と勇気の剣(ラックとプラックのけん)@ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド】
ハサミに支給された武器。
原作の敵の一体である、黒騎士ブラフォードが愛用していた。
剣には「Luck!(幸運を)」の言葉と、自らの血で書き足した「PLUCK(勇気をッ!)」の文字が刻まれている。
しかし、本作ではゴブリンの血で、【Unluck(不運を)】という文字になっている。
現在はヒャクメンハリボテゴブリンが持っている。

【ヒャクメンハリボテゴブリン+幸運と勇気の剣】
ハサミが創った玩具。
ゴブリンを模した巨大な人形だが、その周りにゴブリンの顔が張り付けられている悪趣味極まりないもの
指は兼定の者が使われているためか、兼定によく似た剣術を使うことが出来る。
ただし、あくまで型を真似ただけであるため、兼定に比べるとその技術ははるかに劣る。
全体図がイメージしにくかったら、「ヒャクメンハリボテメット」に似た姿だと考えてよい。


295 : 張りぼての同盟 ◆vV5.jnbCYw :2020/12/19(土) 12:49:15 TieRh0T.0
投下終了です。


296 : 張りぼての同盟 ◆vV5.jnbCYw :2020/12/19(土) 14:08:46 TieRh0T.0
大きな失敗という訳でもありませんが、
ヒャクメンハリボテゴブリンが出た直後に、ホル・ホースが二度「おい……それって……。」
と言っていてどうもくどいので、二回目の台詞を「今のは……」に変えておきます。
この投下がこの先の展開に困るような内容が無ければ、wiki編集の際に直しておきます。


297 : ◆7PJBZrstcc :2020/12/19(土) 22:58:19 qvYoVerg0
アクア、高垣楓、坂田銀時、アルス、アリス、シャガクシャ 予約します


298 : ◆5qNTbURcuU :2020/12/19(土) 23:14:15 RNzLhV/60
シャーロット・リンリン、星野輝子、野原しんのすけ、ロボひろし、レヴィ・ザ・スラッシャー、野比のび太、平野店長、ピーチ姫、島村卯月、真人
予約します


299 : ◆7PJBZrstcc :2020/12/22(火) 22:09:09 KkD2fzFQ0
投下します


300 : 前触れなく始まるボス戦は大体みんなのトラウマ ◆7PJBZrstcc :2020/12/22(火) 22:10:42 KkD2fzFQ0
 憎い、憎い、憎い。
 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い。
 憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎!

 ――憎い!!

 獣の槍から逃げ出したシャガクシャはE-8の橋を渡り、歩いていた。
 彼は歩く。憎しみに心を任せながら。
 彼は思う。なぜ自分はあの槍から逃げ出したのか。俺は退くつもりなどなかったのに。
 まるで自分の中に自分以外の誰かがいて、その誰かが槍に怯え逃げ出したような気がする。

 すると目の前に、シャガクシャに一抹も疑問を許さないかの如く一匹のモンスターが現れた。
 まるでドロドロの粘液の様な外見。しかしその実は鋼を超えるほどの硬さを誇る怪物だ。
 こいつの名ははぐれメタル。
 元の世界では高い防御力と逃げ足の速さ、そして倒した時に莫大な量の経験値が入ることが有名で、見つけたら狩りに行くのが定番だ。
 そしてこのはぐれメタルも例にもれず、シャガクシャと目が合った瞬間に逃げの一手を打つ。
 しかしその前に彼がゴロゴロの実の力で雷を撃ちだし、はぐれメタルに命中させた。
 これでどんな生物を真っ黒に焼き焦げ、生命を終えるだろう。

 だがはぐれメタルは死んでいなかった。
 こいつには防御力だけでなく、様々な耐性まで備わっているのだ。
 故に雷を無効化。はぐれメタルは見事逃走に成功し、安寧を得たかに見えた。

 なのにシャガクシャは何一つ動揺することなく、デイパックから最後の支給品を取り出す。
 取り出したものは槍だった。それもただの槍ではない。
 シャガクシャが一度として見たことのないようなレベルの業物だ。

 実は最初支給品を確かめている時、一番最初に見つけたものだったが、ゴロゴロの実とノトーリアスBIGで十分だと判断してしまっていたのだ。
 シャガクシャは槍を構え、はぐれメタルを追いかけ始める。
 追いかける対象のはぐれメタルは既にかなりの距離を稼いでおり、ここから追いつくのはシャガクシャの身が常ならば追いつくのは不可能だろう。

 されど彼の身は既に尋常に非ず。
 ゴロゴロの実の力で自身を雷に変え、雷の速度ではぐれメタルに迫り、一瞬で追いつく。
 いくらそいつが素早くとも、雷光に勝る道理はなし。

 シャガクシャがはぐれメタルに槍で攻撃を放つ。
 その一撃が急所に当たり、会心の一撃となって、防御を貫き息の根を止めた。

 それが終わったシャガクシャは、もう用はないとばかりに再び進み出す。
 あてもなく彷徨い、出会ったNPCを皆殺しにしながら、途中で虚空から流れた放送すら無視して彼はただ進み続ける。


 ちなみに、シャガクシャがもう少しE-8の橋を渡るのが遅ければドラえもん、レミリア、西片と出会う可能性があった。
 しかしながらそうはならなかった。これが誰にとっての幸福で、誰にとっての不幸かは誰も知らないが、これは完全な余談である。


301 : 前触れなく始まるボス戦は大体みんなのトラウマ ◆7PJBZrstcc :2020/12/22(火) 22:11:55 KkD2fzFQ0


 ところで、ここで疑問が生まれる。それははぐれメタルについてだ。
 通常、NPCは首輪のある参加者を狙うよう主催者から調整を受けている。
 勿論全てがそうではない。アンテン様やぴーたん、森近霖之助という参加者を襲わないNPCもいる。

 しかしアンテン様は参加者の死体を対価に、捧げた者へ対価を渡す。
 ぴーたんは倒されれば主催者が支給した物以外の、空腹を満たす食料を与える。
 森近霖之助は支給品の物々交換と、鑑定を行う。
 彼らにはそれぞれ明確な役割が存在する。

 翻ってはぐれメタルの役割とは何だろう。
 こいつの特徴は高い防御力と多くの耐性に早い逃げ足、そして膨大な経験値だ。
 だけどこの状況でそんな倒しにくさの極致みたいな敵を倒そうとするか。
 シャガクシャは憎しみのあまり殺しにかかったが、そうでもなければ殺し合いに対するスタンスは違えど放置するのが普通だろう。
 更に言うなら、膨大な経験値と言っても、世界によっては経験値という概念がなく、知識があっても架空の存在と流し、存在していても明確に認識されていないことがほとんどだ。
 
 この殺し合いの参加者の中で経験値の概念があるのは、
 カルデアのサーヴァント、空の上を冒険する騎空団、女神エリスが見守る世界の冒険者
 日本帝国の提督、千年に一度目覚めるドラゴンと戦う運命の勇者、二人のロト
 二体のモンスター、ネオラント所属のヒーラー、艦娘、刀剣男子、帰宅部、番長の合計18人。
 更に言うなら空の世界に転移したときのアイドルなど、違う時間軸や出展を含めれば更に増えるがここでは省略する。

 けれどもシャガクシャはこの中に入らない。参加者が112人もいる以上、18人しかメリットにならない存在などあってはならないだろう。
 故にこの殺し合いのはぐれメタルの報酬は経験値ではない。代わりの報酬は――

 ボン

 はぐれメタルが倒されてから十秒ほど後に、死体の近くに間の抜けた音と現れた宝箱だ。
 シャガクシャはここにもういない為今は誰も顧みないが、これが報酬。
 中身については誰も知らず、箱を開けるに至っての制限は一切ない。
 故に他の参加者やNPCに取られるかもしれないが、そこまで主催は考慮しなかった。



 

 アリアハン出身の少年、アルスは勇者である。
 勇者と呼ばれる程の男を父に持ち、それに相応しくあれと育てられた。
 そして仲間と共にバラモス、ゾーマなど数多もの強敵を撃ち滅ぼし、二つの世界を平和にした。
 更にその二週間後に殺し合いに呼ばれ、平行世界の女として生まれた自分自身と遭遇してなお己を見失うことなく、殺し合いの打破に向かう彼はまさしく勇者に相応しい男だろう。

 だがしかし彼には――

「……あら? こんばんは」
「う〜、頭いてえ……」
「う〜、むにゃむにゃ……」

 殺し合いの中でも酔っぱらっている相手に対処するスキルは持っていなかった。
 というか、本来なら勇者にそんなものは必要ない。

 困った彼は隣にいるアリスにチラリと目をやる。
 すると彼女はズカズカと眠っている、水色の髪が特徴な女性の元へ向かう。

「ほら、寝てる場合じゃないでしょ。起きなさいよ」

 そう言ってユサユサと眠っている彼女を起こそうとするアリス。
 しかし彼女は目覚めない。

「なによ〜、今日のトイレ掃除はめぐみんでしょ〜」

 それどころかとても生活感のある寝言まで飛び出す始末。
 これにアリスはキレた。

「ああもう! 起きなさあああああああああああい!!」
「わひゃぁ!?」

 女性の耳元でアリスが大声で叫ぶことで、眠っていた酔っ払いは変な叫び声で目を覚ます。

「ああああああってーなオイ! あんまりギャーギャー騒ぐんじゃねーよ。二日酔いに響くだろーが」
「そもそもなんであなた二日酔いなのよ。状況分かってるの?」

 アリスは横入りしてきた天然パーマの銀髪男に食って掛かる。
 しかし男も負けていない。

「あァ!? こっちは殺し合いの前から二日酔いだっつーの!
 そんなに殺し合いしてほしけりゃ事前に『〇日後に行われる殺し合いに召喚しますので、体調を整えておいてください』って一報入れとけ!」
「何その丁寧な殺し合いの主催者」
「そしたらきちんと『その日は近所のクソババアの七回忌なので無理です』って断るから」
「断り方おかしいでしょ!? どれだけ適当!?」
「ほらアリス、落ち着いて」


302 : 前触れなく始まるボス戦は大体みんなのトラウマ ◆7PJBZrstcc :2020/12/22(火) 22:13:00 KkD2fzFQ0

 いつの間にか漫才が始まってしまったので、とりあえずアリスを押しとどめるアルス。
 そこに頃合いを見計らっていたのか、酒場の椅子に座ってこちらを見ていた女性が話しかけてきた。

「あの、あなた達は……?」
「えっと、僕達は――」
「ちょっと待って」

 自己紹介をしようとしたアルスに対し、水色の女性がまさかのインターセプト。
 その理由は――

「カエデ。自己紹介の前に水持ってきて。頭ガンガンしてそれどころじゃないから」
「それなら俺のも頼むわ。それによく見たら、ゴリラが原作の俺と違ってあの二人は作画が鳥山明っぽいから、こっちから自己紹介しときてえ」
「……?」

 男の台詞に疑問を抱きつつも、水を取りに行くカエデ。
 お盆に二人の分だけでなく、ついでに自分とアルス達の分の水を持ってきた彼女は全員に水を渡す。
 そして水を要求した二人は速攻で水を一気飲み。
 
「っぷはぁ! 少し楽になったわ!」
「んじゃ自己紹介すっぞ。まずはこっちの酒飲みサイドから」
「何よその区分! ここは女神アクアとかわいい信者達にしましょう!!」
「お前を崇めるくらいならドリィィムキャッチャァァァァ!! のほうがマシだ」
「そんな声だけで夢掴めなさそうな奴よりこっちの方が絶対いいに決まってるわ!!」
「早く自己紹介しなさいよ」

 放っておくといつまでもふざけそうな二人に、アリスは少女とは思えないほどのドスを利かせて二人を睨む。
 睨まれた二人は途端におとなしくなり、そそくさと自己紹介を始める。

「俺は坂田銀時。万事屋っつー、まあ何でも屋だ」
「私は高垣楓。アイドルをしています」
「そして私はアクア! アクシズ教の御神体にして水の女神よ!!」

 各々自己紹介する三人だが、アクアの女神という言葉に勇者二人は驚く。
 それを見た銀時はアクアを諫めた。

「お前その設定やめろって。見ろよあの鳥山コンビ、頭おかしい奴だと思ってビビってんだろーが」
「鳥山コンビって何!?」
「銀時さん。私が所属する事務所には蘭子ちゃんという、挨拶が『闇に飲まれよ』と言ったりするアイドルがいますから、恐らく――」
「それ単なる中二病!!」
「あぁ、あれか。こ〇ん星か? こり〇星なのか? お前ゆう〇りんがあのキャラ捨てるのどんだけ大変だったと思ってんだ」
「設定じゃないって言ってんでしょうが!!」

 アクアが涙目になりながら銀時に掴みかかるのを、オロオロしながらなんとか止めようとする楓。
 その光景を尻目に、勇者二人はアクアを見つめていた。
 見つめるのはアクアが女神という大法螺を吹いたと思ったからではない。
 女神であるのは事実だと分かるから驚いているのだ。

 なぜ彼らがアクアを女神と認識しているのか。
 それは過去に似たような存在と出会った経験があるからだ。

 精霊ルビス。
 大魔王ゾーマに封印されていた所を勇者たちが助け出した、アレフガルドを創造した精霊である。
 そのルビスと似たような神聖さを、彼らはアクアから感じていた。
 だからこそ、アクアが女神という言葉を素直に信じたのだ。
 そう、信じたのだが――

「謝って! 設定とか私に失礼なこと言ったの謝って! アクシズ教徒がただじゃおかないわよ!!」
「うるっせえぞこの駄女神! 俺から離れろ! 服がてめえの涙と鼻水でビチャビチャじゃねえかァァァァ!!」
「あああああああああ! 駄女神って言った!! カズマさんと同じこと言った!!」

 泣きながら銀時と本気の取っ組み合いで喧嘩をするアクアに、神らしい神聖さや荘厳さといったものは欠片もなかった。


303 : 前触れなく始まるボス戦は大体みんなのトラウマ ◆7PJBZrstcc :2020/12/22(火) 22:14:30 KkD2fzFQ0

「あの、アクア様……。とりあえずそのへんで――」

 何とか穏便に二人の喧嘩を止めようとするアルス。
 すると様付けで呼ばれたアクアは一瞬で泣き止み、アルスの方へ駆け寄った。

「ねえねえ今私のことアクア様って言った?」
「え、ええまあ……女神様ですし……」
「偉い! 偉いわこの子!!」

 アルスの言葉を聞いたアクアは感激しながら銀時たちへと振り返る。
 その時の表情は見事なまでのドヤ顔だった。これほどのドヤ顔を見る機会はそうそうないだろうと思わせるほどの顔だった。

「ギントキにカエデ! この子のこれが本来するべき態度よ!!」
「つーか正気か少年よ。いくら見てくれがいいからって話に乗ることはないねえぞ」
「いや、まあ僕、本物の女神様と会ったことありまして。その方と同じような雰囲気を感じるので……」

 アルスの言葉に銀時はこいつマジか、と言いたげな顔をする。
 その横では楓も表情こそ変わらないものの、蘭子ちゃんと似たような子って結構いるのね、と考えていた。
 そんなことはつゆ知らず、アクアはアルスに話しかけ続ける。

「その会ったことある女神って誰? 私知ってる?」
「ご存じかは分かりませんけど、名前は精霊ルビスといいます」
「……誰?」
「アレフガルドの創造神なのですが」
「…………どこ!?」

 本気で知らない神や土地の名前を聞かされ、動揺するアクア。
 その反応を見て、ここまで黙ってみていたアリスが喋りだす。

「まあその話はあとにして、私達もそろそろ自己紹介していい?」
「あ、うん。ごめん忘れてた」

 アクアの返答にアリスが若干キレそうになるものの、とにもかくにもアルス達も自己紹介。

「僕はアルス。アリアハン出身の勇者だ」
「私はアリス。私もアリアハン出身の勇者よ」
「双子ですか?」
「いや双子じゃなくて――」

 そこからアルスが語った内容に、銀時たちは驚愕する。
 アルスとアリスは双子ではなく、平行世界の自分自身であること。
 更に名簿を見ると、勇者という名前が自分達と別に二つあり、沖田という名前が二つあることから平行世界の同一人物を多く参加させているのではないかと考えていることを告げる。

「えぇ……なんかすっごい大事になってない……?」
「沖田?」
「そういえば私達、まだ名簿を見ていませんでしたね」

 話のスケールの大きさに戸惑うアクア。知り合いの名前が出て少し驚く銀時。
 そして楓はこの時初めて、自分達三人はまだ名簿を見ていないことに気付いた。

「名簿って何?」

 そしてアクアは名簿の存在そのものすら知らなかった。

「テメーが呑気に寝てるときに主催者の大魔王、えっと……エク〇デスが放送でルールブックに参加している奴らの名簿が浮き出るとかなんとか」
「ミルドラースよ。どこから出てきたのよエク〇デス」
「大魔王ですって!?」

 銀時とアリスの言葉にアクアが過剰に反応する。
 彼女の瞳には確かな怒りが宿っていた。

「大魔王が私を殺し合いに呼ぶなんて、これは魔王しばくべしの教義を持つアクシズ教への宣戦布告ね! 間違いないわ!!」

 プリプリ怒るアクアを含めた三人は名簿を見て、自分たちの知り合いがいないか確認をする。
 その結果、それぞれの反応は大きく異なるものとなった。


304 : 前触れなく始まるボス戦は大体みんなのトラウマ ◆7PJBZrstcc :2020/12/22(火) 22:15:13 KkD2fzFQ0

「そんな……!」

 楓は自身と同じプロダクションのアイドルと事務員が参加していることにショックを受け、

「え、カズマとウィズいるの? ウィズはともかくヒキニートのカズマさんは心配ね〜」

 アクアは仲間である少年を心配し、

(キュアダイアモンドってプリ〇ュアじゃねえかァァァァ!! 下手したら〇映アニメーションに俺らの映画、BN Pictures諸共潰されるゥゥゥゥゥ!!)

 銀時はプリ〇ュアとの共演で、1月4日に公開される映画『銀魂 THE FINAL』が潰されることを懸念していた。
 ちなみに仲間と知人の名前も名簿で確認していたが、そっちは実力を知っているので特に心配していなかった。

「やべえ……サンラ〇ズでもプロデューサー坊主にしたのに……。これはもうBN Picturesの社長に腹切ってもらうしかねえ……」
「あなた、なんか変な心配していない?」

 銀時が当人以外理解不能な感情を吐き出す中、アリスが疑問を呈する。
 その後、とりあえず情報交換をしようとしたものの

「痛っ!」

 楓の指が切れてしまった。どうやら名簿の紙で切ってしまったようだ。
 彼女はこれくらいならすぐ治る、と放っておこうとしたが

「ヒール!」

 アクアが回復魔法を使い、一瞬で治してしまった。
 これには楓のみならず銀時も驚いた。

「お前、ケ〇ルが使えたのか……!?」
「ケ〇ルどころかケア〇ガでもア〇イズでも任せなさい!」
「凄いです。本当に女神様だったんですね」
「もっと凄いのも出来るわよ。ほら、花鳥風月!」

 楓に褒められて調子に乗ったアクアは、デイパックから扇子を二つ取り出して両手に持ち、芸を披露する。
 花鳥風月とは、扇子から水が出る水芸だが、特に何かの役に立つわけでもないただの宴会芸である。

「どう考えても回復魔法の方が凄いでしょ」
「女神様も芸とかするのか……」

 女神の異様な俗っぽさに、改めて勇者二人がそれぞれ呆れと驚きを見せる。
 そんな中、やっと本格的に情報交換が始まった。

 まずは楓から、自分と同じプロダクションのアイドルと事務員が参加していることを。
 次にアクアが、仲間の少年と知り合いのリッチーがいることを。
 ここでアリスと楓が疑問の声を上げる。

「リッチーって何?」
「お金持ちですか?」
「それリッチ。ウィズは全然違うから。むしろ超貧乏だから」

 楓のボケにアクアがツッコミを入れる。
 すると今度は銀時が話に入ってきた。

「あれだろ? 男をとっかえひっかえして遊んでる……」
「それはビッチでしょうが。――って女神に何言わせてんのよ!
 そうじゃなくて、リッチーはアンデッドの王!! 強いのよ!!」

 再び喧嘩しそうなアクアと銀時をアルスが宥め、今度は銀時が知り合いの名前を言う。

「名簿に載ってる俺の知り合いは、この志村新八ってダメガネとドSの沖田総悟君だな」
「ひっどい紹介……」

 銀時の知り合いに対する扱いにアリスが引く中、アルスは疑問点を問う。


305 : 前触れなく始まるボス戦は大体みんなのトラウマ ◆7PJBZrstcc :2020/12/22(火) 22:16:19 KkD2fzFQ0

「銀時さん。この沖田総悟って人は、名簿の上の方にある沖田総司と関係があったりしますか?」
「いや……知らねーはずだ。あいつに姉貴がいたのは知ってるけど、総司とかいう名前じゃなかったしな」

 アルスが銀時に、この二人の沖田が同一人物ではなく、家族か何かではないことを確認する。
 その一方、アクアは沖田総司という名前を聞いて頭をひねっていた。

「うーん、沖田総司ってどっかで聞いた気がするのよね……」
「新選組ですね」
「あ、それそれ! 漫画とかで見たことあるわ!!」

 そこで楓が助け舟を出したことで、アクアの疑問は氷塊した。
 だがこの会話に今度は銀時が疑問をぶつける。

「お前らあのチンピラ警察知ってんのか?」
「は? チンピラ?」

 銀時の疑問に思わず疑問形で返してしまうアクア。
 そこで話し合うと、アクア達と銀時の認識の差が浮き彫りとなった。
 アクアと楓の知識では新選組は京都で活動していたはずだが、銀時の知る真選組は江戸で活動している。
 更に言うなら銀時は宇宙人を天人と呼び、当たり前に交流しているらしいがアクア達の知る地球にそんな事実はない。
 そしてアルスが言っていた、アレフガルドという聞いたこともない土地と合わせて考えたうえで出した結論がこれだ。

「これはアレね。異世界ね! 私はそういうのに詳しいの!!」
「まあそうですよね。僕達も一回移動しましたし、平行世界とかもありますし」

 アクアの出した結論にうんうんと頷くアルス。
 後ろでは銀時たちも納得していた。

「異世界ねえ……。まあ俺も一回行ったことあるし、逆に向こうから来てもらったこともあるな」
「私も実は二回ほど……。とはいっても夢を見ていたみたいにほとんど覚えていませんが……」
「異世界ってひょっとして普通だったりする? 私が初めて行ったときは結構びっくりしたけど」 

 アクア達三人の呑み込みの早さに、ちょっと驚いてしまうアリス。
 こうして話は一段落ついたが、銀時は一人妙な感覚に囚われていた。

(にしてもこの名簿。どうにも知ってる名前が他にもあるような気がすんだよな……。
 後放送してたミドルラースって奴も、声はともかく名前は聞いたことあるような……)

 彼が覚えるのは奇妙な違和感。
 知らないはずの知識を知っているような気がするような、または知っているはずのことを思い出せないように蓋をされているような感覚。
 しかし銀時は、この感覚をどういえばいいのか分からず、結局他の四人には言わないことにした。


 銀時が覚えたこの感覚は、殺し合いにあたって主催者がかけた制限の一つ『メタによる他作品知識の封印』である。
 C-3にいるクロちゃんと同じように、銀時は一部の参加者と主催であるミルドラースを漫画、あるいはゲームで知っているのだ。
 しかしなぜクロちゃんと違い、銀時には制限が掛かっている。これはなぜだろうか。
 答えは『量と質』だ。

 銀時はクロちゃんが持つジョジョ知識のほかに、参加者の中ではドラえもん、ドラクエ、ワンピースを知っており、更には鬼滅の知識が追加される可能性もある。
 決定的なのは主催者のミルドラースに関する知識もあることだ。彼はドラクエはⅤ派で、ビアンカ推しだった。
 そのことを問題視した主催陣は、銀時だけでなく銀魂勢の他作品知識を全て封印した。

 だが現実には、志村新八からプリキュアという限定的かつ、影響がほぼないワードだけであるものの、他作品知識封印の綻びが始まっている。
 これがどう影響するのか、現時点では誰も知らない。

「ギントキ! 聞いてるの!?」
「え、あ? なんだ? 俺ァ朝はいつもケ〇ッグのコーンフレークだけど!?」
「何の話!?」

 銀時が思考の海に沈んでいると、いつの間にか彼以外の四人が何かを話し合い、結論が出たのかアクアが彼に呼びかける。
 しかし彼は何一つ聞いていなかったので適当に返答したら、アリスにツッコまれた。

「銀時さん。実は名簿に知り合いの名前がある私達の仲間探しの為に、二手に分かれて探そうということになったのですが、チーム分けの話し合いがしたくて……」
「分かれんのはいいけど、話し合いとかめんどくせーしグッパーとかでいいだろ別に」
「……それもそうね」
「そこ納得するところ?」

 銀時の適当な言い分にアクアが納得しかかり、慌ててアリスが止めに入る。
 しかし次の瞬間、いきなりアクアが鼻をひくひくさせ、臭いを嗅ぎ始めた。


306 : 前触れなく始まるボス戦は大体みんなのトラウマ ◆7PJBZrstcc :2020/12/22(火) 22:16:48 KkD2fzFQ0

「クンクン、クンクン」
「ど、どうしました?」

 いきなりの奇行に怯みつつも、アルスはアクアに訳を聞く。
 すると彼女はシリアスな顔で返事をした。

「悪魔よ。なんかすごい悪魔の臭いがするわ! もう本当に臭いの!! 牛乳こぼしたのを拭いた後の雑巾位臭いわ!!」

 それはキツイな、と全員の思いが一致したところでアクアが魔法の詠唱を始めてしまう。
 その魔法はセイグリッド・エクシズム。退魔の魔法で、悪魔などに高い効果を誇る上位魔法である。
 一方、アルスはアクアが感じた悪魔の気配を警戒し酒場を出ようとしたところで

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 槍を携えた一人の男が絶叫と共に、酒場の壁を壊して押し入ってきた。
 その男を見てアクアは待っていたとばかりに叫ぶ。

「出たわね悪魔! セイグリッド――」

 そして準備していた魔法を発動しようとしたが

「――え?」

 それより速く、男はアクアのすぐそばに近づき、電撃そのものに変わっている右腕を彼女に叩きつけようとする。
 その刹那

「危ない!!」

 咄嗟にアリスがアクアを突き飛ばした。
 だがそれが彼女の精一杯。彼女自身は攻撃を躱すことも、防御することもできない。
 すなわち――

「あああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 直撃を意味する。
 攻撃を受けたアリスはまるで雷の直撃を受けたが如く黒くなり、肉を焼き焦がした臭いが彼女から漂い始める。

「ア、アリスうううううううううううううううううううううう!!!」

 庇われたアクアは悲鳴を上げながら我を忘れてアリスを治療しようとするが、そこに男がもう一度攻撃を加えようとする。
 だが

「オラァ! テメェの相手は俺らだビリビリ野郎!!」
「アクア様! アリスと楓さんを連れて下がって下さい!!」

 銀時とアルスが持っていた剣で切りかかり、男の攻撃を妨げる。
 二人の攻撃事態は避けられたが、とにかく時間は稼げた。
 その隙にアクアは言われた通りアリスと楓を抱え、とにかく距離を取った。
 それを受けて男もまずは二人を倒してからと認識したのか、槍を構え二人に相対する。

 こうして、酒場の中で戦いは始まった。


 アクアはアリスの治療に専念していた。
 しかし進行のほどは芳しくない。

「ああもう! 何で回復魔法の効きがいつもより悪いのよ!!」

 アクアは思わず悪態をつく。
 本来なら彼女の回復魔法は死者の蘇生すら可能なほど強力だ。伊達に女神をやっていない。
 だがこれも主催陣が施した制限の一つ。
 そう簡単に怪我の治療などされて出るペースを下げられたくない。ましてや死者蘇生など論外という主催陣のメッセージ。
 それでも彼女は諦めない。

「絶対、絶対死なせないんだから……!!」


307 : 前触れなく始まるボス戦は大体みんなのトラウマ ◆7PJBZrstcc :2020/12/22(火) 22:17:17 KkD2fzFQ0


 その様子をただ見ていた楓は何もできずにいる。
 そもそも彼女は殺し合いが始まってからずっと、アクアと一緒にいた。
 アクアはとても殺し合いの最中とは思えないくらい明るく適当で、楓もそれに釣られてどこか能天気だった。
 そして新しくやってきた銀時やアルス達も殺し合いには乗っておらず、彼女は安心感を覚えていた。
 そこにいきなり壁を吹き飛ばして現れた男の極大すぎる憎しみと殺意は、多少非凡な経験があれど基本平和な現代日本で生きてきた彼女には刺激が強すぎた。
 故に恐怖と動揺で動けず、彼女はただ震えるばかり。


 シャガクシャはアクアに対し憎しみを燃やす。
 元々は人の声が聞こえたから襲撃しただけだったが、彼女のこの発言が彼を憎しみに走らせた。

『出たわね悪魔!』

 悪魔。この台詞で彼は昔を思い出す。
 家に流星が落ち、自分以外の家族が死んだ中生まれたおかげで、呪われた子と揶揄されていたあの頃を。
 英雄ともてはやされたことから直接言わなくなっただけで、未だ誰もが腹の底では思っているであろうことを。
 故に彼は殺し合いの会場という箱庭の中で、憎しみを叫ぶ。


 それがただの思い込みと勘違いであることを知ることがないまま、シャガクシャの肩はまた疼く。


【G-8 酒場/黎明】

【アルス(男勇者)@ドラゴンクエスト3】
[状態]:健康
[装備]:王者の剣@DQ3
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]基本行動方針:勇者として、殺し合いを止める
1:目の前の男(シャガクシャ)と戦う
2:アリスが心配
3:仲間を探したい
[備考]
性格は不明ですが少なくともアリスよりは力が下です
名簿上の二人の勇者や沖田などの存在から、同一人物を意図的に集めたのではと考えています

【坂田銀時@銀魂(アニメ版)】
[状態]:二日酔い(ほぼ醒めている)
[装備]:洞爺湖@銀魂
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考・状況]基本行動方針:主催者の打倒。殺し合いには乗らない。
1:目の前の男(シャガクシャ)と戦う
2:仲間探しは新八も総悟君も放っておいて大丈夫だろうし、探すのは楓さんの同僚を優先でいいよな
3:アクアが女神ねェ……。全く見えねえ
4:なーんか引っかかるな……この名簿
[備考]
二日酔いによる頭痛に悩まされております。
アクアを女神だと認識しましたが、態度を改める気はありません。
メタ知識を制限されています。何らかのきっかけで解除されるかもしれません。

【アリス(女勇者)@ドラゴンクエスト3】
[状態]:気絶、重傷、火傷(大)、アクアによる治療中
[装備]:ロトの剣@DQ1
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]基本行動方針:勇者として、殺し合いを止める
1:…………
2:アルスと行動する
[備考]
性格は【おとこまさり】です。
名簿上の二人の勇者や沖田などの存在から、同一人物を意図的に集めたのではと考えています。

【アクア@この素晴らしい世界に祝福を!(アニメ版)】
[状態]:酒の飲みすぎによる悪酔い(今はそれどころではない)、アリスを魔法で治療中
[装備]:―
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2、扇子×2@この素晴らしい世界に祝福を!(アニメ版)
[思考・状況]基本行動方針:主催者の大魔王ミルドラースを倒す。殺し合いには乗らない。
1:アリスを助ける。絶対に死なせない
2:何なのあいつ(シャガクシャ)!? 凄く悪魔臭いわ!
3:カズマが心配。ウィズは多分大丈夫でしょ
4:主催者を倒して元の世界に帰る。
5:大魔王が殺し合いを開いて私を呼ぶなんて、これはアクシズ教への宣戦布告ね!
[備考]
施設内にあった大量の酒を飲みまくったせいで悪酔いしています。
回復魔法に制限が掛かっています。度合いは次の書き手氏にお任せします。


308 : 前触れなく始まるボス戦は大体みんなのトラウマ ◆7PJBZrstcc :2020/12/22(火) 22:17:45 KkD2fzFQ0

【高垣楓@アイドルマスター シンデレラガールズ】
[状態]:恐怖(大)、動揺(大)
[装備]:―
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いには乗らない。死にたくない。
1:…………あの人(シャガクシャ)が怖い
2:卯月ちゃんたちが心配。合流したい
3:異世界なんて、凄いスケールです
4:この子(アクア)、本当に女神だったんですね。
[備考]
施設内にあった酒を少し飲んだため若干酔っていましたが、様々なショックで吹き飛びました。
アクアのことを女神だと認識しました。

【シャガクシャ@うしおととら】
[状態]:肩にダメージ(小)、憎悪
[装備]:ゴロゴロの実@ONE PIECE、ノトーリアスBIGのスタンドDISC、メタルキングのヤリ
[道具]:基本支給品
[思考・状況]基本行動方針:優勝して願いを叶える
1:憎しみのままに殺し続ける。特にあの女(アクア)
2:そのためにまずは目の前の二人(アルス、銀時)を殺す
3:肩がひどく疼く。
4:―――おぎゃああああ
[備考]
放送を聞いていません。


※E-8に宝箱が放置されています。

【メタルキングのヤリ@ドラゴンクエスト8】
シャガクシャに支給。
攻撃力120という高いステータスを誇る。
ウィングエッジと錬金することでメタルウィングになる。
なお、メタル系に対し特効などはない。

【扇子×2@この素晴らしい世界に祝福を!(アニメ版)】
アクアに支給。
花鳥風月というアクアの宴会芸によく使われる。
ちなみに花鳥風月は扇子から水を出す水芸だが、攻撃力はない。

【はぐれメタル@ドラゴンクエストシリーズ】
高い防御力と豊富な耐性に素早い逃げ足。そして倒した時の莫大な経験値が特徴のドラクエシリーズお馴染みなモンスター。
本ロワでは経験値の代わりに倒された後、死体の近くに宝箱が現れる。
中身は完全ランダム。数は一つで固定。
また、宝箱を開けるにあたっての制限はないので、他の参加者やNPCに中身を横取りされる可能性もある。
宝箱は中身を取り出すと消滅する。


309 : ◆7PJBZrstcc :2020/12/22(火) 22:18:30 KkD2fzFQ0
投下終了です
何か疑問点、問題点等があったら遠慮なく言ってください


310 : ◆7PJBZrstcc :2020/12/22(火) 22:29:05 KkD2fzFQ0
すみません。アリスの状態表を間違えました。
こちらに差し替えてください

【アリス(女勇者)@ドラゴンクエスト3】
[状態]:気絶、重傷、火傷(大)、アクアによる治療中
[装備]:ロトの剣@DQ1
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]基本行動方針:勇者として、殺し合いを止める
1:…………
[備考]
性格は【おとこまさり】です。
名簿上の二人の勇者や沖田などの存在から、同一人物を意図的に集めたのではと考えています。


311 : ◆5qNTbURcuU :2020/12/23(水) 21:12:59 cpx7jnQ60
延長しておきます


312 : ◆OmtW54r7Tc :2020/12/26(土) 19:33:47 2UBKqOpM0
ドラえもん、レミリア、西片で予約します


313 : ◆OmtW54r7Tc :2020/12/26(土) 21:37:21 2UBKqOpM0
投下します


314 : 無意味かもしれない考察 ◆OmtW54r7Tc :2020/12/26(土) 21:38:37 2UBKqOpM0
「うーん」
「どうしたんだ、ドラえもん」

腕を組んで何か悩んでる様子のドラえもん。
それに気づいた西片はどうしたのかと尋ねる。

「うん、リルルのことなんだけど…」
「まだ悩んでたの?さっきも言ったけど…」
「レミリアの言うことは分かるよ。だけど今は、別のことで悩んでて…」
「別のこと?」
「うん…今更こんなこと言うのもなんだけど…」


「そもそも…この名簿のリルルは僕たちの知ってるリルルなのかなって」


「はあ?知り合いって言ったのはあんたじゃない」
「そうだけど…何故か僕やのび太君とは離れたとこに名前があるし、ひょっとして全然関係ない人なのかなって」

そういってドラえもんは二人に名簿を見せる。

「僕とのび太君、レミリアとその知り合いの紫って人が近くに名前があるんだし、リルルも僕やのび太君の近くに名前があってもおかしくないと思ったんだけど…」
「へえ、そんなことよく気づいたわね」
「…それにしても、なんで俺の名前、苗字だけなんだろ」


315 : 無意味かもしれない考察 ◆OmtW54r7Tc :2020/12/26(土) 21:40:12 2UBKqOpM0
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

「それで、二人はどう思う?」
「どう思うって言われてもねえ…確かその子、メカトピアって別の星の住人って言ってたわよね。だからじゃないの?」
「う〜ん、西片君はどう思う?」
「そのリルルって人のことはよく知らないけど…そもそも知り合い同士が名前が近いってのが違うような気がするよ」

そういって西片は、「土方歳三」、「沖田総司」の名前を指さす。

「ほら、この二人とか、確か新選組の偉い人だろ?偽物って可能性もあるけど、本物なら近くに名前があるはずじゃないか?」

ちなみに情報交換の中で、ドラえもんは自分が未来のロボットで、タイムマシンで時間移動できることを明かしたので、西片の話は過去の偉人がいる可能性があるということを認識した上での話である。

「あ、ほんとだ……うーん、そっか。ごめん、僕の考えすぎだったよ」

レミリアと西片の話を聞いて、ドラえもんは納得したようだった。

「まあ、ファミリーネームがあるならともかく、『リルル』って三文字の名前だけなら、確かに別人の可能性もあるかもしれないわね」
「確かに、俺も知り合いが呼ばれたとして、『西片』って苗字だけだったら、知り合いとして認識されるか自信ないな…」
「ていうか西片、あんたのそれ、ファミリーネームだったの?名前すらないって、随分雑に扱われてるわね」
「ほんとなんで苗字だけなんだろう?家族とか呼ばれてたら見分けつかないだろうに」
「そうだね、パパとかママとか、未来の結婚相手とか」
「け、結婚相手?」

ドラえもんの何気ない一言に、西片は思わず一人の少女の姿を思い浮かべてしまい、赤面する。

(な、なんで高木さんの顔が!)
「あら?西片、あなた顔が真っ赤よ?そういう相手がいるのかしら?」
「そ、そんな!高木さんとはそんなんじゃ!……って、あ」
「へえ、高木さんっていうのね」

面白そうにニマニマと笑みを浮かべるレミリア。

「そのにやけ面やめろ!」

そんなレミリアにクラスメイトの姿を幻視した西片は、顔を真っ赤にしながら叫ぶのだった。


316 : 無意味かもしれない考察 ◆OmtW54r7Tc :2020/12/26(土) 21:41:10 2UBKqOpM0
【E-8 草原/黎明2:10】
【ドラえもん@ドラえもん】
[状態]:健康、ミルドラースに対する怒り
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]:基本行動方針:殺し合いには乗らない
1:レミリア、西片と行動する
2:のび太くん大丈夫かな...
3:リルルは僕たちの知ってるリルルなのかな
[備考]
レミリアのこと、幻想郷のこと、紅魔館のことを知りました

【レミリア・スカーレット@東方project】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、折り畳み傘@現実、ランダム支給品×2
[思考・状況]:基本行動方針:主催をぶちのめす
1:ドラえもん、西片と行動する
2:のび太という少年を探す

【西片@からかい上手の高木さん】
[状態]:健康
[装備]:エコーズのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、高木さんのハンカチ@からかい上手の高木さん、むったん@けいおん
[思考・状況]:基本行動方針:生還する
1:ドラえもん、レミリアと行動する
2:生還の方法を見つける


317 : 無意味かもしれない考察 ◆OmtW54r7Tc :2020/12/26(土) 21:42:18 2UBKqOpM0
さて、今回出てきたリルル別人説。
実際の所このロワのリルルはドラえもんたちの知ってるリルルなのだから、今回のこの考察はほぼ無意味かもしれない。
しかし、本当にそうだろうか。
このロワのリルルが、完全に別人でないと言い切れるだろうか。


※ここからはややメタ的な視点での考察が行われます

このロワでは、既に何人かの参加者が知り合い同士を名簿で近くに配置していることに気づいている。
そして、今回のドラえもんのように、一見知り合いと思われる人物が遠くに書かれていることに疑問を抱いている者も。

だがしかし、この考察に対しての穴と言える存在。
それがリルルなのだ。
彼女はドラえもんとのび太と知り合い…ぶっちゃけると同一作品のキャラにも関わらず、離された場所に書かれている。
その理由としては、リルルの出展作品が【ドラえもん】ではなく【ドラえもん のび太と鉄人兵団】だからなのだが、これについても疑問が残る。
何故なら、同じ劇場版キャラである「ロボひろし」が、単独枠でなく【クレヨンしんちゃん】の枠に入れられているのだから。
なお、リルルと似たような例としてヴィータとレヴィ、クレしんキャラと野原ひろし?などがあるが、レヴィの出展作品のマテリアル娘は、本編とは別の並行世界から更に分岐した世界線であるし、野原ひろし?に至っては昼飯の流儀の野原ひろしとすら呼べないような状態なので、分けられてることに問題はあまりないだろう。(特に後者は一緒に枠に入れられても困惑する)

話をリルルに戻すと、リルルの名簿位置については主催者の手落ちとして判断することができるし、実際その可能性が高い。
だが…もしもこれが手落ちでなかったとしたら?
リルルがドラえもんやのび太と離されてることに、なんらかの意味があるとしたら?


318 : 無意味かもしれない考察 ◆OmtW54r7Tc :2020/12/26(土) 21:43:06 2UBKqOpM0



もう一つ、今度はこのロワにおけるリルルの話をしよう。
彼女はロワが始まってすぐ藍野伊月と出会い、佐々木哲平に対して不信感を強めていくのだが、その過程で一つ、気になることがある。
それは、10年後のジャンプで藍野伊月を作者としたホワイトナイトを見たリルルが、即座に時を遡る…タイムマシンの可能性にたどり着いたことだ。

実際に経験した佐々木哲平が有り得ないと言ったように、タイムマシンなどというものの存在、普通は思いつかない。
それを瞬時に思いつけるとしたら、それはその存在を知っている者だ。
しかしこのロワのリルルは、ドラえもんたちに助けられた直後のはずで、しずかちゃんによってタイムマシンの存在を知らされるのはもう少し先のはずなのだ。
ドラえもんの存在から導き出した…と考えられなくもないが、しかしこの時点でのリルルが、ドラえもんを未来人と知っていたとも思えない。
それなのに、彼女は何故タイムマシンという可能性に即座にたどり着けたのだろうか。
まあ、発想力がずば抜けてたからと言われたらそれまでだが。


319 : 無意味かもしれない考察 ◆OmtW54r7Tc :2020/12/26(土) 21:43:55 2UBKqOpM0
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

ここまでの考察は、メタ的な視点まで利用して結構無理やりにひねり出した憶測のようなもので、稚拙な推理にすぎない。
実際のとこ、筆者である自分もリルルは普通にドラえもんやのび太の知ってるリルルの可能性が高いと思っている。
上記の考察や、ドラえもんたちのリルル別人説。
これらが実を結ぶのか、はたまた無意味な考察と化すのか。
それはまだ、誰にも分からない。


320 : ◆OmtW54r7Tc :2020/12/26(土) 21:44:57 2UBKqOpM0
投下終了です


321 : ◆OmtW54r7Tc :2020/12/26(土) 22:03:58 2UBKqOpM0
あ、すみません
状態表の現在地と時間のとこ、【E-8 草原/黎明】に修正です


322 : ◆5qNTbURcuU :2020/12/31(木) 15:14:03 GS0jBb/A0
野比のび太、ピーチ姫、平野源五郎、島村卯月を予約から外し、投下します


323 : 殺し抗え、人であるがために ◆5qNTbURcuU :2020/12/31(木) 15:14:58 GS0jBb/A0







仕掛けられた罠は、人の心






324 : 殺し抗え、人であるがために ◆5qNTbURcuU :2020/12/31(木) 15:16:04 GS0jBb/A0
「ぐごおおおおおおおッ!!!」

大気を揺らす怪獣の様な咆哮。
それが人の子供から発せられた物であるとは、直接目にしない限り信じがたいだろう。
咆哮の主はシャーロット・リンリン、未来に四皇となる怪童である。

リンリンは苛立っていた。
先程かけられた怪しげな呪文により、腹ペコで死にそうな時に見つけた走る卵の動物。
動物は好きだが腹の減っているときは別だ、何としても食いたいのに奴は思いの外すばしっこい。
こんなにもおれが腹を空かせているのに!何故食われない!!
そんな彼女の理不尽な怒りは殺意へと変わり、懐から一本の短剣を取り出す。

「さっさと…死ねぇええええええええ!!!!」

そして、投擲。
放たれた短剣は轟!!と時速五百キロは優に超える剛速球に変わる。
如何にぴーたんが速度に秀でたモンスターと言えど、敵うはずもない。
短剣が卵型の矮躯を紙の様に貫き、よろよろとよろめきながらぴーたんは沈黙した。

「ハァ…ハァ…腹…減った……手間取らせやがって……あぁ?」

怨嗟の声を漏らしながらリンリンが近づくと、ぴーたんの死骸はそこにはなく、おにぎりが一つ、そこにあった。
マムは一瞬不可解な現象に眉を顰めるが、どうでもよい事だ。
地面に落ちていたのも気にせず、鷲掴みにして豪快にかぶりつく。
味は悪くない。もちもちの米に程よい塩気と海苔の食感が心地よい。しかし…

「これじゃ足りない…もっと……食い物ォオオオオオオオ!!!!」

健啖家、という言葉も生ぬるいリンリンの胃袋がこれで黙る筈もない。
むしろ、中途半端に食事をしたことで危険性は更なる向上を見せ。
手負いの獣の様に荒い吐息、ぎょろぎょろと血走った瞳で次なる食事を探し求める。

「…こっちから……甘い匂いがするぞ……」

くん、と彼女の常人よりも何倍も優秀な嗅覚が微かな甘い匂いを察知したのは、直後の事だった。
短剣を拾い上げながら立ち上がると、誘蛾灯に誘われる蛾のようにリンリンは歩を進める。
そこには醜悪な人間に対する悪意も、マザーから教えられた善意もなく。
ただ空腹を満たそうとする獣の本能だけが、そこにあった。




岸辺露伴と別れてから一時間後、星野輝子と野原しんのすけは人気のない会場の散策を続けていた。
しかし露伴に出会ってからは他の参加者には出会わず、また幸運にもゴブリンの様なモンスターにも遭遇しなかったため、穏やかな凪の時間が流れていく。
今はただ、夜空に浮かぶ星だけが二人の観客だった。

「ねぇ輝子お姉さ〜ん。オラ、お腹すいちゃった」
「お腹すいたの?しんちゃん」

ぐうとしんのすけの腹の虫が輝子に空腹を伝える。
時刻は深夜。しんのすけの本来の生活サイクルを考えればとうに就寝している時刻だ。
眠気は不思議とないようだが、活動している分空腹を覚えるのは無理もない話だろう。

「そうね…食べ物はカップ麺だけみたいだし…
う〜ん…そうだ!ちょっと待ってねしんちゃん。確か私のカバンに……」

そう言って輝子はデイパックから筒状の箱を取り出し、しんのすけに手渡す。
手渡された筒のパッケージを見た瞬間、しんのすけの瞳が俄かに輝いた。

「おぉ〜チョコビ!それも特別な時にしか食べられないロイヤルチョコビだゾ!」

茶色い筒状の箱に描かれた、王冠を冠ったピンクの怪獣のイラスト。
紛れもなく、彼が愛してやまないチョコ菓子であるチョコビ、それもリッチなロイヤルチョコビであった。

「それ、しんちゃんに全部上げる。全部食べていいよ」
「おぉ!お姉さん太もも〜〜!!」
「それを言うなら太っ腹、ね」
「そうとも言う〜…う〜ん。チョコビは何処で食べても美味しいゾ〜」

軽口に苦笑しつつ、ぼりぼりとチョコビを貪るしんのすけを微笑ましく思う輝子。
人の喜びこそ、魔女っ娘である彼女にとって何より勝るエネルギー源だ。
幸せそうな笑みを浮かべて食べ続けるしんのすけを見て、彼女の自然と緩む。
殺し合いを行っているとは思えないほど、穏やかな時間が流れていた。
しかし、その穏やかな時間こそ、災厄を呼び込む呼び込むとなる事は、今の二人には予想できなかった。


325 : 殺し抗え、人であるがために ◆5qNTbURcuU :2020/12/31(木) 15:17:20 GS0jBb/A0





「お菓子……寄越セ……!!!」


しんのすけがチョコビの箱を開けてから十数分後。
二人の前に大きな影が差す。
街角から現れ、口を利くピンク色の小山。
数メートルはある小山の頂上に頭が乗っていることを確認してようやく、それが少女であることを輝子としんのすけは認識することができた。

「おぉッ!でっか〜い!!」
「いいから…お菓子…ヨコセ…!」

「し…しんちゃん?そのお菓子、あの子に分けてあげて?」

能天気な感想を漏らすしんのすけを他所に、輝子は尋常ではない雰囲気を醸し出す少女に全身が総毛立つのを感じた。
間違いなく、お菓子を渡さなければ最悪の事態が待っている。それだけは確信できた。
大丈夫だ、問題ない。だって、しんちゃんは少しマセているけど、とても良い子なのだから。
きっと、この女の子にもお菓子を分けてあげられる。そんな信頼があった。
そして彼女の予測の通り、しんのすけも目の前の少女がお腹を空かせているのが分かればチョコビを分け与えるのに逡巡は無かっただろう。

「えぇ〜…もう食べちゃった」


――――だがそれも、肝心のチョコビがまだあったならの話である。
ぴしりと、空気が凍り付く瞬間を輝子は肌で感じた。
僅かに沈黙がその場に流れ、そして。

「そう、じゃあ死ね。人間」

輝子の危惧の通り、事態は最悪の展開へと廻り始める。
害虫を駆除するかのような氷点下の殺害宣言と共に、少女――シャーロット・リンリンはその手の天逆鉾を振り下ろした。
リンリンの巨躯で振るう短剣はまるで玩具の様だが、当然それが振り下ろされる事によって導かれる結果は遊びでは済まない。
しんのすけや輝子の頭部に当たれば、柘榴のように弾け、それでお終いだ。

「メテオテール!!」

間一髪。ステッキを振るうのが間に合った輝子の魔法が、リンリンの丸太の様な腕を抑え込む。
本当に危うい所であった。魔女っ子の導き手足るウルがいないとはいえ、紛れもない超人である輝子が反応できたギリギリの速度。
背後でしんのすけが自分の名を叫ぶが、意識を裂く余裕は、ない。
何故なら、危機はまだ輝子たちを見逃してはいないのだから。

「ぐ…やめ…‥貴方…どうしてこんなことを……!」

少女の力は、巨体を考慮してなお異常だった。
魔法のリボンで拘束しているのというのに、その剛力は何ら陰りを見せない。
それどころか、強引にリボンを引きちぎろうとしてすらいる。
本来彼女の魔女っ娘としての能力はリンリンより遥かに巨大な鉄人さえ抑え込むことができる。
しかし、制限のためか本来の能力を発揮するために必要なウルは此処にはいない。
自分はともかく、このままではしんちゃんが危険だ。
少女の視線は、お菓子を独り占めしたしんのすけをずっと殺意の籠った瞳で捉えている。

「しんちゃん!私がこの子を抑えている間に露伴先生を呼んできて!!」
「でも…キッコお姉さんは!?お姉さんを置いてなんか行けないゾ!」
「いいから…!早く行って!!止まらないで!!」

まだ五歳児にも関わらず勇敢な少年は、自分の指示に食い下がろうとする。
しかしここは戦場だ。生き残るのは常に強者と臆病者であり、勇者は死ぬと決まっている。
だから幼いしんのすけにも『露伴呼ぶためにこの場を離れる』という合理的な理由を用意した。
これならばただ逃げろと叫ぶよりも、この場を離れてもらえる確率は上昇するだろう。
戦うにしても逃げるにしても、重点的に狙われているしんのすけを守りながらでは困難だ。
自分一人なら、あの少女が相手でも煙に巻くことが可能なはず、だから、ここで共倒れするわけにはいかない――――

「待てェええええぇえええええ逃げるなァあああああ人間ンンンンンンン!!!」

輝子の思考を裂くように、怪獣の様な雄たけびを上げるリンリン。
大地を揺らすその威容に、びりびりと電流が奔ったような怖気が二人を襲う。
しんのすけと輝子には理解できなかった。
何故、この場で初めてであったはずの彼女が自分たちに此処までの憎悪を向けてくるのか。
…それが人類史の悪性を煮詰めた黒の章というビデオによって齎された者であることは、当然彼女らには知る由もない。

「――――露伴先生を呼んで来るゾ!!」


326 : 殺し抗え、人であるがために ◆5qNTbURcuU :2020/12/31(木) 15:18:21 GS0jBb/A0

リンリンの咆哮を受け、遂にしんのすけが動く。
普段はスケベでおバカな彼も、潜ってきた修羅場の数は他の五歳児とは一線を画す。
この判断力と肝の座り方は、正に嵐を呼ぶ五歳児と呼ぶに相応しいだろう。

加えて、露伴を呼ぶという選択。
一時間ほど前に分かれた露伴がまだ近くにいるかは分からない。
しかし、彼のヘヴンズ・ドアーならばこの少女が相手でも無傷で無力化させるのも決して無理な話ではない。
もし、露伴がいなくても、闇雲に逃げられるよりは先程露伴と出会った周辺に捜索地点を絞れるので合流もしやすい。
場所を指定するより、リンリンに追ってこられる心配もない。

「メテオテール!!」

街を駆けていくしんのすけの後ろ姿を目に焼き付け、魔法のステッキを強く握りしめる。
此処から先は、自分の仕事だ。
魔力を練り上げ、再び魔法のリボンが二重、三重とリンリンを包み込む。

「があああああああ!!!おれの邪魔をするなぁあぁああああああ!!」
「させない…ッ!メテオテール…!」

怒り狂うリンリン。しかし、今度は輝子の魔法の方が優勢だ。
人を守ろうとする時こそ、魔女っ娘という種族の超人は命を燃やすのだから。
リボンに加え、視界を阻害する魔法の蝶の群れが加わる。
こうなれば如何な悪神・シャーロット・リンリンですら脱出は困難だ。
少なくとも、既に彼女はしんのすけの姿は完全に見失っているだろう。
いける。彼女がそう思ったのは無理もない事だった。

「――――え?」

突如としてステッキから手ごたえが消失し、呆けた声を漏らす。
直後、展開していた蝶の群れも、突風に吹かれた煙のように消え失せて。
現れるのは、黒色の殺意をその双眸に秘めて振りかぶるリンリンの姿。
何故。どうして。そんな事を考える暇すらない。
とにかく手を動かさなければ死ぬのだと、本能が告げていた。

「メ、メテオテール!!」

三度響く呪文。しかしその時にはもう、全てが手遅れだった。
リンリンがその手の短剣(カトラス)を放つと同時に、乾坤一擲の魔法は露と消える。
これこそがリンリンに支給された特級呪具、天逆鉾の効力。
最強の呪術師、五条悟の無下限術式すら破る全ての術式の強制解除。
その能力の行使の代償に、此処に来る直前に期せずして得たソルソルの実の能力が使用不能になっている。
だが、誇り高き巨人種であるエルバフの戦士ですら悪神と呼び畏れた怪物、シャーロット・リンリンには何ら問題がない。
一繋ぎの大秘宝(ワンピース)を巡る世界において圧倒的な肉体性能は、このバトル・ロワイアルにおいても健在なのだから。


327 : 殺し抗え、人であるがために ◆5qNTbURcuU :2020/12/31(木) 15:18:56 GS0jBb/A0

「死ね、人間」

少女の声は、先程まであれほど猛り狂っていたとは思えないほど冷静で、しかしドス黒い感情を秘めた声色だった。
そして、それが星野輝子が生涯で最後に聞く声となる。
轟!と。放たれた短剣は砲弾の様に輝子の胸へと吸い込まれ――風穴を開けた。
奇しくも先程リンリンの餌食となったぴーたんの様に。
人体を紙の様に貫くその破壊力。正しく天逆鉾の本来の所有者と同じ、天与の暴君と呼ぶに相応しく。


(あ…これ、もう駄目な傷、だ…)


夥しい鮮血と共に膝をつく輝子。
流れる血の量と、胸に奔る灼熱は自分が助からないのを如実に示していて。
あぁ、と悟ってしまった。
自分は元の場所へ帰ることはできず、此処で死ぬのだと。

(―――けれど、それでも)

このままでは、終われない。
ごふ、と血の塊を吐きながら最後心臓が破壊される前に送っていた最後の血液を巡らせ、立ち上がる。
まだ自分にもできる事があるはずだ、と。凛とした瞳で前だけを見据えて。
ステッキを指向、最期の魔法を行使する。

「――――メテオテェェェルッッ!!!!」
「ぐお!?離せェェェェッ!!!!!」

魔法のリボンがリンリンをぐるぐる巻きに拘束していく。
引きちぎろうともがくリンリンだが、リボンのスピードの方が速い。
加えて、彼女の手には天逆鉾は既に無く。
故に、魔女っ子超人の最後の抵抗を阻む術はない。
全身を簀巻きにされて、ズシンを音を立てて巨体が崩れ落ち沈黙する。

それを見届けると、輝子の身体も最後の力を使い果たし糸の切れた人形のように倒れ伏した。
星野輝子がこのバトル・ロワイアルでできる事は此処までだ。
彼女なら数時間もあればあのリボンを引きちぎるだろう。
だが、その頃にはきっとしんのすけも露伴先生に保護されているはずだ。

しかし結局、まだ顔立ちは幼く見える少女が何故こんな凶行に及んだのかは分からず仕舞いだ。
自分たちと出会うまで、彼女に何があったのか。
しんのすけは無事露伴先生に保護してもらえるだろうか。
ウルがいれば、或いは自分以外の超人課の面々なら、この殺し合いも打破できたのだろうか。
様々な考えが巡るが、星野輝子の思考が最後に行きつくのは一つ。

(爾朗、さん……)

道を違えた、愛しい男の。どこか悲し気な横顔を夢想して、平行世界を統べる支配者となる筈だった魔女は、瞼を閉じる。

【星野輝子@コンクリートレボルティオ 死亡】


328 : 殺し抗え、人であるがために ◆5qNTbURcuU :2020/12/31(木) 15:20:30 GS0jBb/A0


涙で、前が見えなかった。
おれはただお腹が空いているだけなのに、みんなが意地悪する。
甘いお菓子を独り占めして、おれを変なリボンで縛り付ける。薄汚ェ人間ばかりだ。
さっき見た、悍ましい、吐き気のする人間たちの姿が蘇る。
マザーに、皆に、どうしようもなく会いたい。もう一度一緒のテーブルで、お茶会がしたい。
けれど、マザーは此処にはいない。
それがどうしようもなく、悲しかった。

―――ぼりぼり、
一心不乱に、貪る。
味は度外視、ただただリボンを引きちぎるまでに消費したエネルギーと空腹を満たすためだけの摂取行為。
お湯で戻していないカップ麺など不味いし腹の足しにもなりはしない。
しかし、それでもリンリンは食らう。悲しみと憎悪の涙で前が見えなくなるほど、顔をくしゃくしゃにして。
ボリボリと、麺をかみ砕き、肉を千切り、骨を割り、赤い液体をすすって嚥下する。
カップ麺も、ストロングゼロも、転がる肉の塊も、その場の全てが亡くなるまで。
それはリンリンがバトルロワイアルに招かれる直前、六歳のバースデーで起きた悲劇の再演だった。

―――ゴクン。
リボンを千切るのに時間がかかり過ぎたため、最期の一口を飲み込んでも飢えはまだまだ収まらない。
むしろ中途半端に食べた事でもっと飢えたと言ってもいい。
だから、リンリンは再び空腹を満たすべく立ち上がり、輝子のデイパックと天逆鉾を拾って歩き出す。
先ずはお腹を満たし、そして自分に逆らう人間は皆殺しにする。その決意はより強く。
暴食は尽きず、善意の怪物は止まることなく進み続ける。

全てはこの世の光。マザーの夢のために。
偉大なるマザー・カルメルの名のもとに。
全ての人間は、此処で朽ちて果ててゆけ。

【H-6(北部)/早朝】

【シャーロット・リンリン@ONE PIECE】
[状態]:空腹(大)、憎悪

[装備]:天逆鉾@呪術廻戦

[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2、輝子のデイパック

[思考・状況]基本行動方針:人間は殺す。マザーの夢を叶える。
0:何か食い物!
1:人間は殺しつくす。
2:お菓子が欲しい。

[備考]
参戦時期は六歳の誕生日直後、シュトロイゼンに出会う直前より参戦です。
天逆鉾の効果により、ソルソルの実の力が封じられています


329 : 殺し抗え、人であるがために ◆5qNTbURcuU :2020/12/31(木) 15:21:21 GS0jBb/A0



「お助けしなきゃ…お助けしなきゃ…」

短い手足を必死に動かして、しんのすけは一人黎明の街を駆ける。
何度も転んだのかその膝には血が滲んでいたが、本人は気にする様子もない。
早く露伴先生を呼んでキッコお姉さんをお助けする。それだけが、彼の今の想いだ。
だが、見つからない。既に露伴と初めて邂逅してから二時間以上経過している。
何処かの建物で身を休めているか、既にエリアの外に出ていてもおかしくない時間である。

「おぉ〜い!!露伴のおじさ〜ん!!何処だ〜〜!!」

焦燥が募り、大声を上げて捜索する。
だがやはり近くには居ないのか、それとも屋内にいるのか…何方にせよ露伴が姿を現すことはなく。
しかし、その代わりに良く知っている声が彼を呼び止める。

「しんのすけ…しんちゃん!!」
「……おぉッ!?母ちゃん!?」

しんのすけを呼び止め、手招きしているのは彼の母である、野原みさえだった。
本来ならばいないはずの母の登場に、しんのすけも意外な顔をして走り寄る。
その首には参加者の証である首輪は嵌められていなかったが、最早此処まで近づけば見間違えるはずもない。

「良かった、無事で…」
「ほーい。でも何でかーちゃんは何でここにいるの?
キッコお姉さんはとーちゃんしか此処にいないって…」
「それが私にも分からないのよ〜。気が付いたら此処にいて、
訳の分からない緑のお化けに襲われて……」

話を聞くと、どうやらみさえも気が付いたら此処にいた、という事らしい。
そして、数分間のしんのすけ達と同じく怪物に襲われたが、一人のお兄さんに助けてもらったというのは、幼いしんのすけの頭でも理解することができた。

「じゃ、じゃあそのお兄さんに頼んで、キッコお姉さんをお助けに行くゾ!
そのお兄さん何処にいるの?」
「えぇ!?えーっと、今はこの辺りを見回って来るって…
そのキッコお姉さんって言うのは?」
「それは――――」

みさえの問いかけに、夢中でしんのすけがこれまでの経緯を離そうとしたその時だった。

「へぇ、子供と会えたんだ。よかったね、みさえさん」
「あっ…真人さん」

カツンとしんのすけの背後から黒いローブを纏った青年が現れる。
みさえに真人、と呼ばれたその青年は、人当たりのよさそうなにこやかな笑みを浮かべていて。
しかししんのすけにはその笑みがどうしても不気味なものに思えてならなかった。
ともあれ、露伴が見つからない以上、今頼れるのはこのお兄さんしかいない。
挨拶もそこそこに、しんのすけは身振り手振りを交えた全力の説得で、キッコおねいさんを助けてほしいと頼み込む。

「ふぅん…ピンク色の大きな女の子ねぇ…あぁ、あの子かな」
「すッごくでっかくてシリマルダシみたいに暴れてるんだぞ!おねいさんを早くお助けしないと…」
「あー、うん。構わないよ。でも、その前に僕もちょっと見たい事があるんだよね」
「お?見たい事?」

うん、とはにかんで真人はぽんとみさえの肩にポンと手を置く。
みさえの顔にぎょっとした抵抗の色が浮かぶが、彼は気にしない。
抗議の言葉がみさえの口から放たれる前に、しんのすけに目的を告げた。

「うん――――愚かなガキが死ぬところを、ね」


―――無為転変。


「しししししししし、しんのぉすけええええええええ」


グニィ、と。
肉が変形する音が響き。
しんのすけは、目の前で母が怪物へと変貌する瞬間を目の当たりにした。


330 : 殺し抗え、人であるがために ◆5qNTbURcuU :2020/12/31(木) 15:22:05 GS0jBb/A0






「よーし、そろそろ休憩するか?レヴィちゃん」

バトルロワイアルが始まってから二時間余り、ロボひろしは同行者の少女に休憩を提案する。
彼自身はロボットなので疲労を感じないが、隣を歩くレヴィはそうもいかない。
まして今は殺し合いという異常な状況下、できる限り気を払ってやらなければ。
その気遣いからの提案だった。

「うーん、平気!ボクはまだまだ元気だよー!!」

対するレヴィはまだまだ余裕があることを示すように、快活な返事を返す。
どこまでも明るく天真爛漫な彼女の顔には、不安など少しも見当たらない。
何でも魔術師らしいが、ロボットの自分でも多少緊張してる中で大したものだと思う。

「そーかそーか!レヴィちゃんは強い子だな〜しんのすけとやっぱり似てるよ」
「ふ〜ん?しんのすけってひろしの子供だよね?そんなにボクと似てる?」
「あぁ…レヴィちゃんみたいに元気で、強くて…優しい子なんだ
本当のとーちゃんがいるのに、オレの事も…とーちゃんって呼んでくれてな……」

そういってロボひろしは複雑な、けれど暖かな感情を秘めた声色で、野原しんのすけという少年を語る。
夜天の書から生まれたレヴィは父という存在も、野原しんのすけという少年もよく知らないけれど。
何故か。その時のロボひろしの横顔は彼女の奥深くに響いた。

「…早く見つかるといいね、しんのすけ。ボクも、デバイスさえ支給されていればもっと役に立てるんだけど…」
「気にしないでいいさ!レヴィちゃんやマサオ君と一緒に俺が守る!
何て言ったって、俺はロボとーちゃんだからな!!」

デバイスが支給されておらず、しょんぼりと俯くレヴィを、ひろしは励ます。

レヴィちゃんが危ない目に合う必要は何処にもない。
そうだ…誰も殺さないし、殺させない。
しんのすけも、マサオ君も、レヴィちゃんも、もう一人の、人の自分も。
必ず守り、平和な春日部に返して見せる。
きっとそれこそが、自分が再び起動した意味なのだとひろしが思った。
その時の事だった。

―――けて

ロボひろしに内蔵された超高性能の収音装置が、そう遠くない場所で発せられた声をキャッチする。

―――助けて

間違いない。自分が間違えるはずがない。この声だけは!

―――助けて、ロボとーちゃん!!


「レヴィちゃん!ちょっとゴメン!!」
「ふぇ?え?ちょ、ちょっと!?」

レヴィを有無を言わせず強引に担ぎ上げ、疾走を開始する。
例え今から駆け出したところで、人間野原ひろしならば間に合わないだろう。
しかし自分は鉄人だ。ロボとーちゃんだ。人間に間に合わない距離でも間に合わせてみせる!


「―――とーちゃんが直ぐに行くから。待ってろ!しんのすけ!」


331 : 殺し抗え、人であるがために ◆5qNTbURcuU :2020/12/31(木) 15:22:33 GS0jBb/A0




「くぅっそ〜!離せ〜!!かーちゃん、如何したんだ〜!!」
「無駄さ。君のお母さんはもうオレの手駒だからね」

時はしばし巻き戻り、特級呪霊真人は捕らえた少年に嵌められている首輪をじっくりと眺めていた。
しんのすけは何とか逃げようと藻掻くが、彼の首を掴む彼の母であったものがそれを許さない。
ぎょろぎょろと蠢く目は昆虫のように機械的で。グロテスクに肥大した肉体に母の面影は最早無く。
もし、しんのすけが何も知らない状態でこの怪物を見ても母であったなど信じられないだろう。

「くぅぅ〜!!お兄さん趣味悪いゾ!早くかーちゃんを元に戻せ〜!!」
「心配しなくても大丈夫さ。君もちゃんとお母さんとお揃いにあげるからね」
「ヤだ!かーちゃんを早く戻さないと、ロボとーちゃんを呼んでやっつけて貰うゾ!!」
「へぇ、ロボットの父親もいるのかい?」
「そーだゾ!すっごく強くてお兄さん何かコテンパンだぞ!」
「そう、なら呼んでみると言い。もしかしたら、助かるかもしれないよ」

しんのすけはばたばたと手足を振り回すが当然の真人には何の抵抗にもならず。
ひた、と彼の掌がしんのすけの首筋に触れる。
真人にとってはどちらでもよかった。
このままガキを殺すのも。この殺し合いにいるらしい父親の目の前で殺すのも。
どちらもそれはそれで面白い事でしかなく。
だから何時でも殺せるにも拘らず、敢えてゆっくりと、呪力を籠める。
そして、助けを乞うことを促した。


―――助けて。

しんのすけの脳裏に、怪物にされた母の末路が過り、恐怖がにじみ出てくる。
自力で逃げる事が不可能。促されるままにしんのすけはぎゅっと瞼を閉じ、そして叫ぶ。
声の限り叫ぶ。喉が枯れるまで、父の名を呼ぶ。

―――――助けて、とーちゃん。

父は現れない。しかしそれでも声を張り上げ、その名を呼ぶ。
最後のその瞬間まで、野原しんのすけは父を信じる。

―――――助けて―――――!

父は現れない。
真人の”原形の”掌に紫色の呪力がこもる。
術式が奔り、そして。


――――――ロボとーちゃん!!!


鋼鉄の火花が弾けた。


「―――大丈夫か。しんのすけ」
「んもう、遅いぞ…ロボとーちゃん」

首筋の圧迫感が消え、一瞬浮遊感が訪れた後。
懐かしい声に、瞼を開いてみれば。
そこには記憶と変わる事のない、あの日の鋼鉄の父が立っていた。
鋼鉄の父は此処に確かに。致命の一撃に”割り込んでいた”。
青年を殴り飛ばし、青年を守ろうとしていた怪物を蹴り飛ばして。
確かに、しんのすけの前に現れたのだ。
ロボひろしは担ぎ上げていた少女を下ろし、息子の頭を優しくなで、そして宣言する。


「―――もう、大丈夫だ。後はとーちゃんに任せろ」


332 : 殺し抗え、人であるがために ◆5qNTbURcuU :2020/12/31(木) 15:23:22 GS0jBb/A0




「へぇ……これは驚いたな。本当にロボットが出てくるなんてね」
「おーともよ!俺がしんのすけの…ロボとーちゃんだ!
アンタ、よくも人の息子に怖い思いさせてくれたな!!」

唯の鉄屑風情が息子、ね。
真人は不敵に笑みを浮かべながら闖入してきた鉄人を見据えた。
どうやら、愚かなガキをただ殺すよりも愉快な事になりそうだとほくそ笑む。

「……レヴィちゃん。今すぐしんのすけを連れて下がっててくれ。
あいつは、間違いなく危ない」
「うん、任された!けど、今度からは突然担ぎ出して走り出さない事!
おかげで、何度も舌噛みそうになったんだからね!」
「ははは…ゴメンよ」
「そして…気を付けてね。あいつ何だかとっても嫌な感じがするから…」
「あぁ、分かってる」

ロボひろしはレヴィにしんのすけを任せると、二人を守るように進み出る。
目の前の青年が殺し合いに乗っているのは最早明らかだ。疑う余地はない。
絶対に、二人を近づけるわけにはいかないと。ひろしは鉄の拳を握りしめ、口火を切った。

「一応聞いておくが、アンタ、何で殺し合いに乗った」
「それを聞いてどうする。俺に何かやむなき事情があれば息子共々殺されてくれるかい?
あぁ…それとも。『楽しいから殺す』なんて言葉を引き出して、俺を手っ取り早く始末する理由が欲しいのかな?」

そのまま真人は理由なんかないさと答えた。
殺したいから殺す。何処までも欲求に正直に。
それこそが、呪いなのだから。

「……お前、それでも人なのか?」
「あぁ、そうだよ。俺たちこそ嘘偽りのない―――真の人間さ」

人間は嘘でできている。
表に出る正の感情や行動には必ず裏がある。
しかし―――負の感情は別だ。
憎悪や殺意などは偽りのない真実であり、そこから生まれ落ちた呪いこそ、真に純粋な本当の人間。
それが、真人たちが掲げるたった一つの信仰だった。


「…お前が絶対に野放しにはできないってのはよーく分かったよ。絶対に、ここで止めてやる」
「頑張れ〜!ロボとーちゃん!!」

最早交渉の余地はない。そう判断して臨戦態勢に移れば、背後から声援が届く。
しんのすけは自分を信じてくれている。その信頼はロボひろしにとって何よりの力となる。
負けるつもりは毛頭なく。ただ目の前の青年だけを見つめて。

見つめた先の青年の視線に、ぞくりと、頭部のコンピューターにバグが生じるのを感じた。
ひろしは彼を注視しているというのに。青年は、ひろしの方を見ていなかった。
自分を見て笑っているならまだ理解できる。
だが、ずっと見ているのはひろしの背後のしんのすけの方だ。
しんのすけを見てずっとほくそ笑んでいる。
それがどうしようもなく、不気味に思えた。

そんなひろしの事など意にも介さず、青年はゆっくりと指を背後へと向けて、そして告げる。


「親子の絆は美しいね。でもいいのかいしんのすけ。君のお母さんの事は」
「―――は?」

指を刺した先にあったのは、ひろしが先程しんのすけを助ける際に蹴り飛ばした怪物だ。
だが、怪物としんのすけの母。つまりみさえがどう繋がるのかロボひろしの超高性能なCPUを以てしても分からなかった。
そもそも、野原みさえは名簿に載っていなかった。此処には居ない筈の人間なのだから。

ゆっくりと、しんのすけの方に視線を移す。
すると、何故かしんのすけは見たことがない程青い顔をしていて。

「か、かーちゃん!!!」
「あ、コラ!ダメだよ!向こうは危ないんだぞ!!」
「うぅ〜でも、かーちゃんが、かーちゃんが…!」
「どうしたんだしんのすけ!かーちゃんって、みさえは此処には―――」

怪物と青年の方へと駆けて行こうとするしんのすけを慌ててレヴィが抑える。
だが、息子のめったに見たい焦燥した様子は、ロボひろしを混乱させるのには十分だった。
乱れた思考のまま、しんのすけから再び怪物の方に視線を戻す。
すると音もなく青年は怪物の前にしゃがみ込み。手をかざして。

グニィ。
その音が聞こえた一秒後、怪物は―――野原みさえの遺体となっていた。


333 : 殺し抗え、人であるがために ◆5qNTbURcuU :2020/12/31(木) 15:24:05 GS0jBb/A0


「……は?」


脳内の超高性能コンピューターですら、思考が追い付かない。
だって、野原みさえは此処には居ない筈の人間で。
それなのに、自分の超高性能カメラが映す目の前の首の骨がへし折れ事切れた女が、野原みさえとどうしても一致する。
一瞬で思考回路が断絶し、力が漲っていた筈の人工筋肉から力が抜ける。
どうして、あんなところにみさえが居る?
どうして、あんな、壊れた人形のように手足を投げ出している?


「どうしてって顔してるけど。本当は分かってるだろ?アンタがやったってさ」

…違う。
違う違う違う!
そんなはずはない。そんなはずは…ないんだ。
俺が…みさえを殺すなんて……


「おッ!お前お前がやったんだろ!!お前が、みさえを…」
「うーん、まぁ形を変えたのは確かに俺だけどね。
でも野原みさえを殺したのは、間違いなくあんたさ」


何処までも残酷な真人の言葉。だがひろしはその言葉を否定できなかった。
彼はしんのすけを救うために確かに怪物を殴り飛ばしたのだから。
人間ならば都合よく記憶を改ざんして全て青年がやったと責任を転嫁できたかもしれない。
だが、ロボひろしはロボットだ。一度記録したデータを改竄することは難しい。
呆然とするひろしに真人は浮かべていた笑みを消して、さらに言葉を紡ぐ。
意外にも、その内容は今の彼にとって希望になり得る物だった。

「まぁ安心しなよ。この野原みさえはきっと野原みさえであって野原みさえじゃない」
「ど、どういう事だ!」
「掌で魂に触れてその形を歪めることで肉体も変化させる。それが俺の術式、無為転変。
それでこの野原みさえの魂に触れてみたんだけど…一言で言ってこれは偽物だった」


生者の魂は生きている限り常に代謝している物だ。
だが、首輪を嵌められていない参加者…野原みさえは魂の代謝が見られなかった。
つまり、野原みさえは主催者によって用意されたNPCだったのだ。
本物の野原みさえならば、例え怪物の姿に変えられていても気づけたかもしれない。
本物の野原みさえならば、例えロボひろしに殴られても生きていたかもしれない。
だけど此処にいた彼女はNPCで。だからこそ予定調和のように死亡した。
参加者でないNPCに運命の女神が微笑むことは決してない。

「しんのすけやそこの女の子は魂が代謝しているのを見ると、
首輪が嵌められている参加者とそうでない参加者で分けられるみたいだね。
安心しなよ。本物の野原みさえは多分まだ生きてるんじゃないかな」
「それじゃ…」

青年の話の殆どは理解できなかったが、それでもみさえは無事らしい。
ほっと安堵するが、同時に強烈な違和感に駆られる。
何故、殺し合いに乗っているはずの青年がこんなことを言うのかと。
同時に、知りたくないという感情が同時に湧き上がる。
嫌だ。やめろと。
どれだけ願っても、答え合わせは、直ぐにやって来た。

「此処からが本題なんだけど…俺の無為転変は呪力を籠めて触れた時点で効果を発揮するんだ。
もっとも今俺が試そうとしてる事はあんまり経験が無くて、不慣れではあるんだけどね」
「な、何が言いたい……!」
「いや、こうやって術式の開示をする事で効果を上げてるのさ。
ちゃんとできてるか不安だったからね…でも安心したよ」
「だから、何なんだ!お前は!!」

ぞく、と。
ロボットであるはずの肉体に、悪寒が奔る。
みさえは、あの青年に触れられた事で怪物から人に戻った。
怪物を人に戻せるとするならば。
人を怪物にすることも当然可能のはず。
そして、しんのすけは、ひろしが助けに入った時には既に触れられていた。





「――俺の術式は、まだ生きてる」




―――無為転変。
そして、グニィ、と。
全てが終わる音が響き渡った。


334 : 殺し抗え、人であるがために ◆5qNTbURcuU :2020/12/31(木) 15:24:43 GS0jBb/A0





「とぉおおおぉおおおおちゃあああああああ」


しんのすけの姿が一瞬にして変貌する。
頭部と下半身が異様に肥大化し、目はぎょろぎょろとせわしなく動き、舌がだらりと垂らされた、怪物の様な姿へと。


「おっ、おいッ。しっかりし―――わぁッ!がっ!…ぁ……」

その瞬間は、動けなかった。完全に思考回路がフリーズし、指一つとして。
専用デバイスであるバルフィニカスを支給されておらず、また一番近くにいたレヴィが殴られ、建物の壁に激突し、沈黙。
その二秒後に、ようやく動くことができた。


「……ッ!!しんのすけぇえええええええッ!!」


追い打ちをかけようとするしんのすけの前方に回り込み、無我夢中で抑え込む。
だが、最早いまのしんのすけにはロボひろしの事が認識できていないのか、返答は拳で返された。
呪力の込められた拳で、しんのすけだった怪物は鋼鉄のボディを叩く。

「しっかりしろ、今、とーちゃんが治してやるから……!」

嘘だ。
どれだけ頭部のコンピュータをフル稼働しても、呪術師ではないロボひろしに治す方法など出て来るはずもなかった。
しんのすけの頭部を抑えたまま、ひろしは声を張り上げる。


「おい、アンタ!しんのすけを元に戻せ!!さもないと―――」
「さもないと、どうする。俺を殺すかい?
あぁ、それなら――五人ほど俺の代わりに殺してきてよ。それでしんのすけを元に戻そう」
「……ッ!?」
「俺を殺すのも他の参加者を殺すのも一緒だろ?俺は殺せても他の人間は殺せないかい?」

その言葉を受けた時の時のロボひろしの顔は。
機械の顔であると言うのに紛れもなく絶望を示していて。
そうだ、これが見たかったのだ。


「ふふっ、くっ、」


気づけば、笑うのを我慢できなくなっていた。
肩を震わせ、腹を抱えて、そして―――嗤う。





「あ、ははははははははははははははははははははははははは
 ははははははははははははははははははははははははははははは
 ははははははははははははははははははははははははははははは
 ははははははははははははははははははははははははははははは
 ははははははははははははははははははははははははははははは
 ははははははははははははははははははははははははははははは
 ははははははははははははははははははははははははははははは
 ははははははははははははははははははははははははははははは
 ははははははははははははははははははははははははははははは
 ははははははははははははははははははははははははははははは
 ははははははははははははははははははははははははははははは
 はははははははははははははははははははははははははははッ!」


ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲララゲラゲラ。
笑う。嗤う。ワラウ―――全ての未来を、矜持を、命を、呪いは嘲笑う。
何処まで行っても、真人という存在は呪いなのだから。
人が人を人を欺き、差別し、蔑み、陥れ、憎悪し、殺す―――そんな人の原罪全てが、形を成した存在なのだから。


335 : 殺し抗え、人であるがために ◆5qNTbURcuU :2020/12/31(木) 15:25:11 GS0jBb/A0




オラ、なにしてたんだっけ…。
あぁ、そうだ。キッコおねいさんを、あのかいじゅうからおたすけしないといけないんだ。
なんでわすれてたんだろう……

なにもみえないし、きこえない。
だれかがおおきなこえでなにかいってるけど…んもう、よくわからないゾ

でも、なんだかかなしそうなこえだゾ…それなら、おたすけしてあげないと。
………なぁんだ。ロボとーちゃんか。オラは、だいじょぶだから。
とってもねむいけど、それだけだから。

……ロボとーちゃんになら、オラがすこしおやすみしてるときも、おまかせできるゾ。
だから。
だから。
だから。


――――キッコおねいさんを、おたすけしてあげて……



…………………

…………

……



「ギッ…ゴ…おね…ざんを……おだずげ……」


それが、最後の言葉で。
ぐしゃり、と。
さっきまで命だった物が地面に転がる。
抑えていた力を抜いても、もうそれが動くことはない。

二度と、野原しんのすけが動くことはない。


【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん 死亡】





336 : 殺し抗え、人であるがために ◆5qNTbURcuU :2020/12/31(木) 15:25:34 GS0jBb/A0



全身の機能の全てが停止。
結局、何も出来ずにロボひろしは全てが終わることを見送る事しかできなかった。
青年の狂った笑い声さえ、耳に入らない。
正しく壊れたロボットのように、立ち尽くしていた。
彼は正しくスーパーロボットだ、搭載されいる機能。演算性能。共に現行のロボット工学の遥か先を行っているだろう。


だけれど、その人格部分たる野原ひろしの心は。
とうの昔に限界を迎えていた。


「ダッ…ダメだ…ダメだ…しんのすけ……!」

膝をつき、野原しんのすけだった怪物の遺体に縋る。
そうすれば生き返ると信じているかのように。
真人の事も、レヴィの事も、既に視界に入っていなかった。


崩れ落ち、ただ息子の亡骸にすがるロボひろしをひとしきり嗤った後、真人は羽虫のように見つめていた。
嗤っておいてなんだが、やはりこれは真人からすれば紛い物だ。
これだけ喪失の彼岸にあって、魂の代謝を感じない。
嗜好としてみれば偶にはいいかもしれないが、熱が過ぎれば人形を殴っているのと変わらない。
それよりも今の興味は。

「こっちの方かな」

意識を失い、気絶している青髪の少女。
彼女のデイパックを回収し、じっくりと魂の形を観察する
外見は完全に人であると言うのに、何処か魂は呪霊に近しい。それも特級の自分たちに、だ。
闇の書より生まれた彼女の出生については真人は知る由もない。だが、この娘ならば…


「宿儺の器になれるかもしれないね」


真人は隠し持っていた改造人間を三体取り出すと、五本の宿儺の指を渡し、少女を担がせる。
そして、此処から南下したエリア…H-7付近で指を飲ませる様に命令した。
それに加え、少女の死亡か、外的要因により顕現に失敗した時は指だけ回収し此方に戻るようにも伝える。
宿儺が顕現したとしても、自分に向かってくる恐れがある。
そのためリスクヘッジとして、宿儺の顕現は自分のいない所で行う事としたのだ。
もし指に適合し宿儺が復活すれば万々歳。できずに少女が死ねばそれはそれでいい。



運ばれていく少女は未だに目を覚まさない。
そのまま、雪の女王と炎の魔術師が鎬を削る戦場の近くへと。
もし彼女が指に適合し呪いの王が目覚めてしまえば、
地獄が、始まる。

【H-6(南部)/早朝】
【レヴィ・ザ・スラッシャー@魔法少女リリカルなのはPORTABLE-THE GEARS OF DESTINY-マテリアル娘。】
[状態]:気絶
[装備]:三体の改造人間。宿儺の指(五本)
[道具]:無し
[思考・状況]:基本行動方針:しんのすけという子を探す
1:...…
2:王様やシュテルんは今どうしてるのかな...
[備考]
ロボひろしのことについて色々知りました

※三体の改造人間に運ばれています。
※H-7付近で宿儺の指を摂取させられる予定です


337 : 殺し抗え、人であるがために ◆5qNTbURcuU :2020/12/31(木) 15:26:14 GS0jBb/A0



一仕事終えて、大きく伸びをする。
さて、後はあのがらくたを鉄屑に変えて、次の獲物を探すとしよう。
伽藍の鉄人形は未だぶつぶつと虚ろな言葉を漏らして、肉塊に縋りついている。
滑稽だった。魂すらない鉄の塊の癖にが一丁前に人のふりをして。
それ故に、こうして無防備な姿を自分に晒している。


「もうとっくに死んでるよ。ちょっと乱暴に形変えたからね。まぁこんなもんさ」


最早目の前の鉄屑は敵になどなりはしない、さっさと壊して次へ行こう。
そう思い、腕い腕を硬質化させた、その瞬間だった。
轟!と。
真人の顔面に、鉄の砲弾が突き刺さった。


「―――ッ!?」


常人なら首が吹き飛んでいるであろう一撃。
魂への直接攻撃だけが有効打となる真人に痛痒は無い。
しかし、その衝撃は、籠められた殺意は。向けられる呪いは。
彼の殺意を再び高揚させるのに、十分な物だった。


「……へぇ、やればできるじゃないか」


ニィィィィイイイイイと顔を歪めて。
正面に立つ、鉄人と対峙する。
相も変わらず、魂の代謝は感じないが――精巧に作られた表情で分かる。
黒一色に塗りつぶされた、自分を生んだ感情。
即ち、憎悪。即ち、殺意。
それは自分にとって、愛の言葉よりなお心地よい。
野原しんのすけが信じていた父親も、俺たち呪霊のステージまで降りてきてくれたという訳だ。
ゆっくりと加速しながら向かってくる鉄人に向けて正眼に構え、拳に呪力を籠める。
そして、服のすき間から『子供の』改造人間のストックを何時でも放てるよう取り出す。
準備は整った。


「あぁ……それじゃあ存分に」


触れることのできる魂がない以上、無為転変は通用しない。
ならばどうするか。答えは一つ。
より洗練された、殺すための形、殺すためのインスピレーションを体現しろ!


「――――呪い合おう」




『―――そうだ、誰も殺さないし、殺させない。
しんのすけも、マサオ君も、レヴィちゃんも、もう一人の、人の自分も。
必ず守り、平和な春日部に返して見せる。』



―――――その時、俺の口から出会たのは、
     レヴィちゃんに語った事は、思いは 全て嘘だったんじゃないかと思うくらい。
     腹の底から、出た本音。





「ブッ殺してやる」

【H-6(南部) /黎明】

【ロボひろし@クレヨンしんちゃん嵐を呼ぶガチンコ逆襲のロボとーちゃん】
[状態]:精神疲労(極大)、憎悪
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]:基本行動方針:目の前の男を殺す
1:目の前の男を殺す
2:しんのすけ…
3:目の前の男を殺した後、レヴィちゃんを助ける
[備考]
レヴィが魔法少女だということを知りました


【真人@呪術廻戦】
[状態]健康 
[装備]三代鬼徹@ONE PIECE、沖田のバズーカ@銀魂、大量の改造人間@呪術廻戦
[道具]基本支給品、両面宿儺の指15本セット、レヴィのデイパック(ランダム支給品1〜3)
[思考・状況]
基本行動方針:呪霊として殺し合いに参加する。
1:皆殺し、その過程で領域展開を取得したい。
2:宿儺の器を探す。
[備考]
原作16話より参戦です


338 : ◆5qNTbURcuU :2020/12/31(木) 15:26:46 GS0jBb/A0
投下終了です


339 : 名無しさん :2021/01/01(金) 02:56:01 cwKt8xFo0
投下乙です。
一話で二番底の展開がいいですね。悲劇に続いて更に追い悲劇というのは鮮やかで好きですね。


340 : ◆bLcnJe0wGs :2021/01/01(金) 18:04:51 fAYH6UkY0
鳥月、ブースカ、シャドウ茜で予約します


341 : ◆bLcnJe0wGs :2021/01/01(金) 18:21:36 fAYH6UkY0
投下します。
ロワ初参加となりますので、あまり自信はないのですが・・・


342 : ◆bLcnJe0wGs :2021/01/01(金) 19:00:32 fAYH6UkY0
谷に囲まれた森林地帯。
鳥月は地図を見ながら、ブースカの食べるカップ麺のお湯を探すべく、近くの建物を探していたのであった。
「」
『聞け! この地に集いし全てのものたちよ!』
放送を聞いた3人(?)は知り合いの名前が載っていない事を思いながら名簿に目を通す。
幸い、3人(?)に


343 : ◆bLcnJe0wGs :2021/01/01(金) 19:02:03 fAYH6UkY0
>>342
すみません。
間違って投下していました。
一旦投下を破棄して、また書き直しします。


344 : ◆bLcnJe0wGs :2021/01/01(金) 19:11:58 fAYH6UkY0
坂の近くにある場所。鳥月は地図を見ながら、ブースカの食べるカップ麺のお湯を探す為に、地図から見て北にある建物を目指して移動していた。

ーー-
しばらく歩いて、ようやく3人(?)はダスティ・デイポット(以下D.D)と呼ばれる場所にたどり着く。


345 : ◆bLcnJe0wGs :2021/01/01(金) 19:35:48 fAYH6UkY0
3人(?)はD.Dに入ってすぐ近くにある建物に入るのであった。

「失礼しまーす」

目玉おやじを連れた鳥月はそう言って建物に入ったのだが、中には誰もいない様だ。

(あれ?誰もいないのかな?)

鳥月は誰の気配も感じられない建物の中でお湯が欲しいので入らせて欲しいと言い、そのまま進んで行く。

鳥月はブースカと目玉おやじに、自分から離れず、お湯が入っている物、或いは湧かせる物を見つけて、お湯が湧いたら、カップ麺にお湯を注いで食べる様に伝える。


346 : ◆bLcnJe0wGs :2021/01/01(金) 19:46:55 fAYH6UkY0
そして鳥月は部屋にあるポットを見つけ、ブースカに食べさせるカップ麺にお湯を注ぐ。

そして食べられる様になる時間を待っている時に放送が始まった。

『聞け! この地に集いし全てのものたちよ!』

時間を待っている間に、3人(?)は名簿に目を通す。


347 : ◆bLcnJe0wGs :2021/01/01(金) 20:53:54 fAYH6UkY0
すみません、現在書いているSSの投下を一旦、中断させていただきます。
延長させていただいた場合も含めて、予約期間中に投下しきれなかった場合は、現在書いているSSの投下及び予約を破棄させていただきます。


348 : 名無しさん :2021/01/01(金) 21:04:41 SCxhkhFc0
一度wordやメモ帳のアプリなんかで全部書き上げてから投下した方が良いですよ


349 : ◆L9WpoKNfy2 :2021/01/02(土) 17:46:14 9h6GSxeY0
令嬢剣士

で予約します。


350 : ◆bLcnJe0wGs :2021/01/02(土) 18:28:39 eeN0E1Cg0
中断していたSSの続きを投下させていただきます。


351 : ◆bLcnJe0wGs :2021/01/02(土) 18:46:32 eeN0E1Cg0
それは、かなり奇妙な名簿でもあった。
【真人】や【とがめ】等、明らかに“苗字”と“下の名前”で載っていない様なもの沢山ある上に。
【ハサミ】や【絶叫するビーバー】等といった、どう考えても人名とは思えないもの。
【勇者】等、役所らしきもののみだったり。
【聖帝エーリュシオン】等、頭に肩書らしきものがあったりと、とにかくおかしなものであった。

---
名簿を見ている内に、カップ麺を食べられる時間が来てしまった。


352 : ◆bLcnJe0wGs :2021/01/02(土) 19:04:38 eeN0E1Cg0
ブースカは美味しそうにカップ麺を食べている様子を鳥月と目玉おやじは微笑ましく見ている。

ブースカが麺を食べ終えた後に、鳥月はカップ麺の入っていた入れ物を回収するのであった。

そして、二人(?)はお互いのランダム支給品を見せ合う。
鳥月の方は先ほどの目玉おやじに。
怪しげな色をした糸5本。
使うと建物や森林地帯の外へ転移できる道具の様だ。
他のランダム支給品はなかった。

一方のブースカに支給されたものは、巨大な黒いハサミのカバーらしき物。あまりにも大きい過ぎてこの部屋では取り出せそうにない。

そして沢山の工具が掛かった作業台。
彼の方も他にランダム支給された物はなかった。

そして、3人(?)は話し合った後、部屋の中で休憩をとるのであった。


353 : ◆bLcnJe0wGs :2021/01/02(土) 19:16:03 eeN0E1Cg0
【G-6 ダスティ・デイポット 建物の中】

【鳥月日和@妖怪の飼育員さん】
[状態]:健康 疲労(中)
[装備]:目玉おやじ@ゲゲゲの鬼太郎
[道具]:基本支給品(カップ麺一つ減)
アリアドネの糸(5本)@世界樹の迷宮シリーズ
[思考・状況]
基本:早く帰りたいけど、人殺しはしたくない
1:今は休憩。
2:まさかあの目玉おやじが実在していたなんて!
[備考]
単行本8巻時点からの参戦。
ブースカを『妖怪』だと思っています。
基本支給品のカップ麺は全て『サッポロ一番塩ラーメン』です。

【ブースカ@快獣ブースカ】
[状態]:カップ麺を汁ごと摂取
[装備]:無し
[道具]基本支給品(食糧は全滅)
ハサミのカバー@ペーパーマリオ オリガミキング
ちいさなDIYさぎょうだい@あつまれ どうぶつの森
[思考・状況]
基本:早く帰りたい
1:今は休憩。
[備考]
少なくとも、最終回でR惑星に旅立つよりも前からの参戦。


354 : ◆bLcnJe0wGs :2021/01/02(土) 19:21:26 eeN0E1Cg0
>>353
すみません。時間を書くのを忘れていました。
【G-6 ダスティ・デイポット 建物の中 深夜】となります。
お手数をおかけして申し訳ございません。


355 : ◆bLcnJe0wGs :2021/01/02(土) 19:49:37 eeN0E1Cg0
【支給品紹介】
【アリアドネの糸@世界樹の迷宮シリーズ】
鳥月日和に支給。
使うとダンジョンの外へワープできるアイテム。
本ロワでは仕様が変更されている。効果は以下の通り。
・使うと一本消滅。
・一本につき、一体ワープさせることが可能。
・ワープ先は使用したエリア内の区画内にある建物や森林の外。
・区画内が森林一帯になっている場合はワープ不可。


356 : ◆bLcnJe0wGs :2021/01/02(土) 19:50:32 eeN0E1Cg0
また、投下を中断させていただきます。


357 : ◆bLcnJe0wGs :2021/01/02(土) 20:44:46 eeN0E1Cg0
中断していた投下を再開させていただきます


358 : ◆bLcnJe0wGs :2021/01/02(土) 21:10:01 eeN0E1Cg0
【ハサミのカバー@ペーパーマリオ オリガミキング】
ブースカに支給。

ブンボー軍団のメンバーの1体、ハサミの持ち物であったカバー。
本来は安全の為に着ける物であるが、当のハサミはこれを“戦闘でのハンデ”として使用していた。

【ちいさなDIYさぎょうだい@あつまれ どうぶつの森】
ブースカに支給。
様々な工具が掛けられた作業台。
このアイテムを使う事で道具や家具、装備品などの様々なアイテムを作る事が出来る。
更に、サイズが小さいことで物作りをする際に、場所をあまり取らないので結構便利だったりする。


359 : ◆bLcnJe0wGs :2021/01/02(土) 21:20:35 eeN0E1Cg0
---

D.Dより北に位置する森林地帯。
そこでは、シャドウ茜とマイディア・ジョーカーが参加者を攻撃しにかかるNPCと戦い、倒しながら南へと進んでいた。
---
しばらくして、彼女たちもD.Dへとたどり着くのであったのだ…


360 : ◆bLcnJe0wGs :2021/01/02(土) 21:25:00 eeN0E1Cg0
【G-5 ダスティ・デイポット入口 深夜】

【シャドウ茜@ペルソナ5 スクランブル ザ ファントム ストライカーズ】
[状態]:健康 『マイ・ディア・ジョーカー』の顕現
[装備]:アサシンダガー@ドラゴンクエスト3
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]:基本行動方針:『悪党』を全員殺す。
1.他の参加者を探す
2.どうせ皆、悪党なんでしょ?
3.本物の怪盗団は、私を裏切らない……。
[備考]
心の怪盗団を京都ジェイルに誘い込むまで待っている時からの参戦です。
認知の怪盗団は、複数体同時に顕現させることはできません。


361 : ◆bLcnJe0wGs :2021/01/02(土) 21:26:50 eeN0E1Cg0
投下終了です。
勝手に投下を中断するなど迷惑をかけてしまって誠に申し訳ございません。


362 : ◆bLcnJe0wGs :2021/01/02(土) 21:28:58 eeN0E1Cg0
>>361
SSタイトルは『運ゲーは既に始まっている』となります。


363 : ◆L9WpoKNfy2 :2021/01/02(土) 21:49:19 9h6GSxeY0
投下させていただきます。


364 : 栄光なき剣士たち ◆L9WpoKNfy2 :2021/01/02(土) 21:50:16 9h6GSxeY0
ここは会場内にある森の入り口辺り……

そこには令嬢剣士が怒号とともにゴブリンの群れを蹂躙する姿があった。

「死ね、死ね、死ね死ねシネシネシネエエエエ!ゴブリンは皆殺しだアアアアァァ!!」

彼女は先ほど虐殺したゴブリンたちについて、その根城を探すために近くの森の中を探索しようとしていた。

そんな中彼女たちは、近くでたむろしていたゴブリンの群れに遭遇したのだった。

当然彼女はこの機会をのがずつもりはなく、先ほどのように蝙蝠を模した鎧を付けて突撃したのだ。

「GOB!?」
「GAAAA!」
「GOROB!!」

言うまでもなくゴブリンたちはそんな彼女の猛攻にも耐えられず逃げ惑っていた。

しかし、そんな状況は彼女とは別の襲撃者によって一変したのだ。

……それは一部のゴブリンたちが森の中に逃げ込もうとした時に起きた。

森の中に逃げ込めば振り切ることができる、と彼らは考えたのだ。

だけれどもそんな彼らの浅はかな考えは、頭から剣を生やした大蛇たちによって足りない頭ごと刈り取られてしまった。

ゴブリンたちは恐れおののいた、自分たちが逃げ出そうとした先にも怪物が潜んでいることに気づいたからだ。

そしてゴブリンたちは自らの死を悟ることになった。他ならぬ、森に潜んでいる怪物の姿を見たのだから。

そこには……


365 : 栄光なき剣士たち ◆L9WpoKNfy2 :2021/01/02(土) 21:50:48 9h6GSxeY0
「私にぃはぁ剣しかぁないんだぁぁぁぁぁあぁぁぁ」

上半身から無数の蛇を生やした剣士がいたのだ。

そしてその剣士は、体から生えた蛇たちでゴブリンたちを薙ぎ払ったり、剣を振り回して切り裂くなどして蹂躙を始めたのだ。

こうして周囲にゴブリンたちの死骸が積み重なった後、その怪物は令嬢剣士の元へと向かってきた。

「…何ておぞましい化け物ですの…!」

彼女は吐き捨てるようにそう言った。

彼女はその姿から何となく感じたのだ。目の前の怪物が、かつて人間であったことに。

そして『そんな姿になってまでも』強さを求めたという浅ましさに、彼女は嫌悪感を催したのである。

「私は生まれ変わった、最強の剣士として……」
「九本の刀に、誰しも恐れを抱く……」

そんな彼女に対し怪物は意に介した様子もなくそう返し、四体の蛇を伸ばしてきた。

されど彼女はそれに動揺することもなく避け、そのあと手にしていた剣と短銃を使って蛇を攻撃し始めた。

そうすると蛇たちは血をまき散らしながら砕け散り、怪物は体勢を崩したのだった。

これで倒せる、と判断した彼女は迷うことなく怪物に向かい、手に持った剣を彼に突き立てようとした。


366 : 栄光なき剣士たち ◆L9WpoKNfy2 :2021/01/02(土) 21:52:02 9h6GSxeY0
しかしそれは悪手だった。彼女は気づいていなかった、何故彼が『九本の刀』と言ったかを。

先ほど彼女が破壊した蛇は四体だった。では残りの剣はどこにあるのか?彼女はそれに気づいていなかったのだ。

その結果……

「おごっっ!が……あああっ!!」

彼女は腹部に何かを突き刺されたような強い衝撃を受け、変身が解けてしまったのだ。

そして元の姿に戻りもだえ苦しむ彼女は、怪物の背中から生えた五体の大蛇を見たのだった。

(迂闊でしたわ……他の腕がある可能性を考えなかったなんて……)

彼女は自分の迂闊さを嘆いていたが、そんな彼女を見て怪物はなぜか攻撃をしてこなかった。

何故動かないのか、と彼女が疑問に思っていると怪物は地面に毒液を流した後、そこに先ほど破壊された蛇を沈み込ませたのだ。

するとどうだろうか、砕け散ったはずの蛇たちが再生しているではないか。

(な……再生能力まで持っていますの……!)

そして自分の身体が再生したことを確認した怪物は、とどめを刺すべく蛇たちを振り回しながら近づき始めたのだ。

(ここで、わたくしは…殺されるというの……?このまま復讐を果たすこともできずに……?)

彼女は自分に近づいていく怪物を見ながら、自らが死ぬ姿を幻視し始めていた。

しかし彼女は立ち上がった。自分はまだ目的を果たしていない、それなのにここで死ぬわけにはいかないと、そう強く思ったからだ。

「…こんなところで死ぬつもりはありませんわ!」

そう彼女が叫ぶとともに、刀を取り出して怪物の腹部に突き刺したのだ。

それに怪物がうめき声をあげると、彼女は怪物の腹を切り裂き、そこに銃口を突き刺した。

そしてそのまま何度も弾を発射し続けた。怪物の腹から大量の血しぶきが上がるのも構わずに、彼女は撃ち続けたのだ。


367 : 栄光なき剣士たち ◆L9WpoKNfy2 :2021/01/02(土) 22:00:52 9h6GSxeY0
そうして……

「化物になってもかまわなかった……再び剣を握れるなら……」

怪物は、そういうと静かに倒れ伏して動かなくなった。

やっと倒せた、と彼女はそう思ったがそれが命取りとなった。

何と残された蛇が周囲に毒霧をまき散らしたのだ。

そのことに気づいた彼女は急いで口をふさいだが、彼女はわずかながらそれを吸い込んでしまった。

その結果、彼女は吐血してしまった。

(く…喉をやられてしまったようですわ……!急いでここを離れ、体を休める場所を探さなければ……!)

そして彼女は、満身創痍となった体を必死に動かして、体を癒せる場所を探すために歩き出すのだった……。

――― 彼女に栄光はない、何故なら今の彼女はもはや『貴族』でも『冒険者』でもなく、ただの『修羅』なのだから……。

------------------------

そして彼女が立ち去った後、先ほど倒された筈の怪物にはある変化が生じていた。

「敵がいなくなった……空しい……、相手がいなければ意味がない…」

なんと、この怪物はまだ生きていたのだ。

腹部に刀を突き刺され、またその傷口を何度も撃たれたにも関わらず、この怪物は死んでいなかったのだ。

「誰でもいい……、剣を交える相手を……」

そして怪物は、自身の身体から生えた蛇を使って立ち上がった後、何処かへと向かい始めたのだった……。

――― 彼に栄光はない、何故なら彼は『人』であることをやめたのだから……。

------------------------

――― そういう意味では彼らのあり方は悲劇かもしれない……。

――― されど彼らを嘆いてはならない、何故なら彼らは『それで満足している』のだから……。


368 : 栄光なき剣士たち ◆L9WpoKNfy2 :2021/01/02(土) 22:02:12 9h6GSxeY0
【H-4/深夜】
【令嬢剣士@ゴブリンスレイヤー】
[状態]:毒霧を吸い込んだことによるダメージ(小)、ゴブリンへの強い憎悪
[装備]:トランスチームガン、バットロストフルボトル@仮面ライダービルド、古びたカーテン(腐食)
[道具]:基本支給品、ちゅんちゅん丸@この素晴らしい世界に祝福を!(アニメ版)
[思考・状況]:基本行動方針:何が何でも元居た所へ戻り、宝剣を取り返す。
1:ゴブリンは見つけ次第殺す
2:使えるものは全て利用する
3:回復できる場所を探す
4:服が欲しい
[備考]
参戦時期はゴブリンスレイヤー達に洞窟から救出される前。
毒霧により体に巻いていたカーテンが腐食し、崩壊しかけています。

※ヒュドラとの戦闘により、【H-4】の一部で毒霧が発生しました。
 範囲と、いつ頃晴れるのかは後続の書き手にお任せします。

【ヒュドラ@ソウル・サクリファイス】
 NPC。上半身から無数の蛇が生えた、剣士の姿をした魔物。
 かつて部類の強さを誇っていたが、毒を盛られたことで戦えなくなった剣士が変異した魔物で、
 自身がかつて使っていた九本の剣をふるうために内臓を大蛇に変化させたとされる。
 また腕代わりになっている大蛇は剣をふるうだけでなく足元に毒液を流す、周囲に毒霧をばら撒く、
 地面に突き刺して高所から攻撃するなど人間では不可能な動きで翻弄してくる上に、
 たとえ破壊したとしてもしばらく経つと再生してしまうなど
 『ヒュドラ』の名にふさわしい再生能力を持っている。


369 : ◆L9WpoKNfy2 :2021/01/02(土) 22:02:40 9h6GSxeY0
投下終了です

ありがとうございました。


370 : ◆NYzTZnBoCI :2021/01/02(土) 22:27:51 WAm9.ekk0
ゲリラ投下させて頂きます。


371 : それが見えなくても、終わり ◆NYzTZnBoCI :2021/01/02(土) 22:28:57 WAm9.ekk0


「────覚えておきなさい、夜の吸血鬼に潜伏は通用しないということを」


月の傾く黎明を歩む三人組。その先頭が突然立ち止まり辺りを威圧した。
いまだに彼女の言葉の意味を呑み込めないドラえもんと西片は戸惑い、それでも肌を撫でる風の異質感にどうしようもない不安を煽られる。

「レミリアさん、誰かいるの?」

分かりきった質問をドラえもんが投げる。
レミリアは鬱蒼と広がる木々に視線を向けたまま頷き、本格的な警戒態勢に入る。

なんとも異質な存在感だった。
妖怪とも人間とも違う、まるでこの世に存在してはならないものがそこにいるかのような不気味さ。
ゆえに普通の人間である西片へ投げた警告とは違う、己の持つありったけの殺気と威圧をぶつけたつもりだった。


なのに、


372 : それが見えなくても、終わり ◆NYzTZnBoCI :2021/01/02(土) 22:30:14 WAm9.ekk0


「────え?」

木陰からぴよこんと顔を出したのは小柄な少女。
ルビーのように真っ赤な瞳に絹糸のような金髪を揺らして、お人形のようなあどけない顔立ちを持つ『それ』を見たレミリアは急速に血の巡りが早まるのを感じた。

「よかったぁ、ただの女の子じゃないか」

冷や汗をとめどなく垂らし瞳孔を開かせるレミリアとは対照的に安心したような笑顔を見せる西片。当然だ、彼はこの中でもっとも現実に近い感性を持つのだから異常に気付けるわけがない。

「なん、で……貴方が、いるのよ」

ぽつり、レミリアが震えた声で紡ぎ出す。
知り合いなんですか? そんな西片の質問がまるで聞こえていないかのように目の前の少女の名をレミリアが呼んだ。

「──フラン」
「ごきげんよう、お姉様」

フランドール・スカーレット。
それはレミリアがここで出会う可能性が最も遠く、居るはずのない存在だ。


373 : それが見えなくても、終わり ◆NYzTZnBoCI :2021/01/02(土) 22:30:38 WAm9.ekk0


「────え?」

木陰からぴよこんと顔を出したのは小柄な少女。
ルビーのように真っ赤な瞳に絹糸のような金髪を揺らして、お人形のようなあどけない顔立ちを持つ『それ』を見たレミリアは急速に血の巡りが早まるのを感じた。

「よかったぁ、ただの女の子じゃないか」

冷や汗をとめどなく垂らし瞳孔を開かせるレミリアとは対照的に安心したような笑顔を見せる西片。当然だ、彼はこの中でもっとも現実に近い感性を持つのだから異常に気付けるわけがない。

「なん、で……貴方が、いるのよ」

ぽつり、レミリアが震えた声で紡ぎ出す。
知り合いなんですか? そんな西片の質問がまるで聞こえていないかのように目の前の少女の名をレミリアが呼んだ。

「──フラン」
「ごきげんよう、お姉様」

フランドール・スカーレット。
それはレミリアがここで出会う可能性が最も遠く、居るはずのない存在だ。


374 : それが見えなくても、終わり ◆NYzTZnBoCI :2021/01/02(土) 22:31:08 WAm9.ekk0

「お姉様……っていうことは、レミリアさんの妹なの?」
「……ええ。だけど、あの子がここにいるはずが……」

そう、フランがここにいるはずがないのだ。
彼女は紅魔館の地下に幽閉されており存在を知るのは極僅かに限られるし、そもそもとして名簿にも書かれていない。
だからこそドラえもんに紅魔館の事を説明する際フランのことは省いた。必要ないと思ったからだ。
それなのにここにいる。あくまで名簿に居ない知り合いと出会うだけならレミリアはここまで動揺はしなかっただろう。

レミリアが動けない理由は────

「ねぇ、お姉様。どうして目を合わせてくれないの?」
「っ……!!」

フランが怖いから。
彼女の持つ『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』は世界の均衡を乱す可能性があるほど強力だ。そしてフラン本人はそれを使うのに躊躇いがない。
自分を、周りを、そしてフラン本人を守るためにも地下に幽閉していたのに。今目の前にいる彼女は悠々と外の世界を歩いている。

あってはならない。
もしフランが全力を出せば自分を含め参加者は全滅する可能性が高い。
緊張が走る。どうするべきかと脳内に思考を巡らせる内、フランが歩み寄るのを許してしまった。


375 : それが見えなくても、終わり ◆NYzTZnBoCI :2021/01/02(土) 22:31:45 WAm9.ekk0

「お」

フランが可愛らしく首を傾げる。

「ね」

口が裂けるくらいフランが笑う。

「え」

フランの姿が視界から消える。

「さ」

反射的にレミリアが半歩身を引く。

「まあああああぁぁぁぁ?」

視界全体がフランの顔で覆い尽くされる。
鼻が触れてしまうような至近距離にレミリアは乾いた息を漏らし、後方へと大きく飛び退こうとして転ぶ。
尻餅をつく形で体勢を崩したレミリアを見下ろしながら、再びフランは鼻歌交じりに上機嫌な足取りを運ばせた。

「フ、ラン……やめなさ……」

今のレミリアに冷静さなど微塵もなかった。
本来ならば姉として自分が彼女を止めなければならないのだろう。だがそれは舞台が幻想郷であった場合の話だ。
ここは幻想郷ではない。仮に自分がフランに負けた場合に復活できる保証は無いし、自分の他に彼女を抑え込めるような存在がいるかも分からない。
責任感や不安、死の恐怖に苛まれたレミリアは何も出来ず、自分の首筋に手を伸ばすフランを見上げたまま硬直して────

「やめるんだ!!」

横から割り込んだドラえもんがフランを突き飛ばす。
フランは大袈裟に転んで見せて、心底鬱陶しそうに猫型のロボットへと膨大な殺意の塊を浴びせた。


「邪魔するなよ、生き物でもないポンコツの癖にさ」


それはおよそレミリアの知るフランが使う言葉ではない。動揺するレミリアとドラえもんを他所に、フランの周りを黒い霧が囲い出し森全体に広がるそれが二人の視界を遮った。

「一体なにが──」



「────ねぇぇぇずみぃぃぃぃ!!!!」



瞬間、鼓膜をつんざくドラえもんの絶叫。
焦りを抱えたまま腕で霧を払えば物凄い勢いで走り去るドラえもんの姿が目に映った。
その遥か背後、すなわち自分の目の前には三メートルを越える巨大なネズミの姿があった。


376 : それが見えなくても、終わり ◆NYzTZnBoCI :2021/01/02(土) 22:32:22 WAm9.ekk0

「妖怪……? いつの間に!?」

いくら動揺しているとはいえ新たに妖怪が来たのならば気配に気付くはずだ。なのにこの大ネズミはまるでその場に突然現れたかのように鎮座している。
だが本当の問題はそこではない。ついさっきまでむざむざと殺意を見せつけた破壊の権化が──フランドール・スカーレットが居ない。

レミリアは恐怖する。

何が起こっているのか理解できない。
いるはずのない場所にフランがいて、突然大ネズミが現れて、ドラえもんが逃げて、フランが消えた。
立て続けに起こる理解不能な現象に頭が追い付かず、即座に行動に移すことが出来なかった。

「ひ、あ……、……え……っ?」

だから、頭になかった。
次々と引き起こされる『非日常』を前に、『日常』を生きてきた西片は逃げることすら出来ないのだと。
ずしん、地響きを鳴らしながら恐怖心を煽るように西片へにじり寄る大ネズミにレミリアは舌打ちを鳴らした。

「畜生風情が……!!」

フランへ恐怖し何も出来なかった屈辱をぶつけるかのような憤慨をネズミへとぶつければ、デイパックから取り出したライフル銃をそいつの頭へと向ける。
扱い方は大体わかる。弾幕よりも遥かに殺傷力が高いそれを取り出した理由は確実にこいつを殺すため。そして敵の素性が分からないため下手に接近すべきではないという戦いの勘によるものだ。

「は────?」

だが、その銃弾は当たらない。
ネズミが一瞬で姿を消したからだ。

一体どこへ────辺りを見渡すレミリアの視線は少し上を向いている。巨大生物を探すのに下を見る必要などないのだから。
だからこそ、『それ』の存在に気がついたのは西片の方が先だった。


377 : それが見えなくても、終わり ◆NYzTZnBoCI :2021/01/02(土) 22:33:02 WAm9.ekk0


「──高木、さん?」
「よっ、西片〜」


声につられレミリアが視線を下げる。
と、そこには見慣れない少女の姿があった。高木、と呼ばれたその存在は溌剌とした笑顔で西片に近寄る。西片の脳は混乱の最中にあるためか、突然現れた知り合いに対して疑問よりも先に安堵を見せていた。

(────まさか、)

目の前の異質な光景にレミリアはある一つの推測を浮かべる。
もしこれが事実ならば全ての辻褄が合う。突如消えたフランや大ネズミの姿も説明がつく。
それが本当かどうかも分からないまま、レミリアは己を納得させるかのように叫んだ。



「離れなさい!! それは幻覚よ!!」



え、と西片が言葉の意味を理解するよりも先に聞き返す。
すると彼の前で笑っていた高木が突如真剣な面持ちになり、瞳を潤ませて訴えかけるように西方の手を握った。


378 : それが見えなくても、終わり ◆NYzTZnBoCI :2021/01/02(土) 22:34:09 WAm9.ekk0

「ダメだよ西片、騙されないで。あいつははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
「た、高木さん!? どうしたの、高木さん!?」
「ににににににしししかかかかたたたたたたたたたたたたたた」

高木の体が不自然に揺れ始め、顔が崩れ始める。
片目が飛び出し、口からはでろんと長い舌が垂れて鼻からは大量の黒い液体が溢れる。
西片の短い悲鳴が響く。瞬間、パァンッと風船が割れるような軽い音と共に高木の頭が弾け飛び、生ぬるい血液と肉が西片の顔に張り付いた。


「うわああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ──────ッ!!?!!?」


半狂乱になり崩れ落ちる西片の無防備な首筋へ頭のない高木が手を伸ばす。それをレミリアの持つ銃、シュヴァリエボルト・マグナが阻止した。
的が小さいために銃弾は高木の腕を掠めるだけに終わる。やはり慣れないものは使うべきではないと肉薄したレミリアの腕が高木の体を吹き飛ばした。
本気で殴ったつもりなのに手応えが薄い。並の妖怪よりも頑丈な体にやはりかと思いつつ、精神崩壊寸前の西片へ視線を向けた。

「あ、ああああああ……!! あああああああ!!!!」
「落ち着きなさい、貴方の見たものは現実じゃないわ。これでもつけてなさい」
「あ……へっ、……これ、って……?」

レミリアが乱雑に投げ渡したのは何の変哲もないアイマスク。
意味もわからないまま西片はそれを受け取ってしまい、一瞬だが恐怖を疑問が上回った。


379 : それが見えなくても、終わり ◆NYzTZnBoCI :2021/01/02(土) 22:34:49 WAm9.ekk0

「奴の幻覚能力は強力だけれど、視界さえ封じてしまえばマシになるはずよ。私が大丈夫と言うまでそこでじっとしてなさい」
「は、はい……わかり、ました……」

言われるがままに西片はアイマスクを装着する。と、顔にべったりと張り付いていた血や肉の感触が消えたのがわかった。
レミリアの言う幻覚という言葉が事実だったことに安堵の息を吐く。が、視界が封じられるというのはそれだけで不安を煽られるものだ。
黒い視界の中ガタガタと震える体を縮こませて西片はひたすらレミリアの指示を待った。

「────!!」
「幻覚とわかった今、お前の技は通用しない」

声にならない絶叫を上げた高木だったものはぐにゃぐにゃと姿を変え、フランの形を作り上げる。
しかし幻術とわかった今、もうレミリアにそれは通用しない。
フランの偽物に対してシュヴァリエボルトの引き金を絞り、解き放たれた銃弾が肉に風穴を空ける。そのまま何発も、何発も撃ち込んだ。

西片の耳にレミリアの憤怒の声と怪物の叫びが届く。怖くて怖くて堪らなかったが、アイマスクを外す勇気はない。



「トドメよ。────必殺、ハートブレイク」



そうして銃声が止んだかと思えば、澄んだレミリアの宣言とともに風を切る音が鳴り怪物の断末魔が辺りを響いた。
数秒の静寂が森を包む。終わったのか──そうであってほしいという願望は他ならぬレミリア自身の声によって叶えられた。

「もう大丈夫よ。まったく、この私があんな詐欺師に苦戦させられるなんてね」
「レミリアさん!! よかった、よかったぁ……!」
「ふっ、情けないわね。……さて、始末も済んだ事だしドラえもんを探しましょうか」
「はっ、はい!!」

ふわり、辺りに漂う雰囲気が急激に軽くなるのを感じる。それをもって西片は改めて『非日常』は終わったのだと安心した。
もうこの目隠しをする必要はない。西片はアイマスクを額へと上げて数分ぶりの景色と再会する。


380 : それが見えなくても、終わり ◆NYzTZnBoCI :2021/01/02(土) 22:35:26 WAm9.ekk0


そうして西片が見たのは、






「────────え?」







丁度人の頭ほどの大口を開けるレミリアの姿だった。






381 : それが見えなくても、終わり ◆NYzTZnBoCI :2021/01/02(土) 22:35:56 WAm9.ekk0


「……どうなってんのよ」

開口するレミリアの瞳に反射するのは一面の青。
激しく流れる川の真ん中で人一人分ほどの足場に取り残された吸血鬼は嘆きじみた困惑を吐いた。

レミリアは逃げるフランもどきを追っていった。森の中とはいえ飛行速度で彼女に勝るものはそういない。あのフランもどきもそのはずで、手を伸ばせば届く距離にまで迫った。
だがその瞬間、フランもどきは一瞬で姿を消した。また何か別の生物に変身したのかと辺りを見渡したその時、この光景が広がっていたのだ。

「完璧に弱点を把握してるってわけね。くそったれ、反吐が出る」

吸血鬼は流れる水を渡れない。

これが幻だと脳でわかっていても、五感全てが受け取る情報がそれを否定する。川のせせらぎの音は紛れもなく本物で、水に触れれば指先を冷たい水が濡らす。
それでも構わず足を進めようとすれば体が強張り、目蓋を閉じればより一層鼓膜の奥に水の音が張り付いた。

「────ふざけるなっ!」

そうしている内にレミリアの周辺の景色がぐにゃりと歪み、元の森林へと姿を変える。そこでようやくレミリアの体は自由を得て、来た道を疾走した。

何秒かして、草の揺らぎに紛れて震える影を目にする。
あの化け物かという警戒は抱かない。その影の形は酷く見慣れたもので特徴的すぎるものだったからだ。


382 : それが見えなくても、終わり ◆NYzTZnBoCI :2021/01/02(土) 22:36:32 WAm9.ekk0

「うっ、うっ……西片くん……ごめんね、守ってあげられなくて……」

そこには、全身に噛みちぎられた跡を残した無惨な西片の遺体とそれに泣き縋るドラえもんの姿があった。
レミリアはそんな光景を当然だとどこか冷静な思考で見やる。自分が西片の傍を離れた時点でこうなることは必然だった。

「────仕方がないわ」

だからこそ、レミリアはそう言い放つ。
顔を上げるドラえもんの表情は驚きに染まっていた。レミリアの到着も含め、彼女の言葉自体にもネコ型ロボットに仕組まれたその感情が機能する。

「そんな言い方、ひどいよレミリアさん!」
「貴方は現場を見ていないからそう言えるのよ。それに、私が奴と戦っている間貴方は何をしていたのかしら? 一目散に場を離れた癖に死を嘆くだなんて虫がいいにも程があるんじゃない?」
「う……そ、それは……」

レミリアの無感情に綴られる言葉にドラえもんは何も言い返せない。彼女の言い分はどんな刃よりも鋭くドラえもんの心に突き刺さった。

「……西片くんをこんな目に遭わせたやつは、まだ近くにいるのかな」
「恐らくは、ね。瞬間移動のような能力も持っていたようだけど、きっと連発できるものじゃないわ」
「なら探しに行って止めないと……!!」
「探しに行く? どうやって?」

気まずい雰囲気を脱するかのようにドラえもんがそう切り出すもレミリアの冷たい返答に叩き伏せられる。
どうやって、って……答えを探しあぐねているうち、レミリアは思い返すのも屈辱というような苦々しい面持ちで吐き捨てた。


383 : それが見えなくても、終わり ◆NYzTZnBoCI :2021/01/02(土) 22:37:02 WAm9.ekk0



「────私達はあいつの本当の姿も知らないのよ?」



あの怪物の幻術は強大だった。

そういった術に敏感なレミリアでさえ幻だと気付くのに時間がかかったし、それを理解した上でも自分の行動が完全に封じられた。
何かに形を変えるだけならばまだ対処のしようはある。けれど奴の本当に恐ろしいところはリアル過ぎる幻を作り出すことにあった。

目に映る情報さえ遮断してしまえばいい、そんな甘い考えは通用しない。その幻は五感全てを支配し、現実と幻の狭間を分からなくする。
もしかしたらこの森自体も、ドラえもんも、西片の遺体自体も幻なのではないか。そんな猜疑心に囚われたレミリアは頭痛を覚えた。


長い沈黙が流れる。
姿の見えない敵に怯えながらドラえもんは西片を埋葬するために穴を掘り、レミリアは己のプライドをズタズタにされた事に苛立ちを隠せない。
ただ一つ、二人に共通する思考は────疑いだった。


【西片@からかい上手の高木さん 死亡確認】
【残り101名】

※ エコーズのDISC以外の西片の支給品はD-7の森の中に放置されています。
※目隠し@水曜日のダウンタウン が血塗れの状態で西片の支給品の傍に放置されています。

【D-7 森林/黎明3:40】
【ドラえもん@ドラえもん】
[状態]:悲しみ、ミルドラースに対する怒り、ペニーワイズへの恐怖
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]:基本行動方針:殺し合いには乗らない
1:レミリアと行動する。
2:西片くん……。
3:のび太くん大丈夫かな...

※四次元ポケットは回収されました。
※レミリアのこと、幻想郷のこと、紅魔館のことを知りました。

【レミリア・スカーレット@東方project】
[状態]:苛立ち、屈辱感
[装備]:シュヴァリエボルト・マグナ@グランブルーファンタジー
[道具]:基本支給品、折り畳み傘@現実
[思考・状況]:基本行動方針:主催をぶちのめす
1:ドラえもんと行動する。
2:のび太という少年を探す。
3:あの怪物(ペニーワイズ)はいつか殺す。

※紅魔郷終了後からの参戦です。(EXではないためフランが地下から解放されていません)





384 : それが見えなくても、終わり ◆NYzTZnBoCI :2021/01/02(土) 22:37:36 WAm9.ekk0


「ギャハハハハハハハハ!! ハハハハハハハハ!! 食った! 子供を食ってやったぞ!!」

聴く者に不快感を与えるような笑い声を高らかに響かせて森を歩く道化師──ペニーワイズ。
彼は酷く上機嫌だった。なにせ見事なままにレミリア達を騙し、心から怖がらせることに成功したのだから。
それだけじゃない。西片という少年の味は格別だった。深い深い恐怖を刻み込んだ後、希望というスパイスをひと振りしてありついたご馳走は思い出すだけでも興奮に値する。

「それに、素敵なプレゼントももらったしねぇ〜〜! 」

そう言いながら血に濡れた口端を釣り上げるペニーワイズの手には、西片の遺体から出てきたディスクが握られている。
それの説明は西方の記憶を覗き見た際に把握した。どうやらスタンドという異能の力を得る事が出来るらしい。

ペニーワイズは自分が負けるとは毛頭思っていない。だが、レミリアのような自分に近い存在と出会った場合は対処が面倒だ。
事実さっきもテレポートを使用する状況にまで追い込まれた。自分は最強ではあるが無敵ではない。それは憎き負け犬クラブの子供達に思い知らされている。

それに何よりも────


「これでもっと、もォ〜〜〜ッと子供達を怖がらせることが出来るなぁ」


ペニーワイズの力の根源は恐怖心にあるのだ。

【D-7 森林 西側/黎明3:40】
【ペニーワイズ@IT それが見えたら、終わり】
[状態]:ピエロの姿、健康、興奮
[装備]:エコーズのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]基本行動方針:捕食者として、この催しを楽しむ。
1:餌を探す。できれば子供が良い。
2:レミリアのような特殊能力を持った相手は注意する。

※参戦時期は『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』の前。
※対峙した相手の記憶を読むことができます。
※テレポートの範囲は半径20m以内で、一度使用したら十分間使用出来ません。
※透明化、テレパシー、マインドコントロール、テレキネシスなどといった能力に制限があるかどうかは不明です。
※クレマンティーヌ、レミリア、ドラえもんの恐怖を抱くものを把握しました。


【支給品紹介】
【シュヴァリエボルト・マグナ@グランブルーファンタジー】
レミリアに支給された光属性の銃。
所持しているだけで光属性のキャラの攻撃力上昇(大)、土属性のキャラの最大HP上昇(大)の効果がある。
また、奥義『光の刃』が使用できるかはお任せします。

【目隠し@水曜日のダウンタウン】
レミリアに支給されたアイマスク。
水曜日のダウンタウンではよくクロちゃんを拉致るのに使われる。安眠性能は多分高い。


385 : ◆NYzTZnBoCI :2021/01/02(土) 22:39:16 WAm9.ekk0
投下終了です。
>>372>>373で二重投稿となってしまい申し訳ありません。
初投下の為、何か不備などございましたら教えていただけると幸いです。


386 : 名無しさん :2021/01/04(月) 00:00:39 zU7C4vnw0
代理投下します


387 : レイジングループ :2021/01/04(月) 00:01:57 zU7C4vnw0
・キャラ
ナツキ・スバル、エンリコ・プッチ


「……お断り、だ」

結論から言えば、ナツキ・スバルはエンリコ・プッチの誘いには乗らなかった。

「……まあ、急な話だったからな。返事は今すぐというわけではないさ。差し支えなければ理由を聞いてもいいかい?」
「まず、第一に俺はアンタが信用出来ない」
「これは手厳しいな」

少々自虐的に嗤うプッチに対し、スバルは『それにな、』と付け加える。

「笑っていてほしいんだよ」
「……それは『エミリア』に『レム』のことか」
「呼び捨てんなよデコ助神父」
「ああ、すまない。『エミリアたん』に『レムりん』だったな」
「そういうことじゃねぇよ」

その二人は、スバルにとって最も大切なハーフエルフの少女とメイドの少女の名前。
ナツキ・スバルの記憶を覗いたプッチは彼女の事を知っている。

「記憶覗いたなら知ってるだろ、『未来のお話は、笑いながらじゃなきゃダメ』なんだよ。決まった未来なんてお断りだ。来年はどうしたいかって笑顔で話せねぇと、鬼が笑ってくれないだろ」

それはかつてレムが言った言葉であり、スバル自身が彼女に言った言葉である。

「未来を覚悟していれば、不安視することも無い。笑って過ごせるとは思わないのか?」
「思えねぇな。未来が決まってるなんてとんだクソゲーじゃねえか。エミリアたんにそんなもんプレイさせたくねぇよ」
「しかし、スバ『イェイイェイ!未来最高!』」
「急にどうしたんすか」
「いや、今のは私ではないよスバル」

がさり、と音を立て声の主が現れる。その姿は一言で表すなら異形であった。
さながら、大樹が筋肉隆々な成人男性の姿をとったようであり、まるで擬態するかのように木の陰に潜んでいた。
もし、プッチが呼ばれたのが少し未来であれば、彼は植物化した囚人達を想起したであろう。

「……プッチさん、あれもスタンドっすか」
「……スバル、一旦話は後だ」

プッチは来訪者の攻撃に備えホワイトスネイクを発現し、スバルもそれに合わせて一時共闘姿勢をとる。
スバルとしては危険思想を持つプッチの傍からは一刻も早く離れたかったが、目の前の異形がどのような能力を持つか分からない状態で下手に動くのは危険だとやむを得ずに判断した。
だが、そんなことはどうでもいいとばかりに異形が笑う。

「未来最高!何やら凄ェ臭ェ匂いがすると思ったら面白い話してるな!」

嫉妬の魔女に愛されたスバルは「魔女の残り香」と呼ばれる瘴気を纏っている。
その瘴気はときおり、その香りを嫌悪する者を引き寄せてしまうことがある。


388 : レイジングループ :2021/01/04(月) 00:02:35 zU7C4vnw0
〇〇〇


「未来の悪魔、だと?」

現れた者はスタンドではなく、ある世界において『悪魔』と称される存在であった。
『悪魔』、その単語は聖職者であるプッチにとっては聞き捨てならない言葉である。
しかし、悪魔の誘いはプッチに興味を抱かせる。その悪魔が見ることが出来る未来というのは、絶対に変えられないのだという。
『天国』を求めるプッチにとって、その能力は非常に心を躍らせるものであった。

「なるほど、悪魔の契約という訳か。だが、当然代価もあるのだろう?血や魂でも捧げろとでも言うのか?」
「オマエの未来を俺に見せな!契約内容はそれ次第だ!」
「……なるほど」
「俺は契約しねぇからな。俺はエミリアたん専属契約だ」
「いや、オマエの未来はどうでもいい!」
「何故!?」
「オマエの『匂い』過去最悪!クッセェからどっか行け!」
「うっわ契約なんざする気もねぇけど、こいつムカつく!」

この際、スバルにヤバい愛情がINしていることを感じ取った未来の悪魔は九死に一生を得た。
スバルの死に戻りを知った者は死ぬ。嫉妬の魔女サテラによって殺される。
スタンドDISCを通して死に戻りを知ったプッチは何故か無事であったが、その原因は依然不明である。
この世界において嫉妬の魔女の力がどのように作用するか、全貌はまだ明らかに合っていない。
もしも、プッチのホワイトスネイクが例外であったとしたら?未来の悪魔がスバルが死に戻りする未来を見てしまっいたら?
いくら強靭な強さを持つ悪魔といえど魔女に殺される。そんな『未来』もありえたかもしれない。

『聞け! この地に集いし全てのものたちよ!
 喜ばしい事に、総勢111名、現時点を持って全ての参加者が確定した!』

三者の想いが交差する中、ミルドラースの放送が響き渡った。


〇〇〇


殺し合いの始まりを告げる放送が終わり、二人は知り合い達が呼ばれていたことを知る。
プッチは空条徐倫の名前に少々苛立ちを覚え、スバルはレムの名前が記載されていたことに危機感と怒りを覚えた。
スバルがこの世界に呼ばれる前、彼女は眠たきりの状態となっていた。
そんな状態の少女を殺し合いに呼ぶなど、彼女に死ねと言っているのとそう変わりない。
それに、幾多の死に戻りを駆使して倒したばかりの『ペテルギウス・ロマネコンティ』の名前もあった。
何故死亡した人物の名前が載っているかは分からないが、彼のような危険人物がいるのならば、一刻も早くレムを守らなければならないと動きだすのは当然のことであった。

「ミルドラースの野郎!プッチさん、俺はレムを探しに行くからここでお別れだ」
「スバル、君にまた会える時を楽しみにしているよ。気が変わったらいつでも言ってくれ」
「ゴメンだね、俺の返事は変わらねぇよ!」

そうこう受け流しながらスバルは自らに支給された魔獣に乗り込んだ。
名簿を確認しようとデイバッグを開けた際に、彼より一回りも大きい豹が飛び出したときは一悶着あったものの、モフっ子とモフリストは互いに惹かれあう運命にあるものである。
当初、魔獣は『魔女の残り香』を漂わせるスバルに対し警戒していたが、一流のモフリストであるスバルにモフリングされるうちにすっかり親しくなっていた。
憎む心ではなく、愛を持って接すれば仲間になれるのは世界が違えども変わらない。
この魔獣の名は『キラーパンサー』。ある世界において地獄の殺し屋とも称される凶暴な魔物である。

「頼むぜ、『ゲレゲレ』!」
「ガウ」

そうして魔獣は大地を踏みしめて風になる。ほんの刹那で闇へと紛れ、プッチからスバルの姿は見えなくなった。

「一緒に行かなくて良かったのか?」

悪魔の問いにプッチは愚問だなというような顔を浮かべる。

「人と人には『引力』がある、彼との出会いに意味があるならば、いずれまた会う運命だろうさ。そのときには彼も心変わりしているかもしれないな」
「そうか!じゃあ話の続きだ!契約するなら僕のお腹に顔を突っ込め!契約内容はオマエの未来次第だ!」


389 : レイジングループ :2021/01/04(月) 00:03:06 zU7C4vnw0
〇〇〇


かつてある吸血鬼は訪ねた。
「君は『引力』を信じるか?」「出会いというものは『引力』ではないか?」と。
『天国』を求めるプッチが、『天国』そのものであるスバルと出会ったのも、未来の悪魔に興味を抱かせたのも、果たして偶然か必然か。

スバルのディバックに眠る、とある支給品。
彼自身、まだその存在には気づいていないが、これはある世界である少年と拗らせた嘗女を引き合わせたお守りである。
かつて、そのお守りを無くした少年は、嘗女ら妖怪の友人達と別れることとなったが、運命の悪戯により彼らは再び再開することが出来た。
つまり、これもある意味では『引力』と呼べるものである。
ならば、その加護を授かっているスバルの行き着く先は、いかなる方向か。
大切に思う鬼族のメイドと再開する未来か、はたまた悪鬼に引き寄せられて殺される未来か。
あるいは神父と再開し、共に天国を目指す未来となるか。
それは骰子の出目次第。


【F-4 西部/深夜】
【エンリコ・プッチ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康、ナツキ・スバルへの尊敬と興奮(大)
[装備]:スタンド『ホワイト・スネイク』
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]基本行動方針:天国への到達を目指す。殺し合いには乗らないが、必要とあれば手段は選ばない。
1:スバルと行動を共にしたかったが……これが彼との出会いが運命ならばまた機会はあるだろう
2:スバル…君はまさに『天国』そのものだッ!
3:未来の悪魔と契約するか……?
[備考]
 ホワイトスネイクにより、スバルの『死に戻り』の記憶を一部把握しました。
 参戦時期は承太郎の記憶DISCを得た後の時間軸。


【ナツキ・スバル@Re:ゼロから始める異世界生活】
[状態]:健康、エンリコ・プッチへの不信感・不快感(大)
[装備]:キラーパンサー@ドラゴンクエストV
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1、お守り@こじらせ百鬼ドマイナー
[思考・状況]基本行動方針:
1:レム、無事でいてくれ!
2:『天国』なあ……宗教家ってやっぱ禄なヤツいねぇな!
[備考]
 エンリコ・プッチの『天国』の解釈を本人からの説明で理解しました。
 参戦時期は聖域に向かう前後。
 『死に戻り』のペナルティには制限が課せられているようです。


【支給品紹介】
【キラーパンサー@ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁】
ナツキ・スバルに支給。
黄色い毛並みと赤いたてがみの豹型モンスター。ちからとすばやさが高いアタッカータイプ。
一部のDQシリーズでは移動手段として乗ることも出来る。
その凶暴性から地獄の殺し屋とも呼ばれることもあるが、このキラーパンサーは伝説の魔物使いの仲間として魔王ミルドラースを討つ旅に参加した個体である。よって主人に似て心優しく、人を襲うことは無い。
名前については後続の方にお任せします。スバルはどこか見覚えのある姿から『ゲレゲレ』と名づけましたが、本名かどうかは不明です。

使える技は以下の4つ。
次の物理攻撃の威力を2倍にする「きあいため」。
相手をすくませて1ターン行動不能にすることがある「おたけび」。
相手の補助効果を打ち消す「いてつくはどう」。
激しい雷を呼び寄せて、敵全体に軽〜中規模のダメージを与える「いなずま」。

【お守り@こじらせ百鬼ドマイナー】
ナツキ・スバルに支給。
渡海隼人が所持するお守り。彼が妖怪達と繋がるための鍵。
中に「伊勢八幡菩薩」と刻まれた猟銃の弾が入っている。
「必ずあたる祈りをこめた鉄の弾」「必ずあたる奇妙奇天烈不思議なものに」。
所持していれば妖怪のような不思議なものに出会えるようになり、普通の人間には来れない場所に辿り着けるようになる。
このロワでは、妖怪に近しい性質を持つ参加者やNPC相手にも効果があるかもしれない。

【NPC紹介】
【未来の悪魔@チェンソーマン】
樹木が筋肉隆々な人間の形を取ったような姿をした悪魔。
その名の通り未来を見ることが出来る悪魔であり、契約した者には数秒先の未来を見る能力を与える。
非常に性格が悪く、時折どのような死に方をするか教えようとしたり、頼んでもいないときに勝手に嫌な未来を見せることもある。

能力で見れる未来については、あくまで「見えるだけ」であり、それにどのように対処するかは契約者次第である。
腹部の穴を覗いた者の未来を結末まで見ることが出来るが、このロワではあまり遠くの未来を見ることは出来ない。(具体的にどこまで見えるかはお任せします。)
また、参加者の生死に関わる未来について言及しないように主催に命じられている。

このロワにおいて自分から参加者に干渉することは基本的に無いが、彼が興味を抱いた相手には話しかけてくる。
特に「未来」に関することを言及すると出てくる可能性が高い。
オマエも未来最高と叫びなさい!!


390 : レイジングループ :2021/01/04(月) 00:04:18 zU7C4vnw0
代理投下終了です。
すいません。コピペミスで、一番上に登場キャラを入れてしまいました。


391 : 暖かい時間 ◆bLcnJe0wGs :2021/01/06(水) 21:38:58 m2A8IuSw0


弓那の身につけていた制服をボロボロにしてしまったリーゼロッテは、弓那の姿を隠す様にしながら、近くの小屋に入る。



小屋に入ったら、直ぐに扉の鍵を閉め、外に居る者達に姿を見られない様に、窓のカーテンを全て閉める。
屋内は、懐中電灯(因みに、参加者全員にデフォルト支給されている。)を照らしながら探索していく。



小屋にはシャワールームの他に、キッチンもある上、水道やガス、電気も使える様だが、当然電気の照明は点けないでおく。おまけにティーパックやティーポット、マグカップやコースターも有る。
弓那がシャワールームに入る前に、近く有るコンセントにヒーターのプラグを差し込み、スイッチを点ける。
弓那がシャワーを浴びている間に、リーゼロッテは屋内にある衣類をシャワールームのすぐ側にある所に持っていく。



…リーゼロッテは、弓那がシャワールームから上がって来た後でも、すぐに体温を下げることがない様に、紅茶を淹れる事にした。



先に、懐中電灯を点ける調理台の端の方に置き、ティーポットとティーパック、コースターにマグカップ、台所に置いてあった砂糖を用意して、ケトルに水道水を注ぎ、コンロの上に乗せる。
魔法は使わず、コンロのスイッチを点けて、お湯を湧かしていく。




392 : 暖かい時間 ◆bLcnJe0wGs :2021/01/06(水) 21:40:06 m2A8IuSw0
すみません。宣言を忘れていました。
改めまして、投下します。


393 : 暖かい時間 ◆bLcnJe0wGs :2021/01/06(水) 21:40:41 m2A8IuSw0


弓那の身につけていた制服をボロボロにしてしまったリーゼロッテは、弓那の姿を隠す様にしながら、近くの小屋に入る。



小屋に入ったら、直ぐに扉の鍵を閉め、外に居る者達に姿を見られない様に、窓のカーテンを全て閉める。
屋内は、懐中電灯(因みに、参加者全員にデフォルト支給されている。)を照らしながら探索していく。



小屋にはシャワールームの他に、キッチンもある上、水道やガス、電気も使える様だが、当然電気の照明は点けないでおく。おまけにティーパックやティーポット、マグカップやコースターも有る。
弓那がシャワールームに入る前に、近く有るコンセントにヒーターのプラグを差し込み、スイッチを点ける。
弓那がシャワーを浴びている間に、リーゼロッテは屋内にある衣類をシャワールームのすぐ側にある所に持っていく。



…リーゼロッテは、弓那がシャワールームから上がって来た後でも、すぐに体温を下げることがない様に、紅茶を淹れる事にした。



先に、懐中電灯を点ける調理台の端の方に置き、ティーポットとティーパック、コースターにマグカップ、台所に置いてあった砂糖を用意して、ケトルに水道水を注ぎ、コンロの上に乗せる。
魔法は使わず、コンロのスイッチを点けて、お湯を湧かしていく。




394 : 暖かい時間 ◆bLcnJe0wGs :2021/01/06(水) 21:41:17 m2A8IuSw0
お湯が湧いたら、火を止めて先にマグカップにお湯を注ぐ。先にマグカップを温かくしておくのだ。温めて少し経ったらお湯を流す。
カップを温めている間に、ティーポットにもお湯を注いでいく。
温まったマグカップに注いでいたお湯を一度流して、ポットで蒸らしていた紅茶を注ぐ。
それらをリーゼロッテは、テーブルに持って行く。



弓那がシャワーを浴び終えて、体をタオルで拭き、リーゼロッテの用意した衣服を着る。(因みに元々着ていた物は清潔な袋に入れている。)
髪を乾かし終えた弓那が戻って来ると、テーブルには紅茶が用意されていた。



…そして二人は小屋の中で束の間の休息をとるのであった…。



二人が紅茶を飲み終えた後、リーゼロッテは弓那の為に布団を敷き、弓那に布団で休む事を勧める。 引き続き、体温を下げない様にする為だ。
弓那が布団に入った後に、リーゼロッテは同じく小屋にあった湯湯婆のお湯を沸かし始める。
お湯が沸く前に、食器やコースターの後片付けをして、同じく屋内にあったレジ袋に使用したティーパックを入れる。



『聞け! この地に集いし全てのものたちよ!』
遂に放送が始まった。

湧いたお湯を湯湯婆に入れて、弓那の所に持っていった後に、リーゼロッテは名簿に目を通す。
そこには、リーゼロッテにとっては、警戒すべきであるような名前が載っていた。




395 : 暖かい時間 ◆bLcnJe0wGs :2021/01/06(水) 21:42:00 m2A8IuSw0
その名前は【聖帝エーリュシオン】。
かつて、十字軍に信仰心を踏みにじられた彼女にとっては、面識さえも無い筈なのに、恐れ慄く様なものでもあった。


396 : 暖かい時間 ◆bLcnJe0wGs :2021/01/06(水) 21:44:26 m2A8IuSw0
【D-4 小屋の中】

【翠下弓那@輝光翼戦記 天空のユミナ】
[状態]:健康
[服装]:小屋にあった衣類一式@現地調達品
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品3つ神撫学園指定のセーラー服(ボロボロ、血痕+焼け跡、現在は清潔な袋@現地調達品に入れている。)
[思考]
基本:こんな下らない事考えた奴らぶっ飛ばして、さっさと元の世界に戻らせてもらうわ!
1:今は体温を下げない様にする。
2:名簿を確認したい。
3:気温が上がったら外に出る…?
4:ありがとうね、リズ!
[備考]
原作における弓那ルートEND後からの参戦です


【リーゼロッテ・ヴェルクマイスター@11eyes -罪と罰と贖いの少女-】
[状態]:健康 疲労(中)
[服装]:いつもの服装
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品2つ
[思考]
基本:このバカ(弓那)についていくことにする
1:弓那の体温を下げない様にする。
2:自分もシャワーを浴びに行く。その為、着替えを用意しに行く。
3:シャワーを終えて、髪を乾かした後に、自分と弓那の髪と、ティーパックの処理をする。
4:気温が上がったら外に出ようかな…?
[備考]
死亡後からの参戦です。
聖帝エーリュシオンを危険人物と認識しました。


397 : 暖かい時間 ◆bLcnJe0wGs :2021/01/06(水) 21:44:50 m2A8IuSw0
投下終了です。


398 : ◆OmtW54r7Tc :2021/01/06(水) 21:50:29 WEblufbk0
とがめ、佐藤アカネで予約します


399 : ◆OmtW54r7Tc :2021/01/06(水) 22:12:19 WEblufbk0
投下します


400 : そんな過去はウソみたい ◆OmtW54r7Tc :2021/01/06(水) 22:13:27 WEblufbk0
(知ってる名前は……ない)

ミルドラースの放送が終わり、名簿を確認した佐藤アカネは、知っている名前がないことを確認する。

(なんか…変な感じ)

知り合いの名前が呼ばれなかったことは、喜ばしいことだ。
その感情に…ウソなんてないはずだ。
なのに、心の中では不安が大きくなっていく。
まるで、知り合いの名前があって欲しかったかのように。

(一人の方が気楽…そう、思ってたはずなのに)

アカネの脳裏に浮かぶのは、一人の少女の姿。
大橋ミツキ。
あの少女と出会い、妙に懐かれてしまったことで、全てが狂ってしまった。

『アカネちゃん…』

小動物のような泣き顔で自分を呼ぶミツキの姿を、幻視して…

(何考えてんだか)

前言もとい前考撤回。
知り合いがいなくて不安だなんて、大ウソだ。
いなくて、本当によかった。
だって、あの子がこんなとこに呼ばれたとして。
口下手で、鈍くさいあの子が生き残れるわけがない。

(たとえ一人だって…知り合いがいなくたって、私は生き残る)

決意を固めると、アカネは同行者の方へ顔を向ける。
同行者である女性、とがめは未だに名簿を見ていたが、しばらくすると口を開いた。

「…七花の奴はおらんか。全く、わたしの刀だというのにそばにいないとは、なんたることだ」

とがめの反応は、アカネのそれとは全く違っていた。
知り合いがいないことにホッとするわけでもなければ、不安に思うわけでもなく、ぶつくさと不満を口にしていた。
自分とは住む世界が違うんだな、とアカネは思った。


401 : そんな過去はウソみたい ◆OmtW54r7Tc :2021/01/06(水) 22:14:22 WEblufbk0
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

「さて、名簿の確認を終えたことだし、出発したいところだが、その前にアカネ、一つ決めなければならないことがあるが、分かるか?」
「決めないといけないこと?」
「ああ、非力なわたし達が生き残るために必要なことだ」

そういえばとがめは、生き残るための奇策を授けると言っていたか。
彼女の言う通り自分たちは非力であり、現状頼れるのは彼女の頭脳だ。

「降参。もったいぶらないで、教えなさいよ」

そういうとアカネは、真剣な面持ちでとがめの次の言葉を待つ。

「わたし達が決めなければならないこと…それは」
「それは…?」
「決め台詞だ!」
「……………は?」



「例えばこの殺し合いの舞台がどこぞの物書きが作った物語としてだ。アカネ、作者はどういう者を生き残らせると思う?」
「どういうって…強い人とか?」
「半分正解だ。しかし、ただ強いだけでは、作者もつまらんし読者を満足させることができん。作者が、読者が求めるもの…それは強烈な個性を持つ者だ」
「…それで決め台詞?」
「ああ、決め台詞は読者に大きな印象を残し、作者にも書きたいと思わせられる。すなわち、この殺し合いでも生き残れるということだ」
「……………」

そんなフィクションのお約束みたいなものを現実に当てはめられても、困るのだが。

「…本当に決めるの?決め台詞」
「当然。生き残るためだ」

電流は来ない。
どうやらこの女、本気で言っているらしい。

「…分かった。じゃあ、歩きながら考えるから出発しましょう」
「なに、安心しろ。実はそなたのためにいくつか決め台詞を考えておいた」
「…一応聞くけど、どんなのかしら」

うんざりしながらも、アカネは聞いてみる。

「ふむ…一番の自信作はこれだな」


「『お前のウソは全部まるっとお見通しだ!』」


「……………」
「どうだ、これはそなたのウソを見抜く能力から着想を得たものなのだが…」
「なしで」
「ふむ、気に入らぬか?数百年未来にも通じる冴えた台詞だと思ったのだが」


402 : そんな過去はウソみたい ◆OmtW54r7Tc :2021/01/06(水) 22:15:00 WEblufbk0
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

「そ、それよりも。そういえば、結局あんたの名前はなんていうの?」

いつまでもこんな不毛な会話はしてられないと考えたアカネは、強引に話題を切り替えた。

「む?なんだ突然。名前はとがめと名乗ったであろう」
「それ嘘なんでしょ」
「ああ、そういえばそうであったな。…とはいえ、とがめとしか名乗りようがない。名簿にもそうあるしな」
「私の下にあるこれが、あんたを指し示す名前だっていうの?」
「ああ、そうだ。…すまんが、この殺し合いに幕府の手の者が関わっているともかぎらないのでな。わたしの命と目的に関わることゆえ、本名を名乗ることはできん」
「…分かった」

電流は来ない。
命に関わるというのは、本当のことらしい。
それならば、これ以上聞くつもりはなかった。


403 : そんな過去はウソみたい ◆OmtW54r7Tc :2021/01/06(水) 22:15:43 WEblufbk0
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

「…って、ちょっと待って。今、幕府って言った?」
「ああ、それがどうした?」
「どうしたって…幕府って、あの幕府?征夷大将軍とか、そういう…」
「ああ…言ってなかったか?わたしは、尾張幕府家鳴将軍家直轄預奉所軍所総監督。尾張幕府の将軍、家鳴公の下につくれっきとした幕臣だ」
「おわり、ばくふ?」

もし自分が普通の少女だったならば、今の話を嘘だと断じていただろう。
しかし、電流は流れない。
彼女が語った肩書に、ウソはない。

(えっと…おわりって『尾張』よね。それって確か、織田信長の国じゃなかったっけ?家鳴ってなに?幕府?将軍?)

「どうしたというのだ。言っておくが、ウソはついておらんぞ」
「ええ、分かってるわよ。分かってるからこそ混乱してるのよ」
「どういうことだ?」

アカネは語った。
自分が、おそらくとがめより何百年も未来の者であるだろうということを。
しかし、自分が知る歴史と、あまりにもかけ離れているということを。

(織田?徳川?いったいどういうことだ)

アカネの話を聞いたとがめもまた、情報の整理に手間取っていた。
アカネの語る歴史は、自分が知るそれとはまるで違う。
基本的な流れは似ているのだが、全然違うのだ。

(まさかこれは…アカネの知る歴史は)

思い出すのは父の言葉。
父、飛騨鷹比等は言っていた。
この歴史は本来あるべき姿とはまるで違うと。
もしや、アカネが今語った歴史が、父の言っていたそれなのではないか。

(…まあ、今はこんなことに思考を費やしている場合ではないか。ともかく、まずは生き残るために動かねばならぬ)

「というわけでアカネ、そなたの決め台詞だが…」
「それはもういい」

結局、アカネの「こんな話してる暇があったらさっさと動こう」という至極真っ当な提案に、とがめが渋々ながら折れ、話はこれで終わり。
二人はようやく歩き始めるのだった。


404 : そんな過去はウソみたい ◆OmtW54r7Tc :2021/01/06(水) 22:16:19 WEblufbk0
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

(そういえば…)

歩き始めてしばらくして、アカネはふと、先ほども思い浮かべた友人について考えていた。
といっても、考えていたのは彼女自身のことでなく、彼女の能力についてだが。
大橋ミツキには、とある能力がある。
それは、目が合った人の未来が見えるというものだ。
それは、すぐ先の未来であることもあれば、何年も先の未来だったりする。
おそらく彼女がこの場に呼ばれてたら、何人もの死の光景を見せられていたことだろう。
それはあまりにも、酷すぎる。

(未来を知るって、やっぱり怖いことよね。この殺し合いの場では、特に)

アカネは知らない。
自分たちが、未来を見ることのできる悪魔に、近づきつつあることを。


405 : そんな過去はウソみたい ◆OmtW54r7Tc :2021/01/06(水) 22:16:53 WEblufbk0
【F-5 北部/黎明】(北上中)

【佐藤アカネ@そんな未来はウソである】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]:基本行動方針:死にたくも殺したくもない
0:殺し合いなんて、笑えない冗談だわ。

※殺し合いが行われることや、優勝者の願いをひとつ叶えるといった主催者の言葉に対してウソの感知は行われておらず、それを信じています。しかし、その時に限って能力を制限されていた可能性もあります。
※とがめが自分の知るものと違う過去の人間だと認識しましたが、どういうことなのかは深く考えていません。

【とがめ@刀語】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3(武器の類は無し)
[思考・状況]:基本行動方針:自分だけは生き残る
0:佐藤アカネの命は自分の次に優先する。

※鑢七実に髪を切られる前からの参戦です。
※アカネが自分が知るものとは違う歴史の、未来の人間だと認識しました。
 アカネの語る未来が、飛騨鷹比等が言っていた『本来あるべき姿』の歴史なのではと考えています。


406 : ◆OmtW54r7Tc :2021/01/06(水) 22:17:26 WEblufbk0
投下終了です


407 : ◆vV5.jnbCYw :2021/01/07(木) 02:41:18 Q.9NRwkQ0
皆様投下乙です。

>暖かい時間
このロワ初の、ミルドラース以外のセリフなしの会。
しかしそれでいて、物語の暖かな雰囲気が伝わってきて、こういう書き方もあるのだと思いました。

>そんな過去はウソみたい
どちらも知らない作品のキャラですが、クロスオーバー特有の独特の雰囲気が面白かったです。
しかし、未来の悪魔やプッチ神父に会うことでどう変化が起こるのかも気になります。

では、マリオ、ヨッシー、カズマ、パワー予約しますね。


408 : ◆vV5.jnbCYw :2021/01/07(木) 16:59:23 Q.9NRwkQ0
投下します。


409 : この両手に魔剣を! ◆vV5.jnbCYw :2021/01/07(木) 17:00:09 Q.9NRwkQ0

「「じゃんけんぽん!!あいこでしょ!!あいこでしょ!!」」
西へ行こうと考えるマリオと、南へ行こうと考えるヨッシー。
どちらへ行くかで悩んだ末、じゃんけんで決めることにした。



コンペロワイヤル、第43話!!
前回(第12話)のあらすじ!!
最初のモンスターとの戦いを終えたマリオ、ヨッシー、カズマ。
危機を脱した彼らの前に立ちはだかる問題は、次へ何処に行くかという問題だった。
行先さえも決められない大ボケな彼らにとって、次なる試練が襲い掛かる……はず。


「誰が大ボケだーーーーっ!!」
「『……はず』って何ですかー!!」
「俺も大ボケに入れるなーーーっ!!」

じゃんけんを一時的に中断し、地の文であるような、ないような何かにツッコミをいれる三人。

「ところでさ、じゃんけんで行先決めるなら、俺も入れてくれね?俺が勝ったら、東へ行くことでよくね?」
そこへカズマが名のりを上げて、じゃんけんに参戦しようとする。
二人でさえ勝つのに難儀している中で、三人になれば一層あいこ続きになると思うが……。


「「「ぽん!!」」」
たった一戦で、カズマが勝利を収めた。

「俺、じゃんけんに負けたことないんだ。」
異世界転生する前の、カズマの数少ない取柄?である。


「すげー!!A〇Bのセンター獲得出来るじゃん!!」
「マリオさん!AK〇はもう古いですよ!去年に至っては紅白にも出ないし!!」
「ツッコむとこ、そこかよ!?」


一連のボケの末、三人は東へずんずんと進むことにした。

「ずんずんずんずんずんずんずん」
「マリオさんがずんずん言ってるだけじゃないですかーー!!」
(俺、どこの世界でもこんなのとばっかりなのか……?)


どういうわけか一人で東へ進みそうになってしまったカズマの憂鬱は続く。
その後、改めて付いてくることになったマリオとヨッシーも入れて、三人は草原を進んだ。
道中何度かゴブリンからの襲撃を受けるも、たいして盛り上がる状況にもならずにマリオ達に倒されたため、その過程は省略する(手抜き)。



ずっと続くかと思われた草原は、ふいに途切れ、マリオ達の目の前に立ちはだかるは深い森。
先頭を歩いていたはずのマリオが、足を止める。

「なあ、迂回しないか?」
これまでとは随分変わった低めのテンションで、方向転換を呼びかける。
「何かヤバい奴でもいるのか?」
その理由を問うカズマ。


「だってさ!!夜の森って怖いじゃん!!」
ずるーーーーっ!!

ヒーローとは思えないほどのヘタレ発言に、二人は予定調和のようにずっこける。
「それでもヒーローですかー!!」
「だってさ、この先にクッパもピーチ姫もいるかどうか分からないんだぞ!?」


410 : いやだーーーーーーー!!!! :2021/01/07(木) 17:00:39 Q.9NRwkQ0

「スレタイに書き込んでんじゃねーー!!」
「二次創作に適応したボケをするなんて、さすがマリオさんですー!!」
「何で感心してんだよ!!」

必死で行くことを拒否するマリオ。
そこへ急にズドンと木が倒れる音がしたかと思いきや、剣を持った何者かが立っていた。

「ようやく獲物に会えたようじゃな……。」
「お、おまえ誰だ!?」
「その剣は何ですか!?」
「ああ……こんなのばっかり………。」

森から出てきたのは、長身でスーツ姿のピンク髪の美少女だった。
しかし、頭にツノが生えているため、趣味にしろ本物にしろ只者ではないことが三人に伝わった。


「おうおう!ワシの名はパワー!!ひれふせ人間!!」
いきなり自分達の前に頭を垂れて蹲うことを強要してくるパワーに、何言ってんだこいつ、という雰囲気が漂う。

「マリオさんはそう簡単にひれふしたりしませんよ!」
「マリオ!?ウヌの隣にいる奴だったら、丁寧に土下座しているぞ?ウヌも見習わんか!!」

「ははーーーっ。」
「「ええ……」」

「おい!!何してんだよ!!」
パワーの唯一言いなりになるマリオに、何度目かカズマがツッコミを入れる。
「あいつ剣とか持ってんじゃん!」


「ソッチの赤いヒゲはともかく、ウヌら二人?一人と一匹?はワシに従うつもりはなさそうじゃな。
この剣が、丁度血を吸いたがっていたところじゃ!!先に言っておくが、ワシに責任はないからな!!」

パワーはカズマとヨッシーに向かって、アヌビス神の刃先を向ける。
「ウヌらがワシの言うことを聞かないからじゃ!!ワシは悪くない!!」


「いいところでドーン!!」
そこへ、地面で土下座を決め込んでいたマリオが、スタイリッシュ頭突きをパワーの腹にブチ当てた。
見事に決まった一撃で吹っ飛んでいく。


411 : この両手に魔剣を! ◆vV5.jnbCYw :2021/01/07(木) 17:01:30 Q.9NRwkQ0

敵意がないと油断していたパワーは、マリオのことを見ておらず。結果として不意打ちを食らってしまった。

「よし。その顔に免じて、今回は許してやるぜ。」
起き上がったマリオは、キメ顔で語る。

「スゴイです!さすがマリオさん!」
「確かに。ヒーローらしさが一ミリもないけどな!!」

「うぬぬぅ……。不意打ちとは卑怯な奴らじゃ!!まともに話し合うという意志さえないのか!!」
しかし、パワーとて人間ではない。
悪魔が人間に憑依した魔人なのである。


「そんな物騒なもの持っといて、よくそんなこと言えるな。」
そして、マリオもまた、ただのヒゲおっさんではない。
キノコ王国を何度も救ったヒーローとして、ほっといたら何をしでかすか分からないパワーを止めようとする。
カバンから先ほども使ったウォーハンマーを取り出して、パワーに向ける。


「マリオ!ヨッシー!俺に案がある。少しだけ時間を稼いでくれ!!」
カズマが案を出し、マリオとヨッシーが前線へ出ることになる。


「ワシにそんなデカイハンマーで暴力をふるうというのか!許しておけん!!」
「だからどの口が言ってんだよ〜!?」

アヌビス神と、ウォーハンマーがぶつかり合う。
そこへヨッシーがパワーの顔面目掛けて、タマゴを投げつける。

パワーは上体を反らし、タマゴを躱した。

「それくらいで何だというんじゃ!!」
パワーの第二撃がマリオを襲う。
それをまたしてもハンマーで受け止めようとするが……。


「うわっ!?」
マリオの服に、浅いが裂傷が走った。
確かにハンマーで剣を止めたはずなのに、マリオは違和感を覚える。

「え?ハンマーまでボケているのですか?」
「までってどういうことだよ!」


「おお!どうやらこの剣の力のようじゃな!!」
パワーが振り回すアヌビス神は、ただの鋭い剣ではない。
斬撃の途中に障害物があっても、すり抜けて切り付けることが出来るのだ。


しかし、ここでカズマという援軍が力を見せる。
「スティール!!」
カズマの手から青白い光が溢れる。
異世界に来たばかりのカズマが、盗賊から教わった相手の持ち物を奪う魔法だ。
これでパワーから剣を奪う策略だった。


「あれ……これは……。」
手元に出てきたのは、Mのマークがついた下着。


「おれのパンツを取るなー!!」
パワーの攻撃を躱していたため、スティールの軌道上に入ってしまったのだった。
そして、カズマのミスによる弊害は、マリオの股間がスースーするだけではなかった。


「うわっ!!何だこの臭い!!」
たまらずマリオのパンツを投げ捨てるカズマ。
「くっさー!!」
「こ、公害じゃ!!」


敵味方問わず、その悪臭に苦しむ。

「連載初期から履き続けてるからな!!」
30年間履き続けたパンツの威力は、風呂に入っていないパワーにさえもダメージを与えるほどだった。
スーパースターになると、パンツを履き替える時間も中々取れないのである。


412 : この両手に魔剣を! ◆vV5.jnbCYw :2021/01/07(木) 17:01:56 Q.9NRwkQ0

「ワシにこんな臭いを嗅がせるなど、ウヌらは死刑じゃ!」
臭いに苦しみながらもパワーは、自分の左手に剣で傷を入れる。

「これで二刀流じゃ!!」
血の魔人の力で固めて血の刃を作り、ポーズを決め込む。


「まだ終わってねえぜ!スティール!!」
しかし、カズマの二発目の魔法が、パワーに迫る。
今度は首尾よくパワーの剣を奪うことに成功した。
正直胸パッドが取れたと思った人は、手を上げなさい。


「な…なんじゃ!?」
いつの間にか二刀流ではなくなっていたパワーは、自分の状況に驚く。

「これで終わりだぜ!!」
マリオは地面をしっかりと踏みしめ、とどめの一撃となるジャンプの準備をする。


「きょ、今日はこれくらいにしといておこう!!」
しかし、武器の一つを奪われたパワーは、彼らに背を向け逃げ出した。
「持ちネタはそこまでかーい!!」


『お、おい!!ちょっと待て!!』
その時、カズマが聞いたのは、剣からの声だった。
『アンタ、殺し合いに乗ってるか!?』

「いや、乗ってねーし。そこまで非常識じゃねーし。つーかアンタ誰だよ。」
「カズマ、どうしたんだ!?」
パワーとの戦いを終えたマリオは、剣に声を掛けられる。

「あ、マリオ、お疲れ。この剣が俺に話しかけてきてさ。あとパンツ履いてよ」
何の価値もない男の下着などに興味を示さず、遠くでなおも異臭を放っているそれを指さす。

「うえっ、まずっ。普通の金属の味じゃないですか。」
ヨッシーは剣の腹を、自分の舌が傷つかないように器用に舐める。

『舐めるんじゃねーー!(二重の意味で)』

「でも、声が出てくる剣なんて、中々珍しくねーか?」
「確かに、売ったらそこそこ売れるかもな。」


『やめろーーー!!金儲けにしようとするんじゃなーーーい!!』
洗脳能力の喪失を、嘆く剣。


「さて、森には行きたくないし、あのツノスーツもどっかに逃げてしまったし。
カズマ、ちょっとその剣貸してくれ。」

カズマは不審に思いながらアヌビス神を渡す。

「おっ、確かにこの剣を持ったら何か聞こえてくるな。」
マリオは剣を垂直に立てて、手を離す。


『倒れた方向に進むゲームもするなーーー!!』

剣のスタンドの苦難は続く。


413 : この両手に魔剣を! ◆vV5.jnbCYw :2021/01/07(木) 17:02:16 Q.9NRwkQ0

【H-3 草原/黎明】

【マリオ@スーパーマリオくん(コロコロ版)】
[状態]:腹に傷(軽傷) 
[装備]:ウォーハンマー@ドラゴンクエスト3
[道具]:基本支給品、沢田ユキオのポスター、アヌビス神@ジョジョの奇妙な冒険、ランダム支給品×2
[思考・状況]基本行動方針:主催者を倒す。
1:ピーチ姫を最優先で探す。後クッパもついでに。
2:主催者を何としても倒す。そのために会場内を探索する。
3:ともに戦う仲間を探す。
[備考]
参戦時期は、オデッセイ編終了後(単行本55巻)。
クッパ姫を女装したクッパ@スーパーマリオくん だと思っています。
カズマと情報交換しました。
※アヌビス神を所持していますが、剣の洗脳能力が無くなっているため、影響はありません。

【ヨッシー@スーパーマリオくん(コロコロ版)】
[状態]:ちょっと火傷
[装備]:振動パック@スーパーマリオくん
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1
[思考・状況]基本行動方針:主催者を倒す。
1:おなかの痛みは引きました。
2:マリオさんに付いていきます。
3:異世界ですか……。
[備考]
基本支給品の食料を、すべて食べつくしました。
制限により、食欲および消化能力が低下してます。
カズマと情報交換しました。

【佐藤和真@この素晴らしい世界に祝福を!(アニメ版)】
[状態]:健康、精神的疲労(小) 魔力消費(小)
[装備]:妖精弓主の弓と矢@ゴブリンスレイヤー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考・状況]基本行動方針:とりあえず生き残る。仲間がいれば合流したい。
1:アクアとウィズが心配。
2:二人(マリオ、ヨッシー)と一緒に行動する。
3:この二人といて、大丈夫か俺?
4:中々面白いなこの剣
[備考]
参戦時期は第二期最終回後。
主催者は時間移動できると考えています。
マリオ達と情報交換しました。そのせいでクッパ姫を女装したクッパ@スーパーマリオくん だと思っています。

【H-4 草原 黎明】

【パワー@チェンソーマン】
[状態]:腹に打撲
[装備]:血の剣@チェンソーマン
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考・状況]基本行動方針:今日はこれくらいにしておくか!!
1:強そうな奴からは逃げる。
2:弱そうなのは殺す。
3:新しい武器を調達するのじゃ!!


414 : この両手に魔剣を! ◆vV5.jnbCYw :2021/01/07(木) 17:02:28 Q.9NRwkQ0
投下終了です。


415 : ◆bLcnJe0wGs :2021/01/07(木) 18:33:07 UtUsOZcI0
>>396
すみません。また時間帯に抜けがありました。時間帯は深夜となります。


416 : 名無しさん :2021/01/08(金) 04:03:08 8d.WQVxw0
投下乙です。
AKBが紅白でなかったってマジですか?
勉強になりました。


417 : うさぎ好きの人はうさぎのぬいぐるみを殴る...? ◆.EKyuDaHEo :2021/01/09(土) 22:24:03 IyqzhSn.0
放送と名簿の確認が記載していなかったので修正して再投下します

「よし、やっと言うこと聞くようになったな」
「これ以上抵抗しても意味ないと思ったからね...」

ヴィータに無理矢理連れて行かれ仕方なく言うことを聞くマサオ

「とりあえずどっか家でも何でもいいから入れるところに行ってみるかな...お!こことかいいんじゃねぇか?」
「あれ?ここってしんちゃんの家だ...」

マサオは見覚えがある家、野原家を見て疑問に思った

「お前の知り合いの家なのか?」
「うん、この家は僕の友達の家なんだ、でも何でこんなところにあるんだろう...」

本来こんなところにあるはずのない野原家が何故こんなところにあるのかはマサオには分からなかった...するとヴィータはドアを開けて中に入ろうとする

「ちょ、ちょっと!勝手に入っていいの?」
「こんな状況で何言ってんだよ、少しでも安全なところで様子を見たり作戦を立てたほうがいいだろ?それに何か武器もあるかもしれないしな」
「も、もう...」

ヴィータの対応にマサオは呆れながらもついていった、そしてリビングで一休みついでにデイパックを確認した

「そういえばデイパック渡されてたよね?ヴィータちゃんは何が入ってたの?ちなみに僕はまだ一つしか見てないけどこのひらりマントってやつが入ってたよ」
「あたしか?そういえばあたしもまだこのアイゼンしか見てねぇな...他は何があるんだ?」

ヴィータはデイパックを漁ると目を見開いてあるぬいぐるみを取り出した

「うさぎのぬいぐるみだ!役には立たねぇかもしれないけどあたしはうさぎが大好きだから嬉しいな♪」
「ヴィ、ヴィータちゃんうさぎ大好きなの...?」
「あぁ!好きだぜ!...何でそんなに怯えてるんだよ?」

マサオはヴィータがうさぎ好きだと聞いて怯えていた...その理由はマサオの友達の一人に桜田ネネという女の子がいる、彼女もまたヴィータと同じくうさぎ好きだ、しかし彼女がよくイライラするとうさぎのぬいぐるみを出し、ぬいぐるみのお腹の部分を殴ってストレスを解消している...マサオは何度もその光景を見ている、そしてネネとヴィータの性格が似ているところからヴィータもうさぎのぬいぐるみを殴るのではと怯えていたのだ...

「へ、変なこと聞くかもしれないけど...イライラした時にそのうさぎのぬいぐるみを殴ったり...する?」

マサオは怯えながらもヴィータに聞いた、するとヴィータは

「はぁ!?あたしはうさぎが大好きなんだぞ!?いくらイライラしてるからって殴るわけねぇだろ!」
「そ、そうだよね!変なこと聞いてごめんね!」

マサオは圧に押され当たり前だよねと言わんばかりに苦笑いした、しかし内心は

(うさぎ好きの人はみんなうさぎのぬいぐるみを殴ってるのかと思ってたけど...ネネちゃんが変わってるだけだったんだね...)

と思っていた、しかしマサオは念のためヴィータを怒らせないようにしようと思ったのであった、その時だった...


418 : うさぎ好きの人はうさぎのぬいぐるみを殴る...? ◆.EKyuDaHEo :2021/01/09(土) 22:24:24 IyqzhSn.0
『聞け! この地に集いし全てのものたちよ!』
「ひぃ〜!!な、何!?」
「静かにしろ!...放送だな、多分主催のやつの話だからとりあえず聞いてみようぜ」
「う、うん...」

マサオが怯えながら返事をし、二人は放送に耳を傾けた

『これより真のバトル・ロワイアル開幕を宣言する!』




...




『さて……最後に、私の名を告げておこうか。
 私は”ミルドラース”。魔界の王にして王の中の王である。
 願わくば最後に私の前に立つものが、勇者に相応しい者である事を望む』
「ま、魔界の王?何だか分からないけど怖いよ〜!!」

放送を聞き終わるとマサオはガタガタ震えていた、一方ヴィータは...

「...おもしれぇ...」
「へ?」
「魔界の王だか何だか知らねぇけどあたしの気持ちは変わらない!ぜってぇぶっ飛ばしてやるぜ!」

ヴィータは先程よりも主催を倒すという気持ちが強くなり燃えていた

「でもむやみに飛び出しても何も解決しないかもしれないしな、とりあえず名簿を見ようぜ、知り合いがいるかもしれないしな」
「うん、そうだね」

そして二人は名簿を見始めた

「う〜ん、あたしは誰も知り合いいねぇな...ミャサオは誰かいたか?」
「僕はマサオだよ...えっとしんちゃんとしんちゃんのパパと...ロボひろしっていうのはひょっとしてしんちゃんのパパがロボットになった時のかな...?しんちゃんの隣に書かれてるし...でもそしたらもう一人のしんちゃんのパパは何でこんなに離れてるんだろう...?」

マサオはロボひろしに疑問を持っていたが、かつてしんのすけからロボとーちゃんだと紹介され、かすかべ防衛隊のみんなと一緒に遊んだことがある、そして名簿を見るとしんのすけ、佐藤マサオ、ロボひろしの順番で書かれていたのであの時のロボひろしだと考える、しかしそうしたら自分達が書かれている場所からかなり離れた場所に野原ひろしの名簿が記載されている...マサオは考えすぎて混乱していた

「で、その野原しんのすけと野原ひろしとロボひろしってやつが知り合いなのか?」
「うん、多分...しんちゃんは間違いないと思うけどしんちゃんのパパは二人ともよく分からないけど...」
「う〜ん...まぁとりあえず知り合いがいるなら探してみるか?」
「そうだね」

ヴィータが提案を出し、マサオもそれに賛成し二人は野原家を出てとりあえず地図で言うG-7に向かうことにした

【G-8 野原家の家の前/黎明2:00】

【佐藤マサオ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:健康
[装備]:ひらりマント@ドラえもん
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考・状況]:基本行動方針:しんのすけ達を探す
1、何でしんちゃん家が...?
2、ネネちゃんが変わってるだけだったんだね...
3、しんちゃんのパパが二人...?
[備考]
ひらりマント以外にランダム支給品があと2つありますがまだ確認していません

【ヴィータ@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:健康、興奮(中)
[装備]:グラーフアイゼン@魔法少女リリカルなのはA's、うさぎのぬいぐるみ@クレヨンしんちゃん
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1
[思考・状況]:基本行動方針:主催をぶっとばす
1、マサオの知り合い(しんのすけ、ロボひろし、野原ひろし)をとりあえず探す
2、主催を倒すために力を貸してくれるやつを探す
[備考]
グラーフアイゼンとうさぎのぬいぐるみ以外にランダム支給品があと1つありますがまだ確認していません


419 : うさぎ好きの人はうさぎのぬいぐるみを殴る...? ◆.EKyuDaHEo :2021/01/09(土) 22:24:47 IyqzhSn.0
投下終了です、本当に急で申し訳ありません


420 : うさぎ好きの人はうさぎのぬいぐるみを殴る...? ◆.EKyuDaHEo :2021/01/09(土) 22:26:12 IyqzhSn.0
すみませんミスがありました、ヴィータの[状態]のところ「健康、興奮(中)」と書いてありますが、正しくは「健康」だけです、すみませんでした


421 : ◆bLcnJe0wGs :2021/01/21(木) 18:42:18 /B3F1zUI0
ザメドル、ラッドで予約します。


422 : ◆bLcnJe0wGs :2021/01/24(日) 16:30:47 vyeJDjRQ0
予約からザメドルを外した上で投下します。


423 : ◆bLcnJe0wGs :2021/01/24(日) 16:32:09 vyeJDjRQ0
予約からザメドルを外した上で投下します。


424 : えぬぴーしーとのそうぐう ◆bLcnJe0wGs :2021/01/24(日) 16:32:55 vyeJDjRQ0
──────────────────
B-4・森林地帯。
ラッドは、森林から抜け出すべく、その足を進めていた。

──しかし、彼がエリア内を進んでいると、別の方角から、何か異様な気配がするを感じ取った。
──
ふと、ラッドが気配を感じる方へ目を向けると、そこには巨大な影。
そして、上を見上げると赤い光が灯っていた。
──
(コイツは流石の俺でも… !!)

流石の彼でも、このような相手に挑みにかかるのは無謀と考え、さっさと逃げ出そうと走りだす。

──しかし、怪物は逃げる男を視界から逃さず、高熱の球をその眼から放つ。

咄嗟にラッドは熱球が当たらない様、横にジャンプして、着地して直ぐ走りだす。
─熱球は標的を外れて、地面に着弾した。

───
やはりこの場所は危険だ。
そう思いながら、彼は湿った土の上を走り続けるのであった。


425 : えぬぴーしーとのそうぐう ◆bLcnJe0wGs :2021/01/24(日) 16:34:13 vyeJDjRQ0
【B-4 森林】

【ラッド・ルッソ@BACCANO バッカーノ!】
[状態]:健康
[装備]:レミントンM31@現実(予備弾30)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考]
基本:自分は死なないと思っている人間を見つけて殺す! とにかく殺す! 殺しまくる!
1:あの怪物(打擲の剛激手)から早い事逃げる。
2:怪物のいない場所で、殺しがいのある人間を見つける
3:さっきのメイド(瞳)は次会ったら殺す
[備考]
※参戦時期はフライング・プッシーフット号に乗りこむ直前からとなります。


426 : えぬぴーしーとのそうぐう ◆bLcnJe0wGs :2021/01/24(日) 16:34:53 vyeJDjRQ0
【NPC紹介】

打擲の剛激手@世界樹の迷宮V 長き神話の果て

本来はアルカディアの迷宮の上部に生息する、巨大な人型の魔物。
自身に近づく者は同じ迷宮に棲む魔物だろうが、進入者だろうがその腕で離れた場所まで殴り飛ばす習性を持つ。
更には、視界をつぶされない様に眼も進化しており、そこから高熱の球を射出するとも言われている。
本来は出展作品のシステム上移動しないが、主催によって参加者を追跡する様になっている他、素の状態では強力過ぎる為、ある程度弱体化させられている。(度合いについては後続の書き手にお任せします。)

腕に付いた板は、放熱の機能を備えているらしく、加工などを施して短時間での連射が可能な銃火器のパーツにしたり、同一のダンジョンに出現する、馬を模した石造りの魔物の耳を一緒に使う事で、頑丈な鎧の材料にする事も可能。


427 : ◆bLcnJe0wGs :2021/01/24(日) 16:35:13 vyeJDjRQ0
投下終了です。


428 : ◆bLcnJe0wGs :2021/01/24(日) 16:39:51 vyeJDjRQ0
>>423
すみません。二回も投下宣言をした事になってしまいました。


429 : ◆bLcnJe0wGs :2021/01/24(日) 16:47:15 vyeJDjRQ0
>>425
すみません。また時間帯を書くのを忘れていました。深夜となります。


430 : ◆bLcnJe0wGs :2021/01/29(金) 17:25:52 9iAnddxw0
飴宮、いのちの輝き、ホル・ホース、ハサミ、ジェイソンで予約します。


431 : ◆bLcnJe0wGs :2021/01/30(土) 21:27:01 av3C9cuM0
投下します


432 : 盤上に放たれた怪物 ◆bLcnJe0wGs :2021/01/30(土) 21:27:47 av3C9cuM0
飴宮は、幾つもの目玉を持つ生物、いのちの輝きを連れて、とりあえずは近くの家に入る事にした。
即席の家屋ではあるが、一応ここで準備は出来るだろう。

「一緒に、荷物の確認をしよう?」

そして飴宮は、自分といのちの輝きの支給品を確認する事にした。

「縺ェ繧薙□繧阪≧縲?縺薙l(なんだろう これ)」

…のだが、いのちの輝きには、そもそも自身の引きずっている鞄という物がよく分かっていない様だ。
飴宮は、彼(?)の鞄を開けようと、しゃがみ込んで手を伸ばそうとするが、いのちの輝きは横になり、後ろにちょっとだけ転がって退いて(?)しまった。
どうやら、自分で開けてみたい様である。

いのちの輝きは、自身の体を使って、鞄を開けようとするが、ローラーが付いている為に、上手く開けられない。
次は、鞄の留め具を器用に引っ張ってみる。
…すると、鞄が開き、支給品が勢いよく飛び出してきた。
飴宮にも基本支給されている物品を始めとして、ランダム支給品とされる物も幾つか出てきた。
1つ目は、見覚えのあるお菓子。
少し前に、学校給食で食べたものと同じ物だった。
2つ目は、一枚の紙。
3つ目は、両刃の鋭い剣。
振り回すと大きな旋風を起こすと書かれている。

飴宮は、こちらの剣も有用だという事や、腕の無いいのちの輝きの事も考え、自分の鞄にしまう事にした。


433 : 盤上に放たれた怪物 ◆bLcnJe0wGs :2021/01/30(土) 21:29:50 av3C9cuM0
一方の飴宮の方は、先程のレーダーに、何かの液体が入った瓶。
此にも説明書きがされているが、今は使わなくても良いだろう。

そして3つ目は…、

何かヌルヌルした白い玉。

(な…何此‥?!)

それだけではない。玉から「ポーオッ」と間の抜けた音が鳴り、飴宮の掌の上で突然動き出す。 そして玉は大きくなり、中央部に『ぷ』という文字が現れる。

『ビキニなんだ!!』

何処からか、声が聞こえた。

「ひぃっ!!」

飴宮は、驚いた拍子に玉を落としてしまう。

「誰!? 誰かいるの!?」

飴宮は慌てて、レーダーで他の参加者が居ないか確かめてみるが、自身といのちの輝きの反応しかない。

「も…もしかしたら、NPC!?」

しかし、飴宮が慌てている間に、いのちの輝きがその白い玉に近寄り、触れてしまう。
すると…

玉が彼の身体に入り込み、融合してしまった。

「兎に角隠れるよ!」

慌てていた事で、彼の変化に気付かずにいる飴宮がいのちの輝きを片腕で抱えて、キッチンの収納スペースに咄嗟に隠れる。
他にも部屋はあったが、そこにNPCが潜んでいる可能性も考慮して隠れようとは思わなかった。
しかし、キッチンの収納スペースの方は、音も聞こえず、誰の気配を感じる事も無かった上、丁度自分たちの近くにあった為、彼女は一先ずそこに隠れる事にしたのだ。

(此処には誰もいない…。良かった…のかしら?)

しかし、収納スペース内にあった、会場内ギミックであるワープ装置に気付かずに触れてしまった。

「え、ちょっと!?」

そこから、2人(?)は、会場内の別の場所にワープしてしまった…。

◆◆◆◆◆◆◆◆


434 : 盤上に放たれた怪物 ◆bLcnJe0wGs :2021/01/30(土) 21:30:38 av3C9cuM0
場所は変わって、F-7。
そこには、『オモチャ作り』と名簿の確認を終えたハサミと、彼と共に行動しているホル・ホースがいた。

◆◆◆◆

「それにー、ぼくを殺した【マリオ】って奴とそいつの知り合いの名前もあったし、【勇者】とか【いのちの輝き】とかー、【老将エンキ】とか【シャドウ茜】とか名前からしてオモチャにするのも面白そうな奴らがこの世界には沢山居るみたいだよ? 普通のゲームじゃそんなのできないからさー、ねぇ、早く行こーよ?  それに、ついさっき作ったオモチャで早く遊びたいし?
今度しくじったら承知しないよ?
それに、丁度近くに川があるから、先に体を洗い行きたいし。」

ハサミは、ついさっき作った玩具で遊びたい気持ちを押さえられない様で、ホル・ホースに移動する事を要求する。

「あ、あぁ。」

そうして、彼らは移動を始める事にした。

◆◆◆

ハサミは、ホル・ホースと一緒に川で体に付いた血を洗い流し、再び移動を始める。

◆◆◆

暫く移動していると、一人の人影が彼らの視界に現れた。
その人物は、ハンマーらしき武器を担いでいた。
しかし、ホル・ホースは常人の『ソレ』とは異なる、彼の異様な点に気付く。

「お、おい、ハサミの旦那。あいつ、全身傷だらけの癖に平然と歩いてやがるぜ?」

ホル・ホースは、傷だらけの相手に一瞬驚きつつも、エンペラーを構える。

「おー、ホントだ。けどぼくには~、コイツがいるし?」


435 : 盤上に放たれた怪物 ◆bLcnJe0wGs :2021/01/30(土) 21:31:23 av3C9cuM0
そう。ハサミにはヒャクメンハリボテゴブリンが居る。

「さあさあ、行っておいで〜」

ハサミはそう言って、傷だらけの人物に『ソレ』をけしかける。

◆◆◆◆◆

ジェイソンは、殺し合いが始まり、自身に襲いかかるゴブリン達を殺し終えた時から、会場内を彷徨い歩いていたのだが、幸か不幸か誰にも出会う事は無かった。

◆◆◆◆◆

そして現在。
ジェイソンは、目の前に居る、幾つもの肉片や顔が貼り付けられた怪物に一瞬は怯みつつも、怪物を殴りにかかった。

◆◆◆◆◆

一方、ワープの仕掛けに掛かった飴宮といのちの輝きは、ホル・ホース達の居場所からそう遠くない場所に飛ばされていた。

「縺薙%縺ッ縲?縺ゥ縺難シ溘??縺?▲縺溘>縲?縺ェ縺ォ縺後??縺ゅ▲縺溘??(ここは どこ? いったい なにが あったの?)」

ワープ先となる大木の傍で、飴宮は巨大な鋏と、同じく丸みを帯びたの影を目撃する。

(まさか…これが『ハサミ』…!?そしてもっと奥に居るのは…!?)


436 : 盤上に放たれた怪物 ◆bLcnJe0wGs :2021/01/30(土) 21:32:06 av3C9cuM0
【E-7/黎明】


【飴宮初夏@こじらせ百鬼ドマイナー】
[状態]:健康 パニック
[装備]:簡易レーダー@バトル・ロワイアル、ゴブリンの剣@ゴブリンスレイヤー
[道具]:基本支給品、瓶入りの液体(付属の説明書は確認済み)@出展不明、飛竜の翼剣@世界樹の迷宮X
[思考・状況]基本行動方針:ひみつ
1:あの影(ハサミ、ヒャクメンハリボテゴブリン)は一体…!?
2:筆談してた人が気になる…どこに行ったの?
3:この子(いのちの輝き)は大丈夫なのかしら。
4:ターバンの人(アキネーター)は変質者だったのか、妖怪だったのか。
[備考]
※44話以降からの参戦です。
※ハサミを付喪神(または網切の妖怪)、ディアボロを悪魔、偉人を霊と認識してます。
※いのちの輝き、ゴブリンを妖怪と認識してます。
【いのちの輝き@大阪万博2025】
[状態]:健康 疲労(小) 好奇心(今は特に飴宮) 成長中
[装備]:ルカの右ぽ@-パッショーネ24時-
[道具]:基本支給品、和三盆のお菓子@こじらせ百鬼ドマイナー、何かの紙@出展不明
[思考・状況]基本行動方針:とりあえず飴宮についていく。
1:縺ェ縺ォ縺後??縺ゅ▲縺溘??
2:縺輔s縺九@繧?▲縺ヲ縺ェ繧薙□?
3:縺、縺?※陦後¥
[備考]
※参戦時期は産まれたて。
※特技は今のところ「目から眩しい光を出す」、「大して威力はないがビームを出す」です。
 今後の成長によって何か新しい技を覚えるかもしれません


437 : 盤上に放たれた怪物 ◆bLcnJe0wGs :2021/01/30(土) 21:33:20 av3C9cuM0
※横になって転がるを覚えました。

【ホル・ホース@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康 空条徐倫への不安(中) 
[装備]:手にとり望遠鏡(『引き寄せる』『引き寄せられる』ともに現在使用不可)@ドラえもん
[道具]:基本支給品×2(自分とハサミの分)、ランダム支給品0〜1(確認済み?)
[思考]基本行動方針:とりあえず生き延びるが、今はハサミの旦那に従う。
1:目の前の人物(ジェイソン)と戦う。
2:空条って、まさか…?
3:今はハサミの旦那に協力。ハサミの旦那がやられたら…どうすっか。
4:女に手を出さないのも、此処では考え直すべきか、
[備考]
※最低でもエンヤ婆戦後からの参戦です。
※なんとなく参加者は多くが異なる世界から来ているとは思ってますが、まだ確証はありません。
※空条徐倫を承太郎の関係者と言う可能性を考察してますが、
 上の異なる世界がより多いと考えた場合解消されるかも…本人に出会うまでは。


438 : 盤上に放たれた怪物 ◆bLcnJe0wGs :2021/01/30(土) 21:33:54 av3C9cuM0
【ハサミ@ペーパーマリオ オリガミキング】
[状態]:ダメージ(小)、ホル・ホースへの不満(小)、新しい獲物発見でハイ
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、折り紙セット(2/5 黒、黄、青使用済み)、睡眠薬入りアイスティー 
[思考]基本行動方針:この世界で新しいオモチャを作る。
1:ヒャクメンハリボテゴブリンを使ってみる
2: ヒャクメンハリボテゴブリンがやられたら、自分とホル・ホースで戦い、殺さず切り刻む。
3:ホル・ホースと協力し、会場を荒らし回る。
4:自分を殺した相手(マリオ)に復讐する。
5:ちょっと不満…まあ隙を見てホル・ホースも殺すけどね。
6:最終的には優勝。

[備考]
※本編死亡後からの参戦です。
※ハサミの支点になるネジの鉸めが、首輪代わりになっています。
※相手の『身体的な機能』を破壊せずに切断する能力に制限がかかっており、切断してから一定時間経つと効力が無くなります。

【ジェイソン・ボーヒーズ@13日の金曜日】
[状態]:全身の数ヵ所に切り傷や刺し傷
[装備]:アトムの審判@Fallout4
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]:基本行動方針:皆殺し
1:目に入る者を全て殺す
[備考]
参戦時期はフレディvsジェイソン終了後。
首輪の爆発か全身を消し飛ばされない限り何度でも復活します。
part9でやった他者の肉体乗っ取りは制限により使用できません。
※支給品と名簿は確認済み。


439 : 盤上に放たれた怪物 ◆bLcnJe0wGs :2021/01/30(土) 21:34:52 av3C9cuM0
ルカの右ぽ@-パッショーネ24時-
飴宮初夏に支給。
本来は、ジョジョの奇妙な冒険の登場人物、涙目のルカの目玉がチートバグによって変化した物であり、外見が変化したりする。

飛竜の翼剣@世界樹の迷宮X
いのちの輝きに支給。
表裏で性質の異なる翼を持つ魔物、『ワイバーン』の翼を加工して作った両刃の剣。
装備すると、広範囲に脚部を封じる旋風を起こす技、『大翼の旋風』が使用可能となる。

和三盆のお菓子@こじらせ百鬼ドマイナー
いのちの輝きに支給。
魍魎分校“死国校”にて、半年に一回だけ給食の献立の一つとして出てくる砂糖菓子。
作中では、初夏が嘗期(嘗女が何かを無性に舐めたくなる欲が一番高くなる時期。大抵は飴を舐めたりしてやり過ごす。)をやり過ごす為の手段として舐めていた。その際、ちょっとしたトラブル(?)で、他の生徒に1個あげる事になってしまったが。
因みに、一枚の紙に2個のお菓子が包装ているタイプ。


440 : ◆bLcnJe0wGs :2021/01/30(土) 21:35:16 av3C9cuM0
投下終了です。


441 : ◆7PJBZrstcc :2021/01/31(日) 22:50:55 b1HyDOfc0
佐々木哲平、予約します


442 : ◆bLcnJe0wGs :2021/02/02(火) 18:40:48 P1thrQBw0
ライナー、シャーリー、エーリュシオン、クロ(リーダー)、鈴奈で予約します。


443 : ◆7PJBZrstcc :2021/02/02(火) 19:10:14 VI/jN9qo0
投下します


444 : 惨酷無惨 ◆7PJBZrstcc :2021/02/02(火) 19:11:49 VI/jN9qo0
「なんだこれは……」

 I-6の市街地にあるとある家の一室で、佐々木哲平はピンクダークの少年を読みふける。
 最初は『殺し合いの最中に漫画なんて』と思ったが、この漫画をデイパックから出す直前にこれの作者である露伴から散々に言われたことが頭によぎる。
 結果、せめて一巻くらいはと思って本を開いたのだが、その結果。

「おもしれええええええええ!!」

 一巻を読み終えた彼は、今が殺し合いであることも、自分が他の参加者から隠れ潜んでいることも忘れ、ピンクダークの少年を絶賛していた。

「何だこの漫画……グロい絵が多くて正直受け入れにくい部分もあるのに、凄く引き込まれる!
 ストーリーも決して勧善懲悪とは言えないのに、主人公のキャラが絶妙すぎる! 探偵ものとしてある種の答えだ!
 『金田〇少年の事件簿』や『名探偵コ〇ン』みたいな王道じゃなくて、『魔人探偵脳噛ネ〇ロ』みたいな方向だけど、それがいい!
 邪道とか王道じゃなくて、自分の世界というものをこれ以上ないほどに押し出している!!」

 哲平が初めてホワイトナイトを読んだ時には深夜にも関わらず、家の外に出て絶叫していたので今の方がマシかもしれない。
 だがそれは残っていた自制心が働いたとかではなく

「……でも俺は、やっぱりホワイトナイトの方がいいな」

 佐々木哲平にとって、ピンクダークの少年という作品は、ホワイトナイト程心を震わせなかっただけだ。
 一応断っておくと、彼が露伴に抱く反抗心が原因でこう言っているわけでは無い。
 もしかしたら無意識レベルでは影響があるかもしれないが、少なくともそれだけではない。

 端的に言えば、ピンクダークの少年は万人向けではなかった。
 哲平は受け入れたが、人によっては嫌悪感すらもたらす程に特徴的な絵。
 そして露伴の人格から想像できるような、一癖も二癖もあるストーリー。
 もし誰かが『ピンクダークの少年そんなに好きじゃない』と言ったら、ファンは『まあ好み別れるよな』で済ませそうな作品だった。
 そこが作品の売りなので、万人向けにしようと下手にテコ入れすれば面白みが一気に減りそうなのが、この作品の個性というものだろう。

 だが佐々木哲平が書きたい漫画は『沢山の人に楽しんでもらえる漫画』だ。
 なんとも曖昧で適当で、自身すらどんなものか分からない代物が彼の理想。
 その理想に最も近いものが藍野伊月のホワイトナイトである。

 もし哲平がホワイトナイトより先にピンクダークの少年と出会っていれば、自らのメジャー路線への拘りを捨てられたかもしれない。
 沢山の人を楽しませるのではなく、己の書きたいもの、己の作風を見つけられる一助になった可能性もある。
 いつか彼の元担当編集である菊池が言っていたような、エログロを入れたトリッキーな路線へ舵を切ることを選べただろう。

 しかし今の哲平はホワイトナイトがあった。
 それに目を焼かれていたといってもいいだろう。
 だから彼はピンクダークの少年を絶賛しながらも変わらない。


445 : 惨酷無惨 ◆7PJBZrstcc :2021/02/02(火) 19:12:26 VI/jN9qo0

「そういえば、この漫画は一体いつのものなんだ?」

 そこで哲平はふとある疑問に目を向ける。
 それは岸辺露伴が何者かということ。
 職業病の極みのような露伴の言動と、ピンクダークの少年の二つが合わされば、彼は紛れもなく一流の漫画家であることは疑いようがない。
 だが哲平は彼の名前すら聞いたことが無かった。

 そこで哲平が考えたのは、露伴は自分より未来の漫画家という仮説だ。
 自身が未来からジャンプが送られるという経験をしている以上、未来人と出会うのもおかしくないのかもしれない。
 そう思って彼はピンクダークの少年の奥付にある日付を見る。
 しかしそこに書かれていたのは、彼の想像と大きく異なるものだった。

『1995年〇月×日 第1版発行』

「95年!? 俺が生まれた年じゃないか!?」

 哲平の予想とは異なり、ピンクダークの少年は過去の漫画だった。
 だがそれなら哲平がこの漫画を知らないのはおかしい。いくら生まれたころに始まったとはいえ、名作は未来に残るものだ。
 ドラゴ〇ボールしかりるろうに剣心しかり、哲平にとっては物心つく前に終わった作品でも彼は知っているのだから。
 しかし現実には知らない。これはどういうことか。
 この答えはすぐに出た。ヒントはまたも自分の経験だった。

 哲平が未来から送られ続けているジャンプは2030年の物で、そこには藍野伊月が作者のホワイトナイトが連載されている。
 そのホワイトナイトを彼は『代筆』で2020年のジャンプに連載しているが、変わることなく10年後のジャンプは藍野伊月のホワイトナイトが掲載され続けている。
 これの答えは、世界が分岐し、パラレルワールドが発生したのだ。
 ドラゴ〇ボールでトランクスが未来からやってきたことにより、荒廃した未来と本編の分岐が生まれたのと同じ理屈である。

 つまり、自分が生まれたあたりかもっと前に何らかの事象で分岐した別の時空の住人、それが岸辺露伴の正体だと哲平は結論付けた。

「そこまでいくと最早別の世界だな……」

 何気なく呟く哲平だが、同時に末恐ろしさも感じる。
 別の世界に干渉できる存在に、現状自分達の命が握られているのだから。
 それと同時に露伴への反抗心も萎んでいく。
 元々哲平が露伴に反抗心を抱いたのは、彼がどこの誰かも分からない漫画家にも関わらずホワイトナイトを批判されたと思ったからだ。

 実際露伴が批判したのは哲平の盗作であり、ホワイトナイトではないのだがそこは別の問題として一旦流す。

 だが実際のところは岸辺露伴はホワイトナイトを知りようがない存在で、自身より圧倒的に上の漫画家だと理解すれば反抗心は別のものに変化する。
 すなわち、哲平がどれだけ足掻いても見つけられない自身の作風を明確に見つけ、確かに描いている漫画家への羨望へと。

「……支給品を確認しよう」

 殺し合いの主催者への怯えと露伴への羨望を自覚した哲平は、今まで一つも見ていなかった支給品を確認することにした。
 もし当の露伴が未だこの場にいれば、目を背けてばかりだと鼻で笑われそうだが、だからといってどうしろというのか。

 そんな思考に沈みつつ、哲平はデイパックから支給品を取り出す。
 まず出てきたものは、バッジだった。
 なんだこれ、と思いながら哲平は付属していた説明書を読む。

『タマーニラッキー。付けると攻撃がタマーニ外れる』

 ロクな説明じゃなかった。
 それでもお守り代わり位にはなるかと思い、素直につける哲平。
 そして最後の支給品に手を付ける。

 それは、一丁のアサルトライフルだった。
 材質がプラスチックなせいか、形状のせいかどこかおもちゃの様にも見える銃だが、これはおもちゃではない。
 F2000R、通称おもちゃの兵隊(トイ・ソルジャー)と呼ばれる、哲平とは別の世界にある学園都市で、とある女子中学生のクローンが使った銃である。
 特に訓練されたわけでもない中学生でも使え、敵に当てられる代物なので、成人男性である哲平にも当然使えるだろう。

「銃……」

 だが哲平は、自らに支給されたものに怯えていた。
 現代日本の住人である彼からすれば最も分かりやすい暴力、露伴が語ったスタンドとは違う恐怖。
 彼は、自らが人の命を奪う可能性が存在する事実が恐ろしかった。
 暴力や殺しを生業にしているか、ある種覚悟ができているいるならまだしも、多少の起伏はあれど凡そ平穏に生きてきた人間なら、恐れることは不思議ではない。


446 : 惨酷無惨 ◆7PJBZrstcc :2021/02/02(火) 19:13:02 VI/jN9qo0

 ではここで唐突だが、佐々木哲平という人間を掘り下げたいと思う。
 結論から言うなら、彼は『弱い人間』だ。
 内に閉じこもりがちで自身に否定的な意見を聞きたがらず、傷つくことを恐れる男だ。
 そうでなければホワイトナイトの一話を読切として発表し、それを読んだ藍野伊月が盗作だと訴えにやって来た時、彼は素直に謝罪できただろう。
 その結果ホワイトナイトの連載を止められたかと言われると、タイムトラベルというファンタジーが絡んでいる以上一筋縄ではいかないかもしれないが、それはまた別の問題だ。

 だが哲平は『邪悪』ではない。
 正直、彼がやってきたことを知れば岸辺露伴のように批判的な感情を抱くのも無理はないが、それでも露伴がかつて追い掛けた殺人鬼に比べればまともだろう。

 そもそも哲平が最初に盗作をしてしまった場面だけ切り取れば、情状酌量の余地はある。
 彼はあの日、徹夜明けの中いきなり未来からのジャンプが送られ、ホワイトナイトの一話を読み終えた後冷蔵庫の上に置いた。
 そして一度冷蔵庫から離れ、もう一度読み直そうとしたところで置いたはずの場所にないから、彼は未来のジャンプを夢だと思ったのだ。
 実際は下に落ちていただけなのだが、徹夜で眠気のある中そんな非現実なものをわざわざ探そうとは普通しない。
 これを鑑みれば、盗作という結果を生み出したのは悪意ではなく失敗だと言えるだろう。

 これを読んだ露伴は『”夢だと思った”だと? 馬鹿馬鹿しい』と一蹴した。
 だがこれはスタンドという異能を知る露伴だから言えることではないだろうか。
 否、この男ならスタンドなど知らなくても同じことを言いかねないが、タイムトラベルと夢、どちらが現実的か問われれば大半の人間は夢だと答える。
 もっとも、その後に藍野伊月に謝罪できなかったことと、今もごまかし続けているのは彼自身の弱さゆえに安きに流れた結果だ。弁解のしようはない。

 ミスを隠すために嘘を吐き、それが綻びそうになったら更に嘘で覆い固め、そして手に負えなくなる。
 そんな、世界のニュースを紐解けばいくらでも類似例がありそうな人間。それが佐々木哲平という男の一側面。

 一方哲平は、一度こうだと決めたらそこに向かって突き進む傾向もある。
 これは彼の知らない、彼と藍野伊月が殺し合いに巻き込まれなかった未来の話だが、藍野伊月は一度死亡する。
 その際、彼は彼女の死を覆す為に、彼の元に未来のジャンプを送り続けていた存在に対し、時間の止まった世界で気が済むまで漫画を描かせてもらうことを頼んだ。
 そして彼はその世界で最低12472日以上、漫画の為に費やした。
 単純計算で三十四年以上、しかも彼自身が時間を計っていないため想像でしかないが、おそらく倍以上の時間、彼は漫画を描いていた。
 自分しかいない空間、それも睡眠や食事を必要としない世界だとしても、これは驚異ではなかろうか。
 この妙な強固さが、彼を凡人と言い切らせない。

 普遍的な弱さと妙な頑固さが歪に交じり合う男、それが佐々木哲平。
 そんな男に分かりやすい力が与えられればどうなるだろうか。
 答えはこうだ。

「藍野さんを守らなきゃ……」

 哲平はF2000Rを手に取り、家の外につながるドアへと向かっていく。

 元々、露伴が哲平を置いて行ったのは彼を守り切る自信がなかったことと、守りたくなかったからだ。
 そして哲平自身も無力なことを自覚しているから、ただここに引きこもっていた。

 しかしここに力が下りてきた。
 無論、これだけで何もかもが解決するとは彼も流石に思ってはいない。
 しかし少なくとも無手よりはマシだ。


447 : 惨酷無惨 ◆7PJBZrstcc :2021/02/02(火) 19:13:28 VI/jN9qo0

「藍野さんは死んじゃいけないんだ……」

 そして少しでも力があるのなら、哲平は藍野伊月を守りたい。
 未来ある漫画家を、一人の少女を死なせたくない。
 だから彼は外に出る。
 ドアノブを回し扉を開け、周りを慎重に見回しながら、一歩ずつ青年は進み始めた。

 だが佐々木哲平は知らない。可能性を考えていもいない。
 藍野伊月は既に死んでいる。殺されている。
 ホワイトナイトを託し、彼女はこの世を去っている。

 守ろうとした少女の死を佐々木哲平が知るまであと二時間。
 もっとも、それまで生きていられたらの話だが。


【I-6 リテイル・ロー市街地/早朝】

【佐々木哲平@タイムパラドクスゴーストライター】
[状態]:健康、岸辺露伴への羨望(大)
[装備]:タマーニラッキー@ペーパーマリオRPG、F2000R@とあるシリーズ
[道具]:基本支給品、ピンクダークの少年@ジョジョの奇妙な冒険
[思考・状況]基本行動方針:死にたくはないが、人殺しもしたくはない。
1:藍野さんを守らないと……
2:露伴にはもう会いたくない
3:ピンクダークの少年は、凄かった
[備考]
※参戦時期は少なくとも四話以降です。
※露伴からスタンド、及び能力を説明されました。
※露伴が別の世界の人間だと気付きました。
※哲平は一巻しか読んでいませんが、デイパックの中にピンクダークの少年がまだあるかは次の書き手氏にお任せします。


【タマーニラッキー@ペーパーマリオRPG】
佐々木哲平に支給。
付けると攻撃がタマーニ外れる。
もう少し詳しく説明するなら、装備すると自身に降りかかる攻撃が5%の確率で外れるようになる。
効果範囲は装備者当人のみで、付近の参加者には一切影響しない。

【F2000R@とあるシリーズ】
佐々木哲平に支給。
通称おもちゃの兵隊(トイソルジャー)。
材質は積層プラスチック、形状にも戦闘機に見られるような機能美が備わっているため、まるでオモチャの鉄砲にも見える。
赤外線により標的を補足し、電子制御で『最も効率良く弾丸を当てるように』リアルタイムで弾道を調整する機能を持つ。
銃身を覆う衝撃吸収用の特殊ゴムと炭酸ガスにより、射撃の反動は極限まで軽減されており、その軽反動は『卵の殻すら割らない』。弾丸は5.6ミリ。


448 : ◆7PJBZrstcc :2021/02/02(火) 19:13:54 VI/jN9qo0
投下終了です


449 : ◆bLcnJe0wGs :2021/02/07(日) 17:27:09 L81ipFG20
投下します。


450 : 人として生まれ、人として生きて… ◆bLcnJe0wGs :2021/02/07(日) 17:28:05 L81ipFG20
G-4にある高台。
そこには、シャーリーことシャーロット・E・イェーガーとライナーがいた。

「…それで、この銃は元々わたしの物なんだからね?」

何とかライナーを説得して銃を返してもらったシャーリーは、もう自殺しない様に、引き続き説得を続けていた。

◆◆◆

説得を終えたシャーリーは、ライナーと彼が殆ど把握していなかったという殺し合いのルールの説明や、支給品の確認を行う事にした。

◆◆◆

シャーリーがルールの説明と支給品の確認を終えて少し経つと、西南側の遠い場所から爆発音がしたのを聞き取った。

(何だ‥!?今の音は?それも西南の方角からだ!!)

ウィッチと使い魔の能力で爆発音を聞き取った彼女は、どうしても放っておけないライナーも連れて、音の発生場所に向かう事にした。

──────────────────

音の発生場所に向かっていると、地図上ではとティルデット・タワーがある筈の場所から煙が上がっているのや、窓の割れたビルや倒れた電柱、更には巨大なクレーターまであるのを発見する。

(これは一体…!?)

シャーリー達は、一先ず上空から様子を見る事にする。

◆◆◆

暫く様子を見ていると、鮮やかな羽に、天使の輪らしきもの、後ろに束ねた長い金髪に、白く輝く鎧を纏った大柄な人物の姿があった。

(あれは…天使!?それに周囲の惨状も一体…。)

『天使』とも呼べる様な姿をした人物に驚いたシャーリー達は、一先ず天使の視界に入らない様な高台に退避


451 : 人として生まれ、人として生きて… ◆bLcnJe0wGs :2021/02/07(日) 17:28:52 L81ipFG20
して、更に様子を見る…のでは無く、『聞く』事にする。

(ん〜?何々??)

◆◆◆

すると、煙の上がっていた場所よりも南の方から2人の話し声が聞こえてきた。

『先ほどの爆発、それもクロさんの力によるものでしょうか?』
『残念ながら違うよ〜。…でも、あんなことができる存在ならきっと殺し合いを進めていくうえで邪魔になるだろうし、早めにつぶしておかないとね〜』

(クロさん‥力‥あんなことが出来る存在…!!)

まだ会話は続く。

『……確かにこの戦いを勝ち抜くためにはそういった手段も必要かもしれませんけど、このような早い段階でつぶして回るのは早計ではないでしょうか?』
『クロさんの力が有限である以上は早い段階で使い続けると必要な時に使えなくなる危険がありますし、私の能力で見れる未来についても限界があります』
『……ですからまずは『仲間に引き入れて私たちを守ってもらう』か、『あえて放置することで他の参加者たちとつぶし合わせる』というのも必要になると思いますが……どうでしょうか…?』

(クロの力は有限、と…。)

『……確かに、ここから脱出したときに『豹馬君』のために力を使えなくなったら困るし、その方がいいかもしれないね』

(脱出‥ヒョウマ君…?)

二人の会話を聞いたシャーリーは、声の主である2人が殺し合いに乗っている事を直ぐに判断し、ライナーに彼女たちの事を伝えた。

◆◆◆

「そんな‥あの天使みたいな奴だけでなく二人の女まで…」


452 : 人として生まれ、人として生きて… ◆bLcnJe0wGs :2021/02/07(日) 17:30:02 L81ipFG20
ライナーも彼女の話から、二人を警戒する事にする。

◆◆◆

それから少し経つと、初回放送が始まった。

2人が名簿に目を通そうとしたところで、男性のものと思わしき声を、シャーリーが聞き取った。

「ゴメンな、あんたは名簿を見といてくれ。」

シャーリーはライナーに対してそう言うと、その声を聞く事にした。

『"ミルドラース"……また新たな『魔皇』か……!やはり、あの泥人形どもに期待するだけ無駄だったか……!』

(『魔皇』?『泥人形』?)

シャーリーは、先の2人とは異なる声の主の発していた二つのワードに疑問を抱きながらも、その声を聞き続ける。

『やはりこの世界は浄化せねばならぬ……!未来永劫、命など宿らぬ砂漠にせねばならぬ……!!』

(ま…まずいぞこれは!!)

その言葉を聞いたシャーリーは、ライナーにも彼の存在を伝える事にした。

──────────────────

それから暫く経ち、ティルデット・タワーがあった場所。

そこでは、エーリュシオンとクロ、鈴奈が戦っていた。

───

「援護するよ~」

クロは、支給品である入れ物から、霧を吹き出させる。

霧は、鈴奈達をあっと言う間に包み込み、その姿を霞ませる。

「ふん、姑息な真似を」

エーリュシオンはその霧を振り払おうとするが、全くと言っていいほど払う事は出来なかった。

───しかし彼にとっては予想外の出来事が起こった。

『D-5内に、参加者が5名侵入して15分が経過しました。これより15分


453 : 人として生まれ、人として生きて… ◆bLcnJe0wGs :2021/02/07(日) 17:30:38 L81ipFG20
後に、エリア内に滞在している参加者全員に取り付けられている起爆装置を爆破します。 繰り返します…』

突如として流れ出したアナウンス。15分以内に、この場から退去しなければならなくなった。

「卑怯だぞ!こんな状況の中で…」

エーリュシオンは、突然流れ出したアナウンスに癇癪を撒き散らしながらも、霧の中を探り出す。

─しかし、彼女たちの姿は見えなくなっていた。

「たかが泥人形の分際で逃げ出すなどどこまでも卑怯!再開次第、跡形も無く消し去ってやる…」

エーリュシオンは、逃げ出した彼女たちに苛立ちを抱きながらも、D-5を後にする事にしたのであった…。

◆◆◆

「エ、エレンまで…」

名簿を確認したライナーは、知り合いの名前に反応していた。

「えぇっと…知り合いか?」

シャーリーは彼の知り合いの名前を聞いてそう尋ねた。

──そして、シャーリーはその知り合いについてライナーに聞く事にしたのであった…。

◆◆◆

『D-5内に、参加者が5名侵入して15分が経過しました…』

少し経つと、突如としてアナウンスが流れ始めた。

「な…聞いてないぞ!そんなルールがあるなんて…!」

そうして、彼女たちもこの場から退去せざるを得なくなったのであった…。


454 : 人として生まれ、人として生きて… ◆bLcnJe0wGs :2021/02/07(日) 17:31:26 L81ipFG20
──────────────────

シャーリー達よりも早くエリア内から脱け出す事の出来たクロ達は、次に殺す参加者を探して道の中を進んでいた。

「…この支給品が入っていてよかったな〜
結構勿体ない使い方しちゃったけど。」

そう。クロは、霧を噴出させる支給品を使用してから鈴奈と共に例のエリアから抜け出して、会話をしていた。

「…ですが、先程の天使を倒す事は出来なかったのですが、それでも良かったのでしょうか?」

鈴奈は、あそこで逃げ出した事に後目を引きながらも、クロにそう尋ねる。

「まぁ、いいんじゃない?何処かでのたれ死んじゃうかも知れないし。そうで無くともまた会ったら、その時殺せばいいんだし…。」

…しかし、そう話すクロは小刻みに震えていた…。

◆◆◆

実は、鈴奈達がエーリュシオンと戦う前、鈴奈は自分に支給されていた腕輪を予めはめていた。
─しかし、彼女たちの気づかないところで鈴奈達や、エーリュシオン以外の参加者達が来て、時間が経過した結果、先程の様な逃走に至る形になったのであったが…。

しかし、考え方を変えれば、例の2人も近くに居る筈である。
やはり、彼女たちの険しい様である…。


455 : 人として生まれ、人として生きて… ◆bLcnJe0wGs :2021/02/07(日) 17:32:23 L81ipFG20
【D-5 高台 (退避中)】

【ライナー・ブラウン@進撃の巨人】
[状態]:健康、自殺衝動?
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:俺はどうすれば…
1:今はD-5から脱出する。
2:シャーリーの言っていた3人(クロ、鈴奈、エーリュシオン)を止める。
3:エレンも心配
[備考]
参戦時期は97話にて回想が終了した後、口に銃を突っ込み自殺しようとしている時から。
参戦時期の都合上彼の余命は残り2年程になっています。
巨人化能力に制限が掛かっているかどうかは後続の書き手にお任せします。

【シャーロット・E・イェーガー@ワールドウィッチーズシリーズ】
[状態]:健康、肉体的疲労(中)、
[装備]:ノースリベリオン P-51D“ムスタング”@ストライクウィッチーズ、M1918BAR自動小銃@ストライクウィッチーズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには絶対乗らない
1:今はD-5から脱出する。
2:ライナーが心配
3:あの3人(クロ、鈴奈、エーリュシオン)は何としてでも止めないと大変な事になるぞ…!!
4:エレンにも会いたいところ
5:もし宮藤やルッキーニたちが巻き込まれてたら、なんて考えたくはないけど…それなら早く合流しないとな
[備考]
参戦時期は劇場版より後。
劇場版時点での作中舞台が1945年なので(現代基準で)それ以降に誕生・及び発展した物や技術についての知識はありません。


456 : 人として生まれ、人として生きて… ◆bLcnJe0wGs :2021/02/07(日) 17:33:01 L81ipFG20
【D-5(退避中)/深夜】

【聖帝エーリュシオン@モンスター烈伝オレカバトル】
[状態]:度重なる戦闘により蓄積したダメージ(中)、先程の狂信者たち(神楽鈴奈、クロ)に対する強い嫌悪感、ミルドラースに対する激しい怒り
[装備]:原罪(メロダック)@Fate/stay night
[道具]:なし
[思考・状況]基本行動方針:優勝して"ミルドラース"を打ち滅ぼす。その後、穢れた世界を浄化すべく地上にいる全ての命を消し去り、不毛の砂漠にする。
1:救われない世界は消し去るのが最善、それが天命だ。
2:一刻も早く優勝し、"ミルドラース"およびそれに組する者たちすべてを未来永劫消滅させる。
3:キュアダイヤモンド神楽鈴奈、クロは、再会しだい跡形もなく消し去る。
4:奴ら(神楽鈴奈、クロ)は、たかが泥人形ごときに何を期待しているのだ?所詮そいつらも、貴様らと同じ『泥人形』に過ぎぬだろうに。
5:D-5にいたもう2人の参加者(ライナー、シャーロット)も見つけ次第、跡形も無く消し去る。
[備考]
ウィズの爆裂魔法により、デイバッグ及びその中の支給品が消滅しています。
本来『七つの大罪』にまつわる様々な特攻効果を持っているが、制限により以下の2つの効果のみ発動しています。


457 : 人として生まれ、人として生きて… ◆bLcnJe0wGs :2021/02/07(日) 17:33:43 L81ipFG20
【神楽鈴奈@Caligula Overdose-カリギュラ オーバードーズ-】
[状態]:健康、聖帝エーリュシオンに対する怒り(極大)
[装備]:一括首輪爆破装置@ロワオリジナル
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~2
[思考・状況]基本行動方針:先輩と一緒にいる、ずっと
1:先輩のもとに帰る
2:これは夢、早く覚めないと
3:先輩は、私とずっと一緒に居てくれると言ってました……なのに、なんであの天使は私と先輩の仲を否定するんですか…?
※参戦時期は楽士ルート最終決戦で主人公に裏切られ敗北した直後です。
※キャラエピソードは完遂済みです
※この殺し合いと元世界での主人公の裏切りを夢だと思い込んでいます。

【クロ(リーダー)@最悪なる災厄人間に捧ぐ】
[状態]:健康、聖帝エーリュシオンに対する怒り(極大)
[装備]:ー
[道具]:基本支給品、耐氷ミスト(残り1個)@世界樹の迷宮シリーズ、ランダム支給品1~2
[思考・状況]基本行動方針:『豹馬君』と一緒にいる、ずっと
1:『豹馬君』のもとに帰る
2:『豹馬君』のそばにいる
3:『豹馬君』と生きる
4:『豹馬君』は、泥人形なんかじゃない……!『豹馬君』を侮辱するなら、跡形もなく消し去ってやる!!
※参戦時期は少なくても「災厄に捧ぐ」にて後追い自殺した以降です。
※透明人間であるため普通の生物から彼女の声や姿を認識することは出来ません。
ただしこのロワでは「見えないものが見える」キャラであれば彼女を認識することが可能です。


458 : 人として生まれ、人として生きて… ◆bLcnJe0wGs :2021/02/07(日) 17:34:31 L81ipFG20
※このロワでは世界改変の力で直接人を攻撃することが出来ません、結果的に攻撃を受ける形であれば可能です。(倒した電柱がたまたま当たった等)


459 : 人として生まれ、人として生きて… ◆bLcnJe0wGs :2021/02/07(日) 17:35:05 L81ipFG20
【支給品紹介】

一括首輪爆破装置@ロワオリジナル
神楽鈴奈に支給。
装備者の居るエリア内に参加者5名が入って15分経つと、該当エリア内に首輪爆破(或いはそれと同じ役割を果たす爆破装置)を予告するアナウンスが流れ始める。
アナウンスから15分経過すると、エリア内の参加者全員の爆破装置が爆破されれ、機能は解除される。
この機能は、エリア内の参加者が4人以外になっても解除されない。
また、一度発動すると次の放送まで使用不可。

耐氷ミスト@世界樹の迷宮シリーズ
クロ(リーダー)に支給。
使用すると、一定時間(原作では5ターン)氷系の攻撃を和らげる効果を持った霧を発生させる道具。


460 : ◆bLcnJe0wGs :2021/02/07(日) 17:38:52 L81ipFG20
>>457
すみません。
エリアと時刻の表記に抜けがありました。
【C-5とC-6の境界線の道/深夜】となります。またコピペミスでエーリュシオンの備考欄に抜けがありました。
【色欲の罰】:女性と戦う際、攻撃力が2.75倍に上昇する。
【傲慢の罰】:彼に最もダメージを与えたものに対して、攻撃力が約2.5倍近く上昇する(現在はウィズが対象となっている)。
クロ(リーダー)の姿を『黒い影』という形で視認しています。
ミルドラースを、「魔王を従えし真の魔王」である『魔皇』だと認識しています。
が抜けてしまいました。
それでは、投下終了となります。


461 : ◆bLcnJe0wGs :2021/02/07(日) 19:26:08 L81ipFG20
>>459
すみません。 誤字を発見しましたので、修正させて頂きます。
一括首輪爆破装置@ロワオリジナル
神楽鈴奈に支給。
装備者の居るエリア内に参加者5名が入って15分経つと、該当エリア内に首輪爆破(或いはそれと同じ役割を果たす爆破装置)を予告するアナウンスが流れ始める。
アナウンスから15分経過すると、エリア内の参加者全員の爆破装置が爆破され、機能は解除される。
この機能は、エリア内の参加者が4人以下になっても解除されない。
また、一度発動すると次の放送まで使用不可。

耐氷ミスト@世界樹の迷宮シリーズ
クロ(リーダー)に支給。
使用すると、一定時間(原作では5ターン)氷系の攻撃を和らげる効果を持った霧を発生させる道具。


462 : ◆bLcnJe0wGs :2021/02/07(日) 20:53:33 L81ipFG20
>>454
すみません
脱字を発見しましたので修正させて頂きます。
誤:やはり、彼女たちの険しい様である…。
正:やはり、彼女たちの道は険しい様である…。


463 : ◆bLcnJe0wGs :2021/02/07(日) 20:58:15 L81ipFG20
>>459
失礼します。
『参加者5名が入って』ではなく、『参加者5名が滞在して』となります。


464 : ◆bLcnJe0wGs :2021/02/09(火) 19:07:06 NmoW1TjQ0
すみません。
事後報告となりますが、本企画のwikiにて、筆者の投下したSSの細かい誤字や、文章の一部を修正しておきました。


465 : ◆.EKyuDaHEo :2021/02/21(日) 20:35:34 LJXM3qEw0
佐藤マサオ、ヴィータ、足柄、オグリキャップ、藤丸立香予約します


466 : ◆.EKyuDaHEo :2021/02/23(火) 20:00:47 yrCPN7cM0
投下します


467 : ◆.EKyuDaHEo :2021/02/23(火) 20:01:21 yrCPN7cM0
投下します


468 : それは突然の出会いなの! ◆.EKyuDaHEo :2021/02/23(火) 20:01:34 yrCPN7cM0
「全く...化け物はうじゃうじゃいるのに全然参加者は見当たらねぇな...」
「そ、そうだね...」


あれからマサオとヴィータは野原家から出てG-7に進みながら参加者を探すということをしていたが参加者は一向に見つからずいるのはゴブリンばかりだった


「ていうかお前も怯えてばかりいないで戦えよ!」
「だ、だって怖いんだもん...」
「だらしねぇな!男ならもっとしっかりしろ!」
「ひぃ〜〜〜〜〜!!」


道中で出会ったゴブリンは全部ヴィータが片付け、マサオはずっと怯えてばかりだ


「はぁ〜...にしてもキリがねぇな...とりあえず少し休むか」
「そ、そうだね、そうしよう」


ヴォルケンリッターの一人であるヴィータもさすがに疲れが出てきはじめ休むことを提案し、マサオもそれに賛成した...その時


「どいて〜〜!!」
「「!?」」


突然呼び掛ける声が聞こえヴィータはマサオを抱えて突っ込んでくる乗り物から避けた、乗り物には女性が3人乗っていた


469 : それは突然の出会いなの! ◆.EKyuDaHEo :2021/02/23(火) 20:03:35 yrCPN7cM0
◆◆◆


あれからしばらくバギーを運転し続けていた立香は先程の足柄の意見について考えていた


『あのガンマンは最悪説得して引き入れない?』
(説得する...か...)


確かにホル・ホースに関しては説得できるかもしれない...しかし問題はハサミと...オグリキャップだ
ハサミはホル・ホースと共に行動しているため説得しようとしても邪魔しにくるはずだ...
しかし正直一番の問題はオグリキャップだ...オグリキャップはさっきから黙ったままだが無理もない、兼定は恐らくやられてしまいショックを受ける中、ハサミと手を組んでるホル・ホースを説得しようと言うのだ...いくら女性に優しいホル・ホースとはいえハサミと手を組んでる以上仲間にするというのは中々受け入れないだろう...


(一体どの道を歩むのが正解なんだろう...説得して引き入れるか...諦めるか...)


ホル・ホースを仲間につけると頼りになるのは確かだ、しかしその分ハサミをどうするかというリスクもありオグリキャップも賛成してないので難しい...そう考えてる時だった


「おい!前!」
「へ?...!?」


足柄に大声で呼び掛けられ前を見ると5歳ぐらいのおにぎり頭の男の子と男の子より少し年上でハンマーのような物を持っている女の子が目の前にいた


「どいて〜〜!!」
「「!?」」


藤丸は即座に呼びかけると二人の子供もこちらに気がつき女の子が男の子を抱えて避けた
藤丸もブレーキを思い切り踏み、何とか止まることができた


「だからあれほど前を見ろと言ったのに...」
「す、すみません...」


足柄は呆れた声で言い立香は申し訳なさそうにしていた
そしてすぐさま降りて二人の子供に近寄り謝る


「ごめんね!大丈夫だった?」
「大丈夫じゃねぇよ!いきなり突っ込んできやがって!気をつけろ!」
「まぁまぁ...ヴィータちゃん落ち着いて...」


女の子の方はまるで気が強い男の子のような口調で話し、逆に男の子の方は女の子に宥めるように話しかけていた、二人の性格がまるっきり反対で立香は少し戸惑った


「あはは...ごめんね、ところで二人とも名前は?」
「あたしはヴィータ、こっちはミャサオだ」
「ミャサオじゃないってば...佐藤マサオ5歳です...」
「私は藤丸立香、それであっちにいるのが足柄さんとオグリちゃん」


お互いに自己紹介をし一緒に行動していた足柄とオグリキャップの名前も教える立香
すると足柄が藤丸の方に近づいてき、オグリキャップもついていく


「全く、次からは気を付けるのよ?」
「あはは、本当にすみません...」


足柄が再び呆れるように藤丸に言った、すると足柄はマサオとヴィータに問う


「ところで二人は殺し合いに乗ってないわよね?」
「乗るわけねぇだろ!むしろ主催を倒したいと思ってるぜ!」
「僕も乗ってないです...ていうより殺し合いというのがよく分からなくて...」
「あ、確かにそうよね...」


ヴィータは主催を倒すことを目標にしているが、マサオの方は幼稚園児ぐらいのため殺し合いのことについては理解できていなくても無理はない


(ヴィータって子は装備的に戦力になりそうだけど...マサオくんの方は戦力に関しては難しそうね...この殺し合いについても理解してないみたいだし...)
「そういえば怪我してるけど大丈夫ですか...?」
「あぁ、大丈夫よ、心配してくれてありがとうね」


マサオに聞かれ足柄は問題ないという顔で答えた、足柄はマサオに殺し合いのことを教えるか迷った、そして答えを決めた


「マサオくん、殺し合いのことについて教えるからよく聞いてね?」
「足柄さん!?さすがにまだ5歳の子供に教えるのは...」
「確かにそうかもしれない...でもこの殺し合いの場にいる以上何が起きても不思議じゃないわ、教えてあげないといきなり襲われた時に混乱しちゃうわよ」
「でも...」
「大丈夫、なるべくソフトに言うから」


470 : それは突然の出会いなの! ◆.EKyuDaHEo :2021/02/23(火) 20:05:21 yrCPN7cM0
「マサオくん、この殺し合いに呼ばれた以上、もしかしたら殺されるかもしれないの」
「えぇ!?」
(いきなりストレートすぎない!?)


足柄はストレートにマサオに言い立香は足柄のあまりにもストレートな言い方に驚いた


「落ち着いて、絶対に殺されるってわけじゃないわ、でも可能性があるってことだけは頭に入れておいてね?」
「う、うん...」
「マサオくん、何か支給品で使えそうなのある?」
「あ、それならこのひらりマントって言うのがあります」
「どれどれ...?」


マサオから渡されたひらりマントと説明書に目をやる


(...なるほどね...これはかなり使えるわね)


足柄は説明書を呼んで理解し、マサオに教える


「マサオくん、これは常に持ってて、これがあれば何か物が飛んできても跳ね返したり避けることができるみたいだから」
「うん、分かりました...でもやっぱり怖いな...」


マサオはひらりマントで自分の身を守ることができることに少し安堵するが、それでも5歳、まだ不安はずっと残っている


「大丈夫、後は私達で何とかカバーするから、そういえば二人とも知り合いはいる?」
「あたしはいねぇな」
「僕は友達の野原しんのすけって子と後そのお父さんのひろしさんって人がいます」
「なるほどね...ならそのしんのすけくんって子を探したほうがいいかもしれないわね...立香、それでもいいかしら?」
「別に大丈夫ですよ!カルデアの人たちかどうかも分かりませんし、もしそうだとしてもあの人たちなら上手くやってくれると思いますので!それにしんのすけくんって子を探すのを優先したほうがいいと私も思ってたので」
「それじゃあ決まりね、とりあえずしんのすけくんを探しながらどこか休めるところを探しましょう、もし道中で誰かが襲ってきたら私とオグリキャップとヴィータで対応する」
「...分かった。」
「任せとけ!」
「立香はマサオくんのことをお願いね?」
「分かりました!」
「よし...それじゃあそろそろ行きましょうか」


足柄がしんのすけを探しながらどこかで休める場所も探すと言い、4人もそれに賛成し、5人はバギーに乗り出発した...





しかし5人はまだ知らなかった
自分達が探しに向かった野原しんのすけという少年がもうこの世にはいないことを...





【Gー7/黎明】

【佐藤マサオ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:健康
[装備]:ひらりマント@ドラえもん
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考・状況]:基本行動方針:しんのすけ達を探す
1、ヴィータちゃん、足柄さん、オグリキャップさん、立香さんと行動する
2、しんちゃんを探す
3、いざとなったらひらりマントで自分の身を守る
4、しんちゃんのパパが二人...?
[備考]
ひらりマント以外にランダム支給品があと2つありますがまだ確認していません


【ヴィータ@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:健康
[装備]:グラーフアイゼン@魔法少女リリカルなのはA's、うさぎのぬいぐるみ@クレヨンしんちゃん
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1
[思考・状況]:基本行動方針:主催をぶっとばす
1、しんのすけというやつを探す
2、いざとなったら足柄、オグリキャップと一緒に対応する
[備考]
グラーフアイゼンとうさぎのぬいぐるみ以外にランダム支給品があと1つありますがまだ確認していません


【足柄@艦隊これくしょん】
[状態]:左足銃弾貫通(歩くのに支障あり、止血済み)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1(確認済み)
[思考・状況]基本行動方針:戦闘、救出優先。
1、兼さん…
2、殺し合いをする気は無い。
3、いざとなったらオグリキャップ、ヴィータと一緒に対応する
4、化物退治なら大歓迎!
5、ガンマン(ホル・ホース)は説得可能?
  手放しで出迎えられるほどの関係ではないけど。
[備考]
※足柄改二に改装済み。
※ホル・ホースの相方(ハサミ)を見ていません。
※ホル・ホースの銃(スタンド)と能力を把握しました。


471 : それは突然の出会いなの! ◆.EKyuDaHEo :2021/02/23(火) 20:05:36 yrCPN7cM0
オグリキャップ@ウマ娘 シンデレラグレイ】
[状態]:疲労(小)、複雑な心境
[装備]:スタンドDISC『タスク』(現在ACT1のみ)、特別製蹄鉄付シューズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2(確認済み)
[思考・状況]基本行動方針:とにかく生き残ろう。
1、カネサダ…
2、目的のために殺す『意思』…それを覚えて大丈夫なのだろうか。
3、いざとなったら足柄、ヴィータと一緒に対応する
4、ヘイコウセカイって何だろう……?
5、あの男が説得された場合、受け入れられるか?
[備考]
※参戦時期は西京盃後。


【藤丸立香@Fate/Grand Order】
[状態]:悪魔による能力向上状態(支障なし)
[装備]:魔術礼装・カルデア、支援礼装、レター@グランブルーファンタジー、悪魔@大番長、、召喚石『ゴッドガード・ブローディア』(現在使用不可)@グランブルーファンタジー、バギー#9
[道具]:基本支給品×2(自分、兼定の分)、クレイジーソルト、ランダム支給品×1(兼定のもの、あっても未確認)、和泉守兼定(鞘なし)
[思考・状況]基本行動方針:仲間を集めて殺し合いを止め、推測される儀式を防ぐ。
1、兼定さんの分も背負う。
2、ここから殺し合いに反対の人たちを説得する。
3、恐らく、これは何らかの儀式では?
4、もしもの時はマサオくんを守る
5、しんのすけという子を探す、その後マシュ、沖田さん、土方さんを探す。ラヴィニアも確認はしたい。
6、ガンマン(ホル・ホース)の説得の考えは分かる。けど…オグリキャップは大丈夫かな。
[備考]
※参戦時期は少なくともセイレム経験済みです。
※漫画版『英霊剣豪七番勝負』の女性主人公をベースにしてます。
 (が、バレー部とかその辺の設定すべてを踏襲はしていません。)
※このバトルロワイアルを英霊剣豪の時のような儀式だと推測しています。
※彼女のカルデアに誰がいるかは後続の書き手にお任せしますが、大抵はいるかと。


472 : それは突然の出会いなの! ◆.EKyuDaHEo :2021/02/23(火) 20:05:59 yrCPN7cM0
オグリキャップ@ウマ娘 シンデレラグレイ】
[状態]:疲労(小)、複雑な心境
[装備]:スタンドDISC『タスク』(現在ACT1のみ)、特別製蹄鉄付シューズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2(確認済み)
[思考・状況]基本行動方針:とにかく生き残ろう。
1、カネサダ…
2、目的のために殺す『意思』…それを覚えて大丈夫なのだろうか。
3、いざとなったら足柄、ヴィータと一緒に対応する
4、ヘイコウセカイって何だろう……?
5、あの男が説得された場合、受け入れられるか?
[備考]
※参戦時期は西京盃後。


【藤丸立香@Fate/Grand Order】
[状態]:悪魔による能力向上状態(支障なし)
[装備]:魔術礼装・カルデア、支援礼装、レター@グランブルーファンタジー、悪魔@大番長、、召喚石『ゴッドガード・ブローディア』(現在使用不可)@グランブルーファンタジー、バギー#9
[道具]:基本支給品×2(自分、兼定の分)、クレイジーソルト、ランダム支給品×1(兼定のもの、あっても未確認)、和泉守兼定(鞘なし)
[思考・状況]基本行動方針:仲間を集めて殺し合いを止め、推測される儀式を防ぐ。
1、兼定さんの分も背負う。
2、ここから殺し合いに反対の人たちを説得する。
3、恐らく、これは何らかの儀式では?
4、もしもの時はマサオくんを守る
5、しんのすけという子を探す、その後マシュ、沖田さん、土方さんを探す。ラヴィニアも確認はしたい。
6、ガンマン(ホル・ホース)の説得の考えは分かる。けど…オグリキャップは大丈夫かな。
[備考]
※参戦時期は少なくともセイレム経験済みです。
※漫画版『英霊剣豪七番勝負』の女性主人公をベースにしてます。
 (が、バレー部とかその辺の設定すべてを踏襲はしていません。)
※このバトルロワイアルを英霊剣豪の時のような儀式だと推測しています。
※彼女のカルデアに誰がいるかは後続の書き手にお任せしますが、大抵はいるかと。


473 : それは突然の出会いなの! ◆.EKyuDaHEo :2021/02/23(火) 20:06:51 yrCPN7cM0
投下終了します、何度も二重投下してしまい申し訳ありません


474 : それは突然の出会いなの! ◆.EKyuDaHEo :2021/02/23(火) 20:07:59 yrCPN7cM0
後オグリキャップの状態表のところの名前に【】が左側外れてたので上げなおします

【オグリキャップ@ウマ娘 シンデレラグレイ】
[状態]:疲労(小)、複雑な心境
[装備]:スタンドDISC『タスク』(現在ACT1のみ)、特別製蹄鉄付シューズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2(確認済み)
[思考・状況]基本行動方針:とにかく生き残ろう。
1、カネサダ…
2、目的のために殺す『意思』…それを覚えて大丈夫なのだろうか。
3、いざとなったら足柄、ヴィータと一緒に対応する
4、ヘイコウセカイって何だろう……?
5、あの男が説得された場合、受け入れられるか?
[備考]
※参戦時期は西京盃後。


【藤丸立香@Fate/Grand Order】
[状態]:悪魔による能力向上状態(支障なし)
[装備]:魔術礼装・カルデア、支援礼装、レター@グランブルーファンタジー、悪魔@大番長、、召喚石『ゴッドガード・ブローディア』(現在使用不可)@グランブルーファンタジー、バギー#9
[道具]:基本支給品×2(自分、兼定の分)、クレイジーソルト、ランダム支給品×1(兼定のもの、あっても未確認)、和泉守兼定(鞘なし)
[思考・状況]基本行動方針:仲間を集めて殺し合いを止め、推測される儀式を防ぐ。
1、兼定さんの分も背負う。
2、ここから殺し合いに反対の人たちを説得する。
3、恐らく、これは何らかの儀式では?
4、もしもの時はマサオくんを守る
5、しんのすけという子を探す、その後マシュ、沖田さん、土方さんを探す。ラヴィニアも確認はしたい。
6、ガンマン(ホル・ホース)の説得の考えは分かる。けど…オグリキャップは大丈夫かな。
[備考]
※参戦時期は少なくともセイレム経験済みです。
※漫画版『英霊剣豪七番勝負』の女性主人公をベースにしてます。
 (が、バレー部とかその辺の設定すべてを踏襲はしていません。)
※このバトルロワイアルを英霊剣豪の時のような儀式だと推測しています。
※彼女のカルデアに誰がいるかは後続の書き手にお任せしますが、大抵はいるかと。


475 : ◆7PJBZrstcc :2021/03/03(水) 19:17:30 vgwR6UAo0
デンジ、クッパ姫、野崎春花を予約します


476 : ◆7PJBZrstcc :2021/03/03(水) 22:20:04 vgwR6UAo0
投下します


477 : 未練だけは置いていく ◆7PJBZrstcc :2021/03/03(水) 22:21:00 vgwR6UAo0
 空から落ちてきた少女の手当てをすることにしたクッパ姫とデンジ。しかしここで問題が発生した。
 前提としてまず、この殺し合いにおいて主催者が支給したデイパックには、基本支給品一式とランダム支給品が三つ入っている。
 そして基本支給品一式の内訳は地図、食料、ルールブックの三つだ。怪我の治療に使えそうなものはない。
 なのでランダム支給品から使えそうなのを探すしかないのだが――

「俺どれが怪我を治せるとか分かんね〜!」

 二人ともロクに支給品をチェックしてなかったので、使えそうなものを必死こいて調べるハメになっていた。
 だがすぐにクッパ姫は、この状況を打破するためのアイテムを探し当てる。

「デンジ、これをこの少女に食べさせるのだ! それで治る!!」

 クッパ姫がデイパックから取り出したのは、弁当だった。
 これはとある世界の電脳空間で行われた聖杯戦争にて、サーヴァントの体力と状態異常を回復させる効果を持ったアイテム、桜の特製弁当である。
 彼女はそこまでの詳細が書かれた説明書きを見ていないものの、とりあえずHP(ハートポイント)が回復するアイテムだと認識した。
 なので食べさせれば傷が治る、とクッパ姫は理解しデンジに指示を出す。

「ハァ!?」

 だが指示を受けたデンジは、あまりにも素っ頓狂な物言いに思わず驚愕で返してしまった。
 クッパ姫の世界はキノコやナッツを食べれば体力が回復するが、彼の世界は違う。
 デンジ自身は血を飲めば傷が治り、チェンソーの悪魔として戦えるが、それは彼自身だけの能力で、他の人間はそうじゃない。
 彼は自分がものをそんなに知らない自覚はあるが、流石に弁当食って人間の傷が治るとは思っていなかった。

「ええい、いいから早くしろ!」
「はいは〜い」

 しかしクッパ姫が地団駄を踏みながら強く言うとデンジは素直に従った。
 これがもし、デンジの仲間である他の公安のデビルハンターならば亀裂が生じかねない場面だが、彼は、クッパちゃんがそんなに言うならきっと治んだな、位にしか思っていなかった。
 デンジはこの辺り、素直と言うか適当である。

 そうして弁当をあ〜んの要領で食べさせると、少女の怪我はみるみるうちに治っていく。
 そんな見たことない光景に、デンジはちょっとビックリした。

 それから弁当が半分くらい無くなるまで食べさせると、少女はもういいとばかりに手でデンジを止めた。
 そして起き上がり、二人にお礼を言う。

「……助けてくれて、ありがとうございます」
「何、気にするな」
「ところでこの弁当の余り、俺食っていい?」

 デンジの呑気な問いに少女とクッパ姫がそれぞれ了承し、彼は弁当を食べ始めた。

「くしゅん!」

 一方、少女は湖に落ちたせいでずぶ濡れであり、思わずくしゃみをしてしまった。
 これでは風邪をひく、と思ったクッパ姫は魚を焼くためにつけた火に当たるよう勧める。
 ついでに自分も濡れていたので一緒に火に当たるクッパ姫。

「うめぇ!」

 その横ではデンジが弁当の残りを食べているが、彼はここであることに気付いた。

(これ、間接キスって奴じゃねぇ!?)

 弁当に付いていた箸で少女に食べさせ、同じ箸でデンジも弁当を食べている。これすなわち間接キスなり。
 それに気づいたデンジは心持ち弁当を食べるスピードを落とし始める。
 落ちたスピードでデンジが弁当を食べ終える頃には、少女とクッパ姫の服はすっかり乾いていた。


478 : 未練だけは置いていく ◆7PJBZrstcc :2021/03/03(水) 22:21:31 vgwR6UAo0
 そうして落ち着いたところで、三人は名簿を読み始めた。
 百以上の名前が書かれたものの中から知っている名前を探すのは、中々大変な作業だ。

「クソ! 読める漢字が少ねえ!!」

 デンジ一人だけ全然違うことに苦戦していたが、それでも数分あれば知り合いがいるかどうかは分かる。

「何だと!? ピーチ姫がいるのか!?」

 クッパ姫は自分がよく攫う無力な姫の心配をし

「うげっ、パワーいんのかよ。あいつ絶対殺し合い乗ってるぜ……」

 デンジは絶対名簿も見ず、ノリノリで殺しあいに乗るだろう知人に対し憂鬱となり

「…………」

 少女は何を思っているのか分からない無表情で、ただ名簿を見つめていた。
 クッパ姫は少女のそんな態度に疑問を覚え、ぶつけようとする。

「おい、オヌシ……」

 だがここでクッパ姫は、まだ少女の名前を聞いていないことに気付く。
 そこでまずは自己紹介をすることにした。人に名前を尋ねるときは、まず自分からである。

「そういえば自己紹介をしてなかったのだ。
 ワガハイは大魔王クッパ様だ! 名簿にはクッパ姫と書いてるが、断じて姫ではないのだ!
 そしてコイツはデンジ。ワガハイの部下だ」
「よろしくな〜!」
「……野崎、春花です」
「うむ、分かった」

 つつがなく終わる自己紹介。
 こうして話は情報交換に移る。まずはクッパ姫から。

「ワガハイが知っているのはこのマリオ、ヨッシー、ピーチ姫の三人だ。
 前の二人は放っておいても問題ない男だが、ピーチ姫はワガハイが守らねばならん!!」
「……男ほっといて姫を心配って、クッパちゃんってやっぱりソッチ系かな? お前、どう思うよ?」
「さぁ……どうなんでしょう……」

 クッパ姫の熱弁を尻目に、デンジは春花に答えにくい質問をするが、彼女は上手く受け流す。
 そのまま次はデンジの番。

「俺の知ってる奴はパワーだけだな。
 一応仲間だけどこいつとんでもない奴でよ〜。すぐ嘘つくし見得張るし、俺のじゃねえからいいけど人のポイントカード勝手に使うしでさ〜。
 おまけにこいつの猫助けたのに、未だに俺のことたまに殺そうとしてくるんだぜ」
「どういう知り合いなのだ……」
「とりあえずロクでもないことだけが伝わってきますね……」

 仮にも仲間に対してあんまりすぎる物言いに、思わずリアクションに困ってしまう二人。
 とりあえず多分殺し合いに乗っているので、見つけたら何とか止めるとデンジは宣言する。
 そして話は春花の方へ移った。
 しかし彼女の知人は名簿に載っていない。なので代わりに殺し合いの中で出会った危険人物について語る。

「私が出会ったのはこのペテルギウスって人だけです。
 背中から黒い腕みたいなのが出てきて、愛とか勤勉とか怠惰とかよく分からないことをまくしたてながらいきなり殺しにかかられました」
「コワ〜……」
「うむ、明らかに危ないヤツだな!!
 だが安心しろ。そんなヤツはワガハイとデンジで倒してやるのだ!」
「お、おう! 俺とクッパちゃんにかかればそのペテ何とかって奴も楽勝だぜ〜!!」

 いきなり襲われて不安に思っていると考えたのか、クッパ姫は春花に対し安心させようと啖呵を切る。
 その言葉にどう思ったのか、春花は優しそうな笑みで応えた。


479 : 未練だけは置いていく ◆7PJBZrstcc :2021/03/03(水) 22:21:59 vgwR6UAo0

 そしてとりあえず行動方針としては、まずピーチ姫とパワーを探すことにした。
 ピーチ姫は戦う力がないので守りたいし、パワーが殺し合いに乗っている可能性が高いなら止めなければならない、というのがクッパ姫の判断だ。
 デンジとしては、殺し合いという状況でパワーにはあんまり会いたくなかったが、流石に乗ってたら止めないとまずいよな、と思うのでクッパ姫に同意。
 春花も特に異論は挟まなかった。
 だが出発する前に――

「……すみません、その前に、ちょっと……えっと、トイレ行ってきていいですか?」
「うむ、ここで待ってるから早く済ませてくるのだ」

 春花はトイレをするためクッパ姫とデンジから離れていく。
 それを二人は特に警戒せず見送った。
 だから気付かなかった。

 いつの間にか、傍に置いていたデンジのデイパックがなくなっていることに。


【E-4 ルート・レイク東/黎明】

【クッパ姫@Twitter(スーパーマリオシリーズの二次創作)】
[状態]:健康
[装備]:スーパークラウン(解除不可)
[道具]:基本支給品、釣竿@ゼルダの伝説時のオカリナ、ランダム支給品×1
[思考・状況]基本行動方針:主催者を倒し、ワガハイが優勝する!
1:部下(デンジ)、ハルカと行動する。
2:この姿は慣れんが……ワガハイは強いからな!丁度良いハンデだ!
3:ピーチ姫を一刻も早く探し、守る。
4:ハルカが戻ってきたら移動する。
5:ペテルギウスに出会ったら倒す。
6:そろそろデンジにワガハイが本当は男であると伝えたほうがいいか……?
[備考]
性格はマリオ&ルイージRPGシリーズを基準としています。
スーパークラウンの効果は解除できないようになっています。
マリオ達@スーパーマリオくん をマリオ達@スーパーマリオシリーズとして認識しています。
春花と情報交換をしました。
デンジのデイパックがなくなったことに気付いていません。

【デンジ@チェンソーマン】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:
[思考・状況]基本行動方針:とりあえず主催者をぶっ殺せば解決だぜー!
1:クッパ姫、春花と一緒に行動する。
2:パワーかぁ〜合流したくねえ〜! でも殺し合い乗ってるのを見たら止める。
3:今は春花のトイレが終わるのを待つ。
4:姫を守るとかクッパちゃん、やっぱりソッチ系……?
[備考]
時間軸は永遠の悪魔の後。
春花と情報交換をしました。
自身のデイパックがなくなったことに気付いていません。


480 : 未練だけは置いていく ◆7PJBZrstcc :2021/03/03(水) 22:22:26 vgwR6UAo0





 クッパ姫とデンジから離れた春花は、トイレではなく一目散に西へと走っていた。
 理由は距離を取る為である。

 クッパ姫達に助けられた春花は、二人と話しながらずっとペテルギウスにどうすれば殺せるのか考えていた。
 そして出した結論は至極単純。戦力の増強である。
 彼女に支給されたスタープラチナは強力だが、それだけでは勝てない。
 なぜなら彼女自身が脆弱だから。彼女自身がスタープラチナを用いた戦闘に慣れていないから。

 春花が戦ったペテルギウスは、見えざる手と呼んでいたものを十全に使いこなして戦っていた。
 だが彼女が持つスタープラチナは手に入れてそれほど時間があったわけでは無い。付け焼き刃もいいところである。
 もし彼女がスタープラチナを十全に使いこなせるなら話は変わるかもしれないが、そこまで極める時間はどうやっても作れない。

 だから彼女は違う方法で戦力を増強することにした。
 それは、強力な支給品集めだ。スタープラチナに匹敵、あるいは上回る力を手に入れれば強くなれると単純に考えたのだ。
 だからデンジのデイパックを盗んだ。クッパ姫のデイパックを選ばなかったのは、自分を回復させた弁当を取り出していたから支給品が少ないはずと考えたからである。
 勿論これも付け焼き刃であることに変わりはない。その分頭を回さなければならないとは思うが、そこは頑張る。

「もう少し離れたら、デンジさんのデイパックを確認しないと……!」

 とにかく疾走する春花。それは単純に距離を取りたいという思い以上に、二人への罪悪感があった。

 そもそも、戦力を増強するなら支給品ではなく参加者を集めるという方法がある。
 クッパ姫とデンジは殺し合いに乗っていない以上、適当に言えばペテルギウスと戦わせるくらいはできたはずだ。
 にも関わらず春花はその手段を選ばなかった。なぜか。

 それは、自分を助けてくれた二人と一緒に居たくなかったから。
 これ以上二人の優しさに触れていると、殺し合いに優勝して願いを叶えるという決意が揺らぎそうだから。
 なんてことのない、ただの感情である。

 だがそんな弱さはもういらない。
 これからは勝つためならどんな卑怯なこともしよう。
 誰かを騙し、物を盗み、人を殺し、支給品を集め、屍の上で勝利を掴み、願いを勝ち取るのだ。
 だから

「……ごめんなさい」

 二人に対する罪悪感を、春花は意地でも押し殺す。


【F-4 南側/黎明】

【野崎春花@ミスミソウ】
[状態]:疲労(小) 背中に刺し傷(塞がっている)、二人(クッパ姫、デンジ)に対して罪悪感
[装備]:スタープラチナのスタンドDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、何かの石@出展不明、デンジのデイパック(基本支給品、ランダム支給品×3、ツルギゴイ@ブレスオブザワイルド、ヨロイゴイ@ブレスオブザワイルド(大量))
[思考・状況]基本行動方針:優勝して、過去を改変する。
1:早く二人(クッパ姫、デンジ)から離れたい。
2:ペテルギウスに殺すため、強力な支給品を集める。
3:デンジさんの支給品については後で調べる。
[備考]
参戦時期は死亡後です。
スタープラチナのDISCを装備しています。
スタンド使いになった影響か、ペテルギウスの『見えざる手』を視認できるようです。
クッパ姫、デンジと情報交換をしました。そのせいでマリオ達@スーパーマリオくん をマリオ達@スーパーマリオシリーズとして認識しています。


【桜の特製弁当@Fate/EXTRA CCC】
クッパ姫に支給。割り箸もサービスで付いている。
全て食べるとHPを中回復と不利な状態異常を解除する回復アイテム。
今回は二等分したので効果も半分。だが状態異常は回復した。


481 : ◆7PJBZrstcc :2021/03/03(水) 22:22:52 vgwR6UAo0
投下終了です


482 : ◆bLcnJe0wGs :2021/03/04(木) 07:02:00 5V1QkBzc0
結芽、アカツキ、総司、総悟、ザメドルで予約します。


483 : ◆bLcnJe0wGs :2021/03/05(金) 20:27:03 wZEMCwi60
投下します。


484 : 驚異 ◆bLcnJe0wGs :2021/03/05(金) 20:27:42 wZEMCwi60
A-5。
そこには、突然『何か』に呑み込まれて姿を消した勇者と、スタート地点であったスノビー・ショアを後にしたザメドルがいた。

ザメドルは他の参加者を探すべく、東へと道の中を進む。

◆◆◆

彼が移動している中、思い出しているのはこの催しに招かれて間もない時の出来事であった。

自分がクラウスによって密封されたと思ったら、あの薄暗い部屋に五体満足で立っていた。

周りには大勢の人間らしき人物達の他、巨大な鋏その物の姿をした者や、額の辺りに金色の突起物が生えた黄色い二足歩行の生物、果てまでは人型のロボットの様な者もいた。

その人々の中で、何か病があるのか、薄紫色の長い髪をした少女が苦しそうに胸に手を当てているのを目撃した。

その直後に「殺し合いをしろ」と言われた。

そして、殺し合いに反抗しようとしていた見知らぬ人間とローブを着た獣人の首が吹き飛ぶのを見た。

そして、自分達はこの催しの会場に飛ばされた。

◆◆◆

自らに支給されている物品も既に確認している。

現状は被る必要も無い様な帽子、中央部に黄色いギザギザ模様の入った人参。
食べると動きが速くなると書かれている。 いざという時に食べた方がいいだろう。
次は木片。他の物品と合体させることで船の生物を生み出せるらしい。

◆◆◆

暫く道なりに進んでから、次は南に、そしてまた東へと進んで行く。
D-5の分かれ道をまた南へと進んでいると、4人の参加者の姿が見えた。


485 : 驚異 ◆bLcnJe0wGs :2021/03/05(金) 20:28:13 wZEMCwi60
その内一人は先程の部屋で見かけた薄紫色の髪の少女だった。

◆◆◆

「あれ? あっちの方から誰か来てるよ?」

北からやって来た男の存在にいち早く気づく事が出来たのは結芽であった。

「ごきげんよう、お嬢さん方。」

そこに居たのは、長い金髪に翼の様な物と鋭い鉤爪を持った男。

彼に気づいたアカツキと二人の沖田もそちらに視線を向ける。

(薄紫色の髪の小娘…。病を患っている様にも思えるが、『戦いたい』という意志は確かなものだろう。勿論他の3人とも楽しめそうだ)

ザメドルは漸く出会えた、4人の武装した参加者達との戦いに胸を高鳴らせていた。

彼らの命運や如何に。


486 : 驚異 ◆bLcnJe0wGs :2021/03/05(金) 20:29:07 wZEMCwi60
【ザメドル・ルル・ジアズ・ナザムサンドリカ@血界戦線】
[状態]:健康
[服装]:いつもの服装
[装備]:
[道具]:基本支給品、何かの帽子@出展不明、神界の木片@モンスター烈伝 オレカバトル、ブーストにんじん@PUI PUI モルカー
[思考]
基本:せっかくだからこの殺し合いを楽しませてもらう
1:目の前の4人(結芽、アカツキ、総司、総悟)と戦いたい。
2:この首輪は忌々しいからさっさと外したい所
3:広い会場を一人で探索するのは骨が折れるから、有能な斥候は手に入れたいとは思う
[備考]
※原作第八巻『幻界病棟ライゼズ(後編)』より、クラウスに「密封」された後からの参戦です
※首輪の制限により、一定以上のダメージを喰らった場合自動的に密封状態となり、事実上の脱落となります
※再生能力はある程度低下しています

【D-6/深夜】


【沖田総吾@銀魂】
[状態]健康
[装備]どうたぬき@風来のシレン、パズーのバズーカ(残弾2)@天空の城ラピュタ
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜1(ある場合確認済み)
[思考]基本行動方針:お巡りさんが殺し合いに乗るわけにはいかねえなあ。
1:金髪の男(ザメドル)の様子を見る。
2:万事屋のメンバーがいるようなら合流…はまあ余裕があればで。
3:神威レベル1だな、あれ(結芽)。
4:堅物そうな男(アカツキ)と話しとく。
5:爆心地の様子でも見に行きましょ。
[備考]
参戦時期は最終回後。


487 : 驚異 ◆bLcnJe0wGs :2021/03/05(金) 20:30:55 wZEMCwi60
【沖田総司@Fateシリーズ】
[状態]健康
[装備]浅打@BLEACH
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済み)
[思考]基本行動方針:マスターいたら優勝どころじゃないでしょうて。
1:金髪の男(ザメドル)の様子を見る。
2:まさか同じ流派の人がいるとは…というかこれどうしよう
3:とりあえず悪即斬で。
4:北海道で金塊探してる土方さんもいるんですかね
5:後で爆心地に向かってみますか。
[備考]
経験値成分が強めです。
カルデアの方の沖田さんです。

【燕結芽@刀使ノ巫女(アニメ版)】
[状態]:不治の病、沖田総司への興味(大)金髪の男(ザメドル)への興味(中)、アカツキへの不満(大)、疲労(小)
[装備]:千鳥@刀使ノ巫女
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜2(確認済、ペン類ではない)
[思考・状況]基本行動方針:強さの証明。殺し合いは知らない。
1:金髪の男(ザメドル)の様子を見る。敵対するなら戦いたい。
2:本物の沖田総司!?
3:北の街へ向かう。お兄さん(アカツキ)と行動はするけど、群れるのは好きじゃない。
4:弱い人には強さを見てもらう、強い人には挑みたい。
5:やること終わったらお兄さんとか沖田のおねーさんとかと戦いたい。
6:何処かにあるかな? にっかり青江。

【アカツキ@アカツキ電光戦記】
[状態]:電光機関の使用による空腹(中)、心労(小)
[装備]:試作型電光機関+電光被服
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1(確認済・ペンの類ではない)、ゴブリンの槍@現地調達
[思考・状況]基本行動方針:日本への帰還。
1:金髪の男(ザメドル)の様子を見る。
2:結芽が心配。
3:北のティルデット・タワーへと向かう。
4:首輪の解除が当面の問題。道具が欲しい。
5:すべての電光機関を破壊する。この場にあっても例外ではない。
6:腹が減る。流石にそろそろ食わねばならぬか。


[備考]
参戦時期は少なくともアカツキ編ED後以降です。
電光機関が没収されない代わりに、ランダム支給品を減らされてます。
槍は筆談用に持ってるだけなので基本使いません…が、案外使えるのかも。


488 : ◆bLcnJe0wGs :2021/03/05(金) 20:31:16 wZEMCwi60
投下終了です。


489 : ◆bLcnJe0wGs :2021/03/05(金) 20:32:26 wZEMCwi60
>>486
済みません。
ザメドルの方も同じ時間帯とエリアとなります。


490 : ◆bLcnJe0wGs :2021/03/05(金) 20:34:35 wZEMCwi60
>>487
済みません。
支給品の紹介を載せ忘れていました。
以下の内容となります。
【支給品紹介】

神界の木片@モンスター烈伝 オレカバトル

ザメドルに支給。

ニライカナイの水、或いはオボツカグラの土と合体させることで船のモンスター『ナンクルマル』を作成する事が出来るアイテム。

ブーストにんじん@PUI PUI モルカー

ザメドルに支給。

食べた者の動きを加速させる効果を持った人参。
あくまで動きを加速させる為の食べ物なので勢い余って障害物にぶつかったりしない様注意。


491 : ◆EPyDv9DKJs :2021/03/06(土) 02:19:13 /M1ciyak0
投下します


492 : 廻廻奇譚───闇を祓って ◆EPyDv9DKJs :2021/03/06(土) 02:21:01 /M1ciyak0
 息子が嫌いなピーマンを食べた。
 つい最近までいつも残していたのに。

 息子が大きくなると言った。
 巨大ロボよりも大きくなるって。

 鮮明に残っている。
 ロボットだから、データとして記憶しているわけじゃあない。
 本当の父親じゃない俺を父親として認めてくれた息子との記憶、
 機械だから覚えてるとかはそんなことは関係ない。忘れるわけがないだろ。
 けど、もう二度と息子の姿を見ることは叶わない。
 殺したいから殺す、殆ど理由のない悪意によって。



 偽物であれ妻と気付かず殺した。
 息子は理不尽にあの男によって殺された。
 データとしてすべてが、余りに鮮明に残される。
 故にこの感情は忘れる形で減ると言うことを知らない。
 目の前の下手人を殺したところで消えないだろう。

「ブッ殺してやるッ!!」

 殺意のこもった一言と共に駆け出す。
 ひろしと言う存在を知る人からすれば、
 絶対にないであろう怒りと憎悪のこもった言葉。
 ひょうきんな見た目とは思えぬ程のどす黒い感情。
 普段はうだつが上がらないサラリーマンをしながらも、
 どんな困難を前にしても勇敢に立ち向かう父親だった存在だと、
 外見と言う意味ではない『こんな姿』を見て、誰が言えようか。

「ブッ殺すって……俺は呪いだよ? 祓うの間違いだろ?」

 呪術師でもないあんたには祓えもしないだろうけど。
 そんな軽口を叩きながら指を無数の鉤爪に近い刃に変化させて振るう。
 コンクリートの壁など容易く破壊する、斬ると同時に相手を砕く攻撃の波。
 いくら生身でないと言えども決してダメージを受けないと言うわけではない。
 相手を『殺す為』ではなく相手を『壊す為』のインスピレーションを体現する。
 改造人間も準備してたが、少し彼の立ち回りを見たさに今は引っ込めておく。

 一言で言えば、この戦いは泥仕合になる。
 真人の術式『無為転変』は魂の形を変えることで発揮するもの。
 ロボひろしには心はあれども魂がない機械。ないものを弄ることはできない。
 常人なら文字通り瞬殺できる攻撃も、この状況では欠片も役に立つことはなかった。
 ではロボひろしが圧倒的有利かと言われると、それは早計が過ぎる。
 真人には魂への直接攻撃できなければダメージを与えられない。
 魂の輪郭も何も知らないロボひろしにはどうやったってそれは無理な話だ。
 一応、真人の呪力が尽きればその防御もできなくなるので倒すことは可能だが、
 それは逆にロボひろしに対しても同じことが言える。
 真人が自分を変形させての物理ダメージなら問題ない。

「呪いだどうだなんてことは関係ねえ!!」

 女神は微笑むことなく無慈悲に殺された。
 もう賽の目は息子の死と言う赤い一を出すだけ。
 下手人を捨ておいて逃げたりする選択肢はもうない。
 鞭のようにしなやかに、高速で迫りくる殺意の暴風。
 当たれば機械でも無事ではすまないものを前にしても歩みを止めない。
 怒りのあまり攻撃が見えてないのかと正気を疑うかのような動き。
 だがその行動は至極合理的な動きを以って、真人の攻撃をかいくぐる。
 呪術師でもなければ回避できないものを避けれているのは、
 基本能力が優れてるのも確かだが、別の強みも持ち合わせていた。

 可動域。
 機械にしては異常すぎるともいえる可動域を持つ。
 人ではまず変えようのない関節を無茶苦茶な方向へ体を曲げることによって、
 本来なら当たるはずの攻撃を、端から見れば無茶苦茶な動きで避ける。
 ロボットであるが故、にしても行き過ぎた可動域を持つのが彼の特権の一つ。

(肉体の変化、とまではいかないけど少しだけ似ている。
 ああいう形での回避か。今度ちょっと真似しようかな。)

 ありえない身体の軌道はある意味自分と似たようなものだ。
 軟体生物を模した風にすればある程度再現は可能になるので、
 試そうと思えば試せる部類ではあった。

(でも死角までは見切れない!)

 このチェーンブレードは元をただせば真人の指。
 当然ながら自分の力で更に変化させることは可能。
 コンクリートの地面に陥没した指の一本を槍に変えて追走。

「───させるつもりはねえぞ。」


493 : 廻廻奇譚───闇を祓って ◆EPyDv9DKJs :2021/03/06(土) 02:22:53 /M1ciyak0
 だがまだまだ足りない。
 真人はロボひろしのことをまだ理解できていない。
 初対面なので当然のことではあるのだが。
 攻撃が届く前にした行動は乳首を押すと言う端から見れば奇怪な行動。
 だがそこから行われるのは右腕の射出───即ちロケットパンチ。
 当然そんなものがあるとは知らない真人の顔面にクリーンヒット。
 威力はたとえ小さくとも、壁にクレーターができるほどのもの。
 ヒットさせればいかにダメージがなくとも衝撃はあるし顔も潰れる。
 パンチを浴びて吹き飛べば、視覚なしで攻撃は当てられない。
 軌道を変えていた指もあらぬ方向へと飛んで行ってしまう。

 真人が吹っ飛んでいくにつられる、刃物に変えた指。
 腕を回収しつつその内一本を掴み、ハンマーの如く振りかぶる。
 まだ刃のままなので本来なら手がズタズタになるところだが、
 こういう事態を回避できるのもまたロボット故の特権でもあった。
 無理矢理空中へと投げ出される浮遊感を味わうと同時に、地面へと叩きつけられる。
 それを二度、三度、四度……何度も何度も、常人なら数回もやれば死ぬと言う、
 確信が持てるだろう攻撃をどうなっていようとお構いなしに続けていく。
 彼に対する憎悪が、目に見える形となっている光景だ。

「だから、その程度じゃあ無理だって。」

 しかし知らないのはロボひろしも同じこと。
 呪力を伴わないのでダメージはない。クリアな思考で物事を考えらえる。
 状況の把握は変化させた指に目を付けた。勿論相手から死角になる部分で。
 七回目ほどで彼が掴んでいた指から針が突き出し、手を貫く。
 痛みはないにしてもこのまま握ってるのは危険と即座に判断。
 八回目に針を引き抜くついでに、もう一度地面へと叩きつけて手放す。

「思ってたよりやるじゃないか。」

 さっき出会った女とは方向性は違うが面白い。
 呪術を使わないにしては、と注釈も付くが。
 コンクリートの欠片を払いながら迎え撃とうとすると、

「っと。」

 物陰から姿を現す闖入者、ゴブリン。
 あれだけ騒ぎを起こせばNPCも寄ってきて当たり前だ。
 数はかなりのものだが、所詮はある世界で祈りを持たぬ者でも最弱とされる存在。
 いかに数で勝ろうとも、ロボひろしは一人で当てられた攻撃が彼らではかすりもしない。
 当たったところで、かすり傷に等しいかもしれないが。

(なぜか俺を集中的に狙ってくるな。仲間意識なんてなさそうなのに。)

 どういうことかロボひろしもいるはずなのに多くのゴブリンは真人を狙う。
 ゴブリンに仲間意識などないことは、先程みさえを助けた件で把握している。
 NPCは特に理由がなければ参加者に等しく攻撃対象とするもの。
 ではなぜ真人を優先的に狙ってるのか。近くにいたからではない。
 ゴブリンスレイヤーの世界におけるゴブリンは、死体も食料となる。
 だったらまず食えたものではないであろうロボひろしと人の姿に近い真人。
 優先的に狙いたくなると言うものだ。特級呪霊を食ったらどうなるかは不明にしても。
 勿論優先が真人なだけで、ロボひろしを狙うことになった貧乏くじのゴブリンもいる。
 (ただしロボひろしの速度についていけておらず、殆ど足止め程度にしかならない)
 或いは、呪いと言うものをなんとなく直感してるゴブリンもいるのかもしれない。

「呪霊でも人間でもないのをストックしてみたいけど、今はこっちを優先するよ。」

 所詮は有象無象。結局のところは彼らもみさえと同様の存在でしかなく。
 特級呪霊の前にゴブリンなど、数の相手になるはずもなし。
 跳躍と同時に体を球体に変化させながらウニのように全方位に針を突き出す。
 大雑把な攻撃ではあるものの、その範囲はかなり広くまともに対応できたのは、
 接近する針を掴みながら後退させられたロボひろしだけであり、
 ゴブリンは瞬く間に串刺しとなって命を散らす。

「ん-、これは雑魚専門としては悪くないかな───あ。」

 運よく僅かに無傷でやり過ごせたゴブリンを数体発見。
 否。この場合は運が悪いと言った方が正しいだろうか。
 一瞬で蹴散らされたことで恐怖に逃げ出すも既に遅い。

「ハハッ! 君達にも恐怖ってのがあるんだ。」

 魂の揺らぎを堪能しつつ追い回し、
 全員無為転変によって変化させられる。
 手頃なサイズに縮めると、そのまま口に放り込む。
 みさえを助けたときはゴブリンをストックできなかったので、
 念願の特殊な生物の改造人間……否、改造ゴブリンが手に入った。

「こういうのも混ぜるともっと面白そうだ。」


494 : 廻廻奇譚───闇を祓って ◆EPyDv9DKJs :2021/03/06(土) 02:24:06 /M1ciyak0
 先ほどのように単純な改造人間もいいが、
 怪物を織り交ぜてみるのも面白いかもしれない。
 今相対する相手もあれが自分の妻だと分かっていれば、
 助ける名目があったとしても、攻撃を躊躇していたのは間違いないだろう。
 殺しに来る改造した人間でないNPCを、元は人間と思って攻撃を躊躇う姿。
 想像してみると実に滑稽で見てみたい。人と思えば攻撃できず、
 人と思わなければ攻撃できる。そんな愚かな人間の考え方を。

「あ、忘れてた。」

 ついロボひろしから目を離してしまった。
 先の移動からして少女を追われると追いつくのは難儀する。
 攻撃の巻き添えにしていたのは覚えてるが視覚で確認すると、

「よそ見してる暇、あんのかよ!!」

 先ほどまで素手だった彼が、
 赤い得物を握って殴り掛かる姿が映った。
 咄嗟に右腕を貝のような形状の鈍器へと変えて打ち合う。

(!?)

 初めて此処で真人の表情が曇った。
 ひびが入る腕の音に防ぐのをやめて、
 身体を子供に変えて背後へと回り込む形で攻撃を避ける。
 ゴブリンの乱入よりも予期せぬ事態に、咄嗟に避ける動作を選んだ。



 ◇ ◇ ◇



 真人がほんのちょっとだけ遊んだあの短い時間。
 針を受け止めたことで大したダメージはなくとも、
 後退を余儀なくされたひろしは再び走り出そうとする。

「ん?」

 足元に転がっている、真人を叩きつけたクレーターに散らばる二つのデイバックと支給品。
 缶は原形をとどめておらず、インスタントラーメンも砕けた状態で散らばっている。
 とても食えたものではないが、もとよりロボひろしに食事できる機能はないし、
 そんなものは彼にとって二の次であり、その中で転がっている一つの武器を手にとった。
 レヴィの支給品。デバイスでなければ彼女としては使いやすい武器でもなかったものだ。
 ロボひろしも自分の機能があれば、十分に戦えるから必要と感じなかった代物。
 だが、その一つは真人を『殺せる』武器だと思い出して手にとり、
 足をプロペラにして加速しながらそれを振るう。



 此処でレヴィを追いかければ、
 邪魔されることなく助けにいけた可能性はある。
 まだ彼が真人が馬の脚に変える事実を知らない今なら、
 それが失敗するかもしれない、と言う発想には至らない。
 しかし選ばなかった。選ぶと言う選択肢すら今の彼にはなかった。
 あの男を殺さない限り、彼はこの憎悪が止まることは決してない。
 皮肉なことだが、それこそが真人の目的に繋がってしまっている。
 真人は呪いが人の形となったもの。呪いとは誰かに降りかかるもの。
 真人と言う存在に対する妄執……そんな姿を見れば、既にわかるだろう。
 彼は、真人と言う存在に既に『呪われてる』と言うことに。

(考えたらそれもそうか。宿儺の指があるってことは───)

 何の考えもなしに宿儺の指を支給品に入れやしない。
 二、三本なら映画館の彼女のような存在もいるだろうし、
 他の参加者次第ではまだわからないが、一度に十五本もあると流石に別。
 もし器になれる存在がいたらこの舞台は下手をすれば宿儺の優勝確定。
 そんなワンサイドゲームでは大掛かりな準備をする意味がなくなってしまう。
 だったらあってもおかしくはない。通用するかどうかは別としても、
 宿儺相手にもましな戦いができるような代物が。

「呪具もあるってことだ!」

 呪力を持たない人間が使っても呪いを祓える、呪いが宿った武器。
 呪術師同様に階級が定められ、階級が上がる程効力を増していく。
 と言っても大したものでなければ真人には別にどうと言うこともない。
 では、その使われた呪具の階級はというとだ───特級。
 特級呪具『游雲』。同じ強靭な防御を誇る特級呪霊を以てしても、
 ダメージを通すことができるとされるほどの威力を誇る三節棍の呪具。

 此処で初めて泥仕合という名の均衡が崩れる。
 ロボひろしは真人を倒す手段を確立した。
 三節棍を使い慣れてない彼の使い方は鞭のような雑な使い方だが、
 游雲は特殊な能力はないが使用者の膂力がものを言う、単純明快な呪具。
 ましてや使用者はそんじょそこらの人ではなく高性能ロボット。
 常人を超える威力で放たれるそれは、コンクリートの道路を派手に破壊する。

「その様子、やっぱてめえには効くんだな!」


495 : 廻廻奇譚───闇を祓って ◆EPyDv9DKJs :2021/03/06(土) 02:25:40 /M1ciyak0
 あからさまな逃げる動き。
 今までにない動きでは流石に気づく。

「正解。でも分かった以上は避けるさ。」

 先程は不意をつかれたのもあったが、
 不利になりながらも真人は笑みを浮かべる。
 こういう劣勢、まだ生まれてから日が浅い彼には初めてだ。
 自分の不運な状況も、笑っていられるのが真人と言う存在になる。
 一度距離を置きながら、先程使おうと思った子供の改造人間を使う。

「あれを壊せ。」

 指示を受けて子供のような小さい改造人間数体が襲い掛かる。
 無為転変で人を改造できると言うのはすでに明かした手の内。
 戦力になるかは別に、攻撃の手を止める手段にはなるだろう。
 後を追うように体格を戻し、再び指を伸ばして戦おうとしたのだが。

「は?」

 思ってた状況と違う光景が繰り広げられる。
 躊躇も何もない。今襲わせた改造人間は全員、
 游雲を勢いよく振るわれ全員が吹き飛ばされた。
 改造人間は呪霊と同じで祓うことはできるので、全員その身を散らす。
 ───否、この場合『祓われた』と言うよりは『殺された』と言うべきか。
 彼にとってあれが『呪霊かどうか』と言う認識は持ち合わせてなく、
 『改造された人間』と言う認識なのだから。

「いやいや、躊躇うでしょ普通。
 しかもそれ子供だったんだけど遠慮ないなぁ。
 仇の為なら、他の相手はお構いなしなのかい?」

 人間だと分かって行動に出た。
 憎悪は此処まで人を変える。
 やっぱり面白い、たまらない。
 誰かを堕とすことが呪いの本分なのだから。
 憎悪に苛まれてる姿であるほどに呪われた証左となる。

「手遅れで助けようのない相手を送り込んで言う言葉がそれか!」

 武器を握ってるからか。
 もとより険しい表情はより険しく見える。
 赤い呪具がより彼に威圧と言う箔を付けていく。

「さっきはガキを治せって要求したのにとんだ言い草だ。
 人間らしく身勝手であるって言うのには感心するけどね。」

「てめえの都合でしんのすけを殺しておいて、言うんじゃねえ!!」

 足をプロペラ回転させながら先程以上のスピード。
 地面から離れない程度の高さで、滑るような勢いで向かう。

「じゃあ、これはどうかな?」

 改造人間をけしかけたのはもう一つ理由がある。
 どうしても距離があってバレずに取りに行くのが難儀だったから、
 簡単なもので注意を引いてほしかったのもあった。

 その手に構えるのは沖田のバズーカ。
 片手は刃に変化させて注意を引きつつ、
 残った片手は後ろ手にデイバックの所まで伸ばして手にしてきた。
 もっとも、会話で時間が稼げたので殆どそれをする意味はなかったが。
 このバズーカの威力は使用する当人も彼女を殺したので分からないものの、
 機械を破壊することぐらいは難しくない代物であるのはわかる。

「バズーカだからなんだってんだ!」

 避けることはそう難しいことではない。
 空を飛べるので避ける方角は自由にできる。
 人の時と違って動きを見切るのもたやすいことだ。

「へぇ、それなら───この方角で。」

「な!?」

 笑顔で撃つ方角は彼から見て前方のコンクリートの大地。
 撃つ本人も無傷では済まない程に近い位置。
 だが、これでよかった。

 発射とほぼ同時に地面に直撃し、爆発。
 バズーカは自分の身体程融通が効くわけでもないし、
 人の兵器なんて初めて使ったのだから当てられるとも思わなかった。
 相手が避けられる可能性があるなら、いっそ今すぐ爆破してしまえばいい。
 呪霊と言う類であるからこそできる、ほぼノーリスクの自爆戦術。
 爆風で真人が吹き飛び、当然迫っていたロボひろしにも襲い掛かる。

「しまっ───」

 プロペラを前方に向けて後退と同時に爆風の緩和。
 機械らしく判断はどれも正しかったものの流石に近づきすぎた。
 完全には防げず、先程自分が真人にやったように吹き飛び、
 コンクリートへ転がる形で叩きつけられる。

(まだ動ける!)

 休む暇はない。
 一刻でも早く、一秒でも早く───殺したい。
 善意なんてものはどこにもない、殺意だけが今の彼の動力源。

「ンンン〜〜〜ッ!!」


496 : 廻廻奇譚───闇を祓って ◆EPyDv9DKJs :2021/03/06(土) 02:27:40 /M1ciyak0
 起き上がる前に、三代鬼徹を握って迫る腕。
 振り下ろされた一撃を回避するも、休む暇を与えないように振り回す。
 体勢をうまく戻せないまま、石をもたやすく切り裂く業物の威力を見せられていく。
 技術も何もない、殆ど乱雑に振るうだけの、鞭の先端に剣がついただけのような動き。
 しかしその動きはまさに型に囚われることのない暴風の剣技。植え込みを裂き、
 コンクリートに裂傷を刻み、木々を容易く切り倒し、駐車してた車を廃車にする。
 二人が移動するほど、元々整っていた景観は台風の過ぎた後のような光景へと変わり果てた。

「曰く付きの物だとは分かってたけど、すごい業物だ。」

 いくら曰く付きと言う点を考慮しても、刀で此処までの性能はそうはない。
 技術も何もない真人の乱雑な攻撃でも、並みの刀を凌駕する業物。
 麦わら一味の主戦力たるゾロを、ローグタウンから支え続けた武器だ。
 妖刀としての性能は、新世界においても健在とされる代物である。

(あ、ついでに『コレ』も持って行こうかな。)





(クソッ、飛べねえ!!)

 先ほどの爆発のせいか、故障して足を飛べるほどの回転が望めない。
 いくら無茶苦茶なことができる高性能のロボットと言えども、
 これほど激しい戦いをすれば故障が起きることはおかしくはないことだ。
 走る分や攻撃にはまだ問題ないとしても、機動力はがた落ち。
 優位な動きをすることはできない状態へと陥ってしまった。
 近くに鎮座する店へと逃げ込んで、相手の死角から体勢を整え直す。
 少ないが本屋なのかいくつか本棚があり、一瞬でも見失いやすくなるはず。

(こいつ、目も自由に出せるのかよ!?)

 そうはいかないのが無為転変の自由度の高さ。
 真人が他にも視覚を増やすことができる。
 その事実を此処でようやく知ることとなった。
 伸びた腕から突然開きだした複数の眼が視覚を補う。
 寧ろ店へ逃げ込んだのは悪手。障害物が増えて余計に逃げにくい状況だ。
 本棚は横に両断され、未だに防戦一方となる。
 あっという間に壁際に追い詰められて逃げ場を失う。

(呪力がなきゃ殺せないなら、此処が使い時だ!)

 ロボひろしの合体以外における奥の手。
 両手を乳首に手を合わせて発射されるのはチクビーム。
 ひょうきんな見た目とそのネーミングのシュールさに対して、
 威力は見た目を遥かに超える破壊力を持った光線が両胸から薙ぎ払うように発射。
 片方は迫る腕を縦二つに、もう片方は二の腕も焼き切る。
 さらに射線上の、店の外にある駐車場の車なども二つのラインと共に爆破していく。

「そういうこともできるんだ。」

 呪力をレーザーのように飛ばす、
 試せば似たようなことは出来そうだと思う。
 (指先とかその辺から、とあらかじめ断っておく)
 流石に腕が片方だけでは不便なので馬の脚へと変えて走り出す。
 店へ入ると、二階からロボひろしが飛び降りると同時に游雲を振り下ろされる。
 一番厄介なのは呪具で最大限警戒してたのもあって、横へ移動ながら腕を回収。

(ん?)

 普段ならさっきの巫女との戦いのように早く回復できるはずだが、
 状態が酷いと言うところを鑑みても、少し身体の修復が遅い気がする。
 何かしらの制限を受けてる。理由と手段はおおよそ察してはいるが、
 遅いと言っても致命的なレベルではない。事実外面だけならほぼくっついてる。
 適当にくっつけた後は刀の回収は一度諦め、回復まで一先ず防戦を優先としていく。
 腕を回収しつつ、無事な右腕を刃へと変えて着地したところへ振り降ろす。
 着地と攻撃の反動がある。呪具を振り上げてガードに持ち込む暇はない。
 斬首してこれにて決着───

「させるかよぉ!」

 だがこれも避けられた。
 彼の身体は四肢だけが無茶苦茶な動きができるわけではない。
 游雲を一度手放し、足から上の身体の全てが股下をくぐるように回転。
 鉄拳寺との戦いにも用いた驚異的な可動域は初見殺しの一言に尽きる。
 真人の一撃は地面へと叩きつけるだけで終わり、逆に大きな隙を晒す。
 顔面を掴まれ、ロボひろしの頭突きが叩き込まれる。
 痛みを伴うと言うブレーキも、道徳のブレーキもない。
 故に威力は絶大。これが常人であれば即死の威力だろう。
 一撃で見るに堪えないような顔へと変えられたその姿を前に、
 休む暇を与えず呪具を潰れた顔面へと叩きこむ。


497 : 廻廻奇譚───闇を祓って ◆EPyDv9DKJs :2021/03/06(土) 02:29:21 /M1ciyak0
 寸前、背中から生えた白い翼が真人を上空へと逃がす。
 視覚を取り戻しつつ、天井を破壊してそこから逃亡。
 逃がすつもりなんて欠片もないロボひろしはジャンプ一つで追いつく。
 飛ぶことはできずとも、人間離れ(いやロボットだが)した跳躍力で問題ない。
 その間に地上へ降りるように真人は着地して、左腕が動くかを軽く確認する。
 真人が見上げ、ロボひろしが見下ろす。

「参考までに聞くけど、あんたは俺を殺した後どうするつもり?」

 突然として、真人が会話を持ちかけてくる。
 先ほどまでの怒涛の戦いはいきなり静けさを感じさせた。
 相手の腕はもう治ってる。疲労と言うものも相手にはない。

「あ、別に時間稼ぎとか意図はないよ。
 ただ素朴な疑問さ。信じるか信じないかは別だけど。」

「何で、そんなことをてめえが聞くんだ。」

 信じる気などさらさらないが、
 何をしてくるか分からないことに変わりはない。
 適切な対応ができるわけでもないので、着地しつつ返答する。
 寧ろ隙を見せたら攻撃するつもりの構えだ。

「あんたにとって俺は殺すべき仇敵。
 殺した後、一体何をするつもりなのかなって。」

 勿論、楽しみたいから負けるつもりはないけどね。
 自信ありげに不敵な笑みを浮かべる真人に警戒は怠らない。
 質問に対しての答えは、一つだけ。

「決まってんだろ! お前の化け物に攫われたレヴィちゃんを助けるに───」

「へぇ、ガキの方は大事じゃないんだ。」

 その一つの答えを止めたのは
 暴力も何もない、たった一言。
 息子について。

「なんで、しんのすけが出てくるんだよ……。」

「えーっと……ああミルドラース。
 主催の奴が言ってたじゃあないか。
 彼は優勝者に対して願いを叶えてくれる。なら、
 優勝者の権限を使ってガキを生き返らせてもらえばいい。
 そうすればそっちのガキは生き返るし、過程で俺も死ぬ。
 親は子の為に尽くす……人間ってそういうものでしょ?」

「ふざけんな! その為に全員殺すってのかよ!!」

 息子の為にしんのすけの親友であるマサオ君も、
 この殺し合いで出会ったレヴィちゃんも、もう一人の自分も殺すと言うこと。
 誰も殺さない、殺させないという彼女と交わした言葉から最もかけ離れた行為。
 とても受け入れられるわけがなかった。

「第一『息子に尽くすのが親』っててめえは言ってるが、
 俺にはそれが『息子を免罪符にしたバカな親』にしか思えねえ!」

 息子を自分の私利私欲のために利用するなど、
 どんなことがあっても許されることではない。
 それは彼ではないが未来のにおける野原ひろしが相対した敵、
 金有増蔵とやっていることと殆ど変わりはしないだろう。

「ガキも死に際に言ってたでしょ? 誰かを助けたそうな遺言。
 俺にも頼み込んでたよ。仲間が危ない目に遭ってるから助けてって。
 でもあんたはガキの言葉に耳を傾けず、仇の俺を倒してさっきの子を助ける。
 あんたにとっては残り百八人の命とガキの命、どっちを選ぶかもう決まったわけだ。
 いや、もうあれから随分時間が経ってることだし、百七人になっちゃったかな?」

「違う!! 俺は───」

『しんのすけのいない世界に未練なんかあるか!?』

 あくまで野原ひろしの記憶であり厳密には彼の記憶ではないが、
 戦国時代へしんのすけがタイムスリップしたと分かった時そういった。
 戦国と言う、現代人からすれば危険な場所だがそれでも息子を助けに行く。
 それが父親としてしなければならないことだと分かっていたから。

 では、息子が死んだ世界ではどうなのか?

 息子が死んで、そんな息子を助けられる方法がある。
 ならばその方法で助けるべきなのか。明確な答えが出てこない。
 『道徳や倫理から外れた行為を選べる』と言う迷いが、一瞬でも生まれた。

「ブハッ! 嘘が下手!! 魂が見えなくても揺らいでるのがわかるよ。」

 実に楽しそうな、子供のような笑み。
 魂が見えないのに相手のことがわかる。
 彼にとっては滅多にない経験だ。

「でもいいんじゃない? そっちにとって百八人の方が大事で。
 だからガキはくたばったままでいる方が、あんたにとっては都合が───」

「黙れえええええ───ッ!!!」


498 : 廻廻奇譚───闇を祓って ◆EPyDv9DKJs :2021/03/06(土) 02:30:07 /M1ciyak0
 耳を傾けるだけの意味など何もないし、聞くに堪えない。
 ある意味ロボひろしの手を出す行動は最適解になる。
 真人の会話の大体はその場で相手を煽り散らすもの。
 多くの言葉には中身がない、あるいはその場のノリばかりだから。
 勿論、今のロボひろしにはそんな打算的な考えはもっていない。
 ただその口を黙らせなければ気が済まない、それだけ。
 游雲ではなく純粋な右ストレートが戦いの再会の合図。
 真人も両手を突き出し、刃に変えながら迫る。

「人って言うのは多い方が得をするって考えるものさ。
 至極まっとうな考えだと思うけどね。あ、でも君はロボットか。」

「しんのすけを殺したてめえに、そんなこと決められる筋合いはねえ!」

 拳と刃がぶつかり合い、
 游雲の一撃は避けつつの接近戦。
 刃に変えてみたものの、やはり相手が機械では今一つ。
 腕を斬り落とすことは叶わない。この点はあの刀の方が上かもしれない。
 素直に先程の鈍器を模したほうで殴るべきだと改めて理解して其方へと変える。

「ないならどっちか教えてよ。ガキなのか他人なのか、小より大なのか。
 言い訳しないと生きていけない。人間はそうやって言霊に従うものさ。」

「そっちのおしゃべりに付き合ってられるか!
 てめえの言葉に耳を傾ける方が間違いだとよくわかったッ!!」

 互いに受けるべきではない攻撃を用意されてる都合、
 さっきまでの激しさとは打って変わって消極的な戦い方だ。
 致命傷となる武器か部位の攻撃を避けては自分の攻撃を通そうとする。
 一見すると地味ではあるものの、互いに相手の動きを窺っていると言うこと。

「奇遇だね。俺もそろそろ終わりにしたいんだ。
 大分学ぶことができて楽しかったよ。おとーさん。」

「ふざけやがってッ!!」

 五回か六回か。
 互いの攻撃を回避しては自分の一撃を狙う。
 似たようなのを繰り返してた動きを変えるのは真人。
 大きく距離を取りながら腕を肥大化させて、近くの車を投げ飛ばす。
 すぐさまその死角を利用しながら接近して攻撃の準備に入る。

 投げ飛ばされた車へロボひろしが大きく跳躍する形で回避。
 跳躍した瞬間を狙うかのように、真人も空へと翼を広げて飛ぶ。
 下から迫る鈍器の一撃を、回し蹴りの要領でぶつけ合う。

(流石に浅い!)

 漸く入った一撃だが、相手は重力を乗せてるのもあって浅い。
 残る片方の足で蹴り飛ばされるが、それも計算のうち。
 先に地面へと着地できるのは自分で、相手は先程の飛行できないことは察してる。
 飛べば刀の攻撃などすぐに復帰できただろうし、二階への跳躍もジャンプだけ。
 何かしらの故障か何かで、機能しなくなってしまっているのだと。
 後は所謂着地狩りの瞬間を狙ってしまえばこちらが優勢だ。
 悠々と迎え撃てばそれでゲームセット。










 その予想は『真人がした攻撃』で失敗した。
 ぶつけた場所が脚部と言うのが、原因である。
 勢いよく回転する脚部は突如プロペラとなって大きく加速。

(直った!!)

 先の攻撃の衝撃で、機能が戻ってしまったのだ。
 機械は叩けば直るとか、そういうことなのかは分からない。
 とにかく使えると分かった以上、それを使わない筈がなく。

(速度が上がっ───)

 回転はもう使えないと踏んでいたせいで、
 此処で真人の対応は遅れ、顔面に初めて游雲の一撃が叩きこまれる。
 三節棍の扱いに慣れてないお陰で多少威力は低いものになるが、、
 そもそも特級呪具の一撃。顔面を潰す威力を叩き込まれれば無事で済むはずがない。
 勢いの付いた攻撃にアスファルトの上削り、バウンドしながら叩きつけられる。

(これが、これが呪具の一撃!
 しかも特級の俺にもこれほどの威力! 想像以上だ!)

 呪力が相当持っていかれる一撃。
 余り笑える状況ではないし、当人もそう思ってる。
 でも嗤う。こんな痛みもダメージも、一度も経験したことがない。
 何度かバウンドして、近くの民家の植え込みへと突っ込む。


499 : 廻廻奇譚───闇を祓って ◆EPyDv9DKJs :2021/03/06(土) 02:31:38 /M1ciyak0
(追撃するならいましかねえ!)

 倒れている真人をそのまま叩く。
 今なら状況的に自分の方が攻められる状況。
 到来したチャンスを逃すわけにはいかない。
 直ったプロペラをフル回転させて肉薄。
 そして茂みから顔を出した瞬間その呪具を───















「ッ!?」

 振るえなかった。
 植え込みから顔を出したのは真人ではない。
 目の前にいたのは仇ではなく、よく知る顔だ。
 もういるはずがない。しかし此処にいた、自分の息子の顔。
 真人が死体を利用したと思うが、焦点の合った瞳を向けている。
 死人ではない。では真人が顔を変化……その可能性はない。
 身体の変化をさせるならしてくると予想してたことではある。
 しかしその考えは捨てた。やるならもっと使える場面はあったはず。
 手痛い一撃を受けるまで使わない理由が、性根が腐った彼にあるはずがない。
 だから断言できる。彼は体を弄ることはできても誰かに変身はできないと。
 躊躇った瞬間に息子ではないことはすぐに理解する。首から下の服装は、
 服があの男と同じ、性格を現したかのような黒だったから。
 偽物とはすぐに分かった。分かったとしても、一瞬だけ躊躇った。
 たかが一瞬。だがこの状況でその一瞬の隙は、絶大なものへと変わる。

(ああ、やっぱり彼は魂がないのに人間だ。)

 状況が優勢であれば笑い転げていた展開。
 死んだはずの人間が何処かで生きてるような、
 そんな可能性に縋ることがある。それが人間の性。
 愛する者がいつまでもこの世のどこかに生きていると、
 万が一、億が一でもあるとしたらと言う可能性に縋ってしまう。
 もしそれがNPCでも、本物の息子がいると言うたった一つの可能性。
 彼は捨てられなかった。機械による100%ありえないと認識したとしても。

「あれ? 手遅れで助けようのない人を模倣したのに躊躇うんだ。」

 ゲスな笑みと人を莫迦にした態度。
 紛れもない奴だと同時に、その声帯は息子の物だった。

 真人は他人に擬態することはできない。
 勿論成長次第では本来起こるであろう未来での出来事のように、
 顔を変化させて、最終的に他人に化けられる可能性はある。
 だがこの真人は虎杖はおろか、七海とすら戦ってない真人だ。
 首だけになった漏瑚を使いサッカーをしようかしまいかしてた頃の。
 そこから僅か数時間でそこの段階に至れることはかなり難しい。
 いかにロボひろしとの戦いが新鮮で刺激的なものだったとしても。
 ではなぜ今擬態ができたのかは、左手につけた小さな銀色の指輪にある。
 ひろしを刀で狙っていた時に、散らばっていたレヴィの支給品の一つ。
 その中で手ぶらでも使えるものだと分かったので持ってきたもの。
 変身の指輪。安直すぎるものだが円卓の騎士の一人が使った宝具。
 宝具のランクもB相当とあって、精度は見ての通りのものだ。

 そして今躊躇った隙を、見逃すことはない。
 声や顔は彼だが、それを否定する右腕の鈍器。
 回避も防御も完全に間に合わなかった。

「クソッタレ───ッ!!!」

 ただ一つ、怨嗟の声を轟かせることぐらいだ。
 顔面に叩き込まれ、顔面のパーツが辺りへ散らばった───

【ロボひろし@クレヨンしんちゃん嵐を呼ぶガチンコ逆襲のロボとーちゃん 破壊】
【残り102名】


500 : 廻廻奇譚───怨親平等 ◆EPyDv9DKJs :2021/03/06(土) 02:43:47 /M1ciyak0
 重い音を立てながら倒れるロボひろし。
 顔面に叩き込み、中の部品が露出した状態で倒れる。
 色んな道具を使って色んな楽しみ方を味わえた。
 実に充実した時間……だったのだが。

「あれ?」

 困惑したのはまさかの真人。
 確かに一撃は入った。事実相手は吹き飛んで転がっている。
 だが、それにしては思ってるより威力が浅い……浅すぎる。
 確かに顔は損壊して中身が見えるようになったが、
 本来なら潰れる一撃にしては、余りにも浅かった。
 これでは機能停止にするレベルのものではない。

(銃創?)

 よく見ると右腕には無数の銃創ができている。
 ハチの巣とはこのことかと言わんばかりの傷口が。
 この状態だと確かに腕の力が落ちて威力がぶれやすくなるが、
 ロボひろしがビーム以外の銃撃をしようした場面はなければ、
 傷の位置から彼が与えられることはまずありえない。

「ああ、他にもいたんだ。」

 身体を元の姿に戻しながら、
 銃創の風穴を除けば見える参加者の姿。

「ハァ、ハァ……!!」

 余りにも戦場に似合わない恰好。
 余りにも戦場には向いてない表情。
 余りにも戦場に慣れてない魂の揺らぎ。
 一般人、佐々木哲平がまさかのこの場に参加した。










 ───時は少しだけ遡る。

 決意を固めた佐々木は家を出て早々に音に気が付いた。
 あれだけ派手な音をやっておいて、気付かない方が無理と言うものだ。
 最初は殺し合いが始まってるんだと改めて実感して逃げ出そうとも思った。
 だが、そこで戦ってる人が彼女を守っているとしたら。
 或いはこの先、彼女を守ってくれるかもしれない可能性もある。
 どちらかが味方になってくれる人であることを願いながら向かった。
 勿論、気付かれないようにこっそりと物陰から忍び寄るように。

(なんだよ、これ!?)

 想像を絶する状況に、言葉を失う。
 自分の身体を無茶苦茶に変える人間と、
 一件がらくたに見えるのにとてつもない力を持ったロボット。
 決意を固めた瞬間に出会ったのが、こんな超人的な戦いをする二人。
 この場には露伴と違って敵意を持ったスタンド使いだってありうる。
 バトル漫画のような光景を前にしては、彼でなくても大抵は思ってしまう。
 自分の決意が、どれほどちっぽけなものなのかを。
 一般人にできることなど蹂躙されるだけだと。
 眩暈と共に銃を落としかけてしまう。

(落ち着け! 藍野さんを守るって決めたばかりだろ!)

 元々NPCだなんだので危険な可能性は十分に示唆されていたこと。
 誰も勝てない存在がいれば、殺し合いではなくただの蹂躙になってしまう。
 仮にも参加者。何かしらの弱点と言うものが必ず存在するものだ。
 それにこれだけ戦えるのなら、心強い味方になってくれる可能性もある。
 大事なのは、どちらが『敵になりうるのかを見極めるのか』と言うこの一点のみ。
 漫画家としてこの場で役に立つ数少ない武器『観察と想像力』を武器にする。
 此処で下手に動かなかったお陰で、ゴブリンに気づかれずやり過ごせたのは、
 タマーニラッキー抜きの幸運なのは、彼自身を含めて知らないことだ。

 目まぐるしく動く戦いを一般人なりに必死についていった。
 どちらが危険なのかを判断しようと思ったが、足りない。
 巻き添えにならないようになるべく距離を置いていたせいで、
 会話がうまく聞き取れない距離にいた結果、片方は殺意に溢れた殺戮機械。
 片方は笑顔で生物を簡単に組み替えてしまう文字通りの怪物。
 はっきり言って、どちらも敵としか認識できない状態にある。
 このまま野放しにするのはできないが、果たして撃てるのか。
 相手が危険だとしても、銃の引き金は見た目以上に重い代物。
 仮にどちらかを狙って倒したとしても、残った一方と戦える自信もない。
 そうこうしている間に、殴り飛ばされた側の声が届く。
 吹っ飛んだお陰で、ようやく近くに来てくれたが故に。

『あれ? 手遅れで助けようのない人を模倣したのに躊躇うんだ。』

 片方が攻撃を躊躇った。片方の声が届いた。
 決めかねてるときに、どちらを『撃つべき』か。
 違う。『どちらを守るべきか』を理解して撃った。
 今の言葉を吐く奴が、彼女を殺すかどうかは決まりきったことだ。
 同時に躊躇した彼はまだ理性的。味方になりうる存在も理解する。
 殺しなんてしたくはないと同時に、あれを放っておけばどうなるか。
 そう思って撃ったが、それでもやはり覚悟を持てない一般人。
 首輪を狙わずに手だけを狙うあたり、一線は越えられない。
 もっとも、まだ夜間であるこの状況で赤外線ありと言えども、
 慣れない銃器で首輪を狙うのはかなり無理があるので最適解なのだが。


501 : 廻廻奇譚───怨親平等 ◆EPyDv9DKJs :2021/03/06(土) 02:47:09 /M1ciyak0
「残念だけど、俺はこれじゃ死なないよ。
 と言うより君……誰かを殺せないだろう?」

 ビビりまくりの魂の揺らぎ。
 すぐにわかる。戦いなんてものとは一切無縁の一般人だと。
 ガキよりもずっと揺れまくっているのがよくわかる。

(分かってたけど、銃が効いてない!!)

 分かり切っていたことだ。
 人間ならまだしも、あれはもう人間ではない。
 撃ったところで通じるかは怪しいものだと。
 そしてこれ以外に戦える手段など今の彼にはない。
 通用しないと分かっても破れかぶれに撃つも、
 今度は変化させた腕で簡単に防がれる。

「今邪魔されるのも面倒だし、殺しちゃおうか。」

 この程度どうと言うことはないが、
 また妨害されるのも癪に障る。
 馬の脚にしてあっという間に接近。
 既に手の届く範囲。無為転変を決めれば即終わりだ。
 その速度に驚き、佐々木は足を段差に引っ掛けて倒れる。
 避ける以前に身動きが取れない。取れたところで彼に避けろとは無理な話だが。
 気合だけで乗り切れるものではないことを身をもって実感させられた。

「え?」

 が、その手が何故か頭に触れない。
 腕が倒れ行く佐々木の動きに合わせずに空振り。
 余りに不可解な動きに、真人が一番驚かされる。

(腕は治したはず。身体が言うことを効かないなんてあるのか?)

 そんなわけない。
 銃創はとうに治したし、あの程度なら大した傷ではない。
 特級呪具でやられたからにしても、手に力が入らないではないのだ。
 意図的に、それをする以外何もできないかのような決定づけられた何か。
 胸につけられたタマーニラッキーが持つ、たった5%の確率。
 この土壇場で彼は引き当てて、それを運よく回避できた。
 だが所詮は一回。5%を二度連続引き当てる確率は0.25%。
 二度目でこの確率だ。一撃イコール死と言う技を相手にして、
 二度連続成功してそこから三度、四度とやられれば確実に回避不可能。
 今度こそその手が佐々木の頭に触れる。

「何処を、見てやがるんだてめえは!!」

 寸前、游雲による殴打が後頭部を直撃。
 顔面のパーツが破壊されロボットらしい部分を見せながらも、
 十分に稼働が可能な状態である彼はすぐに立ち上がっていた。
 多量の血液を吹き出し、呪力が持っていかれ白目を剥く。
 倒れる真人の手は、ギリギリ佐々木の身体に触れずに済む。

「た、助かっ───」

 命があることに安堵する佐々木だが、目の前の光景に再び絶句する。
 倒れている相手に、ヌンチャクを何度も叩き込むロボットの姿。
 何度も何度も、返り血も顧みることなく確実に殺す為の行動。
 悍ましい光景に、声を上げることも逃げることもできない。

(なんて、なんて新鮮なインスピレーションなんだ!)

 本当に冗談抜きで笑えない状態。呪力がある限り死なないが、
 裏を返せば呪力が尽きれば死ぬ。ましてやあれは特級呪具。
 他の呪具とは違う。このまま続けば本当に呪力が尽きてしまう。
 だとしても彼は嗤う。その新鮮さに。

(そうか、これが……!)

 まだ生まれて長くないがゆえに、
 特級呪霊と言う存在故に感じたことのない境地。
 生命の終わりはいくつも、今さっきも見てきた。
 だがそれはあくまで与えたもの。自分は経験したことがない。





 『死』と言うものを。





(領域───)

 死ぬかもしれないと思えた。
 だからこそ見つかるまでに時間がかかった。
 漸く見つけた。探していたモノはそこにあるんだと。
 今ならそのステージに立つことができる。


502 : 廻廻奇譚───怨親平等 ◆EPyDv9DKJs :2021/03/06(土) 02:56:03 /M1ciyak0
(いや、まだだ。)

 だが、使わない。
 と言うより、今使うメリットがなかった。
 使ったところで無為転変が通じないのは共通。
 もう一人は一般人。使わずとも簡単に殺せる。
 何より、游雲で受けたダメージはかなりのものだ。
 此処で初めての領域展開をして、呪力を保てるかも怪しい。
 いかに此処では呪力の供給がしやすいと言えども限度がある。
 だからやることは一つだけ。

「!」

 体を縮められたことで攻撃が避けられ、クレーターを作る。
 そのまま真人は縮んだ身体で反撃として自分の血を飛ばす。
 視界を赤く染められるが、彼としては大して影響はない。
 真人が逃げたと思われる足音に視線を向けながら拭き取ると、

「バイバーイ。」

 真人の移動先は、狭い下水道。
 自分の身体をゲル状のような状態で滑り込ませながら手を振る。
 首輪は外せないのか、そんな身体でもその存在が目立つ。

「楽しかったよー。」

「てめえッ!! 今更逃げるんじゃねえ!!」

 下水道に潜っていく腕を叩きつけるが、下水道に既に彼の姿はない。
 何が何でも追跡しようと、近くに見つけたマンホールを探す。
 辺りには見当たらず、同じエリア内を探索の為駆け抜ける。

「絶対に───」

 見つけるのにはそう時間はかからなかったものの、ロボひろしが突然倒れてしまう。
 体力の概念こそないものの、彼には避けようのないものが彼にはある。
 単純な話、そう───燃料切れ。

(クソッ! 何やってんだよ俺ッ! 動けッ! 動くんだよッ!
 殺すんだろうあいつをッ! みさえの、しんのすけ仇だろうがッ!!)

 游雲を使う際に筋力を多量に使うようにしていた上に、
 嘗ての戦いと同じかそれ以上に無茶な動きをしてきた。
 この僅かな短時間でも無理が起きて当然のことだ。

「チクショオオオオオオオオオオ───ッ!!!」

 殆ど動かない身体でできるのは叫ぶことだけ。
 真人の完全な逃走によって、この戦いは決着がついた。





 ◇ ◇ ◇
 




「失礼ですが……貴方は乗ってるんですか。」

 叫び終わって静かになった戦場にて、
 佐々木は銃を構えながらロボひろしに迫る。
 真人の血を浴びてるのも相まって、人殺しのそれにしか見えない姿だ。
 もっとも、それはロボひろしも浴びてるのでお互い様か。

「……銃を向ける必要はねえよ。
 燃料切れで俺は動けないんだ。」

 意味はないと言われても、佐々木は銃を降ろさない。
 他の参加者やNPCがいたときの自衛なのはあるにはある。
 だが何よりも、彼を怖がってるがゆえに降ろすことができなかった。
 目の前で怪物であっても攻撃する姿は物語の主人公のような、
 ヒーローみたいな高潔さとは無縁の泥臭いを通り越した、
 推理物とかにある私怨でめった刺しにする犯人のような。
 復讐劇を成し遂げてる最中のダークヒーローのような。
 まともとは呼ぶにはとても無理のある、倫理から外れた行動。
 漫画ならまだしも、目の前でやられて鮮明に残ってる。
 怖くないと思う一般人の方が珍しいだろう。

「答えて、もらえますか。」


503 : 廻廻奇譚───怨親平等 ◆EPyDv9DKJs :2021/03/06(土) 02:58:55 /M1ciyak0
 今必要なのはその答えだ。
 この人は敵なのか、味方なのか。
 いや、此処で乗ってるなどと言う奴はまずいない。
 助けてくれる可能性がある相手に反感を買ってどうする。
 はっきり言ってこの質問に何ら意味などなかった。

「わかんねえんだ。」

「え?」

 しかし、返ってきた返答は予想外なものだ。
 絶対に此処は『はい』と言うはずの状況において違う返事。
 燃料切れでも動く首を、百八十度回転させながらロボひろしは言葉を紡ぐ。

「レヴィちゃん……仲間を助けたいし、
 マサオ君って息子の友達がいるんだ。まだ五歳の子供なんだよ。
 息子の友達でなくとも、大人として保護しなくちゃあならないんだ。
 けどよ……あいつに殺された息子を生き返らせる可能性があるって思うと、
 どんなに甘い誘惑だとしても、どうにかできる自信が今の俺にはねえんだよッ!!」

『ブハッ! 嘘が下手!! 魂が見えなくても揺らいでるのがわかるよ。』

 あの言葉は本当だ。
 今でもその揺らぎが消えたわけではない。
 もし動ける身になったとして、本当に助けるのだろうか。
 レヴィが気を失ってるのをいいことにそのまま首を圧し折る姿。
 起き上がった瞬間目の前の青年を叩きつぶしてしまう光景。
 あり得てしまう可能性を前に、答えが出てこなかった。
 いままではNOと言い続けることができた答えも、
 一瞬でもYESと言う選択肢が出てしまった現状。
 それはこれからも、昨日停止するまで永遠に付き纏うだろう。

 ミルドラースが此方の願いを叶えるかと言ったらNOだ。
 今まで何人もの嵐の如く現れた存在と家族で立ち向かってきた。
 その中において最後まで信用できた巨悪なんて、一人としていない。
 これらはひろしの記憶を模したものであって、厳密には彼の記憶ではない。
 だがこれらが判断材料になるかならないかなら、なるものだ。

「少し遠くに怪物みたいなのがいるだろ。
 あれが俺の息子のしんのすけだ……あいつに変えられたんだよ。」

 一方で、どれだけ信用できないとしても。
 父と呼んでくれた息子と言うかけがえのない存在。
 大事な子供を、邪悪な存在によって理不尽に殺された。
 今その誘惑を跳ね除けるだけの自信が、彼にはない。
 彼は一家の大黒柱ではあるが正義の味方でもなければ、ヒーローでもない。
 一人の記憶と心を持ったロボ───でもとーちゃんなのだから。

「……俺も、助けたいって人がいます。
 俺が生き残るよりも、ずっと世間を喜ばせる人が。
 こんなふざけた殺し合いで死んでいいはずがない人が。
 その人を喪った時、俺も同じような考えをするかもしれません。」

 悲痛な叫びの彼を前に、佐々木も静かに独白する。
 彼は言うなれば、今後もあるかもしれない未来の自分。
 見た目こそSFを頑張って目指したが失敗した見た目のロボットでも、
 ありもしない希望に縋ってしまう、弱い人間のようなもの。
 お互いの立場が逆だった可能性も何処かにあったのかもしれない。

「俺には分かりません。貴方を助けることが正解か、間違いか。」

「だろうな……」

 助けた瞬間襲う可能性だってある。
 助ける理由なんて、どこにもない。
 普通に捨ておくかとどめを刺されるだけ。
 仇も討てないまま、此処で終わりだ。

「だから、今だけでも最善を選びます。」

 彼が思っていたこととは裏腹に、
 動けないロボひろしのデイバックへと手をかける。
 当然、一番困惑しているのはロボひろしだ。

「おい、何をやってんだ!?」

 もしここで彼を放っておくか撃って倒したところで、
 結局のところあの怪物を相手に、自分の手で倒せる気はしない。
 タマーニラッキーなしでは助からなかったのだから、
 今後自分で倒せる確率など限りなくゼロに等しく、
 対抗できる参加者が他にいるのかも不明な状況だ。
 (岸辺露伴は自分と一緒にいる可能性が皆無なので除外とする)

「俺は貴方に助けられた! だからその分を返します!」

「あれは偶然の成り行きだ!
 感謝されるようなことは一つもねえぞ!」

「だとしてもッ!! 此処で見捨てたくありません!」

 唯一戦えてることが証明された彼を助けること。
 自分と藍野伊月が生存できる可能性の一つになる。
 利用目的は確かにあるので偽善ではあるのだが、
 根底にはやはり見捨てられないと言う、良心の呵責。
 盗作云々はともかくとして、彼の性格は基本的には善性だ。
 『僕はともかく君が? 冗談は盗作だけにしろ!』なんて、
 露伴からすればそのことについては嘲笑うのは想像するに難くない。
 完全な悪人とも言えない彼をこのまま見捨てることに、
 酷く気が引けたが故の行動でもあった。


504 : 廻廻奇譚───怨親平等 ◆EPyDv9DKJs :2021/03/06(土) 03:07:09 /M1ciyak0
 身もふたもないことを言ってしまえば、
 間違った道を間違ったと理解しながら歩んだ彼にとって、
 若干感覚が麻痺してる、と言えば否定できない。
 行動したらそれに伴って起きることを理解できないのだ彼は。
 来るはずの未来の少年ジャンプが来ないといったような、
 盗作するリスクについて全く考えてなかったのだから。
 普通ならば悪癖だが、此処ではそれが行動の理由となる。
 正しいかどうかは別としてだが。

 デイバックに手をかけたのには勿論理由がある。
 これだけ暴れられるロボットだ。たった数時間しか動かさない、
 それだけの目的で参加させるとは佐々木的には考えにくかった。
 漫画家として、彼のようなキャラは活躍できるようにしておく。
 となればきっとあるはずだ。彼を動かすためのものが。

「ポリタンク! 灯油が動力源ですか!」

 デイバックから出てきた赤いタンク。
 中を確認すれば独特の臭いは間違いなく灯油。

「……ああ、それだ!」

 これだけのハイスペックを持ちながら、
 動力源は油と言うとんでもないエネルギー源を持つ。
 どこから給油すればいいのかを指示を受けながら補給するも、

「あの、これ何とかならなかったんですか。」

「それについては悪い、無理だ。」

 給油口が尻からと言う、
 絵面的にひどく誤解されやすそうな光景。
 決意を決めた顔は瞬く間に何とも言えない表情へと変わっていった。



 ◇ ◇ ◇



「多分これでいいか?」

 メーターらしき部分がマックスになったので、一先ず給油を終えて戻す。
 終えると同時にロボひろしは立ち上がって、軽く自分の状態を確認する。
 僅かながらの不安もあって、少しだけ距離を置く。

「動けるようだな……えっと、あんた名前は。」

「佐々木哲平、漫画家です。」

「俺はロボひろし……先に謝っておく。
 悪い。助けて貰ったが、今後は俺にも分からねえ。
 最悪の場合、思った通りの敵になるかもしれない。」

 今はただ真人を殺すだけが生きる理由に等しかった。
 そこに野放しに出来ないと言った正義感はなく、
 あるのは純粋に復讐の為だけの、黒い感情のみ。
 復讐を果たした時、どちらへ転んでしまうのか。
 どちらにもなりうると言うことを彼は自覚した。

「そうならないことを、俺は願います。」

 自分のしたことが正しいのか間違いなのか。
 どのような結果で示されるのかは明確には分からない。
 ホワイトナイトを連載しつづけたその時のように。
 正直不安が八割、信用が二割と言ったところだ。
 面と向かってそれを言ってくるだけ相手はまだ理性的で二割。
 力を持った存在が乗るかもしれないで、
 不安になるなと言う方が無理な話だ。

「じゃあ、俺は行くぜ。」

 一先ずレヴィを助けて、あの男を見つけて殺す。
 その後優勝を狙うのか、レヴィとの約束を守ろうとするのか。
 今の彼には何も判断できないままで。

「あの。」

「悪い、急いで……」

「いえ、お子さんの支給品だけでも。」

 此処にはいくつもの支給品が置いて行かれてる。
 真人の、レヴィの、真人が殺したRRMの、そしてしんのすけの。
 息子の支給品を自分が持っていくのは何処か忍びない。
 父である彼に持って行ってほしいと言う、気持ちの問題で。

「……あんがとな。」

「後不躾なんですけど、
 藍野伊月と言う女の子がいたら、
 できればでいいので守ってあげてください。」


505 : 廻廻奇譚───怨親平等 ◆EPyDv9DKJs :2021/03/06(土) 03:12:27 /M1ciyak0
「アンタの言ってた大切な人か?
 さっきも言ったが、俺はどっちに転ぶかわからねえ。
 保証はしないし、最悪のことも想定してくれ。」

 最悪のこと。
 藍野伊月を彼が殺めると言うこと。
 自分が稼働させた結果がそうなったら、
 死んでも死にきれないかもしれなかった。

「言ったはずです。そうならないことを、俺は願います。」

 それに返す言葉はないまま、ロボひろしはしんのすけのデイバックを回収。
 後のはそっちに任せると言って、ロボひろしは南へと向かう。
 目指すはレヴィの救出。だがその後は彼自身にも分からない。



 この世界は『廻廻奇譚』である。
 本来全く交わることのない者達は、
 奇妙な縁を以って紡がれていく。



【H-6(南部)/黎明】



【ロボひろし@クレヨンしんちゃん嵐を呼ぶガチンコ逆襲のロボとーちゃん】
[状態]:顔面破損、精神疲労(極大)、真人に対するの憎悪と殺意(極大)、真人の返り血、脚部故障(プロペラ回転での飛行に支障あり)、左手複数貫通穴(ロケットパンチ等には支障なし)、迷い、燃料満タン
[装備]:游雲@呪術廻戦
[道具]:基本支給品、灯油入りポリタンク(電動ポンプ付き)×2@現実、ランダム支給品×0〜2、しんのすけのデイバック(基本支給品、ランダム支給品×1〜3)
[思考・状況]:基本行動方針:あの男(真人)を殺す。その後は───
1:あの男(真人)を殺す。
2:しんのすけを生き返らせるかの迷い。
3:レヴィちゃんを助ける……助けるのか? 本当に……?
4:藍野伊月って子を見かけたら、どうする?
[備考]
※レヴィが魔法少女だということを知りました。
※真人の無為転変を大体把握しました。
※戦闘により損傷が激しいです。
 脚部のプロペラ以外も故障してるかもしれません。

【佐々木哲平@タイムパラドクスゴーストライター】
[状態]:岸辺露伴への羨望(大)、真人の返り血、精神疲労(中)、不安(大・主にロボひろし)
[装備]:タマーニラッキー@ペーパーマリオRPG、F2000R(残弾・予備不明)@とあるシリーズ
[道具]:基本支給品、ピンクダークの少年@ジョジョの奇妙な冒険
[思考・状況]基本行動方針:死にたくはないが、人殺しもしたくはない。
1:藍野さんを守らないと……
2:露伴にはもう会いたくない。あの怪物(真人)にも。
3:ピンクダークの少年は、凄かった。
4:支給品の回収だけでもしておく。
5:返り血も何とかしないと。
[備考]
※参戦時期は少なくとも四話以降かつ未来で藍野伊月の訃報を知るまでの間です。
※露伴からスタンド、及び能力を説明されました。
※露伴が別の世界の人間だと気付きました。
※哲平は一巻しか読んでいませんが、デイパックの中にピンクダークの少年がまだあるかは次の書き手氏にお任せします。
※真人が呪霊とは知りません(所謂改造人間か人外の類と思ってる)が、
 無為転変については大まかに把握しています、










 下水道の何処か。
 真人は人の形に戻って少し身を休めていた。
 首輪はどうやら身体を弄っても合わせてくるようだ。
 簡単に外れる仕様ではないことぐらい分かっていたことだが。

「あーあ、支給品殆どおいて行ったのは痛いなぁ。」

 使ってみればどれも楽しい代物だった。
 刀はすごい切れ味で、バズーカも中々いい経験だ。
 何よりも変身の指輪で見た相手の表情。最高だった。
 いずれも面白そうなものばかりだったと言うのもあるが、
 特に問題なのは宿儺の指。あれを置いて行ったのは手痛い。
 まだ使う必要もなく、戦いの際に落としてしまうことを気にして、
 デイバックに大事にしまったが、結果的に持ち運ぶ暇がなくなってしまった。
 残りの五本も彼女が宿儺の器になったら、戻ってくるかも怪しいところだ。
 改造人間が移動した自分にちゃんと従って動いてくれるかも不明な状況。
 指の回収は一度諦めるしかなかった。

「でもまあ、得られるものはあったからいいとしようかな。」

 領域展開の兆しは見えた。
 後は使うべき場所を見出すだけ。
 今は一先ず、試そうと思って腕を伸ばす。
 右腕を変化させて、先程の男が持っていたものを模倣する。
 不格好で人肌を維持した状態もあってかなり気持ち悪い銃口、
 そこから見た目通り、弾丸の如く放たれる改造人間。
 本来あるべき世界で彼が未来で行った技術の亜種。


506 : 廻廻奇譚───怨親平等 ◆EPyDv9DKJs :2021/03/06(土) 03:15:42 /M1ciyak0
「うん。少し改良すれば連射もできそうだ。」

 人間の兵器を見て学ぶ。
 呪霊らしく、人間らしく狡猾に。
 この場でもそれは変わらない。
 悪意は、呪いは廻り続ける……何処までも。

【???/下水道/黎明】

【真人@呪術廻戦】
[状態]:呪力消耗(大)、喜び
[装備]:大量の改造人間(ゴブリン数体を含む)@呪術廻戦+他、変身の指輪@Fate/Grand Order
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:呪霊として殺し合いに参加する。
1:皆殺し。
2:宿儺の器を探す。
3:領域展開の兆しは見えた。後は試す相手か。
4:改造人間に渡した指、どうにか回収できないかな。
[備考]
※原作16話より参戦です。
※領域展開をなんとなく感じましたが、
 似たような状態にならないとできないかもしれません。
※F2000Rを模して改造人間を弾丸にすることを覚えました。
 やってることはぶっちゃけ原作のサイコガンもどきのあれです。
※数体ゴブリンを改造人間としてストックしています。



※H-6南部の半壊した店内に三代鬼徹@ONE PIECE、
 H-6南部に沖田のバズーカ(弾未装填、残弾不明)@銀魂、
 真人とレヴィのデイバック(基本支給品は殆ど損壊して使用不能)、
 レヴィのランダム支給品×1(指輪のような手ぶらで使えるアイテムではない)
 両面宿儺の指10本セット@呪術廻戦、改造された野原しんのすけの死体、
 空のポリタンク@現実があります。
※H-6のアスファルト、駐車場周辺にクレーターや倒木、廃車などがあります。
※レヴィに宿儺の実験の後、改造人間が戻ってくるエリアに設定されてます



【游雲@呪術廻戦】
レヴィの支給品
呪力を持たない人でも呪霊を祓える武器『呪具』
呪具にも階級があり、游雲は特級呪具に判定される代物
特殊な術式はないがそれ故に純粋な火力重視で、筋力がものを言う武器
特級だけあってまともな呪具でも呪術でも余り通じない硬さを持つ、
特級呪霊である花御にもある程度のダメージが通る程の代物
売ると五億はくだらない超高級品

【変身の指輪@Fate/Grand Order】
レヴィの支給品
ランサーガレスの宝具(ゲーム上ではスキルか礼装扱い)
貴婦人ライオネスから賜った、様々な色に変化する銀色の指輪
変身の魔術が込められており、姿を変えることができる
ガレスはこれを用いて身分を隠して試合に出ていたとか
変身中は当人の力が増減したりすることはなく、
元の力を維持したまま戦うことができる
魔術ではあるので魔力、或いは代替えが必要
真人の場合は呪力を消費して発動する

【灯油入りポリタンク@現実】
ロボひろしが動くための燃料(食用油等でも代用可能)
給油のための電動ポンプも付属。ストックは三つ(一つ消費)
あくまでメーターを満タンにするだけの量が入ってるだけなので、
見た目より量は少ない


507 : 廻廻奇譚───怨親平等 ◆EPyDv9DKJs :2021/03/06(土) 03:16:01 /M1ciyak0
以上で投下終了です

変身の指輪についてですが、
ランクBの宝具と言うことで個人的な解釈が強いものとなってます
(詳細な描写が存在しているわけではなく、
 変身した姿でガウェインと一騎打ちしたものの、
 当人は気づいてるのか気付いてないのかも現時点では不明)

問題がありましたら修正させていただきます


508 : ◆EPyDv9DKJs :2021/03/06(土) 11:12:42 /M1ciyak0
廻廻奇譚───怨親平等の時間は早朝でした、失礼しました


509 : ◆7PJBZrstcc :2021/03/09(火) 23:07:36 RrJs465E0
島村卯月、野比のび太、ピーチ姫、平野源五郎を予約します


510 : ◆7PJBZrstcc :2021/03/10(水) 19:03:00 r0rH7oyc0
投下します


511 : とけないこおり ◆7PJBZrstcc :2021/03/10(水) 19:03:53 r0rH7oyc0
 炎と氷の戦いは、完全に膠着状態に陥っていた。
 氷の魔法使い卯月がフリーズロッドを用いて繰り出す吹雪は、辺りの半径数十メートルを白く染め上げ、凍り付かせる。
 対し緊縛師平野は支給されたスタンド、マジシャンズ・レッドで自身の周囲数メートルに炎の囲いを作ることで己と仲間を温める。

 しかし、この均衡は僅か数分で崩れようとしていた。

「ぐっ……!?」
「だ、大丈夫!?」

 いきなり崩れ落ち、その場に膝をつく平野。
 彼の額にはこの寒さにもかかわらず汗が滲み、尋常でないことが一目でわかる。
 その様子を心配するのび太だが、平野はすぐに再び立ち上がりながらこう言った。

「すまぬ。どうやら、今出している炎は私の精神を消耗するようだ。
 このままでは、あと数分で消えてしまうじゃろう」
「そんな……!?」

 平野の語る絶望的な現状に、思わず顔が青褪めるピーチ姫。
 しかし彼女はまだ諦めていなかった。

「そうだわ。のび太、あなたのデイパックに何かないの?
 私のには役に立ちそうなアイテムは入っていないのよ」

 縋るような思いでのび太に頼むピーチ姫。
 事実、彼女は自分のデイパックに入っている最後のランダム支給品をすでに確認しているが、とてもこの状況を打破できるとは思えないものだった。

「ええと、何かないか何かないか……!」

 一方、のび太はピーチ姫に頼られた後、必死になってデイパックを漁っていた。
 手当たり次第にデイパックの中にあるものを必死に取り出す姿は、彼の相棒たるドラえもんが慌てているときにひみつ道具を取り出そうとしている姿によく似ていた。
 のび太のデイパックの中にあるストロングゼロ、参加者名簿、会場の地図が彼の手で地面に散らばっていく。
 そして彼がランダム支給品の一つを手に掛け、それを見たとき、彼は動きを止めた。

 それは、一見すればただのうちわだ。
 事実、平野とピーチ姫はこの状況では何の役にも立たないと思い、分かりやすく落ち込んでいる。
 しかし、のび太だけは違った。

 彼はこのうちわが何かを知っている。
 このうちわが、ただのうちわでないことを知っている。

「これは、風神じゃないか!!」
「風神?」

 思わず叫ぶのび太に対し、ピーチ姫は思わずオウム返しに疑問の声をあげる。
 それに対してのび太は手早くこのうちわについて説明を始めた。

 強力うちわ「風神」
 このうちわは、二十二世紀からやってきたドラえもんが持つひみつ道具の一つ。
 空気抵抗が大きく、わずかに扇ぐだけで普通のうちわと同じくらいの風が出る。
 そして普通のうちわと同じように扇げば、人を容易く吹き飛ばす暴風すら生み出せる代物である。

「これを使えば吹雪も吹き飛ばせるんじゃ……」
「そうね。あの子に向かって思いっきり振れば持っている杖もどうにかなるかもしれないわ」

 風神のおかげで希望が生まれ、前向きになるのび太とピーチ姫。
 しかし、希望を見つつも平野だけは慎重だった。

「うむ。しかし念の為、作戦を立てたほうがよいじゃろう」

 平野の提案で作戦を考えることにした三人。
 しかし時間はない。平野の精神力の消耗でマジシャンズ・レッドの炎はどんどん小さくなっている。
 なので三人は手早く作戦を考えた。それは作戦と言えるほど大した代物ではなかったが、今の三人には十分だ。
 タイミングを考え、作戦に必要なアイテムを受け渡し準備完了。

「タイミングが大事じゃぞ」
「ええ。分かってるわ」
「じゃあいくよ。いっせーの――」
「「「せっ!!」」」


512 : とけないこおり ◆7PJBZrstcc :2021/03/10(水) 19:04:24 r0rH7oyc0

 三人が同時に叫ぶ。これが作戦開始の合図だ。
 まず平野はマジシャンズ・レッドの炎を自らの意志で消す。
 これにより三人は低温に襲われることになるが、そこは覚悟の上だ。

「やああああああああああああ!!」

 次にピーチ姫は、のび太から渡された風神を思いっきり振り回した。
 風神は普通に扇いだだけでも人を吹き飛ばす暴風を生む。ならば全力で思いっきり振り回せば、それは吹雪すら吹き飛ばす嵐となる。
 これで吹雪で覆い隠されていた卯月の居場所が分かるはずだ。

 そんな役どころを姫にやらせるのか、というツッコミも聞こえてきそうだが心配ご無用。
 なぜならピーチ姫はそんじょそこらの姫にあらず。
 確かに攫われ役をこなすことが多い彼女だが、時にはマリオと共に冒険し戦うことだってあるのだ。
 だからこの程度体を張るくらいはなんてことない。

「くっ!?」

 そして三人の狙い通り吹雪は止み、苦悶の声をあげながら卯月は姿を見せた。
 あまりに突然の強風に、彼女は魔法で吹雪を起こし続けられず、咄嗟に氷の壁を作ってやり過ごすことにしかできなかったのだ。

 その隙にのび太は手に持つ不死川玄也の散弾銃を撃つ。狙いは勿論卯月の持つフリーズロッド。
 しかし彼女は冷静に、吹雪を起こす前と同じく氷の盾を作り銃弾を防いだ。

「隙あり」

 だが卯月がのび太の銃弾に意識を割いている間に、平野が紅蓮の糸で彼女を再び束縛する。

「無駄だということが分からないのですか」

 卯月は冷静に、冷徹にまたも周囲の温度を下げ、すぐに紅蓮の糸を打ち消す。
 しかしそれは一瞬、ほんの刹那とはいえその場所に硬直することを意味する。

「えい!」

 その隙を逃すのび太ではない。だてに幾多もの冒険を潜り抜けてはいない。
 動きを止めた卯月の手元に向かって、散弾銃とは違う手に持っているレイガンを放つ。
 これで杖を落とすはず、と誰もが思った。撃たれた卯月ですら思った。
 しかし次の瞬間、信じられないことが起こる。

 スッ

 なんと、卯月自身も意識していない足運びで僅かに体を回し、手の位置を変えてのび太のレイガインを躱したのだ。
 これは彼女の記憶が関わっている。

 そもそも、記憶と一言に言ってもいくつかの種類がある。
 そして卯月が失った記憶は自分が誰か、今まで何をしてきたのか、というもの。いわば思い出である。
 この思い出を、脳科学ではエピソード記憶という。

 一旦卯月の話に戻るが、彼女は元の世界ではアイドルをやっていた。
 その事実は彼女が記憶を取り戻すか、彼女を知る他の参加者が彼女を島村卯月と認識しない限り殺し合いの中では露見しないだろうが、ここでは置いておく。
 肝心なのは、彼女がアイドルをやっていたということだ。
 そしてアイドルといえば、歌とダンスだろう。
 それだけではない、と言う人もいるだろうがまずはこの二つが上がると考える。
 アイドルが歌とダンスを覚える為にすることは何か、すなわち練習だ。

 島村卯月はアイドルだ。それもただのアイドルではない、彼女が所属するプロダクションの中でも看板と言っても差し支えないアイドルだ。
 そんな彼女にとって、自らの持ち歌は完璧に歌い、踊ることは最早当たり前。体に染みついていると言ってもいいはずだ。

 再び記憶の話に戻るが、彼女にとってダンスは最早体に染みついている。
 別にこの場合に限らず、何度もやって最早頭を使わずに体が覚えている、という経験は誰にでもあるだろう。
 これを脳科学では手続き記憶という。
 卯月はこの記憶を覚えていたのだ。

 そう、彼女が忘れたのはエピソード記憶だけである。それ以外のことは覚えているのだ。
 そもそも、本当に全ての記憶を失っていたら、今のように三人を相手にして大立ち回りなどできやしない。
 それどころか話すことも、歩くことも、持つこともできなかっただろう。
 だからこそ無意識にステップを踏み、体を回転させられたのだ。


513 : とけないこおり ◆7PJBZrstcc :2021/03/10(水) 19:04:56 r0rH7oyc0

 だがこれはあくまで無意識。卯月自身すら制御できない動き。
 故に

「あっ……」

 のび太がもう一発レイガンを撃てば、杖を撃ち落とせるのは火を見るよりも明らかだ。
 杖を落とした卯月は、気を失ったかのようにドサリと地面にうつ伏せで倒れこむ。
 その様はのび太が少し前に見た、人間を操っていたヤドリが倒され、宿主当人が正気を取り戻した時によく似ていた。

「大丈夫!?」

 倒れこんだ卯月を心配したのび太は慌てて彼女の元へ駆け寄る。
 その際、彼は近くに落ちているフリーズロッドを念のため遠くに蹴飛ばしておいた。

「あの、私は……」
「もう大丈夫だよ。君は杖に操られていたんだ」

 少しだけ頭を上げ、何が起こったのか分からないとばかりに不安げな顔を見せる卯月に、のび太は安心させるべく優しい笑顔を向ける。
 そんな二人に対し、後ろで控えていたピーチ姫と平野も安心して息をつく。
 これでもう大丈夫だと。記憶喪失の少女を助け、この後は彼女の記憶の手がかりを探しながら、ミルドラースを倒すために行動すると。
 のび太、ピーチ姫、平野の三人はそう思った。


 だがそれは大いなる間違い。
 そもそも、卯月が杖に操られていた事実など存在しない。
 彼女は自身の意志で杖を振るい、のび太達を殺そうとした。それが真実。

 だが今はのび太と戦わず助けられている。これの意味は何か。
 心変わり? 情の芽生え?
 いいや違う。

 氷の魔法使いはとても冷たい。それは魔法だけではなく、心も同じく氷の如く凍てつている。
 そのことをのび太達は見切れなかった。
 故に

「ありがとうございます」

 そのツケは、彼らが支払う。

 お代はまず一つ。
 ピーチ姫と平野はそれを思い知る。

「あなたが本当に愚かで」

 のび太の体を貫く光の刃が、それを教えてくれる。

「う、嘘じゃ……」
「――のび太さあああああああああああああん!!」

 あまりの光景に、平野は思わず現実から目を逸らしたくなるが、ピーチ姫の叫びが彼を現実から逃がさない。

【野比のび太@ドラえもん 死亡】
【残り101名】


514 : とけないこおり ◆7PJBZrstcc :2021/03/10(水) 19:05:30 r0rH7oyc0





 ここで時は遡り、未だ卯月が吹雪を出していたところまで戻る。

 彼女はこう考えていた。このまま吹雪を出し続けていれば、いずれ向こうが先に力尽きると。
 だが同時にこうも思った。しかし向こうの手札を完全に把握していない以上、何らかの方法で吹雪を無効化されるかもしれない。と。
 そこで彼女は自分が持っているデイパックの中を検めた。

 すると中から剣の柄だけが現れる。
 卯月は一瞬外れかと思うが、一応説明書きを見るとそこにはこう書いてあった。

『ビームサーベル。
 手に持っているとき、持ち手の意志に応じて刃を自在に出せます。切れ味は抜群です。
 なお、ス〇ーウォーズのライ〇セイバーではありません』

 一部意味の分からない文章があったが、とりあえず試しに使ってみると、卯月の意志通りに刃が現れる。
 これを見た彼女は、ある作戦を思いついた。

 卯月は思い返す。
 戦い始めたとき、敵の一人である子供がこう言っていたことを。

『ダメだよ!!あの子、誰かに操られているんだ!!』

 そう言った後、彼は杖を壊そうとし、なおかつそれに敵の仲間も異論を挟まなかった。。
 つまり、なぜそんな勘違いをしたのか不明だが、彼らは私が持っている杖に操られて殺し合いに乗ったと思い込んでいるのだ。
 これは使える。卯月はそう思った。

 そして立てた作戦はこうだ。
 まず、吹雪を無効化する方法があるというのが自分の考えすぎの場合、順当に吹雪を続けて押しつぶす。
 念のため移動して、あの銃で撃たれても問題ない位置にいることも忘れずに。
 次に、もし吹雪を無効化された場合は、その原因を断つことを優先する。
 最後に、それさえもできず杖を落とされた場合は、杖に操られていたふりをしよう。
 適当に一度倒れ、何が起きたか分からないふりをすれば向こうは望んだ結末になったと勘違いするだろう。
 そこでビームサーベルをあらかじめ懐にしまっておいて、タイミングを見計らって不意打ちすれば一人殺せるはずだ。

 結果は御覧の通り。
 途中、卯月の無意識で体が動くという予想外はあったものの、彼女の杖は弾き飛ばされた。
 そのまま敗北したフリをして、近寄ってきたのび太に対し懐のビームサーベルを突き刺し殺害。
 卯月の作戦は成功したと言ってもいいだろう。

 そして残り二人はいきなり仲間が死ぬという状況に動揺している。
 この機を逃す手はない。

 卯月はフリーズロッドを落とした。そして拾いに行くには少々時間がかかる。
 それは彼女の氷魔法が威力を減らすことを意味する。
 だが魔法が使えなくなるわけでは無い。彼女自身の魔力を用いれば、威力が落ちたとしても残り二人位は殺せる。

「死になさい」

 卯月の魔力で再び氷柱が空から、まるで嵐のように降って来る。
 しかしピーチ姫がこの状況になって己を取り戻し、持っている風神を振るって雹を吹き飛ばそうとした。
 だが卯月もそんなことは百も承知。
 のび太が死してなお手に持っているレイガンを奪い取り、ピーチ姫に向かって発射。

「難しいですね。銃というものは」

 しかし最初の一発は当たらず、その後何発か続けて撃つことでやっと命中。
 ピーチ姫の風神を弾き飛ばした。
 そのまま卯月は魔法でピーチ姫を凍らせにかかる。

「イキマッシュ」

 だがここで平野も正気にもどり、マジシャンズ・レッドでピーチ姫の氷を溶かした。

「消えなさい」

 そんな平野に卯月がレイガンを乱射しながら突撃する。
 だがレイガンの弾は平野に向かい、マジシャンズ・レッドで防がなければ直撃するような軌道の時もあれば、あらぬ方向に向かうこともあった。
 走りながら銃を撃ってまともに標的へ命中させるなど、のび太レベルの技量が無ければまず不可能だ。
 本来なら隙だらけの行いだが、ピーチ姫を庇わなければならない平野からすれば最悪だ。何せいつ攻撃が味方に飛んでくるのかも分からないのだから。
 おまけに霰は未だ止んでいない。


515 : とけないこおり ◆7PJBZrstcc :2021/03/10(水) 19:06:06 r0rH7oyc0

 故に――

「がっ!?」

 霰の一つが平野の頭に直撃し、彼は気を失った。
 これでもう、攻撃を防ぐことも氷を解かすこともできない。

「悪あがきもここまでですね」

 卯月の冷たい笑みがピーチ姫の心を凍り付かせる。
 だが彼女は未だ諦めていなかった。
 彼女はデイパックに残っている最後の取り出す。
 出てきたのは一枚のカード。それを彼女は迷うことなく使用した。

「対象、平野さん!」

 ピーチ姫は必死に叫ぶが、卯月は意にも介さない。
 何せ今まで取り出さなかったのだ。もし切り札ならもっと早く使う筈だと、卯月は考える。
 そして彼女の考えは正しい。何せこれは戦うためのものではない。

「ぶっとばしなさい!!」

 ピーチ姫が叫んだ途端に、何と平野の体が宙に浮き、そのまま虚空へと飛び去って行ってしまった。
 これには卯月も思わず目をむいた。

 ピーチ姫の最後の支給品。それは『ぶっとばしカード』だ。
 桃太郎電鉄シリーズに登場するカードで、自分以外の対象一人を選んで発動。 
 効果は相手をランダムな場所飛ばすというものだ。
 ピーチ姫は逃げるなら全員で、と決めていたのでこれを使えないものと判断していた。

 ならば卯月をどこかにやればよかったのでは、という言い分もあるだろう。
 だがこの殺し合いではこの支給品にも制限がかかり、対象が近くにいないと効果が使えないようになっていたのだ。

「やってくれますね……」

 平野を逃がされ、記憶取り戻すべく優勝するという道のりが遠ざかったことを理解した卯月は苛立ちを見せる。
 しかしこれでピーチ姫にはもうなすすべもないことを理解している卯月は、ゆっくりと彼女に近づき少しづつ体を凍らせていく。

(ごめんなさい、キノコ王国の皆)

 ピーチ姫がどんどん自身が凍っていく状況で思うのは、彼女の故郷キノコ王国。
 そして――

(マリオ、ヨッシー、クッパ。どうか、この殺し合いを……)

 そして参加者の中で彼女が知る者たちに、どうか殺し合いを止めてくれと願いを込める。
 しかしその願いは途中で打ち切られ、美しい姫の氷像は完成。
 最後に

「ふん」

 卯月がビームサーベルでバラバラに引き裂けば、二度と姫の姿は誰の視界にも入らない。
 これにて炎と氷の戦い、決着。

【ピーチ姫@スーパーマリオくん(コロコロ版) 死亡】
【残り100名】


【H-7砂浜/黎明】

【島村卯月@アイドルマスター シンデレラガールズ】
[状態]:『禁断の薬』による記憶喪失および性格・容姿の変化、魔力消費(中)、苛立ち(小)
[装備]:ビームサーベル@銀魂、レイガン@大乱闘スマッシュブラザーズX (エネルギー1/5)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]基本行動方針:自分の記憶を取り戻すべく、優勝する。
1:全員殺して、記憶を取り戻す。
[備考]
『禁断の薬』を飲んだことにより記憶喪失となっています。またそれに伴い冷酷な性格に変化しています。
そして薬の効果により全身が"氷の魔法使い"として作り替えられたため傷が完治しております。
アイドル時代に培ったステップを無意識に使いこなしています。アイドル関連の記憶を取り戻せば能動的に使えるかもしれません。


516 : とけないこおり ◆7PJBZrstcc :2021/03/10(水) 19:06:34 r0rH7oyc0





 そして殺し合いの会場のどこかで、平野は未だ気絶しづけている。
 いずれ目覚め、状況を理解した時、彼が何を思うのか。

 それを知る者は、未だ誰もいない。


【???/黎明】

【平野源五郎@真夏の夜の淫夢シリーズ】
[状態]:気絶、頭に傷(小)
[装備]: 鋼の剣@ドラゴンクエストシリーズ マジシャンズ・レッドのDISC@ジョジョの奇妙な冒険シリーズ
[道具]:基本支給品、台車@現実 
[思考・状況]基本行動方針:主催者には正義の鉄槌で、その腐った心を矯正してやろう。
1:…………

[備考]
参戦時期は、悶絶少年 其の伍で「今日は逆さ吊り、鞭責めをしよう(提案)」と言った辺り
頭を打ちましたが、命に支障はありません。
ぶっとばしカード@桃太郎電鉄シリーズ の効果で飛ばされました。どこに飛ばされたかは次の書き手氏にお任せします。


※H-7 砂浜にて、以下のものが放置されています。
のび太の死体、バラバラになったピーチ姫の死体。
フリーズロッド@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド、不死川玄也の散弾銃@鬼滅の刃(弾数9/20)、サバイバルナイフ@バトルロワイヤル、強力うちわ「風神」@ドラえもん
のび太のデイパック(基本支給品、ランダム支給品0~1)、ピーチ姫のデイパック(基本支給品)


【支給品紹介】

【強力うちわ「風神」@ドラえもん】
野比のび太に支給。
空気抵抗が大きく、軽く扇ぐだけで普通のうちわと同じ風が浴びられるひみつ道具。
普通のうちわと同じように扇ぐと人を吹き飛ばすほどの暴風が出る。
のび太はこのうちわを二つ使い、一つずつ両手に持って、鳥の羽みたいに持って使うことで空を飛ぶアイデアを考えたことがあるが、このロワに支給されたうちわは一つ。

【ビームサーベル@銀魂】
島村卯月に支給。
ビームサーベ流篇に登場した、辺境の惑星に伝わる剣術に用いられる剣。
普段は柄のみだが、持ち手の意志に応じて光線の刀身が出る仕組み。
というか、名前こそビームサーベルだが実際の所はスター〇ォーズのラ〇トセイバーそのもの。

【ぶっとばしカード@桃太郎電鉄シリーズ】
ピーチ姫に支給。
自分以外の対象一人を選んで使用可能なカード。これを使うと、対象はランダムな場所にぶっ飛ばされる。
使い捨てなので、一度使用するとこのカードは消滅する。
さらにこのロワでは、対象が近くに居なければならないという制限も追加されている。


517 : ◆7PJBZrstcc :2021/03/10(水) 19:07:03 r0rH7oyc0
投下終了です


518 : ◆5qNTbURcuU :2021/03/13(土) 17:37:15 0vF9UzGA0
島村卯月、真人
予約します


519 : ◆5qNTbURcuU :2021/03/20(土) 15:17:52 a7X2kzpI0
予約を破棄します
申し訳ありません


520 : ◆7PJBZrstcc :2021/04/08(木) 19:45:31 9nI1eYqQ0
投下します


521 : 考察するM/違うものは見える景色 ◆7PJBZrstcc :2021/04/08(木) 19:46:10 9nI1eYqQ0
 C-7にて、エレンは商店街に背を向けて一人歩いていた。
 地震を起こし家一軒を倒壊させ、さらに戦闘までしたのだ。人が近くに居れば寄って来る可能性がある。
 そこで生存者一人と死体が一つあれば、下手人は確定。
 こんな序盤から殺人者エレンの情報をばら撒かれるのは拙い。
 だから彼はクレマンティーヌのデイパックを奪い、商店街から離れていたのだ。

 その甲斐あってか、エレンは誰にも出会わず商店街から離れることに成功した。
 そしてC-7の遮蔽物のあり、周りから見られにくい位置の地面に一旦腰を下ろす。
 それから、クレマンティーヌから奪った支給品を確認しようとしたところで――

『聞け! この地に集いし全てのものたちよ!』

 主催者からの放送が響き渡った。
 それを聞き終え、エレンが最初に起こした行動は、ルールブックの白紙だったページを開くことだった。

「ミカサ。アルミン。調査兵団の皆……」

 そして必死に、自分の知人の名前が名簿にないか確認するエレン。
 彼は、彼自身ですら意外だったがこの時まで、自分の知っている人間が殺し合いに参加している可能性を全く考慮していなかった。

 本来の歴史なら、エレンがパラディ島を救うため起こすはずだった地鳴らし。
 パラディ島以外の全ての命を駆逐する行い。
 このことは、座標にたどり着き始祖の巨人を掌握した暁には、全てのユミルの民に伝えるつもりだった。
 例えその過程でミカサやアルミン達と自分が戦うことになっても、知らないという不自由を強いたくなかった。

 しかしエレンは未だ、座標にたどり着いていない。
 故に地鳴らしを知っているのはフロック、ヒストリアの二人のみ。
 そんな中で調査兵団の人間と出会えばどうなるだろうか。
 無条件の信頼はないにしても、殺し合いに乗っているとは考えないだろう。
 それでも、エレンは殺さねばならない。パラディの為に。

 しかし、その覚悟は杞憂で終わる。
 なぜなら名簿にある彼の知人の名前はただ一つ。

『ライナー・ブラウン』

 地鳴らしの過程で死ぬ、マーレ人しかいないのだから。
 これを見て、エレンは心底ホッとしたように息を吐く。

「……そうか。俺はあいつらから、何も奪わないで済むのか」

 エレンが笑みを浮かべながら零した言葉に、彼自身が驚いた。

 何が嬉しいというのだろうか?
 いずれ戦う可能性すら覚悟していたというのに。

「……いない奴のこと考えても仕方ねえ」

 頭を振って気持ちを切り替えるエレン。
 今大事なのは、この殺し合いの中に自分のことを知っている参加者は一人だけということ。

 そう考えてエレンは名簿をしまおうとするが、ふと違和感を覚えもう一度名簿を見る。
 そして気づいた。

「なんかここ数合わなくないか?」

 主催者の放送では、参加者の数は111人だったはず。
 しかし名簿には112個の名前があった。
 いや、名前と言い難いものもいくつかあるが、とにかく名簿に書かれている参加者は112人だ。

 他の誰も気付いていない放送と名簿の食い違いにエレンが気付けたのは、はっきり言って偶然だ。
 他の参加者は大半が知人のいない単独であるがゆえに、そこまで名簿を注視しない。
 知人のいる参加者も友人、仲間。あるいは宿敵の名前に気を取られ、そこまで名簿を注視しない。
 仮に違和感を覚えても、一々数え直しはしない。


522 : 考察するM/違うものは見える景色 ◆7PJBZrstcc :2021/04/08(木) 19:46:39 9nI1eYqQ0

 エレンだけだ。
 ライナー・ブラウンに対し、そこまで重きを置かないエレンだけが、名簿と放送の食い違いに気付けた。
 勿論、いずれは他の参加者も気付くだろう。
 だが現時点で気付いているのはエレンだけだ。
 このアドバンテージが何をもたらすのかまでは、彼にすら理解できないが。

「……どういうことだ?」

 エレンはなぜこんな食い違いが起こるのかを考える。
 まず考えられるのは、単なるヒューマンエラーだ。
 何せ参加者は百人以上いるのだ。数え間違い位起きてもおかしくはない。
 だがもし違ったら?

 そこでエレンが思い返すのは、放送前に殺した女のこと。
 クレマンティーヌ。彼は名前を知らないが、とにかく彼は一人殺した。
 その分が差っ引かれているのだろうか。
 しかしそれならそれで違和感がある。

 これだと殺し合い開始から二時間近くたつのに、一人しか死んでいないことになる。
 まさか殺し合いに乗っている参加者が自分一人、なんてことはありえないだろう。
 殺し合いに乗っていない参加者がいるのはいいとしても、自分しか乗っていないなんて状況は異常すぎる。

 それに加えて、最初に出会った参加者を襲うNPCまでいることを鑑みても、そんなことがありえるのだろうか。

「まあいい」

 そこまで考えて、エレンは思索を止めた。
 単に他の殺し合いに乗った参加者が、最初は様子見しているだけかもしれない。
 あるいは、単純に他の参加者と出会えていないだけかもしれない。
 どちらでなくても、主催の方が何かしら考えてはいるだろう。何も考えていなかったら単なる馬鹿だ。

「……!」
「……イーッ!」

 そしてエレンが名簿をしまい、クレマンティーヌの支給品を調べようとしたところで、何かの声と音が聞こえた。
 声は二つ。片方は苦悶と悦びが混ざり合ったような不思議な声。もう一つは、明らかに楽しんでいる声。
 音は何か柔らかいもの同士がぶつかりあうようなもの。
 一体なんだ、と思いエレンが声と音のする方を覗き込むと、そこには――

「キィーッ! ゴブリンの締まりも中々良いではないか!!」
「GOB!!」

 どう見ても人ではない緑色の異形が、ゴブリンの尻に陰茎を突き刺し腰を振っている光景があった。
 端的に言うなら、怪物がゴブリン相手にホモセックスしていた。

 この怪物の名前は不明。名前があるのかさえ誰も知らない。
 通称メガデス怪人、世界征服を企む秘密結社『メガデス』が作り出した怪人である。

 そのメガデス怪人とゴブリンの淫行を目にしたエレンは、即座に目を背けこの場を去ろうとした。
 二匹の怪物には首輪が付いておらず、NPCであることが一目で分かる。
 別に襲い掛かってくるわけでもなく、ただ盛り合っているだけのNPCをわざわざ殺すメリットはない。
 何より、彼は単純にそんな光景をこれ以上見たくなかった。


523 : 考察するM/違うものは見える景色 ◆7PJBZrstcc :2021/04/08(木) 19:47:11 9nI1eYqQ0

「ほう、参加者か。
 ちょっと生きは悪そうだが、なかなか鍛えられた体をしている男じゃないか」

 しかしエレンが去るよりも早く、メガデス怪人は彼の存在に気付いてしまった。
 怪人は兵士として鍛えたエレンの体をいやらしい目で見つめる。
 一方、見つめられるエレンとしては冗談ではない。こうなった以上、とっとと地震の力を怪人に叩き込むべく構える。

「喰らえ!」

 だが怪人の行動は早かった。
 怪人は指から紫色の光線をエレンに向かって放つ。

 この光線は通称ホモビーム。光線を受けた相手を、怪人の意のままにするという恐ろしい技である。

 対しエレンは、怪人が自分を指さしてきた時点で咄嗟に地面を転がることで躱し、光線はあらぬ方向へ飛んでいった。
 これに戸惑うのは怪人だ。

「クソォ! まさか俺の攻撃を躱すとは。
 ならばこうだ!」

 しかし怪人は行動に迷いがない。
 今度は光線を辺り一帯にばら撒いた。

『GBBBB!!』

 するとゴブリンの集団が現れた。
 怪人はゴブリンを操り、エレンに差し向けるつもりである。

「ゴブリン共! 奴をレイプしろぉ!!」

 怪人は指示を言い残し、その場を走り去っていく。
 メガデス怪人は引き際が潔く、とても逃げ足が速いのだ。

 だがゴブリンの集団程度ではエレンの相手にはならない。
 特に何も書かれることなく、ゴブリンはエレンに駆逐されてしまった。
 そしてエレンは呟く。

「なんだったんだ、あいつ……」

 ホモセックスのことしか頭にない怪人相手に対し、エレンは何を思ってあんな奴を殺し合いの会場に配置したのか、と心底疑問だった。


【C-7 平原/深夜】

【エレン・イェーガー@進撃の巨人】
[状態]:進撃の巨人(脳内のみ) 首に切り傷
[装備]:グラグラの実、立体起動装置(ガス残り2/3)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(クレマンティーヌの支給品)
[思考・状況]:基本行動方針:パラディ島を救うために、この場の全ての命を駆逐する。
1:なんだったんだ、あいつ(メガデス怪人)……
2:女(クレマンティーヌ)の武技に加え、名簿と放送の食い違いに対する疑問
[備考]
30巻で座標に辿り着く直前より参戦です


【メガデス怪人@真夏の夜の淫夢シリーズ】
正式出展は超人サイバーZ。
世界征服を企む悪の組織メガデスが作り出した怪人。
力は一般人にも負けかける位弱いが、ホモビームと呼ばれる、当てた相手を意のままにする光線を放つ強力な能力を持つ。
ただし、意のままにした相手に求めることはもっぱらホモセックスである。
また、逃げ足が速いという特徴がある。


524 : 考察するM/違うものは見える景色 ◆7PJBZrstcc :2021/04/08(木) 19:47:56 9nI1eYqQ0
投下終―――――――――――――――


















 ここからは『コンペ・ロワイアル』参加者に閲覧権限はありません。
 閲覧権限を持つのは最高管理者のみです。
 閲覧希望の場合は最高管理者の証を示すか、指示に従って権限を――――





 時は放送後しばらくのこと。

「どういうことだ……」

 ここは殺し合いの会場の外。
 殺し合いの開始を告げたあの場所にほど近い場所。

 いや、この言い方は正しくない。
 ここはバトル・ロワイアルの主催者達が集まる施設であり、殺し合いの開始を告げたあの場所も施設の内にあるのだ。
 この施設の名前は、ここでは仮に『主催本部』としておこう。
 主催本部には黒幕の部屋や殺し合いの運営に必要な部屋の他、ミルドラース、マキマ、アルタイルなど主催の上位者にはそれぞれ個室が与えられている。

 その一室、ミルドラースの部屋にて、部屋の主たるミルドラースは頭を捻っていた。
 理由は自身がさっきした放送にある。
 あの放送の内容が、あまりに不可解だったのだ。

 何が不可解なのか。
 名簿を殺し合い開始から一時間半も経ってから公開したことか。
 NPCの存在か。
 それとも自身を主催者の頂点のように示させたことか。

 答えはどれでもない。
 ミルドラースはこの部分が不可解だった。

『総勢111名、現時点を持って全ての参加者が確定した!』

 この一文の中に、二つの疑問点が存在する。
 一つは総勢111名の部分。実際には112名いるにも関わらずだ。
 これは参加者、エレン・イェーガーも抱いていた疑問である。
 だが主催陣営となればさらに踏み込んだ疑問が湧く。

 そもそも、放送を担当したのはミルドラースだが、放送原稿を考えたのはミルドラース達が”あの男”や”彼”と呼ぶ、この殺し合いの黒幕だ。
 だからミルドラースが放送原稿を確認した時、彼はこの111名の部分に気付き、すぐに部下であるゲマに確認に行かせた。
 当初はただの誤字だろうと軽く考えていたが、帰ってきたゲマの言葉に驚愕することとなる。

 なんと、ゲマ曰く彼は『この原稿に誤字は一つもない』と言い切ったのだ。
 当然ゲマも反論したが、黒幕の返答は変わらなかったらしい。


525 : 考察するM/違うものは見える景色 ◆7PJBZrstcc :2021/04/08(木) 19:48:21 9nI1eYqQ0

 一体どういうことだ、と疑問を抱くミルドラースだったが、放送が間近だったので仕方なくそのまま放送。
 結果、特に何も言われることなく放送は終了。
 更にはマキマに褒められる始末。

 一瞬、マキマは自身が今抱く疑問の答えを知っているのか、と思い聞き出そうかと考えるが、ミルドラースはすぐにそれを打ち消す。
 いくら目的の為に呉越同舟しているとはいえ、弱みを見せたくはなかった。

 二つ目の疑問はここだ。

『現時点を持って全ての参加者が確定した!』

 確定したとはどういうことだろうか。
 ミルドラースが見た限り、殺し合いが開始されたあの会場に居たのは、首輪で死んだ見せしめ二人を含む114名だ。
 断じて、他の何かが入り込む要素はないはずだ。

「あの男は一体何を考えて……
 いや、”どんな風にこの殺し合いが見えている”?」

 そもそも最初からおかしかった。
 なぜ、ミルドラースは殺し合いの主催者に選ばれた。
 マキマやアルタイルと違い、彼には殺し合いの参加者に因縁のある相手はいない。
 にも関わらずミルドラースはここにいる。なぜだろうか。

 まあ、殺し合いの見せしめで自身の宿敵である勇者の父親が死んだのはいい気分だったが。
 なにせ、自分を殺した勇者の父親が、あんな無様に、何も分からないまま死んでいったのだから。

 それはさておき、ミルドラースは決断した。

「悪魔神官。いるか?」
「はっ、ここに」

 ミルドラースは部下の魔物である悪魔神官を一匹呼び出し、指示を与える。

「よいか。今からお前はマキマやアルタイル達、私と同じ立場の者共を調べろ。
 無論、気づかれんようにな。
 どんな些細なことでも良い。何か不審な点を見つけたら記録し、次の放送の後に私に報告するのだ」
「かしこまりました」

 悪魔神官はミルドラースの指示を受け取り、その場を去っていく。
 彼はミルドラースの望む情報を手に入れられるだろうか。
 そもそも、マキマ達はミルドラースの望む情報を持っているのだろうか。
 それを知っているとしたら――

「あの男、だけか」


※ミルドラースの参戦時期は死亡後です。
※ミルドラースはゲマ@ドラゴンクエスト5 含む部下の魔物を数匹従えています。
※見せしめ二人の内、一人は主人公@ドラゴンクエスト5 です。
※ミルドラースは他の主催者が自分の知らない情報を握っていると考えています。
 その通りなのか、彼の考えすぎなのかは不明です。
※悪魔神官@ドラゴンクエスト5 がマキマ達を調べ始めました。


526 : ◆7PJBZrstcc :2021/04/08(木) 19:48:49 9nI1eYqQ0
今度こそ本当に投下終了です


527 : ◆bLcnJe0wGs :2021/05/09(日) 10:26:12 ucIPAeFM0
コルワ、レーティア、狼牙、グレシアで予約します。


528 : ◆bLcnJe0wGs :2021/05/13(木) 19:24:08 XaxaSD3o0
失礼します。
予約を延長させていただきます。


529 : ◆bLcnJe0wGs :2021/05/14(金) 22:10:12 8AR3.qhI0
投下します。


530 : あるログハウスでの一時 ◆bLcnJe0wGs :2021/05/14(金) 22:10:38 8AR3.qhI0
「•••あの2人が見せしめとして殺された後に気付いたら俺達はついさっき壊したログハウスの中に突っ立った状態でいた。」
「そこにはこの娘(こ)がこんな状態で倒れてたんだ。」
「そいつは薬の打ちすぎで馬鹿になっちまったなん言(つ)ってたんだ。 それで薬が足りないからデイパックとやらに入っていた、『エルフが作った、どんな病気も治せる薬』ていうラベルの貼られたペットボトル入りの液体を自分に注射してやがったんだ…」
「それで、『壊れたままでよかった』『何の役にも立たない、ただの玩具のままでよかった』『これは罰なんだ、皆を裏切った罰なんだ』『ごめん、ゲッベルス、デーニッツ』って泣きながら言ってたんだ。」
「俺はそんな女を放っておけない性分で、この娘を連れて行く事にしたんだ。」

コルワの問いかけに対し、狼牙はそう答える。

「…それで、この子がそんな状態になったのはあなたの所為ではないということね? けどこのままだといけないから、先にシャワーで体を洗いましょう? 丁度私がこの会場という場所で最初に連れて来られたログハウスが近くにあったわよ。 案内するわ。」

狼牙の返答に(一応は)コルワも応じてくれた。

「…。」

しかしグレシアは青ざめたままで、更には今のレーティアの姿を見たために激しい不快感にさらされ今にも倒れそうになっている。

「無理はしない方がいいわ。 私がさっきのログハウスまで運んであげるから。」

そうして、


531 : あるログハウスでの一時 ◆bLcnJe0wGs :2021/05/14(金) 22:10:57 8AR3.qhI0
狼牙はレーティアを、コルワはグレシアを抱えて先ほどのログハウスに戻る事にしようとしていた…


その時だった。

「あの…すみませーん!」

後ろの方から、女性の声が聞こえてきた。

(クソッ、まだ巻き込まれた女がいんのかよ… これだから主催の連中は許せないんだよ!)

狼牙はその声を聞いて主催への怒りの感情を更に高まらせた。

すると長い金髪の女性が狼牙達に駆け寄ってきた。

「えっと、私、気が付いたらここにいたんです!」

どうやら彼女もこの会場に連れて来られたらしく、周辺で助けを求めて走り回っていたそうだ。

「あなたもそうなのね。私達も同じだわ。 そうだわ、丁度近くに安全な場所があったから、連れて行くわ。 私に掴まって、目をつむってついて来て。」

コルワも女性を連れてログハウスに戻る事にした。

目をつむってと言ったのは、先程コルワ自身が切り刻んだホブゴブリンや、現在とレーティアの姿を見せない様にする為だ。

◆◆◆

そうして、ログハウスに到着した。

狼牙とレーティアは屋内の風呂場で体を洗う事にした。

「おやすみなさい。」

─彼らが体を洗っている間、コルワはグレシアを自身に支給されていた、布団に寝かせていた。

金髪の女性も、隣でグレシアの眠る姿を見るのであった。

◆◆◆

(うーん、布団が支給されていた事が何とも幸運だった事かしら。 おかげでわざわざログハウス内から布団を持ち出す手間が省けたわね。)

コルワは支給品の布団


532 : あるログハウスでの一時 ◆bLcnJe0wGs :2021/05/14(金) 22:14:50 8AR3.qhI0
について心の中でそう呟く。

他の支給品も確認している。

二つ目は一枚の上着。今のレーティアと狼牙にはとても着せられるような状態ではなく、彼女達には着せられずにいた。

グレシアも軍服を着用している為着用しなかった。

そして現在は金髪の女性に羽織らせている。

三つ目は異能の類を封じるというカツラと、それについた紙の様な精霊。
光を感知すると装着者にそれを知らせて、目を隠すと付属の説明書に書かれている。

光を感知すると装着者の目を隠すなど、何の為なのかコルワにはいまいち理解できなかった。

◆◆◆

しかし、コルワは金髪の女性に首輪が填められていない事に気付いていた。

(─許せないわね。)

コルワも、自分達をこんな殺し合いに巻き込んだことに憤りを感じていた。


533 : あるログハウスでの一時 ◆bLcnJe0wGs :2021/05/14(金) 22:15:40 8AR3.qhI0
【I-5/ロンリー・ロッジ ログハウス 深夜(初回放送より前)】

【コルワ@グランブルーファンタジー】
[状態]:健康 主催への憤り(極大)
[服装]:いつもの服装
[装備]:
[道具]:基本支給品、花子頭+式王子@こじらせ百鬼ドマイナー
[思考]
基本:こんな悪趣味な殺し合いなんてぶっ壊す
1:グレシアの介抱をする。
2:狼牙とレーティアが風呂場から上がってきたら何か話すべき…?
3:金髪の女性(何に対してもギャンブラー)が心配
4:もし東郷とかいうダメそうな女誑しと出会う機会があったらお灸をすえてやるわ!
[備考]
※参戦時期は少なくともキャラ加入エピソードの後。

【グレシア・ゲッベルス@大帝国】
[状態]:不快感(大)、睡眠中
[服装]:いつもの服装
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:不明
1:レー、ティア……?
[備考]
※最低でも本編イベントフェイズ『アドルフに釣り合う男?』後からの参戦です


534 : あるログハウスでの一時 ◆bLcnJe0wGs :2021/05/14(金) 22:16:21 8AR3.qhI0
【斬真狼牙@大番長 -big bang Age-】
[状態]:健康、主催に対し強い怒り、シャワー中
[服装]:全裸
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:クソ野郎どもはぜってぇ許さねぇ、俺が必ず叩き潰してやる
1:あの女性達(レーティア、グレシア、コルワ、何に対してもギャンブラー)をほっとくわけにも行かねぇ
2:兄貴や久那妓を探す傍ら、この娘(レーティア)の知り合いらしき人物(デーニッツ)も探す
[備考]
※最低でもナイトメアアイズ編終了後からの参戦です

【レーティア・アドルフ@大帝国】
[状態]:睡眠中、精神崩壊(大)、罪悪感、シャワー中
[服装]:全裸
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1、注射器、『エルフが作った、どんな病気も治せる薬@銀魂』が入ったペットボトル(1/5消費)
[思考]
基本:ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……
1:???
[備考]
※キングコア編イベントフェイズ『おくすりください』後からの参戦です


535 : あるログハウスでの一時 ◆bLcnJe0wGs :2021/05/14(金) 22:17:13 8AR3.qhI0
【支給品紹介】

布団と枕@ウマ娘 シンデレラグレイ

コルワに支給。

とあるウマ娘達がカサマツトレセン学園の学生寮にやってきたオグリキャップへの嫌がらせとして物置部屋で生活させた時にオグリキャップが見つけた布団。

寝心地はいい様で、その他の物置部屋にあった道具も気に入られており、オグリキャップ自身はそれを嫌がらせとしては受け止めなかった。

60年代米軍のミリタリージャケット@妖怪の飼育員さん

コルワに支給。

#82 脱衣婆のエピソードに登場した衣服。

コヨーテファーのステンシル入りで、八千円位のヴィンテージ品。

現在は何に対してもギャンブラーに羽織らせている。

花子頭+式王子@こじらせ百鬼ドマイナー

コルワに支給。

頭に被った妖怪の妖力を封じるカツラ・花子頭(はなこうべ)と光を感知すると装着者にそれを知らせて、目を隠す精霊・式王子(しきおうじ)のセット。
式王子は本来人には見えないが、主催側の手によって本ロワでは誰でも視認が可能になっている。

【NPC紹介】

何に対してもギャンブラー@Akinator

Akinatorをプレイしていて、診断結果にこの人物が出てきた方も多い筈。
本ロワでは不幸にも巻き込まれてしまった普通の人間である。


536 : ◆bLcnJe0wGs :2021/05/14(金) 22:17:31 8AR3.qhI0
投下終了です。


537 : ◆bLcnJe0wGs :2021/05/16(日) 18:33:44 uGXJQHqs0
露伴、平野で予約します。


538 : 名無しさん :2021/05/17(月) 13:09:35 0Q6BHqos0
>>536
乙です
コルワと狼牙の義心が目覚ましい
支給品の布団とNPCの説明を見て吹きそうになりました
グレシアがこれからどういう方針を取るか気になります
程よくまとまった幕間と思いました


539 : ◆bLcnJe0wGs :2021/05/17(月) 19:53:34 eUYU44Lc0
失礼します。
自作『あるログハウスでの一時』の描写を一部変更させていただきました。


540 : ◆bLcnJe0wGs :2021/05/19(水) 19:46:27 4P1TA/Qo0
失礼します。
予約を延長させていただきます。


541 : ◆bLcnJe0wGs :2021/05/23(日) 11:35:34 5RPqb2iE0
失礼します。
予約を破棄させていただきます。


542 : ◆bLcnJe0wGs :2021/06/10(木) 18:46:19 kBwjuu2A0
紫、サーニャ、勇者@ゴブリンスレイヤーで予約します。


543 : ◆bLcnJe0wGs :2021/06/15(火) 17:21:44 eF7nk4A.0
失礼します。 予約を延長させていただきます。


544 : ◆bLcnJe0wGs :2021/06/20(日) 17:58:10 TSki8EWg0
投下します。


545 : ◆bLcnJe0wGs :2021/06/20(日) 17:58:43 TSki8EWg0
『粕谷 瞳』

紫の取り出したビブルカードにはその名前が書かれていた。

カードは北東の方角へと動いている。

「うんうん、北東の方角ね。」

カードに書かれた名前を見て、紫はそう言う。

「と、いうことで、そっちの方角に向かいたいところだけど…
 やっぱり、私の能力にも制限が掛かっている様ね。
 本来ならもっと能力を使っても疲れない筈なのに、ほんの数回使っただけで疲れちゃうわね。」

案の定、紫の能力にも制限が掛かっており、先程の『境界を操る程度の能力』を行使するのにもかなりの力を消耗する様になっているらしい。

「無理はしない方がいいですよ。
 それと、この周辺には先程の霖之助さんを除いたNPCは来られない様になっているそうですが、万が一外へ出れば襲われる可能性も大きいです。
 一先ずはすぐそこの長椅子で休憩しましょう。」

紫の発言を聞いたサーニャはそう返し、更には霖之助以外のNPCが店の周辺に侵入する事が不可能になっている事も(一応は)把握し、休憩をする様に促す。

「しかし、勇者さんも重傷です。
 負傷者にとって体温を下げる事はとても危険です。
 …そこで紫さん、お疲れの様ですが一緒にお身体を温めて頂けませんか?
 私は重傷の方から優先して治療を行っております。
 勿論貴女にとって楽な姿勢でも結構ですので。」

「…じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうわ。」

しかし、勇者の方も先程のザメドルとの戦闘で負傷を負って包帯を全身に巻いており、紫達よりも遥かに危険な状態だ。

─しかし、サーニャはそういった場合、症状の深刻な相手から治療していく。

対して紫は制限の掛かった状態で能力を行使した結果、体力を大きく消耗した程度でサーニャ同様負傷も全く無い。

そこで彼女達は重大な負傷のある勇者を優先して介抱を行う事になったのである。

「ねぇ、勇者ちゃん、私の支給品に温かい食べ物が入っていたのだけど、怪我が良くなったら食べるかしら?
 といっても、私達に支給されているデイパックという鞄に物を入れていると、中に入っている飲食物が冷えたままだったり、逆に温かい物が全く冷めなかったりするのよね…。」

紫がそう話すと、自身のデイパックから茶碗に盛られた熱々の白飯に、卵の黄身が一個載った食べ物を取り出した。

「これぐらいしかないけど、みんなで分けて食べる?」

そうして紫は、勇者が回復したら支給品の食べ物を3人で分けて食べる事を提案するのであった。


546 : ◆bLcnJe0wGs :2021/06/20(日) 17:59:55 TSki8EWg0
【A-6 香霖堂前/黎明】


【勇者@ゴブリンスレイヤー】
[状態]:負傷(小・自然治癒中)、魔力消費(中)
[装備]:約束された勝利の剣@Fateシリーズ、包帯(ところどころに巻いてる)
[道具]:基本支給品(食料は菓子類と水に交換)
[思考]基本行動方針:こんな殺し合いを許してはおけない。
1:今は自身と紫の回復を待つ。
2:助けが欲しい人はなるべく助けたい。
3:彼(ザメドル)は倒さないといけない。
4:紫さん、サーニャちゃんと同行。
5:これ(卵かけご飯)、食べていいの…?


[備考]
※最低でも魔王を撃破した後からの参戦です。
※約束された勝利の剣の性能は知ってはいますが、
 現状は切れ味のいい剣程度で扱っています
※ランダム支給品の二つはエクスカリバーと交換されました

【サーニャ@UNITIA ユニティア 神託の使徒×終焉の女神】
[状態]:幻惑の学聖ボタンの強化効果(回避率、命中率上昇、魔族属性に有利)
[装備]:幻惑の学聖ボタン@大番長、サーニャの十字架@UNITIA ユニティア 神託の使徒×終焉の女神
[道具]:基本支給品(食料は菓子類と水に交換)、鳥の死骸@ミスミソウに刺さっていた棒状の物(洗浄、消毒済み)
[思考]基本行動方針:出来るだけ生命を救う。
1:現在は勇者と紫の回復待ち
2:紫さんと勇者さんと同行。
3:傷ついた人は助けたいけど……
4:え、これ(卵かけご飯)をみんなで分けて…!?

[備考]
※参戦時期は少なくとも固有のストーリー経験済みです。
※幻惑の学聖ボタンの効果で魔族属性に該当する敵に対して強化効果を得てます。
※治癒能力は低下していますが、元々役割がヒーラーなのでそれなりに回復できます。
※能力を用いた死者の蘇生は不可能となっております。

【八雲紫@東方Projectシリーズ】
[状態]:力の消耗(大)
[装備]:緋舞扇@グランブルーファンタジー、ビブルカード@ONEPEACE、卵かけご飯@現実
[道具]:基本支給品(食料は菓子類と水に交換)、ビブルカード×4(狼牙のだけ少し破れてる、ランダム支給品×1(東方project出展ではない)
[思考]基本行動方針:一先ずは異変解決
1:現在は勇者と自身の回復待ち
2:勇者ちゃんとサーニャと共にビブルカードの示す先へ向かう。
3:霖之助さんは変わらないようで安心した。
4:レミリアは……ほっといても大丈夫でしょ。
5:ミルドラースの目論見とか、その辺考察しておきたいかも。
6:体力の回復がてら、後でこの食べ物(卵かけご飯)をみんなで分けて食べようかしら?

[備考]
※参戦時期は少なくとも緋想天以降です。
※境界を操る程度の能力には制限が掛かっており、行使した場合大幅に力を消耗します。
 ・能力を用いた遠所への移動は2マス先のエリアまでであれば可能です。
※サーニャ、紫、勇者のランダム支給品は森近霖之助の能力、
 『道具の名前と用途がわかる程度の能力』で鑑定済みです。
 ただし使用方法は分かっていません


547 : ◆bLcnJe0wGs :2021/06/20(日) 18:00:16 TSki8EWg0
◆◆◆

ここからはかなり短いお話になるが、サーニャ達3人がどのようにして出会ったのかを語ろう。

サーニャはこの催しは始まって間もない時に、自身の支給品に鳥の死骸が入っているを発見した。

死骸には棒状の物が刺さっていた。

自身のレリックを用いても蘇生出来ず、鳥を埋葬する事にした。

そこで出会ったのが紫であった。

サーニャは紫に先程の死骸の事を話した後に、近くの建物で刺さっていた棒の洗浄と消毒を行った。

その後に紫と共に病室のある別の建物に入り、サーニャはそこで待機する事になった。

それから時間が経つと、紫が負傷した勇者を連れて来た為、サーニャと紫は彼女の治療を行う事になった。

それが、3人の出会いであった。


548 : ◆bLcnJe0wGs :2021/06/20(日) 18:01:04 TSki8EWg0
【支給品紹介】

鳥の死骸@ミスミソウ

サーニャに支給。

春花の転校して来た中学校のクラスメイトが彼女へのいじめの手段として、教室机の中に入れていた死骸。

恐らくはカラスと思われる。


549 : ◆bLcnJe0wGs :2021/06/20(日) 18:01:19 TSki8EWg0
投下終了です。


550 : ◆bLcnJe0wGs :2021/06/20(日) 18:02:05 TSki8EWg0
>>545
作品のタイトルは『生命』となります。


551 : ◆bLcnJe0wGs :2021/06/20(日) 18:07:15 TSki8EWg0
失礼します。ageをさせていただきます。


552 : 名無しさん :2021/06/28(月) 12:40:55 SlkLgECQ0
乙です
のどかだけど不撓さを感じさせるサーニャと紫のやり取り
支給品の死体を能力制限の確認作業に使うシーンも雰囲気出てました
勇者の状態表も素朴な面が出てて良かったです


553 : ◆7PJBZrstcc :2021/07/02(金) 19:26:59 bRJfd7bY0
ゲリラ投下します


554 : ある修羅の結末 ◆7PJBZrstcc :2021/07/02(金) 19:27:40 bRJfd7bY0
 令嬢剣士はただ歩く。
 闇の中の森をふらふらと、毒霧から逃れる為に。
 歩いている最中に流れた放送すら聞き逃し、彼女はただ憎悪を滾らせる。

 そうやってしばらく歩くと、令嬢剣士は毒霧から離れたところまでたどり着く。
 すると、彼女の前にゴブリンの群れがまたも現れた。

 ゴブリンを見た令嬢剣士の行動は早い。
 すぐさま手に持っているトランスチームガンを構え、自らのダメージになど構うことなく躊躇なく戦いの意志を示す。

「蒸血……!!」

 ――MIST MATCH

 ――BAT……B・BAT FIRE

 そしてそのままナイトローグに変身。
 令嬢剣士はすぐさまゴブリンの群れに襲い掛かる。

「死いいいいいねえええええええ!!」

 ナイトローグに変身すると現れるスチームブレードを、彼女は躊躇なく振るい続ける。
 それだけでゴブリンは死ぬ。
 本来なら、ゴブリンごときに使う武器ではないのだ。
 このまま、この殺し合いに来てから何度かやったように、ゴブリンを殺せると、令嬢剣士は確信する。
 しかし、予想外の出来事は往々にして起こるものだ。
 彼女が、ゴブリン退治の依頼に失敗し、何もかもを失うとは思わなかったかのように。

 ヒュン

 前触れもなく唐突に、何かの風切り音が聞こえたので、令嬢剣士はゴブリンに注意を向けつつ音のした方向を見る。
 すると、視線の先には夜には不釣り合いな、緑色が空を覆っていた。

「な、なんですのあれは!?」

 令嬢剣士は一瞬思考が止まりそうになるものの、よく見るとそれはキャベツだった。
 正面にはクリクリと可愛らしい黒色の瞳と口、そして天辺の葉を羽みたいにはためかせて飛ぶキャベツ。
 この殺し合いの参加者の中で、元々知っているのはたった三人だけの、とある世界のキャベツである。

 彼女がこの事実を正しく理解すると同時に、キャベツはゴブリンのうち一匹の顔に激突した。
 すると、ゴブリンの顔はキャベツの体当たりの勢いで破裂し、あたりに脳漿をまき散らす。

 このキャベツは、体当たりで鎧くらいなら壊せるほどの破壊力を持つ。
 それが何の防御もされていない柔な生物の頭に当たれば、破裂も当然である。

 この光景に慌てたのはゴブリン達だ。
 こいつらは、こんな間抜けな死に様はごめんだ、とばかりに一目散に逃げだそうとする。
 当然、令嬢剣士は逃がすつもりもないので、追い掛けようとした。

 キャベツの群れは、そんな意志もないはずなのに、残りのゴブリンを容赦なく蹂躙した。
 後に残るのは体の一部が破裂した小鬼の死体のみ。

 一方、令嬢剣士もまたキャベツから逃げ出そうとしていた。
 しかし、毒で弱った体ではキャベツを避けきれず、幾度も体当たりを喰らってしまう。
 無論、ナイトローグはそこらの鎧を破壊する程度の力では壊れない。
 だが、何発も喰らえば変身者のダメージも決して安くはない。
 結果的に彼女は、変身が解除され、全裸のままうつ伏せで気絶し、キャベツの群れはどこかへ去っていった。

 ボロボロのカーテンすら覆われることなく、令嬢剣士は白い肌を惜しげもなく曝け出してしまうも、キャベツを凌いだことだけを考えれば成功。
 しかし、この後のことを振り返れば、間違いなく致命的失敗(ファンブル)だった。


555 : ある修羅の結末 ◆7PJBZrstcc :2021/07/02(金) 19:28:18 bRJfd7bY0





 いったいどれほどの時間が経ったのだろうか。
 令嬢剣士が目を覚ますと、彼女の眼前には気絶する前と変わらず、体の一部が破裂したゴブリン達の死体がそこにはあった。

「どうやら、助かったようですわね……」

 キャベツの群れをやり過ごした令嬢剣士は、立ち上がるべく地面に手を付き、そのまま押して体を起こそうとする。
 そして上半身が地面から離れた瞬間――

「どーん!!」

 どこか場違いな軽い掛け声が聞こえたと思ったら、肉を貫く音と同時に、自分の腹部にひんやりとした冷たさと強烈な異物感を感じた。
 彼女が腹部を見ると、

「あ、あぁ……」

 剣が腹部から生えていた。
 否、正確には背中から腹まで剣が貫かれていた。

 令嬢剣士が現実を認識したと同時に、体を貫いていた剣が引き抜かれ、傷口からとめどなく血があふれ出す。
 彼女は咄嗟に近くにあったボロボロのカーテンで腹部を抑えるが、血が止まることはない。
 それでも彼女は振り返り、自身を刺した下手人の姿を見る。

 下手人は、令嬢剣士が見たことない服装を身に纏う、ピンク髪の美少女だ。
 ただし、頭に生えている紅の角が、少女が人間ではないことを教えてくれる。


 それもそのはず、彼女の名前はパワー。
 悪魔が人間の死体に憑依した、魔人と呼ばれる存在である。


 しかしそんなことは令嬢剣士には関係ない。
 彼女は精一杯の意地で立ち上がり、せめて一矢報いようと言葉を紡ぐ。
 再びナイトローグに変身しようとも、この体力では戦えないと判断した彼女は違う方法を選んだのだ。

         雷 電
「はぁはぁ……《トニトルス……」

 令嬢剣士が紡ぐもの。それは呪文。
 眼前の敵を屠るべく、世の理を塗り替える真言で稲妻を放とうと、必死に唱える。
 だが――

「うるさいのじゃ!!」

 パワーの一閃が令嬢剣士を袈裟切りにし、彼女の血しぶきが下手人を赤く染める。
 毒で弱り、体を貫かれた彼女に、勝ち目など最初からなかったのだ。
 一方、パワーはなぜか怒りを滲ませながら叫ぶ。

「ええい! 外なのに裸で寝るような変態が、ワシの手を無駄に煩わせるとは……!」

 理不尽にもほどがある物言い。
 だが令嬢剣士にはもう言い返すほどの体力は残されていない。
 代わりに口から出たのは、たったこれだけ。

「……しにたく、ない……」

 それは、修羅に堕ちた令嬢剣士の嘘偽りない願い。
 だけどその声は余りにもか細い。

 少女の懇願は、誰の耳にも聞こえない。

【令嬢剣士@ゴブリンスレイヤー 死亡】
【残り99名】


556 : ある修羅の結末 ◆7PJBZrstcc :2021/07/02(金) 19:28:45 bRJfd7bY0





 そしてパワーは令嬢剣士が持っていたものを奪い、新たな獲物を求め、再び進み始める。

「あれ? ワシ、どっちから来たのじゃ?」

 代わり映えしない森の景色のせいで、若干方向感覚を失いながら。


【H-4 森/黎明】

【パワー@チェンソーマン】
[状態]:腹に打撲、令嬢剣士の返り血で汚れている
[装備]:血の剣@チェンソーマン
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2、トランスチームガン@仮面ライダービルド、バットロストフルボトル@仮面ライダービルド
[思考・状況]基本行動方針:やはりワシは最強じゃ!!
1:強そうな奴からは逃げる。
2:弱そうなのは殺す。
3:新しい武器を調達するのじゃ!!


※H-4 森のどこかに令嬢剣士@ゴブリンスレイヤー の遺体、彼女のデイパック(基本支給品、ちゅんちゅん丸@この素晴らしい世界に祝福を!(アニメ版))が放置されています。


557 : ◆7PJBZrstcc :2021/07/02(金) 19:29:12 bRJfd7bY0
投下終了です


558 : 名無しさん :2021/07/03(土) 16:07:41 VFjH.oww0
乙です
縁を持つ事も外見を取り繕う事もできなかった修羅の残当な切ない最後でした 
運にとことん見放されてたよ……
一線を超えないギャグキャラであり続けられたのも一種の幸運であったのに、手放してしまったパワーの明日はどこに


559 : ◆bLcnJe0wGs :2021/07/31(土) 21:00:48 VmDffWr20
野咲、とがめ、アカネで予約します。


560 : ◆bLcnJe0wGs :2021/08/07(土) 21:13:59 qm15CKbg0
>>559
失礼します。 予約を延長させていただきます。


561 : 名無しさん :2021/08/09(月) 21:59:55 YjM7hVKo0
ペテルギウス・ロマネコンティ、島村卯月、平野源五郎、真人で予約します。


562 : ◆bLcnJe0wGs :2021/08/10(火) 21:25:13 aP37MdZ.0
投下します。


563 : ◆bLcnJe0wGs :2021/08/10(火) 21:25:48 aP37MdZ.0
デンジ達から離れ、草原を疾走し続ける春花。

周囲には大木が数本生えている場所も散見するが、それらがあるからといって容易く身を潜められるとは思えず、敢えて避ける様に移動していた。

なぜなら彼女は過去に林道で飛び道具を持った人間2人に奇襲されそうになった経験があるからだ。

その時は彼らの武器を奪って返り討ちにしたのだが、この場では自身に支給された物品を始めとして、ペテルギウスの見えざる手など元世界ではとても考えられなかった超常的な存在や、彼を襲っていたエビルバイブルといった危険なNPCが会場に放たれている事も考えると、木陰に自分と同じ殺し合いに乗った参加者か敵対的なNPCが潜伏している危険性も十分に考えられる。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



一方、F-5のとある場所では…

「…この風船を持って、『食べると一定時間、攻撃を受ける際に負傷を軽減できる』という月餅を二人で分ける、というのがあんたにとっての奇策‥なんだよね??」

星型の風船を手に持ったアカネがとがめの考案した『奇策』について尋ねていた。

「‥ああ、この何やら空に浮かぶ角ばった物を結んでいる糸を手に持っておれば他の参加者とやへの目印にはなるだろう
 …甘味の方は『効き目』に関しても袋と一緒に入っておった説明書きとやらに書いていただけで確証はないがな。 仮にハッタリだったとしても体力付け程度にはなるだろう?
 それに『殺しをしたくない』とおっ


564 : ◆bLcnJe0wGs :2021/08/10(火) 21:26:07 aP37MdZ.0
しゃっておったお主から譲ってもらった火薬と短刀もわたしの手にある。 これがあれば『お主は殺しをしなくてもよくなるだろう。』しかしそれも確証はないがな。」

とがめは殺し合いに否定的であったアカネから譲り受けた支給品のニトログリセリンと片刃のナイフをそれぞれの手に握りながらそう答えていた。

そうして北上を続けていると、血塗れの厚手の上着に一つのデイパックを背負い、更にもう一つのデイパックを抱えた少女、春花と出くわした。

「下がれ、アカネよ」

とがめはそう言ってアカネを後方に退かせると春花にこう問いかける。

「問おう、お主は何故このようななりをしておる?」

その問いかけに対し、春花はこう答えた。

「それは、私を殺そうとしてきた他の参加者に背中をやられて命からがら逃げてきた。 それで隙を見て、その方が近くに置いていたデイパックを盗んできた。」

─しかし、その発言を聞いたアカネの頭には電流が流れ出した。

どうやら殺そうとしてきた参加者から逃げてきた話は本当の様だが、その参加者のデイパックを盗んできたという話は嘘の様だ。

「とがめちゃん! この人、嘘ついてるよ!」

春花の嘘を感知したアカネは、とがめにその事を伝え始める。

「やはり嘘であったか…!」

アカネからの報告を受けた彼女は、春花に向かってナイフを向け出す。

(嘘を吐いているのが分かる…私やあの愛だの怠惰だの言ってた奴の様な特殊能力持ちか‥!?)

相手が嘘を


565 : ◆bLcnJe0wGs :2021/08/10(火) 21:28:11 aP37MdZ.0
判別できる相手と、たった今目の前で自分にナイフを向けている人物が組んでいる事を判断する。

(こいつらには‥嘘を言っても駄目な奴等だったのか…!
 支給品の石も今では使える様な物ではないし、デンジから盗んだデイパックの中身も確認出来ていない、ここは能力で一気に決めるしかないか…!)

「本当の事は答えぬか…とアカネ! もう一度下がれ!」

とがめが警戒の態勢をとっていると、春花の背後から突然長髪の男が姿を現す。

春花の現在のスタンド、スタープラチナだ。

スタープラチナはとがめに掴み掛かろうとするが、彼女はそれを何とか避ける。

(これは危ない…!仕方ない、彼らにはこの火薬の爆発でもよいから死んでもらおうか!)

しかし、とがめには片手に握ったニトログリセリン入りの瓶があり、それをスタープラチナめがけて投げ飛ばす。

だがスタープラチナの方もそれの危険性に気付いており、咄嗟に春花を突き飛ばしてから自分も爆発物を躱す事で直撃を免れる。

しかし免れたのは爆発物の直撃だけ。

僅かな衝撃でも爆発を起こすというそれが地面に勢いよくぶつかった結果──

大きな爆発が起きた。

更に、爆発によって発生した火がみるみるうちに周囲の草に燃え広がっていく。

それを見た春花は、かつて自分と両親、妹で暮らしていた家に放火された時の記憶がフラッシュバックしていた…。

(─殺す!!)

春花とスタープラチナも再びとがめ達に襲いかかるが、彼女達は先程よりも後方


566 : ◆bLcnJe0wGs :2021/08/10(火) 21:28:43 aP37MdZ.0
【F-5 /黎明】

【佐藤アカネ@そんな未来はウソである】
[状態]:『堅剛月餅』の効果発動中
[装備]:星型の風船@タイムパラドクスゴーストライター
[道具]:基本支給品
[思考・状況]:基本行動方針:死にたくも殺したくもない
0:殺し合いなんて、笑えない冗談だわ。
1:兎に角生き延びないと

※殺し合いが行われることや、優勝者の願いをひとつ叶えるといった主催者の言葉に対してウソの感知は行われておらず、それを信じています。しかし、その時に限って能力を制限されていた可能性もあります。
※とがめが自分の知るものと違う過去の人間だと認識しましたが、どういうことなのかは深く考えていません。


567 : ◆bLcnJe0wGs :2021/08/10(火) 21:29:39 aP37MdZ.0
【とがめ@刀語】
[状態]:『堅剛月餅』の効果発動中
[装備]:参謀エンリルのナイフ@モンスター烈伝 オレカバトル
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2(武器の類は無し)
[思考・状況]:基本行動方針:自分だけは生き残る
0:佐藤アカネの命は自分の次に優先する。
1:奴(春花)を倒す為の奇策を考えねば…

※鑢七実に髪を切られる前からの参戦です。
※アカネが自分が知るものとは違う歴史の、未来の人間だと認識しました。
 アカネの語る歴史が、飛騨鷹比等が言っていた『本来あるべき姿』の歴史なのではと考えています。

【野崎春花@ミスミソウ】
[状態]:疲労(中) 背中に刺し傷(塞がっている)、二人(クッパ姫、デンジ)に対して罪悪感
[装備]:スタープラチナのスタンドDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、、デンジのデイパック(基本支給品、ランダム支給品×3、ツルギゴイ@ブレスオブザワイルド、ヨロイゴイ@ブレスオブザワイルド(大量))
[思考・状況]基本行動方針:優勝して、過去を改変する。
1:あの二人(アカネ、とがめ)を殺す。
2:早く二人(クッパ姫、デンジ)から離れたい。
3:ペテルギウスを殺すため、強力な支給品を集める。
4:デンジさんの支給品については後で調べる。
[備考]
参戦時期は死亡後です。
スタープラチナのDISCを装備しています。
スタンド使いになった影響か、ペテルギウスの『見えざる手』を視認できるようです。
クッパ姫、デンジと情報交換をしました。そのせいでマリオ達@スーパーマリオくん をマリオ達@スーパーマリオシリーズとして認識しています。


568 : ◆bLcnJe0wGs :2021/08/10(火) 21:30:22 aP37MdZ.0
【支給品紹介】

参謀エンリルのナイフ@モンスター烈伝 オレカバトル

佐藤アカネに支給。

参謀エンリルが服の中に隠し持っている片刃のナイフ。
原作では『こうげき』などのモーションで袖の中から取り出して攻撃しているのを確認できる。

ニトログリセリン@現実

佐藤アカネに支給。

僅かな衝撃でも爆発を起こすという物質。

医薬品としても使われている。

星型の風船@タイムパラドクスゴーストライター

佐藤アカネに支給。

屋外で遊んでいた子供の手から空に飛んで行きそうになっていたところを偶然通りかかって佐々木にキャッチされていた風船。
その後、無事に持ち主に返されていた。

堅剛月餅@モンスター烈伝 オレカバトル

とがめに支給。

食べた者が受けるダメージを一定時間減少させる月餅。

今回はアカネととがめが二人で分けて食べた結果、効果も半々程度になってしまっている。


569 : ◆bLcnJe0wGs :2021/08/10(火) 21:32:02 aP37MdZ.0
以上、『消えない 消えない 炎の影』投下終了です。


570 : ◆bLcnJe0wGs :2021/08/10(火) 21:35:30 aP37MdZ.0
>>565
失礼します。
以下ここより先に掲載し忘れていたss内容の内容を投下させていただきます。

へと引き下がっていた。




◆◆◆



一方で、アカネと共に春花より後方へと退いていたとがめは彼女を倒す為の奇策を考えるのであった…。

(さて、被害が広がる前に何としてでも奴を阻まないとな…)


571 : ◆bLcnJe0wGs :2021/08/10(火) 21:36:32 aP37MdZ.0
>>570
失礼します。
『内容の内容』ではなく『内容となります。』


572 : ◆8tIPBp6N4s :2021/08/13(金) 21:12:38 cV6t67pE0
>>561
です。トリップ付けて忘れてすみません。
投下します。


573 : 喪失の果てに ◆8tIPBp6N4s :2021/08/13(金) 21:17:02 cV6t67pE0
既に数多もの参加者が脱落し、彼らが遂には拝む事の無かった朝。
その到来を示す太陽が上り始める。死者達を置き去りにして、長い長い夜が明けてゆく。
それに伴い、うっすらと光さす町中。
荒れ果てた荒野の中央に位置する町、パラダイス・パームズ。
今や人気のない閑静な町並み--
その一角もまた、殺し合いにて招かれた参加者による戦場であった。
爆ぜる獄炎と発砲音。返す刀で魔手が這い寄る。
それを尻目に観客は嗤う。
その笑みに醜悪なる悪意を滲ませながら。

◆◆◆
--『馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿なァ!? わ、私は、私は何を、何をしているのデスか? 何をしてしまったのデスか? なぜ、なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜェ!? ならば私は何のために、こんな……あぁ! ああ!? あああっぁあああ!!』

敬虔なる教徒は己が正気を失った。守るべき者の殺害を以て。
◆◆◆

「お許しを!!お許しを!!お許しを!!お許しを!!お許しを!!お許しを!!お許しを!!お許しを!!お許しを!!お許しを!!お許しを!!お許しを!!お許しを!!お許しを!!お許しをぉぉぉぉ-------」

おぞましき狂信者にして殺人者--ペテルギウス・ロマネ・コンティはただ悔いる。
自らが信仰せし魔女、その寵愛をあろうことか汚した罪人--野崎春花をみすみす取り逃がした
ことを。
しかもその理由が魔女教徒にとっての経典--魔女の福音書を見間違えたことである。
それが魔女教徒の中でも突出した信仰心を持つペテルギウスに深い悔恨を苛んだ。そうして生まれた悔恨は、烈火の如き怒りへと変貌した。
魔女からの多大なる寵愛、それを身に受けながらも何も為せずにいた自らへの怒りを今もぶつけ続けていた。
日が上り、夜の帳も薄れ始めた今なお、自らの怠惰に怒り狂う。
何度も何度も何度も、ペテルギウスは壁に頭をぶつけていた。

◆◆◆
--『あ、頭が割れるように痛い!………わたしは……わたしはだれなんですか!?』

シンデレラは自分の記憶を失った。この殺し合いに招かれた不運によって。
◆◆◆

「......してやられましたね。」

冷徹なる雪の女王にして殺人者--島村卯月はただ悔いる。
先程の戦いにおいて生き残った男、平野源五郎を逃がしたことは失敗だった。
自らが所有するフリーズロッド--それと相反する炎を操る能力。
あの三人組の中でも最も厄介だったと言って差し支えないだろう。
幸い飛んでいった方向は把握している。このまま追い詰め、早急に始末すべきと卯月は判断を下す。その為にも今しがた殺した二人の参加者の支給品。これを回収しておく。まだまだ目標の優勝までの道のりは険しい。先程の相手とは違い自らを殺しにかかってくる相手も居るだろう。このバトル・ロワイアルに招かれし有象無象を一人で相手取るには厳しいものがある。故にこそ戦いにおいての手段を多く取れるようにと支給品を回収した。あの三人組に勝つことができたのは紛れもなく自らの支給品の存在が大きい。ならばこれを回収しない手はないだろう。


(飛んで行ったあの男......一体何処に?)

支給品を回収し終え、平野を追い詰める為に地図を開く。
平野が飛ばされた方向はl-8。
そこには会場の南東に広がる広大な荒野。その中心部にある町を通る。
この場に集った参加者は111人。その中には目立つ位置に陣取って他の参加者とのコンタクトを取ろうとする者も居るだろう。
その仮説から、町には平野以外の参加者もいるのではないか、と予測する。

(まぁ、例えどれ程数が居ようと同じ事です。)

ならば仕留めきれなかった平野ごと町に居る参加者全てを殺す。
全ては記憶を取り戻す為に。
フリーズロッドを片手に、のび太が使っていた散弾銃--不死川玄也の散弾銃をもしもの為の保険として懐に忍び込ませる。
まだ姿も、数すらもわからぬ敵に殺意を固め、黎明の荒野をただ進む。

そうして日が上り--雪の女王は早朝の町へと、狂信者の潜む魔境へと足を踏み入れた。

朧気に光が差し込み始めるパラダイス・パームズ。
町を突っ切る道路上を冷徹なる女王が闊歩する。町に集いし者共を等しく氷塊にせんとする為に。
そうして見つけたのは壁の壊れた家屋。そこから覗いているモノは二つ。
本がぎっしりと敷き詰められた本棚。
もう一つは。


574 : 喪失の果てに ◆8tIPBp6N4s :2021/08/13(金) 21:17:42 cV6t67pE0
「お許しを!!お許しを!!お許しを!!お許しを!!お許しを!!お許しを!!お許しを!!お許しを!!お許しを!!お許しを!!お許しを!!お許しを!!お許しを!!お許しを!!」

愛を捧げし魔女への懺悔を続ける壊れてしまった狂信者。『怠惰』の名を冠した大罪司教、ペテルギウス・ロマネコンティ。
その頭に流れる滂沱の血液。
それにペテルギウスは構うことなく許しを乞い続ける。
卯月も彼の凶行を見てもさして気にも留めずに声をかける。

「ねぇ、そこのあなた。あなたも参加者かしら?」
「おや?おやおやおや?そう言うアナタも......参加者の様デスね?」

ペテルギウスは卯月の声を聞き、夜通し行われた懺悔をついに止めた。
その顔には涙が、血がぐちゃぐちゃに混じり合っている。
元々怪人めいた容貌をしていたペテルギウスは更にその異質さを増していた。
その様はかつて卯月が遭遇したゴブリンにすら勝るおぞましさである。

(こんな汚らわしい生物まで集めているとは....この殺し合いの主催者も物好きですね。)

しかしそんな異質な人物にさえ動じずに言葉を交わす辺り、卯月もやはり常軌を逸している存在であることは間違いないであろう。
どうやらその見た目の割に話が通じる男の様だ。
とりあえず自らの望む情報--すなわちかつての島村卯月について知っていればそれでいい。

(もしもわたしがこんな汚らわしいモノと知り合いなんてことは考えたくはないけれどね。)

そう内心一人ごちながら卯月は自らの名前すら名乗らず質問を始めた。
冷徹なる雪の女王と愛に狂いし狂信者の情報交換は所々騒がしくあれど、淡々と進んでいった。

「どうやら、あなたもわたしの記憶については心当たりがないみたいね。」
「貴方こそ.....私の福音書についても知らない様デスね。」

運も悪くお互いに望みの情報は持っていなかった。ならばもう互いに語る言葉は不要である。
本来ならばこの先の方針、目的地や同行の可不可を問うのが定石だ。しかし彼らは殺人者。他の命を奪う事を是とする者達。故にこそ。

「まぁ、いいわ。例え情報が無くとも他の参加者に会えてわたしとしては僥倖よ。」
「--えぇ。ワタシからしても、とても僥倖、デス!」

--ならば彼女を贄とし怠惰なる骸を晒すことで、魔女への愛に、猛烈に、鮮烈に、凄烈に、勤勉に報いるのデス!!

--ならもう用済みね。あなたはもう死になさい。

互いが相手に求めるモノは一つ。
愛が為の贄を。
願いの為の犠牲を。
二人はこれ以上交わす言葉も無く。
ただただ互いの死を求める。

ひゅう、と一筋の風が二人の頬を撫でる。
それを合図に居合わせた殺人者達の戦端は開かれた。
夜が明けても何ら変わらず殺し合いは続いてゆく--それを知らしめるかの様に。

◆◆◆
--『う、嘘じゃ……』

束縛師は共に戦う仲間を失った。
その光景が朧気にも甦る。
まだまだ垢抜けない、それでいて芯に確かな強さを内包した少年。
例え敵であってもその甘さを、優しさを捨てなかった少年。
目を逸らす寸前。
束縛師は確かに目の当たりにした。
その背に走る光刃を。
溢れる血潮を。
少年の死に様を。

--『――のび太さあああああああああああああん!!』

もう一人の仲間の叫びが男の意識を現実に引き戻す。
そうだ。まだ仲間は残っている。
せめて彼女は--
そうして魔術師を従えるSMバーの束縛師は遂に目覚めた。
◆◆◆

(のび太君!!!)

平野源五郎は町の一角にて目を覚ました。瞬間、脳裏によぎるのは
野比のび太の死。少年の背中から生える光の刃を鮮明に写し出した。

「くそっ!ここは一体何処なんじゃ!?ピーチ姫は!?」

一も二もなく飛び上がり、町の様相を探る。もう一人の仲間、ピーチ姫。もしかしたら彼女がまだ戦っているのかもしれない--その不安から急いで町を駆け抜ける。
これ以上仲間を失う訳にもいかない。
何処なんだ。
何処にいる。
必死に仲間の在処を探す平野。
黎明となった空もうっすらと明け始めている。
もしかしたらピーチ姫も死んでしまったのか--
溢れ出る不安に蓋をして、捜索を続ける平野。
がむしゃらに走り回って平野が辿り着いたのは、町に広がる唯一の道路。
ひゅう、と一筋の風が鳴き、それと同時に平野が飛び出す。
そこで男が見たモノは。

のび太を殺した女、吹雪を放つ氷の魔法使いとその眼前に迫る黒き手であった。

島村卯月とペテルギウス・ロマネコンティの戦いは、平野が辿り着いた時には既に勝敗は決していた。実に彼女達が殺し合いを始めて1分もしないうちに、いとも呆気なく。


575 : 喪失の果てに ◆8tIPBp6N4s :2021/08/13(金) 21:18:33 cV6t67pE0
卯月の操る絶対零度の吹雪。それを以てしてもペテルギウスには勝てはしない。
狂信者の操る権能。
それは魔女からの寵愛の証。
何人もその「手」の姿を認める事すら叶わぬだろう。
攻撃されたという事実すら認識を許さぬ不可視の魔手。
それはこのバトル・ロワイアルにおいても機能していた。
故に卯月は自分が何をされたかすら解らずに、雪の女王たる力を披露するまでもなく魔女への贄と化すのだろう。
そこに一人の参入者が来なければ。

「危ない!!」

平野のタックルが卯月を押し退け、二人纏めて地に伏せる。
そのタイミングにより、卯月の武器やデイパックが飛んで行く。
卯月は避けきれなかったのか顔に一本の赤い筋が入る。

「な--」

何が起こったのか、と卯月は思う。顔にできた傷は何に依るものか、未だに解らずにいる。

「お主はそこでおとなしくしていろ。そして男。お前は殺し合いに乗っているのか?」

平野の中にあるのは心優しい少年の。今しがた助けた少女に殺された仲間の。野比のび太の遺志だ。
彼は最期まで卯月の身を案じていた。だとするならば。例え彼女がのび太を殺していたとしても。これ以上誰の犠牲も出しはしない。そう決意を固め、狂信者へと向き合う。

「--貴方は......あなたは見えていないはずです......見えざる手がみえ、見える?私以外にもふた......二人も!?!?おのれ、おのれぇ!!!」

平野の問いなど耳に入らず、ペテルギウスは怒り狂う。自らの寵愛たる権能の姿を認め、汚したのだ。到底許せるものではない。故に、その狂気は言わずもがな平野に向けられる。


「--お前は人殺しとは言え、記憶を失った少女を殺そうとした。」
「けしからん 私が喝を 入れてやる」
「おのれおのれおのれおのれおのれぇ!!あってはならないのデス!!そのようなことがあっていいはずがないのデス!!!」


激昂した司教の権能を『魔術師の赤』によって弾く。肉弾戦こそかつてペテルギウスと交戦したスタンド、『星の白銀』には劣れど、敵からの攻撃を防ぐ分には申し分ない。しかし、さしもの『魔術師の赤』も止めどなく遅い来る魔の手に防戦一方を強いられる。
そんな最中、戦火より幾分か離れた位置で卯月は現状の打破の為に思案を巡らせていた。
卯月は冷静に考える。
これはチャンスだ--と。
どうやら平野は眼前の男の攻撃が読める、と。
事実、自分では視認すら叶わぬ不可視の攻撃に対処してのけている。
しかし、どうも平野が圧され気味だ。
ならば今、殺すべきは--

「死になさい。」

雪の女王の牙は、容赦なく狂信者へと剥いた。

「--な!?」

放つは支給品、かつての鬼狩りが、自らが殺した少年が使っていた散弾銃。それを放った。
しかし、それも『見えざる手』により弾かれる。
これで不可視の手の存在を把握した。

「その様な手立てで!小細工で!私の忠誠を!信仰を!勤勉を!打ち倒せるものか--あぁ、怠惰!怠惰!怠惰!怠惰!怠惰--」
「そうみたいね。」
「おい、これはどういう--」
「まずはあの男に対処しなさい。まず私はあの男の攻撃は見えません。なのであなたが攻撃を防ぎなさい。」

女王はどこまでも冷静に、冷徹に判断を下した。
優勝という目的の為に平野を利用し厄介な参加者達を殺す。
そも一人で参加者を全て殺すなどどだい無理な話だ。
実際、卯月は平野達三人相手にかなり追い詰められ、ペテルギウスには殺されかけたのだ。
ならばこちらも味方を作り、利用しつくした方が利口だ。
内心ほくそ笑みながら卯月はペテルギウスへと散弾銃を構える。
平野が何か卯月に言い返すより先に、ペテルギウスの『見えざる手』が迫って来た。

少年の遺志を継いだ束縛師。その想いに応える為に赤き魔術師は並び立つ。
冷徹なる雪の女王。凍りついた心は未だ溶けず、静かに殺意を研ぎ澄ます。そうして望むは在りし日のシンデレラただ一人。
愛に狂いし狂信者。その狂気は衰えを知らず、ただ勤勉に魔女への供物を捧げ続ける。


こうして戦いは三者三様の想いをのせて加速する。
その傍らには一人の観客。
男はまるで新品のおもちゃを与えられたかのような--それでいてどこか恐怖を感じる笑みを溢した。


576 : 喪失の果てに ◆8tIPBp6N4s :2021/08/13(金) 21:19:10 cV6t67pE0
◆◆◆
--『ブッ殺してやる』

それは正に惨劇。幼い命のおぞましき散り様。それを目の当たりにして憎悪に狂った父親。情の熱さは、家族への愛情は本物とは変わらない。そんな偽りの父親は愛する息子を失った。その下手人は。相も変わらず悲劇を求めて動き出す。
◆◆◆
暗闇に包まれた下水道。
日が上り、暗闇に一筋の光が差し込む。
開けられたマンホールから解き放たれた悪意は戦場を眺めていた。

--面白い。
それが観客、真人が戦っている三人に抱いた感想だ。彼らの特殊な力も目を引くが、何より面白いのは彼らの魂だ。

正気を失った信徒。この男の魂は揺れに揺れている。魔女への信仰心。既に壊れた男が唯一すがれる最後の砦。そこから彷彿とするのは今しがた戦った鉄人、ロボひろし。もしも彼が息子への生き返りに執着した時にはあのように変貌を遂げるのか--その様を想像し溢した笑みを深くする。

記憶を失ったシンデレラ。彼女の魂は揺れていない。人と人とが殺し合う、その現状を知って尚揺らいでいない。不思議な人間もいるもんだなぁ。そう感慨を抱き視線を移す。

仲間を失った束縛師。男の魂もまた揺らぎがない。野比のび太の死を乗り越え、その心に強固なる意志が芽生えている。
もしもロボひろしが息子の死を乗り越えたら、あの様に強い在り方になるのだろう。そうなったらつまんないなぁ、と想像して少し顔をしかめる。

だが彼らに如何程の意志が、決意があったとしても、悪意はそれら
を悲劇へと引きずり込む物だ。

(もしももう少し呪力が回復したら、僕も混ざってみようかなぁ。)

底なしの悪意は下水道の暗闇の中、醜悪な笑みをひとつ浮かべた。



【I-8 パラダイス・パームズ/早朝】
【ペテルギウス・ロマネコンティ@Re:ゼロから始める異世界生活】
[状態]:健康、興奮(大)、盗人(主催者)への怒り(大)、寵愛を汚した平野への怒り(極大)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]基本行動方針:脱出優先。必要なら勤勉に優勝を目指す。
1:寵愛を汚した平野を殺す。卯月はその次。
2:我が福音書を取り戻すのデス!
3:『見えざる手』を私以外が見ることが叶うなど、あってはならないのデス!
[備考]
野崎春花、平野源五郎が『見えざる手』を視認できることを認識しました。
不可視の『見えざる手』は、少なくともスタンド使いなら視認できるようです。
憑依に関する制限は後続の書き手に任せます。


【島村卯月@アイドルマスター シンデレラガールズ】
[状態]:『禁断の薬』による記憶喪失および性格・容姿の変化、魔力消費(中)
[装備]:、不死川玄也の散弾銃@鬼滅の刃(弾数9/20)
[道具]:
[思考・状況]基本行動方針:自分の記憶を取り戻すべく、優勝する。
1:全員殺して、記憶を取り戻す。
2 : 平野を利用し、ペテルギウスを殺す。

[備考]
『禁断の薬』を飲んだことにより記憶喪失となっています。またそれに伴い冷酷な性格に変化しています。
そして薬の効果により全身が"氷の魔法使い"として作り替えられたため傷が完治しております。
アイドル時代に培ったステップを無意識に使いこなしています。アイドル関連の記憶を取り戻せば能動的に使えるかもしれません


【平野源五郎@真夏の夜の淫夢シリーズ】
[状態]:頭に傷(小)、固い決意
[装備]: 鋼の剣@ドラゴンクエストシリーズ マジシャンズ・レッドのDISC@ジョジョの奇妙な冒険シリーズ
[道具]:基本支給品、台車@現実 
[思考・状況]基本行動方針:主催者には正義の鉄槌で、その腐った心を矯正してやろう。
1: 卯月と共にペテルギウスを止める。殺しはしない。
2:闘いが終わったら卯月にピーチ姫の安否を確かめる。

[備考]
参戦時期は、悶絶少年 其の伍で「今日は逆さ吊り、鞭責めをしよう(提案)」と言った辺り
頭を打ちましたが、命に別状はありません。


【真人@呪術廻戦】
[状態]:呪力消耗(大)、喜び
[装備]:大量の改造人間(ゴブリン数体を含む)@呪術廻戦+他、変身の指輪@Fate/Grand Order
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:呪霊として殺し合いに参加する。
1:皆殺し。
2:宿儺の器を探す。
3:領域展開の兆しは見えた。後は試す相手か。
4:改造人間に渡した指、どうにか回収できないかな。
[備考]
※原作16話より参戦です。
※領域展開をなんとなく感じましたが、
 似たような状態にならないとできないかもしれません。
※F2000Rを模して改造人間を弾丸にすることを覚えました。
 やってることはぶっちゃけ原作のサイコガンもどきのあれです。
※数体ゴブリンを改造人間としてストックしています。


577 : ◆8tIPBp6N4s :2021/08/13(金) 21:21:17 cV6t67pE0
投下完了です。これが初投稿なので作品にいろいろ拙い面もあると思いますが見逃して頂けると幸いです。


578 : ◆vV5.jnbCYw :2021/08/13(金) 22:40:59 0BC5VTN20
初投下お疲れ様です!!
ペテルギウスのイカれっぷりや平野店長の語録を忠実に描写した再現度、実に見事!!
何よりいきなり書くのが難しいバトルから入っていく姿勢、僕は敬意を表する!(フーゴ)
先程まで戦っていた相手と協力する奇妙なことになってしまった平野店長、真人の存在もあってどうなるか気になりますね。


579 : 名無しさん :2021/08/13(金) 22:54:51 Z2kfsFwQ0
投下乙です。
初投下とのことですが、キャラの再現度やさっきまで殺しあっていた相手と共闘する展開など、とても素晴らしいと思います。
そして地下には真人。不穏なフラグは山盛りですね。

ただ、卯月の状態表が少々おかしく見えるので、その部分の修正はお願いします


580 : ◆8tIPBp6N4s :2021/08/13(金) 23:06:24 cV6t67pE0
卯月の状態表を修正しました。ご指摘くださりありがとうございます。
【島村卯月@アイドルマスター シンデレラガールズ】
[状態]:『禁断の薬』による記憶喪失および性格・容姿の変化、魔力消費(中)
[装備]:不死川玄也の散弾銃@鬼滅の刃(弾数8/20)
[道具]:
[思考・状況]基本行動方針:自分の記憶を取り戻すべく、優勝する。
1:全員殺して、記憶を取り戻す。
2 : 平野を利用し、ペテルギウスを殺す。

[備考]
『禁断の薬』を飲んだことにより記憶喪失となっています。またそれに伴い冷酷な性格に変化しています。
そして薬の効果により全身が"氷の魔法使い"として作り替えられたため傷が完治しております。
アイドル時代に培ったステップを無意識に使いこなしています。アイドル関連の記憶を取り戻せば能動的に使えるかもしれません

フリーズロッド@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルドとデイパック
が地面に落ちています。
デイパックの中身は
サバイバルナイフ@バトルロワイヤル、強力うちわ「風神」@ドラえもんビームサーベル@銀魂、レイガン@大乱闘スマッシュブラザーズX (エネルギー1/5)
のび太の支給品(基本支給品、ランダム支給品0~1)、ピーチ姫の基本支給品
です。


581 : ◆7PJBZrstcc :2021/08/15(日) 22:58:07 c.gJ92JQ0
藤丸立香、足柄、オグリキャップ、佐藤マサオ、ヴィータ、シャーロット・リンリン
予約します


582 : ◆7PJBZrstcc :2021/08/17(火) 18:54:47 PGdqRVWE0
投下します


583 : ◆7PJBZrstcc :2021/08/17(火) 18:55:23 PGdqRVWE0
 マサオ、ヴィータと合流し、野原しんのすけを探すことにした立香達は、元々東に進んでいた自分達と、北に進んでいたヴィータ達の間を取り、北東へ進むことにした。
 結果、進路を北東にあるH-6 リテイル・ローを目的地とし、彼女達はバギーを走らせる。

 余談だが、彼女達が乗るバギー♯9は、本来五人も乗れるほど広い車ではない。
 だが五人中二人が子供なので(正確に言うと、一人は子供体系なだけだが)、後ろに少々狭いが三人乗ってもらうことで解決した。
 ちなみに内訳は、運転席に立香。助手席にオグリキャップ。そして後ろに運転席側から足柄、マサオ、ヴィータの三人である。
 戦闘力のある二人が窓側に座り、有事の際に対処すると同時に真ん中にマサオを置くことで、彼を脅威から守るための席順だ。

 だがバギー#9の後部座席に三人が座るには、少々狭かった。
 というより、足柄がスペースを取っていた。おかげでマサオは座席ではなく足元に縮こまり、ヴィータは席にこそ座っているものの艦装に圧迫されている。
 これは足柄が太いということではなく、彼女の装備が問題だ。

 足柄には、彼女の艦装が支給され、装備している。
 その艦装は、彼女の左右に主砲を装備し、足には魚雷を装着しているのだ。
 戦力として見るなら間違いなく強力だが、端的に言って、場所を食う。

「せめぇよ」

 なのでヴィータは不満気に足柄を睨み、マサオも言葉には出さないが少々苦しい。
 ヴィータはデバイスを携帯用に戻し、うさぎのぬいぐるみもしまって、車に乗る際にスペースを取らないようにしたのでなおさらだ。

「ご、ごめんね。今しまうから」

 そう言って足柄はマサオ側の艦装をしまう。
 これで少しスペースができたので、マサオとヴィータは一息ついた。

 そこから話は野原しんのすけについてとなる。
 探すとなった以上、やはり捜索対象についてよく知ろうとするのは当然の流れだった。

「それでマサオ君、しんのすけ君ってどんな子なのかしら?」
「そういや、あたしもその辺のことは聞いてねえな」

 足柄の質問に、ヴィータが乗っかる。
 しかし、マサオとしてはこの漠然とした質問に少々困った。
 どんな子と聞かれても、しんのすけという少年は少々特徴が多すぎる。
 なのでどう答えようかとしどろもどろになっていたが、ここで立香が助け舟を出した。

「足柄さん。それじゃ答えにくいですよ。
 マサオ君。しんのすけ君の好きなものって分かるかな?」
「好きなもの? えっと、それならチョコビとアクション仮面と――」

 立香の質問に、今度は淀みつつも答えるマサオ。
 チョコビやアクション仮面が何か分からなかったものの、聞けばお菓子だったりヒーローものの特撮番組だったりと、五歳児の趣味と考えれば普通だ。
 しかし最後に出てきたものに一人を除く女性陣は驚愕する。

「あ、あとキレイなお姉さん!」
「「「え?」」」

 マサオの口から出た五歳児とは思えないワードに、マサオとオグリキャップを除く一同の声が一つになる。
 ちなみにオグリキャップは、いきなりハモる三人を見て頭に?マークを浮かべていた。
 困惑を抑えきれない立香は問う。

「お、お姉さんって何歳くらいの?」
「確か、前に最低でも女子大生って言ってたような……」
「うわぁ、話が合いそうなサーヴァント多そう……」
「どんな五歳児だよ」

 どこか呆れ気味な立香と、思わずツッコミを入れるヴィータ。
 ちなみに、彼女の周りにいる九歳児も大概年齢離れしているのだが、そんなツッコミを入れてくれそうな存在は、この殺し合いにはいなかった。
 それはそれとして、しんのすけについてこれ以上聞きようがないと足柄達は判断し、話は彼の父親ある野原ひろしについて移った。

「野原ひろしがしんのすけ君のお父さんなのは聞いたけど、じゃあこのロボひろしってのは何かしら?」
「えっと、信じてもらえるかな……」
「いいから言ってみろよ」

 言い淀むマサオに対し、発言をせかすヴィータ。
 しかし、彼の口から飛び出た台詞は、一同を沈黙に追い込むに十分な衝撃を持つものだった。


584 : ◆7PJBZrstcc :2021/08/17(火) 18:55:59 PGdqRVWE0

「実は、前にしんちゃんのおじさんがロボットになったことがあって」
「「「「 」」」」

 マサオの発言に声も出ない立香達。
 しかし、そこから一番最初に立ち直り、質問をしたのは意外なことにオグリキャップだった。

「友達の父親がロボに、なったのか?」
「う、うん……」
「なぜだ?」
「さぁ……? それに、ちょっとしたら戻ったし」
「……期間限定?」
「バーゲンセールじゃないんだから……」

 それから立香達はマサオに色々と質問をするが、大したことは聞けなかった。
 そもそも、彼はロボひろしについてほとんど知らない。
 彼の目線だと、ひろしはいつの間にかロボになり、ひげが付いたらなぜか性格が変わったので、友達としんのすけに協力して元の性格に戻した後はそれっきりだ。
 少ししてからロボひろしはスクラップとなり、残ったのは人間のひろしだけ。
 ロボひろしが本物のひろしの記憶をコピーしたロボットであることすら知らないのだ。
 だから、マサオから見ればこの殺し合いには二人野原ひろしがいることになる。

 これは一体どういうことなのかと、色々考える立香達。
 単に同姓同名の別人なのか、はたまた平行世界のひろしなのか。
 様々な可能性が浮かぶものの――

「あぁもうめんどくせぇ! そんなもん、会ってみりゃ分かる話だろーが!!」

 ヴィータが叫び、それに対し他の全員も返す言葉が無かったので、ロボひろしについての話は保留とし、一旦終わりにした。
 代わりに、ヴィータが立香にあることを尋ねる。

「ところで、さっき平行世界とか言ってたけど、次元世界じゃねぇのか?」
「次元世界?」

 ヴィータの質問に、立香がオウム返しに言葉を出す。
 それに対し、ヴィータは面倒くさそうにしながらも簡単に説明を始めた。

 次元世界とは、平たく言うなら立香の言う平行世界とそれほど違いはない。
 強いてあげるなら、世界を管理する管理局の存在に立香が驚いたくらいだ。
 だがヴィータの知識では、他の世界を認識し、移動手段もある『管理世界』と、それらが存在しない『管理外世界』の二つがある。
 彼女から見れば、僅かではあるが魔力を感じる立香は魔導士で、横にいるオグリキャップは使い魔にしか見えない。
 それをやんわりと否定したのは、使い魔扱いされたオグリキャップだ。

「ツカイマが何かは知らないが違う。私はウマ娘だ」
「ウマ娘ってなんだよ」

 ヴィータは訝し気に問うが、それに対しオグリキャップは困った顔しかできない。
 彼女からすれば、自身は生まれたときからウマ娘であり、世界に当たり前に存在するものでしかない。
 それを何かと聞かれるのは、立香やマサオに人間とは何かを問うに等しいことだ。
 これに明確な返答ができるのは、この場ではヴォルケンリッター紅の鉄騎 鉄槌の騎士であるヴィータくらいだろう。

 一方、話にはロクに入れないマサオだが、ウマ娘の存在は”そういうもの”として受け入れた。
 彼は友人の父親がロボになるなど、素っ頓狂な経験なら割とあるので、理解できなくてもありのままを受け入れるのに抵抗は薄い。
 それにオグリキャップを見ていると、どこか友人であるボーちゃんを思い出すのも、受け入れられる一因だった。

 だがそれはそれとして、ここで足柄がヴィータに問う。

「ヴィータちゃん、一つ聞きたいんだけどいいかしら」
「なんだよ」
「管理局ってのから見て、地球が管理外世界になっているのは聞いたけど、地球っていくつもあったりする?」
「……ハァ? 地球は一個しかねぇだろ」

 足柄の質問の意図が分からず、困惑してしまうヴィータ。
 対し足柄は、今まで見てきたものや立香達とまとめた情報を元にヴィータの発言を否定する。

 なぜなら、立香、足柄、オグリキャップはそれぞれ違う世界の住人であるものの、彼女達の出身地は紛れもなく全員地球、それどころか日本だからだ。
 ヴィータの言う管理外世界に地球がいくつもあるなら、立香達の証言は矛盾しない。
 だがもし無いというのなら――

「もうわっかんねー」

 ここまで考えて、ヴィータは匙を投げた。彼女は元々そこまで考えるタイプでもないのだ。
 それに色々ややこしそうだが、彼女からすれば結局のところ、聞いたことも無い管理外世界の話でしかない。
 第一、管理局に見つかっていない管理外世界などいくらでもある。なら立香達の世界もそういうことでしかないだろう、と彼女は結論付けた。


585 : ◆7PJBZrstcc :2021/08/17(火) 18:56:32 PGdqRVWE0

「それよりマサオ、お前今の話分かったか?」
「えっと、難しいことは分からなかったけど、つまり皆別の世界の人ってことだよね」
「分かるのか?」

 マサオが別の世界云々を理解していることに対し、未だ平行世界について理解できていないオグリキャップだ。
 彼女の眼には紛れもなく驚愕が浮かんでいた。
 そんなオグリキャップに対し、マサオはオドオドしながらも過去の経験について話す。

「実は僕、前に映画の世界に閉じ込められたことがあるんだ」
「映画の、世界?」
「なんだそりゃ」

 マサオの言葉に困惑を隠せない立香とヴィータ。
 そんな二人の視線に圧を感じ、なぜか目を背けながらマサオはその時のことを語った。

 ある日、友達と町で遊んでいたら古びた映画館を見つけ、なんとなく入ってみると、そこでは荒野の映像がひたすら流れる映画が映っていた。
 それをしばらく見ていると、なぜか映画の中の世界に入ってしまい、マサオ達は仕方なくそこで暮らすことに。
 やがて元の世界のことも忘れかけたある時、彼らと同じく映画の中に吸い込まれた人々が、映画を終わらせて脱出することを思いつく。
 その為に彼らは一丸となって、その映画の悪役に立ち向かった。
 そして最後には悪を倒し映画はハッピーエンド、皆は元の世界に戻れた。

「って感じで……」
「ふーん。で、マサオはなんかしたのか?」
「えぇ〜!? 僕も結構頑張ったんだよ〜!!」

 マサオが話し終えた後、ヴィータが彼に返した言葉に彼は泣きそうになる。
 事実、彼は尽力した部類なのだが悲しいかな、五歳児の語彙力ではその辺りは全然伝わらなかった。
 他三人も凄い話を聞いた、と思っても殺し合いとは関係なさそうだと結論付ける。
 ただし――

「映画の……物語の、世界……?」

 立香だけは、関係ないと思いながらも、なぜか小さな引っ掛かりを覚えていた。



 それからしばらく後、立香達は目的地であるリテイル・ローに到着した。
 ちなみに意識していないが、彼女達が今いるのは西側の市街地である。
 ここで一行はバギーを隅に寄せてから一度停止して、車を降りるか、乗ったまま街を進むか話し合おうとしたその時

 ヌッ

 というオノマトペが浮かびそうな程唐突に、建物の陰から三メートルほどの人影が現れた。
 黒い生地に白い丸模様を入れたワンピースを着て、髪を二又に分けた少女としか言えないあどけなさを持った人間。
 立香達の中に知るものはいないが、誰であろう、シャーロット・リンリンである。

「でけぇ……」
「ヘラクレスより大きい……」

 あまりに巨大な”少女”に、辛うじて声が出たヴィータと立香以外は何も言葉が出ず、一行はただ唖然としてリンリンを見つめていた。
 しかし、彼女達にそんな時間はなかった。
 なんと、リンリンがバギーを掴んだかと思うと

「お菓子……ヨコセ……!!」

 お菓子を要求しながら車を揺さぶり始めた。
 これにはたまらず、立香達は慌てて車を降りる。

「このヤロー!!」

 そしてそのままの勢いでバリアジャケットを展開し、グラーフアイゼンをハンマー状に変形させて戦闘態勢を整えるヴィータ。
 続くように足柄も、しまっておいた艦装を再び取り出し、腕に装着し直した。

「待って!!」

 しかし戦闘態勢を整えた彼女達に対し、立香は咄嗟にストップを掛ける。

 ここで立香が止めに入ったのには、当然の如く理由がある。
 まず、彼女の最終目的は殺し合いを止めること。
 その為に殺し合いに乗らない仲間を募るのが、彼女の選んだ手段である。
 そして目の前の相手、リンリンは立香から見て、殺し合い以前の存在だった。


586 : ◆7PJBZrstcc :2021/08/17(火) 18:57:03 PGdqRVWE0

 立香から見てリンリンは、飢えた獣である。
 だからこそ、立香は待ったをかけたのだ。
 どういう理由か知らないが、リンリンは酷くお腹を空かせている。
 だがもし、リンリンが殺し合いに乗っているなら、自分達を問答無用で殺しにかかるのではないか。
 殺し合いに乗っているとしても、問答無用ではない。
 つまり、説得する隙がある。

 ならばここは、リンリンの飢えを満たしてあげれば、こちらの味方につけることができるのではないか、と立香は考えたのだ。
 だからこそ、彼女は彼に頼んだ

「マサオ君。グルメテーブルかけを出して」
「ハッ、ハイ!」

 リンリンに怯えながらも、マサオはデイバッグから支給されたものを出し、彼女から少し離れた所に広げる。
 その名はグルメテーブルかけ。
 彼らとは違う世界の22世紀のひみつ道具で、言えばどんな食べ物でも出してくれるテーブルかけという、凄まじい代物である。

 ここにたどり着く前に、未だ全ての支給品を確認していなかったマサオとヴィータは、足柄達に言われてデイバッグの中身を検めていたのだ。
 それが功を奏した。

 一方、リンリンは不機嫌だ。
 何か出す素振りを見せるから待ったのに、出てきたのは単なる布。
 甘いお菓子はどこにもない。
 ならば用はない。こいつらも、さっきの奴と同じように殺してしまおうか。

 リンリンの思考が殺意に染まり始めたその瞬間

「いちごのショートケーキをホールで」

 立香がお菓子の名前を呟くと同時に、テーブルかけからお菓子が現れた。

 ちなみに、ショートケーキのショートとは小さいという意味ではなく、脆いやサクサクした、あるいは短い時間で作れるという意味である。
 なのでホール、つまり切り分ける前でもショートケーキと称することに矛盾はなかったりする。

 それはそれとして、布からいきなりケーキが現れる光景には思わずリンリンも目の色を変えた。
 リンリンの反応を見て、立香は得意気な笑みを浮かべて目の前の相手にテーブルかけの説明を始める。

「これはね、グルメテーブルかけって言って、食べたい料理の名前を言うと、それを出してくれる不思議なテーブルかけなんだ」
「すげぇ!! セムラ! セムラ!! クロカンボッシュ〜!!!」

 立香の説明を聞いたリンリンは、目を輝かせてお菓子の名前を連呼する。
 彼女の指名に応じてグルメテーブルかけは、オーダー通りにお菓子を次々と出現させていく。
 ポコポコポコポコと、まるで泡のように。

「ホットケーキ!」
「ロイヤルプレジレントチョコビ!」
「大和パフェ!」
「ドーナッツ」

 ここぞとばかりにヴィータ達もお菓子の名前を言って、リンリンに与えていく。
 そうこうしているうちに気づけば、リンリン達が出したお菓子は、彼女の身長、三メートルを超えるほどに積みあがっていた。

「出しといてなんだけど、食いきれんのかよこれ……」

 代表してヴィータが呟くが、思いはリンリンを除く五人とも一緒だった。
 他のウマ娘の何十倍も食べるオグリキャップも、よく食べるサーヴァントや艦娘を知っている立香や足柄も、目の前のお菓子は大量というほかなかった。
 あるいは、別の世界線の足柄なら、これほどの量を食べる艦娘にも心当たりはあったかもしれない。だがそれは別の話である。

 一方、当のリンリンは目の前の山に、完全に心を奪われていた。

「いっただっきま〜す!!」

 目を爛々とさせながら、お菓子を一つずつ手に取り、口の中に収めていくリンリン。
 そのスピードは、さっきまで三メートルを超えていた山が、いつの間にか二メートル間近にまで低まるほどだ。
 彼女の余りの健啖さと食べる速さに、立香達は最早言葉もなかった。


587 : ◆7PJBZrstcc :2021/08/17(火) 18:57:34 PGdqRVWE0





 最初はオレにお菓子をくれない悪い奴らだと思った。
 だけどそんなことなかった。
 こんなに美味しいお菓子を、オレに山ほどくれるなんて、間違いなくこいつらはいい奴らだ。
 幸せすぎて涙が出る。
 涙で前が見えやしない。

 おれに優しくしてくれたマザーに、大好きな羊の家の皆と一緒だ。
 こいつらなら、マザーの夢を手伝ってくれるかもしれない。
 そうだ。そうしよう。マザー・カルメルの夢、全ての種族が同じ目線で暮らせる国を一緒に作ろう。
 こいつらを従えて、悪い人間は殺して、夢の国を作るんだ。

 途中なんだか少しだけ痛かったり、食べた時に苦いものも混じってた気もしたけど、きっと気のせいだ。

 気づけば、目の前に合ったお菓子の山はなくなっていた。
 もうなくなっちまったのか、と残念だったが、すげーうまかったし、お腹もいっぱいだから文句はない。


 とりあえずお礼を言おうと、目の前にいるはずの五人に向き合おうとするリンリン。
 しかし様子がおかしい。

 まず、お菓子を出していた不思議な布がなくなっている。
 次に、目の前にはなぜか四人しかいない。
 その内一人、リンリンは名前を知らないが、立香の服はなぜかボロボロになり、体に怪我をして膝をついている。
 次に一人、またも知らないが、ヴィータは立ったままリンリンを睨んでいる。
 最後にもう二人、こっちも知らないがオグリキャップとマサオは震えていた。
 特にマサオは涙を流しながらズボンを湿らせ、明らかに怯えた目でこちらを見ている。

 とりあえず、リンリンは一番気になることを尋ねてみた。

「なあ、お前らもう一人いなかったか? どこいったんだ?」

 彼女としては何気ない問い。しかしそれは地雷だった。
 返答として、ヴィータの怒号が飛ぶ。

「……ふざっけんじゃねえ!!」

 あまりの叫びに、リンリンは思わず怯んでしまう。
 ひょっとしておれは何かやってしまったのではないか、と。

 大丈夫だ。マザーならちゃんと言えば許してくれた。
 こいつらだってきっとそうだ。謝れば分かってくれるはずだ。
 リンリンはそう信じた。

 だが彼女の思い通りにはならない。

「アイツは……足柄は……!」

 覚悟しろ。

「てめぇが喰ったんだろうが!!!」 

 容赦ない現実が、彼女を責め立てる。


588 : ◆7PJBZrstcc :2021/08/17(火) 18:57:59 PGdqRVWE0





 時間は少しだけ巻き戻る。

 お菓子の山が凄まじいスピードで減っていくのを、ただただ眺める立香達。
 これなら食べ終われば話を聞いてもらえそうだ。
 そう立香が思った直後

 ガシッ

「えっ?」

 リンリンの左手が、マサオの身体を掴んでいた。
 そのままマサオは彼女の口へと、一直線に吸い込まれるように向かっていく。
 大きく開いた巨人の口が、少年を今か今かと待ち構えている。

「ひいいいいいいい!! 助けてえええええええええ!!」
「主砲! 撃てー!!」

 しかし、それを阻むものは当然いる。
 足柄が主砲をリンリンの体に向け発射し、命中させた。
 敵の爆砕を知らせるような重巡洋艦の主砲に相応しい爆音が、辺りに響き渡っる。
 だがリンリンはマサオを手放す程度の衝撃しか受けておらず、彼女の身体には軽い火傷しか与えていない。
 普通の生き物なら、下手をすれば跡形も残らない筈なのに。

「なんて硬さなの……!?」
「はっ!!」

 足柄が凄まじい、というより生物にあるまじきリンリンの硬さに驚愕する横で、オグリキャップはひた走る。
 そしてリンリンの手から離れたマサオを、地面に落ちる前に受け止め転身、リンリンから距離を取るべく再び走り出した。
 同時に、立香とヴィータ、足柄もリンリンから距離を取ろうと移動する。

「っ!?」

 しかしここで、足柄の左足の痛みが彼女の動きをせき止める。
 この場でなければ、なんてことのない一時硬直。
 されど捕食者のいる場で、被食者が足を止めたなら結末は一つ。

 ガシッ

 今度は足柄がリンリンに掴まれ、先程のマサオが辿りかけた結末へと進んでいく。
 しかも彼女の両腕は、リンリンに拘束され主砲を放つこともできない。
 艦娘として人間を超える力を持つはずなのに、振りほどくこともできない。
 食べられる時間を少し遅らせるのが精一杯だ。

 だが彼女には仲間がいる。

「おおおおおおお!」

 リンリンから少し距離を取ったヴィータの足元に、橙色の魔法陣が展開されると同時に、彼女はグラーフアイゼンを天に掲げる。
 そして体を回していくに合わせ、鎚の柄は何倍にも長さを伸ばし、頭部のサイズは何倍にも膨れ上がった。
 この状態になったグラーフアイゼンを、ヴィータはリンリンに向けて全力で振り下ろす。

 これがヴィータの魔法。
 これぞ、鉄槌の騎士の真骨頂。
 あらゆるものを壊す、彼女の全力。

「ギガント、シュラアアアアアアアアアク!!」

 ヴィータの振り下ろした鎚の頭部は、リンリンの頭へと落ちていく。
 これが命中すれば、さしものリンリンでもただでは済まないだろう。

 命中さえすれば。


589 : ◆7PJBZrstcc :2021/08/17(火) 18:58:30 PGdqRVWE0


 この瞬間、信じられないことが起こった。

 それはこの殺し合いを経ない未来において、四皇となる資質か。
 あるいは、食事を邪魔されたくないという人間の嫌悪か。

 なんと、リンリンは己の身体を左側に少し逸らした後、逆手でグラーフアイゼンの持ち手を掴み、受け止めたのだ。

「嘘だろオイっ!?」

 ヴィータがリンリンの行動に対し僅かに怯んだ刹那、彼女はそのまま鎚を振り回し、持ち手側にいたヴィータを近くの建物へと叩きつける。

 リンリンは自身の数十倍の大きさを誇る巨人族の英雄、ヨルルを背負い投げできるほどの胆力を持つ。
 ならば、たかが自分より数メートル大きい程度のグラーフアイゼンを受け止められない道理があるか。振り回せない道理があるか。
 そんなものはない。彼女ならばそれができる。できてしまう。

「っ!!」

 この状況において立香は、いや皆は近寄るのは危険、と判断していた。
 だがここまでくればそうも言ってられない。
 立香はレターを構えリンリンへと走り、オグリキャップはタスクを全て放つ。

 だが砲弾すら大した痛手にならないリンリンに、牙がどれほど食い込むというのか。
 事実、彼女には傷一つ負わせていない。それどころか何かされたとすら思っていない。
 平時ならば風で飛んできた小さな砂利が当たった位の感覚はあったかもしれないが、お菓子を喰らうことしか意識のない今の彼女には毛ほども感じない。

 そして立香も相手にならない。
 リンリンが未だ放していない鎚を、今度はさっきの反対側へと振り回す。
 それだけで立香は吹き飛ばされ、ヴィータとは反対側の建物へ叩きつけられ、地面へと伏せる。ここでグラーフアイゼンは元の大きさに戻り、リンリンは手放す。

「ぐっ……かはっ……!」

 叩きつけられた立香は、意識は朦朧とし、体を震わせながら再び立ち上がろうとするも、血を吐いて止まってしまう。
 本来、彼女が受けたダメージはただの人間に耐えられるものではなかった。
 装備している悪魔の力があって初めて、かろうじて生きていられる程度のダメージに押さえ込めたのだ。

 そんなこと、藤丸立香には関係ない。
 目の前で仲間が殺されそうになっているのに、立ち上がれないことが恐ろしい。
 自分の判断ミスで足柄が死にそうになっていることが、憎らしくして仕方がない。

 だから彼女は己の死力を以って立ち上がろうとする。どれほど無意味なことであったとしても。


 一方、何もできない足柄はただ皆を見つめていた。
 未だ立ち上がれない立香とヴィータ。
 恐怖で動けないマサオと、これ以上何も手立てがないオグリキャップ。
 そんな彼女達を、足柄は恨まない。

 確かに、彼女がリンリンに食べられるのは、結果論ではあるものの立香のせいと言えなくもない。
 だがこんな状況、誰が予想できるというのか。
 それに戦場に予想外は付き物だ。
 どれだけ念入りに策を練っても、運や他の要因で狂わされるなどよくあること。
 今回はたまたま、その結果足柄が犠牲になるだけ。
 だから――

「立香、あなたのせいじゃないわ」

 足柄は自責の念で苦しみかねない少女に向けて、言葉を紡ぐ。
 これがどれだけ相手に届いているか分からないが、それでも言わずにはいられない。

 そうこうしていると、彼女の最期の時がやってくる。
 まるで深淵に続く穴倉のような、リンリンの開けた大口に向かって、足柄は意志と無関係に吸い込まれていく。

 彼女は願う。
 どうか、立香達に勝利を。必ずこの殺し合いを打破して欲しい、と。
 けれども――

(勝利だけが……私の誇りだったのに……っ)

 皆をそこへ連れていく者が自分じゃないことだけは、たまならなく悔しい。

【足柄@艦隊これくしょん 死亡】
【残り98名】


590 : ◆7PJBZrstcc :2021/08/17(火) 18:58:59 PGdqRVWE0


 やがて足柄とお菓子を食べ終えたリンリンは、彼女から見て不可解な現状に疑問を抱いて辺りをキョロキョロ見回す。

 自らが起こした惨状に気付いていないその態度が、マサオとオグリキャップにはたまらなく恐ろしかった。
 藤丸立香はそれどころではなかった。
 やっと立ち上がれたヴィータだけが、リンリンを睨んでいた。

 それに構わず、リンリンは四人に尋ねる。

「なあ、お前らもう一人いなかったか? どこいったんだ?」

 何を言っている?
 ヴィータだけではない。立香以外の三人がそう思った。

「……ふざっけんじゃねえ!!」

 だが、ここで怒りの堰が切れたのはヴィータだけだ。 

「アイツは……足柄は……!」

 そんなに知りたいなら教えてやる。

「てめぇが喰ったんだろうが!!!」 

 お前がやったことを、分かりやすく簡潔に。


 そして時は現在に戻る。

「……は?」

 ヴィータの返答に、リンリンは何を言われているのか分からなかった。
 だが周りの顔色を見て、少なくとも冗談を言っているわけではないとは思った。

 けれどそれは、恐ろしい事実を意味する。
 人肉食。カニバリズム。
 多くの世界で、時代で忌避される禁忌。
 リンリンの頭では思いつきさえしない異常。
 それを自身が行った。

「…………そだ……」

 リンリンの息が荒ぶる。
 決して受け入れられない事実を見せつけられ、体が必要以上に空気を求める。

 目が血走る。


 瞬きを忘れる。



 耳が何も受け付けない。




 そして――

「うそだああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 三千世界のどんな爆音であろうとも、この叫びには届かないのではないかと思わせるほどの叫びを、リンリンは発しながらその場を全速力で逃げ出した。


591 : ◆7PJBZrstcc :2021/08/17(火) 18:59:31 PGdqRVWE0


 リンリンの叫びで起こった風圧に吹き飛ばされ、なすすべなく地面を転がる四人。
 この中で一番早く立ち上がれたのは、ヴィータだった。

「クソが……ちくしょう……」

 彼女には、リンリンの叫びはただとぼけているようにしか見えなかった。
 ふざけんじゃねえ、逃げんじゃねえと、怒りが抑えきれなかった。

「待ちやがれ、このヤロー……絶対、ぶっとばす……!!」

 故に彼女はグラーフアイゼンを再び握り、リンリンを追うために空を駆ける。
 お前を決して許しはしないと、己の赫怒と決意を籠めて。

 一方、未だ立ち上がれない立香の考えはヴィータと異なっていた。
 立香は、リンリンが本当に足柄を食べたことを認識していないと思っていたのだ。
 なぜなら、彼女は似たような事例を知っていたからだ。

 狂化。
 それは、サーヴァントが保有するスキルの一つ。
 バーサーカーのクラススキルであり、効果はスキルの高さの分だけ理性を奪い、その分サーヴァントのステータスを高めるというもの。
 だが高さがEXの場合は事情が異なる。
 この場合、喋ることはできても意思疎通が不可能なことが多いのだ。

 ダメージを負うたびに幸運判定し、失敗すれば暴走する者。
 我が子に関する事柄に関してのみあらゆる制御が通じなくなる者。
 特定の相手と相対すると理性が吹っ飛ぶ者。

 彼らと同じことが、お菓子に目を奪われたリンリンに起きていると立香は考えたのだ。

 だがそんな思考に何の意味があるのか。
 短い付き合いであっても大切な仲間をまたも失い、別の仲間がかたき討ちに飛び出した。

 そして、立香は生前の足柄の想定通り、自責の念に苦しんでいた。
 自分がマサオ君にグルメテーブルかけを出してもらわなければ、足柄は死ななくて済んだのではないか。
 苦しくて辛くて、泣き出しそうになる。


 だとしても――

 立香はこの後悔(いたみ)から逃げない。
 立香はこの喪失(いたみ)を背負って生きていく。
 そうでなければ、今まで歩いてきた道が無意味になる。

 そんなことは、決してできない。

「ハァ……ハァ……」

 だから立香は自身のデイバッグを漁り、和泉守兼定に支給された最後の支給品を取り出す。
 それは、とある不思議なダンジョンにおいて、あるギャングのボスが食べると体力を回復させるアイテム。
 カエルだった。

 これを立香は貪る。
 ガツガツと、とても年頃の少女がするものではない振る舞いで、生きたカエルをかみ砕いて胃に流し込む。
 決して美味しいものではない。血生臭くて気持ち悪い。
 カルデアのキッチンならもっとおいしい調理法を、きっと誰かが披露してくれるだろう。

 それでも立香は食べた。
 おかげで説明書きの通り、体力はわずかに回復した。
 立ち上がるだけなら問題はない。

 未だ体はフラフラするが、血を吐くこともないだろう。
 ならば十分。バギーに乗ってヴィータちゃんを追い掛けよう。

 そう言おうとして、立香はマサオとオグリキャップの方へ顔を向ける。
 そこで見た。


592 : ◆7PJBZrstcc :2021/08/17(火) 18:59:59 PGdqRVWE0

「「…………」」

 恐怖で顔を固まらせながら、立香をすがるように見つめる二人の姿を。
 特にマサオは目で訴えていた。
 行かないで、一緒にいて、と。

 考えてみれば当たり前だ。
 人が目の前で食べられる光景を見て、怯えない一般人なんていない。
 そんな人に、一緒に行こうとは言えない。

 だから立香は二人にこう声をかけた。

「マサオ君は、近くの建物に隠れてて。
 オグリキャップは、マサオ君を守ってあげて」
「……分かった」
「え、立香さんは……?」

 立香の言葉に素直に頷くオグリキャップに対し、マサオは懇願するように問いかける。
 だがそんな希いを見なかったことにして、立香は強く言い切った。

「私は、ヴィータちゃんを追い掛けるよ。
 何ができるか分からないけど、放っておくなんてできないから」

 立香の言葉を聞いて、目を見て、二人は悟った。
 決して彼女の意志を曲げることはできないと。

 だから二人は立香の言葉に従い、近くの建物へと入っていく。


 それを見送った立香は、ずっと訴えかけ続ける痛みを無視してバギー#9へ乗り込み、アクセルを踏む。
 彼女の運転に、少し前にあったはずのおぼつかなさは最早存在しなかった。





 一人市街地を疾走するリンリン。
 彼女は現実から逃げていた。人を食べたという現実から。

 もしここにいるのが六十三年後のリンリンなら、知らないうちにどこの誰とも知らない奴を食べたとしても、気にも留めなかったかもしれない。
 だがそうはいかない理由がある。

 それは、リンリンにとって数時間前のこと。
 マザーと羊の家の皆が、彼女の誕生日を祝ってくれた時のこと。

 あの時、彼女は皆が作ってくれたバースデーケーキを夢中で食べていた。
 あれは本当に楽しかった。
 楽しくて、嬉しくて、思わず前が見えなくなるほど涙が出た。
 そして食べ終わった時、皆は居なくなっていた。

 これにさっき言われたことを合わせると、恐ろしい想像が浮かんでくる。
 例え六十三年後のリンリンだったとしても、目を覆いたくなるような光景が。
 もしかすると――

「そんなわけない……
 おれがマザーや、皆を食べるなんて……! そんなこと、あるわけねえ……!!」

 大好きな皆を、大切な居場所を、自分自身の手で壊したかもしれない可能性など、考えたくもなかった。


593 : ◆7PJBZrstcc :2021/08/17(火) 19:00:27 PGdqRVWE0


【H-6 リテイル・ロー 市街地/早朝】

【シャーロット・リンリン@ONE PIECE】
[状態]:ダメージ(小)、火傷(小)、満腹、憎悪、絶望(極大)、全力疾走中
[装備]:天逆鉾@呪術廻戦
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2、輝子のデイパック
[思考・状況]基本行動方針:人間は殺す。マザーの夢を叶える。
0:おれがマザーや皆を食べたなんて、そんなはずねえ!!
1:人間は殺しつくす。
[備考]
参戦時期は六歳の誕生日直後、シュトロイゼンに出会う直前より参戦です。
天逆鉾の効果により、ソルソルの実の力が封じられています。
どこに向かって走っているかは次の書き手氏にお任せします

【ヴィータ@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:バリアジャケット展開、ダメージ(中)、リンリンに対しての怒り(大)
[装備]:グラーフアイゼン@魔法少女リリカルなのはA's
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1(確認済み、お菓子の類ではない)、うさぎのぬいぐるみ@クレヨンしんちゃん
[思考・状況]:基本行動方針:主催をぶっとばす
1:あいつ(リンリン)を追い掛けて、ぶっとばす
[備考]
支給品を全て確認しました

【藤丸立香@Fate/Grand Order】
[状態]:悪魔による能力向上状態(支障なし)、ダメージ(大)、無力感、自責の念
[装備]:魔術礼装・カルデア、支援礼装、レター@グランブルーファンタジー、悪魔@大番長、、召喚石『ゴッドガード・ブローディア』(現在使用不可)@グランブルーファンタジー、バギー#9
[道具]:基本支給品×2(自分、兼定分)、クレイジーソルト、和泉守兼定(鞘なし)
[思考・状況]基本行動方針:仲間を集めて殺し合いを止め、推測される儀式を防ぐ。
1:あの子(リンリン)とヴィータちゃんを追い掛ける
2:足柄さん、ごめんなさい……
3:ここから殺し合いに反対の人たちを説得する。
4:恐らく、これは何らかの儀式では?
5:マサオくんを守るのは、オグリキャップに任せる
6:しんのすけという子を探す。その後マシュ、沖田さん、土方さん、『野原ひろし』を探す。ラヴィニアも確認はしたい。
7:ガンマン(ホル・ホース)の説得の考えは分かる。けど…オグリキャップは大丈夫かな。
8:映画の世界という言葉がなぜか引っかかる
[備考]
※参戦時期は少なくともセイレム経験済みです。
※漫画版『英霊剣豪七番勝負』の女性主人公をベースにしてます。
 (が、バレー部とかその辺の設定すべてを踏襲はしていません。)
※このバトルロワイアルを英霊剣豪の時のような儀式だと推測しています。
※彼女のカルデアに誰がいるかは後続の書き手にお任せしますが、大抵はいるかと。

【オグリキャップ@ウマ娘 シンデレラグレイ】
[状態]:疲労(小)、複雑な心境、恐怖(大)
[装備]:スタンドDISC『タスク』(現在ACT1のみ)、特別製蹄鉄付シューズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2(確認済み、お菓子の類ではない)
[思考・状況]基本行動方針:とにかく生き残ろう。
1:カネサダ……アシガラ……
2:マサオを守る
3:目的のために殺す『意思』…それを覚えて大丈夫なのだろうか。けれど……
4:ヘイコウセカイって何だろう……?
5:あの男が説得された場合、受け入れられるか?
[備考]
※参戦時期は西京盃後。

【佐藤マサオ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:恐怖(大)、失禁
[装備]:ひらりマント@ドラえもん
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1(確認済み、お菓子の類ではない)
[思考・状況]:基本行動方針:しんのすけ達を探す
1:ヴィータちゃん、立香さん、行かないで……
2:しんちゃんを探したいけど……
3:いざとなったらひらりマントで自分の身を守る
4:しんちゃんのパパが二人...?
[備考]
支給品を全て確認しました。


※足柄と彼女の艦装、彼女のデイバッグ(基本支給品、ランダム支給品×1)、グルメテーブルかけ@ドラえもん はシャーロット・リンリンに食べられました。
※シャーロット・リンリンの絶叫がH-6に響き渡りました。


【支給品紹介】

【グルメテーブルかけ@ドラえもん】
佐藤マサオに支給。
これを広げ、食べたい料理の名前を言うと、その料理が出てくるひみつ道具。
出てきた料理の味は絶品。また、現実に存在しない料理でも出現させることができる。

【カエル@ディアボロの大冒険】
和泉守兼定に支給。
なんてことのないごく普通のカエル。毒もない。
食べるとHPが50回復する。
本ロワでは、食べると少しだけ傷が治る。


594 : ◆7PJBZrstcc :2021/08/17(火) 19:01:05 PGdqRVWE0
投下終了です。
タイトルは『苦いものはまだ嫌いなの』です


595 : ◆8tIPBp6N4s :2021/08/19(木) 10:18:25 yoZjlLco0
粕谷瞳、牛飼い娘、ひろし、ラッド・ルッソ、神楽鈴奈、クロ(リーダー)
予約します


596 : ◆8tIPBp6N4s :2021/08/19(木) 10:20:10 yoZjlLco0
粕谷瞳、牛飼い娘、ひろし、ラッド・ルッソ、神楽鈴奈、クロ(リーダー)
予約します


597 : ◇8tIPBp6N4s :2021/08/25(水) 01:04:09 oPjRd0CQ0
すみません、予約延長させていただきます。


598 : ◆8tIPBp6N4s :2021/09/04(土) 20:06:40 3CY9L0E60
遅れてすみません。投下します。


599 : The run-to escape from monsters- ◆8tIPBp6N4s :2021/09/04(土) 20:11:23 3CY9L0E60
既に深夜に差し掛かかり、闇夜に包まれた森林。木々の間に美しい月明かりが差し込んでいる。 そんな美麗な景色にはそぐわない地鳴りが、破壊音が、咆哮が、そこかしこに響いている。 天上にて鎮座する月は、殺し合いに招かれし者共を等しく照らす。 それは殺人鬼による決死の逃亡劇も例外ではなかった。

月明かりが照らすは疾走する2つの影。 一人は男。 血にまみれた裏の世界で生きる者。自らを安全と驕る者共に悉く死を与える恐怖の伝道師。快楽殺人者にしてシカゴマフィア、ルッソ・ファミリーに身を置く男。その服装は夜闇に目立つ白服を纏っている。 男の名はラッド・ルッソ。 暗闇の森林での逃走劇。 その「逃げる側」となった人物である。 あのラッド・ルッソがあろうことかマフィアの面子すら投げ捨てて敵に背を向けている--この事実だけで「追う側」の存在が如何程の脅威であるかは、ラッド・ルッソという人物を知っている人間は正しく理解できよう。

その件の追跡者はあろうことか参加者ですらない。殺し合いの促進。それを担うNPC。それもゴブリンなどといった弱者ではない。 緑色を纏った巨体。 一つ歩みを進める度に地面が揺れ轟音を轟かせる。 夜の闇でも赤く輝くその眼から放たれるは高度の熱球。 他のNPC達とは一線を画した驚異を誇る存在。 その名は打擲の剛激手という。

(コイツ......!どんだけ追ってきやがる!!しつこいにも限度ってもんがあんだろうが!!!)

今だに互いの距離は付かず離れず、一定の距離を保ったままである。当然、ラッドに支給された散弾銃。それで 打擲の剛激手の目を潰そうにもそうはいかない。ラッドが目を狙おうにも熱球にそれを阻まれる。散弾銃、という性質上、ある程度離れた距離から、しかも一点のみを集中して狙うことは難しい。それ故にラッドは未だに打擲の剛激手からの追跡を許していた。 木々の合間を縫ってなんとか距離を取るも、追跡者はその巨大を駆使して強引に道を開く。 このままでは早かれ遅かれ追い付かれて殺されるのがオチだ。

『聞け! この地に集いし--』

なにやら声が響いてきたがそれに構っていられる程のは余裕はラッドには無い。 今はこの状況を打開せねば命の危機に直結する。しかし、今のところこれといった打開策もない。

(オイオイオイオイ........近付いたらあのゴツい爪でお陀仏、距離を取っても熱球かよ......ヤバいッ!ヤバいってこいつぁよォ!さぞかしこのバケモンはこう思ってんだろうなあッ!でっけえ爪もなけりゃ目から火の玉も出せねぇようなちっぽけな下等な人間ごときには殺されねぇって思ってんだろうなあッ!!!あぁ......クソッ、もうちっといい武器がありゃあなぁ......おあずけもいいとこだぜまったくよーッ!!)

まだ支給品を確かめれば何か役に立つ物でもあるんだろうが--その隙をあの空恐ろしい追跡者が与えてくれはしない。 何かないものかと思案を巡らせながらも追跡者への警戒を怠らない。
咆哮を上げて迫り来る怪物を殺してやりたいという欲望を抑え、今は逃走に徹する。
今の状況ではどうあってもあの化け物は殺せない。 追跡者はラッドを黒焦げにせんと熱球を放ち、その都度ラッドは右へ左へ方向転換して避けてゆく。
その応酬を何度繰り返したか、一人と一匹は森中をジグザグに駆け回るうちに、ラッドは森の出口を発見する。 その場所にあったのは建物だった。 追跡者の放つ熱球を避け、そのまま森を抜ける。 するとどうだろうか、化け物は森から一歩も出ず、眼前にいるラッドを追わずに踵を返し、森の夜闇へと消えていった。 それを確認すると、些かの不自然さを感じつつも安堵のため息をつき、支給品の確認の為に家の中へと入っていった--


600 : The run-to escape from monsters- ◆8tIPBp6N4s :2021/09/04(土) 20:14:55 yI7Sha2E0
◆◆◆

「--ここまでが、この殺し合いに来るまでの顛末です。」
「ひろし様........」
「あなたも大変だったのね........」
「牛飼娘さん程ではありませんよ。まさか村一つがなくなるなんて......」

互いの身の上話をしつつ、三人の参加者が日の出つつある黎明の草原を歩いている。
ゴブリンの襲撃、そして新たな参加者との邂逅からあまり時間は過ぎていない。
始めに集った五人。それと今しがた加わった一人のグループは町に半分、他参加者との合流に半分と別れている。
彼ら三人は殺し合い打開の為の戦力を求めて移動していた。

--表向きは。

実際、三人の中の一人である牛飼娘は殺し合いに乗っていないであろう貴重な戦力足りうる存在。それでいて幼なじみでもある人物、ゴブリンスレイヤーとの同行を目的としている。

しかし、この探索にはもう一つの隠された意図がある。
この移動の発案者であるひろしのみが知る裏の目的。

「ひろし様を襲うとは...........その相手が人間でなくとも、私は断じて許せません......!」

それは二人の同行者--もといメイドの少女、粕谷瞳の存在である。瞳ははっきり言って異質の存在だ。出会い頭にひろしの事を「ご主人様」と称した様に、その行動原理は理解し難い。

初対面から血濡れのチェーンソーを装備していたことに始まり、出会って間もないひろしへの異常なまでの忠誠心や自分意外の者の話には反応しないこと--それらの行動を一つ取っても常軌を逸している。

「瞳ちゃんは、ここに来るまでに何があったの?あたしもひろし君も話したんだしさ、教えて欲しいな?」
「..........」

今も牛飼娘の話には反応すら示さない。ひろしは内心、彼女の動向にも気を配りつつ、先へと進む。

ひろしの真の狙いは彼女--粕谷瞳が信頼に足るかどうかを知ることである。
今までの彼女の行動原理が『誰かのためになりたい』といったものならばまだいい。
NPCに、参加者に何時なんどき襲われるかわからない最中、献身の為だけに動けるとしたら異常ではあれ信頼に足る。

だがこれが演技であったならば。

もしかしたら自分達の寝首を掻こうと虎視眈々とチャンスを待っているならば。

あのチェーンソーで切りかかられる想像をしてしまい、ぞわり、と背筋に寒気が迸る。

「ひろし様、どうかなされましたか?」

その様子を見て心配されたのか、瞳がひろしへと声をかける。
彼女のバックに上りゆく太陽。
日差しを背にした彼女の顔は薄暗く見える。
反対に瞳の得物であるチェーンソーは所々がゴブリンの血に染まっており、その赤色を帯びた鈍い輝きがひろしの目を差す。
かつて遭遇した怪異とはまた別の理解しがたい存在にさしものひろしも恐怖を感じざるを得なかった。

「ねぇ、瞳ちゃん!......ほんとにあたしの声、届いてるのかな?」
「........」

それにしても--と、ひろしは先程感じた恐怖心を思考の奥底へと追いやり、内心辟易する。
瞳が信用に足るか、足らないか以前の問題として、彼女はひろし意外の人間とコミュニケーションを取らない。
前述した粕谷瞳の常軌を逸した行動の一端であるが、これは非常に厄介だ、とひろしは思う。

当然、この殺し合いでは何が起きるかわからない。
まるでファンタジーものの物語から飛び出してきたかのようなゴブリンやそれらを歯牙にもかけずに殲滅してのけた柱たる鬼狩り、さらには漫画のキャラクターときた。
そんな人物達が一同に会したこの場では、何が起こってもおかしくはない。その時に、ひろしが瞳と分断されるような事態になったら間違いなく瞳は牛飼娘を無視して行動を起こすだろう。
それでは困るのだ。
故に、ひろしはとある事を考え、実行に移した。

「あの、瞳さん。僕の頼みを聞いては貰えませんか?」
「はい、ご命令でしたらなんなりと。」
「僕意外の言葉にも反応しては貰えませんか?さすがにいざ、という時に話が通じないと困ります。」
「かしこまりました。お安い御用でございます。」
「じゃあ瞳ちゃん、私の声は届いてた?」
「ええ、もちろんです。」
「じゃあ早速瞳ちゃんはここに来るまで何を--」
「その前に、お話したいことがあるのですが。」

「ご主人様」からの命令は絶対なのか、今まで牛飼い娘が声をかけてもうんともすんとも反応を示さなかった瞳は何事も無かったかの様に対話に応じた。
なんとか目先の問題を解決することができた、と内心ひろしはため息をつきながら先行きに不安を覚えた。

「それで、話とは何ですか?瞳さん。」

◆◆◆

「おいおいおいおい......マジかよ、マジで言ってやがんのかよこれはよー!」

ラッド・ルッソは支給された支給品を見てぼやいていた。
恐ろしい追跡者から逃げ切ったところまではいい。


601 : The run-to escape from monsters- ◆8tIPBp6N4s :2021/09/04(土) 20:15:51 3CY9L0E60
◆◆◆

「--ここまでが、この殺し合いに来るまでの顛末です。」
「ひろし様........」
「あなたも大変だったのね........」
「牛飼娘さん程ではありませんよ。まさか村一つがなくなるなんて......」

互いの身の上話をしつつ、三人の参加者が日の出つつある黎明の草原を歩いている。
ゴブリンの襲撃、そして新たな参加者との邂逅からあまり時間は過ぎていない。
始めに集った五人。それと今しがた加わった一人のグループは町に半分、他参加者との合流に半分と別れている。
彼ら三人は殺し合い打開の為の戦力を求めて移動していた。

--表向きは。

実際、三人の中の一人である牛飼娘は殺し合いに乗っていないであろう貴重な戦力足りうる存在。それでいて幼なじみでもある人物、ゴブリンスレイヤーとの同行を目的としている。

しかし、この探索にはもう一つの隠された意図がある。
この移動の発案者であるひろしのみが知る裏の目的。

「ひろし様を襲うとは...........その相手が人間でなくとも、私は断じて許せません......!」

それは二人の同行者--もといメイドの少女、粕谷瞳の存在である。瞳ははっきり言って異質の存在だ。出会い頭にひろしの事を「ご主人様」と称した様に、その行動原理は理解し難い。

初対面から血濡れのチェーンソーを装備していたことに始まり、出会って間もないひろしへの異常なまでの忠誠心や自分意外の者の話には反応しないこと--それらの行動を一つ取っても常軌を逸している。

「瞳ちゃんは、ここに来るまでに何があったの?あたしもひろし君も話したんだしさ、教えて欲しいな?」
「..........」

今も牛飼娘の話には反応すら示さない。ひろしは内心、彼女の動向にも気を配りつつ、先へと進む。

ひろしの真の狙いは彼女--粕谷瞳が信頼に足るかどうかを知ることである。
今までの彼女の行動原理が『誰かのためになりたい』といったものならばまだいい。
NPCに、参加者に何時なんどき襲われるかわからない最中、献身の為だけに動けるとしたら異常ではあれ信頼に足る。

だがこれが演技であったならば。

もしかしたら自分達の寝首を掻こうと虎視眈々とチャンスを待っているならば。

あのチェーンソーで切りかかられる想像をしてしまい、ぞわり、と背筋に寒気が迸る。

「ひろし様、どうかなされましたか?」

その様子を見て心配されたのか、瞳がひろしへと声をかける。
彼女のバックに上りゆく太陽。
日差しを背にした彼女の顔は薄暗く見える。
反対に瞳の得物であるチェーンソーは所々がゴブリンの血に染まっており、その赤色を帯びた鈍い輝きがひろしの目を差す。
かつて遭遇した怪異とはまた別の理解しがたい存在にさしものひろしも恐怖を感じざるを得なかった。

「ねぇ、瞳ちゃん!......ほんとにあたしの声、届いてるのかな?」
「........」

それにしても--と、ひろしは先程感じた恐怖心を思考の奥底へと追いやり、内心辟易する。
瞳が信用に足るか、足らないか以前の問題として、彼女はひろし意外の人間とコミュニケーションを取らない。
前述した粕谷瞳の常軌を逸した行動の一端であるが、これは非常に厄介だ、とひろしは思う。

当然、この殺し合いでは何が起きるかわからない。
まるでファンタジーものの物語から飛び出してきたかのようなゴブリンやそれらを歯牙にもかけずに殲滅してのけた柱たる鬼狩り、さらには漫画のキャラクターときた。
そんな人物達が一同に会したこの場では、何が起こってもおかしくはない。


602 : The run-to escape from monsters- ◆8tIPBp6N4s :2021/09/04(土) 20:16:28 3CY9L0E60
その時に、ひろしが瞳と分断されるような事態になったら間違いなく瞳は牛飼娘を無視して行動を起こすだろう。
それでは困るのだ。
故に、ひろしはとある事を考え、実行に移した。

「あの、瞳さん。僕の頼みを聞いては貰えませんか?」
「はい、ご命令でしたらなんなりと。」
「僕意外の言葉にも反応しては貰えませんか?さすがにいざ、という時に話が通じないと困ります。」
「かしこまりました。お安い御用でございます。」
「じゃあ瞳ちゃん、私の声は届いてた?」
「ええ、もちろんです。」
「じゃあ早速瞳ちゃんはここに来るまで何を--」
「その前に、お話したいことがあるのですが。」

「ご主人様」からの命令は絶対なのか、今まで牛飼い娘が声をかけてもうんともすんとも反応を示さなかった瞳は何事も無かったかの様に対話に応じた。
なんとか目先の問題を解決することができた、と内心ひろしはため息をつきながら先行きに不安を覚えた。

「それで、話とは何ですか?瞳さん。」

◆◆◆

「おいおいおいおい......マジかよ、マジで言ってやがんのかよこれはよー!」

ラッド・ルッソは支給された支給品を見てぼやいていた。
恐ろしい追跡者から逃げ切ったところまではいい。
あのメイドといい化け物といいここには殺しがいのある奴が多い。
しかし人を殺せる支給品がまさか散弾銃のみとは。
ようやく殺しがいのある化け物を殺す準備ができる思ったらこれだ。

「ったくよー、どんだけ俺にお預けすりゃ気が済むんだよ主催さんはよー!!!」

とりあえずあの化け物に追われた他の参加者がここに来ないか待っては見たが誰一人として訪れはしない。

ここからどうするか--それに対するラッドの答えはいかにも彼らしいものだった。
参加者を求めて探し歩き、彼らの支給品を以てあの化け物を殺す。
そう決めたが最後、確認の為にバックから出した地図やら支給品やらを再び詰め直す。
そうしていざ建物から出ようとしたその時、外から足音が聞こえた。
何者かと思って窓を覗くとそこには見覚えのあるメイド服とチェーンソー。
それを見た直後、ラッドは弾かれるようにして建物から飛び出していった。

◆◆◆

--『私ね、ここに来る前にゴブリンに牧場を襲われたんだ。でもね、彼が守ってくれたんだ。』
--『彼、と言うとあなたが言っていたゴブリンスレイヤーさんでしょうか。......そうして命を懸けて守ってくれる方がいるのはなんというか、羨ましいです。』
--『..........』

◆◆◆

「ようやく着きましたね......」
「そうだね......」
「ひろし様、牛飼娘様、お疲れでしたら一度休まれますか?」

瞳の話とは、この先の移動方針。
日が上り始めた黎明の草原を踏みしめ、向かう先はB-4。
一見すると鬱蒼とした森林が大部分を占めているエリアだが、その末端--丁度今ひろし達のいるC-4エリアに建物が面している。
一応建物があることから、参加者がいる可能性もあるし、何より危険なNPCや参加者がいたとしても他の仲間達が陣取っているC-3エリアは目と鼻の先だ。
故にこそ、近場でかつ最悪の場合は仲間の元へと逃げられるB-4エリアへと移動を進めた。

幸いにもNPCや他参加者からの襲撃も無く、無事にたどり着けてひろしと牛飼娘は安堵のため息を漏らす。
どれ程二人が人ならざる怪物の襲撃から逃げ延びてきたといってもさすがに今回の殺し合いは堪えた様だ。


603 : The run-to escape from monsters- ◆8tIPBp6N4s :2021/09/04(土) 20:17:26 3CY9L0E60
どこかで一服できればいいのだが--そう思った矢先、白服の男が目に入る。男は銃を構えて--

甲高い発砲音と共に弾丸が打ち出される。
咄嗟に瞳がチェーンソーで銃弾を弾く。
旋回する刃が襲撃者の発砲音に負けず劣らずの金属音を撒き散らす。

「あなたは.....!」
「よぉ!久しぶりだな!嬢ちゃんよぉ!!」

鳴らすは発砲音。
それに準じて響くは弾く音。
ラッド・ルッソと瞳の闘いは均衡を保っている。
一度ラッドが銃弾を放てば弾くは瞳のチェーンソー。
旋回する刃が火花を散らして弾丸を撥ね飛ばす。
瞳はラッドの隙の無い銃撃に攻め手をあぐねている。
しかしそれはラッドも同じで、いくら弾を放とうが悉く瞳に防がれる。

「嬢ちゃんがそんなメイド服着てんのって、つまりあれだろ?俺に奉仕してくれるためだよなぁ!!俺に!俺だけのために!!嬢ちゃんはわざわざ戻って来てくれるとはーッ!!!つまり!これはもはや愛だーッ!!!」
「何を言って......!」
「愛してるぜ!だから死ね!!」
「ひろし様!牛飼娘様!今すぐ離れて下さい!」

瞳の指示に従い、ひろしと牛飼娘は一旦距離を取る。
戦闘を瞳に任せてひろしは努めて冷静に状況把握に徹していた。
白服との短いやりとりではあったが、瞳の実力は申し分ないと感じる。
あの男からの襲撃に一番早く気がついたのも瞳であるし、至近距離から放たれた弾丸をチェーンソーで弾くという常人ならざる離れ技を披露してのけた。
さらには即座に自分達を下がらせたことから、少なくとも今はひろし達を裏切る事はないだろう、とひろしは考えた。

ひろしとしては目的は既に達成している。
牛飼娘も敵からの襲撃時はなるべく撤退するべきだと思う。
しかし、白服の男がそれを許さない。
楽しげに笑いながら、時に叫びながら瞳に猛攻を加えている。
ひろしとしても、牛飼娘にしても、ここで戦っている少女を見捨てて行くほど腐ってはいない。
しかし、思いは同じでも、ここで二人の行動には大きな差異があった。

ショックガンを握っている手をいっそう強く握る。
銃を持った相手にも果敢に挑む瞳を見て、ひろしの中に不思議な感情が満たされる。
町でチョロプーからクロちゃんを庇った時も、同じ様に感情が揺れ動いていた。
自分は無力だ。
殺し合いに招かれる前は化け物からただ逃げることしかできなかった。
それでも--今の自分には抗う力がある。

瞳が渡してくれたショックガンを見て、防戦一方と移り変わった二人の戦いを見て、ひろしは決心した。

「牛飼い娘さん。僕はこれから、瞳さんの援護に行きます。」

こうして口に出して言うことでひろしの中に芽生えた覚悟がいっそう強まるのを感じる。
牛飼い娘が驚く表情を見せ、ひろしを引き留めようと口を開くが、彼女の言葉を待たずに突っ込んでいってしまった。

遠ざかっていくひろしの背中を見て、牛飼い娘は逃げることもせず、ただその場に留まっていた。
ひろしが、瞳達が命を懸けて戦っているのに逃げることも出来ない。
ならば彼女ができることはこれだけ。
ただ二人の戦いを見守るだけしか、彼女には思い付かない。
かつてゴブリンスレイヤーの居場所であろうと命を懸けていたように。
牛飼い娘は彼らの帰還を出迎える為に。
彼女は戦う二人から目を放さなかった。


604 : The run-to escape from monsters- ◆8tIPBp6N4s :2021/09/04(土) 20:19:06 3CY9L0E60
ラッドと瞳の戦いは均衡を保った状態から一方的なものへと変貌を遂げていた。
攻めるはマフィア、ラッド・ルッソ--内なる狂気を余すことなく解放せし殺人狂。
その双貌は建物に隠れた獲物に焦点を当て続けている。
対して、彼を迎え撃つはメイド--粕谷瞳。
チェーンソーで彼の弾丸を弾くにも限度を感じた彼女は建物に隠れ、防戦一方となっている。

今のラッドはその持ち前の獰猛さを遺憾なく発揮し、瞳に対して攻めの姿勢を取っている。
それは考えなしのことではなく、ラッドなりの論理あってこそのものだった。

散弾銃とチェーンソー。
離れた距離にて真価を発揮する銃と(瞳によると)メイドの題名詞と呼び声高い専断の刃。
しかし、散弾銃の真価たる距離での戦闘を続けていても、粕谷瞳には通じない。
銃と近接武器ならば当然、誰もが銃の方が強力である、と語るだろう。
しかし、それは常人の理論。
常人の思考など一つも二つもいともたやすく乗り越えてのける異常には通用しない。
遠距離から一方的に攻撃できるのが銃の強みだ。
ならばもし、銃弾を避け、あまつさえ弾いてしまう脅威的な反射神経を誇る存在が相手だとしたら?
何も出来ずに距離を詰められ、予定調和の如く首を跳ねられてお陀仏だ。
それを読んだラッドは、自信の武器--散弾銃の特性を活かして戦うことを選択した。

そう、ラッドはあろうことか至近距離にまで近付いて散弾銃を放ったのだ。
これは前述した話になるが、ショットガンは遠距離武器にも関わらず、一点を狙った狙撃には向いていない。
それは何故か、散弾銃は狙撃、という面を犠牲に範囲、という強みを得たからだ。
一度に大量の弾を放ち、拡散させる。
ならばもし、その弾が拡散させずに一気に襲いかかったとしたら?
答えは単純明解。
凝縮された威力の鉄塊を至近距離で叩きつける。
それでは流石の瞳といえど弾くのには限界が来る。
故にこそ、彼女は隠れることを選択した。
一時的に防戦一方となる立場を受け入れたのだ。

しかし、だからといって瞳が弱者の側に立たされたかというとそうでもない。
無理なく弾丸を弾ける距離は確保しているし、しびれを切らしてラッドが近付いてこれば死角から攻撃すればよい。

互いに『異常』を内に秘める者の第二ラウンドは、お互いに隙を伺う巾着状態へと様変わりした。

「おいおいどうした、嬢ちゃんよ、そんなに恥ずかしがらなくてもいんだぜ?この俺によ、ちょいと顔見せてくれよ、なぁ?」

反応するだけ無駄だと思われたのか、重苦しい沈黙が辺りを包む。
それを再び破ったのも、またラッドだった。

「まぁいいや。それよりさぁ--」

銃声が瞳とは見当違いの方向で鳴り響く。

「お前、誰?」

ラッドは後ろから狙っていたひろしに向けて発砲した。
弾丸がひろしの頬を霞め、飛んで行く。

「ひろし様!!」
「あ、もしかしてお前、アレか、嬢ちゃんのご主人様、とかそんな感じなわけ?まぁメイドがいんなら主様もいるかァ......」

人に発砲した挙げ句にその相手に向かってへらへらと笑いながら声をかける。
ひろしは眼前の男に明確な恐怖を与えた。
あの青色の怪物とは別の毛色の恐怖。
あの瞳にも似た恐怖を再びひろしは目の当たりにしていた。

「--ってことはさ、お前」

ラッドは一歩ずつ、じっくりと踏みしめながらひろしへと距離を詰める。

「お前はさ、自分は死なないって、思ってんだろ?」

一歩、また一歩。
殺人鬼と少年の距離が縮まってゆく。

「--ッ!」
「ざんねんでした」

ひろしがショックガンを構えた隙を見逃さず、ラッドの拳がひろしの鳩尾へと叩きこまれる。
例えひろしが命をかけた修羅場を経験していたとしても、ラッドには到底及ばない。
ひとえに対人戦闘の差。
これが二人の間を隔てる絶対的な壁であった。


605 : The run-to escape from monsters- ◆8tIPBp6N4s :2021/09/04(土) 20:20:28 3CY9L0E60
「おいおいおいおい、どうしたぁ?まだまだこっちは、満足してねーっつうの!もっと頑張ってくれよぉ....」

高笑いと共に銃口をひろしへと向けた瞬間、咄嗟に瞳が飛び出し、ラッドへと襲いかかる。
しかし、それを見切れぬラッドではない。
次の瞬間には瞳に銃弾を放つ。
それを咄嗟に弾き、距離を取る。

瞬間--ラッドの手から何かが放たれた。
それはスタングレネード。
ラッドに支給されていたものだ。
目映い閃光が辺りを包んだ。

「目眩ましなんて逃げる時くらいしか使えねぇって思ってたけどよ、思ったより使えんじゃねえかよー!こいつァ!」

視界を奪われた二人。
どちらにしようか--と一瞬悩んだ後、ひろしへと拳を飛ばした。

「お前さぁ、あの嬢ちゃんのご主人さまなんだよなぁ!?だったらよーッ!このくらい屁でもねぇよなぁ?」

ひろしの顔に拳が連打される。
威力こそボクサーの足元にも及ばないものだが、戦いを経験したことのないひろしには放たれるラッドの拳の一つすら脅威だ。

「そう!お前はこう思ってるはずだ!!この殺し合いに呼ばれた連中の中で自分だけあんだけ強えメイドが従ってる自分を殺せる奴なんていない!俺は最強だ!俺は安全だ!!ってなぁ!!楽しいだろうなァ!楽しいだろうなァ!!お前らをブッ殺すのは!腸を引きずりだすのは!ソーセージの中身みてぇにグチャグチャに!磨り潰してやるのはよォーッ!!!」

そのままひろしを殴り飛ばす。顔面に入ったストレートはひろしの眼鏡にひびを入れ、脳震盪を起こすに至った。さらにラッドは流れる様に銃を手に取り、ひろしへと構える。
瞬間。
後方から刃が飛んだ。

「うおっ、とォ!マジかよ、マジかよオイ!視界治るの早すぎやしねぇか!?オイオイありえねぇって!マジありえねぇって!!」
「ひろし様を傷つけた罪......死んで償いなさい!」
「そうかよ、そうだよなァ!ご主人様を傷つけられて......屈辱かい?死にたいかい?死にたくなくても、殺してやるがね!」

興奮のまま、ラッドは瞳へと引き金を引く。
そうして、殺人狂とメイドの戦いは再び始まった。

(瞳....さん)
 
顔面に走る痛みが、ひろしを襲っていた。
なんとか視界も元に戻り、立ち上がる。
常人ならば既に心も折れているであろう状況。
それでも、ひろしは立ち上がる。
未だに言葉にはできないが--言い様のない感情が、激情が、ひろしに立ち上がれ、と発破をかける。
皮肉にも、あの館で培われた精神力もそこで作用した。
今なら、あの男も気がついていないだろう。
故に、ひろしにとっては絶好の機会だった。
ショックガンを構え、ラッドへと放つ。
射撃は初めての経験だ。
しかも外したらもう勝機は損なわれるだろう。
故に一発で決めなければならない。
意識を集中し。
そして。


--引き金を、引いた。

「なっ--」
「ひろし様!!」


606 : The run-to escape from monsters- ◆8tIPBp6N4s :2021/09/04(土) 20:21:58 3CY9L0E60
不意に身体に走る衝撃。
それによってラッドの視界は薄れて行く。
しかし、ラッド・ルッソは。

「ま、まだだ、ぜ、嬢ちゃん、よォ!」

健在、であった。
マンモスですらも気絶へと持ち込む弾丸を持ってしても、ラッド・ルッソは倒れない。

「......この、程度で、この俺がどうにかできると、思ってんのか?」

さながら酔っぱらいの千鳥足の如く、ふらつきながらも瞳へと発砲する。

(彼は......一体........)

ひろしはラッドがどうしても同じ人間だとは思えない。
これが人間ではなくどこかの宇宙人、とでも言われた方が信用できる。

もう一発。
今度はひろしの足元へと放たれたる。
ついに限界を迎えたのか、ついにラッドは膝をつく。
瞬間。
ここぞとばかりに瞳が突撃する。
チェーンソーを鳴らし、刃がラッドに突き刺さる。

「どうにか、なっても......どうにもならないのが、俺だってんだ......!」

しかし、それすらものともせず、ラッドは瞳を蹴り飛ばす。

「このクソガキがァ!!」

ここに来て、ラッドは牛飼い娘へと銃口を向ける。

「てめえもだぜェ、女ァ!」

瞬間、ひろしがもう一発、ショックガンをラッドに当てる。

「瞳さん!!牛飼い娘さん!!!逃げましょう!!」

辺り一帯にひろしの声が響く。
しかし、瞳はラッドに再び攻撃を加えようとする。
普段ならひろしの指示に従っていた彼女が初めてひろしの言葉に従わなかった。
しかし、チェーンソーが降るわれる寸前、ひろしが瞳の手首を掴み、恫喝する。

「瞳さん!!今は危険な状況なんです!!僕たちだけでなく、牛飼い娘さんにも危害が加えられるかも知れないんです!」

ひろしの鬼気迫る表情にさしもの瞳もひろしに従わざるを得なかった。

「オイ、待ちやが、れ......ガキ共........」

ひろしたちはラッドの言葉を振り切り、森へと逃げていった。


乱立している木々の合間を縫ってひろし達は走る。
殺人を快楽とせし狂人から逃げる為に。
常人には理解が及ばぬ人の形をした怪物から逃げる為に。
もうどのくらい駆け回ったのか--逃げる三人の中で始めに限界を迎えたのは意外にもひろしであった。

全力疾走していたからか、息が荒くなり始めるのを感じる。
次に喉に焼けるような痛みを感じた。
かつて幾多もの化け物の襲撃から逃げ切ってきたその足も今ではうまく動かせない。
かの殺人鬼との交戦で気力も使い果たしてしまったのか、どうにも足が進まない。
こと逃げることに関しては得意だという自負はあったのだが。 


「ひろし!?大丈夫なの!?少し休んだ方が--」

牛飼娘は急に足を止めたひろしを心配して声をかける。 
 
「大丈夫、です。それより速く逃げなければ。なんとか足は動きます。だから大丈夫です。」

それを遮るかのようにひろしが言葉を返す。
見れば激しい疲労に襲われているであろう身体に鞭を打ってひろしはなんとか進もうとしている。
この殺し合いにおいてのひろしは自分のことなど省みずに無茶をする人だ、と牛飼娘は改めてそう認識する。
町でのゴブリンによる襲撃の際も。
先程の戦闘での特攻も。
そして今も、ひろしは一歩ずつ、休まずに進み続けている。
 
かの殺人鬼が与えた恐怖はひろしの心に未だ濃く残っている。

青き異形の鬼に、醜悪なる小鬼に、友人を、日常を奪われたことで共通していた二人。
しかし彼らには致命的な差があった。

ひろしは友人を失った。
その下手人へは一介の高校生風情では抗うことすらできず、ただできたのは逃げることだけ。
時に友人を見殺しにし、自らの罪を責め立てるように友人が異形へと代わりゆく様を目の当たりにし。


607 : The run-to escape from monsters- ◆8tIPBp6N4s :2021/09/04(土) 20:22:44 3CY9L0E60
それでも頼れる者もおらず、たった一人で逃げ続けるしか無かった。
故にこそ、ひろしは誰も頼らない。
自分一人で事を成そうとするのだろう。
たった一人で異常、粕谷瞳を試そうとした事からも伺える。


対して牛飼娘はどうか。
小鬼に故郷を奪われた際にはその幸運によって難を逃れ、命を脅かされる恐怖を味わずに済んだ。
その後になって再び小鬼による襲撃を受けても彼女には頼りになる仲間が、何より彼女にとってのヒーローたる存在がいた。
故郷を滅ぼした略奪者達に抗う者が。

その差が、二人を取り巻く認識のズレが今になって明確になった。

「ひろし様。私も休むべき、ということは同意します。しかし、その前に牛飼い娘様に訪ねたいことがあります。
「何?瞳ちゃん。」
「ひろし様が戦っている間、あなたは何をしていたので
すか?」
「それは--」
「何もせず、見ているだけだった、と?」
「うん、えっと、その--」
「やはり、ですか。」

ぽつり、と瞳が呟いた。
瞳は恐ろしい形相で牛飼い娘を睨んでいた。
もしもひろしに間違いがあったとしたら、それは粕谷瞳の異常性を見くびっていたことだ。

粕谷瞳は異常者である。
常人には理解の及ばぬ化け物、とも言い換えられるだろう。
その気になれば何の躊躇いもなく殺人を犯すであろうし、何よりそれが自分の『ご主人様』の為になると思っている。
さらに質が悪いのは、殺人をするに当たって『ご主人様』の意志を問わずに自らの基準のみで事を起こすことだ。
しかも彼女はそれを一点の曇りなき善意で行うのだ。
瞳はもしも『ご主人様』であるひろしが惑わされている、と判断した場合、彼がどう意見を言おうが構わずに牛飼娘を殺しにかかるだろう。

--そう、今のように。

彼女にとっては先程襲撃してきた白服の男と牛飼娘は等しく『悪』なのだ。

身勝手極まる献身という狂気を孕んだ少女(ばけもの)は主たる少年の為に、もしくは。

かつて憧れた偶像(ヒーロー)の為に。

粕谷瞳は自分の思う悪を断つ。

「瞳さん........?」

「瞳ちゃん?どうしたの?」

瞳は無言でチェーンソーのスイッチを入れる。
ぶおん、と音が鳴り、刃が旋回を始める。

「ひろし様。その女狐から離れて下さい。」

「瞳さん、一体何をするつもりですか?」 

「前々からおかしいと思っていました。あの女狐はひろし様を謀り、利用しようとしたのです。」

「瞳......ちゃん?何言って--」

「ひろし様が危ない目に遭っていたのにあなたは何もしなかった。死地へと赴くひろし様を止めもせずに。きっと前に話していたゴブリンスレイヤー様、という方もきっとこの女が利用していたのでしょう。そして今度はその代わりにひろし様を!」

「瞳さん、落ちついて話をして貰えませんか?さすがにそんなこと」

「ご安心下さいひろし様。すぐにあなた様を惑わす元凶を排除して参ります。」


ひろしが瞳を懐柔しようとしても聞く耳をもたず、牛飼娘に切りかかる瞳。
一時は自分達を守る為に振るわれた刃が轟音を伴って牛飼娘へと襲いかかる。
突然の行為に牛飼娘は何も出来ずに迫り来る刃を眺めていた。
眼前に迫り来る断罪の刃に溜まらず目を閉じる。

--1秒。
彼女の世界では聞いたこともない肉を抉り切断する音。
もともと牛飼娘のいた世界にはチェーンソーなど無かったので、一瞬何の音なのか理解できなかった。


608 : The run-to escape from monsters- ◆8tIPBp6N4s :2021/09/04(土) 20:25:17 3CY9L0E60
--5秒。
この時初めて、牛飼娘は自分の身体に痛みが走っていないことに気がついた。しかし、まだ死にかけた恐怖は収まらなくて。身体を震わせながら目を閉じていた。

--10秒。
ここにきて漸く、牛飼娘も冷静な思考が戻ってきた。彼女は痛みも感じていないし、耳を澄ませてもチェーンソーの稼働音は聞こえない。だが確かに切られた音がしたのだ。何があったのか、と牛飼娘は目を開けた。

運の良いのか悪いのか、まだ時刻は黎明。
もしもこれが昼なら目を開けた際に眩しくて再び目を閉じていたのかもしれない。
しかし、その代わりに薄暗い森の中に牛飼娘は地獄絵図を見た。

何故牛飼娘は傷を負っていないのか。
その答えは単純明快。 

--ひろしが間に庇っていたのだ。

(どうして)

その答えを得る前に怒号が辺り一帯に響く。

「牛飼娘さん!!逃げましょう!!」

ひろしの一言で我に返った牛飼娘は飛び出すように走り出した。 
背中に大きな裂傷を負い、痛みに喘ぎながらも牛飼娘を連れてひろし達は瞳から離れた。 

「ひろし....様......」

その時、牛飼い娘は確かに見た。
粕谷瞳の表情を。
今までの彼女はどこへやら、涙を流している彼女。
どうして、その言葉を吐くより先に足が動いていった。
瞳を置き去りにして、二人は逃げていった。

動かなくなった足で、意識が飛びそうになるのをこらえながらひろしは走る。
火事場の馬鹿力--なんて言葉の通り、本当に命の危機に貧していたら人間やれるものかと思った。
今もひろしの身体は激しい疲労を訴えているし、息も絶え絶えな状態だ。


609 : The run-to escape from monsters- ◆8tIPBp6N4s :2021/09/04(土) 20:27:07 3CY9L0E60
しかし、背中に走る激痛がひろしに制止を許さない。
一刻も早く森から脱出し、町で待っている仲間達と合流しなければ。
その一心で黎明の森林を走り抜ける。

「ねぇ、その、さっきは」
「いえ、気にしないで下さい。今はとりあえず甘露寺さん達と合流しないと」

だがしかし、彼らの不幸はここからだった。
満身創痍のまま走るひろしと、牛飼娘。
色濃い疲労を感じつつ、走った先に--

「ひろし君!危ない!」
「--えっ?」

飛来したのは熱球。
高度の熱気にて構成された球体は、ひろしが今までいた足元に着弾した。

「ひろし君、大丈夫!?」
「ええ、それより、一体何が」

起こっている?
そう牛飼娘に尋ねた瞬間、地響きが辺り一帯に響く。
ずしん、ずしんと音を立て、第二の襲撃者の姿が顕になる。
かつてひろしが出会った鬼よりも巨大な体躯。

「GAAAAAAAAAAAAAAAA!!」
「なっ......!」
「ひろし君!逃げないと!」

そうして出会ったのは追跡者にして森の番人--打擲の剛激手であった。
怪物はひろし達を見るやすぐに追跡を開始する。
ひろしも背中に流れる血を感じつつ二人は全力で森の中を駆け回る。

とうに限界を迎えた身体に鞭を打って、後方より来る化け物から逃げる。

だが悲しいかな、度重なる騒動で削りに削られた体力は二人の体を重くする。
特にひろしは重症だ。
瞳から受けた傷が悪化してきたのか、意識も朦朧としてきている。
それでもなんとか走り、後方より迫りし追跡者から離れる。



そうして走っていると、牛飼い娘が転んだ。転んでしまった。

「牛飼い娘さん!!!」

足元を引っかけたのか、疲労に限界が来たのか、そんな原因を考える間もなく追跡者は牛飼娘に迫る。

--その光景は、まるで。

あの時と同じで、今は周囲が薄暗いせいか。

牛飼娘の髪色が友人と似ていたからか。

--ひろしの友人の、卓郎の末路と同じで

もしも今ひろしが手に持っているショックガンを使えば追跡者の気をこちらへと向けることができるだろう。
しかし、そうなった場合間違くひろしは死ぬだろう。
ただでさえ体力も底を尽きていると言うのに、背中には裂傷が走っている。

だが、もしもここでひろしが逃げたらどうなるか。それは一番ひろしが知っているだろう。牛飼娘は、死ぬ。
自分か、それとも他人か。
今までは確かにひろしは他人をその身で守ってきた。
しかしそれは彼の近くに化け物と戦える者がいたからだ。甘露寺しかり、瞳しかり。
ひろしの根底にあった恐怖が。
自分一人では化け物には抗えないという事実が。
ひろしの判断力を鈍らせる。
そして--


610 : The run-to escape from monsters- ◆8tIPBp6N4s :2021/09/04(土) 20:27:46 3CY9L0E60
◆◆◆




「ったくよー、どいつもこいつもどんだけ俺におあずけ食らわすわけー?もう我慢の限界なんだ、け、ど、よぉ!」

響く銃声。
飛び散る能條。
弾け飛んだ血潮で染まった白服を纏うラッド・ルッソは逃げてゆくゴブリンに目もくれずに歩みを進める。
漸くショックガンの効果から解放されたラッドは不機嫌そうにぼやきながらひろし達を追って森の中へと入っていた。
もしかしたら再びあの化け物と遭遇する恐れはあったものの、お預けにお預けを食らったラッドは既に我慢の限界。
そのようなことを考える前に身体は動き出していた。

森へと獲物を追ったラッドが見つけたのは、見覚えのある少女だった。
メイド服の少女。やっと追い付いた、と歓喜するも。

「うぅ、どこにいるの......?ひぐっ......お母さんっ、どこにいるの........?お願いだからへんじをしてよぉっ、お母さぁんっ!」

少女は幼子のように泣き叫んでいた。そうやって泣いている少女を殺す程ラッドは落ちぶれていないし、何より殺しがいがない。
自分が目を離していた間に何があったんだ、と思いつつ期待はずれでため息をつくと、そこには聞き覚えのある轟音。

「おお、そういやあいつもいたんだったな......なんかいい武器でもありゃー今すぐにでもぶっ殺してやるんだがなぁ......」

はぁ、とため息をつきつつ森から出ようと踵を返す寸前、ラッドの目があるものを捉えた。
それは少女の使っていたチェーンソー。
瞬間化け物の甲高い雄叫びが遠くから聞こえて来る。
それにすらラッドは反応を示さず、チェーンソーをじっ、と見つめている。
これがあれば--
ラッドはにぃ、と表情を綻ばせ、そのチェーンソーに手を取った。

◆◆◆

(あいつ、行っちゃったなぁ--)

走り去ってゆく背中。それを目で追いながら牛飼娘は自らの死を確信していた。


611 : The run-to escape from monsters- ◆8tIPBp6N4s :2021/09/04(土) 20:29:16 3CY9L0E60
ひろしは自分とは違う価値観の人間だ。ゴブリンなどのモンスターもいない世界に住んでいた、と聞いている。
さらにはひろしの語る招待不明の化け物とやらに友達が殺されてからこんな催しに巻き込まれたのだ。
牛飼娘にとってのゴブリンスレイヤーの様に、助けてくれる人もいなければ日常を失った傷を癒す時間もままならなかったのに今まで強くあった。

ひろしと牛飼娘は、似ているようで、そこには大きな違いがあったことをこの瞬間、確実なる死の間際において実感していた。

--『そうして命を懸けて守ってくれる方がいるのはなんというか、羨ましいです。』

ひろしの漏らしていた言葉がリフレインする。

(ひろしも彼も、辛かったのかな。一人で逃げるのって。一人だけ生き残るって。)

しかし自分はどうだったろうか。
戦う、という行為を自分がする事は考えもしなかったのではないか。
そう思ってしまった。
そんな牛飼娘はひろしを恨む気など更々無い。
だからといって死の恐怖はあるし、涙も溢れて止まらない。
身体も震えている。
もしかしたら、先程瞳に襲われた時よりも震えは酷くなっているかもしれない。
そうして、追跡者の巨大な腕が牛飼い娘を潰さんと高く上げられる。怪物の爪が森へと差し込む朝日に照らされる。そうして振り下ろされ--



それを遮るように、銃声が鳴った。
牛飼娘も聞き覚えのある散弾銃の発砲音。
次いで、ぶおん、とまた聞き覚えのある音が鳴る。
瞳が使っていたチェーンソー。
牛飼娘は音の鳴っている方向に目を遣ると、そこには。
それを装備した殺人鬼、ラッド・ルッソがいた。
その傍らには、使い捨てたショットガン。

「あ--、やっぱこいつに銃はダメかー。」

言葉の割には朗らかな口調でラッドは語る。

「でもさぁ、さすがにこれならてめえをぶっ殺せると、俺は思うんだァ........てなわけで、待たせたなぁ化け物さんよぉ!メイドさんのお墨付きチェーンソーでバラバラにしてやるよぉおおおおお---ッ!!!」

ラッドは狂気的な笑みを浮かべ、雄叫びをあげながら追跡者へと突進した。
今しか隙は無い--そう思い、ラッドから距離をとり、逃げ出す。
その時にラッドが落としたショットガンをすかさず回収し、戦場から距離をとる。
牛飼い娘には見慣れない武器だが、ひろしや瞳の戦いを見て使い方はなんとなくであるが理解している。
急ごしらえであるものの、武器を手に入れた牛飼い娘は再び走り出した。


「おいおいおいおい!楽しいねぇ!楽しいじゃねぇか!待たせて悪かったな化け物さんよぉ!今度こそ......しっかり殺してやるからよ!!!」

ラッドは牛飼娘目もくれずに怪物との戦闘に移行する。



ラッドは歓喜にうち震え、殺しがいのある化け物を。
人間よりも上位の種に恐怖を与えるために、突撃した。

--ラッド・ルッソは大いに語り、大いに殺戮を楽しむ。

それはこの殺し合いの場であっても変わる事はないだろう。


612 : The run-to confront the monsters- ◆8tIPBp6N4s :2021/09/04(土) 20:31:10 3CY9L0E60
牛飼娘は走る。
この殺し合いにて初めて目にかかった異界の武具をその手に、業火に包みこまれた戦場を背に、駆けてゆく。

目的はひろしとの合流。
あの怪我ではC-3の町まではたどりつけはしないだろうし、もしも他のNPCやら参加者やらに遭遇したら大変だ。
それに瞳の説得にも彼の力が必要だ。
息が上がるのも、心臓の鼓動が激しくなるのも構わず、牛飼娘は森林の中を駆けていた。
すると、どこからか少女の泣き声が聞こえる。

--『』

思い出されるのはひろしの言葉。
確かに自分はどこか彼らと比べて覚悟がなかったのかもしれない。
自分は闘いの場に出ず、ゴブリンスレイヤーには助けられてばかりだ。
確かに今まではそれでよかったのかも知れない。
だがしかし、この場は違う。
牛飼娘は今までの出来事でそれを実感している。
ただでさえこの会場でまともに戦える味方は二人しか出会えていない。
そしてこの場には--ゴブリンスレイヤーがいない。
ならば、どうするか。
牛飼娘は既に答えを出した。

(ひろし君が瞳ちゃんを助けたように、私もあの子を助けなきゃ!)

その意志のままに泣き声の元へと走る。

粕谷瞳は、異常者である。
しかし、ご主人様に使えるメイド、という殻を被った彼女の本性は、心優しいただの少女である。

メイド、というのは主のために動くものだ。
しかし、瞳は『ご主人様』を傷つけてしまった。
それは最早メイドではない。
その出来事は、瞳を覆う心の殻をいとも容易く粉砕した。

目の前には1体の小鬼がいた。
ゴブリン達の群れからはぐれたのか、一匹で森林の中を徘徊していた。

不運というのは重なるもので。
白服の殺人狂に目をつけられ。
武器すらも奪われ。
もはやメイドの欠片もなく。
恥も外聞もなく泣く声が純粋無垢で残虐な化け物を呼び寄せた。

瞳の周りにはもう誰もいない。
メイド、という存在意義の象徴とも言える『ご主人様』も。
自身が命の危険に晒されて尚、彼女の事を気にかけていた少女も。
誰もいない。
そのことがまた恐ろしくて。
醜悪な笑みを浮かべる小鬼を前にまた泣き出してしまう。

いざ、ゴブリンが瞳に飛びかかろうとした時。

「やめなさい!!」

一人の女性の声がした。
朗らかに、活発に、それでいて優しい彼女の。
恐る恐る顔を上げ、声の主に目を遣ると。
そこには--

「瞳ちゃん!大丈夫だった!?」

少女を助けにきたヒーローがいた。

◆◆◆

(すみません......牛飼娘さん....すみません......!!!)

ひろしは走る。
ただひたすらに走る。
背中から熱いものが流れていき、意識が朦朧として尚、ひろしは足を止めない。
なぜひろしは逃げ切った今なお走っているのか、未だにわかっていない。
そんな時、ふと思い出すのは市街地での戦闘。
ゴブリンからの攻撃を身を呈して庇ったことだ。
そもそもなぜ自分はあのような行動をとったかわからない。


613 : The run-to confront the monsters- ◆8tIPBp6N4s :2021/09/04(土) 20:32:28 3CY9L0E60
あれらも自分が遭遇した化け物と同じ類いのものなのに。
瞳から受けた傷にしてもそうだ。
自分では理解の及ばぬ怪物にはいままで逃げ続けてきた。
ならばなぜ、自分は彼らを庇ったか。

走りながらも、痛みに悶えながも、思考は幾分か冷静に、クリアになっていた。
そのままひろしはその問いへの答えを模索しつつ、ただひたすらに走る。
ひろしの頭の中にはもう仲間の元へと逃げることすら無い。
そのくらいにひろしは自分の中に流れる感情の正体に気を取られていた。

その答えの出ぬまま。
いつしか森を抜け、草原を走り抜け、市街地へとたどり着いた。

--想像を絶する不運に見舞われる時はいつも唐突である。

ちょっとした肝試しに館へ入り、青色の異形に襲われた時も。
この殺し合いに巻き込まれた時も。
町にてゴブリン達に襲われた時も。
白服の殺人鬼、ラッド・ルッソに襲われた時も。
メイドと名乗った化け物、粕谷瞳に襲われた時も。
森林を根城とする追跡者、打擲の剛激手に襲われた時も。

いつも変わらず、唐突に。

身体の力が抜けて行く。盛大に転び、その勢いでデイパックから支給品が飛び出してゆく。

ひろしがそのことに気がついた時には手遅れで。

痛みが走り、血が吹き出した瞬間。

ひろしは自身の胴体が袈裟懸けに切り裂かれたことを知覚した。

その目に映ったのは、奇特な格好をしな少女。
彼女の手にした武器には自身のものであろう血が付着している。
自分はこれから死ぬというのに、やけに冷静な思考が、彼女が殺し合いに乗った参加者であることを導き出した。
例えそれを知ろうとも、今のひろしには動くことすらままならない。
何もする事鳴く。死に行くのみのだ。

自分ももう助からないと自覚する。
卓郎を、牛飼い娘を見捨ててまで望んだ生が終わりつつある。
そこがひろしには悔しく感じられる。
もしも身体が動いたなら女性とはいえショックガンを一撃お見舞いしたいくらいだ。

(ああ--僕は、まだ変われないのか。)

哀れなものだ。と薄れゆく意識の中、ひろしは自嘲する。
自分はただの半端者だった。
化け物達に立ち向かって。下らない自己満足を得てどこか有頂天になって。
そのくせいざ打つ手なしの状況に鳴ったら仲間を見捨てて逃げる。
これを無様、と呼ぶのだろう。

それでも、自分がこれでもかと悔しさ噛み締めているというのに。
胸には言葉に出来ぬ程の激情が渦巻いていて。
そうしてやっと。
ひろしは答えを得た。
自分の胸に渦巻く激情の名前を漸く知れた。
それでも身体は動かない。
冷めやらぬ悔恨に身を焼かれる。
それでも、身体は動かずに、ひろしの意識は闇に呑まれていって--

【ひろし@青鬼 死亡】

◆◆◆

「瞳ちゃんから離れて!!」

大声で威嚇しながら、ゴブリンへと銃口を突きつける。
何故か銃を知らぬ筈のゴブリンがそれに警戒し、牛飼娘を睨みつつも微動だにしない。

敗者は死ぬ。
その前提条件の下に殺し合いは発生する。
それが横行するこの場において、牛飼娘は初めてそのことを強く感じていた。
気を抜いたら殺される。
ゴブリンも本能的に理解しているのか、普段なら逃げる状況下においても牛飼娘から逃げようとすらしない。
殺人鬼、ラッド・ルッソとの邂逅は、ゴブリンにとっての多大なる成長を促した。
よく観察してみると、牛飼娘の銃口は震えていて、狙いが正確ではない。
故にこそ、ゴブリンは彼女に対して勝機すら見出だしていた。
あとは隙を見せるのを虎視眈々と狙い、仕留めるのみ。
ゴブリンは事実上の勝利を確信して、内心ほくそ笑んだ。


614 : The run-to confront the monsters- ◆8tIPBp6N4s :2021/09/04(土) 20:33:56 3CY9L0E60
◆◆◆

少年はただ悔しかった。
理不尽に友人達が殺されて行くのが。

一人は目を離したが故に。
一人は自罰を止められなかった故に。
一人は自分が見捨てたが故に。

意識が完全なる闇に閉ざされる寸前。
少年は一つの仮面を目に止めた。
それは朧気ながらも顔を出した太陽の光に輝いて。
まるで、「俺を使え」と意思表示しているようで。

動け。
動け。
動け。
動け--

そうして。
あらんかぎり身体を動かして。
その仮面を、被った。

出血多量でもう動く筈のない身体を無理やりに稼働させ。
ふらふらに鳴りながらも立ち上がる。

瞬間。
酷使した身体に走る痛みすらも凌駕する激痛が頭に走る。
その痛みで再び意識を失いそうになるも、それをなんとか押し留める。

『我は汝--汝は我--』

そうして、声が鳴り響いた。

●●●

(--怖いなぁ。彼も、こんなに怖かったのかな。)

牛飼娘はゴブリンとの巾着状態の中、そんなことを考えていた。
油断していたら腰が抜けてしまいそうで。
近くにいる仲間のメイドの手前もあり、なんとか今の姿勢を保っている。

(ひろしも、瞳ちゃんもやっぱり怖かったのかな。)

去っていった仲間と、泣いている少女。
彼らは確かに勇敢だった。
自分の役割を正しく理解し、時には知恵を、時には勇気を以てこの殺し合いに立ち向かっている。
もう自分も、他人任せではいられない。
そんな意志の下、牛飼娘は殺人鬼の見よう見まねで引き金に指をかけた。
ゴブリンも姿勢を変え、いつでも牛飼娘へと飛びかかれるようにする。
瞬間、ゴブリンは牛飼い娘へと飛び出していった。

殺し合いにて招かれた二人の少女--神楽鈴音とクロは油断していた。
無防備にもこの殺し合いの最中で走り回っている青年。
持っている武器は不思議な形状の銃が一丁のみ。
背中には遠目でもわかる程の裂傷。
青年が何かから逃げているのは一目瞭然であった。
故に、二人は襲撃に及んだ。
彼の支給品の内容も気になるし、この状況を夢と認識している鈴音はともかくクロは優勝も視野に入れている。
狙えるのであれば頭数を減らしておくのも悪くない。
既に気の狂っていた少女(ばけもの)にとって殺人を犯す動機にはそれだけで事足りた。

そんな青年を手にかけるのは思ったよりも容易く済んだ。
袈裟懸けの裂傷が走り、血溜まりに倒れ込む少年。
それを確認してから、二人は彼のデイパックを改めた。
既に虫の息の少年には目もくれず、鈴音に支給品を調べる様頼む。

--あの怪我でもう生き延びるものか。

それが彼女達の油断だった。


615 : The run-to confront the monsters- ◆8tIPBp6N4s :2021/09/04(土) 20:39:27 3CY9L0E60
支給品を調べていると何やら物音がする、と後ろを振り向くと、そこには。

髑髏の面を付け、満身創痍ながらに立ち上がった少年の姿があった。
瞬間、弾かれる様にして鈴音は少年に飛びかかった。
その髑髏の面が、鈴音の『先輩』に似ていたから。
夢の中ですら操られている『先輩』を救うため。
かつての粕谷瞳が凶刃を振るったのと全く同じ善意で、ひろしへと襲いかかった。

状況は同じ。
眼前の敵は彼/彼女に飛びかかった。
二人の得たものは同じ。
少年は身体中に走る傷を、繰り返してしまった後悔を対価に。
少女は自らの罪悪感を、無力感を対価に。
反抗の意志を手に入れた。
少年が望んだのは、絶対的な理不尽に立ち向かう力を。
少女が望んだのは、『彼』のように仲間を、大事なものを守る力を。
そうして、少年は/少女は。
その仮面を引き剥がす。/引き金を引いた。

◆◆◆

響く発砲音。
飛び散る赤紫の血液。
牛飼娘は自らの手で初めて、ゴブリンを殺した。

足を震わせながら、瞳の元へ歩き出す。
もう安心したのか、瞳は牛飼い娘へと飛び付き、泣いた。
突然の行動に彼女は驚くも、牛飼娘は、瞳の背中をさすり始めた。
二人の少女が抱き合う姿を邪魔するものはいなかった。

◆◆◆

鈴音から放たれた刺突は確かにひろしの心臓を貫く筈だった。
しかし、ひろしから顕れた何かがそれを弾き飛ばす。
少年の背には反逆の魂が鎮座する。

--ペルソナ。

それはあらゆる理不尽に。
あらゆる不条理に立ち向かう力。
青鬼にゴブリン。メイドや殺人鬼に巨大なモンスター。

今まで出会った化け物達にも勝るても劣らない存在を、まさか自分が使役することになるとは。
そんな存在を科学的に考えて、馬鹿馬鹿しいなどと切り捨てていた頃はこんな体験をするとはまさか思ってもいなかっただろう。

ヒビが入ったメガネを投げ捨て、ひろしは眼前の化け物へと向かい合う。

「どうして先輩が......そうです。これもきっと夢......先輩はまだソーンに操れているんですね?大丈夫です。今元に戻してあげますから!!」

「何を言っているかはわかりませんが......もう今までの僕とは思わないことです。」

少年はもう逃げない。
牛飼娘の分も生き抜き、必ずこの殺し合いを打破する。反逆の意志と共に、ひろしは化け物を迎え打った。


616 : The run-to confront the monsters- ◆8tIPBp6N4s :2021/09/04(土) 20:41:26 3CY9L0E60
【B-4 森林 黎明】

【ラッド・ルッソ@BACCANO バッカーノ!】
[状態]:健康
[装備]:チェーンソー@リベリオンズ Secret Game 2nd Stage
スタングレネード@現実
[道具]:基本支給品、
[思考]
基本:自分は死なないと思っている人間を見つけて殺す! とにかく殺す! 殺しまくる!
1:あの怪物(打擲の剛激手)を殺す
2:その後にひろし、牛飼い娘を殺す

[備考]
※参戦時期はフライング・プッシーフット号に乗りこむ直前からとなります。

【NPC紹介】

打擲の剛激手@世界樹の迷宮V 長き神話の果て

本来はアルカディアの迷宮の上部に生息する、巨大な人型の魔物。
自身に近づく者は同じ迷宮に棲む魔物だろうが、進入者だろうがその腕で離れた場所まで殴り飛ばす習性を持つ。
更には、視界をつぶされない様に眼も進化しており、そこから高熱の球を射出するとも言われている。
本来は出展作品のシステム上移動しないが、主催によって参加者を追跡する様になっている他、素の状態では強力過ぎる為、ある程度弱体化させられている。(度合いについては後続の書き手にお任せします。)

腕に付いた板は、放熱の機能を備えているらしく、加工などを施して短時間での連射が可能な銃火器のパーツにしたり、同一のダンジョンに出現する、馬を模した石造りの魔物の耳を一緒に使う事で、頑丈な鎧の材料にする事も可能。

制限として、B-4エリアの森林から外には出られない。

【牛飼い娘@ゴブリンスレイヤー】
[状態]:健康
[装備]:レミントンM31@現実(予備弾3)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]:基本行動方針:殺し合いはしない
1:彼(ゴブリンスレイヤー)を探す
2:瞳を守る
3 :ひろしを探すか、一度町に戻るか......?
[備考]
参戦時期は原作9巻終了後。
※「ジョジョの奇妙な冒険」の参加者について、一定の情報を得ました。



【粕谷瞳@リベリオンズ Secret Game 2nd Stage】
[状態]:健康
[装備]: 回復用キノコ×4@ペーパーマリオ オリガミキング
[道具]:基本支給品
[思考]
基本:???
1:とりあえず牛飼い娘と同行する。

[備考]
※参戦時期は本編開始前となります。
※「ジョジョの奇妙な冒険」の参加者について、一定の情報を得ました。


【C-5とC-6の境界線の道/黎明】

【神楽鈴奈@Caligula Overdose-カリギュラ オーバードーズ-】
[状態]:健康、聖帝エーリュシオンに対する怒り(極大)
[装備]:一括首輪爆破装置@ロワオリジナル
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~2
[思考・状況]基本行動方針:先輩と一緒にいる、ずっと
1:先輩!?なんで........
2:これは夢、早く覚めないと
3:先輩は、私とずっと一緒に居てくれると言ってました……なのに、なんであの天使は私と先輩の仲を否定するんですか…?
※参戦時期は楽士ルート最終決戦で主人公に裏切られ敗北した直後です。
※キャラエピソードは完遂済みです
※この殺し合いと元世界での主人公の裏切りを夢だと思い込んでいます。
※ひろしのことを主人公だと誤認しています。

【クロ(リーダー)@最悪なる災厄人間に捧ぐ】
[状態]:健康、聖帝エーリュシオンに対する怒り(極大)
[装備]:ー
[道具]:基本支給品、耐氷ミスト(残り1個)@世界樹の迷宮シリーズ、ランダム支給品1~2
[思考・状況]基本行動方針:『豹馬君』と一緒にいる、ずっと
1:『豹馬君』のもとに帰る
2:『豹馬君』のそばにいる
3:『豹馬君』と生きる
4:『豹馬君』は、泥人形なんかじゃない……!『豹馬君』を侮辱するなら、跡形もなく消し去ってやる!!
5 :ひろしに対処。でもなるべくは鈴音に任せる。
※参戦時期は少なくても「災厄に捧ぐ」にて後追い自殺した以降です。
※透明人間であるため普通の生物から彼女の声や姿を認識することは出来ません。
ただしこのロワでは「見えないものが見える」キャラであれば彼女を認識することが可能です。
※このロワでは世界改変の力で直接人を攻撃することが出来ません、結果的に攻撃を受ける形であれば可能です。(倒した電柱がたまたま当たった等)

【ひろし@青鬼】
[状態]:顔面に殴られた跡、背中と胴体に裂傷
[装備]:ショックガン@ドラえもん
スカルの仮面@Persona5
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない、瞳、牛飼娘と共にゴブリンスレイヤー、空条徐倫を探す
1:眼前の脅威への対処。
2:ホル・ホース、プッチ、ディアボロ、瞳への警戒
[備考]
参戦時期は館から脱出した後です
※「ジョジョの奇妙な冒険」の参加者について、一定の情報を得ました。
※牛飼い娘は死んでいると思っています。


617 : The run-to confront the monsters- ◆8tIPBp6N4s :2021/09/04(土) 20:42:41 3CY9L0E60
【ランダム支給品】

【スタングレネード@現実】
ラッド・ルッソに支給。
投げると、敵の視覚・聴覚を一時的に奪うことが出来る。
【スカルの仮面@ペルソナ5 】
ひろしに支給
坂本竜司がペルソナに覚醒した時に現れた仮面。 ペルソナ"キャプテン・キッド"との契約の証にして召喚するためのアイテム。 本ロワ内では制限により、誰が付けても"キャプテン・キッド"を使役することが可能。 仮面が発動のトリガーと分かっていれば誰でも使用可能。
なお、使用した人物の容姿は変わらないものとする。


618 : ◆8tIPBp6N4s :2021/09/04(土) 20:47:35 3CY9L0E60
投下完了です。
予約の期限を超過してしまい申し訳ございませんでした。この場を借りて謝罪申し上げます。


619 : 名無しさん :2021/09/05(日) 02:30:45 ueDLAnss0
投下乙です
ひろしがクロ達に襲われた時は、最初はここで脱落か…と死亡表記を鵜呑みにしてましたが支給品込みとはいえペルソナに目覚めて窮地を脱するのは驚きましたね
そして瞳は幼児退行を起こしてこれまでとは真逆のベクトルで手のかかる存在になっちゃってどうなる事やら

あと去年の昨日にOPが投下されたんですね、コンペロワ本編1周年おめでとうございます


620 : ◆bLcnJe0wGs :2021/09/06(月) 18:09:46 LP1uuJ3M0
自己リレーを含みますが、豆鉄、ゴブリンスレイヤー、写影、黒子、飴宮、いのちの輝き、ホル・ホース、ハサミ、ジェイソンで予約します。


621 : 名無しさん :2021/09/06(月) 23:13:41 vf.rf6Xs0
中々に嫌な予感しかしない予約が来たな……。


622 : ◆L9WpoKNfy2 :2021/09/07(火) 21:36:19 NwZHcKsU0
自己リレーを含んでしまいますが、

マリオ、ヨッシー、カズマ、勇者(主人公)、千川ちひろ、レム

を予約します。


623 : ◆bLcnJe0wGs :2021/09/10(金) 04:57:39 3hO6Qmgc0
前編の投下をします。


624 : ◆bLcnJe0wGs :2021/09/10(金) 05:01:27 3hO6Qmgc0
ゴブリンスレイヤーを筆頭に、高台の上を進み続ける豆銑達4人。

「おっと待った、ここから西にある川の向こう。 地図ではティルテッド・タワーと記されている場所だ。 あそこら辺にある高層ビルが幾つも壊れているぞ。」

しかし、豆銑は西の市街地にあったであろうその施設と、周囲の建物が無残にも破壊されているのを発見する。

(この距離… わたくしのテレポートでは… いや、制限でそこまで移動出来ない可能性もありますわ?)

彼らに同行していた黒子も能力制限で現在の位置からティルテッド・タワー周辺までへの瞬間移動が不可能となっている可能性を考え、ここは徒歩で市街地の様子を見る事にする。

そこに写影もついて来て、黒子の隣で、そしてゴブリンスレイヤーも市街地の様子を見始める。

(本当だ、建物が壊れている… それも沢山だ! 中でもティルテッド・タワーらしき場所の辺りには…)
「クレーターが出来てる!」

写影が市街地の様子を見ていると、ティルテッド・タワーがあったであろう場所に巨大のクレーターが出来ているのを発見したことに驚き、思わず叫んでしまった。

「あの場所で何があったのかは分からない。 だが…言える事はあそこからなるべく遠くへ離れる事だ。 このような惨事のあった場所から遠く離れていく事で″その脅威″からも逃れられるだろう。 あくまで″その脅威″のみである事だが。」

同じくクレーターも目撃したゴブリンスレイヤーはそうい出した。

「しかし、そうしますと、殿方のお探しになられている″牛飼い娘″という方を始めとして、この殺し合いに反対的な方の救助が出来なくなる可能性も高いですわ?」

しかし、黒子は彼の発言に対し、『そうすると牛飼娘や殺し合いに反対的な参加者の救助が出来なくなるケース』を考慮してそう発言した。

(…″牛飼い娘″、俺の幼馴染と思わしき人物…)
「それはリスクが大きい。 だが、そこに向かおうとするならば警戒は決して怠るな。周辺の状況を充分に把握して、万全に準備を整え、意を決して進め。俺から言える事はここまでだ。」

彼女の発言に対し、ゴブリンスレイヤーはそう返す。

◆◆◆

こうして会話と西の市街地の様子を見る事を終わらせた4人は、先程のゴブリンスレイヤーの言葉通りに周囲をしっかり警戒しながら、改めて地図上に地名のある場所を目指して移動していたのだが…

(なんだ…あれは? でかい鋏!? それとは別にまたでかい奴… ッてその体を良く見てみれば″まるで多くの小鬼達がその体に貼り付けられている″様だ…!)

万が一の為に支給品の傘を閉じた状態で手に持ち、大木に身を隠し、周囲を見回していた豆銑がある参加者とNPCの姿を目撃する。

「おい、皆! あそこに何か体のでかい奴が2体もいる! 片方はまるで鋏の様…いや鋏そのものと言える姿をしている、もう片方は人の体に何人もの″人の顔″が貼り付けられている様な姿をしていた。」
(((!!!)))

鋏そのものポートと使って飴宮といのちの輝きに抱きつき、瞬時にテレポートを再度行使してゴブリンスレイヤー達の元へと戻って行った。

「え…何があった…??」

だが、飴宮はまたしてもワープをさせられたことによって更に困惑してしまう。

「突然ですが、このような場所を殿方と今抱きかかえている生物だけで出歩く事は非常に危険ですの。それに、見たところ殺し合いに乗った様子は見られませんでしたので、わたくし達に保護させて頂きたいのですわ?」

黒子は飴宮達を(殺し合いに乗っていなければ)保護する為にこう発言した。

「ほ…保護!? いきなりこんな事をされて、そう言われるのはちょっと!」

当然、飴宮もこの状況を呑み込めず、現在思っていることを口に出してしまった。

「まぁ、急にそんな事をされたら誰だって困惑するよ。 それで、君が何か悪さをしない限り、わたし達も協力してあげるよ。」

豆銑は、戸惑う彼女にそう話す。

「さあ、3人共。 こうしてまた殺し合いに反対的な参加者達も見つかったことだから、彼女達を守ってあげよう。」

豆銑達は飴宮達を新たな保護対象として迎え入れることにしたのであった。

「あの、私、大きな鋏の姿をした妖怪と彼に切り刻まれて顔の部分を体中に貼り付けられた様な姿の妖怪を見たんです!」

…のだが突然、飴宮がハサミとヒャクメンハリボテゴブリンを目撃したことを話し出した。

((((!))))

その発言に、4人は驚いた。

「そうか、君も見たのか。わ


625 : ◆bLcnJe0wGs :2021/09/10(金) 05:03:51 3hO6Qmgc0
たしも見たぞ。」

そこで飴宮の発言にいち早く返したのが豆銑だった。

「ならば話は早い。 早急にでもここから立ち去ろう。 皆、行くぞ!」

集団の先頭を取っているゴブリンスレイヤーはその話を聞いて直ぐさまこの場から立ち去ることを選択した。


626 : ◆bLcnJe0wGs :2021/09/10(金) 05:04:49 3hO6Qmgc0
【E-7とE-6の間/黎明】

【飴宮初夏@こじらせ百鬼ドマイナー】
[状態]:健康 混乱(中) 不安(大)
[装備]:簡易レーダー@バトル・ロワイアル、ゴブリンの剣@ゴブリンスレイヤー
[道具]:基本支給品、瓶入りの液体(付属の説明書は確認済み)@出展不明、飛竜の翼剣@世界樹の迷宮X
[思考・状況]基本行動方針:生き延びる
1:今は自分たちを保護してくれると言ってくれた人達(ゴブリンスレイヤー、豆銑、黒子、写影)、この子(いのちの輝き)と一緒にいる。
2:ハサミ、ヒャクメンハリボテゴブリンからは離れる。
3:筆談してた人が気になる…どこに行ったの?
4:ターバンの人(アキネーター)は変質者だったのか、妖怪だったのか。
[備考]
※44話以降からの参戦です。
※ハサミを付喪神(または網切の妖怪)、ディアボロを悪魔、偉人を霊と認識してます。
※いのちの輝き、ゴブリン及びヒャクメンハリボテゴブリンを妖怪と認識してます。

【いのちの輝き@大阪万博2025】
[状態]:『ルカの右ぽ』と融合中 疲労(小) 好奇心(今は特に飴宮) 成長中
[装備]:
[道具]:基本支給品、和三盆のお菓子@こじらせ百鬼ドマイナー、何かの紙@出展不明
[思考・状況]基本行動方針:とりあえず飴宮についていく。
1:縺ェ縺ォ縺後??縺翫%縺」縺ヲ縺?k縺ョ?
2:縺ゅ?縺イ縺ィ縺溘■縲?縺?繧?
[備考]
※参戦時期は産まれたて。
※特技は今のところ「目から眩しい光を出す」、「大して威力はないがビームを出す」です。
 今後の成長によって何か新しい技を覚えるかもしれません
※横になって転がるを覚えました。


627 : ◆bLcnJe0wGs :2021/09/10(金) 05:06:51 3hO6Qmgc0
【豆銑礼@ジョジョリオン】
[状態]:健康、疲労(小)
[装備]:スタンド『ドギー・スタイル』、野咲春花の傘@ミスミソウ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1
[思考・状況]基本行動方針:生存優先
1:ゴブリンスレイヤー達と行動する。
2:ピンク髪の娘(飴宮)と赤い生物(いのちの輝き)を様子見がてら保護する。
3:美山写影は何か隠している。折を見て聞き出す
4:ティルテッド・タワー周辺には万全に準備を整えた上で赴く。
[備考]
時間軸はプアー・トム撃破後。

【ゴブリンスレイヤー@ゴブリンスレイヤー】
[状態]:健康
[装備]:ゴブリンスレイヤーの装備@ゴブリンスレイヤー、小鬼から奪った装備(粗末な棍棒や短剣)、並行世界のディエゴのナイフ@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品
[思考・状況]基本行動方針:ゴブリンを殺す。首魁であるミルドラースも殺す。
1:あいつ(牛飼い娘)との合流を優先する。
2:ピンク髪の娘(飴宮)と赤い生物(いのちの輝き)を様子見がてら保護する。
4:ティルテッド・タワー周辺には万全に準備を整えた上で赴く。
5:なぜ俺たちは本名で名簿に載っていない?
6:異世界か……スタンド以外にもゴブリン退治に役立つものはあるのか?
[備考]
時間軸はゴブリンロードを討伐した後。

【白井黒子@とある科学の超電磁砲】
[状態]:健康
[装備]:鉄矢×10とホルスター@とある科学の超電磁砲
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(未確認)
[思考・状況]:基本行動方針:殺し合いを止める。
1:美山や無力な参加者の保護。殺し合いに乗った参加者の制圧。
2:当面は牛飼い娘さんの捜索を中心にする。
3:ティルテッド・タワー周辺には万全に準備を整えた上で赴く。
4:抜け目のない殿方達ですわね。
[備考]
※美山写影と出会った後、ペロ救出後より参戦です。

【美山写影@とある科学の超電磁砲】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、インスタントカメラとスマートフォン@とある科学の超電磁砲、イエロー・テンパランスのスタンドDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[思考・状況]:基本行動方針:黒子を守る。
1:黒子を守る。自分の持つ能力の全ては、友達の彼女のために使う。
2:とりあえずはゴブリンスレイヤーさん達と行動する。
3:ピンク髪の娘(飴宮)と赤い生物(いのちの輝き)を様子見がてら保護する。
4:折を見て豆銑さんからスタンドについて話を聞きたい。
5:ティルテッド・タワー周辺には万全に準備を整えた上で赴く。

【支給品紹介】

野咲春花の傘@ミスミソウ

豆銑礼に支給。

その名の通り、野咲春花の持ち物であった傘。
しかし、彼女は雪の日にこの傘を差して歩いていたことでクラスメート達からの奇襲を避けることが出来た。


628 : ◆bLcnJe0wGs :2021/09/10(金) 05:08:28 3hO6Qmgc0
以上で『あなたが私を聞くことができるなら、目を覚まし、目を覚ますか、あなたは死ぬでしょう。』前編投下終了です。


629 : ◆bLcnJe0wGs :2021/09/10(金) 06:20:32 3hO6Qmgc0
>>627
失礼します。
黒子の状態表ですが、ランダム支給品の部分から(未確認)はなくなっております。


630 : ◆bLcnJe0wGs :2021/09/11(土) 17:03:31 0DY/o3BM0
後編の投下をします。


631 : ◆bLcnJe0wGs :2021/09/11(土) 17:04:15 0DY/o3BM0
◆◆◆

一方、ハサミはジェイソンとヒャクメンハリボテゴブリンの戦闘を観戦しつついざという時に備えて刃を上に向けて開き、ホル・ホースもエンペラーを構えて臨時体制に入っていた。

ジェイソンの方もハンマーを振り上げヒャクメンハリボテゴブリンの足めがけて突進する。

「わー 傷だらけの奴がハンマーを振り上げたー!」

それを傍観するハサミは彼の動きに関心を示す。

対するヒャクメンハリボテゴブリンも剣を片手にジェイソンの方へと振るう。

「行けー! その剣を振り下ろせ!」

彼らの戦闘を観戦し続けるハサミ。

「わっ 防がれた! って、あっちのハンマーの柄は折れちゃったけどそれに付いてるコードみたいなやつがまだつながってる! しかも無事だ!」

ハサミの実況は続く。

ジェイソンは咄嗟にハンマーで斬撃を防ごうとするのだが、剣を振るわれた際の衝撃で柄が折れてしまう。 だがハンマー部分に接続されているパーツは無事。
よってハンマーの柄部分は完全には離れ離れにならなかった。

ジェイソンもそのパーツが繋がったままのハンマー離れ離れになった柄を握りしめ、再び相手に殴りかかる。

対してヒャクメンハリボテゴブリンは剣を横に構え、そのまま斜め下、ジェイソンへと振るう。

ジェイソンは片手に握った、ハンマーの頭で斬撃を防ぐ。

ハンマーの頭部は衝撃で大破してしまったが、柄の部分は残っている。

◆◆◆

「あーあ。 折角の武器があっという間に壊れちゃったね」

ハサミはジェイソンの持っていたハンマーが剣の斬撃によってあっという間に破壊されてしまったことに内心はがっかりする。

(けど、あんな傷だらけでも動ける様な奴ならオモチャにするのも十分いいよな。 けれど所詮は知らない奴、ましてや自分たちでも確認出来ていないランダム支給品や相手の特殊能力の有無も分からない、やはりしばらくは引き続きオモチャを戦わせつつ様子見としよう。)

ハサミはジェイソンに興味を持ちながらも、こちらから無暗に得体の知れない相手に近寄ることはしようとしなかった。

◆◆◆

一方、ジェイソンはいざという時の為にデイパックを少しだけ開けていた。

ヒャクメンハリボテゴブリンが再三剣を振るおうとしている間、それを思い切り開き、地面に叩きつける。

すると、大きな丸い石がデイパックの中から飛び出し、ヒャクメンハリボテゴブリンの頭上まで落下していく。

「GOBBY!?」

それが彼の背中まで転がり落ち、石が重量を増加させてのしかかる。

そうして怪物は地面に倒れた。

だが、剣は握ったままにしている。

しかし怪物は剣を手放さず、ジェイソンへとまだ振るおうとしている。

◆◆◆

「な、何あれ!? 石が…大っきい石がデイパックから飛んできた! それで背中にのしかかって動けなくなってるみたい!」


632 : ◆bLcnJe0wGs :2021/09/11(土) 17:05:04 0DY/o3BM0
この光景にはハサミも驚きを隠せずにいる。

(これだけエンペラーを構えているのも流石にキツイな…。)

だが、ホル・ホースも長時間スタンドを発動させていたことでスタンドパワーをかなり消耗してしまっていた。
しかも制限によって本来よりも更に消耗している。

「ん、きみもすごく疲れてるみたいだね。 それにきみはぼくのオモチャ作りに協力してくれてる人だから、ぼくが守らないとね? それとその銃、しまっていいよ。」

ホル・ホースの様子に気付いたハサミは彼の目の前へと飛んでいく。

「そうか、ならお言葉に甘えさせて貰おうか。」

流石のホル・ホースもハサミの言う通りにスタンドを一旦解除し、彼に守ってもらうことにしたのであった。

(まぁ、あのオモチャが動けなくとも、傷だらけの奴は割と攻撃的だった。 ならば少なくとも奴にはオモチャを囮にホル・ホースを少しでも回復させる為の時間稼ぎをして貰おう。 それに折り紙もまだ残っているし、例の奴がオモチャを壊しきったならそれをけしかけよう。 それでぼくとホル・ホースはなるべく他の参加者やNPCのいない所に逃げるんだ。)

しかし、ハサミはジェイソンの情報を把握していないことや、その他万が一の事態に備えて彼から逃げることを考えていた。

(あと、ホル・ホースからもらった恐竜のゲノムとやらもまだ試してないな。)

更にハサミは、ホル・ホースから譲ってもらったランダム支給品の1つもいつかは玩具作りの道具にしようと企んでいた。


633 : ◆bLcnJe0wGs :2021/09/11(土) 17:06:24 0DY/o3BM0
【E-7 黎明】

【ホル・ホース@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康 空条徐倫への不安(中) スタンドパワー消耗(大) 疲労(中)
[装備]:手にとり望遠鏡(『引き寄せる』『引き寄せられる』ともに現在使用不可)@ドラえもん
[道具]:基本支給品×2(自分とハサミの分)
[思考]基本行動方針:とりあえず生き延びるが、今はハサミの旦那に従う。
1:今はハサミの言う通り休む。
2:傷だらけの人物(ジェイソン)は様子見。
3:空条って、まさか…?
4:今はハサミの旦那に協力。ハサミの旦那がやられたら…どうすっか。
5:女に手を出さないのも、此処では考え直すべきか、
[備考]
※最低でもエンヤ婆戦後からの参戦です。
※なんとなく参加者は多くが異なる世界から来ているとは思ってますが、まだ確証はありません。
※空条徐倫を承太郎の関係者と言う可能性を考察してますが、
 上の異なる世界がより多いと考えた場合解消されるかも…本人に出会うまでは。

【ハサミ@ペーパーマリオ オリガミキング】
[状態]:ダメージ(小)、ホル・ホースへの不満(小)、傷だらけの人物(ジェイソン)への興味
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、折り紙セット(2/5 黒、黄、青使用済み)、睡眠薬入りアイスティー 、トリケラゲノム@モンスター烈伝 オレカバトル
[思考]基本行動方針:この世界で新しいオモチャを作る。
1:ホル・ホースを守る。
2: ヒャクメンハリボテゴブリンがやられたら、自分とホル・ホースで戦い、殺さず切り刻む。
3:ホル・ホースと協力し、会場を荒らし回る。
4:自分を殺した相手(マリオ)に復讐する。
5:ちょっと不満…まあ隙を見てホル・ホースも殺すけどね。
7:トリケラゲノムもどこかで試したい。
6:最終的には優勝。

【ジェイソン・ボーヒーズ@13日の金曜日】
[状態]:全身の数ヵ所に切り傷や刺し傷
[装備]:アトムの審判@Fallout4
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1(確認済み)
[思考・状況]:基本行動方針:皆殺し
1:目に入る者を全て殺す
[備考]
参戦時期はフレディvsジェイソン終了後。
首輪の爆発か全身を消し飛ばされない限り何度でも復活します。
part9でやった他者の肉体乗っ取りは制限により使用できません。


634 : ◆bLcnJe0wGs :2021/09/11(土) 17:06:53 0DY/o3BM0
【支給品紹介】

オッパショ石@こじらせ百鬼ドマイナー

ジェイソンに支給。

背負うとどんどん重くなる徳島の奇石。
滑りやすく、一度のしかかった際には強力な力と特殊な道具を使わないと持ち上げられない。
作中では、飴宮達クラスメートと苦手なものについての話をしていた渡海がたまたまこれを持ち上げたところ、彼の背中にのしかかってしまった。 

本ロワでは主催の調整によってデイパックを開けば最も近い距離にいる生物の背中に自動的にのしかかりにいく他、のしかかられた対象が死亡するとその場で消滅する様になっている。

トリケラゲノム@モンスター烈伝 オレカバトル

ホル・ホースに支給。

新6章に登場する、トリケラトプスをモチーフとした人型モンスター『恐竜戦士トリケラ』から入手可能なアイテム。
クラス2の『トリケラ』にこのアイテムを合体させるとクラス3の『恐竜戦士トリケラ』に進化させることが可能。

また、トリケラをはじめ恐竜戦士系のモンスターは全体的に己の肉体や装備を活かした戦法を得意とする。

現在はハサミが所持。


635 : ◆bLcnJe0wGs :2021/09/11(土) 17:07:54 0DY/o3BM0
以上で『あなたが私を聞くことができるなら、目を覚まし、目を覚ますか、あなたは死ぬでしょう。』後編投下終了です。


636 : ◆bLcnJe0wGs :2021/09/11(土) 21:38:17 Qm2QJB0U0
wiki内に収録させてくださっている自作『あなたが私を聞くことができるなら、目を覚まし、目を覚ますか、あなたは死ぬでしょう。(前編)』ですが、文章にメモ帳からのコピペミスによる抜けを確認した為修正させていただきました。


637 : ◆L9WpoKNfy2 :2021/09/12(日) 22:24:02 3CjOB1rY0
すみませんが、予約延長させていただきます。


638 : ◆bLcnJe0wGs :2021/09/14(火) 20:52:02 4p5WvosE0
ディアボロ、りあむ、クロちゃん、甘露寺、変なおじさんで予約します。


639 : ◆L9WpoKNfy2 :2021/09/15(水) 00:18:28 tpE6QMsA0
予約した内容について投下いたします。

なお今回の話は少し長くなっていますので、前後編に分けて投下いたします。


640 : 森のキノコにご用心(もっこり編) ◆L9WpoKNfy2 :2021/09/15(水) 00:20:12 tpE6QMsA0
コンペロワイヤル、第63話!!
前回(第44話)のあらすじ!!
夜の森へ入ろうとしたマリオ一行、そこにパワーというツノスーツの姉ちゃんが襲い掛かった。
そして彼女と熾烈な戦いを繰り広げ、その中でカズマが彼女の持つ剣『アヌビス神』を盗み出すことで
見事マリオたちは勝利を収めるのだった。

そんなこんなでさっきパワーから盗んだアヌビス神を使って、適当に進む道を決めていたマリオ一行はというと……

「マリやっこどすえ〜」
「ヨシノザウルスどす〜」

……
舞妓になっていた。

「……ってオイ!舞妓じゃなくて、迷子だろ!というかボケてる場合か!?」
『というより、いつ着替えたんだよコイツら!?』

そして、のっけからボケをかましてくるマリオとヨッシーに対して、カズマとアヌビス神がツッコミを入れていた。

そう、カズマがマリオたちにツッコミを入れたとおり、彼らは森の中で迷子になっているのだ。

「そうだよ、迷子になってんだよおれ達は!一体誰のせいでこうなったんだ!?」

するとさっきまでボケをかましていたマリオが普段通りの格好に戻って、誰が原因で迷子になったのかと怒っていた。

そうすると……

「マリオさん」「アンタだよ」『お前のせいだよ』

その場に居合わせた全員が、一斉にマリオのせいだと答えた。

「そうか、おれのせいか!そうかそうか……っておれのせい!?」
「だって……進む方向を決めたのはマリオさんでしょ?」
「そうそう」『そうそう』

そんなわけで彼らが言い争いをしていると、突如として木々の間から紫色の胞子のようなものが飛んできたのだ。

「おおっと!」「危ねっ!」

それらをヨッシーとカズマは難なくかわし、マリオはというと……

「ぬあぁぁぁ〜〜っ!」

がっつり命中しまくっていた。

『少しはかわせよ……』

相手の攻撃を一切かわせず、そのすべてが直撃したことについてアヌビス神がツッコミを入れた。

「くっしょ〜〜!何者だ!姿を見せやがれ――っ!!」

そして、全身がボロボロになったマリオが悔しそうにこう叫んだ。

それとともに木々の間から、草や枝が揺れる音とともに彼らを攻撃したものが現れた。

そこに現れたのは……


641 : 森のキノコにご用心(もっこり編) ◆L9WpoKNfy2 :2021/09/15(水) 00:21:00 tpE6QMsA0
『うふふふふっ……』

―― それは ただのキノコと言うには あまりにも美しすぎた
―― 大きく 重く ハリがあり そして いやらしすぎた
―― それは 正に パイオツカイデーな全裸のチャンネーだった

そんな衝撃的な存在が現れたことについて……

「ちょっと待て作者ぁ――っ!どちらかというとコイツは、コロコロじゃなくてボ〇ボ〇とかの奴だろ!」
「マリオさん、別の出版社の雑誌名出すのは流石にまずいと思いますよ」

マリオとヨッシーは作者に対し「雑誌が違うだろうが!」と言った感じのツッコミをした。

それに対し作者はというと……


┌───────(・∀・)──────┐
│ │
│ ゴメンごめ〜ん♪ めんゴメ〜ン♪ │
│ うっふんあっはんすっぽんぽ〜ん♪ │
│ │
└────────つ□⊂───────┘

「でんぢゃ〇すじーさんのネタをすな――っ!!」
「というか随分と懐かしいネタですね!?」

今なおコロコロで連載中の、別の漫画のネタをかますのだった。

そうやって彼らがボケとツッコミをしていたが、

『受けなさい!たあぁぁっ!』

キノコ頭の女性が、カズマめがけてカカト落としを仕掛けてきたのだ。

「いかん!かわせ!かわすんだカズマ――っ!!」

マリオが急いでそう叫ぶが、それに対しカズマは一切その場から動こうとはしなかった。

何故ならば……


642 : 森のキノコにご用心(もっこり編) ◆L9WpoKNfy2 :2021/09/15(水) 00:22:12 tpE6QMsA0
「……カズマさん、たったまま気絶してますよ……」

カズマは鼻血を吹き出し、たったまま気絶をしていたからだ。

そりゃそうである、今カズマの目の前にはどのような光景が広がっているのか、それを考えればこうなるのも必然だった。

「仕方ありません!私が何とかします!」

ヨッシーはそう言うと自分の舌でカズマを引き寄せて彼のピンチを救うのだった。
そして先ほどマリオを助けた時と同じように口の中に入れかけて……

「すな――っ!!」

マリオにどつかれるのだった。

そうするとキノコ頭の女性は、再び彼らめがけて胞子を飛ばしてきた。

「二度も三度も同じ攻撃を食らってたまるかよ!今度はこっちの番だ!!」

それに対しマリオはそのすべてをかわし、ハンマーを手に女性に戦いを挑むのであった……。

そして数分後……

「運がよかったな、今回はこれくらいにしといてやらぁ!」

マリオが、全身ボロボロの状態で彼女にそう言った。

一方彼女の方はというと、一切ダメージを負った様子もなく空中にたたずんでいるのだった。

「負けてるときに言うセリフじゃないでしょそれ!」

その光景に対し、ヨッシーが全力でツッコミを入れるのであった。


643 : 森のキノコにご用心(もっこり編) ◆L9WpoKNfy2 :2021/09/15(水) 00:23:07 tpE6QMsA0
「くそう、アイツ結構すばしっこい上に空中に逃げるから全然攻撃が当たらない……カズマはさっきからあんな感じだし、何かないか……?」

そして、いつの間にかまた元の姿に戻っているマリオがそう独り言をつぶやいていた。

直ぐに自分の攻撃が届かないところに逃げる上に、その状態で攻撃を仕掛けてくる彼女をどう倒すかという事に悩んでいるのだ。

「私の舌なら普通に届きますけど」
『きゃあっ!』

その独り言に答えるようにヨッシーがそう言うと、彼は自分の舌を伸ばして彼女の身体を絡め取った。

そして……

「いただきま〜〜す!!」
『はぁんっ! あうっ! いやっ! はぁぁんっ!あああぁ〜〜〜っ!』

そのまま彼女を口の中に引き寄せて、一気に飲み込んでしまったのだ。

「……いつもながら、スゴイやつだ……」
『……ひどい絵面だ……』

その光景に対しマリオは、そう独り言をつぶやくのだった。

「……ハッ!俺は一体何をしていたんだ……?」

それとともにカズマもやっと正気を取り戻し、目を覚まし始めた。

そうやって彼らが危機を乗り越えると、今度は森の奥から何かが聞こえてきた。

<<ギェ〜〜ッ!>>

それはとても大きな悲鳴だった。

そして、それを聞いたマリオたちは声の聞こえたほうへと向かって状況を確認しに行くことにした。

そこでマリオたちが目にしたものとは……?

「……なあマリオ?俺さっき、何かとってもイイモノを見た気がするんだけど……?」
「……それは忘れとけ……!」


644 : ◆L9WpoKNfy2 :2021/09/15(水) 00:24:24 tpE6QMsA0

以上で前編、『森のキノコにご用心(もっこり編)』の投下終了です。

続けて後編、『森のキノコにご用心(コッチン編)』を投下いたします。


645 : 森のキノコにご用心(コッチン編) ◆L9WpoKNfy2 :2021/09/15(水) 00:25:47 tpE6QMsA0
ここで時間が少し巻き戻り、とあるログハウスの中……

『聞け! この地に集いし全てのものたちよ!』

勇者やちひろ、レムたちはミルドラースからの放送に耳を傾けていた。

そして放送を聞き終わると、彼らは一斉に手元の名簿を読み始めた。

「そんな……!りあむちゃんや卯月ちゃん、楓さんに美波ちゃんまで……!」

ちひろは自分の事務所に所属しているアイドル達も参加させられていることにショックを受け……

「スバルくんまで呼ばれてるなんて……!」

レムもまた、自身が恋焦がれ、また英雄視している少年まで誘拐されたことにショックを受け……

「ぉ姫様まで来ているだなんて……ハハハ、責任重大ですね……」

勇者はキングダムのぉ姫様まで呼ばれていることを、どこか他人事のような口調で説明をしていた。

そうして支給された名簿について一通り確認を終えた後、レムが他の二人に話を切り出した。

「……どうやら皆さん、自分の知り合いがこの会場に呼ばれているみたいですね」
「そこで相談なのですが……ちひろ様と勇者様は、自分の知り合いがどこに行きそうか、心当たりはあるでしょうか?」

それは、自分たちの知り合いを見つけるためにどこを目指すかという内容だった。

「そうですね……、みんなが目指しそうな場所ですと……心当たりがあるのはここか、ここでしょうか?」
「この辺りは人が集まりそうな場所ですし……目指すとすればこのあたりだと思います」

それに対しちひろは地図を広げ、【パラダイス・バーム】と記されている場所と【ティルテッド・タワー】と記されている場所を指さした。

「私の方は……心当たりがないので、どうするかはお前たちに任せます」

勇者の方は、そもそもぉ姫様とは出会って間もない(にもかかわらず婚約を迫られる)関係なので、
彼女が行きそうな場所に心当たりがないのもあって二人の判断に任せることを、かなり失礼な言い方で答えるのだった。

「…私の方も今のところ心当たりがありませんので、ひとまずはちひろ様の知り合いを見つけるためにも手分けして行動しましょう」
「……それと、その物言いははっきり言って不愉快ですので、今後気を付けていただけますか?」

レムは勇者の失礼な物言いにムッとしながらも、自分の方も心当たりがないのでまずはちひろの知り合いを探す方針で行動する旨を話した。


646 : 森のキノコにご用心(コッチン編) ◆L9WpoKNfy2 :2021/09/15(水) 00:26:16 tpE6QMsA0
「ではまず、私とちひろ様はここから一番近い場所である【パラダイス・バーム】に向かおうと思います」

「そして、現状ここは安全地帯のようですので、この場所を拠点として活動したいと考えています」

「……ですので、勇者様は私たちが戻るまでの間このログハウスに残っていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」

レムの提案した内容について、ちひろは勇者と最初に出会ったときのように、レムに耳打ちをするのだった。

(彼から見れば、露骨に自分から離れようとしているように見えると思いますが……大丈夫でしょうか?)

それは先ほどの提案が、冷静に考えれば彼を邪魔者扱いしているということが分かるような内容だったからだ。

(多分ですが、大丈夫だと思いますよ。……現に今、彼はその提案について乗り気なようですから)

ちひろのその忠告に対しレムは、彼の様子から見て問題ないと答えた。

「ハハ、責任重大ですね……」

その言葉通り、勇者の方はこのログハウスを守るという事についてこう述べるのだった。

そしてそれを受けたレムは、引き続き話を再開し始めた。

「では、どのくらいの時間にこちらに戻ってくるのかは……」

…………
………
……


そうやって今後の行動に関して議論を交わしていたところ、突如として彼女たちが入っていたログハウスが大きく揺れた。

<<こっち来んなああァ―――ッ!>>

それとともにそのログハウス自体から巨大な悲鳴が上がった。

「い……いったい何が起きているんでしょうか!?」

突如としてログハウスが悲鳴を上げたことについてちひろがそう叫んだ。

「一体何があったんですか?」

勇者は相変わらずどこかズレたことを言いながら、この状況に困惑した様子を見せた。

「とりあえず早くここから出ましょう!」

そんな二人に対しレムが、一刻も早くここから脱出するべきだと叫んだ。

そして、慌ててログハウスから出てきたちひろたちの目に飛び込んできたものとは……


647 : 森のキノコにご用心(コッチン編) ◆L9WpoKNfy2 :2021/09/15(水) 00:26:43 tpE6QMsA0
『……ヌルヌル………ヌルヌルヌルッ!!』

―― それは ただのスライムと言うには あまりにも大きすぎた
―― 大きく 太く 柔らかく そして いやらしすぎた
―― それは 正に フニャ〇ンだった

「」
「」
「はい!?!?!?!?!?!?!?!」

そのあまりにも強烈すぎた光景からちひろとレムは言葉を失い、勇者は驚愕した。

『グワッハッハーッ!やはりその中に女子がおったか!カワを剥けば出てくるモノよのぉ!!』

そしてその怪物は、あまりの衝撃から固まってしまったちひろたちの姿を確認すると、全速力でそちらへと突進を始めた。

「キャアァァァァッ!頼むからこっちこないでください!」

当然ながらちひろは悲鳴を上げ、

「……なんて穢れた魔物なのでしょう……!」

レムはトゲワンワンを片手に、目の前の怪物に対する嫌悪感を一切隠そうともせず立ち向かうことを選び、

「私の力不足だ…この俺の手で片付けてやる!!!」

勇者はあまりにも衝撃的なモノを見たからなのか、より一層支離滅裂なことを言いながらもレムと同じく立ち向かうことを選んだのだった。

『ワシに立ち向かうか!ならばそなたらを、ワシの手で天国にいざなってヤろうぞぉぅ!』

そして、自らに立ち向かおうとする彼らを見た怪物は、どことなく卑猥に感じるセリフ回しをしながら襲い掛かるのだった。

「トゲワンワンさん、お願いします!」

レムはそう言いながら、自身が持っている鉄球を振り回しながら怪物の頭めがけて振り下ろした。

「マジックミサイル〜!!」

そして勇者もまた、先ほどキャベツたちを追い払ったときのように魔法の玉を飛ばしながら怪物に攻撃をし続けた。

しかし……


648 : 森のキノコにご用心(コッチン編) ◆L9WpoKNfy2 :2021/09/15(水) 00:27:14 tpE6QMsA0
「な……攻撃が跳ね返ってしまいます!」

なんとその怪物はスライム状の柔らかい身体を使ってトゲワンワンを跳ね返し、

「私の力不足だ…」

勇者の放った魔法を受けてなお体を震わせるだけで、一切気にも留めていない様子だった。

『……今、ワシに何かしたかのぉ〜?』

こうして、それらを受けた怪物はそれらを一切ダメージを負った様子もなく、先ほどと同じようにたたずんでいるのだった。

『フフフ、もう終わりとは早漏な奴らじゃのう……ならばこれを食らうがよい!【たたり生唾】!』

怪物が自分の身体を上下にピストンしながらそう叫ぶと、彼の頭から謎の白い液体を発射したのだ。

「なんて汚い攻撃なんですか!」
「イヤアァァァァッ!!」

そしてレムたちは、その何とも言えない攻撃をかわしたが一人だけそれをかわせなかったものがいた。

それは……

<<ギェ〜〜ッ!>>

そもそも建物なので身動きの取れない、デクの山ログハウスだった。

そうしてその強烈な叫び声は森全体へと広がっていき、これが先ほどのマリオのシーンにつながるのだった……。

---------------------------------------------------------------
そして舞台は現在へと戻り、悲鳴を聞いて駆け付けたマリオ一行の目にも同じ『モノ』が飛び込んできて……

「どわ〜〜〜っ!!」
「ぶ〜〜〜っ!!」
「ぬぐおぁっ!」

マリオ一行もその強烈さから凄まじい声を上げたり、口の中のものを勢いよく噴き出すのだった。


649 : 森のキノコにご用心(コッチン編) ◆L9WpoKNfy2 :2021/09/15(水) 00:28:00 tpE6QMsA0
『ム?新手か……?まあ良い、連続で二回戦あろうが構わぬ!我が突きで昇天させてくれるわ!』

そして彼のその見た目に驚いているマリオ一行を見ると、今度は彼らに襲い掛かってきた。

「気を付けてください!その怪物の身体は柔らかすぎて、ほとんどの攻撃が効かないんです!」

レムは彼らにその怪物の身体について注意するように叫んだ。

「柔らかすぎて攻撃が効かない?それならこれです!」

それを受けてヨッシーがそう言うと、今まで持ってはいたけども全然使っていなかった"あるもの"を手に怪物めがけて突っ込んでいった。

ヨッシーが使ったもの、それは……

「振動パックか――っ!!」

スーパーマリオ64編の時に、マリオの記憶喪失を治すために使った振動パックだった。

『アバババババババ……昇天しちゃいそうじゃっっっっ!!!』

そしてヨッシーの判断は正しかったらしく、そのいかがわしい怪物はその身を震わせながら硬直し始めたのだ。

「結構効いてるみたいだけど……明らかに本来の使い方と違うだろコレ!!」
「いいんだよ、細かいことは」

その光景に対しカズマがまたツッコミを入れるが、それについてマリオがたしなめた。

そうこうしてヨッシーが目の前の怪物に振動パックを当て続けているとその怪物の身体がだんだん大きくなり、そしてガッチガチに固くなっていった。

その光景を見たヨッシーはマリオに対し叫んだ。

「今です!この怪物がガッチガチに固くなっているうちにそのハンマーでぶん殴ってください!」
「おっしゃーっ!任せろ――っ!!」

そしてマリオが怪物の頭を全力で殴ると、除夜の鐘のような音があたりに響き渡った。

『き、貴様……まさか、不感症か……?』
『口惜しい……、完全体であれば…貴様らのような粗末なモノなどには後れを取らんというのに……!』

そう言うとそのいやらしい怪物は身体をビクンビクンと悶えさせながら倒れていった。


650 : 森のキノコにご用心(コッチン編) ◆L9WpoKNfy2 :2021/09/15(水) 00:28:57 tpE6QMsA0
そしてその光景をカズマはとても苦しそうな顔をし、股間を抑えながら見つめていたのだった。

「どうしたんですか、カズマさん!」

ヨッシーはそれを見て、カズマの身に何があったのかを心配した。

「……『どうしたんですか?』って、見てるだけで痛いだろーがアレは!?」

それに対しカズマは、若干キレながらもツッコミを入れた。

「いや、だって……おれ達の場合、いつものことだし……?」

そしてカズマの叫びに対し、マリオは困惑した様子で答えるのだった。

「ええ、マリオさんって敵から『タマを取ってみろ!』って言われたときに相手のキン〇〇を全力で握りしめたことありましたし……」
「たしかマリオさんがまだ赤ちゃんだった頃に、食べ物と勘違いして敵の股間に噛み付いたことありましたし……いつものことなんですよね」

また、ヨッシーの方もマリオが如何に"そういった攻撃"を平気で行ってきたのかを、今までのエピソードを交えながら説明をした。

「……さいですか」

一方カズマの方は、それらのエピソードを聞いたことでこれ以上追及するのをやめることにした。

そうしてヨッシーとカズマのやり取りが終わった後、急にマリオがこう言った。

「……えっと、話が盛り上がっているところ申し訳ないんだが……さっきの怪物、殴った感触からするとまだ生きているから早く逃げたほうがいいと思うぞ?」

それはさっきの怪物がまだ完全には倒されておらず、気絶しただけというものだった。

「……そうですか、では早く逃げましょう」

それを受けてなぜか勇者が、レムたちを差し置いてそう言って逃げる準備を始めた。

こうして、あのとんでもない怪物との戦いは終焉を迎えたのだった……。

---------------------------------------------------------------

「……ところで、助けてもらっといて何ですが、あなたたちは誰でしょうか?」

戦いが終わってひと段落したところで、レムがマリオたちにそう聞いた。

「ああ、紹介が遅れたな、おれの名はマリオ。そしてこいつらが……」

それに対してマリオが名前を名乗り、続いて他の二人について紹介するのだが……

「おれの"オカマ"のヨッシーとカズマだ」

「ヨッシーよ〜ん、ヨロシクね〜ん」
「うふっ♥あたし、カズマって言うの〜。ヨロシクね……、って"オカマ"じゃなくて"仲間"だろうが――っ!」
『なんでノリノリでやってんだよお前ら!』

マリオがいつものボケをかまし、二人がそれにノリツッコミをかますのだった。

「……あと、『マリオさん』でしたっけ?貴方が持っているその剣について、見覚えがあるのですが……?」

レムは彼らのボケについて一旦スルーしながら話を続けることにし、今度はマリオが持っている武器に見覚えがあることについて言及をした。

「……もしかしてアンタら、さっき俺たちを襲った女性の知り合いか!?」

それを受けてカズマは、レムたちが先ほどの女性の仲間ではないかと追及をするのだった。

「いえ、違います!私たちはさっきそれを持った女性に襲われたんです!」
「ですので、私たちは貴方たちがその女性の仲間ではないかと、警戒をしたまでです」

それに対してちひろは慌てながら、レムは毅然とした態度でその経緯などについて説明を行った。

「実は俺たちもさっきその女に襲われたんだ。そしてそこにいるカズマが、そいつからこの武器を盗み出したんだよ」
「そうするとアイツは捨て台詞を吐いて、一目散に逃げだした……ってわけです」

彼女たちの説明を受けてマリオたちは、自分達も同じ者に襲われたこと、その際に彼女が持っていた武器を奪ったことについて説明を行った。

そうやって彼らが様々な話をしていたところ、ヨッシーが衝撃的なことを口走った。

「カズマさん、最初は間違って(マリオさんの)パンツを盗んでましたけどね」
「ちょ、ヨッシー!それは言わないでくれよホントに!!」

それはカズマが人のパンツを盗んでしまったことについてだった。

(……うわぁ)
(……最低ですねこの人……!)

それによってカズマは、ちひろとレムからかなり厳しい目で見られることになったのだった……。


651 : 森のキノコにご用心(コッチン編) ◆L9WpoKNfy2 :2021/09/15(水) 00:29:27 tpE6QMsA0
【H-4 /黎明】
【マリオ@スーパーマリオくん(コロコロ版)】
[状態]:腹に傷(軽傷) 
[装備]:ウォーハンマー@ドラゴンクエスト3
[道具]:基本支給品、沢田ユキオのポスター、アヌビス神@ジョジョの奇妙な冒険、ランダム支給品×2
[思考・状況]基本行動方針:主催者を倒す。
1:ピーチ姫を最優先で探す。後クッパもついでに。
2:主催者を何としても倒す。そのために会場内を探索する。
3:ともに戦う仲間を探す。
[備考]
 参戦時期は、オデッセイ編終了後(単行本55巻)。
 クッパ姫を女装したクッパ@スーパーマリオくん だと思っています。
 カズマと情報交換しました。
 レムの話から、鬼族の女性(パワー)に関する情報を得ました。
 ※アヌビス神を所持していますが、剣の洗脳能力が無くなっているため、影響はありません。

【ヨッシー@スーパーマリオくん(コロコロ版)】
[状態]:ちょっと火傷
[装備]:振動パック@スーパーマリオくん
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1
[思考・状況]基本行動方針:主催者を倒す。
1:おなかの痛みは引きました。
2:マリオさんに付いていきます。
3:異世界ですか……。
[備考]
 基本支給品の食料を、すべて食べつくしました。
 制限により、食欲および消化能力が低下してます。
 カズマと情報交換しました。
 レムの話から、鬼族の女性(パワー)に関する情報を得ました。

【佐藤和真@この素晴らしい世界に祝福を!(アニメ版)】
[状態]:健康、精神的疲労(小) 魔力消費(小)
[装備]:妖精弓主の弓と矢@ゴブリンスレイヤー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考・状況]基本行動方針:とりあえず生き残る。仲間がいれば合流したい。
1:アクアとウィズが心配。
2:二人(マリオ、ヨッシー)と一緒に行動する。
3:なんか段々、この二人に毒されてないか俺?
4:女性陣からの目線が、かなりキツイ……!
[備考]
 参戦時期は第二期最終回後。
 主催者は時間移動できると考えています。
 マリオ達と情報交換しました。そのせいでクッパ姫を女装したクッパ@スーパーマリオくん だと思っています。
 レムの話から、鬼族の女性(パワー)に関する情報を得ました。

【勇者(主人公)@ファイナルソード】
[状態]:健康、
[装備]:令嬢剣士の家宝の宝剣と盾@ゴブリンスレイヤー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1、キャベツ(3玉)@この素晴らしい世界に祝福を!
[思考・状況]基本行動方針:勇者として主催者を倒します。
1:襲われている人を助けます。
2:主催者はどこに居ますか? この会場のどこかにいますよ
3:この催しは神聖な木の試練ですか?
[備考]
 支給品は確認済み。
 参戦時期は神聖な木と会話した直後。
 レムの話から、鬼族の女性(パワー)に関する情報を得ました。
 マリオ達と情報交換しました。そのせいでクッパ姫を女装したクッパ@スーパーマリオくん だと思っています。


【千川ちひろ@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]:健康、精神的疲労(大)
[装備]:ー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1(確認済)、カニクリームコロッケ(13/25個)@現実
[思考・状況]基本行動方針:死にたくないが、人も殺したくない。
1:ひとまず助かった……?
2:アイドル達と合流したい。特にりあむちゃんはあの性格なので特に心配。
3:変な人が増えました……。
[備考]
 勇者(主人公)を、ちょっとおかしい人だと思っています。
 マリオ達と情報交換しました。そのせいでクッパ姫を女装したクッパ@スーパーマリオくん だと思っています。
 またマリオ、ヨッシー、カズマの三人を『トリオのお笑い芸人』だと思っています。

【レム@Re:ゼロから始める異世界生活】
[状態]:健康、精神的疲労(大)
[装備]:トゲワンワン@スーパーマリオくん
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2(確認済)
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いには乗らず、脱出方法を探る。
1:スバル君は無事でしょうか……
2:あの女(パワー)は鬼族の生き残りなの?
3:またアブナイ人が増えました……。
[備考]
 参戦時期は『イタダキマス』の後。
 パワーを危険人物と認識。彼女を鬼族と勘違いしています。
 勇者(主人公)のことを、パワーとは別の意味で危険な人物だと思っています。
 マリオ達と情報交換しました。そのせいでクッパ姫を女装したクッパ@スーパーマリオくん だと思っています。
 またマリオ、ヨッシー、カズマの三人を『大道芸人』だと思っています。


※I-3 デクの山ログハウスの近くで、【ちぎれた煩悩大王@ペルソナ5】が気絶しています。


652 : 森のキノコにご用心(コッチン編) ◆L9WpoKNfy2 :2021/09/15(水) 00:30:00 tpE6QMsA0
【幻惑の精マイコニド@オーディンスフィア】
 NPC。キノコの笠を頭部に生やした、ボンッ!キュッ!ボンッ!な全裸の女性の姿をした魔物。
 ……キノコの魔物なので、厳密にはキノコの下に女性の体を生やしているのが正しい。

 攻撃方法としては口元に手を当てた後に毒の胞子を発射する、腕を鞭のように伸ばす攻撃のほか、
 片足を垂直に上に伸ばした後に鋭いカカト落としをする、かがみこんだ後にサマーソルトキックをするなど
 世の男性の大半が目を離せなくなるような攻撃をしてくる。

 ……なおこのモンスターにはこの姿以外にも小さなキノコの姿、そして巨大ムキムキマッチョマンの姿など
 合わせて3種類の姿がある。


【ちぎれた煩悩大王@ペルソナ5】
 NPC。とある魔王を召喚しようとしたが失敗し、スライムの様な不完全な状態で実体化した姿とも、
 魔王の分身体ともされており、一部では『フニャ〇ン』と呼ばれている。

 ご立派な完全体と比べるとあまりにも情けない姿だが、カリにも魔王なのでその実力はマラ……、もとい馬鹿にはできず、
 ナメてかかると確実に昇天しかけないほどの強さを持っている。

 なおギンギン☆モリモリな完全体である『そびえる煩悩大王』が会場内に存在するのかは不明。


653 : ◆L9WpoKNfy2 :2021/09/15(水) 00:31:32 tpE6QMsA0
以上で後編、『森のキノコにご用心(コッチン編)』の投下を終了いたします。

ありがとうございました。


654 : ◆bLcnJe0wGs :2021/09/15(水) 17:22:06 h5AVKouY0
投下します。


655 : 誰でもいいから 人権ください ◆bLcnJe0wGs :2021/09/15(水) 17:23:20 h5AVKouY0
ディアボロはりあむに手を出す前に周辺を警戒し、手始めに彼女のデイパックを漁り出す。

(これは…説明書か、それの記述によれば彼女はその支給品で炎の能力を得た事になるのか… まだ漁ってみよう。 ランダム支給品の類は…このシャープペンシルと…何か厚い本もある上にこれにも説明書がついている…。 なるほど、この本があれば折り紙の亀に変身出来る上に一定時間内ではあるが地形も操作できると…)

彼はりあむの支給品の確認を終えると、彼女を抱え出す。

(…丁度よかった、近くに街がある。 しかし、油断などは禁物だ。 他の殺し合いに乗った参加者や″NPC″と呼ばれる存在もある。 警戒は決して怠れない。)

引き続き警戒を怠らず、そのまま彼らの現在地から最も近くにある街、プレザント・パークへと向かう。

─しかし、ディアボロには懐にある最後の支給品、それは予めインストールされている音楽を相手に聴かせる事で洗脳を行えるという携帯端末・マインドホンがある。

少なくとも現在の彼は殺し合いに抗う者を欺くスタンスである以上、彼女にそれを使うつもりはないのだが…

◆◆◆

そうして彼らはプレザント・パークに到着した。

(これは…何者かに斬られたのだろうか?)

そのまま街中を探索していると、緑色の小人やモグラの様な生物が何者かに斬られているのを発見する。

そして更に辺りを見渡してみると、街の中でも最も大きな建物の窓が割れ、板で塞がれているのを発見した。

◆◆◆

ディアボロ達はその建物に入ってすぐのエントランスホールにあるソファに腰をかける。

(あのパネルに貼られている見取図も気になるが…、気を失っている小娘がいる以上傍からは離れられないな)

気を失っているりあむがいる為に、付近のパネルを確認出来ずにいるのも気にかかっていた中、彼女が目を覚ました。

「キ…キミは? もしかして! ボクを助けてくれたの!?」

目覚めたりあむは、声を荒げながらディアボロにそう尋ねる。

「…そうだ。先程、貴様が黒髪の剣士に吹き飛ばされて倒れ込んだのを目撃した。」
「ひいぃ〜よかった〜〜!!」

ディアボロから歳三に襲撃されて吹き飛ばされて倒れ込んでいたところを助けられたことを聞かされた彼女は嬉しさの余り涙を流してしまった。

それから間もなくすると、建物の奥の方から扉が開く音が聞こえた。

どうやら、先程の声が扉の中の部屋にいる人々に聞こえてしまった様だ。

「まあ! 敵対する剣士に襲われていた娘を助け出して、ここまでやって来るなんて、素敵!」

開かれた扉から姿を現したのはりあむとは異なるピンク髪の女性。

「変なおじさん♪ 変なおじさん♪」
「いやっ!? 急に出てきて…脅かさないでよー!」

更には、先程の女性とは別のベクトルで奇抜な格好をした男が会議室から出てきて、りあむ達の周りで奇妙な踊りをやり始める。

(わ〜! また可愛い女の子! けれど関わるのはダルいしん…)

そして、会議室の座席ではに座り込んでいる男性の姿があった。

◆◆◆

だが彼らはまだ知らない。

甘露寺達が送り出したひろし達が過酷な戦いに巻き込まれていく事を。


656 : 誰でもいいから 人権ください ◆bLcnJe0wGs :2021/09/15(水) 17:23:36 h5AVKouY0
ディアボロはりあむに手を出す前に周辺を警戒し、手始めに彼女のデイパックを漁り出す。

(これは…説明書か、それの記述によれば彼女はその支給品で炎の能力を得た事になるのか… まだ漁ってみよう。 ランダム支給品の類は…このシャープペンシルと…何か厚い本もある上にこれにも説明書がついている…。 なるほど、この本があれば折り紙の亀に変身出来る上に一定時間内ではあるが地形も操作できると…)

彼はりあむの支給品の確認を終えると、彼女を抱え出す。

(…丁度よかった、近くに街がある。 しかし、油断などは禁物だ。 他の殺し合いに乗った参加者や″NPC″と呼ばれる存在もある。 警戒は決して怠れない。)

引き続き警戒を怠らず、そのまま彼らの現在地から最も近くにある街、プレザント・パークへと向かう。

─しかし、ディアボロには懐にある最後の支給品、それは予めインストールされている音楽を相手に聴かせる事で洗脳を行えるという携帯端末・マインドホンがある。

少なくとも現在の彼は殺し合いに抗う者を欺くスタンスである以上、彼女にそれを使うつもりはないのだが…

◆◆◆

そうして彼らはプレザント・パークに到着した。

(これは…何者かに斬られたのだろうか?)

そのまま街中を探索していると、緑色の小人やモグラの様な生物が何者かに斬られているのを発見する。

そして更に辺りを見渡してみると、街の中でも最も大きな建物の窓が割れ、板で塞がれているのを発見した。

◆◆◆

ディアボロ達はその建物に入ってすぐのエントランスホールにあるソファに腰をかける。

(あのパネルに貼られている見取図も気になるが…、気を失っている小娘がいる以上傍からは離れられないな)

気を失っているりあむがいる為に、付近のパネルを確認出来ずにいるのも気にかかっていた中、彼女が目を覚ました。

「キ…キミは? もしかして! ボクを助けてくれたの!?」

目覚めたりあむは、声を荒げながらディアボロにそう尋ねる。

「…そうだ。先程、貴様が黒髪の剣士に吹き飛ばされて倒れ込んだのを目撃した。」
「ひいぃ〜よかった〜〜!!」

ディアボロから歳三に襲撃されて吹き飛ばされて倒れ込んでいたところを助けられたことを聞かされた彼女は嬉しさの余り涙を流してしまった。

それから間もなくすると、建物の奥の方から扉が開く音が聞こえた。

どうやら、先程の声が扉の中の部屋にいる人々に聞こえてしまった様だ。

「まあ! 敵対する剣士に襲われていた娘を助け出して、ここまでやって来るなんて、素敵!」

開かれた扉から姿を現したのはりあむとは異なるピンク髪の女性。

「変なおじさん♪ 変なおじさん♪」
「いやっ!? 急に出てきて…脅かさないでよー!」

更には、先程の女性とは別のベクトルで奇抜な格好をした男が会議室から出てきて、りあむ達の周りで奇妙な踊りをやり始める。

(わ〜! また可愛い女の子! けれど関わるのはダルいしん…)

そして、会議室の座席ではに座り込んでいる男性の姿があった。

◆◆◆

だが彼らはまだ知らない。

甘露寺達が送り出したひろし達が過酷な戦いに巻き込まれていく事を。


657 : 誰でもいいから 人権ください ◆bLcnJe0wGs :2021/09/15(水) 17:24:57 h5AVKouY0
【C-3/プレザント・パーク 黎明】

【甘露寺蜜璃@鬼滅の刃】
[状態]:健康
[装備]:甘露寺蜜璃の日輪刀@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない
1:とりあえず町と残りの四人を守る
2:戦えるのは私しかいないけど、頑張るぞぉ〜!
3:あのメイドさん……何者なのかしら……。
[備考]
参戦時期は刀鍛冶の里編終了後から無限城に落とされるまでの間です
※「ジョジョの奇妙な冒険」の参加者について、一定の情報を得ました。

【変なおじさん@志村けんのだいじょうぶだぁ】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いはしたくないねぇ
1:だっふんだ!
※「ジョジョの奇妙な冒険」の参加者について、一定の情報を得ました。

【クロちゃん@水曜日のダウンタウン】
[状態]:健康、上機嫌、気怠げ
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、キャッスルロストフルボトル@仮面ライダービルド、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]:基本行動方針:殺し合いが企画じゃなくて本当ならそんな事はしたくない
1:可愛い娘が3人も! 仲良くなりたいしんよ〜 けど、新しくやってきた二人(ディアボロ、りあむ)と関わるのはダルいしん…
2:殺し合いが本当? 怖いよ…
3:あのメイドさん、無視してばかりで悲しいよ〜。
4:読んだ漫画のキャラがいるって、どういうこと?
[備考]
殺し合いを芸人が持ち寄った「説」による企画と思っていましたが、正真正銘の殺し合いだと認識しました
フルボトルをただの玩具と思っています。
「ジョジョの奇妙な冒険」を読んだ経験があるため、ホル・ホース、岸辺露伴、ディアボロ、空条徐倫、プッチ、豆鉄礼に関しては、一定の情報があります。


658 : 誰でもいいから 人権ください ◆bLcnJe0wGs :2021/09/15(水) 17:27:56 h5AVKouY0
【夢見りあむ@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]:混乱(中程度)、悪魔の実の能力者(メラメラの実)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、土ガミの書@ペーパーマリオ オリガミキング、小黒妙子のシャープペンシル@ミスミソウ
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いとか……やむ。
1:怖い、死にたくない
[備考]
 メラメラの実@ONEPIECEを食べたことで能力者になっています。
 参戦時期は第8回シンデレラガール総選挙の後。

【ディアボロ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康、上半身裸
[装備]:完全耐火リング(試作品)@異種族レビュアーズ、ミステリアスパートナーのマント@キン肉マン
[道具]:基本支給品、マインドホン@Caligula Overdose-カリギュラ オーバードーズ-
[思考・状況]基本行動方針:ゴールドエクスペリエンス・レクイエムの能力を打ち破る。
1:対主催派を装い、能力を無効化できないか探る。
2:人数が減ってきたら優勝狙いに切り替える。
3:りあむが目を覚ましたら説得し、仲間に加える。
[備考]
参戦時期はゴールドエクスペリエンス・レクイエムの能力によって死に続けた後。
殺し合いに何度か参戦した経験あり。
スタンドやドッピオは現在使用不可。何かのきっかけで使えるようになるかも知れません。

【支給品紹介】

マインドホン@Caligula Overdose-カリギュラ オーバードーズ-

ディアボロに支給。

仮想世界『メビウス』内で販売されている携帯端末。
メビウスの維持や、『メビウス』内のバーチャルアイドル『μ』に力を与える役割を果たす『オスティナートの楽士』の面々が『メビウス』の住人を洗脳する為の手段として利用しているもので、各楽やμの楽曲を住人に聴かせれば、各楽士が持ち場で流し続けている音楽よりも速いスピードで洗脳する事が出来る。

本ロワでは一つの端末にオスティナート楽士あるいはμの持ち曲が一本インストールされている。
(どの楽曲が入っているかは後続の書き手にお任せします。)

土ガミの書@ペーパーマリオ オリガミキング

夢見りあむに支給。

亀の姿をした土を司るカミさま『土ガミ』の折り方などが記された書物。

本ロワでは主催の調整によって手に持っているかデイパックに入ってさえいれば誰でも土ガミに変身可能。

しかし制限もかかっており、変身や地形操作をした場合、一定時間で解除される。

小黒妙子のシャープペンシル@ミスミソウ

夢見りあむに支給。

呼んで字の如く、小黒妙子の所有物であったシャープペンシル。

作中では佐山流美に春花へのいじめを強要した結果、放火事件に繋がっていったことを後ろめたく思っていた妙子の所にやって来て、放火の件を話し出した流美の手にこのシャープペンシルを突き立てていた。


659 : ◆bLcnJe0wGs :2021/09/15(水) 17:28:21 h5AVKouY0
投下終了です。


660 : ◆bLcnJe0wGs :2021/09/15(水) 18:59:31 h5AVKouY0
失礼します。
本日、wikiに収録させていただいた自作の誤字の修正をさせていただきました。


661 : ◆bLcnJe0wGs :2021/09/20(月) 15:14:19 pIzOYby60
露伴、ひろし?で予約します。


662 : ◆c4nYy47bT. :2021/09/24(金) 17:58:12 sYm1mnxU0
クッパ姫、デンジ、エンリコ・プッチで予約します


663 : ◆7PJBZrstcc :2021/09/24(金) 19:16:00 V2sDRY6o0
ゲリラ投下します


664 : 悪魔の証明 ◆7PJBZrstcc :2021/09/24(金) 19:16:44 V2sDRY6o0



 悪魔の証明とは、証明することが不可能か非常に困難な事象のことを言う。






 クロちゃんが”そいつ”に気付くのに、少し時間がかかった。
 なぜならば、彼にとって”そいつ”は漫画の世界の住人。
 そんな、普通なら永遠に出会うことのない存在が、今目の前にいる。

 だからこそ一手遅れた。
 二次元の人物が、三次元になっているが故に、”そいつ”が自分の知っている人物だと頭が追いつかない。
 厳密にいえば、この殺し合いが始まってからクロちゃんは、変なおじさん以外二次元の登場人物しか会っていない。
 しかし、”そいつら”以外は知らないクロちゃんの無知がいいように作用し、違和感なく受け入れていた。 
 そう――

「皆離れるんだ! そいつはディアボロだしん!!」

 クロちゃんは、会議室にいたせいで見えにくかった、外にいるディアボロにやっと気づき、叫ぶ。
 一方、彼の叫びを聞いた蜜璃の行動は早い。
 素早く右腕でりあむを、左腕で変なおじさんを抱え、人間二人を抱えているとは思えないほど軽やかな動きで、クロちゃんの元へ跳んだ。

「え、何これ? 何なの!?」

 いきなり抱きかかえられた状態で跳躍され、ひたすら状況に戸惑うりあむ。
 それはディアボロにとっても同じこと。
 彼はクロちゃんに問いかける。

「どういう、ことだ? なぜ私をそこまで警戒する?」

 この時、ディアボロはクロちゃんに聞きたいことが山のようにあった。

 ディアボロの姿を見ただけで名前を呼び、仲間が迷うことなく自分から距離を離した以上、正体を知られ、警戒されているのは間違いない。
 だが彼は元とはいえ、曲がりなりにもギャングのボス。
 それも反逆を警戒し、正体を徹底的に隠し続けていた男なのだ。
 ポルナレフか、ブチャラティのチームメンバーでもない限り自分を知っているはずがない。
 にも関わらず、目の前の東洋人の男は知っていた。
 お前はどこの誰なのか?
 なぜ自分を知っているのか?
 ディアボロの疑問は尽きない。

 しかし、それを馬鹿正直に聞くわけにはいかないので、彼は『いきなり自分を警戒する』訳を問う。
 その答えはすぐに返ってきた。
 クロちゃんは、ディアボロに向けて指を突き付けながら叫ぶ。

「お前のことは知っているしん!
 ギャング『パッショーネ』のボスなことも、麻薬を売りさばいていたことも、自分の母親を殺したことも!!
 皆知ってるしん!!」
「……え?」
(何ィィィィィィィィィ―――――――――――ッ!?)

 あまりに知りすぎているクロちゃんに対し、りあむは呆け、ディアボロは驚愕の余り顔を歪ませ内心で絶叫してしまう。
 ありえない。他はまだしも、それを知っていることはおかしい。
 パッショーネのことは自分がいない状態ならば、時間はかかるが知ることはできるかもしれない。
 麻薬に至っては言わずもがな。
 だが最後だけは違う。
 母親のことは誰にも言っていない。それを知った育ての神父は自分で殺した。

「なぜ……知っている……
 それは、ドッピオにすら言っていないことだ……」

 故にディアボロは慄きながら、クロちゃんに問う。
 惚けることも、誤魔化すこともできた筈なのに。
 今のディアボロには、そんなことを思いつく余裕すらない。


665 : 悪魔の証明 ◆7PJBZrstcc :2021/09/24(金) 19:17:15 V2sDRY6o0

「貴様、どこでそれを知った?」

 だからディアボロの問いに込められた気迫は、クロちゃんはもとより、それ以外の四人すら気圧された。
 今の彼には、気絶していた少女を保護した親切な男の影はどこにもない。
 代わりに、一般人であるクロちゃんだけでなく、柱になるほどに戦いを積み重ねた蜜璃ですら威圧する、底知れない男となっている。

 故に、クロちゃんの言が真実味を帯びていく。

 りあむから見れば、ディアボロは自分を助けてくれた恩人だ。
 だからクロちゃんが警戒しているのを見て、最初は庇おうと考えていた。
 蜜璃と変なおじさんは、クロちゃんの仲間になったものの、出会いが少女を助けた善良な参加者だ。
 だから最初は、正直クロちゃんを少しだけ疑った。

 しかし現実はこれだ。
 ディアボロの振る舞い、威圧感。全てが彼を只者ではないと、ひいてはクロちゃんの言葉が真実だと感じさせる。

「答えろッッ!!」
「ま、漫画で読んだんだしん!!」

 そしてディアボロの叫びが、クロちゃんに真実を暴露させた。

「漫画って……」
「貴様――」

 何言ってるのこの人、と言いたそうなりあむ。
 ディアボロも言い回しは異なれど似たような言葉が出かかるが、ここで彼は一旦思考する。

 すっかり慣れ親しんだものの、スタンドという超能力自体がまず非現実的だ。
 そして、この殺し合いの前に巻き込まれた別の殺し合いでは、別の世界の参加者に幾度も遭遇した。
 ならば、自分達の戦いが漫画となっている世界があってもおかしくはない、のかもしれない。

 とは言っても、ディアボロの在り方は変わらない。
 もうその程度では揺らげないほど、彼は色々経験しすぎた。
 だからこそ、彼は迷うことなく次の一手を繰り出した。

「それで、どうするつもりだ?」
「え? 何?」
「俺をどうするつもりなのかと聞いているんだ」

 どこか間の抜けた顔をするクロちゃんに、ディアボロは真剣に問いかける。

「俺を危険視しして殺すつもりなら、そこの女とりあむの力で楽に手を下せるだろう。
 無論、ただでやられるつもりもないがな」
「え、えぇ〜……」

 ディアボロの言葉にクロちゃんはオロオロしながら、助けを求めるように蜜璃達を見る。
 クロちゃんとしては、危険な存在を近くに置いておきたくはないが、かと言って自分のせいで死人を作るのも嫌だ。
 なのでここから出て行って欲しかった。
 そして、蜜璃や変なおじさんにそれを賛同して欲しかった。
 端的に言えば、責任の所在を自分一人に押し付けられたくなかっただけである。

「更に言っておくが、私は殺し合いに乗るつもりはない」
「!?」

 ここでディアボロの追撃。
 彼はこう言っておくことで、クロちゃん以外の参加者から『この人、そこまで危険視しなくていいんじゃない?』という空気を引き出そうと考えたのだ。
 それに、後ろに『今のところは』という言葉がつくが、嘘をついたわけでもない。

「ねえ、この人そんなに危ない人じゃないんじゃない〜?」

 そしてディアボロの狙い通り、変なおじさんが擁護に回る。
 勿論、彼も目の前の脅威は聞いているが、実際に接してみるとそうは思えなくなってきたのだ。


666 : 悪魔の証明 ◆7PJBZrstcc :2021/09/24(金) 19:17:51 V2sDRY6o0

「う〜ん……」

 一方、蜜璃は悩んでいた。
 気持ち的には変なおじさんと同じなのだが、クロちゃんの言い分を事実だと感じ取れるくらいにはディアボロを危険視しているのもまた本当。
 とはいえ、蜜璃は人を守る組織である鬼殺隊に所属しており、いくら悪人でも人を殺すことに躊躇いがある。
 更に言うなら、彼女はその中でもかなり穏健派である。
 なので、殺し合いにのっていない相手を傷つけることには大いに抵抗があった。

 かと言って、野放しにするほど手放しに信じたわけでもないので、とりあえずは見張ることにした。

「ディアボロサマ……」
「なぜ様付けをする?」

 そしてりあむは混乱の渦中にいた。
 自分を助けてくれた人が実は悪人で、だというのに殺し合いに乗る気はないと宣言する。
 ただでさえメンタルの弱い彼女に、この状況で判断を求められるのはあまりに辛かった。

「キミは、どうしたいの……?」
「……私の目的は、ゴールドエクスペリエンス・レクイエムの能力を打ち破ることだ」
「れくいえむ?」
「ディアボロは、最後で主人公にゴールドエクスペリエンス・レクイエムって言う、永遠に死に続けさせる能力を喰らったんだしん」

 りあむに問われ、ディアボロはクロちゃんの捕捉を受けながら己の目的を明かす。
 これは嘘ではない。
 今のディアボロは、その為だけに動いていると言っても過言ではない。

 だがクロちゃんは空気を読まず、言葉を続けてしまう。

「でもそれは自業自得だしん」
「否定はしない。私の行いはハリウッド映画なら間違いなく悪役の所業だろう。
 それがトリッシュを殺そうとしたことで生まれた結果というなら、事実その通りだ。
 敗者となり、帝王の座を追われても、ジョルノ・ジョバァーナにリベンジする気すら起きん。
 だが――」

 ここでディアボロは、クロちゃんをギロリと睨む。
 今までで一番殺気を籠め、鋭い視線を向けて威圧する。

「永遠に死に続けることがどれほどの苦痛か分かるか?
 ナイフで刺され、車に撥ねられ、生きたまま内臓を取られることのおぞましさが理解できるか?」
「それは……」
「分かるわけがないッ!
 貴様は所詮観客として眺めていたにすぎんッ!
 あらゆる方法で殺され続ける絶望など想像もつかんだろうな!
 貴様に、貴様らにこのディアボロの心は永遠に分かるまいッ!!」

 それだけ言うと、ディアボロは近くの壁にもたれかかり座り込む。
 クロちゃんは未だ危険視しているものの、この空気でディアボロを追い出そうとするものはいなくなった。


(とりあえずは、うまく行ったか)

 そしてそれこそがディアボロの狙いだった。
 彼は、ここで思わず本性を出し、りあむを仲間に引き入れるのは無理だと判断した瞬間、安全を確保する方向にシフトした。

 なぜなら、彼の支給品には武器がない。
 完全耐火リング(試作品)もマインドホンも強力なものではある。
 しかし、直接的な攻撃力はない。
 マインドホンを使いNPCや参加者を洗脳するにしても、無抵抗で事が運ぶわけがない。

 故に、殺し合いに乗っていない集団である、彼らと行動を共にしたかった。
 ディアボロについて予想外の方向から知られていたが、それも何とかはできた。
 むしろ、早い段階でこの事実にたどり着けて良かったとさえ思う。
 こうして一緒にいれば、そういう風評を徒にばら撒くのは控える筈だ。
 あの東洋人の男(クロちゃん)は怪しいが、周りの仲間が止めるだろう。

 こうして、ひとまず安全を確保し人心地つくディアボロだが、彼は知らない。
 彼を危険視する情報はここだけでなく、外に出ていった三人の参加者も握っていることを。
 そして、クロちゃんが知っているのはディアボロについてだけではないことを。


667 : 悪魔の証明 ◆7PJBZrstcc :2021/09/24(金) 19:18:15 V2sDRY6o0


【C-3/プレザント・パーク 黎明】

【甘露寺蜜璃@鬼滅の刃】
[状態]:健康
[装備]:甘露寺蜜璃の日輪刀@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない
1:とりあえず町と残りの四人を守る
2:戦えるのは私しかいないけど、頑張るぞぉ〜!
3:ディアボロには注意を払う
[備考]
参戦時期は刀鍛冶の里編終了後から無限城に落とされるまでの間です
※「ジョジョの奇妙な冒険」の参加者について、一定の情報を得ました。

【変なおじさん@志村けんのだいじょうぶだぁ】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いはしたくないねぇ
1:だっふんだ!
2:ディアボロって人、クロちゃんがいうほど危なくはないんじゃない?
※「ジョジョの奇妙な冒険」の参加者について、一定の情報を得ました。

【クロちゃん@水曜日のダウンタウン】
[状態]:健康、恐怖(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、キャッスルロストフルボトル@仮面ライダービルド、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]:基本行動方針:殺し合いが企画じゃなくて本当ならそんな事はしたくない
1:ディアボロは危険だからいなくなって欲しいしん
2:殺し合いが本当? 怖いよ…
3:あのメイドさん、無視してばかりで悲しいよ〜。
4:読んだ漫画のキャラがいるって、どういうこと?
[備考]
殺し合いを芸人が持ち寄った「説」による企画と思っていましたが、正真正銘の殺し合いだと認識しました
フルボトルをただの玩具と思っています。
「ジョジョの奇妙な冒険」を読んだ経験があるため、ホル・ホース、岸辺露伴、ディアボロ、空条徐倫、プッチ、豆鉄礼に関しては、一定の情報があります。

【夢見りあむ@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]:混乱(小)、悪魔の実の能力者(メラメラの実)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、土ガミの書@ペーパーマリオ オリガミキング、小黒妙子のシャープペンシル@ミスミソウ
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いとか……やむ。
1:怖い、死にたくない
2:ディアボロサマ……
[備考]
メラメラの実@ONEPIECEを食べたことで能力者になっています。
参戦時期は第8回シンデレラガール総選挙の後。

【ディアボロ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康、上半身裸
[装備]:完全耐火リング(試作品)@異種族レビュアーズ、ミステリアスパートナーのマント@キン肉マン
[道具]:基本支給品、マインドホン@Caligula Overdose-カリギュラ オーバードーズ-
[思考・状況]基本行動方針:ゴールドエクスペリエンス・レクイエムの能力を打ち破る。
1:対主催派を装い、能力を無効化できないか探る。
2:人数が減ってきたら優勝狙いに切り替える。
3:しばらくはこいつらと同行する
[備考]
参戦時期はゴールドエクスペリエンス・レクイエムの能力によって死に続けた後。
殺し合いに何度か参戦した経験あり。
スタンドやドッピオは現在使用不可。何かのきっかけで使えるようになるかも知れません。


668 : ◆7PJBZrstcc :2021/09/24(金) 19:18:44 V2sDRY6o0
投下終了です


669 : ◆bLcnJe0wGs :2021/09/25(土) 18:26:49 vBz/KtVY0
予約を延長させていただきます。


670 : ◆c4nYy47bT. :2021/09/27(月) 02:29:49 WXJqqECQ0
投下します


671 : ◆c4nYy47bT. :2021/09/27(月) 02:31:24 WXJqqECQ0

「……キミの能力は大変興味深い話だった。
絶対不変の未来を知る力…それは私が目標とするものに近い。」
「そうだろ?なら契約だ!さぁ早くお腹に顔を突っ込め!
そうしなきゃ正確な未来が見えないからな!」

未来の悪魔は契約に対し前向きな回答をする神父、エンリコ・プッチに気分を良くした。
この男が愉快な未来を見せてくれるのかどうか、それが楽しみで仕方ないからだ。
契約の為にはその対価となる代償が必要であり、その程度は対象の未来によって決定する。
契約者の辿る未来が平凡であれば五感や膨大な寿命を奪い去り、
残酷であれば片目を住処として最悪の末路を楽しむ。
それは場所が変わろうと同じだ。見れる範囲は制限されているが吟味する事は十分可能。
悪魔はプッチが腹部にある大穴を頭が入れやすいように前へ突き出す。
しかし───


「だが、契約は断らせてもらうよ。」
「ナニッ!?」

最終的に返ってきた答えはNo。予想に反した拒絶の答えに思わず驚きの声を上げる。
説明中の反応を見る限り契約への印象は悪くなかったはず。
どんな心境の変化があったというのか。その疑問に応えるようにプッチは静かに理由を語り始めた。

「確かに君と契約すれば私が求める『天国』…その一端が手に入るのだろう。
が、悪魔の誘いに乗ってしまえばこの身を『堕落』させてしまう。
私とDIOの目指す崇高なる『天国』、その領域に穢れた身で到達する事など決して許されない。悪いが契約は他の者にお願いするよ。」

キリスト教において悪魔とは堕落への御使い。その言葉に従えば親愛なる神への背信に他ならない。重罪を犯した者が神聖なる『天国』の担い手に相応しいだろうか?断じてあり得ない。
プッチはそんな存在にはなりたくなかった。彼は聖職者としての信仰を、そして何より親友と共に夢見た理想に相応しい自分を優先したのだ。

「………過去最悪の態度だぞオマエ!ぬか喜びさせやがって!
そんな理由で断るならクセーのと同じようにさっさと断れ!」
「期待させてしまったのなら謝ろう。余りに魅力的だったものでね。私も反省しなくてはならないな。だが、契約しないと決めた以上、ここから先は時間の無駄というものだ。
参加者を探したい私と契約者を探したい君、お互いの為ではない。先を急がせてもらうよ」

激怒する未来の悪魔をそのままにプッチは話を切り上げ地図を広げる。
随分と初期位置で長居をし過ぎでしまった。早く次に向かうべき場所を決めねばならない。


672 : ◆c4nYy47bT. :2021/09/27(月) 02:34:29 WXJqqECQ0
「………フ、フフ、ウフフフフ」

その矢先、怒りに震えていたはずの未来の悪魔が突然笑い出した。
何事かと再び顔を向けると悪魔はバッとT字に手を広げ───


「よし決めた。オマエに付いていくぞ!」
「……何だと?」


突然の宣言に今度はプッチが驚かされる。
困惑する彼を尻目に歪んだ笑顔を浮かべたまま未来の悪魔は言葉を続ける。

「期間は契約者が見つかるまでの間だ!オマエは未来に縁がありそうな雰囲気がする!
ただあてもなく彷徨うより一緒に行動する方が契約者を見つけやすそうだ!
安心しろ!こちらから危害を加えることは決してない。契約者じゃないから助ける事もないがな!」
「何を言っているんだ、お前は…第一私にメリットがある話じゃあないぞ。」

一体それの何が安心できるというのか。断ろうとする。
ここまで表情を変えなかった悪魔が閉じた六つ目を大きく開き、顔を近づけてくる。
今までの陽気で飄々とした態度の面影はなく、悪魔の名に相応しい威圧感を放つ。


「オマエ何か勘違いしているぞ、これは『契約』じゃない。『決定事項』だ。
許可があろうとなかろうと関係はない。」


なんとも理不尽な提案に頭を抱えたくなるプッチ。
少なくとも2mは超える巨体に醜悪な見た目。悪目立ちが過ぎる同行者を連れていれば、
初対面に与える印象は良くないだろう。今後の参加者探索に支障をきたしかねない。

(くっ!まさかこのような話へ持っていかれるとはッ!どうする?いっその事ここで始末を…
いや、ヤツの能力は未来予知。攻撃は通用しないか)

ホワイト・スネイクの能力でDISCを抜き取り、始末することも考えた。
しかし、予知能力を持つ相手に騙し討ちを狙う事は叶わない。
先ほどの契約拒否では虚を突けた所を見るに常時未来を把握してる訳ではないのだろう。が、己を害する事となれば流石に察知してくるはず。

強硬策を取ったとしても参加者でもない相手と事を構え時間と体力を浪費してしまうのも問題だ。
そもそも相手は悪魔という未知の生命体である。自身のスタンド能力が有効なのかも不明。これは得策ではない。

「…分かった。付いてきても構わないが、
私が呼ぶ時以外は出来る限り隠れて静かにしてもらいたい。
君と連れ立って歩くと警戒され逃げられる可能性がある。
一人で近づき問題ない相手ならば、私が事情を説明して君を呼ぼう。」
「それくらいならいいだろう。
あ、呼ぶ時の合図は『未来最高』で頼むぞ!未来!最高!未来!最高!」
「………」

苦渋の決断であったが、こちらから条件を付けることで要求を呑むことにした。
この巨体がどこまで隠れきれるか分かったものではないが何もないよりはマシだろう。
駄目だった場合は会う参加者に対して自分が上手く対処していくしかない。
最初に出会った頃のテンションに戻った未来の悪魔に比べ、プッチの心境はその逆、どん底にあった。

「…ああ、天にまします主よ。これが一時でも悪魔の囁きに耳を傾けた罰だというのか?」

確かに悪魔の囁きに興味をそそられ、契約に心が傾きかけていたのは事実。
しかし、きっちりと断ったのだからお許しいただけないのだろうか?
心の揺らぎは悪魔の仲介人をやらされる罰を与えるほどだというのか。
天国へ至る道筋に唐突に降って湧いた些細な『試練』に彼は己を導く神へと問いかけたくなるのだった。


673 : ◆c4nYy47bT. :2021/09/27(月) 02:37:14 WXJqqECQ0



場面は変わりE-4ルート・レイクの南東
湖に背を向け、一組の男女が焚火の炎に照らされながら立っていた。
男は体をブラブラさせ落ち着きがなく、女はギリギリと歯ぎしりさせながら腕を組むその様子は苛立ちを隠せないのが見てとれる。

「おそい!おそすぎるのだ!デンジよ!一体ハルカはどこまでクソしに行ったのだ!」
「女の子が糞とか下品だぜクッパちゃん!
まぁ糞で便秘だったとしてもよぉ〜さすがに長すぎだよなぁ………あッ!!」

初めはぼんやりと春香を待っていた二人だったが、数十分立っても未だトイレから戻らない現状に違和感を覚え始めていた。
そんな中ある可能性に気づいたデンジが大声を上げる。

「これ…もしかして春香ちゃん、襲われてるんじゃね?」
「なぬ!?」
「考えてみたらペテ何とかだけじゃなくて他にもヤベーのがウロウロしてるかもしんねーじゃんか!
あ〜糞ッ!一人で行かせんじゃなかったぜ!」
「確かに!グヌヌ…クッパ大王最大の不覚!」

今まで釣りに食事とキャンプを満喫していたせいで気が抜けていたが、現在は殺し合いの真っただ中。
いつどこでパワー(推定)や春香を襲った不審者のように殺し合いに乗った人物が潜んでいるとも分からないのだ。
殺伐とした状況下で女子を一人きりにするべきではなかったと二人は後悔する。

「こうしてはおれんぞ、今すぐハルカを助けにいくのだ!デンジ、荷物を持て!」
「りょうかァい!!…って、アレェ…?俺のバックは?」

クッパ姫の号令を受け、傍らに意識を向けたデンジは自分のデイバックがなくなっている事にようやく気が付いた。
慌てて周囲を見渡すも既に遥か彼方へと持ち去られたデイバックがあるわけもなく。
まさかの紛失に顔面蒼白となりあわてふためきだす。

「ウソォ〜!?まさか湖に落っことしちまったとかね〜よなぁ!?」
「こんな時に何をしておるのだ、バカ者!
とりあえずワガハイが先にハルカを探しに行く!オマエは荷物を探すのだ!」

「イヤ…ソノ必要ハナイ…」

「「!!」」


674 : ◆c4nYy47bT. :2021/09/27(月) 02:39:03 WXJqqECQ0

二手に分かれようとする二人に無機質で機械的な声が待ったをかける。
その声がした方へ顔を向けると木の陰から人が姿を見せた。いや、正確には人とは呼べない。
その出で立ちは明らかに人間であるとは考えられないものだったからだ。
緑の横縞模様で『C』『C』『T』『△』と描かれた白肌。おおよそ衣服とは言いがたい顔半分、上半身、腰を覆う紫色の装飾品。人間味を感じない無感情な目。
見る人が見たならば『悪魔』と呼んでも差し支えないだろう。

「こんなヤベーくれぇ大事な時に悪魔かよ〜!アルファベットの悪魔ってとこかァ!?」
「キサマ何者だ!まさかキサマがハルカを!?」

得体の知れない怪人の登場にデンジはシャツの隙間から変身用のスターターロープに指をかけ、クッパ姫は爪を尖らせ臨戦態勢をとる。

「デンジ…オマエノデイバックハ持チサラレタノダ…アノ小娘…野崎春香ニ」

既に名前を把握されている事と訳知りな発言に二人の緊張が更に高まる。
目の前の怪人が春香失踪の重要参考人であることは疑いようもないだろう。
すると、今度は怪人が現れた木々の奥から男が姿を見せる。

「今度は誰だよ、コイツの契約者かなんか?」
「驚かせてすまない、私の名はエンリコ・プッチ。刑務所で教戒師を務めている者だ。
殺し合いには乗っていないので警戒しなくていい…というのは無茶か。
だが、ここはひとまず私を信用もらいたい。」

教戒師を名乗る男は謝罪の言葉を述べつつ穏やかに語りかけ始める。
言動、外見ともに殺し合いを乗っている様子は無く目に見えた悪意は感じないが、状況が状況。警戒を解くことは出来なかった。
クッパ姫は一連の流れで山積みとなった疑問を解消すべくプッチに質問を投げかける。

「キサマにはいくつか聞きたいことがある!
まず何故デンジとハルカの名前を知っているのだ」
「それは私の横にいるこのスタンドを先行させ、今まで様子を伺っていたからだ。
情報なしでいきなり接触するのはリスクがあると思ったからね。
まさかこのような事態が起こるとは思わなかったが…」
「スタンドォ?悪魔じゃなくってか?」
「悪魔…か。まあいい、スタンドというのは―――」


675 : ◆c4nYy47bT. :2021/09/27(月) 02:41:47 WXJqqECQ0


プッチ曰く、スタンドとは人の精神が具現化した存在。
簡単に言えば超能力を持った守護霊とのことらしい。
スタンドが得た情報は遠く離れた場所からでも共有する事が出来る。
それを利用してスタンス不明な参加者に対し、斥候を行わせていたのだ
聞いたこともない未知の能力に更なる疑問は湧いてくるが、
横道に逸れ過ぎてしまうので今は後回し。

「キサマがスタンドとやらでこっそり盗み聞いていたのは分かった。
だが、一体いつから隠れておったのだ?全く気付かなかったぞ」
「そうだな。デンジ、キミが食べかけの弁当を食していた辺りだろうか。」
「え、あれ見てたのかよ?恥ず〜…」

空から落ちてきた春香の救助に気を取られていたのもあるが、
まさかあの場に第三者がいたとは二人とも全く予想していなかった。
余りにも早い段階からの監視、
しかも関節キス現場を見られた事もあり羞恥の言葉が漏れるデンジ。
現在の警戒心の高さがまるで見る影もないここまでの無頓着さ。
プッチは思わず立場を無視して苦言を呈する。

「君たちは少々無警戒が過ぎるようだな。
もし私が敵意を持って隠れ潜んでいたら既にこの世にはいないだろう。
水に濡れた少女を温める為とはいえ、焚き火を起こすのも本来ならあまりよろしくない。
夜間に目立つ明かりと煙は善悪関係なく参加者を引き寄せかねない。
今後は周囲へ意識を向ける事を覚えておくといい。」

「人の話を盗み聞きしてた奴に説教たくない」とさながら近所の口煩い老人に文句を聞かされる子供のように面倒くさそうな態度をとる二人。
実際の場面を見ていないプッチは勘違いしているようだが、崇高な理由は無く、道楽目的に起こした火が結果的に活躍しただけなのだ。
しかし、それを言う必要はないので話題を本題に戻そうとする。

「そ、それでハルカが俺のバッグを持ってったつーのはどういうことなんだよ」
「そのままの意味だ。君のデイバックがないのはあの少女、野崎春香が原因だ。
彼女は隙を見てデイバックを盗み出し、脇目も降らずに逃走していった。
もうこの場に戻ることは決してないだろう。」
「な、なんだと!?ハルカが!?そんなバカな…」
「あんな可愛い子がそんなことするわけねーだろ!?
だいたい証拠がねーじゃんか!証拠が!」

衝撃の告白にクッパ姫は驚愕の声をあげ、デンジは反論の言葉を浴びせる。
自分たちが助けた少女の裏切り行為の暴露。それも突然現れた見知らぬ男によるものだ。
幾ら能天気な彼らでも無条件には信用できるはずなどない。
その反論に対し、プッチは真剣な表情を変えぬまま発言を続ける。


676 : ◆c4nYy47bT. :2021/09/27(月) 02:43:11 WXJqqECQ0

「証拠と呼べるものは今はない。
だが、彼女を見つけ出す事が出来たならば私のスタンドで確実な証明を行える。」
「証明?」
「実際に見てもらった方が早いだろうな。」

プッチがそう言うと彼のスタンド、ホワイト・スネイクが動き出す。
その手の中には何処から取り出したのか一枚のDISCが握られていた。
すると、ホワイト・スネイクは軽くフリスビーを放るかの如く、
デンジの頭部目掛けDISCを投げつけた。
突然の行動に反応出来ず、そのまま異物が頭の中へと侵入する。

「オイ、キサマ!ワガハイの部下に何を…」
「なっ、あっ!体が勝手に回っちまうよォ〜〜!!」

突然の暴挙にクッパ姫が抗議の声をあげる前に異変が起こり始める。
デンジが急にその場をグルグルと回り始めたのだ。
彼の困惑具合を見るに本人の意思ではないのは確かだろう。

「心配しなくていい、彼の頭を強く叩くんだ。それで元に戻る。」
「頭をか?フンッ!」
「痛ってぇ〜!!!あ、戻った。」

促されるままにクッパ姫が頭を殴打するとそこからDISCが排出された。
無防備な状態のまま殴られたことでデンジは大きな叫び声をあげる。
彼の動きは正常に戻り、再び回転しだすことはなかった。

「生み出したDISCに好きな命令を書き込み、挿入する事で操る。
これが私のスタンド、ホワイト・スネイクの能力だ。」
「マジかよ、洗脳とかすっげぇワルの敵が使ってくるヤツじゃん!」

DISCを生成・挿入することで精神と肉体に影響を与える。
これこそがプッチが矢より与えられた力の一つだ。
「10m飛んだら破裂する」といった物理法則を無視するぶっ飛んだ命令は不可能になっているが、
実現可能な動作ならば問題なく出来る。
制限下に置かれても十分すぎる効力を持った能力だと言えるだろう。


677 : ◆c4nYy47bT. :2021/09/27(月) 02:47:44 WXJqqECQ0

「このDISC生成は人間に対しても有効だ。
こうして触れることで記憶を取り出すことが出来る。
そして、その記憶は決して捏造する事は出来ない。私自身でもね。
これを用いれば野崎春香がどのような思惑の元で動いていたかが分かるというわけだ。」

自身のスタンドの手をプッチの頭へ少しだけ侵入させる。するとそこから円盤が僅かに顔を覗かせる。ホワイト・スネイクが人との接触で生成する記憶DISCだ。
実際に彼女と遭遇した時にこの記憶DISCが用いる事がプッチの証明手段である。
手を頭に入れられても平然としている奇妙な光景に驚きつつも今度はクッパ姫が反論する。

「しかしだ、キサマはこっそり隠れておったのだろう。
その力でハルカを操って盗ませたとも考えられるぞ!」
「ああ、確かにそれは可能であるし否定は出来ない。
だが、それならばこうして敵対する相手に能力を明かす必要がないはずだ。違うかい?」
「た、確かに……」
「人間が人間を選ぶ上で最も大切な事は『信頼』だ。人間関係と言うものは『信頼』がなくては成り立たない。
我々はその日会ったばかりの他人同士。完全な信頼を結ぶのは難しいだろう。だが、信頼の為に可能な限りの誠意を示したつもりだ。
その上でどうか私を信じて進めるかを判断してもらいたい。」

一切目をそらさず、理論整然と話すプッチの態度に彼女はたじろいでしまう。
ここまでの話を通して頭では理解しつつあったが、心では納得できずにあった。
もしプッチが口八丁で騙そうとしていて、洗脳されてしまえば取り返しがつかない。
いくら肉体に自信があろうとも精神への干渉はそうもいかないのだ。
だが、敵なら重要な能力を実演してまで説明する理由が思いつかない。

やはりこの男の言っていることは全て事実なのか?
しかし、そうなれば彼女の裏切りも事実と言うことになってしまう。
一度自分が守ろうとした少女を信用しないのか?そんな真似はしたくない。
どうしてももやもやとした思考を振り払えず、答えの出せないクッパ姫。
そんな中、この殺し合いの場で『信頼』を築き部下となった男、デンジが先に答えを出した。


678 : ◆c4nYy47bT. :2021/09/27(月) 02:49:47 WXJqqECQ0

「ん〜まぁいいか!!んじゃ案内よろしくなあ!」
「良いのかデンジ!?コイツを本当に信じても!」

自分が悩み続ける問題をあっけらかんと答える部下に真意を尋ねるクッパ姫。

「正直オレ春香ちゃんを疑いたくねーけどさ〜ここで駄弁っててもぜってー埒があかねぇじゃん?
それなら行動した方が手っ取り早いかなって思ってさ。
こいつの話がホントなら春香ちゃんをとっちめる。ウソでなんか企んでんならぶっ殺す。
そんだけの簡単な話じゃないすか?」

なんとも極端過ぎる結論。だが、クッパはハッと気づかされる。
迷ったならば考えるよりもまず行動する。それが普段のクッパ大王と言うものだ。
疑りかかってグダグダと議論を交わすのは女々しすぎる。ワガハイらしくない。
混乱と焦りからか、いつもの自分とは思えん事をしてしまった。
女の体になったことで知らぬ間に思考が弱気になっていたのだろうか?
彼(彼女)は渦巻いていた思考にようやく踏ん切りを付けられた。

「ムムム……よかろう。部下の忠言を聞くのもボスの務めなのだ。
ひとまずはキサマを信用してやるぞ。ただし、もしハルカが無実ならタダじゃおかんぞ!」
「ああ、それでいい。
キミがもし私への信頼を失ったなら攻撃してくれても構わない。では…「話は纏まったようだな!!」

尋問の末、一時的な信頼関係を結ぶことが出来た三人。
だが、その傍らにはいつの間にか巨大な異形が姿を見せていた。
落ち着きかけていた場に再び混乱が戻る。


679 : ◆c4nYy47bT. :2021/09/27(月) 02:51:01 WXJqqECQ0

「イェイイェイ!チェンソーの少年!未来楽しんでるか?」
「ぬお!?また妙ちくりんなヤツが出てきおったぞ!マガツリーの親戚か!?」
「なあ、コイツは悪魔だよな!?コイツは間違いなく悪魔でいーんだよなァ!?
つか、これが悪魔じゃなきゃもう何が悪魔なんだか分かんねェ!」
「おい、勝手に出てくるんじゃあない!話がややこしくなるだろう!」

折角得た信頼が無に帰りかねない悪魔の身勝手な行動に怒りの言葉をぶつけるプッチ。
しかし、未来の悪魔は特に悪びれる様子もなくこう返した。

「知った顔がいたんだ。つい飛び出してしまっても仕方ないだろ?」
「悪魔と聞いてもしやとは思っていたがキミ、コイツと知り合いかね?」
「ムム?そうだったのか?」
「は?俺こんな悪魔知らねーけど」

デンジがこれまで出会ってきた悪魔は全て一癖も二癖もある外見をしていた。
あれほどインパクトのある悪魔たちを早々に忘れることなどないだろう。
どういうことだ?と首を傾けていると更に不可思議な情報をぶつけられる。

「オマエは僕の事は知らないだろうが僕はオマエの事はよ〜く知っているぞ!
早川アキの右目からずっと見ていたからな!」
「アキの!?あれ〜でもアイツの悪魔ってこんなだっけ?」

見知らぬ悪魔から飛び出した知り合いとの関係性にデンジは増々脳を混乱させた。
早川アキの契約悪魔「狐の悪魔」は戦闘中に見た事はあるがその姿はもっと『狐』の名に相応しい見た目だったはず。
ではコイツは嘘をついているのか?それもおかしい。
パワーのような虚言癖持ちならともかく、こんな場ですぐ分かる出鱈目を吐く意味がない。
情報の波に脳を混乱させる彼を他所に、この嚙み合わない話に何か思い当たる節があるのかプッチが口を開く。

「二人とももう少しだけいいだろうか?話したいことがある。」


680 : ◆c4nYy47bT. :2021/09/27(月) 02:51:52 WXJqqECQ0

プッチはこの疑問を解消すべくスバルの記憶DISCから読み取った情報を一部共有する。
異世界の存在と自分と彼との認識する年代の差。
二人の話のズレはここから来るものだという推論を話す。
試しに全員が最後に記憶している出来事とその西暦を確認してみた。
質問の結果、デンジは細かい年数を覚えていなかったが、
代わりに同郷であるはずの未来の悪魔との経験に差が生じている事が確認。
クッパ姫に至っては西暦の概念や日本やアメリカと言った有名な国名すら存在していないときている。
義務教育の有無が関係ない一般常識の齟齬は異なる世界の存在を全員に嫌でも理解させた。

「キノコ王国ってアメリカらへんにあんじゃねぇの?クッパちゃん金髪で乳デケェしアメリカ人だと思ってたぜ〜
ていうかこんなのと契約するとかアイツ大丈夫なのかよ〜?見た目からして胡散臭さの塊だぜ?」
「世界が違うのには確かに驚いたがワガハイたちの時間がずれていようが世界が違おうがやることは変わらんな!ピーチ姫を保護して主催者をボッコボコにするだけだ!」

事実を認識したデンジとクッパ姫だったが深刻な表情を浮かべることはなかった。
二人はどちらかと言うと細かい話を気にしない方である。
元々最初の情報交換の際、お互い聞きなじみのない単語は度々出ていた。
それらを全て「自分は知らないがまぁそういうのもあるんだな」と疑問を口に出すことなく片づけていたのだ。
そのため、異世界や時間のズレについて把握しても動揺は起きない。
些末事の範囲を出ないと割り切る事が出来た。
しかし、プッチはそんな二人とは違い、そう簡単には済ませられないでいた。

(一体どれ程の力を有すればこれだけ大規模な催しが出来るのか…
とても想像がつかない。もっと多くの世界や能力を把握しておきたいところだ。)

スタンド、魔女の呪い、悪魔、異世界、そして過去と未来。
たった二度の出会いで既に複雑怪奇に絡み合った超常的な要素。
これらも全体から見ればほんの一部に過ぎないのだろう。
全てを引き合わせ制御する黒幕は一体何者なのか?
深淵の闇のように全貌が見えない主催者達の底知れなさ。
同じ思考に一歩先に到達したスバル同様戦慄を覚える。

(だが、『試練』は『強敵』であるほど良い…
必ずこの試練を克服し、『天国』への到達を果たすッ!)

しかし、彼はそれと同時に高揚感を覚えていた。
主催陣営には確かに得体の知れない恐ろしさがある。
だからこそ、乗り越えるべき障害に相応しい。
この殺し合いを『天国』へ至る踏み台にしてみせるとプッチは決意を新たにする。


681 : ◆c4nYy47bT. :2021/09/27(月) 02:53:30 WXJqqECQ0
「つーかさぁ、過去だの未来だの異世界だのこまけーこと言う前に今だろ!今!
早く春香ちゃんを探しにいかねーと!」
「うむ、デンジの言うとおりなのだ。プッチよ!ハルカはどっちへ行ったのだ」
「ああ、すまない。随分と時間を取らせてしまったな。彼女は…」

出発を急かす呼びかけにプッチは思考を切り上げる。
その時、突如として爆発音が響き渡った。
音の発生源では草木が燃え広がっているのか煙が立ち昇り始めている。

「なぁ、あっちってまさか」
「ああ、間違いない。野崎春香が逃げた方角だ。あの場に彼女がいる可能性は高い」

「「!!」」

プッチが見た春香が逃げたという方角と爆発音のした方角は一致していた。
爆発を引き起こしたのは彼女自身か対峙した参加者かはたまた無関係の第三者か。
真相はどうあれ現場で争いが引き起こされているのは間違いないだろう。

「目的地は決まった!ゆくぞ!クッパ軍団出動なのだ!!」
「よっしゃー!待ってろよ春香ちゃん!」
「……まさかとは思うがそのクッパ軍団とやらには私も含まれているのか?」
「キサマはまだ完全に信用は出来んから仮だぞ!仮!」
「もしオマエがクッパちゃんの部下になったら俺先輩な〜!そこ忘れんなよ!」
「あぁスバル…別れてすぐだが、既にキミの事が恋しいよ」

出会いは最悪に近かったが、今ではちょっとした馬鹿話に相手を巻き込めるまでに纏まりを見せる。
一同は騒動の発端、野崎春香が待つ爆炎燃え盛る戦場へと走り出す。




「………フフフ」

後方では途中から沈黙を続けていた未来の悪魔が表情を変えず静かに笑みを零した。
その笑みは今眼前に広がる賑やかしい光景に微笑ましさを覚えたのか、
それともこれから起こりうる未来に邪悪な嗤いがこみ上げたのか。
それは『わらった』本人にしか分からない。


682 : ◆c4nYy47bT. :2021/09/27(月) 02:56:17 WXJqqECQ0


【E-4 /黎明】

【クッパ姫@Twitter(スーパーマリオシリーズの二次創作)】
[状態]:健康
[装備]:スーパークラウン(解除不可)
[道具]:基本支給品、釣竿@ゼルダの伝説時のオカリナ、ランダム支給品×1
[思考・状況]基本行動方針:主催者を倒し、ワガハイが優勝する!
1:部下(デンジ)とプッチと共にハルカを追いかける
2:この姿は慣れんが……ワガハイは強いからな!丁度良いハンデだ!
3:ピーチ姫を一刻も早く探し、守る
4:プッチはまだ完全には信用ならんので仮入団にしておくぞ!
5:ペテルギウスに出会ったら倒す
6:そろそろワガハイが本当は男であると伝えたほうがいいか……?
[備考]
性格はマリオ&ルイージRPGシリーズを基準としています。
スーパークラウンの効果は解除できないようになっています。
マリオ達@スーパーマリオくん をマリオ達@スーパーマリオシリーズとして認識しています。
春花と情報交換をしました。
ホワイト・スネイクの能力について把握しました
長時間女性でいることで性格に影響が出ているかもしれません。
異なる時間軸や世界からの参戦について何となく把握しましたが大して気にしていません。

【デンジ@チェンソーマン】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:
[思考・状況]基本行動方針:とりあえず主催者をぶっ殺せば解決だぜー!
1:クッパ姫、プッチと一緒に春香ちゃんを追っかける。
2:とりあえずプッチを信用。悪巧みしてたらぶっ殺す。
3:パワーかぁ〜合流したくねえ〜! でも殺し合い乗ってるのを見たら止める。
4:姫を守るとかクッパちゃん、やっぱりソッチ系……?向こうの世界では一般なの?
5:未来の悪魔うさんくせぇ〜!将来こんなのと契約してアイツ(早川アキ)大丈夫?
[備考]
時間軸は永遠の悪魔の後。
春花と情報交換をしました。
ホワイト・スネイクの能力について把握しました
異なる時間軸や世界からの参戦について何となく把握しましたが大して気にしていません。

【エンリコ・プッチ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康、精神的疲労(小)、ナツキ・スバルへの尊敬と興奮(大)
[装備]:スタンド『ホワイト・スネイク』
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]基本行動方針:天国への到達を目指す。殺し合いには乗らないが、必要とあれば手段は選ばない。
1:デンジ、クッパ姫と共に野崎春香を追跡する
2:早く未来の悪魔を誰かに押し付けたい
3:異なる世界や能力についてもっと把握しておきたい。
4:スバルと行動を共にしたかったが……これが彼との出会いが運命ならばまた機会はあるだろう
5:スバル…君はまさに『天国』そのものだッ!

[備考]
参戦時期は承太郎の記憶DISCを得た後の時間軸。
ホワイト・スネイクにより、スバルの『死に戻り』の記憶を一部把握しました。
デンジ・クッパ姫・野崎春香の情報交換内容を把握しています。
制限によりホワイト・スネイクのDISCで物理法則を無視した命令は出来ません。
異なる時間軸や世界からの参戦について把握しました
NPC 未来の悪魔@チェンソーマンが同行中です。参戦時期は少なくとも早川アキとの契約後。
基本的にプッチに合図されるまでは隠れて移動していますが、勝手な行動をする場合も多々あります。


683 : ◆c4nYy47bT. :2021/09/27(月) 02:58:27 WXJqqECQ0
以上で「アイ・ラフ・フューチャー」投下終了いたします。
駄文失礼しました。


684 : 名無しさん :2021/09/27(月) 07:26:12 BvU/jOow0
乙です
いやあ読んでて面白かったです
プッチが神父としての矜持を見せたのがちょっと感心しました
クッパがプッチを仮入団としているところに拘りと見る目を感じさせたのも感心
価値観はバラバラだけど上手く噛み合ってる感が最高でした


685 : 名無しさん :2021/09/27(月) 11:13:31 KL55yAb60
投下お疲れ様です。
長いながらもスラスラ読める投下主様の文章力に脱帽でした。
チェンソーマンにジョジョ6部と、設定の難しい話を実に上手く回せていたと思います。

>「ぬお!?また妙ちくりんなヤツが出てきおったぞ!マガツリーの親戚か!?」
ここ地味に好き。マリルイRPG3懐かしいです。


686 : 名無しさん :2021/09/27(月) 18:10:47 KL55yAb60
投下乙です。
各キャラクターのリアクションが面白かったです。
特にプッチの未来の悪魔に対する神父としてのリアクションが好きでした。
酉を見たところ初めての方の様ですが、初投下とは思えない出来に驚かされました。
時間がありましたらここでも別のロワでも良いのでまた書いてください。次の作品楽しみにしてます。


687 : ◆c4nYy47bT. :2021/09/29(水) 06:53:59 DyNNFS7w0
拙作に感想を頂き大変恐縮です。
酉と文章からお察しの通り書き手初心者で至らぬ点ばかりですが、
暖かい目で見ていただければ幸いに存じます。

ホル・ホース、ハサミ、ジェイソン・ボーヒーズ、ゴブリンスレイヤー、豆鉄礼、白井黒子、美山写影、いのちの輝き、飴宮初夏
で予約させていただきます。


688 : ◆bLcnJe0wGs :2021/09/29(水) 21:53:43 yAD8gw7Y0
投下します。


689 : 迫る影 ◆bLcnJe0wGs :2021/09/29(水) 21:54:12 yAD8gw7Y0
(あ〜、しんのすけにマサオも居るか。 と、その隣にいるロボひろしって奴は何だ? それに俺の名前はそいつらの近くにないな〜、もっと読み進めてみるか。)

初回放送を聞き終え、物陰に隠れながら名簿を確認するひろし?。

そこには、殺し屋をやっている彼にとっても大切な息子であるしんのすけと、その友人・マサオの名前があった。

(にしても、何だこりゃ!? 所々コードネームみてぇな奴がわんさかいるぜ? …それはそれとして、俺の名前は下の方にポツリと載ってやがるぞ?)

その名簿の名前の載り方等に困惑しながらも、確認を終えて再び移動を始める。

(そんじゃ、しんのすけとマサオを探しに行きますか。)

◆◆◆

リティル・ローを離れ、ロンリー・ロッジを目指してバイクで進む露伴。

しかし、その進路には湿地があり、とてもバイクで進行出来る様な場所ではなかった。

そこで彼はバイクを一旦デイパックにしまい、代わりに自身の身の丈より少し短め、おおよそ1m程でパイプ状になっている鉄製の棒を取り出す。

ランダム支給されていた物品の一つだ。

(それ以外にも山盛りの炒飯が支給されていたが、現在は食べようとも思えず、そのままデイパックに入れたままにしている。

もし、今の状況が殺し合いという異常事態でなければ『リアルを求める』為に思い切って基本支給品である酒をお供に食べてやろうとまで思っていたのだが。)


690 : 迫る影 ◆bLcnJe0wGs :2021/09/29(水) 21:54:57 yAD8gw7Y0
護身の為、先程の棒を片手に握り目的地へと進む。

暫く進んでいると、地図に地名の載っていない市街地の付近の道にたどり着いた。

そしてそれもコンクリートで出来ている。

(市街地か… だがすぐにでもロンリー・ロッジに向かうのが先決だが、いかんせんあっちに繋がるの道路まではそこそこ遠いな。)

だがしかし、目的地への移動を優先して棒を鞄にしまい、再びバイクを取り出して搭乗し、その道から草地へと走り出す。

そして草地から崖のない坂を下り、乾いた土の上を走り、やがて目的地へと繋がる道路にたどり着く。

(目的地まではもう少しだ… と、ん?)

引き続き、バイクを走らせようとしていた露伴であったが、サイドミラーに一人の中年男性の姿が映った。

(何者だ!? もしかしたら危険人物かも知れない。 仮にそうだとしたら他の人々の命が危ない、ここは気を引き締めて近づこう。)

ここは露伴、目的地にいるであろう人々に被害を及ばせまいと近づくことを選ぶ。

三度バイクをしまい、再び棒を取り出して男に近づく。

(こいつ、棒を持って近寄って来やがる… ならばここはあたかも一般人であるかの様に振る舞って油断させ、しんのすけとマサオの捜索を手伝わせて、最終的には隙を見て殺すとしよう。)

露伴の背後に現れていた男・ひろし? は彼を懐柔し、見知った名前の二人の捜索の協力させ、最終的には隙を見て殺すことを企んでいた。

(それにしてもあの名簿、妙な部分があったんだよな〜 何故かしんのすけとマサオの名前は近い位置にあったのに、俺の名前は下の方に載ってたんだよなぁ…)

だがひろし? は自分の名前が探し人の名前よりも遥かに下の位置に載っていたことに疑問を抱いていた。


691 : 迫る影 ◆bLcnJe0wGs :2021/09/29(水) 21:56:44 yAD8gw7Y0
【I-5/黎明】

【野原ひろし?@野原ひろし 昼めしの流儀】
[状態]:健康、ちょっと楽しくなってきた
[装備]:右手にデザートイーグル、キング・クリムゾンのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2個、ポンプアクションショットガン@ゾット帝国
[思考・状況]基本方針:他参加者の殺害及びしんのすけとマサオの捜索
1:こいつ(岸辺露伴)を懐柔してみる。無理なようなら殺す。
2:1の懐柔に成功しても何時かは殺す。
3:しんのすけとマサオの捜索
4:名簿への疑問
[備考]原作とは性格が大きく掛け離れてます。「自分を野原ひろしと思い込んでる一般人」「殺し屋ひろし」の両要素を含んでます。

【岸辺露伴@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康、佐々木哲平への不快感(大)
[装備]:スタンド『ヘブンズ・ドアー』、鉄製の棒@現実
[道具]:基本支給品、、Z750(燃料??%)@大番長、山盛りの炒飯@ウマ娘 シンデレラグレイ
[思考・状況]基本行動方針:様々な参加者を取材しつつ、主催者の打倒を狙う。
1:中年男性(野原ひろし?)を警戒。
2:ロンリー・ロッジへ向かう。
3:危険人物は取材のついでに無力化を狙う。ただし無理はしない。
4:奴(佐々木)は本当に漫画が描きたいのか?
5:藍野伊月に出会っても、僕からは何も言わない。知ってたら別だが。
6:空条徐倫、まさかとは思うが会っておきたい。
7:野原ひろしとロボひろしには一応警戒
[備考]
※参戦時期は四部終了後。
※佐々木哲平を本にしたため、ホワイトナイトの盗作などを把握済みです。
※佐々木哲平が別の世界の人間だとは気づいていません。
 参加者の一部は別々の時代から参加させられてると思ってます。
※野原しんのすけの劇場版についての情報を複数持っていますが、全て同一の年の、露伴から見て未来の出来事として認識しています。

【支給品紹介】

山盛りの炒飯@ウマ娘 シンデレラグレイ

岸辺露伴に支給。

第22話にてオグリキャップが食べていた炒飯。

ちなみに、カサマツトレセン学園での学食は食べ放題である。

鉄製の棒@現実

岸辺露伴に支給。


692 : ◆bLcnJe0wGs :2021/09/29(水) 21:57:06 yAD8gw7Y0
投下終了です。


693 : ◆7PJBZrstcc :2021/09/30(木) 19:50:31 YcNhccF60
ゲリラ投下します


694 : 土方歳三は周辺に参加者がいない可能性を考慮していない ◆7PJBZrstcc :2021/09/30(木) 19:51:06 YcNhccF60
 体を炎に変えられる女を取り逃がした土方は、東に向けて進路を取った。
 なぜ東かと問うのなら、単に女が飛んで行った方向と逆を選んだ結果そうなったに過ぎない。
 そもそも、彼は現在自分が会場のどのあたりにいるのかすら把握していないのだ。
 故に多少、行き当たりばったりになっても仕方ない。

 そうこうしていると、土方の前にゴブリンが数匹現れた。
 ゴブリン達はニタニタと下卑な笑みを浮かべながら彼を囲もうとするが、その前に彼は目の前の一匹を切り捨てる。
 そして隙ができた群れに対し、土方はそのままの勢いで残りを殺しつくした。

「ふん」

 死体となったゴブリンを見て、冷たく吐き捨てる土方。
 もし、囲んできたのが新選組ならこうはいかなかった。
 彼が定めた掟で縛られ、集団戦に特化された彼らならばこうはならない。
 彼が数で勝るゴブリンを蹂躙できたのは、ゴブリンがいかなる時も自分なら大丈夫と考える愚かな存在だからに他ならない。

「やはり、違うな」

 そのうち土方の思考はゴブリンそのものへと移っていく。
 彼はこいつらに似た存在を知っていた。
 彼が現在従っている黒王。
 その王に同じく従うものの中には、さっきのゴブリンによく似たコボルトと呼ばれる種族がいる。
 しかし、似ているのは外見だけだ。

 コボルトは意志がある。
 故に黒王が生み出した文明を享受し、対価として忠節を黒王に示している。
 そして同じ旗を掲げる以上、理由なく敵対もしまい。

 だがあれは違う。
 あれをいくら施したところで、断じて奴らは感謝などしない。
 それどころか、施されるのが当たり前だと考えるに違いない。
 もしこいつらを兵士にするのならば、忠義ではなく恐怖で従えるほかあるまい。
 それでもなお、隙あらば出し抜こうとしてくるだろう。

 この違いは何なのか。
 と一瞬思考するも、考えても詮無きことだなという結論に達し、土方は考察を投げ捨てる。


 それからしばらく、土方はたまに現れるゴブリンを殺しながら進み続けると、レイジー・リンクスに到着した。
 平原を当てもなく歩くより、こういった施設の方が人が集まるだろう、と考えた彼は躊躇なく街に入る。

 土方の視界に広がる町並みは彼の知る京や、直前に攻め込んだオルテ帝国のヴェルリナとも異なる風景だった。
 これが日ノ本の未来なのか、それともまるで知らない異世界の光景なのか、彼には想像もつかないし、興味もない。
 だが地形の未把握により敵を逃がすことや不意討ちを喰らうことなどあってはならないので、彼は町を探索し始めた。

 こうしてしばらく探索するも、土方の目にはたいして重要そうなものは見つからない。
 すると、彼の前に一際大きな建物が現れた。
 建物の前には広い空き地。建物の横には何かの小屋。
 そして正面の門には『ふたば幼稚園』と書かれているのでここが施設であることと、施設の名前は把握したが、ここがどういう目的で作られたものかは理解できない。
 しかし、ここには何かあると直感した土方は施設へと足を踏み入れた。

「なんだ……これは……?」

 幼稚園に入った土方が感じたものは、困惑だった。
 何に使うのか分からない、現代人なら遊具と分かる、空き地に設置された謎の物体。
 教室に入ると、大人が使うにはあまりにも小さすぎる机と椅子。
 明らかに下手な壁に貼られた絵。
 全てが彼には理解不能だった。


695 : 土方歳三は周辺に参加者がいない可能性を考慮していない ◆7PJBZrstcc :2021/09/30(木) 19:51:32 YcNhccF60

 土方がそれでも探索していると、幼稚園にある体育館にたどり着く。
 まるで道場の様だ、と彼が思ったのもつかの間。
 奥にある壇上の上には、なぜか立て札が。

 土方が立て札を見に近くへ行くと、札の横の床には金属の板の中心に丸いものと、手すりが付いた謎の物体が。
 立て札には、この物体の説明文が書かれているのだ。
 なので、土方は文章を読み始めた。

『この装置はワープ装置で、ここにあるワープ装置の正式名称は次元転送装置です。
 使用すると会場内の違う場所に転移します。
 転移場所は使用する度に変更されるため、転移先は特定できなません。
 ただし、少なくとも海の上など、参加者が転移した途端危険が及ぶような場所は選ばれません。

 また、ワープ装置は一度使用すると、次の放送まで使用できません。
 この点に関しましては、ここだけでなく全てのワープ装置において共通するものとします。

 余談ですが、ワープ装置はこれ以外にも設置しています。
 ここ以外のワープ装置は隠されている場合もあるので、興味のある方は少々気を付けて探してみてください。
 また、ワープ装置の形状も異なっている可能性もあるのでその点も注意』
「ふむ……」

 立て札に書かれた装置についての説明。
 更にその横には使い方まで書かれており、それらを読み終えた土方は思考する。

 まず、この装置の利点について。
 これを使えば、おそらくだが参加者のいる場所へたどり着ける。
 転移先は特定できないなどと書かれているが、主催者にとって俺は殺し合いに乗っている都合のいい存在。
 まさか人のいない所へ追いやるような真似はしないだろう。
 本当に適当だというのなら少々話も変わるが、恐らくそれはない、と推測する。

 つまり、おおよそ欠点は見受けられない。
 しかし、今すぐ使うかと言われれば別の問題だ。

 そもそも、今いる建物は結構目立つ。
 故に、もしこの街に誰かが来ればとりあえずは入って来るだろう。
 だったら、無理に移動せずしばらく待つのも手だ。

 むしろその方がいい気もしてきた。
 そもそも俺はまだ、名簿も禄に見ていない。
 少し疲れているので、休めるときに休める今の内に確認するのも悪くはないだろう。
 勿論、他の参加者を殺す気はあるが、そうすぐに終わる殺し合いではない。

 そこまで考えて土方は、ワープ装置のすぐ横に座り、デイバッグからルールブックを取り出して名簿を確認し始めた。


【F-3 レイジー・リンクス ふたば幼稚園体育館内/黎明】

【土方歳三@ドリフターズ】
[状態]疲労(小)
[装備]毒濁刀@トクサツガガガ
[道具]基本支給品、風神の盾@ドラゴンクエストシリーズ、ランダム支給品0〜1
[思考]基本行動方針:優勝し、新撰組を復活させる
1:今は少し休息しながら、名簿を確認する
2:ここで参加者を待ち、見つけ次第殺す
3:しばらく待ってここに参加者が来なかった場合、ワープ装置を用いて違う場所へ行く
[備考]
参戦時期は単行本4巻終了時点。
召喚した亡霊は物理攻撃でもダメージを受けますが、倒されても一定時間経過すると再召喚できます。
また、土方本人と一定距離以上離れた場合も召喚解除されます。


※ワープ装置は大々的に置かれている場合と、隠されている場合の二つのパターンがあります。
※全てのワープ装置を使用した参加者は、次の主催者の放送を超えるまで再び使用できません。
 つまり、一回の放送につき一度までしかワープ装置は使用できません。これはワープ装置ごとではなく、全てのワープ装置で共通とします。


【F-3 ふたば幼稚園@クレヨンしんちゃん】
野原しんのすけ達が通う幼稚園。
原作漫画ではアクション幼稚園という名前だった。
体育館には次元転送装置@SKET DANCE が設置されている。
なお、本来は隣に園長先生の自宅があるが、この会場では再現されていない。

【F-3 次元転送装置@SKET DANCE】
SKET DANCE第180話、銀魂とのコラボ回に登場したアイテム。
元々は銀魂の登場人物、源外が作った次元を転送できるもの。なお、一度故障したが笛吹和義@SKET DANCE が修理し、その際手すりを付けられた。
本ロワでは、F-3 ふたば幼稚園の体育館内に設置。
使用すると会場内のどこかにランダムで転移させられるものとなっている。
転移場所は少なくとも海の上など、参加者が転移した途端危険が及ぶような場所にはならない。


696 : ◆7PJBZrstcc :2021/09/30(木) 19:51:58 YcNhccF60
投下終了です


697 : ◆c4nYy47bT. :2021/10/01(金) 21:02:37 W01PP/1Q0
先に前編を投下します


698 : ◆c4nYy47bT. :2021/10/01(金) 21:04:48 W01PP/1Q0


「GOBB!!GOBB!!GOBBBBBB!!」

質量が更に増加し、挟まれた部分の顔が一つ、二つと押し潰される。
オッパショ石に囚われたヒャクメンハリボテゴブリンに徐々に避けられない圧死が近づく。
抜け出すことはもはや叶わず、脱出出来たとしても生存は絶望的。
だが、ヒャクメンハリボテゴブリンの闘志は未だ衰えてはいなかった。

まもなく死ぬ体でどうしてそこまで戦おうとするのか?
それは身体のベースとなった命尽きるまで戦い抜いた誇り高き刀、
和泉守兼定の意志がその遺体に残っていたのが原因か。
それとも、複数のゴブリンが結合した事でそれぞれの感情が混ざり合い、
闘争本能が膨れ上がらせたのか。その真相は定かではない。

諦めないヒャクメンハリボテゴブリンは僅かに出ていた上半身を少しずつよじり、
幸運と勇気の剣、ならぬ幸運と不運の剣を振り回し続ける。
その藻掻きを下手人、ジェイソン・ボーヒーズはただ黙って傍観していた。


棒立ちのまま首を傾ける男の様子を余裕の表れなのだと解釈するゴブリン。
高みの見物と言わんばかりの態度に激しい怒りが込み上げてくる。
「ふざけるな、目にものを見せてやる」 とゴブリンは最期の攻撃に移った。
不規則に振るうだけだった動きを正確無比な刺突へと変化させ、男の急所を狙い穿つ。
その一撃は何の障害もなく、見下ろすだけのジェイソンの心臓を刺し貫いた。

「してやったり!」 虚を突く事に成功し、ニヤリと笑うヒャクメンハリボテゴブリン。
だが、心臓を刺されたはずの男は一項に倒れる様子を見せない。
それどころか貫通した状態から片手で剣を握りしめ、奪取しようと引っ張り始めた。

「GOB!?」

ヒャクメンハリボテゴブリンは必死に引き抜こうとするが、
死に体の身で奪い合いに敵うはずもなくあっけなく手から離れてしまう。
一矢報いようとしたはずが、いつの間にか唯一の攻撃手段を失う事となってしまった。

「G、GOB………!」

ここまで闘志を燃やして続けてきたヒャクメンハリボテゴブリンも恐怖の表情に歪む。
反動で一歩 蹈鞴を踏んだ後、ジェイソンは胸部から剣を抜き取る。
そして哀れな獲物に切っ先を向け、黙々と刺し始めた。
滅多刺しの言葉に相応しい苛烈な攻撃が集合体を襲い続ける。


初めは血しぶきと共に、全身から呻き声や叫び声を上げていたが、
やがては一切の反応も示すことも無くなり絶命。
程なく攻撃対象であるヒャクメンハリボテゴブリンの死亡により
オッパショ石が役目を終え消滅する。
後には猟奇的な惨殺死体と重みで出来た窪みに溜まる青血の池が残るのみとなった。


699 : ◆c4nYy47bT. :2021/10/01(金) 21:06:45 W01PP/1Q0



「あ〜あ、やられちゃった。折角作った傑作だったのにな〜。」

一部始終を楽しく観戦していたこの戦闘の仕掛け人、ハサミは残念そうに呟く。
思考錯誤して作った作品が序盤で壊れてしまうとは勿体ない。
破壊までの凄惨な過程には何の心も動かされず、彼はそんな事を考えていた。

「でもやっぱいいな〜アイツ!どんなオモチャに仕上げるか今から楽しみだよ!」

だが、新しく強力な玩具の目途が立ったのは行幸だ。
頑丈な素材で何が出来るかな、と捕らえる前から期待に胸を膨らませる。
その為にもまずはヤツを観察して、上手に切り刻む作戦を練らなくてはならない。
心弾ませるハサミは妄想を切り上げ、目線を素材候補へ戻す。

見ると降ろしていたデイバックを背負い込み、場を立ち去ろうとしている。
早く追いかけねば。そう思った次の瞬間────
ジェイソンはマスクで表情の読み取れない顔面をぐるりと向け、
こちらの方をじっと凝視していた。


ゾクッ───


今まで恐怖とは無縁。寧ろ恐怖を与える側だったはずのハサミに震えが走る。
(実際は血管などないので寒気を感じる事はないのだが)
気づかれる事は想定内だったが、彼から向けられる威圧感は想像を超えていた。
しかし彼にもプライドがある。連れがいる手前、怯えた姿など見せられない。
感じた恐怖を表に出す事なく、後ろで休憩する相方 ホル・ホースへと呼びかける。

「あちゃ〜、気づかれちゃったみたいだね。
おーい、ホル・ホース!休み始めてすぐのとこ悪いけどすぐ移動するよ〜!」

「流石にこんだけ見てりゃ気づかない訳もねぇか。はぁ〜随分と短い休暇だったぜェ
そんじゃさっさとズラかるとしますかねぇ!」

文句を言いつつもホル・ホースは手早く出発の身支度を開始した。
その間、ハサミは何があってもいいようにジェイソンの監視を担当する。
既にこちらに向かってきているかと思われたジェイソンは
先程、自らが殺害したヒャクメンハリボテゴブリンの死体へ視線を向けていた。
そして、死体へ近づいたかと思うとその傍でしゃがみ込む。

(アイツ何してるんだ…?まさか!)

ハサミの予想は的中する。
ジェイソンはヒャクメンハリボテゴブリンの死体から形の残った頭部を引きずり出すと
無造作なフォームでそれを投擲してきたのだ。

「おっと危ない!」

メジャーリーガー顔負けの剛速球をハサミは器用に体を傾け回避する。
頭部はそのまま木に衝突し盛大に炸裂。ゴブリンの血肉が周囲に弾け飛ぶ。

(注意しておいて良かったよ。だけど、コイツ思ったよりも鈍くないな。
これは少し急いだほうがいいかもね)

投球動作は適当だったにも関わらず、的確に鉸めの部分へと狙いすましていた。
一歩遅れていたら大ダメージは免れなかっただろう。
「悠長にはしてられない」とハサミは傾けていた体制を戻し、
急いで逃走の準備にかかろうとする。
そうして身体を戻し終えた彼の目の前には









先程まで小さく見えていたはずの殺人鬼が立っていた。


700 : ◆c4nYy47bT. :2021/10/01(金) 21:08:36 W01PP/1Q0



「は?え?」

「な、なにィーーーーーーーーーーッ!?」

遅れてジェイソンの急接近に気づいたホル・ホースが驚きの声を上げている。
しかし、そんな彼を他所にハサミは突然起きた異常事態に思考が停止してしまう。
ジェイソンは奪った剣をその場に突き立て、両腕をハサミへと伸ばす
丸太のような腕は閉じていた刃の先端部分をガッチリ握りしめ、軽々と持ち上げた。

「あッ!お、おい!何してるんだ!やめろ!離せ!」

地から足もとい刃先が離れた事で、ショートしていた思考が復旧する。
ハサミは咄嗟に捕まれている刃を開いて抵抗しようと試みるが、
見た目に違わない怪力がそれを許さない。
するとジェイソンはハサミを持ったまま回転を開始。
ハンマー投げをするかの如く振り回し、同時に自身の速度を高めていく。

「ホホッ!ホル、ホル・ホース!
何してるんだ!早くコイツを攻撃しろォ―――ッ!!!」

「分かってるぜぇ旦那ァ!
チッ!必要以上にスタンドを出しとくんじゃあなかったぜ!」

回され続けるハサミは覚束ない口調で、呆然とするパートナーに命令をする。
監視中、長時間のスタンド行使で疲労が蓄積しているホル・ホースだが
相棒のピンチを救うべく、自身のスタンド皇帝(エンペラー)を再度召喚。
ハサミを掴むジェイソンの両腕を撃ち抜き、複数の穴を開けた。

疲弊した状態で尚かつ回転中の相手に一発も外さないテクニック。
プロのガンマンの名が伊達ではない事の証明だ。
しかし、手首を撃ち抜かれたにも関わらず、ジェイソンはハサミを手放さない。
まるでジェイソンとハサミ、二人が元より一つであったかのように
その持ち手が揺らぐことは無かった。

「ナニィ〜〜ッ!?どうなってやがんだコイツの体はぁ〜!
そんだけ撃ち抜かれて持ってられるわけねーだろうが普通はよぉ!」

「ふざけるなよ、この役立たず!何の為のコンビだと思ってんのさ!」

そうこうしているうちに回転は加速度的に勢いを増していく。
もはや呑気に実況観戦していた頃の余裕はどこにもない。
呆然とするホル・ホースにハサミは憤りの罵倒を飛ばす。
だが、決してホル・ホースを責める事は出来ないだろう。
銃撃が無意味な存在がいるなんて想像できるはずがないのだから。

二人の必死の抵抗をものともせずジェイソンの回転運動は続く。
そして、運動エネルギーは極限まで高まり、解放の刻がやってきた。


701 : ◆c4nYy47bT. :2021/10/01(金) 21:09:34 W01PP/1Q0


「うわああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……………」


手から放されたハサミは凄まじい勢いでジェイソンから飛んでゆく。
進行方向の樹木が巨躯に激突し、盛大な音を立てながら叩き割れる。
しかし、一つや二つではその勢いを止める事は叶わない
直線上にある全てをなぎ倒しながらハサミは遥か彼方に消えていった。



「ハサミの旦那ァーーーーーッ!?」

相棒の離脱に叫はずにはいられないホル・ホース
つい飛ばされていった方角を目で追ってしまうがすぐに目線をジェイソンに戻す。
回転で酔った様子を少しも見せない怪物は
突き立てた剣を引き抜き、こちらへ向かってきていた。

「次は俺の番ってか!?クソッタレ!」

ホル・ホースは残った精神力を必死にかき集めスタンドを維持。
疲れを無視して再び銃弾を数発、ジェイソンへと放った。
彼は向かってくる弾丸を一切避けることなくその身に全て浴びる。
しかし、与えた影響はほんの僅かなノックバックのみ。進行を止めるには至らない。

(ああ、知ってたぜ。テメェがこんなもんじゃ、何も意に介さないってことはよぉ〜)

だが、止まらないのはホル・ホースも想定内。
ふらついた足取りでなんとか接近する相手から距離を保ち時間を稼ぐ。
その間に体を貫通し飛んで行ったはずの弾丸が宙を旋回。
後方からジェイソンを襲う。その全てが狙う先はただ一つ

「脳漿ぶちまけやがれ!このデカブツがァ!」

狙いは人体の司令塔である脳。
返ってきた弾は寸分狂わず、ジェイソンの後頭部へと叩きこまれた。
衝撃が脳を襲った彼は動きを停止し、沈黙。ぐらりと体を正面に傾ける。
握っていた剣を取り落とし、巨体を地面へと倒れ伏した。


702 : ◆c4nYy47bT. :2021/10/01(金) 21:12:16 W01PP/1Q0

「ふぅ〜…一時はどうなる事かと思ったが流石に仕留められたか。
そりゃそうだ、脳みそ吹っ飛んで生きてるなんざあのDIOでもあり得ねぇ。」

怪物の撃破に一息つくホル・ホース。
どれだけ体が頑丈であろうとも脳を破壊されれば耐えられまい。
例え自分の雇い主である吸血鬼、DIOであったとしても起き上がる事は出来ないだろう。
実際はあの悪のカリスマがあっさりと弾丸を喰らうはずもないのだが

「だが、念には念を入れておかねぇとな」

そう言ってうつ伏せに倒れるジェイソンの脳へ向けて、三度発砲を繰り返す。
仕留めたと思っていた相手が「実は生きていたんだよォ〜!オロローン!」
なんて復活劇を果たす事はあり得ない話ではない。
絶対的な安心獲得の為には不必要に思える体力消費も必要経費だ。

「さてと、飛ばされてったハサミの旦那を探すのもいいが、
果たしてあれで生きてんのかどうか…
それに、生きてたにしてもカンカンに怒ってるだろうしよぉ〜」

確認を終えたホル・ホースは飛ばされていった相棒、ハサミについて思案し始める。
前回の個人的事情による失態に加えて今回の一件。
結果としてハサミを放り投げた張本人を仕留めた戦果を挙げられたが、
最後のご立腹な様子では協調を取るのは難しいだろう。

「ま、ここらが縁の切り時ってとこだな。ハサミだけによ。
早く新しいパートナーを見つちまわねぇと…
体力も使い切っちまったし、何処か腰を落ち着けられるとこは…」

長年培ってきた弁舌で切り抜ける自信もあるにはあるが
万が一、決裂した後の事を考えると解散した方が身のため。
“元”相棒には悪いが、素早い損切の判断が出来るのが一流というものだ。
一刻も新しいパートナーを早く探したいが今は体力の消耗が激しすぎる。
周辺にはまだ敵対的なNPC達がうろついてる可能性もあるのだ。
急いで場を離れ休憩を取るべき、と疲れ切った体に鞭打ち動き始めた。





ベキリ─────と






突然奇妙な音が下から聞こえた。



下半身に謎の違和感を覚えたホル・ホースは恐る恐る音の方向に目線を下げる。




全身から嫌な汗が噴き出す。嘘だ、ありえない!ありえてはならない!



視線の先では足があらぬ方向に曲がり肉の間からは骨が顔を覗かせる。



もう動かぬはずの死体の巨腕が己の右足をへし折っていたのだ。


703 : ◆c4nYy47bT. :2021/10/01(金) 21:14:20 W01PP/1Q0


「ギニャアアアアアアアッーーーーー!!」

残酷な現実を目で捉え、ようやく痛みが追いかけてきた。
余りもの激痛に思わず情けない悲鳴を上げてしまう。
砕けた足で立っていられるはずもなく
振り返った勢いでそのまま背中から地面に倒れるホル・ホース
足から手を離したジェイソンはゆっくりと立ち上がり、弱り切った標的へと近づく。

ホル・ホースにもはやスタンドを出す体力は残されていなかった。
元々、実は生きていたといった現在のような状況を回避する為に
限界ギリギリまでスタンドを行使してでも死亡確認をしたのだ。

なのに、男は平然と起き上がり、元気に自分の足を折り曲げている。
殺人ゲームに吸血鬼すら超越した不死性を持った者がいるなんて理不尽が過ぎる。
こんな化け物を招いた主催に不平不満を言いたくて仕方がなかった。

抵抗する体力も逃げる機動力も失ったホル・ホースは
やがて両手を強引に捕まれ、菓子を潰すかのように容易く粉砕された。
ガンマンの命さえもが破壊され、もはや苦痛の叫びは声にならない。

(あ…ああ…あんときだ。あん時に言っときゃあよかったんだ…!
得体の知れねぇ輩には関わるべきじゃあねぇってよぉ……)


彼の人生哲学は一番よりもNo.2
だが、それは決して言われたままに従うイエスマンになることではない。
相棒が間違った方向に進もうとしたら進言し、
愚行を諫めることが出来る補佐役の役割と言うものだ。

しかし、ハサミが目の前の化け物に手駒をけしかけようとした運命の分かれ道
自分は嫌な雰囲気を感じ取っていたにも関わらず、
既に険悪だった相棒の心評が悪くなることを恐れ、強く言い切れなかった。
つまり、彼は『躊躇』してしまっていたのだ。

この催しに巻き込まれてからホル・ホースはとある少女にこう忠告した
「躊躇一つで戦況が変わる」と。
だが、躊躇しない事の大切さは何も戦闘だけの話ではない。
殺し合い全体においても重要性は変わらないのだ。

不和を起こさない為にしたたった一つの躊躇。
それが回避可能なはずの死への一本道に、
自分を招き入れたんだとホル・ホースは強く後悔する。


だが─────全てはもう後の祭りだ。
ジェイソンの両腕が今にも消えそうな命を刈り取らんと彼の元へと迫る。

(ちき…しょう………最期くらい可愛らしいレデ───)

死に際を美しい女性に看取られる細やかな夢。
その夢想が最後まで許されることはなかった。
首根っこをガシリと捕まれ、一気に体から頭部が引きちぎられる。
出来上がった生首は興味がないと言わんばかりにストンと手から離され、
血だまり広がる地面に転がり落ちた。
ホル・ホースの眼には先ほどまで繋がっていた胴体と返り血に濡れる怪物。
己の死を実感させる光景を最期に彼の視界は何も映さない闇へ染まった。

【ホル・ホース@ジョジョの奇妙な冒険 死亡】
【残り97名】





初の参加者殺害を終えた不死身の殺人鬼、ジェイソンは自分の後頭部へと手を伸ばす。
本来なら頭蓋の硬い感触があるはずの後頭部から伝わる不愉快な感触。
離してみると脳の一部と思しき固体がベッタリ付いていた。

自分は一体どうなっているのか。
脳は銃弾によって破壊しつくされた。何故動ける?何故思考が出来ている?
湧いて当然の疑問を一瞬浮かべ、ジェイソンはすぐに思考を打ち切った。
何故今更要らぬ事を考えてしまったのだろう。
自らが異常である事など墓場から蘇ったあの時から
いや、生まれた時から既に分かり切っていたはずなのに─────


704 : ◆c4nYy47bT. :2021/10/01(金) 21:15:24 W01PP/1Q0


殺人鬼ジェイソン・ボーヒーズ、その復讐劇の歴史は長い。
幼い頃から奇形である事を理由に差別を受け、挙句の果てに殺されかける。
それでも持ち前の生命力でなんとか辛うじて生き延びていたジェイソンだったが
精神異常で人格分裂を起こし、復讐鬼と化してしまった
愛する母 パメラが標的に返り討ちに合い、殺害される現場を目撃してしまう。

それから彼は目の前で殺害された彼女の意志を継ぎ、
因縁の地 クリスタルレイクで殺人者としての日々を過ごし始める。
自身と母の復讐の為に繰り返す殺戮。時に敗北することもあったが、
致命傷を負っては驚異的な自然治癒力で復活を遂げ、人々に恐怖を齎し続けた。
死体の山を築き上げた復讐もやがては一人の青年の手により終わりを告げる。

だが、彼と言う存在を生み出した創造主たちは死と言う名の安らぎを許さなかった。
火葬の為に遺体を掘り起こされた時に発生した一つの落雷
それが、彼に二度目、いや永遠の生を与えてしまった。
『不死身の肉体』と『超常的な能力』を得た怪物としての生き地獄が始まったのだ。

ジェイソンが一瞬の内にハサミ達の元へ移動していた理由も
彼が死後に得た力の一つに起因する。
狙った標的の元へ移動する瞬間移動能力、モーフ
この力はジェイソンに物理的には実現不可能な追跡や先回りを可能にさせた。
ニューヨークやエルム街、遥か未来の宇宙船での惨劇に利用した彼は
殺人鬼から逃れ安堵する被害者たちを再びの絶望のどん底へと叩き落した。

何故超能力を取得するに至ったのか、要因は不明である。
前述通り最初に蘇生した際に不死の肉体と共に備わったのか。
あるいは超能力少女との戦いの中で呼応し合い、覚醒したのかもしれない。
だが、一つ言えることがあるならば
もはやジェイソン・ボーヒーズと言う存在は彼自身は勿論、
彼を創り出した神ですらその全てを把握するなど出来やしないという事だ。


705 : ◆c4nYy47bT. :2021/10/01(金) 21:16:59 W01PP/1Q0





何も分からなくてもそれでいい。
自分と母を虐げ見放した人々へ、世界への復讐
それが出来るのであればこの身がどうなろうと構わない。
例え脳どころか体がバラバラに四散し、心臓一つとなったとしても殺し続ける。
殺人だけが悪魔と化した自分に出来るただ一つの親孝行なのだから────





ジェイソンは辺りに転がっていたデイバックから支給品を回収し始める。
奇怪な支給品の数々はどういう仕組みをしているのか皆目見当も付かないが、
使える物ならばすべて利用すると片っ端から自分のバックへ詰めていく。
最後に取り落とした剣を拾いあげた悲哀の殺人鬼は
緩慢な足取りで更なる殺戮への進撃を再開したのだった


706 : ◆c4nYy47bT. :2021/10/01(金) 21:19:34 W01PP/1Q0
以上で「カニンガムの怪物」前編投下終了です。
拙作に問題がありましたら修正、破棄を行い、問題ないようでしたら後日後編を投下いたします。
駄文失礼しました。


707 : ◆vV5.jnbCYw :2021/10/01(金) 22:30:09 x2iWpP760
投下乙です。
ホラー映画のキャラクターが全力でホラーしててビビりました。
火力よりもテクニックで押すコンビだとは思ってましたが、
小技をものともしないジェイソンの圧倒的なまでの勢いが終始伝わってきました。
ホル・ホースは私がコンペでエントリーしたキャラですが、ここまで圧倒的な引き立て役になると投下者の私も嬉しいです。
後編も楽しみにしています。


708 : ◆7PJBZrstcc :2021/10/02(土) 17:20:09 dqZDN5B.0
岸辺露伴、野原ひろし? で予約します


709 : ◆bLcnJe0wGs :2021/10/02(土) 18:26:28 ifAzFjOo0
>>706
いえいえ、このままの展開で結構ですよ。

しかし、ただ一つ文章内において脱字と思われる箇所を発見しております。

該当箇所は>>703の『しかし、ハサミが目の前の化け物に手駒をけしかけようとした運命の分かれ道』であり、正しい表記は『しかし、ハサミが目の前の化け物に手駒をけしかけようとしたのが運命の分かれ道』と自分は思っております。

その箇所さえ訂正して頂けば後編の投下をして頂いても構いません。


710 : ◆7PJBZrstcc :2021/10/03(日) 07:26:38 .XEmWKTo0
投下します


711 : 岸辺露伴は抗えない ◆7PJBZrstcc :2021/10/03(日) 07:27:18 .XEmWKTo0
「なあ、ちょっといいか?」

 露伴が目の前の男性、ひろし? に話しかけられた時、得も言われぬ不快感を覚えた。
 警戒こそしているものの、なぜ不快に思うのか分からなかった露伴だが、すぐ答えにたどり着く。

 声が似ているのだ。
 かつて杜王町の闇に潜み、十五年以上人を殺し続けた殺人鬼、吉良吉影と。
 とはいえ、それは目の前の男とは何の関係もない話。
 すぐに不快感を押さえ込み、露伴は話に応じる。

「分かった、構わない――と言いたいところだが、まずはその懐にしまった手を見せてもらおうか」

 露伴はそう言ってひろし? を睨む。
 事実、彼の右手はスーツの懐に収まっており、中でデザートイーグルを握り締めており、露伴の警戒は正しい。
 向こうも露伴の警戒心に気付いたのか、やれやれとばかりに肩をすくめながら、右手を懐から抜き、そのまま両腕を上にあげる。

「これでいいか?」
「ああ、すまない」
「でも、俺だけがこんな体勢なのは不平等だよな〜」

 そう言うと今度はひろし? が露伴を睨みつける。
 何せ、露伴は未だ鉄の棒を握ったままなのだから。
 その気になれば早撃ちで、露伴が近づくより先に銃を抜き、引き金を引く自信はあるが、一方的なのはいい気がしない。
 そんな彼の言外に込めた感情を、露伴は理解し鉄の棒から手を離し、カランと音をさせながら落とす。

「……どうだ?」
「それでいいぜ。まずは自己紹介からだ。
 俺は野原ひろし。そっちは?」
「岸辺露伴。漫画家だ」

 お互い話し合う姿勢を見せ、最初は自己紹介とばかりに言葉を紡ぎ、それとなく互いに距離を詰めていく。
 ただし、露伴は内心で驚愕していた。

(野原ひろしッ! まさかしんのすけ君と別れてすぐに出会うとは思わなかったぞッ!!)
「早速質問なんだが、しんのすけと佐藤マサオ君に会わなかったか?
 しんのすけは俺の息子で、マサオ君は息子の友達なんだ」

 そしてひろし? はしんのすけとマサオ、二人の外見の説明を始める。
 それを聞き流しながら、露伴は

(ひとまず、単なる同姓同名ではなさそうだな)

 と考えていた。
 輝子には可能性が薄いとは言ったが、やはりゼロではない。
 一番何事もない可能性が潰れたが、ひとまずよしとする。

「どうだ、見てないか?」

 露伴が思考を回している間に、ひろし? の説明は終わっていた。
 不安げな様子を隠そうともせず、露伴を見つめる視線は、本当にただ息子を心配する父親そのものだ。
 こうなると、ひろしを警戒していたことすら、ただの杞憂だったかもしれないとすら思ってしまう。
 だからこれは念のためだ。

「ああ、マサオという少年は知らないが、実は少し前に僕はしんのすけ君と会って話している」
「本当か!? それは一体どこで――」
「ヘブンズ・ドアー!!」

 息子を知っているという話を聞いて、喜びに満ち溢れたひろし? を露伴は不意討ちで本にした。
 これはしんのすけのことを話した結果、万が一のことが起こったら後悔する、というのが二割。
 そして残り八割が、しんのすけの時にはあまり読めなかった、超常的な出来事について詳しく読みたいというものである。
 流石にじっくり読む気はないが、さっきよりは読み込めるだろうと考えてのことだ。


712 : 岸辺露伴は抗えない ◆7PJBZrstcc :2021/10/03(日) 07:27:47 .XEmWKTo0

「まずは、こいつが本当に野原ひろしかどうかの確認だな」

 そう言って露伴はひろし? の記憶を読み始めた。
 年齢35歳。妻と子供が二人。双葉商事係長。
 昼飯はいつも外食で済ませる、空気の読めない部下がいる。
 その他どうでもいい情報を、露伴は読み飛ばしながら、この男が野原ひろしだと確信する。

 そしていよいよ本題である、超常的な出来事について詳しく読もうとしたのだが、ここで露伴は異常に気付く。

「記憶がないぞッ!
 こいつにはハイグレ魔王、ヘンダーランドに戦国時代へとタイムスリップも!
 名簿にある筈のロボの自分についてさえッ!!」

 どういうことだ? と露伴は頭を捻る。
 この男は野原しんのすけの父親、野原ひろしであることに間違いはない。
 もし、あの出来事をしんのすけだけが経験しているなら分かる。
 しかし、彼の記憶にある限り、過程はどうあれ野原ひろしもしんのすけと同じ出来事を経験しているはずなのだ。
 にも関わらず、それがない。

「まさか、この野原ひろしはしんのすけ君とは別の世界の人間なのか?」

 この状況に対する露伴の回答は、この状況でなければ荒唐無稽といえるものだった。
 しかし、根拠なく言っているわけでは無い。根拠はしんのすけの記憶だ。

 しっかり読む時間はなかったが、軽く目を通した限りハイグレ魔王と戦った際、野原家は平行世界を移動している。
 ならば、このひろしがしんのすけと別の世界のひろしである可能性は、あってもおかしくはない、かもしれない。

「となるとこの名簿、どういう基準で分かれているのかと思っていたが、世界ごとに分けられているのか」

 ならば佐々木哲平も異世界人か、と考えながらも、ひろし? の記憶を読み続ける露伴。
、すると、今までのものが全てどうでも良くなるほどの衝撃的な文章が飛び込んでくる。

『俺は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ』
「何だこれはッ!?」

 スタンドも月までぶっ飛ぶこの衝撃! と言わんばかりに驚く露伴。
 冴えないサラリーマンの筈の男にあるはずもない、自分が殺し屋だという記憶。
 しかし、露伴が驚いたのはそこではない。

「なぜだ……
 本当に殺し屋として活動していたならある筈の、殺し屋としての記憶がない。
 誰を殺したとか、誰に依頼されたとか、報酬はいくらだったとか、そういうものがあるはずなんだッ!!」

 ある筈のものがない。その事実は露伴にある確信を抱かせる。
 図らずも、彼が似たようなことができる故に。

「まさかいるのか?
 僕の『ヘブンズ・ドアー』と同じタイプのスタンドの持ち主が、殺し合いの主催者の中に……!」

 だとすれば、冴えないサラリーマンを殺し屋に仕立てて何の意味がある?
 息子と殺しあわせて楽しむためか?
 などと露伴は考えていたが、試しに『野原ひろしは殺し屋ではない』と書き込んでみる。
 すると後から『俺は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ』という文章がポコポコと浮かび上がり、露伴の書いた文章を塗りつぶした。
 ならばとばかりに今度は『野原ひろしは人を殺さない。殺そうとも思わない』と書き込んでみる。
 しかしさっきと同じように、文章が浮かび上がり塗りつぶされてしまった。

「そう上手くはいかないか」

 そうこうしていると、気づけば露伴はひろし? の殺し合いが始まってからの記憶を読んでいた。
 そこには、既に二人の参加者を手に掛けたこと。スタンドDISCのこと。
 そして、露伴を懐柔して情報を聞き出した後は殺してしまおうと考えていたことが書かれている。

「承太郎さんじゃないが、やれやれだな」

 記憶を読んだ露伴はそう言いながら、ひろし? の懐からデザートイーグルを、デイバッグからポンプアクションショットガンを奪い、自身のデイバッグへ納める。
 できればスタンドDISCも取り外したかったが、本になっている現状ではどうやってもできなかった。
 単に本となったひろし? がつっかえているのか、別の理由があるのかそれは分からないが。


713 : 岸辺露伴は抗えない ◆7PJBZrstcc :2021/10/03(日) 07:28:31 .XEmWKTo0

「そういえば、こいつはしんのすけ君と佐藤マサオを見つけてどうするつもりなんだ?」

 殺し屋として参加者を殺すように主催者が調整した男は、息子とその友人を見つけてどうするつもりだったのか。
 それに関する文章を探すと、幸いなことにすぐ見つかった。

『しんのすけとマサオ君を見つけたら、譛ェ遒コ螳なくちゃな』
「これは一体……?」

 しかし、文章は読めるものになっていなかった。
 色々見てきた露伴だったが、『ヘブンズ・ドアー』で本にしたものの中に、文字化けした文章を持った存在はなかった。
 故に理解が及ばず、露伴は手がかりを求め更に記憶を漁る。
 そして本のページをめくると、主催者が関与している決定的な証拠を見つけた。

『次のページからは『コンペ・ロワイアル』参加者による、ヘブンズ・ドアーを用いての情報閲覧は禁止されております。
 禁止制限を解除する場合、『コンペ・ロワイアル』参加者の証を取り外してください。
 解除方法は《『コンペ・ロワイアル』参加者には閲覧不可能》となっております。
 なお、違反した場合はペナルティを科します。ペナルティの内容については、こちらが適宜判断いたします』

 あからさまな情報封鎖。
 これを犯せば、どんな罰が下るかは想像がつく。
 だがしかし、露伴は一切怯むことなく、主催がひた隠しにするひろし? の記憶の深淵へと飛び込もうとページを手に掛ける。

『「コンペ・ロワイアル」参加者「岸辺露伴」に、禁止されている行動を確認しました。
 三十秒以内に中止しない場合、「岸辺露伴」の首輪を爆破いたします』
「この岸辺露伴が、そんな脅しに屈服すると思っているのか―――――――――ッ!!」

 めくろうとした瞬間、露伴の首輪から警告メッセージが流れ始めるが、彼は気にも留めない。
 本のページはまるで糊付けされたかのように動かないが、スタンドと露伴本人の力を合わせて無理矢理めくる。
 そこで彼が見たものとは――


 俺は殺し屋じゃない。
 俺は殺し屋じゃない。
 俺は殺し屋じゃない。
 俺は殺し屋じゃない。
 俺は殺し屋じゃない。

 俺は殺し屋じゃない。『お前は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ』
 俺は殺し屋じゃない『お前は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ』
 俺は殺し屋じゃな『お前は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ』
 俺は殺し屋じゃ『お前は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ』
 俺は殺し屋じ『お前は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ』
 俺は殺し『お前は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ』
 俺は殺『お前は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ』
 俺は『お前は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ』
 俺『お前は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ』
 俺『前は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ』
 俺『は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ』

 俺は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ。
 俺は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ。
 俺は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ。
 俺は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ。
 俺は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ。
 俺は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ。
 俺は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ。
 俺は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ。

 俺は殺し屋だ俺。誰が何と言おうと殺し屋なんだ。
 俺は殺し屋だ。誰が何と言おはうと殺し屋なんだ。
 俺は殺し屋だ。誰が何螳カと言おうと殺し屋なんだ。
 俺は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺譌し屋なんだ。
 俺は殺し屋だ。誰上rが何と言おうと殺し屋なんだ。
 俺は殺し屋螳だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ。
 俺は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋な医kんだ。



 俺は■■■■■


714 : 岸辺露伴は抗えない ◆7PJBZrstcc :2021/10/03(日) 07:29:01 .XEmWKTo0



「    」

 声すら出なかった。
 露伴がひろし? の、殺し屋でない彼を無理矢理侵した脳内は。
 正視するには、露伴ですらあまりに異様な圧を感じさせるものだった。

『5、4、3……』

 気づけば首輪が爆破されるまで残り五秒を切っており、露伴は慌てて本となったひろし? を閉じる。
 それで首輪から発せられた音は消えたが、代わりに新たな異常が彼を襲う。

「どうも」

 なんと、気づけば露伴はひろし? から数メートル離れた位置に移動させられていた。
 おまけに周りの全てが止まっていた。
 空の雲は動きを止め、星は瞬かず、ひろし? は本から解除されているにもかかわらず息一つしていない。
 さらに目の前には見知らぬ第三者が現れていた。
 第三者の外見は六十代かそれ以上の、紅いポロシャツを着た男性だ。
 手には大きめの懐中時計らしきものを持ち、人のよさそうな笑みを浮かべ露伴を見つめている。

「貴様何者だァ――――――――――ッ!?」
「私は、そうですね……一般通過爺とでも読んで下さい。
 主催者のメッセンジャーとしてやってきました」

 最初はふざけているのかと思ったが、メッセンジャーと聞いて露伴は気を引き締める。
 心当たりは、すぐに思い浮かんだ。

「ペナルティ……って奴か。首輪が爆破される前に、見るのはやめた筈だがな」
「はい。ですが僅かとはいえ、見たことに変わりません。
 なのでこうさせてもらいましょう。なお、抵抗するようなことがあれば、今度は本当に首輪を爆破するとのことです」

 そう言って一般通過爺は露伴のデイバッグに手を入れ、中からデザートイーグルとポンプアクションショットガンを取り出す。
 そのままデザートイーグルはひろし? の懐へ、ポンプアクションショットガンはデイバッグへ戻す。
 それで一般通過爺は終わりとばかりに、露伴へ向き直った。

「では私はこれで」
「……待て、一つ質問に応えろ」
「何か?」

 一般通過爺の言葉遣いとは裏腹に、どこか見下したような態度に露伴は苛立ちつつ、一度周りを見渡してから問う。

「今起きているこれはなんだ?」
「……あなたは存じて……ああいや、いないのですね。
 ならばお答えしますが、これは私が一時的に時間を止めています」
「時間を……!?」
「そして私の用は済みましたので、野原ひろし? 様の視界から移らない位置に移動してから、時間停止を解除いたします。
 それまでの間なら岸辺露伴様の移動も許可いたします。ただし、移動だけですが」

 言外に、それ以外の行動は許さないと釘をさす一般通過爺。
 もっとも、露伴にその気はなかった。
 この瞬間ならひろし? を殺せるかもしれないが、露伴の目線で彼は被害者だ。

 もし、野原ひろしが自分の意志で殺し合いに乗っていたのなら、しんのすけには悪いが露伴は始末もいとわない。
 だが事実は、ひろしは主催者に良いように操られているだけだ。
 現状露伴にどうにかする手段がない以上、これ以上できることはないので逃げるだけだが。

「クソッ!!」

 露伴は悪態をつきながら走り出した。
 こうなると彼にできるのは、しんのすけと輝子に会い、ひろし? に何とか会わせないようにするのみ。
 彼がしんのすけの知る野原ひろしとは違い、殺し合いに乗っている危険人物だと言えば、会おうとはしないだろう。

 だから露伴はひた走る。
 彼と別れた後、しんのすけ達が既にこの世を去っていることを知らないゆえに。


715 : 岸辺露伴は抗えない ◆7PJBZrstcc :2021/10/03(日) 07:29:34 .XEmWKTo0


 一般通過爺は露伴が走り去るのを尻目に、近くの茂みに隠れる。
 それから手に持っている懐中時計のスイッチを押した。
 すると、雲は再び動き出し、ひろし? は意識を取り戻した。

 一般通過爺が持つ懐中時計の名前はウルトラストップウォッチ。
 22世紀のひみつ道具の一つで、スイッチを押すことで時を止めるというもの。
 彼はこれを使って時を止めた後、露伴のみをウルトラストップウォッチで動かして接触したのだ。

 そして目的を終えた一般通過爺は会場から姿を消す。
 だが彼はメッセンジャー。
 今の行いの意味は理解できず、また殺し合いに思うところもない。
 所詮、舞台の隅を歩き回る小間使いでしかない。





「あの野郎どこ行きやがった!?」

 そして何も知らないひろし? は激怒した。
 しんのすけについて知っていると言ったとたんに、いきなり何か仕掛けてきた露伴。
 別に物を取られたわけでも、命を奪われたわけでは無いのだが、何もされていないというのが逆に気味が悪い。
 何よりも、自分がしんのすけの父親であり、探しているにもかかわらず教えずに去っていたのが腹立たしい。
 最初から知らないのにからかっていたのか、それとも自分が他の参加者を殺しているのを知ったのか。
 どちらにせよ、ひろし? に露伴を生かす理由はもう何もない。
 次会えば殺す、と彼は決意した。

「こんなことなら、懐柔なんて方法選ばなきゃよかったぜ」

 ひろし? が無差別に参加者を殺すのではなく懐柔を始めたのは、偏にしんのすけ達の情報を集める為に他ならない。
 だがそれは最初の一歩で躓いてしまった。
 ならばもう、懐柔なんて手ぬるいことはやめる。
 次からは、多少手荒になっても速攻で情報を集めよう。

 そう決意するひろし? の足元には、露伴が拾い忘れた鉄製の棒が転がっていた。


【I-5/早朝】

【岸辺露伴@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康、佐々木哲平への不快感(大)、焦燥感(大)
[装備]:スタンド『ヘブンズ・ドアー』
[道具]:基本支給品、Z750(燃料??%)@大番長、山盛りの炒飯@ウマ娘 シンデレラグレイ
[思考・状況]基本行動方針:様々な参加者を取材しつつ、主催者の打倒を狙う。
1:一刻も早くしんのすけの元へ戻る。二人を会わせるのは危険
2:あの男は、しんのすけ君の知る野原ひろしじゃあないッ!
3:危険人物は取材のついでに無力化を狙う。ただし無理はしない。
4:奴(佐々木)は本当に漫画が描きたいのか?
5:藍野伊月に出会っても、僕からは何も言わない。知ってたら別だが。
6:空条徐倫、まさかとは思うが会っておきたい。
7:ロボひろしには一応警戒
[備考]
※参戦時期は四部終了後。
※佐々木哲平を本にしたため、ホワイトナイトの盗作などを把握済みです。
※佐々木哲平が別の世界の人間だと気づきました
 参加者の一部は別々の時代から参加させられてると思ってます。
※野原しんのすけの劇場版についての情報を複数持っていますが、全て同一の年の、露伴から見て未来の出来事として認識しています。
※野原ひろし? を本にし、記憶を読みました。
※別の世界について把握しました。
※主催者の中にヘブンズ・ドアーと同じタイプのスタンドの持ち主がいると推測しています。


716 : 岸辺露伴は抗えない ◆7PJBZrstcc :2021/10/03(日) 07:29:58 .XEmWKTo0

【野原ひろし?@野原ひろし 昼めしの流儀】
[状態]:健康、怒り(中)
[装備]:懐にデザートイーグル、キング・クリムゾンのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2個、ポンプアクションショットガン@ゾット帝国
[思考・状況]基本方針:他参加者の殺害及びしんのすけとマサオの捜索
1:岸辺露伴は懐柔できない。殺す。
2:あの野郎(岸辺露伴)どこ行った!?
3:次他の参加者に会ったら、懐柔なんて悠長なことはしない
4:名簿への疑問
[備考]
※原作とは性格が大きく掛け離れてます。「自分を野原ひろしと思い込んでる一般人」「殺し屋ひろし」の両要素を含んでます。
※CVは森川智之です。
※主催者から『お前は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ』と付け加えられています。理由は現状不明です。
※ヘブンズ・ドアーで文章が書きこまれると、自動的に『俺は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ』という文章が湧き、書き込まれた文章を塗りつぶして無効化します。
 これは仕様なのか、主催者でも計算外なのか現状不明です。


※鉄製の棒@現実 がI-5に放置されています。


【ウルトラストップウォッチ@ドラえもん】
支給品ではなく、主催者が所持しているもの。
懐中時計型の道具で、スイッチを押すと使用者以外の時間を停止させることができる。
ただし、使用した際に使用者の周囲にいれば影響を受けず、ウルトラストップウォッチ本体を時間が止まっている対象に触れさせれば時間停止が解除できる。
また、これは22世紀の科学で作られたものなので、それ以上の科学力があれば時間停止の解除も可能らしい。

【NPC紹介】
【一般通過爺@真夏の夜の淫夢シリーズ】
正式な出展はBabylon Stage 42「少年犯罪」。
出展では、自転車に乗って撮影中のカメラの前を横切っただけの一般人。
本ロワでは、主催者が直接顔出しをせず、特定の参加者のみに伝えたいことがある場合現れるメッセンジャーのようなもの。自転車には乗っていない。
なお、出展では喋っていないので口調はオリジナル。
なお、今回はウルトラストップウォッチ@ドラえもん を持って登場したが、これは主催者が持たせたもので、彼自身の所有物ではない。
他の場面で登場することがあれば、必要がない限り持っていないだろう。


717 : ◆7PJBZrstcc :2021/10/03(日) 07:30:21 .XEmWKTo0
投下終了です


718 : ◆vV5.jnbCYw :2021/10/04(月) 22:26:11 .09zZvKw0
ひろし、クロ、神楽鈴奈、新田美波、志村新八、空条徐倫、キュアダイヤモンド、ウィズ予約します。


719 : ◆c4nYy47bT. :2021/10/05(火) 08:04:48 Gd4K.Ovc0
>>707 感想ありがとうございます。
退場話を書くにあたり雑な処理は許されないと思っていたので、
キャラを投下されたご本人に喜んでいただき大変恐縮です。

>>709 ご指摘ありがとうございます。
もし拙作のwiki収録がされた場合はそのように修正させていただきます。

後編投下いたします


720 : ◆c4nYy47bT. :2021/10/05(火) 08:06:59 Gd4K.Ovc0

道中保護した飴宮初夏といのちの輝きを加え、五…六人となった一行は
先程目撃した巨大なハサミと悍ましい謎のゴブリンの行き先を南西と推測し、
F-7にあるソルティ・スプリングスへ情報交換を進めながら向かっていた。

向かう理由は脅威を回避する為だけではない。
当初の目的である知人や民間人保護を果たす為には
地図に掲載された要所の探索は不可欠。
それと同時にティルテッド・タワー探索準備も並行して行わなくてはならない。
従って、拠点となりうる場所も要求されてくるからだ。
幾度となく起こるトラブルに何度も予定変更を余儀なくされたものの、
開始から数時間を経てようやく順調と呼べる移動が行えていた。


ここまでは、の話だが。


「…………ぁ!!………ぁぁ!!!」



「…おい、聞こえているか?」
「ええ、何かがこちらに向かってきていますわね。」

何かに気づき足を止めたのは集団の最後方に位置する“果樹栽培師”豆銑礼。
全体への呼びかけに時同じくして音に気づいた“風紀委員”白井黒子が答える。
他の面々も耳を澄ませてみると南西から衝撃と大声が
徐々にこちらへ接近してきているのが分かる。

悲鳴だけなら誰かが襲われて逃げていると解釈可能だ。
だが、この激しい衝突音は一体?
その答えを知る時はすぐにやってきた。


「…………ぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!」

「ッ!全員伏せろ!」


見えてきたのは回転しながら急速に近づく緑と銀色の物体。
木々を次々なぎ倒しながら、その通り道にいる一行に迫る。
誰が叫んだか不鮮明な咄嗟の回避命令に従い
ゴブリンスレイヤーは初夏、礼はいのちの輝き、黒子は写影と
それぞれ近くにいた者を瞬時にしゃがませ、飛来物を回避した。
通り過ぎていった物体は衝突を繰り返す事で勢いを減速させ、岩石を最後に停止。
うう…と小さな呻き声をあげ、動かなくなった。


「これは…あの時のハサミだな。死んでいるのか?」

起き上がった一同が岩場に近寄り正体を確認すると
それは自分達が警戒していた謎の巨大文房具、ハサミだった。
表情が見えないせいで死んでいるとも気絶しているだけとも言える何とも微妙な状態
反応を伺おうと試しに剣で小突いてみるがピクリとも動かない。


721 : ◆c4nYy47bT. :2021/10/05(火) 08:09:00 Gd4K.Ovc0

「飴宮さん、確か首輪レーダーには死人には反応しないんでしたよね。
それで確認してみましょう」
「あ、うん分かった」
「そういえば貴方、彼女に対しても“さん付け”ですのね…
わたくしの事は相変わらず呼び捨てなのに…」

黒子からのツッコミを流す写影に促され、初夏は手に持ったレーダーを確認した。
その画面には自分達を表した六つの点滅の近くにもう一つ、
先ほどまでなかった点が追加されている。岩場で転がる無機物の生存の証拠だ。

「どうやらまだ生きてるようだけど…一体何が?」
「わたくし達が立ち去った後に森で敵と交戦。その後返り討ちにあった…
そう考えるのが妥当ですわね。鋏の近くにいた怪物も共に倒されたのでしょか」
「けど巨大な鋏をここまで吹き飛ばす芸当、そうそう出来るものじゃない。
返り討ちにした相手が強力な能力やアイテムを有しているのは確かだ。
敵か味方かは分からないけど警戒しておかないと。」


「詳しい事は分からん。だが、今やるべきことは
早急に‘アイツ’を対処しなくてはならないという事だ」

ハサミへ意識を集中していた五人はゴブリンスレイヤーが指し示す方向へ向き変える。
その光景は巨大な鋏の飛来など頭から抜け落ちそうな程の衝撃を彼らに与えた。
衝突を繰り返した事で舗装されたここまで続く一本道を進み
森の奥より大男が足元に転がる破壊跡を踏みしめ 一歩、また一歩と接近していた。
迫りくる男の姿には大きく分けて三つの要素が着目出来る。


一つ目は衣服。
人間の赤血とゴブリンの青血、二色が入交り全体を歪な紫に変色させた
その有様は男が危険人物である事を赤ん坊にすら分かりやすく伝えてくれる。


二つ目は頭。
正確な状態を確認できない正面からでも認識出来る後頭部の破壊痕は
生存不可能な状態で悠然と歩く男の異常性を簡潔に証明してくれていた。


最後は両手に携えた武器。これが一番彼らの脳に警鐘を鳴り響かせる。
右手には血が拭われておらず、最近凶器としての運用がされたであろう西洋の長剣。
左手には常人ならば片手で持つのが不可能なサイズのガトリング砲が装着されていた。


722 : ◆c4nYy47bT. :2021/10/05(火) 08:10:39 Gd4K.Ovc0


ジェイソンに支給された最後の支給品。
それはとある街を徘徊し、殺戮の限りを尽くした追跡者 ネメシス。
その怪物がアンブレラ社により支給された強力な武装兵器である。
兵器としての性能と脅威は街に生存していた精鋭の特殊部隊を
ほんの数秒で全滅させた事からも窺い知れる。

本来、ジェイソンにとって重火器の使用は得意とする方ではない。
基本は愛用している鉈や斧と言った近接武器がメインである。
だが、先の戦闘でヒャクメンハリボテゴブリンによりハンマーが破壊され、
回収した支給品にめぼしい物がなかった今、剣だけでは心もとない。
殺戮実行においては些細な拘りは不要
得手不得手よりも効率を考慮し、装着する事を決めた代物だ。



「何…あいつ…妖怪…なの?それに体に付いてる血ってまさか…!う、うえっ……」
「縺?縺?§繧?≧縺カ?」

常軌を逸した存在を目撃し、胃から吐瀉物が込み上げてくる初夏。
自身も非日常の世界にその身を置く存在ではあるが、
それは血生臭い戦闘や殺戮とは無縁。飽くまでも平穏の延長線上に過ぎない。
妖怪でありながらも一般人と同様な感性を持つ少女が
殺戮の化身とも言える姿を見て平静を保つなど土台無理な話だった。
恐怖する彼女の様子を見て、いのちの輝きが心配そうに傍で寄り添う。


(まさかアイツか?アイツが黒子を死の未来へ誘うのか…?
だったらボクは黒子を守るために何が出来る…!?考えろ考えるんだ!)

一方で普段は年齢の割に達観した、大人びた態度を見せる写影も
表にこそ出さないが心の動揺を抑えることは出来なかった。
会場に来て直ぐの頃に予知してしまった守るべき存在、白井黒子の死。
いつ、どこで、誰が、何故、どうやって引き起こすか不明の
血の花を咲かせる死体だけが写った不変ながらも『未確定』な未来。
それを『確定』に変える力を有した怪物の出現は
冷静沈着な少年の思考をかき乱すには十分過ぎた。
それでも彼は焦燥に支配されそうな中、自分が出来うる抗う術を模索し続ける。


「黒子ちゃん、君の能力で全員を連れ逃げることは可能か」
「口惜しい話ですが、全員は不可能ですわね」

接近を確認した礼は冷静に全員離脱の可否を黒子に問う。
その問いに黒子は悔し気な表情を浮かべ、否定の言葉で返した。

「先ほどの飴宮さん達の救助は通常通り行えました。なので、二人までは問題なし。
そして飴宮さんが連れてた謎の生き物は非常に軽い。体感ではありますが5キロもありませんでした。
それに華奢な写影さんを加えて、ようやく三人がギリギリ…と言った所でしょうか。」

白井黒子の持つレベル4スキル空間移動(テレポート)は確かに強力だ。
逃走、回避、救援は勿論、攻撃にも応用が利く。
しかし、彼女の能力は移動距離・質量に限界が存在する。
移動距離に関しては体力消費と脳への負担を伴うが連続転移でカバーする事が出来るだろう。

問題なのは重さだ
空間移動の質量限界は130.5㎏。
本来ならば人間を抱えて逃げる余程の肥満でもない限り十分過ぎる余裕がある。
だが、今回は人数が違う。
成人男性二人、女子高校生、女子中学生、小学生、そして謎の生物。
これだけ複数の転移を行うとなればまず間違いなくサイズオーバー。
なるべく一度に大人数、尚且つ非戦闘員を優先して逃がすという事となれば、
大人を離脱人員から除外する事はどうしても避けられない。

「ですからゴブリンスレイヤーさんと豆銑さん、殿方二人は確実に…」
「そうか、ならいい」


723 : ◆c4nYy47bT. :2021/10/05(火) 08:13:23 Gd4K.Ovc0

出さざる負えない残酷な結論をゴブリンスレイヤーが途中で遮った。
彼は集団から前へと抜け出し、此方へ迫り来る怪物の方に足を踏み出す。

「奴の足止めをする。お前は連れていけるだけ連れて先に逃げろ」

「ちょっと!アイツと戦うつもりなの!?動きも遅いし、今ならまだ逃げられるんじゃ?」
「いや、あのガトリングに背を向けて逃げるのはリスクが大きいよ。
何故かまだ撃ってきてはないけどもう十分射程内。逃走するなら誰かが気を引かないと…」
「よろしいんですの?殿を務めるという事は…」
「ヤツを野放しにすれば確実に犠牲者が出る。誰かが戦わねばならない。」

ゴブリンスレイヤーの脳裏に浮かぶのは共に連れてこられているであろう同郷の幼馴染。故郷をゴブリンに滅ぼされた惨劇から自分以外に唯一生き残った家族同然の少女。
彼女にはゴブリンとは、殺し合いの世界とは無縁の日常の中で生きていてほしい
だから、この怪物を近づかせる訳にはいかない。例えゴブリン以外であったとしてもだ。


「マメズク、悪いがお前も巻き込む事になる」
「………ここまで安定した動きが出来ていると思っていたが、
いつの間にか“下のイチゴ”になってしまっていたか。」

ゴブリンスレイヤーは放送前からの同行者に声をかける。
礼は妙な例えを呟きながらゴブリンスレイヤーの方を見つめ返す。
常に無表情の整った顔は崩れていなかったが、先程までは流れていなかった汗が伝っていた。
迫りくる怪物を前に取り残される事が決定し、恐怖と焦燥を感じないものなどいるはずがない。それでも取り乱さずにいられるのは彼の精神力のなせる業か。

「避けられない状況な以上、協力はさせてもらうが条件がある」

「なんだ」

「私は正義漢って訳じゃあないし、亡くして惜しい知人も連れてこられていない…
だから、ヤツを足止めをするにせよ排除するにせよ『私自身の命』を最優先に行動する。
もし全滅すると判断したら貴方を置いてでも一人で逃げる。それでも構わないか?」

「構わない。力を借りれるなら一時でも十分だ。」

礼から提示された条件を間髪入れずに承諾するゴブリンスレイヤー。
何も考えずに応えたのではないかと思うほどの即答。
だが、たった十数文字だったにも関わらずその言葉は力強いものだった。
その場しのぎなどではない清廉な意志を感じた豆銑は小さく笑う。

「約束とは神聖なものだ。
貴方の曇りなき返答に嘘偽りが無い事を信じて‘かませ犬’の役割を果たして見せよう」

ゴブリンスレイヤーと豆銑礼はほんの数時間の関係性だ。
自分は敬意を払うべき子鬼殺しの腕を、相手は自分の世界にないスタンドの有用さを見込んで、
協力関係を結んだが言葉一つで信頼を結べるほどではない。
だが、発した場が命を賭けた戦場であるならばその重みは別物となる。
礼は一度は敬意を払った男の言葉を信頼に足るものとして認めたのだ。


724 : ◆c4nYy47bT. :2021/10/05(火) 08:14:29 Gd4K.Ovc0

「…話は決まった。シライ、後は任せる。」
「はぁ…何と言っても意志は変わりそうにありませんわね。
ですが、わたくしも同じ立場なら同じ行動をとっていたでしょうし仕方ありませんか。
分かりました。風紀委員の名に懸けて必ず残りの皆様の命はお守り致しますわ。」

黒子は諦めるように溜息を零した。
本来は自分も残り、罪なき参加者に害をなすであろう怪物を仕留めておきたい。
しかし、写影たちを守りながら出来るかと言えばまず無理だろう。
全員逃走も叶わず、二手に分かれるという苦渋の決断は己の力量不足が招いた不徳。
ならば、殿を務める覚悟に恥じぬ働きをして見せようと堂々と宣言をする。

「黒子、これを」

意見がまとまった以上、時間を浪費するわけにはいかない。
急いで行動を開始しようとした矢先、写影が自分の名前を呼んだ。
そのまま振り返るとデイバックを一つ手元に投げ渡される。

「空間移動で逃げるって話になった時から荷物を一つに纏めて置いた。後は黒子の分だけ。」
「いつの間に…助かりましたが、この中身本当に全員分入っておりますの?」

手に持ったデイバックは3人分の荷物が入ってるとは思えないほど軽かった。
自分が現在背負っている物と何も変わらないように思える。

「どういう原理かは分からないけどどれだけ詰めても重さが変化しないんだ。
複数のバック分の重量を含めたら転移の制限をオーバーしかねない。
どうなるか分からない以上、最低限やれることをやっておかないと。」

図らずも主催に助けられた事になるのは不愉快だが重さの課題が一つ解決したのは事実。
自身の支給品もデイバックに収納すべく背中から外し、その手が止まる。
数秒の逡巡の後、自らのデイバックをゴブリンスレイヤーの前に差し出した。


「この支給品はお二人にお渡ししておきます」
「いいのか?お前の手持ちが無くなる事になるが」
「わたくしは既に自前の武器を装備してあるので心配御無用ですわ。
今は確実にそちらの戦力を補強すべき状況、何かお役に立てるはずです。
それに、もし悪いとお思いでしたら必ず生きて返しに来てくださいまし。」
「…感謝する」


ゴブリンスレイヤーは短く感謝の意を口にし、信頼の証を受け取る。
残された三人分の支給品が入ったデイバックは初夏に背負ってもらう結論になった。
黒子自身は移動の都合上持てないため、一番の年長で手隙の彼女が適任。
当人も助けられっぱなしで何もしない訳にはいかないとその任を引き受けた。


725 : ◆c4nYy47bT. :2021/10/05(火) 08:15:32 Gd4K.Ovc0

「縺?o縺√↑縺ォ縺吶k縺ョ?」
「ちょっと!暴れないでくださいまし!さ、写影さんはこちらへ」
「僕はおんぶ?」
「両手が塞がっているので止む負えないでしょう!ほら早くなさい!」

移動の準備を開始した黒子は左手に初夏の手をとり、右手にいのちの輝きを抱えこむ。
詳しい状況が分かっていないいのちの輝きが蠢くのを抑えながら、
最後に写影を自身の背に担げるよう身をかがめる。だが、彼は何やら不満がある様子。
小4にもなって知人の女性におんぶと言うのは年頃の男子には少々気恥ずかしいのだろう。
しかし、今は一刻を争う緊急事態。
我儘言ってる場合ではないとすぐに切り替えさせ、己の背中に身を預けさせた。

「全員掴まりましたわね?
無茶な移動になりますので離さぬよう握ってくださいませ!」

準備を終えた黒子は連続転移に備えるよう全員に呼びかける。
運営による能力への干渉が濃厚である以上、どのような弊害があるかは不明。
不安要素は残るが時間は残されていない。ならば、今はなせる事を信じて為すのみ。


「お二人とも…ご武運を!」


黒子はこれから死地に赴く二人に激励の言葉をかけた。
返答は返って来ない。しかし、気にする事無く空間移動を行使した。
周りに映る風景はガラリと変わり、接近する大男と対峙する二人の背中が遥か後方にある。
転移は無事成功。しかし、一度目の転移を終えた瞬間、普段以上の疲労と脳への痛みが襲う。
質量・移動距離に応じた体力消費と演算に懸る負荷の増加
恐らくはこれが自分に課せられた制限なのだろうと彼女は理解する。

だが目的地まではまだ距離がある。この程度の苦痛は止まる理由になりえない。
脳と全身にかかる過大な負担を無視して、転移と疾走を繰り返し続ける。
逃亡者たちは怪物へと立ち向かう戦士達の無事をただ祈るしかなかった。


726 : ◆c4nYy47bT. :2021/10/05(火) 08:17:27 Gd4K.Ovc0


【F-7 早朝】

【飴宮初夏@こじらせ百鬼ドマイナー】
[状態]:健康 混乱(中) 不安(大) ジェイソンへの恐怖(大)
[装備]:簡易レーダー@バトル・ロワイアル
[道具]:基本支給品×3(初夏、写影、命のかがやき)、ゴブリンの剣@ゴブリンスレイヤー、瓶入りの液体(付属の説明書は確認済み)@出展不明、飛竜の翼剣@世界樹の迷宮X、和三盆のお菓子@こじらせ百鬼ドマイナー、何かの紙@出展不明、インスタントカメラとスマートフォン@とある科学の超電磁砲
[思考・状況]基本行動方針:生き延びる
1:白井たちと共に妖怪?(ジェイソン)から逃げる。
2:ソルティ・スプリングス内にてゴブリンスレイヤーと豆銑が戻るのを待つ。
3:筆談してた人が気になる…どこに行ったの?
4:ターバンの人(アキネーター)は変質者だったのか、妖怪だったのか。
5:ハサミへの警戒は継続
[備考]
※44話以降からの参戦です。
※ハサミを付喪神(または網切の妖怪)、ディアボロを悪魔、偉人を霊と認識してます。
※いのちの輝き、ゴブリン及びヒャクメンハリボテゴブリンを妖怪と認識してます。
※いのちの輝き、美山写影の支給品はそれぞれのデイバック丸ごと、彼女のデイバックに入っています。

【いのちの輝き@大阪万博2025】
[状態]:『ルカの右ぽ』と融合中 疲労(小) 好奇心(今は特に飴宮) 成長中
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]基本行動方針:とりあえず飴宮についていく。
1:縺ェ縺ォ縺後??縺翫%縺」縺ヲ縺?k縺ョ?
2:縺ゅ?縺イ縺ィ縺溘■縲?縺?繧?
[備考]
※参戦時期は産まれたて。
※特技は今のところ「目から眩しい光を出す」、「大して威力はないがビームを出す」です。
 今後の成長によって何か新しい技を覚えるかもしれません
※横になって転がるを覚えました。
※体重は非常に軽いです(黒子基準で5㎏以下)

【白井黒子@とある科学の超電磁砲】
[状態]:健康、疲労(小→?)
[装備]:鉄矢×10とホルスター@とある科学の超電磁砲
[道具]:なし
[思考・状況]:基本行動方針:殺し合いを止める。
1:二人と一匹(飴宮、美山、いのちの輝き)を連れ、ソルティ・スプリングスへ移動
2: ソルティ・スプリングス内で二人(ゴブリンスレイヤー、豆銑)を待つ。支給品を返す約束を果たしてもらう。
3:当面は牛飼い娘さんの捜索を中心にする。
4:ティルテッド・タワー周辺には万全に準備を整えた上で赴く。

[備考]
※美山写影と出会った後、ペロ救出後より参戦です。
※制限により空間移動の重量・移動距離に比例して消耗が通常以上に激しくなっています。






「さて、随分と長話に付きあってくれたものだな。
あれだけ大層なブツがあるなら撃たない理由はないだろうに」

「思惑があるにせよ関係ない。こちらとしては有難い話だ。」


727 : ◆c4nYy47bT. :2021/10/05(火) 08:19:23 Gd4K.Ovc0

黒子達が消えたことをチラリと確認した二人は再び怪物へと目線を戻す。
標的の一部が逃走行動を開始したにも関わらず、
相変わらず進行スピードは緩慢そのもの。早くも遅くもなっていなかった。
その上、既に射程内に居たにも関わらず一向にガトリング砲を使用してこない。

この状況で最も警戒すべきは機関銃による遠距離攻撃。
それが分かっていた二人、黒子含めた三人は撤退に関する話し合いの中でも
いつ敵からの銃撃が行われても対処できるよう気を配っていた。
しかし、会議中の自分達を何時でも攻撃できたのにただ接近を続けるのみ。
結果としては大いに助かったが一体なぜ?

ハサミと同様に表情が確認できない以上、男の真意を窺い知ることは出来ない。
あまりの悠長さに「刺激さえしなければ攻撃してこないのでは?」
と一つの可能性が脳裏をよぎる。
だが、怪物が放つこちらを圧迫し締め付けてくる殺気とプレッシャーが、
そんな楽観的な可能性を直ぐに否定した。
ヤツは明確な殺意を持って向かってきている。戦闘は避けられない。

「覚悟はいいな」 「無論だ」

近づく勝負の時を前に、礼が一言だけ問い、
それに倣ってゴブリンスレイヤーも一言だけ応えた。
そして、遂にジェイソンが二人の元へと到達。対峙したまま睨み合いが続く
二人は即座に回避体勢に移り、いつ始まるか分からない銃撃に備える。
やがて怪物の左腕が徐々に上がっていき、その銃口はターゲットがいる正面へ
瞬間、ジェイソンがレールガンのトリガーを引く。
激しいマズルフラッシュの閃光を皮切りに死闘の火蓋が切られたのだった。


【E-7とF-7の境界 早朝】

【豆銑礼@ジョジョリオン】
[状態]:健康、疲労(小)
[装備]:スタンド『ドギー・スタイル』、野咲春花の傘@ミスミソウ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1
[思考・状況]基本行動方針:生存優先
1:ゴブリンスレイヤーと怪物(ジェイソン)を足止め。可能なら排除。
2:1が不可能と判断したら自分一人でも撤退。
3:飴宮初夏と赤い生物(いのちの輝き)を様子見がてら保護する。
4:美山写影は何か隠している。折を見て聞き出す
5:ティルテッド・タワー周辺には万全に準備を整えた上で赴く。
[備考]
時間軸はプアー・トム撃破後。

【ゴブリンスレイヤー@ゴブリンスレイヤー】
[状態]:健康
[装備]:ゴブリンスレイヤーの装備@ゴブリンスレイヤー、小鬼から奪った装備(粗末な棍棒や短剣)、並行世界のディエゴのナイフ@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、白井黒子のランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本行動方針:ゴブリンを殺す。首魁であるミルドラースも殺す。
1:怪物(ジェイソン)を足止め。可能なら排除。
2: ソルティ・スプリングスでシライ達と合流。
3:あいつ(牛飼い娘)との合流を優先する。
4:アマミヤと赤い生物(いのちの輝き)を様子見がてら保護する。
5:ティルテッド・タワー周辺には万全に準備を整えた上で赴く。
6:なぜ俺たちは本名で名簿に載っていない?
7: 異世界か……スタンド以外にもゴブリン退治に役立つものはあるのか?
[備考]
時間軸はゴブリンロードを討伐した後。


728 : ◆c4nYy47bT. :2021/10/05(火) 08:21:04 Gd4K.Ovc0

【ジェイソン・ボーヒーズ@13日の金曜日】
[状態]:全身の数ヵ所に切り傷や刺し傷、無数の銃創(特に両腕と脳)、何れも殺人に支障なし
[装備]:幸運と勇気の剣@ジョジョの奇妙な冒険、レールガン@実写版バイオハザード
[道具]:基本支給品×3(ジェイソン、ホル・ホース、ハサミ)、折り紙セット(2/5 黒、黄、青使用済み)、手にとり望遠鏡(『引き寄せる』『引き寄せられる』ともに現在使用不可)@ドラえもん、睡眠薬入りアイスティー、トリケラゲノム@モンスター烈伝 オレカバトル
[思考・状況]:基本行動方針:皆殺し
1:目の前の二人を殺す。

[備考]
参戦時期はフレディvsジェイソン終了後。
首輪の爆発か全身を消し飛ばされない限り何度でも復活します。
part9でやった他者の肉体乗っ取りは制限により使用できません。
た。
映画内で時折見せた瞬間移動能力を有しています。
能力に関する情報は以下の通り
・ジェイソン、追跡対象者が互いの存在を認識している事が必要
・同じエリア内でのみ可能。
対象がジェイソンのいるエリア外へ抜けると再び同じエリア内に入るまで使用不可
・瞬間移動の利用は逃走・隠伏する対象を追跡する場合のみ。
攻撃を回避する等の手段には使えない。
瞬間移動以外に原作、ゲームで使用した超能力を有しているかは不明です。


【ハサミ@ペーパーマリオ オリガミキング】
[状態]:気絶、ダメージ(大)、ホル・ホースへの不満(大)、傷だらけの人物(ジェイソン)への恐怖
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]基本行動方針:この世界で新しいオモチャを作る。
1:気絶中

【レールガン@実写版バイオハザード】
アンブレラ社が開発、実験投入した人型生物兵器「ネメシス」が
ロケットランチャーと共に装備していた武装の一つ。
ベースはヘリコプターなどの搭載機銃として開発された機関銃「M61」の小型改良版
「M134」とされている。(通称‘無痛ガン’)
装填数5000発
6連の束ねられた銃身は、回転する間に装填、発射、排莢を繰り返し、
発射速度は秒速100発を記録する。
現実的には重量や発射時の反動の問題で運用は不可能だが、アンブレラ社のオーバーテクノロジーと使用者の常人を超越した怪力が使用を可能にした。
原作では街に籠城していた特殊部隊S.T.A.R.S.を10秒足らずの掃射で殲滅した。


729 : ◆c4nYy47bT. :2021/10/05(火) 08:23:35 Gd4K.Ovc0








(…本当にこれでよかったんだろうか。)

木々を駆け抜ける黒子の背の上で美山写影は一人、
後ろを振り返りつつ、他の逃走者たちとは別の事柄を思案する。
その原因は生きるか死ぬかの非常時においても公言を避けた一つの支給品にあった。

現在頭に挿入しているスタンドDISC イエロー・テンパランス
情報不足で得体が知れないからと使用を躊躇ったが、必要な状況で能力を利用できない事を避ける為に荷物を纏める際に挿入したものだ。
実践利用していない現状では説明文の内容から推察する事しかない。
だが、スター・プラチナの強力な攻撃すら完全に防御出来る変幻自在なスライムの防御壁は
怪物の怪力は当然の事、ガトリング砲の銃撃においても有効な対抗策になるはずだった。

もし写影が残る事になった場合 白井黒子は絶対に反対するだろうが、
その時はゴブリンスレイヤーに貸与すれば自身は前線に出ることもない。
寧ろお互いスタンドへの知識に疎い状態ならば
戦闘経験豊富な彼が装備した方が有用であると言えるだろう。

それでも、写影は全員の救世主になり得るDISCの存在を秘匿し続けた。
理由は単純だ。戦う力を失いたくなかったから。
しかし、それは決して自分可愛さの保身から来るものではない。

(いや、僕の力は黒子の為だけに使う。あの時そう決めたんだ
例えあの二人を犠牲にする事になったとしても…
黒子にこんな事考えてるってバレたら軽蔑されちゃうかな?)

殺し合いにおける脅威はあの怪物一つだけではない。
もし逃げた先に同様の存在がいたら?
予期しない事故が発生し、彼女が巻き込まれたら?
参加者同士の戦闘が発生していて、彼女が介入する事になったら?
共に逃げている女子高生か謎の生物が何らかの原因で彼女に害を及ぼしたら?

能力酷使で疲弊しきった正義の味方に死の未来を回避する術などないだろう。
その時、友達を守れる力を手放す訳にはいかない。傍を離れる訳にもいかない。
彼女を守る事がここでの僕の正義。だから、彼らを切り捨てた。

無論死んでほしいなどとは考えていない。
初夏たちと同様に二人の無事を祈っているのも事実だ。
しかし、彼女たち程純粋な気持ちが籠った願いではない。
スタンドに関する情報の取得、何より黒子を守る為の
戦力として必要だからと下卑すべき打算が込められてしまっている。

そんな自分が正義だなんだとは片腹痛い…そう苦笑しながらも写影の心は決まっていた。
「如何なる犠牲を払っても正義の味方(白井黒子)を守る我儘を貫き通す」
絶対の未来を変えんとする決意を胸に彼は再び前を向きなおした。

タロットカード14「節制」
その正位置が指し示す意味は物事における調和・協調。
その逆位置は物事の停滞、そして分裂である。
現状は順調からは程遠く、一行は分断。アルカナは逆位置を指し示している。
このまま逆位置を向き続け更なる崩壊を齎すのか、それとも正位置となり進展を齎すのか。
全ては『黄の節制』の導き次第。

【F-7 早朝】

【美山写影@とある科学の超電磁砲】
[状態]:健康
[装備]:イエロー・テンパランスのスタンドDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:
[思考・状況]:基本行動方針:黒子を守る。何を犠牲にしても
1:黒子を守る。自分の持つ能力の全ては、友達の彼女のために使う。
2:移動中、移動後の黒子の護衛を行う。
3:飴宮さんと赤い生物(いのちの輝き)を様子見がてら保護する。
4:折を見て豆銑さんからスタンドについて話を聞きたい。
5:ティルテッド・タワー周辺には万全に準備を整えた上で赴く。


730 : ◆c4nYy47bT. :2021/10/05(火) 08:26:05 Gd4K.Ovc0
以上で「カニンガムの怪物」後編投下終了です。
前編同様、問題があれば修正、場合によっては拙作を前編のみの作品とさせていただきます。
駄文失礼しました。


731 : ◆vV5.jnbCYw :2021/10/05(火) 22:40:02 0YfxIp9Y0
投下お疲れ様です。

奉仕マーダーでは無いが、対主催の協力に積極的でもなく、
黒子さえいれば良いという写影の独特なスタンス、心の動きが良く分かって面白かったです。
それでは私も投下しますね。


732 : 叫べ、仮面の裏側からでも ◆vV5.jnbCYw :2021/10/05(火) 22:40:45 0YfxIp9Y0
「ペルソナ!!」
その叫び声は、それまでの弱々しさを感じる少年のものとは思えなかった。
前へ進むことを力いっぱい求める声に応えるかのように、海賊のペルソナは銃を乱射する。


「その力ごと乗り越えます!先輩!!」
しかし、強い想いを抱いて戦うのはひろしだけではない。
精神の具現となった黒槍を振り回し、銃弾を打ち返す鈴奈もまた同じだ。
悪夢から覚める為、見知らぬ力を駆使して己にキバを剥く「先輩」を倒す為、彼女も戦う。


(打ち返された!?)
ひろしは知る由も無いが、鈴奈は仮想の銃を持つ相手と戦ったのはこれが初めてではない。
仮想空間の力で造られた二丁拳銃を持つイケPと戦ったことで、その対処には慣れていた。
一部は躱し、避け切れないものは槍をバトンのように回すことで一部を弾く。


「僕はあなたの『先輩』ではありません!!」
ひろしは力強く説得する。
彼の言葉と背後の銃は雨あられとなってなおも鈴奈に襲い掛かる。

「嘘を言わなくてもいいですよ、先輩。私の目の前に現れてくれたのは、あなただけですから。」
しかし、言葉で造られた弾丸も、ペルソナで造られた弾丸も相手を貫くことは無い。


(ペルソナの銃だけでは駄目なら……!!)
懐にあったショックガンの引き金を引く。
何発かは打ったが、それでも素人に毛が生えたものである以上は、コントロールに難はある。
だが、当たれば大型動物でさえ気絶させられる電磁波だ。
しかし、当たる直前で鈴奈は槍を横に一振り。

「……!?」

カタルシスエフェクトで打ち払われ、レーザーは霧消するかと思いきや、痺れは彼女の白魚のような手にフィードバックした。
電気を操るのに長けたペルソナであるキャプテン・キッドは、ショックガンの威力も上げたのだ。


(銃の威力が増してる?)
武器の威力まで上げるとは、どんなからくりだと思いながらも、願ってもみない幸運だと割り切り、ショックガンを乱射する。
ペルソナの銃と、ショックガンによる波状攻撃で、勝負は大きく傾いた……と言うことは無かった。

傾いたのは、勝負ではなく、一本の腐りかけた木。
それは単なる偶然ではない。
鈴奈は既によく知っている同行者の「災厄」だ。
倒れた太い幹は巨大な盾になり、二種類の銃弾を纏めて防いだ。
脆くなっていた木はそれで文字通り木っ端みじんになるが、それでも一時しのぎには充分役に立った。


733 : 叫べ、仮面の裏側からでも ◆vV5.jnbCYw :2021/10/05(火) 22:41:07 0YfxIp9Y0

木が壊れてもなお、ひろしは波状攻撃を仕掛けようとする。
しかし、思い通りには行かない。
カチ、カチと引き金の音がしながらも、実在する方の銃が光を発さない。
つまり、エネルギーが無くなってしまった。
(しまった……乱射しすぎたか……!!)


「クロちゃんは、手を出さないでください。」
戦いに「災厄」と言う形で干渉したクロを、鈴奈は咎める。

「いいの?」
そう言うと赤いマフラーの少女は、そのまま2人の場所から離れて行く。
クロとしては、この戦いは「鈴奈が勝った方が良い」と言うぐらいでしかない。
極論を言うと、彼女としては想い人である『豹馬君』に最終的に会えれば、どの戦いで誰が勝とうが負けようが、生きようが死のうがどうでもいい。
勿論恋人のことを卑下したエーリュシオンのような存在は別だが、ひろしに関しては個人的な恨みも無い。
よしんば鈴奈が負けてしまっても、ひろしも消耗しているはずだし、彼女にとっては2人分の参加者を落とせるチャンスになる。


「これは、私と先輩の戦いです。」
彼女にとって、これは悪夢から覚め、本当に先輩と結ばれるための大きな第一歩だ。
それは運否天賦で決まっても意味はなく、彼女の心の力で切り開かねば意味がない。
少なくとも、彼女の胸の内ではそうなっていた。


ペルソナとカタルシスエフェクト。
異なる世界の、心の禁忌をトリガーに現れる力同士のぶつかり合いが始まる。
「何を言っているのか分かりませんが……僕はあなたを止めます。」
「ふふ、先輩……いますぐ解放してあげますね。」
手数が減った分は、ひろしが不利。
味方が減った分は、鈴奈が不利。


ここから有利に傾けるには、己の意志の強さしかない。
「キャプテン・キッド!!撃ち続けて!!」
ひろしの命令通りに、ペルソナは銃を撃ち続ける。
実弾ではない、精神エネルギーの銃弾だが、それでも草地を剥がし、地面に小さな穴を作っていった。
彼はもう逃げたくはなかった。
何が彼女をああさせたのかは分からないままだが、それでも錯乱状態に陥っているとしか思えない彼女を、正気に戻したかった。


しかし、その弾数は多かれど、目的の相手に当たることは無い。
彼女は姿勢を低くして、弾幕を潜り抜けたからだ。
そのまま槍を突き出し、突撃兵のごとくひろし目掛けて走る。


結論から言うと、ひろしはペルソナこそ得たが、戦法をマスターしたわけではない。
下手な鉄砲も数撃ちゃ当たると言うが、当たるまでに待ってくれる敵は少ない。
対して鈴奈は、精神世界の中とは言え、デジヘッドや楽士との戦いを繰り返している。
逃げに徹していた者と、戦いの経験が僅かでもある者。
どちらが戦いの主導権を握ることが出来るかと言えば、それは誰でも分かることだ。


734 : 叫べ、仮面の裏側からでも ◆vV5.jnbCYw :2021/10/05(火) 22:41:26 0YfxIp9Y0

「私だって、やる時はやるんです。先輩が自信を付けさせてくれたおかげですよ。」
ディスクリートランサー。五月雨のごとき高速の八連撃がひろしに襲い来る。

「っ……!!」
ペルソナを前面に出して連撃に耐える。
しかし、ダメージはペルソナの使い手にも返って来る。
何とか致命傷だけは避けているが、終わりはそう遠くない。


(やはり……僕は……)
頼みの綱のペルソナもその場しのぎの防御にしか使えず、諦めかけるひろし。
そこへ、二人の攻撃の間に割り込むかのように、雷が落ちた。

「きゃっ……!!」
キャプテン・キッドが放ったのは、「ジオ」。
眩しい光と、痺れが鈴奈を襲う。
逆転勝利にこそならなかったが、防戦一方の状況からは脱却できた。


(このままじゃ勝てない……。)
さっきの連撃を食らった時に、ひろしは十分に理解した。
正面からぶつかり合っても、戦闘経験も無く、運動も決して得意ではない自分はこの女性には勝てないことを。


(ならば……僕の得意なことで勝負するのみ!!)
決断早く、ひろしは踵を返して走り出した。
彼が自信があること、それは武力を使った戦いではなく、知力を巡らせた逃走だ。
回りには目もくれず、草原を横切り、岩を飛び越え、全力疾走。


「先輩、待って下さいよ。卑怯ですよ。」

鈴奈は槍を振りかざし、『先輩』を追いかける。
夢でも会えた想い人を、手放すつもりはなかった。
しかし、『先輩』の足こそはさほど速くないが、どういう訳か追い付けない。


(よし……乗ってきた!!)
街道から離れ、立ち木や瓦礫の山を上手く利用し、何度も曲がる。
自分より足の速い相手に追いつかれない方法を、洋館での死と隣り合わせの鬼ごっこで、良く知っていた。

逃げながら考える。
ひろしの得意としていたことだ。


今度は一転して、鈴奈の方が不利になる。
彼女ら帰宅部が戦っていたオスティナートの楽士にも、storkや少年ドールのように、逃げ隠れしながらの戦いを得意とする者はいた。
だが、彼等との戦いでは、鈴奈はまだ観客に近い存在で戦いに参加はしていなかった。


「先輩……どこにいるんですか?」
空き家に入っていった所までは見たが、その先でひろしを見逃してしまった。
ふらふらと、見えなくなった想い人を探し続ける。


(どうすれば良いでしょうか……)
どうにか鈴奈を振り切り、ひろしは空き家の2階の広間にあったタンスに隠れていた。
逃げるという手段では、自分の方が上手なのが分かったが、逃げ続けていても殺し合いに乗っている彼女を止めることは出来ない。
上手く不意を突いて逆転を狙わねばならないが、どうにも決断が出来なかった。
ずっと彼女を止めるのに時間を費やすわけにも行かない。
彼女だけではなく、同じように殺し合いに乗っている黒と赤の少女も、金髪の殺し屋も止め、どこかにいるはずの瞳を助け、町に戻らねばならない。
死んだであろう牛飼い娘だって、出来るなら埋葬してあげたい。
折角新しい力を手に入れたのに、使いこなせない自分が不甲斐なかった。


735 : 叫べ、仮面の裏側からでも ◆vV5.jnbCYw :2021/10/05(火) 22:41:55 0YfxIp9Y0

「先輩!!出てきてくださいよ、寂しいですよ。」
家に入ってきたらしく、タンス越しからでも彼女の声が響く。
迫力のある声だったが、ひろしが感じたのはそれだけでは無かった。
どこか寂しさを感じる声だった。


(彼女も……そうだったんでしょうか。)
ひろしは知っていた。
何も悪くないのに理不尽に出くわしてしまい、それ故に暗転した人生に納得できず、理不尽をばら撒く存在のことを。

(僕は……彼女の理不尽も止める!!)
ひとりの寂しさはひろしだって知っている。
あの洋館で、自分以外の同行者が皆食われてしまった時は、恐ろしさのみならず孤独感が彼を襲った。
あんな気持ちは、誰にも味合わせたくはない。

足跡が2階に近づいた時だった。
ペルソナを再度出し、発砲。
しかし彼女に当てるのは銃弾ではなく、タンスの引き戸だ。
ターゲットは、鈴奈ではなくタンスの戸の留め金。


「………!?」
大きなタンスの引き戸が飛んで来たことで驚くが、カタルシスエフェクトの槍で簡単に破る。
しかし、時間は十分に稼げた。
飛んでくる引き戸は、遠距離武器のみならず、面積の広さを活かした盾や目隠しにもなる。

「ペルソナ!!」
相手の動きが止まった。
今こそがチャンス。
動いている相手には狙いが定まりづらいが、この距離で動いていない相手なら外すのが難しいぐらいだ。
戦車のアルカナは、強い意志や実行力を秘めている。
従って、戦いの意志が強い者にとって、戦車のペルソナほど適しているものはない。

海賊のペルソナが、鈴奈の右足を撃ち抜く。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

(この痛みは……!?)
ペルソナの力で食らった一撃は、鈴奈に確かな痛みを与えた。
ショックガンの痺れとは異なるそのはっきりとした刺激は、到底夢では味わえない。
μの力で造られたスタンガンの痺れや、炎の熱さはメビウスにいても感じることは出来た。
仮想空間のメビウスでさえ、決して味わうことが無い鋭い痛み。
何をどう間違っても現実でしか味わうことの出来ない痛みを受け、立つことに対して脳が危険信号を出し、そのままへたり込んだ。


「これは……夢じゃない!?」
先程までの勢いが嘘のように、静かな口調で呟いた。

「気が付きましたか?」
ひろしはいつもの穏やかな口調で、鈴奈に話しかけた。
ペルソナを引っ込め、仮面を外して。
「あなたは誰なのですか?」


全く異なる戦法に全く異なる力、そしてメビウスとは勝手が違う空間。
彼女とて落ち着いてみれば、目の前にいる男が先輩で無いと考えるのは簡単だった。


736 : 叫べ、仮面の裏側からでも ◆vV5.jnbCYw :2021/10/05(火) 22:42:22 0YfxIp9Y0

「僕はあなたの先輩ではありません。ですがあなたが先輩の所へ帰るための協力は出来ます。」
「先輩……じゃないなら……。」
その表情はまだ受け入れ切れてないが、段々とその視線はひろしに向いていた。


「またその人に会えるまで、別の誰かに頼ってみてはどうでしょうか?」
ひろしはその手を差し伸べる。
しかし、ゆめゆめ忘れてはならないことがある。
戦車の「逆位置」には暴走、怪我、困難などの言葉があるということだ。

この時、ひろしは鈴奈の攻撃が止まってしまったことで、自分の頭脳が勝利したと僅かながら思い込んでしまい、それ故に彼女に言ってはならない言葉までかけてしまった。
帰宅部で出会った部長との関係が運命の人と呼んでも良いぐらい密接になり、裏切られてなお彼のことを思い続けた鈴奈に、出会ったばかりのひろしの言葉が通るだろうか?


「私には、先輩しかいないんですよ!!あなたが先輩の代わりになれる訳がありません!!」
家全体に衝撃が走る大声が轟き、ひろしの鼓膜を刺し、空き家にビリビリと衝撃が走る。
耳を塞ぐ暇もなく、そこから不安定な姿勢からも、槍が振るわれる。

「ペルソナ!!」
慌てて仮面をつけ、ペルソナを呼び出す。
フックの腕で槍を止めるが、右手には予想外なまでの衝撃が返ってきた。


「落ち着いてください!!大丈夫です!!僕がついています!!」
負けじとひろしも大声を出して、再び暴走する鈴奈を止めようとする。


――――そんなの無理ですよ……絶対
――――大丈夫、俺がついてる


「先輩でもないのに、その言葉を吐くなあっっ!!!!」
その口調も、勢いも、攻撃性も、気弱だった少女のもととはとても思えない。
槍の勢いはさらに増す。
ひろしの傷はまたしても増えて行く。
最早一撃で殺されるのを防ぐので精いっぱいだ。


737 : 叫べ、仮面の裏側からでも ◆vV5.jnbCYw :2021/10/05(火) 22:42:54 0YfxIp9Y0


「ジオ!!」
雷を落とし、再度二人の距離を離す。
再び鬼ごっこが始まる。
今度は鈴奈が片足を怪我している以上、今度はさらにひろしが有利になる……はずだった。


彼女の決意は、片足の痛みなど無視して走る。
先輩を驕った相手など、先輩を侮辱したことになるし、到底生かしておけない。

(この世界が現実でも、先輩の下へ帰るまで戦うしかない!!)
彼女は変わらない。
そこが夢でも現実でもメビウスでも、彼女にとって大事なものは変わらない。
目の前にいるのが操られた先輩ならば、戦って取り戻すのみ。
目の前にいるのが先輩で無いならば、倒して先輩の下に帰るのみ。


空き家から出ても、状況は変わらない。
槍を振りかざした少女は、なおもひろしを追い続ける。


彼女の攻撃が背後からひろしを貫く瞬間、大きくジャンプし、転がっていた岩を飛び越える。
その槍の一撃は岩にぶつかったことで止められ、衝撃はその両手に返って来る……はずだった。
彼女の放った槍の技、ストライクピアースは一撃で岩を貫いた。


「!!」
思う念力岩をも通す
どんなことでも、一心に思いをこめてことに当たれば、できないことはないという諺を、そんなことを考えている暇もないのに思い知らされる。
砕けた岩の破片が背中を打ち付けるが、痛みに動けなくなっている暇はない。


このままだと怪我をしている分、追いつかれるのは時間の問題だと、彼も分かっていた。

(考えろ、考えろ、考えろ!!)
出血と疲労のせいで、いつもよりも頭が回らないが、なんとか打開策を組み立てる。
逃げる相手は怪物ではない、弱さも持った人間。
怪物ほど思考回路は単純ではないが、それ故付け入るすきもある。
最も怖いのは槍であって、追い付かれればその時点で死が確定するわけではない。


(ならば……これが答えだ!!)

まずはペルソナの銃撃を、地面に打つ。
勿論場所は、石畳ではなく土が露呈している場所だ。
土煙がもうもうと舞い、鈴奈の視界を遮る。


時間を稼げるのは一瞬。だが、それで十分。
残ったペルソナの力の全てを、彼女に打ち込む。
本当ならこのようなことはしたくないのだが、言葉による説得が不可能な以上はこれしか方法が無かった。


738 : 叫べ、仮面の裏側からでも ◆vV5.jnbCYw :2021/10/05(火) 22:43:17 0YfxIp9Y0

「僕は生きる!!」
「私と先輩の想い、思い知りなさい!!」

2人の声が、町に響く。


「ペルソナアアアァァァ!!!」
「終わってええええええぇぇぇぇ!!!」

ひろしはジオと一斉射撃による波状攻撃
それに対して鈴奈は、攻撃回数に頼るのではなく、渾身の一撃であるフラクタルスライサーで迎え撃つ。


強い想いの下から放たれた波状攻撃と、想い人との間で生み出された乾坤一擲の一刺しがぶつかり合う。


攻撃が届くのは鈴奈の方が先。
だが、ひろしはペルソナのフックで刺突を受け止める。
腕から血がどくどくと流れるが、更にペルソナは銃を乱射する。



精神の具現だけで行われたとは思えないほどの爆発が起こり、両者吹き飛ぶ。


「まだだ……」
身体中がズキズキと痛み、どちらが上か下かも覚束ない。
そもそもラッドに何度も殴られた時のダメージだって、癒えていないのだ。
こんなことなら、瞳からもう1,2個キノコを貰っておけばよかったと少し後悔する。
だが、彼女を止めると言いいながら、このまま倒れるわけにはいかない。


目の前で鈴奈は倒れている。
ひろしは一歩間違えれば即死の綱渡りの戦いで、勝つことが出来た。
勝敗を分けたのは、彼女は先輩を行動基準にしていたが、ひろしは自分の意志に固く根を張って戦い抜いた。
そんなほんの少しの違いでしか無い。

「痛……。」
立ち上がると、それだけで視界が歪んだ。
彼女の安否を確認したい。
こうでもしなければどうにもならなかったが、それはそうとして生きているなら、甘露寺さん達が待っているはずの町へ連れて帰りたい。


結局その想いは叶わず、体力を使い果たして倒れた。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


(あんまり遠くへ行かないで欲しいな。合流するのが面倒になるし。)

ここはC-6の街道から少し離れた場所。
1人で手持無沙汰にしていたクロは、誰かが来ないか見張っていた。
結局の所来たのはゴブリン達だけだが、いずれも彼女に触れることのないまま、様々な不幸によって倒された。
向こう側で轟音が響いた。
それは確かに鈴奈とひろしがいた方向からの音だった。


「まずいな……」

極論を言うと、クロにとってひろしは言わずもがな、鈴奈でさえも死んだって悲しむことは無い。
大事な人は1人だけだ。
だが、問題は今の音を聞きつけて、誰か他の人が来る可能性があるということだ。


そう思うとすぐに、別の方向からエンジン音が聞こえてきた。

(どうしようかなあ……。)
二次災害が起こればラッキーだが、あの仮面の男と車に乗った者達が同盟を組んだら。
あるいは鈴奈が何かのはずみで、自分のことを話したら。


嫌な予感を感じてくるが、そうしている内に遠くに見えた黒塗りの大型車が、鈴奈たちの方向へ走って行く。
既にもたらされた災害により、車が使えないほど地面は歪んでいるが、彼らの何人かは車を停めてそちらの方向に歩いていく。


739 : 叫べ、仮面の裏側からでも ◆vV5.jnbCYw :2021/10/05(火) 22:43:35 0YfxIp9Y0

この場を離れるか、鈴奈たちの元に戻るか。
災厄の元凶たる少女は、物陰でしばしの間、悩み続けた。

【C-5 市街地 /早朝】

【神楽鈴奈@Caligula Overdose-カリギュラ オーバードーズ-】
[状態]:ダメージ(大) 気絶 聖帝エーリュシオンに対する怒り(極大) 片足を負傷
[装備]:一括首輪爆破装置@ロワオリジナル
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~2
[思考・状況]基本行動方針:優勝し、先輩がいた場所に帰る
1:先輩を驕ったひろしを殺す
2:夢でも現実でも、先輩の言葉を信じて戦う
3:先輩は、私とずっと一緒に居てくれると言ってました……なのに、なんであの天使は私と先輩の仲を否定するんですか…?
※参戦時期は楽士ルート最終決戦で主人公に裏切られ敗北した直後です。
※キャラエピソードは完遂済みです
※この殺し合いと元世界での主人公の裏切りを夢だと思い込んでいます。
※ひろしのことを主人公だと誤認しています。


【ひろし@青鬼】
[状態]:ダメージ(大) 疲労(大) 気絶 顔面に殴られた跡、身体中のあちこちに裂傷
[装備]:ショックガン@ドラえもん
スカルの仮面@Persona5
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない、瞳、牛飼娘と共にゴブリンスレイヤー、空条徐倫を探す
1:神楽鈴奈を助ける
2:ホル・ホース、プッチ、ディアボロ、瞳への警戒
3:出来ることなら同行者の黒い少女(クロ)も止める
[備考]
参戦時期は館から脱出した後です
※「ジョジョの奇妙な冒険」の参加者について、一定の情報を得ました。
※牛飼い娘は死んでいると思っています。
※ペルソナ(キャプテン・キッド)の力に目覚めました。




【C-6 草原 /早朝】
【クロ(リーダー)@最悪なる災厄人間に捧ぐ】
[状態]:健康、聖帝エーリュシオンに対する怒り(極大)
[装備]:ー
[道具]:基本支給品、耐氷ミスト(残り1個)@世界樹の迷宮シリーズ、ランダム支給品1~2
[思考・状況]基本行動方針:『豹馬君』と一緒にいる、ずっと
1:『豹馬君』のもとに帰る
2:『豹馬君』のそばにいる
3:『豹馬君』と生きる
4:『豹馬君』は、泥人形なんかじゃない……!『豹馬君』を侮辱するなら、跡形もなく消し去ってやる!!
5 :危険を冒して、鈴奈の下に戻る?それともこの場から離れる?
※参戦時期は少なくても「災厄に捧ぐ」にて後追い自殺した以降です。
※透明人間であるため普通の生物から彼女の声や姿を認識することは出来ません。
ただしこのロワでは「見えないものが見える」キャラであれば彼女を認識することが可能です。
※このロワでは世界改変の力で直接人を攻撃することが出来ません、結果的に攻撃を受ける形であれば可能です。(倒した電柱がたまたま当たった等)


※車の乗員たちの状態は前回と変わらないため割愛


※C-5・6の間に黒塗りの高級車@真夏の夜の淫夢が留められました。


740 : 叫べ、仮面の裏側からでも ◆vV5.jnbCYw :2021/10/05(火) 22:43:47 0YfxIp9Y0
投下終了です


741 : 叫べ、仮面の裏側からでも ◆vV5.jnbCYw :2021/10/05(火) 23:20:09 0YfxIp9Y0
すいません。
ひろしの装備を ショックガン→なし です。


742 : 名無しさん :2021/10/06(水) 22:52:23 f6Px5al60
投下お疲れ様です
美山くんは原作では単発ゲストキャラでしたが、このロワではかなり独特の存在感を放っており、氏の手腕をひしひしと感じました

クロとひろしの激突はまさにクロスオーバーの妙に満ちており此方も此方で非常に濃厚なバトルを楽しめました


743 : ◆bLcnJe0wGs :2021/10/08(金) 21:48:52 1pDoPO5g0
自己リレーを含みますが、コーガ様、理愛、まみか、シャドウ茜、鳥月、ブースカ、アンテン様(NPC)、目玉おやじ(意志持ち支給品)で予約します。


744 : ◆c4nYy47bT. :2021/10/08(金) 22:51:13 ur.X/CsM0
遅くなりましたが投下お疲れ様です。
戦闘のメインとなったCaligula、青鬼双方の作品への深い理解がなくては書けないバトル
思わず画面に釘付けになってしまいました。
ひろしが青鬼での経験を活かした逃げの一手や先輩への愛ゆえに起こるひろしと鈴奈のすれ違い
そして、なにより戦いの決着となるぶつかり合いまでの一連の動きが個人的にお気に入りです。
自分も氏のような描写の説得力と熱さが両立した作品が作れるよう精進していきます。


745 : ◆bLcnJe0wGs :2021/10/12(火) 08:22:50 Flfz32Oo0
失礼します。予約からシャドウ茜、鳥月、ブースカ、目玉おやじを外させて頂きます。


746 : ◆EPyDv9DKJs :2021/10/12(火) 19:25:25 OSoQ9dF60
ザメドル、アカツキ、結芽、総司、総悟
予約します


747 : ◆bLcnJe0wGs :2021/10/13(水) 19:35:48 Ful1XfLY0
失礼します。 予約を破棄させていただきます。


748 : ◆EPyDv9DKJs :2021/10/14(木) 15:44:12 MVFWYc.s0
投下します


749 : ◆EPyDv9DKJs :2021/10/14(木) 15:45:24 MVFWYc.s0
「ごきげんよう、お嬢さん方。」

 草土の自然が残る開けた場所に集う四人の強者。
 そこへ姿を見せた、深夜の闇の中に眩く煌めいた金色の髪の男。
 人としては余りに華奢、しかし細身の身体から浮き出た筋肉は別物。
 異質。この男を言うなればそう比喩するほかないだろう。

 蘇った戦鬼も、
 異なる新選組も、
 天才と謳われた刀使も、
 各々が何かを成す為に戦ってきた歴戦の戦士である以上、
 命懸けの戦いや修羅場をくぐってきた経験上容易に気づき身構える。
 目の前の存在は紛れもない『脅威』であり『驚異』なのだと言うことを。
 余所見などしようものならば、即座に首を斬り落とされるような威圧感。
 笑顔を浮かべてるのは、強者を前にしてる少女一人ぐらいなものだ。

「はいガキは一旦おとなしくしてろ。」

「私、何も言ってないんだけど!」

 沖田総悟に首根っこを先に掴まれ抗議する結芽。
 確かに何もしてないが、明らかに動く気満々に目を輝かせていた。
 まだ相手は穏便な対応をしている。無暗に刺激するものではない。
 とは言え、あれはそういう話し合いどうこうの領域にすら立ってないのは、
 彼とて理解してないわけではないが。

「余り身構えないでいただきたいものだ。
 此方としても忌まわしき首輪を外すための協力者を募っていてね。」

 殺し合いの場にしては爽やかで、
 穏やかな風が吹き抜けるかのような声をかける。
 素直に戦うのもいいが、この中に首輪を何とかできる技術者、
 あるいはそれに類した人物がいるのであれば話は別だ。
 彼にとって最大の敵は牙狩りですらなく、首輪だけが唯一の天敵。
 牙狩りがこの百名以上の中にいれば別かもしれないが、
 一度牙狩りに負けた以上それらに油断をつもりはない。
 解除さえできれば、負けることはないのは確実だ。

「協力者か。しかしお前には致命的に足りないものがあるな。」

 四人の中で一歩踏み出すのはアカツキ。
 この中で一番生真面目な性格をしているのと、
 先の結芽を諫めたことから対話と言う場面では、
 彼が適任だと他の二人も十分に理解しており彼に任せる。

「ふむ、なんだね?」

「お前は我々を『協力』ではなく『使い倒す』算段なのだろう。」

 『殺し合いを止める』とかではなく、『首輪を外す』を優先とした物言い。
 彼にとっては他者の生き死にはどうでもよく、自分のみを優先しているだけ。
 その時点で得るべき信用は皆無。軍人に属していた以上信用と言うのは極めて重要。
 相手は無知な子供でも愚鈍な輩でもない。紛れもなく脅威と認識できる器を持つ。
 それを理解してない相手を傘下に入れる、或いは入るのは先のことを考えれば論外である。
 結芽でも取り扱い注意なのに、今相対する相手を前に制御などできるはずもない。

「なるほど……それは失礼した。
 何分、人間の価値観を当てはめるのが難しい種族なものでね。
 吸血鬼だの血界の眷属(ブラッド・ブリート)だの、まあ人間ではないのだよ。」

「あー、そりゃ納得ですねー。」

 双方の沖田からすれば異種族と言う存在は腐る程いる。
 互いに剣技は何処まで行っても殺人の手段でしかない。
 一方でその剣技を高潔なものとして扱う存在も少なからずいる。
 特に、そういう英霊が多いカルデアの方の沖田は騎士道精神を持ったのが多い。
 どちらかと言うとアウェー寄りで、モードレッドとかの方が気が合う。

「だが此処は一時的な協力を望む方が得策とは思わないか?
 君等は既に臆した。一時的な協力の道もあるはずだろうに。
 先ほど出会った彼女と同じように、無駄な争いを繰り返すのかい?」

「ま、ジャンプで吸血鬼は色々いるもんでさぁ。
 おたくは食った人間の数も数えられないタイプなのはわかる。
 後、ついでに俺となんか中の人被ってるのがなんか腹立つんで。」

 啖呵を切る総悟ではあるが、余り相手にしたくない存在ではある。
 嘗て相対した虚を前にしたときのような、勝てるかどうかが怪しい相手。
 そんな危険な存在、ホイホイいないでほしいと思いたいものだ。

「お前が他者を脅かす外敵である以上、ここで討つのみ。」

 此処で倒さなければ殺戮を振りまく災禍。
 相手は穏便な対応をしてるのではない。自分が強者であり、
 それ故に相手が従うと言うことを信じて疑わない存在だ。
 このまま生かして放置する道理などどこにもなく。


750 : ◆EPyDv9DKJs :2021/10/14(木) 15:46:57 MVFWYc.s0
「決裂か。元より望みは薄かったが仕方が───」

 言葉を遮るように宙を舞うザメドルの左腕。
 彼の後方には総司がおり、何をされたかはすぐにわかる。

「あーすみません。交渉決裂なのに悠長に喋る隙だらけだったもので。」

 斬り合いに卑怯も正々堂々も何もない。
 ただひたすら斬るのみ、それが彼女の考えなのだから。
 この場合でも隙を見せる方が悪いと言うものだ。

「……ははッ! 少しはやるな!! 牙狩りでもない奴が……!!」

「チェストーッ!!」

 続けざまにアカツキが正面から右ストレート、
 腕が斬られた左側から総悟がどうたぬきによる斬撃。
 両者の人間離れした一撃を、ザメドルはそれぞれ『片手』で受け止める。
 先ほど泣き別れた腕は驚異的な再生力で、皮膚は回復しきってないが手の形をとどめた状態で受け止めていた。
 とは言え再生力が追いついてないのか、或いは首輪によって単純に力が衰えているのか。
 本来ならばスティーブンのエスメラルダ式血凍道ですら再生途中の腕で止められるはずだが、
 この中で一番人間離れの膂力を持つ総悟には再生したばかりの腕ではぐしゃりとつぶれかけていた。
 当人からすれば『だからどうした』というレベルの弱体化であり負傷にもならないが。

「そういう再生はドラゴンボールで読者も見飽きてるんでもう少しパターン変えましょうぜ。」

「驚異的な再生力を有するか……難敵だ!」

(少女がいない。)

 それぞれの一撃を押さえつけてる間視線を配らせると、
 まだ攻撃に参加してない結芽の姿がいつの間にか消えている。

「───そこか。」

 右側からに視線を向けても姿はなく、
 頭上であることに目星を付けて骨の翼が上空へと槍の如く飛び交う。
 推測通り、結芽は戦闘開始と同時に総司に気を取られた隙を見て跳躍。
 頭上からの一撃は空中で翼と千鳥による剣劇の音が周囲へと鳴り響く。
 視線が上に向いてないので大雑把で狙いは甘い為彼女でもいなすことはできるが、
 重力と言う不変の存在は無視できず、そのままではより苛烈な一撃を受けるところだ。
 しかしザメドルは攻撃を中断し、唯一空いている右へ移動して距離を取る。
 同時に地上にいた二人が後退すると、総司による平突きが彼のいた空を突く。
 弾丸が如き一撃は空振りに終わるがその風圧をアカツキは浴びる。
 先の情報交換でサーヴァントと言った概念は理解はしたものの、
 これほどの力を本来より劣ってるのだから頼もしくある。

「燕結芽、集団を好まぬようだが今回は諦めてもらうぞ。」

 降りた彼女を中心に三人は一度固まる。
 正面をアカツキ、左右を沖田で挟む形で。

「え〜……ま、仕方ないか。」

 不満そうな声が漏れたが、仕方なく割り切る。
 自分の強さを証明するにはもってこいな相手だ。
 あれは間違いなく衛藤可奈美や折神紫をすでに超えている絶対的な強者。
 だからこそ戦いたい。自分の短い人生における存在意義の為にも。
 集団で戦うなんてその都合性分ではないものの、一方で今回は話が別。
 言うなればあれは荒魂。人の生活を脅かす存在と同等の怪物。
 自分にとっては強さの証明の相手と認識していた荒魂ではあるが、
 他人からすれば平和とか人のために戦ってる刀使の方が一般的だ。
 同じ親衛隊の獅堂真希もまた、その為に力を求めてたので理解はそれなりにある。
 あくまで自分が違う。刀使の巫女としての役目ではなく、自分の強さを誰かに刻む為。
 一般的な見解からしたら、価値観は明らかに違うものになるだろう。理解されたいとも思わない。
 それと、生前独断行動で隊が乱れたのをこっぴどく叱られたこともある。
 自分の悪い所が記憶に残るぐらいなら、多少の協調性は受け入れるようにはなった。
 今回のも、つまりはそういうことである
 (なお、その時は『一人で解決するよう努力する』と間違えた方向に進みかけてたが)

「牙狩り程ではないだろうが、
 四人ゆえに先の少女と比べれば、多彩なのは結構なことだ!」

 空へと舞い、四人に雨の如く降り注ぐザメドルの翼。
 数撃てば当たるとは言うが、その当たれば軽傷では免れない攻撃。
 各自自分の動きで散開。縮地で総司が先行し、それを迅移で結芽が追走。

「私も混ぜて!」

「……無茶はしないでくださいね!」

 方や地上から八幡力の筋力強化を以って跳躍し、
 方や空間跳躍手前となる縮地による上空からの奇襲。
 二人の天才剣士による空中の、それも背後からの挟撃を相手にするが、
 いずれも翼が爪のような形を以って斬撃とぶつかり合うことで妨害される。
 更に正面から総悟が弾丸のように飛来し、どうたぬきの一撃を白刃取りの要領で防ぐ。

「またか! 牙狩りは学んだが、それ以外の連中は学ばないのか!」


751 : ◆EPyDv9DKJs :2021/10/14(木) 15:51:57 MVFWYc.s0
 三人の攻撃、つまりまた一人だけ足りない。
 同じく四人目に一撃を任せる戦術など下の下。
 見え透いた作戦でしかなく、今度は地上にいるのだと対応をすべく視線を配らせる。

「───何?」

 彼だけが知らない情報による不意打ち。
 視線を下へ向ければ、強烈な光が彼を襲うからだ。
 アカツキが電光機関を用いて強烈な光を発してたが故に。
 三人もそれなりの影響はあるが、電光機関は事前に知っている。
 視線を向けてないので完全ではなくともザメドルよりかはましで済む。

「そこでホームラン。」

 視界が一時的失われたことで隙を見せた、
 その隙に総悟が白刃取りされた勢いで上を取り、背負ったバズーカで頭部を殴打。
 上から受けた攻撃の勢いにより地上へと隕石の如く地面へ激突───だけではない。
 その程度で倒せるような存在だとは思ってないし、その為にアカツキが残っている。

「電光機関、解放ッ!」

 バチバチと帯電していた雷光を放出し、アカツキが迫る。
 地面に激突と同時に、電光機関による強化した徒手空拳の乱打。
 蒼光の雷光を纏う姿はさながら護国を守る雷神と言うべきだろうか。
 高速で迫る攻撃を、視界が回復してない現状ザメドルは半分すら防げない。
 戦車すらも屠ることができると言う、誇張抜きの事実を持った肉体の攻撃。

「歯を───食いしばれぇッ!!」

 乱舞を無数に見舞ってから顎割りで打ち上げ、空中を舞う相手に雷光を手から放ち吹き飛ばす。
 アカツキが体得してる大技が一つ。シンプルながらそれゆえの強さを誇る技『神風』だ。

「先に行きます!」

 着地した瞬間縮地による高速移動でそのまま追走する総司。
 一番敏捷に優れてる彼女は、一人先行して吹き飛ぶザメドルに追いつく。

「四人の中だと貴様が一番牙狩りに近いな!」

「!」

 視線が合った。
 スタングレネードのようなものではなく、
 視力の回復までそう長いものではなかったが、想像以上の回復だ。
 加えてあれだけの乱打を受けても内心ダメージにはなってるのかもしれないが、
 とてもダメージを受けてるような風には見えなかった。

「だが人間(貴様ら)に我々(血界の眷属)は止められない。」

 一人で請け負うには余りに苛烈な翼と言う物量攻撃。
 先ほどは二人で分担してたから防げていたが、
 当然一人で二人分を相手にすれば限界はある。
 結芽の時と違い大雑把ではなく狙ってるのでは当然防ぎきれない。
 マスターとの契約による魔力供給があれば別だっただろうが、
 それがない以上はどうしても劣ってしまう。

 一応、ザメドルが来る前に誰かと契約については考えた。
 カルデアのマスターがいるので事実上の鞍替えもどうかと思ったが、
 しなければならない程に状況は甘いものではないのは分かっている。
 信用できる人物であるのもあって考えたものの、三者はいずれも魔力はない。
 なので契約したところで魔力供給がなく、同時に魔術回路がないので令呪もなく。
 とりあえず、魔術回路がないとは言え荒魂が宿ってると言う結芽であれば、
 ひょっとしたら何かあるのではないか程度に契約を結んだだけである。
 契約した成果は、未だ見られることはないが。

(と言っても、これちゃんとしたマスターいてもきつそうですけど!)

 ステータスが低下してるのを抜きにしても、
 今相対してるのは確実に別格の存在なのが分かる。
 神霊とか、そういった上の段階へ至った存在なのだと。
 どちらかと言えばノッブが戦うと有利そうな印象がある。
 本気ではないからか、まだ致命傷は防ぐも桜色の和服に裂傷が刻まれていく。

「しかし、相討ち上等が新選組の───天然理心流にある!」

 攻撃が無数に飛び交う中、片手平突きがザメドルの脳天を捉える。
 視界を両断するように浅打が突き抜けるが、同時に翼が脇腹や肩へと突き刺さった。

「ッ……!」

 笑い飛ばすには無理のある傷。
 ダメージは安いとはいえないが、
 顔面への一撃は十分な致命傷。

「だから止められないと言っただろう。」

(な───)

 ギョロリと再び視線が合う。
 一定のダメージを受けるまでは絶対に密封と言う形の死を迎えることはない。
 首輪で多少は再生力やパワーは落ちてるのだが、それでも後れを取ることはなく。
 この舞台にいる紅の吸血鬼でさえ、対等足りえないとされるほどの格が違う存在。
 それが血界の眷属の中で、最上位に君臨する長老級(エルダークラス)なのだから。
 間違いなくこの男は、この舞台の最大の敵の一角となりうる存在だ。


752 : ◆EPyDv9DKJs :2021/10/14(木) 15:53:02 MVFWYc.s0
「はいそこどきなもう一人の俺、いや別の俺?
 まあいいや性別も違うし、とりあずどいてくだせえ。」

 どうでもよさげな一言と共に聞いたことのある発射音。
 すぐに浅打を抜いてその場を離れると、バズーカがザメドルに直撃して爆発。
 爆風の勢いで距離を取ると共に、追いついた総悟に合流する。

「いや莫迦ですか? 馬鹿なんですか? バカ?
 得物引き抜けなかったら危なかったんですけど!?」

「その程度で新選組名乗れるほど、やわじゃねーでしょう。やわなんですかい?」

「あ、ずるいですよその返し方!」

「奴はやったのか?」

「それ完全に生存フラグの塊ですからね!?
 って言いたいんですけどまあ生存してるでしょうし、話があるので一度退きますよ!」

 総司に促され、一度距離を取る四人。
 ティルテッド・タワーに近づいたことで自然よりも、
 人工物が増えて道もコンクリートに変わっていく中、
 ザメドルとの距離を取りながら事の顛末を説明する。
 脳天を貫かれてもなお余裕など、タフの次元ではない。
 戦闘続行スキルにしたってもっと手心があると言うもので、
 あれだけタフだと最早とかヘラクレスやアキレウス並の大英雄。
 現状、相手を殺せる手段がないのでは此方は完全に詰んでいる。

「四対一でギリギリ互角、最大戦力足りうる沖田総司でもその負傷。
 情報は共有していたが、支給品までは確認してなかったな……対応可能なのはあるか?」

「あいつを倒せると確証持てそうなのは怪しいもんですよこっちは。」

「右に同じくですねー。使い方を分かってないのかもしれませんけど。」

「此方に至っては電光機関のせいか支給品が一つ、対処できるかは不明だ。」

「結芽もちょっと怪しいかな。あ、でも足しにはなるかもだけどいる?」

 デイバックから取り出されるのは、
 透明なケースに収納された、黒いものに覆われかけていた青い球体。
 その様子から鉱石のように見えなくもない、謎の物体だ。

「それはなんだ?」

「感覚、増幅? で能力とか上がるみたい。
 でも結芽には必要ないし、誰かこれ使ってみる?」

 なんとも胡散臭い代物ではあるが、
 元より四人ともおかしなものに出くわしすぎて今更だ。
 そして結芽は自分とニッカリ青江……がない今は千鳥だけで戦うのが心情。
 こういう外的要因での強化は自分のプライドが許さずにずっと放置していた。

「ならば沖田総司か沖田総悟、どちらかだな。」

 アガルタの末裔と言う(今の彼は知らないが)出自はあれど、
 結局のところアカツキは電光機関にて強化されただけの一兵卒。
 神聖な巫女の力もなければ、英霊と言った存在にも非ず。
 そして結芽の性格から使いたがらないことを考えれば選択肢は二択だ。

「いや此処はそっちの沖田に譲るんで。
 怪我してる分賄えるのは大事だろうし。」

「あ、じゃあいただき……これどう使うんですか?」

「触ればいいみたいだよ?」

 ケースから取り出し触れれば、本当に消える。
 今一つ実感はわかないが、一先ず成功として扱う。
 とりあえずは先程よりはましかもしれないが、
 事態が好転できるようなものであるかは未だに怪しい。

「やはりこうなると首輪を狙うべきか。」

 絶対に勝てない出来レース。
 それならば最初からこの殺し合いは破綻している。
 最低限勝てる見込みを用意するようにしているのであれば、参加者共通ルールを狙う。
 首輪を外さなければ生き残ることは叶わない、すなわち破壊すれば確実に倒せる。
 となれば首輪を狙えばそのチャンスは十分にあるのではないかと思うが、

「流石にそこだけは守るでしょう。
 私の知り合いに慢心ぶっこく英雄王いましたけど、
 アレと違って、首辺りを狙った攻撃は警戒し続けて防ごうとしてた気がしますし。」

「文字通りの露骨に首輪だけは防御に回してる。素直に狙ってうまくいくなんて夢だな。」


753 : ◆EPyDv9DKJs :2021/10/14(木) 15:53:56 MVFWYc.s0
 ごもっともな意見に返しようがない。
 相手は追い詰めたかはどうかはともかくとして、
 キバガリと言う存在と比較しての発言をしていた。
 恐らくだがキバガリなる存在は追い詰めたか、倒すことはしてるはず。
 強すぎで慢心はしてるかもしれないが、最低限首輪だけは死守するだろう。
 それでも防御が全体的に甘いのは、あれだけ強いからなのだろうとも察する。
 防御と言う行動を取らなかったから慣れてない表れだ。

「んで、どこまで逃げるでさぁ。
 仮に一エリア距離を取ってもすぐ追いつくでしょ、ありゃ。」

「かといって殿を決めるわけにも───! 全員散開ッ!!」

 誰かを想い続けた少女達も、全てを塵芥とする聖帝も、
 闘いを傍聴していた兵士達も撤退して四人の足音以外は静かな町、ティルテッド・タワー。
 そこに周囲へと、雫が落ちて広がる波紋のように、街中にトンッと軽い靴音が響く。
 いつの間にか四人の前に背を向けて着地してるザメドルを視認と同時にアカツキが叫ぶ。
 飛来する翼に何人かはかすり傷はあれども大事には至らず、車道を中央としてばらける。

「三年前の牙狩りと戦ったあの時は異変で仕方なかったが、
 今宵は自ら中断などと言う無粋な真似はしないでいただきたい───では死ね。」

 振り向くと同時。
 縮地に負けるとも劣らぬほどの高速移動。
 狙われたのは───司令塔となっているアカツキに対しての貫手。
 彼が工学面に強いことを知らないからこそ狙ってしまった相手だが、
 時間稼ぎから名前を知られると言った知略によって敗北したことを考えれば、
 チームのブレインを担当しているアカツキを狙うのは自明の理でもあった。
 その速さは近ければまだしも、散開した状況では総司でも間に合わない。
 当然、今から避けようとしたところで間に合うはずもなし。





 だから───アカツキは避けなかった。

「!」

 ザメドルは目を見開く。
 貫手がアカツキが構えてから放出した青白いバリアで防がれ───否、一瞬動作が遅らされた。
 攻性防禦。一種のカウンター戦術。アカツキもまた刹那の判断が物を言う戦いに身を投じている。
 正直間に合うのかと内心は冷や汗ものではあったが、成功したので今は良しとして、
 一瞬遅れた攻撃を僅かに身を逸らしながら無駄のない回避と同時に、首元を狙って拳を叩き込む。
 触れる直前に左腕を挟まれる形で防がれてしまい、破壊するには至らない。
 とは言え電光機関で上乗せした火力。無理矢理挟む形だったので、
 最初の時のように正面からしっかりと防ぐことはできず腕は圧し折れたが。

「危ない危ない。流石にこれだけは慢心するわけにはいかないのだよ。」

「じゃあずっと慢心し続けて死んだ方が世の為なんで。」

 怯んでる隙を遠慮なく、総悟の一撃で右側の脇腹の大半が斬られる。
 と言うより最早えぐり取られたとも言うべき具合に吹き飛ぶ。
 斬ってるはずなのに肉塊になる死体を量産する総悟のやり方なら、
 斬撃と言うよりも極めて強い打撲に等しいので抉り取るが正しいかもしれない。

 内臓や骨と言った中身が見える程の負傷をしても、お構いなしだ。
 負傷が負傷として成立していないぐらいに彼は平然としている。
 アカツキが咄嗟に距離を取ると同時に、結芽の千鳥が割って入り、それを翼でいなす。

「戦いたがっているのは結構なことだが、
 君は最も人間に近しいな。うちの愚犬の餌に向いている。」

「その犬も強いの?」

「ああ、君では勝てない強さをしている。
 他の三人だったら、まあ多少は分からないが。」

「そっか。じゃあ見かけたら戦ってみようかなっ!」

 余裕のある会話ではあるが、結芽の表情は険しい。
 病のダメージではない、完全に遊ばれているからだ。
 明らかに三人と比べて余裕があり、しかも加減されてる。
 自分の強さを証明したいのに手加減をされているのは、
 自分が弱いと言われてるのと他ならないがゆえに。
 写シのお陰で出血は免れているが、次第に剥がれかけていく。
 このままだと解除されるのも時間の問題だ。

「横やり!!」

 その一言を聞くと同時にジャンプ。
 弾丸のような総司の突きからの斬撃が結芽がいた背後から飛来。
 再生途中の脇腹を更に切り刻み、ジャンプした結芽は背後へ回り込んでからの三段突き。

「愚策。」

 その前に手での薙ぎ払いをしつつ一回転。
 クラウス達の血闘術を防ぎ、総悟やアカツキの一撃を止めれる。
 その時点でただの薙ぎ払いになるはずもなく、生きた災害のようなものだ。
 当然ガードなどできるはずもないの逃げる形での避け、

「───るわけないよね!」

「───るはずもなし!」


754 : ◆EPyDv9DKJs :2021/10/14(木) 15:54:34 MVFWYc.s0
 いくら一撃必殺だろうが、当たらなければどうということはない。
 軌道の読めない上に数の暴力な翼よりもよっぽど分かりやすい直線状の攻撃。
 避けるのは容易く、強風に煽られつつ姿勢を互いに屈んでの回避。
 そのまま前後から頭、喉、鳩尾を狙うシンプルな三段突き。
 もっとも、姿勢の低さも相まってずれが生じることによって、
 多少のずれのお陰で双方が初撃は喉……基、首輪を狙うことになる。

「!」

 すぐに気付けたザメドルは地面を蹴って飛ぶ。
 どれだけの才覚を持つ天才の巫女でも、人外魔境の江戸を生き抜いた新選組でも、
 ゲゼルシャフトを壊滅させた戦鬼でも、サーヴァントへと至ることになろうとも。
 ザメドル相手に何十分、何百回ものチャンスを手繰り寄せて戦うなど普通に無謀だ。
 仮に一定ダメージを受けることで密封と言う条件を知ったところで気休めでしかなく。
 最善にして最短、その手段での勝利しか選ぶことはできない。

 つまり、二人が腕の攻撃の軌道が分かりやすいように、
 何処を狙って飛んでくるかわかる攻撃など避けるのはたやすい。
 すんでのところで攻撃は別の個所へとヒットし、勝利は遠のく。

「フンッ!」

 空中に逃げれば今度はアカツキの回し蹴り、もとい徹甲脚。
 人間の回し蹴りの威力をはるかに超えた蹴りが迫る。

(再生力は異常だが、連続しての再生は遅れると見た方がいい。)

 最初に圧し折った腕はぐちゃぐちゃのまま。
 絶やさず他人にとっての致命傷を与え続ければ、
 再生が追いつかず防御手段が減らせて一撃必殺に届く。
 であればすべきことは一つだが、どうしようもない問題として、
 この状況だとアカツキが一番敵の肉体を削ぐ行為においては不適切だった。
 電光機関を全力全開でやれば別だが、それでは身体の方が持たなくなる。
 だからと言って何もしないわけにはいかない、絶え間ない攻撃を続けていく。
 まだアカツキに折られた左腕は元に戻ってはなく、右腕を振るうことでぶつかり合う。

「ヌ、グゥ……ッ!」

 勢いはさほどない腕のスイングを相手に、
 強化された蹴りでありながら競り負けている状況。
 当然そんな威力を生身で受ければうめき声の一つだって挙げたくもなる。
 まだ足が折れてないだけましというものだし、その意味は十分にあった。

「その腕いただき。」

 総悟が背後から右腕を斬り落とす。
 首は警戒され続けてはいるものの、
 逆に其処以外の部分はかなり狙いやすい。
 元々長老級と言う出鱈目な強さに属する存在だ。
 防御なんてしたことがなかった以上防御面は不安定にもなる。

「やはり防御はどうにも苦手だ。
 此処は素直に攻めに徹するとしよう。」

 続けて迫る回し蹴りを後方へ飛ぶ形で回避し、翼が爪のような斬撃で迫る。
 そこは意外にも結芽がアカツキを回収して回避。

「助かる!」

「お兄さんも無茶しないでよね!」

 協調性は余りないと判断してたので、この行動には少し驚かされていた。
 それに戦いの邪魔になる首輪を何とかできる可能性を持ったアカツキの存在は必要不可欠、
 という利用目的もなくはないが、自分にはそれなりの理解がある相手と言うのは希少だ。
 天才ともてはやした人達は病に伏せればそれだけで離れ、最終的に親すら見舞いに来なくなった。
 孤独の時間を過ごすことは珍しくなかった。だからこそ折神紫を、折神親衛隊は彼女の拠り所だ。
 真摯に接してくれるアカツキに対しては折神紫達ほどではないものの、多少懐いているのもある。

「最後の一発だが、仕方がねえや。」

 出し惜しみして勝てる相手ではない。
 結芽によってアカツキが離れたことで、
 総悟が途中で装填したバズーカを振り向きつつ放つ。
 残された一発も無事直撃し、ザメドルを軽く吹き飛ばす。
 総悟は反動で少し時間を要し、アカツキは空中、結芽は彼を抱えてる。
 つまり此処で動けるのは今は総司のみで、そこからの判断は早かった。

 態勢が整っていない最中でもザメドルの翼が襲い掛かる。
 先ほど結芽からもらった感覚増幅のお陰で負傷はしているものの、
 被弾は先ほど以上に少ない上に軽微なままで近づくことができている。
 その攻撃の嵐を、負傷してるとは思えない程の縮地で間合いを詰めていく。
 駆ける、駆ける、駆ける。土方歳三の宝具を使うときの如く突き進む。
 すべては超越者にたった一太刀を与えるがために。










 その最中、鐘が鳴り響く。
 災禍を退けるカリヨンの鐘ではない。
 誰もが平等に、無慈悲な死を告げる警鐘が。


755 : ◆EPyDv9DKJs :2021/10/14(木) 15:55:11 MVFWYc.s0
以上で『刃・信じたこの道を何処までも』投下終了です
後編はもう少しお待ちください


756 : ◆EPyDv9DKJs :2021/10/15(金) 19:35:38 8Z2EcMxI0
後編投下します


757 : ◆EPyDv9DKJs :2021/10/15(金) 19:38:04 8Z2EcMxI0
『只今、D-5に新たに参加者が滞在しました。
 五分後にエリア内に滞在している参加者全員に取り付けられている起爆装置を爆破します。』

 近くのスピーカーから発せられた突然のアナウンス。
 ザメドル含めてスピーカーに注目せざるを得なかった。

 一括首輪爆破装置───神楽鈴奈達が残した置き土産。
 D-5の参加者が一斉に退避せざるを得なかったそれは、
 当然後から入ってきた参加者にも公平に情報が行き届くようになっている。
 言うなれば、このアナウンスはただのマニュアル通りの行為。その程度にしか過ぎない。
 だが五人には想定外のアナウンス。しかも首輪と言う誰もが逃れえぬ平等な死をもたらす存在。
 それがほんの数分後に行われる状態となれば、たとえザメドルだろうと反応をせざるを得ないだろう。

 しかしザメドルは元々攻撃していた側、攻撃の命中精度に支障が出るだけだ。
 一方沖田は避ける側。気を逸らしてはならない場面において逸らしてしまった。
 だから避けるべき一撃を受け、腹部を一本だけとは言え突き抜ける。

「───ッ!」

 目を見開き距離を取ってすぐに引き抜くも、今までの傷で一番重傷だ。
 まだ今までは動きに支障が致命的ではなかったが、今回ばかりは流石に無視できない。
 着地して、自由となったザメドルが続けてくる攻撃を避けるだけの状態ではなかったが、

『只今、D-5に新たに参加者が滞在しました。
 三分後にエリア内に滞在している参加者全員に取り付けられている起爆装置を爆破します。』

 再び流れるアナウンスの中、
 結芽が上空から流星の如くザメドルへ肉薄。
 そちらの迎撃に攻撃を回し、辛うじて一命をとりとめる。
 空中で剣劇が続くが当然ながら総司でも無傷では済まないのを、
 実力が劣る結芽が一人でこの攻撃を相手にするなどとてもできない。
 写シのお陰で物理的な傷は受けてないが、その写シも被弾が続き本当に剥がれそうだ。
 完全に剥がれる寸前に、追いついた総悟とアカツキが正面から攻撃を仕掛ける。

「グッ……!」

 攻撃を受けて吹き飛んだ結芽が沖田の前で着地する。
 デイバックの紐が先の戦いでちぎれて、中の物がコンクリートの道路に散らばっていく。

「燕さん、大丈夫ですか!」

 痛みで弱音は挙げない。
 病弱なんて聖杯ですらどうにもならない一種の呪いのスキルを得たが、
 それを含めたとしても寝たきりのまま死んだ生前よりもずっと動きがいいのだ。
 こんなところで弱音を挙げたら、それこそ土方やノッブにどやされてしまう。

「写シのお陰で大丈夫だよ! まだ行ける!」

 刀使の都合、肉体的な傷は一番軽い。
 基本的に短時間で張りなおせるのは二回。
 まだ十分に戦力として戦うことはできるはずだ。

「そうですか、ならいいのですが───え。」

 散らばったものの中に、何か見覚えのあるものがある。
 と言うより、彼女だったら忘れてはならないものが。

「燕さん! それ!!」

「え?」





 一方アカツキと総悟は。

「これ勝てますかい?」

「無理だろうな。」

 肉薄する中言葉を交わす二人。
 悲観的な意見を言うのもどうかと思うが、
 『ま、でしょうね』とあっけらかんに返す。
 そも、四人が戦ってもなお微不利と言った中、
 二人になった時点で劣勢になるのは目に見えたことだ。
 できることは相手が視力を頼ってるようではあるので、
 どちらかが視線を誘導させる囮になってそこからやるしかない。
 なので当然できることは、攻撃後二人が左右に別れての攻撃しかない。
 そしてなったのは、総悟の方である。

「その戦い方は飽きたぞ人間!」

「そうやって人間に一括りすんのやめてくだせェ。
 マヨラーに狂った奴と宇治金時に狂った奴と同類扱いは、
 俺もお断りですけど、人類の大半はお断りですぜ、あれは。」

 コンクリートに平然と穴をあける攻撃を避け続ける。
 その間にアカツキが懐へと飛び込んで砲撃のような拳を叩き込む。

「何故学ばん! 先程とは違うことを忘れるな!」


758 : ◆EPyDv9DKJs :2021/10/15(金) 19:39:05 8Z2EcMxI0
 近づいたことに気付き視線を其方へ移し、またしても腕で止められる。
 今度は腕が十分に再生しているのでひしゃげたりすることはない。

「なめるな!」

 拳を振り上げながら空中に浮いた瞬間、続けざまに再び徹甲脚。
 今度は回転数が跳ね上がり、凄まじい蹴りの旋風が胴を抉る。
 骨が砕け、肉も抉れるがやはり傷を受けていると言う感覚はない。
 少し呆れた表情をしながら、貫手がアカツキの首を捉える。

「余所見すんなよ。」

 総悟が下半身を切断したことで、
 貫手はアカツキの軽く頬を掠めるだけに留まる。
 そのままでは立てないので再生の間は空中へと逃げるように飛ぶ。

「此処を狙え。」

 挑発かのように、すれ違いざまに総悟は自分の胸元を指す。
 煽られたわけではないが、四人の中で一番の戦力は重傷。
 となれば現状次に障害となるのは彼であると言うことになる。
 最早ブレインとなるアカツキは戦局が傾いた時点で使い物にならない。
 優先順位を変えるかのように、アカツキを無視して翼が集中。
 致命傷こそ避けるが隊服に刻まれていく傷は大したものではないが、
 このまま受け続ければ失血死は免れない。

「いい加減にしろ、莫迦の一つ覚えか!」

 またも総悟が囮になってる隙に攻撃。
 流石にもう見飽きたと言わざるを得ない。
 三度もとなればもうそれは無策と同じだ。
 アカツキに対応しよう右腕を振るうが、何故か腕が動かない。

「……ああ、まだ動けたのか。」

 どういうことかと右腕を見やれば、腕がそもそもなかった。
 後方の空中へ投げ出されていた腕と、それを斬った相手が立つ近くのビルを見やる。

「───速攻でカタを付けます!」

 近くのビルの屋上から轟く宣誓。
 続けて総司が迫り、無数の翼と斬撃がぶつかりあう。
 明らかに先程までとは、別格の動きで。


 ◇ ◇ ◇


 ───時は僅かだが遡る。

 総司が拾い上げたのは、一枚のカード。
 他は基本支給品なのでこれが結芽の最後のランダム支給品。

「え、そのカードが何?」

 紅い刻印のようなものが刻まれたカード。
 使い方の説明を見ても理解が浅かった彼女は、
 これが使い物になるとは思わず言及はしなかった。

「これ使い方は!?」

「握りつぶせばそれが宿るみたいだけど……どういうこと?」

「結芽さん、今すぐ握りつぶしてください!」

 よくは分からないが今は一刻の猶予もない。
 彼女が必要としているのであればと即座にそれを握りつぶす。

「イツッ……」

 同時に右手に痛みが走り、赤い刻印が刻まれる。
 『おー、入れ墨』なんて子供らしい感想の中、立ち上がる総司。
 サーヴァントに対する絶対命令権、令呪。それが最後の支給品。
 そして───サーヴァントを強化するための大きな魔力源でもある。
 魔術回路を持たない彼女との契約は実質的に無意味ではあったが、これならば話は別だ。
 (なおサーヴァントに令呪ってどうなるのかよくわからないので念の為彼女に持たせた)

「後は令呪を以って命令してください。ただ、状況が状況ですから内容は間違えないで下さい!」

「分かってるよ! 令呪で命令するよ! あの……名前分からないすごく強い怪物を倒して!」

 命令と同時に入れ墨が一部が消えると同時に、沖田は消えた。
 空間跳躍一歩手前とされる縮地。それが本来の彼女が至った境地。

「やはりお前か! だがその負傷、続けようにも先に失血で倒れるのは貴様の方だぞ!」

 歓喜の笑みを浮かべる。
 さっきとは別人のような強さで迫ってくるその姿。
 だがそれでもよくて牙狩りと同じか、毛が生えた程度。
 制限されようとも長老級を相手できる実力にはまだ届かない。
 それに腹部には大きくはないとはいえ穴が開いて向こう側が見え隠れする。
 普通に重傷。早急に傷を塞がなければどうなるかなど目に見えている話だ。
 (サーヴァントだから通常とは違うことについては分かってないだけとも言えるが)
 下半身に右腕と欠損しすぎてバランスが取れてないのもあって押されてるが所詮その程度。
 既に彼は逃げと言う姿勢を取っており、それ故に足止めできる要因から離れるのは大きい。
 余り悠長に戦っていては、全員揃って自爆と言う笑い話にもならない結末なのだから。

(疾く、鋭く!)


759 : ◆EPyDv9DKJs :2021/10/15(金) 19:40:30 8Z2EcMxI0
 相手が空中と言う有利は壁を利用して実質的に打ち消す。
 コンクリートビルの壁を蹴っては迫り肉を削っていく。
 技術を極限まで高めた縮地は段違いの、英霊としての力。
 被弾は今まで以上に減った。それでもまだ相手には届かない。
 今しかない。下半身と右腕がまだ再生途中の今が一番勝てる見込みがある。

「もう一回令呪を以って命ずる! 勝って沖田のおねーさんッ!」

 その可能性を、更に与えられる。
 刻一刻と死ぬ可能性のある状況でも、
 彼女の戦いを結芽は見届けるべく追いかける。
 残りの二人は最早あの速度についていける状態ではなく、
 他の参加者と遭遇して足止めと言ったトラブルにならないよう、先にエリア外へと戻っていた。
 幸い、結芽も迅移ですぐに戻れるので多少の余裕があるのもついてきた理由ではある。
 時折しつこいようにエリア中にアナウンスが響くが、アカツキがD-5の範囲を調べてるとか、
 大方そんなことだろうとはなんとなく察する。

「今私がするべきは……ただ只管に、斬るのみ!」

 更に令呪によりブーストがかかり、速度が上がる。
 神速で距離を縮める様は、まさにその刀を手にした者達と同じ死神か。
 逃げているのに距離は縮む中、仕留めることができず焦る、

「素晴らしいぞ! 四人で挑んだときよりも遥かに速い!
 それだけの力を出し惜しんでいたことについては疑問だが実にいい!」

 ことなどない。楽しいに決まっている。
 嘗て相対した牙狩りのクラウスよりも負傷しているはず。
 それでもなおまだ動く、まだ戦える、まだ倒そうと近づく。
 次元の違う領域にいるがゆえに、価値観など人間の尺度では測りようもなし。

「最後の令呪を以って命ずる! 絶対に勝って戻って!」

 『そして結芽と全力で戦って』そう願いたかったが、
 そればかりは動きに支障が出そうなので言わなかった。
 今の彼女に必要なのは真希のように目の前の敵を倒し、
 この場にいる人たちに一人でも生きてもらうための誠の刃。
 沖田総司の為に刃を振るってもらう。それが一番なのだと。

(今だ!)

 そしてついに一度追いつき首を狙う。
 翼が全力で死守されたが令呪三画分の強化。
 衝撃は抑えられずにザメドルは地に叩きつけた。
 コンクリートを抉り、地面にめり込んでクレーターを作る。

「一歩音超え───」

 それは総司のスキルにして、宝具に匹敵する技。
 ほぼ同時ではなく全く同時に放たれるその突きは、
 壱の突きを防いでも同じ位置を弐の突き、参の突きが貫くと言う矛盾を孕む技。

「二歩無間───」

 例えるならば事象崩壊現象。
 事実上の防御不可能な、対人魔剣と呼ばれる存在。
 翼だろうと腕だろうとガードしたところで、必ず首輪へと到達する。

「三歩絶刀───」

 今まで一度も使わなかったのは、
 確実に仕留められる場面がなかったがゆえに。
 一度見せれば二度とこれを打たせる、或いは当てさせはしないだろう。
 だから、絶対に当てれると言う自信のある場面。
 その一度の瞬間を彼女はこの場で見出す。


760 : ◆EPyDv9DKJs :2021/10/15(金) 19:41:23 8Z2EcMxI0
「無明───三段突きッ!!!」

 先程使ったただの三段突きではない、沖田総司の代名詞。
 燕返しのような次元を超越したかのような『魔剣』に類する技。
 原理など知らない。と言うより、これを正しく理解してる人物の方が少ない。
 だがザメドル直感が告げている。これは受けてはならないと。
 故に翼で守る。故に翼で先に奴を仕留める。
 それでも仕留めることは、避けることは叶わない。





























 静寂。
 確かにこの場に人がいるはずなのに、
 この場にNPCだっていたはずなのに。
 後方とは言え、燕結芽がいたはずなのに。
 何一つの音が何も起きない、静かな空間。
 地面に浅打を突き立てる沖田と、クレーターの中心となるザメドル。
 次に発せられたのは敗者の声。この壮絶な戦いの結末の勝者を伝える。










「……幸運の低さ、って奴ですか……!!」


761 : ◆EPyDv9DKJs :2021/10/15(金) 19:42:29 8Z2EcMxI0
 負けたのは───総司の方だ。
 普通であれば、間違いなく首輪に到達していただろう。
 令呪のブースト、しかも三画も使っての強化は十分にある。
 だが、いかんせんそれまでに傷を受けすぎて万全とは程遠かった。
 彼女の責ではない。ただ、運がなかったとしか言いようがない。
 令呪の存在を知るのが遅かった、神楽鈴奈の置き土産が勝敗を分けた。
 勝てなかった要因、勝てたかもしれない要因と言うのは無限に浮かび上がる
 だからどうした。そんなものはたらればで、今から変えようのない不変の事実。
 幸運Dと言うステータスが引き起こしたファンブル、とでも言うべきだろうか。
 三段突きは首輪の僅か少し、ほんのちょっとだけ下を貫くだけに留まる。
 本当に僅か、たった一ミリか二ミリ程度の極々小さな差異……そんな程度の。

「……此処まで長く持つとは思わなかったよ。
 逃げの時間も含めれば牙狩りと比較にならない。実に堪能できた。」

 絶命してもおかしくない一撃でも平然としている。
 生きる暴威、災禍の化身。形を得た災害、それが長老級だ。
 だから魔剣と呼ばれた攻撃を受けようと痛みすら感じることはなく。
 とは言えいつまでもそうしているわけにはいかない。
 近いうちに首輪が爆発する。それだけは避けねばならない。
 早々に退けて起き上がろうとするが、

「何?」

 できない。
 軽く払えば倒れるだろう敗者は倒れない。

「言ったはずだ。相打ち上等……それが! 新選組だと!!」

 刃が首輪へと迫り、咄嗟に最後に残ってる左腕で押さえつける。
 死に体とは思えないほどの力で、刃を抜くことができない。

「まさか、僕を逃がさないつもりか!?」

 初めて本気の焦りが始まった。
 時間の猶予は限られている。本当に後少しだ。
 エリア外に出るまでの逃走の時間とかもある。
 すぐに抜け出さなければ最悪の事態を招く。
 翼は彼女の身体を次々と貫く。

「不滅の誠、侮るなぁッ!!」

 だと言うのに倒れない、死なない、消えない。
 桜は最早血染めに染まり切った状態でありながら手を緩めない。
 戦闘続行スキルもなく、病弱補正で耐久Eと言うセイバーにあるまじきステータス。
 そんな彼女が持久力がものをいう勝負に持ち込めているのは、
 結芽から受け取った感覚増幅が防御と体力も相応に増えており、
 少なくとも普段よりもはるかに強固なものとなっている。
 それを差し引いても無理があるとは思うが、最早これは意地と言うべきか。

(土方さんガッツスキルちょっと貸してください!
 いや山の翁とか、なんなら十二の試練とか高望みしたいですが!
 とにかく粘らせてください!! あと少し、あと少しなんです!!)

 共に剣を誓い、共に時代を駆け、共に戦いたかった。
 その果てに無意味な死が横たわろうとも、彼女はそうありたかった。
 のき先の暖かな光に包まれ、空を仰ぎたくなどなかった。
 ただ最後まで、誠の一字と共にあればよかったのだ。
 ――――――――――――いや 今がその時なのだ。

 離れない。どれだけ傷を負ってもその刀を緩めない。
 普通の人間だったら絶命しているはずなのになぜ保っている。
 サーヴァントを知らない相手からすれば、普通におかしいと思えるだろう。

「だが忘れているな!」

 確かに根負けしたと言えばそうかもしれないが、
 此処で哀れにも退場するわけなどあるはずもなし。
 ザメドルが突き刺さった状態で動き、喉から下を自ら切断。
 下半身や腕が治りかけてるとは言え……否、治りかけてるからこそか。
 最早クリーチャーのような姿を見せながら、刀による釘付けから脱出。
 首輪爆発と言う名の密封を避けるべくすぐに移動を開始。

「結芽を放っておかないでよ!」

 不意打ちで千鳥の一閃。
 釘づけにしてる間に彼女は追いついており、両目を潰す。
 両目を潰されたことで視界が一時的に消滅した。
 最短距離で南へ向かわなければならないと言うのに、
 どの方角に走ればいいかが分からなくなってしまう。
 すぐに目は再生するだろうが悠長なことは言ってられない。
 エリアからの脱出を優先の為にんじんを乱雑に取り出し口にする。
 効果が表れたと実感した瞬間に、縮地ばりの高速移動でザメドルは逃げた。
 爆発まで僅か。だが、あの速度ならばまず逃げ切られるだろう。
 最初は追いかけたもののあれでは追いつくことができないのと、
 総司のことを放置もできず、結芽は逃がすことになる。


762 : ◆EPyDv9DKJs :2021/10/15(金) 19:44:40 8Z2EcMxI0
【D-5の何処か/深夜〜黎明】

【ザメドル・ルル・ジアズ・ナザムサンドリカ@血界戦線】
[状態]:失明(時期にすぐ再生する)、左腕と下半身(再生中)、健康、にんじんによる速力強化
[装備]:
[道具]:基本支給品、何かの帽子@出展不明、神界の木片@モンスター烈伝 オレカバトル
[思考]基本行動方針:せっかくだからこの殺し合いを楽しませてもらう
1:首輪の爆発から逃げる為今は移動が最優先。
2:この首輪は忌々しいからさっさと外したい所。
3:広い会場を一人で探索するのは骨が折れるから、有能な斥候は手に入れたいとは思う。
4:彼ら(アカツキ、結芽、総悟)とはまた戦いたいものだ。牙狩り程ではなさそうだが。
[備考]
・原作第八巻『幻界病棟ライゼズ(後編)』より、クラウスに「密封」された後からの参戦です
・首輪の制限により、一定以上のダメージを喰らった場合自動的に密封状態となり、事実上の脱落となります
 今回の戦闘でどの程度のダメージが蓄積されてるかは後続の書き手にお任せします。
・再生能力、戦闘能力はある程度低下しています。
 再生能力は高いものの連続して(常人においての)重傷を負うと、
 再生が少しだけ追いつきません。
・ブーストにんじんがどの程度効果が続くかは後続の書き手にお任せします。


「戻ってきたか! ここが境界線!」

 D-6との境界線。
 アカツキが待機しており
 総司を背負って結芽が戻ってくる。
 ゴブリンの槍で境界線を示し、そこを過ぎることで爆破の条件から脱する。
 念のためもう少し距離を取る形でその場から離れていく。
 だがその様子はすぐに察し、行動を移す。

「沖田総悟! 治療に使えるものは……」

 この傷は無理だと言うことは十分にわかるが、
 まだ支給品の中に対応できるものがあるかもしれない。
 未知なるものが散々出てきてるのだ。あり得ない話ではない。
 そう願いながら、残っている二人へと尋ねる。
 (彼女の支給品にあればとっくに使ってるので既に選択肢はない)

「……いえ、無理ですね。
 サーヴァントには霊核って言う、
 まあありていに言えば心臓をやられまして。
 ご都合主義の回復アイテムで肉体が治っても、
 霊核がやられてる手前、消滅は免れないでしょう。」

 背負われていた結芽から離れ、
 適当な地面へと倒れかけるように座りこむ。
 訪れる死。どこもかしこも血だらけで見るに堪えない程の傷。
 死を覚悟した人物とは思えないほどに、彼女の表情は穏やかだ。

「全く。似非……いや本物ですね。
 別世界の土方さんを倒すはずだったのが、
 マスターにすら会えないとは……私らしいと、言えばらしいですが。」

 肝心な時に大事な人の下へ向かうことは叶わない。
 近藤との最後の別れ、病によって命を落とした生前を思い返す。
 敬愛だけには留まらない感情を持ったカルデアのマスターを置いて消える。
 今度は自分が近藤と同じ立場になるのかと、申し訳なく思い表情に影を落とす。

「こんな早く消滅とか、ノッブに虚弱クソステセイバーって台詞に返せないじゃないですか。」

 茶化したように笑みを浮かべる総司だが、
 血だらけでボロボロの状態を前に笑い飛ばすことなどできない。
 そもそも、ノッブが誰か三人は知らないと言うこともあるが。

「……藤丸立香達に言い残すことはあるか?」

 助けることはできない。
 だからと言って何もしないわけにはいかない。
 この場にいる彼女の主となる藤丸や友人のマシュ、
 それともしかしたら知ってるかもしれないラヴィニアと再会の際、
 何か伝えるべきことだけでも、生き残った者の務めとしてアカツキが聞き届ける。

「ラヴィニアについてはそこまでの関係ではないので、
 何を言えばいいやら……マスターに合流できず申し訳ありません、とだけ。」

「承知した。」

 やはりマスターたる存在に何もせず逝くのは心残りだ。
 彼らが、それを受け継いで後のことを成してくれることを願う。

「……あー。アカツキさん。
 すごく莫迦なことしますが、ダメだったら止めてください。」

「? 分かった。」

 アカツキに一言断ってから立ち上がる。
 その後に視線を向けるのは、結芽だ。

「燕さん。」

「何?」


763 : ◆EPyDv9DKJs :2021/10/15(金) 19:46:13 8Z2EcMxI0
 彼女の消滅が分かって、結芽何とも言えない表情だ。
 刀使の同僚が還らぬ人となった、別に珍しくもない。
 彼女の周りではそういうのはなかったが、刀使にはよくある話。
 写シと言う手段があっても、結局死ぬときは死ぬ仕事でもある。
 だからその辺は割り切れているが、ついでに沖田総司は過去の人間。
 どう思えばいいか分からず、そういう表情へと至っている。

「私と、一戦だけ試合しませんか?
 まだ令呪によるブーストも少し残ってるんですよ。
 今にも死にそうですが、本気の沖田さんの剣技を見せれますよ。」

「いいの!?」

 場も弁えず歓喜の声を挙げる。
 普段だったら二つ返事で戦うことを選ぶ。
 怪我と言うハンデはあると言う点を差し引いても、
 令呪による凄まじい強さを見た後ならハンデになるかも怪しい。
 まさに彼女にとって最も望んだ戦いだが、アカツキが認めないだろう。
 今から行われるのは何ら意味のない、ただの自己満足の試合でしかなく。
 倒したところでアイテムもレベルアップもない。得るのは消耗。それ以外は何もないのだ。
 合理的に見れば殺し合いの中では、とても認められるものではなかった。

「今後勝手な行動を控えると言うのを条件とすれば一戦だけ許そう。」

 この立ち合いは、今しかできないことだ。
 もう二度と来ない。この場限りの夢の一戦。
 天才剣士と謳われた英霊との一騎打ちなど逃せば次はない。
 有利な条件を吞ませると言う軍人らしい合理的な面を見せつつも、
 冷酷と言う程徹底した人物ではないと言うことを伺わせる条件を出す。
 幸い、今回写シが強制的に解除されたのは一度だけだ。
 少しすれば回復するならば損耗はまだ少ないだろう。
 たてつづけに凶悪な参加者に出会う可能性も否定はできないが。

「……できるだけやってみる。」

 聞く気はないと言うわけではない。
 ただ折神紫が厳しそうで思いのほか緩い管理をしており、
 独断での行動とかに割と目を瞑ってたりスルーしたことが多かった。
 だからアカツキの真面目な管理下は、何処か窮屈に感じてしまう。
 絶対という断言はできないが、一方で常に破り続けるような子でもないのだ。

「不安だが、それを信じるとしよう。」

「んじゃ、俺が審判やるんで。」

 少しだけ場所を移して開けた場所。
 互いに刀を抜いてそれぞれが構える。
 結芽は平晴眼の構えを。総司は霞の構えを以って。

「じゃあ、試合開始───」

 開始の合図と同時、勝負は一瞬でついた。
 と言うより、そもそも勝負になるはずがない。
 致命傷を受けても本来のサーヴァントとしての性能の発揮。
 空間跳躍一歩手前の縮地は最早魔法に近しい程の代物になる。
 迅移によって速度を上げたところで、どうにかなる問題ではないのだから。
 超えられるとするなら、相討ち前提となる第五段階の迅移ぐらいなものだ。
 もっとも、そんな事すれば試合以前に実質的に死ぬが。

 初撃から少しだけは運も相まって辛うじて防げたが、
 縮地での高速移動からの攻撃受けて、胴体を突き抜ける刃。
 写シによりダメージはないが、それなりの痛みはあって結芽は膝をつく。
 当然、沖田総司の勝利である。

「はいそこまで。ってか大人気ねー。」

「最期ですし、本気でやらないと彼女に怒られそうですから───コフッ。」

 突然の吐血。
 病弱スキルによるものか、
 怪我のせいか両方かすら分からない。
 次第に死が近づく今となってはどうでもいいことだ。

「どうでしたか? 沖田さんの本気は。
 いや、怪我してるんで本気とは程遠いのですし、
 感覚増幅でドーピングしてますが、比べ物にならないでしょう?」

「……アハハハハハ! 強い! すっごい強いね!
 怪我してこれって、つまり万全の状態だともっと強いんでしょ!」

 ほぼ一方的な瞬殺に等しかった。
 大人気なさ全開で、手心は欠片もない。
 しかし彼女は笑う。こんなに強かったのかと。
 意外にも勝ち負けに拘らないのが燕結芽と言う人物だ。
 確かにあっさりと、一太刀も浴びせることなく負けている。
 だがそれでもいい。自分の凄いところを見せれない弱者よりずっと。

「こんな殺人剣を褒められると、なんだかちょっと複雑ですねー。
 ノッブが虚弱クソステセイバーとか言いましたが、十分強いんですよ私は。
 いやまあ『サーヴァントでもない相手にイキるとかないわー』とか言いそうですが。」


764 : ◆EPyDv9DKJs :2021/10/15(金) 19:47:46 8Z2EcMxI0
 ノッブって誰だろう。
 先ほどから出てくるワードに疑問だが、
 それが史実では縁のない織田信長だと知ることは終ぞないままだ。

「……どうやら限界、みたいですね。」

 全身から光が漏れだす。
 サーヴァント特有の消滅のカウントダウンとでも言うべきか。
 そもそも、戦闘続行に関するスキルもなしにこんなに動けたことが奇跡だ。
 これもすべて、感覚増幅に与えられた名前の通りだったのかもしれない。

「マスターの事、頼みましたよ。」

「心得ている。」

 真面目な対応するアカツキと、

「あんま柄じゃねーですけど、了解。」

 ぶっきらぼうながらそれを請け負う総悟。
 短い時間だが、この二人なら任せられるだろう。

「燕さんも、余りアカツキさんに迷惑かけない方がいいですよ。」

「わ、いきなり撫でないでよ、
 子供じゃないんだから……沖田のおねーさんの分も結芽が戦うよ。」

 使命感は特別強いものではない。
 強さの証明を邪魔する存在を倒す為にアカツキと共にしている。
 動機としてはかなり薄いし、今の言葉も彼女の意志を継ぐとは少し違う。

「いやいや、子供でしょうて。」

 姉と妹かな、
 僅かなやり取りでそう思った。
 同じ流派であり、同じ病弱な存在。
 ある意味もう一人の自分とも言うべき関係に感じる。

(でもやっぱり───マスターの下で、
 最期まで戦いたかったんですけどね───)

 生前、大切な人達と最後まで共にいられなかったこと。
 二度も同じような後悔を抱いて、その生に幕を下ろす。
 最後まで戦うが願いだったことについては皮肉も叶ったが。
 嘆きたくもあったものの、流石にこれは無粋と言うものだ。
 元々過去の人間。現世で余計なものは残すものではない。
 せめて、最期ぐらいはスッキリ終わらせるのが筋だろう。
 言葉に形容できない感情を抱いた主の笑顔を浮かべながら、
 一部のアイテムだけ残して、彼女の身体は跡形もなく舞台から消滅した。





【沖田総司@Fateシリーズ 霊基消滅】





 鉄の音を響かせながら、首輪が近くを軽く転がって動きを止める。
 それを沖田総悟が手にして、アカツキへと投げ飛ばす。
 沖田総司の死……と呼ぼうにもサーヴァント。少々おかしな話だが、
 一先ず彼女の死を無駄にしないため、この首輪は今後の為活用する。
 多くの参加者の為にもこれは必ず必要なものになるだろう。

「……さっきのアナウンス的に、参加者はいねえみてーだがどうします?」

 もう三分以上は経っている。
 恐らくD-5へ入ることは可能だ。
 しかし爆発する可能性があったエリア。
 一度離れた後戻らなければならない理由は薄い。
 特に爆心地。多くの参加者は寧ろ離れるだろう。
 参加者との合流は余り望めるものではない。

「言い換えるならば、周囲のエリアに参加者がいる可能性がある。
 周囲を旋回し敵であれば対処、此方と同じ方針であれば迎え入れる。
 その前に燕結芽の支給品を回収しておこう。損壊したので以降のデイバックは沖田総司のを使え。」

「うん、わかった。」

「けどあの化け物相手できる手段がない現状、
 また遭遇したら俺達は今度こそ詰みますぜ?」

 四対一、しかも死者も出た。その結果で仕留めきれない。
 同時にダメージになってるかが怪しいとは結芽の報告だ。
 手の打ちも大体晒した現状、今出会って勝てる見込みなど確実にゼロだ。


765 : ◆EPyDv9DKJs :2021/10/15(金) 19:48:44 8Z2EcMxI0
「逆だ。支給品に奴を倒す算段があるならば、
 先に他の参加者と合流しなければ手遅れになる。」

 現状あれを此方の手札では対抗できない。
 このまま次会えば全滅も免れないだろう。
 だからその可能性の為にも、せめて人を探しておきたい。
 或いはアレに対抗できるだけの実力を持った人物もいるかもしれない。

「それと沖田総悟、すまないが食料はないだろうか。」

 電光機関の短時間での大量の出力。
 そろそろ食わなければ基本行動にすら支障が出かねない。

「じゃあ俺の支給品でも食ってくだせェ。
 食べ合わせはともかく量は腹は膨れるはずなんで。」

「かたじけない。」

 出された弁当は、一人で食べるにして少し多すぎるボリュームのものだ。
 とは言え電光機関の消耗で空腹のときはざるそば十枚は行けるのがアカツキ。
 一人でもすべて食べきれるだろう。

「ねえ、これは誰が使うの?」

 結芽が指すのは、彼女に渡した感覚増幅。
 死亡するとロストではなく、こういう形で残るらしい。
 当然だが装備すれば能力が上がるものの、
 自分の実力だけで戦いたい彼女には合わない。
 一方で、彼女の分も引き継ぐと言う点で少し悩ませる。

「……非合理的に言えば藤丸立香か、
 一時的と言えど主従となったお前が使うべきものだ。
 だが、その手の類には頼りたくないのが心情なのだろう。
 有事の際にどうするか決めてもらう。それまでは此方で預かる。」

 結芽からケースを貰い、
 触れないよう慎重にそれを回収する。
 殺し合いは始まったばかりだ。それでも彼らは歩む。
 『絶望に立ち向かう者』と呼ばれたスティグマを抱いて。





【沖田総吾@銀魂】
[状態]:疲労(大)、全身裂傷
[装備]:どうたぬき@風来のシレン、パズーのバズーカ(残弾0)@天空の城ラピュタ
[道具]基本支給品
[思考]基本行動方針:お巡りさんが殺し合いに乗るわけにはいかねえなあ。
1:金髪の男(ザメドル)の対策を探すためアカツキと同行。
2:万事屋とか戦力を探さないとあれ(ザメドル)はきつそうだ。
3:神威レベル1だな、あれ(結芽)。
4:似非土方を探して処しておく。
6:柄じゃねえけど、もう一人の沖田の分も背負うか。
[備考]
・参戦時期は最終回後。

【燕結芽@刀使ノ巫女(アニメ版)】
[状態]:不治の病、金髪の男(ザメドル)への興味(中)、疲労(大)、写シ解除による精神疲労(大)、複雑、沖田総司と戦えたことへの歓喜
[装備]:千鳥@刀使ノ巫女
[道具]:基本支給品&ランダム支給品×1〜2(沖田の分、未確認)
[思考・状況]基本行動方針:強さの証明。殺し合いは知らないし興味もない。
1:アカツキ達と同行する。群れるのは好きじゃないけど、善処するって言ったし……
2:金髪の男(ザメドル)と一人で戦いたいけど、状況的に諦めるしかないかも。
5:沖田のおねーさん、すっごく強かった。
4:弱い人には強さを見てもらう、強い人には挑みたい。
5:何処かにあるかな? にっかり青江。
6:これ(絶望に立ち向かう者)使いたくはないけど……どうしよう。
7:土方歳三に警戒、と言うよりあって戦いたい。

[備考]
・参戦時期はアニメ版の死亡後から。
・写シのダメージによる強制解除後の連続使用は、
 短時間では多くても二回、それ以上はある程度時間が必要です。
・本来は刀使でもその御刀に選ばれないと写シ等はできませんが、
 この場では御刀を持てば種類を問わずに使用可能です。
・死亡後は時間経過で荒魂に変化するかもしれません。

【アカツキ@アカツキ電光戦記】
[状態]:空腹(大)、疲労(大)、全身裂傷、心労(小)
[装備]:試作型電光機関+電光被服
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1(確認済み)、ゴブリンの槍@現地調達、沖田総司の首輪、浅打@BLEACH、絶望に立ち向かう者(ケース入り)@Caligula Overdose
[思考・状況]基本行動方針:日本への帰還。
1:金髪の男(ザメドル)を倒す手段の確立。キバガリとやらがいればいいが。
2:D-5エリアの周囲のエリアを旋回し参加者と接触。
3:結芽が心配。
4:首輪の解除の道具が欲しい。
5:すべての電光機関を破壊する。この場にあっても例外ではない。
6:空腹で色々辛い。
7:マシュと藤丸立香を探し、沖田総司のことを伝える。
8:坂田銀時、志村新八を探す。
9:土方歳三に警戒。

[備考]
・参戦時期は少なくともアカツキ編ED後以降です。
・電光機関が没収されない代わりに、ランダム支給品を減らされてます。
 槍は筆談用に持ってるだけなので基本使いません……が、一兵卒なので案外使えるのかも。
・沖田総司、沖田総悟、燕結芽と情報交換をしました。

※D-5に燕結芽のデイバックと基本支給品が散乱してます。


766 : ◆EPyDv9DKJs :2021/10/15(金) 19:49:09 8Z2EcMxI0
【絶望に立ち向かう者@Caligula Overdose】
燕結芽に支給。作中の隠しボスの一体から得られるスティグマ(装備品)。
装備品とは言うが見た目に変化はなく、青い魂の残滓(宝箱)を開けた(このロワの場合触れた)人物に装備される。
装備されると残滓が消滅し、一度装備されると基本的に外せない。この事故防止のため簡素なケースに収納されてる。
(と言うよりどう外すか分からない為。参加者であれば神楽鈴奈か彼女に教われば恐らく可能)
感覚増幅に分類するスティグマで、隠しボスからともあって防御、回避、体力を大きく上昇させる。
装備した人物が死亡した場合、再び魂の残滓となって再利用が可能。
その際魂の残滓は装備した人物の遺体のそばになる。
現在は触れないようケースに入れられたため結芽に装備されてない。

【令呪@Fateシリーズ】
燕結芽に支給。サーヴァントに対する絶対命令権の効力を持つ入れ墨。
本ロワではコマンドコード@Fate/Grand Orderに保管されており、
ペルソナよろしく該当するカードを握り潰した参加者の手にそれが宿る、どちらかと言えば預託令呪
サーヴァントと契約しない限り無意味なもので、大量の魔力が内包されてるので、
魔術に関するそれらのブーストに使うことができた。供給されたのは三画分

【プリンへの弁当@ワンピース】
サンジが許婚のシャーロット・プリンが夜の会食の席に来なかったことを心配して作った弁当。
仲間に対する未練のせいか、内容のレパートリーは仲間に関するものか好物で揃っている。
骨つき肉、海獣の肉、オレンジ、焼き魚、海鮮パスタ、チョコ、サンドイッチ、ハンバーガー、カレー等
女性一人では流石に多めだが、ざるそば十枚行けるアカツキなら恐らく余裕


767 : ◆EPyDv9DKJs :2021/10/15(金) 19:51:18 8Z2EcMxI0
以上で『刃・解き放てただ一つその刃』投下終了です

忘れてましたがアカツキ達の現在位置は【D-5/黎明】です


768 : ◆bLcnJe0wGs :2021/11/28(日) 18:12:22 deaf5x7w0
リルルで予約します。


769 : ◆bLcnJe0wGs :2021/12/01(水) 12:03:36 qsS.5OCI0
投下します。


770 : 秒針が響くだけ ◆bLcnJe0wGs :2021/12/01(水) 12:05:07 qsS.5OCI0
レグルスとぉ姫様から離れ、ジャンク・ジャンクションを目指して草原地帯を西へと横断し続けるリルル。

◆◆◆

それから他の参加者やNPCにも遭遇する事なく移動していると、崖の近くに石らしき物で出来た大きなブロック状の物体が飛んで来ているのを発見する。

(スピードはかなり速いわね)

だが、その物体は崖の隣接する場所で止まると、直ぐに対向する方向へと飛んで行ってしまった。

(あら?
 さっきの石が来た場所の近くに立て札があるわね。
 何か重要な事が書いてあるかもしれないから、読んでおきましょう。)

彼女は石を目撃した場所の付近にあった立て札に目を通す。

その立て札にはこう書かれていた。



『注意!! 
 この先 浮遊床あり
 浮遊床は手前にある崖から、G-2南西ある高台を速いスピードで往復します。
 また、浮遊床の上に乗っていても立ち止まったりしていると落下してしまいます。
 乗る場合は落下しない様に、上で下記の進行ルートに沿って速く歩く等の行動をとってください。』

という注意書きの下には、地図にあるものと同じG-2エリアの画像の上に、自分が居る崖と往復地点となる場所に赤い丸印が付き、その進行ルートを示す為に2つの丸印を結ぶ、赤い点線が書かれた画像が印刷されている。



(上に乗っていても進行ルートに沿っていないと落ちる…?
 仮にその注意書きが本当だとしたら気をつけて行かないといけないわね。
 飛行能力にも制限がかけられている訳だから。
 それに進行ルートには幅の広い川もあるし、出来るだけ利用させてもらいましょう。)

それに実際乗っていない以上、容易には鵜呑みに出来ないが、現在は首輪解除の道具を探す事が先決。

立て札を読んでいる内に戻ってきていた浮遊床にいざ、足を乗せる。

するとそれが進行ルートに向かって動き出す。

(どうやら立て札に書かれていた事は本当みたいね。
 本当に落ちてしまうそうだから、注意しながら行かないと!)

そうして彼女は、床から落ちてしまわない様に足を動かしながら進路の高台を目指すのであった。

◆◆◆

自身に支給されている残りのランダム支給品にも有用そうなものはあった。

それは特殊な構造をした鍵。

アルス、アリスのいた世界住む盗賊が作った物で、その世界の様々な鍵を開くのに使われた道具だ。

それ以外にも、『子』という文字が12個も書かれた紙が支給されていたが、彼女にはその意味が理解出来なかった。

【G-2 浮遊床/早朝】

【リルル@ドラえもん のび太と鉄人兵団】
[状態]健康 怒り レグルス、佐々木哲平への嫌悪感(大)
[装備]なし
[道具]基本支給品、とうぞくのかぎ@ドラゴンクエスト3、『子』という文字が12個書かれた紙@妖怪の飼育員さん、ヘブンズ・ドアーのスタンドDISC、藍野伊月の基本支給品、防御スペルカード@ファイナルソード
[思考・状況]
基本行動方針:ジャンク・ジャンクションへ向かい、首輪解除の部品を入手する
1:浮遊床に気をつけながら高台に移動。
2:佐々木哲平に会えば、藍野伊月のことを話す。
3:レグルスはまた会ったら確実に殺す
4:ドラえもん、のび太と合流する
[備考]
アイノイツキとの会話で、彼女の過去、現在を知りました。
処刑されそうになっていた所を、ドラえもん達に助けられた直後からの参戦です。
原作版、羽ばたけ天使たち版どちらを参考にしても問題ありません。
佐々木哲平をタイムマシンを悪用した犯罪者だと認識しました。ホワイトナイトを盗作したと判断しています。
※飛行能力に制限があり、一定時間以上飛び続けると、首輪が点滅し始めます。


771 : 秒針が響くだけ ◆bLcnJe0wGs :2021/12/01(水) 12:08:30 qsS.5OCI0
【支給品紹介】

とうぞくのかぎ@ドラゴンクエスト3

リルルに支給。

盗賊のバコタが作った鍵。
原作では、入手すれば簡単な作りの鍵穴が付いた扉を解錠出来る様になる。

『子』という文字が12個書かれた紙@妖怪の飼育員さん

リルルに支給。

烏天狗の青北風が鳥月とのコミュニケーションをとる為の手段として、知恵遊びを交えながら書いていた物。
意味合いは『ニコニコ猫 焦がし寿司』となっている。

【会場内のギミック】

浮遊床@ファイナルソード

特定のルートを往復する浮遊床。
しかし、上に乗っていても進行方向に向かって歩く等移動していないと物理法則を無視して落下してしまう。


772 : ◆bLcnJe0wGs :2021/12/01(水) 12:08:56 qsS.5OCI0
投下終了です。


773 : ◆7PJBZrstcc :2021/12/01(水) 19:50:50 .WXU.Dh.0
エーリュシオン、ザメドル、ライナー、シャーリーで予約します


774 : ◆c4nYy47bT. :2021/12/02(木) 17:46:08 LAaWbCPM0
投下お疲れ様です。
本当に今更ながら感想を書かせていただきます。

刃・信じたこの道を何処までも
刃・解き放てただ一つその刃

恐らく参加者トップの強マーダー ザメドルと同じく戦力で言えばトップクラスの沖田組の予約
コンペロワの戦闘回で言うなら皇帝×時間や廻廻奇譚を書いた書き手様と言う事もあって
これはとんでもないものが来るぞと勝手に予感していました。

多対一戦闘の肝ともいえる攻守と相手のマッチングが目まぐるしく変わる高速戦闘。
血界の眷属のカタログスペックを遺憾なく発揮したザメドルが放つ絶望感
戦闘の合間合間に入る軽口やメタネタがぐだぐだ寄りのFGOや銀魂らしさ全開のギャグ
まさかの参加者一斉爆破アナウンスと令呪登場のギミック活用と支給品チョイスの良さ
結芽の思いと誠の一文字が乗った宝具が魅せる物語の最高潮
最期の最後で結芽と沖田さんで手合わせをさせる粋な計らい
書き手経験とキャラ理解から来る引き出しの多さがなせる業を見ました。

個人的に好きだったのが宝具発動からザメドルを足止めする沖田さんの決死の足掻きのシーンで
作中でも書かれてましたが、ステータスだけを垣間見ればあり得ない事なのに
沖田さんの新選組としての信条と本懐を果たさんとする意志の強さ。
それがこの無理を絶対やり遂げるだろうという説得力が与え、
戦いの結末を察せれてはいつつも読む手を早める事が出来ないシーンです。

読み進めてみれば予約時の予感的中で、思い描いた満足が詰めに詰まったSSに
「これだよ、これ!これがクロスオーバーの醍醐味よ!」と何様な感想を心の中で一つ。
無駄と無理を感じさせない丁寧に組み上げられた熱と愛を感じる作品でした。

秒針が響くだけ

読んでる間は浮遊床って何?って思いましたが出典を見てああ、そんなのもあったな!と
初見で主人公が壁と浮遊床に挟み潰されてたのを笑った記憶を思い出しました。
回避困難なバグギミックを残しておくファイナルソードの鬼畜(雑ともいう)制作陣に比べて
ちゃんと注意書き置いといてくれるだけここの主催は思ったより優しい…?
と思わせといて大した意味のない暗号を説明なしで支給品に入れて来る辺りやはり性格悪いようで。
今回とうぞくのかぎが出てきましたが、鍵があるという事は開錠を必要とする場所もあるということ
とうぞくのかぎレベルで開けられる場所がどの程度あって、その先にはどんな物が待っているのか。想像が掻き立てられますね。

本当に言いたいことは他にあるんですが、そこは割愛(確実に長くなるので)
皆様の力作に負けないどこに出しても恥ずかしくない作品を創れるよう私も頑張りたいです。

鳥月日和、ブースカ、シャドウ茜、意思持ち支給品 目玉おやじで予約させていただきます。


775 : ◆c4nYy47bT. :2021/12/02(木) 17:48:12 LAaWbCPM0
大変申し訳ありません
sageつけ忘れました。以後気を付けます


776 : ◆7PJBZrstcc :2021/12/02(木) 19:23:26 ACrgQvbg0
投下します


777 : D-5 禁止エリアを脱出せよ ◆7PJBZrstcc :2021/12/02(木) 19:24:06 ACrgQvbg0
 結論から言えば天使、エーリュシオンのD-5退避は容易だった。
 何せ、彼を阻む参加者など誰もいないからだ。
 南へ向かって進んでいたが、誰も彼の前に立ちふさがらなかった。

 途中、別の参加者同士で目撃したが、エーリュシオンは手を出さなかった。
 無論、戦いに割り込んで全滅させるという手もあったが、今は首輪が爆発する瀬戸際故、手こずれば自分が死ぬ可能性も十分あり得る。
 大いなる使命を持つ自分にそんな万が一があってはならない。
 ならば、知らずに飛び込んできた哀れな者たちには、禁止エリアによる首輪の爆発で死んでもらうのが最善だろう。

 そうしてしばらく進んでいると、首輪からの警告音が消失し、D-5を脱出したことが分かる。
 しかしエーリュシオンは移動を止めなかった。
 なぜならば、もしここで他の参加者やNPCが自身に襲い掛かられ、さっきまでいたD-5に押し込められれば首輪の爆発で死亡する可能性がある。
 その為、彼は念には念を入れて更に南下していった。
 結果、彼は気付いていないが気づけばD-6とD-7の境界辺りまで移動していた。

 ここに来て、彼はこれから先の行動について思考し始めた。
 まず、殺し合いが始まってから出会った参加者であるキュアダイアモンド、神楽鈴奈にクロ、およびD-5にいたもう二人の参加者を消し飛ばすことを中心に考える。
 その場合、最後の二人はともかく、後の三人はおそらくここから見て西の方角にいるだろう。
 D-5から真直ぐに南下して出会えていないことと、忌々しい亡者に消し飛ばされる前に見た地図に描かれた地形を見る限り、まず間違いないとみていい。

 しかし、そればかりにかまけていいものだろうか。

 エーリュシオンにとって彼女達三人は、再会すれば無条件で消し飛ばす対象であることに変わりはない。
 しかし、ミルドラースの放送が真実ならこの殺し合いの参加者は百人以上。
 一人で全て殺しきることをできないとは言わないまでも、手間がかかるのは事実。
 そして、これが殺し合いである以上、自分以外にも優勝を狙う参加者や、NPCとやらが参加者を殺しにかかるのは間違いない。
 ならばある程度は他に任せ、自分は一度他の方向に目をやるのも一つの手かもしれない。
 幸いなことに、自らの背には天使らしく翼がある。
 これを用いて川を渡り、東側へ行くのも道の一つ。
 情報が行き渡っていない場所へ移動し、何も知らぬ参加者を浄化し、支給品を集め態勢を盤石にするのだ。
 この場合、屍を漁るという屈辱的な行為を強要されることになるが、その怒りはミルドラースにぶつけることにしよう。

 だが同時に、もし自分の情報を他の参加者にばら撒き、徒党を組まれたら厄介なことになるかもしれない。
 一度に纏めて消し飛ばせる好機と見てもいいが、度重なる戦闘でダメージを負った以上、楽観はできないと考えるべきだ。

 拙速を尊ぶか石橋を叩いて渡るか。
 しかし余り考える時間はない。
 こうしている間にも状況は変化し、何が起こるか分からないのだから。

 聖帝エーリュシオン。
 彼が次に行く道とは――


【D-6とD-7の境界/黎明】

【聖帝エーリュシオン@モンスター烈伝オレカバトル】
[状態]:度重なる戦闘により蓄積したダメージ(中)、先程の狂信者たち(神楽鈴奈、クロ)に対する強い嫌悪感、ミルドラースに対する激しい怒り
[装備]:原罪(メロダック)@Fate/stay night
[道具]:なし
[思考・状況]基本行動方針:優勝して"ミルドラース"を打ち滅ぼす。その後、穢れた世界を浄化すべく地上にいる全ての命を消し去り、不毛の砂漠にする。
1:次に行くべき道を定める。
2:救われない世界は消し去るのが最善、それが天命だ。
3:一刻も早く優勝し、"ミルドラース"およびそれに組する者たちすべてを未来永劫消滅させる。
4:キュアダイヤモンド、神楽鈴奈にクロ、およびD-5にいたもう2人の参加者(ライナー、シャーロット)は見つけ次第、跡形も無く消し去る。
5:奴ら(神楽鈴奈、クロ)は、たかが泥人形ごときに何を期待しているのだ?所詮そいつらも、貴様らと同じ『泥人形』に過ぎぬだろうに。
[備考]
ウィズの爆裂魔法により、デイバッグ及びその中の支給品が消滅しています。
本来『七つの大罪』にまつわる様々な特攻効果を持っているが、制限により以下の2つの効果のみ発動しています。
【色欲の罰】:女性と戦う際、攻撃力が2.75倍に上昇する。
【傲慢の罰】:彼に最もダメージを与えたものに対して、攻撃力が約2.5倍近く上昇する(現在はウィズが対象となっている)。
クロ(リーダー)の姿を『黒い影』という形で視認しています。
ミルドラースを、「魔王を従えし真の魔王」である『魔皇』だと認識しています。


778 : D-5 禁止エリアを脱出せよ ◆7PJBZrstcc :2021/12/02(木) 19:24:36 ACrgQvbg0





 時は少し戻り、D-5における首輪爆発一分前。
 吸血鬼ザメドルは、彼の生において一番と言っていいほどに焦っていた。
 何せ、彼の生を終わらせるものがあと一分で作動するからだ。

 本来なら、首輪ごときが爆発したところでザメドルに終わりをもたらすことなどできない。
 圧倒的な武力と、どれほどの傷を負っても瞬時に回復する再生力を持つ彼らに恐れるものなどありはしない。
 まあ、その隙を突かれて一度は「密封」されたのだが、それは唯一の例外と言ってもいいだろう。

 しかし、ここは未知なる交差が頻繁に起こり、理が歪んだ世界の殺し合い。
 ならば、起こりえないことも起こりうるのが逆に道理。
 首輪が爆発すればゲームオーバーな以上、何らかの方法で自身を行動不能にし、殺し合いから除外する方法があるに違いない。

 だからこそ、彼は決断した。

 ダッ

 未だ目は見えないものの、この場から全力で駆け出すことを。
 吸血鬼たる自分の脚力なら、例えエリア外までの距離が最短である南では無くても脱出できると信じて。

 ガコォン! ゴシャァ!!

 途中、エリアにある建物が壊れる音が響く。
 明らかに自分の疾走が原因で破壊されていることは明白だったが、ザメドルは気にも留めない。

「オンナァァァ……!」

 また、何やら得体のしれない声が聞こえたが、それに興味を示すことも無い。
 そんなことに構っている時間は、今のザメドルには存在しない。

『首輪の爆発まで、後三十秒です』

 そして残り時間が首輪から告げられた直後に、ザメドルは失明から回復した。
 それと同時に見たものは、己の前に立ちはだかる高台だった。
 彼は失明により方向感覚を失った為、南ではなく北西へ向けて走っていたのだ。
 しかし彼は慌てることはない。
 すぐに高台を飛び越えるべく足のつま先に力を入れ、地面を全力で踏みしめジャンプした。

 だが、ブーストにんじんと効果と吸血鬼の全力は、ザメドルすら思いもよらぬ相乗効果を生み出した。
 なんと、彼の跳躍は彼の想像以上の効果を生んだ為、高台を軽々と超えるほどに跳び上がってしまったのだ。
 その結果、高台はおろか裏にある道路すら飛び越えていく。

『5,4、3――』

 そして、残り三秒のところで首輪から発せられていたカウントダウンが止まり、ザメドルは空中で禁止エリアを脱出した。
 そのまましばらく跳び続け、やがて彼は地面に着地した。
 この衝撃で足に少し衝撃が入ったものの、彼にとっては大した問題ではない。すぐ治る。

 それよりザメドルが考えることは、次に自分がどこへ向かうかについてだった。
 地形から見るに、さっき戦った者共とはほぼ真逆の方角へ来たらしい。
 ならばすぐに南下すれば、再び彼らと戦えるだろう。

「それはないな」

 また戦いたいとは思うが、これほどすぐに再戦しに行く理由がない。
 だからここは、このまま北へ向かうのがいいだろう。
 そこにも牙狩り程でなくとも、さきほどの者共程度に戦える者がいれば上々だ。
 そうでなくとも、斥候にできそうな相手がいればいい。
 だがまずは

「この見栄えの悪い体を、今は再生するとしよう」

 このままでも動けるが、不格好なまま歩き回るのは、ザメドルの性に合わなかった。

 驚異の吸血鬼ザメドルは体を休めたのち、北へ向かおうとする。
 それは予定通りに行くのか、予想外の事柄に阻まれるのか、はたまた彼自身の意思で変更されるのか。
 全ては何も定まっていない。


【C-4/黎明】

【ザメドル・ルル・ジアズ・ナザムサンドリカ@血界戦線】
[状態]:左腕と下半身(再生中)、健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、何かの帽子@出展不明、神界の木片@モンスター烈伝 オレカバトル
[思考]基本行動方針:せっかくだからこの殺し合いを楽しませてもらう。
1:再生が終わるまで待ち、その後北へ向かう。
2:この首輪は忌々しいからさっさと外したい所。
3:広い会場を一人で探索するのは骨が折れるから、有能な斥候は手に入れたいとは思う。
4:彼ら(アカツキ、結芽、総悟)とはまた戦いたいものだ。牙狩り程ではなさそうだが。
[備考]
※原作第八巻『幻界病棟ライゼズ(後編)』より、クラウスに「密封」された後からの参戦です
※首輪の制限により、一定以上のダメージを喰らった場合自動的に密封状態となり、事実上の脱落となります
 今回の戦闘でどの程度のダメージが蓄積されてるかは後続の書き手にお任せします。
※再生能力、戦闘能力はある程度低下しています。
 再生能力は高いものの連続して(常人においての)重傷を負うと、再生が少しだけ追いつきません。
※ブーストにんじんの効果は切れました。


※D-5 ディルディッドタワーの施設の一部が破壊されました。


779 : D-5 禁止エリアを脱出せよ ◆7PJBZrstcc :2021/12/02(木) 19:24:59 ACrgQvbg0





「「なんだあれ……?」」

 なお、ザメドル必死の脱出劇の最後は、D-5を脱出し、D-4に移動した直後のライナーとシャーリーにも見られていた模様。
 吸血鬼が生を拾う様は、彼らからすれば謎の物体が飛行しているようにしか見えなかった。

 それはそれとして、 さてこれからどうするかとお互い思った時、どこからか雄叫びのような声が響く。
 その声は少しずつ二人の方へ近づいてきていた。

「こっちだ!」

 声を聴いたシャーリーがライナーの手を引き、近くの物陰に隠れる。
 すると少ししてから、声の主が二人の目に飛び込んだ。

「オ〇ンコォォォ……!」

 十メートルを超える嫌悪感を催させる怪物が、二人から十メートル程離れた場所に現れた。
 怪物は未だ二人に気付かず、辺りをキョロキョロと見回しながら歩を進める。
 巨人ともネウロイとも違う未知なる怪物に対し、二人が選ぶ道とは――


【D-4/黎明】

【ライナー・ブラウン@進撃の巨人】
[状態]:健康、自殺衝動?
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:俺はどうすれば…
1:あの怪物(エテ公)に対処する
2:シャーリーの言っていた3人(クロ、鈴奈、エーリュシオン)を止める。
3:エレンも心配
[備考]
参戦時期は97話にて回想が終了した後、口に銃を突っ込み自殺しようとしている時から。
参戦時期の都合上彼の余命は残り2年程になっています。
巨人化能力に制限が掛かっているかどうかは後続の書き手にお任せします。

【シャーロット・E・イェーガー@ワールドウィッチーズシリーズ】
[状態]:健康、肉体的疲労(中)、
[装備]:ノースリベリオン P-51D“ムスタング”@ストライクウィッチーズ、M1918BAR自動小銃@ストライクウィッチーズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには絶対乗らない
1:あの怪物(エテ公)に対処する
2:ライナーが心配
3:あの3人(クロ、鈴奈、エーリュシオン)は何としてでも止めないと大変な事になるぞ…!!
4:エレンにも会いたいところ
[備考]
参戦時期は劇場版より後。
劇場版時点での作中舞台が1945年なので(現代基準で)それ以降に誕生・及び発展した物や技術についての知識はありません。


780 : ◆7PJBZrstcc :2021/12/02(木) 19:25:25 ACrgQvbg0
投下終了です


781 : ◆c4nYy47bT. :2021/12/09(木) 14:55:59 1oMrmhNA0
予約を延長させていただきます。


782 : ◆bLcnJe0wGs :2021/12/12(日) 19:04:13 ye6wfMmc0
桐山、エーリュシオンで予約します。


783 : ◆c4nYy47bT. :2021/12/15(水) 21:57:57 WbTxbhqk0
投下お疲れ様です。
度々遅くなりますが、感想失礼いたします。

D-5 禁止エリアを脱出せよ

爆破装置の被害を受けた面々の方針をコンパクトかつ丁寧に纏めあげた一話
エーリュシオンとザメドルは高位存在としてのプライドと戦略的な思考を両立できているのが
どちらも逃走屈辱的な行為をしているにも関わらず格を保てていて実に良い。
ライナーとシャーリーはまぁそういう感想になってもしょうがない。
飛ぶ手段に馴染みがある二人でも人が跳躍力だけで飛んでるとは結び付けられないでしょうよ
改めてエリア一マス分飛び超えられるザメドルの化物っぷりが見事に表現されてるなぁ…と
それはそれとしてここでエテ公参戦。徐倫たちの位置を鑑みても随分歩いてきたねキミ。
奇行種も真っ青な邪鬼相手に巨人になれない(推定)ライナー達がどう動くか今後が気になる終わりでした。

予定よりも文字数が長くなってしまった為、先に作品を前編として投下致します。


784 : ◆c4nYy47bT. :2021/12/15(水) 22:01:05 WbTxbhqk0

「じゃあ、このバックには何が入ってるか分かる?」
「えーとね、糸が3本!お酒が2本!」
「正解!すごいよブースカ。透視も出来るんだ」
「エッヘン!ボクが出来るのはこんなもんじゃないよ〜」
「まだ他にもあるの!?ならもっと見せてもらってもいい?」
「ミュッキー!」

「はぁ…こうのんびりしとっていいんじゃろうか。」

反り返った岩々が並び立つ崖上にポツンとおかれた二階建ての建物
すっかり人と人ならざる者たちの憩いの場と化した
店内に殺し合いの場とはとても思えない明るい声が響き渡る。
その中で一人、支給品として招かれた妖怪目玉おやじは
会場に来てから何度目か知れぬ溜息を吐いた。

目玉一つの頭部のどこから息を吐いたのか。
そもそもどうやって言葉を発しているのか。
明確な答えは存在するが、それを聞くのは不毛と言うものである。
人の一般常識では簡単に語れないのが妖怪という生き物だ。
一つ解明する度に新たな疑問が現れ出る。
寧ろ詳細が分からない人知が及ばぬ存在だからこそ『妖怪』だと言えよう。

閑話休題、妖怪の神秘は置いといて話は溜息の原因へと移る。

空腹に喘ぐブースカとの食事、ミルドラースからの放送、支給品確認を終え、
一行は休憩の時間から次なる行動を考える時間へと移る。
殺し合いからの脱出のためにはより多く参加者と出会う事は必須。
しかし、ここは見知った場所など一つもない無い会場。
人と会うにしてもどこを目指して動くべきか決めあぐねていた。
その中で日和から提案されたのは施設に留まり、更なる情報交換の必要性。
提案された当初、目玉おやじ自身も不安はあったが残留に肯定的だった。

妖怪と気軽に触れ合えるという妖怪園に勤務する日和と
彼女が住む漫画やアニメで鬼太郎達が周知の存在となり、
人と妖怪が国際条約によって友好が結ばれ、共存が成立している世界
イグアナから子どもの発明で快獣に進化したブースカ自身と
彼が住む氷河期を齎す魔女や地球全土をカボチャ畑にしようと企む宇宙人など
地球に甚大な被害を及ぼせる存在が街の至る所に点在する世界

同じ名前に違う性格、同じ地名に違う習慣
妖怪に関する知識では博識であると自負している己でも未知の領域だ。
日和自身は「世の中は広いし、そんなこともある」とあっさり流していたが、
新しい情報を得る以上に現在開示されている情報への疑問解消は急務。
己の知識欲を満たすと言った意味でも対話を否定する理由はない。

加えて、周囲には崖下に広がる森林生い茂る大穴を除けば際立った物は見当たらず
この建物自体は土地の規模が広く、倉庫にも似た二階建てと非常に目立つ外観。
参加者は自分らを除いて100人以上もいる。
こちらから出向かずとも自然と人が来る。当初の目的を考えても支障は出ない。
目玉おやじはそう考え、日和の意見に頷いた。


785 : ◆c4nYy47bT. :2021/12/15(水) 22:03:09 WbTxbhqk0


しかし、実際はどうだろうか。
話し始めて一時間を超えるにも関わらず、待てど暮らせど人は来ずじまい。
ここまで参加者はおろか会場に存在するというNPCにすら会えていない。
夜の帳が降りきっていた空も深夜から黎明に移り、
日は顔を出していないものの徐々に明るくなりつつある。

危険な目に一切あってないと考えれば、プラスに見えるかもしれないが
「何もなかった」と言う事は目まぐるしく変化しているであろう情勢に
自分たちは全く関われていない事を意味する。
時間ばかりが過ぎ、こうも進展がなければ焦りを感じたくなるのが必然だ。

頬杖を突きながら目玉おやじは二人に目線を移す。
話し合いの最中、質問攻めを繰り返していた立案者は
現在、呑気にもブースカとの遊びに興じていた。

二人は現状をどう思っているのだろうか。
呑気にしてる間に取り返しがつかない事になっちゃいないだろうか。
そう考えるとこうして待ちの姿勢でいる事がとても不安に思え
溜まった感情がまた溜息に変わって口からこぼれてしまう。

「のぅ、随分と長居をしているようじゃが、そろそろ移動しなくても良いのか?
ワシ等は充分話し合った。もうここを離れる頃合いだと思うんじゃ。」

長きに渡る時間と不安が積りに積もった末、
しびれを切らした目玉おやじはを彼女へと投げかけた。

「そうは言ってもですね、目玉おやじさん」

それを受けた日和はブースカとの遊びを一旦やめ、う〜んと考える素振りを見せる。
時間にして数秒、頭の中で考えを纏め終えると彼女は反論の言葉を口にし始めた。

「私たちの知り合いはいなかったわけですから無理に動く必要も無いと思います。
それに身を守れる手段がほとんど無いじゃないですか。
武器って呼べる物なんてせいぜいこの…ノコギリくらいですし」

そういって作業台から自分のデイパックに移していた
ノコギリを取り出し、えい!と振って見せる日和。
彼女の言うとおり奇天烈な名が並ぶ名簿の中に知人の名は一人もなかった。
鬼太郎や猫娘、妖怪横丁の頼れる仲間たちがいないという事実は堪えるが
外道の催しに連れてこられていない事を安堵するべきことだろう。
自分のように支給品として、仲間が連れてこられている可能性はあるが飽くまで可能性。
かもしれないと言った曖昧な理由で二人を会場を連れまわす事は出来ない。

闘える武器や力があれば話は別だったが支給品には特に目ぼしい物は見当たらず
しいて言えば、作業台に付属した鋸や金槌といった工具。
これなら本来の用途は違えど最低限の自衛になり得る。
とはいえ、それは相手が一般人であればの話。
今まで戦ってきた妖怪のような超常的な存在相手では気休めもいいところだ。


786 : ◆c4nYy47bT. :2021/12/15(水) 22:04:57 WbTxbhqk0

「だからこそ、今はお互いの親睦を深め合いつつ、誰かが来るのを待つべきなんですよ!
お互いこうして腰を落ち着けて話し合えれば、大抵は何とかなるかもしれません。
ブースカとだってほら!こんなに仲良しになれましたし、ねー?」
「バラサ、バラサ!ひーちゃん、ブースカ、とっても仲良し!」

日和からの同意を求める呼びかけに笑顔で答えてみせるブースカ。
そんな彼の日和に対する呼び方は最初に出会った時より変化していた。
どうやら自分が考え事していた間にあだ名を付けるくらいには仲が進展していたらしい。

「そりゃあ話し合えればそれにこした事はないが、
ここに来る参加者が善人ばかりとは限らんじゃろう。
凶悪な人間や妖怪ならどうするんじゃ?」

「話し合えるならなんとか話し合いたいですけど…無理な時は一目散に逃げます。
武器はありませんでしたが、幸い脱出用の道具は入ってましたから。
説明書通り建物からパッと外に出られるなら相手もびっくりするでしょうし
逃げる時間位はなんとか稼げるんじゃないかな〜と」

支給品の糸を片手に逃げのプランを語り始める日和。
どうやら自分が思っていた以上に危険人物への思考はちゃんと纏めていたらしい。
真面な話が聞けてホッとする反面、どこか相手の善性ありきの
楽観的な考えにも感じてしまい、心に残った心配はぬぐい切れない。

「うむぅ…目的も道理も理解出来たが、そんなに上手くいくかのぅ」
「大丈夫ですよ、目玉おやじさん!上手くいきますし、私たちでさせるんです!
人と妖怪がこんなに仲良くなれるんですから、人と人とで出来ない理由はありません」

異なる種族が交友を結ぶことの難しさは目玉おやじ自身良く知っている。
妖怪と人の間にある外見の違い、文化の違い、価値観の違いを分かり合えず
拒絶しあった結果、暴走し退治せざる負えない結果になった案件も幾つもあった。

だが、負の感情が生まれやすい争いの場で
妖怪と分け隔てなく付き合う事が出来た日和の言葉には
彼女自身の経験に裏打ちされた溢れる自信が感じられた。
少なくとも、根性論にも似た理想を信じてみたくなるほどには。

「…分かった。お前さんがそこまで胸を張って言い切れるなら、もう少しじっくり待ってみるとするわい。何よりワシも有益な代案が出せる訳でもないしな」
「ありがとうございます!
そうです、ここは大御所らしくどっしりと構えておきましょう!
果報は寝て待て、待てば海路の日和あり…です!ひよりだけに。」

別に重鎮と言えるほど有名人ではないのだが、日和のいた世界では妖怪のアニメと言えば
腹巻を巻いた化け猫か自分たちのどちらかとなるレベルで認知度が高いとのこと。
見知らぬ場所で人気者とは何とも不可思議な話…でも少しばかり照れてしまう。
一体、鬼太郎のアニメでどんな描かれ方をされているのか気になるところではあった。

「それよりも目玉おやじさん!」

突然、日和はテーブルに両手を叩きつけ、ずいとこちらに顔を寄せてくる。
小さい体躯では堪えるもクソもなく、叩いた衝撃で思わず身体がひっくり返った。

「な、なんじゃ突然!びっくりするじゃろうが!」
「私、まだ目玉おやじさんからのお話聞き足りてませんよ!
アニメや漫画だけじゃ絶対知れない御本人からの武勇伝、是非もっと聞きたいです!」

興奮した表情と期待の籠った眼差しを向けながら日和は嬉しそうに要求する。
どうやら充分話し切ったと思っていたが、相手はそうは思っていなかったらしい。
情報交換とは言っていたが、さては妖怪話に花を咲かせることが本命だったなと
幸い、こちらも聞きたい話が出来たところだ。ちょうどいいだろう
やれやれと体を起こしつつ、要望通りの武勇伝を妖怪好きの少女に聞かせることにした。


787 : ◆c4nYy47bT. :2021/12/15(水) 22:06:34 WbTxbhqk0


目玉おやじも戯れに参加し始め、場が賑やかになった頃だった。
扉がキィ…とドアベル代わりの音を立てる。
蝶番の軋む古びた音は来訪者が来たことを知らせる合図

遂に訪れた新たな遭遇の瞬間
元の環境もあってすっかり慣れてしまったが、室内は人外が過半数を占めている。
だからようやく現れた参加者を怯えさせないよう
どんな相手であれ皆、溌剌とした笑顔で出迎えるつもりだった。
しかし、当初の思いとは裏腹に表情は笑顔とは違う形に変わってしまう。

闇夜に溶け込むには最適のロングコートを筆頭とする黒で統一された衣服
目的に合わせるかの如く漆黒に染まりきった肌。
その二つが齎していた闇との調和を崩壊させるのは一際目立つ深紅の髪。
ドミノマスクの内側から雲の合間より差す月光のように怪しく光る金眼は
獲物を品定めするようにこちらを見つめている。

──────異質
怪盗を連想させる出で立ちの見た目だけなら人間と何ら遜色のない男に
そんな感想が頭に浮かんだ。目の前の青年には近寄ってはならない何かがある。
長年、魔の物と戦い続けてきた警戒心の高い目玉おやじは勿論
如何なる人間、妖怪相手にも気後れせず天然な対応を返す彼女でさえ
この時ばかりは声をかけるのを躊躇ってしまった。

「こんばんは!ぼく、ブースカれす!」

張り詰めた雰囲気をものともせず、来訪者の元へ挨拶をしに歩み寄る快獣が一匹。
如何に人並外れた力を持ったブースカと言えど
その本質、精神は純真無垢な人間の子どもと何も変わらない。
それ故に相手が発する異質さを感じる感覚が鈍く
結果として彼に躊躇いなく近づけてしまった。

来訪者はブースカの元気な挨拶に返事を返すことはない。
代わりに浮かべたのはニッと口角を上げた不敵な笑み。
連鎖して彼の腕が微かに動きを見せる。その袖口からチラリと顔を覗かせたのは
鈍色の光沢が輝きを放つ―――

「ブースカ!待って!」
「え?どしたのひーちゃ…うわぁ!」

友人の一声にブースカは立ち止まり、くるりと声の方を向く。
瞬間、彼の首元を一筋の線が素早く通り抜けた。
視線を戻すとそこにあったのは体勢を低くしながら、
腕を大きく振るい、一歩こちらへ踏み込んで来ている来訪者。
線の正体、それは標的を捉えそこなったダガーの一閃が
空を切りつけた際に出来た殺意の軌跡だった。

ブースカは驚き仰け反った勢いでどしんと尻餅を突き、青褪める。
もし彼女呼びかけに応えず、一歩前に足を進めていたら
自分は今と同様に床に倒れ伏していた。
尻もちとは違い、『傷口から溢れ出る血飛沫と共に』と一文が添えられて
まさに間一髪。日和の気づきと少しの偶然が起こした幸運。
だが、相手がこのまま一撃で終わる事を許すはずもない。
来訪者から襲撃者へと変貌した男は武器を構え直し、
つづけざまに二撃目を倒れた直後のブースカに向けて放つ。

「え、えいっ!」

追撃に待ったをかけたのは襲撃者の眼前に迫った飛来物。
片手で抱えられる程度の小さ目な缶。
サイズはなくとも当たればある程度のダメージはあるだろう。
それでも、所詮は腕力の低い女性が投げた速度もない一投
何の障害にもならないと缶を華麗に切り裂き───

───バシャンッ!

缶の中から溢れ出した液体、DIY用のニスが襲撃者を襲った。
粘着質な液から漂ってくるのは工事現場でなじみ深い、独特な刺激のあるシンナー臭。
癖毛をファッションに昇華させたパーマも無残に崩され、
潰れた髪がワックスを付けたようにテカテカと赤色を強調しながら光る。
綺麗にニスでコーティングされた男は沈黙。敵ながらいたたまれない様子だ。

何とも言えない空気が辺りを包む。

そんな彼を見て、缶を投げた張本人は頭を掻きながら申し訳なさそうに笑う。


788 : ◆c4nYy47bT. :2021/12/15(水) 22:08:12 WbTxbhqk0

「あ、あはは…すみません。
なんとか止めようと思って、手元にあったやつを適当に…。あの、落ち着きました?」

なんとも気の抜けた問いに対して、返ってきた回答は言葉ではなく行動。
標的を日和に変更し、襲撃者と同様に塗装された短剣を振り回す。
表情は変わってないように見えるもののどこか苛立ち交じりの攻撃だった。

「ですよね〜、きゃあ!」
「日和、これは最悪のケースじゃ!
話をするにせよ逃げるにせよ、あやつを無力化させるしか乗り切る道はないぞ!」
「それは分かってますけどまともに戦うなんて私じゃ絶対無理です!
何か時間を稼げるものがあれば…」

追撃を止めるという目的は見事達したが、状況が好転したわけではない。
現状、相手はべったりと付いたニスの感触に苦戦して、動きは繊細さを欠いている。
それでも何回か振るえば狂った感覚の調整は容易いだろう。
慣れればすぐにでも攻撃速度は元に戻る。タイムリミットはそこまで
長くは場を持たせられない。閃きが無い者に待っているのは死のみだ。

「あっ!そうだブースカ!カバー出して、カバー!」
「カバー?うん、分かった 」

室内を逃げ回りながら日和は思いついた指示をブースカへ飛ばす。
尻餅をついたままだった彼も声を聴いて、急いで立ち上がると
自分のデイバックの元へ駆け寄り、目当ての物を探し始める。
当然、不審な動きを始めれば襲撃者もそれを察知
身体の向きを急転換し、攻撃の優先順位を再びブースカに変更した。

「そこ!そこで一気に引っ張りだして」
「行くよ〜!そぉーーーれっ!」

ブースカが勢いよく引っ張りだしたのは文房具のハサミカバー
無論、ただのハサミカバーではない。
ブンボー軍団の一員であり、この殺し合いの参加者でもあるハサミ
成人男性が見上げる必要がある程、巨大な刃を覆うためのカバーだ。
それに伴って、カバー自体も通常のサイズの何十倍にも膨れ上がっている。
その規模は狭い室内で取り出せば突き破りかねないほどに

デイパックの外見からは想像のつかない予想外の大質量の出現。
攻撃の勢いを殺すタイミングが間に合わず、カバーの頂点が襲撃者の腹部を直撃。
衝突よる強烈な反発作用を受け、意図せぬ方向に飛ばされる彼の進行方向には
建物におけるイレギュラーな出入り口、窓ガラス
そこから連想される結末を回避する時間も余裕も彼にはない。
現在進行形で解放され続けるカバーの大部分諸共、室外への強制退場を余儀なくされた。





「勢いよく飛んで行っちゃったけど大丈夫かな…」

一時的に場を切り抜けた日和は盛大に割れた窓ガラスの外を心配げに見やる
取り出そうとすれば建物を壊しかねない為、扱いに困っていたハサミカバー
あれが飛び出そうとするのに合わせて、上手く相手にぶつけられれば
とりあえず外に追い出せるのではないかと思い、実行に移したものの
こうも派手に吹き飛ぶとは彼女自身も想像していなかった。
非常時につき手荒な真似をしてしまったが、死んでほしいとは思っていない。
ただ相手も襲い掛かってきた訳だから「これでおあいこで一つ」と内心呟いた。

当然、普通に引っ張りだしただけではこうはならない。
ブースカのユーモラスな見た目にそぐわない怪力
ハサミカバーの大質量、一切の減速なしで突き進んだ両者のスピード。
以上の三点が相まって、想定以上の力を生んだ結果だ。


789 : ◆c4nYy47bT. :2021/12/15(水) 22:11:28 WbTxbhqk0

「相手の心配をしとる場合か!ヤツが戻る前に早く逃げるんじゃ!」
「あ、はい!じゃあブースカ、前に話し合った通りね?」
「ミュッキー!」

気づくと復帰した襲撃者が再び室内に入ってこようと向かってきているのが分かる。
相手の事も気になるが今は、自分と身内の命。
この場を切り抜ける為に前もって話したプランを元にブースカへと指示を送る。
二人は外から見えない位置に移動し、ジッと息を殺して時期を見計らう。

迫り来る音が徐々に迫り、胸の音も同時に高まっていく。
そして、襲撃者の足音が直ぐ傍まで近づいた瞬間、それぞれ手に持った糸を解放
使用者の体を包み込み、瞬時にその身を建物の外へとワープ。
後には空っぽの室内と不可思議そうに内部を見渡す襲撃者だけが残った。





「スゴい…ホントに糸一つでワープ出来ちゃった…
あっそうだ!目玉おやじさん、ちゃんと付いてきてますか」
「うむ、ワシはここじゃ。どうやら上手くワシも移動出来たようじゃな」

室内から一気に視界が開けた室外へのワープ
説明書通りの技術に驚きつつ、日和はすぐに確認を取る。
横にはブースカ、帽子の間には目玉おやじの無事な姿。
そして、建物の方では窓から中へと入っていく襲撃者の姿。
どうやら全員問題なく良いタイミングで移動出来たようだ。と彼女はホッと安堵する。

彼女たちの逃亡プランは一つ
アリアドネの糸で転移して、相手からの距離を稼ぐことのみ
ただし、逃げるにあたって彼女達は2つの場合分けをした。
それは逃げる対象が「内」にいるか「外」にいるかの違い
今回は後者…外から明確な怪物や悪人が来ていた場合が適応される。

内容はただ糸を考えなしに使うのではなく
隠れる動きを見せてから相手の突入してくるギリギリで使用する事。
そのワンアクションを外から視認させれば、自分達が不自然に消えたとしても
相手は「逃げた」のではなく、まだ何らかの方法で内部に「隠れた」と予想するはず。

もしそうなれば目論見通り
相手が何らかの方法で扉を開けずに外に出たと考えた時には
既に標的の追跡には何手か遅れが生じていることは確実。
その遅れの分だけ、自分達は逃げる時間を稼ぐことが出来る寸法だ。

とはいえ、命綱の「アリアドネの糸」は初めて使う道具な上に説明も簡易的
どこにどうやってワープするか不明で、ワープ先の「外」が襲撃者の傍だったら無駄な点や
支給品扱いを受けているが、同じ生き物である目玉おやじの判定と
不確定要素が多い作戦だったが、成功した以上は賭けに勝ったという事なのだろう。
直近の危機を脱し、戦い抜いた三人は互いの無事を喜び合った。

「ブースカも大丈夫?具合とか悪くない?」
「うん、ボクはどこも悪くないれすよ!」
「良かった!それじゃあ全力ではし───」



パァンッ!!



岩影の方から響き渡る一発の破裂音。

それが何か考える暇なく肩に走る強い衝撃

不意打ちですねこすりが突っ込んできたとしてもこうはならないだろう。

誰かに激しく押し倒されるように地面に背中から転がる。

倒れこんだ身体に最初に噴き出した鮮血がかかった。

ぼんやりと伝わってくるのは身が焼ける痛みと生暖かい液体が溢れてくる感覚

「日和!」

「ひーちゃん!?」

ブースカと目玉おやじ、二人が叫ぶ声が聞こえる。

ああ、そうか

あの破裂音は銃声で、私は撃たれたんだ。

とても長く感じる数秒の内にたどり着いた結論

なんとも単純明快な事実、受け入れるのは一瞬だった。


790 : ◆c4nYy47bT. :2021/12/15(水) 22:22:03 WbTxbhqk0
以上で「少年少女、前を向け」前編終了です。
問題があれば修正を行って後編を投下。修正困難な問題であれば破棄致します。
後編の投下は明日の締切内に纏める予定ですが、超過してしまう場合はご連絡致します。


791 : ◆c4nYy47bT. :2021/12/17(金) 00:56:25 BvTKsK6A0
後編投下します


792 : ◆c4nYy47bT. :2021/12/17(金) 00:57:43 BvTKsK6A0

「どこに逃げようって言うの?この悪党共…!」

同行者が撃たれ、叫ぶ二人の声とは違う声が聞こえた。
それは弾丸の飛んできた方向を合致しており、声質は女性…それも子供の声だった。
振り返ると襲撃者と同じ怪盗を連想させる服装をした一人の少女の姿。
そして、その手には硝煙が立ち昇る拳銃が握られていた。

「き、キミだぁれ?キミがひーちゃんを撃ったの?」
「私は、私たちは心の怪盗団。
この地に蔓延った悪党を一人残らず改心させる為に参上した正義の味方」
「悪党…?どういうことじゃ!ワシ等は何もしとらんぞ!」
「だから悪党じゃないって?白々しいウソつかないで」

目玉おやじの否定の言葉を正義の味方を名乗った少女はフンと鼻で笑う

「誤魔化したって無駄
一般人だって言うなら殺し合いの場に連れてこられて、
あんな呑気に笑ってなんていられるわけがない。
もっと殺し合いの恐怖に怯えて、助けを求めて震えてるはず…
それなのに、外からでも聞こえるくらい賑やかな声出してさ。
どうやって参加者を殺すか作戦立てながら高笑いでもしてた?」

「違うよ!ボクたちは、そんなことしてない!」
「ワシ等は参加者が来るまで互いの話しをして待っておっただけじゃ
確かに呑気な話をしとったかもしれんが、恐怖に負けぬよう励ましあっとったんじゃ!」

言いがかりに等しい悪人認定。これには黙っていられないと二人は反論を返す。
それでも悪を拒絶する少女の心は揺らがない。

「口先だけならどうとだって言えるよ。私は信じない。
みんな綺麗な言葉の裏では汚い事ばかり考えてる。
弱者を食い物にしてやろうと舌なめずりしてる。
だから、私が成敗してやるんだ。手に入れた…この力で!ジョーカー!」

少女の叫びを合図に上空に影が出現し、
そこから現れた男が短剣を首元に押し付けながらブースカを組み伏せる。
予期せぬ方向からの出来事。彼には抵抗する暇もなかった。

「……っ!! うわあぁっ!!」
「ブースカ!くぅ…やはり戻ってきおったか。
じゃが、その体は…何故なんともなってないんじゃ?」

拘束してきた男は黒い肌にロングコート、そして赤髪と
先程まで戦っていた襲撃者に間違いない。
外で起きてる騒動に気づいたか仲間の声を聞きつけて戻ってきただろう。
だが、仮にそうだった場合おかしな点がある。
濡れていたはずの身体が何事もなかったように乾いているのだ。
染みついたニスを短時間で落とし切るなど絶対に不可能。一体どうやって…

「関係ない事だよ。これから改心されるあなた達には」

男への思考を無意味と断じ、再び目玉おやじらに銃を突きつける少女。

「安心して?すぐにはやらない…最期に懺悔しなよ。
これまでしてきた悪事もこれからしようとしてた悪事も含めて全部。
そうしたら、最期は楽に改心させてあげる」

慈悲とはかけ離れた死刑宣告にも等しい発言に目玉おやじの頬を汗が伝った。
ブースカは拘束され、日和は倒れたまま。
反論の言葉は耳に入らず、言うとおりにしても待っているのは死
状況は詰みに近く、出来る事は何もない。自分の無力さがこんなにも悔しい時は無かった。


793 : ◆c4nYy47bT. :2021/12/17(金) 01:01:10 BvTKsK6A0

「待って…」

瞬間、聞こえたとてもか細い声
普段とは比べ物にならぬ程小さい声で呟いた日和の声だ。
一体何を思ったか。彼女は手元にあったデイバックに手を伸ばすとそれを遠くに放りやり、ゆらゆらと力なく立ち上がる。

「日和!その傷で動いてはならん!」
「オマエ、いったい何のつもり?」

放り捨てたデイバックの開口部からは飛び出ているのは、ノコギリや金づちといった凶器の類
腕の傷を見れば、それらを扱うのは難しい。結論で言えば大した痛手ではないのかもしれない。
しかし、これは彼女がまともな抵抗手段を自ら手放した事を意味していた。
やけっぱちにも見える愚行に少女は疑問の言葉を投げかける。

「口先だけじゃダメって…言ってたよね。
だからこれくらいはしなきゃ、証明にならないって思って…」

処置がされていない絶えず血が流れ出る片腕と明らかに弱り切った表情。
この様子では例え何かを懐に忍ばせていたとしても
危害を加える動きをするなどとてもじゃないが不可能だ。
彼女が今完全な丸腰状態なのは疑いようもない事実。

「観念したってこと?いい心がけだけど、そんなことしたって改心を見逃す理由には」
「貴女がこれまで…
どんな事があったか詳しいことは分からない…それでもね。」
「…!来るな!近づけば撃つよ!」

反応が返り切る前に日和は覚束ない足取りで歩みを開始した。言うべき話を少女に語り掛けながら
迫る相手に銃を向け、警告の言葉をぶつけるが彼女は止まらない。

「周り全てが敵に見えてしまうくらい…辛い事があったってことは分かるよ…
けどさ…どんなに苦しくても誰かを傷つけて…繋がりを断ち切ろうとしちゃダメ…」

一歩、また一歩彼女の元へ進み続ける日和。
その歩みを止める者は誰もいない。味方は勿論、敵ですらも邪魔してはならないと黙って見つめていた。
息も絶え絶えなその傷ついた身で、己を撃った見知らぬ少女を思って話続ける。

「それで皆の命を奪ったら…あなた、独りぼっちになっちゃう…
本当は分かり合えたはずの相手とも…永遠にすれ違ったままになっちゃうから…」

人にも妖怪にも相手にしかない事情がある。それがどれだけ憎い相手だろうと
その事情は歩み寄らなくては決して知る事は出来ない。
だが、死んでしまえば抱えていた真実を知ることは完全に消えてしまう。
本来在り得たはずの和解の機会も二度となくなってしまうのだ。

「ちょっと…やめてよ、近づかないで…!」
「私たちはまだお互いの事何も知らない…
だからまずは…知ろうとするところから始めよう?」

敵は目前にまで迫ってきている。互いの距離はゼロに近しい。
撃とうと思えばいつでも撃てる。だが、撃てなかった
攻撃を受けた訳でもないのに銃を握る手が震え、引き金が格段に重くなっている。
悪人の言葉にどうしてここまで動揺するのか理解できず
その原因の把握に割かれた思考は少女の行動を許さない。
何もしないまま時は立ち、やがて日和の手が彼女の手と重なった。


794 : ◆c4nYy47bT. :2021/12/17(金) 01:03:03 BvTKsK6A0

「私たちは敵同士にならなくてもいい…
銃を置いて、ラーメンでも食べながら少しずつ…自己紹介から始めよう、ね…?」
「……ッ!さ、触らないで!」

重ねられた手を少女は感情的に振り払う。
力いっぱい引き剝がされた日和は体を支える余力などない、そのまま地面に崩れ落ちる。

「騙されない!信じない!
私が…私が悪い奴らを改心させるんだあああああ!!」

激しい頭痛に苦しむように頭を抱え、鋭く突きさすような叫びを上げる少女。
震える銃口を倒れた日和に向け、今にもその引き金がひかれようとしている。
もう何をしても間に合わない。諦めたように目を閉じ―――


「ひーちゃんをイジめるなぁー!」


その凶行を少女の叫びに負けずとも劣らぬ大声で待ったをかける者が一人、いや一匹
湧きあがる憤怒をエネルギーに換え、発揮した爆発的な怪力を持って
自らを拘束する怪盗を力づくで吹き飛ばした。
突然の反抗に少女は我に返り、今もっとも撃つべき相手をブースカと判断。銃を彼へと構えなおす

「ジョーカー!オマエ…!」
「プリプリのキリリンコ!カッカッカァ――ッ!」

それはブースカにとっての怒りの合言葉。
冠からは沸騰した薬缶のように蒸気が噴き出し、爆発した感情を表面化させる。

「ネンネン…リキリキィーーー!」

呪文と共に一直線に放たれる紫色の快光線
その一撃を浴びた少女はフヨフヨと宙に浮き始め、身体の自由を奪い去られた。

「オマエなんか…オマエなんか、とんでっちゃえー!」
「え……きゃあぁ!?」

ブースカは怒りのままに放り投げる動作を取ると念動力で少女を崖へと吹き飛ばす。
身体の自由を奪われた状態では抗えず、どうしようもないままに転落していく。
ジョーカーは仲間の窮地に血相を変え、凄まじい加速で落ちていく彼女の元へ急行。
拘束を解いたターゲットには脇目も振らず、三人の横を一陣の風をなって通り抜ける。
そして、役割を果たす為に大森林の生い茂る崖下へと飛び込んでいった。


795 : ◆c4nYy47bT. :2021/12/17(金) 01:05:30 BvTKsK6A0


二人は飛び降りる怪盗を黙って見送る。
敵の動向以上に気に掛けねばならない者が他にいるからだ。
力なく倒れる日和に駆け寄るブースカと目玉おやじ

「ハァ…ハァ…」
「鬼のいない間に急いで応急手当じゃ!
ブースカよ、そのジャケットで傷口をふさいでくれぃ!」
「う、うん!分かった」

怪盗を遠くに吹き飛ばし、邪魔する者がいなくなった今が好機と
腰に巻いたジャケットをきつく結び付ける事で圧迫止血を施そうと試みる。
日和は片腕が使えない状態な為、本人にやらせるのは酷な話。
彼女や体が小さく結びづらい目玉おやじに代わってブースカが出血部分を縛りあげる。
すぐに止まるというわけではないが、とりあえずは更なる出血を回避出来た。

「…っててて。ありがとうブースカ。助けてくれたんだよね」
「ひーちゃん、体は大丈夫なの!?」
「大丈夫……とは言えないかな…
小さいケガは園だとよくあるけど、流石に…撃たれるのは初めてで…」

撃たれた後も体を行使したせいか顔色は思わしくなかった。
何より妖怪とは違う普通の人間だ。銃で撃たれて元気溌剌でいられるはずもない。

「まったくあんな無茶しおって!止めに入らなければどうなっとったか!」
「あはは…すみませんご心配かけて。…それであの子は?」
「森の方へ落ちてったのをあやつがジョーカーと呼んでいた男が助けに行ったわい。
どうなっているか分からんが、恐らくは死んでおらんじゃろうな」
「…そう、ですか。なら良かったです…」
「良くないよ!ひーちゃんをこんなにイジメたんだよ!
あんなヤツ、そのまま落っこちゃえばいいんだ!」

少女に対し怒りを露わにするブースカ。
自分だけでなく友だちが傷つけられ、死にかけているのだ。
いくら温厚な彼であっても決して許せない所業だろう。
気持ちは大いに分かる。でも───

「コラっ」
「イテッ!」

怒りで震えるブースカの頭を日和はコツンとチョップする。
力は全く入っていないのでダメージは無いが、反射で小さく呻くブースカ。

「どれだけ嫌いな相手でも傷ついてほしいなんて言っちゃダメ
誰かを死なせて物事を解決してもいい気持ちになんて絶対ならないんだよ?」

九尾、一目五先生、刑天
皆、他者の生気や血肉を喰らう事でしか生きられない敵対的な妖怪達
彼らは人を傷つけても何も思わず、笑って命を奪える存在だった。
全てに対してイイ子ちゃんのままではいられない。
やられっぱなしでいるだけでは大切なものを失ってしまう。
戦う道しかなかった。でなければ大勢の人や妖怪が死んでしまうから。
それでも傷つけあう事でしか解決策が無かったことに後悔が尽きない。
彼ら以外にも同様のケースは度々あったが、笑って締められた事は一度もない。


796 : ◆c4nYy47bT. :2021/12/17(金) 01:09:31 BvTKsK6A0

では、あの子はどうだろうか?
敵意を剥き出しにして、皆を殺しにかかってきた
悪に対して並々ならぬ思いを抱いていた少女
彼女も倒さざる負えなかった妖怪達と同じだというのか
どちらかが死ぬまで戦って殺してしまう事道でしか解決できない?

それは違う、違うはずだ。
自分の中の正義だけを信じて一方的な決めつけで人を襲う。
それだけを見れば取り付く島もない危険人物に見える
でも、彼女は動揺していた、苦悩していた。
殺戮を楽しんでる訳でも話が一切通じない訳でもない。
大人が寄り添ってあげる必要のある、ただの子どもなんだ。
力を得てしまった事で負の感情を爆発させるしか出来なくなっているなら
取り返しがつかなくなる前に止めてあげなくちゃいけない。

「我儘ばっかりになっちゃうけど…聞いてもらえるかな?
許してあげるのは難しいと思う。でも、止めてあげてほしいんだ。
何が正しくて何が間違ってるのか分からなくなっちゃってるあの子を」

我ながら無茶苦茶な話だ。その子のせいで酷い目にあったというのにその下手人を助けてあげろなんて。
そんなお願いを聞いて、ブースカは辛そうな顔をしながら俯き、やがて小さく頷いた。

「…分かった、ひーちゃんが許すって言うなら、ボク頑張ってみる
ボクも…誰かに怖い思いさせるのイヤだから」
「…ありがとう、お願いね?」

ああ、本当に良い子と友だちになれたと思う。
頼ってばかりで申し訳なさでいっぱいだ。
もう少し何かしてあげれたら良かったんだけど中々上手くいかないらしい。

安心して気が緩んだのか、だんだんと意識が遠のき始めた。
意識を失えば次、ちゃんと目覚められるか分からない。
目覚めた先がもし三途の川なら脱衣婆さんに追い返してもらえるのだろうか?
その時は元の世界じゃなく、きっと大変だろうけどこの場所で起きたいものだ。

きっと無断欠勤は免れない。また三途の川行きなってもう戻れないかもしれない
それでも、放ってはおけない人たちがいる。皆残して自分だけ退場してしまうのは卑怯だ。
だから。私はまだ死ねない、そう考えながら日和は意識を手放した。





797 : ◆c4nYy47bT. :2021/12/17(金) 01:10:36 BvTKsK6A0

「ひーちゃん!ひーちゃん!起きて!」
「しっかりせんか日和、目を開けるんじゃ!意識を失ってはならん!」
「ねぇ、ひーちゃんは助かるの!?」
「なんとか息はあるようじゃが、このままだと助からん!
それにもたもたしておったらあやつらも戻って来てしまうぞ!」

人は銃で撃たれても脳や心臓でなければすぐには死なない。
それどころか適切な処置を施せば生存率は非常に高めだ。だが、日和の場合は状況が違う。
敵と相対している間、彼女は最低限の応急処置すら出来ず、血を流し過ぎてしまった。
今、こうして辛うじて生を繋いでいるだけでも奇跡に近い。

彼女の死は時間の問題。そして、自分達も安全とは言い切れない。

都合よく敵意がない上に快く助けてくれる相手が来てくれるなど夢物語。
全員の生を手繰り寄せるにはただ泣きながら待っているだけでは駄目なのだ。
受け身にならず、自らの力でつかみ取りにいかなくてはならない。
そして、行動を起こせる者はこの場に一匹のみ
ブースカは涙を拭うと顔を上げ、何かを決心した様子で一気に立ち上がった。

「ひーちゃんはボクが助ける!目玉おやじさん、しっかり掴まって!」

意識を失い倒れる友だちをブースカはそっと抱きかかえた。
目玉おやじも日和に付き添う形で彼に乗り、指示通りに掴みやすい彼女の衣服に掴まる

「ピョンピョンのブー!」

小さな屈伸運動と呪文を一つ
僅かそれだけの二動作でブースカ達は大きく空を舞う。
速度はぐんぐん上昇し、今までいた建物も目玉おやじ並みに小さく見えた。

「す、凄まじいスピードじゃ!一反木綿でもこうはいかんぞ!
これならなんとか間に合うやもしれん」
「目玉おやじさんはヒトを探してくらさい…ボク、あんまり探す元気無くて…」

回復への希望が見えた事で歓喜する目玉おやじとは裏腹にブースカの表情は苦しげだ。

グゥゥゥオォォォォ!!!
「し、シオシオシオ〜」

地響きにも似た轟音が辺りに木霊する。
開始前にも発生した空腹を知らせる腹の虫の音。それは同時にブースカにとって緊急事態のサイレンでもあった。

「ブースカ、速度と高度が落ちておるぞ!大丈夫か!?」

制空権を得る事は飛べる者の少ない殺し合いでの大きなアドバンテージだ。
しかし、一方的な状況は公平さに欠ける為、飛行は一定の時間のみに限定されている。
実際、制限に引っかかったリルルやペテルギウスには警告アナウンスが流れた。
だが、ブースカには主催からその制限を設けられていない。
他とは違い、彼は可能ならばいつまでも滞空が許されている。


798 : ◆c4nYy47bT. :2021/12/17(金) 01:12:39 BvTKsK6A0

では、ブースカに課せられた制限は何か。
それは頭の冠から作られるブースカニウムという物質、その消費率の上昇にある。
万能とも呼べるブースカの多彩な超能力すべての根源。
その気になれば強力な参加者たちとも渡り合う事が可能であるが、
もしもブースカニウムが無くなってしまった場合、彼はその力を全て失ってしまう。
本来は食事によってでブースカニウムを作るエネルギーに変換する。
しかし襲撃前の遊びや怒りに任せた念力と超能力の使い過ぎ。
更にラーメン30杯は余裕で食べる普段と比べ、大した量の食事がとれていないことも合わさり、エネルギーは底を突きかけ、空腹という限界が迫っていた。

「ぼ、ボクは大丈夫だよ、目玉おやじさん。
カバンにラーメンが入ってたからそれ取って食べさせて?」
「ラーメンじゃと?じゃが、このままだと麺は…
いや分かった。お前さんが頑張っとるんじゃ。
ワシが出来る事があればなんだってするわい!」

逃げと捜索、両方行うために必須な飛行能力。
時間を少しでも延ばすにはとにかくお腹を満たす必要があった。
目玉おやじに日和が抱えた荷物の中からカップ麺を取り出してもらい、
アングリと開けた口へインスタントのまま放り込む。
小麦の味はするもののパサパサとしていて美味しいとはとてもいいがたい。
茹でもせずに生で食べた麺の食感はここに連れてこられる前からの友人、
大ちゃん達と食べたスナック菓子によく似ていて、少し笑みがこぼれた。

ブースカは出会って間もない頃に日和から
「生のまま食べたらお腹を壊してしまう」と注意された事を思い出す。
そんなことは彼自身、百も承知だ。
ラーメンを食べる時は彼女に作ってもらったようにしっかり決められた時間茹でて
暖かいスープと一緒に麺を啜るのが美味しいに決まっている。
そこに色とりどりの具材が乗っていれば更にミフチ、ミフチで最高だ。
だが、空にはお湯を沸かす水もやかんは勿論、茹でるのを待つ時間だってない。
事態は一刻を争う。
友だちを守る為だったら約束を破る悪い子になることだって厭わない。

「だから待っててね、言わなきゃいけない事…たくさんあるから」

悪いことをしたら「ごめんなさい」
良いことをしてもらったら「ありがとう」を言う。
こんなことは快獣にだって分かる常識だ。
だから、ブースカは黎明の空を駆ける。
この場で出来た大切な友だちに感謝と謝罪を聞いてもらうために


【G-5 東部/黎明】

【鳥月日和@妖怪の飼育員さん】
[状態]:気絶、右肩に銃創、出血過多による衰弱(最低限の応急処置済み)
[装備]:目玉おやじ@ゲゲゲの鬼太郎
[道具]:基本支給品(カップ麺全滅)
アリアドネの糸(1本)@世界樹の迷宮シリーズ、ちいさなDIYさぎょうだい@あつまれ どうぶつの森
[思考・状況]
基本:早く帰りたいけど、人殺しはしたくない
0:気絶中

[備考]
単行本8巻時点からの参戦。
基本支給品のカップ麺は全て『サッポロ一番塩ラーメン』です。
DIYの工具はそれぞれ別々に分けて入れてあります。ニスはありません
短時間のうちに回復処置が出来ない場合、死亡します。
どの程度の時間彼女が持つかは後続の書き手にお任せします

【ブースカ@快獣ブースカ】
[状態]:疲労(中〜大)、ブースカニウム消費により空腹(大)
[装備]:無し
[道具]基本支給品(食糧は全滅)、アリアドネの糸(2本)@世界樹の迷宮シリーズ
[思考・状況]
基本:早く帰りたい
1:シャドウ茜から逃げつつ、ひーちゃん(日和)を助けてくれる人を探す
2:とってもお腹がすいた、けど今は我慢
3:あの子は許せない。けどひーちゃんの約束は守る
[備考]
少なくとも、最終回でR惑星に旅立つよりも前からの参戦。
様々な超能力を有しています。(透視、怪力、念動力、飛行など)
ただし、空腹によるブースカニウムの枯渇か頭のブー冠を奪われると全て使用不可
制限によりエネルギー消費が通常より激しくなっています。

※ダスティ・デイポットの建物前にハサミのカバー@ペーパーマリオ オリガミキングが放置されています。


799 : ◆c4nYy47bT. :2021/12/17(金) 01:14:45 BvTKsK6A0



ワイヤーが高く伸び、その先端から大きな人影が飛び上がり、地上へ着地した。
崖下から間一髪の生還を果たし、争いの場に残された二人の影
その内救出された少女、長谷川茜から生まれた影、シャドウ茜は謝罪の言葉を口にする

「ありがとう…ごめん、ジョーカー私のせいで。」

改心は上手くいったはずだった
即死を狙える武器をジョーカーに渡し先行させ、万が一逃げのびた相手をジョーカーから託してもらったトカチェフで撃つ。
当然、人を撃ち抜いた経験などない。
だが、元より『偽物』の怪盗団をジェイルにおびき寄せ、改心させるつもりでいた身だ。悪人を始末する為なら何のためらいもない。
ジョーカーを外へと追いやった上にいきなり隠れていた場所の傍に転移してきたのには驚いたが、策が上手く嵌って油断している悪党たちを撃つのは簡単だった。
仲間が撃たれ混乱している隙にジョーカーを気づかれる事無く呼び戻すのにも成功
殺し合いにおける初陣は完ぺきだったはず、はずだったのに…
動揺したせいで全てを台無しにしてしまった挙句、ジョーカーが敵を放置してでも助けてくれなければ、自分は墜落して死んでいた。

(怪盗団が一緒に戦ってくれてるのに…皆の足を引っ張ってしまうなんて…!)

己を恥じる気持ちでいっぱいになるが、同時にこれは良い経験だったともいえる。
悪人たちと戦い続けると言うことは、死と隣り合わせの世界に身を投じるということ
長きに渡る殺し合いの舞台。序盤でその意味を正しく知れたのは僥倖と言えるだろう。
私は『アイツ』や『偽物』の怪盗団に代わって正義を為すと誓い、道を選んだんだ。
これからは痛みや恐怖に怯まず、悪と戦っていかねばと決意を新たににする。

空を見上げると距離が離れ、小さくなった異形の姿。
もうあんな遠くまで逃げていたのか
見た目にそぐわぬ凄まじい念動力を有した強力な怪物
そして、全てを狂わせた原因でもある作業服姿の女…放置されていないのを見るに恐らくまだ息がある。随分としぶといヤツだ。
どちらもこのまま野放しにするわけにはいかない。
ここから解放してしまえば多くの民衆に被害が出る。直ぐにでも追跡をして改心を―――


800 : ◆c4nYy47bT. :2021/12/17(金) 01:15:51 BvTKsK6A0
『ひーちゃんを…イジメるなぁーー!』

自分を吹き飛ばす際、あのシャドウが叫んだ言葉が脳裏に過ぎる。
イジメ?
誰が?
誰を? 
言っている内容が少しも理解できなかった。
あれは抵抗しようとした悪党に罰を与えていただけだ。
事実アイツらはジョーカーや私を傷つけて…

『私たちは敵同士にならなくてもいい…
銃を置いて、ラーメンでも食べながら少しずつ…自己紹介から始めよう、ね…?』

いや、果たして本当にそうだったか?

続けて思い出したのは武器を捨て、こちらに歩み寄ろうとした女性の姿
無視出来ない傷を抱えながら相手の目だけを見て進み続ける
果たしてそんな決死の行動を悪人に出来るんだろうか?
まさか…本当に悪党じゃない?
そもそも先に襲撃をかけたのはこちらだ。
自分達に仕掛けた攻撃も命を守る為なら当然の行動。

だったら、私がしていた事は一体…?
必死の訴えを無視し続け、本質から目を背けようとする行為
手に入れた力のままに相手を蹂躙し、力なき善人を傷つける行為

それじゃあまるで憎み続けてきた悪党そのもの――――――


801 : ◆c4nYy47bT. :2021/12/17(金) 01:17:18 BvTKsK6A0

「違う!!!違う違う違う!」

湧きあがった疑念をかき消すようにありったけの大声を張り上げた。

「アイツらは悪党なんだ!私を、私たちを騙そうとしている!
そうやって油断した隙を突いて、私を殺そうとしてるんだ!」

その悲痛な叫びは一体誰へ向けての言葉なのか。
咎めようとする者は少なくともここには存在しない。
でも、例え不必要だったとしても叫ばずにはいられなかった。
そうでもしなければ自身の存在が消えてしまいそうだったから。
―――自分が信じた正義を見失いそうだったから。

正義を失った人間がどんなに醜いか、嫌と言うほど知っている。
国をより良くする仕事で私腹を肥やす為に働き、保身で罪を秘書に擦り付ける政治家。
絶対正義を謳いながら泣き寝入りする弱者を生み出し続け、強者の味方であり続ける警察。
娘が訴える真実から逃げ出し、母の仇の罪を黙殺する父親。
人を救う為の力に溺れ、華々しい活躍の裏で悪事を働いていた怪盗団。

信じていた憧れの存在達は正義に背き、
この世に正義はなんかないと無情な現実を何度も突きつけてきた。
死んだ母や濡れ衣を着せられた秘書の家族のような弱者を誰も救ってくれない
だからこそ、彼らのようにはならない、自分だけは正義を貫くと力を手にしたはずなのに
結局は自分も同じ穴の貉に過ぎない最低の自己矛盾
自らがした行いへの疑念と恐怖は絶望へと変わり、心を支配していた。

「私もあいつらと同じだったの?正義なんてないただの悪党…?
それじゃ何の意味も…力を手にした意味がない…」

一人じゃとても抱えきれないと膝から地面に泣き崩れる
もう消えてしまいたい…自暴自棄な願いが頭に浮ぶ。
そんな時、肩に感じたのは優しく手が添えられる感触

「あ、ジョーカー…」

振り向くとそこにいたのは自分が憧れた怪盗団の姿。
無法の地に放り出された私に残された唯一の味方。
彼は優しいほほ笑みを浮かべ、私の目を黙って見つめている。

『キミは間違ってなんかない』

『このまま諦めるのか?』

『大丈夫、俺たちがついている』

その温かい眼差しは私が何よりも与えてほしかった言葉を
声なき声で語り掛けて、後押ししてくれているように見えた。

そうだ、自分は一人なんかじゃない。
『本当』の怪盗団が傍にいてくれる。
『私』の怪盗団が一緒に戦ってくれる。
決して裏切る事も悪に屈する事のない正義の執行者たち。
世の中の残酷さに絶望しかけていた私の前に現れた希望の象徴。
彼らは正義から目を背けない。私からも目を背けることは無い。
こうして今も私の為に立ち止まり、真摯に向き合ってくれている。
そんな大切な事を思い出したとき、心の中に渦巻いていた靄が無くなったような気がした。


802 : ◆c4nYy47bT. :2021/12/17(金) 01:18:18 BvTKsK6A0

「うん、そうだよね。ありがとうジョーカー
悪党の演技になんて、惑わされちゃダメだよね
怪盗団が言ってるんだ、間違ってないって…なら、それが真実なんだ」

雑念を振り払えた以上、もたもたしているわけにはいかない。
力強く立ち上がり、デイパックに手を入れる。
中から取り出されたのは到底荷物に入りきらないだろう大きさのバイク
追跡用の乗り物を取り出すと同時にジョーカーは影に包まれ姿を消し、
入れ替わるように出現する新しい影が一人

己の肉体を誇示する力強いマッスルポーズ
黒のライダースーツに随所に散りばめられた威圧感たっぷりのスパイク
目元を隠す厳つい鉄仮面は秩序に縛られない解放者の証。
巻いたスカーフを風に棚引かせながら威風堂々と大地に立つ女王
マイ・ディア・クイーンがここに顕現した。

ポーズを取り終えたクイーンは悪に鉄拳制裁を下さんとするため、荒々しくバイクへ飛び乗った。
受け取った鍵を捻り、ドッドッドッ…とエンジンを唸らせながら
パッセンジャーが乗る後部座席を見やって、出発の時をただ静かに待っている。
その視線を受け、私もバイクへと跨り準備を終えた頼りがいのあるドライバーの背に手を回し、身を預ける。

「…行こう、私たちでアイツらの…化けの皮を暴く!」

決意の言葉を聞き、クイーンはフルスロットルでバイクを疾走させる。
悪党は全員改心(殺害)する。前だけを見て進む彼女の心には、もう一偏の曇りもなかった。





シャドウを構成する能力は『認識』が大きな影響を与える。
茜は怪盗団のペルソナ能力を知らない。
世間で知れる範囲ではほぼ確認できない能力の為、如何に怪盗団マニアの彼女と言えど知る術はない。
故に認知の怪盗団はペルソナ能力を所持する事が出来ない。
彼らが超能力を持つという認知が彼らを創り出す茜にないからだ。
代わりに持つのは常人を超える身体能力と茜が描く怪盗団らしい武器。
具体例として茜がジョーカーより貰った銃、トカチェフが挙げられる。
実際に戦った本当の怪盗団達が同じ動きや攻撃の相手に苦戦していたため、
武器や技術に対する再現度の高さは目を見張るものがあるだろう。


803 : ◆c4nYy47bT. :2021/12/17(金) 01:20:01 BvTKsK6A0

しかし、能力以上に影響を受けるものがある。それは『行動』だ。

心理学上、人間の第一印象は外見が9割と言う一説がある。
清潔不潔でその人が明るい人か暗い人か、信用できる人か信用できない人かが決まるように、人間は最初に見た外見のイメージをそのままに受け取ってしまう事が多い。
認知のクイーンの本来ならとり得ないポージングも外見から来た影響の一つだ。
怪盗団の参謀役を務めるクイーンこと新島真が身に纏う反逆の意志を具現化した怪盗服は
優等生の仮面で己を偽ってきた自分から卒業する自由の象徴
仲間より「世紀末覇者先輩」とも呼ばれたこともある程、雄々しく勇ましい強烈な衣装は
茜のクイーンを構成する認知にも強い影響を与えた。
彼女は男勝りの逞しい女傑なのだと。
その結果、外見の印象で誇張された在り得ない動きをするクイーンが生み出されるに至った訳である。
(もっとも誇張された部分も彼女の一側面として確かに存在しているので、その場のテンションによっては本人もするかもしれないが)

彼女が立ち直るにいたった怪盗団の励ましもそれと同じだ。
怪盗団にこうしてほしい、こうあってほしいという認知がジョーカーに取らせた行動。
冒してしまった過ちから心を守る為にした無意識の防衛反応
誰からの導きもない、茜の中でしか完結していない現実逃避。

本来、その逃げから茜を引き戻してくれる存在、『本当』の怪盗団はここにははいない
与えられるべき改心の機会は悪辣たる殺し合いによって遠ざけられてしまった。
彼女はただ歪められた正義を信じ、黎明の地を駆ける。
真の意味で改心を知る時は、まだ遠い

【G-5 西部/黎明】

【シャドウ茜@ペルソナ5 スクランブル ザ ファントム ストライカーズ】
[状態]:健康 『マイ・ディア・クイーン』の顕現、岸部露伴のバイクに搭乗中
[装備]:アサシンダガー@ドラゴンクエスト3
[道具]:基本支給品、岸部露伴のバイク@ジョジョの奇妙な冒険、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]:基本行動方針:『悪党』を全員殺す。
1.逃げた悪党を追いかけ、改心させる
2.あの女(鳥月日和)の化けの皮をはがす。間違ってないと証明する。
3.本物の怪盗団は、私を裏切らない……。
4.どうせ皆、悪党なんでしょ………………本当に?
[備考]
心の怪盗団を京都ジェイルに誘い込むまで待っている時からの参戦です。
認知の怪盗団は、複数体同時に顕現させることはできません。
彼らは支給品とは別に茜がそれぞれ連想した武器を所持しています。
(例:マイ・ディア・ジョーカーの場合、初期装備のアタックナイフとトカチェフ)
怪盗団が所有しているペルソナ能力を把握していないのでペルソナは使用できません。

【岸部露伴のバイク@ジョジョの奇妙な冒険】
シャドウ茜に支給
岸部露伴が所有するバイク。
ベースはカワサキのZEPHYR。ただし、ロゴはZOPHYRとなっている。
メーターに表示されている最高速は150㎞。ガソリン不足に注意すべし


804 : ◆c4nYy47bT. :2021/12/17(金) 01:24:07 BvTKsK6A0
以上で後編投下終了です。
問題があれば修正を行い、訂正不可の場合は破棄致します。
この度は予約期間を超過してしまい、大変申し訳ありませんでした。
もし今後予約する場合があれば、このような事を繰り返さないよう細心の注意を払う所存です


805 : ◆vV5.jnbCYw :2021/12/17(金) 14:18:30 4XcYK/OU0
投下お疲れ様です。
相変わらず書き手様の重厚な文章とその中で揺れ動く登場人物の感情、実に読みごたえがありました。
実はどの作品も知らないのですが、作中に悪とはっきりしている悪がいない故に、「戦わねばならない」という義務感が良く伝わってきます。
個人的には撃たれてもなお戦おうとする日和が特に魅力的。
そして危機は去ったが、順調に戦力を増やす茜も厄介ですね。
次の作品も楽しみにしてます。


806 : ◆bLcnJe0wGs :2021/12/18(土) 19:21:11 gWop2mh.0
予約延長させていただきます。


807 : ◆bLcnJe0wGs :2021/12/23(木) 16:39:49 1yRBcy4o0
失礼します。
予約からエーリュシオンを外させていただきます。


808 : ◆bLcnJe0wGs :2021/12/23(木) 17:06:55 fzJMk81o0
投下します。


809 : ◆bLcnJe0wGs :2021/12/23(木) 17:07:46 fzJMk81o0
引き続き、殺害したアキネーターのデイパックを漁る桐山。

その中には、基本支給品の他に骨や両刃の短剣が入っていた。

それらも使える時に使おうと自身のデイパックに詰め込む。

だが、桐山の方はというと先程の槍とスタンドDISC以外にランダム支給品は入っていなかった。

そして、一通り支給品の確認を終えた桐山は次に殺す相手を探すべく市街地を探索する事にする。

◆◆◆

しかし、一通り街中を探索しても誰にも出会うこと無く、時間は過ぎていく。

やがて彼は市街地を後にすることにして、他の参加者が来ていそうなシフティ・シャフトへ向かう事を決め、北上を初めてる。

◆◆◆

『聞け! この地に集いし全てのものたちよ!
 喜ばしい事に、総勢111名、現時点を持って全ての参加者が確定した!』

『貴様たちはこの地に放り込まれて、大なり小なり、既に自らと同じ境遇の者と出会い、語り合い、或いは矛を交え、血を流しただろう。
 しかし、それはまだ序章に過ぎない』

北上を続けている中で、この殺し合いが始まって最初の放送が流れ始めた。

もしかしたらまた自分と同じ様に巻き込まれた、かつてのプログラムの参加者も居るのではないのかと、この放送と同時に閲覧できる様になった名簿に目を通す。



だが、自分以外に見知った名前というものは載っていなかったが、その代わり元いた世界ではありえない名前が多数載っていることは把握した。

◆◆◆

暫くしてシフティ・シャフトにたどり着くと、入り口となる見張り場を兼ねた門に入る。

その施設に入ってすぐの手洗い場を探索するが、誰の姿も現れない。

次は窓が張られた見張り部屋に進入し、物陰に隠れながら引き続き探索を行う。

そうしていると、いつの間にか窓の外から白い蝶の大群が飛来していた。

飴宮初夏と同じ世界からNPCとして会場に放たれた、妖怪の蝶だ。

だが彼等はその窓に遮られて、誰よりも纏わり付く対象として定められている参加者の桐山に近寄れない様だ。

そんな妖怪に向けた桐山の心情は如何に。


810 : ◆bLcnJe0wGs :2021/12/23(木) 17:08:48 fzJMk81o0
【D-7 シフティ・シャフト入口の見張り場/黎明】

【桐山和雄@実写版バトルロワイアル】
[状態]:健康
[装備]:獣の槍@うしおととら、サバイバーのスタンドDISC、
マイクロUZI@実写版バトルロワイアル
[道具]:基本支給品(自分とアキネイターの物)、何かの骨@出典不明、ナタリアの短剣@妖怪の飼育員さん
[思考・状況]基本行動方針:バトルロワイアルを楽しむ
1:白い蝶の大群をどうしようか?
2:快楽のままに殺し続ける。
3:殺し合いサイコー!
4:褐色の男(シャガクシャ)は次に会ったら殺す。

[備考]
※もしかしたら、見張り場のトイレや見張り部屋で何らかの物品を調達しているかもしれません。(後続の書き手にお任せします。)

【支給品紹介】

ナタリアの短剣@妖怪の飼育員さん

アキネーターに支給。

#14 ケンタウロス(後編)に登場した、ケンタウロスの女性・ナタリアが持つ長めの刀身を持つ両刃の短剣。

【NPC紹介】

白い蝶@こじらせ百鬼ドマイナー

払っても払ってもまとわりついてくる高知の妖怪。

出典元では体育祭の一競技『四大巡り障害物競争』で参加者の生徒を大群で妨害する役目を務めていた。

ちなみに、『四大巡り障害物競争』は四国四県に関連した障害物をくぐり抜けながらゴールを目指す死国校の体育祭に於ける目玉競技で、他県分校からの来賓者へのアピールを目的として行われているものである。

本ロワでは主催によって参加者を優先してまとわりついて来る様になっている。


811 : ◆bLcnJe0wGs :2021/12/23(木) 17:09:38 fzJMk81o0
以上で『タイクツな毎日 だから ほんのちょっとの 毒も必要!』投下終了です。


812 : ◆7PJBZrstcc :2021/12/24(金) 18:20:18 C0Il4MzM0
投下乙です。
ただでさえ不穏な実写版桐山にさらなる不穏な物体が追加されたり、不思議なNPCが登場したりと、実に氏らしい話だと思います。
しかしアキネーター以降誰とも出会いませんねコイツ。

ですが一点だけ。
桐山は前の話で既に放送を超えていると、前話の書き手が設定しているので、名簿確認の描写はともかく、放送を聞いた描写に関しては修正していただきたいと思います。
それまでwiki収録はしませんので、焦らずとも構いません


813 : ◆bLcnJe0wGs :2021/12/24(金) 20:27:09 cmSFgG0M0
失礼します。
>>809の文章を以外のものに修正させていただきます。

引き続き、殺害したアキネーターのデイパックを漁る桐山。

その中には、基本支給品の他に骨や両刃の短剣が入っていた。

それらも使える時に使おうと自身のデイパックに詰め込む。

だが、桐山の方はというと先程の槍とスタンドDISC以外にランダム支給品は入っていなかった。

次は参加者名簿。

もしかしたらまた自分と同じ様に巻き込まれた、かつてのプログラムの参加者も居るのではないのかと、名簿に目を通す。

それには、自分以外に見知った名前というものは載っていなかったが、その代わり元いた世界ではありえない名前が多数載っていることは把握した。

そして、一通り支給品の確認を終えた桐山は次に殺す相手を探すべく市街地を探索する事にする。

◆◆◆

しかし、一通り街中を探索しても誰にも出会うこと無く、時間は過ぎていく。

やがて彼は市街地を後にすることにして、他の参加者が来ていそうなシフティ・シャフトへ向かう事を決め、北上を初める。

◆◆◆

暫くしてシフティ・シャフトにたどり着くと、入り口となる見張り場を兼ねた門に入る。

その施設に入ってすぐの手洗い場を探索するが、誰の姿も現れない。

次は窓が張られた見張り部屋に進入し、物陰に隠れながら引き続き探索を行う。

そうしていると、いつの間にか窓の外から白い蝶の大群が飛来していた。

飴宮初夏と同じ世界からNPCとして会場に放たれた、妖怪の蝶だ。

だが彼等はその窓に遮られて、誰よりも纏わり付く対象として定められている参加者の桐山に近寄れない様だ。

そんな妖怪に向けた桐山の心情は如何に。


814 : ◆bLcnJe0wGs :2021/12/26(日) 13:01:40 1kb93iLg0
真人、卯月、平野、ペテルギウスで予約します。


815 : ◆7PJBZrstcc :2021/12/27(月) 19:44:47 BaVFcMRo0
ゲリラ投下します


816 : そして誰もいなくなった ◆7PJBZrstcc :2021/12/27(月) 19:46:17 BaVFcMRo0
 エレンは東に向けて道なりに疾走していた。
 それも人間の足ではなく、馬に乗りながら。

 彼が乗っている馬の名前はエポナ。
 ある世界において勇者の愛馬として語られ、そうでなくとも勇者の近くにいることが多い名馬である。
 この馬はNPCではなく、クレマンティーヌに支給されたものだ。
 多少目立ってでも迅速な移動手段を欲したエレンが、彼女のデイバッグを調べるとこの馬が出てきたのだ。

 最初はデイバッグから馬が現れたことにエレンは面食らうも、すぐに気を取り直した。
 この殺し合いは進撃の巨人の力すら及ばず、見たことのないものがあちらこちらに当たり前のように存在する。
 ならばもう、細かいことを考えるより先に、あるがままを受けて入れたほうが楽だ。

 それに、馬なら調査兵団時代に散々乗った。おまけにこのエポナとかいう馬は名馬だ。
 変に訳の分からないものを渡されるより、使いこなせるこっちの方が、エレンにはありがたかった。

「GOBOOO!!」

 疾走の最中、NPCのゴブリンが襲い掛かるも、エレンに届くより先にエポナの脚がそれを蹴散らす。
 そんな一幕もあったものの、そうこうしているうちに彼はシフティ・シャフトに到着した。

 到着して最初にエレンの目に留まったものは、この採掘場の見張り台である。
 勿論、ただの見張り場であれば何も思わなかったかもしれない。
 だが、大量の白い蝶が群がっていれば流石にそうはいらない。

 蝶はなぜあそこに群がっているのか。
 あの蝶はミルドラースが言う所のNPCなのか。
 そんなものを会場に放して何になるのか。

 疑問は尽きないが、殺し合いの最中に藪を突いて蛇を出す道理はない。
 よってエレンは、気持ち見張り台を避けながら採掘場へと入っていった。

 だからこそ、彼は気付かなかった。
 見張り台に集まっている蝶は参加者に群がっていることを。
 その蝶が少しずつだが、エレンの方へ向かっていっていることに。


 そんなことは露知らず、エレンはエポナを降り、デイバッグにしまってから採掘場を進んでいく。
 とりあえず適当な建物に入って調べようとした矢先、彼はあるものを発見する。
 それは、地面にある足跡と、狭い間隔で引かれた三本の線だった。
 彼は知らないが、これは飴宮初夏といのちの輝きが移動した跡である。

 ともかく、この跡の先に誰かいると考えたエレンは、素直にそれを追う。 
 罠の可能性も考えたが、未だ自分以外の参加者に一人しか出会えていないので、少々焦りが生じていた。
 幸い、特に罠もなく、彼はあっさりと跡の先にある家にたどり着いた。
 そこに入ろうとしたところで――

「うおっ!?」

 エレンは、ここで初めて自分が白い蝶の群れに追われていることに気付いた。
 元々距離を取っていたことと、彼が止まらなかったためにここまで追いつかれなかったのだ。
 全滅させるか、と一瞬考えるも、流石に蝶ごときのせいで手の内を晒す訳にはいかない。
 ならば、とばかりに慌てて目的地の家に入るエレン。
 どうせこの家にいるのなら、攻め込んでしまえばいい。
 最悪は立体起動装置で脱出するという手もある。

 幸いなことに、家の中にまで蝶は入ってこなかった。
 早速中にいるであろう参加者を探そうとするが、ここで彼はあることに気付く。

 この家のキッチンの方角から、何やら光がどこからか照っているのが分かる。
 見に行ってみると、青い光がキッチンの収納スペースから発せられているのが見えた。
 エレンが収納スペースの扉を開けてみると、何やら青い光が渦巻いている。
 その横の壁には、光が無ければ見えないであろう文章が書かれていた。

『この装置はワープ装置で、ここにあるワープ装置の正式名称は旅の扉です。
 使用すると会場内の違う場所に転移します。
 転移場所は使用する度に変更されるため、転移先は特定できません。
 ただし、少なくとも海の上など、参加者が転移した途端危険が及ぶような場所は選ばれません。

 また、ワープ装置は一度使用すると、使用した参加者は次の放送まで使用できません。
 この点に関しましては、ここだけでなく全てのワープ装置において共通するものとします。

 余談ですが、ワープ装置はこれ以外にも設置しています。
 ここ以外のワープ装置は隠されている場合もあるので、興味のある方は少々気を付けて探してみてください。
 また、ワープ装置の形状も異なっている可能性もあるのでその点も注意』


817 : そして誰もいなくなった ◆7PJBZrstcc :2021/12/27(月) 19:46:57 BaVFcMRo0

 それはこの青い光についての説明文。
 エレンは知らないが、これはF-3 ふたば幼稚園に設置されている次元転送装置の説明文と、ほぼ同一だった。

「転移、か……」

 壁にある説明文を読んで、神妙な顔で呟くエレン。
 そして彼は、旅の扉に飛び込むことを決断する。
 未だほとんど他の参加者に会えていないことが理由だ。

「せめぇ」

 身長180cmを超えるエレンには収納スペースは少々狭いものの、何とか入り旅の扉の上に乗る。
 そして彼は、この場から消え去った。





 白い蝶が小屋に群がられ、どうするかと考えていた桐山だったが、ここで彼は蝶が少しずつ減っていることに気付く。
 そういえばさっき、何かの足音が聞こえた気がしたが、それに一部の蝶が引きつけられたのだろうか。
 こう考えた彼は、ある賭けに出た。

 まず、手にあるマイクロUZIを小屋の窓を破りながら蝶に向けて乱射する。
 その後、銃をしまい壊した窓から飛び出した後、桐山は獣の槍を振るう。
 槍がどの程度蝶に通じるかは分からないが、どれだけいるかも分からない蝶に対し、数に限りがある機関銃を放つほど彼は考えなしではない。
 しかし、ここで彼は自分で考えているよりも幸運を掴むことになる。

 小屋に群がる白い蝶は、妖怪だ。
 人に群がる習性を除けばほぼ蝶にしか思えないが、それでも妖怪である。
 そして、桐山が持つ獣の槍は妖怪殺しの槍。
 それもあの白面の者を滅ぼす為に、白面に全てを奪われたとある兄妹が、途方もない憎悪を籠めて作られた槍である。
 そんな槍が、世界は違えどたかが蝶の妖怪を滅ぼせない道理はない。

 結果、穂先が僅かに触れるだけで白い蝶は塵となって消えていく。
 そのまま槍を振るい続け、視界が確保できる位になったところで桐山は蝶殺しをやめた。
 さしもの彼も、蝶相手に殺戮を重ねたところで楽しくもなんともなかった。

 とりあえず近くに別の誰かがいる筈なので、走って蝶から逃げながらそいつを探すことにした桐山。
 途中、彼は足跡と車輪の後を見つける。それはエレンが見つけたものと同じものだった。
 跡を追おうとする桐山だったが、なぜか前から蝶の群れがゆらゆらと彼の行く手に現れる。

 それはさっきまで追っていたエレンが転移してこの場からいなくなり、追う対象を変えただけなのだが、その事実を桐山は知ることはない。

 適当に蝶を殺しながら跡を追う桐山は、やがて一軒の家にたどり着く。
 中に入ると、青い光が彼の顔を照らした。
 飴宮達と違い、エレンは収納スペースの扉を閉めなかったので、桐山はすぐに気付けたのだ。

 そのまますぐに旅の扉の元へ行き、説明文を読む桐山。
 すぐに彼はこの扉へと入った。
 まだ二人しか参加者と出会えていないことと、これ以上白い蝶に纏わりつかれながら歩くのはうんざりだったのだ。

 こうして、D-7 シフティ・シャフトに集った参加者は皆、ワープ装置でこの場を去る。
 そして誰もいなくなった。


818 : そして誰もいなくなった ◆7PJBZrstcc :2021/12/27(月) 19:47:27 BaVFcMRo0


【???/黎明】

【エレン・イェーガー@進撃の巨人】
[状態]:進撃の巨人(脳内のみ) 首に切り傷
[装備]:グラグラの実、立体起動装置(ガス残り2/3)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1(クレマンティーヌの支給品、エレン確認済み)、エポナ@ゼルダの伝説シリーズ
[思考・状況]:基本行動方針:パラディ島を救うために、この場の全ての命を駆逐する。
1:NPC、今の所よく分からねえのばっかだな
2:女(クレマンティーヌ)の武技に加え、名簿と放送の食い違いに対する疑問
[備考]
30巻で座標に辿り着く直前より参戦です
どこに転移したかは次の書き手氏にお任せします。ただし、桐山和雄とは違う場所に転移しています。

【桐山和雄@実写版バトルロワイアル】
[状態]:健康
[装備]:獣の槍@うしおととら、サバイバーのスタンドDISC、
[道具]:基本支給品(自分とアキネイターの物)、何かの骨@出典不明、ナタリアの短剣@妖怪の飼育員さん、マイクロUZI@実写版バトルロワイアル
[思考・状況]基本行動方針:バトルロワイアルを楽しむ
1:白い蝶はもういい
2:快楽のままに殺し続ける。
3:殺し合いサイコー!
4:褐色の男(シャガクシャ)は次に会ったら殺す。
[備考]
※もしかしたら、見張り場のトイレや見張り部屋で何らかの物品を調達しているかもしれません。(後続の書き手にお任せします。)
※どこに転移したかは次の書き手氏にお任せします。ただし、エレン・イェーガーとは違う場所に転移しています。


※D-7 シフティ・シャフトにて、飴宮初夏といのちの輝きが使用した転移装置は旅の扉@ドラゴンクエストシリーズ でした。


【エポナ@ゼルダの伝説シリーズ】
クレマンティーヌに支給。
ゼルダの伝説シリーズに登場する、栗毛をしている雌馬。
設定は作品ごとに多少変わるが、おおむね特定の人(リンクなど)にしか懐かないことが多め。
本ロワでは特定の人にしか懐かないということはなく、普通に誰でも乗れる。
ただし、それは別に乗り手に特別気を遣ってくれるというわけでは無いので、彼女を乗りこなすなら馬術の心得か高い身体能力が必要となる。
あるいは、乗り手に勇者リンクを思い起こさせる何かがあるのなら、彼女の方が気を遣うかもしれない。

余談だが、彼女には英語版ウィキペディアに記事がある。


【旅の扉@ドラゴンクエストシリーズ】
ドラゴンクエストシリーズに登場するワープ装置。外見は青い渦巻きのようなもの。
本ロワではD-7 シフティ・シャフトにある即席の家屋の内、キッチンの収納スペースに隠されていた。
スイッチを入れた状態で一度参加者の誰かが使用すると、青い輝きを放つようになり、そこにあることが分かりやすくなる。
使用すると会場内のどこかにランダムで転移させられるものとなっている。
転移場所は少なくとも海の上など、参加者が転移した途端危険が及ぶような場所にはならない。
要約すると、F-3にある次元転送装置@SKET DANCE とほぼ同様。

一度使用すると、使用した参加者は次の放送を超えるまでワープ装置は使用できない。これはこの旅の扉だけでなく、他のワープ装置を含むものとする。


819 : ◆7PJBZrstcc :2021/12/27(月) 19:47:55 BaVFcMRo0
投下終了です


820 : 名無しさん :2021/12/28(火) 06:26:13 VJMlVBks0
皆様投下お疲れ様です。エレンも桐山もキルスコアを稼いでからと言うもの、
今一つ出会いに恵まれないのでワープによって出会いを求めにいきましたか。
地味にエレンのシュールギャグが、原作を彷彿とさせてクスッとさせていただきました。

此方は今回の話とは無関係かつ、既に何か月前と本当に今更過ぎることであり、
更に細かい指摘になってしまうので恐縮ですが、◆bLcnJe0wGs氏と◆8tIPBp6N4s氏に質問があります。

◆bLcnJe0wGs氏の件は>>225 では豆銑礼のランダム支給品が3とされてますが、
氏の投下された >>627 だと野咲春花の傘以外出てないので2になるはずが1になってます。
別の方によりリレーされた >>727 の状態表でもランダム支給品が1になっていました。

それと同じ理由で◆8tIPBp6N4s氏は >>425 ではラッド・ルッソのランダム支給品は2(確定)ですが、
氏の投下された >>616 におけるラッドだとスタングレネード以外は使用されてないので、1になるはずがランダム支給品が0になってます。

作品自体が破綻するほどのことではないのでそこまで気にするものではないとは思いますが、
単なる誤字脱字と違い支給品の数の有無は後続の書き手の方も判断に困ると判断し、このような質問をさせていただくことになりました。
どちらも前の話が0〜3、0〜2と言った曖昧ではなく3と2と前の確定されてるので「それ以上支給されてない」とするには難しいと判断したのもあります。
お手数をおかけすることになって申し訳ないのですがこれらに対する返答、或いは修正があれば幸いです。
単に私が見落としていただけでしたら、本当に申し訳ありません。


821 : ◆bLcnJe0wGs :2021/12/28(火) 17:08:14 cTbair6E0
>>820
ご指摘ありがとうございます。
該当箇所についてですが、本編27話において豆銑の状態表の装備欄には″スタンド『ドギー・スタイル』″の記載があった為、彼が元々持っていたスタンド能力を主催からの制限によって使用不可能にされることを免れたものだと思い、ランダム支給品の最大支給品数を減らしてしまったのです。


822 : 名無しさん :2021/12/29(水) 13:01:08 XxCU6WQs0
>>820とは別人ですが、減らす意味が分からないんですけど…
そもそもディアボロ以外のジョジョキャラだって普通にスタンドが使えてるけど、その分アイテムを減らされるような事はされてません
何故該当キャラだけスタンドが使える代わりにアイテムを一つ減らされたのか、氏の判断は理解出来かねます


823 : ◆bLcnJe0wGs :2021/12/29(水) 19:06:13 VA8iM17o0
失礼します。
>>820のご指摘を受けまして、wikiに掲載させて頂いている該当の箇所を『ランダム支給品×0〜2』に修正させて頂きました。

また、そちらに伴って◆c4nYy47bT.様にリレーさせて頂いた>>727の状態表も巻き込む形になってしまいますが修正させていただきました。


824 : ◆bLcnJe0wGs :2022/01/01(土) 11:08:39 g2oIVtdY0
予約延長させていただきます。


825 : ◆c4nYy47bT. :2022/01/01(土) 17:18:51 UooxzTLw0
コーガ様、煌樹まみか、有栖川理愛で予約させていただきます


826 : ◆bLcnJe0wGs :2022/01/01(土) 18:32:02 g2oIVtdY0
お先に前編の投下をさせていただきます。


827 : コスモダンサー(前編) ◆bLcnJe0wGs :2022/01/01(土) 18:33:01 g2oIVtdY0
 ペテルギウスの放つ魔手に、平野はスタンドが連射する十字架状の火球で応じる。

「こんなこんなこんなこなこなこなこなこなこな!!
 魔女教の信徒でもないのに十字架などという神聖な! 荘厳な!
 よりにもよってそれを模倣した火の魔球で!!
 ワタシを倒そうなど! 卑怯! すなわち怠惰!」

 そう喚き散らしながら、ペテルギウスは魔術師の火球を弾かんと影の腕を伸ばす。

 火球と魔手はぶつかり合い、互いに打ち消される。

「今です」

 その隙に卯月が、ペテルギウスの足元とその周辺にある床や地面、そして破壊を免れた壁や天井に氷を張らせる。
 それも杖を持っていない為に持っている状態よりも魔法を上手く制御出来ない上で、なおかつ平野が巻き込まれない範囲で。
 
「なるほどなるほど、氷の魔法でワタシの足を凍らせ、動きを封じようとする考え、まさに勤勉デスね…
 デスが、このワタシが、我が権能で体を氷の張られてない空中へ逃げられるとまで考慮しないとは、
 そこの氷を操るアナタ、怠惰デスね?」

 だがペテルギウスの方も黙っている訳がなく、
 物理的な干渉も受ける、何本かの魔手が氷に触れた所から凍り付いていくのを構わずに、
 己の身体を氷の届かない空中に持ち上げながら、残りの魔手を平野のいる前方へと放つ。

「平野様、貴方は引き続き敵を阻められるだけ阻めながら、氷の張っていない後方まで引き下がってください。」

「! 了解じゃ。」

 卯月の言葉を受けた平野は、指示通り、引き続きに魔術師に火球を撃たせ、
 周辺の凍結に巻き込まれない様ペテルギウスを監視しながら引き下がる。

「喰らいなさい。」

 平野がこれから攻撃魔法《アイスニードル》の発動範囲を示す、氷の張られた箇所からの退避が出来た事を確認すると、すかさず凍らせた箇所から無数の巨大な氷槍が伸びてくる。


828 : ◆bLcnJe0wGs :2022/01/01(土) 18:33:44 g2oIVtdY0
これにて、前編の投下を終了させていただきます。


829 : ◆bLcnJe0wGs :2022/01/01(土) 18:42:48 g2oIVtdY0
失礼します。
>>827の文章内にある『平野がこれから攻撃魔法《アイスニードル》の発動範囲を示す、氷の張られた箇所からの退避が出来た事を確認すると、すかさず凍らせた箇所から無数の巨大な氷槍が伸びてくる。』の部分を『平野がこれから攻撃魔法《アイスニードル》の発動範囲を示す、氷の張られた箇所からの退避が出来た事を確認すると、すかさず魔法を発動させる。
 すると、凍らせた箇所から無数の巨大な氷槍が伸びていく。』に修正させていただきます。


830 : ◆8tIPBp6N4s :2022/01/01(土) 20:43:19 oNahKpTc0
>>820
ご指摘下さりありがとうございます。こちらのミスでした。ランダム支給品は一で問題ありません。すみませんでした。


831 : ◆bLcnJe0wGs :2022/01/06(木) 09:51:31 vQGHfzoI0
中編の投下を行います。


832 : コスモダンサー(中編) ◆bLcnJe0wGs :2022/01/06(木) 09:55:01 vQGHfzoI0
「なッ!? ワタシとしたことが…あの小娘が凍らせた場所からこんな鋭い! 長い! 太い!
 そして多数の巨大な氷柱が伸びてくるのを予想出来なかったなど…
 どうか! こんな不出来な! 怠惰なワタシを! お赦し下さい!!」

 ペテルギウスの方もすかさず凍りついた方の魔手を解除し、
 再び新たな腕を出現させ、その腕で氷槍が体に刺さるのを防ぎ、そして走らせながら平野に接近する。

◆◆◆

 ─空中への長時間滞在をしていれば点滅し出す首輪の機能。

 それでも滞在していれば本当に爆破されるかもしれない危険性。

 この殺し合いにおける基本ルール。
  首輪が爆発すれば死亡不可避と説明されている。

 死亡、それは即ち己が人間である他者の肉体に憑依させてある、
 ペテルギウスの本体、邪精霊としての死。

 この殺し合いに招かれてから、普段通りの自傷はしていたものの、
 憑依先の肉体を死なせていない以上、
  現状はどう制限されているのかもわからない。

 勿論、今死んでしまえば福音書も取り戻せず終わる。

◆◆◆

 故に、着地を短時間で済ませるべく魔手を用いて出来る限り地面の近くにいる様に、体を宙に浮かせる。

 平野と魔術師に向けていた方の魔手で彼らを捕えんと腕を伸ばし、標的に覆いかぶさる様にして襲いかかる。


(やはり氷槍を避けおったか)

  ─それに対して平野は、すぐさま『見えざる手』から逃れるべく、
  再びスタンドに火球を連射させ、魔手に次々命中させていく。

「ハア゛ァー、ハア゛ァー…」

 ─しかペテルギウスは憑依先の肉体の呼吸を荒げさせながら、魔手の勢いを更に増加させ、魔術師の火球を文字通り、手当たり次第に掻き消していく。


(体を浮かせて氷柱を回避しましたか。
  ですが、それにしても今の火球の消え方… 
 ここは汚らわしい奴から距離をとりながら、炎使いの男に接近しましょう。)

 幸い彼は平野に集中しており、自身には気づいていない。

 卯月は火球が消える際の吹き飛び方、煙の飛んだ方向を頼りに、
  ペテルギウスから距離をとりながら、
 吹雪の魔法を追い風に、平野への接近を初める。
 ある程度魔法を放てる様に手に持っている散弾銃を現在の敵対者が居る方向とは反対の手に持ち、
 狂信者に魔法をお見舞いすべく減った魔力を何も持っていない方の手に込め初め、青白く光らせる。

 見えざる手が見えない彼女はペテルギウスと横に並ぶ位置まで到達すると、
 ステップで追い抜いていく。

 そして平野の付近に到達。
  彼に注目している隙に、先程魔力を溜めていた片手を天に掲げ、
 腕ごと反時計回りに回転させ初める。
  その瞬間、それに応じて水色の魔方陣が卯月の正面に出現し、1回転する直前に雪の結晶をあしらった印が一瞬だけ魔方陣の中心に現れる。
 丁度手が初めに掲げた位置まで到達すると、魔方陣が白く光り出す。

「・・・。」

 そのまま魔方陣の中心に向かって手を振り下ろし、
 発生させた猛吹雪をペテルギウスに対して容赦無くぶつける。
 彼に気付かれない様に声は出さない。

「ア…アナタまで! どこまでも邪魔を!」

 しかし、魔法を派手にぶつけた為に狂信者には気付かれてしまった。

「な…殺すのじゃない!」

 そもそもペテルギウスを殺すつもりのない平野は卯月を止めようとするが、何故かマジシャンズ・レッドに阻まれてしまう。
 尚も冷たい心に支配された雪の女王は攻撃を止める事がない。

「まだまだ攻撃の手を止めないとは… ウル・ドーナ!!」

 ─しかし、ペテルギウスも黙ってはいない。

 咄嗟に土の魔法を唱え、彼を中心に盾となる周囲の地面を盛り上げて二人からの攻撃を防ぐ。

 それによって出来た土壁に吹雪は遮られる。

◆   ◆

(ふぅ~ 寒いねぇ!)
 一方、先程の三人の戦闘を観戦し続けていた真人。
 呪霊として『発生』してから間もなく、
 冬の寒さも感じた事のなかった彼にとっては氷の魔法使いとなった卯月がペテルギウスを捕捉する為に放った吹雪まじりの冷風でさえも感動するものであった。

 ─だが、先程ペテルギウスが敵対している二人からの攻撃を防ぐ為に盛り上げた地面が長時間の観戦を許さなかった。

(おっ あのローブの狂人、
 地面盛り上げる術持ってるのか~
…ん?! 梯子が揺れ…)


833 : ◆bLcnJe0wGs :2022/01/06(木) 09:55:41 vQGHfzoI0
これにて中編の投下終了です。


834 : ◆bLcnJe0wGs :2022/01/06(木) 18:23:02 vQGHfzoI0
後編の投下を行います。


835 : コスモダンサー(後編) ◆bLcnJe0wGs :2022/01/06(木) 18:23:34 vQGHfzoI0
 なんと、ウル・ドーナの効果範囲には真人が潜伏しているマンホールも含まれているからだ。

(こ…これは!?
 すぐにでも脱出しなければ!
 呪力も満足に回復出来ていない、
ここから逃げるんだ!)

 ただでさえ先程のロボひろしとの戦いで大量に呪力を消費している事もあり、 ここで身体を潰してしまえば回復までの時間を更に消費する羽目になる。
 それを避ける為にマンホールからは一先ず退避し、平野達が居る方とは逆の方向に走る。
 無論、呪力は使わない。


◆◆◆


 ペテルギウス達の居る倒壊した建物からすぐ近くの広場に入る。

 その最中、地面の盛り上がりを示す轟音が止まる。
 
 確認の為に一度後ろを振り向き、先程の魔法で盛り上がった地面が動かない事を目視で確認し、
 
 噴水を避け、すぐ近くにある飲食店の扉を咄嗟に開けて、すぐさま閉める。
 
 中に入ったら初めに店内を見わたす。
すると、カウンターの上にデイパックを背負い、参加者の証である首輪を填められたたビーバーの死体、そしてその付近の窓に銃弾らしきもので打ち破られた痕跡のある、
 割れた窓が見つかった。
恐らくはこのカウンターの上で例のビーバーが窓越しに銃火器で打ち抜かれて死んだのだと真人は推測する。


836 : コスモダンサー(後編) ◆bLcnJe0wGs :2022/01/06(木) 18:27:04 vQGHfzoI0
 しかし警戒も怠らない。
周辺に目を凝らしながら、幾つか設置されているテーブルの下をくぐり抜け、カウンターに到達。
 そしてすぐにビーバーのデイパックを掴んで死体ごと引き摺り降ろし、中身を確認する。
 リテイル・ローで自分のものを手放してしまった事もある為、基本支給品は全てもらっておく。

 次はランダム支給品。
  内容は紙容器入りのカフェオレに、パッケージに入っておらず、代わりに透明な袋に入れられているホラー映画のDVDといった物が入っていた。

 その次に手を出したのは、なんとビーバーの死体。

 それも何処かで使えるだろうとデイパックに入れようとするが、何故か飛び出してしまい入れようにも入れられない。
 どうやら、首輪の装置された参加者は生死問わずデイパックに入れられない仕様になっている様だ。
 そこで死体を片腕に抱え、呪力の回復を待つ為に店員の住居スペースに入り、念の為に飲食スペースと繋がるドアとスペース内の窓やカーテンを全て閉める。

(呪力をもっと回復させる為、あいつらに介入するのはまだ保留ってことで)

 そうして、彼は居間でカフェオレを飲みながら一先ず休息をとる事にした。


837 : コスモダンサー(後編) ◆bLcnJe0wGs :2022/01/06(木) 18:27:30 vQGHfzoI0
◆   ◆

 時は遡って、ペテルギウスが築いた防壁の中。

(咄嗟のことで防壁を作り、回復もせず消耗して死ぬ等それこそ怠惰! 
 奴らにまた攻められる前に立て直しを!)

 氷魔法の冷風が上から流れて来るそこの中、
 ペテルギウスは時間が経てば先程の二人に攻め入られることを考慮し、立て直しを図る。

 まずは首輪が点滅するより前に足を地面につけ、よろめきながら腰を降ろす。

 次は自ら手の指を噛み潰し、壁に頭を長時間打ちつけ続けて負傷させた肉体だけでなく、
 己の身体の一部でもある見えざる手を何度も撃ち落とされたことや、
 卯月から浴びせられた氷魔法で蓄積させたダメージを回復させるべく、
 見えざる手でランダム支給品の回復薬が入った瓶を取り出して開き、
 肉体の負傷部分に塗りつけ、余った分を飲み干す。

 その次は、いずれ自身に再び攻撃しに掛かって来るであろう二人に対処すべく片刃のナイフが柄に括りつけられた箒を取り出す。

◆  ◆

(あぁ、杖が無ければ制御が難しい…。)
「うむ…防がれたか」

 一方、ペテルギウスに吹雪を防がれた卯月は魔力を殆ど消費してしまう。

「お前さんは先程までの戦いで氷の力を殆ど使ってしまっただろう。
 この台車に乗っておるが良い。」

 彼女が魔力を消耗したことを感じ取った平野も、鋼の剣をデイパックにしまい、
 次に取り出した台車に乗って休む事を提案する。


838 : コスモダンサー(後編) ◆bLcnJe0wGs :2022/01/06(木) 18:28:07 vQGHfzoI0
「お心遣い有難うございます。」

 卯月もその提案をすんなりと受け入れてくれた。

「例の奴は自分から盛り上げた土の防壁の中におる。
 お互い力を消耗している今、体制を整えるチャンスだぞ。」
「了解しました。」

 そうして彼らは、一先ずペテルギウスから離れて体制を整えることを選んだ。


839 : コスモダンサー(後編) ◆bLcnJe0wGs :2022/01/06(木) 18:29:01 vQGHfzoI0
【I-8 パラダイス・パームズ/早朝】

【ペテルギウス・ロマネコンティ@Re:ゼロから始める異世界生活】
[状態]:体温低下、両手指欠損、頭から出血と打跡(回復中)ダメージ(回復中)、興奮(大)、盗人(主催者)への怒り(大)、寵愛を汚した平野と卯月への怒り(極大)
[装備]:ナイフが括りつけられた箒@進撃の巨人
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0~1
[思考・状況]基本行動方針:脱出優先。必要なら勤勉に優勝を目指す。
1:体制を立て直す。
2:寵愛を汚した平野と卯月を殺す。
3:我が福音書を取り戻すのデス!
4:『見えざる手』を私以外が見ることが叶うなど、あってはならないのデス!
[備考]
野崎春花、平野源五郎が『見えざる手』を視認できることを認識しました。
不可視の『見えざる手』は、少なくともスタンド使いなら視認できるようです。
憑依に関する制限は後続の書き手に任せます。

【島村卯月@アイドルマスター シンデレラガールズ】
[状態]:『禁断の薬』による記憶喪失および性格・容姿の変化、顔に一本の傷、魔力消費(大~極大)、台車に乗っている
[装備]:不死川玄也の散弾銃@鬼滅の刃(弾数8/20)
[道具]:
[思考・状況]基本行動方針:自分の記憶を取り戻すべく、優勝する。
1:平野と共に体制を整える。
2:全員殺して、記憶を取り戻す。
3:平野を利用し、ペテルギウスを殺す。

[備考]
『禁断の薬』を飲んだことにより記憶喪失となっています。またそれに伴い冷酷な性格に変化しています。
そして薬の効果により全身が"氷の魔法使い"として作り替えられたため傷が完治しております。
アイドル時代に培ったステップを無意識に使いこなしています。アイドル関連の記憶を取り戻せば能動的に使えるかもしれません


840 : コスモダンサー(後編) ◆bLcnJe0wGs :2022/01/06(木) 18:29:42 vQGHfzoI0
【平野源五郎@真夏の夜の淫夢シリーズ】
[状態]:頭に傷(小)、スタンドパワー消耗(中程度)、固い決意
[装備]:マジシャンズ・レッドのDISC@ジョジョの奇妙な冒険シリーズ、台車@現実、鋼の剣@ドラゴンクエストシリーズ
[道具]:基本支給品 
[思考・状況]基本行動方針:主催者には正義の鉄槌で、その腐った心を矯正してやろう。
1:卯月と共に体制を整える。
2: 卯月と共にペテルギウスを止める。殺しはしない。
3:闘いが終わったら卯月にピーチ姫の安否を確かめる。

【真人@呪術廻戦】
[状態]:呪力消耗(中〜大)、喜び
[装備]:大量の改造人間(ゴブリン数体を含む)@呪術廻戦+他、変身の指輪@Fate/Grand Order
[道具]:絶叫するビーバーの死体とデイパック(中身は基本支給品一式とATTACK OF THE KILLER PUMPKINSのDVD@妖怪の飼育員さん、ランダム支給品0~1)カフェオレ@アンテン様の腹の中(消費中)
[思考・状況]
基本行動方針:呪霊として殺し合いに参加する。
1:呪力を回復させる。
2:皆殺し。
3:宿儺の器を探す。
4:領域展開の兆しは見えた。後は試す相手か。
5:改造人間に渡した指、どうにか回収できないかな。
6:あの三人(ペテルギウス、平野、卯月)については保留。
7:この映画(ATTACK OF THE KILLER PUMPKINS)も気になるんだよね。
[備考]
※原作16話より参戦です。
※領域展開をなんとなく感じましたが、
 似たような状態にならないとできないかもしれません。
※F2000Rを模して改造人間を弾丸にすることを覚えました。
 やってることはぶっちゃけ原作のサイコガンもどきのあれです。
※数体ゴブリンを改造人間としてストックしています。


841 : コスモダンサー(後編) ◆bLcnJe0wGs :2022/01/06(木) 18:30:08 vQGHfzoI0
【支給品紹介】

メディカⅢ@世界樹の迷宮シリーズ

ペテルギウスに支給。
使用した対象の体力を大幅に回復させる効果を持った薬品。
ペテルギウスは自傷や平野と卯月、そして春花からの攻撃によって蓄積したダメージを回復させる為に使用した。

ナイフが括りつけられた箒@進撃の巨人

ペテルギウスに支給。
子供時代のエレン・イェーガーが人攫いに囚われていたミカサ・アッカーマンを救出する為に、物置部屋にあった調理用と思わしきナイフを紐か細目のロープで箒の柄の先に括りつけて作った即席の武器。

カフェオレ@アンテン様の腹の中

絶叫するビーバーに支給。
四角い紙製の容器に入ったカフェオレ。
作中では不良達に飲み物をパシられていた主人公の世恒 一斗(よづね かずと)が買いに行って来ていたり、その後にアンテン様の力によって不良達に仲間に入れてもらった際、逆におごられたりしていた。
現在は真人が飲んでいる。


842 : コスモダンサー(後編) ◆bLcnJe0wGs :2022/01/06(木) 18:30:35 vQGHfzoI0
ATTACK OF THE KILLER PUMPKINSのDVD@妖怪の飼育員さん

絶叫するビーバーに支給。
#94 猫南瓜(単行本9巻に収録。本ロワに参加している鳥月の参戦時期よりも先になるので注意。)に登場。
ナイス映像制作会社の映画監督、古戸理 環(カン・コドリ)が低予算でのモンスターパニック映画の制作を行う為に、猫南瓜(殺された猫の死体から生える猛毒の妖怪植物)を起用した結果出来た映画のDVD。
映画の内容については、該当エピソードの描写を見る限り、とある平和だった街で野良猫の鳴き声に悩まされていた一人の男性がゴルフクラブでその猫を撲殺したところから物語が始まり、殺された猫の無念から猫南瓜が街に発生、その南瓜を調理して食した住人達が次々と殺されていく、といったもの。
因みに、作品としての評価はお世辞にも良いとは言えないらしく、SNSでは劇場で視聴した人間、或いは妖怪から『映画ではない』等と書き込まれる、映画評価サイト『ええ映画.COM』では50点満点中3点をとる、通販サイト『JUNGLE』では星一つの嵐という状態だが、逆に注目されてDVDは黒字らしい。
現在は真人が所持。


843 : ◆bLcnJe0wGs :2022/01/06(木) 18:30:51 vQGHfzoI0
投下終了です。


844 : ◆5qNTbURcuU :2022/01/06(木) 19:22:32 8PkCHzVc0
ロボひろし、佐々木哲平、レヴィ・ザ・スラッシャー
予約します


845 : ◆c4nYy47bT. :2022/01/08(土) 15:49:47 xXYOKkjw0
予約延長します


846 : ◆5qNTbURcuU :2022/01/10(月) 12:30:40 kJX9oFwk0
投下します


847 : 幼魚と逆罰 ◆5qNTbURcuU :2022/01/10(月) 12:32:41 kJX9oFwk0

最早異形となり果てた元人間の怪物たちに、一人の少女が運ばれていく。
気を失い、未だ目を覚まさぬ少女。
自力での脱出は不可能だ。
そして、囚われの少女を助けに来るものもいない。
彼女の仲間だった父たる鉄人は、憎悪に身を焦がし、己の息子の仇と死闘を繰り広げていた。
そして、彼女の同胞であり家族である、星光の殲滅者も、
闇統べる王も、砕けえぬ闇も、この地にはいない。
都合よく、見ず知らずの少女を助けようとする正義の徒も通りかからなかった。
だから、彼女を誰も助けないのは当然の帰結だった。
そして、それ故に。


「ん……」


気を失った彼女の口に、指をねじ込む異形の怪物の手を阻むものはなく。
ごくりと。
五本の指全てを、レヴィ・ザ・スラッシャーは嚥下した。
異形の人間達の体が弾けたのは、その数秒後の事だった


848 : 幼魚と逆罰 ◆5qNTbURcuU :2022/01/10(月) 12:34:15 kJX9oFwk0



「……お、よしよし。あったあった」


特級呪霊と父なる鉄人の死闘の後。
最後の役者であった盗作者、佐々木哲平は辺りに散らばった支給品を回収していた。
漫画さながらに半壊した店内におっかなびっくり足を踏み入れ、突き立っていた刀を回収する。
その次に打ち捨てられたバズーカと、二人分のデイパックを回収した。
当然、刀もバズーカも哲平には扱えるはずもない。
だが放置しておいて、もし危険な人物の手に渡ったら…
そう考えると、回収しないわけにはいかなかった。
この地には危険な人間が少なくとも一人はいるのだ。
ここで武器を回収しておけば、藍野伊月を守る際に役に立つかもしれない。


「あ…」


そんな時に目に入る、無理やり人間を引き延ばしたらこうなるだろうかという印象を抱く怪物の遺体。
この子が、あのロボットの。
思わず、息をのむ。
いったいどうすれば、人間をこんな風に変えてしまえるのだろうか。
腐っても哲平だって漫画家だ。
少年誌のみならず、青年誌だって一通り目を通している。
その中には目を覆いたくなるような惨たらしい描写のものもあった。
だが、だがこれは。


「悪趣味が過ぎるだろ…」


吐き捨てるようにつぶやきを漏らす。
少なくとも、自分は岸部露伴とは違う。
この死体を見ても、沸いてくるのは下手人への怒りと悲しみだけで。
目の前にあるクリーチャーの死体を、漫画に活かそうとは思えなかった。
それは盗作者である彼が、それでもまだ人として失ってはいけない物を持っていた証拠だった。
哲平は静かに手を合わせて、目の前の少年の冥福を祈った。


849 : 幼魚と逆罰 ◆5qNTbURcuU :2022/01/10(月) 12:35:31 kJX9oFwk0

「ん…?」


そんな時だった。
怪物から少し離れた場所に、気になるものを見つけたのは。


「こ、これは……」


見つけたのは、薄く青がかった人の指だった。
呪術師ではない哲平にもわかる。
これはいわくつきの代物だと。
そんな指が十本も揃って放置されていた。
どうするか、と思案を巡らせる。
刀やバズーカと違って、目に見えて凶器になるとは考えにくい。
不気味だし、置いていきたいというのが正直なところだった。


(……い、いやいやいや!明らかにやばそうだし、これも持っていこう!!)


此処は怪物やロボットが跋扈する戦場だ。
それなら幽霊だっているかもしれない。
もし悪意を持った霊的存在が、このいわくありげな指を手に入れればどうなるか。
それを想像しただけで、血の気がさぁっと引いていく。
漫画家の哲平らしい発想だった。
そして、そんな彼の予想は的を射ていた。

指の正体は特級呪物、両面宿儺の指の死蝋。
人でいう赤子に相当する呪胎と呼ばれる呪霊を、特級まで引き上げる最上級の忌み物だ。
もし仮にNPCのゴブリンがこの指を手に入れていた場合、
即座にチャンピオンクラスまで危険度は跳ね上がっていただろう。
だから、とりあえずデイパックに回収しようとした彼の判断は間違っていない。
間違ってはいないがーーーー


850 : 幼魚と逆罰 ◆5qNTbURcuU :2022/01/10(月) 12:37:27 kJX9oFwk0

「……へ?」


彼は、どうしようもなく間が悪かった。 
まず聞こえたのは「キンッ」という、甲高い音。
なんだろう、そう思えたのは一瞬だった。
それに続くように、右手が燃えるような熱を帯びたから。
といっても正確には、二の腕の先だ。
だってーーー彼の右手は、二の腕から先が消失していたから。


―――え?


分からない。
思考が追い付かない。
だってこれじゃあ、もう利き手でペンが握れない。
これじゃあ、もう、漫画が描けないじゃないか。
これじゃあ、もう―――――、


「ぎ、ぃ…?いいいいいいあああああああッッ!?!?!?!?」


頭の中で疑問の残響が木霊した直後の事だった。
彼に、灼熱の痛みが殺到したのは。
蛇口の壊れたホースのように、面白いように噴出する鮮血。
まともに立っていることなんて、できるはずもない。
よろよろとできそこないのダンスを踊って。
周囲に赤い花を咲かせながら、地面に倒れこむ。


「ケヒッ!ケヒッ!ヒヒッ」


壮絶な痛苦の中、耳朶がとらえるのは少女の笑い声。
必死に右手を残った手で押さえて、涙で歪む視界で声の主を見る。
そこに立っていたのは、声色と同じ幼い少女だった。
青いツインテールの髪に、快活そうな顔立ち。小学生程の背丈。
ロボひろしに聞かされた、レヴィという少女の特徴と一致していた。
だが、これは違う。
“これ”があのロボットと行動を共にしていたなど、哲平には信じられなかった。
少女の顔に奔る黒の紋様。
暴力的なまでの存在感。
さっき出会った体を自由自在に変化させる怪物をはるかに超える、圧倒的邪悪!


「あッがッ…あぁ……き、君は…」


此処までの行動に、佐々木哲平に落ち度はほとんどなかった。
殺し合いを是としない者として支給品の回収を行うのは当然の行いだ。
そのあと、怪物へと変貌させられた少年の冥福を祈り手を合わせたことも。
明らかに曰くつきの指を回収しようとしたことも、それ単体では全くミスはない。
だがミスがない、だけでは不足な場面が人生には得てしてあるものだ。
この状況を回避するには、一にも二にも、直ぐにこの場所を離れるべきだった。
支給品を回収するという一見合理的な選択が、彼にとっての最悪を招いたのだ。


「これは俺のものだ、汚い手で触れようとしたのが間違いだったな」


地に這いつくばる哲平を嘲笑しながら少女は悠々と脇を通り抜け、十本の指を拾う。
そして―――十本まとめて飲み込み、嚥下した。
その様を見て、哲平は直感する。
これはさっきのあの男と同じ存在だ。
この少女は―――呪いだ。それも、さっきの男よりもずっと強い。
それを確信すると同時に、自身の末路をも、悟ってしまう。
戦う?無理だ。右手を失った状態で逆立ちしても勝てる相手ではない。
逃げるのも無理だ。大量に出血した状態で逃げれる相手でもない。
支給品のタマニーラッキーもこの少女には通用しないだろう。
終わった、今自分の命運は完全に万策尽きたのだ。


851 : 幼魚と逆罰 ◆5qNTbURcuU :2022/01/10(月) 12:38:03 kJX9oFwk0


「久々に目覚めてみればこんな場所で少々面食らったが……
いい地だな此処は。呪いが渦巻いている」


怖い。怖い。怖い。怖い!
少女を前にして、哲平は息をすることすらおぼつかなかった。
息をした次の瞬間、殺されるのではないかという恐怖が心胆を凍らせる。


「おい、だんまりでは困るぞ。何のために喋れるようにしてやったと思ってる?
すべて話せ、いま行われているこの状況が何なのかをな」


そう言って、少女がゆっくりとこちらへと歩み寄ってくる。
一歩近づくごとに、狂いそうになるほどの恐怖が哲平を包み込む。
このままでは、死因は出血多量ではなく窒息になるだろう。


「おい、そう怯えるな。久々の自由で今は気分がいいんだ。
だからさっさと話せ。ケヒッ、ヒヒッ」


そう言って少女は笑う。
芋虫の様に地面に這いつくばる哲平を見下ろして。
最初は鼻で笑うように、少し後にゲラゲラゲラゲラゲラ、と。
哲平にはその笑い声すら物理的な圧力があるように感じられた。
そして、この笑い声がやむと同時に、自分は死ぬのだろう。
それを確信してしまった。
そんな哲平の様子など気にも留めず、少女は千年ぶりの自由に酔いしれ笑う。
笑う、嗤う、ワラウ―――彼こそは全ての命を嘲笑う呪いの王。


両面宿儺―――ここに顕現。


852 : 幼魚と逆罰 ◆5qNTbURcuU :2022/01/10(月) 12:39:46 kJX9oFwk0



しんのすけの遺品となったデイパックだけを受け取り、俺はレヴィちゃんの元へと急いでいた。
元、と言っても完全にあてずっぽうの勘でしかない。
何故かって?
レヴィちゃんが連れていかれたとき、俺はあの男を殺すことで頭がいっぱいだったからだ。
だからこうして、しらみつぶしに辺りを探し回っている。
もし、あの時俺が冷静だったら、直ぐにレヴィちゃんを助け出せたかもしれないのに。


「くそ……生きててくれ、レヴィちゃん」


もう、子供が死ぬのは見たくない。
しんのすけが死んだ今、レヴィちゃんとしんのすけの友達のマサオ君が一番守るべき対象だった。
絶対に見つけ出す。絶対に守る。
だから頼む、生きていてくれ……!
今の俺の中にあったのは、ただひたすらにそれだけだった。
だが、そんな俺の意思とは裏腹に、鉄の体の動きはあまり良くない。
あの呪いとの戦いでプロペラを損傷したから自由に飛ぶのは無理だ。
他にもあちこち壊れてる。
もし人間の体ならそもそも動けていない傷だろう。それは分かってる。
分かってはいるが今の俺にはその事実は焦りを募らせるばかりだった。


―――アンタはつまり、自分のガキより見ず知らずの他人を選んだってことだろ?


「違うッ!違うッ!違うッ!そんなんじゃねぇ!!」


俺がレヴィちゃんをしんのすけの替わりに何かしようとしてるはずねぇだろうが!!
俺の頭にある野原ひろしの年収数十年分であろうお高い思考回路はこんなにもガラクタだったのか?
今はそんな事、考えてる暇でもないし、考える必要も無いだろうが…!
そう思った矢先の事だった。


ゲラゲラゲラゲラゲラゲラ、と。


聞き覚えのある声で女の子が笑っているのに気づいたのは。
俺に搭載された超高性能の収音マイクが速攻でそれが誰のものかを導き出す。


「この声は……レヴィちゃん……!」


よかった。
生きていてくれて本当に良かった。
俺は回路の底から安心して、音の場所を探る。
そう遠くない、というより、向こうもこっちに気づいてるのかどんどん近づいてる。


「レヴィちゃ―――」


そして遂に彼女を見つけた。
どうやら彼女は俺に気づいていないようで、すぐさま建物や木を飛び越えて行ってしまったが。
でも、今はとにかく生きていてくれただけでうれしい。
俺はすぐにレヴィちゃんの後を追いかける。
鉄の体の動きは悪くなっているが、十分ほどで追いつけるはずだ。
……この時、もしも。もう少し冷静だったなら。
俺に気づかないほどの上機嫌のレヴィちゃんへの違和感。
一度のジャンプで十メートル以上ジャンプしてる事への違和感に気づけたかもしれない。
……いや、気づいていたとしても。
命からがら逃げだして興奮していたとか、魔法少女の体だから特別なんだ、とか。
そんな都合のいい考えで疑問に蓋をしてたかもしれないけど。
まぁ、一言で言うなら。とどのつまり、俺はそんな違和感に気づけなかった。
気づかないままに、追ってしまった。


853 : 幼魚と逆罰 ◆5qNTbURcuU :2022/01/10(月) 12:40:32 kJX9oFwk0



「おい、いつまで呆けている。喋れない様なら殺すが」

「ヒッ!ハァ…ハァ…ハァ…は、話す…話します、から…ッ!」


ひとしきり笑った後、宿儺は再び詰問の態勢に映っていた。
彼の瞳に温度というものはなく。
氷点下を優に下回る、極寒の瞳だった。
人を殺そうという目ではない。
邪魔な虫けらを踏みさんとしている者の目だった。
生殺与奪を握られている相手にそんな瞳を向けて、哲平が沈黙を保っていられるはずもなく。
たどたどしく、飛びそうになる意識を必死に保ってこの殺し合いの説明を行う。
たとえそれが、処刑される時間を僅かに引き延ばすだけの行為だと理解していても。


(あぁ……もう、無理だ…いっそ一思いに……)


閾値を超えた恐怖は、哲平に狂うことすら許さない。
出血多量で頭の中はぼうっとしてきているのに、口だけは別の生物になったかのように多弁だった。
哲平の口上を聞く宿儺の様子を見ればそれが何の救いにもなっていないのは明らかだが。
明らかに、話が進むごとに不機嫌になっていく。
天上天下唯我独尊。
己の快・不快のみが生きる指針の宿儺にとって、この状況は屈辱的だった。
故に。


「もういい、分かった。不愉快だ」


死刑宣告を容赦なく宣告する。


(あぁ……よかった…これで、もう……)


今から死のうとしているのに、状況に反して哲平の心は安堵していた。
これでもう、痛い思いも怖い思いも終わる。
盗作という十字架を背負い、後ろめたい思いもせずに済むのだ。


(でも、藍野さんには……謝りたかったな……)


自分よりずっと漫画が好きで、真摯に漫画に打ち込んでいて。
自分より、ずっと才能があった。まさしく天才と呼べる少女。
せめて、最後に彼女には心からの謝罪をしたかったと、そう思わずにはいられなかった。
彼女は無事だろうか。
今の自分の様に怖い思いをしていないだろうか。
自分は咎人だ。これはある意味天罰なのだろう。
だが、彼女に罪はない。
だから、無事であってくれればいいと思う。
彼女が無事でいてくれたなら、今はもう、それだけで。


854 : 幼魚と逆罰 ◆5qNTbURcuU :2022/01/10(月) 12:41:08 kJX9oFwk0

(―――あ、あれは)


その瞬間だった。
少女の背後に人影を捉えたのは。
あの姿は、間違いない。
先ほど自分が助けた、ロボひろしと名乗ったロボットだ。
もしかしたら、助かるかもしれない。
一縷の希望が哲平の中で萌芽する。
そうだ、助けを乞おう。
彼は強い。さっきの呪いだって圧倒していたじゃないか。
彼が戦ってる間に、自分は逃げられるかもしれない。
あの岸部露伴ならともかく、ただの漫画家それもただの盗作作家の自分に何ができるというのか。
だから、助けを乞うのは何らおかしな話じゃない。
むしろ、さっきは自分が助けたのだから当然だ。
だから言え。助けてって言うんだ。
そうすればきっと、彼は漫画のロボットヒーローの様に―――


「―――ひ、ひろしさん!!」


そうだ。
だから、俺は。
俺がいうべきことを、叫ぶ。


「―――逃げろッ!!!」


―――キンッ


…以上を以て佐々木哲平の物語は閉幕だ。
何のことはない、ただ単に弱肉強食の世界で弱者が順当に排除されただけの事。
知己と再会することすらできず、背負った十字架の清算もできず。
成しえたことはなく彼は死んでいく。
けれど、それでも。
最後に放ったその言葉だけは。
千年前、あらゆる呪術師を下した両面宿儺。
かの呪いの王に、そして、彼自身の恐怖心に。
彼は最後のその時だけは、屈しなかったのだといえるのかもしれない。

【佐々木哲平@タイムパラドクスゴーストライター 死亡】


855 : 幼魚と逆罰 ◆5qNTbURcuU :2022/01/10(月) 12:41:40 kJX9oFwk0




今来た道を、必死に引き返して。
ようやく、俺はレヴィちゃんの背中を捉えた。
良かった!見間違えじゃないし、ケガもなさそうだ。
さっき俺を助けてくれた佐々木さんもいる。
これからどうなるかは分からない。
もしかしたら、俺は殺し合いに乗ってしまうのかもしれない。
だけど、二人が生きているのを見たとき。
少なくともその時だけは、そんな考えは吹っ飛んでいた。
今はとにかく、レヴィちゃんと話したかった。
そして、謝りたかった。
男を殺すのに夢中で彼女が危ないことになってるのを気づかなかった事を。
謝って、佐々木さんと話をして、レヴィちゃんを預けて―――
そして、あの男を追おう。そうしよう。
そんな、都合のいい事を考えていた俺の前で。


「―――ひ、ひろしさん」


佐々木さんが叫ぶ。
な…何だよ。そんな切羽詰まった声をして、如何したんだ?
確かに頼りない人だったけど、女の子に涙目にされるのは度が過ぎてるだろ?
やめてくれよ。こんな時に。こっちまで不安になってくるじゃないか。
そんな顔するなよ、俺の高センサーアイは見えすぎるんだ。
夜でも、あんたがそんな切羽詰まってる顔してるのは見えちまうんだ。
右手が真っ赤に染まってるのも、分かっちまうんだ。
だから頼む。そんな顔しないでくれ。


「―――逃げろッ!!」


やめろ。止めろよ。そんな声上げないでくれよ。
悪い冗談でも、許すから。今なら許すから。
だから―――


―――キンッ


そして、佐々木さんは。
俺の見てる目の前で、バラバラに解体された。
崩れた積み木みたいに、バラバラに。


856 : 幼魚と逆罰 ◆5qNTbURcuU :2022/01/10(月) 12:42:07 kJX9oFwk0

「……何だ、ここはお前の様な肉もないガラクタも参加しているのか」


振り返って、レヴィちゃんは俺に尋ねてくる。
けど、もう、レヴィちゃんは前のレヴィちゃんではなかった。
俺を心底見下して、馬鹿にしている目だ。
つい一時間前まで見ていたはずの、あの子の明るい笑顔が今はどうしようもない位遠い。
あぁそう言えば。
あの子の笑顔を見て、しんのすけの友達になってくれるかもな。
なんて、考えたっけ。


「う、うおおおおおおおッッ!!!」


エラー。エラー。エラー。
頭の出来のよろしい回路がそんな文字を嫌になるくらい吐き出す。
これじゃあ本当にガラクタだな。
でも、それを止める方法は俺は知らなかったし、知っていたとしてもやらかっただろう。
喉部分に仕込まれたスピーカーからうるさいと思うくらいの声を上げて。
俺はレヴィちゃんの姿をした何かに呪具を振り上げて殴り掛かった。
だけど。


「弱いな。お前」


あの呪いにだって通じた棒の一撃は、泣けてくるくらい通用しなかった。
手加減したわけじゃない。全力でやったさ。
その証拠に、受け止められた衝撃で地面にはクレーターができてる。
それでもレヴィちゃんの姿をした―――呪いはびくともしやがらねぇ。


「ほら、どうした。頑張れ頑張れ?」


黙れ。
レヴィちゃんと同じ声で喋るんじゃねぇ。
受け止められた呪具を手放して、殴り掛かる。
でも、死に物狂いで打ったパンチは、一発として入ることはなかった。


「もっと呪いを籠めてみろ!」


呪いがそういうのと同時に――トラックに正面衝突したみたいな衝撃が腹をぶち抜く。
ボディが凹んで、軋むのを感じながら俺は吹っ飛ばされていく。
どっかの家の壁を六枚くらい突き破って、ようやく止まった。
ダメだ、勝てねぇ。
今の俺がどうこうできる相手じゃねぇ。
あの呪いに比べれば、しんのすけを殺したあいつがかわいく思えてくる。


857 : 幼魚と逆罰 ◆5qNTbURcuU :2022/01/10(月) 12:44:09 kJX9oFwk0


「この儀式では―――我々は同じ蟲毒の蟲というわけらしいな。
俺と、お前たちのような下奴がだぞ?」


悠々と奴が近づいてくる。
しんのすけ、悪い。
俺ももうすぐ壊れることになりそうだ。
仇、取れなくてごめんな。
あの呪い野郎のいうことには、俺に魂はないらしいけど―――
でも、できることなら…お前と一緒の所に行きてぇなぁ……
そう思っている間にも、奴が腕を振り上げる。
振り下ろされれば、俺は壊されるだろう。
佐々木さんみたいに。
だけどもう、じたばたするつもりはなかった。
機械の体なのに、ひどく疲れた気がする。
ビールを浴びるほど飲んで、昼までぐっすり眠りたかった。
だから俺は静かに、その時を待った。


「―――何?」


だけど、待っていてもその時はやってこなかった。
振り下ろす前に呪いの足が止まる。


「―――ひろしッ!逃げろッ!!ボクがこいつを抑えてる間に、早く……!」


その声を発したのは呪いではなく。
間違いなく、ついさっきまで俺と一緒にいた女の子の…レヴィちゃんのモノだった。
あの子の顔は苦しげで、顔の変な模様が浮き出たり消えたりを繰り返している。
俺は立ち上がる。
見捨ててなんて、行けるわけない。
そのまま駆け寄ろうとして―――肩に衝撃が走った。


「虚しい抵抗だな小娘。貴様程度がこの俺を抑え込めると思うの―――
……ひろし!何してる!!早く…行って!ボクも…あんまり保たない!」


様子を見れば、レヴィちゃんと呪いが綱引きをしていて、呪いが優勢なのは俺にもわかった。
そして、呪いが勝てば俺は今度こそ壊されるだろう。
しんのすけの時と同じだ。
助ける方法なんて、思いつくはずもなかった。


858 : 幼魚と逆罰 ◆5qNTbURcuU :2022/01/10(月) 12:44:50 kJX9oFwk0


「……畜生ッ!」
 


気づけば、俺は走り出していた。
レヴィちゃんとは―――逆の方向に。


「よ、かった…ひろし、それで、いいんだ、よ……
……しんのすけ、に…会わないと、いけ、ないもんね……」


俺の収音センサーは嫌になるほど高性能で、普通の人間なら聞こえない声も拾ってしまう。
俺が逃げて安心した声を上げるレヴィちゃんの声を聴いて、全身が軋んだ。
そうだ、これでいいんだ。
俺にあの子を助けるための力はない。
あのまま残っていても、壊されるだけだった。
だから、後で助けるために背を向けることは何らおかしくない。
これでいい。
これでいい。
これでいいんだ。
俺は暫く脇目も降らず走りぬいて―――そして、地面に突っ伏して叫んだ。


「良い訳……無いだろうがッ!!!」


本当は、分かってた。
俺がしんのすけを殺したあの男を殺すよりも、レヴィちゃんを優先していれば。
あの子が、体に何かされることもなかっただろう。
佐々木さんだって、死なずに済んだ。
レヴィちゃんが人殺しにならずに済んだ。
俺が呪いを捨てることができなかったから、佐々木さんは死んだ。


「人を呪わば……穴二つってか……」


そう、もし。
ロボひろしが、レヴィ・ザ・スラッシャーの救助を優先していれば。
術式の効かない面倒な相手であるロボひろしを、真人は見逃していたかもしれない。
そうでなくとも、交戦中に助けに行く好機は確かにあったのだ。
もし遅くてもその時に救助に向かっていれば。
少女が宿儺に乗っ取られることもなかったかもしれない。

呪いは廻る。
ロボひろしが真人を呪う心を捨てられなかったから、佐々木哲平は死んだ。
全て、真人という特級呪霊の思惑通りになった。



―――ロボひろしの、真人に向けた『呪い』が佐々木哲平を殺した。


【H-7/朝】
【ロボひろし@クレヨンしんちゃん嵐を呼ぶガチンコ逆襲のロボとーちゃん】
[状態]:顔面破損、精神疲労(極大)、真人に対するの憎悪と殺意(極大)、真人の返り血、脚部故障(プロペラ回転での飛行に支障あり)、左手複数貫通穴(ロケットパンチ等には支障なし)、迷い、腹部損傷、燃料満タン
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、灯油入りポリタンク(電動ポンプ付き)×2@現実、ランダム支給品×0〜2、しんのすけのデイバック(基本支給品、ランダム支給品×1〜3)
[思考・状況]:基本行動方針:あの男(真人)を殺す。その後は───
1:あの男(真人)を殺す。
2:しんのすけを生き返らせるかの迷い。
3:レヴィちゃんを助ける……助けるのか? 本当に……?
4:藍野伊月って子を見かけたら、どうする?
[備考]
※レヴィが魔法少女だということを知りました。
※真人の無為転変を大体把握しました。
※戦闘により損傷が激しいです。
 脚部のプロペラ以外も故障してるかもしれません。


859 : 幼魚と逆罰 ◆5qNTbURcuU :2022/01/10(月) 12:45:30 kJX9oFwk0

レヴィ・ザ・スラッシャーにとっての幸運。
それは彼女に宿儺の器としての適性があったこと。
かつて闇の書と呼ばれたロストロギア(発展しすぎた文明の遺産)
それは何度破壊されても他世界で復活する自己修復機能を備えた魔導記録媒体。
その構築体の一片が彼女である。
そして、かつての自己修復能力と魔導記録媒体としての性質が宿儺の器として合致。
常人なら即死する最強の毒性である宿儺の指の毒にも見事に耐えて見せたのだ。


「……フン、ようやく収まったか。小娘が」
(おさまってなんかいないぞー!!ボクの体さっさと返せー!!)
「あーもう五月蠅い」


そして、彼女の不幸は。
彼女には、本来の器である虎杖悠二ほどの強度はなかった事だ。
肉体の中、彼女の意識そのものは大健在である。
しかし、表層に出るには完全に宿儺に抑え込まれていた。
短時間ならば今しがた見せたように肉体の主導権を奪取することも可能だが…
基本的な肉体の主導権は宿儺優位にあることに変わりはない。


「目覚めた先が蟲毒の中とは業腹だが…千年ぶりの自由の身だ。もっと愉しまねばな」


宿儺にとって今の首輪を嵌められて剣奴にされている状況は非常に不愉快だった。
だが、鏖殺そのものに抵抗感はなく。
手始めにこの場にいる全員を皆殺しにした後、ミルドラースとやらを誅滅しに赴こう。
そう結論付けて歩き始める。


(どうしよう。王様、シュテルん……)


呪いの王の中で、雷刃の襲撃者は不安げな声を上げた。
現状は完全に此方が閉じ込められている状態だ。
ひろしは逃がせたが、ひろしの知り合いだったかもしれない男は自分が殺してしまった。


(もし、王様やシュテルんが知ったら…怒るかな……)


多くの魔導士が関わり、そして死んでいった呪われた魔本と呼ばれた闇の書。
その構築体であるレヴィは自分が人を殺した事へのショックはあったが、消沈まではしなかった。
重要なのはこれからなのだから。


(……落ち込むのは後回しだ。今はとにかく、こいつから体を取り返す……!)


ここで自分が消沈し、すべてを投げ出してしまえば自分に巣食った呪いは死を振りまき続けるだろう。
それは、彼女の姿の元となったフェイト・テスタロッサの構成データも、良しとするわけにはいかないと叫んでいた。
故に、彼女は勝負の舞台から降りはしない。
この怪物の殺戮を止められる可能性があるのは、雷刃の襲撃者だけなのだから。
紫電の瞳に、意志の炎を燃やして。
己の生得領域で、少女の孤独な暗闘が始まろうとしていた。


860 : 幼魚と逆罰 ◆5qNTbURcuU :2022/01/10(月) 12:45:55 kJX9oFwk0

【H-6/朝】
【レヴィ・ザ・スラッシャー@魔法少女リリカルなのはPORTABLE-THE GEARS OF DESTINY-マテリアル娘。】
[状態]:宿儺の器
[装備]:宿儺の指(15本分)
[道具]:無し
[思考・状況]:基本行動方針:しんのすけという子を探す
1:...出会う参加者を鏖殺する。
2:王様やシュテルんは今どうしてるのかな...
3:宿儺から肉体を取り戻す。
[備考]
ロボひろしのことについて色々知りました
宿儺の器となりました。十五本分の魂が入っています。
肉体の意識は宿儺優位ですが、頑張ればレヴィも表層に出てくることができます。


861 : ◆5qNTbURcuU :2022/01/10(月) 12:46:08 kJX9oFwk0
投下終了です


862 : ◆c4nYy47bT. :2022/01/15(土) 02:13:29 BsXaqNXs0
予約を破棄します。
長期間の拘束、申し訳ありませんでした。


863 : ◆7PJBZrstcc :2022/01/16(日) 16:36:04 BscZa91s0
ゲリラ投下します


864 : ◆7PJBZrstcc :2022/01/16(日) 16:37:24 BscZa91s0
 森の中でザクザクと、土を掘る音が響く。
 怪物、ペニーワイズに殺された西片の遺体を埋める為、ドラえもんは一人、彼を埋めるための穴を掘る。
 手にあるのは一メートルほどのスコップ。
 この殺し合いのどの参加者とも違う世界のものだが、五人ほど縁のある参加者がいる世界のものだ。
 しかし、そんなことはドラえもんには関係ない。
 彼はただ、穴を掘るだけ。

 そして西片を入れるに十分な大きさの穴ができ、ドラえもんは彼を入れて土をかぶせる。
 その作業が終わるころには黎明は終わり、時間は早朝へと進んでいた。

「終わったかしら?」

 ドラえもんが西片に土をかぶせ、地面に埋め終えると同時に、折り畳み傘を差しているレミリアが声をかけてくる。
 森の中とはいえ、そろそろ日が差し始めてもおかしくない時間帯。
 吸血鬼である彼女にとっては、決して無視できない要素だ。故に彼女は折り畳み傘を取り出していたのだ。

 それはそれとして、ドラえもんがレミリアの方を見ると、なぜか彼女は酷く不可解そうな表情を浮かべていた。

「……レミリアさん?」
「ちょっと地図を見せなさい」

 疑問を呈すドラえもんに対し、問答無用で要求するレミリア。
 彼が渋々言葉に従い地図を取り出し広げ、彼女がそれを一瞥すると、「やっぱり」と納得した声を出した。

「どうかしたの?」
「聞きなさいドラえもん。私達、転移しているわ」
「えっ!?」

 あまりにも突然すぎる宣言に、大声で驚いてしまうドラえもん。
 それを静かにさせてから、レミリアは地図のE-8辺りを指差す。

「最初に私達が出会ったのがこの辺りでしょ?」
「う、うん」
「だけどさっき、あなたが穴を掘っている間に、あいつがいないか調べるために周りを見てきたのよ。
 まあいたのはゴブリンくらいだったけど」

 実のところ、レミリアは先の言動に含めた分だけでなく、今見えているものが現実かどうかを確かめるために周りを見ていた。
 懸念自体はひとまず晴れたと思いたいが、確実だと言い切れる自信はまだない。
 ともかく彼女はここで言葉を区切ると、今度はD-7にあるシフティ・シャフトを指差した。

「これが少し行ったところにあったわ」
「な、何で……?」
「さぁ?」

 ドラえもんの問いに対し、無造作に返答するレミリア。
 事実、彼女もペニーワイズの能力なのか、奴に支給された物の力なのか判断できないので、こういう言動しかできないのだ。
 それをドラえもんもちゃんと理解していた。
 なので、代わりに尋ねるのは違うこと。

「レミリアさんはその、あの怪物をどう思う?」
「そうねぇ……」

 ドラえもんの今一つ要領を得ない問いに、レミリアは顎に右手をやりながら考える。

 自分に屈辱感を味合わせた、いつか殺す敵。

 彼女の言わせれば、ペニーワイズに思うことなどこれくらいだ。
 しかし、ドラえもんが問いたいのはそういうことではなく、おそらく本質について。
 彼も彼なりにヤツを倒そうとしている、とレミリアは解釈した。


865 : ◆7PJBZrstcc :2022/01/16(日) 16:37:55 BscZa91s0

「怪物。
 恐怖を呼び起こし、恐怖を糧にし命を喰らう、あらゆるものの敵よ」

 ヤツの在り方は正しく怪物で、きっと対象を選ぶことはない。
 だから自分達に襲い掛かり、西片を食べたのだろう。

 別に、レミリアは人を喰うなと言うつもりはない。
 彼女が人の血を吸いつくして殺さないのは、単に少食だからだ。
 そうでなければ、妹に人間を加工したケーキを食事として提供したりはしない。

 だからレミリアがペニーワイズを殺しにかかる理由は、結局のところただの私怨。
 人間やドラえもんみたいな存在にとっては、怪物を倒す英雄譚だが、彼女にとっては同類同士の食い合いでしかない。

 もっとも、そんな内心をレミリアはおくびにも出さない。
 だから、ドラえもんが悩んでいるのはペニーワイズについてだ。

「恐怖を呼び起こす……」
「だから対処としては、恐怖を持たないもの、例えばゴーレムとかが相対するのが一番効率的でしょうね。
 あるいは――」

 ここでレミリアは一旦言葉を止めたかと思うと、どこか自嘲的な笑みを浮かべてから続けてこう言った。

「勇気で恐怖を克服しなさい。。
 おとぎ話の勇者の様に、立ち向かって戦いなさい。それが怪物を倒す王道よ」
「勇気……!」

 レミリアの言葉でドラえもんは思い出す。
 太古の恐竜時代にいた違法ハンター。
 遠い宇宙の彼方でコーヤコーヤ星を狙ったガルタイト鉱業。
 アフリカ中央部のヘビー・スモーカーズ・フォレストに存在する犬の王国を牛耳っていたダブランダー大臣。
 かつてバミューダトライアングルに存在した、海底国家アトランティスに残された自動報復システムポセイドン。
 平行世界の地球を狙った魔界の大魔王デマオン。
 小人達の惑星、ピリカ星を支配した独裁者ギルモア。
 そして、鉄人兵団。
 他にも様々な、かつて自分達が戦った敵を。

 そうだ、いつもそうだった。
 ただの小学生四人とドラえもんが、そんな敵と戦い打ち勝ってきた理由。
 ドラえもんこそ未来世界の超技術で生み出され、彼の手元には同じく超技術のひみつ道具があった。
 だがそれだけでは倒せない敵もいた。ならばどうやって倒してきたか。

 知恵と勇気、そして友情だ。
 時にバラバラになり、ひみつ道具を失うことがあっても、彼らは決して諦めなかった。
 それだけではどうにもならず、運や外的要因に頼ることもあったが、人事を尽くして天命を待つ。
 最初から運頼みならば、ハッピーエンドはありえない。

 ならば、今度もそうしよう。
 見知った仲は普段より少なく、おまけに近くに居る訳でもなければ、確実に会える保証もない。
 おまけに倒したい怪物、ペニーワイズの正体は未だ分からず、勝つ方法も想像できない。
 更に言うなら、ペニーワイズへの恐怖をぬぐえたわけでもない。
 だとしても――

「やろう! 仲間を集めて、あの怪物をやっつけるんだ!!」

 ドラえもんは決意した。
 声は未だ震え、恐怖していることは傍目に見ても明らか。
 それでも、彼は戦うことを選んだのだ。


866 : ◆7PJBZrstcc :2022/01/16(日) 16:38:20 BscZa91s0

 そんな彼を、レミリアは見つめながら考える。

(そう、それでいい。
 だけどあなたは、それをどこまで貫ける?)

 レミリアにとってもドラえもんの決意は好都合だが、同時にある懸念があった。
 それは彼女と違い、彼は友人が二人この殺し合いに参加しているという点だ。
 そして、殺し合いである以上、今現在危機に陥っている、あるいは既に殺されている可能性も当然存在する。

(それでも戦うと言うのであればいいわ。
 だけどもし、心が折れて立ち上がれなくなるのなら、あなたを置いていくことになるでしょうね)

 奮起するドラえもんとは対照的に、レミリアは冷ややかな考えを頭の中に置く。
 そして彼女の懸念は正しい。ドラえもんの友人、野比のび太は黎明の段階で既に殺されている。
 それを彼らが知るまでの時間は、もう二時間も残っていないのだ。

(まあ、それはその時になってみなければ分からないか)


 そうしてドラえもんが決意を固めた後、二人は西片の墓を作った。
 とはいってもそれは簡素とすらいえない代物。
 彼に支給されていたギターを、彼が埋まっている地面の近くに突き刺して墓代わりにし、同じく支給されていた、彼が恋焦がれる少女のハンカチを供える。
 二人がその気になればもう少しちゃんとしたものも用意できるが、今の彼らは時間が惜しかった。
 
(しかしまあ……)

 二人が森林を無言で進む中、レミリアはふと思う。

 怪物に襲われた人間の墓を作った。
 強力な怪物と相対するために、同行者を奮起させた。
 そして今、仲間を求めて出発した。

(吸血鬼のやることじゃないわね。どちらかというと、人間の領分でしょうに)

 あまりにも妖怪(じぶん)らしくない振る舞いに、レミリアは思わず自身に対して戸惑ってしまうのだった。


【D-7 森林/早朝】

【ドラえもん@ドラえもん】
[状態]:悲しみ、ミルドラースに対する怒り、ペニーワイズへの恐怖、奮起
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2、スコップ@幼女戦記、西片のデイバッグ(基本支給品のみ)
[思考・状況]:基本行動方針:殺し合いには乗らない
1:レミリアと行動する。
2:あの怪物(ペニーワイズ)をやっつけるため、仲間を探す
3:のび太くん大丈夫かな...

※四次元ポケットは回収されました。
※レミリアのこと、幻想郷のこと、紅魔館のことを知りました。

【レミリア・スカーレット@東方project】
[状態]:苛立ち、屈辱感、自分に対して戸惑い(小)
[装備]:シュヴァリエボルト・マグナ@グランブルーファンタジー、折り畳み傘@現実
[道具]:基本支給品、目隠し(血塗れ)@水曜日のダウンタウン
[思考・状況]:基本行動方針:主催をぶちのめす
1:ドラえもんと行動する
2:のび太という少年を探す
3:あの怪物(ペニーワイズ)はいつか殺す。
4:怪物を殺す為に策を練り、仲間を集める。……まるで人間みたいね

※紅魔郷終了後からの参戦です。(EXではないためフランが地下から解放されていません)


※むったん@けいおん! は西片の墓の代わり、高木さんのハンカチ@からかい上手の高木さん は供え物としてD-7 森林に置かれています。


【スコップ@幼女戦記】
ドラえもんに支給。
塹壕戦において穴を掘ったり敵兵を殺したりと大活躍した、帝国製の道具兼武器。
ぶっちゃけ、ただのスコップである。
これにて、参加者と支給品を合わせると異世界かるてっとコンプリート。


867 : ◆7PJBZrstcc :2022/01/16(日) 16:39:02 BscZa91s0
投下終了です
タイトルは『もう戻れないよ、昔のようには』です


868 : ◆bLcnJe0wGs :2022/02/03(木) 21:45:43 e9om1Vfo0
コーガ様、理愛、まみか、アンテン様(NPC)で予約させていただきます。


869 : ◆bLcnJe0wGs :2022/02/09(水) 21:58:58 R2ODBzao0
お先に前編の投下をさせていただきます。


870 : 黒く黒く(前編) ◆bLcnJe0wGs :2022/02/09(水) 21:59:49 R2ODBzao0
「ところで理愛さん、体はしっかり洗えていませんよね…?」

 コーガ様から『アンテン様』の情報を聞き出したまみかは理愛に対して、体をしっかり洗い切れていないことについて話す。

「あ…そうです、洗えてないです!」
「丁度近くにあなたが手を洗うのに使っていた、蛇口がありしたよね。見ていた所、水も綺麗に透き通っていて、そして液体石鹸も一緒に置いてましたし…。」

 理愛の返答を聞いたまみかは、彼女の体を何としてでも洗ってあげようと厠の近くにあった水飲み場の蛇口のハンドルに泡立てた液体石鹸をかけてから捻って水を流し、先程ハンドルに付けた石鹸を洗い流す為先にそちらに水をかけて泡を流し、次に自分の両手と手首に水を掛けて石鹸をつけて泡立て、洗い流す。

(つ、冷たい!)

 流れる水の冷たさを堪えながら、手を洗う。
 どうやら、この水道は温度調節をできないタイプの様だ。

「あの、体を洗えるなら、私は冷たい水や手洗い用の液体石鹸でもいいので…」

 そんなまみかを見ている理愛は彼女に申し訳なさそうにそう言う。

「ご、ごめんなさい、この辺りではここくらいしか綺麗な水を出せる場所がありませんので…
 それと私、柔らかくて長いタオルとコーガ様って人から没収しちゃっている鞄(デイパック)に入っていた合羽とカイロを持ってます。」

 対してまみかは、周辺に現在使っている水飲み場程度しか綺麗な水を出せる場所を見つけられなかったことを謝罪し、自分に支給されていた長いタオルとコーガ様から没収していた、彼の方のデイパックに入っていた支給品のカイロとレインコートを所持していることを伝える。
 そう話している内に彼女の手を覆っていた石鹸の泡は全て流れ、それを確認すると一旦水を止めて両手をパタパタと振り、水を可能な限り吹き飛ばす。


871 : 黒く黒く(前編) ◆bLcnJe0wGs :2022/02/09(水) 22:01:07 R2ODBzao0
「ふ〜、冷たかったです。」

「あの…体、洗わせて貰います…。」
「それなら、タオル出しますね。」

 理愛が体を洗うことを伝えると、まみかは先程のタオルを取り出す。

「レスプリ・エル・クープ!」

理愛は一旦変身を解除し、まみかに石鹸をつけてもらいながら髪や体を冷たい水で洗い流していった…。






(今の内に逃げてやるぞ!)

 だが、その隙にコーガ様は術を使って煙に身を包みながら転移を繰り返しながら、何処かへと逃げてしまう。

 そうして先程の二人の視界に入らない崖下に辿り着く。


872 : 黒く黒く(前編) ◆bLcnJe0wGs :2022/02/09(水) 22:01:54 R2ODBzao0
「ぜぇ…ぜぇ…(支給品を全部取られちまったが仕方ねぇ…)」

 まみか達に没収された支給品を取り戻すのは一先ず諦め、ここは逃走に専念。

(さっきあいつらにボコボコにされたばかりだ、何とか隙を見て逃げられたが…
 そうだとしてもまた俺様を探しにくるだろう、にしても痛過ぎて体が動かねぇな)

 だが、尋問された際の負傷によって体を思う様に動かせず、現在では術を用いた転移で精いっぱいだ。

『大丈夫? この傷なら、私が治してあげられるよ?』
(ん…?誰だ!?)


873 : 黒く黒く(前編) ◆bLcnJe0wGs :2022/02/09(水) 22:02:40 R2ODBzao0
そんな中、唐突に銀色の装飾品を髪や耳に装着した黒髪に赤い瞳の少女が目の前に現れていた。
 首輪は装着されておらず、この殺し合いの場に於いてNPCとして招かれた人物の様だ。

「何者だ!? 名乗りをあげろ!」

 そんな人物に流石のコーガ様も驚きを隠せず、名乗り上げを要求する。

「そうだね… 私のことは【ソーン】と呼んで貰えればいいよ。」
「なら本当の名前は名乗らないのかい!」

 『ソーン』と名乗る人物の口ぶりから即座に怪しいと判断。
 直ぐさま術で前面に障壁を張るが、相手が仕掛けてきたのは意外なものだった。

「まぁまぁ、落ち着こうではないか。【ヒーリング】!」
「え!?」
「君の傷を治す技だ、直ぐに効果が現れるよ。」

 その技をもろに受けたコーガ様の体が光り出す。

「体の痛みがなくなっていくぞ!」
「効果が出てるんだ、よかった。」

 【ヒーリング】の効果が現れた事を認識したのか、ソーンの表情は次第に笑顔になる。

「すまない! 俺様のダメージを治してくれたお礼に、ご一緒させてもらいたい!
 それと俺様の名はコーガ様だ!」

 コーガ様は土下座をしながら、傷を治してくれた恩人に(一応は)敬意を払い、同行を申し出たのだが…

「そんなに畏まらなくてもいいよ? 無事に傷が治ったなら何よりだよ。
 それと私には今の件とは別の『用事』があるんだ。
 もし生きていたら、また会おう。」


874 : 黒く黒く(前編) ◆bLcnJe0wGs :2022/02/09(水) 22:03:21 R2ODBzao0
 彼女から出た返答は、コーガ様からしたら全く意味の分からないものであった。
 どうやら、同行するつもりはない様だ。
 そして、いつの間にかソーンの姿が光に包まれ、コーガ様の視界から消えていた。

「おい! 人を治しておいてその態度はなんだ!」

 既に姿を消してしまった彼女に向かって、コーガ様は怒りの言葉を叫ぶ。



◆◆◆


(さて、先程のコーガ様という奴の事は心底どうでも良い…
 次は自分に与えられた役目、このだだっ広い会場という島で如何に参加者を減らせるか、誰と出会えるか、そこが重要になりそうだ。
 この催しで参加者の中から優勝者を出せば『俺』の願いも叶えて貰えると上から言われている、もしそれが本当ならば、一環が自ら命を絶つ過去を変えられるだろう。)

 ──会場内の何処か。

 転移した先でソーンは周辺を見回しながら、目的の為に再び思考を始める。

 それは嘗ての友人が目の前で命を絶った過去を改変する為に。


875 : 黒く黒く(前編) ◆bLcnJe0wGs :2022/02/09(水) 22:03:44 R2ODBzao0
【F-10/深夜】
【コーガ様@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド】
[状態]:ダメージ回復、黒髪の少女(ソーン/棗飛鳥)への苛立ち(中)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]:基本行動方針:願いを叶えるために死体を集める。
1:今はあの変態女(理愛)とその付き人(まみか)から逃げる。
2:アンテン様に願いを叶えてもらって、脱出したい。
3:誰かをイーガ団のメンバーに加えたい。
4:アイツ(ソーン/棗飛鳥)は何者だったんだ!?そして何がしたいんだ?
[備考]
本編死亡後の参戦です。
支給品は全てまみかによって没収されました。


876 : 黒く黒く(前編) ◆bLcnJe0wGs :2022/02/09(水) 22:05:05 R2ODBzao0
ソーン@Caligula Overdose-カリギュラ オーバードーズ-

 本名は棗 飛鳥(なつめ あすか)。

 元々は仮想世界『メビウス』の維持活動を行う、『オスティナートの楽士』のリーダー格であった人物。
 戦闘では槍を模した武器を扱う。

 現実世界で生活していた頃、高校時代によく遊んでいた一人の少女がある日突然、投身自殺したことで死別悲観《グリーフ》のトラウマを抱えた過去を持つ。
 その経緯からメビウス内でも彼女の自殺の原因を探る為に、自身の容姿を彼女と同じものに設定し、言動を真似ている。

 本ロワでは楽士ルートのラストでとある建設途中の商業施設から身投げした瞬間に、主催陣営によってこの世界へ召喚され、『この殺し合い(ゲーム)で参加者の中から優勝者を出せば、その参加者と同様にソーンの方の願いも一つだけ叶える権利を与える』と伝えられて会場に転送されて来た経緯がある。

 また、会場内であれば無制限で自由な場所にワープ出来る様になっている。

※固有のキャラクターエピソードは完遂済みです。
※会場内のどの場所にワープしたのかは後続の書き手にお任せします。


877 : ◆bLcnJe0wGs :2022/02/09(水) 22:05:40 R2ODBzao0
これにて前編の投下終了です。


878 : ◆c4nYy47bT. :2022/02/10(木) 06:25:20 JqlnJkwc0
投下お疲れ様です。
お忙しい中、大変恐縮ですが◆bLcnJe0wGs氏にお伺いしたい事があります。

氏が先日投下された作品内にてNPCとしてソーンが登場しました。
しかし、彼女はNPCと定義されていますが作中の描写を見るに
殆ど参加者と変わらない立場かそれ以上のように思えます。
これは企画者である◆SvmnTdZSsU氏 が規定された【書き手ルール】
・参加者の追加はNG。に抵触しているのではないかと感じました。

NPCの扱いは基本書き手一任であり、選出も役割も自由です。
これはルールにも記載されています。
ただ、NPCを経由してのソーン参戦という前例が出来てしまった場合、
例え落選した候補作のキャラだろうとそうでなかろうと
NPCと言う扱いがなされていれば無制限に登場可能という事態になりかねません。
これはコンペ形式の企画として非常に問題があると思います。

確かにゴブリンやドラクエモンスターと言った人外NPCとは違う
人間のNPC達はソーンよりも前に何名か登場していました。
ただ、彼彼女らは
盤面にほぼ影響を与えない完全な一般人だったり(みさえ・ギャンブラー)、
特定の施設を任された立場で招集されたり(霖之助、アンテン様)と
ある程度の制限や制約の元、ミルドラースの発言通り舞台装置としての役割で登場しています。
例に挙げたNPC達と比較するとソーンの立ち位置は少々度が過ぎているように感じました。
(前者は正直ソーン同様、参加者の様にも見えますが、
一話退場などの処理がなされているので過度の干渉はしていませんでした。)

もし仮にNPCではなく殺し合い促進の為に送り込まれた黒幕陣営の人間だとしても
それなら最初から一参加者として送り込めばいいだけの話です。
私はCaligulaは未把握な為、ソーンのキャラクターに関しては詳しくありませんが、
描写と概要を見る限り、参加者でもマーダーとして主催の意図通り動いてくれるように思えます。
わざわざNPCで呼ぶ合理的な意味が分かりません。彼女の願いを叶える特別待遇までされているので猶更

現状、判断を下す企画者様が不在な為、私個人が感じた違和感が正しいかどうかは分かりません。
本来なら人様の作品を咎める権利も口出しする権利も私には無いと思っています。
しかし、万が一上記のような問題が発生してしまった場合、
例え自由がコンセプトであるコンペロワであっても
全体のバランスやルールが崩壊してしまう可能性があると考え、
大変勝手ながら今回のような質問をさせていただきました。
お手数おかけしてしまい申し訳ありませんが、
氏がNPCに関してどのようなお考えをお持ちなのかお聞かせ願えますでしょうか。


879 : ◆c4nYy47bT. :2022/02/10(木) 06:25:21 JqlnJkwc0
投下お疲れ様です。
お忙しい中、大変恐縮ですが◆bLcnJe0wGs氏にお伺いしたい事があります。

氏が先日投下された作品内にてNPCとしてソーンが登場しました。
しかし、彼女はNPCと定義されていますが作中の描写を見るに
殆ど参加者と変わらない立場かそれ以上のように思えます。
これは企画者である◆SvmnTdZSsU氏 が規定された【書き手ルール】
・参加者の追加はNG。に抵触しているのではないかと感じました。

NPCの扱いは基本書き手一任であり、選出も役割も自由です。
これはルールにも記載されています。
ただ、NPCを経由してのソーン参戦という前例が出来てしまった場合、
例え落選した候補作のキャラだろうとそうでなかろうと
NPCと言う扱いがなされていれば無制限に登場可能という事態になりかねません。
これはコンペ形式の企画として非常に問題があると思います。

確かにゴブリンやドラクエモンスターと言った人外NPCとは違う
人間のNPC達はソーンよりも前に何名か登場していました。
ただ、彼彼女らは
盤面にほぼ影響を与えない完全な一般人だったり(みさえ・ギャンブラー)、
特定の施設を任された立場で招集されたり(霖之助、アンテン様)と
ある程度の制限や制約の元、ミルドラースの発言通り舞台装置としての役割で登場しています。
例に挙げたNPC達と比較するとソーンの立ち位置は少々度が過ぎているように感じました。
(前者は正直ソーン同様、参加者の様にも見えますが、
一話退場などの処理がなされているので過度の干渉はしていませんでした。)

もし仮にNPCではなく殺し合い促進の為に送り込まれた黒幕陣営の人間だとしても
それなら最初から一参加者として送り込めばいいだけの話です。
私はCaligulaは未把握な為、ソーンのキャラクターに関しては詳しくありませんが、
描写と概要を見る限り、参加者でもマーダーとして主催の意図通り動いてくれるように思えます。
わざわざNPCで呼ぶ合理的な意味が分かりません。彼女の願いを叶える特別待遇までされているので猶更

現状、判断を下す企画者様が不在な為、私個人が感じた違和感が正しいかどうかは分かりません。
本来なら人様の作品を咎める権利も口出しする権利も私には無いと思っています。
しかし、万が一上記のような問題が発生してしまった場合、
例え自由がコンセプトであるコンペロワであっても
全体のバランスやルールが崩壊してしまう可能性があると考え、
大変勝手ながら今回のような質問をさせていただきました。
お手数おかけしてしまい申し訳ありませんが、
氏がNPCに関してどのようなお考えをお持ちなのかお聞かせ願えますでしょうか。


880 : ◆bLcnJe0wGs :2022/02/10(木) 19:58:11 hM8kPL0M0
>>878
ソーンについての返答ですが、これは筆者が今回の話について構想している中で彼女を殺し合い促進の為のNPCとしてNPC解説欄の通りの扱いで登場させる展開を思いついてしまい、そのまま書いて投下してしまったものです。

氏が書き込んだ様に、今回の件については筆者もNPCの扱いが自由であったからと度が過ぎた事をやってしまったと申し訳なく思っております。

また、意見を反映させて頂きまして、該当のNPCの解説文を以下のものに修正させて頂きます。

【NPC紹介】

ソーン@Caligula Overdose-カリギュラ オーバードーズ-

 本名は棗 飛鳥(なつめ あすか)。

 元々は仮想世界『メビウス』の維持活動を行う、『オスティナートの楽士』のリーダー格であった人物。
 戦闘では槍を模した武器を扱う。

 現実世界で生活していた頃、高校時代によく遊んでいた一人の少女がある日突然、投身自殺したことで死別悲観《グリーフ》のトラウマを抱えた過去を持つ。
 その経緯からメビウス内でも彼女の自殺の原因を探る為に、自身の容姿を彼女と同じものに設定し、言動を真似ている。

 本ロワでは楽士ルートのラストでとある建設途中の商業施設から身投げした瞬間に、主催陣営によってこの世界へ召喚され、『この殺し合い(ゲーム)で参加者の中から優勝者を出せば、その参加者と同様にソーンの方の願いも一つだけ叶える権利を与える』と伝えられて会場に転送されて来た経緯がある。

 また、会場内であれば1時間毎に一回だけ自由な場所にワープ出来る権限を与えられている。

※固有のキャラクターエピソードは完遂済みです。
※会場内のどの場所にワープしたのかは後続の書き手にお任せします。


881 : ◆bLcnJe0wGs :2022/02/10(木) 20:36:56 hM8kPL0M0
予約延長させていただきます。


882 : ◆c4nYy47bT. :2022/02/10(木) 22:39:35 jV9fvt.M0
>>880
返答ありがとうございます。
何の権利も無い新参者の意見をくみ取り、作品修正まで行ってくださって大変恐縮です。
ですが、返答を拝読しまして私と氏との問題の認識に大きな齟齬がありました。
ログ汚しをしたにも関わらず、私の表現不足で余計な手間をかけてしまい申し訳ありません。深く謝罪致します。
ただ、このままこのNPCを放置するのは企画進行に対して問題なしとは言えない為、改めて書かせていただきます。

単刀直入に申し上げますが、私はソーンの能力制限の問題ではなく、彼女の登場自体がコンペロワの規定違反に思えます。
ですので、現在執筆中の『黒く黒く』をNPC未登場で作品を修正しなおすか、作品自体の破棄をご検討していただけないでしょうか。

そもそもNPCの扱いについての解釈なのですが、

複雑な思考や権利を持たない主催側が用意した雑魚敵・ボス敵のような暴力装置
何の力も無い言うなれば町の村人のような非力な一般人
必要以上参加者に干渉しない中立な立場を与えられた店員や案内人

以上のようなプレイヤー、つまり参加者と明確に差別化された存在だと個人的に考えております。
もし参加者との線引きを逸脱したNPCが現れたとしてもそれは描写を幾重にも積み重ね、納得できる過程と物語があって初めて成立していくものでしょう。

ですが、今回のソーンはどうでしょうか。

参加者同様に願いを叶える権利を与えられ、
参加者同様にキルスコアを稼げる立場と能力を有し、
参加者同様に時に参加者に加担し、時に裏切る自由な意思を持つ。

これは他の112名の参加者達と何が違うのでしょうか?
『願いを叶える事を条件に殺し合い促進の為に送り込まれたNPC』と言う設定も主催者側の立ち位置を鑑みて、あまり合理性がある話には思えません。
殺し合い促進目的の敵対的NPC(ゴブリン・ヒュドラ等)は既に会場に山ほどいます。なのに、態々殺し合い優勝者と同様の権利を与えてまでソーンをNPC扱いにして参戦させる理由は何ですか?

他の書き手様方がどのようなご意見をお持ちかはわかりかねますが、私には氏が登場させたソーンはNPCではなく、一人のプレイヤーにしか見えませんでした。
合理性を度外視し、NPCと言う設定を経由して、新たに113人目の参加者を何の脈絡もなく無理やりねじ込んだのでは?とすら考えているのが現状です。

無論、氏にその様な意図があるとは思っておりません。
ただ、>>879でも記載した通り、『参加者同様の権利を持ったNPCが何の理も無く登場する』という前例はコンペ形式の企画を根底から覆すものになりかねません。
参加者とNPCの境界線が曖昧になり、前例を盾に無制限にキャラを増やし、無制限に殺す。さながら無法地帯のような状態になる恐れがあります。
氏を含め、偉大な書き手様方がここまで繋いできたリレー作品がそのよう結末になってしまうのは、私としては大変心苦しいです。
ですので、どうか今一度NPCの扱いに関して検討していただけますと幸いです。
ご一考のほど宜しくお願い致します。


883 : ◆5qNTbURcuU :2022/02/10(木) 23:19:11 np8u/E0E0
自分も今回の話のNPCの扱いに関しては疑問符を抱きます。
これまでNPCはアンテン様等の拠点から動かず殺し合い事態にはさほど関わらないユニットか所謂死体役ややられ役が殆どです
NPCとしてて出る以上次話で既にやられ役や死体役となる可能性を考慮すべきですが、氏の設定ではそうなることを考慮した上で出されたものではない様に感じます。
完全にNPCの範疇を超えた扱いをする事になるのは自分も反対です


884 : ◆vV5.jnbCYw :2022/02/10(木) 23:27:09 LCP4M49I0
私からの疑問を述べさせていただきますと、「ソーンである必要があったのか」ということが気になります。
極論を言ってしまえば、コーガ様が回復してもらえるだけならば、もっと原作でも回復だけに特化したNPC(ホイミスライム@ドラゴンクエスト)などにすればいいのではないかと思います。
参加者に襲い掛かるだけではなく、ぴーたん然りはぐれメタル然り、参加者に利益をもたらすNPCもいるので、回復してもらうこと自体は問題ないと思います。
ソーンの様に回復以外にも様々な面があり、かつ願いをかなえてもらえるのだとしたら、それでは何ら参加者と変わりはないので、NPCをもっとありふれた雑魚モンスターなどを使えば良いと思います。


885 : ◆bLcnJe0wGs :2022/02/11(金) 09:31:07 XSOJikMc0
失礼します。
>>882-884のご意見を受けまして、ソーンの参入は無かった事にさせて頂きます。
また、作品が完成した次第に修正版を投下させて頂きます。


886 : ◆bLcnJe0wGs :2022/02/11(金) 21:36:16 XSOJikMc0
修正版の投下をさせていただきます。


887 : 黒く黒く ◆bLcnJe0wGs :2022/02/11(金) 21:37:09 XSOJikMc0
「ところで理愛さん、体はしっかり洗えていませんよね…?」

 コーガ様から『アンテン様』の情報を聞き出したまみかは理愛に対して、体をしっかり洗い切れていないことについて話す。

「あ…そうです、洗えてないです!」
「丁度近くにあなたが手を洗うのに使っていた、蛇口がありしたよね。見ていた所、水も綺麗に透き通っていて、そして液体石鹸も一緒に置いてましたし…。」

 理愛の返答を聞いたまみかは、彼女の体を何としてでも洗ってあげようと厠の近くにあった水飲み場の蛇口のハンドルに泡立てた液体石鹸をかけてから捻って水を流し、先程ハンドルに付けた石鹸を洗い流す為先にそちらに水をかけて泡を流し、次に自分の両手と手首に水を掛けて石鹸をつけて泡立て、洗い流す。

(つ、冷たい!)

 流れる水の冷たさを堪えながら、手を洗う。
 どうやら、この水道は温度調節をできないタイプの様だ。

「あの、体を洗えるなら、私は冷たい水や手洗い用の液体石鹸でもいいので…」

 そんなまみかを見ている理愛は彼女に申し訳なさそうにそう言う。

「ご、ごめんなさい、この辺りではここくらいしか綺麗な水を出せる場所がありませんので…
 それと私、柔らかくて長いタオルとコーガ様って人から没収しちゃっている鞄(デイパック)に入っていた合羽とカイロを持ってます。」

 対してまみかは、周辺に現在使っている水飲み場程度しか綺麗な水を出せる場所を見つけられなかったことを謝罪し、自分に支給されていた長いタオルとコーガ様から没収していた、彼の方のデイパックに入っていた支給品のカイロとレインコートを所持していることを伝える。
 そう話している内に彼女の手を覆っていた石鹸の泡は全て流れ、それを確認すると一旦水を止めて両手をパタパタと振り、水を可能な限り吹き飛ばす。

「ふ〜、冷たかったです。」

「あの…体、洗わせて貰います…。」
「それなら、タオル出しますね。」

 理愛が体を洗うことを伝えると、まみかは先程のタオルを取り出す。

 先に自分の手とデイパック、そして紙や飲食物の類でない基本支給品を石鹸で洗浄する。
 幸いな事、ランダム支給品の方には紙や飲食物の類はない。

 うちストロングゼロを除いた洗浄を行わない物品は、先程理愛に浴びせられていたゴブリン達の体液に含まれる雑菌などが付着している可能性もある為、仕方なくまみかのマジカル・スプラッシュ・フレアで焼却し、酒は地面に流して残った缶を捻って先述の焼却物の中に入れる事にする。

「レスプリ・エル・クープ!」

 一通り支給品の洗浄と焼却処分を終えた理愛は一旦変身を解除し、まみかに石鹸をつけてもらいながら髪や体を冷たい水で洗い流していった…。






(今の内に逃げてやるぞ!)

 だが、その隙にコーガ様は術を使って煙に身を包みながら転移を繰り返しながら、何処かへと逃げてしまう。

 そうして先程の二人の視界に入らない崖下に辿り着く。


888 : 黒く黒く ◆bLcnJe0wGs :2022/02/11(金) 21:38:58 XSOJikMc0
「ぜぇ…ぜぇ…(支給品を全部取られちまったが仕方ねぇ…)」

 まみか達に没収された支給品を取り戻すのは一先ず諦め、ここは逃走に専念。

(さっきあいつらにボコボコにされたばかりだ、何とか隙を見て逃げられたが…
 そうだとしてもまた俺様を探しにくるだろう、にしても痛過ぎて体が碌に動かねぇ)

 だが、尋問された際の負傷によって体を思う様に動かせず、現在では術を用いた転移で精いっぱいだ。

(ふぅ… 今なら誰も居ないな)

 幸い、周辺には誰の姿も見えない。
 一先ずコーガ様は、岩肌に腰をおろした。

◆◆◆


 体を洗い終えた理愛は、まみかから渡されたタオルで全身をくまなく拭き取り、先程焼却した物品から発されている僅かな火に当たりながら再び魔法少女姿に変身し、髪を結っていた物を片腕に着け、とんがり帽子を一旦外して次に渡されたレインコートを羽織り、フードを被ってその上から先程の帽子を被る。

「それと、さっき言っていたカイロです。」

 その次にまみかから渡された、温かくなっている貼らないタイプのカイロを片手で抱える。

「あの、コーガ様…っていなくってますよ!」

 理愛がまみかと共に、コーガ様をアンテン様の所まで連れて行かせようとした頃には既に、逃げられてしまっていた。

「えっ…て本当に居なくなってますね! 早く探しましょう! 私は空中に飛んで、コーガ様が近くに居ないか辺りを見渡してきます!」
「あ、私も空は飛べますよ!『セ・ヴィト・コム・ベント!』」
「あなたも飛べたんですか…。」

 理愛はその呪文と唱えると同時にブーツを杖で叩き、飾りの翼を広げてまみかと一緒に上空に飛び上がる。

 ─だが、コーガ様は直ぐに見つかった。

「な…なんですか、すぐ近くにいるじゃないですか…。」

 以外とあっさり探し人を発見出来てしまった。

「捕まえます、『ヌ・ジュル・パ』」
「畜生ー! すぐにバレちまった!」

 理愛はすかさずコーガ様を狙って拘束魔法を唱え、彼を不可視の鎖に捕らえる。

「さて、そろそろ観念しなさい!」
「ひ〜! アンテン様の所に案内しますから! 止めてください!」

 引き続き、まみかと共にコーガ様へと接近。



 ─ようやく彼を連れて、今度こそはアンテン様の居場所まで案内して貰う事に成功した。



◆◆◆

 ─ようやく到着した、アンテン様の祀られている神社。

 コーガ様を連れたまみか達は、ここに来るまでの経緯をアンテン様に話していた。

「…そうか、そうして彼にここまで案内もらえたと。
 それはそれとて、ご苦労だったね。
 また、今回はアンテン様はなにか供物を捧げておいていけば、何が一つ願いを叶えるまで、それの価値に応じた力を維持してくれるよ。」

 彼女達の視界に映る少女【アンテン様】は、コーガ様が最初に訪れていた時には語らなかった新しい情報を教えてくれた。

 要するに、彼女に何か物品を捧げておけば、何らかの願いを一つ叶えるまでそに必要な力を溜めておく事が出来るそうだ。

「それと、そのカイロや雨合羽なんかもずっと使っていれば、その道具に篭もる『想い』が強くなっていって、『価値』もどんどん上がっていくよ。 だから、願いを叶えたいのならもっと使っていくといいよ。」

 アンテン様は、供物として物品を捧げる際、対象の道具を大切に使えばその願いを叶える為の『想い』と『価値』も高くなっていくことを説明する。

「それでは、コーガ様でしたよね?あなたは殺し合いに乗っているという事ですので、この刃物はアンテン様にあげちゃいますね。」
「おいっ それだけはやめてくれ!!」

 先程の説明を聞き終えたまみかは、没収していた首狩り刀を容赦なくアンテン様に差し出す。
 すると、何か黒いものが現れ、刀を包み込んで消滅させる。

「畜生ー! こうなったら…!」

 刀を捧げられたコーガ様は仕返しといわんばかりに二人へ術を用いた攻撃を仕掛けようとするが、何故か発動しない。

「アンテン様はね、この場所での暴力行為は駄目だって言ってるよ。」

 どうやら、この場所で暴力を振るってはいけないらしく、コーガ様の術も使えない様だ。

「それと、ここにずっととどまっていないで、貢ぎ物を捧げたら早い内に一旦神社の境内から出て、また時間が経ったらおいで」

 彼女のによると、この神社の境内に長居するのもよくない様だ。

「一回来たら、また時間おく必要あるのかよ…」

 アンテン様の言葉


889 : 黒く黒く ◆bLcnJe0wGs :2022/02/11(金) 21:39:14 XSOJikMc0
を受けたコーガ様は、一人愚痴を漏らす。

「そうみたいですし、アンテン様の言う通りここは一旦神社から出ましょう。」

 理愛がそう話すと、彼彼女達は神社を後にする。



◆◆◆



(このケース入りの指輪、これは持っていましょうか)

 神社の境外、まみかは自身に支給された最後のランダム支給品であるケース入りの指輪を眺めていた。


890 : 黒く黒く ◆bLcnJe0wGs :2022/02/11(金) 21:40:18 XSOJikMc0
【F-10/深夜】
【コーガ様@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド】
[状態]:ボロボロ
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]:基本行動方針:願いを叶えるために死体を集める。
1:隙を見てまた逃げ出してやる…!
2:アンテン様に願いを叶えてもらって、脱出したい。
3:誰かをイーガ団のメンバーに加えたい。
[備考]
本編死亡後の参戦です。
支給品は全てまみかによって没収されました。

【煌樹まみか@Re:CREATORS】
[状態]:健康
[服装]:魔法少女姿
[装備]:マジカルステッキ@Re:CREATORS
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1つ、婚約指輪@呪術廻戦 東京都立呪術高等専門学校、柔らかいタオル@こじらせ百鬼ドマイナー(濡れている)
[思考]
基本:こんな殺し合いなんて止めないと
1:理愛ちゃんの身体が心配。無理をしてないといいけど
2:『アンテン様』…やっぱり何者でしょう…?
[備考]
※本編第九話「花咲く乙女よ穴を掘れ」で、死亡後からの参戦です
コーガ様を、『別の物語の登場人物』だと思っています。
コーガ様から、アンテン様に関する情報を得ました。

【有栖川理愛@魔法娼女理愛 獣欲に嵌まる母娘】
[状態]:発情(小)、快楽中毒(中)
[服装]:魔法少女姿、髪は解いている
[装備]:魔法の杖(変身前はペンダントの形態)@魔法娼女理愛 獣欲に嵌まる母娘、使い捨てカイロ@妖怪の飼育員さん、レインコート@妖怪の飼育員さん
[道具]:基本支給品(ストロングゼロとカップ麺、ルールブックは焼却)、ランダム支給品2つ(紙や飲食物の類は無い)
[思考]
基本:殺し合いを止めたい
1:身体の疼きが……
2:もしトキくんと出会ったら、その時は……
3:『アンテン様』……もしかして魔罪人……?
[備考]
※本編第五章『砕ける心、隷属の刻』終了後からの参戦です
※トキによって仕掛けられた『道具』は解除されています
コーガ様から、アンテン様に関する情報を得ました。


891 : 黒く黒く ◆bLcnJe0wGs :2022/02/11(金) 21:41:19 XSOJikMc0
【支給品紹介】

使い捨てカイロ@妖怪の飼育員さん

コーガ様に支給。

原作73話に登場。
 蛟龍の飛行機襲撃に巻き込まれていた乗客がたまたま所持していたカイロ。
 龍(蛟龍が成長した姿)のエネルギーを吸収する特性を把握するのに一役買った一品でもある。
 その乗客は前面に大きなポケットの付いた服を着ていた為、恐らくは貼らないタイプと思われる。
 本ロワではその貼らないタイプで支給されている。

レインコート@妖怪の飼育員さん

コーガ様に支給。

 原作77話に登場した、西東京妖怪公園の備品。
 劇中では園の従業員が砂かけ婆展示ゾーンに訪れる観光客に着用する様指示している。(砂かけ婆が飛ばしてくる砂から身を守らせる為。)
また、描写を見る限り様々な年齢の見物客が着用しており、サイズも様々なものがあると推測出来る他、すねこすり用の耳付きタイプも存在する。
今回支給された物は人間用で、標準体型の成人男性なら普通に着用出来るサイズ。

上記2つは現在理愛が所持。

婚約指輪@呪術廻戦 東京都立呪術高等専門学校

煌樹まみかに支給。

 本編開始から6年前、折本里香が乙骨憂太への誕生日プレゼントとしてケース入りで渡していた、シンプルなデザインの結婚指輪。
 (因みに、里香が祖母のタンスから勝手に持ち出してきた故人の母親のものであった。)
 しかし、その後に憂太の目の前で里香が交通事故に遭って死亡してしまう。
 その際に憂太が里香の死を拒んだ事で彼女に呪いを掛けてしまい、怨霊(特級過呪怨霊)化させて憂太に危害を加えようとする人間を逆に負傷させ、呪霊(少なくとも特級未満?)ならその圧倒的な力だけでねじ伏せ、祓う程の『呪い』となり、この指輪と憂太に取り憑いた。
 憂太は戦闘の際、この指輪を左手の薬指にはめて里香から呪力を供給する。
 また、呪いは物に憑いている時が一番安定する為、本編2話には里香の呪いを貰い受け、日本刀に込めて支配する様に出来る様になる為、鍛錬を始めるシーンもある。
 本ロワでは夏油傑との戦いを経て憂太が里香との主従制約を破棄したことで解呪に成功し、彼女が成仏した後に支給されている。
 しかし、何らかの要因で里香が顕現したり、再び呪霊化する可能性もある。
(後続の書き手にお任せします。)


892 : 黒く黒く ◆bLcnJe0wGs :2022/02/11(金) 21:42:04 XSOJikMc0
柔らかいタオル@こじらせ百鬼ドマイナー

煌樹まみかに支給。

 原作24話で紅坂 光子(こうさか こうこ)の提案によって渡海への誕生日サプライズとしてプレゼントを贈る企画に乗じた瀬々良木 碧(せせらぎ あおい)が渡海へのプレゼントとして渡していた消耗品のタオル。

 誕生日当日に受け取った渡海は『柔らかくて使い易そう』と普通に喜んでいた。

※アンテン様についての追加設定

神社の境内に入ってから一定時間滞在する、『アンテン様』に危害を加えようとする、境内で何らかの暴力行為を行ったキャラは『ルール違反』としてアンテン様に捕食されて死亡します。
(連載版のものを参考にした設定)


893 : ◆bLcnJe0wGs :2022/02/11(金) 21:43:37 XSOJikMc0
投下終了です。


894 : ◆c4nYy47bT. :2022/02/11(金) 23:17:13 t6JDPCcY0
投下お疲れ様です。
作品修正有難うございました。私が確認した限りでは話自体にも破綻は無く、問題は解消されたと思います。
この度はお手数をおかけしてしまい申し訳ありません。言及含め長文失礼致しました。


895 : ◆7PJBZrstcc :2022/02/20(日) 23:06:38 5QOEz44Y0
エンキ、マシュ、ラヴィニア、トキ 予約します


896 : ◆7PJBZrstcc :2022/02/22(火) 19:13:44 VVDVJTHk0
投下します


897 : 危険淫子 ◆7PJBZrstcc :2022/02/22(火) 19:14:45 VVDVJTHk0
 エンキ達三人を襲うゴブリンの先陣を切るのは罪魔小鬼(ゴブリンギルティナ)。
 ギルティナの目にはマシュとラヴィニア、美少女二人しか映らない。
 それに立ちふさがるはエンキ。彼は先程と同じく風斬り刀を構えてゴブリンの群れと相対する。

「GBYYYB!!」

 対しギルティナは、エンキに向かって手に持っている武器を振り下ろす。
 その様は敵を殺すというよりは、障害物を壊すような無機質な攻撃。
 そこに意思も技巧も無い、ただの暴力。
 そんなものを躱すなど、歴戦のエンキからすればたやすいこと。
 故に、少しだけ体の位置を動かすだけで容易く避けられた。

 躱されたギルティナの攻撃は、そのまま地面を抉る。
 衝撃で轟音が鳴り、地にはひび割れが生じた。
 もしもこの光景をこのゴブリンに詳しいものが見れば、間違いなくホブ以上の筋力を持っていると分析するだろう。
 最も、エンキは本来のホブゴブリンについて何も知らないので、ただ破壊力に少し驚くだけに留まった。

 しかもギルティナの脅威はそれだけではなかった。
 エンキの視線が地面に行ったその刹那、ギルティナの股間に蠢く触手の全てが後ろにいるマシュとラヴィニアに向かう。
 増大した性欲に囚われてなお、奴もまたゴブリン。まだ悪知恵を働かさせるくらいはできる。
 触手を用いて二人を犯すと同時に、人質にとろうと考えたのだ。

 そして、ギルティナの触手に便乗して、一緒に攻めて来ていた普通のゴブリンの群れも二人の元へ直行していた。
 ゴブリンは全員、やたらと強そうなうえ、どう見ても男であるエンキの相手などしたくなかった。
 なので、エンキの相手はギルティナに任せ、自分達は女を犯す方に回ろうと考える。
 だが——

「疾風の乱撃」

 エンキは触手とゴブリンの群れに一瞬で近づいたかと思うと、そのまま刀を振るう。
 幾たびも往復する刀は、風を纏いて触手やゴブリンを切り裂いていった。
 結果、ギルティナの股間から生えた触手は切り裂かれるも、ゴブリンの一部は取り逃してしまう。
 しかし、マシュの盾とラヴィニアの触手で十分跳ね除けられる程度の数だったので、特段何かが起こることも無かった。
 これで残るはギルティナ一匹のみ。

「GRBBBBBBBBYYYYYYYY!!」

 一方、ギルティナは三人に目もくれず、ただひたすら痛みの余り絶叫していた。
 彼の股間に生えていた触手は、正しく性器。
 そこを切り裂かれるということは、人間の男性なら麻酔なしで去勢されるということに等しい。
 おまけに、今の彼は本来有り余っている性欲を更に強化された状態。
 にも関わらず性器を消失した。
 この状況を言うならば、アイデンティの消失に近い。
 故に彼はこう思考する。

 なぜ自分がこんな痛い目に遭わなければいけないのか。
 よくも、よくも体の一部を……
 まずは目の前の老人を殺す。
 そして後ろ二人の女を、自分では犯せないから他のゴブリンを呼んで輪姦させてやる。
 そうでもなければ、自分の溜飲が下がらない。

 怒り狂うギルティナは、まずはエンキを殺そうと武器を振る。
 しかしエンキも、ギルティナの痴態を黙ってみていたわけではない。
 彼はこの間に、目の前の敵を確実に屠るべく、力を貯めていたのだ。
 そして今、その力を解放する。

 エンキはギルティナの怒りに狂った故軌道の読みやすい攻撃を軽々躱し、素早く懐に入り込む。
 そのまま彼は、刀を全霊で振り上げた。
 振り上がったそれはギルティナを、まるでケーキのように容易く切り裂いた。
 まさしく必殺の一撃である。

 こうしてギルティナは倒れたが、エンキは未だ警戒を解かずある一点を見つめている。
 そこにはただ岩場があるだけだが、つられてマシュとラヴィニアも同じ場所へ視線を向ける。

「出てくるといい。そこにいるのは分かっている」

 そのままエンキが視線の先に向けて言葉を放つと、そこから一人の少年が現れた。
 少年は中性的な顔立ちに長い銀髪をたなびかせながている。
 彼の顔には怯えと戸惑いが浮かべながら、両手を上にあげて無抵抗をアピールしていた。

「ボ、ボクの名前は清良トキと言います。殺し合いには乗っていません」

 その状態で必死に自己紹介をし、なんとか穏便に話を進めようとするトキの姿に、マシュとラヴィニアは警戒を解き、エンキもまた警戒を緩めた。


898 : 危険淫子 ◆7PJBZrstcc :2022/02/22(火) 19:15:21 VVDVJTHk0





 トキと合流した三人は、各々簡単な自己紹介だけ済ませ、即座に移動を始めた。
 理由としてはまず、ギルティナが咆哮を悲鳴を上げたことにより、それを聞きつけた別のゴブリンや他のNPCが再び襲ってくるかもしれないから。
 そしてもう一つは、マシュとラヴィニアが持つギルティナへの嫌悪感だった。

 マシュは人理修復という長い旅の中で、いわゆる性的な目で見られるという経験を多少はしてきた。
 だがギルティナほどの熱量を持って見られていたかと言われると、否になる。
 それでも、彼女はまだマシだ。

 ラヴィニアにはそんな経験がまるでない。
 彼女の正体や経たものを考えれば、辛い出来事こそあれ、性的な目で見られた経験など全くない。
 そこに元々旺盛なうえ、トキによって更に増幅させられ暴走したギルティナの性欲は、彼女にとって多大な恐怖と嫌悪感を煽るものだった。

 そうこうしているうちに、一先ずギルティナの死体からある程度の距離を稼いでいた。
 ここで一行は一度足を止め、エンキはトキに向かって鋭い目線を向けて問いかけた。

「まずは、お主がわしらと出会うまでに見てきたものを教えてもらおうか」
(警戒されてるなあ)

 エンキの問いかけと鋭い視線の意味を、トキは正確に読み取っていた。

 彼はおそらく、あの性欲に囚われたゴブリンをけしかけたのはトキ、と考えている。
 当然、トキは馬鹿正直に『自分がやりました』などいうわけがない。
 だから何かしら話させて、確定とまで行かなくとも、疑いを晴らすか深めるかの材料が欲しいのだ。

 もっとも、トキがあのゴブリンをけしかけたのは紛れもない事実なので、彼が今からするのは言い逃れである。
 
「えっと、ボクは最初荒野に一人いたんですけど……」

 トキが選んだ道は『嘘を言わない』である。
 人が人を騙す際の最良は、嘘をつかないこととされている。
 情報を一部制限することで、相手に誤解させてしまうのだ。
 彼も同様の方法を選ぶことにした。

 とは言ってもトキが言わないのは『魔罪人ヨトギとしての能力』と『自分があのゴブリンをけしかけたこと』の二点だけだ。
 後は全て真実を言うことにした。

「最初、ボクは他の人と合流したくて、北にあるパラダイス・パームズに行こうとしてました。
 でも、そこで殺し合いに乗っている人同士が戦っているのを見て、すぐに引き返したんです」

 ちなみにこれは放送前の出来事。トキが目撃したのはペテルギウスと春花の戦いである。
 パラダイス・パームズに向かう最中、何だか騒がしさを感じて、支給されていた望遠鏡を使って観察して、素早く撤退を選んだのだ。
 いくら殺し合いを楽しむつもりとはいえ、流石に始まってすぐ戦うほど血の気の多い参加者と早々に関わるつもりはなかった。

「後はただ南下し、そこでゴブリンと戦っているエンキさん達を見つけたので、邪魔にならないように隠れていました」

 実際はギルティナを作り、けしかけたという一幕があるものの、これがトキの今までの行動である。
 しかし、彼の話はまだ終わらない。

「その、ウェイトリーさんみたいな小さい子が襲われているのに何もしないのは心苦しかったんだけど……
 でも前に、迂闊なことをしてボクが怪我をした挙句、戦っている人の足を引っ張ってしまったことがあって……」

 いかにも申し訳なさそうに、苦い過去を語るような顔で、トキは昔のことを話す。
 それは、トキが理愛の母親であるミリアと二人きりになる為に仕組んだ茶番劇。
 わざと敵の攻撃を受けて、足手まといになってしまった出来事。
 そのことを後悔しているからこそ、情がどうであれ極力理性で行動している、ように印象付けようとした。

 実の所、この話を聞いている三人は別に、トキが隠れていたことに関して悪印象を持っているわけでは無い。
 三人とも、そういう道理は弁えていた。
 代わりに、内一人が気になったのは別のこと。

「魔法少女、ですか?」

 マシュが引っかかったのは、トキの口から出たこのワードだった。
 前述の出来事を説明するためには、まず前提として魔法少女や魔罪人のことについて話さなければならない。
 だから簡単に話したのだが、彼としてはよそうがいのところで食いつかれてしまった。

「えっと、信じられないかもしれないけど――」
「いえ、そうではなく」


899 : 危険淫子 ◆7PJBZrstcc :2022/02/22(火) 19:16:58 VVDVJTHk0

 何とか信じてもらおうとするトキの発言をマシュは遮る。
 彼女はこの時、カルデアにいる三人の魔法少女を思い出していた。
 しかしトキが語る魔法少女は、彼女の知る魔法少女と大きく異なっていた。

 そもそも、マシュはまだ、この殺し合いがあらゆる世界から参加者が集められているものだと気づいていない。
 最初に出会った参加者が、顔見知りのラヴィニアだったこと。
 次に出会ったのが、サーヴァントではないものの、彼女の知識にある存在と同じ名前だったこと。
 これらにより、マシュはこの殺し合いに違う世界が絡んでいるとは考えていなかったのだ。

 厳密にいえば、マシュが人理修復の過程で巡ってきた特異点も異世界と言える。
 しかし、異なる世界であったとしても、魔術・神秘のルールが変わったわけでは無い。
 彼女には理解できない例えだが、テイル〇オブシリーズにおいて、作品ごとに舞台となる世界が異なれど、魔法や特技に差異はそこまでないのと一緒だ。

 だがトキの語る魔法少女は、マシュの知るものと大きく異なっていた。
 無論、彼の話に出ていた理愛やミリカが、素人相手に分かりやすく説明する為、簡略化したかもしれない。
 しかしそもそも、マシュの世界の神秘は、素人に知られないようにするのが大前提。
 一般人に目撃された場合、記憶を消すのが穏当な分類で、目撃者を殺害することを躊躇しない魔術師も多いのだから。

「第二、魔法……」
「「「……?」」」

 だからこそ、マシュの口から思わず言葉がこぼれる。
 それに対し、三人はただ首をひねるしかできない。
 違う世界の住人であるエンキやトキはもとより、同じ世界のラヴィニアも、魔術の知識が深いとは言えないからだ。

 第二魔法とは、マシュたちの世界の魔術師の悲願の一つであり、並行世界の運用である。
 この領域に届いている者が、彼女が所属するカルデアにも僅かに存在するが、それでも少しだけ作用しているにすぎない。
 こんな、他の世界から自在に人間を呼び出すなどありえない。

 という説明を、マシュは三人に向けてかなり簡略的に行った。
 第二魔法について詳しく説明していいものか迷うが、彼女に記憶を消す技術はないし、そもそもそれどころではない。
 なので、出来る限り簡潔に説明し、肝心な部分はボカすことにした。
 それに対し三人はとりあえず、改めてこの殺し合いは尋常ではない、ということだけは理解した。

「となるとこの名簿はおそらく、世界ごとに行を変えているというわけじゃな」
「知り合い同士を集めている、にしては結構違和感ありましたからね……」

 マシュの話を聞いたエンキは、デイバックから名簿を取り出し、改めてマジマジと見つめる。
 彼の言葉にトキもまた賛同した。

 これで、トキが三人と接触した目的は果たされる。

 そもそも、殺し合いに乗っているトキが、明らかに主催に抗おうとしている面々に、無力な少年の振りをして接触したのには理由がある。
 まず、名簿にある違和感を解消するため。
 次に、そもそも最初から暴れて参加者を殺していくつもりもなく、適当な主催に抗う集団に入り、ある程度信頼を得てから殺して回るつもりだったから。

 現状、出会ったばかりなので信頼も何もないが、名簿にある違和感については納得できた。
 トキは別に殺し合いの主催者を敵視しているとか、疑問視しているわけではないので、解消できないならそれはそれでまあいいか、くらいの感覚だった。
 例えるなら、魚の小骨がのどに刺さっているような感覚。無視できなくもないが、解消しておくに越したことはない、といったところだ。

 その後も情報交換をするものの結局、ある種重大な前提条件は見つかったが、そこまで大きな進展はなかった。
 共有できたことは、殺し合いに乗っていないであろう参加者は、藤丸立香、沖田総司、有栖川理愛の三人だということくらいだ。

 今後の方針としては、ひとまず他の参加者との合流を目指すことにした。
 そして北は、トキが殺し合いに乗っている者同士で戦っているという情報を参考に行かないことに決め、西にある施設へ向けて進むことにする。

 戦いを止めるべきか、という考えもあったが、そもそもそんな争いの渦中にわざわざ飛び込むなど、よほどの平和主義者か自分に自信のある殺し合いに乗った者くらいだろう、という結論が出たので、それはなしになる。


900 : 危険淫子 ◆7PJBZrstcc :2022/02/22(火) 19:18:17 VVDVJTHk0

「結構遠いのう」
「何か手立てがあればいいのですが」
「でしたら、全員で一度デイバッグを検めてみましょうか。乗り物なら私が運転できますので」

 エンキとトキは地図を見ながら、西にある一番近い施設までの距離を見て、エンキとトキが少々面倒そうな顔をするが、そこにマシュがある提案をする。
 デイバッグの中身を、トキ以外の三人はまだ全部確認しきれておらず、そこにもしかしたら車があるかもしれない、と考えたのだ。
 マシュのいまは遙か理想の城が入るくらいである、デイバッグより大きいものが出てくる、ということに疑問は今更誰も挟まない。

「でも、僕が持っているのは望遠鏡と、この王冠くらいだよ」

 そう言ってトキが見せたのは、スーパークラウンとカモメの絵が描かれた望遠鏡だった。
 ペテルギウスと春花の戦いも、この望遠鏡で見つけたのだ。
 スーパークラウンを見せたのは、流石に支給品が望遠鏡一つだと不自然に見えるかもしれない、と判断したためだ。
 睡眠薬を隠しておけば、いざという時有用に使えるかもしれない。

 そうこうしていると、ラヴィニアもデイバックから一台の車が出現した。
 トヨタRAV4。四人乗りの日本車である。
 更に説明書きを見れば、参加者のうち一人の愛車らしいことも分かった。
 なので、もし持ち主に会えば返そうと決意しつつ、彼らは車に乗り込んだ。

 まず運転席には当然マシュ。
 次に助手席だが

「ラヴィニアがいいじゃろ。
 隣に見知らぬ男がいるより、知り合いの同性の方が心が休まるじゃろうからな」
「は、はい……」

 ラヴィニアに決まった。
 エンキのこの言葉に嘘はないが、その実トキを未だ警戒しており、見張る為であるということも、見張られている当人は理解していた。
 まだ何も疑いを晴らすようなことをしていないのだから、当たり前といえば当たり前だ。

(当分はなにもしないつもりなんだけどね)

 トキは自分の考えをおくびにもださず、大人しく後部座席に乗り込む。
 それを見たエンキも乗り込んだ後、車は出発した。


901 : 危険淫子 ◆7PJBZrstcc :2022/02/22(火) 19:18:44 VVDVJTHk0


【Iー9/黎明】

【老将エンキ@モンスター烈伝オレカバトル】
[状態]:健康、マシュたちの話に対する困惑(小)、トキに対する警戒心(小)、搭乗中
[装備]:風斬り刀@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2(確認済み)
[思考・状況]基本行動方針:一刻も早く元の世界に戻りたいが、そのために無辜の人々を傷つけるつもりはない。
1:一刻も早く元の世界に戻り、王子を止めねば……!
2:これも"ネルガル"や"エンリル"の企みなのか……?
3:キヨラトキ、少々怪しいかもしれん……
4:違う世界か……
[備考]
参戦時期は、"エンリル"の策略により王子"マルドク"が狂王になってしまった後。
マシュの話から、今後訪れる未来について暫定的な内容を知りました
(違う世界の物と判明したので、心に留めておく程度です)。

【マシュ・キリエライト@Fate/Grand Order】
[状態]:体に無数の傷(中)、疲労(小)、ゴブリンへの嫌悪感(中)、運転中
[装備]:トヨタRAV4@例のアレ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2(確認済み)、いまは遙か理想の城(ロード・キャメロット)@Fate/Grand Order
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いを止める。
1:ひとまず西へ向かう
2:先輩や他のサーヴァントの皆さんと合流したい……
3:エンキさんは別の世界の方でしょうか……?
4:"ネルガル"と"エンリル"……これが今回の黒幕でしょうか?
5:黒幕は第二魔法を自在に扱える存在……?
[備考]
参戦時期は少なくとも、第1部第六章「神聖円卓領域キャメロット」以降です。そのため自身の宝具などについて把握しています。
目の前の老人(老将エンキ)をその特徴から、メソポタミア神話の主神『エンキ(エア)』ではないかと推測しています。
老将エンキから、"ネルガル"と"エンリル"、"マルドク"に関する情報を得ました。
"藤丸立香"が殺し合いに参加していることを把握しました。

【ラヴィニア・ウェイトリー@Fate/Grand Order】
[状態]:健康、ゴブリンへの恐怖、嫌悪感(大)、搭乗中
[装備]:あやしい触手@魔界戦記ディスガイア
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1(確認済み)
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いに乗るつもりはない。元凶に立ち向かう。
1:これも、魔神柱の仕業なの……?
2:違う世界……?
3:ゴブリンはもう嫌
[備考]
参戦時期は死亡後。そのためカルデアや魔神柱、アビゲイルの正体などを知っています。

【清良トキ@魔法少女理愛 獣欲に嵌まる母娘】
[状態]:健康、搭乗中
[服装]:いつもの服装
[装備]:望遠鏡@ゼルダの伝説 風のタクト
[道具]:基本支給品一式、ホモコロリ@真夏の夜の淫夢、スーパークラウン@New スーパーマリオブラザーズUデラックス、
[思考]
基本:せっかくだから楽しませてもらう。だけど、一筋縄ではいかないかもしれない
1:しばらくは大人しく、ただの高校生清良トキとして行動する
2:ミリアは…見つけたら手伝ってもらうかな
3:違う世界か……そこにもキリエライトさんやウェイトリーさんみたいな素敵な子がいるといいな
4:ホモコロリは隠しておく
[備考]
※本編第五章『砕ける心、隷属の刻』終了後からの参戦です
※ゴブリンを配下にできますが、現在配下はいません。


【望遠鏡@ゼルダの伝説 風のタクト】
清良トキに支給。
リンクの妹、アリルが愛用する、カモメの絵が付いた望遠鏡。

【トヨタRAV4@例のアレ】
ラヴィニア・ウェイトリーに支給。
Syamu_gameの愛車。オフ会0人の時にも運転していたもの。


902 : ◆7PJBZrstcc :2022/02/22(火) 19:19:10 VVDVJTHk0
投下終了です


903 : 名無しさん :2022/03/03(木) 06:10:12 XZS1INlw0
乙です
ギルティナの不快さとそれに対処する女性の嫌悪感が上手く表現されていたと思います
トキの悪賢さに留まらない賢さも描写され考察も含めた興味ある内容でした
傍から見るとエンキさんが頼りですね^^


904 : ◆7PJBZrstcc :2022/03/03(木) 19:11:18 ZRkGv9Tg0
スバル 土方で予約します


905 : ◆7PJBZrstcc :2022/03/04(金) 19:00:29 fIFn.Ul.0
投下します


906 : ゼロニハモドレヌコンペ・ロワイアル ◆7PJBZrstcc :2022/03/04(金) 19:01:51 fIFn.Ul.0
「特に、知己はなしか」

 ふたば幼稚園の体育館内にて、名簿を読み終えた土方が一言零す。
 彼から見て心を揺るがせるような名前は、名簿の中に存在しなかった。
 しいて言うなら沖田総司と沖田総悟だが、二人とも土方からすれば異世界の存在。
 別段、思うところはなかった。

 また、自身の愛刀である和泉守兼定についてだが、土方もまさか刀が人の姿をとって動き回るとは思わず、単にその名を冠しただけの新選組とは関係ない何かだと思っていた。
 既に和泉守兼定は殺し合いの中で死んだ上、もし生きていたとしても土方の願いを知れば止めにかかることは明白なので、彼からすれば重荷にはならない。
 最も、その事実を知るには藤丸立香かオグリキャップに遭遇しなければならないが、それが為されるかは現時点では誰にも分からない。

 そんな土方が次に手を掛けたのはデイバッグ。
 中から取り出したのは一枚の紙。それは支給品そのものではなく、その説明書きだ。
 それを流し読みした彼は、これは今すぐ役に立つものではないと考え即座にしまう。

 直後、彼は何かの気配を感じ取った。
 気配が大きいわけでは無いが、どこか異様だ。
 人間のものではない。どちからというと、自分達廃棄物(エンズ)に近いような、そんな何か。
 それが今、この建物の近くにいる。

 そしてしばらくすると、恐らく気配の主が体育館の扉を開く。
 その時土方は――





 時は少し戻る。
 プッチと別れたスバルは、北にあるレイジー・リンクスを目指して進んでいた。
 理由としては単純に、一番近い地図にある施設を目指しているだけだ。
 あるいは、彼のデイバッグの中にあるお守りが、廃棄物(エンズ)の土方歳三がいる方へ向けたのかもしれないが、真実は定かではない。

 その間、散発的にゴブリンに襲われることもあったが、概ね問題なかった。
 元々、素手ならチンピラ三人相手に戦えるスバルに加え、地獄の殺し屋と呼ばれるキラーパンサーまでついているのだ。
 余程油断しない限り、負ける要素はなかった。
 大規模な群れに遭遇したのなら話は変わるかもしれないが、そういうこともなく、彼らはレイジー・リンクスに到着した。

「なんつーか、浮いてんなあ……」

 それからスバルは他の参加者を軽く探しながら辺りを探索する。
 その過程でふたば幼稚園を見つけた時、彼は思わずぼやいてしまった。

 ここ、レイジー・リンクスは避暑地という言葉がよく似合いそうな場所である。
 お金持ちの別荘のような家や、遊ぶためであろうプールや池、コートなどがあるのだから。
 そんな中に幼稚園があるというのは、景観破壊を通り越して、最早存在意義を問いたくなるような光景だ。

「いずれは別荘地じゃなくて市街地にでもするつもりだったのかね」

 そもそも殺し合いの為に用意された会場にある施設に事業企画があるのか。
 そんなツッコミが入りかねない台詞を吐きながら、スバルは幼稚園へと足を踏み入れた。

 最初に向かったのは教室だ。大きな窓にはとひまわりのイラストが貼られている。
 中に入ると、床に靴跡がついているのが分かった。
 それを見てスバルは思わず呟く。

「誰か、いるのか……!?」

 ここに来てスバルは慌てて警戒し始める。
 他も見て回ったが、あまりに人の気配が無いので、探索はしていてもこの辺りには誰もいないと思っていたのだ。

 おっかなびっくりになりながらも探索を再開するスバル。
 その後、残りの教室二つを見てからたどり着いたのは体育館だ。
 恐る恐る扉を開けようとしたその刹那


907 : ゼロニハモドレヌコンペ・ロワイアル ◆7PJBZrstcc :2022/03/04(金) 19:02:23 fIFn.Ul.0

「――っ!!」

 扉の向こうから、刀が扉を裂きながらスバルに向かって振り下ろされそうになる。
 それと同時に、キラーパンサーが彼の服の袖口を咥え、引っ張る。
 いきなり引っ張られたことで転ぶスバルだが、おかげで刀は彼の前方を通り過ぎ、斬られることはなかった。

「クソッ! マジかよ!? 金属製のドアってあんな風に斬れんのか!?」

 即座にスバルは起き上がって脱兎のごとく逃げ出す。
 その直後、体育館の扉が蹴破られ、中から黒ずくめの衣装を纏った男、土方歳三が現れた。
 手ごたえで人を斬れていないと判断し、即座に出てきたのだ。
 対しスバルは、逃げながらも現実離れした光景に思わず叫んでしまうが、即座に同じことができそうな知人が思い浮かび冷静になった。

「あ、駄目だ。ラインハルトやヴィルヘルムさんならできるわ。ユリウスは知らねえけど」
「ガルガル」

 すると、横で合わせて並走していたキラーパンサーが、頭を背の方にクイっと動かしながら、スバルに呼びかける。

「ゲレゲレ。お前に乗れってことか?」
「ガル」

 スバルの問いに肯定の意を見せるキラーパンサー。
 それを感じ取った彼は素早く騎乗し、そのまま疾走する。
 一方、土方は体から白い煙のようなものを発すると、スバルに向けて放つ。
 やがて煙が追いつくと、煙は刀を携えた亡霊の集団となって、スバルを囲んで襲い掛かった。

 亡霊をなんとか避けようとするキラーパンサーだが、多勢に無勢。
 内一体の亡霊の刀がスバルを裂き、彼はそのまま地面に落下する。
 そのまま止めを刺そうとする残りの亡霊だが、キラーパンサーが彼らに襲い掛かり、何としてもスバルを守ろうとする。
 だがその間にも、土方がこちらに向けて駆けてきており、スバルが殺されるのは時間の問題に見える。
 しかし、スバルにはまだ切り札があった。

「シャマアアアアアアク!!」

 スバルが叫ぶと、彼の体から黒い霧が生じ辺り一帯を包み込む。
 これが彼が使える唯一の魔法、シャマク。
 効果は、霧の内部にいる者の意識と肉体のつながりを分断する、というもの。
 格下にしか通用しないなどと言われるが、彼が信頼を置く、数少ない彼の技能である。

 これが通用するなら言うことなし。
 そうでなくても、目くらまし位にはなると考えた上での選択。

 スバルはシャマクを発動し、効果範囲が広がったのを確認してからキラーパンサーの元へ移動しようとする。
 この隙に魔獣を連れて、土方から逃げ出すつもりだった。
 しかし――

 ズブッ

 気づけばスバルの胴体に、亡霊の一人が持つ刀が貫かれていた。

「……あ?」

 刺されたスバルは何が起きたか理解するのに時間を要したが、簡単な理屈だ。
 亡霊に意思はあるが、肉体はない。だから繋がりを断つも無い。
 そして亡霊に視覚もあるが、スバルはシャマクを発動した位置からまだ動いていなかった。
 ならば、それを覚えておけば目隠しは障害にならない。

 つまるところ、相手が悪かった。

「ぐ、がぁ……!!」

 苦痛で身を捩らせるスバルだが、土方はそんな光景に対し見飽きたとばかりに悠然と彼の元へ歩いていく。
 まだ生きているのだから、確実なトドメを刺す為に。

「グルルルルルルル!!」

 それを阻止すべく、キラーパンサーは今まで以上の気迫で亡霊たちを吹き飛ばし、土方へと飛び掛かる。
 もし彼が普通の剣士ならば、強力な魔獣の攻撃に成すすべなく敗れ去ったかもしれない。

 しかし現実には、土方歳三は尋常な剣客ではなく、そして人間でもない。
 彼はキラーパンサーの攻撃に対し一歩身を引いたうえで、攻撃の軌道上に刀を添えたのだ。
 当然、飛び掛かっている魔獣の攻撃を途中で止めることは何者にも叶わない。
 何とか身を捻ることで刀が刺さる場所を調整し、致命傷にならないようにするのが精一杯だった。


908 : ゼロニハモドレヌコンペ・ロワイアル ◆7PJBZrstcc :2022/03/04(金) 19:02:52 fIFn.Ul.0

「や、やめろゲレゲレ……逃げろ……!」

 これを見てスバルはキラーパンサーに逃げるよう呼びかける。
 どちらが勝つにせよ、かなりの傷を負うことは確実。
 おまけに向こうは、いざとなればスバルを人質にすることすら出来る。
 ならばここは、この周は捨て回にして『死に戻り』した方が賢明だ。と彼は考えた。

 しかし、キラーパンサーは『死に戻り』を知らない。
 プッチは知っても何もペナルティを受けなかったが、ゲレゲレにも同じようになるかの保証はない。
 そうでなくても『死に戻り』を人に話せない状態が長すぎて、説明するという選択肢を無条件に放棄していた。

 だからなのか、それとも『死に戻り』を知っていたとしても同じ道を選ぶのか。
 キラーパンサーは、土方に対し一歩も退かなかった。
 それに応じて、土方もまた構える。

 だが勝敗は既に決まっている。
 十全な土方と傷を負ったキラーパンサー。
 おまけにキラーパンサーは仮に土方を倒せたとしても、スバルの傷を治さなければならない。
 スバルか土方、どちらかに支給品に治療するものがあればいいが、無ければ助ける方法を探すしかない。
 そしてそんな心構えで勝てるほど、土方歳三は易しくない。
 だからこれは必然だ。

「あ、あぁ……!」

 キラーパンサーは、土方に一刀で切り捨てられた。
 その光景をただ見つめるしかできないスバルだが、次の瞬間には彼もまた亡霊の集団が持つ刀に貫かれる。


 かくして、ナツキ・スバルの生命はここで尽きた。

【ナツキ・スバル@Re:ゼロから始める異世界生活 死亡】
【残り94人】





 ゆらゆらと、いつか味わったようなただ水の中を漂っている感覚があった。
 目に映るのはベッドにテーブル。それとテレビに小型の冷蔵庫など。
 まるで大学生の一人暮らしの部屋だ。

『あ、もう本格的にやってんだぁ(憐憫)』

 すると、目の前に一人の男が現れ、声をかけてきた。
 顔は黒塗りで覆われているかのように見えないが、背丈や体格から男だと推測できる。
 どこかで見たような気もするが、思い出せない。

『それじゃいきなりだけど、ちょっと言わなきゃいけないことあるから聞けよ。
 大丈夫だって安心しろよ〜。パパパッっと話してオワリッていう感じだから』

 男からはなぜか、太陽のような温かみを感じた。
 到底そんなものを持ち合わせているようには見えないのに。
 男は構わず話を続ける。

『じゃあ言うぞ……お前の『死に戻り』だけどさ、ちょっと制限かけたから。
 具体的には回数制限。上限は言わない方が都合がいいから言わないけど、死んでもいいなんて思うんじゃねえぞ』

 男の言葉が聞こえたその瞬間、心に溢れたのは途方もない悲しみ。
 決してなくしてはいけない筈のつながりが途切れたような。
 全てを染め上げるほどの彼の愛が。
 彼を包み込む無限のような彼女の想いが。
 どちらも等しく断ち切られかのような。


909 : ゼロニハモドレヌコンペ・ロワイアル ◆7PJBZrstcc :2022/03/04(金) 19:03:20 fIFn.Ul.0

『おとなしくしろ! バラ撒くぞこの野郎!』

 しかしそれは男には関係ない。
 男はただ、告げるべきを告げるだけ。

『後はセーブポイントって呼ばれてる『死に戻り』の復活地点も、こっちで決める。
 コンペロワに嫉妬の魔女サテラの出番があるとしても、主催には必要ねえんだよ!』

 これで話は終わり、とばかりに男は指を鳴らす。
 ただそれだけで、この世界が消えていく。
 背景だった部屋は徐々に形をなくし、男の声も届かなくなる。

『まあ今はこんな所か。
 後から『死に戻り』の制限に関して何かしら生えるかもしれないけど、それはお前に言うことじゃないんで。
 というか、別に参加者に説明してるわけじゃねえしな。
 ナツキ・スバルに把握して欲しいのは『死に戻り』の回数制限だけだし。聖域解放のノリで死なれちゃたまんねえからよ』

 ここまでで男の声は完全に聞こえなくなる。
 だから男が何かしら喋っていたとしても、かろうじて表情と口が動いていることが分かるだけ。
 男について分かるのは、何か急に驚いた表情を見せたこと。
 もし言っていることが分かるとするなら、それは――

『おい……どうなってんだよ……
 ナツキ・スバル。こいつ基本行動方針未設定かよ……』





「……ん?」

 レイジー・リンクスまであと少し、というところでスバルが急に足を止めたので、訝し気に彼を見つめるキラーパンサー。
 この瞬間、彼は自分が『死に戻り』したことを理解した。

【ナツキ・スバル@Re:ゼロから始める異世界生活 『死に戻り』】
【残り95人】

「……っ! ああ!!」

 それと同時に思い出す苦痛。
 名前も知らない黒服の、亡霊を操る剣士に殺された痛みともう一つ。

 ・・・・・・・・・・・・・
 どこで聞いたかもわからない、『死に戻り』の回数制限が頭に刻み込まれていた。

「回数制限、だって……!?」

 正直、スバルがこのことを懸念していなかったと言えば嘘になる。
 しかしいざ明言されると怖気づきそうになる。
 彼にとって『死に戻り』は、自分の数少ない武器と考えていたからだ。
 何もない自分がエミリアを救えたのも、アーラム村を守れたのも、白鯨やペテルギウスを倒せたのも『死に戻り』あってのこと。
 そこに制限が加わるというのは、彼が持ちうるものが大きく削がれるということになる。

 参戦時期がもう少し未来なら、強欲の魔女エキドナから『死に戻り』についての推察を聞いた後なら、また違う驚きもあったかもしれないがそれはこの際関係ない。

「こりゃ、迂闊に死ねねえな……!」

 キラーパンサーが未だ止まっているスバルを不安げに見つめる中、当人は小さく呟く。
 そしてキラーパンサーに向けてこう言った。

「……ゲレゲレ。ここは拙い。違う施設を目指そう」

 いきなり何を言い出すのか、と疑問視するキラーパンサーを差し置いて、方向転換し歩き始めるスバル。
 もしかしたらあの剣士がレムに手を出している可能性もあるが、迂闊に死ねない以上他の場所を目指した方が効率がいい、と判断したためだ。
 それをただ、魔獣は追いかけるのだった。


【F-3 レイジー・リンクス付近/黎明】

【ナツキ・スバル@Re:ゼロから始める異世界生活】
[状態]:健康、エンリコ・プッチへの不信感・不快感(大)、黒服の剣士(土方)への警戒心(大)、魔女の残り香(中)
[装備]:キラーパンサー@ドラゴンクエストV
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1、お守り@こじらせ百鬼ドマイナー
[思考・状況]基本行動方針:
1:黒服の剣士(土方)を避ける為、レイジー・リンクスには行かず違う施設を目指す
2:レム、無事でいてくれ!
3:『天国』なあ……宗教家ってやっぱ禄なヤツいねぇな!
[備考]
※エンリコ・プッチの『天国』の解釈を本人からの説明で理解しました。
※参戦時期は聖域に向かう前後。
※『死に戻り』のペナルティには制限が課せられているようです。
※『死に戻り』にも制限が掛かっています。以下一覧
 ・『死に戻り』には回数制限在り。正確な制限回数は現在不明
 ・セーブポイントは主催者側の意思で設定、変更される
 このうち、スバル当人が把握しているものは『死に戻り』の回数制限のみです。
 これ以外にも制限があるかは現在不明です。


910 : ゼロニハモドレヌコンペ・ロワイアル ◆7PJBZrstcc :2022/03/04(金) 19:03:43 fIFn.Ul.0





 土方が『それ』を感じ取ったのは突然だった。

「……何だ?」

 土方が感じたのは、スバルが放つ魔女の残り香だ。
 前は彼が近づくまで気づけなかったが、『死に戻り』を経るとその度に魔女の残り香は増していくのだ。
 だからこそ、土方は魔女の残り香を感じ取った。
 ここで彼は疑問を覚える。

 それは、なぜこんな気配がいきなり現れたのか?

 別に土方は、自分がこの殺し合いの参加者で一番強い、などと思いあがっていない。
 別世界の新選組や殺し損ねた炎を操る少女を筆頭に、侮れない相手がいることをきちんと認識している。
 だから仮に、自分より強い敵や、未知の何かが現れても、驚きはしてもちゃんと対処に努めるだろう。

 しかし、そんな未知の何かがいきなり現れることに関しては理解できない。
 気配が徐々に近づくなら分かる。
 あるいは、気配を抑えているというのも分かる。
 だが、隠しておいたはずの気配をいきなり出すのは分からない。

 そこまで考えて、土方はふと横にある物に思い当たる。

「そうか。これ以外にも転移装置があるのか」

 この気配は別の場所から転移してきた。
 そう考えれば、いきなり気配が現れるのにも納得がいく。
 そしてこの気配は、どうやらここから離れていくようだ。

 この機を逃す理由はない、とばかりに土方は腰を上げ、気配の主を追うため体育館を出ていく。

 しかし彼は知らない。
 転移装置が複数あるのは正解だが、気配の主はそれを使用したわけでは無いことを。
 そして今追い掛けようとしている相手が、既に土方のことを知っていて、警戒心を大いに高めていることを。


【F-3 レイジー・リンクス ふたば幼稚園体育館内/黎明】

【土方歳三@ドリフターズ】
[状態]健康、異様な気配(魔女の残り香)への警戒心(中)
[装備]毒濁刀@トクサツガガガ
[道具]基本支給品、風神の盾@ドラゴンクエストシリーズ、ランダム支給品0〜1(確認済み)
[思考]基本行動方針:優勝し、新撰組を復活させる
1:異様な気配(スバルの魔女の残り香)の元へ向かう
[備考]
※参戦時期は単行本4巻終了時点。
※召喚した亡霊は物理攻撃でもダメージを受けますが、倒されても一定時間経過すると再召喚できます。
 また、土方本人と一定距離以上離れた場合も召喚解除されます。
※魔女の残り香を感じ取れます。


911 : ◆7PJBZrstcc :2022/03/04(金) 19:04:09 fIFn.Ul.0
投下終了です


912 : 名無しさん :2022/03/04(金) 21:55:30 4dm5eymo0
乙です
支給品の性質という点を差し引いてもスバルとゲレゲレの絆のようなものが伺えて心地良かったです
信頼はまだかな
拙さが残るもののゴブリンや遭遇した危険を回避したスバル、独自の思想と経験で獲物を探す土方、底知れぬ主催陣営とそれぞれの個性が発揮された話と思いました


913 : ◆7PJBZrstcc :2022/03/16(水) 18:55:13 zNKvT8Fs0
ゲリラ投下します


914 : Super Survivor ◆7PJBZrstcc :2022/03/16(水) 18:55:57 zNKvT8Fs0
『聞け! この地に集いし全てのものたちよ!
 喜ばしい事に、総勢111名、現時点を持って全ての参加者が確定した!』

 狼牙とレーティアがシャワーを浴び始め少し経った後、コルワの耳に聞こえてきたのはミルドラースと名乗る主催者の放送。
 当然、彼女はこれに多大な憤りを覚えるが、同時にほんの少しだけホッとする。
 これで、とりあえずレーティアと何を話せばいいのか困る、ということはなくなるからだ。

 別に、これはコルワが弁の立たないというわけでは無い。
 元々ドレスデザイナーを務める彼女は、客商売の経験も豊富だ。
 更に言うなら、趣味のおかげで人と接する機会も多いと言える。

 しかし、そんな彼女も流石に、同じ女として口にするのもおぞましい扱いを受けたであろう少女に掛ける言葉は見つからなかった。
 狼牙が下手人ではないと信用しているものの、彼も何がどうなったのか詳しく知っているようには見えない。
 殺し合いの前から知人のようなグレシアは、あまりの惨状に倒れてしまった。
 だからと言って、まさかレーティア本人に聞くわけにもいかない。

 そんな折に流れてきたのがこの放送だ。
 これでとりあえず話題は、参加者名簿の中に知人はいるか、これからどうするか、などに絞られる。
 ありがたいなどとは断じて思わないが、正直助かった。

 そして放送からしばらくすると、シャワーの音が聞こえなくなる。
 どうやら、二人のシャワーが終わったようだ。
 すると、二人がバスローブ姿で脱衣所から出てきた。
 この状態のまま、狼牙は静かに問う。

「なあ、他に着替えねえか?」
「ごめん。無いわ」

 狼牙の問いというか懇願に対し、申し訳なく返すコルワ。このログハウスには、着替えがこれしかなかった。
 彼としては別に問題はない。バスローブなど服が乾くまでの繋ぎでしかない。
 しかしレーティアは違う。
 彼女が元々着ていたのは、恥部が隠れない淫猥な衣装。それをまた着せるなど断じてありえない。
 かといって、バスローブのままで行動するというのも、いささか危うい。
 人によっては、元々着ていた衣装よりもいやらしく見えそうだ。

 なので、支給品を調べることにした。
 コルワは既に調べ終えており、中にあったもので唯一の服は既に人に渡している。
 一方、狼牙は自身のデイパックを検めて見つけたのは、一つのカメラだ。

 そのカメラは着せかえカメラ。
 とある世界の22世紀のひみつ道具であり、服のデザインをカメラに入れて人を撮影すると、デザイン画の通りに服を着替えさせるものだ。
 狼牙はカメラの中に入っていた複数のデザイン画から一つを選び、早速レーティアを撮影する。

 すると、撮られたレーティアはバスローブから、どこかの学校の女子用制服へと服が変わる。
 やっとまともな服になった、と思う狼牙。
 対し、コルワはなぜか不安げな表情を見せる。

「どうした?」
「いや、何となくこの服はやめたほうがいいような気がして……」

 コルワの言葉に首をひねる狼牙。
 事実、発言した当人でも何でそう思ったのか理解できないので、理由を問われれば困ってしまう。

 なお、二人とも知らないがこの服は上白井学園の制服。
 殺し合いの前にレーティアに匹敵するほどの凄絶な陵辱を受けた参加者、有栖川理愛が通っていた学校の制服である。

 そんなことは露知らないとはいえ、狼牙は別に口を挟んだりはしない。
 ただカメラを渡し、代わりに選んでくれと頼むだけだ。

 本来なら自分は服を仕立てる側なんだけど、と思うも流石にこの状況で服の仕立ては無理がある。
 そうして代わりに彼女が選んだのは、やはりどこかの組織の制服。
 これも二人は知らないが、この服は折神家親衛隊の制服。
 荒魂から人々を守るための存在、刀使のエリートが着る服である。
 アイドル総統などと謳われたレーティアには、合っていると言えるだろう。
 もっとも、今も自身の服のこと関わらず何一つ口を挟まず、未だ精神が崩壊している彼女に言っても虚しいだけかもしれないが。

 ついでに狼牙も着替えさせてもらった。
 背中に殺と書かれた黒一辺倒の服は、鬼殺隊の制服だ。
 人を守るために怪物と戦う組織の制服と聞いて、狼牙はちょっとテンションが上がっていた。
 なお、コルワは鬼殺隊の面々の一部と面識がある。
 なので、異世界の存在である鬼殺隊についても説明ができたのだ。


915 : Super Survivor ◆7PJBZrstcc :2022/03/16(水) 18:56:29 zNKvT8Fs0

 こうして着替えが終わったところで、情報交換が始まった。
 まずは名簿に書かれている知り合いについてだ。
 とはいっても話すのはほぼコルワだ。

 狼牙は殺し合いに呼ばれている知人はおらず、レーティアも知っているのはそこで寝ているグレシアだけだ。

「よかった……いきていてくれた……」

 ただ、グレシアを見つめるレーティアが、口からふとこう零したのが、コルワには気にかかった。
 大した話はしていないが、グレシアから聞いたレーティアのイメージ像と実像が、何一つ噛み合っていないのだ。
 おまけに、レーティアの中ではグレシアが死の危機に瀕してもおかしくないような言い回しも気に留まる。

 とはいえ、コルワがそれについて何か考察が思いつくわけでもないので、彼女は大人しく自分の知っている参加者について話す。
 まずはナルメアとカリオストロ。それから下の方にあるリルル。
 同じ騎空団に所属する仲間であり、特にカリオストロは錬金術師なので、首輪を外せるかもしれない、と話す。

 ここで狼牙が「騎空団ってなんだ」と引っかかるのだが、コルワの説明により最終的に「学生連合のようなもんか」と納得した。
 はっきりに言ってそんなに合ってないが、指摘できるものはこの場にいなかった。

 そして話は続く。コルワの語る知人の残りはこうだ。

 高垣楓 島村卯月 新田美波
 坂田銀時 志村新八 沖田総悟
 エレン・イェーガー
 野比のび太 ドラえもん
 和泉守兼定

「結構多いな」
「まあね」

 コルワから語られる十三人の名前に、狼牙は軽く驚く。
 自分の仲間や知人は一人もいないのに、コルワの仲間は実に参加者の十分の一を上回っている。
 この差は何なんだ、と少しだけ思うも、すぐに兄貴ならまだしも俺じゃ分かんねえ、と振り切る。
 どうしてを考えるのも大事かもしれないが、自分の役目ではない。

「んじゃ、さっき言ってた騎空団だったり知り合いだったりを探しに行くか?」
「そうね……」

 狼牙の問いに、コルワは横目でレーティア達を見ながら言葉を濁す。
 確かに、効率を考えるならさっさと探しに行くべきだろう。
 しかし、コルワはここにいるレーティア、グレシア、ギャンブラーを置いていくつもりもない。

「分かってる。俺だってほっとくつもりはねえよ。
 とりあえず、そこのグレシア……だったか? そいつが起きるまでは待つさ」

 そしてそれは狼牙も同じだったので話は纏まる。
 ついでに今までグレシアの解放をしていたギャンブラーに名簿を見せるも、彼女の名前はなく、彼女がミルドラースの語るところのNPCであることが明らかになる。
 とはいえ、それが何の意味を持つのか推測できる面子はこの中にいない。
 ので、四人はグレシアを目覚めを待つことにした。

 その間、コルワはあることを考えていた。
 グレシアの語るレーティアと今ここに居るレーティアの差異についてだ。
 とはいっても、これに関しては思い当たるふしがある。

 それは、鬼殺隊がコルワの元の世界に来た時の話。
 その時幽世を通じて現れた鬼殺隊が何人か呼ばれたが、内々で呼ばれた人間の時間が違うという話があった。
 これと同じことがグレシアとレーティアの間でも起きていると考えたのだ。

 とはいっても、コルワが思い描けるのはここまで。
 仮に時間の違いがあったところで、何があったのか分からなければ、だから何だと言う話だ。
 なので彼女はここで思考を打ち切った。

 実の所、コルワの推測は正しくない。
 ここにいるグレシアとレーティアの差異は時間軸ではなく、世界線だ。
 グレシアの呼ばれた世界線が本編と呼べるものなら、レーティアが呼ばれたのは特定の条件で閲覧できるIFのようなもの。
 固い絆で結ばれた間柄でありながら、その実途方もない溝があるのだ。
 その溝を知る術を、今の彼女達は決して持たないが。

 なお、コルワは特に疑問なくリルルを仲間と紹介しているが、実は同姓同名の全くの別人である。
 その可能性に、コルワは全く思い当たりもしなかった。
 更に余談だが、参加者の一人甘露寺蜜璃が、件の鬼殺隊に所属していることに関しては、コルワは知る由もなかった。

 その後、金髪の女性に対し名簿を見せるが、彼女の名前は名簿になかった。
 これで彼女が参加者ではなくNPCだと分かったが、何をもって彼女を殺し合いに配置したのかは誰も分からなかった。


916 : Super Survivor ◆7PJBZrstcc :2022/03/16(水) 18:57:05 zNKvT8Fs0


 やがてどれだけ時間が経っただろうか。
 それは突然起こった。

「んっ……ここは……?」

 まず聞こえたのはグレシアの目覚めた声。
 それを喜ぶ暇もなく、直後に聞こえたのは破壊音。
 見れば、ログハウスの上から何かが落ちてきて、それが屋根を破壊し中にやってきたことを理解する。
 落ちてきたものは一人の参加者。
 古ぼけた槍を携えた長髪の、学ランを着た、狼牙と同じか少し下くらいの少年。

 彼の足元にはコルワに支給された布団と枕。
 そして、上半分がぐちゃぐちゃに潰れた女性の死体。
 近くで介抱していた何に対してもギャンブラーやコルワ達は無事。
 ならば、該当者は一人しかいない。



































 グレシア・ゲッベルスが少年の落下の下敷きとなり、上半身を潰され死んでいた。

【グレシア・ゲッベルス@大帝国 死亡】
【残り94人】


917 : Super Survivor ◆7PJBZrstcc :2022/03/16(水) 18:57:36 zNKvT8Fs0





 時は少し遡る。
 桐山和雄がD-7 シフティ・シャフトの旅の扉から転移した先は、空中だった。
 しかし彼は慌てない。
 すぐさま獣の槍を握り締め、魂を食わせ戦うための姿へと変わる。

 そのまま彼は下にあるログハウスにただ落ちていくが、このまま屋根をぶち破り家の中に突入するつもりだった。
 屋根の上に着地することもやろうと思えばできるだろうが、どれほどの轟音を響かせるか分かったものではない。
 もし中に人がいるなら、どう対応するにしても確実に警戒するだろう。
 ならば、屋根を突き破ってしまったほうがまだいい。
 家に人がいたとしても、前触れなくいきなり落ちてくる存在に対処は簡単にできないだろう。

 結果は大当たり。
 落下地点の真下には運よく人がいて、殺すことができた。
 欲を言えばこんな事故みたいな形ではなく、自分の意志できっちり殺したかったが、まだ目の前には四人もいる。
 だから、まあいいかと思えたので、桐山は獰猛な笑みを浮かべた。

「何を――」

 一方、狼牙は桐山を見た瞬間は攻撃するつもりはなかった。
 狙いすましたのなら話は別なら、もし落下してきたのが偶然なら、これは事故になる。
 勿論、そう簡単に割り切るつもりもないが、少なくとも戦うつもりはなかった。

 しかし、その思いは桐山の笑みを見て吹き飛んだ。

 これが偶然か故意かは最早重要ではない。
 目の前の相手は理由はどうあれ、グレシアを殺したことを何とも思っていない。
 そして彼の殺意はそのまま、自分達へと向けられている。

「――笑ってやがる!!」

 だったら、戦うことに躊躇はない。
 狼牙は迷うことなく桐山に殴りかかった。

 咄嗟に後ろへ飛び回避する桐山だが、戦車すら破壊できる力を持つ狼牙の拳圧は常軌を逸している。
 なので桐山は窓を突き破ってログハウスを脱出した。

「待ちやがれ!」

 即座に追い掛けようとする狼牙だが、ここで彼は他の三人をまるで見ていなかったことに気付く。
 彼が慌てて振り返ると、そこには茫然自失としたレーティアとギャンブラーを守るコルワの姿があった。
 コルワは狼牙に言う。

「私はこの二人を安全そうな所まで避難させて来るわ。
 そしたらすぐに戻って、あんたに加勢する。だから――」

 ここでコルワは一瞬言いよどむも、はっきりと告げた。

「それまで死ぬんじゃないわよ」
「あったりまえだろ。俺は、番長だぜ!」

 狼牙の自信満々な返答を聞き、コルワは二人を抱え、崩壊したログハウスから飛び出していく。
 そして彼もまた、桐山を追って走り始めた。


918 : Super Survivor ◆7PJBZrstcc :2022/03/16(水) 18:58:12 zNKvT8Fs0

 そしてすぐに狼牙は桐山に追いつく。
 森とログハウスばかりのロンリー・ロッジだが、中には僅かでも開けた場所がある。
 そこに桐山が待ち構えていたのだ。
 彼の持つ武器が槍という長物である以上、森の中を選ぶのもおかしな話だが。

 まず先制を仕掛けたのは桐山。
 槍を構えて凄まじいスピードで一直線に突っ込んでいく。
 対し狼牙は、こちらも同じ様に桐山に向かって直進を選んだ。
 いくら桐山が獣の槍で強化されているとはいえ、狼牙もまた特待生。ついて行くだけの身体能力はある。

 そのまま狼牙が仕掛けるのはアッパー。
 これで桐山の体を浮かせれば、相手の抵抗を難しくし、一気に打撃を叩き込める寸法だ。
 しかしその程度で彼――否、獣の槍は止まらない。

 獣の槍は、戦闘経験値という意味ではコンペ・ロワイアルの中でも最高峰に位置している。
 故に、狼牙のアッパーに対し、即座に横薙ぎをすることで対処した。
 これにより、狼牙はアッパーを無理矢理中断され、体勢を崩される。

 だがそもそも、桐山が繰り出した横薙ぎも咄嗟の物であり、十分な威力は伴っていない。
 故に狼牙も即座に体勢を整えようとするが、それより先に槍の穂先が彼の体に命中する。

 ここで、信じられないことが起こった。

 なんと、槍の穂先が抜けていくではないか。
 突き抜けたのではない。すり抜けたのだ。
 これは、獣の槍の持つ特性が影響していた。

 そもそも、獣の槍は妖怪を倒すための物。
 西暦が始まるよりも前の中国において、ある刀鍛冶が妹を人身御供にし、鬼となってまで生み出したもの。
 刀鍛冶自身の体が柄となり、ある妖への膨大な憎悪が籠った究極の武器。
 バラバラにしなければ死なない筈の妖怪を、ただの一突きで殺す異常。
 故に、その矛先は常に妖怪へ向かう。
 たとえそれが、人の体の中にあるものだったとしても。

 ・・・・・・・・・・・・・・
 だから獣の槍は体をすり抜ける。
 妖怪を絶対に見逃さない為に。

 しかし、そんな事実を桐山も狼牙も知る由はない。
 彼らはただ、槍が体を通り抜ける異常に驚くばかり。

 特に桐山は、既に参加者の一人をこれで殺しているが故に、驚きも一入だ。
 さっき使えたはずの武器が、なぜ効果を発揮しないのか。理解に苦しむ。
 その差が狼牙に好機を生んだ。

 狼牙は自分の体をすり抜けている槍の柄を左手で握りしめ、即座に引く。
 すると桐山がバランスを崩し倒れそうになるので、そこを狙って腹を蹴る。
 そしてそのまま右ストレートを叩き込み、殴り飛ばした。
 そのまま更に追撃を加えるため、狼牙は槍をそこらに捨ててから、未だ吹き飛ばされている桐山を追い掛ける。

 しかし桐山も負けてはいない。
 彼は即座に、獣の槍に向けて来い! と念ずる。
 すると槍は猛スピードで彼に向けて飛ぶことで応じた。
 それもただ飛ぶだけではない。

 ゴ ッ

 槍は、狼牙の頭に鈍い音を発せながら桐山の元へ舞い戻った。
 突如脳を揺らされた狼牙は必死だ。
 何とか倒れないように全力で踏ん張る。
 一方、桐山はデイパックからナタリアの短剣を取り出し、全力で投げつけた。

 そしてその剣が狼牙の胸に突き刺さるのと、桐山がログハウスの壁に叩きつけられるは同時だった。
 この時、槍は桐山の横の壁に刺さる。
 彼はデイパックがクッションになったのかそこまでのダメージはなかったが、心臓に剣が刺さった狼牙はそうはいかない。
 死ぬのは時間の問題だろう。
 しかし、彼は未だ立っていた。


919 : Super Survivor ◆7PJBZrstcc :2022/03/16(水) 18:58:44 zNKvT8Fs0

「刻め、魂の鼓動……」

 それどころか、構えて何かを貯めながら呟いている様子。
 これに本能的な危機感を覚えた桐山は、デイパックからマイクロUZIを取り出し、即座に発射する。
 放たれた銃弾のいくつかは狼牙の体を貫くが、彼を止めることはできなかった。

「ウルフファング!!」

 狼牙が拳を突き出して繰り出すそれは、白い闘気を狼に見立てて放つ必殺技。
 拳が相手に当たることはなかったが、闘気があれば十分。
 桐山は咄嗟にそこにあった槍で防ごうとするも、またも吹き飛ばされ、今度は背後にあったログハウスの壁を破壊して床を転がる。

(ハッ……! 俺はここまでかよ……!!)

 だが、流石の狼牙も限界だった。
 むしろ剣が心臓に刺さり、なおかつ僅かとはいえ銃弾を受けた状態でここまでやっているだけ、異常と言える。
 しかしそれもここまでだ。

 パララララララララ

 いっそ軽くさえ思えるサブマシンの銃弾が、狼牙の体を無抵抗に貫き続ける。
 ログハウスの中から桐山が即座に起き上がり、マイクロUZIを連射しているのだ。

(悪ィな兄貴、久那妓、皆。それからコルワ……! 後は頼んだぜ……!!)

 浴びせられた銃弾は、心臓に刺さった剣と共に狼牙の体を破壊する。
 こうして、彼の命は終わる。
 グレシアの仇も討てず、殺し合いの打破も、日本統一の夢も叶わないまま、バッドエンドで幕を閉じる。

【斬真狼牙@大番長 死亡】
【残り93人】


 そして桐山も限界だった。
 黒髪の長髪から元の茶髪パーマに戻った時、彼の体はまともに戦える状態ではなかった。
 本音を言うなら即座に休みたいくらいだが、さっきまで戦っていた相手には逃げた仲間がいる。
 そいつらがもし戻ってくれば、桐山は死ぬだろう。
 無論、ただでやられるつもりもないが、彼は殺戮をまだまだ続けたい。
 なので彼は、狼牙のデイパックを握り締めると、この場から距離を取る為逃げ出した。


【I-5 ロンリー・ロッジ/黎明】

【桐山和雄@実写版バトルロワイアル】
[状態]:ダメージ(大)
[装備]:獣の槍@うしおととら、サバイバーのスタンドDISC、マイクロUZI@実写版バトルロワイアル、
[道具]:基本支給品×3(自分、アキネイター、狼牙の物)、何かの骨@出典不明、ランダム支給品0〜2(狼牙の支給品)
[思考・状況]基本行動方針:バトルロワイアルを楽しむ
1:この場は一旦逃げて、少し休む
2:快楽のままに殺し続ける。
3:殺し合いサイコー!
4:褐色の男(シャガクシャ)は次に会ったら殺す。
[備考]
※もしかしたら、見張り場のトイレや見張り部屋で何らかの物品を調達しているかもしれません。(後続の書き手にお任せします。)


920 : Super Survivor ◆7PJBZrstcc :2022/03/16(水) 18:59:14 zNKvT8Fs0





 ここは未だロンリー・ロッジだが、エリアはJ-6。
 そこにある、さっきのとは違うログハウスにコルワ、レーティア、ギャンブラーの三人はいた。
 コルワは二人に向かってこう言った。

「それじゃ悪いけど、レーティアちゃんのことお願いね……!
 私は狼牙を助けに行くわ」

 コルワの言葉に頷くギャンブラー。
 本音を言うなら、コルワもレーティアの傍にいてあげたい。
 何があったのか知らないが、彼女はグレシアを見て安堵していた。
 そんな存在が目の前で唐突に死亡し、彼女は更に精神をおかしくなってしまっていた。
 その心を少しでも癒してあげたい、とコルワは思うが、しかし更に命が消えるかもしれないのに見捨てることもできない。

 なので、コルワはレーティアをギャンブラーに任せ、狼牙を助けに行く。
 その助けが既に届かないことを知らないままに。


【J-6 ロンリー・ロッジ/黎明】

【コルワ@グランブルーファンタジー】
[状態]:健康 主催と長髪の少年(桐山)への憤り(極大)
[服装]:いつもの服装
[装備]:
[道具]:基本支給品、花子頭+式王子@こじらせ百鬼ドマイナー、着せかえカメラ@ドラえもん、
[思考]
基本:こんな悪趣味な殺し合いなんてぶっ壊す
1:狼牙に加勢しに行く。
2:狼牙、死ぬんじゃないわよ……!
3:レーティアと金髪の女性(何に対してもギャンブラー)が心配だが、
4:もし東郷とかいうダメそうな女誑しと出会う機会があったらお灸をすえてやるわ!
[備考]
※参戦時期は少なくともキャラ加入エピソードの後。
※リルル@ドラえもん のび太と鉄人兵団 をリルル@グランブルーファンタジー と思っています。

【レーティア・アドルフ@大帝国】
[状態]:精神崩壊(極大)、罪悪感
[服装]:折神家親衛隊の制服@刀使ノ巫女
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1、注射器、『エルフが作った、どんな病気も治せる薬@銀魂』が入ったペットボトル(1/5消費)
[思考]
基本:ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……
1:???
[備考]
※キングコア編イベントフェイズ『おくすりください』後からの参戦です


※ナタリアの短剣@妖怪の飼育員さん は破壊されました。
※I-5 ロンリー・ロッジに以下のものが放置されています。
 ログハウス内にグレシア・ゲッベルスの遺体、布団と枕@ウマ娘 シンデレラグレイ、60年代米軍のミリタリージャケット@妖怪の飼育員さん、狼牙とレーティアが元々着ていた服。
 ログハウス近くに斬真狼牙の遺体。破壊されたナタリアの短剣@妖怪の飼育員さん の残骸。
※グレシアのデイパック(基本支給品、ランダム支給品1〜3)は何に対してもギャンブラーが所持しています。


【着せかえカメラ@ドラえもん】
斬真狼牙に支給。
正方形のカメラの形をした道具であり、服のデザイン画をカメラに入れた状態で人を撮影すると、被写体がその服装を着た状態になる。
ちなみに、服が無から生み出されるのではなく、着ている服を原子レベルまで分解してから再構築しているので、おそらく全裸の相手に使っても効果は発揮しない。
また、カメラに何も入っていない状態で使用すると、被写体は全裸になる。

本ロワでは、サービスで服のデザイン画も入っている。
内訳は

鬼殺隊隊服@鬼滅の刃
上白井学園の制服@魔法娼女理愛 獣欲に嵌まる母娘
折神家親衛隊の制服@刀使ノ巫女

など、参加者に関連する制服が男女別にいくつか。
なお、デザインについての説明は一切ない。


921 : ◆7PJBZrstcc :2022/03/16(水) 18:59:44 zNKvT8Fs0
投下終了です


922 : 名無しさん :2022/04/26(火) 08:13:54 4VDhoF.g0
一応ageときます


923 : ◆7PJBZrstcc :2022/04/28(木) 19:57:02 qqUf21v20
マリオ、ヨッシー、カズマ、レム、ちひろ、勇者、レグルス、ぉ姫様で予約します


924 : ◆7PJBZrstcc :2022/04/30(土) 18:56:00 3Ct4XZSw0
投下します


925 : この騒がしい六人で話し合いを! ◆7PJBZrstcc :2022/04/30(土) 18:56:42 3Ct4XZSw0
 コンペロワイアル、第85話!!
 前回(第63話)のあらすじ!!
 森の中で迷子になっていたマリオ、ヨッシー、カズマの三人。
 するとキノコを模した二体のNPCと出会う。
 その二体を退ける過程でマリオ達は勇者、レム、ちひろの三人を新たに仲間にする。
 そうして六人となった彼らは、とりあえず森からの脱出を図っていた。
 そして――

「「Zzz……」」

 マリオとヨッシーの二人は、それはそれは見事な寝姿を披露していた。

「寝るな――――っ!!」

 そんな二人に蹴りでツッコミを入れるカズマ。
 後ろではレムとちひろが呆れを通り越し、最早驚きの目で三人を見つめていた。

「悪い悪い、二十話くらい出番が無いとヒマでつい……」
「だからって寝るなよ!!」

 カズマがマリオの弁明にキレていると、ここでちひろがあることに気付いた。

「ところで私達、どこに向かっているのでしょうか?」
「とりあえず森から出ようって話になったのでは?」

 ちひろの問いにヨッシーが返答するが、彼女は顔を青褪めながらこう続けた。

「私達、ちゃんと外に向かってますよね?」
「……それはちょっと分かりません」

 ヨッシーには、ちひろの問いに自信をもって応えることはできなかった。

 ここで唐突だが、本スレの>>1か、wikiにあるロワのルールのデイパックの箇所を見て欲しい。
 以下に全文を記す。


【デイパック】
・全ての参加者はゲーム開始後「デイパック」を渡される。以下中身。

・地図:マップを印刷した安っぽい地図。
・食料:インスタントラーメンと缶チューハイ(ストロングゼロ)×3個だけ。お湯は現地調達。
・ルールブック:基本ルールが書かれている紙。A4用紙。初回放送にて裏側に全参加者の氏名のみ浮き上がる。
・ランダム支給品:現実出展かフィクションのアイテム。最大3つ。


 これをよく見れば分かるが、基本支給品の中に方位磁石の類はない。
 すなわち、彼らには正確に方角を確かめる術がないのである。
 
「クソッ! せめてノズ〇スが支給されてたら良かったのに……」
「いや確かに、常に北を向くみたいなずかん説明文はありましたけど、何故にポ〇モン?」

 現状のまずさにカズマが思わず毒づくが、内容がおかしいせいで思わずちひろがツッコミを入れてしまう。
 するとここで、マリオが皆に向かって一喝した。

「大丈夫だ! オレを信じてついてこい!!」
「おぉ〜!」

 ドンと自分の胸を叩き、自信ありげに宣言するマリオ。
 その堂々とした佇まいは、流石主人公にして歴戦の風格。
 思わずヨッシーは手を叩いていた。

 ガクガクガクガクガク

 しかし膝は滅茶苦茶に震えていた。
 元々迷子だったのだから、当たり前といえば当たり前である。


926 : この騒がしい六人で話し合いを! ◆7PJBZrstcc :2022/04/30(土) 18:57:23 3Ct4XZSw0

「全然自信ねえじゃんか!?」
「うるせ――――――っ!!」

 ツッコミを入れるカズマに逆ギレするマリオ。
 不安要素は大いにあったが、他にアテもないのでとりあえずマリオについていくことになった。
 それから数分後、実はH-6と森の外周部にいた彼らはあっさり脱出に成功した。

「何とか脱出できましたね……」
「都合のいい展開で助かるぜ」
「いつまでも森で迷ってるだけなんて、絵面が地味ですしね」

 ホッと息を吐くレムに対し、ギリギリアウトな発言をするマリオとヨッシー。
 そしてこれからどっちに行くかを考えるも、一先ず近くにある施設へ向かうことにした。

 余談だが、H-6には勇者を除く彼ら五人が一度遭遇したマーダーであるパワーがおり、
 カズマのものであるちゅんちゅん丸が支給され、また勇者が現在装備している剣と鎧の本来の持ち主である令嬢剣士の遺体がある。
 しかし彼らは幸か不幸か、どちらとも遭遇することはなかった。

 そこからしばらくして、彼らは最も近い施設であるトマト・テンプルに到着する。
 途中、ゴブリンが襲ってくることもあったが、勇者とレムの力と、ヨッシーの食欲によりあっさりと迎撃されていった。

「俺ら出番ねえな」
「楽でいいじゃん」
「……いいんですかね?」

 あからさまに楽だと思うカズマとマリオ。
 対して、一人これでいいのかと思うちひろだが、特に何かが起こることも無く、彼らは入っていった。

 そして始まるのは情報交換。
 お互い合流した時に少しだけしていたが、話したのはパワーのこととクッパのことくらいである。
 トゲワンワンやアヌビス神がいたからそれについてだけは話したが、それ以外のことは何も話していない。
 そうでなければ、レムとちひろにマリオ達三人が芸人だと思われることはなかっただろう。

「トリオの芸人さんじゃなかったんですね」
「しかもこの殺し合いが初対面だったなんて……」
「そんなことだと思ったよ畜生!!」

 そしてその誤解がとけた時、カズマは思わず天を仰ぎながら叫んでいた。
 初対面の人間にそんな誤解を受けるレベルで、マリオ達の影響を受けている自分に不安を覚えてしまったからだ。

「カズマのやつ、なんか大変そうだなモグモグ」
「ですねムシャシャ」

 しかしカズマの嘆きなど関係なく、マリオとヨッシーは何やら食べながらぼんやりとその光景を眺めていた。

「おい、何食ってんだ二人とも?」
「それ私が渡したカニクリームコロッケです」

 カズマが尋ねると、答えたのはちひろだった。
 そう、マリオ達が食べているのは彼女に支給されたカニクリームコロッケだった。
 そしてヨッシーの手には、最後の一個が握られている。

「あれ!? 十個以上あった筈なんですけど!?」
「ヨッシー! おれはそのコロッケ二個しか食ってないんだぞ!!」
「俺に至ってはまだ食ってねえよ!!」

 ちひろはヨッシーの食欲に驚き、マリオとカズマはこれ以上食べられてたまるかとヨッシーを抑えにかかる。
 その後、紆余曲折の末にコロッケ最後の一個はカズマの胃袋に収まる。

 そうこうしているうちに、色々あったものの情報交換自体はつつがなく終わった。

「一度まとめてみるか」

 カズマはそう言うと、手近な地面にさっきまでの情報交換の結果を簡単に纏めていた。

「まず名簿にいるそれぞれに知り合いがこんな感じで」

 夢見りあむ、高垣楓、島村卯月、新田美波
 ナツキ・スバル
 アクア、ウィズ
 ピーチ姫
 ぉ姫様
 クッパ姫


927 : この騒がしい六人で話し合いを! ◆7PJBZrstcc :2022/04/30(土) 18:58:00 3Ct4XZSw0

「んで、この中で戦闘力が無いから心配なのが」

 夢見りあむ、高垣楓、島村卯月、新田美波
 ナツキ・スバル
 ピーチ姫
 ぉ姫様

「こうで、放っておいても大丈夫そうなのが」

 アクア、ウィズ
 クッパ姫

「こうだな。まあアクアは違う理由でさっさと合流したいけどな」
「お姫様多いですね」
「クッパは違いますけどね」

 カズマの簡単なまとめを見て、思わず率直な感想を零してしまうちひろと、それに対してコメントするヨッシー。
 一方、今までの話に対しそこまで参加していなかったレムは、どこか訝し気な目でカズマを見つめていた。

「どうしたんだ?」

 レムの仲間を見つめる視線に気づいたマリオが、それとなく問いかける。
 すると彼女は、遠慮がちにこう言った。

「マリオ様……
 ただ、サトウ様のアクアという仲間が死者を蘇らせるほどの水魔法の使い手というのがどうにも……」
「成程、殺し合いなのに死んだやつを生き返らせることができる参加者はおかしいってことか……」
「いえそうではありませんが」

 レムが疑わしく思っていること。
 それは、カズマの語る仲間の話だった。

 レムの常識では、青の称号を授かるほどのルグニカ随一の水魔法の使い手、フェリスであっても死者を蘇らせることはできない。
 にも関わらず、カズマの仲間アクアはそれをこともなげに成すという。
 正直、今一つ信じられなかったが、この状況で嘘を言うとも思えないので直接本人に言おうとは思わなかった。

 マリオは彼女の言葉をかなり違う方向に解釈してしまったが、それもまあ疑問の一つといえば一つなので、あまり深く否定しなかった。

「あ、人を疑うのはよくないと思います……」
「何で急にコミュ障になってんだよ!?」

 そんなレムに対し、ここまで静観を貫いていた勇者が注意する。
 しかし、なぜかやたらコミュ障のような話し方だったせいで、カズマは己への不信などどうでもいいとばかりにツッコミを入れていた。
 それはそれとして、彼はレムに向けてこう話しかける。

「まあいきなり死者蘇生とか言われても胡散臭いよな。
 気持ちはわかるけど、それアクアには言うなよ。ただでさえ自称女神の面倒くさい奴なんだから」
「自称女神……!?」
 
 ただでさえ胡散臭く思っている存在が女神を自称するという情報に、主であるロズワールやスバルを除いて変人慣れしていないレムの処理容量は限界だった。
 というより、道化を演じているだけでロズワールもスバルも根は割とまともな部類である。
 そんな相手しか知らない彼女に、本当の変人相手は少々荷が重い。
 ここでそれを見かねたちひろが割り込んで、無理矢理話を変える。

「ところで、知っている人を探すにしても、これからどうしますか?」
「皆一緒じゃダメなのか?」
「いえ、私が一番知人が多いのにいうのもなんですけど、探す相手が十人もいますから。
 別れた方が効率がいいんじゃないかと」

 話の矛先は、これからどうするかだった。
 それに対し合いの手を入れるマリオだが、ちひろはチーム分けを提案する。
 しかし、彼女は知らなかった。
 マリオはここでもボケてくる、ギャグ漫画の人間であることを。

 ・・
「獣人?」
「十人でしょ――っ!!」
「いつ着替えたんですか!?」

 いつの間にか狼男のコスプレに着替えたマリオに向かって、全力でツッコミを入れるヨッシーとちひろ。
 その後ろでは、カズマがこんなことを考えていた。

(俺がツッコミ入れなくていいの、楽だな……)

 カズマが思わずしみじみしている中、話はチーム分けする方へ向かっていきそうになるのだが、口にこそしないもののレムは内心で、これ以上変な人と行動するのは正直ちょっと嫌だった。
 とはいえ口に出さない以上、誰も彼女の気持ちは察せられない。
 まずは現状把握から。

 現在、戦えるのはちひろを除く五人。
 しかしカズマの戦力は、戦える他四人に比べるとはっきり言って、かなり低かった。
 以上を踏まえてカズマが出した結論はこれだ。


928 : この騒がしい六人で話し合いを! ◆7PJBZrstcc :2022/04/30(土) 18:58:38 3Ct4XZSw0

「おらよ」

 チーム1 チーム2

 マリオ  カズマ
 ヨッシー レム
 勇者   ちひろ

「これ絶対戦力のこと考えてないでしょ――っ!!」
「あの、流石にどうかと思いますよ?」

 カズマのあらゆる意味で欲望丸出しなチーム分けに正論を言うヨッシーと、やんわり非難するちひろ。
 正直これ以上マリオ達と付き合っていると、どんどん変な影響を受けそうなので離れたかったカズマだが、その野望はあえなく潰えた。
 すると今度はレムがチーム分けを提案する。

「こうではいけませんか?」

 チーム1 チーム2

 マリオ  レム
 ヨッシー ちひろ
 カズマ
 勇者

「まさかの男女別!?」
「お前これ、色物が自分と一緒にいるの嫌なだけだろ!? いやよく見ると俺も色物扱いかよ!?」

 正直こういうこと言わなさそうなレムからの、まさかすぎる提案に驚くちひろ。
 しかしカズマはこの分け方に、とりあえず色物を自分と違う方に分けようとしている、という意図を見抜いた。

 バツの悪そうな顔をするレムだが、ここで見かねたヨッシーが新たにチーム分けを提案した。

「こうですよ」

      ちひろ
    勇者  レム
 カズマ ヨッシー マリオ

「ピラミッド!?」
「組体操かよ――っ!!」

 最早チーム分けでも何でもなかった。

 その後、ああでもないこうでもないと話し合う一行だが、最終的に最初出会った時の状態に戻すことになった。
 すなわち、マリオ、ヨッシー、カズマ組と、ちひろ、レム、勇者組である。
 そうして結論が纏まったと同時に――

 ザッ

 今までいなかった誰かの足音が、トマト・テンプルに響いた。


929 : このイカれた強欲と遭遇を! ◆7PJBZrstcc :2022/04/30(土) 18:59:23 3Ct4XZSw0

 皆が足音のした方を向くと、そこには二人の男女が立っている。
 男の方はごく普通だった。
 長くも短くもない白髪に、整っているものの目立たない顔立ち。
 体つきも中肉中背と、十把一絡げとしか言いようのない、群衆の中なら即座に埋もれてしまうような青年だ。

 対し、女性の方は顔立ち、スタイルともに整っており、赤を基調とした服装と、膝上十センチ以上に短いスカートが特徴的だ。
 どれほどの群衆の中にいたとしても、埋没することはないだろう。
 その女性を見て、勇者は思わず声をあげた。

「姫様! ご無事ですか!?」
「姫様?」

 勇者の言葉を聞き、思わずオウム返しをしてしまうちひろ。
 彼女には、勇者の言う姫がそれらしい服装をしているようには見えないのだ。
 正直、キャバ嬢と言われた方が違和感がない。

 レム達も似たようなことを思っている。
 だがレムからすれば、現状彼女が住む国の王族は全員亡くなっているうえ、王族との面識など一切ない。
 おまけに、彼女の主であり、宮廷魔術師のロズワールが普段からピエロのようなメイクをしているせいで、姫の服装についてツッコミを入れるほどの物かと思っていた。
 マリオ達も同様で、伊達に異世界や奇人変人慣れしていない。
 そういう物、という感覚で処理していた。

 一方、仲間達がそんな考えを巡らせているとは露とも思っていない勇者は、同行している青年に向けて感謝の念を述べる。

「よく来たな」
(よく来たなは違くね?)

 だが言葉のチョイスは最悪だった。
 勇者当人としては、危険な殺し合いの中ここまで姫様を守っていただき感謝します、位の意味合いなのだが、どう考えても伝わるわけがない。
 予想通り、苛立ったような素振りを見せながら青年は口を開く。

「あのさぁ。初対面の人間に対してそんな高圧的な態度はおかしくないかな? 
 君が僕の妻とどんな関係かは知らないけど、僕らはこの殺し合いの参加者という意味なら対等と言っても差し支えないと思うんだよ。
 おまけに君からすれば僕は恩人だろ? 別に感謝しろとか押し付けてるわけじゃないよ。そんな風に要求するのは僕の趣味じゃない。
 だけど、感謝するならそれ相応の態度があると思わないかい? 誰だっていきなり上から目線で話されたら嫌だって、考えたりしないのかい?
 もしかしたら君の周りではそれがまかり通ってたのかもしれないけど、そんなことがいつまでも続くと考えているようなら、僕は君と分かり合える気がしないな」

 青年の口から飛び出す長文に、一瞬だが気圧されてしまう一行。
 しかし、よくよく考えれば怒らせるだけの言動をしたのは勇者なので、とりあえず代表としてカズマが謝ることになった。

「何で俺!?」
「いや、何か慣れてそうなので……」

 確かにカズマの仲間が問題を起こした時、謝りに行くのは彼である。
 しかしまさかこんなところでもその役割になるとは、流石の彼も予測していなかった。

「あ、いやその……すまん。こいつ、悪い奴じゃないんだけど、言葉のチョイスがおかしいところがあってな」
「申し訳ありません」

 とはいえ仕方ないので何とか弁明するカズマと、横で素直に頭を下げる勇者。
 すると溜飲が多少下がったのか、青年は謝罪を受け入れた。

「そうだね。間違えたら謝罪する、それが大事なんだ。
 過ちを素直に認め受け入れ、次はしないように努める。簡単なことだろう?」

 お前も上から目線じゃね? とカズマは言いたくなったが、あえて問題を起こすことも無いかと思い、グッと堪えた。
 一方、青年は姫に一つ質問をする。

「ところで、君はこの男とどういう関係なのかな?
 いや、彼とどういう関係だったとしても、君と僕の愛は決して途切れないと信じているよ。僕らがあそこで出会ったのは運命だからね。
 だけど知人がいるのなら、関係を清算しておくのも必要なことだと考えているだけなんだ。
 それにもし、万が一だけど、君が処女じゃなかったとしたら、君が他の男に触れられているとしたら、流石の僕も君との付き合いを考え直さなきゃいけなくなる」

 一つの台詞の中で矛盾が生じ始める青年の言葉。
 それに対する姫の返答は、誰にとっても予想外の物だった。


930 : このイカれた強欲と遭遇を! ◆7PJBZrstcc :2022/04/30(土) 19:01:52 3Ct4XZSw0

「いいえ、私はこの方と会ったことはございません」
「はい?!?!?!?!?!?!」

 姫の返答に一番驚いたのは勇者だ。
 何せ、彼が彼女を攫ったデーモンを倒し、救い出した当人なのだから。
 にも関わらず知らないと言われたのは、流石の彼にも多大なショックを与えた。

 ただし、これはあくまで勇者視点の認識だ。
 姫の参戦時期は勇者に救出される前なので、彼とは事実一切面識がないのである。
 時間軸の違いが生んだ認識の差異である。

 一方、このやりとりを聞いた青年は少し違う解釈をした。

「面識はないんだね。ならよかった。
 彼女はこう言っているけど、君はおそらくキングダムの兵士か何かだろう。
 なら一兵卒の君が姫の目に留まることは、はっきり言って無いんじゃないかな?
 いや、別に恋人でもないのならそれでいいんだ。正直、僕の時は出会っていきなり告白されたからね。それを誰彼構わずやっているというのなら、流石に貞操観念を疑ってしまうよ。
 本来なら人の趣味にあれこれ口出しするなんてぶしつけかもしれないけど、おかしいことや間違っていると思うことに対して何も言わないのは、人としてどうかと思うからね。
 いくら僕が多くを求めず、平凡で当たり前の幸せさえあればいい人間だからと言って、無抵抗主義ではないんだ」

 青年は、勇者をただの兵士と解釈した。
 基本的に青年は他人が自分に嘘をつくとは思っていない。
 それでも矛盾が発生した時、彼はそれを自分の都合がいいように解釈するタイプの人間だった。

 そんな青年はふと、勇者の仲間に目をやる。
 別に深い意味があったわけでは無い。そういえばなんかいるな、位の感覚だった。
 やたらと個性的なメンツだが、彼が目を奪われたのは、彼の世界では珍しい黒髪のポニーテールの女性。
 千川ちひろだ。

 青年はちひろに向かって一歩一歩、悠然と歩いていく。
 やがて彼女の目の前で足を止めたとき、彼は彼女の顎をクイッと引き、一言。

「結婚しよう」
「    」
「……え?」
「はぁ?」

 あまりにも突然すぎる青年の結婚発言に対し、驚きのあまり絶句するちひろ。
 レムとカズマも傍目で見ながら、間の抜けた声をあげることしか出来ない。

「おれと!?」
「マリオさんじゃないですよ――っ!!」

 そしてそしてマリオはなぜかウェディングドレスを纏い、ヨッシーにツッコミを入れられていた。
 ちなみに勇者はさっきの姫の発言がショックなのか、特に反応しなかった。

 一方青年も、自分の発言が唐突な自覚があるのか、何やら語り始めた。

「ああ、突然の発言で驚かせたかな? ごめんね。その点については素直に謝罪するよ。僕は謝れる人間だからね。
 でも思うんだ。人と人の出会いは一期一会で、その中で運命の人と出会える可能性はどれだけだろうって。
 僕は本当はありふれていると思う。でもそれを見逃したり、あるいは些細な理由で口に出すのを躊躇ったりしているだけなんだよ。
 だけど運命の人と結ばれないのは僕だけじゃない、相手にとっても寂しいことだ。だから僕は気づいた時に迷うことなく口にしているのさ」
「あー……その、ちょっといいか?」

 高揚しているのか、やたら機嫌よく話す青年の言葉を挙手しながら遮るカズマ。
 彼としてはかなり珍しく、かなり引き気味の態度だ。
 一方、いきなり話の腰を折られた青年は機嫌を悪くしながらカズマを睨む。

「何かな? 今僕は気分よく喋っているんだけど、それを遮るって言うのはどういう了見なわけ?
 いや、別に話を聞かない自由はあると思うし、場合によっては遮らなきゃいけない時もあると思うよ。
 だけど今はどう考えても違うよね。火急の用があるわけでもないのに人の発言を遮るのは、正直育ちを疑ってしまうな。
 まあ、人は産まれや育ちを選ぶことは難しいから、仕方のないことかもしれないか。仕方のないこと、どうにもならないことは誰にでもあるよね。
 それをどうにかしようなんておこがましいことだ。人は下手に身の丈に余る欲望を持たず、今ある平凡を愛することが重要なんだ。
 なら寛大で無欲な僕は話を聞いてあげるよ、何?」
「お、おう……サンキュ」


931 : このイカれた強欲と遭遇を! ◆7PJBZrstcc :2022/04/30(土) 19:02:53 3Ct4XZSw0

 怒涛の長文が続くあまり完全に青年に呑まれているカズマだが、形だけ頭を下げると、即座に質問を繰り出す。
 それは彼の好奇心であり、これ以上話を聞いているとマズいのでは、という直感でもあった。

「お前の言う運命って、何で判断するんだ?」
「顔だよ。顔が可愛い。愛なんてそれが全てでしょ?」
「顔だけかよ――っ!!」

 カズマの質問に対し、青年は迷うことなく返答する。
 一方、ここまでギャグ漫画にあるまじき狂気を見せる青年にノーリアクションを貫いていたマリオだったが、ここでついにツッコミに走る。
 すると青年はマリオに向けて、まるで出来の悪い生徒に呆れる教師のような視線を向けながら、自身の発言の理由を説明し始めた。

「僕は思うんだけどさ、世の中勝手な人が多い気がするんだ。
 恋人や夫婦になった後に、愛が冷めて別れるなんてよく聞く話だろ?
 お互い愛し合って一緒になった筈なのに、やれ好みが合わない、生活習慣が合わない、趣味が合わない時間が合わない。
 そんな些細な理由で相手に幻滅して別れるような奴はクズだ。僕はそんな奴らが心底嫌いなんだよ」

 喋っているうちに怒りを覚えたのか、青年は顔を歪ませながら話を続ける。
 その様は正しく、愛の形を知らないものへと義憤が宿っていた。
 自分は正しいと、心から信じ切っていた。

「勝手なんだよ誰もかも。どうしてそんなちょっとしたことで幻滅するのかな。そんなことが馬鹿な話があっていいのか? おかしいじゃないか。
 だから僕は好きな相手は顔で選ぶ。好きな顔をしているのであれば、僕はその顔の持ち主がどんな子であっても幻滅なんてしないよ。
 だって顔が好きなんだから。その顔である限り、愛が冷めることなんて絶対ない。

 脱いだ服を片付けない人でも。子供を何人も殺した殺人鬼でも。料理が壊滅的に下手くそだろうと。
 親兄弟を借金のカタに売り飛ばしていようと。色移りする洗濯物が分けられない人でも。隠れて動物を殺すのが趣味な頭のおかしい人でも。
 服のセンスが最悪だろうと。金に汚い性根だろうと。風呂に入らなくて汚物みたいな臭いがしていても。
 世界の滅亡を本気で目論んでいようとも――僕は嫌わない」

 それは青年の知らない未来において、79番目の妻にしようとしたハーフエルフの少女に語った言葉だった。
 勿論、そんなことはこの場にいる誰も知らない。
 ただ話を聞いていた一同は理解する。目の前の青年は、何か途方もないほどの異常者だということを。

「ま、待ってください! そんな……私はまだ、あなたの名前も知らないのに……!!」

 ここで今までフリーズしていたちひろが、それとなく距離を取りながら、何とかもっともらしい理由でプロポーズを断ろうとする。
 しかし彼は拒絶されているとは夢にも思わず、穏やかな笑みで謝罪しながら話しを続けた。

「そうだね。お互いのことを知っていかなければならないのに、まさか一番大事な名前を教えるのを忘れていたよ。
 でもよく考えれば僕もまだ君の名前を知らないから、お互いさまと言っても問題ないよね。
 ああいや大丈夫、最初に名乗るのは僕だよ。人に名前を聞くならまずは自分から、というしね。
 君が自己紹介が苦手だとしても、僕のを参考にしてくれればそれでいい。これから夫婦になるんだ、それくらいの気遣いはするさ」

 そして青年は名乗る。
 それがどれほどの意味をもたらすか、知ることのないまま。

「僕は魔女教大罪司教、『強欲』担当。――レグルス・コルニアス。
 さあ、君の名前はなんていうの――」
「はあああっ!!」

 レグルスの名前を聞いた瞬間、ここまでほぼ沈黙を貫いていたレムが、トゲワンワンを振りかざし、そのまま彼の頭に振り下ろした。
 彼女にとって、魔女教とはそうするだけの存在。
 魔女教は、彼女の元の世界では見つけ次第殺すことが常識となっている程の危険な組織。
 おまけに、彼女からすれば幼少期に自身の故郷を滅ぼした仇でもある。

 そして何より、こんな危険人物を生かしておけば、いずれレムの愛しい人であるスバルに危害が及ぶことは確実だ。
 ならばこそ、彼女が武器を振るわない理由はもう何一つ存在しなかった。

 とはいえ、何も知らない者がはたで見ていればいきなりの凶行ではある。
 だが誰も何も言えなかった。止めようと思えなかった。
 マリオにヨッシー、カズマに勇者に加え、戦いとは無縁の日常を送っていたちひろさえも。
 それほどまでに、レグルスの在り方は『怪物』だった。

 しかしそんなこと、レグルスには一切理解できない。
 自身を常識人と心から信じる彼からすれば、いきなり攻撃してくる少女など野蛮以外の何物でもない。


932 : このイカれた強欲と遭遇を! ◆7PJBZrstcc :2022/04/30(土) 19:03:30 3Ct4XZSw0

「いきなり攻撃なんて穏やかじゃないね。どんな親に育てられたらこうなってしまうのか心底疑問だよ。
 相手に気にくわないことがあっても、まずは言葉で対処するのが知性あるものの務めだと僕は思うんだ。
 だってそうだろう。動物や虫にも序列や決まりがあって、それを守って生きているんだから。
 ならば僕らもそうするべき、いやそれ以上に理性的に生きるべきだ。
 もしかして力が全ての蛮族の生まれなのかな? ならばそんなメイド服を着て仕事するような場所に馴染めるわけ無いから、一刻も早く辞めた方がお互いの為だよ。
 社会とは理性で成り立つべきだ。暴力の入る隙間なんてもの、あってはならないからね」

 トゲワンワンを頭に受けたにも関わらず、何一つ減ることのないレグルスの言葉。
 防いだのではない。受け止めたわけでもない。
 だけど彼は無傷だった。血はおろか、土埃一つついていなかった。

「にもかかわらず君は暴力で僕を排除しようとする。
 何が気に入らなかったのかは分からないし、もう知りたくもないけど、僕には、いや誰しもが生きる権利を有しているはずだ。
 にも関わらず奪おうとするということは、それは相手の人生への侵害だ。
 無欲で理性的な僕に対する、僕の権利の侵害だ」

 殴られたことには意にも介さず、話し続けたレグルス。
 しかしもう語ることはない、とばかりに彼は右足を振り上げようとする。
 なんて事のないはずの動作。だが異様な何かを感じたレムは、自身のデイバックから以前確認していたものを取り出しながら、ちひろに向かって叫んだ。

「ちひろ様! あれを!!」
「は、はい!!」

 レムに言われてちひろは咄嗟にデイバックに手を伸ばし、あるものを取り出す。
 それは黒い帽子だった。

 次の瞬間、レグルスが足を振り上げると同時に、彼を中心とした数十メートル一帯に衝撃が走った。

 しかしレムは衝撃が届くより先にデイバックから取り出したものを、近くにいた勇者に使う。
 そしてちひろもまた、帽子を一番近くにいたヨッシーに被せる。

 辺りに立ち込める土煙。
 やがてそれが晴れたとき、一行は無事な姿を現した。
 ただし、勇者とヨッシーをレグルスに向けて押し出し、残りの四人が盾にした状態で。

「どうして僕に……」
「私達をいきなり盾にしないでくださいよ――っ!! というか――」

 いきなり盾にされたことを嘆く勇者と、怒るヨッシー。
 更に言うなら、勇者は普段通りだがヨッシーはそうではなかった。

「なんで私だけやたらカチコチなんですか――――っ!?」

 カズマは、石になったかのように固まっていた。
 それは一行が無事なことに加えて、レムとちひろが使った支給品に秘密がある。

 まず、レムが使用したのはフィジカル軟膏というものだ。
 効果は、味方に使用すると一度だけ物理攻撃を反射するバリアを張る。
 これで勇者はレグルスの衝撃波を反射したのだ。
 しかし、盾が一人ではあの広範囲に及ぶ衝撃波は防ぎきれなかった。

 そこで次に、ちひろがヨッシーに被せた帽子が生きてくる。
 これはストーンぼうしと言うもので、被せると三ターン動けなくなる代わりにダメージを受けなくなる効果を持つ。
 これをヨッシーに被せることで、残る四人はレグルスの攻撃を防げたというわけだ。

「やってくれたね……」

 そしてレグルスも無事だった。傷跡はおろか、彼の体にも服にも土埃一つついていない。
 反射されたはずの自身の攻撃も何一つ彼に影響を及ぼさない。
 一方、彼は誰一人殺せなかったという結果に苛立ちを隠せなかった。

「どうやって防いだかは知らないけど、まさか勝てるなんて思っていないよね?
 まあ分からないか。なら分かるようにやってせて、言って聞かせて、示してあげるよ。
 僕はね、争いは嫌いなんだ。人を傷つけたり、逆に傷つくことで楽しむ人間なんて理解が及ばない。
 初期の魔女教にはこんな言葉がある。『頬を打たれたなら、反対の頬を差し出して、その上で理由を問いなさい』だ。
 実にいい言葉だと思う。話し合いの大切さを説いている。相手が暴力を振るってきても、話し合いの意思を失ってはならないと言っている。
 だけど僕はこう思うんだ。世の中、話し合いだけでは解決できないこともある。いや、話し合いという機能を失っている人間が一定数いるんだ。
 そんな相手はもう、力で解決するしかない。
 僕の手はちっぽけで、私財を守るのが精一杯の小さな人間だけど、愛し合うもの同士を引き裂こうとすることは、

 ――いかに無欲な僕でも、許せないな」


933 : このイカれた強欲と遭遇を! ◆7PJBZrstcc :2022/04/30(土) 19:03:57 3Ct4XZSw0

 最早見慣れてきた長台詞を繰り出すレグルスだが、一行は最早聞いていなかった。
 代わりに返答として、マリオはヨッシーを投げ飛ばす。

「行け――――――っ!!」
「ひええぇ――――――っ!!」

 マリオに投げ飛ばされたヨッシーは一直線にレグルスに向けて飛び、そして直撃する。
 だがやはりダメージを与えることはなく、ヨッシーはレグルスに激突したと同時に地面に落ちた。

 ガッ

 そのヨッシーをレグルスは即座にマリオ達に向けて蹴り飛ばす。
 すると、ヨッシーはマリオが投げたよりも明らかに速く、彼らの後方へと飛んで行った。
 これを見たカズマがこっそり皆に話しかける。

「なあ、あいつひょっとして、何かバリアみたいなものを張ってるんじゃないか?」
「なるほどな。ならそのバリアを何とか止めないとな。
 止める……止める……ストップ……」

 カズマの言葉を聞いて何やらブツブツ呟き始めるマリオだが、やがて彼はデイバックからあるものを取り出し、そのままレグルスに向けて投げつけた。

「ストッパ!!」
「下痢止めじゃねーか!!」

 当然だが、マリオの投げつけたそれがレグルスに通じる訳もなく、哀れストッパは彼に踏みつぶされた。

「ああっ! おれの支給品が!!」
「支給品だったんですか!?」
「馬鹿にしているのかな?」

 ストッパを壊され嘆くマリオに驚くちひろ。
 そして苛立ちを隠せないレグルス。

「僕はこれでも本気で怒っているんだ。それなのにこの対応は最早人を馬鹿にしているとしか思えないよ。
 人の本気には本気で応える。それが人同士のあるべき姿じゃないのかな?
 まさか道化を演じればやる気が削がれて許してもらえると考えているわけじゃないよね。
 いくら僕が個で完結している満たされた人間だからって、そんなその場しのぎの考えが通じるほど甘いつもりは流石にないんだけど?
 それともそれが君の本気なのかな? だとしたら怒りとかじゃなくて純粋にこう思うよ。どうかしてる」
「うるせ――っ!! おれは本気だ!!
 こちとらこれで三十年間やってきたんだよ!!」
「いや本当によくやってこれましたよね……」

 レグルスの発言に反論するマリオ。
 更には、いつの間に戻って来たのか、ヨッシーがしみじみとマリオの発言に頷いていた。
 するとカズマがある可能性にふと思い至る。

「そうだ! あのパワーが持ってて俺らがスティールしたあの刀……名前なんだっけ?
 とにかく、あれ使えばバリアを抜けられるかもしれねえ!!」

 カズマが思い至ったのは、今はマリオのデイバックに入っているアヌビス神のことである。
 アヌビス神がマリオのハンマーや服をすり抜けている場面を、カズマは今思い出した。
 なので彼はマリオのデイバックへ勝手に手を伸ばし、中からアヌビス神を引き抜いた。

「頼む。お前の力が必要なんだ! えっと……アクビ神!!」
『アヌビスだよ!! 何だその眠そうな名前は!?』

 名前を間違えられてキレるアヌビス神だったが、カズマがレグルスについて説明していくと、徐々に機嫌を直していった。
 どういうことか聞いてみると、アヌビス神は得意気に答えてくれた。


934 : このイカれた強欲と遭遇を! ◆7PJBZrstcc :2022/04/30(土) 19:04:36 3Ct4XZSw0

『おれは人が斬れればなんでもいいんだよ!』
「ざっくりしすぎだろ……まあいいか。
 それより、さっき言ったこと忘れんなよ」
『おう。あいつの体は傷がつかねえから、何かバリアみたいなのを張ってるかもしれねえって奴だろ。
 安心しろ! このアヌビス神に斬れないものなど、何ひとつありはしねェ――――――――――ッ!!』

 アヌビス神の返答に呆れるカズマだが、ともかくレグルスを
 一方その頃、マリオとヨッシーはなぜか漫才をしていた。

「面白い話をしてやる!
 この前見かけた犬が全身真っ白でな……」
    ・・・・
「そりゃ尾も白いでしょうが!!」
「何ですかこの光景……」

 二人の漫才を見て戸惑うレム。
 だがレグルスは苛立ちの余り、右腕を振るって真空波をマリオに向けて放った。
 真空波は一直線にマリオの首目掛けて進み、一時彼の首から上が消失するのだが――

「ふぅ〜ビックリした〜」
「カメですかあんたは!?」

 実は首を体内に引っ込めていただけなので事なきを得た。
 その直後、カズマがレグルスにアヌビス神を両手で握り、振り上げて斬りかかった。

「うおおおおおおおお!!」
「はあ……まだ分からないの? 不完全で未完結な君達の攻撃は、完全で完結している僕には届かないってことがさ」

 カズマの攻撃を見て呆れ果てたような表情をするレグルス。
 彼には、敵が勝機を見出していることなど想定すらしていなかった。

 ズバッ!!

 そしてレグルスの予想とは異なり、カズマの振るったアヌビス神が、肉を裂く音が辺りに響く。
 ただし、裂かれたのはレグルスではない。

「え、あ、あぁ……」
「はぁ!?」

 切り裂いたカズマの戸惑いと怯え、レグルスの驚きの声が聞こえる。
 なぜなら、切り裂かれたのは――

「大……丈夫で……すか? ゆう……しゃさ、ま……」

 レグルスの前に飛びだし、正面で彼を庇ったぉ姫様だから。

「な、何で……」

 なぜぉ姫様がレグルスを庇ったのか分からないカズマ。
 それは庇われた当人も同じだったが、あまりにも突然すぎる展開なのかもはや言葉すら出てこない。
 そして庇ったぉ姫様は、自身の血で汚れた手を必死にレグルスへ向けて伸ばしながら、最期の言葉を口にした。

「勇者……様、どう……か…ご無事……で……」

 これと同時に、ぉ姫様の手はレグルスの首輪に触れ、そして終わる。
 彼女の行動の意味を彼女自身が語ることは、決してないままに。

【ぉ姫様@ファイナルソード 死亡】
【残り92人】


935 : 獅子座劇場 ◆7PJBZrstcc :2022/04/30(土) 19:05:18 3Ct4XZSw0





「………………はい!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」

 ぉ姫様の衝撃の死に、実はちひろを守るように立ち回っていた勇者の間の抜けた声が、トマト・テンプルにこだまする。
 誰も彼女の行動の意味を理解できない。
 それは心情的にもそうだし、実利の面でもそうだ。

 今までの言動、振る舞いを見れば、レグルスは狂人だ。
 彼の一挙手一投足があらゆる人間の怒りを買い、あらゆる恐怖をもたらすのは明確。
 そんな相手を何故、身命を賭してまで庇ったのか。

 そしてレグルスの能力『獅子の心臓』は、マリオ達は未だ能力の内容を理解していないものの、強力であることは明確だ。
 それこそ、アヌビス神の能力を把握していない限り、レグルスを庇い立てするという選択肢が思い浮かばないほどに。
 だが当然の如く、レグルスも亡きぉ姫様も、アヌビス神の能力など知る術を持ってはいない。

 しかし、レグルスはぉ姫様が自身を庇ったわけに気付いた。
 心情的な意味で言うなら、彼は自分を常識人でまともな人間だと認識している。
 だから、愛してくれる誰かが自分を庇うことについては、何の疑問もない。

 それはそれとして、レグルスは少し顔を下ろし、ある一点を見つめる。
 そこにあるのは、ぉ姫様の血がついた自身の首輪。
 これを見て、彼は彼女の行動の意味に気付けたのだ。

 まず、レグルスの能力『獅子の心臓』は非常に強力だ。
 能力の対象は彼自身にのみならず、彼の身に着けているもの、彼が触れた空気、彼が吐いた息にまで及ぶ。
 その効果で、彼にはおろか服にすら、どんな攻撃も通用しない。土埃一つつくことはない。

 しかし今、首輪にはぉ姫様の血が付着している。
 首輪には『獅子の心臓』が及んでいないのだ。

 あの時、カズマはアヌビス神を振り上げて斬りかかっていた。
 そしてレグルスは、それに対し何も抵抗するつもりはなかった。そんなことをするのは無駄だと認識しているかだ。
 しかし、今現在首輪にカズマの攻撃を無効化する力はない。

 つまり、ぉ姫様が立ちはだからなければ、アヌビス神は首輪を切り裂き、爆発させていた。
 首輪に『獅子の心臓』が及んでいない以上、爆発で死んでいたかもしれないのだ。

 すなわち、レグルスはぉ姫様に命を救われた。
 この事実に彼が気付いた時、心中を駆け巡ったのはある一つの感情だった。

「妻が、僕を見下していたのか!!」

 猛烈な怒りだ。

 レグルスという人間を一言で表すなら、クズだ。
 自らを完結している、満たされていると称しながらも、その実彼は他者からの評価を人一倍気にする。
 そして自己愛が激しすぎるあまり、本当は他者からの干渉を酷く嫌っている。

 彼からすれば、人の愛というものも嫌悪の対象である。
 事実、彼は子供の頃から、貧乏ながらも真っ当に彼を愛していた家族すら嫌い、殺したくらいなのだから。
 そんな彼が、他者から命を救われればどう思うか。答えは明白だ。

「おかしいだろう!! この僕が!!
 大罪司教『強欲』にして、この世で最も満たされて、揺るがなき存在である僕が!
 どうしてよりにもよって、愛する妻に見下さなきゃいけないんだ!!
 夫婦とは対等であるべきだろう!! 同じ目線でなければならないだろう!!
 にもかかわらず彼女は、それを汚したんだよ!!」

 怒りのあまり傍で倒れているぉ姫様の遺体を、幾度も踏みつけるレグルス。
 その様はまるで、おもちゃを買ってもらえなくて駄々をこねている子供のようだった。

 こんな殺し合いを開いた挙句、自身を参加者に仕立てた主催者が憎い。
 野蛮にも剣を振りかざし、自分を切り裂こうとしたカズマがおぞましい。
 夫の命を守って死に、自分に酔っていい気になっていたぉ姫様が気持ち悪い。


936 : 獅子座劇場 ◆7PJBZrstcc :2022/04/30(土) 19:05:50 3Ct4XZSw0

「やめなさい!! そのような振る舞いは私たちの心を痛めます」

 ここで、今まであまりの迫力で口を出せなかった勇者が、レグルスの蛮行を見て止めに入る。
 もっとも、台詞はどこかおかしかったが。

「君はつくづく無礼だよねぇ。夫婦間の問題に部外者がいきなり割り込んでくるなんてさ。
 それとも何かな? 君の故郷では夫婦がもめていると一々他の人が出張って来るのかな?
 田舎で見たことある光景だよ。僕も生まれは田舎だからね。でもあれはおかしいとずっと思っているんだ。
 だってそうだろう。人と人とのかかわり方なんて千差万別だろうに、あいつらは勝手に自分達のやり方が正しいと本気で思いあがっているんだ。
 そんな傲慢がまかり通ることを、はっきり言って僕は認めたくないよ」

 それだけ言い返すとレグルスは、実は今までずっと傍でフリーズしていたカズマに殺気を向ける。
 なぜ彼は固まってしまっていたのか。
 彼なら作戦が失敗した時点で引き下がっていてもおかしくないのに、動けずにいたのか。
 
 なぜなら、カズマは人を殺したことがない。
 人語を介するモンスターを殺したことはあるが、人は殺したことはない。
 更に言うなら、彼の出身は現代でも特に平和と言われる日本。
 殺人に猛烈な抵抗感を持っていてもおかしくない。
 そしてそんな彼が、全く殺すつもりのなかった相手を斬り殺してしまい、動揺しないこともありえない。
 故に、今まで動けなかったのだ。

 しかしここに来て、レグルスの猛烈な殺意がカズマを硬直から引き戻した。
 咄嗟にアヌビス神を構え、もう一度斬ろうとするが、そんな稚拙な殺意は大罪司教の前では無意味だ。

 レグルスがまたも腕を軽く振るう。
 それだけで生まれる真空波は、カズマに避けるという選択肢すら許さず、彼のあるものを斬り飛ばす。

 命ではない。カズマはまだ生きている。
 代わりに飛んでいくのは、彼がさっきまで握っていたアヌビス神。

 死ななかったことに思わず安堵してしまうカズマ。しかしここであることに気付く。
 彼はさっきまで、アヌビス神を両手で握っていた。断じて放したつもりはない。
 にも関わらず、アヌビス神は飛んで行った。
 その答えはカズマの手首から先にある。すなわち――

「う、うわああああああああああああ!!」

 カズマの両手首から先は、アヌビス神と共に飛んで行ってしまったのだ。
 彼はやっと気づいた痛みの余り、思わず絶叫した。

「苦しいかい? でもそれは君が殺した僕の妻の苦しみに比べたら、間違いなく些細なことさ。
 人を殺した奴がのうのうと、何の罰も受けず生きていていいわけがない。
 もし傷ついたのが僕だけだったらそれだけで許してあげてもよかったけど、残念ながらそうはいかない」
「あ、アクアああああああああああああ!!」

 失った両手首の喪失感と、体の一部が削がれた痛みのあまり、この場にいないものに助けを求め、走り出してしまうカズマ。
 一方、それを聞いたレグルスは不愉快気に眉をひそめてから、言葉をさらに続ける。

「アクア、というのは君の知人かな?
 この状況で呼ぶのだから優秀な水魔法の使い手なんだろうね。
 そんな仲間がいるのはまあいいとしても、どうして今呼ぶんだ?
 まさか、自分が痛みを負ったからじゃないよね? もしそうだとするなら僕は君を許さない。
 なぜなら、お前は自分の事しか考えていない男だからだ。
 僕の妻が死にゆくときには何もしなかった癖に、自分が死にそうになれば助けを求めるなんて、お前は最低だ」
「やめろ――――――っ!!」

 いよいよレグルスがカズマを殺しにかかっている。
 そう確信したマリオは必死に叫びながら、ヨッシーに勇者、レムと共に攻撃を仕掛ける。
 しかし――

「ふん」

 レグルスがぉ姫様の遺体と共に在る彼女のデイバックを、まるでサッカーボールのように蹴り飛ばす。
 それだけで、蹴られたデイバックは砲弾のような威力で突き進み、やがてカズマの胴体を貫いた。

「え、あ……?」

 誰も何もできない。カズマですら、うめき声をあげるのが精一杯。
 水魔法の使い手レムでも、彼の傷跡を治すことはできない。
 なぜならば、デイバックが貫かれた時にもう、助かる道などなくなったのだから。

【佐藤和真@この素晴らしい世界に祝福を!(アニメ版) 死亡】
【残り91人】


937 : 獅子座劇場 ◆7PJBZrstcc :2022/04/30(土) 19:06:21 3Ct4XZSw0

「カズマ――――っ!!」
「カズマさん!!」

 カズマの遺体を見て思わず叫ぶマリオとヨッシー。
 しかし、仲間を助けるためとはいえちひろから離れるという選択は、彼らにとって最悪のものをもたらす。

「……え?」

 なんと、レグルスは一瞬のうちにちひろの目の前に移動していたのだ。
 これもまた『獅子の心臓』の権能の一つである。
 そしてレグルスは、驚き目を見開く彼女に目もくれず、一方的に語り掛け始めた。

「さあ、一緒になろう。僕の新しい妻。
 こんなことを言うと、前の妻を何とも思っていないように見えるかもしれないけど、それは誤解だよ。
 人間は、過去に囚われてはいけないと思うんだ。
 勿論故人をないがしろにするわけじゃないけど、だからと言って囚われるのもまた違うよ。
 だってそうだろう? 故人が思うのはきっと、生きている大切な人の幸せだ。その為なら自分を忘れる位許すはずさ。
 過去に囚われて未来を見ないことが幸せな訳がない。それが自分のせいで起きていると知ったら、どんなことをしても止めようとするだろう。
 だから僕は新しい幸せの為に君と結婚する。いいね?」
「は、はい……」

 レグルスのプロポーズに、ちひろはついに屈してしまった。
 彼の言葉を受け取らなければどうなるのか、という単純な恐怖が彼女の心を大きく占めたのは事実だが、同時にこうも考えた。
 もし自分が彼の妻になれば、もしかしたら彼の行動を誘導し、仲間やアイドル達を助けることができるのではないか、と。
 しかしその考えは余りにも甘い。大罪司教と会話が成立する存在はない。
 それを彼女はすぐ思い知る。

「じゃああの邪魔者たちを始末してくるよ。
 いや、始末と言うと語弊があるな。これは掃除だ。人殺しの仲間なんて、生かしておいても害にしかならない。
 道端にゴミが落ちていると気持ち悪いだろう? それと一緒さ。汚いものを汚いままにするのはどうにも落ち着かなくてね。
 いや、もちろん人がどう思うかまで口を出したりはしないよ。掃除が嫌いなことを責めるつもりは全くないんだ。
 だけど汚しっぱなしにする権利があるなら、綺麗にする権利もある筈だよね。
 だからこれは僕が持つ権利の、当然の行使だ」

 そうちひろに告げると、レグルスはマリオ達に向けて殺意を滾らせる。
 何か手立てがない限り、彼らの死は時間の問題だ。

「この俺が片づけてやる!!! 私の力不足だ……」

 勇者は一瞬それでも戦おうとしたが、すぐにレグルスを倒す方法が見つからない現実を受け入れ、諦めてしまう。
 それが嫌ならもう逃げるしか道はないが、果たして彼らはそれを選べるだろうか。

 別に、マリオ達は逃げることに抵抗はない。
 マリオもヨッシーも負けイベントは経験済みだし、逃げることを選ぶ時もある。
 勇者も、ボス戦では逃げられないことが多いが、雑魚敵相手に苦戦するなら、体勢を立て直すために引くことに抵抗はない。
 レムも、別に戦いに誇りがあるわけでは無い。一対一の決闘を申し込まれた話は変わるかもしれないが、逃げる必要があるなら躊躇なくそれを選べる。

 だがレグルスがさっき見せたあの超スピードを前に、単純に退くことができるのか疑問だった。

 するとここで、レムが覚悟を決めたような鋭い眼つきでカズマの遺体に近づく。
 そして彼のデイバックと手に取り、トゲワンワンを自分のデイバックにしまってから、二つ一緒にしてマリオ達に手渡した。

「レ、レムさん……? 一体何を……」

 レムの行動の意図が分からず戸惑うヨッシーに向けて、彼女ははっきりと宣言した。

「私が囮になりますので、お三方は逃げてください」
「バ、バカヤロー! そんなの駄目に決まってるだろ!!」
「そうですレムさん、わからないんですか?」
「話している時間はありません」

 囮になろうとするレムに対し、マリオと勇者が必死になって止める。
 しかし彼女は譲らない。

「もうこれしか私には思いつきません。
 スバル君ならこんな状況にならないよう立ち回れたでしょうけど、私にはできません。
 心配しなくても、ちひろ様が殺される可能性は低いでしょう。少なくとも、今の私達よりは。
 だから、皆さんにはスバル君をお願いします。あの人は、強いけど弱い人ですから」
「お前勇敢なヤツだな」


938 : 獅子座劇場 ◆7PJBZrstcc :2022/04/30(土) 19:06:53 3Ct4XZSw0

 さっきまで止めていたのにいきなり称賛し始める勇者に、レムは一瞬だが虚を突かれたような顔を見せる。
 一方、マリオは未だ納得していないのだが反論が思いつかずただ口をパクパクさせ、ヨッシーは何やらカズマのデイバックを漁っていた。

「もう話は終わりかな?」

 そこにレグルスが話しかけてきた。
 今まで待っていたのは別に能力の対価とかではなく、彼の慢心だ。
 マリオ達にはもう何もできないと高をくくって、せめて最期の語らいくらいは許してやろう、などと思っていたにすぎない。
 しかしその判断は間違いだったと、レグルスはすぐに思い知る。

「マリオさん! 勇者さん! 逃げますよ!!」

 ヨッシーはそう言うと素早くマリオと勇者の腕を掴む。
 彼の足元にはいつの間にか、見覚えのない靴が履かれていた。
 これはペガサスの靴といい、履くと素早いスピードでダッシュできるようになるものだ。
 本来はゼルダの伝説シリーズに登場するアイテムだが、過去にその世界に行ったことがあり、なおかつマリオがこの靴を借りたことがあるので、ヨッシーは知っていたのだ。

 こうして、ヨッシー達は靴を用いてトマト・テンプルを脱出した。
 仲間の仇を討てなかったことと、仲間を見捨てて逃げていくことに心を痛めながら。


【G-4 トマト・テンプル付近/早朝】

【マリオ@スーパーマリオくん(コロコロ版)】
[状態]:腹に傷(軽傷)、悲しみ(大)、ヨッシーに掴まれている
[装備]:ウォーハンマー@ドラゴンクエスト3
[道具]:基本支給品、沢田ユキオのポスター、ランダム支給品×1
[思考・状況]基本行動方針:主催者を倒す。
1:レグルスから逃げる
2:カズマ……レム……ちひろ……
3:ピーチ姫を最優先で探す。そしてちひろ、レム、カズマの言っていた仲間も探す。後クッパもついでに。
4:主催者とレグルスを何としても倒す。そのために会場内を探索しつつ、ともに戦う仲間を探す。
[備考]
※参戦時期は、オデッセイ編終了後(単行本55巻)。
※クッパ姫を女装したクッパ@スーパーマリオくん だと思っています。
※カズマと情報交換しました。
※レムの話から、鬼族の女性(パワー)に関する情報を得ました。
※レグルスは何らかの方法でバリアを操っていると考えています。

【ヨッシー@スーパーマリオくん(コロコロ版)】
[状態]:ちょっと火傷、悲しみ(大)、ダッシュ中
[装備]:振動パック@スーパーマリオくん、ペガサスの靴@ゼルダの伝説シリーズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1、
    カズマのデイパック(基本支給品、ランダム支給品×1)、レムのデイパック(基本支給品、ランダム支給品×1、トゲワンワン@スーパーマリオくん)
[思考・状況]基本行動方針:主催者を倒す。
1:レグルスから逃げる
2:マリオさんに付いていきます。
3:カズマさん……レムさん……ちひろさん……
[備考]
※基本支給品の食料を、すべて食べつくしました。
※制限により、食欲および消化能力が低下してます。
※カズマと情報交換しました。
※レムの話から、鬼族の女性(パワー)に関する情報を得ました。
※レグルスは何らかの方法でバリアを操っていると考えています。

【勇者(主人公)@ファイナルソード】
[状態]:健康、悲しみ(大)、ヨッシーに掴まれている
[装備]:令嬢剣士の家宝の宝剣と盾@ゴブリンスレイヤー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1、キャベツ(3玉)@この素晴らしい世界に祝福を!
[思考・状況]基本行動方針:勇者として主催者を倒します。
1:レグルスから逃げます。
2:襲われている人を助けつつ、レグルスを倒す方法を探し、ちひろさんを助けます。
3:姫様……
4:主催者はどこに居ますか? この会場のどこかにいますよ
5:この催しは神聖な木の試練ですか?
[備考]
※支給品は確認済み。
※参戦時期は神聖な木と会話した直後。
※レムの話から、鬼族の女性(パワー)に関する情報を得ました。
※マリオ達と情報交換しました。そのせいでクッパ姫を女装したクッパ@スーパーマリオくん だと思っています。
※レグルスは何らかの方法でバリアを操っていると考えています。


939 : 獅子座劇場 ◆7PJBZrstcc :2022/04/30(土) 19:07:28 3Ct4XZSw0





「やってくれたね……!
 人の慈悲に付け込んで生き汚く逃げ出すなんて、人殺しの仲間に優しさを振る舞ったのが間違いだった!
 しかも一人残るなんて、仲間を守って死ぬ英雄気取りかな?
 じゃあまずはお望み通り、お前から醜く殺してやるよ!!」

 憤りを隠さないレグルスだが、レムはもはや彼の言葉など耳に入れるつもりはなかった。
 もう彼女は託すしかない。
 勇者に。マリオに。ヨッシーに。
 そして、ナツキ・スバルを信じていた。
 だから彼女は宣言する。
 私が信じるものは、お前などに負けないと。

「私は英雄なんかじゃありません。ですが、英雄はいます」

 毅然と返すレムはそのまま、拳を構える。
 不格好な構えだった。本来なら鉄球を用いて戦う彼女は、無手の戦いは経験が少ないのだから、当たり前と言えば当たり前だが。

「覚悟をしろ、大罪司教。――レムの英雄が、必ずお前を裁きに来る!!」

 それは、レムが殺し合いに呼ばれなかった本来の未来で叫ぶもの。
 あるいは、レグルスが過去に言われたはずの、『暴食』に食われたもの。

 しかしそんなこと、この二人には何も関係ない。
 レグルスはただ、うるさいハエに苛立つように叫ぶ。

「うるさいんだよぉ! この汚らわしい売女が!!」

 そうキレたレグルスは足場を砕き、砂を作ったかと思うとそのままレムに向けて蹴りだす。
 それだけで、蹴られた砂粒は『獅子の心臓』の効果で、散弾銃のような勢いで彼女の体を貫いた。

 そしてレムも詳しいことは何も分かっていないが、彼女は己の死を確信した。
 だが彼女に恐れはない。

 あの三人がスバルと合流すれば、きっとレグルスを倒すことができる。
 雨粒一つ分でもスバルの助けになること。
 その為に命を捨てられるのであれば、レムは幸せだった。

 そして願わくば、自身の死で彼の心にさざ波がおきますよう。
 それだけが、彼女の最期の瞬間の願いだった。

【レム@Re:ゼロから始める異世界生活 死亡】
【残り90人】


「さて、掃除も終わったことだし、君に質問がある。
 とても大切なことで、本当なら出会った時に聞いておくべきだったんだけど、色々邪魔が入ったから聞けなかったんだ。
 普段なら質問に答えない自由を尊重する僕だけど、こればかりは真剣に答えて欲しい」

 カズマとレムを殺した事実など無かったかのように、レグルスはちひろに向き直って優しいほほえみを浮かべる。
 さっきまで殺戮を繰り広げていた男がそんな笑顔を人に向けられるという事実そのものが、彼女には恐ろしくてたまらない。

「君は、処女かい?」
「は、はい……」

 レグルスの問いに即座に頷くちひろ。
 質問の意味は分からない。しかし、ここでもし「いいえ」などと答えれば、どうなるかは簡単に想像できる。
 だから彼女はただ肯定する。事実かどうかなど重要ではない。ただ、即答する。

 一方、即答されたレグルスは即座に機嫌を良くし、高らかな笑顔でちひろに語り掛ける。

「そうかそうか。うん、よかった。安心したよ。これで何の懸念もなく君と婚姻を結べるよ。
 本当なら即座に式場やドレスを用意したいところだけど、こんな野蛮な殺し合いの中ではそれもできないから、悪いけど終わるまで待っててほしい。
 ああ、そうだ。結婚するんだから、夫婦の間での約束事があるんだ。なに、そう難しいことじゃないよ。
 ただ、君には笑顔を禁じる」
「笑顔を……?」

 レグルスの言葉の意味が分からず、思わずオウム返しにしてしまうちひろ。
 彼はその振る舞いに特に言葉を荒げることなく、意図を淡々と説明を始めた。

「僕はね、君の顔が好きだ。君の顔がとてつもなく好きだ。
 だけど笑顔になると、その好きな顔が崩れてしまう。普段は可愛いのに笑顔がブスになる子っているだろ? あれが僕には耐えられなくてね。
 いや、笑顔だけじゃない。泣き顔、怒り顔。全てを禁じる。ただかわいい顔をしていろ」
「……はい」


940 : 獅子座劇場 ◆7PJBZrstcc :2022/04/30(土) 19:07:55 3Ct4XZSw0

 レグルスの言葉にただ従うちひろだが、果たして自分は今言われた通りにできているか不安しかなかった。
 仲間を二人も失い、尋常ではない狂人に付き従うことを強要されている状態で、さながら能面のような無表情を貫けるかどうか。

 しかしその心配は杞憂だった。
 レグルスはちひろの顔を見て満足気に頷くと、ぉ姫様の傍に落ちている彼のデイバックを指差して指示する。

「じゃあ早速だけど、僕のデイバックを持ってもらおうか。
 夫の財産を管理するのは妻の仕事だからね。これは差別じゃなくて区別さ。
 君が僕の財産を管理する代わりに、僕は君を守る。
 さっきは亡き妻を守れなかった僕が言っても信じられないかもしれないけど、今度は絶対に守るよ。信じて欲しい」

 レグルスの言葉にちひろは何も返さず、ただ言われた通りにデイバックを拾う。
 それを省みることなく、彼はただ歩き始める。何も言わずとも、妻はついてくると信じている故に。

 そしてちひろも彼に続く。
 無表情な仮面の中に、尋常ではない恐怖と悲しみを押し殺しながら。


【G-4 トマト・テンプル/早朝】

【レグルス・コルニアス@Re:ゼロから始める異世界生活】
[状態]:健康、『獅子の心臓』発動中、苛立ち、首輪に返り血
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]基本行動方針:主催者を被害者の正当な権利として殺す。
1:とりあえず優勝を目指す。
2:夫として妻(ぉ姫様)を失ったことは悲しいが、新しい妻(ちひろ)を今度こそ守る。
[備考]
※参戦時期は5章直前。
※現在「小さな王」をちひろに寄生させています。
※自分のデイパックをちひろに預けています。
※『獅子の心臓』で無効化出来る物理法則に、一定の制限がかかっています。
 首輪に『獅子の心臓』の効果は通じません。

【千川ちひろ@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]:健康、精神的疲労(極大)、レグルスに対する恐怖(極大)、悲しみ(大)
[装備]:ー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1(確認済)、レグルスのデイパック(基本支給品、ランダム支給品×3)
[思考・状況]基本行動方針:死にたくないが、人も殺したくない。
1:…………誰か助けて。
2:アイドル達とはレグルスと同行している限り合流したくない。
[備考]
※勇者(主人公)を、ちょっとおかしい人だと思っています。
※マリオ達と情報交換しました。そのせいでクッパ姫を女装したクッパ@スーパーマリオくん だと思っています。
 またマリオ、ヨッシー、カズマの三人を『トリオのお笑い芸人』だと思っていましたが、誤解は解けました。
※「小さな王」の効果により、レグルスの疑似心臓に寄生されています。ちひろに自覚はありません。
※レグルスは何らかの方法でバリアを操っていると考えています。


※G-4 トマト・テンプルに以下のものが放置されています。
 ぉ姫様、佐藤和真、レムの遺体。ストッパ下痢止めEX@現実、妖精弓主の弓と矢@ゴブリンスレイヤー。
 そこから離れたところにアヌビス神@ジョジョの奇妙な冒険、佐藤和真の両手首。
 また違う地点にぉ姫様のデイバック(基本支給品、ランダム支給品×3)

【フィジカル軟膏@ペルソナ5】
レムに支給。
使用すると味方1体に物理・銃撃属性攻撃を1回反射するバリアを張るアイテム。
使い捨て。

【ストーンぼうし@マリオストーリー】
千川ちひろに支給。
使用すると、三ターンの間マリオは行動できないがダメージを受けなくなるアイテム。
本ロワでは、マリオに限らず被せるとしばらく動けなくなる代わりに、同じ時間だけダメージを受けなくなるように身体を固くするアイテム。
使い捨て。

【ストッパ下痢止めEX@現実】
マリオに支給。
水無しで飲めて一錠で下痢を止める市販薬。
敵の能力を止める効果はない。

【ペガサスの靴@ゼルダの伝説シリーズ】
佐藤和真に支給。
装備した状態で使用すると、通常より速い速度でダッシュできるようになる。
使用するにあたっての制限はないが、ダッシュした状態では曲がれないので、曲がる際は一度止まろう。

実はスーパーマリオくんにも一度登場したことがある。


941 : ◆7PJBZrstcc :2022/04/30(土) 19:08:31 3Ct4XZSw0
投下終了です


942 : ◆7PJBZrstcc :2022/07/16(土) 20:01:32 PfPgiJf20
弓那、リーゼロッテ、ライナー、シャーリー、沖田、アカツキ、結芽 予約します


943 : ◆7PJBZrstcc :2022/07/17(日) 07:19:40 d.1csRFg0
投下します


944 : HP回復は少し余裕を見る位で丁度いい ◆7PJBZrstcc :2022/07/17(日) 07:21:13 d.1csRFg0
「リズ、そっちは知り合いいた?」

 リーゼロッテが敷いた布団に弓那を寝かせようとしたところで流れた放送。
 それを聞いては寝てられるか、とばかりに弓那は慌てて名簿を見る。
 なお、最初はミルドラースの物言いに怒っていたものの、時間の無駄だとリーゼロッテに窘められていた。

 なので大人しく名簿を読む弓那だが、幸か不幸か知人の名前はない。
 沖田総司と土方歳三の名前があることは気になるが、知人ではない。
 そしてリーゼロッテの方を見るが、彼女の様子がおかしい。
 何か、ただならぬ表情で名簿を見つめているのだ。
 だからこそあえて軽めに聞いてみたのだが、彼女の返答は想像だにしないものだった。

「いや、そういうわけでは無いのだがな……」

 そう言いながらリーゼロッテは名簿を弓那に見せつつ、ある部分を指差した。
 そこには『聖帝エーリュシオン』の文字がある。

「えーりゅしおん?」

 疑問符を浮かべる弓那に対し、リーゼロッテは簡単に説明する。

 エーリュシオンギリシア神話に登場する死後の楽園である。
 冥界の審判官を務めるアイアコス、ミーノース、ラダマンテュスが支配する世界で、神々に愛された英雄たちの魂が暮らすとされる。(wikipediaより引用)

 実際に引用したわけでは無いが、これくらい簡素に説明するリーゼロッテ。

「楽園ならいいんじゃないの?」
「……私は悪徳の魔女だと言っただろう」

 説明を聞いた弓那の言葉を否定するリーゼロッテ。
 彼女が否定的なのは、彼女の過去が関係している。

 それはリーゼロッテが不老不死の魔女になるよりもずっと前の話。
 元々はキリスト教の異端であるカタリの熱心な信者であった彼女はある日、十字軍により家族を失い、自身の身も心を深く傷ついた。
 異教徒ならば改宗の可能性もある為、征服や布教で済んだかもしれないが、異端である以上討伐を優先されたであろう彼女の傷は想像に難くない。

 だが十字軍とは教皇やそれに準ずるような存在が命じて作られるもの。
 つまるところ、民衆にとっては正義として保証されていたに等しい。
 しかし、リーゼロッテにとっては忌むべき存在である。

 そして、エーリュシオンもまた楽園と称しつつも、それは誰にとっての楽園であろうか。
 ギリシャ神話とキリスト教では話も違ってくるだろうが、少なくとも人類鏖殺を企んだ者を受け入れる楽園など存在しないだろう。
 というか、今更楽園などに導かれるなど彼女自身も御免被る。

 結論としては、リーゼロッテがエーリュシオンを危険視するのは彼女の過去から来る経験が大きい。
 そうでなければ、名前しか知らない存在をそこまで危険視などしないだろう。

「――まあ」

 ここでリーゼロッテは、弓那が自分を見捨てればエーリュシオンを危険視する理由が彼女には無くなるかもしれない、と言おうとするもすぐに口を噤む。
 本気の殺意を籠めた言葉を投げかけようと、本気の魔法を叩き込もうと魔女を信じた女が、自身の安全の為にリーゼロッテを見捨てるとは思えなかった故に。

「……いや、何でもない」
「?」

 結局言葉を濁したリーゼロッテに対し、疑問符を浮かべる弓那。
 だがそれ以上話が広がることはなく、今度は弓那が土方歳三と沖田総司について伝える。
 リーゼロッテからすれば他国の偉人でしかない以上、特に思うところはない。
 もっと言うなら、自身が死から蘇っている以上他にそういう参加者がいてもおかしくないので、更に感情を揺るがすものは何もなかった。

「話は終わりだ。さっさと布団に入れ」
「えぇ〜……」

 話を無理矢理打ち切って弓那を布団に押し込めようとするリーゼロッテだが、当の本人は体温が戻っている気分なのか、今一つ休みたがらない。
 とはいえ、何事も無ければ彼女が布団に入るのは時間の問題だろう。
 しかし現実はそうはいかない。


945 : HP回復は少し余裕を見る位で丁度いい ◆7PJBZrstcc :2022/07/17(日) 07:21:43 d.1csRFg0

「オ〇ンコォォォォ!!」

 唐突に響き渡る卑猥な叫びが、二人の間にあった静寂を一瞬で切り裂く。

「……え、何? 何なの今の!?」
「私が見てくる。戻るまで小屋から出てくるな」

 戸惑う弓那を適当に押しとどめ、リーゼロッテは小屋から外へ出る。
 そして最初に視界に入ったものは、巨大な女体に性器から生えた老人の顔、頭部からはエビの胴体という醜悪な外見をした怪物だった。

「お〜い、そこの人! その怪物から離れろ!!」

 次にリーゼロッテが目にしたのは、ウサギ耳を生やしたスタイルのいい美少女が下半身を露出し、脚に謎の機械を身に着け、手には銃を持って宙を舞う姿だ。
 空を飛ぶ少女は銃で怪物を撃ったのか、怪物は少しよろめくも、大したダメージなど無いかの様にすぐに復帰し、少女へと下卑た劣情が籠った笑みを向ける。

 少女、シャーリーがこの場にいる理由は簡単だ。
 彼女は、同行者であるライナーと一度エテ公をやり過ごそうとし、それは成功した。
 しかし、エテ公の向かう方向に他の参加者がいれば危ないと考えた二人は、まずシャーリーが先行し様子を見つつ、後からライナーが追いかけることにした。
 そして今、シャーリーはエテ公がリーゼロッテの前にいる場面に到着したのだ。

 だがリーゼロッテからすれば、シャーリーは突如やって来た女でしかない。
 怪物を攻撃したのも、殺し合いに乗っていないのか邪魔者を先に倒そうとしたのか判断がつかないのだ。
 なのでリーゼロッテは空飛ぶシャーリーと、

「はぁ……はぁ……」

 後から追いついてきたライナーに向けて冷たく言い放つ。

「そこを動くな貴様ら」
「「!?」」

 まさか助けようとした相手にそんな言葉を掛けられるとは思わず、動揺するシャーリーとライナー。
 しかし考えてみれば当たり前。
 目の前の少女が殺し合いに乗っていない保証も、自分達が殺し合いに乗っていない証明もないのだから。
 だがこのままでは、目の前の怪物に成すがままにされてしまうだろう。

「心配するな」

 そんなシャーリーの内心を読んだかのように、リーゼロッテは一言だけ声をかける。
 すると次の瞬間、彼女の目の前に禍々しい紋様の魔法陣が現れた。

 ズガガガガガガッ

 そこから黒いエネルギーが無数の弾丸となり、エテ公へと撃ちだされる。
 弾丸はエテ公に命中すると同時に爆発し、体を確実に抉っていく。
 その光景を呆然と見つめる二人に対し、リーゼロッテは何でもないかのように宣言する。

「これは私が始末する。貴様らをどうするか決めるのはその後だ」

 爆音とダメージの壮絶さで最早悲鳴すら聞こえないエテ公のことなど目に入らぬ、と言わんばかりのリーゼロッテ。
 事実、彼女の目つきは冷淡を通り越して虚無に近い。
 怪物を倒さなければならないという使命感も、他者を甚振り悦ぶ快楽もない。
 あるのはただ、面倒ごとをさっさと済ませたいという思い。
 友達とお茶していたのに、いきなり仕事の電話が入ってきたみたいな感覚が一番近いかもしれない。

「沸騰する混沌より冒涜の光を呼び寄せん!
 原初の闇より生まれし万物を、今、その座に還さん!」

 リーゼロッテの詠唱が始まると同時に、彼女の前方に黒い光が集中する。
 あまりに禍々しい光に、ウィッチであるシャーリーはもとより、魔法の知識などないライナーすら目を奪われる。

「却の眼も持たない上、ただの怪物相手に少々大盤振る舞いではあるが、今の私は貴様など興味がない。
 疾く消えよ」

 やがて黒い光は巨大な球となり、エテ公へと撃ちだされた。
 これで終わり。奴にできることは何もない。

 本来の世界では救世主宮本明の脅威となり続けたエテ公も、ここではただ参加者を追い回しただけのNPCで終わる。
 ただ一体で十分と主催に判断されたNPCは、ただの一人も参加者を殺せず殺し合いを去る。
 敗因は一つ。

 リーゼロッテ・ヴェルクマイスターを敵にしたからだ。

【エテ公@彼岸島 死亡】


946 : HP回復は少し余裕を見る位で丁度いい ◆7PJBZrstcc :2022/07/17(日) 07:22:16 d.1csRFg0

「さて」

 エテ公を始末したリーゼロッテは、シャーリーとライナーの方へ視線を向ける。
 二人は彼女の実力を目の当たりにし、警戒心を隠そうともしない。

「そう警戒するな。私は殺し合いに乗る気はない」

 リーゼロッテがそう言うが、二人は警戒を解けない。
 彼女が嘘を言っていないことは分かる。
 そもそも、あれほどの実力があるのなら嘘をつく理由がない。
 自分達を蹂躙することなど、造作もないはずなのだから。
 しかし扱う力の禍々しさが、安堵する要素を容赦なく奪っていく。

「なお警戒するか。
 まあ別に構わんが、用がないならさっさと消えろ。私は貴様らと睨みあいをする趣味はない」
「まァそう固いこと言わねェでくだせえ」

 二人を切り捨てにかかるリーゼロッテに対し、今までいなかった新たな登場人物が彼女に声を掛ける。
 彼女を含む三人が声のした方を向くと、そこにはそれぞれ別の制服を着た青年二人と少女一人が立っていた。
 既に一戦交えてきたのか、いずれも見ただけで分かるレベルに疲労していた。

 誰であろう、沖田総悟とアカツキ、そして燕結芽の三人である。
 ここでライナーとシャーリーは首輪がまた鳴り響かないことに疑問を覚えるが、構わず総悟がリーゼロッテに向けて話を続ける。

「こちとら調整ミスったクソゲーみたいな吸血鬼相手に負けイベントこなしてきたところなもんで、パーティメンバー募集中でさァ。
 さっきの戦いを見てやしたが、テイルズオブシリーズみたいな魔法陣バンバン出して魔法使ってたんだ。
 前衛しかいないウチで唯一の後衛として使い潰されてみやせんか?
 今なら月給0円のアットホームな職場がお前さんを待ってるぜィ」
「馬鹿にしているのか」

 どう考えても誘う気がない誘い文句を繰り出す総悟に対し、冷たく切り捨てるリーゼロッテ。
 そこに、今まで何も感じられなかった小屋の扉が開き、中から弓那が現れリーゼロッテに呼びかけた。

「リズ〜、もういい〜? ……って誰この人達?」
「……殺し合いに乗っていないであろう参加者の集団だ。名前は知らん」
「本当!? じゃあ入って入って!!」

 リーゼロッテの言葉を聞き、まるで突然遊びに来た友達を迎え入れるように小屋の扉を開け放つ弓那。
 彼女の行動に、リーゼロッテは呆れ嘆息するが、仕方ないとばかりに未だ状況についていけない五人に言い放つ。

「来るなら早くしろ。来ないなら去れ。
 後一応言っておくが、怪しい真似をしたなら即座に鏖殺してやるからな」

 不承不承とばかりに脅しつけるリーゼロッテ。
 この言葉を聞いて驚いたのはシャーリーとライナーの二人。
 なにせ、この場で間違いなく一番強い存在が、なぜか小屋に入っていった少女の言い分を聞いているのだから。
 とはいえ、この振る舞いのおかげで少し警戒心が緩んだ二人と、元々他の参加者との合流を目指していた総悟、アカツキ、結芽の三人は大人しく小屋に入っていった。





「まずは、我々のこれまでの経緯について話そう」

 自己紹介もそこそこに済ませ、アカツキは今までの事を話す。
 最初の結芽との出会い、違う世界同士の新選組二人との出会い。そして最後に吸血鬼である金髪の男との戦いを。

「その後、自分達は他の参加者と合流するためにD-5の周辺エリアを回っていたのだ。
 そして今ここに居る四人と出会えた」

 アカツキは安心したように言葉を吐き出す。
 金髪の男、ザメドルと出会うより先に他の参加者、それも内一人は相当な実力者だ。
 光明が見えたと言っても差し支えはなかった。
 なお、正確には他の参加者を探しに行く前に総悟の支給品であるプリンへの弁当を手早く食べる、という一幕もあったものの、それをわざわざ説明する理由はないので三人は黙っていた。


947 : HP回復は少し余裕を見る位で丁度いい ◆7PJBZrstcc :2022/07/17(日) 07:22:48 d.1csRFg0

 一方、ここで今まで口を挟まなかったライナーが、思わず毒づく。

「クソッ……! そんな危ない奴がまだこの辺にいるのかよ……!!」
「まだ?」

 ライナーが零した言葉に疑問を覚える結芽。
 それに対する返答は彼ではなく、シャーリーが引き継いだ。

「ああ、あたしが話すよ」

 そう言うとシャーリーはD-5を脱出する前に見た天使の男エーリュシオンと、話を聞いたクロと鈴奈について伝える。
 三人の話を聞いている最中にいきなりD-5が禁止エリアになったことも含めて話をした。
 名前を知っているのはクロだけで、後の二人は名前を知らず、エーリュシオンは姿だけを目撃し、クロと鈴奈は姿を見ていないので、情報として見るなら穴だらけもいい所だが。

「いきなり禁止エリアになったの?」
「そのおかげでこちらは助かったが……」

 禁止エリアについて疑問を覚える結芽とアカツキ。
 それに返答するのはライナーだ。

「今ここに七人いるけどここが禁止エリアにならねえってことは、D-5はあの三人のうちの誰かが持っている支給品の力で禁止エリアになったのかもな」
「確かにな。
 参加者が五人集まる度に禁止エリアになっていたのでは進む殺し合いも進まんし、下手をすれば禁止エリアによる爆発で全滅になりかねん。
 その条件で禁止エリアになるにしても、そこまでの頻度ではないだろうな」

 ライナーの推測に同調するリーゼロッテ。
 彼女の考えでは、この殺し合いはルールがある程度決まっており、遊びがある。
 その遊びを主催者側から埋めるのは、どうにもちくはぐ感が否めなかった。

 が、その考えを彼女は話す気がない。
 別段、理由が重要とは思えなかったのだ。

 代わりに彼女が疑問に思った別の点について、アカツキ達に問いかけた。

「まあその話はいい。
 それより一つ疑問だが、貴様らが遭遇した吸血鬼は名乗らなかったのか?」
「……そういえばそうだね」

 リーゼロッテの疑問に言われてみれば、とばかりにハッとする結芽。
 彼女の質問の意図に気付き、アカツキもまた考え込む姿勢を見せるも、そのおかしさが分からない弓那は皆に問う。

「名前を言わないのがおかしいの?」
「先ほども言ったが、あの吸血鬼は最初我々を従えようとしていた。
 ならば偽名や仮の名前であったとしても、何かしら名前があった方が話がしやすいはずだ」
「……『貴様ら下賤なものに名乗る気はない』とかはどうだ?」

 弓那の疑問に返答するアカツキに、今度はライナーが問う。
 するとアカツキは「なくはないが」と前置きしつつ、否定の意見を出す。

「それにしては、随分と我々との戦いを楽しんでいたように見えた。
 いや、奴の言う『キバガリ』ほどではないかもしれないが、そこまで我々を下賤と見下していたようには見えなかったのでな」

 アカツキの返答を聞き、じゃあなんだと考える一同。
 だがリーゼロッテだけは多少推測があった。

「となると、名前を知られると不利になる何かがある、と見るのが妥当か」
「デス〇ートに名前を書かれないよう警戒でもしてるんですかィ?」

 リーゼロッテの推測に対して発せられた総悟の台詞は、意味が通じなかったので誰も反応しなかった。
 代わりにこれ以上推測のしようがないので、話は名簿の中に知人がいるかに移っていた。
 とはいえ、弓那、リーゼロッテ、シャーリー、アカツキ、結芽は知人がいないので、話すのは総悟とライナーがメインだが。


948 : HP回復は少し余裕を見る位で丁度いい ◆7PJBZrstcc :2022/07/17(日) 07:23:47 d.1csRFg0

「何だ。女どもはぼっちの集いかよ」
「ちゃんと友達いるわよ!!」
「確かに七分の五も知人がいないのは疑問だが……」

 総悟の発言にキレる弓那と、知人のいない参加者率の高さを不思議に思うリーゼロッテ。
 しかしこればかりはどうにもならないと、それぞれ話し始める。
 まずは総悟から。

「まあ俺の知り合いはこの坂田銀時と志村新八君だ。
 二人とも頭はアレでも腕前は確かなんでほっといても大丈夫だろうと思ってやしたが、今は戦力募集中なんで、なるべく早く出会いたいってのが本音だな。
 後、この下の方にある土方歳三は俺とは別世界の新選組で、殺し合いに乗ってるから見つけ次第ぶった斬るんで、そこんとこヨロシク」
「言い方軽っ!?」

 余りにも軽々しく言うものだから思わずツッコミを入れてしまう弓那。
 しかし総悟はスルーし、その後に今は亡き沖田総司の仲間について説明を加える。

「まあ俺からはこんなところで」
「じゃあ次は俺だな」

 総悟の説明が終わったところで、今度はライナーに代わる。
 しかし彼は話を始めようとしても、難しい顔をして言葉に詰まる。

「どうしたの?」
「いや、説明が難しくてな……どうやっても話が長くなっちまう」

 どう説明したものか、とばかりに悩むライナー。
 しかしいつまでも口ごもっている場合ではない、と思いなるべく簡略化しながら説明することにした。

「俺が知っているのは、このエレン・イェーガーって奴だけだ。
 こいつはまあ、殺し合いに乗るような奴じゃない。
 だけど俺のことは殺しに来るだろうな」
「どういうことだ?」

 ライナーの物言いに疑問を覚えるシャーリー。
 すると彼は顔を歪ませつつも、説明を再開する。

「簡単に言うと、俺とエレンは所属している同士が敵対してるんだ。
 そして俺は四年前、敵勢力に訓練兵として潜入した」
「工作員、か」
「で、それが向こうにもバレて敵対中と?」
「ああ……もう四年もあってないが、あいつは時が経てば恨みが消えるような奴じゃない。
 ……あいつの母親が死んだのは俺のせいだからな。
 だからもし、あいつにあっても俺を仲間だなんて言うな。お前らも殺しにかかるかもしれない」

 ライナーの話を聞き、難しい顔になる一同。
 特に、エレンの母親が死んだのは自分のせいだと語る彼の姿はあまりに悲痛で、痛々しさすら覚えてしまう。

 パンパン

 そんな空気を変えるように、総悟は手を叩きこう言った。

「まあ辛気臭ェ話は当人同士で解決してもらうとしようや。
 それより俺は正直少し休みたいんで、そこの布団借りていいですかい?」
「いや待て。その布団は貴様の為に敷いたのではない」
「というか休んでる場合じゃなくない?」

 突然すぎる総悟の発言に驚く結芽と、非難するリーゼロッテ。
 しかし彼も譲らない。

「おいおいガキンチョ。HPバーが真っ赤なのに働こうなんざ今時ナンセンスだぜ。
 人間ってのはな、ゴールデンボールブリッジで一戦ごとにポ〇モンセンターに戻るくらい慎重で丁度いいんだよ」
「確かに休息は必要か……」
「えぇ……?」

 総悟の発言に同調するアカツキを見て、あからさまに嫌そうな顔をする結芽。
 しかし彼女も戦いに身を置く存在。休息の必要性が理解できないわけでは無く、今の自分じゃ十全に戦えないことも分かってはいる。
 ただ、強者がいることが分かっているのにじっとしているのが、性分に合わないのだ。

「ゴホッゴホッ……ハァハァ……」

 だが咳き込んだと同時に血を吐けば、当人はともかく周りが良しとしない。
 反論しようとする結芽に対し、弓那とシャーリーは有無を言わせず布団に放り込む。
 するとやはり疲労は隠せないのか、結芽はそのまま眠ってしまい、その横で付き添いのつもりか弓那も眠る。


949 : HP回復は少し余裕を見る位で丁度いい ◆7PJBZrstcc :2022/07/17(日) 07:24:27 d.1csRFg0

「んじゃ俺も」

 そう言って今度は総悟が床に転がり、そのまま寝始めた。
 最後はアカツキ。
 彼はリーゼロッテにあることを頼む。

「最後は自分か。
 ならばヴェルクマイスター。貴殿に頼みがある」
「ああ、貴様らが寝ている時の見張りだろう。弓那のついでにしてやる。
 何か区切り――そうだな、あのミルドラースが一定時間ごとに放送するようだから、次の放送の後にでも起こしてやる」
「……感謝する」

 アカツキはリーゼロッテに頭を下げると、壁に寄りかかって眠りに入る。
 それを見た後、彼女は未だ起きている二人に問う。

「それで、貴様らはどうする?
 出ていくと言うのなら止めはしないが」
「……いや、あたし達も見張りを手伝うよ。
 悔しいけど、殺し合いを止めるなら、ここにいるみんなの力が必要だと思うから」
「そうか」

 それだけ言うとリーゼロッテは椅子に座り、弓那の方へ視線を向ける。
 この状況に、シャーリーとライナーは一度顔を見合わせつつも、大人しく見張りを開始するのだった。


【D-4 小屋の中/早朝】

【翠下弓那@輝光翼戦記 天空のユミナ】
[状態]:健康、睡眠中
[服装]:小屋にあった衣類一式@現地調達品
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品3つ(確認済み)、神撫学園指定のセーラー服(ボロボロ、血痕+焼け跡、現在は清潔な袋@現地調達品に入れている。)
[思考]
基本:こんな下らない事考えた奴らぶっ飛ばして、さっさと元の世界に戻らせてもらうわ!
1:Zzz……
2:金髪の男(ザメドル)やシャーリーの言う三人(エーリュシオン、クロ、鈴奈)を止めたい
:ありがとうね、リズ!
[備考]
※原作における弓那ルートEND後からの参戦です

【リーゼロッテ・ヴェルクマイスター@11eyes -罪と罰と贖いの少女-】
[状態]:健康 疲労(中)、魔力消費(小)
[服装]:いつもの服装
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品2つ(確認済み)
[思考]
基本:このバカ(弓那)についていくことにする
1:弓那とついでに他の寝ている三人(総悟、アカツキ、結芽)を守る。放送の後に起こす
2:シャワーを浴びるのは諦めるか
[備考]
※死亡後からの参戦です。
※聖帝エーリュシオンを危険人物と認識しました。

【ライナー・ブラウン@進撃の巨人】
[状態]:健康、自殺衝動?
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:俺はどうすれば…
1:寝ている三人(総悟、アカツキ、結芽)を守る
2:シャーリーの言っていた3人(クロ、鈴奈、エーリュシオン)と、アカツキが言っていた金髪の男(ザメドル)を止める。
3:エレンも心配
[備考]
※参戦時期は97話にて回想が終了した後、口に銃を突っ込み自殺しようとしている時から。
 参戦時期の都合上彼の余命は残り2年程になっています。
※巨人化能力に制限が掛かっているかどうかは後続の書き手にお任せします。


950 : HP回復は少し余裕を見る位で丁度いい ◆7PJBZrstcc :2022/07/17(日) 07:24:58 d.1csRFg0

【シャーロット・E・イェーガー@ワールドウィッチーズシリーズ】
[状態]:健康、肉体的疲労(中)、
[装備]:ノースリベリオン P-51D“ムスタング”@ストライクウィッチーズ、M1918BAR自動小銃@ストライクウィッチーズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには絶対乗らない
1:寝ている三人(総悟、アカツキ、結芽)を守る
2:ライナーが心配
3:あの3人(クロ、鈴奈、エーリュシオン)は何としてでも止めないと大変な事になるぞ…!!
4:金髪の男(ザメドル)も止めたい
5:エレンにも会いたいところ。坂田銀時と志村新八、藤丸立香達も探す
[備考]
※参戦時期は劇場版より後。
※劇場版時点での作中舞台が1945年なので(現代基準で)それ以降に誕生・及び発展した物や技術についての知識はありません。

【沖田総悟@銀魂】
[状態]:疲労(大)、全身裂傷、睡眠中
[装備]:どうたぬき@風来のシレン、パズーのバズーカ(残弾0)@天空の城ラピュタ
[道具]基本支給品
[思考]基本行動方針:お巡りさんが殺し合いに乗るわけにはいかねえなあ。
1:Zzz……
2:金髪の男(ザメドル)の対策を探すためアカツキと同行。平行してシャーリーの言う三人(エーリュシオン、クロ、鈴奈)の対策も考える
3:万事屋とか戦力を探さないとあれ(ザメドル)はきつそうだ。
4:神威レベル1だな、あれ(結芽)。
5:似非土方を探して処しておく。
6:柄じゃねえけど、もう一人の沖田の分も背負うか。
[備考]
※参戦時期は最終回後。

【燕結芽@刀使ノ巫女(アニメ版)】
[状態]:不治の病、金髪の男(ザメドル)への興味(中)、疲労(大)、写シ解除による精神疲労(大)、複雑、沖田総司と戦えたことへの歓喜、睡眠中
[装備]:千鳥@刀使ノ巫女
[道具]:基本支給品&ランダム支給品×1〜2(沖田の分、未確認)
[思考・状況]基本行動方針:強さの証明。殺し合いは知らないし興味もない。
1:Zzz……
2:アカツキ達と同行する。群れるのは好きじゃないけど、善処するって言ったし……
3:金髪の男(ザメドル)と一人で戦いたいけど、状況的に諦めるしかないかも。
4:シャーリーおねーさんの言う三人(エーリュシオン、クロ、鈴奈)も、一応刀使として止めるつもり
5:弱い人には強さを見てもらう、強い人には挑みたい。
6:何処かにあるかな? にっかり青江。そういえば、シャーリーおねーさんとライナーおにーさんに持ってるか聞いてないや
7:これ(絶望に立ち向かう者)使いたくはないけど……どうしよう。
8:土方歳三に警戒、と言うより会って戦いたい。
[備考]
※参戦時期はアニメ版の死亡後から。
※写シのダメージによる強制解除後の連続使用は、短時間では多くても二回、それ以上はある程度時間が必要です。
※本来は刀使でもその御刀に選ばれないと写シ等はできませんが、この場では御刀を持てば種類を問わずに使用可能です。
※死亡後は時間経過で荒魂に変化するかもしれません。

【アカツキ@アカツキ電光戦記】
[状態]:空腹(小)、疲労(大)、全身裂傷、心労(小)、睡眠中
[装備]:試作型電光機関+電光被服
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1(確認済み)、ゴブリンの槍@現地調達、
     沖田総司の首輪、浅打@BLEACH、絶望に立ち向かう者(ケース入り)@Caligula Overdose
[思考・状況]基本行動方針:日本への帰還。
1:Zzz……
2:金髪の男(ザメドル)やシャーリーの言う三人(エーリュシオン、クロ、鈴奈)を倒す手段の確立。キバガリとやらがいればいいが。
3:結芽が心配。
4:首輪の解除の道具が欲しい。
5:すべての電光機関を破壊する。この場にあっても例外ではない。
6:マシにはなったが、まだ空腹。
7:マシュと藤丸立香を探し、沖田総司のことを伝える。
8:坂田銀時、志村新八、エレン・イェーガーを探す。
9:土方歳三に警戒。
[備考]
※参戦時期は少なくともアカツキ編ED後以降です。
※電光機関が没収されない代わりに、ランダム支給品を減らされてます。
※槍は筆談用に持ってるだけなので基本使いません……が、一兵卒なので案外使えるのかも。
※沖田総司、沖田総悟、燕結芽と情報交換をしました。


951 : ◆7PJBZrstcc :2022/07/17(日) 07:25:49 d.1csRFg0
投下終了です。
何かおかしな点があれば遠慮なく指摘してください


952 : ◆NIKUcB1AGw :2022/08/29(月) 00:12:16 oYPBm/1w0
アルス、アリス、高垣楓、アクア、坂田銀時、シャガクシャ予約します


953 : ◆NIKUcB1AGw :2022/09/03(土) 21:39:14 cc59MRO.0
投下します


954 : 真白に淀んだ迅雷が砕けて ◆NIKUcB1AGw :2022/09/03(土) 21:40:32 cc59MRO.0
「自らが無敵だと勘違いしてきた“自然系”の寿命は短い」

ビッグマム海賊団の構成員、ペコムズの言葉である。


悪魔の実を分類する上での一つのカテゴリーである、「自然系(ロギア)」。
この系統に属する実を食べた者は、体を自然物に変化させることができる。
変化した肉体は、その自然物固有の弱点や上位互換の能力などの例外を除き、敵の攻撃を素通りさせる。

ならば自然系の能力は不死身なのか。否、そうではない。
「覇気」と呼ばれる、鍛錬によって身につく力。
これを習得していれば、能力を使用している自然系にも攻撃を当てることができる。
そしてトップクラスの海賊団の戦闘員、あるいは海軍将校であれば、覇気を習得していて当たり前。
ゆえに自然系の力を手に入れただけで満足し、鍛錬を怠るような輩は、あっけなく狩られることになるのだ。

ではこのミルドラースが管理する殺し合いにおいて、自然系の立場はどうなるのか。
この戦いに悪魔の実が存在する世界から参加しているのは、シャーロット・リンリンただ一人。
しかも彼女は幼少期から参加させられており、覇気を習得している可能性は非常に低い。
ならばこの場であれば、自然系は無敵なのか。
それもまた、否。
たとえば魔法。たとえば「スタンド」に代表される、超能力。
異なる世界で生まれた超常の力が、自然系にどう作用するかは未知数なのだから。

さて、前置きが長くなった。
それでは、堕ちた英雄に立ち向かう勇者と酔っぱらいたちの姿を見ていただこう。


955 : 真白に淀んだ迅雷が砕けて ◆NIKUcB1AGw :2022/09/03(土) 21:41:27 cc59MRO.0


◆ ◆ ◆


「クソッタレがぁぁぁぁぁ!!」

銀時の口から、悪態が漏れる。
それも、無理はない話である。
突如現れた襲撃者に、鳥山フェイスの勇者と共に立ち向かったまではよかった。
だが襲撃者は、全身を電気に変化させられるという反則的な体質の持ち主。
木刀で突こうが払おうが、まるで手応えがない。
むろん銀時も、考えなしにただ木刀を振り回していたわけではない。
頭部を狙えば、あるいは心臓なら。
弱点の可能性がありそうな場所を、片っ端から狙ってみた。
だが、そのいずれも空振りに終わっていた。

「くっ……」

そして銀時と共に戦うアルスも、状況の悪さに顔をしかめていた。
剣による物理攻撃が効かないのは、こちらも同じ。
ならば魔法を……と言いたいところだが、彼の使える最強の攻撃呪文はよりによって電撃魔法であるギガデインである。
無効化されるどころか、吸収されて相手に有利な結果になってしまうことも考えられる。
そしてアルスが使える電撃系以外の攻撃呪文は、中級呪文止まり。
イオラやベギラマをぶつけてはみたが、有効打になっているようには見えない。

「なら……これなら!」

アルスは、手にした王者の剣を高く掲げる。
するとたちまち稲妻が轟き、空気が切り裂かれる。
真空波を発生させ、敵を切り裂く。
それが王者の剣に込められた力だ。

「グウッ……!」

真空波が直撃したシャガクシャの口から、苦悶の声が漏れる。

(よし! これなら効く!)

ようやく手応えを感じ、アルスの表情がわずかに緩む。
だがそれも、一瞬のことだった。
王者の剣を脅威と見なしたシャガクシャが、攻撃の対象をアルスに絞ったのである。

「くっ! うあっ!」

振るわれる槍を受け止め、飛んでくる電撃をかわす。
いかに大魔王を打ち取った勇者といえども、雷の速さを持つ敵に集中攻撃を受けては防戦に徹するしかない。
呪文を唱えるのならば口頭とわずかな身振りだけで済むが、武器に宿る力を解放するにはそのための構えを取らなければならない。
その余裕がないのだ。

「てめえこら、銀さんはガン無視ですか、このやろー!」

一方ノーマークとなった銀時は、隙だらけの背後から連撃を叩き込む。
だが、全ては電気と化したシャガクシャの体をすり抜けるだけだ。

「ふざけんな、ちくしょう!
 チートか、コラァ! 弱点アイテムくらい用意しておけや!」

苛立ちをごまかすように、銀時は吐き捨てた。


956 : 真白に淀んだ迅雷が砕けて ◆NIKUcB1AGw :2022/09/03(土) 21:42:22 cc59MRO.0


◆ ◆ ◆


高垣楓は、呆然としていた。
当初は体内のアルコールもあり、殺し合いの場だというのに危機感が足りていなかった。
だがそこへ、突然現実が叩きつけられた。
さっきまで会話していた少女から発せられる、焼けた肉のにおい。
それは殺し合いが夢でも撮影でもなく、本当に行われているものだという現実を楓に思い知らせる。
だがその現実は、平和な世界でみんなに愛されて生きてきたアイドルにはあまりにも重かった。

(私も……私も何かしなければ……)

楓の脳内は、ずっとその言葉で満たされている。
銀時とアルスは、危険を顧みず襲撃者を食い止めてくれている。
アリスは、身を挺して仲間をかばった。
アクアはそのアリスを、魔法で治療している。
この場で何の役にも立っていないのは、楓だけだ。
だから、自分も何かしなければならない。
そう考える楓だが、思考はそこで停止したまま。
具体的に何をすべきかが、まったく浮かんでこない。
だが銀時が適当に放った言葉が、彼女の思考を前に進めた。

「ふざけんな、ちくしょう!
 チートか、コラァ! 弱点アイテムくらい用意しておけや!」

「アイテム」。その単語が、楓の脳に閃光を走らせる。

(そうだ……。支給品! 支給品の中に、何か役に立つものがあるかもしれない!)

よくよく考えてみれば、まだ支給品をろくにチェックしていないことに楓は気づく。
慌てて傍らに転がっていたデイパックをたぐり寄せ、中をあさる。

「これは……!」

とある支給品の説明書きを読み、楓の顔色が変わる。
その説明どおりの代物だとすれば、まさにこの状況を打開するのにうってつけだ。
彼女の常識ではとうてい考えられない効果だが、すでに常識を超えたものは目撃している。
信じてみる価値はある。
意を決し、楓はそれをデイパックから取り出そうとする。
だがそこで、彼女を視界の隅に置いていたシャガクシャがその行動に気づいてしまう。
楓の様子から「自分に有効な何らかの道具を使おうとしている」と判断したシャガクシャは、攻撃の対象を彼女へ移す。
しかし、わずかな動きからそれを察知した銀時がそれを妨害しに動いた。

「させるかよぉ!」

銀時がデイパックから取り出した巨大な布が、シャガクシャの視界を覆う。
むろん、そんなものははねのけてしまえばそれまでだ。
しかし、急に視界を塞がれればいかなる強者といえども反射的に動きは止まる。
それによる数秒を消費させれば、すでに充分だった。

「これで!」

その隙に、楓はいびつな形のライトのような道具を取り出し、そのスイッチを入れた。
放たれた光が、シャガクシャの体を照らす。

「なっ!」

シャガクシャが、思わず驚嘆の声を漏らす。
なぜならば、雷と化した彼の体が実体を持ち始めたからだ。
楓が使用した支給品の名は、「カチンカチンライト」。
水や炎など形の定まらぬ物を固めることができる、22世紀のひみつ道具だ。
まさに、「自然系殺し」といっていい代物である。

「貴様ぁぁぁぁぁ!!」

シャガクシャが、怨嗟の叫びを上げる。
彼はすでに、自分の敗北を悟っていた。
自分と戦っていた二人の剣士は、どちらもかなりの手練。
攻撃を無効化できなくなるどころかまともに動くともできなくなってしまっては、彼らの刃によって命を奪われることはもはや必然。
だが、このまま死ぬわけにはいかない。
この身に満ちた憎しみ、欠片も晴らさずに死ぬなどできようか。
せめて、敗北の元凶だけでも道連れにしてやる。

シャガクシャはまだ動く右腕に全身全霊の力をこめ、メタルキングの槍を投擲する。
槍は電撃を纏い、恐るべき速さで楓に向かって飛んでいく。
アルスも銀時も、反応が間に合わない。
ましてや、一般人である楓には反応できるはずがない。
槍は、楓の胸に深々と突き刺さった。

「あ……」

楓の口から、意味のない声が漏れる。
何が起きたのか、彼女には理解できていない。
だが胸を貫いた激痛が、自分を死に至らしめるのだということはわかっていた。
後悔はない。誰かの役に立って死んだのだから。
そうは言っても、やはり死ぬのはいやだ。

(プロデューサー……さん……)

大切なパートナーの顔を最後に思い浮かべ、楓の意識は永遠の眠りについた。


957 : 真白に淀んだ迅雷が砕けて ◆NIKUcB1AGw :2022/09/03(土) 21:43:35 cc59MRO.0


◆ ◆ ◆


そしてシャガクシャの命も、ここで尽きる。
アルスが無言で振るった剣が、硬化したシャガクシャの胴体を両断する。
悪魔の実の力を封じられた状態で受けるそのダメージは、致命傷に他ならない。
上半身だけで床に倒れ込んだシャガクシャは、その状態で何かを口にしようとする。
だがその意思が言葉を紡ぐことはなく、彼はそのまま息絶えた。


◆ ◆ ◆


戦いは終わった。
だがそこに勝利の喜びはなく、生き残った者はみな沈痛な表情を浮かべている。

「なんなのよ……。これは……」

アクアはいつものおどけた態度もとれず、現実逃避するかのように頭を左右に振る。

「ごめんなさい、楓さん……。
 俺が警戒を怠らなければ……」

アルスは楓の亡骸の前に突っ伏し、謝罪の言葉を口にする。

「クソッタレが……」

銀時は悪態をつき、床に腰を下ろす。

その時。

『!!』

3人が一斉に、表情を変える。
室内に、突如として邪悪な気配が満ちたからだ。


◆ ◆ ◆


「それ」は、ひどく焦っていた。
まさか自分が力を蓄える前に、宿主が死んでしまうなど考えもしなかった。
このままでは、自分はどうなるのか。
自分でもわからない。
ひょっとしたら、生まれることもできずに消えてしまうかもしれない。
そんなことになるのはいやだ。絶対にいやだ。
生き延びるために、「それ」は宿主の頭部へと向かった。
そこに埋め込まれた、強大な力を利用するために。


◆ ◆ ◆


「なんだよ……。何が起きるってんだよ」

気配は、シャガクシャの死体から発せられている。
それに気づいた銀時は、荒ぶる心のままに叫ぶ。

「てめえはもう死んだはずだろ、ビリビリ野郎!
 第2形態にでもなるつもりかぁ! おとなしく永眠してろや!」

だが、銀時のそんな願いもむなしく……。
今、最悪が誕生する。


【高垣楓@アイドルマスター シンデレラガールズ 死亡】
【シャガクシャ@うしおととら 死亡】


958 : 真白に淀んだ迅雷が砕けて ◆NIKUcB1AGw :2022/09/03(土) 21:44:57 cc59MRO.0
【G-8 酒場/早朝】

【アルス(男勇者)@ドラゴンクエスト3】
[状態]:ダメージ(中)、MP消費(小)
[装備]:王者の剣@DQ3
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]基本行動方針:勇者として、殺し合いを止める
1:シャガクシャの死体を警戒
2:アリスが心配
3:仲間を探したい
[備考]
性格は不明ですが少なくともアリスよりは力が下です
名簿上の二人の勇者や沖田などの存在から、同一人物を意図的に集めたのではと考えています


【坂田銀時@銀魂(アニメ版)】
[状態]:ダメージ(中)、二日酔い(ほぼ醒めている)
[装備]:洞爺湖@銀魂
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本行動方針:主催者の打倒。殺し合いには乗らない。
1:シャガクシャの死体を警戒
2:仲間探しは新八も総悟君も放っておいて大丈夫だろうし、探すのは楓さんの同僚を優先でいいよな
3:アクアが女神ねェ……。全く見えねえ
4:なーんか引っかかるな……この名簿
[備考]
二日酔いによる頭痛に悩まされております。
アクアを女神だと認識しましたが、態度を改める気はありません。
メタ知識を制限されています。何らかのきっかけで解除されるかもしれません。


【アリス(女勇者)@ドラゴンクエスト3】
[状態]:気絶、重傷、火傷(大)、アクアによる治療中
[装備]:ロトの剣@DQ1
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]基本行動方針:勇者として、殺し合いを止める
1:…………
[備考]
性格は【おとこまさり】です。
名簿上の二人の勇者や沖田などの存在から、同一人物を意図的に集めたのではと考えています。


【アクア@この素晴らしい世界に祝福を!(アニメ版)】
[状態]:酒の飲みすぎによる悪酔い(今はそれどころではない)、アリスを魔法で治療中
[装備]:―
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2、扇子×2@この素晴らしい世界に祝福を!(アニメ版)
[思考・状況]基本行動方針:主催者の大魔王ミルドラースを倒す。殺し合いには乗らない。
1:アリスを助ける。絶対に死なせない
2:楓の蘇生を試みたい
3:カズマが心配。ウィズは多分大丈夫でしょ
4:主催者を倒して元の世界に帰る。
5:大魔王が殺し合いを開いて私を呼ぶなんて、これはアクシズ教への宣戦布告ね!
[備考]
施設内にあった大量の酒を飲みまくったせいで悪酔いしています。
回復魔法に制限が掛かっています。度合いは次の書き手氏にお任せします。


【備考】
※メタルキングのヤリ@ドラゴンクエスト8は楓の体に刺さっています
※カチンカチンライト@ドラえもん、ヒルルクの旗@ONE PIECE、シャガクシャの基本支給品は室内のどこかに落ちています
※ノトーリアスBIGのスタンドDISCが発動寸前です


【カチンカチンライト@ドラえもん】
多数存在する、ライト型のひみつ道具の一つ。
炎、煙、水などの不定形の物体に光を当てることで、それを固形化する。
効果は5分で切れる。
エピソードによっては「固体に光を当てると、硬度を上昇させる」という効果が付属していることもあるが、今回はこの効果はない。


【ヒルルクの旗@ONE PIECE】
Dr.ヒルルクが「あらゆる病を治療する」という信念の象徴として掲げた旗。
海賊旗をオマージュしており、ドクロと桜の花びらが描かれている。


959 : ◆NIKUcB1AGw :2022/09/03(土) 21:46:18 cc59MRO.0
投下終了です


960 : ◆bLcnJe0wGs :2022/09/08(木) 21:12:28 CuXCYgDI0
自己リレーを含みますが、とがめ、アカネ、クッパ姫、デンジ、プッチ、春花で予約します。


961 : ◆bLcnJe0wGs :2022/09/12(月) 17:47:39 jmzkCSZU0
予約延長させていただきます。


962 : ◆bLcnJe0wGs :2022/09/15(木) 18:56:13 rP5ExOqA0
お先に前半の投下を行います。


963 : 彼女を逃がしてはならない ◆bLcnJe0wGs :2022/09/15(木) 18:57:07 rP5ExOqA0
 とがめ達に距離を取られ、爆発物を本体・スタンド共に命中しなかったとはいえ近くに投げられ、大きな爆発音を立てられた春花は一先ず大木が数本生えている地帯から抜け出し、開けた場所へと移動すべく早急に走り出す。
 スタンドは消耗を抑える為解除したいところではあるのだが、今はアカネに嘘を見破られている。
 更にはとがめという同行者もおり、周辺にそれを口で知らされる可能性も高い。

(私の嘘を見破ったかもしれないあの黒髪の女…あいつは先にでもつぶさなければ…!同行者の白髪女も同じだ!)

 それ故に、少しでもスタンド解除の機会を得る為に彼女は先程出会ったアカネ、その次にとがめを優先して口を封じるべくすぐにでも殺害する事を決断する。

 やがて大木が群生する地帯を一先ず抜け出した春花は念の為、その場で周辺を見渡す。
 その時間は一瞬といってもいいだろう。

 勿論、とがめ達の方も黙ってはいない。

「アカネ、離れずわたしに付いてくるのだぞ。」
「…うん、わかってる。」

 とがめもアカネも命が惜しい。
  ─だから共に行動をとる。

 実は、支給品の月餅を二人で口にするより前に、とがめ側のランダム支給品でもあった二匹の『蝿頭(ようとう)』にナイフで傷を付け、その片方に月餅の毒味をさせ、更にその効果を試す為にもう一度傷付けるといった事をやっていた。
 この殺し合いという状況において、そういった実験は必然となる。
 また、最後の支給品である缶入りのオレンジジュースと緑茶も同様に毒味させてからアカネと共に月餅を速く食べる為、それと交互に飲んでいた。
 空になった缶を地面に捨てるのはもってのほか。
 月餅の入っていた袋に入れて口を閉じ、とがめのデイパックにしまっている。

 一方、春花への支給品の一つであるラグマイト鉱石も衝撃を与えれば発光するといった代物。
 しかし元々青い鉱物であり、他の人間など知性のある者にに見られている状況で発光させてしまえばすぐ感づかれるのは当然だ。
 勿論デンジのデイパックの中身を確認する余裕など無い。

 とがめとアカネが居る場所の近くには高台があるが、階段や梯子などが無く、また現在は春花をすぐにでも倒す方針に入って居る為にどの道登る目的がなくなってしまっている。

「このような緊急事態だアカネ、
 風船は鞄に仕舞うのだぞ。」

 さすがに風船を誰かへの目印として持つことを一度はアカネに勧めた彼女ではあったが、先程の問答によって野咲春花という殺し合いに乗っていることが判明している他参加者と遭遇してしまった。
 その状況で目立つ色の風船を持っていてはまた他のマーダーやその風船に目を付けたNPCに襲われる可能性があるからだ。


964 : ◆bLcnJe0wGs :2022/09/15(木) 18:57:40 rP5ExOqA0
作品前半の投下終了です。


965 : ◆bLcnJe0wGs :2022/09/16(金) 22:01:04 TsbX7H9Y0
前回の続きを投下します。


966 : 彼女を逃がしてはならない ◆bLcnJe0wGs :2022/09/16(金) 22:02:20 TsbX7H9Y0
 時は少し遡って、クッパ姫達が春花を追う為に移動しだした頃───

「ぬおー! まさかハルカがよからぬ事をしようとしているのかー!」
「こうなっちゃ全速力で春花ちゃんを探しに行くぞー!」

 彼女をすぐにでも見つけるべく爆心地へと疾走するデンジとクッパ姫。

(やれやれ)
「…」

 同じくその後を追いかけるプッチと未来の悪魔。
 未来の悪魔は今のところ何も言わない。

「ちょっといいかね君たち?」

 そんな中、唐突にプッチが先頭の二人に何かを問いかける。

「何だ!?話すなら移動しながらで頼むぞ!」
「えーなんか話?」
「そうだ、君達に渡しておきたいものがある。
 私の支給品2つであるが、君達の役には立てるかもしれないだろう。
といっても、今の状況でトス(投げて渡す)したら、キャッチに失敗する可能性もある。」

 そうして自分の支給品の中に、クッパ姫達にとっても役立つかもしれない物が入っていたので、いつかは渡そうとしていることを伝える。

「トスって何だ?」
「うがー!デンジ!ソレは物を投げるって意味だぞ!
 と言っても、ソイツが言うには支給品を渡したかったけど、走りながらじゃ受け取るのは難しいって事だ!」
「なるほどね」

 プッチの言った『トス』という言葉の意味をよく理解していなかったデンジにクッパ姫はその発言の意味を簡素に伝える。
「まずは喉薬。スプレータイプだ。」
「スプレータイプ?なんじゃそりゃ?」
「いいか?スプレータイプというのはだな…」

 次にプッチはスプレータイプの喉薬を持っている事を伝える。
 しかしまたもやデンジはスプレータイプの意味を理解していない様で、クッパ姫がまた簡素に伝えた。

「もう一つは苺とサクランボを小さく細い串に刺して水飴で包んだ菓子だ。君達、それらの食材に対してアレルギーはないかね?」
「アレルギーって何だ?」
「デンジ、ソレはだな…」

 その次にプッチはそれをサクランボと苺を串に刺し、それを水飴でコーティングした菓子だと伝え、更にそれらの食材に対するアレルギーを持っていないかと問う。
 しかしデンジはアレルギーもよく分かっていないそうで、それもクッパ姫が簡素に伝え、その問答に二人共答えた。

「いやまぁ、どこか間を見てでも食べられたらなと」
「それでブクブクに太ったら動くのに支障が出る!」
「それとは別で、うっかり誰かのゲロを飲むよりちゃんとした物食べれる方がよっぽどいいじゃん?
 思えばアレがファーストキスじゃなくてよかったぜー」

 そして現在。そうして会話をしながら移動している内に、一同は爆心地へとたどり着いていた。

 そこには、地面に生えていた草が火によって焼け焦げた跡が残っていた。


967 : 彼女を逃がしてはならない ◆bLcnJe0wGs :2022/09/16(金) 22:04:27 TsbX7H9Y0
「あ、春花ちゃん!」
「──ッ!?」

 そこでデンジは誰よりも先に春花を目撃してしまった。
 血の跡が付着し、破けた上着。黒い長髪。それは彼女と出会って間もない頃に目撃したものと同じだった。
 それもその際にクッパ姫と共に介抱し、特殊な弁当で傷の治癒もした。
 その痕がハッキリと残っている。だが、彼女は何も喋らない。

「何!?ハルカが見つかったのか!」
「それが見つかったんだよ!背中にあの時の血と傷の跡が残ってるんだよ!」

 デンジは彼女を発見した事をすぐ同行者2人と一体の悪魔に伝える。

「ふむ、先程聞いたハルカという人物…気になるところだね」

 プッチも春花を捜索する為、周辺を見渡しながら先の二人について行く。

「フフフ…(ハルカねぇ、ソイツには中々面白い未来を見せられそうだなぁ)」

 大木の隅で、未来の悪魔も彼女への興味を抱いている。

「デンジさん、クッパさん、そしてご一緒にいる人は…?」

 さすがの春花も自分が長時間デンジ達から離れ、それも彼のデイパックを盗み出した為に、彼等が心配してこちらにやってくる事は考えついていたが、また新たな同行者を連れてきているとは予想もつかなかった。

「な…ッ!?(アレは…承太郎のスタンド!?落ち着け、素数を数えるんだ…)」
「どうしたキサマ!?」

 だが、プッチは春花のスタンドを目撃した事に動揺しており、事情を知らないクッパ姫が初対面の春花に対して挨拶もしない彼を訝しげな視線を向ける。


968 : 彼女を逃がしてはならない ◆bLcnJe0wGs :2022/09/16(金) 22:05:37 TsbX7H9Y0
(まさか…ッ奴のスタンドDISCがッ!!どのようにしてあの少女にッ!渡ったというのだ!もしや″支給品″の一つでは!?だとしたら記憶のDISCはどこにあるのだ!?)

 春花が承太郎のスタンドである『スタープラチナ』を発動させている姿を目の当たりにしたプッチ。
 だが、返り討ちに遭うのを懸念し、敢えて近寄らない。

「おい!どうしたと聞いておるぞ!」

 クッパ姫は問いかけに何も答えない彼に、急かす様に再び動揺の理由を聞こうとしたのだが…

「あっ!春花ちゃんがなんか悪魔みたいな奴と一緒に戻って来た!いや、もしかしたらスタンドって奴だったりして!?」

 なんと、春花がスタンドを出したままデンジの方へと向かって来る。
 それに、デンジも笑顔で出迎える。

「ごめんなさい、デンジさん、貴方のデイパックを勝手に持ち出して…ここまで走って来ました…」

 春花はデンジのデイパックを持ち出して一人でここまで移動して来た事を謝罪する。
 しかし、殺し合いに乗っている事は言わない。その為に盗み出した事も。
 デンジとクッパ姫への罪悪感から言えなかったのだ。

 ─しかし、その直後にけたたましい少女の声が鳴り響く。

「その黒髪の娘はは嘘吐きだ!わたしには嘘を確実に見破れる相棒がいるから分かるのだ!」

 声の主は春花とこの場所で先に出会っていた、参加者の一人、とがめであった。

「あの、私はお隣のとがめと一緒に行動している佐藤アカネです!
 嘘だとは思わると思うでしょうが、他人の嘘を耳にすると、あたしの頭の中に電流が流れてそれを見破れる力があります!」

 そこでアカネも彼等に自己紹介をする。

「えっホントなのか…、春花!!」
「…。」

 デンジの問いかけに春花は答えない。
 春花の方もアカネ達に殺し合いに乗っている事を見破られている。
 彼女達の問いかけに嘘で答えた事を看破された為、即座に殺しに向かっていたことを目撃されている。
 そこで真偽問わず彼の質問に答えれば、再びアカネ達にそれを暴かれる可能性は非常に高いからだ。

「わたしは其奴に何故その様な成り(格好)をしているのかという問いかけに答えていた時、アカネが嘘を吐いていると教えてくれたのだからな。」

 とがめは続けてアカネが春花の嘘を見破った事を暴露する。

「春花ちゃん!?勿論アイツらのいう事は嘘だよな!?」
「残念ながら本当の事。あたしがその子の嘘を聞いた時、電流が流れて来たもの。」
「…。」
「クソッ!信じられるかよッ!!」

 本当の事を話すアカネだが、デンジは耳を疑う。
 しかも、春花はそれについて何も答えないままだ。

「ハルカ…!?」
「何だとッ!?(承太郎のスタンドDISCはお預けか…。)」

 それには話を聞いていたクッパ姫とプッチも驚きを隠せずにいる。

(あの長髪の女二人を殺すつもりだったのに…デンジさん達と再会してしまった…。
 そしてまた知らない人を連れてきてる…)

 少し前に、負傷して逃げて来た自分の手当をしてくれた二人と再開してしまった為に春花は動きを止めてしまう。
 更にその同行者であるプッチは初対面であり、碌に会話も出来ていない以上まだ信頼出来ない相手だ。
 ─春花の中では、殺し合いに乗るという思いが揺らぎ初めている。


969 : 彼女を逃がしてはならない ◆bLcnJe0wGs :2022/09/16(金) 22:06:22 TsbX7H9Y0



(ハルカ、頼むから嘘であってくれ…!)

 そんな中、クッパ姫は自分のデイパックの紐を握りながらとがめとアカネの言葉を疑っている。
 ─そのデイパックには、北原譲という、あるウマ娘のトレーナーが彼女の為に作った、手縫いの人形が入っている。

【F-5 /黎明〜早朝】
【クッパ姫@Twitter(スーパーマリオシリーズの二次創作)】
[状態]:健康、エンリコ・プッチ、とがめ、佐藤アカネへの不信感
[装備]:スーパークラウン(解除不可)
[道具]:基本支給品、釣竿@ゼルダの伝説時のオカリナ、ブードゥー人形@ウマ娘 シンデレラグレイ
[思考・状況]基本行動方針:主催者を倒し、ワガハイが優勝する!
1:嘘だよな…ハルカ!?
2:この姿は慣れんが……ワガハイは強いからな!丁度良いハンデだ!
3:ピーチ姫を一刻も早く探し、守る
4:プッチはまだ完全には信用ならんので仮入団にしておくぞ!
5:ペテルギウスに出会ったら倒す
6:そろそろワガハイが本当は男であると伝えたほうがいいか……?
[備考]
性格はマリオ&ルイージRPGシリーズを基準としています。
スーパークラウンの効果は解除できないようになっています。
マリオ達@スーパーマリオくん をマリオ達@スーパーマリオシリーズとして認識しています。
春花と情報交換をしました。
ホワイト・スネイクの能力について把握しました
とがめと佐藤アカネの発言を信じていません。
長時間女性でいることで性格に影響が出ているかもしれません。
異なる時間軸や世界からの参戦について何となく把握しましたが大して気にしていません。


970 : 彼女を逃がしてはならない ◆bLcnJe0wGs :2022/09/16(金) 22:08:05 TsbX7H9Y0
【デンジ@チェンソーマン】
[状態]:健康、動揺、とがめと佐藤アカネへの不信感
[装備]:
[道具]:
[思考・状況]基本行動方針:とりあえず主催者をぶっ殺せば解決だぜー!
1:春香ちゃん、ウソだよな!?
2:とりあえずプッチを信用。悪巧みしてたらぶっ殺す。
3:パワーかぁ〜合流したくねえ〜! でも殺し合い乗ってるのを見たら止める。
4:姫を守るとかクッパちゃん、やっぱりソッチ系……?向こうの世界では一般なの?
5:未来の悪魔うさんくせぇ〜!将来こんなのと契約してアイツ(早川アキ)大丈夫?
[備考]
時間軸は永遠の悪魔の後。
春花と情報交換をしました。
ホワイト・スネイクの能力について把握しました
異なる時間軸や世界からの参戦について何となく把握しましたが大して気にしていません。

【エンリコ・プッチ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康、精神的疲労(小)、ナツキ・スバルへの尊敬と興奮(大)
[装備]:スタンド『ホワイト・スネイク』
[道具]:基本支給品、初夏5才のおやつ@こじらせ百鬼ドマイナー、のどナオール@呪術廻戦 東京都立呪術高等専門学校 ランダム支給品×1(スタンドや記憶DISCの類は無し)
[思考・状況]基本行動方針:天国への到達を目指す。殺し合いには乗らないが、必要とあれば手段は選ばない。
1:まずは周囲の状況を見る。
2:早く未来の悪魔を誰かに押し付けたい
3:異なる世界や能力についてもっと把握しておきたい。
4:機会があればスタープラチナのスタンドDISCをとり戻したい。承太郎の記憶DISCもあればいいが…
5:スバルと行動を共にしたかったが……これが彼との出会いが運命ならばまた機会はあるだろう
6:スバル…君はまさに『天国』そのものだッ!
[備考]
参戦時期は承太郎の記憶DISCを得た後の時間軸。
ホワイト・スネイクにより、スバルの『死に戻り』の記憶を一部把握しました。
デンジ・クッパ姫・野崎春香の情報交換内容を把握しています。
制限によりホワイト・スネイクのDISCで物理法則を無視した命令は出来ません。
異なる時間軸や世界からの参戦について把握しました
NPC 未来の悪魔@チェンソーマンが同行中です。参戦時期は少なくとも早川アキとの契約後。
基本的にプッチに合図されるまでは隠れて移動していますが、勝手な行動をする場合も多々あります。


971 : 彼女を逃がしてはならない ◆bLcnJe0wGs :2022/09/16(金) 22:08:55 TsbX7H9Y0
【佐藤アカネ@そんな未来はウソである】
[状態]:『堅剛月餅』の効果発動中
[装備]:
[道具]:基本支給品、星型の風船@タイムパラドクスゴーストライター
[思考・状況]:基本行動方針:死にたくも殺したくもない
0:殺し合いなんて、笑えない冗談だわ。
1:春花に凶行をやめさせないと

※殺し合いが行われることや、優勝者の願いをひとつ叶えるといった主催者の言葉に対してウソの感知は行われておらず、それを信じています。しかし、その時に限って能力を制限されていた可能性もあります。
※とがめが自分の知るものと違う過去の人間だと認識しましたが、どういうことなのかは深く考えていません。

【とがめ@刀語】
[状態]:『堅剛月餅』の効果発動中
[装備]:参謀エンリルのナイフ@モンスター烈伝 オレカバトル
[道具]:基本支給品、蝿頭@呪術廻戦、缶飲料2本(種類は緑茶とオレンジジュース)@呪術廻戦(アニメ版)
[思考・状況]:基本行動方針:自分だけは生き残る
0:佐藤アカネの命は自分の次に優先する。
1:奴(春花)を倒す為の奇策を考えねば…

※鑢七実に髪を切られる前からの参戦です。
※アカネが自分が知るものとは違う歴史の、未来の人間だと認識しました。
 アカネの語る歴史が、飛騨鷹比等が言っていた『本来あるべき姿』の歴史なのではと考えています。


972 : 彼女を逃がしてはならない ◆bLcnJe0wGs :2022/09/16(金) 22:09:14 TsbX7H9Y0
【野崎春花@ミスミソウ】
[状態]:疲労(大)、背中に刺し傷(塞がっている)、二人(クッパ姫、デンジ)に対して罪悪感
[装備]:スタープラチナのスタンドDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、ラグマイト鉱石@Re:ゼロから始める異世界生活、デンジのデイパック(基本支給品、ランダム支給品×3、ツルギゴイ@ブレスオブザワイルド、ヨロイゴイ@ブレスオブザワイルド(大量))
[思考・状況]基本行動方針:優勝して、過去を改変する…?
1:あの二人(アカネ、とがめ)は殺すべき…?
2:今はクッパ姫、デンジと一緒にいる。
3:ペテルギウスを殺すため、強力な支給品を集める。
4:デンジさんの支給品については後で調べる。
[備考]
参戦時期は死亡後です。
スタープラチナのDISCを装備しています。
スタンド使いになった影響か、ペテルギウスの『見えざる手』を視認できるようです。
クッパ姫、デンジと情報交換をしました。そのせいでマリオ達@スーパーマリオくん をマリオ達@スーパーマリオシリーズとして認識しています。


973 : 彼女を逃がしてはならない ◆bLcnJe0wGs :2022/09/16(金) 22:10:08 TsbX7H9Y0
【支給品紹介】
初夏5才のおやつ@こじらせ百鬼ドマイナー

エンリコ・プッチに支給。
原作45話に登場。
 飴宮家が江戸時代から代々経営している、和三盆糖をメインに扱う老舗の和菓子屋『飴嘗屋』で販売されている商品の一種。
 木製と思わしき串で苺と種類不明の丸い果物を一緒に刺したお菓子。
 恐らく果物は和三盆糖製の水飴でコーティングされていると思われる。
 因みに商品名を付けたのは初夏の父親。
 本ロワでは丸い果物はサクランボで、果物をコーティングしているものは水飴になっている。

のどナオール@呪術廻戦 東京都立呪術高等専門学校

上に同じく。
 ハピナ商店街での任務を受けていた狗巻が薬局で購入してきたスプレータイプの喉薬。
 当の狗巻は、自身の能力である『呪言』の発動を補助するのに使用していた。
 また、容器のラベルを見る限り消炎効果がある模様。

ラグマイト鉱石@Re:ゼロから始める異世界生活

野咲春花に支給。
 衝撃を加えると発光する鉱物。
 作中では照明としても使われている。


974 : 彼女を逃がしてはならない ◆bLcnJe0wGs :2022/09/16(金) 22:10:30 TsbX7H9Y0
蝿頭@呪術廻戦
とがめに支給。
 特級を最高の等級とする呪霊の中でも最低級に位置するもの。
 大した戦闘能力は持たないが、生身の人間の肩にのっていると肩が重く感じる様になる他、呪霊捜索時の囮にしたり戦闘中に大量に放ってチャフの様に扱ったりする事も可能。
 本ロワでは呪具のケージに入った状態で支給されており、呪力のないキャラや呪具に触れていないキャラでも視認が可能な他、物理的な干渉も受けるになっている。

缶飲料2本(種類は緑茶とオレンジジュース)@呪術廻戦(アニメ版)
上に同じく。
 五条悟が虎杖裕二に『呪力をそのまま対象にぶつけた場合と術式を用いて攻撃した場合、どんな風になるのか』という説明をした時に使っていたもの。
 原作ではラベル部分に何も描かれていなかった為何の飲み物かは不明だったが、アニメ版では緑茶とオレンジジュースになっている。

ブードゥー人形@ウマ娘 シンデレラグレイ

クッパ姫に支給。
 第34話にてオグリキャップが秋の天皇賞に出走するという報せを受けたトレーナーの北原 穣(きたはら じょう)が『どっかの国で厄除けとか願いを叶えると云われている』と彼女に似せて作り、渡した人形。
 因みにベルノライトの分も作っているらしい。


975 : ◆bLcnJe0wGs :2022/09/16(金) 22:11:09 TsbX7H9Y0
投下終了させていただきます。


976 : ◆7PJBZrstcc :2022/09/18(日) 20:01:03 9bsisFfE0
コーガ様、理愛、まみか、エレン、マシュ、ラヴィニア、エンキ、トキ 予約します。

後、念のためにあらかじめ延長もしておきます


977 : ◆7PJBZrstcc :2022/09/20(火) 22:07:48 AesPmX9o0
延 長 別 に い ら な か っ た


投下します


978 : 世界は残酷なんだから ◆7PJBZrstcc :2022/09/20(火) 22:08:32 AesPmX9o0
『聞け! この地に集いし全てのものたちよ!』

 まみか、理愛、コーガ様の三人がアンテン様の神社の境内から出た瞬間、デスタムーアの放送が鳴り響く。
 それを聞いた二人はすぐにデイバックからルールブックを取り出そうとするが、ここでコーガ様の方がこんなことを言いだした。

「なあ、ここで読むのは流石にまずくないか?」
「……確かに」

 NPCが闊歩している外で名簿を読むのは危ない、というごく普通の考えを示すコーガ様に、不承不承という態度をありありと見せながら同意するまみか。
 結局、寺に戻ってから名簿を読むことにした三人。
 途中に何かトラブルが起こることもなくあっさりと戻ってこれた三人は、早速名簿を確認し始めた。
 なお、理愛だけはさっきルールブックを燃やしてしまったので、まみかのルールブックを横から覗き込む形で見せてもらっている。

「うーん、俺様の知っている奴はいないな」

 名簿を確認し終えたコーガ様が、なんともいえない微妙な表情で呟く。
 彼としてはイーガ団の部下がこんな殺し合いにいないことにホッとするが、同時に無条件に信頼できる存在がいない心細さも感じる。
 彼は決して戦えないわけではないが、正直そこまで強くない上に現状ボロボロなので、はっきり言って非常に不安だった。

 一方、まみかと理愛の名簿に対する反応は大きく異なった。
 まみか当人の知人は参加していないものの、理愛が語った名前がそこにはある。

『清良トキ』

 理愛にとっては最悪の名前と言ってもいい。
 宿敵で、母やクラスメイト、そして自身の心と体を滅茶苦茶にした存在で――

 初めて好きになった男の子。
 そんな複雑怪奇な思いを抱く相手の名前が、確かに存在していた。

 勿論、理愛はトキを酷く危険視している。
 彼は社会を滅茶苦茶にするつもりはない、と語ったがそれはあくまで元の世界の話。
 この限られた箱庭の中で行われる殺し合いの中、他者の命を慮る存在ではない。
 更に言うなら、NPCの存在がトキの厄介度合いを跳ね上げる。

 理愛が最初に遭遇したゴブリンのような、性欲を滾らせる存在はトキにとっては恰好の獲物だ。
 彼の魔法で淫欲を操り、ゴブリンを良いように扱うなど造作でもないだろう。
 おまけに演技力も高いので、もしかしたら殺し合いに乗っていない参加者の集まりに紛れ込んでいるかもしれない。

「おい、ひょっとしてお前知ってる奴がいるんじゃないだろうな? だとしたら教えろ!」

 一方、コーガ様は名簿を見る理愛の表情から何をどう判断したのか、こんなことを言いだす。
 彼の言い分は事実その通りであり、教えないというのも理屈に反するだろう。

「分かりました。じゃあ、トキくんについて話します……」

 なので理愛は全てを語ることにした。
 清良トキが魔罪人という宿敵であること。
 彼の企み。

 そして、彼が自身に何をしたかも。

 途中まみかが「何もそこまで」と言いたげな目で理愛を見たが、彼女は全てを話した。
 それはなぜか、まみかはおろか理愛自身にすら分からない。
 彼女の性格から、上手く誤魔化すことができなかったのかもしれないし、あるいは単に勢いで全て喋ってしまったのかもしれない。

 とはいえ、トキの所業を全て知ったコーガ様の反応はこうだ。

「お、おう……」

 ドン引きだった。
 理愛に憐憫の情を覚えるとか、トキの所業に憤るとかではなく、ただただ引いていた。

 コーガ様は理愛の話を自身の世界観に置き換え、勇者と魔王の世界を掛けた戦いだと認識している。
 そして彼が長を務めるイーガ団は、かつて魔王と呼ばれたガノンを崇拝し、今のハイラルの破壊を望む組織である。
 なので、彼としては理愛よりもトキよりの視点で話を聞いていた。
 だがそれはそれとして、コーガ様はトキの所業にドン引きした。


979 : 世界は残酷なんだから ◆7PJBZrstcc :2022/09/20(火) 22:09:08 AesPmX9o0

 敵を倒すために手段を選ばないのは理解できる。
 イーガ団の末端員は旅人に化けて勇者に攻撃を仕掛けるなど当たり前だ。
 かつて自分を一度倒した相手に思う所があるのも理解できる。
 イーダ団も、かつて自身を追放したハイラルをずっと憎んでいるからだ。

 それでもドン引きだった。
 イーガ団も悪の組織ではあるが、そこまで女に対し非道な所業はしない。
 男やもめであるが、別に女に飢えているわけでは無いので。
 というか、そこまでして心を折りにかかる意味はあるのだろうか。
 いくらでもさっさと殺す手段はあったろうに、なぜわざわざ生かしていたのだろうか、とコーガ様は疑問に思っていた。

 まあ、理愛を殺せば心の世界とやらが異変を察して、世界を作り変えるより先に援軍を送り込むかもしれないので、心を壊すだけの方がいいのかもしれない。
 そうコーガ様は内心で納得しようとするも、いやそれにしてももう少しやりようはあるだろ、とやはり無理があると思ってしまう。

 つまるところ、コーガ様にとってトキの所業は趣味が悪いとしか思えない。
 だからドン引きしていたのである。
 それともう一つ

(あの時、なんか悪いこと言っちまったな)

 コーガ様にしては珍しく、反省をしていた。
 その内容は彼と理愛が初めて遭遇した時に言ったこの一言。

『……変な奴がいるぞ!』
 
 最初は殺し合いの最中激しめの一人遊びをする変な奴と思ったが、事情を聞けばそれが本意ではないことくらいは分かる。
 別に殺しにかかったことを反省したわけでは無いし、なんだったら今でも隙を見て逃げ出そうと思っている。
 だがそれでも、実質的に変態扱いしたのはちょっと悪いと思っていた。

(とはいえそれはそれだ。
 なんとかこいつらから離れないと、他の参加者を殺してアンテン様に願いを叶えてもらえねえ――ん?)

 内心でいかに逃走するか考えているコーガ様だが、ここで彼はある違和感を抱き、最初に出会った時に聞いたアンテン様の言葉を思い返す。

『アンテン様に願いを叶えてもらうには……
 その願いと同じだけ強い想いが込められている、「大事なもの」をお供えしなきゃいけないんだ。』
『もし大切な物が無いなら、今回だけは他の物でもアンテン様は許してくれるみたい。』
『こんな場所だからね。「参加者の死体」でも良いってアンテン様は言っているよ。』
『もちろん、願いを叶えるには、死体の「質」が重要だけど。
 それはあなたにとって大切な人だったり、この戦いの中でとても強い人だったり。まあいろいろあるけどね。』

(あ、そうか。別に俺様が殺さなくてもいいのか)

 コーガ様が気付いたのは、自らが手を汚す必要性。
 アンテン様は参加者の死体をお供えしろと言っただけで、別にコーガ様自身が殺せとは言っていない。
 まさか殺し合いに乗っているのが自分だけではないだろう、と考えた彼は方針を少し考え直す。

(となると、別に無理にこの小娘たちから離れなくてもいいのか?)

 まみかと理愛は殺し合いに乗らず、なおかつ自分達を殺しにかかったコーガ様すら生かすお人よしである。
 しかし、殺し合いの参加者は百人以上いるのだ。他の参加者が作った死体を集めるだけでいいのではないか?
 むしろ殺し合いに乗っておらず、なおかつ敵すら殺す気がない二人に守ってもらうのも手ではないか?

(いや、でもなあ……)

 しかしコーガ様は今思い浮かんだ考えを否定する。
 理屈の上ではありかもしれないが感情としては否定したい上、おまけに二人の性格だと、コーガ様を出会った他の参加者に悪く紹介することは確実だ。
 そうすれば間違いなく警戒される。
 おまけにアンテン様のことまで知っている状況で、コソコソ死体集めをしているとバレれば何をされるか分かったものではない。

(いや、やっぱり駄目だ。なんとかしてこいつらから逃げるぞ!)

 内心でコーガ様が決意を新たにしていると、まみかが出発を促してくる。
 どうやら、彼の知らぬところで次の目的地を決めてしまったらしい。
 当然抗議する彼だが、理愛曰く「声を掛けたけど反応しなかった」とのこと。
 明らかに考えに没頭していた自分が悪いので、彼は反論が思いつかなかった。

 ともかく、出発しようとコーガ様が立ち上がった瞬間――

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

 何の前触れもなく寺がいきなり震え、三人はバランスを崩して転びかける。

(ここだ!!)

 しかしコーガ様はこれをチャンスと捉えた。
 彼は瞬時に体をまるでコマのように回転させたかと思うと、目にも止まらぬ速さで神社を脱出する。


980 : 世界は残酷なんだから ◆7PJBZrstcc :2022/09/20(火) 22:09:45 AesPmX9o0

「えっ」
「ま、待ってください!」

 呆気にとられるまみかと、咄嗟に魔法を使って追いかけようとする理愛だが、それより早く寺の崩落が始まり、まずは近くの柱が折れた。
 そしてそのまま寺も崩壊する。
 幸い二人とも魔法少女に変身していたので寺からの脱出自体は問題なかったが、咄嗟のことだったのでコーガ様を完全に見失ってしまう。
 代わりに二人の前に居るのは――

「……」

 地獄の幽鬼もかくやと言わんばかりの冷たい目をした、黒い長髪の男だった。





 時は少し遡る。
 D-7 シフティ・シャフトから転移したエレンが最初に目撃したのは、森の中に佇む一基の鳥居だった。
 もっとも、彼は鳥居というものを知らないので、よく分からない門のようなものという認識だが。

 エレンは警戒しつつも鳥居をくぐる。
 するといきなり風景が変わり、少し歩くと巫女服という彼からすれば見慣れない服装をした少女が現れた。
 それだけならただの邂逅だが、少女の首元には殺し合いの参加者の証である首輪が存在しない。
 彼が少女を警戒するには十分な理由だった。

「おや、今日は千客万来だね」

 少女はエレンの警戒などないかのように、柔らかな笑みを浮かべて応対する。
 当然、彼が警戒を解くはずもないのだが、彼女は構わず話を続ける。

「ここはアンテン様の神社。
 本来ならアンテン様に招待されたものしか入れないけど、ここでは特別。
 あの鳥居を潜れば誰でも入ることができるのさ」
「お前は……何だ?」

 少女の話を打ち切り、質問するエレン。
 その問いに彼女は、さっきとは違う笑みで答える。
 目の前にいるはずなのに、半月に裂けたような口元しか見えない不気味な表情で。

「『コンペ・ロワイアル』の『NPC』さ」
「そうか」

 少女の表情など一切気にかけず、エレンは矢継ぎ早に質問を続ける。

「それで、お前は何をするんだ?
 さっきの蝶みたいに纏わりついて来るのか?」
「何かするのはアンテン様なんだけどね。
 まあ、簡単に言うならお供え物を貰うことで、願いを叶えてくれるんだよ。」

 そこから先は、この神社へ先に訪れていたコーガ様やまみか達が聞いた説明とほぼ同じだった。
 祠に捧げものをすることで願いが叶うこと。
 願いを叶える為の捧げものには、願いと同じだけの思いが詰まっている物ではないとならないこと。
 この殺し合いの中に限り、参加者の死体でも構わないこと。
 神社の境内に長くいすぎる、暴力行為を働く、アンテン様に危害を加えようとするとペナルティを与えること、などなど。

 その話を聞いたエレンは、興味深げに頷いた後即座に踵を返した。

「おや、願いはいいのかな?」

 意外そうな顔で問う少女に対し、エレンの返事は端的だ。

「捧げられる物がない」
「そうかい?
 君が腰に携えている物、立体機動装置だったかな? それを捧げるなら、殺し合いの脱出が叶うよ」
「……何だと?」

 少女の言葉は余りにも予想外で、エレンは思わず振り返り、こう問いかけてしまう。

「……もし脱出できたら、俺の願いは、パラディ島を守ることはできるのか?」
「いいや。アンテン様に願って脱出しても、何でも願いが叶う権利は手に入らないよ。
 ただ本来の運命に戻るだけ。
 まあ、殺し合いに来る前に運命が終わっているのなら、今の状態で関われるから何かしら変えられるかもしれないけどね」
「……?」

 少女の言葉に首をかしげるエレン。
 まさかこの殺し合いに一度死亡した後、蘇生させて参加させられた者がいると、彼には想像もできないのだ。


981 : 世界は残酷なんだから ◆7PJBZrstcc :2022/09/20(火) 22:10:22 AesPmX9o0


 結局、何をするでもなくアンテン様の境内から出ていったエレン。
 それからあてもなく探索していると、今度は違う建物を見つける。
 そこから何やら人の声が聞こえたので、彼は躊躇なくグラグラの実の力を建物にぶつけた。

 エレンは目の前にあるものが寺とは知らないし、それがどういうものか知っていたとしても止めはしないだろう。
 彼の進撃の意志を止めることは、誰にもできないのだから。

 轟音を響かせて崩れ落ちる寺。
 これで中にいる奴は死んだだろう、と思ったのはつかの間。
 中から少女二人、まみかと理愛が凄まじい勢いで脱出してきた。

 なお実際はもう一人、コーガ様がその前に脱出していたのだが、別の位置から脱出したので誰にとっての幸か不幸か、エレンが気付くことはなかった。

「……駆逐してやる」

 エレン当人すら意識せず漏れ出す強烈な殺意。
 並の人間なら怯むだけでは済まないであろう意志は、しかし少女二人を怯ませるには足りない。
 即座に立ち上がり、各々ステッキを構えて二人は彼に相対する。





 さて、ここで唐突だがF-10の地理について話しをさせてもらおう。
 このエリアは地図を見ていただければわかる通り、一番目立つのは間違いなくラッキー・ランティングだ。
 ならば、まみかに理愛、エレンがいる先程崩壊した寺があるのはラッキー・ランティングなのかと言われると、そうではない。

 F-10にあるのはラッキー・ランティングだけではない。
 小高い丘、小規模な林、他のエリアに続く道。そして海や川。
 この中で寺があるのはラッキー・ランティングから少し外れた所にして、林がすぐ近くにある辺りだ。
 なお、アンテン様の境内は林の中にある。


 そして、この地理を踏まえてエレンはエポナに乗って疾走し、戦場を崩壊した寺の傍から林へと移した。
 ここならば調査兵団時代に幾度も移動してきたので、ある種一番戦いなれている場所と言えるかもしれないし、数の力をうまく分断できるかもしれない戦場だ。
 それに、いくら自身が食べた悪魔の実が強力だからといって、敵が同じような力を持っていない保証もない。
 更に言うなら、寺が崩壊した際に少女二人が人智を超えた速度で脱出している瞬間を目撃しているので、真っ向勝負をする気にはならなかった。

 実の所、エレンの判断は間違っているわけでは無い。
 まみかも理愛も林で戦闘した経験はない上、連携できるほど互いの魔法を知っているわけでもない。
 ただでさえまともに連携できない上に、エレンは数の力を分断しにかかってきている。
 おまけに基本的に理愛はソロの戦闘しか経験していない。
 戦い以外ではトキやミリカが支えてくれていたが、直接的な戦闘はいつも一対一だった。
 故にこんなことが起こってしまう。

「セ・ヴィト・コム・ベント!」

 理愛が呪文を唱え、杖でブーツを叩くと、背中にある羽が翼を広げ彼女は宙を舞う。
 そのまま一直線に、疾走するエレンに向けて進む理愛。
 いくらエポナが名馬でも、歩けば五分以上かかる距離を十数秒で駆け抜けられるほどのスピードではない。
 故に本来ならすぐに追いつくはずだが――

「きゃっ! ひゃぁ!?」

 そうはならない。
 理愛は生えている木々を必死によけながら、林を飛び回っていた。
 これは、彼女の今までの飛行魔法の扱いが原因だ。
 彼女にとって飛行魔法は移動手段であって、空中戦をするためのものではない。
 無論、アニメの魔法少女がそういう戦い方をしているのを見た記憶があるような気はするが、あくまでアニメ。実情とは異なるものだ。
 少なくとも、彼女にとっては。

「シャイニング・シャワー!!」

 その穴を埋めるように、今度はまみかが魔法でエレンを狙う。
 この魔法はマジカル・スプレッシュ・フレアとは違い、ハートの群れを撃ちだして攻撃するものだ。
 どちからというと、必殺技というより牽制や手数を重視する魔法である。

 故に、ハートのいくつかが林の木々に当たっても、まみかからすれば別に何の問題もない。
 一部が外れても、残りが命中すればいいのだから。

 だがエレンはこの状況をこう打破した。


982 : 世界は残酷なんだから ◆7PJBZrstcc :2022/09/20(火) 22:10:54 AesPmX9o0

「はぁっ!!」

 エレンはエポナに乗って疾走しながら手近な木に手を触れる。
 それだけで木の一部は砕け、安定性を失った木はそのまま倒れていく。
 無論、エレン自身に向かって倒れないように考えたうえで。

「えっ、ちょっと!?」

 慌てて倒れる木を回避しようとするまみかだが、そもそも木は彼女とは違う方向に倒れた。
 エレンがした計算はあくまで自分に向かって倒れないようにするだけで、別にまみかや理愛に向けて倒したわけでは無い。
 そもそも、彼女達なら仮に倒れてきたとしても回避は容易なのだから、計算する意味がない。

 それだけでなく、エレンの攻撃は終わらない。
 彼は同じ様に木々を倒し、二人を攻撃しようと企む。
 当然、二人は当たらないように立ち回ろうとするが、それが彼の狙いである。

 エレンはクレマンティーヌのデイパックから、最後の支給品を取り出す。
 それはまるでおもちゃの銃だった。
 全体が黄色でありながら、銃口だけが水色という少々奇抜なデザイン。
 しかしこれはおもちゃではない。

 エレンが引き金を引くと、銃口からピンクがかった紫色の光弾が発射される。
 この銃は決しておもちゃではない。
 かつて、キノコ王国を支配しようとした宇宙人、ゲドンコ星人が持つ光線銃だ。
 威力は決して高くはないが、エネルギー切れがまず起きないコスパのいいものである。

 これがエレンの作戦。
 グラグラの実の力で木々を倒し、相手に当たればそれでよし。
 当たらなかったとしても動きを制限できるから、そこに光弾を当ててダメージを与えるという二段構え。
 別に彼は銃の名手ではないが、そうそう弾切れしないのだから当たるまで連射しない理由もない。

 しかしここでエレンにとって予想外なことが起きる。

「リッド・ドリューミエ!」

 理愛が呪文を唱えながら杖を振ると、杖の軌跡をなぞって光のヴェールができる。
 そしてエレンの放った光弾がヴェールに触れると、光弾は理愛ではなくヴェールに沿って逸れていく。
 これは彼女の魔法の効果である。

 ここでエレンは一旦理愛を狙うことを諦め、まみかへと矛先を変えるがそれよりも先に

「マジカル・スプラッシュ――」

 まみかが魔力を貯めた状態で、エレンの背後の空中から彼に向かって飛んでいく。
 咄嗟にエレンはエポナを捨て、立体機動装置を起動させようとするも――

「――フレアァァァァアアアア!!」

 まみかの魔法が逃がすことなく、桃色の光が彼を包み込んだ。

「があぁぁぁっ!!」

 まみかの魔法はエレンにダメージと頭からの出血を与えながら、地面をゴロゴロと転がせる。
 それでも彼はそれでも立ち上がる。
 フラフラと、ヨロヨロと体を揺らがせながら、なおも彼は優勝を諦めたりしない。
 だが体のダメージは小さくないのか、すぐにへたり込んでしまった。
 体に力が入らず、だらんとしており、右手の光線銃は握っておらず、左手は無造作に地面に触れている。

「……やっぱり、アリスちゃんと同じだ」

 そんなエレンを見て、まみかは思わず呟く。
 彼女の瞳はどこか懐かし気で、切なさと哀しさを携えていた。

「……どういうことですか?」

 まみかの言葉に疑問を覚え、思わず問う理愛。
 その問いに対し、まみかはすぐに答えた。


983 : 世界は残酷なんだから ◆7PJBZrstcc :2022/09/20(火) 22:12:08 AesPmX9o0

「私の元の世界……じゃないけど、殺し合いの前にいたところで出会った友達に、アリスちゃんって子がいるの。
 アリスちゃんの生まれた所はとってもつらい所で、だからアリスちゃんはその世界を救おうとしてた。どんな手を使ってでも」
「……そのアリスちゃんって人と、この人にどんな関係が?」
「同じ目をしてる」

 話の意図を掴み切れなかった理愛が零した言葉に、まみかの答えは酷く抽象的だ。

「心の底から守りたいものがあって、助けたい人いて。
 何とかするにはあまりにも難しいけど、諦めたくないって、諦める訳にはいかないって。
 だけど、あなただって本当はこんな殺し合いに乗りたいわけじゃ――」
「だからどうした」

 ないはず、と続けようとしたまみかの台詞を、エレンは切って捨てた。
 彼の言葉には何の感情もない。
 本当に心の底から、彼女の言葉に何の意味もないと断じている。

「俺がそのアリスって奴と同じだとしても、殺し合いに乗りたくないとしても、それでも俺は選んだんだ。
 今更他の道なんか選べるか」

 エレンはまみかの言葉を突っぱねる。
 こんな問答に何の意味もないと、彼女の言葉を切り捨てる。
 おまけにただ切り捨てただけではない。

 エレンの左手が触れていた地面に、彼はグラグラの力を発動する。
 それだけで地面はひび割れ、三人は裂け目に飲み込まれそうになる。
 だがことを起こした当人は即座に立体機動装置を起動し、近くにあるまだ倒れていない木にアンカーを突き刺す。

 対するまみかと理愛の二人は魔法で宙を舞い躱すが、エレンは二人に向けて光線銃を発射する。
 これを二人は成すすべもなく喰らってしまった。
 銃のダメージは極めて小さいが、怯みは発生してしまい、その隙にエレンは逃げ出した。

 即座に追い掛けようとするまみかだが、理愛があることに気付き思わず止まる。
 彼女が気付いたあることとは、エレンが乗り捨てたエポナだ。

 突如足場が崩れ、空を飛ぶ術を持たないエポナは、裂け目に飲み込まれることはなかったが、衝撃で足の骨がが折れてしまった。
 この骨折が治らない限り、彼女の俊足は何の意味ももたらさないどころか、やがて訪れる悪意あるNPCに襲われ命を落とすかもしれない。
 そう考えた理愛は即座にエポナをデイパックにしまった。
 今の二人には治療する方法も時間も持ち合わせていない。しかし見捨てることもできない。
 だから即座に拾い上げ、エレンを止めてから改めて治療法を探すことにした。
 幸い、二人ともエレンより早く移動できる。追いつくのはそう難しくないだろう。


 もっとも、この僅かなタイムラグが二人を追い詰めるやもしれないが、先の事柄は未だ定まっていない。
 これから先どうなるかなど、誰も分かりはしない。


【F-10 林/早朝】

【煌樹まみか@Re:CREATORS】
[状態]:ダメージ(極小)
[服装]:魔法少女姿
[装備]:マジカルステッキ@Re:CREATORS
[道具]:基本支給品、婚約指輪@呪術廻戦 東京都立呪術高等専門学校、柔らかいタオル@こじらせ百鬼ドマイナー(濡れている)
[思考]
基本:こんな殺し合いなんて止めないと
1:あの男の人(エレン)を追いかけて、止める
2:理愛ちゃんの身体が心配。無理をしてないといいけど
3:『アンテン様』…やっぱり何者でしょう…?
[備考]
※本編第九話「花咲く乙女よ穴を掘れ」で、死亡後からの参戦です
※コーガ様を、『別の物語の登場人物』だと思っています。
※コーガ様から、アンテン様に関する情報を得ました。

【有栖川理愛@魔法娼女理愛 獣欲に嵌まる母娘】
[状態]:発情(小)、快楽中毒(中)、ダメージ(極小)
[服装]:魔法少女姿、髪は解いている
[装備]:魔法の杖(変身前はペンダントの形態)@魔法娼女理愛 獣欲に嵌まる母娘、使い捨てカイロ@妖怪の飼育員さん、レインコート@妖怪の飼育員さん
[道具]:基本支給品(ストロングゼロとカップ麺、ルールブックは焼却)、ランダム支給品2つ(紙や飲食物、回復アイテムの類は無い)、エポナ(足を骨折)@ゼルダの伝説シリーズ
[思考]
基本:殺し合いを止めたい
1:あの男の人(エレン)を追いかけて、止める
2:身体の疼きが……
3:もしトキくんと出会ったら、その時は……
4:『アンテン様』……もしかして魔罪人……?
[備考]
※本編第五章『砕ける心、隷属の刻』終了後からの参戦です
※トキによって仕掛けられた『道具』は解除されています
※コーガ様から、アンテン様に関する情報を得ました。


984 : 世界は残酷なんだから ◆7PJBZrstcc :2022/09/20(火) 22:13:01 AesPmX9o0

【エレン・イェーガー@進撃の巨人】
[状態]:進撃の巨人(脳内のみ) 首に切り傷、ダメージ(中)、頭から出血
[装備]:グラグラの実、立体機動装置(ガス残り2/3)、ゲドンコ星人の光線銃@マリオ&ルイージRPG2
[道具]:基本支給品、
[思考・状況]:基本行動方針:パラディ島を救うために、この場の全ての命を駆逐する。
1:目の前の二人(まみか、理愛)から一旦逃げ、回復したい
2:NPC、今の所よく分からねえのばっかだな。怪物(メガデス怪人)といい蝶といいアンテン様といい
3:女(クレマンティーヌ)の武技に加え、名簿と放送の食い違いに対する疑問
[備考]
※30巻で座標に辿り着く直前より参戦です
※逃げた方向は次の書き手氏にお任せします
※出血していますが命に係わるほどではありません





「ハァハァ……」

 一方その頃、回転を利用して勢いよく逃げ出したコーガ様は、盛大に息切れしていた。
 そもそもこの移動方法はどちらかと言うと、接敵している状況で一時的に間合いをとる為に使うもので、断じて逃げる為ではない。
 そのせいで彼は普段ならありえないほどに目を回していた。
 おまけにその後、距離を取る為にボロボロの体をおして走ったので疲れ切っている。
 しかし、そのおかげで得たものもある。

「何だアレ?」

 コーガ様の走っている場所がいつの間にか草原から荒野に風景が変わった頃、ふと気づくと視界に走る一台の車が目に入る。
 彼の世界にはないものなので、それがどういうものかは正確には理解できてないが、中から首輪をつけた、紫髪の少女が現れたことでこれが乗り物だとコーガ様は判断した。

(しめた!)

 コーガ様は表に出さないようにしつつ、内心でほくそ笑む。
 ここでこの参加者を理愛とまみかの悪評を流して上手く殺させる方向に誘導すれば、彼が殺し合いに乗っていた事実を知る者は誰もいなくなる。
 そうすれば、彼の目的である死体を集めて脱出もかなりやりやすくなるはずだ、と考えていた。
 そうだ、あの二人を殺し合いに乗っているということにしてしまおう。

 それは正しいだろう。もしそれがうまく行けば、彼を取り巻く状況は大きく変わるに違いない。
 しかし彼は知らない。
 この車の中には目の前の少女だけでなく、後三人乗っていることを。
 そして三人の中には理愛が話した宿敵、清良トキがいることを。


【G-9 荒野/早朝】

【コーガ様@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド】
[状態]:ボロボロ、疲労(大)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]:基本行動方針:願いを叶えるために死体を集める
1:他の参加者……これはチャンスだ! 上手く取り入ってまみかと理愛を始末させてやる!!
2:アンテン様に願いを叶えてもらって、脱出したい。
3:よくよく考えたら死体を集めりゃいいんだから、別にわざわざ俺様が殺して回る必要ないよな?
4:誰かをイーガ団のメンバーに加えたい。
[備考]
※本編死亡後の参戦です。
※支給品は全てまみかによって没収されました。

【老将エンキ@モンスター烈伝オレカバトル】
[状態]:健康、マシュたちの話に対する困惑(小)、トキに対する警戒心(小)、搭乗中
[装備]:風斬り刀@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2(確認済み)
[思考・状況]基本行動方針:一刻も早く元の世界に戻りたいが、そのために無辜の人々を傷つけるつもりはない。
1:一刻も早く元の世界に戻り、王子を止めねば……!
2:これも"ネルガル"や"エンリル"の企みなのか……?
3:キヨラトキ、少々怪しいかもしれん……
4:違う世界か……
[備考]
※参戦時期は、"エンリル"の策略により王子"マルドク"が狂王になってしまった後。
※マシュの話から、今後訪れる未来について暫定的な内容を知りました
 (違う世界の物と判明したので、心に留めておく程度です)。


985 : 世界は残酷なんだから ◆7PJBZrstcc :2022/09/20(火) 22:13:34 AesPmX9o0

【マシュ・キリエライト@Fate/Grand Order】
[状態]:体に無数の傷(中)、疲労(小)、ゴブリンへの嫌悪感(中)、運転中
[装備]:トヨタRAV4@例のアレ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2(確認済み)、いまは遙か理想の城(ロード・キャメロット)@Fate/Grand Order
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いを止める。
1:他の参加者……?
2:先輩や他のサーヴァントの皆さんと合流したい……
3:エンキさんは別の世界の方でしょうか……?
4:"ネルガル"と"エンリル"……これが今回の黒幕でしょうか?
5:黒幕は第二魔法を自在に扱える存在……?
[備考]
※参戦時期は少なくとも、第1部第六章「神聖円卓領域キャメロット」以降です。そのため自身の宝具などについて把握しています。
※目の前の老人(老将エンキ)をその特徴から、メソポタミア神話の主神『エンキ(エア)』ではないかと推測していましたが、異世界ということで推測を捨てました。
※老将エンキから、"ネルガル"と"エンリル"、"マルドク"に関する情報を得ました。
※"藤丸立香"が殺し合いに参加していることを把握しました。

【ラヴィニア・ウェイトリー@Fate/Grand Order】
[状態]:健康、ゴブリンへの恐怖、嫌悪感(大)、搭乗中
[装備]:あやしい触手@魔界戦記ディスガイア
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1(確認済み)
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いに乗るつもりはない。元凶に立ち向かう。
1:これも、魔神柱の仕業なの……?
2:違う世界……?
3:ゴブリンはもう嫌
[備考]
※参戦時期は死亡後。そのためカルデアや魔神柱、アビゲイルの正体などを知っています。

【清良トキ@魔法少女理愛 獣欲に嵌まる母娘】
[状態]:健康、搭乗中
[服装]:いつもの服装
[装備]:望遠鏡@ゼルダの伝説 風のタクト
[道具]:基本支給品一式、ホモコロリ@真夏の夜の淫夢、スーパークラウン@New スーパーマリオブラザーズUデラックス、
[思考]
基本:せっかくだから楽しませてもらう。だけど、一筋縄ではいかないかもしれない
1:しばらくは大人しく、ただの高校生清良トキとして行動する
2:ミリアは…見つけたら手伝ってもらうかな
3:違う世界か……そこにもキリエライトさんやウェイトリーさんみたいな素敵な子がいるといいな
4:ホモコロリは隠しておく
[備考]
※本編第五章『砕ける心、隷属の刻』終了後からの参戦です
※ゴブリンを配下にできますが、現在配下はいません。


※F-10 寺が崩壊しました。
※エポナ@ゼルダの伝説シリーズ は足を骨折しているので走れません。


【ゲドンコ星人の光線銃@マリオ&ルイージRPG2】
クレマンティーヌに支給。
かつてキノコ王国を支配しようした宇宙人、ゲドンコ星人が持つ光線銃。
威力は高くない。

本ロワではエネルギー制限があり、一定数撃つと弾切れとなるが、そうそう切れることはないだろう。


986 : ◆7PJBZrstcc :2022/09/20(火) 22:14:03 AesPmX9o0
投下終了です


987 : 名無しさん :2022/11/16(水) 20:02:20 YaC53iBw0
age


988 : ◆7PJBZrstcc :2022/11/27(日) 13:45:53 Z/GLy5Z60
コルワ、レーティア、ひろし? 予約します


989 : ◆7PJBZrstcc :2022/11/27(日) 16:44:23 Z/GLy5Z60
投下します


990 : 二兎を追う者は一兎をも得ず ◆7PJBZrstcc :2022/11/27(日) 16:45:03 Z/GLy5Z60
 レーティアとギャンブラーを置いてコルワはひた走る。
 その疾走に意味がないことは決まっている。
 どれだけ急いでも斬真狼牙の死亡は覆らず、桐山和雄が逃亡することは確定している。
 しかし、それをコルワが知ることは決してできない。
 否、出来たとしても関係ないだろう。彼女は変わらず疾走したやもしれない。

 そんなもしもの話はさておき、コルワは目的地であるI-5へ何事もなく到着した。

「狼牙……」

 そこで見たものは仲間である斬真狼牙の遺体と、周りに散らばっている何かの残骸。
 これが短剣の砕けたものだとは分からないし、知る意味もない。
 コルワが理解したのは、さっき出会ったばかりとはいえ仲間を失ったことと、殺し合いに乗ったあの長髪の少年はまだ生きているということ。

 ならば、とコルワは即座にレーティア達の元へ戻ろうとする。
 もしあの少年が近くにいて、なおかつレーティア達のいる場所へ向かったとするならば、彼女達は成すすべもなく命を散らすだろう。
 さっきここまで来た時は特に誰とも遭遇しなかったが、入れ違いになった可能性もある。

 そう考え行動しようとしたコルワだが、唐突に彼女の行方を遮るものが現れる。
 彼女の眼前に現れたそれは、上半身から無数の蛇を生やした剣士のような魔物だった。
 この魔物を元の世界で知っている参加者は誰もおらず、また殺し合いの中で遭遇した唯一の参加者は既に命を散らしている。
 名を、ヒュドラという。

「私にぃはぁ剣しかぁないんだぁぁぁぁぁあぁぁぁ」

 ヒュドラの悲痛な叫びが辺りに木霊する。
 しかし今のコルワには、目の前の相手に付き合う時間がない。
 この叫びに乗じて桐山が戻って来るやもしれない。
 ヒュドラがレーティアの元へ向かうかもしれない。

 さまざまな可能性が浮かび上がっていくうえ、ヒュドラがまき散らす毒霧がいつの間にかコルワの体を蝕んでいこうとする。
 それを知ってか知らずか、コルワの眼前のヒュドラは上半身の蛇を一度体に巻き付けたかと思うと、一気に解き放ち、まるでプロペラの様に振り回しながら迫る。
 幸い、逃げられないほどのスピードではないが彼女は迷う。
 ここで目の前の魔物と戦うか、逃げるか。
 戦えないことも無い。逃げられないことも無い。
 彼女が選んだ選択は――


 ダッ!


 逃走だった。
 コルワはヒュドラに背を向け、逃げ出した。
 なぜならば、彼女にはこんなところで足踏みしている暇はないからだ。

 現状、狼牙の遺体がここにあり戦っていた長髪の少年、桐山がいない以上、彼は戦いに勝って逃げ出したと考えるのが妥当である。
 その逃げ出した方向が、現在レーティアがいるJ-6の方面でない保証はどこにもない。
 おまけに、ここで戦えば戦闘音を聞きつけた桐山が、様子を見に来てコルワがヒュドラと一対一で相対するのを見れば、レーティアを殺しに行きかねない。
 なのでコルワは逃げることにした。
 無論、ヒュドラがレーティアの方向へ行かないよう、一旦は反対方向に逃げることも忘れずに。


991 : 二兎を追う者は一兎をも得ず ◆7PJBZrstcc :2022/11/27(日) 16:45:33 Z/GLy5Z60





 野原ひろし? は逃げた露伴を殺すことにしたが、肝心の当人がどこにいるか分からない。
 逃げた痕跡もなく、いつの間にか姿を消したので、どっちに行ったのかすら判別不能だ。
 なので、仕方ないとばかりに彼は当初の進行方向通り、一度北に向かうことにした。
 行く当てもないが、どこにも向かわないという選択肢もないのだ。

 ひろし? の道筋は、結論から言うと大したことはなかった。
 散発的にゴブリンが現れるだけで、他の参加者も特徴的なNPCに出会うことも無く、彼はJ-6 ロンリー・ロッジに到着した。

「さーて、誰かいてくれりゃいいんだが」

 独り言を零しながら辺りを見回すひろし?
 すると、いくつかあるログハウスのうち、一つに目を付けた。
 他の家と違い、明らかに人が入った跡が残っているからだ。
 中に誰かいるのか、それとももういないのか分からないが、とにかく彼は一度そこを調べるにした。

 とはいえ、いきなり何も考えず家の扉に手を掛けるのは馬鹿のやることだ。
 ひろし? はまず、家の窓から中を覗き込んでみる。
 窓にはカーテンが掛かっていないので、あっさりと中を調べることができた。

 家の中にいるのはどこかの制服を着た金髪の少女と、同じく金髪の成人女性の姿があった。
 大人の方は明らかに怯えながらオドオドし、感情が丸わかりだが少女の方はひたすらに虚ろで、ひろし? には少々薄気味悪く見える。
 だからと言ってすごすごと引っ込むわけもなく、彼は家に入ると決めた。


 バンッ!!


 ひろし? は家のドアを蹴り開け、懐に忍ばせていたデザートイーグルを突き付けながらログハウスに突入する。
 万が一中の二人が強力な支給品を持っていたとしても、それを使わせなければどうとでもなる。そう考えたからだ。
 しかし、その心配は杞憂だった。

 金髪の成人女性、何に対してもギャンブラーは突如現れたひろし? に驚き、銃を見た瞬間に顔を青褪めて怯えを見せるだけだ。
 少女、レーティア・アドルフに至っては、この状況になってなお何もしない。
 ただ虚ろな目のまま、どこを見ているのかも分からないまま佇んでいる。

 何も抵抗してこないことにひろし? は少々拍子抜けするも、すぐに彼は驚愕に目を見開くことになる。
 彼の目に入ったのは、ギャンブラーの首元。
 そこに在るべきはずの、首輪がないのだ。これには流石の彼も驚き、銃を向けて問い詰めた。

「おい、なんでお前には首輪がついてない?」

 銃を向けて尋問してくるギャンブラーは恐怖に負け、自分は殺し合いの参加者ではなく、主催者が言うところのNPCであることを話す。
 対し、ひろし? はそっけなくこう返した。

「ふーん、なるほどな」

 ひろし? はギャンブラーの話を特に疑ってはいなかった。
 ただでさえ色々と不可解なことが次々と起こるこの殺し合い。
 ならばまあ、ただの人間にしか見えないNPCがいてもおかしくはない、のかもしれない。
 なので彼は意識を切り替え、別の事を尋ねる。

「なら、お前が今までで聞いた情報を教えろ。なんかあんだろ?」

 ひろし? の銃を突き付けながらの問いに、ギャンブラーは必死になって答えた。
 狼牙達四人の事。その中のコルワが話していた名簿に載っている知人の事。
 突如現れた、槍を使う長髪の少年の事。
 ギャンブラーが遭遇したこれまでの全てを、懸命に。

「へえ……」

 ギャンブラーがもたらした情報の多さに、ひろし? は思わず感嘆の声を上げる。
 目当てのしんのすけとマサオ、露伴の情報こそないものの、出てきた名前の数は実に十三人。
 同姓同名の可能性もなくはないが、それでもかなりのアドバンテージを得たと言っていい。
 更に殺し合いに乗って参加者の情報もある。
 これは率直に言って当てにならないが、槍を持った参加者を警戒するだけでも多少はマシだろう。
 おまけに、露伴がこっちに来ていないことも確定した。


992 : 二兎を追う者は一兎をも得ず ◆7PJBZrstcc :2022/11/27(日) 16:46:00 Z/GLy5Z60

「それじゃ、もういいか」

 ひろし? がそう呟いた直後


 ドスッ!


 彼は、己が持つキング・クリムゾンの拳でギャンブラーの腹を貫いた。
 当然の理屈だ。
 己の情報を持つ者を、情報を抜いたのが誰かを知っている者を、殺し合いの中で生かしておく道理がない。
 ちなみにひろし? が銃ではなくスタンドで殺したのは、銃だと音が響き人を呼び寄せるかもしれないからである。

 一方、ギャンブラーは心底驚愕し、絶望の表情を見せる。
 参加者が、わざわざNPCである自分を殺す理由があるとは思っていなかったからだ。
 しかも恐怖に屈服し、殺し合いに乗った参加者に情報を渡すということまでしたのに、死んでいくからだ。

 だがもうどうにもならない。
 何のために居るのか分からなかったNPCは、何のために生きていたのかすら分からないまま死んでいく。
 それだけの話。


【何に対してもギャンブラー@Akinator 死亡】


 一方、目の前でギャンブラーが死んでなお、レーティアは何もしなかった。
 驚くことも、怒ることも、恐怖することも。
 その事実が、ひろし? には酷く気味悪く見えた。
 別に生かす理由もないのでさっきと同じく始末しようとするが、ここで彼の思考にあるひらめきが生まれる。

 現状、ひろし? が殺し合いに乗っていると知っているのは露伴だけだ。
 だが奴は出会った参加者にこのことを話すだろう。
 もしかしたら、しんのすけやマサオ君にも伝えるかもしれない。
 簡単にあの二人が露伴の言うことを信じるかは謎だが、信じない保証もない。
 そうなれば、自身がしんのすけ達に会うのはかなり難しくなるだろう。もしかしたら会えないまま死別もありえる。

 だがもし、自分が殺し合いに乗っていないふりをすればどうだろうか。
 例えば、どう考えても足手まといにしかならない参加者を保護し連れているとか。
 それに息子とその友人を心配をする父親であると伝えれば、懐柔もしやすくなるだろう。
 もし懐柔に時間がかかりそうなら、その時は力づくに切り替えればいい。

 懐柔にこだわるのではない。
 懐柔以外を捨てるわけではない。
 どちらもできるよう準備を整える。それがひろし? の最終的に選んだ結論だった。

「でもな……」

 しかしここで、レーティアをどうやって連れて行けばいいのか、という問題が発生した。
 まさかおんぶで、というわけにもいかない。
 いや、出来ないことはないだろうが、両手が塞がる上に体力も使うし、移動に時間がかかる。
 なので一度、ギャンブラーが持っていたデイパックを調べてみることにした。
 自身のはとうの昔に調べているが、この状況で使えそうな移動手段はなかった。

 そうして検めると、最初に出てきたのは大きなベッドだった。
 人が数人乗れそうな程大きなベッドだが、これが何だと言うのか。
 思わず毒づきそうになるひろし? だが、付属している説明書きを見て認識を改めた。

『空飛ぶベッド。
 このベッドは乗った者の意志に合わせて自在に移動します。
 また、移動の際に乗り手の魔力などは一切頂きません』

 これを見て試しにひろし? がベッドに乗り、動かしてみると、確かに動く。
 ならば、とばかりに彼は一度ベッドをデイパックにしまい、レーティアと共に外に出てから再び取り出し、今度は二人で乗る。

 この状態でひろし? が目指すはH-6 リテイル・ロー。
 理由は、そこが一番しんのすけがいそうだからだ。
 露伴はひろし? に『実は少し前に僕はしんのすけ君と会って話している』と言った。
 それが本当か嘘か判断する術をひろし? は持たないが、はっきり言って当てがない彼はそれに縋るしかない。
 後は単純な消去法だ。
 南にはいなかった。北にも今きたがいないらしい。
 なら位置的に、残るは西しかない。
 どうせ西に行くなら、地図に乗っている街の方が情報が集まりやすいだろう。
 こうして彼はリテイル・ローを目指すことにしたのだ。

 事実、ひろし? の考えは当たっている。
 だがそれは過去の話。しんのすけは既にこの世を去っている。
 その事実をひろし? が知るまで、あと少し。


993 : 二兎を追う者は一兎をも得ず ◆7PJBZrstcc :2022/11/27(日) 16:46:24 Z/GLy5Z60


【I-6/早朝】

【野原ひろし?@野原ひろし 昼めしの流儀】
[状態]:健康、怒り(中)、空飛ぶベッド@ドラゴンクエスト6 に乗って移動中
[装備]:懐にデザートイーグル、キング・クリムゾンのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2個(確認済み、移動手段の類はなし)、ポンプアクションショットガン@ゾット帝国、グレシアのデイパック(基本支給品、ランダム支給品0〜2)
[思考・状況]基本方針:他参加者の殺害及びしんのすけとマサオの捜索
1:リテイル・ローを目指す。
2:懐柔と力業を場合によって使い分けて、しんのすけとマサオ君を探す。その為にこいつ(レーティア)を連れていく
3::あの野郎(岸辺露伴)どこ行った!?
4:岸辺露伴は懐柔できない。殺す。
5:名簿への疑問
[備考]
※原作とは性格が大きく掛け離れてます。「自分を野原ひろしと思い込んでる一般人」「殺し屋ひろし」の両要素を含んでます。
※CVは森川智之です。
※主催者から『お前は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ』と付け加えられています。理由は現状不明です。
※ヘブンズ・ドアーで文章が書きこまれると、自動的に『俺は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ』という文章が湧き、書き込まれた文章を塗りつぶして無効化します。
 これは仕様なのか、主催者でも計算外なのか現状不明です。
※何に対してもギャンブラー経由でコルワと彼女が話した情報、桐山和雄の外見(変身時のみ)を知りました。
 その為リルル@ドラえもん のび太と鉄人兵団 をリルル@グランブルーファンタジー と思っています。

【レーティア・アドルフ@大帝国】
[状態]:精神崩壊(極大)、罪悪感、空飛ぶベッド@ドラゴンクエスト6 に乗せられて移動中
[服装]:折神家親衛隊の制服@刀使ノ巫女
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1、注射器、『エルフが作った、どんな病気も治せる薬@銀魂』が入ったペットボトル(1/5消費)
[思考]
基本:ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……
1:???
[備考]
※キングコア編イベントフェイズ『おくすりください』後からの参戦です





「ハァ……ハァ……」

 コルワは息を切らせながら、レーティア達が居るログハウスに到着した。
 ヒュドラを振り切ることはできたものの、かなり大回りをして逃げたのでたどり着くのに時間がかかったのだ。
 しかし家のドアは壊されており、慌てて中を見ればそこにあるのは、何に対してもギャンブラーの遺体のみ。
 レーティアの姿も、グレシアのデイパックもどこにもない。
 連れ去られたのか、別の場所で殺されたのか。
 とにかく、コルワの手から零れ落ちたことは確定だ。
 この瞬間、彼女は悟った。
 選択肢を誤った、と。

 あの時、コルワは何があってもレーティア達から離れるべきではなかった。
 桐山は狼牙に任せ、一緒に逃げるべきだったのだ。
 しかしそんなことを言っても後の祭り。

 二兎を追う者は一兎をも得ず。
 その事実だけが残るこの場で、コルワはただ茫然としかできない。


【J-6 ロンリー・ロッジ/早朝】

【コルワ@グランブルーファンタジー】
[状態]:健康 主催と長髪の少年(桐山)への憤り(極大)、茫然自失
[服装]:いつもの服装
[装備]:
[道具]:基本支給品、花子頭+式王子@こじらせ百鬼ドマイナー、着せかえカメラ@ドラえもん、
[思考]
基本:こんな悪趣味な殺し合いなんてぶっ壊す
1:………………
2:狼牙……レーティア……
[備考]
※参戦時期は少なくともキャラ加入エピソードの後。
※リルル@ドラえもん のび太と鉄人兵団 をリルル@グランブルーファンタジー と思っています。


※何に対してもギャンブラーの遺体がJ-6 ロンリー・ロッジのログハウスに放置されています。


【空飛ぶベッド@ドラゴンクエスト6】
グレシア・ゲッペルスに支給。
主人公たちが夢の世界において使う、空を飛ぶ移動手段。
人間が数人乗れるくらいの大きさはある筈。
本ロワでもほぼ同様だが、乗った者の意志にそって移動する。
また、一定以上の高さまでは上がれないよう制限されている。


994 : ◆7PJBZrstcc :2022/11/27(日) 16:46:52 Z/GLy5Z60
投下終了です


995 : ◆7PJBZrstcc :2022/11/27(日) 17:16:30 Z/GLy5Z60
多分大丈夫だと思って新スレ立てました
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1669536777/


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