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バトル・ロワイアル 〜狭間〜

171空っぽなんかじゃなかったんだ ◆2zEnKfaCDc:2020/07/11(土) 00:02:23 ID:YG6Tn0BI0
「滝谷。ひとつお前は忘れているようだ。」

「どうしたでヤンス?」

 滝谷は顔にクエスチョンマークを浮かべる。ドラゴンを前にした人間の反応として見れば、本来それは異常でしかないものなのだ。

 人間がドラゴンと対峙した時、その人間は一目散に逃げ出すのが普通だ。そのドラゴンが混沌勢であれば逃げても追い詰められて殺される。調和勢か傍観勢であれば何事もなく終わる。

 稀に相応の技量や魔法を身につけてドラゴンを討伐しにかかる人間もいる。貧弱なドラゴンなら狩られることもあるかもしれないが、少なくともファフニールはそんな人間を数多く返り討ちにしてきた。

 だが間違っても、ドラゴンを前にして安堵する者はこれまでにいなかったのである。

「俺がドラゴン……それも破壊を生業とする混沌勢のドラゴンだということをだ。」

 自分やトール共が周りにいたことで、これまでの滝谷は物理的な危機とは比較的無縁でいられたはずだ。小林の元には終焉帝が訪れたというが、滝谷にはそのようなイベントは起こっていない。だからこその危機感というものが乖離してしまっているのだろう。この俺でさえ戸惑っているこの状況下で、俺がいれば大丈夫だろうとでも思っているのか。気に入らん。実に気に入らん。

「滝谷。お前は……」

 その言葉が、最後まで紡がれることはなかった。ふと意識を集中したファフニールが、滝谷の背後の木の裏から人間の気配を感じたからだ。

「……どけ! 滝谷!」

「えっ!?」

 その気配の動きに気づくや否や、ファフニールは滝谷の身体を払い除けた。ドスンと尻もちをつく滝谷の前に躍り出たファフニールは滝谷の背後より迫ってきた襲撃者に対してその身を晒すこととなった。

――ザクリッ。

 襲撃者のナイフがファフニールの左腕に刺さる。しかし仮にもドラゴン、その程度の痛みで悶えることはない。極めて冷静に反撃に出るが、敵はさらに冷静だった。刺さったナイフを即座に引き抜きバックステップでファフニールの反撃を回避する。

(小柄のようだな……女か?)

(まさかあのタイミングで気付かれるなんて……!)

 それぞれが思わぬ状況に現状の把握を急がされる。

 襲撃者、茅野カエデは殺せんせーでもない、ただの人間(茅野視点)相手に奇襲を失敗したことに戸惑っていた。しかし初撃が失敗すること自体は常日頃からの想定の範囲内。勝負を分けるのは2撃目以降であると彼女はすでに学んでいた。

 考えるが先か、右手にナイフを握って地を蹴り、再びファフニールに向けて飛び込む。対するファフニールは長い脚による回し蹴りで応戦する。ナイフのダメージを考えるに、肉体を人間に制限されている分、その生命力もドラゴンのそれに比べ弱まっているようだ。普段であれば避ける必要のない斬撃に対しても範囲攻撃を駆使して受けない立ち回りをしなくてはならない現状に腹が立つ。しかし制限を受けてもドラゴンの豪脚。辺りを薙ぎ払うファフニールの脚は風切り音を鳴らし、土埃をも巻き上げた。


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