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歌うんだロワ

1 : ◆2017/xzYU2 :2017/01/02(月) 21:59:09 VJHNRrOg0
>>2 OP
>>3 名簿
>>4 ルール
>>5 地図
>>6 状態表関連
>>7- 本編


"
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2 : OPENING ◆2017/xzYU2 :2017/01/02(月) 22:00:30 VJHNRrOg0
『かよわい者たちよ!

 人生を旅する者たちよ! 

 生きる意味を知らないの者たちよ! 

 殺し合いなさい! 

 流れに身を任せるだけでは駄目! 

 勝ち続け願いを叶えなさい! 

 そして伝説になりなさい!

 終わりのない道を終わらせなさい!』


 不死鳥と見紛う主催者が殺し合いの開会宣言をする。
 それは絶望への航海なのか、それとも希望への光なのか。
 様々な思惑が蔓延る祭りが今、始まる。


3 : ◆2017/xzYU2 :2017/01/02(月) 22:00:53 VJHNRrOg0
《名簿》
【純恋歌(湘南乃風)】4/4
○大親友/○大親友の彼女/○家庭的な彼女/○家庭的な女がタイプな俺
【紅(X JAPAN)】2/2
○紅に染まったこの俺/○何かに追われるように走り出すお前
【前前前世(RADWIMPS)】2/2
○君を前前前世から探している僕/○遅いよと怒る君
【PPAP(ピコ太郎)】1/1
○I
【PERFECT HUMAN (RADIO FISH)】1/1
○nakata
【JAM(THE YELLOW MONKEY)】3/3
○過ちを犯す男の子/○涙化粧の女の子/○嬉しそうに「乗客に日本人はいませんでした」「いませんでした」「いませんでした」って言ったニュースキャスター
【スーパースター(東京事変)】1/1
○スーパースター
【JOURNEY THROUGH THE DECADE(GACKT)】1/1
○僕
【Did You See Jackie Robinson Hit That Ball?(Woodrow Buddy Johnson & Count Basie)】1/1
○ジャッキー・ロビンソン
【Top of the World(Carpenters)】1/1
○デレク・ジーター
【All I Want(The Offspring)】1/1
○ドラえもん
【六甲おろし(水樹奈々)】1/1
○金本知憲
【あの鐘を鳴らすのはあなた(和田アキ子)】2/2
○あなた/○世界を救った後BARでお酒を嗜むアッコさん
【We Are The World(USA for Africa)】3/4
○ふざけてる奴(男)/○ふざけてる奴(女)/○爆笑問題田中に似てる奴/●プリンス(欠席)
【DAYS (FLOW)】1/1
○ロボットなのに不倫したロボット
【キルミーベイベー(やすなとソーニャ)】2/2
○キルミーベイベー/○なんでもナーミン
【BE MY BABY(COMPLEX)】1/1
○許して欲しい俺
【BORN TO BE MY BABY(BON JOVI)】2/2
○俺のために生まれたお前/○お前のために作られた俺
【I Was Born to Love You(Freddie Mercury)】1/1
○君を愛するために生まれてきた僕
【Bohemian Rhapsody(QUEEN)】7/7
○たった今人を殺してきた僕/○ガ↑リレオ/○ガリレオ〜〜〜/○ガ↑リレオ〜〜〜/○ガリレオ〜〜〜!/○ガリレ↑オ!/○フィガロ
【書き手枠】たくさん
○【()】/○【()】/○【()】/○【()】/○【()】/

(38)/108

《主催者》
○□□□□□【????????(□□□□□)】


4 : ◆2017/xzYU2 :2017/01/02(月) 22:01:18 VJHNRrOg0
《ルール》
・最後の一人になるまで殺し合いをします。
・最後まで残ったらなんでも願いが叶う権利を入手。
・作中のタイムリミットは72時間です。
・タイムリットをオーバーした場合このロワのスレタイを見た人は今年このロワに出た曲をカラオケで歌ってはいけません。(任意、ついでに参加者は全員死亡)
・書き手枠は
1:歌詞にいる人物及びなんか
2:音楽PVにいる人物及びなんか(カラオケ映像も可、機種明記すると尚良)
3:あとなんか歌詞に関係があるモノ及びなんか
 って感じです。
・版権キャラ出してもいいですがあんまり良い扱いにはなりません(1が知らない作品は特に)
・書き手枠の上限は70人くらいです。
・ただしどうしても書きたいなら別に出しても構いません。
・書き手枠の締切はロワが打ち切り及び完結するまでありません。
・放送とかはだいたい6時間ごとです。
・6時スタートです。
・○時区切りです、黎明とかはないです、状態表例(>>6)参照。
・ランダム支給品とか配られてたりしたりしなかったりします。
・あとは流れでお願いします。


5 : ◆2017/xzYU2 :2017/01/02(月) 22:01:33 VJHNRrOg0
<<地図>>

□初春夏名秋九
□□□□□□□
①白止白馬白白
②把白旭馬馬白
③馬白白白白馬
④白鶴白白白白
⑤白白照白鶴馬
⑥菊白白馬豪鶴

白=草原
止=カジノ
馬=市街地
把=クレーンが設置されている池(何故かシャケがいっぱいいる)
旭=大使館
鶴=運動場
照=銀行
菊=断崖絶壁
豪=処刑場(ギロチン台が有る)

※マップ外は塩湖です


"
"
6 : ◆2017/xzYU2 :2017/01/02(月) 22:01:49 VJHNRrOg0
《状態表例》

【1-初/白/一日目/6時】 ※左から 場所/地図記号/日付/時間 時間は一つ前のSSより遡ってはいけません(同時間帯はOK)
【ヤンキーをボコる山P@抱いてセニョリータ(山下智久)】 ※左から キャラ名@出典(歌手)
【容姿】山下智久 ※想像しやすいように、歌に関係あっても無くても、なんかこれっぽくね?って奴で
【出典媒体】音楽PV ※キャラクターの元媒体 歌詞、音楽PV、カラオケPV、MAD、2chネタ、その他 など
【状態】健康 ※いつもの
【装備】アジャ・コング@プロレス(一緒に歩いている)※いつもの
【道具】支給品一式 ※いつもの、ランダム支給品はあってもなくてもいいです
【思考】殺し合いを打破する。 ※いつもの
【備考】
 ※アジャ・コングをバレンティン(東京ヤクルトスワローズ)と勘違いしています。 ※いつもの

《状態表コピペ用》

【-//一日目/時】
【@()】
【容姿】
【出典媒体】
【状態】
【装備】
【道具】
【思考】
【備考】


7 : ◆2017/xzYU2 :2017/01/02(月) 22:02:25 VJHNRrOg0
次から本編 予約制度はありません


8 : 1st ◆2017/xzYU2 :2017/01/02(月) 22:02:52 VJHNRrOg0
I have a pen
(私は貴方を殺せるものを持っています)

I have a apple
(私は貴方の運命を持っています)



Apple pen!
(ハイ、いま貴方は絶命しました!)



I have a pen
(私は優勝する力を持っています)

I have a pineapple
(私は貴方と違って神に近い精神を持っています)



pineapple pen!
(ただの人殺しである貴方が私に殺されるのは当然なのです!)



Applepen... pineapplepen...
(人を殺した者には…… 因果が巡ってくるのです……)


Pen-pineapple-Apple-pen!
(だから貴方は一人寂しく地獄に落ちていくのです、私の優勝のために!)


Pen-pineapple-Apple-pen!
(しかしこれは私の野望の一歩目、貴方は私の野望の一員となれたことを光栄に思いなさい!)

【たった今人を殺してきた僕@Bohemian Rhapsody 死亡確認】

【3-秋/白/一日目/6時】
【I@PPAP(ピコ太郎)】
【容姿】ピコ太郎
【出典媒体】PV
【状態】健康
【装備】ペン@PPAP
【道具】支給品一式
【思考】優勝する。
【備考】
 ※たった今人を殺してきた僕の支給品一式は3-秋に放置されています。


9 : ◆2017/xzYU2 :2017/01/02(月) 22:03:43 VJHNRrOg0
投下終了です
だいたいこんな感じでいきます


10 : ◆9zqLdn6d2Y :2017/01/02(月) 22:38:39 dlVzNBhU0
投下します


11 : ◆9zqLdn6d2Y :2017/01/02(月) 22:39:12 dlVzNBhU0

 不可解だった。

 あの男の存在こそが我が武勇伝にとって唯一の障害であろう。

 大地を割り、海を裂き、神を気取ったあのモーセすら断罪した。

 しかしどれだけの偉業を成し遂げようと、あの男の覇道に蹂躙されてしまった。

「この俺を……またもしくじりの枠に収めようというのか」

 サングラスの漆黒。その奥に光る瞳に反映するは怒りの焔。殺戮の泥。

「支配者は俺だ……! お前如きが頂点に君臨するなど、神が認めても俺が認めてなるものか」

 その男こそ天才。

「この世界に存在する絶対王者が俺であり、圧倒的敗者がお前」

 まさに天災。

「モーセと同じ結末をお前にも味合わせてやる」

 審判の時来たれり。敗者は彼の前に跪け。

「生命は平等とは限らない。俺がパーフェクトならお前はイナビリティの存在に過ぎない」


 さあ、民衆よ。彼の名前を叫び褒め称えよ。


 その力、かの大地讃頌をも超越する武勇の完全人間なり。


「ゴジラに傷を与えた程度で誇るなよ――I’m a perfect human」


 その掌に握られたりんごが音を響かせ――砕け散った。

 
【6-九/鶴/一日目/6時】
【nakata@PERFECT HUMAN (RADIO FISH)】
【容姿】I’m a perfect human
【出典媒体】I’m a perfect human
【状態】健康
【装備】
【道具】支給品一式
【思考】ピコ太郎を殺し、自分がI’m a perfect humanであることを証明する。
【備考】


12 : ◆9zqLdn6d2Y :2017/01/02(月) 22:39:22 dlVzNBhU0
以上です


13 : ◆TscLnyJXsc :2017/01/02(月) 22:58:15 T.gw7Lt20
許して欲しい俺@BE MY BABY(COMPLEX)

baby@スリル(布袋寅泰) baby@スリル(布袋寅泰) baby@スリル(布袋寅泰) baby@スリル(布袋寅泰) baby@スリル(布袋寅泰) baby@スリル(布袋寅泰) baby@スリル(布袋寅泰)
baby@Baby(Justin Bieber) baby@Baby(Justin Bieber) baby@Baby(Justin Bieber)
BABY@BABY BABY(銀杏BOYZ)BABY@BABY BABY(銀杏BOYZ)BABY@BABY BABY(銀杏BOYZ)BABY@BABY BABY(銀杏BOYZ)BABY@BABY BABY(銀杏BOYZ)BABY@BABY BABY(銀杏BOYZ)
BABY@BABY BABY(GOING STEADY)BABY@BABY BABY(GOING STEADY)BABY@BABY BABY(GOING STEADY)蠅@五月の蝿(RADWIMPS)BABY@BABY BABY(GOING STEADY)BABY@BABY BABY(GOING STEADY)BABY@BABY BABY(GOING STEADY)

投下します。


14 : 名無しさん :2017/01/02(月) 22:58:30 T.gw7Lt20
「俺を許してよ」
「僕は君を許さないよ」

【許して欲しい俺@BE MY BABY 死亡確認】
【baby@スリル 死亡確認】
【baby@スリル 死亡確認】
【baby@スリル 死亡確認】
【baby@スリル 死亡確認】
【baby@スリル 死亡確認】
【baby@スリル 死亡確認】
【baby@スリル 死亡確認】
【baby@Baby 死亡確認】
【baby@Baby 死亡確認】
【baby@Baby 死亡確認】
【BABY@BABY BABY(銀杏BOYZ) 死亡確認】
【BABY@BABY BABY(銀杏BOYZ) 死亡確認】
【BABY@BABY BABY(銀杏BOYZ) 死亡確認】
【BABY@BABY BABY(銀杏BOYZ) 死亡確認】
【BABY@BABY BABY(銀杏BOYZ) 死亡確認】
【BABY@BABY BABY(銀杏BOYZ) 死亡確認】
【BABY@BABY BABY(GOING STEADY) 死亡確認】
【BABY@BABY BABY(GOING STEADY) 死亡確認】
【BABY@BABY BABY(GOING STEADY) 死亡確認】
【BABY@BABY BABY(GOING STEADY) 死亡確認】
【BABY@BABY BABY(GOING STEADY) 死亡確認】
【BABY@BABY BABY(GOING STEADY) 死亡確認】

【1-初/白/一日目/6時】
【蠅@五月の蝿(RAD WIMPS)】
【容姿】蠅
【出典媒体】タイトル
【状態】健康
【装備】許さないという気持ち
【道具】支給品一式
【思考】許さない
【備考】
※BE MY BABYのMYとは所有格ですので、BABYランダム支給品ごと許して欲しい俺の支給品になりました。
しかし、許して欲しい俺は許されずに死にました、ということはMYの部分は失われ、BABY達は再びただのBABYに戻るはずです。
しかし、考えても見て下さい人に育てられた動物は野生に帰れないといいます。
つまり、一度BE MY BABYになったBABYは二度とBABYに戻れず、死ぬということです。
つまり許して欲しい俺の支給品は全て爆発しました。


15 : ◆TscLnyJXsc :2017/01/02(月) 22:59:10 T.gw7Lt20
俺を許してよ(投下終了します)


16 : ◆9zqLdn6d2Y :2017/01/02(月) 23:03:36 dlVzNBhU0
投下乙です。謝ったなら俺は許す、例外じゃなければ

投下します


17 : ◆9zqLdn6d2Y :2017/01/02(月) 23:03:47 dlVzNBhU0


 物語の主役と云えばわたし。
 冗談でも比喩でも無くて自分の人生。つまり物語の主役はわたしである。
 ちょっと気取った言い方だけど、なんだか小説みたいな表現の仕方でちょっとお気に入りです。
 
 でも普段はこんなこと言いませんよ?
 不思議ちゃんみたいで友達から嫌われそう……。でも、わたしにも大切な人がいました。

「……そっか。今はもう……」

 ふと右側へ自然と顔が動いていました。そこに誰かが居る訳でもないのに、誰かを意識している。
 ページが抜けたように、大切な存在が欠けている。そのことに慣れたつもりでした。
 季節が何度変わろうとも、わたしはあなたのことを忘れることができなかった。

「また泣いちゃってる……わたし、だめだなぁ。いつまでも未練で」

 叶わない思いだって知っている。分かりきっている。それはもう夢なんだって。
 いつまでも一緒にいたかった。となりで笑っていていたかった。
 でもそれはもう、駄目なんだ。わたしだって本当は気付いているんだ。あなたがもう、帰ってこないことは。

 心が立ち止まる。どれだけ意識を固めても、心は納得してくれない。
 あなたを忘れるほんの少しの勇気すら、今のわたしには湧いてこない。
 
 こんな日が来るなんて思わなかった。

 こんな日が来ることなんて思いたくもなかった。

 会いたい。わたしはあなたにもう一度だけ会いたい。

 わたしの心に記されたあなたのアドレスは今も残っています。

 だから何度だって。繋がるまでわたしはあなたとの思い出を追い掛けます。


「本当にごめんなさい……今のわたしにはあの人しか見えないから」


 誰かの生命が森の中へ星のように消え去っても。


 あなたを忘れる勇気がわたしを奮い立たせて、もう一度だけ一緒に笑うために。


【ガ↑リレオ〜〜〜@Bohemian Rhapsody(QUEEN)】

【1-秋/城/一日目/6時】
【わたし@M(プリンセスプリンセス)】
【容姿】女性、18歳、髪型はショート
【出典媒体】上記妄想(探しても媒体が見つかりませんでした)
【状態】あなたを忘れる(くらいなら誰かを殺す)勇気
【装備】
【道具】支給品一式
【思考】あなたともう一度会うために、全ての星(参加者)を森(冥府)へ返す。
【備考】
※正しくは「わたし」では無く「私」です。書き終えた後に気付きました。


18 : ◆9zqLdn6d2Y :2017/01/02(月) 23:04:04 dlVzNBhU0
終了です


19 : ◆Zzed4QwrgA :2017/01/02(月) 23:23:58 r1tbLeVw0
投下します


20 : ◆Zzed4QwrgA :2017/01/02(月) 23:24:37 r1tbLeVw0

その心が求めるものに正直なればなるほど

加速ついて、止められなくて

最後にはバケモノになったっていい

だって君の絶望喰らってやれる。

でも、ただの化け物じゃつまらない。

だから、今――――、



さ! け! べ!



【叫んだ少女@叫べ 死亡確認】


【2-夏/旭/一日目/6時】

【オーズ!オーズ!カモォン!!@Anything Goes!】
【容姿】叫べコンボ
【出典媒体】Anything Goes!
【状態】健康
【装備】変身ベルト
【道具】支給品一式
【思考】優勝する。


21 : ◆Zzed4QwrgA :2017/01/02(月) 23:25:06 r1tbLeVw0
投下終了です


22 : ◆Zzed4QwrgA :2017/01/02(月) 23:31:50 r1tbLeVw0
やっぱり名前を【オーズ!オーズ!オーズ!カモォン!!@Anything Goes!】に変更します


23 : ◆CDIQhFfRUg :2017/01/03(火) 00:40:53 7yWTdTIU0
投下します


24 : 嵐吹くこの街がお前を抱く ◆CDIQhFfRUg :2017/01/03(火) 00:43:01 7yWTdTIU0
  

「「「「「体中に風を集めて巻き起こせ♪ A・RA・SHI A・RA・SHI for death......」」」」」

 空間に白と緑の刃エフェクトが舞う。
 《ボクら》と名乗った5人集合体のさわやかな肉塊が処刑場に嵐を呼び起こす。
 「お前」は吹き抜ける風に目を閉じ、名状しがたき何かに追われるように走り出した。

(何だ、あの化け物は……!? いきなりこんなところにあんな何かが!?)

 個性のある5つの顔および手と足がたくさん生えている肉塊が宙に浮かんでいるのを振り返る暇もなく「お前」は走る、走る、走る。このままでは殺されてしまうからだ。
 だが、BPMが速い。
 風刃エフェクトの速度がリズムよく上がっていく。
 「お前」がギロチン台のそばに隠れることができるまでに、「お前」の体は社会の荒波に揉まれたかのようにぐちゃぐちゃになった。

(こんなところで……終わるのか……)

 どうにか何かから自分の姿を隠すことが出来たが、「お前」はひどく疲労し、Tシャツからも血がにじんでいる。
 「お前」はちかちかと明滅する視界の中に誰かの姿を見つけた。
 姿……。
 「お前」は思い出す。盟友であり家族のような存在でもあった、かつての相棒のことを。

「もし呼ばれていたら、体を紅に染めてでもこんなクソ音楽を終わらせるのだろうな、あいつは。
 だが俺はそこまではできねえな……逃げるように走ることしか俺にはできなかった……まさかあいつが……死の間際に見えるとはな」
「違いますよ」
「えっ」

 瞬きをするとそこにいたのは旅人衣装の謎の男だった。
 肩にアゲハ蝶を載せている。

「お初にお目にかかります。旅人と申します。先ほどから一緒に居たのですがやっと気づいてくれましたか。すぐそばにいたのに」
「す、すまない、嵐から逃げるのに夢中で」
「あまり喋っている時間がありません。手伝っていただきますか」
「何を?」
「世界の表情を変えるための一手です」

 顔を隠した旅人は「お前」の問いにそう答えた。
 そして無言でギロチン台の引き紐を指さした。



 でっかい愛や希望を探して《ボクら》は雲のように漂っていた。
 この弱肉強食社会において愛とは死であり、希望とはすなわち獲物である。
 ギロチン台の前に両手を広げる旅人を発見する。希望だ。《ボクら》は肉塊の背後から肉の翼を広げ、5つの顔からベロを出して歌った。

「「「「「step by step ブッ飛ぶよりも裸のまま突っ込め〜♪」」」」」

 旅人は両手を広げたままその場から動かず、軽快な砂漠音楽のテンポに載せて揺れ動く。
 てん・てーれ・てん・てーれ・てん・てーれ・てん・てーれ・てん・てーれ・てん・てーれ・てん・てーれ・て……。
 次第にそれは蜃気楼のようにあいまいな影になっていく。が、夢に満ちた若者たちの集合体である《ボクら》はそれに気づかなかった。
 気づけば旅人の体はアゲハ蝶の集合体へと変化していた。
 《ボクら》はふわりふわりと舞い遊ぶように旅人の体をすり抜ける。センターに付いていた大野君の顔がすっぽりと木の枠へと収まる。


25 : 嵐吹くこの街がお前を抱く ◆CDIQhFfRUg :2017/01/03(火) 00:43:50 7yWTdTIU0
 
「今だ!やれ!」

 「お前」が紐を引くと、漆黒の刃が大野君の顔に振り下ろされた!
 GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!
 世の果てのような悲鳴!

「うわあ……」
「これでしばらく動けないでしょう。今のうちに行きましょう」

 二人は紅に染まった肉塊を振り返ることのないままその場を後にした……。



 処刑場の周りは果てがあるのかもわからない荒野だった。
 旅人と「お前」は二人、ただひたすらに歩く。

「なんで助けてくれたんだ? これから、どこまで行くんだ? この悪夢は……終わるのか?」

 「お前」は旅人に尋ねた。
 旅人は答えた。

「終わりなどはありませんよ。終わらせることは、出来ますけどね」


【6-秋/豪/一日目/7時】

【何かに追われるように走り出すお前@紅(X JAPAN)】
【容姿】男
【出典媒体】歌詞
【状態】ぼろぼろ
【装備】なし
【道具】支給品一式
【思考】とりあえず旅人についていこう。「紅に染まったこの俺@紅(X JAPAN)」が心配
【備考】

【旅人@アゲハ蝶】
【容姿】砂漠風の旅人姿、顔が見えない
【出典媒体】歌詞
【状態】健康
【装備】アゲハ蝶@アゲハ蝶
【道具】支給品一式
【思考】旅をする
【備考】
※アゲハ蝶を操れます。


「大野君がいなくなっちゃった」
「大野君……」
「紅白の司会だったからね、ライブには来れなかったんだ」
「でも《ボクら》は五人一緒だよ」

 風の刃で《ボクら》は背中に大野君の顔の形の傷を彫った。
 これで五人一緒だ。まだまだ《ボクら》の夢は終わらない。

【6-秋/豪・ギロチン台前/一日目/7時】

【ボクら@A・RA・SHI】
【容姿】メンバー四人の顔とたくさんの手足が肉塊から生えている。五人一緒。
【出典媒体】歌詞
【状態】HP4/5
【装備】なし
【道具】支給品一式
【思考】愛(死)と希望(獲物)を探す
【備考】
※体中に風を集めて巻き起こせA・RA・SHIできます。


26 : ◆CDIQhFfRUg :2017/01/03(火) 00:44:16 7yWTdTIU0
投下終了です


27 : ◆CDIQhFfRUg :2017/01/03(火) 00:48:18 7yWTdTIU0
《修正》
紅白の司会は相葉君だったので、死んだのは相葉君になります。

修正を終了します。


28 : ◆Dz2A8sssnA :2017/01/03(火) 00:51:56 HxqalDI.0
投下します


29 : ◆Dz2A8sssnA :2017/01/03(火) 00:52:22 HxqalDI.0


僕は泣いているのか……
なぜ泣いているのか忘れてしまったが……
何か失くしてはならないものを忘れてしまったようで……
それはもう二度と戻らない そんな気がする……


「誰も旅の途中……本当の自分を探している」


……そうか。
僕も僕自身を探しているのか。
 
なら――僕は何者なんだ。
 

「――自分の信じた道を走れ」 


それだけ言うと男はオーロラと共にどこかへ消えた。


選択肢は何万通りもあっただろう。
けれども、僕が欲しかったのは……選べるのたった一つ。

僕が選ぶのは…………………。

【1-名/馬/一日目/6時】
【僕@レプリカ(坂本真綾)】
【容姿】ブロンドの髪を結った端正な容姿の青年
【出典媒体】歌詞
【状態】健康
【装備】銀色の義手
【道具】何らかの武器@レプリカ
【思考】?????
【備考】

【?-?/?/一日目/6時】
【僕@JOURNEY THROUGH THE DECADE(GACKT)】
【容姿】GACKT(右手がライダーマン)
【出典媒体】音楽PV
【状態】健康、一流
【装備】グラサン、その他不明
【道具】支給品一式
【思考】脱出する。
【備考】
 ※一流です。自身の選択を誤りません。
 ※オーロラでどこにでも移動できます。


30 : ◆Dz2A8sssnA :2017/01/03(火) 00:52:46 HxqalDI.0
投下終了です


31 : ◆2017/xzYU2 :2017/01/03(火) 11:03:45 Omc.EPTM0
おはようございます、沢山の投下ありがとうございます。
新春早々変なロワ旗揚げした夢見たらと思ったら現実で僕は割りとため息ついています。

と言うことで現在の状況をまとめました。
スレに載っけると長くなるのでwikiにまとめました、ご確認ください。

歌うんだロワお話一覧
ttp://seesaawiki.jp/thebattleroyal/d/%b2%ce%a4%a6%a4%f3%a4%c0%a5%ed%a5%ef%a4%aa%cf%c3%b0%ec%cd%f7

歌うんだロワ参加者一覧
ttp://seesaawiki.jp/thebattleroyal/d/%b2%ce%a4%a6%a4%f3%a4%c0%a5%ed%a5%ef%bb%b2%b2%c3%bc%d4%b0%ec%cd%f7

歌うんだロワ地図関連
ttp://seesaawiki.jp/thebattleroyal/d/%b2%ce%a4%a6%a4%f3%a4%c0%a5%ed%a5%ef%c3%cf%bf%de%b4%d8%cf%a2

これからも何卒よろしくお願いたします


32 : ◆NIKUcB1AGw :2017/01/03(火) 21:32:22 KVrYAhDs0
wiki乙です
書き手枠二人で投下します


33 : 過ちは恐れずに進むあなた ◆NIKUcB1AGw :2017/01/03(火) 21:33:35 KVrYAhDs0
カジノの前で、一人の男が途方に暮れていた。

「くそっ、なんでこんなことになってしまったんだ……。
 僕には徳川埋蔵金を掘り出すという使命があるのに……」

男は、落胆のあまり声に出して呟く。

「へえ、埋蔵金か。いいね、それ」
「え?」

後ろから響いてきた声に反応し、男は反射的に振り向く。
だが彼の頭部は振り向くどころか、360度回転して元の向きに戻ってしまった。
こんな芸当、ナポレオンズ以外の人類には絶対にできないことである。
では男の正体は、ナポレオンズなのか。いや、そうではない。
答えは簡単。男の首は、振り向くのと同時に鋭利な刃物によって切断されていたのだ。


「これから石油掘りに行こうと思ってたけど……。埋蔵金もいいねえ。
 よし、さっさと優勝して、埋蔵金見つけに行こう!
 忙しくなってきたぞー!」

目の前で血の海に沈む首なし死体を意に介さず、殺人を犯したばかりの青年は陽気に呟く。
その有様、まさにクズである。

「じゃ、出発!」

そう叫んでその場を後にしようとした青年だったが、2,3歩進んだところで止まる。

「やっぱ、このおっさんの荷物も回収しておくか。
 何か武器は……。ツルハシぃ? まあ、ないよりはましか」

こうして死体の荷物を漁ると、青年は改めてその場を後にしたのであった。

【糸井重里@愛しさと切なさと心強さと(篠原涼子) 死亡】

【1-春/止/一日目/6時】
【お兄さん@全力バタンキュー(A応P)】
【容姿】松野おそ松@おそ松さん
【出典媒体】歌詞
【状態】大変ご多忙
【装備】研ぎ澄まされた刃@もののけ姫(米良美一)
【道具】支給品一式、ツルハシ
【思考】
基本:優勝して埋蔵金を見つけに行く


34 : ◆NIKUcB1AGw :2017/01/03(火) 21:34:13 KVrYAhDs0
投下終了です


35 : ◆rGsyzf.Kp2 :2017/01/04(水) 02:00:09 //FK9KJo0
ロワが始まった瞬間――天国から迎えが来て昇ってしまった。
それがお爺さんの寿命であった。


【時計の持ち主のお爺さん@大きな古時計 死亡】


※どこで亡くなったのかは後の書き手さんにお任せします


36 : ◆rGsyzf.Kp2 :2017/01/04(水) 02:02:17 //FK9KJo0
タイトルは
お爺さんの長かった100年の人生
です

ゲリラ投下でした


37 : DAN DAN 紅に染まっていく ◆rGsyzf.Kp2 :2017/01/04(水) 02:27:08 //FK9KJo0
俺の身体が紅に染まっていた。
そういうオチだ。

【紅に染まったこの俺@紅(X-JAPAN) 死亡】


「一体、何がどうなっているというのですか!?」

ゲーム開始時から既にくたばった参加者が独り。
だが、彼を驚愕させたのはそれだけでは無かったのだ。

「私はいったい何体存在しているのですか!?」

フ○ーザの視界には32人もの己がいっぱいに広がっていた。

【5-秋/鶴/一日目/6時】
【フ○ーザ@F (マキシマムザホルモン)】
【容姿】フリーザ第4形態@ドラゴンボールZ
【出典媒体】歌詞
【状態】健康
【装備】不明
【道具】支給品一式
【思考】何故こんなに私がいるのですか!?
【備考】
※フ○ーザという歌詞が32回あるので32人存在しているという解釈をしています。
※紅に染まったこの俺に手は下していません。最初から紅に染まっていたのか、フ○ーザがここに出現する前に誰かが手を下していたのかは不明です。


38 : ◆rGsyzf.Kp2 :2017/01/04(水) 02:30:42 //FK9KJo0
再び投下。
フ○ーザも一応前の書き方に習ってHP32/32という書き方が相応しいかもしれないですね


39 : ◆NIKUcB1AGw :2017/01/04(水) 21:49:51 Y2WedOL.0
投下します


40 : 兄貴と私 ◆NIKUcB1AGw :2017/01/04(水) 21:50:46 Y2WedOL.0
「殺し合えとは、ふざけたことを……。
 この俺がいる限り、こんなくだらないイベントを開くやつなんかの思い通りにはさせないぜ!」

縦縞のユニフォームに身を包んだ巨漢は、力強くそう宣言した。
彼こそは日本球界にその名をとどろかすスーパースター、金本知憲(全盛期)である。

生き馬の目を抜くプロ野球界を生き抜いてきた精神力。
「鉄人」と呼ばれるまでに鍛えられた肉体。
たしかに彼には、殺し合いをどうにかできると思わせるだけの能力があった。
だが悲しいかな、どんなに高い能力を持っていても彼は一般人。
人知を超えた力への抵抗力は、まったく備わっていなかった。

「まだ6時だぞ! 寝てろ!」

大声を聞きつけてやってきた妖怪によって、金本はあっさり眠らされてしまうのであった。


【4-九/白/一日目/6時】
【金本知憲@六甲おろし(水樹奈々)】
【容姿】全盛期の金本
【出典媒体】エピソード
【状態】熟睡
【装備】なし
【道具】不明
【思考】
基本:殺し合いの打破
【備考】
何事もなければ、昼頃まで起きません。


【朝眠い原因の妖怪@ようかい体操第一(Dream5)】
【容姿】バク
【出典媒体】歌詞
【状態】健康
【装備】なし
【道具】不明
【思考】
1:朝に起きてるやつを眠らせる
2:昼になったらどうしよう
【備考】
朝に限り、他人の眠気を増幅する妖術が使えます。


41 : ◆NIKUcB1AGw :2017/01/04(水) 21:51:58 Y2WedOL.0
投下終了です


42 : ◆2017/xzYU2 :2017/01/04(水) 22:42:28 .mhgd25U0
皆様投下ありがとうございます!
>>40までまとめました、ご参考ください。
ttp://seesaawiki.jp/thebattleroyal/d/%b2%ce%a4%a6%a4%f3%a4%c0%a5%ed%a5%ef%a4%de%a4%c8%a4%e1


43 : ◆CDIQhFfRUg :2017/01/05(木) 01:27:23 T.0QX3AY0
投下と収録乙です。脚注力に初笑いしました。
投下します。


44 : 街は矛盾の雨 ◆CDIQhFfRUg :2017/01/05(木) 01:30:14 T.0QX3AY0
 

凄惨な殺し合いの現場、照エリアにある銀行の事務室で七人の男女が身を寄せ合っていた。

「うえ〜〜ん……」
「泣かないで、涙化粧の女の子さん……」「いったいどうしてこんなことになったんだよ……あなたさん、何かわかったっすか?」
「いや、ネットも生きてないみたいだ。なんでかyoutubeは見れるけどね」
「そうっすか……」

少しがっかりした顔であなた(鐘を鳴らすほう)はデスクトップpcの前から立ち上がる。
大親友と大親友の彼女は、出会ってからずっと泣きじゃくったままの涙化粧の女の子を介抱しつつ、部屋の隅を見やった。
ふざけている外人の男女と爆笑問題田中っぽい外人が、酒を飲みながら手をたたいて笑っている。
すげえよな、外人って殺し合いの場でもあんなにのん気だ。
七人は偶然銀行の近くにいたので、集まったのだ。

「うえ〜〜ん……」
「英語が喋れる人がせめていたら協力してもらえたのかもだけど」「身振り手振りでここまで連れてくるのが精いっぱいだったからなあ」
「まあまあ大親友と大親友の彼女さん、数が集まっただけでもよしとしましょう。とりあえず、これからの対策を練りましょう」
「あなたさん、頼りになるっす」

大親友は頼れて話の通じるあなた(鐘を鳴らすほう)から希望の匂いを感じていた。
そこに、ドアの開く音。

「誰だ?」

一斉に全員がドアの方を向くと、にっこり笑顔をしたニュースキャスターが立っていた。
ニュースキャスターは開口一番、

「日本人はいますか?」
「いるけど……なあ、あんた、」
「そうですか。では、仕方ありませんね」

ニュースキャスターは懐から9mm拳銃を取り出すとぱららららした。えっ、と叫ぶ暇もなく、手を挙げた体制のまま大親友の体が不規則に跳ねた。

【大親友@純恋歌(湘南乃風) 死亡】

「きゃああああ!!?? 大親友くん!?」
「ああ、日本語……日本人ですね……」

流れ弾を喰らったあなた(鐘を鳴らすほう)が声にならない悲鳴を上げて崩れるのを確認し、親友の彼女が悲鳴を上げた。
が、日本語をしゃべってしまったので銃口は大親友の彼女のほうに向いた。
ニュースキャスターがまたぱららららする。

【大親友の彼女@純恋歌(湘南乃風) 死亡】

「ぐっ……な、いったい何が……」
「うえ〜〜ん……」
「この泣き声は日本人でしょうか? 判断はできませんが……あなた、は日本人のようですね」
「どういうことだ、誰だかわからないニュースキャスターさん」

肩から血を流しながらあなた(鐘を鳴らすほう)はニュースキャスターに問いかけた。
ニュースキャスターは平然と答える。
 
「日本人がいると困るんですよ」
「なんだと……?」
「日本人はいませんでしたって、日本の皆さんに伝えられないでしょう?」

ぱららららされ、希望の匂いとともにナイスミドルの腹部から鮮血の華が咲いた。

【あなた@あの鐘を鳴らすのはあなた 死亡】

ニュースキャスターはそのまま、先ほどから聞こえる泣き声の主の少女が日本人であるか確認しようと奥へ進む。
しかし、涙の声をかき消すように歌が聞こえた。
首を曲げてそちらを見ると、決死の表情でwe are the worldを歌う外国人三人の姿があった。
we are the world アフリカの飢饉と貧困救済のためのチャリティーソング、人類の平等と平和を願う曲である。
その歌い手である外国人三人が、無慈悲な殺戮を前に、その曲を口ずむ感情は、理解に値するだろう。
しかし、ニュースキャスターにはそのソングは「こいつらは少なくとも日本語は喋らないのだな」という情報を与えただけにすぎなかった。

「おや……あなたは、爆笑問題の田中さんではありませんか?」
「what's!?(訳:何て!?)」


45 : 街は矛盾の雨 ◆CDIQhFfRUg :2017/01/05(木) 01:30:55 T.0QX3AY0
 
そして、外国語を口ずさんだからといって、それがすなわち外国人であるという証拠にはならない。
ちょうど真ん中で歌っていた男が爆笑問題の田中に似ていたがために、ニュースキャスターの食指がそちらへと向く。
言った後の反応がどことなく正月番組の芸人の過剰リアクションっぽかったのも、ニュースキャスターの疑念に拍車をかけた。

「もしかして、それまでテレビで見かけなかったのに正月ものまね番組に唐突に出てくる外国人のものまね芸人の皆様方でしょうか?」
「mm.....!?(訳:んん……!?)」
「一気にそんな気がしてきました。だって、有名な歌手っぽすぎますものね」

ぱらららら。9mmパラベラム弾が銀行のカベに赤いアーティスティック模様を描いた。

【爆笑問題田中に似てる奴@We Are The World(USA for Africa) 死亡】

「いいですか? 日本人はグロテスク・ニュースには、日本人がまきこまれてないことを望んでいるんです。
 日本人がまきこまれたニュースは、日本人をおびやかしてしまいますが、日本人さえまきこまれてないことにしておけば、おびやかされないんですよ。
 生存者に日本人っぽい因子が混じっていると、非常に困るんです。ですので、日本人を抹消します」
「――Lady, get away!(訳:逃げろ!お嬢ちゃん!)」
「逃がしませんよ」
「うええええええん!!!!」

涙化粧の女の子が、ふざけてる奴(男)の号令とともに走り出すも、そちらにぱららららが放たれる。
しかしそれは、いつのまにか駆け出していたふざけてる奴(女)が間に入ることで阻害された。

【ふざけてる奴(女)@We Are The World(USA for Africa) 死亡】

もちろんふざけてる奴(女)は人間からただのクズ肉へとランクダウンするが、
その間にふざけてる奴(男)がニュースキャスターの腰をつかみ、床へと引き落とす。ニュースキャスターは床に顎をしたたかに打ち付ける。
ふざけてる奴(男)が叫ぶ。
なお、ここからは画面に日本語字幕が入っている体で読んでください。

『俺にはあんたが言ってることは分からん! わからんが、あんたが狂ってることは分かるぞ!』
「クレイジー? クレイジーなのは殺し合いを開いた社会的犯罪者でしょう。私は殺人を強制されている被害者です、よ!」

成人男性のプレスをものともせず、ニュースキャスターは跳ね起きる。
最近のニュースキャスターは芸能人の代わりに番組で無茶をすることもある。そのうえで本業もこなす。芸能人だけやってる奴らとは鍛え方が違う。

『な、なんて力だ……日本のニュースキャスターはこんなに鍛えてるのか? だが、神が絶対にあんたを裁く!』
「神? あはは。神様を信仰するなんて、まるで日本人じゃないみたいですね。いい演技です」

銃口が男を射抜く位置へと。引き金が引き絞られる。

「ですが残念でしたね。助け合いの精神さえ発揮しなければ、日本人だと見抜かれずに済んだのに」

ぱらららら。

【ふざけてる奴(男)@We Are The World(USA for Africa) 死亡】

「もう一人は……逃がしましたか……追いかけないといけませんね」

肩こりをほぐすようなしぐさでニュースキャスターは残念そうに呟く。若干の疲労があるものの調子は良好。
時刻は7時。天気は快晴。本日も殺し合い日和。参加者たちはめいめいに、血みどろの歌を歌います。日本人はそこからいずれいなくなるでしょう。
以上、現場からお送りしました。


【5-夏/照・銀行の事務室/一日目/7時】

【嬉しそうに「乗客に日本人はいませんでした」「いませんでした」「いませんでした」って言ったニュースキャスター@JAM(THE YELLOW MONKEY)】
【容姿】金井憧れアナ
【出典媒体】歌詞
【状態】健康
【装備】9mm拳銃
【道具】基本支給品
【思考】日本人を殺す。
【備考】

【5-夏/照/一日目/7時】

【涙化粧の女の子@JAM(THE YELLOW MONKEY)】
【容姿】夏川りみ(幼少時代)
【出典媒体】歌詞
【状態】涙
【装備】なし
【道具】基本支給品
【思考】うえええん!!
【備考】
※涙が枯れません。


46 : ◆CDIQhFfRUg :2017/01/05(木) 01:32:10 T.0QX3AY0
投下終了です。1時間進めました。よろしくお願いします。


47 : <削除> :<削除>
<削除>


48 : ◆rGsyzf.Kp2 :2017/01/05(木) 21:01:25 L2X0g9qo0
すいません、文章消えました
投下取り消します

申し訳ありません


49 : ◆2017/xzYU2 :2017/01/05(木) 21:34:47 gPYTgSxY0
投下お疲れ様です。
ついに参加者が37人と初期名簿の面子を下回りました、とてもハイペースです
と言うことで>>45までwikiを更新しました、ご参考ください
ttp://seesaawiki.jp/thebattleroyal/d/%b2%ce%a4%a6%a4%f3%a4%c0%a5%ed%a5%ef%a4%de%a4%c8%a4%e1


50 : ◆CDIQhFfRUg :2017/01/05(木) 23:54:47 zPaPwSAE0
>>48
dont mind dont mind 後ろを振り向くな
dont mind dont mind 明日はまた来る

>>49
すばやい収録おつです。たすかります。 

投下します。


51 : 愛という毒 ◆q/baRh/vls :2017/01/05(木) 23:55:34 zPaPwSAE0
 

ガラガラヘビがやってくる


ガラガラヘビがやってくる


あいつらは グルメじゃない


なんでもペロリ


でもたまにはグルメに行ってみるのもどうかな


ラーメン大好き小池さん


ラーメンを差し出す


おいしい。


【3-名/白/一日目/7時】

【ガラガラヘビ@ガラガラヘビがやってくる】
【容姿】緑色のヘビ
【出典媒体】歌詞
【状態】おなかがすいている
【装備】なし
【道具】なし
【思考】おいしい。
【備考】
※ラーメンを美味しんでいます。

【小池さん@ラーメン大好き小池さんの唄(シャ乱Q)】
【容姿】小池さん
【出典媒体】歌詞
【状態】ラーメンが食べたい
【装備】ラーメン
【道具】基本支給品
【思考】ラーメン
【備考】
※ラーメンを美味しんでいます。


52 : ◆CDIQhFfRUg :2017/01/05(木) 23:56:50 zPaPwSAE0
なんかトリップがずれましたが投下終了です。


53 : ◆2017/xzYU2 :2017/01/06(金) 22:25:07 DazesiNQ0
投下お疲れ様です!!
wiki更新定期です
ttp://seesaawiki.jp/thebattleroyal/d/%b2%ce%a4%a6%a4%f3%a4%c0%a5%ed%a5%ef%a4%de%a4%c8%a4%e1


54 : ◆NIKUcB1AGw :2017/01/11(水) 21:47:10 aapYVQF.0
投下します


55 : いったいどこまでできるかもわからないけど ◆NIKUcB1AGw :2017/01/11(水) 21:48:11 aapYVQF.0
「ラストチャンス」という言葉がある。
成功するための、最後の機会だ。
それをつかめなければ、もう二度と這い上がることはできない。
だがつかんだとして、「めでたしめでたし」になるとは限らない。
手にした栄光がその先も続くことなど、誰も保証してはくれないのだから。


◆ ◆ ◆


今、僕の目の前には血まみれの少年が倒れている。
彼を傷つけたのは、僕だ。

「まだ……死ねない……。僕は、彼女を……」

もうしゃべるのも辛いだろうに、彼が呟く。
彼には、もう一度会いたい人がいるのだろう。
その思いに、感じるものがないわけではない。
だがそれでも、僕は彼を殺さなければならない。

「サンダー、とどめを」

僕に支給された怪鳥に、指示を出す。
それを受けたサンダーは、体から電撃を放ち少年を攻撃する。
電撃は少年の体を焼き尽くし、見るも無残に炭化させた。

「うっ……」

視覚と嗅覚をいやな意味で刺激され、吐き気がこみ上げる。
だが、人を殺したという罪悪感は湧いてこなかった。
僕の心はもう、壊れてしまったのだろうか。
苦しみながら人を殺し続けるよりは、その方が幸せかもしれないけれど。

「僕は生き残る……。そして、願いを叶えるんだ……。
 もうチャンスはない……。これが最後なんだ……」

自分に言い聞かせるように、僕は呟く。
その眼前で、墨と化した少年の死体は風に吹かれて消えていった。


【君を前前前世から探している僕@前前前世(RADWIMPS) 死亡】


【5-九/馬/一日目/7時】
【僕@ラストチャンス(samething else)】
【容姿】まったく特徴の無い青年
【出典媒体】歌詞
【状態】健康
【装備】サンダー@ポケモンいえるかな?(イマクニ?)
【道具】支給品一式
【思考】
基本:優勝し、最後のチャンスをつかむ
【備考】
※サンダーの技は「でんきショック」「ドリルくちばし」「かみなり」「こうそくいどう」です


56 : ◆NIKUcB1AGw :2017/01/11(水) 21:49:00 aapYVQF.0
投下終了です


57 : ◆2017/xzYU2 :2017/01/13(金) 23:47:32 DhUYBShc0
投下お疲れ様です!
wiki更新しています
ttp://seesaawiki.jp/thebattleroyal/d/%b2%ce%a4%a6%a4%f3%a4%c0%a5%ed%a5%ef%a4%de%a4%c8%a4%e1


58 : ◆NIKUcB1AGw :2017/01/20(金) 00:29:32 AvydIP1Q0
投下します


59 : 死の鐘を鳴らすのはあなた ◆NIKUcB1AGw :2017/01/20(金) 00:31:19 AvydIP1Q0
キルミーベイベーは死んだんだ。

【キルミーベイベー@キルミーベイベー(やすなとソーニャ) 死亡】


キルミーベイベーを殺したのは、全身を黒いタイツに包んだ男だった。
いわゆるショッカーである。
彼に、殺人への忌避感など存在しなかった。
邪魔なものは、全て殺す。ただそれだけだ。
一刻も早くこのばかげたゲームを終わらせ、任務に復帰する。
それがショッカーの思考であった。


◆ ◆ ◆


数分後、ショッカーは新たな人影を発見した。
女性……いや、男性? いやいや、やっぱり女性だ。たぶん。
とにかくその人間は顔が赤く、酔っているように見えた。格好の獲物である。
ショッカーはすぐさま、ナイフを構えて女に突進した。
常人より優れた能力を持つショッカーが一般人を殺すのに、奇襲など必要ない。
真っ正面から迫り、恐怖を存分に味わわせて殺すのだ。
あと数歩の距離まで近づいたとき、女とショッカーの目が合う。


次の瞬間、ショッカーは自分の首にナイフを突き立てていた。


脳改造をされている彼でも、本能で理解してしまったのだ。
このままだと、自分は世にも無残な殺され方をすると。
それを避けるために、ショッカーは自ら命を絶つという手段を選んだのである。


◆ ◆ ◆


「なんやこいつ……」

アッコさんは困惑していた。
黒タイツの男が襲ってきたと思ったら突然自殺してしまったのだから、無理もない。

「まあええか。どう見ても悪者やしな、こいつ。
 そんなことより、とっととこんなことおっ始めたアホを見つけて締めてやらんと……」

むろん、アッコさんほどの人が殺し合いに乗っているはずがない。
彼女はこの殺し合いを破壊するという決意を固めていた。

「どれだけの相手かは知らんけど……。まあ、世界救うよりは楽やろ」

酒瓶を手に、アッコさんは不敵に笑った。


【迫るショッカー@レッツゴー!!ライダーキック(藤浩一) 死亡】


【3-初/馬/一日目/7時】
【世界を救った後BARでお酒を嗜むアッコさん@あの鐘を鳴らすのはあなた(和田アキ子)】
【容姿】和田アキ子
【出典媒体】
【状態】ほろ酔い
【装備】マッコリ@日本全国打ち上げ音頭(NO PLAN)
【道具】支給品一式
【思考】
基本:殺し合いの破壊
1:邪魔するやつは容赦しない

【備考】
※迫るショッカーの死体付近に、地獄のナイフ@悪魔くん(こおろぎ'73、WILD CATS)とキルミーベイベーの不明支給品が放置されています


60 : ◆NIKUcB1AGw :2017/01/20(金) 00:32:36 AvydIP1Q0
投下終了です


61 : ◆2017/xzYU2 :2017/01/20(金) 19:52:18 OmBbZ3kk0
投下お疲れ様です!
ttp://seesaawiki.jp/thebattleroyal/d/%b2%ce%a4%a6%a4%f3%a4%c0%a5%ed%a5%ef%a4%de%a4%c8%a4%e1

もしかしたら地図が

□初春夏名秋九
□□□□□□□
①白止白馬白白
②把白旭馬馬白
③馬白白白白馬
④白鶴白白白白
⑤白白照白鶴馬
⑥菊白白馬豪鶴
⑦稀

と追加されるかもしれません


62 : ◆CDIQhFfRUg :2017/05/03(水) 17:34:51 MCYaXNVA0
GW特番めいて投下します。


63 : 思い出 ◆CDIQhFfRUg :2017/05/03(水) 17:35:32 MCYaXNVA0
 

それは、思い出だった。

「――野球、やる?」

殺し合い開始直後、いったいどうしようかと決めかねていた俺たち――デレク・ジーターとジャッキー・ロビンソンに、
どこからか現れた少年が語り掛けてきた。
言語は今一つわからなかったが、野球を誘われているのだということはすぐに分かった。
持っているバットとグローブ、それに真っすぐな笑顔が何よりそれを物語っていた。
そう、野球は世界の垣根を超える言語だ。

たった3人だったが、幸いにもそこは草原で、ボールは支給されていた。
俺たちと少年は、童心に戻ったかのように野球をして楽しんだ。
簡単なキャッチボール。宙を飛ぶ白球を追う楽しさ。
相手に取りやすいように投げるそのとき、いつもより優しい気分になれたりして。
あるいは、バッティング練習。笑いながらの真剣勝負。
そうだ、魔球を投げてこい。どんな変なフォームでもいい、時速1000kmの球が俺たちには見えるぜ。

「ヘイ、キャプテン。楽しいな、野球は」
「あなたにそう呼ばれるのはこそばゆいよ、ロビンソン。でも、嬉しいね」
「ああ。俺たちは自由だぞ。平和の歌でも歌っているような感覚さ」
「そうだな。……本当にそうだ。何も考えなくても楽しかったあの頃の思い出が、ここに――」

俺がふと横を見ると、バッターボックスに立つロビンソンは子供になっていた。

「……ロビンソン?」
「ねえ、どうしたの! 次、ジーターさんの番だよ!」

マウンドに立つ野球少年の声にそちらを意識する。そうだ、バッティング練習をしていたんだ。
ロビンソンがバッターで、少年がピッチャーで。俺がキャッチャー。
ロビンソンは、少年の放った魔球をスイングすることさえできず、するとロビンソンの体が縮んで……。

「何を考えてるんだ? キャプテン」

考え込んだ俺を見透かしたかのように、ロビンソンが白い歯を見せて笑った。

「細かいことは気にするなよ。こんなに楽しいんだから、もっと楽しもうぜ?」
「……ああ、そうだな」

深く考えずに生返事をしたのがいけなかったのかもしれない。
気が付くと俺は、バッターボックスに立っていた。

「じゃあ、投げるよ!」

少年が笑い、右手で白球を握る。
変なフォームだ、という第一印象だった。形もまるでなっていない。プロのリーグではまず見ないような投球フォーム。
それでも、確かに俺にはわかった。この魔球は――時速1000kmをたたき出す。
それが、思い出なのだ。


白球が放たれた。


ジャッキー・ロビンソン。
アメリカ・メジャーリーグに存在していた人種差別と戦い続けた伝説の男。
黒人差別が常識だった古い時代に、背番号42を背負い活躍し続けることで、その偏見を覆した。
素行は品行方正で、問題を起こすことなどなかった。
いや、ご法度だったといってもいい。差別と戦う日々が、象徴としての彼にそれを許さなかったのだ。
ヒーローであり続けた彼に――思い出は安らぎを与えた。
戦う日々は終わったのだと。
楽しいだけの野球をしてよいのだと。
だから、ジャッキー・ロビンソンはただの少年に戻った。

ただの少年になった彼はもう歌われた存在ではない。
ゆえに、思い出の一部へと取り込まれた。
もうジャッキー・ロビンソンはここにはいない。

そしていま、その白球はデレク・ジーターにも迫ろうとしていた。

……いや、迫ると言うのは語弊があろう。
全てを童心に返すそれは、彼を包み込もうとしている。

(打たなければ……俺も、消えてしまう!)


64 : 思い出 ◆CDIQhFfRUg :2017/05/03(水) 17:36:02 MCYaXNVA0
 
思い出の速度は、時速1000kmだ。
確かに。デレク・ジーターの人生にも、戦いがなかった訳ではない。
黒人と白人のハーフ。
ロビンソンの活躍で差別による道の閉塞こそ打破されたものの、人種差別が完全になくなった訳ではなく、「ニガー」と野次を飛ばされたこともある。
取り沙汰されるのは女性遍歴くらいで、背番号2を背負った彼は、模範的で人格者なキャプテンだとよく言われた。
それは……その裏にたくさんのプレッシャーや葛藤を押し込めてチームのためにふるまった結果だ。
忘れたいことだってたくさんある。
だが……忘れたくないことのほうが、もっと多い。

(この時速1000kmを打って、思い切り飛ばすんだ。そして、彼の心を折るんだ。
 この野球を、終わらせなければ。でなければ、俺は――)

デレク・ジーターは眼を持っている。打のタイトルにこそ恵まれていないものの、選球眼やミートさせる技術は高いレベルで持っている。
少年の放った規則などないかのような魔球だって、初球であろうと、振ればミートさせることができる自信は持っている。
迷うことなどない。
振れ。
振って、自分をここに残せ。

だが――手は、動かない。
動かなかった。
見てしまったのだ。

見てしまったのだ、心底楽しそうに遊んでいる、野球少年の目を。

(ああ――畜生)

野球が好きで好きで仕方がないという目。
何にも心を汚されず、楽しむことだけを願っている少年時代。
そんな思い出を。
野球が好きだからこそ。野球少年を愛しているからこそ。
デレク・ジーターは、打ちのめせない。

(もっと、このユニフォームを着ていたかった。……だけど――)

【ジャッキー・ロビンソン@Did You See Jackie Robinson Hit That Ball?(Woodrow Buddy Johnson & Count Basie) 消滅】
【デレク・ジーター@Top of the World(Carpenters) 消滅】

(だけどこの夢は、この歌は。俺には、止められない)


♪♪♪♪


家庭的な女がタイプな俺は、その一部始終を見ていた。
つまり、二人のいかつい外国人野球選手が、ちいさな子供と野球で遊ぶうちに少年へと戻っていき、
いつしか少年を残して透明になっていくその一部始終をだ。

「な、なんだよ、お前は……!」
「お兄ちゃんも、野球やる?」

恐怖に腰を抜かす家庭的な女がタイプな俺に、少年が屈託のない笑みを浮かべながら、小さな手を伸ばす。
そこに悪意などはない。恣意的な思惑も一切存在しない。
彼は思い出なのだ。
触れれば消えてしまうような、されど深追いすれば取り込まれる――誰の心にでもある、少年の日の思い出なのだ。


【3-夏/白/一日目/8時】

【野球少年@ホームラン(THE BLUE HEARTS)】
【容姿】野球少年
【出典媒体】歌詞
【状態】健康
【装備】
【道具】支給品一式
【思考】野球がしたい
【備考】
※野球をしているとついつい少年時代に戻ってしまいます。

【家庭的な女がタイプな俺@純恋歌(湘南乃風)】
【容姿】星空柄のインナーシャツを着た青年
【出典媒体】歌詞
【状態】健康
【装備】
【道具】支給品一式
【思考】なんなんだよ、こいつは!
【備考】
※家庭的な彼女(パスタがおいしい)が心配。


65 : ◆CDIQhFfRUg :2017/05/03(水) 17:36:18 MCYaXNVA0
投下終了です。


66 : 名無しさん :2017/05/04(木) 00:15:44 2AgjuZe60
投下乙
切ないのに怖い、不思議な話だ


67 : ◆CDIQhFfRUg :2017/05/11(木) 23:05:01 bzzsnp5E0
感想ありがとうございます。
GWにカラオケに言ったら喉を傷めたので投下します。


68 : you ◆CDIQhFfRUg :2017/05/11(木) 23:06:30 bzzsnp5E0
  
ラーメン大好き小池さん

ガラガラへび

ラーメンを食べ終えた

「どうぞ・・・」

が、すぐに目の前にはパスタが並んでいた

家庭的な彼女が作ったパスタだった

いいね

少し南下でもしながら なんか食べて歩こう


「ポアダ」 「ポアダ」 「ポアダ」
「ポアダ」 「ポアダ」 「ポアダ」
「ポア」  「ポア」  「ポア」
「ポアダ」
「ポアダ」
「ポア」
「ポアダ」 「ポアダ」 「ポアダ」
「ポアダ」 「ポアダ」 「ポアダ」
「ポア」  「ポア」  「ポア」
「ポアダ」
「ポアダ」
「ポア」
「ポアダ」
「ポアダ」
「ポア」  
「ポアダ」
「ポアダ」
「ポア」  
「ポアダ」
「ポア」 


道行く先からデス声 リズムのよい声 見上げれば32人のフ○ーザ

パスタ そしてフ○ーザ つまりそう、冷製パスタ

おいしいよね

でも小池さんは熱々のラーメンが好きだったし、パスタも出来立てがよかった

デスパンクなBGMが辺りを支配

小池さんがフ○ーザに歯向かい、その胸を気力の乗った腕に貫かれる

凄惨な光景に家庭的な彼女は思わず目をつむった そのときだった


――pi

――pipi

――pipi

――pi-co-ta-ro!

――――――pico.


69 : you ◆CDIQhFfRUg :2017/05/11(木) 23:07:24 bzzsnp5E0
 
天からのぞく「pi」の声とともになんらかのパワアによってフ○ーザが撃ち落とされ、ポアされていく

終末の「pico」とともに宇宙的なパラレラリラ音が鳴ったかと思えば――――フ○ーザの目の前に pen を持った男がいた

「I have a pen」

黄金のパリピ装束にヤクザ・スタイル 不敵な笑み

「I have a apple」

男はわざとらしい動作で虚空へと向かって自らの pen を突き立て

「Apple pen!」

次の瞬間、すべてのフ○ーザはこの世からポアされていた・・・

【小池さん@ラーメン大好き小池さんの唄(シャ乱Q) 死亡】
【フ○ーザ@F (マキシマムザホルモン) 死亡】


「すごい! わたしあなたについていく」
「キシャー」

家庭的な彼女とガラガラへびは大喜び しかしまだ 唄は とまらない

「I have a pen」

ゴージャスヤクザな男はガラガラへびをおもむろに掴み

「I have a pineapple」

家庭的な彼女の胸ぐらもつかんだ

えっ と驚く暇もなかった・・・

「pineapple pen!」

ガラガラへびと家庭的な彼女は――家庭的なガラガラへび彼女になった・・・





Applepen... pineapplepen...

血まみれの運命…… 蛇と同化した少女……

Pen-pineapple-Apple-pen!

さらにこの2つも練り合わせ!

Pen-pineapple-Apple-pen!

さあ、新しい君の誕生だ!


【4-名/白/一日目/8時】

【I@PPAP(ピコ太郎)】
【容姿】ピコ太郎
【出典媒体】PV
【状態】健康
【装備】ペン@PPAP
【道具】支給品一式
【思考】優勝する。
【備考】

【家庭的なガラガラへび彼女@純恋歌がやってくる(湘南とん風ねるず)】
【容姿】蛇と彼女のマッシュアップ
【出典媒体】歌詞
【状態】健康
【装備】不明
【道具】支給品一式
【思考】ピコ太郎様についていく。
【備考】
※二つの歌がマッシュアップされました。


70 : ◆CDIQhFfRUg :2017/05/11(木) 23:08:12 bzzsnp5E0
投下終了です。


71 : 名無しさん :2017/05/11(木) 23:17:38 /Hg4xVac0
投下乙です
どこからつっこんでいいのかわからないが、とりあえずPPAPパネェ


72 : ◆CDIQhFfRUg :2017/05/19(金) 22:48:10 hDh3ATQQ0
五月が終わる前に投下します。


73 : きいて ◆CDIQhFfRUg :2017/05/19(金) 22:48:55 hDh3ATQQ0
 
きいてこいのぼり

ちょっと言いにくいんだけど

きいてこいのぼり

僕は君を許さないよ

きいてくれてありがとこいのぼり

♪♪♪

小さな蠅が一匹、こいのぼりの近くを通って行った。
通っていくついでに自分の境遇をひたすらに愚痴っていった。
こいのぼりは脳がカラッポなので、というか中身ごとカラッポなので、
蠅にはどうやら許せないやつがいるということしかいまいちわからなかったが。

こいのぼりはゲーム開始からずっと草原の真ん中に刺さっているので、蠅を見送ることしかできない。
何もない草原である。
何もない草原である。
草生えるっていうか、草しか生えてない。
こいのぼりとしては、風に吹かれて適当に揺れるしかない。
比較するような屋根もないので、歌詞の再現にもなっていない。
ああ、せっかくなら屋根より高い場所に置いてほしかった。なんて思うくらいしかできない。

「あの人も、大変なのね」

ふと気が付くと隣に少女が立っていた。

「魔女に蠅に変えられちゃったなんて、こんな催しごとに巻き込まれる前から可哀そう」

風に揺られながらこいのぼりは少女を横目で見た。
藤色の髪の少女だった。
哀しそうな顔をしている。
だが、それは蠅を哀れんでいるのではなく、常にそういう顔をしているのだろう、と思えるような感じだった。
服は白いブラウスに青いスカートで、とてもよく似合っていた。
彼女にはこの服以外は似合わないのではないかと思えるくらいだった。
それに――着替えるのは大変そうだ。

そう、何より目を引くのは、
彼女の大きく胸の開いた白いブラウスからのぞく、剥き出しの心臓だった。

心臓からは沢山のコスモスが思い思いに茎と花を伸ばし、彼女の胸部をがんじがらめにしている。
彼女はそれを隠すように心臓に包帯を巻いているが、コスモスはその包帯すら、突き破っているのだった。
こいのぼりは思った。
なんだか悲しいほど痛そうな子だ。

「あら。心配してくれているの? こいのぼりさん。ありがとうね」

全く表情を変えずに、彼女はこいのぼりを振り向いた。
こいのぼりは驚いた。
こいのぼりは確かに大きな口を開けてこそいるが、そこは風の通り道でしかなく、いっさい喋っていない。

「そう……そう。草原にひとりぼっちで、暇なの。
 それで、屋根より高いところで揺れたいの? それって、今と何か変わるのかしら。面白いわね」

いっさい喋っていないのに、こいのぼりのこころが読まれている。

「ああ――ごめんなさいね」

心臓から伸びる花畑を揺らして、少女は小首をかしげた。彼女なりに、お道化てみせたという感じだった。
やっぱり表情は哀しそうなまま彼女は思いもよらぬことを謳った。

「私、ハートがこんなだからか、感受性が高くって。あなたのこころが、歌になって聞こえてくるの」

♪♪♪


74 : ◆CDIQhFfRUg :2017/05/19(金) 22:50:38 hDh3ATQQ0
 
きいてこいのぼり

ちょっと言いにくいんだけど

きいてこいのぼり

僕は君を許さないよ

きいてくれてありがとこいのぼり

♪♪♪

小さな蠅が一匹、こいのぼりの近くを通って行った。
通っていくついでに自分の境遇をひたすらに愚痴っていった。
こいのぼりは脳がカラッポなので、というか中身ごとカラッポなので、
蠅にはどうやら許せないやつがいるということしかいまいちわからなかったが。

こいのぼりはゲーム開始からずっと草原の真ん中に刺さっているので、蠅を見送ることしかできない。
何もない草原である。
何もない草原である。
草生えるっていうか、草しか生えてない。
こいのぼりとしては、風に吹かれて適当に揺れるしかない。
比較するような屋根もないので、歌詞の再現にもなっていない。
ああ、せっかくなら屋根より高い場所に置いてほしかった。なんて思うくらいしかできない。

「あの人も、大変なのね」

ふと気が付くと隣に少女が立っていた。

「魔女に蠅に変えられちゃったなんて、こんな催しごとに巻き込まれる前から可哀そう」

風に揺られながらこいのぼりは少女を横目で見た。
藤色の髪の少女だった。
哀しそうな顔をしている。
だが、それは蠅を哀れんでいるのではなく、常にそういう顔をしているのだろう、と思えるような感じだった。
服は白いブラウスに青いスカートで、とてもよく似合っていた。
彼女にはこの服以外は似合わないのではないかと思えるくらいだった。
それに――着替えるのは大変そうだ。

そう、何より目を引くのは、
彼女の大きく胸の開いた白いブラウスからのぞく、剥き出しの心臓だった。

心臓からは沢山のコスモスが思い思いに茎と花を伸ばし、彼女の胸部をがんじがらめにしている。
彼女はそれを隠すように心臓に包帯を巻いているが、コスモスはその包帯すら、突き破っているのだった。
こいのぼりは思った。
なんだか悲しいほど痛そうな子だ。

「あら。心配してくれているの? こいのぼりさん。ありがとうね」

全く表情を変えずに、彼女はこいのぼりを振り向いた。
こいのぼりは驚いた。
こいのぼりは確かに大きな口を開けてこそいるが、そこは風の通り道でしかなく、いっさい喋っていない。

「そう……そう。草原にひとりぼっちで、暇なの。
 それで、屋根より高いところで揺れたいの? それって、今と何か変わるのかしら。面白いわね」

いっさい喋っていないのに、こいのぼりのこころが読まれている。

「ああ――ごめんなさいね」

心臓から伸びる花畑を揺らして、少女は小首をかしげた。彼女なりに、お道化てみせたという感じだった。
やっぱり表情は哀しそうなまま彼女は思いもよらぬことを謳った。

「私、ハートがこんなだからか、感受性が高くって。あなたのこころが、歌になって聞こえてくるの」

♪♪♪


75 : きいて ◆CDIQhFfRUg :2017/05/19(金) 22:51:24 hDh3ATQQ0
 
アルエと名乗った少女に、こいのぼりは地面から引き抜かれた。
すたすたと歩きだすアルエは、ぶっきらぼうに独り言。

「とくにやることもないから、あなたをどこか高いところに刺してあげるわ」

――「殺し合いはしないのだろうか?」
こいのぼりは、彼女のハートに語り掛けた。
彼女もそれをわかっていて、

「特に誰もうらんでないもの。それに私、生きていたってしょうがないと思っているし」

と答えた。
こいのぼりはこころで歌う――「なんで?」。

「そうね。……ハートに聞いてみてちょうだい」

はぐらかされてしまった。
ハートに話しかけているのに、おかしなことを言うな、とこいのぼりは思った。
思ったから伝わったはずだが、アルエは会話をそれ以上続けなかった。
二人はすたすたと歩き続ける。


【1-初/白/一日目/8時】

【アルエ@アルエ(BUMP OF CHICKEN)】
【容姿】白いブラウスに青いスカート、剥き出しのハートに包帯とコスモス
【出典媒体】歌詞
【状態】健康
【装備】こいのぼり@こいのぼり
【道具】支給品一式
【思考】とくにやることもないので、気まぐれにやる。
【備考】
※感受性が高いです。

【こいのぼり@こいのぼり(作曲者不明)】
【容姿】こいのぼり
【出典媒体】歌詞
【状態】健康
【装備】なし
【道具】なし
【思考】揺られる。せっかくなので、屋根の上で揺られたい
【備考】

♪♪♪

蠅の体はあまりに小さく、エリアを移動するだけでも時間は刻一刻と経ってしまう。
人間であったころと比べてあまりに遅いその歩みに、蠅の小さな脳が奏でる音楽は、じめじめとした恨み言のみだった。
許さない。
許さない。
負の感情は彼をこんな姿にした「魔女」にすべて向けられるが、心の中へ仕舞い込むことなど到底できない。
いったんは偶然出会ったこいのぼりにすべての感情をぶちまけ、スッキリしていたものの。
膨れ上がる許さないという気持ちはすぐにまた心からあふれだし、彼の周りの空気を禍々しいものへと変えていく。

「オオオオオオオーーーッ!! 負ける気しないッ! ――――…………???」

ゆえにそう、いかに強きものであろうと、
殺意みなぎる彼のそばへ近寄りすぎてしまったが最後、彼の殺意(うた)に飲み込まれる。
オーズ!オーズ!オーズ!カモォン!!に不運があるとすれば、ちょうど五月の蠅のサビ(ストレスが最高潮の瞬間)に出くわしてしまったことだろう。
それはあまりに理不尽な不運だったが、もはやどうあがいても許されなかった。

「あ―――あああああ――――」

歌はどこまでも簡単に、世界をその歌の色に染める。
オーズ!オーズ!オーズ!カモォン!!が最後に見た景色は、殺意に満ち溢れた血みどろの世界だった。
そして彼は、すべての生まれてきた意味を否定された。
それで終わりだった。

【オーズ!オーズ!カモォン!!@Anything Goes! 死亡】

【2-初/白/一日目/8時】

【蠅@五月の蝿(RAD WIMPS)】
【容姿】蠅
【出典媒体】タイトル
【状態】健康
【装備】許さないという気持ち
【道具】支給品一式
【思考】許さない
【備考】


76 : ◆CDIQhFfRUg :2017/05/19(金) 22:52:26 hDh3ATQQ0
なんか1レス目が2重投稿になってしまってAメロが繰り返された感じになってしまいましたが投下終了です。


77 : 名無しさん :2017/05/19(金) 23:11:20 FFI2zkrc0
投下乙です
風に吹かれるしかない鯉のぼりを殺し合いに放り込むとは、主催者はなんと鬼畜なのか
そして蠅は地味に厄介な存在だな


78 : ◆CDIQhFfRUg :2017/05/19(金) 23:24:57 hDh3ATQQ0
あ、地図ミスってました。2-初が「把」なのをwikiで修正します。
感想ありがとうございます。うれしい。


79 : ◆CDIQhFfRUg :2017/05/28(日) 23:51:21 mGhPhuig0
投下します


80 : 完全性の欠如 ◆CDIQhFfRUg :2017/05/28(日) 23:51:59 mGhPhuig0
 

世の果てのような処刑場。
どこからか、嵐のような雄たけびが響いている。

「「「「AAAAAAARAAAAAAASHYYYYYYY……AAAAAAARAAAAAAASHYYYYYYY」」」」

砂嵐が厳しい荒野をうろうろしている、悲しきモンスターの雄たけびである。
「ボクら」という名の彼らは、どこへ向けてか何に向けてか悲痛に叫びながらも、愛(死)と希望(獲物)を探し続けている。
それはあまりにいびつにゆがんだ「歌」の在り方だった。
傍目から見れば狂っているとしか思えないくらいに。なにより――

「完全ではない、というのが気にくわない」

崖上から「ボクら」を見下ろすパーフェクト・ヒューマンnakataは、その一点に厳しい指摘を入れた。
完全ではない。そう、「ボクら」は先の旅人&何かに追われるように走り出すお前のコンビとの戦いで、顔を一つ失っている。
大野君だったか相葉君だったかよく覚えていないが、今彼らは完全ではないのだ。
現代の英雄、黄金の男、世界の頂点、人類の極致へと至りしパーフェクト・ヒューマンnakataは、完全でないものに興味がなかった。

「俺の武勇伝に加えるほどの敵ではない。やはり、【あの男】以外は俺の敵にはなりえない」

nakataはその瞳の奥に純金の炎を燃やし、ここにはいないパンチパーマのピコピコ男をただ見据え、その場から立ち去ろうとする。
するとnakataの横に、いつの間にか一人の男が立っていた。
じっと、下を見ていた――いや。「ボクら」という名の嵐を、見ていた。憐れむような。慈しむような眼で。
それは、
トイレットペーパーを頭部にぐるぐる巻きにした、男だった。

「お前は――」
「なあ。nakataちゃんは、『完全』って何だとおもう?」

その男は、特徴的なダミ声でnakataに突然話しかけてきた。

「完全ってのは、なにごとも欠けないことなのかな? それとも、誰よりもすべてが足りてることなのかな?
 あるいは、何年たっても変わらずに、そこにあり続けることこそが、完全だってことなのかな……なあ、どう思うよ?」
「……お前、いや、あなたは」
「ああ、いや――答えはいらねーよ。きっと、回答なんて出せないものなんだろうから。でもこれは答えてくれな。なあnakata。俺も、もう完全じゃないかな?」

人懐っこい、とも、慣れ慣れしいとも思える口調だったが、nakataは男にそれを指摘することはできなかった。
トイレットペーパー越しに、感じてしまったのだ。
目の前の男から感じる、圧倒的なまでのオーラと、渇きと、悲しみと、悔しさ。

「完全じゃ、ないな」

nakataは口の中に湧いて出た唾を飲み込み、どうにか口を開いた。

「完全な人間なんて、俺以外に、存在しないのだから」
「そうだよな。だから、「俺たち」は――揃うことを許されなくなった。全部俺のせいなんだよ。俺が、完全じゃなかったからだ。
 で、あいつらはさ……あいつらはきっと、俺たちを見て、だからああなったんだ」
「……」
「ありがとう。決心ついたよnakata。やっぱり、あいつらには言ってやらなきゃいけないことがある」

顔は見えないが――nakataの言葉にトイレットペーパーの男は、すっと迷いが晴れたような、そんな表情の声になった。
nakataは、何も言えなかった。
トイレットペーパーが風に揺れた。次の瞬間にはそこから男はいなくなり、崖を駆け下りる音が聞こえた。
彼は彼の戦いに向かった。nakataは、そこに参じる理由も、権利もないと知っていた。
それは完全でないものたちの戦いだから。
完全な人間が邪魔してはいけない。

「……完全とは何か、か」

サングラス越しに、nakataはしばし目を瞑った。
完全とは何か。その命題が、頭の中で回っていた。
ピコ太郎に話題を持っていかれたことで、自らの完全性を否定されたように感じていた。
いまでも怒りが煮えたぎっているのは間違いない事実だ。
だが、トイレットペーパーの男が放った原初の問いへ立ち返ると。
「その怒りを持ってしまったnakataは、果たして完全なのか」
というところまで、自らの完全性を問わなければならなくなった。

「I’m a ...perfect human...いや。違う。違うな」

nakataは、結論づけた。

「I’m a not perfect human。俺もまた、完全ではない。完全になるために、やつを倒す」


81 : 完全性の欠如 ◆CDIQhFfRUg :2017/05/28(日) 23:53:25 mGhPhuig0
 
ああ、見よ。
今、我らの覇王は自らを再認識し、再び研ぎ澄まされた。
その覇道に迷いはなく、ゆえに彼こそが、最も……。

 
【6-秋/豪/一日目/8時】

【nakata@PERFECT HUMAN (RADIO FISH)】
【容姿】I’m a perfect human
【出典媒体】I’m a perfect human
【状態】健康
【装備】
【道具】支給品一式
【思考】ピコ太郎を殺し、自分がI’m a perfect humanであることを証明する。
【備考】


♪♪♪♪


「――よう。同じ舞台に立つのは、ひっさしぶりだなあ、お前ら」

荒野を当てもなくさまよっていた「ボクら」の前に、トイレットペーパーを頭に巻いた男が現れた。
直感で分かった。この男は、愛と希望を持っている。
「ボクら」に足りないものがある。 
倒さなきゃ。
殺さなきゃ。
殺して奪い取って、五人で生き残らなきゃ――――。

「「「「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」」」」

「はははっ、元気いいじゃねえか。よし、じゃあ始めようぜ」

咆哮は波導となり空気を揺らす。観客のいない荒野でもここは「ボクら」のコンサート会場。
迎え撃つ男は懐からトイレットペーパーを取り出して、空間へ広げる。彼もまた、ひとつの唄であり歌手である。

「Just A Breakin' on, Busta Beats YO!
  Rock Da House, Pop Around & Round Yeah Cut The Rhyme,
   Masta Mic, So Come Along With Us, We're Japanese! Just A Breakin' on, Busta Beats YO!
 Rock Da House, Pop Around & Round Say Peace,
  World, Hope, Tough, And Love...

          TOILET TOILET TOILET TOILET PAPER MAN」

トイレットペーパーマンは嵐に挑む。
足りないものを教えるために。ゆがんでしまった大切なうたを、スッキリと水に流すために。

【6-秋/豪/一日目/8時】

【ボクら@A・RA・SHI(嵐)】
【容姿】メンバー四人の顔とたくさんの手足が肉塊から生えている。五人一緒。
【出典媒体】歌詞
【状態】HP4/5
【装備】なし
【道具】支給品一式
【思考】愛(死)と希望(獲物)を探す
【備考】
※体中に風を集めて巻き起こせA・RA・SHIできます。

【トイレットペーパーマン@トイレットペーパーマン(中居正広(SMAP))】
【容姿】トイレットペーパーを頭部に巻いて顔を隠した喪服の男
【出典媒体】歌詞
【状態】健康
【装備】トイレットペーパー
【道具】支給品一式
【思考】スッキリと水に流そうぜ
【備考】


82 : ◆CDIQhFfRUg :2017/05/28(日) 23:54:13 mGhPhuig0
投下終了です。


83 : 名無しさん :2017/05/29(月) 00:19:13 atN3ZeuI0
投下乙です
話の流れはシリアスだけど、見た目はめっちゃカオスだな


84 : ◆CDIQhFfRUg :2017/06/01(木) 20:18:30 VKwDJZjw0
六月もよろしくお願いします、投下します


85 : すいみんオルタ ◆CDIQhFfRUg :2017/06/01(木) 20:19:54 VKwDJZjw0
 
ああ空はこんなに青いのに

風はこんなにあたたかいのに

太陽はとっても明るいのに

どうしてこんなにねむいの

ドォワッハッハー!

よ う か い の せいなのよ、

そうなのよ

ウォッチ!いま何時?

9時ー!

「わたしがこんなに眠いのは……お前のせいだったのか!!!! 殺す!」
「ちょまっ、待って!確かにオレは眠らせますけど! 眠らせようとしましたけれど! あんたに限ってはオレ何もしてないからね!?」
「問答無用ーーッ!!」

まさに凶鬼。包丁を持ったミヨちゃんヘアの少女が、赤白模様のバクをぐるぐると追いかけ回している。目にはひどいクマがある。
朝のうちは人の眠気を増幅させることができる朝眠い原因の妖怪は、
適当にぶらついていて見つけたこの少女を、半分善意、半分興味本位で眠らせようとしたのだが……その前に逆に襲われたのであった。

「安眠妨害罪!」
「ひぃーッ!?」

振り下ろされる包丁!

「睡眠権侵害!」
「やめーっ!?」

地面に突き立つ包丁!

「長期……倦怠感!」
「うひゃー……あれ?」

振り返るバク! そこには睡眠不足が祟り、ぜえぜえと息を吐く少女がいた。

「だめ……すいみんぶそくでは運動もままならないわ……」
「かわいい」
「ざけんな殺す殺す殺す……!」

ぐったりと地面に座り込んだ少女からの暴言も、危害が加わらない位置から見れば、可愛い小動物の鳴き声と変わらない。
妖怪バクは、もちろん一番好きなのは無防備に眠っている少女の寝顔だったが、こういうのもまたオツなものだと思いなおした。
とはいえ、ずっと喚かれるのもそれはそれでうっとおしい。気が付くと太陽も高い位置へ向かっているし、ここは昼までこの子を眠らせてやろう。
オレってなんて人思いなバクなんだろう、などと自画自賛しつつ、妖怪バクは少女を眠らせようとした。

「――危ないッ!!!」

そのとき、突然背後から振るわれたデスサイズを避けられたのは、すいみんぶそくの少女がバクをかばってくれたからだ。


86 : すいみんオルタ ◆CDIQhFfRUg :2017/06/01(木) 20:20:55 VKwDJZjw0
 
「なッ――!?」

動転、暗転、眼を再度開けば……そこには不可解極まりない光景があった。

「あなたは……!」「お前は……!」

少女が――――2人いる!!

妖怪バクをかばっているのは先ほどまでバクを追いかけ回していた少女で間違いない。
息切れの感じもそうだし、持っているのは包丁だ。雰囲気もこちらのほうが幼いというか。黒くない。目のクマは黒いが。
対して、デスサイズを持っている少女のほうは、雰囲気からして悪夢のように黒い。クマもひどい。
そしてなにより――デスサイズはすでに血塗れていた。

「わたし……なの……?」
「……わたしか」
「ど、どうして……なんで……」
「そう。そういうこともあるのね。ふうん。ふううん。まったく、頭が痛いわね」

これは夢なのだろうか? いや現実のはずだ。だが、目の前の現象を理解するのはバクには困難だった。
包丁少女とデスサイズ少女。瓜二つの唄。しかし何かが違う……『同じ歌から生まれたようで、同じ歌から生まれていない』ような感覚!
デスサイズ少女が、冷たく言い放った。

「まあいいわ。死になさい」
「あ、安眠できてないのに死ねるかーッ!」
「ううおおよくわからないけど……トンズラだぜ!!」
「ってキャー!?」

ここは三十六計逃げるが勝ち。妖怪バクはすばやく包丁の方のすいみん不足少女を自らの背中に乗せると、デスサイズ少女に踵を返して走り出した。
デスサイズ少女が鋭く振るったデスサイズは空を切る。付いていた血液がぱたぱたと飛び、少女とバクにわずかに降りかかった。
生々しい血の匂いと色。それは、間違いなく夢ではなかった。

「逃げたか」

デスサイズ少女は深追いせず、その場で静かに呼吸を整えた。
一人の空間は静かで、もしかしたら眠れるかもしれないという願いを想起する。
結局眠れはしないのだが、彼女はとにかく、その時間を邪魔されたくない。
太陽も、自然も、社会も、政治も。周りにはびこる「うるさいもの」すべてが睡眠不足な彼女の敵であり殺害対象だ。
それゆえに彼女は、自ら遠ざかる「うるさいもの」を深追いなどはしないのだ。

「わたしの『オルタ』……安眠できるといいわね」

ギラギラと不健康に輝く目は願っていた。

「まあ、最終的にはあなたを含めて、全員永眠させてあげるけど」

自分以外誰もいない、静かな世界を願っていた。

【4-秋/白/一日目/9時】

【わたし@すいみん不足(原曲)(CHICKS)】
【容姿】目の下に尋常じゃないクマがあるミヨちゃんヘアの少女
【出典媒体】歌詞
【状態】すいみん不足
【装備】デスサイズ
【道具】支給品一式
【思考】全員殺して静かになったら寝る
【備考】


87 : すいみんオルタ ◆CDIQhFfRUg :2017/06/01(木) 20:21:59 VKwDJZjw0
 
♪♪♪♪

逃げて、逃げて、隣のエリア。
二つの歌が辿り着いた先にいたのは、先ほどのデスサイズについていた血の流し主だった。
三つの首と、三つの体。もちろん、事切れている。

【君@眠り姫(SEKAI NO OWARI) 死亡】
【勇敢な蛮人@夜は眠れるかい?(flumpool) 死亡】
【完全感覚Dreamer@完全感覚Dreamer(ONE OK ROCK) 死亡】

「あれはわたしだわ」
「どういうこと」
「わたしじゃないわたしだわ。並行世界とか、信じたくはないけど……見た瞬間に分かったわよ」

体力の問題でバクの背中にだるーんと乗っているすいみんぶそく少女(包丁)は、バクにそう言い放った。
ここで読者の皆さんにも説明しておこう。
すいみん不足――みなさんからすればキテレツ大百科のオープニングとしてが最も有名であろうこの曲には、『原曲』が存在する。
今となっては珍しいことだが、アニメ主題歌版のすいみん不足はアニメ用に歌詞表現を柔らかくした「子供向け」のすいみん不足なのだ。
原曲は、せわしなく働いて自らの社会に関心が持てない若者達を強烈に風刺した「大人向け」の曲である。
聞き比べればわかるだろう……原曲の方が、明らかに、

「重症よね」
「まあそうかも」

バク的にはどっちも襲い掛かってきたことには変わりないのだが。

「で、どうするんだ? 一応、助けてもらったし、昼までなら能力も使えるし、協力してもいいけど」
「そうねえ」

ふあァ、と少女はあくびをした。

「止めなきゃいけない気もするし、放っとけばいい気もするし。まあわたしが他にもいるってのは気にくわないけど、対処は一考必要かしら。
 それより、とりあえず――眠いの。ほんきで眠いの。分かる? 思考がまとまらないくらいに今わたしは眠いに支配されてるの。だから――」
「……ああ、そういや言ったっけ。眠らせようとしたって」
「ええ。不意打ちせずに声をかけてくれればわたし大歓迎だったのよ、ふりだしに話を戻すとね」

にこりと笑って一言、

「お願いまるいち。このまま昼まで寝させてくれる? あ、背中の上きもちいーので、このままでよろしくー」

【5-秋/鶴/一日目/9時】

【朝眠い原因の妖怪@ようかい体操第一(Dream5)】
【容姿】バク
【出典媒体】歌詞
【状態】健康
【装備】なし
【道具】不明
【思考】
1:朝に起きてるやつを眠らせる
2:昼になったらどうしよう
3:昼まではわたし@すいみんぶそく(アニメ版)を背中に乗せてあげる
【備考】
朝に限り、他人の眠気を増幅する妖術が使えます。

【わたし@すいみん不足(アニメ版)(CHICKS)】
【容姿】目の下にひどいクマがあるミヨちゃんヘアの少女
【出典媒体】歌詞
【状態】睡眠中
【装備】包丁
【道具】支給品一式
【思考】昼まで寝る
【備考】


88 : ◆CDIQhFfRUg :2017/06/01(木) 20:23:08 VKwDJZjw0
投下終了です。zzz...


89 : 名無しさん :2017/06/01(木) 21:17:30 5DdYfWOg0
投下乙です
すいみん不足に原曲があるのは初めて知ったわ


90 : ◆CDIQhFfRUg :2017/06/11(日) 23:07:29 0b62cvXs0
忙しかったので短めですが投下します。


91 : アスファルトに咲く拳 ◆CDIQhFfRUg :2017/06/11(日) 23:08:19 0b62cvXs0
 
逃げて、逃げて、逃げて、逃げます。

あの恐ろしい、そして狂っているニュースキャスターの人から、わたしは逃げて逃げて逃げます。

「うえええ〜〜〜〜ん……いやあああ〜〜〜〜」

みんな死んでしまったのです。
殺し合いの場で自分をたすけてくれた人たちは、銃弾の雨に蹂躙されて死んでしまったのです。
怖すぎて、悲しすぎて、涙が止まらないです。
いや開始してからずっと涙が止まらないです。
わたしの涙腺は殺し合いのショックで壊れてしまったのかもしれないです。きっとそうです。
だって何時間も泣いているのに、涙がぜんぜん枯れないのです。

「うええええ〜〜〜〜……?」

おえっ、と泣きすぎでえづいてしまい、それでも目から涙がこぼれ続けて、前がぼやけっぱなしです。
そんななので、そこでわたしはようやく、前方に誰かがいることに気が付きました。
ぼやけてあんまりよくは見えないですけど……男の人でしょうか? 体格がいいです。
あ、こっちに近づいてきます。
え、しかもめちゃめちゃ速度があります。

「うえええん」

殺されるのかも……。わたしは震えて目をつむろうとしましたが、涙があふれてあふあふで目さえ閉じれませんでした。
こんなんじゃ生き残る生き残らない以前の話です、ディスアドも大概にしてほしいです……。
もはや無理が高まりすぎて軽く諦めていると……わたしは肩をたたかれました。
そして、こう言われたのです。

「ああ! いい涙っぷりだ! きっと君も強くなれるぞ!」
「うええ……????」

見上げたら、男の人はたぶん、白い歯を見せて笑っていました。
というのが、一時間ほど前の話……わたしと「涙の数だけ強くなれる君」さん……師匠との出会いです。

♪♪♪♪

――涙拳(るいけん)とは?
太古の昔より中国奥地でひそかに語り継がれていた拳法の一つである。
涙を流すことによるストレスからの解放が体を柔軟に変化させることは近年の科学でも証明されている通りだが、
涙拳の熟練者においてはそれを戦闘しながら行う――つまり泣きながら戦うことで身体をリラックスさせつつ技を放つのである。
また、涙を流すべく行われる感情コントロールの技術も恐ろしい練度となる。
瞬時に怒り、瞬時に悲しみ、瞬時に涙を流す……その感情の爆発が乗った拳は時に、自らの身体能力以上の力を出すという――。

歌うんだ書房「世界のマッスルミュージカル」より抜粋

♪♪♪♪


92 : アスファルトに咲く拳 ◆CDIQhFfRUg :2017/06/11(日) 23:09:13 0b62cvXs0
 
「うええええん!!」ドゴォ

わたしは師匠に教えてもらった通り、涙を流す「感情の流れ」を拳に集めるイメージをしながら、拳を前方の鉄のポール……のぼり棒に放ちました。
するとどうでしょう、わたしの握った拳には痛みはほとんどないにも関わらず、のぼり棒に衝撃音が響いて、
泣いているかのようにミシミシと音を立てて折れていったのです!

「うええ……!?」
「ああ! いい拳っぷりだ! やはり涙を無限に流せると上達も早い!」

視界がぼやけているため完全には見えませんが、師匠はわたしのそばで腕組みをしながらわたしを見守っています。
感動で泣いているっぽいです。
やはりこんな拳法をやっていると、涙腺も緩みがちになってしまうのでしょうか。
でも嬉しいです。

「うえええん……」
「ああ!」

嬉しかったので抱き着きました。師匠はなでなでしてくれます。
なんであれ力を手にすると、色々なことを前向きに考えられるようです。もはや悲観的に泣いてばかりだったわたしはいません。
たった一時間で、わたしは前向きに泣く方法を手に入れたのです。
涙の数だけ強くなれる……なんて素晴らしいのでしょうか! でも……。

「うう……うええええん……うわあああん!」
「ああ。そうだな! もっと早く俺が君にこの力を与えられていれば……惨劇も起きなかったかもしれない!
 だが結果論だ! それに、惨劇の落とし前はこれからとればいい……そうだろう!?」
「うええええん」

師匠は泣き声しか発していないわたしの言いたいことを正確に読み取って、わたしを強く抱きしめてくれました。
そうです。前向きになったわたしには、やりたいことが生まれたのです。
逃げるだけじゃない……あのニュースキャスターさんに、涙の鉄槌を喰らわせてやるのです!

「向こうも君を探しているだろうが……ならば逆に探しに行こう! 俺も、悲しい涙を生むものは許せないタチだ!
 だが、理不尽な拳は振るわないぞ! あくまで君の弔い合戦だ! 俺は後方で泣きながら応援するぜ!」
「うえええん!」

運動場での修業を終え、わたしと師匠は逆にニュースキャスターさんを探し始めました……。

【4-晴/鶴/一日目/9時】

【涙化粧の女の子@JAM(THE YELLOW MONKEY)】
【容姿】夏川りみ(幼少時代)
【出典媒体】歌詞
【状態】勇ましい涙
【装備】なし
【道具】基本支給品
【思考】ニュースキャスターに弔い合戦を挑む
【備考】
※涙が枯れません。※涙拳を習得しました。

【涙の数だけ強くなれる君@tomorrow(岡本真夜)】
【容姿】マッチョでさわやかな拳法家
【出典媒体】歌詞
【状態】さわやかな涙
【装備】なし
【道具】基本支給品
【思考】涙化粧の女の子を応援する
【備考】
※涙拳を極めています。


93 : ◆CDIQhFfRUg :2017/06/11(日) 23:11:04 0b62cvXs0
投下終了です。トンチキ拳法これが好き。


94 : 名無しさん :2017/06/11(日) 23:16:04 BUun/MqI0
投下乙です
あの歌からこんなキャラを生み出せる発想がすごいよ!


95 : ◆CDIQhFfRUg :2017/06/18(日) 22:46:35 toLOUKgY0
感想ありがとうございます。書き手なので感想の数だけ強くなれる。
投下します。


96 : 少し変よ ◆CDIQhFfRUg :2017/06/18(日) 22:47:58 toLOUKgY0
 
山口さんちのツトムくん

このごろ少しヘンよ

どうしたのかナ

しぬまでころそうっていっても

てほんをみせるっていっても

いつも答えはおなじ

「あとで」

つまんないなあ・・・

♪♪♪♪

「そんなんじゃ生き残れないよ? おとこのこでしょ? しっかりしなきゃ!」
「サッちゃん・・・でも殺し合いはダメだよ、ママに怒られちゃうよ」
「怒られちゃうも何もないよ! サッちゃんたち、何もしなかったら、殺されちゃうのに!」

5-春、草原の真ん中に小さな少年と小さな少女がいた。
一見すると少し意気地なしな男の子を女の子が叱りながら引っ張っていくというほほえましい光景だが、
もちろん殺し合いの中なのでその内容を見れば殺伐この上ない。

サッちゃんと山口さんちのツトムくんは先輩後輩の関係である。
ツトムくんの「みんなのうた」での初放送が1970年代なのに対して、「サッちゃん」は1950年代のNHKラジオ「うたのおばさん」が初出だからだ。

「サッちゃんはね、ツトムくんのママが呼ばれてるかもしれないって心配してるの!」

サッちゃんが頬を膨らませて言う。

「サッちゃんはあんまりセットって感じの存在がいないからサッちゃんしか知り合いはいないと思うけど、ツトムくんはママがいるでしょ?」
「ま、ママが・・・」
「ママが殺されちゃったらどうするの!? おとこのこでしょ! しっかり守らなきゃ!」

ずいぶん男の子に期待を寄せているサッちゃんだが、価値観が1950年代であることを考えれば仕方あるまい。
とにかくツトムくんもサッちゃんの言葉に感化されたのか、おどおどしていた瞳もまっすぐになり、顔も覚悟が決まった。
男の顔になったといってよい。

「うん。分かったよ、サッちゃん。僕・・・ママを、守る」
「それでこそよ! じゃあまず、支給品の確認からしましょう」
「うん!」

草原にかばんを広げて、二人は支給品の確認をし始める・・・
ツトムくんはかばんをまさぐり・・・そしてマヨネーズの容器を取り出した。
目をぱちくりする。中身はどうみてもマヨネーズだった。マヨネーズ以外のなにものでもなかったのだ。

「サッちゃんはモーニングスターだったわ! ツトムくんは?」
「マヨネーズだった・・・」
「マヨネーズ」
「くんくん・・・あっ、マヨネーズだこれ」

一応フタを開けて匂いを確かめてみたが、やはりマヨネーズだった。
ツトムくんの真剣な顔は一瞬でFXで有り金を溶かした人みたいな顔になった。
まあ、バトルロワイアルもので支給品がクソなことはいくらでも存在するが、それにしたってこれはひどい。

――マヨネーズのフタを開けてしまうということは、地獄の窯のフタを開けてしまうということに等しいというのに――。

「まあ♪ マヨマヨマヨマヨ、マヨネーーズじゃないの♪」
「!?」
「えっ。。。ママ。。。?」

唐突に、近くから声がした。支給品を確認する前、周囲に誰も居ないことを確認したはずだったのに。
ツトムくんはその声がなんとなくママを感じさせる母性あるトーンであったために、思わず無防備にそちらを向いてしまう。
そこにいたのはママだった。
だが、ツトムくんのママではなかった。
ママは・・・顔の両サイドに手を広げた。
親指と人差し指にて輪を作り、それを解放すると同時にはにかみ、子供たちへ挨拶をした。

「おっはー♪」

「――こいつ・・・ツトムくん! ここはサッちゃんに任せて逃げて!」

サッちゃんがモーニングスターを構えて立ち上がる。サッちゃんは見抜いていた。このママは、危険なママであると。
だが、子供にしては早いその判断ですら、あまりにも遅い。


97 : 少し変よ ◆CDIQhFfRUg :2017/06/18(日) 22:49:40 toLOUKgY0

サッちゃんがモーニングスターを構えて立ち上がる。サッちゃんは見抜いていた。このママは、危険なママであると。
だが、子供にしては早いその判断ですら、あまりにも遅い。

「まあ♪ 武器なんて持っちゃって、子供らしくないわ♪ ママ、あぶないあぶないの、没収♪」

モーニングスターが振るわれるも、ママはプロのアイドルグループもびっくりなアクロバティカルな動きで宙を舞った。
着地点はサッちゃんの真横。モーニングスターはいまだ振るわれたまま。振り回される鉄塊を潜り抜けるような鮮やかな動き。
次いで手刀が、サッちゃんの細い手首へ舞う。力強いママの「おしおき」が、サッちゃんの手首の骨ごとモーニングスターを地に叩き落した。

「ぐえっ・・・」
「やんちゃガールには、おしりペンペン♪」

手首を抑えてその場に座り込むサッちゃんに追撃のおしりペンペン。圧力をかけた掌による、臀部への掌打が、稲妻の速度で放たれる。
回避の選択を考える暇もない。直撃。
今度は尻の骨から、脳髄へと抜けるようなダメージ。サッちゃんのかよわい喉から獣のようなあえぎが漏れる。

「があぁう!!?」
「サッちゃ、」

遅れて事態を把握したツトムくんがサッちゃんに声をかけたときには、第三打が放たれていた。
音もなく振り下ろされたのはママの頭部そのものであった――頭突き。
シンプルでありながら、子供と大人の体格差と骨の熟度の差をそのままぶつけるあまりにも無慈悲な一撃。
衝打で跳ね上げられたサッちゃんの瞳は、最期にこちらへ向かってくるママの笑顔を見た。

「ごっつん♪」

岩とプリンがぶつかったかのような気の抜けた音がした。サッちゃんの額は破壊され――鼻から血が噴き出し――今度こそ地に沈む。
へんじはない。
ただのしかばねのようだった。


【サッちゃん@サッちゃん(うたのおねえさん) 死亡】


「さ・・・サッちゃん!」
「ねえ、ママね、マヨチュッチュさせてほしいの♪ いいかしら♪」

サッちゃんの返り血を顔に浴びたママだが、どうやらそれは気にとめていなかった。
ママの瞳はただ一点、ツトムくんの持っているマヨネーズを見ている。
最初から――マヨネーズが目的だったのか。
ツトムくんは恐怖した。このママは、ママじゃない。ママの皮をかぶった何かだ――!

「う、うわああ!! ママ、ママを、守るんだ!!」

ツトムくんは、がむしゃらに腕を振り回しながら突撃する。マヨネーズを持ったまま、作戦も何もない子供じみた突撃。
それがツトムくんの限界だった。
対するママは少し嫌そうな顔をすると、口を大きく開けた。
そのまま、ぐるぐると回る手が持っているマヨネーズへと、思い切り噛みつくためである。
そして――数秒後。
そこには指ごとマヨネーズを噛みちぎられ、草むらで痙攣するツトムくんの姿があった。

「もう・・・どうしてみんな、歯向かってくるのかしら。ママはみんなのことが大好きなのに。みんなといつまでも仲良くいられたら、それでよかったのに」
「僕は・・・あんたなんか嫌いだ・・・」
「本当に嫌になる、マヨチュッチュしなきゃやってられないわ♪」

マヨネーズをちゅうちゅうと高速で吸いつくすと、薬物中毒患者のそれに似た恍惚な顔をした。
そしてママはその表情のまま、ツトムくんへかかとを振り上げる。
降ろすと同時に――吐き捨てた。

「大丈夫♪ みんなママが守ってあげるからね♪ 殺し合いなんかさせない♪ 天国へ、連れてってあげる♪」

ぐちゃり。
マヨネーズを引きつぶしたような不快な音とともに、また一つのうたが終わりを迎えた。


【山口さんちのツトムくん@山口さんちのツトムくん(川橋啓史) 死亡】


「やんちゃ坊主、やんちゃガールに付き合ってたらずいぶんお洋服が汚れちゃった♪ 朝シャンしなきゃ♪」

ママはモーニングスターを拾うと、シャワーがありそうな場所を探して歩き始めた。
その瞳には、歪んだ子供への愛とマヨネーズしか映っていない。


【5-春/白/一日目/9時】

【慎吾ママ@慎吾ママのおはロック(慎吾ママ)】
【容姿】慎吾ママ
【出典媒体】歌詞
【状態】血まみれ
【装備】モーニングスター
【道具】基本支給品、マヨの容器(空)
【思考】子供たちを殺し合いから守る、マヨをチュッチュする。
【備考】


98 : ◆CDIQhFfRUg :2017/06/18(日) 22:51:10 toLOUKgY0
投下終了です。


99 : 名無しさん :2017/06/18(日) 23:34:54 zaX0Tvuw0
投下乙です
狂気に満ちてるなあ、慎吾ママ


100 : ◆CDIQhFfRUg :2017/06/25(日) 23:39:47 Ab5tyZSI0
酔っていたらこんな時間になってしまいました。投下します。


101 : チャンス ◆CDIQhFfRUg :2017/06/25(日) 23:41:13 Ab5tyZSI0
 


「そうか……それが、君の信じた道か」

 選択を間違えない男に向けて、肯定の意思表示をする。
 毒の針を目の前の男の人に刺したまま。
 あたしはそれを選択した。

「良いだろう。それを望むなら、そうしなさい。
 自分が瞬間ごとに決断するそのすべてで、未来は理想にも絶望にも変わっていく」

 男の人は涙をぬぐった。自分に毒針を突き指すあたしの涙をぬぐってくれたのだ。

「だから、決めたなら泣くな。信じた道を――走れ」

 あたしは、あたしを応援してくれたその人に報いるためにも、より深く毒針を突き刺した。
 この選択は――間違っているのかもしれない。
 それでもあたしは、この曲がりくねった道を往く。


♪♪♪♪


「あ、建物」

歩くことしばし。アルエとこいのぼりは、カジノらしき建物の前までたどり着いた。
なかなか豪華な建物である、横に広いうえ、2階建てときた。

「屋上に行けるかしら?」
(無理はしないで)
「大丈夫。心のうたが聞こえるのは、魔除けに効果的だから。蠅さんだって、それで避けられたのよ……」

アルエは両の手を耳に当て、目をつむり耳をそばだてた。
そうすることで、カジノ内にいる人の心を聞くことができる。

「……痛っ」

こいのぼりは、アルエの胸からのぞく心臓が、びくり、と跳ねたのを見た。

(どうしたの)
「……すごくささくれ立った心の人がいるわ。あとは、野心にあふれた心の人。どちらも、心に刺さるのは同じね」
(危険ってこと?)
「他の場所を探すというのも、選択肢の一つかもね」

他の場所がここより危険でないという保証はないけれど。と、アルエは皮肉めいて言った。

「大丈夫。うたの聞こえるほうさえ気にしていれば、私は隠れながら進むことができるの。きっとあなたを屋上まで連れて行ってあげるわ」
(そこまでしてくれる理由は?)
「ふふ。ハートに聞いてみて頂戴」

またはぐらかされたな、とこいのぼりは思った。ハートは剥き出しなのに、隠し事は多い娘だ。
しかし、多少言いたいことがあるとしても、こいのぼりに声帯はないし足もない。
アルエの言う通り、動く通りに任せるしかないのが現状であった。
まるで風に流されるこいのぼりのままだ。
それでも、その姿で何かの気持ちを誰かに伝えることが出来れば、こいのぼりとしては十分なのだが。

(ささくれ立った心、か)

アルエから聞いた言葉を反芻する。やはりこんな場所だからか、そういう心になってしまう持ち主は多いのだろう。
こいのぼりは先ほど出会った蠅も連想で思い出した。
彼は救われるのだろうか。
転じて、この殺し合いに巻き込まれた歌の登場人物たちには――何かしらの救いがあるのだろうか。
あまり考えたくないことだが、動けない身では考えることしか能わず、ついつい思索にふけってしまう。

「よし、ついた」

思索に耽っていたら、いつのまにかこいのぼりは屋上についていた。


102 : チャンス ◆CDIQhFfRUg :2017/06/25(日) 23:42:39 Ab5tyZSI0
 
「だけど……ちょっと、来たことを後悔してしまうわね」
(とういと?)
「……いえ、独り言よ」

アルエはこいのぼりから何かを隠すように、カジノ屋上のだだっぴろい敷地を90度右に曲がった。
こいのぼりには嗅覚がないので気づけない。
そこには濃い血の匂いが漂っていた。

毒で苦しんで死んだであろう死体があった。

【僕@JOURNEY THROUGH THE DECADE(GACKT) 死亡】


【1-春/止・カジノ屋上/一日目/10時】

【アルエ@アルエ(BUMP OF CHICKEN)】
【容姿】白いブラウスに青いスカート、剥き出しのハートに包帯とコスモス
【出典媒体】歌詞
【状態】健康
【装備】こいのぼり@こいのぼり
【道具】支給品一式
【思考】とくにやることもないので、気まぐれにやる。
【備考】
※感受性が高いです。

【こいのぼり@こいのぼり(作曲者不明)】
【容姿】こいのぼり
【出典媒体】歌詞
【状態】健康
【装備】なし
【道具】なし
【思考】揺られる。せっかくなので、屋根の上で揺られたい
【備考】


♪♪♪♪


カジノのスロットコーナーで一人の青年が大チャンスタイムに入っていた。

「来い…来やがれ…来いぃいいいい!? あああああああああああああ」

――が、外した。出目は776を指している。
殺し合いをそっちのけでこんなことをしているのが誰かというと、賢明な読者のみなさんなら察しがつくかもしれない。
そう、お兄さん@全力バタンキューである。
最後の一人になって優勝するという自分本位な野望を以ってさっそく一人殺した彼であったが、
ふらふらとしていたところカジノを見つけてしまったのだ。カジノを見つけてしまった以上、お兄さんがこうなるのは自然の摂理であった。
そして負けるところまで含めてお兄さんなのであった。

「やっぱりこんなクソゲーの主催が立てた施設のスロットなんて当たるわけないってはっきり分かったね。
 完全に冷めた、覚めたよ。やっぱりさっさと抜け出して、徳川埋蔵金を手に入れる以外にないっすわ。ああ忙しい忙しい」
「あの……ご多忙のところすみません」
「!?」

お兄さんはスロット席の後ろから急に声をかけられて空気イスのポーズでその場を跳ね上がった。オナラでもしたのかな?
していないが、それくらい驚いたのは確かだった。
振り向くと、絶世の美女……とまでは言えないが、可も不可もない、ごくありふれた感じの綺麗なお姉さんがそこにいた。

「おおおお姉さんいったいなんでしょうか」
「あ、その……」

お兄さんはお姉さんから事情を聴いた。
曰く、殺し合いに消極的だが、一人では怖い。会いたい人がいるが、来ているのかも、会えるのかもわからない。
スロットに興じているお兄さんもまた殺し合いに消極的なのであれば、一緒に行動してくれないかと。
そういう感じの話であった。

「ええもっちろんですとも! このお兄さん、地獄の果てまでお兄さんをお守りしますよ!」
「ありがとうございます……!」
「いえいえ、お礼はいらないですよ!」


103 : チャンス ◆CDIQhFfRUg :2017/06/25(日) 23:43:38 Ab5tyZSI0
 
肩の力が抜けたらしく、うつむいてほっと息を吐くお姉さん。
それを見下ろして鼻の下を伸ばすお兄さんは、

(やっぱり女の子は優しくしてあわよくば……ね……! ヤッて後味悪くなったら殺せばいいしな!)

お姉さんをヤり捨てて殺す恐ろしい計画を頭の中で練っていた……。
だが、お姉さんもまた、うつむいたその表情の奥で、

(よこしまなことを考えているオーラがある人ね……浮かれているようで。逆に隙を見せていないわ。骨が折れそうね)

いつお兄さんを油断させて毒針を刺そうか考えていた。

「では一緒に行きましょう!(すみません、万全のチャンスが来たら、殺させてもらいます……)」
「ええ! お供しますとも!(ごめんな、万全のチャンスが来たら、スケベさしてもらいます!)」

互いに笑顔の裏にチャンスを狙う強かさを隠しながら、二人はカジノを後にする……。

「そういえばお姉さん、その会いたい人というのはどんな人で?」
「ええと……会えばすぐにわかると思います。マッシブな感じで……それと……あの人は」


「愛してるの響きだけで強くなれるんです」


【1-春/止・カジノ前/一日目/10時】

【お兄さん@全力バタンキュー(A応P)】
【容姿】松野おそ松@おそ松さん
【出典媒体】歌詞
【状態】大変ご多忙
【装備】研ぎ澄まされた刃@もののけ姫(米良美一)
【道具】支給品一式、ツルハシ
【思考】
基本:優勝して埋蔵金を見つけに行く

【いつかまた巡りあいたい君@チェリー(スピッツ)】
【容姿】可もなく不可もない綺麗なお姉さん
【出典媒体】歌詞
【状態】焦燥
【装備】毒針
【道具】支給品一式
【思考】
基本:あの人にもう一度会いたい、助けたい


104 : ◆CDIQhFfRUg :2017/06/25(日) 23:45:07 Ab5tyZSI0
投下終了です。

>「ええもっちろんですとも! このお兄さん、地獄の果てまでお兄さんをお守りしますよ!」
ここはお姉さんをお守りしますよ!ですね・・・wikiで修正しておきます。


105 : 名無しさん :2017/06/26(月) 00:20:16 x2xEPpbs0
投下乙です
純粋な鯉のぼりと策を巡らす二人が対照的だなあ


106 : ◆CDIQhFfRUg :2017/06/28(水) 01:19:01 DPw1duRs0
こいのぼりの純粋さは書いてても癒されました。今週分投下します。


107 : スリル・ショック・サスペンス ◆CDIQhFfRUg :2017/06/28(水) 01:20:29 DPw1duRs0


「俺はスリル」
「ショック」
「サスペンス」
「あとフィガロ」

「――きゃあああっ!」

 手に持ったハート型のナイフが、カットラスの一撃に弾かれて。
 がらあきの胸部正面を、慌てて腕でガードしたけれど、あざ笑うかのように、ショックの蹴りがみぞおちへと突き刺さって。
 わたし――わたし@Mは、胃の中身がシェイクされる感覚を味わいながら後方へと思い切り吹き飛びました。
 自分の人生。物語。
 その主役は自分なのだから、演者に墜ちず、台本を作らず、やりたいことを真っすぐに。
 会いたい人に会うために。
 そう思っていた、そう思っていたのに――それさえも許されないような状況が、わたしの元へ踊り来ていました。

「見えない力頼りに」
「心の扉閉ざさずに」
「Power(強く)power(強く)……POWERRRRRRRR!!」
「フィ〜〜ガ〜〜ロ〜〜」

 三人の、眼鏡を掛けた少年。あとフィガロ。合わせて四人の男たちに、わたしは囲まれていました。
 真顔でパラパラ踊りながらカットラス・ハルバード・タルワールを巧みに操る三連星の連携に、わたしのハート型のナイフはすっかりヒビ割れていました。
 あとフィガロは素晴らしいテノールで威嚇してきます。こいつだけ何やってんだろう……?
 とにかく、ピンチオブピンチ、絶体絶命の真っただ中であることだけは、確かでした。

「な、なんでッ!? なんでわたしを襲うの!」
「スリル」「ショック」「フィ〜〜ガ〜〜ロ〜〜」「サスペンス」

 答えは返ってきません。代わりに、嵐にも似たパラパラ踊りの群れの中から、棘の連撃が、わたしを執拗に突きます。
 まるで私が感じていた痛みを、君にも同じように与えるかのような攻撃。
 何に痛めばいいのか、何に怯えればいいのかもわからないまま、わたしの体にいくつもの裂傷が出来上がっていきます。

「……!」

 まさにスリル・ショック・サスペンス。
 きわどく、衝撃的に、はらはらと。わたしの体から血が流れていきます。
 ああ――これは厳しいでしょう。
 わたしが『ヒロイン』を自称していたなら、『王子様』が助けに来てくれることを望んだでしょう、
 でもわたしは『主人公』を自称してしまった――うたってしまったのですから、
 ピンチの時に助けが現れるなんて、ご都合を期待しては御門違いと言うものでしょう。
 順当に死ぬだけでしょう。

「フィガロ」
「ショック」
「スリル」「サスペンス……」

 嗚呼、これはもう仕方がない。
 刃と刃と刃、あとフィガロを前に、わたしは覚悟を決め――

「嫌だ、死にたくない……会いたい、会いたい!」

 ――覚悟を決めず叫んでいました。恥も外聞もなく。

「会いたい、もう一回、あの人を見たい、感じたい、手をつなぎたい、ぬくもりを感じたい、
 ご飯を食べて、おいしいねって笑い合って過ごして、もう一回でいい、もう一回でいいのに――いや、い……いやああああああっ!」

 涙で顔をぐちゃぐちゃにして。叫んでいました。
 覚悟など、決められるわけがありません。納得など、できるはずがありませんでした。
 だって何も、何も、叶えていない。わたしの物語に、あなたが現れずにエンドマークを迎えるなんて、ありえない。
 叶わないと悟っていても、胸に焼きついたそのアドレスを、自分の居場所を、諦められない。

 認めたくなくて、泣きながら眼をつむりました。

 ・
 ・
 ・
 ・

 だから、次に目を開けた時。目の前の光景が信じられなくて、わたしは目を何度もこすりました。

「……お嬢ちゃん。涙じゃ人は強くなれない」
「え……」
「人を強くするのは『愛してる』の響きだ」


108 : スリル・ショック・サスペンス ◆CDIQhFfRUg :2017/06/28(水) 01:21:25 DPw1duRs0
 
 スリルは、メガネを割られて地に伏していました。
 ショックは、ショック死したのか、泡を吹いて痙攣していました。
 サスペンスは裸足で逃げ出して、でも逃げきれなかったのか犬神家になっていました。
 フィガロは喉を掴まれて、地面から浮かされて、叫ばずにもがいていました。
 筋骨隆々な体のその人は、そんな状況で愛を語りました。

「『愛してる』と言ってくれれば、俺はもっと強くなれる」
「……い、言わないわ。わたしが言うのは、一人だけだもの」
「くく。見込んだ通りだな」

 ぐちゃり、と喉が潰される音がして。
 その人は――「愛してるの響きだけで強くなれる僕」さんは、フィガロを殺しながらはにかみました。

「もちろん俺も一人にしか言われるつもりはない。どうやら、ライバルだな」

 ああ、そうか。
 わたしは死が積み重なった草原の真ん中で、ひとつ得心をしました。

 自分の人生という名の物語のヒロインを気取るなら、助けに来るのは王子様。
 でも、主人公をうたうなら。ピンチに貸しをつけにくるのは、ライバル以外にあり得ない。
 ということを。

「絶対に俺に『愛してる』と言わない女を求めていた。
 血に染まったこの手でも、抱きしめたい女(ヤツ)がいる。協力してくれるか?」
「……分かりました。デュエット、しましょう」

 わたしは男の人に、デュエットを申し込みました。

♪♪♪♪


「ちなみにささやかな喜びを抱きしめるのはまだ早い」

 かくしてデュエットが決まった直後――少し表情を柔らかくした少女に向かってそう言い放つと、筋肉男は遠方を指さした。
 そこには、二人組のイカしたスタイルの男と女が立っていて、抱き合いながらこちらを見ていた。

「やあベイビーたち。スリルとショックとサスペンスはいかがだったかな?(英語)」
「フィガロの後は、メインディッシュよ?(英語)」
「俺は彼女のために作られた。そして彼女は、俺のために生まれた(英語)」
「さあ――本物の愛の前にひれ伏しなさい(英語)」

 英語で何かしゃべっている。
 けっこう遠いのでいまいちインパクトはなかった。日本語でしゃべれ。でもニュアンスは伝わった気がする。

「なにあれ……さっきのはあいつらの差し金ってこと?」
「おそらくはな。そしてやつら、どうやらカップルのようだ。
 燃えるじゃないか。即席のニセカップルで本物の愛を張り倒す。なかなかできることじゃないぞ」
「ふふ……面白いわね」

 血まみれの少女は立ち上がる。
 割れたハート型のナイフは、割れたからこそ鋭く尖っている。

「わたし知らなかったな。あのひとしか見えてなかったからかな。幸せ気取りのやつらを見ると、こんなにもぞわぞわするんだ」
「ああ。まったく――虫酸が走るな」

 さあ。恋はスリルとショックとサスペンスを乗り越えて、なおも激しく燃え上がる。
 真実の愛は一つではない。
 主人公を選んだプリンセスは、愛のためにライバルと一緒のマイクで歌(ころしあ)う。

「じゃあ、やりましょう」

 ――すべては愛の証明のために。

【スリル@恋はスリル、ショック、サスペンス(愛内里菜) 死亡】
【ショック@恋はスリル、ショック、サスペンス(愛内里菜) 死亡】
【サスペンス@恋はスリル、ショック、サスペンス(愛内里菜) 死亡】
【フィガロ@Bohemian Rhapsody(QUEEN) 死亡】


109 : スリル・ショック・サスペンス ◆CDIQhFfRUg :2017/06/28(水) 01:22:34 DPw1duRs0
 

【1-秋/白/一日目/10時】

【わたし@M(プリンセスプリンセス)】
【容姿】女性、18歳、髪型はショート
【出典媒体】上記妄想(探しても媒体が見つかりませんでした)
【状態】あなたを忘れる(くらいなら誰かを殺す)勇気
【装備】割れたハート型のナイフ
【道具】支給品一式
【思考】あなたともう一度会うために、全ての星(参加者)を森(冥府)へ返す。
【備考】
※正しくは「わたし」では無く「私」です。書き終えた後に気付きました。
※でもそのまま行きます。

【愛してるの響きだけで強くなれる僕@チェリー(スピッツ)】
【容姿】男性、ムキムキ、修羅
【出典媒体】歌詞
【状態】殺気
【装備】なし(身一つで戦えるので)
【道具】支給品一式
【思考】いつかまたこの場所で君と巡り合いたい
【備考】

【お前のために作られた俺@BORN TO BE MY BABY(BON JOVI)】
【容姿】イケてる外人の男
【出典媒体】歌詞
【状態】高揚
【装備】???
【道具】支給品一式
【思考】本物の愛の前にひれ伏せ
【備考】

【俺のために生まれたお前@BORN TO BE MY BABY(BON JOVI)】
【容姿】イケてる外人の女
【出典媒体】歌詞
【状態】高揚
【装備】???
【道具】支給品一式
【思考】本物の愛の前にひれ伏しなさい
【備考】


110 : ◆CDIQhFfRUg :2017/06/28(水) 01:23:08 DPw1duRs0
投下終了です。


111 : ◆CDIQhFfRUg :2017/07/01(土) 11:41:36 UoobEMAI0
夏を感じてきました。投下します。


112 : たび ◆CDIQhFfRUg :2017/07/01(土) 11:42:13 UoobEMAI0
 

すたすたすた。
すたすたすた。
ずっと歩いている。
終わりなどないかのように、ずっと歩き続けている。

「な、なあ…どこまで歩くんだ?」
「どこまででしょう」
「変な言い回しやめろよ……目的があるから歩いてるんだろ? どこに着くまでなんだ? 誰に出会うまでなんだ?」
「……それは、誤解ですね」
「誤解?」
「旅の終わりを決めるのは、そちらですよ」

すたり。
と立ち止まると、旅人は振り向いて何かに追われるように走りだすお前の方を見た。
その顔はターバンめいた布に隠されている。断頭台の荒野で一緒に修羅場を潜り抜け、お前はこの旅人にある種の信頼を抱いてはいるが、
かといって完全に心を預けられたわけではなかった。それに、

「全ての唄には終わりがある。でも、どこを終わりにするかを決める権利は、唄のほうにある。
 こちらは願わくばそれが唄にとって最適な終わりであるように、祈っているだけなので」

ひとえに旅人の言うことがあまり理解できないというのも、その理由の一つである。
そもそも、助けてくれた理由さえ教えてもらってない。お前はある種、旅人に不気味ささえ感じていた。
突然現れて助けてくれる。謎の魔術を使い、自らの体をアゲハ蝶に変える。その場にあるものをうまく使って、化け物さえも退治して見せた。
間違いなく、一緒に付いていれば旅を続けることはできるだろう――だが、そうして続ける旅に何の意味があるのか。
旅人は何を望んでいるのか。それがわからない。

「迷っていますか?」
「……迷ってるのはあんたじゃないのか? 歩いているのに、理由がないって言うんだろ?」
「でもそちらにも理由はない」
「それは…:…」

そう言われるとお前は返せない。
他人の望みの提示を望むほどには、お前は自分の望みを知らなさ過ぎた。

「こうして歩き続けているのは、そちらが終わりを決めていないからですよ。終わりが見えていないのに、終わらせることなどできるはずがないのですから。
 少なくとも――あの五頭の化け物の前でそちらは終わりたくなかったのでしょう? ならば、そちらにはあるはずですよ」
「俺、は……」

確かにそうだ、とお前は思った。
あの、顔が五つある化け物に殺されそうになっていた時、お前はそれを受け入れていなかった。
絶望しながらも、ここで終わりかと思いながらも、ここで終わってしまうことを望んではいなかった。
それは誰もが生にしがみつくようにそうしていたのだと、単純に考えてしまっていた。だが、それ以外にも理由は必ずある。
例えば、死の間際に見えた人物――。

「俺は、あいつに会いたい」

紅に染まったあの男に、無事を伝えたい。
あの勇敢で、真摯で、いつもお前のそばにいてくれたあいつに、心配をかけたくない。付かれていたら励まし、凹んでいたら慰めてやりたい。
お前にひとつ残っていたのは、そんな感情だった。


113 : たび ◆CDIQhFfRUg :2017/07/01(土) 11:42:40 UoobEMAI0
 
「であれば――終わらせますか?」
「……ああ」

旅人に答える。そうすると、突然霧が晴れたかのように気分が明るくなった。
あたりも明るくなり、ずっと遠回りして避けていたそれが、お前の目の前に現れた。
それは。
それは――。

「ああ……そうか……」




「俺は――遅かったのか」


♪♪♪♪


旅人は、折り重なるように倒れる二つの死体を眺めていた。
一つの死体は赤く染まっていて、もう一つの死体はその死体へ寄り添うように、抱きしめるように、重なり倒れている。
ひとりじゃないことをつたえようと、追いかけていった。

残念ながら、この旅は悲しい終わりを迎えてしまった。
愛は閉じられ、叫びは届かず、紅に染まった彼を慰めるには、お前はこうして隣で死ぬしかなかった。
もう少し紅が生き延びていれば。
もう少しお前が早く、望みに気づき、決断していれば。
イフを考えることはいくらでもで出来るが、その登場人物である本人たちがもういないのであれば、それは仮唄にすぎない――。

旅人は、小さくため息をついた。

「次の旅を、探しましょう」

アゲハ蝶へと変じた彼は、その場からはらはらと飛び立つ。
残されたのは、もう二度と戻らないただの死体が二つ。それだけだった。


【何かに追われるように走り出すお前@紅(X JAPAN) 死亡】

【5-秋/鶴/一日目/10時】

【旅人@アゲハ蝶】
【容姿】砂漠風の旅人姿、顔が見えない
【出典媒体】歌詞
【状態】健康
【装備】アゲハ蝶@アゲハ蝶
【道具】支給品一式
【思考】旅を探す
【備考】
※アゲハ蝶を操れます。


114 : ◆CDIQhFfRUg :2017/07/01(土) 11:43:42 UoobEMAI0
投下終了です。


115 : ◆CDIQhFfRUg :2017/07/01(土) 23:37:20 UoobEMAI0
しばらく忙しいので再来週分まで投下します。


116 : 存在証明/来来来世 ◆CDIQhFfRUg :2017/07/01(土) 23:37:58 UoobEMAI0
 

歩道橋には、にじんでいる落書きがあった。
雨や、年月で、スプレーで書かれていただろうそれはぐちゃぐちゃになっていて。何が書いてあるのか読み取ることはできなかった。
きっとこれを書いた人がいるのだろうと思うと、少し悲しくなった。
誰にも気づかれずに死んでいく落書きが、悲しくなった。
僕はこれを誰かに見せなければいけないと思った。
世界に忘れられてしまう前に、ここにこれがあったことを思い出してほしい。
テンプレートな落書きだって誰かの帰りを待っている。
存在を、認めてほしい。

「僕は、存在を認めてほしい」

市街地の歩道橋の上で、僕はそうつぶやいた。
信じた道を走れ、と言われ。何万通りもあっただろう選択肢の中で、僕が選んだのは存在の証明だった。
自分の右手――銀色の義手には、「M-3」という通し番号が書いてある。僕は人間じゃない。人間のレプリカだ。
僕のオリジナルは、僕とは別のところに居て。
きっと、この殺し合いには呼ばれていない。
そのことに気づいてしまって。
だから、あのとき僕は泣いていたんだ。

「この催しで優勝すれば、願いは叶う」

ここまで誰も言及していなかったかもしれないが、基本支給品の中にはルールを書いた紙が入っていた。
曰く、最後の一人まで生き残れば、あらゆる望みが叶うのだという。
正直に言って、非常に惹かれるものがあった。
例えば、「オリジナルの僕と入れ替わりたい」と願う。そうすれば僕は偽物の、レプリカの僕から、本物を奪うことが出来る。
それは存在の証明とは違うかもしれないが、幸せをつかむことはできる選択肢だろう。

「でも……それは無いな」

でも、それは僕の「望み」ではない。
僕の存在証明は。
人を殺して奪うような物語では、在りたくない。
この、歩道橋の落書きみたいに。誰かに置いて行かれた自転車みたいに。忘れ去られなければそれでいい。
ここに在ることに気づいてもらえるだけでいい。

欲を言えば、誰かのために戦うことで、認めてもらえたら。きっと至上の喜びだ。

銀の義手を強く、強く握りしめて、僕はそれを決意の証とした。

――遠くのビルから爆発音が聞こえたのは、そんな時だった。


【1-名/馬/一日目/11時】

【僕@レプリカ(坂本真綾)】
【容姿】ブロンドの髪を結った端正な容姿の青年
【出典媒体】歌詞
【状態】健康
【装備】銀色の義手
【道具】何らかの武器@レプリカ
【思考】自分の存在を認めてもらう。
【備考】
※レプリカです。


♪♪♪♪


117 : 存在証明/来来来世 ◆CDIQhFfRUg :2017/07/01(土) 23:39:31 UoobEMAI0
 

「や、や、、、やっちゃったぁ、、、、」

市街地のビルの一フロアが、一瞬にして吹き抜けに変わった。
爆発したのは、支給品だ。愛のバクダン@愛のバクダン。愛のなんて枕言葉が付くにはあまりに物騒なその武器が、爆発した結果がコレだ。
爆発させたのは、参加者だ。
過ちを犯す男の子@JAM――のび太のような姿をした彼は、
ドラえもんの姿をしたドラえもん@ALL Want と
しずかちゃんのような姿をしたなんでもナーミン@キルミーベイベーと一緒に、殺し合いを打倒しようと動いていた。
だが、敵と対峙し、戦いを繰り広げていたそのとき。支給品を誤って爆発させてしまったのだ。

まったくおっちょこちょいにもほどがあるが、彼を責めるべきではない。
フロアにはさっきまで命だったドラえもんの残骸となんでもナーミンの残骸が散らばっているが、彼を責めるべきではない。
なぜなら、フロアを吹き飛ばすような爆発でもなお、彼らが対峙していた敵は死んでいなかったからだ。
茫然自失の男の子に無言で武器を向けるそれもまた、ロボットだった。

無機質に過ぎるそのロボットの名は、K-5と言った。

「殺して、K-5」
「う、うあ、なあ、なあ! なんでだよ! 君、君は、なんで!」
「殺して、K-5」

K-5の後ろには、白い少女がいる。K-5は無言でその少女の言葉に従った。
過ちを犯した男の子の首が舞う。
男の子は最後まで少女に手を伸ばしていた。何故って。少女が、苦しそうな顔をしていたからだ。

「残念ね。もう遅いのよ」

少女は――「もう遅いよと怒る君」は、苦い表情で吐き捨てる。
その手には、白い花がある。
ロボット「K-5」は、「白い花の少女」が好きだから。白い花の少女に救われてしまったから。その白い花で惑わされてしまうのだ。

「私、分かるの。私が前前前世から探してたあの人は、もう死んじゃったって」

胸を苦しそうに抑えながら、少女は世界に向けて吐き捨てる。

「だからね、みんなみんな来世に連れて行って、もう一回探すから。だから、みんな。いっぱいいっぱい、苦しんで死んでね」

物言わぬロボットを付き従えて――彼女はすでに来世を望んでいた。


【過ちを犯す男の子@JAM(THE YELLOW MONKEY) 死亡】
【ドラえもん@All I Want(The Offspring) 死亡】
【なんでもナーミン@キルミーベイベー(やすなとソーニャ) 死亡】


【2-名/馬/一日目/11時】

【遅いよと怒る君@前前前世(RADWIMPS)】
【容姿】清潔感のある白い感じの少女
【出典媒体】歌詞
【状態】落胆
【装備】白い花@???
【道具】基本支給品
【思考】みんなで来世に行きましょう?
【備考】

【ロボットなのに不倫したロボット@DAYS (FLOW)】
【容姿】デーモン小暮っぽい髪形のロボット
【出典媒体】PV
【状態】従順
【装備】いろいろ
【道具】基本支給品
【思考】遅いよと怒る君に従う。
【備考】
※遅いよと怒る君をPVの白い花の少女と誤認識しています。


118 : ◆CDIQhFfRUg :2017/07/01(土) 23:40:59 UoobEMAI0
投下終了です。
過ちを犯す男の子のパーティは速爆殺するには惜しかったかもしれません。


119 : 名無しさん :2017/07/02(日) 00:48:26 sMAYbfMY0
投下乙です
大切な人を失って修羅の道に堕ちた女の子が、切ないですね


120 : ◆CDIQhFfRUg :2017/07/10(月) 23:20:29 cu6FeE4M0
遅いよと怒る君は悲しい物語ですね・・・
2ケタ投下の実績解除は今しかないと天の声がしたので投下します。


121 : 太陽論 ◆CDIQhFfRUg :2017/07/10(月) 23:21:22 cu6FeE4M0
 

太陽が憎い。さんさんと中天に輝く太陽が、その眩しさが、あまりに憎かった。
太陽が輝けば輝くほど、そんなすばらしい空から逃げ出すように眠りを求める自分が、嫌いになっていくから。



昼がやってくるまでもう幾刻もありはしない。
すいみん不足の黒いオーラを放った少女、わたし(オルタ)は獲物を探して歩いていた。
うるさい。まぶしい。そういったもの全てが、彼女の獲物だった。
騒音(しょうがい)をすべて叩き潰してしまわないと、彼女は眠れない。そういう運命(さだめ)にある。

「六時間ごとに、放送だったかしら? それまでにもう一人くらいは、冥府(じごく)に送っておきたいわね」

何回徹夜したかわからない彼女の頭は、そして瞳は、ギンギラギンという形容詞(かざりことば)が似合ってしまうくらいに冴えている。

「そう、例えば――あれとか?」

そんな彼女が数十メートル先に見つけた敵性存在(さつがいたいしょう)もまた、ギンギラギンの鎧をまぶしく輝かせていた。
太陽を反射して澄んだ光を放つ全甲冑(フルアーマー)。
身の丈は2メートルはある。手に持っているのは、純銀を鍛えた重剣(ヘビーソード)のようだ。
巨人めいた堂々とした足取りで、ゆっくりと、こちらに歩いてきている。
ああ――あれは、嫌いだ。
太陽から逃げているすいみん不足の狂少女(バーサーカー)は、太陽に物怖じしない歩き方をしているその騎士を、一秒で嫌いになった。
二秒で足を踏み出した。
三秒で死神の鎌(デスサイズ)を振りかぶった。
四秒で彼我距離を詰める。

「わたしは眠気が嫌い」

五秒で呪詛を吐き。

「わたしは太陽が嫌い」

六秒で死念を重ね。

「だから――あなたの生魂(いのち)を黙らせる」

七秒で刈り取る。

「――死ね(終われ)」


「……☼☽☆☼」

剣衝音。
八秒目に、死の銀と太陽の銀が交響曲(ユニゾン)を吟じた。

(――こいつ、今、何て?)

最高速度(さいそく)で叩きつけたはずの鎌を相殺され驚愕する少女は、
それ以上にその竜頭族(ドラゴノイド)に似た頭部装甲(フルヘルメット)の奥から響いたくぐもった言葉の響きに、眠たい目を限界まで見開いた。
明らかに、それは。この地球上の言語ではなかった。


122 : 太陽論 ◆CDIQhFfRUg :2017/07/10(月) 23:22:30 cu6FeE4M0
 
「☆☼☽☆☼☽☼……☆☼☽」
「何ッ、だ……!? お前は……!!」

――わたし(オルタ)が殺し合い開始から三人もの首を難なく刈り取ることが出来たのには理由がある。
通常、人間が筋肉を動かす際にかけている脳の制限(リミッター)。
睡眠不足を超えた睡眠不足な彼女はあまりの連日の徹夜の果てに、その枷の存在から解き放たれている。
ゆえに、少女の細腕でも、強力無比かつ巨大な鎌を、ひょいひょいかるがると操ることが出来てしまうのだ。
人間の限界を超えた過剰稼働(オーバーロード)を発揮し続ける彼女に、力負けなどどという概念(りゆう)はない。
勝つまで押し込む、殺すまで殺し続ける。
それだけの絶対殺意を載せて繰り出し続ける死の鎌が今、目の前の竜の騎士(ドラゴンナイト)に届かない。

「☼☽☆☼……」

弾かれ。いなされ。流され。無力化される。
交えた剣の数がすいみん不足の少女に、その脳の奥の受容体(’シナプス)に知らしめる――技量の違い。力量の違い。
経験値の、違い。
あまりにも遠い、その心臓に向かって――少女は吠える。

「何な、のよ!」

狂った眠気が焼き付いた脳が、あまりにも簡単に気付いてしまう。だからもう一度吠える。

「何で、お前――『戦いを避ける』!!」
「……☽☽」

――言葉は分からない。理由は分からない。
だが目の前の騎士(あいて)は間違いなく、『少女を殺せるのに殺しに来ていない』。
戦いを、避けている。こちらが疲れるのを待って。血を見ずにこの戦いを、殺し合いを、終わらせようとしている。
少女は沸騰した。叶わないことよりも、届かないことよりも、何よりもそれに、心の水を沸騰させた。

「生きるのは、戦いでしょう!? ――願うのは、殺し合いでしょう!?」

打つ。打つ。飾り気のないがむしゃらな攻撃を繰り返す。

「わたしが願いのために戦っているのに……お前はそれを否定するのか! そんな、絶大な力を持ちながら……お前はわたしを躱す(あそぶ)だけなの!?
 わたしを侮辱するな! わたしを怒らせるな! 頭が、頭が、痛くなる! わたしの清らかな眠りを、お前のその傲慢こそが妨げているのに!!」

剣と鎌が打ち合うキンとした音とともに、泣き言のような叫びだった。
すいみんオルタは止めなかった。肘が悲鳴を上げても。爪が剥がれても。肉が断裂しても、甲冑を殺しにかかるのを止めなかった。
その願いはすべて虚しく受け止められた。
ドラゴンナイトは強かった。
終いには、血を吐いた。吐いたのは、少女の方だった。

「あ……う……嘘……」

どさり。
地面に崩れ落ちた少女を、騎士は哀しそうに見下ろす。
少女の、少女を、強制的に動かし動かされていた動力糸(エンジン、あるいはマリオネット)がこと切れたのだ。

「いやだ……ねむれない……こんなんじゃ、やさしく、ねむれないよ……。
 わたし、わたし……わたしは……ああ……」

そのまま――目を開けたまま、ねむれない少女は動かなくなる。
騎士はやはり、黙ってそれを見届けていた。
戦いは終わる。
眠るための少女の唄は、太陽の下に停止した。


【わたし@すいみん不足(原曲)(CHICKS) 死亡】


123 : 太陽論 ◆CDIQhFfRUg :2017/07/10(月) 23:23:58 cu6FeE4M0
 

「……あなたは、日本人ですか?」
「☆☼☆☼☽☆☼」
「なんだ、異世界人でしたか」
「☼☽☆☼」
「そこで死んでいるのは……日本人ですか。貴方が? いえ、自滅ですか」

涙だらけの少女を追っていたものの、道に迷ってしまったニュースキャスターは、
血を吐いて息絶えた少女と、その少女を見つめながら悲しげにうつむく異国の騎士を見つけた。
試しに話しかけてみると、明らかに地球上の言語ではない言葉が返ってきた。
これは異世界人の特徴である。

まあ、外見や状況からなんとなくそんな気はしていたが、
異世界に連れていかれた日本人という可能性を消す必要があったため、念のため話しかけたのだ。
答えとしては、この騎士は間違いなく日本とは関係ないという結論が得られた。
だって日本人が目の前で死んでいくのを止められていないのである。
協調性の高い日本人であれば、目の前で死にゆく日本人を救えて当然のはずであるからして。

「日本人でないなら私の願いには関係ないので、これでおさらばというのも良いですが……。
 見たところ、戦いたくないひと? あるいは殺し合いを止めたいひとという感じでしょうか? ああ騎士ですか。
 ああいえ、こちらの言葉も通じてないのでしょうから、これは独り言ですね。
 ニュースキャスターという職業柄、どうしても言葉数は多くなってしまうタチなのです」
「☆☽☆☆☼☽☆☼☆……」
「言ってしまうとね、無理だと思いますよ。ええ、無理だと思います。
 ジェスチャーしてあげましょうか? こう、バツを両手で作って嘲笑ってあげましょう。ええ、なぜかって?

 ――人間ってのはね、汚いんですよ。
 異なる「正義」、異なる「言語」、異なる「願い」――そんな些細なことでいつまでも争い合う。

 そんな世界で澄んだ歌を歌えるのは、もう人間なんかじゃないんですよ。狂って天使になったか、生まれつき天使かなんですね。
 だからあなたのその願い、提出・即・却下って感じだと思いますね。三文にもならない台本です。
 一日二日の停戦なら、奇跡でも起こせばどうにかなるかもしれませんが。私、そういうファンタジー、クソだと思ってるんで」

太陽が常に中天にあるように。
人間は、空に罪をさらし続ける生き物ですよ。
現実見ましょう、現実を。
立ち尽くす騎士を後目に、ニュースキャスターはそんな締めの言葉をその場に置いた。

「では、また会うことがありましたら」
「☼……」

騎士は立ち尽くす。
太陽は照り続ける。
清き願いを置き去りに、死体は腐り始めるだろう。


【4-名/白/一日目/11時】


【ドラゲナイ@Dragon Night(SEKAI NO OWARI)】
【容姿】ドラゴン甲冑の騎士
【出典媒体】歌詞
【状態】……。
【装備】銀の重剣(ヘビーソード)、甲冑
【道具】なし
【思考】誰とも戦いたくない、争いを終わらせたい
【備考】
※百万年に一度しか太陽が沈まない星の出身です。

【嬉しそうに「乗客に日本人はいませんでした」「いませんでした」「いませんでした」って言ったニュースキャスター@JAM(THE YELLOW MONKEY)】
【容姿】金井憧れアナ
【出典媒体】歌詞
【状態】健康
【装備】9mm拳銃
【道具】基本支給品
【思考】日本人を殺す。
【備考】


124 : ◆CDIQhFfRUg :2017/07/10(月) 23:25:06 cu6FeE4M0
投下終了です。


125 : 名無しさん :2017/07/10(月) 23:37:35 x41ba/Vc0
投下乙です
戦いを望まないものが報われないのはロワの常道ですが、やはり切ないですね
それはそうと、名前はそれでいいのかw


126 : ◆CDIQhFfRUg :2017/08/31(木) 23:12:13 CxVXZQiQ0
夏が終わるので投下します。


127 : 思い出をこえていけ ◆CDIQhFfRUg :2017/08/31(木) 23:13:02 CxVXZQiQ0
 


946。947。948。

ボールを投げて、そして投げ返される。

1000飛んで13。14、15。

家庭的な女がタイプな俺はただただ無心で、得体のしれない思い出とキャッチボールを続けていた。

「おにいちゃん、バッティング練習しようよー」
「まま待ってくれ。待ってマジで。ほんと。投げ込みが足りない気がする」
「もう千回もキャッチボールしてるよー。飽きちゃうよー」
「俺、パスタと投球フォームにはこだわるタイプなんだよ、たのむ、もう少し付き合ってくれ!」

パスタはともかく、投球フォームへのこだわりはもちろん嘘である。
野球なんて、家庭的な女がタイプな俺は、草野球で遊んだ程度の知識と経験しかない。
なのになぜこんな嘘を俺がついているかと言えば、ひとえに先ほど見てしまった衝撃的な光景にある。

(さっぱり原理は分からないが、こいつとまともに野球をすると子供になってしまう)
(しかも、こいつとバッティング勝負をして負けたら、そのまま消えてしまう……!)
(くっそ……こんなことで消えるわけにはいかねーのに……! なんでだ! なんで、キャッチボールが辞められない!!)

二人の偉大なる野球選手を童心へと還し、そして消し去った時速1000kmを、俺はしかと見ていた。
だから分かっていた、目の前の野球少年は人外の存在だ、関わるべきではないと。
なのに逃げようとしていた俺は気が付くとキャッチボールをしていた。……野球を持ち掛けられた時点で、少年との戦いは始まってしまうのだろう。
もちろんそのルールに気づけていたからこそ、俺はこうしてバッティング勝負を引き延ばしているが――すでに限界が近づいている。

(ううう……止まらねえ……疲れない……投げて、投げ返して、受け取って……ちくしょ、う……た、楽しい……!)

楽しいのだ。
徐々に、徐々に。千回を超したキャッチボールのトランスじみたリズムの中で、神経を、精神を削られ、代わりに不可解な楽しさが刷り込まれていく。
なにが面白いのかもわからないけどなんとなくはしゃいでいたら楽しかった、あのころの、子供のような心にされていく。
まだ自分は大丈夫なのか? 体が縮んでいないだろうか? わからない。恐ろしくて敢えて認識をしていない。
思い出の毒が脳内麻薬となって、俺の脳をむしばんでいる。

(あの夏を思い出す)(あの夏? どの夏だ)(この夏はどんな夏だった?)
(草野球をしていたんだ)(居るだけで楽しくなるような悪ガキ仲間とだった)(河原の広い公園)(白線も無い共有空間)
(俺はホームランを打った)(人生初のホームランだった)(いい音だったんだ)(これが打てたら死んでもいいくらいの)
(ああ、そう、だから、きっと、)
(きっと俺の人生の最高潮はあの場所だった――)
(……あの場所だった?)

「ね?」

家庭的な女がタイプな俺は、気が付くと少年になって、バッターボックスに立っていた。
にこやかに。それが当然で、それがすべてであるかのように野球少年は、俺に語り掛けるのだった。

「野球の思い出は、いちばん楽しいでしょ?」


「違う」

口からこぼれた言葉は否定だった。

「ちげーよ。……俺の最高の思い出は」

目をつむる。

「幾千の星の中でいちばん光るあいつを見つけた時なんだよ」

白球が放たれるその前に、俺は片手を高く高く空へ掲げた。


「――代打。スーパースター」

ふたりだけの野球世界に、スーパースターが現れた。

「よく粘ったね。ここからは、勝負の時間だ」


♪♪♪♪


128 : 思い出をこえていけ ◆CDIQhFfRUg :2017/08/31(木) 23:13:48 CxVXZQiQ0
 

バッターボックスに入るその動作さえ、あまりに研ぎ澄まされていた。
少年時代の、野球の楽しさを司る少年からすれば、それはまさしくヒーローの動作だった。
スーパースター。
そう呼ばれた彼は、たった今、家庭的な女がタイプな俺を助けるピンチヒッターのごとく、マウンドの少年と向き合っている。

「感心しないな」
「なあに? おじさん」
「野球がいちばんではない人にまで、野球の夢を見せるのはよくないな、と言っているのさ。僕が気づいて止めなければ、彼は溶けたくない思い出に溶けていた」
「ぼくは、楽しく野球がしたいだけだよっ」

キャッチボールの欧州と度重なる精神への浸食で、スーパースターの背後に隠れる家庭的な女がタイプな俺はすっかり疲弊している。
それを見ても悪びれることない少年。実際に、悪いだなんて思っていいないのだから当然の反応だ。

「おじさんも、そんな堅苦しくしないで、楽しく野球しようよ」
「……」
「聞いてるよ。知ってるよ。分かってるよ。スーパースター、おじさんはプロフェッショナルすぎて、野球が楽しくないんでしょ?」
「……」
「ぼくといっしょに野球したら、みんな楽しさを思い出せるんだ。おじさんもきっと、思い出せるよ! さあ、勝負、勝負!」

野球少年が、思い出が、硬球をこれみよがしに握った。

「きっと、おじさんでも見たことない世界を見せてあげられるよ! まずは、一球目!」

そして――投げたと同時に甲高い金属音。
スーパースターは、振っていた。
打音のあと、ボールは――――後方。手から外れて変形したバットとともに、思い切り後方へ吹き飛んでいた。
ファールだ。

「確かに、未体験だ」
「でしょ?」

スーパースターもそんな言葉を漏らす。時速1000km。現実にそんな球をバッターへ向けて放つ存在などありえない。
デレク・ジーターは振ることができずに消えたが、仮に振れたとして、ミートできていたとして、果たして飛ばせたかどうか。

「ただ、やるまえからやれないって決めつけるのが、僕は一番嫌いでね」
「そういう言い方が楽しくなさそうなんだけどなー」
「二球目の前に、君に言っておこう。野球は楽しいことだけじゃない」

愚痴をこぼす少年に、スーパースターは諭すように語った。

「楽しいだけのことならこんなに続かないさ。楽しいことだけじゃないから、僕はやっているんだ」
「いみわかんない!」

二球目――投げた。
スーパースターは、もちろん振った。
時速1000kmの重さは、初撃である程度掴んだ。
経験から、このタイプは「掬い上げる」打ち方では力負けする。「叩き斬る」が正解だ。今度は前へ飛ばす。
スーパースターの狙いどおり、前へ飛んだ。が、インパクトの最高点からは外れた。やはり速い。

「ファール2ッ!」

野球少年はわくわくを隠せない表情で叫んだ。

「あと一球だよ、おじさん!」
「す、スーパースター! だ、大丈夫なのかよ!」

思わず家庭的な女がタイプな俺がスーパースターにすがる。思い出の海に溺れかけていた俺を救い上げてくれたスーパースターを、心底心配しての言葉だった。
が――。

「スーパースター?」
「……」

届いていない。スーパースターはバッティングに集中していた。
真剣なそのまなざしの奥で、いくつの検討と試行を走らせているのか。恐ろしささえ、感じる。
野球が楽しくない――俺はその言葉を想起する。いいや、違う。この人にとっては。この人にとっては野球は、人生なんだ。
遊びとは、趣味とは、違うんだ。

「三球目の前に、言っておこう」

スーパースターはバットを高く掲げ、バックスクリーンを指した。
予告だ。

「僕は思い出に溺れない。未来に、目標に向かって進み続けるのが、僕の人生だから。思い出は、常に超えるべきものでしかない」
「……じゃあ、その思い出に、未来も閉ざされちゃいなよ!」

三球目。
スーパースターの言葉に心を逆なでられた野球少年は、これまでと手を変えた。
変えてしまった。
時速はもちろん1000km。しかし、これまでの楽し気なストレートではない。その球種はシンカー。投手の利き手方向へ沈ませる球。
あそびなしの、思い出に沈ませるためだけの球だった――その遊びのなさが、命取りになった。
スーパースターは、ボールを叩き上げた。

キィン。

歯車かみ合ったかのような打撃音。空へ舞う白球。
高く、高く。安易に落ちることはない。
予告通り運ばれたそれは、誰が見ても間違いのない、ホームランだった。


129 : 思い出をこえていけ ◆CDIQhFfRUg :2017/08/31(木) 23:14:56 CxVXZQiQ0
 
「な」
「お、おおお!?」
「なんで……ッ!?」
「その速度で変化は、逆に失敗の選択だったね。
 変化球は曲がるときに多大な空気抵抗で速度を落とす。君の思い出なら、曲がったあと速度をもとに戻す程度の力はあるのだろうけど、曲がる瞬間はそうはいかない」
「まさか……そんな……曲がるその、わずかな一瞬を、狙って叩いたとでもいうの……? ぼくは、曲げることだって言ってない、の、に………」

勝負に負けた思い出は、歌としてのカタチを崩していく。
悔しさや苦しさ、敗北感は、彼の歌われたうたにはない感情だから。
いや、そうだとするならばきっと、手を変えた時点で――歌い方を変えてしまった時点で、思い出の敗北は決まっていたのか――。
中天に太陽。
夏を思わせる直射光の中、きらきらと消えゆきながらそんなことを思う思い出に、スーパースターは言葉をかけた。

「言ってなくても、打つさ。どんな球が来ても打つよ。打ちたい球を待ってたら、いつまでだって打てないから」
「……そっか……」
「次も負けないよ。また戦おう」
「…………うん!」


【野球少年@ホームラン(THE BLUE HEARTS) 消滅】


「おっ、お前こんなとこおったんか!」
「……アッコさん?」

野球少年の思い出を消し去り、スーパースターと家庭的な女がタイプな俺は固有結界から放たれ、通常の草原へと戻った。
するとそこには赤い攻撃的な衣装とほろよいな赤ら顔をした女巨人が立っていて、スーパースターに親し気に声をかけたのだった。
家庭的な女がタイプな俺は戦慄した――あ、アッコさんじゃねーか!?

「プリンスから電話あったんやわ。ちょっと飲み行くぞ。付き合え」
「プリンスから?」

さすがのスーパースターも驚きを隠せない顔だったが、

「まあ、水の一杯くらいならいいですよ。今日の打席は終わったので」
「飲まんのかい!」
「体調管理の一環でして」
「は〜相変わらずほんま! 固いやっちゃなあ。ええわええわ。ほな行くで。ここは空気が悪うて叶わんわ。蠅もいよるし」

と、アッコさんは酒瓶の中に浮いている蠅の死体をばっちそうに見せつけた。

「こいつなんかぶんぶん飛んどったかと思ったら襲ってきよったから、つい叩いてもうた。したらちょうどここに入って。もう飲めんのだわ」
「災難でしたね」
「ほんまやわ!」
「……っと、行く前に。君」

アッコさんに半ばひきずられるように塩湖の方向へと向かって歩き出したスーパースターは、ふいに俺のほうを振り返った。

「君も、災難だったね。後悔しないように行きなよ」

――次の瞬間、アッコさんとスーパースターはその場に爆撃にも似た音だけを残して消滅した。
地面を蹴って加速し、エリア周辺の塩湖を走って会場から脱出、会場外のプリンスの元へと向かったのだ。
首輪? そんなもんこのロワにあったっけ? ないんだよなあ……。
そういう感じで、取り残された家庭的な女がタイプな俺は、事態を把握しきれていない頭で言葉を紡ぐのだった。

「なんというか、その……すごかったな!?」


【世界を救った後BARでお酒を嗜むアッコさん@あの鐘を鳴らすのはあなた(和田アキ子) 脱出】 ※一通りプリンスたちと飲んだら帰ってくるかもしれません。
【スーパースター@スーパースター(東京事変) 脱出】 ※今日の打席は終わったのでもう出ないと思います。
【蠅@五月の蝿(RAD WIMPS) 死亡】 ※五月も終わったし、アッコさんに叩き潰されました。


【3-夏/白/一日目/11時】

【家庭的な女がタイプな俺@純恋歌(湘南乃風)】
【容姿】星空柄のインナーシャツを着た青年
【出典媒体】歌詞
【状態】健康
【装備】
【道具】支給品一式
【思考】なんというか、その……すごかったな!?
【備考】
※家庭的な彼女(パスタがおいしい)が心配。


130 : ◆CDIQhFfRUg :2017/08/31(木) 23:16:11 CxVXZQiQ0
投下終了です。、


131 : 名無しさん :2017/08/31(木) 23:28:01 MUSFLN/.0
投下乙
見応えのある野球対決だった
そして普通に脱出するアッコさんとスーパースターに吹いたw


132 : 名無しさん :2017/09/02(土) 16:11:20 aFPDnA.s0
投下乙です
どんな相手にも真摯に向き合い真っ向から叩き伏せるその姿は正に綺羅星だな


133 : ◆CDIQhFfRUg :2017/09/10(日) 23:20:32 Ivd66BOs0
9/8も過ぎてしまいましたが投下します。


134 : VS嵐 ◆CDIQhFfRUg :2017/09/10(日) 23:21:30 Ivd66BOs0
 

トイレットペーパーが、嵐の中で舞っている。
幾多の風の刃を受け止める柔らかい紙。
紙束の中心にはトイレットペーパーマンがいて、嵐を放つボクらと向かい合っている。
言語をわすれ、ただ寄り合うだけの肉塊と化したモンスター。
周りのすべてをバラバラにしながら進むそれを、トイレットペーパーマンはただまっすぐに見つめる。

「「「「AAAAAAAAA!!」」」」

八十を超える風の刃、そのすべてが不規則に踊りながらトイレットペーパーを頭に巻いた男へ向かっていく。
しかしトイレットペーパーマンは風の刃をトイレットペーパーで上手くいなし、避ける。
右捻り。左捻り。バク転、前転、側転からの勢いよく綺麗なバク宙。
ダンスが得意なトイレットペーパーマンの体を風で捕まえるのは、あまりに至難の業だった。

「YO!」「YO!」「Wo Wo」「Wo Wo」

そうする合間にもトイレットペーパーが空間に張り巡らされる。
激情を洗い流したあとに痛んだケツを優しく受け止めるかのようなその紙を、薄紙を、なぜか風の刃は破れない。
薄紙など、破れて当然のはずなのに。それだけの嵐を起こしているはずなのに。なぜ破れないのか。
ボクらにもそれは分からなかった。
そして――戦闘の末に、いまやボクらの体は多量のトイレットペーパーに雁字搦めにされていた。

「「「「AAAAAAAAA!! RAAAAAAAA!!」」」」
「ごめんな。痛ぇよな。苦しいよな。でも、一個だけ言いてーんだ――」
「「「「SHIIIIII……」」」」
「なあ、狂ったふりはよしてくれよ、大野。俺とお前の仲だろ?」

トイレットペーパーマンがそう告げると。肉塊に残っている四つの生きた顔のうち、
いちばん歪んで白目を剥いて、草でも吸ってそうな顔になっていた顔が、真顔に戻って呟いた。


「……見抜くの早すぎだろ、先輩」


それを合図に、残りの顔も静かに普通の顔に戻っていく。
哀しそうな顔で。
さみしそうな顔だった。
すでに一人欠けてしまった四人は、口をそろえて先輩に言った。

「「「「先輩。」」」」
「「「「どうしてバラバラになっちゃったんだよ、先輩」」」」


×♪×


昨年のことだった。
永久で不滅で、ずっとなくならないと思っていたものが、この世界からなくなった。
テレビに映った最後のステージは、あまりにも悲しいものだった。
間違いなく、すべての国民に衝撃を与えた出来事だった。

ボクらはずっと、そばで見ていた。
光り輝く先輩たち、尊敬している、空に輝く星のような先輩たちだった。
うたばんぐみで仲が悪いようなノリをやらされても、「派閥」の関係で同じステージに立つことがあまりなくても、
ボクらよりずっとずっと先を走り続けている、偉大な存在であったことに間違いはない。

それが――消し飛ばされた。あまりに簡単に。届かないはずの星を、ひきずりおろすようなやり方で。
ボクらはそれも見ていた。
夢が、希望が、あたりまえにそこにあったはずのものが、無くなっていくのを見ていた。

怖くなった。
恐ろしくなった。
ボクらがいつか同じようになるんじゃないかと、不安になった。

だからより集まった。
固まってぐちゃぐちゃに混ざり合えば絶対に離れられないから。
巻き起こす嵐で、周りをバラバラにしてしまえば、自分たちだけはバラバラにならずに済むから。


×♪×


135 : VS嵐 ◆CDIQhFfRUg :2017/09/10(日) 23:22:56 Ivd66BOs0
 

「でも。相葉くんがやられちゃって」「ボクらはバラバラになってしまって」
「ぜんぶ先輩たちのせいだ」「先輩たちがずっとそこに在ってくれれば、ボクらはこんなことには」

「……お前らを、悲しませちまったのは、ホントに悪かった」

「優勝するつもりだったんだ」「優勝して先輩たちをもう一度くっつけるつもりだった」
「ずっとボクらの先にいてほしかったから」「先輩たちがいなくなったら、ボクらどこにたどり着けばいいのか分からないじゃんか」

「お前らならどこだって行けるよ」

「行けないよ」「行けるかもしれないけど、それは俺たちが行きたかった場所じゃない」
「だってあんなの、勝ち逃げじゃんか」「もう永遠に、ボクらは先輩たちと並べないし、越せないんだよ」

「……だな」

「肯定しないでくれよ」「肯定するんじゃねえよ!」
「否定してくれよ、否定してくれよ」「あんなのうそっぱちだって、そう笑ってくれれば、ボクらは!」

「――大野」

トイレットペーパーマンは、首を小さく横に振った。

「かたちあるものは、いつかなくなるんだよ」
「「「「……」」」」
「俺だって、あんな形にはしたくなかった。でもな、完全なものなんて、絶対なものなんて、この世には無いんだ。
 笑点のメンバーだって時代とともに変わる。ドラえもんの声だって世代交代してずいぶん経った。
 ザ・ドリフターズだって、今は全員そろってライブできないんだ。俺らのうたの結末も、早いか遅いかの違いでしかない」
「「「「そんな言い方」」」」
「俺だって、こんな言い方したくねえよ!」

トイレットペーパーの奥から、強い声が漏れた。魂が泣き叫んでいるような、強いダミ声。

「お前らの十倍、百倍、いや千倍! 俺は、俺たちのことを大好きだった!」

いや、それは実際に、泣いているのだろう。
トイレットペーパーに隠して、見せていないだけで。

「何があっても乗り越えられるって、何があっても無くならないって、
 もし誰かに壊されそうになったら、死んでも止めてやるって、俺が一番、思ってたに決まってんだろ!
 だからお前らの一万倍悲しかったし、苦しかったし、つらかった。
 それこそ俺だって、戻りたい、神にだってすがりたいよ……でも。でも、それじゃダメなんだよ。
 誰かに願って元に戻ったって、そんなのは本物じゃないんだ。俺が愛した俺たちじゃねえんだ。
 受け入れなきゃいけないんだよ。大野。お前らもだ。俺らが俺らを失ったことを、お前らも受け入れなきゃいけない」

そして、トイレットペーパーがさらに増量される。
ボクらを包む。
それは、汚いものを包み隠すのではない。間違ってしまったモノを縛って正すのでもない。
ただ優しく包んで、流してあげるためだ。

「俺は、絶対に忘れない。諦めない。だけど、バラバラになったことを、無かったことにするのは違う。
 出しちまったウンコを、腸の中にもう一度戻すなんて、アブノーマルだろ?
 だから、俺たちは流すんだよ。トイレットペーパーに包んで流すんだ。スッキリして、もう一度前を向くために」

ボクらが嵐によってトイレットペーパーマンを攻撃しきれなかった理由は、ひどく簡単なものだ。言うまでもない。
どれだけ奪おうとしても。どれだけ殺そうとしたって。
敬愛する先輩を、目標であったその人を、自分たちの手でなんて、バラバラにできるはずがないからに決まっている。
ぐちゃぐちゃに歪んでしまっていても、そこには強いリスペクトの気持ちがあったのだ。
トイレットペーパーマンもそれを分かっているから……結末は、優しいものになった。

「お前らはもう、俺から奪わなくても持ってるよ……夢だって、希望だってさ」
「「「「……約束してくださいよ……絶対、また戻ってくるって……」」」」
「ああ。今度はちゃんと、素顔で向き合ってやるって、約束する。だから今回は――流して、スッキリしようぜ」

どこからか水が流れる音がする。
全身をトイレットペーパーに包まれながら、ボクらはその音に身をゆだねた。


【ボクら@A・RA・SHI(嵐) 死亡】


136 : VS嵐 ◆CDIQhFfRUg :2017/09/10(日) 23:23:56 Ivd66BOs0
 

「――ハァッ!! ……く、っそ……」

 トイレットペーパーマンは膝を付く。それでもよろめきを抑えきれず、みじめにも地面に突っ伏した。
 寄る年波というものがある。もちろん同年代よりは鍛えているが、バトル漫画のようにドンパチをやる年齢ではない。
 それが、やらなければいけなかったこととはいえ、愛すべき後輩のデビューソング出展のフレッシュなパワーとぶつかったのだ。
 この消耗も仕方がないことと言えよう。

「こりゃあ、もう、動けねえかな……。まあ、一番流してやらねえといけねえもんは流しただろうし、
 優勝する気もねえわけだから、ここでくたばっても、問題ないっちゃないが……」
「本当にそうでしょうか?」

 息を思い切り吸って、ごろん、と上を向いた時だった。
 トイレットペーパーマンの顔のトイレットペーパーに、一匹のアゲハ蝶が留まったのは。

「そちらの旅は、まだ終われませんよ。そちらが水に流すべきうたは、もう一曲存在する」
「何……だと?」
「人生が数奇であるように、唄たちの運命もまた、数奇なものなのでしょうね。
 そちらは、関係するような登場人物など、一人いれば十分だと思っていたのでしょうが……」
「おい、教えろよ。誰が来ているんだ。誰が……」

 アゲハ蝶は、焦燥するトイレットペーパーマンに、告げた。

「マヨネーズと言えば、分かりますかね?」
「――!!」

 まあ、まずは放送を聞いてから話しましょうか。
 そういってもったいぶる旅人は、トイレットペーパーの頭上をくるくると回った。
 
 そして、時報が鳴った。
 時刻は12時。
 唄に旅することを命じられた彼らが耳にする、初めての放送が始まる。


【6-秋/豪/一日目/12時】

【トイレットペーパーマン@トイレットペーパーマン(中居正広(SMAP))】
【容姿】トイレットペーパーを頭部に巻いて顔を隠した喪服の男
【出典媒体】歌詞
【状態】ボロボロ
【装備】トイレットペーパー
【道具】支給品一式
【思考】スッキリと水に流そうぜ、でないと、前に進めねえ
【備考】

【旅人@アゲハ蝶】
【容姿】アゲハ蝶
【出典媒体】歌詞
【状態】健康
【装備】アゲハ蝶@アゲハ蝶
【道具】支給品一式
【思考】トイレットペーパーマンの旅を見守る。
【備考】
※アゲハ蝶を操れます。


137 : ◆CDIQhFfRUg :2017/09/10(日) 23:25:26 Ivd66BOs0
投下終了です。
放送書きます。


138 : 名無しさん :2017/09/10(日) 23:38:03 WSCB7eAc0
投下乙です
解散当時のことを思い出して、切なくなったよ……


139 : 第一回☆歌うんだロワラジオ ◆CDIQhFfRUg :2017/09/15(金) 20:53:54 K4TzztDo0
 
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

 第一回☆歌うんだロワラジオ〜〜!

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪


(*゚∀゚)『というわけでですね、歌うんだロワラジオ、やっていきたいと思います!』

(*゚∀゚)『パーソナリティはこのわたし!R.N恋するウサギちゃんです!』

(*゚∀゚)『一行AAだと見えないんですけどウサみみ生えてますんでね、萌えてくださいマジで』

(*゚∀゚)『うふふ、ラジオ番組のリスナーからパーソナリティに成り上がり! 嬉しいですね! 頑張っていきますよ!』

('A`)『君の自己アピールは良いからさっさと進行してくれない? マンドクセ』

(*゚∀゚)『修羅くん! テキビシイ!』

(*゚∀゚)『ムカつくので童貞拗らせた修羅くんに耳障りな誘惑のコーナ〜』

(*゚∀゚)『知ってた? 花椿の香りをさせながら近づいてHな言葉を耳元で呟くだけで、童貞の男の子はいいなりになるんだよ!』

チカヅキチカヅキ

(*゚∀゚)『さてとじゃあ耳元で……』

(*゚∀゚)

(*゚∀゚)『《オウ……コノアト裏デ話ソッカ……》』

(;'A`)『誘惑になってねえぞ脅迫だぞそれ!』

(#*゚∀゚)『《HはHでもHellの方だからなァ……!?》』

(;'A`)『ヒィェ〜! マジギレ!?』

(*゚∀゚)『この番組、私の城だからね。私に逆らうとかダメなんでよろしく』

(;'A`)『秒で先行きが怪しくなってきた。誰か僕に火を付けて燃やしてくれ……!』


140 : 第一回☆歌うんだロワラジオ ◆CDIQhFfRUg :2017/09/15(金) 20:54:50 K4TzztDo0
 
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

 はいここで、死者読み上げタイム〜!

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪


(*゚∀゚)『めんどいから読み上げは修羅君に全部任せます!』

(;'A`)『

●【大親友@純恋歌(湘南乃風)】
●【大親友の彼女@純恋歌(湘南乃風)】
●【紅に染まったこの俺@紅(X JAPAN)】
●【何かに追われるように走り出すお前@紅(X JAPAN)】
●【君を前前前世から探している僕@前前前世(RADWIMPS)】
●【過ちを犯す男の子@JAM(THE YELLOW MONKEY)】
●【スーパースター@スーパースター(東京事変)】
●【僕@JOURNEY THROUGH THE DECADE(GACKT)】
●【ジャッキー・ロビンソン@Did You See Jackie Robinson Hit That Ball?(Woodrow Buddy Johnson & Count Basie)】
●【デレク・ジーター@Top of the World(Carpenters)】
●【ドラえもん@All I Want(The Offspring)】
●【あなた@あの鐘を鳴らすのはあなた(和田アキ子)】
●【世界を救った後BARでお酒を嗜むアッコさん@あの鐘を鳴らすのはあなた(和田アキ子)】
●【ふざけてる奴(男)@We Are The World(USA for Africa)】
●【ふざけてる奴(女)@We Are The World(USA for Africa)】
●【爆笑問題田中に似てる奴@We Are The World(USA for Africa)】
●【プリンス@We Are The World(USA for Africa)】
●【キルミーベイベー@キルミーベイベー(やすなとソーニャ)】
●【なんでもナーミン@キルミーベイベー(やすなとソーニャ)】
●【許して欲しい俺@BE MY BABY(COMPLEX)】
●【たった今人を殺してきた僕@Bohemian Rhapsody(QUEEN)】
●【ガ↑リレオ〜〜〜@Bohemian Rhapsody(QUEEN)】
●【フィガロ@Bohemian Rhapsody(QUEEN)】
●【baby@スリル(布袋寅泰) 】/
●【baby@スリル(布袋寅泰) 】/
●【baby@スリル(布袋寅泰) 】/
●【baby@スリル(布袋寅泰) 】/
●【baby@スリル(布袋寅泰) 】/
●【baby@スリル(布袋寅泰) 】/
●【baby@スリル(布袋寅泰) 】/
●【baby@Baby(Justin Bieber) 】/
●【baby@Baby(Justin Bieber) 】/
●【baby@Baby(Justin Bieber) 】/
●【BABY@BABY BABY(銀杏BOYZ)】/
●【BABY@BABY BABY(銀杏BOYZ)】/
●【BABY@BABY BABY(銀杏BOYZ)】/
●【BABY@BABY BABY(銀杏BOYZ)】/
●【BABY@BABY BABY(銀杏BOYZ)】/
●【BABY@BABY BABY(銀杏BOYZ)】/
●【BABY@BABY BABY(GOING STEADY)】/
●【BABY@BABY BABY(GOING STEADY)】/
●【BABY@BABY BABY(GOING STEADY)】/
●【BABY@BABY BABY(GOING STEADY)】/
●【BABY@BABY BABY(GOING STEADY)】/
●【BABY@BABY BABY(GOING STEADY)】/
●【蠅@五月の蝿(RADWIMPS)】/
●【叫んだ少女@叫べ(RADWIMPS)】/
●【オーズ!オーズ!オーズ!カモォン!!@Anything Goes!(大黒摩季)】/
●【ボクら@A・RA・SHI(嵐)】/
●【糸井重里@愛しさと切なさと心強さと(篠原涼子)】/
●【時計の持ち主のお爺さん@大きな古時計 (みんなのうた)】/
●【フ○ーザ@F (マキシマムザホルモン)】/
●【小池さん@ラーメン大好き小池さんの唄(シャ乱Q)】/
●【迫るショッカー@レッツゴー!!ライダーキック(藤浩一)】/
●【野球少年@ホームラン(THE BLUE HEARTS)】/
●【わたし@すいみん不足(原曲)(CHICKS)】/
●【君@眠り姫(SEKAI NO OWARI)】/
●【勇敢な蛮人@夜は眠れるかい?(flumpool)】/
●【完全感覚Dreamer@完全感覚Dreamer(ONE OK ROCK)】/
●【サッちゃん@サッちゃん(うたのおねえさん)】/
●【山口さんちのツトムくん@山口さんちのツトムくん(川橋啓史)】/
●【スリル@恋はスリル、ショック、サスペンス(愛内里菜)】/
●【ショック@恋はスリル、ショック、サスペンス(愛内里菜)】/
●【サスペンス@恋はスリル、ショック、サスペンス(愛内里菜)】/



(;'A`)『……それと俺の喉』

【修羅くんの喉@修羅(DOES) 死亡】

(*゚∀゚)『死にすぎワロタ!』

(*゚∀゚)『ひとりひとりにスポット当てていくと番組が何時間あっても足りないので総括すると、死にすぎワロタだよ!』

(*゚∀゚)『とくに死亡者の3分の1を占めるBABYがすごいよ! 赤子に厳しいね! えっ赤子じゃないの? じゃあなんなの……?』

(*゚∀゚)(あ。あとちょろちょろ脱出者とか欠席者とかいるっぽいんですが!)

(*゚∀゚)(放送する側としては始末しておいたていで話を進めるので、みなさん空気を読んでくださいね!)


141 : 第一回☆歌うんだロワラジオ ◆CDIQhFfRUg :2017/09/15(金) 20:55:46 K4TzztDo0
 
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

 続いて、禁止エリア発表〜!

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪


(*゚∀゚)『なし!』

(*゚∀゚)『以上!』

(;'A`)(ええ……)

(#*゚∀゚)『首輪がないのに禁止エリアなんてあるわけないでしょ! 次行くよ次!』

(;'A`)(そしたらこのくだり要る?)


142 : 第一回☆歌うんだロワラジオ ◆CDIQhFfRUg :2017/09/15(金) 20:56:28 K4TzztDo0
 
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

 続いて、生存者発表のコーナ〜!

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪


(;'A`)(って生存者発表!?)

(*゚∀゚)『こっちは少ないからわたしのほうでいくかんね!』

(*゚∀゚)『

○【家庭的な彼女@純恋歌(湘南乃風)】
○【家庭的な女がタイプな俺@純恋歌(湘南乃風)】
○【遅いよと怒る君@前前前世(RADWIMPS)】
○【I@PPAP(ピコ太郎)】
○【nakata@PERFECT HUMAN (RADIO FISH)】
○【涙化粧の女の子@JAM(THE YELLOW MONKEY)】
○【嬉しそうに「乗客に日本人はいませんでした」「いませんでした」「いませんでした」って言ったニュースキャスター@JAM(THE YELLOW MONKEY)】
○【金本知憲@六甲おろし(水樹奈々)】
○【ロボットなのに不倫したロボット@DAYS (FLOW)】
○【俺のために生まれたお前@BORN TO BE MY BABY(BON JOVI)】
○【お前のために作られた俺@BORN TO BE MY BABY(BON JOVI)】
○【わたし@M(プリンセスプリンセス)】/
○【旅人@アゲハ蝶(ポルノグラフィティ)】/
○【僕@レプリカ(坂本真綾)】/
○【お兄さん@全力バタンキュー(A応P)】/
○【朝眠い原因の妖怪@ようかい体操第一(Dream5)】/
○【ガラガラヘビ@ガラガラヘビがやってくる(とんねるず)】/
○【僕@ラストチャンス(samething else)】
○【トイレットペーパーマン@トイレットペーパーマン(中居正広(SMAP))】/
○【わたし@すいみん不足(アニメ版)(CHICKS)】/
○【涙の数だけ強くなれる君@tomorrow(岡本真夜)】/
○【慎吾ママ@慎吾ママのおはロック(慎吾ママ)】/
○【いつかまた巡り合いたい君@チェリー(スピッツ)】/
○【愛してるの響きだけで強くなれる僕@チェリー(スピッツ)】/
○【ドラゲナイ@Dragon Night(SEKAI NO OWARI)】/



(*゚∀゚)『以上25名! この子たちは、放送までしっかり生き抜いたえらい子たちだよ!』

(*゚∀゚)「バッタバッタと死者が出まくってる中、じぶんたちの歌を奏で続けられたのは、すごいと思うよ!』

(*゚∀゚)『ほめてあげるね!』

('A`)『ウサギちゃんウサギちゃん、なんでわざわざ生存者も発表するんで?(あっ喉生き返った)』

【修羅くんの喉@修羅(DOES) 蘇生】

('A`)『ていうか、持ってるデータからすると生存者だいぶ足りないと思う』

('A`)『もう倍くらいはいない?』

(*゚∀゚)『いるといえばいるよね、まだ』

('A`)『まだ?』

(*゚∀゚)『実際のところ上からの伝達でね』

(*゚∀゚)『「この時点でAメロどころかイントロも始まってような子はいらない」らしいんだよね』

('A`)

('A`)『ほう』

(*゚∀゚)『放送を聞いているみんなは、空の雲行きが怪しくなっているのにすでに気づいていると思うけど』

(*゚∀゚)『いまからちょっと中継をするので、しっかりと聞いてあげてね!』

(*゚∀゚)

(* ∀ )『みんなの断末魔の唄声をね♪』


143 : 第一回☆歌うんだロワラジオ ◆CDIQhFfRUg :2017/09/15(金) 20:57:47 K4TzztDo0
  
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

 ここで会場に中継がつながっております

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪


「……what's?(何て?)」

 放送――というていで始まったテンションの高いラジオにて、不可解な言葉が流れたのを、男は聞いていた。
 男の名前は君を愛するために生まれてきた僕という。
 派手に前の開いた白スーツに西洋風の濃い顔をしている彼は、始まってからこれまでの六時間、ずっと踊り続けていた。
 キレのあるダンスを踊り続けていた。
 何故って? 君を愛するためである。君に捧げるために踊っていたのである。
 愛するために生まれてきた彼に殺し合いという選択肢はなかった。
 出来ることと言えば、殺し合いに抵抗するようにパフォーマンスをする――踊るだけだったのである。

「断末魔だと!?」※注:英語です
「ガリレオ……」「ガリ……」「レオ……」※注:こっちは日本語です

 そんな彼の姿に共感して周りで鏡合わせのように踊りつくしていたガリレオたちも、放送が告げた言葉に動揺している。
 断末魔を聞かせる。
 その文言が指しているものの意味。
 そして、急速に空に広がっている、黒い、黒い雷雲。

「……そうか」

 何かに勘づいた君を愛するために生まれてきた僕は、支給品のマラカスを取り出すと、さらに激しく、サンバのリズムで踊り出した。
 愛するべき人はそばにいない。
 どこまでも孤独な踊り。

 もし何かが違えば、もし何か一つでも変数が違ったのなら。
 彼にも、彼と彼の愛するべき人のための曲が、すでに歌われた歌とは違う詩が、旅という名の物語が描かれたかもしれない。
 ガリレオたちをバックダンサーに、愛する人の前で愛を叫んだり。
 どれだけ愛しても抱えている孤独というなの心の欠けが、優しさの水で埋め立てられたり。
 そういうことがあったかもしれない。

 でも、そうはならなかった。
 そうはならなかったのだ。
 だから、この歌はここで終わりなのだ。

「ああ! ああ! それでも――これが、俺の愛だった!!」

 踏みしきったステップが頂点を蹴った瞬間に、
 <かみさまのかみなり>が空から地へと、そして地獄へと突き刺さり、
 スプラッシュシンバルをどれだけ強く叩いても出ないような衝撃音の後に、
 ギターアンプをどれだけ歪ませても出ないようなバリバリという空間歪曲音がして、辺りは雑音に喰らいつくされた。

 後には何も残っていなかった。
 歌すらも。命すらも。彼を慕ったガリレオすらも。彼が示した愛すらも。
 後には、何も残っていなかった。


【君を愛するために生まれてきた僕@I Was Born to Love You(Freddie Mercury) 死亡】
【ガ↑リレオ@Bohemian Rhapsody(QUEEN) 死亡】
【ガリレオ〜〜〜@Bohemian Rhapsody(QUEEN) 死亡】
【ガリレオ〜〜〜!@Bohemian Rhapsody(QUEEN) 死亡】
【ガリレ↑オ!@Bohemian Rhapsody(QUEEN) 死亡】


 同時刻――会場に降り注いだ裁きの雷によって、未登場の唄は世界から消え去った。


【しくじったトニー@アンダルシアに憧れて(近藤真彦) 死亡】
【速い車に乗っけられても急にスピンかけられても恐くなかった私@飾りじゃないのよ涙は(中森明菜) 死亡】
【さっきまでと言ってること違うじゃないガール@少女S(SCANDAL) 死亡】
【遠い夢の中、夏に居た君@夏祭り(Whiteberry) 死亡】
【好きだって言えなかった僕@夏祭り(Whiteberry) 死亡】
【ゆきこさん@ゆきこさん(ミドリ) 死亡】
【七回目のベルで受話器を取った君@Automatic(宇多田ヒカル) 死亡】
【ちび1@アブラハムの子(童謡) 死亡】
【ちび2@アブラハムの子(童謡) 死亡】
【ちび3@アブラハムの子(童謡) 死亡】
【ちび4@アブラハムの子(童謡) 死亡】
【ちび5@アブラハムの子(童謡) 死亡】
【ちび6@アブラハムの子(童謡) 死亡】
【のっぽ@アブラハムの子(童謡) 死亡】


144 : 第一回☆歌うんだロワラジオ ◆CDIQhFfRUg :2017/09/15(金) 20:59:46 K4TzztDo0
 
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

 そんなこんなで、エンディングの時間〜!

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪


(*゚∀゚)『はい、前置きのわりにさくさくっと行っちゃったけど、エンディングのお時間で〜す♪』

('A`)『わーおー』

(*゚∀゚)『わおわお!』

('A`)『生中継、いかがでしたでしょうか。エレキテル、びりびり』

('A`)『僕はキンのタマが縮みすぎて女の子になりそうです』

('A`)『あんっ❤』

(*゚∀゚)『これから中盤戦だと思ってたでしょ? 残念! もう終盤戦でした!』

('A`)『第一回☆歌うんだロワラジオ、ご視聴ありがとうございました。第二回の予定は未定でございます』

('A`)『というかもうないよたぶんこのペースだと……』

('A`)『僕の火も消えて飛んでしまうのではないか』

(*゚∀゚)『修羅君の火が付くところは果たして放送されるのか――!? 一説には主催戦があれば再出番ワンチャンとの声も!』

('A`)『番組への応援のおたよりはラジオ放送局まで!』

(*゚∀゚)『そして個人的な応援は私のケータイまで! 番号は090なんたらかんたら……忘れた……』

('A`)『ウサギちゃん、これは僕も驚きなんだけど、今の世界のトレンドにケータイという言葉はないんだよ』

(*゚∀゚)

(*゚∀゚)『年がバレるような発言は控えろや』

('A`)Σ

('A`)『そ、そろそろ時間も押してきたのでお別れ! では、まったね〜〜!!』

(#*゚∀゚)『おうちょっと待ていツラ貸せツラァ!』

ワーキャーヒーワーキャーヒーキャーテー

ワーヒーキャーアーヤメテー……

――――……ブツッ


145 : ◆CDIQhFfRUg :2017/09/15(金) 21:02:05 K4TzztDo0
放送投下終了です。
ここまでこれたのもみなさんの応援のおかげではないでしょうか。ありがたや……
書き手枠は既定値全消滅しましたが、ルール上は別に出してもいいので出したい人はどうぞです
(自分もなんか思いついたら出すと思う)


146 : 名無しさん :2017/09/15(金) 21:11:25 Cc/IcFd60
投下乙です
もう終盤戦か……
感慨深いですね


147 : ◆CDIQhFfRUg :2017/09/20(水) 23:06:19 dl9r.hpA0
投下します。


148 : ひらいしん ◆CDIQhFfRUg :2017/09/20(水) 23:07:14 dl9r.hpA0
 

会場に響いたラジオという名の放送は、その場に残っていた生存者たちに、二重の意味で衝撃を与えた。

1・会場に集められた参加者が60名以上も死んでいたという、精神的な衝撃が一つ。
2・主催陣が放った裁きの雷という、物理的な衝撃が一つ。

特に何もなければ昼まで起きないとされていた我らが兄貴も、さすがに雷で飛び起きた。

「なんだこの騒ぎは!?」

とはいえもう昼なので、昼になったから起きたのか、雷がうるさいから起きたのかは、議論が分かれるところだろう。
とにかくはっきりとしていることは、放送の瞬間まで寝ていた金本兄貴の頭上には、幾束もの雷が降ってきていたということである。

「!!」

兄貴は聞いていないが、主催者の手先であろうラジオのパーソナリティはこう言った。
――この期に及んでイントロすら終わっていない歌に興味はない、と。
そう、名前をきちんと読み上げられたとはいえ、
殺し合いが始まってすぐに妖怪に眠らされてしまった兄貴が、イントロが終わっていない歌であることは確かである。

おそらくはそれ故に、主催からの、試練ともいえる一撃。
温情で名前は呼んでやった、さあ生き延びてみせろ。という、傲慢な上からの叱咤だ。

もちろん放送を聞いていない兄貴にそんなことが分かろうはずもない。
ただ、自分が今殺されそうになっているのだということだけ理解できた。
だからその瞬間、金本兄貴は――避けなかった。フライを捕球するかのように、手を雷にかざし広げた!

(殺し合いめ! 来るなら来い)

金本知憲、鉄人。
たとえ頭部に四球を受けようと翌日の試合に出る男。

(雷に打たれる程度で、俺の闘志を殺せると思うな!)

その辞書に逃げの二文字も隠れの二文字もない。雷であろうと、こちらに向かってくるのであれば獲って殺す(アウトにする)!!

「うおおおおおおおお!!」

そして奇跡が起きた。
雷は、金本のアニキの左手に捕球され、そして勢いを止めた――なんてファンタジーな芸当は、当然出来るわけがない。
雷は、捕球されなかった。曲がった。空中で、まるで金本のアニキを避けるかのように、曲がったのだ。

「お……おお!?」

驚くアニキは曲がった先の方向を見る。
そこには、阪神のイメージカラーである黄色と黒色をあしらった鳥がいた。
雷を引き寄せるその鳥を、従えている男をアニキは見た。

――――その周りで、黒焦げにされている七人の子供たち(ひとりはのっぽであとはちび)を――――見た。

男は笑みを浮かべていた。
死体に囲まれて満面の笑みを浮かべていた。
満面の笑みを浮かべながら、確かな確信を得たかのように、アニキに叫ぶ男が居た!


149 : ひらいしん ◆CDIQhFfRUg :2017/09/20(水) 23:08:08 dl9r.hpA0
 
「ふふ、ふふふ……ははははは! チャンスが、チャンスが、巡ってきたぞ!!
 このサンダーは、ひらいしん持ちだったんだ! 雷! 雷が力をくれる! 全員殺せるぞ! 全員殺せるんだ!
 まるで夢みたいだ!
 僕の、勝ちだ!
 僕が、優勝できる!
 最後のチャンスを、掴めるんだ!」

「だから――おっさん、あんたにも死んでもらうぞ?」

カジノのスロットで大当たりに陶酔する破滅者のような上擦った声とともに、
電磁気をバチバチと鳴らす、警戒色マックスの極雷鳥が、球界の鉄人を前に、天高く鳴き声を上げた。
アニキは、ごくりと唾を呑んだ。
誰に言われずとも、放送など聞かずとも、幾多の試合で身に付いた感覚がアニキに告げていた。

もはやこのゲームはとっくの裏に9回裏に突入している。


【4-九/白/一日目/12時】

【金本知憲@六甲おろし(水樹奈々)】
【容姿】全盛期の金本
【出典媒体】エピソード
【状態】驚愕
【装備】なし
【道具】不明
【思考】
基本:殺し合いの打破
【備考】
目覚めはスッキリしています。

【僕@ラストチャンス(samething else)】
【容姿】まったく特徴の無い青年
【出典媒体】歌詞
【状態】健康
【装備】サンダー@ポケモンいえるかな?(イマクニ?)
【道具】支給品一式
【思考】
基本:優勝し、最後のチャンスをつかむ
1:目の前のオッサンを殺す
【備考】
※サンダーの技は「でんきショック」「ドリルくちばし」「かみなり」「こうそくいどう」です
※とくせいはひらいしんでした。


※アブラハムの七人の子は主催の雷ではなく、主催の雷を食ってパワーアップしたサンダーの手によって殺されたようです。


150 : ◆CDIQhFfRUg :2017/09/20(水) 23:09:24 dl9r.hpA0
投下終了です。
そういえば会場に雷なんて落としたらこうなっちゃうよな。というお話


151 : 名無しさん :2017/09/20(水) 23:15:40 znBaoNfE0
投下乙です
サンダーにとっては、恵みの雨ならぬ恵みの雷となったか……
それでも兄貴なら、兄貴ならなんとかしてくれる……


152 : ◆CDIQhFfRUg :2017/10/10(火) 23:51:54 rWgk4PEQ0
投下しますー


153 : ◆CDIQhFfRUg :2017/10/10(火) 23:52:44 rWgk4PEQ0
 

ふわふわ。ふわふわ。
わたしは、マシュマロみたいな柔らかさの何かの上でまどろんでいる。
まどろみは心地いい。
心地よくて気持ちいい、一生ここでふわふわしていたい。
布団にはこだわるタイプのすいみんぶそく少女であるところのわたしだけど、今寝ているこの何かはとても素敵だ。
沈んじゃうくらい柔らかいのに、わたしの重さを受け止めてくれていて。
だからと言って蒸れたりもしない、冷たかったりもしない。人肌のぬるま湯につかってるような気持ち、いつまでだって居られる。
ああきっと。
これが安眠ってやつなのだ。
頭がぼんやりとしか回らないことを嬉しく思いながら、わたしはそんなことを考えた。

「いつまで寝てるの」
「あれっ――わたし?」

目をつむって安心に浸っていたら、横から口槍が飛んできた。
すっごく緩慢に右を向いたら、そこにはわたしが寝ころんでいた。
ギンギラギンに目を光らせてこちらを見ていた。
おそろいのすがた。
わたしと、わたし。
隣にいたのは、わたしの『オルタ』のわたしだった。
わたしより目のクマがひどくて、わたしよりもきっと眠れてない、わたし。

「安眠、楽しかったかしら? わたし。残念だけどもう昼よ。お前は今から、起きないといけない」
「ええと……すごく良かったけど」

なんでわたしがここにいるの? と疑問を投げかけるまえに、急に気が付く。
わたしが寝ころんでいるのは、でっかい、でっかい、でっかい、でっかくて果ても見えないような、マシュマロそのものだということに。
そう、ここは何でもありな空間だった。

――そう、夢だった。

わたしは夢の中にいた。
だからわたしが隣にいるんだ。

じゃあ、こう言わなきゃ。

「ねえ、あなたは眠らないの?」
「……」

わたしはわたしに言った。

「あなたを見た時思ったの。きっとあなたは、わたしより眠りたいんじゃないかって。
 夢の中にいるなら、きっとあなたも寝てるのよね? わたしと同じわたしだから、あなたも同じ夢の中にいる」
「……」
「いっしょに寝ようよ。気持ちいいよ?」
「……眠れないのよ、もうね」

少し悲しそうな顔をして、わたしはわたしにそう告げた。

「わたしはもう眠れない。眠る権利を失ったわ。お前が寝ている間に、そうなってしまったの」
「どういうこと?」
「ここでさよならってことよ」

ぐい、と両手をついて、眠れないわたしは起き上がった。
そして、ぱんぱんと埃を払うような仕草をしたあと、すたすたと歩き出した。
きびきびとした歩き方で、まるでわたしは兵隊さんみたいだ。そうわたしは思った。わたしならあんな歩き方はしない。
ああ、きっと無理をして歩いている。前に進むのではなく、どこか後ろ向きな遠くへ行ってしまう、
それを惜しく思ってる、それでも進まなければならない、そんな後姿を見てしまって私は、つい口を開こうとした、
その唇の動きは静かに放たれたわたしの言葉に遮られた。

「――わたし。【夢】を探しなさい」

消えていく私と、明るくなっていく視界の中。

「歌われることに抗いなさい。自分が歌いたい歌を探しなさい。きっとこの世界は、そのためにあるものだから」

マシュマロみたいに甘くも柔らかくもない、ずしりと重くて固いその言葉が。
なんでなんだろう? わたしの心にはなぜか、どんな安らぎよりも優しく響いたのだった。





154 : ◆CDIQhFfRUg :2017/10/10(火) 23:53:24 rWgk4PEQ0
 

「……おはよう」
「おおおい! 放送! 放送終わってるってあんた! マジで昼まで寝る奴があるかよ!」
「放送?」

 ――バクの姿をした妖怪さんの話によれば、わたしがすやすやと眠っている間に、放送と雷が空から落ちてきたという。
 いっぱいの人の名前が呼ばれ、いっぱいの危険な雷が地面を焼き、危うくわたし達も打たれかけたとかなんとか。
 夢みたいな話だったけど、そもそもこの催し事態が夢(あくむ)みたいな話なわけで、信じるしかないといったところだ。
 わたしは妖怪さんに昼まで守ってくれてありがとうを言って、頭をちょっと撫でてあげて、地面に下りた。
 もちろん現実の地面は固い。とてもマシュマロなんかじゃない。
 放送は聞いていないけど分かる。
 あの子はきっともう、あの夢の中で眠れない。
 わたしはあの子の分まで、この現実で、夢を見ないといけない。

「わたしね」
「?」

 わたしは妖怪にふと話しかけたくなった。

「わたしね、とにかく眠りたいって思ってた」
「そうだろなそりゃ」
「望みなんて、それ以外になかったのよね。眠りたいってだけだった。で、叶っちゃった。叶っちゃったのよ」
「……まあそうだろうね??」
「わたし、次に何を願えばいいんだろう」

 けっこう大真面目に言ったつもりだったのだが、バクの妖怪は目をぱちくりとさせた。

「あんた、まだ寝ぼけてるのか?」
「わりとガチな話なんだけど……」
「殺し合いなんだから生き残るのが願い、とかが常道だと思うバクですが」
「それはみんな同じじゃない。あなただってそうでしょ?」
「オレは別に……妖怪ってあんまり生死に頓着ないっていうか、死んでからが本番みたいなところあるし」
「えっそうなの?」
「強いて言うなら、こんな状況でもみんなを眠らせちまえたら面白いかも、って愉快な考えが行動の原動力だったんだが……もう昼でそれもできないしなあ……」
「ってことは、わたしと同じじゃん。夢のないもの同士〜」
「こらやめろやめ……あきゃー」

 うりうりとバクの両耳をこねこねして遊ぶと、くすぐったそうにするので少し楽しくなった。
 楽しくなったけど、なんとも進展しない話だった。
 中身も夢もない話だった。

「とりあえず支給品とか確認してみるか? あんたは包丁だったけど」
「これ市街地の家でパクってきたやつなのよね。かばんとか開ける余裕もなかったし」
「じゃあお互いに未知って感じなのか」
「何かヒントになるものが入ってればいいけど」

 中身のない話はともかく、支給品さえまともに確認していないわたしたちは、今さらになってそこから始めてみることにした。
 さあ、【夢】はどこにあるんだろう?
 わたしはわたしに問いかけながら、バクと一緒にかばんのフタを開けた。


【5-秋/鶴/一日目/13時】

【朝眠い原因の妖怪@ようかい体操第一(Dream5)】
【容姿】バク
【出典媒体】歌詞
【状態】健康
【装備】なし
【道具】不明
【思考】
1:朝に起きてるやつを眠らせる
2:昼になったらどうしよう
3:支給されたカバンを開けてみる。
【備考】
朝に限り、他人の眠気を増幅する妖術が使えます。

【わたし@すいみん不足(アニメ版)(CHICKS)】
【容姿】目の下にひどいクマがあるミヨちゃんヘアの少女
【出典媒体】歌詞
【状態】睡眠中
【装備】包丁
【道具】支給品一式
【思考】【夢】を探す
【備考】


155 : ◆CDIQhFfRUg :2017/10/10(火) 23:54:13 rWgk4PEQ0
投下終了です。ペースを上げていきたい・・・


156 : 名無しさん :2017/10/11(水) 00:22:33 vrqEtHKI0
投下乙です
もう一人の自分との別れは切ないなあ


157 : ◆CDIQhFfRUg :2017/11/16(木) 00:13:21 GVvEMpgY0
投下します


158 : ネクスト・ロマンス ◆CDIQhFfRUg :2017/11/16(木) 00:14:21 GVvEMpgY0
 
「尋問って、したことある?」
「無いな。されたことならある」
「辛い人生だったのね」
「ちょっと警察でな」
「清くない人生だったのね……じゃあ、やってみるわね」

 と、そっけなく言うと、黒髪ショートの少女は割れてするどく尖ったナイフを器用に扱い、
 木に縛り付けられている男女の眼前に、昼真っ盛りの太陽の光をちかちかと反射させた。
 ちか、ちか。それは警告。
 明滅する刃物を使って、「いまからこれを使って危険な行為をします」ということを対象に教える。
 
「と言っても、わたしも経験は無いの。だけど、上手くできるよう頑張るから」
「や、やめ…(英語)」
「痛くても泣き叫ぶのは我慢してね? うるさいなって思ったら、わたし加減を忘れちゃうかもしれないわ」
「待て、止めろ、そもそも尋問されても俺たち(英語)」
「えい」

 ぶすり、指と爪の間に突き立てる。
 癒着している隙間が無理やりこじあけられ、初めての血が滲んだ。
 未体験の感覚に悲鳴が上がった。
 少女は恐怖を植え付けるために愉快そうに笑って、さらにぐりぐりと押し進めた。
 わたし(M)がそんな調子でテキパキと捕縛者に尋問という名の拷問を加えるのを、愛してるの響きだけで強くなれる僕は、支給されたタバコをくゆらせながら眺めた。

「知ってるかしら?」
「わ、ワッツ……?」
「知ってる?」
「ワッ……ギャー!」
「聞き返すのはダメ。質問への答え以外の一切の発言は、痛みの原因になると思ってね」

 そうまでして何を聞いているかといえば、生存者の情報である。
 先ほど、放送があった。
 死亡者の数にも驚いたが、生存者の少なさにはもっと驚いた。二十数名。この広い島の中には、もうそれだけしか生きてはいないのだという。
 愛しているの響きだけで強くなれる僕にとってはうれしいニュースがあった。
 死んでも会いたいと思っていた、女。いつかまた巡り合いたい君の名前が「生存者側」で呼ばれたのだ。
 ※逆に、わたしが会いたいと願っていたあなたは、「死者側」でも「生存者側」でも呼ばれなかったという。
  まあ、どちらのほうが良い結果かと言われると、若干答えに詰まる。
  会いたい人間が会場内にいるということは、会えないうちに死んでしまう危険性を孕んでいるからだ。

「わたしたちに会うまでに、死んだガリレオ以外に、誰かに会った?」

 ともかく、人数が絞られてきた現状で生き残る/目的を達成するためには、情報が何より必要である。
 そういうわけで彼と彼女は、放送のどさくさに紛れて、ふんじばることに成功した襲撃者たち――俺のために生まれたお前、お前のために作られた俺の二人に、早急に尋問をする必要性に駆られた。
 つまり、他の参加者に会ったかどうか。また、誰でもいいから、他の参加者の情報を知っているかどうか。
 知っていれば、もうけもの。
 知らないとしても、知らなかった、という情報が、判断材料の一つとして手に入る。
 やらない手はない。

「名前は知ってる? 姿を見たことは? 匂いを嗅いだことは? 味わってみたことは? あるいは、音を聞いた? 気配があったという感覚はなかった?」
「ノ、ノォ……ノォーオ」
「もう。要領得ないこと言わないで」
「ノォーッ」
「なあ、お嬢ちゃん」
「ノッ、ノォーッ」
「何? ええと……なんて呼べばいいかしら、」
「チェリーでいい。お嬢ちゃん、」
「ぷくすぷ」
「おい笑うな」
「だって、チェリーって似合わないわ! いくら何でも、その顔と体でさくらんぼって……!!」
「ワッギャァアアアアウ!!」

 悲鳴。


159 : ネクスト・ロマンス ◆CDIQhFfRUg :2017/11/16(木) 00:15:03 GVvEMpgY0

「あ、刺しちゃった」
 
 淡々と尋問を遂行していたわたし(M)だったが、不意に笑筋を刺激されたはずみで尋問相手を刺してしまった。
 見おろすと、縛った男女の男のほうの右眼球が、ガラスで突き開かれており、男は目もそうだが内部をやられたのか、鼻から血を流していた。
 隣の女はそれを見てショックを受けたらしく、何も言わずに泡を吹いていた。
 というか男は刺されてないほうの目もぐるんと白に剥いていて、
 専門家が見なくても、今の一撃が、非常にまずいところを抉ってしまったのは間違いなさそうだ。
 あちゃー。という顔でわたし(M)がチェリーの方を観ると、なおさらばつが悪そうにチェリーが言った。

「でな。思ったんだが」
「はい」
「そもそもこいつら英語しか喋らないっぽいから、何聞いても無駄なんじゃないかって」
「あ」



「ねえ。恋って、すごいですよね」

 二人の死体を木の根元に並べ終えると、やりとりで気がほぐれたのか若干くだけた話し方になった少女が、チェリーにそんなことを言った。

「わたし、いくらあの人にもう一度会いたいからって、人をこんなに迷いなく殺せるなんて思ってませんでした。
 いま、ケガしてるはずなのに、血もまだ滲んでるのに、全然痛くない。
 焦がれて、焦がれて、焦がれてるだけなのに。何でもできちゃうんです。
 意味なんてないかもしれないのに、相手が自分のことをもう想ってないかもしれないのに、こうして、愛し合ってる人たちすら倒せるくらいに」
「そうだな」

 チェリーとしても、同意しかない。
 たった今葬り去ったこの男女コンビは、確かに息の合った、愛し合っていなければできないコンビネーションでこちらを苦しませてきた。
 対してこちらは、それぞれが全く別の想い人のために動く即席コンビ――想いのベクトルだけが同じ、ばらばらのテンポの唄のはずだ。
 それでも、結果としてこちらが生き残った。
 それを、ただの力量差、あるいは偶然や運の問題と片付けることもできるが、チェリーは実感として、「想いの強さの差」があると感じていた。

「恋は愛より強いんだよ。殺し合いに限ってはな」
「えっ?」
「恋は、何かを手に入れようとするエネルギー。愛は、何かを守ろうとするためのエネルギーだ。 
 日常生活じゃこの差が何かの優劣になることなんざないが、こと殺し合いの場だと、それが生をつかみ取る力に直結するのさ」

 拳をチェリーは強く握った。

「お嬢ちゃん。宣言しておくが、俺はいつかまた巡り会いたい君に巡り合ったら、その場で君を殺しにかかるぜ」

 それは、嘘偽りない本心からの言葉だった。

「お嬢ちゃんとは、巡り会うまでの、ビジネス(共犯)の関係でしかない。望みが叶ったらポイだ。
 ま、お嬢ちゃんのその芯の太えとこはなかなか気に入ったと言えば気にいったが――そこんとこ、恨みっこなしでいこうや」
「当たり前です」

 対して、少女もまた一ミリも視線をずらさずにはきはきと語った。

「わたしがあなたを殺してないのは、わたしにとってあなたと共闘する状態が、生き残るうえで有益だからにすぎないですもの。
 そのときが来たら、まあせいぜい、愛する人に触れる前に死なないよう祈ってくださいね」
「それでこそだ」
「あ、そうだ。――プリンセス」
「?」
「あなただけふざけた名前を名乗るのも、なんだか平等ではない気がするので。わたしのことは、プリンセスと呼んでください」
「がっは」


160 : ネクスト・ロマンス ◆CDIQhFfRUg :2017/11/16(木) 00:15:33 GVvEMpgY0

 真顔でそんなことを言い出したプリンセスがあまりにおかしくて、チェリーが噴き出す。

「プリンセス。プリンセスか。さっきまでクソみてえな拷問してたやつが自分を殺し合いの姫と。傑作じゃねえか」
「芸術点10点でしょう?」
「お笑いなら優勝狙えるぜ」
「狙うのは殺し合いの優勝だけです」

 そこまで言い切ると、プリンセスはおもむろに歩き出した。
 チェリーも察して後に続く。そう。この二人にとって、くだらない雑談で時間をつぶすことは本意ではない。
 どこまでもクレバーにいかなければならない。軽口をたたき合うにしても、移動しながらだ。

 チェリーは、いいパートナーを見つけた、と、改めて感じた。
 自分がやろうとしていることがどれだけ愚かな行為かということくらい、とうの昔に分かっていた。
 それでも恋が止められない。それだけは間違いがなかった。
 ならば求めるべきは、同じように恋に狂って、同じように恋に溺れて、互いの罪をとがめ合わず、
 なおかつ、最期まで罪を意識し続けることができるような。そんな関係だった。

「アドレナリン切らすなよプリンセス。ここからノンストップでいくからな」
「チェリーさんこそ、バテたりしないでくださいね。わたしの物語に、どんくさい相棒はいらないですから」

 別々の方向をまっすぐ見ながら、恋に生きる二人の殺人者は同じ道を歩いていく。
 求めるロマンスをつかみ取るために。


【1-秋/白/一日目/13時】

【わたし@M(プリンセスプリンセス)】
【容姿】女性、18歳、髪型はショート
【出典媒体】上記妄想(探しても媒体が見つかりませんでした)
【状態】あなたを忘れる(くらいなら誰かを殺す)勇気
【装備】割れたハート型のナイフ
【道具】支給品一式
【思考】あなたともう一度会うために、全ての星(参加者)を森(冥府)へ返す。
【備考】
※正しくは「わたし」では無く「私」です。書き終えた後に気付きました。
※でもそのまま行きます。

【愛してるの響きだけで強くなれる僕@チェリー(スピッツ)】
【容姿】男性、ムキムキ、修羅
【出典媒体】歌詞
【状態】殺気
【装備】なし(身一つで戦えるので)
【道具】支給品一式
【思考】いつかまたこの場所で君と巡り合いたい
【備考】

【お前のために作られた俺@BORN TO BE MY BABY(BON JOVI) 死亡】
【俺のために生まれたお前@BORN TO BE MY BABY(BON JOVI) 死亡】


161 : ◆CDIQhFfRUg :2017/11/16(木) 00:16:20 GVvEMpgY0
投下終了です
今年中にあと何本いけっかな


162 : 名無しさん :2017/11/16(木) 00:22:38 y/FOW/d60
投下乙です
デンジャラスなコンビですなあ


163 : ◆CDIQhFfRUg :2017/11/21(火) 01:12:27 ybBvN8WQ0
投下しますー


164 : おひるだよ! ◆CDIQhFfRUg :2017/11/21(火) 01:13:27 ybBvN8WQ0

 
 最初に目に映ったのは、変わってしまった両手。
 緑色の、長六角形の鱗に、手首から先が覆われている。指は細く尖って、その先端はどこかぬめぬめとしている。
 次に臀部に違和感。振り向くと、視界の端にちらりと何か細長いものが映った。
 また、風を切るような音と、長い何かが振られる感覚。おしりから、重たい後ろ髪が生えているみたいな。
 いや違う。生えているのは髪なんかじゃない。にょろりとしなる、蛇の尻尾。
 自覚すると、変化は、同化は、みるみる進んだ。口内にずるりとした不快感があり、それは口の中が急にいっぱいになったからだと気がついた。
 少し出さないといけない。何も感じ取れなくなる。
 そう思った次の瞬間には、先端が二股に分かれたそれを小刻みに出し入れしていた。
 安心できる匂いと、あたたかい体温が感じられた。
 ああ――ご主人様だ。

「you have me」

 自然と紡いだことばに、豹蛇柄の服を着たご主人様はうんうんと頷くと、大きな手のひらで頭を撫でてくれた。
 少女は、蛇は、それがとても嬉しくて。思わず首を長く伸ばして言った。

「ラーメンパスタを食べましょう、ご主人様」

 混ざり合った家庭的なガラガラへび彼女は、二人の好物を混ぜ合わせた料理を提案した。

♪♪♪♪

――ラーメンパスタ(らーめんぱすた)とは?
かつてラーメンが食べられないことを嘆いたイタリア奥地の中国マニアが編み出した禁断の料理。
市販のパスタに魔法の粉を加えてゆでることで、一瞬にしてパスタをラーメンに変化させる魔術的措置を用いる。
具はゆで卵、刻みネギ、燻製ベーコンのソース煮などでラーメンを限りなく再現。
スープは蛇の涙やホワイトペッパーなど薬味と呼ばれるものをなんとなく混ぜた後、市販のウェイパーで整えていく。
啜るように食べることでラーメンっぽさを出して味わうのがコツである、と記されている。

歌うんだ書房「世界のラーメンレシピ大全」より抜粋

♪♪♪♪


「うえぇえええん……(師匠、どうしましょう?)」
「ああ!うーむ……」

 びっくりな雷や放送によっていよいよ涙が止まらなくなった涙化粧の少女が、小声で泣きながら師匠にお伺いを立てる。
 茂みに隠れている少女と師匠がひそかに見つめるのは、支給品だろうか、草原に四角いちゃぶ台サイズのテーブルを立ててラーメンをすすっている男女だ。
 ただし男女、と形容していいかどうかは、非常に微妙だった。
 男のほうはパンチパーマに派手な豹蛇柄の金色服を着て、ヤクザっぽいグラサンをかけているため、服のセンスはともかく男であることは間違いなさそうである。
 しかし女の方はどうか。服装は落ち着いた女大学生といった感じでまとまっているものの、その容貌はモンスターに近い。
 ブサイクという意味ではない。確かにギョロリとして縦に瞳孔が開いた目、口から頻繁に二股の舌が飛び出しているなどの特徴はあるが、
 元の顔が整っているからか、奇跡的にそれらの状態がチャームポイント然としており、色物カワイイ雰囲気を出している。
 モンスターに近いというのは全体の印象のことだ。緑の鱗に覆われた肌をのぞかせ、蛇じみたしっぽを嬉しそうにふるその様は、蛇人間とでも呼称すればよいだろうか?
 どうしてそんな姿なのかは見当もつかないが、パッと見の印象だけを言えば……。

「ああ! 言っちゃあ何だが、非常に悪っぽいよな……!」
「うえぇえええん……(はいです……)」

 涙化粧の女の子は、師匠――涙の数だけ強くなれる君と共に、
 狂気のニュースキャスターへのリベンジを目的としてこの殺し合いの会場を進んでいた。
 そんな中、新たに見つけた参加者に対してどうアプローチをとろうか、声を掛けようとしたが、あまりに風貌が怪しいので師匠に止められたのだ。
 さらに、すこし観察すれば向こうのスタンスも分かるだろうと放送を聞きながら見守っていたものの、ここまでずっとラーメンをすすっているだけなのである。
 判断のしようもない。
 ※ちなみに小池さんやフリーザの死体はすでにどこかへと消えている。

「うええぇえん……(なんか満てたらお腹すいてきたです)」
「ああ! 腹が減ってはいくさはできぬと言うしな……! あんな草原のド真ん中で飯食ってるってこたあ、善きにしろ悪きにしろ、腕には自信があるんだろう。
 仮に何かが起きても、きっと自分たちで対処できるという、確信があると見た! もはや俺たちもお昼にするか?」
「うえぇええん(そうねです)」
「ならマヨチュッチュはどう?」
「ぅえっ?」「ああ!?」


165 : おひるだよ! ◆CDIQhFfRUg :2017/11/21(火) 01:14:27 ybBvN8WQ0
 
 と――唐突に。
 二人が見ている方向の反対側から、弾むような声がかかった。
 背後を取られた
 その事実を意識することが出来た数瞬後には、ママが二人に襲い掛かっていた。

「朝シャン♪ 朝シャン♪ 朝シャンの時間をオーバーしているの♪
 だから今から朝シャンするの――――おまえたちの返り血でなあああああああああああああああああああああ♪」

 いくら昼とて、涙が渇く暇などない。


【4-名/白/一日目/13時】

【慎吾ママ@慎吾ママのおはロック(慎吾ママ)】
【容姿】慎吾ママ
【出典媒体】歌詞
【状態】血まみれ
【装備】モーニングスター
【道具】基本支給品、マヨの容器(空)
【思考】子供たちを殺し合いから守る、マヨをチュッチュする。
【備考】目の前の二人の返り血で朝シャンする。

【涙化粧の女の子@JAM(THE YELLOW MONKEY)】
【容姿】夏川りみ(幼少時代)
【出典媒体】歌詞
【状態】勇ましい涙
【装備】なし
【道具】基本支給品
【思考】ニュースキャスターに弔い合戦を挑む
【備考】ぅえっ
※涙が枯れません。※涙拳を習得しました。

【涙の数だけ強くなれる君@tomorrow(岡本真夜)】
【容姿】マッチョでさわやかな拳法家
【出典媒体】歌詞
【状態】さわやかな涙
【装備】なし
【道具】基本支給品
【思考】涙化粧の女の子を応援する
【備考】ああ!?
※涙拳を極めています。

♪♪♪♪


166 : おひるだよ! ◆CDIQhFfRUg :2017/11/21(火) 01:15:07 ybBvN8WQ0
 
 トラックがコンクリートの建物に激突したかのような音がしたので、いくら方向音痴であってもその場所にたどり着くことが出来た。
 草原の真ん中。
 現在進行形で上がる粉塵と打撃音の嵐をバックに、優雅にもちゃぶ台でラーメンを啜っている芸能人と蛇人間を、ニュースキャスターは視界におさめてしまった。
 おさめてしまった、と記述せざるを得ないのは、その芸能人がくしくもニュースキャスターの殺害対象となってしまうからである。

「……ピコ太郎氏……!」
「誰ですか?」

 異形の風貌に似合わず綺麗なメス猫声を出した蛇人――家庭的なガラガラへび彼女が、鱗付きの手をキャスターをマスターの間に挟みこむように、前に出た。
 ピコ太郎と呼ばれた男は、窮地を救った尊敬と尊敬をミックスさせて忠実なしもべになるよう練り上げたその少女の仕上がりを改めて確認し、無言で笑みを浮かべている。

「ああ……なんということでしょうか。謎多きピコ太郎氏。
 謎多きまま、出身地も謎のままであれば、私の論理では見逃すこともできましたがしかし。あなたは千葉のシンガーソングライターであることを明かしています。
 よって、日本人はいませんでした しなければなりません」
「何を言っているのか、理解に苦しみます。
 ご主人様に害をなすというのであれば、わたしとしてはご主人様に練って頂いたこの体で、貴女を抹殺します」

 パスタが得意なだけのただの少女だったはずの存在は、殺人鬼を前に舌を挑発的にちょろ出しし、迎撃の構えを取った。

「ふむ。最近のわれわれ(マスメディア)はどうでもいいニュースを騒ぎ立てて本当に伝えなければならないことをおろそかにしているなどと言われますが」
「……?」
「日本語を話す蛇人間というのは、また奇妙奇天烈にしてニュース映え(インスタ映え亜種)しそうなネタですよね」

 対するニュースキャスターもまた、自らのゆがんだ信念を貫く意思表示とばかりに、懐から拳銃を取り出して少女を嘲笑った。
 拳法とママ拳法の爆音が舞うすぐそば。
 かたや命の恩人への崇拝を加算され、崇拝を強制された蛇の少女。
 かたや自らの仕事への誇りを加速させた結果、報道という名の神を大義名分に使うニュースキャスター。
 二人の女の戦いが始まろうとしていた。

「ええ、明日の一面にしてあげましょう。もちろん、日本人であることは伏せたうえで。とびっきりの訃報でね」
「ではあなたは、わたしの試運転の実験台になってもらいます」


【4-名/白/一日目/13時】

【I@PPAP(ピコ太郎)】
【容姿】ピコ太郎
【出典媒体】PV
【状態】健康
【装備】ペン@PPAP
【道具】支給品一式
【思考】優勝する。
【備考】

【家庭的なガラガラへび彼女@純恋歌がやってくる(湘南とん風ねるず)】
【容姿】蛇と彼女のマッシュアップ
【出典媒体】歌詞
【状態】健康
【装備】不明
【道具】支給品一式
【思考】ピコ太郎様についていく。
【備考】ピコ太郎様をお守りする。
※二つの歌がマッシュアップされました。

【嬉しそうに「乗客に日本人はいませんでした」「いませんでした」「いませんでした」って言ったニュースキャスター@JAM(THE YELLOW MONKEY)】
【容姿】金井憧れアナ
【出典媒体】歌詞
【状態】健康
【装備】9mm拳銃
【道具】基本支給品
【思考】日本人を殺す。
【備考】


167 : ◆CDIQhFfRUg :2017/11/21(火) 01:16:40 ybBvN8WQ0
投下終了です。
いろんなところで戦いが発生していき良い感じですね。


168 : ◆CDIQhFfRUg :2017/11/26(日) 03:27:23 gmOcbYno0
投下します。


169 : 全力バタンキュー ◆CDIQhFfRUg :2017/11/26(日) 03:28:04 gmOcbYno0
 

ういーん、ういーん。

池の中央に白いクレーンが立っていて、機械の音を唸らせている。

ういーん、ういーん。

クレーンの先端には、マジックハンドのようなものが付いている。

ういーん、ういーん。

池には沢山のシャケが泳いでいて、クレーンは狙いをつけると、一匹のシャケをマジックハンドでつかむ。

ういーん、がしゃん。

つかまるシャケ。

ういーん。

シャケは無抵抗で吊り上げられ、池の外へと運ばれていく。

どさっ

そしてそれが、お兄さんの頭の上に落ちた。

……。

「シャケだーーーーーーーーーッ!!??」

「ええええええっ!!??」


♪♪♪♪


170 : 全力バタンキュー ◆CDIQhFfRUg :2017/11/26(日) 03:29:04 gmOcbYno0
 

「大使館にキッチンがあってよかったわね」
「すげえ……フルコースじゃん……」

 徳川埋蔵金を探しているお兄さん、と大切な人を探しているお姉さん。
 なにかを探すにはまず外堀から埋めていけ、ということで、外周を回って池まで来たときに放送が鳴った。
 放送の際に池に見事に落ちた雷によって、池のシャケはぷかぷかお腹を上に向けて浮かんで動かなくなった。
 偶然にも出くわしてしまったその魚の大量死をひどく悼んだお兄さんとお姉さん。
 お兄さんの頭の上に落ちてきたシャケ達を使って、お姉さんはシャケのフルコースを作った。
 シャケのムニエル、シャケのおにぎり、シャケの姿煮、焼きシャケ、いくら丼、シャケフレークのちらし飯。
 大使館の広いもてなしテーブルの上には、よりどりみどりの料理が並んでいる。

「ふふふ、お姉さん、それなりに料理は得意なほうなのよ。ささどうぞどうぞ」
「お、おうとも……」

 いそいそと背中を押して、椅子に座らされるお兄さん。
 フォークとナイフを握らされ、丁寧によだれかけまでかけさせられる。
 あまりにもイタレリツクセリであった。
 そのもてなしにお兄さん、ああ、腕によりをかけた料理たちを、どうしても食べてもらいたいのだろうなあと、のんきに思ったり思わなかったり――。

(思……)

(思うわけ、ねえーッ!)

 否。内心思うお兄さん。
 あまりに、あまりに露骨であると!
 なぜなら見えているのだ! シャケの姿煮、その一部分に! 骨に紛れるようにして金属針が紛れているのを!
 いくら丼の粒の中に、明らかな紫色のヤバげな粒が隠されているのを!
 そう、お姉さんは殺し合いに乗っているのである。
 乗っているので、大量の料理を作り、その中に毒を盛ったのである!

(このお姉さん……人を騙すのが下手すぎる!)

 実のところカジノで出会ってからここまでの同行で、お姉さんが自分を殺すつもりであることをはっきりと感じ取っていたお兄さん。
 心中でツッコミを入れるのもこれで何度目だか分からなかった。
 あまりに普通の人なのだ、お姉さんは。殺し合いで面従腹背をつらぬけるような、大女優のような演技力などない。
 歩いてるときにチラチラとこっちを見てくるのも、最初はお兄さんがカッコよすぎるのかな? と自惚れることもできたが、あまりに多いのでそれも間違いだと気づく。
 しきりにポケットに手を入れ、隙あらば何かを取り出そうとするしぐさ、何かを隠しているのがバレバレである。
 極めつけにこの過剰料理! もはやどれだけIQが低かろうと、お姉さんのたくらみを看破できぬはずなどなかった。

 だが、それゆえに難しい。
 お兄さんにとっては、非常に難しい局面だ。

「どうしたの? 食べないんですか?」

 にこやかに笑ってくるお姉さん。その笑みが悪魔の笑みに見えるお兄さん。
 だって、そうであろう。
 この場に渦巻くあまねく謀略をわきに置けば、これは「一緒に想い人を探してくれている協力者さんに、ふるまいをしている」だけの構図に過ぎない。
 そこで「いやこれ毒入りですよね??????」などと発言してみろ。仮面をかぶり合う関係は破談。現状の関係はたやすく壊れてしまう。
 お兄さんにも、狙いがあった。
 ずばり、この生死の境をたゆたう危険地帯で、女の子を一人でもいいから食い散らかすことである。
 穴に棒をストライクすることなく生涯を終えるなどまっぴら。こんな料理よりも食べたい果実がお兄さんにはあるのだった。

(どうする……!? どうすればいい!!
 食べれば死、しかし食べなければ食べられるチャンスを失う……くそうどうしてここまで何もしなかったの俺!
 えっお前がヘタレだからだって!? 大当たりだけどそれは言うなよな!!)


171 : 全力バタンキュー ◆CDIQhFfRUg :2017/11/26(日) 03:31:09 gmOcbYno0
 
 ここまでの道程で隙を見て襲っちゃえばよかったと今さら後悔するお兄さん。しかしそれも意外と難しかったのだ。
 なにせ向こうはこちらの命をキルしようとしてきているので、ビンビンに警戒線を張っているのだ。
 お兄さんにはその隙を突けるほどの余裕がなかったし、お兄さんのお兄さんがビンビンになる余裕もなかった。
 
(考えろ! 考えるんだ俺! 走馬灯より速い速度で頭を回せ! エネルギーというエネルギーを一点へと収束させてバースト!
 うわあ何言ってるか自分でもわからねえ! でもでも天才の俺はここで最強の打開策を思いつくんです! うおおライツ・カメラ・アクション!)

 意識を超えて、無意識で思考を巡らせるお兄さん。
 背景はどろどろしたビビッド色になりうねうねし、縦楕円に大きく広がった眼は雨の日のガラスのように曇る。
 そしてお兄さんは思いつく。
 八方ふさがりに思われたこの絶対的窮地にわずかに開いていた活路を。
 狭すぎる隘路を通りぬけ、なおかつ天秤をお兄さんのほうへと傾ける作戦を!

 それは――全力バタンキュー!

「いッ……ただッ……きまああああああああああああああああ!!」


♪♪♪♪


「アバアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!???!!!???」

 ――血を吐いて倒れたお兄さん。
 バネ仕掛けのおもちゃみたいに唐突に、あまりにも綺麗に椅子を蹴飛ばして倒れる。
 驚いたのはお姉さん。驚くに決まっていた。
 
 いま、お兄さんが食べたのは、毒を盛っていない料理のはずだ。

 料理に毒を盛ってお兄さんを殺す作戦。いくつかの料理には毒を盛ったが、毒の容量の関係で盛れていない料理もある。
 お兄さんはそれを食べたはずだ。
 食べたはず、なのに。

「アバアアアアアア!!?? アバアババアアアアアアア!!?? エベエエエエエエドロロロロロブエッ」

 床を転げ回ったあと動かなくなるお兄さん。
 これは……いったいどういうことだろうか? どういうことでもない。そういうことだ。
 お姉さんは驚きフェイスを継続しながら心の中で叫ぶ。

(しまった――)

(してやられた! 逆に使われたわ!!)

 演技である。
 そう、お兄さんによる、全力全霊の演技である!
 毒を喰らっていないにもかかわらず、毒を喰らったかのような演技をしているのだ!
 お兄さんとお姉さんが覆面協力関係にあるのはご存知の通り。
 その前提がある以上、お姉さんはお兄さんのこの一手に対し、覆面をかぶったまま行動をとらざるを得ない。

「ど、どうしたんですか!!?」
「アバッ……」

 つまり、あたかも何が起こったのか分からないという風に、声を掛けにいかざるを得ない。
 殺しに行くはずの相手を助けに行かせられる……この時点で計画はおじゃん!
 そして――。


172 : 全力バタンキュー ◆CDIQhFfRUg :2017/11/26(日) 03:32:11 gmOcbYno0
 
「す、すまねえお姉さん……お兄さんは……なんかに当たったみたいだ……たぶん、シャケに……」
「シャケ……!」

 ここでお兄さんがさらにファインプレーを重ねる!
 毒ではなく、食材に問題があったのだというニュアンスを含ませた発言で、お姉さんの所業をなかったことにする妙手である。
 お姉さんが料理に使った食材は主にシャケであり、シャケは主催が用意したフィールドから調達したものである。
 主催がシャケそのものに毒を仕込ませていない保証がない以上、この論理をお姉さんは否定できない。

「俺はもうだめだ、もはや一秒一刻ごとに体調が悪くなっていてじきに死ぬだろう」
「そんな!」
「ああ故郷の母にも父にも兄弟たちにも顔を見せることが出来ず、シャケ死するなんて俺はかわいそうだぜ……」
「あっ、あきらめないで! そうだわ、解毒剤を探してきてあげる!」

 しかしここでお姉さんも機転を利かせ、お兄さんの演技に食らいつく。
 解毒剤を探しにいくという名目で一時離脱し、その後、解毒剤という名の毒薬をお兄さんに飲ませる算段だ。
 一瞬の閃きにして、悪くない手に思えたが。

「いいんだ」

 お兄さんの手がスッと伸びるとお姉さんの肩をつかむ。引き止める。
 お姉さん、さらに困惑! 引き止めれば(演技上は)死ぬというのに何をするというのか――。

「いい……いいんだお姉さん、もう間に合わねえよ……最後に……お兄さんの願いを聞いてくれ……」
「お願い、って……まさか……」
「そうだ……わかるだろ、男が死に際に願うことと言えば一つ」

 お姉さんは見た。
 お兄さんがわずか数コンマ秒見せた邪悪な笑みを。
 ああ――これはまずい。後悔が胸に襲い来るが、もはや時すでに遅い。
 分かっていても逃げられない。
 土俵の外まで一気に吊り上げられたシャケのような、一方的な展開である。
 演技を継続したまま、お兄さんが言葉を紡ぐ。

「お姉さんと一発、スケベさせてくれえッ!」
「えええええええっ……!!??」

 お姉さんの返答は如何に――!!??
 次回、刮目せよッ!

 
【2-夏/旭・大使館/一日目/13時】

【お兄さん@全力バタンキュー(A応P)】
【容姿】松野おそ松@おそ松さん
【出典媒体】歌詞
【状態】大変ご多忙
【装備】研ぎ澄まされた刃@もののけ姫(米良美一)
【道具】支給品一式、ツルハシ
【思考】
基本:優勝して埋蔵金を見つけに行く
1:お姉さんと!

【いつかまた巡りあいたい君@チェリー(スピッツ)】
【容姿】可もなく不可もない綺麗なお姉さん
【出典媒体】歌詞
【状態】焦燥
【装備】毒針
【道具】支給品一式
【思考】
基本:あの人にもう一度会いたい、助けたい


173 : ◆CDIQhFfRUg :2017/11/26(日) 03:34:15 gmOcbYno0
投下終了です。マップの小ネタは拾っていかないと……ということで。


174 : 名無しさん :2017/11/26(日) 10:22:14 tcImzqDk0
投下乙です
これはひどいwww


175 : ◆CDIQhFfRUg :2017/11/27(月) 03:18:00 ra4ouDw60
投下します


176 : 後悔 ◆CDIQhFfRUg :2017/11/27(月) 03:20:28 ra4ouDw60
 
「……命が、溢れ落ちたか」

男が、草原に立ち尽くしている、
草原の短い芝のすべてが、完璧の体現者である男に平伏している、
しかし、男の心の中は完璧なコンディションとは程遠かった。

流れた放送で呼ばれた命。
決して、このような不完全者の戯れで奪われてはならなかった命、その数の多さが男の心を苛んだ。

「これだけの命が失われたというのに、俺は――」

後悔。

男は未だ――何もできていない。

宿敵であるピコ太郎を見つけ、妥当することも。

不完全者たちを救うことも。

開始から四半日が経ったにもかかわらず、何も。

「……」

次の瞬間、

ぱしぃん!

空間をつんざくような張り手の音が響く。

完璧な同一タイミングで、男が男自身の両掌をつかい、男自身の両頬を張った音だ、
自惚れを消し去り、懺悔の心を吹き飛ばし、自身の完全性のゆらぎを叱咤するためのルーティーンだ、
あまりに綺麗なその張り手が巻き起こしたインパクトは、
辺りの空気を完璧なタイミングで揺らし、風を巻き起こした、
下々の芝は風に呼応し、ぴったり777本が地面から宙へ巻き上げられることを許可され、完璧な軌道を描いて空を泳いだ、
張られた筈の頬に赤味は差さない、なぜなら男はその自然体で完璧な存在であるがゆえに、その身体は一切の劣化を許さない、
あらゆる疵は男に付くことを許可されない、当たり前のこだ、
巻き上げられた草も触れないのは、あらゆる不完全存在は男に触れることを許可されないからで、それもまた不変の真理である。
なぜなら男は完璧なのだから。

完璧とはそれ以上の進化を遂げられないということだろうか。

完璧とはそれ以上の変化を許さないということだろうか。

否である。

完璧とはほかのすべてに左右されない存在であり。

完璧とは、自分自身の力のみで常にさらに完璧であろうとする存在である。

男は、故に、真なる意味で完璧である。

「ここからだ」

男は後悔を完了した。

自己の完璧性をアップデートした。

耳を澄ませば、五秒前よりたくさんの音が聞こえた。
鼻を動かせば、三秒前よりするどく匂いを感じ取れた。
目を凝らせば、一秒前より視界は広がっていた。

戦闘の音。
砂埃の匂い。
遥か遠くに見えたのは、
宿敵の姿と、救うべき者たちの姿。

「今行く」

「1分でいい、待っていてくれ」

一瞬前より完璧なフォームで大地を蹴る。
刹那の先に、彼が成さなければならない完璧が存在する。

男の名前はnakata。

全員その名を、心に刻め。

【5-名/白/一日目/14時】

【nakata@PERFECT HUMAN (RADIO FISH)】
【容姿】I’m a perfect human
【出典媒体】I’m a perfect human
【状態】健康
【装備】
【道具】支給品一式
【思考】ピコ太郎を殺し、自分がI’m a perfect humanであることを証明する。
【備考】
中央へと向かいます。


177 : ◆CDIQhFfRUg :2017/11/27(月) 03:22:58 ra4ouDw60
投下終了
短く回していきます


178 : 名無しさん :2017/11/27(月) 14:24:02 eVJ7dC6Q0
投下乙でした
nakata△


179 : ◆CDIQhFfRUg :2017/12/04(月) 23:08:30 lCJ.I1k60
投下します。
少し長くなってしまいました・・・でも大事な話なので・・。


180 : その右腕で縋れるか? ◆CDIQhFfRUg :2017/12/04(月) 23:09:35 lCJ.I1k60
 
「……遅いわよ」

 と吐き捨てる。
 放送で呼ばれた「君を前前前世から探している僕」という名前に、彼女はそう言って怒った。
 彼女――遅いわよと怒る君にとってその死は、もうすでに感じ取って、悲しみ切った事柄だったから。
 涙はとうに枯れていた。
 ただ胸に果てしない苦しみがわだかまっている。
 だから彼女は、ただ怒ることしかできない。

「ホント……遅いわよ」

 そんな彼女の後ろを、ロボットが一人、ゆっくりと従うように歩く。
 ぎしぎしと体をきしませながら、彼女が手に持つ白い花を追うように歩く。
 言葉を認識できるそのロボット、K-5は、彼女が呟いた「遅い」の意味を勘違いし、歩く速度を少し上げた。
 ビルが立ち並ぶアスファルトの市街地。
 生きているモノ以外誰も居ない世界で、足音の変化はとてもよく分かってしまう。
 淡々としたテンポの進行を乱すそのソフランに、少女は余計に苛立った。

 この馬鹿、と叱ろうとして、後ろを振り返って。

 遠目にこちらに静かに走り寄ってくる人影が見えた。

「……襲うわよ、K-5」

 なので、言おうとした言葉を撤回して、彼女はK-5に命令をする。
 すべてを苦しめるように言う。
 深い海の底に沈んだまま浮き上がれなくなった少女は、自分が一番息苦しい存在ではなくなるために、そうするしかなかった。


▼▽▼▽
 
 
 声をかけようとしたはずが、目の前に銀色が迫っていた。
 距離は、10メートルはあったはずだった。
 銀色の顔をしたそれがアスファルトを蹴る音は確かに聞こえたが、その速度は想定していなかった。
 想定していなかったが、「右腕」は縋り付いた。

「くっ――ぁああああああッ!!?」

 僕は、自分の反応速度に驚きながら、K-5の突進と共に放たれたラリアットを「右腕」で上にかちあげる。
 銀と銀がぶつかり、交わる。
 瞬間的視線の交錯。
 一拍。
 僕を見るK-5の瞳から、僕は彼の想いをダイレクトに受け取る。
 「ただ、彼女のために」
 僕はその感情を知って、推測を確信に変えた。

「やっぱり……君たちなのか」

 歩道橋で自らの方針を決めた後、遠くのビルから聞こえた爆発音。放送の直前くらいの時間には、レプリカの僕はその現場にたどり着いていた。
 そこで見つけた、死体、死体、死体。
 悲惨な爆発跡に打ち捨てられるように転がっていたそれらを行ったのがいったい誰なのかを、僕は探していた。
 死体には、まだ熱が感じられたから。犯人はそう遠くには行っていないと思って。

「君たちが、あれをやったのか!」

 K-5は答えず、その鋼の体が45度回転し、背中に背負われていた無骨な機銃の銃口が僕を捉える。
 僕はその口が火を放つまえに口火を切った、同時に「右腕」が振るわれた。
 同時に視界が暗転。
   何故?
 理解する前に視界が開け、銃が 数メートル先の空中へ殴り飛ばされている。
 ここで理解する。
 そうか。僕の「右腕」は僕の意思とは無関係に、僕を守るために動く。
 それは僕の機能を削って行われる。


181 : その右腕で縋れるか? ◆CDIQhFfRUg :2017/12/04(月) 23:10:18 lCJ.I1k60
 
「そうよ」

 少女の声がした。続けて舌打ちの音が聞こえた。
 なおも向かってくるK-5と「右腕」で格闘しながら、僕は少女の方をちらりと見る。
 少女は、怒っていた。

「あのビルの死体のことでしょ。そうよ、私がそいつに命じたの。爆発は不可抗力だけどね」
「何で……」
「なによ。怒ってるの? 知り合いでも居たの。なら、ご愁傷様ね。もう生きてるそれには会えないわ」
「それは、違う、僕は……僕を知っている人は、きっとどこにもいない」
「はぁ? なら何で怒るのよ」

 少女は不快な顔をした。

「知らない人の死に怒るなんて、あなたヒーロー気取り?」
「……僕は……僕にも…………分からない」
「……は?」

 僕は「右腕」でK-5の正拳突きを受け止めながら、少女の問いに素直に返答した。
 そう、実際僕にも分からなかった。
 理屈が合わない。僕は誰かに存在を認めてもらいたいだけで、人を殺した参加者をとがめようなんて気持ちはなかったはずだ。
 でも何故か、これをやった参加者を、探さないといけないという気持ちになって。
 論理が通らない。『君たちが、あれをやったのか!』どうしていま、声を荒げてしまったのか。
 分からない。分からない。分からない。
 僕は僕が分からない。
 でも――それでも。

「でも、……当たり前じゃないのか」

 「右腕」で、K-5の肩をつかむ。そのまま、力任せに押し倒す。
 僕の体からエネルギーのようなものが一気に失われていくのがわかる。
 それと引き換えに、「右腕」が力をさらに増している。

「人間、なら。当たり前じゃ、ないのか。
 止めなきゃって、思うのは……当たり前なんじゃ、ないのか!」

 僕は人間のレプリカで、つまり正しい人間じゃない。
 正規品じゃない、贋作。
 でもだからと言って、人間と同じ感情を持てないわけじゃないみたいだった。
 それが、失くしてしまったと思っていたものなのかどうかは、分からないけれど。
 怒っているでもなく、悲しんでいるでもなく、義憤に駆られているでもなく、ただ、ただ、止めたいと。
 何が何だか分からないまま、言語化できない気持ちのまま、前へ進んでゆくこの感覚を、心のようなものが覚えていた。

「僕は、君を止める!」
「K-5! こいつを殺せ!」

 少女は僕の恫喝に臆し、耐えきれない顔で叫んで、大事そうに持っていた白い花を高く掲げた。
 ぎぎぎぎぎ。
 ぎぎぎぎぎぎぎぎ
 K-5はその花を見ると、息を吹き返したかのように力を増して、僕の全力の「右腕」を押し戻す。
 白い花を見ていた。僕はそれを、しっかりと見ている。次の行動は、早かった。

「それ、か……ッ!!」
「な、や、やめてっ」

 K-5を無視して少女に飛びつき、追いすがる。必死に「右腕」を伸ばす。
 少女に戦闘能力はない。すぐに捕まえられる。

 僕は、少女の白い花を奪って――握りつぶした。


182 : その右腕で縋れるか? ◆CDIQhFfRUg :2017/12/04(月) 23:11:29 lCJ.I1k60
 
「ああっ!」
「これで、ロボットを操っていたんだな」
「あ、あああ。ああああ」
「もうこれで、君に、抵抗のすべはない」
「あ……」

 花弁を散らした花を見て、気の抜けた声だけを、少女は断続的に出した。
 そしてK-5は――地面を這うように動き、その花びらを拾い集めるような動作を、繰り返す。
 K-5はそれを繰り返す。
 彼はもう、それ以外の行動を取らないだろう。
 目と目が合ったときに、彼が「少女」のために動いていることを僕は把握していた、
 でも、それが「少女」でなく、「白い花の少女」なのであれば、
 ただの「少女」に戻った少女には、もうロボットを操るすべがない。

「なん、なのよ」
「……何だろうと、人を襲うのはダメだ。ましてや、ロボットを操って襲わせるなんて、なおさらダメだ。
 こん、なの。見てらんないってば。本当に。
 ああ――つ、か、れた。君も、疲れたんじゃないか」
「当たり前よ……」

 そして少女も僕も、まるで鏡写しのように、どちらも消耗していて、ひどい顔をしていた。
 身体中から力が抜ける――どちらともなく、地面に倒れこんだ。

「……ねえ、どうして、奪われて、ばっかりなの」

 少女が、観念したかのように話し始めた。

「どうして私がこんな思いをしなくちゃならないの。どうして私がこんなに苦しまなきゃいけないの。
 好きなひとも。怒る手段も奪われて、ねえ、私に、何が残るのよ。何が、出来るのよ。何もないしか、無いじゃない」
「だからって他の人から奪ったら、君は君から奪った人と、同じじゃないか。
 そんな模倣は、最悪だ。その連鎖だけは、しちゃいけないことだ」
「そんなの、そんなの。知らないわよ……知りたくないわよ。あなた、やっぱりヒーロー気取りなことを言うのね。
 正論は嫌いだわ。イライラしてるときは特に。女の子がこうしてるときは、黙ってうなずけって話なのよ」
「でも黙れないからこうやって君を止めたわけだからね」
「もう、何なのよもう……」
「僕はただのレプリカだよ」
「……比喩でいいこと言った風にするのも私嫌いだわ」
「好き嫌いがはっきりしてる子は好きだね」
「私の逆張りして楽しいわけ?」
「君があまりにも自暴自棄になってるから引き止めてるだけだ」
「あなたにだけは引き止められたくなかったわ」
「それは残念」
「ぐう、してやったり顔め……」

 譲らない言い合いがそのあとしばらく続いて。

「はぁー」

 と。
 K-5の駆動音だけが響く空間に、少女のため息は大きく反響した。

「もうやだ最悪。めっちゃシリアスに決めたつもりだったのに、ぐだぐだのぐだの助なんですけど」
「僕も放送前はこう、存在証明とか言ってたはずなのに。どうしてこんなことになったのか」
「やっぱりなんの力も才能も持ってない私じゃ、この辺が限界なのかしらね」
「君は持ってるよ」
「何を」
「僕とこれだけ言い合える会話能力とか。言っておくけど僕、頑固な方だからね。張り合える人、なかなかいないんだぜ」
「はぁー……自分で言うなんておかしい人よね。徹頭徹尾」


183 : その右腕で縋れるか? ◆CDIQhFfRUg :2017/12/04(月) 23:12:59 lCJ.I1k60
 
 乾いた笑い声がした。
 ずっと怒っていた少女のその笑い声に、もう毒気は含まれていない。
 吐き捨てきったのだ。
 レプリカの僕にまっすぐな正しさをぶつけられて、右腕を深海まで伸ばされて、無理やり引きずり上げられてしまった。
 それはもう。昼の太陽が、沁みるくらいに。

「まあ、こんな終わりも悪くないのかしら。
 もしあの人が地獄に居たら、最後に浮気じみたことしてんなよって怒るかもだけど」

 少女はゆっくりと体を起こし、レプリカの僕に笑いかける。

「ありがとう。楽しかったわ」
「待て待てよ。まだ終わりじゃないだろ。君は、まだ生きて……」
「いいえ、ここまでよ」

 僕は、何を言ってるんだと思いながら、そんな彼女に「右腕」を伸ばした。
 何故だかそうしないといけないような気がした。
 頭で考える前の、心の動きだった。
 だが、先ほどの戦いの後遺症が、それ以外の行動を僕に許さなかった。
 自らの機能にダメージを与えながら常人以上のパワーを引き出す「右腕」。
 奇跡の前借りの代償を、僕は否応なく払っている。
 機能の低下。ただ話しているだけの時間でさえ、それは快復を認めなかった、から。

「生きて……生きなきゃ、ダメじゃ……ないか……」
「おやすみなさい。ヒーロー気取りさん。あなたは間違ってないわ。でも」

 視界がかすみ、意識が薄れる。
 体の感覚がなくなり、脳内にスリープモードの文字が浮かぶ。
 嫌だといっても、もう遅く。
 少女は最後に、僕に向けて優しい言葉で。

「遅いのよ、もうね」

 と言った。


▼▽▼▽


 ビルが立ち並ぶアスファルトの市街地。
 生きているモノ以外誰も居ない世界で、――足音の変化はとてもよく分かってしまう。
 すでに、新たな参戦者がこの場所に現れようとしているのを、少女の耳は捉えていた。視界に収めた姿は二人。
 筋骨隆々で背の高い男と、メルヘンな服装の背の低い女のコンビ。

「よお」「こんにちは。早速だけど、死んでくれる?」

 一縷の望みも潰える殺戮宣言に、少女は――怒らなかった。

「ひとつだけお願いがあるの」

 ただ、静かに、お願いをした。


184 : その右腕で縋れるか? ◆CDIQhFfRUg :2017/12/04(月) 23:14:22 lCJ.I1k60
 
「私はいいわ。やけっぱちで人を襲ったから、報いを受ける覚悟はある。
 でもね、この人とそこのロボットは、別に悪くないの。
 ロボットは私が利用しただけだし、この人は、私のために自分の願いも投げ捨てて、戦ってくれたわ」
「……ふぅん。それで?」
「貴方達も、なにかを願って戦っている人間なのよね。人が願うことの意味を知っている人間なのよね。
 だから、通ると信じてこう言うわ。この人とロボットは、見逃してちょうだい。一度だけでいいから、見逃してあげてほしい」
「そうしないと俺たちに、どんなデメリットがあると?」
「……こうなるわ」

 喉が、乾いていた。緊張で。
 少女は懐に忍び込ませていた、虎の子の一手に手を伸ばす。かみさまにでも縋るように。
 だが――その右手は届かない。
 筋骨隆々の男、チェリーは、そのモーションのおこりを見抜いて、少女に瞬歩で近寄ると、細い手をやすやすと捻りあげていた。

「痛ッ……!!」
「はー。爆弾か」

 懐に無造作に手を突っ込んで取り出したのは小型の爆弾だった。
 愛のバクダン@愛のバクダン。
 愛のなんて枕言葉が付くにはあまりに物騒なその武器は、すべて爆発したわけではなかったのだ。
 少女は、それを交渉材料にしようとした。
 少女にもうほんの少しでも身体能力があれば、その目論見も叶ったかもしれない。

「あら、物騒ね」
「……悪りぃがお嬢ちゃんその2、その願いは聞けねえな」
「理由を……お聞かせ願えるかしらッ……?」
「舐めてんじゃねえよ」

 拳。
 男性の筋力で無造作に、しかしシャープに放たれた拳が、少女がそれを認識する前に少女の鼻にクリーンヒットする。
 それは血しぶきと共に少女の鼻骨を山から谷に変化させた。
 人間の骨格は、あまりにも簡単にゆがんでしまう。
 少女は叫ぶ、ことができなかった――チェリーが、その喉を締め上げたから。
 そして、吊り上げる。ガリレオと同じように。

「ぐぇう……」
「舐めるな。殺し合いを。
 舐めるな、殺すと決めた人間の覚悟をよォ。
 お嬢ちゃん2、お前は偽物だよ。レプリカ以下の偽物だ。くだらん三文芝居を俺とこいつに見せやがって。
 俺たちはな、お遊戯会をしてるんじゃねえんだぞ? 誰がこの場で、殺し合いの場で。死にかけのやつに情けをかけるんだよ。言ってみろよ、おい」
「……チェリーさん」
「分かってる。拷問だろ。でも不要だ。こいつ俺らがこうするのを知ってておちょくって来やがった」
「え? そうなの?」
「目が死んでねえ」

 メルヘンな少女、プリンセスは、チェリーに吊り上げられた少女、ブサイク面(にされた)その顔を見上げる。
 瞳を見つめる。そして確かに、と頷く。ガリレオと違って、少女は恐怖していなかった。
 ただ、達観したかのようなその瞳が、上から二人を見下ろしていた。
 ああ、とプリンセスは気付く。

「確かにこれは――ムカつきますね」
「な? だろ?」
「こんなにも負けているのに。勝った気でいるところが、特にムカついて、仕方がないです」
「――――はは。だかいところからみおろすの、はは、わるくなイわね」


185 : その右腕で縋れるか? ◆CDIQhFfRUg :2017/12/04(月) 23:17:04 lCJ.I1k60
 
「まあ、むりよね。おごってしまったじてんで、わたしには きせきはもうおごせないの、わかってだ。
 でもぜんせのおこないがよかったのかなあ? そこそこすぐわれちゃったのよねわたし?
 ふふっ、だからすくわれないあなだたちが、こっげいにみえるのよ。
 いのってるわ。のろってるわ。あなただちが、だれにもすくわれないごとを。
 あなたたちの歌が、さいあくのがたちでおわることを、ねぇ。じごくのそこからみていてあげる。はははっ――」
「もういい。鳴くな」

 ぼきり。
 あっけない音がして。
 ぶきっちょな笑い方で二人を最後まで逆撫でしたそれは、今世を終えることとなった。


【遅いよと怒る君@前前前世(RADWIMPS) 死亡】


「で、どうするの?」
「こいつらも殺すに決まってんだろ。今のを見る限りじゃ、大したものも出てこねえしな」
「同意ね」
「まあ、持ってけるものは以ってこうぜ。例えばこの爆弾もそうだし……あれなんかも良さそうだ」

 チェリーが指差した先には、銀色の右腕があった。
 二人に向けて拳を固め、震えている銀色の右腕があった。
 それは使用者の意思の有無にかかわらず、最適な行動を選択しようと、していた。
 だが――それだけだった。

 
【2-名/白/一日目/14時】

【わたし@M(プリンセスプリンセス)】
【容姿】女性、18歳、髪型はショート
【出典媒体】上記妄想(探しても媒体が見つかりませんでした)
【状態】あなたを忘れる(くらいなら誰かを殺す)勇気
【装備】割れたハート型のナイフ
【道具】支給品一式、???
【思考】あなたともう一度会うために、全ての星(参加者)を森(冥府)へ返す。
【備考】
※正しくは「わたし」では無く「私」です。書き終えた後に気付きました。
※でもそのまま行きます。

【愛してるの響きだけで強くなれる僕@チェリー(スピッツ)】
【容姿】男性、ムキムキ、修羅
【出典媒体】歌詞
【状態】殺気
【装備】なし(身一つで戦えるので)
【道具】支給品一式、???
【思考】いつかまたこの場所で君と巡り合いたい
【備考】


 ▼▽▼▽


186 : その右腕で縋れるか? ◆CDIQhFfRUg :2017/12/04(月) 23:18:17 lCJ.I1k60
 

 ただ歌われる、だけならば。すべての願いが叶うこともある。
 ――ただ歌われる、だけならば。誰もが物語のように、盛り上がり、盛り下がりを繰り返し、正しいエンドマークへとたどり着くこともある。
 けれど、いま彼らはそうではない。彼らはただ歌われるだけではなくなってしまった。
 自ら、自らが望むエンドマークへ歩まなければいけなくなった。

 それは夢のつづきであり、現実のはじまりでもある。

 だから、たどり着けないものもあらわれる。
 これは、それだけの話。

「……」

 スリープモードが、解除され。
 あるレプリカの青年が目をあけると、血だまりが周りに広がっていた。
 バイタルサインはオールレッド。脳が意識より先に理解していた。眠っている間に、殺されたようだった。

 ちらりと、辺りを見回せば。
 助けようとした少女も死んでいたし。
 壊れた白い花を元に戻そうとしつづけていたロボットは壊れていたし。

 自分の銀の腕は、根元から引きちぎられていた。

「……」

 失敗したな、という思いが、半分くらいあった。
 まだまだ生きたいという生命への欲望が、これは失敗だ、これは失敗だ、僕の罪は、僕の罪は何だと叫んでいた。
 でも残り半分は、なんだろうか。
 言葉にはできないけれど、満たされているなにかが、僕のもう半分だった。

 だって、手を伸ばしてくれていたから。
 僕の知らない誰かのために人を殺した少女が。きっと僕より手をつなぎたい人がいただろう、少女が。
 最期に僕を認めてくれたかのように、僕の方に手を伸ばしてくれていたから。

「ああ――」

 それでも。やっぱり失敗だなと僕は思う。
 だって、なあ、そうだろう?

「……その手を、僕も、握りたかったなあ」

 死んでしまったら、そんな簡単なことも、できないんだから。
 もう二度と。


【僕@レプリカ(坂本真綾) 死亡】
【ロボットなのに不倫したロボット@DAYS (FLOW) 死亡】


187 : ◆CDIQhFfRUg :2017/12/04(月) 23:20:35 lCJ.I1k60
投下終了です。
×2-名/白 ⇒ 〇2-名/馬 でした、wikiで直します。
次も早めに投下できるよう尽力します。


188 : 名無しさん :2017/12/04(月) 23:25:42 wo9irAks0
投下乙です。
悲しみのメリーゴーランド真昼間のメロディースローダンス


189 : 名無しさん :2017/12/04(月) 23:35:37 /sK7AmB60
投下乙です
切ない話だなあ


190 : ◆CDIQhFfRUg :2017/12/17(日) 21:27:33 VG0PzC2Y0
投下します。


191 : 快晴 ◆CDIQhFfRUg :2017/12/17(日) 21:28:14 VG0PzC2Y0
 

 雷がいっぱい鳴ったあと、空は快晴だった。
 沢山のかなしいことが起きたのに、空は快晴だった。

「いい天気よね」

 カジノの屋上で、放送までずっと座っていた少女。
 アルエは空を見上げながら、そんな言葉を皮肉めいたトーンでつぶやく。
 胸から突き出す剥き出しの心臓と、そこへ絡みつくコスモスが、どくり、どくりと動いている。
 燦々な太陽で、光合成でもしているのだろうか。
 それは、彼女自身にも分からないことだった。

「……さっきの雷の音のせいで、胸は痛いけれど」

 その心臓は感受性が強い。
 先ほどの雷に込められたメッセージを受け取るほどには。
 雷は語っていた。
 アルエにしか聞こえないであろう声で語っていた。

  『留まるな』『止まるな』『流れに身を任せるな』
  『願え』『勝ち続けろ』『他者を虐げてでも、伝説を手にしろ』
  『それができぬのであれば――――』

  『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』
  『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』
  『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』
  『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』

 ……急き立てるかみさまの声。
 とげとげしい、痛々しい、重苦しい、そんな感情の奔流。
 そんなに急がせて、むりやり生を終わらせることに、なんの意味があるのか、アルエは分からない。
 そもそも、アルエはそうまでして叶えたい願いなんて――。
 
(アルエ)
「こいのぼり、さん?」
(アルエ、きみに頼みたいことがある)

 アルエは、横に突き立てていたこいのぼりの心の声を聴いた。
 どこか、決意をしたような声だった。
 感受性が高いアルエは、その想いだけで感じ取った。
 こいのぼりは、もう。

(きみに――)

 こいのぼりの想いが、アルエに突き刺さる。
 アルエは心臓から血が噴き出さないのを不思議に思った。
 だって、こんなに痛いのに。
 こんなに苦しいのに。
 こんなに、さみしいのに。


♪♪♪♪


192 : 快晴 ◆CDIQhFfRUg :2017/12/17(日) 21:29:09 VG0PzC2Y0
 

 快晴の中、狼煙が上がっている。
 屋上で死んでいた男の人が持っていたライターで、こいのぼりに火をつけた。
 カジノをあとにして歩き出すアルエは、ふいに振り向いて、その煙が空に登っていくのを、見上げた。

 ――燃やしてくれないか。
 ――もっと、高いところを泳ぎたいんだ。

 こいのぼりは、心の言葉ではそう喋っていたけれど、アルエが感じ取った感情は、それだけではなかった。

 ――もう自分の願いは叶ったから。
 ――いつまでもきみをここに縛り付けるわけにもいかないだろう。
 ――わからないけど、きみにも願いがあるのだろう?
 ――例えば誰かに襲われて、これ以上、願いが叶えられなくなるうちに。
 ――きみはきみの願いを叶えなよ、アルエ。

 そんなことを震えた想いでつづられて、拒否などできるわけがない。
 例えアルエが、そうまでして叶えたい願いなんて持っていないと思っていようが。
 そんなことがわかるのはアルエくらいなもので、こいのぼりにアルエの心は分からないのだから。
 優しさを、無下になどできなかった。

「また、一人になっちゃった」

 煙が登っていく。
 命が天へ昇っていく。
 空は快晴である。

「一人じゃなければ、それでよかったのにな」

 ぽつりとつぶやいて、アルエは歩き出す。


【こいのぼり@こいのぼり(作曲者不明) 死亡】


【1-春/止/一日目/14時】

【アルエ@アルエ(BUMP OF CHICKEN)】
【容姿】白いブラウスに青いスカート、剥き出しのハートに包帯とコスモス
【出典媒体】歌詞
【状態】健康
【装備】こいのぼり@こいのぼり、ライター@現実
【道具】支給品一式
【思考】また、一人になっちゃった。
【備考】
※感受性が高いです。


193 : ◆CDIQhFfRUg :2017/12/17(日) 21:29:57 VG0PzC2Y0
投下終了です。


194 : 名無しさん :2017/12/17(日) 22:06:01 m8p/9mMQ0
投下乙
屋根を超えた先


195 : 名無しさん :2017/12/17(日) 22:52:59 zDFeCFj.0
投下乙です
鯉のぼり、不器用な男よ……


196 : ◆CDIQhFfRUg :2017/12/25(月) 23:53:59 Sl8eYr9o0
クリスマすべりこみ投下です。


197 : チキンライス ◆CDIQhFfRUg :2017/12/25(月) 23:55:36 Sl8eYr9o0
 

今日は

クリスマス

街はにぎやか、お祭り騒ぎ

でも七面鳥は持ってないので

私達まだチキンライスでいいや


♪♪♪♪


「……チキンライス、おいしいな!」
「支給品がケチャップとサラダチキンだったときはどうしようかと思ったけど、なんとかなった」
「市街地にちゃんと電気が通ってるとこが味だよな。そんであんたが料理が美味いのも驚きだ」
「混ぜるだけだもん、わたしじゃなくても、誰でもできるよ〜」
「褒められ慣れなさが顔に出てるぜ」
「はずかしーことをいうな」

 スプーンが食器をカタンカタンと叩く音が、静かな住宅街の一軒家の中から聞こえていた。
 すいみん不足の少女と朝眠い原因の妖怪の支給品は、異様な量のケチャップとサラダチキンだった。
 ケチャップ。チキン。
 七面鳥ではないが、この材料だったらもうチキンライスを作る以外にやることがない。
 そう、快眠にてスイミン欲を満たした後は、食欲を満たそうということである。
 市街地へと移動し、家探しで見つけたコメを炊き、
 少女が作ったのはよくほぐされたチキンがいい味付けでご飯に絡む、至上のチキンライスだった。

「まあ腹は膨れたが(オレは妖怪なんで別に食わなくても動けるが、気持ちの問題だな)武器がなかったのは痛いな」
「そうね。ピストルとかあったらよかったんだけど。や、撃てるかは別として」
「スタンスは決めたのか?」
「うん」

 ぺろり、と口の端についたケチャップを舐めた少女は、迷いのない瞳でバクを見つめていた。

「お腹を膨らませてる間に、お腹をくくったよわたしは。
 やっぱり、夢を叶えたわたしが次にやるべきは、誰かの夢をかなえてあげることだと思う。
 そんでね、もういっこ、誰かが夢を叶えようとしてるのを邪魔する人がいたら」

 ばきゅーん、手でピストルを打つジェスチャーをする少女。

「その人を倒さなきゃだめだって、思ったよ」
「優勝することで夢を叶えようとしてるやつがいてもか?」
「妖怪さん、厳しいとこ突っ込んでくるよね。でも、それも考えたの。確かに。
 わたしだって最初はテンパってたし、叶えようのない願いを叶えようとして、殺し合いしちゃおうとしてる人もいると思う。
 そういう人の、夢を、否定していいのか? すっごい難しいよ。
 でも結論、誰かの夢を虐げてまで叶える願いなんて、よくないんじゃないかなってわたしは思うの。
 わたしは、そう思った。だって、それを実行してたもう一人のわたしが、なんだか悲しそうだったから。あれは――よくないって思った」

 少女は、自らの写し鏡である、自分よりクマが酷い少女のことを想った。
 眠りを望み、戦い、殺し、そして眠る権利を失った彼女が、最期に自分に託した言葉の意味を思った。
 彼女の叫びを、あのような唄を、もう二度と聞きたくはない。誰かに唄ってほしくない。
 誰がなんと言おうと、少女はそう思った。だから、少女のやることは決まっていた。


198 : チキンライス ◆CDIQhFfRUg :2017/12/25(月) 23:56:31 Sl8eYr9o0
 
「ふうん」

 その覚悟を聞いて、しかし妖怪は鼻で笑う。

「ま――いいんじゃないの。悪くねえよ。協力するって言っちゃったの、後悔しないくらいにはね。
 でも、具体性がなしの助だな。結局どうすんべこれからって事」
「それはまあ、そうだけども……」

 そう、いくら志が高くても。
 この殺し合いの地で、ただの睡眠不足の少女となんの能力も使えない妖怪など、一息で殺されるだけの存在にすぎない。
 この問題の解決策は、少女も持っていなかった。
 結局武器もなく、余ったのは大量のケチャップだけである。
 血のりとかに使えなくもないだろうが、本音を言えばそんなことより武器が欲しかった。

「とりあえず誰か、強力な助っ人を探すって感じかなあ」
「んー。爆速で人が死んでるってのにのん気だが、まあそれしかねえかね?
 まさかこの、余った大量のケチャップが有効利用できる場面が急に来るとかはないだろうし――」

 少女とバクがある種、消極的な方針を固めかけた……その時だった。

「いえ、ナイスですよ、そちらがた」

 妖怪のセリフに、示し合わせたかのように。
 一軒家の窓から急に、吹雪のようなナニカが舞い込んできた。

「わっ!」
「きゃ!」

 びゅう、びゅう、びゅう、荒野にふきすさぶ風のようなそれは、よく見れば極彩色のアゲハ色をしていた。
 違う。アゲハ蝶なのだ。アゲハ蝶の群れが食卓に渦をまいている。
 その渦は次第に人の形に収束する。
 少女とバクが目をぱちくりさせている間に、大量のケチャップをアゲハ蝶に抱えさせた男が、その場に現れていた。
 かんばせ伺い知れぬ、砂漠の旅人衣装。
 ミステリアスが形を成したようなそれは、開口一番に驚きの言葉を並べた。

「マヨネーズに対抗するなら、やはりケチャップですよね」
「は?」
「時間がありませんので、手短に。
 こちらは旅人。全ての旅を応援している、ナビゲーターのようなものとお考え下さい」
「ナビゲーター……?」
「取引があります。こちらの望みは、このケチャップ。こちらからの提示は、情報二つ。
 一つ、そちらの望み、殺し合いの打破に協力してくれそうな助っ人――心当たりがあります。成立の暁、場所をお教えしましょう。
 そしてもう一つ、こちらは先行情報をば。
 いまだ鳴りやまぬ雷が、勇敢な鉄人の命をいままさに削り取ろうとしています」

 早口に、旅人がそう言い終わるか言い終わらないかのうちに、バクの耳(そこそこ良い)は遠雷の音をとらえた。
 それは聞き間違えようのない、主催が放送の終わりに放った殺戮の雷と遜色ない音をしていた。
 雷は、主催が放ったアレで終わりではなかったのか?
 誰かの命が「雷」で失われようとしている?
 いやいやまてまて。急に現れて、都合のいいことをまくしたてたこいつは何者だ?
 こいつの存在から匂う、妖怪と同じような、不安定な気配はいったい?

「おいあんた、これ怪しいぜ、ちょっとシンクタイムを」
「うん、わかった」
「ってオイ!」

 と、妖怪が教育番組のおさらいのように情報を反芻する時間を取っている間に、物語は動き始めた。
 ツッコミを入れるすきますらない、ノータイムで――少女が取引を呑んでいた。
 考えなしのバカ!
 怒ろうとしたバクだったが、強い光を秘めた少女の瞳を見てしまい気圧された。
 少女が、いっさいひるまずに旅人に言葉を返した。


199 : チキンライス ◆CDIQhFfRUg :2017/12/25(月) 23:57:49 Sl8eYr9o0
 
「別にケチャップなんていらないし。いくらでも持っていきなさいよ。
 でもね、ひとつだけ。眠たいことはしないでって言っとくわ。
 嘘を吐くくらいなら、何も話してくれなくていい。情報をくれるっていうのなら、それは正しいことだと信じるから。
 あなたも、わたしを信じて話してよね。それでいいなら、取引成立よ」
「ほう……」
「誰かが苦しんでいるってのがホントなら。一分一秒でも、それを長引かせちゃいけないから」
「ああ――素晴らしいですね」

 にこり。
 と。
 妖怪にも、少女にも見えないように隠した顔の下で、旅人がわらったような気がした。
 その意図は、誰にも分かることはできない。
 ただ、旅人にとって、見守るべき旅が増えたのは、どうやら確かなようだった。 

「では、アゲハを一匹付けさせてもらいます。「太陽の騎士」の元へと誘導しましょう。
 ケチャップ、ありがたく頂かせてもらいます。では―――――よい旅を、かわいい少女さん」

 びゅおお。
 またもや嵐が室内に吹き荒れ、一気に旅人とケチャップは消え去り、後には一匹の蝶が残った。
 そして、ふわふわと。誘蛾灯に引き寄せられる蛾を思わせる動きで、蝶が少女とバクを外へと誘っていた。
 それはこの先に待ち構える波乱への片道切符と同義だ。

「はー……ま、うさん臭くてもやるしかねえか。あんた、肝座ってんな」
「妖怪で肝試しはとうの昔にしたし。チキンライスもおいしく食べたしね」
「ハッハッハー。眠って食べて充足したら、ずいぶん頭が冴えてる女の子になったことで」
「ふふ、おかげさまで」

 少女とバクは、臆せず蝶についていく。
 目指すは太陽の騎士、そして、雷の討伐。
 少女はもう迷わない。
 なぜなら、もうよく寝たから。


【3-九/馬/一日目/15時】


【朝眠い原因の妖怪@ようかい体操第一(Dream5)】
【容姿】バク
【出典媒体】歌詞
【状態】健康
【装備】なし
【道具】不明
【思考】
1:朝に起きてるやつを眠らせる
2:昼になったらどうしよう
3:支給されたカバンを開けてみる。
【備考】
朝に限り、他人の眠気を増幅する妖術が使えます。

【わたし@すいみん不足(アニメ版)(CHICKS)】
【容姿】目の下にひどいクマがあるミヨちゃんヘアの少女
【出典媒体】歌詞
【状態】睡眠中
【装備】包丁
【道具】支給品一式
【思考】【夢】を探す
【備考】

【旅人@アゲハ蝶】
【容姿】アゲハ蝶
【出典媒体】歌詞
【状態】健康
【装備】アゲハ蝶@アゲハ蝶
【道具】支給品一式、大量のケチャップ
【思考】トイレットペーパーマンの旅を見守る。
【備考】
※アゲハ蝶を操れます。


200 : ◆CDIQhFfRUg :2017/12/25(月) 23:58:52 Sl8eYr9o0
投下終了です、この季節はなんかチキンライスの歌を思い出します……


201 : 名無しさん :2017/12/26(火) 00:13:07 qg/68eag0
投下乙です
チキンライスは名曲だよなあ
そしてマヨネーズとケチャップの戦いが始まるのか……


202 : 名無しさん :2017/12/26(火) 23:07:21 r9HObq1I0
投下乙でした
バラバラだったそれぞれの物語が徐々に繋がり始めましたね


203 : ◆CDIQhFfRUg :2017/12/28(木) 20:38:29 QTe1Jdmc0
感想ありがとうございます!非常に嬉しいです
〜修正連絡〜
>>199
位置3-九→5-九に変更します。
あと状態表の思考欄がノーメンテすぎるのでwikiで直します。


204 : ◆CDIQhFfRUg :2018/01/22(月) 00:48:51 CWhZIoVQ0
投下します


205 : 宿命の交わる時 ◆CDIQhFfRUg :2018/01/22(月) 00:50:23 CWhZIoVQ0
 

 正味の話、女と付き合ったことは一度や二度じゃない。
 人生30年を手前に、同年代と比べれば、まあ自慢できるくらいには遊んできたという自負がある。
 小さなものから大きなものまで、それこそ星の数……とまではいかねえかもだけど、
 目を閉じれば今まで夜を共にした女たちが浮かんでくるくらいには、色々な経験をしてきた。

 その中で、いちばん光るのが、彼女だ。
 他の思い出が霞むくらいに彼女は、俺の中で光っている。

 大親友の彼女の連れ――パスタ――大貧民――マジ惚れ。
 桜月の夜に付き合い始めて、ずっと連れ添っていた、絶対に失いたくないあいつ。
 
 たとえどれだけ違う姿になってしまったとしても、絶対に分かる。
 だってお前は、俺のことを変なあだ名で呼ぶんだから。

「あれ……『うーた』?」
「ゆ、ユミ……なのか……?」

 ユウタとユミで「ユ」が被ってるから、みたいな理由だったはずだ。
 『うーた』幼児みたいなあだ名を付けられたのは生まれて初めてだったから、最初はこそばゆかった。
 でもまあ嫌いじゃなかった。バカップルみたいだと思うけど、それは俺とあいつじゃなきゃ生まれないあだ名だったから。特別なものだったから。

 だからこそ驚いた。
 放送の後、必死になってそいつを――俺の彼女、ユミを探してた俺の前に現れたのは、ヘビの彼女だったんだ。
 ヘビのような顔をして、ヘビみたいに尻尾を生やした亞人だったんだ。
 信じられなかったけど信じるしかなかった。
 彼女以外は使わないあだ名で俺を呼んだそいつは、間違いなく彼女であり――

「いたんだ、うーた。でもちょっと待ってね。もうちょっとで、殺せるから」

 ニュースキャスターみたいな姿の女の人を、ずたぼろにしているところだということを、認めざるを得なかった。


♩×♩×♩×♩×♩×♩×♩×♩×♩×♩×♩


 ぺっ、と。
 回し蹴りを顔面に入れられて折れた歯を、ニュースキャスターは冷静に吐き捨てた。
 こんな時でも実況を忘れられないのはニュースキャスターの性だろうか。
 ともかく、新たな日本人の登場。
 今は闖入者の存在を計算に入れて、この不利を覆す方法を模索するのが課題だ。

 そう、不利を強いられている。
 ヘビの少女が特別強いわけではない。
 ヘビの舌に備わる超感覚センサでこちらの動きを若干読んできたり、尻尾を使って人間には出来ない角度・軌道での攻撃を行ってはきたが、
 所詮格闘経験のない一般人の考えがベースになった『なりたて怪人』の小技、たかが知れている。
 あらゆる荒事・危険地・異常時での報道実況が可能なよう鍛えてきた、ニュースキャスターの敵ではない。
 加えてこちらには9mm拳銃がある。適当にいなしたあと胸にでも撃ち込んでやればそれで終い。
 そう軽く考えていたし、実際戦闘開始から五分後には一射目を撃ち込むことができた。

 だが、その銃弾は何者かに掻き消された。

「I have a pen...(私はこの勝負の行く末を握っています)」

 ニュースキャスターはちらと横目で見る。ヘビ娘を使役して高みの見物を決め込むピコ太郎を。
 確証はないが、報道者としての勘が告げている。
 おそらくは、彼、ピコ太郎こそが銃弾を消した犯人だ。

 彼がその両手でリンゴとペンを合体させるとき――それはその実、リンゴとペンの合成ではないのだ。
 概念と概念の合成。あらゆるもの、神羅の万物を、ピコ太郎は歌に載せて合成させることができる。
 生命と死の合成。=死んだ生命。
 人間と蛇の合成。=蛇の人間。
 銃弾と空気の合成。=空気の銃弾。
 つまりはそういうことだ。


206 : 宿命の交わる時 ◆CDIQhFfRUg :2018/01/22(月) 00:50:58 CWhZIoVQ0
 
「ご主人様、お待たせして申し訳ありません! 今、いま、殺しますから!」
「I have an apple...(熟した果実は私の手の内です)」
「……ぐぅう!!」

 ほら、今も感じた。その場の全てを握られているかのような圧迫感。
 直接相対した際の、この求心力。影響力。掌握力。想像以上だ。そりゃあyoutubeで異次元の再生回数を誇るわけである。
 握られたままではだめだ。
 ニュースキャスターはその瞬間、たとえ有利な体制を取れていても、その場から飛び退く必要に駆られる。
 次の「合成」は直ぐに来る。

「――――apple pen !(踊りなさい!)」

 傍目には何も起こらない。その場を爆風が覆うわけでも、エネルギー波が現れるわけでもない。
 ただ漠然とその空間に「死」が合成され、その空間が「終わる」。
 せっかく作り上げた粘土細工を、子供が両の手に持って、思い切りぶつけてぐちゃぐちゃにするような、単純暴力。
 抗いようのない現象。……その現象に気を取られていれば、再びニュースキャスターの眼前に少女(ダンサー)が躍り出る。

 一切の躊躇なく叩き込まれる蛇の拳。
 一文で矛盾するそのふざけきった概念を、ニュースキャスターは苦しい体制で相手取る。無理やりいなすも、また体に傷を作る。
 少女は「合成」を回避できるようだ。
 それがピコ太郎に作られた存在だからなのか、自身の動物感覚で感じ取っているのかは、この際あまり問題ではない。

 状況判断、勝目薄。
 日本人の処理のこれ以上の継続は、自己死亡リスクを跳ね上げるという試算を算出。
 であればニュースキャスターが、ニュースキャスターとしてとるべき行動は、一つだ。

「報道者として、少し前に出すぎましたかね……?」
「あら、弱音を吐くのですか?」
「事実を述べただけです。ですので、ここは。後ろに下がらせて頂きましょう――」

 「合成」の直後のタイミングを、ニュースキャスターは狙っていた。
 そう、「合成」にも欠点がないわけではない。歌のリズムに乗せて行われるため、瞬時の連発には不向きと考えられる。
 ピコ太郎もまた、状況をコントロールしながらこの死亡戯曲を組み立てているはず。
 だからニュースキャスターは、ここで、一つ音を外す。

 パン!
 
 空間座標の小さな一点から複数人が拍手をするかのような音がはじけて。 
 ニュースキャスターは9mm拳銃を、闖入者に向けて撃ち鳴らした。

「私は日本人に死亡していただければ勝利はいらないので」

 闖入者――『うーた』と呼ばれた男の、腹部に向けて。


♩×♩×♩×♩×♩×♩×♩×♩×♩×♩×♩


207 : 宿命の交わる時 ◆CDIQhFfRUg :2018/01/22(月) 00:51:41 CWhZIoVQ0
 

 恋に落ちることをよく「赤い花が咲いた」とか「赤い実がはじけた」なんて言うらしいが、俺のお腹は銃弾に恋をしたらしい。
 ばかやろうが、俺のお腹め、お前にはパスタがいるだろうが、浮気すんじゃねえ。
 恨み節を叩く言葉も声には出なかった。叫んだ覚えもないのに声が枯れている。
 ぞく、と背筋が凍り、次いで真っ赤な痛みが視界に広がった。
 自分が世界から外れたような感覚と、ツンと鼻をつく嫌な臭いにくらくらする。五感が混乱しているのだ。

「うーた! うーた!!」
「ばかやろ、う……」

 耳だけがしっかりとお前の声を聴いていた。ちかちかする視界の中で俺はお前に憎まれ口をたたく。
 だってまだ銃を持った女がいるんだ、なんで俺のところに、うれしいけどちがうだろ。
 そんなことしたらお前まで撃たれるんだろうが。
 だから俺はひやひやしたが、体温が下がる中、ニュースキャスター女の追撃の音は、そこからしばらく、しなかった――逃げたのか。
 ――ああ、そうかよ。
 そういう――ことかよ。
 頭を狙えたのに、あえて腹にしたのかもしれないと、俺はそのとき思った。
 ずたぼろのあの女もまた、逃げる口実を探していたのだろう。
 俺を一撃で仕留めることをしなかったのは、きっとそれだ。
 俺を彼女にとっての「重石」にすることで、逃げる展開を作り出したのだ。
 野球でいえば四番打者にデッドボールか? いや、まちがっても俺が、四番打者なわけはないが。
 ともかく、おそらくはわずか一瞬の会話で俺と彼女の仲を見抜いた狡猾なニュースキャスターの手によって、状況は最低の最悪に追い込まれたのだ。

「うーた! ご主人様! うーたが!? うーたが死んじゃう!」
「……ち、くしょう……」

 そう、最低の最悪だ。
 元より最低だったのがさらに最悪になった。
 彼女は、ユミは、何故だかヘビみたいな感じになってしまっている上に、近くにいるおっさんをご主人様と呼ぶようになってしまっている。
 すでに野球少年との不思議なひと時を過ごした俺だから、今更理解を拒否することはしねえ。
 まあ何かがあったんだろう、何かがあって、俺の彼女はあのおっさんに従属させられてしまったのだろう。
 そこまではまあ納得してやろう。
 百歩、いや千歩譲って納得してやろう。
 だけどな。
 だけどなあ――納得しても、是にはしねえぞ!?

「て、め、え!」

 俺は吠えた。

「俺の女に! 何しやがった!!!!」
「……you have a pen(あなたはその男を救う方法を知っています)」
「……ご主人様?」

 おっさんは俺の言葉を無視して、ユミに語り掛けた。

「……you have a pineapple(あなたはその刺激的な味をすでに味わっています)」
「……!!」

 ユミはおっさんの英語?の言葉に何を感じ取ったのか、はっとしたように、蛇の舌をちろちろさせた。
 そしてなにやら悲壮な表情でこちらを見て、俺に向かってにっこりと笑いかける。

「うーた……大丈夫だよ、助かるから。ご主人様が、助けてくれるから」
「やめ、ろ、ユミ……そんな奴の言うことを、聞くな……」
「大丈夫だから。ずっといっしょだから」

 ユミは俺に覆い被さるようにして、

「ご主人様が、わたしたちをずっといっしょにしてくれるの」


208 : 宿命の交わる時 ◆CDIQhFfRUg :2018/01/22(月) 00:52:56 CWhZIoVQ0
 
 ぎゅっとぎゅっと強く、俺を抱きしめる。
 俺の腹部から流れる血がユミの服を紅に染める。俺の体温は下降の一途をたどっていて、だからユミが抱きしめてくれて温かかった。
 だがそれは少しだけ、ヘビの体表のようにぬめぬめとしている。俺はそれが許せないから素直には喜べない。
 「ずっと一緒だから」
 俺もそれは願ってる。だが、誰かの思い通りにそうされることは、俺は望んでないんだ。
 そんなのは政略結婚と変わらねえだろうが。
 俺たちだけでやらないと意味ねえじゃねえか。
 そんなのは本当は、お前も望んじゃいないはずだ。
 ノーを突きつけたい。そして立ち上がり、おっさんを殴って、歪められた大切なものを元に戻さなければいけない。なのに体に力が入らない。

 反省点ばかりだ。
 ユミの異様な姿に、一瞬固まってしまった。
 その場で、何もできなかった。立ち尽くすだけの俺は、あまりに簡単に撃たれてしまった。
 もう一声でもかけていれば、一歩でも動いていれば、俺にだって何かできたかもしれないのに。
 このまま俺たちはそれが宿命であるかのように、知らないおっさんの思い通りにされてしまうのか?
 このまま、何もできないまま……。
 後悔、するような、結末を迎えるのか。
 「後悔しないように行け」と、あんなにかっこいいヒーローに言われたのに?
 
「――――pineapp「ざけんなああああああああああああああああああああああッ!!!!!」

 そんなことは、させねえ。俺は、バッターボックスに立ち続ける。
 命を燃やすほどの大声で俺は叫んだ。
 九回裏ツーアウトから放たれたその一打はおっさんの歌を「中断させる」。

「うーた!?」
「バッカ野郎が! んなことされなくてもな、俺たちはずっと一緒なんだよ!」
「で、でも、怪我が!」
「うるせえ!」

 立ち上がる。腹に空いた穴から血がどばっと落ちるが気にしていられない。
 なあに手足は付いてんだ、体が動かないなんてのは結局のところ気合の問題だ。
 俺はユミを……きっと今の俺よりはずっと動けるだろう、蛇の彼女を、それでも手で後ろに隠して前に出る。
 これは意地だ。
 理解されようとは思わない、男の意地の張り方だ。

「惚れた女より先に死ねるかよ」

 俺はファイティング・ポーズを取った。


♩×♩×♩×♩×♩×♩×♩×♩×♩×♩×♩


 ピコ太郎は――がっかりした。
 せっかく願い通りに合わせてあげようとしたのに、男のほうがそれを拒否したので、がっかりした。
 あのまま合わせておけば、ぬるま湯のように幸せなまま、もう少しは生きながらえることができただろうに。
 しあわせの歌を拒否した愚か者は、遠くないうちに死ぬだろう。本当に、がっかりだ。

 ピコ太郎の「PPAP」の力はおおむね、ニュースキャスターの推測通りである。
 右手に掴んだ概念と左手に掴んだ概念を、「合体」させる。ただし、必ずしも物理的な手を使う必要はない。
 イメージ上の右手と左手でも、概念の合体は可能だ。もちろんその場合は、「調整」の精度が落ちるというデメリットはある。
 ニュースキャスターが読み取れなかったのは、PPAPは融合時に「要素の調整」ができるという点である。

 例えばこの蛇少女を「合体」したとき。
 蛇と少女は、外敵(フリーザ)を倒したピコ太郎に感謝をしていた。
 手で掴んで合体させたとき、ピコ太郎はその「感謝」の配分を大きくした。するとどうなるか。
 蛇の感謝と少女の感謝、二つの感謝が、強調された状態で融合すると――それは「崇拝」にも似た絶対的な感情へと発展するのである。
 崇拝でほとんどが占められた蛇少女はそれが自然な感情であると誤解したままピコ太郎に奉仕する。
 そうして有用なしもべを作ることが、あのときのピコ太郎の狙いだったのだ。


209 : 宿命の交わる時 ◆CDIQhFfRUg :2018/01/22(月) 00:54:05 CWhZIoVQ0
 
 ピコ太郎には野望がある。
 この「PPAP」の能力をもってして、全人類を「一つに繋ぐ」という野望がある。
 youtubeを利用したプロモーションにより、彼の野望をサブリミナル的に人類に浸透させる第一段階はすでに叶った。
 シン・ゴジラでさえも打ち滅ぼせるプロップスも得た。もはや計画の成就は秒読みだった。
 だのにこんな場所で殺し合いをさせられる。ありえない。
 優勝以外にありえない。

「……I have a pen,(未だ、この劇場は私が支配しています)」

 事実を唄に載せてつぶやく。ピコ太郎の目の先に見えるのは、手負いの鼠と困惑の猫。対するこちらは虎である。ウエイトが違う。

「……I have an apple.(君たちの宿命を私が決めてあげましょう)」

 片手に「死」を握る。
 もう片手には「男」を握る。
 蛇少女には、まだまだ働いて貰わないといけない。邪魔な男は、ピコ太郎の世界から消えてもらう。

「――――apple pen !(それは、死です!)」

 手を交差させ、二つの概念を「合体」させる。
 ふらつきながらこちらを睨む愚かな男に、歌の速度で迫る概念上の手を避けられる道理は存在しない。
 終わりである。ピコ太郎はそれを確信し、つまらなさげに目線を逸らした。

 その目線を横切るようにして、何かが「死」と「男」の間に挟まった。
 「死」はその乱入者と「合成」される。
 されるはず、だった。

「I'm a(俺は)」

 その男は。

「perfect human(完璧だ)」
 
 ――「すでに完璧」であるがゆえに、外部からの合成を受け付けない。

「……」「……誰?」
 
 血を流す男が彼を見る。蛇の少女が彼を見る。
 ピコ太郎という名の大魔王が彼を見る。彼は自然と注目を浴びて、高貴な言葉を申し上げる。

「歴史を覆しに来たぞ、ピコ太郎!!」


【4-名/白/一日目/15時】
 
【I@PPAP(ピコ太郎)】
【容姿】ピコ太郎
【出典媒体】PV
【状態】健康
【装備】ペン@PPAP
【道具】支給品一式
【思考】優勝する。
【備考】

【家庭的なガラガラへび彼女@純恋歌がやってくる(湘南とん風ねるず)】
【容姿】蛇と彼女のマッシュアップ
【出典媒体】歌詞
【状態】健康
【装備】不明
【道具】支給品一式
【思考】ピコ太郎様についていく。
【備考】
0:うーた!?
1:ピコ太郎様をお守りする。
※二つの歌がマッシュアップされました。

【nakata@PERFECT HUMAN (RADIO FISH)】
【容姿】I’m a perfect human
【出典媒体】I’m a perfect human
【状態】健康
【装備】
【道具】支給品一式
【思考】ピコ太郎を殺し、自分がI’m a perfect humanであることを証明する。
【備考】

【家庭的な女がタイプな俺@純恋歌(湘南乃風)】
【容姿】星空柄のインナーシャツを着た青年
【出典媒体】歌詞
【状態】腹部に銃創、瀕死
【装備】
【道具】支給品一式
【思考】なんというか、その……すごかったな!?
【備考】
※家庭的な彼女(パスタがおいしい)が心配。


210 : 宿命の交わる時 ◆CDIQhFfRUg :2018/01/22(月) 00:54:46 CWhZIoVQ0
 

♩×♩×♩×♩×♩×♩×♩×♩×♩×♩×♩
 
 
 草原をとぼとぼと歩く。思った以上に足取りがおぼつかない。
 これはしばらく休息が必要だな、と、ニュースキャスターは冷静に思考する。
 逃げの一手に後悔はない。報道とは伝え続けることであり、伝えられなくなることが敗北なのである。
 こうして生きているという時点で、ニュースキャスターの勝ちなのだ。
 もちろん、試合を諦めはしない。
 この惨憺たる催しに「日本人はいませんでした」という言葉を上書きするために、命果てるまでニュースキャスターは真実を捏造する。
 そう報道されることで喜ぶであろうすべての日本人のために。彼女は彼女の正義を貫き続けるのだ。

「……それにしても……先ほどは、危ない局面でした。
 銃を持っている優位を、驕りすぎていましたね。もっと距離を取って立ち回れば、やりようはあったかもしれません。
 だから……あのとき……」

 後悔はないが反省はする。
 ニュースキャスターの脳内では先ほどの戦いがまるで録画映像のようにフラッシュバックしていて、
 ニュースキャスターはそれに対して「もっと良い手はなかったか」という検討を重ねている。

「そう、あそこで……もう2ミリ、左に寄っていれば、この傷は受けなかったし……」

 伝え漏れはないか。もっと掘り下げられないか。もっと印象付けられないのか。
 常にさらなる最善を探し続けるその姿勢こそが、報道者としての姿勢であると彼女は信じている。
 局に居たときは、寝る間も惜しんで自分の関わったビデオを見直しては、今と同じようなことをしていた。
 そうすることで小さな問題点を洗い出し、次の収録に生かすのである。

「もっと切り上げるのを早くしていれば、……いや、そもそも、逃げることができたのが、奇跡といえば奇跡ですか。
 ピコ太郎氏が、逃げ出す私に対して少しでも動いていれば、私は今ここを歩くことすら許されていない……。
 そういえば、なぜピコ太郎氏は、私に追撃を加えなかったのか? それは、考えねば、ならないでしょうね……。
 もちろん、戦闘中、間接的な……ちょっかいのような手出ししかして来ず、あまり動かなかったことから、私も追撃はないと推測しましたが、
 別に、逃げを取った私を追い打っても、いい……場面でした……なのになぜ……あ……まさ、か?」

 と――そのシークエンスの最中。
 ニュースキャスターの中のニュースキャスター、とびぬけて聡明な彼女は、ある可能性に気づいてしまう。

「……蛇――の、少女」

 げほ。と。
 小さくせき込んだ。
 ニュースキャスターは思わず手のひらに吐き出した。

 それは、深い赤に濁った彼女の血液だった。


211 : 宿命の交わる時 ◆CDIQhFfRUg :2018/01/22(月) 00:55:39 CWhZIoVQ0
 
「ああ」

 推測は……確信に変わった。

「ふふ……そういうことですか……ははは! これは、一本、取られ、ましたね……」
「……うえええん……」
「おや」

 ニュースキャスターは前を向く。
 そこには、どこかで見たことのあるような、泣き腫らした顔の小さな少女がいた。
 どこから水分を得ているのか、枯れずに泣き続けている。
 何か悲しいことがあったかのように、泣き続けている。

「……うえええん……うえええええん!!」
「ああ――思い出しました。最初のあのとき、取り逃がした……何かを得て戻ってきましたか」
「うええええん……!」
「努力する子は、好きですよ……ええ……」

 口の端を舐めて、ニュースキャスターは銃を構える。

「うえええええええん……」
「ほら、何があったか知りませんが、泣いてる場合じゃない……んじゃないですか?
 復讐の、相手が目の前にいる、クライマックスでしょう? なのにそんな顔じゃあ……撮れ高がないですよ」

 ニュースキャスターは毒づきながらも気丈にふるまった。
 でなければ、向こうもやりづらいだろうから。

「日本人は、皆殺しです」
「うえええええ……ん」

 その体に毒を抱えながら、彼女の決算が始まった。


【3-名/白/一日目/15時】

【涙化粧の女の子@JAM(THE YELLOW MONKEY)】
【容姿】夏川りみ(幼少時代)
【出典媒体】歌詞
【状態】悲しみの涙
【装備】なし
【道具】基本支給品
【思考】ニュースキャスターに弔い合戦を挑む
【備考】ぅえっ
※涙が枯れません。※涙拳を習得しました。

【嬉しそうに「乗客に日本人はいませんでした」「いませんでした」「いませんでした」って言ったニュースキャスター@JAM(THE YELLOW MONKEY)】
【容姿】金井憧れアナ
【出典媒体】歌詞
【状態】蛇の毒
【装備】9mm拳銃
【道具】基本支給品
【思考】日本人を殺す。
【備考】


212 : 宿命の交わる時 ◆CDIQhFfRUg :2018/01/22(月) 00:56:40 CWhZIoVQ0
 

♩×♩×♩×♩×♩×♩×♩×♩×♩×♩×♩


「ああ……弟子は逃げたかな?」

 男は雲一つない空を仰ぎ、遠ざかって消えた足音に安堵した。
 涙の数だけ強くなれるその男は……せっかくの綺麗な青空を見ることも叶わない状態であった。
 両目はつぶされており、両足も埒外の方向に曲げられており、折れた肋骨が内臓に突き刺さり、呼吸のたびに激痛が走っていた。
 だが、それはイコール、男が制圧されるだけの弱者であったことを意味しない。
 男は、よく戦った。
 実に二時間もの間、相対する化け物の攻撃を耐えしのぎ、かわいい弟子をその脅威から逃がすことにも成功した。
 それが、とてつもない快挙であることは、だれもが保証しよう。

 それでもだからと言って、褒美が与えられるわけではない。
 生き延びさせてもらえるわけもなければ、最後の言葉をつぶやく時間も与えられるわけもない。
 敗北したものに、この世界は残酷なまでに厳しい。

「泣いてばっかりの悪い子には――めっ♪♪」

 ――血の涙を流す彼の顔面を、ママのおみ足が、踏みつぶす。
 潰されたスイカがピンク色を辺りにまき散らして、それで終わりだった。

【涙の数だけ強くなれる君@tomorrow(岡本真夜) 死亡】

「結局、あんまりいいシャワー浴びれなかったわ……子供も一人、見失っちゃったし……ママ失格かしら♪」

 生命で無くなった物体に興味を失ったママは、変顔をしながらその場で地団駄する。

「もっともっとみんなを守ってあげないと――あら♪」

 ふざけた踊りを踊っているようにしか見えないその動作の最中も辺りに気を配ることを忘れていない。
 新たな気配を感じたママは、直ぐに振り向いた。

「お次はだ〜〜〜……れ」

 そして、硬直した。
 そこに立っていたのは、トイレットペーパーを顔に巻き付けた男だったから。
 ママが、忘れるはずのない、存在だったから。


213 : 宿命の交わる時 ◆CDIQhFfRUg :2018/01/22(月) 00:57:24 CWhZIoVQ0
 
「――慎吾」
「……ひろちゃん」

 こっぱずかしいあだ名で呼び合う。
 向かい合い、互いに互いを感じ取る二人を。
 上空でアゲハ蝶が渦を巻きながら、眺めているのだった。

「一つの旅の終着点。此方、しかと導かせてもらいますよ」


【4-夏/白/一日目/15時】
 
【慎吾ママ@慎吾ママのおはロック(慎吾ママ)】
【容姿】慎吾ママ
【出典媒体】歌詞
【状態】血まみれ
【装備】モーニングスター
【道具】基本支給品、マヨの容器(空)
【思考】子供たちを殺し合いから守る、マヨをチュッチュする。
【備考】……ひろちゃん。

【トイレットペーパーマン@トイレットペーパーマン(中居正広(SMAP))】
【容姿】トイレットペーパーを頭部に巻いて顔を隠した喪服の男
【出典媒体】歌詞
【状態】ボロボロ
【装備】トイレットペーパー、大量のケチャップ
【道具】支給品一式
【思考】――慎吾。
【備考】

【旅人@アゲハ蝶】
【容姿】アゲハ蝶
【出典媒体】歌詞
【状態】健康
【装備】アゲハ蝶@アゲハ蝶
【道具】支給品一式
【思考】
1:トイレットペーパーマンの旅を見守る。
2:すいみん不足少女の旅を見守る。
【備考】
※アゲハ蝶を操れます。


214 : ◆CDIQhFfRUg :2018/01/22(月) 00:58:26 CWhZIoVQ0
投下終了です、新年特番ばりに長くなってしまいました。
でもこれでばらけたので書きやすそうです。
次はもっとみじかく早めに……。


215 : 名無しさん :2018/01/22(月) 01:09:42 Y.pFXOe20
投下乙です
最高に盛り上がってきましたね、続きが待ち焦がれます


216 : 名無しさん :2018/01/22(月) 10:15:10 Z37yfWIw0
投下乙です
あっちもこっちも因縁の対決か


217 : ◆CDIQhFfRUg :2018/01/24(水) 00:44:38 lkVQq6yU0
わあ感想 感想ありがたい 今年もよろしくお願いしますね。
投下します。


218 : M ◆CDIQhFfRUg :2018/01/24(水) 00:45:46 lkVQq6yU0

「――と言った風にだ。今頃中央は、かなり盛り上がっているころだろうよ」

 市街地の一角にあった、小洒落た洋館風の建物の中。
 椅子に座り、噛み煙草をくわえた筋骨隆々な男――チェリーが、皮肉げに言葉を吐き捨てた。
 答えるのは彼の背後に立っている黒髪の少女――プリンセス。
 二人はある目的のために、この洋館に身を隠してじっと時を待っている。
 ただ待つのも辛いので、ちょっとした雑談をしていたのだ。

「ふうん、そうなの」
「お前ほんとに興味ないんだな」
「基本、わたし、あの人以外への興味は薄いので」
「戦術の話をしてるんだぜ、俺は」
「戦術?」
「ほんとに上の空で聞いてたのかよ……」

 どこか天然な返しをした姫にため息をつくも、さくらんぼはそのまま話を続けた。
 テーマは「殺し合いのセオリー」。

「いいか、もう一度言うが、殺し合いのセオリーは、『メインストーリーから少しずれた場所で勝機を待て』だ。
 ああ、この場合のストーリーってのは、お前の物語ではないぜ。つーか違う単語だわな。全体の流れ……ストリームか。
 たくさんの人間が、たくさんの感情が交じった土地には、知らず知らずのうちに、大きな流れが生まれるものなんだ。
 その中で生き残りたいなら、そこに「加わるタイミング」を吟味しなくちゃならねえ。そういう話を俺はしてる」
「タイミング、ですか」
「例えば今は最悪だな。俺たちはついさっき、一山集まってた奴らを殺したばっかりだ。
 人数から考えて、市街地――地図の北東にはもうほとんど参加者はいないと見ていい。
 となると、地形的に、今の時点で残っている他の参加者たちは、どこへ向かっていると思う?」

 地図を広げるチェリーの頭の上に顎を載せて、プリンセスはその地図の一点を指さす。

「……わたしなら……真ん中を目指しますね」
「その心は」
「殺すにしても生き残るにしても、誰かに会えそうな気がします。
 まずこの地図には、特に目立って人が集まりそうな施設が少ないです。
 処刑場、運動場、カジノ……この辺りは不人気でしょう。
 となると残るは銀行か大使館ですけど、その二つは逆に人気、誰かが陣取っている可能性があります。
 そして、ちょうどこの二つの施設は、地図の北と南にある。
 つまり――とりあえず中央に行けば、そのあと、銀行と大使館のどちらにも行けますからね」
「うん、優秀だな。その通りだ。
 まず中央。そして願わくば同志を集めて、その二ヶ所のどちらかに襲撃をかけて……制圧する。
 それが出来れば「勝ち」は近くなる。そう考える奴は多いだろう。もちろん、何も考えずにただ中央に寄せられる奴らもいるだろうな。
 だからこそ今、中央はリスクが高い」

 ふぅー。と、白い煙を男が吐く。

「今は〈装備を整えて〉、中央が間引かれるのを待つのが一番だ」

 噛み煙草の煙が天へ登る。ゆらゆらと、くらくらと。
 プリンセスはその厭な煙を吸わないよう、チェリーから少し離れて、

「でも会いたい人に会える期待値も高いのではないかしら」

 と返した。
 「それも間違いの無い思考だな」とチェリーが頷く。
 が、直後に鼻で笑い、

「ただし、探してるのが俺の相方でなければ、だが」
「……ああ、成る程。すでに仔細は〈ご教授〉済みと」
「ちげーよ。俺の論はあいつと別れた後に培ったノウハウだ。
 ただ、あいつは……俺より聡明だ。俺が思いつくことくらい、あいつなら、当然思いつくさ」
「思いつけるのと実行できるのは、また別次元のレイヤーの話ではないですか? 
 ……やっぱり、わたしはこれには反対ですね。チェリーさんはこんなことをせずとも充分闘えます。
 今は這いずってでも色々な所を探すのが優先ではないでしょうか? わたしは、少し失望感を覚えています」
「くくっ。お前にゃあ分からんよ」


219 : M ◆CDIQhFfRUg :2018/01/24(水) 00:46:23 lkVQq6yU0
 
 むすっとするプリンセスに笑いながら話すと、チェリーは急に、ふあ、と大きく欠伸をした。
 噛み煙草が口から外れて床に落ちる。

「……よし」

 チェリーはそれを拾うことはない、いや、今は拾えないのだ。
 噛み煙草は、麻酔薬。
 二人が待っていたのは、チェリーの体にこの簡易麻酔が染み込むまでの時間なのだから。
 プリンセスは取り出す。
 先ほど路上に倒れていた男から〈略奪〉した、銀の腕。
 加えて、男からその腕を切り離すときに使った、がっしりとした大のこぎりを。

「きっと、痛いですけど」
「死ぬより軽い痛みならむしろ快感だね。これで俺はかなりMなところがある。そうそう、あいつに惚れたのも――」
「チェリーさん。きもいです」
「純粋に厳しいコメントやめろ」
 
 のこぎりを構えながらプリンセスは。
 ばかなひと、と、思う。
 あれだけ「いつか殺し合いになる仲だ」と強調したのに、この男は麻酔を自らかけて、パートナーにのこぎりを持たせることに同意した。
 命を預けることに同意した。それが、どれだけ危険なことであるかは、分かっているだろうに。
 プリンセスはあまり他人に興味がない。だが、全く無い訳ではない。だから評価くらいはできる。
 この男の評価は、純粋――そう、どこまでも純粋なのだ。
 会いたいという気持ちも純粋で。その為になんでもやるという想いも、紛い物なんかじゃない本物で。
 ほんの少し嫉妬してしまうくらいに、前しか向いていないのだ。

(でも、信じすぎは良くないと思いますよ?
 わたしはまあ……九割がた同じ穴のムジナですから、〈そのとき〉までは付き合ってあげますけれど。
 女の子はいつだって、好きな人に知られないように、好きな人にいい顔を見せようとするんですから……)

 例えあなたの信じるそのひとが、あなたの信じる通りに聡明で、しっかりと生き延びていたとしても。
 きっと心の底ではいつだって、あなたに会えなくて寂しがっているんですから。
 だから、これが終わったらすぐにまた、走り出してあげてくださいね。
 プリンセスは心の中でそっと、愚かな男に警告を発して。

 ノコギリを、チェリーの肩に引き当てた。

「――んギああああああああクオあああアああああああァああああ♪
 エウィオおおおおアアゥあああああああッギあああアあアアああ゛あああああああッ♪♪
 ぎギあああああああああああアああああああァあああああああアあアアああ゛あああああああッ♪♪♪
 イヒィあ♪ エヒッ、あ゛あ゛あ゛お゛お゛お゛♪ う゛エええええああああ♪♪ いィイ♪
 いいぃいいいいッ是えぇぇえええええええええエエエえええええエええッ!!!!」


【2-名・名もなき洋館/馬/一日目/15時】

【わたし@M(プリンセスプリンセス)】
【容姿】女性、18歳、髪型はショート
【出典媒体】上記妄想(探しても媒体が見つかりませんでした)
【状態】あなたを忘れる(くらいなら誰かを殺す)勇気
【装備】大のこぎり
【道具】支給品一式
【思考】あなたともう一度会うために、全ての星(参加者)を森(冥府)へ返す。
【備考】
※正しくは「わたし」では無く「私」です。書き終えた後に気付きました。
※でもそのまま行きます。

【愛してるの響きだけで強くなれる僕@チェリー(スピッツ)】
【容姿】男性、ムキムキ、修羅
【出典媒体】歌詞
【状態】あえいでいる
【装備】なし(身一つで戦えるので)
【道具】支給品一式
【思考】いつかまたこの場所で君と巡り合いたい
【備考】


220 : ◆CDIQhFfRUg :2018/01/24(水) 00:48:02 lkVQq6yU0
…投下終了です。
どんどん投下したいという気持ち。


221 : 名無しさん :2018/01/24(水) 00:51:53 iZciueto0
投下乙でした
果たしてこの二人はどこまで行けるのか?
注目ですね


222 : 名無しさん :2018/01/24(水) 00:54:51 xmh2em5U0
投下乙です
戦力アップのためとはいえ、殺し合いの中で自分から腕一本切り落とせる度胸はすごいなあ


223 : ◆NIKUcB1AGw :2018/01/26(金) 23:11:11 UZAVinlw0
投下します


224 : 星の願いを ◆NIKUcB1AGw :2018/01/26(金) 23:12:02 UZAVinlw0

「はあ、はあ……」
「しぶといな、あんたも……」

金本アニキとサンダー使いの青年との戦いは、長期戦となっていた。
ここまで戦闘を続行できるのはさすがに鉄人と呼ばれた男であるが、その顔には疲労の色が隠せない。
一方青年の方は、サンダーに指示を出しているだけなのでさほど疲労は見られない。
サンダーも、雷をたっぷりと吸収して元気いっぱいである。

「いいかげんに終わらせてやる! サンダー、でんきショック!」

青年の指示で、サンダーが電撃を飛ばす。
とっさに、ダッシュでそれをかわそうとする金本。
だがその瞬間、彼のひざに鋭い痛みが走った。

(しまった! 短時間で負担をかけすぎたか!)

金本が大きくバランスを崩す。そこへ、電撃が直撃した。


◆ ◆ ◆


(俺は……死ぬのか……)

金本の意識は、闇へと沈んでいく。
もはや、視界を覆うのは暗闇だけ。
彼の心は、少しずつ諦観に支配されていく。

『こら、金本! 何を情けない姿さらしとるんや!』

だがそんな彼の耳に、聞こえるはずのない声が届く。

(この声は……。まさか、そんな……)

驚愕が、金本の中から諦念を吹き飛ばす。
姿は見えない。だが金本は、たしかにかつて世話になった男の気配を感じ取っていた。

『お前には、これからのプロ野球界を背負っていってもらわなあかんのや。
 こんなところでのたれ死になんぞ、わしが許さん』
(監……督……)
『立て、金本! お前は鉄人なんや!
 こんなくそったれな殺し合い、めちゃくちゃにしたれ!』

強い語気で金本を激励すると、気配はすっと消えていった。


225 : 星の願いを ◆NIKUcB1AGw :2018/01/26(金) 23:13:35 UZAVinlw0


◆ ◆ ◆


「え……?」

青年は驚愕していた。完全に息絶えたと思っていた金本が、突然立ち上がったからである。

「本当にしぶといね、あんた……」
「アスリートの体力を舐めるなってことだ。
 それに俺は、まだ死ぬわけにはいかない。
 今ここで死んだら、あの世であの人に合わせる顔がないからな」
「まだ死ねない、か……。僕が最初に殺した相手も、そんなことを言ってたよ。
 バカバカしい話だ。精神力でカバーするのにも、限界がある。
 心臓が止まれば、どんなに死にたくなくたって人は死ぬんだ。
 あんたも次の攻撃で……」

青年の言葉が終わるのを待たずして、金本は動く。
その手には、いつの間にかボールが握られていた。
ボールを投げるチャンスは、ここまでいくらでもあった。
だが、投げられなかった。神聖なボールで、人を傷つけることに抵抗があったからだ。
しかし、もう吹っ切れた。
「傷つける」ためではなく、「勝つ」ために。
金本は、ボールを投げた。
ある少女と、彼女の想い人との思い出が詰まったボールを。

金本は、ピッチャーではない。ゆえに、目にも止まらぬ剛速球が投げられるわけではない。
だがそれでも、一流プロ野球選手である。
素人からすれば、彼が投じたボールは十分すぎるほど速い。
青年は腕を伸ばして受け止めようとするが、まったく間に合わない。
ボールは、青年の心臓(ハート)に直撃した。


◆ ◆ ◆


青年は、起き上がってこない。

「ゲームセットだ。もう終わりにしよう」

青年の傍らに立ち、金本が言う。

「気の迷いは、誰にだってある。お前も、ここからやり直せばいいんだ。
 チャンスなんて、いくらでもある」
「いえ……僕にもうチャンスはありません」

金本の言葉に、青年は穏やかな声で返す。
その表情は、憑き物が落ちたように落ち着いていた。

「あなたのボールを受けたとき、心に暖かいものが流れ込んできました。
 一度なくしたものを、取り戻してしまったんです。
 僕はもう、人を一人殺している。
 今の僕では、その罪の重さに耐えられない」
「そんなことを言うな! 罪はきっと償える!」

必死で青年を励まそうとする金本に対し、青年はかすかに笑みを浮かべる。

「ありがとう。あなたに会えてよかった……。
 サンダー!」

青年は、すぐ側で待機していたサンダーに指示を出す。

「僕に、雷を落とせ!」
「やめろ!!」

金本の制止の声も、意味をなさない。
サンダーは命令の通りに「かみなり」を発動させ、青年の命を奪った。


226 : 星の願いを ◆NIKUcB1AGw :2018/01/26(金) 23:14:15 UZAVinlw0


◆ ◆ ◆


「ちくしょう……なんでこんなことに……」

炭化した青年の亡骸を地面に埋めながら、金本は呟く。
そのめには、かすかに涙がにじんでいた。

「こいつだって、被害者だった……。
 こんなこと、許されるはずがない……!」

金本の胸に、改めて闘志が宿る。
涙を拭いて、彼は立ち上がった。
そして力強い足取りで歩き出す。
すると、サンダーがその後を当然のようについていく。

「お前も来るのか」

返事はない。だが金本は、サンダーがそれを肯定したように思えた。

「わかった。お前の力、今度は守るために使ってやる」

そう口にすると、金本は改めて歩き出す。
失われた命に、報いるために。

【僕@ラストチャンス(samething else) 死亡】


【4-九/白/一日目/14時】

【金本知憲@六甲おろし(水樹奈々)】
【容姿】全盛期の金本
【出典媒体】エピソード
【状態】疲労(中)、全身にダメージ(中)
【装備】見えなくなるほど遠くに投げられたボール@1/2(川本真琴)、サンダー@ポケモンいえるかな?(イマクニ?)
【道具】支給品一式
【思考】
基本:殺し合いの打破
【備考】
※サンダーの技は「でんきショック」「ドリルくちばし」「かみなり」「こうそくいどう」です
※とくせいはひらいしんでした。


227 : ◆NIKUcB1AGw :2018/01/26(金) 23:15:12 UZAVinlw0
投下終了です


228 : 名無しさん :2018/01/26(金) 23:27:55 l4KRM9Qs0
投下乙です
少女と妖怪のペアが助っ人で来るかと思ったが別にそんなことはなかったぜ


229 : ◆NIKUcB1AGw :2018/01/27(土) 00:22:32 8z0c5.sg0
しまった、そっちとのすりあわせを忘れてました……
とりあえず時間を15時30分に変更します
他に矛盾点がありましたら、指摘おねがいします


230 : ◆CDIQhFfRUg :2018/01/27(土) 14:02:39 N9YqkJ9w0
投下乙です!
そうだった、監督のためにもアニキがここで死ぬわけにはいかないよな……!
支給品を曲から持ってくるセンスが好きです。
ラストチャンスくんお疲れ様、最後にあったかい気持ちで死ねるだけこのロワでは幸せなほうだぜ
あ、助っ人たちは一回ドラゲナイさんのとこに寄ってくはずなので、調整できるのでだいじょうぶです。


231 : ◆CDIQhFfRUg :2018/02/03(土) 00:08:15 Bu3k9IPI0
test♡


232 : ◆CDIQhFfRUg :2018/02/03(土) 00:08:46 Bu3k9IPI0
一応自環境から化けないなよし
投下します……


233 : S ◆CDIQhFfRUg :2018/02/03(土) 00:09:54 Bu3k9IPI0
 

 大使館の地下、プレイルーム――。
 見つかりにくい隠し扉の先にそのいかがわしい部屋があるのを、お兄さんはお姉さんがお料理をお調理している間に、めざとくも見つけていた。
 空間は刺激色。ビビッドピンクのカーテン、バイオレットのカーペット、照明もけばけばしいピンク色で、なにやらくらくらしてしまう。
 壁に沿うように並ぶ黒色の机には、プレイ用の調度品が並んでいる。
 [コンプラ]、[コンプラ]、[コンプラ]……見るだけで唾を飲むような、えぐいカタチのものばかりだ。
 服を着るには少し暑い、適切な温度に保たれたこの部屋には、甘い匂いのアロマが焚かれていて、空間はかすかに靄がかる。
 きっとそれはいけないアロマで、入った者の思考もふやふやにしてしまうだろう。
 中央にはふかふかのベッド、丸くて広くて、もこもこのパンケーキのような形をしている。ここだけが優しい印象を与える。
 そう、ここに入った誰もが、誘導されるように、そこに向かうような――そしてはちみつを掛けられて、とろとろに蕩かされるような。
 そんな意図が読み取れるのは、きっと間違いではないのだろう。
 なぜならすでに、「そうなってしまっている」者が、ベッドの上で啼いているのだから。

「あっ♡ いやっ♡」

 そこに仰向けに倒されているのは、惨めなる敗北者。
 後ろ手に手錠をかけられ、すべての衣服をはぎとられ、柔らかなベッドに大の字で力なくうずもれている。
 桃色のいくさに全身は汗ばみ、咽のからからを自覚しながらも、似合わない跳ねた声で叫ぶことをやめられない。
 断続的に与えられ続ける[コンプラ]への上下運動刺激。
 すでに体は芯から茹だされてしまった。どこがこの熱の天井なのかを探る暇も与えられず、自己の限界点を更新させ続けられている。

「あああっ♡ やああっ♡しぬっ♡ しんじゃう♡ やめてええっ♡」
「……」
「しないでっ♡ これいじょうしないでぇっ♡ ずんずん、やめてえっ♡」
「……ふふ」

 そしてそんな敗北者を冷たい瞳で見下ろしているのが、このプレイルームにおける勝者であることに、異論あるものはいないだろう。
 支配する者の余裕あふれる、ひといきも乱さぬ優雅なふるまい。
 自らの硬い部位を巧みに動かして、ぐりぐりと[コンプラ]へ「敗者へのおしおき」を与え続ける。
 服はこの部屋にふさわしい衣装へと着替えた。瞳は――この部屋の淫の気に中てられたのか、妖しく輝き陰の魅力を放っている。

「じゃあ、ぐりぐりに変えよっか?」
「ぐりぐりもらめぇ♡」
「拒否権はないよ♡」

 ぐりぐり、ぐりぐりと……えぐりこむように、支配者の攻撃が与えられる。
 その痛いほどの押し込みが、圧力が、被支配者にとっては、もう悦びにしか感じられない。
 そうなるように、躾けられてしまったのだ――あまりにも短期間で。
 その、「かかと」によって。
 ……踵。
 「足」によって。


234 : S ◆CDIQhFfRUg :2018/02/03(土) 00:11:11 Bu3k9IPI0
 
「あん♡ああん♡ あ、は♡」
「……踏まれて気持ちいい? じゃあもっと踏んであげよっか」

 ボンテージスーツを着た支配者が、やさしく、やさしく語り掛けながら、きびしく、きびしく[コンプラ]を踏む。
 ――それは、妖艶に髪を乱した、お姉さんだった。

「ああっ♡ふまないでっ♡ きもちっ、よく、な、ちゃ♡ はーっ……あやぁっ♡♡」

 喘ぐ敗北者は[コンプラ]をさらけ出してなすがまま。
 きもちいいのれんぞくですべてがどろどろ。
 考えをまとめるちからを失って、こころに浮かんだ言葉がそのまま、ばねじかけのようにはじき出される。
 その声色はどこか、甲高い櫻井声であった――つまりは、そう、お兄さんだった。

 プレイルームでは今、お姉さんがお兄さんを躾けているのだった。

「やあぅ♡ あぶぅ♡ やっ、やああ♡」
「情けない姿、まるで赤んぼうみたいね。全部ゆだねて喘ぐだけ……恥ずかしくないの?」
「はずかしい♡ やめてえ♡ やめっ……あああーっ♡ い、いっちゃ♡ いっちゃうよぉおっ♡ やだあ♡ やめてぇ♡」
「くすくす……じゃあやめない。もっと強く踏んであげる♡」
「ひっ……♡」
「ほら、いっちゃえ、いっちゃえ、いっちゃえ、いっちゃえ、いっちゃえ……!」
「やめっ♡やめろって……いっ……♡ あああっ♡ またっ♡ くる、くる、くる、くる、くる♡ ああ、あーっ♡♡♡」

 びびびっ……じわ……。
 高い喘ぎ声とともに、湿度の高い足裏に踏まれていた[コンプラ]が震えあがり、絶頂する。

 ――もうこれで五回目だった。
 最初のうちは威勢よくどろどろのココナツ・ジュースを噴き出していたそれも、短期間の連続絶頂ですでに空砲。
 [コンプラ]を踏み下ろすお姉さんの手管もとい足管で、あたかも全力の状態を外面だけ維持されているものの、その中身は完全に敗北状態。
 快感を与えられ、だらしなく潤滑油をたれながすだけの、壊れたオモチャと化している。
 上位者は下位者のそんな姿を見て笑みを浮かべ、舌なめずり。
 それは下位者が酸素を求めて犬のように舌を出し、なさけなく天を仰ぐ姿とあまりに対極な光景。
 支配するものと支配されるものの関係性は明白だ。

「さて、じゃあ……♡」

 そしてこの支配者は容赦というものを知らないのだった。
 蛇口が使い物にならなくなったと見るや、それを踏んでいた足裏をすいと動かし、ベッドにごしごしとこすりつける。
 汚いものをふき取るかのように、ごしごしとこすりつける。
 教えつける。すべてを好きにするのはどちらなのかを、これみよがしに示す。
 脱力してベッドに倒れこむお兄さんの手をぶっきらぼうに引く。跳ね上がった顔にお姉さんは顔を近づけて、耳元でねっとりと囁く。

「次は、ち・く・び。おんなのこに、しよっか♡」
「……ヒィ!?」
「こんどは、優しく刺激。ぜったいにからだをびっくりさせずに、じわじわ……じわじわ……って、ゆっくりいじめ続けてあげる。
 ほら、こうやって後ろに回られて、思いっきり抱きしめられながら、ひたすらにそれをされるの。
 くりくり、しこしこ。つばをつけて、ぬりゅってしたり。ゆびさきでぴんとひっぱって遊んだりしてあげる。
 耳元でちろちろって、舌べろもサービスしてあげるね? ふふ、そうされるとね……♡ 一時間くらいで、できあがり……♡ かわいいマゾ犬の、できあがり♡」
「な、な……っ♡」
「あっ♡ 見えた♡ 見えたよ、お兄さん、いま、ちょっとだけ期待したでしょ?
 99の怖いって気持ちの中に――ほんのちょっと。さっきのきもちいいが染みついちゃったんだ♡ そしつ、あるよ、お兄さん?
 だいじょうぶ、怖い怖い気持ちも、だんだんきもちいいで、忘れさせてあげるから……いっぱいいっぱい、お馬鹿さんにしてあげるからね♡」

 はー♡はー♡と熱い息を浴びせながら、いやらしく右手をくねらせるお姉さん。
 お兄さんは、全身を蜘蛛の糸に縫い付けられてしまったかのような、絶望的なまでの恐怖を覚えた。
 そして確かにその中に、先ほど叩き込まれた快楽への期待があるのを、ああ、自覚してしまう。刺激を、おしおきを、体が欲しがる感覚。
 もはや――引き返せない。
 いったいどうしてこんなことになってしまったのか――。
 現実から積極的に目を逸らすようにして、お兄さんはプレイルームに入ったときのことを回想し始めた。


235 : S ◆CDIQhFfRUg :2018/02/03(土) 00:12:27 Bu3k9IPI0
 
♪♪回想♪♪

「くっくっく……見てくれよこのすげえプレイルーム! すごいぜ!」
「い、いやらしい部屋ですね……嫌……」
「もっと賛同しろや! ちょっと! 俺は死にかけてるんだよ! いたわろうマジで!」
「あっそうだったわね……お姉さん、いたわります……」
「じゃあ、さっそくだけど ♡ すけべさせてもらおうかァ……」
「……!!」
「くくく……何をしてもらおうかな……! あんなこといいな出来たらいいながマジで出来ると、それはそれでよりどりみどりで迷いどころだぜ……くくく」
「なっ、なにを……させるつもりなの……」
「それはもう……いろんなことを……!」
「いろんなこと……!」
「そう……つまり、……くくくく……!」
「くくく……!?」
「つまりですね……ええと」
「……ええと?」
「なににしよう」

「あの……お兄さん」
「はい、お姉さん」
「もしかして、何させればいいか分かってないのでは?」
「そんなことないよ」
「童[名誉のためコンプラ]ですか?」
「ちゃちゃちゃ ちゃちゃちゃ ちゃちゃちゃ」
「ちゃうわ! すら言えてないわよお兄さん……」
「待って。五秒待って。考えさせて」
「……ええ……」

「そう。俺思いついた。悪魔的なこと思いついたよお姉さん」
「はあ……」
「お姉さん、会いたいひとがいるっていってたろ」
「ええ、そうよ……」
「愛してるの響きだけで強くなれる、だっけな? 睦まじいよなあ、睦まじい。夜ごとさぞお楽しみしてたんじゃないかと? 思うお兄さんだが!」
「……」
「『そいつとやってたことを俺にしてみろよ』」
「……!!」
「おお……決まった……エロ同人みたいなセリフ完全に決まったろこれ」
「……いいのね?」
「ん?」
「分かったわ……それがお好みなら……あたし、……やるわよ。あの人には、悪いけど……」
「あれやけに物分かりがよ――」
「1000%の、本気でやってあげる――てんごく、みせてあげるね?」

♪♪回想おわり♪♪


236 : S ◆CDIQhFfRUg :2018/02/03(土) 00:13:18 Bu3k9IPI0
 
(――そう、それで、いきなりわけがわからなくなるほどべろちゅーされて)
(酸素ぜんぶ、うばわれて、目をまわしてる間に、ぬがされて、手錠されて)
(しゅどうけん、かんっぜんに、うばわれて――)
(そうだった、これかんっぜんにおれのはつげん、裏目だったんだ……)
 
 がっちりと後ろから組み付かれ、身動きを取れなくされているお兄さん。
 耳からゆるゆると吐息を流しこまれながら、乳首をいじられ続けていて、なすすべなしの状態だった。

(つーかどういうことなのこれ、このお姉さんの会いたい人、
 どんだけМだったって話なんだけど? マッシヴのMじゃなくてマゾヒストのMだったんじゃ?)

「あ♡ ああ♡ あああ♡」
「ふふ、なってきた? なってきたね。いいよ、なっていいんだよ。
 おっぱいにク[コンプラ]がついてるみたいに、これからもっとびんかんになるからね♡」
「あ゛あ゛あ゛あ゛♡ あ゛あっあ゛あ♡♡ あ゛〜♡♡♡」

(あっこれ俺死ぬな)

 もはやお兄さんの精神は肉体と分離し始めていた。
 白目をむき、よだれを垂らす自分の体を、悦楽刺激に飲み込まれる自分の体を、宙空からじっと見つめているような感覚。
 俗にいう、「魂が抜けるほど気持ちいい」というやつだろう――それはお兄さんに否応なく死を予感させた。
 単に気持ちよさだけでそうなったわけではない、というのがわかるのだ。
 これは生命の防御本能のようなものだ。
 執拗な快楽攻めで壊れようとしているお兄さんの精神が、最後のあがきで、まともなお兄さんを意識の外へ避難させたのである。
 だから、いま思考しているお兄さんは、最後に残った理性なのだ。

(で、この俺も、もう消えかけてるもんね……ああ、)

「じゃあ次は、片手でのどぼとけ、おさえて……窒息させてあげる♡
 おとこのこの象徴、ぐりぐりって押し込まれて、だめにされて……もっときもちよくなろうね♡」
「あっ……♡ 〜〜〜……♡」
「ふふふ。てんごく、みえてきた? ……大丈夫、気持ちよく、つれてってあげるから♡
 このまま、ちくびいじいじしながら、耳舐めてどろどろに溶かしながら――いっしょに[コンプラ]いじめてあげるから。
 頭のところ。ごしごしってやるの、知ってる? しおふき♡ っていうんだよ♡ びゅ〜って♡ ふつうの[コンプラ]よりきもちいいの♡
 くるっちゃうかもね、でもね、それでもやさしくなでなで♡ してあげるからだいじょうぶ♡ だから安心して、壊れて、いいんだよ♡」
「あ……♡」
「ね、……やってほしいよね?」
「あ……ああ……」

(――こりゃあ……だめだわ……♡)

「はい……っ♡ お姉さま♡ お兄さんを、こわして♡」

 ぼやけてきた自らの精神が、徐々に、徐々に。自らの命ごと屈服を選択しているのを、お兄さんは傍観している。
 その「視点」もすでに、快楽の毒でゆるやかに分解されている。
 後にはメスに服従し、心臓と[コンプラ]を差し出して笑顔する、哀れなオスが残るだろう。

(埋蔵金……♡ ちくしょう、ダメだったなあ……♡ あと♡は、任♡せる♡か♡♡……♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」

 その後――ベッドが体液で湿るまで、お姉さんによる攻めは続けられ。
 地下のプレイルームからひっきりなしに聞こえていた鳴き声は、徐々に元気をなくしていった。
 すべての精力を吸い取られつくしたお兄さんは。
 体も、精神も、活動を停止――快楽の果てに、死んだのだった。


♪♪Game set♪♪


237 : S ◆CDIQhFfRUg :2018/02/03(土) 00:14:32 Bu3k9IPI0
 

「うう……ごめんな、さい……ごめんなさい、チェリー……」

 ベッドの上、ボンテージスーツのお姉さんは、快楽死体と化したお兄さんを前に座り込み、ただただ懺悔をする。
 自らの愛するもの以外に、性愛の攻撃を加えてしまったことを懺悔している。
 それしかなかったと、言うこともできる。あの状況から、自分の貞操を守りながらお兄さんを殺し返すには、こうするしかなかった。
 普通の攻撃では、性差からくる力の差で勝ち目がない。
 拘束したとて、何か特殊能力でも使われれば逆転はありうる。
 ゆえに性の暴力でどろどろに蕩けさせて、抵抗する力を完全に奪ってから、侵し殺す――。お姉さんが生き抜くために選べた手はこれしかなかった。
 だが、その状況に追い込まれるポカをやらかしたのもまたお姉さん。けして仕方がなかったなどと言い訳できるものではない。

「絶対に……もしであったら、この人にしたのより、すごいの、してあげるから……本当に、ごめんなさい……」
②「いや、ほんとだぜ」
③「こんな死に方末代までの恥だよね」

 そして――実は、言い訳をしている場合でも、ない。

「……え?」
⑤「やっぱり〜……自分と同じ顔のやつがサドられてる映像じゃシコれないよね!」
⑥「僕はシコれるよ〜! だって自分が好きだからね〜!」
④「シコ松キモッ」

 ぞろぞろ。ぞろぞろと。
 閉じられていたプレイルームの扉が開いたかと思ったら、死んだお兄さんと同じ顔をしたお兄さんが五人、プレイルーム内に飄々と入ってきた。
 サングラスをかけた青。いまいち特徴のない黄緑、ダウナーな紫。お気楽な顔の黄色と、ナルシシズムに浸っている桃色。
 たんたんとリズムで歩き、丸いベッドの周囲に五等分で立つ。

②「あ、言ってなかったっけお姉さァん? 実はさ、オレたちも、Sなんだよね」
⑤「S(サディスト)じゃなくてS(複数型)のほうだけど!」
「そ、そん、な……!!?」
③「まあアホこいて死んだ①のお兄さんに同情はしないけども」
⑥「一応、そんなでも肉親だからねぇ〜!」
「く、そ……っ!!」

 慌てて立ち上がろうとするお姉さん。しかし、にわかに足が震えて、ベッドに膝をつく。
 体力の、限界である。
 全力のプレイド・Sの肉体的負荷は尋常ではないのだ。
 お姉さんは歯噛みした。恐れていた事態が発生してしまった。一瞬にして構図が逆転し、捕食者と被捕食者が入れ替わる。
 1対5。援軍は望めない。

④「……悪いけど。……仕返させて、もらうよ」

 時計の針が16時を指す。
 五人の視線がお姉さんの肢体を刺して、にやにやと嗤った。


【2-夏/旭・大使館・地下プレイルーム/一日目/16時】

【お兄さん@全力バタンキュー(A応P)】
【容姿】松野カラ松、チョロ松、一松、十四松、トド松@おそ松さん
【出典媒体】歌詞
【状態】大変ご多忙
【装備】研ぎ澄まされた刃@もののけ姫(米良美一)
【道具】支給品一式、ツルハシ
【思考】
基本:優勝して埋蔵金を見つけに行く
1:お姉さんに仕返し
※お兄さん①が死に、フィールドにお兄さん②〜⑤が召喚されました。

【いつかまた巡りあいたい君@チェリー(スピッツ)】
【容姿】可もなく不可もない綺麗なお姉さん
【出典媒体】歌詞
【状態】疲労困憊
【装備】毒針
【道具】支給品一式
【思考】
基本:あの人にもう一度会いたい、助けたい
1:……助けて!


238 : ◆CDIQhFfRUg :2018/02/03(土) 00:17:49 Bu3k9IPI0
投下終了です
えっと、その・・・wikiでSSのページ名をS_Sにしてみたくて・・・・・はい。
いい息抜きになったので次は普通にがんばります。


239 : 名無しさん :2018/02/03(土) 00:34:03 7s6I97lw0
投下乙です!
エロい展開からの兄弟召喚にビックリですわ


240 : 名無しさん :2018/02/03(土) 11:38:54 0s3fW3JA0
投下乙
なんだろう……圧倒的に有利な展開のはずなのに五人が勝てる未来が全く見えない……


241 : ◆CDIQhFfRUg :2018/02/20(火) 23:56:05 hPRL8w4E0
うおお遅れてすみません、
こんなに長い期間、先のSSで止めたくなかった……!
投下します。


242 : 背に乗って ◆CDIQhFfRUg :2018/02/20(火) 23:56:47 hPRL8w4E0
 

太陽の騎士は夢を見ない。
百万年の戦い(エンドレス・ウォー)の中、夢見ることを忘れた。そういう星の下に生まれている。
だから休息から目が醒めるときはいつも、夢と現の間に取り残されることなく、すぐに意識が切り替わる。

「……☀︎」

見回せば長椅子(ソファ)。薄暗いどことも知れぬ部屋の中。脱ぎ散らかした鎧(アーマー)が床に転がっている。
寝てしまっていたのだ――という事実を認識する。
すぐに時計を見る、と、17時を指していた。記憶に残っている最後の時刻は13時。

「……☼☆☽☼」

ため息をひとつ付いた。
たしかに、不眠症(インソムニア)の死鎌少女と交戦した騎士(ドラゲナイ)は一度休息をとる必要があった。
彼の纏っている重鎧は、「竜種(ドラッグ)」との過惨な闘いを生き抜くための特注品で、体力を激しく奪うつくりをしている。
報道士(ニュースキャスター)の女と会話を交わした後、放送が流れるころには、戦闘の後遺圧(フィードバック)が彼の体に警鐘を鳴らしていた。
彼は草原を歩き運動場(グラウンド)へと向かい、体よく部室棟(クラブハウス)と流水場(シャワールーム)を発見した。
さっそく鎧を外すと、流水にて汗を流し、長椅子(ソファ)でほんのすこし、仮眠を取るつもりで――そこからの記憶がなかった。

太陽の騎士は夢を見ない。ゆえに現実が飛ば(スキップ)されたような感覚のみが残る。
寝る前の記憶(メモリ)が薄れることもない。
だから放送で呼ばれた多量の死者に、祈りを捧げようと思っていたことも忘れていない。
騎士(ドラゲナイ)は寝床から立ち上がり、鎧(アーマー)を着込んだ。

銀行から外へ出ると、太陽はすでに傾いていた。
彼は地面へ膝を付き、両の手を組んで太陽のほうを真っすぐに見つめるような姿勢を取った。
そして――彼らにとっての神様(ゴッド)である太陽へ、祈りとともに、懺悔を捧げる。

「――☆☆☽、☼☆☽……」

救いたいものを救えなかった懺悔。

「☼☆☽☽☼☆☆☽☽☼☆☽☼、☼☆☆☼☼☆☽、☽☽☼」

行動したかった時間を行動できなかった懺悔を、たとえそれが自己満足(じぶんのため)と分かっていても。

「☼☆☆☽☼☽☆☆……☆☆☽☆☆☽☆☼☼」

その彼の鼻先を、ひらひらと舞い踊る蝶がいた。

「……☼!?」
「あ、見つけた! 見つけたよ、妖怪さん!」
「おお〜、ほんとに中世の騎士って感じだなオイ」

蝶(バタフライ)の導きにより、その場に現れた妖怪と少女を見て、騎士(ドラゲナイ)はひどく驚いたことだろう。
妖怪に驚いたわけではない、彼の世界に人語を解す怪物(モンスター)なら余るほどいる。
少女の顔に驚いたのだ。

誰だって、先刻殺してしまったばかりの少女に瓜二つの顔の少女が現れれば動揺するだろう。

「……☼!? ☽☆!? ☆☆☼……!!??」
「おいあんた、なんかめちゃめちゃ驚かれてるぞ」
「ええなんで……ほんやくこんにゃくが欲しい感じだ。ってそれどころじゃないんだった! あの、雷がやばくて!」

少女が騎士が向いていたほうとは反対の空を指さした。

「……ってあれ?」

しかしそこには何もありはしない。
雷の原因との死合は、すでに鉄人が制していた。

「おい、あっちもやばいことなってんぞ!?」
「えっ!?」
「……☽?」


243 : 背に乗って ◆CDIQhFfRUg :2018/02/20(火) 23:58:49 hPRL8w4E0
 
今度は妖怪が首を振って別の方向の空を指した。
少女、妖怪、騎士、蝶の四つの目が、いっせいにそちらを向いた。
そして、一番最初に奇声を上げたのは、騎士だった。

「――――☼!?」

そこには――龍(ドラゴン)がいた。
そこには――雷(いかづち)があった。

銀色を太陽に乱反射させて踊る龍神が! 青白く発光する雷とともに、空を激しく泳いでいる!!


☇☇☇☇☇☇☇☇


ピコ太郎とnakata。
「統和」と「完璧」の闘いは、おおよそ地上に収まるものではなかった。
ピコ太郎のPPAPこそ、nakataの完璧性の前に無効化されたものの、それは能力が能力によって打ち消されただけであり、実質イーブン。
必然両者、ゼロに戻った優位性を取り戻すための、激しい戦を始めた。
ここまで無傷で勝ち抜いてきた二人に、最上のパフォーマンスをしない理由はない。全力の、全開だ。

一度手と手が打ち合っただけで空間に亀裂が走り、風が巻き起こる。

一度足と足を鍔競り合わせただけで地面が大きく軋み、クレーターがバキバキと広がる。

それでも数分の体術戦の後、互いに無傷。
埒が明かないと頷きあって、どちらともなくバッグから虎の子の支給品を取り出した。

片やピコ太郎は――銀の龍を取り出した。
     雨雲の渦を運び、命の砂漠へと向かう伝説の龍。空へと舞い、嵐を呼んで荒れ狂う。
   ピコ太郎はその背に乗り、nakataを挑発した。追ってこい、続きは空だ。

片やnakataは――青いイナズマを取り出した。
     言葉を交わしたトイレットペーパーの男から密かに譲り受けていた、炎さえ焼き尽くす雷撃。
   その概念。嵐を呼ぶならば好都合、完璧に乗りこなしたうえで打ち勝ってやる。

雷が轟き、龍が踊る。
二対の超越者が会場中央の空で魂の削り合いを始めた。


【4-名/白・嵐空/一日目/17時】
 
【I@PPAP(ピコ太郎)】
【容姿】ピコ太郎
【出典媒体】PV
【状態】健康
【装備】ペン@PPAP、銀の龍@銀の龍の背に乗って
【道具】支給品一式
【思考】優勝する。
【備考】

【nakata@PERFECT HUMAN (RADIO FISH)】
【容姿】I’m a perfect human
【出典媒体】I’m a perfect human
【状態】健康
【装備】青いイナズマ@青いイナズマ
【道具】支給品一式
【思考】ピコ太郎を殺し、自分がI’m a perfect humanであることを証明する。
【備考】

 ※4-名/白 の上空が大嵐になりました。


244 : 背に乗って ◆CDIQhFfRUg :2018/02/20(火) 23:59:40 hPRL8w4E0
 

☇☇☇☇☇☇☇☇


地上に残る星のように小さな参加者たちも、その嵐に否応なく動かされる。

「オイオイオイ……ニチアサのクライマックスじゃねーんだぞ! 周りに気をつけて戦ってくださいっての!」
「あっ、そうだよね……! 迫力で動けなくなりそうだったけど、あれ、周りのみんなが余波で永眠しかねないじゃない!」
「止めに行くぞ!」
「うん! ――ねえ、それでいいよね、アゲハさんも!」

少女と妖怪は仲裁を望む。
目の前に出現した巨大な戦闘空間に一瞬たじろいだが――もともと戦いを止めようとしているのが彼女らのスタンス。
東の雷にはもう決着がついたとみて、あの大嵐へと目標を切り替えるのが正しそうに思えた。
少女と妖怪がアゲハ蝶を見やると、どうやらその考えは間違っていないらしい、アゲハ蝶もひらひらと「○」の字を描いて飛んだ。
であれば、力なき彼女たちが次にすべきは、

「――騎士さん! 自己紹介もまだでごめんなさいなんだけど、私たち、殺し合いを止めたいの!
 あの嵐のように激しい戦いは、止めないときっと、ひどい悪夢になるわ! お願い、いっしょに」

と。
――騎士への依頼を血気盛んにまくしたてかけていた少女が、二の句を詰まらせた。

「……☀︎」
「騎士、さん?」
「…………☀︎☀︎☀︎、☀︎……!!」

うなって、いる。
怒を憎を苦を悲を噛み潰し擂り潰すように、呻って、いる。
甲冑(ヘルム)に覆われ見えないが、その視線は上空で固定され。
暴れ狂う「龍」へと固定され。
如何なる言語か分からないが、その言葉は黒く濁って。
並々ならぬ感情が鎧の中で渦巻いているのが、少女でも伺って取れた。

言葉を、掛けられない。

「……こりゃ呪われてんな、騎士のにーちゃん」
「妖怪さん。分かるの?」
「オレもこれで妖怪の端くれだからなあ。人の心の動きはある程度は読めるさ。
 っつっても、よっぽど人生に根差してる仇への感情が、呪いのように圧し掛かってるってことくらいしか分からんけどね。 
 たぶんだが、龍に嫌な思い出――トラウマ――? があるんだろうな。こりゃあ触れないが吉っぽいぞ……」
「あっ!」

妖怪とコンセンサスを取っていると、騎士が二人を無視して歩き出す。

「☀︎……☀︎☀︎、☀︎☀︎……!!」

罪に囚われた咎人(クリミナル)が、重苦しい枷を引きずりながら歩くかのように、
何を以ってしても前へ進まなければならないとするその姿は、見ていて気持ちのいいものではなかった。
騎士と龍という存在の間に、何があったかは分からない。
言語が違う以上、そこにまつわる唄(ストーリー)を聞くことは少女たちには叶わない。


245 : 背に乗って ◆CDIQhFfRUg :2018/02/21(水) 00:00:47 xlTVv5uY0
 
「……騎士さん」

しかしその姿に、少女は胸が締め付けられるような感覚を覚える。こ
れは、あれだ。
いけないやつだ。
このまま進ませたら、きっと、きっと。後悔する。
きっと――夢に出てしまう。

「騎士さん!」
「おい!」
「……☀︎」

少女は、重戦車の前に飛び出した。
両手を広げて立ちふさがる。
障害物(じゃまもの)を前に騎士は、身の丈より大きな重剣(ヘビーソード)を振りかざし、

「騎士さん、それは、だめだよ」
「……」
「感情に任せて、燃えたら。わたしじゃないわたしと、同じになっちゃう」
「……」
「ねえ、ひとりで先に行かないで。わたしには何の力もないけど、睡眠だけは取ったから。あなたに冴えたアイデアを上げられるかもしれない!」
「……」
「いや思いついてはないんだけど……で、でも、力になれるかもだから! 応援とかします、だから!
 だから、――悲しそうに戦わないで!」
「……!」

奇しくもそれは、放送前に起きた悲しい戦いの再話だった。
演者の姿もまったく同じで、ただ立ち位置が違うだけ。
いや、もう一つ。今回は刃の交わしあいではなく、言葉の投げ合いだったという違いがあった。
暴走しかけていた太陽の騎士も、その示唆的な状況に、煮えかけていた頭を冷やす。

太陽の騎士は夢を見ない。
だが夢を望む。
――これは望んだ戦いではない。

「……☼☽☆☽、☽☆☼☼☆」

重剣(ヘビーソード)は、降ろされた。

「騎士さん!」
「オイオイオイ、マジかよ。あんた、やるなァ……いいねを10個くらいつけてやるぜ」
「えへへ、褒められた♡」
「褒められ慣れた!?」
「……☼……」
「あ、騎士のにーちゃんしょんぼりすんなって。まあ言葉が通じてるかは知らんけど。
 異常な状況の連続でオレたちもあんちゃんも、少し焦ってたな。
 考えてみりゃ、あんな上空でやりあわれてもオレたちにゃ手出しの術がねえ。ぶっちゃけあんたも、空にまでそのでっかい剣を届かせられはしないだろ?」
「……☼」
「しょ、しょげないで騎士さん! うおお今だわたし、ひらめけひらめけ!」


246 : 背に乗って ◆CDIQhFfRUg :2018/02/21(水) 00:01:47 xlTVv5uY0
 
そう、騎士の憎しみによる暴走を止めて一件落着かといえばそうではない。
これでようやくスタート地点。
今度は彼らには、上空までの移動手段という壁が立ちはだかる。
いいアイデアを出すと言った手前、少女はここががんばりどころ。
両の人差し指をこめかみにぐりぐりしながら頭をシェイクし、なんとかしていい案を……

 ①絞りだせる
 ②絞りだせない。現実は非常である。
→③かっこいい助っ人が現れて解決する。人生にはそういうこともある。


「おい君たち――空へ向かうなら、いい案があるぞ」


まるで九回裏満塁のピンチヒッターのようなタイミングで、その場に新たな乱入者が現れる。
志同じく、殺し合いへと反逆するその男はにこやかに、少女妖怪騎士蝶へと元気よく声をかけた。
そのかたわらに雷鳥を従えて。

――伝説のポケモンを秘伝要員にしていた読者諸兄には、少しジェネレイションギャップかもしれないが。
――現代のポケモンは、わざを使わなくても人を空へと運べるのだ。


「ポケライドだ、サンダー!!」
 

【5-秋/鶴/一日目/17時】

【金本知憲@六甲おろし(水樹奈々)】
【容姿】全盛期の金本
【出典媒体】エピソード
【状態】疲労(中)、全身にダメージ(中)
【装備】見えなくなるほど遠くに投げられたボール@1/2(川本真琴)、サンダー@ポケモンいえるかな?(イマクニ?)
【道具】支給品一式
【思考】
基本:殺し合いの打破
1:空へ。
【備考】
※サンダーの技は「でんきショック」「ドリルくちばし」「かみなり」「こうそくいどう」です
※とくせいはひらいしんでした。

【朝眠い原因の妖怪@ようかい体操第一(Dream5)】
【容姿】バク
【出典媒体】歌詞
【状態】健康
【装備】なし
【道具】なし
【思考】
1:朝に起きてるやつを眠らせる
2:すいみん不足少女を応援する
3:空へ。
【備考】
朝に限り、他人の眠気を増幅する妖術が使えます。

【わたし@すいみん不足(アニメ版)(CHICKS)】
【容姿】目の下にひどいクマがあるミヨちゃんヘアの少女
【出典媒体】歌詞
【状態】睡眠中
【装備】包丁
【道具】支給品一式
【思考】
1:夢を叶えようとする人を応援する。
2:誰かを殺してまで夢を叶えようとするのは、よくない。
3:空へ。
【備考】

【ドラゲナイ@Dragon Night(SEKAI NO OWARI)】
【容姿】ドラゴン甲冑の騎士
【出典媒体】歌詞
【状態】正常
【装備】銀の重剣(ヘビーソード)、甲冑
【道具】なし
【思考】
基本:誰とも戦いたくない、争いを終わらせたい
1:空へ。
【備考】
※百万年に一度しか太陽が沈まない星の出身です。
※龍とは浅からぬ因縁があるらしい。


247 : ◆CDIQhFfRUg :2018/02/21(水) 00:02:37 xlTVv5uY0
投下終了です。


248 : 名無しさん :2018/02/21(水) 00:12:23 nAJUNl5g0
投下乙です
これは大規模バトルの予感


249 : 名無しさん :2018/02/21(水) 10:19:21 pi52Fqg60
投下乙でした
果たして兄貴よりも小さいサンダーは四人も搭乗させることができるのか!?(野暮)


250 : ◆CDIQhFfRUg :2018/02/28(水) 01:27:20 gFexueOQ0
投下します。


251 : ステヱシヨン終点 ◆CDIQhFfRUg :2018/02/28(水) 01:28:05 gFexueOQ0
 

 ここが終点です。
 だから、報道の話をしましょう。

 報道というものは、ただの報告ではありません。
 その名に「道」を冠するとおり、柔道や剣道と同じ、極める道を持っている技術なのです。
 ニュースキャスターであれば声のトーンや読み上げの速度、表情、言葉遣い。
 新聞記者であれば文字のレイアウト、情報の選定、適切な単語の選択。
 映像(スクープ)を追い求めるのであれば足腰の鍛えかたから始まって、撮影場所の位置取りも、撮れるタイミングの狙いも、
 色々なファクターに研ぎ澄ませられる部分が存在し、経験を積んで育てることができるのです。

 では、なぜ、そうして私たちは報道を極めるのでしょうか?
 お金のため? 数字(しちょうりつ)のため? ノウ、ノウ。それは違います。
 加速する情報速度、加熱する報知合戦で、各社が傲慢に報告の押し付けをするようになってしまったこの世の中では、
 そう思われてしまっても仕方のないことなのでしょうが……報道の本質は、そこにはありません。

 報道の本懐は、安心の提供なのです。
 みなさんを安心させることが私たちのお仕事なのです。
 あたりまえでしょう。不知は未知。未知とは不安の代名詞。知らせるという行為は本来、相手を安心させるためにある行為なのですから。
 世の中にある危険、不条理、落とし穴、恐怖――そんなものを私たちは、誰より早く受け止めて。誰より早く消化して。
 その事がどれだけ鋭く、多くの人を不安にさせるものであろうと、
 意を曲げず、意を繕わず、意を損なわず、
 しかしあらゆる手を尽くして、そこに一筋の光を差し込むように知らせるのです。

 だから私は日本人を殺さなければいけませんでした。



 いいえ、それは、傲慢ですね。



 私は日本人を殺すことに決めたのです。


 殺し合いに巻き込まれた時点で、すべての人を安心させることはできません。
 その事実が知られてしまえば、「自分も殺し合いに巻き込まれてしまうかも」という不安をすべての人に与えてしまいます。
 かといって事実を隠ぺいするのは報道者として出来ないことです。
 「殺し合いに巻き込まれることを知らない人がいる」状況を見過ごすくらいならば、私は舌を切り捨てて死ぬでしょう。
 清く働けば角が立ち、情に掉させば沈みゆく。
 板挟み。
 私は泣きそうになりました。

 けれど泣いている時間もありません。
 刻一刻と変わっていく世界の中で、報道者に悩む時間も涙を流す時間もありはしないのです。
 決めなければなりませんでした。
 ここにいる人々を安心させるために殺し合いを止める情報を探すか。
 ここにいない人々のうち、せめて一部の人だけでも安心させられるように、優勝して願いを叶えるか。
 直ちに決めなければなりませんでした。


252 : ステヱシヨン終点 ◆CDIQhFfRUg :2018/02/28(水) 01:28:44 gFexueOQ0
 
「だから――優勝することにしたんですよ、私のエゴで、優勝することにしたんです。
 優勝して、主催が何かは知りませんが、『せめて、せめて日本人は今後一切この催しに参加させないでください』、と、そう願ってしまえば、
 あとは私が一生墓まで持っていけば、日本人のみなさんは安心させることができる、そう思ったんですよ」
「うええっ……ばか……なんです?」
「ばかですよね」

 空を仰ぎながら、私は涙で化粧をされています。

「さすがにばかでした。一介のニュースキャスターでしかない私には、少し荷が勝ちすぎていましたか」
「うっ……やっぱりっ……あなたは、日本人じゃなくてもっ……殺すつもりだったんです。
 だって、最初にわたしと、一緒にっ……銀行にいた人たち……、ほとんど日本人じゃなかったです」
「ええ」
「くるってるって、思ってたのに……ううううう。くるってるって、おもわせたいなら……そのままでいろですっ!」

 私はとめどなく溢れる涙を上から直接、私の顔に浴びています。
 私は、私を覗き込みながら涙を流している少女に、覗き込まれたまま怒鳴られていました。
 私は地面に仰向けに倒れこんでいて、私のすぐそばで彼女は地面にへたりこんでいて、そして私に涙を浴びせているのです。
 どうして泣いているのでしょう。
 私には分かりません。
 まあ、私のために泣いているのではない。ということくらいは分かりますが。

 リザルトですが、単純です。
 私の銃弾は外れてしまいました。
 なぜなら私が先ほど戦った蛇少女はその体に毒を抱えており、それによって私は足元も視界もおぼつかない状態で。
 ニュースキャスターといえども人間の範疇である私が、その状態で、使ったこともない銃の弾を人間に当てることができたのであれば、
 そうですね――それはニュースになってしまうレベルの事態なんじゃないでしょうか?

 ああ、翻って、この少女はとてもとても強い子でした。
 きっと私なんかよりずっとずっと強く生きていける子なのだと思います。
 たった数時間で、私の肩をクレーターにするほどの拳を繰り出せるだなんて、仮にここが放送局なら、明日の目玉情報だったと太鼓判を押しましょう。
 痛みすら感じません。ただ血液がお茶入れの瓶をこぼしたときのように地面に広がっているのは感じています。
 なので、終点です。

「私は役者(アクター)ではないので、死ぬ間際まで演技なんてできませんよ。
 本当に申し訳ないのですが。貴女が私を殺したことによる心の損害賠償を求めようと考えているのなら、それは厳しい相談ですね」
「さいっていです……! あれだけ、殺しておいて、ううえっ、そんな、言い草……っ」
「本当に謗りを受けるべきは主催者ですよ。私もまた被害者であることには違いありません。
 ……なんてのは、責任逃れでしょうね。でも、申し訳ないとは思いますが、貴女に謝罪の言葉は言えません。
 私もまた、私の決意のために戦っていたので。それを止めた貴女の思い通りの、言葉を吐くのは……違うで、しょう?」

 私は血を吐きながら、私を倒した優しくて強い涙化粧の少女に、ただ事実のみを告げます。
 事実を告げるのは得意なんですよ、ニュースキャスターなので。
 現実を計算するのも得意です。

「違って、も……っ、言ってくださいです」
「……」
「あやまって、くださいです。そんなの、勝ち逃げですっ……!
 わたしが、勝ったのにっ……! わたし、それだけを、夢見てたのにっ、うううっ……!!」


253 : ステヱシヨン終点 ◆CDIQhFfRUg :2018/02/28(水) 01:30:32 gFexueOQ0
 
 ああ――そうですね。
 それゆえに、夢を見ることを拒否しなければならなかったのが、きっと、私の敗因なのでしょうね。
 夢見る少女じゃいられなくなって、大人になって、人は汚くなる。
 汚くなると、自分の汚さに不安になって、
 だからいつのまにか、安心を求めるようになってしまって……。

「うううっ……うううううっ。うええええ。うええええん」
 
 ふう。涙で化粧されていてよかった。
 ぼたぼた落ちてくる温かいそれに、ただ、ただ私は感謝をしていました。
 だって、
 だってこうされていれば、
 よくわからないうちに泣いてしまっていても、それをこの子に悟られませんから。

「うううっ……うううううっ。うええええ。うええええん」

 まああれかなあ。

 働きすぎだったかなあ。

「うううっ……うううううっ。うええええ。うええええん」

 泣かせてごめんねくらいいえばよかったかしら。

 でも今更か。

 私、悪いやつだなあ。

「うううっ……うううううっ。うええええ。うええええん」

 ――ああ。

 もう厳しいな。

 だってこんなに疲れている。

 脳も、体も、心も、もう休めって。

「……」


 もう、眠りましょう、か。


「……おやすみなさい」


【嬉しそうに「乗客に日本人はいませんでした」「いませんでした」「いませんでした」って言ったニュースキャスター@JAM(THE YELLOW MONKEY) 死亡】
  

♪♪♪♪


 それから涙が枯れるまで、少女は泣き続けました。
 理不尽への反撃を望み、強い心で師匠に師事し、限界を超えた力を手にし。
 凶敵を前に師匠に見送られ、見事復讐譚を遂げてなお、彼女の涙は止まることはありませんでした。
 それは拳を血に染めてしまった悲しみでもあり。
 それは自分を殺人へと走らせた原動力の相手のことを、最後まで理解することができなかった悲しみでもあり。
 こんなことになるのなら師匠と一緒に戦い続ければという後悔の悲しみでもあり。
 ただ内から湧き上がる、理由のない悲しみでもありました。

「……うええ……」

 二時間ほど泣き明かしたあと、ひっそりと彼女は、死体の上に折り重なるようにして眠ります。
 泣き終わって、眠ります。
 それが例え望んだ結果でなくとも。彼女は、走り続けて、そしてやり遂げたので。

「……師匠……ありがとう、ございました、です」

 小さな小さなその命を、流しきってしまうその前に。
 叶えたものに与えられる安らぎを享受するだけの時間は、彼女に与えられるべきなのでしょう。
  

【涙化粧の女の子@JAM(THE YELLOW MONKEY) 死亡】※命を流し切りました。


254 : ◆CDIQhFfRUg :2018/02/28(水) 01:32:15 gFexueOQ0
投下終了です。
ニュースキャスターさんは書いてて非常に楽しいキャラでした。
登場させたときはこんなまともな終点になると思わなかったなあ〜死因はともかく…
次もがんばります。


255 : 名無しさん :2018/02/28(水) 09:49:20 /vyAkOHM0
投下乙です
ニュースキャスターの最期が、こんなしっとりしたものになるとはなあ


256 : ◆CDIQhFfRUg :2018/03/15(木) 20:55:37 WWuuMsjI0
そうそう、
この前数えたら108人超えてたみたいなのでちょっとした修正で

歌うんだ 45話(+ 6) 17/110 (- 4) 15.4 (- 2.2)

です…そろそろまた書きます…


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