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版権異能授与バトロワ

1 : ◆N.AC9rXJ/I :2016/08/27(土) 11:43:16 7s/x/hao0
版権キャラの異能をオリキャラに授与して戦わせるロワを作りたいです


"
"
2 : ◆N.AC9rXJ/I :2016/08/27(土) 11:48:25 7s/x/hao0
ルールは原作準拠、ただし各参加者にひとつずつ版権キャラの異能を支給します
支給された異能に必要なアイテムがあればそれも支給されます
どんな異能をもらったのか、どう使うのかは参加者には教えません


3 : ◆N.AC9rXJ/I :2016/08/27(土) 11:53:13 7s/x/hao0
op
〈overture〉
――――見飽きた。

ありとあらゆるモノを見てきた故に、彼は見飽きていた。

なんら特異的なモノがない世界。
その陰で異常が蔓延る世界。
「異常」が「常識」となっている世界。
人類が存在しない世界。

多種多様な世界があった。
多種多様な生が、死があった。

だがそれにも限界というものはある。
個性とやらも、彼の前には同じような鋳型にしか見えない。
スタンド、魔術、法力、ギア、契約者、魔法少女、錬金術師...。
「異常」も見飽きた。

この世界も、幾度となく見てきた異常なき世界。

次に行こうと布を翻したその時、ある考えが浮かんだ。

――――見知った異常を手にして殺し合わせる。

「そうか、こいつは確かに初体験だ」

なら、見てみよう。

無意識に笑みが浮かぶ。

そうして、男の計画が始まった。

【???】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]なし
[思考・行動]
基本
新しいものが見たい


4 : ◆N.AC9rXJ/I :2016/08/27(土) 11:55:52 7s/x/hao0
op投下しました
初めてなので間違えてたらご指摘お願いします


5 : 名無しさん :2016/08/27(土) 19:23:02 cF2gA2Qw0
異能とは例えばどんなもの?
ドラゴンボールの『気』とかもあり?
それともワンピースの『悪魔の実』みたいな固有の能力だけ?
そこんところ参加予定人数も含めてルールを説明してくれ


"
"
6 : ◆N.AC9rXJ/I :2016/08/27(土) 19:59:13 7s/x/hao0
後者の「悪魔の実」のような固有の能力ですね
そのキャラクターが劇中に使った能力を授与します
例えば、Fateシリーズのアルトリア・ペンドラゴンを使いたい場合、「約束された勝利の剣」と「風王結界」、「全て遠き理想郷」が扱えるようになります(ある程度制限はかかるでしょうが)
参加人数は40名程でいきます


7 : 名無しさん :2016/08/28(日) 06:27:24 PZ6j1tHsO
面白そうだけど、とりあえず質問をいくつか

質問1
「北斗の拳」「るろうに剣心」には人間離れした奴ら多いけど、そいつらの「真拳」「剣技」などの「技」は異能の内に入るの?

質問2
サイボーグ設定のキャラの異能を使う場合、オリキャラの方の体も改造する必要がある?
例:仮面ライダー

質問3
ガンダムの「アムロ・レイ」の能力を使う場合、異能である「ニュータイプ能力」は引き継ぐとして、「MSの操縦技術」は能力として引き継げるのか?

質問4
オリキャラ作成は一人につき何人まで?


8 : 名無しさん :2016/08/28(日) 14:44:13 k3zg21Qg0
首輪やマップとかは無し?


9 : ◆N.AC9rXJ/I :2016/08/28(日) 17:16:56 iB3msx/60
質問1について:「技」は異能のうちに入ります。例えば、ケンシロウを選んだ場合、「北斗神拳」を使えるようになります
質問2について:いりません。仮面ライダーのような変身系サイボーグの場合、変身能力を特別な改造なしで得ることができます
質問3について:「操縦技術」も「技」に入るため、引き継げます
質問4について:十人までとさせていただきます。参加要項は後で書きます

>>8
異能授与以外は原作準拠となります

>>6について訂正します。ドラゴンボールの「気功波」についても「技」であるため、引き継げるものとします。すみません


10 : 名無しさん :2016/08/28(日) 17:24:48 o405Vdls0
オリキャラ達の住んでいる世界は超能力とか存在しない世界だよね?
それとオリキャラの設定と与える能力を同時に決めるという事でOK?


11 : ◆N.AC9rXJ/I :2016/08/28(日) 17:31:50 iB3msx/60
もともとそういう超常的な物がない世界ですね


12 : ◆N.AC9rXJ/I :2016/08/28(日) 17:35:27 iB3msx/60
設定と能力は同時に決めてください
その上で授ける能力を持つキャラクターとオリキャラにある程度の関連性を持たせてもかまいません(「常識」の範囲内で)


13 : 名無しさん :2016/08/28(日) 17:35:49 o405Vdls0
OKわかりました


14 : 名無しさん :2016/08/28(日) 17:39:24 o405Vdls0
キャラクター作成のテンプレを考えてみました
こんな感じで良いでしょうか?

【名前】必記
【性別】必記
【年齢】おおよそでOK
【職業】必記
【服装】おおよそでOK
【身体的特徴】必記
【好きなこと・もの】おおよそでOK
【嫌いなこと・もの】おおよそでOK
【特技】おおよそでOK
【趣味】おおよそでOK
【与えられた特殊能力】必記
【詳細】必記
【備考】


15 : ◆N.AC9rXJ/I :2016/08/28(日) 17:43:13 iB3msx/60
>>14
ありがとうございます!これを使わせていただきます


16 : ◆N.AC9rXJ/I :2016/08/28(日) 17:45:08 iB3msx/60
>>14
少し改良させていただきます

【名前】必記
【性別】必記
【年齢】おおよそでOK
【職業】必記
【服装】おおよそでOK
【身体的特徴】必記
【好きなこと・もの】おおよそでOK
【嫌いなこと・もの】おおよそでOK
【特技】おおよそでOK
【趣味】おおよそでOK
【与えられた特殊能力】必記(作品とキャラクターも記入)
【詳細】必記
【備考】


17 : ◆N.AC9rXJ/I :2016/08/28(日) 17:59:11 iB3msx/60
【参加要項】
・作成できるキャラクターは一人につき十人まで
・作成したキャラクター間に関連性を持たせてもよい(例:幼馴染、恋人同士など)
・作成したキャラクターと授与される能力の版権キャラに関連性を持たせてもよい(例:東方定助と作成キャラが「すきっ歯」など)
・最終的な参加者は>>1と皆さまがエントリーの中から40人ほどに選びます


18 : ◆N.AC9rXJ/I :2016/08/28(日) 18:11:10 iB3msx/60
エントリーは8/30の24時までか、ある程度キャラがエントリーするまでです


19 : 名無しさん :2016/08/28(日) 19:52:24 PZ6j1tHsO
期限早ぇな・・・・・・
キャラシートの投下はここでOK?


20 : 名無しさん :2016/08/28(日) 19:54:16 o405Vdls0
確かにキャラ投下の期限1週間は欲しいな


21 : ◆N.AC9rXJ/I :2016/08/28(日) 19:57:34 iB3msx/60
了解しました
9/4(日)の24時までとします
投下はこちらでどうぞ
不手際が多く申し訳ありません


22 : 名無しさん :2016/08/28(日) 19:59:54 PZ6j1tHsO
というか>>1さん
管理人氏に企画の宣言した?
連絡スレにそれらしい宣言が見当たらないんだが・・・・・・


23 : 名無しさん :2016/08/28(日) 20:02:40 ZkaVhd060
身体能力はどうなるんだろう。
例えばルフィからゴムの能力や技は授与されるとして、身体能力(ルフィが訓練で得たもので異能ではない)は授与されない感じ?


24 : 名無しさん :2016/08/28(日) 20:06:15 bEIJ/gWo0
>>22
企画宣言は別に必須じゃないよ


25 : ◆N.AC9rXJ/I :2016/08/28(日) 20:09:33 iB3msx/60
>>22,>>24
事後報告とはなりましたが、一応宣言してきました


26 : 名無しさん :2016/08/28(日) 22:48:10 o405Vdls0
やっぱり技とか無しにしてスタンドとか禁書の超能力とか身体能力に依存しない能力だけに絞った方が良いんじゃないか?


27 : 名無しさん :2016/08/28(日) 22:51:31 SS/3rlwY0
面白そうな企画ですね。
気になったことがあるので二点ほど質問させてください。

1.エントリー開始はいつからか
2.エントリーの際に投下するのはキャラクター設定のみか(聖杯企画のように登場話の作成が必要か)

以上、よろしくお願いします。


28 : ◆N.AC9rXJ/I :2016/08/28(日) 23:23:04 iB3msx/60
身体能力については自分も迷っています
案としては
・ある程度平等になるように制限をかけた上で再現
・再現なし
・感情の昂りなど、限定的状況下でのみ再現
ですね。それについて意見をお願いしたいです

>>27
エントリーはルールが固まり次第とします。登場話の作成は不要です

わからないことも多く本当にすみません。これを勉強の機会とさせてください


29 : 名無しさん :2016/08/28(日) 23:43:09 k3zg21Qg0
身体能力は再現なしでいいんじゃないかなぁと思う
ゴムゴムみたいな身体能力無いと活用できない能力を活躍させるんなら、初めから職業軍人やアスリートとかみたいな一定の身体能力備えてるキャラ作ればいいし
あるいは「支給された能力は強いけど身体能力が低いから上手く使いこなせない」みたいなキャラも作れそうだし


30 : 名無しさん :2016/08/28(日) 23:57:44 PZ6j1tHsO
したらば復旧できたか

>>29
なるほど
能力にキャラを合わせるのではなく、キャラを能力に合わせるということね
まあ、このあたりは空気の読み合いかな


31 : 名無しさん :2016/08/29(月) 00:39:07 q/gLEHWQ0
キャラ投下の前にオリキャラ達の世界の設定や与えられる特殊能力の扱い、ルールを明確にする必要があるな


32 : 名無しさん :2016/08/29(月) 00:40:39 2ic1uDaQ0
オリキャラ物ってキャラの個性把握しづらいし、期限伸ばすならサマロワみたいに短レスでも登場話形式の方が良さそう


33 : 名無しさん :2016/08/29(月) 01:05:11 TH9JaagQ0
聖杯やサマロワはタッグバトルだからまだ掛け合いで話持つけど、単独登場話でコンペやるのはなあ
全キャラ支給品確認オンリーの単独登場話縛りみたいなもんだし逆にやりづらそう


34 : 名無しさん :2016/08/29(月) 10:25:05 q/gLEHWQ0
オリロワはリレーする内に曖昧だったキャラが固まっていくのも醍醐味の一つだから登場話でガッチリ決めてしまうのも


35 : 名無しさん :2016/08/29(月) 10:30:01 CbSbP2M60
>>31
>>11を見る限り、世界観は現実路線っぽい


36 : 名無しさん :2016/08/29(月) 10:57:14 TH9JaagQ0
>>9>>11を見る限りだと現実世界観で基本ルールは原作準拠らしいから沖木島会場ってことでいいのかな


37 : 名無しさん :2016/08/29(月) 11:00:33 q/gLEHWQ0
会場の地理は後の地図投下の時に決めればいいだろ


38 : 名無しさん :2016/08/29(月) 11:02:10 q/gLEHWQ0
まず第一に決めなきゃならないのは与える特殊能力についてだろ


39 : 名無しさん :2016/08/29(月) 11:30:04 TH9JaagQ0
特殊能力に関してはもう企画者が「技も含めた異能力や特殊な技術」って定めてるんだし、企画者が悩んでる身体能力のあれこれ以外特に語ることなさそう
ここテスト板じゃなくて企画者主導の俺ロワだし


40 : 名無しさん :2016/08/29(月) 13:14:57 jIIe.yaY0
全員同一の現実世界から来てロワ参加時に能力付与されたって事でいいんだよな?


41 : 名無しさん :2016/08/29(月) 14:26:06 3XRRY4q2O
>>38
これだね
「惑星を破壊するほどのパワー」「絶対に死なない」とかゲームバランスを壊しそうなものは制限をもうければ良いとして
問題なのは特殊能力使用元の知名度や把握難易度、能力の難解さだと思う
使用元の作品がマイナー・把握が難し過ぎてわからない、能力が複雑過ぎて書きにくい
書き手が困る能力は避けた方が良いと思われ


42 : 名無しさん :2016/08/29(月) 14:49:29 TH9JaagQ0
まあそこは空気読んでキャラメイクしてねとしか言いようがなさそう
マイナーとか把握が難しいとかボーダーラインが曖昧な部分だし


43 : ◆N.AC9rXJ/I :2016/08/29(月) 16:36:18 C8tetEYg0
>>40
それで大丈夫です

身体能力については再現なしの意見の方が多いようですね

能力の使用元となる作品はその世界でも「存在する」とします
参加者が知っているかどうかについては書き手に委ねるということでいいでしょうか?


44 : 名無しさん :2016/08/29(月) 17:14:47 q/gLEHWQ0
ルールや設定が後出しで混乱してきたから一度はっきりと明記して欲しい


45 : ◆N.AC9rXJ/I :2016/08/29(月) 17:26:25 C8tetEYg0
暫定ルール

・基本ルールは原作準拠、ただし各参加者にひとつずつ版権キャラの異能を支給する
・支給された異能に必要なアイテムがあればそれも支給される
・どんな異能をもらったのか、どう使うのかは参加者には教えない
・支給された能力の元となったキャラの身体能力は再現されない
・ケンシロウの北斗神拳のような「技」も支給できる
・参加者の世界は全員同じ、現実の延長線上にある、超常的な物が何もない世界。元となる作品は存在するが、参加者が知っているかどうかは書き手に委ねる
・参加者と能力の元となったキャラクターに関連性を持たせてもよい


46 : 名無しさん :2016/08/29(月) 17:37:02 q/gLEHWQ0
基本ルールは原作と同じってことは戦闘に向かない異能が授与されても支給された武器で補ったり出来るってことか


47 : ◆N.AC9rXJ/I :2016/08/29(月) 17:44:30 C8tetEYg0
>>46
そうですね 逆に強い能力持ちがさらに銃やら何やらもらって鬼に金棒もありです


48 : 名無しさん :2016/08/29(月) 21:35:49 NescdP2s0
>>45
・参加者の世界は全員同じ、現実の延長線上にある、超常的な物が何もない世界。元となる作品は存在するが、参加者が知っているかどうかは書き手に委ねる

これって例えば一方通行の能力だったら「ベクトル操作する能力」じゃなくて「禁書シリーズの一方通行が使っている能力」だってメタ知識がある人にはあるってこと?


49 : 名無しさん :2016/08/30(火) 10:51:20 SwaUAS4IO
他に掘り下げるべきルールはあるかな?
なければ試しにキャラシートを投下してみたいな〜


50 : ◆N.AC9rXJ/I :2016/08/30(火) 16:38:37 xNPAcku.0
>>48
それでokです
参加者が知っているかもしれない能力を支給します


51 : 名無しさん :2016/08/30(火) 20:28:11 UbZUUBGA0
DDoS攻撃によるサバ落ちがひどすぎる件
攻撃がいつまで続くかわからないし、キャラメイクの更なる期限延長を希望


52 : ◆N.AC9rXJ/I :2016/08/30(火) 20:55:30 xNPAcku.0
そうですね、せっかく作ったキャラがサバ落ちで期限内に投下できなかったらもったいないですし延長します
9/18(日)の24時までなら大丈夫ですかね?


53 : 名無しさん :2016/08/30(火) 21:25:11 UbZUUBGA0
>>51
ありがとうございます
いつになったら攻撃が止むかもわからないんで助かります


54 : 名無しさん :2016/08/30(火) 21:29:46 Sxm3uwJg0
>>52
それでいいと思います
オリキャラ投下はいつからになりそうかな…?


55 : 名無しさん :2016/08/31(水) 18:04:38 RVVLXgks0
キャラ投下にはトリップ必要ですか?


56 : ◆N.AC9rXJ/I :2016/08/31(水) 18:16:45 xh/UwRds0
できればお願いします


57 : 名無しさん :2016/08/31(水) 23:11:43 IuBMRDTcO
・・・・・・ひょっとしてもうキャラ投下してもOKだったりする?


58 : 名無しさん :2016/08/31(水) 23:25:42 G5J29Ohk0
まだダメじゃね?
>>28>>1がロワやその他もろもろのルールが固まり次第
開始するんだと思う。
まぁ、、期限が残り4週間くらいはあるけど早ければそれに越したことはないけどね


59 : 名無しさん :2016/09/01(木) 00:10:27 e69beLRk0
あまり長引くと企画が廃れちゃうから早めにキャラ投下までいきたいんだけどね


60 : ◆N.AC9rXJ/I :2016/09/01(木) 07:00:50 qPdCePac0
最後のルール追加です
・支給品には、版権作品のアイテムを登場させてよい

以上です
これと>>45を決定ルールとし、今から9/18(日)24時までをキャラ投下期間とします

では、どうぞ


61 : 名無しさん :2016/09/01(木) 08:33:07 cToq7Tjk0
スレ主の見本キャラは?


62 : ◆IGqhVK/Nqo :2016/09/01(木) 08:42:03 wF5UP.xk0
物は試しということで早速エントリーしてみる。

【名前】千原 亜希(ちはら あき)
【性別】女
【年齢】17
【職業】高校生
【服装】着崩した制服
【身体的特徴】髪はポニーテール、化粧をしていて柄が悪そうに見える
【好きなこと・もの】クレープ、少女漫画
【嫌いなこと・もの】虫、特に蜘蛛
【特技】メイクやネイルのオシャレ
【趣味】カラオケ、映画鑑賞
【与えられた特殊能力】サム・ライミ版映画スパイダーマンの能力
(手から糸を発射できる、スパイダーセンス、壁に貼りつくことが出来る等の超人的な身体能力)
【詳細】
日本の高校に通う現代っ娘の女子高生。
いわゆるギャルで読者モデルもやっている。
社交的で女友達が何人もいる。
本人は少女漫画のような純愛の様な恋をしてみたいと考えている。
【備考】
一人称「あたし」。
メジャーな映画はだいたい見てる。
蜘蛛が苦手なのは、小さい頃に壁にくっついていた
蜘蛛を追い払おうとしたら顔面に突撃されたのがトラウマになったため。


63 : 名無しさん :2016/09/01(木) 10:14:34 cToq7Tjk0
【名前】増田 ユーリ(ますだ ゆーり)
【性別】女
【年齢】17
【職業】元アイドル
【服装】香月舞(マジカルエミの主人公)のコスプレ
【身体的特徴】貧乳、どんな表情でも目が怯えている
【好きなこと・もの】嘘や作り話で他人に構ってもらうこと
【嫌いなこと・もの】自分よりも嘘や作り話の上手い女
【特技】特殊メイク
【趣味】嘘や作り話で他人を振り回すこと
【与えられた特殊能力】アニメ「魔法のスターマジカルエミ」の鏡の妖精トポ
(魔法でマジカルエミに変身できる)
【詳細】
学校ではいつも作り話丸出しの嘘ばかりついていた。
異常性を見抜かれてスルーされるも自分の非を認められず。
「いじめを受けた」と被害者ヅラで親を騙して学校中退。
自分を無視したクラスの女子を見下して自己満足に浸るためだけに
特殊メイクで顔を変えて親戚のコネでアイドルグループの一員になる。
しかしルックスカースト上位女子グループであるアイドルグループ内でやっていけるわけもなく。
同グループのアイドルたちをネットで誹謗中傷しまくってクビになる。
【備考】
一人称「ユーリ」。
親戚のオタクが構ってくれるのでマジカルエミのコスプレをしている。
アイドルグループをクビになった今マジカルエミのコスプレだけが心の支え。


64 : ◆QLtMIQQIR2 :2016/09/01(木) 10:37:51 cToq7Tjk0
鳥を忘れてゴメンなさい
スレ主さんのオリキャラも楽しみですー^^


65 : 名無しさん :2016/09/01(木) 10:56:26 XSzGGjmQ0
【名前】ロック・パンサー
【性別】男
【年齢】29
【職業】格闘家(ボクサー)
【服装】ジーンズ、タンクトップ、豹の横顔をあしらったネックレス
【身体的特徴】屈強な体格の大柄な黒人
【好きなこと・もの】暴力、夜遊び
【嫌いなこと・もの】規律
【特技】ボクシング
【趣味】格闘、トレーニング、ボウリング
【与えられた特殊能力】
『超人兵士血清による力@キャプテン・アメリカ』
500kgのベンチプレスを難なく可能とする筋力を始めとし、人間の潜在能力の限界以上の身体能力を発揮できる。
また頭脳も向上し、高い判断力も兼ね備える。

【詳細】
ヘビー級ボクシング界において敵無しと称されていたチャンピオン。
しかし横柄かつ暴力的な性格からトラブルが絶えず、周囲から反感を買うことも少なくなかった。
そしてある時喧嘩の末に相手を殺害してしまう事件を起こし、チャンピオンの座を剥奪されてしまう。
その後実刑を食らい投獄されるも、彼はこの件を逆恨みし自らを迫害した世間を憎んだ。

【備考】
一人称は『俺』。基本的に他人を見下し、横柄な態度を取ることが多い。
ボクサーとしての格闘センスは本物であり、単純な身体能力のみならず搦め手などの技術にも優れる。
ルール無用の殴り合いにも慣れている。


66 : ◆nxSSTXu5SI :2016/09/01(木) 11:56:27 g0zre3OgO
【名前】ダイナン・ガイアット三世
【性別】男
【年齢】20
【職業】用心棒
【服装】中東ゲリラ風
【身体的特徴】中東系人、長身で浅黒い肌、細マッチョ
【好きなこと・もの】カレー、夜空、星
【嫌いなこと・もの】テロリスト、爆撃機、理不尽
【特技】チャクラム
【趣味】星占い
【与えられた特殊能力】ウルトラマン@ウルトラマンシリーズ
【詳細】
中東にて田舎町の用心棒として生計を立てている男。
内戦、テロ、国連軍による爆撃で両親と10人いた兄弟を全員失って以来、寡黙で内向的な性格になったが、根は正義漢で理不尽に弱者を虐げる悪人を嫌う。
しかし、用心棒として荒事に慣れ、腕っぷしも強いがあくまで一般人の域を出ない。
そんな自分では親兄弟を殺した時のような「理不尽な悲劇」に抗えないだろうと自覚しつつも、そう簡単に悲劇を凪ぎ払える力を手にできない現実に半ば諦めを覚えている。
ちなみにチャクラムを使えるのは、チャクラムを使って戦った戦士を先祖に持つ家系の習わしにより父親から教わったため。
【備考】
支給品のベーターカプセルを使うことで、光の国の巨人(人間サイズにもなれる)ウルトラマンに変身できる。
飛行、様々な念動力に加え、スペシウム光線・八つ裂き光輪などの強力な光線技も使用できる。

ただし、変身できるのは原作に沿って三分まで。
強烈な冷気も弱点になる。
また、一度変身が解けると六時間は変身ができなくなってしまう制限がある。


67 : ◆PgN2tlrPpU :2016/09/01(木) 11:59:12 fzF2vhYo0

【名前】岩井 政隆 (いわい まさたか)
【性別】男
【年齢】40代後半
【職業】警察官 巡査長
【服装】制服
【身体的特徴】186cn 97kg
角刈り頭の体格の良い大男
【好きなこと・もの】大福
【嫌いなこと・もの】不誠実な輩
【特技】柔道三段
【趣味】草野球
【与えられた特殊能力】
魔術師の赤(マジシャンズ・レッド)
【ジョジョの奇妙な冒険 Part3スターダストクルセイダース@モハメド・アブドゥル】
【詳
義理高く、熱い心をもった警察官。
常に町のことを思い、万引き犯を自転車で追いかけたり、立て籠もった銀行強盗を熱い説得で改心させてしまったりと数々の事件を持ち前の正義感で解決してきた町内で知らぬ者はいない男。
【備考】
その性格が暑苦しいと言われながらも何だかんだで町内の人に愛されている。


68 : ◆.Xw8JQLBi. :2016/09/01(木) 12:16:42 XSzGGjmQ0
>>65
すみません、鳥付け忘れていました。


69 : ◆QLtMIQQIR2 :2016/09/01(木) 13:22:44 cToq7Tjk0
【名前】河野 明代(こうの あきよ)
【性別】女
【年齢】43
【職業】風俗嬢
【服装】胸元のラインを誇示する若々しい服
【身体的特徴】細身、巨乳(Fカップ)
【好きなこと・もの】性的な話で気をひくこと
【嫌いなこと・もの】モテる要素が少しでもある女
【特技】色仕掛け、若作り、厚化粧
【趣味】風俗店での接客の詳細をメールで元夫に送りつける
【与えられた特殊能力】巨人化能力@進撃の巨人
ただし奇行種にしかなれない
借り物の能力なので一定時間経過で解除
【詳細】
性知識のない子供の頃から年下の従弟を性的好奇心のはけ口に。
従弟に好きな女の子がいることが許せず
相談に乗るフリをしながらその子の話を聞き出しては
彼女をネタにした性的妄想を聞かせていたが
ある日興奮した従弟にレイプされる。
以後、学校で嫌なことがあるたびに従弟に身体を開き
気分を紛らわせていたが高校生のときに妊娠、従弟と結婚する羽目に。
「あのときおまえがレイプしたからこんなことになった」と
自分を棚に上げて従弟を責め、従弟にゴーストライターをさせて作家になる。
しかしこの関係に耐えかねた従弟が20年以上にわたって1000人以上と浮気。
逆ギレして離婚したものの従弟なしでは何もできず
元夫に対する嫌がらせで熟女専門アナル風俗店に勤務している。
【備考】
一人称「わたくし」。
従弟に依存してきたため判断力や行動力が劣っている。
風俗店に客が来ないとヒステリーを起こす。


70 : ◆YlfcDuGY1. :2016/09/01(木) 14:52:15 pWGPTQRo0
【名前】井上 快夢(イノウエ カイム)
【性別】女
【年齢】17
【職業】アイドル
【服装】白を基調とした、血まみれのアイドル衣装
【身体的特徴】清楚な印象、薄紅色の長髪、巨乳+右目に花が生えている
【好きなこと・もの】歌、ファンの笑顔、トカゲ
【嫌いなこと・もの】臭いもの
【特技】歌、ダンス
【趣味】ミケル(ペットの白トカゲ)を愛でる
【与えられた特殊能力】ゼロ(ウタウタイ)@DRAG-ON DRAGOON 3
【詳細】
現在ブレイク中の超若手アイドル。
子供の頃から歌で、自分の歌で喜ぶ周囲の笑顔が大好きな一心でアイドルになった。
そして天性の美声と音楽センス、更に血の滲むような努力により今の地位を獲得する。
清純系を地でいくアイドルで見た目通りに清楚で実直であり、人気欲しさに枕営業や工作などの汚い手段は一切使っていない、理想的とも言えるアイドルであった。
……だが、何者かに嵌められてビルの屋上から突き落とされて、落下による致命傷を負う。
すぐさま病院の集中治療室に送られるも生存は絶望的、だったのだが、いざ手術が始まる所を主催者に拉致され、ウタウタイの力の源である災厄の花を植え付けられ……

【備考】
ウタウタイになったことで右目に災厄の花が生え、以下の能力や特徴が付加される。

○人間離れした膂力や筋力。
○ウタウタイモード:血を浴びてウタノチカラを解放することで一時的に素手で相手を引き裂ける強力な爪攻撃と、短距離なら一瞬で相手に近づける機動力を得られる。
○ウタウタイの再生:大打撃を受けると右目にある花が肥大し、新しい肉体を生やすことで再生できる。(その際、全裸で出てくるのだが、制限により首輪はそのまま)
○弱点:竜による攻撃か竜の肉体で作った武器で傷を負わされると、その傷は再生せず、その負傷部分は前述の再生能力でも治らない。というか原作では竜に関する攻撃以外では基本的に死なない(竜の絡まない攻撃でもダメージそのものは通るが、再生してしまう)。
そのままだと殺し合いにならないので制限として脳や心臓、首などの急所を突かれると竜に関係なく死ぬようになっている。
○性欲が強くなる。
○原作では自殺しようとしたり、目に生えている災厄の花を無理矢理引き抜こうとすると花から自分のコピーが産まれてしまうが、これも制限対象だと思う。
○災厄の花が魔力を蓄えて成長しきると、開花して世界を滅ぼせるが、これも制限対象と思われる。

【交友関係】
千原 亜希→中学生の時以来の大親友


71 : ◆YlfcDuGY1. :2016/09/01(木) 14:54:57 pWGPTQRo0
【名前】郷音 ツボミ(ゴウネ)
【性別】女
【年齢】18
【職業】アイドル
【服装】オレンジを基調としたボーイッシュ風アイドル衣装
【身体的特徴】笑顔、金髪ボブカット、貧乳
【好きなこと・もの】父親、自分の地位、蹴落されるライバルの姿
【嫌いなこと・もの】自分の地位を汚すもの
【特技】歌、ダンス、空手
【趣味】ツイッター
【与えられた特殊能力】立花響(ガングニール)@戦姫絶唱シンフォギア
【詳細】
一人称は「僕」のボーイッシュ系売れっ子アイドル、「ごーね!☆」。
明るく前向きになれる歌とエロかっこいい踊り、爽やかなエクボが売りのアイドル。

……というのは表向きの姿で、裏では売れるためにイジメ、恫喝、買収、枕営業、工作と、手段を選ばない卑劣で腹黒い本性の持ち主。
競合中だったアイドルである井上快無も、自分に熱狂的なファンをけしかけて殺害しようとした主犯であり、れっきとした犯罪者である。
実は極度のファザコンであり、父親はある日に突然蒸発している。
どこかにいる父に対して一秒でも多く自分の歌を聞いてもらうために、できれば自分のもとに帰ってきてほしいがために、どんな汚い手を使ってでも売れっ子アイドルの地位に固執している。
アイドルになる前は空手家で、一般人としては腕っ節が強く体力もある。

【備考】
アームドギア「ガングニール」に適合できる能力者「装者」となっている。
大雑把に言えば装者は歌いながら戦う魔法少女で、立花響のガングニールは拳を
主体に戦う。
変身に必要な起動聖詠は「Balwisyall Nescell gungnir tron(バルウィシャル ネスケル ガングニール トローン)」。

能力は
○位相差障壁を操り物理攻撃を無力化する存在(原作ではノイズ)を調律し、強制的に人間世界の物理法則下へと固着させる。
○衝撃の緩和と宇宙空間での活動や大気圏突破、再突入をも可能とする程の防御フィールド。
○最大の欠点は歌わないと変身すらできない。変身後でも歌唱が中断されると戦闘力が減衰する。
○インパクトハイク:脚部のパワージャッキで発生させた衝撃波で空気を蹴り込むことで、空中での挙動を行う。消耗が大きい。
○絶唱:奥の手の一つ。歌唱にて増幅したエネルギーを一気に放出し、対象に強烈なダメージを与える事が出来る反面、その反動も絶大で、場合によっては死ぬ場合もある諸刃の剣。
○限定解除:奥の手の一つ。所謂リミッター解除で単体での飛行能力の発揮や、念話(テレパシー)による装者同士の意思疎通などが可能となり、前述の歌唱中断による戦闘力低下のデメリットから開放されている。
また、この状態では生身の人間の宇宙での活動を可能とし、エネルギーチャージに時間のかかる技の連発が可能になるなど、規格外なパワーを発揮できるが、使用には幾人もの歌を重ねる必要がある。
○暴走:何らかの要因を以って負の感情を増大させ、その限界を越えた時に発現する制御不能状態。 この状態に陥ると、装者は抑えきれない破壊衝動に飲み込まれ、理性を失う代わりに戦闘力を増大させる。
ちなみに立花響の場合、全身に赤黒い影のようなモノを纏った獣のようになる。

【交友関係】
増田 ユーリ→元同僚だったが虚言癖持ちで、アイドル活動の邪魔になると思い、率先していじめて追い出した。
井上 快夢→その高い実力を疎ましく思い、ファンを使った関節的な殺害を企てる


72 : ◆IPU8SGkvmQ :2016/09/01(木) 16:24:19 AHc1nC3c0
【名前】石黒千晶(いしぐろ ちあき)
【性別】女
【年齢】17歳
【職業】高校2年生(クラス委員長)
【服装】校則準拠のキッチリした制服姿
【身体的特徴】メガネ・一本にまとめた三つ編み・Bカップ
【好きなこと・もの】読書・勉強・頼られること
【嫌いなこと・もの】退屈な時間・非効率で無駄な行動・馬鹿
【特技】頭の回転が早く、複雑な作業を2つ同時にこなす
【趣味】読書・海外映画をその国の字幕付きで見ること
【与えられた特殊能力】『直観』@海外ドラマ「HEROS」/ガブリエル・グレイ(サイラー)
 見るだけで、機械から生物まですべての物事の仕組みや動きを理解することが出来る。
 能力者の脳を直接見ることで能力の仕組みを理解し、能力を手に入れる事が可能。
【詳細】
 進学校に通う女子高生であり、クラス委員長を努める。
 効率的な行動を重視し、感情で動くものや馬鹿を嫌う。
 指示を出すことで群衆の動きを効率化でき、頼りにされる事に密かに快感を得ている。
 知識欲を満たすことに貪欲で、読み終わっていない本が常に側にないと落ち着かない。
 才能という点では特に秀でたものはなく努力によって頭が良いタイプだが、無意識に自分が特別な存在だと考えているため天才への嫉妬心はない。
 眉唾ものな記憶力向上術やマルチタスク講座なども真剣に行っている。
【備考】
 一人称は「私」で、常に面接する就活生のような敬語で話す。
 外面が良いため以外に友人は多い。
 本代や知識欲を満たすために様々なアルバイトに手を出すが、極めたと感じるとすぐ止める(最短1日)。
 あまりアニメやファンタジー系の作品は観ないため、HEROSは知らない。


73 : ◆N.AC9rXJ/I :2016/09/01(木) 17:08:37 qPdCePac0
皆さん、多くの投下ありがとうございます
まだまだ待ってますからね


74 : ◆N.AC9rXJ/I :2016/09/01(木) 17:21:50 qPdCePac0
自分も投下します
【名前】四季邑 飛鳥(しきむら あすか)
【性別】男
【年齢】16
【職業】高校一年生
【服装】ワイシャツ、ネクタイ、ズボン(いずれも制服)
【身体的特徴】特にセットしてない髪、低めの身長(160cm)
【好きなこと、もの】小動物、少年漫画(ジャンプ系)、肉
【嫌いなこと、もの】殺すこと、自分の身長
【特技】お絵かき、動物と仲良くなる、料理
【趣味】漫画を描く、料理
【与えられた特殊能力】直死の魔眼@空の境界
【詳細】虫を殺すことすら躊躇う心優しい少年。五歳の頃に殺人現場に遭遇してしまった経験から死に対する恐怖感を抱くようになる。その一方で趣味である料理や好物の肉が「殺すこと」に繋がっていることに気づいていない。運動神経は良く、足も速い。低身長がコンプレックス。
【備考】一人称は「俺」、死体、多量の血をみると気絶する


...ベタだな


75 : ◆N.AC9rXJ/I :2016/09/01(木) 17:31:01 qPdCePac0
能力のキャラを記入するのを忘れてました
【与えられた特殊能力】直死の魔眼@空の境界:両儀式


76 : ◆7PJBZrstcc :2016/09/01(木) 17:51:10 R.87.SNw0
【性別】男
【年齢】17
【職業】高校二年生
【服装】だらしなく着崩した学生服
【身体的特徴】常につまらなさそうな顔をしている
【好きなこと・もの】刺激、興奮
【嫌いなこと・もの】退屈
【特技】影を薄くする事
【趣味】殺人
【与えられた特殊能力】幻想殺し(イマジンブレイカー)@とある魔術の禁書目録/上条当麻
ありとあらゆる異能を打ち消す能力。
ただし、この能力は持ち主の右手に宿り触れなければ効果を発揮しない。
また、本人の意思と関係なく発動するので自身に有益な回復や補助も打ち消す。
【詳細】
会社員の父と専業主婦の母、それに中学2年生の妹を持つごく普通の高校生。
学校の成績も平均的で、得意科目も苦手科目も特になし。

だが実際は特に理由もなく人殺しをしたいと思っていた天性のサイコパス。
今まではその思いを抑えて生きていたが、つい最近うっかり友人の一人を殺害してしまった。
そのとき彼は、これまでの人生で味わったことのない刺激と興奮を味わった。
ちなみに友人の死体の骨は砕いて川に捨て、肉は自分と近所の野良犬などで食べて処分した。

そんな風に処分に苦労し、もう処分はやりたくないと思いつつもまた人を殺したいとも思ってしまう。
そして彼は、次々クラスメイトや通行人に手をかけていくことになった。

【備考】
人肉は一度食べたが、死ぬほどまずかったので二度と食べたくないと思っている。
最初の一人以外の死体は基本的にほったらかしである。
殺人の際は素手で絞め殺すことを好む。好むだけで他の手段を取る時もある。


77 : ◆N.AC9rXJ/I :2016/09/01(木) 17:54:18 qPdCePac0
【名前】成沢 弥生(なるさわ やよい)
【性別】女
【年齢】16
【職業】高校一年生
【服装】ワイシャツ、ベスト(紺)、スカート(いずれも制服)
【身体的特徴】ポニーテール、メガネ(手裏剣の絵が入っている)
【好きなこと・もの】忍者、侍、刀、これらが好きな人
【嫌いなこと・もの】西洋の騎士、銃、ニ〇ジャスレイヤー(忍者への冒涜と捉えているため)
【特技】木登り、忍び歩き、すいとんの術
【趣味】忍者になること(決してコスプレではないらしい)、忍者の勉強
【与えられた特殊能力】呪腕のハサンの能力と技術@Fate/stay night(「妄想心音」、気配遮断、投擲、風よけの加護)
【詳細】忍者に憧れる少女。幼少期に見た忍者のアニメではじめて興味を持ち、図書館やネットで調べてるうちにはまりこみ、「本物の忍者になること」を夢とするようになる。
    モットーは「弱きを助け、強きをくじけ」とのこと
    身体能力は高く、体力テストでは女子の中で学年トップの成績を出した
    明るい性格ではあるが、忍者として活動している間は己を殺し、たとえ身内でも手にかける(本人談)
【備考】 一人称は「わたし」
     手裏剣は投擲スキルなしで使いこなせる
     NARUTO、忍者ハットリくん、忍たま乱太郎、手裏剣戦隊ニンニンジャー、ニンジャスレイヤーの知識あり


78 : 名無しさん :2016/09/01(木) 18:15:45 S/Oa8/E60
【名前】島津 蒼太(しまづ そうた)
【性別】男
【年齢】17歳
【職業】星美原学園二年四組出席番号14番ゴミ係兼カサ係
【服装】制服
【身体的特徴】145cn 45kg
オッドアイ、ショートカット、男の娘
【好きなこと・もの】喧嘩、料理、姉の手料理
【嫌いなこと・もの】身長、牛乳
【特技】射撃、格闘技
【趣味】パルクール、ストリートファイト
【与えられた特殊能力】『腹話術』@魔王JUVENILE REMIX/安藤(兄)
「自分の考えたことを他人に話させる」能力。
腹話術で喋っているときは相手の意識を奪い、強制的に能力を解除できる(変身能力などは腹話術の効果切れと共に再展開されると思われる)。
射程距離は約30数歩。相手を見ながら出ないと効果が出ない。また、使いすぎると呼吸困難に陥る。
制約は多くぶっちゃけクソ能力だが、射程距離にさえ入ればどんな能力を持ってる相手でも「巨乳大好き!」と叫ばせられるぞ!

【詳細】
小さいころから原因不明の成長不全で身長が全く伸びずそのお蔭でよく絡まれ、喧嘩に明け暮れていた。
成長不全は脳にも影響を及ぼしているらしく、短身痩躯ながら身体能力と格闘センスは下っ端の不良数人をしのぐ(脳がおかしくなってようやく強さは街で一番強い不良程度ともいえる)
殺人一歩手前の喧嘩をしまくっていたからか、性格は少し冷徹。
ただし姉にだけは別で、頭が上がらない。

【備考】 一人称は「僕」
姉と夕飯を作るのが日課


79 : ◆x61iQ1APEQ :2016/09/01(木) 18:18:18 wKjBakdo0
【名前】結城キユ
【性別】男
【年齢】17
【服装】一般的な学生服
【職業】高校二年生
【身体的特徴】
【好きなこと・もの】創作物、陰謀論
【嫌いなこと・もの】無駄な悩み
【特技】様々
【趣味】創作物の堪能
【与えられた特殊能力】朱色の魔本@金色のガッシュ!!/ティオ
一人で読むことも可能だが、術の力は半減する
【詳細】
心配性の少年。
創作物に影響を受けやすく、本やアニメ、映画を見た後は常にあらぬ方向の心配をしている。
最近はバトロワ系の映画にはまっており、「突然殺し合いに巻き込まれたらどうしよう」と周囲に吹聴している。
【備考】
彼の悩みはいつものことで基本周囲に相手にされず、大体一人でから回っている。
解決のための行動力は無駄に持っており、意外と多芸。


80 : ◆x61iQ1APEQ :2016/09/01(木) 18:47:14 wKjBakdo0
【名前】蘭堂虎竜太(らんどう こりゅうた)
【性別】男
【年齢】16
【職業】高校一年生
【服装】着崩した改造学生服
【身体的特徴】黒と金の虎模様の髪、低身長童顔
【好きなこと・もの】強い立場
【嫌いなこと・もの】喧嘩
【特技】足が速い
【趣味】万引き
【与えられた特殊能力】ドアドアの実@ONE PIECE/ブルーノ
【詳細】
不良グループの下っ端。
グループ内外でパシリや伝令など、主に足を使った便利屋扱いを受けている。
外見に反してリーダーの名前を出さなければ喧嘩もできない臆病者であり、
仲間内では仰々しい名前と合わせてよくネタにされている。
【備考】
基本的に長いものに巻かれるタイプ。


81 : 名無しさん :2016/09/01(木) 19:37:27 ZM1Eiqtg0
【名前】八神そう
【性別】女
【年齢】9
【職業】小学生
【服装】白い制服
【身体的特徴】茶色のショートカット、右足が不自由で、杖を突いている
【好きなこと・もの】サブカルチャー、特に魔法少女リリカルなのはシリーズ、八神はやて
【嫌いなこと・もの】サブカルチャーを馬鹿にする人、『障害者だから』と特別扱いされること
【特技】年齢不相応の妄想力
【趣味】『もしも自分が魔法少女だったら』という妄想をする
【与えられた特殊能力】ムジョルニアによるマイティ・ソーへの変身@マーベルコミックス
所持している杖で地面を1回叩くと、杖が魔法のハンマー『ムジョルニア』に変わり、スーパーヒーロー『マイティ・ソー』に変身する(顔と体格は変化無し)。変身している状態で60秒以上ムジョルニアを手放すと、元の姿に戻ってしまう。
【詳細】
都内在住の小学3年生。
生まれつき片足が不自由で、障害者学級に通っている。
まだ小学生ではあるが、サブカルチャーを愛するオタクで、特に『魔法少女リリカルなのは』シリーズのメインキャラクターの一人『八神はやて』を自分と同一視しており、八神はやてのまねをして、普段から関西弁で喋っている。
『なのはやはやてのように、自分も魔法少女になりたい』と夢見ている。
【備考】
アメコミは軽く嗜む程度だが、マーベル・スタジオのMCU映画は母親とちょくちょく見に行っている。


82 : 名無しさん :2016/09/01(木) 22:07:28 pWGPTQRo0
【名前】御船ジャック(ミフネ)
【性別】男
【年齢】9
【職業】小学生
【服装】赤いTシャツに短パン
【身体的特徴】ハーフ、小学生相応に小柄、銀の短髪
【好きなこと・もの】変身ヒーローもの特撮、母ちゃん、亡くなった父ちゃん
【嫌いなこと・もの】牛乳、困っている人を放っておくこと
【特技】足が速い
【趣味】近所の空き地でのヒーローごっこ
【与えられた特殊能力】相羽 タカヤ(テッカマンブレード)@宇宙の騎士テッ

カマンブレード
○支給品のテッククリスタルを使うこと強襲突撃型のテッカマン、テッカマンブ

レードに変身できる。
○設定上は超極音速を超える機動力を持ち、核兵器にも耐える装甲を持つ。(流

石にある程度制限か?)
○技には槍の「テックランサー」、装甲を変形させて体をスリム化し、背面バー

ニアを全開にして高速域での突進とその衝撃波などで対象を破壊する技は「クラ

ッシュ・イントルード」、体内に蓄積された反物質フェルミオンを放出し相手を

対消滅させる必殺技「ボルテッカ」がある。(ボルテッカは一度の変身につき一

度しか使用できない)
○相羽タカヤのテッカマンとしての不完全性も引き継いでいるので、変身する度

に肉体が崩壊し、30分以上変身し続けると暴走する。
○テッカマンの進化形態である「ブラスター化」ができれば大幅なパワーアップ

に加え、上述の肉体崩壊は止まるが、代わりに記憶を失っていく。
○なお、変身する度に服がなくなるので、変身が解けると全裸になる

【詳細】
都内在住の小学3年生。
頭は良くないが、活発で明るい少年。
幼稚園児の頃から特撮が大好きで、画面に映るヒーロー達に憧れている。
5歳の時に特撮関連の仕事についていた父親を亡くすも、亡くなる前の父親から「どんなことにもくじけない強い心と、人を幸せにする優しい心があれば必ずヒーローになれる」と教えられ、優しくて強いヒーローになると決意。
クラスではムードメーカーで困った人を放っておけない良いやつで通っている。
将来の夢はもちろん特撮ヒーローである。

【備考】
仮面ライダーやスーパー戦隊・ウルトラマンといった子供向け特撮の知識は豊富。
ただし牙狼やアキバレンジャーのような大人向け深夜もの特撮は例外。
さらにアニメな上、作品自体が古い「宇宙の騎士テッカマンブレード」の知識は

皆無。

【交友関係】
岩井 政隆→叔父さん、時々ヒーローごっこにも付き合ってくれる
八神そう→同じ学校に通う友達、通学路が同じなので登下校を共にする。


83 : ◆YlfcDuGY1. :2016/09/01(木) 22:08:27 pWGPTQRo0
>>82
アカン、トリ付け忘れた


84 : ◆YlfcDuGY1. :2016/09/01(木) 22:30:13 pWGPTQRo0
>>82
読みにくい上によく見ると設定ミスがあったので書き直し
【名前】御船ジャック(ミフネ)
【性別】男
【年齢】9
【職業】小学生
【服装】赤いTシャツに短パン
【身体的特徴】ハーフ、小学生相応に小柄、銀の短髪
【好きなこと・もの】変身ヒーローもの特撮、母ちゃん、亡くなった父ちゃん
【嫌いなこと・もの】牛乳、困っている人を放っておくこと
【特技】足が速い
【趣味】近所の空き地でのヒーローごっこ
【与えられた特殊能力】相羽 タカヤ(テッカマンブレード)@宇宙の騎士テッカマンブレード
○支給品のテッククリスタルを使うこと強襲突撃型のテッカマン、テッカマンブレードに変身できる。
○設定上は超極音速を超える機動力を持ち、核兵器にも耐える装甲を持つ。(流石にある程度制限か?)
○技には槍の「テックランサー」、装甲を変形させて体をスリム化し、背面バーニアを全開にして高速域での突進とその衝撃波などで対象を破壊する技は「クラッシュ・イントルード」、体内に蓄積された反物質フェルミオンを放出し相手を対消滅させる必殺技「ボルテッカ」がある。(ボルテッカは一度の変身につき一度しか使用できない)
○相羽タカヤのテッカマンとしての不完全性も引き継いでいるので、変身する度に肉体が崩壊し、30分以上変身し続けると暴走する。
○テッカマンの進化形態である「ブラスター化」ができれば大幅なパワーアップに加え、上述の肉体崩壊は止まるが、代わりに記憶を失っていく。

【詳細】
都内在住の小学3年生。
頭は良くないが、活発で明るい少年。
幼稚園児の頃から特撮が大好きで、画面に映るヒーロー達に憧れている。
5歳の時に特撮関連の仕事についていた父親を亡くすも、亡くなる前の父親から「どんなことにもくじけない強い心と、人を幸せにする優しい心があれば必ずヒーローになれる」と教えられ、優しくて強いヒーローになると決意。
クラスではムードメーカーで困った人を放っておけない良いやつで通っている。
将来の夢はもちろん特撮ヒーローである。

【備考】
仮面ライダーやスーパー戦隊・ウルトラマンといった子供向け特撮の知識は豊富。
ただし牙狼やアキバレンジャーのような大人向け深夜もの特撮は例外。
さらにアニメな上、作品自体が古い「宇宙の騎士テッカマンブレード」の知識は皆無。

【交友関係】
岩井 政隆→叔父さん、時々ヒーローごっこにも付き合ってくれる
八神そう→同じ学校に通う友達、通学路が同じなので登下校を共にする。


85 : ◆7PJBZrstcc :2016/09/01(木) 22:38:26 R.87.SNw0
>>76で名前を入れ損ねました。
【名前】笹原卓(ささはら すぐる) と追加します

【名前】藤崎直哉(ふじさき なおや)
【性別】男
【年齢】20
【職業】大学二年生
【服装】Tシャツにジーパン
【身体的特徴】爽やかなイケメン
【好きなこと・もの】13歳以下の少女
【嫌いなこと・もの】14歳以上の女、女装少年、児童ポルノ規制法
【特技】見ただけで相手の性別を正確に見抜く。
【趣味】人間観察、カメラ
【与えられた特殊能力】セト神@ジョジョの奇妙な冒険 Part3スターダストクルセイダース/アレッシー
【詳細】
一見するとイケメンの大学生だが、実態は重度のロリコン。
中学二年生までが彼にとっての旬であり、それ以降は性の対象にはならないババァ扱い。
ただし合法ロリは有り。長身ロリは無し。男の娘もなし。
イエスロリータノータッチなんて精神は無く、小学生や中学生との援交を何度もしている。
強姦経験は今のところないが、いつやってもおかしくないと彼の性癖を知る友人は思っている。

ちなみに、何故こんな特技を持っているかというと、昔女装したショタをナンパしてしまったことがあるから。
【備考】
ロリがメインキャラとして出てくるサブカルチャー全般に詳しい。


86 : ◆x61iQ1APEQ :2016/09/01(木) 23:04:47 wKjBakdo0
>>79で抜けてたので
【身体的特徴】目の下に濃いクマ、常にせわしなさげにしている

【名前】科学教師
【性別】男
【年齢】不明
【職業】浮浪者
【服装】白衣に眼鏡
【身体的特徴】長身痩躯
【好きなこと・もの】科学実験
【嫌いなこと・もの】警察
【特技】豊富な科学知識
【趣味】浮浪者への講義
【与えられた特殊能力】隠者の紫@ジョジョの奇妙な冒険/ジョセフ・ジョースター
【詳細】
とある地域の河川敷にて浮浪者相手に講義をしている男。
経歴本名ともに不明であり、一見すると立派に見える白衣も所々が薄汚れている。
謎の人脈を持っているようで、彼の住処は出所の知れぬ薬や工具で満たされている。
本人も浮浪者同然の生活を送っているが、身寄りのないものに対して妙なカリスマがあり、
講義の報酬として食料をはじめとしたさまざまな物品を受け取り、他の浮浪者よりワンランク上の生活をしている。
【備考】
何度か実験で爆発騒ぎを起こしたことがあり、警察関係者からはテロリスト予備軍として扱われている。


87 : ◆YlfcDuGY1. :2016/09/01(木) 23:20:18 pWGPTQRo0
【名前】夜之 憂(ヨルノ ユウ)
【性別】女
【年齢】9
【職業】小学生
【服装】白いブラウスにサスペンダー付きスカート
【身体的特徴】小学生としては長身、冷たそうな印象、黒い長髪
【好きなこと・もの】あらゆる分野で一位になること、両親
【嫌いなこと・もの】不真面目な奴、馴れ合い
【特技】速読
【趣味】勉強
【与えられた特殊能力】相羽 シンヤ(テッカマンエビル)@宇宙の騎士テッカマンブレード
○支給品のテッククリスタルを使うこと多目的汎用型のテッカマン、テッカマンエビルに変身できる。
○設定上は超極音速を超える機動力を持ち、核兵器にも耐える装甲を持つ。(流石にある程度制限か?)
○技には槍の「テックランサー」、装甲を変形させて体をスリム化し、背面バーニアを全開にして高速域での突進とその衝撃波などで対象を破壊する技は「クラッシュ・イントルード」、両肩に装備している剣「ラムショルダー」。
さらに必殺技の「PSYボルテッカ」はエネルギーである反物質素粒子をエビルがその意志によって自由にコントロール出来、機動操作や威力を調整して二度以上の使用ができるようになっている。
○テッカマンの進化形態である「ブラスター化」ができれば大幅なパワーアップができるが、肉体崩壊で短命になってしまう。

【詳細】
都内在住の小学三年生。
父親は有名外科医、母親は弁護士というエリートで彼女自身も英才教育を受けている才女。
スポーツ万能、学力テストでは一位という成績を叩きだしている完璧超人だが、小学生不相応の意識の高さの持ち主で自分に厳しいが他人にも厳しく、クラスからは孤立している。
本人は両親の期待にさえ答えられるなら友達などいらないと言っているが、内心では友達がいないことに空虚感を覚えている。
とにかく成績一位を目指す野心家ではあるが、同時にストイックで極めて我慢強く、頑固なくらい真面目なので不正を嫌う。

【備考】
父が医者、母が弁護士なので医学や法律に関する知識が人一倍詳しい。
サブカル系は低俗なものだと思っているので、アニメ・特撮・ラノベの知識は全くない。

【交友関係】
八神そう→同じ学校に通うが、サブカル嫌いなので仲は険悪
御船ジャック→クラスメイト、友達の多い彼を羨ましく思っている節がある


88 : ◆JndOxQqNJo :2016/09/01(木) 23:22:50 hxgTeQdA0
【名前】KENGO(雨宮 健吾)
【性別】男
【年齢】17
【職業】高校生・アイドル
【服装】胸元の開いた白いシャツ、ラメの入った派手な赤いパンツ
【身体的特徴】日本人離れした美形、輝くような金髪、絵に描いたような王子様
【好きなこと・もの】自分、鏡
【嫌いなこと・もの】両親、人付き合い
【特技】スマイル
【趣味】トレーニング、ファンサービス
【与えられた特殊能力】『大嘘憑き(オールフィクション)』@めだかボックス/球磨川禊
【詳細】
某大型事務所が売り出している歌って踊れるアイドル。
自己愛が強く極度のナルシスト。世界で一番自分が美しいと本気で思っている。
しかし勤勉で常に自らを磨く努力を怠らない努力家な一面もある。

その外見の美しさから幼少期に親に売り飛ばされるも同然の形で芸能界に放り込まれる。
それから身元引受人である事務所社長(初老女性)に性的虐待を受けるなど歪んだ寵愛を受けて育つ。
両親は息子の稼いだ金で遊び暮らす典型的なろくでなしで、酔った勢いで暴力沙汰を起こし問題になりかけた。
だがそれを事務所がもみ消し被害者に示談金を払うと共にいい機会だと両親にも親子の縁を切るよう要求。
これに対して両親は手切れ金を要求し、あっさりと縁を切った。

このような経験を得ながら人間不信に至らなかったのは何事も割り切れる本人の気質のためだろう。
両親の離別も事務所社長との関係も『そういうもの』と割り切っている。
その代償として自己愛が肥大化、他者に対する興味が薄く、他者は自分を崇拝する大衆としか思っていない。
根本的に他人に興味がないため人付き合いが苦手だが、割り切りと鍛え上げたアイドルスマイルで乗り切っている。

【備考】
ダンスは一流。ルクッスも超一流。しかし歌は下手。本人は気づいてない。


89 : ◆Upy4wcs9SI :2016/09/02(金) 00:30:43 EIwjZgck0
【名前】伊丹沢 妙(いたみさわ たえ)
【性別】女
【年齢】10歳
【職業】小学生
【服装】おさげの黒髪、子供用ワンピース着用
【身体的特徴】小柄な体形、背中に痣がある
【好きなこと・もの】マカロニサラダ、お母さん
【嫌いなこと・もの】痛いこと
【特技】我慢
【趣味】絵を描くこと
【与えられた特殊能力】略奪@Charlotte/乙坂有宇
対象者一人に乗り移り、5秒間だけ体を支配する。
その際、自身の体は意識を失い、完全に無防備となってしまう。
元の体に戻る際、望むなら対象者の能力を奪い取ることが出来る。
だが、能力を奪う度に記憶を失い、最終的に自身が何者かもわからなくなってしまう欠点を持つ。
【詳細】
何の変哲もない普通の女の子。
両親と仲良く暮らしていたが、母親の急死を境に一転。
荒んだ父親から日常的に虐待を受けるようになってしまう。
助けを求められる人物もおらず、ただ耐え忍ぶ毎日。
優しかったかつての父と、愛する母の記憶を胸に抱き、今も懸命に生き続けている。
【備考】
好物のマカロニサラダは亡き母親の得意料理。
子供向けの教育アニメを好んで観るが、Charlotte等の深夜アニメは存在すら知らない。
また、原作で乙坂有宇が奪い取った能力は異能として与えられていない。


90 : ◆/SrI0Wa0Uo :2016/09/02(金) 00:45:37 ggkI9XSw0
【名前】美談 展夫(びだん のぶお)
【性別】男
【年齢】31
【職業】捜査官
【服装】汚れが目立つスーツ
【身体的特徴】サイコパスっぽい面
【好きなこと・もの】戦争映画
【嫌いなこと・もの】名前を馬鹿にされる事
【特技】放送禁止用語を早口で言う事、演技
【趣味】犯罪心理学の探求
【与えられた特殊能力】毒電波@零/月島拓也
【詳細】
ある犯罪組織にスパイとして潜入しているFBI捜査官。
「いつか何かやらかしそう」と言われる面構えと、キ○ガイめいた言動をごく自然にこなせる高い演技力で組織に完全に溶け込んでいる。
根は優しい性格であり組織の全容を掴んで壊滅させるのを目的としているが、組織のメンバーとしての演技がハマり過ぎている為、「本当に寝返っているのではないか?」と同期の捜査官に度々誤解を受けている。
学生時代は父親の浮気が原因となって両親との仲は険悪であった。
それでも内心は和解を望んでいたのだが、父はある事件に巻き込まれて他界。
数年後には母も後を追うように病死し、終ぞ仲を修復出来なかった事が今でも心のしこりとして残っている。
【備考】
彼は…正常だよ。


91 : 名無しさん :2016/09/02(金) 08:22:11 eSE4JX460
【名前】天草士郎(あまくさ しろう)
【性別】男
【年齢】16
【職業】高校生
【服装】純白の学生服、首から十字架をかけている
【身体的特徴】赤い長髪の美少年
【好きなこと・もの】家族、アニメや特撮、フルート、聖書
【嫌いなこと・もの】サブカルチャーを嫌う人、キリスト教を馬鹿にされること
【特技】フルートの演奏
【趣味】日曜朝の特撮鑑賞とミサ
【与えられた特殊能力】仮面ライダーキバへの変身@仮面ライダーキバ/紅渡
支給品であるキバットバット三世を使って仮面ライダーキバに変身する。
フエッスルでフォームチェンジも可能だが、ドガバキフォームにはなれない。あと、タツロットが居ないとエンペラーフォームにもなれない。

【詳細】
キリスト教系の私立高校に通う高校1年生。
日本有数の大企業『天草財閥』の御曹司で、道を歩けば10人中10人が振り返る程の美形だが、重度の特撮オタクという意外な一面を持っている。
これは、天草財閥総裁である父親が年季の入ったオタクだったことからの影響で、本人もかなりオープンにしており、学校の女子からは『そこ(オタクであること)だけが残念』と評されている。
母親を6歳の時に病気で亡くしており、形見の十字架を常に首から下げている。
【備考】
一人称は『僕』で、物腰柔らかな口調で喋る。
子供の頃の夢は『仮面ライダーになること』。
父親を尊敬している。


92 : ◆.ksO9nG.ek :2016/09/02(金) 08:27:34 eSE4JX460
トリップ忘れてました。

91 : 名無しさん sage 2016/09/02(金) 08:22:11
【名前】天草士郎(あまくさ しろう)
【性別】男
【年齢】16
【職業】高校生
【服装】純白の学生服、首から十字架をかけている
【身体的特徴】赤い長髪の美少年
【好きなこと・もの】家族、アニメや特撮、フルート、聖書
【嫌いなこと・もの】サブカルチャーを嫌う人、キリスト教を馬鹿にされること
【特技】フルートの演奏
【趣味】日曜朝の特撮鑑賞とミサ
【与えられた特殊能力】仮面ライダーキバへの変身@仮面ライダーキバ/紅渡
支給品であるキバットバット三世を使って仮面ライダーキバに変身する。
フエッスルでフォームチェンジも可能だが、ドガバキフォームにはなれない。あと、タツロットが居ないとエンペラーフォームにもなれない。

【詳細】
キリスト教系の私立高校に通う高校1年生。
日本有数の大企業『天草財閥』の御曹司で、道を歩けば10人中10人が振り返る程の美形だが、重度の特撮オタクという意外な一面を持っている。
これは、天草財閥総裁である父親が年季の入ったオタクだったことからの影響で、本人もかなりオープンにしており、学校の女子からは『そこ(オタクであること)だけが残念』と評されている。
母親を6歳の時に病気で亡くしており、形見の十字架を常に首から下げている。
【備考】
一人称は『僕』で、物腰柔らかな口調で喋る。
子供の頃の夢は『仮面ライダーになること』。
父親を尊敬している。


93 : ◆QLtMIQQIR2 :2016/09/02(金) 08:49:36 POaQZ98w0
【名前】河野 英雄(こうの ひでお)
【性別】男
【年齢】41
【職業】ヒモ
【服装】会社員のフリをしてスーツを着ている
が、ネクタイが不自然に歪んでいて借り物感が半端ない
【身体的特徴】胴長短足、猫背、口が半開き
【好きなこと・もの】自分の名前、特撮ヒーロー敗北シチュエーション
【嫌いなこと・もの】自分の名前、元妻の明代
【特技】女を騙してヒモになること
【趣味】特撮ヒーロー(男)敗北シチュエーションでエロ小説を書く
【与えられた特殊能力】ガッツ星人@ウルトラシリーズ
【詳細】幼少期に両親が事故死。
父方の従姉である河野明代の家に引き取られる。
優等生的な振る舞いで明代の両親には気に入られるが
両親の歓心を失った明代には疎まれ、性的好奇心のはけ口にされる。
中学生のときに明代を妊娠させ、18歳で結婚。
明代の性格や夫婦関係を苦痛に感じ、仕事に行くフリをして
複数の女性のヒモになっていた。
その数、20年間で1000人以上。

幼少期にテレビで見たウルトラセブンの磔シーンに性的興奮を覚え、
四肢を切断されたウルトラマンの姿を想像しながらオナニーしていた。
両親にとっての「英雄」になれなかったことを密かに悔いており
「ヒーローになれなかったウルトラマン」に自己投影している。
ウルトラセブンのように磔になりたいと思いながらヒモ生活を送っている。
【備考】
一人称「自分」。
マゾヒストだがプライドが無駄に高い。
胴長短足を気にして猫背になっている。

以下ウィキペディアのガッツ星人の項目のコピペ

「いかなる戦いにも負けたことのない無敵のガッツ星人」と自称し、数多くの戦いにことごとく勝利してきた実績を持つ、宇宙の実力者。地球侵略に邪魔なウルトラセブンを徹底的に分析して敗北させ、十字架へ磔にして地球人の目の前で処刑しようと企んだ。徹底的な分析を行って作戦を決行する一方、相手に予想外の行動を取られるとパニックに陥る脆弱さも持っている。画面上では4体確認できる。等身大時では、機関銃を武器にする。

徹底的な分析を行って作戦を決行する一方、相手に予想外の行動を取られるとパニックに陥る脆弱さも持っている。
徹底的な分析を行って作戦を決行する一方、相手に予想外の行動を取られるとパニックに陥る脆弱さも持っている。


94 : ◆.ksO9nG.ek :2016/09/02(金) 09:00:14 eSE4JX460
【名前】天草 ゆたか
【性別】女
【年齢】16
【職業】高校生
【服装】純白の女子学生服
【身体的特徴】栗色のツインテール、小学生並の体格と身長、下手なアイドル以上の美少女
【好きなこと・もの】家族、特に兄、魔法少女アニメ、歌うこと
【嫌いなこと・もの】年齢と体型をネタにいじられること
【特技】プロ並の歌唱力
【趣味】魔法少女アニメの鑑賞
【与えられた特殊能力】
ミッドチルダ式の魔法@魔法少女リリカルなのはシリーズ/高町なのは
支給品であるインテリジェントデバイス『レイジングハート』の力で、魔法少女に変身し、ミッドチルダ式の魔法が行使できる。魔力光の色は桃色。
【詳細】
キリスト教系の私立高校に通う高校1年生であり、天草士郎の双子の妹。
学校一の美少女で、兄と同じく重度のオタク。
子供の頃から魔法少女に憧れていて、いつか自分の前にも喋る動物が現れるのでは?と夢見ている。
困っている人を放っておくことができない優しさを持っている。
【備考】
魔法少女アニメ全般が好きだが、『まどマギよりリリなのが好き』と公言している。

【交友関係】
天草士郎:双子の兄。しかし、大半の人は『双子だ』と言ってもすぐには信じない。今でも同じ部屋の同じベッドで寝るくらい仲が良い。


95 : ◆YlfcDuGY1. :2016/09/02(金) 10:21:28 fjLivjFE0
【名前】後藤 万緒(ゴトウ マオ)
【性別】女
【年齢】16
【職業】高校一年生
【服装】ハーフパンツとタンクトップ
【身体的特徴】銀髪のポニーテール、日焼けによる浅黒い肌、グラマー + 全身に渡る光る刺青と後頭部の黒い角
【好きなこと・もの】水泳、イチゴジャム、ラーメン
【嫌いなこと・もの】体脂肪
【特技】水泳
【趣味】ダイエット
【与えられた特殊能力】人修羅@真・女神転生Ⅲ-NOCTURNE
○悪魔になったことで、マガタマ(装備品)を取り込んでの肉体強化と悪魔召喚能力を得る。
○最初に装備しているマガタマは、簡単な物理技とアナライズ能力、破魔と呪殺が弱点になる特性を持つ「マロガレ」のみ。
 他のマガタマは参加者が支給品として持っている可能性もある?
○最初に召喚できる仲魔は低レベルの回復技を使える「ピクシー」と、低レベルの氷雪技が使える「ジャックフロスト」だけ。
 他にも仲魔は何体かいるようだが、主催者の調整によって一定数の戦闘をこなすor参加者を殺害しないと召喚できない仕組みになっているようだ。
 また、一度死亡した仲魔は復活できず、「リカーム」のような死者復活系魔法も禁止されている。

【詳細】
キリスト教系の私立高校に通う高校1年生。
水泳部に所属しているダイエット好きの女の子、争いを嫌う温厚な性格という点以外は至って普通であり、特徴のないのが特徴とも言える女の子。
今の高校に通っているのも家が近く、悪くない偏差値を持っているからという理由である。
大きな夢も目標もないこと自体に密かな苦悩を抱いており、「何かしたいが何をすればいいのか形になっていない」悩みを持っている。

【備考】
一人称は「私」。
オタク兄妹である天草兄妹を友人に持ったことによって、そこそこの仮面ライダー、魔法少女系知識を持っている。

【交友関係】
天草士郎→クラスメイトの友達。イケメンだが重度の特撮熱のせいか、恋愛感情は微妙。
天草 ゆたか→クラスメイトの友達。仲がいい。
島津 蒼太→幼馴染。「蒼ちゃん」。


96 : ◆Fq8yirYGo2 :2016/09/02(金) 12:17:21 5Gv08VO.0
トリップ忘れ失礼

78 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/09/01(木) 18:15:45 ID:S/Oa8/E60
【名前】島津 蒼太(しまづ そうた)
【性別】男
【年齢】17歳
【職業】星美原学園二年四組出席番号14番ゴミ係兼カサ係
【服装】制服
【身体的特徴】145cn 45kg
オッドアイ、ショートカット、男の娘
【好きなこと・もの】喧嘩、料理、姉の手料理
【嫌いなこと・もの】身長、牛乳
【特技】射撃、格闘技
【趣味】パルクール、ストリートファイト
【与えられた特殊能力】『腹話術』@魔王JUVENILE REMIX/安藤(兄)
「自分の考えたことを他人に話させる」能力。
腹話術で喋っているときは相手の意識を奪い、強制的に能力を解除できる(変身能力などは腹話術の効果切れと共に再展開されると思われる)。
射程距離は約30数歩。相手を見ながら出ないと効果が出ない。また、使いすぎると呼吸困難に陥る。
制約は多くぶっちゃけクソ能力だが、射程距離にさえ入ればどんな能力を持ってる相手でも「巨乳大好き!」と叫ばせられるぞ!

【詳細】
小さいころから原因不明の成長不全で身長が全く伸びずそのお蔭でよく絡まれ、喧嘩に明け暮れていた。
成長不全は脳にも影響を及ぼしているらしく、短身痩躯ながら身体能力と格闘センスは下っ端の不良数人をしのぐ(脳がおかしくなってようやく強さは街で一番強い不良程度ともいえる)
殺人一歩手前の喧嘩をしまくっていたからか、性格は少し冷徹。
ただし姉にだけは別で、頭が上がらない。

【備考】 一人称は「僕」
姉と夕飯を作るのが日課


97 : ◆.Xw8JQLBi. :2016/09/02(金) 13:36:36 yTdL5s2g0
【名前】真島 芳郎(まじま よしろう)
【性別】男
【年齢】32
【職業】フリーター
【服装】ポロシャツ、ジーンズ
【身体的特徴】ボサボサの髪、冴えない顔立ち
【好きなこと・もの】昼寝、チョコレートなどの甘いもの
【嫌いなこと・もの】世間、仕事
【特技】なし
【趣味】金を貯めて散財すること(主に菓子など)
【与えられた特殊能力】
『ハイウェイ・トゥ・ヘル』
出典:ジョジョの奇妙な冒険 第6部
キャラ:サンダー・マックイイーン
他人を自分の自傷行為の道連れにするスタンド能力。
本体が手首を切れば相手も手首に切り傷が生まれ、本体が首吊り自殺を図れば相手も同様に身体が持ち上がって窒息し死に至る。

【詳細】
就職活動に失敗し、本屋のバイトで何とか生計を立てているフリーター。
その後も仕事を探しているものの上手く行かず、三十路を越えても未だにバイト生活を送っている。
何年も続けている職場にも余り馴染めず、常に虚無感と絶望感を抱えながら生きている。
チョコレートなどの甘味を食べることでストレスを発散し、そういった感情をある程度誤魔化している。

心の奥底では死への憧れを抱いている。しかし同時に死ぬのが怖い。
結局のところ何も出来ずに惰性で生き続けているが、何かの拍子があれば彼は自ら死を選ぶだろう。

【備考】
一人称は『俺』。基本的に無気力で口下手。
生活能力は低く、稼ぎも決して多くはない。
にも関わらず菓子を買うのに無計画な出費をすることが多い。


98 : ◆IGqhVK/Nqo :2016/09/02(金) 22:14:26 AikUABwI0
【名前】大木 潮(おおき うしお)
【性別】男
【年齢】24
【職業】フリーター
【服装】チェックシャツをジーンズにインしてるオタクファッション
【身体的特徴】メガネをかけているふとっちょ。
【好きなこと・もの】変身少女系のアニメを見ること
【嫌いなこと・もの】運動
【特技】アニメの知識を披露すること
【趣味】アニメ鑑賞、フィギュア、同人集め
【与えられた特殊能力】ギニュー@ドラゴンボールの能力
(気弾発射、自分と相手の肉体を入れ替えるボディーチェンジ)
【詳細】
テンプレートなオタク。いわゆる「おおきなおともだち」であり、
魔法少女や変身少女のアニメが大好き。
ひそかに変身願望を抱いており、生まれ変わったら
二次元のカワイイ少女になるのが夢。
【備考】
増田ユーリ(>>63)は親戚。マジカルエミとしての姿を気に入っており、
時折コスプレ写真を撮影しにくる。


99 : ◆x61iQ1APEQ :2016/09/02(金) 23:13:52 45z3Resc0
【名前】沢松井之助(さわまつ いのすけ)
【性別】男
【年齢】10
【職業】小学生
【服装】育ちの良さがにじみ出ている
【身体的特徴】おかっぱ、年齢にしても小さい方
【好きなこと・もの】新しいもの
【嫌いなこと・もの】古いもの、名前
【特技】鉄棒
【趣味】ゲーム、漫画、アニメ
【与えられた特殊能力】ボム@星のカービィ/コピー能力
【詳細】
大手百貨店、沢松屋グループの跡取り息子。
両親が年を取ってからの子供であり、それなりに甘やかされている。
親の力を自分の力と勘違いしている節があり、考え方は少々傲慢ともとれる。
立場上様々な人物と出会う機会が多いため、目上への礼儀は鍛えられている。
【備考】
彼の名である『井之助』は沢松屋の創始者である曾祖父から代々受け継ぐ由緒ある名である。
しかし響きの古臭さから彼自身はあまり好んではいない。


100 : ◆Upy4wcs9SI :2016/09/03(土) 01:30:41 IdcDl6Ng0
>>89
申し訳ありません。何点か記述ミスがありました為、以下に修正させていただきます。

【名前】伊丹沢 妙(いたみさわ たえ)
【性別】女
【年齢】10歳
【職業】小学生
【服装】水色の子供用ワンピース
【身体的特徴】おさげの黒髪、小柄な体形、背中に痣がある
【好きなこと・もの】マカロニサラダ、お母さん
【嫌いなこと・もの】痛いこと
【特技】我慢
【趣味】絵を描くこと
【与えられた特殊能力】略奪@Charlotte/乙坂有宇
対象者一人に乗り移り、5秒間だけ体を支配する。
その際、自身の体は意識を失い、完全に無防備となってしまう。
元の体に戻る際、望むなら対象者の能力を奪い取ることが出来る。
だが、能力を奪う度に記憶を失い、最終的に自身が何者かもわからなくなってしまう欠点を持つ。
【詳細】
何の変哲もない普通の女の子。
両親と仲良く暮らしていたが、母親の急死を境に一転。
荒んだ父親から日常的に虐待を受けるようになってしまう。
そんな境遇ゆえか必要以上に人の顔色を窺うようになってしまったが、人の痛みがわかる優しい性格でもある。
助けを求められる人物もおらず、ただ耐え忍ぶ毎日。
優しかったかつての父と、愛する母の記憶を胸に抱き、今も懸命に生き続けている。
【備考】
好物のマカロニサラダは亡き母親の得意料理。
子供向けの教育アニメを好んで観るが、Charlotte等の深夜アニメは存在すら知らない。
また、原作で乙坂有宇が奪い取った能力は異能として与えられていない。


101 : ◆Upy4wcs9SI :2016/09/03(土) 02:03:55 IdcDl6Ng0
【名前】道端 ロクサーヌ(みちばた ろくさーぬ)
【性別】女
【年齢】26歳
【職業】モデル
【服装】ベージュのトレンチコート、ブーツ
【身体的特徴】
プラチナブロンドのウェーブがかかった長髪に抜群のスタイル
……だったのだが、現在は異能の影響で体の大半が異形に侵食されている。
【好きなこと・もの】美味しいもの、美しいもの
【嫌いなこと・もの】料理、蝉
【特技】体が柔らかい
【趣味】美術館巡り
【与えられた特殊能力】名状しがたい力@SAVE/ウズラ
神話生物の部位を全身に纏い、人間では発揮しえない異形の力を操ることが出来る。
怪物の持つ牙や爪の他、眼球や心臓、果ては虫羽や毒腺さえも埋め込まれ、その外見は悍ましい。
かろうじて人の形を保ってはいるが、身体能力は人間の比ではなく、人知を超えた存在とも互角に戦うことが出来る。
【詳細】
日本人の父とフランス人の母との間に産まれたハーフ。
日本ではその名を知らぬ者はいないとされるほどの超有名モデル。
テレビや雑誌を中心に幅広く活動。
自信に満ち溢れ、勝気な発言が目立つが、その一方で礼節を重んじ、曲がったことが許せない実直な一面も。
誰に対しても丁寧な口調ではっきりと話す。
高名な料理人である父のおかげで舌は肥えているが、何故か料理スキルは壊滅的。
【備考】
異能を与えられた副産物として、ウズラが習得していた魔法と空手のスキルも扱うことが出来る。
ニョグダの呪いは浴びていないため、寿命や体調に影響はない。


102 : ◆XksB4AwhxU :2016/09/03(土) 15:50:09 a7hPlrkE0
【名前】側後 健彦 (かわと やすひこ)
【性別】男
【年齢】28
【職業】弁護士
【服装】スーツ姿
【身体的特徴】瞳が黒く、常にポーカーフェイス
【好きなこと・もの】欲しいものは「安心」
【嫌いなこと・もの】少しでも自分の本性を探られる事
【特技】巧みな話術
【趣味】依頼人の観察。人が最底辺の状況に晒される時の「絶望」の表情を観るのが趣味
【与えられた特殊能力】謝債発行機(レンタルポッド)@HUNTER×HUNTER
恩を売った相手の能力を一時的に借りる事の出来る能力。
後述の"条件"を満たすと、発行機にデータが記憶され、リストから対象者の名前、能力名、レンタル回数などが確認できるようになる。
そこから借りたい能力の所有者を選ぶと券が発行され、その券を破る事によって能力が使用可能になる。
レンタルできるのは一回一時間。能力をレンタルされた能力者はその間、その能力が使用出来なくなる。

【詳細】
大手弁護士事務所所属の弁護士。
主に個人の低所得者による、企業の公害問題や不当なリストラなどによる訴訟を担当しており、社会的な信頼は厚い。
しかしその正体は極めて利己的、非常に独善的な人間で、裏で相手の大手企業から多額の賄賂を貰い、
依頼人を精神的に虐待、抹殺し、全ての証拠を闇へ葬り去っている。
自分の依頼人に一回の裁判ごとに法外な金額を請求し、
家から土地、家族など文字通り"全て"をしぼり取り、裁判が終わる直前に自殺に追い込ませる。
今までに担当した依頼人、そしてその家族を何人も"合法的"に抹殺し、誰にも知られる事無く私腹を肥やし続けている。


【備考】
レンタルできる条件は以下の通り。
・対象者の能力の内容とその名前を知る
・恩を売る際に「これは貸しだ」「タダじゃないからな」などと、相手に貸しである事を確認し、かつ相手の同意を得なければならない
・対象者が死亡した場合、データが消え能力はレンタル出来なくなる。


103 : 名無しさん :2016/09/03(土) 19:52:54 OIoBLPZY0
【名前】島原 翼(しまばら つばさ)
【性別】男
【年齢】16
【職業】高校生
【服装】白と青のTシャツの上に白黒ジャケット、ジーンズ。
【身体的特徴】黒髪ストレート、瞳は黒
【好きなこと・もの】ボランティア活動、Fateシリーズ作品
【嫌いなこと・もの】無力な自分
【特技】歴史に詳しい(日本史、世界史どちらも)
【趣味】Fateシリーズのアニメゲーム漫画を楽しむこと
【与えられた特殊能力】衛宮士郎の能力@Fate/stay night
(武器の投影魔術、短時間ではあるが無限の剣製も詠唱すれば展開可能)
【詳細】
Fateシリーズ好きの男子高校生。
特に『Fate/Stay night』の衛宮士郎に憧れており、自分も正義の味方になりたいと思っているが、
同時に士郎のような覚悟や決意は自分にはないと考えており、半ば諦めている。
根は真面目だが、その真面目さから1人で悩み道を外れて暴走してしまうこともしばしば。
士郎というよりは『Fate/Prototype 蒼眼のフラグメンツ』の登場人物、來野巽に近い。
【備考】
一人称:「俺」
アニメを見て以来Fateシリーズのファンであり、その方面の知識は豊富。
他の型月シリーズ作品はかじった程度。
また、家族に妹がおりその点も來野巽との共通点がある。
成沢 弥生(>>77)とはクラスメート。憧れのものを目指す者同士親近感を抱いている。
四季邑 飛鳥(>>74)とは中学生時代のクラスメート。自分よりも運動ができる彼に憧れていた。


104 : ◆IGqhVK/Nqo :2016/09/03(土) 19:53:48 OIoBLPZY0
>>103
すみませんトリップ忘れてました。


105 : ◆YJZKlXxwjg :2016/09/03(土) 21:22:21 M3BhdBVc0
【名前】小路瀬 間栖夜(ころせ ますよ)
【性別】男
【年齢】20台後半
【職業】三流殺し屋
【服装】黒いマント、黒スーツ、黒靴
【身体的特徴】黒目 黒髪
【好きなこと・もの】アクション映画鑑賞 ジャンクフードを山ほど食べること
【嫌いなこと・もの】堅苦しい食事 虫 夏
【特技】変装・指弾
【趣味】アクション映画鑑賞
【与えられた特殊能力】『ニュータイプ能力@機動戦士ガンダム/アムロ・レイ』
【詳細】
三流の殺し屋。子どもの頃にみた殺し屋の映画に憧れ、殺し屋になる。
殺し屋をする理由は一つ『カッコいいから』である。
腕前はそこそこある癖に、何故か現場でイレギュラーな事態に巻き込まれる事が多く、成功率は30%ほどしかない。
失敗の際は当然大騒ぎとなるが、悪運は強く何故かいつも姿はバレることなく逃げ切れてしまう。
その成功率の低さから彼を雇う者は少ない。そのため格安の報酬で依頼を請け負っており、基本貧乏。
大口の依頼はなく、個人的な怨恨の解決やヤクザの鉄砲玉替わり的な依頼が大半である。
とはいえ、彼自身殺し屋の仕事を死ぬほど気に入っており、どんな危険な目にあっても楽しんで仕事をしている。
人殺しに忌避はないが、殺し自体に快楽を覚えている訳ではなく、飽くまで『殺し屋している俺カッコいい』を地でいく、中二病患者である。
殺し屋のスキルとしては変装と指弾。映画で憧れた殺し屋の特技であり、幼少時より鍛錬し続けて身に着けた技。
依頼は基本この2つのスキル頼りで行われ、変装で潜入、ターゲットに接近し指弾で殺害していくパターンが常である。
スキル自体は一流で、指弾であれば急所に命中させれば人を殺せ、変装も(イレギュラーなことがなければ)そうバレることはない。
単純な戦闘力は低く、拳銃やナイフなど武器は扱えず、腕っぷしも空っきり。ただ逃げ足は速い。


【備考】
一人称は「僕」。
黒づくめの恰好も、映画で憧れた殺し屋を真似したもの。
依頼をこなす時も、依頼人と会う時も、普段も、この恰好。というか変装している時以外は一年中この恰好。
そのせいか夏場は苦手。


106 : ◆YlfcDuGY1. :2016/09/03(土) 21:24:44 Df0M23.Y0
ここまで集まったキャラをまとめてみる

○名前/性別/年齢/職業/能力

○千原 亜希/女/17/高校生/サム・ライミ版スパイダーマン
○増田 ユーリ/女/17/元アイドル/マジカルエミ
○ロック・パンサー/男/29/ボクサー/超人兵士血清(キャプテン・アメリカ)
○ダイナン・ガイアット三世/男/20/用心棒/ウルトラマン
○岩井 政隆/男/40代後半/警察官巡査長/マジシャンズ・レッド
○河野 明代/女/43/風俗嬢/巨人化
○井上 快夢/女/17/アイドル/ウタウタイ
○郷音 ツボミ/女/18/アイドル/ガングニール
○石黒千晶/女/17/高校生/『直感』
○四季邑 飛鳥/男/16/高校生/直死の魔眼

○笹原卓/男/17/高校生/幻想殺し
○成沢 弥生/女/16/高校生/呪腕のハサンの能力と技術
○島津 蒼太/男/17/高校生/『腹話術』
○結城キユ/男/17/高校生/朱色の魔本
○蘭堂虎竜太/男/16/高校生/ドアドアの実
○八神そう/女/9/小学生/マイティ・ソー
○御船ジャック/男/9/小学生/テッカマンブレード
○藤崎直哉/男/20/大学生/セト神
○科学教師/男/不明/浮浪者/ハーミット・パープル
○夜之 憂/女/9/小学生/テッカマンエビル

○KENGO/男/17/高校生・アイドル/大嘘憑き
○伊丹沢 妙/女/10/小学生/略奪
○美談 展夫/男/31/捜査官/毒電波
○天草士郎/男/16/高校生/仮面ライダーキバ
○河野 英雄/男/41/ヒモ/ガッツ星人
○天草 ゆたか/女/16/高校生/ミッドチルダ式の魔法
○後藤 万緒/女/16/高校生/人修羅
○真島 芳郎/男/32/フリーター/ハイウェイ・トゥ・ヘル
○大木 潮/男/24/フリーター/ギニューのボディーチェンジ
○沢松井之助/男/10/小学生/星のカービィのボム

○道端 ロクサーヌ/女/26/モデル/名状しがたい力
○側後 健彦/男/28/弁護士/謝債発行機(レンタルポッド)
○島原 翼/男/16/高校生/衛宮士郎の能力


33/40
残りキャラ枠 7人


107 : ◆YlfcDuGY1. :2016/09/03(土) 21:26:40 Df0M23.Y0
>>105も含めれば残り6枠だね


108 : 名無しさん :2016/09/03(土) 21:39:23 OIoBLPZY0
まぁたとえ40人オーバーしても先着順じゃないだろう。
最終的に選ぶのは>>1だし、
>>1のコメントからして何人かは投票か書き手枠かは分からないけど
選出するみたいだし


109 : ◆x61iQ1APEQ :2016/09/03(土) 22:00:10 hWReEtmU0
【名前】地納力也(ちのう りきや)
【性別】男
【年齢】26
【職業】無職
【服装】見るからに安物
【身体的特徴】髪や髭が伸びっぱなし、目が死んでいる。
【好きなこと・もの】ほめられること
【嫌いなこと・もの】批判、マスコミ
【特技】手品、超能力(自称)
【趣味】無し
【与えられた特殊能力】サイコ・ロック@逆転裁判/成歩堂隆一
【詳細】
かつて世間を賑わせた元超能力少年。
主に読心術を得意としており、当時はテレビに出ない日はなかった。
しかし週刊誌にやらせがすっぱ抜かれ、凋落。そして家族離散。
その後は祖父母に引き取られたが、情緒不安定で育児を放棄される。
やがてその祖父母も病死し、今は当時の貯金で細々と暮らしている。
【備考】
やらせ自体は彼の親とテレビスタッフが主導しており、彼自身にその自覚はなかった。
ボロが出ないように洗脳に近い形で自分が超能力者であると思い込まされており、
現在でも自身が超能力者であったという過去は疑ってはいない。


110 : ◆S8Lr4.GGho :2016/09/03(土) 22:10:41 3Slaft3A0
【名前】月宮埜々香 (つきみやののか)

【性別】女

【年齢】16

【職業】JK

【服装】セーラー服

【身体的特徴】
呪いのビデオのあの人に似てる。
そこそこ整った顔立ちだが、目の隈が目立ち、全体的に不健康。手首にリスカ跡がある

【好きなこと・もの】
ダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリン…… あぁ……愛してる

【嫌いなこと・もの】 
拒絶、孤独、リア充

【特技】
愛の追跡(ストーキング)
盗撮や盗聴も御手の物。
愛のなせる技なのか、素人とは思えないほど隠蔽工作に優れている。

【趣味】
天草のことを考えながらリスカすると最高に気持ちいいことに気がつき、それ以降貧血ぎみ。
暇なときは大抵、部屋でダーリンの写真を眺める、鑑賞する、ペロペロする。ダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリン!!好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き!! 大 好 き ! !

【与えられた特殊能力】
ペテルギウス・ロマネコンティの怠惰の権能と憑依能力@ゼロから始まる異世界生活
怠惰の権能は不可視の黒い腕を操るが、制限で見えるようになっている。
憑依能力については『月宮と面識があり』『性別が同じ』『死亡したときに近くにいる』対象にしか乗り移れないように制限されている。

【詳細】
天草士郎(あまくさ しろう) >>92に執着するストーカー。メンヘラでヤンデレでちょっとキチガイ。
愛してるならば何をしてもいいと自分を正当化するタイプで、盗撮盗聴など犯罪スレスレの愛を繰り広げている。

【備考】
天草とは接点どころか面識すらないのだが、半年前に落とし物を拾ってもらっただけで彼に一目惚れ。
元々内気で交遊関係も狭く、思い込みが激しかったためにヤンデレと化した。


111 : ◆7PJBZrstcc :2016/09/03(土) 22:19:42 wWKaV4jY0
【名前】笹原天音(ささはら あまね)
【性別】女
【年齢】14
【職業】中学二年生
【服装】学生服
【身体的特徴】黒髪ポニーテール、アイドル並の容姿
【好きなこと・もの】サブカルチャー全般、兄
【嫌いなこと・もの】勉強
【特技】スポーツ
【趣味】サブカルチャー全般
【与えられた特殊能力】螺旋力@天元突破グレンラガン/シモン
【詳細】
両親と高校生の兄を持つ女子中学生。
明るく活発な性格で、勉強は少し苦手だがスポーツ万能。部活こそ入っていないもののたまに助っ人をしている。
普段はアニメを見たりゲームしたり、割と自堕落に暮らしている。
兄である笹原卓とは仲が良く、一緒に遊んでいることも多かったが最近は少し減った。
【備考】
一人称は「あたし」
【交遊関係】
笹原卓(>>76):実の兄で仲は良い。最近様子がおかしい気がする。


112 : ◆S8Lr4.GGho :2016/09/03(土) 22:36:21 3Slaft3A0
【名前】鈴宮ミカ
【性別】女
【年齢】16
【職業】高校生
【服装】厚手のパーカーに分厚いマスク。あまりお洒落には頓着しない
【身体的特徴】全身に火傷。目が死んでる
【好きなこと・もの】ナメクジ
【嫌いなこと・もの】安い同情
【特技】我慢する
【趣味】ガーデニング
【与えられた特殊能力】
ビタミンC/田最環@ジョジョリオン
道化師とも悪魔ともとれるような容姿のスタンド。肩から下が無数の腕に覆われている。
本体があらかじめ付けておいた指紋に触れた人間を、ビニールか熱したチーズのように軟らかくして溶かしてしまう能力。
この能力に捕らわれたら最後、本体は抵抗がほとんどできなくなるばかりか、スタンドも軟らかくなって無力化してしまう。
なお、肉体は軟化しても痛覚はそのままらしく、拷問や尋問にも使える。
射程距離が指紋で作った結界内というやや変わった性質のスタンドだが、中の人間を悉く軟化させてしまう能力と、近距離型スタンドのラッシュも捌ききるスピードを持つ強力なスタンド能力である。
ただその性質上、結界の外からの攻撃には対処できない模様。軟化現象も、結界外に脱出すれば元に戻る

【詳細】
元々は活発系美少女だったが、火事により肉親を亡くし、自身も顔から足にかけての左半身に大きな火傷を負った。
現在でも火傷痕が残っており、そのことがコンプレックスとなり以前の快活さは失われてしまった。
なお、両親の生命保険がいつのまにか8割程親戚間で分配され、奨学金で高校に通い、リストカットの経験もあるなど相当どころじゃない苦学生である。

【備考】
火事や親戚の態度からか人間不信になっており、特に火傷に安易な同情的を抱く相手を毛嫌いしている。


113 : ◆IPU8SGkvmQ :2016/09/03(土) 22:45:27 nkjpHq5A0
【名前】斎藤混沌(さいとう カオス)
【性別】男
【年齢】13歳
【職業】中学二年生
【服装】改造していない普通の制服を着崩している
【身体的特徴】左目に眼帯、右腕に包帯、髪は黒髪に赤のメッシュ
【好きなこと・もの】アニメ・漫画・ラノベ観賞
【嫌いなこと・もの】勉強、心配されること
【特技】中二病的発言をスラスラ言える
【趣味】アニメや漫画の技名を大声で叫んだり、公共の場で右腕が疼いたりする事
【与えられた特殊能力】『影』(シャドー)@海外ドラマHEROS REBORN/フィービー
 両手から黒い靄のような影を出し、周囲の能力者の能力を使えなくする。(掌に少し出しただけで数メートルは効果が及ぶ)
 影は人間の体内では有毒であり、大量に入れば死に至る。また、紐状にして物を持ち上げたり、物を破壊する事も可能。

【詳細】
 親に痛いDQNネームを付けられ、絶望して二次元に現実逃避していたら中二病になってしまった少年。
 はからずも名は体を表す感じになってしまったが、「これも運命か……」などとそこそこ名前を受け入れ始めている。
 わりとヘタレで引かれたり馬鹿にされるのは耐えられるが、本気で心の病を心配されるとヘコむ。
 DQNな親に怒られるのが怖いので、装飾や着崩しはするが制服にダメージが入ることはしない。

【備考】
 一度右手が急に疼きだしてお菓子を万引きをしたことがあるが、罪悪感で一ヶ月悪夢にうなされた。


114 : ◆N.AC9rXJ/I :2016/09/03(土) 22:45:59 56RgKFRM0
40人はある程度超えてもokです
10人程度は投票で決定したいかと


115 : ◆x61iQ1APEQ :2016/09/03(土) 23:04:15 hWReEtmU0
【名前】花浦昨亜(はなうら さくあ)
【性別】女
【年齢】14
【職業】中学生
【服装】全体的にゆったりとした恰好
【身体的特徴】「ぽっちゃり」
【好きなこと・もの】料理、食べること
【嫌いなこと・もの】食べ残し
【特技】創作料理の開発
【趣味】外食
【与えられた特殊能力】ポイズンクッキング@家庭教師ヒットマンREBORN!/ビアンキ
【詳細】
本人曰く「ぽっちゃり」な少女。
料理を作るのも食べるのも大好きであり、食が満たされると皆が幸せであると信じている。
いつか店を持って自分の料理をより多くに人たちにふるまうことが夢である。
【備考】
周りの友人たちよりも「美味しい」と感じる範囲がやや広い。
そのため、彼女の料理は友人たち笑顔よりもを微妙な表情にしてしまうことが多い。
いつか心からの笑顔を見るために彼女か今日も腕を磨く。


116 : ◆/SrI0Wa0Uo :2016/09/03(土) 23:10:38 RZTjMEKE0
【名前】爽超裕太(さわごえ ゆうた)
【性別】男
【年齢】18
【職業】高校三年生
【服装】学生服
【身体的特徴】整った顔立ち、高身長
【好きなこと・もの】少女漫画
【嫌いなこと・もの】汚れ
【特技】弓道
【趣味】音楽を聴く
【与えられた特殊能力】マギウスの能力@革命機ヴァルヴレイヴ/時縞ハルト
心肺を損傷しても死なない再生・蘇生能力。
但し、自身のルーンを全消費した場合及び本体が全消滅に近いダメージを受けた場合は死亡する。
また、噛み付いた相手の身体を乗っ取る「ジャック」という能力も有する。
ジャックされた側の意識は封印され、ジャックされた間の記憶を失う。
ジャックした人間の戦闘能力といった後天的な手続き記憶も乗っ取っている間は使用できる。
本体の肉体に噛み付けばその状態は解除される。
定期的に他人に噛み付き、情報原子RUNE(ルーン)を補充しなかった場合、理性を失って凶暴化する。
【詳細】
品性方向な学生であり、常に学年三位以内に入る成績をキープし、教師にも将来が有望されている。
…というのは表の姿。
彼の実態は過去50人以上の女性をレイプしてきた連続強姦魔である。
特定の時間帯になると覆面を被り強姦魔に変わり、ターゲットの女性と事に及んだ後は現場に捻ったおしぼりを置いて速やかにその場を去る。
彼のレイプには一定のルールが設けられており、「水曜日はポストの側では事に及ばない、但し緑色のポストは例外」、「ターゲットが子連れ且つ子供が娘の場合、下一桁の数字が若い順に犯す」等がある。
【備考】
彼の初体験は母親である。


117 : 名無しさん :2016/09/03(土) 23:34:35 a7hPlrkE0
>>103ですが、謝債発行機の能力のレンタル条件は
・対象者の能力の内容とその名前を知る ではなく
・対象者の能力を実際に見るか能力名を知る
でした。訂正いたします


118 : 名無しさん :2016/09/03(土) 23:36:15 a7hPlrkE0
>>102でした、失礼しました


119 : ◆S8Lr4.GGho :2016/09/03(土) 23:42:21 3Slaft3A0
【名前】阿良 愛(あらぎ あい)
【性別】女
【年齢】25
【職業】警察官
【服装】女性警察官の制服、下着はサラシと褌という謎過ぎるセンス。
【身体的特徴】腹筋が割れてる
【好きなこと・もの】市民の笑顔
【嫌いなこと・もの】理不尽なルール、誰かを悲しませるもの
【特技】瓦100枚割り。
【趣味】鍛練
【与えられた特殊能力】
スパルタクスの宝具とスキル@Fate/(「疵獣の咆吼」、狂化、被虐の誉れ)
【詳細】
正義感に燃える新米婦人警官。
父が自衛官で母が刑事。幼少の頃から道徳と正義を説いた両親の影響により、正義の味方を志すまっすぐな女性に育った。
元自衛官で、二十歳の時に陸上自衛隊に入隊し、五年間の所属を経て警察官に転職した。
天真爛漫で裏表がなく、若干の天然。空気が読めずズケズケとものを言う。
その性格と童顔も相まってかなり子供っぽく見えるが、その胸には『何もしない善より、誰かを助ける偽善が良い』という確固たる信念を持つ。
見かけに似合わずかなりの武道派で、野生の熊相手にナイフ1本&格闘術だけで渡り合って勝利する程の猛女。かつての同僚からは『熊殺しの愛ちゃん』の異名をもつ。
【備考】
学生時代はスポーツに打ち込んでいたため、サブカルチャーには詳しくない。Fateを知らない。
ただし狂化スキルはしっかりと機能している。
さすがに"常にもっとも困難な選択をする"訳ではないだろうが、状況選択で何らかの影響を受けるのは避けられない


120 : ◆RzdEBf96bU :2016/09/04(日) 01:25:09 U9hG054w0
【名前】風 浩太
【性別】男
【年齢】24
【職業】無職
【服装】くたびれた印象の服装
【身体的特徴】片方の目がつぶれた男
【好きなこと・もの】煙草、酒、ギャンブル
【嫌いなこと・もの】世の中の不条理
【特技】逃げ足の速さ
【趣味】麻薬
【与えられた特殊能力】ヘイ・ヤー@スティール・ボール・ラン
【詳細】
ケチなヤク中のチンピラで、性根は歪みきっている
彼の人生を一言で言い表すなら不運。
小学生の頃、状況証拠だけで泥棒の犯人にされ、クラスメイトからいじめを受けたことを皮切りに、
安全に気を付けていたのに理科の実験でビーカーが割れて彼だけけがを負い、
酔っぱらってゴミ箱をひっくり返したら女の死体が出てきて殺人犯にされかけるは
挙句痴漢冤罪を掛けられそうになり、逃げようとしたら乗っていた電車が事故を起こして
ほとんどの乗客が大したけがを負わなかったのに、風だけ転倒し、転んだ先にあった傘で片目を
潰す大けがを負った
何の罪も犯していない自分に降りかかる世の中の不条理さに憎しみを感じ、
どん底から這いあがって幸せになりたいと願っている

【備考】
ちなみに余りの不幸に絶望して何度も自殺しようとしたが一回も成功することはなかった
それは死んで逃げることもできない彼の不幸である


121 : ◆S8Lr4.GGho :2016/09/04(日) 02:35:20 gpr9YN.E0
【名前】桂岡 笑顔 (かつらおか えがお)
【性別】女
【年齢】14
【仕事】中学生
【服装】黄色いジャージ
【身体的特徴】健康的に日焼けしている、笑顔がとても似合う女子
【好きなこと・もの】お笑い
【嫌いなこと・もの】梅干し
【特技】頑張る
【趣味】ネタを考える
【与えられた特殊能力】
SCP-1799『ミスター・おわらい』の能力・特性@SCP Foundation
会話する言葉のすべてジョークとして聞き手に受け取られる能力。聞き手に対し話す時間が長いほど「ジョーク」は愉快さを増していき、ついには相手は笑い転げてしまう。
……これだけなら無害に思えるかもしれないが、どんなパターンで話しかけても相手が笑い転げてしてしまうため、意思疎通が極めて困難になる。
唯一、対象と意思疎通する方法は、筆記を通じて会話を行うこと。
さらに人体には不可能な以下の行動が、苦痛を伴うができるようになる。
手足をはずして、またくっつける。
最長で45.2mを計測した、ひとつながりの色とりどりの布を口から引っ張り出す。
あちこちの体の穴から色のついた煙が出る

【詳細】
 お笑い芸人を目指す中学生で、ひびネタの開発や相方探しに勤しんでいるが、絶望的に笑いのセンスが無い残念な子。
 どのくらいセンスが無いのかというと、作るネタのほとんどが親父ギャグのレベル。
クラスでネタを披露した時についたアダ名は「おっさん」。
 ただし、本人はそんな評価を気にもしていない。「努力すれば夢は必ず叶うんや!by松岡」……前向きである

【備考】
両親が関西出身なので関西弁で喋る。


クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、
SCP FoundationにおいてRoget氏が創作されたSCP-1799のキャラクターを二次使用させて頂きました。


122 : ◆S8Lr4.GGho :2016/09/04(日) 03:59:50 gpr9YN.E0
【名前】鏑木シリカ
【性別】女
【年齢】14
【職業】中学生
【服装】ボロいパーカーとズボン。
【身体的特徴】
イギリスとのハーフで、日本人離れした整った容姿をしている。普段は厚着で隠しているが、素肌は青アザや火傷が絶えない
【好きなこと・もの】うまい棒
【嫌いなこと・もの】暗いところ
【特技】我慢する
【趣味】絵を描く
【与えられた特殊能力】
キャスター(ジル・ド・レェ)の宝具・スキル@Fate/(陣地作成、精神汚染、芸術審美、深淵の邪視)
【詳細】
五歳の時に両親が事故死し、親戚をたらい回しにされ、冷遇されるなかで人間の汚さを幼いながらに痛感。
結局、遠縁を名乗る男に引き取られるもその容姿から虐待を受けている。
【備考】
……犬や猫を殺して、その死体で遊ぶとこの上ない幸せな気分に包まれるらしい


123 : ◆IGqhVK/Nqo :2016/09/04(日) 10:13:06 ts4pTihc0
【名前】フレイス
【性別】オス
【年齢】5歳(人間年齢でいうと20代くらい)
【職業】なし
【服装】動物なのでなし
【身体的特徴】トラそのものだが、一本だけ縞模様が光線に似た白い部分がある。
【好きなこと・もの】自然、同じ種族のトラ
【嫌いなこと・もの】人間、空腹の時
【特技】危険を感知すること
【趣味】爪とぎ
【与えられた特殊能力】ピカピカの実@ワンピース/ボルサリーノ
(光となって光速移動や、レーザーの発射、光攻撃も光になって受け流すことが出来る)
【詳細】
とある島に生息するトラ。かつては自然豊かな場所で生活をしていたが、
そこへ人間が入り込んできて住処を追い出されてしまった。
自分の仲間と美しい自然を破壊した人間を憎んでおり、復讐を決意。
仕掛けられた罠を見つけ壊したり、ハンターを分断させて各個撃破するなど
動物とは思えないほど賢い。
【備考】
フレイスという名前も体の特徴から人間がつけた名前。


124 : ◆YlfcDuGY1. :2016/09/04(日) 11:21:20 Wl3qhNQY0
【名前】丹美 寧斗(タミ ネイト)
【性別】男
【年齢】28
【職業】株のトレーダー
【服装】黄色いTシャツに短パン
【身体的特徴】低身長童顔で10歳前後の少年にしか見えない外見
【好きなこと・もの】生き物を殺すこと、ロリポップキャンディ
【嫌いなこと・もの】刑事、岩井 政隆
【特技】工具の扱い、株の取引
【趣味】野良猫や野良犬の殺害・解体、子供たちと遊ぶ
【与えられた特殊能力】T-1000@ターミネーター2
T-1000と同じく肉体が液体金属化していることで変幻自在に姿を変えられる。
体の一部を刃物や刺突物に変えて敵を殺傷させることも可能。
液体金属ゆえに銃弾や衝撃に対しては穴が開けたりひるませたりすることはできても殺すことはできず、元の形に再生できる。
欠点としては、体を銃や爆弾のような飛び道具に変えることはできない。
液体窒素のような強い冷気では凍りつき、行動不能になる(温めれば復活する)。
超高温や強酸でも溶解してしまうなど、科学的攻撃にはめっぽう弱い。

【詳細】
よく空き地で近所の子供たちと遊んでいるところを目撃される児童。
正体は小人症(実在の病気)を患った影響で子供に見える成人男性。
更に言えば元殺人鬼で、生き物を解体するのが大好きな、破壊衝動の強いとんでもないサイコパス。

本名は網空 仙一(アミゾラ センイチ)。
12歳の時に「チビ呼ばわりしてムカついた」という理由で、1人の教師と4人もの同級生を一人づつ殺害・解体し、世間を騒がせた(衝動的犯行ではなく計画的犯行)
最後にボロが出て逮捕されるも、少年法による保護と精神異常者であることにより刑罰は見送られて、精神病院に閉じ込められる。
しかし、10年以上たっても反社会的な精神が治る見込みがまるでなく、病院生活に痺れを切らし、ついには病院を脱走する。

現在は自殺者の名義を使って、株の取引をしながら生計を立て、足がつかないように野良猫や野良犬を殺すことで衝動を抑えることで社会に潜伏している。
だが、胸には何にも縛られずに人を沢山解体したいと恐ろしい願いを持っている。

【備考】
小人症は殺人鬼・網空と周囲にバレないために利用している。
ほぼ完璧に子供を装う、株の取引ができる、バレずに犬や猫を殺せるなど、狡猾で頭の回るタイプ。
ただし、同年代の子供と会話中にジェネレーションギャップを引き起こすこともしばしば。(例:ドラえもんが青くなった理由は「泣き続けた振動でメッキがはげた」ため、駄菓子「こざくら餅」の初期の量を知っている)
また、少年時代の大半を精神病院で過ごした影響で、子供達と公園で遊ぶのが楽しくて仕方ないという一面も。

【交友関係】
岩井 政隆→自分を逮捕した警官であり、逆恨みしている一方、顔も知られているため、鉢合わせするのを恐れている。


125 : ◆Upy4wcs9SI :2016/09/04(日) 14:51:39 e7CnBX6s0
【名前】三船 響子(みふね きょうこ)
【性別】女
【年齢】33歳
【職業】書店の店員
【服装】グレーのセーター、濃紺のロングスカート
【身体的特徴】淡い栗色の長髪、豊満な肉付き
【好きなこと・もの】夫、湯葉、ケーキ
【嫌いなこと・もの】爬虫類
【特技】ボタンの縫い付け
【趣味】読書
【与えられた特殊能力】新型デュエルディスク@遊☆戯☆王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS/海馬瀬人
海馬瀬人の叡智と執念の結晶。
自我を増幅させ、自身の存在や意識を塗り潰そうとする攻撃(憑依、洗脳、空間転移など)に対して耐性を得る。
また、ディスクから排出される非実在のカードを使用し、モンスターのビジョンを具現化させることが出来る。
(排出されるカードは『青眼の白龍』など、海馬瀬人が使用していたもの)
ビジョンはその場に実在しているかのようなリアリティを持つが、あくまでイメージであるため、物理的なダメージは発生しない。
【詳細】
都心から離れた一軒家でひっそりと暮らす女性。
あまり人と接することを好まないが、優しく物静かなおっとりとした人であるため、近隣住人からの評判はいい。
活字を読む際には眼鏡を使用する。
運動不足のせいか、最近は尻が大きくなってきたことが密かな悩み。
元来は朗らかで笑顔の眩しい女性であったが、28歳の時に交通事故で夫を失ってから、笑うことが少なくなった。
当時の事件を未だに引きずっており、再婚出来ないでいる。
もしかしたら、いつの日か彼が帰ってきてくれるのではないか。
そんなありもしない望みを抱きながら、今も彼の幻影を追い続けている。
【備考】
デュエルディスクそのものが異能として支給されている。
そのため、別の人間が装着した場合はその人物に能力の使用権が移行する。


126 : 名無しさん :2016/09/04(日) 16:04:03 .pm5bB720
デュエルディスクは固有の能力じゃないのでは


127 : ◆BNxC/Vtkps :2016/09/04(日) 17:28:20 R/F6xPe60
【名前】戸柱好羽 (とばしら よしは)
【性別】女
【年齢】17
【職業】高校二年生
【服装】一般的な学生服
【身体的特徴】黒髪ぱっつん、「普通」と言う事がこれ以上もなく似合っている
【好きなこと・もの】静かなところ、音楽
【嫌いなこと・もの】雑音、不良、郷音ツボミ(>>71)やKENGO(>>88)と言った売れっ子アイドルの流行曲
【特技】特になし
【趣味】音楽を聞く事。
【与えられた特殊能力】日暮熟睡男の能力@こちら葛飾区亀有公園前派出所
起床している間、以下の能力を行使可能。
・24時間以内の未来を予知出来、その光景をポラロイドカメラに念写出来る。
・念力能力。ただし自身の機嫌が悪くなると暴走する。
・テレポーテーション。ただし5mが限界。
・透視能力。
原作では起床は4年に一度だが、今回では4日に一度に短縮されている。
起床日時以外の時に起こすと理性が保てなくなる。
寝起き直後は能力の調子が悪い。また能力を余りにも酷使した場合、眠りに入ることが出来なくなる。
また制限として目覚ましなどを利用して自力で起床日時以外の日に起きる事は不可能。
【詳細】
気弱で臆病な性格。引っ込み思案で、断る事が苦手。
その性格が災いし、一時期不良グループの財布としてこき使われていた。
非常に音に敏感であり、わずかな物音でも目が覚めてしまう。
【備考】
こち亀自体は聞き齧った程度しか知らない。
【交遊関係】
蘭堂虎竜太(>>80):パシリにされていた不良グループのメンバー。


128 : 名無しさん :2016/09/04(日) 18:36:57 JV.iHHX.O
>>81さん、トリつけ忘れてますよ


129 : ◆x61iQ1APEQ :2016/09/04(日) 21:47:51 E2F9Y0zk0
【名前】篠根優五(ささね ゆうご)
【性別】男
【年齢】35
【職業】空き巣、スリ
【服装】基本的には黒
【身体的特徴】坊主頭、痩せ気味
【好きなこと・もの】金
【嫌いなこと・もの】警察、血
【特技】手先が器用、変装、応急手当
【趣味】競馬、パチンコ、ネットカフェに入り浸ること
【与えられた特殊能力】バラバラの実@ONE PIECE/道化のバギー
【詳細】
空き巣歴20年にして前科0犯の自称プロ。
今までに一度も真っ当に働いたことはなく、すべて他人から盗んだ金で生活している。
何よりも捕まらないことを優先しており、住民に姿を見られると利益がなくとも一目散に逃走する。
ただ怪我人や病人がいた場合は別であり、応急手当や救急車を呼ぶなどぎりぎりまで適切な対応を取ろうとする。
本人は臆病者だと言い張っているが、知り合いからはむしろスリルジャンキーを疑われている。
【備考】
上記の特殊な行動から、警察などでは彼の個人情報は不明だが存在は広く知られている。

科学教師:顔見知り程度に親交はある


130 : 名無しさん :2016/09/05(月) 13:42:16 ubXVBOlc0
ウルトラマンや巨人化能力とかサイズが企画進行に支障がありそうなんだが


131 : 名無しさん :2016/09/05(月) 14:58:38 tR4rMKqYO
ウルトラマンは大きさを人間サイズにすることができる
巨人化能力はザコ巨人の3〜18mぐらいの大きさだろうし
どっちも制限で変身する時間は限られている


132 : 名無しさん :2016/09/05(月) 15:12:15 ubXVBOlc0
サイズの大きい奴は強さとはまた違うキャラの行動に関わる問題がある


133 : 名無しさん :2016/09/05(月) 15:19:25 KrXb9sW60
巨大ロボを出して完結したアニロワ2をご存知でない?
ロワの本質は不平等って某ロワのエース書き手が言ってたっけな
個人的には本質だとは思わないけどな


134 : 名無しさん :2016/09/05(月) 15:23:37 ubXVBOlc0
そういうこと言ってるんじゃないんだが(^^;;
まぁ、いいや


135 : 名無しさん :2016/09/05(月) 15:38:21 7n4/C1j60
そもそも巨大化能力は首が太くなった結果首輪が破壊されてその爆発で死ぬんじゃない?
死なないならそれ参加者じゃないし


136 : 名無しさん :2016/09/05(月) 15:58:17 tR4rMKqYO
>>132
等身大のキャラと比較すると巨大化キャラは

・他の参加者から視認されやすくなる
・足の長さ大きさが人間時より桁違いに大きくなり、移動速度が早くなる
・ちょっと暴れただけで建物が倒壊する、本気で暴れれば一区画が瓦礫の山になる

ってところかな。


>>135
首輪も同時に大きくなる、もしくは巨大化した肉体の中に取り込まれる
進撃の巨人に登場する巨人化能力者は衣服も一緒に巨人の体に取り込まれてる描写があるから、首輪も衣服と同じ扱いと考えるのが妥当だと思う


137 : 名無しさん :2016/09/05(月) 16:58:10 HAK7Qu9A0
>>133
巨大ロボ出てきたのって終盤もいいとこじゃないっけ?

正直数十メートル級の巨大化はやめてほしいなあ
下手すれば会場全土から確認できるサイズにまで巨大化となると、同時間帯のキャラの動きで矛盾起こりやすくなるし
会場が原作通り大きな建造物や遮蔽物のない小島なら尚更目立って仕方ないというか
進撃の巨人のザコ巨人サイズならギリギリいけるとは思うけど


138 : 名無しさん :2016/09/05(月) 20:52:09 IrXLD.HY0
まぁ最終的な決定権は>>1にあるのがここの板のルールだし、
>>1が巨大化能力がアリって言ったらそれはアリだけどね


139 : 名無しさん :2016/09/06(火) 03:25:39 BZZeOE0cO
>>137
なるほど、そういうメタ的な考慮もあるのか
考えつかなんだ

それじゃあ>>1次第でもあるけど、企画を考慮してダイナンのウルトラマンでの巨大化は最大10mぐらいにしておくべきか
これぐらいなら>>137のメタ的デメリットは発生しないだろうし


140 : 名無しさん :2016/09/06(火) 19:40:45 cQjjhA.20
ここまで集まったキャラをまとめてみる

○名前/性別/年齢/職業/能力

○千原 亜希/女/17/高校生/サム・ライミ版スパイダーマン
○増田 ユーリ/女/17/元アイドル/マジカルエミ
○ロック・パンサー/男/29/ボクサー/超人兵士血清(キャプテン・アメリカ)
○ダイナン・ガイアット三世/男/20/用心棒/ウルトラマン
○岩井 政隆/男/40代後半/警察官巡査長/マジシャンズ・レッド
○河野 明代/女/43/風俗嬢/巨人化
○井上 快夢/女/17/アイドル/ウタウタイ
○郷音 ツボミ/女/18/アイドル/ガングニール
○石黒千晶/女/17/高校生/『直感』
○四季邑 飛鳥/男/16/高校生/直死の魔眼

○笹原卓/男/17/高校生/幻想殺し
○成沢 弥生/女/16/高校生/呪腕のハサンの能力と技術
○島津 蒼太/男/17/高校生/『腹話術』
○結城キユ/男/17/高校生/朱色の魔本
○蘭堂虎竜太/男/16/高校生/ドアドアの実
○八神そう/女/9/小学生/マイティ・ソー※1
○御船ジャック/男/9/小学生/テッカマンブレード
○藤崎直哉/男/20/大学生/セト神
○科学教師/男/不明/浮浪者/ハーミット・パープル
○夜之 憂/女/9/小学生/テッカマンエビル

○KENGO/男/17/高校生・アイドル/大嘘憑き
○伊丹沢 妙/女/10/小学生/略奪
○美談 展夫/男/31/捜査官/毒電波
○天草士郎/男/16/高校生/仮面ライダーキバ
○河野 英雄/男/41/ヒモ/ガッツ星人
○天草 ゆたか/女/16/高校生/ミッドチルダ式の魔法
○後藤 万緒/女/16/高校生/人修羅
○真島 芳郎/男/32/フリーター/ハイウェイ・トゥ・ヘル
○大木 潮/男/24/フリーター/ギニューのボディーチェンジ
○沢松井之助/男/10/小学生/星のカービィのボム

○道端 ロクサーヌ/女/26/モデル/名状しがたい力
○側後 健彦/男/28/弁護士/謝債発行機(レンタルポッド)
○島原 翼/男/16/高校生/衛宮士郎の能力
○小路瀬 間栖夜/男/20台後半/三流殺し屋/ニュータイプ
○地納力也/男/26/無職/サイコ・ロック
○月宮埜々香/女/16/女子高生/ペテルギウス・ロマネコンティの怠惰の権能と憑依能力
○笹原天音/女/14/中学生/螺旋力
○鈴宮ミカ/女/16/高校生/ビタミンC
○斎藤混沌/男/13/中学生/影(シャドー)
○花浦昨亜/女/14/中学生/ポイズンクッキング

○爽超裕太/男/18/高校生/マギウス
○阿良 愛/女/25/警察官/スパルタクスの宝具とスキル
○風 浩太/男/24/無職/ヘイ・ヤー
○桂岡 笑顔/女/14/中学生/ミスター・おわらい
○鏑木シリカ/女/14/中学生/キャスター(ジル・ド・レェ)の宝具・スキル
○フレイス/オス/5/なし(虎)/ピカピカの実
○丹美 寧斗/男/28/株のトレーダー/T-1000
○三船 響子/女/33/書店の店員/新型デュエルディスク※2
○戸柱好羽/女/17/高校生/日暮熟睡男
○篠根優五/男/35/空き巣、スリ/バラバラの実

ちょうど50名
※1=トリップを付け忘れている
※2=>>126より、デュエルディスクは装備品であって固有の能力じゃないのでは……?


141 : 名無しさん :2016/09/07(水) 14:50:44 5J4ALhTI0
キャラ投下の期限は9/18の24時まではまだ大分時間があるけど、とりあえずロワができる人数は集まったな


142 : 名無しさん :2016/09/07(水) 16:53:55 bZSvMH3MO
DDoS攻撃、あと一週間続くかと思ったらそんなことなかったぜ!

上に挙がってるウルトラマン、巨人化の能力以外で制限が必要な能力はある?
とりあえずKENGOの大嘘憑きはどこまで「なかったこと」にできるか、使用に関するコストはいかほどか、くらいの線引きは必要だと思う


143 : ◆.ksO9nG.ek :2016/09/07(水) 17:23:28 hwmZhHVs0
【名前】バーニィ・ウエスト
【性別】男
【年齢】35
【職業】科学捜査官
【服装】赤いポロシャツにジーンズ
【身体的特徴】赤い髪の細身の男性
【好きなこと・もの】コミックブック、ヒーロー
【嫌いなこと・もの】『コミックブックは子供に悪影響を与える』・『ヒーローなんて子供だまし』という偏見及びそういう主張をする人
【特技】科学捜査に関する知識と技術
【趣味】コミックブック漁り
【与えられた特殊能力】フラッシュの超高速移動能力@DCコミックス/フラッシュ
正確には『異次元に存在する運動エネルギーの塊・スピードフォースへアクセスしての運動エネルギー操作』で、『超高速移動』は運動エネルギーの分かりやすい使い方でしかない。
応用として、『超高速摩擦による熱エネルギーの発生』、『分子を振動させることによる物質通過並びに透明化』、『他者への運動エネルギーの譲渡』、『時空間移動』等があるが、さすがに『時空間移動』は制限確定と思われる。
【詳細】
アメリカ・ウェストサイドシティのシティ警察に勤めているコミックブックマニアな科学捜査官。
子供の頃からコミックブックのヒーロー達に憧れ、ヒーローのように人助けをしたいと考えて警察に入ったのだが、体力不足の為に科学捜査官となった。
正義感は人一倍だが、オタク気質が抜けず、スーパーパワーもスーパーメカも使わない現実の犯罪者に物足りなさを感じている。
ヒーローに関する知識には自信があり、コミックコンベンションで催されたヒーロークイズに全問正解したことが自慢。
【備考】
数あるコミックブックのスーパーヒーローの中でも、DCコミックの『フラッシュ』がお気に入りで、本当は警察の科学捜査官になったのも、2代目フラッシュが警察の科学捜査官だったからである。


144 : ◆TeAoSh7Hf6 :2016/09/08(木) 01:35:36 T8571o..0
【名前】アルマゲドンナオキ
【性別】男
【年齢】30
【職業】プロボクサー
【服装】ボクサーグローブ、パンツ
【身体的特徴】筋肉質、180cm以上あり
【好きなこと・もの】お金、暴力
【嫌いなこと・もの】自転車
【特技】ギター(プロ並み)
【趣味】仕事
【与えられた特殊能力】怪物強盗XI@魔人探偵脳噛ネウロ/XI(サイ)
自分の体細胞を変化させて、遺伝子レベルで他人になりかわったりできる。
【詳細】
本名『山口直樹(やまぐちなおき)』 ヘビー級プロボクサー。リング上で恐ろしい強さを見せ、世界大会を5連覇している。
更に顔がモデル並に良い。あまりの強さから「アルマゲドンナオキ」といつしか呼ばれるようになった。
しかしこの上なく性格が悪く、すぐに人を馬鹿にする。物事に対して否定から入る典型的インターネット脳。
ボクサーになった理由も「合法で人を殴れる」「苦痛の表情が見たい」とのことで、多くのボクシングファンから嫌われている。
小さい頃、親から虐待を受け育ち、その為か自己肯定力が低く、他人を傷付ける事で安心している、(興奮もしている)
父親から教育と称し、自転車で踏まれたり、轢かれたり、ホイール部分に指を入れられて回されたりされた事がトラウマで
自転車を見るのが嫌い。見ると冷や汗をかき、強い吐き気に催す。


145 : ◆TeAoSh7Hf6 :2016/09/08(木) 01:52:54 T8571o..0

【名前】善養寺 十次(ぜんようじ じゅうじ)
【性別】男
【年齢】82
【職業】無色
【服装】ポロシャツ
【身体的特徴】老人、慢性的腰痛
【好きなこと・もの】読書、会話、ピアノ
【嫌いなこと・もの】非常識な事。
【特技】ピアノ。入れ歯飛ばし。
【趣味】読書
【与えられた特殊能力】第四の壁破壊/デッドプール@X-MEN
【詳細】
優しいお爺ちゃん。子宝に恵まれないまま、妻に先立たれた。
しかしそういう運命だったと受け入れて、今は老人ホームでその時を待つ生活を送っている。
誰にでも優しいが、非常識な事をしている人に対しては誰彼かまわず注意をする。


146 : ◆.ksO9nG.ek :2016/09/08(木) 08:47:54 z44C9z9.0
【名前】四角 渡(よつずみ わたる)
【性別】男
【年齢】18
【職業】高校生
【服装】黒い学ラン、
【身体的特徴】白髪、猫背、右目に眼帯
【好きなこと・もの】能力バトル系の漫画
【嫌いなこと・もの】偉そうにしている奴
【特技】漫画の速読
【趣味】週刊漫画雑誌の立ち読み
【与えられた特殊能力】三つのしもべの召喚と使役@バビル二世/山野浩一
ロデム、ロプロス、ポセイドンの三つのしもべを呼び出し、命令通りに操れる。
ただし、ロプロスとポセイドンは本物の10/1くらいの大きさしかない。
【詳細】
クラスに一人はいるボッチな高校生。
内気でオタク気質な為に友達がおらず、漫画を読むことだけが唯一の楽しみ。
数日前に転んでカバンの中身をぶちまけてしまった際に、たまたま通りかかった天草ゆたかに助けてもらって以来、ゆたかにラブレターを書いているが、未だに渡していない。
【備考】
能力バトル系の漫画が大好きだが、バビル二世に関しては世代では無いためにあまり詳しくは無い。
【交友関係】
天草ゆたか:一目惚れした相手。ラブレターを書いたが、返事が怖くてまだ渡していない


147 : ◆5PTMWp7tO6 :2016/09/08(木) 09:02:46 iOMY381Q0
【名前】世神城児(せがみ じょうじ)
【性別】男
【年齢】18
【職業】元高校生
【服装】派手なTシャツ、ジーンズ
【身体的特徴】赤く染めた髪、三白眼
【好きなこと・もの】勝利
【嫌いなこと・もの】舐められること
【特技】種々の格闘技
【趣味】喧嘩、鍛錬
【与えられた特殊能力】絶対遵守のギアス@コードギアス 反逆のルルーシュ/ルルーシュ・ランペルージ
【詳細】
悪いことは一通りやっていると噂されていた札付きの不良。
血の気が多く売られた喧嘩は買う主義であり、昔から彼の周りでは乱闘騒ぎが絶えない。
強くなるために様々な格闘技を習っていたが、騒ぎのたびに破門されており今ではそれらを組み合わせた独学。
相手を屈服させることに密かな喜びを見致している節があり、振るう力も徐々に過激に過剰になりつつある。
【備考】
つい最近、喧嘩相手を死なせてしまい現在拘置所で反省中。
周りからの反応は大体「いつかやるとは思っていた」。


148 : ◆IGqhVK/Nqo :2016/09/08(木) 11:52:47 88BARmT20

【名前】トーマス・ベイカー
【性別】男
【年齢】30
【職業】資産家
【服装】高級そうなスーツ
【身体的特徴】金髪、青い瞳の白人
【好きなこと・もの】食べること
【嫌いなこと・もの】食事を邪魔されること
【特技】食べたものの味をすべて記憶できる
【趣味】世界中の珍味を食べること
【与えられた特殊能力】バクバクの実@ワンピース/ワポル
(どんなもとのでも美味しく食べることが出来る能力。
食べたものを自分の身体に取り込んだり、混ぜて合体させることも可能)
【詳細】
「食」について病的なまでに興味を持ち、追求する男。
世界中の珍味や食べ物を取り寄せて食べ、
どんな味かどんな食感かをこと細かに記録することに喜びを感じる。
しかし、それも全て味わい尽くしたため、ついには「食べ物ではないモノ」にまで手を出し始める。
ひそかに犬や猫を解体し、食べたことがあり、いつか人間を食べてみたいと考えている。
【備考】
一人称は『私』。
アニメや漫画よりもグルメ関連の雑誌や本の方が詳しく、
サブカル面の知識は低め


149 : ◆.Xw8JQLBi. :2016/09/08(木) 12:35:57 UDYB2Nro0
【名前】波瀬海 潤(はぜみ じゅん)
【性別】女
【年齢】27
【職業】記者
【服装】黒のスーツ、ズボン
【身体的特徴】後ろで結んだ黒い髪、細身で長身
【好きなこと・もの】取材、身体を動かすこと、朝に飲むミルク
【嫌いなこと・もの】消極的な人、捏造、アパート家賃の催促
【特技】尾行と撮影
【趣味】記事のネタ探し
【与えられた特殊能力】
『ハーミット・パープル』
出典:ジョジョの奇妙な冒険 第3部
キャラ:ジョセフ・ジョースター
イバラ型のような形状をしたスタンド。
一言で言えば『探知と念写』の能力。
カメラを使うことで遠距離の対象を撮影することが出来る他、物体の内部構造や周囲の地形(+自身や敵の位置)などを調べることが可能。
更にイバラ型のスタンドを使って物体を掴んだり拘束したりすることも出来る。

【詳細】
フリーランスの記者。
『大スクープを掴むこと』に情熱を燃やしており、芸能人のゴシップなどのネタには興味を持たない。
大企業や大物のスキャンダルなど、彼女が狙うのは常に崖っぷちの危険なネタばかりである。
しかしそういったネタしか狙おうとしないために収入が安定せず、彼女の生活もボロアパート暮らしで常に崖っぷちに立たされている。

【備考】
一人称は『私』。
末期ガンに侵されており、余命幾ばくもない。
もはや自分の命は諦めているが、せめて死ぬ前に何か大きなネタを掴みたいと思っている。


150 : ◆7PJBZrstcc :2016/09/08(木) 14:12:08 .PRsBOK60
【名前】五十嵐椿(いがらし つばき)
【性別】女
【年齢】25
【職業】デイトレーダー
【服装】部屋着
【身体的特徴】アイドル顔負けの美貌、一流アスリート顔負けの体格
【好きなこと・もの】コロコロ変わる。強いて言うなら混沌
【嫌いなこと・もの】コロコロ変わる。強いて言うなら平穏
【特技】大抵の事はできる
【趣味】コロコロ変わる
【与えられた特殊能力】安心大嘘憑き(エイプリルオールフィクション)@めだかボックス/球磨川禊
【詳細】
資産家の家に生まれIQ180という高い知能と優れた運動能力、更には美貌まで持って生まれた女。
スポーツや楽器など、大抵の事は少しやればプロ顔負けのレベルで身に付ける事が出来る。
ただし、それ故彼女は何かに熱中した事や目標に向かって頑張ると言った経験がない。
その為か、彼女は自身が熱中できるものを探すために主義主張や趣味をコロコロ変える。ある時は平等主義、ある時は実力主義と言った具合に。
その中で一貫していることは、彼女は平穏無事を嫌い混沌を好んでいるという事だけである。
【備考】
一人称は『私』
サブカルチャーにはまるで詳しくない。(ドラえもんやクレヨンしんちゃんレベルの知名度があれば少しわかるレベル)


151 : ◆IPU8SGkvmQ :2016/09/08(木) 14:14:29 0/ltx4M.0
【名前】沢田総一郎(さわだ そういちろう)
【性別】男
【年齢】28歳
【職業】無職
【服装】入院患者用の検査衣
【身体的特徴】ガリガリ、目の下にクマ、色白
【好きなこと・もの】体調がいい日の散歩、ずっと自分を担当してくれている4歳年上の看護婦さん
【嫌いなこと・もの】日に日に弱っていく自分の身体、悲しそうにやつれていく母親の姿
【特技】景色や人を見るしかできなかった為に鍛えられた観察眼
【趣味】読書・テレビ
【与えられた特殊能力】範馬の血@刃牙シリーズ/範馬勇次郎
 宇宙の膨張速度と同じと言われるほどの成長性。
 また、一度見ただけで相手の技をコピーするほどの吸収力、および一目で身体の弱点(病気なども)が分かる観察眼。
 反射神経や動体視力も常人の域を超えている。

 しかし、いきなりムキムキになったり、鬼の顔が出るということはない。

【詳細】
 生まれつき病弱で入退院を繰り返す生活を送っていた。
 高校生の時に正体不明の病にかかり、以来10年間病院で過ごしている。
 安静にしていなければいけないからと普段はベッドで過ごしているが、トイレや自動販売機などは自力で行ける。
 
【備考】
 医学の発展でいつか病気が治ると信じている。
 治ったら、その時は……


152 : ◆IPU8SGkvmQ :2016/09/08(木) 14:46:59 0/ltx4M.0
【名前】君島蛍(きみしま けい)
【性別】女
【年齢】15
【職業】高校一年生
【服装】ミニスカ制服(腰を巻き上げているだけ)、ルーズソックス
【身体的特徴】小柄、短いツインテール、可愛い
【好きなこと・もの】遊ぶこと、お姉さんっぽく振る舞うこと、親戚の子供達
【嫌いなこと・もの】嫌味な奴、子供扱い、ツタヤや映画館のホラー映画のポスター
【特技】バスケットボール、意外と足が速い(女子の中では)、意外と頭も良い(期末テスト全校生徒197人中48位)
【趣味】バスケットボール、ニチアサを見ること
【与えられた特殊能力】一指全断@アニメ「ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日」及び漫画「ジャイアントロボ地球の燃え尽きる日・バベルの籠城」/素晴らしきヒィッツカラルド
 指パッチンで真空破を起こし、ありとあらゆる物全てを切断できる。
 真空破なのになぜかみねうちもでき、生殺与奪も思いのまま。
 自分の死と引き換えに空間を捻じ曲げ、物理的な要素だけでは突破できない強力な結界などでも通過できるようにする事も可能。

【詳細】
 バスケットボール部所属の高校一年生。
 クラスや部活ではみんなの妹的存在で愛されているが、本人はお姉さんぶりたいのでたまにいじける。
 一番大人っぽいクラスメイトを真似した服装にしているが、友人ににすぐ戻される。
 本人は自覚していないが、プリキュアや仮面ライダーが好きだというお子様っぷり。
 ホラー映画のポスターを見てしまった日の夜は母親と一緒に寝る。

【備考】
 一応ジャンプと朝や夕方にアニメ化した漫画は知っているが、青年誌や深夜アニメは知らない。


153 : ◆.ksO9nG.ek :2016/09/08(木) 19:48:50 XKoY681A0
【名前】天草 時春(あまくさ ときはる)
【性別】男
【年齢】56
【職業】天草財閥総裁兼筆頭株主
【服装】純白のスーツ
【身体的特徴】白髪交じりの髪、口ひげ
【好きなこと・もの】死んだ妻、士郎とゆたか、サブカルチャー全般、聖書
【嫌いなこと・もの】イスラム教徒、アンチサブカルチャー主義者
【特技】旧約・新約両聖書の丸暗記
【趣味】おニャン子クラブのレコードを聞きながらのティータイム
【与えられた特殊能力】仮面ライダーダークキバへの変身@仮面ライダーキバ/先代キング・紅音也・登大牙
支給品であるキバットバット二世を使用することで仮面ライダーダークキバに変身する。
ただし、ウェイクアップフエッスルは2回しか吹けず、シールフエッスルの使用は不可能。
【詳細】天草士郎・ゆたか兄妹の父親にして、日本有数の企業グループ『天草財閥』の総裁。
一見すると気難しい人物のようだが、その実態は小学生の時『仮面ライダー』を見て以来からのベテランオタクで、自身の会社を使って近年の『クールジャパン』ブームを生み出した張本人。
妻を亡くして以来、士郎とゆたか(特にゆたか)を溺愛しており、『ゆたかと顔を合わせるとゆたかのスカートの中に顔を突っ込んでパンツの匂いを嗅ぐ』といういささか危ない一面がある。
敬虔なクリスチャンでもあり、士郎達をキリスト教系の学校に入れたのもそのため。
おニャン子クラブの楽曲が妻との思い出の曲。
【備考】
平成ライダーより昭和ライダーが好きなので、キバに関してはあまり詳しくない。
英国式のティータイムが日課だが、猫舌なのでホットティーではなく、アイスティーを好む。


154 : ◆5PTMWp7tO6 :2016/09/08(木) 21:56:23 iOMY381Q0
【名前】岸島水平(きしじま すいへい)
【性別】男
【年齢】14
【職業】中学生
【服装】海パン、Tシャツ
【身体的特徴】短髪、褐色、水泳体型
【好きなこと・もの】両親、海
【嫌いなこと・もの】特になし
【特技】水泳
【趣味】釣り、抜刀修行
【与えられた特殊能力】氷輪丸@BLEACH/日番谷冬獅郎
【詳細】
とある港町で生まれ育った少年。
両親ともに漁師であり、自身もまた当然漁師になるのだと信じている。
もちろん水泳はマスターしており、その気になればどこまででも泳いで行ける。
【備考】
最近漫画の影響で剣術に興味を持っており、近所の爺さんに稽古をつけてもらっている。
最初は見るも無残な様子だったが、稽古のおかげでかろうじて基礎の基礎を習得したと言える状態になっている。


155 : ◆BNxC/Vtkps :2016/09/09(金) 00:47:17 BkKimISY0
【名前】萩原舞 (はぎわら まい)
【性別】女
【年齢】16
【職業】高校一年生
【服装】一般的な学生服
【身体的特徴】黒髪ツーサイドアップ
【好きなこと・もの】ミリタリー
【嫌いなこと・もの】運動全般
【特技】銃の名前を当てる事
【趣味】ミリ系模型作り
【与えられた特殊能力】干柿鬼鮫の忍術@NARUTO
以下の忍術を使用可能。チャクラを練る必要がない代わりに使用時には自身の体力を大幅に消耗する。
水牢鮫踊りの術及び水遁・大爆水衝波は制限により使用不可。
○水遁・五食鮫 - チャクラを流し込み(本作では自身の体力を消費)、水中に五匹の鮫形気弾を出現させ敵を襲う。
○水遁・千食鮫 - 水を用いて千匹の鮫型気弾を作り出し、大波のように叩き付ける。
○水遁・水鮫弾の術 - 鮫を象った水の塊を飛ばす。
○水遁・大鮫弾の術 - 巨大な鮫を象った水の塊を飛ばす。原作ではチャクラを吸収するが、本作では異能を一時的に弱体化させる。
制限により2回まで使用可能となっている。
○水遁・爆水衝波 - チャクラ(本作では自身の体力)を大量の水に変換し口から吐き出す。
○水牢の術 - 水牢に対象者を閉じこめる。発動者の手が水牢に触れている限り術は持続する。
○土遁・土中潜航 - 周りの地面を液状に変換し、土中を泳ぐように高速移動できるようになる。
○水分身の術 - 自身と同体積の水を使用し、自身の分身を作る。分身の性能は本体の十分の一。制限により一度に作れる分身は2体まで。
【詳細】
ミリオタ女子高校生。両親共に自衛官であり、物心ついた時からミリタリーにハマってた経歴を持つ。
1000m持久走で3周遅れになる程度には体力がなく、体育の成績は昔から非常に低い。
子供の頃の夢は自衛官だったが、自身の体力のなさから断念している。
一度だけサバゲーに参加した事があるが、さんざんな成績で終わった。
【備考】
「拳銃は決して人を殺めるためのものではない」という考えを持っている。


156 : ◆.Xw8JQLBi. :2016/09/09(金) 01:02:49 ssaR2r7M0
【名前】劉苑寺 泰斗(りゅうえんじ やすと)
【性別】男
【年齢】51
【職業】実業家
【服装】フォーマルなスーツ、灰色のネクタイ
【身体的特徴】黒の短髪、切り揃えられた髭、やや皺の入った顔
【好きなこと・もの】権力、向上
【嫌いなこと・もの】貧乏、卑屈な人間
【特技】柔道、話術
【趣味】ビジネス全般、体力作り
【与えられた特殊能力】
『アブソープション』
出典:スクライド
キャラ:無常矜侍
触れた相手の能力を強制的に解除し吸収する能力。
吸収されている最中、相手は肉体に激痛が走りダメージを受ける。
更に吸収した能力をコピーして行使することが可能。
ただし吸収と言っても相手の能力を奪うわけではなく、あくまで一時的に解除させるのみ。

またアブソープションによって手に入れた無常矜侍の能力として『ホワイトトリック&ブラックジョーカー』も使用可能。
両手からの放電で触れた相手を感電させる能力であり、また両手をドリルの形状にして攻撃することも出来る。

【詳細】
日本有数の大企業の総帥を勤める実業家。
優れた経営手腕と独特のカリスマ性を備え、合理的で有能な経営者として活躍している。
しかし内面では「男は頂点を目指して生きるものであり、向上心が無ければ男としての価値はない」といった独特の価値観を持つ。
大企業の総帥にまで上り詰めたのも、己の価値観を達成するための手腕と見なしたからに過ぎない。
更に彼はこれだけの権力ではまだ飽きたらず、いずれは『世界随一の権力者』にまで上り詰めることを本気で狙っている。
彼は言わば、現実主義者の皮を被った理想主義者。

【備考】
一人称は『私』。
柔道の達人でもあり、並のボディーガードを上回るほどの実力を持つ。
また運動や体力作りも積極的に行っているため五十代とは思えぬほど運動神経は高い。


157 : ◆.Xw8JQLBi. :2016/09/09(金) 02:32:42 ssaR2r7M0
【名前】芹 大輔(せり だいすけ)
【性別】男
【年齢】30
【職業】ヤクザ
【服装】着崩したブランド物のスーツ、指輪やネックレス等の装飾
【身体的特徴】細身、爬虫類顔、よく薄ら笑いを浮かべている、やや長めの荒れた黒髪
【好きなこと・もの】金儲け、自分
【嫌いなこと・もの】正義、しつこい奴、警察
【特技】雑用、裏での暗躍
【趣味】喫煙、装飾品集め
【与えられた特殊能力】
『バリア+読心』
出典:TIGER & BUNNY
キャラ:ジェイク・マルチネス
あらゆる物理攻撃を遮断する超硬度のバリアを展開する。
更にバリアを圧縮し殺傷能力の高い飛び道具として放つことも可能。
また他人の思考を自在に読む読心能力も備える。
ただし思考を読めるのは一度に一人のみ。

【詳細】
関東随一の暴力団に所属するヤクザ。
とはいえ立場としては『下っ端の中では上』程度であり、普段は武闘派幹部の腰巾着として雑用や使い走りをさせられている。
飄々としているものの腰が低く、上司に媚びるような態度を取るため周囲からはしょうもないチンピラと見なされている。
また気質よりは多少喧嘩慣れしているものの腕っぷしもさほど強くない。
しかし実際は残忍で計算高く、常に抜け目なく利益を得ようとする狡猾な性格の持ち主。
幹部の一人が抗争で命を落とした際にもどさくさに紛れて遺産の一部を横領するなど、軽薄で仁義を持たない。

【備考】
一人称は『俺』。目上の相手には砕けた敬語だが、それ以外の者には柔和な口調で喋る。
あまり乱暴な言葉は使わないものの、どこか胡散臭い雰囲気を漂わせる。


158 : ◆.ksO9nG.ek :2016/09/09(金) 08:41:40 klRPB5PY0
【名前】ジョナサン・ジャクスター
【性別】男
【年齢】25
【職業】ニュースキャスター
【服装】青い背広に眼鏡
【身体的特徴】栗色の髪の白人男性
【好きなこと・もの】人を笑顔にするような明るいニュース、自身の仕事
【嫌いなこと・もの】殺人やテロ等の暗いニュース
【特技】全く舌を噛まずに早口言葉が言える
【趣味】知恵の輪
【与えられた特殊能力】クリプトン人の肉体@DCコミック/スーパーマン
地球の『黄色い太陽』の光線のおかげで怪力、飛行、ヒートヴィジョン(目からの熱線)、スーパーブレス、X線透視、超遠方からミクロの物体まで見える視力、超音波も聞こえる聴力、核爆発にも耐えられる耐久力が得られる。
反面、クリプトン星の放射性物質『クリプトナイト』や物理法則を超えた『魔法』には耐性が無く、ダメージを受ける。
それからクリプトン星の『赤い太陽』の下では地球人並に弱体化する。
【詳細】
アメリカのテレビ局『サイエンスTV』に務めるニュースキャスター。
入社一年目の新人だが、その甘いマスクから女性視聴者からの人気が高い。
ネブラスカ州出身で、両親はカントリータウンという小さな街で牧場を営んでいる。
暗く悲しいニュースより、明るく楽しいニュースを伝えて視聴者を笑顔にするのが生き甲斐。
【備考】
その風貌がスーパーマンの正体である『クラーク・ケント』に似ていることから、同僚からは映画でスーパーマンを演じたクリストファー・リーヴにちなんで『リーヴ』というニックネームで呼ばれている。


159 : ◆J.8ELO1x0o :2016/09/09(金) 23:17:29 juNKGMQU0
【名前】江本咲穂(えもと さきほ)
【性別】女
【年齢】16
【職業】高校生
【服装】天草ゆたかと常に同じ服装
【身体的特徴】天草ゆたかと常に同じ髪型、化粧。容姿自体は普通
【好きなこと・もの】天草ゆたか、彼女が好きなもの
【嫌いなこと・もの】自分の中の天草ゆたかを汚すもの
【特技】天草ゆたかの情報収集
【趣味】天草ゆたかを眺めること
【与えられた特殊能力】マネマネの実@ワンピース/Mr.2ボン・クレー
【詳細】
天草ゆたか(>>94)の幼馴染で親友を自称している。
彼女に対して過剰なまでの思い入れを持っており、自分と同一視している節すらある。
常日頃から彼女のためならば何でもできると公言しており、常にかいがいしく尽くしている。
彼女含めた周囲からは基本的にドン引きされているが、基本的に彼女のそばにいられれば幸せなためまったく気にしていない。
【備考】
彼女への感情は同性愛などではなく、あくまで強烈な憧れである。
自身の中に「天草ゆたか」という偶像を作り上げる域に達しており、
それを壊そうとするものはたとえ彼女本人であろうとも容赦はしない。


160 : ◆/SrI0Wa0Uo :2016/09/10(土) 02:20:44 8y8Q7Jpc0
【名前】分目青司(わんめ あおし)
【性別】男
【年齢】27
【職業】消防士
【服装】制服
【身体的特徴】短髪、恵体
【好きなこと・もの】他人からの賞賛、火
【嫌いなこと・もの】自分より注目を集める者
【特技】消火、放火
【趣味】エゴサ
【与えられた特殊能力】キリエルの力@ウルトラマンティガ/キリエル人
両手から放つ衝撃波、遠隔的精神ジャック、そして炎魔戦士キリエロイドへの変身能力を有する。
ただしキリエロイドの大きさは相対した敵と同じものとなる。
【詳細】
正義感の強い優秀な消防士であり、幾度か表彰を貰った事もある。との評価を周囲からは得ている。
が、実態は自己顕示欲の強い独善的な性格の持ち主であり、彼が得た表彰というのも、自ら放火した家を消火するというマッチポンプ行為によって獲得したものである。
非常に嫉妬深い性格でもあり、自分以上に注目を浴びる者、賞賛を浴びる者には深い憎悪を抱く。
しかし放火魔の疑いを少しでも避ける為に、彼は善人の仮面を被り続けている。
【備考】
サブカルチャーには疎いが、デパートで偶然キリエロイドのソフビを見て以来そのイメージが脳裏に焼き付いている。


161 : ◆.Xw8JQLBi. :2016/09/10(土) 12:19:30 Ip7hWOKQ0
【名前】枝銅 蓮司(しどう れんじ)
【性別】男
【年齢】20
【職業】大学生
【服装】白のシャツ、茶色のズボン、戦隊ヒーロー風の覆面ヘルメット
【身体的特徴】黒の短髪、それなりに高身長で容姿も整っている
【好きなこと・もの】善行、運動、文学小説
【嫌いなこと・もの】悪、不真面目なこと、酢豚のパイナップル
【特技】スポーツと勉強
【趣味】バドミントン、読書
【与えられた特殊能力】
『ビョウキ・ニンジャのソウル』
出典:ニンジャスレイヤー
キャラ:ナックラヴィー
平安時代に跋扈した伝説的存在『ニンジャ』の魂。
憑依した者の身体能力を飛躍的に上昇させるが、多くの者はその強大な力に飲まれて邪悪性に目覚めてしまう。
ビョウキ・ニンジャ固有のジツ(能力)は『ハカバ・ハンド』。
触れたものを病毒で蝕む能力であり、汚染された者は肉体が灼けるような感覚と共に急激に衰弱し死に至る。
水源などを介して病毒を広範囲に拡散することも可能だが、制限対象になる可能性もある。
なお枝銅 蓮司は異能力としてニンジャソウルを与えられているため、死亡した際には爆発四散する。

【詳細】
ヒーローを自称する怪人物。
元々は文武両道で物静かな大学生に過ぎなかったが、ある日から『夢の中で正義の神からの啓示を受けた』と言い張って豹変。
自らを正義のヒーロー“ミッション・エックス”と称し、善行を重ねることに執念を燃やすようになった。
しかし彼の正義は極めて適当かつ勝手なもので、自身の能力ではどうにも出来ないことは都合良く回避する。
勘違いや早とちりで暴力を行使することも少なくないし、彼の介入で逆に事態がややこしくなることも多い。
更に自身の行動で事態が悪化しても何食わぬ態度で言い訳をし無関係を装う等、行動派の割に事なかれ主義的な一面も持つ。
当人は自らの矛盾や不手際に関して堂々と開き直ってるため尚更たちが悪い。

【備考】
一人称は素だと『僕』、ヒーローになりきってる時は『私』。
普段は余り口数が多くないが、ヒーローとして振る舞うと一気に芝居がかった口調になり口数も増える。
大学生としては優等生だったものの、性格は余り良くなかったらしい。


162 : ◆.ksO9nG.ek :2016/09/10(土) 19:10:59 NAHjrqew0
【名前】天草あかね
【性別】女
【年齢】16
【職業】高校生
【服装】純白の女子学生服、左右側頭部に花の形の髪飾り
【身体的特徴】茶髪のショートカット、年相応の体型、胸のサイズはD
【好きなこと・もの】天草士郎(>>91)、會川昇が脚本を担当したアニメ、ハッピーエンド
【嫌いなこと・もの】虚淵玄・脚本、バッドエンド
【特技】剣道3段
【趣味】コスプレ
【与えられた特殊能力】魔法の杖メテオテールとサポートキャラのウル@コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜/星野輝子
魔法の呪文『メテオテール』を合図に杖を振ると、物理法則をマジカルに逸脱した『魔法』が発動する。また、ウルに『魔女力チャンネルセット』の許可を得ることで魔女っ子の姿に変身する。ただし、人間の命に関わる魔法の使用は禁止されている。
サポートキャラのウルは、的確なアドバイスを与えたり、飛行用ユニットに変身する他、『彗星の尾』というアイテムになる。
【詳細】
天草士郎・ゆたか兄妹の従姉妹であり、親同士の決めた士郎の婚約者。
小さな頃から士郎ひと筋で、顔を会わす度に士郎に抱きついてくる。
中学の卒業式の前夜に士郎に夜這いをかけて、大人の仲間入りしたことが自慢。
【備考】
會川昇が脚本を担当したアニメの大ファンで、その中でも『コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜』がお気に入りであり、全話を録画・繰り返し視聴し、グッズも買い漁っている。
【交友関係】
天草士郎:従兄弟であり、婚約者。度々過剰なスキンシップを取っている。
天草ゆたか:従姉妹であり、未来の義妹。よく一緒にアニメイベントに遊びに行く程仲が良い。
天草時春:おじであり、未来の義父。


163 : ◆.ksO9nG.ek :2016/09/10(土) 20:17:59 g9Vb1ffU0
【名前】東 ジョー(あずま ジョー)
【性別】男
【年齢】42
【職業】警視庁捜査一課の刑事 階級は警視
【服装】ダブルのスーツ、眼鏡
【身体的特徴】中肉中背の優男
【好きなこと・もの】正義、法秩序
【嫌いなこと・もの】犯罪者
【特技】柔道2段、空手3段
【趣味】クラシック音楽のCDを聞く
【与えられた特殊能力】8マンのボディ@8マン/東八郎
ハイマンガンスチール製で、人間の人格や記憶をインプット可能な電子頭脳を搭載したスーパーロボットの機体。
透視装置付の目や超音波が聞こえる耳、時速3000キロメートルで走れる加速装置等の機能がある。
電子頭脳の加熱を抑える為に、定期的にタバコ型の冷却剤を吸わないといけない。
【詳細】
警視庁捜査一課所属の刑事。
東大法学部出身で、いわゆるキャリア組のエリート。
正義感が強く、悪を決して許さない警察官の鏡。しかし、いささか融通が利かず頑固な性格をしておる。
【備考】
アニメはあまり見ないので8マンに関しては詳しくはない。


164 : ◆.ksO9nG.ek :2016/09/10(土) 20:46:18 g9Vb1ffU0
【名前】レオパルド・ガーネット
【性別】男
【年齢】62
【職業】映画俳優
【服装】青いシャツに白いベスト
【身体的特徴】赤い髪を分けたダンディな壮年の白人男性
【好きなこと・もの】アクションシーンの撮影、アカデミー賞、仮面ライダー
【嫌いなこと・もの】辛口の批評家、ゴールデン・ラズベリー賞
【特技】各種格闘技、流暢な日本語
【趣味】日本の特撮ヒーローのビデオを見る
【与えられた特殊能力】仮面ライダーV3への変身@仮面ライダーSPIRITS/風見志郎
【詳細】
ハリウッド在住のアクションスター。
主演映画を多数有し、今までアカデミー賞を幾度も受賞している。
小学生の時に日本で暮らしていた経験があり、映画俳優になったのは、日本に居た時にテレビで見た『仮面ライダー』に憧れたから。
いつか藤岡弘、や宮内洋といった昭和ライダー俳優と共演するのが夢。
【備考】
日本の特撮ヒーローが大好きで、新作は欠かさずチェックしている。
一番好きな仮面ライダーは『仮面ライダーV3』。


165 : 名無しさん :2016/09/10(土) 21:00:21 eHYPum620
ここまで集まったキャラをまとめてみる

○名前/性別/年齢/職業/能力

○千原 亜希//女/17/高校生/サム・ライミ版スパイダーマン
○増田 ユーリ/女/17/元アイドル/マジカルエミ
○ロック・パンサー/男/29/ボクサー/超人兵士血清(キャプテン・アメリカ)
○ダイナン・ガイアット三世/男/20/用心棒/ウルトラマン
○岩井 政隆/男/40代後半/警察官巡査長/マジシャンズ・レッド
○河野 明代/女/43/風俗嬢/巨人化
○井上 快夢/女/17/アイドル/ウタウタイ
○郷音 ツボミ/女/18/アイドル/ガングニール
○石黒千晶/女/17/高校生/『直感』
○四季邑 飛鳥/男/16/高校生/直死の魔眼

○笹原卓/男/17/高校生/幻想殺し
○成沢 弥生/女/16/高校生/呪腕のハサンの能力と技術
○島津 蒼太/男/17/高校生/『腹話術』
○結城キユ/男/17/高校生/朱色の魔本
○蘭堂虎竜太/男/16/高校生/ドアドアの実
○八神そう/女/9/小学生/マイティ・ソー※1
○御船ジャック/男/9/小学生/テッカマンブレード
○藤崎直哉/男/20/大学生/セト神
○科学教師/男/不明/浮浪者/ハーミット・パープル
○夜之 憂/女/9/小学生/テッカマンエビル

○KENGO/男/17/高校生・アイドル/大嘘憑き
○伊丹沢 妙/女/10/小学生/略奪
○美談 展夫/男/31/捜査官/毒電波
○天草士郎/男/16/高校生/仮面ライダーキバ
○河野 英雄/男/41/ヒモ/ガッツ星人
○天草 ゆたか/女/16/高校生/ミッドチルダ式の魔法
○後藤 万緒/女/16/高校生/人修羅
○真島 芳郎/男/32/フリーター/ハイウェイ・トゥ・ヘル
○大木 潮/男/24/フリーター/ギニューのボディーチェンジ
○沢松井之助/男/10/小学生/星のカービィのボム

○道端 ロクサーヌ/女/26/モデル/名状しがたい力
○側後 健彦/男/28/弁護士/謝債発行機(レンタルポッド)
○島原 翼/男/16/高校生/衛宮士郎の能力
○小路瀬 間栖夜/男/20台後半/三流殺し屋/ニュータイプ
○地納力也/男/26/無職/サイコ・ロック
○月宮埜々香/女/16/女子高生/ペテルギウス・ロマネコンティの怠惰の権能と憑依能力
○笹原天音/女/14/中学生/螺旋力
○鈴宮ミカ/女/16/高校生/ビタミンC
○斎藤混沌/男/13/中学生/影(シャドー)
○花浦昨亜/女/14/中学生/ポイズンクッキング

○爽超裕太/男/18/高校生/マギウス
○阿良 愛/女/25/警察官/スパルタクスの宝具とスキル
○風 浩太/男/24/無職/ヘイ・ヤー
○桂岡 笑顔/女/14/中学生/ミスター・おわらい
○鏑木シリカ/女/14/中学生/キャスター(ジル・ド・レェ)の宝具・スキル
○フレイス/オス/5/なし(虎)/ピカピカの実
○丹美 寧斗/男/28/株のトレーダー/T-1000
○三船 響子/女/33/書店の店員/新型デュエルディスク※2
○戸柱好羽/女/17/高校生/日暮熟睡男
○篠根優五/男/35/空き巣、スリ/バラバラの実

○バーニィ・ウエスト/男/35/科学捜査官/フラッシュの超高速移動能力
○アルマゲドンナオキ/男/30/プロボクサー/怪物強盗XI
○善養寺 十次/男/82/無職/第四の壁破壊
○四角 渡/男/18/高校生/三つのしもべの召喚と使役
○世神城児/男/18/元高校生/絶対遵守のギアス
○トーマス・ベイカー/男/30/資産家/バクバクの実
○波瀬海 潤/女/27/記者/ハーミット・パープル
○五十嵐椿/女/25/デイトレーダー/安心大嘘憑き
○沢田総一朗/男/28/無職/範馬の血
○君島蛍/女/15/高校生/一指全断
○天草 時春/男/56/天草財閥総裁兼筆頭株主/仮面ライダーダークキバ

○岸島水平/男/14/中学生/氷輪丸
○萩原舞/女/16/高校生/干柿鬼鮫の忍術
○劉苑寺 泰斗/男/51/実業家/アブソープション
○芹 大輔/男/30/ヤクザ/バリア+読心
○ジョナサン・ジャクスター/男/25/ニュースキャスター/クリプトン人の肉体
○江本咲穂/女/16/高校生/マネマネの実
○分目青司/男/27/消防士/キリエルの力
○枝銅 蓮司/男/20/大学生/ビョウキ・ニンジャ
○天草あかね/女/16/高校生/魔法の杖メテオテールとサポートキャラのウル
○東 ジョー/男/42/刑事・警視/8マンのボディ

現在名70名、当初の予定人数40名の倍近くまで投下されてるけど、そろそろ>>1の意見が欲しいのが本音

※1=トリップを付け忘れている
※2=>>126より、デュエルディスクは装備品であって固有の能力じゃないのでは……?


166 : ◆.Xw8JQLBi. :2016/09/11(日) 18:35:59 1ATxfEdM0
【名前】篠崎 隼彦(しのざき はやひこ)
【性別】男
【年齢】48
【職業】ホームレス
【服装】浮浪者風の小汚ない服装とハンチング帽
【身体的特徴】白髪混じりの髭や髪の毛(どちらも汚く伸びている)、年齢以上に老け込んだ顔
【好きなこと・もの】自分の栄光
【嫌いなこと・もの】物分かりの悪い人間、侮辱
【特技】機械弄り
【趣味】自慢話(過去の栄光を膨張気味に語ることが殆ど)
【与えられた特殊能力】
『磁力操作』
出典:X-MEN(実写映画版)
キャラ:マグニートー
磁力を自在に操作する異能力。
金属を意のままに支配して操ることが出来る他、磁力の反発によって浮遊することも可能。
ただし制限によって高度での飛行や首輪の金属を操作することは出来ない。

【詳細】
都市部で数名の仲間と共にひっそりと生活するホームレス。
元々は金属を用いた珍品を作ったことで偶々脚光を浴びた発明家であり、一時はテレビにも出演する程の人気を誇っていた。
しかし才能の限界から次第に発明品の題材で行き詰まるようになり、思うように発明が出来なくなったことで徐々に人気が低迷。
それでも彼は現状を巻き返すべく様々な事業に手を出し、何とか発明の資金を集めようとするも失敗。
多額の借金を背負った末に一文無しとなった彼は最終的にホームレスへと身を落とした。

【備考】
一人称は『私』。どこか他人を小馬鹿にするような物言いが多い。
数名のホームレス仲間と交流を持っているが、本心では彼らを見下している。
自分の才能の限界を決して認めず、未だに『自分は優秀な人間である』『現状は最悪だがいつか挽回できる』と信じて疑おうとしない。


167 : 名無しさん :2016/09/14(水) 21:57:14 VyjMB4DE0
>>1来ないなぁ


168 : 名無しさん :2016/09/14(水) 23:11:33 PSxkBaPUO
ひょっとして期限日の18日まで来ないつもりなのかな?
そうじゃなくても企画が軌道に乗るまでは来れる日や書き込める時間くらいは教えて欲しい


169 : ◆BNxC/Vtkps :2016/09/16(金) 23:09:30 R1WaHIQU0
【名前】天草友秋(あまくさ ともあき)
【性別】男
【年齢】52
【職業】無職
【服装】くたびれたスーツ
【身体的特徴】ボサボサの髪、「イカれてる」と形容される目つき
【好きなこと・もの】亡くなった娘
【嫌いなこと・もの】天草一族、娘を陥れたアイドル
【特技】とっくにそんなものは捨てた
【趣味】亡き娘の事を思いながら夕日を見る事
【与えられた特殊能力】ドラゴンオルフェノクへの変身@仮面ライダー555/北崎
原作通り任意のタイミングで龍人態・魔人態を切り替える事が可能。
原作において北崎が持っている灰化能力は特殊能力として与えられていない。
またオルフェノク化しているため、扱い上人間ではなく、死亡する際は灰化する。
【詳細】
かつての天草財閥No.2にして天草時春の弟。
時春とは当初は仲が良かったものの、父親の死後、遺産を巡ってお家騒動に発展。
幾度もの裁判の結果、友秋は財閥を追われることとなる。
本人は「不正があった」として未だにその判決を無効と考えており、財閥に対する感情は非常に悪い。
その後は芸能事務所を設立し、自身の娘をアイドルデビューさせるものの、娘はグループ内でのいじめから自殺。
この事件は本人の心に非常に深い傷を残し、自殺騒動の責任を取って芸能事務所の社長を退いた後も再起出来ず廃人のような生活を送っている。
【備考】
娘を陥れたアイドルに対しては強い殺意を抱いており、
裏のコネを利用し、主犯の一人の親族を死に追いやった事がある。


170 : 名無しさん :2016/09/17(土) 00:29:57 fe4GSues0
締め切り過ぎたので改めてまとめ
総勢73名

○名前/性別/年齢/職業/能力

○千原 亜希//女/17/高校生/サム・ライミ版スパイダーマン
○増田 ユーリ/女/17/元アイドル/マジカルエミ
○ロック・パンサー/男/29/ボクサー/超人兵士血清(キャプテン・アメリカ)
○ダイナン・ガイアット三世/男/20/用心棒/ウルトラマン
○岩井 政隆/男/40代後半/警察官巡査長/マジシャンズ・レッド
○河野 明代/女/43/風俗嬢/巨人化
○井上 快夢/女/17/アイドル/ウタウタイ
○郷音 ツボミ/女/18/アイドル/ガングニール
○石黒千晶/女/17/高校生/『直感』
○四季邑 飛鳥/男/16/高校生/直死の魔眼

○笹原卓/男/17/高校生/幻想殺し
○成沢 弥生/女/16/高校生/呪腕のハサンの能力と技術
○島津 蒼太/男/17/高校生/『腹話術』
○結城キユ/男/17/高校生/朱色の魔本
○蘭堂虎竜太/男/16/高校生/ドアドアの実
○八神そう/女/9/小学生/マイティ・ソー※1
○御船ジャック/男/9/小学生/テッカマンブレード
○藤崎直哉/男/20/大学生/セト神
○科学教師/男/不明/浮浪者/ハーミット・パープル
○夜之 憂/女/9/小学生/テッカマンエビル

○KENGO/男/17/高校生・アイドル/大嘘憑き
○伊丹沢 妙/女/10/小学生/略奪
○美談 展夫/男/31/捜査官/毒電波
○天草士郎/男/16/高校生/仮面ライダーキバ
○河野 英雄/男/41/ヒモ/ガッツ星人
○天草 ゆたか/女/16/高校生/ミッドチルダ式の魔法
○後藤 万緒/女/16/高校生/人修羅
○真島 芳郎/男/32/フリーター/ハイウェイ・トゥ・ヘル
○大木 潮/男/24/フリーター/ギニューのボディーチェンジ
○沢松井之助/男/10/小学生/星のカービィのボム

○道端 ロクサーヌ/女/26/モデル/名状しがたい力
○側後 健彦/男/28/弁護士/謝債発行機(レンタルポッド)
○島原 翼/男/16/高校生/衛宮士郎の能力
○小路瀬 間栖夜/男/20台後半/三流殺し屋/ニュータイプ
○地納力也/男/26/無職/サイコ・ロック
○月宮埜々香/女/16/女子高生/ペテルギウス・ロマネコンティの怠惰の権能と憑依能力
○笹原天音/女/14/中学生/螺旋力
○鈴宮ミカ/女/16/高校生/ビタミンC
○斎藤混沌/男/13/中学生/影(シャドー)
○花浦昨亜/女/14/中学生/ポイズンクッキング

○爽超裕太/男/18/高校生/マギウス
○阿良 愛/女/25/警察官/スパルタクスの宝具とスキル
○風 浩太/男/24/無職/ヘイ・ヤー
○桂岡 笑顔/女/14/中学生/ミスター・おわらい
○鏑木シリカ/女/14/中学生/キャスター(ジル・ド・レェ)の宝具・スキル
○フレイス/オス/5/なし(虎)/ピカピカの実
○丹美 寧斗/男/28/株のトレーダー/T-1000
○三船 響子/女/33/書店の店員/新型デュエルディスク※2
○戸柱好羽/女/17/高校生/日暮熟睡男
○篠根優五/男/35/空き巣、スリ/バラバラの実

○バーニィ・ウエスト/男/35/科学捜査官/フラッシュの超高速移動能力
○アルマゲドンナオキ/男/30/プロボクサー/怪物強盗XI
○善養寺 十次/男/82/無職/第四の壁破壊
○四角 渡/男/18/高校生/三つのしもべの召喚と使役
○世神城児/男/18/元高校生/絶対遵守のギアス
○トーマス・ベイカー/男/30/資産家/バクバクの実
○波瀬海 潤/女/27/記者/ハーミット・パープル
○五十嵐椿/女/25/デイトレーダー/安心大嘘憑き
○沢田総一朗/男/28/無職/範馬の血
○君島蛍/女/15/高校生/一指全断
○天草 時春/男/56/天草財閥総裁兼筆頭株主/仮面ライダーダークキバ

○岸島水平/男/14/中学生/氷輪丸
○萩原舞/女/16/高校生/干柿鬼鮫の忍術
○劉苑寺 泰斗/男/51/実業家/アブソープション
○芹 大輔/男/30/ヤクザ/バリア+読心
○ジョナサン・ジャクスター/男/25/ニュースキャスター/クリプトン人の肉体
○江本咲穂/女/16/高校生/マネマネの実
○分目青司/男/27/消防士/キリエルの力
○枝銅 蓮司/男/20/大学生/ビョウキ・ニンジャ
○天草あかね/女/16/高校生/魔法の杖メテオテールとサポートキャラのウル
○東 ジョー/男/42/刑事・警視/8マンのボディ

○レオパルド・ガーネット/男/62/映画俳優/仮面ライダーV3への変身
○篠崎 隼彦/男/48/ホームレス/磁力操作(マグニートー)
○天草友秋/男/52/無職/ドラゴンオルフェノクへの変身

※1=トリップを付け忘れている
※2=>>126より、デュエルディスクは装備品であって固有の能力じゃないのでは……?


171 : 名無しさん :2016/09/17(土) 00:30:49 fe4GSues0
すまん期限9/18だった


172 : ◆7SR3c6/uok :2016/09/17(土) 21:14:55 RRmhqypkO
【名前】田所 恋矢(たどころ れんや)
【性別】男
【年齢】24
【職業】大学生(留年)
【服装】ISLANDSとプリントされたTシャツと短パン
【身体的特徴】日に焼けた浅黒い肌、短くさっぱりした髪型
【好きなこと・もの】アイスティー、ラーメン
【嫌いなこと・もの】臭そう等の見かけで物を言う奴
【特技】迫真の演技、水泳、空手
【趣味】トレーニング
【与えられた特殊能力】仮面ライダービースト@仮面ライダーウィザードの能力。
ビーストドライバー、ダイスサーベル、ミラージュマグナム、プラモンスター、
リングの装備一式を持っている。
フォームチェンジやビーストハイパーにも変身可能。
倒した相手の魔力を吸収することができる。
【詳細】
下北沢に住む大学生。
水泳部と空手部と兼部しているけっこうがっちりとした体つきのスポーツマン。
部活の後輩に一目ぼれして以来、なかなか自分の想いを打ち明けられない
日々に悶々としており、いつか告白しようと自宅に誘う計画を立てている。
【備考】
一人称は『俺』
ん?どこかの誰かに似てるって?なんのこったよ(すっとぼけ)


173 : ◆Si4n3ET9Lk :2016/09/17(土) 22:59:54 TzGm6dH20
【名前】ブッチャーマン
【性別】男
【年齢】35
【服装】調理用のエプロン姿に豚のマスクを被っている
【身体的特徴】丸々とした力士のような巨漢
【好きなこと・もの】肉なら何でも大好き
【嫌いなこと・もの】空腹
【特技】サバイバル、肉の解体、早食い
【趣味】食べることが大好き
【与えられた特殊能力】
「喰種の肉体と赫子@東京喰種」
『喰種』の捕食器官。"液状の筋肉"とも呼ばれ、その正体は、"喰種"の『赫包』から放出された『Rc細胞』。
 硬化と軟化を繰り返しながら自在にうねり、多用な攻撃が可能。
 血液のように流れ、"歯"よりも頑丈になるこの赫子は、『羽赫』『甲赫』『鱗赫』『尾赫』と呼ばれる"喰種"ごとに固有の4タイプに分類でき、それぞれに相性による優劣が存在するが、彼は4タイプすべてを所持している。

【詳細】
本名不明。豚のマスクで顔を隠し、巨大な肉斬り包丁を凶器として使っていたことから噂では「ブッチャーマン」と呼称される。
街のゴミ屋敷に住み着く殺人鬼であり、夜な夜な人をさらっては肉を食っていた。
それも変態的理由ではなく「タダで食べられるから」といった経済的理由からであり、人間よりも獣に近い精神の持ち主。
15年にも渡り犯行を繰り返し、もはやその存在は都市伝説と化している。

【備考】
豚のマスクを被っているのは顔を見られるのを防ぐためなのもあるが、その実、かなりの恥ずかしがりだから。素顔はめったにさらさないためはんば忘れてすらいる。


174 : 名無しさん :2016/09/18(日) 10:08:42 OeU7fgMA0
今日まで?


175 : ◆BNxC/Vtkps :2016/09/18(日) 23:59:07 .wW8SfWg0
最後に滑り込み

【名前】早川千夏 (はやかわ ちなつ)
【性別】女
【年齢】15
【職業】高校一年生
【服装】一般的な学生服
【身体的特徴】黒髪ショートポニー
【好きなこと・もの】平穏、頼れる人
【嫌いなこと・もの】長話
【特技】話を聞き流す事
【趣味】カフェ巡り
【与えられた特殊能力】工兵@放課後アサルト×ガールズ
工作技術により、資源を消費しあらゆる物資を制作可能。
制限として、首輪を解除出来るものは制作不可能。また架空のものでもある程度は制作出来るようになっている。
また、物資をデジタル圧縮し、3トンまでの荷物を運搬可能。
他にはある程度の運転技術を手に入れている。
【詳細】
萩原舞(>>155)の友人であり幼馴染。
ミリタリー系には一切興味がなく、彼女の長話に手を焼いている。


176 : 名無しさん :2016/09/19(月) 11:42:26 dVbhTuJI0
期限過ぎたのに、なして>>1来ないし……>>1がまとめてくれないと何も始まらんで!


177 : 名無しさん :2016/09/19(月) 11:54:19 LiALCtPQ0
イッチは生きているのだろうか
とりあえず76名まとめ


○名前/性別/年齢/職業/能力

○千原 亜希//女/17/高校生/サム・ライミ版スパイダーマン
○増田 ユーリ/女/17/元アイドル/マジカルエミ
○ロック・パンサー/男/29/ボクサー/超人兵士血清(キャプテン・アメリカ)
○ダイナン・ガイアット三世/男/20/用心棒/ウルトラマン
○岩井 政隆/男/40代後半/警察官巡査長/マジシャンズ・レッド
○河野 明代/女/43/風俗嬢/巨人化
○井上 快夢/女/17/アイドル/ウタウタイ
○郷音 ツボミ/女/18/アイドル/ガングニール
○石黒千晶/女/17/高校生/『直感』
○四季邑 飛鳥/男/16/高校生/直死の魔眼

○笹原卓/男/17/高校生/幻想殺し
○成沢 弥生/女/16/高校生/呪腕のハサンの能力と技術
○島津 蒼太/男/17/高校生/『腹話術』
○結城キユ/男/17/高校生/朱色の魔本
○蘭堂虎竜太/男/16/高校生/ドアドアの実
○八神そう/女/9/小学生/マイティ・ソー※1
○御船ジャック/男/9/小学生/テッカマンブレード
○藤崎直哉/男/20/大学生/セト神
○科学教師/男/不明/浮浪者/ハーミット・パープル
○夜之 憂/女/9/小学生/テッカマンエビル

○KENGO/男/17/高校生・アイドル/大嘘憑き
○伊丹沢 妙/女/10/小学生/略奪
○美談 展夫/男/31/捜査官/毒電波
○天草士郎/男/16/高校生/仮面ライダーキバ
○河野 英雄/男/41/ヒモ/ガッツ星人
○天草 ゆたか/女/16/高校生/ミッドチルダ式の魔法
○後藤 万緒/女/16/高校生/人修羅
○真島 芳郎/男/32/フリーター/ハイウェイ・トゥ・ヘル
○大木 潮/男/24/フリーター/ギニューのボディーチェンジ
○沢松井之助/男/10/小学生/星のカービィのボム

○道端 ロクサーヌ/女/26/モデル/名状しがたい力
○側後 健彦/男/28/弁護士/謝債発行機(レンタルポッド)
○島原 翼/男/16/高校生/衛宮士郎の能力
○小路瀬 間栖夜/男/20台後半/三流殺し屋/ニュータイプ
○地納力也/男/26/無職/サイコ・ロック
○月宮埜々香/女/16/女子高生/ペテルギウス・ロマネコンティの怠惰の権能と憑依能力
○笹原天音/女/14/中学生/螺旋力
○鈴宮ミカ/女/16/高校生/ビタミンC
○斎藤混沌/男/13/中学生/影(シャドー)
○花浦昨亜/女/14/中学生/ポイズンクッキング

○爽超裕太/男/18/高校生/マギウス
○阿良 愛/女/25/警察官/スパルタクスの宝具とスキル
○風 浩太/男/24/無職/ヘイ・ヤー
○桂岡 笑顔/女/14/中学生/ミスター・おわらい
○鏑木シリカ/女/14/中学生/キャスター(ジル・ド・レェ)の宝具・スキル
○フレイス/オス/5/なし(虎)/ピカピカの実
○丹美 寧斗/男/28/株のトレーダー/T-1000
○三船 響子/女/33/書店の店員/新型デュエルディスク※2
○戸柱好羽/女/17/高校生/日暮熟睡男
○篠根優五/男/35/空き巣、スリ/バラバラの実

○バーニィ・ウエスト/男/35/科学捜査官/フラッシュの超高速移動能力
○アルマゲドンナオキ/男/30/プロボクサー/怪物強盗XI
○善養寺 十次/男/82/無職/第四の壁破壊
○四角 渡/男/18/高校生/三つのしもべの召喚と使役
○世神城児/男/18/元高校生/絶対遵守のギアス
○トーマス・ベイカー/男/30/資産家/バクバクの実
○波瀬海 潤/女/27/記者/ハーミット・パープル
○五十嵐椿/女/25/デイトレーダー/安心大嘘憑き
○沢田総一朗/男/28/無職/範馬の血
○君島蛍/女/15/高校生/一指全断
○天草 時春/男/56/天草財閥総裁兼筆頭株主/仮面ライダーダークキバ

○岸島水平/男/14/中学生/氷輪丸
○萩原舞/女/16/高校生/干柿鬼鮫の忍術
○劉苑寺 泰斗/男/51/実業家/アブソープション
○芹 大輔/男/30/ヤクザ/バリア+読心
○ジョナサン・ジャクスター/男/25/ニュースキャスター/クリプトン人の肉体
○江本咲穂/女/16/高校生/マネマネの実
○分目青司/男/27/消防士/キリエルの力
○枝銅 蓮司/男/20/大学生/ビョウキ・ニンジャ
○天草あかね/女/16/高校生/魔法の杖メテオテールとサポートキャラのウル
○東 ジョー/男/42/刑事・警視/8マンのボディ

○レオパルド・ガーネット/男/62/映画俳優/仮面ライダーV3への変身
○篠崎 隼彦/男/48/ホームレス/磁力操作(マグニートー)
○天草友秋/男/52/無職/ドラゴンオルフェノクへの変身
○田所 恋矢/男/24/大学生(留年)/仮面ライダービースト
○ブッチャーマン/男/35/不明/喰種の肉体と赫子
○早川千夏/女/15/高校一年生/工兵

※1=トリップを付け忘れている
※2=>>126より、デュエルディスクは装備品であって固有の能力じゃないのでは……?


178 : 名無しさん :2016/09/19(月) 12:37:22 XaKgf92I0
いっちが来ないので心配になってきた
こんだけ味のあるキャラが揃ったのに連絡なしとか
リアルでなにかあったんだろうか…心配だな…


179 : 名無しさん :2016/09/19(月) 12:55:14 lxv9.1TQO
リアルの都合ってことはケガや何かの可能性もあるのか・・・・・・連日台風も続いてるし

しかし、ずっとやりたかったコンセプトのロワだし、このまま企画が立ち消えになるのはヤダな


180 : 名無しさん :2016/09/19(月) 15:23:52 XaKgf92I0
キャラのクオリティと投下数を見た限りでは
飽きて放置したって線は考えられないもんな
これだけいいキャラが揃ったんだから
投下見てるだけでテンション上がるし
ネット環境があればウキウキで即レスだろうし

なにがあったんだ…心配だな…


181 : 名無しさん :2016/09/19(月) 16:38:01 Lu3G35JU0
まぁ、イッチを待つしかないか


182 : 名無しさん :2016/09/19(月) 23:22:30 lxv9.1TQO
イッチが来るまでの間、強すぎる能力とかに設ける制限について議論しとこうか


183 : 名無しさん :2016/09/20(火) 03:24:49 zQKb3dRo0
あげ


184 : 名無しさん :2016/09/20(火) 07:42:47 sKnCsH8g0
>>182
でも、>>1が選出するキャラによっいぇはその必要がないかもしれないからね
投票も含めて全員出たところでした方がいいと思う


185 : 名無しさん :2016/09/20(火) 08:06:26 7MqZeBlI0
>>173ブッチャーマンの能力って東京喰種の誰が持ってるの?


186 : 名無しさん :2016/09/20(火) 10:52:56 .c8LkxHQ0
誰も持ってないでしょ


187 : 名無しさん :2016/09/20(火) 10:55:49 s7iz/Js60
いやゲーム版の主人公は一応4種持ちだぞ


188 : 名無しさん :2016/09/20(火) 10:58:26 QfOxOHKE0
二種類の赫子持ってるキャラならヒナミやナッツクラッカーとかいるけど、全種類持ってるキャラは誰もいないから
正直「特定の版権キャラの異能力」に該当するかっつうとアウトな気はする


189 : 名無しさん :2016/09/20(火) 10:59:06 QfOxOHKE0
>>187
あーそれならゲーム主人公の異能力ってことにすればアリかな


190 : 名無しさん :2016/09/25(日) 13:20:47 yA7bKM2k0
>>1 来ないなー
アクシデントか失踪か理由はなんにせよ、企画始めるための代理人立てるべきか……?
しかし、これも>>1の許可なしだとまずいかな?


191 : 名無しさん :2016/09/25(日) 13:48:06 QB1u7t8g0
代理人立てても良いと思うよ
後から>>1が来れば交代すれば良いし、モチベ無くしてても企画が進行してれば再加熱するかもだし


192 : 名無しさん :2016/09/25(日) 14:31:16 69B0Avvc0
じゃあやりたい奴酉付きで代理頼む
イッチ来ないし取り敢えずは投票の10人決めるか?


193 : ◆YlfcDuGY1. :2016/09/26(月) 20:02:07 kMAMBjVQ0
我こそは!

と言いたいところですが、パロロワ企画のイッチになったことは一度もないですし
まとめられかどうか不安です
避難所とかまとめwikiも一から作ったことはないし


194 : 名無しさん :2016/09/26(月) 20:24:33 zjYEbLUw0
経験とかそんなのは全然良いよ(^-^)
wikiも避難所も必ず用意しなきゃいけないとかじゃないし、盛り上がれば大抵なんとかなるし


195 : ◆YlfcDuGY1. :2016/09/26(月) 22:26:34 kMAMBjVQ0
足りない部分は他の人に補ってもらう前提に加えて、あくまで>>1が戻るまでの繋ぎでよければ……

他の方に代理人やりたい人はいますか?


196 : ◆YlfcDuGY1. :2016/09/28(水) 22:47:09 xQYFOp/M0
他にやりたい人はいない感じですかね。
それでは代理人を務めさせてもらいます。

まずは参戦キャラなんですが本来ならイッチが決めるところでしたが、不在なので投票で決めるのが順当だと思います
参戦人数はイッチの要望に従うと40名ぐらいほどになりますね。

投票者一人につき何票ぐらいが適切か、投票は何日に行うべきか、その他諸々ご意見がある方はいますか?


197 : 名無しさん :2016/09/28(水) 23:18:40 d7CBdlbM0
参戦キャラはもう少し多めでもいいかもしれない
45〜50名ぐらいかな


198 : ◆YlfcDuGY1. :2016/09/28(水) 23:58:21 xQYFOp/M0
キャラが少ないとキャラ同士の接触が薄くなって中々ロワが進行しないと聞きますし、イッチも40名はあくまで目安程度としていたようで45〜50くらいいても問題ないかと。

欲を言えば60名〜全通しと行きたいですが、オリロワはキャラが多すぎても進行が厳しく完結まで長いスパンを覚悟する必要があるので、50から先はみなさんの意見待ちで。

それとこの二つのキャラは
>>81 八神そう⇒トリップがついてない。
>>125 三船 響子⇒デュエルディスクは装備品であって固有の能力ではない。
という問題があるので投票日までに>>81はトリ表示を、>>125はキャラの修正をお願いします。
期日までに間に合わない場合は遺憾ながら、このキャラは投票不可=参戦不能にさせていただきます。


199 : 名無しさん :2016/09/29(木) 00:00:03 KkeSKnzg0
俺はバンバン死んでくスタイル好きだし、オリだから把握も楽だから人数は多くてもいいと思う
期日過ぎてるし、投票は早いほうがいいかな


200 : ◆YlfcDuGY1. :2016/09/29(木) 00:20:53 gYAPuBoI0
投票日は無難に人が一番集まりそうな日曜日かな。
投票日を急ぐなら今週日曜日(10/2)あたりか、来週日曜日(10/9)。
前者だと期限が短い分投票者が集まりにくく。
後者だと投票者は集まる代わりに企画のスタートが遅くなる。
どっちが良いですかね?


201 : ◆Upy4wcs9SI :2016/09/29(木) 00:49:07 IApfMKc20
>>198
承知しました。人物設定をそのままに、能力を以下のものに変更させていただきます。

炎術士@烈火の炎/紅麗
炎を発現させ、操る力。
死者の魂を炎として取り込み、自身の力として使役する。


202 : 名無しさん :2016/09/29(木) 03:21:48 /UMh2jIY0
来週でもいいんじゃない。このスレ止まったまんまだと思っている人もいそう
その間にwikiや地図、投票用のしたらばとかを準備すればいいかなと思うな

持ち票は12票を希望してみる。


203 : 名無しさん :2016/09/29(木) 06:49:08 KPCe8kjw0
オリロワでは元々キャラの関係性は希薄だしロワが
進行し辛いって問題はないと思うし参加人数は40人に抑えたほうがいいと思う。
人数が多いと版権キャラと違ってキャラが薄いからキャラの差別化がしにくい問題もある、最悪酷い死に方をさせたり奇抜な行動をさせるくらいでしか読み手の印象に残せないってこともありえる。


204 : ◆.ksO9nG.ek :2016/09/29(木) 08:00:39 /tEaPSPg0
トリップ付で再投下します。

81 : 名無しさん sage 2016/09/01(木) 19:37:27
【名前】八神そう
【性別】女
【年齢】9
【職業】小学生
【服装】白い制服
【身体的特徴】茶色のショートカット、右足が不自由で、杖を突いている
【好きなこと・もの】サブカルチャー、特に魔法少女リリカルなのはシリーズ、八神はやて
【嫌いなこと・もの】サブカルチャーを馬鹿にする人、『障害者だから』と特別扱いされること
【特技】年齢不相応の妄想力
【趣味】『もしも自分が魔法少女だったら』という妄想をする
【与えられた特殊能力】ムジョルニアによるマイティ・ソーへの変身@マーベルコミックス
所持している杖で地面を1回叩くと、杖が魔法のハンマー『ムジョルニア』に変わり、スーパーヒーロー『マイティ・ソー』に変身する(顔と体格は変化無し)。変身している状態で60秒以上ムジョルニアを手放すと、元の姿に戻ってしまう。
【詳細】
都内在住の小学3年生。
生まれつき片足が不自由で、障害者学級に通っている。
まだ小学生ではあるが、サブカルチャーを愛するオタクで、特に『魔法少女リリカルなのは』シリーズのメインキャラクターの一人『八神はやて』を自分と同一視しており、八神はやてのまねをして、普段から関西弁で喋っている。
『なのはやはやてのように、自分も魔法少女になりたい』と夢見ている。
【備考】
アメコミは軽く嗜む程度だが、マーベル・スタジオのMCU映画は母親とちょくちょく見に行っている。


205 : ◆YlfcDuGY1. :2016/09/29(木) 16:37:07 gYAPuBoI0
今戻りました。

>>201>>204
お二方、ありがとうございます。これでキャラ絡みの問題は解決しました。

参加者人数に関しては40以上に増やしたい・40までに抑えるべきという意見がありますね。
自分の考えではこれから書き手か読み手として企画に参加するキャラの作り手のモチベを考えるとキャラは多少増やすメリットもあると思います。
ただ、多すぎると個々のキャラが薄くなる意見もごもっともなので、投票の結果どんなに多くなっても50超えないぐらいが適当かと思いますが、いかがでしょうか?

投票日に関してはしばらくスレが止まっていたことを考えると今週では早過ぎると思うので
来週日曜日(10/9)に決行、投票時間は同日の0:00〜23:59までで、投票数は一人につき12票

投票日までの10/9までの空いた期間はwiki・したらば・地図を作ろうかと思います。

何かご意見があればどうぞ。
ちなみに私は以前にも書き込んでますがwikiやしたらばのノウハウがイマイチわからず、地図についてはノープランです。


206 : 名無しさん :2016/09/29(木) 17:26:12 zn1C97Ac0
人数、投票予定日ともに賛成です
地図に関しては1氏が「基本的なルールは原作準拠」と仰っていたので、沖木島会場でいいのでは


207 : 名無しさん :2016/09/29(木) 17:33:34 6aZNkNt6O
うーん、地図は原作通りじゃなくて能力者達に合わせたマップが良いかな
能力者の長所をいかせる、もしくは弱点になる地形とか
例えばスパイダーマンならビルの建ち並ぶエリアなら機動力大幅アップだし、ターミネーターなら溶鉱炉が死亡フラグになるし


208 : 名無しさん :2016/09/29(木) 18:08:12 /UMh2jIY0
人数は最大でも50人以下でちょうどいいかもね
wikiはアットウィキっていうのがあって誰でもタダでレンタルできるwikiがある
他のパロロワでもこれを使ってるのが多いね
したらばも同様に無料のレンタル制。
地図に関しては最悪文字並べるだけでも何とかなると思う
理想的には画像があったらうれしいのだけれどもね


209 : 名無しさん :2016/09/29(木) 18:11:06 JjE4gjQ60
>>207
それだと誰が受かるか分からない状態じゃあ作りようがないじゃないか


210 : 名無しさん :2016/09/29(木) 18:33:27 o61uEuHE0
沖木島を基本としてあとは作中で施設見つけるとかで魔改造していく感じでいいんじゃね


211 : ◆YlfcDuGY1. :2016/09/29(木) 20:56:03 gYAPuBoI0
>>208
教えていただきどうもありがとうございます。

地図に関してはベースを沖木島にして、参加キャラ決定後に施設を配置する。
もしくはベース以外はあらかじめ決めず、作中で参加者が発見していく形でもいいかもしれませんね。


212 : ◆YlfcDuGY1. :2016/10/03(月) 09:41:04 0XQMEj/Y0
ようやくしたらば掲示板ができましたので報告いたします

ttp://jbbs.shitaraba.net/otaku/17654/

ここの投票スレで投票を行ってください。
投票スレにもありますが、投票日は2016/10/9にキャラ投票を決行
投票時間は同日の0:00〜23:59まで
投票数は一人につき12票
当選数は40名を目安に50名以内を予定しています。


213 : 名無しさん :2016/10/04(火) 17:41:11 KIhftp6M0
お疲れ様です!これで投票の準備は整った感じですね


214 : 名無しさん :2016/10/08(土) 19:53:54 oJNvqD2c0
もうすぐ投票か


215 : 名無しさん :2016/10/08(土) 20:10:13 rf8Zs1q20
そろそろ投票だけど
誰か気になってるキャラとかいる?
デッドプールの能力得たじいちゃんとか
頭の中がいろいろやばくなってそうだなと思った


216 : 名無しさん :2016/10/09(日) 00:15:56 RvsBpxWo0
本日>>212のしたらばでキャラ投票あるので忘れずに


217 : 名無しさん :2016/10/09(日) 11:46:59 zDVznK2.O
>>215
天草オタク親子
女版人修羅
マッチポンプ消防士
野獣パチモン先輩


218 : 名無しさん :2016/10/09(日) 13:07:39 zDVznK2.O
当選できるかどうかは別として、自分のキャラに1票でも票が入ってるとやっぱ嬉しいな〜


219 : 名無しさん :2016/10/09(日) 16:14:22 Po6CVrTg0
どの辺が人気出るかな


220 : 名無しさん :2016/10/09(日) 21:28:04 A1Vo8Rrc0
結構、繋がり考えて投票してる感じかな


221 : 名無しさん :2016/10/09(日) 23:09:51 02ITL6/E0
締め切りまであと一時間やけど、今の所誰が受かるんかな


222 : ◆YlfcDuGY1. :2016/10/10(月) 00:59:04 KNYwFqHk0
避難所にも書きましたが投票結果発表です

☆6票 2名
【天草 ゆたか】
【江本咲穂】

☆5票 7名
【蘭堂虎竜太】
【藤崎直哉】
【阿良 愛】
【善養寺 十次】
【トーマス・ベイカー】
【レオパルド・ガーネット】
【田所 恋矢】

☆4票 17名
【千原 亜希】
【郷音 ツボミ】
【石黒千晶】
【笹原卓】
【八神そう】
【科学教師】
【KENGO】
【伊丹沢 妙】
【天草士郎】
【鈴宮ミカ】
【フレイス】
【四角 渡】
【沢田総一朗】
【君島蛍】
【天草 時春】
【芹 大輔】
【天草あかね】

☆3票 12名
【増田 ユーリ】
【岩井 政隆】
【成沢 弥生】
【大木 潮】
【道端 ロクサーヌ】
【島原 翼】
【月宮埜々香】
【鏑木シリカ】
【丹美 寧斗】
【萩原舞】
【分目青司】
【早川千夏】

ここまでで合計38名

☆2票 19名
【河野 明代】
【井上 快夢】
【島津 蒼太】
【結城キユ】
【御船ジャック】
【夜之 憂】
【河野 英雄】
【後藤 万緒】
【側後 健彦】
【笹原天音】
【斎藤混沌】
【篠根優五】
【バーニィ・ウエスト】
【アルマゲドンナオキ】
【世神城児】
【ジョナサン・ジャクスター】
【枝銅 蓮司】
【天草友秋】
【ブッチャーマン】

☆その他1票・投票なし

3票までだと38名で40に届かず
2票を入れると57名で大幅オーバーするという形です


223 : 名無しさん :2016/10/10(月) 01:01:13 b1lyspKA0
別に38人でもいいと思うけど、意見によっては2票勢で決戦投票か?


224 : 名無しさん :2016/10/10(月) 01:04:05 QjRkQ9520
まあ若干少ないけど原作ロワ並と思えば十分だし、オリキャラの掘り下げやすさや進行のしやすさ的にも38人でもいいかなとは思う


225 : 名無しさん :2016/10/10(月) 01:11:21 tDsROYLI0
俺も38名でちょうどよいと思うが、
これも投票とか話し合いとかでしっかりきめたほうがいいよね?


226 : 名無しさん :2016/10/10(月) 01:19:05 QjRkQ9520
まあ2票勢入れるとしても決選投票とかじゃなくて、参加者数上限を45人くらいに設定した上で
2票勢を書き手枠として出せるとかくらいでいいんじゃないかなと思う


227 : ◆YlfcDuGY1. :2016/10/10(月) 01:34:59 KNYwFqHk0
あー、難しいですね。
57名は流石に多すぎるし、38名はちょい少ない気もする。
二票勢はばっさり切るか決選投票と書き手枠という提案もありますが……

リアルの都合で忙しいので今日はここで落ちます。
明日の夜(11日)にはまた顔を出しますので、スレの流れを見て答えを出してみようと思います。


228 : 名無しさん :2016/10/10(月) 01:42:29 GIS12szE0
38人はちょっぴり少なすぎると思うな
オリロワなんだし版権キャラと違ってスムーズに死者出るでしょ
決選投票あるいは2票限定で書き手枠を設けたいね

どっちかというならこれ以上伸ばすのはちとマズイし書き手枠かな
2〜6人くらいがちょうどよくなるかな


229 : 名無しさん :2016/10/10(月) 02:59:37 jlFCLUqY0
パロロワの平均的な参加人数と比べると少ないが
キャラがオリジナルで固定書き手が付きにくい
オリロワだと考えれば人数を抑えて進めた方が良いと思う


230 : 名無しさん :2016/10/10(月) 07:20:54 XDIiR8V20
原作バトロワと同じ同じ最大42人までで四人書き手枠でいいんじゃない


231 : 名無しさん :2016/10/10(月) 15:16:03 upI4AoCU0
初代イッチも原作準拠言ってるし、原作の転校生的な感じで42人の4人書き手枠いいかもな


232 : 名無しさん :2016/10/10(月) 17:38:55 osZZI5HUO
書き手枠かあるいは決選投票で40人以上でいいんじゃないかな


233 : 名無しさん :2016/10/10(月) 18:51:40 QjRkQ9520
個人的には上で言われてるように42人上限で4キャラ書き手枠がいいかな
出せるのは2票組のみ+書き手1人につき1キャラだけくらいの制約で


234 : 名無しさん :2016/10/10(月) 18:54:33 QjRkQ9520
連投失礼
もしくは書き手で制約じゃなくて、一度の予約につき1人だけとか


235 : 名無しさん :2016/10/10(月) 20:56:15 E88d5u7A0
俺はバランスとれてそうな>>233に賛成。他に意見や妙案がなければ良いと思う


236 : 名無しさん :2016/10/10(月) 21:13:40 tDsROYLI0
ぜんぜん関係ないけど1がwiki作るっていってたのに勝手にwiki作ってしまった……


237 : 名無しさん :2016/10/10(月) 22:04:10 GIS12szE0
>>236
wiki製作乙
調べてみたけどまだ◆YlfcDuGY1.氏はwikiを作ってないし、
いいんじゃないかな。
このスレの進行以外は企画者が管理しなければいけない
ルールはないしね


238 : 名無しさん :2016/10/10(月) 22:05:22 jlFCLUqY0
まぁ、どうするにしろ早めに決めたいな


239 : 名無しさん :2016/10/10(月) 22:06:20 tDsROYLI0
これっす・・・・・
まだ絶賛編集中ですが
はやとっちりにしてすまん……

ttp://www65.atwiki.jp/abilityrowale/


240 : 名無しさん :2016/10/10(月) 22:09:12 GIS12szE0
>>239
自分も編集しにいくよ
1票以下のキャラはせめてwikiで記念に保管したいしね


241 : 名無しさん :2016/10/10(月) 22:26:28 tDsROYLI0
>>240
とても助かる……!ありがとう!


242 : 名無しさん :2016/10/10(月) 22:42:44 Gc7wGCzU0
とりま、トップページのテンプレと本スレ、したらばのリンク張っといた
いらんかったら消しといてくれ


243 : 名無しさん :2016/10/10(月) 22:56:21 HiizmhRAO
惜しくも当選できなかったキャラは企画が軌道に乗ってきたら参加者の回想に出てくるとか、一方その頃ロワという事件の外側では、みたいな外伝SSとか考えてみようかな
まずは企画を軌道に乗らせることが先だけど


244 : 名無しさん :2016/10/10(月) 23:06:14 tDsROYLI0
.>>243
ありがとう!
俺は明日早いからまだ中途半端な編集しかできていないけれど、落ちます


245 : 名無しさん :2016/10/10(月) 23:06:41 tDsROYLI0
安価まchいがえた243じゃなくて242


246 : ◆YlfcDuGY1. :2016/10/11(火) 21:12:34 19h6c9VE0
お待たせしました。
>>236氏にはwikiを作っていただき誠にありがとうございます。

さて、問題になった二票勢ですが決戦投票だと時間がかかりすぎると思うので>>233氏の意見を採用して書き手枠で行こうかと思います。
キャラ数ですがバトロワ原作順序で42名(枠4名)、もっと多く入れたい人のためや数字的にキリがよくなる45名(枠7名)。
制約は出せるのは2票組のみ+書き手1人につき1キャラのみをプランとして考えます。


247 : 名無しさん :2016/10/11(火) 22:10:38 wDwrqT0s0
正直書き手一人につき1キャラのみより「一度の予約につき1キャラのみ、同一の書き手による複数回の枠使用は可能だけど節度をもって自重することを推奨」くらいのがいいんじゃないかなとは思う
45キャラで枠7つだと逆を言えば書き手が最低七人いないと全員出揃わないまま膠着することになっちゃうし


248 : 名無しさん :2016/10/11(火) 22:28:43 bXxb3khEO
なるほど
書き手は七人も揃うとは限らないし、七人以上いても全員が書くとは限らないわけだ


249 : ◆YlfcDuGY1. :2016/10/11(火) 23:00:49 19h6c9VE0
そこまで考えてなかったな……
では>>247氏の意見を取り入れて
一度の予約につき1キャラのみ、同一の書き手による複数回の枠使用は可能。
ただし一人で書き手枠を大半埋めるなどの行為はなるべく自重を推奨という形でよろしいですかね。

後はプランA(参加者42名、書き手枠4名)、プランB(参加者45名、書き手枠7名)のどちらが良いかぐらいでしょうか。


250 : 名無しさん :2016/10/11(火) 23:23:20 wDwrqT0s0
個人的にはキリ良いし適度に2票組出せる45人でいいんじゃないかなと思う


251 : 名無しさん :2016/10/11(火) 23:23:59 cDEL6eLcO
やっぱり最終的に企画者が書くことになってしまう状況を考えると少なめの42人の方がいいと思う


252 : 名無しさん :2016/10/11(火) 23:33:11 H52XJSxk0
まぁ、どれだけ出したい人がいるかだよなー
個人的には七枠で、第一回放送までに余りが出たらそれはそれで放っといてもいいんじゃないかな


253 : 名無しさん :2016/10/12(水) 10:56:07 wrYSDz8g0
強いて言うなら38人の中にマーダーになりそうなキャラ(あくまで私見だけど)が少ない印象かな


254 : 名無しさん :2016/10/12(水) 10:58:37 wrYSDz8g0
ちなみに私はプランB派
企画に足を突っ込んだ以上、せめて自分の当選したキャラの登場話ぐらいは書くつもり


255 : 名無しさん :2016/10/12(水) 12:16:59 c8YAoODU0
俺はプランAかなぁ
マップも原作の島にする流れだし、42という数字を大切にしていきたい。
4人分枠があればどうしても、って人も書けるんじゃないか?


256 : 名無しさん :2016/10/12(水) 13:06:03 gXgPVLoU0
俺はBプラン。別に原作設定を尊重するにしても42にこだわる理由はないと思う
それよかモチベーションとか、企画がぐだる前に予約解禁した方が上手くいくんじゃない?


257 : 名無しさん :2016/10/12(水) 13:17:13 3J0LIvTM0
予約解禁する前に予約期間決めんとね
5~7日くらいでいいとは思うけど


258 : 名無しさん :2016/10/12(水) 15:46:14 rePdnOns0
先にマップ決めないと


259 : 名無しさん :2016/10/13(木) 07:11:06 83mre7560
マップはすでに沖木島で決まってないか


260 : 名無しさん :2016/10/13(木) 13:10:27 RyqMAlQY0
手元にネットから拾ってきた沖木島マップと原作小説のマップをスキャナーで取り込んだ沖木島マップの2つがあるけど、どっちか使う?
新たに作りたい人がいるなら別だけど。
ネット: ttp://gazo.shitao.info/r/i/20161013130548_000.jpg
小説 : ttp://gazo.shitao.info/r/i/20161013130836_000.jpg


261 : 名無しさん :2016/10/13(木) 17:16:13 /0g0ua260
自分は原作mapに一票。やっぱり先人の知恵は偉大だよね


262 : 名無しさん :2016/10/13(木) 19:38:30 MP6z795I0
同じく原作マップが良いと思う
シンプルイズベストだ


263 : 名無しさん :2016/10/13(木) 21:15:55 4CaYu/T.0
だから原作マップに少しアレンジを加えるって話だったろ?


264 : ◆YlfcDuGY1. :2016/10/13(木) 21:33:54 zdhsTv1M0
>>260
原作小説はわかりやすい、施設のバリエーションも豊富で良いですね。
反対意見が特になければこのまま原作マップで行こうかと思います。

予約の期限は無難に一週間で良いと思います。

そして問題だった書き手枠のキャラについてはプランAとプランBで意見が真っ二つに分かれている印象ですね。
そこで新たに二つのプランを折衷したプランCを提唱します。
書き手枠の最大人数は7名ですが、予約解禁から一ヶ月以内という締切期限を設けます。
期限を過ぎたら書き手枠7人揃わなくても参加者38+登場話の書かれた書き手枠のみで企画を続行という形になるプランです。


265 : ◆YlfcDuGY1. :2016/10/13(木) 21:38:51 zdhsTv1M0
>>263
アレンジを加える意見もありましたね。
あくまで基礎は沖木島で、参加者が発見していく形でニョキニョキ増やしていくという形でしょうか。
それと何か開始前に追加・削除すべき施設について意見はありますか?


266 : 名無しさん :2016/10/13(木) 23:04:09 DRG/fnng0
自分は特には無いが、強いていうなら原作だと政府や軍の詰所だった学校も一施設として使えるようにするくらいかな


267 : 名無しさん :2016/10/14(金) 00:29:50 WkbYm2Gg0
参加者が発見して増やすのはやめた方が良い矛盾が生まれたらこまるしややこしくなる。
増やすなら参加が確定してる参加者に関連する施設を例えば警察署とか?

あと自分はネットの方の地図が良いと思う


268 : ◆YlfcDuGY1. :2016/10/14(金) 21:17:05 g4hMu7v.0
ちょっとまとめ

書き手枠:プランA(4人)とプランB(7人)で意見が割れてる
       いちおうプランC(最大7人・期限制)も用意した

マップ:全体的には原作小説派が多い印象

予約期限:7日?

企画を始めるために、この三つをそろそろ決めないとまずいですかね。


269 : ◆YlfcDuGY1. :2016/10/14(金) 21:20:21 g4hMu7v.0
個人的には

書き手枠:プランC(自分が決めたものに賛同するのもアレですが)

マップ:賛成の多い原作+何らかの施設追加・変更 参加者が見つけて増やすのは無し

予約期限:7日

でFAといきたいところです


270 : 名無しさん :2016/10/14(金) 21:57:22 RHLeAaEM0
地図はネットと小説を組み合わせるのはどうだろうか


271 : 名無しさん :2016/10/14(金) 22:05:07 4vGQzvHU0
原作地図は禁止エリアのことまで書いてあるから後々面倒なことになりそう


272 : ◆YlfcDuGY1. :2016/10/14(金) 22:11:46 g4hMu7v.0
>>270
組み合わせられる技術を持った人がいると良いんですが……自分には無理です。

>>271
流石に禁止エリアまでは原作通りにはならないと思いますが……気になる人は気になりますかね?
放送や禁止エリアは他ロワの相場から六時間毎、三エリアずつにしようかと思います。


273 : 名無しさん :2016/10/15(土) 19:27:46 8XCUfbTM0
正直>>269で問題はないと思う。

追加施設に関しては正直必要ない気がする。参加者の大半が学生だから学校も使える位でいいかと。
しいて言うなら交番位ならあってもいいかもしれない。


274 : 名無しさん :2016/10/16(日) 02:17:55 TJD5NMpA0
俺も>>269で良いと思う


275 : 名無しさん :2016/10/16(日) 04:00:08 LZEqdfuM0
原作の地図は曖昧過ぎないか?


276 : 名無しさん :2016/10/16(日) 11:50:28 K26h1IkkO
施設と施設の間を繋ぐ道が書いてないし、施設のない空白になっている部分が気になるが、逆に言えば想像の余地がいくらでもあるってことさ


277 : 名無しさん :2016/10/16(日) 12:44:24 PdOhq0K60
wikiのマップページに両方の地図と、一応禁止エリアやらもろもろを削った地図をアップロードしておきましたが
間違ってテキストモードで作ってしまったので代行殿には@wikiモードに変更するか、ログイン承認をお願いしたい


278 : 名無しさん :2016/10/16(日) 14:00:51 LZEqdfuM0
想像の余地があり過ぎるんだよ。
原作地図には山が二つあるみたいだけどこの地図だとどのエリアまでが山なのか分からないし
南東に施設が偏ってるのも気になるし。


279 : 名無しさん :2016/10/16(日) 14:05:58 AOn/X8120
細かいなぁ。そこは先に描写した書き手に習っていけば良いんじゃない?


280 : 名無しさん :2016/10/16(日) 14:13:34 LZEqdfuM0
そこまでしてまでなんで原作地図を使いたいんだ?
全く良さが分からないんだが


281 : 名無しさん :2016/10/16(日) 14:30:24 m6ovEjzo0
山頂の周囲一マスに施設がないからそのあたりくらいまでが斜面なんじゃね?

地図の話題でふと思ったけど、キャラの初期位置ってどうなるんだろ
原作だと分校スタートで、だから施設の配置が分校周りに固まってるんだろうけど


282 : 名無しさん :2016/10/16(日) 15:50:26 PK1g9wNk0
>>281
普通にランダム配置でいいんじゃない
分校スタートだと能力によっちゃ赤松みたいなスタート地点闇討ちハメ殺しが洒落にならないレベルで行使されそう


283 : 名無しさん :2016/10/16(日) 19:32:35 K26h1IkkO
>>280
ネット版は原作版に比べて施設のバリエーションが少なすぎる
ネット版が別に悪いってわけじゃないんだが、二択になるとどうしても原作版を選びたくなるというだけ
他に選択肢があれば良いんだが、どうやらこのスレに地図を1から作れる人がいない模様


284 : ◆YlfcDuGY1. :2016/10/16(日) 20:31:40 xY2dyZiY0
ここにきてマップが最後の鬼門になるとは……

とりあえず特に批判もないので
書き手枠:二票勢から最大で7名まで
       枠が余っていても予約解禁から一月以内に予約がない限り、締切で参戦できなくなる
       出せる書き手枠は一つのSSに一人づつまで
       書き手氏自身は何人書き手枠のキャラの登場話を書いて良いですが、
       他の書き手氏がなかなか書かないなどの事情を除き、一人で複数の書き手枠を埋める行為はなるべく自重してください

予約期限:7日


以上の内容は決定。
あとキャラ配置は原作通りではなく、パロロワの相場に合わせてランダムで。


285 : 名無しさん :2016/10/16(日) 20:42:13 PK1g9wNk0
ぶっちゃけ意見としては原作優勢だし(というか原作地図に根強く反発してるの一人だし)、原作地図でええんやないの
別にどっちでもいいけど


286 : 名無しさん :2016/10/16(日) 20:52:46 kXEzigFc0
原作版ベースにネット版のホテル跡とか別の集落とか池とか追加すればいいんじゃないかな


287 : ◆YlfcDuGY1. :2016/10/16(日) 20:57:31 xY2dyZiY0
ぶっちゃけ、もう原作MAPでいいかなとは思っています。

また、これまでの意見を参考に
・原作だと主催拠点で使えなかった学校が使用可能。
・武器がありそうで参加者の行動方針に影響を出しそうな交番もどこかに配置(どこに配置するか希望があればお早目に)。
・H3の山の周辺のエリアは斜面(G2〜4、H2、H4、I2〜4)

あとこれは個人的な要望ですが、原作マップはA1、J10の周辺が海で閑散としてるので人口の小島や座礁した大型船、資源開拓プラントのようなものを配置したいです


288 : ◆YlfcDuGY1. :2016/10/16(日) 21:15:34 xY2dyZiY0
おっと、忘れてた
・C7の山周辺エリアも斜面で(B6〜8、C6、C8、D6〜8)。


289 : 名無しさん :2016/10/16(日) 21:33:32 m6ovEjzo0
マップいじりがしやすくなるようにwikiに現在位置表を追加してみた
できれば画像も一緒に貼りたかったけど、マップページの地図は大きすぎてサイズが合わなかったので断念


290 : ◆YlfcDuGY1. :2016/10/16(日) 21:44:43 xY2dyZiY0
乙です。これでだいぶわかりやすくなりましたね。


291 : 名無しさん :2016/10/16(日) 22:12:16 cq4UprOI0
wiki管理人です。
僕のミスで禁止エリアとかを削った原作マップのファイルは、消えてしまったです……
申し訳ないですが、もう一度アップしていただけませんか?
本当に申し訳ない……
あとwikiのログイン承認の件ですが、(申請メールアドレスが有効か確認中) と表示されているので
一度自分のメアドにwikiからメールが来ているか確認していただけますか?


292 : 名無しさん :2016/10/16(日) 22:51:09 OiRJNtEU0
ok、予約解禁はいつになるのかな


293 : ◆YlfcDuGY1. :2016/10/17(月) 08:11:06 g5d5RWag0
アカン。寝落ちした。
予約解禁は特別な批判のない限り、今週金曜日(10/21)、0:00からにしようとします。
そして前日の10/20の0:00までは地図に追加する施設の希望を募りたいと思います。
否定意見がなければ基本全通しの予定です。

ちなみに私は
・A1に座礁した大型船
・J10に資源開拓プラント
を設置したいです。


294 : ◆YlfcDuGY1. :2016/10/17(月) 08:13:20 g5d5RWag0
ちなみに避難所に予約スレを追加いたしました。
ご予約の際はお使いください。


295 : 名無しさん :2016/10/17(月) 18:24:54 u1AZi9KA0
Wikiのマップ及び現在位置ページに禁止エリアと、再アップついでに本特有の折り目等を可能な限り消した地図をアップロードしました。


296 : 名無しさん :2016/10/17(月) 19:02:34 ME7fFffc0
新しい地図のアップロードありがとうございます!

施設ですが、個人的には集落近くに図書館がほしいです。

あと、>>1のOPですが、情報量的にとても少ないのかな、と感じたりしています。

参加者が自分の能力に気付いていない状態で殺し合いさせられるのか、とか
何も説明されぬまま孤島に移動させられてしまうのか、とか
そういった細かい描写等は、投下されて早い物順で決めてしまうのでしょうか?
自分はそれで構わないのですが、他の人の意見をお尋ねしたいです。


297 : 名無しさん :2016/10/17(月) 20:07:38 5BLh/cqYO
>>1はロワの第0話みたいなものだと思ってる

「主催が参加者に全員に何かしらの異能がある」ことを教えるOPや
「個々の異能のトリガーになる支給品に簡単な説明がある(キュウベぇみたいに全容は教えない)」程度の処置は必要だと思う
例えば郷音は歌わないと変身もできないし、歌詞を必ず支給するべき


298 : 名無しさん :2016/10/17(月) 21:26:37 Uj51uSJs0
流石に「最後の一人になるまで争う殺し合いであること」と「参加者には異能力が与えられてること」が説明されないとロワも能力バトルも成り立たなそうだしなぁ
能力に関しては支給品と一緒に簡素な説明がついてくるか、あるいは「能力の全貌は解っていないけど使い方は無意識に認識してる」みたいな形にするか


299 : 名無しさん :2016/10/17(月) 22:46:53 5BLh/cqYO
ちなみにOP書きたい人いる?
何人OP考えているかぐらいは知りたい


300 : ◆YlfcDuGY1. :2016/10/19(水) 11:14:18 Uab3YJcg0
OPを書こうと思うんですが、見せしめに困ってます。
それで見せしめ要員として出して良いキャラとかありますか?
もしキャラを出したいとあらばトリ付きのレスでお願いします。

※惜しくも当選できなかったキャラでもOKです。
※あまりにも多い場合、全員のSS登場は難しいと思うので、此方が書きやすいと思ったキャラのみになります。
※逆に誰もいなかった場合、名無しのモブになります。


301 : 名無しさん :2016/10/19(水) 12:11:08 /c6WbZnQ0
見せしめに出すなら当選したキャラと関係のある
当選しなかったキャラじゃないか?


302 : ◆YlfcDuGY1. :2016/10/19(水) 15:18:43 Uab3YJcg0
>>301
いちおう聞いてみただけだと思ってください。
ちなみに当選したキャラと関係のある当選しなかったキャラを見せしめにすることも考えてみましたが、ザッと調べたところあんまりいないようです。
また、自作キャラを勝手に見せしめに使われたくない人のためにも聞いてみました。


303 : ◆.ksO9nG.ek :2016/10/19(水) 16:48:32 m.Z.goFs0
東 ジョー


304 : ◆7PJBZrstcc :2016/10/19(水) 16:58:26 qytrOU/g0
五十嵐椿


305 : ◆.ksO9nG.ek :2016/10/19(水) 22:11:08 m.Z.goFs0
唐突ですが、避難所に死者スレを立てました。
どうぞ自由に使って下さい。


306 : ◆YlfcDuGY1. :2016/10/19(水) 22:29:16 Uab3YJcg0
死者スレ、能力把握用スレ立て乙です。
便乗して感想雑談スレも作っておきました。


307 : ◆YlfcDuGY1. :2016/10/20(木) 00:19:18 DrZEnZEo0
と、マップ追加施設締切ですね
追加されるのは
・G8に交番(場所指定がなかったので適当な位置に)
・A1に座礁した大型船
・J10に資源開拓プラント


308 : ◆YlfcDuGY1. :2016/10/20(木) 09:44:33 DrZEnZEo0
また忘れてた。
>>296氏の提案より I7 に図書館を追加。


309 : ◆YlfcDuGY1. :2016/10/20(木) 15:38:52 DrZEnZEo0
休日を利用してOPの作成が終わりました。
投下は予約解禁前と後のどっちが良いですかね?


310 : 名無しさん :2016/10/20(木) 17:49:34 yNSYN/p20
オープニングなら解禁前でいいと思う


311 : 名無しさん :2016/10/20(木) 18:44:40 WnjC36Eo0
乙です!
解禁前でお願いします


312 : ◆YlfcDuGY1. :2016/10/20(木) 18:46:17 DrZEnZEo0
予約をしやすくなるでしょうし、解禁前に投下してしまいましょうか
というわけでこれより投下いたします


313 : 日常のオワリ 物語のハジマリ ◆YlfcDuGY1. :2016/10/20(木) 18:47:48 DrZEnZEo0
僕の名前は郷音ツボミ。
明るく前向きになれる歌とエロかっこいい踊り、爽やかなエクボが売りのボーイッシュ系売れっ子アイドル「ごーね!☆」で通ってる女の子だよ♪

僕は数年前に蒸発したパパを探すために健気に歌い続けてる。
日本のどこかにいるパパに歌が届くように、できれば帰ってきて欲しいからどうしてもトップのアイドルの地位が必要だった。
大好きなパパ……僕はあなたのために必死で歌ってるよ、早く会いたいよ……



それで大舞台で歌い続けるために僕は、なんでもやってるよ。
死に物狂いの練習? くだらないバラエティ番組の参加?
ノンノン。それらも確かにやってるけど、それだけじゃないよ。

邪魔な奴に冷たい言葉や熱い拳を使って大人しくしてもらったり。
お金が欲しい人にお金をあげて色々手伝ってもらったり。
重役のオッサンと一緒に寝て仕事をたくさんもらったり。
会社の人や狂信的なファンの奴らに手伝ってもらって仕事をスムーズにしてもらったりもしているよ。
あ、自信過剰でもなんでもなく、歌やダンスに関しては実力だからね?
歌とダンスだけでは届かない部分を補ってるだけだし、他にもやってる人はいっぱいいるでしょ。たぶん。

で、この前は、僕の対抗株だった実力派アイドルの井上快夢さんがあまりにも邪魔だったから、狂信的なファンをけしかけてビルの屋上から真っ逆さま落ちてもらったよ。
例のファンにはお仕事のご褒美に抱いておいたよ……できれば都合が悪くなる前にこいつも近々消しておきたいけどね。
ペシャンコになった快夢さんには悪いけど、これもパパのためだからね。
そしてライバルも消えて晴れ晴れした気分で歌うために舞台裏からステージに行こうとした瞬間――ステージの照明より遥かに眩しい光が僕を飲み込んだ……


314 : 日常のオワリ 物語のハジマリ ◆YlfcDuGY1. :2016/10/20(木) 18:49:02 DrZEnZEo0



目を開けると僕はやたら広く薄暗い空間、その空間の冷たい床に転がっていた。
何事かとすぐに体を起こす。
だんだん脳も起き上がってきて鮮明になっていく感覚の中で、この空間には雑多に人がいることがわかった。

高校生が数人、小中学生ぐらいの小さな子もいる。
どっかのスーツ姿のお偉いさんやおまわりさんに消防士さん。
汚らしい浮浪者もいればおじいちゃんも。
人間だけじゃなくて檻に入れられた虎までいるし。
ってあれは、アイドルのKENGOさんじゃないの!?
あっちはハリウッドスターのレオポルド・ガーネットじゃん!
あ、グズのユーリちゃんまでいる。やっほー、元気してた?(棒)。
なんて考えつつ、僕は周囲の人達を冷静に観察した。
差異こそあるけど、みんな戸惑っている様子だ。
よく見るとみんな同じ機械でできてそうな首輪をつけている。

首輪……?
自分の首元に触れると、みんなと同じ首輪を僕もつけていることがわかった。
窮屈でなんか気持ち悪いなあ……飼い犬プレイは枕でもしたことないよ。
だけどこの首輪、引っ張っても簡単には外れてくれない。
どっかに外すための仕組みとかあるのかな? などと思いつつ、僕は首輪を指で調べようとした。
その時だった。

「そこのオレンジの衣装の女! 首輪を弄るな!!」

オレンジの衣装と言えば、僕が着ているステージ衣装のことだ。
どこからともなく聞こえてきた男の声に大声で注意された。
それにしても売れっ子アイドル相手にずいぶん態度がデカくてムカつくなあ……なんて考える前に、一箇所に向けてスポットライトが照らされた。
僕や他の人の視線が照らされたステージとその上に乗る灰色のローブを深々と着込んだ男に集中する。
ライトが眩しすぎるせいで男の顔がローブの影で隠れてよく見えない。


「全員起きたようだな。
俺の名前は……ナオ=ヒューマ。
ちょっと俺の暇つぶしに付き合ってもらうために、お前達には集まってもらった」

ヒューマという男は尊大な態度で僕達みんなに話しかける。
この時点で何人かの人に苛立ちを募らせてる様子だ。
僕だってその一人だよ……ったく、もうすぐ大事なライブが始まるって時に。

「さっそくだがお前達には最後の一人になるまで殺し合いをしてもらう」

はっ……?
この人何言ってるの?
てゆーか、今の台詞どっかで聞いたことあるけど……確か、かなり古い映画の……

「――“バトル・ロワイアル”。
原作者・高見広春による学生同士の殺し合いを描いたディストピア小説。
深作欣二による実写映画化、田口雅之による漫画化もされた。
今の台詞が“教官”、もしくは映画でのビートたけし演じる“キタノ”が言った台詞の真似だろうと思った奴は正解だ」

バトルロワイアル……そんな映画あったね。
たぶん僕がまだヨチヨチ歩きしてた頃の映画なんじゃないのかな?
……ということはこれはバトルロワイアルをパロッた企画なのかな? と僕はこれをどこかのTV局が仕掛けたドッキリ系の番組だと考えた。
ドッキリ番組だったら空気を読まねば……と思う一方、バトルロワイアルはネタとしては相当古くて若い視聴者は知らないかもしれないし、そもそも番組一つのためにハリウッドスターを呼び込むなんて視聴率取れても大赤字になるんじゃ……レオポルドもスケジュールカツカツだろうによく日本に来れたね。
そんな呑気な考えはすぐにヒューマに打ち砕かれた。

「言っとくがこれはドッキリとかじゃないぞ。本当に殺し合いをしてもらうからな」

その言葉が放たれた瞬間、場はドッと騒然となった。
本当の殺し合いという、あまりに荒唐無稽なヒューマの言葉に「冗談だろう」と笑う者、呆れて何も言わなくなる者、怒鳴りつける者もいた。
「嘘はそれぐらいにしなさいよ」と妄言を吐くヒューマの頭に向けて履いていた靴を投げつけた者もいた。


直後、バンッ、という何かが弾ける音がして、僕の足元にコロコロ何か一つの斑点がついた白いモノが転がっていた。


315 : 日常のオワリ 物語のハジマリ ◆YlfcDuGY1. :2016/10/20(木) 18:50:28 DrZEnZEo0
――これ、眼球だ!!

流石の僕もいつものエクボを忘れて、戦慄した。
さらに例の破裂音を辿ると、首から上が綺麗になくなった体が断面から噴水のように赤い鮮血を周囲に撒き散らしていた。
足元にはピンク色の物体や赤い液体による海ができあがっていて、首がなくなった遺体は重力に従って、血肉の海に沈んだ。
映画などで使うスプラッタ人形かとも思ったけど、この空間を包み込む血なまぐさい匂いはどう考えても……一人の人間が本当に死んだという事実に悲鳴や怒号が上がった。

「五十嵐椿……IQ180でありながら平穏無事を嫌い混沌を好んでいる性格で殺し合いをかき乱してくれると思ったが、その荒事を望む性格が仇になったな。
正直誰を“見せしめ”にするかギリギリまで悩んでいたが、そっちから“立候補”してくれて助かったよ」

首がなくなって死んだ五十嵐という名前の女性の足をよく見ると、片足の靴がないことに気づく。
彼女はヒューマに喧嘩を売り、靴を投げつけたがために見せしめにされたのだ。
運が悪かったのか、ボタンをたった一つ掛け間違えたのが致命傷に繋がってしまったのか。

【五十嵐椿 死亡】


「バトルロワイアルを知ってるのならわかるだろうが、お前達全員の首には爆薬の入った首輪がついている。
主催者である俺に逆らったりすると爆発する。
わかったら静かに俺の説明を」
「ナオ=ヒューマ! 貴様ぁ!」

五十嵐を殺害後、油断でもしていたのかヒューマは後ろから中年男性の警察官に羽交い締めにされた。
中年の警察官は誰にでもわかりやすいぐらい正義感を燃やしていた。
目の前で無辜の女性を殺されて気が立ったのだろう。

「……おい、俺の話を聞いてたのか。俺に逆らえば首輪が爆発するんだぞ?」
「やりたければやればどうだ? この距離だとおまえもただじゃすまないがな!」

首輪に詰まっているのは人の頭一つ簡単に粉砕する爆弾だ。
今、警察官の頭を爆破すればほとんどゼロ距離にいるヒューマもただじゃすまない。

「なるほど、考えたな……だが!」
「ッ!?」

ヒューマはどこからか取り出した拳銃で背後にいる警察官に向けて背面撃ちをする。
警察官は避ける暇もなく一発の銃弾が額に命中した。
仮に防弾チョッキを着込んでいても頭は守れない以上、これは死んだな……と僕だけじゃなく誰もがそう思っただろう。

「なにッこれは……!?」
「「!?」」

警察官はたたらを踏んだだけで生きていた。
額は特に出血もなく、潰れた鉛玉がポロリと落ちた。
周囲だけでなく、撃たれた本人さえ面食らっていた。
これに関してヒューマは解説する。

「古い作品で子供で知っている奴はいないだろうが、平井和正と桑田二郎が原作のSF漫画“8マン”。
警視の東ジョー、おまえにはサイボーグである8マンのボディを再現して移植した」
「移植しただと? うわッ!」

ヒューマは東に向きなおり、続けて数発発砲した。
しかし、着ていたスーツこそ穴が開きこそすれ、金属がぶつかり合う音がするだけで怪我は全くなかった。

「8マンはハイマンガンスチール製の体を持っている。
要は硬い装甲で覆われていて、こんな豆鉄砲では傷もつかない」

ヒューマは一頻り発砲した後、つい先ほど死んだ五十嵐の死体にも三発ほど撃ち込まれた。
こちらは命中と同時にグチャグチャと嫌な音を立て、肩から右手が外れて損壊した。
どうやら東に移植されたサイボーグの体が嘘ではないという証明と、あの拳銃が玩具でないことをわからせるために死体撃ちをしたらしい。

「この男だけじゃない。
お前達の肉体も寝ている間に改造させてもらった。
全員がそれぞれ違う個性を持った異能力を使えるようにな」

肉体改造? 違う個性を持った異能力? 頭の理解が追いつかないよ。
少なくとも今の人類の技術でできることじゃないはずだ。

「話はそれで終わりか、人殺しめ!!
何が何だかよくわからんが、おまえは必ずこの手で逮捕してやる!!」

東は迷うことなく、ヒューマに再度掴みかかろうとする。
自分の体に銃弾が効かないとわかった以上、何も恐れるものはないという様子だ。
まだヒューマには首輪爆破という手段があるが、それよりも早く掴みかかるつもりなんだろう。
固めてしまえば東の勝利であり、僕達は殺し合いなんてしなくて済むハズだった。


しかし、次の瞬間、東の胸にはぽっかりと大きな風穴が空いていた。


316 : 日常のオワリ 物語のハジマリ ◆YlfcDuGY1. :2016/10/20(木) 18:51:31 DrZEnZEo0

「なッ……?」
「悪いが、俺も異能者だ。
少なくとも力を使いこなせていないおまえを一撃で倒せるぐらいの力は持っている」

ほんの一瞬の出来事で何か起こったのかわからなかったけど、金属が砕けるような音と共に、東の体がえぐられたのだ。いったいどんな手品(異能?)を使ったというのか?
風穴からは血なのかオイルなのかわからない赤黒い粘性を帯びた液と、金属片が吐き出される。
そして東はヒューマの前に倒れた。

「強い正義感からの行動かもしれんが、
次の機会を伺う程度には冷静であるべきだったな。
……もう聞こえていないか」

東ジョーの眼には光が消えており、既に物言わぬ屍……いや、ジャンクになったというべきか。

【東ジョー 死亡】


「お前達、もう静かにして俺の話を聞け。俺だってこれ以上は殺したくはない。
……せっかくの暇つぶしのために集めた玩具が減るのは面白くないからな」

五十嵐と東。二人の生贄により、ようやく全員がヒューマの言葉に耳を傾ける。
辺りはしんと静まり返っていた……厳密には完全に静かになったわけじゃなく、目の前で起きた惨劇に対して、大声を上げない程度のすすり泣きや嗚咽を漏らしている人もいたけど、それぐらいはヒューマは許容してくれるらしい。
僕はと言うと、別にパパが死んだわけでもないから泣きもしなかったけど、いつもの営業スマイルができる心の余裕はなく、ただ冷や汗を流して話を静聴していたことだけ加えておく。


「ルール説明に入るぞ。一度しか言わないからよく聞け。
殺し合いと言ってもやるのはこんな狭い場所じゃない。
お前達には沖木島……原作でも殺し合いの舞台となった島を会場に殺し合いをしてもらい、最後に生き残った一人が優勝者となる。
優勝者は家に帰してやるし、願いがあるなら一つだけ何でも叶えてやろう」

優勝者には願いを叶えるだって……?

「死者蘇生、記憶消去、大金や地位、身近な人間関係の修正、暗殺、障碍や不治の病の治療、俺とサシで戦うなんてのもありだぜ」

タイマンは言わずもがな。富や名声、暗殺とかはそれなりの財力権力があれば現実でもできそうだけど、他は普通ならありえない。
だけど今までの非現実的な出来事を見せつけられてきたせいで不思議と信じられる気がしていた。
優勝すればパパにも……

「ただし、お前達全員の首には首輪がはめ込んである。
爆破の条件は無理矢理首輪を外そうとしたり、禁止エリアに入った場合。
24時間連続で死者が出ない場合。
それから俺にあからさまな反抗をした時は爆破される。
ああ、俺に対する暴言や殺し合いに乗らないって宣言ぐらいは良いぞ。
どうせ口だけじゃ俺に反抗はできやしないからな」

ああ、さっきの首輪を弄るなってそういうことだったのね。
あのまま取ろうとしたら危うく五十嵐さんより先に死ぬところだったってわけか。危ない危ない。

「全員には生き残るために最低限必要になる地図や食料と言ったツールや、殺し合うための武器や道具をランダムに入ったディパックを支給する。
名簿だけ演出のためにゲーム開始から6時間経たないと文字が浮き出ない特殊な紙を使っている。
ひょっとしたら知り合いがいるかもしれないから、それを知るためにも敵を殺して生き延びるんだな。
また、6時間毎に定時放送を行う。
そこではさっき言った禁止エリアとそれまでに死んだ死亡者を発表する。
放送のやり直しなんてしないから、絶対に聞き飛ばすなよ」

参加者はだれが出ているか知るには最初の放送まで生き延びなきゃならない、放送の時はメモ必須だね。
そう考えていると、ヒューマが改まってみんなに言った。


317 : 日常のオワリ 物語のハジマリ ◆YlfcDuGY1. :2016/10/20(木) 18:53:47 DrZEnZEo0

「さて、ここからがこの殺し合いの面白いところだ。
さっき殺した東ジョーのように俺はこの場にいる全員に、一人につき何らかの能力が使えるように肉体改造を施した。
一部例外を除いて見た目は変わってないが、全員が何らかの力を手にしている。
一見ガキにしか見えない奴も大人を余裕でバラバラにできるぐらいの能力を持ったいるんだ。
能力を使いこなせばガキだけじゃなく、肉体的にハンデを持ってる奴でも優勝できる可能性は大いにある。
だから簡単には諦めるなよ、つまらないからな」

彼の言ってることが本当なら僕にも異能が備わっていることになる。
どういう能力なんだろうか?
漫画やアニメのキャラみたいに色々できるのだろうか?

「能力は様々だ、火や水を扱ったり、ヒーローや怪人に変身できる者や、中には赤いマスクの変態野郎が扱うような俺でもよくわからないものがある。
能力についてはある程度は無意識で直感的に使えるものや、常時発動しているものもある。
能力発動のキーにどうしても一定の道具が必要な者は専用の品を特別に支給した。
後は能力の応用の仕方や弱点だが、それくらいは自分で探せ。
ヒントになりそうなものは会場にある施設などに隠れているが、場合によっては知ってる奴に聞いた方が早いだろうな」

あれ? じゃあ能力次第ではこの窮屈な首輪を外すこともできるんじゃ?

「言っておくが能力を使って首輪を外せると思うなよ?
その手の対策は既に考えついていて、能力ではどうやっても外れることはない。
火や爆発で死なない能力者は爆薬の代わりに猛毒を仕込んでいる。
下手な真似はするなよ」

チッ、読まれてたか。

「優勝者は特別報酬としてその能力を進呈する。会場の外でも好きなだけ使うがいい。
逆に気に入らないようなら取り払って元の体に戻してやろう。
ちなみにさっき言った、願いを一つ叶える報酬には含まれない。あくまでオマケだ。
そして最後に、この殺し合いで起きたことは世に露出することはない。
だからここで何人殺そうが、どんな汚い手を使おうが、法の手は届かないし経歴は傷つかない。
アフターケアはちゃんとしてやるから安心して殺しあえ」

それだけ言うと、ヒューマは、両手を振り上げた。
そしてこの場にいた何人かの参加者が白い光に包まれる。

「さあ、そろそろ時間だ。
これより会場である沖木島に転送する。
何もかもに飽きを覚えてきた俺を……楽しませてくれよ!」

僕は眩い光に包まれる中で、殺し合いの主催者ナオ=ヒューマがローブの下で笑っていたのが確かに見えた……

そして僕らは殺し合いの舞台である沖木島へと転送されるのだった。








こうして僕は事件に巻き込まれた。
殺し合いを強要された挙句、逆らえば首輪がドカン。生き延びたければ素直に主催者に従って、最後の一人になるまで殺し合うしかないらしい。
報酬は日常への帰還と願いを一つ叶えてくれる。

しかもヒューマによると僕らには一人ひとりに現実じゃありえない魔法や奇跡のような能力が備わってるらしい。

まるでB級ものの映画みたいだね!
そんな映画みたいな事態に巻き込まれた僕はどうするのかって?


それはもちろん、決まってるじゃないか☆――







【版権異能授与バトルロワイアル――開幕】


318 : ◆YlfcDuGY1. :2016/10/20(木) 19:00:01 DrZEnZEo0
投下終了です

◆.ksO9nG.ek氏と◆7PJBZrstcc氏にはキャラを貸していただきありがとうございました
主催者に名前がついてないのもアレだと思ったので、>>1氏には悪いんですが勝手ながら名前と性格づけをさせていただきました
ちなみに主催者の名前は能力バトルもの作品の原作者の名前を一字ずつ取っただけだったりします。


319 : 名無しさん :2016/10/20(木) 22:09:15 lMdA88820
投下乙です、予約解禁って明日の零時でしたっけ


320 : 名無しさん :2016/10/20(木) 22:12:21 H0RcW6FA0
投下乙です!

名簿は完全に白紙で、6時間後に書き手枠含めた名前が浮き出るシステムなのですね!

あと予約は後に時間ですね


321 : 名無しさん :2016/10/20(木) 22:17:24 lMdA88820
おっと今日の零時か、これは失礼


322 : 名無しさん :2016/10/20(木) 22:18:32 H0RcW6FA0
状態表テンプレはこんな感じでいいですか?

【名前】
[状態]:
[装備]:
[道具]:
[思考・行動]
基本方針:
1:
2:



[備考]


[ex

【ころしあい たろう】
[状態]:健康
[装備]:刀
[道具]:基本支給品一式、不明支給品(0〜2)
[思考・行動]
基本方針: 殺し合いから脱出する。
1:仲間を集める
2:襲われたら戦う
3:
[備考]
※異能を信じていません
※C-2での爆発を目撃しました。


323 : ◆.ksO9nG.ek :2016/10/20(木) 22:29:25 1aKW9jRY0
投下乙です。
自分のキャラが見せしめってなんか複雑な気分ですが、良いOPでした。
しかし、ハリウッド俳優であるレオパルドを知っているのに、大企業の経営者である時春を知らないとは・・・郷音ちゃん、少しは新聞読みなさい


324 : ◆XksB4AwhxU :2016/10/21(金) 00:39:03 WPLsEMH20
投下乙です
それでは早速、
【伊丹沢 妙】
書き手枠で【側後 健彦】

以上の二名を予約させていただきます


325 : ◆YlfcDuGY1. :2016/10/22(土) 18:46:50 a8cvmzy.0
予約の八神そうと後藤万緒(書き手枠)のSSをこれより投下いたします。


326 : GOD&DEVIL ◆YlfcDuGY1. :2016/10/22(土) 18:48:02 a8cvmzy.0
深夜0時頃。
場所はJ-2の浜辺。

そこには一人の少女がいた。
潮風にショートカットの髪をなびかせる彼女の名前は八神そう。
都内在住の小学三年生であり、今時はどこにでもいるサブカルチャー好きなオタク小学生である。
……障害で動かない右足を除けば。
彼女は障害者用の杖を突いて、浜辺に立っていた。

「殺し合いなんて……そんな……」

そうは途方に暮れている。
わけのわからぬまま、知らない場所に連れ込まれ、唐突に殺しあえと言われれば大人でも混乱してしまう。
人が無残に死んでしまうところだって見た。
そんな状況に9歳児が放り込まれれば尚更だ。
泣いても喚いても仕方ないことだろう。
実際、恐怖でそうの双眼からは雫が一筋ずつこぼれていたし、数分前には気持ち悪さで吐き下した。

 
「……アカン、こんな状況の時こそめげたらアカン。
こんな時、“はやて”だったら泣かずにアイツと戦うことを考えるハズやで」

しかし彼女は折れなかった。
脳裏にいる彼女が大好きなキャラクター“八神はやて”の存在が彼女を奮い立たせた。
八神はやてとはテレビアニメ・魔法少女リリカルなのはシリーズに登場する主要キャラの一人で、要は架空の人物だ。
しかし、同じ名字でシリーズ登場初期は足に障害を持っていながらも健気で明るく、ヴォルケンリッターを始めとして多くの者に慕われ、そして強かった。
故に彼女ははやてのような魔法少女のようになりたいと強く願い、はやてに近づくべく日常生活でも関西弁を使うほど憧れていた。
架空のキャラと言えど、八神はやては彼女にとって欠かすことのできない人物なのだ。
それが9歳の少女が絶望せず、多少無理矢理にでも壊れずにいられた理由である。

「まず、私は殺し合いには絶対乗らへん! 乗らへんたら乗らへんで!」

恐怖を無理矢理にでもフタをし、どこかにいる主催者ナオ=ヒューマに向けて、そうは殺し合いに乗らないと宣言した。
人と人が殺し合うのが悪いのは当然だ。
そんな悪いことを絶対に許容できないそうは、殺し合いを拒絶する意思を見せた。

「……でも、これからどうすれば良いんやろな?」

しかし、そこは9歳の子供。思考力には限界があった。
殺し合いに乗らない、そのために最終的に主催者を倒すか主催者の手から逃げるかぐらいは想像できるが、そこに行き着くまでヴィジョンやプロセスが思い浮かばない。
リリカルなのはに「殺し合いに巻き込まれた」なんて展開は無いので、余計に思いつかなかった。

「そう言えば、あの人は全員に異能の力を与えたって言うてたけど……」

ふと思い出すは、先の説明会場で主催者が言っていた参加者全員に異能の力を与えたという言葉。

「それって私にも魔法や超能力が使えるってこと?」

常識的に考えればそんなことありえないのだが、実際に東はサイボーグの体を持ち、ヒューマはその東を一瞬で殺している。

「私の能力ってなんやろ?」

与えられた個々の能力に関しては事前説明は一切なしだ。
それは他の参加者も概ね同じだろうが、手探りで探さなくてはいけない。
探し当てるまでは参加者は自分がなんの能力を持っているのかがわからない。
最悪、探し当てる前に終わってしまうだろう。

「なんかヒント、ヒントはあらへんか? ……そうや!」

そこでそうの視線は、足元に置いたデイパックに向く。
主催者から支給されたものだが、その中にある支給品に能力に纏わるヒントもしくは能力の媒体そのものが入っている場合もあるというヒューマの言葉に着目した。
はやての使うデバイス「夜天の書」、もしくはなのはやフェイトの使うデバイス「レイジングハート」「バルディッシュ」だったら良いなあ、と思いつつディパックを漁る。
地図、名簿、メモ、ペン、コンパス、食料、水筒……全員に配られる基本支給品の中からそれは現れた。
それは一本の木切れだった。
一見するとそうにしか見えないのだが、彼女には見覚えがあった。

「これって確か……ムジョルニア?」

サブカル好きなそうはリリカルなのはほど深い知識はないが、アメコミを嗜んでいる。
マーベル映画も母親と一緒に見に行くほどだ。
だから杖の形状からマーベルヒーローの一角にしてアスガード最強の戦士にして雷を操る神・ソーの持つ戦鎚に変わる杖、ムジョルニアであることがわかった。
実際、支給品についている説明書にもそう書いてある。

もし本物のムジョルニアならば杖で地面を叩いた瞬間、杖はハンマーに変わり、持ち主は雷神ソーになるはずだ。
そうは唾を飲み込んだ後に、マイティ・ソーの転生先の姿であるドナルド・ブレイクの如く、杖で地面を叩いた。

だが、何も起こらない。


327 : GOD&DEVIL ◆YlfcDuGY1. :2016/10/22(土) 18:48:39 a8cvmzy.0

「……え? やっぱ偽物」


――少女がそう思った瞬間、ただの木切れにしか見えなかった杖は電気を帯びた後に無骨であるが神々しい、ハンマー――ムジョルニアへと姿を変える。
更に少女が驚きで開いた口が塞がらなくなるより早く、少女の全身に電気が駆け巡り、少女の衣服が変貌する。
ただの布製の制服は北欧神話の神々が纏うような甲冑となり、背中には赤いマントが生成され、その頭には羽飾りのついた金属製の兜が被らされる。
そうの顔と体格以外の全てが、変貌を遂げていた。

「嘘……本当に!」

魔法の如き、否、魔法という現象そのものを己の体で感じた瞬間、少女の驚きは最高潮に達する。
理解を越えた現象を見続けた結果、自分はまだベットの上で眠っていて夢でも見ているんじゃないかという錯覚を覚える。
そして――障害で動かないハズの右足が動いた。

「右足が動く、動くよ!」

マイティ・ソーの転生先である人間、ドナルド・ブレイクはそうと同じく足が不自由だった。
しかし、マイティ・ソーへ変身してからはその足を動かせるようになったのだ。
それと同じ現象がそうの身にも起きている。
生まれついてから動いたことのなかった右足が動いた奇跡にそうは感動を覚え、いつものはやてを模した関西弁を忘れるほどに喜ぶ。
そして、ここが殺し合いの場であることを忘れて浜辺を歩き回って……

パキッ

「!?」

枝が踏まれて折れる音と共に、そうは一気に現実に引き戻された。
ここは殺し合いの場……そうの心に緊張が走る。
音がした方向を見ると、距離にして僅か10m先に闇夜の中で緑色に光る刺青をした者がいた。
殺し合いに巻き込まれた混乱状態から立ち上がるまでの間か、ソーに変身し片足が動くようになったことに浮かれていた時か、いつの間にかここまでの接近を許したらしい。
暗くてよく見えないが胸のふくらみからして、おそらく自分よりは年上の女性。

「誰!? 誰なの!!」

そうは威嚇のために自分の胴体くらいのハンマーを何者かに向ける。
もし相手が殺し合いに乗ってたらと思うと、ゾッとしている。
ソーの強さはコミックや映画で折り紙つきだが、それがわかっていても殺し合いは怖いのだ。

「その声……まだ子供!?
待って! 私は殺し合いに乗ってないの!」

光る刺青をした女は困惑しつつも、両手をあげて戦意がないことを表明する。

「……本当?」
「ええ、信じて!」

女は信用を得るために背中に下げていたディパックも地面に降ろした。
そこまできて、そうもようやく信じたのか、大きなハンマーを降ろした。

「ありがとう。
私の名前は後藤……後藤万緒。あなたは?」
「八神そう、やで」

こうして八神そうと、光る刺青を持つタンクトップにハーフパンツ姿の銀髪の褐色肌の少女……後藤万緒は出会った。


 ■


328 : GOD&DEVIL ◆YlfcDuGY1. :2016/10/22(土) 18:49:07 a8cvmzy.0

目が覚めたら見知らぬ天井。
見覚えのない冷たい床で私は横になっていた。
その場から動きたくとも、全身が金縛りになったように動きはしない。

部活が終わり、帰り道をジャージ姿で帰宅前に大好物のラーメンを食べて帰ろうかと考えていたところまでは覚えているのが、その後の記憶がない。

夢なのかこれは?
私がそう思う前にこれまた見知らぬ男が動けなくなっている私のすぐ近くに立ち、私を見下ろしていた。
男は動けない私の目を見て話しかける。

「おまえに与える“力”はちょっと風変わりでな。
おまえを悪魔にするんだが、適合に一瞬とはいえ痛みを伴うぞ」

悪魔、適合、痛み? この人は何を言ってるの?

「できれば悪魔化に伴う痛みぐらいは抜いておきたかったが、それはできなかった。
……まあ痛みは一瞬だ」

そして男は何かを取り出し、片手で何かを持った。
銀色の細長い……蟲らしきものを!
ちょっと! 人の体の上でそんなものをぶらつかせないでよ!

「適合できなかれば死ぬ場合もあるが、その時はその時だ」

……は? 死ぬ?
この人は何を言ってるの?
悪ふざけで言ってるのかと思えば、男の目は真剣(マジ)だった。

――この男は私に対して、何かする気だ――

直感的にそう気づいた瞬間、動かない口の代わりに心の中で私は必死になって叫んだ。
誰か助けて! 動けない!
……しかし、虚しいことに誰も助けに来ることはなかった。

そして……男の手から蟲が私の体に落ちた。

目をつぶったので蟲が口から入ったのか、肉を食い破ったのか、それ以外の体の穴から入ったのかは見ていない。
それでも蟲が体の中に侵入したのはわかっていた。


直後、とてつもない激痛が襲い、私は声にならない悲鳴を上げた。

痛い! 痛い!! 痛い!!!

体の内側から燃え上がるような痛みが全身を壊そうとしている。
痛みだけでなく鼓膜の中にもメキメキという嫌な音が響き渡った。
視界は目の中の膨張した毛細血管で半分位真っ赤だ。

気が付けば私の金縛りは解けていた。
体が自由になった瞬間、私は痛みに耐えられなくて必死に暴れた。
理性など欠片もなく全身の痛みから逃げるようにジタバタした。
見る者によってはそれは滑稽なダンスを踊っているように映るかもしれない。
今考えるとあの男が痛みでショック死しないよう、痛みを受け流させるためにわざと解いたのかもしれないが、正直どうでもいい。

とにかく痛みを取り除こうと着ていたジャージを素手でビリビリと破いた……ジャージを素手で破れるだけの握力を私をいつ備えたんだろうか。
そして、タンクトップに守られた肉付きの良い胸と胴体が露になる。
すると驚きの光景を私を目にした。
闇色の刺青が私の肌を駆け巡っていた。当然元からあったものではなく、現在進行形で彩られるように刺青が作られていった。
胸や腹だけでなく、腕や足にも同様の黒い刺青が入っていく。

常識では考えられないおどろおどろしい現象に私は正気を保てなくなりそうだった。
私の体に何が起きているのか、理解できなかった。
これが悪い夢ならさっさと醒めて欲しかった。

そして私は痛みに耐えられなくなり、とうとう気絶した。
消えゆく意識の中で「成功だな」という声だけが聞こえた気がした。




329 : GOD&DEVIL ◆YlfcDuGY1. :2016/10/22(土) 18:50:12 a8cvmzy.0


「後はそうちゃんと同じで、気がついたらヒューマって人がみんなに殺し合いをしろって言ってた場所にいて……また気がついたら、この浜辺の近くにいた。
それでそうちゃんが変身していた所を見つけて、近寄ったというわけ」
「後藤さん、そんなことが……」
「万緒でいいよ、そうちゃん」

二人は今、浜辺に漂着した丸太を椅子にして座っている。
そこで万緒は一頻り、そうに自分のこれまでの経緯を説明した。
どうやらそうと違い、痛みを伴う肉体改造を施されたらしい。

「うわっ、これ本物の角や! 直に生えとる!」
「でしょ。抜こうと思ったら痛いし、刺青はなぜか光ってるし、もう意味がわからないよ」

そうは万緒の後頭部に生えていた尖った角に触れると、本当に体から生えていることに驚く。
日焼けした肌の上を彩るように緑色に光る黒い刺青も、光っているのは蛍光塗料などではなさそうだ。

「私の記憶が正しければ万緒お姉さんは“人修羅”になっているみたいやね」
「ひとしゅら?」
「確か私が生まれる前に発売された真・女神転生Ⅲっていうゲームの主人公だったと思うで。あっちはお姉さんと違って男の子だった気がするけど」

豊富なサブカル知識故に、そうは今の万緒の特徴から人修羅とよく似ているとわかった。
一方、万緒は人修羅ひいては真・女神転生の内容もよく知らないので、人修羅については想像もできないので尋ねた。

「それってどんなキャラなの?」
「古いゲームでプレイしたことないから詳しいことはわからへんけど……ただの人間だった主人公が悪魔になって、仲魔にした悪魔を召喚して悪魔と戦うってキャラだった気がする」
「今の私は悪魔って、ちょっとマジですか……」

そう曰く、今の自分は主催者によって悪魔にされたことに衝撃を受ける。
自分が何者かに拉致された挙句、体を勝手に改造されたとあらば当然だろう。
こんな体にされてこれからどうやって生きていけばいいのか、という悩みが生まれる。
その悩みに対して殺し合いに乗って優勝すれば元の体に戻してくれるというヒューマの甘言を思い出す。
しかし、だ。
そのために他者を殺すことは万緒にはできなかった。
他者を殺めてはいけないという人間性のブレーキが強く働いたのだ。
最初にであったのが10歳にも満たない子供だった点も大きく、自分の目的のために小さな子供を手にかける気にはとてもなれなかった。
むしろ(そうがハンマーや鎧で武装している点は置いておくとして)人として年上として、そうを守ってやらねばと思っているぐらいだ。
万緒としては五十嵐や東のように死にたくはないし、ヒューマは怖い。その上すぐにでも元の人間の体に戻して欲しいが、だからと言って人を殺したくはなかった。

「でもメガテンって言うたら、悪魔召喚が売りのゲームらしいけど、万緒お姉さんは悪魔を召喚できるの?」
「召喚? ああ、そう言えばこんな紙が入ってたけど……」

万緒は自分のディパックから一枚の紙を取り出した。
それは悪魔召喚に関連する事が書かれたメモである。
万緒はそれを広げてそうと一緒に読む。

 ■
右手を天にかざし、仲魔の名前を唱えよ。
召喚して連れ歩ける仲魔は三体まで。
戻す時は名前と同時に戻れと言えば戻る。
参加者と同じく一度死ねば仲魔が戻ることは二度とない。
召喚者が死亡しても、仲魔は数時間以内に消滅する。

・ジャックフロスト、ピクシー(条件なし)
・???(第一回放送まで生き延びる)
・???(第三回放送まで生き延びる)
・???(第五回放送まで生き延びる)
・???(参加者を一人殺害する)
・???(参加者を二人殺害する)
・???(参加者を三人殺害する)

???は条件をクリア次第、名前が表示される。
それは召喚解禁の合図でもある。
 ■

「仲“魔”? これって誤字かな?」
「いや、元になったゲーム的にはそれであってるで。仲間の悪魔って意味で」


330 : GOD&DEVIL ◆YlfcDuGY1. :2016/10/22(土) 18:50:46 a8cvmzy.0

万緒の野暮なツッコミを置いておき、二人はメモに目を通した。
どうやら放送まで生き延びたり、参加者を殺害すると召喚できる仲魔が増えるルールらしい。
現実に考えてただのメモにしか見えないのに、紙面上の???が悪魔の名前に置き換わること自体がありえないが、神や悪魔に姿を変えている二人からすれば今更驚くような内容でもなかった。

「私、鞄の中に地図や食べものとか以外だと、これしか入ってなかったんだよね……」
「え? そうなん?」
「ぶっちゃけると、さっきそうちゃんの目の前で鞄を置いたのも、ろくなものが入ってなくて持っていても大して意味がないって理由もあるのが半分くらい締めてたよ」

万緒のディパックには基本支給品を除くと、このメモしか入っていなかった。
複数の仲魔を召喚できるのだから、この上に武器や防具まで支給すると参加者間の公平性が薄れてしまうととでも思われたのか。

「さっきはメモに書かれた内容を全然信じてなかったけど、書いてることが本当なら悪魔を召喚できるってことだよね? ポケモンみたいに。
でも悪魔と聞くと怖いイメージがあるんだけど……」
「大丈夫やで、もし襲いかかってきたら私がやっつけたるで!」

悪魔と言えば基本的に恐怖のイメージしかない万緒。仮に召喚した悪魔が自分達に襲いかかってきたらどうするのか?
そんな怖気づく万緒の前でそうはハンマーをブンブン振って戦えるアピールをする。
そうとしてはソーの高い戦闘力を根拠にした自信であったが、体格が9歳相応なので正直あまり強そうには見えない。
だが、仮に襲いかかってきてもすぐに戻すか、メモにも書いてある“召喚者が死亡しても、仲魔は数時間以内に消滅する”事実を突きつけて強引に従わせるなどして対処することを念頭に入れて、万緒は召喚に踏み切った。

そして召喚する悪魔は……

「じゃあ、これにしよう。 “ジャックフロスト”!」

万緒が右手をかざし、かの者の名前を読んだ瞬間。
二人の少女の側に、黒もしくは濃い紫色をした雷が落ちた。

「ひゃ!」
「うわ!」

けたたましい音に驚く二人。
そして煙が晴れた先に現れたのは……



『ヒホ? ここはどこだホ?』



二頭身ぐらいの雪だるまに小さな手足が生えて、耳もしくは角状に二つに割れた青い帽子を被った、鼻のない黒い目と大きな口が特徴的な顔をした悪魔――ジャックフロストが召喚された。

「これが悪魔なの……?」
「本当に動いとるで……」
『おまえたち誰だホ?
見た目からして噂に聞く人修羅とマントラ軍のトールっぽい姿をしてるけど、なんか違うホね。主に性別とか……ってヒホ!?』

ジャックフロストを見た瞬間、万緒とそうは覆いかぶさった。
突然のことに驚くジャックフロスト。

『い、いきなり何をするホ!』
「可愛い〜、ぬいぐるみみたい!」
「ふわ〜、触ってみるとちょっとヒンヤリするで」

万緒はふくよかな胸と腕でジャックフロストを抱きしめ、そうは頬ずりする。
ジャックフロストは顔を赤くしてかなり困り果てていた。

妖精ジャックフロストはお世辞にも怖い外見とは言えず、一見すると可愛いぬいぐるみにも見える姿だ。
その見た目のせいで万緒とそうは恐怖心を煽られることなく、むしろ犬でも愛でるようにジャックフロストを思わず抱きしめてしまったのだ。

『ヒ〜ホ〜……』

こうして、ソーの力を受け継いだ八神そうと、人修羅と化した後藤万緒、そして召喚されてわけもわからないまま少女達に抱きしめられ悲鳴を上げるジャックフロストで、この殺し合いでの彼女達の最初の物語は幕を引く。



しかし神・ソーへの変身と、悪魔・人修羅への変貌……
いわば本当にタネも仕掛けもないマジックのように、現実に起きえないことが起きている現状が彼女達を余計に困惑させた。
今でこそ笑っていられてるが、未だ彼女達が混乱の渦中から抜け出せていないことをここに書き加えておく。


331 : GOD&DEVIL ◆YlfcDuGY1. :2016/10/22(土) 18:51:25 a8cvmzy.0



【一日目・1時00分/J-2・浜辺】

【八神そう@マイティ・ソー/マーベルコミックス】
[状態]:精神疲労(小)、混乱気味、変身中
[装備]:ムジョルニア@マイティ・ソー
[道具]:支給品一式、不明支給品0〜2、障碍者用杖
[思考・行動]
基本方針:殺し合いには乗らない
0:ジャックフロスト可愛い〜♪
1:万緒お姉さんを守る
2:まさかマイティ・ソーに変身できるなんて……
3:はやてのように戦えるのが理想だけど……
4:今の状況に対してだいぶ混乱している
※マイティ・ソーに変身できることを知りました。マーベル映画知識より、映画で使用した技は概ね使用できます。また変身中は右足の障碍が治ります。
※サブカル好きがこうじて、人修羅のことも知っていますが、シリーズのゲームは未プレイなため大雑把な内容しか知りません。(主人公が悪魔でありながら悪魔を召喚して戦う程度)
 

【後藤万緒@人修羅/真・女神転生Ⅲ-NOCTURNE】
[状態]:精神疲労(小)、混乱気味
[装備]:マロガレ@真・女神転生Ⅲ-NOCTURNE
[道具]:支給品一式、仲魔召喚に関するメモ
[召喚中]:妖精 ジャックフロスト(健康)
[思考・行動]
基本方針:殺し合いには乗らない、元の体に戻りたい
0:ジャックフロスト可愛い〜♪
1:そうちゃんを守る
2:私が悪魔にされたってマジですか……
3:この体、直るのかな?
4:今の状況に対してだいぶ混乱している
※悪魔召喚能力があることに気づきました。
※八神そうから大雑把な人修羅の知識を知りました。
※八神そうの足の障害に気づいてません
※悪魔召喚については以下のルールがあります。
 ○最大で召喚できる仲魔は三体まで、真・女神転生Ⅲに出てくる悪魔のみ召喚可能
 ○後藤万緒が死亡すると仲魔も数時間以内に消滅する
 ○仲魔に召喚条件あり。召喚できる仲魔については次の書き手氏にお任せします。
  ・妖精 ジャックフロスト、妖精 ピクシー(条件なし)
  ・???(第一回放送まで生き延びる)
  ・???(第三回放送まで生き延びる)
  ・???(第五回放送まで生き延びる)
  ・???(参加者を一人殺害する)
  ・???(参加者を二人殺害する)
  ・???(参加者を三人殺害する)


☆支給品紹介
【ムジョルニア@マイティ・ソー】
 魔法のハンマー。ウルという超金属でできているためアダマンチウム並みの高い強度を誇り、パワーは関係なくソーと同等以上の高潔な心の持ち主でなければ持ち上げることが出来ない。
 普段は木切れと化しているが、そうが使うことでハンマーに姿を変え、そして彼女がマイティ・ソーに変身する時に必要なツールでもある。
 変身時はソーと同じ鎧一式と同時に足の障碍も治り、投げても必ず自分の手元に戻ってくるハンマー・雷雨や嵐などの天候操作の力・稲妻を発生させる・エネルギーの放射と吸収・飛行能力・物質操作が使える。原作だと次元間及び時間軸の移動もできるが、流石に制限対象と思われる。
 

【マロガレ@真・女神転生Ⅲ-NOCTURNE】
 原作では主人公を人修羅にさせた、悪魔の力が結晶化された幼虫状の物体・マガタマ(禍魂)。これは主人公が一番最初に手に入れるものなので性能はマガタマとしては低め。
 寄生した人間を悪魔にする力があるが、適正のない者は死ぬ。本ロワでは万緒以外が寄生されると死ぬ可能性が高い。
 装備中は以下の能力が使用できます→ 突撃、暴れまくり、反撃などの簡単な物理スキルや、アナライズ(敵一人の能力を見れる)、一分の活泉(少し体が頑丈になる)。そして破魔・呪殺が弱点。(強すぎるので“貫通”は使用不可)。
 本ロワでの調整と制限として、レベルの概念がないので、レベルに関係なく技を使用できる代わりにマガタマを交換すると使えなくなる(交換したマガタマの技と入れ替わる)。

【ジャック・フロスト@真・女神転生Ⅲ-NOCTURNE】
 厳密には支給品というより万緒が召喚できる仲魔だが、いちおう解説する。
 冬と霜の妖精で基本的には邪気のない存在だが、怒らせると相手を氷漬けにして殺してしまう。一貫して「ヒーホー」という独特な口癖を持ち、メガテンシリーズには必ずと言ってもいいほど参戦する、ドラクエに例えるならスライム的マスコットな悪魔。
 ブフ、マハブフ、アイスブレスのような氷系魔法や技を使い、氷結攻撃は吸収する。
 しかし、悪魔としてはレベルは低い方であり、火炎攻撃はが弱点。


332 : ◆YlfcDuGY1. :2016/10/22(土) 18:55:47 a8cvmzy.0
投下終了です
八神ちゃん及びマイティ・ソーを見たとき、トール(雷神)と人修羅、引いてはトールマンとゴトウ繋がりでどうしても組ませたくなったんですハイ


333 : 名無しさん :2016/10/22(土) 20:19:47 o4BtQEHg0
投下乙
ジャックフロストに甘える2人がかわいい!


334 : 名無しさん :2016/10/22(土) 21:27:41 YBKRIKaM0
投下乙です
神と悪魔、まさかのタッグ
サブカル知識あるとスムーズに能力への理解が進むから地味に強い……w
ジャックフロストを可愛がる女の子二人はかわいい


335 : ◆TeAoSh7Hf6 :2016/10/23(日) 02:43:12 f3fhtRGw0
投下します


336 : ナイーブレターズ  ◆TeAoSh7Hf6 :2016/10/23(日) 02:44:09 f3fhtRGw0

「マジありえない!」
 
月明りに照らされていたのは、ボロボロの鳥居、ボロボロの社。ボロボロの街灯。そして読者モデル。
いつもは着崩している制服のボタンをしっかりと留めている理由は、彼女が最も苦手としている物が原因か。
彼女の名前は千原 亜紀。17歳のどこにでもいる学生である。
好きな物はクレープ。嫌いな物は虫。
読者モデルをしており、知っている人は知っている女子高生だ。

「(確か、昨日は友だちと出かけて、クレープ食べて、新しい服買って、それで……)」 

そんな彼女は、神社の境内に腰を掛けて座っていた。
背中には「ゲーム」をするための道具が入っているデイパック、そして首には忌々しき銀色の首輪がついていた。
先程のの惨劇が脳裏に焼き付いていて、気持ち悪かった。

「……夢だったらいいんだけどなぁ。この首輪も冷たくてなんか嫌だし。あー!クレープ食べたいなぁ!マジで意味わかんない!」 

首の冷たい感触が自分の鼓動を早くさせた気がした。
あの時の、あの光景は本当に現実なのではないのだろうか。少し前に友だちとふざけてみたB級ホラー映画の様に
簡単に人が死んだ。あの鮮血を見ても、どこか「現実」だと認識ができなかった。
……もしかしてどっきりなのではないのだろうか?
自分のデイパックの中には、きっと「ドッキリ大成功」と書かれた紙が入ってたりするんじゃないのだろうか?
殺された人も、実は生きていてテレビ局のスタッフと一緒に出てくるんじゃないか。
そういえばあの場には、テレビでよく見る芸能人が複数いた。確認できただけでもKENGOと郷音ツボミ、それに道端ロクサーヌと増田 ユーリ……それにあのレオポルドもいた気がする。 
どれもテレビでよく見る顔だ。ってことはやっぱりドッキリなのでは?
だいたい殺しあいだなんて、現実的に考えてそんなことあり得るわけがない。
こんなドッキリを仕掛けられるなんて私も知名度が上がってきたんだなぁ。嬉しい事だ。


337 : ナイーブレターズ  ◆TeAoSh7Hf6 :2016/10/23(日) 02:44:40 f3fhtRGw0

「……でも増田ユーリって確かごーねをやめてそのまま芸能界を引退したよなぁ」

ごーねとは、ボーイッシュ系アイドル「ごーね!☆」の事である。
井上 快夢、郷音 ツボミ、増田ユーリ、その他数名によるアイドルグループで、日本人なら殆どが知っている。
実はこのアイドルグループに実際に会った事がある。メンバーの一人の井上 快夢が大親友だからだ。よくライブにも招待されている。
更には何回か楽屋にも招待された事がある。増田ユーリが「ごーね☆!」を脱退し、そのまま芸能界を引退した時はとても驚いたものだ。
……芸能界を引退した「元アイドル」にドッキリなんか仕掛けるものだろうか?

「あー、快夢だったらどうするんだろ。わっかんないなぁ」

快夢は今頃何をしているのだろうか?快夢の事だ。きっとドッキリを仕掛ける側になっているんだろうなぁ。
『ドッキリ大成功!』って言いながら早くアタシの前に出てきてほしいよ。
こんな虫が多くて、暗くて怖いところから早く解放されたいし、この冷たくて不快な首輪も早く取りたくてたまらない。

「……絶対ドッキリだけど、一応これの中身を見てみよっかな」

ドッキリという事を願ってデイパックに手を突っ込んだ。
なんだかごちゃごちゃ入っている。
中には地図、飲料水にパンが2、3個、懐中電灯。地図にコンパス。
なんだかやけにリアルだな。
名簿は、アイツがいった通り白紙の様だ。よく見るとうっすら見える気がするが、気のせいだろうか。
六時間後に名前が浮き出るなんて、よくわからないけどすごいもんだなー。
そういえば支給品があるって聞いたな。さて、なにがはいってるんだろう。

「……いやいやいやいや。なにこれ。ふざけてるの?」

出てきたのは、七味唐辛子だった。

「やっぱり、ドッキリだよね。殺し合いとかいいながらこんな適当なものいれてるんだし」

その時だった。ブワっと音を立てるように全身の毛が逆立ったような気がした。この場所に、アタシ以外の誰かがいる。
理屈ではない。何かがいる、とアタシの中の何かが訴えている。
なんだか変な気分だった。背中に羽が生えた気分だ。
もしかしてこれがアイツが言っていた「異能」とかいうものではないのだろうか?(それかアタシの頭がこの異常な環境でおかしくなったのかもしれない)
アタシは、気配を感じた場所に目を向けた。それの正体は……


338 : ナイーブレターズ  ◆TeAoSh7Hf6 :2016/10/23(日) 02:45:12 f3fhtRGw0

「うわ!む、むし!」

アタシはいつも着崩しているブレザーも、巻いて短くしているスカートも、今だけはしっかりと学校のルールを守って着ている。
更にはまるでクラスの端っこにいるマジメちゃんの様に、はたまたいつも校則に五月蠅い生徒会長の様にブラウスの襟のボタンも留めている。
アタシをよく知っている人が、今の自分を見たら「どうかしたのか?」「熱でもあるのか?」と心配されそうだ。
こんなことになっているのは理由がある。
絶対に素肌に虫を付けたくないからだ。首元から服の中に虫を入る事を防ぐために襟を閉めているし、足に虫が付くのを防ぐ為にスカートも膝下まで下げている。
自分の中では、「森=虫がいる」という式が出来上がっていた為、ここに付いた瞬間にすぐに身嗜みを整えたのだ。
(これだと私の服装がいつも乱れているみたいだが)

それでも虫はまるでエイリアンの様に少しずつ忍び寄ってくる訳で。
私のブレザーにはカメムシが一匹くっ付いていた。

う、うごけない。カメムシがアタシの服に来るのは、わかっていた。
それでも動けなかった。声もでなかった。
あまりの恐怖からだろうか、。
そして気が付いてしまった。私の回りは、虫に囲まれている。
いま私が座っている境内や神社の壁には多数のカメムシが歩き回っていた。


「た、た……た……す……け……ひぐ……ひぐ………うぇぇ………」
 
鼓動が早くなった。
殺し合いドッキリよりも虫の方が怖かった。
気が付くとアタシは涙を流していた。
 
「おっ、大丈夫か大丈夫か?」

その時だった。絶体絶命のアタシの目の前に、この状況でTシャツ短パンを纏った男が現れたのは。


339 : ナイーブレターズ  ◆TeAoSh7Hf6 :2016/10/23(日) 02:45:53 f3fhtRGw0

そんな事を真っ暗闇で呟いた。田所 恋矢24歳。学生がそこにいた。
彼の回りにはデイパックに入っていたペットボトルの水や食料、子供向けの玩具(?)が散らばっていた。
それはなぜか。デイパックに入っていたものが正真正銘の「人を殺す為の道具」で、驚いて放り投げてしまったからである。

恋矢も最初は殺し合いに対して半信半疑だった。あの場所には芸能人の顔もチラホラあったからドッキリかも、と思ったからだ。
異能力なんてものも全くと言っていいほど信じる事ができなかったし、ただの大学生である(留年はしているが)自分がなぜドッキリに呼ばれるのか?
理由はわからなかった。そしてあの「見せしめ」は、トリックや特殊メイクとか、そういった類の物ではないのか?
わけがわからなかった。
しかし、デイパックの中身をみた時、それは確信に変わった。

『サバイバルナイフ』
『日本刀』

手に持った時の感触と重たさが「嘘じゃないぞ」と自分に語り掛けてきた気がした。
ナイフを持った時に、誤って手を少し切った。血が少しだけでた。
痛みはほんのちょっとだったが、恋矢の精神を揺さぶるには十分だった。
恋矢は震えるでてデイパックから散らばった物を入れ直した。玩具は……荷物になると思い、拾わなかった。

「………やべえよ………………やべえよっ…………神様、俺が何をしたっていうんだよ。許してくれよ……!なんでもするからっ……!
俺が、なんでこんな目に合わないといけないんだよ、畜生……」

この深い森の中を照らしているのは月明りだけだった。風がざわざわと拭いており、草木が影を揺らしている。
それに対しても恋矢は怖がっていた。
あの草木の向こうに、俺を狙うやつがいるかもしれない。あの草木の向こうで誰かが俺に銃口を向けているのかもしれない。

怖い。

恋矢は必至になって、静かに、息を押し殺しながら歩いた。
目指す場所は、わからない。ただ森の向こうに弱い光が見えるのだ。
おっかなびっくりしながら歩いていく。
デイパックの中から地図を取り出して、光が漏れないように懐中電灯で照らした。


340 : ナイーブレターズ  ◆TeAoSh7Hf6 :2016/10/23(日) 02:46:17 f3fhtRGw0



「これは、もう……わかんねえなぁ……」

地図を見ても自分が何処にいるのかわからなかった。確実に言えるのは自分が森のど真ん中にいるという事だけ。
コンパスを見て、明かりの方向を見てみる。明かりはちょうど北の方向にあった。だとすると今自分が向かっているのは神社か、展望台のどちらかだろうか?

「あ〜、死にたくねえなぁ……。なんだ……俺、根性なしだな……」

死にたくないっていうのは、生きてる証拠。何でこんなことになったんだ俺……。
昨日は自宅の屋上で体を焼いたり、紅茶飲んだりしてエンジョイしてたんだけどなぁ……。
何でこんなことになってんだよ……
あー、こんな所後輩に見られたらすげえ恥ずかしいだろうなぁ。
でも、しにたくねえよ。仕方ねえじゃん。初めての殺し合いだから、力なんか抜けるわけない。
そうだ。神社か展望台についたら、そこでじっとしてよう。隠れてよう。

◇ ◇ ◇


341 : ナイーブレターズ  ◆TeAoSh7Hf6 :2016/10/23(日) 02:47:13 f3fhtRGw0
「おっ、大丈夫か大丈夫か?」

思わず声をかけてしまった。なぜ声なんかかけてしまったのだろうか。
もしこの女の子が殺し合いに乗っていたら、とか考えなかったのか。
いや、この女の子は、自分自身と同じなのではないのだろうか?
この殺し合いに無慈悲にも巻き込まれてしまった。
フィクションとも間違えてしまうようなこの現実に絶望しているのではないのか。
だったら、俺と同じだ。同じなんだ。声をかけて、これからどうするか、なんか考えてもいないが、
この子を安心させたい。そんな気持ちから声をかけてしまった。
 
「ひっ……た、た、す……け……」
「ん……?くっせぇなお前……コリアンダーみたいな匂いがする」

そして気が付いた。虫が多い。自分の腕にも蚊に刺されたのか何か所か刺されている。
この神社も周りが杉林で囲まれているせいか、かなりの数のカメムシが蠢いている。

「お、俺は、この殺し合いには、乗っていない。大丈夫だって、安心しろよ……!」
「……む、むしが……」

彼女の服にはカメムシが一匹ついていた。もしかして彼女はカメムシに毒があるのでも思っているのだろうか?
さっさと手で払ってしまえばいいとは思うが。
俺は彼女についていたカメムシをデコピンで追い払ってやった。

「た、助かった……!ねえ、誰だからわからないけど早くここから逃げよう!虫がいやだから!」
「は?なんで?」
 
◇ ◇ ◇


342 : ナイーブレターズ  ◆TeAoSh7Hf6 :2016/10/23(日) 02:47:45 f3fhtRGw0

神社の中は意外と綺麗だった。電気はなかった為、神棚の蝋燭に火をつけた。なんだか怪談話をする雰囲気の様になってしまったが、仕方ない。
蚊取り線香が置いてあった為、恋矢は亜希の要望を聞いて火をつけた。独特な匂いが鼻につくが、カメムシの匂いよりはマシだ。
こんな状況になっても虫が嫌とは、今時の女子高生は肝が据わっているらしい。

「助けてもらって悪いね。アタシは千原 亜希っていうんだ!読者モデルしてるんだけど、聞いたことない?
 あー、でも男の人は知らないかな?アタシと同世代の人なら知ってる人が多いと思うんだけど、まぁ、お互い災難だったね。こんなのに巻き込まれてさ」
「た、田所 恋矢です……」
「れんや?かっこいい名前だね!どういう漢字書くの?」
「れ、『恋愛』の恋の字に、『弓矢』の矢の字だけど……」

女子高生の恐ろしいコミュニケーション能力、悪く言えば弾丸トークに驚いている。自分が高校生の時にも、クラスにこんな女の子が一部いた気がする。
しかしスカートも膝下まで下げているし、襟元のボタンもしっかりと閉めている所を見ると、もしかしてマジメな進学校に通っているのかもしれない。
 
「アタシさー。虫がすっごく苦手でさ、ちっちゃい頃に顔にクモが飛んできてさ、その時に大きな声出しながら気絶しちゃってさ。その時にママがアタシの事が死んじゃったって思っちゃったみたいで
 もう大騒ぎでさ、で、気が付いたら病院のベッドにいるの。めっちゃウケるよね!で、警察の人とかから事情聴取を何回もされちゃってさー。すっごい恥ずかしかったんだー。
 それから虫がすっごい苦手でさ。だから恋矢がいなかったら、また気絶して警察から事情聴取を受けてたと思う!ホントにありがと!」
「そ、そう……」

よく喋る女の子だ。聞いてもいない事なのにペラペラとよく喋る。まるでこの状況をよくわかっていないのだろうか?
……自分と同じようにこの殺し合いに対して恐怖を抱いていると思っていたが、それはただの勘違いだったらしい。
虫が怖くて泣いていたのか?自分の中での疑念を解決する為に一度聞いてみた方がいいみたいだ。

「あのさぁ、千原はもしかしてさぁこの殺し合いの事、信じてない?」
「え?……うーん、なんていうんだろ」

彼女は一呼吸おいて、答えてくれた。

「わっかんない。だってさ。あの場所にはKENGOとか郷音ツボミとか色んな有名人がいたからさ。アタシも一応読者モデルしてるから、新手のドッキリ企画かなーってさ」
「つまり、半分信じて、半分信じてない?」
「ううん。最初はまったく信じてなかったよ。でもさ、アイツが『異能』の力とか言ってたでしょ?さっきね、アタシの体がぶわああっってさ、自分の神経っていうの?それが全部研ぎ澄まされた感じがしたんだよね」
「えっ、それは……」

恋矢は殺し合いは信じていたが、『異能』に関しては信じる事ができなかった。あの場で殺された伊東ジョーについては説明する事ができないが、自分の体が改造された形跡は見当たらないし、自分の体から「力が湧き出る」
なんて事もなかったからだ。
だが、千原は「自分の体が改造された」と言っているのだ。それこそ信じる事ができなかった。

「あの感覚になった時、『今の自分なら何でもできる!』って思えたんだよね。結局カメムシがくっついてたから何にもできなかったけど。ホントかっこわるいなぁ、アタシ」
「はえ〜……俺は、別に自分の体が改造された、とかわかんないけどなぁ……」
「そっかー。……あ!じゃあデイパックの中に何か入ってるんじゃない?アイツも言ってたじゃん」
「…………」
「…………………?どうしたの急に静かになって」
「…………落としたかもしれない」
「はぁ!?」


343 : ナイーブレターズ  ◆TeAoSh7Hf6 :2016/10/23(日) 02:48:08 f3fhtRGw0


彼女の「異能」については半信半疑だった。嘘だとは思いたいが、あの時殺されてしまった伊藤ジョーの事も説明できない。
漫画みたいな(エイトマンは実際に漫画だが)事が現実に存在していて、実際に見る事ができれば納得できるが……

「た、たぶんだけど、俺の支給品の中に玩具みたいなのが入ってたんだ。でもちょっといろいろあって……」

自分の支給品にビビッて、それを落としただなんて、カッコ悪すぎて千原には言えなかった。

「じゃ、じゃあさ。取りに行こうよ。なんかカッコいいのに変身できるかもしれないよ!例えばマジレンジャーみたいのとか仮面ライダー響鬼とかみたいなのになれるんじゃない?」
「女子高生からその単語が出てくるとは驚きなんですが……」
「保育園の時に見てたからね。戦隊物はそれ以外は知らないけど。まぁ、とりあえず落としたところに向かおうよ……あっ!やっぱダメだ!アタシここから出れない!」

取りに行こうと立ち上がった時に、急に千原が声を荒げた。なんとも忙しい女子高生だ。
俺の後輩の落ち着きを見習ってほしいところである。

「……さっきもいったけど、ホントに虫が無理なんだよね。懐中電灯使うと虫が寄ってくるじゃん。だから無理!」
「…………そんくらいで?」
「無理なものは無理なの!」
「……もし殺し合いをしようとする人がいたらどうすんだよ」
「で、でも、ドッキリかもしれないし……」
「じゃあ異能についてはどう説明すんだよ。さっき自分で言ってたよなぁ」
「うっ……」

彼女は痛いところを付かれた、と言いたげな顔をしていた。
……実のところ、恋矢は亜希に取りに行くのを付いて来てほしかった。怖かったからだ。殺されてしまうのも嫌だし、一人になるのも嫌。
 
「……とりあえず、俺が落とした玩具を拾ったら、またここに戻ろう。夜にうろつくのは危ないよな」
「虫が近くに来たら恋矢が追い払ってよね」

あぁ、なんとも面倒な女子高生に話しかけてしまったのだろうか。
自分と同じように、この殺し合いを怖がっていると思いきや、殺し合いよりも虫のが怖くて泣いていたとは、どういう事だ。
出会ってしまった事は運が悪かったと思うが……

「(……能天気だなぁコイツ)」

彼女の能天気さに救われている部分も確かにあった。
先程までの自分には余裕がなかった。ずっとあのままだったら、きっと自分は他の参加者に切りかかっていたり、襲われたりしていたのではないのだろうか。

「(……会いたいなぁ)」

ふと、自分を慕う後輩の顔を思い出した。俺はここから生きて帰る事ができるのだろうか?
……そうだ。もしこの殺し合いから生きて帰る事ができたら、アイツに告白しよう。
生きて帰る事ができれば、の話ではあるが……


◇ ◇ ◇


344 : ナイーブレターズ  ◆TeAoSh7Hf6 :2016/10/23(日) 02:48:33 f3fhtRGw0

 
「(……あれは、なんだったんだろうなぁ)」

自分の神経が研ぎ澄まされるような感覚。周りの物がスローモーションの様に流れていくようだった。
あれが自分の「異能」なんだろうか?

「(まだ信じられないなぁ)」

自分の体のようで、自分の体ではない。なんとも妙な気分だった。結局カメムシのせいで動けなかったが……。
そういえばあの殺されてしまった(本当に死んだのかわからないが)伊東ジョーという人の「異能」は『エイトマン』とかいう漫画のキャラだと話していた筈。
すると自分も漫画のキャラの「異能」とやらを身に着けたのだろうか?

「(でもアタシ、そんなに漫画とか特撮とか、詳しくないからなぁ。それにアタシの能力ってなんだろうなぁ。ワンピの覇気とかこういう感じなのかな。……ていうか、ドッキリ、じゃないのかな」

恋矢が本物のナイフを持っている所を見ると、なんだか色々と信じる事ができなくなってきた。
頭の中には疑問が浮かんでは消え、浮かんでは消え、を繰り返している。

「(……恋矢っていい人そうだよなぁ。年上の余裕?ってのもあるんだろうけど)」

先程自分を虫から助けてくれた恋矢に視線を向けた。
絶体絶命の自分を助けてくれた事を感謝したい。

「(……快夢に会いたいなぁ。ドッキリならドッキリで早く終わらせてほしいし。……でもロンブーみたいに凄く長くて壮大なドッキリなのかもなぁ)」

そしたらこの状況、最低でも三日、最高で一か月ぐらい続くのでないのだろうか。……いや、あのハリウッドスターもいるんだ。
スケジュールの関係で長くても二日で済む、……と思う。
快夢はきっと今頃、アタシの状況を見てモニターごしに笑っているのかなぁ。
早いところこの状況から解放されたい。そうすればきっとこの虫を見る事はなくなると思うから。
 
【一日目・1時00分/C-4・神社】

【千原 亜希@スパイダーマン/スパイダーマン(サムライミ版)】
[状態]:健康。スカート膝下、襟までボタンを閉めたマジメスタイル
[装備]:七味唐辛子
[道具]:支給品一式
[思考・行動]
基本方針:ドッキリ?本当?どっち?
1:C-5に向かう。
2:恋矢と一緒に行動(虫から守ってもらう)
※ドッキリだと思っていますが、半信半疑です。
※スパイダーセンスが一度発動しましたが、異能には完全に気付いていません
※漫画、特撮に対しての知識は「ワンピース」と保育園の時に見ていた「魔法戦隊マジレンジャー」
「仮面ライダー響鬼」「ふたりはプリキュア」のみ。
 

【田所 恋矢@仮面ライダービースト/仮面ライダーウィザード】
[状態]:精神疲労(小)、混乱気味
[装備]:サバイバルナイフ
[道具]:支給品一式、日本刀、不明支給品(0~1、武器ではない)
[思考・行動]
基本方針:すいません許してください、何でもしますから……
0:家に帰りたい
1:置いてきた玩具をC-5に拾いにいかなきゃ
2:亜希を守る(虫から)
3:玩具を拾って来たら、神社に戻って篭るつもり
※仮面ライダービーストの装備一式を玩具だと思っています。
※異能を信じていません。

※C-5のどこかに仮面ライダービーストの装備一式が散らばっていますが、制限により田所 恋矢にしか触る事ができません。
 また、何かしらの能力で触れたとしても、使用できるのは田所 恋矢のみです。


345 : ナイーブレターズ  ◆TeAoSh7Hf6 :2016/10/23(日) 02:50:42 f3fhtRGw0
投下終了です。

>>339のレスの一番上に「結構……怖いですよ」のセリフを入れ忘れていましたが、お願いします。


346 : 名無しさん :2016/10/23(日) 05:28:32 r8rYT5kk0
投下乙
なんだこのSSは…たまげたなぁ…
JKに頼られる田所先輩が良かった(小並感)


347 : 名無しさん :2016/10/23(日) 07:15:07 2bvaW3cU0
初投稿乙です
(設定からして淫夢語録が出るのは)わかってたよ……
かなり早い段階から異能を持ってると確信した神悪魔コンビ(トリオ?)と違って、こっちは殺し合いは半信半疑で異能を信じていないか
最初から外見がそのものが変わってる万緒と違ってこっちは捨ててきたビーストドライバー以外は現実路線だし、しゃーない
それよりも状態表だけを見るとビースト先輩は人間の鑑から人間の屑になりそうで怖い


348 : 名無しさん :2016/10/23(日) 10:09:59 jy70yEOg0
投下乙です。
女子高生を守る人間の鑑なんだよなぁ……
陽気だけど虫嫌いの亜希ちゃんのキャラがかわいい
いきなり巻き込まれて能力で殺し合いしろなんて言われたらまあ半信半疑になるよね


349 : ◆j0K3675zFI :2016/10/23(日) 14:33:01 jy70yEOg0
さて、投下します


350 : 命短し、走れよ乙女よ。 ◆j0K3675zFI :2016/10/23(日) 14:33:51 jy70yEOg0



墜ちてゆく。
死へと目掛けて。
宙を無様に舞う。



私は、墜ちている。
ビルの屋上から突き落とされたのだと、私は理解していた。
私の前に現れた男の人が、私を何の躊躇も無く突き落としたのだ。
男の人は、ストラップを付けていた。
その腰に、『ごーねちゃん』のグッズであるストラップを身に付けていた。
あの子のファンか――――――いや、差し金かなって。
なんとなく、理解してしまった。

地面に叩き落ちるまで、きっと数秒にも満たない。
なのに私の中で、その一瞬の時間は。
まるで『永遠』のように感じられた。
そんな刹那の最中に、私の心では様々な想いが渦巻いていた。

解らなかった。
何でこんな目に遭っているのか。
何故こんな目に遭わなくてはならないのか。
私には解らなかった。

走馬灯のように脳裏を過る、私の人生。
歌が、好きだった。
子供の頃から、歌うことが好きだった。
歌うことは、とても楽しいから。
歌えば、自分を解放できるから。
歌えば、皆が笑顔になってくれるから。
だから成長して、歌を仕事に選ぶのは当然だった。
アイドルとしてデビューすることが決まった時は、何よりも嬉しかった。

暴力。賄賂。根回し。枕営業。
業界に入って、汚い噂も幾度と無く耳に挟んだ。
同僚であるアイドルがそういうことに手を染めていると、聞いたこともあった。
キラキラと輝いているって思っていた世界は、とても醜くて。
これが現実なんだということを私は理解した。
でも、それでも、私は歌い続けた。
歌うことが純粋に好きだったから、私は清純であり続けた。
己の中の『理想のアイドル』を貫いた。
汚い手なんて一切使わない、努力と才能によって輝くアイドルを貫いた。


だって、アイドルはそういうものだから。
歌って踊って、みんなを笑顔にする。
アイドルとは、キレイに輝く存在なのだから。


351 : 命短し、走れよ乙女よ。 ◆j0K3675zFI :2016/10/23(日) 14:34:20 jy70yEOg0


楽しかった。幸せだった。
みんなが歌を聴いてくれることが、嬉しかった。
みんなが自分の歌で笑顔になってくれることが、嬉しかった。
みんなに笑顔を届けることが出来て、何よりも嬉しかった。
私は、『アイドル』という仕事が大好きだった。



―――――――――なのに。
―――――――――それなのに。



どうして、こんなことに。
嫌だよ。
私は歌いたい。
もっと笑顔を届けたい。
みんなを幸せにしてあげたい。
それだけだったのに。
私が望んだのは。
それだけのことだよ。
誰も憎んでなんていない。
誰も恨んでなんかいない。
誰も嫌ってなんかいない。
汚れてなんかいない。
ずっと努力してきた。
キレイな女の子であるためにずっと頑張ってきた。
なのに、それなのに。
なんで。
なんで。
なんで。
なんで。
なんで。
なんで。
なんで。
なんで、なんでなんでなんでなんでなんで?
私、何か悪いことをしたの?
何も悪くないよ。
私は、悪いことなんてしてないよ。
もっと悪いことしてる子だって一杯いる。
なのに、何も悪くない私が死ななくちゃいけないの?
がんばってきた私が死ななくちゃいけないの?
悪いことなんてしてないのに。
悪くないのに。
おかしい。
絶対におかしい。
嫌、嫌、嫌、嫌、嫌。
いやだ。
こわい。
死にたくない。
死にたくないよ。
誰か
助け
て――――――――――――


◆◆◆


352 : 命短し、走れよ乙女よ。 ◆j0K3675zFI :2016/10/23(日) 14:34:51 jy70yEOg0
◆◆◆



目が覚めた時、そこは草原だった。
雑草が肌や服に擦れて、少しばかりくすぐったい。
仰向けに倒れていた彼女は、ゆっくりと目の前の景色を見据える。
月が空に昇り、紺色の天上が広がっている。
ああ、まだ夜なのかと彼女は気付く。
普段ならば、仕事の疲れでとっくにぐっすりと眠っている時間だろう。
ぼんやりとそんなことを思いながら、がさがさと雑草の音と共に彼女は立ち上がった。

自らの身体に、触れる。
ぺたぺた、ぺたぺた。
すらりと伸びた手足。
引き締まった胴体。
豊満な胸。
薄紅色の髪。
両親から貰った、自慢のきれいな顔。
なんともない。
傷一つ、ついていない。
無事だ。


「………………生きて、る」


実感が無いように、ぽつりと呟いた。
さっきまでの光景なんて何も無かったかのように。
『ビルの屋上から突き落とされたこと』なんて、夢であったかのように。
彼女の、『井上 快夢』の身体には何一つとして異常がなかった。


だけど、一つだけ違った。
少しだけ視界が狭いことに、気付いていた。
そして、顔を触っていた時に彼女は気付いた。
柔らかい感触が、指先に触れる。
右目に当たる部分に、『何か』が生まれている。
これは、何なのだろう。
撫でるようにそれを触る内に、彼女の疑問は解ける。


これは、花だ。
右目から花が、生えている。


何が、起こっているのか。
なんで、右目から花が。
そもそも、なんでこんな所に。
困惑し、混乱する彼女は必死に記憶を探る。
先程までの出来事を、思い返す。

男の人に突き落とされて。
もう死ぬんだと思って。
それから。
それから―――――――



『さっそくだがお前達には最後の一人になるまで殺し合いをしてもらう』



そうだ。
あの場所で、ヒューマという男がそう言っていた。


353 : 命短し、走れよ乙女よ。 ◆j0K3675zFI :2016/10/23(日) 14:35:49 jy70yEOg0
これは、殺し合いで。
最後の一人になるまで殺し合わないといけなくて。
そして、『参加者一人ずつに能力が授けられる』。
逆らった者には、首輪による粛正がある。
彼は、そう言っていたのだ。

訳が解らなかった。
理不尽だとしか思えなかった。
死なずに済んだと思ったら、今度は『殺し合え』?
殺人の被害者になったと思ったら、今度は殺人の加害者になれ?
ひどい話としか、言い様が無かった。
なんで、こんなことになったのだろうか。
理解が出来なかった。

突き落とされた時も、そうだった。
自分が何か、悪いことをしたのだろうか。
誰かを憎んだり、恨んだりしただろうか。
してない。何も、してない。
なのに、こんな目に遭っている。
わからない。わからない、わからない。
何も、理解できない。




(ねえ、神サマ。あなたは、私を、どうしたいの?)




これが、運命だというのなら。
運命を操る神様は、なんて残酷なんだろう。
少女を弄ぶことを、どれだけ楽しんでいるのだろう。
呆然とした瞳で空を見上げ、彼女は宛も無く歩き出す。
何処へ向かうか等、考えていない。
これからどうするかなんて、未だに思いつかない。


そう思って彷徨っているうちに、彼女は一つの『影』を見つけた。
彼は雑草の上に腰掛け、夜の海をぼんやりと眺めていた。
覚束無い足取りで、なんとなく快夢は近寄って見る。
そして『影』は快夢の存在に気付き、ゆっくりと振り返った。


「……おや。お嬢さんも『参加者』……でいいのかな?」


それは、老いた男性だった。
髪の色は真っ白に染まり。
顔は皺と染みに覆われている。
既に八十を越した老人であることは、快夢から見ても解る。
支給品に手をつける様子も無く、彼はどこか惚けたように快夢を見上げる。


354 : 命短し、走れよ乙女よ。 ◆j0K3675zFI :2016/10/23(日) 14:36:23 jy70yEOg0

快夢は、無言、無表情のままだ。
目の前で座る老人を、ただ見つけ続けている。
そんな彼女の様子を見た後、老人は再び口を開いた。


「まず、自己紹介が必要かな……儂は『善養寺 十次』。
 儂は殺し合おうなんて思ってない……だから、安心して構わないよ。
 どのみち儂は老い先短い……勝ち残った所で、意味は無いと思っているからね……」


老人はそう告げて、再び海を見つめる。
まるで既に諦めを付けたかのように、彼はただ海を眺め続ける。


「……井上……快夢、です」
「おや……どこかで聞いたことのある名前だね」
「まあ、アイドルやってるので」
「ほう……まさか死ぬ前に有名人さんと会えるとはなあ。
 死ぬ前のプレゼント、と言うべきなのだろうね……」


快夢はどこか寂しげで、諦観に満ちた老人の横顔を見つめる。
何もかも投げ出したような彼の表情を、唖然と眺める。
何故、そんな顔が出来るのだろう。
何故、そうも諦め切った顔が出来るのだろう。
そんなことを、思っていた。


「死ぬのが、こわくないんですか」
「儂はもう年寄りだよ。この歳になると、死ぬのも怖くなくなるんだ。
 それに、こんな時……腰を痛めた老人に出来ることは、未来ある者に生存の席を譲ることくらいさ」


悟ったように語る老人を見て、快夢はきゅっと怯えるように拳を握った。
自らの死を受け入れた老人の姿を見て、少しだけ震えてしまった。


「でも、お爺さん、何も悪いことなんてしてないのに――――」
「良い悪いの問題ではないさ。『そういう運命だった』……ただ、それだけのこと」


ただ冷静に老人はそう答える。
快夢は―――――怖い、と思った。
きっとこのお爺さんは、何も悪いことをしていないのに。
何も酷いことをしていないのに。
なのに、理不尽に巻き込まれている。
それを受け入れて、死ぬことを選んでしまっている。
それが、快夢にとって恐ろしかった。



過去の光景が、フラッシュバックする。
突き落とす男性。
墜ちゆく快夢(わたし)。
理不尽への嘆き。
これから死ぬという事実。
自問自答。
恐怖。
慟哭。
絶望。
終焉。
恨み節。
私の。
あの最後さえも。
そういう、運命―――――――?


355 : 命短し、走れよ乙女よ。 ◆j0K3675zFI :2016/10/23(日) 14:37:47 jy70yEOg0

己の中の雑念を振り払うように、快夢は言葉を投げ掛けようとする。


「でも、お爺さん」
「それに、儂は『見たんだ』」
「……え?」
「『見てしまったんだ』」


唐突な老人の発言に、呆気に取られ。
そして老人が、再び口を開く。


「『版権異能授与バトロワ』」
「急に、何を……」
「この物語の『題名』なのさ」


老人の奇天烈な言葉に、快夢はただ呆然とするしか出来ない。
バトロワ?題名?
急に何を言い出すのかと、思うしか無かった。
でも、なのに。
快夢の背筋は、急激に震えていた。
知ってはならない真実に触れてしまったかのように。


「儂らは、キャラクター……らしい。
 漫画やアニメ……『版権作品のキャラクターの能力』を与えられたオリジナルキャラクターが、殺し合う」
「…………」
「そのオリジナルキャラクターこそが、儂ららしい。
 儂らは、殺し合う為に生み出された存在であるようだ」


老人は、ただ淡々と語り続ける。
快夢は、気付く。
老人の姿に見えた『絶望』の正体に。
老人の『諦観』の正体に。


「この殺し合いは、ひとりひとりに、異能力が授けられる。
 儂に授けられた能力とは、これなんだ」


老人はふっと振り返り、そう言った。
その瞳と口元に浮かぶのは―――――諦めに沈んだ微笑。


「越えてはならない『壁』を越えてしまう能力。
 つまりは、現実と空想の壁を乗り越える能力。
 それが、儂に授けられた能力だったらしい」


356 : 命短し、走れよ乙女よ。 ◆j0K3675zFI :2016/10/23(日) 14:38:33 jy70yEOg0

それが、彼に与えられた能力。
本来は傭兵『デッドプール』が持つ能力。
全身を癌細胞に蝕まれ、死ぬことすら出来なくなった男の狂気の具現。
彼は知ってはいけない壁を知り、越えてはならない境界を越える能力を手に入れていた。
それは文字通り、狂気の具現。
正気を失った男の妄想の行く末。
妄言。狂言。そう捉えられても仕方無い、絶望的な真実の認識。
狂っていたからこそ、傭兵はそれに耐えられた。

されど、老人は狂えなかった。
ただ運命を漠然と受け入れるだけの老人が、狂っている筈が無かった。
だから彼は絶望したのだ。
心優しい老人は、行動を放棄した。
未来ある若者に生存の席を譲った、というのもある。
だが、その思い以上に老人の心を支配していたもの。
それは諦めだった。
絶望であった。
老人は真実を前にし、死を受け入れる道を選ぶしか出来なかったのだ。


なぜなら老人は―――――――正気であったから。
正気である老人に、この真実は耐え切れなかったから。


そして。
運命を嘆く少女にとっても、それは同じであり。
されどその絶望は、老人とは異なり。
正気と狂気の狭間に居る少女は、耐え切れなくなった末に。
この道を選んだ。



鮮血。
ぼんやりと座り込んでいた老人の左腕が、吹き飛ぶ。
真紅の液体が雑草を赤く染め上げ。
そのままバランスを崩した老人が、崩れ落ちる。



老人が見たのは、右手に血染めの剣を握る快夢の姿だった。
その眼は絶望と恐怖に染まり。
荒い息を吐きながら、冷静さを失い。
そして、その瞳からはただただ涙を溢れさせていた。
ゆらり、ゆらりと迫り来る快夢を老人は見据える。
自分はこれから死ぬのだと、理解する。
だが、老人はその死を受け入れていた。
受け入れていた―――――――受け入れて、いた?
ならば、何故自分は『語った』のか。
どうして自分は『真実』をこの少女に言ってしまったのか。
老人は自問自答をする。
自らの行為は、ただ少女を絶望させたのみ。
当然だ。自らが空想の存在である、という真実など知ってはならない。
知れば誰もが絶望するだろう。慟哭するだろう。
なのに、己は語った。
この世界が『まがいもの』であることを、目の前に少女に語った。
ああ、どうしてなのか。
何故なのか。



――――――ああ、単純なことだった。
――――――絶望していたからだ。
――――――この絶望を、誰かに押し付けたかったからだ。


357 : 命短し、走れよ乙女よ。 ◆j0K3675zFI :2016/10/23(日) 14:39:05 jy70yEOg0


悟ったふりをして、結局はこの有様か。
老人は己の行動を自嘲するように思う。
『自分の人生が空想に過ぎない』という真実に、結局は耐え切れなかったのだ。
だからこそ初めから諦め切っていた。
そして、その絶望を他人に共有させたかった。
きっとそれが、『心優しい老人』と言われた自分の、最後の恨み節だったのだろう。



「お嬢さん……それでも、忘れないで、く、れ。
 儂らが空想の存在であったとしても、殺し合うためだけの存在であったと、しても」



だから。
せめて、最後に。
この少女に、詫びたいと老人は思った。
最期の言葉を残したいと、思った。
涙を溢れさせる少女に、詫びるように。
老人は、少女への最後の慈悲を与える。




「それでも、儂らは、儂らの人生を……歩んできた、のだ」




最後に視界に映ったのは、鈍く輝く死の刃。
少女が振り下ろした刃が、老人の頭部を叩き割った。




【善養寺 十次@第四の壁破壊/デッドプール 死亡】


358 : 命短し、走れよ乙女よ。 ◆j0K3675zFI :2016/10/23(日) 14:39:47 jy70yEOg0
◇◇◇



――――――カイムちゃんは、歌がお上手ね!



『えへへ、ありがと、ママ!』



――――――カイムは凄いなあ。いつか歌手になれるんじゃないか?



『うん、パパ!わたし、かしゅになりたい!』



――――――カイムちゃんの歌なら、みんなを笑顔に出来るわ!



『わたし、だいすきなの。わたしのうたで、みんなわらってくれるのが!
 みんなニコニコしてて、うれしいの!』


――――――パパとママは応援してるぞ!いつかカイムがデビューしたら絶対見に行くからな!



『ありがと、パパ!えへへ……わたし、がんばるね!』



◇◇◇


359 : 命短し、走れよ乙女よ。 ◆j0K3675zFI :2016/10/23(日) 14:40:36 jy70yEOg0
◆◆◆



目の前に転がっていたのは、老人の亡骸。
頭部を叩き切られ、脳漿をぶちまける無惨な死体。
私の手に握り締められるのは、一本の剣。
赤い血が滴る、殺人の凶器。
そして呆然と立ち尽くすのは、わたし/井上 快夢。
キレイであり続けることを誓った筈の、女の子。



人が死んだ。
死んでしまった。
いや、ちがう。
殺した。
殺してしまった。
人を殺してしまった。



「あは」



何が、キレイなアイドルだ。
何が、清純な女の子だ。
そんなもの、今、ここで死んだ。
このおじいさんと一緒に、死んでしまった。
死んだ。
死んだ、死んだ。
死んだ死んだ死んだシんだシんだ×んだ!



「はは、ははは」



わたしの人生、なんなんだろう。
ずーっとがんばってきたのに。
パパとママからほめられて嬉しかったのに。
歌うのがだいすきでアイドルになったのに。
いっしょうけんめい努力してきたのに。
なのに、突き落とされて。
きっとそれは、醜いみにくい『ごーねちゃん』のせいで。
わたしの人生はおわっちゃって。
でも、生きてて。
目から花が咲いてて。
そして。
そして、おじいさんが。



「あは、は、あはは、はっ、はっははははははははははははははははははははははは!!!!!!」




『わたしたちはオリジナルキャラクターだ』って、言った。
ふつうに考えれば、信じる筈が無かったのに。
そんなの狂言だっておもうはずだったのに。
なのに、わたしは確信していた。
じぶんたちが空想のキャラクターだってことを、りかいしてしまった。
頭ではなく、こころが。


360 : 命短し、走れよ乙女よ。 ◆j0K3675zFI :2016/10/23(日) 14:41:00 jy70yEOg0

たのしく生きたかったのに、現実はきたなくて。
どりょくしてきたのに、他の子から恨まれて。
いっしょうけんめい生きてきたのに、全部だいなしにされて。
そしてそしてそして。
たのしかったことも、うれしかったことも、つらいことも、理不尽なことも。
ぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶ――――――――ウソでしかなかった。
わたしの人生は、このコロシアイのために用意されたうそっぱちだった。
そう理解した瞬間、わたしはおじいさんをころしていた。
かなしくって、つらくって、自然に手がでていた。

なんなの、なんでこうなの?
わたし、なにかわるいことした?
わたし、どうしてこんな目にあうの?
わたしの人生、なんなの?
ひどい、ひどいよ。
みんなひどい。
ゆるせない。
きらいだ。
きらい。
きらいきらいきらいきらいきらい!



「あは、は、はぁ―――――――――――」



涙がとまらない。
もういやだ。
このせかいはひどい。
ぜんぶ、きらいだ。
わたしが、ぜんぶ、ころしてやる。
ごーねちゃんも、ころしてやる。
おわらせてやる。
うそっぱちの命なんて、意味はない。
わたしが、わたしが、わたしが―――――――




「ねえ、なんで、なんでなのよぉ―――――――」




――――――かなしいよ、こんなの。


361 : 命短し、走れよ乙女よ。 ◆j0K3675zFI :2016/10/23(日) 14:42:41 jy70yEOg0

【一日目・1時00分/A-7 海辺の草原】

【井上 快夢@ゼロ(ウタウタイ)/DRAG-ON DRAGOON 3】
[状態]:発狂、右目に災厄の花、返り血
[装備]:ショートソード
[道具]:支給品一式、不明支給品(0~2)
[思考・行動]
基本方針:全部殺して、終わらせる。
1:郷音ツボミは必ず殺す。
※ブラッドゲージの蓄積度は『30%』です。100%になればウタウタイモードを発動可能です。
 他者を攻撃、あるいは自らが傷付いて血を浴びることで蓄積していきます。








※A-7に善養寺 十次の遺体が放置されています。
快夢がデイパックの中身を回収したかは後の書き手にお任せします。


362 : 名無しさん :2016/10/23(日) 14:42:55 jy70yEOg0
投下終了です


363 : 名無しさん :2016/10/23(日) 15:18:53 wQt/qr56O
投下乙・・・・・・って仕事、早ッ!
設定を読んだ段階では快夢がマーダー化すると思わなんだ
そして優しい十次お爺ちゃんが快夢マーダー化の引き金を引いて逝くとな・・・・・・
どっちもゼロやデップーみたいに最初から頭のネジが吹っ飛んだキジルシだったら結果は変わったんだろうか?


364 : 名無しさん :2016/10/23(日) 16:46:23 r8rYT5kk0
投下乙
第4の壁を越えて見たものを見ても
冷静だったのはおじいちゃんの優しさゆえか…
カイムちゃんもマーダーとなってこれからどうなるのか気になる


365 : ◆LJGPFoTaW6 :2016/10/23(日) 20:39:17 H4vNRdPk0
投下します


366 : その始まりは喜劇 ◆LJGPFoTaW6 :2016/10/23(日) 20:42:40 H4vNRdPk0

島津蒼太にとって世界とは常に暴力と共にあった。
別に彼自身はさほど暴力を振るうのは好きではない。
しかし彼の体の小ささと女顔、両目の色が違うという事実は否応無く排斥をもたらし、彼をそちらの道へ引きずり込んだ。

高校に上がるまで絡んでくる相手と繰り広げたいざこざの数は、百からはもう数えていない。

昔診察を受けた医師の話では何でも脳内分泌物やホルモンバランス、成長異常により幸運にも自分は人並みより少し上の力を振るえるそうだが、彼にとってはどうでもいい事だった。
人並み以上と言っても喧嘩番長と言うくらいだし、それなら普通の容姿の方が百倍は欲しいと思えた。

当然ながら蒼太に友達は少ない。
トラブルに巻き込むことを考えたら別段欲しいとも思わないが。
なんせ雪だるま式にトラブルは増え、ここ一年はヤクザ崩れの手合いと事を構え、銃を撃ったことだってあるのだ。
付き合う方も命がけと言うものだろう。
中学の頃は後藤万緒という腐れ縁の幼馴染がいたがそれも昔の話だ。

「お姉……」

そんな彼にも、顧みてくれる人は一人だけいる。
彼の姉、島津■■■。
いつだって彼女だけは蒼太の味方だった。

自分が死んだら、
もし誰かを殺したら、あの姉はどう思うだろうか?
多分泣くと思う。

「それは、やだな」

自分より強い彼女が泣くのは、見たくないと思った。
例えシチューを作って帰りを待ってくれていたとしても、泣かれたらしょっぱくなってしまうかもしれない。
出来る事なら、誰も殺すことなく帰りたい。
尤も、彼に与えられた最大の武器である”異能”ははずれも良い所だったが。
『腹話術』
射程距離と言う制約がある癖に、忘年会の一発芸位にしか使い道の無さそうな力。
こんなのでどうしろと言うのか。

「あのヒューマだかへちまだか、僕を生き残らせる気ないだろ……」

思わず毒づき、支給品である手の中の拳銃を弄る。
FNブローニング・ハイパワー。
幸いにも半年ほど前にヤクザの出来損ないのチンピラ相手にぶっ放した銃と一致していたが、どうにも超能力者相手に拳銃一丁で歯が立つ光景が浮かばない。
かませ犬が関の山だろう。

「ま、でも、なるようになるさ」

幾ら考えても現時点では出たとこ勝負にならざるを得ない。
もしかしたら本当にドッキリかもしれないし。
まずは一服しようとベルトに拳銃を刺し、非行少年らしく幸運にも没収を免れたタバコにライターで火をつけようとしたその時だった。

「ハーイ、そこの今にも道を踏み外しそうなチビッ子。タバコは後十年は早いですよー」

十年じゃあ無い。三年だ。
そう心中で呟きながら億劫に振り向く。
こんなことをのたまう人種は、教師か、或いは―――

「こんな変な催しの最中じゃなかったら補導しちゃいますからね?」

警察だろう。
どちらも蒼太の好きな人種では無い。

現れたのは頑丈そうなベストに身を包んだ若い女性。
茶がかった髪をサイドテール、快活そうな童顔、そしてぶ厚いベストの上からでも分かるくらい、そのバストは豊満であった。


367 : その始まりは喜劇 ◆LJGPFoTaW6 :2016/10/23(日) 20:43:08 H4vNRdPk0

ただの豊満でない。鍛え上げたインナーマッスルにしっかりと支えられた立派な胸部装甲。
見てわかる美人だったが、二頭筋や体幹の精悍さから同時にメスゴリラであることも伺える。

「何だ、ポリさんか」
「ポ、ポリって……」

淡白な応対をしてくる少年の態度に対し―――新人婦警、阿良愛は納得がいかなかった。
法の守り手たる警察と言う響きは、相手が非行に絶賛走っている少年とは言え、混迷した状況下では精神的支柱になると彼女は疑っていなかったのだが。
ぶっちゃけると頼られると思っていた。

「何か反応薄くないですか?ホ、ホラ警察手帳」
「いや別に疑っては無いけど、こういう時警察って大抵役に立たないし」
「ムム……!」

それがお約束と言うものだ。
事実、愛にもこの状況は何が何やらなので返す言葉も無い。
だがしかし、と愛は蒼太を見つめ言う。

「それでも!私はこの集団拉致と殺人を犯した『圧制者』の傲慢と強者の驕りを叩き潰してみせますよ!!」
「…………?」

愛のその言葉と表情に蒼太は僅かに眉を顰めた。
今までの人生経験上、危機に対する嗅覚には自信がある。
彼のそんな嗅覚は目の前の正義感に燃える女性の言葉の違和感を目ざとく嗅ぎ取っていた。
普通こういう時は、一般時の保護を第一に口にするべきではないか?
別にヒューマを打倒するという決意事態はおかしい物ではないが……
何にせよこの女性は早死にするタイプだ、間違いない。だって圧制者の下りの時の眼がヤバかった。
巻き添えを食わないよう、どうにか別れる方向に話を持っていこうと話を切り替える。

「あー、うん。そのベストは見たところ支給品か何か?」
「えぇ、防弾防刃の優れもの、らしいですよ。後ナイフが入ってました。
能力についてはよく解りません!きっとあの男の与太話でしょう!」

自信満々にゆさっ、と胸を張る愛。
成程彼女自身の戦闘能力を考えれば武器以上の当たりだろう。
だが、超能力者が跋扈しているかもしれないこの島でそれはどれほどの強みになるだろうか。
駄目だ。素の強さが逆にカモになる未来しか見えない。

「……そう、それじゃ聞きたいことも聞けたのでこれで」
「待ちなさい」

穏当に回れ右をしようとしていた蒼太の肩が掴まれる。めっちゃ痛い。
本当にゴリラもかくやの握力だった。

「何です?僕はポリさんの活躍を邪魔にならない場所で隠れながら期待させてもらおうと思ってるけど」
「そんな訳にはいきませんよ。一般人の『女の子』をこんなところに一人でブラブラさせたら警察官失格でしょう!」
「もしかして天然かポリさん…!」

他人には礼儀正しくと、姉の教えの言いつけから逸脱し、地金が出る。
確かに背も小さいし女顔、ハスキーボイスと役満だが、普通は気づくだろう。
少しカチンときた蒼太はあることを思いつく。
どうせ離れるつもりがないなら、彼女で自分の能力を試してみよう、と。

口に手を持っていき、響き渡らない程度に叫ぶ。

「「ピカチュウ!!!」」

言葉が紡がれると同時に肩の拘束が緩まり、するりと脱出。
まさか本当に成功すると思っていなかったので蒼太自身少し面食らった。

「……あれ?」

愛はさらに怪訝に思ったようで、棒立ちのままポカンとした表情を浮かべる。

「…ホントにできるんだ」
「ちょ、ちょっと。何かしましたか今?」
「え?うわちょっ」

驚いているところに愛の馬鹿力で引っ張られ、よろめく。
無論愛の方はそのままなら小揺るぎもしなかったが、先ほどと同じく蒼太は運悪く左手の甲で口を覆ってしまった。
丁度、腹話術を発動するときと同じように。

「「あっ」」

結果、腹話術の発動により彼女まで倒れこむ事となる。
効果が切れると同時にぐに、と愛は左手に奇妙な感触を覚えた。
丁度女性なら何の感触もしないであろう場所に。
具体的に言えば、蒼太の下半身に。
ついでに言うなら彼女は初心であった。

「―――――!??!!?」

…。
……。
…………。

顔を赤くしながら幽鬼のようにゆらりと立ち、ブツブツと何某か呟く愛を見て蒼太は青ざめる。

「圧制」
「え」

見下ろす愛の顔は笑っていた。
その笑みを見て、蒼太はさらに確信を深める。
ああやっぱり、この女性はとびきりの厄ネタだと――――――


その後、二十分ほど彼の生死をかけた追いかけっこが繰り広げられた。
スパルタクスの敏捷値が高かったら彼はここで死んでいたのは間違いない。


368 : その始まりは喜劇 ◆LJGPFoTaW6 :2016/10/23(日) 20:43:31 H4vNRdPk0

【一日目・1時00分/I-4】

【島津 蒼太@『腹話術』/ 魔王JUVENILE REMIX】
[状態]:全力逃走中
[装備]:FNブローニング・ハイパワー
[道具]:支給品一式、タバコ、ライター、不明支給品×2(確認済み)
[思考・行動]
基本方針:姉のもとへ帰る
1:助けて
2:助けろ
※ドッキリではないかと少し思っています。
※腹話術の制約、効果は把握済みですがリスクについては把握していません。

【阿良 愛@スパルタクスの宝具とスキル/Fate】
[状態]:追跡中(次の話にはもう終わっているだろう)
[装備]: 防弾防刃ベスト
[道具]:支給品一式、サバイバルナイフ
[思考・行動]
基本方針:圧制者を潰す。
1: 一般人を保護する。
2:圧制を許さない
※『今の所』狂化スキルの効果は微弱です。しかし圧制者が目の前に現れればその限りではありません。


369 : ◆LJGPFoTaW6 :2016/10/23(日) 20:43:46 H4vNRdPk0
投下終了です


370 : 名無しさん :2016/10/23(日) 21:16:17 VztsWeGcO
投下乙です
圧政者を追い求める愛さんが面白いw


371 : 名無しさん :2016/10/23(日) 21:29:04 jy70yEOg0
投下乙です
荒んだ生活を送っているけど『姉が悲しむのを見たくないから』っていう一点だけで殺し合いに乗らない蒼太くんのキャラいいなぁ…
元気で真っ直ぐな愛さん可愛いけど、スパルタクスの狂化がじわじわ作用してて心配になる…w


372 : ◆7PJBZrstcc :2016/10/23(日) 22:14:16 95N7bRjI0
投下します


373 : 愛のままにわがままにこの二人は自分の都合しか考えない ◆7PJBZrstcc :2016/10/23(日) 22:14:54 95N7bRjI0
 一見凡庸に見える高校生、笹原卓は殺人鬼である。
 それも過去にトラウマがあってそうなったのではなく、生まれた時からずっとそうだった生粋の殺人鬼である。
 だから彼は一切の躊躇なく殺し合いに乗った。
 いきなり起きた瞬間移動や、ヒューマが言った異能について多少は気にしつつも彼はこの殺し合い受け入れた。

「さてさて、俺の異能は何かな〜」

 楽しげな声色を浮かべながら卓はデイバッグを漁る。
 そして最初に出てきたのは、1mほどの装飾のない赤色の棒だった。

「えぇ……」

 それを見て卓のテンションは途端に下がる。
 こっちは銃とかナイフみたいな武器が欲しいのであってこんな棒が欲しいんじゃない、と不満を思う卓。
 だがしかし、赤色の棒に付いていた説明書きを見て卓は驚愕する。
 その説明書きにはこう書かれていた。

『如意棒。ドラゴンボールの主人公、孫悟空が持っていた武器。
 これを持った状態で伸びろ如意棒と唱える事で伸ばすことができる。ただしこの殺し合いの中では10メートル程が限度となっている』
「マジかよおい!?」

 その説明書きの内容に思わず叫ぶ卓。
 異能というファンタジーがあるから多少の事では驚かないつもりだったが、こうして漫画の中のアイテムが目の前にあるとなると流石に驚く。

「と、とりあえず使ってみるか」

 そう言って卓は如意棒を構え、「伸びろ如意棒!」と唱える。
 しかし如意棒は伸びることなくそのままだった。

「何だよ伸びねえじゃねーかクソが!!」

 卓は叫びながら如意棒を叩きつける。
 柄にもなく結構ワクワクしたというのに、その期待を裏切られたからか怒りは大きい。
 だが卓の怒りはあっさり静まる事となる。

「ん?」

 卓はふと人の気配を感じ、右を向く。
 するとそこには1人でこちらに向かって歩いてくる少女の姿があった。
 それを見て卓は思う、この苛立ちをぶつけようと。

「クックックッ、お前が(多分)この殺し合い最初の犠牲者だ―」

 そんな事を小声で呟きながら卓は少女に近づく。
 しかし少女の姿が良く見える位にまで近づいた時、卓は思わず足を止めてしまった。

 その少女は顔立ちの整っているセーラー服を着ていた。
 だが目の隈が目立ち、貧血気味なのか肌が不健康に白い。
 そして何よりもその少女は片手剣を両手で持ち、不気味な笑顔を浮かべながら

「ダーリンダーリン何処にいるの? 大丈夫だよダーリンは私が絶対守ってあげるからね。
 あぁでも心配、ダーリンって優しくてとってもカッコイイんだもの。人を殺すなんて絶対できないしもしかしたら他の泥棒猫がダーリンに恋しちゃうかも。
 でも大丈夫よダーリン、私が代わりにいっぱい殺してダーリンを優勝させるからね。死ぬのはちょっと怖いけどダーリンの為なら我慢できるもん。
 ダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリン……。あぁ……、愛してる」

 と呟いているのだから。
 それを見て殺人鬼は一言。

「何アレ超怖い」


374 : 愛のままにわがままにこの二人は自分の都合しか考えない ◆7PJBZrstcc :2016/10/23(日) 22:15:39 95N7bRjI0



 時は少し遡る。

 一見しても普通にはちょっと見えない女子高生、月宮埜々香はストーカーである。
 それも盗撮盗聴お手の物、隠蔽工作だって自信のあるストーカーである。
 そんな埜々香は大好きなダーリン、天草士郎の写真を自室で眺めている所で殺し合いに呼ばれた。
 最初は何が起きたのか分からなかった。自分の部屋にいたはずなのに気づけば違う場所にいるし、手に持っていたはずのダーリンの写真がいつの間にかなくなっていた。
 だがそんな不安はすぐに吹き飛ぶ。
 何故ならダーリン、天草士郎がそこにいたから。
 すぐに駆け寄ろうと思ったが、その前にナオ=ヒューマと名乗る変な男が現れて自分たちを殺し合いの為に呼んだと告げる。
 埜々香としてはそんな戯言気にも留めなかったのだが、靴を投げつけた人が爆発して死んだのを見て流石にちょっとだけ驚く。
 その後ナオ=ヒューマは、異能やどんな願いも叶えると言っていたが埜々香にとってはどうでもいい事だった。
 そして殺し合いが始まった。


 埜々香にとって異能や願いなんてダーリンに比べたら全部些細なことである。
 彼女にとってダーリンこそが一番であり、ダーリンへの愛が全てだ。
 だから彼女の行動は早い。
 手早くデイバッグを確認し、武器になりそうなものと地図を取り出すとあてもなく歩きはじめる。
 最初は人の気配がしなかったものの少し歩くと

「マジかよおい!?」

 という叫び声が聞こえた。
 埜々香はその声が聞こえた方に向かって進む。するとそこには赤い棒に当たり散らす少年の姿があった。
 その少年がこちらに気付いたのかこっちに赤い棒を持って向かってきている。

 これはチャンスだ、ダーリンを守るために他の人を殺せるチャンスだ。
 そう思い片手剣を強く握る。
 だが何故か手が震え始めてしまう。
 それも必然、何故なら月宮埜々香にとって人を殺そうと思うこと自体生まれて初めてなのだから。
 彼女にも一般人と比べると薄い物の殺人への忌避感が無い訳では無い。

 こんなんじゃだめ、そう思った埜々香は言葉を口にすることにした。
 言葉で自分を奮い立たせれば、きっとあの少年を殺せるはずだから。

「ダーリンダーリン何処にいるの? 大丈夫だよダーリンは私が絶対守ってあげるからね。
 あぁでも心配、ダーリンって優しくてとってもカッコイイんだもの。人を殺すなんて絶対できないしもしかしたら他の泥棒猫がダーリンに恋しちゃうかも。
 でも大丈夫よダーリン、私が代わりにいっぱい殺してダーリンを優勝させるからね。死ぬのはちょっと怖いけどダーリンの為なら我慢できるもん。
 ダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリン……。あぁ……、愛してる」

 こうつぶやいた後、埜々香の中から殺人への忌避感は消えた。
 埜々香の天草士郎への愛によってかき消された。
 そうなればもう躊躇する理由は無い。
 埜々香はいつの間にか近くに来ており、何故か茫然としている少年に向かって剣を振り下ろした。


375 : 愛のままにわがままにこの二人は自分の都合しか考えない ◆7PJBZrstcc :2016/10/23(日) 22:18:00 95N7bRjI0



「うおおおおおお!?」

 自分が殺すつもりの少女、月宮埜々香に片手剣で斬られそうな極限状況に、笹原卓は持っている如意棒を動かして剣を受け止める。

「……何で殺されてくれないの?」

 剣を受け止められたことが不満な埜々香は目の前の卓に問う。
 早く死ね、あなたに時間を取ったらダーリンが危ないじゃないの。そんな情念が目に見える。
 だが卓はそんなものに怯まない。毅然とこう言い返した。

「何で殺されないかって? 決まってる、それは俺がこの殺し合いを楽しむため!
 日常だとこっそりやらなくちゃいけない俺の趣味である殺人を、大っぴらにやるためだ!!」
「……え?」

 卓の回答があまりにも想像を超えていて埜々香は一瞬思考が止まる。
 その隙を見逃さず卓は如意棒を彼女に振るう。

「きゃっ!」

 その攻撃を喰らい地面に倒れる埜々香。
 卓は彼女に如意棒を突きつけて一言

「形勢逆転だな」
「くっ……!」
「後ろに『殺せ!』とかつけたりしない?」
「……何で?」
「いや、流れ的に」

 軽くとぼけた会話をしつつ卓は埜々香を見る。
 多少は整っているものの、卓には埜々香が貞○にしか見えないせいで少し怖い。
 だがそんな様子はおくびにも見せず、卓は埜々香に話しかける。

「まあ殺してもいいんだけど、殺さない方が面白そうだからいくつか質問に答えて、頼みを聞いてくれる解放してやるよ」
「私の処女はダーリンの物よ!」
「いや正直今の俺、性欲より殺人衝動の方が強いからお前に欲情なんかこれっぽっちもしてないんだけど」
「ならいいわ」
「いいのかよ!?」

 あまりのセメント対応に思わず驚く卓。
 殺人衝動とか色々衝撃的なこと言ったんだけどなー、と思いつつ卓は話を進める。

「まず最初、お前の名前は?」
「月宮埜々香」
「オッケー月宮。次の質問だけど、お前なんで殺し合いに乗ったんだ?」
「ダーリンを守るためよ」
「……ダーリン?」
「そうダーリン! 格好よくて優しくて赤い長髪が似合うイケメンでキリスト教を信じている私のダーリン!
 得意なことはフルートの演奏でとっても上手なの!
 あとアニメや特撮が好きなちょっと子供っぽい所もあるんだけど、自分を偽らずオープンに生きるって素敵よね!!」
「いやダーリンはともかくお前はもうちょっと隠せ」
「いつも首から十字架を掛けてるんだけど、それは亡くなったお義母様の形見らしいの。
 それでいてお義父様を尊敬していて義妹とも仲がいいのよ。家族を大切にするなんて素晴らしいでしょ! きっと私の事も大切にしてくれるはずよ!!」
「聞けよ人の話。後全部に義の字つけんな、お前の家族じゃねえだろ」
「そのうちなるわ」
「なんなんだコイツ」


376 : 愛のままにわがままにこの二人は自分の都合しか考えない ◆7PJBZrstcc :2016/10/23(日) 22:19:07 95N7bRjI0

 いい加減イライラしてきたので無理やり話を進める事にした。
 これが最後の質問だ、と前置きし埜々香に問う。

「何でお前、反撃してこないんだ?」

 その質問に埜々香は唖然とする。だが卓はずっと疑問だった。
 倒れているとはいえまだ剣を奪っておらず、如意棒を突き付けているとはいえいくらでも反撃する隙はあった筈だ。
 にも拘わらず無抵抗に質問に答えている、これが卓には理解できない。
 一方埜々香は唖然としていたが平静を取り戻しこう言った。

「簡単よ。ここで貴方に反撃して殺せたとしても私は多分ダメージを受けるわ」
「そうだな」
「参加者が私とダーリンとあなただけだったら何が何でも殺すけど、そうじゃないでしょ」
「俺が見た限りあの会場には40人くらいいたな」
「だからよ。私はダーリンを守らなきゃいけないの。ここで死んだら誰がダーリンを守るの?
 私はダーリンを守る。その為ならどんな事でもするわ。泥にまみれても這いつくばることになってもね」
「成程気に入った、殺し合いの場じゃなかったら友達になりたいくらいイカレてるなお前。LINEのID交換しようぜ」
「覚えてないわよ」
「俺もだ。まあそれはそれとして」
「……何?」

 そこで卓は如意棒を突き付けるのをやめて埜々香に言う。

「その剣とこの如意棒、交換してくれ」
「……いいけど」

 予想外の頼みにちょっと驚きつつ、埜々香と卓は互いの武器を交換する。
 如意棒を軽く振り回しながら埜々香は質問する。

「何で交換するの?」

 その質問に同じく剣を振り回し「あ、これ片手剣か」と言いながらも卓は答える。

「いや、なんかその棒『伸びろ如意棒』って言ったら伸びるって説明書きに書いてたのに伸びないからさ」
「ええ……? 伸びなきゃただの棒じゃないの」
「酷い話だろ?」
「……そうね」

 そう言いながらもちょっと気になったのか、如意棒を卓に向けないようにしながら構え小さく「伸びろ如意棒」という。
 すると如意棒はグングン伸びていき、10m位になった所で止まる。
 それを見ていた卓は叫ぶ。

「何でだよぉぉぉおおお! 何でお前が使ったら伸びるんだよ!!」

 叫びながら卓の右手が伸びている如意棒を掴むと、如意棒は途端に元の長さに戻る。
 卓は埜々香から如意棒をひったくると、狂ったように叫び続ける。

「伸びろ如意棒! 伸びろ如意棒!! 伸ーびーろ―――!!!」

 それを傍から見ていた埜々香はある事に気づく。

「ねえ、あなたが右手で触れた途端に如意棒が元の大きさに戻ったんだけど」
「右手?」

 それを聞き、卓は右手を放し左手だけで如意棒を持ち「伸びろ如意棒」と言う。
 すると如意棒はさっきと同じようにグングン伸びていき、10m位になった所で止まる。
 そして右手で如意棒に触れると元の大きさに戻った。

「あーはい、そういう事ねうん」
「何だかよく分からないけど、私もう行っていい?」
「おう、何処にでも行けよメンヘラ女。お前が生きてる間はなるだけダーリンっぽい奴は殺さないからさ」
「そう。じゃあね腐れ殺人鬼」

 そう言って埜々香は去って行った。
 それを見送ることもなく、卓は自分の右手を見ながらこう思った。


 俺の異能幻想殺しかよぉぉぉおおおお!!!
 強いよ!? 能力的には強いよ!? 殺し合いでは結構優位に立てると思うよ!?
 でもこんなもん貰っても俺どうしろってんだよ!? 日常生活で何一つ役に立たねえよ!? 俺学園都市にも通ってないし魔術師とも戦ってないし!!
 優勝賞品でくれてやるとかヒューマ言ってたけど、要らねえよ!?

 というかあの主催者、俺の異能を分からせるために如意棒支給しやがったな!?
 何その回りくどさ、ジュ○ル星人かあいつは!?
 そんな気を回すくらいなら素直に紙にでも書いとけ!!
 そもそも如意棒って異能の内に入るのかよ!?


「ハァ……ハァ……」

 一通り内心で憤ったことで、卓は落ち着きを取り戻す。
 そして出発支度を整えようとした所で、ある重要な事に気づいた。
 それは――

「あ、俺月宮に自分の名前名乗ってねえ」


377 : 愛のままにわがままにこの二人は自分の都合しか考えない ◆7PJBZrstcc :2016/10/23(日) 22:19:46 95N7bRjI0


【一日目・1時00分/F-5】

【月宮埜々香@ペテルギウス・ロマネコンティの怠惰の権能と憑依能力/Re:ゼロから始まる異世界生活】
[状態]:
[装備]:如意棒@ドラゴンボール
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜2)
[思考・行動]
基本方針: どんな手を使ってでもダーリンを守る
1:ダーリンダーリンダーリン、何処にいるの?
2:あの殺人鬼、なるだけ早く死んでほしいな
[備考]
※天草士郎の参加を把握しています
※笹原卓の名前を知りません


【笹原卓@幻想殺し/とある魔術の禁書目録】
[状態]:
[装備]:片手剣
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜2)
[思考・行動]
基本方針:楽しく気ままに人殺し
1:幻想殺しか……、強いけどさぁ……
2:月宮のダーリンっぽい奴(赤毛のイケメン)はなるだけ殺さない
[備考]
※自身の異能について把握しました

【如意棒@ドラゴンボール】
ドラゴンボールの主人公、孫悟空が持っていた武器。
これを持った状態で伸びろ如意棒と唱える事で伸ばすことができる。ただし本ロワでは10メートル程が限度となっている
また、本ロワでは自在に伸び縮みすることは異能の部類に入るので無効化能力で打ち消すことができるようになっている。


378 : ◆7PJBZrstcc :2016/10/23(日) 22:20:16 95N7bRjI0
投下終了です


379 : ◆7PJBZrstcc :2016/10/23(日) 22:24:14 95N7bRjI0
>>377の二人の状態表の状態の部分に健康、と追加します


380 : 名無しさん :2016/10/23(日) 22:58:01 jy70yEOg0
投下乙です。
卓くん面白い奴だなぁ…w
殺人衝動持ちで間違いなく狂人なのに、埜々香へのツッコミとかで殺人以外の感性のまともさが滲み出てて微笑ましい
しかし埜々香ちゃんはやっぱり危ない子だった…


381 : 名無しさん :2016/10/23(日) 23:05:54 r8rYT5kk0
投下乙
これはマーダーコンビの結成…なのか?


382 : ◆XksB4AwhxU :2016/10/24(月) 01:09:11 yFM99jnM0
投下します


383 : 「幸福な」少女とウソつきの話  ◆XksB4AwhxU :2016/10/24(月) 01:10:25 yFM99jnM0


彼女は、普通の少女だった。
友達と優しい両親を持つ、幸福なごく普通の少女だった。
しかし、悲劇が訪れた。
その悲劇は、その少女とその家族の人生を狂わせるには、十分すぎる物だった。
少女の父は、”無くなってしまった”母を求め続けた。
少女が何を言っても、聞かなかった。
やがて父は、その少女を鬱陶しく思うようになった。
そして、父は少女に、暴力を教えた。


384 : 「幸福な」少女とウソつきの話  ◆XksB4AwhxU :2016/10/24(月) 01:11:08 yFM99jnM0

I-8、岸壁に立つ集落の家屋の一つ。

伊丹沢 妙 という少女は転送された部屋の隅で、震えている事しかできなかった。

この舞台に転送される前......彼女は些細な事で父親に叱られ、罰を受けていた。
執拗に殴られ、蹴られ、髪を引っ張られながらも、少女は悲鳴を上げず、ただ「ごめんなさい」と繰り返し謝るだけだった。
父親はそれが癪に障るのか、終いには酒ビンを取り出し、頭から血が出るまで殴られても.....少女は、ただ耐えるだけだった。
.結局父親はぼろ雑巾の様になった自身の娘を蹴り飛ばし、ドアを蹴って出て行ってしまった。
かつて、父親と母親に囲まれて過ごした部屋を片付けながら、少女は思う。
どうして、こんな事になったのだろう。
何で優しかったお父さんは、帰って来てはくれないのだろう。
幾ら考えても分からなかった。やがて、父が帰ってきて、隅で震えている彼女を殴ろうとした瞬間、少女は見知らぬ空間へ転送された。


始めは、何が何だか分からなかった。もしかして、殴られて死んじゃったのかな、みたいな事をぼんやり思っていた。
男の人が殺し合いをするとか何とか言っていたけど、よく分からなかった。
皆、何やら騒いでたけど.......突然、大きい音と一緒に女の人の頭が無くなって、消えていった。
私は、これは夢なのだと思った。
男の人が何か言っていたけど、何も聞こえなかった。その人に組み付いてきた人がいたけれど、しばらくしたらその人は倒れて動かなくなった。
そして、男の人が何か言い終わると同時に、私の体はどこかへ消えていった。

夢だと分かっているはずなのに、私の体には、まだこの夢に入る前の、殴られた痛みが残っていた。


「痛い.....痛い.....痛いよお........お父さん、やめて......ねぇ、お父さん......」
「バトル・ロワイヤル」という「暴力」の中で、彼女は現実を受け入れられず。小さく、か細い声でうわ言を繰り返し呟き続ける事しかできなかった。


385 : 「幸福な」少女とウソつきの話  ◆XksB4AwhxU :2016/10/24(月) 01:12:21 yFM99jnM0

古い家屋の一室で、側後 健彦は目覚めた。
どうにも記憶が曖昧、と言えばいいのか......今までの出来事がどうも現実離れし過ぎているのか、状況の把握に数秒かかった。
私は、あの夜....確か、『仕事』の『後始末』を終えて帰路に着いていたはずだった。
何一つ証拠が出ないよう、入念に「掃除」し、塵の一つも「汚れ」がない事を確認し、満悦に浸りながら.....楽しい週末を、過ごすはずだった。
しかし.....『奴』が、それを邪魔した。
ナオ=ヒューマ......訳の分からないイカれた男に首輪を付けられ、「バトル・ロワイヤル」とか言う、傍迷惑な「暇潰し」のキャストに選ばれた。
歯向かった二人の少年は殺された。「能力」を与えたとか言っていたが、何の事かは分からない。
そして、その一連の行為は.....「安心」を求める彼にとっては、恐ろしく屈辱的なものだった。
しかしその傍らで、冷静に事態を受け入れ、先の見えぬアクシデントに対処・対策を練ろうとする「彼」もいた。記憶を巻き戻し、この殺し合いに関する情報を少しでも多く手に入れようとする。
そうして頭を分析の方へ回し......一通り落ち着いた側後は、傍に転送されていたらしい「支給品」を確認した後、慎重に部屋の探索を始めた。


386 : 「幸福な」少女とウソつきの話  ◆XksB4AwhxU :2016/10/24(月) 01:13:28 yFM99jnM0

そうして、彼女等は出会う。
先に気付いたのは、側後の方だった。暗がりの隅で、蚊が鳴くような声で何かを呟き続けている。自分の中の世界に縋り付いて、周りなどこれっぽっちも見えてはいない様子だった。
そして彼女は、側後 健彦という男が、幾重となく見てきた「目」をしていた。
全てを失い、何も見えていない目。ただひたすらに、在りし日の幸福を求める盲目の「目」だった。
チャンスだ、と側後は思った。
チャンスというよりは、幸運と言うべきか......ある意味当然の事ではあった。ごく普通の小学生が、いきなり見知らぬところへ転送され、理不尽な殺し合いを強いられているという状況なのだから。
そして、今まで「観察」をしてきて分かった事だが......この状態の「人間」という生き物は、酷く脆い。
それでいて、扱いやすい。.....もっとも、この「殺し合い」という場では、彼女など真っ先に屠られる存在であり、どの道足手纏いにしかならないと、普通なら思うだろう。
しかし、この「殺し合い」の場合......あのイカれた男、ヒューマが言っていたことを思い出す。

「一見ガキにしか見えない奴も大人を余裕でバラバラにできるぐらいの能力を持っている」.....にわかには信じがたいが、どうも奴の言動からして漫画とかアニメとかの”創作物”から、そういった類の能力を”そのまま”移植したらしい。

だとしたら、利用する価値は存分にある。少なくとも、その「能力」とやらの存在を確認するまでは、生かしておいて損は無いだろう。
そう判断し.....表向きの弁護士の顔で接しようと、極力自然に、心配するように声をかけた。

しかし、それが誤算だった。



濁っていた瞳が、黄金色に光り

声を掛けられた彼女は、その意識を外界に向け

『戻される事』への恐怖からか、無意識に 『能力』 を発動させていた。


387 : 「幸福な」少女とウソつきの話  ◆XksB4AwhxU :2016/10/24(月) 01:14:08 yFM99jnM0

双方とも、何が起きたのかは最後まで分からなかった。
ただ、どちらも一瞬、「妙な感覚」があった。厳密に言うなら、「意識」が飛ぶような感覚が。
先に我に返ったのは、妙の方だった。ハッとなって、目の前に男がいる事に気づき、怯えて数歩、覚束ない足取りで後ずさった。
暗がりで、顔は見えなかった。どうやら自分に起こった事が信じられず、呆然としている様子だった。
そうして、男の方も我に返り......妙の体を、恐怖が包んだ。

「......お前.........」

その男の顔には、何も無かった。
まるで、『薄っぺらな嘘』の仮面が剥がれ落ちたように。

「私に、『何をした?』」

真っ白な顔から、目が浮かび出た。
男は、伊丹沢 妙という少女が、幾度となく見てきた「目」をしていた。

そして、顔が生えてきた。
少女は、絶叫した。
薄れゆく意識の中で、男は、父親と同じ顔をしていた。


388 : 「幸福な」少女とウソつきの話  ◆XksB4AwhxU :2016/10/24(月) 01:14:49 yFM99jnM0

部屋の片隅で、側後はため息をついていた。
結局少女は糸が切れたように倒れ、そのまま眠ってしまったようだ。精神の限界、という奴だろう。始めて『仕事』を引き受けた時によく見物出来た光景だった。
少女の能力については、依然不明のままだ。身体にも、能力をモロに受けたと思われる視界にも異常は見られない。
側後は再びため息をつき、掌から『あるもの』を出現させる。
”謝債発行機”――名称など側後は知る由もないが、その『能力』は、音楽プレーヤーの様な形をしていた。
側後が少女から能力の攻撃らしきものを受けたあの時.....側後の掌には、何かが出現したかのような感触があった。
その後、不可解に思いあの感触のイメージを何回か試しているうちに.....彼の掌には、『感触』の正体が具現化されていた、という訳だ。
妙な感覚だが.....あのヒューマの言う事を信じるなら、これが自分の能力だという事になる。
そのイメージを掴む為、しばらく出現させては消す動作を繰り返していたが.....ここで、”謝債発行機”の上部に、イヤホンジャックのような穴がある事に気づく。
「(........そう言えば.....デイバッグの中に、イヤホンがあったな)」
思い出し、デイバッグから『オマケ』とメモが付けられたイヤホンを取り出す。確認した時は何の事だか分からなかったが.......
「(.....しかし........これが本当に「能力」だとして、あの男......本当にこれで私を生き残らせる気があるのか?)」

最初、あの男.....ヒューマに逆らい、体に穴をあけて死んでいった男.....警官の、ジョーと言ったっけな。
あの男にはお誂え向きと言わんばかりの、子供向け番組に出てきそうなスーパーマンの様な能力が与えられていた。
その超人染みた能力を、ヒューマは自分が与えた能力を.....まるで自慢するかのように語っていた。
それに比べて、自分の能力は......「音楽プレーヤーを出現させる能力」?笑い話にもほどがある。
勿論、そんなカスみたいな能力で到底生き残れるとは思えないが......何かが、引っかかる。
.....確か、あの男は、確か殺し合いが開始される直前に......「優勝者は、特別報酬として能力を進呈する」等と、言っていたな。
.......やはり、引っかかる。能力を紹介していた時と言い、あの男は、自分が与えた能力に妙な自信を持っている。

「(.....試してみる価値は、あるか)」


389 : 「幸福な」少女とウソつきの話  ◆XksB4AwhxU :2016/10/24(月) 01:15:24 yFM99jnM0

....しかし、何とも言えない、厄介な状況になったな。
この「能力」の事もあるが.......やはり、一番の心配はこの少女だ。
幸い今は寝ているが、どうもこのガキ.....前は暗くて分からなかったが、見てみた所、まるで数分前までぶたれていたような腫れ痕などが顔のあちこちに幾つか見られる。
成程、どうもこいつは......既に、壊れていたみたいだな。一時的なショックで混乱していただけだと思っていたが......
......そうなると、困ったことに......この少女が何をするか、想像が付かない。もしかすればヒューマの言っていた事を思い出し、「能力」を使って私を真っ先に殺しにくるのかもしれないな。
しかし、未だ自分の能力の"本質"が分からない以上、リスクはあるが......折角の幸運を、無駄にするわけには行かない。一先ず、彼女との接し方にはより一層、慎重になる必要があるな。
幸い、”職務上”人に「希望」をチラつかせ、誘導させるのは自分の十八番だ。くれぐれも隙は、与えないようにしなければ。

一先ず、休むとするか.......そう言えば、このプレーヤー、確か一つだけ音楽のアルバムが入っていたな.....「Black planet」?......一先ず、聴いてみるか......

夜は、まだ明けない。


390 : 「幸福な」少女とウソつきの話  ◆XksB4AwhxU :2016/10/24(月) 01:16:09 yFM99jnM0

【一日目・1時00分/I-8・集落】

【側後健彦@謝債発行機/HUNTERxHUNTER】
[状態]:精神疲労(小)、若干の不安
[装備]:謝債発行機@HUNTERxHUNTER
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0〜2(確認済み)、『オマケ』のイヤホン
[思考・行動]
基本方針: 生き残る。一先ず自身の能力の”本質”が分かるまでは様子見。
1:この音楽プレイヤー(謝債発行機)を試してみる。
2:一先ず、休む。どうするかはガキが目覚めたら考えるか。
3:このガキは....能力が分かるまでは、精々利用させてもらおう。

[備考]
※伊丹沢妙の能力を見ました(能力レンタルの第一条件を達成)

【伊丹沢妙@略奪/Charlotte】
[状態]:体中に殴られた傷と痣、精神疲労(大)、睡眠中
[装備]:なし
[道具]: 基本支給品一式、不明支給品(0〜2)
[思考・行動]
基本方針:???
1:お母、さん......
2:側後への恐怖

[備考]
※自身の能力を、まだ使いこなせていません


391 : 「幸福な」少女とウソつきの話  ◆XksB4AwhxU :2016/10/24(月) 01:17:47 yFM99jnM0
投下終了です
それと、投下した後に気づいたのですが
歯向かった二人の少年は殺された。 の所を
歯向かった女と、刑事らしき男は殺された。 に訂正します


392 : 名無しさん :2016/10/24(月) 08:30:42 ce2SvbrA0
投下乙です
何気に地に足ついた危険人物は今までそんなに居なかったから新鮮
しかし謝債発行機の能力に初見で気付くのは相当難しそうだ…
恐怖に震えるばかりの妙ちゃんの明日はどっちだ


393 : 名無しさん :2016/10/24(月) 12:38:55 3vbho/vgO
投下乙乙

>愛のままにわがままに二人は自分の都合しか考えない
二人とも危険人物に間違いないのに、コメディチックというか独特の面白さがあって良いですね
テンプレなメンヘラヤンデレ埜々香とヤザンみたいな殺人狂なのに変なところで常識人な卓とか
二人のマーダーとしての活躍に期待

>「幸福な」少女とウソつきの話
他の方も言ってましたが、今まで出た危険人物の中では地に足がついてるクレバーなキャラは側後で初めてかも
対主催になるのか、マーダーになるのかはまだ不明っぽいですが、妙をどう扱うのか、自分の能力に気づけるのかが活躍の鍵になりそうですね


394 : 名無しさん :2016/10/25(火) 11:49:09 ZZMw3/gUO
始まる前から思ってたけど、このロワのアイドル業界がドロドロ過ぎて草


395 : 名無しさん :2016/10/25(火) 12:29:04 8uBfAVpQ0
このロワのアイドルキャラ自体が汚れまくりのごーねちゃん中心の関係だからまあ黒くなるやろなぁ


396 : 名無しさん :2016/10/25(火) 18:32:20 uMW2O50o0
書き手枠の元芸能事務所社長が殴りこんで来たらもっとむごいことになりそうだ

関係は仄めかされてないけど


397 : ◆YlfcDuGY1. :2016/10/29(土) 22:46:32 Vxu11VH.0
予約のフレイス、投下いたします


398 : 風吹けば ◆YlfcDuGY1. :2016/10/29(土) 22:47:28 Vxu11VH.0
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       ;/  ;彡' ;;' ~ヽ,( oヽ,〉''     /y'( o,),/~ ;;ミ ミ;; |;
       ;;|  ;彡 ;;; ミ;  ー;'ミ|      ヾ彡;'´  ;;' ミ  ミ |;
      _;|   ;ミ ;: ミ   ミソ   ..:: ::..  lミ  ,,彡 ;; ;;'' |;;.
   _,- ',,'' ;;l ;ミ, ヾ   '' ;;;l''  :::.   ::.  ヾ ,,;;;;;ソ ノ;; ミ|
_,-'jj ;/''  ,,:jj ヘ;: ;;;ミ''; ,''  ;;:: ::..::: :::;;  :ヽ  ミ '' ミj;ー、
/; ;;/;' j;j'' ,,,j;;''彡;;  ミ   ,;l , , `ヽ;;,_ ,_,)y , ,tーニ二;ニ_` |:
.,,// j''  ;;;''  メ;二ニ=-j;,; ; ;; ,, lミヽ_;`;_r'' ,,; ;; ; ; 二二ニ;二ー_ |,
/''    jj;;''l  =,-メ―ニ l;;; ; ; ; . ' ヾ;;/ ,, , , ; ; 二;_ーlニ二_ |,
    /;; ヾ''';;;:;;:;;,,.ヾニ=,ー、_;_; _'_,/=\_'_'__メ二__lニ二_ ;|;
  ,,;;'' /'  ヽ  '';;;;;;;,,,.. _;;;ヾ;;;;''' '';::'';;;'''  ';;'/;;ー、ソ     ,;;ミ|,
 ;;'' ;;''   /;;〉    '';;;;;;;,, ``ヽ_       ,j,'  /''  ̄ ,;;彡'' :|
/''   ,,;/' /''|;,,     `l;;;,,   `y_ ; ; _; ; '/  ,,;''    彡''   |:
    ;;'  ;'/``;;;,,,..    ヘ;;;,,.  ゙ '´ `´ ''`,; ''     ,,彡''    |;
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   j,;'  /;;,,     `;;;,..    ;;',         ,;;;;;'''     ,,;;;'' ヾ
;;  ;;''  .;/ `;;,,     `;;;   ;;..        ..;;;;''   ,,,,;;;;;.;''   ヽ;


フレイス―― 一本だけ縞模様が光線に似た白い部分があることから、そう名付けられたオスの虎。
専門家によると5歳(人間換算で20歳ほど)とされている。
彼の生息していた自然豊かな無人島であったが、某国家の開拓・開発のために多くの人間が入り込み、急速に美しい自然は破壊されていった。
無論、彼も住処も奪われ、仲間である虎もハンターや密猟者によって捕獲・駆除され急速に数を減らしていった。

そのことに恨みを持ったのであろう。
フレイスはジャングルに入り込んだ者の前に度々出没しては、攻撃・殺害・捕食に及んでいる。
人間に多大な被害を及ぼしたのでいつしか懸賞金がかけられ、多くのハンターが彼に挑んだが、この虎は異常に賢く、仕掛けられた罠を破壊し、集団を分断させて各個撃破などの戦法を使ってハンターを返り討ちにしている。
今日までに幾多のハンターが犠牲になり、死傷者(あくまでハンターに絞った場合である)は既に2本の手では数え切れないほどになっている。
ハンターや民間人から犠牲者が出るたびに懸賞金も上がっていくが、未だに彼に銃弾一つ掠められた者はいない。
































「――てな感じで、人間どもはワイの噂をしてるンゴwwwww」

注:これは虎語を翻訳した言葉です。
  某掲示板サイトで使われる猛虎弁とは一切関係ありません。
  また、上記にあるフレイスの説明に嘘偽りはなく、人間に復讐心を抱いているのも、虎としては賢いのも嘘ではありません。
  そのことを承知してクレメンス。


彡(゚)(゚)


399 : 風吹けば ◆YlfcDuGY1. :2016/10/29(土) 22:48:28 Vxu11VH.0


ここは地図上でH-3と記される南の山の山頂。
そこには一匹の虎がいた。
この個体は参加者であるフレイスと呼ばれる虎だ。
彼は島全体を見回している。

「かぁ〜、ここどこやねん!
少なくとも島の地形や生えている植物からしてワイが住んでいた島やあらへんな?」

フレイスは山頂から島全体を見渡すことで地形を把握し、周辺に生えている植物に自分の見知った物がないところから、殺し合いの会場とされた島が自分の知っている島ではないことを理解した。

「クッソ〜、人間共にはまず見つからない巣だと思って油断していたで!
まさかワイが巣で寝ている間に拉致られてまうなんて。
ナオ=ヒューマだかクソ=ヒューマだか知らんが、あのキッズ、けったいな真似をしおってからに!」

フレイスは憤っていた。
自分をいつの間にか誘拐し、見知らぬ土地へと連れ込んだ主催者ナオ=ヒューマに。
そして捕らわれた自分の迂闊さに。

「しかし、何なんやアイツ……人間の癖に、なんで虎のワイにもわかる言葉で話とったんや?」

フレイスは憤りと同時にヒューマにはよくわからない奇妙さを覚えていた。
先ほどの殺し合いに関する説明の折に、ヒューマは参加者である人間達と同時にどういうわけか虎にもわかる言葉で説明していたのだ。

「人間どもにそういう道具でもあるんかな? ……アカン、全然わからへんからこの辺は保留やで」

彼が敵対する人間達は様々な道具を使うことを知っているが、今まで自分が見てきた人間達に虎と喋れる道具を使っていた者は見たことがない。
島の外にはあるかもしれないが、フレイス自身が島の外から出たことがない。
情報がないだけに疑問が解決することがないと悟ったフレイスは考えを保留した。

「まあええで。
あのヒューマという得体の知れない奴の目的を大雑把に言うと最後の一匹になるまで殺し合えやったな……
食うためでもないのに楽しむために仲間同士で殺し合いをさせるなんて、人間はやっぱチンパンジー以下やで。
いや、チンパンジーはいちおう殺した仲間を食料にする場合もあるから、人間は猿未満やで」

フレイスから見て、殺し合いを強要するヒューマやそれをする人間は共食いや強姦をする凶暴なチンパンジーよりも滑稽で愚かに映った。

「だが逆らえば首輪にある火薬に火がついてドカンと……ワイは人間共に大人しく飼われている畜生どもやないんやで! クソが!」

フレイスも主催者に粛清された女の死は見ている。
本心としては窮屈な首輪など早々に外したいところだが、首輪が爆発すれば人間よりはタフな虎でも死は免れないことは理解していた。

「不本意やが人間共を皆殺しにして最期の一匹になるしかあらへんな。
まあ、ワイは元々人間嫌いやし、柔らかくて美味そうなキッズやメスもいた。
全員ワイの腹の中か血の海に沈めたるで」

フレイスは住処であるジャングルを荒らし、多くの仲間を殺してきた人間をひどく憎んでいた。
人間(?)の命令に従うのは嫌だったが、生き延びる道がそれしか無いと言われれば迷わず殺し合いに乗る方を選ぶ。
同族の虎でもいない限りは、彼は参加者を殺すことを厭わない冷徹な猛虎であった。

「そしてどっかで踏ん反り返っているヒューマも殺す。
鉄砲も効かへんオヤジをどんな道具や罠で殺したかしれへんが、タネを暴いて絶対に殺したるで!」

彼の殺害対象は参加者だけでなく、自分を拉致し殺し合いを強要した主催者のヒューマも含まれていた。
ヒューマがどのような手段でジョーを殺したのか見当もつかないが、生き物である以上はなんであれ死ぬ。
優勝後には隙や弱点を見つけてヒューマを殺すつもりなのだ。


400 : 風吹けば ◆YlfcDuGY1. :2016/10/29(土) 22:49:10 Vxu11VH.0



「さて、人間共を皆殺しにすると決めた以上はこれからどうするか決めなくてはアカンな」

フレイスは本格的に殺し合いに乗る前に自分の周囲を確認した。
まず、彼の背中についているディパックを見る。

「後ろ足が……届かへん!
クッソ、カラカラ音が入ってるところからして何か入ってるのは確実やが、開けられなきゃ意味ないで!」

ディパックは他の参加者同様に背負ってはいるものの、鞄に足が届かないので自力開封は不可能だった。
そこらじゅうにゴロゴロ転がって強引に破いて開けることも考えたが、中身にハンターも使っていた爆弾だったりすると危険なのでやらなかった。
何より虎なので仮に銃器などが入っていても足で扱うのは不可能なので無用の長ものだった。

「……いや、ワイに意味はなくとも人間共には意味ありか。
ワイを殺せば中身の道具は手に入るしなあ」

賢い虎は考察する。
確かに自身が扱えない道具は多いだろうが、人間には有用だろう。
さすれば自分を殺した人間は背中にあるディパックを手に入れて生存率が上がるだろう。
故に道具目当てに自分を殺しにくる人間も出てくるだろうと考察する。

「道具に頼らないと生きていけない人間如きにゃワイは意地でも殺されへんで。
……で、足元にあるのは雉か?」

次にフレイスが足元及び会場への転送先付近には三匹の雉の死骸があった。
自然に三匹揃って同じ場所で死んでいたとは考えられない。
おそらくディパックを自力で開けられないフレイスを飢えさせないためのヒューマの計らいだろう。

「う〜ん、この。
雉は嫌いやあらへんが、これじゃ狩りの有り難みがないで。
とりあえず非常食にはなるからその辺に隠しとくか」

人間には見つかりにくそうな場所に穴を掘り、食料となり得る人間が減ってきた時や、狩りが上手くいかない時の非常食として雉の死骸を隠しておいた。

「さて、お次は……」

フレイスは最後に山頂からもう一度、島全体を見渡す。
虎は夜行性であり、ネコ科に属する彼らは人間と違って網膜の下に輝板(タペタム)と呼ばれる層があるので僅かな光も捉えることができ、闇夜で目が利く。
そのために山頂からなら島全体の地形や建物の位置ぐらいなら把握することができた。

「え〜と島自体は大して広くあらへんな……端から端までの距離2kmちょい……ワイなら一日中走りこめば島全体を移動しきることも可能やな。
お、人間どもの巣は東側に偏っているみたいやで」

フレイスは虎なので人間のように地図を読むことはできないが、その代わりに地形を見ることで覚えられるくらいの高い知能を持っていた。
大雑把ではあるが、島の地形や建物の位置は僅か数分で覚えてしまっている。

「よし! 地理の勉強はこの辺でええな。次はお待ちかねの狩りの時間やで!」

ディパック、非常食、地理の把握。
全ての準備を終えたフレイスはいよいよ人間達に打って出ることにした。

「まずは向こうに向かってみるで」

まずは人間達がいそうな建物の多い東側に狙いを定める。
狙う理由は人間が多そうだから?
フレイスの狙いはそれだけではない。

「ククク……人間どもめ。
まさか虎がおまえらの巣に出没するなんて思っておらへんやろから、そこを“よろしくニキーwwww”と奇襲するで。
加えてワイと違って人間共は夜に目が効かへんから、真っ暗な夜こそ人間を殺るチャンスや。
夜行性動物の恐ろしさ、思い知らせたるで!」

フレイスは建物の中なら安全と油断しきった参加者を、夜襲込みによる戦法で屠る気なのだ。


401 : 風吹けば ◆YlfcDuGY1. :2016/10/29(土) 22:49:43 Vxu11VH.0

「そうと決まれば、さっそく出発や!」

目的が決まった瞬間、フレイスは駆け出した。
南の山を颯爽とかけ下っていく一匹の虎。


「そういえば奴の言っていた“イノー”ってなんやろなあ?」

山を下りながら、ふと、ヒューマのある言葉を思い出すフレイス。
イノー(異能)……殺されたジョーは普通の人間なら耐えられるハズのない弾丸を肌で弾き返し、ヒューマはそのジョーを一撃で殺した。

「奴の説明通りなら、イノーって奴は一匹ごとに違うらしいし、ワイにも備わっているらしいが……これもうわかんねえなあ……」

虎の世界に漫画やアニメが普及しているわけはないので、フレイスは異能が具体的にどんなものなのか、イマイチ掴めていなかった。
少なくともジョーのような防御力やヒューマのような攻撃力を持ってないことだけはなんとなくわかった。

「まあええで。
よくわからんイノーを使って自滅して“【悲報】フレイス氏、某島で死去。自殺か。”ってなったら目も当てられへん。
ワイの武器はマッマとパッパからもろた爪と牙で十分や。
ほな、余計なこと考えてないで先に進みで〜」

よくわからないイノーに頼らず、戦闘スタイルはあくまで使い慣れた己の肉体を武器に戦うことに決めて、とにかく先へ進もうとするフレイス。
夜が明けると奇襲がしづらくなる。
そうなる前に減らせる分だけ人間を減らしていくつもりなのだ。


だが、彼はまだ気づいていない。
己の体が少しだけ輝き、足の速さが僅かに増していることに。
ピカピカの実の能力者が持ち得る、光速移動能力の片鱗が出かかっていることに彼はまだ気づいていなかった。



【一日目・1時00分/・H-4 南の山斜面】

【フレイス@ピカピカの実/ワンピース】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品1〜3(自力での確認不可)
[思考・行動]
基本方針:人間達を皆殺しにし、ナオ=ヒューマも殺して島に帰るンゴ
1:人の巣(集落)がある東側に向かうで
2:優勝後にヒューマを殺すために、何か対策も考えとく
3:イノーって何なんやろなあ?

[備考]
※南の山山頂から見たことで会場の地形や建物の位置を大雑把に把握しました。
※自身の能力(イノー)にまだ気づいていません。ただしピカピカの能力の一つである光速移動の片鱗が出かかっており、僅かに移動スピードが上がっています。
※支給品の入っているディパックを自分で確認することができません。
 食料のみ開始地点に配置されていました。
 支給食料(新鮮な雉の死骸)×3はH-3のどこかに埋めてあります。


402 : ◆YlfcDuGY1. :2016/10/29(土) 22:53:20 Vxu11VH.0
投下終了です(ニッコリ)
今回の話のフレイスの言葉はあくまで筆者なりに翻訳しただけなので、ネタが気に入らなかったら次回から言葉使いを変えてもOKです


403 : 名無しさん :2016/10/30(日) 12:57:53 jGW3k06Q0
猛虎弁を操る虎ニキ…これは参加者にとって強敵になりそう


404 : 名無しさん :2016/10/30(日) 21:21:09 G3YKiDX20
投下乙
関西弁を操る虎か…!
いわゆる地方訛りを吹き替えで表現してみたヤツですね


405 : ◆IPU8SGkvmQ :2016/10/30(日) 21:57:25 gGeElyz20
投下します。


406 : 相性-たった二人の生存協定- ◆IPU8SGkvmQ :2016/10/30(日) 21:58:38 gGeElyz20
 午前0のバトルロワイヤル開始から、十分程が経過した頃。
 早川千夏は、会場内に設置された分校の一角で目を覚ました。
 起きる気力もなく、千夏は寝転がりながら周囲に目を向ける。
 すると、どこのド田舎だ、と言いたくなる程の古ぼけた教室内に、妙に多くの整頓された机と椅子が並べられている。
 そこは、原作『バトル・ロワイアル』において、最初に生徒たちが集められた場所だ。
 一部の原作を知っている者にとっては、まさしく『始まりの場所』といえる場所だろう。
 しかし、千夏はその一部の者には当て嵌ってはいない。
 いきなり「ナオ・ヒューマ」なる人物に殺し合いをしろと言われただけの、ただの一般人だった。

「はぁ……なんでこんなことになっちゃうかなぁ……」

 思わず口から溢れだしたその呟きも、誰の耳にも入ることは無かった。
 この場所は原作と異なり、始まりの場所ではなく会場の一部なのだ。
 当然の事ながら、同じ教室内には人っ子一人いなかった。

 もちろん千夏にはバトルロワイヤルに巻き込まれる覚えなど無い。
 いつも通り学校に通い、帰り際のファーストフード店で幼馴染の萩原舞から興味もないミリタリー談義を聞かされ、いつも通り帰宅した。
 その記憶に一切の違和感など覚えてはいない。
 しかし、現に千夏はこんな場所に転がされているのだ。
 なにやら身体がゴワゴワすると思い、身体を見れば軍服まで着せられている。
 完全にこれは夢だと思い、千夏は自分の頬をつねった。

「……いふぁい……夢じゃない、かぁ」

 考えられる要因としては、間違いなく萩原舞の仕業だろう。
 むしろそれ以外で自分に落ち度があったとは思えないからだ。
 以前にも勝手に自衛隊の軍事演習の見学を2人分申し込まれたことあった事を思い出しながら、千夏はこの『プログラム』も危険な物とは知らずに申し込まれたのだろうと当たりをつけた。
 軍服を着させられているのがそれのいい証拠である。
 
 ――面倒くさい。
 そんな感情が千夏を支配していた。
 もともと千夏は積極的に動くタチではなく、学校のイベントや体育などでも指示されなければ全く動かない事が大半である。
 逆に指示されれば、余程の重労働じゃない限りなんでも淡々とこなすことから、そこまで目立ったサボり症だとは思われていなかったが……。
 千夏はなるたけ楽して静かに暮らせればそれでいい、という隠居老人のような思考をしている。
 そして今、バトルロワイヤルという平穏とは正反対の事件に巻き込まれてもなお、積極的に動く気は毛頭なかった。
 平穏を取り戻すために殺し合いなどという動乱に身を投じるなど本末転倒であるからだ。


407 : 相性-たった二人の生存協定- ◆IPU8SGkvmQ :2016/10/30(日) 21:59:06 gGeElyz20

「(そういえば能力がどうとか言ってたっけ……あ、あと荷物も見ておかなきゃ)」

 正直に言って能力のことはよくわからなかったが、荷物は大事な生命線だ、確認しておかなければならない。
 千夏はようやく上半身を起こし、脇に置かれていたデイパックに視線を移す。
 学生鞄よりも少し大きめのソレは、否が応でも今の自分の全てであると実感させられる。
 
 千夏はデイパックのチャックを開くと、とりあえず中身を全て外に出してみる。
 まず出てきたのは、地図やコンパス、何も書かれていない表が書かれている冊子に、食料と飲料。
 
「コーヒー……ないかぁ……」

 一般にカフェイン中毒と呼ばれるほどのコーヒーマニアの千夏にとって、これは死活問題ある。
 これは決して比喩などではなく、起床性低血圧の千夏は毎朝一杯のホットコーヒーがなければ活動開始までにかなりの時間を要するのだ。
 殺人者が頭の覚醒を待ってくれるはずもないため、千夏はどこかでカフェインを調達することを第一の目標に決めた。

 そして、次に出てきたのは『戦場での立ち回り本セット』という本の束である。
 「軍事戦略入門」「現代の孫子の兵法」等と言ったハードカバーから文庫までの本が6冊まとめられていた。
 機敏に動かなければならない戦場で、本を5冊も持っていたら重くて立ち回りどころではない、まるで嫌がらせである。
 そして、最後に出てきたのが、デイパックの隙間を埋めるようにギチギチに詰められた手榴弾であった。

 「うわっ、あぶなっ」

 何のケースにも入っていないむき出しの手榴弾が、無造作に少なくとも10個以上入っている。
 それはアメリカが主に使用しているM67手榴弾は破片手榴弾と呼ばれるものであり、15m以内に入れば即死、100m以上離れても大怪我する事もある程のものである。
 それを“瞬時に理解していた” 千夏は、額に冷や汗を垂らした。
 乱暴に扱っていたら、すでに死んでいてもおかしく無かった状況なのだ。

 ――ふと、そこで千夏は違和感を覚えた。
 萩原舞から散々ミリタリー知識を押し付けられていた千夏だが、その大半を聞き流していたため、手榴弾といえば「パイナップルっぽい奴」程度の認識しかなかった。
 しかし、この手榴弾は丸く膨らんでいて、どちらかと言えばリンゴに近い形をしている。
 おそらくピンなどから手榴弾だということは理解できただろうが、種類や効果などまで分かるはずがない。

「(……舞のミリオタが伝染っちゃったのかな……?)」


408 : 相性-たった二人の生存協定- ◆IPU8SGkvmQ :2016/10/30(日) 21:59:48 gGeElyz20
 千夏はどこまでも自分に影響を及ぼしてくる幼馴染の存在にため息を吐いたが、勿論そんなことはない。
 それだけで兵器の知識が得られるならば、世界の軍人達も苦労はしていないだろう。
 それは千夏に与えられた能力に寄るものだったが、その小さな違和感だけではまだ能力を自覚するには至らなかった。

 地図を見る限りでは、幸い会場の区分けは細かく設定されている。
 まだ夜中であることだし、もう少しゆっくりしてもいいだろう、と千夏は荷物を散らかしたまま、また床に寝転がった。
 ――しかし、その時。

 ガララッと扉が開いた音がしたかと思うと、千夏の視界が一気に明るくなる。
 何者かによって教室の電気が付けられたのだ。
 どうやらインフラは正常に機能しているようである。
 千夏はとっさに手榴弾を一つ拾い上げ、扉から隠れるようにして机の影に身を隠した。

「どなたかいらっしゃいますか? 隠れる必要はありません、私は殺し合いをしようとは思っていませんので」

 千夏の耳に、まだ年若い女性のものであろう凛とした声が聞こえてくる。
 千夏もその言葉を鵜呑みにするほど愚かではない、手榴弾をよく見える位置に掲げたまま、頭だけを机から露出させた。
 そこにいたのは、グロック18Cと呼ばれる自動拳銃を構え、最初から場所がわかっていたかのように、こちらをじっと見つめている同い年くらいの少女だった。


◇   ◇   ◇


 少し時間を巻き戻して、午前0時丁度。
 石黒千晶はバトルロワイヤルが開始されると同時に目を覚ました。
 周囲の状況確認と記憶の整理を同時に行い、効率的に最短で事態の把握に努める。
 どうやら場所は分校のような物の一室で、ここは殺し合いの会場だと理解した。

「(どうやら冗句の類じゃなさそうね……)」

 全ての情報の整理を終え、千晶はどう動くかを思案し始める。
 外出する際は必ず着用する簡素な腕時計を確認すると、0時0分30秒を指していた、“時間のズレはない”。
 日常のおける最後の記憶はまだ昼間だったはずである。
 ずっと眠らされていたとしても、能力の付与などが数時間で終わるはずもない。
 千晶は日付が気になったが、それよりも早く移動することが先決だと考え、思考を切り捨てる。

 立ち上がると同時にデイパックを開き、歩きながら中身を確認する。
 中から出てきた武器であろう物は拳銃であった。
 名称や威力などはわからないが、なぜだか構造が手に取るように分かる。
 なるほど、これが能力か、と千晶は特別何か感情を抱くわけでもなく、すとんと理解できた。
 これが『炎を出す能力』や『物を動かす念動力』だったらもう少し感動していたかもしれないが、物の構造を理解するだけなら一般人の延長にいると言えるだろう。


409 : 相性-たった二人の生存協定- ◆IPU8SGkvmQ :2016/10/30(日) 22:00:41 gGeElyz20
 見たところ異常はない銃だったが、千晶の意識は急に“分解したい”という欲で満たされた。
 元々知識欲が旺盛な千晶である、本が手元にない今絶好のストレス発散道具に見えて仕方がなかった。
 そのうえ、千晶に付加された能力『直観』は能力者の知識欲を増幅させ、殺人衝動にまで昇華させる程のものである。
 普段から自身を律している千晶だが、知識欲については自分に甘いところがあるため、この欲求に逆らうことはできなかった。


 静かに扉を開け、廊下に人が居ないことを確認すると、窓のカーテンも全て締め切る。
 完全な暗闇となった教室には、千晶が点けた懐中電灯の灯りだけが灯っていた。
 5分だけ自分の時間を作ろう、と取り決め、早速銃の分解に入る。
 15秒程で分解は終わり、やはり部品に以上は無いと理解した。
 余談だが、グロック18Cはフルオート・セミオートが切り替えられる自動拳銃であり、素人にはとても組み上げられる物ではない。
 しかし、分解よりも時間はかかったものの、分解&組み立ての作業を1分以内に終了することができた。
 千晶に与えられた能力がきちんと発揮されている証明でもあった。

「(やっぱり初めから構造が分かっている物だとダメね……)」

 幾分か気は紛れたが、知識欲はあまり満たされていない。
 早くまだ目を通したことのない本を手に入れなければ、気がおかしくなってしまいそうだった。
 図書室を探そうと千晶は廊下に出た、勿論足音は極力立てないようにすることを忘れない。
 デイパックからは銃と地図を手元に残し、姿勢を低く保ちながら素早く移動する。
 今まで滞在していた教室は端にあったため、反対の端へと一部屋ずつ中の様子を伺っていった。
 どうやら2階への階段は無いようだ。

「(この能力で本の内容もわかっちゃった最悪ね……)」

 まだ能力の全容を理解できていない千晶は、能力の考察を進めながら最悪のケースも頭の隅に思い描いていた。
 小さな島の分校に期待した図書館など無く、とうとう最後の教室の前に到着する。
 中を覗くと、自分の物と同じような食料や飲料に加え、数冊の本が散乱しているのが見えた。
 注意深く観察すると、人間の足のようなものが荷物の近くに転がっている。
 拳銃の安全装置を外し、行動しやすいように左手に持ち替えた。
 生存者にしても死体にしても、先手を取る事は重要だと考えた千晶は、わざと音を立てながら扉を開き、素早く電気のスイッチを入れる。

「どなたかいらっしゃいますか? 隠れる必要はありません、私は殺し合いをしようとは思っていませんので」


410 : 相性-たった二人の生存協定- ◆IPU8SGkvmQ :2016/10/30(日) 22:01:52 gGeElyz20
 千晶は銃を構えながら、転がっている足と、もし殺人者がいるならばその者に向かって声を掛ける。
 この言葉は本心であり、相手が危害を加えてこない限り銃を撃つつもりはない。
 生き残った場合には刑法第36条及び第37条の正当防衛・緊急回避を主張するつもりであるからだ。
 すると、転がっていた足は引っ込み、少し経って手榴弾を構えた軍服の少女が顔を出した。


◇   ◇   ◇


 今、2人の女子高生が手榴弾と拳銃を構えて対峙している。
 傍から見れば間違いなく緊迫した状況であった。
 もちろん、本人たちにとっても。
 そこで、先に口を開いたのは軍服の手榴弾を持った少女――早川千夏である。

「この手榴弾結構威力高いっぽいし、そこから撃ったらアンタも死ぬよ……」

 荒事に慣れていない少女の精一杯の威嚇だった。
 対する拳銃を構えた少女――石黒千晶は千夏の手榴弾のピンが外れていないことを確認すると、素直の銃を下ろした。
 
「申し訳ございません。 危険人物が潜んでいる可能性も考慮していましたので……私に交戦の意思はありません」

 千晶は拳銃の安全装置をロックすると、制服のポケットに仕舞って有効の意思をアピールする。
 相手に協力者がいることも考慮していたが、言葉の通りここで手榴弾を使うことは考えにくい事と、廊下に出て安全装置を外すのに1秒も掛からないことが解っていたからだ。
 その様子に安心したのか、千夏も手榴弾を鞄に放り、立ち上がる。
 演技とは思えない千夏のホッとした様子に、千明も警戒を解いて扉から離れた。

「私は石黒千晶と申します」
「あ、はい……早川千夏です」

 自己紹介と同時に、千晶は満面の笑みで千夏に握手を求めた。
 あまりにも普通な彼女の様子に千夏は、さっきまで武器を構え合っていたのに変な人だな、と思いながらも自己紹介と握手を返した。
 ――しかし、そこで友好を示して終わり、とはいかなかった。
 握手が終わっても、千晶は千夏の手を離す気配がないのだ。
 千晶はただ黙って掴んだ千夏の左手の甲を凝視している。

「これは……貴方は入墨を入れているのですか?」

 千晶の声に千夏は自分の左手の甲を見る。
 すると、そこにはこれまで無かったはずの奇妙な模様が描かれていた。
 確かに入墨や痣に見えるが、当然千夏には入墨の記憶など無い。
 猫や熊の手形にも見える丸と三角で構成されたその模様は、いつだったか萩原舞に進められたとある漫画を千夏に連想させた。
 『放課後アサルト×ガールズ』という漫画である。
 いつも舞のミリタリー談義を聞き流している千夏だったが、漫画は人並みには読むため、いまだ2巻しか発売されていないこともあって流し読みをしたことがあったのだ。


411 : 相性-たった二人の生存協定- ◆IPU8SGkvmQ :2016/10/30(日) 22:03:00 gGeElyz20

「……これは、多分“能力”って奴のせいだと思う」

 千夏がそう説明すると、少し険しくなっていた千晶の顔は笑顔に戻り、握手を解いた。
 そんな千晶の様子はよそに、千夏は能力を必死で思い出そうと試みている。

「こう、かな?」

 千夏は荷物へと向き直ると、左手でキツネの形を作り、荷物を収容するイメージを浮かべる。
 すると、散乱していた食料も飲料もデイパックでさえ、一瞬で消え去ってしまう。

「おおっ……重くない、これは便利だ」

 あの非常に重たい荷物をどうしようか悩んでいたところなので、千夏は素直に喜んだ。
 身軽であるというのは大きなアドバンテージとなるだろう。
 
「今のは……物体を収納できる能力という事でしょうか?」
 
 横から見ていた千晶が、千夏に能力の説明を求めた。
 千夏も完璧に覚えていたわけでもないが、思い出せる限りの説明を簡潔に行った。
 ――その際、どうせだからと千晶は情報交換や詳細な自己紹介を提案し、千夏もこれを承諾。
 千晶も完全には把握しきれていない自分の能力を考察も交えて伝え、情報交換は終わった。
 長話が嫌いな千夏と、効率を求める千晶の会話は非常に短い時間で終わったが、両者ともに相手への印象は少しばかり向上していた。
 2人の他者に求める自身のエゴが、うまく合致した結果である。

「早川さん、貴方も私も『ナオ・ヒューマ』という人物による拉致・監禁の被害者であることは明白です。 そこで、私達が生き延びるために協力関係を結びたいと思うのですが、どうでしょうか?」

「ああ、はい。 ウチはもう千晶さんと行動する気満々だったんで……どうぞよろしくお願いします」

「ありがとうございます。 こちらこそ、宜しくお願い致します」

 非力な女子高生達は、バトルロワイヤル中は協力し合うが決まった。
 まだ完全に信頼し合っているわけではないが、千晶は素直な協力者を得て、千夏は方針を決めてくれるまともな牽引者を得た。
 要するに、需要はお互いに満たされているのである。

「……あ、そういえば。 千晶さん、荷物、ストレージにしまいます?」
「ありがとうございます。 では、拳銃と懐中電灯意外をお願いできますか? それと……早川さんの所持している本を、一冊貸していただけないでしょうか?」
「本、ですか?」

 何に使うのか疑問に思いながらも、千夏は千晶の荷物を収納し、ストレージ内の本を確認する。

「お恥ずかしい話ですが、手元に未読の本が無いと少々落ち着かない性分ですので……」


412 : 相性-たった二人の生存協定- ◆IPU8SGkvmQ :2016/10/30(日) 22:03:44 gGeElyz20
 日常生活では家族にしか知られていない事だったが、この会場ではいつでも本が手に入る状況では無いため、千晶は素直に打ち明けた。
 周囲の人間には完璧な人として認知されたい欲求がある千晶も、この緊急事態ではプライドよりも効率化を優先しなければいけないと考えているからだ。
 最後の砦である丁寧口調も、保っていられない状況が来るかも知れなかった。

「……では、一番軽い文庫サイズのこれで良いですか? 他のは結構重いのとかありますけど」

 そう言って千夏が差し出したのは、『歴史から学ぶ戦争学〜この先生きのこるには〜』という本だった。
 歴史書は多く読んでいたが、自分とは関係ないとしてこういった本は読んでいなかったため、千晶の欲求を満たすには十分な本である。
 千晶は手にとって確認してみたが、どうやら自分の能力では本の中身まではわからないようだとホッとする。
 全何ページだとか、糸栞が273ページに挟まっているだとか、そういった情報しか頭に入ってこない。

「重量の事まで考慮していただき、誠にありがとうございます。 早川さんは何か欲しい物はありますか?」

 見返りというわけでも無いが、千晶は行動方針を決める一環として、千夏に訪ねた。
 特に無いようであれば、I7の図書館・G9の診療所・J10の資源開拓プラントといった物資のありそうな場所に向かう予定であった(一つは完全に私事だが)。
 
「あー……ウチもコーヒー、というかカフェインが欲しいかなー、無いとヤバいかなー、みたいな……」

「わかりました。 では、民家にコーヒーが存在するかは不確かなので、G9の診療所に向かいましょう。 恐らく給湯室もあるでしょうし、カフェインの錠剤が置いてある可能性もあります。 その後、J10に置かれている資源開拓プラントに向かいます。 ここで早川さんの能力に必要な資源を探しましょう。 プラントは海上に存在していますが、早川さんの能力で簡単な小舟を作れば渡ることが出来ると考えられます。」

 さながら企画会議のプレゼンテーションの様に、すらすらと千晶は方針を説明していく。

「もし仮にはぐれてしまった場合は、集落で最も南にある建物に集合しましょう。 地図に名称の記載されている建物は長時間の滞在には不向きだと考えられます。 大まかな方針は以上ですが、詳細な方針は実際に行動を開始してから決めましょう。 ここまでで何か質問はありますか?」
「いや、特に無いです」

 千晶の問いに、千夏は即答で返した。
 深く考えるのも面倒くさかったし、何かあればまた言ってくれるだろう、と千夏は半ば思考を放棄し始めていた。
 千晶の立てた計画に不都合はないし、ディベートの様な事になったらなどと考えたくもなかったからだ。

 では、ここを出ましょう、という千晶の声によって、行動は開始された。
 去り際に放たれた千晶の提案によって、教室内の机や椅子をストレージに仕舞い、木と鉄の資源を稼ぐ。
 教室はすっかり寂しくなり、そこから人影までも去っていく。
 方や拳銃と本、方や手ぶらという、一見サバイバルをナメているような装備の2人は、診療所を目指し、分校を後にした。


413 : 相性-たった二人の生存協定- ◆IPU8SGkvmQ :2016/10/30(日) 22:04:17 gGeElyz20
【一日目・0時45分/G-7・分校周辺】
【早川千夏@工兵/放課後アサルト×ガールズ】
[状態]:健康、工兵変身状態、
[装備]:工兵服(シールドフル状態)
[道具]:{支給品一式×2(-懐中電灯)、M67手榴弾×15、『戦場での立ち回り本セット(本4冊)』、不明支給品1(確認済み)、デイパック×1、机と椅子×42}分のリソース
[思考・行動]
基本方針:千晶と行動し、生き残る。
1:カフェイン欲しい。
2:千晶さんに付いていけばなんとかなる。
3:舞に合ったら一発シメてやる。

[備考]
※石黒千晶と情報交換しました。
※自分の能力と石黒千晶の(大まかな)能力を把握しました。
※萩原舞が参加していることは薄々予想しています。
※机と椅子は木と鉄パイプで出来た普遍的なものです。原作バトルロワイヤルの生徒数分の用意がありました。

【石黒千晶@『直観』/HEROS】
[状態]:健康
[装備]:グロック18自動拳銃(フルオートモード)、懐中電灯
[道具]:本一冊(『歴史から学ぶ戦争学〜この先生きのこるには〜』)
[思考・行動]
基本方針:生き残る。
1:診療所へ向かう。
2:資源開拓プラントへ向かう。
3:協力者を増やす。

[備考]
※早川千夏と情報交換しました。
※自分の(大まかな)能力と早川千夏の能力を把握しました。


414 : ◆IPU8SGkvmQ :2016/10/30(日) 22:04:46 gGeElyz20
投下終了です。


415 : 名無しさん :2016/10/30(日) 23:19:14 W6XD.R9E0
投下乙です
二人共名前に千が入ってるからさながら千千コンビとでも言いましょうか
兵士系の千夏と参謀系の千晶の活躍に期待


416 : ◆j0K3675zFI :2016/10/31(月) 15:50:44 2q4nJnEQ0
投下します。


417 : ◆j0K3675zFI :2016/10/31(月) 15:52:57 2q4nJnEQ0
◇◇◇


『あの、ママ……』


何となく目が覚めてしまった夜中の出来事。
その日のママの後ろ姿を今でも覚えている。
空っぽで、ちっぽけで、どこか物悲しかった。
その日のママの横顔を今でも覚えている。
苛立ってて、怒ってて、そしてどこか悲しそうで。
幼い僕は、不安で仕方無かった。
何かが変わってしまったということを、何となく察してしまった。


『なに……してるの……?』


ママは物置の部屋で、黙々と何かを破いていた。
僕の質問に答えることも無く、何度も何度も。
ママは俯き気味に『それ』を破き続けていた。
僕は『それ』に見覚えがあった。
否、覚えていて当然だった。


『ママ、それ……!』
『ツボミッ!!いいから寝てなさい!ママは忙しいのよ!ママは……!』


ママは、すごくつらそうで、悲しそうな顔をしていた。
そんな表情で、何度も何度も『写真』を破っていたのだ。
僕は驚いたし、怖かった。
ママが破っていたのは――――――――パパとの写真だったのだから。
幼稚園の入園式の時の写真。
家族で遊園地に行った時の写真。
『久しぶり』に家に来てくれた時の写真。
ママが破り捨てていたのは全て、パパが一緒に写っていた家族の写真だった。

何でこんなことしてるの?
何でパパとの写真を破ってるの?
何でそんな酷いことするの?
その時の僕は、混乱するばかりだった。
どうしてパパとの思い出を破ってしまうのか、わからなかった。
だから僕は、怖かった。



『だめだよ、ママ!そんなこと、だめ……!』



止めなくちゃ、と思った。
やめさせなくちゃ、と心から感じた。
だから僕は、ママにしがみついた。
でも、ママは。



『うるさいっ!!!ママの言うことを聞きなさい!!!』



ママは、僕を強引に振り払った。
右腕を思いっきり振るって、僕の頭をガァンと叩いた。
僕は堪らず、尻餅を突いた。
頭の痛みがじんじんと響いて、そしてママから叩かれたことが悲しくて。
気が付けば、くしゃくしゃになって泣きじゃくっていた。

そんな僕を見て、ママはハッとしたような顔をして。
そして、凄くつらそうな表情を浮かべた。
でも、複雑な面持ちのまま顔を背けて、僕にこう言った。


『……今日はもう、寝なさい……ツボミ……』



僕はただ、泣きながらこくこくと頷くことしか出来なかった。
ママから逃げるように寝室へと向かった。
何が起こっているのかも解らなかったし、どうしてこうなったのかも知らなかった。
その時の僕はただ、とにかく不安で、怖かった。



そんな僕の恐怖を裏付けるかのように。
その日から、パパとは会えなくなった。


◇◇◇


418 : ◆j0K3675zFI :2016/10/31(月) 15:53:59 2q4nJnEQ0
◆◆◆


やっほー、久しぶりー!
改めまして、僕の名前は郷音ツボミ!
ごーね!☆って呼んでね♪

さて、売れっ子アイドルでボクっ娘のカワイイ僕なんだけど。
どういうわけか、あのナオ=ヒューマとかいう男に拉致されちゃったんだ。
しかも『最後の一人になるまで殺し合え』とか言われちゃう始末!
つまり僕はバトル・ロワイアルの参加者に選ばれてしまったのです!
まあ、だから、その―――――――


「………はぁ」


――――――そんなふざけた催しに巻き込まれたら、溜め息の一つや二つ吐きたくなるよね。
勿論、最初はペテンかドッキリだと思ってた。
いきなりこんな大人数を集めて『殺し合え』だなんて言われても現実味がない。
でも、僕の目の前で二人の人間が確かに死んでいた。
あれは作り物にしては生々し過ぎたし、僕の前に飛んできたのはどう見たって本物の眼球だった。
色々とツッコミたい所もあるのだけれど、これがペテンでは無いのは確か。
これで後になって『ドッキリです!』とか言われたら悪趣味過ぎて怒りたくなる。
きっとこれは、本物。
そして殺し合いは、本当に起こる。
僕は半ばそう確信していた。


木製の座席に座っていた僕は周囲を見渡してみる。
ここはどうやら、建物の中らしい。
如何にも田舎の観光協会って感じの、しょぼくてこじんまりとした施設だ。
『沖木島観光ガイド』だの『沖木島の海の幸紹介』だのつまんなそーなパンフレットやポスターも見受けられる。
こんなとこ、観光でも来る人がいるんだろうか。
僕だったら絶対来ないな。
すっごいつまんなそうだし。
そんな失礼なことを考えながら、僕はこれからのことを考える。



『優勝者は家に帰してやるし、願いがあるなら一つだけ何でも叶えてやろう』



あのナオ=ヒューマとかいう男はそう言っていた。
あいつの手に掛かれば死者蘇生だろうと、記憶消去だろうと、大金や名声だろうと、何でも叶ってしまうらしい。
正直言って、かなり胡散臭いとは思う。
そんなことが出来たら魔法とか異能とかそういうレベルじゃない。
それはもう神なんじゃないかと僕は思うし、幾ら異能があってもそこまでのことが出来るのだろうか。
それに例え本当に叶えられる力があったとしても、受け付けてくれるのはあいつにとって都合のいい願いだけだと思う。
『殺し合いを無かったことにしてくれ』とか『この殺し合いの犠牲者を生き返らせてくれ』なんて言って、あいつが叶えてくれるか。
きっと拒否されるだろうと、僕は思う。
それが罷り通るんなら殺し合わせる意味なんて無くなるし。
まあとにかく、僕はあいつがちゃんと願いを叶えてくれることに関してかなり懐疑的なのである。



でも。
それでも、僕は思う。



(………死にたくはないよ。まだパパに会えてないもん)



殺し合いで願いが叶おうと、叶わなかろうと、僕は生き残らなくちゃいけない。
だってまだパパに会えていないのだから。


419 : ◆j0K3675zFI :2016/10/31(月) 15:54:37 2q4nJnEQ0

それは数年前―――――と言っても、実際は十年近く前のこと。
僕のパパはいなくなってしまった。
ある日忽然と蒸発してしまった。
思えば、パパはよく家を空けていた。
普段は家にいなかったし、時折しか帰ってくることはなかった。
よくだらしないスーツを着ていたけど、パパが外で何をしているのかは解らなかった。
でも、そんなことはどうでもよかった。

さっきも言ったように、パパは時折帰ってきて。
そして僕を可愛がってくれた。
僕を目一杯愛してくれていた。
休みの日に帰ってきた時には、公園や遊園地に連れて行ってくれたこともあった。
不定期にしか会えなかったけど、それでもパパの温もりはしっかり覚えていた。
短い時間の中での関わりだったからこそ、僕の中でパパの存在は大きくなっていたんだと思う。
僕はパパのことが大好きだった。
パパもきっと僕のことを愛していた。
でもパパは僕の前から消えてしまった。
今となってはパパの顔も殆ど忘れてしまったのが、無性に悲しい。
時間と共に記憶は薄れ、破り捨てられた写真と共に思い出はセピア色に蝕まれた。

ママは何も言わなかった。
どうしてパパが帰ってこないのか、何一つ教えてくれなかった。
どうしてパパとの思い出の写真を全て破り捨てたのか、理由なんて言ってくれなかった。
聞いてみても暗い表情で誤摩化されるばかりで、時には怒鳴られることもあった。
僕は、そんなママが憎かった。
パパのことを教えてくれないママが心底嫌いだった。

だから僕は飛び出した。
そして僕はスカウトを切っ掛けにアイドルになった。
何故スカウトを受け入れたのかって?
そんなの決まってるじゃない。
人前に立って目立てる世界にいれば、パパもきっと僕に気付いてくれるって思ったから!

あのナオ=ヒューマとか言う男が本当に願いを叶える力を持っているのかは解らない。
もしかしたら本当に願いを叶えてくれて、パパと再会できるのかもしれない。
でも、そうでなかったとしても、僕はこのまま死ぬのなんて御免だ。
どっちにせよ、生きて帰れなくちゃパパには会えないんだから。
お歌やダンスのレッスン、枕営業、お偉いさんやファンとの関係を使った根回し。
あらゆる手段を使ってアイドル業界を駆け上がったのも、パパに気付いてもらうため。
死んでしまえば、それさえも水の泡になる。
そんなの、絶対にイヤ。



(生き残るよ、僕。パパのために……パパとまた会うために!)



だから僕は決意した。
この殺し合いで、絶対に優勝してやるって。
どんな手段を使ってでも、必ず生きて帰ってやるって!


さて、と。
その為にはまず、支給品とかを確認しないと。
今はまだ自分の異能すら何なのか解っていないのである。
この場に『熱狂的なファン』はいないし、枕営業で頼み事を聞いてくれる『都合の良い権力者』もいない。
つまりまっさらな状態で立ち回らなくてはいけないのだ。
出来ることなら適当なお人好しを掴んで、漁父の利とかそういうのを掴みたいのだけれど……


「……これ、なんだろ」


その時、ふと気付いた。
僕の首に奇妙なペンダントが掛けられているということを。
まるで宝石か何かのような結晶で、集音マイクのように見えなくもない。
勿論、こんなアクセサリーを身に付けていた覚えはない。
もしかすると、これが異能に関する道具なんだろうか?
そう思っていた矢先。



「……あの、誰かいますかね?」


入り口の扉が軋む音。
そして、男の人の声が聞こえてきた。
僕は咄嗟に身構えてそちらの方へと向く。


420 : ◆j0K3675zFI :2016/10/31(月) 15:56:14 2q4nJnEQ0



「ああ、いや、僕は別に怪しいもんじゃないですよ」



入り口から入ってきたのは、中年の男の人。
スーツやネクタイに身を包んだ、いかにもサラリーマン風の格好と言った所。
だけどネクタイは変に曲がってるし、スーツも皺が目立ってる。
正直言ってだらしないというのが最初に抱いた印象である。
顔立ちはそれなりに端正だけれど、猫背気味の姿勢でやっぱりだらしなさを感じてしまう。
そんなだらしなさそうな男の人は、両手を上げて安全をアピールしながら僕に話し掛けてきた。



「僕は……河野 英雄って言うもので。しがないサラリーマンです。
 殺し合いに乗る気はないんですよ。だから安心して……」



そう言ってから、河野さんは―――――少しだけびっくりしたような表情を見せた。
僕の顔を見て、河野さんは驚いていたのだ。
何でだろうって一瞬思ったけど、すぐに合点が付いた。
あー、僕がアイドル『ごーね!☆』ってことに気付いちゃったかな?
僕ってば、やっぱり売れっ子だね!


「えっと、僕、郷音ツボミって言います……その、河野さん……」
「どうしました?」


そうして僕は河野さんに不安げな顔を見せて。
そのまま――――――河野さんに駆け寄る。
それで、ギュッと抱きつくようにスーツにしがみつく。



「うぇっ……怖かったんです、僕……こんなことになっちゃって……不安で……!」



怯えた表情と今にも泣きそうな声で、僕は河野さんに訴える。
端から見れば『理不尽な殺し合いに巻き込まれたカワイソーな女の子』だ。
まあ、演技なんだけどね。
僕はこれまで、業界の裏で色んな汚い手段を使ってきた。
これくらいの芝居だって朝飯前です。
僕ってば、名役者だね☆


「そ……そうですか……よしよし、不安だったろうに……」
「ひっぐ……河野さんみたいな人が来てくれて、よかった……」
「君の不安は、わかりますよ……僕もこんなことになって、不安ですし……
 とにかく、安心して下さい……僕は敵じゃないから……」


河野さんは優しく僕の頭を撫でてくれる。
ああ、この人は、きっと『人並み』に優しい人だ。
まるっきりの善人ではないかもしれないけど、少なくとも良心はある。
僕のファンにも一杯いた、『普通の人間』だ。
そういうやつこそ利用し易い。
適当に良心に付け込んで、僕の色に染め上げてやれば―――――コロっと味方になってくれる。
普通の人だからこそ、如何様にも転ばせることが出来る。
だったら利用させてもらうだけだ。
僕の為に頑張ってもらうよ、河野さん。
最悪、適当な所で切り捨てちゃえばオッケーだし。



「河野さぁん……ありがとうございます……僕、嬉しい……」



それにしても。
何だろう、この懐かしい感じ。
なんか、河野さん見てると、安心する。
……なんでだろうね。わかんないや。



◆◆◆


421 : ◆j0K3675zFI :2016/10/31(月) 15:57:17 2q4nJnEQ0
◇◇◇




『あなた、どういうことなの?』
『……どういうことって?』



僕を問いつめる声。
煩わしい女の糾弾。



『探偵に依頼したの。あなたの調査を』
『そうですか』
『それで、これが送られてきた』


そういって、彼女は僕に三枚の写真を差し出してきた。
それは僕が他の女―――サユリ―――と一緒に出かけていた時の写真。
それは僕が他の女―――アユミ―――の家に訪れた時の写真。
それは僕が他の女―――ミヤコ―――とホテルに入った時に写真。
どうやら探偵が僕を尾行し、これらの写真を撮影したらしい。

正直に白状すれば、これらの写真はでっちあげなんかじゃあない。
全て事実である。
僕は確かに複数の女性と関係を持っている。
あの『クソ女』との結婚生活に嫌気が差し、僕は会社に行くふりをして複数の女性と関係を結んでいる。
端正な顔立ちと天性の話術によって女性を口説き、彼女たちから経済的な支援を受ける。
所謂ヒモとしての関係だ。
腐った結婚生活を送り続けるよりもよっぽど刺激的で楽だ。
中には僕に本気で惚れ込み、肉体関係を結んだ相手だっている。
そういう女は特に利用し易いから楽だ。
惚れている男の言うことは何だって聞く。
彼女もまた、その一人だと思っていた。
だが、案外面倒な女だったらしい。
まさか僕の女性関係を嗅ぎ付けるとは。



『これは誤解だよ、僕の仕事の同僚さ。
 僕は浮気なんてしてないよ。僕は君を愛して―――――』
『ふざけないで、白々しい!!そんな嘘で誤摩化せると思ってるの!?』



まあ、そういう返事は予想していた。
どうせ拒絶するんだろうと理解していた。
何人もの女性と関係を結んでいると、こういうことはたまに起こる。
なので特に感慨もないし、衝撃を受けたりもしない。
正式な婚姻関係も結んでいないので、面倒な手続きも必要とはしない。
適当にすっぱりと口約束で関係を切って、それで終わりだ。
彼女と別れた所で、どうせ他にも僕に尽くしてくれる女性はいる。


422 : ◆j0K3675zFI :2016/10/31(月) 15:57:28 2q4nJnEQ0



『……私、あなたのことを愛していた。
 なのに、こんな、こんなことって……!』



そして、彼女が泣き出し始めた。
僕に裏切られたことが余程ショックだったらしい。
当然の反応だろう。
愛していた男が複数の女性と関係を持っていたなんて。
ましてや一夜を共にし、『子供だって授かった』相手から裏切られたなんて。
彼女にとっては大きなショックだったのだろうと推測する。

僕にとって、彼女は大勢いる愛人の一人に過ぎない。
正直言って僕の中では別にショックなんてない。
毎日大勢の女と出会い、はりぼての愛を育んでいるのだから、いちいちショックなんか受けていられない。
だから僕は、彼女のように泣くことは出来ない。



――――――――ああ、でも、あの娘との関係は少し楽しかったかな。



彼女との間に授かった子供のことをふと思い出す。
たまにしか会うことは出来なかったが、あの子は随分と僕に懐いていた。
僕が帰ってくればすぐに駆け付けてきて、べたべたとくっついてきたな。
あの娘に関しては僕も嫌ってはいなかったし、一緒に出かけた時はそれなりに楽しかった。
素直で明るくて、快活なあの娘との時間は悪くなかった。
尤も、あの娘ともお別れだ。
きっと彼女は僕をあの娘と会わせてはくれないだろう。
まあ、当然か。
どうせ数ヶ月もすればあの娘のことも忘れるだろう。
でも、やはり少しは名残惜しいので聞いてみることにした。



『あの』
『……出てって』
『僕がいなくなったら、あの娘が心配すると思うのだけど』
『出てって!!』




――――こうして怒ってくれる女性がいることに、なんだか安心する。
僕は英雄になりそこねて、成り行きで従姉妹と結婚してしまったどうしようもない男だ。
そんな僕に憤り、糾弾してくれる者がいることにほっとする。
きっとそれは、過去の罪の意識があるからなのだろう。
英雄になれなかったクズだからこそ、そんな自分を誰かに蔑まれたいと思っている。
僕にとっての理想の英雄は、磔の負け犬だ。
なのに僕は女性を利用しながら生きるし、僕に尽くす女性を見下す。
自分でも自分が度し難いとつくづく思う。



◇◇◇


423 : ◆j0K3675zFI :2016/10/31(月) 15:59:17 2q4nJnEQ0
◆◆◆



こんな巫山戯た催しに巻き込まれるとは思わなかった。
そもそもバトル・ロワイアルなんて十年以上も前の小説だ。
今更それを模した催しが行われるなんて思わなかった。
といより、あの殺し合いが実際に行われるなんて思っていなかった。
あのルール説明の際、二人の参加者が死亡した。
この殺し合いが嘘ではないということを証明するには十分な犠牲だった。

さて、僕はこの殺し合いでどう動くか。
正直言って、まだ殆ど考えていない。
僕だって死にたくはないが、かといって「生きる為に皆殺しだ」なんて堂々と宣言できる元気もない。
体力的にも若い頃と比べて衰えが見え始めている。
そんな初老に差し掛かった男に殺し合いをさせるだなんて、ナオ=ヒューマとやらは酷い男だ。
だが、やはり死ぬのは怖い。
なので適当に近くの施設に足を運び、休息を取りつつ支給品等の確認を行おうかと思ったのだが……



「河野さぁん……ありがとうございます……僕、嬉しい……」



まさか、既に参加者がいたとは。
しかも―――――――この娘は。
僕は適当に慰めるような言葉を投げ掛けながら、彼女の頭を撫でてやる。
この娘は『郷音 ツボミ』と名乗っていた。
テレビで何度か見たことがある。
ほんの数年足らずで出世街道を駆け上がったアイドル、だったか。
その人気はあの井上 快夢に匹敵する程だという話も聞いたことがある。

そして、僕はこの娘のことを。
ぼんやりと、何となくだが、記憶している。



(数ヶ月程度で、忘れると思ったんだけどな……)



僕が彼女を見て驚いたのも、複雑な感情を覚えたのも、彼女を知っていたからだ。
23歳の時、僕はある女性と関係を結んだ。
その女性とはおよそ10年前後の交際を経て破局した。
彼女とは子供も儲けていた。だが破局以来、一度も会った事は無かった。
彼女以外にも関係を持っている女性は大勢いる。
どうせ彼女のことなんかすぐに忘れるだろう。
そう思っていたし、実際に彼女のことなんて今となっては殆ど記憶していない。
だが、彼女との間に出来た娘のことは忘れられなかった。
否、正確に言うなら『思い出してしまった』。


424 : ◆j0K3675zFI :2016/10/31(月) 15:59:49 2q4nJnEQ0

彼女の娘は、スターになっていたのだから。
歌って踊れるアイドルとなっていたのだから。
人気絶頂の大型ルーキーとして、テレビに幾度と無く出演していた。
ある日テレビで彼女の顔と声を聞いた途端、僕は思い出してしまったのだ。


(彼女……ええと、郷音……名前は何だったかな。すっかり忘れてしまった。
 まさか彼女との間に出来た『あの娘』が、こんな大物になるとは……)



言わないでおこう、と僕は思う。
もしも僕が父親であることを知ったら面倒なことになる。
彼女と同様に、この娘も僕を憎んでいるかもしれない。
そうでなくとも『もう一度関係をやり直そう』なんて言われたら堪ったものではない。
彼女と築いた家庭はもはや過去のものでしかないのだ。
だから僕は何も言わない。気付かれるのも御免だ。



(……それにしても、大きくなったなぁ……)



だけど、同時に僕の心はそんなことをしみじみと感じていた。
娘に愛着を覚えることなんて無いと思っていたが、どうやら違ったらしい。
僕は娘の―――――ツボミの成長した姿に、少しばかりの感慨を覚えていた。

【一日目・1時00分/E-9 観光協会】

【郷音 ツボミ@立花響(ガングニール)/戦姫絶唱シンフォギア】
[状態]:健康
[装備]:ガングニールのギアペンダント
[道具]:支給品一式、不明支給品(0~2)
[思考・行動]
基本方針:生きてパパと会うために優勝する。
1:ひとまず英雄と行動を共にして利用。
2:移動する前に自分の異能を確認したい。
※実父が失踪したのは小学生の頃です。
母親が実父の写真を全て消却していること、実父とは時折しか会えなかったことから顔は殆ど覚えていません。
※英雄に無意識に懐かしさを感じていますが、実父とは気付いていません。


【河野 英雄@ガッツ星人/ウルトラシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:支給品一式、不明支給品(0~3、確認済)
[思考・行動]
基本方針:とりあえず死にたくない。
1:ツボミとの関係は黙っておく。
2:磔になりたいという無意識の願望。
※郷音ツボミの実父です。彼女の母親とは「諸星 茂(モロボシ シゲル)」という偽名で関係を持っていました。
英雄本人もツボミが娘であると無意識に気付いていますが、面倒なので黙っています。
※異能力を確認しているのかどうかは後の書き手にお任せします。


425 : 名無しさん :2016/10/31(月) 16:01:16 2q4nJnEQ0
投下終了です。
タイトルは『LOVE DELUXE』で。


426 : 名無しさん :2016/11/01(火) 03:15:47 aabd744oO
投下乙!
設定の時点でごーねちゃんのパッパは参加者の誰かなんじゃね?って予感はしてたけど、まさか英雄だったとは・・・
現状では利用する気満々だけどごーねちゃんは英雄が愛するパパだと気づけるのか?


427 : ◆7PJBZrstcc :2016/11/01(火) 18:26:54 NHQMPa/o0
投下します


428 : 危険な資産家! 鏑木シリカは眠れない ◆7PJBZrstcc :2016/11/01(火) 18:27:32 NHQMPa/o0
 日本人とイギリス人のハーフの少女、鏑木シリカにとって生きるとは地獄と同義だ。
 彼女にとって、己の人生は不幸しか無いのだから。

 5歳で両親を亡くしたシリカは、その後親戚をたらいまわしにされた。
 今から考えれば当然である、誰が好き好んで親のいない子供を引き取るのだ。
 だがそれは今だから分かる道理であって当時は知らなかった。
 親戚の誰からも冷遇され、自分はこの世界で必要とされていないのかとも思った。

 その後、紆余曲折の果てに遠縁の親戚を名乗る男に引き取られる。
 だがそこで待っていたのは虐待の日々だった。

 イギリス人の血が濃く出たのか、シリカは日本人離れした容姿をしている。
 幸か不幸か大抵の人間が見れば整った容姿をしているので、アイドルやモデルをやれば彼女は十分な評価を得る事が出来るだろう。

 しかしその親戚はその容姿を理由に暴力を振るってきた。
 殴る蹴るは当たり前。
 酷い時には熱湯を身体にかけることだってある。
 おかげで体は青痣に火傷の痕だらけになり、我慢する事だけが特技になった。

 勿論本音を言うならこんな状況さっさと抜け出したい。
 だがこの状況を人に話してどうなると言うのだろう。
 警察に通報すればすぐに警官がやってきて、あの親戚を逮捕してくれるのだろうか。
 そんなはずがない。いいとこ児童相談所止まりだろう。
 児童相談所にしたってすぐに虐待を止められるわけがない。
 児童相談所が虐待の事実を把握していながら止められず子供が死んだケースなどいくらでもある。

 冗談じゃない。自分がそのケースの一つになって死ぬなんて嫌だ。
 だからシリカは隠す。ボロボロのパーカーとズボン、そして厚着で自らの傷跡を隠す。
 そうしていれば死ぬことは無い、死ぬほどの暴行を加えられることは無い。

 とはいえストレスは溜まる。むしろこの生活でストレスが溜まらない方がおかしい。
 そこでこっそり始めたのが犬や猫の殺害だ。

 最初は軽くいじめるだけだった。
 明らかに小さい犬猫の子供を狙い、殴ったりして痛めつけるだけだった。
 しかしそれが徐々にエスカレートし、ついに猫を殺害してしまった。

 その時、シリカは幸せな気分になった。
 これまでの人生では味わえず、これからの人生でも味わうことは無いだろうと思っていた幸せを知った。
 その後、彼女は何匹も犬や猫を殺し続けた。
 しかし彼女は、殺すだけではだんだん物足りなくなっていった。
 そして考えたのが死体で遊ぶことだ。
 死体を切り刻んでオブジェにしたり、通っている学校の校庭の中心に磔にしたりもした。

 そして今日彼女が行ったのは特別製のオブジェ作り。
 猫と犬の死体をそれぞれ1つずつ用意する。
 そして両方の頭と前足を切り落とし、犬の死体には猫の頭と前足を付け、猫の死体には犬の頭と前足を付けたオブジェを作った。
 アンバラスだけどそのアンバランスさがいい感じになった、そんな感想を自作のオブジェに付けていたら


 ――いつの間にか殺し合いの会場に呼ばれていた。


429 : 危険な資産家! 鏑木シリカは眠れない ◆7PJBZrstcc :2016/11/01(火) 18:28:13 NHQMPa/o0



 突然起きた空間移動、ナオ=ピューマの出現と告げた殺し合い、五十嵐椿と東ジョーの死、そして異能。
 短い時間の間に起きた様々な出来事に対し鏑木シリカが最初に考えた事は

「どうしよう……、オブジェ作ってたから服が血まみれになってる……」

 自身の服の事だった。
 とはいってもこれはシリカが潔癖症という事ではなく、自分が血まみれなことで殺し合いに乗っている風に思われることを考えての発言である。
 シリカは犬猫をストレス発散で殺すが、人間を殺したことは無い。
 なのに(殺し合いに乗る乗らないは別として)、殺し合いに乗っているかのように思われるのは不味い。

「そうだ、服を脱げば……。いや私パーカーとスボン脱いだら下着だけになっちゃう……」

 様々なことが起きたためか、普段なら絶対選ばないような選択肢が一瞬だけ頭によぎる。
 シリカは自身に支給されたデイバッグが足元にある事すら気づかず、オロオロとああでもないこうでもないと呟いている。
 分かりやすく言うなら、彼女はテンパっていた。

 しかし、彼女の思考の迷走は外部からの刺激により強制的に止まる。

「動くな」
「えっ!?」

 いきなり背後から男の声が聞こえ、背中に何かが突きつけられている感触がする。
 この状況で突きつけるものと言ったらもう銃しかありえない、とシリカは考える。
 そんな彼女の思考など知らぬとばかりに、男は言葉を続ける。

「安心したまえ、いくつかする質問に正直に答えてくれれば殺しはしない」
「は、はい」

 殺す気がない、その言葉の真偽はシリカには分からないが彼女は素直に返事するしかない。
 シリカの返事を聞き、男は質問を始める。

「まず一つ目の質問だ、君の名前は?」
「……鏑木シリカです」
「鏑木シリカか。ではミス鏑木、次の質問だが君の異能は?」
「わ、分かりません。改造したなんてあのナオ=ヒューマは言ってましたけど全然実感わきませんし」
「デイバッグは?」
「……まだ見てません」
「そうか、なかなか迂闊だな君は。まあいい、次に聞くがその服についている血は何だ?」

 来た! とシリカは思う。
 この状況で自分の服が血まみれな理由を聞かない訳がない、だけどそれは想定内。
 質問に答えながら言い訳も考えてある、ちょっと苦しいけど。
 シリカはこれが通用するかどうか不安を覚えるものの、それを隠して答える。

「こ、これは野良の犬と猫の血です」
「それが何故君の服に?」
「この殺し合いに呼ばれる前に、怪我をしていた犬と猫を動物病院に連れて行こうとして抱きかかえていたんです。だからその時に付いたんだと思います」

 どうだ、これで大丈夫か。そうシリカは思った。
 しかし現実はそこまで甘くはない。


430 : 危険な資産家! 鏑木シリカは眠れない ◆7PJBZrstcc :2016/11/01(火) 18:28:43 NHQMPa/o0

「嘘だな」

 男はシリカの発言を一言で切り捨てた。
 シリカは動揺しそうになるものの懸命に隠しながら男に問う。

「……何で、嘘だと思うんですか?」
「簡単なことだ。私はこうして君の背後から脅す前に少し君の事を観察をしていた。
 そして君は服の心配しかしなかった。いや正確に言うなら服が血まみれで、自分が危険な存在だと思われるのでないかという心配しかしていなかった。
 おかしいじゃないか。君が本当に怪我をしていた動物を病院へ連れて行くような優しい少女なら、まずは抱きかかえているはずの犬と猫の心配をするのではないか?」
「それは……」

 甘かった、急場しのぎでどうにかなる相手じゃなかった。
 じゃあどうする。今からでも本当のことを話す?
 ありえない。犬と猫の死体でオブジェ作ってましたなんて言えるわけがない。

 そんなシリカの葛藤を知る由もない男の話は続く。

「私は言った、正直に言えば殺しはしないと。だが君は嘘をついた」
「ま、待って下さい! これはその……」
「ふむ、ならばもう一度だけチャンスをあげよう。その服の血は何だ?」

 言うしかない、とシリカは思った。
 後ろにいる男は頭が良くて観察眼もある、嘘の通じる相手じゃない。
 それに本当の事を言ったとしてもやったのは犬と猫を殺しただけだ。
 印象は悪いかもしれないけど、そこまで重罪じゃないはず。

「こ、これは殺した犬と猫の返り血です」
「成程、君が嘘をついた理由は分かった。だが何故犬と猫を殺した?」
「……ストレス発散です」
「なんだ、食べるためではないのか」
「え?」

 男の口から余りにも予想外の台詞が飛び出し、思わず困惑し間抜けな声を出すシリカ。
 そしてシリカは現状も忘れ男に質問をする。

「あの、食べるって……?」
「ふむ、知らないのか? 世界だと一般的ではないが中国などでは犬や猫を食べる文化はあるぞ」
「そ、そうなんですか……」
「そうだ」

 シリカはこう思った、何で私社会の勉強をしているんだろう? と。
 そんな微妙な空気の中男の尋問は続く。

「じゃあ最後の質問だ、君は殺し合いに乗るか?」

 普通に考えれば乗らない、これ以外の答えは無いだろう。
 だがシリカが出した答えは別のものだった。

「分かりません……」
「ほう?」
「叶えてほしい願いならあります。だけど私に人を殺せるかが分かりません。
 死んでほしい人はいます、殺してしまおうと思ったこともあります。ですが結局殺せないままでした。
 そんな私に全く見知らぬ他人を殺すなんて……」
「……最後の質問と言ったな、あれは嘘だ」
「へ?」
「君の願いは何だ?」


431 : 危険な資産家! 鏑木シリカは眠れない ◆7PJBZrstcc :2016/11/01(火) 18:29:31 NHQMPa/o0

 それはシリカにとって一番つらい質問だった。
 だがここまで来たら全部正直に話すしかない、そもそも嘘をつける状況じゃない。
 シリカは話す。震えながら、苦しみながら。

「……私は子供のころ、両親を亡くしました」
「それで?」
「……それで私は親戚をたらいまわしにされて、遠縁の親戚に引き取られました。
 だけど、その親戚は私の容姿を理由に暴力を振るってきました、今もです」
「その親戚を消し去ることが君の願いか」
「違います。その親戚が消えても私は他の親戚をたらいまわしにされるだけです。
 ……私の願いは幸せになることです。その親戚がどうなろうとどうでもいいですけど、私だけは幸せになりたいです」
「成程分かった」

 そう言って男は今まで突きつけていた物を背中から放す。
 それが分かったシリカは思わず振り返る。そしてシリカは驚愕する。
 男は金髪、青い瞳をした外国人だった。それはいい、問題は彼が持っているものだ。

「木の棒……!?」

 そう、男が持ち今まで突きつけていたのは拳銃などではなくただの棒だった。
 その事について男は申し訳なさそうに謝る。

「女性を騙した挙句、脅して質問責めにした事は謝罪しよう。
 私の名前はトーマス・ベイカー、資産家だ。そして詫びの印に私の異能も見せよう」

 そう言ってトーマスは木の棒を自分の口に向ける。
 そして彼はその棒を食べ始めた。

「それが、異能……!?」
「そうだ、これが私の異能。何でも食べる事が出来る能力だ。それだけではない気もするが、一先ずこれが私の異能だ」

 明確に見せられた異能に驚くシリカ。
 そして同時に疑問を覚える。彼は謝罪だと言っているが何故自分に手札をさらしたのだろうか、正直ああされてもしょうがないはずなのに。
 そんな思いが顔に出ていたのか、トーマスはその心中の疑問に答える。

「これは私の謝罪であると同時に誠意だ」
「誠意、ですか?」
「そうだ誠意だ。私はこの殺し合いに反逆し、ナオ=ヒューマを倒そうと思っている。その為に君の手が欲しい」
「でも私は……」

 殺し合いに乗るかもしれない、そう続けようとした所で思わずシリカは言葉を詰まらせる。
 何故ならトーマスは強い眼でシリカを見ていたから、それも力づくで従えようという嫌な目でなく、必ず殺し合いに乗せないようにするという強い意志を秘めて。

「もしも君が私に力を貸してくれるのならば、私は必ず君に報いると誓おう」
「……具体的に何をしてくれるんですか?」
「君を虐待する親戚を消し、私が君を引き取ろう」
「」


432 : 危険な資産家! 鏑木シリカは眠れない ◆7PJBZrstcc :2016/11/01(火) 18:30:14 NHQMPa/o0

 トーマスの言葉があまりにも予想外過ぎたせいか思わずフリーズするシリカ。
 そんなシリカを気にすることもなく、トーマスは話を続ける。

「私は資産家だから金の心配はいらないし、人を痛めつける趣味は無い。
 信用ならないというなら誓約書も書こう。今は紙がないから後でという事になるが」
「何でそこまで……」
「ふむ」

 シリカの疑問にトーマスは一瞬ためらいつつもこう言った。

「私はこの殺し合いの中で人肉を食べたいと思っている。そして君はそういう事を気にする人間ではないだろう?
 ああ心配する事は無い、食べるのは殺し合いに乗っている参加者にするとも」
「……人肉って食べられるんですか?」

 本当は色々言いたいことがあったが、シリカは我慢した。我慢は得意だ。
 そしてそんな内心を知るはずもなく、トーマスは得意げに話す。

「シリアルキラーと呼ばれる人種が人肉を食べたという話は多くある。
 それに1920年代のドイツでは、フリッツ・ハールマンという殺人鬼が人肉の肉屋をやっていたという記録もある。無論買い手は知らなかっただろうがね。
 おいしいのかは分からないが、少なくとも食べられないほど不味い程のものではないのだろう」
「そうですか」

 倫理観とかは気にしないのだろうか、シリカはそう思ったがやっぱり我慢して言わない事にした。
 迂闊なことを言って食べる対象が自分になるのはごめんだし、自分にそれを言う資格があるか怪しい。

「ミス鏑木も食べるかい?」
「遠慮しておきます」

 こればっかりはシリカも即答した。
 その返答に対しトーマスは特に何も思わず

「そうか。まあ食べたくなったらいつでも言うといい」

 それより今後の事だが、とトーマスは後ろにつけシリカに自分たちの行動方針を話す。

「まずは君の着替えと誓約書を書くための紙を探す。
 私の支給品には着替えになるようなものは無かった、君はどうだ」
「あ、はい。今調べます」

 そう言ってシリカは調べたが、着替えとなりそうなものは無かった。
 それを見てトーマスは呟く。

「……前途多難だな」
「……ごめんなさい」


【一日目・1時00分/G-2】

【トーマス・ベイカー@バクバクの実/ワンピース】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品1〜3(確認済み、着替えになりそうなものは無し)
[思考・行動]
基本方針:ナオ=ヒューマを倒し殺し合いから脱出する
1:まずはミス鏑木の着替えと誓約書を書くための紙を探す
2:食べた事の無い物を食べたがらないとは、変わっているなミス鏑木は
[備考]
※自身の異能を『何でも食べる事が出来る能力』と認識していますが、それだけではないと考えています。
ただし、確信はしておらず食べる以外の能力は分かっていません。

【鏑木シリカ@キャスター(ジル・ド・レェ)の宝具・スキル/Fate/】
[状態]:健康、血まみれ
[装備]:
[道具]:基本支給品、螺湮城教本、不明支給品0〜2(確認済み、着替えになりそうなものは無し)
[思考・行動]
基本方針:死にたくない。生きて幸せになりたい
1:この人(トーマス・ベイカー)に付いていく。
2:人肉を食べるのは、ちょっと……


433 : ◆7PJBZrstcc :2016/11/01(火) 18:31:01 NHQMPa/o0
投下終了です


434 : 名無しさん :2016/11/01(火) 19:01:29 mLgx2Ecg0
投下乙です。
なんか一味どころかすんごい変わった対主催が現れたぞ
食人願望はあるけど、ここまで紳士的でダンディなキャラに仕上がるとは、キャラ投下時点ではこのリハクの目を持ってしても(ry


435 : 名無しさん :2016/11/01(火) 19:35:39 Id9txv1cO
投下乙です

こういう人には、相手を殺さずに食える能力って便利ね


436 : ◆YlfcDuGY1. :2016/11/02(水) 17:14:20 f2u8Br9w0
予約の島原翼、丹美寧斗を投下します


437 : ◆YlfcDuGY1. :2016/11/02(水) 17:15:28 f2u8Br9w0
E-2にある夜の草原。
そこには草木に紛れて二人の少年がいた。
片や白と青のTシャツの上に白黒ジャケットにジーンズ姿の高校生。
片や黄色いTシャツに短パン姿の小学生である。

高校生――島原翼は、小学生――丹美寧斗を背に向けていて、翼の左手にはひと振りの剣・幸運を意味するLuckの頭に血文字でPを書きたされてPLUCKとなった“幸運と勇気の剣”が握られている。
そして翼は静かに唱えた。

「――――投影、開始(トレース、オン)」

その言葉と共に翼の体内の中で、何か熱いものがこみ上げてきた。
彼もまたナオ=ヒューマに肉体を改造された参加者の一人で、その肉体に現実ではありえないハズの魔術回路が埋め込まれている。
おそらく体が熱く感じるのはその回路を伝って駆け巡る魔力によるものだろう。
そして若干の疲労感と同時に空いていた右手に、左手に持った剣と全く同じ剣が握られた。

「……もしやと思ってやってみたけど、本当にできるなんて」
「お兄ちゃんすごーい!」

驚く翼と、手品を見た子供のように拍手しながらはしゃぐ寧斗。
現実に起こりえないことを翼自身の手で起こしたのだ。
驚くのも無理はない話だった。

「重さも全く同じだし、“P”の血文字の位置まで同じ……本当に衛宮士郎の投影そのものじゃないか」

翼は両手に持つ複製元と複製した剣を見比べてみて、血文字の形や小さな傷に至るまで全く同じであると気づく。
重さが同じということは同じ材質でできていることを意味し、複製は完璧であることを意味していた。
しかし剣はその後、しばらくすると消えてしまった。

「あ、消えちゃった」
「細かい説明は省くけど、投影で作り出した剣はそんなに長くは持たないんだ。
扱いづらい点もある能力だけど、これなら寧斗を守ってあげられるな」


島原翼に与えられた異能とは、Fate/stay nightの主人公・衛宮士郎の能力である。
その具体的な能力とは自分の心象世界をカタチにして現実を侵食する大魔術の固有結界・無限の剣製を使った武器の投影(複製)や強化である。
投影は具現化できる時間こそ限られているが、自分の見たあらゆる武器の複製も可能であり、強化は成功すれば掃除道具であるモップさえも武器にできる。
翼はFateシリーズ好きの男子高校生であり、その中でもstay nightなどの主人公である衛宮士郎というキャラクターに憧れている。
そのため、主催者から全ての参加者に異能が与えられていると教えられた時、自分の能力が無限の剣製ではないか?と思い、半ばダメ元で支給品の幸運と勇気の剣を投影しようとしたが、本当にできてしまった。
魔法のような出来事に翼は困惑しつつも自分は衛宮士郎と同じ能力を持っていると確信するのだった。

(まさかこんな形で衛宮士郎に近づけるなんてな……)

翼の心境は複雑であった。
確かに憧れの衛宮士郎と同じ能力を手に入れたことには嬉しさを感じてはいるが、今を置かれている殺し合いという状況では正直に喜べなかった……彼の好きなFateが聖杯戦争という殺し合いを軸にしたシナリオであってもだ。

(力を持っていようと殺し合いはやっぱり怖い……死にたくはないよ)

そして彼自身は殺し合いに恐怖を抱いていた。
この前まで殺し合いとは無縁の日常を生きてきたのだから、怖くないわけがなかった。

(これで怯えているってことは、俺はやっぱり衛宮士郎にはなれないんだろうな)

翼は衛宮士郎に憧れている。
所詮は創作の中の人物とはいえ、人助けそのものを報酬とし、聖杯戦争という争いを止めるために命を投げ出すことさえ厭わずに戦う彼の勇姿に惚れ込んでいた。
それに比べて自分はどうかと、死と隣り合わせの現状に冷や汗が出て足が震えている。
大好きな衛宮士郎ならこんなことはならないだろうと思い、ひどく劣等感を感じていた。

(でも……)
「? どうしたのお兄ちゃん?」


438 : ◆YlfcDuGY1. :2016/11/02(水) 17:16:36 f2u8Br9w0

翼は寧斗を見る。
この少年とは数十分前、周囲を探索していた時に一人で震えていたところを出会ったのだが、話を聞いたところではまだ9歳という話であった。
9歳と言えば年端も立たないという年齢どころではない。
こんな幼い子供まで殺し合いに巻き込んだナオ=ヒューマという男に翼は怒りを覚える。
しかも寧斗に与えられた能力とはカメレオンのように体色を周囲に溶け込むように変える能力であり、支給品も日用品もアイスピック一本のみ。
ちょっと想像すれば周囲にカモフラージュして殺し合いに乗った参加者をやり過ごしたり、殺し合いに乗るのなら姿を隠しつつ尖ったアイスピックで参加者を刺殺する使い方ができなくはないが、仮にカモフラージュがバレてしまえば寧斗のような非力な少年は簡単に殺されてしまうだろう。
それこそサーヴァントのような力を与えられた参加者が相手だったら、アイスピックなど何の抑止力にもなりはしない。
翼がもし主催者に従って殺し合いに乗るのなら無力なこの少年を自分で殺すか他者に殺させる必要があるのだが、そんなこと翼が許せるわけがなかった。
寧斗と会った瞬間から翼の中にある衛宮士郎譲りの強い正義感が死の恐怖を上回り、主催者に義憤を覚えさせたのだ。
よって、島原翼は殺し合いの否定を決めたのであった。

「いや、何でもない。
それよりも、ここから東にちょっと歩いたところに井戸のある家があるらしいんだ。
夜道を歩き回るのは危険だ。朝になるまではその家で過ごそう」
「うん、ママも暗い時は出歩いちゃダメだって言ってたしね」

翼の言葉に屈託のない笑顔で賛成する寧斗。
幼心に夜の暗さは怖かったのか、家にいくと聞くと喜んだ。
翼の判断としては、こんな暗い草原では参加者を補足しづらく、開けた場所では殺し合いに乗った者によってこちらが気づく前に闇討ちされる恐れがある。
それだったら太陽が昇るまででも壁のある場所に籠城した方が安全だと思ったのだ。
明るくなれば少なくとも参加者を捕捉しやすくなり、奇襲を受ける可能性はグッと減るだろう。
後は状況を見て家に篭城するか出るかを決めればいい。
そういうわけで翼は寧斗と共に現地点である地図上のE-2の草原からE-4の井戸のある家に向かうことにしたのだ。

翼は寧斗の前を警戒しながら歩いていく。
いざ、殺し合いの乗った者が現れた時に出くわした時に幼い子供をいつでも守れるように、最悪でも盾や囮にはなれるように。


井戸のある家に向かう途中でふと、翼は衛宮士郎の台詞の一つを思い出す。

――誰かの為になりたいっていう思いが、間違えの筈がないんだからな

(そうだ。こんな小さな子供を守ることに間違いなんてないんだ。生きたいからといって殺そうとする方が間違いに決まっている)



衛宮士郎の言葉が、翼の心に勇気と大義を与えていた。
衛宮士郎は所詮創作の中の人物に過ぎない。
しかし、創作された人物も、人の行動に大きく影響を及ぼせるのだった……
















(クックック……)

自分の前を歩く翼の背後で寧斗は静かに笑っていた。
それは先程まで翼に見せていた邪気のない笑顔では決してなく、これは嘲笑いであった。
前を歩く翼は正面を警戒していたがために、背後にあるその顔を拝むことができない。

(このガキは気づいちゃいないぜ……俺がてめえの倍近く年上なのも、殺し合いに乗っていることにもな)


丹美寧斗は殺し合いに乗っていた。
更に言えば彼は外見通りの年齢ではなく、厳密には“丹美寧斗”という人間ですらなかった。

この男の本当の名前は“網空仙一”
日本の犯罪史に残る大事件“網空事件”の犯人である。
その事件の内容とは、12歳の少年・網空が「チビ呼ばわりしてムカついた」という理由で、1人の教師と4人もの同級生を一人づつ殺害・解体し、世間を騒がせた事件である。
これだけの大事件が当時に話題にならないわけがなく、ニュースなどでは持ち切りとなり、世を震撼させた。
当時のニュースを見ていない若い参加者でも、名前ぐらいは聞いたことがあるだろう。
ちなみに1997年に起きた某少年殺傷事件との大きな違いは、あちら以上に計画的犯行の色が強く、被害者を殺害する際は自分の痕跡を残さないように周到な用意をしていた点だろう。
その事件の幕引きは六人目の犠牲者を出そうとしたところで、今までの殺人で調子づいて油断していたことと、パトロールしていた岩井という名前の警官に偶然見つかってしまったことが重なり、そのまま現行犯逮捕されたのだった。


439 : ◆YlfcDuGY1. :2016/11/02(水) 17:18:09 f2u8Br9w0

しかし当時の網空は未成年であり、検査でも精神異常者という判定がくだされた。
よって少年法による保護と精神異常者であることにより刑罰は見送られて、精神病院に閉じ込められる結果となった。
ところが、10年以上たっても反省の色が全く見えず、反社会的な意思が治る見込みがまるでなかった。
そして長い病院生活に痺れを切らし、自分の命を繋いでいた少年法がいつの日か改訂されて刑が遡及で執行される恐れもあったので、22歳を迎えた年に隙をついて病院を脱走したのだった。
網空の脱走ももちろんニュースになったが、少年法・精神異常者保護のの問題により名前や体格まではニュースに流れたが、顔までは警察関係者以外では公表されることなく、脱走から6年経った今日まで捕まることはついになかった。
なお、丹美寧斗という名前は網空が脱走の果てにたどり着いた樹海で首吊り自殺をしていた本物の“丹美寧斗”から身分証明書を抜き取り、奪った名義である。
この名義を使って株のトレーダーとして取引をしながら生計を立て、社会に潜伏してきたのである。


ここまで網空の経緯についての話で疑問に思った読者もいると思うだろう。
網空が事件を起こし逮捕されたのが12歳の頃、精神病院を脱走するまでに10年、丹美を名乗って潜伏した今日までが6年であり、網空仙一は28歳の成人男性になってないとおかしい計算である。
だが、島原翼の目の前にいる網空は10歳前後の少年の姿をしている。
これはどういうことか?

これが網空に与えられた異能の力……ではない。
網空は小人症という奇病に先天的に患わっており、身長などが小学生低学年の頃から伸びないのだ。
小人症を持った有名人と言えば「スター・ウォーズのイウォーク族」「ハリー・ポッターの教師と子鬼」「ウィロー」などの役で有名な俳優ワーウィック・デイヴィスがいるが、網空も彼と同じ病気にかかっている。
しかも年相応に老けていたワーウィックと違い、網空は生まれつき老けにくい体質の上に声も少年のように高く、髭も伸びにくいので初見で彼を成人だと見抜ける人間は非常に少ないだろう。
彼は気晴らしに公園に出かけてそこにいる子供達と一緒に遊ぶこともあるのだが、子供や親達が気づかないレベルである。

彼は小人症のハンデを潜伏に最大限に活かし、株のトレーダーとして食べていくことで生きてきたが、その胸には強い鬱憤が溜まっていた。
――何にも縛られずに人を沢山解体したいと。

12歳の折に殺人を犯した時に血に酔ってしまったのか、人を殺して新鮮な内臓を見てみたいという恐ろしい願望を抱くようになってしまった。
だが人を殺せば足がつき、警察に追われることになる。
逮捕されれば少年法の保護が効かず、今度こそ死刑は免れない。
そのために足がつかないように野良猫や野良犬を殺すことで殺人衝動を抑えていた。
野良動物なら誰も被害届を出さないので隠れてやっていれば気づかれないからだ。
しかし、それにも飽きを覚えてきた。そろそろ本当に人を殺したいと思っていたのだ。

そこで彼に転機が訪れた。
そう、このバトルロワイヤルである。

(他の連中にとっちゃナオ=ヒューマをどう思っているか知ったこっちゃないが、俺にとっては神様同然だぜ。
殺し合いなんて沢山の人間を解体できる遊びに招いてくれたんだからな。
奴のことはナオさん……いやナオ様って言って肖りたいぐらいだ)

ここではいくら人間を殺めても外部に漏れることはない。ヒューマ自身がそう言っていたのだ。網空にとっては願ったり叶ったりである。
無論、全てを鵜呑みにするほどヒューマに気を許してはいない。
だがザッと40人は超えている参加者を眠っている内に全員、島に運ぶなど不可能に近い。
ヒューマ自身に何らかの神業(異能)を使ったとしか思えないのだ。
そして自分が殺し合いの主催者ならば、自分より強い異能の持ち主はまず作らない。
極論になるが説明会場で参加者全員が東のように首輪の爆破を恐れずに反乱し、全員が異能を使ってヒューマを止めにかかったらどうするか?
それで無力化されたり殺されたりしたらヒューマはバカとしか言い様がない。
きっと全員を一辺に相手にできる強力な異能か安全策をヒューマは持っているハズだ。
さすれば主催者への反逆は無駄であり、殺しを楽しめる優勝狙い路線の方が網空には遥かにお得に思えた。だから殺し合いに乗るのだ。

(それだけじゃなく、俺にはT-1000の力……液体金属の体をナオは恵んでくれた!)


440 : ◆YlfcDuGY1. :2016/11/02(水) 17:18:43 f2u8Br9w0

網空は翼に会う前に、体にどことない違和感を覚えて試しに支給品のアイスピックで手を軽く刺して見ると、皮膚の下に本来あるハズの血肉がなくなり、代わりに鋼色の金属でできていることに気づいた。
そして刺傷も痛覚はほとんどなく再生し、手足を刃物や刺突物に変えたり、姿や体色を自由自在に変えられることを知った。
網空にはこの能力に見覚えがあり、能力がターミネーター2に登場する液体金属の体を持つ殺人ロボット“T-1000”と全く同じものであると確信する。

(この体を優勝して持ち帰れば俺は殺人・解体なんでもし放題だぜ!
俺を逮捕した岩井や、俺をボロクソに叩いた遺族の方々へのお礼参りもできる!)

T-1000は銃などの物理攻撃の前では無敵であり、液体金属なので姿も変幻自在、肉体はそのまま凶器に変えられるなど、人間には絶対に不可能な完全犯罪を可能にするのだ。
そうなれば網空にとっては天下である。
もう国家権力の目を気にせず(絶対に気づかせないというべきか)、ほとんどなんでもやりたい放題ができるからだ。

(とはいえ、まだ油断大敵だ。T-1000には弱点も多かったからな)

優勝すれば網空にとってのバラ色の人生が待っているとはいえ、それは優勝してからの話。
目の前にいる翼のように、他の参加者にも何かしらの異能が与えられている。
その中にはT-1000の弱点となる超高温・凍結の能力を持った異能者もいるかもしれない。
液体窒素などの極低温だとT-1000の液体金属の体は凍結してしまい動けなくなってしまう。映画だと身動きが取れなくなるだけで死にはしなかったが、ここでは凍ってる間にいる場所が禁止エリアになったりすると厄介だった。
そして溶鉱炉のような超高温では液体金属も溶けてしまい、間違いなく死んでしまう。
手足を剣や槍に変えられても銃器のような飛び道具には変えられない。(火薬が体内にないので作れない)
そして最大の弱点は――

(――ターミネーター2は名作だ。
名作だからこそT-1000を知らない奴も少ないだろう)

余程テレビに興味がない限り、名作映画として知られるターミネーター2を知らない者は少ないと思われる。
その圧倒的な知名度こそT-1000の体を持つ最大の弱点と言えた。
T-1000を知っていれば対処もできてしまうからだ。
それで高熱や氷結の能力・支給品を持つ参加者でもぶつけられたらまず勝てないだろうと、網空は見立てた。

(だから俺は正面から参加者と戦わずに“いつもどおり”潜伏することにした)

幼くか弱い子供を装って庇護欲を刺激しつつ本性を悟らせずに近づき、能力も体色を変えてカモフラージュするだけという陳腐な異能に見せかけることで本来の能力を隠す。
そして保護者という肉の盾を手に入れ、必ず数人は出てくるだろう殺し合いに乗った者達と戦わせてライバルの数を減らすと同時に殺し合い否定派を消耗させる。
行く行くは自分を殺せる異能者や支給品を持つ者がいなくなり、否定派が疲弊しきったところをひとり残らず全滅・解体する計画を立てたのだ。
その一歩が翼との接触である。
彼の出会う時にガタガタ震えていたのは演技であり、むしろカモが来たと思って武者震いしていたのだ。

(翼クンは運が良いねえ〜。
能力が弱過ぎたり、手に負えないほど強かったりしたら後ろから刺して殺すところだったよ)

仮に翼の能力があまりに使えないものだったり、強すぎて後で敵に回すと厄介なものだったら、油断している今のうちに暗殺するつもりだった。
武器を作り出す能力だったので戦力的には有用かつ絶対に殺せないほどの危険性はないと判断したので、この場で殺さずに盾として役立ってもらうことにした。
もちろん、役に立たなくなったり、自分の正体や能力に気づいたら隠れて殺すつもりだが。

(ああ〜、早く人をバラしたくてウズウズするぜ。
生まれて初めて持った銃も一度くらい使いたいしなあ。
やっぱり、ここでこのガキをバラそうかなあ……)

実は網空の支給品はアイスピック一本だけではない。
小さな銃・レミントン・デリンジャーと、予備弾を一ダースを隠し持っているのだ。
デリンジャーは装弾数たった二発、射程も銃としては最低クラスだが、防御力が人並み程度の異能者を殺すならこれで事足りるだろう。
しかし、翼が網空のディパックを確認した時はこの銃は入っておらず、アイスピック以外は何も身につけてもいなかった。
いくら小さいために携帯性や隠匿性に優れている銃とは言え12cmもある物体を網空はどこに隠したのか?


441 : ◆YlfcDuGY1. :2016/11/02(水) 17:19:05 f2u8Br9w0


答えは腹の中である。
液体金属である体を利用して、腹部の中に隠したのである。
これにより網空は銃が欲しくなった時にいつでも取り出すことが可能である。
しかも、たった12cmプラス弾薬12発の物体ならば体積はそこまで変化せず、腹が少しばかり膨れ上がる程度である。
網空の能力を体色が変わるだけと思い込まされている翼では、まず気づかないだろう……網空の腹に秘められたドス黒い野望と人を殺傷しうる危険な銃器に。

(おっと、我慢我慢。今までの演技が台無しになっちまう。人を騙すのもそれなりに疲れるんだ。
労力に見合った働きを見せてくれよ翼クン……いや翼“お兄ちゃん”)

溢れ出てくる破壊殺人衝動を抑え、二つの意味で翼をバラそうとした自分の欲望を引っ込める。
優勝の後に見えてくる鮮血で赤く染まったバラ色の人生を夢見るがために。



T-1000の言葉が、網空の心に夢と希望を与えていた。
T-1000は所詮創作の中の人物に過ぎない。
しかし、創作された人物も、人の行動に大きく影響を及ぼせるのだった……



【一日目・1時00分/・E-2 草原】

【島原翼@衛宮士郎の能力/Fate/stay night】
[状態]:疲労(小)
[装備]:幸運と勇気の剣@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0〜2(本人確認済)
[思考・行動]
基本方針:殺し合いの否定
1:E-4にある井戸の家に向かい、そこで一夜を過ごす
2:戦いはなるべく避け、殺し合いに乗った者もなんとか説得したい
3:寧斗は何がなんでも守る
4:俺は衛宮士郎のような正義の味方になれるのか……?

[備考]
※与えられた異能が衛宮士郎のものであると気づきました。
※首輪は能力による構造解析は不可能です
※丹美寧斗の正体が殺人鬼・網空仙一だと気づいていません。
 また寧斗の能力を体色が変化するものだと思い込んでいます。


【丹美寧斗@T-1000/ターミネーター2】
[状態]:健康
[装備]:レミントン・デリンジャー(2/2)、デリンジャーの弾丸×12発
[道具]:基本支給品一式、アイスピック
[思考・行動]
基本方針:優勝し、能力を持ち帰って殺人を楽しむ
1:素性と本心を隠しつつ、島原や他の対主催参加者を利用する
2:対主催集団に紛れ込み、利用してライバルを減らしつつ、最終的には疲弊したところを全滅させる
3:他の参加者には自分が子供であると思わせ、能力も体色が変化するだけのものと思わせて本性と能力を悟らせない
4:仮に自分の正体や能力がバレた時は、対象者を暗殺する

[備考]
※肉体がT-1000と同じものになっていると気づきました。
※腹部にデリンジャーと弾丸を隠しています。
※液体化しても首輪は外れません。(上から液体金属で防御したり隠したりすることは可能)


【支給品紹介】

☆支給品紹介
【幸運と勇気の剣@ジョジョの奇妙な冒険】
第一部、ファントムブラッドに登場した剣。
黒騎士ブラフォードから主人公ジョナサンが譲り受けた物。
剣そのものは特殊能力はないのだが、譲渡される際に剣に掘られたLuck(幸運を!)の文字に、血文字でPを書きたされPLUCK(勇気をッ!)という字になっている。


442 : ◆YlfcDuGY1. :2016/11/02(水) 17:19:50 f2u8Br9w0
投下終了です
タイトルは「セイギトアクイ」でお願いします


443 : ◆BNxC/Vtkps :2016/11/11(金) 00:21:28 eJX0Ss9U0
投下します


444 : ◆BNxC/Vtkps :2016/11/11(金) 00:21:56 eJX0Ss9U0
夢の中で、男は少年に戻っていた。

「友秋ー!早くしろー!」
「始まっちまうぞー!」
前を行く二人の少年を追うように、華奢な少年は走る。
少年たちがはまっていた特撮の新しいシリーズが今日から始まるのだ。
見逃すわけにはいけない。走らなければ間に合わない。
「わかってるって!」
華奢な少年は二人の少年に相槌を打つと、わき目もふらず走る。

彼らは仲のいい三兄弟であった。
一番上の兄は特撮好きの信仰深いキリスト教徒、
真ん中は漫画好きで兄にべったり、
一番下の弟はアニメ好きの負けず嫌い。

喧嘩をしているところは誰も見たことがないほどの仲のいい兄弟であった。

煙草屋の角を曲がり、川沿いを三人は走る。
3つの橋を右手に見れば、巨大な屋敷―――天草家が見えてくる。
その豪邸がくすんで見えることに、少年はふと違和感を感じた。

「変だなぁ…」
少年は疑問に思うと同時に、既視感を感じた。
この屋敷はどこかで見たような…
どこかで、そう、20年前。

いや違う、そんなはずはない。


三人が屋敷に近づくと、さらに違和感は大きくなった。
くすんで見えるだけではなく、色あせているようにも見える。
これはあの時の、俺が天草財閥を…

そんな訳があるのか。第一今は…


「どうした?」
「友秋ー?どうしたんだ?」
後ろを走っていた少年の足音が聞こえなくなった事を疑問に感じたのか、二人は歩みを止めた。
前を行っていた少年の、背の高い方が振り向く。
その顔は、忘れもしない中年男。

「ああっ!」
違う、これは現実ではない、これは違う、違う、違う、違う…

「………負け犬が」
中年男が吐き捨てるのを聞きながら、少年の意識は遠ざかっていった。


445 : ◆BNxC/Vtkps :2016/11/11(金) 00:22:10 eJX0Ss9U0
草原の中で死んだように突っ伏していた男…天草友秋は、いつからか見ていた悪夢から解き放たれた。
友秋は起き上がると、見張るように回りを見回した。
周囲に明かりはなく、少なくとも目に見える範囲にはなだらかな起伏と小さな林、草原の影しか見えない。
友秋は少し前を思い出そうとする。
確かいつものアパートを出て、コンビニに行こうとして、変な奴に絡まれて、趣味の悪いパフォーマンスを見せられて…
そして気づけばこれだ。

「…どうやらヤツの言ってた事は、半ば虚言ではないと取れる」

首を触れば、冷たいものを感じる。
やはり自分は、どこの誰かも知らない下種が考えた異能力を用いた殺し合いに巻き込まれたのだと自覚する他なかった。

友秋の頭の中では、ヒューマと名乗った男と兄・天草時春が堕落した実弟の姿を見てケラケラ笑っている姿が浮かぶ。
性格が悪い奴の事だ、時春に異能とやらでこの殺し合いを見せているのかもしれない。


そんな妄想を巡らしつつ、彼の視界にはデイバッグと銀色のアタッシュケースが映る。
どうやらこれが支給品らしい。
彼は回りを警戒しながらデイバッグとアタッシュケースを開く。

デイバッグには乾パンや水と言った食料・飲料と地図、コンパス、白紙の紙。
アタッシュケースには灰色のベルトに携帯電話、旧式のデジカメ、双眼鏡、「Χ」の字を模った銃剣。
ご丁寧にも、これらが詰められていたウレタンにはおおよその使い方が描かれたピクトグラムが描かれていた。

「どうやら、こいつを使えるのが俺の能力らしいな」

彼は番号とピクトグラムが書かれた紙切れを読みつつ、スーツのベルトを外し灰色のベルトを腰に付ける。
どうやら携帯電話で番号を打ち込むことによって変身や攻撃が出来るようだ。

友秋は今ここで変身する事も考えたが、異能力をさらけ出すのは危険が多すぎると判断し見送った。

「しかし、殺し合いか」

天草友秋は自分の事をきわめて正常な人間と考えている。
物事は円満な和解での平和的解決を望み、無駄な争いは起こしたくはない。
昨日まで何の変哲もない日常を送っていた人間を自分の手で殺す、なんて事は無理だ。
――――――特に悪行も行わず昨日まで何の変哲もない日常を送っていたのならば。

彼には、どうしても復讐したい人間がいた。


446 : ◆BNxC/Vtkps :2016/11/11(金) 00:23:23 eJX0Ss9U0
今やすっかり落ちぶれてしまったが、天草友秋はこう見えても天草財閥の三男である。
創業当初から天草財閥はサブカルチャーに目をつけ、大々的な投資対象としていた。
そのため、天草財閥の創業者である父は後継者として「日本のサブカルチャーを引っ張っていける者」を熱望していた。
当時天草グループの関連会社で社長をしていた友秋も、脚本家の育成を目指すプロジェクトの起案やアニメ雑誌のコンセプトの転換など、
所謂「質アニメ」の制作・宣伝を通して日本のサブカルチャーへの貢献を目指していた。

そんな中、友秋はある日突然父親に呼ばれ、お前ならやっていける、ぜひとも後継者としたい、このことはお前以外には話さないから「その日」が来るまで話すなと伝えられた。
かねてより自身の扱いの改善を求めていた、かつ自分が後継者となるとは全く考えてもいなかった友秋にとってはまさに青天の霹靂である。友秋はすぐさま承諾し、誓約書に判を押した。

それからしばらくして父が亡くなった。大往生だった。
後継者の話は近く側近が公表すると発表された。
お互い自身が総裁となると信じ込む二人の兄の姿は、友秋にとっては毒でしかなかった。
仮に今自分が後継者と明かしたらどうなるだろうか。褒め称えるだろうか。殺してでも社長の座を奪い取るだろうか。


そして「その日」は来た。
―――二代目総裁として、天草時春を選出する、と。



目の前が真っ白になった。
父が持っていた誓約書はどこへ行ったのか?
あの会談の事を誰かが知っていたのか?
彼はすぐさま兄の元に出向き、後継者の事、誓約書の事、全てを打ち明けた。
しかし帰って来た答えは、冷酷なものだった。

『負け惜しみはよせ。そんなものは最初からない』
『…これを見てくれよ兄さん………………どう見ても親父の字だろ』

友秋は一枚の紙を取り出すと、兄の前に開く。
その紙を興味深そうに眺める時春。

『誓約書の写し、か…」
時春は唾を飲む。そして口元を少し緩めて、言い放った。
『だがもう原本はどうやら処分されてしまったようだ』


447 : ◆BNxC/Vtkps :2016/11/11(金) 00:23:59 eJX0Ss9U0
『兄さんにはそんなこと知る余地もないだろう』
『これは私が父から聞いたものだ。いずれ自分の口から友秋に話すと言っていたが…』

時春の話をはばかるようにして、友秋は叫ぶ。
『いい加減にしてくれ!俺が社長になられたら困るのか!?』
『困るんだろう、少なくとも父にとっては』

時春は強く言い放つ。そして静かに語り始める。

『誓約書を処分したのは父自身と聞いている』
『どうやら今の時代、質アニメではやっていけないと考えていたらしい』

『小学生じみた言い訳はやめてくれ!』

まるでふざけたような論弁を繰り返す時春に対して、友秋の怒りは頂点に達していた。
煽るように時春は続ける。

『貰ったんだよ、これをね」
時春はまるでゲームにでも勝ったように、胸ポケットから紙切れを取り出す。

一枚の紙の燃え残り。
まるで信念のように、丁度友秋のサインが書かれた部分だけが白く残っていた。

『………ふざけるなよ』
『私だってこれがジョークだったらどれだけ嬉しかったか』

時春は同情したように言う。

『父は言っていたよ、最早質アニメは売れない。友秋もいつか行き詰まるだろうと』
『そして、お前の考えるアニメ文化の国際化という考えは私の長年の夢と同じ、とても気に入ったともね』

友秋は悟った。
きっと父は最初から後継者を時春にするつもりだったのだろう。
あの発言も虚言だったのだろう。
今まで跡取りとして最善の事を尽くしていたつもりだった。
だが結局は、最愛だった父の手のひらで遊ばれていたに過ぎなかった。
もはや限界だった。


『…そうか』
『分かったか、ならさっさと帰れ』
『……………法廷で会おう』
『無駄な事を』


お家騒動が時春側の勝訴で幕を閉じたのは、それから2年後の事だった。


448 : ◆BNxC/Vtkps :2016/11/11(金) 00:24:20 eJX0Ss9U0
こうして財閥を追われた友秋は、娘の夢を叶えるため芸能事務所を設立。
天草グループから出禁とされた身である以上、サブカルチャー関連に関わるのは難しい。
そう考えた友秋が行きついたのが三次元、リアルアイドルであった。

友秋は一度あるアニメの制作に関わった際、この業界について取材を申し込んだ事があった。
そのためある程度の業界に対する知識はあった。
無論それだけでどうにかなるものではなかったが、ある程度の役には立つだろうと思っていた。




『お願いします!どうかこのグループを…』
『無理だな』

現実は厳しかった。いくら頭を下げても仕事は回ってこず、取り上げられても扱いは非常に小さい。
いつしかグループの仲間は一人、二人と離れていき、所属は娘と、熱意を持ったある新人アイドルのみになってしまった。

同業他社は枕営業や買収といった汚い手を使って仕事を手に入れているらしいと聞いたが、友秋としてはそのような手は使いたくない。
他人に夢を与える仕事であるこそ、汚い手段を使って誰かを悲しませては本末転倒だと今まで関わってきた事業で痛いほど感じてきたからだ。

だが、そうきれいごとを言っていられるような状況はとうに過ぎ去っていた。
友秋は屈辱にまみれながらも、反社会的勢力との交友を行い、ある事務所の有力株と言われていた一人のアイドルをこちらへ移籍させた。

『この事務所でも自分が、そして皆が輝けるように頑張りたい』
友秋はその言葉を信じ、彼女を新しいグループのリーダーとした。


449 : ◆BNxC/Vtkps :2016/11/11(金) 00:24:41 eJX0Ss9U0
彼女たちの結成したグループは、これまででは信じられないような好待遇を受けた。
音楽番組ではトップを任され、CDはオリコン1位まで上り詰めた。
バラエティ番組にもゲスト枠で呼ばれ、ドラマの主題歌の担当も決定。まるでシナリオに沿っているような、あまりにでき過ぎたストーリーだった。
友秋は事業の成功に喜びながらも、どこか不安だった。
なぜいきなり好待遇を受けることになったのか、その理由がまるでわからなかったのだ。

答えは簡単だった。
連れてきたあのアイドルが枕営業をしていたのだ。
そのことが分かったのは、そいつのグループ卒業宣言から少しあとの、週刊誌のすっぱ抜きだった。

グループは壊滅状態だった。
メンバーのほぼ全員はあいつの言いなり状態になっていた。
あいつに言われれば、枕でもライバル排除でもなんでもやっていたらしい。
あいつの卒業とともに忽然と消えたプロデューサーも、積極的な買収や賄賂によってグループを宣伝するように仕向けていたらしい。

まだそれだけならよかっただろう。
あいつの真の目的がわかったのは、それから少したった頃だった。




忘れもしないあの日。

『メンバー間でそのようなことがあったことは把握していますか?』
『私は何も知らされておりません』

その日はメンバー間でのSNSの履歴からグループ内でのいじめが事実であったことが発覚し、友秋は週刊誌からのインタビュー攻めに合っていた。
帰宅時間は深夜3時を回り、このまま家に戻っても到底休める状況ではなかった。
だからせめて家族の顔でも見て元気を出そう、友秋はそう考えた。


450 : ◆BNxC/Vtkps :2016/11/11(金) 00:25:16 eJX0Ss9U0
しかし、

『おい!何をやってるんだ!』
家に帰った友秋が見たのは、妻と娘が心中している姿だった。

娘はグループ内でのいじめの対象になっていたのだった。
社長の娘という立場が気に入らなかったのだろう。コネ起用だの贔屓枠だのいうだけ言われていたらしい。
発端はあいつだった。それに5人ぐらいが乗っていた。あいつがいなくなってもやまなかったと遺書には書かれていた。
むろん友秋はそんな扱いを行った記憶は一切なかった。だからこそ許せなかった。

さらに許せなかったのが、娘の遺書に書かれていたこれだ。
「あの子の「所詮このグループは踏み台、レベルアップのための通貨儀礼に過ぎなかった」「こんなグループに居続けると腐る」という言葉で心が折れた」と。

あいつは自己顕示欲のために大勢の人間を利用して、唾を吐くように出ていった。
許せなかった。
あの発言も演技だったのだ。また騙された。

『――――――許せねぇ…』



友秋が謝罪会見を開き、社長を退いたのは翌日のことであった。
しかし、どこかでもみ消されたのか、あのアイドルに対してのそれ以上の追及はされることがなかった。

友秋は再び反社会的勢力に接触し、金ならいくらでも出す、だからなんとしてでもあいつらの親族を処分するように頼み込んだ。
人を死に追いやっておいて、自らは悠遊と生きているのが許せなかった。
なんとしてでも同じ屈辱を味合わせたかった。

数か月後、主犯の一人の親が事故死したという報道が入って来た。
友秋は心底愉快だった。主犯のクズが俺と同じ絶望を味わっているということが面白くて仕方がなかった。


451 : ◆BNxC/Vtkps :2016/11/11(金) 00:26:27 eJX0Ss9U0
娘を殺したアイドル共、俺を破滅に追い込んだ天草一族、そして忌々しいあの側近とプロデューサー。
この殺し合いに参加しているかどうかは分からない。
だがもし参加していれば、必ず殺す。
人を不幸にしておいて笑顔を守るとか言っている奴らに、生きる価値はない。

「…ふっ」
ヤツは勝ち残れば、一つだけなら願いを叶えると言った。
過去改変、死者蘇生、なんでも叶えると。

だが願いは一つでは足りない。
側近が居なくなったところで、総裁の座は帰ってこない。
アイドル共が居なくなったところで、娘は帰ってこない。
そいつらを消したところで、ズタズタにされたプライドは治らない。
しかし「一つ」は叶うのであれば、それで十分だ。

「俺に都合がいい世界になればいい…」

だから勝ち抜かなければならない。
復讐するために勝ち抜かなければならない。


「………………面白れぇ」

この殺し合いに参加している奴は、駒だ。
殺し合いに乗った奴も乗らなかった奴も、全てを利用して勝ち抜いてやる。
善人をこの手で殺すのは憚られる。だが相手がクズなら無問題だ。
クズもこちらを殺す気マンマンだろう。正当防衛が通用する。
アイドル共や天草一族、そしてあの側近やプロデューサーがいたならば、苦しみ抜いて死んで貰おう。

そのためには、まずは体制を整えなければならない。

集落に行けば物資が手に入る。そこを目指すカモはごまんといるはずだ。
まずはそこに来た奴を利用して情報を集める。
友秋はデイバッグと銀色のアタッシュケースを掴み、歩き始める。


「絶対に許さんぞ…クズ共…必ずぶっ殺してやるからな…」

その感情は本心か、それとも彼に与えられた異能…オルフェノクの闘争本能によるものなのか。
明確に言えるのは、彼は正気であって、正気ではない、と言う事だ。


452 : ◆BNxC/Vtkps :2016/11/11(金) 00:26:51 eJX0Ss9U0



「……………はぁ」

時を同じくして、天草あかねは同じ丘の、小さな林の中にいた。
偶然にも木々と暗闇に身を隠した形になった彼女は、友秋に見つかる事なくここにいられた。

これがドッキリだったらどれだけ嬉しかっただろう。
現に彼女は首輪を付けられている。
それだけではなく、この闇の中、一瞬何かがキラリと何かが光ったのも見ていた。
恐らく参加者が近くにいるだろう。

彼女は単なる一般人である。殺し合いに乗る気は当然ない。
しかし、この中には当然殺し合いに乗った人もいるだろう。
もし参加者に襲われればどうすればいいのだろうか。
彼女が持つ剣道3段の実力でさえ、異能相手では無意味だろう。

「怖いよ…」

ああ、ここに士郎お兄ちゃんが来て、助けてくれたらいいのに。
見知らぬ誰かに殺し合えと言われ、見知らぬ誰かと共に見知らぬ場所に連れてこられた彼女が、心細くない訳がなかった。

「確か、誰が参加しているのかわかるのは、六時間後だったよね」

もしかしたら、士郎やゆたかが参加しているかもしれない。
彼らが参加しているのなら、どこかで合流しよう。

そのためにもまずは生き残るしかない。そう彼女は決心する。

「まずはこの中身を確認しないと…」
彼女はデイバッグを開け、中身を確認する。


453 : ◆BNxC/Vtkps :2016/11/11(金) 00:27:17 eJX0Ss9U0
「ひっ」
そこには地図や食料に混じって、大きな何かが入っていた。

「なんだろうこれ…うっ、重っ!」

彼女は不安を抱きながら、ゆっくりとそれを取り出す。
それは一丁の大型の拳銃だった。


「これ…ドミネーター…」


「PSYCHO-PASS サイコパス」に登場する銃、ドミネーター。
この状況下では恐らく最強であり最凶のウェポン。

同作品は士郎がハマっていたため、彼女もそれをある程度は知っていた。
内容が気になり、士郎からDVDを借りたところ1話でダウン。翌日すぐさま返却したという伝説付きで。

彼女はハッピーエンドが好きだった。
悪は倒され、努力は報われ、一度どん底に落とされても必ず這い上がってくる。
そして何よりも救いがある。幸せそうなキャラクターを見ると、こっちまで幸せになれそうな気分がする。

しかし、同作品の雰囲気はそれとは真逆だった。
1話見ただけでは全ては分からない。だが、彼女は直感的に悟ってしまった。これは幸せにはならないと。

「やっぱり合わないんだよなぁ…あの脚本作品は」

脚本家・虚淵玄。
彼を一躍有名脚本家への座へ押し上げた「魔法少女まどか☆マギカ」を筆頭に、陰鬱な世界観の作品を作ることに定評がある。
バッドエンドを嫌う彼女に取ってはまさに嫌悪対象そのものだった。
そしてまた「PSYCHO-PASS サイコパス」も彼の脚本作品の一つだ。

彼の特徴的な作風の一つとして、「キーとなるものの正体が人間」と言うものがある。
前述した「魔法少女まどか☆マギカ」の敵・魔女は絶望した魔法少女のなれの果て。
「翠星のガルガンティア」のヒディアーズは遺伝子操作とナノマシンによって改造された人間。
「仮面ライダー鎧武」のインベスはヘルヘイムの森の果実を食した生物。
そして「PSYCHO-PASS サイコパス」も同様。犯罪係数を差し図る「シビュラシステム」は人間の脳の集まりである。
理不尽だ。余りにも理不尽だ。

彼女が虚淵玄を最も苦手とする理由はここである。
彼の作る世界観には、一筋の救いも見えない。


454 : ◆BNxC/Vtkps :2016/11/11(金) 00:27:40 eJX0Ss9U0
だから貰いたくなかった。
自らの手でバッドエンドを作り上げるのが嫌だった。
しかしいくら持っていきたくないと言え、ここで捨てれば誰かに拾われる。
その後に待っているのは…

「持っていかなきゃ」
彼女はデイバックにドミネーターをしまおうとするが、ふと違和感に気づく。

「どうやって起動するんだろ…これ…」
いくらドミネーターであれども、起動出来なければただの文鎮である。
寧ろ彼女に取っては起動出来ないほうが助かるのだが、最低限どうやって起動するかぐらいは分からなければ、万一の場合誤爆という危険性がある。
「まっ、出さずにしまっておけばいっか」
少なくとも触らなければ問題はない。彼女はそう判断し、デイバッグの中に戻した。


夜は更けていく。
この暗闇の中を無暗に動くのは危険と考えた彼女は、しばらくの間この林に隠れている事にした。
朝日が昇るころには他に誰が参加しているかもわかる。その後の事は、それから考えよう。

「でも、私の異能がドミネーターの使用って言うのはちょっとあんまりだったなぁ…」

出来れば私の好きな作品…そう、會川昇脚本作品。
ケイオスドラゴンの魔術とか、コンクリート・レボルティオの超人の能力とか。それだったらよかったのに。

そう考えるあかねの背中で何がが蠢いていた事に、彼女が気づくことは少なくとも今はなかった。


455 : ◆BNxC/Vtkps :2016/11/11(金) 00:28:36 eJX0Ss9U0
【一日目・1時10分/・I-6 丘】

【天草友秋@ドラゴンオルフェノク/仮面ライダー555】
[状態]:狂乱(自覚なし)
[装備]:カイザドライバー@仮面ライダー555
[道具]:基本支給品一式、アタッシュケース@仮面ライダー555
[思考・行動]
基本方針:参加者をうまく利用して勝ち残る、そのためには何が犠牲になろうと構わない
1:他の参加者の情報が欲しい
2:娘を死に追いやった遠因であるアイドル共が参加していれば、俺がこの手で殺す
3:天草一族、特に天草時春が参加していれば俺と同じ屈辱を味わって貰う

[備考]
※「仮面ライダーカイザへの変身」が自身に与えられた特殊能力と考えています。
※自身のオルフェノク化には気づいてません。

【天草あかね@魔法の杖メテオテールとサポートキャラのウル@コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ドミネーター@PSYCHO-PASS サイコパス
[思考・行動]
基本方針:生き残る。
1:絶対にドミネーターは使わない。
2:信頼できる人を見つけ出して合流する。

[備考]
※「ドミネーターの使用」が自身に与えられた特殊能力と考えています。
※ウルが背中に張り付いていますが、今のところ気づいていません。
※I-6でドミネーターが使用不可な事を確認しました。


【支給品紹介】

【カイザギア@仮面ライダー555】
銀色のアタッシュケースに収められている仮面ライダーカイザへの変身及び戦闘に使用するツール一式。
以下のものが該当する。
・カイザドライバー:下記参照
・カイザフォン:「913」と打ち込み、カイザドライバーに突き刺すことで変身する。変形することで光線銃にもなる。
・カイザショット:左腰に備えられているデジカメ。
ミッションメモリーを挿入することでバトルモードに変形し、
手にはめることで打撃技・グランインパクトを放つことが可能。
・カイザブレイガン:右腰の専用ホルスターに収められている銃剣。
・カイザポインター:ベルト後部に備えられている双眼鏡。
ゴルドスマッシュを放つ際には足に付けることで敵を捕捉する。

なお、原作ではフォトンブラッドはオルフェノクに対してのみ毒性を持つが、
本作では対人に対してもある程度の毒性を持つようになっている。


【カイザドライバー@仮面ライダー555】
オルフェノクの王を守るため作られた三本のベルトのうちの一つ。
オルフェノク及びオルフェノクの記号を持つ者なら誰でも変身できるが、
不適合者が変身した場合、変身解除した瞬間に体が灰と化す。

ドリンク剤「変身一発」を二本飲む事で人間含む不適合者でも変身が可能になるが、代償としてベルトが灰となる。


【ドミネーター@PSYCHO-PASS サイコパス】
対象のサイコパスを読み取り、対象の犯罪係数(対象が犯罪者となる可能性を数値化したもの)をシビュラシステムにより算出し、その値に応じて変形、「鎮圧・排除・いずれもなし」から最も適切な処置を行う。
本作世界にはシビュラシステムが存在しないため、ナオ=ヒューマの手によって疑似的に再現された仮想シビュラシステムと接続されるようになっている。
仮想シビュラと接続する中継器は島の東側に多く設置されており、西側には少ない。
生体認証を用いた個人認証機能によって天草あかねが登録されているため、基本的に他者が使用することは不可能。
また、本ロワには免罪体質者は存在しない。


456 : ◆BNxC/Vtkps :2016/11/11(金) 00:29:42 eJX0Ss9U0
投下終了です

タイトルは「選択なき幸福」で。


457 : 名無しさん :2016/11/11(金) 03:01:52 eKZm9wq20
かなり面白い話だったけど、カイザはともかく参加者に異能者がいないドミネーターはありなのかな?


458 : 名無しさん :2016/11/11(金) 13:56:25 I2YbjxuQ0
投下乙です
お家騒動で負けて実家を追われたり、新たに始めた事業でも不祥事で地位や家庭を失ったり、友秋悲惨すぎる…
こんな転落人生送ってたらそりゃ殺意や復讐心に満ちるのもわかる
殺る気満々の友秋の側に配置された血縁者のあかねちゃんの明日はどっちだ

ただ能力未登場の作品に出てくるアイテムまで支給対象にするのは止めた方がいい気が
流石に何でもありになりかねないし、能力関連でただでさえ膨大な把握の手間も増えそう


459 : 名無しさん :2016/11/11(金) 15:50:46 htctyn7Q0
投下乙です。
転落人生を無かったことにするために殺し合いに乗る決意を固める友秋に対して、あくまで殺し合いに乗らないと決意するあかね・・・中々鋭い対比でした。

けども、>>457氏と>>458氏が言っているように、参戦していない作品のアイテムを支給するのはどうかと思います。
個人的には、友秋の支給品が元ネタつながり(555関連)でカイザギアなのだから、あかねの支給品も元ネタつながりのコンクリート・レボルティオ関連のアイテムに修正した方が良いと思いました。


460 : 名無しさん :2016/11/11(金) 18:21:09 eI9JH9DE0
カイザギアもどうなのよ
同作なら支給品で異能力出していいってなると異能力込みで投票した意味薄くになるんじゃない


461 : ◆YlfcDuGY1. :2016/11/11(金) 19:53:19 5R37CXok0
>>1代理人である私の意見からすると
皆さんの意見通り、能力未登場の作品に出てくるアイテムは禁止にした方が無難でしょう
>>458の方の通り、ここで前例を作ってしまうと何でもアリになってしまい、把握が困難になってしまいます。
よってドミネーターの下りは別の支給品に差し替えか削除する形での修正を提案します

カイザギアについては>>460の方の意見もありますがグレーゾーンと言ったところでしょうか
理由はオルフェノクの異能は怪人に変身するだけではなく、555に登場する三つのベルトを使用できることにもあると私は考えるからです
つまり友秋の異能はドラゴンオルフェノクに変身できると同時に555の仮面ライダーに変身できるということだとも思えます
ただ、仮面ライダーに変身している間はオルフェノクの能力は使用不能(原作で能力を併用する描写がない)になってしまうので、仮に友秋がオルフェノク化せず仮面ライダーカイザのまま死んでしまうと、キャラ作成者や投票者が見たかった「ドラゴンオルフェノクそのものの力や特性を使う参加者」が見れなくなってしまう危険があります
そうなると作成損・投票損になってしまうでしょう
カイザギアの場合はオルフェノク(友秋)にしか使えないとはいえ、能力を与えてしまう支給品は議論の必要があるかもしれません


今回の件は支給品関連の制限を考えてなかった(制限しなくても大丈夫だろうと考えていた)私の責任でもあります
よって今後はドミネーターのような能力未登場作品からの出典は禁止とします

それに◆BNxC/Vtkps氏が手がけたこのSSを私は素晴らしいと思っています
天草家関連は今後の展開を面白くしてくれそうですし、このまま破棄されるのは非常に勿体無いとも考えています


462 : ◆YlfcDuGY1. :2016/11/11(金) 20:02:06 5R37CXok0
カイザギアがグレーゾーンな理由をもう一つ
原作のドラゴンオルフェノクである北崎はカイザベルトを使っていないため、どこまで適合できるかわからないという点もあったからです

また個人的意見ですがカイザギア説明欄の
>原作ではフォトンブラッドはオルフェノクに対してのみ毒性を持つが、本作では対人に対してもある程度の毒性を持つようになっている。
これはいらないかも……カイザは設定上、パンチ力3t・キック力7tであり、毒性がなくても肉体を強化されてない参加者は普通に死ねます


463 : ◆BNxC/Vtkps :2016/11/11(金) 20:04:00 SVyaJKxU0
やりすぎましたね…認識不足申し訳ありません。


464 : ◆YlfcDuGY1. :2016/11/11(金) 21:17:40 5R37CXok0
SSの内容としては支給品の下りを修正するだけで大丈夫でしょう
SSを修正しますか?
修正するのでしたらかかる日数も教えて欲しいのですが


465 : ◆BNxC/Vtkps :2016/11/11(金) 23:54:48 SVyaJKxU0
修正します
一応万が一の事を考えて期間は一週間としますが
皆様にこれ以上迷惑をかけるわけにはいかないためできるだけ早く投下したいと思っています


466 : ◆YlfcDuGY1. :2016/11/14(月) 23:30:34 /iXiv08o0
予約の分目青司、鈴宮ミカを投下します


467 : ◆YlfcDuGY1. :2016/11/14(月) 23:31:14 /iXiv08o0
参加者の一人である分目青司が会場の一部であるミカン畑にたどり着いたのはゲーム開始から30分ほど経った頃。
月明かりに照らされたそこでは驚くべき光景が広がっていた。

「なんだこれは……?」

そろそろ収穫期が近いのだろうか?
柑橘系独特の甘酸っぱい香りと多くの木に黄色く実った果実が目を引く場所であったが、その一部のミカンの木が、スライムのようにドロドロに溶けていた。
木に集っていたのであろう小さな幼虫なども溶けていた。
現実ではありえない、異様すぎる光景である。

「まさか、これが異能という奴なのか?
信じられないが……奴が言ったことは本当のようだな」

しかし現実ではありえない出来事を可能にする力を分目は知っていた。
ヒューマが言っていた“異能”の力である。
この殺し合いの主催者であるヒューマは全員に異能の力が与えられていると言っていた。
それが嘘でないからこそ、ミカンの木がドロドロになっているのだ。
漫画や何かでしかありえない出来事だが、それを目の当たりにした以上、異能を認めざる負えなかった。


「ん……? あれは人か?」

分目はミカン畑の中で、数十m先に人影があるのを発見する。
状況から察するに異能の力でミカンの木をいくつかスライムに変えた参加者だろう。
その参加者は何か闇夜で光るものを持っていた。

……光っていたのはサブマシンガンの銃口だ。

「ッ!?」

銃口が自分に向けられていると知った分目は急いで銃撃から逃れられる場所を探そうとする。
しかし周りの木は全部溶けてしまっており、障害物にすることができない。
それに焦った分目は最後に参加者が殺し合いに乗っていない可能性にかけたが……

「待ってくれ! 俺は殺し合いに乗ってな――」

例の参加者は聞く耳持たず、分目に向けた十数発発砲した。
そう、この参加者は殺し合いに乗っていたのである。
携行性と弾幕を張ることを優先的に開発されたサブマシンガンの命中率はさほど高くない。
その集弾性は距離が開けば開くほど低くなっていく。
実際、ほとんどの弾丸は数十m離れていた分目の横をすり抜け、もしくは近くの地面に当たるだけであった。
しかし、たった一発の銃弾だけは分目の顔面に直撃し、分目の体は仰向けにバタリと倒れた。


「痛ッ……マシンガンの反動はキツいって聞いてたけど、これほどなんて……」

たった今、分目を射殺した厚手のパーカーに分厚いマスクをかけ、少女の声を発する鈴宮ミカはサブマシンガンであるマイクロ・ウージーを持っていた手を振っていた。
非銃社会である日本生まれの彼女は銃なんて握ったことはなく、銃に慣れていない故に高反動のマシンガンは手をジンジンと痛めていた。
更に銃のリコイルの仕方もよくわからなかったので貴重な弾丸の大半は無駄になってしまった。

「けど……結果オーライだね」

弾丸の多くは確かに無駄になってしまったが、マグレ当たりで参加者の一人の殺害に成功した。
頭に直撃するのを確かに見た……分目が生きているとは到底考えられなかった。

「……悪く思わないでね。私はどうしても優勝しなきゃ、いけないんだから」

彼女の声はどこか震えていた。
殺人は初めてだったので、それをやってのけてしまった自分に恐怖していたのだ。
それでも彼女は立ち止まることはしなかった。
屍を作り出してでも優勝したい“理由”が彼女にはあったからだ。

マシンガンの銃声で他の参加者が近づいてくる危険がある。
優勝を目指す以上は他の参加者は全て敵。
参加者と正面からかち合わないためにも、さっさと殺した参加者から支給品を剥ぎ取ってこの場から立ち去る必要があった。


「よくもやってくれたなァ……」
「!!?」


468 : ◆YlfcDuGY1. :2016/11/14(月) 23:31:47 /iXiv08o0

鈴宮が倒れている分目に十m圏内まで近づいたところだった。
死んでいたと思われた分目が突然起き上がりだしたのだ。
その声は先程までの良い人そうな穏やかなものではなく、怒りを込めたドスの効いた口調になっていた。

「絶対に許さねえぞ……キリキリキリ」

いや起き上がったのは分目だったというべきか。
その姿はいつの間にか消防士の制服姿から、心臓と眉間の部分が妖しく光る、灰と黒で彩られた悪魔のような姿に変貌していた。

「ば、化け物!」
「キリッ!!」

分目が生きていたことと怪人に変貌したことに驚いた鈴宮は震えた手のまま、マシンガンを分目に向けた。
しかし分目は彼女が銃弾を放つよりも早く、手から火炎放射に似た攻撃――獄炎弾を放つ。

「ひッ、ひいいいいいいいいい!!」

獄炎弾が放たれた瞬間、鈴宮は急に萎縮してその場にかがみ込んでしまった。
これが結果的には幸いだったと言うべきか、伏せたことによって直線的な攻撃である獄炎弾を躱すことに繋がった。
しかし火炎によって生じる煽り風によって鈴宮のパーカーがめくれ上がった。

「キリ?」

鈴宮の顔を分目が見るとそこには右側は美少女の美貌を持っていたが、もう片方の左側は火傷によって生じたと思われる大きなケロイドで醜くい顔があった。
それを見たとき、分目は一瞬だけ反撃を忘れて手を止めてしまう。

「く、来るな、見るなぁ!」
「キリィ!?」

分目が隙を見せたことを見計らって、鈴宮は一目散に逃げ出した。
その際に分目に向けた数発撃ち込む。
当てるために撃った弾丸ではないが、それでも数発の弾丸が分目の体に命中した。
それでも怪人と化した分目には効果は薄く、ダメージはそれほどは入っていない。

「キリキリーーーッ!!」

分目はまた攻撃された報復に、怒りを込めて獄炎弾をがむしゃらに放った。
だが攻撃の判断が少しばかり遅かったのか、逃げる鈴宮には一発も当たることなく、何本かのミカンの木を燃やしただけであった。
気づいた時には鈴宮は獄炎弾の射程圏外であった。

「キリ……」

そのまま分目は鈴宮を追撃しようとも考えたが、スライムのようになった木々を思い出して踏みとどまる。
彼女が引き起こしたと考えられる異能――銃弾ぐらいで死ななくなった自分でも、ミカンの木のように溶かされたら目も当てられない。
そう考えた分目は深追いは危険だと思い、追撃を止める。
鈴宮はその頃には闇夜に紛れて雲隠れしてしまった。

それからしばらくして溶かされていたミカンの木は元通りの木々に戻り、分目も敵がいなくなったことで戦意と興奮が薄れてきたためか、元の消防士の姿に戻った。


469 : ◆YlfcDuGY1. :2016/11/14(月) 23:32:25 /iXiv08o0





「これが俺の異能なのか……?」

戦闘が終わった後、分目はただただ己の力に圧倒されていた。
弾丸が自分の顔面に直撃する寸前、死を悟った分目だったが、それが異能を発現するためのスイッチになったのだろう。
自分が悪魔のような姿になったのだ。
姿だけでなく防御力も人間のそれを上回っていたのか、人間に戻った時に銃弾が当たった部分に多少の出血と腫れはあったが、負傷はせいぜい打撲レベルであった。
それだけでなく炎を腕から出すこともできた。

「あの姿は確か……ウルトラマンティガに出ていたキリエル人、もしくはキリエロイドだったか?」

キリエル人/炎魔戦士キリエロイド。
分目が怪人である時の姿から、自分がウルトラマンティガに登場する怪獣・宇宙人であるキリエル人になったことと考察する。
分目自体はサブカルチャーに疎い上、子供の時に見ていたと思われるウルトラマンティガの内容などほとんど覚えてはいない。
しかし、子供の頃、おもちゃ屋で売られていたキリエル人のソフビ人形はなぜか印象に残っていた。
たぶん、ウルトラマンのライバルのようなデザインが好きだったのだろう。

「ふふふ、しかしこれはチャンスだな」

燃えるミカンの木を背にして分目は怪しく笑う。
分目青司は正義感の強い優秀な消防士として知られ、表彰をいくつも貰った事もあるほど周囲からは高い評価を得ている。
しかし、その実態は自己顕示欲の強い独善的な性格の持ち主であり、彼が得た表彰というのも、自ら放火した家を消火するというマッチポンプ行為によって獲得したものである。
つまり彼は消防士であると同時に放火魔であるのだ。

そんな危険人物である分目は何を企んでいるのか?
殺し合いの優勝だろうか?

(優勝……優勝すれば生きて家に返すことや願いを叶えるだとのたくっていたが、そもそもナオ・ヒューマが約束を守る保証がどこにもない。
願いを叶えることに関しては殺し合いを盛り上げるためのでっち上げの可能性も十分に有り得る)

分目は主催者であるナオ・ヒューマへの不信感から優勝の路線は踏まなかった。
ならば主催に抗うということになるが……

(殺し合いを、ナオ・ヒューマを打破した方が得だろう。
もし、こんな30人以上は巻き込まれている歴史的大事件を解決して多くの人々を救ったとあらば、俺は英雄として持て囃されるだろうな。
ニュースにも出て一躍時の人、国民栄誉賞、歴史の教科書にも乗れるかもしれないな……ふふふ)

彼の路線は主催に抗うものであったが、その動機は実績目当てで自己顕示欲を満たすための極めて独善的なものであった。

(まあ、ヒューマの願いを叶えるという話も嘘じゃないかもしれないが、だったらヒューマに叶えてもらう必要はねえ。
生きていく上で欲しいものはいくらでもでるだろうし、消えて欲しい人間もいっぱい現れるだろうから……どうせなら願いを叶える方法を奪って、俺が好きな時に好きなだけ叶えちまえばいい)

分目は名誉欲に飽き足らず、ヒューマの願いを叶える方法を奪って、自分に使うつもりであった。
もちろんこれは先ほど自分で考えていた通り、でっち上げの可能性や奪えるものではない可能性も十分にあったため、オマケ程度の考えだが、もし奪えるものだったら彼はヒューマから迷いなく奪っていくだろう。

「さて、これからが忙しいぞ。
まずは正義の消防士さんとして民間人を保護しなきゃならんしな。
殺し合いに乗った奴は……まあ、殺しても正当防衛でなんとかなるか」

未だに燃え盛るミカン畑を背に分目は歩みだした。
その胸に野望を燃やしながら。


470 : ◆YlfcDuGY1. :2016/11/14(月) 23:33:20 /iXiv08o0



一方、分目から少し離れた地点では一人の少女がいた。
キリエロイドと化した分目から無事に逃げおおせた鈴宮ミカである。
彼女は荒い深呼吸をしていた。

「スゥ、ハー、スゥ、ハー……スゥ……もう大丈夫……」

やや過呼吸気味だった深呼吸は収まったようだ。

顔面左側の火傷痕、死んだような目。
そんな今の彼女からは想像もつかないが、かつては活発な美少女であった。
しかし火事により肉親を亡くし、自身も顔から足にかけての左半身に大きな火傷を負ってしまってから彼女の人生は狂い始めた。
まず体の大半にできた火傷によって将来的にまともな職には付けないだろう、他者との交流についても気持ち悪がられて避けられるか蔑まされるか上辺だけの心配されるかのどれかしかない。
それだけでなく両親の生命保険が自分の知らない内に8割程親戚間で分配されていたことを知ってしまう。
親戚としては両親の代わりに育てているのだからこれくらい当然だという態度だったが、それにより彼女は人間不信に陥ってしまった。
それでも少しでもまともに生きられるように奨学金で高校に通い続けるが、周囲の奇異の視線に耐えられなくなり、幾度も自殺を試みて自殺を考え、何度も手首に切り傷を作ったことか。
先ほど分目の放った炎を見たとき、自分の何もかもを奪った火事を思い出して一時的にパニックになってしまったのだ。

「でもこんな暗い人生も、もう終わるんだ……」

彼女の死んだような魚の目にギラギラと光が宿る。
彼女は優勝を目指していた。
そして参加者最後の一人になり、優勝した暁には主催者であるヒューマに願うのだ。

「あの日の火事をなかったことにして、この火傷や母さんと父さんの死をなかったことにするんだ」

人生を狂わせ、自分から人なりの幸せを奪った火事。
それをなかったことにすれば両親は生き返り、コンプレックスである火傷痕も消える。
彼女にとってこの殺し合いは、幸せを取り戻すための最後のチャンスに感じられたのだ。

「そのためなら何を犠牲にしてでも、優勝してやるよ」

仮に親戚が参加していようとも容赦なく殺す気である。
人間不信に陥っている彼女には信頼できる人間は亡くなった両親だけであり、全部敵に見えていた。

さて、立派な野望を抱いていた鈴宮だが、彼女はまだ16歳。
サブマシンガンで武装しているとはいえ、戦いの素人である彼女は40名以上いる参加者を相手にするには無茶に思えるだろう。
それなのに優勝への自信の根拠はなんなのだろうか?
それは彼女の隣に立つ“何か”にあった。

「この悪霊の力を使いこなせば、きっと優勝できる……ハズ」

悪霊――鈴宮がそのように称した物体の名前はスタンド“ビタミンC”である。
道化師とも悪魔ともとれる姿に肩から下が無数の腕に覆われている奇怪なスタンドだが、これこそ鈴宮がヒューマの肉体改造によって与えられた異能である。
その能力は、本体があらかじめ付けておいた指紋に触れた人間を、ビニールか熱したチーズのように軟らかくして溶かしてしまうというもの。

先ほど、ミカン畑の一部の木が溶けていたのは、鈴宮がこの能力の実験を行っていたためである。
彼女はジョジョリオンは読んだことがないため、スタンドやビタミンCのことはわからなかったためであるが、実験によってビタミンCの大体の能力を把握した。
実験により石などの非生物には効果がないことや指紋で作った結界の外には効果がないことを理解した。
後者の結界の外である射程外に対応できるようにするためにサブマシンガンが支給されたのだろう。
この異能を先の分目には直接使うことはなかったものの、事前に実験を行っていたことで溶けたミカンの木が彼の目に入り、追撃を振り切ることはできた。
いくら銃弾を弾く防御力を持っていても、溶かされれば意味がなくなるからだ。


「さっきは遅れを取ったけど、今度こそ殺してやる」

先程は突発的な遭遇戦に加えて準備が足りず、キリエロイドに変身して炎を操った分目の力に驚いてしまい、無様に逃げるしかなかったが、次はこうはいかないと心に誓った。
能力の使い方や銃の使い方もだんだんわかってきた。
態勢を整え次第、次の襲撃を結構するつもりである。

「絶対に取り戻してやる、私の幸せを!」

そして鈴宮ミカはミカン畑を後にした。
彼女の心もまた、分目と同じく、それでいて違う野望で燃えていた。


471 : ◆YlfcDuGY1. :2016/11/14(月) 23:34:04 /iXiv08o0



【一日目・1時00分/・E-8 ミカン畑】
※ミカン畑の一部が現在も炎上中です


【分目青司@キリエル人の力@ウルトラマンティガ】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1〜3
[思考・行動]
基本方針:殺し合いを「俺が」打破して名声を得る、もしくは願いを叶える力を奪う
1:一先ず、他の参加者を保護する
2:殺し合いに乗っている者は可能なら殺す
3:特に火傷の女(鈴宮ミカ)は特に注意する

[備考]
※自分の異能がキリエル人の力であると知りました
 ウルトラマンティガ放送時の記憶が曖昧なので今のところ使うことができると思っている能力はキリエロイドへの変身と獄炎弾のみです
※鈴宮ミカの能力を生物を柔らかくする能力だと知りました(指紋による結界はまだ見ていません)
※分目がどこに向かったのかは次の書き手氏にお任せします


【鈴宮ミカ@ビタミンC/田最環@ジョジョリオン】
[状態]:疲労(小)、精神疲労(小)
[装備]:マイクロ・ウージー(8/32)
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0〜2(本人確認済み)
[思考・行動]
基本方針:優勝して家族との幸せな日々を思い出す
1:体制が立て直り次第、他の参加者を襲撃する
2:火は大嫌いだ……!

[備考]
※自分の異能(スタンドの作った指紋による結界に触れた生物を柔らかくする)を自覚しました
※分目青司の異能の一部(キリエロイドへの変身、獄炎弾)を知りました
※彼女がどの方角に逃げたのか、次の書き手氏にお任せします


472 : ◆YlfcDuGY1. :2016/11/14(月) 23:35:04 /iXiv08o0
投下終了です
タイトルは『ケロイド』でお願いします


473 : ◆BNxC/Vtkps :2016/11/18(金) 01:45:53 F8oIs.7Y0
再投下します


474 : ◆BNxC/Vtkps :2016/11/18(金) 01:46:24 F8oIs.7Y0
夢の中で、男は少年に戻っていた。

「友秋ー!早くしろー!」
「始まっちまうぞー!」
前を行く二人の少年を追うように、華奢な少年は走る。
少年たちがはまっていた特撮の新しいシリーズが今日から始まるのだ。
見逃すわけにはいけない。走らなければ間に合わない。
「わかってるって!」
華奢な少年は二人の少年に相槌を打つと、わき目もふらず走る。

彼らは仲のいい三兄弟であった。
一番上の兄は特撮好きの信仰深いキリスト教徒、
真ん中は漫画好きで兄にべったり、
一番下の弟はアニメ好きの負けず嫌い。

喧嘩をしているところは誰も見たことがないほどの仲のいい兄弟であった。

煙草屋の角を曲がり、川沿いを三人は走る。
3つの橋を右手に見れば、巨大な屋敷―――天草家が見えてくる。
その豪邸がくすんで見えることに、少年はふと違和感を感じた。

「変だなぁ…」
少年は疑問に思うと同時に、既視感を感じた。
この屋敷はどこかで見たような…
どこかで、そう、20年前。

いや違う、そんなはずはない。


三人が屋敷に近づくと、さらに違和感は大きくなった。
くすんで見えるだけではなく、色あせているようにも見える。
これはあの時の、俺が天草財閥を…

そんな訳があるのか。第一今は…


「どうした?」
「友秋ー?どうしたんだ?」
後ろを走っていた少年の足音が聞こえなくなった事を疑問に感じたのか、二人は歩みを止めた。
前を行っていた少年の、背の高い方が振り向く。
その顔は、忘れもしない中年男。

「ああっ!」
違う、これは現実ではない、これは違う、違う、違う、違う…

「………負け犬が」
中年男が吐き捨てるのを聞きながら、少年の意識は遠ざかっていった。


475 : ◆BNxC/Vtkps :2016/11/18(金) 01:47:37 F8oIs.7Y0
草原の中で死んだように突っ伏していた男…天草友秋は、いつからか見ていた悪夢から解き放たれた。
友秋は起き上がると、見張るように回りを見回した。
周囲の明かりは星明かり程度であり、少なくとも目に見える範囲にはなだらかな起伏と小さな林、草原の影しか見えない。
友秋は少し前を思い出そうとする。
確かいつものアパートを出て、コンビニに行こうとして、変な奴に絡まれて、趣味の悪いパフォーマンスを見せられて…
そして気づけばこれだ。

「…どうやらヤツの言ってた事は、半ば虚言ではないと取れる」

首を触れば、冷たいものを感じる。
やはり自分は、どこの誰かも知らない下種が考えた異能力を用いた殺し合いに巻き込まれたのだと自覚する他なかった。

友秋の頭の中では、ヒューマと名乗った男と兄・天草時春が堕落した実弟の姿を見てケラケラ笑っている姿が浮かぶ。
性格が悪い奴の事だ、時春に異能とやらでこの殺し合いを見せているのかもしれない。

そんな妄想を巡らしつつ、友秋はふと考える。
自らに備わった異能とはどういうものだろうか。
この少しの時間を振り返ってみても、直感的に何か感じたと言うものはない。何かが発動しているということも感じない。
専用の品を特別に支給されたのかもしれないが、回りにカギとなるようなものはデイバッグ以外に見当たらない。
ヒントになりそうなものは、あの場所に移動する前に言われた言葉。
『お前には一度死んで貰う必要がある』、ただ一つだった。


476 : ◆BNxC/Vtkps :2016/11/18(金) 01:47:55 F8oIs.7Y0
「とにかく、異能は早めに把握しなければならないな」

専用の品が何か入っているかもしれない。友秋は回りを警戒しながらデイバッグを開く。
中には乾パンや水と言った食料・飲料と地図、コンパス、白紙の紙。そして、鞘に入った日本刀が一本。
どうやらこれを使えと言う事らしい。友秋はそう考えると、日本刀を引き抜く。
星明かりを受け光る刀身は、今にも参加者の鮮血を求めているようにも見える。

「妖刀、か…?」
もしこれが妖刀ならば、自身に与えられた異能はこれと言う事になる。
巷では刀剣を擬人化した作品が流行っていると聞いた。恐らくはそれだ。

「こんな異能も、あるものなんだな」



「しかし、殺し合いか」

天草友秋は自分の事をきわめて正常な人間と考えている。
物事は円満な和解での平和的解決を望み、無駄な争いは起こしたくはない。
昨日まで何の変哲もない日常を送っていた人間を自分の手で殺す、なんて事は無理だ。
――――――特に悪行も行わず昨日まで何の変哲もない日常を送っていたのならば。

彼には、どうしても復讐したい人間がいた。


477 : ◆BNxC/Vtkps :2016/11/18(金) 01:48:11 F8oIs.7Y0
今やすっかり落ちぶれてしまったが、天草友秋はこう見えても天草財閥の三男である。
創業当初から天草財閥はサブカルチャーに目をつけ、大々的な投資対象としていた。
そのため、天草財閥の創業者である父は後継者として「日本のサブカルチャーを引っ張っていける者」を熱望していた。
当時天草グループの関連会社で社長をしていた友秋も、脚本家の育成を目指すプロジェクトの起案やアニメ雑誌のコンセプトの転換など、
所謂「質アニメ」の制作・宣伝を通して日本のサブカルチャーへの貢献を目指していた。

そんな中、友秋はある日突然父親に呼ばれ、お前ならやっていける、ぜひとも後継者としたい、このことはお前以外には話さないから「その日」が来るまで話すなと伝えられた。
かねてより自身の扱いの改善を求めていた、かつ自分が後継者となるとは全く考えてもいなかった友秋にとってはまさに青天の霹靂である。友秋はすぐさま承諾し、誓約書に判を押した。

それからしばらくして父が亡くなった。大往生だった。
後継者の話は近く側近が公表すると発表された。
お互い自身が総裁となると信じ込む二人の兄の姿は、友秋にとっては毒でしかなかった。
仮に今自分が後継者と明かしたらどうなるだろうか。褒め称えるだろうか。殺してでも社長の座を奪い取るだろうか。


そして「その日」は来た。
―――二代目総裁として、天草時春を選出する、と。



目の前が真っ白になった。
父が持っていた誓約書はどこへ行ったのか?
あの会談の事を誰かが知っていたのか?
彼はすぐさま兄の元に出向き、後継者の事、誓約書の事、全てを打ち明けた。
しかし帰って来た答えは、冷酷なものだった。

『負け惜しみはよせ。そんなものは最初からない』
『…これを見てくれよ兄さん………………どう見ても親父の字だろ』

友秋は一枚の紙を取り出すと、兄の前に開く。
その紙を興味深そうに眺める時春。

『誓約書の写し、か…」
時春は唾を飲む。そして口元を少し緩めて、言い放った。
『だがもう原本はどうやら処分されてしまったようだ』


478 : ◆BNxC/Vtkps :2016/11/18(金) 01:48:26 F8oIs.7Y0
『兄さんにはそんなこと知る余地もないだろう』
『これは私が父から聞いたものだ。いずれ自分の口から友秋に話すと言っていたが…』

時春の話をはばかるようにして、友秋は叫ぶ。
『いい加減にしてくれ!俺が社長になられたら困るのか!?』
『困るんだろう、少なくとも父にとっては』

時春は強く言い放つ。そして静かに語り始める。

『誓約書を処分したのは父自身と聞いている』
『どうやら今の時代、質アニメではやっていけないと考えていたらしい』

『小学生じみた言い訳はやめてくれ!』

まるでふざけたような論弁を繰り返す時春に対して、友秋の怒りは頂点に達していた。
煽るように時春は続ける。

『貰ったんだよ、これをね」
時春はまるでゲームにでも勝ったように、胸ポケットから紙切れを取り出す。

一枚の紙の燃え残り。
まるで信念のように、丁度友秋のサインが書かれた部分だけが白く残っていた。

『………ふざけるなよ』
『私だってこれがジョークだったらどれだけ嬉しかったか』

時春は同情したように言う。

『父は言っていたよ、最早質アニメは売れない。友秋もいつか行き詰まるだろうと』
『そして、お前の考えるアニメ文化の国際化という考えは私の長年の夢と同じ、とても気に入ったともね』

友秋は悟った。
きっと父は最初から後継者を時春にするつもりだったのだろう。
あの発言も虚言だったのだろう。
今まで跡取りとして最善の事を尽くしていたつもりだった。
だが結局は、最愛だった父の手のひらで遊ばれていたに過ぎなかった。
もはや限界だった。


『…そうか』
『分かったか、ならさっさと帰れ』
『……………法廷で会おう』
『無駄な事を』


お家騒動が時春側の勝訴で幕を閉じたのは、それから2年後の事だった。


479 : ◆BNxC/Vtkps :2016/11/18(金) 01:49:00 F8oIs.7Y0
こうして財閥を追われた友秋は、娘の夢を叶えるため芸能事務所を設立。
天草グループから出禁とされた身である以上、サブカルチャー関連に関わるのは難しい。
そう考えた友秋が行きついたのが三次元、リアルアイドルであった。

友秋は一度あるアニメの制作に関わった際、この業界について取材を申し込んだ事があった。
そのためある程度の業界に対する知識はあった。
無論それだけでどうにかなるものではなかったが、ある程度の役には立つだろうと思っていた。




『お願いします!どうかこのグループを…』
『無理だな』

現実は厳しかった。いくら頭を下げても仕事は回ってこず、取り上げられても扱いは非常に小さい。
いつしかグループの仲間は一人、二人と離れていき、所属は娘と、熱意を持ったある新人アイドルのみになってしまった。

同業他社は枕営業や買収といった汚い手を使って仕事を手に入れているらしいと聞いたが、友秋としてはそのような手は使いたくない。
他人に夢を与える仕事であるこそ、汚い手段を使って誰かを悲しませては本末転倒だと今まで関わってきた事業で痛いほど感じてきたからだ。

だが、そうきれいごとを言っていられるような状況はとうに過ぎ去っていた。
友秋は屈辱にまみれながらも、反社会的勢力との交友を行い、ある事務所の有力株と言われていた一人のアイドルをこちらへ移籍させた。

『この事務所でも自分が、そして皆が輝けるように頑張りたい』
友秋はその言葉を信じ、彼女を新しいグループのリーダーとした。

彼女たちの結成したグループは、これまででは信じられないような好待遇を受けた。
音楽番組ではトップを任され、CDはオリコン1位まで上り詰めた。
バラエティ番組にもゲスト枠で呼ばれ、ドラマの主題歌の担当も決定。まるでシナリオに沿っているような、あまりにでき過ぎたストーリーだった。
友秋は事業の成功に喜びながらも、どこか不安だった。
なぜいきなり好待遇を受けることになったのか、その理由がまるでわからなかったのだ。

答えは簡単だった。
連れてきたあのアイドルが枕営業をしていたのだ。
そのことが分かったのは、そいつのグループ卒業宣言から少しあとの、週刊誌のすっぱ抜きだった。

グループは壊滅状態だった。
メンバーのほぼ全員はあいつの言いなり状態になっていた。
あいつに言われれば、枕でもライバル排除でもなんでもやっていたらしい。
あいつの卒業とともに忽然と消えたプロデューサーも、積極的な買収や賄賂によってグループを宣伝するように仕向けていたらしい。

まだそれだけならよかっただろう。
あいつの真の目的がわかったのは、それから少したった頃だった。


480 : ◆BNxC/Vtkps :2016/11/18(金) 01:49:21 F8oIs.7Y0
忘れもしないあの日。

『メンバー間でそのようなことがあったことは把握していますか?』
『私は何も知らされておりません』

その日はメンバー間でのSNSの履歴からグループ内でのいじめが事実であったことが発覚し、友秋は週刊誌からのインタビュー攻めに合っていた。
帰宅時間は深夜3時を回り、このまま家に戻っても到底休める状況ではなかった。
だからせめて家族の顔でも見て元気を出そう、友秋はそう考えた。

しかし、

『おい!何をやってるんだ!』
家に帰った友秋が見たのは、妻と娘が心中している姿だった。

娘はグループ内でのいじめの対象になっていたのだった。
社長の娘という立場が気に入らなかったのだろう。コネ起用だの贔屓枠だのいうだけ言われていたらしい。
発端はあいつだった。それに5人ぐらいが乗っていた。あいつがいなくなってもやまなかったと遺書には書かれていた。
むろん友秋はそんな扱いを行った記憶は一切なかった。だからこそ許せなかった。

さらに許せなかったのが、娘の遺書に書かれていたこれだ。
「あの子の「所詮このグループは踏み台、レベルアップのための通貨儀礼に過ぎなかった」「こんなグループに居続けると腐る」という言葉で心が折れた」と。

あいつは自己顕示欲のために大勢の人間を利用して、唾を吐くように出ていった。
許せなかった。
あの発言も演技だったのだ。また騙された。

『――――――許せねぇ…』



友秋が謝罪会見を開き、社長を退いたのは翌日のことであった。
しかし、どこかでもみ消されたのか、あのアイドルに対してのそれ以上の追及はされることがなかった。

友秋は再び反社会的勢力に接触し、金ならいくらでも出す、だからなんとしてでもあいつらの親族を処分するように頼み込んだ。
人を死に追いやっておいて、自らは悠遊と生きているのが許せなかった。
なんとしてでも同じ屈辱を味合わせたかった。

数か月後、主犯の一人の親が事故死したという報道が入って来た。
友秋は心底愉快だった。主犯のクズが俺と同じ絶望を味わっているということが面白くて仕方がなかった。


481 : ◆BNxC/Vtkps :2016/11/18(金) 01:49:44 F8oIs.7Y0
娘を殺したアイドル共、俺を破滅に追い込んだ天草一族、そして忌々しいあの側近とプロデューサー。
この殺し合いに参加しているかどうかは分からない。
だがもし参加していれば、必ず殺す。
人を不幸にしておいて笑顔を守るとか言っている奴らに、生きる価値はない。

「…ふっ」
ヤツは勝ち残れば、一つだけなら願いを叶えると言った。
過去改変、死者蘇生、なんでも叶えると。

だが願いは一つでは足りない。
側近が居なくなったところで、総裁の座は帰ってこない。
アイドル共が居なくなったところで、娘は帰ってこない。
そいつらを消したところで、ズタズタにされたプライドは治らない。
しかし「一つ」は叶うのであれば、それで十分だ。

「俺に都合がいい世界になればいい…」

だから勝ち抜かなければならない。
復讐するために勝ち抜かなければならない。


「………………面白れぇ」

この殺し合いに参加している奴は、駒だ。
殺し合いに乗った奴も乗らなかった奴も、全てを利用して勝ち抜いてやる。
善人をこの手で殺すのは憚られる。だが相手がクズなら無問題だ。
クズもこちらを殺す気マンマンだろう。正当防衛が通用する。
アイドル共や天草一族、そしてあの側近やプロデューサーがいたならば、苦しみ抜いて死んで貰おう。

そのためには、まずは体制を整えなければならない。

集落に行けば物資が手に入る。そこを目指すカモはごまんといるはずだ。
まずはそこに来た奴を利用して情報を集めるとするか。
友秋はデイバッグを掴み、歩き始める。

「絶対に許さんぞ…クズ共…必ずぶっ殺してやるからな…」

その感情は本心か、それとも彼に与えられた異能…オルフェノクの闘争本能によるものなのか。
明確に言えるのは、彼は正気であって、正気ではない、と言う事だ。


482 : ◆BNxC/Vtkps :2016/11/18(金) 01:50:00 F8oIs.7Y0



「……………はぁ」

時を同じくして、天草あかねは同じ丘の、小さな林の中にいた。
偶然にも木々と暗闇に身を隠した形になった彼女は、友秋に見つかる事なくここにいられた。

これがドッキリだったらどれだけ嬉しかっただろう。
現に彼女は首輪を付けられている。
それだけではなく、この闇の中、一瞬何かがキラリと何かが光ったのも見ていた。
恐らく参加者が近くにいるだろう。
そして彼女に支給されたデイバッグは、やたらと重い。
良くて重火器、いやそれ以上の殺傷能力を持つものが入っているかもしれない。

彼女は単なる一般人である。殺し合いに乗る気は当然ない。
しかし、この中には当然殺し合いに乗った人もいるだろう。
もし参加者に襲われればどうすればいいのだろうか。
彼女が持つ剣道3段の実力でさえ、異能相手では無意味だろう。

「怖いよ…」

ああ、ここに士郎お兄ちゃんが来て、助けてくれたらいいのに。
見知らぬ誰かに殺し合えと言われ、見知らぬ誰かと共に見知らぬ場所に連れてこられた彼女が、心細くない訳がなかった。

「確か、誰が参加しているのかわかるのは、六時間後だったよね」

もしかしたら、士郎やゆたかが参加しているかもしれない。
彼らが参加しているのなら、どこかで合流しよう。

そのためにもまずは生き残るしかない。そう彼女は決心する。


483 : ◆BNxC/Vtkps :2016/11/18(金) 01:50:45 F8oIs.7Y0
「まずはこの中身を確認しないと…」
彼女はデイバッグを開け、中身を確認する。
その中には、食料や折りたたまれた自転車に加え、見覚えのある王冠飾りのついたステッキが見える。

「これって…もしかして…」
ステッキを手に取った彼女は、まじまじとそれを細部まで眺める。
やっぱり間違いない。紛れもなくこれは、私の大好きなあの作品の、
「メテオテールだ…」

アニメ「コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜」に登場するアイテム、魔法の杖メテオテール。
同作品のキャラクター・星野輝子が使用するアイテムで、この杖を振り、「メテオテール」と唱えることで魔法を行使する。

もしかして、本当に使えるのだろうか。
あかねは唾をのむ。
そして、そそくさとバックから自転車を取り出すと、ステッキを振る。
「メテオテール」


畳まれた自転車は一人でに起き上がると、彼女の周りを回転木馬のように回る。
「凄い…」

自らが異能を使えるということに、あかねは感動すら覚えていた。
しかも自らの異能は、一般物理法則をマジカルに逸脱する魔法の行使。
あかねの頭の中に、士郎を襲う参加者を、自らが魔法で撃退する姿がおぼろげに浮かぶ。

「でもこれだけじゃ、ちょっと」

原作で輝子が自らの身で行使出来る魔法は、せいぜいある程度の大きさのものを動かす程度である。
これ以上の魔法を行使するためには、サポートキャラ・ウルにチャンネルセットをしてもらう必要がある。
しかしながら、そのウルがここにいるような気配はない。

「もしかして、バッグの中にいたりして」


484 : ◆BNxC/Vtkps :2016/11/18(金) 01:51:04 F8oIs.7Y0
彼女はバッグの中身を全て出し、中を探そうとする。
食料の下には、白い粉の入った袋が敷き詰められていた。
「ひっ」

彼女は恐る恐るそれを手に取り、それが何か確認しようとする。
ラベルには崩された漢字が踊る。かろうじて分かるのは、「農薬」の文字程度。
それを見た瞬間、彼女は直感的に悟ってしまった。
これが自分に与えられた武器なのだと。
「もしかして…これを食料に混ぜて…」

捨てられるのなら、ここで捨ててしまいたかった。
しかしここにばらまくと言う手もこの量では無理だ。
そして、捨てれば恐らくは誰かに拾われるだろう。
その後に待っているのは…

「持っていかなきゃ」

彼女は、自らの手でバッドエンドを作り上げるのが嫌だった。
だからこそ、持たねばならなかった。
他の参加者に悪用されるよりは、自分で持っていた方がマシだ。
そう考えた彼女は、農薬の入った袋を鞄に入れる。

夜は更けていく。
この暗闇の中を無暗に動くのは危険と考えた彼女は、しばらくの間この林に隠れている事にした。
朝日が昇るころには他に誰が参加しているかもわかる。その後の事は、それから考えよう。
彼女はそう考え、近くに木に腰掛けた。

「うぎゃっ」
男の声がする。

彼女はすぐに立ち上がる。
さっきまで腰かけていた木に、赤い起き上がりこぼしがしがみつくように乗っていた。
間違いない、ウルだ。でもさっき探したときはそこには居なかったはずだ。さっきまでどこにいたのだろうか。
色々思うことはあったが、彼女は赤い起き上がりこぼしをつかむ。

「気絶してる…」

彼女が真相に気づくのは、もう少し後になりそうだ。


485 : ◆BNxC/Vtkps :2016/11/18(金) 01:51:26 F8oIs.7Y0
【一日目・1時10分/・I-6 丘】

【天草友秋@ドラゴンオルフェノク/仮面ライダー555】
[状態]:狂乱(自覚なし)
[装備]:日本刀
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0〜2
[思考・行動]
基本方針:参加者をうまく利用して勝ち残る、そのためには何が犠牲になろうと構わない
1:他の参加者の情報が欲しい
2:娘を死に追いやった遠因であるアイドル共が参加していれば、俺がこの手で殺す
3:天草一族、特に天草時春が参加していれば俺と同じ屈辱を味わって貰う

[備考]
※自身のオルフェノク化には気づいてません
※支給品の刀を妖刀と信じています

【天草あかね@魔法の杖メテオテールとサポートキャラのウル@コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜】
[状態]:健康
[装備]:魔法の杖メテオテール@コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜
[道具]:基本支給品一式、マッハじてんしゃ@ポケットモンスター ルビー・サファイア・エメラルド、農薬3袋
[思考・行動]
基本方針:生き残る。
1:ウルはさっきまでどこにいたんだろう?
2:信頼できる人を見つけ出して合流する。

[備考]
※自分の異能を自覚しました

支給品紹介
【マッハじてんしゃ/ポケットモンスター ルビー・サファイア・エメラルド】
歩行の二倍以上の速さで移動できる折り畳み式自転車。
十分な加速があれば、砂の坂やひび割れた床の上くらいなら走行可能。


486 : ◆BNxC/Vtkps :2016/11/18(金) 01:52:11 F8oIs.7Y0
投下終了です
タイトルは『超人誕生 光と影』に変更させて頂きます。


487 : 名無しさん :2016/11/18(金) 03:23:17 RUyrbMoE0
残念だがポケモン(>マッハ自転車)は参戦してないんだな・・・・・・把握ミスかな?
ただの支給品差し替えで話を終わらせなかったのは良かっただけに勿体ない


488 : ◆BNxC/Vtkps :2016/11/18(金) 20:23:21 LLhS2vI20
ああ完全に勘違いしてたわ
参加者が持ってる異能の原作から出していいって事ね


幸いにも>>485のテンプレ少し弄るだけで済みそうなんでそこだけ再投下します


【一日目・1時10分/・I-6 丘】

【天草友秋@ドラゴンオルフェノク/仮面ライダー555】
[状態]:狂乱(自覚なし)
[装備]:日本刀
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0〜2
[思考・行動]
基本方針:参加者をうまく利用して勝ち残る、そのためには何が犠牲になろうと構わない
1:他の参加者の情報が欲しい
2:娘を死に追いやった遠因であるアイドル共が参加していれば、俺がこの手で殺す
3:天草一族、特に天草時春が参加していれば俺と同じ屈辱を味わって貰う

[備考]
※自身のオルフェノク化には気づいてません
※支給品の刀を妖刀と信じています

【天草あかね@魔法の杖メテオテールとサポートキャラのウル@コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜】
[状態]:健康
[装備]:魔法の杖メテオテール@コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜
[道具]:基本支給品一式、折り畳み式自転車、農薬3袋
[思考・行動]
基本方針:生き残る。
1:ウルはさっきまでどこにいたんだろう?
2:信頼できる人を見つけ出して合流する。

[備考]
※自分の異能を自覚しました


489 : ◆7PJBZrstcc :2016/11/19(土) 19:12:25 fmP1LDQE0
投下します


490 : 都市伝説B/絶対自分至上主義 ◆7PJBZrstcc :2016/11/19(土) 19:13:09 fmP1LDQE0
 夜の沖木島に1人の少年が立っている。
 その少年は、胸元の開いた白いシャツとラメの入った派手な赤いパンツを着こなし、輝くような金髪を持った日本人離れした美形の持ち主だ。
 例えるなら、まさしく絵にかいたような王子様。
 そんな彼の名はKENGO、高校生にして歌って踊れるアイドルである。
 そのKENGOは今

「殺し合いか、ドッキリだよな?」

 この現状を、真実かどうか疑っていた。
 常識的に考えて殺し合いなどありえない、現実的じゃない。
 そんな思いがKENGOを支配している。
 しかし

「でもあの最初に死んだ二人の行動や言動は、演技だと思えない……」

 KENGOは同時にドッキリではないのか、とも思っていた。
 もしもこれがドッキリなら、最初に死んだ二人は当然仕掛け人という事になる。
 だがあの二人の怒りや驚きは演技だとは思えなかった。
 KENGOはそれなりに人の良い面も悪い面も見てきた、少なくとも演技しているのであれば多少は分かるつもりだ。
 それにあの二人の死体、東ジョーと名乗った男の方はともかく、最初に首輪の爆発で死んだ五十嵐椿と呼ばれていた女の死体は本物にしか見えなかった。
 もっとも、死体の真贋を区別できるわけではないので何とも言えないが。
 KENGOには、あの死体が日本の誇る技術で作られた特殊メイクだと言われて反論できる自信はない。

「とりあえず、この殺し合いは本物だと仮定して動くか」

 ドッキリという可能性を捨てるわけじゃない、それでも基本的には本当の事だと思うべきだろう。
 殺し合いをドッキリだと楽観して死ぬのはごめんだ。
 そうなるくらいだったら、ドッキリを本物だと思っている方がマシだ。
 それにドッキリだった場合、本物だと思って動いている方が番組の為にもなるだろうし。

 そんな事を考えながらKENGOは周りを見る。
 殺し合いが本物であろうと偽物であろうと、まずすべきは現在地と支給品の確認だ。
 そして支給品の確認を、こんな外でやる気は無かった。
 どこかに建物は無いか、と探しているとKENGOは建物を見つける。
 暗いからか良く見えないが、塔のようなものだろうか。
 更に、今までは気づかなかったが良く聞くと近くから波の音が聞こえる。
 波の音が聞こえるという事は海辺。
 海辺にある塔といえば

「灯台か」

 とりあえず最初の目的地を灯台に定め、KENGOは歩き出した。
 そしてしばらく歩くと灯台の入口の扉の前になんの障害もなく辿り着く事が出来た。
 KENGOは入口の扉を開けようとする。
 しかし、扉はKENGOが開けるよりも先に開く。
 しまった、誰かいるのか。そう思いKENGOは扉から少し距離を取る。
 そして中からはKENGOの予想通り別の参加者が居た。
 その参加者の風体を見て、KENGOは心底驚く。


491 : 都市伝説B/絶対自分至上主義 ◆7PJBZrstcc :2016/11/19(土) 19:13:50 fmP1LDQE0

 その参加者は見た感じ男で、丸々とした力士のような巨漢である。
 そこまではいい、問題はここからだ。
 その男は豚のマスクを被り、エプロンを着こなしていた。
 そして右手には巨大な肉斬り包丁。
 KENGOは知っている。その姿をした存在を知っていた。

「ブッチャー、マン……!?」

 都市伝説ブッチャーマン。
 それは夜、人気のない場所に現れる謎の男である。
 その男に攫われた者は一片の容赦なく殺され、解体されるという。
 解体された死体の用途は不明。
 食べるためとも言われているし、一説には邪教の神に捧げているとも言われている。

 確かなことはただ一つ。
 ブッチャーマン、そいつに出会う事は死を意味する。
 ただ一つの例外を除いて。

「本当にいたのか……!?」

 KENGOは都市伝説であり、実在するとは思っていなかったブッチャーマンに驚く。
 そしてブッチャーマンはその隙を見逃さない。
 力士のような巨体からは想像もできない俊敏さでKENGOの目の前に移動する。
 KENGOがその事に気づき逃げようとするものの、ブッチャーマンの左手がKENGOを掴んでいた。

「いつの間に!?」

 KENGOが自分はもう逃げられないと悟ると、ブッチャーマンに立ち向かう決意をする。
 そしてKENGOは、ブッチャーマンが被っている豚のマスクへ右手を伸ばす。

 ブッチャーマンと出会い、死から逃れる方法はただ一つ。

 ――それは確か、マスクを剥がして素顔を見る事だったな!

 ブッチャーマンが何故都市伝説という形とはいえ人に知られているのか。
 その答えは一つ、ブッチャーマンと出会い生き残っている人間が一人居るから。
 そしてブッチャーマンと出会った人間はこう言った。

『無我夢中で抵抗していたら、いつの間にかマスクを剥いでいた。
 そしたら、こっちの事なんか忘れて必死になって落ちたマスクを拾っていた』

 とはいえ、この状況でマスクの下の素顔なんて覚えているわけもなく、豚のマスクを被った危険人物がいるという風に警察は捜査する。
 しかし、そんな人物はいくら捜査しても出てこないので次第に風化し、都市伝説となっていったのだった。

「これでなんとか……!」

 そしてその話を知っていたKENGOはブッチャーマンのマスクを狙う。
 だが

「くそっ……、たれ……」

 KENGOの手が届くよりも先に、ブッチャーマンがKENGOの上半身と下半身を分断させる。
 そしてブッチャーマンは一片の油断なく、KENGOの頭を踏みつぶした。

【KENGO@大嘘憑き/めだかボックス 死亡】


492 : 都市伝説B/絶対自分至上主義 ◆7PJBZrstcc :2016/11/19(土) 19:14:27 fmP1LDQE0



 ブッチャーマンが殺し合いの宣言を受けて、最初に思ったことは歓喜だった。
 何せ人を殺しつくすだけでどんな願いでもかなうと言うのだから。
 そんなブッチャーマンの願いは、食事に困らない生活をすることである。

 ブッチャーマンは殺人鬼である。
 だが人を殺すことに喜びを覚える快楽殺人鬼ではない。
 彼が人を殺す理由は、食料を獲得する為にほかならない。
 人を殺して食べれば食費は0。金銭を得て社会に適応しているわけではない彼からすれば一番楽な手段なのだ。
 だが狩りというものは危険がつきもの。危険がないに越したことは無い。
 そんな彼からすればこの殺し合いはチャンスそのものだ。
 このゲームにリスクはあるものの、これを勝ち抜けば未来永劫の安息が得られるのだから。

 そんな事を考えていると、いつの間にかブッチャーマンは灯台の展望部分に移動していた。
 自身に起きた瞬間移動に少し驚きつつも、彼は自分のデイバッグを調べる。
 すると中に入っていたものは愛用の肉斬り包丁だった。
 愛用の武器がある事に安心しつつ、彼は他のデイバッグの中身を見る。
 色々調べるうちにこの島の地図を見つけ、現在地を調べ、これから先行く場所を考える。

 そして次の目的地をH-8にある集落に決め、出発しようとした矢先、1つの人影がこっちに向かってくるのが見えた。
 その人間を出発前に殺しておこうと思ったブッチャーマンは灯台の中から奇襲する。
 その後、多少抵抗されたもののブッチャーマンはその人間の殺害に成功したのだった。

 改めて出発しようと思った所で、ブッチャーマンはこう思った。

 ――この人間どうしよう、と。

 他の支給品は別にいらなかった。ブッチャーマンに必要な武器は愛用の肉斬り包丁だけだ。
 それに他に荷物を増やしたらいざという時に必要なものを出せなくなるかもしれない。

 この人間の一部を切り取って非常食に持ち歩く事も考えた。
 だが人間の死体というのは臭いがきつい。もしも隠れている最中に臭いが原因で見つかったら大変だ。
 だけど非常食にするくらいならいいかもしれない。
 そう思ったブッチャーマンは死体を灯台の中に放り込む。
 隠し方が雑なのは、この死体はあくまで予備なので別に見つかっても対して支障がないからである。

 一連の作業を済ませたブッチャーマンは出発する。
 これから歩く道はブッチャーマンにとっては幸せへの架け橋、そのせいか足取りは軽やかだ。
 そして灯台は、しばらく歩くと見えなくなっていった。

【一日目・1時00分/C-10】

【ブッチャーマン@喰種の肉体と赫子/東京喰種】
[状態]:健康
[装備]:巨大な肉斬り包丁
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜2(確認済み)
[思考・行動]
基本方針:優勝して食事に困らない生活を手に入れる
1:人の多そうな集落に向かう


493 : 都市伝説B/絶対自分至上主義 ◆7PJBZrstcc :2016/11/19(土) 19:14:55 fmP1LDQE0



















 時は少し遡る。

【KENGO@大嘘憑き/めだかボックス 復活】


494 : 都市伝説B/絶対自分至上主義 ◆7PJBZrstcc :2016/11/19(土) 19:15:36 fmP1LDQE0



 ブッチャーマンが灯台を出発して数分後、KENGOは死体から生きている体に戻った。
 それも、潰された頭も両断された体も元に戻った状態で。
 KENGOは自身の体を見ながら呟く。

「とりあえず、これは間違いなくドッキリじゃないな」

 KENGOはここでドッキリの可能性を捨てた。
 殺し合いもという現実も、ナオ・ヒューマが言っていた異能も間違いなく真実だ。
 自分は間違いなく一度死んで、そして甦った。

「となると、俺に与えられた異能は死から甦るほどの治癒能力なのか?」

 自身の異能を考察したものの、明確な答えは出ない。
 KENGOは考察を打ち切り、違う事を考え始める。
 それはこの殺し合いでどうするか、どんなふうに立ち回るかだ。

「確かナオ・ヒューマは言ってたな、ここでいくら殺しても経歴に傷はつかないと」

 KENGOはアイドルだ、そしてアイドルに傷はあり得ない。それがないと保障されているのはありがたい。
 だが問題がある。それは――

「ふざけるな。俺明日も仕事があるんだぞ……!」

 KENGOはアイドルだ、それも大人気と上に付けても問題ない程の。
 そんな彼に休みの日は少ない。明日も当然仕事だ。
 それをバックれるなどしたら今後の人生に関わる。
 まさかこの殺し合いが1時間や2時間で終わる訳はないだろう。

「それにもう一つ問題がある」

 そう言ってKENGOが思い浮かべるのはナオ・ヒューマが殺し合いの開催を告げたあの場所だ。
 あの場所に居たのはKENGOから見ればほとんどがどうでもいい一般人だ、そいつらの事は気にする事はない。
 だが一部、どうでもいいと割り切るには問題のある人間が居た。

 井上快夢
 郷音ツボミ
 道端ロクサーヌ
 天草時春
 レオパルド・ガーネット

 この5人だ。
 最初の二人はアイドル、正直どうでもいいが同時間に居なくなった事を見て週刊誌の記者がある事ない事書きかねない。
 なので死なずに生きていて欲しい人間だ。生きて元の場所に戻れればあいつらも否定するだろう。
 だが残り3人はどうでもいいとは言い難い。
 この3人は悔しいが間違いなく自分以上の知名度を持つ、そいつらがこの殺し合いで死んで万が一自分が生き残り元の場所に帰ったら世間は何と思うだろうか。
 勿論大半の人間は気にも留めないかもしれない、だがひょっとしたら誰かが関連づけるかもしれない。
 それがスキャンダルになったら俺のアイドル人生にケチがつくかもしれない。
 となると選択肢はこうだ。


495 : 都市伝説B/絶対自分至上主義 ◆7PJBZrstcc :2016/11/19(土) 19:16:30 fmP1LDQE0

「俺が優勝してブッチャーマン除く参加者全員を蘇生させるか、殺し合いに呼び出された直後の時間に帰るしかないって事か」

 どっちにしろ優勝しなきゃいけないってのは決まりだな。
 ならばすることは

「変装だな」

 殺し合いに乗ると決めた以上、やるべきことはなるべく目立たないようにすることだ。
 だがKENGOは有名アイドル、どうやっても目立ってしまう。
 ならば変装するしかない。
 カツラでも被って、メガネでも掛けて、あとは雰囲気で分からないように演技すれば問題ないだろう。

「変装か、正直抵抗はあるな……」

 自分のこの美しい顔を隠すことになる、それは正直なところ嫌なものだ。
 だが醜い死に様を晒すのはもっと嫌だ、死後に崇められるのは画家だけで沢山だ。

「それにしても……」

 こうしてある程度の行動方針を決めたところで、KENGOは小さな疑問が芽生える。
 ナオ・ヒューマが殺し合いの開催を告げたあの場所で見たアイドル、井上快夢の事だった。

「あいつって、あんな雰囲気だったか?」

 井上快夢とは何度か共演したことがある、その時の彼女はもっと清らかというか穢れがない感じがした。
 だがあの場に居た彼女からは途方もない憎悪、ドス黒い何かを感じた。

「まあいいか」

 ここまで考えてKENGOは考えを打ち切った。
 別にあいつがどんなキャラだろうと自分には関係ないし、いずれは殺すかもしれない相手をそこまで気に掛ける道理はない。

「そんな事より、まずは灯台を探索をするか。何かあるかもしれないからな」

 こうしてKENGOは優勝を目指して動き始めた。

 だが彼は知らない。
 井上快夢が郷音ツボミの悪意と、善養寺十次という老人が告げた真実によって発狂している事を。
 少なくとも一部の参加者が自分とは違う時間から呼び出されている事を。
 そして、自分に与えられた異能が治癒能力のような前向きな力ではない事を。

【一日目・1時00分/C-10 灯台内部】

【KENGO@大嘘憑き/めだかボックス】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品1〜3
[思考・行動]
基本方針:優勝して、自分に関わるスキャンダルが起きないような願いをする
1:灯台を探索する
2:アイドルのKENGOとばれないようにする為に変装し、目立たないように他の奴を殺す
3:井上快夢って、あんな雰囲気だったか?
[備考]
※井上快夢がビルから突き落とされるより前から参戦しています
※参加者は全員同じ時間から参戦していると思っています
※自分の異能を治癒能力だと思っています
※大嘘憑きの制限は以下の通りです。
首輪、参加者の存在、支給された異能、沖木島や島の施設をなかったことにすることは出来ません。
自身の復活:5回まで(残り4回)
他者の復活:5回まで(残り5回)
それ以外の使用は1時間に1回可能


496 : ◆7PJBZrstcc :2016/11/19(土) 19:17:06 fmP1LDQE0
投下終了です


497 : 名無しさん :2016/11/19(土) 20:37:11 g60kk1Dk0
投下乙です
ブッチャーマンはともかくKENGOも殺しあいに乗ったか
いちおう優勝したら一部例外を除いて生き返すつもりとはいえ能力はブッチャーマンのそれよりも脅威だなあ
読んでる時はKENGOどうやって殺すの?と思ったけど、回数制なら納得ですね


498 : ◆YlfcDuGY1. :2016/11/26(土) 11:22:25 uV0jGXZ20
予約の道端ロクサーヌ、君島蛍を投下します


499 : しんえん! ◆YlfcDuGY1. :2016/11/26(土) 11:24:26 uV0jGXZ20
道端ロクサーヌ。
日本人の父とフランス人の母との間に産まれたハーフであり、プラチナブロンドのウェーブがかかった長髪に抜群のスタイルを持った美貌を持つ女。
テレビや雑誌を中心に幅広く活動し、日本ではその名を知らぬ者はいないとされるほどの超有名モデルである。
美貌だけでなく、自信に満ち溢れ、かつ礼節を重んじる実直な性格から彼女に憧れるファンは老若男女問わずに多い。
唯一、欠点があるとするならば他人が食べれる物を全く作れない料理の腕くらいであろう。
まさに彼女は現在のトップモデルに相応しい美しさと器を持ったレディと言えた。



そんな超有名モデルとうたわれるロクサーヌが目覚めたのは、沖木島のとある林の中であった。

「これハ……」

気品のあるベージュのトレンチコートにブーツ、闇夜でも輝くプラチナブロンドの髪。
コートごしの背中からでもわかるぐらいのスタイルの良さに誰でも目を惹かれるだろう。


だが、世間で知られているロクサーヌの姿で似ている部分はそこだけだった。


搾り出されたその声は辛うじて言葉としては聞き取れるものの、何か人間とは違う別の生き物の声のようだった。
手には人間を殺傷できそうなするどく尖った爪が生えており、これまた生き物の肉を容易く食い千切れそうな牙が口からはみ出ている。
不気味な真っ赤な瞳が顔の半分を覆うほどびっしりと覗き、肌も疫病にでもかかったかのような斑点や死体のような体色が目立つ。
プラチナブロンドの髪が生えた頭も、よく見ると角とも触手ともとれる何かが生えていた。
これらはあくまで露出している部分であり、服の下もおそらくは人間のそれとは違う物があるのであろう。
このような姿を持つ女性を人は美人とは言わないだろう。
名状しがたき異形……そういうべきだろう。


道端ロクサーヌがナオ=ヒューマに施された肉体改造は名状しがたき力……クトゥルフ神話をモチーフにした作品“SAVE”、その男性主人公であるウズラの持っていた“名状しがたき力”を与えられたのだ。
その結果、ロクサーヌは辛うじて人の形を保っている程度の異形と化した。
彼女自身も先の殺し合いの説明会場となっていたあの場で、肉体に違和感を感じていた。(それと二人の男女が殺された惨劇に気を取られた結果、レオポルドや時春などの有名人も殺し合いに招かれていたことに気づかなかったが)
違和感の正体を確かめるべく、手探りで自分の体を確かめる。
それでわかったことは自分の体から生えている爪や牙、人間の持ちえないもの全てが作り物ではないということだった。

「特殊メイク……ナンカじゃない。全部、直二生えてるものだ……」

自分が異形と化したことに衝撃を受けるロクサーヌ。
どうやってやったのか検討もつかないが、人間……それどころかどこの生き物かもわからない“何か”を移植されたところで、ヒューマがかなりの能力もしくは技術を持っていることがわかる。
夢かドッキリかと思いたいところだが、これは紛れもない現実で、実際に自分は異形と化しているのは間違いではないと肌でわかった。
ナオ=ヒューマの言っていた肉体改造は嘘ではない……転じて殺し合いをしろというのも嘘ではないだろう。
これでどこぞのテレビ局が仕掛けたドッキリ番組企画の線は消失した。

「…………クッ」

そして何よりも、母親と父親から与えられ、自分なりの努力と研究で育み磨いてきた美貌が、どこの誰ともしれない輩にグチャグチャにされて醜い姿にされたことにロクサーヌは怒りと悲しみを覚えた。
戻れるものならすぐにでも元の姿に戻りたかった。
そこへ脳裏に主催者の優勝すれば特典として元に戻すという言葉が反芻する。
仮に他者を殺して最後の一人になればロクサーヌはかつての美貌を取り戻せるだろう。

「……悪党二負けてたまるもんですか。
私ハ意地デモ殺し合い二乗りませんよ……」

しかし、ロクサーヌは強い女であった。
確かに元の姿に戻して欲しいとは強く願っている。
だからと言って元の姿に戻りたいがために殺し合いに乗ってしまったら、それこそ主催者の思うツボだろう。
ナオ=ヒューマはそれを見越してわざと美しさで食べているモデルである自分を異形にした可能性だってある。
望まぬ肉体改造を施したのは主催者であるのに、それで主催者に従って殺し合いに乗ったら悪党への泣き寝入りと何も変わらない。
自分のためだけに他者を犠牲にすることは浅ましいことだと思い、ロクサーヌはその実直さ故に、体は醜くなっても心までは醜女には成り下がる気はなかった。


500 : しんえん! ◆YlfcDuGY1. :2016/11/26(土) 11:25:14 uV0jGXZ20

(ナオ=ヒューマは優勝すれば元に戻せるとも言っていたということは、彼に元に戻せる手段があるということ。
……優勝する必要なんてどこにもない。彼を捕まえて、元に戻れる方法を吐かせればいい!)

ヒューマは参加者たる人々を拉致し、その全員に肉体改造を施した下手人だ。
ということは元に戻すこともできるということであり、本人もそれを口にしていた。

(最悪、この場で捕まえられなくとも、この殺し合いから脱出は目指そう。
後は警察に彼を逮捕してもらえばいい)

ヒューマが会場である沖木島や自分や他の者の力を借りても捕まえられない場合は、真っ向から戦わずに逃げてしまうのも手だ。
ロクサーヌ自身は喧嘩の仕方もよくわからない素人であるし、他の人々も荒事が得意かどうかはわからない。
犠牲をなるべく出さないためにも島から脱出することを優先させるべきだろう。
後は権力と武力を持った国家機関に任せる方が無難である。
最終的に元に戻れるならロクサーヌとしては文句はない。

(見ていなさい、ナオ=ヒューマ。
私は絶対に殺し合いには乗りません!
あなたが望んでいるであろう化物になってやるものですか!)

ロクサーヌはこうして主催に抗う決意を強く固めた。


(まず私がやるべきことは、殺し合いに乗っていない人々との合流……いくら生存がかかっているからって人殺しをやりたくない人々は必ずいるはず。
そして、殺し合いに乗ってしまった人は説得する……殺し合いが馬鹿げていることを教えなくては)

一先ず、殺し合いに乗っていない人々との合流を目指すロクサーヌ。
道中で殺し合いに乗った者が現れた場合は、説得してこちら側に引き入れるつもりだ。
ロクサーヌ自身は異形となっている自分の体になんらかの戦闘能力・異能があるのは薄々気づいているが、それでも暴力は振るいたくなかった。
例え敵対した相手を確実に殺せる異能であっても、暴力による解決は避けたいのである。

(ん? あれは……?)

ふと、ロクサーヌはそう離れていない場所に一人の少女がいることを確認する。
その少女は外見的には非常に小柄で中学生……いや、見ようによっては小学生にも見えるくらい小さな少女であった。




「ナオ=ヒューマだかなんだか知らないけど! 殺し合いになんか乗ってやるもんですか!」

腰を巻き上げているだけのミニスカ制服、ルーズソックス 、短いツインテール、何より小中学生に間違えられそうなほど小柄な女子高校生、君島蛍は殺し合いを押し付けてきた主催者ナオ=ヒューマに対してひどく“憤慨”していた。
実際は子供っぽくプンスカプンスカしていたというべきだが、日曜の朝にプリキュアと仮面ライダーを見てたりしても大人らしさに拘る彼女のために“憤慨”と書かせてもらおう。
そして会場に転送されてから30分ほどは恐怖で泣いて怯えていたが、涙を流している内に恐怖は怒りに変わり、義憤になった。
なぜ自分がいきなり拉致されて望まぬ殺し合いを押し付けられなけらばならないのか。
自分だけではなく、他の人達も拐われて殺し合いを強制された者達に違いない。
自分が楽しみたいために人と人を殺し合わせようとするヒューマの非人道的な行いが蛍には許せなかった。

(絶対にこの首輪を外して、こんな島から出て行ってやるんだからね!)

蛍にはこの殺し合いをただ否定するだけではなく、脱出のための指針も考えていた。
禁止エリアに入るもしくは島の外に出ると自爆して参加者の命を奪う首輪。
これがある限り、参加者は主催には逆らえない。
殺し合いを打破もしくは脱出したいなら、全ての参加者の足枷になっている首輪を外す必要があると蛍は睨んだのだ。
これは期末テスト全校生徒197人中48位に入る程度に頭が良い彼女が導き出した答えであった。


501 : しんえん! ◆YlfcDuGY1. :2016/11/26(土) 11:25:55 uV0jGXZ20

「あの場にはちっちゃい子供や走るのも大変そうなおじいさんもいた。
立派なお姉さんとしてそういった他の人達も守ってやらなきゃ」
(そのためにも首輪を外せそうな道具を揃えて、機械に詳しそうな人を見つけないとね)

蛍はどこかで盗聴されている危険性も考慮して殺し合いを否定している以上のことは口に出さない。
首輪を外す手段を探していることがバレてしまえば、ヒューマから妨害され、最悪首輪を爆破して殺されると危惧していたからである。
ちなみに先に言った立派なお姉さんとして他の人を守りたいという言葉は真意を隠すためのカモフラージュではなく、心からの言葉である。

「……とは言ったものの、何か身を守る武器とかないと心細いね。
自分に与えられた異能っていうのもよくわからないし。
仮面ライダーやプリキュアに変身できるアイテムとかないかな……」

殺し合いに乗った人間も0ではないだろうし、武器もなしに島を彷徨うのは危険だと思った蛍はディパックを足元に下ろして支給品を確認した。

「……? なにこれ?」

中から一枚のメモが現れた。

 ■ ■ ■

☆指パッチンのやり方


正式名称 フィンガースナップ。
指をこすって鳴らす動きであり、親指と中指をこすりつけ、中指を親指の付け根に勢い良く打ち当てる事で、パッチンという音が鳴る。

パッチンという音は指をこすった摩擦音ではなく、空気を弾いている音。
原理は拍手など手をたたいて音を出すのとほぼ同じ、中指を親指の付け根部分に振り下ろした時に空気が振動し、それが音波として鳴っている。
勘違いされがちだが指のこすれ音ではなく、破裂音や振動音なのだ。


○鳴らし方のコツ

使う指は親指と中指。
中指を軽く曲げ、親指を中指の第1間接の上のあたりに付ける。
そして薬指を親指の付け根に付ける。
親指と中指をこすり、中指は親指の付け根に振り下ろす。
この時、薬指は伸ばしておかないとうまく鳴らない。
また薬指と小指は手のひらにピタッとくっつけず、空洞を作るようにすること。

小指を握りこまない(くっつけすぎない)事がポイント。
この方法でたいていは鳴るが、鳴りが悪いようなら指をこする位置をずらすなどして工夫してみよう。

 ■ ■ ■

「……なんで指パッチンのやり方なんて書いた紙があるんだろ?」

ハズレ支給品か?
などと思いながら呆れかえる蛍。
指パッチンなど皆でカラオケやパーティーで集まった時、使えてればそこそこの受けが狙えそうだが、殺し合いでは何に使えるというのか?

……などと思いつつ、蛍の右手の指は説明書き通りに指パッチンができる形になっていた。
指パッチンをしようとしたことに大した意味などない。
ただのその場のノリであった。

一回目、音が出ない。失敗。
二回目、強く指の擦れた音だけがする。失敗。
三回目、今度は指を擦る位置をずらして鳴らそうとする。

三度目の正直、蛍の指からパッチンという空気を弾く音が生まれた。

「え」

その瞬間、蛍は指パッチンをした右手から違和感を感じた。
何かが指先から強い空気の塊が放たれたのを確かに感じた。

そして次の瞬間、指パッチンの進行先の木が“真っ二つ”になってしまったのだ。

「嘘でしょ!?」

指パッチンと同時に木が二つに分かれる。
日常ではありえない光景に唖然となる蛍。


502 : しんえん! ◆YlfcDuGY1. :2016/11/26(土) 11:26:23 uV0jGXZ20

「いったいどうして……?」

最初はどうしてこうなったのかが理解できなかった。
指パッチンで木が割れる因果関係がわからなかった。

「いや、ひょっとして……!」

少しの間だけ思考停止していた蛍だったが、思い当たる節に気づき、メモを足元に置き、今度は二丁拳銃のように指パッチンの構えをした。
そして二つのパッチンというこ気味の良い音と共に、前方にあった二本の木が両断された。
続けて、今度は足元の草むらや手近な岩に向けて指パッチンをする。
草むらはバッサリと伐採され、岩も真っ二つになった。
そこで蛍は己に与えられた異能について理解した。

「間違いないよ。
指パッチンから真空波みたいなものを生み出して両断する……これが私の能力なんだ!」


君島蛍に与えられた能力はジャイアントロボに登場する悪役集団・BF団、その中でも幹部クラスに当たる十傑衆が一人、素晴らしきヒィッツカラルドの能力“一指全断”。
この能力を使いこなしていたヒィッツカラルドは、個人でありながら軍隊の基地に真正面から殴り込みをかけ、ロボット兵器を真っ二つにできるだけの能力を有していた。
蛍はジャイアントロボという作品を良く知らないが、この指パッチンが相当な凶器になりうることは容易に理解できた。
木や岩を容易に両断できるところからして、下手な銃器より威力があるだろう。

「すごい! この力があれば自分だけじゃなく他の人を守ることができるかも!
でも与えられるならプリキュア変身が良かったけど!」

まるで魔法のような能力に関して恐れと同時に感動を覚える蛍。
この力を与えた主催者は許せないが、与えられた力は日常では決して手に入るものではない超能力であり、常人にできないことができることは純粋な楽しさと喜びを覚えていた。
そして調子に乗った彼女は適当な木に向けて指パッチンした。

「キゃアアアアああああ!!」
「!?」

木が真空波で縦に真っ二つになった直後だった。
女の叫び声(それにしては別の生き物っぽい声も混じっていた)が聞こえたのだ。
蛍は異能が与えられて調子に乗ったことで、自分以外にも参加者がいることを忘れていた。
間違っても人殺しはしたくない。それが殺し合いに乗ってない相手なら尚更だ。

「ご、ごめんなさい! だいじょうぶですか!?」

恐る恐る声をかける蛍。
誤って相手を真っ二つにしていたらと思うと、冷や汗がにじみ出てくる。
仮に生きていても殺し合いに乗っていたらと思うと緊張と焦りが心を覆う。
だが、相手を殺したケースも相手が殺し合いに乗っているケースも杞憂に終わった。
悲鳴を上げた大人の女、殺し合いに乗っていないロクサーヌは真っ二つになった木の隣の木から無傷で現れたのだから。

「大丈夫よ、ナントカネ……
そんなに警戒しないデください。こっちモ殺し合いニハ乗っていません」
「ホッ……」
「こちらコソごめんなさい。
ストーカーみたいにコソコソトしていたケド、それハあなたノ持つ異能ガどのようなものか、あなた自身ガ殺し合い二乗っているかどうかヲここカラ見極めていたの」

蛍は相手が生きていたことと殺し合いに乗っていないことにホッと胸をなで下ろした。
ロクサーヌもまた蛍は殺し合いに乗っていないことに安心を覚える。
さっきまでの蛍の殺し合いに乗らないといった発言を聞いてたこともあるが、指パッチンで物を分断するというあからさまに危険な能力を持っていながら、のこのこ現れた自分に攻撃してこないところから殺し合いに乗っていないのはほぼ確実だろう。

「ん、暗くて良く見えないな〜」
「そうですか?」
「ちょっと近づいていいですかね」

蛍からでは闇夜によってロクサーヌの顔がほぼ見えなかったので近づいて相手の姿を確認しようとする。

「ちょっと待ってください! 先二隠さないと」
「え? それってどういう――」
「あ」

ロクサーヌは自分の顔や体が異形のものになっていることを思い出し、ディパックから何か顔を覆えるものを探す。
しかし、蛍はそれより早くロクサーヌに接近し……その姿に絶句した。

手にはおそろしい爪が生え、口からは殺戮の牙が生えている。
顔の約半分は真っ赤な瞳がブツブツと覆われて、こちらを不気味に凝視していた。
透き通るようなプラチナブロンドの髪からは角か触手かよくわからないものが生えていて、更に夜の闇がそれらのパーツの怖さを引き立てていた。
怪人……それもプリキュアや仮面ライダーに出てくるような少年少女がそこまで怖がらない程度に配慮されたデザインではなく、グロテスクそのものを絵に描いた姿がそこにはあった。
触れてはならない、知ってはならない、見てはならない宇宙的恐怖を凝縮したおぞましいものがそこにはあった。

そして。


「ふにゃああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」


503 : しんえん! ◆YlfcDuGY1. :2016/11/26(土) 11:26:59 uV0jGXZ20


少女の悲鳴が林に響き渡った。
聞きようによっては可愛く聞こえなくもない悲鳴が林に響き渡った。

「ど、どうしたの?!」

悲鳴を上げた少女に驚くロクサーヌ。
もちろん、悲鳴を上げた理由は自分の醜い顔を見たからだと予想はつくが、いくらなんでも目の前の少女は怖がり過ぎていた。
顔を見られれば怖がられるはわかっていたが、それでもロクサーヌの想定の範疇を超えていた。

それもその筈、この君島蛍という少女はホラー映画のポスターを見てしまっただけでその日の夜は母親と一緒に寝るほどのホラー嫌い。
ポスターよりも遥かにホラーなロクサーヌの今の顔を見て震え上がらないわけがなかった。
そしてこの蛍の恐怖心が一つの悲劇を招く。

「お、オバケ! こないでーッ!!!」
「うわッ!」

パニックになり、正気を失った蛍はロクサーヌが殺し合いに乗っていないのも忘れて彼女に向けて指パッチンから真空波を放った。
ロクサーヌは直感と体の柔軟さと運に助けられ、体を捻って真空波は回避する。
外れた真空波はさっきまでロクサーヌが隠れていた木を上下に分断させて葉の生い茂った上半分がゴトリと地面に落ちた。

「落ち着いて! さっきモ言ったケド私ハ殺し合いニハ!」
「なんで、なんで出ないの!?」

どうにか蛍を落ち着かせようとするロクサーヌだったが、蛍は構わずに指パッチンでオバケ(ロクサーヌ)を倒そうとする。
しかしパニックで指パッチンが上手く行かず、音も真空波も出ない。

「う、うわあああああああああああああ〜ん!」
「待ちなさい、ッテ早い!?」

指パッチンが出きないと悟った蛍は泣きながら猛ダッシュでロクサーヌの下から逃げ出した。
その足の早さは字で起こすとピューッという擬音が聞こえそうなくらいであり、ロクサーヌが呆気にとられている内に見失いかけるほどであった。


「ああ、なんてこと……ある程度ハ予測できたトハイエ、あそこマデ怖がるなんて」

意図してやったわけではないとはいえ、蛍を怖がらせてパニック状態してしまった。
他者との接触前に顔を隠すなどの対処を怠った自分の落ち度であるとロクサーヌは反省し落胆する。

「あれ? これハ?」

落胆して視線を地面に向けたロクサーヌだったが、そこには一つのディパックがポツンと鎮座していることに気づいた。
あれはロクサーヌから逃げ出した少女・蛍に支給されたディパックであった。
逃げる際にパニックになったことで自分の支給品の回収も忘れて置いていったに違いない。

「あの子……自分ノ持ち物ヲ忘れていってる!?」

これはまずい、とロクサーヌは思った。
いちおう彼女は指パッチンで何でも切断する能力は持っているとはいえ、能力を完全には使いこなしていない様子だった。
殺し合いに乗った者が彷徨いているかもしらない以上、小さな子供が丸腰のままで島を歩き回るのは危険であった。
ディパックには食料や地図と言ったサバイバルに必要なツールも入っている、無くすと生き残るために不利になるのである。

「急いで追わなくては!」

ディパックを早急に彼女に渡す必要があるだろうと思い、ロクサーヌはまだ辛うじて視界からは消えていない名も知らぬ少女を追いかけることにした。


落し物を届ける親切なロクサーヌと、そうとは知らずに逃げる怖がり少女の蛍。
その様はさながら童謡の“森のくまさん”と言ったところだ。
大きな違いは森の熊が生物的恐怖を人に抱かせるなら、ロクサーヌは宇宙的恐怖を纏っていることであろう。


504 : しんえん! ◆YlfcDuGY1. :2016/11/26(土) 11:27:34 uV0jGXZ20


【一日目・1時00分/・G-4 林】
※一部の木が君島蛍の異能によって真っ二つにされています

【道端ロクサーヌ@名状しがたい力(ウズラ)/SAVE】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1〜3、君島蛍の持ち物(基本支給品一式、不明支給品×0〜2、指パッチンのやり方を書いた紙)
[思考・行動]
基本方針:ナオ=ヒューマの打破、もしくは殺し合いからの脱出
0:あの子(君島蛍)を追いかけなくては……
1:殺し合いに乗っていない人々と合流
2:殺し合いに乗った人も可能であれば説得
3:すぐにでも元の姿には戻りたいが、そのために他人を犠牲にしない 
4:何か顔を覆えるものが欲しい

[備考]
※自分の姿が異形のものになっていると確認しました。使える技そのものは把握しきっていません。
※君島蛍の能力が指パッチンで物を切断するものだと知りました


【君島蛍@一指全断@ジャイアントロボ /素晴らしきヒィッツカラルド】
[状態]:SAN値減少(小)、一時的なパニック
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・行動]
基本方針:殺し合いに乗らない
0:今はひたすらオバケ(道端ロクサーヌ)から逃げる
1:首輪を外せそうな道具や技術を持っている人を探す
2:立派なお姉さんとして、他の人を守りたい
3:でもオバケは怖い! 怖いったら怖いの!

[備考]
※自分に与えられた異能の使い方を把握しました
 制限により時空までは切れませんが、命と引き換えに核攻撃級の攻撃をも断つことができます
※パニックで支給品を置いてきたことに気づいていません
※どの方向に逃げたのかは次の書き手氏にお任せします


505 : ◆YlfcDuGY1. :2016/11/26(土) 11:27:53 uV0jGXZ20
投下終了です


506 : 名無しさん :2016/11/27(日) 20:32:31 d1Gj8EG.0
投下乙です
自分の外見に悲観せず対主催の方針を固めたロクサーヌ、なかなか芯が強い
しかし幾ら芯が強くても外見のエグさはどうしようもないね…


507 : ◆7PJBZrstcc :2016/11/30(水) 17:20:52 UP1kZskw0
投下します


508 : 諦めは心の養生なのか ◆7PJBZrstcc :2016/11/30(水) 17:22:05 UP1kZskw0
 黒と金の虎模様の髪、改造した高校の制服、そんな姿をした男を見れば人はその男の不良だと思うだろう。
 そしてそんな姿をした少年、蘭堂虎竜太もまた不良だった。
 ここまでだと、仰々しい名前も相まってとても強い男のように見えるだろう。

「俺が殺し合いとか勝てるわけねーだろうが……!」

 この情けない発言を聞くまでは。
 更にいうなら、彼は低身長で童顔である。

 蘭堂虎竜太は不良グループに所属している。
 だが普段は、不良グループではパシリや伝令など足を使った便利屋みたいな扱いを受けている。
 もしも喧嘩するようなことになれば、彼は自身が所属しているリーダーの名を出して脅さなければ自分一人で戦う事も出来ない臆病者だ。
 そんな彼からすれば、この殺し合いは少々刺激が強すぎる。

「と、とりあえずどこか室内に……」

 外をうろついていると殺し合いに乗った他の参加者に狙われるかもしれない、そう思った虎竜太は建物を探す。
 それに、建物の中ならば不意を突かれることもないだろうしバリケードでも作れば人も入ってこないだろうと虎竜太は考えた。
 そうしてしばらく建物を探しながら歩いていると、虎竜太は建物を見つける。
 慎重に建物に近づき、その建物が何なのかを見ると診療所と書いてあった。

「診療所か……」

 ここなら籠城にはもってこいだな、そう思いながら虎竜太はドアを開ける。
 するとそこには――

「……ええと、君も参加者かい?」

 診療所の待合室にある横長の椅子に寝転がっている検査衣を着た男が居た。
 虎竜太はその男を見て一瞬の迷いもなくドアを閉めた。
 そして虎竜太は考える。

 やっべー、人居た! どうするアレ? どうしようあいつ!?
 殺っとく? 殺っちまう? 俺の安全のために殺しとくか!?
 でも勝てるか俺!? 明らかに体格で負けている相手に! 入院患者みたいな服着てるぞ!?
 どうする!? どーすんの俺!? 人殺しとか出来んのか俺!?
 何か昔のライ○カードのCMみたいになっちゃったけど!

「そ、そうだ支給品!」

 ここに銃とかがあれば話は変わる。
 俺銃とか撃ったことないけど、多分その辺はあのナオ・ヒューマとかいう奴が配慮してるだろ! 配慮してるよね?

 そう思いながらデイバッグの中を探る。
 そして虎竜太が取り出したものは

「何だこれ?」


509 : 諦めは心の養生なのか ◆7PJBZrstcc :2016/11/30(水) 17:22:32 UP1kZskw0

 本だった。表紙には『Fate Stay night』と書いてある。
 虎竜太は一応中身を検める。
 そして

「漫画じゃねーか!」

 虎竜太は叫びながら本を地面に叩きつける。
 別に漫画が嫌いとかそういう訳では無いが、殺し合いの最中しかも扉向こうに他の参加者がいる状況で漫画が出てきたら誰だってキレるだろう。

「クソ! 他のは何だ!?」

 そう言いながらまたデイバッグの中を探る。
 そして虎竜太が取り出したもの2つ目の物は

「また本かよ!」

 本だった。表紙には『バトル・ロワイアル』と書いてある。
 虎竜太は嫌な予感がしつつも一応中身を検める。
 そして

「また漫画じゃねーか!!」

 再び虎竜太は叫びながら本を地面に叩きつける。
 武器を寄越せ武器を、殺し合いさせる気あるのかおい。
 そんな思いが体を支配しつつ、虎竜太は3度目の正直を信じてデイバッグの中を探る。
 そして虎竜太が取り出したもの3つ目の物は

「いい加減にしろよ……」

 二度ある事は三度ある、本だった。表紙には『グッドルーザー球磨川』と書いてある。
 虎竜太は半分諦めつつも本の中身を検める。
 そして

「小説じゃねーか! ここまで来たら漫画で揃えろよ!!」

 三度、虎竜太は本を叫びながら叩きつける。
 ここまで来ると彼はもうヤケクソになった。
 虎竜太は診療所のドアを蹴り開け叫ぶ。

「もう殺せよ、自分の異能が何かわからない上に武器の一つもないこの俺をよ!
 更にいうなら体格に恵まれてるわけでもないし、小柄だけど強いみたいな設定背負ってないんだよこっちは!!」

 そう叫び虎竜太は若干満足気だった。
 一方、その叫びを聞いた男は呆気に取られつつも虎竜太に話しかける。

「……えっと、僕は別に殺し合いに乗る気はないよ」
「――マジで?」

 え、だったらさっきまでの一連の俺の行動全部無意味じゃん。
 そう思いながら虎竜太は青年に問う。

「……本当に殺し合いに乗っていないのか?」
「うん」
「本当に本当に?」
「ライオンだ?」
「違う、そうじゃない」

 こうして少年と男性、二人は落ち着いて話をすることになった。


510 : 諦めは心の養生なのか ◆7PJBZrstcc :2016/11/30(水) 17:23:04 UP1kZskw0





 その後、人が居る形跡を残すのは拙いと判断した虎竜太はさっき地面に叩きつけた本3冊を回収する。
 次に、待合室にいると入ってきた他の参加者にすぐ見つかってしまうと思った虎竜太は青年と共に奥の診察室に移動した。
 そして二人は腰を落とし話し始める。
 ちなみに、座っている場所は虎竜太が医者が良く使うような丸椅子、男が診療用だと思われるベッドの上である。

「それじゃあ自己紹介をしようか。僕は沢田総一郎、見ての通り入院患者だ」
「俺は蘭堂虎竜太、高校生だ」
「あ、高校生だったんだ。中学生くらいだと思ってた」
「どうせ俺はちっせーよ!」

 総一郎の発言に多少ふて腐れつつ虎竜太は目の前の男を見る。
 さっきは気付かなかったが、この沢田と言う男は自分でも勝てそうな位弱い。
 ガリガリで色白、更には寝不足なのか目の下にクマまである。
 これならあんな慌てなくても素手で勝てたんじゃねーか?
 そう虎竜太が思っていると

「蘭堂君、今僕なら素手でも勝てると思ってるよね?」
「なっ!?」

 総一郎は正確に虎竜太の心を読んだ。
 それに虎竜太は思わず動揺する。

「まあ実際合ってると思うよ。僕は君に勝てやしない」
「……あんた、死にたいのか?」

 自分が死ぬことを恐れないかのような総一郎の発言に虎竜太は眉をひそめる。
 その答えを、総一郎はこう返した。

「いいや、死にたくないよ。何だったら優勝して願いを叶えたいとすら思ってる」
「じゃあ何で襲ってこないんだ」

 総一郎の優勝したい宣言に驚きつつ、虎竜太は質問を重ねる。
 それに対する総一郎の回答はこうだ。

「無理だからさ」
「無理?」
「僕は生まれつき病弱でね、子供のころから病院の入退院を繰り返していたんだ。
 そして高校生の時に正体不明の病気にかかってね、10年位入院生活をしている。
 更に言うなら僕は基本ベッドで過ごしていて、同じ階のトイレや自販機まで移動するのが精一杯の体力しかない。
 ――人を殺して回るどころか、島を一周するだけで死んでしまいそうだよ。
 今はいつもより調子はいいけどさ」

 総一郎の話を聞きどう返答すればいいか分からない虎竜太。
 そんな虎竜太を尻目に総一郎の話は続く。

「まあ入院生活が長くて親に迷惑掛けっぱなしだからここで死んでもいいかなとは思っているけどね。
 自殺とかじゃなくて純粋な不可抗力だし、死にたくはないけど」
「……すげー割り切り方だな」
「SAS○KEよろしく反り立つ壁に挑めるほど強くないからね、僕は」

 そこで総一郎は「それはそれとして」と告げ、さっきから気になっていた事を聞いた。

「君の支給品は何だったんだい? 扉の前に随分騒いでいたけど」
「ああ、あれか」

 そう言って虎竜太はデイバッグの中に手を突っ込みさっき叩きつけた本3冊を出す。
 それを見て総一郎はこう言う。

「それぞれ1巻しかないのかい? 2巻以降は?」
「ちょっと待ってくれ」

 虎竜太はデイバッグの中を探る。
 すると、本が出るわ出るわ。バトル・ロワイアルの2巻から15巻が、Fate/stay nightの2巻から20巻が。そしてグッドルーザー球磨川の下巻が。
 つまり、漫画版バトル・ロワイアル全巻と漫画版Fate/stay night全巻、そしてグッドルーザー球磨川の上下巻が蘭堂虎竜太の支給品だったのだ。

「お得だね」
「殺し合いの場じゃ無かったらな」

 そう言いながら虎竜太はグッドルーザー球磨川の上巻を手に取り、読みはじめる。
 それを見た総一郎は思わず「あ、読むんだ」と言ってしまった。
 その言葉に対して虎竜太はこう返した。

「いや、ひょっとしたらこの本に出てくる異能を持った奴が殺し合いの中に居るかもしれねーし。それに対策出来るように支給されたんだよ、きっと!」
「後半願望だよね」
「悪いかよ!」
「……まあいいけどさ。それはそれとして僕にもどれか貸して欲しいんだけど」
「バトロワと、このFateって奴とどっち読む?」
「じゃあFateで」

 そう言って総一郎は漫画版Fate1巻を手に取り、読み始めた。


 そして本を読む二人はこう思う、殺し合いの最中自分たちは何をしているんだろう? と。


511 : 諦めは心の養生なのか ◆7PJBZrstcc :2016/11/30(水) 17:23:28 UP1kZskw0


【一日目・1時00分/G-9・診療所】

【蘭堂虎竜太@ドアドアの実/ONE PIECE】
[状態]:健康
[装備]:グッドルーザー球磨川上巻
[道具]:基本支給品
[思考・行動]
基本方針:死にたくないけど、どうしたらいいか分からない
1:とりあえずこれ(グッドルーザー球磨川)読むか
2:……何やってんだろ、俺?


【沢田総一郎@範馬の血/刃牙シリーズ】
[状態]:普段より調子が良い
[装備]:漫画版Fate/stay night1巻
[道具]:基本支給品、不明支給品1〜3
[思考・行動]
基本方針:死にたくないけど、どうしようもない
1:せっかくだし、この本(漫画版Fate Stay night)を読む
2:普段より体の調子が良い様な……?
3:……何をやっているんだろう、僕は
[備考]
※体の調子が普段より良いと思っていますが、異能のおかげとは考えていません


※漫画版バトル・ロワイアル全巻、漫画版Fate/stay night2巻から20巻、グッドルーザー球磨川下巻は診療所内部に置いています。


512 : ◆7PJBZrstcc :2016/11/30(水) 17:23:53 UP1kZskw0
投下終了します


513 : 名無しさん :2016/12/01(木) 00:23:09 lL.7DmEsO
投下乙
二人で漫画を読みふけるなんかほのぼのな展開・・・・・・
と思いつつも何気に異能を調べるのに有用なアイテム・・・なのか?>漫画


514 : 名無しさん :2016/12/03(土) 09:31:30 en2TS/4E0
投下乙です
>「漫画じゃねーか!」
>「また本かよ!」
>「また漫画じゃねーか!!」
不覚にも草
殺し合いで漫画支給されたらキレたくのも解る(一応能力把握に使えなくもなさそうだけど
本当に本当に?の下りといいこのコンビ妙にユーモアあっておもろい


515 : ◆7PJBZrstcc :2016/12/06(火) 12:24:33 ompdKjek0
投下します


516 : 夜、二人、山頂にて ◆7PJBZrstcc :2016/12/06(火) 12:25:26 ompdKjek0
 C-7、北の山山頂に二人の男が居る。
 一人は白衣に眼鏡をかけた長身痩躯な男。
 もう一人は着崩したスーツを着て指輪などの装飾品を身に付け、細身で爬虫類顔の男だ。

 その二人の内爬虫類顔の男が白衣の男に話しかける。

「いやぁ、何か大変なことに巻き込まれちゃいましたね」
「そのようだな」
「そんな警戒しないで下さいよ。あ、俺芹大輔って言います」

 爬虫類顔の男、芹大輔が自己紹介をする。
 次は白衣の男の番となるが、その返答は大輔にとって予想外のものだった。

「悪いが本名はとうに捨てた。呼び名が必要なら科学教師とでも呼んでくれ」
「……え?」

 名前を名乗らないという暴挙に茫然とする大輔。
 その状況を見かねてか、科学教師は言葉をつづけた。

「6時間後に浮き出る名簿に私の本名があったならば、その時は名乗ろう。それまではこれで通させてくれ」
「……はぁ、分かりました」

 大輔はその言葉を素直に受け入れる事にした。
 その気になれば名前を聞き出すくらいは出来るだろうが、そんな事をしても大した意味はない。
 この男が本名を名乗ろうが名乗るまいが、信用できるかどうかは別の問題なのだから。
 そんな考えを読んでいるのかいないのかは分からないが、科学教師は大輔に問いかける。

「それで芹。君はこの殺し合いをどう考える?」
「どうって言われましても……。非人道的だとか、こんなこと許せない、とか言えばいいんですか」
「そんな非生産的な事を聞きたい訳では無い」

 大輔のどこかいい加減な態度に少々苛立つ科学教師。
 その様子を見て、大輔は少し態度を改めた。

「まあ、真面目に考えるなら乗らないのが得策でしょうね」
「その心は?」
「ナオ・ヒューマは信用できない。この一点です」

 大輔から見てナオ・ヒューマを信用する理由はこれっぽっちもない。
 確かに力はあるのだろう。
 自分たちを何の前触れもなく呼び出して、知覚できない間に首輪を付けたり異能を持った体に改造できるのだから。
 だからと言って、優勝してもあいつが言った通り願いを叶えてくれたり、家に帰してくれるかどうかは別の問題だ。
 何故なら、その二つはあいつの口約束に過ぎない。
 ナオ・ヒューマがこの約束を守る保障など何処にもない。
 あるいは、あいつがゲームマスターとして誠実なら信用してもいいかもしれない。
 だがあいつはこのゲームを開いた理由を暇つぶしだと言った。
 信用できるわけがない。


517 : 夜、二人、山頂にて ◆7PJBZrstcc :2016/12/06(火) 12:25:56 ompdKjek0

「私も同じ考えだ」

 大輔が自らの考えを科学教師に伝えると、科学教師もこれに賛同する。
 そして科学教師は自らの考えを話し始めた。

「信用できない以上やるべきはナオ・ヒューマの打倒だが、それに辿り着くためにはいくつかの壁がある。まずは――」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

 科学教師の話が本題に入ろうとした所で、大輔は思わず敬語も忘れて止めてしまった。
 大輔からすれば聞き捨てならない事があったからだ。
 それは

「打倒ってどういう事だ!? そりゃ首輪を付けたまま脱出は無理だろうけど、それさえ外せば船か何かで島の外に出る位……」
「出て何処へ行くつもりだ?」
「何処ってそりゃ、自分の帰るべき家だ!」
「スタート地点も分からないのにゴールに辿り着ける訳がない」

 大輔は一瞬何を言われたのかが分からなかった。
 だが科学教師の言葉は続く。

「忘れたのか? 私たちは瞬間移動で転送されてこの沖木島に来たのだぞ。
 そして私は、いくら名前が日本名だからと言って、この島が日本領海にあるとは全く考えていない。
 少なくとも北極星は見えたから北半球の何処かだとは思うが」
「……まじかよ」
「これは飽くまで可能性。しかしこんな状況だ、多少悲観的に考えておくことも必要だろう」
「そうです……よね……」
「さて、それを踏まえた上で私の考えを話したいのだが、構わないか?」
「あ、はい。俺正直集団作った方がいいくらいしか考えてませんでしたし」

 すっかり科学教師に圧倒された大輔は、科学教師の考えを聞く体勢に入る。
 それを見た科学教師は話を改めて始める。

「この殺し合いから脱出する為にナオ・ヒューマの打倒する事を目標とする。
 それに当たって最初に突破すべき壁はこの首輪だ」
「まあ、それは誰でも思いつきますよね」
「これに関してはサンプルがいくつかあれば何とかなるだろう。
 私は多少の科学知識がある。機械工学は専門ではないが、やるしかあるまい」

 科学教師の言葉は自信無さげであったものの、大輔からすれば十分に頼もしかった。

「次に考えるべきはナオ・ヒューマの元へどうやって辿り着くかだ」
「居所、分かりませんからね……」
「まあこれは深く考えなくてもいいだろう。この場で殺し合いに乗らないものだけを残して、首輪を外せば奴も出てこざるを得まい」
「成程。殺し合いに対して否を唱えないようにする為の抑止力がこの首輪。それを無効化されると直接手を下すしかなくなる。そういう事ですね」
「そういう事だ。だが奴がこの場にこない可能性もある」
「ありますかね、そんな可能性?」

 科学教師の言葉に思わず疑問を呈す大輔。
 彼は、科学教師の言う可能性が何か分からなかった。

「ナオ・ヒューマがこの場を放棄する可能性だ」
「放棄?」
「ああ、殺し合いが失敗に終わって、始末が面倒になり放置する可能性だ」
「そんな可能性は考慮したくない……」

 悲観的にも限度ってものがあるだろう、そう思いながら大輔は科学教師を睨む。
 一方、睨まれている当人はそんな視線を無視していた。

「まあこれ以上話し合っていてもしょうがない。出発しようと言いたいがその前に」
「何ですか?」
「これを見てほしい」

 そう言って科学教師は左腕を大輔にの方に伸ばす。
 そこにはさっきまで無かったはずの紫色の茨があった。

「これは、ひょっとして異能って奴ですか?」
「おそらくな。だが私はこれが何なのかさっぱり分からない。君は分かるか?」
「すいません、俺にもさっぱりです」
「そうか。ところで君の異能は何だ?」
「あ、俺はこれです」

 そう言って大輔はバリアを出す。
 それを見て科学教師は感心した様な声を出す。

「中々便利そうだな」
「まあそうですね。固さが分からないので何とも言えませんが」
「とりあえずお互いの異能を見せ合った所で出発しようか。
 目的地はそうだな、私は自分の異能を知りたいから図書館にしたいのだが構わないか?」
「そりゃ構いませんが、図書館で調べられますかね?」
「ナオ・ヒューマが我らに与えた異能はおそらく漫画などに登場するものだ。ならば一番資料が集まってそうな場所に行くのが妥当だろう。
 そうでなくても他の参加者がいるのなら聞けば分かるかもしれん」
「成程納得しました」
「では行こうか」

 そう言って科学教師はデイバッグを持ち歩きだし、大輔も後を追った。

「そういえば支給品は確認したか? 私はもう済ませたが」
「それ位は流石に済ませてますよ」


518 : 夜、二人、山頂にて ◆7PJBZrstcc :2016/12/06(火) 12:26:40 ompdKjek0



(思い通り!)

 大輔は表情にこそ出さないものの、どこかの新世界の神のような事を考えていた。

(あの科学の先生は俺の異能がバリアしかないと完全に思っている!
 おまけに多少胡散臭く思われているが俺を切り捨てるつもりは今の所0! 有難い話だぜ!!)

 何故大輔が科学教師の考えを理解しているか、それは大輔の異能に理由がある。
 大輔の異能はバリアだけでなくもう一つあったのだ。
 それは読心、シンプルに心を読む能力だ。
 これにより、大輔は心を読み科学教師の言葉に嘘がないか確かめていたのだ。

(そして今のところ嘘は無し。まあこれは単に嘘をつく理由がないだけだろうけどな)

 そもそも大輔は別にナオ・ヒューマをどうこうする気は無かった。
 あんな強大な力を持った相手に勝てるとは欠片も考えてなかったからだ。

(とはいえあいつの言う通りなんだよな。ナオ・ヒューマに媚び売っても帰れる保証はどこにもないって)

 ならしばらくは一緒に行動を共にして、そのまま帰れそうならナオ・ヒューマの打倒に協力しよう。
 だがもし無理だと判断すれば

(その時は悪いが裏切らせてもらうぜ、科学の先生)

 彼は歩く、正義も怒りも感じずに。ただ己の生存を目指して。


【一日目・1時00分/C-7 北の山山頂】

【科学教師@隠者の紫/ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品1〜3(確認済み)
[思考・行動]
基本方針:ナオ・ヒューマを倒し殺し合いから脱出する
1:自らの異能を調べる為に図書館に向かう
2:芹大輔は若干胡散臭い
[備考]。
※芹大輔の異能をバリアだけだと思っています

【芹 大輔@『バリア+読心』/TIGER&BUNNY】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品1〜3(確認済み)
[思考・行動]
基本方針:とりあえず自分が死なないように動く
1:科学教師と行動を共にし協力するつもりだが、ナオ・ヒューマの打倒が無理だと思ったら裏切る
[備考]
※バリアを攻撃に使えるとは思っていません


519 : ◆7PJBZrstcc :2016/12/06(火) 12:27:12 ompdKjek0
投下終了です


520 : 名無しさん :2016/12/07(水) 00:33:56 UeuZ1azQO
投下乙です
科学教師のヒューマを倒さないと真に脱出できないという目のつけ所は良いんだが、なんだか芹が不穏だなあ


521 : ◆j0K3675zFI :2016/12/12(月) 23:34:17 3tzvCE1o0
投下します


522 : Eye Of The Tiger ◆j0K3675zFI :2016/12/12(月) 23:35:37 3tzvCE1o0


沖木島南部の山岳を疾走する影が一つ。
均整の取れた四足歩行のシルエットが、闇夜の中にぼんやりと浮かび上がる。
その正体は一人の参加者。
否、一匹の獣である。
黄色毛と黒毛の縞模様。その中に紛れ込む光線のような独特の模様。
その口から覗かせる牙。四足から剥き出しになる鋭い爪。
狩猟の為に鍛え上げられた、天性の強靭なる肉体。
これは何だ。この獣は何者か。
―――――――――――虎だ。
その姿を見た人間は誰もがそう答えるだろう。否、そうとしか形容が出来ない。

虎は強靭な四肢で大地を蹴り、山の斜面を駆け下りていた。
彼は生まれながらの狩人だった。
獣としてこの世に生を受けた瞬間から、彼の生活は戦いと殺戮で彩られていた。
自然豊かな無人島で奔放に生き、鹿や猪などの獲物を狩り続けた。
やがて島の開発に乗り出した人間との縄張り争いに発展し、武装した人間との死闘に明け暮れた。
多くの仲間たちが散っていった。多くの自然が踏み躙られて行った。
人間は狡猾だ。そこいらの獣とは違う。
頭を使い、武器を使い、的確にこちらを追い詰めてくる。
この世のどんな野獣よりもずる賢く、おぞましい種族だ。

ならば、彼らに勝つ為にこちらも頭を使わねばならない。
狡猾な猿を殺すためには、奴らを出し抜ける程に狡猾にならねばならない。
故に虎は彼らを狩る為の策を練り続けた。

人間が仕掛けた罠の破壊。
複数の狩猟者の分断による各個撃破。
自然環境を利用した奇襲攻撃。
持てる手段をとにかく使った。
人間を殺す為に。
住処と仲間を蹂躙する猿を駆逐する為に!
卑劣な人間との戦いを重ね、虎は『知恵』を手に入れた。
強靭な肉体と野生のカンのみで狩りを続けていた獣は、この世で最も狡賢い種族との戦いの中で合理的な『狩りの手段』を体得していった。
皮肉にも、人間との戦いが虎をより強力な狩猟者へと育て上げたのだ。

そして彼が人間を憎み、蔑むようになったのも当然の帰結だった。
人間共は欲深い。自分達の繁栄の為ならば平気で自然を踏み躙る。
人間共は狡賢い。自分達を邪魔する獣達を徹底的に追い詰めていく。
人間共は愚かしい。自分達でこんな無意味な殺し合いをしてしまうのだから。
その愚かしい殺し合いに巻き込まれてしまったことは、彼自身にとっても不本意なことである。
人間同士の共食い以下の争いに何故自分が付き合ってやらねばならないのか、とさえ思った。
しかし参加させられてしまった以上最早取り返しは付かない。
憎き人間を殺戮して優勝し、ナオ=ヒューマをも殺す。
それが自分を下らない殺し合いに巻き込んだ人間共への鉄槌であり、自分の住処を穢した人間という種族に対する復讐だ。


愚かしい猿共よ。
獣の怒りを思い知るがいい。
この牙によって―――――――全てを血祭りに上げる。
虎(フレイス)は復讐の炎を滾らせながら、走り続ける。



『早速獲物を見つけたンゴwwwwwww
 ほんま負ける気せえへんわ、狩猟はワイの十八番やぞ(虎語)』



あっそうだ(唐突)
さっきまで虎ニキは山の斜面の上から会場を見渡していたんや。
そんで追いかけっこしてる二人の参加者を見つけたんやで。
決まっとるわ、人間だから狩るんやぞ。
やったれ虎ニキ!狩りの始まりやで!





523 : Eye Of The Tiger ◆j0K3675zFI :2016/12/12(月) 23:36:14 3tzvCE1o0



「あの、島津くん?」
「何すかポリさん」
「その、なんというか、ごめんね?」
「そっすか」
「そんな可愛い顔してるから、てっきり女の子かと……」
「…………」
「……やっぱり怒ってます?」
「いや別に」
「怒ってますよね……?」
「はぁ……」


H-6の草原の木陰に座り込む影が二つ。
さっきまで追いかけっこを繰り広げていた二人の参加者が、何とも言えぬ空気で会話していた。
女顔の男子高校生、島津 蒼太。そして婦人警官、阿良 愛である。
先ほどまで追いかけられていた蒼太は木の幹の側で胡座をかき、右足の上で頬杖を突きながら溜息を吐いている。
「正直言って、マジで殺されるかと思った」というのが彼の感想である。
追いかけていた張本人である愛が数十分ほど掛けてようやく冷静さを取り戻したことで何とか危機から脱した。
愛も初心さ故にひょんなことから暴走してしまったことを恥じらい、気まずそうな態度で蒼太の近くに座り込んでいる。
先程までの箍が外れた行動が狂化スキルの影響の片鱗であることなど、彼女には知る由もない。

「別にもういいっすよ……というか疲れたし、まず休ませて」
「すみません……」

疲れ切った表情で木に寄りかかる蒼太に愛はしゅんとした態度で謝る。
そんな彼女の姿を蒼太はちらりと横目で見つめる。

(ホントに天然というか、抜けてるっていうか……)

縮こまった愛の姿を見て、ぼんやりとそんなことを思う。
出会ってからまだ数十分程度の仲であるが、愛の人となりは何となく掴めてきた。
悪い人じゃあない。でも天然。どこか抜けている。
しかもうっかり「アソコ」を触ったくらいで取り乱すくらいには初心。
警察官だし腕っ節は立つのだろうが、ある意味で微妙に頼りない。

「あっ、今『この人本当に大丈夫かな』って思いませんでした?」
「知らないですよ」
「顔にちょっぴり出てますよ、でも安心してください!
 さっきの不手際の分まで島津くんの身は守らせて頂きますから!
 なので『大丈夫』です!私を頼っちゃってください!」
(うざいなこの人……)

そして若干空気が読めないというか、遠慮がない。
蒼太はそんな愛の言動に軽く頭を抱え、やれやれと言った表情を浮かべた。


524 : Eye Of The Tiger ◆j0K3675zFI :2016/12/12(月) 23:37:45 3tzvCE1o0

「というか別に守らなくていいですよ。僕はポリさんにとって足手纏いになると思うんで、一人で隠れてますから」
「そういう訳には行きません!」

そう言いながら愛はグイッと蒼太の方へ身を乗り出すように近づく。
急に接近してきた愛に辟易して顔を逸らしたのも直後のことである。

「私は警官です!警官にとって最大の職務は市民の命を保護することです!
 君が足手纏いであるとか、役に立つとか、そういうのは勘定に入れたりしません。
 何故なら一般人を守るのが警官の勤めだからです!打算で人を助けるつもりなんて私にはありません!」

高らかな宣言。
真っ直ぐな眼差しと共に伝えられる確かな思い。
愛の警官としての矜持に、蒼太は少しばかり怯む。
同時に、どこかくすぐったいような感覚に襲われる。

(……やっぱり苦手だな、この人……)

内心、そんなことを思った。
蒼太には『親しい者』がいなかった。
友人なんて者はいないし、恩人と言えるほど綺麗な関係にある大人だっていない。
周囲は喧嘩屋の不良として悪名高い蒼太を露骨に敬遠するし、蒼太にわざわざ付き合おうとする大人は警察くらいのものだ。
自分の身を案じてくれる両親なんてものもいない。物心ついた頃には既に親戚の家で育てられていた。
その親戚でさえ喧嘩に明け暮れる蒼太を疎み、結果として半ば勘当のような形で追い出された。
蒼太の周りには彼を認めてくれる者なんていないし、彼の身を案じてくれる者だっていない。
唯一の例外があるとすれば、勘当された自分に付き添ってくれた姉だけだ。
蒼太を心配してくれる人間は、実の姉だけだ。

「なので安心してください。君が何であれ、私は君を守りますから!」

だからだろうか。
阿良愛には、どこか苦手意識を感じていた。
彼女が警察官だということもあるが、それ以上に彼女の性格にむず痒さを覚えていた。
真っ直ぐな眼差し。自分の身を本気で案じて投げかける言葉。
そこに打算や哀れみなど感じられない。
今まで自分を補導してきた警察官達が向けてきた『呆れ』の感情も無い。
あからさまに素の、天然の善意。
この状況で何の疑心暗鬼も無く、本気で自分を守ろうとしている。
他人からその身を案じられた経験に乏しい蒼太にとって、愛の態度はどこか慣れないものだった。



「そしてッ!!最終的にはこの殺し合いを打破し!!『圧制者』を叩き潰します!!!」



――――続けて吐き出された言葉に、蒼太は再び唖然とする。


525 : Eye Of The Tiger ◆j0K3675zFI :2016/12/12(月) 23:38:12 3tzvCE1o0

蒼太には阿良愛が解らなかった。
数十分前、彼女と出会った時もそうだった。

『それでも!私はこの集団拉致と殺人を犯した『圧制者』の傲慢と強者の驕りを叩き潰してみせますよ!!』

愛が天真爛漫で正義感の強い真っ直ぐな警官であるということは理解出来る。
それは解るのに、何かがおかしい。
時折人が変わったように『圧制者』とやらへの怒りを露わにする。
しかもその時の愛の目は決まっておかしい。
なんらかの狂気に取り憑かれてるかのような、そんな目を見せるのだ。

(犯人に対しては豹変するタイプなのか……?
 いや、でも、何か違う気がするというか……何か……おかしい……)

蒼太は内心で疑問を抱く。
何か引っかかるような感覚がする。
阿良愛という人間のキャラクターからどこか掛け離れているような、そんな違和感がする。
そんなことを考えていた最中、愛が先ほどまでの純真な表情へと戻る。

「ま、とにかく島津くんは私が保護しますので!」
「いや、だから別にいいって」
「遠慮しなくて大丈夫です!君はまだ若いんですから、大人にじゃんじゃん頼っちゃって下さい!」
(あんたも十分若いだろ)

心の中でツッコミを入れつつ、蒼太は考える。
とにかく、彼は阿良愛という人間に危うさを感じていた。
まず「根っからの善人」という時点で何処かで下手を打ちかねない。
その上明らかにイっちゃってる目で主催者にケンカを売ろうとしている。
先ほどの追いかけっこのように、時にはしょうもないことで感情的になって暴走することもある。
不安な要素しかない愛に付き合う気は更々無かった。
尤も愛も引く気はないらしく、そのことが蒼太を悩ませていた。

(どうやってこのポリさんから離れるか……)

言い訳が通用しないのはここまでの会話でだいたい解った。
それっぽい理屈で離れようとしても意固地になってくるのも解った。
ならば全速力で彼女から逃げるか……否、多分無理だ。
この人ならどこまでも追いかけて来かねない。
蒼太の中で選択肢が潰されていき、次第に「潔く諦める」という回答が浮かび上がってくる。
いっそ諦めて暫くは愛と行動を共にするか。
その道中で別の参加者と友好関係を結んだ際、その人に着いていくなり何なりするか。
正直それくらいしか手立てがなさそうだと蒼太は思いつつある。
というか、最早それくらいしか選択肢がない。
はぁ、と蒼太はため息をついた。

(まあ、いいか。暫くはこのポリさんと)

思考していた直後のこと。
何の脈絡もなく、突然に愛が蒼太を押し倒した。
余りにも唐突な出来事に蒼太は思考が追いつかず。
彼の小柄な身体は、包容力のある女体になすすべもなく覆い被された。

は?と思わず声を漏らす蒼太。
いきなり何してんだこの人は、というか何するんだこの人は、そんなことを思いつつ。
女性との経験を持ったことがない蒼太からすれば、女性に押し倒されるなど未知の体験であり。
僅かに顔を紅潮させながら、声を上げる。


「ちょ、いきなり、何を――――――――」


その瞬間、蒼太の表情が変わった。
べちゃりと彼の顔に温かい液体が零れ落ちた。
それが何なのか、すぐに理解した。
血だ。
愛の首筋から滴る、赤い血だ。


(何が、起きて)


蒼太は愕然とする。
唐突な惨劇に、ただ唖然とする。
そして彼は、『それ』に気づいた。
自身に覆い被さる愛の首筋に喰らい付く、一頭の『虎』の存在に気づいたのだ。


◇◇◇◇


526 : Eye Of The Tiger ◆j0K3675zFI :2016/12/12(月) 23:38:50 3tzvCE1o0
◇◇◇◇


山沿いの道を、一人の少女が駆け抜ける。
忙しなく何かを追跡し続ける。
少女は音も無く、気配も無く、激しくも静寂に満ちた走法を繰り出す。
それは彼女自身の能力と『異能力』の相乗効果による賜物。
忍者としての隠密技能。暗殺者の英霊としての気配遮断能力。
今の彼女には、その二つが上乗せされていた。
その姿を見た者は『くノ一』を連想するだろう。
隠密任務を生業とする忍びの女。
女でありながら影に生き、影に死ぬ、修羅の者。
尤も、彼女は未だ修羅には程遠い少女に過ぎないのだが。

ワイシャツにベスト、スカートとその姿は一般的な女子学生となんら変わりはない。
しかし顔にかけたメガネには彼女の嗜好を表す『手裏剣』の模様が刻まれており。
その右腕には『布』が巻かれ、異能の象徴である『呪腕』が覆い隠されていた。
少女の名は『成沢 弥生』。
忍者に憧れる女子高生であり、山の翁の異能を獲得した参加者だ。

自身の右腕を見て『異能』について把握した弥生は、気配遮断スキルを利用して隠密行動を開始した。
古今東西の英雄が登場するFateに関しては多少齧っている。
尤も彼女が好む英雄である忍者が殆どいないので、余りのめり込んではいないのだ。
最初に呪腕を目にした時には多少驚いたものの、すぐに適応した。
弥生はアニメで見た忍者に憧れ、高校に進学した今でも忍者になることを夢見て本気で修行している。
言うなれば、どこかズレた少女なのだ。
それゆえに自身の異形の右腕に関しても『そういう異能なのだから』とすぐに割り切れた。
普段は右腕が使えなくなるため、少々不便なのが面倒だとも思っていたが。

(まさか『虎』がいるなんて……!)

そして、弥生が追跡していたのは『虎』だった。
隠密行動を続けていた彼女は、遠目から山の斜面に立つ虎の存在を確認したのだ。
一定以上の距離が離れていたこと、気配遮断スキルによって身を潜めていたこと、虎が主に見渡していた東側とは逆の西側の物陰に身を隠していたこと。
それゆえに弥生は虎に存在を感付かれなかった。
この暗闇で虎の姿を視認できたのも、忍者の修行によって暗闇に目を慣らしていたからだ。
虎が斜面を下りて東側へと向かっていった直後、彼女は迷わず虎の追跡を開始した。

弥生の行動方針。
それはこの殺し合いに巻き込まれた弱者の保護。
そして殺し合いを打破する方法の模索だ。

彼女は幼い頃に弱きを救い、強きを挫くアニメの忍者に強い憧れを抱いた。
それは彼女の中の忍者観にも強い影響を与えた。
弥生にとって忍者はヒーローである。影に生きる者でありながら、時に人を救う存在でもあるのだ。
故に弥生は己の中の夢をひた向きに守り、貫き続ける。
この殺し合いにおいても『正義の忍者』として振る舞い、ナオ=ヒューマに抗うことを決意したのだ。
恐怖がないわけではない―――――だが、やらねばならないのだ。
忍者は己を殺す。恐怖や不安を断ち切り、任務を果たすのだ。

(そう、今のわたしは忍者。冷徹に戦い、弱者を守る影の者!
 悪しき者に天誅を下すのも忍びの役目!)


527 : Eye Of The Tiger ◆j0K3675zFI :2016/12/12(月) 23:39:52 3tzvCE1o0

弥生が虎を追跡しているのは、虎を脅威だと認識したからだ。
人間ですらない動物までこの殺し合いに巻き込まれていることには驚いたし、ナオ=ヒューマの見境のなさに頭を抱えそうになった。
虎といえば猛獣だ。理性を持つ人間とは異なり、本能によって周囲へ積極的に危害を加える可能性が高い。
その動向を追跡し、警戒を払う。弱者に危害を加えようとするならば止める。
それが弥生の現在の行動方針だ。
忍者の修行を大真面目に続けてきた弥生にとって、隠密行動は大の得意。
ましてや気配遮断スキルの効果まで上乗せされているのだから、身を潜めることにおいては他の参加者の追従を許さない。
そう、普通ならば。


「―――――君!!そこの君っ!!」


山沿いを走る弥生の耳に声が届く。
それは明らかに彼女を呼び止める声であり、弥生は一瞬呆気に取られる。

(……あれ?気配遮断って、見られたら効果無いんだっけ?
 というか開幕早々見つかるって忍者失格……いやいやいや!まだ挽回できる!きっと!)

弥生は間違いなく気配遮断スキルを機能させていた。
にもかかわらず、声の主は弥生の存在を認識して声を掛けてきたのだ。

(とにかく、今はひとまず声の主と接触!ファイトだ弥生!)

疑問を抱きつつも弥生はザザッと土の上を滑るように足を止める。
直後に、近くの草陰から人影が姿を現した。

「君も殺し合いの参加者だよね!?」
「はい!あ、それと大丈夫です!わたしは殺し合いには乗っていません!」
「そうか、よかった……!俺も殺し合いなんて御免だよ」

弥生の前に現れたのは、Tシャツにジーパンといったカジュアルな服装の青年だった。
暗闇で少々姿が見えづらいが、恐らく大学生くらいの年頃だろうかと弥生は判断する。
端正な顔立ちの青年は爽やかに笑みを浮かべながら、弥生へと歩み寄る。

「俺は藤崎 直哉。君は?」
「成沢 弥生、忍者を目指す16歳です!宜しくお願いします!」

両手をビシッと組んで忍者ポーズを取りながら挨拶をする弥生に、直哉は少しだけ呆気に取られる。
忍者?と頭の中に疑問符を浮かべるが、当の弥生は純真な表情でこちらを見据えている。
どうやら今の挨拶、大真面目に言っていたらしい。
天然の変人なのかなと直哉はやや失礼なことを思う。

対する弥生は挨拶の後、じっと直哉を見つめていた。
殺し合いに乗っていないというこの青年を観察していた。
忍びは影に生きる者。
闇夜に潜み、悪を欺く者だ。
敵もまたこちらを欺き、陥れてくる可能性がある。
故に僅かとはいえ直哉を警戒していた。
見てくれは……普通の青年。
特に武器らしきものを隠している様子はない。
いや、異能力が戦闘向けのものだったら武器を持つ必要がないだろう。
もしかすれば隙をついて攻撃を仕掛けてくる可能性もあるかも。
しかし、こうして態々声をかけてきて姿を現したのだ。
案外本当に乗っていないのかも――――と思考を繰り広げていた最中。
無言が続いたことに痺れを切らした直哉が問いかけてきた。

「えっと、弥生ちゃん……でいいかな。君、さっき走っていたよね?
 まるで何かを追いかけているみたいだったけど……何かあったのかい?」
「あっ、そうだった!わたしは『虎』を追いかけていたんです!!」
「は?虎?」
「そう、虎です!首輪をつけていたので、恐らくあの虎も参加者でしょうね。
 地図で言うと……たぶんH-3だったかな。そこの山の斜面から虎が降りていたのを見たんです。
 私はその虎を追いかけ、危険があれば止める為に追いかけていたんです!」


528 : Eye Of The Tiger ◆j0K3675zFI :2016/12/12(月) 23:40:35 3tzvCE1o0

弥生が伝えた情報に直哉は目を丸くする。
参加者に虎がいた。
そう、虎である。猛獣である。
その事実を聞き、直哉は頭を抱える。
同時にさも当たり前のように『虎を追いかけていた』と答える目の前の少女に呆れた様子を見せる。
冷静に考えて無謀だろう。
幾ら異能力があるからって、虎を追いかけようとする人間がいるか。
直哉は呆れながら問いかけを続ける。

「虎を止めるって……大丈夫なの?普通に考えて強いじゃん虎、異能力とか関係ないじゃん」
「大丈夫です。忍者の修行を積んだ身ですよ、わたし!それにわたしにも異能力はありますから!」

自信満々に言ってのける弥生に、直哉はぽかんとした表情を浮かべる。
彼女は本気で虎を止める気満々なのだ。
自分の忍術とやらで大真面目に戦う気なのだ。
真剣にボケている善人。忍者を自己に投影して酔っている厨二病。
直哉は目の前の弥生を見て、そんなことを思った。
正直言って、適当なところで早死にしそうな気さえしてくる。

弥生という少女が性格に難があることは理解した。
しかし、それを差し引いても中々の美少女だと直哉は思う。
綺麗な黒髪のポニーテールに、あどけなさを残した顔立ち。
スタイルも悪くないし、間違いなく可愛らしい部類に入る少女である。
目の前に立つ弥生の出で立ちをまじまじと見つめながら考える。
まるでじっくりと品定めをするように、直哉は彼女の体を眺めている。
そんな直哉の態度に、弥生は少しばかり不安を覚えつつも問いかける。

「あの、藤崎さん?どうしました?」
「ごめんね、弥生ちゃん」
「えっ?」

その直後。
ストンと弥生がその場に尻餅をつく。
そして、弥生が顔を上げる。
眼前の直哉を見上げる。
―――あれ、大きい。
呆気に取られたように、弥生は直哉を見つめる。
明らかに直哉が『巨大化』している。
せいぜい自分よりも一回りほど背が高い程度だった直哉が、明らかに大きくなっている。
何とか立ち上がろうとした弥生の視線は、直哉の太腿から下半身ほどの高さしか無かったのだから。
弥生の頭に数多の疑問が浮かび上がる中、直哉は乱暴に彼女の体を引っ張った。
そして草陰へと無理矢理連れ込み、押し倒す。

「ちょっと乱暴させて」
「は?ふぇ?」
「君、可愛いね」
「え、あの」
「でも小さくなった君はもっと可愛いよ」
「え、え、え……?」

困惑する弥生。
何を言っているのか訳が解らない。
何が言いたいのか理解できない。
だが、自分の状況は少しずつ理解し始めていた。
直哉が大きくなっているのではない。
自分が小さくなっているのだ。
自分の身体が、子供のように幼くなっているのだ。
そして直哉の足元から伸びる影は、まるで『守護霊』か何かのような姿を形成していた。
すぐさま彼女は『異能力』のことを思い出した。
もしかして、これが、これこそが直哉の異能力。
でも、どうして。
殺し合いに乗っていなかったはずなのに、何で。


529 : Eye Of The Tiger ◆j0K3675zFI :2016/12/12(月) 23:41:06 3tzvCE1o0


「……さて、まあ歳はこれくらいでいいかな。
 下手に若返らせすぎて赤ん坊になっちゃったら可哀想だし。
 弥生ちゃんホントごめんね。色々ワケわかんないと思ってるだろうけどさ」


そんなことを呟きつつ、直哉の『守護霊』が姿を消す。
軽薄な笑みを浮かべる彼の姿に、弥生はぞくりと背筋に寒気が走る。
本能的な恐怖を胸の内から覚えたのだ。

子供の頃に見た忍者の活躍に影響され、今でも夢を見続けている弥生は本質的には純粋だ。
任務の際には冷徹に振る舞えるだとか、冷静沈着で切れ者の忍者だとか、彼女は自分をそう思っているかもしれない。
しかし、そんな筈がない。
身体能力を鍛えるだけで都合よく忍者としての精神的な素養に目覚める訳がない。
彼女は夢に恋する天真爛漫な少女に過ぎないのだ。
故に彼女は人間の本物の悪意を見抜けないし、注意深く観察したつもりでこうしてまんまと騙されることになる。
弥生は上手く警戒したつもりで、その実根本的な部分を見落としていたのだ。
そして、弥生の疑問を遮るように、直哉は堂々と宣言した。




「君のおかげで死ぬ前に幼女を無理矢理犯したい夢が叶うッ!!!!!!」




藤崎直哉。
彼は生粋のロリータ・コンプレックスであった。






(よっしゃああああああああ!!!『セト神』じゃん俺の異能力!!!!
 俺の人生始まったああああああああああ!!!!!)



弥生と出会う少し前のこと。
藤崎直哉は幸せの絶頂に立っていた。
何故なら彼が与えられた異能力は『セト神』だったのだから。
本体の影と一体化し、影に触れた者を若返らせるスタンド能力だ。
ジョジョの奇妙な冒険を読んだことのある直哉はすぐさまその能力の有用性を理解した。
本来の使い手であるアレッシーは成人であるポルナレフを幼い子供にまで若返らせていた。
正直に言って、『最高』以外の感想が出てこなかった。


530 : Eye Of The Tiger ◆j0K3675zFI :2016/12/12(月) 23:41:49 3tzvCE1o0

藤崎直哉はロリータ・コンプレックスである。
無論、周囲にはその本性を隠している。
というか、バレたら社会的に終わるのだから当然である。
数年前に女装した少年をナンパしたあの日から、彼の性癖は狂ってしまった。
あの一件にショックを受け、絶望し、直哉はそれ以来14歳未満の少女にしか興奮できなくなってしまったのだ。
どうしてこうなったとか、何で幼女趣味に目覚めたんだとか、本人もよく分かっていない。
ただ目覚めてしまったものは仕方ないし、それを否定するつもりもない。
故に直哉は数々の幼女に手を出すようになった。
盗撮の技術を鍛えるために大学では写真部に所属したし、時には小学生と援助交際をすることさえあった。
そんな彼が『生物を若返らせる能力』を得たのだ。喜ばない筈がない。
いかれたワオキツネザルのようにはしゃいでいた直哉だったが、はしゃぎ疲れたのでふぅと一息つく。

どうやら自分は殺し合いに巻き込まれてしまったのだと、直哉は理解する。
正直言って、最初のルール説明の時はあまり真面目に話を聞いていなかった。
夢か何かだろうと思って話半分にしか聞いていなかったのだから。
かろうじて殺し合いやら異能力やらの話は耳に挟んだが、この会場に転送されるまではずっと夢だと思っていた。
尤も、そんな幻想はすでに打ち砕かれているが。

そこで直哉はひとまず自分の異能力と支給品を確認することにした。
出てきた異能力はスタンド『セト神』。
直哉、大喜び。

その瞬間から直哉の行動方針は確定する。
セト神を使って女性を幼女化し、無理矢理ヤる。


(一度は夢見た幼女の陵辱をやってみたいッッ!!!)


直哉は心の底からそう思ったのである。
あのナオなんちゃらが言うからには、この殺し合いで起こったことは表沙汰にならないらしい。
まあこんな非人道的なゲームをやらかしてるんだから当然だろう。
つまり自分が幼女を陵辱しても表沙汰にはならない。犯罪にはならないのだ!
「絶対捕まるから」という理由で避けていた暴行が、ここでは許される!
ならばやるしかない!
直哉はそう決意したのだ。
幼女相手の援助交際を幾度となく繰り返している直哉にまともなモラルなど存在しない。
最早彼の欲望は援助交際だけでは収まりがつかない。
嫌がる幼女を無理矢理力で押さえつけ、蹂躙する――――やってみたかった。
ロリータ・コンプレックスである直哉にとって最大のロマンであった。
想像するだけで興奮が止まらない。

そうと決まれば早速行動開始である。
直哉は支給品である『首輪探知機』と『双眼鏡』を利用し、遠方から走ってくる参加者の存在を草陰から把握したのである。
どうやら若い女性のようだ。
双眼鏡についた暗視機能のおかげでそれを確認できた。

(よしきた)

相手が女性と見るやいなや、直哉は即座に次の行動を決める。
彼女に声をかけ、友好的な素振りを見せて油断を誘い―――セト神で幼女化。
欲望に素直なだけあって、欲望を前にした直哉の判断は早かった。



「―――――君!!そこの君っ!!」



◇◇◇◇


531 : Eye Of The Tiger ◆j0K3675zFI :2016/12/12(月) 23:42:36 3tzvCE1o0
◇◇◇◇



「あ、が、あ――――」
「阿良、さん」



己を庇う女性の名を、愕然と呼んだ。
蒼太の顔に、愛の血が降り掛かる。
生暖かい赤い液体の感触を気にしている余裕等、無かった。
愛は首筋を噛み付かれ、瞳孔を震わせる。
『虎が襲い掛かってきた』などという非現実的な光景以上に。
蒼太は、自分を庇った愛から目を離せなかった。



「がっ―――――――」



再び、愛の首筋から血が噴き出す。
虎がより強く牙を突き立て、傷口を切り開いたのだ。
ぐしゃり、ぐしゃりと肉に牙が突き刺さる音が響く。
阿良さん、と声を上げる蒼太。
されど、反応は返ってこない。
虎に首を食らい付かれ、愛は何も答えることが出来ない。
蒼太の中に、戦慄が走る。
『死』というものを、改めて実感する。

蒼太とて、血には慣れている。
殴り合いの喧嘩なんてのは日常茶飯事。
ヤクザに喧嘩を売ったことさえもある。
人を殺す寸前の暴力を振るったことだって、何度もあった。

だが。
それはいつだって、自分一人で売り買いした喧嘩だった。
蒼太が生きてきたのは、暴力の世界。
それはつまり、力でしか自分を主張することの出来ない血濡れは領域。
其処で生きている連中は、決まっている。
ごろつき共だ。
やり合う相手は社会からの逸れ者のみ。
不良やギャング、ヤクザと言ったお天道様の下で大手を振って歩けないような人間だけだった。
そんな同類同士での暴力なんてものは、呆れ返る程に繰り返した。
根っから闘争を好む訳でもないのに、気が付けば蒼太にとってその世界は奇妙な居場所と化していた。
そこに見ず知らずの他人を引きずり込んだことなんてない。
蒼太は己の喧嘩に、無関係の者を巻き込んだことは無かった。
自分を守るために誰かが傷付いたことだって、今まで一度も無かった。

故に、蒼太は愕然としたのだろう。
自分を守って重傷を負った愛の姿に。
自分の不手際で愛を傷付かせたという事実に。
自分はこうして、何も出来ずに尻餅を突いているという情けなさに――――――



「ッの、が、あああああああああああああああああああああああ!!!!!」



咆哮。
それは阿良愛の叫び。
そして轟音。
何かを投げ飛ばすような激しい音。
瞬間、虎の身体が宙を舞う。
投げ出された身体が吹き飛び、そのまま地面へと叩き付けられる。
吹き飛んだ勢いで虎は地面を転がるも、直後に立ち上がり再び戦闘態勢を取る。


532 : Eye Of The Tiger ◆j0K3675zFI :2016/12/12(月) 23:43:24 3tzvCE1o0
蒼太は―――――ただただ、驚愕することしか出来ない。
目の前で起こった異常事態に、呆然とすることしか出来ない。


「だい、じょ、ぶ、しま、づ、く、ん――――?」
「阿良さ……いや、その、ポリさん……その傷」
「あー、これ、たぶん、わたしの、いのう」


首筋から血を吹き出しながら、愛は声をかけてきた。
強がるような弱々しい笑みを浮かべながら、蒼太の身を案じたのだ。
唖然とする蒼太。
言葉を失うに決まっている。

愛は首筋を噛まれたにもかかわらず、力づくで動いて見せたのだ。
そして、反撃。
自身の首に喰らい付く虎を無理やり引き剥がし。
腕力を振り絞り―――投げ飛ばしたのだ。
無謀。無鉄砲。否、普通に考えれば無理。
痛みと出血多量によってまともに動くことも出来ない筈。
そもそも虎を投げ飛ばすというのが無茶にも程がある。
なのに、彼女は動いて見せた。
一言で言って、おかしい。
『不死身の存在』でもなければ、まず有り得ない。



グジュル。グジュル。グジュル。グジュル。グジュル。



奇怪で不快な音が蒼太の耳に入る。
それが血肉の蠢く音だと気付いたのは数秒後。
愛の首筋の傷口から、肉塊のようなものが盛り上がっている。
それはまるで肉の絆創膏のように傷口を塞いでいく。
先ほどまでの負傷など何事もなかったかのように、愛は瞬く間に『自己再生』を果たしたのだ。
これが彼女の異能力の一片。
首を切られようと即座に微量の魔力で再生を果たし、傷つけば傷つくほどに強くなる狂戦士――――スパルタクスの能力。


「ッ、はあ―――――――」


愛はよろよろと立ち上がり、蒼太を守るように構えた。
先程までは『早死にしそうで不安しか感じない』と思っていた彼女の姿が、どこか大きく見えた。


533 : Eye Of The Tiger ◆j0K3675zFI :2016/12/12(月) 23:43:53 3tzvCE1o0
そして、愛が振り返る。
蒼太を安心させるかのように、口元に微笑みを浮かべながら。
先程の負傷なんて、何事も無かったかのように。


「島津くん、逃げて下さい」
「でも、ポリさん」
「だいじょーぶ……ですよ。私、自衛隊いた頃、熊殺しとかよばれてたんですから――――」


瞬間。
愛の身体が大きく仰け反る。
蒼太と言葉を交わした一瞬の隙を突き、接近した虎が鋭い爪を振るったのだ。
防弾防刃ベストを纏っていたことで深手にはならなかったものの、そのパワーの前では愛とて怯む。


「早く!逃げてッ!!」


愛が叫んだ。
それは先程までとは異なり、鬼気迫る態度であり。
蒼太は一瞬迷った後、すぐに駆け出した。
この場から離れるために。
愛の足手纏いにならないために。
蒼太は立ち上がり、走る。



―――――虎が動いた。



愛へと右前足の爪を再び振るおうとした直後。
虎は爪を命中はさせず、そのまま大地へと前足を振り下ろし。
『異様な瞬発力』で、駆け抜けた。


愛の横を通り抜け、虎が目指す先。
それは走り出した蒼太の方であり―――!



「こんのおおおおおおおおおおおッ!!!!!
 お前の!!相手はッ!!!この私でしょうがァァーーーーーーッ!!!!!!!!!」



吠えるッ!!
愛は獣の如く吠えるッ!!!
自衛隊の訓練で鍛えた強靭な肉体で瞬時に駆け出し、虎へと体当たりを行うッ!!!!

されど、虎は瞬時に躱す。
刹那の間に振り返り、突進する愛へと向かって走り。
そのまますれ違いざまに爪で胴体を引き裂いたのだ。
コンマ数秒。愛の反射神経にも反応できない速度。


「ぐあっ!?」


愛の脇腹から血が噴き出す。
今度は前足に力を集中し、『正確に』ベストの防御を突破する一撃を叩き込んできたのだ。
直後に、当然の如く瞬時に傷口が塞がる。


534 : Eye Of The Tiger ◆j0K3675zFI :2016/12/12(月) 23:45:18 3tzvCE1o0


「くっ、そ……!!」


愛は周囲を忙しなく見渡した。
虎は草原を跳ね回るように駆け抜けていた。
異様な瞬発力。残像すら見えるほどのスピード。
まるで愛を翻弄するように、彼女を中心とした草原の一帯を駆け回る。
蒼太の追跡が不可能と見たためか。
虎は、愛を『狩る』ことを選択したのだ。



(幾ら何でも、速すぎやしませんか……!?)



凄まじい疾さで動き回る虎に、愛は歯ぎしりをする。
愛とて自衛隊や警察で鍛錬を重ねてきた。
その身体能力、動体視力は並の人間をはるかに上回る。
ましてや、かつて強靭な熊をも退治したことがある愛だ。
その実力はそこいらの自衛官、警察官の比にならないレベルに到達している。

しかし、それでも尚この虎の動きは。
残像を『目』で追うのが、精一杯ッ――――!

スパルタクスという英霊は、基本的に剣と肉体で戦う。
その攻撃能力もまた、純粋な身体能力に依存する面が大きい。
故に、身体能力で捉えられぬ相手には分が悪い。
凄まじい高速移動能力を持つ敵の前では、『受身』の状態で構えることしか出来なくなるのだ。

身構える愛の耳に、幾度となく小気味良い音が響く。
それは残像を残しながら駆け回る虎が雑草を踏む音。


535 : Eye Of The Tiger ◆j0K3675zFI :2016/12/12(月) 23:46:06 3tzvCE1o0

ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ――――




(何処だ?)




ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ――――




(何処から来る!?)




ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ――――




(この虎は何処から攻めてくるッ!!?)




ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ――――




(落ち着けッ!!落ち着きなさい、阿良愛ッ!!!)




ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ――――




(攻撃の瞬間はいずれ来る!)




ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ――――




(その時に一気に叩けばいいッ!!)




ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ――――




(奴にだって隙は必ず、)




ザッ、ザッ、ザッ ヒュンッ ザッ、ザッ――――



「いッ」



顔面に、右目へと目掛けて何かが飛んできた。
それが小石だと気付いたのは一瞬の後。
愛は目の下へとぶつかった小石に対し、反射的に目を閉じてしまい。




瞬間。
虎が、跳躍したッ!!!


536 : Eye Of The Tiger ◆j0K3675zFI :2016/12/12(月) 23:46:44 3tzvCE1o0

愛は驚愕した。
一瞬で飛びかかった虎が、愛を押し倒したのだ。
先ほど飛んできた小石は、虎が草原を駆け回りながら口に咥えて投げつけたものだったのだ。
まさか駆け回りながら小石を回収したというのか。
それとも予め小石を口の中に仕込んでいたのか。
答えは分からない。ただ確かなことは、一つ。
この虎は小石の投擲によって相手に隙を作り、その『一瞬』を恐るべき瞬発力によって突いてきたのだ!


「こ、な、くそォッ!!!!」


勢いよく愛の頭部に喰らいつく虎の顔面に鉄拳が叩き込まれる。
虎はその衝撃に耐え、愛の頭部に噛み付く。
グジュル、グジュル、グジュル、グジュル――――
されど愛の頭部に突き立てられた傷は、今も尚再生を続ける。
それでも尚、虎は噛み付く。
それでも尚、愛は殴る。
それでも尚、虎は噛み付く。
それでも尚、愛は殴る!殴る!殴る!
それでも尚、虎は噛み付く!
不死身の女の頭部を食いちぎらんと、顎の力を強める――――!



「退けえっ!!!!」



凄まじい勢いで、愛の左腕が動いた。
その手に握られているのはサバイバルナイフ!
懐に仕込んでいたナイフが、虎の頭部へと突き立てられたのだ!

咄嗟に躱そうとする虎。
しかし愛に噛みついていたのが仇となり。
虎は回避が遅れ、躱しきれず。
そして。
虎の頭部にナイフが食い込む。
虎は驚愕する。
虎は吠える。
虎は。
虎は。
虎は。
虎は――――傷を負っていないッ!!!



「え……!?」



愛もその目を丸くさせ、驚愕の表情を見せる。
透過している。
虎の頭部に突き刺さっているように思われたナイフは、虎を傷つけていなかった。
ナイフの刃は、虎の頭部をすり抜けていたのだ!


537 : Eye Of The Tiger ◆j0K3675zFI :2016/12/12(月) 23:47:36 3tzvCE1o0

虎は咄嗟に愛から離れ、距離を取っていた。
虎もまた、先ほどの透過が想定外と言わんばかりに回避行動を行っていたのだ。
頭部の傷を再生させながら、愛は立ち上がる。
虎の不自然な動きを疑問に思いながら、その手にナイフを握りしめる。


(あのスピードに、透過……間違いなく、あの虎の異能力……!)



愛は虎と睨み合いになりながら思考する。
あの虎にも首輪が嵌められている。
どういう経緯で巻き込まれたのかは解らないが、虎もまた参加者であることは間違いない。
参加者であるならば、あの虎にも何かしらの異能力が支給されていることは明白だろう。
『異常な速さの高速移動』と『物質透過』。
それぞれ異なる二つの能力を奴は見せた。
あの虎に支給されたのは一体何の能力なのか。
奴の能力に弱点はあるのか。
自分の能力もまた、本当に単純な再生能力のみなのか。
愛は思考する。己について、敵について考える。
そして。



―――――――虎が、再び駆け出した。
―――――――愛は身構える。
―――――――戦いは未だ、始まったばかり。


◇◇◇◇


走る。
走る。
走る。
走る。
走る。
小柄な身体を必死に動かし、蒼太は走り続ける。

どこへと向かっているのかなど、彼にも解らない。
愛が自分に気を遣わぬように、兎に角あの場から離れることを優先した。
自分があの場に残り続ければ、きっと愛は自分を庇い続けるだろう。
幾ら再生の異能力があると言えど、限界も必ずある筈だ。
それに『腹話術』と拳銃しか持たない自分があの虎と戦った所で、きっと相手にはならないだろう。
自分が足手纏いになる訳にはいかない。
蒼太はそう思った。だからこそ愛の言葉に従い、逃げ出した。

だが。
いつの間にか、歯軋りをしていた。
悔しさがほんの僅かに込み上げてきた。

これでいい。
こうするべきだ。
自分が足を引っ張る必要などない。
そう言い聞かせた。
だが、やはり納得はできなかった。

結局蒼太は、阿良愛に守られてしまった。
彼女は長生きなんて出来ないだろうと思っていた。
どうせその善意が祟って早死にするのだろうと思っていた。
結果、その通りになった。
蒼太を守り、彼女は無謀な戦いを始めたのだ。

適当に別れようとさえ思っていた相手に守られ。
自分はそれを黙って見ていることしか出来ず。
剰え、こうして逃げることしか出来ない。
常に暴力で何事も切り開いてきた蒼太に取って、屈辱だった。
自分の力ではどうしようも出来ない事実に、苛立っていた。


――――助けを、求めるか。


脳裏に思考がよぎった。
あのまま愛を見捨てて逃げていいのか。
寧ろ誰か助けを呼び、愛のもとへと連れて行くべきではないか。
だが、どうやって。
それに見ず知らずの相手からの助けに応じる者がどれだけいるのか。
そもそも、愛は自分に逃げろと言っていた。
それを無視してでも助けを連れてくるべきなのか。
草原を越えて駆け抜ける蒼太の思考が渦巻く。

自分は、どうする。
どうするべきなのか。
迷い続ける蒼太の耳に、奇妙な音が入ってくる。

それは草影から聞こえたもの。
何かガサガサと音が聞こえる。
女の子が、何か大きな声を上げている。
足を止めた蒼太は、そちらへと視線を向けた。


◇◇◇◇


538 : Eye Of The Tiger ◆j0K3675zFI :2016/12/12(月) 23:48:55 3tzvCE1o0




「いや、やだ、やめて――――!」



小さな女の子/弥生が、もがいていた。
卑劣漢/直哉に組み伏せられ、異形の右腕もろとも両腕を押さえつけられ、身動きは取れず。
それでも必死に、必死になって抵抗していた。
生まれて一度も味わったことのない下衆な欲望を向けられ、その目には涙を浮かべる。


「あぁ……弥生ちゃん!可愛い、可愛いね……ッ!」


されど、力で敵うはずがない。
何故ならば、今の弥生は子供なのだから。
直哉は強引に幼い弥生を組み伏せていた。
異能力『セト神』で彼女を小学生低学年程度の幼女へと若返らせたのだ。

必死にもがき、抵抗し、今にも泣き出しそうな表情を浮かべる弥生に。
直哉は、興奮していた。
未知の快感に酔い痴れていた。
幼い子供を力尽くで蹂躙するという禁断の味に、蕩けていた。
故に彼の欲望は留まることは無い。
衣服の下で、彼の下腹部は怒張し続けている。
愛しき幼女を組み伏せた直哉は、左手で弥生の呪腕を押さえつつ。
そのまま、右腕を伸ばした。


「やだ、やだぁ………!」


だぼだぼになった衣服に手がかけられる。
今の弥生の身体は幼い子供のものだ。
本来身に着けていた学生服は今の彼女には余りにも大きい。
紺色のベストも、ワイシャツも、スカートも、下着も。
程よいサイズだった衣服は、だぼだぼで。
成人男性が少し乱暴に力を入れれば、すぐにすっぽ抜くことが出来るだろう。
弥生は身体をよじって何とか逃げようとするも、片手で頭を無理矢理に押さえつけられる。


「大丈夫……怖いと思うけど、すぐに気持ちよくなるよ……!」


男の下衆な視線が、弥生を見下ろした。
怯える彼女の顔を、下品に見つめた。ひっ、と怯える声を上げた弥生。
その直後に、ぐいっとサイズの合わない上着が強引に引っ張られた。
幼い子供の白い腹部が隙間から覗く。
その先に見えたのは薄い乳房。
小さな桜色の乳首。
育ち切っていない未熟な果実が露になる。
しかし、それこそが彼にとって極上の美食。
幼女を喰らう男にとって、最高のセックスシンボル。


舌舐めずり。
薄ら笑い。
ギラギラとした視線が、素肌へと向けられる。
恐怖の余り、弥生の瞼が閉じられる。
耐え切れず、その瞳から涙が溢れ出る。


539 : Eye Of The Tiger ◆j0K3675zFI :2016/12/12(月) 23:49:26 3tzvCE1o0

なんで。
どうして。
いや。
たすけて。
こわい。
やめて。
やめて。
いやだよ。
いや。
いや。
いや。


弥生の心は、半ば恐怖に支配されていた。
恥辱と絶望に沈みかけていた。
どうしてこんなことになったのか、解らなかった。
正義の忍者として戦う筈だったのに。
弱いものを助けようと思っていたのに。
なんでこんなことに。
このままこの人に乱暴されてしまうのか。
好き勝手に蹂躙されて。
色んな酷いことをされて。
男の欲望の捌け口になるのか。
いやだ。
怖い。
気持ち悪い。
背筋に走る悪寒に、彼女はただ目を瞑ることしか出来ない。
誰か、助けて。
そんな祈りを繰り返すことしか出来ない。
最早今の彼女は、ただの無力な少女だった。
ただ神に願うことしか出来ない。
そんな哀れで、情けない子供で―――――――





「『あああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!』」




―――――突然、直哉が叫んだ。
身体を仰け反らせ、まるで天に向かって吼えるように。
何の脈絡も無い行動に、弥生は呆気に取られる。
何が起こったのか、理解できなかった。
何故唐突に叫び出したのか、解らなかった。


次の瞬間。
直哉の身体が横薙ぎに吹き飛ばされた。
否、蹴り飛ばされたのだ。
直哉の背後から迫った小柄な少年が、彼を回し蹴りで勢いよく蹴り飛ばしたのである。



「―――――胸くそ悪い」



現れた少年。
島津 蒼太は、そう吐き捨てる。
俯せで倒れて呻き声を上げる直哉を軽蔑の眼差しで睨んでいた。


540 : Eye Of The Tiger ◆j0K3675zFI :2016/12/12(月) 23:50:02 3tzvCE1o0
戦場から逃走していた彼は草陰で狼藉を働く直哉、組み伏せられる弥生の存在に気付いた。
蒼太は弥生を助けるべく、己の異能力『腹話術』によって直哉を吼えさせた。
腹話術の効果を受けた相手は『本体が思ったこと』を喋らされている最中に自意識を失う。
それを利用して直哉の動きを止め、その隙を突いて接近。
そして回し蹴りを叩き込み――――今に至る。

蒼太は暴力の世界に生きてきた人間だが、決して外道ではない。
冷徹であっても、愛を見捨てて一人で逃げたことに負い目を感じるだけの理性はある。
幼い少女が乱暴されている光景を目撃して、黙って素通りできる程冷酷でもない。
故に彼が弥生を助けたのは必然だった。

蒼太は狼藉を働かれていた少女へと目を向ける。
弥生は大きすぎる服で何とか素肌を隠しながら、蒼太へと視線を向ける。
その表情には未だ恐怖が混ざっている。

「ええと……君」
「え、あ、」
「早く逃げるぞ」

手短かにそう言って、蒼太は少女を抱え上げた。
子供になっているとは言え、小柄な少年が自分を軽々と抱えたことに弥生は少し驚く。
だが、感傷に浸っている時間はない。
蒼太は弥生を抱え、足早にその場から逃げ出した。

愛のことも心配だが――――今は目の前の出来事が優先だ。
とにかくこの女の子を無事な場所まで連れて行くべきだろう。
蒼太は心に蟠りを抱えつつも、走り続ける。



「あの野郎おおおおおおおおおおッ!!!!!!!!!!」



そして、走り続ける蒼太の後方から咆哮が轟いた。


藤崎直哉は激怒した。
必ずあのチビガキを排除せねばならぬ。

折角のお楽しみを邪魔された直哉は怒り心頭だった。
今の彼は、長年の夢を叶える直前だったのだ。
例えるなら、野球少年がメジャーリーグへと進出するような。
例えるなら、科学者がノーベル賞受賞を志すような。
それと同じように、幼女に乱暴することは彼にとって目指すべき目標だった。
なのに。
なのに、なのにッ!!!!!


「許さねえ……俺はキレたぞ……!!」


あのチビに、邪魔をされたのだ。
しかも『男の娘』っぽい可愛らしい顔したガキにッ!
数年前、女と間違えて女装少年をナンパしてしまった直哉にとって男の娘は嫌悪の対象だった。
別に男の娘でなくとも、女っぽい顔をした少年が嫌いだった。
美しく可憐な幼女の紛い物めいたアレが許せなかった。
ただでさえ嫌いだと言うのに、剰えそいつにお楽しみを邪魔されたのだ。
キレぬはずが無い。
怒らぬはずが無い!


「殺す……ブッ殺すッ!!!」


人間の三大欲求の一つは性欲とされる。
欲深い人間がそれを妨害された場合、どうなるかは想像に難くない。
キレるに決まっているッ!!
直哉の足下から影が伸びる。
己の異能力である『セト神』が出現する。
最早今の彼の心は殺意と怒りに満ちていた。
どんな手を使ってでも、どんな卑劣なことをしてでも、あのガキは仕留める。
そして愛しき弥生を取り戻す!
支給品である小鎌を握り締めた直哉は、走り出した。
目指す先は無論―――――――蒼太らが逃げた方角!


541 : Eye Of The Tiger ◆j0K3675zFI :2016/12/12(月) 23:51:40 3tzvCE1o0

【一日目・2時00分/H-5 草原】
【阿良 愛@スパルタクスの宝具とスキル/Fate】
[状態]:魔力蓄積(小)、体力消耗(小)、疲労(中)
[装備]: 防弾防刃ベスト、サバイバルナイフ
[道具]:支給品一式
[思考・行動]
基本方針:圧制者を潰す。
1:虎を倒す。最悪、島津蒼太が逃げきるまで時間を稼ぐ。
2:一般人を保護する。
3:圧制を許さない
※『今の所』狂化スキルの効果は微弱です。しかし圧制者が目の前に現れればその限りではありません。
※宝具によって驚異的な再生能力を得ていますが、『頭部および心臓の大規模な破壊』『首輪爆破』には再生が働かず死亡します。
※ダメージと共に魔力が少しずつ蓄積していきます。最大値まで蓄積されると魔力の制御が出来なくなり、暴走状態に陥ります。

【フレイス@ピカピカの実/ワンピース】
[状態]:頭部にダメージ(中)、疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品1〜3(自力での確認不可)
[思考・行動]
基本方針:人間達を皆殺しにし、ナオ=ヒューマも殺して島に帰るンゴ
1:この人間(愛)をぶち殺したるわ。ついでに一緒にいたチビ(蒼太)も後で殺すで
2:人の巣(集落)がある東側に向かうで
3:優勝後にヒューマを殺すために、何か対策も考えとく
4:イノーって何なんやろなあ?
[備考]
※南の山山頂から見たことで会場の地形や建物の位置を大雑把に把握しました。
※自身の能力(イノー)についてはまだ完全に把握できていません。
またピカピカの実による攻撃透過などの詳しい能力制限に関しては後の書き手にお任せします。
※支給品の入っているディパックを自分で確認することができません。
 食料のみ開始地点に配置されていました。
 支給食料(新鮮な雉の死骸)×3はH-3のどこかに埋めてあります。


【一日目・2時00分/H-4 草原】
【島津 蒼太@『腹話術』/ 魔王JUVENILE REMIX】
[状態]:疲労(中)、顔に返り血
[装備]:FNブローニング・ハイパワー
[道具]:支給品一式、タバコ、ライター、不明支給品×2(確認済み)
[思考・行動]
基本方針:姉のもとへ帰る
1:弥生を連れてどこかへ逃げる。
2:阿良のために助けを呼ぶ?
※ドッキリではないかと少し思っています。
※腹話術の制約、効果は把握済みですがリスクについては把握していません。

【成沢 弥生@呪腕のハサンの能力と技術/Fate/stay night】
[状態]:恐怖(大)、混乱、幼女化(8歳程度)
[装備]:『妄想心音』、クナイ複数本
[道具]:支給品一式、不明支給品×2(確認済み)
[思考・行動]
基本方針:正義の忍者として戦う?
1:だれ……?
2:こわい。
※右腕が呪腕化しています。普段は布で覆われています。
※気配遮断スキルは機能しますが、オリジナルよりある程度劣化しています。

【藤崎直哉@セト神/ジョジョの奇妙な冒険 Part3 スターダストクルセイダース】
[状態]:興奮、苛つき
[装備]:小型の鎌
[道具]:支給品一式、首輪探知機、双眼鏡
[思考・行動]
基本方針:幼女に乱暴したい。今は弥生ちゃんが標的。
1:蒼太を追って殺す。
2:殺し合い?そんなの後回しだ馬鹿!
※セト神による若返りの効果が解除される条件は以下の通りです。いずれか一つでも満たせば解除されます。
・直哉が能力を維持できなくなる程の大きなダメージや物理的衝撃を受ける
・直哉が気絶する
・直哉から1エリア分以上離れる
また、原作とは異なり幼児化によって記憶が当時の状態に戻ることも無いようです。
支給された異能力を除く本人の技能や能力等は原作通り若返った年齢の状態に依存します。

【暗視機能付き双眼鏡】
遠くのものを見ることができる。
暗視機能も付いているため、暗闇でも一定の視界を確保できる。

【首輪探知機】
周囲に存在する首輪の位置を表示する携帯端末。
端末を中心とした1エリア分の距離に存在する首輪を探知する。
死体の首輪、取り外された首輪も破損していなければ探知に引っ掛かる。
参加者の首輪を直接探知するため、『気配遮断スキル』など隠密系の能力の影響を受けない。
ただし周囲の地形や位置の高低差などは表示しない。


542 : 名無しさん :2016/12/12(月) 23:53:59 3tzvCE1o0
投下終了です。
それと>>523の文章にミスがあったので修正します。

×H-6の草原の木陰に座り込む影が二つ。

○H-5の草原の木陰に座り込む影が二つ。


543 : 名無しさん :2016/12/13(火) 14:47:42 Z4tPIQZ.O
投下乙です

婦警と虎が熱血バトルしてる一方、ゲスロリコンが幼女化くノ一と男の娘を追っかけてる


544 : 名無しさん :2016/12/13(火) 16:01:52 37nIh3z.0
もう少しでキャラも一通り出揃うかな


545 : 名無しさん :2016/12/14(水) 18:23:09 XOTRfO7Y0
投下乙です
キャラシートを読んだ時点でとてつもな〜く嫌な予感がしたがロリコンは変態紳士どころかガチレイパーになったか
こんなのに狙われて弥生ちゃんカワイソス
虎ニキ相手に奮戦する愛さんだけど能力的に相性悪そう……
ゲスロリコンに追われる中で島津くんの救援は間に合うのか?


546 : ◆7PJBZrstcc :2017/02/27(月) 18:31:37 hILQHatc0
投下します


547 : 絶望のU/夢見る少女じゃいられない ◆7PJBZrstcc :2017/02/27(月) 18:32:28 hILQHatc0

 夜の闇の中、殺し合いの会場である沖木島。
 そこの東端であるD-10に二人の人間が居た。
 一人は小学生位の身長の、栗色の髪をした下手なアイドル以上の美少女。
 もう一人は眼鏡をかけているふとっちょの青年。
 一見すると不釣り合いなこの二人も殺し合いの参加者。
 少女の名前は天草ゆたか。
 青年の名前は大木潮。
 その二人は今

((どうしよう……))

 猛烈に困っていた。
 理由はゆたかの手に在る赤く小さな丸い宝石にある。
 その宝石の名前はレイジングハート、アニメ魔法少女リリカルなのはシリーズに登場するデバイス、魔法の杖である。
 これがゆたかのデイバッグの中にあったのだ。

 二人は幸か不幸かアニメ鑑賞が、中でも潮は変身ヒロイン物が、ゆたかは魔法少女物が好きだった。
 そのおかげで2人ともリリカルなのはを知っていたし、そのアニメの主人公を務める高町なのはのデバイスであるレイジングハートを知っていた。
 そう、2人にとってレイジングハートとはアニメの中の物なのだが

『あの、ここはどこで貴方達は何者ですか?』

 今ここに、現実の物として2人に話しかけてくる。
 しかもアニメだと英語だったのにここでは日本語で。
 だが2人が困っている理由は、創作の存在のはずの物が現実に現れている事では無く

『そしてなぜ、貴方達は私の事を御存じなのですか?』

 2人がレイジングハートを知っている理由を、どう説明しようか考えているからだ。


 天草ゆたかと大木潮の2人は殺し合いが始まってすぐ出会った。
 最初こそお互いに警戒していた物のゆたかの人のいい性格と、2人が似たような趣味を持っていることからあっさり意気投合した。
 そのまま2人で絶対に殺し合いに乗らない、と決意を固めまずは支給品を確認しようということになった。
 そしてゆたかが最初に取り出しのがレイジングハートだった。
 取り出したそれを見て2人は思わずこう言ってしまったのだ。

「えっ、レイジングハート?」

 と。
 そして今に至る。


548 : 絶望のU/夢見る少女じゃいられない ◆7PJBZrstcc :2017/02/27(月) 18:32:59 hILQHatc0

『何か言っていただけないでしょうか』

 どう説明しようかと考えてる2人、その間にもレイジングハートの疑心は膨れ上がるのが2人にはよく分かる。
 レイジングハートからすれば見も知らない人間が自分の名前を呼ぶのだから。
 この2人が管理局の人間なら納得はできるのだろうが、そうは見えないはずという自覚がある。

「とりあえず自己紹介をするね。
 僕の名前は大木潮、こっちは天草ゆたかだ」
「は、はじめまして……」
『……はじめまして』

 そんなレイジングハートの心情を全部では無いもののある程度察した二人は、とりあえず自己紹介をした。
 その自己紹介にとりあえずレイジングハートは応じる。

「次に僕たちの今置かれている状況を説明するよ」

 そして潮は自分達が殺し合いに巻き込まれたこと、レイジングハートはその殺し合いの為の支給品にされたことを説明した。

『成程、状況は把握しました。
 ですが肝心なことを私は聞いていません』
「えっと、それは……」
「大木さん、説明しましょう」
「えっ!?」

 ゆたかのある種諦めに近い発言に驚く潮。
 その反応を見たゆたかの発言はこうだ。

「大丈夫です。レイジングハートはなんせあの高町なのはのデバイスですから、多分大丈夫です」
「理由になってないよそれは!?」

 ゆたかの理由になっていない発言に思わずツッコむ潮。
 しかし、代案があるのかと言われればそんなこともないので結局ゆたかに任せた。

「あのねレイジングハート、私たちが貴方を知っていた理由は――」

 こうして、ゆたかはレイジングハートに魔法少女リリカルなのはというアニメについて説明した。
 そしてとりあえず無印の説明、つまりPT事件の話が終わった後レイジングハートは言葉を途切れさせながらこう返答した。

『な、成程……。貴方達が私を知っている理由は理解しました。
 しかしまさか、私達の行いがこの世界ではアニメになっていたとは……』

 感心しているような口ぶりだが、声は震えている。
 ショックなのだろう、とゆたかと潮は思う。
 ギャグ時空の登場人物ではないのだ、自分がアニメの存在だと言われても平気な人間はいないだろう。レイジングハートは人間ではないが。
 それでも、しばらくするとレイジングハートは持ち直し、ゆたかと潮にこう話した。

『正直ショックが無いとは言えません、しかし私達はあの世界に生きている。偽物でも作り物でもありません』
「そうだよ! レイジングハートは本物だよ!」
「あぁ良かった、一時はどうなるかと思った」

 レイジングハートの言葉に賛同するゆたかと、安心する潮。
 そんな2人を見てレイジングハートはこう切り出した。


549 : 絶望のU/夢見る少女じゃいられない ◆7PJBZrstcc :2017/02/27(月) 18:33:29 hILQHatc0

『貴方達は信用できるみたいですね。それにゆたか、貴方には適性がある』
「えっ!? それって私にリンカーコアが!?」
「これがナオ・ヒューマの言ってた異能って所か……」

 意外なタイミングで自身の異能が分かり喜ぶゆたか。
 一方、レイジングハートは潮の言葉に疑問を覚える。

『異能とは?』
「なんか、この殺し合いの主催者が僕達にアニメやら漫画の能力を持たせたんだって」
『……ゆたかにリンカーコアを人為的に植え付けたと? そんなことが可能なのですか?』
「いや、僕に聞かれても分からない」
『申し訳ありません』
「いや気にしてないよ」
「レイジングハート!」

 潮とレイジングハートが異能について話していると、ゆたかが唐突に割り込んできた。
 そして話すことは潮にとっては予測できたものだ。

「私、変身してバリアジャケット着たい!」
『この殺し合いを壊すに置いて、私の力は有用だと判断します。
……分かりました、変身させましょう』
「やった!」
「凄い無邪気に喜んでるなあ。
でも魔法少女の変身シーンが現実で見られるなんて僕もワクワクしてくるから、気持ちは分かるけどね」
『では早速始めましょうか』

 レイジングハートの言葉にゆたかは頷き、潮から少し離れて準備する。
 そしてゆたかはレイジングハートを構え、呪文を唱える。

『起動呪文はご存知でしょうか?』
「うん!」
『……なんというか、不思議な気分になりますね』
「いくよ。
 我、使命を受けし者なり。
 契約のもと、その力を解き放て。
 風は空に、星は天に、そして不屈の魂(こころ)はこの胸に。
 この手に魔法を。
 レイジングハート、セットアップ!」
「この呪文聞くの何年ぶりなんだろう」

 無印第1話でしか使われなかった起動呪文をゆたかが唱えると、一瞬だけ光が放たれる。
 そして光が収まると、ゆたかはバリアジャケットを装着していた。
 その恰好は、本家本元の高町なのはと同じ服装だった。

「あ、変身って一瞬なんだ……」
「というか、一瞬じゃなかったら僕に全裸を見られたいってことになるよ。
 僕も君もバリアジャケットつける時に全裸になるのは知ってるんだから」
「違いますよ! 人を露出狂みたいに言わないでください!!」
「言っておくけど、僕はいくら可愛いからって三次元の小学生に欲情する趣味は無いからね」
「私は小学生じゃなくて高校生です!」
「え?」
『それは事実ですか?』
「レイジングハートまで!?」

 ゆたかが高校生だと明かされ、その場に微妙な空気が漂う。
 これはゆたかが隠していた訳では無く、1人と1機が勝手に勘違いをしていただけなのだが。
 その空気を払拭する様に、レイジングハートは潮にこう切り出す。


550 : 絶望のU/夢見る少女じゃいられない ◆7PJBZrstcc :2017/02/27(月) 18:34:04 hILQHatc0

『ところで、あなたの異能はどのようなものですか?』
「あ、僕? 僕はこれだよ」

 そう言って潮は右手を近くにあった木に向ける。

「はぁっ!」

 そして叫ぶと、そこからビームのようなものが飛び出し木を揺らした。
 その光景を見てレイジングハートは茫然としながらも、潮に問いかける。

『今の光弾は一体?』
「多分だけど、気弾だと思う」
「気弾って、ドラゴンボールのですか?」
「それそれ」
『……?』
「あまり深く考えない方がいいよ。簡単に言うなら体内にあるエネルギーみたいな感じで考えて置けばいいと思う」
『分かりました……』

 正直納得しきれないレイジングハートを尻目に、ゆたかと潮は盛り上がる。

「凄いです! これでサイヤ人ばりの戦闘が出来るんですね!」
「いや気弾は出せるけど、肉体スペック何一つ変わってない」
「えぇ!?」
「でもそれだけじゃない。天草ちゃん変身解除してからちょっとこっち来て」
「あ、はい」

 言われたとおりに変身解除をしてから潮の元へ向かうゆたか。

「それで私は何をすればいいんですか?」
「いやちょっとそこに立ってて、今からもう一つ能力を見せるから」
「はぁ……」

 潮が何をしたいのかよく分からず生返事になってしまうゆたか。
 しかしそれは次の言葉で覆った。

「チェンジ!!」
「えっ!?」

 潮の言葉と共に身体からゆたかに向かって光が発せられ、それと同時にバチッという音がする。
 そして光が収まると同時にゆたかが見た物は、自分自身だった。

「これは、まさか……。入れ替わってる!?」
「無理に『君○名は。』っぽくしなくてもいいと思うな、僕は」
「つまり大木さんの異能は、シルバーチャリオッツレクイエム!」
「いや違うよ、ギニューのボディチェンジだよ」

 どこか発言がずれているゆたかにツッコミを入れ続ける潮。
 一方、レイジングハートは体が入れ替わる異能だけでなく、別のことに驚いていた。

『リンカーコアが移動している……?』
「それってつまり……」
「異能が入れ替わってる!?」
「それはもういいよ」
「すみません、今のは素です」

 ボディチェンジで体だけでなく異能まで入れ替わることに驚く2人。
 しかし、驚きながらもゆたかは重要なことを潮に言った。

「あの、それはそれとして体返してください」
「え、もうちょっとだけ女の子の体を体験してみたいんだけど……」
「返してください」
「あ、はい」

 目が本気でやばい、と潮は思いながら再びボディチェンジをし元の鞘に収めた。


551 : 絶望のU/夢見る少女じゃいられない ◆7PJBZrstcc :2017/02/27(月) 18:34:43 hILQHatc0





 そして時は午前1時を少し過ぎたところまで進む。






552 : 絶望のU/夢見る少女じゃいられない ◆7PJBZrstcc :2017/02/27(月) 18:35:26 hILQHatc0

 午前一時過ぎの沖木島D-10、そこでは天草ゆたかが魔法の練習をしていた。
 いくら知識として知っていても、実際に使いこなせるかは別の話。
 なので実際に使用してみたが、結果は上々。
 高町なのはと同程度の能力がゆたかに備わっていることが分かった。
 そしてレイジングハートにはカートリッジシステムが搭載されていなかった。
 これはどういうことか聞くと、どうやらレイジングハートはPT事件は経験しているものの、その後の闇の書事件意向については知らなかった。
 このことから、ゆたかはレイジングハートが無印終了後の時間から来ていると判断する。
 そして大木潮はそれを後ろで見てるだけ。

「いやだって、原作でギニューが気功波撃ってるシーン1回くらいしかないからどんな技使えるかよく分からないし」
「どうしたんですかいきなり?」
「いや何でもないよ」

 潮のよく分からない発言に疑問を抱きつつ、ゆたかは魔法の練習を続ける。
 するとゆたかが潮に話しかける。

「大木さん、あっち見てください」
「何?」

 ゆたかが指を指し、潮がその方向を向く。
 そこには

「人が居ます」
「お、本当だ」
『慎重に行きましょう』

 人影を見つけた2人と1機はその人影に向かって行く。
 少しすると、その人影の風貌が良く見えた。

 人影は2mほどの身長を持った人間だった。
 顔には豚のマスク。
 片手にはデイバッグ。
 もう片方の手には血の付いた巨大な肉斬り包丁。
 そして体にはエプロンを身に纏っていた。

「絶対殺し合いに乗ってるよあれ!」
『どう見ても危険人物ですね』
「待って下さい2人とも、人を見た目で判断するのは良くないです!」
「いや限度があるよ。あれで乗ってなかったら詐欺だよ、ク○サギ出張るよあれは!
 というかあれ都市伝説のブッチャーマンじゃない!? 昔テレビで見たのあんな感じだった気がする!」
「なんか聞いたことはありますけど、本当に居たんですね……」

 そんなことを話している間にも人影、ブッチャーマンはどんどん近づいてくる。
 そしてブッチャーマンは持っている肉斬り包丁を容赦なくゆたかに降ろそうとする。

「危ない!」

 咄嗟に潮は手から気弾をだし、ブッチャーマンに攻撃する。
 ブッチャーマンは咄嗟に腕で防ぎ、その隙にゆたかは脱出に空へ逃げる。
 しかし、ゆたかは空高い所へ行こうとするが高度5メートル程の場所で急に上昇が止まる。


553 : 絶望のU/夢見る少女じゃいられない ◆7PJBZrstcc :2017/02/27(月) 18:35:57 hILQHatc0

「あ、あれ? 何で?」

 ゆたかは止まった自分に疑問を抱きながらも上に行こうとするが、身体は一向に上がらない。
 この場に居る誰もが知らないことだが、これはナオ・ヒューマの掛けた制限である。
 何故なら、空を自由自在に飛ばれてはワンサイドゲームになりかねないからだ。 
 勿論、5メートルという高さは空を飛べない相手なら有利なものだが、この殺し合いにはそれを逆転できるだけの要素は有り余っている。

「いやそれよりもこっち注意してお願いだから!」

 ゆたかが何とか飛ぼうと苦心している間に、ブッチャーマンは狙いを潮に変更していた。
 潮はブッチャーマンを近づけまいと連続で気功波を撃つが、ブッチャーマンは獣のような勘の鋭さででこれらを防御しながら潮に近づいていく。
 それを見た潮は慌ててゆたかに助けを求めた。

「エクセリオンシュート!」

 助けの声を聴いたゆたかは発生の速い魔法でブッチャーマンに攻撃する。
 ブッチャーマンはこの声を聴いて攻撃を止め、回避しようと動く。
 しかしエクセリオンシュートは自動追尾、多少動いた所で回避できるはずも無く全弾命中。
 ブッチャーマンに大したダメージは無いものの、怯んで動きを止め、2人の様子を見ている。
 その隙にゆたかは潮の元へ降り、作戦会議をする。

「……どうします?」
「どうしますって言われても……。
 一応聞いておくけど、ブッチャーマンを殺すなんて真似はしたくないよね?」
「当然です! 魔法少女が人殺しなんてありえません!」
「そういうと思ったよ……。まあ僕も人殺しなんてごめんだけど」
『そうなると、気絶させたうえで拘束という形が理想ですね』
「まずは僕の気弾で動きを止める。
 そこからバインドからのディバインシューターが妥当かな」
「勿論、私の魔法は非殺傷設定ですよね?」
「当然」

 こうして、殺人を忌避する2人と1機の作戦会議は終わった。
 そして行動を開始する。

「はぁっ!」

 まずは潮が気功波で攻撃する。
 それをブッチャーマンは機敏な動きで回避。

「だだだだだだだだだだっ!」

 それを見た潮は気弾による攻撃を切り替え、連続攻撃する。
 その様は、ドラゴンボールの世界で悟空がベジータの技と評する連続エネルギー波によく似ていた。
 この連続攻撃で、ブッチャーマンは一時的であるものの動きを止める。

「今だ!」
「はい!」

 動きを止めたブッチャーマンを見てゆたかはレストリクトロック、高町なのはが使うバインドタイプの魔法を行使する。
 それにより光の輪がブッチャーマンの両手両足を拘束し、決定的に動きを止めた。


554 : 絶望のU/夢見る少女じゃいられない ◆7PJBZrstcc :2017/02/27(月) 18:36:37 hILQHatc0

「よし、上手くいった!」

 動きが止まったブッチャーマンを見て喜ぶ潮。
 その潮を尻目にゆたかは空を飛び、レイジングハートを構える。

『Divine Buster』

 レイジンハートのシステム音の後、空に巨大な魔法陣が現れ、魔力が収束していく。
 それを見ている潮、それを行使しているゆたかは思った。
 これで終わりだ、と。
 勿論まだ殺し合いは始まったばかりだけど、ブッチャーマンの様な相手を拘束出来るだけの力があるのが分かれば、殺し合いを破綻させるのは難しくないかもしれない、と。
 そう思うのも無理はない。
 ここまでの戦いだけを見れば、それは間違いじゃないかもしれない。
 だが彼らには罪がある。
 どうしようもない罪がある。






 無知という、罪がある。






「あ、あぁ……!」

 その光景を、天草ゆたかは理解できなかった。

『忘れていました……。
 ゆたかや潮に異能があるように、彼にも異能があることを……!』

 その光景を、レイジングハートは理解した。

 言葉にするならこうだ。
 拘束していたブッチャーマンの腰回りから触手のようなものが現れ、潮を近くに置いてあった彼のデイバッグ諸共吹き飛ばしたのだ。
 そんなことを想定していなかった潮はまともに攻撃を喰らい、地面に倒れ伏す。

「が、はぁ……っ!」

 潮は思う。
 ヤバイ、これはヤバイ。多分肋骨折れてる。超痛い。
 漫画とかだったら大したことないように扱われる肋骨骨折だけど、実際になるとマジでヤバイ。
 よくこんな怪我して戦えるな漫画の主人公は! 流石ヒーローだよ。根本から何かおかしいよ!
 こっちは痛くてまともに動けやしないってのに!


555 : 絶望のU/夢見る少女じゃいられない ◆7PJBZrstcc :2017/02/27(月) 18:37:06 hILQHatc0

「大木さん!」

 一方、ゆたかは倒れ伏した潮を見て思わずディバインバスターの準備を解除し、潮の元へ向かう。
 だがそんな隙をブッチャーマンは見逃さない。
 ブッチャーマンは触手を伸ばし、ゆたかの足を掴む。
 そして地面に叩きつけた。

「うわっ!」

 バリアジャケットを装着していたこと、咄嗟に防御魔法を使ったことでダメージは無い。
 だがこれで、さっきまであった優位は完全に失われることとなった。

『大丈夫ですか、ゆたか!?』
「う、うん……。私は大丈夫……」

 レイジングハートの心配な声に返事しながらゆたかは思う。
 腰回りから生えている触手、これってまさか……。

「喰種の赫子……? 確か主人公が持ってた……」

 ゆたかはブッチャーマンの異能を理解した。
 東京喰種に出てくる喰種、その喰種の体から発生する捕食器官の赫子の一つ鱗赫、それがブッチャーマンの持つ異能だとゆたかは理解した。

「大木さ、んぐっ!」

 ゆたかはブッチャーマンの異能を把握し、潮に伝えようとする。
 しかしブッチャーマンはゆたかが話すよりも先に首に触手を回し、締めると同時に口の中に触手を突っ込む。
 これによりゆたかは声を出すことが出来なくなった。


 それを見た潮は拙いと思う。
 このままだと天草ちゃんは殺される、だけど僕にはどうすることも……。
 その時潮は気づいた、僕の前に自分のデイパッグがあることに。
 そしてその口から、小さな緑色の豆が出ていることに。
 枝豆にも見えるが少し違うその豆は――

「仙、豆か……?」

 仙豆。
 ドラゴンボールに登場するアイテムの一つで、1粒食べれば10日は何も食べなくて済むほど腹が膨らみ、更にどんな重症でも一瞬で治す回復アイテムである。

 それが本当に仙豆か潮には分からない。
 だが少しでも希望があるのなら、それに掛ける。
 その思いで痛みを堪えながら必死に手を伸ばし、仙豆を掴みそして食べる。

「な、治った……!?」

 どうやら本当に仙豆だったらしく、潮の肋骨骨折は完治した。
 だが治ったからといってゆたかを助けられるかは別の問題だ。

「ボディチェンジだ、それしかない」

 潮は口の中で小さく作戦を呟く。
 潮は自分に与えられている異能で、自分とブッチャーマンの体を入れ替えることにした。
 これなら天草ちゃんを触手から解放できるし、あの巨体ならかなりの腕力を持っているから有利に動けるはずだ。
 作戦ともいえないような代物だったが、今の自分はやられて立ち上がれないと思われているはずだ。なら不意は撃てる。

「いくぞ」

 そう言って潮は可能な限り素早く立ち上がり

「チェンジ!」

 と叫んだ。
 だがその動きはとても素早いと言えるものでは無かった。
 何故なら潮はふとっちょで、素早く起き上れる体型じゃなかったから。
 だが不意は付けた、と潮は思ったがそれは甘い。

 ブッチャーマンは触手を動かし、ゆたかを盾にした。
 決して驚かなかった訳では無い。だがブッチャーマンは、その驚きに思考を止めることなく最善の手を打ったのだ。

 そしてボディチェンジにより、潮とゆたかは体を入れ替えた。


556 : 絶望のU/夢見る少女じゃいられない ◆7PJBZrstcc :2017/02/27(月) 18:37:34 hILQHatc0





 ゆたかは前触れもなくいきなり首絞めから解放され、自分に何が起きたのかが分からなかった。
 だがその疑問は目の前の光景を見たことで解消される。
 そこにはバリアジャケットは解除されたものの、相も変わらず触手に首を絞められている天草ゆたかの姿があるのだから。

「ボディチェンジ……」

 ゆたかは自分が入れ替わったことを瞬時に理解する。
 しかしレイジングハートが手に無い以上出来ることはない、と思った瞬間。

 レイジングハートが飛んできた。
 勿論自立飛行したのではない、ゆたかの体になった潮が投げたのだ。
 ゆたかはレイジングハートに言う。

「レイジングハート、変身を――」
『逃げてください、ゆたか』

 再び変身して戦おうとするゆたか、しかしレイジングハートが告げたのは残酷な指示だった。

「逃げるって、どうして……!」
『今の我々では勝つ術はありません、バインドも通用せず大技を当てることも出来ない』
「だからって……!」
『今のブッチャーマンは変身が解けたことでバインドが解除されています。
 それに潮を見てください』

 言われたとおりにゆたかは潮を見る。
 すると潮は目くばせで、『早く逃げろ』と言っているような気がした。

『決断してくださいゆたか、あなたは逃げねばならない。
 潮の為に、ブッチャーマンを倒す為に。そして殺し合いを打破する為に』
「そんな……」

 ゆたかは困っている人を放っておくことが出来ない優しさを持っている。
 だがその優しさのせいで死ぬことを潮もレイジングハートも望んでいない。

「う、うわああああああああああああああああああああああああああ!!」

 だからこそゆたかは逃げ出した。
 本当は一緒に戦いたい気持ちを胸に秘めつつもそれを堪えて。

「ごめんなさい、大木さんごめんなさい……!」
『申し訳ありません。ゆたか、潮……』

 逃げ出しながらも謝る1人と1機。
 それがどんな感情が理由で謝っているのか分からないままに。


557 : 絶望のU/夢見る少女じゃいられない ◆7PJBZrstcc :2017/02/27(月) 18:38:08 hILQHatc0





 逃げ出したゆたかとレイジングハートを見て潮は思う。

 良かった、逃げてくれて本当に良かった。
 その為に死にかけの身体で気弾撃ってたんだから。

 そう、潮はブッチャーマンに向かって気弾を撃つことで今まで足止めをしていたのだ。
 だからこそ今までブッチャーマンは動かなかった。
 だがそれを行う体力はもう残っていない。後は殺されるだけだ。

「あ、あぁ……」

 声にもならない言葉を漏らしながら潮は涙を流す。

 死にたくないな……。
 まだ見ていないアニメが一杯あったのに。
 久しぶりにマジカルエミを見返したかったのに。
 またユーリちゃんにコスプレさせたかったのに。

 でも。
 天草ちゃんと仲良くなれた。
 魔法少女の変身シーンをリアルで見れた。
 そして今、二次元に出てきてもおかしくないような美少女に僕はなった。

 なら僕の最期は、決して全てが悪いものじゃない。


 その思考を最後に、潮はブッチャーマンに首を折られ息絶えた。

【大木潮@ギニューの能力 死亡 】
【残り43人】


 そしてブッチャーマンは思案する。
 このまま当初の予定通り集落に向かうか、それとも逃げた男を追いかけるか。
 そして選んだのは――


【一日目・2時00分/D-10】

【天草ゆたか@ミッドチルダ式の魔法/魔法少女リリカルなのはシリーズ】
[状態]:恐怖、後悔、魔力消費(中)、大木潮の肉体
[装備]:レイジングハート@魔法少女リリカルなのはシリーズ
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜2
[思考・行動]
基本方針:殺し合いを打破する
1:とりあえず今は逃げる
2:大木さん……、私は……
[備考]
※自分の異能を把握しました
※レイジングハートの参戦時期は無印終了後、A`s開始前です。
その為カートリッジシステムは搭載されていません
※制限により5メートル以上の高さは飛べません
※集落がある方向には逃げていません。どの方向に逃げたかは後の書き手にお任せします
※ブッチャーマンの異能を鱗赫の赫子だけだと思っています

【ブッチャーマン@喰種の肉体と赫子/東京喰種】
[状態]:ダメージ(小)
[装備]:巨大な肉斬り包丁
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜2(確認済み)
[思考・行動]
基本方針:優勝して食事に困らない生活を手に入れる
1:人の多そうな集落に向かうか 、それともあの男(天草ゆたか)を追いかけるか――
[備考]
※自分の異能をある程度理解しました。どの程度理解したかは後の書き手にお任せします
※大木潮と天草ゆたかが入れ替わったことを認識していません


※D-10に大木潮(天草ゆたかの肉体)の遺体が放置されています。
ブッチャーマンが天草ゆたかのデイパック(不明支給品0〜2)を回収したかどうかは後の書き手にお任せします。

【レイジングハート@魔法少女リリカルなのはシリーズ】
魔法少女リリカルなのはシリーズ1期から3期までの主人公、高町なのはが持つインテリジェントデバイス。
待機時は赤い球体の宝石状、戦闘時には赤い宝玉が先端にある杖状の姿になる。
また自立思考をし、喋る。
本来なら英語で喋るが、このロワでは日本語で喋る。
参戦時期は無印終了後、A`s開始前。

【仙豆@ドラゴンボール】
見た目は小さな緑色の豆。
だが1粒食べれば10日は持ち、更に大けがを負っても一瞬で回復するという代物。


558 : ◆7PJBZrstcc :2017/02/27(月) 18:38:44 hILQHatc0
投下終了です


559 : 名無しさん :2017/02/27(月) 19:11:55 sLsX8dK60
投下乙です。
なんという事でしょう、美少女キャラがたった一話でオデブなオタクに!
というのは冗談として・・・
しかしこれ、最初の放送が流れたらゆたかの名前が呼ばれてないのにゆたかの死体があるということになるのでは?
それに、知り合いにあった時にどうやって自分が天草ゆたかだって証明するんだろ?
前途多難だなぁ・・・。


560 : 名無しさん :2017/02/27(月) 20:24:57 WLLmXXgo0
投下乙
潮、ゆたかを守って散ったか
最後までブッチャーマン足止めのために奮戦したりと漢だった
同行者と美少女ボディを喪って命を拾ったゆたかの行く末はどうなるか


561 : 名無しさん :2017/02/28(火) 09:33:33 tOkSzSKIO
待ちに待ってました
投下乙です

本ロワ第二の犠牲者は潮になったか
だけど十次おじいちゃんとは違う良さのある、熱い序盤退場だった
その散り様はまさに漢とヲタの鑑だったぜ

現状のゆたかのメンタルと変身時の姿がヤバいのは禁句


562 : ◇T9FS3jjYPM :2017/03/01(水) 08:01:54 uoJkbRZA0
投下します


563 : ◆T9FS3jjYPM :2017/03/01(水) 08:02:25 uoJkbRZA0
鳥間違え


564 : 知人への一歩 ◆T9FS3jjYPM :2017/03/01(水) 08:03:28 uoJkbRZA0
天草士郎という少年は恵まれている。それはだれの目にも疑いようがない。
日本有数の大企業『天草財閥』の御曹司、道を歩けば10人中10人が振り返る程の美形、そして美人な妹と婚約者。
これで恵まれていないなどと卑下しようものなら周囲からの袋叩きは必定である。
そのためか、また自身の御曹司という立場もあり、彼は普段より非常に物腰柔らかな人間であると知られている。
事実、彼は父親の影響で重度の特撮オタクであること以外は完璧と言ってよい人格を有しており、人とのコミュニケーションなどで困ったことはほとんどない。

そう、ほとんどである。


「何をしているんですか!急ぎますよ、オニイサマ!」

誰にでも苦手なものは存在する。
その数少ない例外の一人が現在、彼の目の前にいる少女である。

「え?あ……うん、……オニイサマ?同い年だった……よね、僕ら」
「……?ゆたかちゃんのお兄さんの天草士郎。違いますか?」
「あぁ……うん……ソウデスネ……、はぁ」

頭を抱えたくなるのを必死でこらえながら士郎は心なしかうれしそうに話す少女、江本咲穂の言葉を聞き流す。

士郎は彼女が得意ではない。
むしろ苦手と言っていい。

付き合いの時間自体は短くはなく、人によっては二人の関係は幼馴染だと言うほどには長い。
ただ、その事実に反して二人の関係は浅い。

元々誰かに依存気味な咲穂の性格を士郎が苦手としていたのもあるが、そもそもの原因は彼女のやや複雑な立ち位置にある。

天草財閥重鎮の娘であり、御曹司の縁者となるために送り込まれた少女。

妹、ゆたかは問題なく彼女と友人になれたが、情報の行き違いかすでに婚約者がいた士郎はそうもいかなかった。
無邪気に自分を慕ってくれる婚約者、あかねを悲しませるわけにもいかず、かと言って咲穂をないがしろにするわけにもいかず。
どっちつかずを続けること数年、気づけば咲穂の方が士郎への興味を無くしていた。
結果的にはゆたかに完全に押し付けてしまった形となってしまっている。

そして現在、自身の怠惰を猛烈に後悔している最中である。


565 : 知人への一歩 ◆T9FS3jjYPM :2017/03/01(水) 08:03:50 uoJkbRZA0
「……はぁ」

もう何度目かにもなる溜息を吐きながら士郎は思考を切り替える。
過ぎたことを考えても仕方がない。大切なのはこれからのことだ。

「ええと。江本さん、これからの……」
「ゆたかちゃんを探します!」

半ば答えが分かり切った質問をするつもりだったが、想定以上に予想通りの言葉が返ってきてややひるむ。
彼女がゆたかに対して並々ならぬ思いを抱いているのは普段の恰好などから薄々感じてはいたが、
異常な状況ともいえる現在でもそれは健在のようでどことなく安心感を覚える。

しかし、彼女の言葉は間違ってはいないだろう。
あの場、ナオ・ヒューマによって殺し合いが告げられた小部屋、に彼の大切な家族がいたことは自身の目で確認済みだ。

士郎は昔、母を亡くした経験を持つ。
幼いながらに感じた当時の悲しみと喪失感は今も脳裏にこびりついて離れない。
今再び家族を失う可能性、しかも他人の手によって、そんなことは想像するだに怖気が走る。

そしてだからこそ、今は冷静さを保つべきときだと士郎は確信する。
もう二度とこの島で咲穂に出くわした時のような失態は犯さない。

「江本さん」

心中で密かに決心をしながら改めて咲穂に声をかける。
今度は質問ではなく、提案だ。

「僕らはお互いのことをもっと知るべきだと思うんだ」

向き合うべきなのだろう、今度こそ。

【一日目・2時00分/D-3・丘】

【天草士郎@仮面ライダーキバへの変身/仮面ライダーキバ】
[状態]:精神疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品(0〜3)
[思考・行動]
基本方針:殺し合いには乗らない、
1:咲穂と向き合い、情報交換
2:家族を優先的に探す


566 : 知人への一歩 ◆T9FS3jjYPM :2017/03/01(水) 08:04:17 uoJkbRZA0





士郎が犯した失態は一つ。

殺し合いへの焦りと家族への心配、それらがない交ぜとなった状態で咲穂と遭遇。

その結果、普段はあり得ないことだが『咲穂とゆたかを間違えた』。


彼はまだ知らない。

咲穂が彼の妹、ゆたかに対して抱いている想いの正体を。

愛や忠誠などとはまた違う、自己投影そして同一視という脆く歪んだ感情を。

『ゆたかの兄が自分をゆたかと間違えた』という事実が彼女の中にどう響くのか。

天草士郎はまだ何も知らない。


【一日目・2時00分/D-3・丘】

【江本咲穂@マネマネの実/ワンピース】
[状態]:健康、上機嫌
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品(0〜3)
[思考・行動]
基本方針:ゆたかちゃんを最優先
1:???


567 : ◆T9FS3jjYPM :2017/03/01(水) 08:04:51 uoJkbRZA0
投下終了です


568 : 名無しさん :2017/03/01(水) 09:20:35 5GwhMSUQ0
投下乙です。
妹とは違う意味で色々ヤバいな士郎くん。
多分バッグの中に入っているであろうキバットがいれば、もう少しマシになるかと思うけど。


569 : 名無しさん :2017/03/01(水) 17:20:58 6NPy5vWcO
投下乙
どう転ぶか予想できない思考にモヤが入った奴が現れたな
まだ遠い位置にあるとはいえ、ゆたか(中の人は潮)の死体を見つけたらどうなることやら・・・・・・


570 : ◆7PJBZrstcc :2017/03/31(金) 18:38:10 l2T5FIes0
投下します


571 : さあここに築いて見せろ 天に届く死体(ヒト)の山を ◆7PJBZrstcc :2017/03/31(金) 18:39:17 l2T5FIes0
 G-4の林、そこに1人の少女が居た。
 怯えた目をした元アイドルの少女、増田ユーリは目だけでなく心も怯えていた。
 何にか、と問われればこの殺し合いという状況に、という答えが返ってくるだろう。

「うぅ……。ナオ・ヒューマだか何だか知らないけどユーリが何でこんな目に……」

 そして口から飛び出すのは泣き言。
 まあ、前触れもなく殺し合いに巻き込まれた人間の反応としては普通の部類に入るだろう。
 そんなユーリは殺し合いが始まって数十分、何をするでもなく座り込んでいた。
 これは、殺し合いという現実を直視したくないユーリなりの現実逃避である。
 それと同時に、今自分が居る場所が林であることから目立たなければ他の参加者に出会わずにやり過ごせるのではという打算もある。
 多分に希望的観測は含まれているが。
 そうして今まで過ごしていたのだが

「えっ、何!?」

 いきなり大きな音が響き、ユーリはそれに驚く。
 その音は何が大きなものが倒れるような音だった。
 この状況で倒れそうな大きいものといえば――

「木?」

 すると今この林には木を倒せるような力を持った参加者がいるということになる。
 その事実に気付いたユーリはデイバッグを持ってなるだけ早く、しかし慎重に逃げようとする。
 そして少し動いた所で

「ふにゃああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 声からして少女らしい、そんな可愛らしい悲鳴が響いた。
 その後にはまた何か大きなものが地面に倒れる音。
 ユーリはその悲鳴と音を聞いて、慎重さを捨てさっさと逃げようとする。
 すると

「うわああああああああん!」

 悲鳴を上げながら走る外見は小学生くらいの女の子が、ユーリの方へ向かって走ってきたのだ。
 その少女はユーリの存在に気が付くと足を止め話しかけてきた。

「ねえ、そこの女の子!」

 いやどう見てもユーリの方が年上じゃん、という言葉を飲み込みユーリは返事をする。
 すると女の子は話し始めた。

「今こっちにお化けが向かって来てるの! だから一緒に逃げよう!」
「……お化けってさ、ひょっとしてあれ?」

 少女の言葉を聞いてユーリは指を差す。
 その先には、怪物の持つ牙や爪の他、眼球や心臓、果ては虫羽や毒腺さえも埋め込まれた悍ましい外見の人型の怪物が走ってくるた。
 怪物を見た少女は無言で首を振る。
 それを見たユーリは考える。

 あんな外見の化物なら、木を薙ぎ倒す位簡単なのかも。
 それによく見たらこの子凄い怯えてるし、きっとあの怪物に酷いことされたんだ。
 ということは

「ユーリ達早く逃げなきゃ!」
「うん!」

 こうしてユーリと少女は逃げる為に走り出した。
 1人は単純な恐怖から。
 1人は多大な誤解から。

 しかし、その事実を指摘できる人間は今この場に居ない。





572 : さあここに築いて見せろ 天に届く死体(ヒト)の山を ◆7PJBZrstcc :2017/03/31(金) 18:39:56 l2T5FIes0


「うーん、どうするか……」

 一方ここはF-5。
 そこで一人の殺人鬼少年、笹原卓が悩んでいた。
 何に悩んでいるかというと、これからどうするかである。
 と言っても目的は決まっている、この殺し合いで楽しく気ままに人殺しをすることだ。
 だからこの場合のこれからどうするは目的ではなく

「どっちに行こうか」

 物理的な意味で行く先の問題だった。
 彼が行く先に悩んでいるのにはある理由がある。
 何故かというと、卓はさっきまで一緒に居た月宮埜々香と合流したくないからだ。
 あんな風に分かれておいて、1時間もしない間にまた会いましたなんて気まずい。
 そして卓は埜々香がどっちに向かったのかを知らなかった。

「こんなことなら見送っておけばよかった……」

 後悔を口にしながら、卓は埜々香がどっちに行ったかを考える。

 月宮はダーリンとかいう奴を探していた。
 ダーリンがどんな奴かよく分からないが、話を聞く限り殺し合いには乗ら無さそうだ。
 かと言って臆病風に吹かれるタイプでもない。
 となると人の集まりそうなところ、集落とかそっちの方に向かうだろう。
 じゃあ逆に、北や西の方に行けば問題ないんじゃないか?

「いや、でもなあ……」

 卓は自分の出した結論に不満だ。
 そもそも卓は殺し合いに乗っている。なおかつ理由は楽しく気ままに人を殺したいという己の享楽の為だ。
 そんな男が、いくら多少気まずいからといってわざわざ人のいなさそうな所に行くのは嫌だった。

「よし南に行こう」

 そして卓は南に行くと結論を出した。
 理由はこうだ。

 南には集落への一本道があるが、月宮が集落を目指すのなら、あいつは直線距離で一番短い南東で行く気がする。
 それにひょっとしたらすぐ東にある倉庫のある農家を気にするかもしれない。
 最悪同じ方向だとしても、あいつの外見は遠目で分かるだろうから見つけてから引き返せばいい。

「んじゃ出発するか。
 あ、でもその前に剣はしまっておこう。幻想殺し使いにくくなるし。
 ――あーるこうー、あーるこうー、わたっしはーげーんきー」

 そして卓は出発した。
 のんきに歌を歌いながら、しかも殺し合いという場には余りにも似つかわしくない朗らかな歌を。

 しかし、それにツッコミを入れられる人間は今この場に居ない。





573 : さあここに築いて見せろ 天に届く死体(ヒト)の山を ◆7PJBZrstcc :2017/03/31(金) 18:40:25 l2T5FIes0


 深夜の沖木島G-5、そこで2人の少女が走っている。
 1人は女子小学生位に見える高校生の少女、君島蛍。
 もう1人は元アイドルの無職の少女、増田ユーリ。
 2人は後ろから迫る怪物から逃げ続けていた。

 そうしていると、2人の前に1人の少年が現れる。
 その少年は特徴のない少年だった。
 髪も黒髪で目立つことも無く、容姿も特に不細工でもなければ整っているわけでもない。
 そんなごく普通の少年だった。
 蛍はその少年に呼びかける。

「えっと、そこの君!」
「いやどう見ても小学生の奴にそこの君呼ばわりされたくないんだけど」

 蛍の呼びかけに少年は冷たく返す。
 少年から見ればまあ妥当ともいえる対応かもしれないが、蛍は不満を覚える。
 一方、ユーリはそんな不満を知るすべもなく少年に便乗した。

「あ、ユーリも正直それ思った。それどころじゃ無かったからその時は流したけど」
「いや俺はお前にも言いたいこと出来たぞ。
 なんだよ一人称ユーリって。一人称が自分の名前で許されるのは小学生までだぞ」
「何で名前も知らない初対面の相手にそこまで言われなきゃいけない訳!?」

 少年の容赦ない言葉にキレるユーリ。
 そしてユーリの言葉に少年はこう返す。

「じゃあ今名乗るわ。
 俺は笹原卓、そっちは?」
「……ユーリは増田ユーリ」
「私は君島蛍
 ――それと一言言っておくけど、私は小学生じゃないから!」
「嘘でしょ?」
「マジかよ……」
「何でそんなに驚くの!」

 卓とユーリの反応が不満の蛍。
 それに対し2人は顔を見合わせる。

「いやだって、なぁ……」
「ねぇ……」
「私は高校生! お姉さんなの!!」
「いやお姉さんは自分ことをお姉さんと呼ばないだろ……」

 卓の呆れた様な態度にふくれっ面を見せる蛍。
 それを見た卓が「そういうところが子供っぽいぞ……」と小さくつぶやく。
 しかしユーリは、その流れを一旦断ち切る。

「ってそんなこと言ってる場合じゃなかった!
 ……あのね、ユーリ達今追われてるの!!」
「追われてるって誰に? レイパーか何かか?」
「いや違うけど……」


574 : さあここに築いて見せろ 天に届く死体(ヒト)の山を ◆7PJBZrstcc :2017/03/31(金) 18:41:14 l2T5FIes0

 卓の妙に現実的な発想に思わず戸惑うユーリ。
 それを見た蛍は横から割り込んで説明する。

「違うよ! 私たちが今追われてるのはお化け!! 何だかすっごく怖いの!!!」
「全然分かんねえ……」
「ユーリが見たのは、木をなぎ倒せるほどの力を持って、この子を恐怖させるモンスターよ」
「洋画ホラーの怪物かよ。
 この殺し合いがデスゲームからサバイバルに変わってるじゃねえか」

 そんな会話をしていると、卓があることに気付き指を指す。
 そして卓は言う。

「つうか来てるぞ、そのお化け。あそこに」

 その言葉を聞いて蛍とユーリは、卓の指指した方を見る。
 するとそこには、さっきまで自分たちが逃げていたお化けの姿があった。

「ふにゃあああああああああああああああ!!」
「いやそんな叫ばなくてもいいんじゃね? 確かにちょっとは気味悪いかもしれないけど」

 お化けを見て叫ぶ蛍。
 それを見た卓は蛍を落ち着かせようとするが、蛍は涙目で首を横に振るだけだ。

「……ユーリ達どうしよう?」
「逃げよう! ランナウェイしよう!!」
「いやどうしようって言われても困るし、ランナウェイしようって言われても困るんだけど。
 まあ状況的に考えるなら、あいつは異能のせいであんな姿になった殺し合いの参加者だろ。話しかけてみるしかないな」
「無理だよ! 怖いもん!」
「ちょっと黙っててくれお姉ちゃん(小)」

 卓に黙るように言われてちょっと落ち込む卓。
 一方、ユーリは神妙な声でこう告げた。

「気を付けて。あのモンスターは木を切り倒して奇声を上げ、ユーリ達を恐怖の底に突き落とした悪魔なんだから」
「さっきと話変わってるじゃねえか! つーか話すの俺かよ!?」

 いつの間にかお化けと話す役が自分になってることに怒る卓。
 それを見たユーリは前かがみになり、上目づかいで卓を見てこう言った。

「お願い、もしやってくれたら後で好きな服着てあげるから。
 ユーリはこれでも元アイドルだからコスプレには慣れてるし。ちなみによく着るのはマジカルエミのコスプレだよ!」
「色々ツッコミ所はあるけど、あえて一つだけ聞かせてくれ。お前アイドルなの?」
「元、がつくけどアイドルだよっ」

 いきなり自分を元アイドルだと言ったユーリを怪訝な目で見る卓。
 その目に気づきユーリは必死に喋る。

「そんな目をされてもユーリが元アイドルなのは本当なの!」
「じゃあなんでアイドルやめたんだよ」
「同じグループだった郷音ツボミが、ユーリの魅力に恐れおののいてユーリをいじめて追い出したの!」
「……本当かよ」
「本当なの! 郷音ツボミがこの殺し合いに居るのは見てただろうし、会ったら聞いてみればいいよ!」
「そこまで言うなら信じるか……。そしてそろそろ現実見るか……」

 そう言って卓はお化けの方を見る。 
 そこには無言で佇んだままのお化けが居た。
 それを見ながら卓はデイバッグにさっき入れた剣を出す。
 そしてお化けの元へ向かいながら思わず一言。

「それ以前に何でアイツ棒立ち?」





575 : さあここに築いて見せろ 天に届く死体(ヒト)の山を ◆7PJBZrstcc :2017/03/31(金) 18:41:53 l2T5FIes0


 やっとまともに会話してくれそうな人が現れた、とお化けこと道端ロクサーヌは思った。
 最初に会った少女は私の外見を怖がり逃げ出してしまった。
 2人目の少女、ユーリはどう聞いたのか一緒に逃げてしまった。
 そして現れた3人目。
 剣を持ち、戦々恐々とした表情をしながらもこちらに歩いてくる少年。
 彼ならば話が出来るだろうか、ロクサーヌはそう思いながら佇む。
 そして彼が会話ができる程度の距離までたどり着いた時、彼は口を開きこう言った。

「マイネームイズ スグル・ササハラ」

 何故か英語で自己紹介された。

「アノ、日本語分かりマス」
「あ、そうですか……」

 ロクサーヌの言葉に恥ずかしそうな顔をする卓。
 しかしすぐにオホン、と咳払いをしながら表情を改めて一言。

「んじゃ改めて。俺は笹原卓、何処にでもいる普通の高校生です。
 あっちに居る小さいのは君島蛍、そうじゃないのは増田ユーリです」
「分かりマシタ。私ノ名前ハ道端ロクサーヌです」
「道端ロクサーヌ? あのモデルの?」
「ハイ」

 ロクサーヌの返事に卓は顔を喜ばせる。
 そして畳み掛けるように話す。

「いやー、妹がロクサーヌさんのファンなんですよ!
 サインとかもらえません!? あいつ喜ぶと思うんで!」
「アノ、それハ後で……」
「すいませんつい」

 そこで卓は表情を戻してロクサーヌに問いかける。

「ところでロクサーヌさんは殺し合いには乗っているんですか?」
「乗ってません、私は悪党ニ負けたくありませんから」
「そうですか、それはいいことですね」

 そこで卓は言い辛そうにしながらロクサーヌに尋ねる。

「……ところで木を切り倒したり奇声を上げたりについては?」
「何ですかその事実無根ナ言われようは!」

 突然言われたあまりにも事実とかけ離れた発言に怒るロクサーヌ。
 モデルという職業の都合上、あることないこと週刊誌やネットで言われたこともあるがこれはその比じゃない。
 その怒りが通じたのか卓は、申し訳なさそうな顔をしながらロクサーヌに一言。

「――ちょっとタイムで」
「……ハイ」


576 : さあここに築いて見せろ 天に届く死体(ヒト)の山を ◆7PJBZrstcc :2017/03/31(金) 18:42:26 l2T5FIes0

 それだけ言って卓は蛍とユーリの方へ走って行った。
 そして聞こえてくるのは卓の怒る声とそれに弁明する2人の声。

「どういうことだよ増田、木を切り倒してなければ奇声もあげてねえじゃんか」
「いや本当だって。木の倒れる音はユーリ聞いたもん」
「奇声は聞いてねえのかよ、嘘教えるな嘘を」
「いやだってモンスターだよ? 奇声位上げるでしょ?」
「お前の中のモンスターイメージどうなってんだ!? エイ○アンじゃねえんだよ!
 それ以前にイメージをさも事実みたいに言うな! ありのままの姿しめせよ!!」
「いやそれは……、ユーリがちょっと話を盛っただけで……」
「盛ったどころかゼロから構築されてんだけど!
 嫌だよ俺、道端ロクサーヌが木を切り倒してモンスターに成り果ててるなんて!!」
「えっ!? あのお化けモデルの道端ロクサーヌなの!?」
「そう言ってた。嘘言ってる感じは無かったな、お前と違って」
「いや奇声は嘘でいいけど木を倒したのは本当なの! ユーリその音聞いたし!!」
「嘘くせえなぁ」
「……ごめんなさい、この状況で言いにくいけど木を倒したの私なの」
「お前かよ君島!?」
「私の異能は指パッチンで真空波を起こす物なの。だからそれで木を……」
「十傑集かよ、ヒィッツカラルドとかちょっと羨ましいんだけど」
「いやヒィッツカラルドって誰……?」
「ユーリも知らない」
「ジャイアントロボ知らねえのか? って古い作品だしな。
 まあいいや、それより増田の言った情報は全部嘘だったんだけど」
「結果論じゃん!」
「半分は作為あっただろうが! とにかく俺ロクサーヌさんに謝って来るわ!」

 そこで卓はロクサーヌの元へ戻ってくる。
 そして発した言葉は謝罪だった。

「すいませんロクサーヌさん、どうも色々行き違ったみたいで」
「……そうですか。
 ともかく、私ノ疑いハ晴れたト見ていいですね?」
「そりゃ勿論」

 卓の太鼓判を押した言葉にホッと胸をなでおろすロクサーヌ。
 そしてロクサーヌは自分にとっての本題を切り出した。

「アノ……」
「何でしょう?」
「私ガあの子、君島さんヲ追いかけていたのニハ理由ガあります。
 これヲ見て下さい」

 そう言ってロクサーヌは手に持っていたデイパックを卓に付きだす。
 卓はそれに疑問を呈す。

「何ですかこれ?」
「これハ、君島さんガ落としたデイパックです。
 私ハこれヲ届けようト思って追いかけてきたのです」
「それはまたご苦労なことで……」
「あの……」
「はいはい、言いたいことは分かってますよ。
 おーい君島、ロクサーヌさんお前のデイパックわざわざ届けてくれたんだってよ!」


577 : さあここに築いて見せろ 天に届く死体(ヒト)の山を ◆7PJBZrstcc :2017/03/31(金) 18:42:57 l2T5FIes0

 卓の呼びかけに蛍は応じ、ロクサーヌの元へ向かって行く。
 ただしその顔は、少々怯えが見えている。
 それを見たロクサーヌは卓に聞く。

「笹原さん、私ノ顔ハそんなに怖いですか……?」
「まあ初見ならSAN値チェックは必要かもしれませんが、俺としては別にそんなに怖くないです」
「そうですか……」

 今一つ卓の言ってることがロクサーヌには分からなかったが、とにかくあんまり怖がっていないことは理解した。
 ということは君島さんが特別怖がりなのだろうか、とロクサーヌは思う。

「が、頑張らなきゃ……。だって私はお姉さんなんだから……」

 口の中で小さく呟きながら歩く蛍。
 それを見かねてか卓は蛍に声をかける。

「なあ、そんな気張らなくてもいいんじゃないか」
「だ、だって……」
「心配するなよ。だってお前――」

 そして次の瞬間に起きたことを、ロクサーヌは一瞬だけ認識できなかった。
 何故ならば安堵していたからだ。

 怖がりではあるものの、殺し合いに乗っていない君島蛍。
 変貌した自分の外見にも臆さず、気さくに話しかけてきた少年笹原卓。
 正直よく分からないが、とりあえず殺し合いには乗っていないという増田ユーリ。

 ロクサーヌは思っていた。
 殺し合いなんてもの、人はそんなものに乗ったりしないと。
 正直前途多難ではあるものの、きっとこんな風に仲間を増やしていずれはナオ・ヒューマを打倒できると。
 だから























「――もう死んでるしさ」

 笹原卓が持っていた剣で君島蛍の首を斬り落とすなんて、そんな現実受け入れられなかった。

【君島蛍@一指全断/素晴らしきヒィッツカラルド 死亡】
【残り42人】


578 : さあここに築いて見せろ 天に届く死体(ヒト)の山を ◆7PJBZrstcc :2017/03/31(金) 18:43:21 l2T5FIes0





 ――あぁ、やっと殺せた。
 それが、蛍を殺した卓の感想だった。
 そしてその後に湧き上がるのは、形容しがたい興奮だ。

 突き飛ばして殺したことはある。絞め殺したことはある。鈍器で殴り殺したこともある。
 でも剣で人を斬ったのは初めてだ。
 そしてそれは

「悪くないな」

 こんなのが味わえるから、古来より剣が武器の象徴となるのもよく分かる。
 そんな思いが口から溢れ、また表情を薄気味悪いものへ変える。
 しかしその興奮も

「いやああああああああああああああああああああああ!!」

 増田ユーリの悲鳴で一気に萎えてしまった。
 まあしょうがないか、と思いながら卓はユーリの方を向く。

「ご、ごめんね君島さん!」

 見られたユーリはそう言って、自分のデイパックを持って逃げ出した。
 それを達也は黙って見送る。

「逃げちゃったか、まあいいや。
 いやあんまりよくないけど、まあいいことにしよう。それより問題は――」

 こっちだよな。
 そう思いながら卓は再びロクサーヌの方を向く。

 ロクサーヌは怒っていた、誰がどう見ても怒っていた。
 その中でロクサーヌは絞り出すかのように問いかける。

「……なぜ、ですか?
 なぜ君島さんヲ、殺したノですか?」
「なぜって聞かれると困りますけど……。
 『笹原卓は殺人鬼である。だから殺したい、だから殺す』って所ですかね。
 あ、笹原卓は殺人鬼であるって略したらさささになるな。ゆゆゆみたいな感じで」

 一部どうでもいいことも言ってしまったが、卓はロクサーヌの問いに本心で答えた。
 しかしそんな答えでロクサーヌは納得しなかった。

「ふざけないで! 殺したいからなんてそんなものが理由に――」
「なりますよ、それが理由で人を殺すなんてよくあることじゃないですか」

 笹原卓は性善説が嫌いだ。
 ならならば自分は殺人衝動を生まれた時から持ち続けているのだから。
 もし人間の本性が善なら、悪意を持ち続けている自分は化物だというのか。
 ふざけるな、そんなはずはない。
 俺は人間だ、俺以外の殺人鬼だってみんな人間だ。
 人を信じるなとは言わない、なぜなら俺も信じている他人はいるから。
 でも人を無条件で信じろとは言わない、なぜなら俺が信じてはいけない人間だから。
 そんな思いを秘めつつも、卓の言葉は続く。

「古来より理由のない殺人をする殺人鬼なんていっぱいいたじゃないですか。
 ジャック・ザ・リッパーしかりジョン・ゲイシーしかり。
 あなたの母親の故郷フランスにだってド・ブランヴィリエ侯爵夫人がいるし、日本には都井睦雄だっている。
 そんな殺人鬼がたまたま俺で、そんな俺がたまたまここで人を殺しただけです」

 言いたいことを言いきると卓は満足気な表情でロクサーヌを見る。
 一方、見られたロクサーヌは決意を込めて卓を睨み、確かな意思を持って卓に告げる。

「笹原さん」
「なんですかロクサーヌさん」
「私ハ、万が一殺し合いニ乗った人ガいても説得するつもりでした。でも私ハあなたヲ説得しようト思いません」
「俺の場合説得以前の問題ですからね。快楽殺人鬼に説得もクソも無いでしょう」

 ロクサーヌの言葉に賛同する卓。
 その態度にロクサーヌは眉をひそめつつ言葉を続ける。

「私ハあなたヲ止めます。力づくデでも」
「それは……。息の根を止める、という意味で?」

 卓の言葉にロクサーヌは首を横に振り、力強く言い切った。

「私ハ人ヲ殺しません、たとえ相手ガ殺人者デモです!」
「俺やナオ・ヒューマみたいなのは殺した方が世の為だと思いますよ。
 殺してもバチなんて当たりませんって」

 そう言いながら二人は構える。
 笹原卓は殺す意思を篭めて。
 道端ロクサーヌは殺さない意思を篭めて。

 そうして二人の戦いは始まった。





579 : さあここに築いて見せろ 天に届く死体(ヒト)の山を ◆7PJBZrstcc :2017/03/31(金) 18:44:09 l2T5FIes0


 増田ユーリは走る。逃げる為に、生きる為に。

「冗談じゃないし。ユーリが何したって言うのさ……」

 泣き言を言いながらユーリは走る。
 走りながらこれからどうしよう、とにかく信頼できる人にこのことを早く伝えよう。
 そう考えたところでユーリは思わず足を止めてしまった。
 そして思わず考えが口から出る。

「信頼できる人って、誰……?」

 そう、誰を信じればいいのかユーリには分からない。
 参加者の名前が書いている紙は放送の後にならなければ機能しない。
 じゃあ最初のあの場所で信頼できる人の姿なんて――

「あ、潮さん!」

 ――居た。
 大木潮、ユーリの親戚でマジカルエミが好きなオタク。
 正直頼りがいがあるとは言いにくいけど、今のユーリはとにかく会いたかった。
 とにかく潮さんに会うことを目標にしよう。
 そして他の人に会っても、笹原卓がやばいってことだけ言ってあまり関わらないようにしよう。
 またあんな目にあうのはごめんだし。

「よし、出発」

 こうして増田ユーリは歩きはじめる。その先の希望を信じて。
 しかし彼女は知らない。
 彼女が会いたがっている大木潮は既に死亡していることを。
 そしてその体には全く別の人格が宿り今活動していることを。
 彼女はまだ知らない。


【一日目・2時00分/G-5】

【道端ロクサーヌ@名状しがたい力(ウズラ)/SAVE】
[状態]:怒り
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1〜3、君島蛍の持ち物(基本支給品一式、不明支給品×0〜2、指パッチンのやり方を書いた紙)
[思考・行動]
基本方針:ナオ=ヒューマの打破、もしくは殺し合いからの脱出
1:笹原卓を止める、殺しはしない
2:殺し合いに乗っていない人々と合流
3:殺し合いに乗った人も可能であれば説得
4:すぐにでも元の姿には戻りたいが、そのために他人を犠牲にしない
5:何か顔を覆えるものが欲しい
[備考]
※自分の姿が異形のものになっていると確認しました。使える技そのものは把握しきっていません。
※君島蛍の能力が指パッチンで物を切断するものだと知りました

【笹原卓@幻想殺し/とある魔術の禁書目録】
[状態]:健康
[装備]:片手剣
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜2)
[思考・行動]
基本方針:楽しく気ままに人殺し
1:妹には悪いけどロクサーヌさんを殺す
2:増田はどうしよう、後でいいや
3:月宮のダーリンっぽい奴(赤毛のイケメン)はなるだけ殺さない
4:郷音ツボミに会ったら増田ユーリのことを聞いてみる
[備考]
※自身の異能について把握しました

【増田ユーリ@鏡の妖精トポ/魔法のスターマジカルエミ】
[状態]:恐怖、
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品(1〜3)
[思考・行動]
基本方針:潮さんを探す
1:今は、潮さん以外の人と一緒に居たくない
2:何なのあいつ(笹原卓)、ヤバイ……
[備考]
※どの方向に逃げたかは後の書き手にお任せします


580 : ◆7PJBZrstcc :2017/03/31(金) 18:44:37 l2T5FIes0
投下終了です


581 : 名無しさん :2017/04/01(土) 17:04:36 TXwRfqqY0
投下乙
卓、殺人鬼としての本性解放か
パッと見だと普通のあんちゃんみたいで面白いだけに油断してしまう
異形になりはてても善を貫くロクサーヌは頑張ってほしいけど、どうなることか
しらずしらずの内に知り合いがとっくに死んでるユーリちゃんは先がつらい


582 : 名無しさん :2017/04/04(火) 19:18:06 /UGcgJao0
投下乙です
ロリ姉さん脱落か
一見まともそうに見えても油断大敵ですな
SAN値直葬系モデルと幻想殺しを持った殺人鬼、勝つのはどっちだ?
いかにもメンタル弱そうなユーリちゃんはうしお


583 : 名無しさん :2017/04/04(火) 19:20:02 /UGcgJao0
途中送信した

いかにもメンタル弱そうなユーリちゃんは潮さんの死に耐えられるのか?


584 : ◆7PJBZrstcc :2017/04/27(木) 13:18:51 WTUciSuc0
投下します


585 : 恋は渾沌の隷也 ◆7PJBZrstcc :2017/04/27(木) 13:19:43 WTUciSuc0
 ここはF-6にあるブロック塀の家の中、現在の時刻は午前1時過ぎ。
 そこには二人の男性が居た。
 1人は40代後半の中年男性、岩井政隆は警察官である。
 階級は巡査長と低いものの、義理堅く熱い心を持った男である。
 そんな彼は勿論殺し合いに乗るはずも無く、一刻も早く殺し合いを止めねばと考えている。
 ではなぜ政隆がこんな所に居るかというと、その理由は2つある。

「つまり、今俺の目の前に居るのはマジシャンズ・レッドっていう名前のスタンドとかいう奴なんだな」

 理由の一つは政隆に与えられた異能、スタンド『魔術師の赤(マジシャンズ・レッド)』にある。
 「スタンド」とは「パワーを持った像」であり、持ち主の傍に出現してさまざまな超常的能力を発揮し、他人を攻撃したり持ち主を守ったりする守護霊のような存在である。
 その姿は人間に似たものから動物や怪物のようなもの、果ては無機物まで千差万別であり、一言で言えば超能力が具現化したものである。(Wikipediaより引用)

 この知識は、ジョジョの奇妙な冒険という作品を知っているなら誰でも持っている物である。
 しかし、岩井政隆はこの作品について何一つ知識を有していなかったのだ。
 だから最初にマジシャンズ・レッドが現れた時は、思わず敵だと思い支給品の銃を突き付けてしまったほどである。
 まあ、しばらくほっておいても何もしてこなかったので政隆はマジシャンズ・レッドを敵だと思う事は無かったのだが。

「ええ、そうです……」

 そして、政隆の自身の異能を把握出来ていないという問題はこの場に居るもう一人の男によって解消された。
 その男の名前は四角渡、年齢は18歳。
 白髪に猫背、右目に眼帯を付けた内気な高校生だ。
 彼は最初、スタート地点になったブロック塀の家の中に閉じこもっていた。
 電気もつけず、ただやり過ごせればいいと考えていた。
 しかし、殺し合い開始30分ほどで岩井政隆がこの家に入ってきた。
 渡は最初警戒し、心を開かなかったが政隆の熱い言葉による説得でとりあえず信用した。
 まずは自己紹介。そしてお互いの異能の話になり、渡は政隆にマジシャンズレ・レッドについて教えたのだった。

「いや助かったよ、俺もうおじさんだから最近の漫画とかよく分かんなくてさ」
「そんな最近じゃないですけどね、ジョジョ3部は」
「そうなの?」
「89年から92年位だったかと」
「それだったら俺知っててもおかしくないよな……。雑誌何でやってたの? ジャンプ? マガジン?」
「ジャンプです」
「そっか、俺昔読んでたのサンデーだったし知らなくてもしょうがないか……」
「サンデー派だったんですね……」
「ああ、サンデー派だった。ら○まとか好きだったんだよ俺」
(知るかよ……)

 政隆は渡が内心で呆れていることも知らずに話し続ける。
 しかしこの話しはすぐに打ち切られることになる。

「っ!? 危ない渡君!!」

 なぜなら政隆がいきなり渡を突き飛ばし、あまつさえ圧し掛かったから。

「な、何を……!」

 するんですか、と言葉の後ろに付けようとする渡。
 だがその瞬間にガラスの割れる音が聞こえ、渡は押し黙る。

「攻撃されてる……!」

 そして政隆の言葉が、むなしく響く。


586 : 恋は渾沌の隷也 ◆7PJBZrstcc :2017/04/27(木) 13:20:18 WTUciSuc0





 時は少し遡る。

 少女、月宮埜々香は愛に生きる女である。
 月宮埜々香は愛するダーリン、天草士郎を優勝させる為に他の参加者を殺そうと頑張る女である。
 その埜々香は殺し合いが始まってすぐに、F-5で殺人鬼に襲い掛かるものの返り討ちに遭い、紆余曲折の末殺人鬼と支給品をエクスチェンジしてこのF-6に逃げてきたのであった。
 埜々香がこのエリアに来て最初に目を付けたのはブロック塀に囲まれた家。
 その家の中に気配を感じた埜々香は足音を立てないように家の周りを歩く。
 そして窓を見つけ、埜々香は覗きこむ。
 幸いなことに、その窓にはカーテンがかかっておらず、中の様子を見ることが出来た。
 中には男が2人。1人は埜々香と同じくらいの年代の男。もう1人は警察官の制服を着た遥かに年上の男。
 これを見た埜々香は不意打ちならいける、と判断した。
 そして持っていた如意棒を相手から見えない様に構え、小声でこう呟く。

「伸びろ如意棒」

 その言葉のままに伸びる如意棒は、警察官の男の頭へ向かって突き進む。
 だがしかし、如意棒が窓ガラスを割る直前に警察官の男が攻撃に気付き床に伏せてしまった。
 それを見た埜々香は慌てて如意棒を元の長さに戻しながらこう言った。

「失敗した……!」

 あの殺人鬼に続いて2回も失敗するなんて、と内心で悔いる埜々香。
 その時に中から二人の男の声が響く。

「この部屋は危険だ、脱出するぞ渡君!」
「脱出!?」
「そうだ脱出だ、急げ!」

 そしてバタバタと足音が響き、遠ざかる。
 逃げられた、と埜々香は思うが次の瞬間それどころじゃないことに気付く。

「拙い……!」

 割れたガラスの方向から攻撃してきた方向を読み解くくらい自分でもできる。
 なら相手がそれをできない道理は無い。

「逃げなきゃ……!」

 どこへ?
 この家はブロック塀に囲まれている。
 逃げるなら玄関前しかないが、そこへ至る道をふさぐことは十分可能だ。
 何せ相手は二人だ。二手に分かれて片方ずつから攻め込めば逃げ場を奪うのは容易。
 ならこの塀を乗り越える?
 如意棒を使えばそう難しいことでは無いかもしれないが、それは瞬時に行えることではない。

「見つけたぞ!」

 そうこう悩んでいるうちに、2人の男の内警察官の方が埜々香を見つける。
 その男の手には拳銃が握られており、それは埜々香の方を向いている。
 男は言う。

「その棒とデイバッグを捨てて手を挙げるんだ、そうすれば撃ったりはしない」

 男の言葉を聞いて埜々香は考える。

 どうする? 素直に言う事を聞くか、それとも抵抗するか。
 素直に従うなら命は大丈夫だと思う。相手はおそらく警察官、そんな無闇矢鱈に容疑者を殺したりはしないだろう。
 この状況だとその考えも甘いかもしれないが。
 そして抵抗するならリスクは大きい。
 問答無用で撃ってこなかった以上相手は殺し合いに乗ってないと考えていい。
 とはいえ何かの弾みで引き金に手がかかれば躱す手段は自分にはない。
 それ以前に勝てる可能性も少ない。
 だったら

「分かったわ」

 埜々香は男の言葉に答え、デイバッグと如意棒を地面に捨て手を頭の上に置く。

 これは賭け、たとえこの男が私を殺す気が無くても、もう1人は殺そうとするかもしれない。
 その時になったら武器も何もない私に出来ることは何もない。
 だからこれは賭け、私が死ぬか生きるかの大博打。

 そんな埜々香の内心も知らず、男は言う。

「抵抗しないでくれてよかった、じゃあ両手を前に出して」

 その言葉に埜々香は素直に従う。
 すると男は自分の持っていたデイバッグから手錠を取り出し、埜々香に掛ける。

「悪いが拘束させてもらう、異論はないな?」
「ええ」

 そう会話した二人は、男の先導で家の中に入って行った。


587 : 恋は渾沌の隷也 ◆7PJBZrstcc :2017/04/27(木) 13:21:03 WTUciSuc0





 政隆が埜々香と対峙していた時、渡は玄関前に立っていた。
 本来なら自分も反対側から向かおうと思っていた渡だったが、政隆が警官としての立場からか止めたのだ。
 だから渡はこうしてやきもきしながら待っている。
 そして少しすると、政隆が手錠のかかった少女を連れてきた。
 その少女を見て渡が最初に思ったことは、不気味な女、だった。
 服装はセーラー服と普通だ。
 だが着ている本人が異様だ。
 整っているように見えるが、だからこそ濃い目の隈が目立つ。
 さらに言うなら見た目が昔テレビで見た貞○にそっくりなせいか、雰囲気が尋常じゃ無く薄気味悪い。
 人づきあいが殆どなく、人を見る目なんてものに自信が無い俺ですらそう思う。
 ならば警察官である岩井さんはどう思うのか、などと渡が考えていると政隆が話しかける。

「これからこの子と話をする、渡君も来てくれ」
「俺も、ですか?」

 表向きは疑問を呈するような言い方だが、渡としては正直行きたくなかった。
 異様な雰囲気を持つ人間と好き好んで話をしたいとは誰も思わない。
 とはいえその辺りの心の機微を政隆は察している様だ。

「渡君の言いたいことは分かる。だから話をするときは俺の後ろに居てくれ。
 だが俺としては君を一人にするのは論外だし、かと言ってまだ子供のこの少女を見捨てる気は無いんだ」
「分かりましたよ……」

 政隆の説得に折れた渡は一緒についていこうとする。
 しかしその前にあることを尋ねた。

「ところで岩井さん」
「何だ?」
「話しって、どこでするつもりですか?」
「そうだな、この家の二階が妥当なところか」
「分かりました」

 そう言って二人は少女を引き連れブロック塀の家に入り、2階の部屋に付く。
 そこで少女を床に座らせ、2人は立ったまま少女を見る。
 そして政隆が口を開いた。

「まずは、君の名前は?」
「……月宮埜々香」
「埜々香ちゃんか。
 じゃあ次の質問はこれだ、何で俺達を殺そうとした?」

 政隆が語りかけ、埜々香は言葉を少なくして答える。
 それを見て渡は、こいつ案外普通だなと思う。
 いまだに薄気味悪いが、それは見た目だけかもしれない。
 だが次の瞬間にその評価は一転する。


588 : 恋は渾沌の隷也 ◆7PJBZrstcc :2017/04/27(木) 13:21:33 WTUciSuc0

「愛よ」
「……は?」

 埜々香の言葉に思わず声が出る渡。
 その対応が気に入らないのか、さっきまでの静かさとは打って変わって埜々香は声を荒げる。

「愛よ! 私のダーリンへの愛の為にあなた達には死んでもらわなきゃ困るのよ!」
「何故そこで愛ッ!?」
「だってダーリンは人殺しなんか出来ないもん!
 ダーリンは優しくてかっこいいから絶対殺し合いなんか乗らないもん!
 でもあのナオ・ヒューマに勝つ手段なんて見つからないし、じゃあダーリン以外殺すしかないじゃない!!」

 当然のことのように言い切る埜々香。
 それを見て渡は言葉を失った。
 一方、政隆は何とか絞り出すかのように問いかける。

「その、ダーリンってのは月宮ちゃんの言う様な方法で生き残って、喜ぶような奴なのか?」
「喜ぶわけないでしょダーリンを馬鹿にしてるの!?
 ダーリンが人の死体の上で生きて喜ぶような人なわけない!!
 むしろ悲しくて目一杯泣くに決まってるわ!!
 でも生きていて欲しいもん! 例えダーリン以外の全てが地獄に落ちてもダーリンだけは守りたいの!!」
「……」

 埜々香の余りにも覚悟の決めた言葉に、今度は政隆も言葉を失う。
 そんな2人の態度を見て埜々香は一言。

「何? 文句なら聞くわよ。改めないけど!
 だって愛は何よりも尊いから、素晴らしいから。
 法律よりも倫理道徳よりも人命よりも優先されて当然でしょ?
 どこかで人の命は地球より重いって聞いたけど、それならダーリンは宇宙の全てより重いわ」
「イカれてやがる……」

 埜々香の想像外過ぎる言動に渡はやっとまともな言葉を発する。
 その言葉に埜々香は心底不思議そうな態度でこう返した。

「あなた、人を好きなったことないの?」
「……あるさ、だったらなんだよ」
「じゃあ分からない? 大事な人がこんな危険な場所に居たら絶対守らなきゃって思わない?
 その結果好きな人に嫌われるかもしれないけど、だからといってみすみす死にそうな方向に行かせるのはおかしいって気づかない?」
「そんなの……」

 その言葉を聞いて渡が思うのは数日前に出会った少女、名前は天草ゆたか。
 全く見知らぬ自分の荷物を拾ってくれた優しい女の子、そしてラブレターを渡そうと思ったけど渡せていない女の子。
 こんなことになるならちゃんと渡しておけばよかった。
 そう思ってしまう物の、今はそれどころじゃ無い。

 そしてもう一つ、俺はこの月宮埜々香がちょっとだけ羨ましい。
 例え俺は天草ゆたかの名前が名簿に浮かび上がっても、こいつと同じ行動はとれないだろうから。
 なぜって、俺には人を殺せる気がしないから。


589 : 恋は渾沌の隷也 ◆7PJBZrstcc :2017/04/27(木) 13:22:02 WTUciSuc0

「……」
「渡君、一旦部屋の外へ行こう」

 自分の思考に囚われていた渡に政隆は声をかける。
 そして二人は埜々香を置いて部屋の外へ行き、1階と2階をつなぐ階段に二人して座り込む。

「なあ渡君、これまで俺は警官としてそれなりに自信があったんだ」
「はぁ……」
「自慢じゃないけど地域住民にそれなりに慕われてさ。
 時には銀行強盗を説得したことだってある」
「それは、すごいですね」
「でも俺は埜々香ちゃんを説得できる気がしない」

 政隆の口から弱音が飛び出し、渡は一瞬だけ驚くがすぐに納得する。
 何せ相手が悪い、これを岩井さんの力不足とするのは間違っている。
 そう思い渡は何とか慰めようとした。

「岩井さんのせいじゃありませんよ。
 あんなのは一部の例外です。BA○ARAXならオクラみたいなものです」
「すまん、その例えはよく分からない」
「ですよね」

 そんな会話でほんの僅かだが和やかになる2人。
 しかし雰囲気はすぐに戻り、渡は政隆に問う。

「それで、どうします月宮を? この家に縛って置いていきます?」
「いやそれはダメだ。この家に他の人が来た場合の事を考えるとな。
 それにこのエリアが禁止エリアになったら埜々香ちゃんが死んでしまう」
「……改心させられないと思っている相手でも、見捨てないんですね」
「ああ、俺は警察官だからな」

 政隆の迷いのない断言に、渡は思わず感心する。

「だがずっと見張っているわけにはいかない」
「それは、まあ……」

 そうなのかもしれない、と渡は思うが同時にこうも思った。
 この殺し合いの中に月宮以上の危険人物がいるとは思えない。
 その思いを政隆に告げたら帰ってきた答えに渡は驚愕する。

「いや、ひょっとしたらこの殺し合いには殺人鬼が潜んでいるかもしれない」
「殺人鬼!?」

 そして政隆は語り始める、聞くもおぞましいある事件を。

 16年前、当時12歳の少年が1人の教師と4人の同級生を殺害する事件が起きた。
 しかもそれは1人づつ殺害されており、更には解体されていた。
 その事件は計画的なもので、当時のニュースや新聞を賑わせた。

「そしてその犯人、網空仙一を逮捕したのが俺なんだ……」
「すごいですね、ってまさか……!」
「ああ、居たんだ。16年前と変わらない姿であそこに!」
「は?」

 予想通りの言葉と、予想外の言葉が同時に飛び出てきて語彙力を失う渡。
 それでも必要なことはちゃんと聞いた。

「え? 同じ姿? 16年前ですよね?」
「ああ、だから俺も別人かもしれないと思っているんだが……」
「だが?」
「別人と決めるにはあいつは同じすぎる……!」
「……探します?」

 政隆の思いつめたかのような態度に、渡は思わず捜索を提案してしまった。
 一方の政隆はそれを聞いて頷く。

「そうだな、探そう。
 もしいれば捕まえるし、俺の思い違いならそれでいい。
 渡君もついてきてくれるか?」
「勿論、こんな状況で一人になるのは嫌ですから」
「ありがとう渡君。じゃあ早速埜々香ちゃんを呼んできて出発しよう」

 やっぱり連れて行くのか、その言葉を渡はかろうじて飲み込んだ。
 しかし、不安げな表情は隠せなかった。


590 : 恋は渾沌の隷也 ◆7PJBZrstcc :2017/04/27(木) 13:22:29 WTUciSuc0





 一人部屋に残された埜々香は、声に出さないものの小さな笑みを浮かべていた。

 まだよ、まだ私は生きている。
 なら十分。これならまだ私はダーリンへの愛を貫ける。
 ……とりあえず、まずはこの手錠を外す方法を考えなきゃ。

 月宮埜々香は諦めない。
 例え他の何かで妥協したり、退くことはあっても己の愛を貫くことだけは諦めない。
 ダーリンへの愛がある限り、月宮埜々香は不屈なのだ。

「それにしても」

 何であの2人、私がダーリンへの愛を語っただけで私を化物を見るみたいで見るのかしら。
 あの腐れ殺人鬼は、そんなことなかったのに。

「殺人鬼の方が会話が通じるなんて、世も末ね」

 そして月宮埜々香は気づかない。
 自らの歪みに、自らの危険性に。


【一日目・2時00分/F-6 ブロック塀の家の中】

【岩井政隆@魔術師の赤(マジシャンズ・レッド)/ジョジョの奇妙な冒険 Part3スターダストクルセイダース】
[状態]:健康
[装備]:ニューナンブM60(5/5)
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜1)、如意棒@ドラゴンボール、月宮埜々香のデイバッグ(基本支給品、不明支給品(0〜2))
[思考・行動]
基本方針:警察官としてナオ・ヒューマを逮捕し、殺し合いを終わらせる
1:渡君と埜々香ちゃんを連れて、網空仙一を探す。居ないならそれでいい
2:埜々香ちゃんを改心させられる気がしない
[備考]
※自身の異能を把握しました
※網空仙一(丹美寧斗)を目撃しましたが、別人の可能性も考えています

【四角渡@三つのしもべの召喚と使役/バビル二世】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品(1〜3)
[思考・行動]
基本方針:岩井さんと一緒に行動する
1:岩井さんが心配
2:月宮埜々香がちょっとだけ羨ましい、が一緒に居たくはない
[備考]
※岩井政隆の異能を把握しました

【月宮埜々香@ペテルギウス・ロマネコンティの怠惰の権能と憑依能力/Re:ゼロから始まる異世界生活】
[状態]:健康、手錠を掛けられている
[装備]:
[道具]:
[思考・行動]
基本方針: どんな手を使ってでもダーリンを守る
1:諦めない、まずは手錠を外す方法を考える。
2:あの殺人鬼の方が会話が通じるなんて、世も末ね
[備考]
※天草士郎の参加を把握しています
※笹原卓の名前を知りません


591 : ◆7PJBZrstcc :2017/04/27(木) 13:23:00 WTUciSuc0
投下終了です


592 : 名無しさん :2017/04/28(金) 08:45:15 onUvBbA.0
投下乙
ヤンデレ怖し、異能が何かわかってないのと元が戦闘慣れしてないのが救いか……
岩井さん、ペテ公の能力者相手に腕縛っても無駄無駄無駄ァ!
そして意外と早い段階で正体バレそうな気がする網空ェ……


593 : ◆7PJBZrstcc :2017/05/08(月) 18:34:23 3Zz8ppgU0
投下します


594 : 女三人寄れば姦しい ◆7PJBZrstcc :2017/05/08(月) 18:35:10 3Zz8ppgU0
 暴力に惨劇、狂気や謀略渦巻く恐怖の殺人ゲーム、バトルロワイアル。
 そのゲームの会場沖木島の一角に1人の少女が居る。
 少女の名前は、萩原舞。このゲームの参加者の一人である。
 舞はあることを考えていた。
 それはバトルロワイアルについてではなく、これからの行動方針でもなかった。
 では何を考えていたかというと

「何なの、このアサルトライフル……」

 自身に支給された物についてだった。
 舞は何度目になるか分からないが付属されていた支給品の説明書きを読む。
 そこには支給品の名前が正しく書かれている。
 そう、『F2000R』と。

「そんな銃知らない……」

 舞はミリタリーオタクだ。
 サバゲーに参加したり(成績は思い出したくないが)、自衛隊の軍事演習の見学を幼馴染の分まで勝手に応募する様な少女だ。
 彼女の特技は銃の名前を当てる事。これに関してはかなりの物だと自負している。
 そんな彼女でもこの銃についての知識は無かった。

「おもちゃなのかな? そんな感じの形状だし」

 思わずそんなことを呟いてしまうが、すぐにそれはないと自らの考えを打ち消す。
 舞の趣味は銃の模型作りだ。
 なので模型は家にたくさんあるし、その中には実物大の物もある。
 だからこそわかる、これは本物の銃だ。模型とは重さが違う。

「撃ってみようかな……」

 色々考えたが、その中で舞はあることに気付く。
 それは、自分が実銃を持つのが初めてだということだ。
 アメリカにいけば銃社会だから、射撃場はある。
 だが舞はその機会には恵まれず、撃ったことがあるとすればせいぜいサバゲーの銃位しかない。
 舞は初体験に興奮し、冷静さを失っていた。
 冷静であれば、殺し合いの状況で無為に音を出すことの恐ろしさについて考えるだろう。

「えっと、周りに人はいないよね……」

 とはいえ冷静でなくても人に当てないように最低限の確認をする舞。
 舞は拳銃は決して人を殺めるためにあるものではないと思っているし、そうでなくてもうっかりで人を殺したいと思う者はいないだろう。

「えいっ!」

 可愛らしい掛け声を上げながら舞は引き金を引く。
 そして数発ほど発砲音が響いた所で引き金から指を外し、舞はまじまじと今手に持っている物を見る。
 その目はまるで化物を見るかのように。

「何これ、反動が殆どない……」

 そう、舞が撃った銃には反動が無かった。
 いや正確にはあるのだが、それはとても小さいものだった。

「やだ……、怖い……」

 こんな銃、知らない以前に現代の科学力で作れるとは思えない。
 そんなオーバーテクノロジーの産物が自分の手に在ることに、舞は恐怖を覚える。
 それと同時に、舞は今自分は尋常ならざる事態に巻き込まれていることをようやく実感したのだった。


595 : 女三人寄れば姦しい ◆7PJBZrstcc :2017/05/08(月) 18:35:50 3Zz8ppgU0



















 ここで種明かしをしておくと、舞が自らに支給された銃についての知識が無いことは必然だ。
 それはおもちゃではないが、実在する銃でもない。
 F2000Rとは、とある魔術の禁書目録に登場する学園都市で開発された架空の銃だ。
 おもちゃの鉄砲に見える外見と、卵の殻すら割れない軽反動が特徴である。


 舞はミリオタであってサブカルチャーに詳しいオタクではない。
 故に、とある魔術の禁書目録という作品について知らないし、それに登場する銃も知らなかった。
 ただ、それだけの話。


596 : 女三人寄れば姦しい ◆7PJBZrstcc :2017/05/08(月) 18:36:28 3Zz8ppgU0





 午前1時25分、J-2の浜辺。
 そこに居るのは神が一柱と悪魔が二匹。
 神の名前は八神そう。マイティ・ソーという、オーディンの息子と同じ力を持った存在に変身できる様になった9歳の少女。
 悪魔の名前は後藤万緒。人修羅と呼ばれる人でも悪魔でもない存在になってしまった16歳の少女。
 もう一匹の悪魔はジャックフロスト。人修羅が呼び出した雪の妖精である。
 そのジャックフロストにそうと万緒は

「――というわけやねん」

 現状の説明をしていた。

 そうと万緒の二人は召喚したジャックフロストに抱き着いていたが、5分ほどして流石に苦しくなったのかジャックフロストが放すように要求。
 それを聞いた二人はやりすぎたという思いと、よく考えたらこんなことしてる場合じゃないという焦りからその要求を聞き入れる。
 そして現状を理解していなかったジャックフロストに説明をする。
 とはいえ未だ分からないことの方が多く、更に説明する2人が混乱気味だったことからそれほど要領の得られる話は聞けなかった。
 それでもそんな思いはおくびにも出さず、ジャックフロストは神妙に頷く。

「つまり、おまえたちは噂に聞く人修羅と同じ存在になった女と雷神と同じ力を宿したただの人間。
 そしてここはナオ・ヒューマとかいうよく分からない奴が始めた殺し合いの会場で、おまえたちの力もそいつがよこしたと。そういうことだホ?」
「そういうことよ、うん」

 そしてジャックフロストは説明を聞き、自分なりに要約した。
 それに同意する万緒、その顔は暗い。

「それでオイラは人修羅になった、えっと……」
「万緒よ」
「そう、万緒に呼び出されたホか……」
「うん、そうやねん」

 ジャックフロストの言葉に今度はそうが同意する。
 その顔はやはり暗い。

「何でおまえたちそんなに暗い顔してるホ?」
「いや、なんか説明してたら冷静になってきて……」
「私達とんでもない状況にまきこまれたんやなって改めて実感しとるねん……」
「……ヒホ」

 2人の言葉に何も返せないジャックフロスト。
 これからどうしようかと思い悩んでいると



 ――いきなり轟音が響いた。
 その音はまさしく


597 : 女三人寄れば姦しい ◆7PJBZrstcc :2017/05/08(月) 18:37:01 3Zz8ppgU0

「銃声!?」
「そ、そんな! どないしよ!?」
「落ち着くホ。今のおまえたちなら銃に当たっても大きなダメージにはならないホ」

 突然の銃声に慌てふためく二人を、言葉一つで落ち着かせるジャックフロスト。
 その言葉にそうは納得する。

「そうや、私はいまマイティ・ソーやし万緒お姉さんは人修羅や。そう簡単には死なへん……」

 銃声が数回続くと、音は止み辺りには静寂が戻る。
 少ししてからそうは尋ねる。

「どないする万緒お姉さん……」
「どうするって、銃声のした方に行くかどうかってこと?」
「ううん、私は見に行きたいけど万緒お姉さんは一緒に来るかってこと」

 銃声のする方に行けば他の参加者が居る。
 だがその参加者は間違いなく武器を持っていて、しかも殺し合いに乗っているかもしれないのだ。
 いくら簡単に死なないとはいえ、現実で銃を持った相手に相対することに恐怖を覚えない訳がない。
 だがしかし、そうはなりたいのだ。八神はやてのような魔法少女に。
 そんな彼女が恐怖に屈し、逃げる事を選びたくは無かった。
 だからこそそうは万緒に尋ねたのだ、一緒に来るかと。
 これは自分の勝手だから、強制なんかしないと。

「そうちゃんが行くって言うなら私も良く。子供一人に押し付けたりなんかしたくないし」

 そうの言葉に万緒は首を縦に振る。
 万が一の時に、子供を盾にするようなまねはしたくないのだ。
 そんな2人を見てジャックフロストは音頭を取る。

「それじゃ、2人とも行くホ」
「「オー!」」

 そうして銃声がしたであろう辺りに着くと、そこには想像と違い少女が一人で銃を持って立っていた。
 歳はそうから見れば自分より上、万緒から見れば同じくらいだ。
 万緒は少女に話しかけようとする。
 しかし少女は万緒に銃を向ける。その目は間違いなく怯えていた。
 まあこの状況なら見知らぬ人間が怖いのは仕方ないと二人は思う。

「ふ、不良!?」

 だがこの発言には万緒は思わずあっけにとられた。
 そしてそうは

「いや不良より物騒やろ今のあんた!」

 思わずツッコミを入れていた。


598 : 女三人寄れば姦しい ◆7PJBZrstcc :2017/05/08(月) 18:37:28 3Zz8ppgU0






 その後、そうと万緒は殺し合いに乗っていないこと、万緒は不良ではないことを必死で伝える。
 それを受け入れたのか、舞は銃を置き話し合うことにした。

「私は後藤万緒。ナオ・ヒューマ与えられた異能は人修羅って奴になること」
「人修羅?」
「その辺は後で私が説明するで。
 それはそれとして、私の名前は八神そう。異能はマイティ・ソーになることや」
「さっきから異能の部分がさっぱり分からない……」
「オイラはジャックフロストだホ」
「そしてこの子が何なのかすら分からない」

 自己紹介をしているだけなのに疑問がどんどん増えていく舞。
 そうはそれらの疑問に一つ一つ答える。
 人修羅やジャックフロストの事。マイティ・ソーの事。
 それらについて説明をしていく。
 そして舞は説明を聞きおえ、自分の中で消化した。

「アメリカの漫画とか読んだことないし、RPGとかしないから分かんない部分もあるけど、でも大体分かった」
「ならええねんけど」
「それなら、そっちも自己紹介して欲しんだけど」

 万緒にせっつかれ、舞は慌てて自己紹介を始めた。

「私は萩原舞。異能は――」
「異能は?」
「……そういえば私の異能なんだろう?」
「「えぇ〜……」」

 ゲーム開始から1時間半以上がすでに経過しているのに、自身の異能を調べていない舞に驚くそうと万緒。
 そんな2人を見て、舞は宣言する。

「いや待って、今から使うから見てて!」

 そう言って舞は気合を入れる。
 すると宙に鮫の形をした水の塊が現れ、そうと万緒を飛び越した地面へ向かって激突し消滅する。

「どう、これが私の異能! 何なのかは分からないけど!」
「分かんないんだ……、私もだけど。そうちゃんはどう?」
「多分NARUTOの水遁の術やと思うねんけど……」
「思うけど?」
「私そんなにNARUTOの内容覚えてへん……」

 うろ覚えな自分の記憶を申し訳なく思うそう。
 それを見かねて万緒と舞は謝らなくていいと励ます。
 そして少ししてから、万緒はあることを告げる。

「図書館に行こうと思うの」
「図書館?」
「うん、そこなら多分だけどNARUTOの本だってあるかもしれないし。
 それに他の参加者の異能だって分かるかもしれない」

 その言葉にそうと舞は成程と返す。

「それやったら早速出発や。善は急げ言うしな。
 出発おしんこー!」
「「きゅうりの糠漬けー!!」」

 軽くボケるそうと、それに乗る2人。
 こうして3人は図書館に向かって歩き出した。

「オイラのこと、忘れて無いホ?」

 妖精ジャックフロストを引き連れて。


599 : 女三人寄れば姦しい ◆7PJBZrstcc :2017/05/08(月) 18:38:01 3Zz8ppgU0


【一日目・2時00分/J-3・砂浜の岩】

【八神そう@マイティ・ソー/マーベルコミックス】
[状態]:精神疲労(小)、変身中
[装備]:ムジョルニア@マイティ・ソー
[道具]:支給品一式、不明支給品0〜2、障碍者用杖
[思考・行動]
基本方針:殺し合いには乗らない
0:図書館に行く
1:万緒お姉さんと舞お姉さんを守る
2:まさかマイティ・ソーに変身できるなんて……
3:はやてのように戦えるのが理想だけど……
※マイティ・ソーに変身できることを知りました。マーベル映画知識より、映画で使用した技は概ね使用できます。また変身中は右足の障碍が治ります。
※サブカル好きがこうじて、人修羅のことも知っていますが、シリーズのゲームは未プレイなため大雑把な内容しか知りません。(主人公が悪魔でありながら悪魔を召喚して戦う程度)
※NARUTOについてはうろ覚えです

【後藤万緒@人修羅/真・女神転生Ⅲ-NOCTURNE】
[状態]:精神疲労(小)
[装備]:マロガレ@真・女神転生Ⅲ-NOCTURNE
[道具]:支給品一式、仲魔召喚に関するメモ
[召喚中]:妖精 ジャックフロスト(健康)
[思考・行動]
基本方針:殺し合いには乗らない、元の体に戻りたい
0:図書館に行く
1:そうちゃんと舞を守る
2:私が悪魔にされたってマジですか……
3:この体、直るのかな?
※悪魔召喚能力があることに気づきました。
※八神そうから大雑把な人修羅の知識を知りました。
※八神そうの足の障害に気づいてません
※悪魔召喚については以下のルールがあります。
 ○最大で召喚できる仲魔は三体まで、真・女神転生Ⅲに出てくる悪魔のみ召喚可能
 ○後藤万緒が死亡すると仲魔も数時間以内に消滅する
 ○仲魔に召喚条件あり。召喚できる仲魔については次の書き手氏にお任せします。
  ・妖精 ジャックフロスト、妖精 ピクシー(条件なし)
  ・???(第一回放送まで生き延びる)
  ・???(第三回放送まで生き延びる)
  ・???(第五回放送まで生き延びる)
  ・???(参加者を一人殺害する)
  ・???(参加者を二人殺害する)
  ・???(参加者を三人殺害する)

【萩原舞@干柿鬼鮫の忍術/NARUTO】
[状態]:疲労{小)
[装備]:F2000R(25/30)@とある魔術の禁書目録
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜2)
[思考・行動]
基本方針:殺し合いには乗らない
0:図書館に行く
1:異能はあんまり使わないようにしよう
2:このアサルトライフルも漫画やゲームのものなのかな?


【F2000R@とある魔術の禁書目録】
旧約3巻に登場し、御坂妹が使用した銃。
通称おもちゃの兵隊(トイソルジャー)。
材質は積層プラスチック、形状にも戦闘機に見られるような機能美が備わっているため、まるでオモチャの鉄砲にも見える。
赤外線により標的を補足し、電子制御で『最も効率良く弾丸を当てるように』リアルタイムで弾道を調整する機能を持つ。
銃身を覆う衝撃吸収用の特殊ゴムと炭酸ガスにより、射撃の反動は極限まで軽減されており、その軽反動は『卵の殻すら割らない』。弾丸は5.6ミリ。


600 : ◆7PJBZrstcc :2017/05/08(月) 18:38:42 3Zz8ppgU0
投下終了です


601 : 名無しさん :2017/05/09(火) 15:30:43 9BNOMm660
投下乙
この三人娘はキャピキャピしているというか、良くも悪くも緊張感がないなー
図書館に向かうまでの道に危険そうなマーダーがチラホラいるけど次話か次々話辺りに戦闘かな?
そしてイメージの割に地味に場馴れしてるのか貫禄があるジャックフロスト……(出典元のボルテクス界が修羅の国だからか?)


602 : ◆QBK2jED/WU :2017/05/11(木) 19:47:29 eGqCti6Y0
とうかします


603 : 「夢をあきらめて現実を生きます」 ◆QBK2jED/WU :2017/05/11(木) 19:48:52 eGqCti6Y0


7:19
天気 ××市 晴れ
湿度 △△%


テロップ『貴方は、漫画「ハイスコアドール」を知っていますか?』

テロップ『漫画家、赤木水槽さん原作で週刊少年ガソガソで連載され、日本の若者のみならず、世界で大旋風を巻き起こしました!』

テロップ『そして、ハリウッドで実写化されたこの作品が、日本で世界一速く公開されます!』

テロップ『主演は。コムロテ・ツヤさん、レオパルド・ガーネットさん、アノルドー・ワルシュツガネーさんなど豪華俳優陣に加え』

テロップ『ボクシング世界チャンピオンのロック・パンサーと、同じく日本が誇るボクサー、アルマゲドンナオキさんがゲスト出演です!』

テロップ『実は、レオパルド・ガーネットさん、日本のある番組に憧れて俳優になったそうですが、それは本当なのでしょうか?』

テロップ『という訳で、私たち、『耳覚ましテレビ』クルーは、レッドカーペットを歩くレオパルド・ガーネットさんに突撃インタビューをしました!』

インタビュアー『レオパルドさん!どうもこんばんわ『耳覚ましテレビ』です!』

(ここでインタビュアーがマイクをレオパルドに向ける)

レオパルド『おっ?マジで?日本に来た時は必ず見てるよ!マスコットも可愛いよね』

テロップ『噂通り、流暢すぎる日本語を披露!』

インタビュアー『レオパルドさん、噂によると、日本の特撮作品に憧れて俳優になったと聞いていますが、それは本当なのでしょうか?』

レオパルド『僕はね、仮面ライダーに憧れて、映画俳優になったと言っても過言じゃないよ。初めて観た時の衝撃は、今でも忘れられないね。……そうだな、あの時の衝撃を一言で表すなら、『ヤバい』、だね
      仮面ライダーは、アメリカのMAVEL COMICよりも、クールだと思ってるよ。』

(ここで、映像を早回し)

テロップ『レオパルド・ガーネットさん、その後もカメラの前で30分も特撮作品について語ってくれました、がなくなくカットさせていただきました(笑)』

インタビュアー『最後に、耳覚ましティーヴィーのポーズを取ってもらっていいですか?』

レオパルド『おお、いいよ!耳覚ましティーヴィー!』

(レオパルド、カメラに向かって指を指してポージング)

(映像をスタジオに切り替え)

男性キャスター『いやぁ、日本の作品に憧れたっていう噂は本当だったんですね〜』

女性キャスター『いつか、日本で特撮映画を撮りたいそうですよ!』

男性キャスター『はい、では次のニュースです。あの人気アイドルがグループを脱退です』

(ここでテロップを表示)

(映像の切り替え)


☆ ☆ ☆


604 : 「夢をあきらめて現実を生きます」 ◆QBK2jED/WU :2017/05/11(木) 19:49:28 eGqCti6Y0

 
「おい、レオパルド、あの猿共のカメラの前で何を語ってたんだ?」

「俺の熱い思いだよ」

「はっ、ナード根性が染みついてるなぁ。どうせまた日本のトクサツについてだろ!?」

「ロック君、君みたいに人を殴るだけが職業のやつにはわからねぇだろうねぇ」

「俺に喧嘩売ってるのか?」

「こんな挑発に乗るなんて、つまらない男だな。いつか捕まるんじゃねぇのか?安い挑発に乗って、逆上して人を殺したりしてな」

「…………けっ」

「………………でもまぁ、君みたいな人生も、よかったのかもなぁ」

「…………どういう意味だ?」

「リングの上で、倒れてはいけないスリルとの隣り合わせ、後ろにはファンがいて、闘う自分に対して声を上げて応援する。君は、アメリカにとってのヒーローだろ?」

「映画俳優も同じような気がするんだが」

「スクリーンの中だけだ。俺はね、戦いの中に身を置いてみたいんだよ」

「おいおい、なんだよレオパルド、セレブの仲間入りを果たして、買えない物はないぐらい金を持ってるだろ?それなのに満たされないってか?」

「そうだよ。ロックくん。俺はね、映画俳優だ。最初から最後まで。理想と現実ってのは違う」

「………………」

「俳優になった時、俺の夢は、叶ったと思ったんだ。だけど、違った」

「………………」

「スクリーンの中では、ヒーローになれた。でもそれは映画の中だけだ。俺は映画の中では超能力を身に着けたり、天才科学者になったり、なんでもできた」

「…………確かに、お前は小さい時の俺の憧れだった。ガキの頃に見た子ども向けのアクション映画は、まだ覚えてるぜ」

「ありがとう。君みたいに、私に憧れる人は沢山いたさ。でも、俺は…………」

「…………本物のヒーローになりたかった、か」

「身体を動かし、クンフーや、超能力を使い、改造人間に変身し、悪を倒したかった」

「……夢物語もほどほどにしとけよ。62歳のクソジジイがいきなりスーパーヒーローになるなんて、ぜってえ無理だから」

「わかるさ。痛いほどわかる。理想と現実の違いってのは嫌になるほど見てきたさ。今回の映画も、嫌になるほど突き付けられた。俺は、スクリーンの中でしかヒーローになれないんだよ」

☆ ☆ ☆


605 : 「夢をあきらめて現実を生きます」 ◆QBK2jED/WU :2017/05/11(木) 19:49:57 eGqCti6Y0

駅前の喫煙所にはお兄さんやおじさん、化粧が濃い目のお姉さんがいて、ニコチン混じりの溜息を吐いている。
窓の外から見える風景は、何処にでもあるような風景だ。
サングラスを外して見る程の光景でもないし、日差しが眩しくて外す気にもなれない。
まるでマンガのような晴天だった。

ここは駅近くのカフェ。
亜希と一緒に見つけて以来、2人で入り浸る事が多かった。ケーキもラテも美味しいし、可愛いものが多い。
窓から見えるのは喫煙所のみで、眺めは少し良くないが、店長さんの計らいで、私たちはいつも一番奥の目立たない席に座らせて貰っている。
店長さんは優しそうなおじいさんだった。私たちがアイドルと読者モデルと知ると奥の席に案内してくれるようになった。
今日もおじいさんは『可愛い孫娘がいる気分だよ』と言いながら奥に案内してくれた。
私たちはおじいさんの笑顔に釣られて笑ってしまった。なんだかこっちも嬉しくなった気がした。

亜希がクレープを食べながらいつもの調子で喋り始めた。

「ねぇ、そういえばさ、今度映画見に行く約束したじゃん?アタシ、アレを見たいんだよね」
「あぁ、前に亜希が言ってたやつ?『ハイスコアドール』だっけ?」
「ううん、そっちじゃなくて『デッドプール』っていうやつ!……『ハイスコアドール』も面白いんだけど、あのボクサーの演技が微妙なんだよね」
「あぁ、やっぱり俳優じゃない人は映画出ちゃだめだね……。それで、『デッドプール』って確かアメコミのやつだっけ? 私そういうの詳しくないんだよなぁ」
「ただのヒーローものじゃないんだよ!」
「例えば何処らへんが?」
「なんと18禁」
「はい??」
「ヤバくない?」
「・・・・・・もしかしてHなやつ?」

亜希はクレープを吹き出した。汚い。汚いけど、許せた。
亜希はこういう話題には弱い。エッチ、という単語でさえこの調子だ。
見た目はギャルで遊んでそうに見えるが、人は見た目で判断しちゃいけないんだなぁ、なんて事を再認識した。
この様子を見ると更にからかいたくなるが、自分もこの話題には疎いのでやめておく。

「ち、ちがうよ!」
「亜希はウブだなぁ。エッチって言っただけなのに・・・ふふふ」
「アンタだってウブな癖に!」

私はアイスラテを飲みながら笑ってしまう。最近はアイドル活動が忙して、亜希となかなか会えなかった。
彼女の顔を見るだけで元気が出てくる。

「デッドプールはね、下品なの」
「下品? えーと、ウンチを投げたり・・・」
「そんなヒーローいてたまるか!あと、アイドルがそんな事言っちゃいけない!」
「冗談だよ。私はアイドルだからトイレにも行かないの知ってるでしょ?」
「それアイドルが言っちゃいけないセリフ!」


606 : 「夢をあきらめて現実を生きます」 ◆QBK2jED/WU :2017/05/11(木) 19:50:24 eGqCti6Y0

いつものやりとり。私がふざけて、亜希がツッコミをいれる。
亜希の前だからこそ、私は全てを曝け出す事が出来ていた。
私たち2人なら、きっと漫才師にもなれるだろう。私たちはそんな気がするぐらい2人で笑って過ごす時間が多かった。

「でも、すごいね。ヒーローなのに、下品って」
「今までもそういうヒーローは沢山いたんだよ。アンチヒーロー? っていうのかな?」
「ほら、アンパンマンに出てくるロールパンナちゃんも、敵になったり味方になったりするでしょ?」
「アンチヒーロー?」

私はは聞きなれない単語に少し興味を惹かれた。
持っていたカフェラテをテーブルに置いて、体を亜希の方に向けた。

「悪を倒す為に、目的を選ばなかったり、限りなく悪の方にいるんだけど、結果的に正しい事をしたりするヒーローのこと!ロールパンナちゃんはちょっと違うかもしれないけど・・・」
「あ!凄い前に亜希の家で見た『パニッシャー』って奴?」
「そう、それ!パニッシャーも自分の家族を奪われて、復讐のために色々悪い事してたよね」

亜希は、映画の話になると止まらない。
しかし彼女の話は分かりやすいので 右から左へ流れることはなかった。

「でも、デッドプールは今までのアンチヒーローとは違うんだよ!昨日調べたんだけど、本当に凄いの!」
「ただのヒーローじゃない、アンチヒーローなのに、今までのアンチヒーローとは違う?」
「第四の壁、って知ってる?」
「第四の壁?」
「快夢は、演劇とか見る?」
「ステージ側に立った事なら何回かあるけど」

ヒーロー物の話をしていた筈なのに、急に演劇の話になった事に対して私は疑問を抱いた。
亜希は私がステージ側に立つ人間だったという再認識すると少し変な顔をしたが、すぐに話を続けた。

「演劇中に快夢はお客さんに話しかけたりした?」
「そんなことしたら監督に凄く怒られそう」
「だよね!普通はそんな事を絶対しちゃいけない。ステージと客席には透明な壁があるんだよ」

アイドル研究生時代に、勉強として何回か演劇をしたが『透明な壁』を意識した事は一度もなかった。

「その壁を第四の壁、って言うんだけど。この壁があるからこそ、演者は客席を認識できない。でも、デッドプールは第四の壁を破壊できるんだよ!」
「……つまり、どういうこと?」

第四の壁、の破壊?
どういうことか、意味がわからなくなってきた。私が理解できていない事を察した亜希は口を紡いだ。

「例えばさ、アニメが始まる前に主人公が『テレビを見る時は、部屋を明るくして離れて見てね』って言うじゃん。アニメのキャラが演者、私たち視聴者は、お客さんだとすると・・・」
「・・・・・・あぁ!そういうことか!」

演者側から客席側への干渉。それは演劇では絶対にあってはいけない事。
アニメのキャラが私たちに注意喚起する事は、本来なら絶対にあってはならない事だった訳か。今までそれが当たり前の風景だったから、少しだけ衝撃を受けた。

「デッドプールはね、私たちが見えるの。原作は見た事ないけど、漫画だと読者にバンバン話しかけてくるんだって!もう本当に映画が楽しみ!」
「私も少し興味出てきたなぁそれ。一緒に見に行こうよ」
「でもね、快夢。一つ問題点があるの。・・・・・・18禁だから、私達見れない」

しっかりとオチが付いた所で、亜希はクレープを食べ終えた。亜希の話は、長い。マシンガントークだ。
でも彼女の話は興味を惹かれた。
第四の壁、か。


607 : 「夢をあきらめて現実を生きます」 ◆QBK2jED/WU :2017/05/11(木) 19:51:01 eGqCti6Y0


「今日は天気がいいなー!雲ひとつない青空!そして飛行機!飛行機雲!こんにゃろー!せっかくの雲ひとつない青空が!」
「たった今、雲ができちゃったね・・・ねぇ、亜希」
「ん?なーに?」



「もし、私たちの世界が、そのデッドプールの映画みたいに、演劇のステージ側の様に、誰かに見られてる創作物だったらどうする?」



私は、こういう例えばの話が好きだった。
アメリカに移住したら、イケメンの彼氏が出来たら、宇宙人がやってきたら、戦争になってミサイルが飛んできたら・・・・・・
同じメンバーのツボミちゃんとユーリちゃんにもよくこういった話をするが、亜希の答えが一番面白い事が多い。
私は今日もなんとなく、そんな話を彼女に聞いた。

「この世界が映画みたいに創作物だったら、ってこと?」
「うん。私達の事を大勢のお客さんが見てると仮定すると、だよ」
「うーん・・・このスーパーモデルの亜希ちゃんにそんな難しい質問をしないでよーーー!」

いつもの調子の亜希は、ニコニコしながら答えた。
そして突然、真面目な顔になった・・・・・・気がした。

「・・・・・・もし、私の人生が、誰かの創作だったら、私はね……」

亜希は背伸びをしながら自慢気に答えた。



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608 : 「夢をあきらめて現実を生きます」 ◆QBK2jED/WU :2017/05/11(木) 19:51:25 eGqCti6Y0



☆ ☆ ☆







私の人生は、私の人生ではなく、誰かの創作物だった。

ハリウッドの超大作でもなく、週刊少年ジャンプで連載している人気漫画でもなく、芥川賞作家が書いた小説でもなく、青春活劇テレビドラマでもなかった。

漫画、アニメの二次創作だった。





「・・・・・・」



疲れて眠っていたらしい。何だか懐かしい夢を見た。
まだアイドルとして駆け出しの時で、メンバー三人がお互いを良く知らなくて、あの女の悪事も知らなかった頃の事だ。


「・・・・・・あの時の亜希は、なんて言っていたんだろう」

思い出せなかった。覚えていない、という訳ではなく、記憶を奪われた様な感覚だった。

『版権異能授与バトロワ。この物語の題名さ』

ずっと、ずっと頭の中であの言葉がぐるぐると回っている。
あの時の亜希のセリフも、創作物だと考えるとしたらどうでもいいか。

「みんな殺そう。早く殺そう。この物語を終わりにしよう」

体についていた血は、乾いてた。なんだか体が軽い気がする。
体は軽いが、嫌な気分だった。私がこうやって呟いた言葉も、『奴等』は楽しんで見ている事を考えると胸が締め付けられそうになった。
目指すはバッドエンディング。全員殺そう。

私の人生なんて意味なかったのだから、

全員、殺そう。



☆ ☆ ☆


609 : 「夢をあきらめて現実を生きます」 ◆QBK2jED/WU :2017/05/11(木) 19:52:49 eGqCti6Y0

☆ ☆ ☆

時は少し遡る。そこには欝蒼とした繁みがあった。成人男性の背丈程の草花達は人ひとりを隠すのにうってつけだろう。
 
「うっそでしょ。マジで?俺V3になれるの?めちゃくちゃ夢叶ったじゃん。あぁ、あと40歳ぐらい若かったらかっこよく変身できるのに。俺もう62だぜ?
 62才でライダーに変身していいの?60代以上でライダーになっていいのは、藤岡さんだけなのに、俺本当に変身していいの?」
 
ハリウッド在住のハリウッドスター、レオパルド・ガーネットは長すぎる独り言と一緒にため息をついた。
純アメリカ人による流暢すぎる日本語はどこかおかしかった。まるで日本の男子学生、女子学生が話す日本語の様に崩れていた。
現在進行形で日本文化(特に特撮)に触れているからだろう。彼の日本語の流暢さは、日本人はもう誰も驚かないぐらい有名になってしまっていた。

彼は、興奮していた。まるで新しい玩具を手に入れた子どものように、声を挙げながら喜んでいた。
彼の腰に巻いてあったのは、特撮番組、仮面ライダーV3のベルトだった。
玩具にしか見えないそれは、本物だった。デザインは昭和チックで、色は少しくすんでいる。
粘土細工の様で、頑張れば手作りできそうな見た目ではあるが、触るとひんやりと冷たく、そして重厚である。
 
「どうしよっかなー、本当に変身していいかなー。・・・・・やっちゃおっか!」
 
彼には、その玩具にしか見えない物を「本物」だと確信していた。
なぜ、彼がそれを「本物」だと認識できたのかは、本人しか知らない。

「へ え え え え え え ん ん ん、し い い い い ん ん ん ! ! ! !」
 
彼は手を天に翳し、そしてぐるりと回す。月明りだけがその様子をジッと見ていた。
聞こえるのは風の音と彼の声だけである。

「ぶ い す り や あ あ あ あ あ あ あ あ あ ! ! ! !と お ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ っ っ っ っ っ っ ! ! !」

ベルトからけたたましい音が聞こえ、そして彼の身体が光り輝いた。
そして、そこには仮面ライダーV3が立っていた。
 
「うっひょ〜〜〜!!本当に変身できちゃったよ!!」
 
仮面ライダーV3。
それは日本の漫画家、石ノ森 章太郎原作の「仮面ライダーシリーズ」の第二作目である。
仮面ライダーV3は昭和48年に放映された作品である。前作の勢いを引き継ぎながらも変身ヒーローブームを牽引したと言われる作品である。
レオパルドはこのV3がライダーシリーズの中で一番のお気に入りだった。
 
「V3なぁ、最高だよな。昭和ライダーの中で一番最高だと思う。シナリオを熱い展開が多いしな」

繁みの中で仮面ライダーV3が体を動かし、跳ねている。その様子はヒーローに成りきっている2歳児の様だ。
レオパルドは独り言をぶつぶつ言いながら、繁みから飛び出した。


610 : 「夢をあきらめて現実を生きます」 ◆QBK2jED/WU :2017/05/11(木) 19:53:14 eGqCti6Y0

 
「……波の音に、潮の匂い。海が近いのかな?」
 
彼は、仮面ライダーV3という「非現実」的な存在に変身しながらも、この突拍子もない出来事を「現実」として受け入れてしまっていた。
仮面ライダーV3は勿論、仮面ライダーというものは、漫画、もしくは特撮作品であり、スクリーンの向こう側にしか存在しない。
彼は十分それを承知している。

「…………非現実っぽいけどでも、このベルトを触ると、『本物』って分かっちゃうんだよなぁ」
 
理屈ではない、何か。どうみても玩具にしか見えないそれを触った彼は、ベルトを『本物』だと認識し、そして変身して見せた。
仮面ライダーV3の熱狂的ファンだからベルトを本物だと感じたのか。
それとも、長年の俳優経験から、映画の小道具との違いを感じたのか。
それは、わからない。
とにかく、彼はベルトを本物だと認識し、そして変身して見せた。仮面ライダーV3に、変身して見せた!
 
「……で、やる事は勿論、『悪を滅ぼす』、だろうね。仮面ライダーならそうするし……」
 
レオパルド・ガーネットとしても、そうする事は変わらない。
東ジョーが殺された時の、あの血の匂いは、本物だった。
映画で使うような小道具の絵の具の匂いではない。噎せかえるような嫌な臭いだ。
 
『さっそくだがお前達には最後の一人になるまで殺し合いをしてもらう』
 
ナオ=ヒューマ、奴は顔色を変えずにそんな事を言った。言いのけた。
あれは、演技ではない。俳優の自分だから分かったことだ。
こんな事、許されてはいけない。
悪は、倒さなければならない。
正義は勝たなければいけない。

「……昔、こんな映画があった気がするなぁ。あの七原だったか、伊藤だったか、夜神だったか……名前忘れたけど、あの俳優が主演してたやつ。なんだったっけなぁ」
 
…………『バトルロワイアル』、だ。思いだした。
確か、あれは日本によく似た国で戦闘実験だったか、プログラム、だったか、中学生が政府によって殺し合いをさせられる作品ではなかっただろうか。
あまりの衝撃作で、日本国内で少し問題になった覚えがある。カルト的人気で漫画にもなっていた筈だ。
あれも、最後にはデスゲームから脱出する事ができた筈だ。

「……まぁあれはあんまり良い感じの終わり方じゃなかったな。まぁデスゲーム物の作品にはよくある感じか」
 
そんな事を言いながら、足を前に進めた。月明りが仮面ライダーV3を照らした。
彼は少しだけ肌寒さを感じた気がした。でもそれは気のせいだったのかもしれない。
 
悪は滅ぼさなけれならない。
正義は勝たなければならない。
それは、俳優の彼にとって、作品に求める美学だった。作品に求める美学は、いつしか彼の生き方にも影響するようになった。

「……大切な事は、映画から学んだ。様々な作品から学んだ。そして『仮面ライダー』からも学んだ。だからこそ俺は、ナオ=ヒューマの事を許せねえわ。
 お前は悪人だ。罪のない女子供も巻き込みやがって。だからお前を絶対に倒さなきゃなんねぇ」
 
彼はたった今、本当の意味で仮面ライダーV3になった。夢にまでみた仮面ライダーV3になった。
悪を滅ぼす為に仮面ライダーV3になった。正義の味方、仮面ライダーV3になった。
このどうしようもない、最悪な現実で、仮面ライダーV3になった。
 
「例え、仮面ライダーV3に変身できなくても、俺は、レオパルド・ガーネットとして、この殺し合いに対して、抵抗し、打破してやんよ」
 
だって、それが俺の生き方だから。
彼はそう呟きながら、また一歩、足を進めていく。

……彼は一つ勘違いしていた事がある。彼が変身したのはテレビで放映していた『仮面ライダーV3』ではない。
月間マガジンZで連載されていた漫画『仮面ライダーSPIRITS』に登場する『仮面ライダーV3』の方だ。
微々たる問題ではあるが、原作と漫画では差異があるのだ。彼はその差異に気付く事ができるのだろうか。
そして、仮面ライダーV3の力を得た唯の映画俳優が、この殺し合いの中で、本当に正義のヒーローになる事ができるのだろうか。


611 : 「夢をあきらめて現実を生きます」 ◆QBK2jED/WU :2017/05/11(木) 19:53:42 eGqCti6Y0

 
 
☆ ☆ ☆
 
「お嬢ちゃん、こんばんわ。星空に満月。そしてそれを美しく移す海の水面。まるで君のようだね。これで血がついてなければシンデレラと同じぐらい美しいと思うんだけど」
「……………………………」
「なんで無視するの?完全無視は人としてよくないと思うよ。それで、そこで亡くなってるお爺さんは君が殺したの?そうだとしたらやばいなー」
「……静かにしてください」
 
レオパルドは、歩いていると草原にたどり着いた。この状況でなければコーヒーでも入れてこの眺めを楽しみたかったが、それは叶わない事だ。
老人の死体がそこにあったからだ。酷い有様だ。状況をよく見ようと近づいた時に、彼女が背後から現れたのだ。
 
「…………見たことあると思ったんだけどさ、『ごーね』の快夢ちゃんだよね?」

月明りに照らされた彼女を見て驚いた。人気アイドルグループの一人が血まみれでそこに立っているからだ。
目には花が咲いているように見える(眼帯だろうか?)
そして彼女の手には同じように血がついた剣が握られていた。

「…………そういう貴方は、レオパルド・ガーネット」
「ワーオ!声で分かるなんて凄いじゃーん。噂通り、耳が良いみたいだね。努力の賜物ってステキ☆」
「………………………」
「ちょっとちょっと、また無視か。悲しい気持ちになるからやめてほしいんだけど」
 
快夢はショートソードを構えた。
さて、なぜレオパルド・ガーネットが仮面ライダーのコスプレをして私の目の前に現れたのだろうか。
あの時、ナオ=ヒューマの説明があった時に私の他に集められていたが、ハリウッドスターであるレオパルド・ガーネットがいた事に気づかなかったとは……
……いや、しょうがないことだろう。私はあの時気が動転していた。

「……剣を構えたって事は、この馬鹿げた殺し合いに乗った、って事でいいのかなぁ?俺は、マジで強いからやめとけって」
「仮面ライダーのコスプレした映画俳優が、ただのアイドルより本当に強いのか、試してみますか?」
「ひゅー♪やってみようぜ!ぜってー俺の方が強いから!」
 
快夢は剣を構えた。V3は拳を構えた。
快夢はなんだか心が躍った気がした。

「(……なんか不思議な気分。体が軽い気がする)」

思えば、剣を構える前から体が軽い気がする。
……もしかしてこれが私に授けられた『異能』なのだろうか?
自分の目から咲いた花が少しだけ熱くなった気がした。
 
「君の目に咲いてる花が、異能か何かかい?」
「もし、そうだったとしても、答えませんよ」


612 : 「夢をあきらめて現実を生きます」 ◆QBK2jED/WU :2017/05/11(木) 19:56:02 eGqCti6Y0

 
先に動いたのは、快夢だった。
地面を蹴り、宙に浮いた。
それをレオパルドは知覚するのにコンマ数秒かかった。もしV3に変身していなければ、快夢が飛び上がった事さえ気づかなかっただろう。

「(おいおいおいおい!!ただのアイドルじゃねえのかよ!異能ってのはおっかねぇ!)」

仮面の下でレオパルドは苦笑いをした。冷たい汗が頬を伝った。
しかしそれに驚いたのはレオパルドだけではなかった。
 
「(うそでしょ!?私は、今、目の前の敵に向かって走り出しただけなのに!!)」
 
まるで、自分の身体が自分の物ではない気がした。
…………いや。
 
「………あはは」
 
思わず、笑みがこぼれた。
違う。私の身体は、最初から私の物ではないじゃないか。
私の身体は、私の人生は、最初から私の物ではない。

「私の、人生は、誰かの物だったんだよ。だからこうやって体が軽くなるもの、不思議な事じゃない」
 
快夢は、そのまま空中で剣をレオパルドの頭に向かって振り下ろした。
それをレオパルドは間一髪で避けた。
地面に降り立った快夢は、もう一撃をレオパルドに向かって振り回す。
それを間一髪でレオパルドは避ける。V3に変身した為、身体能力が向上しているのだ。
普通の60代だったら、それを避ける事は叶わないだろう。
レオパルドは、しっかりと避ける事が出来ていた。しかし……
 
「本当に殺す気かよ!?勘弁してくれ!!!」
 
仮面ライダーV3に変身した事により、快夢の攻撃は楽々避ける事は出来ている。
だが彼は、攻撃をしなかった。それはなぜか?
 
「(やべぇ、本当に殺される!!予定としては『オレツエー!』ってなる筈だったのに!)」
 
彼は、怖かった。ただのアイドルが軽々と剣を振り回し、人間とは思えないようなスピードで、自分に襲い掛かるからだ。
変身もしていないのに、まるで仮面ライダーのように、彼女は強かった。

……結論から言えば、この勝負に快夢は勝ち目はない。勝てる筈がなかった。
体格、体力は、レオパルドの方が上である。
異能によって強化された体だとしても、仮面ライダーV3には勝てないだろう。
それでも、彼は怖かった。血まみれの剣を振り回し、笑いながら殺そうとしてくるアイドルが、どうしようもなく怖かった。
彼女の攻撃は、一度もレオパルドに当たらない。仮面ライダーV3という強大な力の前では、絶対に当たらない。
彼女がウタウタイモードを発動しない限りは無理だろう。
一撃、また一撃と、彼女はレオパルドに剣を降ろす。それを全て避けるレオパルド。
 
「(むっ、むりだ!勝てない!に、にげなきゃっ!)」


613 : 「夢をあきらめて現実を生きます」 ◆QBK2jED/WU :2017/05/11(木) 19:57:22 eGqCti6Y0


彼は、絶対に勝てる戦いを「勝てない」と思い込んでしまっていた。
もしこの場にレオパルドではなく、仮面ライダーV3の主人公の風見志郎がいたのであれば、臆することなく彼女に立ち向かい、勝利をもぎ取ることだろう。
 
「あはは、なんで避けるの?死ねば、楽になるのに。私達を玩具にしか思ってない人から、私達を見世物にしている人から、解放されるのに!」
「お前は何を言っているんだ!?!?本当に殺す気か!?」
 
この人のさっきまでの威勢はどうしたのだろう。彼が逃げ惑う姿を見ていると、たまらなく面白くなった。
彼は素早く体を動かし、私の攻撃を華麗に避ける。私は一度も攻撃を当てる事ができなかった。
でも私はなぜか、彼に勝てるという確信があった。
 
「ひっ」
「死ねば、助かるよ。さっき殺した善養寺さんだって、全てから解放されたんだから」
「カ、カルト宗教にでも入信してるのかよ!?」
「あははは」
 
こいつは、狂ってる。レオパルドは寒気がした。
薬でもキメているのではないか?それともそういう異能か?頭がおかしくなる異能?
それでこいつは、その異能のせいで妄言を垂れ流しながら、人間とは思えない速さで剣を振り回しているのか?
冗談じゃねぇ!俺は、仮面ライダーV3に変身できた。この力は、この異能は、俺を変えてくれたんだ!
スクリーンの中でしかヒーローになれなかった。
でも、今は、憧れの仮面ライダーV3に変身できた。それなのに、それなのに、それなのに!
 
「アハハハ。早く死ねばいいのに」

俺の目の前にいる敵は、仮面ライダーに出てくるショッカー戦闘員よりも、デストロン首領よりも、アポロガイストよりも、凶悪で、極悪で、最悪だ。
逃げなければいけない。こいつには、勝てない。こいつには、絶対に勝てない。

「ひぃぃぃぃぃぃいぃ」
 
思わず、声がでた。自分の喉から出てきた声なのかさえ、自分にはわからなかった。
カッコ悪い。仮面ライダーV3に変身できたのに、俺は、カッコ悪い。
一つの悪さえ倒せない。
俺は、やはり、ただの映画俳優で、

「スクリーンの中でしか、ヒーローになれねぇのかよ…………」


鮮血が舞った。


614 : 「夢をあきらめて現実を生きます」 ◆QBK2jED/WU :2017/05/11(木) 19:57:44 eGqCti6Y0


☆ ☆ ☆
 
 
 
「はっはっはっはっ」
 
走る。走る。走る。走る。頭から血を流しながら、彼は走った。無我夢中に、森の奥に体を隠すように、彼は走った。
 
「うっ…………おええええええ」
 
びちゃびちゃびちゃと音が鳴る。昨日食べた物が消化されていないのが、嫌でも確認することができた。
いったい俺はどこまで走ってきたんだろう。
酷く眠たい。腹が痛い。喉も胃酸でやられたようで不快だ。
右目は、見えない。あの狂った女にやられたからだ。
 
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
 
カッコ悪い。俺は、カッコ悪い。なんてカッコ悪いんだ
仮面ライダーV3の力を、必殺技を一度も使うことなく、俺は負けてしまった。

それどころか、知らない誰か、知らない何かに助けられた。
だからこそ俺は、あの女から逃げ切る事が出来たのだ。
あれは、自分がよく知るヒーローだった。
…………俺を助けたのは、仮面ライダーだった。
 
「…………夢は、やっぱり、夢だったみてぇだ。畜生、畜生、ちくしょう、ちく、しょう」
 
俺は地面にぶっ倒れた。なぁに、少し休むだけさ。少しだけ眠るだけ、少しだけ寝させてくれ。ここまで逃げれば、大丈夫さ。
俺、明日撮影なんだけど、目が見えなきゃ満足がいく作品がとれねぇなぁ。
また夢をあきらめて、現実を生きなければいけないのか。
悲しいな。
 
【1日目 2時30分 D-8の何処かの繁み】

【レオパルド・ガーネット@仮面ライダーV3への変身/仮面ライダーSPIRITS】
[状態]気絶、右目失明、背中から出血中、疲労(大) 変身解除中 PTSD
[装備]変身ベルト
[道具]基本支給品、不明支給品(0〜2、確認済み)
[思考・行動]
1:快夢から逃げる
2:快夢が怖い
 
☆ ☆ ☆


615 : 「夢をあきらめて現実を生きます」 ◆QBK2jED/WU :2017/05/11(木) 19:58:08 eGqCti6Y0
 
快夢は苛々していた。邪魔が入った。せっかくもう一人殺せそうな所だったのに。
剣を一度レオパルドに振り下ろす事ができた。だが、彼は倒れなかった。彼の変身が解除されただけだった。
私は、もう一度そこに剣を振り下ろした。彼は叫びながら身体を捻った。
私は鮮血を浴びた。それでも彼は生きていた。
私はもう一度、振り下ろした。しかし、それは当たらなかった。
私の剣を掴んだ奴がいた。
なんという馬鹿力だろう。私は剣を動かす事ができなかった。
 
「あなた、いったい誰?」
「儂か!儂の名は、」

私はようやくそいつの正体に気が付いた。
またか、と心の底で思ってしまった。
 
「仮面ライダーだ!儂は貴様の様な童子(わっぱ)が殺し合いに乗るのが、どうしても納得できん!儂は、貴様をここで止める!」
「はぁ……」
 
もはや溜息しかでない。
奴は私の剣から手を放す。

「じゃあ、やってみてよ。私は、この物語を終わらせる為に、絶対に貴方を殺す」
「やってみせい!井上 快夢よ!儂は、強いぞ!」
 
……有名税をこんな場所でも取られてしまうとは思わなかった。あんなに努力して成ったアイドルなのに、今はその存在が鬱陶しくて仕方がない。
もしかしたらこの会場にいる全員が私の名前を知っているのではないのだろうか?

「……あー、馬鹿らしい。私が積み上げた努力も全部作られたものだった事に対して苛々もするよ」
「貴様の努力は本物だった。儂はわかる!その努力を無駄にするんじゃない!ここで人を殺したら、もう戻れんぞ!」
「もう手遅れだよ。あはははっ」
 
私は、目の前にいる仮面ライダーに剣を向けた。
目の前の仮面ライダーも私に対して構えた。
闘いがまた始まる。
 
☆ ☆ ☆


616 : 「夢をあきらめて現実を生きます」 ◆QBK2jED/WU :2017/05/11(木) 19:58:29 eGqCti6Y0
 

「あっははははっ!」
「な、なんで笑うの!?」
「そんな恥ずかしい事、私は絶対に言えないよ」
 
亜希が言った事に対して、私はつい笑ってしまった。彼女は顔を真っ赤にしながら私に怒る。
彼女は、本当に恥ずかしかったようで、耳まで赤くしながら机に伏してしまった。
 
「でも、亜希らしいな。私は、絶対にそんな事思えないよ」
「それは褒めてんの!?それとも馬鹿にしてるの!?」
「両方」
 
亜希が顔を更に真っ赤にしながら怒っていると、店長さんがコーヒーのお代わりを持ってきてくれた。
二人はいつも楽しそうだねぇ、と言いながら私達を微笑ましそうに見ながら、またカウンターの裏で新聞を広げていた。
 
「で、快夢だったらどうするの?」
「『ハイスコアドール』が見たい」
「何でこの話の流れでなぜ映画の話題に戻したと思うの!?」
「冗談だよ……もしのこの世界が創作だとしたら、か。私だったら、怒っちゃうと思うな」
「えぇ、なんで怒るの?」
「だってさ、私が今まで積み上げてきた人生や努力が全部、作り話だったら嫌じゃない?私の人生がもし誰かの創作だったら、作者を一発殴って、自分の人生を取り返して、私の人生を、私だけの人生をもう一度歩ませて貰いたいな」
「…………あははははっ!」
「あー!笑ったな!」
「私とおんなじぐらい恥ずかしい事言ってるよ快夢!めっちゃウケるんだけど」
「もう!笑わないでよ!」

私たちが、笑い合っている様子をカウンターの奥から嬉しそうに店長さんが見ていた。
私もなんだか楽しい気分だった。こんな夢みたいな時間がずっと続けばいいな、って思った。


617 : 「夢をあきらめて現実を生きます」 ◆QBK2jED/WU :2017/05/11(木) 19:58:49 eGqCti6Y0
 ☆ ☆ ☆
 
天草 時春は、絶望していた。憤っていた。悲しんでいた、心配していた。目の前の敵に対して『救いたい』と思っていた。自分の娘と同じぐらいの歳の子が、人を殺す事がとてつもなく悲しかった。
この殺し合いに対して様々な感情を向けていた。
絶対に止めなければいけない。
あの場には自分の子ども達もいた筈だ。守らなければならない。
最愛の人と一緒に残した最後の形見だ。絶対に失ってはならない。失いたくない。
 
儂は、絶対に負けぬ。
 
彼の信念は、決して折れる物ではない。
レオパルドの様に、漠然とした考えでヒーローになりたいわけではない。
彼は、愛するべき人の為にヒーローになった。
 



【1日目 2時30分 A-7 海辺の草原】

【井上 快夢@ゼロ(ウタウタイ)/DRAG-ON-DRAGOON3】
[状態]発狂 右目に災厄の花 返り血 第四の壁を破壊できているように『演じている』
[装備]ショートソード
[道具]支給品一式、不明支給品(0〜2)
[思考・行動]
基本方針:全部殺して、終わらせる。
1:郷音ツボミは殺す
2:レオパルドは殺す
3:目の前の仮面ライダーは殺す
※ブラッドゲージの蓄積度は45%です。100%になるとウタウタイモードを発動可能です。
 他者を攻撃or自らが傷つくと蓄積していきます。
 
【天草 時春@仮面ライダーダークキバへの変身/仮面ライダーキバ】
[状態]健康 ダークキバに変身中
[装備]変身ベルト&フエッスル
[道具]支給品一式、不明支給品(0〜2)
[思考・行動]
基本方針:殺し合いの打破
1:井上 快夢の打破
2:先程逃げた男を保護
3:子どもたちを保護


618 : 「夢をあきらめて現実を生きます」 ◆QBK2jED/WU :2017/05/11(木) 20:07:39 eGqCti6Y0
投下終了です


619 : 名無しさん :2017/05/11(木) 20:44:31 ebbsjhNg0
投下乙です。
ただ憧れていた俳優はヒーローになれず、守るものがある父親はヒーローになれた・・・やはり親は強しと言った感じでしょうか。
快夢ちゃん、ドンドン深みにはまっていくなぁ。
時春ダークキバは少女を救えるのか!?
次回こうご期待!って感じがします。


620 : 名無しさん :2017/05/11(木) 21:23:43 NtKGp.EcO
投下乙です

仮面ライダーに必要なのは憧れでも正義感でもなく、悲しみ

邯鄲の夢
リアルのどこにリアリティが落ちてるのだろうか


621 : 名無しさん :2017/05/11(木) 21:25:28 qjKdOfm20
投下乙
シート投下時では予測できなかったレオポルドまさかの不安ルート
実際、現実ではライダーの悪役より包丁振り回すヤンデレの方が怖いよなあ
どんどんDODのキャラみたいになっていく快夢と仮面ライダー天草パッパ、勝つのはどっちだ?!
続きが気になりますね


622 : ◆7PJBZrstcc :2017/05/25(木) 19:06:31 2P5KtyNU0
投下します


623 : 対ちょっぴり怖い資産家 ◆7PJBZrstcc :2017/05/25(木) 19:07:30 2P5KtyNU0
 G-2の山の中腹部、午前1時を少し過ぎたころ、トーマス・ベイカーと鏑木シリカは地図を見ていた。
 シリカの着替えを探す為に、そしてトーマスとシリカの間で交わされた約束を書いた誓約書を作る為に必要なものがありそうな場所を探していた。。
 とりあえず一番近い家に行こうということになり、E-4の井戸のある家を目指すことになる。
 片やボロボロのパーカー、もう片方は高級そうなスーツ。
 そんな山歩きには到底向いていないであろう格好のせいか、山を下りるのに少々手こずる2人。
 やがて山を下り、平地に出ても目的地までの間に目印があるわけでもないから方位磁石や地図を見ながら四苦八苦。
 こうして、直線距離ならそうたいした距離でもないE-4まで、結構な時間を掛けながら歩いた。

 そして到着し、トーマスは家のドアノブに手を掛ける。
 ノブを回して開けようとするも、ドアはガチャガチャというだけで開く気配を見せない。

「おかしい、開かないぞ」

 ドアに対して悪戦苦闘するトーマス。
 それを見ていたシリカはあることに気付く。

「あの、ベイカーさん……」
「何かねミス鏑木」
「……日本の家のドアは外開きです」

 シリカの言葉にトーマスは思わず手を叩いていた。

「ああ、そういえばそうだったな。ここ数年日本に来る事が無かったから忘れていたよ」
「そう言えばベイカーさんはどこに住んでるんですか?」
「私はイギリス人だ」
「へぇ……」

 などと雑談しながらトーマスは再びノブを回し、ドアを引く。
 そしてドアが開き、シリカが目撃したのは2人の男だった。
 1人は自分より年上、高校生くらいの男。
 もう1人は小学生くらいの男の子だった。
 その高校生は剣を持ち、小学生をかばいながら2人を睨む。
 睨まれる原因は間違いなくシリカが着ている血まみれの服。だが今のシリカにはどうすることも出来ない。
 すがる様な思いでトーマスを見るシリカ。
 一方、見られたトーマスは睨まれていることなど気にも留めないような態度でこう言い放つ。

「言いたいことは分かっている。だがその前に自己紹介の一つでもしようじゃないか」
「「え?」」

 トーマスの発言に驚き、台詞がハモってしまうシリカと高校生。
 それを気にせずトーマスは自己紹介を始めた。

「私はトーマス・ベイカー、資産家だ。
 そしてこちらは鏑木シリカ、私の同行者だ。
 私も彼女も殺し合いには乗っていない」
「……どうも」

 突然の展開について行けないながらも何とか挨拶はするシリカ。
 一方、対峙している高校生は完全に呆気に取られている。

「どうした? こちらは自己紹介したのだから君達も自己紹介すべきではないのかね?」
「あ、はい。
 俺は島原翼です。こっちは丹美寧斗」
「ふむ、よろしく頼む」

 そう言ってトーマスは家に上がりこんだ。
 靴のままで。

「えぇ……」

 シリカは日本の家は靴を脱ぐんですよ、と言うべきかと思ったが我慢した。
 なぜなら、何かあったときに靴のままの方が逃げやすいと考えたからだ。
 だからシリカもトーマスに追従し、靴のままで家に上がった。


624 : 対ちょっぴり怖い資産家 ◆7PJBZrstcc :2017/05/25(木) 19:08:01 2P5KtyNU0





 あ、ありのまま今起こったことを話すぜ!
 俺は血まみれの女の子相手に警戒していたら自己紹介されて、いつの間に上がりこまれていた。
 何を言ってるのか分からないと思うが、俺も分からなかった……。

「なんでさ」

 あまりの現状に思わずジョジョ風のモノローグをした挙句、衛宮士郎の口癖が飛び出してしまう翼。
 その動揺など目に入らないとばかりにトーマスは話し始めた。

「正直信じてもらえるとは思っていないが、我々は殺し合いに乗っていない」

 トーマスの言葉を黙って聞く翼。
 翼はこの言葉をどう受け取るか考える。
 疑うのが妥当だろう。しかし目の前の二人は武器も持たずこっちと話している。
 自分は剣を持っているにも関わらずだ。
 なら少なくともこの場で襲い掛かる気は無い、ということだろうか?

「なら、その子の服が血まみれなのはどういうことですか?」

 とはいえこれだけは聞いておかなければならない。
 乗っていないというなら服が血まみれな理由は聞かなければならない。
 しかし、トーマスはその問いを当然のように予測していたのか、素早く回答を返してきた。

「ああこれかね?
 これはこの殺し合いが始まる前に怪我をした犬と猫を抱えていたために付いた血だよ」
「犬と、猫? 人間の血じゃないのか…?」
「はい。これは怪我をしていた犬と猫を動物病院に連れて行こうとして抱きかかえていたときについた血です」

 あらかじめ言っておくことを決めていたかのようなシリカの言葉を翼は黙って聞く。
 そして翼はそれを受け入れる。

「分かりました、とりあえずあなた達を信じます」
「感謝する。後ろの少年、ミスタ丹美もそれでいいかね?」

 トーマスは翼だけじゃなく寧斗にも確認を取る。
 その言葉の後に翼が寧斗の方を見ると、寧斗は翼に抱き着きながら首を縦に振っていた。
 翼は寧斗の反応を見て、これは怖いけど俺を信頼してくれてるんだな、と解釈した。

「ミスタ丹美にも礼を言おう」

 そしてトーマスは寧斗に頭を下げた。
 その行いに翼は軽く驚く。まさかこんな小さい子にまで礼儀を尽くすとは、と。
 少なくともこのこの人は悪い人じゃないな。
 子供をないがしろにしない人間に、悪い人はいないと思うし。
 と翼は感心していた。


625 : 対ちょっぴり怖い資産家 ◆7PJBZrstcc :2017/05/25(木) 19:08:55 2P5KtyNU0

「それでは、悪いのだがいくつか頼みがある」
「頼み、ですか?」
「そうだ。まず一つはミス鏑木が着替えられそうな服を持っていないだろうか。
 私が用意すべきだと思うのだが、ナオ=ヒューマはレディの服装には無頓着な男の様でね」
「殺し合いを暇つぶしで起こすような奴に、そんな甲斐性がある方が驚きですが……」
「それは言えているな」

 軽口を叩きながら翼は考える。
 寧斗君の支給品がアイスピックしかなかった以上、着替えは俺の支給品から出すことになる。
 ――そういえば。

「えっと、こっちか?」

 翼はデイバッグをガサゴソと探す。
 そしてしばらくすると。

「あった、これだ」

 そう言って翼はデイバッグから服を出す。
 それは、黒のワイシャツに黒のジャケット。更には黒のズボンに黒の手袋、黒のネクタイと言った黒一色の男性ものの服装だった。

「黒一色だな。喪服か何かかね?」
「違います」

 実はこの服は、Fate/Zeroでセイバーが普段着としていた服装である。
 Fate好きである翼は当然知っているのだが、その事をわざわざ説明すると長くなりそうなので説明しなかった。

「デザインの是非はともかくとして、なかなかいい生地を使っているなこの服は」
「……そうなんですか?」
「うむ、そうだ」

 シリカの疑問の言葉に強く言い切ったトーマス。
 その言葉を聞いてシリカはスーツをじっと見るものの、やはり分からないのか首をひねる。

「では着替えてくると良い。
 ミスタ島原、彼女にどこか着替えが出来そうな場所を教えてやってくれ」
「それならあっちに洗面台があります」

 そう言って翼は指を指す。
 その方向を見てシリカは服を持ち歩いていくが、その途中小声で呟く。

「似合うかな、こんな服」
「君なら似合うさ」

 小声での呟きに律儀に反応され、シリカは恥ずかしかったのか顔を赤らめながら洗面台へ駆け込む。
 それを見ていた翼は思わずこう言った。

「喪服とか言ってませんでした?」
「彼女が着れば何でも似合うさ」

 翼は何も言えなかった。


626 : 対ちょっぴり怖い資産家 ◆7PJBZrstcc :2017/05/25(木) 19:09:27 2P5KtyNU0





 ――早く出てってくんねえかな、あいつら。
 それが丹美寧斗のトーマス・ベイカーと鏑木シリカへの偽りなき思いだった。

 そもそも殺し合いに乗っているいないはともかく、こっちを攻撃する意図が無いのは分かっていた。
 シリカが血まみれなのには少々驚いたが、あいつが人を殺した直後の人間かどうかくらい見れば分かる。
 素振りとして怯えている様子を見せていたが、あんなものはほとんどポーズだ。
 だからこそ、少なくともこの2人に対し警戒する気は寧斗には無かった。

 だからといって気を休められるかと言われれば、そんなことは無い。
 寧斗にとってはトーマスもシリカも厄介な存在だ。
 この場で殺したいとは言えないが、さっさと死んでほしいと思っている。
 なぜなら、寧斗から見て2人は余りにも異様なのだ。
 殺人鬼なのに異様に見えるのか、殺人鬼だから異様に見えるのか分からないが、とにかく寧斗には異様に見える。

 まずは目の前に居るトーマス・ベイカー。
 寧斗にはこの男が自分と近い、あるいはそれ以上の欲求を持っているように見える。
 殺し合いに乗っていないというからには無闇矢鱈に殺さないとしても、殺し合いに乗った参加者は躊躇なく殺す、そんな目をしている。
 否、『殺す』だけで済むのだろうか。何か自分でもしない『それ以上』を望んでいるような――
 そんな気がする。

 次にこの場にはいない鏑木シリカ。
 こっちはトーマス・ベイカーほど警戒する相手じゃない。
 犬猫を殺すのが趣味の様だが、人の代わりに殺しているわけじゃなさそうだ。
 それに、あいつみたいな雰囲気の人間は何度か見たことがある。
 かつて入院していた精神病院でも、シリカみたいにどこに向かえばいいのか分からない人間はいた。
 トーマスみたいに強い意志を持った人間を、道しるべにしなければ歩くこともままならない人間は。

(だからこそ、あいつの方がやばいかもしれない)

 裏を返せば、道しるべがなくなると何処に向かうか分からなくなるということだから。
 何をするか分からない奴ほど危険な奴はいない。

(それに、あの目……)

 寧斗は一瞬だけシリカの目を見た。
 その目を見たとき、寧斗は得体のしれない恐怖を覚えた。
 自分よりも年下の、自分では何も決められなさそうな子供の目を見ただけで。

(異能か?)

 そうでもなければありえない、と寧斗は思う。
 だが同時にこうも考える。
 ただ恐怖を与えるだけが、あいつの異能なのか。

 これは自分の異能がT-1000、翼の異能が衛宮士郎の能力だったからこそ起きた考えだ。
 寧斗は無意識に、参加者に授与された異能は相手にダメージを与えるものだと考えていた。


627 : 対ちょっぴり怖い資産家 ◆7PJBZrstcc :2017/05/25(木) 19:09:53 2P5KtyNU0

「寧斗君、寧斗君!」

 寧斗が考えに耽っていると、いつの間にか翼が寧斗を読んでいた。
 寧斗は慌てて返事をする。

「え、えっと……。何、お兄ちゃん?」
「いや、ベイカーさんが白い紙を欲しがっていてね。ちょっと探してきてほしかったんだ。
 ひょっとして寝ていたかな? まあ今は深夜だから眠くてもしょうがないとは思うけど」

 この状況で寝れるとかどんだけ肝太いんだよ、と寧斗は思わず内心でツッコミを入れる。
 すろと、洗面台のほうから音がする。鏑木シリカが帰ってきたのだ。

「……着替えてきました」
「ふむ、見違えるようだね」

 トーマスは着替えをしたシリカを褒める。
 だが寧斗としてはあまり見たくないので立ち上がり

「じゃあ、僕は紙を探してくるね!」

 と言ってシリカに背を向ける。
 そして探し始めたのだが、幸か不幸か紙はあっさり見つかった。
 どうもこの家の住人は、プリンターで印刷する用の紙を一纏めにするタイプらしい。
 その紙を恨めし気に見つめながらも、これ渡したらさっさと出て行ってくれるかもしれない。
 そう思った寧斗はさっさと紙束を持って翼たちの元へ帰る。
 そして紙束をトーマスに渡した。

「1枚で良かったのだが……」
「そうなの?」
「いや、これは私の落ち度だな」

 そうだよ、そう言う事は先に言えよ。と寧斗は腹の底で思う。
 だがトーマスにそんな思いは理解できるはずも無く、筆記用具を取り出し何かを書き始めた。
 その間はなぜか喋りにくいのか誰も喋らなかったのだが、やがてシリカがある話題を切り出した。

「あの、島原さんちょっといいですか?」
「何?」
「……島原さんって、アニメとか漫画とかって詳しいですか」
「……まあ、それなりには」
「良かった。ちょっと見てほしいものがあるんです。
 多分私の異能に関するものだと思うんですけど、何なのかよく分からなくて」

 そう言いながらシリカはデイバッグからあるものを取り出す。
 それは本だ。分厚いハードカバーの本、表紙には苦しんでいるであろう人の顔が浮かんでいる。
 寧斗は気味の悪い本だなとしか思わないが、翼はそれを知っているのか驚愕を顕わにしていた。

「これって……、螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)!?」
「……何ですかそれ?」
「ジル・ド・レェの宝具……、ルルイエ異本の劣化コピー……!」


628 : 対ちょっぴり怖い資産家 ◆7PJBZrstcc :2017/05/25(木) 19:10:26 2P5KtyNU0

 シリカの疑問の声に答えながら、翼は螺湮城教本を見つめる。
 やがて翼は大きく息を吸い、吐く。
 それで落ち着いたのか翼は説明を始めた。

「えっとこれは魔道書でね、これを使えば魔術が使えるようになる」
「魔術ですか……」
「ああ、確か海魔を召喚できるはずだ」
「……じゃあ、後でやってみようかな」

 魔術が使えると聞いて好奇心を浮かべた表情をするシリカ。
 しかし翼はシリカを慌てて止める。

「いや、これ元はクトゥルフ神話の魔道書だから、多分読んだら正気度が削られる。最悪発狂だ」
「発狂ですか……」

 発狂と聞いて使いたい気持ちがいっきに薄れるシリカ。
 それでもいざという時には使えるかもと考え、シリカは本を手に持っておく。

「言ったはいいけど発狂とかするのかなぁ?
 してもおかしくないとは思うけど、本編で読んでたの旦那だけだもんなぁ。
 常時SAN値0みたいなメンツだったから分からねえよ畜生」

 などとぼやきながら頭を抱える翼を寧斗とシリカは見ないことにした。
 そうこうしていると、トーマスが書き終えたのか紙と筆記用具をしまい顔を上げた。

「これで私たちの用は済んだ。
 そこで礼と言ってはなんだが、これを受け取って欲しい」

 そう言ってトーマスはデイバッグから銃を取り出した。
 短銃身の六連発リボルバー、銃の名手でもないと使いにくそうだなと寧斗は思う。
 一方、翼は銃を見て顔を顰める。

「あの、すいませんけど俺の異能の都合上銃よりも剣の方がありがたいんですけど」
「そうか、ではミスタ丹美に渡そう」
「いや子供に銃を渡さないで下さいよ」
「ふむ、ではこの銃は私が持とう」

 トーマスはそう告げると懐に銃をしまう。
 そしてシリカに呼びかける。

「ミス鏑木、私は剣を持っていないのだが君は持っているかね?」
「……持っていますよ」

 シリカはトーマスに返答すると、デイバッグから剣を取り出す。
 それは刀だった。剣の素人である寧斗にも分かるほどの業物の刀だった。

「説明書によれば和道一文字っていう刀らしいです」
「確か、ワンピースのゾロが使ってた奴だっけ……。
 ありがとう、良いもの貰ったよ」


629 : 対ちょっぴり怖い資産家 ◆7PJBZrstcc :2017/05/25(木) 19:11:05 2P5KtyNU0

 翼は感謝をシリカに向けてするも、シリカは照れているのか顔をそむける。
 その様子を見ていたトーマスは立ち上がり一言。

「では我々はこれで失礼させてもらおう」

 やれやれやっと出ていくのか、と思う寧斗。
 それとは対照的に翼は慌て気味にトーマスを引き留める。

「ちょっと待って下さい! 一緒に行動しないんですか!?」
「……その気持ちは尊いと思うが、君と我々では必ず破綻する」

 翼の引き留めを無下に切り捨てるトーマス。
 しかし翼はそんなことで納得しない。

「破綻ってどういうことですか!?」
「私達と君ではいずれ仲たがいするということだ。
 ……例えば、君がもし殺し合いに乗った参加者と遭遇した時どうする?」
「説得しますよ」

 トーマスの問いに翼は即答した。
 その答えにトーマスは感心したような口ぶりを見せる。

「素晴らしい回答だ。
 だが私達はそうではない、私達は殺す。
 相手がどんな理由であっても、殺し合いに乗るのであれば殺す」
「そんな……」
「それほどの正義感と優しさを持つとは、今時珍しい若者だな君は。
 願わくば、君に幸運があることを祈る」

 そう言ってトーマスは家のドアを開け出ていく。
 それにシリカも追従しようとするが、翼は必死に引き留めた。

「鏑木、お前はそれでいいのか!?
 人を殺すなんて、そんなこと……!!」
「ごめんなさい、私はベイカーさんについて行くって決めましたから」

 翼の言葉を拒絶するシリカ。
 だがシリカは優しく微笑んでこう続けた。

「……でもあなたみたいな人がいてよかったと思います。
 私貴方みたいに優しい人、人生で初めて出会いましたから」

 それだけ言って、シリカも出て行った。
 翼は二人の言葉がショックで、その場に膝を突いて落ち込む。

「そんな……」

 一方、それを黙ってみていた寧斗は思った。

 ――これ、俺が慰めなきゃいけないのか?


【一日目・2時00分/E-4・井戸の家】

【島原翼@衛宮士郎の能力/Fate/stay night】
[状態]:疲労(小)、落胆
[装備]:幸運と勇気の剣@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0〜1(本人確認済)、和道一文字@ワンピース
[思考・行動]
基本方針:殺し合いの否定
1:ここで一夜を過ごす
2:戦いはなるべく避け、殺し合いに乗った者もなんとか説得したい
3:寧斗は何がなんでも守る
4:ベイカーさんも、鏑木も、なんで……
[備考]
※与えられた異能が衛宮士郎のものであると気づきました。
※首輪は能力による構造解析は不可能です
※丹美寧斗の正体が殺人鬼・網空仙一だと気づいていません。
 また寧斗の能力を体色が変化するものだと思い込んでいます。
※鏑木シリカの異能の一部(螺湮城教本)について知りました

【丹美寧斗@T-1000/ターミネーター2】
[状態]:健康
[装備]:レミントン・デリンジャー(2/2)、デリンジャーの弾丸×12発
[道具]:基本支給品一式、アイスピック
[思考・行動]
基本方針:優勝し、能力を持ち帰って殺人を楽しむ
1:翼くんを慰めなきゃならないのか……
2:素性と本心を隠しつつ、島原や他の対主催参加者を利用する
3:対主催集団に紛れ込み、利用してライバルを減らしつつ、最終的には疲弊したところを全滅させる
4:他の参加者には自分が子供であると思わせ、能力も体色が変化するだけのものと思わせて本性と能力を悟らせない
5:仮に自分の正体や能力がバレた時は、対象者を暗殺する
6:いなくなって精々するぜ、あの2人は
[備考]
※肉体がT-1000と同じものになっていると気づきました。
※腹部にデリンジャーと弾丸を隠しています。
※液体化しても首輪は外れません。(上から液体金属で防御したり隠したりすることは可能)
※参加者に授与された異能は全て相手にダメージを与えるものだと考えています。
※鏑木シリカの異能の一部(螺湮城教本)について知りました


630 : 対ちょっぴり怖い資産家 ◆7PJBZrstcc :2017/05/25(木) 19:11:33 2P5KtyNU0





 井戸の家を出てすぐ、トーマスとシリカの2人は歩いていた。

「良かったんですか、出て行って?」
「構わんよ、彼は私の食人を絶対肯定しないだろうからな」

 人喰いを肯定する人はどう考えても殺し合いに乗りそう、シリカはそうツッコミを入れたかった。

「それに、あのミスタ丹美は思ったより曲者かもしれないからね」
「曲者、ですか?」

 言葉の意味が分からずシリカはオウム返しに問うてしまう。

「ああ、恐らくだが彼は異能で姿を変えた成人男性だ」
「……どうして、そう思うんですか?」

 シリカには分からない。
 シリカには、彼はただの子供にしか見えなかった。

「まず第一に、彼は冷静過ぎた。
 血まみれの少女がいきなり出てきたら、もっと慌てふためいてもいいだろう?」
「それは、そうですね……」
「第二に、彼はこちらを追い出そうとしていた。
 紙を探すのを引き受けたり、引き留めようとしたミスタ島原を静観したりとね」
「成程……」

 言われたことにとりあえず納得の意を示すシリカ。
 しかし疑問は残る。

「じゃあ、何で島原さんに言わなかったんですか? 何か忠告くらい……」
「証拠が何一つないからさ。
 その状況で何を言っても彼は聞きはしないだろうし、下手をすれば彼が殺されかねない」

 その言葉に理解はできるものの、納得のできないシリカ。

「君の気持ちは分かる。だが私にも君にもやりたいことがあるのだから、あまりそればかりに目を向けるな」
「はい……」

 こうして2人は進んでいく。
 殺し合いの打破を、そして人生初の食人を目指して。

「島原さん……」

 少女の心にしこりを残して。


【一日目・2時00分/E-4・井戸の家付近】

【トーマス・ベイカー@バクバクの実/ワンピース】
[状態]:健康
[装備]:グイード・ミスタの銃(6/6)@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0〜2(確認済み、着替えになりそうなもの、剣無し)
[思考・行動]
基本方針:ナオ=ヒューマを倒し殺し合いから脱出する
1:殺し合いに乗った人間は殺し、食す
2:ミスタ丹美は怪しい
3:今時珍しい若者だな、ミスタ島原は
[備考]
※自身の異能を『何でも食べる事が出来る能力』と認識していますが、それだけではないと考えています。
ただし、確信はしておらず食べる以外の能力は分かっていません。
※鏑木シリカの異能の一部(螺湮城教本)について知りました
※丹美寧斗は異能で子供に成りすましている成人男性だと推測しました
※これからどの方向に向かうのかは、次の書き手にお任せします

【鏑木シリカ@キャスター(ジル・ド・レェ)の宝具・スキル/Fate/】
[状態]:健康
[装備]:セイバーのスーツ@Fate/Zero、螺湮城教本@Fate/
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0〜1(確認済み、着替えになりそうなものは無し)、トーマス・ベイカーの誓約書
[思考・行動]
基本方針:死にたくない。生きて幸せになりたい
1:この人(トーマス・ベイカー)に付いていく。
2:あんまり使いたくないな、私の異能……
3:島原さんは今までの人生で一番いい人かもしれないから、死んでほしくない
[備考]
※自身の異能の一部(螺湮城教本)について把握しました
※螺湮城教本を読んで正気度が喪失するかは次の書き手にお任せします
※丹美寧斗は異能で子供に成りすましている成人男性だと推測しました
※これからどの方向に向かうのかは、次の書き手にお任せします


【支給品紹介】

【セイバーのスーツ@Fate/Zero】
霊体化出来ないセイバーの為にアイリスフィールが選んだ服。
黒のワイシャツに黒のジャケット。更には黒のズボンに黒の手袋、黒のネクタイというダークスーツ。

【グイード・ミスタの銃@ジョジョの奇妙な冒険】
第五部、黄金の風に登場した銃。
ミスタが愛用している銃で、短銃身の六連発リボルバー。

【和道一文字@ワンピース】
ゾロが最初期から所持している刀。
元々はゾロの幼馴染くいなが所持していた物。
買おうとするなら1000万ベリーは下らない名刀である。


631 : ◆7PJBZrstcc :2017/05/25(木) 19:12:04 2P5KtyNU0
投下終了です


632 : 名無しさん :2017/05/25(木) 20:09:30 oijFGwGQ0
投下乙です
同盟ならずか…組んでても寧斗関係で破綻しそうだけども


633 : 名無しさん :2017/05/26(金) 20:10:27 Tvo8TNNc0
投下乙です
トーマス氏は願望はサイコだけど紳士でクレバーなところが良いキャラにしてますね
食人願望はともかく、メタ的にはトーマスのマーダーは殺す方針がロワ的に最善なのもなんとも言えない……
そして証拠はないとは言え、薄々成人とバレてる寧斗ェ……


634 : ◆7PJBZrstcc :2017/07/05(水) 16:01:22 2KWlN.zg0
投下します


635 : ◆7PJBZrstcc :2017/07/05(水) 16:02:00 2KWlN.zg0


 この殺し合いで現状唯一の女子高生コンビ、早川千夏と石黒千晶の2人はG-9にある診療所を目指して歩いていた。
 出発地点の分校から診療所までは500m程、本来なら数分もあれば辿り着く距離である。
 しかし、深夜という時間帯により星と月明かりしかないこと、殺し合いという現状から彼女たちは普段よりはるかに遅いスピードでの移動になった。
 それでも何事も無く到着した結果、時計は1時5分を示していた。
 この話は、そこから始まる。


636 : ◆7PJBZrstcc :2017/07/05(水) 16:02:39 2KWlN.zg0



「あー、やっと着いた」

 周りを警戒しながら歩き続けて20分。ようやく目的地である診療所に着いた千夏は思わず呟く。
 しょうがないと理解していても、暗闇の中を警戒しながら歩くことは疲れる。
 それを思えばボヤキの一つくらいは許されてしかるべきだ、千夏は思う。

「では早速カフェインの回収に向かいましょうか」

 そんな千夏の思いを千晶が分かるはずも無く、千晶はテキパキとした行動を促す。
 元々自分のわがままに近い言い分でここに来てもらった身として、千夏はそれに逆らわず従う。
 しかし千夏が診療所のドアに手を掛けた瞬間、

「待って下さい」

 千晶が静止を掛ける。
 千夏が「どうかしましたか?」と聞くと、千晶は診療所のドアノブの下に指を指す。
 そこには、靴底の跡が残っていた。

「これって……」
「どうやらここには乱暴な参加者がいるようですね。
 私が先行しますので、早川さんは手榴弾を用意して着いてきてください」
「は、はい……」

 その言葉のままに千夏は能力で仕舞っていた手榴弾を一つ取り出し、いつでも使えるように構える。
 それを見た千晶は銃を構え、背をドアに付け突入のタイミングを計る。その様はまるでハリウッド映画だ。
 そして千晶が突入し、銃を向けるもそこには誰もおらず、千晶は千夏を手招きで呼ぶ。

「待合室に人の姿はありません。おそらく診療室かどこかの部屋にいると思われます。
 ですので、早川さんはさっきと同じように後ろで待機していてください」
「はい」

 今度は診療室のドアに背を付け、さっきと同じように千晶が突入する。
 そこで見たものは

「うわあああああああああああ!!」

 銃を持った千晶を見て驚き、床にへたり込む少年と

「えっと、ごめん。今漫画読んでるから後にしてくれる?」

 銃を持った千晶を見ても平然とし、漫画を読んでいる青年だった。
 千晶は構えている銃をそのまま青年に向け、問いかける。

「この状況で呑気に読書とは……。貴方は何を考えているのですか?」
「別に何も考えてないよ。
 君が僕を殺さないならよし、殺されても別にいい。だから僕が何かを考える理由がない」
「貴方は一体何を……!」

 青年の投げやりな態度に、千晶の声に怒気が混じり始め、銃を握る手に力が籠っていく。
 それを見ていた千夏は慌てて千晶を抑える。
 基本面倒臭がりで積極的に動くタイプの人間ではない千夏だが、流石に目の前で銃を撃ちそうになっている人間を見て止めない程薄情ではない。

「ま、まあまあ千晶さん。落ち着いてください!」
「しかし……!」
「とりあえず、あなたは殺し合いには乗っていませんね!?」

 千晶の声を無視し、千夏は青年に話しかける。
 青年はとくに様子を変えることも無く飄々と答えた。

「あー、うん、大丈夫、ってことになるのかな……。
 まあ一応、僕もそっちでへたり込んでる蘭堂君も乗ってないから」
「そうですか、じゃあ情報交換でもしませんか!? 聞きたいこともありますし!」
「別にいいけど、君随分テンション高いね。生理?」
「違います!」

 アンタのせいだよ叫んでるのは! と千夏は心の中で叫んだ。


637 : ◆7PJBZrstcc :2017/07/05(水) 16:03:08 2KWlN.zg0





 蘭堂虎竜太からすればそれは、あまりにも突然の展開だった。
 支給品が全部本で武器も無く、身体能力がある訳でもない。
 更に言うなら自分に与えられた異能が何なのかすら分かっていない。
 こんな三重苦を背負ってヤケになっていた虎竜太は、診療所で支給されて本を読んでいた。
 そしたら読み始めて10分も経たないうちに、いきなり銃を持った女子が突入してきた。
 それに驚いて腰を抜かしている間に、なぜか情報交換をする流れになっていた。
 別にそれはいい。
 銃を持っているのも他の参加者を警戒してのことだというのは分かるし、乗っていないなら情報交換の一つでもしようと思うのは当然だ。
 だがそれはそれとして

「何で俺、石黒にあんなに睨まれてんの? 俺なんかした?」

 とりあえず全員が簡単な自己紹介を済ませた後、虎竜太は総一郎に小声で問う。
 虎竜太は、何故か自己紹介する前から千晶に睨まれていたのだ。
 まあそれは、総一郎も同じだった。

「いや、それをいうなら僕もなんか睨まれてるけど」
「お前が睨まれてる原因は明白じゃねーか!」

 どう考えてもあの態度が原因だろ、と虎竜太は突っ込む。
 それはそうだけど、と総一郎が返事をし、じゃあ原因は何だと考えて言葉に出す。

「あれじゃない? 君の改造学ランがダサイからイライラしてるんじゃない?」
「何で殺し合いの真っ直中でファッションチェック受けなきゃいけねーんだよ!?
 つーかあいつ学校制服を見たことないレベルでキチっと着こんでるぞ! ファッションのファの字も感じないぞ俺!?」
「いやああいうのがうけるのかもしれないよ、仕事場では」
「援交でもやってんのかあいつ!?」
「本当はもっと、露出度の高いネグリジェが着たいのに……」
「バジャマだろうが! それで外出る奴にファッション語られたくねーよ!!」

 小声で言い争う2人。その様子はまるで漫才の様だ。
 しかし千晶はその流れを容赦なく断ち切る。

「訪ねたいことがあります」
「何かな?」
「この診療所に、給湯室かカフェインの錠剤はありますか?」
「…あったっけ蘭堂君?」

 千晶の問いに首をひねり、虎竜太のほうを見る総一郎。
 虎竜太はすぐに答えた。

「給湯室は隣だぞ」
「分かりました。では早川さんは」
「コーヒー飲んできますね」

 千晶の言葉で千夏がコーヒーを入れに行こうとする。
 しかし、そこで総一郎が呼び止めた。

「何ですか?」
「コーヒー入れるんだったら僕の分も頼んでいい?」
「あ、俺の分も頼むわ」
「ブラックお願いね」
「俺もだ」
「まあ、いいですよ……」


638 : ◆7PJBZrstcc :2017/07/05(水) 16:03:43 2KWlN.zg0

 総一郎と虎竜太のオーダーを聞いて、千夏は診療室を去って行った。
 そして千夏が診療室のドアを閉じたと同時に、千晶は虎竜太に近づいていく。
 虎竜太がその行動を訝しく思っていると、千晶は虎竜太の金に染まっている部分の髪の毛を掴んだ。

「いたたたたたた! いきなり何しやがるテメエ!!」

 その行為に当然の抵抗し、千晶の手を振り払う虎竜太。
 振り払われた千晶は不満気な表情を隠さないまま話しかけてくる。

「2つ目の質問です」
「人を痛めつけながら尋ねるっていうのは、質問じゃなくて尋問って言うんじゃない?」
「蘭堂さんの髪の毛が一部金色ですが、それは地毛でしょうか?」

 総一郎の茶々入れを無視して千晶が質問してきた内容に、虎竜太は戸惑う。
 何で殺し合いの最中で髪の毛について尋ねられなければならないのか。
 意味が分からないものの、嘘をつく理由が無いので虎竜太は正直に答えた。

「あぁ? 地毛な訳ねーだろ、染めてんだよ!」
「そうですか……」

 虎竜太の答えを聞き、千晶は返答した後迷い無く銃口を虎竜太に向けた。
 それを見て虎竜太は怯える。

「な、何の真似だよ!?」
「君の染め方がダサイから……」
「まさかのマジファッションチェック!?」
「ファッションチェックではありません」

 総一郎と虎竜太の惚けた言動を訂正する千晶。
 その言動に、眼光に迷いは無く、その行動に狂いは無い。

「あれは『人殺しの目』だ。
 石黒さんは全てを捨てる気だ……、その人間性までも……」
「髪の染め方だけでそこまで殺意持たれる意味がわかんねーよ!」
「何か誤解があるのですが、私は蘭堂さんを殺す気はありません」

 千晶の言葉に思わず呆けた反応をしてしまう2人。
 それでも虎竜太はすぐに調子を取り戻し、必死になって尋ねる。

「じゃあ俺をどうする気だ!?」
「私はどうにも、貴方の風紀を乱す行動が我慢できない。それだけです」
「だったらなんだよ……」
「本来ならあなたの髪の金髪部分を染め直させるのが常道でしょうが、今は出来ませんからね。
 なので……」

 虎竜太は恐ろしかった。
 目の前に居る石黒千晶という女が恐ろしかった。
 何を考えているかが分からない、次に何をしてくるかが分からない。
 人生の中で出会った事の無いタイプの人間である千晶が、未知が虎竜太には恐ろしかった。
 だから虎竜太が後ろに下がっていくのは無意識に近く、更に言うなら壁に手を突いたのは無意識だった。
 しかし次の瞬間

「な!? これって……」

 壁にいきなり線が走り、そしてドアとなって開いた。
 その理由を虎竜太は瞬時に理解する。

「確か、ワンピに出てきたドアドアの実……!」

 その事を理解した虎竜太は迷うことなくドアに飛び込み外に出る。
 出てすぐに千晶が同じくドアを潜ろうとするのを見てに閉め、虎竜太はあてもなく走り出した。
 そして走りながら虎竜太はある考えに至る。

「俺は弱いし、支給品も本だし、さらに異能まで戦闘向きじゃない……。
 これ俺詰んでね?」

 その呟きに、答えが返ってくることは無い。


639 : ◆7PJBZrstcc :2017/07/05(水) 16:04:18 2KWlN.zg0





 早川千夏が4人分のコーヒーを入れて診療室に戻る。
 そこには苛立ちを隠さず居る千晶と、相変わらず漫画を読んでいる総一郎の姿があった。
 ちなみに、千夏が千晶の分までコーヒーを入れたのは、流石に自分含む3人が飲んでる横で一人待ちぼうけにするのはどうかと思った千夏の善意である。

「あれ、蘭堂君は?」

 いなくなった虎竜太について聞く千夏。
 それに総一郎が答える。

「ああ、石黒さんが蘭堂君を殺しかけてね。
 蘭堂君は必死になって命からがら逃げだしたのさ」
「え?」

 あまりにもさらりと言われ、思わず呆ける千夏。
 しかしそれも一瞬、千夏はすぐに千晶に向き直り問い詰める。

「……えっと」
「誤解です。私は蘭堂さんを殺そうとはしていません」
「銃持って物凄い目で睨んでたけどね」

 その言葉を聞いた千晶は余計な補足をしてくれた、とばかりに総一郎を睨む。
 とはいえ事実は事実なので黙って受け入れ、千夏への弁明を再開した。

「確かに私は苛立ちで銃を持ったまま凄んでしまい、蘭堂さんはそれに怯えて逃げました。
 しかし私は蘭堂さんを殺そうとしたのではなく、ただ……」
「ただ?」
「金髪の部分の髪を引きちぎろうとしただけです」
「それは逃げる」
「それは逃げます」

 千晶の行動の意図を聞き、思わず答えが被る総一郎と千夏。
 その返答に千晶は驚く。

「何故です!?
 彼の振る舞いや言動、それに外見は風紀を乱しています! 私はそれを正そうとしただけです!!」
「そんな理由で銃持って恐怖政治敷かれちゃたまったもんじゃないね。
 基本的人権をもうちょっと尊重すべきじゃない?」
「沢田さん、貴方は本当に……!」

 これ以上話してたら、千晶さんは本当に沢田さんを殺すんじゃないか。
 そう思った千夏は流石にそろそろ止めに入ろう、と思った所で

「おっと、それ以上争うなら俺が仲裁させてもらう」

 新たな登場人物が、この診療所に舞い込んできた。


640 : ◆7PJBZrstcc :2017/07/05(水) 16:04:44 2KWlN.zg0





 消防士、分目青司が燃え盛るミカン畑から診療所を目指そうと思った理由は、これからの事を考えてだった。
 『俺が』殺し合いを打破するためには、当然だが自分が生きていなければならない。
 幸いさっきは大したダメージは負わなかったが、こんな極限の状況下ならいつ致命的な傷を負うか分からない。
 その時の為に治療用の道具を持っておくのも悪くは無い。

 そんな事を考えながら歩いていると、特に障害も無く診療所に到着。
 青司が早速中に入ろうとすると、中から話し声が聞こえた。
 そこで中の参加者の会話を聞こうと、物音を立てないように入り会話が聞こえる位置まで行く。
 聞こえてくる会話から、中に居る参加者は殺し合いに乗っていないものの揉めていることを理解した青司は人死が出る前に仲裁に入ろうと決断する。
 勿論、本当に死人が出てからでも悪くは無いのだが、タイミングが良すぎれば正義の消防士とみられなくなるかもしれない。
 一方、人死が出る前ならタイミングが多少作為的でも警戒心が強い慎重な人という評価で済む。

「おっと、それ以上争うなら俺が仲裁させてもらう」

 そこまで考えて仲裁に入った青司を、中に居た女子高生2人と同い年位の青年が見てくる。
 明らかに警戒されているが、それを解きほぐすのは周囲から高い評価を得、善人の仮面をかぶり続けている青司からすれば容易い。

「俺は分目青司、消防士をしている。勿論殺し合いには乗っていない」

 その証拠だと言わんばかりに青司はデイバッグを3人の近くに投げ、両手を上げて武器を持っていないことをアピールする。
 異能という物がある以上、完全な武装解除にはつながらないかもしれないがしないよりはマシだろう。
 事実、3人はそんな青司を見て警戒を解き始めていた。

「それで、その2人はどうして言い争っていたんだ?」
「その2人じゃなくて、僕は沢田総一郎。そっちの制服をきちんと着ている子は石黒千晶。
 そして僕としては言い争っているつもりはないよ、僕は彼女の言動に対し思ったことを言っただけだ」
「あなたの言動は奔放すぎます! 皆が貴方の考えをするのでは社会は成り立ちません!」
「出来ればどういう流れでそんな話になっているのかを聞きたいんだけど……」
「あ、それはウチが話します」

 その場に居た3人目は早川千夏と名乗り、この状況に至った経緯を話し始めた。
 一時期この場に居なかったため、伝聞の部分もあると明言されて始まった話に青司は嘘偽りなく驚愕する。

 ヤバいんじゃないか、あの女。
 石黒千晶がここにさっきまでいた蘭堂虎竜太という男子高校生の髪染めを注意しようとした。
 青司からすればその行動は普段ならともかく、この状況では空気の読めていない愚かな行いにしか見えない。
 それを口に出すだけでも悪感情は溜まるだろうし、殺し合いの場では何が変わる訳でもない。
 更に銃を持った状態で凄まれたら逃げようと考えるのは普通だ、それを悪評としてばらまかれたら自分が殺し合いに乗っていると思われる可能性を考えないのだろうか。

「邪魔だな、こいつ……」

 青司は小さく口の中で呟く。
 分目青司は石黒千晶を、最悪始末すべきだと考えるだけの邪魔者だと判断した。
 よほどのことが無い限り正義の消防士として動く以上、殺すことは無いだろうがもし最悪が起こればいつでも始末するつもりで行く。
 青司はそう決断した。


641 : ◆7PJBZrstcc :2017/07/05(水) 16:05:23 2KWlN.zg0

「まあそれはそれとして」

 未だ険悪、というより石黒千晶の沢田総一郎への敵視を何とかしよう。
 そう思い、青司は千晶に話しかける。

「石黒さん」
「何でしょうか」
「君の言い分は早川さんから聞かせてもらった。その上で僕の意見をはっきり言わせてもらおう」

 一体何を言うのか、と疑問が顔にありありと出ている千晶を前に、青司はこう言った。

「君はTPOを弁えた方がいい」
「環太平洋戦略的経済連携協定?」
「それはTPPだ」

 総一郎の茶々を流しつつ、青司は千晶を見る。
 一方、千晶は何を言われたのか分からないと言わんばかりの表情で茫然としている。

「君の言い分は真っ当な日常なら正しいし、行いは褒められてしかるべきだろう。
 だが今は駄目だ。この状況でそんな事をしても意味は無いんだ」
「意味が、無い……!?」

 心底驚愕したとばかりに驚く千晶。
 そんな彼女を尻目に青司は言葉を続ける。

「君は正しい。だが正しいだけではどうにもならないことを君は学ばなければならない。
 妥協し、折れ曲がり、時に間違える。人間はそうして成長していくんだ。完璧で人の言い分だけ聞く人形になっちゃ駄目だ」
「……!」

 心底悔しそうな表情を浮かべ、青司を睨む千晶。
 その行為にどれだけの意味があるか、青司には分からない。
 分からないが、とりあえずスルーしながら青司はこんなことを思っている。
 楽しい、他者に正論を叩きつけて説教するのは楽しい、と。

 そんな後ろ暗い思いは毛ほども見せず、話は終わったとばかりに診療室を漁る青司。
 そして包帯や薬を取り出し、自身のデイバッグに入れていく。
 やがて量はこんなものだろうと納得し、入れるのをやめると3人に向かって尋ねる。

「それで、これから君達3人はどうするつもりなんだ? 何かアテはあるのか?」

 青司が尋ねたのはこれからの行動方針だった。
 それについては明確なビジョンを持つ千晶が即答する。
 千夏の異能の事、それを利用するためJ-10の資源プラントへ向かう事。
 それらを千夏に説明した時と同じく、企画会議のプレゼンテーションの様に説明していく。
 その説明に青司は感心し、ある提案をする。

「そう言うことなら、俺も同行しても構わないだろうか?」
「……私は構いませんが、早川さんはいかかですか?」
「ウチもオッケーです」

 青司の同行の願いに、千晶は不承不承、千夏は即答で了承の返事を出す。
 それを聞いた青司は了承に喜ぶと、返事をしていない総一郎に目を向ける。


642 : ◆7PJBZrstcc :2017/07/05(水) 16:05:50 2KWlN.zg0

「あ、僕は同行しないよ。病人なんで大人しくベッドで寝てます」
「病人?」

 総一郎の病人発言に首をかしげる青司。
 彼の目には、総一郎は少し体調が悪そうな人くらいにしか見えない。

「そんな目をされても、僕が10年病院で過ごす病弱人間であるのは事実なんで。
 まあ、殺し合いの会場に来てからはなんか調子がいいけど。案外異能のおかげだったりして」

 ハッハッハッ、と高笑いする総一郎を見てどう反応すればいいか分からない青司。
 とりあえず、本人がそう言うならそれでいいかと無理矢理納得した。

「では早速出発しましょうか」
「おっと、その前に大事なことを忘れていた。殺し合いに乗っている参加者についてだ」

 出ばなをくじかれた千晶は多少ペースを乱されながらも、青司の話に耳を傾ける。
 青司は、ミカン畑で遭遇した少女の外見と能力を伝える。
 その話を聞いて、一番最初に反応したのは総一郎だった。

「柔らかくする、ねえ……。
 何だかピンとこないな、蘭堂君の異能位分かりやすければいいのに」
「俺に言われても困る」
「だよね」

 その会話を最期に青司は立ち上がり、千晶と千夏もそれに続く。
 そして診療所を出ていき、歩き出した。
 目指すはJ-10資源プラント。
 そこに至るまでに何が起こるのか、それを知る者は誰も居ない。


【一日目・2時00分/G-9・診療所付近】

【早川千夏@工兵/放課後アサルト×ガールズ】
[状態]:健康、工兵変身状態、
[装備]:工兵服(シールドフル状態)
[道具]:{支給品一式×2(-懐中電灯)、M67手榴弾×15、『戦場での立ち回り本セット(本4冊)』、不明支給品1(確認済み)、デイパック×1、机と椅子×42}分のリソース
[思考・行動]
基本方針:千晶と行動し、生き残る。
1:千晶さんに付いていけばなんとかなる、よね……?
2:分目さんはまともそう
3:舞に合ったら一発シメてやる。
[備考]
※石黒千晶と情報交換しました。
※自分の能力と石黒千晶の(大まかな)能力を把握しました。
※萩原舞が参加していることは薄々予想しています。
※机と椅子は木と鉄パイプで出来た普遍的なものです。原作バトルロワイヤルの生徒数分の用意がありました。
※鈴宮ミカの外見と能力を知りました(名前と指紋の結界は知りません)

【石黒千晶@『直観』/HEROS】
[状態]:健康、苛立ち
[装備]:グロック18自動拳銃(フルオートモード)、懐中電灯
[道具]:本一冊(『歴史から学ぶ戦争学〜この先生きのこるには〜』)
[思考・行動]
基本方針:生き残る。
1:資源開拓プラントへ向かう。
2:協力者を増やす。
[備考]
※早川千夏と情報交換しました。
※自分の(大まかな)能力と早川千夏の能力を把握しました。
※蘭堂虎竜太の異能を目撃しました
※鈴宮ミカの外見と能力を知りました(名前と指紋の結界は知りません)

【分目青司@キリエル人の力@ウルトラマンティガ】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1〜3、包帯、薬
[思考・行動]
基本方針:殺し合いを「俺が」打破して名声を得る、もしくは願いを叶える力を奪う
1:一先ず、石黒と早川に同行する
2:他の参加者を保護する
3:殺し合いに乗っている者は可能なら殺す
4:特に火傷の女(鈴宮ミカ)は特に注意する
5:石黒はいつでも始末するつもりでいる
[備考]
※自分の異能がキリエル人の力であると知りました
 ウルトラマンティガ放送時の記憶が曖昧なので今のところ使うことができると思っている能力はキリエロイドへの変身と獄炎弾のみです
※鈴宮ミカの能力を生物を柔らかくする能力だと知りました(指紋による結界はまだ見ていません)
※早川千夏の異能を把握しました
※診療所で手に入れた包帯、薬の量や種類は次の書き手氏にお任せします


643 : ◆7PJBZrstcc :2017/07/05(水) 16:06:37 2KWlN.zg0





 青司、千晶、千夏の3人が診療所から出て行ったと同時に壁に線が走り、そこがドアとなり開く。
 そして現れたのは蘭堂虎竜太だった。
 彼は、診療所から離れていたがしばらくするとこっそり戻ってきたのだ。

「おかえり」
「ただいま」

 そんな虎竜太を総一郎はなんでも無いかのように出迎える。
 虎竜太は千晶たちが来る前と同じように丸椅子に座り、実はずっと持っていた本を再び開く。
 そして読みながら虎竜太は総一郎に思わず問いかける。

「なあ、正直さ、俺って詰んでないか?」
「武器も身体能力も無くて、異能も攻撃向きじゃないから?」
「ああ」

 その言葉に総一郎は考えるそぶりを見せつつ、こう返した。

「いやでも弱そうな能力がカギを握るって、わりとあるじゃん。ワンピースとか」
「……ドアドアの実ってそんな印象ねーんだけど。エアドア位しか覚えてねーぞ俺」
「じゃあもうエアドアで自分以外全員死ぬまで引きこもってたら?」
「俺がナオ・ヒューマなら、そんな興ざめする結末は絶対させないだろうな」
「僕も実はそう思う」

 どーすっかなー、本当になー、そんな事をぼやく虎竜太。
 それを尻目に総一郎は呑気にこんなことを言っていた。

「よし、2巻読み終わったし3巻行こうっと」
「お前ずっと読んでたのかよ!?」


【一日目・2時00分/G-9・診療所】

【蘭堂虎竜太@ドアドアの実/ONE PIECE】
[状態]:健康、恐怖
[装備]:グッドルーザー球磨川上巻
[道具]:基本支給品一式
[思考・行動]
基本方針:死にたくないけど、どうしたらいいか分からない
1:とりあえずこれ(グッドルーザー球磨川)読むか
2:エアドアは試すべきかどうするか……
3:石黒にはもう会いたくない
4:俺詰んでね?
[備考]
※自身の異能を把握しました

【沢田総一郎@範馬の血/刃牙シリーズ】
[状態]:普段より調子が良い
[装備]:漫画版Fate/stay night3巻
[道具]:基本支給品一式、不明支給品1〜3
[思考・行動]
基本方針:死にたくないけど、どうしようもない
1:せっかくだし、この本(漫画版Fate Stay night)を読む
2:普段より体の調子が良いのは異能のおかげ?
3:柔らかくする能力、ピンとこないな
[備考]
※体の調子が普段より良い理由を、異能のおかげとは考えるようになりました。
ただし半信半疑です
※蘭堂虎竜太の異能を把握しました
※早川千夏の異能を把握しました
※鈴宮ミカの外見と能力を知りました(名前と指紋の結界は知りません)
※漫画版Fate/stay night1〜2巻まで読み終えました


漫画版Fate/stay night1〜2巻は診療所内部に置いています。


644 : ◆7PJBZrstcc :2017/07/05(水) 16:07:24 2KWlN.zg0
投下終了します。
タイトルは「秩序・狂と混沌たち」です


645 : 名無しさん :2017/07/05(水) 20:36:42 5UWRBq0.0
大雨特別警報
num.to/814977904859


646 : ◆YlfcDuGY1. :2017/07/05(水) 22:07:34 vkyCvStg0
7P氏投下乙です
いちおう全員対主催なのに不穏な爆弾を抱えた集団ができてしまった……分目と千晶に関しては将来的に嫌な予感がする
そして良い意味で小物臭い蘭堂くんと天然の沢田くんは癒し


647 : ◆YlfcDuGY1. :2017/08/25(金) 00:28:50 oGSWmjnI0
予約のブッチャーマン、郷音ツボミ、河野英雄を投下します


648 : ブラックアイドル地獄変 ◆YlfcDuGY1. :2017/08/25(金) 00:32:11 oGSWmjnI0
この殺し合いにおいて二度目の殺害を行ったブッチャーマン。
(KENGOは異能の力で蘇生したことを彼は知らないが)
異能の力を借りて青年と少女による二人組の内、少女(の肉体を持つ潮)の方を殺害し、逃げた青年(ゆたか)を負うか思考していたが、少し考えた結果、男は追わないことを選択した。

追わないと自分の所在や異能が他の参加者に伝わるかもしれないが、まだ自分はヒューマによって与えられた異能になれておらず、深追いして自分を殺せる異能を持つ人間に殺される危険がある。
流石のブッチャーマンと言えど猫科動物ほど闇夜で目が利くわけではないので、思わぬ闇討ちを受ける危険がある。
正面からの殺し合いならまだしも、奇襲を仕掛けられることだけはどうしても避けたい。
それよりは人が集まりそうな集落を探索し、見知らぬこの地の土地勘を備え、隠れる場所や罠を張れるポイントを覚えた方が良い。
あの青年が仲間を連れてきたら、逆に待ち伏せと罠で餌食にし、集落方面に逃げなかったことを後悔させてやるべきだろう。

それに少女と青年は何やら自分や自分たちの異能を知っている素振りを見せていた。
しかし、青年と喋る杖は闘争ではなく逃走を選んだ。
この逃走は奴らの異能では自分の異能(触手)を打ち破れないことを知っているということの証左ではないか?
後で殺せるかもしれない相手と思えばますます後回しで良い気がしてくる。
まだ殺し合いは始まったばかりだというのに、深追いで不用意に消耗したくはない。
あの男が自分の知らない内に他の参加者に殺されて肉が手に入らなくなるのは勿体無いし気がかりだったが、食に困らない生活を手に入れる大望のために目先の肉と欲望は我慢するべし。
それがブッチャーマンの答えであった。

食人に狂ってはいるが、この冷静さこそが彼が都市伝説として警察に見つけられない所以であった。



画してブッチャーマンは集落を目指すことに決めたが、その前に自分が主催者に与えられた異能の練習をする。
せっかく与えられた武器なので存分に扱えるよう練習するに越したことはないだろう。

さっそくブッチャーマンは先刻少女を殺した時に使用した液状の筋肉……赫子・鱗赫を出す。
出し方は非常に簡単で、出ろと頭の中で念じたら腰の皮膚をぶち破って(不思議と痛みもなく、赫子による傷も直ぐに治る)ぶわりと触手が顔を出した。
Rc細胞でできた武器である赫子の出し方がわかったことで、足元に転がっているゆたかの遺体でさっそく練習する。
触手で首が折れて糸の切れたマリオネットになった少女の遺体に対して、四肢の骨や肉をボキボキブチブチと砕き潰していく。

……なるほど。
初めて使う異能だからということもあるために手先ほどの精密さは期待できないが、それでも捕まえたり潰したりする力はある。
少なくともろくに鍛えていない一般人なら殺すのは容易い。

ただ不満があるとしたら得物の長さに限界があるというべきか、一定以上はどうしても伸びない。
これだと自分より足の速い参加者には逃げられ、銃のような飛び道具には対抗できない。
そういった奴らに対抗するためにももう少しぐらい長くならないものか……

そう、ブッチャーマンが願った時、そのちょっとした願いを神は叶えたのか?

鱗赫が腰に引っ込んだかと思えば、今度は尾てい骨の辺りから蠍の尾のような触手が現れ、槍のように少女の死体の腹を穿った。
更に死体から尾を引き抜いたブッチャーマンは明らかに鱗赫よりは長いソレを使ってやや離れた位置の木を刺す。
射程が一気に伸びた武器の存在を知り、ブッチャーマンは確かにマスクの下で笑みを浮かべていた。

この蠍のような長い尾の正体は尾赫というものである。
鱗赫よりは攻撃性や再生力に劣る引き換えに強度や射程、汎用性が高いのだ。


649 : ブラックアイドル地獄変 ◆YlfcDuGY1. :2017/08/25(金) 00:33:08 oGSWmjnI0


ちなみに彼の能力の元である東京喰種に登場する亜人である喰種(グール)は、羽赫、甲赫、鱗赫、尾赫といった赫子を基本的に一人につき一種類しか持てず、その例外のグールですら「二種持ち」までしか登場していない。
しかしパラレル作品であるゲーム「JAIL」の主人公は四種類の赫子を使用することができ、ナオ=ヒューマは一種ではつまらないと思ったのか、この主人公のようにブッチャーマンに四種全てを扱える赫包を肉体改造の際に宛てがったようだ。
そんなことはテレビを見ず、漫画を読まず、ゲームもやらないので「東京喰種」という作品を知らない社会のはぐれものであるブッチャーマンは知る由もないが、未だ隠された能力である羽赫、甲赫の存在を直感的に悟っている。
残念ながら「スイッチの入れ方」がわからない能力……盾になるほど硬い装甲やガス状の翼などが想像できなかったため、この練習ではそれ以上の能力を引き出せることはできなかった。
だが短い練習時間で尾赫存在を知り、赫子の動かし方のコツを覚えて武器として利用できるようになったことは、ブッチャーマンにとってはプラスであろう。

喰人鬼の練習台にされて顔面を残してグチャグチャになった少女の遺体。
ブッチャーマンはその遺体から無事な臓器である肝臓を取り出し、喰らって元々薄汚れている服とマスクを更に血で濡らす。
赫子を使うことによってRc細胞を使ったせいで、妙に腹が減っている。
ブッチャーマンは周囲に誰もいないことを確認して、マスクの口の部分だけ開けて少し癖のある肝臓を咀嚼する。
若くピチピチし、おそらく栄養バランスの取れた旨い物を食べてきたであろう臓器は非常に美味しかった。
また、今の彼は人間ではなく、人間を主食にする喰種であるため、なおさら人肉は旨く感じたのだった。

人肉の旨さ故にこのまま食事に耽っていたい気もするが、食事をしている内に他の参加者に襲われる危険もあったので肝臓一つまでで我慢をした。
腹八分で食事を打ち切り、ブッチャーマンはゆたかのディパックを他の参加者に見つけられないように遺体から離れた場所に埋めた後にD-10を後にする。

――食事に一生困らないパラダイスへ向かうために、次なる獲物を求めて喰種はマスクの下で赤い瞳を輝かせる。



 ◆

観光協会施設内。
行動を共にすることになったツボミと英雄は、夜が明けるまで施設の内部に篭ることになった。
土地勘のない場所で夜道を出歩くのは危険であるし、闇討ちの危険もあるからだ。
それに四方を壁で囲まれた建物の中にいれば、狙撃される心配もあまりないだろう。
夜が明けて太陽が昇り、視界が確保される時間になるまでは下手に出歩くべきではないというのが二人の中で一致した。
朝になったら周囲の状況を見て施設に籠城し続けるか、移動をするかを決めた方が無難であろうと二人で決めたのだった。


「――とにかく行動するのは朝まで待ちましょうってことですね」
「ああ、そうですね」

施設の内部で怯えていたツボミは河野に会ってしばらく経つと、安心したのか精神的に持ち直し、テレビでよく見せるエクボを英雄に向けていた。
そんなツボミの様子を殺し合いに乗っていない大人がいたことで、緊張がほぐれたのだろうと英雄は判断する。
……実際に怯えていたのはツボミの演技なのであるが、英雄には知る由もなかった。
ツボミの演技力が秀でていることもあるし、まさかこんな場所で生き別れの娘とバッタリ出くわすとは思わなかったので、ヒモである英雄の女の嘘を見抜く勘が鈍くなっていたこともある。


650 : ブラックアイドル地獄変 ◆YlfcDuGY1. :2017/08/25(金) 00:33:41 oGSWmjnI0

「……ところで、河野さんの異能ってなんですか?」
「ん?」

ある程度行動方針(と言っても朝まで篭城するだけだが)が決まった後に、ふとツボミは異能について触れるのだった。
英雄を駒にして利用する以上、相手がどんな異能を持っているか知っておく必要があるというのがツボミの判断であった。

「実は僕はまだ自分の能力がわからないんです。
いつの間にか首に付けられていたこのペンダントが怪しい感じがするんですが、使い方がさっぱりで……河野さんの能力を見れば何かヒントが掴めるんじゃないかと思いまして」

ツボミが自分の能力を知らないのは嘘ではない。
集音マイクに似ているペンダントが能力のキーなのはわかっているが、発動の仕方まではイマイチピンとこない。
英雄の変身を見れば彼の異能を知ると同時に、自分の異能もわかるのではないかと判断したのだ。
同時に後に裏切る時に相手の手の内を知っていれば対処しやすくなる算段のために、ツボミは自然な展開を装って英雄の異能を知ろうとしている。
一方の英雄は特にツボミを怪しむ様子はなく、自分の異能について実際に見せてみることにした。

「……わかった、教えましょう。
ここに来るまでの間に自分の能力を使って「変身」していて、能力をだいたい把握しているんだ」
「変身??」

英雄は施設に入るまでの約一時間以内の間に自分の能力を使って変身し、能力を把握した。
同時に殺し合いも異能の話も嘘ではないと英雄に自覚させたのだった。

「だが正直、ウルトラマンや仮面ライダーみたいなカッコいい姿ではない。
人によっては気持ち悪かったり怖かったり感じる姿かもしれないが、そこは了承して欲しい」
「大丈夫ですよ、河野さんは殺し合いに乗ってないから怖いとは思いませんよ」
「ああ、それでは見ててください、自分の……変身!」

了承の意味を含めたツボミのエクボを見た時、英雄の姿は変わった。
衣服は消えて体色は白と灰色が中心となり、体型も河野の元の肉体と比べるとマッシブに。
体格は人間より一回りほど大きくなり、いちおう人型を保っている体にアンバランスに大きいオウムに似た頭を持つ奇っ怪な姿をしていた。
元の英雄とは面影が全くない変身が目の前で行われたことにツボミは驚愕する。

「これって……」
『怖いかい? 少なくとも女の子が好きそうなデザインじゃないだろうがね』

鳥人によく似た異形と化した英雄を前にツボミは、驚愕の後に……エクボを見せた。

「それってガッツ星人じゃないですかー!」
『んん? ツボミさんは知っているのかい?』
「昔、パ……お父さんと一緒にレンタルビデオ屋で借りてきたウルトラセブンでこんな怪獣を見たことがあるんですよ。懐かしい〜」
『そうかい?』

そういえば昔、ツボミと一緒にビデオ屋で借りたウルトラセブンのビデオを一緒にこの娘と見たことがあったか?
……あの時は無性にガッツ星人にやられて磔にされたウルトラセブンを見たくなったんだ。
そんな父親の後暗い欲求など知らずにこの娘はテレビの中のヒーローと怪獣を見て無邪気に笑っていたな。
と、英雄は片隅に追いやっていた記憶の欠片を思い出す。

「内容はほとんどうろ覚えですけど、一度はセブンをギリギリまで追い詰めるも、最終的に負けてセブンに逆襲されたUFOの中で慌てふためく姿が可愛くて印象的でした」
『そ、そうなのかい?』

磔にされるセブンが印象に残った英雄に対して、ツボミは話のラスト周辺の狼狽するガッツ星人の方が印象に残ったらしい。
父と娘、同じ話を視聴していても記憶に残るものは違うのだ。


651 : ブラックアイドル地獄変 ◆YlfcDuGY1. :2017/08/25(金) 00:34:15 oGSWmjnI0

「河野さんもセブンを見ていたんですか?」
『いえ、あんまり……』

セブンを見ていないというのは英雄の嘘である。
これはセブンを見ていないと主張することでツボミに親子の接点を悟らせないためである。

「そうなんですか?
世代的には河野さんぐらいの世代がセブンの流行った時期だと思ったんですが」
『あ、あんまりウルトラマンに興味を持てなかったんですよ。親も厳しくてね』
「ふ〜ん、そうですか」

接点を必死に隠そうとしている英雄に対し、ツボミは特に何かに気づくことはなかった。
英雄がどのような幼少期を過ごしたのかは興味はなく、知りたいのはどんな異能を持っているかであるからだ。

「でもまあ、ガッツ星人は確かビームを出したり、瞬間移動能力を持っていたり……あ、分身もできた覚えがありますね」
『そうなのか。まあ見てくれからして人間よりは幾分強そうですが』

元々持っている怪獣ガッツ星人の知識を始めて聞くように振る舞いつつ、英雄はツボミから異能の話を聞いた。
もっとも、ツボミはガッツ星人に関してはうろ覚えのにわか知識しか持っていないのだが。
そうして異能がわかったところで、英雄は光と共に元の人間の姿に戻った。

「自分の異能はこの通りですけど、君の異能のヒントにはなったかな?」
「う〜ん、それは……」

日常ではまずあり得なかった出来事が英雄によって目の前で起こり、ナオ=ヒューマが言った通りに異能はペテンでもなく本当に存在することが目の前で証明されたからだ。
ともすれば一人につき一つの異能が与えられているのは嘘ではないのだろう。
だが、ツボミには自分の異能の発動の仕方すらわからなかった。

「河野さんはどうやって今の変身ができたんですか?」
「頭の中にあるスイッチを押すように、強く念じてみたらガッツ星人になっていた。
ちょうどナオ=ヒューマが言ったように、直感を信じてみたんだ」
「念じる……直感か…… フンッ! セイッ! 変身ッ!! ……ダメか」

英雄に言われた通り、ツボミは異能発動のキーと思わしきペンダントを手に持って念じてみたが、何も起きない。
変身したり、瞬間移動したり、ビームが出ることもなかった。

(だけど、何かヒントがあるはず……このペンダントが鍵であることは僕の“直感”が告げてるんだ。
どこかに異能のヒントがあるはずなんだ!)

この殺し合いを生き抜くツールになるであろう異能をひたすらに探すツボミ。
そこで彼女の脳裏に主催の言葉が蘇る。


652 : ブラックアイドル地獄変 ◆YlfcDuGY1. :2017/08/25(金) 00:35:16 oGSWmjnI0


――能力発動のキーにどうしても一定の道具が必要な者は専用の品を特別に支給した。


(! そうだ、支給品!)

ツボミはディパックを開けて、中で未だに眠っている支給品に手を伸ばす。
地図などの基本支給品に紛れて中から現れたのは一枚の音楽CDとイヤホン付きのラジカセ。
支給品はこれだけで、他の参加者ならば殺傷力の低い鈍器代わりにしかならないラジカセと娯楽にしかならない音楽CDはハズレ支給品にしか見えなかっただろう。
だが、ツボミにとってはこれらが銃火器や刃物よりもずっと有用な武器になることを後に知ることになる。

英雄に見守られつつ、さっそくラジカセに音楽CDを入れ、耳にイヤホンをつけて視聴するツボミ。
再生された音楽の最初の一節が流れた時、ツボミはそれを復唱した。



「Balwisyall Nescell gungnir tron ♪」


瞬間、ツボミの体を光が包みこんだ。
眩い光、それも一瞬だったので英雄の目には写らなかったが、その一瞬の間にツボミの纏っていたステージ衣装はオレンジと黒を基調にした戦闘向けのボディスーツに変わり、四肢には手甲や具足、白いコート、頭部にはヘッドフォンを模したヘッドギアが追加される。
その姿は光が収まることで、英雄の目と施設にある最寄りの鏡を確認することでツボミの目にも入った。

「なにこれ? 魔法少女ってヤツ?」

鏡で自分の姿を確認するツボミ。
なんか体のラインが丸分かりでエロいデザインだな。大きいお友達が喜ぶね。この衣装だと貧乳が際立ってしまう。などとあまり意味のない感想を頭で浮かべつつも、この衣装について覚えていることを思い出す。

「あー、これ、どっかで見たことあると思ったらシンフォギアのアレじゃないですか」
「知っているのかい?」
「ええ、声優もやる歌手もやるアイドルでは大御所な水樹奈々さんが主題歌を歌っていることで有名な魔法少女ものですよ。
何期もやってるからそれなりに人気だと思います。
もっとも、僕はアニメは見てないから内容はさっぱりですけど」

自分と同じアイドルである水樹奈々がテーマソングを歌っていることから、ツボミはシンフォギアのことも少しだけ知っていた。
と言っても、シンフォギアがバトルアニメでこれが主人公の変身する姿であることぐらいしか知らないのだが。
ついでにアニメやヒモをさせてくれないアイドルには特に興味がない英雄にはシンフォギアと言われても全くピンとこなかった。

「でも、まあ、バトルものアニメってことはそれなりに強いってことかな?」

杖ではなく、手甲や具足を着けた見てくれからしてビームやら魔法で戦うタイプの魔法少女ではなく、空手で戦うタイプだと思ったツボミは試しに施設の壁を殴ってみたツボミ。
アイドルを始める前は空手を習っていた彼女は一般人のそれと比べると格段に早い突きを放つが、壁はヒビ一つ入らず、少々の汚れ傷と壁に金属をぶつけた程度の音しかしなかった。
殴った腕が手甲のおかげでそんなに痛めたり痺れたりしなかったことぐらいしか変身のメリットがなかった。
これではちょっと硬いだけのコスプレに過ぎない。

「あれれ? 全然弱いんだけど……」
「……ツボミさん、歌で変身できるなら能力を引き出すのも歌なんじゃないですかね?」
「歌……」

英雄の鶴の一声により、変身の時に外れたラジカセのイヤホンを耳につけるツボミ。
イヤホンをつけ直して再生すると「撃槍・ガングニール」という曲が耳の中に入る。
そして歌を復唱するように口ずさむと、どういうわけか力が漲るような感覚を覚え、もう一度施設の壁を殴ってみた。

「――ぶっ飛べこのエナジーよ! ♪」

するとどうだろうか、先ほどとは比べ物にならないほどの重い音と振動を立てて、コンクリートでできた壁に拳大のクレーターができたではないか。

「って、うわ、すごい!」
「やっぱりツボミさんの異能は歌で引き出すものだったか」

今度は歌わずに壁を殴って見るも、結果は最初と同じで壁に些細な傷がつくだけであった。
そうしてツボミと英雄は確信する。
ツボミに渡された異能とは、歌を力にする魔法少女である、と。

「ありがとうー! 河野さーん!」
「うおッ!?」

唐突に英雄に抱きつくツボミ。
テレビで視聴者に見せるエクボが顔に近づき、驚く英雄。

「河野さんがいなきゃ、僕は死ぬまで異能に気付けなかったかもしれないよ」
「いや、自分は何も……」
「そんなことない、河野さんのおかげだよ!」

吐息が唇に当たるぐらいの近さにある娘の顔。
それと本人は気づいてないかもしれないが、彼女の小さいながらも弾力のある胸が自分の胴体に、柔らかい太ももが股間に当たってしまっている。
これが他の女なら英雄も欲情していたかもしれないが、別れた女の子供とはいえ自分の血を引いてるため、一線を超えてはならないという最低限の理性あるいは本能が働き、近すぎる彼女の肩を掴んでグイと放した。


653 : ブラックアイドル地獄変 ◆YlfcDuGY1. :2017/08/25(金) 00:35:45 oGSWmjnI0

「わ、わかったから落ち着いてくれ!」
「あ、ごめんなさい……自分に魔法みたいな力が宿ったことと、生き残るための力ができたかもしれないと思うと嬉しくて、少し馴れ馴れしすぎました?」
「いや、そうじゃないが……自分が仮に善人を装った悪漢だったらどうするのかと。
油断したところをナイフで刺されたり、衣装を剥かれて乱暴されたらどうする。
君の感謝の気持ちは嬉しいが、この場はもう少し慎重に行動した方が良いだろう」
「すいません、ごめんなさい……」

父親が娘にするように(実際に親子だが)、軽い説教をする英雄。
ツボミもわかってくれたのか、しおらしくなったのだった。



その後、ツボミは変身を解き、二人は建物の窓越しに外を見張る形で西と東に別れた。
他の参加者、特に殺し合いに乗った者を警戒するための布陣である。
できれば女の子であるツボミには無茶をさせずに夜が明けるまでゆっくりさせたいと英雄が気を使おうとしていたが、人気があるほどハードになるスケジュールをこなすアイドルには1日・2日寝ない程度は大丈夫だとツボミは言った。
そもそもアイドルは歌やダンスなどで意外と体力を使う仕事であり、体格からして運動をやっていなさそうな英雄よりは体力があると自信があった。


ツボミが西側、英雄が東側に別れてからは特に会話を交わすことなく、時間が過ぎていく。
ツボミは窓から外を見張りつつ、片耳にはイヤホンをつけてラジカセから音楽を聞く。
もうひとつの耳で物音を聞くために片耳は空けているとはいえ、音楽を聞いている以上は集中力が下がってしまい、危険な行為である。
しかし歌を力にする装者の性質上、CDの中にある歌の歌詞やリズムを暗記するのは急務であり、異能を生かすための措置であった。
とりあえず一曲でもしっかり覚えないと、異能を練習することさえできない。

そんな中でツボミは支給された飲料水入りペットボトルを飲みながら東側を見守る英雄の背中をチラリと見る。

(ふぅ〜、しかしあのオジサン、意外とガード硬いなあ。
僕のお色気攻撃が全然通じなかったよ)

実は先程の、自分の異能がわかった後に喜んで抱きついたのは演技であり、英雄を篭絡するための手段であったのだ。
顔が触れかけたのも、胸や太ももを当てたのも偶然を装った演技である。
それで熱狂的なファン共のように手篭めにできれば御の字。
いきなりそこまで行かなくとも、最低でも庇護欲を刺激させたり、欲情させたりできれば後で使いようがあるというものだろう。
ところが事はそこまで上手く運ばなかったらしい。

(太ももを股間に当てるついでに勃起を確かめたけど、勃っている様子はなし。
視線も唇や胸や尻じゃなくてあくまで瞳だけを見ていた……少なくとも欲情はしていないね。
あ〜あ、チョロイ奴だったらあれだけでイチコロだったんだけどなあ。
まあ、あのオジサンは家族もいそうだし、もし家族に優しい人ならストイックになろうとするだろうし、何より殺し合いという異常事態に巻き込まれたら性欲どころじゃないかもしれないけど)

どうせ優勝するその時までに殺す相手とはいえ、英雄を生き残るためのツールとして手駒にしておきたいツボミ。
特にガッツ星人の能力である分身や瞬間移動はいざという時の逃走などに色々使えそうだ。
ラジカセのイヤホンから流れる曲「撃槍・ガングニール」を暗記しつつ、次なる生存戦略を考えるツボミであった。

「……ん? あれは?」

事態が動いたのは時刻が深夜2時を回る前だろうか。


 ◆


654 : ブラックアイドル地獄変 ◆YlfcDuGY1. :2017/08/25(金) 00:36:32 oGSWmjnI0


「近場で火事?」
「うん、ミカン畑の当たりから出火しているのを見ました。
……殺し合いに乗った危険な人がいるのかもしれません」

ツボミは地図上のE-8にあるミカン畑から燃え上がる炎を発見したのだ。
そして危険を知らせるために英雄と合流し、今後どうするかについて話し合おうとしている。

「ミカン畑とこの観光協会はエリアが隣あっている。
今は大丈夫でも、2・3時間もすれば延焼して火が燃え移るかもしれないか……」
「それに僕の異能は端的に言えば歌って戦うこと。
歌う以上、火災で発生した有害なガスを吸うことになって戦えなくなっちゃいます」

火災は人間に取って危険であるし、何より歌えない状況こそがツボミの異能を殺すことに繋がってしまう。

「幸い、少し南下すれば診療所や集落がある。篭城先をそっちに変えよう」
「畑に火をつけた人がいるかもしれないし、ここから移動するのは正直不安ですけど、この施設もいつ炎に包まれるかわからないですし……」
「あ」

ツボミの手は震えていた。
それを見た英雄はツボミは自分に異能があるとわかってはいても殺し合いが怖いんだと考える。
ツボミとは既に縁を切った娘ではあるし、今さら父親ぶる意味もないとわかってはいる――それでも少しはカッコつけたくなったのか、本来の情けない男の姿を見せづらいと思ったのか、形だけでも大人の体を取ることにした。
具体的にはガッツ星人に変身し、ツボミの前を歩くようにする。

「河野さん……?」
『自分が他の施設に着くまで先導します。ツボミさんは自分の後ろについてきてください』
「ありがとう、河野さん」
『さあ、早くここから出ましょう』

死にたくないと願う英雄にとって自分が盾になることは本当は嫌であったが、ガッツ星人の防御力なら簡単には死なないだろうという自負と、今、ツボミに嫌われる行動を取ると後で居心地が悪くなるだろうという打算からの行動であった。
あくまで震える少女を慰めて点数を稼ぐような行為であり、善意からでは決してない、と英雄自身は思っている。

ちなみにツボミの手の震えは演技であり、庇護欲から自分から盾になってくれた男に対して、アイドルは黒いエクボを見せていたことを背を向けていたガッツ星人は知らない。
アイドルもまた、弾除けにしようとしている男が自分が探し求めた父であることを知らないのだった。

そして脱出を決意し、二人は施設の出口へ向かった。



しかし出口には待ち構えている男がいた
ツンとするような濃い血の匂いと同時にのそりと、力士のような巨体に血まみれの調理用のエプロン姿に豚のマスクを被っている男が現れた。
距離からして5mは離れていて薄暗い施設の中であったが、英雄にもツボミにも聞き覚えがあり、二人の思考と声がシンクロした。

「『ブッチャーマン!?』」

都市伝説とされていた危険な食人鬼が二人の前に現れ、一瞬でも驚愕させた。
その一瞬の隙をブッチャーマンが見逃すわけはなく、蠍の尾に似た尾赫を出し、勢いをつけて英雄の胸を突き刺した。


655 : ブラックアイドル地獄変 ◆YlfcDuGY1. :2017/08/25(金) 00:37:09 oGSWmjnI0

『ぐはあッ?!』
「河野さん!?」

幸い、予めガッツ星人に変身したことが功を成し、人間に比べれば硬い肉体に守られたことによって常人なら死に至るダメージも軽い出血で済み、床に尻餅をつくぐらいであった。

しかし……

『……う、うわああああああああ!?』
「!?」

突如、現れた殺人鬼と、明確な殺意を向けて放たれた一撃と痛み。
仮に変身してなければ確実に死んでいたという事実に英雄は混乱しパニックになってしまった。
それを見るツボミにとっては、叫ぶ英雄の様はテレビで見たUFOの中で慌てふためくガッツ星人そのものであった。
そして、叫んだ直後にガッツ星人こと英雄の姿はフッと消えてしまった。

「消えた……?」
「?」

突然霧の如く消えてしまった英雄の姿に何がなんだかわからなかったツボミ。
ブッチャーマンも首を傾げているところから彼がやったわけではないらしい。
しかし、ガッツ星人の特性をうろ覚えながらも知っているツボミは次の瞬間には呆れたエクボを浮かべていた。



「アッハッハッハ。なるほどねぇ! ……あのオッサン、自分だけ逃げやがった!」


656 : ブラックアイドル地獄変 ◆YlfcDuGY1. :2017/08/25(金) 00:37:56 oGSWmjnI0



ガッツ星人には瞬間移動能力があり、パニックに陥った英雄はそれを使って逃げたんだと悟る。
駒として利用するつもりが、自分の方が置いてかれるとはツボミも失笑を禁じ得なかった。
だが、そんな事情など知ったことかとブッチャーマンは尾赫を使ってツボミを突き刺そうとする。

「ヒィ!」

頭部にまっすぐ向かってきたソレをツボミは姿勢を低くして回避するも、表情からは先程までのエクボが消えて戦々恐々としていた。
ブッチャーマンは続けて尾赫で突き刺そうとするが、相手の運動神経が良いのか、ツボミは腰が引けつつも右へ左へ後ろへと尾赫を躱していく。

「まだ死にたくない、こないで……こないで……!」

だがツボミの精神も限界が来たのか、股の方から垂れ流した黄色い液体でパンツや靴下に靴と床を汚していた。
あまりの恐怖に失禁したようだ、とブッチャーマンは理解する。
少しは粘った方だが、所詮は血なまぐさいことに無縁な一般人。
失禁した以上は戦意は喪失しているだろうし、向かうから反撃をしてこないところからして自分に勝てるだけの支給品や異能は持ち合わせていないと彼は断定した。

これまでは武器や異能による反撃を警戒して尾赫一本による攻撃でチクチクと攻めていたブッチャーマンだったが、勝利を確信した殺人鬼はここで一気に攻勢に出る。
尾赫による攻撃はそのままに突進しつつ、尾赫を躱された時の策として二撃目に肉切り包丁による一撃を与える。
一辺に二度の攻撃ならば尻餅をついているツボミに躱すことなど不可能に近い。
それは人間を相手に狩りを続けてきたブッチャーマンなりの経験則であった。
そしてブッチャーマンは戦術を実行に移し、尾赫を放ちながらも包丁を構えてツボミに詰め寄る。
次の瞬間には多くのファンを魅了したツボミの顔は、グチャグチャの肉塊に成り果てるだろう。



……と思っていたブッチャーマンだったが。
尾赫がアイドルを襲わんとした瞬間、食人鬼は確かに見た。
ツボミの口角が確かに三日月状に釣り上がり、更に何かの言葉を口ずさんでいたことに。
その言葉は自分の走る音などにかき消されてよく聞こえなかった。

次の瞬間に一瞬の発光がツボミの身に起こり、姿をフリフリのアイドル衣装から戦闘的なスーツに変えていた。
ブッチャーマンの思考はそれを確認すると同時にツボミの口が再び動いているところを見た。
今度はしっかりと聞き取れた。

「絶対に…離さないこの繋いだ手は♪」

――目の前の少女は歌っている。なぜそこで“歌”?


657 : ブラックアイドル地獄変 ◆YlfcDuGY1. :2017/08/25(金) 00:38:30 oGSWmjnI0
そう思った瞬間がブッチャーマンの大きな隙となった。
放った尾赫は躱され、その直後に掴まれた挙句に人間とは思えぬ怪力で弾かれた。
自分よりは遥かにか細い少女の裏拳によって、尾赫にヒビが入る。

「こんなにほら暖かいんだ ヒトの作る温もりは♪」

すかさずブッチャーマンは振りかぶった包丁による一撃をお見舞いしようとするが、ツボミはこれが振り下ろされる前に手甲で防いだ。

「難しい言葉なんていらないよ♪」

渾身の力を込めた包丁を躱されたことによって絶対的な隙が生じてしまったブッチャーマンに対し、ツボミはガラ空きの腹に向けて回し蹴りを入れた。
ブッチャーマンは包丁から手を放した左腕の防御がギリギリで間に合い、蹴りをガードするも、その一撃は非常に重く、左腕の骨をボキリと折ってしまった。
仮に左腕を犠牲にしなければ、胴体に命中した蹴りが内臓を破裂させていた危険もあるかもしれない。

「――今わかる 共鳴する Brave mind♪」

左腕の骨折は流石に響いたのか、ブッチャーマンはたたらを踏んで後退。
これを勝機と思ったツボミは勝負をつけるべく、一気に間合いを詰め寄って再び回し蹴りを放つ。
ブッチャーマンは今度は折れてない右腕に持つ肉切り包丁で懐を守ろうとするも、蹴りはフェイントで当たることはなく引っ込められ、真打はガードされていない豚マスクの顔面にあった。

ツボミはKENGOのようにマスクをはぎ取って撃退しようなど考えていない。
空手由来の正拳突きで頭部の頭蓋を砕かんとしていた。
相手の両腕は塞がっており、どうやってもガードは不可能。
ツボミは勝利を確信する。

「!!」
「な?!」

しかし必殺と思われた正拳突きは防がれた。
ブッチャーマンはツボミが攻撃に移る前に尾赫を引っ込め、全く別の赫子を肩甲骨の辺りから出していた。
赫子の中で最も高度に優れた“甲赫”である。
盾として現れた歯のように硬い赫子がツボミの正拳突きを防いだのである。
ブッチャーマンの身を守らねばという防衛本能がきっかけで異能発動のスイッチが初めて入ったようだ。

「クッ……ぐっとぐっとみなぎっていく――♪」

ブッチャーマンの底知れぬ異能の力に驚きを隠せぬツボミは中断した歌を再び歌って追撃を加えようとするが、今度は盾となっていた甲赫が引っ込んで、左右から覆うように触手“鱗赫”が襲いかかる。

(この豚、いくつ異能があるの……!)

ツボミは追撃を諦め、左右から来ていた鱗赫を腕で捌きながら後退。
広く間合いを取って仕切り直すことにし、ツボミは拳を、ブッチャーマンは包丁と鱗赫を構えて対峙する。



「やれやれ、油断を誘うために人前でオシッコまでしたというのにアドバンテージは腕一本か……人を殺すのって難しいね」

実はツボミが先ほど失禁したのは半分は不意打ちするための演技である。
「半分は」と言ったのは、ツボミがブッチャーマンに恐怖を憶えたこと事態は嘘ではなく、先にパニック状態に陥って逃げ出した英雄の件や、自分も殺人鬼に殺されて愛する父親に再開する前に見せしめになったジョーや椿のように物言わぬ肉塊になるのだと思うと怖くて仕方なかった。
しかしブッチャーマンが何度か攻撃を仕掛けてくる内に、彼女の中にある目的のために手段を選ばない計算高さや生き汚さ、そして戦う覚悟が蘇っていき、奇策を思いつかせたのである。
本人は演技には自身があり、極めつけに失禁したように見せかければ戦意を喪失したように見せかけて不意を突けるだろうと。
皮肉にも異能による反撃を恐れて半ば牽制的に尾赫による遠巻きからの攻撃に徹したことが仇になり、ブッチャーマンはツボミに戦意と作戦を立てる時間を与えてしまったのだ。
あと一歩、踏み込めればツボミはブッチャーマンを猛反撃の勢いで殺害できていたが、そこまでの強運を天は与えず、現れた盾である甲赫に邪魔をされてしまった。


658 : ブラックアイドル地獄変 ◆YlfcDuGY1. :2017/08/25(金) 00:39:05 oGSWmjnI0



ブッチャーマンは獲物であるツボミを見てこう思ったであろう。
この女は先に殺した二人とは格が明らかに違うと。
異能の強さの問題ではない。
人間的な意味での強さを目の前のオレンジの女は持っているのだ。
肉体的には見た目以上に鍛えられているようであり、そこらの一般人より遥かに手強い。
それだけでなく生き延びるために何でもしてくる……相手に勝つためならどんな卑劣な手段を使おうが、自分がどんなに恥ずかしい目に会おうが構わない外道の眼をしている。
あれは人の皮を被った猛獣、下手すれば自分の方がとって食われかねない相手であった。

だからこそ自分の手で殺して喰ってみたいと思った。
グッチャグッチャにして喰ってみたいと思った。
強敵の肉はきっと美味に違いないと、第六感が囁いているのだ。

左腕は折れているが、どういうわけか痛みが徐々に引いている。
再生でもしているのか?
なんとなくしばらく経てば動かせそうな気がする。
肉切り包丁は無事であり、折れた腕の代わりに赫子は使える。
戦闘の続行は可能だ。
向こうも強力な異能を持っているみたいだが、それはこちらも同じである。
特にこの狡猾な女を逃すと後で面倒なことになりそうな気がするのでここでなんとしても殺す。と。



ツボミは都市伝説の食人鬼についてこう思った。
空手を習っていた自分にだからわかるが、この男はさほど強くない。
確かに殺人鬼で恵まれた体躯からくる筋力は凄まじく、一般人にとっては歯が立たない相手だろう。
だがある程度訓練した人間で奇襲を受けるなどの不利な条件でなければ、制圧も簡単にできる。
肉切り包丁は殺傷力のある凶器だが、鎧(アームドギア)に身を包んでいる自分ならば危険性もだいぶ減っている。

問題なのは食人鬼に渡された異能の方である。
背面の赫子やマスクから覗く赤く輝く瞳から、ツボミは食人鬼がブームになった漫画作品“東京喰種”の異能を渡されていると断定している。
だが悲しきかな、シンフォギア同様に東京喰種に興味がなかったので作品のことをよく知らず、喰種や赫子の特性を知らないのだ。
少なくとも壁にクレーターを作った拳を凌ぐ程度の身体強化と、少し離れた場所を攻撃できる蠍の尾、硬い盾、ウネウネした無数の触手を出すぐらいはわかったが、まだあるかどうかもわからない。
そもそも自分の異能すら完全には把握したと言い難く、空手と歌を力にする異能がどこまでできるか、どこまで通用できるのかもわからない。

更にツボミには急がなくてはならない状況に立たされている。
E-8の火事が気がかりであり、今は大丈夫だろうがモタモタしていると火事がこの施設までやってきてしまう。
先に英雄との会話で懸念した通り、火災そのものの危険はもちろん、燃焼によって生じる有害ガスは歌うことで力を発揮するツボミには死活問題であった。
だが出入り口は食人鬼が立ちふさがっている。
窓をぶち割って逃げることも考えたが食人鬼の異能の全貌がわからない以上、背を向けた瞬間に殺される恐れがある。
生き残るためにすべきことは施設からの早急な脱出、そのための食人鬼の撃退もしくは殺害である。


659 : ブラックアイドル地獄変 ◆YlfcDuGY1. :2017/08/25(金) 00:39:30 oGSWmjnI0


「ねえ、ブタさん」

再度の激突が始まる前に、ツボミは唐突にブッチャーマンに笑顔を向けて話しかけた。
次にツボミはビシッと、自分の股を指さした。

「アイドルの恥ずかしーところをあなたのために見せたんだから代金をしっかり払ってよね?」

変身の際に衣服は再構成されたが、尿はそのままなのか股の辺りはビショビショである。
それがどうした、と言いたげ(喋らないが)なブッチャーマンだったが、次の言葉を聞いて確かに彼は反応した。


「――お代は命でいいよ☆」


ツボミのエクボが一点、黒いスマイルを変わり、挑戦状を叩きつける。
ブッチャーマンはこの挑発に怒ったのか、引いたのか、それとも面白いと感じたのか、確かに赫子が揺らめいたのであった。



(全く、あのオッサンがいれば瞬間移動でこんな面倒くさいことにならなかったのになー
勝手にいなくなったせいで大変な目にあってるよ)

スマイルの裏で、ツボミの脳裏に逃げ出した英雄の顔が浮かぶ。
最初に会った時は懐かしい雰囲気でちょっとだけ好感を持っていたが、自分を置いて一人だけ逃げていったのでその好感も吹き飛んだ。

(まあ、いいや。人殺しに慣れるための良い機会が巡ってきたと前向きに考えよう。
……河野さん、次に会った時にすぐ殺るかはわからないけど、楽な死に方はさせないからね☆)

ガッツ星人に磔にされたウルトラセブンの如き姿の英雄のヴィジョンが浮かび、なるべく惨たらしく殺すことを決めたツボミ。
だがそれはブッチャーマンを対処した後でなければできないことなので、今は思考の片隅に置いておくことにした。


 ◆



ここはE-9エリア内の観光協会施設から十数m離れた場所の茂み。
そこに一体のガッツ星人がポツンと座っていた。


『しまった……ツボミを置いてきてしまった』


ブッチャーマンの奇襲によってパニックに陥った英雄は、逃げたいと念じたその時にガッツ星人の能力の一つである瞬間移動能力が発動し、若干の疲労と引き換えに自分だけ観光協会の外へとワープしてしまったのだ。

『戻るか……いや、だが……』

今から戻ればガッツ星人の力とツボミのシンフォギアの力でどうにかできるかもしれない。
だが動こうとする度にブッチャーマンに赫子で付けられた傷の痛みがズキズキし、血まみれで冷酷な恐ろしき食人鬼の姿がフラッシュバックするのだ。
彼が最低の女としている河野明代とは違うベクトルの、殺人鬼に狙われるという体験したことのない恐怖により、どうしても腰が竦んでしまう。
ガッツ星人の力があるとわかっていても、勝てる気がしなかった。

『落ち着くんだ自分、今の俺と彼女はなんの関係もない……この前まで忘れていた、もう娘でも何でもない子のハズだ。
どのみちもう、ブッチャーマンに殺されているかもしれないしな……』

臆病風に吹かれた英雄はそのように自分に言い聞かせる。
赤の他人で助からない相手と思い込めば、罪悪感はわかないと思ったからだ。
結果的に娘だった少女を見捨てて、否、囮にして逃げる形になってしまうが、それでも死にたくないのである。

そして英雄は震える体と竦んだ腰を可能な限り制して立ち上がり、観光協会から背を向ける。
それで走り出せば危険地帯を脱出した英雄はしばらくは延命できるであろう。


『…………』


しかし、英雄はできなかった。
彼の頭の中には幼少時と成長してつい先ほど再会したツボミのエクボが浮かんでいた。


――パパ、大好き
――ありがとうー! 河野さーん!


己の確実な生存か、娘だった少女の笑顔を選ぶか。
英雄のガッツ星人の大きな頭の中では葛藤が渦巻いていた……


660 : ブラックアイドル地獄変 ◆YlfcDuGY1. :2017/08/25(金) 00:39:54 oGSWmjnI0



【一日目・2時30分/E-9 観光協会】

【ブッチャーマン@喰種の肉体と赫子/東京喰種】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(小)、左腕骨折(再生中)、血まみれ
[装備]:巨大な肉斬り包丁
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜2(確認済み)
[思考・行動]
基本方針:優勝して食事に困らない生活を手に入れる
0:目の前の女(ツボミ)を殺す
1:殺し合いを有利に進めるために夜明けまで集落を探索する
2:逃げた男共(ゆたか・英雄)は取り敢えず後回し
[備考]
※自分の異能をある程度理解しました。鱗赫、尾赫、甲赫ができることは認識し、他にもまだあると思っています。
※大木潮と天草ゆたかが入れ替わったことを認識していません
※KENGOが大嘘憑きで生き返ったことを知りません。遺体はまだ灯台の中にあると思っています
※天草ゆたかの遺体は損壊した状態でD-10に放置されています。また、彼女のデイパック(不明支給品0〜2)は遺体から離れた場所に埋められました。


【郷音 ツボミ@立花響(ガングニール)/戦姫絶唱シンフォギア】
[状態]:健康、変身中、股が尿で濡れている
[装備]:ガングニールのギアペンダント
[道具]:支給品一式(飲み水残り70%)、ギア歌唱曲一式が収録されたCD、イヤホン付きCDラジカセ
[思考・行動]
基本方針:生きてパパと会うために優勝する。
0:ブッチャーマンから逃亡もしくは撃退、可能なら殺害したい
1:ブッチャーマンを対処したら蜜柑畑の火事から逃れるために施設から離れる
2:英雄はなるべく惨たらしく殺したい。いつ殺すかは状況を見て考える
※実父が失踪したのは小学生の頃です。
母親が実父の写真を全て消却していること、実父とは時折しか会えなかったことから顔は殆ど覚えていません。
※英雄に無意識に懐かしさを感じていますが、実父とは気付いていません。
※自分に与えられた異能を理解しました。
 また支給された譜面から「撃槍・ガングニール」の歌詞を暗記しました。
※ガングニールのロック解除は「立花響」限定であり、見た目や拳を主軸に戦う点は固定です。
 現状の姿は原作一期(無印)においての立花響の姿ですが、ツボミの精神的成長・変化に応じて二期(G)・三期(GX)・四期(AXS)の形態に変化し、戦闘力が上がっていきます。
※幼少時に父親である諸星茂(=河野英雄)とウルトラセブン39話〜40話を視聴したことがあるため、ガッツ星人も知っていますが細かい部分はうろ覚えです
 

【一日目・2時30分/E-9 観光協会 外部】

【河野 英雄@ガッツ星人/ウルトラシリーズ】
[状態]:胸部にダメージ(中)、疲労(小)、困惑、変身中
[装備]:
[道具]:支給品一式、不明支給品(0~3、確認済)
[思考・行動]
基本方針:とりあえず死にたくない。
0:ブッチャーマンから逃亡するか、ツボミを助けにいくべきか……
1:ツボミとの関係は黙っておく。
2:磔になりたいという無意識の願望。
3:テレポートを使えばブッチャーマンからは逃げられるが、その場合はツボミが……
※郷音ツボミの実父です。彼女の母親とは「諸星 茂(モロボシ シゲル)」という偽名で関係を持っていました。
英雄本人もツボミが娘であると何となく気付いていますが、面倒なので黙っています。
※変身中はガッツ星人の能力であるテレポート、分身などが使えますが、いずれも体力を消費し、テレポートは短距離(20m以内)での移動に制限されています。
 巨大化は不可。


【支給品解説】

【ギア歌唱曲一式の収録されたCD@現実?】
戦姫絶唱シンフォギアにおいて登場人物である立花響が劇中で歌う歌を収録したCD。
シンフォギア装者は歌わないと戦闘力を発揮できないので、覚える必要がある。
収録された歌は「撃槍・ガングニール」「私ト云ウ 音響キ ソノ先ニ」「正義を信じて、握り締めて」「 Rainbow Flower」「限界突破 G-beat」「リトルミラクル ?Grip it tight?」


661 : ◆YlfcDuGY1. :2017/08/25(金) 00:40:18 oGSWmjnI0
投下終了です。


662 : 名無しさん :2017/08/27(日) 08:29:14 fStW0.I60
投下乙です
油断を誘う為におもらしまでするツボミちゃんマジアイドル。……アイドル?
そして娘を置いて逃げ出して好感度まで下げた河野はどうなるのか。


663 : 名無しさん :2017/08/28(月) 02:30:18 BCg1zvRA0
投下お疲れ様です
生きるためには恥じも何もかも捨てられるツボミの鉄の意志 
恥どころか娘すら捨てかねない英雄とは、ある意味親子なんだなと思えた
ブッチャーマンもただの殺人鬼ではない、理知的な部分が輝いて恐ろしく思えてならない


664 : ◆7PJBZrstcc :2017/09/21(木) 15:16:13 ZRUUrrmk0
投下します


665 : あの素晴らしい愛をもう一度 ◆7PJBZrstcc :2017/09/21(木) 15:17:06 ZRUUrrmk0
 ミカン畑に背を向けて、鈴宮ミカは歩く。
 何処へと問われたら、彼女にも分からず。
 何故かと問われたら、燃え広がる前に避難する為に。

 ミカがミカン畑を後にして最初に考えたことは、体制を立て直すにはどう動くかについてだった。
 彼女は先ほどキリエロイドに変身した分目青司に後れを取っている。
 理由としては、手持ちの銃マイクロ・ウージーがキリエロイドに通じないという物理的な面と、青司が出した獄炎弾を見てトラウマを思い出した精神的な面がある。
 このうち精神的な部分は彼女自身の問題で、一朝一夕では解決できない。
 それを理解しているが、彼女はあえて今は考えないようにしている。
 彼女が考えているのはもう一つの方、物理的な面だ。
 手持ちの銃じゃ通じない、ならばもっと強力な武器を手に入れなければ。ではその為にどうするか。
 その答えは既に出ている。

「他の参加者から殺して奪い取ること……」

 それが最善だと彼女は理解していた。
 だがここで別の問題が発生する。
 一応言っておくと、彼女は別にその事に不満も躊躇も一切ない。
 元々他の参加者も殺すつもりだったのだから当たり前である。
 物理的な意味でも問題は無い。
 彼女は辛い過去を持ち、それを無かった事にする為に殺し合いに乗れるある意味肝が据わっている少女だがそれ以外は普通である。
 とはいえ彼女にはナオ・ヒューマに与えられた異能がある。
 その異能はジョジョリオンに登場したスタンド、ビタミンC。
 射程こそ指紋で作った結界内部という特殊なものの、その能力は強力だ。敵対すれば対処は容易ではない。
 では何が問題かというと

「悪霊だけじゃ殺して回れない……」

 ミカは気がはやっていた。
 それはこれまでの行動でも明らかだ。
 友好的に接してきた相手をだまし討ちでは無く問答無用に銃撃。
 銃に慣れていないのだからもっと近づいてから撃てば確実に命中し、青司の命を奪うことが出来ただろう。
 最も、これは気がはやるだけでなく、異能と支給品に恵まれたことにより油断していたという部分もあるが。
 その油断が除かれた今でも、態勢を立て直したら打って出るつもりなのだから気がはやっていることは事実だ。

 しかしこれに関して彼女に非があるとは言い難い。
 彼女が殺し合いに乗ったのは、失った家族を取り戻しもう一度幸せになるためだ。
 火事で両親を失い、両親の保険金の大半が親戚に奪われ、自殺未遂すら起こしている。
 この殺し合いはそんな彼女に与えられた最後のチャンス。
 戦略的にミスがあるといえば事実だが、心は抑えられない。

 とはいえそんな事情は彼女以外に関係ない。
 また知ったとしても参加者は考慮する義理はない。
 その事に彼女はまだ気づかない。

「どうしよう……」

 はやる気持ちと自身の現状に折り合いが付けられず悩むミカ。
 しかしそんな彼女の前に建物が見える。
 それは交番、本来ならば警察官が常に在中し、この恐怖の惨劇の中ではさぞ頼りになったことだろう。
 しかしこの時間には殺し合いに参加している二人の警察官のいずれもこの場におらず、ここは会場の一施設でしかない。
 その交番を見て彼女が思ったことは

「他の参加者がいるかもしれない……」

 そして彼女は持っていたマイクロ・ウージーを構え、細心の注意を払いながら交番へ入って行った。


666 : あの素晴らしい愛をもう一度 ◆7PJBZrstcc :2017/09/21(木) 15:17:32 ZRUUrrmk0



 結論から言うなら、ミカの注意は無駄だった。
 何故ならば、他の参加者はいなかったからだ。
 ミカの期待と不安が肩すかしとなり、彼女は交番から出て行こうとする。
 しかし出て行こうとした直後に彼女のお腹から可愛らしい音がした。
 それを恥ずかしがりつつ彼女は食事をしようと考えた。

「何かあるかな……」

 そう言って彼女は交番の中を探す。
 ちなみにデイバッグにある食料に手を付けない理由は簡単。
 いざという時の為に残しておいた方がいいと考えたからだ。
 決して日常から遠く離れたこんな時まで今のみじめな生活のような食事をしたくないからじゃない、と彼女は思っている。
 実際は後者の方が大きくウェイトを占めているのに。

「あったけど、これって……」

 そうこうしている間にミカは食料を見つけた。
 それは大量のカップラーメン、なんて事の無い普通のインスタント食品だ。

「……」

 ミカはそれを黙って見つめる。
 別に食べるのが嫌なわけではない、彼女がラーメンを嫌ったことなど一度も無い。
 問題はこの部屋にポットが無く、火を起こすにはガスコンロを使うしかない点だ。

「火……」

 そう、ミカは火をつける事が怖かった。
 ミカン畑で向けられた獄炎弾と違い、自分に牙をむけることは無いだろうコンロの火が恐ろしかった。
 別に普段からコンロの火を怖がっている訳では無い。
 ただ、今火を見るとさっき見た獄炎弾、ひいては火事の記憶がフラッシュバックしそうになると彼女は感じていた。

「火は大嫌いだ……、だけどパニックを起こすようなことはもう駄目だ……」

 そう言ってミカは鍋と水を用意した後、火を付けようとすると手が震える。
 駄目だ、こんな事じゃ駄目だ。そんな思いばかりがつのる。
 その思いを貫く為に彼女はコンロに手をかけて、火をつけた。

「……大丈夫、何も問題ない」

 ミカは鍋に火を掛ける様子を、否火をただ見続ける。
 さっきまでに震えを嘘にしたいから。
 そんなことが出来るのかは彼女にすら分からないのに。

「もう大丈夫、次あの化物と戦っても無様に逃げたりしない……!」

 その言葉が本当かどうか、確かめる術は誰も持っていない。


667 : あの素晴らしい愛をもう一度 ◆7PJBZrstcc :2017/09/21(木) 15:18:17 ZRUUrrmk0



 その後、ラーメンを食べ終わったミカはこれからどうするかを考えた。
 そして出した結論はこうだ。

「やっぱり待ち伏せしかない……!」

 ミカは殺して回ることを一旦止め、籠城を選んだ。
 本音を言うなら今すぐにでも動き回りたい。
 だが、この殺し合いには40人以上の参加者が居る。それを女子高生1人の体力で、殺して回ることは武器が十全であっても出来るのか。
 答えは決まっている、不可能だ。
 そうでなくても体力を使う場面はきっと来る、ならばなるだけ体を休める方向で考えなければ。

「じれったくても我慢しなきゃ……。
 強く持たなきゃいけない。体だけじゃなくて心も……!
 だけど我慢するのは態勢が整うまでの間だけ……!!」

 一刻も早く両親と再会したい、だけど急ぎ過ぎて死ぬわけにはいかない。
 二律背反の気持ちを抱えながら、彼女は歩き出す。

「まずはこの交番を指紋の結界で囲まなきゃ」

 自分が今成すべき事を。
 自分が望む過去の為に。


【一日目・2時00分/G-8 交番】

【鈴宮ミカ@ビタミンC/田最環@ジョジョリオン】
[状態]:疲労(小)、精神疲労(小)
[装備]:マイクロ・ウージー(8/32)
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0〜2(本人確認済み)
[思考・行動]
基本方針:優勝して家族との幸せな日々を取り戻す
1:交番の中で待ち伏せし参加者を殺すことで、支給品を手に入れて態勢を立て直す
2:態勢が立て直り次第、積極的に他の参加者を襲撃する
3:火は大嫌いだ……! だけどもう、パニックになんてなりはしない……!!
[備考]
※自分の異能(スタンドの作った指紋による結界に触れた生物を柔らかくする)を自覚しました
※分目青司の異能の一部(キリエロイドへの変身、獄炎弾)を知りました


※G-8 交番はビタミンCの指紋の結界の範囲になりました。
※交番の中には大量のカップラーメンが保管されています


668 : ◆7PJBZrstcc :2017/09/21(木) 15:19:03 ZRUUrrmk0
投下終了です


669 : 名無しさん :2017/09/21(木) 18:31:14 Cu558ZCc0
投下乙です
異能は七部キラークイーンすら封殺できるほど強力なのと反対にマーダーの中ではわかりやすく不安定感が漂うミカ
籠城はトラップ設置型のビタミンCには適しているが……


670 : 名無しさん :2017/09/22(金) 00:33:03 5UttxOF20
投下お疲れ様です
攻めには向いてないビタミンCでは必然的に待ちだよなぁ
待ちに入れば仕掛けの難解さあって初見殺しだが、
果たして簡単に上手く行くか否か


671 : 名無しさん :2017/09/24(日) 18:28:06 b7qWhND60
>>669
今更ながら七部じゃなくて八部だったw


672 : ◆YlfcDuGY1. :2017/09/25(月) 23:40:47 LxS4zhXw0
お ま た せ
予約の千原亜希、田所恋矢を投下します


673 : ◆YlfcDuGY1. :2017/09/25(月) 23:41:44 LxS4zhXw0
まだ夜明けにも遠い時間の暗い森。
その中をゆっくりと進む二つの影があった。
水泳部兼空手部の大学生である田所恋矢と、読者モデルのギャル千原亜希である。
恋矢は亜希を守るナイトのように彼女の前を歩いている。

否、歩かされていると言った方が正しいだろう。
それでもまだ、この殺し合いの場で襲撃者に対してか弱い婦女子の盾になろうとしていれば勇ましいと言えるのだが。

「あのさぁ……おまえがビビリすぎて全然前に進めないんですが。
頼むよ〜、もっと早く歩いてくれよ」
「ヤダ、虫怖いもん」

……単に虫が怖いから、恋矢に前を歩いて欲しいだけのようだ。
人が死なない前提のお化け屋敷でカップルがデートの相手に前を歩かせるのと何ら変わりがない。
殺し合いの場では随分と呑気に見えるが、この二人はまだこの殺し合いがドッキリではないかと疑っており、異能に関してもさほど信じていない。
殺し合いは始まったばかりとはいえ、血なまぐさいことにまだ無縁であり、恋夜には人殺しの道具であるナイフや日本刀が確かに支給されてはいたが、ドッキリを信じ込ませるための小道具と強引に解釈も可能と言えば可能。
異能に関しては亜希が先ほど発露させたスパイダーセンスも、考えようによっては直感を思い込みで予知能力か何かと誤認したと思えば片がついてしまう。
それが二人に良くも悪くも緊張感のない行動を取らせるのだった。


「はぁ……千原サンが虫が怖いのはよくわかりましたよ。でもさ」
「なに?」
「虫はダメでなんでトカゲは大丈夫なんだよ?」

溜息混じりに恋矢が振り向いた先には虫に対して360度警戒する亜希の顔があったが、その肩の上には一匹の手のひらサイズの白トカゲが乗っていた。
トカゲは変温動物なので太陽が昇るまで彼女の頭から動く気配がない。
ちなみにこの白トカゲはこの森で見つけたトカゲではなく本来は恋矢の支給品であり、虫かごに入っていたコレを見覚えのあるらしい亜希に譲渡したのだ。

「ええ? なんで?」
「なんでって……キモくないのかよトカゲ」
「はあ!? ミケルつーか、トカゲはそんなにキショくないし!
触ってみると蛇革みたいで案外気持ちいいし、お目目はクリッとしてて二つに割れた舌をチロチロするところはなんだかキモ可愛いし、足は四本で動きも芋虫や蜘蛛みたいにキモくないから!」
「お、おう……」

ギャルに逆ギレされてタジタジの恋矢先輩であった……
女子と言えば虫に限らず、爬虫類や魚もダメな印象があったための恋矢の発言であったが、亜希の場合は虫は見るのもダメなのと引き換えにその他の動物は触っても大丈夫らしい。
また、ミケルと名づけられた白トカゲは現在ブレイク中のアイドルである井上快夢のペットであり、快夢は亜希にとっての大親友である。
そんなミケルを気持ち悪いと言ったことのように聞こえたことに亜希には癪に触ったようだ(なお、キモ可愛いならセーフだった)。


「てゆーか恋矢〜、まだ例の玩具見つからないの?」
「たぶん、この辺にぃ、落としたと思うんだけどな〜。
距離にすれば自宅から近所のコンビニに向かう程度なんだけど、なまじ土地勘がない上に暗いし、誰かさんが虫を怖がったせいでほとんど前進できなかったから時間かかっちまったなぁ〜」
「む」

恋矢が刃物に怯えてうっかり投げ捨ててしまった玩具――と思っていた支給品を探しに来ていた二人だが、C-4と隣り合うD-4エリアは地図上の尺を見てもそれほど離れていない50m以内の距離だ。
しかし恋矢の話した理由、特に虫に怯えた亜希が大きな割合を占めて前進がなかなかできなかった。

「そもそも恋矢がビビって投げ捨てなければ……」
「ちょっと待って、今草むらの中になんか光ってたぞ」
「マジ?」

恋矢の遠まわしな文句を亜希が文句で返そうとした寸前に、恋矢は見つけたのだった。
光っていたのは緑の目をしたライオンに似た何かを掘られた黄金の指輪。
そしてその他の指輪や銀色のベルト、銃なども草むらの中に転がっていた。

「あった、あったコレコレ」
「これが恋矢の支給品なの? マジで玩具にしか見えないんだけど……」
「だろ?」


674 : ◆YlfcDuGY1. :2017/09/25(月) 23:43:01 LxS4zhXw0

件の支給品は、本当に子供向けの玩具にしか見えないデザインをしていた。
もし本当に玩具ならハズレ支給品もいいところだが、これのせいか二人の中で殺し合いが大掛かりなドッキリなのでは……という考えが余計に大きくなる。

「あ〜、これなんだか仮面ライダーの変身ベルトに似てるよなあ。
子供の頃、こういうおもちゃに憧れたんだけど、高くて親に買ってもらえなかったぜ」

そう言って、ベルトを装着する恋矢。

「何してるの?」
「いや、せっかく見つけたんだからなんとなくつけてみようと思って……お? このベルト、ちゃんと大人でも合うようにサイズが調整されているぞ」

深い意味はなく、なんとなくベルトを理由をつけた恋矢。
ようはおふざけの一環である。

「スイッチ……とかないな。この穴に指輪を差し込んだりすると動いて音を出すのかな?」
「最近の玩具は良く出来てるからね〜」
「見とけよ見とけよ、俺の、変身ってね!」

恋矢は亜希を楽しませる目的で指輪を左手につけて、即席で思いついた変身ポーズをした後に指輪をベルトに差す。
ちなみに振り付けは、左腕を上に上げ、次に亜希に指輪を見せるように左手のひらを返し、そこから鬣を描くように左腕を右に右腕を左へと持っていく。
そして右腕が右上にきたところで一瞬だけ右腕を左に持っていき、すぐに両腕を右側に持って行って“C”に似た文字を作る。
最後にベルトの側面に空いている穴に指輪を差し込み、内部ではめ込むように回した。
そのポーズは偶然にもこのベルト本来の持ち主のそれと酷似していた。

『SET! OPEN!』

ベルトから音声が出ると、ベルトの中から黄金の獅子の顔をあしらったレリーフが現れる。
恋矢と亜希からすればこの後に「ドッキリ大成功」の看板を抱えた番組スタッフがやってきて殺し合いは嘘であると告げてくれれば嬉しかったかもしれにない。


しかし、魔法は実在することを直後に二人は知ることになる。
それと同時に殺し合いも異能も嘘ではないと知ることになるのだった。

「ファ!?」
「ええ!?」

突如、獅子の口から金色の魔法陣が現れ、一瞬で恋矢を飲み込む。
その際に『L・I・O・N! ライオーン!』とふざけたような音声が聞こえたが、これは普通に唱えると時間のかかる呪文を圧縮して高速化したものである。
そんなことは最近の仮面ライダーをよく知らない二人には知る由もないが、この二人にはこの言葉を送っておこう。

奇跡も魔法もあるんだよ、と。



魔法陣が消えると同時に恋夜の姿は一人のヒーローに変化していた。

「えっ、何これは……」
「嘘!? 本当に変身しちゃった?!」

その名は仮面ライダービースト。
仮面ライダーウィザードの相棒にして、ファントムにして魔獣キマイラの力を行使する古の魔法使い。
その姿は金色と黒を基調に雄々しきライオンを仮面ライダーに落とし込んだ姿であった。
おふざけで変身ポーズを決めるつもりが本当に姿を変えてしまった非現実的な事態に、恋夜も亜希も驚きを隠せない。

「信じられねえ……だけど力がみなぎるのを確かに感じる」
「恋矢?」
「ちょっと離れて、木から虫が落ちてくるかも」
「ひえ、なにすんの!?」

仮面ライダーとなった恋矢は手近な木に近づき、亜希が(虫を怖がって)十分な距離を離れたのを確認すると、その太い幹に空手部由来の回し蹴りを放った。
するとバキリという音と共に幹にヒビが入り、数十の木の葉と虫が落ちてきたと同時にメキメキと音を立てて木は倒れた。

「うせやろ」
「これマ」

空手部に通っているだけの大学生が一発の蹴りだけでプロにもできない倒木を成し遂げた光景に、二人は「嘘だろ」「これマジ」という言葉を中途半端に言い放たさせるほどの衝撃を受けた。
仮面ライダービーストのキック力は7.5tであり、直撃すれば常人を簡単に殺害できる威力だ。
そのだけの力――異能を恋矢は手に入れたのである。

「やべえよ、やべえよ、なんだよこれよ……」

恋矢が異能の力を知って最初に知ったのは、大いなる力に対する恐怖。
その気になれば簡単に人を殺せるだけの力を手にしたことに恐れを抱いたのは彼に人間性がある証であろうか?
まるで仮面ライダー一号こと本郷猛が改造人間になった自分自身を初めて恐れたように、ナオ=ヒューマによって肉体改造をされていた恋矢も己の力に恐怖を持った。
本郷との違いは体に機械を入れているか否かの違いであろう。

(それに、なんだこの疲労感、いや空腹感か?)

恐怖の次に抱いたのは腹がどんどんと減っていく感触。
ただ変身しているだけでも僅かずつだが、空腹感が加速していく。


675 : ◆YlfcDuGY1. :2017/09/25(月) 23:43:43 LxS4zhXw0

(この異能……力と引き換えにずっと変身し続けると腹が減っていく異能なのか?)

仮面ライダービーストは定期的に魔力を吸収しなければ死んでしまうという非常に重い制約が課されている。
そして魔力は変身したり魔法を使うほど減っていき、それが本来の持ち主である仁藤攻介と同じく空腹感として身体に現れているのだ。
今はちょっと気になる程度の空腹感だが、このまま変身し続けるとどうなるのか……仮面ライダービーストを知らない恋矢にはわからない。
そして、恋矢はバックルから指輪を抜いて変身を解除する。


「まさか俺が特撮ヒーローみたいになれると思わなかったよ〜」

変身を解除した後にクルリと恋矢は亜希に向き直り、笑顔を見せる。
これは自分が抱いた異能への恐怖を悟らせないための恋矢なりの配慮であった。

「っ……!」
「あれ?」

亜希はさっきまでの能天気さや明るさはなく、蒼い顔をして震えていたのだ。
虫にビビっていた時とは違う、もっと根源的な恐怖を目に映らせていた。

「あっ……!」

彼女の目を見て恋矢は察する。
自分がその気はなかったとはいえ、異能を見せびらかしてしまったことで、亜希を怯えさせることに繋がってしまったのだ。
現実ではありえないと思っていた、一瞬でスーツを纏うことや蹴り一発で倒木を可能にするパワーなどの異能の存在証明を恋矢がしてしまった。
異能の存在が証明されたということは、この殺し合いは決しておふざけのドッキリではないことに繋がるのだ。

「やっぱりドッキリじゃないんだよね……さっき殺された女の人や、オッサンも……」
「まあ、多少はね……」

全てドッキリ番組でモニターの前では親友の快夢が笑っている……そんな幻想を打ち砕かれた亜希の目は涙目になっていた。
本当に目の前で人が殺される瞬間を見た上に、自分たちもまた殺し殺されるかもしれない渦中にいる。
対する恋矢もまた彼女にかける言葉が見つからず、ただ視線を下ろすだけであった。
そして殺し合いという異常事態に巻き込まれたことを理解した二人は、これからどうするべきか、それさえも浮かばなかった。



その時である。
亜希に全身の毛が逆立つような感覚が襲った。
この殺し合いにおいて二度目である。
しかも今度は明確な敵意らしきものを恋矢の方向から感じていた。
亜希の視線が恋矢に視線を向けると、相変わらず彼は地面に視線を向けているが、その手はディパックに伸びていた。
そんな何やら今にも動き出しそうな彼に亜希は警告する。

「動かないで!」

そして亜希は直感的に、本能的に右手を恋矢の方角に向け、更に広げた手のひらの中にあるスイッチを押すように中指と薬指を折った。
次の瞬間には右手の付け根、ちょうど脈がありそうな辺りに穴ができ、そこから白い粘液のようなものが発射された。









「んにゃぴ、え……?」


676 : ◆YlfcDuGY1. :2017/09/25(月) 23:44:13 LxS4zhXw0

粘液は大気中で凝固して糸へと変化し、恋矢の肩の上をすり抜けていた。
そして糸は恋矢のすぐ後ろにあった木に直撃し、張り付いた。





「危なかった……」
「……一瞬おまえに殺されるのかと思ってびっくりしたゾ」

どこかホッとした様子の亜希と、小腹が空いたのでディパックにある支給食料に手を伸ばそうとして驚かせられた恋矢。
その後ろの木には――ぶぅ〜ん、ぶぅ〜ん、と一匹の大きな蜂が糸に絡まっていた。

「この蜂……すごく大きいです。刺されたらぜってぇ痛い目にあってたなコレ」
「さっき木を倒した時か恋矢が出した食べ物の匂いに釣られてやってきたんだと思う。
あのままボーッとしてたらアンタ刺されてたよ」

亜希は蜂に気づいていない恋矢を助けるために、異能の力で彼を守ったのである。

「アタシの異能、予知だけじゃなくて糸の発射もできたんだね。でもこれって――」
「この糸はいったい……ああ、これ蜘蛛糸だ」
「蜘蛛……」

恋矢は木に張り付いた糸を見聞すると繊維の形から蜘蛛糸であると理解する。
ついでに日本刀で突くが、全く切れない。
それもそのはず、蜘蛛の糸は世界最強の繊維と謳われ、それを更に強化したこの蜘蛛糸は鋼鉄並みの強度を誇り、摂氏550度または華氏55万5538度まで耐えてしまう、超常レベルの繊維だ。

その上で亜希が手から糸を出した瞬間の独特の手の形には、恋矢にとっても亜希にとっても見覚えがあった。

「さっき千原が出した糸って確か、スパイダーマンじゃね?
確かサムライミ版っていう一番古い実写映画の……」
「くも……きゅう」
「って、ファ!?」

恋矢の口に出した亜希の異能の正体はサムライミ版のスパイダーマンでズバリ正解であった。
他のスパイダーマン映画には無い特徴として蜘蛛に噛まれて肉体が変化した主人公のピーター・パーカーはウェブシューターと言った機械を使わずに直接糸を腕に空いた穴から発射する。
だがそれを聞いた亜希の顔は蒼かった顔が更に蒼くなり、ばたりとその場に倒れてしまった。
彼女は虫の中でも蜘蛛が大の苦手であり、一番嫌いな生物の力を持ってしまったとわかれば人によっては悶絶ものだろう。

突然失神した亜希に驚く恋矢。
幸いなのは倒れた際に頭などの大事な部分を傷つけなかったことと白トカゲのミケルが潰れなかったことであろう。

「お、おい、こんなとこで気絶すんなよ! 殺し合いに乗った奴に狙われたらどうすんだ。
……しょうがねえなあ、もう」

気絶してしまった同行者にむけて苦そうな顔をしつつも、ミケルを虫かごに入れて、亜希をおぶって神社に戻ることにする恋矢。
失神しているなら亜希を殺せる最大級のチャンスであったが、彼はそれをしなかった。
初めて会ってから三時間も経っていないが、彼女の明るい人柄を知ってしまうととても殺す気にはなれず、何より彼女には蜂から守ってもらった借りがあった。

「これで貸し借りなしだかんな」

失神している亜希にむけてそっと微笑む恋矢であった。
そして神社を目指す。
これからどうすればいいかさっぱりわからないが、とにかく生き延びるための自分たちの知りうる砦である神社に戻るしかなかった。
そして亜希を背中で抱えながら神社へと歩を進めた。





一方、彼らを見つめる視線があったことを恋夜たちは知らない。
それはビーストドライバー……その中に封じられたファントム、キマイラだった。

魔獣は今は沈黙をしている。
まだ状況を読めずに混乱しているのか、新たなる契約者を値踏みしているのか、それとも……


677 : ◆YlfcDuGY1. :2017/09/25(月) 23:44:43 LxS4zhXw0



【一日目・2時00分/D-4・森林】
【千原 亜希@スパイダーマン/スパイダーマン(サムライミ版)】
[状態]:失神、スカート膝下、襟までボタンを閉めたマジメスタイル、殺し合いへの恐怖
[装備]:七味唐辛子、ミケル、ミケルの入ってる虫カゴ
[道具]:支給品一式
[思考・行動]
基本方針:不明(ドッキリではないのはわかった)
0:失神中
1:虫怖い虫怖い虫怖い蜘蛛怖い蜘蛛怖い蜘蛛怖い
2:恋矢と一緒に行動
3:殺し合いや異能への恐怖感
※異能がスパイダーマンであることを理解しました
※漫画、特撮に対しての知識は「ワンピース」と保育園の時に見ていた「魔法戦隊マジレンジャー」
「仮面ライダー響鬼」「ふたりはプリキュア」のみ


【田所 恋矢@仮面ライダービースト/仮面ライダーウィザード】
[状態]:精神疲労(小)、混乱気味、空腹度5%
[装備]:仮面ライダービーストの装備一式
     (ビーストドライバー、ファルコリング・カメレオリング・ドルフィリング・バッファリング、
     ハイパーリング、ダイスサーベル、ミラージュマグナム、グリーングリフォン@仮面ライダーウィザード
[道具]:支給品一式、サバイバルナイフ、日本刀、プラモンスター
[思考・行動]
基本方針:すいません許してください、何でもしますから……
0:とにかく今は神社に戻る
1:本気で早く家に帰りたい
2:気絶した亜希を神社までは守る
※異能が仮面ライダービーストであることを知りましたが、知識が無いので具体的に何ができるのかわかっていません。
※仮面ライダービーストの装備一式は制限により田所恋矢にしか触る事ができません。
 また、何かしらの能力で触れたとしても、使用できるのは田所 恋矢のみです。
 この制限は田所 恋矢が死亡しても解除されません。
※長時間魔力を得なかったり、ビーストの能力を使うたびに副作用として空腹感が高まっていき、100%になると死亡します。
 食事で空腹感を抑え、他の参加者を殺害して魔力を吸収するなどで空腹を満たすことができます。

 

【支給品紹介】

【ミケル@オリジナル支給品】
参加者である井上快夢のペットの白トカゲ。虫カゴ入り。
手のひらにはギリギリ収まる程度には大きいが具体的な種類は不明。
白トカゲは幸運をもたらすらしい。
爬虫類は変温動物なので夜間はほとんど動けない。

【仮面ライダービーストの装備一式@仮面ライダービースト】
古の魔法使い・仮面ライダービーストへの変身を可能にするビーストドライバーや様々な魔法を駆使できる武器・指輪を揃えた一式。
またファルコリングで飛行能力、カメレオリングで透明化、ドルフィリングで治癒、バッファリングで肉体強化の能力を主に得られる。
ハイパーリングを使えばミラージュマグナムを使えるビーストハイパーにパワーアップアイテムできるが魔力の消耗(空腹度の上昇)も激しくなる。
使い魔であるプラモンスター・グリーングリフォンは飛行能力を持ち、小さいので偵察に向いている。
制限の関係上、全て田所恋矢専用支給品。
また、ベルトの中に封じられたファントム、キマイラとも会話可能。


678 : ◆YlfcDuGY1. :2017/09/25(月) 23:45:49 LxS4zhXw0
投下終了です。
タイトルは「ギャルと見るはじめての異能」でお願いします。


679 : ◆YlfcDuGY1. :2017/10/22(日) 22:13:13 ZGoFZZDc0
予約の島津蒼太、成沢弥生、藤崎直哉、八神そう、後藤万緒、萩原舞を投下します


680 : セトの花嫁 ◆YlfcDuGY1. :2017/10/22(日) 22:16:12 ZGoFZZDc0
J-4の砂浜を移動していた、そう、万緒、舞とジャックフロストによる三人と一匹は、図書館へ向かうまでの間にまた一人の仲間が増えることになった。
いや、一人の仲間というより一匹の仲魔が増えることになった。
ジャックフロストの提案により、全員の生存率を高めるため、新たに仲魔を増やすことにしたのだ。

「“ピクシー”!」

万緒が天に右手をかざすと、少女たちの近くに稲妻が落ち、そこから新たなる仲魔が現れた。
悪魔が小さな羽をトンボのようにバタつかせて宙に浮きながら、赤い瞳で周囲を見回す。

「あれあれ? ここはどこかしら……って、ちょっと、頬ずりしないでよ!」
「妖精っていうから可愛らしいの想像したけど」
「むっちゃ可愛いやん! まるでリインフォースや」
「万緒〜、私にも抱かせて!」
「……やれやれ、またこのパターンかホ」

召喚したピクシーは妖精の名前のとおりに、手のひらに乗りそうな小さな少女に羽虫の羽と尖った耳を持った愛くるしい姿をしており、カワイイもの好きな女の子ならまず反応する姿をしていた。
召喚した直後にさっそくピクシーを愛でる三人の少女、弄ばれてバタバタするピクシー。
その端で経験のあるジャックフロストはため息をついていた。

「ねえ、ジャックフロスト! 悪魔ってこんなに可愛いのばっかりなの?」
「んなわけねえホ。ダツエバとか見たらおまえら卒倒するホ」
「だ、誰かアタシに状況を教えて〜〜〜!」

すっかり悪魔への恐怖心が薄れてしまっている万緒にジャックフロストは呆れるように言葉を返す。
ついでに状況についていけずに混乱しているピクシーに、現状を説明しておいた。


「ふぅ〜ん、じゃあこの人修羅が死んだら契約しているアタシたちも死ぬのね?」
「まあ、そういうことになるホ。
マオは殺し合いに乗る気はないみたいだからオイラたちは殺し合いからの脱出を目指すことになるホね」
「ボルテクス界に帰るにはそれしかないかぁ」
「ボルテクス界って何?」
「オイラたちの住んでいた世界のことだホ」

ジャックフロストによってだいたいの状況を理解したピクシーは、にこやかに笑って万緒に手を差し出した。
握手のつもりらしい。

「わかったわ。私は妖精ピクシー。
ボルテクス界に帰るためにマオたちに協力するね」
「ありがとう!」
「今後ともよろしく、ってね」

万緒は笑顔で小さな仲魔の手を握り、殺し合いを生き抜くための仲間として握手を交わした。



「――というわけでピクシーにはオイラたちより前に先行して偵察することをみんなに提案するホ」
「え? ピクシーだけを前に出すの?」
「ピクシー自体が対して強くないと自分で言ってるけど、大丈夫なんかそれ?」

一頻りまとまった後にジャックフロストは三人に提案するが、力の弱いピクシーを一匹で先に行かせて大丈夫か、それよりも全員で固まって動いた方がいいのではないか、というのが万緒とそうの感想だった。
しかし、サバゲー知識のある舞とボルテクス界でそれなりの修羅場を体験しているであろう悪魔の意見は違った。

「なるほど、ピクシーは確かに力は弱そうだけど、その代わり飛べるし小さな体を持っている。
だから敵に発見され難いし、万が一は飛んで逃げられる」
「私たちで勝てそうにない異能を持っている奴がいたり、危険な罠があったらマオたちに知らせられるしね」
「まさにピクシーは生きたドローンね」
「ヒーホー、ドローンがなんなのかわからないけど、オイラが言いたいこととだいたい合ってる気がするホ」

飛行能力と小さな体を持つピクシーなら殺し合いに乗った人物に発見されにくく危険を知らせることができる。
不意打ちや罠によるリスクも減らせるだろう。
集団行動で戦場を練り歩くには斥候の大切さは必要なのだ。

「そんなことしなくてもみんなで固まって動いた方が良いんやない? ……ピクシーも危ないやろうし」
「甘いよそうちゃん! そんなんじゃ突然のアンブッシュを喰らった時に全滅するわよ」
「どんな猛者でもハマで先手を打たれたらあっさり沈むホ」
「あの……アンブッシュとかハマとかいきなり言われてもさっぱりわからへんのやけど!?」

専門用語を言われて混乱するそう。
その横で万緒はピクシーに問いかける。

「ピクシーは大丈夫なの? 一人だけ離れて前を行くのは危なすぎない?」

神妙な面持ちの万緒に対して、ピクシーは飄々と答える。

「べっつに〜。ボルテクス界じゃその程度の危険は日常茶飯事だよ。
それに……」
「それに?」
「アタシ自身、決して強い悪魔じゃないけど、マオたち三人に比べれば戦いなれているつもりだよ。
襲いかかってくる悪い奴はサクッと殺しちゃうね」
「う……」


681 : セトの花嫁 ◆YlfcDuGY1. :2017/10/22(日) 22:17:10 ZGoFZZDc0

ピクシーのあどけない顔に似合わない、敵対者ならば殺せる瞳と言葉にそうは怖気を覚えた。
このピクシーやジャックフロストは味方であるからまだ良いが、もし状況が違ったら生き延びるために自分たちに襲いかかってきてもおかしくないのだ。
ボルテクス界がどういうところかまだわからないが、少なくとも争いのない日常で生きてきた自分たちはまず体験しない、ヨハネスブルクのような無法地帯ではないかと万緒は思う。

生き延びるためなら敵対者を殺せる。
そう言った点ではどんなに見た目は可愛くても、やはり悪魔なのだと。
それを理解した上で万緒はジャックフロストの提案に賛同し、ピクシーに指示を出す。

「わかったわ……ジャックフロストの言ったとおり、ピクシーは先導をお願い」
「ピクシー、危のうなったらすぐ引き返してや」
「私たちがすぐに駆けつけるからね」
「へーき、へーき。アタシはそう易易と死なないよ」

少女たち三人の心配をよそに、ピクシーは一行から離れて偵察行動を開始する。
一行の目となった妖精はいかほどのアドバンテージを与えるのだろうか?



同時刻、J-4の最寄りのエリアであるI-4の草原。
ここでは命をかけた鬼ごっこが繰り広げられていた。

「待ちやがれ!! カモホモ野郎!」
「待つわけ無いだろ、それに僕は男色家じゃない」

追われるは幼くなってしまった弥生を抱えて走る少年、蒼太。
追うは支給品の鎌を片手にオタノシミの邪魔をした蒼太に向ける幼女姦淫人面獣心の藤崎。
その二人は一定の距離を保ちつつ追走劇を繰り広げている。

肉体的に優れている蒼太は幼女となった弥生を抱える分には、走力はさほど減衰しない。
だが、追跡者である藤崎を撃退して距離を引き離す手段がない。

(銃や異能を使って追い払うか……?
いや、相手の異能がよくわからない。不用意な攻撃は危険だ)

先程は与えられた異能である「腹話術」を使って弥生を救い出すことができたが、それは相手に異能を使わせなかった不意打ちによるものであり、真正面からかち合った場合は敵の能力いかんによっては制約の多すぎる腹話術など簡単に足蹴にされるだろう。
ならば銃を使って戦うことも考えたが、これもまた相手の異能が愛のように傷を再生する能力や銃弾を跳ね返すバリアなどだったら効果は薄い。

ただ少なくとも藤崎が銃や異能で攻撃してこないところからして、遠距離武器や異能の使用には一定の距離に接近する必要があることはわかった。
それを踏まえて撃退するための行動にでなくては、いくら体力に優れる蒼太といえどいずれは疲弊し、追いつかれてしまうだろう。

(せめて逃走に使えそうな支給品はないか?)

藤崎を確実に巻くことができそうな手段をディパックの中に求める蒼太。
残念ながら蒼太の支給品はイグナイトモジュールという特定の参加者を強化できるらしい宝石と、警察や警備員が持っていそうな警棒だけである。
シンフォギア装者のために作られたイグナイトモジュールで蒼太の異能が強化できるわけがなく、警棒で戦おうにも藤崎の異能の射程に入ったら意味がない。
なので、蒼太が開けたディパックは保護対象である弥生である。

「ごめん! ちょっと借りるよ!」

弥生から支給品を漁っていいという許可はもらっていないが、彼女は相変わらず恐怖と混乱で動けなくなっており、非常時なので仕方ないと割り切って蒼太は使えるものを探すことにした。
煙を撒く発炎筒や火事を起こす火炎瓶でも入っていれば藤崎から逃げ切れるかもしれないと希望を持って、ディパックを漁った。

「…………これ、使えるか?」

結果、ディパックの中から「使えそうなもの」が出てきた。
蒼太はさっと該当の支給品を流し読みして、これを如何様に使うかを考える。
なるべく早く、有効的に使える方法を考える。

「うわ!!?」
「キャッ!?」

その時である。
幼女だと思っていた弥生が突然大きくなり、蒼太と同い年ぐらいの少女……本来の女子高生の姿に戻り、合わせて体重も年齢相応に戻る。
そうなった場合、軽いと思って持ち運んでいたものが突然重くなった時、大半の人間はどのような対応を取るか?

答えはバランスを崩しての転倒である。

いくら蒼太といえ、普通は体験しない出来事に体が慣れてないために転倒することになった。
弥生もまた地面に転がり、持っていた拳銃が地面に落ちる。

「まさか……アイツの能力は……!」

そこまできて漸く、蒼太は藤崎の異能を理解する。
抱えていた弥生がやたらブカブカの服を着ている時点で気づくべくだった。
藤崎が相手を幼くしたり、戻すか老いさせる能力なのだと。
それがわかった時には蒼太は藤崎の射程圏内である、影の中へと入ってしまい、弥生ともども三歳くらいの幼児になってしまった。


682 : セトの花嫁 ◆YlfcDuGY1. :2017/10/22(日) 22:17:46 ZGoFZZDc0

「ま、まずい、ガハッ!」

弥生とともに取り落とした拳銃を拾いに行こうとするが、その前に蒼太の腹に強烈な蹴りが入る。
軽くなった蒼太の体が数メートルほど飛んで地面にぶつかった。

「へへ、昔ジョジョを読んでいた時に思ってたんだ。
この『セト神』、ただ幼くするだけじゃなくて一定のタイミングで能力を解除する有用な使い方もできるんじゃないかってなあ〜!」

藤崎は悪神の名を持つスタンド『セト神』をあえて解除して、蒼太の意表を突く使い方を思いつき、実行したのだ。
結果としては藤崎の思惑通りになり、蒼太に追いつくのみならず、幼児化させて戦闘力を極限まで奪うまでに至った。

「このまま、受精卵に戻して殺すこともできんだろうが、それじゃ面白くねえ。
殺すついでに俺と弥生ちゃんとのオタノシミを妨害したことを泣いて後悔する様をおがんでやる!」

藤崎は舌なめずりをしながら拳銃を拾って銃口を蒼太に向ける。
自分の異能と性癖が知れ渡ると優勝するにしろ脱出を目指すにしろ、今後が生き延びづらくなるとの焦りから蒼太を殺すことが彼の決定事項である。
藤崎はロリコンなれど本来は快楽殺人鬼ではないのだが、自分にとっては夢と言えた異能を手に入れたことでハイになっており、弥生とのまぐわいを邪魔されたことによる独善的な怒りは殺意へと変わっていた。
大きな力と夢を手に入れてしまってイカれた男に人を殺すことにためらいはない。

蒼太もまた抵抗しようとするが、持っていた拳銃ブローニング・ハイパワーも藤崎の手の中である。
しかも、今までの追跡劇で蒼太が藤崎の能力が一定以上近づかないと使えないことに気づいたことと同じく、藤崎も蒼太の能力が近づかないと使えないことに気づく。
よって、腹話術による反撃を恐れて鎌で切りつけようとはせず一定の距離を保って拳銃での射殺を試みる。
仮に腹話術の射程に入っていたとしても先にセト神の力で受精卵にまで若返らせられて殺害するだろう。

「や、やだ…こないで……」

弥生もまた恐慌状態のためにまともに戦うことはできない。

「待っててね、弥生ちゃん。後で俺が女にしてあげるから」

悪魔のスマイルを弥生に向けながら勝利を確信する藤崎。
万事休すとなったのか蒼太は手元にあった弥生のディパックの中身を藤崎に向けて投げつける。
それはペンやコンパス、一冊の参加者名簿といった参加者共通の支給品だった。
しかし、三歳児まで落ちた腕力故に大した勢いも出ずにそれらは藤崎の足元近くに落ちただけで精一杯であった。
どちらにせよ藤崎に直撃しても大した打撃にはならないだろう。

「これが抵抗のつもりか?」

蒼太の抵抗を嘲笑うは藤崎。
その藤崎は蒼太に向けて銃の照星を合わせる。
さて、腕か足……どこから吹き飛ばしてやろうか、とサディスティックな考えがよぎっている。


そんな時であった。


普通ならあるはずのない出来事が起きる。

「――え?」

突如、足元に投げ込まれた参加者名簿が手榴弾のように爆発し炎上、そして藤崎の両足を粉々に吹き飛ばしたのだ。
足を付け根から失った藤崎が吹き飛ばされて後方へ飛んで地面に落ちる。
同時に大ダメージを受けてスタンドを制御する力を一瞬でも失ったためか、蒼太と弥生は三歳児から元の高校生の姿へと戻った。


683 : セトの花嫁 ◆YlfcDuGY1. :2017/10/22(日) 22:20:01 ZGoFZZDc0



ここでタネを明かそう。
蒼太が投げ込んだのはペンやコンパス、参加者名簿といった基本支給品だけではなかった。
NARUTOに登場する手榴弾代わりの物品、起爆札があり、これを爆破したのだ。

しかし投げ込む瞬間にそんな怪しい札があれば警戒して避けてしまうだろう。
そこで蒼太は名簿のページにしおりを入れるように、起爆札を挟み込んだ。
そして全員が共通で持っている上に殺傷力のない普遍的な支給品を投げることで無駄な悪あがきをしているように見せかけて警戒心を薄れさせた。
先ほど藤崎は蒼太の異能を喰らっていたため、物体に殺傷力を加える異能ではないと知っていた故にこれらの物品に対する油断が生まれていた。

結果的に藤崎は地雷を踏んだ人間と同じような悲劇を味わう羽目になる。




「あひィ、あひィ、あひ、うおおおおおおおおおお!!
おおおおおおれェェェェェのォォォォォ あしィィィィがァァァァァ〜〜〜!!」

一瞬で両足を失った耐え難い激痛に藤崎は悲鳴をあげてのたうち回る。
両足は血が噴き出しており、傷口は骨と脂身と肉が見えている惨憺たるものであった。

「形勢逆転だな」
「て、てめえ」
「させない、拳銃と支給品は全部没収させてもらう」
「あ……」

元の姿に戻った蒼太が藤崎に迫る。
藤崎は拳銃で蒼太を射殺しようとするが、それより早く蒼太は腹話術と使って藤崎の意識を奪い、操って拳銃と支給品を奪わせた。

「この野郎……」
「ふん」

武器を失ったのなら異能だと藤崎はセト神たる影を再展開させるが、蒼太はこれを躱してブローニングハイパワーから発射されたパラべラム弾が藤崎の左耳に大穴を開けて、再びスタンドが引っ込ませる。

「あひィ!」
「直感だがだいたいわかった。
アンタの異能はその影を踏むか、影を交わらせると発動するんだろ?」

周辺は起爆札による爆発の残滓によって僅かであるが火が移り、明かりがついていた。
これにより藤崎のスタンドの影に気づくことができたのだ。
その影は少なくとも目や嘴らしきものがついているので人のものではない。
そこからこの怪しい影が藤崎の力の源であると気づいた。
ちなみにスタンドは本来はスタンド使いにしか見えないが、バランス調整のためか制限で誰でも見ることができる。
それでも夜間であれば闇の中にある影の見極めは困難であったが、起爆札さえ爆破させなければ、そもそも蒼太を幼くする段階で変なこだわりを持たずに一気に胎児にでもしてしまえば起爆札を使わせずに殺害はできたハズだ。
全ては藤崎の慢心が招いた結果である。

「初見だと強いが、タネさえわかれば余裕……少なくともアンタの異能より、この銃の方が早いね」
「このクソカスがあああああ!」

蒼太の言うとおり、藤崎がスタンド攻撃をするよりは引き金を引く方が早く、両足を失ってしまった藤崎では銃弾を避けることもできない。
チェックメイトである。

(……とはいえ、お姉のためにも人殺しはしたくない。
両足を失った以上は一人で移動はできまい、この殺し合いで誰かに依存しないとこいつは生きていけない。
優勝への望みも絶たれたハズだ。
だが、こいつは反省の色も見せずに僕への闘志も薄れていない……どうするべきか)

戦いにおいて優位に立った蒼太であるが、やはり人殺しへの抵抗はあった。
しかし藤崎の殺意は薄れておらず、仮にそうでなくとも弥生もいるのに殺し合いが終わるまで足のない奴の面倒を見るのは骨が折れる。
見捨てていけば殺し合いに乗った誰かが殺してくれるかもしれないが、少々後味が悪い。
次に見つけた何も知らない参加者に対して藤崎が襲いかからないとも限らないからだ。
どう処断を下すべきか、考えあぐねてきた。


そこへ一匹の妖精が飛んできた。


「ちょっとそこの人間ー! なにしてんのー?!」
「妖精!?」
「空飛ぶ幼女!?」


684 : セトの花嫁 ◆YlfcDuGY1. :2017/10/22(日) 22:21:03 ZGoFZZDc0

羽虫かと思いきや、日常でお目にかかれるハズのない小さな存在にギョッとする蒼太と藤崎。
察するに妖精を操れるなどの誰かの異能であろうか?
今さっきの爆発音や銃声に引き寄せられたらしい。

これに対して驚いた蒼太であったが、すぐにこれはチャンスであるとも考える。
相手が殺し合いに乗っていなければ、殺し合いに乗じて弥生をレイプしようとした藤崎を数の差で抑え込んで抵抗できないようにすることもでき、藤崎も優勝を諦めるだろう。
そう考えた蒼太は妖精に声をかけようとする。

「ちょうど良かった、僕は「騙されるな! そいつは殺し合いに乗ってる!!」……なっ!?」

その時である。
蒼太の声を覆いかぶせるように、大声で藤崎はピクシーに呼びかけたのだ。嘘の情報を。

「ま、待て僕は……「助けてくれ! このままじゃ殺されてしまう!!」

蒼太の声をシャットアウトするように、より大きな声で訴えかける藤崎。
加害者が被害者ぶり、被害者を加害者に見せかけるために。
そして、藤崎を聞いたピクシーは。

「なるほどね〜。
殺し合いに乗っている上に、女の子に乱暴たんだ〜」
「違う!」

ピクシーの視点では両足と支給品を失った満身創痍の藤崎と、銃を構えて相手を殺そうとしているように見える蒼太。
そして蒼太の後ろには乱暴されと思われるぐらい衣がはだけている弥生がいた。
事前の状況を知らなければ、蒼太の方が冷酷な殺人鬼に見えるだろう。
ピクシーの無邪気さの中に殺気が混ざる。
彼女は完全に騙されたのだ。

してやられたと思う蒼太。
それに内心でほくそ笑むは藤崎である。

「女の子に乱暴するやつは死んじゃえば〜? ジオ!!」

蒼太を危険人物だとみなしたピクシーの行動は早かった。
小さな両手を蒼太のいる方向へ向けると、蒼太の直上から稲妻が落ちる。
電撃魔法『ジオ』だ。

「くっ……」

反応が間に合い、危険を察知した蒼太は後ろへ飛んで寸でで躱す。
蒼太のように身体能力と反射神経に優れたものでなければ避けることなどできなかった。
そして、肉体的に優れる蒼太でもジオが直撃すれば瀕死の重傷……最悪そのまま死亡するだけの威力がジオにはあった。


685 : セトの花嫁 ◆YlfcDuGY1. :2017/10/22(日) 22:22:31 ZGoFZZDc0

「むぅー、避けられちゃった。次は外さないよ!」
(説得は無理か……! だがお姉のためにこんなところで死ぬわけにも!)

一度見てわかったが雷撃のスピードはかなりのものであり、次に撃たれたら避けられないと悟る蒼太。
しかもピクシーがやってきた方面から何人かの人間がやってくる気配がする。
戦うにしても数の差、そして集団戦には向かない腹話術では不利である。
気が立っているピクシーに説得は困難であり、このままだと袋叩きにされてしまう。
そうなれば藤崎の思うツボだ。
弥生を証人にする手もあるが、恐慌状態である現状でまともな証言は望み薄だ。
逆に藤崎の標的にされてしまう。

説得も戦闘も無理だと判断した蒼太は弥生とともにこの場は逃げることを選択する。
立ちふさがる壁としてピクシーがいたが、彼女が攻勢(プレスターン)が回ってくる前に行動に出た。
蒼太は起爆札を貼り付けた警棒を投擲する。

「どこ見て投げてるの?」

投擲先はピクシー……ではなく、彼女より数m上。
ただの暴投か、とピクシーは思ったがそれは誤りであった。

「え?」

蒼太が狙ったのはピクシーの直上にあるいくつもの木の枝。
そこにガサリと葉っぱをかき分け警棒が侵入すると起爆札が爆発し、いくつもの葉や枝が上から落ちてきて、それらにのしかかられたホバリング中の彼女を墜落させた。

「いったぁーーーい!」
「ごめん」

墜落したピクシーに謝りつつ、彼女が動けなくなった隙に弥生の手を引っ張る蒼太。

「あ、あの……」
「来るんだ!」

弥生を置いていくと藤崎が彼女やピクシーの持ち主である参加者たちに何をするかわからないので、今は共に逃げることを選択する。
弥生は未だに藤崎に対する恐怖心が抜けておらず、少なくとも味方ではある蒼太についていくしかなかった。
二人が逃げる方向は危険な藤崎や虎であるフレイスとは逆方向である西側である。


「あいつ……逃がさないんだから!」

ピクシーもただ黙っているだけでなく、葉や枝をかき分けて頭と両腕が自由になったところで遠のいていく蒼太の背中に向けてジオを放とうとする。

「やめてピクシー!」
「待つホ、ピクシー!」

それを止めたのは遅れて現場にやってきたジャックフロストだった。

「どうして止めるの?」
「今魔法を使ったら後ろの人間まで死ぬホ」
「……あの子は人質ってわけね」

蒼太に向けて電撃を当てることは不可能ではなかったが、その場合彼と手を握っている弥生にも通電してダメージを与えてしまう。
弥生は体のいい人質……にピクシーには見えた。

「ピクシー大丈夫!?」
「悪い奴はどこや?」
「ひいひい、待って……二人共足早すぎ」

ジャックフロストに続いて、万緒、そう。
さらに遅れて舞が草むらの中から現れる。
特に悪魔の契約主である万緒は急いで葉と枝に埋もれたピクシーを救助する。
その頃には殺し合いに乗ったと思われる少年と人質の少女はだいぶ離れていた。


686 : セトの花嫁 ◆YlfcDuGY1. :2017/10/22(日) 22:24:43 ZGoFZZDc0

「あれが殺し合いに乗っていた人?」
「早く追わんと!」
「ダメよ! どんな装備や異能を持っているかわからないのに深追いすべきじゃないわ。それに……」

殺し合いに乗った者を追いかけようとした万緒とそうを、彼女らよりは冷静であった舞は止める。
それだけでなく、舞の目線の先には両足を失いあちこり火傷だらけの藤崎がいた。
合わせて万緒とそうの目線も藤崎に向く。

「ひっ!」
「うっ……」
「こんな……ひどい」
「助けて、死にたくない……!」

藤崎の痛みに悶える姿と怪我は生々しく、そうは思わず目をそらし、舞は吐き気を覚えながら涙目になる。
万緒は不思議と吐き気も涙も出なかったが、藤崎が可哀想だと思った。
同時に自分たちにほど近い場所で殺し合いが行われたことに、三人の少女はショックを受けた。
先程までの能天気なピクニック気分など、もうない。

「と、とにかく処置しなきゃ……傷口を消毒して、止血しないと」

舞は哀れな犠牲者である藤崎を助けるために支給品にちょうど良い医療品がないかディパックを探す。
しかし、その前にピクシーが待ったをかける。

「待って! 私は回復魔法のディアが使えるよ。繰り返して使えば足も戻るかも」
「回復魔法ですって!」

ディアは傷を癒せる魔法だ。
回復効果自体はさほどでもないが、傷口を塞いで止血するだけなら十分であろう。
さらに何度かかければ失った足も戻ってくるらしい。

「でもディアでこの人間の失った足まで戻ってくるまでやったら、アタシの魔力も対して多くないからスッカラカンになっちゃうね」
「オイラとしては反対だホ。魔力を回復するアテもないのに攻撃手段であるジオや別の機会にいざ傷を治したい時にディアができなくなるホ」

仮に藤崎が足を取り戻すまでディアをかけたら、今後魔力を補充できる手段ができるまで魔法が使えなくなる危険があるので、ピクシーは許可を求めていたのだ。
……だが怪我の痛みにあえぐ藤崎を見て、少女たちは見捨てることはもちろん、布で縛る程度の簡単な処置で済ますこともできなかった。
彼に対してその苦痛をとってあげたいという気持ちが強くなる。
また止血だけしても彼は逃げる足もないので再び殺し合いに乗った者に狙われた時に殺される危険がある。
彼を守りながら戦うにしても万が一、というころもある。

「お願い万緒。この人に魔法を使ってあげて」
「ピクシーが魔法を使えなくなったら私が代わりの役目をするから、お願いや……」

涙目になって万緒に懇願する舞、そう。
仲魔に対する決定権は万緒が握っているが、彼女自身もまた二人と同じ気持ちであった。

「もちろん、私も二人と同じ気持ちだよ。ジャックフロストもいいよね?」
「……まあ、マオの決定なら従うホ」
「ピクシー、あの人を助けて」
「りょか〜い! ディア!」

人修羅たる万緒の指示を受けてピクシーが藤崎に向けて魔法を放つ。
それは破壊の力であるジオとは反対の癒しの力。

「痛みが…足の痛みが消えていく……」

藤崎が幾度かの光に包まれ、かけられる度にその顔から苦しみが消えて安らかなものになり、最後は穴の空いた左耳も無くなった両足も元通りになった。

「ふぅ〜、つかれたー」
「ありがとうピクシー、休んでて」

だいぶ疲れた様子のピクシーは手近な木の枝に腰をかける。
本当に魔力を使い切ったようだ。
一方ジャックフロストは起爆札で燃えた木々や木の葉が延焼して燃え広がるのを防ぐために火が小さい内に足で踏むなどして消火していた。
炎や煙で他の殺し合いに乗った者に居場所がバレてしまうのを防ぐための処置である。



「ありがとう、本当にありがとう! もうダメかと思っていた!」

藤崎は少女たちの前で土下座をするように怪我を治してもらったことを感謝した。
その感謝の言葉を聞いて少女たちもまた自分たちの決断に誤りはなかったと思うのだった。


687 : セトの花嫁 ◆YlfcDuGY1. :2017/10/22(日) 22:25:23 ZGoFZZDc0










無論、それは偽りの感謝であったが。
藤崎は治らないハズの怪我を治してもらったこと自体は嬉しいが、少女たちへの感謝の気持ちなどない。

(ええい、そうちゃんとピクシーはまだ良いが、胸に脂肪をくっつけた刺青黒豚とゴキブリみたいな髪をしたもやしBBAが邪魔だな……いやセト神で幼女にすれば楽しめそうか?)

あるのは性欲のはけ口と彼女らをいかに利用できるかだけであった。
土下座で隠した顔にはあからさまに悪い顔があった。

(無警戒のこいつらにセト神を使えば、全員幼女にできるが、今はまだ我慢だ。
こいつらを騙して利用してあのガキを殺し! 弥生ちゃんを手に入れてやる!
ロリレイプハーレムはそれからだ!)

藤崎は少女たちを無力な幼女にして犯す前に、彼女らを騙して蒼太を殺すつもりなのだ。
単純計算で四人+悪魔二匹の異能を相手どることになるのでいくら蒼太でも勝てないだろうという見通しだ。
もちろん追跡の際に弥生から自分の正体が万緒たちにばれる危険はあるが、その時は万緒らを胎児にでも戻して完全に無力化し、蒼太や弥生に従わないと殺すように脅すだけだ。

(まずはここが正念場だ……待ってやがれよ、あの激痛の仕返しに必ず殺してやるからな!)

藤崎の心の中には幼女を犯す欲望と、蒼太に足を一度奪われた逆恨みだけが渦巻いていた。
なるべく自然を装うために、もう少し間を空けてから嘘を吹き込むつもりである。

そんなことを露とも知らずに万緒はチラリと、蒼太の逃げていった方向を見る。
二人はもうほとんど見えない距離、I-3の辺りまで逃げていた。

(殺し合いに乗った恐ろしい人がいる……戦うのは怖いけど、そうちゃんや舞ちゃんのためにもいざという時は……)

万緒は震える手を抑え、拳を握って戦う覚悟を決める。

まさか善意から助けた男こそ悪神の落し子のような者で、殺し合いに乗っていると思っている者が幼馴染であることも知らずに。



【一日目・3時00分/I-3 草原】
【島津 蒼太@『腹話術』/ 魔王JUVENILE REMIX】
[状態]:疲労(大)、腹部にダメージ(中)、顔に返り血
[装備]:FNブローニング・ハイパワー(12/13)、起爆札×3@NARUTO
[道具]:支給品一式、食料と水、地図、タバコ、ライター、イグナイトモジュール@戦姫絶唱シンフォギア
     小型の鎌、首輪探知機、双眼鏡
[思考・行動]
基本方針:姉のもとへ帰る
1:弥生を連れてどこかへ逃げる。
2:阿良のために助けを呼びたいが……
3:あのペド(藤崎)を最大限に警戒。ペドを助けた人たちが奴に騙されてなければいいが……
※腹話術の制約、効果は把握済みですがリスクについては把握していません。
※藤崎が影に入った相手を幼くする能力を持っていることを把握しました。


【成沢 弥生@呪腕のハサンの能力と技術/Fate/stay night】
[状態]:恐怖(大)、混乱、服があちこちはだけている
[装備]:『妄想心音』、クナイ複数本
[道具]:支給品一式、不明支給品×1(確認済み)
[思考・行動]
基本方針:正義の忍者として戦う?
0:とにかく彼(蒼太)と一緒に逃げる
1:いやだ
2:こわい。
※右腕が呪腕化しています。普段は布で覆われています。
※気配遮断スキルは機能しますが、オリジナルよりある程度劣化しています。


688 : セトの花嫁 ◆YlfcDuGY1. :2017/10/22(日) 22:26:02 ZGoFZZDc0



【一日目・3時00分/I-4 草原】

【藤崎直哉@セト神/ジョジョの奇妙な冒険 Part3 スターダストクルセイダース】
[状態]:健康、蒼太への復讐心、素足
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・行動]
基本方針:幼女に乱暴したい。ロリハーレム!
1:ガキ(蒼太)を追って殺す。そのために万緒たちを騙して利用する
2:目論見がバレたら、スタンドを使って万緒たちを脅す
3:殺し合い?そんなの後回しだ馬鹿!
4:最終的に万緒、そう、舞、弥生、ピクシーをまとめて犯す
※セト神による若返りの効果が解除される条件は以下の通りです。いずれか一つでも満たせば解除されます。
直哉が能力を維持できなくなる程の大きなダメージや物理的衝撃を受ける
直哉が気絶する
直哉から1エリア分以上離れる
また、原作とは異なり幼児化によって記憶が当時の状態に戻ることも無いようです。
支給された異能力を除く本人の技能や能力等は原作通り若返った年齢の状態に依存します。


【八神そう@マイティ・ソー/マーベルコミックス】
[状態]:精神疲労(中)、変身中
[装備]:ムジョルニア@マイティ・ソー
[道具]:支給品一式、不明支給品0〜2、障碍者用杖
[思考・行動]
基本方針:殺し合いには乗らない
0:図書館に行く前に助けた人(藤崎)から事情を聞く
1:図書館はひとまず後回し
2:万緒お姉さんと舞お姉さん、藤崎お兄さんを守る
3:はやてのように戦えるのが理想だけど……
※マイティ・ソーに変身できることを知りました。マーベル映画知識より、映画で使用した技は概ね使用できます。また変身中は右足の障碍が治ります。
※サブカル好きがこうじて、人修羅のことも知っていますが、シリーズのゲームは未プレイなため大雑把な内容しか知りません。(主人公が悪魔でありながら悪魔を召喚して戦う程度)
※NARUTOについてはうろ覚えです


【後藤万緒@人修羅/真・女神転生Ⅲ-NOCTURNE】
[状態]:精神疲労(小)
[装備]:マロガレ@真・女神転生Ⅲ-NOCTURNE
[道具]:支給品一式、仲魔召喚に関するメモ
[召喚中]:妖精 ジャックフロスト(健康)
妖精 ピクシー(魔力枯渇)
[思考・行動]
基本方針:殺し合いには乗らない、元の体に戻りたい
0:図書館に行く前に助けた人(藤崎)から事情を聞く
1:そうちゃんと舞を守る
2:殺し合いに乗った人(蒼太)を警戒
2:図書館はひとまず後回し
3:この体、直るのかな?
※悪魔召喚能力があることに気づきました。
※八神そうから大雑把な人修羅の知識を知りました。
※八神そうの足の障害に気づいてません
※殺し合いに乗っていると思っている男が幼馴染の蒼太だと気づいていません
※悪魔召喚については以下のルールがあります。
 ○最大で召喚できる仲魔は三体まで、真・女神転生Ⅲに出てくる悪魔のみ召喚可能
 ○後藤万緒が死亡すると仲魔も数時間以内に消滅する
 ○仲魔に召喚条件あり。召喚できる仲魔については次の書き手氏にお任せします。
  ・妖精 ジャックフロスト、妖精 ピクシー(条件なし)
  ・???(第一回放送まで生き延びる)
  ・???(第三回放送まで生き延びる)
  ・???(第五回放送まで生き延びる)
  ・???(参加者を一人殺害する)
  ・???(参加者を二人殺害する)
  ・???(参加者を三人殺害する)
※仲魔の魔力は時間経過では回復できません
 回復には魔力を補給できる支給品が必要になります


【萩原舞@干柿鬼鮫の忍術/NARUTO】
[状態]:疲労(小)、精神疲労(小)
[装備]:F2000R(25/30)@とある魔術の禁書目録
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜2)
[思考・行動]
基本方針:殺し合いには乗らない
0:図書館に行く前に助けた人(藤崎)から事情を聞く
1:異能はあんまり使わないようにしよう
2:このアサルトライフルも漫画やゲームのものなのかな?
3:図書館はひとまず後回し


689 : セトの花嫁 ◆YlfcDuGY1. :2017/10/22(日) 22:26:32 ZGoFZZDc0


【支給品紹介】
【イグナイトモジュール@戦姫絶唱シンフォギア】
 シンフォギア装者の暴走のメカニズムを解析されて作られた宝石状のモジュール。
 装者はこれを使うことで暴走状態と同等の戦闘力を、理性を保ったまま使用できる。
 ただしセーフティとして使用制限時間(999カウント)が存在し、0になるとギアが強制的に解除される。
 またニグレド→アルベド→ルベドと段階的に力を引き出すことで、カウントが高速で消費される。

 使用すると見た目が刺々しい黒を貴重とした悪役みたいな姿になる。
 この殺し合いで装者は郷音ツボミしかいないので、実質ツボミ専用強化アイテム。
 また、この装備自体にかけられた制限としてカウントがゼロになると再使用不可。

【起爆札@NARUTO】
 使用すると爆発する御札。作中描写を見る限り手榴弾程度の爆発力がある。
 爆発の原理は不明(原作で解説されていない)だが、ここでは一定以上の衝撃を与えると起爆するものとする。
 元は五枚組で支給。

【妖精 ピクシー@真・女神転生Ⅲ-NOCTURNE】
 万緒の召喚した仲魔。非常に小さな可愛らしい妖精。
 悪魔としては低レベルだが多くのメガテンシリーズで一番最初に仲魔になる。
 ディア(回復)、ジオ(電撃)、ラクンダ(防御力減退)、ポズムディ(毒治療)、羽ばたき(風攻撃)などの魔法が使用できるが、魔力(MP)が少ないのですぐ枯渇する。
 合体で誕生したわけではないのでメガドラオンを使えたりはしない。


690 : ◆YlfcDuGY1. :2017/10/22(日) 22:28:13 ZGoFZZDc0
投下終了です


691 : 名無しさん :2017/10/23(月) 17:57:36 3Ohcl7KQ0
投下おつー。ぶれねえなあ、この幼女レイパー


692 : 名無しさん :2017/10/24(火) 02:43:01 oFPOWjwI0
投下お疲れ様です
>ギャルと見るはじめての異能
ひとまずドッキリではないと分かったものの、どうにも事が進まない二人
ほかは着々と動き出してる人が多い中、結構致命的な予感がする
亜希、友人今めっちゃやばい状態だよ・・・・・・!

>セトの花嫁
この男ぶれなさすぎていっそ清清しい
ここまでガチでそっち優先のやつ、、ロワでも早々いないんじゃないのか
(一人心当たりあるが)
前途多難の蒼太、弥生がこの状況打開のかぎとなるか・・・・・・?


693 : 名無しさん :2017/10/30(月) 18:50:24 vBUh9qns0
wikiのキャラクタープロファイリングを更新しました

個人的には惜しくも当選しなかったキャラも回想とかで参加者を食わない程度に話に絡むと嬉しい(非当選者感)


694 : ◆7PJBZrstcc :2017/12/31(日) 10:22:23 VMOXhXHs0
投下します


695 : ロクでなし成人男性達と壊れた少女 ◆7PJBZrstcc :2017/12/31(日) 10:23:35 VMOXhXHs0
 I-8にある集落にある家の1つ。その中に居る男、側後健彦は体を休めつつ持っているプレーヤー、謝債発行機で曲を聴きながら考える。
 何について考えているのかというと、自身の能力についてである。

 自分の能力で出したプレーヤーは、ただ音楽を再生するだけではない、はずだ。
 だが現状はプレーヤーでしかない。
 それ以上の事を起こすには、何らかの条件があるのだろうか。
 ならば、これに入っている曲にも何らかの意味があるのではないか。
 そう思ってしばらく聴いていたが、どう聴いてもただの洋楽のアルバムである。
 曲名に意味があるとか、歌詞にヒントがあるとなれば絞り込むのは難易度が高い。

「チッ」

 ここまで考えて出した結論は、『これ以上聴いても大した意味は無い』だった。
 その考えに至った健彦は舌打ち混じりに音楽を止め、イヤホンを外した。
 考えてどうにかなる問題ではなく、答えを探る方法も無いのなら一旦後回しでもいいだろう。
 最も、襲われた場合は能力を用いて戦うことは出来ないだろうがそこは割り切る。
 それに能力を使いこなしている参加者は少ないのではないか、と健彦は思う。

 ヒューマが渡した能力が何らかの創作物を移植したものである以上、その作品について知っていなければ使いこなすことは出来ないはずだ。出来るにしても完全ではないだろう。
 丁度今の私やこのガキみたいに。
 作品の知名度が有名なら話も変わって来るが、それならば対処法も同時に有名であってもおかしくはない。

「待て……」

 そこで健彦は別の可能性に行き当たる。
 彼はヒューマが言っていたある言葉を思い出した。 
 
『五十嵐椿……IQ180でありながら平穏無事を嫌い混沌を好んでいる性格で殺し合いをかき乱してくれると思ったが、その荒事を望む性格が仇になったな』

 この言葉、ヒューマが五十嵐椿という女を惜しんでいる台詞だがここからもう1つ情報が読み取れる。
 それは、ヒューマが決して参加者を適当に選んだのではなく、ある程度精査した上で殺し合いを開いたという事だ。
 ならば、参加者がどんな作品を知っているかも調べているだろう。
 となると、知名度が低くても知っている参加者に強力な能力を渡すことも出来るはずだ。
 更に言うなら、精査して集めた以上殺し合いに抵抗の無い参加者もいるに違いない。
 例えば近頃、名前は忘れたがどこかの町で絞殺遺体が何体も見つかり、連続殺人だとマスコミが盛り上がっていた。
 その犯人をここに呼び出せば、ヒューマの望むとおりに動くことだろう。
 いや、そんなシリアルキラーである必要はない。
 追い詰められて、もう後がない人間を呼び出せばいい。
 追い詰められた人間は思考回路がまともに働かない。普通ならおかしいと思う言葉を信じ、破滅の道を突き進み最後には自分で幕を下ろす。
 私は幾人も人を精神的に痛めつけ、自殺に追い込んできた。だから分かる。
 そんな人間にとってこの殺し合いはまさしく釈迦が伸ばした蜘蛛の糸。
 カンダタは人を蹴落としたせいで地獄から出られなかったが、このゲームは人を蹴落とさなければ地獄から出ることは出来ない。ならば蹴落とさない理由が無い。
 そいつに強力で殺人に使いやすい能力を持たせれば、そいつは無条件でヒューマのマリオネットになるだろう。

「くっ……」

 となるとこの状況はかなり拙い。というよりここにいる少女が拙い。
 この少女の殴られた痕、イジメか虐待か分からないがおそらくまともな環境にはいない。
 リスクは承知だった、しかしそのリスクは最初に考えていたより遥かに大きいことに気付いた。
 しかしここで殺して何になる。
 殺し合いに乗るか反るかも決めていないのに、自分から手を汚してもマイナスでしかない。
 なら置いて逃げるか? それも出来ない。
 日も明けていない暗闇の中、1人で行くあてもなく彷徨うなど冗談じゃない。

「こうなると、このガキにはなるだけ長く眠ってもらうしかないな……」

 朝になったら起きるかもしれないが、その頃になればこの集落にも人が集まるだろう。
 その時になったら殺し合いに乗っていない集団を見つけて押し付ければいい。
 行き違いで恐がらせてしまったとでもいえば理由としてはもっともだろう。

 だからなるべく大きな物音など起こるな、と健彦が思った所で

 ガチャ

 と扉が開く音が響いた。


696 : ロクでなし成人男性達と壊れた少女 ◆7PJBZrstcc :2017/12/31(日) 10:24:27 VMOXhXHs0





 天草友秋はただひたすらに集落を目指して歩いていた。
 その間に他の参加者に出会い、戦いになる可能性も考えていたが杞憂に終わり、何事もなく集落に辿り着いた。

「フッ……」

 何の障害も無く目的地に辿り着けた事で思わず笑う友秋。まるで俺の行いを誰かが祝福しているみたいだと。
 だが油断は無い。まだ殺し合いが始まってから自分が行った事は、異能を確認して2つ東のエリアへ移動しただけなのだから。

「他の参加者を探すか……」

 集落に着いた友秋は、まず他の参加者を探すことにした。
 アイドル共や天草一族、もしくはあの側近やプロデューサーが居るのなら話が早い、迷うことなく殺してやる。
 それ以外なら相手次第。殺しに来るなら返り討ち、殺しに来ないなら精々利用してやる。
 もし誰も居ないなら、適当な家に入って誰か来るまで待っていればいい。

「まずはあの家にするか……」

 そう呟いて友秋は目に着いた家のドアを、日本刀を構えながらノックをすることも無く開け放つ。
 ノックくらいするべきか、と思う事は無い。
 人が中に居るとして、そいつが殺し合いに乗っている可能性がある以上わざわざ自分の存在を教える義理は無いのだから。

 そして友秋は家の中を見る。
 そこはなんて事の無い民家であり、特に目を付けるものはない。
 だが1つ、否2つだけ目をやるべき存在がある。
 それは2人の参加者だった。
 1人は友秋と比べて歳が下であろうスーツを着た男。
 もう1人は、眠っている小学生位の少女だ。

 そこで友秋は、眠っている少女に暴力を受けた跡があることに気付く。
 この痕はこいつが付けたのか、そう思った友秋は持っている日本刀を目の前の男に突きつけながら問う。

「おい、その少女に何をした」

 言葉だけ聞けば正義感に熱い人間の台詞だ。
 だが友秋にとっては実際の所どうでも良かった。
 もし少女を暴行したのが目の前の男なら問答無用で斬り殺せばいい、。して少女を助けて利用すれば、殺し合いに乗っているとは思われなくなるだろう。
 男が何もしていないというのであればそれもいい。利用する対象が1人増えるだけだ。

 そんな友秋の思いに気付いているのかいないのか。
 表情1つ見せる事の無いまま男はこう答えた。

「いいえ、私は何も」
「……本当か?」
「ええ、私は傷一つつけていません。
 この子がこうやって眠っているのは私のせいかもしれませんが」

 そう言って男は少女が眠っている理由を話しだす。
 男は最初、小学生位の少女が1人でこんな場所に居る状況を心配して声を掛けたそうだ。
 しかし少女は能力を使ったのか、男の意識を一時的に飛ばしたのだ。
 それを問い詰めようとした所で、少女は絶叫し気絶してしまったらしい。

「恐らくですが、この少女は虐待に遭っていると思われます。
 その影響で大人の男性という物に怯えているのではないかと」

 理路整然と話す男に友秋は「そうか」と返事をして刀をしまう。
 そして男に一言。

「すまなかったな。いきなり武器を向けて」
「いえ、この状況なら当然かと」

 友秋は男に謝罪した。
 勿論この謝罪に心など籠めていない、形だけの物である。
 それを目の前の男は分かっているだろう。
 話が早いのは助かる、と友秋は思った。


697 : ロクでなし成人男性達と壊れた少女 ◆7PJBZrstcc :2017/12/31(日) 10:24:58 VMOXhXHs0

「それで、情報交換をしたいのですが」
「分かった」

 そして始まる情報交換。
 まずは自己紹介から始めた。

「まずは私から。私の名前は側後健彦、弁護士をしています。
 そしてこちらの少女の紹介ですが、名前を聞いていないので出来ません」
「……そうか。
 俺の名前は天草友秋、今は……無職だ」

 友秋は無職という名乗りづらい役職を名乗ったが、健彦はなにも反応を見せずそのまま話を進める。
 友秋はその事実を嬉しく思った。

 次に2人はこれまで出会った参加者について話そうとしたが、お互い情報が今この場に居る人間の分しかなかったのでやり様が無かった。
 なので友秋はこう切り出す。

「そうだ、最初ナオ・ヒューマが殺し合いを告げたあの場所。あそこに知っている参加者はいなかったか?
 恥ずかしい話だが、俺はあの状況がどういうものか把握するのが精一杯で周りを見る余裕が無かったんだ」

 これは嘘ではない。
 友秋はあの時、アパートからコンビニに行くという日常から急転直下で殺し合いという非日常に落とされたのだから。
 最も、把握してしまえばそれに怯える事は無かったが。

「そうですね……」

 一方、そんな思いを知らない健彦は表情を変えることなく考えるそぶりを見せ、やがて話し始めた。

「私の個人的な知り合いは見た限り居ませんが、テレビで見たことのある人なら居ましたね」
「……芸能人か?」
「ええ、まずは俳優のレオパルド・ガーネット」

 レオパルド・ガーネット。芸能関係に疎くても知っているであろうハリウッドの大スター。
 直接の面識はないが、当然の如く友秋は知っていた。
 そんな大物も呼ばれていたのか、と友秋は少し驚く。

「後はアイドルの郷音ツボミに、天草財閥の総裁である天草時春を見ましたね」

 だが友秋のさっきまでの驚きはこの2人の名前を聞いて吹き飛んだ。

 天草友秋。血の繋がった実の兄にして、俺のプライドをズタズタにしてくれた男。
 俺がこの手で屈辱を与えなければならない男。
 郷音ツボミ。元俺の事務所に所属していたアイドルにして、俺の妻と娘を自殺に追い込んだ女。
 俺がこの手で殺されなければならないクズ。

 殺し合いの外では、この2人を殺す事は友秋の力では無理だった。
 大財閥の総裁である時春は勿論、一介のアイドルであるツボミもなぜかガードが固く、友秋が使えるレベルの非合法な手段では2人に手が届かなかった。
 しかしここなら殺せる。
 なぜならここでは、外でどれだけの存在であろうとただ1人の人間にすぎないのだから。
 異能という不確定要素はあるが、それはこっちも同じ事。やりようはある。

 ああ、畜生。
 今すぐこの2人の元へ行き、与えられる限りの屈辱と絶望を与えてやりたい。だがそれは出来ない。
 なぜなら俺はあいつらの居場所を知らないからだ。
 無為に飛び出して見つかる保証は無い。だからここは抑える。
 集落であるここなら人は集まるはずだ、情報を集めるのは難しくないだろう。
 だから



 ―――俺と出会うまで、死んでくれるなよ



 友秋は、強くそう思った。


698 : ロクでなし成人男性達と壊れた少女 ◆7PJBZrstcc :2017/12/31(日) 10:26:16 VMOXhXHs0





 イカれているな、この男。
 それが、健彦から見た天草友秋の評価だった。

 初対面の印象から、目つきが正気じゃないとは思っていた。
 しかしそんな物はあてにならない。見た目が強面だろうと善人は居るし、穏やかな外面の悪人も居る。
 だがこの男はイカれている。それが分かったのは健彦が郷音ツボミと天草時春の名前を出した時だ。
 あの瞬間、友秋の目には歓喜が宿った。
 それも知り合いがいたという喜びでは無く、もっと黒い喜びだ。
 そこから導き出せる答えは1つ。

 復讐、か。

 天草友秋は郷音ツボミと天草時春に何らかの恨みを持っている。
 そしてそれをこの殺し合いで晴らそうとしている。
 手段は恐らく、殺人で。それが一番分かりやすいだろう。

 そう考えた健彦が出した結論は、これは放っておくしかないだった。
 目の前に人を殺そうとする人間がいる以上、止めるのが人道かもしれないがそうすれば間違いなく友秋は健彦を殺しにかかる。
 最終的な結論はともかく現状こちらに害のない人間を、わざわざ捨てる理由が健彦には無かった。
 それに別の問題もある。

 健彦は横に顔を向けた。そこには、未だ眠ったままの少女が居る。
 この少女がどう動くか分からない以上、警戒は必須。
 ならばもし戦う事になるとするなら、1人よりも2人の方が良いに決まっている。

 更に、この男はイカれているが頭が悪い訳では無い。
 それでいて目的も見えているから利用も難しくなさそうだ。
 復讐に関してはもしそんな素振りを分かりやすく見せたら、こっちは形だけ止めるが極力関わらないようにすればいい。
 こんな極限状況で、人としての善意など大して意味は持たないだろうから。

 健彦が今後の行動方針をまとめていた所で

 さっきまで眠っていた目の前の少女が、体を起こそうと動いていた。

「目が覚めたのか……」

 目覚めた少女を見て健彦は考える。
 どうする、どう対処する。
 私は無理だ、おそらく私に対して恐怖を抱いている。
 ならばこの部屋に居る男、天草友秋に頼るか。
 それしかないのか。
 こんな見ただけで狂気を感じさせる男に、壊れた子供は耐えられるのか。
 健彦には分からなかった。


699 : ロクでなし成人男性達と壊れた少女 ◆7PJBZrstcc :2017/12/31(日) 10:27:00 VMOXhXHs0





 ウソつきの男は、狂った復讐者と動きが読めない少女に挟まれながらも必死に次の手を考える。
 狂乱した男は、ただ己が憎む対象の情報を待ち望んでいる。
 壊れた少女は、目覚めたばかりで変化した現状を何も理解していない。

 この3人がどうなるか、それは誰にもわからない。




【一日目・2時00分/I-8・集落】

【側後健彦@謝債発行機/HUNTERxHUNTER】
[状態]:精神疲労(小)、焦り
[装備]:謝債発行機@HUNTERxHUNTER
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0〜2(確認済み)、『オマケ』のイヤホン
[思考・行動]
基本方針: 生き残る。一先ず自身の能力の”本質”が分かるまでは様子見。
1:このガキの対処を考える。
2:天草友秋をうまく利用する。
3:この音楽プレイヤー(謝債発行機)については一旦保留。
[備考]
※伊丹沢妙の能力を見ました(能力レンタルの第一条件を達成)

【天草友秋@ドラゴンオルフェノク/仮面ライダー555】
[状態]:狂乱(自覚なし)
[装備]:日本刀
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0〜2
[思考・行動]
基本方針:参加者をうまく利用して勝ち残る、そのためには何が犠牲になろうと構わない
1:郷音ツボミと天草時春の情報が集まるまで、集落に滞在する
2:娘を死に追いやった郷音ツボミは俺が必ずこの手で殺す。他のアイドル共も参加していれば殺す
3:天草時春には俺と同じ屈辱を味わって貰う、他の天草一族も参加していれば同様
[備考]
※自身のオルフェノク化には気づいてません
※支給品の刀を妖刀と信じています

【伊丹沢妙@略奪/Charlotte】
[状態]:体中に殴られた傷と痣、精神疲労(大)、寝起き
[装備]:なし
[道具]: 基本支給品一式、不明支給品(0〜2)
[思考・行動]
基本方針:???
1:お母、さん......
2:側後への恐怖
[備考]
※自身の能力を、まだ使いこなせていません


700 : ◆7PJBZrstcc :2017/12/31(日) 10:27:25 VMOXhXHs0
投下終了です


701 : 名無しさん :2018/01/01(月) 19:30:16 2VKhg6kU0
投下乙です
友秋こわい


702 : 名無しさん :2018/01/01(月) 19:52:07 tZNpSBhA0
投下乙です
ベクトルは違うけど側後と友秋のなかなかのクレバーぶり
側後の最初から殺し合いに乗り気な奴、後がない奴があえて参加させられている考えはなかなか鋭い
流石に全員じゃないけど実際にそんな参加者はいる
友秋も見境なく襲いかかるバーサーカーかと思ったけどまず情報を聞き出す程度には冷静
この状況の鍵を握るのは明確なスタンスがない妙ちゃんになりそう
惜しむらくは思考力の高さに反して異能がなんだかわかっていない(誤解している)点か


703 : 名無しさん :2018/01/02(火) 21:40:38 r0An4xkQ0
投下お疲れ様です
友秋の狂気は思っているよりも静かで、寧ろ怖い
異能を理解せずしてこれだけ不気味で、異能に気づいたらどうなるのやら
側後は仕事柄、どの方面でも厄介な人物さが感じさせられた
こんな悪い大人達と一緒の彼女の行く末やいかに・・・・・・


704 : ◆EPyDv9DKJs :2018/01/09(火) 16:33:05 QkU9ArHg0
投下します


705 : ◆EPyDv9DKJs :2018/01/09(火) 16:33:36 QkU9ArHg0
 鬱蒼とした茂みを走り続ける、一人の走る男の姿がある。
 走る男は、お世辞にも恵まれた体格とは言いがたい。
 運動をしてないと想像するに難くない、だらしない体格。
 センスもあまり感じられない、どこにでもあるファッション。
 人によっては、嫌悪や侮蔑の対象の代表格たる姿をした男だ。

 しかし、誰が思うだろうか。この身体を動かしているのは、
 元々少女だった存在、しかも学園一の美女とまで評された存在など。
 この身体の持ち主である大木潮の異能、ボディーチェンジによって身体を入れ替わった少女、
 天草ゆたかはブッチャーマンとの戦いに敗れ、今もなお敗走の道をたどっていた。
 ゆたかが逃げるまで潮が必死に時間稼ぎをしたお陰で、彼女は無事に逃亡に成功している。

「あ―――」

 がむしゃらに走り続け、ゆたかは足を滑らせて派手に転ぶ。
 運動不足の身体でがむしゃらに走り続ければ、体力の限界は転ぶに決まっている。
 運動嫌いにより、典型的な肥満体となった潮の体躯は、元が小柄な彼女では不慣れなものだ。
 元となるギニューも、孫悟空を乗っ取った時に戦闘力が本来のより、かなり低かったのと同じである。

「イタタ・・・・・・」

 転びはしたものの、肥満体のお陰でいくらか衝撃は和らげた。
 同時に、本来なら当たらないであろう部分までダメージがあるのだが。
 顎をさすりながらゆたかは(肥満体においての)すばやい動きで身を起こし、背後を見やる。
 こんな派手に転べば敵にとってはチャンスでしかなく、恐怖に染まった顔ですぐに見るが、背後は誰もいない。
 ブッチャーマンの姿はないが・・・・・・同時に、自分の―――潮の姿もなかった。
 あるはずがなくとも、まだ現実を受け入れられてないのだ。
 自分の身体・・・・・・も確かにあるにはあるが、殆ど二の次である。
 身体よりも、潮を見捨てて逃げ出したことが一番の後悔だ。
 潮は最善だからした行為であり、レイジングハートもそう促した。
 わかっている。だからこそ、こうやって逃げていたのだから。
 だからと言って彼女は人の死を簡単に受け入れられる存在ではない。
 魔法少女に憧れて、しかもあの高町なのはの魔法を得た言うのに、
 一人の命を救うことも出来ず死なせてしまい、逆に助けられて。
 彼女にとっての憧れた魔法少女とはまったく異なる、陰鬱で悲惨な結果。

「アアッ・・・・・・アアアアアッ!!

 涙を流さずにいられるはずがない。可憐な少女の泣き声なんてものはなく、
 事情を知らぬ者が見れば、いい年した大人の男が泣きじゃくる、見るに耐えない光景だ。
 殺し合いの場であるこの状況では周囲の警戒も怠り、自分の居場所を教えるカモでしかない。

「ウッ・・・・・・」

 泣き叫んでいると、聞こえてくるうめき声。
 いや、本当は先ほどから呻いてはいたのだが、
 ゆたかの声にかき消されて聞こえなかっただけだ。
 声のした茂みを掻き分けると、そこに倒れているのは一人の老人。
 アイドルの狂気を前にし、右目から光を失った男、レオパルド・ガーネットだ。

『ゆたか、どうしますか?』

 汗ばんだ手の中にいるレイジングハートから、問いかけられる。
 倒れる老人が、殺し合いに乗った側かどうかの判断は出来ない。
 殺し合いに反対していた者達へと襲撃し、逆に致命傷を負わされて、
 撤退して今に至っているのかもしれない以上、怪我は判断の基準にならず。
 老人を前にゆたかは―――


706 : ◆EPyDv9DKJs :2018/01/09(火) 16:35:37 QkU9ArHg0





(助け、ないと。)

 困ってる人は放っておけない。
 優しい彼女には、選ぶことなど最初からなかった。
 相手が乗っている可能性が完全に否定できないとしても。
 潮を見捨てたように、一つでも後悔したくないから。
 慣れない身体で大の大人を担ぐのに時間はかかるが、
 なんとか担いで、とりあえず状態が見えにくい茂みから脱出。
 傷の箇所は把握して背中の傷を見るべく、うつぶせに寝かせて傷を診る。
 傷は決して深いものではなく、今すぐ命に関わる問題ではない。
 とはいえ、見るからに痛々しい傷で、見てるだけで胸が痛く感じていた。

「レイジングハート、フィジカルヒールって・・・・・・」

 ミッドチルダ式の魔法の一つにはフィジカルヒールと言う、
 肉体的な負傷の治癒と言うシンプルな回復魔法が存在する。
 レイジングハートに頼もうかと思ったものの、

「できないよね。なのはは一度もつかってないし。」

 途中でゆたかも無理だと悟り、声が縮みながら項垂れる。
 A’S以前でもクロノが使用しているが、作中でなのはが使用してる描写はない。
 (ついでに言うと、フィジカルヒールの名前が判明したのはA’SのDVDの特典でもある)
 ないものを異能として支給することはないだろうし、何より肉体の傷を治す魔法だ。
 明らかに殺し合いを否定する者には有利であり、なおかつ殺し合いが進まなくなる。
 異能を与えるに当たってこちらの性分も理解しているであろう主催者が、
 都合よく使用したことがない異能、それも回復魔法をくれるはずがない。
 もっともヒューマは一つだけ、参加者に支給した異能の能力を理解してないし、
 制限や使い捨てはあれども、回復出来る異能やアイテムに関しても、支給してくれている。
 無論、こんなことを考える時点で彼女の支給品でどうにかできるものもなく。
 正確にはあったと言うべきか。彼女がこうして動けたのは、潮が仙豆を食べたお陰だ。
 あんなものが二つも三つもあったら、所持者が圧倒的有利なので仕方ないが、あれは一つしか支給されてなかった。

「と、なると―――すみません。」

 残る可能性は一つ、倒れている老人の支給品だ。
 瀕死の人間のデイバッグを漁るなど、端から見れば危険人物そのものだが、
 かといってこの傷を放っておくのは、彼女としては出来ない行為でもある。
 人気もないので誤解もないと思い、聞こえてはいないだろうが謝罪してから、デイバッグを漁る。

(あった!)

 望んでいた物―――避難の際に用いる医療キットを発見し、
 中に入っている包帯テープを手に、今度は老人の上着を脱がす。
 老人とは言うが、アクションシーンをやるにあたって身体は資本だ。
 若者に劣らぬぐらいの、健康的かつ引き締まった体つきをしている。
 暗がりもあってか、誰だかわかってないゆたかは驚かされながら、包帯テープを巻く。

 多少焦って無駄に使ったものの、さらしのように巻き終え、
 右目も同じ要領に巻いて今度は仰向けに、老人のデイバッグを枕代わりにして寝かせる。
 出来ることなら集落など民家のある場所で目指したかったが、現在地はD-8。
 民家がある場所は周辺の地図には表記されてなく、先ほどでさえ運ぶのに苦労している。
 万が一殺し合いに乗った参加者に出会ってしまえば、逃げることは困難を極めるだろう。
 怪我人を背負って逃げれるほど恵まれた体躯でもない以上、動かないほうが得策だ。





 ―――ああ、いい天気だ。

 朝日に照らされながら、レオパルド・ガーネットは目を覚ます。
 背伸びをしながらベッドから出て、目覚ましにコーヒーをすすり、朝食を摂る。
 快晴の空の下、優雅に過ごせる朝食の時間。平和―――この言葉以外考えられない空間だ。
 豪邸の一言に尽きる、一人ではもてあましそうな家で朝食を摂った後、
 彼はすばやく身支度を整えて撮影現場へと向かう。

「ハロー! おまたせ〜!」

「お、主役がきてくれましたよ!」

「これが終われば打ち上げしましょうか!」

「お、いいねぇ。でも君達、浮かれすぎて手を抜いちゃだめだよ?」

「浮かれてるように見えるのに、一番真摯なレオパルドさんに言われちゃ敵わないなぁ。」

 スタッフと談笑して、緊張をほぐす。
 本人は本当にただの雑談のつもりではあるのだが、
 結果的にそうなって、よりいい物に仕上がる。
 大スターでありながら、ユーモアで身近な存在。
 それがレオパルド・ガーネットと言う男だ。

 撮影はクライマックスの場面の撮影に入っていた。
 アメリカンコミックのヒーローのように軽快な動きで進み、
 この物語のレオパルドが勤める主人公と、因縁の相手が相対する場面だ。

「残るは、お前さん一人だ。一応聞くが、降参するつもりはないか?」


707 : ◆EPyDv9DKJs :2018/01/09(火) 16:36:31 QkU9ArHg0
 無駄に開けた、ビルの一室で窓際を眺めていた相手へと言葉を紡ぐ。
 広々とした一室は彼のダンディな声がよく響き、残響が消えると相手が振り返る。
 縦に赤と白に別れた仮面を被り、真っ黒なローブに身を包む相手は肯定も否定もない沈黙。
 静寂は、ほんの数秒の出来事であるにも関わらず、緊張感を走らせるには十分な時間だ。
 沈黙を貫きながら、相手は返答のつもりのように、その仮面をはずす。
 仮面を外れる音が周囲に響き、それを放り投げ、素顔を白日の下へとさらした。

「お、お前は・・・・・・!?」

 絶句。迫真の演技ともいえるレオパルドの表情。
 見てはならないものを見たような恐怖に染まった色、例えるなら、青。
 だが、これは演技ではない。本当の意味で彼は今の光景に絶句している。
 相手の姿が、彼にとって忘れたくても忘れられない相手だからだ。
 薄い紅色の長髪、右目に咲いている花。狂気にそまった表情で見る彼女の姿。
 唐突に、レオパルドの右目から何かが零れる。何かを感じ、軽く触れてみる。
 右目から零れていたのは、二人の髪の色のような、赤い液体―――血だ。
 血を認識すると、突然右目の視界が不自然になる。右目の視界が半分ほどずれている。
 彼女を捉えているが、彼女の右半分が、空間が切れたかのようにずれていた。
 目の錯覚と思い、役を演じるのも忘れて右目をこすってもう一度見る。
 再び目を開けば、彼女はいつの間にか距離を詰めており、手に握った剣で―――

「ウワアアアアアアアアアッ!?」





「ハァ、ハァ・・・・・・!!」

 絶叫を森に響かせながら、レオパルドは目を覚ました。
 気分は最悪だ。あんな夢を見て楽しいと言えるものは極少数だろう。
 汗は噴き出し、青ざめた表情は風邪を引いたようにも見えてくる。
 息を荒げながら辺りを見渡して、彼女の姿を探してしまう。
 夜風にあたり、次第に落ち着きを取り戻し、状況を思い出した。
 忘れてはいない。なぜ此処にいるのか、自分は何をしたのか、
 そして―――狂気に染まったアイドルの姿を。

「夢、ではないんだな。」

 右目に触れながら、レオパルドはつぶやく。
 誰が手当てしたのかテープが巻かれ、一応止血は出来ている。
 けれど、意識を失う寸前に理解している。もう右目は使い物にならない。
 なにも映すことはない。あるとすれば、彼が望まぬ道、優勝による願望を成就させる力だけだろう。
 右目一つのために人を殺すなど、今気力があったとしてもしようなどとは思わないが。

「あの、大丈夫ですか? 傷が痛かったりしますか?」

 声が落ち着いたのを確認すると、ゆたかは茂みから姿を出して声をかける。
 いきなりの絶叫に驚いて、彼女も近くの茂みへと逃げるように隠れていたのだ。
 そのだらしない体躯と少々似合わない、非常に丁寧で綺麗な言葉遣い。
 どこか違和感を感じるようなその姿をレオパルドが凝視していると、

「あ、殺し合いは乗ってません! といっても信用されるか怪しいですけど。」

 ゆたかは凝視しているのを疑っているものだと思い、
 両手を広げて敵意がないことを示しながら距離をとる。

「―――戦力的にも足手まといと判断できる傷を負ったこの老いぼれを、
 わざわざ気遣っているんだ。君が乗った人とはおもわんさ。まずは、ありがとう。」

 テレビのコメントや快夢との邂逅した時のような、
 飄々とした態度は取らず、友人と話すようなどこか堅苦しく礼を言う。
 取らないと言うよりは、『取れなかった』と言うべきだろうか。
 怪人なんて目でもない恐怖を植えつけられたと言ってもいい彼に、
 彼女を想起させるトリガーとなる行動を、無意識に避けていたからだ。

「よかった・・・・・・ところで、どこかで会いませんでしたか?」

 会話は出来るようなので、ゆたかはホッと胸をなでおろす。
 そして声と顔をあわせ、どこかで見覚えがあるような顔だと今になって気づく。

「恐らくテレビの画面越しだろうね。
 こんな状態だが、ハリウッドでは何度も主演に出ていたんだよ。
 レオパルド・ガーネットという名前ぐらいは知ってるんじゃあないかい?」

「あ、確かに言われてみれば・・・・・・すみません、気づかなくて。」

 ゆたかはオタクだが、どちらかと言えば魔法少女のアニメが中心だ。
 ハリウッドといえばハリーポッターと言ったものなら身近にはあったりはするが、
 暗がりで顔の判断が完璧につかず、その↑包帯で右半分の顔は隠れている状態。
 この状態で、彼がレオパルドとすぐ気づけるのは簡単なものではないだろう。
 天草家と言う環境から、魔法少女以外も色々知ってはいるものの、
 ハリウッドとなると知識は今の時間帯のように、余り明るくはなかった。


708 : ◆EPyDv9DKJs :2018/01/09(火) 16:37:03 QkU9ArHg0
「暗い以上しかたないことだ。それで、君の名前を聞かせてくれないか?」

「そういえば名乗ってませんでしたね、私―――」

 名乗ろうとした瞬間、言葉が詰まるゆたか。
 詰まる理由はただ一つ。この状況、どう説明するべきかを。
 身体は大木潮のものだが、意識は天草ゆたかであるこの状況。
 一定時間に来る放送でどちらの名前が挙がるのかすら分からない中、
 どちらで名乗るべきか。下手を打てば乗ってない人からでも疑われてしまう。

「・・・・・・どうしたんだね?」

 名乗ろうとしてまだ名乗らないのでは、
 レオパルドが訝るのも至極当然のこと。
 時間は残されていない。ゆたかが選んだ選択肢は―――

「えーっと・・・・・・まず、説明しないといけないことがあります。」

 正直に、真実を話すこと。
 嘘を隠すのは下手ではないが、決して得意といえるわけでもない。、
 異能がこの殺し合いにある現状、信じてもらえる可能性が高い事に賭ける。
 と言うより、嘘を突き通し続ける自信がないだけなのだが。
 自分と潮の邂逅の経緯、ブッチャーマンの邂逅、そして敗走を話す。

「と、言うわけなんですが、信じていただけますか?」

 異能の存在で荒唐無稽な話にはなってはないが、
 同時に、異能と言う言葉で惑わしにきていると思う可能性も否定は出来ない。
 異能だから、と口々にしてしまえばどれが真実か分からなくなってしまう。
 真偽の確認が困難なものを利用して、疑心暗鬼を狙う者もいるはずだ。
 内心不安でしかないゆたかに対し、レオパルドの返答は―――





「あれか、日本で流行ってる映画。
 君の、なんだったか、あれと似た状態だね。」

 手をポンと叩くと、驚くほどに、すんなりと受け入れてくれた。
 とは言うも、彼とて最初は多少ながらも疑っている部分はあった。
 初対面の人間を、この状況下で簡単に信じきれるものは少ない。
 特に最初にであったのがアレであれば、仕方のないことだ。

 彼女(彼?)の言葉を信用したのは、俳優としての観察眼が理由にある。
 ゆたかと騙る潮か、潮を騙るゆたかか、どちらでもない誰かか。
 いずれにせよ、信じさせるにはそれ相応の演技力が当然必須だ。
 知人に疑われては、どれだけ騙ったところで崩れてしまう策。
 あらゆる役になりきった彼からすれば『相手は役になりきれてない』。
 だが、その拙さは逆に騙そうとする人と思えず、信用を勝ち取ることになった。

「え、ええ、まあそういうことです。」

 先ほどの潮との会話でもそんな話をしたのを思い出し、
 苦笑気味にゆたかは言葉を返す。

「元女性となると、不便ではないのかい?」

「住めば都なんでしょうか。特には・・・・・・」

 一先ず信用はされた。
 こう言うと乗っているようには聞こえるが、
 彼女の状況はこの殺し合いの参加者でもトップクラスに異質。
 説明して理解される、と言うのは中々難しい。

「それで、レオパルドさんは誰か会えましたか?」

 ブッチャーマンのような存在が他にいては危険だ。
 情報とは、あるとないとではかなりの優劣が決まる。
 特に、殺し合いに乗ってない人の区別が出来るのは大きい。
 無論、撹乱する輩もいるかもしれないので厄介ではあるが。

「わた、し、は―――」

 情報の共有と言う目的があったが、彼女はやらかしてしまった。
 いや、こんなものを想定しろと言うほうが、無理な話ではある。
 落ち着いた後は意思疎通が出来るぐらいに、落ち着いていたのだから。
 だが、今の彼に過去を振り返らせればどうなるか、予想出来る筈がない。


709 : ◆EPyDv9DKJs :2018/01/09(火) 16:37:36 QkU9ArHg0
「―――ウワアアアアアアアアッ!!」

 答えようとしたレオパルドの突然の絶叫。
 耳をつんざくような悲鳴に、ゆたかも耳を塞がざるを得ない。
 右目を押さえ、叫ぶように茂みへと逃げ込む。
 吐き気もこみ上げてたが、先ほども吐いたゆえに出すものなどなかった。

 トラウマを持つ人はゆたかの周りでも存在はするが、
 これほどのレベルの人は、一般的にまず目にすることはない。
 突然の行動にゆたかは困惑して唖然としてしまうが、
 この光景、と言うよりこういう症状の人に、多少覚えがあった。
 兄が見ていた仮面ライダーの一つに、こんな状態の主人公がいた記憶がある。
 敵に恐怖し、絶叫を上げた主人公を。

「え、えっと、大丈夫でしょうか・・・・・・」

 彼女は学生で、医者を目指してるわけでもない。
 こういう時にかけれる言葉なんてものは分からず、
 ただ蹲るレオパルドを、心配そうに見て声をかけるだけだ。
 聞こえているのか聞こえてないのか、言葉を返さず息を荒げるだけ。
 先ほどの叫びは結構響いた。殺し合いに乗った参加者が来る可能性もある。
 けれど、彼女は見捨てることはなく、彼が落ち着くのを近くで見守っていた。



「快、夢。」

 あれから数分。
 未だ息を荒げているが、言葉と受け取れるようなものが聞こえた。

「井上、快夢・・・・・・この名前を、知ってるかい?」

 何とか顔を上げて、レオパルドが振り返りゆたかへと問いかける。
 震えは止まっておらず、声も今の彼の状態と同じく、寒空の下にいるかのような震え声だ。
 顔も青ざめていて、今にも死にそうに見えて、ゆたかも流石に少し引いていた。

「アイドルの井上快夢さん、ですか?」

 言葉は理解できた。後はそれに関する言葉を返すだけ。

「―――彼女は、彼女は・・・・・・乗っている、人間だ。」

 震えながら紡がれた言葉に、ゆたかの顔に驚嘆の表情が浮かぶ。
 日本で有名なアイドルなので、レオパルドよりは身近な存在だ。
 サブカルチャーのオタクである彼女でも名前は十分に知っており、
 画面越しの存在ではあるのだが、それでも知った人物が乗っているのは、
 余り喜ばしいことではない。

「何故乗ってるのか私には理解できなかった。
 彼女のいう言葉の意味が、私には理解できない。
 理解できたのは、今の彼女は狂っている―――恐ろしいッ・・・・・・!!」

 思い出すだけでも傷口が開きそうな感覚に襲われ、
 右目に手を当てて、うめき声と共に再びうずくまる。

「もしかして、その傷も・・・・・・」

「・・・・・・憧れた仮面ライダーに、なれたと言うのに、この結果さ。
 ヒーローとは、こんなにも難しいことだと、私は思わなかった。」

 何度も俳優としてヒーローを演じ続けた。
 誰よりもヒーローというものを理解している、
 とまではいかないかもしれないが、相応の理解はもっていた。
 それでも、彼は憧れた存在になることはできない。

 どれだけ演じようと、どれだけ賞を貰おうとも、
 彼が受けた殺意と言うものは、究極のところ『演技』でしかない。
 本当の殺意を目の当たりにし、彼はヒーローに憧れた夢から覚めた。
 今の彼はヒーローに、仮面ライダーに変身することはできない。
 故障とか破損ではない。単純に彼が変身を恐れると言う、精神的な問題だ。
 変身しようとすれば彼女を思い出す。脚力を活かそうとすれば彼女から逃げたことを思い出す。
 仮面ライダーとしての行動、一挙手一投足全てに彼女を想起させるトリガーとなってしまった。
 今の彼には変身する行動すら、そのトラウマを想起させるトリガーになっている。
 恐怖に屈したヒーローは変身すら出来ない。平成だが、彼の好きな仮面ライダーの一つにもあったことだ。


710 : ◆EPyDv9DKJs :2018/01/09(火) 16:38:43 QkU9ArHg0
「・・・・・・私も、同じです。」

 夢から覚めた老人に、ゆたかが言葉を返す。

「同じ?」

「私の異能、高町なのはって言う、あるアニメの魔法少女の力だったんです。
 レオパルドさん同じで、憧れてた存在だったんですけど、さっき話した通り.....」

 彼女も、また同じだ。
 殺し合いに乗った狂人との戦いに挑むも、
 憧れた魔法少女とは程遠い現実を突きつけられて。

「怖くて、怖くて仕方がないんです。また誰も助けられないかもしれなくて。」

 潮のことを思い出し、ゆたかは涙を流す。
 自分のせいで死なせてしまったのを、心優しい彼女は傷つかないはずがない。
 ほんの数時間、世代も離れていたが、同じ魔法少女を好む同志。
 こんな殺し合いで死なせていいような、悪い人間ではない。

「けど―――同時に、もう後悔したくないんです。
 潮さんのように、また誰かを見捨てたくありません。」

 だからこそ彼女は彼の死から、現実から目を背けない。
 恐怖は未だ拭えない。今でさえブッチャーマンや快夢といった存在を前に、
 自分は同じ過ちを繰り返してしまうのではないかと身体に震えが走る。
 だが、それ以上に、これ以上犠牲者を増やしたくない。
 ダークヒーローのような手を汚す覚悟はなくとも、
 彼らのような存在を止めなければならない。

「私はこれから、仲間を探そうと思います。
 ブッチャーマンを相手に、私だけじゃ太刀打ちできません。
 レオパルドさん。一緒に戦ってください、とは言いません。
 ただ、同じ考えの人を、立ち向かう人を探してもらえませんか?」

 殺し合いを止める為の仲間は必要だ。
 今やブッチャーマンの存在は、彼女にとって恐怖の象徴。
 鍛えられた警察官でも修羅場を潜った軍人でもない、青春を送る女子高生なのだから当然だ。
 加えて、未だ潮の身体に慣れない以上、あの時の練習通りに動けるか怪しくもある。
 また、ブッチャーマンの異能は自分の制限もあいまって、上空への対処の手段も持つ。
 全体的に彼女が有利になれない状況が多く、一人で勝つことはとても出来ない。
 仲間を募ってブッチャーマンのような存在を止める。そのためには仲間がいる。
 人を集めることなら傷があっても大丈夫なはずだと思い、彼の返答を待つ。

「・・・・・・人探し、か。
 それぐらいなら、引き受けよう。」

 あんなことがなければ躊躇うことなく、ともに戦う一歩を踏み出せただろう。
 『OK! 君と共に戦おうではないか!』と、普段のノリならそれぐらい言えるはずなのに。
 狂気に当てられた彼は、一歩を踏み出すことすら出来ない恐怖を、彼女によって植え付けられた。
 変身なんてとても出来たものではない。いても異能すら使えない、ただの負傷者の人間だ。
 一人で戦わんとする、彼女の足を引っ張るだけの同行者にはなりたくない。
 それは彼の気遣いと同時に、また彼女に会いたくないと言う恐怖からきていた。
 彼女と同行すれば、快夢にまた出会ってしまう可能性が、彼を震え上がらせる。

「私は、西へ向かうつもりだが、君は北と南どっちだね?」

 西へ向かうとは落ち着いた口調で言うが、
 どちらかといえば西へ『逃げたい』が本音だ。
 東から逃げた彼に、彼女がいる方角へ行きたいなどとは思わない。

「南へ向かおうと思います。人が多いと思いますから。」

 ブッチャーマンがもし動くのならば、きっと集落に向かってると推測できる。
 ただの一度しか自分の存在を公に出すことはなかった、その用意周到さ。
 間違いなく人並み以上の知性はある。となれば、人が集まる場所を狙うは当然。
 先に到着して人を避難させれば、仲間を増やしつつブッチャーマンから助けられる。

「いいよね、レイジングハート。」

『先手を打つ、確かに大事ですね。北も余り人が行くとはいいがたいですし。』

 北は人が落ち合うについては不向きか、人が向かいそうな場所が少ない。
 ミカン畑や農家が密集してる以上、食料目当てに向かう人は多いはずだ。

「わかった、私は西へ、ミスゆたかは南へ。
 落ち合う場所は・・・・・・F-5が、いいだろうね。」

「何もない場所、ですね。」


711 : ◆EPyDv9DKJs :2018/01/09(火) 16:39:36 QkU9ArHg0
 地図を見ると、F-5は地図上の表記はほぼない。
 辛うじて、E-2から続く舗装された道が僅かにエリアの隅にある程度だ。
 集合場所ならば、やはり目立つ場所、二人の移動ルートから纏めると、
 井戸の家があるE-4辺りの方が適しているとも思えたが、二人の考えは違う。
 ゆたかが南下する理由はブッチャーマンが向かう可能性が高く、先回りしたいから。
 誰かが来るということは、殺し合いに乗った参加者も多く近づく可能性が高い。
 故に集まるなら、何もない場所の方が合流しやすいというのが二人の考えだ。
 しかもF-5は舗装された道があるといっても、僅かにあるだけで獣道に近い。
 わざわざ舗装された道を歩かない参加者は限られ、先に到着していれば地の利もある。
 無論、この場所に誰も来ないとは言い切れないが、来る確率は低いほうだ。
 一応ではあるが北西に井戸の家を目印にはなるのも、一つの利点ではある。

「後は時間ですね。第一回放送辺りに落ち合いますか?」

「そうだね、もしも禁止エリアに指定された場合に備えて、
 G-4はその際のも集合場所ということにしておこう。
 放送から一時間待っても集合しなかったら、待たずに行動、でいいかね?」

「はい、分かりました。」

 若干レオパルドに任せきりではあったものの、
 行動方針や、いざと言う時の対処も纏まった。
 頼れる人がいないかと思われた状況の打開の一歩に、
 ゆたかの顔はほころぶ。

「色々ありがとうございます。」

 行動方針が決まり、別れる寸前。
 ゆたかは頭を深々と下げ、礼を言う。

「気にしないでくれ。もう私には、
 これしか出来ないのだから・・・・・・ではミスゆたか、また会おう。」

「はい、また会いましょう。」

 レオパルドは西へ、ゆたかは南へとその足を進め、歩き出す。
 まだ始まったばかりで終わらない、このバトルロワイアルの打破のため。





 レオパルドとゆたか、ヒーローと魔法少女と言う変身系の代表の異能を手にした二人。
 どちらもその存在に憧れて、そして夢とはかけ離れた現実を前にして、共に敗北した者達。
 創作物、テレビ、演技と言う多数の壁を越えた現実の存在は、年も趣味も関係なく二人を絶望に落とした。

 ゆたかは立ち直ったかに見えるが・・・・・・実際の所、レオパルドとそんなに状況は変わってはいない。
 ブッチャーマンよりも先に集落へ向かうという名目は確かにあるが、言い換えればブッチャーマンに会いたくないのだ。
 人数が足りないとか、レオパルドとの約束の優先とか合理的な問題ではない、彼女の精神的な問題である。
 PTSDには至らないが、彼女がブッチャーマンと再び邂逅したそのとき、彼女は平静を保っていられるのか。

 一方で、レオパルドはヒーローとして完全に折れたわけでもなかった。
 確かに本来のノリに戻れず、変身すら間々ならない、完全に精神をへし折られた男だ。
 だが、戦うことを諦めない限り、その者はヒーローの資格は失いはしない。
 とある漫画では主人公とは、ヒーローの資格とはそう表現されていた。
 彼はどんな形であろうとも、殺し合いを始めたヒューマに対抗しようと殺し合いを否定した。
 戦わずして仲間を探すのは逃げだと思いつつも、彼もまたヒーローの資格を失ってはいないのだ。

 敗北を知った、傷だらけのヒーローと魔法少女。
 親以上に離れた年代二人の正義の味方は、その恐怖を克服できるか。
 彼らの歩みだした道でそれが出来るかは、まだわからない。


712 : ◆EPyDv9DKJs :2018/01/09(火) 16:39:59 QkU9ArHg0
【1日目 三時以降 D-8】

【天草ゆたか@ミッドチルダ式の魔法/魔法少女リリカルなのはシリーズ】
[状態]:ブッチャーマンに対する恐怖、後悔、魔力消費(中)、大木潮の肉体
[装備]:レイジングハート@魔法少女リリカルなのはシリーズ
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜2(確認済み、傷を治せる道具ではない)
[思考・行動]
基本方針:殺し合いを打破する
1:大木さんの分も、戦わないと
2:でも、ブッチャマンは・・・・・・
3:ブッチャーマンよりも先に集落へ向かい、参加者を探したい
4:第一回放送を目安に南下。E-5かG-4でレオパルドさんと合流
[備考]
※自分の異能を把握しました
※レイジングハートの参戦時期は無印終了後、A‘s開始前です
 その為カートリッジシステムは搭載されていません
※制限により5メートル以上の高さは飛べません
 (制限だとは何となく把握してるかもしれません)
※ブッチャーマンの異能を鱗赫の赫子だけだと思っています
※レオパルドほどではなくとも、ブッチャーマンを前に落ち着いていられるかは怪しいです
※南へ進みます。徒歩か、飛んでいくか、低空していくかは後続の書き手にお任せします
※まだ潮の肉体になれていません



【レオパルド・ガーネット@仮面ライダーV3への変身/仮面ライダーSPIRITS】
[状態]気絶、右目失明(応急処置済み)、背中から出血(応急処置済み)、疲労(大) 変身解除中 PTSD
[装備]変身ベルト
[道具]基本支給品、不明支給品(0〜1)、医療キット(包帯テープ五割減)
[思考・行動]
基本方針:快夢は怖いが、できるだけのことはしたい
1:快夢が怖い
2:変身は・・・・・・できない
3:西へ向かい、参加者を探す
4:第一回放送を目安に、E-5かG-4でミスゆたかと合流

※医療キットの具体的な中身については、後続の書き手にお任せします
※西へ向かいますが、北西かそのまま西は後続の方にお任せします
※故障ではなく、精神的な問題で変身することが出来ません
 具体的に言えば、仮面ライダーWのテラー・ドーパントを前にした翔太郎です



支給品説明
医療キット@現実
避難時などに用いる、比較的コンパクトなタイプの医療キット
医療目当てなので武器として頼れるものは余りないが、
包帯テープを拘束の変わりに用いたり、なんだかんだで応用可能
肝心の医療としては、避難時の応急処置が主で、此方も心もとない
ゆたかが慣れなかったがため、包帯テープは必要以上に消費している
何が入ってるかは後続の方にお任せします


713 : ◆EPyDv9DKJs :2018/01/09(火) 16:40:53 QkU9ArHg0
以上で『ヒーローの資格』投下終了です
期限ギリギリまで費やしてすみません・・・・・・


714 : ◆EPyDv9DKJs :2018/01/09(火) 16:44:40 QkU9ArHg0
あれ、ランダムの支給品ってこのロワいくつでしたっけ
もぢも2つまででしたら0〜1です、失礼
後、大変恐縮なのですが、WIKIからスパムと間違えられてしまい、
編集が出来ないので、WIKIへの収録も、できればお願いします・・・・・・


715 : ◆YlfcDuGY1. :2018/01/09(火) 19:56:30 fSxc9ErY0
投下お疲れ様です
支給品は他のロワを基準にして最大三つぐらいが妥当だと思います

ゆたかはブッチャーマン恐怖症なれど潮の分も頑張ろうとし
レオポルドも快夢にビクビクしながらも戦おうとしている姿に今後がどうなるか楽しみです
個人的にはトラウマ描写と役者故にレオポルドはゆたかの仕草から信用できると判断した描写が丁寧で好きです


716 : ◆7PJBZrstcc :2018/03/13(火) 21:46:14 HQJ1wtdw0
投下します


717 : 図書館についたぞ ◆7PJBZrstcc :2018/03/13(火) 21:47:09 HQJ1wtdw0
 C-7の山の頂上、科学教師と大輔は図書館に向かうつもりだ。
 しかしその前に、せっかく高所に居るのだから少し偵察していこうと科学教師は提案した。
 そして科学教師は山頂の展望台にある望遠鏡を使い、辺りを見渡している。

「どうですか、何か見えますか先生?」
「南東で火事が起きているのが見える。場所はそうだな、地図でいうならE-8のミカン畑辺りか」
「火事、ですか……」

 科学教師の言葉にオウム返しな返答をする大輔。
 だが、特に気にすることも無く科学教師は言葉を続ける。

「火事に関しては誰かが火を放った以上の事は知ることは出来ない。
 異能で攻撃した結果燃えたのか、ガソリンでも撒いて火のついたライターを投げ込んだのか分からんからな」

 それだけ言って科学教師は望遠鏡から離れる。
 そこで大輔に向かって一言。

「さあ出発だ。他に情報を集めようにもこの位置と今の時間では何も見えんからな、動かなければ」
「分かりましたよ」

 科学教師の言葉に大輔は従い、2人は山を下りるのだった。


718 : 図書館についたぞ ◆7PJBZrstcc :2018/03/13(火) 21:48:01 HQJ1wtdw0





 そして2人は特に何の障害にぶつかることも無いまま図書館の目の前に到着した。

「いささか拍子抜けだな。正直一戦位は覚悟していたのだが」
「いやぁ、危険が無いに越したことはありませんよ」
「後でツケが回ってこなければいいが……」

 そう言いながら科学教師は図書館の扉に手を掛ける。
 この時、先に来ている他の参加者が罠を仕掛けている可能性も考えて、慎重になることも忘れない。
 だがその心配は杞憂となり、2人は少しホッとした面持ちで図書館に入るのだった。

「さて、早速自分の異能を調べると行きたいところだが……」
「だが、何です?」

 そこで科学教師は眼を鋭くし、大輔に真剣な口調で問いかける。

「どうやって調べればいい?」
「どうやってと言われましても……」

 大輔は科学教師の言葉に困惑しながら、辺りを見渡す。
 すると図書館の入口から少し離れたところにあるものを見つけた。

「あ、あそこにパソコンがあります! あれ使えばいいんじゃないですか?
 でかい本屋とかなら検索機器みたいなのがあるし、そんな感じで」
「そんなものがあるのか。
 あいにく私はホームレスでな、そんな場所に行く機会が無い」
「ホームレス!?」

 科学教師がさらっと語る情報に驚く大輔。
 それを無視して科学教師はパソコンの前に座り、画面を見る。
 画面には『異能 検索』と書かれその下には入力欄が置かれているだけとシンプルだった。

「今画面に出ているのが検索画面だな。一応下のタスクバーを見てみるか」
「何でパソコン使い慣れてるんですかホームレスが」
「使う機会があっただけだ」

 大輔の疑問を流しつつ科学教師がタスクバーを見ると、そこには3つのアイコンがある。
 1つ目は今使っている検索システム。
 2つ目を開くと、出てきたのはこの図書館の案内板。
 そして3つ目は――

「何だこれは? save?」

 そこにあったのは科学教師からはよく分からないものだった。
 実際は参加者の1人、道端ロクサーヌに授与された異能『名伏しがたい力』の出展作品というだけなのだが、フリーゲームの存在すら知らない科学教師は深読みしてしまった。

「まあいい、今は自分の異能についてだ」

 そして科学教師は疑問を一旦置いておき、異能を調べることにした。

「何と打ち込めばいいんだ。……茨、腕。でいいか」
「そのまんまですね」

 他に打ち込めそうなキーワードが思いつかず、見たままを打ち込む科学教師。
 それでも検索は上手くいったのか、検索結果が画面に表示される。


 ――『漫画 ジョジョの奇妙な冒険』と。


 余りにも簡素な検索結果に科学教師は思わずこう呟く。

「なんだ、これは?」
「作品名、ですかね?」
「なるほど、細かいことは漫画を読んで確かめろという事か」

 大輔の出した答えに納得した科学教師は、パソコンで案内板を出し漫画が置いてある場所を把握。
 そのまま1人、ジョジョの奇妙な冒険を探して歩き出した。


719 : 図書館についたぞ ◆7PJBZrstcc :2018/03/13(火) 21:48:40 HQJ1wtdw0


 そしてジョジョの奇妙な冒険はあっさり見つかった。
 しかし問題があった。

「随分な量だな……」

 それは本の量だった。本自体は図書館らしく棚に入っているのだが、その量が多いのだ。
 漫画、ジョジョの奇妙な冒険は1987年から現在まで連載が続く長期作品である。
 その為、単行本は100巻を越えているのだ。
 それを見て、科学教師が思わず随分な量だと思うのも無理はないだろう。

「ここで読むか? いやしかし……」

 科学教師は呟きながら後ろを見る。
 目線の先にはまた別の棚がある。

「後ろから棚が倒れてきたら、押しつぶされかねんな。
 仕方ない、あるか知らないが台車でも取って来るか」

 そう言って歩こうとする科学教師。
 しかし、何気なくジョジョが入っている方では無く、反対側の棚を見るとそこにはDVDが入っていることに気付く。

「ほう、本以外もあるのか」

 それが気になり試しに1つ取り出しタイトルを見てみる科学教師。
 そこには『仮面ライダー555』とあった。

「仮面ライダー……、5,5,5? 何と読むんだこれは?」

 知識が無ければ読むことは出来ないであろうタイトルに困惑する科学教師。
 しかし次の瞬間ある考えに辿り着く。

「仮面ライダーか。ひょっとしてナオ・ヒューマが与えた異能には、仮面ライダーへの変身も含まれるのか?」

 ふと思いついた可能性。
 しかしそれは科学教師にある懸念を抱くことになる。

「あ、ここにいたんですか」

 そのタイミングで大輔が声をかけてきた。
 手にはBru-rayのBOXを持っている。

「何だそれは?」
「いや、俺も先生と同じように自分の異能を調べようと思って検索したんですよ」
「その結果がそれか」
「ええ、30分アニメが全25話。中々長丁場になりそうです」
「そうか。こっちは単行本100巻以上の漫画だ。間違いなく長丁場になるぞ」
「うわあ……」
「まあそれは仕方ない。
 それより芹。私は先ほどある懸念を抱いた」
「懸念?」
「ああ、これを見てくれ」


720 : 図書館についたぞ ◆7PJBZrstcc :2018/03/13(火) 21:49:54 HQJ1wtdw0

 そう言って科学教師が大輔に見せたのは、さっき手に取った仮面ライダー555のDVDだ。

「仮面ライダー、ですか? これに懸念が?」
「ああ、それは変身している相手は顔が見えないという事だ」

 科学教師の言葉に思わず何言ってんだこいつ、と言いたそうな大輔。
 しかしそれを無視し、科学教師は話を進める。

「いや、見れば分かりますがそれが何か?」
「分からないか。
 ……そうだな。例えば芹、顔を見られたくないから覆面を付けたまま殺し合いの会場に居る参加者をどう思う?」
「怪しすぎますね」
「だが仮面ライダーのような変身ヒーロー、もしくはライダーが敵対している怪人ならどうだ」
「最初に改造人間が見せしめで殺されている以上、異能だなと納得できますね。常に変身してても警戒心の表れなら拒絶するほどでは……、ってまさか!?」

 そこまで言って大輔は気づいた顔をする。
 そうそれは――

「顔を隠し行動することが、不自然じゃなくなる……?」
「更に言うなら、名簿に名前が載っていない今なら偽名も名乗り放題のおまけつきだ」

 科学教師は自分の言葉に、やれやれだと付け加える。

 一方大輔は、これは恐ろしい事態だ、と思った。

 ――今までの考えが意味することは、単に変身する参加者が信用できないだけではない。
 例えば、仮面ライダーに変身して参加者を襲う奴がいたとする。
 周りは当然仮面ライダーを警戒するが、変身者の姿は見えない。
 これにより、変身者がライダーを警戒している相手に近づくことはそうたいした難易度ではなくなってしまう。
 顔が見えない以上、誰が相手でも多少の警戒はしても確定しない状況では、排除には踏み切れないのが普通の人間だ。
 確信も無く人を殺すのなら、それは最早殺し合いに乗っている。
 疑わしきは罰せよという言葉もあるが、悪手になる可能性は高いだろう。

「参ったな、これでは仲間を探す際にいちいち異能の提示を求めねばならなくなる。
 そして見せろという以上我等も見せねばならんだろう。
 私が自分の異能を把握していないことを晒すのは好ましくないのだが……」

 大輔の内心を知らない科学教師の言葉に、彼は心から同意する。
 それも科学教師が考えている以上に。

 ――自己紹介の度に異能のお披露目だと? ああそうだよ冗談じゃねえよ! 一歩間違えたら大参事だよ!!

 大輔は科学教師に自身の異能の一部、読心を言っていない。
 これがアニメや漫画、もしくは特撮に登場するものである以上、知っている人間がいる可能性は十分ある。
 もし自身の異能が科学教師にばれたら、表だった破綻が無い現状なら大きな問題にならないだろう。
 知らなかったでごり押すだけだからだ。
 科学教師が自分の異能を把握していない以上、大輔が知らなかった、気付かなかったといえば強くはいえないだろう。
 疑われる可能性はあるが、そこは知らぬふりを通すしかない。
 しかしそれを人に言いふらすとなると話は変わる。
 一方的に心を読んでくる相手と、誰が喜んで手を組みたがるというのか。
 何もやましいことが無くても嫌がるのが普通の反応だろう。

「とりあえず異能が分からない相手はどんな姿をしていようと注意を払え。分かりやすく力を振るう奴よりもだ」
「この状況で力押しを選択する奴は、早死する以外有り得ないと思いますが……」
「分からんぞ。ごり押しは極まると意外と厄介だからな」
「経験、あるんですか?」
「さてな」

 科学教師が大輔の疑問を軽く流し、そのまま逆に質問をする。

「ところで芹、唐突だが台車の様な物を見なかったか?
 私は自分の異能を把握しなければならないが、100冊以上ある本をこんな本棚の間で読みたくは無いんだ」
「あー、そういやテレビの近くに有った様な……」
「どこだ」
「あ、こっちです」

 そう言って大輔は科学教師を案内する。
 そして案内した先には、50インチ位のテレビがあり、その傍にはPS2とPS3、更には何らかの再生機器まであった。
 肝心の台車はテレビの裏に数台置いてある。

「それじゃ、俺は早速これを……。
 と言いたいですがその前に1ついいですか、先生?」
「何だ」
「このプレイヤーなんですけど、何ですかねこれ? DVDでもBru-rayでもなさそうですし」

 大輔の言葉の後、プレイヤーを一瞥する科学教師。
 そして問いの答えを出す。

「これはレーザーディスクプレーヤーだな」
「……何ですかそれ?」
「知らないか。まあ簡単に言うなら、最終的にビデオテープに普及率が負けたレーザーディスクの再生機器だ」
「……知らねえ」
「そうか」

 それだけ言って科学教師は台車を押してこの場を離れる。
 そして大輔もレーザーディスクプレーヤーの事は忘れて、自らの異能が出てくる作品を見始めた


721 : 図書館についたぞ ◆7PJBZrstcc :2018/03/13(火) 21:50:32 HQJ1wtdw0


【一日目・2時30分/I-7 図書館】

【科学教師@隠者の紫/ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品1〜3(確認済み)
[思考・行動]
基本方針:ナオ・ヒューマを倒し殺し合いから脱出する
1:自分の異能を調べる。
2:芹大輔は若干胡散臭い
3:save、助ける? 疑問だが今は後回し
4:変身する異能の持ち主には警戒
[備考]。
※芹大輔の異能をバリアだけだと思っています
※E-8の火事を目撃しました

【芹 大輔@『バリア+読心』/TIGER&BUNNY】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品1〜3(確認済み)
[思考・行動]
基本方針:とりあえず自分が死なないように動く
1:自分の異能が出てくる作品を見る
2:科学教師と行動を共にし協力するつもりだが、ナオ・ヒューマの打倒が無理だと思ったら裏切る
3:変身する異能の持ち主には警戒
[備考]
※バリアを攻撃に使えるとは思っていません
※E-8の火事を目撃しました



※図書館について
図書館には参加者に授与された異能の作品の原作が全て置いてあります。(例:ジョジョなら漫画全巻、仮面ライダー555ならDVD全巻)
再生機器が必要なDVDなどの為、テレビはありますが、PS2かPS3をプレイヤーとして使ってもらいます。代用が利かないレーザーディスクのみ再生機器があります。
ただし、置いてあるのは原作のみです。メディアリミックスやスピンオフ作品は置いてありません。
(例:ジョジョなら原作漫画のみ。アニメ版のDVDやゲームソフト、The Bookなど小説は置いていません。
ただしFate/Zeroなどスピンオフ作品の異能が授与されている場合は置いてあります)
また特例として、原作が18禁のFate/Stay nightは参加者の大半が未成年の為、PS2版のFate/stay night [Realta Nua]が置いてあります。


722 : ◆7PJBZrstcc :2018/03/13(火) 21:51:14 HQJ1wtdw0
投下終了です


723 : 名無しさん :2018/03/14(水) 22:06:26 iP23WQ4c0
投下乙です
ゲームが流動的な序盤の、情報も人間性も不明確な状況でのチームはいつ破綻するかという緊張感が良いですね


724 : 名無しさん :2018/03/14(水) 23:02:30 WVghSd2Y0
投下お疲れ様です
こういう、普段のロワでは見られない展開とかも一つの魅力だよね
仮面ライダーが危険人物になるってのは、なかなか面白い


725 : 名無しさん :2018/03/15(木) 10:39:07 QUu5QMZI0
投下乙です
>>724氏も言ってるけど正義の味方(の能力)が敵に回るかもしれないっていうのは面白い解釈ですね
顔が隠れる(変えられる)タイプの変身能力者は天草パパとJr、友秋、分目、レオポルド、ビースト先輩、江本、やろうと思えば寧斗も
八人中三人は危険人物……こう考えると変身能力者はステルスマーダーにうってつけなんだなぁ……


726 : ◆7PJBZrstcc :2018/04/21(土) 22:15:51 sXSiT/E.0
投下します


727 : Bが知らせるもの/この夜に夢を見る暇は無い ◆7PJBZrstcc :2018/04/21(土) 22:17:38 sXSiT/E.0
 トーマス・ベイカーと鏑木シリカの2人はE-4,井戸の家から出発しようとしていた。

「さて、次の目的地だが……」
「南東の集落じゃないんですか?」

 トーマスの言葉に疑問を呈すシリカ。
 彼女はトーマスの目的である人喰いをする為に、参加者が集まりやすそうな集落を目指すと思っていた。

「いや、私はここを目指そうと思っている」

 そう言ってトーマスは持っている地図を広げ、目的地を指差す。
 そこはシリカが考えていた場所とは真逆だった。

「座礁船、ですか……」
「ああ、私はそこを目指す」

 A-1にある座礁船、それがトーマスの目的地だった。
 それを意外だとシリカが思っていると、トーマスはそれを見破ったのかなぜそこを目指す理由を説明し始めた。

「私がここを目指そうと思った理由は簡単だ。ここには何かある、そう考えたからだ」
「……簡単すぎます」

 一言で説明され、思わずツッコミを入れるシリカ。
 勿論トーマスもこれで説明を終わらせる気はなく、詳しい説明を始めた。

「そもそも私は最初から疑問だった。
 資源開拓プラントはまだしも、座礁した船を地図に乗せていることが。
 それも島から数百メートルは離れた位置にある船をだ。
 殺し合いなら島の中だけで完結させても問題ないだろう、あのナオ=ヒューマが参加者を海に出す意味も無い」
「そうですね……」

 トーマスの言葉に同意するシリカ。
 それを背に受けながら説明は続く。

「ミス鏑木、私にはこの座礁船と資源開拓プラントは、殺し合いに乗る者の為にある訳では無い様に見えるのだよ」
「え?」

 殺し合いに乗る者の為ではない、ならば誰の為に船やプラントはあるのか。
 そのシリカの疑問にトーマスは答える。

「考えられる可能性は3つ。
 まず1つ目はナオ=ヒューマの為にある」
「はぁ……」
「船やプラントがこの会場に置いてあるのはナオ=ヒューマにとって置かなければならない事情がある、という考え方だ。勿論理由は分からないがな」
「勿論、なんですか……」
「勿論だ、我等には情報が無さすぎる」
「なら、2つ目は何ですか」


728 : Bが知らせるもの/この夜に夢を見る暇は無い ◆7PJBZrstcc :2018/04/21(土) 22:18:18 sXSiT/E.0

 勿論を付ける意味はあるのか、そう思いながらシリカは1つ目の可能性には納得できた。
 だからこそ次に聞く事になる、2つ目が理解できなかった。

「2つ目は殺し合いに抗う我らの様な者の為だ」
「は?」

 トーマスが何を言っているのか、シリカには理解できなかった。
 なぜナオ=ヒューマが反抗する相手の為に物を置くのかがシリカの頭では思いつかないからだ。

「何で、ナオ=ヒューマがそんな事……」
「いや、ナオ=ヒューマでは無いかもしれんぞ」
「……どういう事ですか?」
「簡単だ。
 ナオ=ヒューマには仲間なり部下なりがいて、その中に反逆者が混じっていると考えれば納得出来るだろう」
「な、成程……」

 獅子身中の虫、という奴だろうか。
 まあ確かに、ナオ=ヒューマは他人に好かれ無さそうだな。とシリカは思う。
 トーマスのいう反逆者がこっそり私達の様な参加者に力を貸すのなら、殺し合いに乗る者の為にある訳では無いというにも納得はいく。
 もしそうなら、そこから殺し合いを脱出する手がかりがあるのでは、とシリカは考えた。

「もっとも、現状では3つ目のナオ=ヒューマの気まぐれという可能性が一番高いがな」
「そうですか……」

 しかしトーマスは容赦なくシリカの希望を打ち砕く。
 そして

「まあこれで理解できただろう、私が座礁船を目指す訳が」
「分かりました。じゃあどちらにしろ集落に行って港から出発ですか」
「それは確かめてからだな」
「……何をです?」

 トーマスの言葉の意味を問うシリカ。そして答えはすぐに帰ってくる。

「もしナオ=ヒューマが座礁船に行かせたくないなら、諦めて集落を目指しそこから出発することになる。
 だがナオ=ヒューマにとって行くことが問題ないのであれば、おそらくC-3辺りに座礁船に行く方法があるはずだ」
「船や橋、とかですか?」
「いや、船ならともかく橋なら地図に書くはずだ。私は地下通路だと思っている」
「地下通路ですか……」

 確かに地下通路なら地上の地図に掛かれていないのはおかしくない、のかな。
 そう思いながらシリカは聞く。

「じゃあ直接C-3に?」
「いや、その前に神社に行っておこうと思う。
 そこに通路があるかもしれんし、無いとしても人がいるなら情報交換もできる。
 それに直接行くより道筋が分かりやすいだろうからな」
「分かりました」

 こうして2人は神社をめざし歩き出した。


729 : Bが知らせるもの/この夜に夢を見る暇は無い ◆7PJBZrstcc :2018/04/21(土) 22:19:00 sXSiT/E.0





「ぬわあああああん疲れたもおおおおおん」

 亜希を背負いD-4から歩いてC-4の神社まで歩いてきた恋矢は、亜希を床に降ろしながらぼやく。
 無理もない。距離こそ決して長くは無いが、歩きにくい森の中でなおかつ気絶した人間を運んできたのだから。不満の一つも言いたくなるだろう。
 とはいえこのまま亜希を床の上で寝かせるのはいかがなものか、と恋矢は思った。
 何か掛ける物をと思うが、自分の服はTシャツと短パンでこいつの服は現状ピッチリと着こんでいるし脱がすわけにもいかない。
 仕方ないので亜希のデイバッグを枕代わりに頭の下に敷いた。

「これで少しはマシだろ」

 多分、と後ろにつけて恋矢は亜希を寝かせる。
 この時点で亜希を見捨てても良かったが、今更別れるのも嫌だった恋矢は亜希の横に座る。
 そうして座りながら亜希が起きるのを待っていたが、しばらくして恋矢は心から思った。

「暇だ」

 暇だった、凄く暇だった。
 普段なら空き時間が出来たなら、スマホで音楽を聴くなりゲームするなり暇つぶしの手段がある。
 が、現状スマホは取られている上に殺し合いという異常な環境だ。
 この状況で暇つぶししている場合ではない、とは思う。
 思うのだが、殺し合いが始まってから2時間以上経ち、C-4とD-4の間をウロウロしているだけとはいえ未だ亜希以外の参加者と会っていない事を考えると、この辺りは人がいなくて安全なのではと考えてしまう。
 だから油断が生まれ、暇だなと思うのだった。
 しかし恋矢の心を油断が支配しようとするまさにその時。

 ギィ

 神社の入口の床が軋む音がした。

「ファッ!?」

 恋矢が驚きの声を上げながら入口の方を見る。
 だが入口は閉めていて、暗闇の中では何も見えず、やむを得ず入口の方へ向かおうとする。

「すまない、誰かいないか」

 すると神社の扉の向こうから男の声がする。
 恋矢はそれに返答せず、音をたてないようにしながら―最初の時点で驚きの声を上げた時点で遅い気もするが―扉の前に立つ。

「誰も居ないんじゃないですか?」

 更に扉の向こう少女の声が聞こえてきた。
 恋矢はそれを聞いてやりすごせる、と安心した。

「いや、中に誰かいるのは確実だ。
 小さいが男の声が聞こえたし、僅かだが足音もした」
「はぁ……」


730 : Bが知らせるもの/この夜に夢を見る暇は無い ◆7PJBZrstcc :2018/04/21(土) 22:19:45 sXSiT/E.0

 しかしその希望は一瞬で崩れ去る。
 男は恋矢が出した足音や声を聞いていたのだ。

「という事だ、聞こえているのだろう。
 我らが信用できないというのならそれもいい、だが情報交換位はしてくれないだろうか」

 恋矢は考える、この申し出を受けるか否か。
 受けないデメリットは少ない、無言を貫くなら何も言わず彼らは去るだろう。
 受けるメリットは多い、こっちはほぼ情報が無い。何せ自分たちはC-4とD-4をうろうろしてただけでロクに他の参加者と会っていないのだから。

 恋矢は考えた結果

「しょうがねぇなぁ(悟空)、じゃけん情報交換しましょうね〜。
 とはいっても俺、大した情報持ってないけどいいすか?」
「それは構わんよ。
 だが情報交換の前に自己紹介でもしようか、私はトーマス・ベイカーだ」
「私は鏑木シリカです」
「田所恋矢、学生です」

 情報交換を受け入れた。
 恋矢が渡した情報は少ない、精々この辺りには蜂が居るから気を付けろ位だ。
 異能や気絶している亜希の事は言わなかった。気絶している人間を抱えている事を言いたくは無かったし、異能に関しては向こうも言うとは思っていないからだ。
 一方、恋矢が受け取った情報も決して多くは無い。だが有益だった。

「E-4の井戸の家に殺し合いに乗っていない参加者、すか……」
「うむ、君は乗っていないのなら会いに行くといい。彼、ミスタ島原なら君を拒絶したりはしないだろう」
「そ、そうすか……。でもいいんすか?」
「何がだね?」

 恋矢の疑問の声に、何を言っているのか分からないとトーマスは返す。

「いや、俺大したことない情報しか渡せてないのに他の参加者の情報貰っちゃって……」
「大したことないだと? いやいやとんでもない、我等にとってはとても有益だ」
「「え?」」

 トーマスの発言に恋矢とシリカの声がダブる。

「ミス鏑木は思い出してほしい。我らが出会ったのはG-2、山の中腹だ。だがそこに虫はいたかね?」
「……いませんでした」
「やべぇよやべぇよ……」

 2人の会話に思わず口を出す恋矢。
 森の中に虫がいるのだから山の中にも普通は虫位いるだろう。
 たまたま見なかっただけならともかく、もし1匹もいないとしたら……。

「他の場所も回らないと何も言えないが、もし虫がいるのがこの辺りだけならば……」
「ここには何かあるという事ですか?」
「そうだ。そして一番怪しいのはやはり――」
「座礁船……」
「うむ、おそらくな」

 そこでトーマスはシリカとの会話を打ち切って、恋矢に話しかける。

「と、いう訳だ。これより我らはA-1の座礁船を目指す、手伝ってくれるのなら後からでもいいから来てくれ」
「……申し訳ないが同行はNGさせて下さい」
「……まあ仕方あるまい」

 そう言うと2人分の足音が遠ざかっていくのが恋矢には聞こえた。
 それを聞いて恋矢はこれからどうするか考えようとするが

「何するにしても、まずは千原が目覚めるのを待つべきだよなぁ……」

 その前に、同行者の回復を待つことにした。


731 : Bが知らせるもの/この夜に夢を見る暇は無い ◆7PJBZrstcc :2018/04/21(土) 22:21:20 sXSiT/E.0





 田所恋矢との情報交換は、トーマス達にある種の指針こそ得たものの大したことはお互い言っていない。
 それは同行者の存在や異能、そしてもう1つ

「良かったんですか、怪しいと思っている丹美君のことは言わなくて」
「下手に何か言うとミスタ丹美に気付かれるかもしれないからね。何も言わない方が良いだろう。
 嘘や確証の無い情報をまき散らすようなメディアリテラシーの無い真似はしたくないのでね」
「……そう言う問題ですか?」

 怪しさを覚えている参加者、丹美寧斗について。
 彼らは寧斗について何も言わなかった。容姿どころか存在すらも。
 こうすれば実際に会った時寧斗と出会う事で何らかの違和感を覚えてくれるのではないか、とトーマスは考えたのだ。

「でも下手すれば田所さんがこっちに疑いの目を向けますよね?」
「それならそれで仕方のないことさ」

 このトーマスの行動が誰にとっての吉で、誰にとっての凶になるか。
 それは誰にも分からない。


【一日目・3時00分/C-4・神社】

【トーマス・ベイカー@バクバクの実/ワンピース】
[状態]:健康
[装備]:グイード・ミスタの銃(6/6)@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0〜2(確認済み、着替えになりそうなもの、剣無し)
[思考・行動]
基本方針:ナオ=ヒューマを倒し殺し合いから脱出する
0:A-1の座礁船を目指す、その為にC-3へ行く
1:殺し合いに乗った人間は殺し、食す
2:この辺りには何かある、かもしれない
3:ミスタ田所は割と妥当な考え方をするね
[備考]
※自身の異能を『何でも食べる事が出来る能力』と認識していますが、それだけではないと考えています。
ただし、確信はしておらず食べる以外の能力は分かっていません。
※鏑木シリカの異能の一部(螺湮城教本)について知りました
※丹美寧斗は異能で子供に成りすましている成人男性だと推測しました
※田所恋矢と情報交換をしましたが、一緒に居た千原亜希の事や異能の事は知りません。

【鏑木シリカ@キャスター(ジル・ド・レェ)の宝具・スキル/Fate/】
[状態]:健康
[装備]:セイバーのスーツ@Fate/Zero、螺湮城教本@Fate/
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0〜1(確認済み、着替えになりそうなものは無し)、トーマス・ベイカーの誓約書
[思考・行動]
基本方針:死にたくない。生きて幸せになりたい
1:この人(トーマス・ベイカー)に付いていく。
2:この辺りにはなにかある……?
[備考]
※自身の異能の一部(螺湮城教本)について把握しました
※螺湮城教本を読んで正気度が喪失するかは次の書き手にお任せします
※丹美寧斗は異能で子供に成りすましている成人男性だと推測しました
※田所恋矢と情報交換をしましたが、一緒に居た千原亜希の事や異能の事は知りません。


732 : Bが知らせるもの/この夜に夢を見る暇は無い ◆7PJBZrstcc :2018/04/21(土) 22:21:56 sXSiT/E.0

【千原 亜希@スパイダーマン/スパイダーマン(サムライミ版)】
[状態]:失神、スカート膝下、襟までボタンを閉めたマジメスタイル、殺し合いへの恐怖
[装備]:七味唐辛子、ミケル、ミケルの入ってる虫カゴ
[道具]:支給品一式
[思考・行動]
基本方針:不明(ドッキリではないのはわかった)
0:失神中
1:虫怖い虫怖い虫怖い蜘蛛怖い蜘蛛怖い蜘蛛怖い
2:恋矢と一緒に行動
3:殺し合いや異能への恐怖感
※異能がスパイダーマンであることを理解しました
※漫画、特撮に対しての知識は「ワンピース」と保育園の時に見ていた「魔法戦隊マジレンジャー」
「仮面ライダー響鬼」「ふたりはプリキュア」のみ

【田所 恋矢@仮面ライダービースト/仮面ライダーウィザード】
[状態]:精神疲労(小)、混乱気味、空腹度5%
[装備]:仮面ライダービーストの装備一式
     (ビーストドライバー、ファルコリング・カメレオリング・ドルフィリング・バッファリング、
     ハイパーリング、ダイスサーベル、ミラージュマグナム、グリーングリフォン@仮面ライダーウィザード
[道具]:支給品一式、サバイバルナイフ、日本刀、プラモンスター
[思考・行動]
基本方針:すいません許してください、何でもしますから……
0:亜希が目覚めるのを待つ
1:本気で早く家に帰りたい
2:亜希が目覚めたらE-4の井戸の家にに行くかA-1の座礁船に行くか決める
※異能が仮面ライダービーストであることを知りましたが、知識が無いので具体的に何ができるのかわかっていません。
※仮面ライダービーストの装備一式は制限により田所恋矢にしか触る事ができません。
 また、何かしらの能力で触れたとしても、使用できるのは田所 恋矢のみです。
 この制限は田所 恋矢が死亡しても解除されません。
※長時間魔力を得なかったり、ビーストの能力を使うたびに副作用として空腹感が高まっていき、100%になると死亡します。
 食事で空腹感を抑え、他の参加者を殺害して魔力を吸収するなどで空腹を満たすことができます。
※トーマス・ベイカーと情報交換をしましたが、丹美寧斗の事や異能の事は知りません。


733 : ◆7PJBZrstcc :2018/04/21(土) 22:22:28 sXSiT/E.0
投下終了です


734 : 名無しさん :2018/04/21(土) 22:41:39 yF/Vm5kc0
投下乙です
果たして座礁船に何が待っているのやら……
トーマス氏は寧斗の件をビースト先輩に教えなかったけどそれはそれでまずいんだよなあ……(殺人鬼並感)
あと亜希ちゃんはいつ目覚めるのか


735 : 名無しさん :2018/04/22(日) 00:55:29 txw9r2og0
投下乙です
ようやっと二人も進展しそうで何よりだ
座礁船、前々から気になってたけど何があるやら・・・・・・


736 : ◆7PJBZrstcc :2018/05/10(木) 18:46:23 NFQlMCZs0
投下します


737 : 殺人鬼が虎と戦ってどうすんだ ◆7PJBZrstcc :2018/05/10(木) 18:47:18 NFQlMCZs0
 怪物(ひと)、道端ロクサーヌと人間(おに)、笹原卓の戦いは一進一退だった。
 と言っても2人の実力が伯仲していた訳では無い。
 怪物と化したロクサーヌの身体能力は、人間である卓より高くなっている。
 だから真っ向勝負ならロクサーヌの勝ちは明白だ。
 にも関わらず互角なのには理由がある。

 1つはロクサーヌが自らの異能に慣れていないからだ。
 異能、名状しがたい力は彼女に人間を超えた力を与えた。
 だが彼女は殺人はおろか喧嘩すら縁遠い生活を送るモデルである。
 そんな彼女にとって与えられた力を操るのは難しく、振り回されるのが精々である。
 異能には魔法と空手のスキルを扱うことができる効果もあるが、彼女はそれを把握していない。
 もしも把握していれば戦いを有利に出来たかもしれないが、現状彼女に出来るのは身体能力を生かした直接攻撃のみだ。

 ならば対峙している殺人鬼、笹原卓が有利なのかと言われるとそんな事はない。
 まず単純に、肉体スペックが上がっているロクサーヌとは対照的に卓の身体能力は一般的な男子高校生の平均だ。
 そして異能は幻想殺し、右手で触れた異能を打ち消すという強力な物だがリーチが短いという欠点がある。
 更に言うと、ロクサーヌの名状しがたい力の様に肉体を変化させる異能に対してどう作用するかも分からない。
 触れただけで人間に戻るのか、触れられている間、その場所だけ人間になるのかが卓には想像出来ない。
 にも関わらず武器は現状片手剣のみ、なので彼は慎重な戦いを強いられている。
 だからこその互角、お互いに決め手に欠けるのが現状だ。
 しかしその現状も、まるで薄氷のようにいつ壊れてもおかしくないものだ。

「ハァ……ハァ……」

 交戦の中、卓は息を切らす。それでも隙を見せないように心掛けているが、疲労は明白だ。
 対するロクサーヌは息を切らすことなく卓を睨んでいる。
 単純な身体能力の差が、持久戦という状況で露呈している。
 この現状を正しく認識している卓は、思わず頭を抱えたくなりながらも考える。

 ――現状やっべーぞこれ!?
 このままじゃ間違いなく俺は負ける。死にはしないが生きてればいいって問題じゃない。
 勝つ手段? ねえよんなもん。単純に力で負けてんだから。
 よし逃げるか。いやどうやって?
 待て、まだ俺にはこれがある。

 そう考えて卓は自分が持つデイパックを見る。
 そこにはまだ自分が調べていない支給品がある。
 そしてそれを取り出す方法は、既に思いついている。

「外せば負けの一発勝負か……、こういうのも悪くねえな」

 この卓の呟きが聞こえたのか、ロクサーヌは構えて警戒する。
 最も、その構えも警戒も卓から見れば殺せるレベルに隙のあるものだったが。

「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 そして卓は前触れもなく叫び、全力を込めて

「いっけええええええええええええええ!!!」


738 : 殺人鬼が虎と戦ってどうすんだ ◆7PJBZrstcc :2018/05/10(木) 18:47:53 NFQlMCZs0

 持っていた剣を投げ飛ばした。

「エ?」

 ロクサーヌが驚きの声を上げ、注意を剣に向けた瞬間に卓はデイパックに手を入れ、最初に触れた物を引き出す。
 何が出るのか分からない、だが卓は己の運を信じる。

 ――俺の運を舐めるな!
 俺は艦○れで島風を建造出来たし、ア○レンならネ○テューヌコラボ全キャラ手に入れた。
 いやこれ運の証明にならねえな!
 でも殺し合いに乗る率100%の俺をナオ・ヒューマは多分優遇するだろ、主催者的に考えて!
 だからいける、大丈夫だ!

 半分以上自己暗示だが、とにかく卓は自分を奮起させながら引き出した。
 引き出したもの、それは。

「バイク来たあああああああああああああああああああああああああ!!!」

 バイクだった。
 正式名称はマシンウィンガー、仮面ライダーウィザードの主人公操真晴人が乗るライダーマシンである。
 最高速時速260キロと、ライダーマシンとしては低いがバイクとして見るなら十二分に速い。
 最も、卓はそれに気付いておらずただのバイクとしか見ていない。
 だがそれで今の卓には十分。
 バイクを見た卓は迷いも無く飛び乗り、エンジン全開にして逃げ出した。





 一方、卓をまんまと逃がしたロクサーヌ。
 まさか剣を投げるとは思わなかった、今まで接近戦で戦っていたから。
 まさか逃げるとは思わなかった、完全に殺す気で来ていると思っていたから。
 いくつも理由が思い浮かぶが、ロクサーヌはそれらを振り払い次にやるべきことを決める。

「追いかけなくてハ!」

 正直バイクに速度で追いつける気はしないが、それでもロクサーヌは卓を追いかける為走り出した。
 まさかあんな隠し玉があったとハ、と驚きながら。

 実際は隠し玉でも何でもなく、卓が半分くらいやけっぱちで賭けてたまたま勝っただけなのだが、ロクサーヌにそれを知るすべはない。

「でも、何デ……」

 何で笹原さんは逃げるという選択肢を取れるのか、がロクサーヌには分からなかった。
 笹原さんからすればこの場でロクサーヌを殺さなければ、自分が殺し合いに乗っていることが私を通じて広まりかねない筈なのに。
 だからこそ絶対に私を殺すまで戦うと思っていた。
 なのに現実は恐ろしい程迷いの無い逃走だ。
 まるで殺し合いで優勝する為に人を殺すのではなく、人を殺す為に殺しているようだ。

 そこまで考えて思い浮かぶのは、卓が少し前にしていたこの発言だ。

『笹原卓は殺人鬼である。だから殺したい、だから殺す』

 これを私は本気だと捉えなかった、だがもし本気だと言うのなら――

「彼ハ、私ガ考えていたより遥かニ危険ナ存在カモしれませんネ」  

 だとすれば急がなければ、とロクサーヌは気持ちが逸る。
 それでも卓には追いつけはしないだろう、向こうが止まらない限りは。


739 : 殺人鬼が虎と戦ってどうすんだ ◆7PJBZrstcc :2018/05/10(木) 18:48:24 NFQlMCZs0





 虎、フレイスと人間、阿良愛の戦いはフレイスが圧倒的に優勢だった。
 なぜかと言うのなら、やはり異能の差が大きい。
 愛に与えられた異能、スパルタクスの宝具とスキルは彼女に強力な肉体を与えた。
 ダメージを受けると身体に魔力が蓄積され、そのダメージも一定時間で自動回復するのだから肉弾戦ならまず負けることは無いだろう。

 だが相手が悪い。
 相手はライオンであるフレイス。いくらナイフ1本と格闘術で熊と渡り合える彼女でも、肉体面で言うなら間違いなくフレイスは人間である愛よりも上だ。
 更にフレイスの異能はピカピカの実。
 光となって光速移動や、レーザーの発射に攻撃を受け流すことが出来る強力な異能だ。
 フレイスは未だ完全に使いこなせている訳では無いが、戦いの情勢が変わる訳では無い。
 攻撃方法は物理しかない愛とは洒落にならない位相性が悪かった。

 更に言うなら、愛が苦境に追い込まれている理由はもう1つある。
 それは愛の異能、スパルタクスのスキルの1つ狂化にある。
 この狂化の効果は、『常に最も困難な選択をする』と『圧制者を許さない』という風に思考するようになるものだ。
 今の所このスキルの効果は微弱だが、それでも働いている。
 だからこそ彼女は攻撃が効かない相手に、島津蒼太を逃がすという当初の目的を果たしてなお自分は逃げずに戦っているのだ。

『こんなん楽勝やんwww。
 ワイの勝ちは決まりや。終わったらさっき逃げたチビ殺したろか、と思ったけどどこ行ったか分からんな。
 まあええわ、どうせ皆殺しやし生きとったら殺したるわ』

 そして全てを理解してはいないが、自分が有利だという事は理解しているフレイスは余裕の態度だった。
 フレイスからすれば、自分の攻撃は届くのに相手の攻撃は避けられるワンサイドゲームにもほどがある状況だ。
 それを理解していなかった時には攻撃を受けたりもしたが、裏を返せば理解すれば攻撃を受けることも無くなる。
 懸念を上げるなら、愛が持つ回復能力位だ。しかしそれもフレイスからすれば多少鬱陶しい位しか思っていない。

 つまる所、フレイスは調子に乗っていた。
 流石にナオ=ヒューマ相手には簡単に勝てない、と思いつつもそれ以外は楽勝だと高を括っていた。
 これはただのハンティングだと、そう思っていた。

『ん、なんや?』

 さてどうやってこの人間を殺してやろうか、と考えていた所でフレイスは後ろから何らかの音が響いてくることに気付く。
 それは故郷の島で幾度も聞いた音、故郷を蹂躙しようとした人間たちが出す無粋な音。
 エンジン音だ。
 フレイスは後ろを向き、何か、フレイスには分からないがバイクに乗った人間が自分に向かって一直線に走って来ているのを見た。
 ここでフレイスは考える。
 はっきり言って回避するのは造作もない、だがこの島で得た能力の練習になるのではないかと。
 自分はまだこの力を完全に使いこなしているとは言えない。それでもナオ=ヒューマ以外は楽勝だろうが、ヒューマと戦う事も考えておきたかった。
 だからこそフレイスは練習の為に、バイクが自分に当たる直前に透明化しバイクを回避することを選んだ。
 それがミスとも知らずに。


740 : 殺人鬼が虎と戦ってどうすんだ ◆7PJBZrstcc :2018/05/10(木) 18:48:53 NFQlMCZs0

「どけよおおおおおおおおおおお!」

 人間が何か叫んでいるがうでもいい。
 フレイスが透明化しバイクがフレイスをすり抜けて進んでいく。
 しかし、人間の右手がフレイスに掛かった瞬間

『ぐわあああああああああああああああああ!!!』
「うわあああああああああああああああああ!!!」

 透明化が解除され、バイクが体にめり込み、吹き飛ばされた。
 それと同時に乗っていた人間も投げ出され、さっきまで戦っていた人間が受けとめたのだがフレイスはそれを感知しない。
 そんな事より自分が今受けている激痛の方が問題だ。
 バイクはもう1回透明化する事で体から取り除いたが今度は血が止まらない。

『死ぬんか!? ワイは死ぬんか!?
 嫌や、死にたない!
 死ぬわけにはいかへん!
 ワイは人間共を殺さなあかん!
 何か手は無いんか!?』

 さっきまでの優勢が嘘のように掻き消えるフレイス。
 必死になって足で傷口を抑えたり、無駄だと思いつつ周りを見て何か無いか探すフレイス。
 すると、さっきまで何もなかったはずの場所に見たことの無いものが落ちていた。
 まるで黒い石の様な、不思議な物体。
 さらにその横には、なぜか虎にも読める文字で書かれた黒い石の説明書きがあった。

『魔石。使用すればHPを最大値の25%回復するアイテム』

 それを見てフレイスは迷うことなく食べた。
 どう使えばいいのか分からないが、とりあえず回復という事は体にいい筈。そんな考えで食べた。
 それが功を奏したのか、フレイスの体の傷は塞がり血は止まる。
 だが内部にダメージは残ったままだ。

『許さんであの人間……!
 ワイが絶対にぶち殺したるからな……!!』

 バイクに乗っていた人間に殺意を向けるフレイス。
 治ったとはいえあそこまでの傷をつけた相手を許す選択肢は、フレイスには無い。
 だが彼はもう少し考えるべきだった。
 なぜ自分の前にさっきまで無かった石が落ちていたのかを、そうすれば気付けたかもしれない。
 自分のデイパックから支給品が零れ落ちたことに。
 自分の支給品が、いつの間にか1つ無くなっていることに。


741 : 殺人鬼が虎と戦ってどうすんだ ◆7PJBZrstcc :2018/05/10(木) 18:49:24 NFQlMCZs0





 阿良愛は訳が分からなかった。
 さっきまで虎と戦っていたと思ったら、いきなりバイクがやってきて虎にぶつかり運転手の少年がこっちに飛んできたので受け止めた。
 1行で説明できるが、状況がジェットコースターだ。

「えっと……。あなた、名前は?」

 とりあえず受け止めた少年を地面に降ろしながら尋ねる。
 少年は、さっき身近にあった危険を感じていないかのように澱みなく答えた。

「笹原卓、ごく普通に高校生やってます」
「私は阿良愛、警察官です!」
「おお、それは有難いですね。
 じゃあ早速なんですけど虎をなんとかしてくれませんか? さっきから殺気向けられまくってるんですよ。
 いや洒落じゃなく」
「余裕ありますね笹原くん」
「まあ殺意向けられるのはこの殺し合いが初めてじゃないんで。野生動物に襲われるのは初めてですけどね」

 どこでそんな経験をしたのか、と愛は聞きたくなったがその前に虎が2人の目の前に立ちはだかった。
 虎の目は卓を睨んでおり、彼が言った殺気の下りは嘘でないと明確に示される。

「笹原くんは下がってください、ここが私が戦います」
「下がってたいのはやまやまですけどね……。
 でも阿良さんはあの透明化に対する異能を持ってるんですか?」
「私の異能はおそらくですが回復能力なので透明化に対しては力になれません。
 ですがこれでも熊殺しと言われたことがあります!」
「虎殺しになってくれませんか。愚地独歩になって頂けませんか!?」
「でも正直物理的な面ならともかく、あの透明化をされると私には成す術はありません。
 ですが時間稼ぎ位なら……」
「いや、それなら俺も戦いましょう。
 物理面はともかく、異能相手なら俺の立つ瀬もあります。
 というか戦闘面で初めて俺異能使うわ、最初が自分の支給品の効果無効ってどういうことだよ」

 卓の言葉にどういうつもりなのか、と愛は思う。
 警察官である以上一般人を守るのは当たり前だ。
 いくらこの殺し合いが異常事態だからと言って一般人を矢面に立たせるつもりは愛には無かった。

「一般人のあなたに矢面に立たせるわけにはいきません」
「んな事言ってる場合じゃないでしょうに……。
 てかもう向かってきてんだよ!!」

 卓の言葉通りに虎はこっちに向かってきていた。
 それもただ走って来るだけじゃない、愛が卓が来る前に見た高速移動だ。

「気を付けてください!」
「分かってますって!」


742 : 殺人鬼が虎と戦ってどうすんだ ◆7PJBZrstcc :2018/05/10(木) 18:50:05 NFQlMCZs0

 卓に注意をしながら、前後左右を見張る愛。
 自身の動体視力では追い切れない以上、出来るのは向かってきたときに迎撃する事のみ。
 虎の足音が前後左右で響く。さっきと同じように凄まじいスピードで。
 その音が幾分か続いた所で、紛れるかのように小さな音がした。
 その音を愛は知っている。
 それは石を飛ばした音だ。
 そして狙いは

「笹原くん危ない!」

 卓だった。
 彼に向かって飛んできた石を愛は咄嗟に受け止めた。そしてその石を見て愛は驚愕する。
 それ自体は普通の石だった。だが大きさが違う。
 愛に飛んできたのは小石だった、恐らく石をぶつけても大した効果は無いと分かっていたから隙を作る為のものだろう。
 だが卓に飛んできたのは大き目の石だ。頭にぶつければ大怪我は間違いのないような大きさの石だった。
 これを見て分かる事は、この虎は頭が良いという事だ。
 相手をよく見て、それに合わせて効果的な攻撃をする。
 野生動物が持つ悪辣さでは無い気がするが、気にしている暇は無い。

「阿良さん後ろ!」

 なぜなら虎が石が飛んできた方向とは反対から、愛目がけて飛びかかってきたのだから。
 そして押し倒し、動けないようにし愛の頭を噛みちぎろうとする。

「私……!?」

 笹原くんじゃないの!? という驚きが愛を支配する。
 私を仕留める為に笹原くん狙いに見せたハッタリなのか、それとも邪魔になる私を先に倒したいだけなのか。
 それを知るすべは愛には無い。
 だがこれだけは分かる。
 これはもう虎じゃない。
 虎の形をして、野生の力を持っていてもこの周到さは野生動物のそれじゃない。
 人間だ。知恵のある人間と同じだ。
 性質が悪すぎる。

「畜生が!」

 それを見て叫びながら右拳を構え、虎に向かって行く。
 愛もまた拳を構え、虎に抵抗しようとする。
 だが押さえつけられ上手く動くことが出来ない上に、透明化で無効にされるかもしれないという懸念もあったがそれでも目一杯殴り掛かる。
 当然フレイスは透明化で対処しようとする。

「甘いんだよ!」

 しかし卓が右拳で虎を殴った瞬間、透明化が解除され虎は殴り飛ばされる。
 勿論人間が虎を殴った所で大したダメージを与えられるわけがない。
 だが隙は生まれる。
 その生まれた隙に、愛もまた殴り飛ばす。
 卓と違い十分なダメージを与えて。


743 : 殺人鬼が虎と戦ってどうすんだ ◆7PJBZrstcc :2018/05/10(木) 18:50:41 NFQlMCZs0

「よし!」

 大きくのけぞった虎から這い出た愛は、卓を連れて距離を取る。
 そしてある程度の距離を取った所で、お互い動くことなく睨みあっていた。
 理由は簡単だ。
 愛と卓は虎のスピードについて行けず、受け身にならざるを得ない為うかつに動けないから。
 そして虎は卓が自分の異能をどうやってか無効にしていると理解し、うかつに近づけなかった。

 膠着状態になる2人と1匹、ともすれば永遠すらありえそうなこの現状。
 だがその状態は長くは続かなかった。

「見つけましたヨ、笹原サン!」

 唐突に女性の声が聞こえた。
 声がした方を愛が見ると、そこに居たのは異形だった。
 人型ではあるものの、それは人の形をしているだけだ。
 警察官として活動し、人の死体すら見たことのある愛でも見覚えの無い怪物。
 そんな物が現れ、卓の名前を呼んでいる。
 その事実に愛は思わず思考が止まった。

 だが卓は思考の止まった愛から、持っているサバイバルナイフをひったくると、なんと虎へ向かって行った。
 危ない、と愛は言おうとしたが虎もまた現れた異形に目を奪われていた。
 というより、恐怖して動けなかったというのが正しいのだろうか。
 野生では絶対に見る事の無い存在に、理解を越えた存在に虎は恐怖したのだ。
 その隙を卓は容赦なく突く。

 卓はナイフを振るい、虎を斬りつけようとする。
 それに気付いた虎は咄嗟に後ろに退く。そのお蔭でナイフの直撃は避けた。

 だが虎の片目を傷つけるには十分だった。
 片目に傷を負い、咆哮する虎。
 卓はすぐにナイフを構えながら、愛の元まで下がる。
 しかし虎は愛達に向かってくる事無く、異形を一瞥して逃げ出した。

「助かった……」
「訳じゃありませんよ」

 安心する卓と対照的に、未だ臨戦態勢を解かない愛。
 それを見た卓は一言。

「ああ、大丈夫ですよ阿良さん。
 見た目は怖いかもしれませんけどあの人殺し合いには乗ってませんから」
「本当ですか?」
「本当です」

 その言葉を聞いて愛も戦闘態勢を解く。
 短時間だが卓は信頼出来る人物だ、と愛は思っていた。
 自身を狙う虎相手に、勇気を持って立ち向かえる人。
 愛は卓をそんな風に思っていた。
 だからこそ、卓がそう言うならあの異形も殺し合いに乗っていないと信じたのだ。

 ――なら何で一緒に居ないのか?

 愛は一瞬そう思ったが、これまでの戦いで疲弊していたのか卓に寄りかかるように気を失った。


744 : 殺人鬼が虎と戦ってどうすんだ ◆7PJBZrstcc :2018/05/10(木) 18:51:13 NFQlMCZs0





 完敗だった。
 ぐうの音も出ない程の完敗だった。

『油断してもうた……。
 これがヒューマのいうイノーって奴かと思って、調子乗ってもうた……』

 透明化に高速移動、この2つがあれば楽勝だと高を括ったせいで負けた。
 言い訳しようと思えばできるが、仮にも野生で生きてきたフレイス。それが意味の無いことくらいは分かる。

『何やあの人間のイノー、ワイが躱そうと思ってもいきなりそれをでけへんようにするやなんて。
 もしかしてあの人間はイノーを使えへんようにするイノーを持っとるんか』

 それでもただの肉弾戦なら負ける道理は無かった。
 でも負けた、それはなぜか。

『ワイが弱いからや。
 人間なんざ余裕やと思ってたワイが弱いからや』

 人間は弱い。
 銃や罠が無ければ人間なんて余裕で食べられるだけの存在になる。

 だが人間は強い。
 仲間を集めて道具を持って戦い、あの自然を破壊し恐ろしい勢いで自分の領土にしていった。
 そして沢山の仲間を殺してきた。

『やったるわ。今までの傲慢はポイーでいくで。
 そしてあのイノーを無効化するイノーを持った人間をぶち殺したるで。
 でも疲れたンゴ、その前に少し休まなアカンわこれ』

 そう思ったフレイスの前に現れたのは、H-6にある農協の建物。
 勿論フレイスに人間の文字は読めないが、とにかく建物であることくらいは分かる。

『雨風しのぐには丁度ええな……。
 人の気配もせえへんし、ここで一休みや』

 そしてフレイスは農協に入り、体を寝かせて一休みする。
 勿論寝る訳では無い、体を休めていても警戒はする。

『待っとれよ、人間共!
 ワイは必ず、お前らに勝つで!!』

 そして宣戦布告。虎の言葉が人間に分かる訳は無いが、それでも宣言する。
 これは狩りでは無いと。
 これは殺し合いだと。

 この瞬間、フレイスは真にゲームに乗ったのだ。

『にしても最後に見た奴、あれ人間なんか……?』

 一抹の疑問を残して。


745 : 殺人鬼が虎と戦ってどうすんだ ◆7PJBZrstcc :2018/05/10(木) 18:51:42 NFQlMCZs0





 道端ロクサーヌが見た物、それは虎と戦う殺人鬼。そして殺人鬼と一緒に居た少女。
 少女は気を失い、殺人鬼に寄りかかっていた。
 それを見たロクサーヌはすぐに殺人鬼、笹原卓の元へ向かう。

「その人ヲ放しナさい!」
「お断りします」

 そう言って卓は少女の首に持っていたナイフを向ける。

「いささか月並みですが、動くとこの人の首をナイフで掻き切りますよ」
「あなたハ……! こんな事ヲして恥ずカシくないノですか!?」
「流石に罪悪感は感じてますけど……」

 ロクサーヌの問いに答えながら、卓は少女を引きずりつつある場所へ向かう。

「でも捕まりたくないんでしょうがないですよね」

 そう言って卓は少女を放す。
 それを見たロクサーヌは少女の元へ向かおうとするが

「一歩でも動いてみろ、首は切れなくても頭にナイフを刺すくらいは楽勝だぞ」

 卓の言葉で足を止める。
 その光景を見ながら卓は目指していた場所に辿り着く。

 それはバイク、が倒れている場所だった。
 卓はナイフを持ちながらバイクを起こし、そして乗る。
 乗ったと同時にナイフを投げ捨て、エンジンを掛けて走り出した。

「もう動いていいですよロクサーヌさん。
 あとその人の介抱よろしくお願いしますね」
「待ちナサ……っ」

 そう言って卓はロクサーヌが呼び止める間もなく去っていた。
 ロクサーヌは少女の元へ行き、状態を確認する。
 幸いなことに傷一つ付いていないようだ。
 虎と戦い、更に殺人鬼の人質にされたにもかかわらず。

「良かっタデす……」

 少女の状態に安心したロクサーヌは、卓が捨てたサバイバルナイフを拾いながらこう思う。

 分からない、笹原サンの考えていることが何一つ分からない。
 何で阿良さんは殺さなかったのだろうか。
 虎と戦っていたから、それどころではなかったのか。
 それとも、何か別の理由が……。

 ロクサーヌには、殺人鬼の気持ちは分からない。
 だがそれでいい、狂人の気持ちなど理解しない方が常人の為なのだから。


746 : 殺人鬼が虎と戦ってどうすんだ ◆7PJBZrstcc :2018/05/10(木) 18:52:13 NFQlMCZs0





 殺人鬼はバイクに乗りながら呟く。

「疲れた……、まじダルい……」

 だがあの状況で休むわけにはいかず、しょうがないから愛を人質にして逃げ出した。
 阿良さんには悪いことをした、と思いつつも卓は次の事を考える。

「虎どうしよっかなー、もう虎優勝エンドでいいんじゃねえの?」

 面倒くささの余り自身の生存すら投げ捨てた言動をする卓。
 だがすぐに思い直す。

「いや駄目だ、虎に襲われて死ぬなんてただの獣害だ。
 どうせ死ぬなら俺は殺人鬼らしく死にたい。高笑いしながら死にたい」

 常人には理解不能の願望を掲げながら、卓は走る。

「でも今は休みたい」

 常人みたいな願望を口にもしつつ。



【一日目・3時00分/H-6 農協】

【フレイス@ピカピカの実/ワンピース】
[状態]:頭部にダメージ(中)、肉体にダメージ(中)、疲労(小)、片目に傷、腹に傷跡
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0〜2(自力での確認不可)
[思考・行動]
基本方針:人間達を皆殺しにし、ナオ=ヒューマも殺して島に帰るンゴ
1:今は休むンゴ
2:あのイノーを無効化するイノーを持った人間(笹原卓)は絶対にぶち殺したる
3:人の巣(集落)、どないしよ?
4:優勝後にヒューマを殺すために、何か対策も考えとく
5:これがワイのイノーか……
6:あれ(道端ロクサーヌ)人間なんか……?
[備考]
※南の山山頂から見たことで会場の地形や建物の位置を大雑把に把握しました。
※自身の能力(イノー)についてはまだ完全に把握できていません。
またピカピカの実による攻撃透過などの詳しい能力制限に関しては後の書き手にお任せします。
※支給品の入っているディパックを自分で確認することができません。
 食料のみ開始地点に配置されていました。
 支給食料(新鮮な雉の死骸)×3はH-3のどこかに埋めてあります。
※強い衝撃を受けると、支給品がデイパックから零れ落ちる事があります。
フレイスはこの事に気付いていません。
※自身の支給品が1つ減ったことに気付いていません。
※人間(笹原卓)の異能を『イノーを無効化するイノー』だと思っています


747 : 殺人鬼が虎と戦ってどうすんだ ◆7PJBZrstcc :2018/05/10(木) 18:52:44 NFQlMCZs0

【一日目・3時00分/H-5 草原】

【道端ロクサーヌ@名状しがたい力(ウズラ)/SAVE】
[状態]:怒り、困惑
[装備]:サバイバルナイフ
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1〜3、君島蛍の持ち物(基本支給品一式、不明支給品×0〜2、指パッチンのやり方を書いた紙)
[思考・行動]
基本方針:ナオ=ヒューマの打破、もしくは殺し合いからの脱出
1:笹原卓を止める、殺しはしない
2:殺し合いに乗っていない人々と合流
3:殺し合いに乗った人も可能であれば説得
4:すぐにでも元の姿には戻りたいが、そのために他人を犠牲にしない
5:何か顔を覆えるものが欲しい
[備考]
※自分の姿が異形のものになっていると確認しました。使える技そのものは把握しきっていません。
※君島蛍の能力が指パッチンで物を切断するものだと知りました

【阿良 愛@スパルタクスの宝具とスキル/Fate】
[状態]:魔力蓄積(小)、体力消耗(中)、疲労(大) 、気絶
[装備]: 防弾防刃ベスト
[道具]:支給品一式
[思考・行動]
基本方針:圧制者を潰す。
1:気絶中
:虎を倒す。最悪、島津蒼太が逃げきるまで時間を稼ぐ。
:一般人を保護する。
:圧制を許さない
※『今の所』狂化スキルの効果は微弱です。しかし圧制者が目の前に現れればその限りではありません。
※宝具によって驚異的な再生能力を得ていますが、『頭部および心臓の大規模な破壊』『首輪爆破』には再生が働かず死亡します。
※ダメージと共に魔力が少しずつ蓄積していきます。最大値まで蓄積されると魔力の制御が出来なくなり、暴走状態に陥ります。

【笹原卓@幻想殺し/とある魔術の禁書目録】
[状態]:疲労(中)
[装備]:マシンウィンガー@仮面ライダーウィザード(運転中)
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜1)
[思考・行動]
基本方針:楽しく気ままに人殺し
1:とりあえず今は逃げる
2:阿良さんには悪いことしたとは思うけど、休みたい
3:虎(フレイス)対策を考える
4:ロクサーヌさんも増田も後でいい
5:月宮のダーリンっぽい奴(赤毛のイケメン)はなるだけ殺さない
6:郷音ツボミに会ったら増田ユーリのことを聞いてみる
[備考]
※自身の異能について把握しました
※どこに向かうかは次の書き手氏にお任せします


【マシンウィンガー@仮面ライダーウィザード】
操真晴人が乗るライダーマシン。
内部には多彩な魔法石が組み込まれているが燃料はガソリン。
最高時速は260km。

【魔石@真・女神転生Ⅲ-NOCTURNE】
使用すればHPを最大値の25%回復するアイテム。
本ロワでは悪魔に限らず参加者なら誰にでも使える。


※G-5のどこかに片手剣が放置されています。


748 : ◆7PJBZrstcc :2018/05/10(木) 18:53:13 NFQlMCZs0
投下終了です


749 : ◆7PJBZrstcc :2018/05/10(木) 18:55:39 NFQlMCZs0
道端ロクサーヌと阿良愛の状態表を間違えたのでこちらに差し替えて下さい

【道端ロクサーヌ@名状しがたい力(ウズラ)/SAVE】
[状態]:怒り、困惑
[装備]:サバイバルナイフ
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1〜3、君島蛍の持ち物(基本支給品一式、不明支給品×0〜2、指パッチンのやり方を書いた紙)
[思考・行動]
基本方針:ナオ=ヒューマの打破、もしくは殺し合いからの脱出
1:この少女(阿良愛)を介抱する
2:笹原卓を止める、殺しはしない
3:殺し合いに乗っていない人々と合流
4:殺し合いに乗った人も可能であれば説得
5:すぐにでも元の姿には戻りたいが、そのために他人を犠牲にしない
6:何か顔を覆えるものが欲しい
[備考]
※自分の姿が異形のものになっていると確認しました。使える技そのものは把握しきっていません。
※君島蛍の能力が指パッチンで物を切断するものだと知りました

【阿良 愛@スパルタクスの宝具とスキル/Fate】
[状態]:魔力蓄積(小)、体力消耗(中)、疲労(大) 、気絶
[装備]: 防弾防刃ベスト
[道具]:支給品一式
[思考・行動]
基本方針:圧制者を潰す。
1:気絶中
2:虎を倒す。最悪、島津蒼太が逃げきるまで時間を稼ぐ。
3:一般人を保護する。
4:圧制を許さない
※『今の所』狂化スキルの効果は微弱です。しかし圧制者が目の前に現れればその限りではありません。
※宝具によって驚異的な再生能力を得ていますが、『頭部および心臓の大規模な破壊』『首輪爆破』には再生が働かず死亡します。
※ダメージと共に魔力が少しずつ蓄積していきます。最大値まで蓄積されると魔力の制御が出来なくなり、暴走状態に陥ります。


750 : 名無しさん :2018/05/10(木) 22:09:30 vMHAdZZM0
投下乙です

手負いの獣は恐ろしいというがフロイスの場合は果たして


751 : 名無しさん :2018/05/10(木) 22:24:16 PEJh.VL20
7P氏投下乙です
四人とも実質痛み分けか……
フレイスは手負い、笹原くんは怪我はないが脆さは人並みと露呈、怪物乙女は怪我を負いつつも合流と
まさか異能も実力も最強格だと思われたなんJ虎に対してロクサーヌの名状しがたい見た目が鍵になるとは思わなんだ
強い異能と地力=即勝利に繋がらないわけですね


752 : 名無しさん :2018/05/10(木) 23:48:26 Z/SYwpfU0
投下乙
卓がいるだけで会話のテンポが早く感じるw
全員そろって成果なしだが、愛には一応仲間の成果はありか
でもこっからはフレイスも本気だしk、困難は多い


753 : <削除> :<削除>
<削除>


754 : ◆7PJBZrstcc :2018/07/16(月) 22:33:00 /Y8tIJ.Y0
投下します


755 : 1/6の生きている参加者 ◆7PJBZrstcc :2018/07/16(月) 22:33:44 /Y8tIJ.Y0
 少女が目を覚まし、体を起こす。
 その目にはどこか希望の様な物が見えたが、周りを軽く見てあっさり掻き消えた。
 この殺し合いを悪い夢とでも思っていたのか、それとも私がいなくなるとでも考えていたのか。
 どちらにしても呑気な話だ、と健彦は思う。
 自分は何もしないのに周りは変わって欲しい、などと都合のいい望みを臆面もなく持つのだから。
 まあ、大の大人が本気で思うなら苛立ちの1つでも覚えるかもしれないが、目の前の相手は年端もいかない少女だ。別に気にはならない。
 それよりもこっちだ、と健彦は隣に居る友秋を見る。
 天草友秋はこの少女にどう接するのか、そして少女は友秋を見て何を思うのか。
 健彦には想像もできない。

「大丈夫かいお嬢ちゃん」

 先に話しかけたのは友秋だ。いかにも友好的だというような笑顔を見せ、少女を安心させようとしている。
 そして友秋は手を差し出し、少女はおずおずとその手を取った。
 どうやら私の心配は懸念だったらしい。
 私と目を合わせようとはしないが、これなら大丈夫そうだ。
 あの少女には少し悪い気がしなくもないが、私の命の為にしばらくは一緒にいさせてもらおう。
と思ったら少女がいきなり立ち上がり、どこかへ向かって歩く。

「どこに行くんだい?」
「……おトイレ」

 友秋が聞くと少女はあっさり答えた。まあ殺し合いが始まってからそういう事は1回もしてないから無理もない。
 というか私も1回もしていなかった、少女のトイレが終わったら私も行っておこう。

 そう思って健彦は待っていた。
 しかし10分ほど待っていても少女が出てこない。
 試しにノックをしてみても反応が無い。

「天草さん」
「何だ?」
「あの子供がトイレから10分以上出てきません。それだけじゃなくノックをしても反応がありません」
「何かあった、か?」
「分かりません。なので天草さんに確かめてほしいのですが」
「ああ、分かった」

 友秋は健彦の頼みに応じて、トイレを開ける。
 一応、入るよと宣言したうえで。

 しかし、少女どころか誰1人としてトイレの中に姿は無かった。
 トイレにある窓を見ると、開いていてその幅は子供なら十分に出られるくらいだった。

「に、逃げたのか……」

 少女が逃げるというのは健彦にとって思考の埒外だった。
 あの現実の重さに耐えられなさそうな少女が、自らの意思で動くとは想定外である。
 だが悔やんでいてもしょうがない、健彦に与えられた選択肢は2つ。

 1つ、このまま見過ごす。
 あの少女は私を怖がったのだからそれに配慮して会わないようにする、という選択肢だ。
 だがこの場合、あの少女が他の殺し合いに乗らない参加者と出会った場合私の悪評が流されるかもしれない。

 2つ、追いかける。
 いくら自分を恐れて逃げた相手とはいえ、少女をこの状況で放りだすなどあってはならない、と考えて追いかける選択肢。
 だが問題は、仮に外に出て追いかけたとしても追いつけるかが分からない。
 それだけでなく、その光景を何も知らない人間が見た場合、大の大人2人が少女を真夜中に血眼になって探すと言う危ない絵面が誕生するということだ。
 正直私なら弁護したくない。

 しかし友秋は、一瞬だけ躊躇ったものの扉に手を掛けた。

「天草さん、何を!?」
「馬鹿野郎、真偽がどうあれこの状況で悪評ばらまかれちゃまずいのが分からないのか!?
 それに、今の時間で他の参加者と接触する可能性なんてかなり低いだろ! 十分連れ戻せるはずだ!」

 それだけ言って友秋は走っていく。

「クソッ!」

 ここで自分だけ留まってしまえば、己の風評が悪くなるどころの騒ぎじゃない。
 この殺し合いをどう動くにしても他者と関わるのは必須なのだから、最初の段階でつまづくのはまずい。
 これが2人ならまだどうにかなったかもしれないが、1人に全部おっ被せられるのは最悪だ。
 だから探すしかない。

「……殺すか?」

 少女の殺害も選択肢に入れた上で。


756 : 1/6の生きている参加者 ◆7PJBZrstcc :2018/07/16(月) 22:34:26 /Y8tIJ.Y0





 少女、伊丹沢妙は逃げる。
 弁護士の側後健彦は妙を現実の重さに耐えられない少女と推察していたが、それは間違いではない。
 彼女は実の父親にどれだけ勝手な理由で殴られ、蹴られようともいずれ無くなると信じて耐える以外の選択肢を持たない少女だ。
 それは間違いではない。
 だが彼女は苦痛から逃げ、恐怖から逃避する少女であっても、それは耐えるか意識を手放す以外の選択肢を持たないわけではない。
 むしろ自ら遠ざかろうとするのは妥当な選択肢だろう。
 血の繋がった実の父親ではなく、ただの他人相手から、それも恐ろしい存在から逃げるのは不自然ではない。
 だから走る。己がどこに向かっているのかすら分からないまま。






 殺人鬼、笹原卓から逃げる為増田ユーリは走る。
 実際は1ミリも追うそぶりを見せていなかったのだが、ユーリにそんな事を知るすべはない。
 ともかく走った。普段なら絶対に走りきれないような距離すら走り切った。
 これがうわさに聞く火事場の馬鹿力なの、なんて考えながら走った。

「ハァ……、ハァ……」

 だが限界は訪れる。今まで走り続けていたユーリは疲労で足を止め、その場に座り込み息を切らす。
 場所はH-8、集落の外側にある道のど真ん中である。

「ヤバい、こんな道の真ん中はヤバい……」

 ユーリとしてはそんな目立つ真似をしたくない、のでなるべく素早く移動。
 1軒の家の壁を背にし、ユーリは息を整える。
 そして落ち着いてきた所で、そういえば支給品を調べていなかった事に気付く。
 最初は隠れていれば大丈夫だろうと考えて、目立っても困るからあえて調べなかったがこの状況じゃそうはいかない。
 だからデイバックを開けようとした所で

 少女がこっちに向かって走ってきた。
 明らかにユーリより年下、下手すれば一桁の年齢かもしれない少女。
 妙にフラフラとした走りで真っ直ぐ進めておらず、近くまで来た時にユーリは少女の体が痣だらけなのを見た。

「え?」

 思わず驚きが口から零れる。
 それが聞こえたのか少女がユーリの元へフラフラと、まるで誘蛾灯に吸い寄せられる虫の様に向かっていく。
 ユーリは考える。

 え、これは何? この子は他の参加者に襲われて、命からがら逃げてきたとか、そう言う感じなの?
 じゃあここ全然安全じゃないじゃん! 何でユーリ逃げてばっかりなの!?


757 : 1/6の生きている参加者 ◆7PJBZrstcc :2018/07/16(月) 22:35:05 /Y8tIJ.Y0

 疲れ切った体に鞭を打ち、ユーリは逃げる事を選ぶ。
 だがここで選ばなければならないことがある。
 それは、ユーリに近づく少女だ。
 連れて行くのか、放っておくのか。
 心情的には連れて行きたい。自分はそこまで善良じゃないと思っているユーリでも、流石にこんな子供を見捨てたいとは思わない。
 だが異能がはびこるこの状況で、見た目や年齢は人を判断する材料になるのか。
 ひょっとしてだまし討ちする為にあんな姿を見せているのかもしれない。
 それどころかひょっとしたらあの少女自体が幻覚かもしれない。
 苦悩しながらユーリは少女をもう1度見る。
 そしてユーリは思った。

 ――あの目は、ユーリと同じだ。
 あの怯えた目は、殺されそうになった一時的な恐怖じゃない。
 もっと常日頃から、何かに苛まれている目だ。ユーリと同じく。
 なら助ける? 自分にそんな力があるかすら分からないのに。
 だけど、でも……。

「こっち来て!」
「……?」

 ユーリは少女の手を取った。
 少女は意味が分からないような顔をしているが、ユーリはそんな事知らないとばかりに走り、家と家の間に隠れる。
 すると少ししてから、2人の男がやって来た。

「見つけましたか!?」
「いや、駄目だ! どこにいる!?」

 声を荒げながら何かを探す2人。ユーリには今一緒にいる少女を探している物だと判断した。
 こんな小さな子に痣が出来るほど殴る相手からは逃げるに限る。

「大丈夫だから、ユーリと一緒に逃げよう」
「……おかあ、さん?」
「ユーリ17だから、お姉ちゃんとかの方が嬉しいかな……」

 少女の言葉にちょっと凹みつつ、ユーリは見つからないように気を遣いながら逃げる。


 なぜ増田ユーリは少女と共に逃げる事を選んだのか。
 大木潮以外の他人を信じられないと思っていたユーリは、なぜロクに話してもない相手と共に逃げたのか。
 それはユーリが少女の中に過去、そして今の自分を見たからだ。

 ユーリは自分の居場所を作れない人間だ。
 嘘ばかり話すという完全な自業自得であるものの、彼女は学校も職場も失っている。
 そのせいで両親すら彼女を見放しかけている。はっきり言って家族仲は悪い。
 唯一やさしくしてくれるのが大木潮。彼の為のコスプレだけがユーリの心の支えだ。
 この子もひょっとしたら似た者同士かもしれない。
 この子も居場所を持たないのかもしれない。
 いわば同情である。
 実際はユーリと少女の境遇はかなり違うのだが、それをユーリが知る術は今は無い。
 とはいえその同情は悪い物ではない。
 ユーリからは見えないが、少女の表情は間違いなく安らいでいるのだから。


758 : 1/6の生きている参加者 ◆7PJBZrstcc :2018/07/16(月) 22:35:42 /Y8tIJ.Y0





 石黒千晶、早川千夏、分目青司の3人は特に障害も無く港に到着した。
 時間にして10分未満、300mも歩いていないのだから当たり前と言えば当たり前だが。

「それじゃ早速」

 そう言って千夏は異能で船を出す。
 それは本当に小舟と言うしかない物で、後ろにエンジンを積んだだけの簡素な物だった。

「ありがとうございます、それでは早速出発しましょう」
「はい」

 千晶が出発しようとし、千夏は素直に頷いて舟に乗る。千晶もそれに続くがなぜか青司は乗る素振りを見せない。

「青司さん、どうかしたんですか?」
「ん、ああ。いやこの辺りに他の参加者がいるんじゃないかって思って見回していたんだ。
 もうあの資源プラントに行った参加者から何か聞けるかもしれないし、殺し合いに乗っている参加者に海に出た後に狙撃でもされたら大変だからね」
「な、成程……」

 青司の言葉に感心する千夏。それを黙って見ている千晶。
 青司はある程度周辺を探りに船から離れる。その後ろを千晶はついて行く。

「え、千晶さんも行くんですか?」
「1人よりも2人でしょう」

 そんな事も分からないのか、と千晶は言外に千夏に示す。

 この時の千晶は少し苛立っていた。分目青司という存在に。
 消防士らしく実戦経験豊富で理にかなった考え方をする彼が、なぜか千晶は気に入らなかった。
 私の蘭堂虎竜太への説教を意味がないと一蹴されたからか、それとも他の何かかは自分でも分からない。
 だがそんな個人的な感情論で数というアドバンテージを逃がすわけにはいかない。
 なのでここは素直に青司に追随しよう。

「では」
「あ、ウチも行きます!」

 千夏も千晶を追いかけて歩く。
 そして少し探索しているとあっさりと他の参加者は見つかった。
 1人は水色のワンピースを来た10歳位の少女、もう1人は舞台の上に立てそうなほど派手な服装をした千晶と同じくらいの少女だ。
 少女は女の子に抱き着いたまま顔を埋め、もう1人は千晶たちを警戒している。

「初めまして、私は石黒千晶と申します」
「は、早川千夏です」

 なので警戒を解いてもらおうと自己紹介を始める。
 その後に持っていた銃を地面に置き、少女2人に向かって蹴り飛ばす。
 それを見て話しに応じる気になったのか、1人が名乗った。

「増田ユーリ」

 ユーリは自己紹介を返す。
 だがもう1人の少女はそのまま動かない。

「大丈夫だから、多分大丈夫だから。ね?
 ユーリに自分の名前を言ってみて」

 何とか自己紹介させようとするユーリ。
 だがその言葉はたどたどしく、とても子供の相手に慣れているようには見えない。

「……伊丹沢、妙」

 それでも何とか自己紹介をする妙。
 これで千晶は2人に心を許してもらえたと考え、さっき蹴り飛ばした銃を回収する為近づこうとする。

「近寄らないで!」

 しかしユーリに拒絶された。
 何のつもりだ、と千晶が思うより先にユーリが告げる。

「ごめん、今ちょっと初対面の人間が信用できないから……。
 銃は返さないわけにはいかないけど、こっちに来ないで。というか銃持ってる限りこっち向かないで」

 そう言って千晶が蹴り飛ばした銃を拾い上げる。
 それを聞いた千晶は、あまりにも身勝手な言い分だと怒りそうになるが

「うん分かった。じゃあウチらが先に進むから」

 千夏が千晶の手を引いて、先に歩き出した。
 その直後千晶の銃は帰ってきたが、千晶は不満だ。
 何があったにせよ、一方的に要求を突き付けられていい気がする人間はいない。
 とはいえそうしてしまうほどの事があった、と考えれば向けるべき感情は怒りじゃない事くらいは分かる。
 だから千晶は堪え、黙って歩く。
 千晶は後ろを見てないが、千夏の様子を見る限りついてきているのは確かなようだ。


759 : 1/6の生きている参加者 ◆7PJBZrstcc :2018/07/16(月) 22:36:19 /Y8tIJ.Y0





 友秋にとって、この状況は最悪に近かった。
 逃げ出した少女を探す2人。子供だからそんなに遠くにはいってないだろう、という考えだったがそれは当たっていた。
 事実、集落のそばにある港に少女は居たのだから。
 別の高校生くらいの女の参加者に抱き着いた状態で。
 しかも他の参加者3人と一緒に。
 女子高生2人に、大人の男が1人が何を聞いたのかこっちを睨んでいる。
 軍服を着た高校生くらいの女と、消防士の服を着た男と、制服をピッチリ着た女子高生に睨まれるのはある種滑稽だった。
 まるでコスプレパーティーだ、こっちがスーツなのがちょっと申し訳ない。

「どうにも誤解があるようですね」

 友秋が脳内でジョークを飛ばしているとも知らず、健彦は誤解を解こうと話し出す。
 弁護士を名乗っていたが、そのお手前をみせてもらおうか。どっちみち俺じゃ無理だろうし。

「まずは自己紹介から。
 私の名前は側後康彦、弁護士です。こちらは天草友秋さんです。
 それで、まあ……。貴方方はその少女を我々がいたぶったとでも思っているのでしょうが――」
「違うとでもいうのですか?」

 健彦の言葉に制服の少女が噛みつく。
 だがその程度は予測済みだ。

「ええ、違います。
 痣を見れば見てもらえば分かるでしょうが、彼女は日常的に暴行を受けています。
 それこそ、殺し合いが始まる遥か前から」
「……分目さん、確かめられますか?」
「分かった、やってみよう」

 分目と呼ばれた消防士の男が、少女の元へ行き痣を確かめようとする。
 消防士に分かるのか疑問だったが、怪我を確かめる事もあるかもしれない。

「側後さんの言う通りではある。日常的に暴力を受けていたのは間違いない。
 だがここ数時間の間に暴力を受けた跡もある、あなた達を信用することは出来ない」
「……そうですか」

 あてが外れた、と言わんばかりの顔を見せる健彦。

「ではこれでどうでしょう」

 そう言うと健彦はデイバッグを5人の方へ投げ飛ばし、頭の上に後ろ手を組む。

「天草さんも」
「あ、ああ……」

 それに続いて友秋も持っていた刀をデイパックにしまい、同じように投げて後ろ手を組む。


760 : 1/6の生きている参加者 ◆7PJBZrstcc :2018/07/16(月) 22:37:01 /Y8tIJ.Y0

「これで少なくとも我々に攻撃の意思がないと理解して頂けるでしょうか」
「まだだ、まだあなた達は異能を見せていない」

 健彦の言葉に分目が応じる。成程、この殺し合いならではの不穏分子か、と友秋は納得する。

「俺の異能はさっきまで持っていた妖刀だ」

 友秋は言う。友秋にとっては真実なので、嘘をついている澱みのような物は一切見えない。

「私の異能は、これなのですが……」

 健彦はそう言うと、音楽プレイヤーを出現させる。
 友秋は異能とはこんな物理法則を無視したものもあるのか、と驚く。

「これ、どう使えばいいのでしょうか? 誰か知りませんか?」

 どこか切実な健彦の言葉に、誰も何も言えない。
 この場にいる全員が、健彦の出したそれがただの音楽プレイヤーにしか見えないのだ。

「まあ、こういう具合でして……。信頼も信用も必要ありませんが、とりあえずあなた達を害する意思はありません」
「……分かりました」

 不承不承とばかりに分目が頷く。
 他に言い様は無いだろうな、と友秋は思った。
 情報が何一つ出そろっていない段階で、これを精査する手段は何一つない。
 そんな段階ではうかつな真似は出来ないだろう、と友秋は納得する。
 しかし次の瞬間、友秋にとって予想だにしない事が起こる。

「ならばこうさせてもらいます」

 分目がそう言った瞬間、姿が人間から一瞬にして怪獣としか言えない姿に変身した。
 余りの事に思わず放心しかかる友秋。

「詳しくは言いませんが、この状態なら銃に撃たれてもあまりダメージは受けません。
 うかつな事をすれば、どうなるか分かっていますね」

 その脅しに何も言わない健彦と友秋。そんな事をするつもりはないが、相手が警戒するのも必然だからだ。

「……分かっています。その上で1つ、情報交換をしませんか。
 信頼できる人を紹介しろなどとは言いません、ですが危険人物の情報位ならよろしいのでは?」
「それ位なら構いませんが、情報はそちらからお願いしますよ」
「ーーすみませんが、私達は」
「郷音ツボミだ」

 情報交換を申し込みながら言いよどむ健彦を遮り、友秋は強い口調で言い切った。
 俺が郷音ツボミを恨んでいる事に気付いていたのか、と思わなくもないがとりあえず友秋は話す。

「郷音ツボミはこの状況なら間違いなく殺し合いに乗る。
 あいつは己をトップアイドルという立場に置くためなら人を死に追いやり、平然と股を開く女だからな」


761 : 1/6の生きている参加者 ◆7PJBZrstcc :2018/07/16(月) 22:37:56 /Y8tIJ.Y0

 友秋の言葉に怪訝な顔を見せる分目達3人。
 健彦ですら若干胡散臭そうな目で友秋を見る。
 だが意外なところから助け舟が出てきた。

「あ、天草さんも郷音ツボミに酷い目に遭わされたの!?
 ユーリは増田ユーリって言うんだけど、ユーリも酷い目に遭わされたの!
 一時期郷音ツボミと同じグループに居たんだけど、ユーリのアイドルとしての才能に嫉妬して結託してユーリをイジメで追い出したの!
 それにライバルを自殺に追い込んだなんて話、しょっちゅう聞いたしアイツなら人殺しなんて平気だよ間違いなく!!」

 ユーリの堰を切ってあふれ出た言葉に少し圧倒される友秋。
 だが守っている相手からの言葉は、分目達を少しだけ友秋の言葉を信じる方に傾いたようだ。

「……分かりました、警戒はしましょう。ですが実際に殺しの場面を目撃するまでこちらからはどうこうしませんので」
「郷音ちゃんが、ねえ……」

 軍服の少女が信じられない、とばかりに呟く。
 確かに姿だけを見れば、美しく整っている。
 しかし、一皮むけば、その中はさながらヘドロの如き汚泥だ。
 その中身が世間に溢れれば、魔女狩りの如くバッシングという炎に焼かれるのだろうか。
 友秋にとってはどうでもいい。あいつはこの殺し合いで誰にも看取られる事なく死ぬんだ、俺の手で。

「それで、そちらから危険人物の情報はありませんか?」
「ええと――」

 健彦の最速に分目が柔らかくする異能の少女について話す。
 友秋も話を聞き、警戒心を高めた。

「あ、ユーリも」

 続いてユーリも殺人鬼、笹原卓の情報を開示する。
 突然すぎる凶行を見せる卓の振る舞いを聞いて、多少後ろ暗い付き合いのあった友秋すら動揺が隠せない。

「では、情報交換はこれで終わりという事で構わないですね」
「はい、構いません」

 分目の言葉に健彦は同意する。
 友秋たちが投げたデイパックを返してもらい、友秋達は港から去り元居た家まで戻る。

「これからどうする?」

 友秋は思わず健彦に尋ねてしまった
 本質的に別の道を歩む人間に問いかけるほど、友秋は焦っていた。

 郷音ツボミと天草時春の情報を集める筈が、郷音ツボミの悪評を振りまくだけで終わってしまった。
 殺すな、とも言えず引き下がってしまった。
 あの場にいた人間の反応から、どうやら会ってはいないらしい。驚きは無いから最初の場で見ていたようではるが。
 天草時春に関しては何も出来なかった。
 殺し合いにはまず乗らないだろうし、悪評をばら撒いても信用されるかが郷音ツボミ以上に怪しい。

「どうもこうもありません。とりあえず現状維持以外ないでしょう。
 向こうは恐らく我々を信用できないが殺し合いには乗っていない参加者、くらいに認識しているはずです。
 ならもしその情報を聞いている参加者が来たら、信用させるのは我々の技量の問題になる。
 増田ユーリの反応から、あなたは多少好意的に扱われるかもしれませんがね」
「……そうだな」
「とにかく今は情報を集めつつ危険人物を警戒するくらいしか出来る事がありません。
 あなたがどうしたいかにもよりますが、今はここを離れない方が得策かと」
「だろうな」

 友秋にだってそれ位は分かっている。
 郷音ツボミと天草時春は恐らくこの辺りにはいない。
 さっきまで話していた奴らがどの方角から来たのか分からないが、少なくともこの集落の周辺にはいないと考えていい。
 となるとあいつらは人の集まる方に向かうはずだ。
 殺し合い乗るのなら、殺す為に参加者が集まる方へ。
 殺し合いに抗うのなら、仲間を集うために参加者が集まる方へ。
 分かっている、分かっているんだ。

「クソッ!」

 分かっていても、何も出来ない己が友秋は歯がゆかった。


762 : 1/6の生きている参加者 ◆7PJBZrstcc :2018/07/16(月) 22:38:27 /Y8tIJ.Y0





 健彦と友秋を見送った青司は、姿を元に戻して皆の方へ向き直る。
 大半が驚きとともに青司を見るが、異能だという事が分かっているからか特に騒ぎ立てる事は無い。
 否、伊丹沢妙は多少恐怖の目で青司を見ている。

「もう少し色々聞き出したかったのですが」
「いや、あれくらいでいいはずだ。あまり情報を開示したくない」

 千晶の言葉を切り捨てる青司。
 弁護士を名乗るだけあって、あの警戒状態からあっさり簡単な情報交換にまで場を持って行った。
 自分の異能を見せてしまったのはいいが、それ以上は札を見せたくなかった。

「それで、増田ユーリだったかな。
 君に聞きたいんだけど、僕らと一緒に来る気はあるかな?」
「え?」

 青司の問いにユーリは呆けた表情を見せる。
 だがこれは正義の消防士としての必然だ。殺し合いに乗っていない、殺人鬼から逃げるしかできない少女を保護するのは青司にとっての当然。
 しかしユーリは首を横に振った。

「ごめんなさい。今ちょっと知っている人しか信じたくないんで……」
「そうか、じゃあ仕方ないね」

 ユーリの拒絶を青司はあっさり受け入れる。
 保護しようとしたけど当人が拒絶した、となればそれは青司の責任ではない。故に死のうと生きようと知ったことではない。
 だがもう1つやる事はある。

「それじゃ、伊丹沢妙ちゃんはどうする?」
「……ユーリお姉ちゃんと一緒にいる」

 同じように妙に質問し、同じように拒絶された。
 ならもう用は無いとばかりに青司は歩き始め、千晶と千夏もそれに続く。
 とはいえこれだけだと外聞が悪いかもしれない、と思った青司は1つ付け加えた。

「診療所に殺し合いに乗っていない参加者が居るから、もし会うのなら会いに行くと良いよ」

 それだけ言って青司は歩く。
 目指すのは資源開拓プラント、そこに何があるかは誰も知らない。


【一日目・3時00分/I-8・集落】

【側後健彦@謝債発行機/HUNTERxHUNTER】
[状態]:精神疲労(小)、焦り
[装備]:謝債発行機@HUNTERxHUNTER
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0〜2(確認済み)、『オマケ』のイヤホン
[思考・行動]
基本方針: 生き残る。一先ず自身の能力の”本質”が分かるまでは様子見。
1:しばらく集落に留まる
2:天草友秋をうまく利用する。
3:郷音ツボミなど危険人物を警戒
4:悪評はばらまかれない、と思うが……
5:この音楽プレイヤー(謝債発行機)については一旦保留。
[備考]
※伊丹沢妙の能力を見ました(能力レンタルの第一条件を達成)
※分目青司の能力を見ました(能力レンタルの第一条件を達成)
※天草友秋の異能を妖刀だと誤認しました
※鈴宮ミカの外見と能力を知りました(名前と指紋の結界は知りません)
※笹原卓の名前と外見を知りました(異能は知りません)

【天草友秋@ドラゴンオルフェノク/仮面ライダー555】
[状態]:狂乱(自覚なし)
[装備]:日本刀
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0〜2
[思考・行動]
基本方針:参加者をうまく利用して勝ち残る、そのためには何が犠牲になろうと構わない
1:郷音ツボミと天草時春の情報が集まるまで、集落に滞在する
2:娘を死に追いやった郷音ツボミは俺が必ずこの手で殺す。他のアイドル共も参加していれば殺す
3:天草時春には俺と同じ屈辱を味わって貰う、他の天草一族も参加していれば同様
4:笹原卓には少し引いている
[備考]
※自身のオルフェノク化には気づいてません
※支給品の刀を妖刀と信じています
※側後健彦の異能を目撃しました
※分目青司の異能を目撃しました
※鈴宮ミカの外見と能力を知りました(名前と指紋の結界は知りません)
※笹原卓の名前と外見を知りました(異能は知りません)


763 : 1/6の生きている参加者 ◆7PJBZrstcc :2018/07/16(月) 22:39:01 /Y8tIJ.Y0


【一日目・3時00分/H-9・港】

【伊丹沢妙@略奪/Charlotte】
[状態]:体中に殴られた傷と痣、精神疲労(大、少しずつ落ち着いている)
[装備]:なし
[道具]: 基本支給品一式、不明支給品(0〜2)
[思考・行動]
基本方針:ユーリお姉ちゃんと一緒にいたい
1:ユーリお姉ちゃんについて行く.
2:お母、さん……
3:側後への恐怖
[備考]
※どの方向に向かうは後の書き手にお任せします
※自身の能力を、まだ使いこなせていません
※天草友秋の異能を妖刀だと誤認しました
※側後健彦の異能を目撃しました
※分目青司の異能を目撃しました
※鈴宮ミカの外見と能力を知りました(名前と指紋の結界は知りません)
※笹原卓の名前と外見を知りました(異能は知りません)

【増田ユーリ@鏡の妖精トポ/魔法のスターマジカルエミ】
[状態]:恐怖、疲労(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品(1〜3)
[思考・行動]
基本方針:潮さんを探す
1:今は、潮さんと妙ちゃん以外の人と一緒に居たくない
2:診療所に行くか行かないか――
2:天草さんはそんなに悪い人じゃない、のかな?
3:笹原卓はやばい
[備考]
※どの方向に向かうは後の書き手にお任せします
※天草友秋の異能を妖刀だと誤認しました
※側後健彦の異能を目撃しました
※分目青司の異能を目撃しました
※鈴宮ミカの外見と能力を知りました(名前と指紋の結界は知りません)

【早川千夏@工兵/放課後アサルト×ガールズ】
[状態]:健康、工兵変身状態、
[装備]:工兵服(シールドフル状態)
[道具]:{支給品一式×2(-懐中電灯)、M67手榴弾×15、『戦場での立ち回り本セット(本4冊)』、不明支給品1(確認済み)、デイパック×1、机と椅子×30}分のリソース
[思考・行動]
基本方針:千晶と行動し、生き残る。
1:千晶さんに付いていけばなんとかなる、よね……?
2:分目さんはまともそう
3:舞に合ったら一発シメてやる。
4:郷音ちゃんがねえ……
[備考]
※石黒千晶と情報交換しました。
※自分の能力と石黒千晶の(大まかな)能力を把握しました。
※萩原舞が参加していることは薄々予想しています。
※机と椅子は木と鉄パイプで出来た普遍的なものです。原作バトルロワイヤルの生徒数分の用意がありました。
※鈴宮ミカの外見と能力を知りました(名前と指紋の結界は知りません)
※天草友秋の異能を妖刀だと誤認しました
※側後健彦の異能を目撃しました
※分目青司の異能を目撃しました
※笹原卓の名前と外見を知りました(異能は知りません)


764 : 1/6の生きている参加者 ◆7PJBZrstcc :2018/07/16(月) 22:39:27 /Y8tIJ.Y0

【石黒千晶@『直観』/HEROS】
[状態]:健康、苛立ち
[装備]:グロック18自動拳銃(フルオートモード)、懐中電灯
[道具]:本一冊(『歴史から学ぶ戦争学〜この先生きのこるには〜』)
[思考・行動]
基本方針:生き残る。
1:資源開拓プラントへ向かう。
2:協力者を増やす。
3:郷音ツボミを警戒……?
[備考]
※早川千夏と情報交換しました。
※自分の(大まかな)能力と早川千夏の能力を把握しました。
※蘭堂虎竜太の異能を目撃しました
※鈴宮ミカの外見と能力を知りました(名前と指紋の結界は知りません)
※天草友秋の異能を妖刀だと誤認しました
※側後健彦の異能を目撃しました
※分目青司の異能を目撃しました
※笹原卓の名前と外見を知りました(異能は知りません)

【分目青司@キリエル人の力@ウルトラマンティガ】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1〜3、包帯、薬
[思考・行動]
基本方針:殺し合いを「俺が」打破して名声を得る、もしくは願いを叶える力を奪う
1:一先ず、石黒と早川に同行する
2:他の参加者を保護する
3:殺し合いに乗っている者は可能なら殺す
4:特に火傷の女(鈴宮ミカ)は特に注意する
5:石黒はいつでも始末するつもりでいる
6:郷音ツボミを一応警戒
[備考]
※自分の異能がキリエル人の力であると知りました
 ウルトラマンティガ放送時の記憶が曖昧なので今のところ使うことができると思っている能力はキリエロイドへの変身と獄炎弾のみです
※鈴宮ミカの能力を生物を柔らかくする能力だと知りました(指紋による結界はまだ見ていません)
※早川千夏の異能を把握しました
※診療所で手に入れた包帯、薬の量や種類は次の書き手氏にお任せします
※天草友秋の異能を妖刀だと誤認しました
※側後健彦の異能を目撃しました
※笹原卓の名前と外見を知りました(異能は知りません)


765 : ◆7PJBZrstcc :2018/07/16(月) 22:39:55 /Y8tIJ.Y0
投下終了です


766 : 名無しさん :2018/07/17(火) 15:07:51 J/wLD6nc0
投下乙です
多人数での合流があったわけだけど千晶が分目に不信感を抱いていたりユーリと妙は結局離れたり…色々不安定で危なっかしいなあ
そして結構な人数に悪評が広まったツボミちゃんの命運や如何に


767 : 名無しさん :2018/07/18(水) 00:34:33 zHPNdZX20
投下乙です
藁の砦とも言うべきか
まっとうに対主催してる人がこれだけの人数でほぼいないとは
導火線に火が付けばあっという間に崩れそうですな・・・・・・


768 : 名無しさん :2018/07/18(水) 18:16:14 sCEvbM0.0
投下乙です
>>767氏も言ってるけどわかりやすい藁の砦ですな
妙を保護しようとする辺りユーリはキャラシートを見たときよりは意外と人間的にマシな印象だが……

とゆーかこのロワ、集団になるほど不安要素多すぎィ!
西側にいる女子三人にはロリコンが紛れ込んだし、対主催が集うであろう井戸の家にはステルスマーダーのショタオッサンがおるし


769 : ◆7PJBZrstcc :2019/03/14(木) 18:59:41 LHA47Wd20
投下します


770 : 殺人鬼達の不満をよそに少年少女は決断を下す ◆7PJBZrstcc :2019/03/14(木) 19:01:26 LHA47Wd20

「お互いのことって、今更私達が何を知る必要があるんですか?」

 長い時間に反比例する士郎と咲穂2人の薄い人間関係。
 士郎はそれを冷静受け止め、今からでも遅くないと関係を深めようとしたのだが咲穂の冷徹な一言によって切り捨てられてしまった。
 確かに咲穂の言い分は正しい。
 今この時にも、殺し合いに参加している妹の天草ゆたかがどんな目にあっているか分からない。
 だから、今更何を言うんだという咲穂の言動は実の所もっともだ。

 だが、本来間違いようないほど違うゆたかと咲穂を間違えるほど動揺している自分。
 そして、プロフィール以外ほとんど知らない長い付き合いの知人。
 士郎はこの不安が募る組み合わせを少しでも何とかしたかった。

 士郎としては、ゆたかに死んでほしくないのは勿論だ。
 だが誰であろうとこの死んでほしいとは思わないし、誰かを殺す事も選びたくない。
 その思いは強固だが、目の前にいる知人の江本咲穂は心を同じにしてくれているのだろうか。
 人殺しを進んで行うとは流石に考えないが、ゆたかの為に1人位手に掛けるのではないか。

 士郎の心の中には過剰ともいえる疑心と、殺し合いへの焦りと家族への心配がある。
 それらが彼の心を不安定にさせているのだ。
 だからこそ彼は自身を安定させる意味と、疑心を取り除きたい意味で咲穂と向き合いたかったのだが。

「そもそもすでに情報交換ならしたじゃないですか」

 結果はこの通り。
 士郎には向き合う気があるけど、咲穂にその気は無い。
 彼女はゆたかの事しか考えていない。
 士郎と向き合おうなど、欠片も思っていない。

「殺し合いが始まって2時間過ぎ。
 その間私達が出会うまで、私とオニイサマの見てきた情報は共有したじゃないですか」

 そもそも彼らは出会うまでの間、お互い異能も支給品もロクに調べずゆたかを探して動き回っていた。
 しかしまるで見つからず、しばらく経ってから2人は合流した。
 そしてお互い得た情報を交換し、共に行動するという経緯を経ている。

 士郎はそれじゃ足りないと思うが、咲穂としてはそれで十分だった。

「ほら、早く行きましょうオニイサマ! ゆたかちゃんが待っています!!」

 急かしてくる咲穂。
 ゆたかが心配なのは士郎も同じなので、彼女の言い分を強く否定し辛い。

 し辛いが、それでも一度きちんと向き合おうとはっきり言うべきか。
 あるいは、ここでは一旦妥協して折れ曲がるか。

「……そうだね。行こうか、江本さん」

 士郎が選んだのは妥協だった。
 ここで己の意思を先行させ強要すれば、仲たがいになる事は確実。
 日常であるなら反省し、時間をおけば解決できるかもしれないが殺し合いの最中でそんな余裕はあり得ないと考えるべきだろう。
 だから士郎は今はゆたかを優先した。


 きちんと向き合うのは、ゆたかと合流してからでも遅くは無いよね?


 その考えは悪い物ではないだろう。
 たが彼らは知らない。ゆたかの精神が見知らぬ男の身体に宿っている事を。


771 : 殺人鬼達の不満をよそに少年少女は決断を下す ◆7PJBZrstcc :2019/03/14(木) 19:02:50 LHA47Wd20





 E-4、井戸の家。
 トーマス・ベイカーと鏑木シリカ、2人が出て行った後、島原翼は落胆していた。
 自分と一緒にいてくれないから、ではない。
 他者が殺人を受け入れている、その事実が翼には受け止めきれなかったからだ。
 生きたいから殺す、それは間違っているはずなのに、止める事が出来なかったのが悔しいのだ。
 悔しくて悲しくて、翼はその場にへたり込みたくなる。
 だが翼は無様を晒さない。晒せない。
 なぜならば、後ろには自分よりも小さな丹美寧斗という子供が居るのだから。
 翼が後ろを見ると、寧斗は不安気な顔で翼を見つめていた。

「心配かけたかな? でももう大丈夫」

 心配を掛けまいと翼は笑い、頭を撫でる。
 くしゃくしゃと撫でられた寧斗は、ただされるがままになっているが不安気な表情は消えた。

「そうだ。俺には守るべきものがあるんだ」

 だから折れるわけにはいかない。まだ何もしていないのに、逃げる様な真似は出来ない。
 そんな事じゃ、憧れの衛宮士郎みたいな正義の味方になれない。
 例え士郎ほどの覚悟が無くても、俺は戦うんだ。
 怖いし、死にたくないし、怯えているけど、それでも。

 決意を新たにした翼は両手で自分の顔を叩き、気合を入れる。
 その音で若干ビックリした寧斗に恨むような視線を向けられ、謝りながらこれからの事を考える。

――時計を見る限り放送まで3時間以上あるし、寧斗君を一回寝かせようかな。
 まだ小さい子だし、こんな時間まで起きていたら流石に疲れるだろうし。

 と翼が考えた所で。

 ゴンゴンゴンゴン

 とノックの音が響いた。

「お、お兄ちゃん……」

 ノックの音に怯えるそぶりを見せる寧斗。

「大丈夫」

 そんな寧斗を軽く宥めながら、翼は幸運と勇気の剣を構え扉を開ける。
 そこには首から十字架を掛けた赤髪の美少年と、ツインテールの少女が居た。
 翼の目を引いたのは少女の方だ。
 翼は女性のファッションに詳しい訳では無い。がそんな彼でも思う事がある。
 なんというか、ツインテールが似合っていないのだ。
 うまく言えないが、何かが噛みあわない。
 例えるなら、別人の為のファッションをそのまま適用しているような不自然さだ。
 それだけならファッションに興味の無い子、で済むだろう。
 しかし違う。彼女はどこか誇らし気で上機嫌なのだ。
 以上の事から翼が導き出した結論はこう。

 ――ファッションセンス、あんまり無い子なんだな……。

 そんなことを考え、思わず気が抜けそうになりながらそれでも剣を構えている翼に少年が話しかけてくる。

「大丈夫です、僕達は殺し合いに乗っていません」

 と両手を上げながら言う少年を、翼は戦意が無いと思い信用する。

「俺達も殺し合いには乗ってない」
「そうか、それは良かった。
 僕は天草士郎、こっちは江本咲穂。それで一つ質問だけど、君は――」
「あ、あの!」

 簡単な自己紹介の後、何かを言いかけた士郎を遮って咲穂が勢い込んで尋ねてきた。

「ゆたかちゃんを知りませんか!?」


772 : 殺人鬼達の不満をよそに少年少女は決断を下す ◆7PJBZrstcc :2019/03/14(木) 19:04:25 LHA47Wd20





 ――何で入れちゃうかな、本当。


 勢い込んで尋ねる咲穂を翼は宥め、とりあえず家の中に招き入れる。
 その事に関して寧斗は不満だった。

 そりゃ殺気が無い事くらいは分かるけど、内心を隠しているとか、突如心変わりするとか考えないのかな。
 お前俺を守る気あんの?
 と内心で愚痴をこぼしながら咲穂と翼の会話を聞く。
 要約するまでも無いが、どうやら咲穂は友人を探しているようだ。

「それで、ゆたかちゃんはどこに?」
「いや、そんな名前の子には会ってないけど……」
「じゃあいいです」

 翼がゆたかを知らないと言った途端に、咲穂は立ち上がりこの場を去ろうとする。
 それを見て慌てて翼は慌てて引き留めた。

「ちょっと待って! 決断が速すぎるよ!!」
「ゆたかちゃんが居ないならここに用はありません」
「いやそうかもしれないけど、それならそれで特徴とか……」
「そうですね」

 翼の問いに咲穂は間髪入れずに答える。

「身長は小学生位で髪の色は栗色。そして服装や髪形は私を見てください、全て同じなので」
「「え?」」
「同じなので」

 翼と寧斗は咲穂の返答に唖然とした。特に寧斗は思わず今まで被っていた仮面すら脱ぎ捨てた。
 理由としては彼女の発言内容もさることながら、それ以上に彼女の態度が気にかかる。
 堂々としているのだ。まるで自分はゆたかと同じ格好をするのが必然だと言わんばかりの態度なのだ。

「じょ、女子には流行ってるの、その髪型?」

 服装は明らかにどこかの学校の制服なので、髪型についておずおずと寧斗が咲穂に問う。殺し合いに怯える小学生という皮すら捨てて。
 一方、彼女は質問に対しまたも即答だった。

「いえ、特に。流行とかではなく、私が個人的にゆたかちゃんと同じ髪型にしていますので」
「そ、そっか……」

 咲穂の返答に合いの手を入れたのは寧斗ではなく翼。
 そしてこの返答を聞いた寧斗と翼は、この殺し合い開始以来初めて同じ事を思った。


773 : 殺人鬼達の不満をよそに少年少女は決断を下す ◆7PJBZrstcc :2019/03/14(木) 19:05:20 LHA47Wd20

 ――江本咲穂、こいつヤバくない?

 さっき会ったトーマス・ベイカーは殺しすら躊躇する気の無い男だった。
 それはそれで危ないが、この状況ならその選択は間違っていない。
 寧斗は若干危険視しているが、それはあくまで自分の行動を阻害されるかもしれないというリスクマネジメントの一環でしかない。

 だが江本咲穂はそうじゃない。
 彼女は殺し合いとは一切関係なくずれている。
 でなければ、いくら友人とはいえ似合いもしない髪型に自ら誇りを持つだろうか。
 そうでなくても、なんでもかんでも真似てくる友人をゆたかの方がウザがったりしないだろうか。止めたりしないのか。
 寧斗の心は疑問で山積みだった。

「では、私はこれで。行きましょうかオニイサマ」

 そう言って咲穂は立ち上がり、今度こそこの家を去ろうとする。
 が

「いや待って欲しい江本さん」

 それを天草士郎が阻む。
 彼の言葉に咲穂は不満気に彼を見る。

「なんですかオニイサマ」
「江本さんはここで待機して欲しいんだ」

 士郎の言葉に咲穂の視線は殺気すら帯び始める。
 彼は一瞬慄くが、それでも言葉を続けた。

「いや、ゆたかのスタート地点がどこか分からない以上2手に別れたかったんだ。
 でも僕はともかく、君の異能は戦いに向いてなかったから言い出せなくてね。でも……」

 そこで士郎は言葉を止め、翼と寧斗を一瞥した。
 その視線の意図に気付いた寧斗は内心で叫ぶ。

 ――俺らに押し付ける気かよ、こいつ!?

「島原君なら、守ってくれるだろう?」
「え、いや……。僕はいいけど、寧斗君が嫌がるかも……」

 いきなり話を振られ、しどろもどろになりながら返答する翼。
 その答えは明らかに先延ばしだ。しかし、彼にはなんかヤバそう、という直感でしかない評価を信じて少女を追い出すような真似はできなかった。
 自分で守れ、と士郎に向けて言うのは出来るだろう。が、士郎たちはゆたか捜索を優先としている。
 優先する物の為に2手に分かれるのは、選択肢としては妥当である。
 結果、翼は寧斗に決断を押し付けた。

「ぼ、僕はいいよ……」

 そして寧斗も、殺し合いに乗っておらず、会話から察するに異能が戦闘に向きそうな士郎の不興を買いたくなかった。
 であるならば返答は1つ、肯定しかない。

「2人ともありがとう。じゃあ江本さんは」
「分かりましたオニイサマ。吉報をお待ちしています」

 その会話を最後に、天草士郎は玄関の扉を開けて家を出て行く。
 そして咲穂は翼と寧斗の2人を見て、話しかけた。

「ではお二人とも。情報交換を兼ねて、ゆたかちゃんの話をしましょう」

 その言葉と共に、2人の目は一歩死に近づいた。


774 : 殺人鬼達の不満をよそに少年少女は決断を下す ◆7PJBZrstcc :2019/03/14(木) 19:05:56 LHA47Wd20


【一日目・3時00分/E-4・井戸の家】

【島原翼@衛宮士郎の能力/Fate/stay night】
[状態]:疲労(小)、精神疲労(小)
[装備]:幸運と勇気の剣@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0〜1(本人確認済)、和道一文字@ワンピース
[思考・行動]
基本方針:殺し合いの否定
1:ここで一夜を過ごす
2:戦いはなるべく避け、殺し合いに乗った者もなんとか説得したい
3:寧斗は何がなんでも守る
4:江本さん、やばいかも?
[備考]
※与えられた異能が衛宮士郎のものであると気づきました。
※首輪は能力による構造解析は不可能です
※丹美寧斗の正体が殺人鬼・網空仙一だと気づいていません。
 また寧斗の能力を体色が変化するものだと思い込んでいます。
※鏑木シリカの異能の一部(螺湮城教本)について知りました

【丹美寧斗@T-1000/ターミネーター2】
[状態]:精神疲労(小)
[装備]:レミントン・デリンジャー(2/2)、デリンジャーの弾丸×12発
[道具]:基本支給品一式、アイスピック
[思考・行動]
基本方針:優勝し、能力を持ち帰って殺人を楽しむ
1:なんかヤバいのが残った……
2:素性と本心を隠しつつ、島原や他の対主催参加者を利用する
3:対主催集団に紛れ込み、利用してライバルを減らしつつ、最終的には疲弊したところを全滅させる
4:他の参加者には自分が子供であると思わせ、能力も体色が変化するだけのものと思わせて本性と能力を悟らせない
5:仮に自分の正体や能力がバレた時は、対象者を暗殺する
6:天草士郎の方がこっち居ろよ
[備考]
※肉体がT-1000と同じものになっていると気づきました。
※腹部にデリンジャーと弾丸を隠しています。
※液体化しても首輪は外れません。(上から液体金属で防御したり隠したりすることは可能)
※参加者に授与された異能は全て相手にダメージを与えるものだと考えています。
※鏑木シリカの異能の一部(螺湮城教本)について知りました

【江本咲穂@マネマネの実/ワンピース】
[状態]:健康、上機嫌
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品(0〜3)
[思考・行動]
基本方針:ゆたかちゃんを最優先
1:今はこの場にとどまる。
2:ゆたかちゃんの話をしましょう。星の内海。物見の台。楽園の端からあなたに聞かせましょう。あなたたちの物語は祝福に満ちていると。
[備考]
※自身の異能を把握しています。
※天草士郎の異能を把握しています。


【一日目・3時00分/E-4・井戸の家】

【天草士郎@仮面ライダーキバへの変身/仮面ライダーキバ】
[状態]:精神疲労(小)、罪悪感(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品(0〜3)
[思考・行動]
基本方針:殺し合いには乗らない
1:家族を優先的に探す
2:咲穂と向き合うのはゆたかを見つけてからにしよう……
[備考]
※自身の異能を把握しています。
※江本咲穂の異能を把握しています。


775 : ◆7PJBZrstcc :2019/03/14(木) 19:06:27 LHA47Wd20
投下終了です


776 : 名無しさん :2019/03/16(土) 01:17:13 jqLAecM60
久々の投下乙です
いやこれやばいわ。正常に狂ってるって言うのかな
プロフィール見た時から「あーこの子やばい可能性秘めてる」って思ったけど、
想像以上に、ストッパーがないこの子! 月宮とどっこいどっこいだよこれ!
翼達だけじゃなくて、士郎も相当やばい人を引き込む可能性を秘めてる気がするわこれ
というか立て続けに集団=ろくでもない面子の集いにしかなってないな!?


777 : 名無しさん :2019/03/19(火) 14:25:01 OMPPc4j60
投下乙です
これまた違った狂い方をしているキャラが出たな…
まさかの狂信者系キャラ 奉仕マーダー候補
そして、このまま屋敷に居座ると南から大きな台風が接近しているという


778 : 管理人 :2020/07/07(火) 19:05:34 ???0
本スレッドは作品投下が長期間途絶えているため、一時削除対象とさせていただきます。
尚、この措置は企画再開に伴う新スレッドの設立を妨げるものではありません。


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