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ストライクウィッチーズでレズ百合萌え 避難所7

236名無しさん:2011/01/17(月) 22:49:53 ID:EjaGIKPs
>>235の続き。

「ジーッとこっちを見てるでありますよ?;;」
「はあ…だから…」
「入ってもらったらいかがですか?」
「…良いわ、開けて頂戴」
「はい…」

私は指示された通り窓を開けるや否や…

「ハイデマリー・W・シュナウファー大尉ぃ!!!!」
「ひいっ??!!」
「…はあ…何か御用でしょうか?」
「妾と決闘を申し込む!!」
「…決闘って、どんなのよ?;;」
「チェスだ!」
「意外と普通…でありますね;;;」

すると突然、ハインリーケ大尉がこっちに…

「この小娘は誰なんだ、シュナウファー大尉!?」
「こっ、小娘?」
「ヘルマ・レンナルツ曹長よ」
「よし、お主は出てけ!」
「えぇぇっ…」
「あのねえ!ハインリーケ大尉!!」

急に立ち上がったシュナウファー大尉…
あれ、怒ってる…?

「私たちは今、楽しみながらお茶を楽しんでたの!!あなたずっと外から見てたからわかるでしょう?!この際だからはっきり言います、邪魔しないで!!」
「ハインリ…じゃない、シュナウファー大尉…?名前が長いから間違えたであります;;」
「わっ、妾はただ…ただっ!!」
「ただ何?私に対していっつも怖いけど、何かあなたに悪い事した?!」

んっ!?
ハインリーケ大尉…手に何かを隠し持ってるであります…

「もうやめて!!同じナイトウィッチだけど…今後一切、仕事上だけの付き合いにしてくれる??!!」
「シュナウファー大尉…ちょっと」
「何、ヘルマ?」
「…ハインリーケ大尉、あなたはただシュナウファー大尉と仲良くなりたかっただけじゃありませんか?」
「っ!?なっ、何故それを!!」
「手に持ってるそれであります…」

そう、ハインリーケ大尉が持っていたのは…!!

「それって…百貨店の紙袋でありますよね??」
「うっ…」
「どうゆう事、ヘルマ?」
「わっ、妾は…お主と一緒にこのハイビスカスのハーブティーを飲もうと思っていたのだ…」
「眼球疲労にとても役立つそうです。この間、町へ出かけた際に売ってたであります!」
「えっ…うそ…つい、私にケンカを吹っかけてきたのかと………ごめんなさい」
「ふっ、ふん!別にお主のために買ってきたのではない!!!!」

うわあ…典型的なツンデレでありますね;;
しかもさっき「お主と一緒に」って言ったのに、それを否定するでありますか?!

「…ヘルマ、お湯を沸かしてくれるかしら?」
「はっ、はいであります!」
「それに…椅子をもう一つ持ってきて頂戴。ハインリーケ大尉が座る席がないでしょ?」
「シュナウファー大尉…」
「素直に最初っから言えば良いじゃない、お茶を飲もうって」

あ…良かったぁ…シュナウファー大尉に笑顔が戻ってきたであります!!


***

237名無しさん:2011/01/17(月) 22:50:23 ID:EjaGIKPs
>>236の続き。



数日後、私は食堂でシュナウファー大尉と出会ったので話しかけたであります。

「仲良くなったのでありますか?」
「う〜ん…まあね。まああのプライドの高さとツンツンさは残ってるけど」
「まあ…良かったんじゃありませんか?」
「まあねえ〜。あんなに馬鹿にしてたナイトウィッチの無線通信コミュニティもこっそり始めたり、さりげなくmixiも始めてたり」
「あはははは…」
「あ、私は会議があるから行ってるわね」
「はい!」

シュナウファー大尉を見送った後、とりあえず席に座る私。
ん…何か熱い視線を感じるであります…???
その視線のする方へ向くと………

「…ぶっほ!!??」

柱の影からハンカチを噛みながらこっちを見ているハインリーケ大尉が!!
いくらなんでもステレオタイプじゃありませんか??!!
そう思ってると、ズカズカとこっちに来るでありませんか!!;;

「ヘルマ・レンナルツ曹長!!!!」
「はっ、はいぃぃぃ??!!」

あまりの迫力に声が裏返ったであります;;

「おっ………」
「お…?」
「お主に決闘を申し込む!!!!」
「えぇぇぇっ??!!」
「あっ、あんなにシュナウファー大尉と仲良くと…っ!!」

ん…っ?
もしかしてハインリーケ大尉って…

「…あ、そうゆう事でありますか!」
「何を考えておる??!!」

なんか面倒な事になりそうであります………。


【おわれ】

238mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/01/18(火) 21:29:41 ID:X/fm39Wo
>>237 Hwd8/SPp様
GJ! ヘルマもハイディも姫様もハイテンションですねw
これもヘルマのパワー……?


こんばんは、mxTTnzhmでございます。
短いのをひとつ思い付いたのでどうぞ。

239thaw:2011/01/18(火) 21:30:10 ID:X/fm39Wo
 ピアノも有るミーティングルーム隅の角っこに、二重に敷かれた畳。その広さは約四畳半程。
 そこだけ扶桑の民家から切り抜かれた様な奇妙な空間……畳の中央には、冬の風物詩が置かれていた。
 ふんわりと掛かる綺麗な布団。そっと置かれたテーブル。
 慣れた感じで入って温もる芳佳、ちょこんと足を入れて温かさを確かめるサーニャの姿があった。
「芳佳ちゃん、これが『こたつ』?」
「そうだよ。温かいでしょ」
「うん……」
 炬燵布団の上、テーブル部分に置かれたみかんの篭を不思議そうに見るサーニャ。芳佳はサーニャの顔を見て、微笑んだ。
「サーニャちゃん、こたつにはみかん。これが扶桑の冬の……」
「はっはっは! その通りだな宮藤。こたつには掘炬燵と置炬燵の二種類があるが、今回は扶桑から畳と置炬燵を持ってきた」
 いつ来たのか、ささっとこたつに入る美緒。温かさを実感し、うむ、と頷く。
「うむ、良い感じだ」
「わざわざ扶桑から取り寄せたんですか、坂本さん」
 驚く芳佳に美緒は力強く頷く。
「そうだ。寒さをしのぐにはこれが一番だからな!」
 力説する美緒を横目に、サーニャは掛け布団を少しめくって覗いた。
「芳佳ちゃん。これ、中はどうなってるの?」
「ええっとね、小さな火鉢を入れて、それを小さな木の枠で囲って、やけどしないように作ってるんだよ」
「そうなんだ……あったかい」
 掛け布団を元に戻し、ほんのりとした温もりを感じるサーニャ。
「でしょう? で、暖まりながら、こうやってみかんを食べて……」
「そして、眠くなったら少し足を伸ばして、横になると……。実に良いな……」
 言いながら横になり、うとうとし始める美緒。あまりの展開の速さにびっくりする芳佳。
「さ、坂本さん寝ちゃだめです!」
「そうよ何のんびりしてるの美緒。ちょっと……」
 こちらもいつ来たのか、ミーナが美緒の眼前に立っていた。畳の向こうから、呆れ気味に美緒を呼ぶ。
「ああすまんミーナ、今行く」
 急に呼ばれた美緒はらしくなくよろよろと立ち上がると、ミーナについて行った。
「坂本さん行っちゃった……」
 呆気にとられる芳佳。
「坂本少佐、扶桑のものよく持ってくるよね」
 サーニャがぽつりと呟く。
「そうだね。もしかして私に気を遣ってくれてるのかな……。でも、みんなでおこた出来ると楽しいよね」
 芳佳はそう言って笑った。
「そうね。オラーシャにはこう言う暖房、無いから……」
 少し足を伸ばして、ぬくもるサーニャ。
「そうだ、オラーシャの暖房ってどんなのがあるの?」
 芳佳の問いに答えるサーニャ。
「暖炉かな……部屋全体を暖かくするから」
「そっか。違うんだね、色々と」
「でも、501(ここ)だと色々な国の事が分かるから、楽しい」
「良かった。坂本さんも喜ぶよ」
「一番楽しそうなの、芳佳ちゃんだと思う」
「えっそうかな」
「だって、みかん食べて、ぬくぬくして……」
 そう言いながら、サーニャは、芳佳の頬にそっと手を伸ばす。
「ひゃっ! サーニャちゃんの手、冷たい……」
「あ、ごめんね」
 思わず引っ込めたサーニャの手を、ぎゅっと握る芳佳。
「大丈夫。手の冷たい人は心が温かいって、おばあちゃんが言ってたから」
「そうなんだ……私には、分からない」
 少し悲しそうな顔をするサーニャ。黄昏にも似たその横顔を見て芳佳は一瞬どきりとしたが、すぐに言葉が出る。
「サーニャちゃんは大丈夫だよ。せっかくだし、もっとこたつで暖まろう?」
 芳佳に手を握られる。芳佳の手は温かく、とても気持ち良い。
 ずっと触れても吸われ尽くされる事の無い様な……、そんな芯のある温もりを、芳佳の手から感じる。

 もっと触れてみたら……どうかな。

 サーニャは芳佳の入る位置にそそっと場所を変え、一緒に潜り込む。
 二人の身体の側面が、ぴたりとくっつく。
「ちょっ、狭いよ、サーニャちゃん」
「だって、温かいの、足と腰だけだから……」
 芳佳は少々苦笑し、サーニャを受け入れる。
「こうすると温かいって事だよね」
 深くこたつに入り、二人そっと身体を寄せ合う。
「こたつでのんびりしてると、眠くなるのは何でだろうね、サーニャちゃん」
「私に聞かれても、分からない。でも、確かに気持ち良い」
「でしょ? せっかくの休みだし、ゆっくりしよう」
「芳佳ちゃんの身体も、温かい……」
「サーニャちゃんだって……」
 ふふ、と微笑み合う二人。
 やがて、微睡みが二人を包み込む。他の隊員が賑やかに入って来るまで、二人だけの時間は続く。

end

240名無しさん:2011/01/18(火) 21:30:59 ID:X/fm39Wo
以上です。
冬はおこたでみかん!(但し扶桑に限る……)
と言う事で書いてみました。
多分この後、物珍しさ込みで
501全員でわいわいやるのだと思います。


ではまた〜。

241名無しさん:2011/01/18(火) 23:44:43 ID:pInhJ2ow
>>233
まじかよ、ありがとう。買ってくる

242zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2011/01/19(水) 00:13:50 ID:jn82I1Yo
知らない人が多いかもだけど1/19はエンリーカ・タラントラの誕生日です。
フミカネついったーでそれらしきキャラのラフが上がってすぐに消されてしまいましたが、
その時キャライメージを前提に捏造を重ねて書いてみました。

えっちぃ上に捏造が過ぎるので今回はtxtでの投下にします。

一応フェデリカxエンリーカのカップリングです。
アニメwikiにまとめられている設定に目を通しておくとバナナ連呼が受け入れやすいかもしれません。

243zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2011/01/19(水) 00:21:03 ID:jn82I1Yo
URLはりわすれてたw
http://www1.axfc.net/uploader/Sc/so/195694
パスはswです。

244mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/01/19(水) 20:55:51 ID:poHcUrtQ
>>243 zet4j65z ◆le5/5MRGKA様
これはエロス! バナナと言う単語がゲシュタルト崩壊w
とにかくGJです!


こんばんは、mxTTnzhmでございます。
マイナーカプは無いかなーと思っていたら
ちょっと思い付いたのをひとつ。
ではどうぞ。

245bleu or rosso 01/02:2011/01/19(水) 20:56:47 ID:poHcUrtQ
 ペリーヌはひとり基地の廊下を歩いていた。
 誰も居ない基地は「かつて遺跡だった」と言われるだけあって静寂そのもの、石壁の向こうから過去の住人達が出てくるのではと
そんな怪談じみた話も聞くが、自らがウィッチであり、“遺跡の番人”を倒した自信も有り、別にどうと言う事はなかった。
 そんな折、執務室から出てくる女性が一人。
 ペリーヌより少し年上であろうか、長い髪をさらっとかきあげ、モデル宜しく肩で風を切る歩み方。
 黒い制服の端から、赤色のシャツ、そしてズボンが見える。恐らくは、ウィッチか。
「貴方は……」
 聞きかけたペリーヌよりも早く、その女性は一気に間合いを詰め、顔を間近に寄せた。
「聞いているわ、貴方がガリア解放の英雄ね。青の一番(ブループルミエ)さん?」
「なっ……」
 確かにガリア解放の時、新聞の記事になったり、顔は知られている方だ。
 だが少々唐突過ぎやしないか。そして何よりも。

 無粋。

 この事がペリーヌの気に触る。
「貴方、自分の名も名乗らずに何ですの? 一体、501(ここ)に何の御用?」
「まあそう尖らないの、ガリアの英雄さん。カワイイ顔が台無しよ。私はフェデリカ・N・ドッリオ……聞いた事は?」
「……ロマーニャの方ですの?」
「正解ね。一応、ロマーニャの赤ズボン隊の一員で、今は504JFWの隊長をしているわ」
「504の隊長? こっこれは失礼しました……でも」
 一応、上官らしいと言う事で非礼を詫びる。だが、腑に落ちないペリーヌ。
 何故、こんなに互いの距離……特に顔が近いのか。背け気味に問う。
「それにしても、何の御用で501に?」
「まあ、連絡と見学を兼ねて。504がボロボロになってからは501におんぶに抱っこ。その御礼もね」
「なるほど」
「そして、ガリア解放のエースをこの目でちょっと見たくなったって訳よ。とっても興味有るわ〜」
 ずいとまた一歩踏み出す。距離が近い。近過ぎる。
 思わずのけぞり気味のペリーヌに、更にずいと迫るフェデリカ。
 黒に近いダークブラウンの細くしなやかなフェデリカの髪。ペリーヌの頬に掛かり、彼女の髪と、微かに交わる。
「なっ何のつもりですの……見るって、そんな近くで」
 いつの間にかペリーヌの腰に腕を回し、抱きかかえる格好になっている。フェデリカは言った。
「私、ちょっと貴方みたいに、可愛くて、それでいて強くて優しくて、刺激的な方が好みみたいでさ」
「何を仰ってるの?」
 動揺するペリーヌの耳元で、囁くフェデリカ。
「どうして、ガリア解放後、民間人なんかに? ノブレス・オブリージュ? ガリアの民の為? それとも貴族たる矜恃?」
「何を言いたいのか、はっきりして貰いません事?」
 苛ついているペリーヌを楽しむかの様に、彼女の豊かな髪に手を触れ、さっと玩ぶフェデリカ。
「506の隊長への昇進、どうして断ったの。勿体ない」
「いきなり何ですの!? 貴方に何が分かるんですの!? さっきから聞いていれば……っ」
 口を塞がれる。交わる唇。
 肩をきゅっと抱かれ、ぎゅっと腰に手を回されている事にも、ようやく気付く。
 唇全体で撫で回す様な、情熱的なキス。
 唾液が絡まり、舌の先が触れる。

246bleu or rosso 02/02:2011/01/19(水) 20:57:15 ID:poHcUrtQ
 そこでペリーヌは両手で思いっきりフェデリカを突き飛ばした。おっと、と言った感じで一歩退くフェデリカ。
 ペリーヌは髪と唇……身体をも玩ばれた事に怒り、フェデリカを睨み付ける。唇を拭う。うっすらと手の甲につく口紅の痕。
「もう我慢なりませんわ! 貴方に決闘を……」
「良いの? いつだって受けるわよ。但し……」
 不敵な笑みを浮かべるフェデリカは言葉を続けた。
「私が勝ったら、私の望み、何でも聞いてくれる? それで良いかしら?」
「……っ!?」
「私はもうじき引退だけど、まだまだ空の上ではイケてる自信があるの。どう、私を試してみない?」
 自信と愛嬌たっぷりのロマーニャ娘を前に、ペリーヌは怒り心頭となり、なじる。
「ロマーニャ人は、どうしてこうもいい加減で、享楽的なんですの!? チームプレーもろくに出来ずスタンドプレーばかり……
ルッキーニさんも同じロマーニャ人と言う事は、本当、まさにこう言う事ですのね!」
「だけど個人の勇気、そして才覚で戦うロマーニャの者は、とっても強い。その事も忘れちゃダメよ。ガリアのエースさん?」
 フェデリカはペリーヌを指差して妖艶な笑みを見せる。
「確かに貴方は同じ501の扶桑人が気になってるみたいだけど……ホント、扶桑の魔女ってずるいわよね。
私もあんな魅力、いや魔力が欲しいわぁ」
「な、何の事ですの?」
 美緒の事をいきなり言い当てられたショックからか動揺を隠せないペリーヌ。
「ウチの竹井も、流石“扶桑の魔女”って感じよね。見た目とっても大人しいけど、もう周りが大変。分かるでしょ?」
 答えに詰まるペリーヌを後目に、フェデリカは踵を返して歩き始めた。
「ちょっと、何処へ行くんですの!? 話はまだ終わってませんわよ!」
「ごめんね、ちょっと急いでるの。もし用事が有ったら、続きがしたければ504にいらっしゃい。歓迎するわ」
「504って……」
「生憎、今は開店休業中だけどね。でも私は居るから。そして……」
 ちらりと振り返り、ペリーヌの顔を見る。まるで写真を決めるポーズの様に決まった端正な横顔。フェデリカは言葉を続けた。
「決闘はいつでも受けるわ。赤ズボン隊でも504でもなく、私個人としてね。貴方は何でも背負ってくると良いわ」
「待ちなさい、この……」
「本当はすぐにでも貴方を食べてしまいたいけど、時間がないの、ごめんなさいね。504で待ってる。Ciao!」
 フェデリカは手を振り別れを惜しむと、颯爽と、廊下を後にした。
 嵐の様な、ロマーニャの魔女は舞台から去った。残されたのは、ガリアの娘。
 ただ、立ち尽くすペリーヌ。

 一体何故、私を?

「ん? どうかしたかペリーヌ、こんな所で? 何か用事か?」
 執務室から出て来た美緒と鉢合わせし、慌てたペリーヌは何でもありませんわと答えてすぐにその場を後にする。
 早足で、自室に戻る。廊下の距離がいつもより長く思える。誰とも会わない事を、何故か祈る。
 誰とも顔を合わせたくなかった。誰にも顔を見られたくなかった。何故かは分からない。
 部屋に着き、入るなり後ろ手に扉を閉め、溜め息を付く。しかし、息が震えている事に気付く。

 どうして?

 答えは出る筈もなく……そっと唇に指をやる。まだ微かに残るフェデリカの残滓。
 随分と尻軽なロマーニャの……だけど、この気持ちは一体。
 ペリーヌはうつむき、顔を手で覆った。整理の着かない心を落ち着かせる為に。
 私は何者で、どうしたいのか。
 答えは出る筈も無く……部屋の窓から差し込む夕日が、ペリーヌを朱に染める。

end

247名無しさん:2011/01/19(水) 20:57:32 ID:poHcUrtQ
以上です。
イラストによって髪の毛の色とか違うので
どれを参考にすれば良いのか迷いましたが……
その辺の描写は適当ですのでご了承下さい。

ではまた〜。

248名無しさん:2011/01/19(水) 21:33:33 ID:fTl2sZwA
>>247
押され気味ペリーヌかわいかったですGJ!

249名無しさん:2011/01/19(水) 21:59:47 ID:Aaa6q/VE
>>247
これはまた珍しい組み合わせ
できれば竹井無双もまじえた504編も見たいものですが
……できれば

250名無しさん:2011/01/19(水) 23:00:00 ID:HrKK6PWM
こんばんは、Hwd8/SPpです。
>>245 mxTTnzhm様
フィデリカとペリーヌ?!これまた珍しい組み合わせですねぇ!!
思わずニヤニヤしながら読んでしまいましたw

さて、今回はあまりクローズアップされていないラル隊長について書いてみました。あくまでもこうゆうイメージ!って感じで書いているので;;
あとネタが少々古い…かもです;;


【デキる女の一日】

「ん………」

5時58分…私は自然に目を覚ます。
1分でボーッとし、残り1分で覚醒させるのだ。

〜♪〜♪

6時ぴったりに起床ラッパが鳴る。
同時に私はベッドから体を起こす。

「あー…そういや飲みっぱなしだったな」

ベッド近くに置いてあるミニテーブルにはビールの空き瓶が数本転がっている…昨日のうちにやっときゃ良かったかもな。

「仕方ない…」

サイドテーブルに畳んで置いてあった軍服に袖を通す。
あ、私は寝る時は全裸だ!スッポンポン派だ!裸で何が悪い?!

着替えた後、私は空き瓶を回収して食堂近くのゴミ捨て場に捨てる。
そしてそのままの足で私の部屋…つまり隊長室へ赴く。

キイッ...

入って最初にする事…それは朝食前のコーヒーを飲む事だ。
結構こだわる方だ。わざわざコーヒーミルをロンドンのハロッズから取り寄せ、丁寧に豆をゴリゴリと粉砕する。

コポコポコポ...

「うむ、美味しい!」

合格!85点だな、今日の出来は。


***

251名無しさん:2011/01/19(水) 23:00:36 ID:HrKK6PWM
>>250の続き

8時に食堂にて朝のミーティングを兼ねた朝食時間だ。

「…となっている。以上が今日の報告だ。なお、ネウロイはこの間出現されたばかりなので今日は発令されていない。なので各自、訓練等をしておく事」
『はいっ!』

502のメンバーが全員、同じタイミングで返事をする。
思ったんだが、これってなかなか滑稽な光景ではないか?

今朝の朝食当番はジョゼだ。手作りのクロワッサンに目玉焼き2個、ベーコンにサラダ…と至って普通のメニューだ。
でも美味しいんだ、これが!

「わっ!なんで私のベーコンを取るんだ?!」
「うっせ、これが実際の戦いだったら墜ちてんぞ?!」
「朝食と実戦は関係ないだろ!!」

ニパとナオがケンカをしているな、全く…。
慌ててジョゼがニパにベーコンをやろうとしているが…サーシャが急に説教をし出したぞ。
この部隊は見ていて実に飽きないなー。


***


9時に部屋に戻る。
さっ、仕事だ仕事!

コンコン...

「ロスマンです」
「おっ、入れー」

ガチャッ...

「隊長宛てに来ていた手紙です」
「おぉ、ありがとう」
「そしてこれが…今月分の請求書です」
「…やけに部品代が高くないか?」
「ははあ…あの3人が…」
「なんだ、『ブレイクウィッチーズ』か」
「はい…度々注意しているのですが、すみません…私の力不足で」
「いや、大丈夫だ。心配しないでくれ」
「申し訳ございません…」
「そんな事よりも今夜も一緒に飲むか?」
「はい!喜んで!」

うむ、やはりロスマンは笑顔が一番だな。

「さて…と、私の仕事はっと」
「上層部に送る書類作成、ストライカーユニット部品の発注書、援助物資のリスト作成ですね。あ、でも全て私がもうやっています」
「え…?」

驚いた…仕事早いな、ロスマンは。

「じゃあ私の仕事は…?」
「えっと…あ、領収書の整理お願いします。あのエセ伯爵、経費を私用に使ってるんですよ!あり得ないですよ!」
「ははは…わかった、じゃあハンコ押しぐらいは私がやる」
「助かります」













「ふう…」

領収書のハンコ押し完了。
ただ、ほとんどグルピンスキー関連の物だったなあ…アイツには一回、話し合いの機会を設けないと。
まあ予算が欲しいからじゃんじゃん使うのは良いんだけどな。

ゴリゴリゴリ...

とりあえずする事がないから本日2回目のコーヒー。

「うむ…美味しいな!」


***

252名無しさん:2011/01/19(水) 23:01:07 ID:HrKK6PWM
>>251の続き


時が流れるのは早いもので、既に12時を回っていた。
昼食の時間なため、食堂へ赴く。

昼の当番もジョゼで、ふむ…今日はパスタなのにリべリオン生まれのメニュー…『カルボナーラ』か。

「わっ!なんで私の麺を取るんだ?!」
「うっせ、これが実際の戦いだったら墜ちてんぞ?!」
「昼食と実戦は関係ないだろ!!」

…おいおい、朝とまるっきり同じやり取りをしているぞ?!あの2人!!


***


「なあロスマン…」

昼食後、廊下を歩いていたロスマンに声をかける…が、

「すみません、ちょっと今仕事が忙しいのでまた後でお伺いします!」

…おいおい、それって本来私の仕事じゃあ…?

モヤモヤしながらも、本日3回目のコーヒーを煎れる。

ゴリゴリゴリ...

「…うむ、やはり美味しいな」
















15時過ぎ、あまりやる事がない…いやこの言葉だと語弊があるな;;
仕事が落ち着いたので、格納庫へ行ってみる。

そこにはチェック表を手にしたサーシャと、傍にグルピンスキーが居る。
しかし、何から言い争い?お説教?をしているようだなあ…;;;

「ったく!あなたは何遍言わせればわかるんですか??!!」
「困るなあ熊さん、別にボクだって好きで壊してるワケじゃないよ」
「良いですか??!!湯水のようにお金があるんじゃありません!!」
「え、でもちゃんと税金は納めてるよ?」
「あなたは自分が払ってる金額以上のストライカーユニットを破損しているんです!」
「いや、違うよ…飛んだら勝手に壊れるんだよ。リコール?これ、製造元の本社へ早速電話しなくちゃなあ」
「そんな情報は私の耳に入って来てません!!!!」
「何せ10分前に耳に入った情報だからね」
「…っ!!」

「まあまあまあ」
「たっ、隊長!」
「隊長、聞いてよ〜…熊さんがボクの事を虐げるんだよ」
「なっ??!!」
「グルピンスキー、お前はもっと破損するのを控えろ」
「控えろって;;」
「『ブレイクウィッチーズ』姉妹の長女だろぅ?1人減っただけで、注文書の紙が1枚減るんだ」
「…は〜い、気をつけま〜す」
「エセ伯爵!!あなた上官に向かって…っ!!!」
「サーシャもそんな怒るな、国民だって世界を守っている実績があるからお金を出してくれてるんだ。そもそもグルピンスキーに実績が無かったらとっくに自腹だぞ?」
「すみません…」
「2人ともケンカはするなよー」
「熊さんごめん…この後、仲直りとしてエッチしないか?」
「こここここの変態っ!!!!」







部屋に戻る。
2人のケンカを仲裁した所でまた、

ゴリゴリゴリ...

本日4回目のコーヒーを煎れる。

「うむ、美味だ」


***

253名無しさん:2011/01/19(水) 23:01:35 ID:HrKK6PWM
>>252の続き


17時、今さらながら新聞を読む。
おっ、なんだ…今回の特集はマルセイユ特集か。
思えば彼女と一番最初に出会った時は荒れていたなあ…でもあの時、注目しなかったらこんな活躍は出来なかっただろう。
そう思いながら、本日5杯目のコーヒーを飲む。

「うむ、素晴らしい」

しかも…この写真、撮ったのは扶桑の加東圭子…え?!隊長になったのかぁ…。
そういや入院している時、私に取材しに来たなあ。あの時はカメラマンだったが復帰したのか。
そう思いながら、本日6杯目のコーヒーを飲む。

「うむ、エクセレント」

そういや、501部隊のミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐もこんなんだろうか…?
こんなに時間を持て余しているのだろうか?…今度聞いてみるか。そもそも彼女とは…JG53に所属した以来会ってないなあ…。
そう思いながら、本日7杯目のコーヒーを飲む。

「うむ………ゴホゴホッ!気管支に詰まった…っゴホッ!」


***


19時、ミーティングを兼ねた夕食だ。

「…本日異常なし。で良いか?」
『はいっ!』

502のメンバーが全員、同じタイミングで返事をする。
思ったんだが、これってなかなか滑稽な光景ではないか?
…あれっ、もしかして朝と同じ事を言ってるか…?まあ良いや。

今晩は、下原が当番だ。何なに…扶桑の鍋料理で『すき焼き』と言うのか。
肉やら野菜…この白い物体はなんだ?チーズか?とにかく色々な物を煮込んでいる。
しかもそれを、生卵を付けて食べると言うからまた不思議だ。腹は壊さないのか?
最初はこの扶桑の鍋料理に、みんなの箸でつつくと言う行為に抵抗があったが今では全くない。扶桑ナイズされてきたなあー

「わっ!なんで私の肉を取るんだ?!」
「うっせ、『すき焼き』は戦争だ!お前の捕虜はもらうぞ!」
「夕飯と戦争は関係ないだろ!!」

…うん、あの2人…朝と昼で言葉を変えてるが全く意味は変わってないぞ。


20時過ぎ、私は部屋に戻る。
レコードをかけるとするか…今夜はモーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」だな。
ちなみに私は第三楽章が好きだ。

そして日課である、オオカミの剥製の手入れをする。私の使い魔はオオカミで、非常に尊敬している動物だ。
彼らの行動を見ていると時々、戦術の勉強になる時もある。そうした彼らに感謝の意を込めて、ピッカピカにする。

「ー♪ー♪」

椅子に腰かけ、モーツァルトを口ずさみながらピカピカになったオオカミを見る。
そうしながら、本日8杯目のコーヒーを飲む。

「うむ…流石に胃が痛い…」

なんだ、私はバリスタにでもなりたいのか??!!


***

254名無しさん:2011/01/19(水) 23:02:05 ID:HrKK6PWM
>>253の続き


22時過ぎ、私は自室で本を読んでいる。

コンコン...

「ロスマンです」
「入れ―」

ガチャッ...

「失礼しま〜す」
「『カールスバーグ』で良いな?」

と緑色のビール瓶をロスマンに見せる。

「はい、もちろん!と言うか隊長、それしか飲まないじゃないですか」
「…そうだな、考えてみれば」

そうして戦術の事、メンバーの事、時には…『ガールズトーク』に花を咲かせる。
23時を少し過ぎた頃、

コンコン...

「夜分遅くにすみません、下原です」
「おっ、どうした?入れ」

ガチャッ...

「あれっ、ロスマンさんもいたんですか?!」
「そうよ、何なら私たちの『グータンヌーボ』に加わる?」
「え?!良いんですか??!!あ、扶桑から援助物資としてこんな物が届いたんですが」

と下原が持っていた瓶を手にする。

「ふむふむ、これはなかなか良い代物だな………って扶桑語読めんわ!!!!」
「出たっ!隊長のノリツッコミ!」
「あ、扶桑で有名な芋焼酎です。『魔王』って言う幻の酒なんですが」
「よし、ロスマンと下原!飲むぞ!」
「ラジャ〜!」
「え、私まだ未成年…」
「隊長命令だっ!!!!」
「はっ、はいぃ…」


***


チュンチュン...

「むむっ…」

5時58分…私は自然に目を覚ます。
1分でボーッとし、残り1分で覚醒させるのだ。

〜♪〜♪

6時ぴったりに起床ラッパが鳴る。

「…えっ?」

ビックリした…何故なら私は壁に寄り掛かって寝ているのだから。
そしてその上に毛布が掛けられている。

とにかく私は立ち上がり、着替えて散乱している空き瓶を回収して食堂近くのゴミ捨て場に捨てる。
そしてそのままの足でロスマンの所へ。

「起きてるか?」
「あっ、はい…ちょっと待ってください」

といかにも今起きたばっかりのロスマンが部屋から出てくる。

「あの…私…」
「大丈夫です、誰にも言いませんから」
「へ…?」
「記憶にないんですね…」
「ああ」
「昨日…一瓶開けちゃって、隊長…急に服を脱ぎだしてですねえ」
「…はっ?!」
「急に全裸で正座しだして『裸で何が悪い』と…」
「………」
「そしてそのまま寝ちゃったんです」
「…すまんな」

それだけを言い残して、廊下を歩く。しかし何故か早足になっている…。

グンドュラ・ラル

カールスラント空軍第52戦闘航空団第8中隊、カールスラント空軍第52戦闘航空団第3飛行隊司令を経て、こう見えても私は502JFWの隊長を務めている。
エーリカ・ハルトマン、バルクホルンに次ぐカールスラント空軍第三位撃墜記録を持つグレートエースであり、芸術的な空戦技能を持っている。
さあて、今日も一日仕事だ。



【おわれ】

255名無しさん:2011/01/20(木) 21:20:23 ID:mx4Zd84M
>>254
さすがラル隊長、あのカルピス原液部隊を束ねてるだけあるお人ですね!!
一緒に泥水みたいなコーヒーを飲んでみたいモンです。GJでした!
あ、それと伯爵の名前が『グ』ルピンスキーになってましたよ〜

256名無しさん:2011/01/20(木) 21:49:54 ID:mvApYoQg
>>255
どうも、Hwd8/SPpです。
カルピス原液部隊w確かに濃いメンバーが多いッスね〜;;

あれま…ご指摘、ありがとうございます;;やっぱちゃんと読みなおししなくちゃダメですね〜;;;

257名無しさん:2011/01/21(金) 18:41:16 ID:wJKLg9QM
>>254
まさに校長先生な隊長がいいですね〜(^O^)おかずを取り合うナオちゃんとニパが可愛すぎる…!!

258mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/01/23(日) 23:53:37 ID:w2SPciDw
>>254 Hwd8/SPp様
GJ! ラル隊長何かかわいいですねw 502もいつも通りで。


こんばんは、mxTTnzhmでございます。
某所で頂いたネタをひとつ。
保管庫No.0450「ring」シリーズ続編となります。
ではどうぞ。

259no border 01/03:2011/01/23(日) 23:54:04 ID:w2SPciDw
 部屋の中央に引かれた、一本の赤い線。何者も超える事を許されないその“防衛線”を、「ジークフリート線」と呼んだ。
 その線をいとも簡単にまたぎ、がらくたをぐわっしゃんと崩壊させながら、金髪の少女が転がり込んできた。
「こ、こら! また私の境界を侵犯する気かっ!?」
 部屋のテーブルで読書をしていたトゥルーデは、慣れた手つきで散らばった本やら瓶やら何かの木ぎれなど
様々な“物体”を手に取っては、適当に領域の向こうへと戻し始める。
「ちょっとトゥルーデ、もっと丁寧にそっと扱ってよ」
「なら何故がらくた毎やって来るんだ!? あれ程モノをこっちにやるなと……」
「まあまあトゥルーデ」
 侵犯の主、エーリカは、トゥルーデの肩に腕を回し、にやにやと笑う。
「どうした? 何か様子が……息が酒臭いぞ」
 気付いてエーリカの顔を見る。頬がほんのり紅い。
「たまには良いかなーなんて思って。珍しいカールスラント産のワインだよ」
 にやつくエーリカを見る。ワインの瓶を渡され、自然と受け取る。
「ほう、これは珍しいな。何処で手に入れたんだ」
「私のスペースに、有った」
 エーリカの指さすところは、およそゴミの山と言った感じだ。何が出てきてもおかしくない。
「飲めるのか、これは」
「大丈夫、何本も出てきたし、栓もしっかりしてあったし、ラベルも読めるよ。ほら」
「ふむふむ。……結構年代物みたいだな」
 ラベルの記載をつらつらと読むトゥルーデ。いつの間に用意したのか、グラスをふたつ用意し、トゥルーデのベッドに腰掛けるエーリカ。
「さ、飲もう」
 パジャマ姿と言うラフな格好で、誘うエーリカ。
「飲もうって……明日も有るのにどうしろと」
 呆れるトゥルーデ。
「今夜私達非番じゃん」
「非番も何も、いざネウロイが来たら……」
 言いかけるも、既にエーリカは栓をぽんと抜き、こぽこぽとワインをグラスに注ぐ。
 琥珀色をした魅惑的な液体が注がれる。
「貴腐ワインか?」
「だね。甘くて美味しいんだよ」
「……知っている」
 トゥルーデは仕方無くグラスを手に取った。
「あれ、さっき飲まないって言ってなかった?」
「栓を開けた以上、早く飲まないと痛むからな。せっかくの貴腐ワインが勿体ない」
「そそ。飲まないとね〜」
 二人は一応、乾杯、とワイングラスを合わせ、ぐいと呷った。
「甘いね!」
「悪くないな」
 二人は同時に感想を述べた。
「確かまだ何本か有った筈だから持ってくるよ」
 エーリカは自分のスペースへ戻ると、ワインの瓶をどこからともなく持ち込んでくる。
「今そんなに飲まなくても」
「いつ飲めるか分からないし、この際飲めるだけ飲んじゃおうよ」
「おいおい……」
 そう言いながら、実はまんざらでもなさそうなトゥルーデ。
「はい、飲んで飲んで〜」
「うん……。まあ、うまいな。やはりワインはカールスラント産に限るな」
「でしょでしょ? もっと飲もうよ」
 窓から月明かりが差し込む中、二人はつまみも無しにワインを一瓶、また一瓶と開けていく。

260no border 02/03:2011/01/23(日) 23:54:33 ID:w2SPciDw
 夜も更け、月もだいぶ傾いた頃……
 ふたりはぐでんぐでんに酔っぱらい、ベッドの上で微睡んでいた。
 ワインの瓶は何本も転がり、ベッドの周りだけエーリカのスペースと余り変わらない感じになっている。
「……飲み過ぎたか」
 うう、と呻くトゥルーデ。
「トゥルーデ飲み過ぎなんだよ……瓶毎ラッパ飲みするなんて」
「エーリカがやれと言ったから!」
「罰ゲームだもんね」
 にしし、と笑うエーリカ。トゥルーデはベッドの上に、ごろりと横になる。そしてぽつりと呟く。
「毛布が欲しい」
「毛布?」
「もうこのまま眠りたい」
「えー」
「飲み過ぎて何だか気分が……」
「しょうがないなー、トゥルーデ」
 エーリカもよろめきながら、近くに置かれた毛布を手に取る。
「おろ? 端が二重に見えるよ、トゥルーデ。面白い」
「エーリカも酔ってるじゃないか」
「とりあえず、はい!」
 折り畳んだ毛布を投げつける。
「痛っ! 畳んだまま投げるな! て言うか、掛けてくれないのか……」
「トゥルーデ、いつの間に甘えっ子になったの?」
「こう言うのは甘えっ子とは言わない」
「仕方無いなあ、トゥルーデ」
 エーリカは毛布の端を持ち、ばさっと広げるとトゥルーデの身体に掛ける。
「すまない、エーリカ……」
 何か言いかけたトゥルーデが気になり、顔を見る。気分が悪そうとかそう言うのではなさそうだ。
 そこで、少々の寒気を覚えたエーリカは、そのままするりとトゥルーデの懐に潜り込んだ。
「どうした、エーリカ」
「寒くなったからちょっと暖めて」
「あ、暖め、て……?」
 トゥルーデの声色が変わる。
 そこで、エーリカは、ふと気付く。
 目の前で微睡んでいた筈のトゥルーデが、何故か覚醒している。
 いや、目の色はまるで貴腐ワインの様にとろけ、そして少々澱んでいる。
 だが、何処か何か思い詰めた様な、一途な表情をしている。
「今、暖めてと言ったな?」
「う、うん」
「じゃあ、そうする?」
「えっ? えっ? トゥルーデ? ちょっ……」
 腕をがっしりと掴まれ、唇を奪われる。舐る様な、濃厚なキス。
 さっきまで飲んでいたワインの味が、お互いの口を行き来する。
 舌が絡む。貪る様に、唇を重ねる。はあ、と息が上がり、灼ける吐息が頬を掠める。
 そんなキスを何度も繰り返し、息がとことん荒くなったところで、トゥルーデはエーリカのパジャマを強引に脱がせた。
「ちょっと、トゥルーデ?」
「お前が望んだんだぞ、エーリカ」
 まだ息の荒いトゥルーデは、エーリカを前に、自分も服を脱ぎ捨てた。
「そして、私も望んでいる」
 それだけ言うと、エーリカに襲い掛かった。
 毛布の中で、突然始まる情事。
 普段あまり自分から求めないトゥルーデが情欲に溺れ狂ったのは、ワインの魔力か。
 それとも、間近で嗅いだ“愛しの人”の芳香か。
 体中に唇を這わせ、乳房を舐め、微かな膨らみを繰り返し舐る。
「あっ……はうっ……トゥルーデ、そこばっかり……」
「エーリカの、胸は……。でも、だからこそ好きだ」
「トゥルーデ、何言ってるかよく分からないよ」
 途中何を言っているか分からないが、とにかくトゥルーデにがっしりと身体を拘束され、なすがままにされる。
 執拗に胸を舌と唇で玩ばれ、身体をびくりと震わせるエーリカ。
「ズボンも要らないな」
 しゅるりとズボンを脱がすトゥルーデ。少々熱く、湿り気味の秘所に、中指をくちゅっと入れ、こすり、回し、つまむ。
 堪えきれずにトゥルーデを抱きしめ、腰を震わせるエーリカ。
「トゥルーデ、だめ……そんなにしちゃ……」
「私も……」
 いつ脱いだのか、トゥルーデもズボンを下ろし、露わになった自分の股をエーリカと合わせる。
 最初ゆっくりしたリズムで、腰を浮かし、擦り合う。溢れ出る蜜。
「あっ……んっ……だめ……トゥルーデ……」
「うう……先にはイカせないぞ……エーリカ、愛してる」
「トゥルーデ、ずるい……んっ……こんな時に……はあっ」
 唇を重ねる。身体が本能的に動き、うまくキス出来ない。無理矢理ぎゅっと抱きしめ、腰を振りながら、もう一度キス。
 やがてテンポが早くなり、息が浅くなり、上がり……
 二人は同時に、快楽の頂点に達し、がくがくと身体を震わせた。
 抱き合ったまま、ベッドにごろりと横になる。
 二人の重なった秘所から溢れる愛液はつつっと垂れ、ベッドのシーツにぽつぽつと染みを作る。
 荒い息のまま、二人はキスを繰り返す。数なんて数えていられない。ただ、目の前に居る者が、愛おしい。それだけ。
「トゥルーデ、愛してる」
「エーリカ、私もだ」
 絡み合う視線、吐息。
 そして重なる唇。乳房。素肌。
 二人の営みは、夜を徹して続いた。

261no border 03/03:2011/01/23(日) 23:55:51 ID:w2SPciDw
 明け方。のそっと身体を起こすエーリカ。いつ掛けたのか、毛布にくるまったまま二人は寝ていた。
 トゥルーデは疲れ切ったのか、全身の力が抜けた様にぐたーっと寝ている。
「あんなに飲むから……って飲ませたのは私か」
 髪をかき上げ、ぼんやりと思い出し呟くエーリカ。
 その“飲み過ぎ”な愛しの人は、エーリカの横で寝たまま、起きる気配もない。
 時計を見る。そろそろトゥルーデは起床する時間なのに……。
「こりゃ起きないね。起こしてもしょうがないし」
 エーリカはもそもそと毛布に潜り込むと、トゥルーデと肌を合わせる。
 素肌の触れ合い。とても温かく心地良い。お互いの鼓動がはっきりと分かる。
 本能的か反射的か、エーリカを抱き寄せるトゥルーデ。しかし寝たままだ。
「私は抱き枕かっつうの」
 口調は少しきついが、悪い気はしない。
「もし、ワイン飲んだ後の事、忘れてたら……」
 一週間無視しよう、と決心するエーリカ。
 でもトゥルーデの事だから、きっと顔を真っ赤にして「それはその……」とかしどろもどろになって弁解するに違いない。
 そこも織り込み済みでの、決心。
 ある意味での逃げかも知れない。
 だけど、そうなる確信にも似た気分は有った。何より、二人で付け合った身体の痕。そしてベッド周りの状況。
 ふふ、と何故かこみ上げる笑みを浮かべながら、エーリカはトゥルーデの胸の中で、もう一度眠りに落ちる。
 一番安心出来る人の、腕の中で。

end

--

以上です。
やや? エロスな感じで。

ではまた〜。

262名無しさん:2011/01/24(月) 22:56:17 ID:IPgkt3Ho
>>259

いつも楽しく読ませて頂いてます。
早速拝見させて頂きました。エーリカとゲルト…今回はまあ何とも神秘的(?!)な話でしたね。
「ring」シリーズ作品は頭の中で急にイメージが浮かぶから素晴らしいと思ってます!

あの…一回限りなのですがリクエスト…出来ますか?!させてください!!
ぜひとも、アメリーが501に来訪するというエピソードが一度読んでみたいです!!

263名無しさん:2011/01/25(火) 01:11:54 ID:QROkypIw
エーゲル神!!
501神!!

264名無しさん:2011/01/26(水) 01:15:52 ID:XtijJEQg
こちらは初めてなのですが、ものすごく短い話を一つ投下させていただいてもよろしいでしょうか。

265名無しさん:2011/01/26(水) 01:17:46 ID:XtijJEQg
どなたも居らっしゃらないようなのでこっそり落としていきます。
エイラが501に赴任した直後のおはなしです。

266名無しさん:2011/01/26(水) 01:18:21 ID:XtijJEQg
彼女のことが気になって、
彼女の部屋をノックした。
少し遅れて返事がして、
彼女は扉をあけてくれた。
暗かったけど、目が赤いのはわかった。

私は彼女と話をした。
ツンツンメガネに何か言われたらしい。
そんなこと気にすんなって言ったけど、
彼女はうつむいたままだった。

私は彼女に約束した。
朝になったら迎えに来るよと。
みんな同じさ、私もちょっとは緊張してるんだ。

辛いなら、うつむいてちゃだめだって。
彼女も分かっているはずなんだ。

私は彼女を連れ出した。
朝の風はまだ冷たいけど。
今日がどんな日かなんて、
未来予知でだってわからないんだから。

彼女の願いを聞いた。
その願いは、私の願いにもなったから、
その重りを分けてごらん。
これからはふたりの願いだよ。

朝になったら迎えに来るよ。
朝の風はまだ冷たいけど。
今日がどんな日かなんて、
未来予知でだってわからないんだから。

267名無しさん:2011/01/26(水) 01:19:31 ID:XtijJEQg
これは私の好きな歌の歌詞を模しています。
これからもさっと落としに来るかもしれないので、どうかよろしくお願い致します。

268名無しさん:2011/01/26(水) 13:54:26 ID:BqRB/N/w
>>267
GJ!ここは結構過疎ってるから気にせずどんどん投下しておk

269mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/01/26(水) 21:52:10 ID:jhyJXrNE
>>267
GJです。これは良いエイラーニャ。はじめから優しいんですね。


こんばんは、mxTTnzhmでございます。
今回は >>262様のリクにお応えして一本書いてみました。
多分想像や希望とは違うものになっていると思いますので
予め陳謝……。
時期的には、アニメ1期、ガリア解放前辺り
(ブリタニア基地滞在時)と言う事で宜しくお願い致します。
ではどうぞ。

270they need you, i need you... 01/02:2011/01/26(水) 21:52:53 ID:jhyJXrNE
 アメリーはトラックから降りると、どんと眼前にそびえ立つ501基地を眺めた。
「これが、501の……」
 ごくり、と唾を飲み込む。自由ガリア空軍からの補給……ストライカーユニットの部品や食料、
些細だが「慰問」と称して贈られる幾つかの嗜好品など……の護衛を任され、ようやくかの地へ辿り着いた。
 そして何より、アメリーにはどうしても逢いたいひとが居た。今日こそは。
 いつの間にか門前で仁王立ちしている自分に気付き、アメリーは慌てて501の基地へと向かった。

「ようこそ501統合戦闘航空団へ。補給及び連絡の任務、ご苦労様です、プランシャール軍曹」
 執務室に通されたアメリーは、大人びた風貌の佐官からねぎらいの言葉を受ける。カールスラント空軍の制服を着ている。
「あっありがとうございます」
「礼を言うのはこちらの方だ。補給品だけでなく他にも色々と……。こんなに良いのか?」
 扶桑人と思われる佐官も、書類のリストを見てアメリーに聞いてくる。
 よく見るとこの扶桑人、以前ブリタニア駐在時にあの人をスカウトしに来た……? と気付くアメリー。
「ほ、ほんの気持ちですから! どうぞご自由にお使い下さい」
「では、後で隊員達に使わせるとするか。それで良いか、ミーナ」
「ええ、そうしましょう」
「あっあのっ!」
 意を決したかの様に、問いかける……つもりが大声をだしてしまい自分でも慌てるアメリー。
「どうした、そんなに焦る必要もないだろう」
 笑う扶桑の佐官。
「ごっごめんなさい。その、あの……ペリーヌさんは何処に居ますか!」
 あっ、と自分の口を手で覆う。そして言い直す。
「すいません。クロステルマン中尉は、どちらに……?」
「ペリーヌさん? 確か……」
「今はロンドンの自由ガリア空軍連絡所に出掛けている筈だが」
「えっ」
 動揺を隠しきれないアメリー。
「何でも使用しているストライカーユニットの件で軍と連絡を……おい、どうした?」
 アメリーの目に溜まる大粒の涙、ぽろぽろとこぼれ落ちる。
「そんな、すぐに帰って来るから、泣かなくても」
「せっかく会えると、思ったのに……」
 ぐすっと鼻を詰まらせる。涙が止まらない。
「いや、あと半日もすれば戻って来る筈だ」
「は、半日!?」
 思わず大声を上げた事に、佐官ふたりはぎくりとした。
「半日がどうかしたの?」
「私、あと一時間程で帰らないと……。ぐす……、うええっ……」
「あら……。それは残念ね」
「会いたかったです〜」
 落胆が悲観に代わり、泣き止まないアメリー。
「参ったな……こう言う時は誰を呼べば良いんだ?」
「そうね。リーネさんと宮藤さんをここに」
「了解。適任だな」

「はいどうぞ。カモミールティーですよ」
 ブリタニアの軍曹からカップを渡されたアメリーは仰天した。リンゴの様な、爽やかな香り……
「こっ、これは」
「どうかしました?」
「このカモミールティー、何処で?」
「何処でって、ペリーヌさんが教えてくれたんですけど」
「ああ、なるほど……」
 複雑な表情をするアメリー。
 そんなアメリーを見たブリタニアの軍曹と扶桑の軍曹は、顔を見合わせ、どうしよう、と呟いた。
 アメリーは二人に問うた。
「あの、ひとつ聞きたいんですけど」
「はい」「なんでしょう?」
 同時に答える二人の軍曹。
「お二人は、ペリーヌさんのお友達さんですか?」
「えっ!? え、は、はい」
「私はどうか分からないけど……一応、仲間、かな」
 戸惑い気味に肯定するブリタニア娘、苦笑いして頭を掻く扶桑娘。
 カモミールティーに口を付けるアメリーを見て扶桑娘は言った。
「やっぱり。ね、リーネちゃん」
「でも芳佳ちゃん、この人、何だか悲しそう……」
「お気になさらず。私もガリアの軍人ですから……ですから」
 またも涙目になるアメリー。
「ああっ何故泣くの?」
 人目も憚らず、アメリーはまたも涙目になった。
「ペリーヌさんに会いたかった……」
 ぽつりと、呟く。
「ごめんなさい、今日は居ないの。代わりにこのカモミールティー、飲んで」
「ありがとう、ございます……」
 ブリタニア娘は、少し顔を覗き込んで言った。
「ペリーヌさんが言ってました。このお茶を飲むと落ち着くって」
「……それ、私がペリーヌさんに教えて差し上げたんです」
「そうだったんですか」
「意外なルーツ発見だね、リーネちゃん」
「そうだね芳佳ちゃん」
「……あ! て事は、貴方があのアメリーさん?」
 何かに気付いた扶桑娘は身を乗り出した。
「ほえ? 私ですけど、どうかしました?」
 カップを手にきょとんとした顔をするアメリー。

271they need you, i need you... 02/02:2011/01/26(水) 21:53:20 ID:jhyJXrNE
 小一時間後。
 扶桑の娘と、ブリタニア娘から、事の次第を聞いたアメリー。
 ペリーヌが、かつての自由ガリア空軍時代の事を皆に話した事。
 扶桑の軍人から501JFWへのスカウトを受けた時の事……模擬戦でこてんぱんにやられた事……
その後アメリーからカモミールティーを振る舞い、淹れ方を教えた事。
 そして……。
「そうですか……ペリーヌさん、忘れてなかったんですね」
 手にしたカップの中で漂う液体、花びらの一片をじっと見つめるアメリー。
 爽やかな香りは、何故か自分が教えた筈なのに、いつのまにかあのひとそのものに見えて。
「ペリーヌさん」
 アメリーは、お茶の中に自分の存在を見出し、ふと、微笑んだ。

「帰りは気を付けてな」
「何も無いとは思うけど、万が一の時はすぐに連絡を。掩護に向かわせるわ」
 501の佐官ふたりが見送る中、トラックに乗り込んだアメリーは礼を述べた。
「お気遣い有り難う御座います。一応、トラックには私のストライカーユニットと武装、発進ユニットを積んでありますから」
「それは頼もしいな。でも501に来たんだ、もっと我々を頼ってくれても良いんだぞ?」
「いえいえ。……あの」
「? どうした」
「すいません、取り乱して……色々と」
 恥ずかしげに言ったアメリーの言葉を一蹴するかの様に、扶桑の佐官は笑った。……あの時と同じ笑い声。
「扶桑の諺に『旅の恥はかき捨て』と言うのが有ってな。長居する訳では無いから、特に気にするなと言う意味だ」
「はあ」
「だから、ペリーヌには内緒にしておく」
「そ、それはどうも」
「ただ、プランシャール軍曹が来た事だけは伝えておこう。……何か伝言は有るか?」
 不意に扶桑の佐官から聞かれ、答えに詰まるアメリー。
「あ、あの……」
 咄嗟に思い付かない。そして繰り返してしまう。
「お会いしたかったです、と……」
「そうか。分かった。伝えよう。何、大丈夫。すぐに会えるさ」
「えっ、何で分かるんですか?」
「なぁに、勘だよ、勘。何となくそんな気がしてな」
 笑っていた扶桑の佐官は、ふと顔を引き締めて言った。
「だから会えるまで、絶対に生き残れよ」
「は、はい! 頑張ります」
「宜しい! ペリーヌも喜ぶだろう」
 またも笑う。呆れ顔をするカールスラントの佐官は、アメリーに言った。
「では、そろそろ時間ね。気を付けて」
「はい。皆様も、ご武運を」
「有り難う」
 こうして、アメリーは501基地から去った。帰路敵襲も無く、基地に戻る頃にはトラックの席でうつらうつらとしてしまっていた。

 後日、アメリーに一通の手紙が届く。
 ペリーヌからだ。
 生憎の“不運”を嘆く言葉、様々な補給品に混じり、乾燥カモミールティーを差し入れしてくれた事の感謝。
 手紙によると、基地でアメリーが飲んだカモミールティーが、501に残っていた“最後の一杯”だったらしい。
 ちょうどのタイミングで、入れ替わる様にやって来た事を喜んでいる様だ。
 乾燥カモミールティーはいつでも手軽に使える事から、重宝しているとの事。
 そして、ペリーヌも基地の中庭で、カモミールの花を育てている、と言う事も書かれていた。
 手紙を読み終え、アメリーは決心した。
 もう一度、カモミールティーを淹れてあげたい。
 もう一度、会いたい。
 その為にすべき事はひとつ。あの扶桑人が言っていた事を、する。
 それが自分の為にもペリーヌの為にもなると、彼女だけでなく、皆が分かっている事だから。

end

272名無しさん:2011/01/26(水) 21:53:36 ID:jhyJXrNE
以上です。
このSSの時期は、アニメ2期の頃(ロマーニャ展開時)ではないのでご注意を。
またアメリーの軍籍や所在等はかなり適当です。すいません。

カモミールティーのエピソードに関しては
秘め話CD2『カモミールの想い出』を参考に書きました。
色々齟齬もあると思いますがご容赦を……。

ではまた〜。

273名無しさん:2011/01/28(金) 20:41:23 ID:J/PYgnKE
こんばんは、Hwd8/SPpです。
「ヘルマの発情」シリーズなのですが、風邪の流行する季節…ってな事でその風邪についてのエピソードを書いてみました。
皆様も体調管理は万全に(`・ω・´)
それではドゾー


【ヘルマの風邪】


「くしゅんっ!!!!」

ハルトマン中尉の部屋…なんだか寒いような…?

「風邪…?」
「いえっ!誰かが私の事を噂してたんだと思います」
「…じゃあヘルマ、よろしく」
「りょ、了解でありますっ!!!!」

この間フルーツ風味の歯磨き粉を卒業しました!!ヘルマ・レンナルツであります!(ビシッ
普段、私の所属している部隊は実験ばかりしているのですが…なんと今回!!ハインリーケ大尉の部隊に期間限定ですが、出向することになったのであります!
なのでその報告をハルトマン中尉にしているところであります。


***


「しっ、失礼するであります!」
「入れ」

ガチャッ...

「本日よりそちらに出向します、ヘルマ・レンナルツ曹長であります!」
「知っとる」
「よろしくお願いします!」
「ふっ…」

ハインリーケ大尉は足を組み、こちらを見てるでありますね;;
ホンットに裏で『姫』って呼ばれてるだけあります。

「まっ、せいぜい頑張るが良い」
「はい!…え?」
「何故か妾の下に来た新人の部下は皆『親が危篤で』『風邪を引いて』『家のペットが心配なので』…と何かしら理由を付けて、出向期間途中に原隊へ帰ってしまうヤツが多いのだ。まっ、そうならんようせいぜい頑張れ」
「は…ははあ…」
「前にここにおったヤツも一昨日までここに居たんだが…急に『原隊でトラブルがあった』と言って帰ってしまったのだ」

うわあ…何ですか、その典型的なウソは!!;;
…でもそんなに辞めてく人間が多い部隊なんですね;;;

「軍の方に緊急に兵を補充してもらうよう頼んだんだが…まさかお前だったとは」
「人を車検の代車手配のような感覚で呼ばれたんでありますね;;…でも!空の上とプライベートは関係ありません!以後、よろしくお願い…へっ…へっ…へっくしょん!!!!」
「…よろしく」



私が何故この部隊に呼ばれたのかと言うと、夜間哨戒担当のウィッチが不足しているからであります。
そもそもハインリーケ大尉とその一昨日まで居たウィッチが1日ごとに交代して行っていたのでありますが、今はもういない…。
そして急遽、ヒスパニア方面から本国へ夜間哨戒担当ウィッチが来るはずだったのでありますが…戦況の悪化のため足止めをくらってしまっている状況であります。
なので来るまでの間、私がハインリーケ大尉と交代で哨戒をすることになったんであります!

そしてその日の夜…

「ヘルマ・レンナルツ曹長…行きますっ!!!!」

ジェットストライカー…はまだ研究中なため貸与してもらえず、ここの部隊から借りたストライカーで哨戒任務に就いたであります!
それにしても………

「寒いっ!」

いくらシールドを張れるとは言え、なんだか寒気が…;;

「くしゅんっ!!!」

くしゃみを寒い夜の空の下で連発するであります…。
もしかして…風邪でありますか??!!
でも大尉は………
「何故か妾の下に来た新人の部下は皆『親が危篤で』『風邪を引いて』『家のペットが心配なので』…と何かしら理由を付けて、出向期間途中に原隊へ帰ってしまうヤツが多いのだ」
と言ってたであります;;このままだと私は…?

「くしゅんっ!!」

以前、風邪だと思うからさらに悪化する…と聞いたことがあるであります!!こうゆう時は楽しい事を妄想するに限ります!!
楽しい事楽しい事…あ、バルクホルン大尉とマルセイユ大尉のどちらかが私を巡って部隊への引き抜きをするかをモメてる…と言うシチュエーションで妄想しましょう!

「くしゅん!!」

…ダメであります、今のくしゃみで興ざめしたであります…。
とりあえず、任務が終わったらバファリン飲むであります!!

274名無しさん:2011/01/28(金) 20:42:17 ID:J/PYgnKE
>>273の続き。






「ただいま戻りました!」

朝方、私が部隊の宿舎へと戻ると一目散に風邪薬を飲むであります。

ゴクゴクッ...

「…ぷはぁ…よくなると…良いであります」

とにかく寝るであります!!
私は用意された部屋へ向かい、仮眠を摂ったであります…。


***


「40.3度…ゴホッ」

起きた後、計った体温計を見て愕然とするであります…
あれ…頭がボーッと…

「ゴホッ…いや、ここで倒れてたまるもんでありますか!!!!ゴホッゴホッ」

そう自分に言い聞かせるであります!
とりあえず薬箱から風邪薬を2錠ほど水で流しこみ、哨戒へ向かうであります!















「たっ…只今戻ってきたであります…ゴホッ」

宿舎に帰ってきた私…ヤバい、冗談抜きでヤバいであります!!
なんかこう…視界がフラフラし出して、まっすぐ歩くのもやっと…?って感じで;;;

「…おかえり、レンナルツ曹長」
「ただいまであります…ゴホッ」
「おっ、貴様も早速仮病かぁ」
「ちっ、違うであります!これはガチで!…ゴホゴホッ」
「ふっ」
「いっ…行かないでっ!!」

と言い残し、スタスタと何処かへ行ってしまうハインリーケ大尉。おっ、置いてかないでくださいであります〜っ!!
必死にハインリーケ大尉を追いかけようとする私…勢い余って………

「わっ!!」

後ろから大尉を抱きしめるような感じになったであります…いやあ…その前に、ツラい;;

「なっ、何をしておるっ!!!」
「ごっ…ごめんなさいであります…」
「ったく…」

しかし、その廊下の角から2つの目が光っていた…。

「みみみ…見ちゃった!!」


***

275名無しさん:2011/01/28(金) 20:44:18 ID:J/PYgnKE
>>274の続き。


「ねえねえ、知ってる?あのちびっこ補充員の話」
「知ってる!何でも昨夜、大尉に廊下で抱きついたとか?」
「わっ、ダイタン〜!!」
「どうやら『行かないで!』って必死に懇願して抱きついたらしいわよ」
「もう許されない愛ね、上官と部下の恋愛って…ロマンチックだわ〜!」
「で、ここがそのちびっこ補充員の部屋かぁ〜」


んんんっ…
何だか廊下が騒がしいであります…
昨夜からずっと部屋に閉じこもって寝ているであります。
熱は一向に下がらず………うん、今日こそ医務室へ報告しに…!!
でも………
「何故か妾の下に来た新人の部下は皆『親が危篤で』『風邪を引いて』『家のペットが心配なので』…と何かしら理由を付けて、出向期間途中に原隊へ帰ってしまうヤツが多いのだ」
この大尉の言葉が頭の中でグルグルと…。ここで「私は風邪だ!」と言ってしまったら絶対に仮病扱いされてしまいます…。どうするでありますかぁ〜…。


***


「ハインリーケ大尉!!!!」
「…何じゃ?」
「おっ、乙女の純情を弄ばないでください!!!」
「はあ?何を言っておる?」

―――後から聞いた話なのでありますが、いつの間にか私の『許されざる恋』を応援する女性兵30名ほどの小集団が結成されたんだそう。そして、意を決してその集団の代表が大尉の部屋に押し入ったそうです。

「レンナルツ曹長は…あなたの事が大好きなんですよ?!どうして受け入れないんですか??!!」
「待て待て待て、一向に話が理解できぬ」
「理解するモンじゃありません!…感じるモンです、愛ってのは!!!!」
「バカか、コイツは…」
「わっ、私の予想だと…レンナルツ曹長は今夜の哨戒へ行く寸前に愛の告白があると思います!そこでイエスかノーかはっきり言ってください!!」
「???」

―――そう言うと、そそくさと部屋から出て行ったそうです。

「…レンナルツが、妾を…?まさか………!!」




















そして、哨戒へ飛ぶ直前。
何やらハンガー付近には大勢人が居るでありますが、今夜こそ意を決して…っ!!!!
…あれ、でも何故大尉がハンガーに居るのでありますか?
若干フラフラしながらも近付きます。

276名無しさん:2011/01/28(金) 20:45:13 ID:J/PYgnKE
>>275の続き。

「…ハインリーケ大尉」
「レレレレレンナルツ曹長!!ここここ今夜も今までに異常はないそうだ!!!!」
「そ…そうでありますか…」
「………」

あれ、なんで大尉は頬を赤くしてポリポリと掻いているんでありますか…?

「なっ、何かあったら遠慮なく言うのだぞ!」
「…あの」
「どっ、どうしたのだ?!」
「今夜…大尉にどうしても伝えなくてはならない事があります…」

『キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!』

ん…?なんだかバッグヤードが騒がしいでありますね…;;
熱のせいで耳が若干遠くても、聞こえるであります…。

「なななな何だ??!!」
「言いたくても…ずっと言えずにいまして…」
「うっ…うん…」
「この気持ちはウソなんじゃないかって大尉に思われるのがイヤで…」
「わっ、妾は全て受け入れるつもりだ!」
「あの…っ!!!!私、医務室へ行ってもよろしいでしょうか?」
「あ…ああ!もちろんだ!!!…へっ???」

ズテーーーーーーン!!!!

なんか後ろの方で盛大にズッコけたという、典型的な音がしたであります…。

「い…医務室…?」
「はい…ここ3日、ずっと熱が出てまして…」
「はっ…早ぅ行け…」
「すみません…今夜の哨戒、お願いします…」


***


「う〜っ!!!!」

ハンガーでの告白から2日後、私は医務室で診てもらい…そのまま、アーヘンの病院へ緊急搬送。
早いハナシ、原隊へ強制送還されたってワケであります…。
あ、大尉の部隊には既にヒスパニアから無事到着したそうでありますね!

「思ったより…」
「元気そうねぇ」
「あ、ハルトマン中尉とシュナウファー大尉!」

両名がお見舞いに来てくれたであります!

「まさかヘルマが入院だなんて…」
「それ聞いてビックリしたわよ」
「すみません;;己の体調管理を全くやってなかったばっかりに…。あ、でも実験の方は?」
「大丈夫、まだ設計図を描いてる途中だから」
「退院したらすぐ実験へ参加しますので…」
「まあ、完治するまでゆっくりしてなさい」
「ありがとうございます」
「あ、それと…」

ん、シュナウファー大尉が小包みを持ってるであります。

「ハインリーケ大尉からこれを渡すよう頼まれたわ」
「え…?」

あんなに迷惑かけたのに、お見舞い品なんて…!!

「途中で帰って来て、悪い
「あの人、ああ見えてもちゃんと他人へ思いやる気持ちがあるのねえ…」
「…ハインリーケ大尉」

なんだろう…この『キュン』となる気持ちは…;;;

「打ち合わせがあるから戻る」
「じゃっ、私も戻るわ」
「ご心配をおかけして本当に申し訳ございません!そして今日はありがとうございました!!」

両名が病室から出て行ったあと、ハインリーケ大尉のくれた小包を開くであります。
その小包の中には箱が入っており、中を開けてみると………!?

「わっ、わあっ!!??」

思いっきりベッドから落ちたであります;;
あのですね…箱の中身は…

「なっ、何でありますか!?これはっ!!??」

何かの動物の骨が入ってました;;
そして同封のメモには赤いインクで『許すまじヘルマ・レンナルツ』と。
………どんだけ恨んでるんですか!?私を!!


風邪だから仕事を休む、
しかし休んではならない。
では風邪を二の次にして良いものなのか…?
それを痛感した出来事でありました…。


【おわれ】

277mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/01/30(日) 21:29:56 ID:axU7Gq0w
>>276 Hwd8/SPp様
GJです。姫も取り巻きもなんか怖いですw


こんばんは、mxTTnzhmでございます。
保管庫No.1474「cherry and berry」
No.1475「cherry and berry II」の続きができましたので
投下します。
ではどうぞ。

278cherry and berry III 01/02:2011/01/30(日) 21:30:26 ID:axU7Gq0w
 もう幾つ夜が明け、朝を迎え、そして日が暮れたのか分からない。
 芳佳は目隠しを外して貰えないまま、ただサーニャにされるがまま、欲望の檻の中でもがいていた。
 欲望……。
 どちらの?と問われれば答えに困る。
 嫌がってもサーニャは迫ってくる。容赦なく、執拗に。そしてなすがままにされ……やがて墜ちる。
 不思議と、サーニャと共に過ごすうち、芳佳はサーニャのことだけを考えるようになった。
 501がどうだとか他の隊員がどうとか、そういうことは既に考えなくなり、ただ目の前にいる筈の、
 サーニャそのひとのことを想わずにはいられない。
 そんな芳佳は、今日もサーニャから“おやつ”を食べさせられ、間もなく淫靡な“遊び”へと導かれる。

 はあ、はあ、と荒い息をつく。またもサーニャの責めに耐えきれず身体が悲鳴を上げた。
「芳佳ちゃん、どんどん敏感になっていくのね。嬉しい」
「サーニャちゃん……ずるいよ」
 サーニャは芳佳の股からたらりとたれる愛液を拭い、指でにちゃっと言わせてみせた。
「芳佳ちゃんは私だけのものだから」
「サーニャちゃん……」
 唇の端からたれる涎も気にせず、サーニャは芳佳の唇を塞いだ。

「サーニャちゃん……お願いがあるの」
 芳佳は、サーニャの声がする方を向いて懇願した。
「なあに?」
「あのね。目隠しを、外して欲しいの」
「もう何日も、何も見てないから……もう何も見えないかもしれないけど」
 えっ、と思わず声を上げた芳佳に、サーニャは悪戯っぽく笑いかけた。
「冗談。外せば見えると思うけど……ここはそんなに明るい場所じゃないから」
 それにね、とサーニャは芳佳に言った。
「芳佳ちゃんには見て欲しくないものもあるから」
「それってどんな?」
「内緒」
「……ならいいけど。サーニャちゃん」
「どうしたの芳佳ちゃん。おなかすいた?喉渇いた?」
「そうじゃなくて。サーニャちゃんのことが気になるの。というか、心配」
「私のことを心配してくれるの?嬉しい」
 サーニャは芳佳の頬を、慈しむようにそっとなぞり、それから子供をあやすように優しく唇を落とす。
「でも、芳佳ちゃんがそんなこと考える必要なんてないよ。
 私のそばにずっといてくれるだけでいいの。ずっとずーっと……」
「でも、知りたいの」
 目隠しをされ、腕を拘束されたまま、そして何も抵抗出来ない筈なのに、サーニャの方を向いて喋る芳佳を見て、
 サーニャは僅かな苛立ちを覚える。
「どうしてかな……」
 サーニャは何か考えあぐねている様だった。しばしの沈黙の末、口を開いた。
「芳佳ちゃんは、そういうところ、強いよね。羨ましい。扶桑の魔女だから?」
「それは、関係ないと思う」
 芳佳はサーニャの方を向いたまま、喋った。
「サーニャちゃんが心配なの。だから」
「だから?」
「少し、腕の紐を緩めて欲しいの」
 芳佳の腕は時にベッド、時に天井からたれる紐と、常にどこかしらに結ばれていた。
 サーニャは芳佳を試す意味も込めて、無言で芳佳の戒めを解いた。勿論、まだ緩めに紐で結んではいるが。
「ああ……腕が自由になるっていいね……ちょっと関節が鳴ってる」
 芳佳は腕をぐるりと回し、自由になった両手を自分の感触で確かめる。
「芳佳ちゃん、それだけ?」
 呆れた様なサーニャの物言いに、芳佳は違うよ、と言葉を掛けた。
「私、サーニャちゃんにされてばっかり。今度は、私がしてあげたい」
「どうして?芳佳ちゃんは私のものなのに」
「だからこそ、サーニャちゃんのこともっと知りたい」
 芳佳はサーニャの声のする方へにじり寄った。思わず身を退くサーニャ。
 しかし芳佳がサーニャの身体に触れる方が早かった。脇腹と思しき部位に触れる。
「つかまえた……やっと、サーニャちゃんに触れた」
 嬉しい、と芳佳は呟いた。目隠しの部分から、涙が一筋流れる。
「どうして泣くの」
「だって、サーニャちゃんが私のものなら、サーニャちゃんを心配しないでどうするの?」
「意味が分からないよ、芳佳ちゃん」
「私、サーニャちゃんに色々されて、最初はすごく怖かったの。このままじゃいけないってあれこれ考えてた。
 でもサーニャちゃんとのことも、ずっと考えちゃってた。それで気付いたの。
 このままじゃいけないのは、私自身の方だって。私の考えが正しいなら……」

279cherry and berry III 02/02:2011/01/30(日) 21:30:48 ID:axU7Gq0w
「随分勝手な物言いなのね、芳佳ちゃん」
 サーニャに構わず、ずいと迫る芳佳。
「サーニャちゃんと、一緒に……」
「? ……ひゃうっ!」
 芳佳はサーニャの身体をまさぐった。ただむやみに触ったのではなく、どこがサーニャのどの部位なのか、触覚で確かめるために。
「いやっ、芳佳ちゃん……」
「だめ……逃げないでサーニャちゃん」
 芳佳はサーニャを片手で抱きしめると、指をつつっと伸ばし、サーニャの太股に触れ、そのままの勢いで付け根の……敏感な場所へと指を絡めた。
「あっ……いやあ……」
「サーニャちゃんも、私と一緒に……」
 サーニャの秘蜜の場所をくちゅくちゅといじくる。既に湿り、汁が溢れていることに気付く。
「サーニャちゃんも、我慢してたの?」
「ち、ちがっ……」
「サーニャちゃんが教えてくれたこと、私もしてあげたい」
 芳佳は脇腹から肋骨の端を舐め、つつっと迷走し、最後、胸の膨らみに到達する。ちゅっと吸い口を付け、
 柔らかな乳房を味わう。
「芳佳ちゃん……いつの間に、こんなこと覚えたの」
「全部今までにサーニャちゃんから教わったんだよ」
「いやっ……あふっ……んっ……」
 芳佳はサーニャの胸と股の二カ所を同時に触り、サーニャが芳佳にしたのと同じことをする。
 ただ、単なる仕返しとか憎悪由来のものではなく、優しさに溢れている。
 それはサーニャの身体を受け止める腕が、サーニャを触る手が、乱暴でなくとてもソフトで……
 肩を掴んで押し返そうとしていたはずのサーニャの両腕は今や芳佳の身体をきつく抱き寄せている。
 このまま身を委ねてなすがままにされたいような、不思議な気分───。
 それは、芳佳の体だけでなく心も、言葉も、何もかもを手に入れたという高揚感だった。
 全身を包み込む体温を強く実感し、胸の奥深くに渦巻く独占欲が僅かに笑みとなって浮かぶ。
 しかし、それだけではサーニャは良しとしなかった。
 おもむろに芳佳の身体に手を伸ばし、お尻をじわじわと揉む。
「んあっ……サーニャちゃん……」
「私も……一緒に……芳佳ちゃんと、一緒に。いいでしょ?」
「サーニャちゃん……ああっ」
「芳佳ちゃん、お尻弱いもんね」
 サーニャは慣れた手つきで芳佳のアナルに指を一本すっと入れ、くるっとかき回す。
 びくっと身体が震え、穴がきゅっと反射的に締まる。
「こっちも……もうぐしょぐしょ」
 サーニャは芳佳のヴァギナを触った。ズボン越しに滴る、芳佳の滴。
「あ……わ、わ、私だって……負けないんだから」
「んっ……芳佳ちゃん、上手……ふわあああっ」
 お互いの衝動をこれでもかという程に突きつけ迸らせる。
 一層激しく昂ぶる二人の身体。どちらからともなく、ヴァギナを合わせてぐいぐいとこすり合わせる。
 溢れ出る愛液は混じり合い、ぽたぽたとベッドに落ちて染みを幾つも作る。
「あっ……いく……芳佳ちゃん……もう……!」
「はあっ……あぁ…サーニャちゃん……私、だめ……!」 
 やがて……。
 二人は同時に悲鳴を上げ、びくびくと身体を痙攣させた。

 足を、腕を絡ませたまま、二人はベッドの上で抱き合い、横になる。
 二人は満ち足りた二人だけの空間で、お互いをじっくりと味わう。
 お互いの肌を感じ、汗を感じ……。互いの腕の中で気持ちを通じ合わせる。
「ねえ、芳佳ちゃん」
「サーニャちゃん、どうしたの?」
「やっぱり、芳佳ちゃんは素敵。私が見えないのに、私の思いが分かるなんて」
「サーニャちゃん……」
 言いかけた所で、サーニャに唇を塞がれる。
 しばしの沈黙。ゆっくり唇を離すと、涎が一筋の滴となって糸を引き落ちた。
 ふふ、とサーニャは芳佳の頬を撫でる。その瞳はもう、あの凍てつくような昏い色を湛えてはいない。
 ただ優しく、深く。満たされた者の慈愛に溢れて───
「芳佳ちゃんは一生私のものなの。だから、目隠しも取ってあげない。いい?」
 サーニャは笑った。その笑顔に宿ったものが、芳佳の瞳に映ることはなかった。

end

280名無しさん:2011/01/30(日) 21:31:02 ID:axU7Gq0w
以上です。
芳ーニャも良いよね! と言う事でひとつ。
ではまた〜。

281MigJ7:2011/01/31(月) 05:11:23 ID:CEtC1kJw
初めまして、MigJ7と申します。
以前から保管庫の小説を楽しませていただいていた者の1人なのですが、この度一念発起して自分でも一つ書いてみました。
未熟ゆえにうまくまとめきれず5400字程になってしまったのですが、3回ほどに分割して投稿しても大丈夫でしょうか?

282名無しさん:2011/01/31(月) 05:56:19 ID:AG4yWnTM
>>281
断り入れず投下して大丈夫だよ

283名無しさん:2011/01/31(月) 07:52:35 ID:fdD/beS6
どんどん投下おねがいしま〜す!

284名無しさん:2011/01/31(月) 09:24:34 ID:5MOhjuro
>>281
酉つけたほうがいいぜ

285MigJ7:2011/01/31(月) 22:01:07 ID:CEtC1kJw
酉って何のことなのでしょうか?
無知ですいません><

286名無しさん:2011/01/31(月) 22:11:31 ID:Kf5ijiwM
>>285
酉=トリップのこと
ここを参照にしてみるといいよ。
ttp://wstring.pos.to/guide/index.html#trip

#の後ろに半角で8字入力

287MigJ7 ◆KqppoLuL6I:2011/02/01(火) 06:04:29 ID:NGttFEGY
>>286
説明ありがとうございます。

では投稿させていただこうと思います。
タイトルは「信じあえる人」
アニメ2期6話、「空より高く」を自分の好みで改変したものになります。
初投稿なので至らぬ点も多いとは思いますが、ご容赦ください。

288MigJ7 ◆KqppoLuL6I:2011/02/01(火) 06:06:09 ID:NGttFEGY
ある日の夕方。私はいつも通り起きて出撃の準備をする。普段と違うことといえば、いつもは騒がしい基地の中がやけに寂しいことぐらい。ミーナ中佐に理由を尋ねたら、ネウロイが出現したからみんな出撃しているけど、今無事に帰ってきているところだと教えてくれた。なので、私はいつも通りの自分の任務のために出撃することにした。今出撃すれば帰ってくるみんなと会えると思ったから。


出撃して少し経ったころ、魔道針でみんなの声をとらえることができた。

「シールドなんかに頼っている奴は、私に言わせりゃ二流ダナ」
この声の主はエイラ。この基地に来たばかりの時、どうしたらいいのかわからなかった私に手を差し伸べてくれた人。

「そんな〜。私はシールドだけが取り柄だって言われているのに〜。」
 この声の主は芳佳ちゃん。エイラと私だけの閉鎖的なつながりに踏み込み、広げてくれた人。
二人は私にとってとても大切な人なのだけれど、エイラはいつも芳佳ちゃんをからかって遊んでいる。でも私は二人には仲好くしてもらいたいから、私はエイラを諌めることにする。

「そんな言い方をしたらだめよ、エイラ。おかえりなさい、みんな。」
「サーニャ!」
「サーニャちゃん!そうか・・・これから夜間哨戒なんだ。」
そう。私はこれからいつも通り夜間哨戒の任務に出発するはずだったんだけど・・・

「待て、サーニャ。今夜はいい。一緒に基地に戻れ。」
坂本少佐のこの一言で、私のいつも通りは終わりを告げた。


 その夜のブリーフィングで坂本少佐がなぜ私を行かせなかったのかが分かった。
今回のネウロイのコアは高度33333mという超高高度にあるのだという。そこは魔法がなければ一瞬で死に至るような世界だけど、私のフリーガーハマーならその厳しい条件下でも広範囲を攻撃できる。だから私がそこまで行って、そのネウロイを撃墜することになった。たしかにその案は正しいと思う。でも気がかりなのは・・・

「はいはいはいっ!だったら私も行く!」
やっぱり。私の横に座っていたエイラが手を挙げてアピールしている。
エイラはいつもそう。さっきだって私が夜間哨戒では一人で戦うこともあるということを芳佳ちゃんに自慢げに話していたのに、実際には私が一人で行動することをよしとしない。心配してくれるのは嬉しいのだけど、その振る舞いはなんだか母親が幼い子供を見ているような感じがして、私は少し不満だった。

私がそんな相反する二つの感情を抱いていると、坂本少佐が口を開いた。
「時にエイラ。お前、シールドを張ったことはあるか?」
坂本少佐の問いかけ、それは普通なら聞くまでもないこと。だってシールドは私たちの身をネウロイのレーザーから守ってくれる、ウィッチにとっては命綱のようなものだから。でも彼女にとっては・・・

「シールド?自慢じゃないけど、私は実戦でシールドを張ったことなんて一度もないぞ。」
やっぱり。固有魔法によって未来予知ができる彼女にとって、攻撃とは“避けるもの”であって“防ぐもの”ではないのだろう。彼女もそれを自慢げに言い放ったのだけど・・・

「なら無理だ。」
「そうね。こればかりは・・・。」
「え?」

坂本少佐とミーナ中佐によってエイラの希望はあっさり却下されてしまった。理由は、高度3万mでの戦闘では、誰かがシールドで私を守る必要があるから。なので、隊で一番強いシールドを張れる芳佳ちゃんが私と一緒に飛ぶことになった。エイラは悔しそうにして芳佳ちゃんに対して唸っていたけど、私は彼女に、私と芳佳ちゃんのことを信じて待っていて欲しかった。


翌日、私もエイラも気持ちが不安定だったからかもしれない。私は、いつもからかっているペリーヌさんの手を借りてまでシールドの特訓をしているエイラを励ましたかった。なのに、エイラはできないから諦めると言い出して、私がそれを止めようとしたら・・・

「じゃあ最初からできる宮藤に守ってもらえばいいだろ!」
どこか投げやりで人任せなエイラの言葉は私の心に響き、これまで私がエイラに対して心の中で築いてきた何かを壊してしまったような気がした。そのせいか、気づくと口が、体が、勝手に動いていた。

「エイラのバカ!」
「サーニャのわからずや!」
エイラも言い返してきたけれど、私はそれをろくに聞きもせずに彼女に手に持っていた枕を投げつけ、部屋から走り出てしまった。

289MigJ7 ◆KqppoLuL6I:2011/02/01(火) 06:14:00 ID:NGttFEGY


部屋を出た後しばらく走って少し冷静になれた私は、近くに魔力反応があるのを感じた。間違いようのない、“あの人”の魔力を。彼女が何をしているのか気になったのと、さっきあったことを忘れたくて、私は様子を見に行ってみることにした。


「芳佳ちゃん、何をしているの?」
「あ、サーニャちゃん。何って・・・今から訓練に行くところだけど。」
 私はがむしゃらに走っているうちに、気づけばハンガーまで来てしまっていたらしい。そこには発進準備をしている芳佳ちゃん、坂本少佐、バルクホルン大尉の姿があった。

「でも、芳佳ちゃん今日はお休みのはずじゃないの?」
そう。今日は訓練がないはず。それにもしあったとしても、芳佳ちゃん一人に坂本少佐とバルクホルン大尉がつくような厳しい訓練は聞いたことがない。

「それは・・・その・・・」
芳佳ちゃんは何やらモジモジして言いづらそうにしている。すると坂本少佐が普段と変わらない大きな声で話し始めた。
「ああ、宮藤に特別訓練を頼まれてな。サーニャのことを絶対に守りきりたいんだそうだ。よかったな、サーニャ。はっはっは。」
「ちょっと坂本さん。なんで言っちゃうんですか〜。」
「まあ細かいことは気にするな。」

そんな二人の会話を聞いてると、私も楽しい気持ちになってくる。でも、まだ疑問はある。
「芳佳ちゃんはあれだけ強力なシールドを張れるんだから、訓練なんていらないんじゃ・・・。」
そんな私のつぶやきを聞き逃さなかったらしく、今度はバルクホルン大尉が答えてくれた。
「宮藤は今回のような超高高度での戦闘経験がないからな。生命維持の方法やその状況での戦い方を事前に練習しておきたいそうなんだ。」

「芳佳ちゃんそうなの?」
「うん・・・。今回の任務で私にできることは、サーニャちゃんがネウロイを撃破してくれることを信じてシールドを張ることだけ。だから、そのためにできる限りのことをして、サーニャちゃんが不安なく戦えるようにしたいの!」
カッコつけすぎかな私、と芳佳ちゃんは照れているけど、私にとっては彼女の私を信じるという言葉がとても嬉しくて・・・私の口からも気づけば言葉がでていた。

「なら私も芳佳ちゃんを信じて、そして芳佳ちゃんから信じてもらえるように頑張ります。だから坂本少佐、バルクホルン大尉、私にも特訓をお願いします。」
 芳佳ちゃんはちょっと驚いた顔をしたけど、すぐに私の手を取ってこう言ってくれた。
「サーニャちゃん・・・。一緒に頑張ろうね!」
「うん!」

こうして私たち二人は、そのあとみっちりと特訓をしてもらった。昼に特訓をすることなんて久しぶりだったし、まして芳佳ちゃんと二人での特訓なんて初めてだったけど、私にとってそれはとても清々しく感じられた。


夕方まで実際に飛行して、夕食の後、注意事項をもう一度おさらいしてから特訓は終わった。最後には坂本少佐やバルクホルン大尉も誉めてくれたので私が充実感に浸っていたら、芳佳ちゃんが私をお風呂に誘ってくれた。

疲れた体には温かいお湯が心地よくて、いつも入っているサウナとはまた違った良さがあるなと考えていると、いつも一緒にサウナに入っている人のことを、そしてその人と喧嘩をしてしまったことを思い出してしまった。そのせいで無意識のうちに顔色が曇ってしまったみたいで、それに気づいた彼女が訪ねてくる。

「サーニャちゃんどうかしたの?」
「それは・・・」
喧嘩の原因に彼女が絡んでいるので、できれば彼女には話したくない。けれど、せっかく信じあおうとしている相手に嘘をつきたくもないという思いもあって、私は口籠ってしまう。どうしたらいいのか困っていたら、思わぬところから助け船が来た。

「うりゃりゃりゃりゃ〜〜〜。」
「きゃああああ!ル、ルッキーニちゃん。何をしてるの。」
「う〜ん。やっぱり残念〜。」
「残念って何よ〜。」

どこからともなく現れたルッキーニちゃんが、芳佳ちゃんの後ろから彼女の胸を揉んでその一言。おかげで二人の追いかけっこが始まってしまった。彼女の注意がそちらに逸れたので答えずに済んだけど・・・それでもエイラとのことが頭から離れなくて、私はまた考え込んでしまう。すると今度は私の隣に入ってくる人がいた。

「ルッキーニ。風呂で転んだら危ないから走んなよ〜。おっと隣失礼。」
そう言いながら入ってきたのはシャーリーさん。私が彼女の体にちょっと見とれていると、彼女が口を開いた。

290MigJ7 ◆KqppoLuL6I:2011/02/01(火) 06:15:43 ID:NGttFEGY

「聞いていいことかわからないけど・・・エイラと何かあったのか?」
「それは・・・」
「いや夕飯のときに二人の様子がおかしかったから気になってな。よければ話してくれないか?」
走るのをやめた芳佳ちゃんとルッキーニちゃんは、今度は水の掛け合いをしていて、こっちには気を止めていないし、他にお風呂に入っている人もいない。それにシャーリーさんなら力になってくれそうな気がしたので、私は全てを話すことにした。


「成程なあ。」
私が全てを説明すると、シャーリーさんは納得したような声をあげた。
「私、どうしたらいいんでしょうか。」
「う〜ん・・・。難しいところだけど、自分の気持ちを信じてまっすぐ振り返らずに進めば、きっと答えは見つかるんじゃないか。」
「あ、ありがとうございます。」
自分の気持ち・・・私は・・・私は・・・。

考えてもうまく答えはでなくて、気づけば私は少しのぼせてしまったみたいで、お風呂から出た後芳佳ちゃんと話しながら歩いていたこともあってか、気づけば私は芳佳ちゃんの部屋まで来てしまっていた。
自分の部屋に戻らないといけないのは分かっているんだけど、まだエイラと顔を合わせる勇気が私にはない。それに久しぶりの激しい特訓で疲れたのもあってか、私は芳佳ちゃんのベッドに横になってしまう。

「あ・・・」
彼女は少し驚いた表情をしたけれど
「今日だけは・・・いいよね。」
そういいながら私の横に寝そべると、もう私が眠っていると思ったのか小さな声で話しかけてきた。
「私たちならきっとできるから。一緒に頑張ろうね、サーニャちゃん。」

緊張が隠し切れていない彼女の声。でもその言葉のおかげで、私は自分の気持ちを確認できた。自分を信じてくれるこの人のために、全力を尽くしてこの任務を成功させたい、と。そんな決意を胸に秘めて、私たちは一緒に眠りについた。


そんな中迎えた作戦当日。高度33333mに到達するために、私たちは3段重ねの塔のような隊形をとっていた。1番上が突撃班の私と芳佳ちゃん。その下にエイラを含む第2打ち上げ班。さらにその下に第1打ち上げ班がいて、下から順にストライカーに点火、それぞれが限界まで飛行しては離脱を繰り返す計画だ。

打ち上げは順調に進み、まず第1打ち上げ班が離脱。続いて第2打ち上げ班も離脱して、いよいよ私と芳佳ちゃんがストライカーに点火した。今回の作戦のための特別装備、ロケットブースターが生み出す騒音で、周りの音が聞き取りづらい。でも私はシャーリーさんに言われたとおり、まっすぐ振り返らずに高度33333mまで上昇していった。


目標高度に到達したときには、私たちは魔道針を使わずともネウロイを確認できた。ここは本来生命の存在しない死の空間だから。それはネウロイも同じらしく、すぐに私たちに攻撃をしかけてきた。強力なレーザーが何本も向かってくるのが見える。でも私はそれを恐れたりしない。

「任せて!」
空気のないこの空間では言葉が聞こえるはずがないのだけど、私には芳佳ちゃんがそう言ったような気がした。その直後、彼女が張ったシールドは、この空間でも何の問題もなく機能し、レーザーを受け止めてくれる。彼女は攻撃が途切れた一瞬のタイミングを見計らってシールドを解除、私はそれと同時にフリーガーハマーでネウロイを攻撃する。言葉を交わせなくても、彼女を信じて私は動く。彼女もそれに応えてくれる。そして・・・

私が放った弾丸はネウロイにすべて命中、ネウロイは爆炎に包まれた。芳佳ちゃんが笑いかけてきたけど、私はあるものに気づいて慌てて彼女の手を握り締める。

私が気付いたもの。それは倒したと思ったネウロイの先端部分。コアとその周りの僅かな部分のみが切り離されたそれは、爆風を利用して一気にこちらに接近してきていた。これはまずい、フリーガーハマーの弱点である近接戦闘に持ち込まれてしまった。今攻撃すれば、強力すぎる爆風は自分をも巻き込んでしまう。予想外の事態に私はパニックに陥りそうになる。けどそんな私の手を、芳佳ちゃんは強く握り返してくれた。それだけで私は冷静になれた。そして彼女が言いたいことも分かったから・・・私はフリーガーハマーをネウロイに向け、躊躇なく引き金を引いた。

命中と同時に途方もない爆風とネウロイの破片が向かってくる。でも私たちの手が離れることはなくて・・・彼女が張った巨大なシールドは全てを防いでくれていた。

291MigJ7 ◆KqppoLuL6I:2011/02/01(火) 06:20:53 ID:NGttFEGY


今度こそ戦闘が完全に終わったことを確認して、私たちは笑いあい、基地へ帰還しようとしていた。その時、私の目に映ったものがあった。

「芳佳ちゃん。あれがオラーシャよ。」
そう。それはネウロイに占領されてしまった私の故郷。
「あれがウラルの山。あの向こうのどこかに私の家族がいるの。」
 今すぐにでもあそこに飛んでいきたい。私がそう考えていると・・・
「取り返そう!」
「え?」
唐突な彼女の言葉に思わず聞き返してしまう。
「絶対にこの戦いに勝って、平和な日常を取り返そう。そうすればきっと、サーニャちゃんも家族に会えるよ。そのために私頑張るから!」

 人のために戦いたい、そんな彼女の純粋な言葉に、私はさっき思ったことを心にしまうことにした。彼女の願いを叶えたい、そしてそれを叶えることは、きっと私の願いを叶えることでもあると思ったから。
私は目に浮かんでいた涙を拭って彼女に応えた。
「うん。頑張ろう!」

そうしてネウロイと戦う新たな決意を胸に、私たちは基地へと帰って行った。

〜end〜

以上になります。
一応この後のことも少し考えはしたのですが、エイラの扱い方しだいでいろいろと分岐しそうだったもので・・・
アニメとほぼ同じタイミングで一旦endとさせていただきます。
それでは失礼します。

292名無しさん:2011/02/01(火) 10:39:10 ID:c7C53/pA
>>287
GJです、こういうのいいな〜
俺も自分好みにした話とか書いてみたい

293名無しさん:2011/02/01(火) 14:38:25 ID:Nm7GbxQQ
>>291
GJ!こういうifストーリーもイイネ!
芳ーニャ最高です。

294名無しさん:2011/02/02(水) 12:09:54 ID:E2aImN0g
こんにちは、LWqeWTRGです。
とある方から学園ネタを、と言われたのでとてつもなく短い小ネタを落として逃げたいと思います。



「あの、ごめんなさい…」
「いいっていいって。気にすんなよなー」

私はさっきまでの自分を思い出して自己嫌悪に陥っていた。
登校中に憧れのあの人とたまたま会って、一緒に自分たちの教室へ向かって歩いていた時のこと。
あの人と話すのに夢中になっていた私は階段を踏み外してしまい、足を挫いてしまった。
転び落ちそうになった体は抱き留めてもらったり、挫いた足のことを気遣っておんぶをしてもらったり……。

そう、おんぶだ。
お話だけでも十分嬉しくてドキドキしていたというのに。こんなにくっつい――。

「ほら、ちゃんとつかまって」
「え!? あ……はい…」

はう。心臓がすごくドキドキいってる……。
聞こえてないかな? ううん、きっと聞こえてる。
それでもいい、かな。
あなたを想う私の気持ちが少しでも伝わらないかな、なんて。

295名無しさん:2011/02/02(水) 12:11:07 ID:E2aImN0g
いい匂い…。そしてとってもあったかい……。
あなたはいつもあたたかくて。ぽかぽかと私を包み込んでくれる。
あなたが私を気にかけてくれて。私はあなたを目で追うようになって。

ううん。
きっと、初めて会ったあの時から、ずっと

…大好き。



「あっ、あのさっ!」
「は、はい!」
「わた、私も…その……」
「…?」
「す、す……」
「す?」
「す、う、ああああああああああああ!!!」
「ふぇ!?」
「今日も一緒に帰ろうな! な!?」
「は、はい! …えっ!?」
「あー…だめ…?」
「いえ! あの、嬉しいです!」
「へへ…。じゃあ、決まりな!」
「はいっ!」



END

――――――
以上です。
まだ出会って数週間くらいのえいらにゃでしょうか。
タイトルは「せなかのうえで」です。
でもこれ学園あんまり関係なゲフンゲフン……。

それでは失礼します。

296名無しさん:2011/02/02(水) 12:46:23 ID:5QBfN4jo
>>295
甘々GJ!これは良いエイラーニャ。

297名無しさん:2011/02/03(木) 19:46:22 ID:d/ewVbTU
http://i.imgur.com/7Mfp8.jpg
誰かこの画像についてkwskお願いします

298mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/02/03(木) 19:54:17 ID:nJNyZwMY
>>291 MigJ7 ◆KqppoLuL6様
GJ! アナザーストーリーと言うか、if話も良いですよね!
芳ーニャ良かったです!

>>295 LWqeWTRG様
GJ! ほんわかエイラーニャご馳走様です。
エイラーニャは何故こうも安心できるのか……。

>>297
エイラーニャ結婚みたいですね。どっかの雑誌ですかね?
お姉ちゃんが神父さん役ってのは、元キャラの人を考えると納得。


こんばんは、mxTTnzhmでございます。
ひとつ思い付いたネタを、ざざっと文章化してみました。
ではどうぞ。

299marriage blue 01/02:2011/02/03(木) 19:54:45 ID:nJNyZwMY
「へえ、リーネちゃんのお姉さん、結婚したんだ」
「うん……私も話聞いてびっくりしちゃった。突然なんだもん」
「そっかあ。結婚かあ……」
「どうしたの芳佳ちゃん?」
「私達もいずれするのかなと思って」
「えっ、私と? そ、そんな無理だよ……法律的に」

「と言う訳で、私達、将来の結婚のために訓練する事にしました」
「お前も唐突だな宮藤」
「ウジャー とうとつー」
「シャーリーさんとルッキーニちゃんも居るから、ちょうど良いです。ここはみんなで訓練です」
「結婚の訓練って、何をどう訓練すりゃいいのさ」
「例えば料理に家事全般に……」
「ギニャー いやーだー! めんどくさーい!」
「まったく宮藤さんと来たら、いつも計画性が無いのですから……」
「甘いですよペリーヌさん。そう言われるかと思って、きちんと準備してあります」
「? 準備って何を?」
「おー、全員居たか。お前達何をやって……」
「噂をすれば坂本さん! お願いしますっ! 私達の訓練相手になって下さいっ!」
「何っ!? 何の訓練だ? 訓練と言えば朝にやった走り込みや腕立て、剣の素振り……」
「違います坂本さん。これは坂本さんにしか出来ない事なんです。一生に一度の私のお願いを聞いて下さい」
「な、なんかヤケに必死だな宮藤。どうした?」

「と言う訳で準備できましたー。どうです凛々しいでしょう坂本さん」
「何も男物のズボンを用意しなくても良いだろう宮藤。足の感覚が妙だぞ。太股に布が当たってすれる……」
「まずは形からです。雰囲気です」
「宮藤さん貴方! 少佐で何遊んでらして!?」
「ペリーヌさん、何で少佐を直視しないんです?」
「坂本さんはいつも通りで良いんですよ。じゃあ、まずはペリーヌさんから」
「へっ? なぜわたくしが最初に?」
「ささ、どうぞ。ガリアの淑女の魅力をばばーんと。さあ、坂本さんの横に」
「え? ……わたくし、横にと言われましても、一体何をすれば?」
「私も何をすれば良いのかさっぱり分からんぞ宮藤。記念撮影でもするのか」
「坂本さんはいつも通りで良いんです。何でしたらこれをどうぞ」
「何だこの瓶は?」
「あの、少佐……?」
「さあ、ぐいっと」
「毒じゃないだろうな」
「上官に毒盛るウィッチなんていません」
「まあ、そうか。では貰おう」

「あの、少佐? 何故お黙りになるのです? わたくし、何かいけない事でも」
「ふっ……」
「少佐、なぜ、お笑いになるのです? わたくし、何か問題でも」
「ペリーヌは優しいな」
「えっ……いえ、そんな事は」
「そして可愛いな」
「ちょっ……少佐……顔が近すぎます……ああっ」
「ウギャー ペリーヌが倒れた」
「耳元にキスされたら、普通はああなるわな」
「ルッキーニ、来い! 私と遊ぶか!?」
「へっ? 少佐いきなりどしたの?」
「ならば私から行くぞ、ルッキーニ! わはははは!」
「ギャー 少佐がぁー タスケテー」
「ちょっ、少佐? ルッキーニが……嗚呼」
「ふむ、シャーリーはルッキーニが心配なのか」
「そうやってさりげなくあたしを抱き寄せるの止めて貰えませんか少佐」
「流石部隊一だけ有るな! 魅力的だぞシャーリー!」
「誉めてるんだか単に酔っぱらってるだけなのか……宮藤、少佐に何飲ませたんだ」
「ウォッカを」
「おい! 一番きっついやつじゃないか! どっから持ってきた?」
「サーニャちゃんの部屋から」
「何でサーニャがこんなもの持ってるんだ」
「戦車の燃料代わりになるみたいですよ」
「誰が戦車使うんだよ」

300marriage blue 02/02:2011/02/03(木) 19:55:05 ID:nJNyZwMY
「ふむ、大きさもかたちも世界一だなシャーリー」
「ちょっ! さりげなく上着脱がさないで下さいよ! 何してるんですか少佐!」
「ここにちゅー」
「うはっ……あっ……。ちょっとやめて下さいって、みんな見てるじゃないですか」
「照れるなシャーリー。私の命令が聞けないのか」
「そもそも何も命令されてませんて」
「じゃあシャーリーの胸は私のものだぁー」
「いやーだー! シャーリーはあたしのだもん!」
「良いだろうルッキーニ、勝負だ!」
「二人とも、あたしで争うのやめてくれ!」
「わあ、なんかシャーリーさんが悲劇のヒロインみたいに」
「ちょっと違うと思う、芳佳ちゃん……」
「そうかな?」
「それに芳佳ちゃん……。少佐、おかしくない?」
「飲んだらいつもあんな感じだよ、リーネちゃん」
「飲んだらって……」
「貴方達、騒がしいと思ったら一体何を……ッッッ!!!」
「あ、ミーナ中佐」
「ミーナ中佐、入って来るなり鼻押さえてどうしたんです? なんか鼻血出てるみたいな……」
「そんな服で居るなんて、卑怯よ美緒ッ!」
「お酒飲んでないのにミーナ中佐もおかしくなってきたね」
「どうしよう芳佳ちゃん」
「おお、ミーナ。いま乳比べをしてたのだ」
「……は? 乳?」
「シャーリーが一番なのは認めるところだが、なかなかリーネも……」
「いやあ助けて!」
「坂本さん、リーネちゃん離して下さい!」
「美緒、貴方一体何やってるのよ! リーネさんから離れなさい!」
「私の魔眼は誤魔化せんぞリーネ、また成長したな!」
「なっなんで知ってるんですか!?」
「え、そこ芳佳ちゃんが驚くところ?」
「止めなさい坂本少佐。これ以上の騒動は許しません」
「じゃあミーナも騒動に加わればいいじゃないか」
「何馬鹿な事言ってるの……え? 美緒、何を!?」
「うーむ。ミーナもなかなか素敵な……」
「やめーてー美緒ー! 皆が見てるわっ」
「大丈夫だ、この前みたいに唇にはしないから」
「!!! やっぱりあれ覚えてたのねっ! 酷いッ酷いわ!」
「じゃー、ほっぺにチュー」
「……あ、ミーナ中佐が倒れた」
「おい、犠牲者が増えたぞ!」
「どうしようリーネちゃん」
「うう……私お嫁に行けない」
「大丈夫、私がお嫁さんになってあげる」
「えっ?」
「ウジャー どうするシャーリー……」
「こう言う時に限って、バルクホルン達は何してるんだ、それにエイラとサーニャも?」
「部屋から出てこないし『呼び出し厳禁』とか部屋の扉に張り紙が……」
「あ、あいつら……」
「うわはははは、わしょーい烈風斬!」
「おい、所構わず何か斬り始めたぞ! 少佐やめてくれ!」
「だれかとめてー」
「芳佳ちゃん……」
「リーネちゃん……のおっぱ」
「えっ?」
「ううん何でもない、私幸せだよ?」
「有難う芳佳ちゃん」
「で、あの少佐どうすんだよ宮藤」
「それは、しりません」
「そりゃあたしの台詞だ」

end

301名無しさん:2011/02/03(木) 19:56:12 ID:nJNyZwMY
以上です。
「将来に備えて異性との交際を研究しよう」
と奮闘するも……という、
男が出ないけど男話題の百合という話……
のつもりだったのですが。
誰得な話ですね、すいません。

ではまた〜。

302名無しさん:2011/02/03(木) 20:11:29 ID:kek5J5xI
pixiv、Oh MARIA
エイラーニャいいよね
この人の作品好きだ

303名無しさん:2011/02/03(木) 20:17:23 ID:kek5J5xI
>>302>>297宛でした。投稿慣れてなくてごめんよ

作者様方いつも素敵なSSありがとうございます。
ひっそりROMってます。

304名無しさん:2011/02/04(金) 00:50:21 ID:bTqyY95s
>>294
わふーい、あなたのSS大好きです。これからめくるめく学園生活展開ですね。

>>300
>「なっなんで知ってるんですか!?」
>「え、そこ芳佳ちゃんが驚くところ?」
吹いたw

305Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/02/06(日) 00:16:06 ID:S5GIlh7Q
こんばんは、今さらながらトリップを付けました!Hwd8/SPpです。
エイラーニャ祭り実施中ですが…空気を読まず、502モノを投稿しますw
やはり自分、ギャグ作品以外は苦手です…('A`)
ではっ!


【noblesse oblige】

「さっ…寒みぃ…」
吐く息が白い。1月のある寒い夜、菅野は真っ暗な部屋の片隅で震えていた…。
菅野は地面がコンクリートで出来た独房のような場所に拘置されていたのだ。

それもそのはず、担当区域ではない場所へ応戦した…つまり『軍紀違反』を犯したのである。

コツコツコツ...

すると、遠くから足音が聞こえる…。

キイッ...

「…は、伯爵?」
「自分はカールスラント空軍第52戦闘航空団第6中隊所属、現第502統合戦闘航空団所属のヴァルトルート・クルピンスキー中尉!」

クルピンスキーが入って来たのだが、いつものおちゃらけた表情はどこかに封印し、いつもは見せない堅苦しい…まさに『軍人』の表情をしていた。

「…あぁ知ってるぜ」
「管野直枝中尉の身柄引き渡しに参りました!」
「…そうか」
「AKB48では断然、高橋みなみ派です!」
「知らねえよ!」
「良かったぁ…ナオちゃん、すっかり元気が無くなってるかなって思って」
「てか寒みぃよ…早く出してくれよ」
「それがさあ…今、ラル隊長とここに来たんだけどこっちの隊長さんと飲んで盛り上がっちゃってんだよねー」

すると菅野はベッドへもぐりこむ...

「…へ、ナオちゃん…もしかしてボクがそのベッドの中へ誘ってるのかい?」
「ちげーよバカ!ふて寝だ、ふて寝!」
「あらら…残念」
「…行かなくて良いのか?」
「どこにさ?」
「隊長んとこ」
「うーん…なんか管理職の愚痴を言いあってて、ボクが会話に入り込む余地がないんだよねー」
「なあ、一人にさせてくれないか」
「…どうしてさ?」
「一人になりたいんだって」
「…だが断る!ってね」
「はあ?」

するとクルピンスキーは地面にあぐらをかき始めると、

「あんまこうゆう話って好きじゃないんだけど…するね。本当はしたくないんだけれど」
「早く言えよ…」

菅野は顔を壁に向きながらそう発言する。

306Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/02/06(日) 00:16:38 ID:S5GIlh7Q
>>305の続き

「今回はさ…ナオちゃんの味方は出来ないよ」
「…は?」
「隊長だって熊さんだって、まずナオちゃんの心配をしてるんだよ?」
「わかってる…」
「お願いだからさ…心配させないであげてくれるかな?あ、ボクも人のこと言えないよね〜!あはは〜」

ドンッ!!!!

いきなり菅野は冷たい壁を殴った...

「…っ!!じゃあ今にも撃墜されそうな味方を見殺しにしろってのか??!!」
「はあ…別にボクはそんなことを言ったつもりじゃ」
「同じだ!!!!」
「手、大丈夫?今思いっきり壁を殴ったけど?」
「話を聞け!!答えろ!!!!」
「…ナオちゃん、今日の戦い方ヘンだったよ?あれじゃあいつネウロイにやられてもおかしくなかったよ」
「必死だったんだ!」
「良いことを教えてあげようか、前のボクの上司が言ってたんだけど…感情的になるなって」
「べっ、別に感情的になんか!」
「なってたさ!!!!」

突然クルピンスキーは声を上げたのだ。
普段、怒る姿を見たことのなかった菅野は体をこわばらせた…。

「ジョゼ君のサポートがなかったらストライカーの破損どころか、ナオちゃん自身危なかった!それをわかって言ってるのかい?!」
「うっ…うっせ…」
「ちょっと自惚れた部分があったんじゃないの?!自分の担当じゃない所へサポートして、カッコ良い所を見せようとして」
「そっ…そんなんじゃねえよ!!!!」

ベッドから飛び起き、いきなりクルピンスキーの胸倉を掴む菅野。
しかし、クルピンスキーはいつの間に笑っていた...

「…ふふっ…そんなワケないよね、ナオちゃんは」
「…はっ?」
「そんな計算高くないもんね?」

安心したのか、クルピンスキーの胸に顔を埋める。

「おやおや、今夜は積極的だねえ…ま、ボクは爆乳じゃないけど楽しんで」
「………」
「…ねえナオちゃん、悔しい?」

クルピンスキーは優しく髪を撫で始めた...
そして嗚咽をしながら泣き始めた菅野であった…。

「悔しい…っ!!ものすごく悔しいっ…!!」
「お〜よしよしよし………ボクらもね、すごく心配したんだよ?ジョゼ君があの時追いかけなかったら、死んでたんじゃないかってね」
「オレッ…謝るっ…みんなに謝るっ…!!」
「うんうん…あらあら、さっき壁殴ったからものすごく血が出てるよ?痛くないのかい?」
「痛い…」
「…この痛みがわかるってことはいつものナオちゃんだ」
「痛い…痛いよォ…」
「ちょっと待っててね、包帯を持って来るから」

307Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/02/06(日) 00:17:42 ID:S5GIlh7Q
>>306の続き















そして、夜が明ける。
菅野はスヤスヤとベッドで寝ており、クルピンスキーはその側に座りウトウトとしていた。
そして、拘置されている場所にラルがやって来た。

「…伯爵、菅野はどうだ?」
「あ、ラル隊長おはようございます」
「あぁ、おはよう」
「ナオちゃんは…元気です」
「そうか…今回ばかりはお灸を据えなければなと思ったんだが…」
「昨日ちゃんと調教…じゃない、説教したんで問題ないと思います」
「ほほぅ…ナンパじゃなくてか?」
「そりゃしましたがもちろんダメでしたよ」
「そうかそうか…っておい!」
「わ〜、ラル隊長ノリツッコミがウマ〜い!」
「…まっ、私がロスマンやサーシャに報告しとく」
「じゃあボクは先生と熊さんを頂きます」
「………」
「…あれ、ノッてくれないんですね;;ふあ〜…っ」
「寝てないのか?」
「えぇ、だってここ寒かったんですもん」
「お疲れ様、伯爵」
「いえいえ…。隊長、こんなこと聞いたことあります?」
「あん?」
「ガリアの言葉だそうなのですが、『noblesse oblige』って言葉を」
「ノッ…ノブ?…小栗旬?」
「ノーブレス・オブリージュです…意味は『高貴さは義務を強制する』…彼女こそホンットの伯爵なのかもしれない…」
「???」
「確かに彼女は間違ったことをした、でも人間としては正しいことのはずなのになあ…って」
「何が言いたいんだ?朝でまだアルコールが抜けきってないからわかりやすく言ってくれ…」
「…何でもないです。さっ、帰って先生と熊さんを食べようかなあ〜♪…ふあ〜っ」





―――『noblesse oblige』…やはり、彼女ほどの正義感を持つ者の然るべき行為だったとボクは考えている。



【END】


やはりハイテンション物以外は苦手です('A`)

3085uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2:2011/02/08(火) 00:46:34 ID:9NkN7E/M
皆様、いつもGJです。
ちょっと来ない間に凄く賑わってますね。個々にレスできなくて申し訳ないです。
さて、今日はクリスの誕生日ということでクリス×トゥルーデで一本書いてみました。ではどうぞ

309Live in the present 1/1:2011/02/08(火) 00:48:45 ID:9NkN7E/M
――1947年2月、カールスラント東部カイザーベルク

「お姉ちゃん、ちょっと作り過ぎじゃない?」
「何を言う、今日は年に一度のお前の誕生日なんだぞ。これでもまだ足りないくらいだ」
「あはは……」

――お姉ちゃん達ウィッチの活躍で戦争が終わってから、もうすぐで一年。
あの戦争で失ったものは大きかったけど、今は大好きなお姉ちゃんと一緒に暮らすことができて毎日が幸せ。

「ふふっ、いい匂い……私には勿体ないくらい豪華な誕生会だよ」

今日、2月7日は私の誕生日。
テーブルの上にはお姉ちゃんが作ってくれた美味しそうな料理がいっぱい並べられている。
これ全部食べきれるかな。

「クリス」
お姉ちゃんがオーブンからケーキを取り出しながら、不意に私の名前を呼んできた。
「なに、お姉ちゃん?」
「お前にはずっと寂しい想いをさせてきたな……本当にすまなかった。でも、これからはずっと一緒だ。
誕生日だって毎年祝ってやれるし、夏になったらまた遠くまで遊びに行ける」
「うん……」
お姉ちゃんが優しく頬笑みながら私にそう言ってくれた。
お姉ちゃんの言葉はとても嬉しかったけど、その表情はどこか寂しげな感じがした。
私と長い間一緒にいれなかった事に責任を感じてるのかな。
「ダメだよ、お姉ちゃん。お姉ちゃんがそんな顔してたら、天国のお父さんやお母さんだってきっと寂しがるよ」
私はお姉ちゃんの手をぎゅっと握りしめながら言う。
「お姉ちゃんと離れていた時の事、寂しくなかったって言えば嘘になるけど私、それ以上に誇らしかったんだよ」
「誇らしかった?」
「うん。私の大好きなお姉ちゃんが世界の平和を守るために戦ってるウィッチだっていう事が誇らしくて嬉しかったんだ。
だから、お姉ちゃんが負い目を感じる事なんてないんだよ。それに、一緒にいれなかった分の時間だってこれからいくらでも取り戻せるよ」
気が付けば私はお姉ちゃんの事を抱きしめていた。
優しくて、暖かみのある私の大好きな感触。
「お、おいクリス……」
私がお姉ちゃんの胸に耳を当ててみると、胸の鼓動が激しく動いてるのが分かった。
ふふっ、お姉ちゃんったら顔真っ赤にしちゃって可愛いな。
「ケーキより先にお姉ちゃんを頂いちゃおっかな」
私が冗談混じりでそう呟くと、お姉ちゃんの顔は更に真っ赤になった。
「な!? お、お前はどこでそんな言葉を覚えたんだ!? さては、エーリカかクルピンスキーの入れ知恵だな?」
「えへへ、どうだろうね」

――もし、ネウロイが現れていなかったら、私は今より幸せな日常を過ごせてたのかな。
時々、そんな事を考える。でもいくら考えても、失ったものは戻ってこないんだ。
だから、私は振り返らないで前を見て、『今』を精一杯楽しもうと思う。
大好きなお姉ちゃんと一緒に。

「お姉ちゃん」
「な、何だ?」
「いつもありがとう」

私は日頃の感謝を込めてお姉ちゃんの唇にそっとキスをした。
お姉ちゃん、これからもずっと一緒にいようね。

〜Fin〜

―――――――

以上です。クリス、誕生日おめでとう!

310名無しさん:2011/02/08(火) 16:53:55 ID:LC5cdwLQ
>>307
GJ!!ギャグも素晴らしいですがこーいうちょいとシリアス気味なのもよかっですよ!それにしても伯爵かっけ〜!ナオちゃんは殴った拳の痛みがわかる子ですよ、きっと!!

311名無しさん:2011/02/08(火) 23:02:06 ID:dc/vB.Rg
>>309
GJです。平和な姉妹に和んだ。

312mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/02/09(水) 22:36:13 ID:9SeIvse2
>>305 Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA様
GJです。何だかんだでハイテンションなノリが良いですね。

>>309 5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2様
GJ! バルクホルン姉妹がステキ過ぎます。ほっこりします。


こんばんは、mxTTnzhmでございます。
軽く思い付いたネタを、ざざっと文章化してみました。
保管庫No.0450「ring」続編となります。
ではどうぞ。

313listless feelings:2011/02/09(水) 22:36:57 ID:9SeIvse2
 午後の薄日が差すミーティングルーム。
 誰も居なくなったその部屋で、窓際のソファに深々と腰掛け、そっと肩を寄せ合う二人。
「トゥルーデ」
「どうしたハルトマン」
「もう二人っきりなんだから、カタくなくていいんだけど」
「ああ……そうか。そうだったな。エーリカ」
「そそ。ちゃんと名前呼んでくれれば良いの」
「すまない。どうも……」
「? どうかした?」
「いや、何でもない」
「顔赤いよ。照れてる? 可愛い、トゥルーデ」
「こら。人をからかうんじゃない」
「……その辺は、昔も変わらないよね」
「仕方無い。私は私だ。急に変わるなんて、無理だ」
「でも、私と一緒に過ごす時間が増えてから、大分変わって来たと思う」
「そうか? 私には解らないが……」
「自覚無しか……。まあ、その辺も変わらないよね」
「悪かったな」
「別に怒ったり悲しんだりしてるんじゃないよトゥルーデ、安心して」
 微笑むエーリカ、ちょっと物憂げな表情のトゥルーデ。頬にそっと手をやり、唇を重ねる。
 お互いの気持ちを通じ合わせ、確かめる為のちょっとした“儀式”。

 二人は横のテーブルからカップを取り、粗めに挽いたコーヒーの香りを楽しみ、一口飲む。
 ミルク入りも良いかもね、などと雑に会話を交わしたところで、ふとエーリカが思い出したかの様に呟いた。
「人には色々有るから。急に変わるなんて無理」
「さっきの、私の台詞だぞそれは」
「反芻してみただけ。確かにそうだよね」
「ああ」
「でも、少しずつだけど、変えていける部分も有るよね」
「それは、確かに有ると思う」
「例えばクリスの事とか。元気になって、随分と……」
「クリスの事は良いんだ」
「また照れてる」
「と、とにかくだ。時間は過ぎて行くから、嫌でも変わってもいくし、変えていかなければならない部分も有るだろう」
「トゥルーデ、言ってる事固い割には結構進歩的? だね」
 肘をついた格好のまま、エーリカはふふっと笑った。首を傾げるトゥルーデ。
「そう言う問題か?」
「まあ、私とトゥルーデの間については、もっと進歩的であって欲しいと思うよ」
「これ以上どう進歩しろと」
 ひそひそと耳元で囁くエーリカ。言葉を最後まで聞き終わらないうちに、トゥルーデは頬だけでなく耳まで真っ赤になる。
「ばっバカっ! そんな事出来るか!!」
「えー、やってみないと分からないよ」
「たまに、お前についていけなくなる時が有るから困る」
「冷静になられても。これも全部トゥルーデを愛しての事だから」
「こっこらっ! 皆に聞かれそうな所で、軽々しく『愛してる』とか言うな」
「えーなんで? 事実だし」
「だって、その、私としては……」
「分かってるよトゥルーデ」
 そっとトゥルーデの手を握るエーリカ。少しがさつで、骨太で。でも愛おしいその手をぎゅっと握って、エーリカは笑う。
「手を握るだけで分かるもの。トゥルーデの気持ち」
「何故? 超能力でも有るのか?」
「手、汗かいてるから」
「……っ!」
「じゃあ、そろそろ行こうかトゥルーデ。今夜が楽しみだよ。トゥルーデは?」
「……まあ、その」
「無理しちゃって。聞きたいな、トゥルーデの……」
 観念したかの様に、エーリカをそっと抱き寄せ、耳元で囁く。
「分かった。愛してる、エーリカ」
 そこで、誰かが部屋に来る気配を察するカールスラントのエース二人。
 空になったカップを手に、腕を組んで部屋を出る二人。
 行き先は……。

end

314名無しさん:2011/02/09(水) 22:37:17 ID:9SeIvse2
以上です。
いつものエーゲルと言う事で。

ではまた〜。

315サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 09:54:06 ID:kyCPAeeI
【月】

「私を月まで連れてって」
少し照れた眼差しでサーニャが呟いた。
「…えっ?」
「この曲の名前。エイラが訊いたんでしょ?」
「そ、そうだった。私を月まで連れてって…か。変な名前だけど私は好きだナ、この曲」

二人で夜間哨戒するのは久しぶりだ。
サーニャが聴かせてくれる遠い異国のラジオの曲、月明かりに柔らかく照らされたサーニャの姿…
その幻想的な雰囲気に目眩を感じて月を見上げる。

突然ラジオに雑音が入り込み、やさしい曲の音色を掻き消した。
代わりに誰かの声が途切れ途切れに聞こえてくる。
『…偉大なる時代が…諸君らが望んで…闘争を続けねばならない…』
サーニャは眉をしかめて魔導針を解除した。
「サーニャ?」
「この人…」
「うん。カールスラントの総統だナ。南リベリオンから戻って来たんだろ。私は嫌いだな」
サーニャが暗い表情で頷く。
その場を取り繕うようにエイラが慌てて続けた。
「みんな戦争の噂をしている。でも人間はそれほど馬鹿じゃない。
みんなネウロイに苛立ってるだけなんだ。私たちがネウロイを倒せば、
また平和な世界が戻ってくる。そしたら…」
「そしたら?」サーニャが覗き込むように尋ねた。
その先を考えていないエイラが苦し紛れに言葉を続ける。
「そしたら…人間は再び手を取り合って歩き続けるんだ。
みんなが助け合えば人間に不可能なんてない。
だから…人間はいつかあの月にだって行けるんだ!」
「それはエイラの予知魔法?」サーニャがクスクスと笑う。
「そ、そうだ。わたしの予知魔法だ。だから絶対に間違いないんだぞ!」
「それじゃエイラが私を月まで連れてってくれる?」
「もちろん。約束する!」
他愛のない冗談に2人が笑い出す。

寄り添うように指切りを交わした瞬間、
エイラの意識が跳んでサーニャの魔導針が反応した。
「サーニャ…?」
ラジオから再び誰かの声が聞こえてきた。
今度はさっきよりも遠くから聞こえてくる感じだが、明瞭に聞き取ることが出来た。

『接触灯点灯。オッケー。エンジンストップ。ACA解放』
『ACA解放了解』
『モードコントロールオート。降下用エンジン指令停止。エンジンアームオフ。413イン』
『ヒューストン、こちら静かの基地。イーグルは着陸した』

7月20日
エイラ・ユーティライネン中尉及びサーニャ・リトヴャク中尉による夜間哨戒飛行。
…特記すべき異常は見られず。

316サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 09:56:52 ID:kyCPAeeI
魔法の眠り】

『一つ理解して欲しいのは、魔法と睡眠は等価だという事だ。
大量の魔法力を消費した魔女は長時間の睡眠を必要とする。
しかし、なかには睡眠中に無意識の内に魔法力を発露させてしまう魔女だっている。
そんな魔女は、早起きすることが出来ないんだ…』
エーリカ・ハルトマン中尉/柏葉剣付鉄十字賞授与式における発言より抜粋


エイラ「た、大変だあ! サーニャが、サーニャが、眠ったきり目を覚まさないぞ!」

もっさん「これは…魔法の眠りだな。魔法力を使い過ぎたんだ」

エイラ「一体どうしたらいいんダ?」

もっさん「簡単なことだ。魔法力を注入してやればいい。宮藤! 魔法力が大きいお前が適任だ。お前がやれ」

宮藤「わかりました! …でも、どうやるんですか?」

もっさん「キスだ。キスをするんだ!」

宮藤「エエエえっ!?」

エイラ「み〜や〜ふ〜じ〜!!」

宮藤「ひぇええっ!」

エイラ「嫌だ! わたしがサーニャにキスするんだ!」

宮藤「私には上官の命令に従ってキスする義務があります。私に任せて下さい!」

エイラ「義務だなんて言い訳だ! だいいち宮藤! お前のその手の動きはなんだ!」

宮藤「(ハッ!)…こ、これは父との約束で、そのぅ…守りたいから私は揉むんです!」

リーネ「…芳佳ちゃん…」

エイラ「乳との役得ぅ? そんな目でサーニャを見んなぁああ!」

バルクホルン「話は聞かせて貰った。上官として私は妹…いや、部下を救う責務がある。
私に任せろ!」

宮藤「バルクホルンさん! ずるいです!」

バルクホルン「な、何を言う! わ、わたしはカールスラント軍人として…」

エイラ「こ、こうなったら早い者勝ちダあ! サーニャぁああ!!」

宮藤「あっ! 待って下さい!」

バルクホルン「貴様!やめろ!」

ルッキーニ「うじゅじゅじゅ〜(阿呆らしくてやってらんない)!」

シャーリー「我慢だ。ルッキーニ」

サーニャ(エイラの馬鹿!)

317サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 09:57:59 ID:kyCPAeeI
【霧の中】1/2

「くっ…!」
ネウロイのビームに反応して、サーニャのシールドが展開された。ネウロイの姿は濃霧に隠れて見えない。
濃密な霧でビームの威力は半減してるが、それでも殺傷能力は十分にある。
(まずい…このままじゃ魔法力を消耗するだけだ…)
複雑な回避飛行を続けながら、幾度となく全方位広域探査を試みるが、レーダーは全く効かなかった。
それどころか基地にいる仲間に連絡する事さえ出来ない。霧は強い磁気を帯びていた。
ビームを回避しながら、フリーガーハマーの残弾数を計算してみる。
…予備を含めて残り3発。
一晩の間に2度もネウロイと遭遇するのは初めてだった。1体目を撃破した直後に2体目が出現した。
体制を整える為に霧の中に身を隠したが、それがかえってアダになったようだ。
ネウロイの進行方向を計算すると真っ直ぐに基地に向かっている。ここで身を引く訳には行かない。
回避飛行するサーニャを再びネウロイのビームが捉える。
ビームの方向にフリーガーハマーを1発ぶち込んでみるが、まるで手応えがない。
おそらくホーミングレーザーだろう。
(敵の位置が掴めない。どうする…?)
息があがってきている。そろそろ限界も近い。日が昇るまで1時間程。
それまで持ちそうもなかった。
基地にいる仲間の事を考えてみる。こんな時エイラならどうするだろう?
またネウロイのビームが飛来する。どんな方法かは知らないが、敵がこちらの位置を把握してるのは間違いない。
回避飛行を続けているのにネウロイの攻撃は正確だ。しかしトドメは刺しに来ない。
執拗に繰り返される攻撃は、まるで獲物を弄んでいるようにも思える。
(そうか…フリーガーハマーを警戒して近づけないんだ)
サーニャはフリーガーハマーの弾を取り外してポケットに入れると、おもむろにフリーガーハマーを放り捨てた。
(遠距離での攻撃じゃ不利だ。なんとかして接近戦に持ち込まないと!)
空中でホバーリングしながら目を閉じて耳を澄ます。周囲の音を聞き漏らすまいと黒猫の耳がピンと立てられた。
濃霧の中を移動するネウロイの発する微かな空気の動きが感じられる。
ネウロイは攻撃を止めて真っ直ぐにこちらに向かっているようだ。
やはり武器を捨てた事を知っているのだ。サーニャの猫耳が慌ただしく動きまわる。
ネウロイは確実に距離を詰めて来ている。距離500…300…100…

318サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 09:59:13 ID:kyCPAeeI
【霧の中】2/2

瞬時に左足のストライカーユニットを脱ぎ、中にフリーガーハマーの弾を込めると、
自律航行モードでストライカーユニットをネウロイの方向に射出した。
僅かな間をおいて、ストライカーユニットがネウロイにぶち当たり、閃光と共に爆発する。
爆風と共に爆発の轟音が衝撃波となって襲いくる。
最大の魔法力を込められたフリーガーハマーの弾薬の破壊力は凄まじい。
爆風は周囲の濃霧を吹き飛ばし、オレンジ色の焔がネウロイの姿を露わにした。直撃だ。
ネウロイの装甲は大きく抉れており、コアが焔の明かりを反射して輝いて見える。
ネウロイは鋼鉄の巨体をのた打ちまわらせて咆哮する。
すかさず、サーニャのブローニングM2重機関銃が火を噴いた。
奥歯を食いしばりながら銃弾に魔力を込めて連射する。片足だけのストライカーユニットはバランスが悪い。
コアに照準を合わせても当たらない。ネウロイの姿が目前に迫った時、ようやくサーニャの銃弾がコアを撃ち抜いた。
唐突に鋼鉄の軋むような咆哮をあげてネウロイの装甲が崩壊していった。
空気を揺るがす衝撃波と鋼鉄の残骸がサーニャを襲う。
シールドで防御しながら、サーニャは無意識に片腕で防御の姿勢をとっていた。
硝煙の匂いが立ち込めるなか、結晶化したネウロイの破片がサーニャの脇を吹き抜ける。
「…終わった?」
肩で大きく息をしながら、思わず呟いた。暫くのあいだ呆然としたまま身動きすることも出来なかった。
重機関銃を撃っていた右腕が僅かに震えている。

やがて、気を取り直したように大きく深呼吸すると、
乳白色の霧が立ち込める空を、サーニャは基地に向かってゆっくりと飛び始めた。
「今回は使い魔の黒猫に助けられたみたい…ありがとう」


『使い魔』ウィッチが魔力を使う時にサポートする存在。
使い魔が使役されてる間、ウィッチにはその使い魔と同じ耳と尻尾が現れ、使い魔となった動物の特性を得る。
猫の聴力は、犬よりも広い6万〜10万ヘルツの哺乳類トップクラスであり、
音源までの距離と方向を正解に把握することが出来ると言われている。

319サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 09:59:55 ID:kyCPAeeI
【シュレディンガーの猫】1/3

『暗箱の中の猫だって夢を見る。猫にとって私たちは、重ね合わせた確率の存在でしかない』

夜明け前の教会は、凛と張り詰めた空気の中に厳かな静寂を響かせていた。
一人で教会の中に居ると、まるで世界は此処だけしかない錯覚に捕らわれる
本当にそうなら、どれほど楽だろう? 窓の外には現実感のない暗闇が広がるだけだ。
私は世界に一人きり。冷たい床にひざまづき、ひたすら神に祈り続ける。
─神さまお願いです。どうかサーニャをお守り下さい
私の命と引き換えでも構いません。どうかサーニャを助けて下さい。神さま─

教会の扉が開いてミーナ隊長が飛び込んできた。
薄暗い教会を見渡して、私を見つけて息を飲む。
「エイラさん! サーニャが、サーニャが…」それだけ言うと、床に倒れるようにして泣き崩れてしまった。
私の心臓は一瞬で凍りつく。全身の肌が粟立ち、背中を冷たい感触が走る。
私は知っていた。ミーナの言葉の意味を。
私は何度も何度も繰り返し、この場面を見てきた。遠い過去から何度も繰り返し…。
私は震える足取りで医務室に走った。後ろでミーナが呼び止める声が微かに聞こえる。
サーニャは医務室のベッドに横たわったまま動かない。まるで眠っているように見えた。
「…サーニャ?」
震える手でサーニャの頬に触れてみる。冷たい感触が指先から全身に広がって行った。
「サーニャ…」
もう一度呼び掛けて私は、サーニャの上に泣き崩れた。とめどもなく涙が溢れ出た。
「サーニャ…」

教会の扉が開いて坂本少佐が飛び込んできた。
「こんな所で何をしている! 緊急出撃の警報が聞こえないのか?」
基地の中をサイレンが鳴り響いていた。
「ネウロイだ! いまサーニャが足止めしている。サーニャが危ない!急げ!」
私は格納庫に走った。ストライカーユニットに脚を突っ込み、重機関銃を手に取る。
私は薄暗い夜空に向かって飛び立った
「サーニャ待ってろ! いま助けに行く!」
ネウロイに対する怒りが全身を駆けめぐった。

320サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 10:00:32 ID:kyCPAeeI
【シュレディンガーの猫】2/3

教会の扉が静かに開いた。扉の前にはサーニャが立っていた。
「サーニャ…?」
サーニャは不思議そうな顔をして静かに佇んでいた。
「驚いた顔して、どうしたのエイラ…?」
彼女の暖かな手が私の肩に優しく置かれる。
「な、なんでもない!」
「エイラの目…赤い。もしかして、一晩中教会でお祈りしてたの?」
少し可笑しそうな顔でサーニャが尋ねた。
「わたしは…夢を見たんだ。サーニャの夢を…だから私は…」
「夢?」
「そうだ。わたしの見る夢は只の夢じゃない。予知魔法が見せる夢なんダ…でも…」
「…でも?」
「たまには外れることだってあるってことだナ」
サーニャはクスクスと笑いながら私の手をとった。彼女の手の温もりにが心地よかった。
サーニャが悪戯っぽい眼差しで私の顔を覗き込む。
「サ、サーニャがネウロイに撃たれた夢だったんだぞ。笑いことじゃないんだ。
もし本当にサーニャが私の前から消えてしまったら、私はどうすればいい?
サーニャのいない世界で生きて行くなんて、わたしには無理だ…」
サーニャはクスクスと笑うと、祭壇の上の十字架を見ながらこたえた。
「もし私が死んでも悲しまないでエイラ。
私は神様の前で胸を張ってこう言うわ。
─私は私に出来る事を全てやった。私はネウロイからも、そして私自身の弱い心からも
決して逃げることはなかった。本当に怖くて震えるような夜間哨戒だって、最後までやり抜いた。
私はみんなを守るために最後まで堂々と戦った─って。
だからエイラ、私が死んでも悲しまないで。
─サーニャ凄いぞ。よく頑張ったな─って言って私のことを誇りに思って。
私はみんなを守るために自分の意志で戦ってるのだから。
約束してエイラ…」

「サーニャ…」私は彼女の目を見ることが出来なかった
何だかひどく自分が恥ずかしく思えた。

321サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 10:01:04 ID:kyCPAeeI
【シュレディンガーの猫】3/3

教会の扉がゆっくりと開いて、目の前にサーニャが横たわっていた。
寝台を彩る花に囲まれたサーニャは、静かに眠っているように見える。
私はサーニャにすがりついて涙を流していた。
「サーニャ…」嗚咽で言葉にならない。
「何でだ。何でサーニャか死ななければならない?
まだ14才の小さな女の子じゃないか?
何でこんな小さな女の子が戦場で戦わないといけないんだ?
戦うのは大人たちがやればいいんだ。
魔女だから戦う?
魔法力があるってだけで普通の女の子と何も変わらないじゃないか…。
世界の運命なんて関係ない。
こんな、こんな小さな女の子の命を犠牲にしなければ守れないような世界なんて
一体何の意味があるんだ?
何故サーニャが世界の運命を背負わないといけない?
他の人たちは私達に戦うことを押し付けて普通の生活を楽しんでいる。
サーニャだって本当なら音楽の勉強をして友達と遊んで誰かと恋をしてたはずなんだ。
何でサーニャが死なないといけないんだ?
私はサーニャを守れなかった…守ると誓ったのに…
サーニャ目を開けてくれ!
サーニャ…」
私は泣いていた。いつまでも、いつまでも泣いていた。
『エイラ…私が死んでも悲しまないでね』
わたしには無理だ…

外は明るみはじめ、教会の窓から朝日が差し込んでいた。
もう夜は明けたようだ。どこからか小鳥のさえずり声が聞こえてくる。
私は冷たい床にひざまづいたまま、一晩中神様に祈りを捧げ続けていた。
疲れ果てて頭がふらふらしている。聖母マリアの像を見つめながら立ち上がる。
そして、私はゆっくりと教会の扉を開け、眩しい光に包まれた外に足を踏み出した。
「エイラ? 何してるのこんなところで…?」
夜間哨戒から帰ってきたサーニャが眠たげに尋ねた。
ストライカーユニットを付けた彼女はフリーガーハマーを片手に持ったまま、
朝日の中をゆっくりと舞い降りてくる。
「どうしたのエイラ?」
「サーニャ…」
私は目の前に着陸したサーニャをギュッと抱き締めて泣いていた。
「お帰りサーニャ。無事で良かった。本当に良かった…」
サーニャは頬を赤らめて戸惑っていたが、私の唇に優しく唇を重ねて囁いた。

「ただいま…エイラ」

322サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 10:01:36 ID:kyCPAeeI
【冬虫夏草】1/2

「蝉の声が聞こえる」
ハルトマンが不思議そうに呟いた。
12月に蝉などいる筈ないと思いつつ、サーニャも耳を澄ましてみた。
「本当だ…本当に蝉の声が聞こえる! でも…なんで?」
飛行訓練を終えて基地に戻る途中だった。眼下には金色の草原が広がっている。
「向こうから聞こえてくるみたいだ。サーニャ、一緒に行ってみようよ」
「うん!」
日中の日差しは強いものの、身を切る風は冬の到来を告げていた。
2人は蝉の声を追いながら、胸の中で繰り返し「なんで?」と呟く。
草原の上を低空で旋回しながら音源を探ってみる。どうやら蝉の声に間違いないようだ。
しばらく探しまわって、やがて2人は草原に舞い降りた。
「ここから聞こえるけど、蝉がいないね。それどころか木さえないよ…」
周囲を見渡しながら、ハルトマンが不思議そうに言う。
「そこの背の高い草の辺りから聞こえるみたい」
頭をもたげた背の高い草を指差してサーニャが言った。
2人で草に近づいてみる。特に変な感じには見えない。
でも蝉の声は間違いなく、この草から聞こえてくる。
何か思い当たる節があるのか、サーニャがおもむろに草を引き抜いた。
草の根元に視線を向けたハルトマンの体が硬直する。
「そんな馬鹿な!」ハルトマンが喘ぐように叫んだ。
草の根が蝉の形をしている。いや、正確には蝉の背中から草が生えていた…。
その草の根(?)が蝉の声で鳴いている。
「冬虫夏草…?」サーニャが呟いた。
「えっ?」
「夏は草の姿をして、冬は虫の姿になるの。わたしも実際に見るのは初めてだわ。
…でも何で蝉の姿に?」
「いや、冬虫夏草はそもそも菌類の…これはソレとは…」
ハルトマンが言いかけた瞬間、草原の草花が一斉に蝉の鳴き声をあげた。
耳をつんざくような蝉の大合唱に2人がたじろぐ。
「まさかこの草全部が?」
「まさか…そんな…」サーニャの声が震えていた。
「サーニャ! 早く此処から離れよう!」
蝉の鳴き声は急速に強さを増していき、いまや雷鳴の如く轟き渡っていた。
「うわっ! この鳴き声! 頭が割れそうだ」
2人はもはや立っている事さえ出来ない。遠のいていく意識の中でハルトマンが叫ぶ。
「サーニャ!」

323サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 10:02:04 ID:kyCPAeeI
【冬虫夏草】2/2

「起きろ! ハルトマン! 」
バルクホルンの怒鳴り声にハルトマンが薄目を開ける。
「うぅ…ん、あと40分…」
耳元で鳴り響いている目覚まし時計を手探りで止めて布団の中に潜り込む。
「ふざけるなコラっ! サーニャも起きろ! だいたい何でサーニャが此処にいるんだ?」
サーニャは怒鳴り声にさえ気つかずにハルトマンの横でスヤスヤと寝息を立てている。
「っ…貴様らは…早く起きろぉおおお!」
呆れ果てたバルクホルンが最後の雄叫びを残して部屋を出て行った。

冬虫夏草の草原から脱出したハルトマンとサーニャは手を繋いで草原を見下ろしていた。
「ここまで来ればもう大丈夫だ。本当に危ないとこだったね、サーニャ」
サーニャが頷いた。もう蝉の声は聞こえない。
「うん。でも不思議だわ。蝉の声に混じって、エイラの泣き声が聞こえたような…」
こんな所にエイラがいる訳ないと思いつつ、ハルトマンも耳を澄ましてみた。
「本当だ…エイラのすすり泣く声がする。行ってみよう」
「うん!」

…to be continued


そのころ、ハルトマンの部屋の前を偶然シャーリーが通りかかった。
「よぅエイラじゃないか! 何してんだ、そんなとこで…て、泣いてんのか?」

『泣きながら 蟻にひかれる 冬の蝉』詠み人 エイラ

324サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 10:02:32 ID:kyCPAeeI
【流れ星】

冬の夜空はぶ厚い鉛色の雲に覆われていて、気持ちまで暗くさせる。
気持ちが滅入っている時は尚更だ。
こんな夜は夜間哨戒なんて放り出して、暖かなベッドの中で眠りたい。
魔法力で寒気を緩和できるとはいうものの、身を切るような夜風の中に長時間いるのは、
正直つらいものがある。
サーニャはフッと白いため息をつくと、今日の出来事を思い出していた。

今日、サーニャはエイラと喧嘩した。軽い口喧嘩に過ぎないけど喧嘩には違いない。
…喧嘩の原因は忘れた。
たぶん、エイラの纏わりつくような保護者ぶった言動にイラついたのだと思う。
エイラは私の保護者じゃないし、私はエイラに何かを頼った覚えなどない。
私はどんな事だって独りで出来るし、実際に今までだって独りでやってきたのだ。
「私のことはかまわないで! だいたいエイラは過保護すぎるのよ!」
思わず口にした自分の言葉に、誰よりも自分が驚いた。
もしかしたら…エイラは私以上に傷付いただろうか?

鉛色の雲の下を飛んでいると気持ちまで滅入ってくる。
サーニャはおもむろに雲の中に飛び込むと、そのまま真っ直ぐに上昇した。

唐突に視界が開けて、サーニャの体が雲を突き抜けた。
雲の上は何処までも空気が澄んでいて、満天の星空が広がっていた。
サーニャはハッと息を飲み込むと、息をする事さえ忘れて茫然と星空を眺めた。
今まで見たこともないような荘厳ささえ感じる星空に、サーニャの身体が微かに震える。
流れ星が一瞬だけ輝いて空を横切って消える。
そして、無数の流れ星がいっせいに星空の中を泳ぎだした。
「しし座流星群…」
時がたつのも忘れて、ひたすら流れ星を眺め続けていた。

あした帰ったら素直な気持ちでエイラに伝えようと思う。
「ごめんなさい」って…

325サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 10:03:38 ID:kyCPAeeI
【定時報告】

『こちらアレクサンドラ中尉。22時定時報告。
現在位置○○。半径300km圏内にネウロイの姿は存在せず』
『こちら501特別支援小隊通信班。定時報告了解しました。おっと、これは…?
…失礼しました。申し訳ありませんが中尉殿、そのまま少々お待ち下さい』
(沈黙)
『…さきほど民間から問い合わせが有ったようです。
スオムス上空を飛行する未確認物体ありとのことですが…そちらで確願できますか?』
『了解しました。物体の探索を開始します…』
(沈黙)
『こちらアレクサンドラ中尉。物体はレーダー探索の圏外にあり探知不能です。
…ですが、物体のものと思われる信号を受信しました。緊急救難信号です。
物体はストライカーユニット。国識別コードはスオムス。
ユニットの機体識別コードは○○』
『(コード表をめくる音)了解しました。…中尉殿は引き続き夜間哨戒の任務にあたって下さい。
次の定時報告は24時です。それでは2時間後にお会い出来ることを楽しみにしてます』
『了解しました。でも、あの…救難信号の件は…?』
『問題ありません。なんせニッカ・エドワーディン・カタヤイネン曹長ですから』
『あぁ…了解しました。えーっと…これで22時定時報告を終了します』


「何で誰も助けに来ないんだよぉー!
誰も助けに来ないなんてひどいじゃないか!
ひどいじゃないか・・・」

326サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 10:04:06 ID:kyCPAeeI
【同期】1/6

『そこは原代名詞の世界。それが彼女に、彼女が彼らに、彼らが私に、そして私が謎へと化していく』

「サーニャ! ネウロイをこっちに近づけるなー!」
リーネを後ろから抱き締めてエイラが叫ぶ。
サーニャは小さく頷いて、おもむろにフリガーハマーを撃ち放った。
雷鳴を思わせる轟音と共にオレンジ色の火球が広がり、爆発の衝撃波が大気を揺るがす。
ネウロイは爆発を回避して、既にリーネとエイラの真下に潜り込んでいた。
「動きが早過ぎる・・・」リーネが小さく呟いた。ボーイズMK.?を握る手が汗ばんでいる。

卵形の小型ネウロイは、尋常でないスピードでグザグに動きまわっていた。
一瞬の停止と急激な加速をランダムに繰り返し、変則的な動きで間合いを詰める。
常軌を逸したネウロイの動きに、リーネの狙撃は付いて行くことが出来ない。
唯一対応出来そうなエイラは右腕を負傷している。リーネを守る為に払った代償。
先読みと正確な射撃がなければ、超高速で変則的に動くネウロイを倒すことは無理だ。
エイラとリーネは何度も複合魔法を試みるが、上手く呼吸か合わない。
只でさえ高度な技術が求められるのに、この状況下では無理もない。

ネウロイが赤色のビームを放ちながら間合い詰め、おもむろにリーネに体当たりした。
シールドが鈍い音をあげて、エイラとリーネが後ろに突き飛ばされる。
割り込むようにサーニャが慌てて飛び込み、ネウロイを自分の方に引きつけた。
その間にエイラが後ろからリーネを支えて体勢を立て直す。
「大丈夫か?」
頬を赤く染めながらリーネが小さく頷く。
「よし。それじゃーもう1度やるぞ。呼吸を合わせて魔法力を同調させるんだ!」
「はい!」
2人の顔に焦りの色が浮かんでいた。

327サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 10:04:27 ID:kyCPAeeI
【同期】2/6

焦燥しているのは2人だけではない。サーニャの顔にも焦りの色が浮かんでいた。
何とかしてネウロイを遠くに引き離さないと2人が危ない。
真下にいるネウロイに、上から覗き込むような姿勢でフリガーハマーを撃ち込むと、
そのまま急降下して躊躇いもなく爆炎の中に突っ込む。
爆発の炎の中でも全方位広域探知は確実にネウロイの姿を捉えていた。
急降下しながら体を捻り込み、右腕を真横に伸ばすと再びフリガーハマーを撃つ。
片手でフリガーハマーを自在に操る姿は驚異的だ。しかも撃つ方向を一瞥すらしない。
独特のリズム感があるその力技は、あるいはバルクホルンを上回るのかも知れない。

サーニャは再び体を捻って急上昇すると、左手のブローニングM2重機関銃を撃ちながら
ネウロイの前に回り込む。
だがネウロイの速度は尋常ではない。変則的な動きでフェイントをかけて回避した。
サーニャは前方左上空にフリーガーハマーを連射すると同時に、右に急旋回する。
魔法力で弾頭の爆発するタイミングを操作して、ネウロイを右方向に追いやる。
同時に重機関銃を正面に散らすように連射し、ネウロイの動きを封じようとした。
しかしネウロイは簡単に弾幕を掻い潜って、サーニャの脇を猛スピードで掠め抜ける。
「…!」サーニャは思わず目を閉じて体を丸めた。強烈な衝撃波が体を揺さぶる。

サーニャの後ろに回り込んだネウロイを透かさずリーネが狙撃する。
銃弾はネウロイの装甲を僅かに掠めてはじかれた。
「惜しい!」エイラが舌打ちして悔しがる。
サーニャは振り向きざまにフリーガーハマーを撃ち込んで急上昇した。

まるでイタチごっこだ。攻めては逃げて、逃げては攻める。その繰り返しだ。
ても…やるしかない。右へ左へと体を捻りながら必死でネウロイを追う。
その間隙を突いてリーネが狙撃するが当たらない。
まだ複合魔法が有効に働いていないのだろうか?
咄嗟に残りの弾数を計算してみる。この消耗戦は分が悪い。

328サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 10:04:55 ID:kyCPAeeI
【同期】3/6

体力的にも弾薬的にも、複合魔法の成功を待っている余裕はない。
熾烈な空中戦を展開しながら、サーニャは打開策を思案する。きっと何か手があるはずだ。
サーニャはネウロイの攻撃に奇妙な違和感がある事に気付いていた。

ネウロイの異常なまでのスピードなら、私はとっくに捕捉されている筈だ。
なのに私は未だに無事で此処にいる。何故?
さっきの攻撃も、本当ならば体当たりを喰らっても不思議はなかった。
なのにネウロイは私の後ろに回り込んだだけ。何故?
イタチごっこ…
フリーガーハマーを左右に撃ち分けながら、猫のような敏捷さでサーニャが空中を舞う。
「まさか…」

「サーニャさん凄い…!」
ボーイズMK.?を構えたリーネが思わず感嘆の声を上げる。
「どこ見てんだー? 感心してる場合じゃないだろー!
早くネウロイを撃ち落とさないと…」
苛立ちを隠せずにエイラが咎めた。確かにサーニャの動きは凄いとエイラも思う。
サーニャは最近急激に強くなった。怖いくらいに。
世界のトップクラスに囲まれている現在の環境がサーニャの成長を促して
いるのかも知れない。
「それより、少しだけ先の未来はちゃんと見えてんのか?」
「はい、でも敵の動きが速すぎて…」
「くそー、わたしの先読みでも追い付けないのか。なんて奴だ!」
複合魔法は働いている。ネウロイがサーニャに気を取られている今がチャンスだ。
しかし…未来予知が追い付かない。銃弾が到達する前にネウロイは更に先に進む。
こんな敵は初めてだ。私がもっと先を読まなければ!
でも…どうすればいい?

もし遊んでるのなら…
サーニャの思考が目まぐるしく展開していく。
それを逆手に取って、ネウロイを撹乱できるかも知れない。
サーニャの脳裏を以前遭遇した歌うネウロイがよぎる。
わずかに逡巡した後、サーニャはおもむろに魔導針の送信出力を上げた。

329サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 10:05:21 ID:kyCPAeeI
【同期】4/6

「音楽が聴こえる」エイラが不思議そうに周りを見渡す。
「サーニャか…?」
リーネも耳を澄ましてみる。
「この曲は…? Come falda di neve…?」
サーニャは熾烈な空中戦を繰り広げながら、悠長な雰囲気でハミングしていた。
曲の旋律に合わせて、踊るようにネウロイの攻撃を回避しながら反撃している。

次々に周波数を変えながら、サーニャは観察する。確実にネウロイに曲を聴かせる為に。
ネウロイの攻撃は極端に減少している。サーニャの曲に反応している証拠だろう。
もう少しだ…。サーニャは周波数を微調整して限界まで魔導針の出力を上げた。
魔法力が一挙に高まり、奔流となってネウロイに放たれる。
その魔法力に呼応するかの様にネウロイが小さな咆哮を上げて一瞬跳ね上がると、
鯨のような低周波でサーニャを模倣しながらハミングした。
「…!」
その共鳴音を聴きながら、サーニャは不思議な感覚にとらわれていく。
現実感を喪失していくような得体の知れない感覚。
サーニャの意識が乖離して共鳴音の中に吸い込まれた…

目の前のネウロイは音楽を楽しんでいる。
まるで無垢な子供のように。

子供…? 何を馬鹿なことを!
ネウロイは街を破壊して沢山の人を殺した!
でも…
夢中で遊んでいる子供?
目の前の矛盾。

音楽への関心?
破壊の為の強力な武器?
それは私だ。
戦場で戦う私の姿。
ネウロイ…
それは鏡に映った私。違う!

サーニャは強い吐き気と目眩を感じていた。
魔法力とコアの共鳴?
放出した魔法力の逆流?
いや…違う…
たぶん別の何か。
わからない…。

幼い頃に父が弾いてくれたピアノの音が聞こえる。
窓の外は雨が降っていた。
私は窓の外から部屋の中を覗き込む。
部屋の中には、ピアノの音に耳を傾けるネウロイがいた。
それは私だ。違う!

ネウロイってなに…?
私の現し身。
私の本当の姿。違う!

「違わないわ…」鏡の中の私が静かに微笑む。

人間と何も変わらない。
ネウロイは人間の象徴。
人間の獣性の具現。
姿を変えただけの、何処にでも居るごく普通の人。
ネウロイは人間そのもの。
目の前の矛盾は人間の矛盾。
平和の為に殺戮する矛盾。
それは人間。

違う!違う! 絶対に違う!
鏡が砕け散った。
私は鏡に向かって銃を乱射していた。
怒りのままに。
怯えるままに。
いつまでも銃を撃ち続けた。

330サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 10:06:00 ID:kyCPAeeI
【同期】5/6

「エイラさん…」リーネが囁いて、ボーイズMK.?対装甲ライフルを構え直した。
エイラも黙って頷く。ネウロイの様子が変だ。
猛スピードでランダムに動きまわる姿に変化はないものの、
攻撃を仕掛けてくる気配がまるでない。
サーニャが少し離れた場所で静観し、その周りをネウロイが飛び交っているだけだ。
一寸前の激しい空中戦がまるで嘘のようだ。「いったい何が起きてるんだ?」
おそらく、サーニャのハミングが何か関係しているのだろうと思う。
当のサーニャはまだハミングを続けており、ネウロイは耳障りな共鳴音を響かせている。
しかし…
大人しくなったとは言えネウロイが未だに脅威であることに変わりはない。
急激な状況の変化。その状況は更に変わりつつある。
「ネウロイが止まる…」
エイラはリーネの肩に顔を擦り寄せて耳元でそっと囁く。リーネが小さく頷いた。

少しだけ先の未来。今はまだ何も無い空っぽの空間。その場所をリーネが見つめる。
引き金を引こうとして呼吸を止めた瞬間…リーネは驚愕の表情を浮かべて絶句した。
ネウロイじゃない…? 人間だ! 人間がいる! まさかそんな馬鹿な…!
激しい動悸が胸を締め付け、額に脂汗が滲む。
瞳を閉じてゆっくりと息を整え、再び照準を覗いてみた。
そこには鋼鉄の装甲に覆われたネウロイの姿があった。
いまのは一体…? 幻覚? そう…ただの幻覚だ。そうに決まってる!
リーネの背中を冷たい汗が流れ、引き金におかれた指が微かに震えた。
銃口で少しだけ未来のネウロイを追いながら、リーネは口の中で神に祈っていた。

「主よ、我らの罪をお許し下さい。
我らを地獄の火からお守り下さい。
全ての霊魂、
特に主の憐れみを最も必要とする霊魂を
天国にお導き下さい」

リーネの指がゆっくりと引き金を引いた。

331サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 10:06:28 ID:kyCPAeeI
【同期】6/6

唐突にサーニャはハミングを止めた。何故やめたのか自分でも分からなかった。
意識がはっきりしない。誰かと会話していた気もする。
ハミングを止めると同時にネウロイもゆっくりと停止し、その場に留まった。
停止したネウロイ?
ハッと気がついてサーニャが叫ぶ。
「…リーネさん待って!」
その瞬間、リーネの放った銃弾がネウロイの装甲に黒い穴を穿った。続いて2発目。
そして3発目の銃弾がコアを直撃した。
コアが砕けた瞬間、サーニャはネウロイの悲鳴を聞いたような気かした。
もしかしたら、それはサーニャ自身の悲鳴だったのかも知れない。…わからない。
サーニャは目を見開いたまま呼吸することさえ忘れている。
何故? 何故わたしは動揺してるんだろう?
ネウロイの装甲が連鎖的に崩壊し、細かな結晶になって周囲に散らばる。
煌めく結晶は音もなく風の中に消えていき、
ネウロイが存在していた痕跡を跡形もなく消し去った。
サーニャは寂寞とした空の中に独り佇みながら、どうしようもない虚無感を感じていた。

わたしはネウロイの中に私自身の姿を見た。
わたしは私自身の中にネウロイの姿を見た。
戦争が人を獣に変えてしまうのなら、戦場にいる私もまた獣なのだろうか?
私とネウロイの何が違うと言うのだろう?
何も違わない。
あれは…人間だった。

「サーニャぁ大丈夫か? 怪我はないか?」エイラが心配そうに声をかけた。
エイラの後ろからリーネも心配そうに顔を覗かせた。
瞳に溢れんばかりの涙をたたえたリーネがはにかむ。
サーニャは横を向いたまま俯いて、そっと呟いた。
「うん大丈夫…何でもない」
「サーニャ…」
エイラは何も訊かずに優しくサーニャを抱きしめた。
その暖かい胸に包まれながら、サーニャは漠然と理解した。
わたしは独りじゃない。わたしには大切な仲間がいる…。
誰かを大切に思う気持ちがあるのなら、人は獣ではなく人間として生きて行ける。
サーニャの腕がエイラの体を抱きしめた。
後から後から止めどもなく溢れ出る涙に、エイラがそっとキスをする。

風の中を「Come falda di neve」の美しい旋律が舞っていた。

332サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 10:07:03 ID:kyCPAeeI
【迷子】

「エイラさん、もしかして道に迷ったんですかー?」
からかうような口調で宮藤が尋ねた。
「ナニ言ってんだー? 私が道に迷う筈ないじゃないか!」
「だってエイラさん、さっきから地図を広げて同じ所をグルグルしてますよ?」
「…」
「やっぱりサーニャちゃんがいないと駄目なんですね?
私達だけで夜間哨戒なんて、最初から無理なんですよ」
「サーニャは風邪で寝てるんだぞ! 仕方ないじゃないか」

雲の中に入った時に方向を見失った。
雲を抜け出たのは良いが風で相当流されたらしい…
現在位置がさっぱり分からない。正直途方に暮れた…。

「そんなことより宮藤、腹が減ったろ? そろそろ休憩にしないか」
「賛成! あそこに丁度いい広場がありますよ!」
「広場? …本当だ。此処って何処かの街の上だったんだな…」
「やっぱり…」宮藤が咎めるような眼差で見つめる。

広場で手早く食事済ませると、エイラは再び地図を広げて唸り始めた。
「人の苦労も知らないで…」
子犬のようにはしゃいでいる宮藤を横目に、エイラは溜め息をついて仰向けになった。
「サーニャ…私がサーニャの代わりになるから、
サーニャはゆっくり休んで早く元気になるんだぞ…」
「エイラさん!エイラさん!起きて下さい!」
「もー何だよ五月蠅いな!」
「此処って、もしかしてブランデンブルク門じゃないですか?」
「何言ってんだー宮藤? ブランデンブルク門があるのはベルリンじゃないか?
ベルリンはネウロイの巣の中心にあるんだぞ!」
「でも、あの門の写真を教科書で見たことあります!」
「宮藤ぃ…お前は歴史や地理が得意か?」
「勉強は苦手です!」
「ほらみろ!」
「でも…」
「そんな事より、そろそろ帰るぞ宮藤!」
「基地の方向が分かるんですか?」
「わたしのダウジングを信用しろ!」
「はい!」

エイラ・ユーティライネン中尉及び宮藤芳佳曹長による夜間哨戒任務の報告
『両名はやむを得ない諸事情により単身ネウロイの巣に突入するも、無事に任務を遂行し奇跡の生還を果たす』

333サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 10:07:35 ID:kyCPAeeI
【雷帝】1/4

漆黒の闇に覆われた空を稲妻が走った。
無機質な白色の光が世界を照らし出すと同時に、大砲を思わせる轟音が大気を揺さぶる。
サーニャとペリーヌは稲妻の下を基地に向けて飛んでいた。
「…!」突然サーニャが立ち止まって後ろを振り返る。
「どうしたんですの?」ペリーヌが不審そうに尋ねた。
終末を連想させる荒れた空の下で、サーニャの魔導針は確実にネウロイの姿を捉えていた。
「待って…ネウロイの姿を補足したわ。
現在○○上空を時速500kmで通過…30分後に接触」
「ネウロイ!」ペリーヌの体が強張る。
何もこんな嵐の日に来なくても…という思いが一瞬ペリーヌの胸をよぎる。
「分かりました。基地へ連絡して私達は此処でネウロイの足を止めましょう」
サーニャが頷く。

334サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 10:07:59 ID:kyCPAeeI
【雷帝】2/4

サーニャの魔導針がネウロイの姿を追尾する。距離は10kmを切っていた。
「ネウロイが来るわ…」
目を閉じて沈み込むような口調で言うと、おもむろにフリーガーハマーを撃ち込んだ。
稲妻の駆け巡る漆黒の空にオレンジ色の軌跡を残して3発のロケット弾が走る。
数秒後に雲の彼方に大きな火球が広がった。外した…?
ネウロイは極端に速度を落として、雲の中を探るようにゆっくりとこちらに近づいて来る。
肉眼で確認することは出来ない。ペリーヌにはまだ敵の姿が見えていなかった。
雲の一点を指差してサーニャが叫んだ。
「あそこ!ネウロイが出るわ!」

335サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 10:08:24 ID:kyCPAeeI
【雷帝】3/4

サーニャの指差す場所をペリーヌが見つめる。雲の一点に稲妻が集中していた。
「サーニャさん後ろに下がって!」ペリーヌが叫ぶ。
黒色の雲が青白い光を発して僅かに揺れると、まるで雲の中から沈み落ちてくるように、
ゆっくりとネウロイが姿を現した。
ネウロイの下部には白色の砲塔状の突起が六本あり、その突起が激しい放電を発している。
突起を持つ独特な形状のシルエットは巨大な櫂を持つガレー船にも、あるいは
脚を広げて襲撃してくるドラゴンのようにも見えた。

突然ネウロイの発した雷撃がサーニャを襲った。
サーニャは咄嗟にシールドするが、雷撃はシールドの表面で拡散し、
四方から回り込むようにしてサーニャに達する。
「サーニャさん!」
サーニャは魔法力を総動員して雷撃を凌ぎながら、フリガーハマーを手放した。
フリガーハマーがサーニャの肩口で爆発する。新たなシールドで爆発を受けながら体を沈めて間一髪で回避した。
回避と同時にサーニャの重機関銃がネウロイを襲撃する。

なんて戦闘能力だろう…ペリーヌが信じられない面持ちでサーニャを眺めた。
しかし、ネウロイの固有魔法。あの雷撃が相手では如何にサーニャといえども分が悪い。
「サーニャさん下がって! 私が相手になります!」

336サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 10:08:46 ID:kyCPAeeI
【雷帝】4/4

ペリーヌはサーニャに近づいて機関銃を手渡した。
「ペリーヌさん?」
「サーニャさんは後ろに下がって。…電撃戦なら、わたしくしの方が有利ですわ」
サーニャが頷く。ペリーヌは魔法力だけで戦うつもりだ…後ろに下がって銃を構えた。

ネウロイに突進していくペリーヌの両腕は、激しい放電を始めて雷撃を纏っている。
ペリーヌはネウロイに近づくと両腕を頭上にあげて、巨大な槍状の雷撃を作り始めた。
その間にネウロイの雷撃が続くがペリーヌには通用しない。
時折発する赤色のビームはシールドに阻まれた。
サーニャが後方からネウロイを狙撃する。ペリーヌは一撃でケリを着ける積もりだ。
槍状の電撃が完成するまで時間を稼がなくては…。サーニャは後方で大きく揺さぶりをかけながら狙撃した。

ペリーヌの作る電撃の槍はますます巨大になっていき極限に達している。
その槍を見つめるサーニャが何かを思い出した。
「あれは…サイコスピア…? 伝説の魔女が使った技? 第一次世界大戦の…」
その瞬間、ペリーヌの巨大なサイコスピアが放たれネウロイを直撃した。
漆黒の空が大爆発を起こし、白色の光に覆われる。津波のような衝撃波が広がり、
周囲の雲を次々と蒸発させていった。
衝撃波にサーニャの体がシールドごと突き飛ばされる。凄まじい破壊力だった。
ネウロイは結晶化して灰になる暇もなく、鋼鉄の装甲ごと蒸発してしまった。
空には何本もの稲妻を纏った巨大なキノコ雲ができ、ペリーヌが涼しい顔で眺めている。

「雷帝…第一次世界大戦の伝説の魔女…ガリアのエース。
何故ペリーヌさんが…?」
サーニャが不思議そうにペリーヌを見つめた。

337サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 10:10:15 ID:kyCPAeeI
【イノセント】

「おまえ魔女を見たことあるか?」
「いいや、ないね」
「だろうな。魔女の絶対数は少ないし、大抵は軍の中で隔離されてるもんな」
「おまえは見たことあるのか?」
「あるよ。…聞いて驚け。あいつら本物の子供なんだぜ!」
「なんだそりゃ…?」
「だから、本当に子供なんだよ。そこらにいる餓鬼と何もかわらねぇ」
「ふーん…少し飲み過ぎだな、おまえ」
「酔ってねぇよ。…とにかく聞けって」
「さっきから聞いてるよ」
「うん…その子供達が戦場の最前線にいるわけよ。信じられるか?」
「魔女しか対抗できないしな。それに…シールドがあるから平気なんだろ?」
「大本営の公式記録じゃ魔女の死傷率は限りなくゼロに近いってことになってるけどな…」
「違うのか?」
「実態は悲惨なもんだ」
「…そうか」
「中には怯えきってしまい、戦場に出ることを拒否する魔女もいる。
いや…大抵の魔女がそうだな。泣きながら逃げちまうんだ。
まあ…無理もないけどな」
「…」
「そんな子供達を気持ちよく戦場に送り出すために、どーすると思う?」
「さあ…考えたくもないね」
「薬だよ! 子供達に薬を投与すんだ! 信じられるか? 恐怖心を麻痺させて、残虐性だけを引き出すんだ!
中には精神崩壊しちまう魔女もいる。そいつらはお払い箱さ。ただの道具なんだよ!」
「…」
「だから俺達はコアコントロールシステムを開発する。子供達に闘わせないために。子供達を犠牲にしないために…」
「そういえば…お前の娘も魔女だったな。確か戦場で大怪我をして引退したとか…。今はどうしてるんだ?」
「娘の話しは…やめて…くれ…」
男は酒瓶を手から滑り落とすと、テーブルに覆いかぶさるようにして酔いつぶれた。

「しょうがねーな…。だから言ったろ? 飲み過ぎだって。そろそろ帰った方がいい。いま迎えを呼んでやるよ」
男は席を立つと後ろで控えている兵士に声を掛けた。
「マロニー大将のお帰りだ。表に車をまわしてくれ。それと…貴様がこの場で聞いたことは軍の最高機密事項だ。
…わかってるな?」

兵士は青ざめた顔で震えながら敬礼すると、駐車場へと走った。

338サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 10:11:03 ID:kyCPAeeI
【魔女の肖像画】1/7


サーニャが夜間哨戒から帰って来た時、滑走路の隅から青年が飛び出してきて声を掛けた。
そこに人がいると思ってなかったサーニャは、心臓が止まるほど驚いて一瞬悲鳴をあげた。
「驚かせてしまって申し訳ありません。そんなつもりじゃなかったんだけど、その…まいったな…」
胸の動悸を手で押さえながら、サーニャはふーっと軽い溜め息をついた。
「こちらこそ御免なさい。まさか人がいると思わなかったから驚いちゃって…」
どぎまぎしながら対応したサーニャは、それでも少し落ち着きを取り戻した。
まだ薄暗い滑走路のなかで改めて青年に目をやると、見慣れない軍服を着ていることに気がついた。
サーニャはまじまじと青年の顔を眺めた。痩せ形で背が高く優しい目をしている。
「501支援部隊のかたですか? 珍しい軍服ですね?」
「僕は最近オラーシャから配属されたんです。徴兵された途端に何も知らない異国の地に島流しです」
青年はおどけた調子で言うとケラケラと笑い出した。
オラーシャという言葉に興味を抱きながらも、サーニャは素知らぬ顔で尋ねた。
「…それで、私に何かご用ですか?」
「あぁ失礼しました。じつは先日もこちらで中尉殿を目にしました。優雅に空から舞い降りてくる姿に感動しちゃって…」
「はぁ…」
「僕は徴兵される前は絵描きを目指してたんです。それで…もし良かったらモデルになって欲しと思いまして…」
「もでるぅう!? そんなの無理です! 絶対無理!」
「迷惑はかけませんから。夜間哨戒から帰ってきた所を毎日10分程で構わないんです。お願いします!」
青年は深々と頭を下げて頼み込んだ。

339サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 10:11:24 ID:kyCPAeeI
【魔女の肖像画】2/7


「それで…素性も分からない不審な男の言葉を真に受けて、モデルの仕事を引き受けちゃたのかー?」
「うん…」
「お人好しにもほどがあるぞ、サーニャ!」
「そんなに怒ることないでしょエイラ。支援部隊の人だし素性はハッキリしてるわ。それに…悪い人には見えなかった」
「モデルなんて私は絶対に反対だな。だいだいサーニャは甘すぎるんだ」
サーニャは顔をしかめてベェーと舌を出して見せたがエイラは気がついていない。
「だいだい男の絵描きにろくな人間はいないんだ。扶桑の絵描きを見ろ。
股間ばかり描く変態だらけじゃないか。そんな変態の目でサーニャの事を見られるかと思うと私は私は…」
「エイラの馬鹿!」サーニャは枕を投げつけると部屋を出て行った。
一人残された部屋の中で寂しそうにエイラが呟く。
「私はサーニャの事が心配なだけなんだ。それなのに…サーニャの分からず屋!」

340サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 10:11:43 ID:kyCPAeeI
【魔女の肖像画】3/7


「お疲れ様ですサーニャ中尉。今日もご無事で何よりです。早速ですが始めましょうか?」
サーニャが夜間哨戒から戻ってくると、青年は既にキャンパスを広げて絵を描く準備をしていた。
「毎朝早いんですね。そんなに無理して任務に支障はないんですか?」
絵を描き始めてから既に一週間になる。
もうだいぶ絵は仕上がっていると思うが、青年は頑として絵を見せてくれなかった。
そんな青年にサーニャは軽い苛立ちを感じる。いったいどんな絵を描いてるのか気になって仕方がなかった。
「僕のことは気にしないで下さい。大丈夫ですから…」
青年は一心不乱に筆を動かしながら時おり真面目な瞳でサーニャを見つめた。
そのたびにサーニャは顔が赤く火照るのを感じた。
「絵が出来たら絶対に見せて下さいね」
「もちろんです…ってゆーか、絵は中尉殿に差し上げるつもりです」
「いいんですか?」
この青年は何の為に絵を描いてるんだろ。本当に絵の勉強のためだろうか?
サーニャは首を傾げて青年を眺めた。

341サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 10:12:28 ID:kyCPAeeI
【魔女の肖像画】4/7


「サーニャ。大切な話があるんだ…」
昼食が終わってリビングでくつろいでいる時にエイラがそっと耳打ちした。
「話ってなーに?」
他の隊員は部屋の中央で先日撮影した写真の話題で盛り上がっている。こちらに注目している者は誰もいなかった。

「例の青年のことだけど…少し調べてみたんだ」
エイラは少し躊躇いながら真顔で続けた。
「支援部隊にはオラーシャ出身の人間はいないんだ…何の目的か知らないけど、あいつは嘘をついてる!」
「…」
「ちゃんと聞いてるのか、サーニャ?」
「ごめん。今はその話はしたくないの。もうすぐ絵が完成するわ。そしたら…」
「そしたら…?」
「そしたら全てがはっきりすると思うの」
「そんな…! 私はサーニャのことが心配なんだ! あんな奴にこれ以上付き合うことなんてない!」
「私は平気だから。だから…もう少しだけ待って。エイラ」
サーニャは席を立つと足早に食堂を後にした。
「ちょ、ちょっと待って。話はまだ終わって…」
「ごめん。わたし今日も夜勤なの。だから先に寝るね」
「サーニャ…」

342サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 10:12:51 ID:kyCPAeeI
【魔女の肖像画】5/7


「エイラ中尉と喧嘩してるそうですね? もしかして僕のせいですか?」
申し訳なさそうな顔で青年が尋ねた。
「あなたが気にする事じゃないわ」
「絵は完成しました…けど、僕にはエイラ中尉の誤解を解けそうにありません」
「…」
「約束通り絵は差し上げます。僕の願いは叶いました。僕はここから消える事にします」

「もとの世界…いえ未来の世界に帰るのね?」
青年は驚いた顔でサーニャを見詰めた。
「驚いたな…いつから気がついてたんですか?」
「初めて会った時から。あなたエイラの面影があるわ」
サーニャは悪戯っぽく笑ってみせた。
「…なんてね。確信したのは写真を拾ってから。あなたエイラの写真を落としたでしょ? 色褪せた古い写真。
あの写真ね、4日前に撮られた写真なの。写真を見比べた時は本当に驚いたわ」
「やっぱり、おばあちゃんが拾ってたのか…あの写真」
「まさかと思ったけど、やっぱりそうなのね?
でも"おばあちゃん"はよして。私は"おばあちゃん"なんかじゃないわ」
青年は少し躊躇いがちに目を伏せた。
「…サーニャさんは僕の父親の母。エイラさんは僕の母親の母なんです。
つまり両方とも僕のおばあちゃんって訳です。今まで隠していてごめんなさい。
でも余計な混乱は避けたかったんです」
「おばあちゃん…? まさか…」サーニャは目を丸めて絶句する。
「本当に…本当に私があなたの"おばあちゃん"なの?」
「僕はサーニャおばあちゃんに似てるって、よく言われてましたよ。
見た目だけじゃなく芸術家としても、ね」
サーニャは困惑の表情を浮かべた。

343サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 10:13:26 ID:kyCPAeeI
【魔女の肖像画】6/7


「私が"おばあちゃん"だという事は認めたくないけど、とりあえず認めるわ。
でも、あなたはどんな方法でこの世界に来たの?」
問い掛けて直ぐにサーニャは気がついた。
「魔女の力を受け継いだのね。男の子なのに? 時間を跳躍する固有魔法?
そんな途方もない魔法力があるなんて信じられないわ」
「僕は伝説の魔女2人の血をひいてるんですよ。
それより、未来の世界がどうなってるのか興味はないんですか?」
サーニャは首を横に振った。
「あなたを見てれば分かるわ。とても幸せそうだもの。
それに…あなたの存在そのものが証明してる。私達の戦いが無駄ではないことを」
青年は照れたように頷いた。
「501部隊にいた頃の若いサーニャ"おばあちゃん"にどうしても会ってみたかった。
やっぱり来て良かった」
「このままエイラに会わないで帰るの?」
「エイラおばあちゃんは、僕が絵描きになることに反対してて…なんか苦手なんです」
青年は少し苦笑いをしながら答えた。
「だけど…、その絵はエイラおばあちゃんに渡してくれると嬉しいかな。
サーニャおばあちゃんからの贈り物なら、エイラおばあちゃんも喜びそうだし」
「なるほどね。分かったわ。エイラおばあちゃんの事は私に任せなさい。
あなたが産まれるまでに、絵描きに対する偏見を直してみせるから」
「ありがとう。僕はそろそろ帰ります。僕の能力じゃ上手いこと条件が揃わないと時間を跳躍できないから」
青年は明るみ始めた滑走路をゆっくりと歩き出した。
「ちょっと待って…」
サーニャが慌てて青年を引き止める。
「もう一度…もう一度だけ顔をちゃんと見せて」
サーニャは青年に近づくと両腕で青年を抱きしめた。知らぬ間に涙が溢れでていた。
この不思議な感情をどう表現すれば良いのだるう? サーニャには分からなかった。
「むこうに帰っても無理をしないで…体には気をつけて…」
青年はクスクスと笑った。
「やっぱりサーニャおばあちゃんだ。未来でも同じことを言ってる」
「年寄りの言うことは聞くものよ。元気でね…さよなら」
「またすぐに会えます。おばあちゃん」

344サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 10:14:01 ID:kyCPAeeI
【魔女の肖像画】7/7


サーニャは青年の描いた絵を壁に立てかけて眺めていた。
サーニャとエイラが寄り添うように並んでいる絵。凛々しくも優しい表情をしたサーニャとエイラ。
繊細なタッチで描かれたその絵からは、まぎれもない画家の愛情が溢れ出ている。
絵を眺めているだけでサーニャは幸せな気分になった。
「あいつ…何でエイラの写真を持ってるのかと思ってたら、こういう事だったのね。
…素直じゃないところはエイラに似ちゃったのかしら?」
腕組みしたサーニャは自分の考えが可笑しくてクスクスと笑い出した。

「サーニャ? これが例の不審人物が描いた絵か?」
いつの間にかエイラが横に並んで絵を覗き込んだ。
「うわっ! これって私じゃないか? な、なんでだ? 私はモデルになった覚えはないぞ」
「素敵な絵だと思わない? エイラ」
エイラは無言のまま絵を眺めていたが、暫くしてからポツリと呟いた。
「うん…いい絵だな…」
内心でガッツポーズをとりながら、サーニャは涼しげな顔をしている。
「気にいった?」
「うん。なんて言うか…サーニャが綺麗だな…」
「この画家さんね、この絵をエイラに貰って欲しいんだって言ってたわ」
エイラが必死の形相で振り向いた。
「えっ! いいの? これを本当に私が貰ってもいいの?」
「私もエイラに貰ってもらうのが一番良いと思う」
「そうか、この絵は家宝として孫の代まで大切にする」
「うん。きっと私達の孫も喜ぶと思うわ」
「えっ?」

「戦争もいつかは終わる。いつの日か私も年老いて、この手に孫を抱くことになるのね」
サーニャは感慨深い気持ちでいつまでも絵を眺めていた。

345サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 10:14:23 ID:kyCPAeeI
【模擬訓練】1/3


宮藤は午前の模擬訓練が終了すると、真っすぐにサーニャの所に向かった。
「ねぇ、エイラさんって弱点ないのかなー?」
宮藤の服はペイント弾のインクでベトベトに汚れている。
「いくら撃っても予知魔法で読まれちゃって全然当たらないんだ。エイラさんズルいよ。
サーニャちゃんならエイラさんの弱点知ってるんでしょ?」
「知ってるけど…」
サーニャは少し困った顔をして続けた。
「エイラの弱点を教えることは出来ないわ。だってそれはエイラを裏切るのと同じことだもの…」
宮藤は一瞬ハッとした顔をすると頬を赤く染めて恥いるように下をむいた。
「そ、そうだよね。ゴメンね変なこと訊いちゃって…」
宮藤につられるようにサーニャも頬を赤らめてうつむく。
「ううん。こっちこそ役に立てなくてゴメンね…」

346サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 10:14:41 ID:kyCPAeeI
【模擬訓練】2/3


午後の模擬戦でサーニャはエイラと対戦することになった。
後ろから執拗にマークしてくるエイラを魔導針で補足しながら、サーニャはぼんやりと宮藤のことを考えていた。

「芳佳ちゃん…エイラを撃墜する方法は本当は沢山あるの。
一つ目は予知しても避けようのない攻撃をする方法。例えばペリーヌさんの雷撃みたいに。
二つ目はエイラの魔法力が消耗するのを待つ方法。鋭い攻撃を続けて予知魔法をずっと使い続けさせる。
三つ目はエイラに予知魔法を使わせない方法。心理的な揺さぶりを掛けるなどしてエイラの集中力を撹乱する。
そして四つ目は…」

サーニャは目の前に浮かぶ大きな雲に飛び込んだ。

347サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 10:17:39 ID:kyCPAeeI
【模擬訓練】3/3


サーニャを追ってエイラも雲の中に飛び込んだ。濃密な雲の中は、まるで視界が効かない。
追撃を諦めて雲から抜け出そうとしたエイラは突然顔色を変えた。
「ま、まずい!」
狼狽したエイラの腹部と右肩にサーニャのペイント弾が直撃した。
困惑するエイラに次々とペイント弾がヒットしていく。

「四つ目は…エイラの予知した光景を利用する方法。
エイラは少し先の未来の光景を見ることが出来るわ。
でも濃密な雲で視界が遮られてる状態では、エイラの見てる未来の光景も雲に遮られている光景でしかないの。
エイラは自分が撃たれた場面を知る事はできても、弾がいつどこから何発飛んできたのか『見る』ことは出来ない…
だから、エイラはどの方向に逃げれば良いのか分からないし、予知魔法で逃げる方向を検証してる時間的余裕もないわ。
でも私にはエイラの正確な位置が見えるし、エイラが何を予知しているのか『見える』…」

サーニャは軽いため息をつくと沈んだ表情で呟いた。
「もちろんエイラは私が相手だから手加減してるわ。でもねエイラ、私も手加減してるのよ。
私が本気なら、雲の中に誘い込むようなまどろっこしい真似はしない。
最初からナパーム弾を使って、エイラの周囲1キロ四方を一瞬で火の海にしてるわ」

348サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 10:21:57 ID:kyCPAeeI
【SHE/みっちゃん編】


遠い風が運んだエアメール
ぎこちない綴りの宛名書き
ポトリと落ちた一枚の写真
あなたと伝説の魔女たち 501部隊に溶け込んだあなたの笑顔

あなたの全てを変えた土曜のベースキャンプ
制服を着替えて お洒落をして ピアスをして 二人で急いだ

Dear my best friend
元気でいて 見知らぬ空の下
Dear my best friend
泣き虫のあなた 海を飛び越した

あのころ語り合った夢
現実はそんなに上手く行かないね
あなたの活躍を聞いてから
本気で夢を追うことなんて
今は忘れてしまいそう

ニュースが伝えるあなたの活躍を見ていた
手の届かぬ場所へと あなたは行く
わたしは ただ ただ立ちつくした

Dear my best friend
覚えてるよね 壁の落書きを
Dear my best friend
時間が落とした小さな忘れ物
Dear my best friend
幸せそうな写真をふせる
Dear my best friend
元気でいて 見知らぬ空の下
Dear my best friend
泣き虫のあなた 海を飛び越した

349サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 10:23:35 ID:kyCPAeeI
>>348はSSじゃねーな。プリプリの名曲を改竄したものだわな。まぁ良いか…

350Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/02/12(土) 10:29:00 ID:nqEBa8jM
おはようございます!Hwd8/SPpです。

>>315-347
いやあ…やはりエイラーニャ人気はスゴいですね!読んでいてとても勉強になります!

話は変わりますが、2008年11月26日にn7rMsqmD様が書かれた「ウィッチーズ劇場シンデレラリーネ」という作品が大好きです。しかし、未完なため続きはどうなるのだろう…?とずっと思っていたのですが…。
なので誠に勝手ではございますが!続きを自分が書きました!…勝手な行動をお許しください;;


【ウィッチーズ劇場 シンデレラリーネDX】

(語り手:ミーナ)

むか〜しむかし…あるところにリネットという胸が大きい、可哀想な女の子がいました。
リネットのお母さんは生まれてすぐに死んでしまい、お父さんはミーナというカールスラント人と再婚しました。

「たっ、隊長がお母さんだなんて…っ」
「リーネちゃん!!もう物語始まってるよ!!;;」

ゴホンッ…ミーナには、トゥルーデとエーリカという2人の連れ子…ちょっと!私まだ18よ?!

「ミーナ、落ち着け」
「でも美緒!」
「愚痴なら後でたくさん聞いてやる」
「…もう…」

連れ子が2人居て、お父さんが生きているうちは仲良くしていました………が!
お父さんが死んだ途端、ミーナは財産を全て自分達の物にしてリネットには襤褸を着せて、まるでメイドの様にこき使っていました…。

「まるで鬼ね…」
「いやあ、ミーナ合ってるかもよ〜」
「…エーリカ、後で私の部屋に来なさい…」
「ってエイラが言ってた」
「わっ、私カヨッ??!!」

そして、トゥールデとエーリカはいつもリネットを虐めていました。

「ゴホン…リーネ、スマン…これはセリフなんだ。きっ、貴様…なんてけしからん乳をしているんだ!」
「アハハ…どーしてロクな物を食べていないくせにおっぱいが大きいんだろうね…トゥルーデ姉さん♪…あ、お姉ちゃん」
「その言い方はやめろ!!!」

そしてトゥルーデとエーリカはいつものようにリネットの胸を、まるでパン生地の様にこねくり回して弄んでいました。

「ひひひ…どうだどうだ〜っ!」
「やめて下さい…トゥールデ義姉さん、エーリカ義姉さん………ちょっとハルトマンさん、台本では『フリ』だったのに本気で揉むのはやめてくださ〜い(泣)」
「あ、ミー…お母さんが帰ってきた!」

351Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/02/12(土) 10:30:58 ID:nqEBa8jM
>>350の続き。

ドレスの包みを抱えたミーナが帰ってくると、トゥルーデとエーリカに向かってこう言いました。

「明日、お城で舞踏会があります。ひょっとすると、芳佳王子の目に留まるかもしれません!二人とも、頑張っておめかしして舞踏会に備えましょう!」
「みやふ…芳佳王子が私のモノに!よし…芳佳…よしっ…よしホーッ、ホアーッ、ホアアーッ!!!!」
「トゥルーデ落ち着いて!!;;」

「お義母様…ドレスの包みが3つありますが…」
とリネットはミーナに聞きました。

「これは私の分です。もしかしたら美緒国王の目に留まって側室に…(ジュルリ」
「うわ〜、ミーナ半分マジだよ…」
「そうそうリネットさんにはカラス豆を選別して貰います」

リネットはがっかりしました。

「リネット!さぼったら承知しないからな!」
「けっこう毛だらけ〜リネット灰だらけ〜♪」
「…ぐすっ」

2人の義姉はリネットに追い討ちをかけるような事を言い、包みを抱えて自分達の部屋に向かいましたとさ…。

352Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/02/12(土) 10:32:36 ID:nqEBa8jM
>>351の続き。

そして舞踏会の夜…リネットはかわいそうに1人残って泣きながらカラス豆を選別していました。

「残らせたのはミーナじゃ〜ん」
「だから黙ってろ、エーリカ!」
「へ〜い…」

「ああ、わたしも舞踏会に行きたいわ。芳佳ちゃ…芳佳王子さまに、お会いしたいわ」

でも、シンデレラのボロボロの服では舞踏会どころかお城に入る事も許されません。
その時、どこからか声がしました。

「泣くのはおやめなさい!!!!」
「キャッ!?不法侵入!!??」

「現実的ダナ、このシンデレラ…」

「だっ…誰ですか?」
「私はペリーヌ。誇り高き妖精ですわ!」
「リーネさん、アナタははいつも仕事をがんばる、とても良い子ですね。そのごほうびに、このワタクシが舞踏会へ行かせてあげましょう………あんな38歳に坂本少佐を取られるだなんてたまったモンじゃありませんわっ!!」
「あは…あははは」

…ペリーヌさん、後で私の部屋に来てくださいね。

「ゴホン…ではリネットさん、畑でカボチャを取ってくださいまし」
「はっ、はい!」

魔女に言われた通り、リネットは畑からカボチャを取って来ると魔女はそのカボチャを魔法のつえで叩きました。

「トネール!…ラピエルッ!!!!」

凄まじい雷光とともに、そこには………

「ウジュー…私はシンデレラ役やりたかったよぉ〜!」

カボチャがどんどん大きくなり、何と黄金の馬車(正確にはルッキーニさんがカボチャの着ぐるみを)になったではありませんか!

「あつい〜あ〜つ〜い〜」
「ゴメンね、ルッキーニちゃん…後で冷たい飲み物作ってあげるね…」
「なんでぺったんこが継母役じゃないの〜?」
「なっ!!しょうがないでしょう!!それに何です?!そのあだ名!!」
「ぺったんこはぺったんこじゃ〜ん」
「2人とも!!今は…ケンカはよした方が…」

ゴホンッ…ペリーヌさん、続けて。

「ごめんなさいわ、えと…まだまだ、魔法はこれからですわ!さてと、馬車を引くには馬が必要ですわ。その馬は、どこにいるのかしら?」

すると魔女はポケットからウサギを取り出しました。そして先ほどと同じように、

「トネール!…ラピエルッ!!!!」

凄まじい雷光とともに、そこには………

「えと…この扱いは流石に酷いと思うんだけどなあ…」

ウサギは立派な白馬(正確にはシャーリーさんが馬の着ぐるみを)になりました。

「これって特別手当出るんだよな?隊長」

え、ええ…まあ…シャーリーさん!今はこれに集中して!

「おっといけね、ヒッ…ヒヒ〜ン!!」
「さあリーネさん!これで舞踏会に行く仕度が出来ましたわよ」
「うれしいです!ありがとうございます!…でも、こんなドレスじゃ」
「あぁ、もう!一度で仰いなさい!もう!」
「す…すいません…」

魔女がまた杖を叩くと、みすぼらしい服はたちまち輝く様な純白の美しいドレスに変わりました。
同時に、小さくて素敵なガラスのクツもくれました(ここ、重要!)。

「さあ、楽しんでおいでませリーネさん。でもワタクシの魔法は12時までしか続かないから、それを忘れないこと」
「わかりました〜!ペリーヌさ〜ん、ありがとうございま〜す!」

そうして、リネットは馬車に乗り芳佳王子の居るお城へ向かいました…。

353Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/02/12(土) 10:34:12 ID:nqEBa8jM
>>352の続き。

その頃、お城ではダンスパーティーが催されていました。

「ウジュー…私たちは一人何役なの〜?」
「がーまんだ、ルッキーニ」
「と言うか私もダゾ…それにしてもサーニャ、ドレス似合ってるゾ!」
「エイラも…タキシード服似合ってる…」
「…お2人さん、イチャつくのはロビーでやってくんないかなあ?」
「ねえシャーリー!あそこにあるオードブル食べようよ〜」
「そうだなあ………って、ペリーヌ!お前いつの間に魔女役からウェイター役に変わったんだ?!」
「うるさいですわねえ…人手が足りないですの!」
「ほえ〜っ…ペリーヌ、胸が小いさいから男の服が似合うね〜!」
「なななな何ですの??!!」

ゴホンッ…
さて、お城の大広間にシンデレラが現れるとそのあまりの美しさにあたりはシーンと静まりました。
それに気づいた芳佳王子が、シンデレラの前に進み出ました。

「うわあ…リーネちゃん、綺麗〜っ!!」
「あ、ありがとう芳佳ちゃ…王子さま…」
「えと…ミーナ隊長、セリフなんでしたっけ??」
「おいミヤフジー、ちゃんと台本読んどけヨー」
「あ、思い出しました思い出しました!!ぼくと、踊っていただけませんか?」

「宮藤宮藤宮藤宮藤宮藤…」
「トゥルーデ、セットの柱が壊れちゃうよ…そんなしがみついたら…」

リネットはとてもダンスが上手でした。
王子はひとときも、シンデレラの手を離しません。
楽しい時間は、あっという間に過ぎてハッと気がつくと12時になる15分前です。

「あっ、いけないわっ!…おやすみなさい、王子さま」
「えっ、リーネちゃん??!!」

リネットは丁寧にお辞儀をすると、急いで大広間を出て行きました。
ですが、慌てた拍子にガラスのクツが階段にひっかかってガラスのクツが脱げてしまいました。

「あっ!!」

12時まで、あと5分です。
カラスのクツを、取りに戻る時間がありません。シンデレラは待っていた馬車に飛び乗ると、急いで家へ帰りました。
シンデレラの後を追ってきた王子さまは、落ちていたガラスのクツを拾うと王さまに言いました。

「ぼくは、このガラスのクツの持ち主の娘と結婚します」
「わっはっは…そうか宮藤ぃ!なら結婚する前に訓練だぁ!」
「えぇぇっ??!!さっ、坂本さん…」

354Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/02/12(土) 10:34:49 ID:nqEBa8jM
>>353の続き。

次の日から、お城の使い(エイラさんとサーニャさん)が国中を駆け回り、
手がかりのガラスのクツが足にぴったり合う女の人を探しました。

「ムリダナ」
「エイラ…」
「だって王子もムチャ振りダゾ?こんな何千軒もあるのに…」
「私も手伝うから…」
「キョ、今日ダケダカンナー」

そしてお城の使いはリネットの家にもやって来ました。

「さあ2人とも!このクツが足に入れば、あなたたちは王子さまのお嫁さんよ」
「うわあ…ミーナ、お母さん役が染みついてるね」
「………っ」
「おおおいエーリカ!!どれどれ!私から履いてみよう!!」
「…お願いだからトゥルーデ、履く『フリ』をしてよ?魔力解放とかして壊さないでね」
「…;;」

二人のお姉さんたちは小さなガラスのクツに足をギュウギュウと押し込みましたが、
どう頑張ってもガラスのクツは入りません。

「わ〜無理だ〜(棒読み)」
「残念ながら、この家には昨日の娘はいないようダナ」

そう言ってお城の使いが帰ろうとした時、リネットが現れて言いました。

「リーネさん、どうぞ…」
「何をバカな事を言っているんだ!!」
「えと…そうよ、あたしたちにも入らないのにあんたなんかに(棒読み)」
「もっと力を入れて演技しろ!」
「え〜…だってだんだん面倒くさくなってきたんだも〜ん」
「あ…」

すると1人の使いが小さな声をあげました…

「当たり…ダナ」

リネットが履いてみると、ガラスのクツはピッタリです。
みんなは驚きのあまり、口も聞けません。

するとそこに、ペリーヌさん扮する魔女が現れます。

「あらあら、わたしの出番ですわ」

魔法の杖を一振りすると、リネットはたちまち眩しいほど美しいお姫さまになっていました。

「「「あっ、あのリネットが??!!」」」
「………バルクホルン大尉、今ちょっとタイミングがズレたロ?」

お母さんと二人のお姉さんたちは、ヘナヘナと腰を抜かしてしまいました。
それからシンデレラは王子さまと結婚して、いつまでも幸せに暮らしました。

めでたしめでたし………。


***

355Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/02/12(土) 10:36:04 ID:nqEBa8jM
>>354の続き。




「…やはりやめましょう」
「えぇっ??!!」
「うん、そもそも主役がリーネって時点で地味なんだよね〜。やっぱ主役はこのエーリカちゃんじゃなきゃ」
「酷いです、ハルトマン中尉」
「じゃあ私やる〜っ!!!!」
「ルッキーニはカボチャの馬車役でじゅうぶ〜ん」
「はああ…」

リハーサルの終えたステージにて、ミーナはその場で座りこむ。

「地域貢献の一環として、近隣の村の子供に見せようと思ったけど…こんな劇は見せられないわ!」
「わっはっは、ならば私が能を舞おう」
「え?!坂本さん、舞えるんですか??!!」
「舞えん!」
「と言うか、おっぱい揉む童話なんて聞いたことないわ!!」
「しかし、ミーナ…予算かけてセットや小道具を作ったんだぞ?」
「中止よ、中止!」
「私とエイラが協力して台本書いたのに〜」
「そうダゾ!本来はもっとリーネがあんな目やこんな目に遭うシナリオだったんダゾ?!」
「エイラ…」
「………頭痛いわ、私は横になってます。それと、エーリカとペリーヌさんは後で私の部屋に来なさい」




【おわれ】



以上です。書いててスゴい楽しかったです!
何か不都合等がありましたらご連絡お願いします。

356名無しさん:2011/02/12(土) 11:04:51 ID:fC7sHxpQ
>>315-347
短編集かな、乙。雰囲気すきだった
あんまり長いのはあぷろだにテキストでまとめた方がいいかもな

>>355
コメディおもしろかった乙

357サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 18:05:15 ID:kyCPAeeI
【Magic Waltz】

基地にはピアノが設置されている。ミーナ隊長の趣味で用意されたピアノだ。
暇があるとサーニャは、このピアノに張り付いて延々と曲を弾き続ける。
有名なクラシックからジャズ、ポップスに至るまで何でもこなす。気分のままに即興で曲を作る事も多い。
エイラはサーニャのピアノを聴くのが好きだった。

気だるい日曜の午後、エイラはピアノの音に誘われて音楽室のドアを開けた。
「ここにいるのかサーニャ?」
部屋の中を覗き込んだエイラが絶句した。
サーニャのピアノに合わせて、無数の花びらが部屋の中を渦を巻いて舞っている。
「な、なんだコレ?」
そよ風に舞う無数の花びらを目で追いながら、エイラはサーニャの隣に腰を下ろした。
「どう? 素敵でしょ?」
ピアノを弾きながらサーニャが尋ねた。
「うん…でもコレは?」
「Magic Waltzという曲よ。1900という名前の人の曲」
「いや、曲名じゃなくて…」
言いかけたエイラが部屋の片隅に目を留めた。
「ハルトマン…?」
部屋の隅でハルトマンがクスクスと笑っている。
「気づくのが遅いよエイラ」
「何やってんだ、こんなとこで?」
「演出。Magic Waltzって曲にピッタリでしょ?」
「うぐぐ…確かに悪くはない」悔しそうにエイラが言う。
「村の人達に招待されて、次の日曜日に公民館で演奏することになったの。その練習よ」
サーニャが慌てて説明した。
「地域貢献の一環ってやつ。ミーナ隊長の命令でもあるんだよ」ハルトマンが補足する。
「そうか、それなら私も協力するぞ!」
「いいけど、エイラは何か楽器が弾けるの?」ハルトマンが意地悪そうに言う。

「私はDJ兼MCパーソナリティをやる! スターライトストリームで慣れてるから安心していいぞ」
「えっ?」

358mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/02/12(土) 21:50:42 ID:Vrkwrbm2
>>サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk様
GJです。短編集ですかね? どれもステキです。凄い量に圧倒されました。

>>355 Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA様
GJ! 相変わらずのハイテンションぶりが面白かったです。


こんばんは。mxTTnzhmでございます。
軽く思い付いたネタを、短く文章化してみました。
ではどうぞ。

359memory and record:2011/02/12(土) 21:51:37 ID:Vrkwrbm2
 風の無い穏やかなある日の事。兵舎の窓のひとつを開け放ち、外を見るビューリングの姿があった。
「ビューリングさん、こんな所で一体何を?」
「ちょっとな」
 煙草の火をくゆらせ、どんよりと曇った空を眺める。
 しばしの沈黙。エルマはビューリングの背後に立ったまま。ビューリングはそんな彼女の表情を振り返って見る事も無しに、ぽつりと言った。
「あいつの……」
「えっ?」
「昔の話さ。ライバルだった奴が居るんだが……そいつが戦死してな」
「そうなんですか。お気の毒に……」
「今日はそいつの命日なんだ」
「……」
 冷たい風が、軽く窓を通して部屋に入ってくる。お構いなしのビューリングは、煙草をくわえ、言葉を続けた。
「ここには墓も無いし、思い出すものと言えばあいつの小憎らしい顔位。でも、せめてもの手向けに、思い出す位はしてやらないと」
「十分ですよ。だって、覚えていてくれる人が居るって事は、それだけ覚えてる人に愛されてるって事ですから」
「エルマは優しいな。無条件にそう思えるなんて」
「えっ……違うんですか」
 ビューリングは何も言わずに、もう一本煙草を取り出すと火を付けた。
「私は……」
 エルマの方を振り向き、ビューリングは独り言の様に呟いた。
「ネウロイとがむしゃらに戦って名誉の戦死を遂げるか……一人生き残って恥を背負うか」
 エルマは黙り込んで、ビューリングの顔をじっと見た。
「私にはどっちも出来ん。せいぜい、馴染みの顔を思い出して……」
「そうやって、いじけてるの良くないと思います」
 毅然とした表情のエルマ。
 珍しい。
 ぴくりと眉を動かして反応を見る。エルマは彼女なりに、必死に訴えかけている。
「亡くなった方を弔うのはとても大事な事です。でも、貴方には……」
「分かってる。生きて恥を背負ったまま、今の仲間を守るさ。私にはそれしか出来ん」
 煙草の火を消し、エルマの顔をじっと見る。
「それなら、良いんです」
「エルマに納得された」
 少し驚くビューリング。
「もっと、今の貴方を、今の私達を、大事にしてくれれば、それで良いんです」
 エルマはそう言って、一歩踏み出した。
「分かってるさ」
 ビューリングは、エルマをそっと抱きしめた。ごく自然な感じで。
 一陣の風が、二人を包み、抜けて行く。
 ビューリングは鈍色の空と太陽を窓越しに見上げた。
 エルマは彼女の悲しそうな目を見た。やがて、彼女の瞳が自分のそれと重なる時、悲しみは薄れ、希望にも似た光を湛えている事に気付く。
「そうだな。私は……」
 言いかけたが、エルマにぎゅっと抱きしめられ、ビューリングは答えが出なかった。でもそれで良かった。
 居なくなった者を慰めているつもりが、逆に慰められるとは。でも、それで……。

end

360名無しさん:2011/02/12(土) 21:51:48 ID:Vrkwrbm2
以上です。
ビューリングさんは何処か引きずってる感じがして
それをエルマさんが頑張って癒してあげたらと思います。

ではまた〜。

361名無しさん:2011/02/12(土) 21:52:44 ID:AySEBkRw
何処かに載っていたSSにサーニャスレに投下されたやつの転載オンパレード
ついでに百合としては喧嘩売ってるやつまで・・・
荒らしはどっか行ってくれないか

362名無しさん:2011/02/12(土) 21:56:39 ID:AySEBkRw
NG→ID:kyCPAeeI

363サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/12(土) 22:16:39 ID:kyCPAeeI
>>361
荒らしてるつもりは無いけど厳しいな。まぁでも駄目なんだろうな。
ハルトマンを主人公にしたSSも考えてるけど、長くなりそうだし百合でもないしないしな。

でも、せっかくだから触りの部分だけでも投下させてくれ。


【ホムンクルス計画】


『ナチズムを政治運動としか理解せぬ者は、実は何も知らないに等しい。ナチズムは宗教以上のものだ。
それは新しい人類創造の意志である。自分とその組織は、新人類を創造する使命を受けているのだ』
〜アドルフ・ヒトラーの談話より抜粋


1929年、私はカールスラントの施設で産れた。ナチスの前身であるトゥーレ協会を母体とする大きな研究所だ。
後にトゥーレ協会はナチスに疎まれて排除されることになるが、その思想は確実にヒトラーの中に残された。
すなわちアーリア民族主義。ハインリヒ・ヒムラー長官はこれを自身のオカルト思想と結び付けて、様々な秘密
結社を立ち上げていた。一般に知られる「レーベンスボルン(生命の泉)計画」は、人口増加と純血性の確保を
目的とした母性養護の福祉機関だと言われているけど、本質的には人種改良計画の一翼を担っている。
だけど、それは深い闇に閉ざされた全体の中の一部でしかない。
それより遥か以前に積極的優生学に基づく「本当の人種改良計画」の研究は始まっていたんだ。

私の産れた研究施設もその中の一つだった。
目的は『高レベル魔法力を持つ魔女の遺伝子を解析し、人工的にレベル5以上の魔女を量産する』こと。
研究所の人達はそれを「ホムンクルス計画」と呼んでいた。
当初の研究はネウロイの出現とは何も関係はなかった。それは純粋にナチスの思想に基づくものだった。
ネウロイの出現以降、研究は対ネウロイの戦略的な軍事研究へと変貌していく。

親愛なるトゥルーデ。何から話して良いのか未だに気持ちの整理がついていない。
私はこれから「ある行動」を起こさなくてはならない。私の行動に賛同してもらうつもりはない。
ただ、私が行動しなければならないという事を理解してほしい。
カールスラント総統のヒトラーの動向がはっきりした。あいつは私達がカールスラント奪還作戦を決行する日に
すぐ近くまで来る予定なんだ。本当にすぐ近くまで、私の手が届きそうな距離に。

親愛なるトゥルーデ。あなたがこの手紙を読み終える頃には、全ての決着がついているだろう。
どのような結末を迎えることになったとしても、私はトゥルーデと出会えた事を神に感謝したいと思う。

364名無しさん:2011/02/13(日) 00:02:55 ID:Smzv2GJY
ううん、読むのが間に合わない。
2月13日の祭りに巻き込まれる前に投下するつもりだったんだけど、>>363のつづきは大丈夫なのかな?
なければ短めのを投下したいんだけど。

365名無しさん:2011/02/13(日) 00:06:09 ID:2JIf5OhM
ここは『避難所』ですよ〜

366サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk:2011/02/13(日) 00:12:00 ID:VrhkGu5s
>>364
もう辞めとくから大丈夫ですよ

367zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2011/02/13(日) 00:28:40 ID:Smzv2GJY
>>366
そうなのですか…。
個人的にはここに投下しにくいないようでしたらpixiv小説などへの投下もアリじゃないかと思います。

今日が誕生日のキャラとは全然関係なくてごめんなさい。
真美とおケイさんネタです。

368zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2011/02/13(日) 00:33:38 ID:Smzv2GJY
●トブルク1943 まみちゃんがおっぱ(ry

「うん、しょ……っと。ケイさん、書類はココでいいですね」
「……ええ、ありがとうね、真美」

 冷え込みのきつくなる夜。
 お使いを色々頼まれて辿り着いたテントの中、ケイさんは書類に埋もれていた。
 そんなところに更に書類束を持ってきたものだから流石のケイさんも「うえー」って表情になる。
 そうはなるけれど、お使いを頼んだ対象であるわたしなんかにしっかりと「ありがとう」という感謝の言葉を作れるのは本当に大人だなぁと思う。
 そんなケイさんにわたしが出来る事は……そうだ。

「あの、ケイさん」
「なぁに? 真美」
「肩、凝ってませんか?」
「あら、もしかして」
「はい、デスクワークで疲れているでしょうし、よろしければ肩揉みでもと思いまして」
「嬉しいわね。じゃあ、お願いしてもいいかしら? すこし休んだ方が帰って効率上がりそうだし」
「はいっ」

 そんなわけで背もたれのある椅子に腰掛けたままのケイさんの肩をもみ始める。
 まずは様子見で軽く揉みながら全体を把握します。
 うん、とっても硬い。
 肩の上のラインから肩甲骨の間辺りの辺りがガチガチになっている感じ。
 これは、もしかするともっと下の方まで固くなっているかも。

「ケイさん、ちょっとお願いがあるんですけれど」
「ん? どうしたの?」
「ええと、逆向きに椅子に腰掛けられませんか」
「あら、ずいぶんと本格的になってきたわね。いいわ……よし、これでいい?」
「ありがとうございます」

 背もたれ側を抱くようにして座りなおしたケイさんの肩から背中にかけてを改めて触る。
 結構下の方まで背骨の両側とか、肋骨よりも下の辺りの腰に硬さがある。
 わたしの武器の調達とか、偉いおじ様達に言えば色々持ってきてくれてるみたいだったけれど、代わりに裏では山のような書類が発生してたんですね。
 その書類処理のためには結局隊長であるケイさんが机に縛り付けられて頑張ってる。
 そんな頑張ってるケイさんの為に、わたしも頑張って肩揉みします!
 軽く揉みながら大体の状態を確認できたので、次は懲りの頑固そうな所を中心に軽く叩いてほぐして行きます。
 とんとんとん……。
 子供っぽいわたしからすると羨ましさを覚える様な女性らしいラインのケイさんの背中を、軽く作った握りこぶしでリズミカルに叩いていく。
 その後は手のひら全体で硬さの残る辺りをさするようにして揉み、最後に指で押していく。
 で、当のケイさんなんですが……さっきから「んっ」「ああっ」「あんっ」「そこぉ」と、なんだかもしかすると声だけ拾ったらすごくヒワイな事になっている気もします。
 ちょっと、こっちまでドキドキしてくるかも……。

369zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2011/02/13(日) 00:36:01 ID:Smzv2GJY
 指先の感覚としてはまだまだ凝りは奥深いけれど初めに比べると柔らかくなってきていて、すこし汗ばんでも来た様なので、あとあとのもみ返しのことを考えるとこのくらいで止めておくのがいいかもしれません。

「とりあえず、このくらいでしょうか?」
「はふぅ……、あら、もうおしまい?」
「はい、あまりやりすぎると却ってもみ返しで痛くなるかもしれませんし、もう30分近くたっています」
「あら、そうだったのね……私とした事が」
「でも、もっと続けてほしいほど気持ちよかったのなら幸いです」
「ええ、すごく良かったんでまた今度も頼んじゃおうかしらね」
「はい、是非!」

 椅子に座りなおしながらそう言って微笑みかけてくれるケイさんに対して、二つ返事を返した。
 悦んでくれて笑顔が見れる上に、なんだかちょっと普段聞けないような声を聞かせてもらえるのはこちらも幸せなので、それは非常にありがたい申し出だと思ったから。


 ――――。
 と、そんな事が数日続いたある日。

「ふぅ……真美、帰る前にちょっといいかしら」
「はい、何でしょう?」
「肩揉みの後で申し訳ないんだけど、ちょっとお願いがあるの。あなたの魔法で、試してみたい事があるのよ」
「試したい、事?」

 いつに無く真剣なケイさんの眼。
 その迫力に押されるようにして、私はゆっくりと頷いた。

「まずは……そうね、この椅子をこうして……」

 ケイさんは立ち上がると別の椅子を持ってきて、自分の椅子の後ろにそれを置いた。

「ねぇ真美、あなたの固有魔法って見た目は怪力だけれど、実際は対象物の軽量化なのよね」
「は、はい。そういう風に聞いています。自分ではよくわかりませんが」
「それって言うのは、多分だけど、自分が重量を感じた対象を軽くしているって認識でいいのよね」
「はい、多分」
「よしっ!」
「きゃっ」

 ケイさんはわたしがびっくりするほど気合を入れると、自分の椅子に座る。

「真美、後ろの椅子に座って」
「はいっ」

 言われるままに後ろの椅子へと座る。

「椅子はぎりぎりまで前に出して……私にくっつくような感じで……そうよ。そのまま腕を前に出して」
「はい。こう……ですか?」
「ええ、いいわ……うん、これで……」

 むにゅ。

「えっ!?」

 ケイさんの胴体の前側に回した手のひらになんていうかこう……重量感のある柔らかいものがっ……ごくり。

「真美、魔法使ってみて」
「えっ……あっ、はい!」

 言われるがままに魔法を使い、手に余る「にくまんじゅう」の重量感を消し去る。

「お、おおおおっ!」
「ひゃ」

 ケイさんが変な声を上げたので驚いて思わず手を引っ込める。

「あ、真美」
「すすすすいません!」
「驚かせちゃってゴメンね、真美。ね、もう一度お願い」
「えと……あの、いいんですか?」
「私からお願いしてるのよ。都合悪いなら仕方が無いけれど……」
「い、いえいえっ、そんな事はありません!」
「じゃあ」
「はいっ」

 生唾を飲み込みつつ、ケイさんの脇の下から腕を通し、もう一度胸に触れ、大きくて柔らかいものを掴む。
 程よい重量感を少しだけ堪能してから魔法を込め、重みを消し去った。

「うう~ん。やっぱり軽いわ~」

 軽く頸をかしげるようにして回しながら嬉しそうに呟くケイさん。

「そ、そんなに違うんですか?」
「ええ、かなり違うわ。暫くこうしてもらっててもいい?」
「はい……って、えええ!? あの、いいんですか?」

 暫くこうするっていう事は、わたしがずっとケイさんのおっぱを、こう……鷲づかみに状態を維持するという事でして……つまり、なんというか、すごく幸せな気分になってきました。

「え? 私がお願いしてる側よ。魔力も消費してもらってるわけだし、疲れてたり何か他に用事があるんだったらあなたの事を優先して頂戴」
「めめめ滅相もございません!」

 こんな機会は逃せません!
 でも、下手を打って失礼にならない様にしないといけませんね。

「あら、ふふふ……すこしなら揉んだりして触り心地を楽しんでくれてもいいのよ」

370zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2011/02/13(日) 00:38:12 ID:Smzv2GJY
「ええっ、ほほほほんとうですかっ!?」

 ううっ、思わず大声で反応してしまいましたが、そんな嬉しい事を言われても欲望に流されるわけには行きません。
 こうして触れているだけでも鼻血が出そうなくらい幸せなのに。

「えっと、あの……大丈夫です。変な事はしませんので、お仕事の方を進めてください」
「そう、真美は真面目ね。じゃ、お言葉に甘えて書類を片付けちゃうわね」

 ケイさんが机に向かって集中し始めた。
 私の手のひらにはただ重量ゼロでひたすら柔らかい、例えるなら綿菓子のようなケイさんのおっぱいがあって、その存在感と体温を私へと伝えてくる。
 わたしはと言えば少し、いえ、かなりドキドキしていたりします。
 この胸の過剰な高鳴りを気付かれていないか心配になるけれど、なるべく呼吸の間隔を浅く長くしてハァハァ言わないように制御。
 無意識に手のひらへと感覚が集中して、このまま手をぐーぱーとは言わないまでも微妙に動かしてというか揉みしだいて、もっと柔らかさを堪能してみたいという欲求が盛り上がる。
 そんな邪な思考を難しい事とかを考える事で何とか押さえ込もうとするけれど……うう、やっぱり手のひらの中の存在感が大きすぎて無理っぽいです。
 どうにか意識を別のものに向けられないでしょうか?
 落ち着き無く周囲を見回していると、視線が止まったのはケイさんのうなじ。
 ああ、まずいです。
 さらに肩揉み中の色っぽい声が勝手に脳内で再生され始めました。
 これは、これは泥沼……。
 なんだか頭がくらくらとしてきました。
 あれ? 目の前が、暗く……。


 ――――。
 なんだか私を呼ぶ声が聞こえる。

「真美、大丈夫?」
「んっ……。あれ? ケイさん?」

 目を覚ますと白い布地の盛り上がりの向こうにケイさんの顔があって、心配そうに私を覗き込んでいる。
 後頭部にも体温。
 この姿勢って……膝枕?

「よかった。目を覚ましたのね」
「一生懸命になってくれるのは嬉しかったんだけど、私の頼みだからってそんなに消耗するほど頑張らなくて良かったのよ」

 あれ、なんだか誤解されている気がします。

「え? あの、いえ……そういうわけじゃなくて……」
「でも、本当に助かったわ。調子がいいときとかにはまたお願いしてもいいかしら」
「は、はいっ! 勿論です!」

 口の中でゴニョゴニョと言い訳のようなそうでない様な事を言おうとするも、笑顔で膝枕な上に頭を撫でてながら優しくそう言うケイさんの前にはそうとしか答えられず、何となく手のひらに残る柔らかい体温を反芻する事しか出来なかった。



 後日、どこかからその話が流れてポルシェ少佐やマイルズ少佐のデスクワークにもお付き合いするようになるのは別の話です。

371zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2011/02/13(日) 00:40:17 ID:Smzv2GJY
以上となります。
誕生日とかバレンタインとか色々飽和してるうちに全く別のネタが出てきてしまうという……。
たくさん投下されてるSSはこのあと読ませていただきます~。

372名無しさん:2011/02/13(日) 01:12:09 ID:ILZMdGKE
>>371
GJ! マミも遂にマイスターに!w

373名無しさん:2011/02/13(日) 15:30:48 ID:ZiFWP486
>>371
GJ

3745uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2:2011/02/13(日) 23:14:22 ID:5QMwXOUo
>>315 サーニャ補完計画実行委員 ◆HbpyZQvaMk様
GJです。素敵な短編集をありがとうございます。こういう雰囲気大好きです。

>>350 Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA様
GJです。501のみんなでの演劇、面白いですね〜。
妙にノリのいい501の面々が大好きです。

>>358 mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c様
GJです。シリアスな中にどこか暖かみのある雰囲気が良いですね。
自分もいつかビューエル書きたいなぁ……

>>367 zet4j65z ◆le5/5MRGKA様
GJです。このおっぱいシリーズ、大好きです。
真美ちゃんかわいいよ真美ちゃん。

こんばんは、今日はシャーリーとジュンジュンの誕生日ということで1本書いてみました。
シャッキーニと竹フェルがイチャイチャしてるだけの話です。ではどうぞ

375チョコとロマーニャ娘 1/2:2011/02/13(日) 23:15:03 ID:5QMwXOUo

「シャーリー! あ〜んして」
「へ? あ〜ん……お、美味いなこのチョコ」
「へへー、でしょでしょ〜? リーネが作ってくれたんだよ。もっと食べて〜」

2月13日、今日はあたしの大好きなシャーリーの誕生日。
誕生パーティーも終わって、今はあたしとシャーリーの2人きりの時間。
「いっぱいあるからどんどん食べてね。はい、あ〜ん」
「あ〜ん……うん、甘くて美味しい」
あたしはお皿の上に山盛りに乗ってる一口サイズのチョコレートを1個また1個とシャーリーの口へと運んでいく。
シャーリーはあたしからのチョコを受け取ると、それを1個また1個とテンポよく食べてくれた。
えへへ、やっぱりあたし達って息の合う名コンビだね。

「ところでルッキーニ、なんでこんなにチョコがあるんだ? はむっ」
「えっとね、フェブル……なんだったっけ? とにかく、明日何かの神祝祭があってブリタニアでは
その日は好きな人にチョコレートを贈る日なんだって」
「へぇ〜」
「それでね、あたしも大好きなシャーリーのためにチョコ作ろうと思って、リーネに習って、
試しに何個か作ってみたんだけど……やっぱり初めてだと上手くいかないね」

あたしは、チョコレートの山の底にある形がいびつなチョコをフォークでつつきながら言った。
一目で自分が作ったチョコだと分かるくらいリーネの作ったそれと比べると、見栄えが良くないのが分かる。
でも、シャーリーはそんなこと気にせずにあたしの作ったチョコをぱくっと食べてくれた。
「うん、美味い!」
「本当?」
「ああ。なんてったってルッキーニがあたしのことを想って作ってくれたチョコだからな。
あたしにとっては世界一のチョコだよ」

そう言ってシャーリーは優しく頬笑みながら、あたしのことを優しく抱きしめてくれた。
ぱふぱふで、ふわふわしてて、暖かくて、あたしの大好きな場所。
「ありがと、シャーリー。あたし、今度は綺麗な形のチョコ作ってみせるから、その時はまた食べてくれる?」
「おう、楽しみにしてるぞ。そうだ、こんな話知ってるか? チョコレートって食べ過ぎると鼻血が出るんだってさ」
「え? その話本当なの?」
「う〜ん、あたしも噂で聞いた話だから本当のことはよく分かんないんだけどね」
「あはは! なにそれ〜」
「ははは! ま、こういう時は笑ったもん勝ちってことだよ」
「それもそうだね。あはは……」
あたし達はそれからしばらくの間、2人で笑い合った。

――シャーリー、誕生日おめでとう。
これからもずっと、2人でバカ騒ぎして一緒に笑い合おうね。
あっ、そう言えばジュンジュンも今日が誕生日なんだっけ。
ジュンジュンも今頃フェル達に祝ってもらってるのかな。
あたしはそんなことを考えながら、シャーリーのおっぱいに顔を埋め、眠りの世界へと落ちていった……

―――――――――――

376チョコとロマーニャ娘 2/2:2011/02/13(日) 23:15:56 ID:5QMwXOUo

「竹井」
「なーに、フェル?」
誕生会の後、私は1人で竹井の部屋を訪れていた。
うぅ、なんだかすごく緊張してきたわ。

「その……改めて誕生日おめでとう。これ、私が作ったんだけど良かったら食べて」
「ありがとう……わぁ、美味しそう。チョコレートケーキかしら?」
「うん。今日の誕生会でルチアナが作ったケーキと比べると味は劣ると思うけど……」
「そんなことないと思うけど……はむっ」
竹井が私の作ったチョコケーキをフォークで一口大に切ると、それを口へと運んだ。
「ど、どう……?」
「うん! とっても美味しいわ」
そう言って満面の笑みで微笑む竹井。
「ほ、本当?」
「ええ。良かったらフェルも食べてみる?」
と、フォークで切ったケーキを私に差し出してくる竹井。
あ、あれ? これ、私がプレゼントしたケーキよね?

「はい、あ〜んして」
「あ、あ〜ん……はむっ」
竹井に言われるがまま口を開けて、自分のケーキを食べる私。
豊かな甘みが口の中にふわっと広がって、とても美味しかった。
「本当に美味しいわ……私ったら天才かも」
「ふふっ、でしょ? ねぇ、今度は私にあ〜んして」
上目遣いでそう言う竹井を見て私の胸は一層鼓動を早めて行く。
ちょ、ちょっと何その表情、可愛すぎるじゃない。
オ、オーケーオーケー、落ちつくのよフェルナンディア。
「は、はいあ〜ん……」
「あ〜ん……うん、やっぱり美味しい。じゃあ今度は私の番ね。はい、あ〜ん」
それからしばらくの間私たちは、1つのフォークでお互いにケーキを食べさせ合った。
……まるでリベリオンのおしどり夫婦ね。

「ねぇ、竹井」
「どうしたの、フェル?」
2人で1つのケーキを食べ終わった後、私はベッドに腰掛ける竹井の手をそっと握った。
柔らかくて、暖かみのある私の大好きな手。
「明日って何の日か知ってる?」
「ええ。フェブルウス神祝祭でしょ?」
「うん。パティに聞いたんだけど明日は、ブリタニアでは大切な人にチョコレートを贈る日なんですって。
それを聞いて私、竹井にチョコケーキを作ろうと思ったの。竹井は私にとって大切な人だから……」
私がそう言うと、竹井は使い魔の耳と尻尾を出して私に頬笑みかけてきた。
「へ? ちょっと! なんで使い魔の耳と尻尾を出してるの?」
「ふふっ、フェル可〜愛い!」
「きゃっ!」
竹井ははち切れんばかりに尻尾を振りながら、私をベッドに押し倒した。
ちょ、ちょっと! 色々とマズいんじゃないかしらこの状況。
「ふ、扶桑のウィッチって、みんなこんな感じなの?」
「ふふっ、どうかしらね……」
悪戯っぽく笑いながら竹井は、私の唇に自分のそれを重ねてきた。
彼女の手と同じくらい柔らかくて暖かみのある唇だった。
「あぅ……」
「フェル、大好きよ」
そう言ってもう一度口付けを落とす竹井。
――フェデリカ少佐、竹井って本当に『出来るオンナ』ね……色々な意味で。

〜Fin〜

―――――――
以上です。シャーリー&ジュンジュン、誕生日おめでとう!

377名無しさん:2011/02/14(月) 01:03:56 ID:x34XljVA
>>376
GJ!シャッキーニの安定感と竹フェルの色っぽさがステキ

378zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2011/02/14(月) 19:54:11 ID:pMKONIUQ
こんなん書いていいのかなーと思いつつ、書いてしまったので投下します。

えっちな上にSM入ってます。
痛そうとか熱そうなのが苦手な方はスルーでお願いします。
サーニャxエーリカで、一応バレンタインのネタとなります。

379zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2011/02/14(月) 19:54:27 ID:pMKONIUQ
●ロマーニャ19XX 秘密

 なだらかな曲線の白い素肌へと、深い色のどろりとした液体を、垂らす。

「ッ!」
「熱い?」

 硬いベッドの上に横たわって、苦悶の表情を浮かべる、目隠しをされた金髪ショートカットの少女。

「んんっ……へ、へいき……だか、らっ……続けて、いいよ……さーにゃん」
「返事が、違う」

 あっという間に上気してほんのりと赤みを帯びた丘陵へと、さっきよりも多めに溶けたチョコを垂らす。

「あっ! ああああっ!!!」

 耐え切れずに少女が叫ぶ。
 手足が自由なままにもかかわらず、私のその苦悶の施しから逃げるようなことはしない。
 うん、たまに返事の仕方を間違えるけれど、これは良くしつけられたワンちゃんだと思う。

「ワンちゃんの返事はそうじゃないわ」
「……わんっ、わんわんっ」
「うん、いいお返事にはご褒美」

 ご褒美に、このワンちゃんの大好きなお菓子、チョコを上げる。
 ベッドの横に置かれた台。
 その上の携帯型コンロにくべられた鍋。
 はられたお湯。
 そこに浮かぶもう一つの鍋。
 二重の鍋の中で溶けた熱々のチョコレートを大きめのスプーンですくって、わたしより浅い胸の谷間からおヘソにかけて、垂らした。

「ひっ! うああっ!!」

 目の前の子犬は大きな声をあげながらも肌を茶色で彩られるという行為にシーツを強く掴むことで耐える。

「いっぱい食べていいのよ、ワンちゃん」

 更に断続的に垂らす。
 私よりも控えめな胸も、おヘソのくぼみも、みんなチョコの茶色に染め上げる。

「うぁっ! あっ、つぅ……うあああああああああ!!!」

 熱いチョコを大量にかけられた私のワンちゃんが悲鳴をあげる。
 こういう声を聞くと、とても胸の奥、体の芯の方が熱くなってくる。
 すごく、心地良い。
 目の前であられもない姿を晒す年上の中尉の姿に劣情を煽られながらも、心の何処か冷静な部分が、いつから二人の関係はこうなってしまったんだろうと自問自答する。

 どちらからともなく――ううん、きっと話しかけてくるのはいつもハルトマン中尉だから、彼女の方からだったと思う――お互いの愛する人の話から性癖の話になって、何度かその話題を経る内にお互いに自分の中にある異常な部分に気づいた。
 わたしにはどうやら嗜虐癖があって、ハルトマンさんには被虐癖がある。
 でも、お互い愛する人にそんな事を求める事なんて出来ない。
 わたしは自分が満足するためにエイラにひどいことなんて出来ないし、ハルトマン中尉も自分を大切にしてくれているバルクホルン大尉に自分を傷つけるような事はさせたくない、と。
 そして、ハルトマン中尉が放った言葉「ねぇ、二人で試してみない?」それが発端だった。
 はじめはおしりを叩いたりすることから始まって、ハルトマン中尉の苦悶の表情、痛みと周知のないまぜになった喘ぎに心のそこから興奮を憶えて、今日という日にはこうしてエイラとバルクホルンに贈るために用意したはずのチョコで、こんな事をしてる。

「おっぱいもおヘソも、茶色く染まっちゃった。まるで天使のチョコレート掛け」
「わんっ」

 その甘くて香ばしい色をまとった小さなふくらみの頂点へと、前触れもなく口をつけた。

「ふあっ!? んっ……あぁん」

 ワンちゃんが驚く。
 目隠しをしているのだから当たり前かもしれない。
 わたしはその反応に僅かな満足感を得ながら、あとに続いて響いてくる喘ぎ声と、舌先に広がる甘さをゆっくりと味わう。
 そして、じっくりと舌先と唇を使って優しく甘噛みと愛撫を繰り返した。
 痛みではなく、ただひたすら気持いと思える行為を刻んでいくうち、わたしの唇と口元への汚れと引換に乳房全体のチョコが取り払われ、綺麗になる。

380zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2011/02/14(月) 19:55:06 ID:pMKONIUQ

「くぅん」

 舌を離した事によって寂しくなったのか、ワンちゃんが鼻にかかったような声を上げた。
 大丈夫。
 寂しくないよ。
 もっと、よくしてあげるから。
 左手で優しく頭を撫でた。

「んんっ」

 安心した様に小さく喉が鳴らされた。
 そのタイミングを見計らって、チョコの取り払われた胸へと熱いチョコをぼたぼたと落とした。

「ひぎっ!!!! あつっ! あついよぉっ! あああああっ!!!!!」

 一度火傷して過敏になった場所へのチョコはさすがのワンちゃんでも耐えられずに胸を庇って背を向ける。

「だめよ。いいって言うまで胸をかばっちゃダメって約束だったでしょ」
「で、でもっ……」
「ワンちゃんは人の言葉を話さない」
「う、ううっ……わん」

 少し強い口調で注意するとちゃんとワンちゃんの返事をしてくれる。

「いい子……。いい子にはいっぱいチョコをあげるけれど、約束を守れない子にはお仕置きが必要だよね」
「わんっ」

 頭を撫でながらの言葉には一番素直な返事が返ってくる気がする。
 わたしは暫くそうしてからワンちゃんの脚を持ち上げて開かせた体勢で拘束した。
 拘束する間、ワンちゃんは不安そうにしていたけれど、今のわたしにとってはその気配すら心地良いものでしか無い。
 割開かれた股間に指で触れてツルツルのそこを数度なぞる。

「んっ……ぅう……」
「ご褒美とお仕置き、両方いっぺんにしてあげる」
「え……」

 股が開いているにもかかわらずいまだにふっくらとした肉の壁に包まれて開ききっていない幼さの残るソコを、指で開く。

「ココに」
「ま、まって……」

381zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2011/02/14(月) 19:55:25 ID:pMKONIUQ
「犬は喋らないよ」

 粘膜にチョコを垂らした。

「ひああああああああっ!!!!!!!」

 想像通りの悲鳴に全身が熱くなる。

「ワンちゃんらしくしていられたらご褒美。出来なかったらお仕置き。その自由な手で、わたしのする事を邪魔してもお仕置き。出来るでしょ。お互いが望んだ事なんだから」
「ああっ……はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……わ、わんっ」

 従順なその態度に満足して、更に興奮。

「いい子。その調子。ほら、これはご褒美」

 再び、粘膜にチョコを垂らす。

「きゃうううううううううっ!!!!!!!」

 嗜虐壁を満たす叫び、匂い、空気。
 それらの隙間、ふとした瞬間に蘇る僅かな後悔。
 でも、ワンちゃんが心のそこから悦んでいる事を理解できてしまう身としては、ここで中途半端なことは出来ない。
 だから、決めたところまでは突き進む。
 胸と同じように舐めて、きれいにして、また不意打ちでたらして粗相をさせて、もっときついお仕置きをして……。
 お互いの本当のパートナーで満たせない心を満たそう。
 唇を合わせるキスだけはNGで、でもそれ以外のいろんなコトをして、身体の奥に点った官能の火を燃え尽きるまで燃やし続けよう。

 そうすれば、余分なものがなくなった二人は再び炎が燃え広がるまでは、本当に好きな人の隣に居られるのだから。

382zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2011/02/14(月) 19:56:51 ID:pMKONIUQ
以上となります。

黒サーニャな電波が降りてきたんで書いてみました。

383名無しさん:2011/02/14(月) 22:11:21 ID:DffvAYmQ
>>382
これは……っ! 危険がアブナイ!w GJ!

384mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/02/15(火) 00:17:22 ID:WLEEAE56
>>371 >>382 zet4j65z ◆le5/5MRGKA様
GJ! 新たなおっぱマイスター誕生の予感とえろすの予感!

>>374 5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2様
GJ! 二組の織りなす甘々さが凄いです。美味しく頂きました。


こんばんは。mxTTnzhmでございます。
今回もふと思い付いたネタを、短く文章化してみました。
保管庫No.0450「ring」シリーズ続編となります。
ではどうぞ。

385powdery snow:2011/02/15(火) 00:18:56 ID:WLEEAE56
 その夜、しんしんと降り積もる雪を窓越しに眺めていたエーリカは、やおらソファーから立ち上がると、おもむろに戸を開けバルコニーに出た。
 何事かとトゥルーデが後を追うと、エーリカは真上をじっと眺めていた。
「どうしたエーリカ?」
「雪だよ、トゥルーデ」
「ああ。このままだと明日の朝には積もっているかもな」
「もう数センチ積もってるよ」
「そうだな。足元に気を付けろよ」
「ありがとトゥルーデ。でも、それだけじゃ物足りないな」
 エーリカは手摺に積もっていた雪を手に取りきゅっきゅっと軽く握って固めると、おもむろにトゥルーデ目掛けて投げつけた。
 ぱしゃっ。
 粉雪の塊が、トゥルーデの服にぺたりと張り付き、端から少し解けていく。
「こら! いきなり何をする?」
「雪遊び」
「あのなあ……。そうやってはしゃぐ年でもないだろうに」
「そう? 楽しいものは楽しいよ。幾つになってもね」
「まったく……」
 半分呆れ気味のトゥルーデに、もう一発、えい、と雪玉を投げつける。今度は避けたつもりが、踏み出した先にもう一発待っていた。
 太腿に炸裂した雪玉は、じわじわと解けてトゥルーデの肌を濡らす。
「つ、冷たっ! こらエーリカ! 何するんだ!」
「トゥルーデが怒った〜」
 からかわれたと感じたトゥルーデは、手近に積もっていた雪をぎゅーっと握り、手当たり次第にエーリカに投げつける。
「お? トゥルーデが本気になった」
「やられっぱなしと言うのは腹が立つからな」

 雪玉を投げ合う事しばし。二人は上気した息遣いの中、背を合わせて立っていた。
 止まない雪が、二人の周囲を白銀に染め、肩に幾つもの結晶を載せていく。
「楽しいね」
「まあ、この程度ならな」
「皆集めて遊ぼうか」
「それはまずい。皆を考えてみろ。はしゃぎすぎて収拾が付かなくなって、ミーナか少佐に怒られるのがオチだ」
「そうかな? ほら、あそこ」
 エーリカが指し示す先を見るトゥルーデ。
 少し離れた場所では、ミーナと美緒が、窓から身を乗り出して雪を見ている。
 舞い降りる雪を直接手に取り、くすっと笑うミーナ。そんな彼女を見て優しい表情を見せる美緒。
 不思議な事に、こちらの様子は気にもしていない様だ。
「見て。向こうではエイラとサーニャが。あっちではシャーリーとルッキーニが……」
「エーリカ、他の奴等の事は良いから」
 こちらから見えるという事は、向こうもこっちを見ていると言う事だと気付いたトゥルーデは、少々気恥ずかしくなって
エーリカを部屋に引き戻そうとした。
「待って、トゥルーデ」
 エーリカは足を止め、空を見た。
 灰色の空から、とめどなく舞い降りる雪の欠片。大きいもの、小さいもの……綿毛の様に繊細で、触るとすぐに溶けて消える。
 音も無く、降り続く雪は大地を、二人を包み込む。
 雪が少し頭に積もったのを見たトゥルーデは、エーリカの頭をそっと払い、雪を除ける。
 ぶるっと身体を震わせたエーリカを見て、トゥルーデはそっと抱きしめる。そしてエーリカの名を呼び、呟く。
「寒いなら寒いと、言えば良いのに」
「だって、ここじゃあんまり雪を見る事が出来ないから」
「無理はダメだ」
「分かったよトゥルーデ」
 エーリカを抱きしめ、頭を撫でる。積もった雪をそっと落とし、これ以上積もらせはしない、と胸に埋める。
「どうしたのトゥルーデ、急に」
「お前が心配なんだ」
「ありがとう」
 二人はそっと軽く唇を触れ合わせて気持ちを確かめ合った後、一緒に空を見上げる。
 いつ止むのか。
 止んで欲しくない気持ちと、作戦に支障が出ると言う思いと……目の前で抱き合ういとしのひとを思い、
頭の中が巡り巡って、雪の中立ち尽くす。
 トゥルーデは、そっとエーリカの耳元で囁く。
「そろそろ、良いか?」
「うん。満足した」
「部屋に戻ろう。温かいココアを入れてやる。温まるぞ」
「ありがと、トゥルーデ。……そう言えば」
「どうかしたか?」
「ココアもホットチョコレートも一緒だよね。と言う事は」
「どう捉えて貰っても良い。とにかく、戻るぞ」
「トゥルーデ、そういうとこ素直じゃないんだから」
 エーリカはトゥルーデの服の裾を持って、部屋に戻る。引っ張られる格好のトゥルーデは、足を滑らせもたつきながらも後を追う。
 間も無く、二人の部屋からほのかにココアの温かい香りが漂う。

 501JFWには、降雪の多い地域と、そうでない地域出身のウィッチが混在している。
 雪に対する見方は皆違う。
 ただ、隣に居る者と一緒に眺め、少々戯れる事は悪い事ではない。
 束の間の安らぎは、時として天から降りてくる。

end

386名無しさん:2011/02/15(火) 00:20:10 ID:WLEEAE56
以上です。
舞台がブリタニア基地かロマーニャ基地かは分かりませんが
何となく雰囲気で……。

今年の冬は雪が多いですね。ご注意を。
ではまた〜。

387名無しさん:2011/02/15(火) 03:05:57 ID:CzZA1fq6
>>386
雪すごいですね。
北欧組意外がいきいきしてそうです。

こんばんは、LWqeWTRGです。
2月14日でした。というわけで2レスです。


「エイラ」
「んー? なんだー?」
「いつまでそうしてるの?」
「んー… もうちょっと」
「昨日もそういって結局やめなかったじゃない」
「だぁってさぁ……」
「だって……?」
「せっかくサーニャからハートのチョコレートもらったんだぞー?」
「いいから早く食べて」

えー、とか言いながらにへにへ。
にへにへしながら足をぱたぱた。
ぱたぱたしたらベッドの上をコロコロ。
嬉しいのはわかる。むしろ喜ぶ顔を思い浮かべながらチョコを作ったの。
でもそろそろこっち向いて。かまってくれなきゃ寂しいんだから。

「ねぇエイラ」
「んー?」
「ねぇったら」
「なんだー?」
「……もう」

だめだな。これは。
このままだとなにもせず終わっちゃうわ。
今日もかまってあげなきゃいけないのね……。

「なんだよー」
「たいくつなのー」
「んー… ってお、おい!」
「えーいーらー」
「や、やめ、頭の上でしゃべらないで!」
「じゃあぎゅー」
「ちょっと、サーニャ!」
「頭の上じゃないもん。背中の上だもん」
「背中もダメー!」

388名無しさん:2011/02/15(火) 03:07:02 ID:CzZA1fq6
そんなこと言ったってもう遅い。今日の私の居場所はここに決めた。
ぎゅーってしてすりすりすることに決めた。

「もー、サーニャー!」
「なあにーエイラー」
「すっごく棒読みだぞ!?」
「今日だけだかんなー」
「そっか今日だけー、ってそれ私のセリフ!」
「じゃあ、そのセリフをどうぞ」
「あうっ!?」

ふふ、赤くなっちゃって。
エイラ、かわいい。

「き」

言い終わると同時に抱きしめちゃおうかな。

「き…」

それから、ほっぺにキスして。

「ううう〜…!」

いっぱい、甘えて――

「きゃあっ!」
「今日は私がリードするんだああああああああ!!」
「ちょっと、エイラ!? んむっ!」
「サーニャ…」

体勢を入れ替えられて身体はエイラの下、腕は顔の横で拘束されていて、唇はエイラに封じられ。
…どうしたのエイラ、今日は本気じゃない。
手つきはおぼつかないけれど。
いいよ、きて。

「だいすきよ、エイラ」



END

―――――
以上です。
おぼつかないのは自分orz
内容薄くて短いのをなんとかしたいのですけど…。

タイトルは「ハートの誘惑」です。
たまには本気だしたエイラさんも。
それでは失礼します。

389名無しさん:2011/02/16(水) 03:31:33 ID:n5rl4bbA
物凄く和んだ GJ!!!

390[:2011/02/16(水) 23:07:33 ID:kTatHhwU
「なんじゃと? シュナウファーの様子がおかしい?」
 食堂を出てすぐのこと。
 子飼いの一人にそう耳打ちされ、足を止めた。
 シュナウファーの異変は逐一わらわに報告せよと厳命してある。あやつときたら何でもかんでも内に秘めるゆえ、こういった周辺情報が欠かせない。
「はい。いつも困ってらっしゃる感じですが、今日はそれに輪をかけて」
「…そうか。大儀であった」
 懐からスタンプを取り出し、カードの空欄にポンポンポン。
 功ある者には惜しみない労いを――――これがわらわの覇王道だ。
 高評価に喜んだ彼奴は小躍り。これからも精進せいと言い捨てて、わらわはその場を後にする。
「会敵とかトラブルの報告はなかった。すると哨戒後か……」
 腕組みして、廊下の真ん中を歩く。
 この基地でわらわに道を譲らぬ者はない。驕りではなく、それが当然なのだ。
 人には生まれついての定めがある。果たすべき義務がある。
 ウィトゲンシュタイン家に生まれたわらわは、それに則した威厳ある振る舞いをせねばならない。
「ノーブレス・オブリージュとは面倒なものよのぅ」
 ふふんと笑い、肩にかかる髪を払う。
 これは貴族の務めなのだ。シュナウファーが心配だからとか、そんな俗な感情ではない。
 通路の角を曲がると視界がふっと暗くなる。ここから先は夜間戦闘員の個室が並ぶ。最小限に照明が絞られているのは、暗い状態に目を慣らすための

措置だった。
 突き当たりにある皇帝像を左に行けばわらわの第5夜間戦闘航空団、右に行けばシュナウファーの第1夜間戦闘航空団がある。
「食堂では見なんだがまだ部屋におるのか? ウィッチたるもの、食事もとらずぶをああああっ?!」
 ドォン、ガシャシャンッ!
 突き当たりを右に曲がったところ、ボリュームのある何かと衝突して吹っ飛ぶ。そのはずみに陛下の銅像で側頭部を強打し、未知の感覚に廊下を転げ

まわった。
「だ、大丈夫ですか?」
「くうぅ〜〜〜おのれ。父上にもぶたれたことのないわらわに、なにやつ?! 相応の報いを受けさせてくれる!」
 ずきんずきんする側頭部を抱えて身を起こす。
 目の前に星が散って前がよく見えない。
「そ、その声はもしかしてハインリーケさんですか? すみません!」
「なっなに?! シュナウファーか?」
「はい。ちょっとよそ見をしていて………本当にすみませんでした」
「―――そなた、誰に謝っておるのじゃ?」
 ようやく視界が晴れてのち、口元をぴくぴく。
 王女の称号を与えられたこのわらわを前に、いい度胸だ。
「誰ってもちろんハインリーケさんに」
「たわけ! わらわを陛下の銅像と見間違えるなど言語道断、無礼も甚だしいわ!」
 銅像に向けて深々と頭を下げているシュナウファーにかみつく。
 わらわをあのような中年と間違えるとは。手袋を持っていたら即刻投げつけてやったのに。
「え?! あ―――し、失礼しました! 申し訳ございません、陛下」
「こ、この〜〜〜っ」
 怒りに両手をぶるぶる。
 こうまでコケにされたことは生まれて一度もない。
 この狼藉の始末をどうしてくれよう。咎ある者には容赦ない責めを――――これもわらわの覇王道だ。
 あれやこれやと考えて、ふと、違和感に眉を寄せる。
「…シュナウファー」
「は、はい! なんでしょう?」
「わらわはこっちじゃと言うておろう! そなた、目が……」
 またもや違う方を向くシュナウファーの両肩をつかみ、正面からその瞳を覗き込む。
 分厚いレンズの奥、紅玉のように薄っすらと光るそれが、焦点を合わせるのに苦慮したふうに揺らぐ。その様子を見たわらわの頭から音を立てて血が

引く。
「なぜそれを先に言わんのか! 医務室へゆくぞ!」
「きゃっ?! まっ、待ってください」
「ええい、大人しゅうしておれ! 体裁を気にしておる場合か!」
 じたばたするシュナウファーを叱りとばす。
 それでなくてもメロン大の膨らみが邪魔をして抱えづらいというのに。

391「からまわり」:2011/02/16(水) 23:08:55 ID:kTatHhwU
「で、ですから待ってください! 目の不調ではないんです。いつもの眼鏡を壊してしまって」
 いざゆかん、と踏み出しかけた足を止める。
 射殺さんばかりに眼力をこめ、腕の中にある紅玉を見下ろした。
「……眼鏡、だと?」
「はい。えっとその……すみません」
「すみませんで済むと思うか! このわらわをたばかったあげく、あまつさえ途方もない心配をかけるとはっ!!」
 縮こまる様子にかまわず怒号をうつ。
 引いた血が一気に戻ってきた。まったく腹立たしいったらない。
「え……心配?」
「うっ―――こ、言葉の綾じゃ! それだけわらわが徒労を感じたという意味で……本当じゃぞ? わらわはそなたのことなど、これっぽっちも」
「ありがとう、ございます」
「〜〜〜〜〜っ」
 ぐぬぬっと押し黙る。
 こやつはなにを勘違いしておるのか。
 物事を都合よく解釈するのは凡人のなせるわざ。わらわのライバルがそのような体たらくでは困る。
「ふん、まあよい。ときにシュナウファー。そなた、食事はとったのか?」
「い、いえ。食堂には今から行こうと」
「じゃが、その眼鏡は度が合っておらんのだろう?」 
「はい。でも、これしか替えがなくて……。夕方には新しいものが届くのですけど」
 視線を感じてか、シュナウファーは眼鏡のふちを触ってもじもじ。
 ドクンと、胸の奥で音が鳴る。
「その状態で行ってもさっきのようになるだけじゃ。給仕に申し付けて食事を運ばせるゆえ、自室で待っておれ」
「…わかりました。下ろしていただけますか」
 聞き分け良くうなづいたその紅玉に翳りがさす。
 ドクンと、ふたたび胸の奥で音が鳴る。
 何をやっておるのだ、わらわは。早く下ろさんとまたシュナウファーがおかしな勘違いをするではないか。
 そのとき、通路の先に見回りだろう衛兵の姿が見えた。
「おい、そこの!」
「はい! なんでございましょうか、姫」
 呼べば即座に駆けてくる。
 ほほう、なかなか見所のあるやつじゃ。
「今すぐ食堂へおもむき、シュナウファーの部屋まで食事をもて」
「は! 承知いたしました」
「そ、そんな、見回りの方を用立てるなんて」
 慌てた様子のシュナウファーが止めようとしてくる。
 だが、その程度は予想済み。わらわはシュナウファーの頭越しに指示を出す。
「よいな? 二人分だぞ」
「ですから私用でそのような命令は………え?」
 首をかしげて目をぱちぱち。
 普段は深刻げな顔ばかりしているが、こういう表情を浮かべると存外幼い。
「シュナウファー。そなた、今日が誕生日であろう? そのような日にひとり食事をとるのも味気ないものだ」
「ハインリーケさん……」
「ふん! 他意ならないぞ。これはノーブレス・オブリージュ、貴族としての務めじゃ」
 頬に感じる熱を無視して言い放つ。
 わらわには生まれついての責務がある。守るべきことわりがある。
「それに、わらわもまだ昼食をとっておらぬゆえな」
「は? 姫様は先ほど昼食をとられたのでは」
「お、おまえはさっきの奴かっ?! ――――余計な事を言うでないわ、この愚か者が! さっさとゆけい!」
 大いに焦り、その尻を蹴っ飛ばす。

 つんのめるように走り出した彼奴の背が遠ざかっていく。
「ま、まったく、このわらわを誰かと間違うなど無礼千万じゃ。あやつは後で折檻してくれる」
「あの……」
「なんじゃ――!」
「ありがとう、ございます」
「〜〜〜〜〜っ」
 ぐぬぬっと押し黙る。
 またしてもこやつは都合の良い勘違いを。
「もうよい! ゆくぞ!」
 正面に顔を戻し、風を切って歩き出す。
 シュナウファーの部屋は第1夜間戦闘航空団の最奥だったな。
「あっ?! 自分で歩きますので下ろしてください」
「聞こえぬ。黙ってそこで大人しゅうしておれ」
 じたばたする荷物にかまわず突き進む。
 この基地にわらわの行く手を阻もうとする者はない。
 ただひとり例外がいるとしたら――――それはシュナウファー、そなたのみじゃ。

392名無しさん:2011/02/16(水) 23:10:33 ID:kTatHhwU
あー、タイトル失敗...orz
マリー誕にかこつけたハインリーケssでした
それでは〜

3935uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2:2011/02/16(水) 23:30:25 ID:y1.YhCEo
>>379 zet4j65z ◆le5/5MRGKA様
GJです。えっちな黒サーニャいいですね〜。受けエーリカも可愛い

>>384 mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c様
GJです。雪も溶けちゃいそうなくらい熱々なエーゲルが素敵です

>>387 LWqeWTRG様
GJです。積極的なエイラーニャが大変可愛らしいですね

>>390
GJです。イケメン姫様と乙女なマリーの関係が素敵です

こんばんは、今日はマリーの誕生日ということで1本書いてみました。
ではどうぞ

394ナイトウィッチの誕生会:2011/02/16(水) 23:31:28 ID:y1.YhCEo
――ここは506JFW、談話室。
同隊の戦闘隊長、ウィトゲンシュタイン大尉は今日が誕生日の友人、
シュナウファー大尉のために各部隊からナイトウィッチを招き、誕生会を開いていた。

「あー、皆の衆。今日は我が親友ハイディのためによくぞ集まってくれた。ハイディの1番の友として礼を言うぞ。
そもそも、わらわとハイディの出会いはだな……」
「ハイデマリーさん、誕生日おめでとう」
「おめでとな」
「おめでとうございます、シュナウファー大尉」
「みなさん、ありがとうございます」
「お、おい! まだわらわの話は終わっておらぬぞ」
「まぁまぁ、長話なんてしてたらせっかくの料理も冷めちゃうぞ、プリン姫」
「だ、誰がプリンだ! 無礼者!」
「いいですね、プリン姫って愛称。可愛らしいウィトゲンシュタイン大尉にピッタリです。えいっ!」
「お、おい下原、どさくさに紛れてわらわを抱くな!」
「……ふふっ」
「どうしたのだ、ハイディ? 急に笑い出して……」
「あ、ごめんなさい。私もプリン姫って愛称、可愛いなって思って……」
「……ま、まぁそなたに気に入って貰えたなら良いか。それにしても、各統合戦闘航空団にナイトウィッチの招集を要請したというのに、
501と502以外どこからも来ないとは……」
「まぁ、504みたいに正規のナイトウィッチがいない部隊もあるし仕方ないんじゃないか? あるいはプリン姫に人望がないのかもな〜」
「な!? 無礼な、わらわには直属の親衛隊もいるのだぞ」
「へぇ、プリン姫さん、親衛隊がいるんですか。何だか分かる気がします。だってプリン姫さん、こんなに可愛いんだもの」
「はぅっ、く、苦しいぞ下原……離れろ」
「よーし下原、そのまま押さえてろ。プリン姫のボディチェックをしてやるんだな」
「ひゃぅ!? ど、どこを触っておるのだユーティライネン」
「うんうん、隠れよくできましたーって感じだな。悪くない」

「ごめんなさい、ハイデマリーさん。なんだか騒がしくなっちゃって……」
「いえ、賑やかで楽しいです……あの、エイラさんっていつもあんな感じなんですか?」
「ええ。いつもあんな感じです……」
「……楽しそうですね」
「はい、エイラと一緒にいると楽しいです」
「ふふっ、サーニャさん、大尉……えいっ!」
「きゃっ! し、下原さん!?」
「わぁ、サーニャさんも大尉も白くてすべすべですね〜」
「お、おい! 何やってるんだお前! サーニャから離れろ〜!」
「あ、エイラさん。じゃあ変わりにエイラさんをぎゅってしていいですか? えいっ」
「ふにゃっ!? ふ、扶桑のウィッチって変な奴ばかりナンダナ……」
「ねぇ、エイラ」
「な、何だサーニャ」
「私もエイラのこと、ぎゅってしていい?」
「へ? サササササーニャ!? あぅ……」
「ふふっ、エイラ、すべすべしてて気持ちいい……」
「本当、白くてふわふわですね」
「ふ、2人とも、私をそんな目で見んな〜!」

「全く、騒がしい連中だ……ハイディ、大丈夫か?」
「は、はい……あの、プリン姫」
「な、何だ? ハイディ(そなたもその呼び名で呼ぶのか……)」
「今日はありがとうございました。私のためにこんな素敵な誕生会を開いてくれて……
私、同じナイトウィッチのみなさんに誕生日を祝ってもらって本当に嬉しかったです」
「何、わらわはそなたの友人として当然のことをしたまでだ……おっと、すっかり言い忘れていた。
ハイディ、誕生日おめでとう」
「ありがとう、プリン姫」
「うむ。これからも毎年、そなたの誕生日はわらわが盛大に祝ってやるぞ。そなたはもう、1人ではないのだからな」
「……はい」

こうしてナイトウィッチ達の夜は更けていく……

〜Fin〜

3955uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2:2011/02/16(水) 23:32:41 ID:y1.YhCEo
以上です。姫様の口調って難しい……
ではまた

396zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2011/02/17(木) 00:01:38 ID:z3M5L//s
ヨシ、日付変わった!

去年の黒江さん誕生日合わせに書き始めて忙しくて手が止まって放ったらかしにしていたらキミ空で黒江x坂本の展開があったんで一度はお蔵入りしたんですが、書きかけのをちょろっと人に見せたら反応良かったんでちゃんと書き上げてみたお話です。
相変わらず妄想全開な内容ですがもう状況はifということで開き直ってます。



●ブリタニア1944 早咲きの桜の下で

『如月は十七日、
 村外れの丘、
 桜の下にて待つ。』

 おもむろにそんな文面の手紙が届いた。
 どう見ても果たし状なのだが……、ブリタニアまで扶桑の言葉で手紙を送りつけた人物には興味がある。
 ミーナは不審に思っていろいろ出所を探っているようではあるが、私は結果を待たずにその待ち合わせの場へと赴く事にした。

 辿り着いた丘の一角。
 驚いた事にそこは春に彩られていた。
 記憶にある物よりも少し濃い目の色をした桜が今まさに満開となり、私にここがブリタニアだという事を暫し忘れさせる。
 幻想的な光景にしばし目を奪われ立ち尽くし、不覚にも郷愁の念に囚われ、扶桑の日々を思い出して目頭が熱くなる。
 そんな私の背後から若い女性の声がかかった。

「どうだ、なかなかのもんだろう」

 声の方を見ると、ござを敷き胡坐をかいて杯を煽る見知った顔があった。

「黒江大尉」
「久しぶりだな、坂本」

 杯を掲げ、片目を瞑って挨拶してくる。

「一体いつブリタニアに?」
「ここの桜はむかーしに同盟結んだ時あたりに植えられたらしいな。ちょっと種類が違うんで扶桑のとは時期もずれるし色も違う。でも、こういうのも中々乙なもんだろ?」

 私の質問を無視して桜の解説を始める。全くマイペースな御仁だが不思議と憎めない。

「こっちへきなよ。折角だから扶桑撫子のお酌がほしい」
「はっはっは、それならば手酌でも条件は満たすんじゃありませんか?」
「あっはっは、私は撫子って柄じゃないさ。陸はがさつでいかん。お前とか竹井みたいなのじゃないとダメだろう」
「はぁ、あんまり変わらないと思いますが、私でよろしければ」

 言いながら近付いて傍らに腰を下ろす。
 数本用意してある日本酒の一升瓶のうちふたの開いているものを手に取り、黒江大尉の杯へと注ぐ。

「いつ、こちらへ?」

 改めての質問。

「一週間ほど前だな。本当は武子と一緒にここに来るはずだったんだが、あいつの方の予定が合わなくなって、ね」
「そういう事ですか。でも、何故あんな招待状を? あれではまるで果たし状ですよ」
「桜を愛でるなら扶桑人同士にしたくてね。それから他にもある……」

 黒江大尉が一度言葉を切り、ただでさえ近かった顔の距離を詰めてくる。

「一つは今年で上がりを迎える後輩の顔を見に来た、って言うのはどうだ?」
「黒江大尉……」
「知り合いに世話焼きが多くてな。ま、私もその一人ではあるんだが……どうなんだ? 坂本」
「私は……」

 まだ実感がわかなかった。
 確かに魔力の衰えは感じている。
 リバウで飛んでいた時よりも明らかに今の私の魔力は落ちているだろうと思う。
 だが、衰えた魔力は気力と技術によって補完され、振るう刃の冴えは今こそが絶頂期だと感じてもいる。
 何よりも私に勇気を与えてくれたのは上がりを迎えても飛び続けるこの黒江大尉やアフリカで活躍する加東少佐の存在だ。
 だから、私も飛び続ける、そう言いおうとした。
 直接言葉で感謝と決意とを伝えたかった。

397zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2011/02/17(木) 00:02:24 ID:z3M5L//s
 しかし、その言葉を最後まで紡ぐ事は出来なかった。
 不意の殺気を感じ取り、魔力シールドを展開。
 そこに重い斬撃が来た。
 勢いを殺すためにそのまま後方へと飛びずさる。

「流石坂本、よく受けた」
「一体何のつもりです!?」
「現役のシールドは流石だな、ストライカーの強化なしで私の刃を止めるか……ふふっ、ならば遠慮なく行かせて貰うぞ」
「くっ!」

 こちらの問い質しを無視して次の一撃が来た。
 間合いを取る事で薙ぎ払いの斬撃を回避し、自身の刀を抜き、構える。

「よし、抜いたか。それでいい」

 錯乱している様子も、酔っている様子もなかった。
 だが、振るう刃に本物の殺気が込められているのも確かだった。

「やめてください!」

 叫びながら刀で攻撃を受け流し、受けきれないものはシールドで止める。

「私はお前が『やる気』だって聞いたぞ。だったら上がりのウィッチの攻撃程度でシールドに頼るな!」
「ぬぅ……」

 言っていることは尤もだ。
 目の前のウィッチがそれを実践しているのだ。
 ならば、応えるしかあるまい。

「ッ!」

 安易にシールドに頼らず、体捌きに集中する。
 心をよぎるのは死ぬかもしれないという恐怖と、その恐怖を凌駕する高揚感。
 黒江大尉は私の憧れであり、目標の一つだった。
 初めて顔を合わせたのはウィッチの養成校に入って間も無くの剣道の稽古だ。
 出稽古に来ていた黒江大尉との竹刀を合わせ、以来一度も試合での勝ち星が無い。
 お互い10代で3年の開きがあれば、その実力の差は歴然となる。
 年下の側が才に秀でるのであれば逆転はありえるかもしれない。
 だが、年上の側が才に恵まれた上に努力、研鑽を積み重ね続ける限り、その差は永遠に越えられない山脈となって二人の間に横たわる。
 しかし、今この瞬間、魔力、気力、体力ともに充実した私ならば、黒江大尉を超えられる気がした。
 細かい理由など要らない。ただ、目の前に偉大な先輩を超えるチャンスが訪れたとそう思えばいい。
 間合いを取り、暫しの瞑目の後に覚悟を決め、眼帯を外し、正面に刀を構える。
 見据えた視線の先、黒江大尉がにやりと笑う。
 それが応の証。
 二人の間に絶対的に強固な信頼関係が構築された事を感じ取り、踏み込む。
 呼吸、足の運び、指先の緊張、瞬き、発汗、鼓動……今まで僅かな誤差を持って刻まれていた動きが一つの物へと成っていく。
 お互いの手には真剣。
 一瞬の過ちが互いの命を刈り取るであろう剣舞を舞い散る桜が祝福する。
 黒江大尉の動きは速く、その一撃は重い。
 魔眼を以ってその動きの始点を見切り、機先を制することで優位を確保。
 次第に黒江大尉の打ち込みの手が減り始める。
 だが、同時に違和感を覚え始める。
 おかしい。
 私の切っ先は確実に黒江大尉の出足を殺していて、攻め手の主導権はこちらにある。
 あるがしかし、この場の空気とも言うべきものを出会った時から相変わらず黒江大尉が支配している気がした。
 不意に黒江大尉が構えを解いて目を閉じ、私の刃をその刀で受ける事を放棄した。
 違和感は確信に変わる。
 打たされている。
 私は初めと変わらずに刃を打ち込み続けているというのに、両手をだらりと下げて瞑目する黒江大尉の身体に触れることすら出来ない。
 理解した。
 攻撃の気配と殺気、僅かな動きの視点を私の魔眼が見切る事を見越した黒江大尉は、それを積極的に見せる事に依ってこちらの攻撃を誘発し、操り、支配する。
 既に術中に嵌り、私は徒に体力と魔力の消費を強いられていた。
 それでも攻め手を緩める事は出来なかった。
 構えなど無しにも何時何処からの一撃でも「お前を殺すぞ」という気配の起点が生まれては消え、私はそこから襲い来る恐怖を払う為、必死に踏み込んで斬り、突き、払った。

「情けない。そして浅はかだ。魔力にさえ頼めば私を凌駕できるとでも思ったか?」
「くっ……」

 黒江大尉の突き放すような声に、尚早と疲労から苦悶が漏れる。
 それが一瞬の隙になった。
 無造作な動きで踏み込んだ黒江大尉の左手が私の首を掴んで、思い切り振りぬかれた。

398zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2011/02/17(木) 00:02:53 ID:z3M5L//s

「かはっ」

 数メートルを投げられ、したたかに桜の幹へと背を打ちつけ、咳き込む。

「どうした? 終わるか?」
「もう一本!」
「そうでなくちゃな、立て!」

 痛みを堪えて立ち上がり、刀を構え直す。
 その切っ先の迎撃範囲に対し、再び殺気も無しに無造作に踏み込んで来る黒江大尉。
 慌てて刃を払って追い払おうとするも既にその左手は私の右手と鍔を掴み込み、私の剣を殺していた。
 そのまま上半身を押し込まれ、再び桜の木へと背中を押し付けられる。
 押さえ込まれた上に互いの身体に挟まれたせいで腕は動かせず、上半身同士が密着した状態で睨み合う。
 いや、既に気負けしていた私は睨むと言えるほどの眼力をこの眼に宿らせる事ができず、ただ、その瞳を覗き込むことしか出来ていない。

「……」

 黒江大尉が息を吐いて視線をずらし、一度私の肩にあごを乗せるようにする。

「なぁ、お前もう下りろ。がちがちになりすぎて滑稽なだけだぞ。でなきゃ……」

 下りろという言葉、私には重い言葉。

「黒江大尉……私、わひゃっ」

 反論しようとした私の耳にペチャっというえも言えぬ感触。

「くくくっ、扶桑撫子の耳たぶはいい味がするな」
「な、何をっ!?」
「耳たぶを噛んだんだ。唇でな」

 何を当たり前のことを聞いているんだ?とでも言うような表情で顔を正面に持ってきてからいたずらっぽい笑みを浮かべる。

「そ、そんな事はっ」
「まぁ、分かってるだろうな。ホラッ」

 遮ってそう言いながら軽く拳を作った手の甲で私の胸の中心を叩き、そのままバックステップして距離をとる。

「恐れんなよ。それと、難しく考えんな。力抜いてもっとのびのびと打ち込んで来い」
「黒江大尉……」

 確かに初めから、ずっと緊張しっぱなしだった気がする。
 自分が手にしている黒江大尉に対してただ一点の優位を魔力の強さだと思い込んで戦っていた。
 しかし、優位などは……そんなものは無かった。
 二人の関係は初めて会ったあの日から変わらず絶対的な力の差があり、彼女の存在そのものが聳え立つ巨峰そのものだった。
 大きく深呼吸してからその山を見上げれば、なんと登り甲斐があるのだろうと感嘆する。
 
「来いよ坂本。稽古をつけてやる」

 改めて構えを取る黒江大尉。
 もう一度深呼吸、自然体として大地に立つ。
 この身を包む大気は冷たいが、それ以上に開放感を欲して上着を脱ぎ、靴を放り出し、髪を解いた。
 更に意識して魔眼を閉じる。
 余計なものを削ぎ落とした等身大の坂本美緒として、剣士黒江綾香の前に立つ。

「いい空気だ」

 その一言と共に魔のクロエが神速の踏み込みを見せる。
 動きが視えた私はだらりと落としていた右手を引き寄せ、首を刈り取ろうとした真剣の一撃を受け止めてそのまま鍔迫り合いへと持ち込む。

「よく受けた。受けてくれなきゃ色んな奴にわたしが殺される所だったぞ」
「冗談がきついですな」
「冗談じゃないさ。この交わりの中でどちらが死んでも後悔はしない。しないがしかし、この意思を周りに理解してもらうのが面倒だとは思わんか?」

399zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2011/02/17(木) 00:03:17 ID:z3M5L//s
「違いない」

 自然に笑みがこぼれ、そこから先は無邪気なチャンバラだった。
 無論一瞬のミスが死に繋がる事は変わらない。
 それでも互いの剣閃の交錯が楽しくてたまらなかった。
 いつしかお互い疲れ切って大地を背に頭の天辺を向け合って大の字になっていた。
 見上げるのは青空と桜。
 
「坂本」
「はい」
「何でもない」
「ははっ」
「ふ……」

 風が吹いて桜が舞う。
 もう一度黒江大尉が口を開いた。

「坂本」
「はい」
「酒を」
「お酌ですか?」
「ああ」
「はっはっは、仕方の無い御仁だ」

 適度な心地よい疲労感を抱えた身体で立ち上がり、酒瓶をとりにいく。

「ほんとはな、凹まして諦めさせようと思ったんだ。でも惜しくてな。発破をかけた」
「黒江大尉」
「そしたら見る見る動きが良くなるじゃないか。そうなるとこっちも楽しくってな」
「……」
「お前を繋ぎとめるつもりが気が変わったんだ……お前は自分の信じる道を行け。回りの雑音なんぞ気にするな……って、私がこんな事言ったのは秘密で頼むぞ。色々心配性な連中に半殺しにされかねん」
「はっはっは。ご心配なく」

 笑いながら酌をする。
 黒江大尉はその酒を豪快に飲み干す。

「そーだ坂本、お前ちょっと『おめでとう』って言ってみろ」
「え? ……おめでとう、ございます……」

 きょとんとして言った私の祝福の言葉に満足したのか、黒江大尉はニカッと笑って抱きついてくると背へと回した腕で私を引き寄せつつ「お前も飲め」と頬を寄せて囁く。

「私は酒は……」

 正直、私は下戸で酒は飲めない。

「知ってる。お前用にサイダーの瓶も持ってきてる」
「用意がいいですね」

 好意を受け取らない理由はなかった。
 酒とサイダーで乾杯。
 程よく身体が冷えて二月の冷気が浸透してきた所に、酔いで発熱した人肌が作り出す温もりが心地良い。
 後は二人で盃と瓶を傾けあって騒いで楽しんで、そんな酒宴は日が傾く頃にミーナと加藤の両中佐の登場によって幕を閉じた。

「半年後でも一年後でも、またやろうぜ」

 黒江大尉はそういって茶目っ気たっぷりに笑って片目を瞑り、扶桑刀一本だけ持って加藤中佐の車に乗った。
 半年、か……。
 先輩の明るい姿を見て、自分の半年後が少しだけ気楽に迎えられるようになった気がした。




以上となります。
坂本と黒江では本国では本来坂本中尉と黒江大尉という階級差があり、海と陸という立場の違いもあり、更に年齢差もあるという前提で坂本が一歩引いた態度を取っています。
まぁ、なんていうか自分は黒江大尉が大好きなんです。

400zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2011/02/17(木) 00:13:22 ID:z3M5L//s
しまった、ハイデマリー誕生日SSきてたの見落としてた。
後でゆっくり読ませていただきます〜。

401名無しさん:2011/02/17(木) 00:56:26 ID:gpYqJJ0Q
>>388
いちゃいちゃエイラーニャ和んだ!GJ!

>>392
微妙にイマイチだけどやっぱりカッコイイ姫に萌えた。GJ!

>>395
何故ナイトウィッチじゃないのにエイラがw 和気藹々とした雰囲気GJ!

>>400
剣術の描写がステキ。黒江さんまだ現役いけるんじゃないの?w GJ!

402mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/02/21(月) 01:33:41 ID:x1ApGJ1Y
>>388 LWqeWTRG様
GJ! 積極的なサーニャさんとエイラさんに萌えました。
エイラさんもやればできる!?

>>392
GJ! 姫様イケメンですね。ハイデマリーも幸せ者ですね!
スラップスティックなノリに、和みました。

>>395 5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2様
GJ! さり気なく混ざってあれこれしてるエイラに吹いたw
自重しない定子さんもGJです。

>>400 zet4j65z ◆le5/5MRGKA様
GJ! 剣と剣のぶつかり合い、迫力が伝わってきます。
文章から黒江さんのイケメンっぷりが漂って来ます。ステキです。


こんばんは。mxTTnzhmでございます。
今日はエイラ誕生日祝いと言う事で……
じゃあ誰に祝って貰うのが良いかなとか
色々考えてるうちに出来たSSを投下します。
ではどうぞ。

403jealously:2011/02/21(月) 01:34:34 ID:x1ApGJ1Y
「誕生日おめでとー」
 のんびりとした雰囲気で始まったエイラの誕生日祝い。
 まんざらでもない感じで祝福の輪の中心に陣取るエイラ。
 ひとときの賑やかな時間を過ごしたエイラは、にやけ顔でミーティングルームを後にした。
 そう言えば、と後ろを振り返る。さっきまで一緒に祝ってくれていたサーニャ。何故か機嫌が悪い。
「どうしたんダ、サーニャ?」
 無言。
 同じ事を繰り返すも、むすっとして、ぷいと顔を向ける。
 だんだんと不安になってくるエイラ。
 ……何か変な事を言ったのか? サーニャにとって悪い事でも言ってしまったか?
 あれこれ思い返すも、そんな事は全然無い。
 ただ、賑やかに祝って貰っただけ。
 拭えぬ疑問を抱いたまま、部屋に戻る。

「エイラ……っ!」
 ふたり一緒に部屋に戻り、扉を閉めるなり、サーニャはエイラの腕を取り、身体ごとぐいと壁に押しつけた。
「な、何するんだサーニャ!?」
 手首に食い込むサーニャの爪。痛さよりも先に、サーニャの行動への驚きが出る。
「エイラ、分かってない……」
「な、何を? 私何か変な事言ったカ?」
「違う!」
「じゃあ、一体どうしテ。何でサーニャが怒ってるのかわからな……」
「エイラは黙って!」
 サーニャから発せられたいつになくきつい言葉に、エイラは唖然とし、同時に返す言葉を失う。
 ごくり、と唾を飲み込む。
「さ、サーニャ……」
 それ以上言葉を言わせて貰えなかった。不意に唇を塞がれる。
 先程二人で沢山食べたケーキの甘酸っぱさが、唾液に混じって微かに感じる。
 ゆっくり唇を離すサーニャ。はあぁ、と熱い溜め息がエイラの頬を撫でる。
「エイラは……」
「う、うん?」
「私だけのものなの。他の人に祝って貰うの、嫌なの」
「な、何で? サーニャも一緒に楽しん……んんっ……」
 またも唇を塞がれる。ぷはあっと息切れしたところで、ようやく唇を離す。
「エイラは、私だけのエイラなの。エイラ、私だけを見て?」
「サーニャ、どうしたんだヨ……い、痛い……」
 ぐいとエイラの手首を押しつけ、動きを封じる。いつしか耳と尻尾も生やし、力がこもる。
「私を、見て?」
 両手首を押さえつけて、顔をじっと見る。
 抵抗出来ない。しようと思えば出来るのだが、何故かしてはいけない気がして……。
 エイラも真正面からサーニャの顔を、目を見る。
 少々の涙で澱んだオラーシャ娘の瞳は、いつもの柔らかな輝きが失せ、エイラの怯える顔を映し出す。
 同時に、サーニャのキモチも垣間見る。
 狂おしい程の、愛情。
 いや、愛が故に狂気に走ったのか。
 腕の痛みを忘れ、息を呑むエイラ。
「もっと。ずっと、一生、私だけを、見て?」
「……」
「返事は?」
「う、うん……」
「じゃあ、ご褒美」
 エイラにもう一度口づけをすると、耳たぶの後ろに唇を這わせる。
「ひゃうっ……サーニャ……」
「エイラ、ここ、弱いもんね」
「そ、そんな事……」
「震えてる。可愛い」
「サーニャ、おかしいぞ……何か」
「エイラの為なら、何でもするわ」
「するって、私をしたい放題じゃないかー、うわっ……」
 サーニャはエイラをそのまま掴まえて、ずるずるとベッドに引きずり込んだ。
 エイラは為す術もなかった。

 ベッドの上で、疲れ果てて眠るエイラとサーニャ。
 何度キスを交わし、身体を重ねたか分からない。
 もうひとつエイラに分からない事。それはサーニャの豹変。
 重たいまぶたをうっすらと開け、目の前のサーニャを見る。
 やっぱり、分からない。
 しっかりと抱きつかれ、一時も離してくれない。
 でも、こう言う事も、何だか良いかも知れないと、思い始めた自分に気づき、驚く。
 だけど。一抹の不安が頭を過ぎる。
 ずっとこのままだったら、どうしよう。今のサーニャも魅力的だけど、いつものサーニャに戻って欲しい。
 でも、これはきっと何かのきっかけでたまたまこうなっているだけだと、言い聞かせる。
 起きたら、いつもの優しいサーニャに戻っている。そうに違いない。
 うぅん、と抱き枕みたいにサーニャにぎゅっと抱かれながら、エイラはぼんやりと思う。
 そう。夢から醒めれば。
 夢から……。

end

404名無しさん:2011/02/21(月) 01:34:59 ID:x1ApGJ1Y
以上です。
たまにはサーニャさんが積極的でもいいよね、とか思ったり。
ちょっとアレですけど。

ではまた〜。

405mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/02/21(月) 23:01:50 ID:AXSh3dio
こんばんは。mxTTnzhmでございます。
本屋に立ち寄った時に思い付いたネタをひとつ。
保管庫No.0450「ring」シリーズ続編となります。
ではどうぞ。

406book seller 01/02:2011/02/21(月) 23:02:17 ID:AXSh3dio
 小春日和のとある日、ローマに赴き、それぞれの所用を済ませたトゥルーデとエーリカ、そしてペリーヌ。
 基地帰還まで少々の暇が出来た三人は、ローマ市内某所の本屋に足を踏み入れた。
「ここは……古書も扱っている様ですわ」
 ペリーヌが辺りを見回し、二人に言う。
「なるほど。ブリタニアの……ロンドン程は揃ってないか」
「まあ、ローマだし〜早く済ませてケーキ食べに行こうよ。シャーリーが言ってたあのお店〜」
「分かった分かった。とりあえず本だ」
 蔵書をざっと眺めて呟くトゥルーデと、ぴったり寄り添って歩くエーリカ。
「しかし大尉、本屋に何かご用ですか?」
 二人の後を歩くペリーヌがトゥルーデに聞く。
「ん? ああ、基地で読む為に丁度良い本は無いかと思ってな」
「なるほど。ではこちらなど、如何ですか?」
 ペリーヌが棚から探し、差し出したのは、カールスラントの哲学書。
「哲学か……戦闘教本とかそう言うのは」
「無いと思うよ」
「流石に、ここには無いかと」
 エーリカとペリーヌに即答され答えに困るトゥルーデ。
「そ、そうか。普通の本屋だからな……」
 ペリーヌから哲学書を手渡され、ぱらぱらとめくる。
「うーむ。私には、どうもな……」
「私も読んでると寝ちゃうよ」
「お前は何を読んでも寝るだろう」
「何で知ってるの?」
「あのなあ……」

 ペリーヌはひとり、ガリアの文学は無いかと探し、棚のひとつに辿り着く。
「ここには、まだ有るのですね……」
 何故か安堵するペリーヌ。
「ネウロイは、本は食べないからな」
 いつの間にか後ろに立っていたトゥルーデが呟く。
「でも、街ごと焦土に……」
「そうだったな。でも、こうして異国に有る事自体貴重な事じゃないか?」
「確かに……」
「ペリーヌも何か一冊買って行ったらどうだ? 何なら私が出してやるぞ」
「いえ、お金は大丈夫です」
「まあ、ペリーヌは、自分で本を買う金が有ったら、全て復興に回してしまうからな」
「そっそれの何処がいけないんですの!?」
「まあ怒るな。他意は無い。ただ、少し位自分の為になるものを買うのは、悪い事じゃないと思うが」
「それは……」
「そうだな。私はガリアの文学には疎いが……これなんかどうだ?」
 カラフルな表紙の本を一冊、ペリーヌに渡す。
「これは児童向けの童話集ですけど」
「今度、クリスに読んでやってくれないか?」
「えっ? 大尉の、妹さんに?」
「いや、クリスでなくても良い。子供達に夢を与えるのも大事な役割だと、思わないか?」
 しばし本を見つめる。表紙に描かれた無邪気な子供達の顔を見、目の前に立つトゥルーデの顔を見比べる。
「大尉らしいですわね」
 ぽつりと呟くと、ペリーヌは本を手にカウンターに向かった。
 ふと微笑むトゥルーデ。

「ねえ見てトゥルーデ。古書の処分だってさ」
「ほう」
 無造作に積まれた本棚の一角を見やる。
 様々な書物がどどんと積まれ、さながら「知識」のバーゲンセールだ。
 手に取ろうとするも、いささか躊躇われる。
 どの本も、必死の思いで書かれたものの筈なのに……、一山幾らの扱い。
 もし著者がこれを見たらどう思うのか。トゥルーデはそんな事を想いながら、一冊の本を手に取る。

407book seller 02/02:2011/02/21(月) 23:02:48 ID:AXSh3dio
 詩編。
 著者も題名も知らない。
 ページを開く。
 終わりなき、ものがたり。
 軽やかなリズムに乗って、ことばは軽やかに頁の上を飛び回り、何かを訴えかけてくる。
「トゥルーデ、その本が気になったの?」
「う、いや……」
「色々考え過ぎなんじゃない? 今は読む人が居なくても、平和になったらそのうち誰か読むって」
「平和って……。いつだそれは」
「私達が頑張るしかないんじゃない?」
「まあ、な」
「私はこの本買おうかと思って。妖精の話」
「妖精?」
「トントとか言う不思議な妖精の話」
「どっかで聞いた様な……まあいい」
 トゥルーデはさっきから手にしたままの本をどうすべきか考えていた。
 戦闘の役に立つものではない。
 クリスに読ませるには、少し難しい。
 だが……。
「大尉こそ、少しは戦いから離れた内容の本を手に取るのも宜しいんではなくて?」
 先に会計を済ませたペリーヌが、声を掛けてきた。
「お、ペリーヌ結局童話集買ったんだ」
 エーリカが目ざとくペリーヌの手にした本を見る。
「ええ。大尉のお薦めですから」
「そうだな。私もペリーヌに言った事だし。……そうだな」
 トゥルーデは繰り返すと、その本を会計に持って行った。

「トゥルーデの買った本が一番安いなんてねえ」
 ローマ市内のカフェ。シャーリーと芳佳お薦めの店で、エーリカは美味なるケーキを一口食べ、愚痴を続けた。
「私の買った本、トゥルーデの本の二十倍はしたよ」
「この本は古書で処分品だったからな……中身は他と変わらない筈なんだが」
「それ、どう言う意味?」
「どの本も皆著者の懸命なる努力の末に書かれたもの、と言う意味だ」
「トゥルーデらしいね」
「今度ガリアに帰ったら、この本を子供達に読ませますわ」
「そうすると良い。喜ぶと思うぞ」
「ええ」
 ペリーヌは微笑んだ。
「ま、いっか……」
 エーリカは一人呟くと、トゥルーデのケーキに手を伸ばした。
「おい、私のケーキ!」
「スキだらけなんだもん、トゥルーデ」
「スキも何も……って自分の分はもう全部食べてるのか」
「美味しかったよ」
「私は食べてない」
「じゃあもう一皿頼んでよ」
「仕方ない」
 ウェイトレスを呼ぶと、同じものをひとつ、いやふたつ頼むと声を掛ける。
「そんなに頼んで大丈夫ですの?」
 いぶかるペリーヌに、トゥルーデは言った。
「どうせ食べられるんだったら、予防線を張っておかないとな」
「私がひとつ食べると思った?」
「ああ」
「残念。来た分は全部食べるよ」
「こら、私の分も少しは残せ!」
「へへー」
 いつもと変わらぬカールスラントコンビのやり取りを見て、苦笑するペリーヌ。
「まあ、良いですわね」
「? 何が?」
「どうかしたのペリーヌ?」
 きょとんとしたカールスラント娘二人を前に、ガリアの娘はくすっと笑った。

end

408名無しさん:2011/02/21(月) 23:03:02 ID:AXSh3dio
以上です。
2期5話以降の話と思って頂ければ。
丸くなったペリーヌとお姉ちゃんの
ちょっとした交流も良いと思うんですが
如何でしょう?

ではまた〜。

409名無しさん:2011/02/21(月) 23:46:00 ID:9Hh7gI/c
エイラちゃん誕生日おめでとー!!

SSとか用意してないけども、とにかくおめでとう!

4105uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2:2011/02/21(月) 23:47:56 ID:.yOjDb6.
こんばんは、何とか間に合ったのでエイラの誕生日SSを3レスほど投下していきます。
では、どうぞ

411夢と髪飾り 1/3:2011/02/21(月) 23:48:42 ID:.yOjDb6.

「つまんねぇな〜」

ピンク色の明かりが灯された部屋の中、私はベッドに寝転がり夜間哨戒のローテーション表を見ながら呟いた。
今日の夜間哨戒の担当はサーニャと宮藤だ。
今頃サーニャ、宮藤と楽しくお話でもしてるのかな。
そんな事を考えてたら、何だか無性に虚しくなってくる。
宮藤は確かに良いヤツなんだけど最近、あいつのサーニャを見る目が何と言うかその……いやらしい感じがする。
宮藤の奴、私がいないのを良い事にあんなことやこんなことをサーニャにしてたりしないよな?
「まぁ、一応出発前に宮藤には釘をさしといたから大丈夫だよな? 多分……」
私は自分にそう言い聞かせて、寝ることにした。

夢の中にサーニャ、出てこないかな……

 「エイラ、起きて」
 私を揺すりながら、耳元で甘く囁く声。
 世界広しと言えど、こんなに甘い声を出せるのはこの世で1人しかいないだろう。
 そう、私の大好きなサーニャだ。
 「サーニャ! お帰り……ん? どうしたんだ、その格好……」
 私は飛び上がってサーニャの方を振り向くと、彼女の服装がいつもと違う事に気付く。
 サーニャは何故かいつもの軍服ではなく、純白のウェディングドレスに身を包んでいた。
 「エイラ、よく聞いて。私、芳佳ちゃんと結婚することになったの」
 「……へ?」
 一瞬、私の思考は停止する。
 ちょっと待ってくれよ、何言ってるんだよサーニャ。
 「サーニャちゃん、お別れの挨拶は済んだ?」
 「あ、芳佳ちゃん」
 そこにタキシードに身を包んだ宮藤がやってきた。
 サーニャは宮藤が入ってくるや否や、宮藤のことをぎゅっと抱きしめる。
 何だよ、それ。2人ともまるで本当の夫婦みたいじゃないか。
 「エイラ、私たち幸せになるから」
 「お、おい! どういう事だよ!? サーニャ! 宮藤!」
 「エイラ、今までありがとう……」 
 「それじゃ行こっか、サーニャちゃん」
 「うん。じゃあねエイラ」
 サーニャはそう言い残すと、宮藤と一緒に部屋を去って行った。
 そんな……行かないでくれよ、サーニャ……サーニャ!

412夢と髪飾り 2/3:2011/02/21(月) 23:49:19 ID:.yOjDb6.

「いやだあああああああああ!」
叫び声と共に私は、がばっと起き上がる。
「ゆ、夢……?」
額を拭うと、べっとりとした寝汗が手に張り付いた。
「確かに、夢にサーニャが出てきてほしいって願ったけど……」
全く、なんて夢見てんだよ私は。
サーニャと宮藤が結婚だなんて悪夢以外の何物でもない、まだ心臓がバクバクしてるよ。
「何事だ!?」
「どうしたんだ!?」
「エイラさん、大丈夫ですか?」
「一体何事ですの?」
私の叫び声がよっぽどすごかったらしく、バルクホルン大尉、シャーリー、リーネ、ペリーヌの4人が一斉に部屋に入ってきた。
着替える間も惜しかったのか、バルクホルン大尉に至っては衣服を何も身に付けていなかった。
「エイラ、何があったんだ? あんなに大きな声を出して」
大尉が心配そうな表情で私の肩をつかんできた。
何というか……目のやり場に困るな。
「えっと……何があったか全部話すから、とりあえず服を着てくれ大尉」

「あーはっは!」
十数分後、私が食堂で夢の事を話し終えると、シャーリーは腹を抱えて大声で笑い出した。
……やっぱり話すんじゃなかった。
「声が大きいぞ、シャーリー。ミーナ達はまだ寝てるんだ」
「ごめんごめん。でも、宮藤とサーニャが結婚だなんて……くくっ」
「何だよ。そんなに笑うことないだろー?」
「全く、ちょっと変な夢を見ただけであんなに騒ぐなんて……みっともないですわよ」
「じゃあツンツンメガネは、坂本少佐とミーナ中佐が結婚する夢を見ても平常でいられるのか?」
「な!? 何でそういう話になるんですの!? と、とにかく……私とリーネさんで作ったカモミールティーですわ。
これでも飲んで、気持ちを落ち着けなさい」
ペリーヌはあからさまにうろたえた様子を見せながらも、私にカモミールティーを差し出してくれた。
ほんわりとした良い香りが辺りに漂う。
「……ありがとな。ツンツンメガネもたまには優しいとこあるんだな」
「『たまには』は余計ですわ。たんとお飲みなさい」
私はペリーヌ達が淹れてくれたカモミールティーを口に含んだ。
ほんわりとした香りが口の中にも広がるのを感じる。
「うん、美味い」
「気に入って貰えて良かったです。それにしても私、ビックリしましたよ。眠ってたら、エイラさんの部屋からいきなり
すごい叫び声が聞こえてくるんだもん」
「騒がしてごめんな。でも、リーネだって同じ夢を見てたら、慌ててたと思うぞ〜?」
「それは、絶対ないと思います」
リーネがはっきりとした口調でそう応える。
「へ? 何でそう言いきれるんだ?」
「芳佳ちゃんが夢の中で誰と結婚しようと、それはあくまで夢の中での話です。本当の芳佳ちゃんは、
エイラさんからサーニャちゃんをとるような事は絶対しません」
「すごいな、そこまで言いきれるなんて……」
「はい。だって私、芳佳ちゃんを信じてますから」
リーネは、私を真っすぐ見つめながらそう言いきった。
本当にすごい奴だな、お前。
「あはは! 一本とられたな、エイラ。お前ももう少し宮藤のこと信じてやんなよ。確かにあいつはちょっと変なとこあるけど、
リーネの言うようにお前からサーニャをとるような事は絶対にしないと思うよ。なぁ、バルクホルン?」
「うむ。宮藤もサーニャも素直で可愛い私の妹だ」
「あー、あんたに振ったあたしが馬鹿だった……それじゃ、あたしらはもう寝るからエイラもそれ飲んだら寝たほうがいいぞ。
何てったって明日は……おっと、これはまだ秘密だった。じゃ、また明日な」
みんながいなくなると食堂は急に静かになった。
シャーリーの奴、一体何を言おうとしてたんだ?
まぁいいや、早くこれ飲んで部屋に戻って寝よ……

413夢と髪飾り 3/3:2011/02/21(月) 23:49:43 ID:.yOjDb6.
「エイラ、起きて」
私を揺すりながら、耳元で甘く囁く声が聞こえる。
こんなに甘い声を出せるのは世界で1人だけ……
「ん……サー……ニャ?」
私が起き上がると、そこにいたのは軍服に身を包んだサーニャだった。
もちろんウェディングドレスも着てないし、隣にはタキシードを着た宮藤もいない、私の知っている大好きなサーニャ。
「夢、じゃないよな?」
「何言ってるの? ふふっ、変なエイラ……ねぇエイラ、これ見て」
サーニャが微笑みながら小さな鏡を私に見せてきた。
私がその鏡を覗きこむと、そこに映っていたのは見慣れない髪飾りを付けた私の顔。
「ん? なんだこれ……」
私は、いつの間にか髪に付いていた髪飾りを触ってみた。
花の形をしたとても可愛らしい髪飾りだ。
「エイラ、誕生日おめでとう。それは私からの誕生日プレゼントよ」
「え?」
私は、サーニャの発言を理解するのに少々時間がかかった。
誕生日? 誰の?
「あ、そうか……私の誕生日、今日だったっけ……」
部屋のカレンダーを見て、ようやく私は今日が自分の誕生日だという事を思い出す。
昨日はサーニャと宮藤の事で頭がいっぱいですっかり自分の誕生日を忘れていた。
もしかして、シャーリーは昨日この事を言おうとしてたのか?
「……なぁサーニャ、頬をつねってくれ」
「え? いいの?」
「ああ、頼む」
サーニャが私の頬をそっとつねってくれた。
少し痛かった。痛いってことはつまり……
「夢、じゃないんだ……私、サーニャからプレゼントもらったんだ……やった! 本当にありがとな、サーニャ」
「ふふっ、やっぱり今日のエイラちょっと変……ん」
「へ? サ、サーニャ!?」
その時、私はサーニャに突然ベッドに押し倒された。
ちょ、ちょっと待ってくれよサーニャ。私たちまだこういうのは早いんじゃ……
「すー、すー……」
「え? ね、寝てる?」
サーニャは可愛らしい寝息をたてながら、私の上でぐっすりと眠ってしまった。
まぁ夜間哨戒明けだから無理もないか……って、そういう問題じゃない!
この体制だと私、身動きとれないじゃないか。
私の心臓の鼓動が昨日夢から覚めた時よりも早く鳴っているのを感じる。
色々とマズいぞこの状況。
でも、心地良く眠っているサーニャを起こすわけにもいかないし……私、一体どうすればいいんだー!

〜Fin〜

4145uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2:2011/02/21(月) 23:56:42 ID:.yOjDb6.
以上です。エイラ、誕生日おめでとう!
それと名塚佳織さん、ご結婚おめでとうございます。

>>396 zet4j65z ◆le5/5MRGKA様
GJです。美緒と黒江さんのやり取りが素敵です。2人ともかっこいいですね。

>>402>>405 mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c様
GJです。積極的なサーニャと優しいお姉ちゃんがいいですね。
お姉ちゃんと本と言えば、乙女の巻2巻の私の大好きなエピソードを思い出します。

ではまた

415名無しさん:2011/02/22(火) 15:33:06 ID:C0kCiUTo
>>414
これは良いエイラーニャ!GJ!
相変わらずのお姉ちゃんにもワロタ

4165uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2:2011/02/24(木) 01:13:08 ID:O/9rDeXw
こんばんは。>>411-413の続きのお話が出来たので投下していきます。
芳リーネで2レスです。ではどうぞ

417お嫁さんはどっち? 1/2:2011/02/24(木) 01:14:15 ID:O/9rDeXw

「え? 私とサーニャちゃんが結婚?」
「うん。エイラさんが昨日そんな夢を見たって」
エイラさんの誕生会の後片付けが終わって、リーネちゃんと部屋でのんびりしていた就寝前。
リーネちゃんは、昨日私とサーニャちゃんが夜間哨戒でいなかった時に起こったある事件の話をしてくれた。
「昨日は本当にビックリしたんだよ。寝てたらエイラさんの部屋から突然叫び声が聞こえてきたんだもん」
「あはは……実際、私がサーニャちゃんと結婚するなんて言ったらMG42持ったエイラさんに追いかけまわされそう……」
エイラさんは本当にサーニャちゃんの事、大事に想ってるもんね。
でも、それ以上にサーニャちゃんはきっとエイラさんの事……
「ねぇリーネちゃん、もしエイラさんとサーニャちゃんが結婚したら、どっちがお嫁さんになると思う?」
「え? どうしたの急に」
「私、どっちかって言うとエイラさんがサーニャちゃんのお嫁さんだと思うんだ。サーニャちゃんと一緒にいると、
エイラさんに守られたいんじゃなくて誰よりもエイラさんの事を守ってあげたいっていう気持ちが伝わってくるんだよね」
昨日夜間哨戒で一緒になった時もサーニャちゃんは、エイラさんの事をどんなに大事に想っているかを私に話してくれた。
エイラさんはサーニャちゃんにあんなに想ってもらって幸せ者だね。

「エイラさんがお嫁さんかぁ……何となく分かるかも。それじゃあ……もし、私たちが結婚したらどっちがお嫁さんになるのかな?」
「……へ?」
突然、リーネちゃんが顔を赤らめながらそんな事を訊いてくるものだから私も思わずドキリとしてしまう。
もう、リーネちゃんその表情可愛すぎだよ。
「えっと、私……できるならリーネちゃんをお嫁さんにしたいかな」
私がそう応えると、リーネちゃんも満面の笑みを浮かべてくれた。
「えへへ、私も芳佳ちゃんのお嫁さんになりたいって思ってたんだ。ねぇ、せっかくだからシミュレーションしてみない?」
「シミュレーション?」
「うん。私、今から芳佳ちゃんのお嫁さんになるから、芳佳ちゃんは仕事から帰ってきた旦那さんの役をやってくれない?」
「疑似夫婦になるって事だね……分かった。じゃあ、早速やってみよう」

418お嫁さんはどっち? 2/2:2011/02/24(木) 01:14:45 ID:O/9rDeXw

「ただいまー」
「お帰りなさい、芳佳ちゃん」
私が一旦外に出て、また部屋の扉を開けるとエプロン姿のリーネちゃんが出迎えてくれた。
リーネちゃんのエプロン姿は台所でいつも見てるのに、何だか今私すごくドキドキしてる……
自分のお嫁さんがエプロンをしてるって考えると、こんなにもドキドキしちゃうんだね。
「ご飯にする? お風呂にする? そ、それともわた、私……?」
リーネちゃんが顔を真っ赤にしながら私に三択を迫ってくる。
そんな表情で迫られたら答えは一つしかないじゃん。
「もちろんリーネちゃん! えいっ」
私は今日一番の笑顔でリーネちゃんをベッドに押し倒した。
「きゃっ! もう、芳佳ちゃんったらせっかちなんだから」
「えへへ……リーネちゃん、耳出して」
「う、うん……」
リーネちゃんは私の指示通り魔力を解放して、使い魔の耳と尻尾を出してくれた。
私がその猫の右耳を思いっきり甘噛みすると、リーネちゃんはくすぐったそうに身をよじった。
「ひゃぅっ! 芳佳ちゃん、くすぐったいよぉ〜」
「リーネちゃん、ここが弱いんだね」
私が続いて左耳を噛もうとしたその時、背後から聞き覚えのある声が聞こえた。
「宮藤さん、リーネさん」
「「ペ、ペリーヌさん!?」」
振り返るとそこにいたのは、この部屋の3人目の主であるペリーヌさんだった。
「あなた方は一体、何をなさっているのかしら?」
ペリーヌさんは口調こそいつも通りだったけど、背後からは殺気のようなものを漂わせていた。
こういう時は何て答えればいいんだろう……
「……えっと、よ、夜の営み?」
「よ、芳佳ちゃん!」
「え? 間違った事は言ってないよね?」
「あ、あなた方という人は! な、何て破廉恥な〜! もう、知りませんわ!!」
ペリーヌさんは顔をりんごのように真っ赤にさせて、その場から去ってしまった。
「あ、ペリーヌさん行っちゃった……」
「もう……どうするの? 芳佳ちゃん。ペリーヌさん、怒りを通り越して呆れてたよ」
「ペリーヌさんには後で事情を説明するよ。それより今は……」
私はさっき噛み損ねたリーネちゃんの左耳を右耳と同じように甘噛みする。
リーネちゃんもさっきと同じようにくすぐったそうに身をよじらせた。
「リーネちゃんの事、もっと知りたいかな」
「はぅ……芳佳ちゃんのえっち……」

――リーネちゃん、私の可愛いお嫁さん。これからもずっと一緒にいようね。

―――――――

以上です。
なんだか思ってた以上にシュールな話になっちゃいました。
ではまた

419名無しさん:2011/02/24(木) 02:17:35 ID:LCdbcCfg
>>418
GJ! 芳リーネの夫婦に萌えてペリーヌさんの怒りでワロタ
あと30機撃墜クラブ入りおめでとうございます!
新たなミラクルエースの誕生に乾杯!

4205uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2:2011/02/28(月) 23:49:29 ID:elsxYk82
こんばんは。今日はペリーヌの誕生日ということで
短いですが、アメリーヌで1本書いてみました。
ではどうぞ

4215uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2:2011/02/28(月) 23:50:53 ID:elsxYk82

「ねぇアメリー」
「何ですか? ペリーヌさん」
「その……あなた、少しひっつきすぎじゃない?」

現在の時刻は23時57分、日付の変わる3分前――私とペリーヌさんは1つのベッドに向かい合うような形で横になっていました。
「えへへ、ここにいればペリーヌさんの誕生日を一番に祝えますから」
「ええ。それはありがたいんだけど、その……こうもベッタリされると、なんだか恥ずかしいですわ」
そう言って、頬を朱に染めるペリーヌさん。
わぁ、ペリーヌさん、照れちゃって可愛いな。
私はそんなペリーヌさんの胸に耳を当てて、胸の鼓動を聞いてみる。
「本当だ。ペリーヌさん、すごくドキドキしてますね」
「ふぇっ!? だ、だから! ひっつきですって〜」
「……ペリーヌさんは、私にひっつかれるのイヤですか?」
「別に、悪い気はしませんわ。むしろ嬉しい……って、何言わせてるのよ」
「ふふふ……あっ!」
「どうしたの?」
「0時になりましたね」

部屋の時計を見ると、長針と短針がてっぺんで重なり合っていた。
今日は2月27日――私の大好きなペリーヌさんが生まれた日。
「ペリーヌさん、誕生日おめでとうございます」
「……ありがと」
「これ、私からのプレゼントです」
私は寝巻きのポケットからプレゼントを取り出し、それをペリーヌさんの耳に付ける。
シンプルな形の銀色のイヤリングだ。
「イヤリング?」
「はい。わぁ、すごく似合ってますよペリーヌさん」
「……本当にありがとう。正直あなたや501のみんなと逢うまでは、自分の誕生日というものに意味が持てなかったわ。
私には誕生日を祝ってくれる家族がいなかったから……でも、今は本当に嬉しい……家族と同じくらい大切な人に祝ってもらえて」
と、どこか寂しげな表情で語るペリーヌさん。
「ペリーヌさん……」
何だかしんみりした雰囲気になっちゃいました。
こういう時はどうすればいいんだろう……あっ、そうだ。
私は思いついたある事を実行するために、ベッドに侵入する。
「ペリーヌさん、ちょっとごめんなさい」
「へ? ア、アメリー!?」
私はベッドに潜り込み、ペリーヌさんのお腹の辺りをこちょこちょとくすぐる。
「ちょ、ちょっとアメリー!? く、くすぐったいですわ……ふふっ」
「あ、笑ってくれた」
「え?」
「その……私、とにかくペリーヌさんには笑っててほしいんです。だって、私ペリーヌさんの笑顔が大好きだから」
私がそう言うと、ペリーヌさんは顔を真っ赤にしながらこう呟いた。
「ま、全く、あなたという人は……お返しですわ」
今度はペリーヌさんがベッドに潜り込んで私のお腹をくすぐってくる。
「あぅ……ペ、ペリーヌさん! そこはダメですよ〜……ふふふ」
「ふふっ、観念なさいアメリー」
「や、やめてくださ〜い……あはは」

――ねぇペリーヌさん、私たちこれからもずっと一緒に笑いあえたらいいですね。

〜Fin〜

4225uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2:2011/02/28(月) 23:53:34 ID:elsxYk82
以上です。ペリーヌ、誕生日おめでとう!
ペリーヌはアメリー相手には積極的だったらいいなーと思ったり。

>>419
ありがとうございます。まだミラクルエースになったという実感は湧きませんが、
これからもちょくちょく書いてくのでよろしくお願いします。

4235uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2:2011/02/28(月) 23:56:04 ID:elsxYk82
すみません、タイトル忘れてました……
>>421のタイトルは「tickles」です

424Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/03/01(火) 22:44:34 ID:Ggr4Rfow
お久しぶりです!
最近スランプ気味(!?)であったので、なかなか作品を投下出来ませんでした…;;
もう開き直って、スランプ状態なまま書いたらこんな作品が出来ました!ぜひ読んでください!
なお、初挑戦のエイラーニャ作品です!


【過保護エイラさん】

ここは部屋中、占いグッズなどが溢れているエイラとサーニャの部屋。
ネウロイの奇襲もなく、急きょ全員非番となり暇を持て余した隊員たち。
そんな中、エイラはベッドで寝ながらタロットカードで遊んでいた最中であった
急にサーニャがこんなことを聞いたのだ...

「何ダヨ、このタロットカード破れかけてるじゃんかヨー」
「ねえエイラ…」
「ん?どうしたサーニャ?」
「子供ってどうやって出来るの?」
「ハ…?」
「『愛の結晶』って何?」
「…ダッ、誰から聞いたンダ??!!」
「ハルトマンさん…」


***

425Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/03/01(火) 22:45:02 ID:Ggr4Rfow
>>424の続き。


「ハールートーマーン!!!!」
「ん〜?何〜?」

エイラは急いで、居間でダラっとしていたエーリカを呼びとめる

「オッお前、サーニャになんてコトを!!!!」
「え、何?なんか私、変なこと吹き込んじゃった?」
「吹き込むも何も…サーニャがあんな突拍子にもない事を言うはずネエダロー!!」
「ん〜…思いつかない!じゃっ!」
「待てハルトマン、何処に行くんだ?!」
「え〜と、ミーナに頼まれてた領収書の整理?みたいな」
「オイオイオイオイ!!!!」
「はあ…」

エーリカは急に手を額にのせ、ため息をつく...

「エイラって、将来は良いパパになると思うよ」
「ハア?」
「んじゃ。わ〜たしに〜でっきること〜♪」
「待て、何処行くンダ!?」

意味深な言葉を残し、何処かへと行ってしまったエーリカであった...






























そして、また夕飯後に事件は起こる。

「ナア宮藤ぃ、サーニャ知らないカー?」
「サーニャちゃんならさっき、ルッキーニちゃんとハルトマンさんと一緒に居間に居たような…」
「ゲッ…」

薄々、嫌な予感を感じながらもエイラは居間へ向かう。
やはり予想通り………、

「ウジュー!おっきい!」
「これって…すごい」
「うん、大きいねえ!私もこんなんになりたいねぇ!!」
「…ッ!!ハルトマン!!!!」
「あ、エイラだ」

エーリカを囲むように、ルッキーニとサーニャは本を読んでいた

「エイラ」
「エイラ、どうしたの?顔真っ赤にしてさあ」
「どうしたも何も…お前、サーニャに何てモノを見せてるンダッ??!!」
「エッチな本」
「見りゃ分かるヨ!!」
「バッカだなあ、エイラ。このサーニャんの性教育はこのエーリカ先生に任せておきなさい!」
「アホらし。サーニャ、戻るゾ」

無理やりサーニャの腕を引っ張ろうとすると、

「…嫌」
「へ???」
「サーニャはねー、今日はあたしと一緒に寝るのぉー」
「じゃあエーリカちゃんも〜!」
「おいおい、待て待てルッキーニとハルトマン…どうゆう事ダ?」
「どうゆう事って…こうゆう事。おやすみ、エイラ」
「サーニャ…サーニャぁぁぁぁ…」

その場で立ちつくしてしまったエイラであった...


***

426Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/03/01(火) 22:46:16 ID:Ggr4Rfow
>>425の続き。


「ううっ…うううっ…」
「泣くなってエイラ…」

何故かエイラはシャーリーに慰められていた...

「だって…だって私なんかもう必要ないンダ…ううっ」
「あぁもう面倒臭いヤツだなあー」
「何か言ったカ?」
「ううん、別に」
「ぐすっ…サーニャに捨てられたら私、私はどうやって…」
「極論過ぎんだろ!?」
「まだわからないの?エイラ」
「えっ…」

いつの間にか、エイラの背後にはエーリカが居た

「旦那、何かコイツに言ってやってくださいよ」
「おうおうおう…おうエイラ」
「何だよ、その打ち合わせしたようなやり取りはサ」
「今までサーニャの意見って聞いたことある?」
「そりゃあもう…いつもサーニャの頼みごとなら何でも聞いてたサ」
「ウッソだ〜!じゃあ本当はサーニャはツナのサンドイッチが食べたかったのに、エイラが勝手にハムのサンドイッチを持って行って食べさせてたってことは無かったと言い切れるの?」
「うっ…」
「もちろん、エイラは好意で持ってきてるから断れないよなあ」
「他にも、まだまだ。1人で落ち着いてサウナ入りたいのに下心アリアリなエイラが勝手に入ってくるんだよ?」
「まっ、まさか!サーニャに限ッテ!!」
「言い切れるのぉ〜?」
「うっ…」
「他にもサーニャはEXILEかCHEMISTRYは選択しきれなかったかもしれない。けどエイラは勝手にコブクロを…」
「もう良いよ!しつこい!!つまり何が言いたいんだ、ハルトマンは」
「はあ…だから、たまにはサーニャもエイラも、一人になる時間が大切だって話。そして最近のエイラは『お節介』や『押し売り』の度が過ぎてるかな〜って」
「…お前らにサーニャの何が分かるンダ!」

…怒り気味で部屋を出て行くエイラ。

「おい、待てって」

急いでシャーリーが追いかける

「落ち着けってエイラ」
「落ち着いてられるカ!!」
「あー…これ、ハルトマンには秘密な」
「秘密?」
「まあハルトマンとサーニャって最近仲が良いじゃん?」
「あぁ…」
「サーニャから相談を受けてたらしいんだ」
「ハルトマンに?」
「あぁ。もちろんエイラも大事に想ってるけど、最近私に付きっきりでエイラは他の人とあまり交流が少なくなってきてるってな」
「サーニャ…がか?」
「ああ。だからハルトマンは一念発起!…あえて引き離そうとしたらしいんだ」
「ご、誤解シテタ…」
「お前がサーニャが好きなのはわかる、けど…自分や相手を『思いやる』ってのも大事だぞ」
「…ありがとう、シャーリー。なんかムカムカしてたからサ」
「いんや、礼を言うのはハルトマンにな」
「サルミアッキでも贈るか、お菓子好きだって言ってたしナー」


***

427Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/03/01(火) 22:49:36 ID:Ggr4Rfow
>>426の続き。

翌日

「ねえエイラ…」
「どうした?サーニャ」
「私、欲しい物があるの」
「そうかそうか!じゃあ私が………ううん、何でもナイッテ」
「だから今日もお休みをもらって買い物に行って来ようと思うの」
「ソウカソウカ…私は行かなくても大丈夫カ?」
「大丈夫。エイラはゆっくりしてて」

やはり少し心配したエイラは玄関までサーニャを送り出すことにしたが…

「………」
「おー、リーネ。どうしたンダ?」
「これ…何なんでしょう…?」

入口付近でただ呆然と立っていたリーネ。リーネの視線の先には…

「………」
「………」

この間送られてきたジャガイモの入っていた空き箱を何個か利用して工作され、それが積み上げられている物体があった

「…なんだこれ、『無人契約機 ナンボちゃん』?ナンダコレ?」
「コノ度ハ、『無人契約機ナンボちゃん』ヲゴ利用頂キマシテ誠ニグラシアス」
「わっ、喋ったゾ!?この箱!!」
「この無人契約機、なんか訛ってる…」
「そこをツッコむのカ?!…と言うかサーニャ!こんなの無視して早く行くんだ!!」
「うん…じゃあ行ってくるね、エイラ」
「おっ…おう!」

そうしてサーニャは走って外へ出かけて行ったのであった...

「ゴ利用ハ、計画的ヌ」
「…もう良いぞ、ハルトマン」
「あ、バレてた?」

箱の山から出てくるエーリカ

「これさあ、昨日ルッキーニとシャーリーの3人で徹夜して作ったんだよね〜!危うくトゥルーデに壊されそうになったけどさ」
「ったく…」
「たまにはさ、サーニャサーニャだとサーニャんの何処が好きなのか忘れちゃうよ?」
「余計なお世話だっての!」
「素直じゃないんだからさあ〜、トゥルーデじゃあるまいしぃ」
「けど…」
「けど?」
「あ…ありがと…ナンダナ」
「はは…あはは!ムリダナ〜!!」
「ぐぬぬっ!!ハルトマン!!!!」
「サーニャん、何買ってくるか楽しみだね〜♪」
「そうダナ」

428Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/03/01(火) 22:49:58 ID:Ggr4Rfow
>>427の続き。



そうして、サーニャは昼過ぎには帰ってきた。

「あれ、無人契約機ナンボちゃんは…?」
「あれはどうでも良いンダ!!で、サーニャ!ケガとか無かったか?!」
「うん、無事」
「良かったぁ…」
「はい、これ」
「…ん??」

サーニャは買ってきたと思われる、ギフトを渡したのであった。

「私にカ??!!」
「うん…開けてみて」

若干手が震えながら、エイラはギフトの包みを開ける。そこには…

「新しいタロット…?」
「うん、今使ってるのずいぶん使い古してたみたいだから…やっぱりいつも使ってるのじゃないと、ダメ?」
「いやいや!全然!全然これでOKダヨ!!うわあ…素直に嬉しいナア」
「…ハルトマンさんに相談したら、タロットが良いんじゃないかって」
「へ???」
「いつも、エイラに面倒を見てもらってるって感覚だったから今度は私がって…」
「面倒を見るって…介護じゃあるまいし…」
「でも気に入ってくれたなら、嬉しい…」
「ホンットに嬉しいサ!ありがとナ、サーニャ!」
「エイラ…」


「ニシシシシ…」

柱の影から2人の様子を見ていたエーリカ
そしてその後ろにはルッキーニとシャーリーも居る。

「ウジュー、ハルトマンもっとイタズラしないのー?」
「おいおい、今一番良い所なのにイタズラってまあタライがエイラの上に落ちてきたら『笑い』的には美味しいな」
「エイラのリアクション芸が見たーい!!」
「そうゆうのはペリーヌで我慢しとけ、ルッキーニ。…なあハルトマン」
「ん〜?」
「お前って…一体何なんだ?」
「私?天使だよ!」

これぞ、まさに『EMT』である…。


【おわれ】


以上で〜す。如何でしたでしょうか、初のエイラーニャだったんですが;;
それにしても、リアクション芸担当はペリーヌだって断定するルッキーニは酷いw
やはり皆様の作品を読んで、どうかスランプから抜け出したいと思います!

429mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/03/04(金) 20:14:25 ID:Y6hG8x8g
>>414とかたくさん 5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2様
激しくGJです! どのSSもキャラへの愛情に溢れる素敵な作品ですね。
あと30機撃墜おめでとうございます。新しい時代のミラクルエースですね!

>>428 Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA様
GJです。普段とは又違った感じなハイテンション面白いです。


こんばんは。mxTTnzhmでございます。
ふっと思い付いたネタをひとつ短めに。
保管庫No.0450「ring」シリーズ続編となります。
ではどうぞ。

430tact:2011/03/04(金) 20:15:43 ID:Y6hG8x8g
 遅めの朝食。殆どの隊員は食事を済ませ既に席を立っている。
 のんびりと食事をしているのは、エーリカとシャーリーのふたり。
 厨房に居る筈の食事係……リーネと芳佳も何処かへ行っており、食堂の中はしんと静まりかえっている。
 もそもそとサラダを食べつつ、シャーリーは斜向かいに座るエーリカに声を掛ける。
「今朝は、ハルトマン一人か?」
「そう言うシャーリーこそ、ルッキーニは?」
 ふかし芋を食べながらのエーリカの答えに、シャーリーは薄く淹れた珈琲を口に付けた後、答えた。
「ルッキーニは昨日から何だかご機嫌斜め四十五度でさ〜。今はどっかで寝てるか遊んでるんじゃないか」
「ふーん」
 会話終了。
 二人だけの淡々とした食卓は尚も続く。穏やかな陽射しが窓辺から二人のもとを照らす。
 不意に口を開くシャーリー。
「そういや、バルクホルンは風邪ひいたって聞いたな。大丈夫か?」
「トゥルーデ? 薬飲んで、部屋で寝てる」
「良いのか、看病してやらなくて」
「本人が良いって言うから。『他の連中の面倒を見てやれ〜』とか言っちゃってさ。で、私はここでご飯を食べてる」
「そっか……」
 その場に居ない“堅物”の物真似声を交えたエーリカの答えに、シャーリーは相槌を打つ以外に何も出来なかった。

 エーリカは、普段にも増してのんびりと食事を取っている。
 しかし、普段と変わらない様でいて、ペースはいつもよりゆっくり、そして何処か物憂げだ。
 シャーリーは、そんなエーリカをしばし観察した後、呟いた。
「ハルトマンってさ」
「?」
「そうやって、自由気ままに見えて、相手の事すげえ心配してるって言うか気を遣ってるって言うか、そういうとこ有るよな」
 エーリカの表情は変わらない。ただ、一瞬ぴくりと眉が動いたのをシャーリーは見逃さなかった。
 あえて気怠そうな表情のまま、エーリカはシャーリーの方を向いた。
「何が言いたいのさ」
「カールスラント人ってどうしてこう、カタい奴が多いんだろうね」
「リベリオン人だって、勝手気まま過ぎるよ」
「ハルトマンに言われたくはないな」
「私もシャーリーに言われたくないよ」
 二人の視線が交錯する。お互いを見つめてるうちに不意におかしくなり、くすくすと笑う。
「行ってやれよ。きっとあの堅物の事だ、部屋の隅で寂しく泣いてるぞ」
 エーリカをけしかけるシャーリー。
「シャーリーも行ってあげたら? ルッキーニ寂しがってるよ」
「そうだな。あいつの好きなキャンデーが何処かに有った筈だ……ええっと」
 服のポケットを探し始めるシャーリーに、エーリカが何かを差し出した。
「はいこれ」
「おっ、サンキュー。ってこれスオムスのまずい飴じゃないよな?」
「シャーリーの服に入ってたからそれはないと思うよ」
「なるほど……っていつの間に取ったんだよ」
「さあね。スキだらけ〜」
 エーリカはさっと立ち上がり、食べ終わった食器を片付けると、シチュー皿にシチューをたんまりと注ぐ。
 それをトレーに載せて、食堂を後にする。恐らくは、部屋で寝込んでる彼女の元へと持って行くつもりだろう。
 シャーリーはそんなエーリカを見て、ふっとため息を漏らす。

 あいつらと来たら……。
 ま、そう言うあたしも同類か。

 そんな事を考えながら、返された飴玉ふたつを、手に取る。
 ルッキーニの居場所は大体分かってる。
 行って声を掛けて……しかし飴玉ふたつで機嫌を直して貰えるだろうか。
 少々の不安か、飴玉の乗る手をじっと見つめる。

「考えるより、動いた方が良いよ。多分待ってる」
 見ていたのか、食堂の入口でエーリカがにやついている。

 ……全く、油断も隙も無い奴だ。

 そんな感想を胸にしまい、わかったわかったと大きめに返事をして、シャーリーは席を立った。

 ハルトマンなりの気遣い……あたしまで受けて、どうするよ。

 参ったね、と呟いて、シャーリーは外へ出た。

 あのウルトラエース二人は、よく分かってる。だからこそ……。
 リベリオン出身の大尉は大きく息を吐くと、ルッキーニの元へと走った。

end

431名無しさん:2011/03/04(金) 20:16:05 ID:Y6hG8x8g
以上です。

エーリカ×シャーリーな感じで。
でも前提としてエーゲルとシャッキーニがあってこそ
こう言うのも有りかなーとか思った訳で。

ではまた〜。

432管理人 ◆h6U6vDPq/A:2011/03/04(金) 23:38:22 ID:7A0XfQVw
皆様乙です
500KBに近づいてきましたので次スレを立てました
ここが500KBに達したら移動お願いします

ストライクウィッチーズでレズ百合萌え 避難所8
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12483/1299248601/

433mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/03/20(日) 00:07:45 ID:gLiv7t0U
スレが前後してしまいますが

次スレ>>6 6Qn3fxtl様
GJです。エーリカかわいいです!

次スレ>>11 5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2様
GJです。オラーシャの魔女もおそろしや。


こんばんは。mxTTnzhmでございます。
今日は何の日お姉ちゃんの誕生日と言う事で、埋めついでにひとつ。
保管庫No.0450「ring」シリーズ続編となります。
ではどうぞ。

434cocoa:2011/03/20(日) 00:08:16 ID:gLiv7t0U
 それはまだ陽も出ない早朝の事。
 ベッドでひとり微睡んでいたトゥルーデは、部屋の中からただならぬ気配を感じ、がばと飛び起きた。
 果たしてそこにはシャーリーとエーリカが居て、トゥルーデを見て「しまった」と言う顔をしている。
「何をしている二人共」
 寝惚け眼をこすりつつも、問い質す。
「今日誕生日だよな?」
 呑気なシャーリーの答え。
「ああ……。まあ……、そうだが」
「と言う訳で、後でみんなからお祝い有ると思うけど、まず私からの前祝い〜」
 笑うエーリカ。
「『私から』って、エーリカお前何もしてないじゃないか」
 トゥルーデの言う通り、シャーリーは携帯コンロとフライパンを持ち込み、何やらパンケーキをじゅっと焼いている。
 エーリカは横で見ているだけ。
「だって、私には料理するなって言うじゃん。だからシャーリー代理」
「代理って……」
 呆れるトゥルーデ。
「まあ、堅物にも、たまにはこうして何か作ってやるのも良いかな、なんて思った訳よ」
 シャーリーもまんざらでもなさそうな顔で、パンケーキを一枚、また一枚と焼いていく。
「なあ、別に部屋でなくても……それに前にもこんな事が有った様な」
「気にしなーい。はい、焼けた。熱々のうちに食べな」
 ほかほかのパンケーキが載った皿を渡される。何処か釈然としないトゥルーデ。
「そうそう、バターとハチミツはそこに有るから適当に」
「……」
 適当に甘味を付け、もそもそと一口食べる。
「悪くない」
「美味いと素直に言えないのかねー」
「いや、すまない。美味い」
「……ま、誕生日おめでとう、って事で」
「おめでとう、トゥルーデ」
「ああ、有り難う……」
「で、これも」
 エーリカから、カップを渡される。カップの中身はココアだった。
 ミルクと砂糖で甘味を出していて、ほんわかと湯気が立ち上る。
 一口、口に含む。少し熱い。いや、だいぶ熱い。
「エーリカ、これは舌を焼くぞ」
「その辺は魔力で……」
「どうにもならん」
 だらけた二人のやり取りを聞いていたシャーリーは、くすっと笑った。
 ふわあとひとつあくびをすると、フライパンやら携帯コンロをさっさと片付け、立ち上がった。
「何処へ行くリベリアン」
「あたしの役目はここまで。起床までもう少し時間有るから、ちょっと寝るわ」
「分かった」
 寝坊するなよ、と言いたかったが色々気を遣わせてしまった以上、厳しくも言えない。
「色々すまなかった」
「なぁに、良いって。そいじゃ」
 シャーリーは片付け物を持ったまま、部屋から出て行った。

 いつの間に用意していたのか、エーリカも自分のカップにココアを淹れていた。
「ココアってさ」
 ふーふーしながら一口飲み、トゥルーデに語りかける。
「チョコレートと一緒なんだよね?」
「成分的にはそうだな」
「じゃあ、……そう言う意味で取っても良いのかな?」
「そう言う意味ってどう言う意味だ」
「まあ、もう祝祭日は過ぎたし……」
 二月の聖なる日を思い返すエーリカ。トゥルーデはそんな彼女を見ていたが、ぽつりと呟く。
「いや、そう取るなら取っても良いんじゃないか」
 途端に目を輝かせるエーリカ。
「本当?」
「な、何でも無い。良いから早く飲め」
「ふふ、ありがとトゥルーデ。トゥルーデも冷めないうちに早くパンケーキを」
「ああ……」
 エーリカが顔を近付けてくる。
「食べ残し、ついてる」
「えっ?」
 少し顔を向けた途端、唇が触れ合う。
「なんてね。ウソ」
「こら、人をからかうな」
「でもちょっとドキッとした?」
「……した」
「じゃあ、もう少しだけ」
 エーリカはトゥルーデにしだれ掛かり、腕を身体に回すと、ゆっくりキスをする。
「たまにはこう言うのも良いよね」
「しょっちゅうの様な気もするが……」
「気にしない」
 くすくすと笑うエーリカを前に、……まあいいか、とぼんやり思うトゥルーデ。
「今日はどれ位お祝いして貰えるかな、トゥルーデ?」
「私は、もう十分……」
 またもエーリカに唇を塞がれる。オモチャにされている感じもしたが、悪い気分ではなかった。
 もう少し、このままで。トゥルーデは腕を回し、エーリカを抱きしめた。

end

435名無しさん:2011/03/20(日) 00:08:38 ID:gLiv7t0U

以上です。
お姉ちゃん誕生日おめでとう!

ではまた〜。

436名無しさん:2011/03/21(月) 11:08:04 ID:lF.KuDvo
1日遅れたけどお姉ちゃん誕生日おめでとおおおおお

437mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/03/28(月) 23:42:24 ID:3hhrsnIQ
次スレ>>18 Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA様
良いお姉ちゃんですね。GJ!

こんばんは。mxTTnzhmでございます。
今日は思い付いたネタを、埋めついでにひとつ。
保管庫No.0450「ring」シリーズ番外編となります。
ではどうぞ。

--

buddy

 あの時、何故トリガーを引けなかったのか。
 あの時、挟み撃ちにされて、どうして何も逃げなかったのか。いや、逃げられなかったのか。
 あの時、あいつが来なければ……、あたしは……。

 ストライカーの魔導エンジンをいじくりながら、ハンガーの隅でぼんやり考える。
 結果的に事なきを得たのは事実だけど、あいつが魔法力、体力を削ってまで来なければ、あたしは海の藻屑となっていた。

 だから、どうした。
 多分あいつはそんな感じでさらっと流すに違いない。
 自分の事もほっぽり出して、へろへろで飛び立って、魔力を吸われ、気を失ってまで、あたしを助けた、あの馬鹿。大馬鹿。
 あたしが全力を出して抱きかかえた時の、何とも言えぬ感覚。触覚。ルッキーニのそれとも違う……

 全てを預けて来る、そんな身体の触れ合い。

「あーもう!」

 あたしは何となしに苛ついて、手にしていたスパナを放り投げた。乾いた音を立てて、近くに転がった。
 知ってる。分かってる。悪あがきだ。どうしようもないって事を。
 あいつはいつも、規則だなんだと怒ってる様で(実際表面的にはそう見える)、だけど心の中ではとても心配してる。
 凄惨な戦いを生き延びたからこそ、なんだろうな……。あたしはそこまで奴の事を知らないし、分からない。
 でも。
 もう少し位、良いじゃないか。何でいつも、いつも……。
 もっと、あたしを。

「ニヒヒ、どったのシャーリー? 何かうまく行かない事でもあった?」
 ルッキーニか。何でもない。

「シャーリー、どうしたの?」
 ルッキーニこそどうした、改まって。

「だって、シャーリー、泣いてる……」
 はは、嘘だろ? 冗談。あたしが何で泣くんだ? そんな必要もないしそう言う時でもないし。

「あたしで良ければ、何でも話して?」
 あはは……。ルッキーニは可愛いし優しいな。安心するよ。

 遠慮無しに全体重を預けてくる彼女の華奢な身体も、あと数年も経てば立派なナイスバディになるかもな。
 だけど、今はその無邪気な優しさが、かえってあたしの心に突き刺さる。
 何ていえば良いのか……分からない。
 今ただひとつ言える事。それは、彼女の前では泣かない事。
 これじゃあたしは“保護者”失格だな。

「ねえシャーリー、整備うまくいかなかったの? あたしも手伝おうか?」
 はは、そうだな。今日はだめだったよ。もうお終い。
 あいつは話を聞かないからな。
 そうだな、次はルッキーニにも手伝って貰うよ。

 ……え、「あいつ」って誰かって? 今は内緒って事にしといてくれよ。
 大丈夫、あたしは……。

end

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以上です。
埋めネタと言う事で、短めにひとつ、ひっそりと。

ではまた〜。


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