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☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第116話☆

680ザ・シガー ◆PyXaJaL4hQ:2013/10/29(火) 20:25:38 ID:acixBZ26
 ユーノはその意図をすぐに察した。
 つまり、クロノは新しいクルーとしてユーノを自分の傍に置きたいと思っているのだろう。
 ある意味で職権の乱用と言えたが、正当性はある以上誰も口は挟めない。
 ユーノも断る理由はなかった。
 だが、ユーノは心のどこかで自分の未来をある程度予想していたのだろうか。
 果たして、リンディはこのクロノの決断を前に何を思う。
 無限書庫の職を辞し、クラウディアへ移るまでの間、ユーノは短い休暇を取り辺境世界の遺跡発掘に行った。
 それが少年の運命の袋小路だった。



 無人の世界、森は深く、ユーノは一人テントの傍でキャンプチェアに腰掛け、焚き火の明かりを頼りに本をめくっては、時折夜空を見上げていた。
 静かな自然の中、静寂を友とする一時。
 そこへ、闖入者の姿がふいに現れた。
 茂みの中から歩み出るのは、フードを目深に被った黒い外套姿の女。
 手にした長剣の白刃が月光を吸って冴え冴えと銀色に輝く。
 明らかに剣呑な様相を前に、しかしユーノはまったく慌てる事もなく、静かに本を閉じ、立ち上がった。
 そして悠然と剣士に近づき、親しげに呼びかける。

「久しぶりだね、シグナム」

 彼の言葉に、さしもの刺客も驚嘆に身を戦慄かせた。
 フードをめくりシグナムは素顔を晒す。

「よく分かったな」

「守護騎士のうち、もし来るなら君じゃないかなって思ってたんだ」

「そこまで読めていたのか……ならば、誰の差金かは言うまでもないだろうな」

「リンディ提督、だね」

「……」

 無言はすなわち肯定だった。
 リンディは、ユーノを殺害すべくシグナムを刺客に仕立てあげたのである。
 はやてや八神家の皆を盾に取り、命令を下したのだ。
 彼女の地位と権力を以ってすれば過去の罪状や危険性を元に監獄へ送るなど造作も無い、となればシグナムに逆らう手立てはなかった。
 何故、彼女はそこまでクロノとユーノの関係を許さないのか、人命を奪うほどの事をするのか。
 その理由さえもユーノは察していた。
 リンディは決して冷淡でも冷酷なわけでもない、彼女はむしろその逆、深く激しい愛を持つ女性だった。
 麗しき美貌を湛える彼女が今でも再婚せず独身を貫くのは、彼女が未だに亡夫クライドを愛し、操を捧げているからに他ならない。
 そんな彼女にとって、クロノはかけがえのない夫の一粒種である、もしその息子が道ならぬ愛に走り、エイミィを捨ててしまえばクライドの血筋は絶える事となる。
 リンディはそれを最も恐れた。
 そう、彼女がユーノを殺さんとするのは、怒りでも憎しみでもない、殺意でさえもない、あるのは愛と恐怖だった。
 家族を持たぬ天涯孤独のユーノだからだろうか、不思議とリンディの気持ちを読み取る事ができ、自分を殺そうとする彼女に対して恨みは生まれなかった。
 ただ、悲しく憐れだった。
 
「許してくれとは言わん。好きに恨んでくれ」

「良いよ、別に恨んだりしないさ」

 シグナムがゆるりと構える、悲痛な顔とは裏腹に、上段に構えた剣は刀身に殺気満ち、微塵の隙もない。
 ユーノもまた寂しげな微笑と共に軽く手を上げて構えた、翡翠色の魔力光を放って形成されるスクライアの民族衣装型バリアジャケット。
 見守るのは天上の月と黒い空のみ。




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