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☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第115話☆

862しぐ×あい!:2013/04/27(土) 20:17:26 ID:3g6BdljI
 どれも似たようなシルエットを連ねる墓石の群の中を、シグナムは確かな足取りで進む。
 ここへ訪れるのは初めてではない、何度も歩んだ順路は間違いようがなかった。
 墓地の中でもかなり奥まった場所に鎮座する墓石の一つを前にして、シグナムは立ち止まった。
 目的の墓である。
 
「……」

 その墓を前に、シグナムはしばし無言で目を眇め、故人を偲ぶように墓石を見下ろした。
 脳裏には、かつて共に生きた蜜月が幾重にも過ぎっていた。
 そして、ふと顔に微笑を浮かべて、膝を突く。

「久しぶりだなリインフォース」

 慈しむように、彼女の名を呼んで。
 あの日旅立った愛する人を想った。
 本当ならば海鳴の墓地に葬ってやりたかったが、戸籍を改ざんする手間を考えると、やはりミッドチルダの方が墓を作るには易かった。
 聖王教会にはカリムを通じて顔が利くし、なにより、棺や墓石の場所にリインフォースとてこだわりはしないだろうと思ったからだ。
 プログラムを魔力を以って顕現していた彼女は、死ぬと共にただの魔力素に散って、遺骸は欠片も残らなかった。
 だから、この下に眠る棺の中身は空だ。
 ならば墓を設ける事自体、無意味と言えなくもないかもしれない。
 だが、人として愛し敬う為、生きた証として、八神家の皆はこうして彼女を弔った。
 空の棺桶だって、魂の在り処とするなら意味も在るだろう。

「しかし、随分降られたな」

 そう言いながら、シグナムは冷たい墓石に手を乗せた。
 降り積もった雪を手袋をした指でさっと払い、無機質な御影石の表面を拭う。
 十年の間風雪を浴びた墓石は、やはり色褪せて見える。
 そう、十年……もうそれだけの月日が経った。

「お前が逝って、もう随分経つんだな」

 口にしてみて、シグナムはあの日かから今日までの間の年月を噛み締めた。
 十年、途轍もなく長く感じる反面、短いようにも思える。
 そんな時間の流れの持つ慈悲深さと残酷さを。
 かつてリインフォースが死んだ直後は、その悲しみにあまりの深さに幾度となく涙し、嘆いた。
 だが流れ行く歳月は、少しずつ悲しみを癒す。
 今シグナムは、こうして墓石を前にしてもかつてのような激しい悲嘆に暮れる事はない。




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