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☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第114話☆

34 ある幸福の解答 :2012/07/05(木) 23:40:08 ID:MaYuWzkI
 駐車場から歩くこと数分、良く手入れされた芝の上に並ぶ長方形の石塊の間を行けば、目的のそれはあった。
 墓標である。
 プレシアとアリシア、妻子の名を刻んだ墓石が二つ。
 ここは、母子二人が眠る場所。
 だが、土中の棺の中身は空だ。
 彼女らの亡骸は遥か虚数空間の闇に消え、永久に見つかる事はない。
 空っぽの棺おけと、その上に置かれた墓石のみを見舞う墓参り。
 二人の命日にそれぞれ行う、虚しい行いだった。
 肉体はなくとも魂はここに眠ると、そう言い切れれば楽だったろう。
 それは気休めに過ぎなかった。
 彼には、とてもそうは思えない。
 今でも妻の魂は、何処とも知れぬ冥府に落ちた娘を探し、どこかを彷徨っているのではないか。
 そっと墓前に花を置き、詮無き思慮に耽る。
 そんな男の心を現世に呼び戻したのは、視界の隅に映った金髪の女性の姿だった。

「あ……」

 紅い瞳に動揺を見せて、女性が吐息を零す。
 黒い執務官の制服に、肉感的な肢体を包んだ美女だった。
 亡くした娘と瓜二つの、しかし決定的に違う別人。
 彼女の事は知っていた。
 プレシアの最期を管理局員に伝えられた時、事件の顛末と共に、アリシアを模して生み出された人造人間についても教えられた。
 初めてその事を聞いたとき、彼は目の前が眩むのではないかと思える程の不快感を得た。
 なんとおぞましい事なのだろうか。
 亡くなった娘と瓜二つのクローンが、この世にあるなどと。
 狂したプレシアならまだしも、彼は娘の代わりに複製人間を作ろうなどという発想を理解できなかった。
 無論、その複製への愛情など。
 ハラオウンと名乗る管理局員に、保護者にならないか、と促された時、彼は珍しく激昂してこれを断った。
 哀れには思う、だがどうしても無理だ、失った者とそっくりの別人を愛せるほど、彼は聖人君子ではなかった。
 できる事なら、永遠に会いたくないとさえ思う。
 だが、顔を会わせるのは初めてではなかった。
 命日に墓参りを欠かさない二人が出会う確率は、決して低くない。
 
「あ、あの……」

 縋るような眼差しと声で、金髪の美女――アリシアの似姿が言葉に迷う。
 彼女が何を求め欲しているか、判らないほど彼も愚鈍ではない。
 まるで飼い主に捨てられた子猫のような眼差し。
 血の繋がった肉親から蔑ろにされ続けた過去を持つ彼女は、失った温もりを求めていた。
 悲しい、そして憐れに思う。
 生み出したのも厭ったのも虐げたのも、全てはプレシアの妄執だ。
 彼女には何一つとして、罪などないのに。
 もしこれが自分の娘にさえ似ていなければ、抱き締めて優しい言葉の慰めを掛けてやりたい。
 ……だが、無理だ。
 男はつい、と視線を彼女から外し、歩き出す。
 何か声を掛けようと手を伸ばすのを知りながら、それを無視して去っていく。

「すまない」

 雨音に混じり、聞こえるか聞こえないか、そんな声音で別れを残し。
 一瞥もくれずに袖にした。
 アリシアに似せて作られた少女を、アリシアの代わりに愛する、それはあまりに罪深かった。
 もし彼女に優しくしてしまったら、自分は絶対に穢せない大切な何かを裏切る事になる、そう思えた。
 背後から、押し殺したような嗚咽が聞こえる。
 心に冷たい氷の刃が突き刺さるような痛みが、じわじわと染み渡っていく。
 傷つけたくなどなかった、だが傷つけねばならなかった。
 何故、こんなにも世界は不条理に満ちているのだろうか。




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