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☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第102話☆
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「それ、ビイが作ったんですよ。この娘が作れる唯一の得意料理です」
「ああ、そうなんですか」
断る道理もないので、コップを手に取って人肌に温まった液体をゆっくりと喉に流し込む。
口の中に広がる甘い香り。僅かに酸味が感じられるが、飲めないほどではない。
温かい感触が喉を嚥下する度に、胸の隙間へ染み渡るような感覚が新鮮で、何とも言えない心地よさと気だるさが全身を支配していく。
有り体に表現するならば、おいしいと言うのだろうか?
「………………………」
「……………?」
半分ほど飲み干したところでコップをテーブルの上に置くと、ビイが何かを聞きたそうな目でこちらを見つめていることに気づく。
どう対応すれば良いのかわからず、助けを求めるようにビイの母親に視線を送ったが、彼女はにこにこと笑みを浮かべたまま沈黙を保っている。
ただ、その目は何かを訴えかけているようにも思えた。
(………………ああ、そういうことですか)
逡巡した後、殲滅者は癖の強いビイの金髪に左手を添える。
まだ言葉の意味はよくわからないが、彼女が求めている言葉はこれで間違いがないだろう。
「ありがとうございます」
抑揚もつけずに素っ気なく紡いだ言葉であったが、ビイはとても明るい笑みを浮かべで喜びを表現する。
些細な言葉のやり取りが人間の感情をこんなにも一喜一憂させる。
殲滅者からすればそれはとても不思議な出来事で、どこか別世界の理のように思えてならなかった。
ただ、彼女が作ってくれたホットミルクの味は悪くない。
この味のために一言、唇の筋肉を動かすことへの労力を惜しむ気にはなれなかった。
「ビイ、夕飯を作るから手伝って。今夜はお客様もいるから、少し多めに作らなくちゃね」
「うん」
母親に呼ばれ、ビイはトテトテと奥にあるキッチンへ消えていく。
その背中を見送ると、殲滅者は窓の外で夕日に照らされている砂の町を眺めながら、もう一度ホットミルクを呷っていた。
□
その夜、少女は夢を見た。
それはほんの数ヶ月前の出来事。
自分がこの世に生まれ出でた日に起きた事件。
否、自ら望んで起こした災厄。
かつて、闇の書と呼ばれたロストロギアの残滓より生み出されたマテリアル。
それこそが星光の殲滅者の正体にして、唯一つの存在理由であった。
『ああ…………私は消えるのですね』
『うん…………ごめんね』
自分を倒した自分と同じ顔の少女が、夢の中で済まなそうに詫びる。
鏡に映った表裏存在である自分達は、まるで見えない糸に導かれるかのように出会い、死力を尽くしてぶつかり合った。
自分と同胞の目的は、力ある魔導師を屠り闇の書を復活させること。
敵対した白衣の少女の目的は、自分達の目的を阻止すること。
互いに譲れぬからこそ両者はぶつかり合い、こちらは僅かに思い届かず敗北した。
そのことに対して悔いはない。
戦えば勝敗は決する、それは自明の理だ。
だが、目の前の少女は違った。
彼女は、敵対した相手が闇の書を復活させるという目的の為だけに生み出された存在であると知っていた。
仮初とはいえ命と意思を持つ相手に対して、存在理由を奪ってしまうことに涙を流していた。
いったい、自分が打ち破った少女は何のためにこの世に生を受けたのかと。
それは殲滅者にとって、とても良くないことであった。
勝者に涙は似合わない。
だから、この少女には笑っていて欲しい。
だから、負け惜しみではなく、素直な称賛を彼女に対して贈っていた。
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