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仮投下スレ

690我ら魔を断つ剣をとる  ◆iDqvc5TpTI:2010/07/09(金) 05:12:10 ID:4nGbyjws0
有無を言わせずゴゴが割り込む。
己が命を握っている魔神に対し臆しもせず自分の矜持を叩きつける。
ロードブレイザーはいつの間にか会話の主導権を奪われていた。

「だからこそアシュレーの物真似は面白い。
 俺という個人のままでは持ちえぬものを持っているからこそあいつの物真似は面白い。お前と違ってな」
「なんだ、何を言っている」
「分かりやすく言ってやろうか」

覆面で顔が見えていないはずなのにロードブレイザーにはゴゴが浮かべているであろう表情がありありと伝わってきていた。
笑っている。
こいつは焔の厄災を前にしてあろうことか笑顔を浮かべていた。
それも親愛の情が籠ったものでも、作り笑顔でもなく、

「ロードブレイザー、お前はつまらない。
 世界の破滅だと? そんなことを考える奴はケフカで既に足りている」

ニヤリと唇を釣り上げて物真似師はロードブレイザーを嘲笑っているッ!

「我が提案を受け入れぬと。生き延びれる唯一のチャンスを逃がすというのかッ!?」
「くどいッ! 俺が誰の物真似をするかは俺自身が決めるッ!」

未だかってこのような人物がいただろうか?
ロードブレイザーを恐れるでもなく、否定するでもなく、見下し、哀れむ人物が。
身の程知らずにも程がある。
ロードブレイザーは悔いた。
気まぐれとはいえこのような下等生物に生き残る機会を与えようとした己を恥じた。

「ほざいたな、矮小な生命風情がッ! ならば貴様の言うつまらない存在の手で無様に死ねえいッ!」

両翼より生じさせた焔の中に愚かしい物真似師が消える。
最初からこうしていればよかったのだ。
ロードブレイザーは八つ当たり気味に焔をもう二発撃ち込む。
ただでさえ大きかった火の勢いは増し、森や教会も熔解させていく。
ここまでやればトッシュのように火に強くとも死んでいるだろう。

そう高を括っていたロードブレイザーの耳に、

「幻獣召喚《ハイコンバイン》――ティナ・ブランフォード」

自身が真似したい人物を自らの手で選び取った物真似師の声が響いた。





691我ら魔を断つ剣をとる  ◆iDqvc5TpTI:2010/07/09(金) 05:12:44 ID:4nGbyjws0



「ラフティーナだとッ!? いや、違うッ! だが、だがこれはッ!
 こいつから感じる忌々しい光は、あの愛のガーディアンロードそのものではないかッ!」

女神と間違われるのも無理はない。

ゴゴを護り、魔神の焔を跳ね返したのはそれはそれ美しい女性だった。
宝石のように輝く髪と肌という喩えが、喩えではなくそのまま事実として当てはまる女性だった。
衣服を一切纏っていないのも頷ける。
彼女の桜色のオーロラとでも評すべき髪や肌の美しさはありとあらゆる衣服や装飾品に勝っているのだから。

彼女は力強き者でもあった。
女性の両手に光が生じる。
とある道化師も使った究極魔法。
それを女性は一度に二つも詠唱していた。

最後に彼女は人間ではなかった。
幻獣でもなかった。
人間と幻獣とのハーフだった。
名をティナ・ブランフォードという。

「ティナ、また会えたな」

喜色を隠さずにゴゴがティナへと話しかける。
返事はない。
分かっていたことだ。
幻獣が魔石として残すのは力だけなのだ。
今ここにいるティナも、ティナが蘇ったわけではないことくらい百も承知だ。

だから十分だ。
言葉もなく、顔も向けず、だけど頷いてくれただけで十分だ。
ゴゴは物真似を開始する。
ティナの物真似を。
人と幻獣の狭間で揺れ、愛することを知った少女の真似を。

「アシュレー、忘れないで。愛するということを。あなたを待っている人達を」

もう二度とすることはないと思っていた声真似ができることをゴゴはトッシュに感謝しつつ、アシュレーに語りかける。

「マリナさんだけじゃない。あなたには二人の子ども達もいるのよ?
 そしてあなたが護りたい世界は、あなたが護りたい日常はこれからも広がり続けてく」

アシュレーの子どもたちも誰かと恋し、誰かを愛するのだろう。
そうして人間は子どもを産み、後へ後へと託していく。
親から子へ、子から孫へ、孫から曾孫へ。
アシュレーの護りたかった世界、日常はこうして続いていく。
アシュレーだけのファルガイアはどんどんどんどん広がっていく。

ああ、そうか。
それは確かに護りたくなるほどに素晴らしいことだ。

ゴゴは一歩、アシュレー・ウィンチェスターという人間とティナ・ブランフォードという人間への理解を深めた。
物真似師としての最奥へと一歩、近づいた。

692我ら魔を断つ剣をとる  ◆iDqvc5TpTI:2010/07/09(金) 05:13:32 ID:4nGbyjws0

「だから、戻ってきて! 魔神に打ち勝って! 
 今ある命だけじゃなく、これから生まれてくる命もたくさんある。それを守るためにも!
 あなたは、あなたの家に帰ってあげて!」

その願いを叶えることができなかったティナの分までも。
マッシュやエドガーやシャドウ、ナナミやリオウにビッキー、ルッカにトカの分までも。
誰かが帰ってこないことの寂しさを知ったゴゴは目をつむり一度祈る。
次に目を開けた時にはゴゴの左右の手にもアルテマの光が宿っていた。
連続魔とアルテマと物真似による法外火力なアルテマ四連。
現段階でゴゴのできる最高の物真似の一つ。

「く、黙れ、黙れえッ!! バーミリオン、ディザスタァァァアアアアアッ!!」
「『アルテマッ!!』」

ロードブレイザーの最大火力とアルテマの光がぶつかる中、ティナの声が聞こえたのは。
きっと気のせいなんかじゃない。





いつからだろうか?
とぼとぼと一人砂漠を歩いていたちょこの耳にその歌が聞こえてきだしたのは。
静かで、途切れ途切れではあるけれど。
優しい、優しい歌だった。
幼子をあやし、幸せな夢を見せてくれる歌だった。
子守唄だ。

「ちょこ、知ってるの。ちょこが怖がったり寂しがったりして眠れない時に父さまも歌ってくれた……」

けれどどこか違う気がした。
歌詞が知らないものだとか、声が知らない人だとか、そんなんじゃないどこかが。
ちょこの知っている子守唄とは違っていた。

「なんでだろ。この人の子守唄もとってもとっても安心できるの。
 父さまが歌ってくれたのといっしょのはずなの。気になるの」

ちょこは歌を追いかけ始めた。
淋しげだった歩調は常の少女の元気なものへと戻っていた。
まるでそのことを喜ぶかのように。
子守唄は少しずつ、少しずつ、よりはっきりと聞こえるようになっていた。
その度にちょこの中で確信が生まれていく。
やっぱり父さまの歌とは違うと。
でも、父さまの歌とは違うけどこれはきっと子どものための歌なんだと。
ちょこは走った。
走り続けた。

不意に、歌に混じって別の誰かの声が聞こえた。

――幻獣召喚《ハイコンバイン》――ティナ・ブランフォード

693我ら魔を断つ剣をとる  ◆iDqvc5TpTI:2010/07/09(金) 05:14:04 ID:4nGbyjws0

「ティナおねーさん?」

それが歌を歌っているおねーさんの名前なのかな。
ちょこはなんとはなしに思った。
なんとはなしに思って、けれどどこか引っかかるところを感じた。

「ティナおねーさん、ティナおねーさん、ティナおねーさん?」

おかしいなと何度も何度も呟けど違和感は消えてなくならない。
しっくり来ないものを抱えて、ちょこはもやもやとしたまま戦場へと辿り着いた。
辿り着いて、その人を見て、これまでに生じていた疑問が一気に氷解した。

「おかー、さん……?」

自身の口から零れた言葉にちょこは驚く。
彼女は母親を知らない。
物心ついた時からずっと父親とだけ繰り返す時間の中で過ごしてきていた。
少女と表裏一体であるアクラだってそうだ。
ただ父だけを求めて生きていた。
ちょこという少女の世界に母親は完膚なきまでに存在していなかったのだ。

なのに。

「ティナおかーさん、ティナおかーさん、ティナおかーさん」

少女はティナのことをそう呼ぶ。
ティナがおかーさんなのだと確信して呼ぶ。
今まで使えなかった分を取り戻すかのように、嬉しそうにおかーさんと呼びつづける。

別にどこもおかしなことはない。
ちょこは子どもなのだから。
子どもがおかーさんのことを分からないわけがないのだ!

『マリナさんだけじゃない。あなたには二人の子ども達もいるのよ?
 そしてあなたが護りたい世界は、あなたが護りたい日常はこれからも広がり続けてく』

そして少女はおかーさんの声にもう一つ知る。
おかーさんが訴えかけている相手がおとーさんであることを。
シャドウと同じで子どもが待っているということを。

「ねえ、アクラ。アクラも知ってるよね。
 父さまのいない寂しさは。父さまのいてくれる温かさは」

ちょこはもう一人の自分に思いのままを伝える。

「ちょこは母さまを知らないけれど、きっと母さまがいたら二倍寂しがったり、二倍温かかったりしたと思うな」

だからね。
少女は続ける。

「やっぱりみんなおうちに帰れるのが一番なの! アクラも分かるよね。力を合わせてくれるよね」

分かりきった問いかけだった。
ちょこもアクラも元は同じ一人の少女で、誰よりも家族を愛していたのだから。
羽が舞う。
翼が広がる。
四つのアルテマの光芒へと一つの優しい闇が力を与える。

「闇に、還れ……」




694汝、無垢なる刃、デモンベイン  ◆iDqvc5TpTI:2010/07/09(金) 05:14:54 ID:4nGbyjws0



破壊の力のはずだ。
押し寄せてくる5つの魔法はどれもロードブレイザーの力となる破壊の力のはずだ。
それならば。
それならば何故ッ!
究極の光は還元の闇もこうも愛に溢れているのだッ!?
負の念を力とするロードブレイザーには猛毒にしかなりえない正の念。
バーミリオンディザスターと拮抗するその眩い光にロードブレイザーは恐怖した。
魔神を脅かしたのは外からの魔法だけではない。
装備したままだった魔石がどうしてか急に光ったかと思うと、内的宇宙のウィスタリアスまで輝きだしたのだ。
まずい。
ロードブレイザーはことこにきて自身が追い詰められていることを悟った。
屈辱を呑み込み、魔神は逃亡を選択。
魔法と焔がぶつかっているのとは逆の方向へと翼を広げ、
その先に

――剣者がいた



695汝、無垢なる刃、デモンベイン  ◆iDqvc5TpTI:2010/07/09(金) 05:15:24 ID:4nGbyjws0
夢とも現とも思える世界。
意識と無意識の狭間。
生と死との境界に。
男は一人存在していた。
白い闇に包まれて。
ここがどこか、自分が誰かも分からぬままに彼は立っていた。
胴の左半分を吹き飛ばされ、腸を臓物を黒く墨色に染めながらも。
ただ一つのことを成さんが為に地に膝を着くことを拒んでいた。

そこまでして男は何を願う?
彼の者の命を留め続ける未練とはいかなるものか?

護ることか?
違う。
救うことか?
違う。

それは確かに男が心底望むことではある。
生死の理を曲げて尚叶えるに値する想いではある。
だが無理だ。
無理なのだ。
男には誰かを護ることなど不可能、救うことなど不可能。
男にできることは今も昔も一つだけなのだ。
一つ。
ただ一つ。
それは何だ?
護ることか?
否。
救うことか?
否。
決まっている。
斬ることだ。

誰かを斬る以外男にできることなどなかったのだ。

だったらその行為に全てを託せ。
トッシュという人間の想いを、力を、命を賭けろ。
斬ることで護れ。
斬ることで救え。
斬ることで道を拓け。

して、その為に何を斬る?
して、その為に誰を斬る?

オヤジだ。
オヤジを斬らねばならない。

何よりも。
勇者に殺されてしまったのならオヤジは単なる悪として扱われる。
正しい戦いにより討たれた世界の敵として記憶される。
それは、駄目だ。
それだけは、許せない。
モンジは優しい男だった。
邪悪なんかではない、強く誇り高いトッシュの父だった。
モンジを世界の敵にしたくないのなら、本当のモンジを知るトッシュが。
他の誰でもないトッシュ・ヴァイア・モンジが斬らねばならないのだ。

696汝、無垢なる刃、デモンベイン  ◆iDqvc5TpTI:2010/07/09(金) 05:16:49 ID:4nGbyjws0

白い闇のみが広がっていたはずの世界に二刀を手にした剣鬼の姿が滲み出る。

そうだ、そうだった。
どうして忘れていた?
トッシュは嗤う。こんな大事なことを忘れていた自分を嗤う。

戦っていたのではないか、冥府魔道に落ちたオヤジと。

モンジが動く。
両の剣を突き出して。
モンジが駆ける。
押さえつけられていたダムが決壊するかのように、怒涛の速度をもって。
土を穿ち、その間合いを一間で詰める。

対するトッシュは不動。

不思議な感覚だった。
護りたかった人に剣を向けているというのに迷いも戸惑いもなかった。
救いたい家族を殺さねばならぬというのに悲しみも辛さもなかった。
仇たる敵と相対しているというのに怒りも憎しみもなかった。
静かだった。

ただモンジとモンジの剣だけが世界の全てだった。

――斬る

一足一刀の間合いに入り対の刃が振り抜かれる。
神速を超えた魔速、人ならぬ身になって得た人外の秘剣が十字を描きトッシュを四散させんとす。
刹那、遂にトッシュが動く。
後足が弾け、大地を蹴り押し、強引に身体ごと必殺の一太刀を前方へと押し込む。
パレンシアタワーでの一騎打ちにて終ぞ掴めなかった好機。
攻防一体の二刀流、その両の剣が防御を捨て攻撃に回され、トッシュの剣が魔を絶てる唯一のチャンスを逃してなるものか!

――斬る

爆ぜた雷の如き一刀が解き放たれる。
天空に舞う桜の花すら両断する速く鋭い一閃。
敵の先の機を奪いし刃は二刀を追い抜き空に煌く。
されど約束されたはずの勝利は不条理に阻まれる。
トッシュの敵は人ならぬ魔。
人界の摂理も常識も振り払い、全力で振り下ろされたはずの刀が人を超えた膂力により引き戻され一息で盾へと転ずる。
ここに勝負は決する。
トッシュの渾身の桜花爆雷斬は身体能力で勝る魔人の両剣の盾を貫くことは叶うまい。
二刀で受け止められ、うち一刀で跳ね除けられが関の山だろう。
魔人が見せた魔技を再現できるはずもない人の身ではルシエドを戻すよりも先に残る一刀にて斬り伏せられ終る。
努力は絶対の前に灰燼と帰し、人は魔の前に膝を着く。

打ち合うのであれば。
正面から打ち合うのであれば。

――――

魔剣ルシエドが“ほどける”。
実体が霞み陽炎のように揺らめく。
いかな達人といえど形無き剣を受け止めることは叶わず護りの剣は空しく空を切る。
心を無にし、その刃さえも無と帰した剣客の剣が双璧を超え懐に入り込む。
無念無想。明鏡止水。風光霽月。
怒りも憎しみもなくただ一念でのみ動いていたトッシュは遂に剣聖の域へと脚をかけた。
一徹の心。
無我ではなくその対極であったが、雑念を全て排除した点においては無我にも等しい心境――そこから出ずる一剣。
何も考えず、己を無とし。
己を無とし、世界と合一。
さすれば敵に心を読まれることはなく、己だけが敵の全てを掌握する。

697汝、無垢なる刃、デモンベイン  ◆iDqvc5TpTI:2010/07/09(金) 05:17:29 ID:4nGbyjws0

――見える

過った前回とは違い気の収束点を明確に捉えられている。
モンジが託してくれた剣の最奥は、仲間達がそうしてくれていたようにトッシュが切るべき敵をしかと示していた。
ならばこれより先はトッシュの仕事だ。
擬似的な無我を破棄し魂を再燃させる。

――斬る

刀身が蘇る。
“斬る”という想念を刃としルシエドが再び猛る。
ガーディアンブレードは想いを喰らい力に変える武器だ。
無我にて振るえば刃を保てなくなるのも道理なれば、炎の如く燃え盛る一念で振るえば万物を断つのもまた道理ッ!

「あばよ!!」

トッシュは斬った。
モンジを――魔を――ロードブレイザーを一刀のもとに断ち切った。
受け継がれし秘剣紋次斬りにて。
悲劇の物語はここに書き換えられるッ!







焔の災厄、ロードブレイザー。
彼の魔神を災厄たらしめている一因はその不死性にあった。
概念的な肉体は物理的攻撃を一切受け付けず。
魔法の域に達した超科学ですら肌の皮一枚を傷付けるの関の山。
そもそも負の意志が存在する限り無限の再生力を誇る彼にはいかな致命傷も致命傷足り得ない。
ロードブレイザーを倒さんと放たれる一撃一撃は、込められた怒りや恐怖、殺意や破壊の意思により彼を満たすだけに終るのだ。
故に無敵。
故に不滅。
剣の聖女がロードブレイザーを討滅ではなく封印で留めざる得なかったものこの不死性のせいだった。
数百年の時を経てロードブレイザーは遂に後のない死をもたらされかけることとなったがあれは例外中の例外だ。
ロードブレイザーの力の根源たる負の念。
それらを相殺しきるだけの世界中の人々の一丸となった希望の念が相手だったからこそロードブレイザーは真の意味で敗れたのだ。

こんなことはあってはならない。

698汝、無垢なる刃、デモンベイン  ◆iDqvc5TpTI:2010/07/09(金) 05:18:48 ID:4nGbyjws0

「馬鹿な……」

ロードブレイザーが。
星一つの全生命と釣り合うだけの力を秘めたデミガーディアンが。
たかが一人の人間に敗れることなど!

「ぐっがァァァアアアアアッ!」

ロードブレイザーの身体が霧散していく。
よりしろであるアシュレーの血肉を失った今、オーバーナイトブレイザーの姿を維持するだけの力がロードブレイザーにはなかった。
天をも焼かんとしていた黄金の炎は輝きを失い黒くどす黒くくすぶり続けるのみ。
強固を誇った装甲は罅割れ醜い中身を露呈させていた。
必死に残る力を掻き集め凝縮することで作り上げた紫色の筋肉を剥き出した白いボディを。
オーバープロトブレイザーとでも言うべきおぞましい姿を。

「認めん、認めんぞッ! ガーディアンブレードを手にしていたとはいえたかだか人間一人にこの私がッ!」

正確に言えばロードブレイザー自身が敗れたわけではない。
追い詰められはせども致命傷を与えたのはロードブレイザーの方だ。
だが、だがしかし、トッシュが切り拓いた道はロードブレイザーにとっては終焉へと導かれうるものだった。

「それは違うぞッ、ロードブレイザーッ!」

奴が、来る。
先刻までロードブレイザーの生命線だった寄り代が。
かってロードブレイザーに絶望を与えた人間の代表格が。
剣の英雄がやってくるッ!

「僕たちは、どんな時でも独りじゃないッ!!」

ロードブレイザーはアシュレー・ウィンチェスターの身体を失った。
けれどもそれはアシュレーの身体が破壊されたからではなかった。
破壊されたのはアシュレーとロードブレイザーを繋いでいた根ともパイプとも言える負の気の流れ。
トッシュはアクセスにより表出化した収束点を断ち切ることで魔神と人間の分離を成し遂げたのだ。
結果ロードブレイザーは未だ不完全な形で現世へと逃れなければならなくなり、

「アシュレー、ウィンチェスター……。その姿、その姿はッ!」

アシュレーは魔神から開放され万全の力を発揮できることとなる。
これまでロードブレイザーを押さえることに割いていた魔剣の力を。
果てしなき蒼の力をッ!

「アティが最後に残してくれたこの力で」

白と蒼に彩られた長衣をはためかせ。
蒼き魔剣を手にした人間が砂漠を歩む。

「トッシュが、ゴゴが、ちょこが、ティナが呼び覚ましてくれたこの心で」

その姿は魔神が恐れし英雄に似てはいれども。
風に流れる髪の色は白く。
背には蒼き光輪が輝いていた。

「ロードブレイザー、お前を討つッ!」

蒼き剣の英雄《セイバー》アシュレー、

ここに抜剣せり!

699汝、無垢なる刃、デモンベイン  ◆iDqvc5TpTI:2010/07/09(金) 05:21:05 ID:4nGbyjws0
【F-3 砂漠 一日目 真夜中】
【アシュレー・ウィンチェスター@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:健康(抜剣により回復)、クラス:蒼き剣の英雄(サモナイ3でいう蒼き剣の勇者)
[装備]:果てしなき蒼@サモンナイト3、解体された首輪(感応石)
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品0〜1個(確認済み)、バヨネット
    焼け焦げたリルカの首輪、魔石『マディン』@ファイナルファンタジーⅥ
[思考]
基本:主催者の打倒。戦える力のある者とは共に戦い、無い者は守る。
1:ロードブレイザーを今度こそ倒す
2:フィガロ城でA-6村に行き、座礁船へ
3:テレパスタワーに類する施設の探索と破壊
4:ブラッドなど、仲間や他参加者の捜索
5:セッツァー、シャドウ、アリーナを殺した者(ケフカ)には警戒
[参戦時期]:本編終了後
[備考]:
※ロードブレイザーが内的宇宙より完全にいなくなりました。
※蒼き剣の英雄アシュレーは剣の英雄アシュレーの髪の毛を白く刺々しくして背に蒼い光輪を背負った姿です。
 あくまでも姿が剣の英雄に似ているだけで武器の都合上使用可能スキルは蒼き剣の勇者のもののみです。
 (暴走召喚・ユニット召喚・威圧・絶対攻撃)
 またあくまでもアティが残した力による覚醒なので効果が切れるともう二度と覚醒不可能です。
 変身がどの程度もつかなど思うところはお任せします。
※バヨネット(パラソル+ディフェンダーには魔導アーマーのパーツが流用されており魔導ビームを撃てます)

【ロードブレイザー@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:疲労(小)、ダメージ(小)、オーバープロトブレイザー
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本:皆殺し
1:アシュレーを殺す
2:殺し合いの場に破滅をばら撒き負の念を吸収して完全復活を果たす
[参戦時期]:本編終了後
[備考]:
※ロードブレイザーとして復活しきるには力も足りず時期も早すぎたため現状本来の力を出し切れていません。
 無論島に負の念が満ちれば満ちるほど力を取り戻していきます(強化&回復)。
 オーバープロトブレイザーは黒炎を纏ったプロトブレイザーっぽい姿です。
 元がロードブレイザーなのでナイトブレイザー、オーバーナイトブレイザー(魔剣ルシエド除く)、
 ロードブレイザーの技を使用できる可能性がありますがお任せします。

700――トゥーソード  ◆iDqvc5TpTI:2010/07/09(金) 05:21:45 ID:4nGbyjws0
夜の砂漠に背を預けトッシュはただただ空を眺めていた。
冷たい月は、冴え冴えとしており、光に照らされる砂漠も昼間とはうって変わって冷え込んでいる。
やや強い砂交じりの風が頬を打ちなけなしの体温を奪っていく。
放っておいても出血多量で死ぬのにご苦労なこった。
笑いながらも耳を澄ます。
涼やかな空気の中をさやさやと何かが舞う音がする。
天を地を砂が海のように川のように流れているのだ。
川の流れは無数の波飛沫を煌かせながら、そ知らぬ顔でトッシュの傍らを過ぎ去っていく。
のろのろと手を伸ばしてみるも捕らえられるはずもなく砂は掌から零れ逝く。
月光と同じだ。
いかに風雅だと思いを寄せようともトッシュに掴めるものではなかった。

ふと見渡す限りの砂の絨毯を仄かに照らす光に陰りが生じる。

もはやろくに見えない目を凝らす。
視界は相変わらず霞がかったままだったが、ものにしたばかりの心眼が何とかその姿を捉えた。
月影に輪郭を描かれて、気の流れが人の形をなし幽かに浮かび上がってくる。

「よう、ゴゴ」
「……よう、トッシュ」

月を背負い見下ろしてくる影に手を伸ばす。
今度は掴めた。
傷に響かぬよう緩やかに引っ張り上げてくるゴゴの力を借りトッシュは半身を起こし胡坐をかく。
ゴゴが気絶したちょこを背負っているのが目に入り、もう一人の行方を尋ねる。

「アシュレーは、どうなった?」
「勝つ」

たった一言の短い返答。
それだけで十分だった。

「そうか」
「ああ」

いつまでも月を奪っていることに気が退けたのだろう。
ゴゴはトッシュの隣に腰を下ろし、膝を枕としちょこも地に寝かせ休ませる。

「何かして欲しいことはあるか?」

戦場で何度も耳にし、時には口にしたその言葉。
人間が使う最も重い定型句の意味をトッシュが誤解するはずがなかった。

トッシュは死ぬ。

もう間もなく。もしかしたら今すぐにでも。

「そうだなあ」

701――トゥーソード  ◆iDqvc5TpTI:2010/07/09(金) 05:22:46 ID:4nGbyjws0

ちょこを頼むとはいう言葉を口にすることなく飲み込む。
ティナという人物の物真似だろうか。
友から託された少女の髪を優しげにすくうゴゴを見てわざわざ頼む必要がないと思った。
個人的な願いを優先することにする。

「酒。酒が飲みてえなあ」
「分かった」

とぽとぽと酒が注がれる音が聞こえる。
いい音だなと耳を澄ませる。
とぷりと、音が途切れた。

「あんがとよ」

ぎこちない動きで酒を受け取る。
月明かりを照り返す酒の水鏡は神秘的で、きらきらと輝いていた。
雅なもんだ。
骨を埋めたかったあの場所で飲むことは叶わなかったが月と砂漠を肴に酒を飲むのも悪くはねえ。
一気に飲み干すつもりで杯を口元まで持っていく。
風に温み豊かになった薫りが優しく鼻腔をくすぐる。
城に置いてあっただけあって申し分ない時代物のようだ。
ますます気をよくして念願の一口。
酒を口に含もうとして――そこで、止まった、止められた。
止まらざるを得なかった。

「待て。礼を言われるのはここからだ」

瞬間、世界が一変した。
寒色の空を優しい月明かりが包み込んでいく中、舞い散るは薄紅色の吹雪。
吹雪というには温かく、風雅で、見るものを捕らえて離さない、そんな美しさがあるそれは――花吹雪。
雪のように空を閉ざすことなく、故に月明かりを浴びることを許された桜の美しさは儚く気高いものだった。

「こいつあ……」

トッシュが知るどの景色よりも幻想的な光景に心を奪われる。
思わず感嘆の声を上げる合間にも、心地よい夜風に乗って桜の花びらが舞い降りる。
静かに、ふわりふわりと。
舞う花弁が数枚杯に落ちて、透き通る酒が波打った。
トッシュは我を取り戻す。

「どうなってんだ?」

砂漠のど真ん中にいきなり満開の桜の樹が現れたのだ。
驚かない方が無理がある。
不思議なことはもう一つ。
そもそもトッシュの目は一足先にあの世に踏み込んでいる。
最早色を区別などできようもないのにどうしてこうも鮮やかに桜の花の色を楽しめているのだろうか。

702――トゥーソード  ◆iDqvc5TpTI:2010/07/09(金) 05:23:22 ID:4nGbyjws0

いや、そうか。
目が見えていないからこそか。

トッシュの中で合点がいった。
視覚が禄に働いていないからこそ、聴覚が、嗅覚が、触覚が、感覚が感じたものがリアルとして脳内に再生されているのだ。
桜がさもここにあるようなこの雰囲気が脳を騙し幻想の光景を見せているのだ。
誰の仕業かなど問うまでもない。
ゴゴだ。
幻術を使うでも魔術を行使するでもなく、月光を浴び咲き誇る桜の真似ただ一芸のみで一つの幻想の世界を構築して魅せたのだ。

ああ、そうだった。
こいつは心身の芯まで芯物真似師だ。
そのこいつが何かして欲しいことがあるかと聞いてきたのなら、それはして欲しい物真似があるのかということに他ならない。

トッシュが誰かのためにしてやれる唯一のことが斬ることならば、ゴゴが誰かの為にしてやれる唯一のことが物真似だ。
彼は成した。
ゴゴの問いの意味を汲んでやれなかったトッシュの返答をしかししかと受け止め最上の形で実現させた。
酒を呑みたいと願った友に、できうる限りで最高の酒が美味く感じる場を贈った。
物真似師として。
ただ物真似師として。

感嘆する。
物真似師のぶれない芯に、成した技にトッシュは舌を巻く。
同時に思う。
こいつは馬鹿だと。
酒を楽しく飲むのに一番大切なものを抜かしちまってどうすんだと。

「ゴゴ」

呼びかける。
月と、風と、砂と、桜に彩られた世界の中。

「どうした?」

声が返ってくる。
少女が夢見るすぐそばの誰もいない場所から。
完璧な物真似をしているが故に元となる存在の痕跡を綺麗さっぱり世界から消してのけている物真似師の声が。

「大切なもんが一つ抜けてるぜ?」
「……何?」

本当に分かっていないのだろう。
常のゴゴらしからぬ動揺した雰囲気が伝わってきてトッシュはおかしげに笑みを浮べる。
渡されたばかりの杯をゴゴなのであろう桜に向けて突きつけ返した。

「お前がいない。この世界には俺しかいない。
 一人で呑む酒もそりゃあ乙なもんだが気心の知れた誰かと呑む酒は最高だぜ?」

共に飲もうと。それがいっちゃんうめえんだと。
心身ともに桜の木になりきっている友へとトッシュは語りかける。

「そうか、そうだったな。俺としたことがもうろくしていたようだ」

703――トゥーソード  ◆iDqvc5TpTI:2010/07/09(金) 05:23:53 ID:4nGbyjws0

ふっと世界に新たな色が加わる。
人一人分の気配が増える。
月と夜桜に彩られた宴の中に友が一人来訪する。

「すげえな。桜の真似をしたままかよ」
「これぐらい容易いことだ」

胸を張るゴゴにそうかよとトッシュが返し、また二人、同じ時を過ごしだす。
ゆったりと流れる時間にひやりと頬を撫でる風。
空想とは思えぬほどに命を輝かせる樹木に死にいく者と生き行く者は杯をかざす。
触れさせる訳でなくお互いに酒を揺らし、幻想の桜の花を眺める。

「トッシュ」
「ああ」
「桜は綺麗か?」
「たまげるくれえに」
「酒は美味そうか?」
「おうよ」
「俺は……お前の友になれただろうか?」
「あたりめえよ」

とりとめのない会話を交わす。
ただ仲間と共に居ることだけを味わう。
トッシュにとっては代え難い贅沢だ。
ずっと、奪われ続けた。
ずっと、失い続けた。
誰一人護れなかった。
それが最後には師の誇りにて仲間を救い友に見送られて逝くというのだから。

悪くは、ない。

目の前に杯が掲げられる。
同じようにトッシュも杯を掲げる。
二人、笑みを交し合い、今度こそ杯を口元に寄せた。
酒が口内を満たし、喉を通る。
冷たすぎないそれはほのかに甘いが嫌味はなく、寧ろ独特な苦味が重なって味わいに深みを持たせていた。

「ああ……」

ひらひらと桜が舞う。風が強くなったのか舞い手の数が増えている。
その光景にいつか見た景色が重なった。
トッシュにとっての桜の樹。
ダウンタウンでモンジや舎弟たち、街の人々に囲まれて酒盛りをしたあの樹と。
見れば幻想の世界にはモンジ達に混じってシュウやエルクやリーザ達もいた。
ナナミなんかゴゴの焼き蕎麦パンをばくばくとほうばっていて、隣ではリオウが困りがちな顔をして笑っている。
トッシュが今そうしているように。
誰も彼もが笑っていた。

何とも幸せな幻想を見たもんだ。
トッシュは一層笑う。
自嘲などではない本当の笑み。
未練たらたらだなとすさむのではなく気分がいいから笑うのだ。

残る酒を一気に飲み干し想う。

704――トゥーソード  ◆iDqvc5TpTI:2010/07/09(金) 05:24:40 ID:4nGbyjws0
都合のいい夢を見たというならそいつは酒のせいだ。
たった一杯の酒に酔ってしまうっつうのもかっこわりい気もするがしかたねえじゃねえか。
だってよお、この酒は

「うめえなぁ」

本当にうめえんだから――


杯が落ちる。


風が吹く。


桜が散る。


炎が消える。



トッシュ・ヴァイア・モンジは静かに逝った。


【トッシュ・ヴァイア・モンジ@アークザラッドⅡ 死亡】


【G-3 砂漠 一日目 真夜中】
【ゴゴ@ファイナルファンタジー6】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)
[装備]:花の首飾り、ティナの魔石、壊れた誓いの剣@サモンナイト3、ジャンプシューズ@WA2
[道具]:基本支給品一式 、点名牙双@幻想水滸伝Ⅱ、解体された首輪(感応石)、閃光の戦槍@サモンナイト3
    ナナミのデイパック(スケベぼんデラックス@WA2、基本支給品一式)、焼きそばパン×4@現地調達
[思考]
基本:数々の出会いと別れの中で、物真似をし尽くす。
1:シャドウとトッシュより託されたちょこを護る。
2:フィガロ城でA-6村に行き、座礁船へ
3:テレパスタワーに類する施設の探索と破壊
4:セッツァーに会い、問い詰める
5:人や物を探索したい
[参戦時期]:本編クリア後
[備考]
※本編クリア後からしばらく、ファルコン号の副船長をしていました。
※基本的には、『その場にいない人物』の真似はしません。
※セッツァーが自分と同じ時間軸から参戦していると思っています。
※ティナの魔石の効果はティナがトランスした上で連続魔でのアルテマを撃つ感じです

705――トゥーソード  ◆iDqvc5TpTI:2010/07/09(金) 05:25:14 ID:4nGbyjws0

【ちょこ@アークザラッドⅡ】
[状態]:疲労(極)、気絶
[装備]:なし
[道具]:海水浴セット、基本支給品一式
[思考]
基本:みんなみんなおうちに帰れるのが一番なの
1:おとーさんになるおにーさん家に帰してあげたい
2:おにーさん、助けてあげたいの
3:『しんこんりょこー』の途中なのー! 色々なところに行きたいの!
4:なんか夢を見た気がするのー
[備考]
※参戦時期は本編終了後
※殺し合いのルールを理解しました。トカから名簿、死者、禁止エリアを把握しました。
※アナスタシアに道具を入れ替えられました。生き残るのに適したもの以外です。
 ただ、あくまでも、『一般に役立つもの』を取られたわけでは無いので、一概にハズレばかり掴まされたとは限りません。

※魔剣ルシエド@WA2、天罰の杖@DQ4、基本支給品一式 が近くにあります

※ルカの所持品は全て焼失しました
※F-1〜J-1、及びF-2〜J-2の施設、大地は焼失しました

706――トゥーソード  ◆iDqvc5TpTI:2010/07/09(金) 05:26:23 ID:4nGbyjws0
投下終了です
明日にでも自分でやるか代理投下お願いします
なにぶんつめこんだので誤字指摘もあれば喜んでお受けします

707修正 ◆jtfCe9.SeY:2010/07/14(水) 04:36:51 ID:uAZHIixk0
「……グッ……くっ……」

逃げていたジャファルだったが、積み重なったダメージによって思わず膝を突く。
ニノの攻撃が思いのほか身体にきていたようだ。
こんな所で、倒れてはいけない。
ニノを生かす為に、まだやらねばいけないのだ。
けれど、身体を動かそうにも動かない。
まだ、何も為してないのに。

そう、思った矢先だった。


「ケアルラ」

癒しの力が身体を少しだが癒していく。
身体に付いた傷が少し消えて、大分身体が楽になっている。。
ジャファルが驚き振り向くと其処には、銀髪の男が立っていた。

「例え、それがエゴだとしても、自分の信念、自分の意志を変えずにひたすらに突き進む者、進む事を止めない者、最後まで諦めない者……」

その男は笑いながら、ジャファルに語っている。
何か、納得したように。

「その者を、人は『勇者』と呼ぶのだろうか。ならば、お前は『勇者』に相応しいのかもな」
「お前は……?」
「セッツァー。ギャンブラーさ」
「そのギャンブラーが何故俺を助ける?」

ジャファルを勇者と呼んだセッツァーの行動がジャファルには読めない。
この男はヘクトルに与してたはず。
なのに、何故自分を助けるのだろうか。

「お前は、自分の手でその願いを、叶えようとしている。例えエゴと言われようとそれを止めない」
「……」
「自分を捨てる奴から見れば……こっちの方がよっぽどいいさ」

元々、限界を感じ始めていた。
自分の嘘がばれかけている事がヘクトルの解りやすい行動によって理解できたのだ。
そろそろこの殺し合いも終盤戦。新たに自分のみの振り方を考えなければならない。
その上で、ヘクトルの考え方にセッツァーは嫌悪感を示していた。
故に、ヘクトルについていくのは無理と思い始めた所に、ジャファルが現れた。
ジャファルの考えに、セッツァーは理解し、共感した所もある。
だからこそ、

「俺はこの殺し合いでお前と共に戦う事に賭ける! ベットするのは俺の命!」


今、ジャファルに全てを賭ける。

この殺し合いで最大の賭け。

彼が断れば、多少傷ついてるとはいえジャファルに勝てはしないだろう。
故に自分の命を賭けた、最大の賭け。



「伸るか反るか! どうする! ジャファル!」



そのセッツァーの言葉にジャファルは考える。
治癒していた事、そしてセッツァーが語る言葉。
全てを考え、そして。



「……乗った」



セッツァーは最大の賭けに勝ったのだ。







     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

708修正 ◆jtfCe9.SeY:2010/07/14(水) 04:37:49 ID:uAZHIixk0
「よし、こんなものだな」

セッツァーの声と共に、暫くの間続いた魔法が止まる。
ジャファルに堆積していた傷と疲れは、セッツァーの力によって大分回復していた。
ジャファルは腕を軽く回し、身体が十全である事を確認すると、既に次の行動を起こしていた。

「助かる。セッツァー、俺達は何処に行く?」
「そうだな……俺がどうやって行動していたか聞いてたよな?」

ジャファルは首肯し、少し前の話を思い出していた。
傷ついた身体の回復を行っていた間、少しでも時間を無駄にしない為にも情報交換を行っていたのだ。

そのセッツァーはジャファルがエドガーらしき人間を殺害したと聞いた時、驚いた。
驚いたと同時にこの男の強さも再び認識した、エドガーを殺せるような人間なのだ。相当な実力者である事には違いない。
エドガーが殺された、その事実は特にセッツァーを大きく動かす要素は無かった。
ちょっとした感傷はあったが、それまで。
何故ならば、セッツァーが今手に入れるべきは、大切な夢なのだから。
最悪自分の手で始末しなければいけない相手だった。
だからこそ、他人の手で死んだ事を幸運に思うべき。
そう、思って、セッツァーはエドガーの事を考える事をやめた。

今はそれよりも、夢をかなえるべきなのだから。


「……南から北上したと言ったな」
「ああ、東から来たというお前の行動も考えると、一つ提案がある」
「なんだ?」

セッツァーが思うにこの殺し合いは、もう既に後半戦に入っている。
殺し合いに乗る者、背く者どちらもかなりの数が減っているだろう。
その上で、自分達が勝ち抜く為に自分達が取るべき選択肢を考える。

「まず、もう無為な探索は止めだ。いくら行ってないとはいえ、今更南西の方向いってもしょうがないだろう?」
「ああ、そうだな」
「ならいっそ此処の周りをメインに動くとして……拠点を作らないか?」

そう、セッツァーが示したのは戦闘拠点だ。
殺しを行うにしても、何かしら休める場所、落ち合う場所があると非常に便利である。
それは殺し合いに背く者だけは無く、殺し合いに乗っているものも一緒だ。
例えはぐれたとしても、其処に行けばまた再びあえるだろう。
また、其処での篭城戦も可能である。
その事を、ジャファルもすぐに理解し、頷く。

「じゃあ、決まりだな」
「場所は何処にする?」
「……そうだな、まず北東の都合のいい位置にある座礁船に向かってみるか。それでどうだい?」
「構わない」
「よし、ならそれでいこう」


そして、進路は座礁戦へ。
二人の男は北に向かって駆け出していく。


そう、全ては


「さあ、叶えようじゃないか。俺達の夢を、願いを、な」


叶えたいものの為に、彼は歩みを止めず


――そして殺していく。

709修正 ◆jtfCe9.SeY:2010/07/14(水) 04:38:21 ID:uAZHIixk0
【C-7 北部 一日目 夜中】


【ジャファル@ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:健康
[装備]:影縫い@FFVI、アサシンダガー@FFVI、黒装束@アークザラッドⅡ、
[道具]:聖なるナイフ@ドラゴンクエストIV
[思考]
基本:殺し合いに乗り、ニノを優勝させる。
1:ニノを生かす。
2:セッツァーと組む。まず拠点探しの為に、座礁船へ。
3:参加者を見つけ次第殺す。深追いをするつもりはない。
4:知り合いに対して躊躇しない。
[備考]
※ニノ支援A時点から参戦
※セッツァーと情報交換をしました


【セッツァー=ギャッビアーニ@ファイナルファンタジー6】
[状態]:絶好調、魔力消費(中)
[装備]:デスイリュージョン@アークザラッドⅡ、つらぬきのやり@FE 烈火の剣、シロウのチンチロリンセット@幻想水滸伝2
[道具]:基本支給品一式×2(セッツァー、トルネコ)、
    シルバーカード@FE 烈火の剣、メンバーカード@FE 烈火の剣
    マーニ・カティ@ファイアーエムブレム 烈火の剣、バイオレットレーサー@アーク・ザ・ラッドⅡ、拡声器(現実)
    毒蛾のナイフ@ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち、フレイムトライデント@アーク・ザ・ラッドⅡ、天使ロティエル@サモンナイト3
[思考]
基本:夢を取り戻す為にゲームに乗る
1:ジャファルと行動。まず拠点探しの為に、座礁船へ。
2:手段を問わず、参加者を減らしたい
※参戦時期は魔大陸崩壊後〜セリス達と合流する前です
※ヘクトル、トッシュ、アシュレー、ジャファルと情報交換をしました。

710 ◆jtfCe9.SeY:2010/07/14(水) 04:39:05 ID:uAZHIixk0
以上ジャファルとセッツァーの部分の修正版です。
確認の程、よろしくお願いします。

711SAVEDATA No.774:2010/07/14(水) 04:57:02 ID:jto66Yes0
修正お疲れ様です
確かに大乱戦で生き残りをだいたいは把握してるこいつらが今更探索するのもおかしいよなあ
しかし船かあ
松、よやくぼっち脱出だがはてさて……

712SAVEDATA No.774:2010/07/14(水) 07:04:16 ID:tA4ZHshw0
修正お疲れ様でした。
やっぱり冷静だな、この二人は……。
搦め手の怖さがよく伝わる、納得感の強い描写でした。

713SAVEDATA No.774:2010/07/14(水) 20:44:53 ID:XqcBATF20
◆jt氏修正乙です

流石というか何というか,2人とも冷静ですな
今後も怖い存在ですね.
松はどうなってしまうんだろう


さて,誤字などです.毎度毎度細かくてすみません

仮投下スレ
708 南西の方向いっても → 南西の方向へ行っても(或いは「南西へ行っても」)
   殺し合いに背くものだけは無く → 殺し合いに背くものだけでは無く
   進路は座礁戦へ → 進路は座礁船へ
   彼は歩みを止めず → 彼らは歩みを止めず

714SAVEDATA No.774:2010/07/14(水) 22:48:22 ID:uBNIVsUQ0
お疲れ様です

早くもメンバーカードと秘密の店がご対面か・・・
松はまだセッツァーの正体に気づいてないし状況は絶望的だけど
このまま死んだらいいとこ無しだからちょっと頑張って欲しいな

715 ◆MobiusZmZg:2010/07/18(日) 01:13:06 ID:I/mtESxw0
本スレでさるさんに引っかかってしまったので、以降のレスを投下いたします。
気付かれた方は、代理投下を行っていただけると助かります。

716いきてしんで――(ne pas ceder sur son desir.):2010/07/18(日) 01:13:39 ID:I/mtESxw0
 そんな二人に対するアキラは、意識的な呼吸を数度繰り返した。
 アナスタシアにせよユーリルにせよ、言動をみるに難物といっていいだろう。
 そんな彼らに対して、アイシャのときのように、心を読み足りないものを補填してやれるのか。
 がむしゃらに戦うなか、様々なものを取りこぼし、いまや疲れきってさえいる自分が。
 知らなくても良かったであろう、ひとの心の裏側を知ってひねた自分が。

「出来ると、思うぜ。あんまり好きなやり方じゃねーが、なんとか……してみせる」

 そう思いながらも、ここに眠っているアイシャの生き様を思えば――。
 彼女と同じ場所に立っているアキラに、うなずく以外の選択肢など初めからなかったのかもしれない。
 加えて、《英雄》になる願いの裏に隠れていた彼女の強い望みこそが、背中を後押ししてくれる。
 口の端にのぼらせていたか否かの違いこそあれ、ユーリルについては彼女と同じ程度に望みが前面に出ていた。
 アナスタシアにせよ、ユーリルをあそこまで歪めたのかも知れない言葉をかけたのなら望みを読める望みはある。

 しかしながら、《英雄》のつぎに《勇者》がくるとは予想だに出来なかった。
 どうやらここでは、そうしたたぐいの言葉に縁があるらしい。

「いけるのかい?」
「ひとまずはな。ただ、いまの俺じゃあ間違いなく」

 格好をつけるべく口をつぐみかけて、やめる。
 意識を喪った者の体がいかに重いかくらいは、分かっているつもりだ。
 片方は非戦闘員、片方は敵対にかぎりなく近かったとはいえ、三人で二人を抱えるいま、ここに。
 いまのアキラがもつ最大の弱点に触れないでいては、笑うに笑えない結果を呼びうるのだから。

「あぁ。心を読んだあと……ひょっとしたら心を読んでる最中に、意識が落ちる。
 すまねぇ。情けねー話だが、ちょっとばかり力を使いすぎちまったんだ」

 アキラに出来ることといえば、困ったように笑ってみせることくらいだった。
 やせ我慢に他ならない笑みを見せるべく視線を上げれば、さみだる雨が泉に流れ込むさまが見える。
 ――アイシャのなきがらも、いま、同じ霖雨(りんう)をうけているのだろうか。
 気絶を避けるかのように、意識の間隙を埋めるかのような思考が止まない。
 ひとを降りそぼしてまだ足りないとばかりに手数の多くある雨滴と同じように、止むことがない。

「まったく……前途多難、だね」

 考えているようで、そのじつぼんやりしているのと変わらない思考を読まれたか。
 ほんの少しの棘を交えた口調にため息を交えて、イスラが雨の向こうを見やる。

「ストレイボウさんたちも、無事だといいんだけど――」

 ユーリルから少し遠い場所にアナスタシアを横たえたジョウイも、イスラと逆の方向につづく。
 彼らのあいだで二択をせまられたアキラは、第三の方角――。


 何者かの心を映したかのように晴れない雨をもたらす雲に、しいて視線を持ち上げた。

717いきてしんで――(ne pas ceder sur son desir.):2010/07/18(日) 01:14:55 ID:I/mtESxw0
【C-7橋の近く 一日目 夜中】
【ユーリル(DQ4男勇者)@ドラゴンクエストIV】
[状態]:気絶、疲労(極大)、ダメージ(中)、精神疲労(極大)、アナスタシアへの強い憎悪、押し寄せる深い悲しみ
[装備]:最強バンテージ@LAL、天使の羽@FF6、天空の剣(開放)@DQ4、湿った鯛焼き@LAL
[道具]:基本支給品×2(ランタンはひとつ)
[思考]
基本:アナスタシアが憎い
0:気絶中
1:アナスタシアを殺す。邪魔する人(ピサロ、魔王は優先順位上)も殺す。
2:ジョウイの言葉が、許せない
[参戦時期]:六章終了後、エンディングでマーニャと別れ一人村に帰ろうとしていたところ
[備考]:自分とクロノの仲間、要注意人物、世界を把握。
※オディオは何らかの時を超える力を持っている。
 その力と世界樹の葉を組み合わせての死者蘇生が可能。
 以上二つを考えました。
※アナスタシアへの憎悪をきっかけにちょことの戦闘、会話で抑えていた感情や人間らしさが止めどなく溢れています。
 制御する術を忘れて久しい感情に飲み込まれ引っ張りまわされています。
※ルーラは一度行った施設へのみ跳ぶことができます。
 ただし制限で瞬間移動というわけでなくいくらか到着までに時間がかかります。

【アナスタシア・ルン・ヴァレリア@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:気絶、疲労(極大)、胸部に重度刺傷(傷口は塞がっている)、中度失血、自己嫌悪
[装備]:絶望の鎌@クロノ・トリガー
[道具]:基本支給品、賢者の石@DQ4
[思考]
基本:生きたい。そのうち殺し合いに乗るつもり。ちょこを『力』として利用する。
0:気絶中
1:……生きるって、何?
2:あらゆる手段を使って今の状況から生き残る。
3:施設を見て回る。
4:ちょこにまた会って守ってもらいたい。
[参戦時期]:ED後
[備考]:名簿を未確認なまま解読不能までに燃やしました。
※ちょこの支給品と自分の支給品から、『負けない、生き残るのに適したもの』を選別しました。
 例えば、防具、回復アイテム、逃走手段などです。
 尚、黄色いリボンについては水着セットが一緒に入っていたため、ただのリボンだと誤解していました。
※アシュレーも参加してるのではないかと疑っています。

【アキラ@LIVE A LIVE】
[状態]:テレポートによる精神力消費、疲労(大)、ダメージ(中)
[装備]:パワーマフラー@クロノ・トリガー、激怒の腕輪@クロノ・トリガー、デーモンスピア@DQ4
[道具]:清酒・龍殺しの空き瓶@サモンナイト3、ドッペル君@クロノ・トリガー、基本支給品×3
[思考]
基本:オディオを倒して殺し合いを止める。
1:ピサロ、ユーリルを魔剣が来るまで抑える。可能ならばユーリルかアナスタシアの心を読む
2:無法松との合流。
3:レイ・クウゴ、アイシャ・ベルナデット(カノン)、ミネアの仇を取る。
4:どうにかして首輪を解除する。
[参戦時期]:最終編(心のダンジョン攻略済み、ストレイボウの顔を知っている。魔王山に挑む前、オディオとの面識無し)
[備考]:超能力の制限に気付きました。テレポートの使用も最後の手段として考えています。
※カノンの名をアイシャ・ベルナデット、リンの名をリンディスだと思っています。
※名簿の内容に疑問を持っています。

718いきてしんで――(ne pas ceder sur son desir.):2010/07/18(日) 01:15:31 ID:I/mtESxw0
【イスラ・レヴィノス@サモンナイト3】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)
[装備]:魔界の剣@DQ4、ミラクルシューズ@FF6
[道具]:確認済み支給品×0〜1、基本支給品×2、ドーリーショット@アークザラッドⅡ、ビジュの首輪
[思考]
基本:感情が整理できない。自分と大きく異なる存在であるヘクトルと行動し、自分の感情の正体を探る。
1:ピサロ、ユーリルを魔剣が来るまで抑える
2:次にセッツァーに出会ったときは警戒。
[参戦時期]:16話死亡直後(病魔の呪いから解かれている)
[備考]:高原、クロノ、マッシュ、ユーリル、ヘクトル、ブラッドの仲間と要注意人物を把握済み。

【ジョウイ・ブライト@幻想水滸伝Ⅱ】
[状態]:疲労(中)
[装備]:キラーピアス@DQ4
[道具]:回転のこぎり@FF6、確認済み支給品×0〜1、基本支給品
[思考]
基本:更なる力を得て理想の国を作るため、他者を利用し同士討ちをさせ優勝を狙う。(突出した強者の打倒優先)
1:生き残るために利用できそうな者を見定めつつ立ち回る。可能ならば今のうちにピサロ、魔王を潰しておきたい。
2:座礁船に行く。
3:利用できそうな者がいれば共に行動。どんな相手からでも情報は得たい。
[参戦時期]:獣の紋章戦後、始まりの場所で2主人公を待っているとき
[備考]:ルッカ、リルカと参加している同作品メンバーの情報を得ました。WA2側のことは詳しく聞きました。
※紋章無しの魔法等自分の常識外のことに警戒しています。
※ピエロ(ケフカ)とピサロ、ルカ、魔王を特に警戒。
※制限の為か、二人が直接戦わなかったからか、輝く盾の紋章と黒き刃の紋章は始まりの紋章に戻っていません。
 それぞれの力としては使用可能。また、紋章に命を削られることはなくなりました。
 紋章部位 頭:バランス 右:刃 左:盾


【C-7中心部 一日目 夜中】
【ピサロ@ドラゴンクエストIV】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(極大)、MP0、人間に対する憎悪、自身に対する激しい苛立ち、絶望感
[装備]:ヨシユキ@LIVE A LIVE、ヴァイオレイター@WA2、クレストグラフ(ニノと合わせて5枚。おまかせ)@WA2
[道具]:基本支給品×2、データタブレット@WA2、双眼鏡@現実
[思考]
基本:優勝し、魔王オディオと接触。世界樹の花、あるいはそれに準ずる力でロザリーを蘇らせる
1:ロザリーを弔う
[参戦時期]:5章最終決戦直後
[備考]:確定しているクレストグラフの魔法は、下記の4種です。
 ヴォルテック、クイック、ゼーバー(ニノ所持)、ハイ・ヴォルテック(同左)。


【やぎのぬいぐるみ@WILD ARMS 2nd IGNITION】
ギア(アクセサリー)の一種。致命に至る一撃から、一度だけ復活することが可能となる。
ただし、装備者の身代わりになったぬいぐるみは失われてしまう。


 ×◆×◇×◆×

719いきてしんで――(ne pas ceder sur son desir.):2010/07/18(日) 01:16:52 ID:I/mtESxw0
【7】










          ――――この袋小路からの抜け道を提供するのが「外的反省」だ。
          外的反省は、テクストの「本質」「真の意味」を到達不可能な彼方に
          追いやり、それを超越的な「物自体」にする。有限の主体であるわれ
          われの手に入るものはすべて、われわれの主観的視野によって変形
          された歪んだ反映であり、一部分である。<物自体>、すなわちテク
          ストの真の意味は永遠に失われているのである。










 ×◆×◇×◆×

720 ◆MobiusZmZg:2010/07/18(日) 01:17:36 ID:I/mtESxw0
以上で投下を終了します。
問題点や矛盾点、ご意見ご感想など、お寄せいただけると幸いです。

それと、下手すれば誤解を与えるかもしれないので一点のみ。
【0】【7】の惹句は、いずれもスラヴォイ・ジジェク著『イデオロギーの崇高な対象』に拠ります。
本文中に引用の表記を行ってみると衒学的にすぎる印象になっちゃったので、代わりにここで。
自分のオリジナルでないと分かるのが肝要なんで、wiki収録時にも元ネタのページあたりに明記しておきます。

721ハッピーエンドじゃ終わらない  ◆iDqvc5TpTI:2010/08/12(木) 22:15:46 ID:SZkbz1o20
お待たせしました、規制中もあってこちらで投下します

722SAVEDATA No.774:2010/08/12(木) 22:35:06 ID:SZkbz1o20
止まない雨が降り注ぐ中、二人の男が倒れていた。
片や気絶、片や絶命。
同じ“絶”の字を冠していながらも二つの言葉の持つ重みには天と地の差があった。
ブラッド・エヴァンスは死んだ。
襲撃者との戦いの中、果てた。

だが。
襲撃者の片割れにして魔王と組んでいる男、カエルは断言する。
勝ったのはブラッド・エヴァンスだ、と。

その証拠にどうだ。
今自分は押されている。
一度は三人がかりで向かってこられてさえ優勢に立つことができた夜の王に。
魔王との実力差を目の当たりにし膝をついたはずの魔道士に。
完膚なきまでに押し負けている。

「うあああああああああああああ!」

ストレイボウが“斬り込んでくる”。
魔道士たる身でありながら剣を手にし死んだブラッドの代わりに空いた前衛をこなさんと必死に食らいついてくる。
隠しようもない恐怖をグレートブースターによる強引な戦意高揚効果で押し切って。
脚を震わせ、剣を震わせ立ち向かってくる。
そのさまをどうして無様だとカエルに笑えようか。
かってカエルは自らを護り死んだ友から逃げた。
ストレイボウは逃げなかった。
みっともない姿を晒してでもブラッドが残した勇気を受け継ごうと手を伸ばし足掻いているのだ。

「ぐっ……」

強化魔法がかけられていることを差し引いても我武者羅に叩きつけられる剣のなんと重いことか。
ああ、そういえば。
この剣はストレイボウの様子からすればカエルにとってのグランドリオンのようなものだったではないか。
ならばその剣を手にしていること自体がストレイボウの覚悟の現れだ。
自らへの嘲りを込めて握った魔剣如きで押し返せるわけがない。
そもそも持ち主を選ぶ類であるこの魔剣は眠りについたままで、木刀にも劣っているのだから。

「まだだ、まだわらわ達の攻撃は終わっておらんぞッ!」

ストレイボウの突撃に負けた身体が幾多もの火球に狙い撃たれる。
体勢を崩された身では跳躍して回避することは困難。
かといって魔法に頼ろうにも、今は魔力を封じられた身だ。
打つ手なし。
大人しく我が身を穿つ魔法を耐え忍ぶしかない。
両腕を交差させ、炎に備え、

「ぬう!?」

723ハッピーエンドじゃ終わらない  ◆iDqvc5TpTI:2010/08/12(木) 22:35:59 ID:SZkbz1o20

そこに追撃が迫る。
あろうことかストレイボウに続きマリアベルまで前線に踊りでてきたのだ。
否、それは躍り出たなどという可愛いものではなかった。
投げ込んできたと称すべき乱暴極まりないものだった。
怒りのリングに隠された秘技、仲間ではなく自身を砲弾と化し投じる荒業によって一瞬にして距離を詰めたのだ。
そしてマリアベルの手にもまた一本、剣が輝いていた。

「でえいッ!」

ソウルセイバー、魂食いの剣。
ブラッドが指揮した先の持久戦時にマリアベルはその効果を正しく理解していた。
故に躊躇することなくファイアボルトの連撃により緩んだガードの隙間からカエルへと突き刺す。
たちまちカエルを襲うのは痛みではなく虚脱感。
その隙にとマリアベルが催眠呪文を唱えようとしていることを察知。
間一髪、覚悟の証たる傷を自ら拡げ、意識を覚醒させてマリアベルをはねのける。

「――潮時か」

吹き飛んだマリアベルを駆けこんできたストレイボウが受け止める中、カエルは勝つことに見切りをつけた。
このまま戦ったところでまず本願を達することは不可能だ、と。
マリアベルとストレイボウには勢いがある。
仲間ひとりの命と引き換えにして得た好機だ、それこそ命を賭けてでも掴みに来る。
対するカエルには勢いがない。
彼にしても何としても叶えねばならぬ願いはあるが、しかし、その願いを叶えるためには彼が生きていなければならない。
我が身を優先しなければならない現状、どうしても決死には届かず、勢いに劣ってしまうのだ。
加えてもし術師二人に勝てたとしても。
ストレイボウ達にはまだジョウイを初めとした仲間がいる。
北方での戦闘が収まったことは既に察知済みだ。
あれだけ激しく聞こえていた剣閃の音も、天を脅かす雷鳴の光も消えた。
殺気立った空気が霧散していることからも勝ったのはジョウイ達の方なのだろう。
混戦時に目にした彼らの戦いぶりからも、魔法を封じられた現状ではカエルに勝ち目はない。
であるならストレイボウ達を殺してジョウイ達を煽り説得の通じない討滅対象と見なされるわけにはいかない。

724ハッピーエンドじゃ終わらない  ◆iDqvc5TpTI:2010/08/12(木) 22:36:32 ID:SZkbz1o20

「結局のところ敗因は後を託せる仲間がいたかどうか、か。
 自ら斬り捨てておきながらざまあないぜ」

腕から力を抜き、カエルは剣をマントに収めた。

「カエル……? 話を、聞いてくれる気になったのか?」

臨戦態勢を解いたことを訝しみながらも、喜色を隠せずにはいられないストレイボウにカエルは首を横に振る。
違う、そうではない。
単に勝てないと悟ったから。
ここで死ぬわけには、または戦う力を奪われるわけにはいかなかったから。
それだけだ。
どころかストレイボウが己に抱いてくれている友情を、殺されないという確信を利用してこの場より逃げようとしているのだ。
堕ちたものだと嘲りながらもカエルは一跳びで魔王の元へと跳躍する。
こちらが武装解除したことで僅かに戦意を収めたマリアベルが再度呪文を唱えるよりも早く、カエルは“それ”を手にした。
魔鍵ランドルフ。
魔王曰く異世界への道を拓くことさえ可能な空間を操る魔具。
カエル達が逃げおおせるための文字通りの鍵。

「ランドルフ……? そうか、そういうことか。無駄じゃ。今、お主の能力は封じられておる」
「覚えておけ。魔王は抜け目のない男だ。こんなふうにな」

ランドルフは時に主の命なくして主を強制転移させるなど自立行動が可能である。
そのことを見抜いた魔王はランドルフに緊急脱出用の空間転移プログラムを施していたのだ。
追い詰められた時ようの術式だけあって、術者の魔力に頼らずランドルフ単体で転移は発動できるようになっている。
パワーシールであろうとアイテムの使用は制限できない点も突いた最上の脱出手段であった。

とはいえ欠点がないわけではない。
魔王自身が使えばもう少し自在に転移先を選べたであろうが、カエルにはそんな器用なことはできない。
せいぜい事前に設定された転移先――魔王が唯一立ち寄ったランドマークになる施設に跳ぶことが精一杯だ。
その転移先とは、

「F-07エリアの遺跡とは名ばかりダンジョン。その地下深くにてお前達を待つ」

言うが否やカエルはランドルフを掲げる。
待てと呼び止めるはマリアベル。
キルスレスのことも含め、人殺しの意思があるままカエル達を逃がすわけにはいかない。
武力行使によって止められないのであれば、言葉により逃走を思いとどまらせる他なかった。

725ハッピーエンドじゃ終わらない  ◆iDqvc5TpTI:2010/08/12(木) 22:37:07 ID:SZkbz1o20
「よいのか? わらわ達の目的はあくまでもオディオの討伐。
 待ちぼうけをくらってるお主達をほっぽりだして先にオディオめを倒してしまえば魔王はともかくお主と戦う理由はなくなるぞ?」

こちらを挑発するようにニヤリと笑うマリアベル。
真理だ。
魔王はともかくカエルにとっては願いを叶えてくれるオディオが倒されたとあっては無為に命を刈り取ることはできまい。
茫然自失と崩れ落ちるか、以前のように酒に逃げるか。
我ながら碌でも無い未来しか想像ができなかった。

だからそのような未来にならないよう挑発し返す。

「それは困るな。だがお前達は遺跡に来ざるを得ない」
「……なんじゃと?」

カエルはランドルフについて説明を受けた時に忠告してきた魔王の言葉をそのままマリアベルに伝える。
曰く、遺跡の最下層には恐ろしい何かがあると。

「何かとは何じゃ」
「さてな。生物だか無機物だかも分からん。しかしあいつは言っていた。
 自分をも上回る魔力を感じたと。信じられんことだがあの男がそう言うのなら事実なんだろう。
 そして魔王を上回る魔力の持ち主がそうそう居るとも思えん。
 いるとすればピサロと呼ばれていた男のように魔王同様に魔の王の称号を冠する者……」
「まさか!?」
「流石に本人だとは思っていないが、無関係とも思えんだろ?」
「……」

マリアベルが押し黙る。
それを無言の肯定だとカエルはとった。
これでいい。
これでストレイボウだけでなくマリアベル達もカエル達を追撃せざるを得ない。
こちらはそれを待ち構えていればいい。
地の底深くで傷を癒し、或いは罠さえ張り巡らせ、待っていればいい。

起動したランドルフが宙に浮く中、カエルは魔王を背負いストレイボウ達に背を向ける。

「カエル!」

その背に届けと発せられる声があった。
転移を思いとどまらせるためではない。
これまでのように自分の想いのみを投げかける言葉でもなかった。

「せめて教えてくれ! 全てを守る戦いを優先するとお前は言っていたな!
 お前は、お前は何を護ろうとしているんだ! 頼む!」

友の抱く想いを、友の秘めた想いを知って力になろうとしての言葉だった。
カエルは僅かに間を置き、それでもワームホールに飛び込みながら振り向くことなく答えた。

「国のためだ。友が護ろうとし、俺が愛したガルディアをなかった事にされないためだ」

726ハッピーエンドじゃ終わらない  ◆iDqvc5TpTI:2010/08/12(木) 22:37:57 ID:SZkbz1o20







ブラッド・エヴァンスは灯火だった。
死だの罰だのを言い訳に諦めかけていたストレイボウに諦めるなと言ってくれた。
広く視野を持てとも、自分の意思を打ち立てろとも。
そして死んでいった。
自らの意思で、人を導き、仲間を護り、仲間の仇を討って死んでいった。

ああ、そうか。

ストレイボウはその死に様を、否、マリアベルの言うところの生き様を目にしようやっと馬鹿な加害妄想から脱することができた。

何が生きているだけで他の人間が死んでいく、だ。
巫山戯るな。

ブラッドが死んだのは他の誰のせいでもない。
ブラッドが自らの意思を貫き通した結果だ。
俺が、ちっぽけな俺ごときが、あの大きな男の生き死にを曲げることなどできるものか。

ストレイボウは自覚する。
結局はあの頃と変わっておらず自分のことしか見ていなかったのだと。
世界を自分中心にしか考えず、良いも悪いも他人のことも全て一方的にしか見ていなかったのだと。

広い視野で世界を見ろとはそういうことか。

思えば自分はカエルのことを何も知らない。
何も知らずに盲信して、いや、単に二度と友と戦いたくないという自分可愛さから剣を収めてくれと言い募るばかりだった。
何故と、どうして急に殺し合いにのったのかも、一度たりとも聞こうとはしなかった!

727ハッピーエンドじゃ終わらない  ◆iDqvc5TpTI:2010/08/12(木) 22:39:46 ID:SZkbz1o20

カエルが話を聞いてくれないのは当たり前ではないか。
他でもないストレイボウ自身がカエルの話しを聞こうとしていなかったのだから。
否、もしかすればそれはもっと質の悪いものかもしれない。

ストレイボウは思い至る。
自分の弱さに。
聞こうともしなかったのではなく聞きたくなかったのではと。
核心に迫る問いを投げかけることで得た返答が、カエルを引き戻せないと納得してしまうほどの力を持つものであることを恐れていたのではと。

馬鹿馬鹿しい話だ。
納得出来る理由があれば退いたと?
説得できないと分かれば辞めていたと?

そんな、そんな半端な想いで自分はカエルに対峙していたのか。

許せなかった。
諦めることをよしとしていた臆病な自分が許せなかった。
変わらなければならない。変わるんだ!
これまで何度も抱いた想いに行動を伴わせるべく、マリアベルに頼み身体強化を施してもらい前に出た。
覚悟の証としてブライオンも鞘から抜いた。
全てはカエルの声を聞くことの先である、カエルの心に触れるために。

なのに。

「国のためだ。友が護ろうとし、俺が愛したガルディアをなかった事にされないためだ」

ストレイボウはカエルの心中を知り早速後悔してしまった。
他の如何な理由でもここまで彼を動揺させはしなかっただろう。
だが、これだけは駄目だ。
この意思に対してだけはストレイボウは掛ける言葉が見つからなかった。
止めていいのかも分からなくなってしまった。

カエルが振り向くことなく消えて行ったのはストレイボウにとっては悲しいながらも幸いだった。
後悔と罪と絶望に彩られた顔を見せずにすんだのだから。
何よりも。
ストレイボウはカエルに合わせる顔がなかった。
友を騙し、王を殺させ、一つの国が滅ぶ原因を産み出したストレイボウには。

728ハッピーエンドじゃ終わらない  ◆iDqvc5TpTI:2010/08/12(木) 22:40:30 ID:SZkbz1o20
ブライオンが重い。
勇者の剣が元・魔王を責め立てるように手から零れ落ちる。

「くっ、ぐっ、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお……っ!」

かって犯してしまった罪。
その罪を悔いているからこそ、カエルに殺し合うのを止めてくれという国を救うなと同義のことを訴え続けられるか分からなくなってしまった。
これまであれほど軽く吐き続けていた言葉のカエルにとっての重さを知り、ストレイボウは天へと絶叫する。
天は応えを返してはくれなかった。
ぽつぽつと雨を返すのみだった。
当たり前だ。
答えはストレイボウ自身の手で見つけ出せねばならないのだから。







ストレイボウは気付かない。
自らの罪とカエルのことに気を取られるあまり、マリアベルが自身以上に絶望を湛えた目でストレイボウを見つめていることに。

マリアベルは気付いてしまった。
どう足掻いてもストレイボウに待ち受けているのは悲劇だけだということに。

729ハッピーエンドじゃ終わらない  ◆iDqvc5TpTI:2010/08/12(木) 22:41:49 ID:SZkbz1o20
きっかけは些細なことだった。
カエルが去り際に発した言葉、そのある部分がどうしても頭に引っかかったのだ。

愛した国を“なかった事にされる”? どういうことじゃ?

これが単に愛した国を護るため、というのであれば疑問を抱きはしなかったであろう。
カエルは騎士だ。
祖国に危機が迫っているというのなら魔王オディオに縋りついてでも救おうというのは許容はできないが忠義の形としては納得出来……否。

マリアベルは思い直す。
そうだとしても変じゃなと。
ストレイボウ曰くカエルは最初はオディオを倒す気でいた。
もしカエルの祖国が危機に瀕していたとして、それはこの島に呼び出される前のことだ。
であるなら初めから殺し合いにはのっているべきだ。
願いを叶えてくれるオディオを倒そうとは思いもしないだろう。

それともオディオを倒すというのは演技じゃったか?

違う。
マリアベルは即座に否定する。
カエルはそういった嘘をつけるほど器用な男には見えない。
カエルの危険性を見抜いてたシュウには悪いが、少なくともあの時点では殺し合いにはのっていなかったと断定できる。
転じてそれは次にカエルと会い襲われるまでの間に彼の心境を変える何かがあったということ。

その何かとは?

ストレイボウの話では少なくとも彼の元をカエルが去った時点では殺し合いにはのっていなかったらしい。
その時ストレイボウが襲われていないのが何よりの証拠だろう。
つまりはその何かが起きたのは彼らが別れた更に後。
その条件に当てはまるものとして真っ先に思い浮かぶのはただ一つ。

放送だ。

カエルに初めて襲われた時、カエルが一人だったことからも現在組んでいる魔王に唆された線は薄い。
十中八九放送で誰か、国を護るというからには例えば王族が死んだのだろう。
名簿を確認した時のカエルの反応も護るべき王の名がそこにあったというのなら頷ける。
頷ける、が、恐らくはそれは正解の半分程度でしかない。

730ハッピーエンドじゃ終わらない  ◆iDqvc5TpTI:2010/08/12(木) 22:47:38 ID:SZkbz1o20

けれども。
まだましだ。
解決策がどれだけ気に食わないものであっても存在しているだけまだましだ。
カエルには、本人がどれだけ自分を許せなくなっても救いがある。
ストレイボウには、それがない。

――のう、ストレイボウ。わらわはこの推測をお主に伝えるべきじゃろうか?

歴史に起きた綻びをそのままにしておけば、過去の改変によりカエルは近いうちに消滅する。
“なかったことにされる国”に生まれたカエルは“なかったことにされる人間”として確定してしまう。
説得が成功した時、つまりはカエルが歴史の修正を断念した時。
それはストレイボウが自らの意思で友の存在を否定してしまうということになるのだ。

「笑えない、全くもって笑えない話ではないか。本当にカエル達を無視できればいいのじゃがのう……」

それが何の解決にもならないと分かっていても、そう思わずにはいられなかった。
叫び続けるストレイボウに釣られてマリアベルも夜空を見上げる。
零時が近づいたことで雨は小雨になり、ようやっとふりやもうとしているも、マリアベルの心は晴れそうになかった。




【C-7(D-7との境界付近) 一日目 真夜中】
【マリアベル・アーミティッジ@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:疲労(大)※ただし魔力はソウルセイバー分回復済み、ダメージ(中)
[装備]:44マグナム&弾薬(残段数不明)@LIVE A LIVE、アリシアのナイフ@LIVE A LIVE、ソウルセイバー@FFIV
[道具]:ゲートホルダー@クロノトリガー、いかりのリング@FFⅥ、基本支給品一式 、マタンゴ@LAL、アガートラーム@WA2
[思考]
基本:人間の可能性を信じ、魔王を倒す。
1:ストレイボウに残酷な推測を話すか否か。
2:ひとまずはイスラ達との合流。後、キルスレスの事も含め、魔王達を追撃?
3:付近の探索を行い、情報を集めつつ、元ARMSメンバー、シュウ達の仲間達と合流。
4:首輪の解除、ゲートホルダーを調べたり、アカ&アオも探したい。
6:アガートラームが本物だった場合、然るべき人物に渡す。 アナスタシアに渡したいが……?
[備考]:
※参戦時期はクリア後。 レッドパワーはすべて習得しています。
※アナスタシアのことは未だ話していません。生き返ったのではと思い至りました。
※ゲートの行き先の法則は不明です。 完全ランダムか、ループ型なのかも不明。
 原作の通り、四人以上の人間がゲートを通ろうとすると、歪みが発生します。
 時の最果ての変わりに、ロザリーの感じた何処かへ飛ばされるかもしれません。
 また、ゲートは何度か使いましたが、現状では問題はありません。
※『何処か』は心のダンジョンを想定しています。 現在までの死者の思念がその場所の存在しています。
(ルクレチアの民がどうなっているかは後続の書き手氏にお任せします)

731ハッピーエンドじゃ終わらない  ◆iDqvc5TpTI:2010/08/12(木) 22:49:41 ID:SZkbz1o20
すみません、729と730の間に欠落があります。
次の732を本投下時は間に挟んでください

732ハッピーエンドじゃ終わらない  ◆iDqvc5TpTI:2010/08/12(木) 22:50:15 ID:SZkbz1o20

マリアベルは思い出す。
名簿を見てひどく動揺していたカエルの表情を。
あの時は恋人の名前だとかトンチンカンなことを考えていたが、数時間前の自分を鏡で写してみてみろといってやりたい。
自分だって名簿を手にした時、何故、どうしてと訝しんだではないか。
亡き友の名を、“数百年も昔に死んだはずの友”の名を目にして慌てたではないか。

そう、数百年も前の。

カチリ、カチリとピースが当てはまっていく音がする。
カエルの言葉、名簿を見た時の彼の動揺、時を越えて存在する友人。
それらの要因を合わせてマリアベルは一つの推測を導き出す。
カエルが叶えたい願いとは即ち

“この殺し合いに巻き込まれて死んでしまったカエルの仲間であった遥か昔の王族、或いは救国の英雄を蘇らせること”

これなら全ての辻褄が合う。
過去の人物を仲間と呼ぶのは普通の人間には矛盾にしているように思われるが、考察主は不死の王。
マリアベルは自分同様カエルもまた不死者なのではと考えたのだ。
もちろん真実は違う。
カエルが過去の人間を仲間だと言ったのはとっさのでまかせではない事実であるが、彼らが時間を超えて旅をしていたからだ。
しかしここではそんな些細な勘違いは重要ではない。
大切なのはカエルが蘇らせようとしているのがマリアベルで言うところのアナスタシアだということだ。

例えば、例えば、だ。
あのアナスタシアがロードブレイザーを封印する前の時間から呼び出されており、しかも死んだとすれば?
言うに及ばず。
ファルガイアの歴史は変わる。
封印されることのなかったロードブレイザーにあらゆる命は蹂躙され、星は滅び、アシュレー達は生まれてこない。
これが現在に迫っている驚異なら良かった。
ブラッド、カノン、リルカを欠いたといえどマリアベルはアシュレーやティム、多くの仲間達と共に危機を乗り越えようと諦めることなく戦っただろう。
しかし既に過ぎ去った過去の危機が相手ではそうはいかない。
いかなノーブルレッドといえど干渉すること能わず、過去の改変より滅びを待つしかない。

カエルが直面している問題とはそういうものなのだ。
時も生死も超越できるかもしれないオディオの手を借りねば解決できない問題なのだ。

733ハッピーエンドじゃ終わらない  ◆iDqvc5TpTI:2010/08/12(木) 22:51:33 ID:SZkbz1o20


【ストレイボウ@LIVE A LIVE】
[状態]:健康、疲労(大)、心労(超極大)、自己嫌悪
[装備]:ブライオン@ LIVE A LIVE
[道具]:勇者バッジ@クロノトリガー、記憶石@アークザラッドⅡ、基本支給品一式
[思考]
基本:魔王オディオを倒す
1:カエルを止めたいが、俺なんかに止める資格のある願いなのか?
2:戦力を増強しつつ、ジョウイと共に北の座礁船へ。
3:ニノたちが心配。
4:勇者バッジとブライオンが“重い”。
5:少なくとも、今はまだオディオとの関係を打ち明ける勇気はない。
参戦時期:最終編
※アキラの名前と顔を知っています。 アキラ以外の最終編参加キャラも顔は知っています(名前は知りません)
※記憶石にルッカの知識と技術が刻まれました。目を閉じて願えば願った人に知識と技術が転写されます
※記憶石の説明書の裏側にはまだ何か書かれているかもしれません


※C-7(D-7との境界付近)にブラッドの遺体があります。
 遺体はドラゴンクロー@ファイナルファンタジーVI を握りしめており、にじ@クロノトリガーが刺さっています。
 また、遺体付近に以下のものが落ちています。
 ・昭和ヒヨコッコ砲@LIVEALIVE
 ・リニアレールキャノン(BLT0/1)@WILD ARMS 2nd IGNITION
 ・不明支給品0〜1個、基本支給品一式





734ハッピーエンドじゃ終わらない  ◆iDqvc5TpTI:2010/08/12(木) 22:52:17 ID:SZkbz1o20


【ストレイボウ@LIVE A LIVE】
[状態]:健康、疲労(大)、心労(超極大)、自己嫌悪
[装備]:ブライオン@ LIVE A LIVE
[道具]:勇者バッジ@クロノトリガー、記憶石@アークザラッドⅡ、基本支給品一式
[思考]
基本:魔王オディオを倒す
1:カエルを止めたいが、俺なんかに止める資格のある願いなのか?
2:戦力を増強しつつ、ジョウイと共に北の座礁船へ。
3:ニノたちが心配。
4:勇者バッジとブライオンが“重い”。
5:少なくとも、今はまだオディオとの関係を打ち明ける勇気はない。
参戦時期:最終編
※アキラの名前と顔を知っています。 アキラ以外の最終編参加キャラも顔は知っています(名前は知りません)
※記憶石にルッカの知識と技術が刻まれました。目を閉じて願えば願った人に知識と技術が転写されます
※記憶石の説明書の裏側にはまだ何か書かれているかもしれません


※C-7(D-7との境界付近)にブラッドの遺体があります。
 遺体はドラゴンクロー@ファイナルファンタジーVI を握りしめており、にじ@クロノトリガーが刺さっています。
 また、遺体付近に以下のものが落ちています。
 ・昭和ヒヨコッコ砲@LIVEALIVE
 ・リニアレールキャノン(BLT0/1)@WILD ARMS 2nd IGNITION
 ・不明支給品0〜1個、基本支給品一式





735ハッピーエンドじゃ終わらない  ◆iDqvc5TpTI:2010/08/12(木) 22:52:51 ID:SZkbz1o20
「魔王が警戒したわけだな……」

遺跡ダンジョン下層、地下五十階玉座の間。
ランドルフの転移によりこの地に踏み入った瞬間、カエルは眉を潜めた。
手にしていたキルスレスが独りでに震えだしたのだ。
まるで地下の何かに反応するかのように。
鮮血のように紅い刀身を更に鮮やかに輝かせ、鳴動すること収まらない。

「魔王が言う何かとはこの魔剣に関するものなのか? ……或いは」

魔剣に認められていないカエルだが、たった一つだけキルスレスについて分かっていることがあった。

「魔剣が反応せざるを得ないような巨大な思念が渦巻いているか」

それはこの剣もまた人の精神や意思に影響されるものだということ。
仮にも聖剣グランドリオンの担い手。
聖剣との共通点であるその性質を見抜くことは容易かった。

「む?」

と手にしていた剣から伸びた光がカエルを包むや否や、身体の中で魔力の滾りが再活性化する。
どうやらマリアベルにかけられていた能力封印が解けたらしい。
どころかケアルガを使ってもいないのに徐々に、本当に徐々にだが傷が癒えていく。
原因がこの心臓が脈打つように鼓動する真紅の光にあることは間違いなかった。

「そういうことか」

カエルは得心がいき、魔剣を一度大きく振るう。
予想通りストレイボウ達との戦闘では起きなかった衝撃波が発生し、巨大な玉座を吹き飛ばした。
どうやら地下の何かの影響でこの地では限定的ながらもカエルにも魔剣の力を引き出すことができるらしい。
もっとも同系統の武器を使い慣れてたカエルだからこそ魔剣の膨大な力を制御しきれたのだが。

「どうやら俺にはつくづくこの剣がお似合いらしい」

自嘲しつつも魔王を地に降ろし、回復呪文をかけようとしてふとそれが目に入った。
階段だ。
キルスレスで吹き飛ばした玉座の下に隠されていたのか、はたまたその衝撃がスイッチとなり隠し階段が姿を現したのか。
どちらかは分からないがついさっきまではなかった階段が確かにそこにはあった。
カエルは魔王の治療を中断。
一人魔剣を手に階段を下り、地の底へと降りていく。

その終着点にそれは鎮座していた。

736ハッピーエンドじゃ終わらない  ◆iDqvc5TpTI:2010/08/12(木) 22:53:40 ID:SZkbz1o20

「これは……虹色の貝殻? いや貝じゃねえ、石だ」

巨大な、あまりにも巨大な虹色に輝く石。
カエルは知る由もないがこれこそが感応石。
殺し合いの参加者を首輪の楔から解き放つ為に破壊を必須とされているそれ。
加えて、カエルの手には同じく首輪解除の鍵となる紅の暴君。

マリアベルの願いは届かない。
決戦は避け得なかった。



【F-7 遺跡ダンジョン最下層 一日目 真夜中】
【カエル@クロノ・トリガー】
[状態]:左上腕脱臼&『覚悟の証』である刺傷。 ダメージ(やや大)、疲労(大)、自動微回復中
[装備]:紅の暴君@サモンナイト3
[道具]:基本支給品一式
[思考]
基本:ガルディア王国の消滅を回避するため、優勝を狙う。
1:出来る限り殺す。
2:魔王と共に全参加者の殺害。特に仲間優先。最後に魔王と決着をつける
3:できればストレイボウには彼の友を救って欲しい。
[備考]:
※参戦時期はクロノ復活直後(グランドリオン未解放)。
※キルスレスの能力を限定的ながら使用可能となりました。
 開放されたのは剣の攻撃力と、真紅の鼓動、暴走召喚のみです。
 遺跡ダンジョン最下層からある程度離れると限定覚醒は解けてしまいます。


【F-7 遺跡ダンジョン地下五十階 一日目 真夜中】
【魔王@クロノ・トリガー】
[状態]:ダメージ(極大)、疲労(大)、瀕死、気絶
[装備]:魔鍵ランドルフ@WILD ARMS 2nd IGNITION 、サラのお守り@クロノトリガー
[道具]:不明支給品0〜1個、基本支給品一式
[思考]
基本:優勝して、姉に会う。
1:出来る限り殺す
2:カエルと組んで全参加者の殺害。最後にカエルと決着をつける
[備考]
※参戦時期はクリア後です。ラヴォスに吸収された魔力をヘルガイザーやバリアチェンジが使える位には回復しています。
※ブラックホールがオディオに封じられていること、その理由の時のたまご理論を知りました。
※遺跡の下が危険だということに気付きました。


※F-7 遺跡ダンジョン最下層に巨大な感応石が設置されています。
 尚、オディオの手で感応石に何らかの仕掛けがされている可能性や、他にも何か設置されている可能性もあります

737ハッピーエンドじゃ終わらない  ◆iDqvc5TpTI:2010/08/12(木) 22:54:57 ID:SZkbz1o20
投下終了
間の欠落といい、ストレイボウの状態表重複といい、ミスが多くて申し訳ありません
できればスレ立て&代理投下時に直しておいていただければありがたいです

738 ◆iDqvc5TpTI:2010/08/14(土) 17:42:48 ID:wAzuxsNM0
スレ立ての人及び代理投下してくれた方、ありがとうございました

739 ◆iDqvc5TpTI:2010/10/06(水) 18:45:05 ID:.zh9cZb60
闇からの呼び声の冒頭及び最後の部分、加えて指摘されたました誤字などの修正完了しました

740 ◆y.yMC4iQWE:2010/10/13(水) 19:17:13 ID:NGITva2Q0
こちらに続きを投下します

741 ◆y.yMC4iQWE:2010/10/13(水) 19:19:08 ID:NGITva2Q0
     ◆



「――――ほう?」

一方、湧き上がる破壊衝動を万物を溶かす焔へと変えて吐き出したロードブレイザーは、さしたる疲労もなく為した破壊の痕を見る。
島を東に貫いた粒子加速砲は、地表面に存在する全ての形あるモノを灼き払っていった。
焔の災厄と呼ばれていた全盛期からは程遠いが、それでも人を屠るには十分すぎる力であった。


だと言うのに。


「さすがは我が宿敵……いいぞ、そうでなくてはなッ!」

ロードブレイザーの魔眼は、溶けた大地に這い蹲る――しかし五体満足の英雄の姿を見出した。
その手には殊勝にも蒼い魔剣が握り締められている。
身体を灼かれながらもたった一つの希望を守り通すことには成功していたらしい。
笑声を漏らし、ロードブレイザーはゆっくりと彼に近づいていく。
飛ぶのではなく歩く。絶望を刻むように、砂を蹴立てて。

「く……う、うう……」

「正直、驚いたぞ。その小賢しい剣ごと消し飛ばしてやるつもりだったが、まさか耐え抜くとはな」

どうやって難を逃れたか、見当は付く。
直撃の瞬間、アシュレーは連続して氷結魔法を発動していた。
もちろん蒼剣の補助なしに発動した魔法では粒子加速砲を防ぐ盾には成り得ない。
アシュレーの狙いは空中に足場を作ること。それらを蹴り跳び、光輪の噴射と合わせて焔の軌跡から逃げ延びたのだ。

だが、それでも無傷ということは有り得なかったようだ。
身を包んでいた聖衣は半ばほど焼け落ち、無残な傷痕を夜気に晒している。
呼吸は弱々しく、指先は痙攣を繰り返す。
脅威が間近に迫っても立ち上がれもしない。

742 ◆y.yMC4iQWE:2010/10/13(水) 19:20:28 ID:NGITva2Q0
死線の底でかろうじて掴み取った果てしなき蒼は魔神によって蹴り飛ばされ、アシュレーの手を離れていく。
決着の瞬間――因縁の終わりがやってきたことを、ロードブレイザーは感じていた。

「思えば長かったな。剣の聖女から続く我らの戦いも……ここが終局だ。物悲しさすら感じるよ、アシュレー」

ナイトフェンサーを顕現させる。
油断はしない。なんとなれば、アシュレー・ウィンチェスターという男の真価は追い詰められたときこそ爆発するのだ。
全力を以て屠ってこそ、かつて自身を育てたこの男の恩に報いるというもの。


「心臓を抉り出し、喰らってやろう。私の血肉となるがいい……ルカ・ブライトと同じように」

「ま……だ、だ……ッ!」

「剣もなく、立ち上がることもできん。お前はよくやったよ、アシュレー」


いかに剣の英雄だとて、首を落とさば生きてはいられまい。


「さよなら、アシュレー・ウィンチェスター」


ナイトフェンサーが閃き、アシュレーの首を一刀の下に斬り落とす。
落ちて消えるが、儚き人の定めである。

「…………は」

重い肉塊が砂を散らす。
ロードブレイザーは傲然とソレを見下ろしていた。

743 ◆y.yMC4iQWE:2010/10/13(水) 19:23:31 ID:NGITva2Q0

「なん……だと……?」

肩から斬り落とされた、己自身の片腕を。


「が……がああああッ! ば、かな……ッ!?」


ロードブレイザーの前に、一振りの剣がある。
果てしなき蒼、ではない。
遥か南の地にあるはずの、いるはずの、


「ルシ、エド……?」


ガーディアンブレード・魔剣ルシエドが、純然たる敵意と共にロードブレイザーと相対していた。


「貴様……欲望の守護獣! 何故動ける!? 宿主はここにいたというのに!」

ルシエドはずっとアシュレーの裡にいた。だからこそ彼の呼びかけに応え剣となって顕現した。
だが、魔王の影響下にあるこの島では、一度剣として顕現させたのならそれはアシュレーの内的宇宙とは切り離された状態ということだ。
手元になければ呼び戻すことはできない。
またルシエドは唯一実体を保てる守護獣であるが、欲望を糧にするがゆえに他者の欲望が無ければ自ら動くことはできない。
ルシエドを戦力として数えたいのならばアシュレーがその場に行き命じなければならないはずだった。
だからこそ脅威として認識しつつも、この戦いの中でさほど気に留めていなかったのだ。

影狼は黙して語らない。
ただ、己を握る主の命を待つのみ。


そして、ロードブレイザーにはわからずとも。

アシュレー・ウィンチェスターにはわかる。わかっている。


ルシエドがここに来た理由を。
ルシエドがここに来れた理由を。
今、ルシエドが己に何を望んでいるのかも。


ハッキリと、わかっている。

744 ◆y.yMC4iQWE:2010/10/13(水) 19:28:11 ID:NGITva2Q0

「ああ……そう、だ……」


そして……、立ち上がる。

ロードブレイザーが最も恐れた男が、
人の身でありながら魔神へと食い下がる男が、
もはや死泉に腰まで浸かっている、放っておけば遠からず死に至る、そんな状態だというのに、


アシュレー・ウィンチェスターは、何度だって立ち上がる。


「どんなときでも……僕は、一人じゃ……ないッ……!」


アシュレーは相棒たる剣を引き抜いた。
その掌には、蒼く輝く絆の証。


「いっしょに……戦っているんだッ……!」


ロードブレイザーが最も嫌う命の輝き、繋がり拡がる想いの糸。
その糸を手繰った先に、きっと、いてくれるのだ。




「そうだろ――ゴゴッ!!」




『当然だ』




応えた声は、物真似師のもの。
アシュレーの握り締める感応石が、遠く離れた友の心を届けてくれる。

745 ◆y.yMC4iQWE:2010/10/13(水) 19:30:21 ID:NGITva2Q0
     ◆


幾重もの衣で素顔を隠すその人物は、あるいは泣いていたのかもしれない。
今……友が逝った。
はたして彼は、辿り着きたい場所へ、辿り着けたのだろうか。


安らかな顔で、眠るようにトッシュは逝った。


ゴゴはその男の胸元へ、携えていた剣をそっと置いた。
トッシュは剣士だ。ならば、死出の道行にも剣が無ければ締まらないというもの。もう、ゴゴにしてやれることはこれくらいだ。
視線を転じ、昏倒したちょこを見やる。
トッシュの元々の仲間だと言う少女は、トッシュの死を知れば泣くのだろうか。
涙を知らないゴゴはどこかそれを羨ましいとさえ感じていた。


遠く離れた地で、アシュレーが戦っている。しかしゴゴに成す術は無い。
無論今すぐにでも駆けつけ共に戦いたいという想いはある。
だがちょこを置いて行く訳にはいかないし、身体の疲労も無視できない。
なにより、行ったところで何ができると言うのか。


英雄と魔神の戦いに、物真似師が介入する余地はどこにもない。


それを知っているから――握り締めた拳から血が滴るほどに痛感しているからこそ、ゴゴは動かない。
友の勝利を信じるしかない歯がゆさを噛み締めながらも、動けない。

「アシュレー……」

心をリンクさせる石を胸に、ゴゴは祈る。
石を通じてアシュレーの苦境は伝わってくる。
痛み、苦しみ、それらを圧する勝利への意思。

だが敵の力は強大だ。直に対面していなくてもわかる。
アシュレーは今、破壊の力そのものと戦っている。

時折り空を照らすあの光はどちらが放ったものか。
紅蓮が空を焦がすたびに友の無事を願い、蒼光が煌くたびに安堵する、その繰り返し。
ロードブレイザー、かの魔神の力は三闘神にすら匹敵するのではないか。
そんな化け物へ、友はたった一人で挑んでいる。

746 ◆y.yMC4iQWE:2010/10/13(水) 19:32:39 ID:NGITva2Q0
「……無力だ、俺は」

呟く言葉にも力はない。
そのときゴゴははっと顔を上げた。
アシュレーのいる場所からまっすぐ東へ、太陽と見紛うほどの朱金の灼熱が駆け抜けていくのが見える。
同時、感応石から伝わるアシュレーの石がひどく弱まった。

「アシュレー……!」

決着が着いたのかもしれない。
だが、あの攻撃を放ったのは十中八九ロードブレイザーだ。
あんなものを受けたのなら、いかに聖剣の加護があろうとも……。

「……助けなきゃ」

無駄と知りつつそれでもなお救援へ向かうか。
半ば本気でそれを考えていたゴゴの耳を、涼やかな声がくすぐった。
振り向けば、ちょこが目覚め立ち上がろうともがいている。
が、やはり連戦のダメージは大きいらしく生まれたての小鹿のように何度も転ぶ。そしてそのたびに立ち上がろうとする。

「ちょこ?」

「助けるの……おにーさんを……助けるの!」

痛みも苦しみも、何物も彼女を阻めない。
その瞳の輝きこそ、魔を討ち闇を払う力――希望であると、ゴゴは知っている。

だからこそ――ゴゴは、ちょこを気遣いはしなかった。


戦う意思がある。
守りたいと思う人がいる。
ならば、ゴゴがするべきことは一つッ!


「ちょこ。俺に力を貸してくれ。あいつを……友を、助けたいんだ」


物真似師が差し伸べた手を……、少女は、


「うんッ!」


強く、強く握り返した。

747 ◆y.yMC4iQWE:2010/10/13(水) 19:34:34 ID:NGITva2Q0
「あっ……狼さん?」

「ん?」


ゴゴの手を借りて立ち上がったちょこが、ゴゴの背後を見て驚きの声を上げた。
そこに、数秒前は確かにいなかった影がある。
毛並みも鮮やかな黒い狼。
だが野生のそれと違い、瞳には深い知性を湛えている。

「この子……知ってるの。おにーさんといっしょにいた」

「アシュレーと?」

狼はゴゴ達に構うことなく彼方の方角を睨み唸っている。
まるで用事が済むまで待っているように命じられた犬のようだ。
その視線を追って気付く。
狼が見ているのは、アシュレーがいると思しき方角であると。

「……お前は、アシュレーを待っているのか?」

疑念に駆られゴゴがそう問いかける。
すると狼はついと視線を巡らせる。首肯はしなかったが、それをゴゴは肯定と取った。
何者であろうと、目指す先が同じであるならば。
ゴゴが選ぶ言葉はやはりこれだ。

「手を貸してくれ」

音もなく現れた狼が途方もない力を秘めているのは見てわかる。
だが決して足を踏み出そうとはしない。
あるいは魔王に干渉されているのか、動けない理由でもあるのか。

「お願い、狼さん! ちょこ、おにーさんをおうちに帰してあげたいの!」

ちょこが狼の首を掴み、ガクガクと揺らす。
だがその言葉に嘘の成分は一欠片もない。

「俺はこれ以上友を失いたくはない。だから、頼む」

ゴゴは、かつて感じたことがないほどの渇望を吐き出す。
トッシュを目前で失った衝撃は、自分で思っている以上にゴゴという人間の根幹に影響を与えているらしい。

748 ◆y.yMC4iQWE:2010/10/13(水) 19:36:26 ID:NGITva2Q0


――幼く、それがゆえに透き通った心地よき欲望……いいだろう。俺を、アシュレーの元へ連れて行け!



突然頭に響いた声に、ちょこと二人して辺りを見回す。
だが当然誰もいない。

「あっ!」

いや、変化はあった。
狼が消えて、代わりに一振りの剣が突き立っている。
アシュレーがトッシュへ託した、あの約束の剣だ。

「そうか、お前がアシュレーの言っていた……いいだろう、やってみせるさ。見ていろ、トッシュ……ッ!」

連れて行けと言っている。
記憶の中で、あの赤毛の剣士が友を救えと吠え立てているッ!

魔狼ルシエドが剣、魔剣ルシエドを引き抜いた。
その柄から伝わる熱はトッシュが残したものと、今のゴゴなら信じられる。
刃から伝わる力は強大だ。これならなるほどあの魔神にすら届き得るだろう。

「行こう、おに……おじ? あれ? ちょこ、あなたのことなんて呼べばいいの?」

「む……」

ちょこに問われ、ゴゴは考える。
ゴゴの種族性別個人情報はトップシークレットだ。
それに、自分で応えるのでは芸がない。

「あいつ……シャドウを何と呼んでいたんだ?」

「えっと、おじさん、って」

「なら、俺もそれでいい」

「ゴゴおじさん……わかったのッ!」

ちょこは力いっぱい返事をしてさあ駆け出そうとし、ゴゴはそれを制止した。
走って行ったのでは間に合わない。
ちょこが飛べるのだとしてもまだ無理だ。
そもそも満身創痍の二人が行ったところで何ができるわけもなく。

だから。
ゴゴとちょこがするべきは、アシュレーの下へ馳せ参じることではない。

749 ◆y.yMC4iQWE:2010/10/13(水) 19:47:18 ID:NGITva2Q0

「ちょこ……俺を、空へ!」

大きく助走を取り、ゴゴは猛然と走り出す。
その手にしっかと友から託された魔剣を握り締めて。

「わかったの! 行くよ、ゴゴおじさんッ!」

時間が無いのは百も承知。
だからどうして、などとは聞かない。
ちょこはただ言われた通りに、ゴゴの望む通りに力を振り絞る。
魔力を風へと変換、凝縮、そして解放。


「――――飛んでけぇぇぇぇぇぇえええええええッ!」


ちょこの足元から風が――嵐が巻き起こる。

ちょこの視線の先、ゴゴが跳んだ。
ジャンプシューズで増幅された跳躍を――ゴゴは知らない。その靴は、アシュレーの友の物――ちょこの魔法が下から一気に押し上げる。

天へ昇る塔――風の階段は、物真似師を遥か高みへと連れて行ってくれる。


「……見えたッ!」

遮るもののない空の中で、ゴゴは、ゴゴの持つ感応石は、アシュレーの心の在り処を寸分違わず感じ取った。


準備は整った。
目的地もすぐそこだ。
未来を斬り拓く力は今、この手の中にある。



後は、そう――物真似を、するだけだ!

750 ◆y.yMC4iQWE:2010/10/13(水) 19:51:03 ID:NGITva2Q0

「シィィィィィイイイイイイイ……」


あいつのように――雄叫びを上げ、

     震える喉が、一層の気合を呼び起こす。


あいつのように――身体を引き絞り、

     ぎしぎしと骨が鳴り、手にした刃に極限の遠心力を注ぎ込む。


あいつのように――イメージを練り上げて、

     八竜だろうと闘神だろうと貫き通す無敵の投法、その始終をずっと傍で見てきた。



ゆえに、この一投こそは必殺必中ッ!
地平線の彼方にだって届くのだと確信しているッ!



――――――――――――――今だ、放て!




「ャャャャャヤヤヤヤヤヤヤアアアアアアアアアアッッッ!!!!!」



幻聴かもしれない。だがどうでもいい。
聞こえてきた声に従い、ゴゴは渾身の物真似を完遂した。


人体の限界を超えた跳躍。
雲すら吹き散らす嵐。
鍛え抜かれた技術。


三位一体となり打ち出された砲弾――魔剣ルシエドは。

風を超え、音を超え、光を超えて。

寸分の狂い無く。


魔神の右腕を斬り落とすことに、成功した。

751 ◆y.yMC4iQWE:2010/10/13(水) 19:55:00 ID:NGITva2Q0
落ちゆくゴゴは懐から感応石を取り出した。
か細い、だがハッキリと高鳴る友の鼓動が伝わってくる。


『どんなときでも……僕は、一人じゃ……ないッ……!』


結果がどうなったかなど目を閉じていてもわかる。
カノンとシャドウの力を借りて、ちょこが支え、ゴゴが送り出したトッシュの剣なのだ。
アシュレーに届かなかったはずが無い。


『いっしょに……戦っているんだッ……!』


友の声に力が戻る。
そうとも、共に戦っているさ。
伝わっただろう? 俺達の想いが。


『そうだろ……ゴゴッ!!』


「当然だ」


ゴゴは腕を組んで悠然と返答する。
近づいてくる大地の上に、両手をぶんぶんと振るちょこの姿が見て取れる。
物真似師は微笑み、そして、

――あいつを助けてやってくれ、友よ。

ルシエドと共に往ったもう一人の大切な仲間へと、願いを込めた。

752 ◆y.yMC4iQWE:2010/10/13(水) 19:57:04 ID:NGITva2Q0
     ◆



「ニンゲン風情が……どこまで図に乗るというのだ……ッ!」

「その人間が、繋ぎ束ねたこの力にッ! お前は今度も、何度でも敗れ去るんだッ!!」


右――清廉な光満ちる果てしなき蒼。
左――欲望を糧に尽きぬ力与える魔剣ルシエド。


剣の双翼を広げるは、立ち上がった蒼き剣の英雄。


「おおおおッ……おおおおおあああああああああああああああぁぁぁぁぁッッッッ!!!!」


滾る想いを双剣に込め、アシュレーは飛翔する。
光輪はいまやドラゴンの推進器にすら匹敵すすらスター。アシュレーの求めに従い光の速度を叩き出す。
その力を最も強く炸裂させられる方法が、アシュレーの脳裏に浮かぶ。


描くは必勝への軌跡――、



「――――アークインパルスだッ!!」



一閃、振り下ろした果てしなき蒼が空を裂く。
二閃、薙ぎ払った魔剣ルシエドが大地を揺らす。


二刀が示す破邪の十字。
閃光の軌跡が交わるところ――すなわちロードブレイザーの存在点ッ!

「ぐ……あ、あああああああッ!!」

生み出した炎剣は一瞬で砕かれた。
翅の守りは紙ほどの抵抗も無く斬り裂かれた。
焔の壁は展開と同時に吹き散らされた。

「まだ……まだだッ、アシュレェェェェッッ!!」

それでもなお、魔神は膝を屈さない。
再生が完了したばかりの腕を突き出して、二度と再生ができないことすら覚悟して焔を凝縮させ、剣の侵攻を食い止めた。

753 ◆y.yMC4iQWE:2010/10/13(水) 20:01:39 ID:NGITva2Q0
ナイトフェンサーでは砕かれる。
ガンブレイズでは気休めにもならない。
バニシングバスターでは押し切られるのが関の山。
ファイナルバースト、ヴァーミリオンディザスター、ネガティブフレア――何もかも足りない!


ならば、

ならばこのロードブレイザーの持てる最大最高最強の火力で以て迎え撃つのみ!


「ファイナル……ッ!」

全身の装甲を開閉――否、内側からこじ開ける。
十、二十――百、二百――千の砲塔。


「……ヴァーミリオン……ッッ!!」

そこに自身の存在すらも揺らぐほどの力を充填する。
『この後』など考えていられない。
今この瞬間こそが、ロードブレイザーという存在の滅亡の危機なのだから。
アシュレーもまた全霊を込めた一撃を放っている。
ならばそれを凌いだときこそが、このロードブレイザーの勝利の瞬間に他ならないッ!


だから、

だからこその、

真っ向勝負ッ!


「…………フレアァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァッッッッッッ!!!!!!!」


一兆度にすら達しようかという、焔と形容するのも理不尽な力の奔流が放たれた。
世界を七度滅ぼすに足る、破壊神の吐息。

迎え撃つアシュレーの二刀が再度の、最期の輝きを見せる。
搾り出すのは剣の燃料である魔力、欲望。そして担い手であるアシュレーの生命そのもの。

手を伸ばせば届く距離で、破邪の双剣と破滅の咆哮が激突する。
ロードブレイザーの渾身の砲撃は、アシュレーの振るう二刀に正面からぶつかってきた。

754 ◆y.yMC4iQWE:2010/10/13(水) 20:03:32 ID:NGITva2Q0

「……ロードブレイザー」

その、万物を消滅せしめる絶対破壊圏の只中で。


「確かにお前の言う通り、たった一人の悪意が世界を滅ぼすことがあるのかもしれない」

剣の英雄はゆっくりと言葉を紡ぐ。


「でも、それを黙って見ているほど、僕らは、世界は弱くはないよ」

優しささえ感じさせる、ひどく穏やかな声音で。


「世界の破滅を止める力はいつだってそこにある。生きている、生きようとする、一つ一つの命の中に……」

焔を斬り裂き続ける果てしなき蒼に、亀裂が走った。


「……きっと、僕らは勝つよ。何度でも……」

魔剣ルシエドが、半ばから折れ飛んだ。


「だから……」

ここまで付き合ってくれた魔剣から手を離し、蒼剣の柄へと両手を添えて。


「だから」

押し込まれた蒼い魔剣は、魔神の核へと到達した。


「だから僕らは、お前を倒して明日へ行くんだ……!」

魔神の核を貫くと同時、果てしなき蒼が砕け散った。
背の光輪が閉じ、蒼き剣の勇者はただの人間へと回帰する。

755 ◆y.yMC4iQWE:2010/10/13(水) 20:04:39 ID:NGITva2Q0
アシュレーは倒れ伏す。
その髪は純白ではない、短く刈り込まれた彼本来の青い髪。

ロードブレイザーは立ち尽くす。
壊死した砲塔がぼろぼろと崩れ落ち、酷使した右腕が地に落ち瞬時に燃え尽きた。


立っているのはロードブレイザー。
すなわちそれは、


「私の……勝ちだ……アシュレー……ッ!」


勝者と敗者の、ありのままの姿だった。


「一歩……届かな……かった、な」

ゆらり、ロードブレイザーが残る左腕に焔をかき集めていく。
それは災厄と呼ばれた時代からすれば見る影も無く弱く儚い焔だが、英雄でも勇者でもない人間を跡形無く葬り去るには十二分の熱量だ。
それを見てもアシュレーは動かない、動けない。
もはや力を全て出し尽くし、一片の余力も残ってはいない。

「これで……」

振り上げた掌を――

「……貴様ぁ……!!」

だが、ロードブレイザーを押し留める影がある。
剣を折られ、胴体半ばから断ち割られた魔狼だ。
主の危機を察し、剣化を解いて喰らいついている。

「悪足掻きを……貴様の主はもう欲望を吐き出すことも無いのだぞッ!」


その、ロードブレイザーの言霊に……反応するように。
アシュレーは震える腕を懸命に伸ばす。

掴み取る……何を?

自分でもわからない。果てしなき蒼は砕かれ、ルシエドもまた傷ついた。
甚大な傷を受けたマディンは遠からず消え去るだろう。
ならばもう、本当に打つ手が無いではないか。

756 ◆y.yMC4iQWE:2010/10/13(水) 20:06:42 ID:NGITva2Q0

――諦めないで――


そのとき、ささやきが聞こえた。
知らない、でも懐かしい声……その声に力をもらって、アシュレーの指先が前進し、触れる。


ゴゴが託し、ルシエドが携えてきた最後の希望。
ティナ・ブランフォードが変化した、幻獣の魔石に。


――あなたの帰りを待っている人がいる――


待っている……僕を?
そうだ、僕は帰らなきゃ……。
子供が待ってる……男の子と女の子の双子が。
大切な人たちから名前をもらった、大切な宝物……。
そして、その子達を抱く、あの……。


「……マリ……ナ……!」


いつだってアシュレーの帰りを待ってくれていた。
優しく微笑んで、こう言ってくれた。


おかえりなさい、と。


そして僕はこう応えるんだ。


ただいま、マリナ。


でも……参ったな。
ここで眠ってしまったら、マリナにただいまと言えなくなってしまう。

それは困る。
世界の危機より、何よりも。
マリナのいるところこそ、アシュレーが求め、守りたいと願った……帰るべき場所なのだから。

757 ◆y.yMC4iQWE:2010/10/13(水) 20:10:12 ID:NGITva2Q0
ゆえに。

「だから……だからッ! こんなところで、死んでいる場合じゃないんだ……!」

立ち上がる。
何度だって立ち上がることができる。

日常に帰りたいというアシュレーの欲望は、決して果てることは無いのだから。


「……つくづく、お前には驚かされる……」


呆れたようなロードブレイザーの声。
もう眼が見えない。
もしかしたら、右腕も落ちているのかもしれない。感覚が無い。

「だが、もはや私に届く剣はない。諦めろ……穏やかに死なせてやることが、私からの手向けなのだ」

魔神が何か言っている。だが理解できない。耳に血が詰まっているからだろう。
ゆっくり……亀の歩みよりも遅く、アシュレーはその方向へと足を投げ出し続ける。
握り締めた魔石が温かな力をくれる。闇の中でも迷わずに歩く標となる。

「もはや言葉も解さんか……そんなお前は、見るに耐えん。燃え尽きるがいい」

攻撃が来る。ささやきに従い、掌中の石を魔神へと掲げた。
優しい光が壁となってアシュレーを守る。
殺到した焔は刹那に霧散し、彼の歩みを一瞬たりとも止められなかった。

「……待て、アシュレー。来るな……そこで止まれッ!」

続けて何度も解放される炎弾は、すべてティナの魔石が放つ光波によって防がれた。
アシュレーは知る由もないが、懐にあるマディンの魔石が娘の魔力に共鳴し、力を高めていた。
衝撃で尻餅をつく。だが、顔を砂で汚し、血を吐いてなお、アシュレーは前進を止めない。
唯一感覚の残る左腕を地に突き立て、殴りつける。
無様だろうと何だろうと構いはしない。こうして立ち上がれるのなら。

「なぜ……なぜ死なない! なぜ立ち上がる!? どこからそんな力が沸き上がってくるというのだ!?」

わかりきったことを聞くな、と唇を歪めた。
言ったのはお前だ。僕らの絆とルカの妄執と、どちらが強いのかって。
お前が今、僕を恐れているのなら……それは、つまり。

「僕らの、勝ちって……いうこと、だろう」

758 ◆y.yMC4iQWE:2010/10/13(水) 20:14:53 ID:NGITva2Q0
そして、全ての攻撃を封じられたロードブレイザーの前に、アシュレーは辿り着いた。
最後に残った唯一つの武器、バヨネットをその手に携えた、ただの人間が。

バヨネットの魔道ユニットを開き、ティナの魔石をセットする。
あの爬虫類(?)、さすがは天才と自称するだけのことはある。
撃墜王謹製のバヨネットには、持ち主がこんな状態になっているのに不調のふの字も見出せない。
今だけは素直に感謝しようと想った。

魔石から供給される魔力が銃身を、アシュレーの体内を駆け巡る。
これなら放てる――あの技を。



「さよなら、ロードブレイザー」

「止めろッ……止めてくれ、アシュレーッ!!」


ロードブレイザーの核、そこには果てしなき蒼が穿った亀裂がある。
今のアシュレーにはその空隙が、仲間達――アティ、ティナ、トッシュ、ゴゴ、ちょこ、そしてシャドウが開いてくれた、未来への扉に見える。
バヨネットの剣先を、僅かな隙間に潜り込ませた。


――フルフラット・アルテマウェポン。


言葉にならない小さな呟き。
弾倉内に魔石から伝えられた究極魔法、アルテマを装填……完了。



ゼロ距離。全弾、発射――炸裂。



爆発は少量――その大半を、ロードブレイザーの内的宇宙へと送り込んのだから。
概念存在であるロードブレイザーも傷つけ得る、たった一つの魔法。
その暴虐は、不死身の魔神をして、その存在意味を根こそぎ塗り潰していく。


「がああああ…………ぎっぎぎぐぐぐ、がが……がああああ、あああああああああ……ッッッ!
 消え……る……私、が……燃えて……アシュレ……滅びると……認めん……英雄……貴様が……アシュレェェッ……!」


やがてロードブレイザーの核が砕け散り、後を追うように形を保っていた身体も灰に――否、炎に変わり融けていく。
バヨネットを引き抜いたアシュレーは、これでようやく終わったのだと、静寂を取り戻した夜空を見上げて。

759 ◆y.yMC4iQWE:2010/10/13(水) 20:17:23 ID:NGITva2Q0



「アシュレー・ウィンチェスタアアアアァァァァッ! 貴様だけはぁ――――――――――――――ッ!!!」


その、彼の安堵した隙を、消え逝く魔神は見逃さなかった。
炎と化していく腕を懸命に伸ばし、突き出された鋭利な爪は――アシュレーの心臓を、真っ直ぐに貫いた。


直後、ロードブレイザーが、完全に……消滅する。

それを見送ったアシュレーはゆっくりと砂漠に腰を下ろし、仰向けになって星を見る。
不思議と痛みは無い。いや――心臓を砕かれる前に、既に死んでいたのだろう。
だからひどく穏やかな気持ちで、アシュレーはその結末を受け入れていた。


「ああ……きれいだ、な……」


感応石が何事かがなりたてているが、何を言っているのかがもう理解できない。
そして思い出したのは、かつてこの感応石をプレゼントしたときのことだ。
あのときもそう、笑って彼女は――。


「……ごめん、マリナ……もう、ただいまって……言え……な……」


星へ向かって伸ばした指は、何を掴むこともない。
魔神を討ち果たした人間の命の灯は、この瞬間に、消え失せた。




【アシュレー・ウィンチェスター@WILD ARMS 2nd IGNITION 死亡】
【残り17人】

760 ◆y.yMC4iQWE:2010/10/13(水) 20:18:43 ID:NGITva2Q0


その決着が着いた頃。

ゴゴもまた、行動を開始していた。
トッシュと別れ、力を出し尽くし立っていることすら困難になったちょこを背負い、ゆっくりと砂漠を進む。

「おにーさん、大丈夫かなぁ……?」

「心配はいらん。あいつは勝つさ」

正直に言えば、ゴゴも疲労の限界にあった。
加えてアシュレーの無事を確かめることばかり考えていたため、ちょこの物真似をすることすら無意識のうちに忘れてしまっていた。

「うん!ちょこ、おじさんを信じるの!」

元気よくちょこは言うが、直後盛大に響いた空腹を示す腹の音に小さく赤面した。
ちょこを背負ったまま、ゴゴは片手で器用にバッグを探り目当てのものを取り出し渡す。

「これを食べるといい。アシュレーが作ったものだ」

「わぁ、おいしそうなの!」

渡された焼きそばパンを、ちょこは猛然と胃に収めていく。
ゴゴもまた一つ、かじる。
優しい味が広がる。疲れた身体に少しだけ力が戻ってきた。
これを前に食べたときは、隣にトッシュがいた。今はもういない。
それを寂しいとは思う。だが今この瞬間は、背中にいるちょこの軽い重さが忘れさせてくれる。

「う〜、もっと食べたいの……」

ちょこは三つの焼きそばパンをぺろりと平らげた。
材料さえあればゴゴが作ってやることもできる。アシュレーの調理の物真似をすればいい。

(しかし……それは何か、違う気がする)

この焼きそばパンはアシュレーが作ったからこの温かさがあるのだろう。
同じ材料、同じ作り方、同じ味であっても、決してアシュレーが作るものと同一ではないのだ。

「また、あいつに作ってもらえばいい」

「うん! ちょこ、おてつだいするの!」

ちょこは微塵もアシュレーの死を疑ってなどいない。
ずきり、と心が痛むのを感じる。



懐にある感応石は、少し前から何の反応も示さなくなっていた。



ゴゴはそれが何を意味するのかを努めて考えず、ひたすらに足を投げ出し続ける。
夜の砂漠に、砂を踏む音と少女の賑やかな声だけが響いていた。

761 ◆y.yMC4iQWE:2010/10/13(水) 20:19:32 ID:NGITva2Q0

【G-3 砂漠 一日目 深夜】
【ゴゴ@ファイナルファンタジー6】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)
[装備]:花の首飾り、壊れた誓いの剣@サモンナイト3、ジャンプシューズ@WA2
[道具]:基本支給品一式×3、点名牙双@幻想水滸伝Ⅱ、解体された首輪(感応石)、閃光の戦槍@サモンナイト3、天罰の杖@DQ4
[思考]
基本:数々の出会いと別れの中で、物真似をし尽くす。
1:ちょことともにアシュレーを迎えにいく
2:フィガロ城でA-6村に行き、座礁船へ
3:テレパスタワーに類する施設の探索と破壊
4:セッツァーに会い、問い詰める
5:人や物を探索したい
[参戦時期]:本編クリア後
[備考]
※本編クリア後からしばらく、ファルコン号の副船長をしていました。
※基本的には、『その場にいない人物』の真似はしません。
※セッツァーが自分と同じ時間軸から参戦していると思っています。


【ちょこ@アークザラッドⅡ】
[状態]:疲労(極)
[装備]:なし
[道具]:海水浴セット、基本支給品一式
[思考]
基本:みんなみんなおうちに帰れるのが一番なの
1:おとーさんになるおにーさん家に帰してあげたい
2:おにーさん、助けてあげたいの
3:『しんこんりょこー』の途中なのー! 色々なところに行きたいの!
4:なんか夢を見た気がするのー
[備考]
※参戦時期は本編終了後
※殺し合いのルールを理解しました。トカから名簿、死者、禁止エリアを把握しました。
※アナスタシアに道具を入れ替えられました。生き残るのに適したもの以外です。
 ただ、あくまでも、『一般に役立つもの』を取られたわけでは無いので、一概にハズレばかり掴まされたとは限りません。

※トッシュの遺品はゴゴが回収しました。
※ルカの所持品は全て焼失しました
※トカの所持品はスカイアーマーの墜落、爆散に巻き込まれて灰になりました
※F-1〜J-1、及びF-2〜J-2、加えてE-3〜A-3の施設、大地は焼失し、海で埋まってます
 海はロードブレイザーがアシュレーと切り離された時点で鎮火しました
※F-3から東のラインの地表より上部全てが焼き払われました。

762 ◆Rd1trDrhhU:2010/11/10(水) 22:34:46 ID:uvoOcX2w0
本スレは規制されているのでこちらに投下します。

763アキラ、『光』を睨む ◆Rd1trDrhhU:2010/11/10(水) 22:35:46 ID:uvoOcX2w0
 ふらつきながらも立ち上がった少年。
 それに気づいたジョウイが彼に駆け寄り、倒れそうになったその肩を慌てて支える。
 疲弊したサイキッカーを労わって……というのも、ないわけではない。
 だが、ジョウイのこの行動は、やはり打算に基づいたものだ。
 アキラが今の今までユーリルに対して行っていたマインド・リーディングの結果を、彼は一刻も早く知りたかったのだ。

 勇者だったはずの少年に何が起こったのか。
 なぜ彼はアナスタシアを殺そうとしていたのか。
 彼女はいかなる方法で、英雄をここまで破壊したのか。
 それらのことは、同じく英雄にならんとしているジョウイにとっては知らなくてはならない真実だ。
 だから彼は、アキラがユーリルの心の中で入手した情報を、彼が気絶してしまわないうちに聞き出そうとしていた。

 しかし、アキラはジョウイに寄りかかることなく。
 差し出されたその手を振りほどいて、歩き出す。
 おぼつかない足取りで、静かに眠るアナスタアシアへと歩み寄った。

「アキラ……?」
「何か、書く、もん……ある……か?」
 アキラの突然の要求に、ジョウイは怪訝な顔を見せるほかない。
 同じく不思議そうな表情をしたイスラが、参加者全員に支給されていた筆記具を投げてよこす。
 心身ともに限界を迎えようとしていたアキラは、受けとり損なって地面に転がってしまった筆記具をゆっくりと拾った。
 そのまま眠る少女のもとへフラフラと進み、その頭の傍にかがみ込む。
 彼女の整った顔にかかっている艶やかな青い髪をかき上げると、その顔に筆記具を走らせた。
 震える手で何事かを書き込んだ後……。

「……へっ…………。ざまぁ、み、や……が、れ……」
 アキラは息を切らしながら一度だけ満足げに笑い。
 直後、意識を失って、静かに倒れた。
 何事かと駆け寄ったジョウイとイスラが、相も変わらず寝息を立てているアナスタシアの顔を覗き込む。

「なんだ……これは……?」
 ジョウイがわけが分からないと言った風で、片眉を上げる。
 それは、呪いなのか。
 あるいは何かの紋章なのであろうか。
 それとも、自分たちの知らない、新たな概念か。
 二人の少年は、少女に印された字がもつ意味を考えた。

 だが、彼らが真実にたどり着くことは決してありえない。
 まさか、少年たちは思いつきもしなかっただろう。
 実はその文字の正体は、アキラがいた世界で流行っていた……ただの……。

764アキラ、『光』を睨む ◆Rd1trDrhhU:2010/11/10(水) 22:37:32 ID:uvoOcX2w0

「……僕が知るわけないだろ?」
 イスラが観念したように両手を掲げる。
 気絶した少女の額には、汚い筆跡で『肉』の一文字が刻まれていた。


【C-7橋の近く 一日目 真夜中】

【イスラ・レヴィノス@サモンナイト3】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(中)
[装備]:魔界の剣@DQ4、ミラクルシューズ@FF6
[道具]:確認済み支給品×0〜1、基本支給品×2、ドーリーショット@アークザラッドⅡ、ビジュの首輪
[思考]
基本:感情が整理できない。自分と大きく異なる存在であるヘクトルと行動し、自分の感情の正体を探る。
1:ピサロ、ユーリルを魔剣が来るまで抑える
2:次にセッツァーに出会ったときは警戒。
[参戦時期]:16話死亡直後(病魔の呪いから解かれている)
[備考]:高原、クロノ、マッシュ、ユーリル、ヘクトル、ブラッドの仲間と要注意人物を把握済み。


【ジョウイ・ブライト@幻想水滸伝Ⅱ】
[状態]:疲労(小)
[装備]:キラーピアス@DQ4
[道具]:回転のこぎり@FF6、確認済み支給品×0〜1、基本支給品
[思考]
基本:更なる力を得て理想の国を作るため、他者を利用し同士討ちをさせ優勝を狙う。(突出した強者の打倒優先)
1:生き残るために利用できそうな者を見定めつつ立ち回る。可能ならば今のうちにピサロ、魔王を潰しておきたい。
2:座礁船に行く。
3:利用できそうな者がいれば共に行動。どんな相手からでも情報は得たい。
[参戦時期]:獣の紋章戦後、始まりの場所で2主人公を待っているとき
[備考]:ルッカ、リルカと参加している同作品メンバーの情報を得ました。WA2側のことは詳しく聞きました。
※紋章無しの魔法等自分の常識外のことに警戒しています。
※ピエロ(ケフカ)とピサロ、ルカ、魔王を特に警戒。
※制限の為か、二人が直接戦わなかったからか、輝く盾の紋章と黒き刃の紋章は始まりの紋章に戻っていません。
 それぞれの力としては使用可能。また、紋章に命を削られることはなくなりました。
 紋章部位 頭:バランス 右:刃 左:盾

【アナスタシア・ルン・ヴァレリア@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:気絶、疲労(大)、胸部に重度刺傷(傷口は塞がっている)、中度失血、自己嫌悪、キン肉マン
[装備]:絶望の鎌@クロノ・トリガー
[道具]:基本支給品、賢者の石@DQ4
[思考]
基本:生きたい。そのうち殺し合いに乗るつもり。ちょこを『力』として利用する。
0:気絶中
1:……生きるって、何?
2:あらゆる手段を使って今の状況から生き残る。
3:施設を見て回る。
4:ちょこにまた会って守ってもらいたい。
[参戦時期]:ED後
[備考]:名簿を未確認なまま解読不能までに燃やしました。
※ちょこの支給品と自分の支給品から、『負けない、生き残るのに適したもの』を選別しました。
 例えば、防具、回復アイテム、逃走手段などです。
 尚、黄色いリボンについては水着セットが一緒に入っていたため、ただのリボンだと誤解していました。
※アシュレーも参加してるのではないかと疑っています。

765アキラ、『光』を睨む ◆Rd1trDrhhU:2010/11/10(水) 22:39:04 ID:uvoOcX2w0




◆     ◆     ◆


「こりゃまた……」
 アキラがユーリルの心象世界に降り立った瞬間、彼の足裏にはジクジクと鈍い痛みが走る。
 眉をしかめながら足元を見ると、立つべき地面がすべてイバラで作られていたではないか。

「勇者の道、か」
 その声に、思わずため息が混ざる。
 天を仰げば暗雲が支配する空。
 どこか遠くからは雷鳴が響く。
 遥か彼方には微かに光るぼやけた希望が。
 そして、足元には……イバラの道。
 この世界は、ユーリルの歩んできた『勇者』という生き様をそっくりそのまま反映しているのだろう。
 すべてを犠牲にして戦ってきた、その人生の在り方を。

「そりゃあ投げ出したくもなっちまうよな」
 この空間にたどり着く前、つまりユーリルの心にダイブした瞬間のこと。
 アキラは、ある映像を覗き見てしまう。
 それは、勇者だった少年の脳内で何度も何度も再生されてきた忌まわしい記憶だった。

 うす暗い部屋で、妖艶に微笑むアナスタシア。
 彼女のひざの上では、赤毛の少女がスヤスヤと眠っていた。
 緩やかな曲線を描く唇が穏やかに語りだす、ファルガイアの神話。
 その締めくくりに勇者に投げかけられた疑問。
 そして生まれた、殺意。
 ユーリルに降りかかった事の顛末を、アキラは断片的にだが知ることとなった。

「あの女の言いたいことは分かったよ」
 サイキッカーは、トゲだらけの道の途中でうずくまる少年に語りかけた。
 災難に見舞われた彼への、多少なりともの同情を感じながら。

「…………」
 このいびつな世界の持ち主が、ゆっくりと顔をあげた。
 焦点のあわないその瞳が、訪問者の少年を音もなく拒絶する。
 しかし、アキラは臆することもなく言葉を続けた。

「確かに、お前はイケニエだ」
 まるでトドメを刺すかのように冷たく、少年は聖女に同意する。
 口元に含ませた笑みすらも、聖女のソレの完璧な再現だった。
 弱りきっていたユーリルの目が吊り上がり、アキラに対する怒りを表す。
 ガラスの割れるような音と共に、何度目かの遠雷が落ちた。

「やりたくもねぇ勇者なんかやらされてよ。
 大事なモンも全部犠牲にして……。
 他のやつらといやぁ、お前に縋りつくだけだ」
「だったら……ッ!」
 かつてアナスタシアに突きつけられた地獄。
 その再来に耐え切れなくなったユーリルが、怒りをこめて口を開く。
 唇端から滴りおちた血液
が、大地のトゲをわずかに赤黒く染めた。

766アキラ、『光』を睨む ◆Rd1trDrhhU:2010/11/10(水) 22:39:51 ID:uvoOcX2w0

「だったらどうすればよかったんだよッ!
 英雄が生贄なら、あの女の言うとおりなら……」
「ふざけんじゃねぇよ」
 堰を切ってあふれ出した感情のままに、ユーリルが矢継ぎ早に言葉を連ねる。
 アキラは悲鳴のようなソレを遮って、「はッ」と馬鹿にしたように笑った。

 憤怒のボルテージをさらに引き上げ、勇者は目を血走らせる。
 しかし、彼を見下したアキラもまた、静かな怒りの火を心に灯していた。

「俺は『お前はイケニエだ』とは言ったさ。
 だがな、『英雄はイケニエだ』とは一言も言ってねーぜ」
 アキラの目がギラギラと鋭く尖る。
 直後、彼を中心として、その足元に炎の渦が巻き起こった。
 少年を守るように生まれ出でた火炎は、大地に広がる毒々しい植物を焼き払い、消し炭と化して空へと舞い上げる。
 そのまますべてを焼き殺すと思われたが、炎はものの数秒で鎮火した。
 結果として、アキラの立っている付近のイバラだけが燃え尽きる。
 彼は、直径一メートルほどの焼け野原に立っていた。

「……?」
「わかんねーか?」
 ユーリルには、アキラが何をしたのかも、何を言っているのすらも理解できない。
 その頭上を巡り続ける疑問符をまったく解決できないでいる。
 そんな彼に、サイキッカーは躊躇いもなく決定打を放った。

「お前は英雄じゃねぇっつったんだよ」
「…………ッ!」
 直球で放たれた暴言に、ユーリルの怒髪が天を衝き。
 言葉にならない咆哮が、巨大な稲妻をアキラに落とす。
 しかし、落雷は少年を避けるように捻じ曲がり、イバラの一部を黒く焦がすだけ。
 サイキッカーは涼しい顔で。
 それでいて、その心は相も変わらず燃え盛っていた。

「ついでに言やぁ、あの女が言ってた『剣の聖女』とかいうのもな」
「なッ…………?」
 何もかもを否定するような。
 そのアキラの口ぶりに、ユーリルは呆気にとられる。
 胸中を支配していたはずの憎悪すらも置き去りにして。

「ヒーローってのはな……そんなんじゃねえ」
 アキラが遠い空で微かに輝く光を睨む。
 思い返すのは、小さなころに見た特撮ヒーローのこと。
 孤児院で子供たちと見た、名前も忘れたプロレスラーのこと。
 湖に眠った機械仕掛けの女のこと。
 そして父親を殺した男のこと。

「あいつらはな、ブッ壊れてんだよ……」
 自身が憧れたものたちの生き様を脳裏に甦らせ、アキラはかつての高揚感を再燃せしめる。
 彼らの暴力的ともとれる異常な信念に、少年の目は曇天を照らすほどに輝いた。

「使命も犠牲も人類も関係ない。
 やつらはただテメーが救いたいモンを救えりゃ満足なのさ。
 他のヤツらの態度を見て、身勝手だなんだと抜かしてるお前らは……ヒーローじゃねぇッ!
 それは、ただのイケニエだ……!」
「…………」
 アキラが見てきた英雄は、自分の命を顧みようとはしなかった。
 他人の顔色を伺うものなど、ただの一人もいなかった。
 感謝の一つも求めようとはしなかった。
 彼らにとって、人を助けるということは『趣味』と呼べるレベルのものでしかないのかも知れない。

767アキラ、『光』を睨む ◆Rd1trDrhhU:2010/11/10(水) 22:40:47 ID:uvoOcX2w0

「そんなになるほど辛かったなら、勇者なんてやめちまえばよかったんだ」
「じゃあ……」
 我に返ったユーリルが、その心に怒りを呼び戻して立ち上がる。
 アキラのあまりの理不尽な理屈に、意義を申し立てるために。
 その姿は、勇者とは思えないほど頼りなく。
 衰弱しきった人間とは到底思えないほど、凛々しかった。

「じゃあ、世界を見捨てて逃げ出せばよかったのかよッ!?」
 喉を裂いてまで発したその叫びは、目の前の少年に向けてだけ発せられたものではない。
 彼を勇者に祭り上げたものたち。
 彼に頼るばかりで、何もしなかった人々。
 そして彼を勇者から引きずりおろしたアナスタシア。
 そのすべてに対して、彼の悲鳴は響いていた。

「助けたい人だけ助けて、残りの人たちの悲鳴は聞き流して……それでよかったのかッ!?」
「それでいいじゃねぇか。何がいけないんだ?」
 アキラが当然だと言わんばかりに胸を張る。
 彼の自信はその声にもハッキリと現れていた。
 ユーリルの鼓膜から伝わった振動が、全身を戦慄かせる。

「なッ……! じゃあ、救われない人たちはどうする?
 世界はどうなるッ?!」
「知るかよ」
 陰鬱としたユーリルの世界を切り裂くように。
 少年は正論をキッパリと切って捨てた。

「助けたくないなら仕方ねぇだろ。ヒーローのいねえ世界は滅ぶしかないんじゃねぇの?」
 アキラの言う『ぶっ壊れた者』。
 それは、見返りも感謝も求めずに、ただひたすらに救うもの。
 身勝手な弱者に怒りを覚えることもなく。孤独な戦場へも振り返らずに歩みだす。
 他の何を捨て去っても、大切なものだけは取りこぼさないもの。
 それを『ヒーロー』と、彼は呼ぶ。

 ブリキ大王は人類を、世界を救った。
 しかし、それは『ついで』だ。
 少年を、信念を、ひとりの女を、その女が愛した子供たちを。
 ある男が、それらを救った、その副産物として……人知れず世界は救われたのだ。

「そんな……そんなの……」
 ユーリルの体が震える。
 それは、アキラに気圧されたからではない。
 彼の世界が揺れる。
 サイキッカーの提示した可能性を殺すために。

「じゃあ聞くが、お前は『誰の』英雄になりたかったんだよ。
 世界の端っこにいる人間の生き死にまで、ぜーんぶテメーの力でどうにかするつもりだったのか?」
「…………」
 アキラが見てきた英雄たちにとって、「世界を救う」ことは手段であって目的ではない。
 自分が守りたい『誰か』にとっての英雄になることができれば、それでいいのだ。
 もちろん、その大切な『誰か』を救うために必要ならば、彼らは喜んで世界を救うだろう。
 しかし、その者たちにとって大事なことは、あくまでも『守る』こと。
 だからイケニエも糞もない。
 彼らは自らの欲望のまま、好き勝手に救っているのだから。
 自分のやりたいように、生きて、死んでいるのだ。

768アキラ、『光』を睨む ◆Rd1trDrhhU:2010/11/10(水) 22:41:26 ID:uvoOcX2w0

「俺は、松の代わりに……あいつが守ったやつらのヒーローになりてぇ。
 そのためにオディオをぶっ飛ばして、自分の世界に返らなくちゃならねぇんだ」
 アキラが言う『松』という人物のことを、ユーリルは知らない。
 その代わりに、彼はある一人の人物の姿を強く思い出していた。
 それは、この殺し合いで、一番最初に出会った少年。
 無口ながら、熱い心を胸に秘めた男。

 彼は、普通の人間だった。
 勇者の血統も、悲劇の過去も一切持ち合わせてはいない。
 それなのに、彼は世界を救ってみせた。
 他の誰に導かれるでもなく。
 たったひとつ……自分の意思で。

「もう一度聞くぞ、お前は誰のヒーローなんだ?」
 ユーリルは、ぐうの音も出せない。
 アキラの質問に対する答えが見当たらない。
 彼は、誰の英雄でもなかったから。
 ただ、提示された使命に導かれるままに世界を救った。
 本当に大切な人は、勇者になる前に既に殺されていて。
 その人たちとの思い出も、今となっては仮初で。
 彼には、誰もいなかった。

「お前がイケニエになるのはお前の自由だ。勝手にしやがれ。
 だがな、俺の邪魔をすんなら」
 アキラが、用は済んだと言わんばかりに踵を返す。
 来た道をテクテクと歩き出した。
 ユーリルは、その背中をただ呆然と見つめている。

「あの背中を否定すんなら」
 数歩進んでから、ふと立ち止まったアキラ。
 振り返ることなく、立ちすくんでいる生贄に呼びかける。

「お前を叩きのめしてでも、俺は前へ進んでやる」
 静かに放たれた宣言は、ユーリルに対する警告のようでもあり。
 まるで、自分自身への誓いの言葉のようでもあった。
 一度だけ大きく深呼吸してから、アキラはまた再び歩き出す。

「なんなんだよ、アナスタシアもお前も……」
 去り行く少年に向けて、ユーリルが吐き出した言葉は反論でもなく。
 どうしようもない、やり場のない怒りは、表しきれるものではなく。
 クロノに対して感じてしまった確かな憧れは、誤魔化しようもなく。

「なんなんだよォッ!」
 ただ、無性に気に食わなかった。
 アキラのことが不愉快で仕方がない。
 彼に何一つ反論できなかったことが、とてつもなく悔しかった。

 こんなとき、クロノならどうするのだろうか。
 彼は誰の英雄だったのだろうか。
 ユーリルは、喉をズタズタに引き裂きながら、そんなことが気になっていた。

769アキラ、『光』を睨む ◆Rd1trDrhhU:2010/11/10(水) 22:41:56 ID:uvoOcX2w0


【C-7橋の近く 一日目 真夜中】

【ユーリル(DQ4男勇者)@ドラゴンクエストIV】
[状態]:気絶、疲労(大)、ダメージ(中)、精神疲労(極大)、アナスタシアへの強い憎悪、押し寄せる深い悲しみ
[装備]:最強バンテージ@LAL、天使の羽@FF6、天空の剣(開放)@DQ4、湿った鯛焼き@LAL
[道具]:基本支給品×2(ランタンはひとつ)
[思考]
基本:アナスタシアが憎い
0:気絶中
1:アナスタシアを殺す。邪魔する人(ピサロ、魔王は優先順位上)も殺す。
2:アキラが気に食わない。
3:クロノならどうする……?
[参戦時期]:六章終了後、エンディングでマーニャと別れ一人村に帰ろうとしていたところ
[備考]:自分とクロノの仲間、要注意人物、世界を把握。
※オディオは何らかの時を超える力を持っている。
 その力と世界樹の葉を組み合わせての死者蘇生が可能。
 以上二つを考えました。
※アナスタシアへの憎悪をきっかけにちょことの戦闘、会話で抑えていた感情や人間らしさが止めどなく溢れています。
 制御する術を忘れて久しい感情に飲み込まれ引っ張りまわされています。
※ルーラは一度行った施設へのみ跳ぶことができます。
 ただし制限で瞬間移動というわけでなくいくらか到着までに時間がかかります。




◆     ◆     ◆


『エイユウッテナニ?』
 アナスタシアが、うるさい。
 ユーリルの心理世界からの帰り道にて。アキラはうんざりしていた。
 彼の表層心理は、この少女の声に支配されている。
 この空間では、同じ疑問が延々と鳴り響いていたのだ。

「俺が知るかっての」
 アキラが小さく毒づく。
 ユーリルには、好き勝手なことを言ってきた。
 だが、本当のところは、彼自身にもソレが正しいのかどうかは分からない。
 アキラだって、まだ誰の英雄にもなれてはいないのだから。

 無法松にも、アイシャにも、ミネアにも守られてしまった。
 ただ英雄の背中に隠れるばかりで、彼自身は誰のヒーローにもなれないでいる。

 ユーリルには、「立ちはだかるなら叩きのめす」などと啖呵を切ったものの……。
 ……彼の実力では、あの勇者には到底敵うはずもない。

 つまるところ、少年には課題が山積していたのだった。

「松……アンタいったい、どこで何をしてんだ?」
 しかし、それでも彼には希望があった。
 この島で、生きているだろう男であり、アキラが今度こそ救いたい人物だ。
 ユーリルと対話をしていく中で、彼はある決心をした。
 今度は自分が、無法松の英雄になろうと。
 そして、自分の世界に戻って、彼がしたように子供たちを守ると。

 それが、今の彼の支えであり。
 今まで散々守られ続けた少年が掲げる目標だ。
 その思いを胸に、彼はひたすら進む。

770アキラ、『光』を睨む ◆Rd1trDrhhU:2010/11/10(水) 22:42:28 ID:uvoOcX2w0

 決心した矢先に、無法松が再び殺されてしまうことになるなどとは……彼は考えもしなかった。

『ドウイウソンザイナノ?』
「うるせーっての」
 文句を言っても、不愉快な声は止まず。
 ただイライラだけが募っていく。
 もともと、アナスタシアのことは好きではなかった。
 そしてユーリルの心にアクセスしたせいで、彼女に対する感情はすっかり嫌悪感へと変じてしまう。

 目覚めたら、倒れてしまう前に、なんとかしてアナスタシアに一泡吹かせてやろう。
 そう誓って、アキラはユーリルの心を後にした。


【C-7橋の近く 一日目 真夜中】

【アキラ@LIVE A LIVE】
[状態]:精神力消費(大)、疲労(大)、ダメージ(中)
[装備]:パワーマフラー@クロノ・トリガー、激怒の腕輪@クロノ・トリガー、デーモンスピア@DQ4
[道具]:清酒・龍殺しの空き瓶@サモンナイト3、ドッペル君@クロノ・トリガー、基本支給品×3
[思考]
基本:オディオを倒して元の世界に帰る。
1:気絶中
2:無法松の英雄になる。
3:レイ・クウゴ、アイシャ・ベルナデット(カノン)、ミネアの仇を取る。
4:どうにかして首輪を解除する。
[参戦時期]:最終編(心のダンジョン攻略済み、ストレイボウの顔を知っている。魔王山に挑む前、オディオとの面識無し)
[備考]:超能力の制限に気付きました。テレポートの使用も最後の手段として考えています。
※カノンの名をアイシャ・ベルナデット、リンの名をリンディスだと思っています。
※名簿の内容に疑問を持っています。
※無法松死亡よりも前です。
よって松のメッセージが届くとすれば、この後になります。

771 ◆Rd1trDrhhU:2010/11/10(水) 22:43:13 ID:uvoOcX2w0
以上、投下終了です。
代理投下してくださってる方、ありがとうございます。

772第四回放送 ◆6XQgLQ9rNg:2010/12/11(土) 12:34:37 ID:cPsyFRUk0
 地上で繰り広げられた戦闘の終焉を待っていたかのように、分厚く濃厚だった雨雲が晴れていく。
 こびりついて消えない汚れに満ちた大地を押し流すかのような豪雨の気配が、天空には欠片も存在しなくなっていた。
 代わりに空を支配しているのは、青白い満月と数え切れない星の瞬きだ。
 夜天の王と兵の群れが見下ろす世界――たった一つの、箱庭めいた島には、夜に相応しい静けさが落ちている。
 まるで、好き勝手に喚き散らした後に、泣き疲れて寝息を立てる子どものようだった。
 そう、少し前まで。
 ほんの少し前まで、その島には狂乱めいた騒乱で溢れかえっていた。
 無数の感情がせめぎ合い意志がぶつかり合い想いが交錯した。
 その果てに、離別があり喪失があり過ぎた。
 希望や喜びや活力を覆い隠し押し潰してしまいそうなほどに、絶望や悲嘆や辛苦が多すぎた。
 そのせいだろう。
 世界が、疲れ切って眠っているかのように見えるのは。
 世界が、全身に負った傷を癒そうとしているかのように感じられるのは。
 世界が、ささくれ立った気持ちを整理したいと望んでいるかのように思えるのは。
 月が、傷ついた世界を慈しむように、たおやかな光を投げかけている。
 星たちが、疲弊した世界を慰めるように、絶えず瞬きを繰り返している。

 だが。
 この箱庭に人々を集めた王は、そのような平穏は与えない。
 憎しみに塗れた魔王が、そのような慈悲を容認するはずがない。
 まだ騒乱に参加すべき者がいるのだから。 
 
「――時間だ」

 大気が震え、無慈悲な声が響く。 
 
「もはや前口上などいるまい。しかと耳に焼き付けよ」

 粗野でもなく荒々しくもなく高圧的でもなく、乱暴さとはかけ離れた声音だ。
 それでも、その声は苛烈なほどの存在感と、竦み上がる様な威圧感に満ちていた。 
 
「まずは禁止エリアを発表する。
 1:00よりA-04、H-07、
 3:00よりC-08、E-10、 
 5:00よりE-04、I-03、
 以上だ」
 
 まるで声色そのものに力が宿っているようだった。
 それも月明かりを陰らせ星の瞬きを止めてしまいそうなほどの、人智を超えた力が、だ。
 そんな空恐ろしい声は、聴き手に現実を叩きつけるべく、続ける。
 
「では、死者の名を告げよう。
 リンディス
 シャドウ
 ブラッド・エヴァンス
 ロザリー
 トッシュ・ヴァイア・モンジ
 トカ
 ルカ・ブライト
 無法松
 ――以上、八名が朽ち果てた者たちだ」
 
 夜の暗さが一層深く濃密なったような錯覚に陥る。
 響き渡る声以外に、物音は聞こえない。
 その様はもはや穏やかさではなく、生命が滅び死に絶えたが故の静寂めいていた。
 だとしても、声の主は確信している。
 耳を傾けている者はいる、と。
 死体の山の上に佇み血液の河を掻き分ける者たちが確かに生きている、と。

773第四回放送 ◆6XQgLQ9rNg:2010/12/11(土) 12:36:44 ID:cPsyFRUk0
「たった八名だと落胆するだろうか?
 八名もの数がと戦慄くだろうか?
 どちらにせよ、早いものだ。
 僅か二十四時間で、実に六割強の命が死神に魅入られたのだからな。
 だが、手を下したのは死神などではないのは理解しているだろう。
 諸君らが敵だと断じた者が、諸君らが仲間だと信じた者たちが。
 そして――諸君らこそが。
 命を奪い尽くしたのだ。
 時に大義名分を振りかざし、時に信念を盾として、時に欲望に忠実に。
 他者を蹴落とし踏み躙ったのだ。
 果たして諸君らには、他者を斬り捨ててまで立っている価値があるのか?
 果たして諸君らには、否定しつくした末に生き延びるだけの意味があるのか?
 もしあると言うのならば――」
 
 問いかける。
 答えなど返ってはこないと分かっていながら、それでも、感情のままに声は告げる。
 
「――全てを奪い尽くした上で、私の元に来るがいいッ!」

 ◆◆
 
 本当に早いものだと、オディオは思う。
 豪奢というよりも禍々しい玉座に背を預け、目を閉じる。
 視界を閉ざし想起するのは、二十四時間前から始まった殺戮劇。
 自らが催した殺戮劇は、予想を上回る速度で進行している。
 それはまるで、人間の業の深さや愚かさを体現しているかのように感じられた。
 参加者の中には、人間ではない者も数名混じっている。
 彼らはどう思っているのだろう。 
 そして人間は、彼らをどう思っているのだろう。
 同種族ですら争う人間が、異種族と手を取り合えるとは思えない。
 その証拠と言うように。
 夢にメッセージを込めたエルフの身は、彼女自身が愛する者と信頼する者によって灼かれたのだ。
 
 しかし、その一方で。
 絆を築き希望を抱き、巨悪を打ち破った者もいる。
 人間でありながら――否、人間であるからこそ、人間を強く憎悪した狂皇子も。
 負の感情を糧とし世界を紅に染め上げた災厄も。
 たったひとりの人間が相手では、滅び去りはしなかった。
 それは、人間が持つ力を、否定しきれないケースに他ならなかった。 

「それでも……」

 オディオの奥歯が、強く噛み締められる。
 ルカ・ブライトやロードブレイザーの死滅に口惜しさを覚えているわけではない。
 強い絆と希望の力で貴種守護獣を呼び起こし、再生したアシュレー・ウィンチェスターに忌々しさを覚えているわけではない。
 
「それでも、人間は決して愚かさを捨てられんのだ……ッ!」

 呻くような呟きに混じる、羨望めいた感情を拾う者は、誰一人存在しなかった。
 芽吹いたモノを振り払うように、オディオは瞼を開く。

774第四回放送 ◆6XQgLQ9rNg:2010/12/11(土) 12:37:18 ID:cPsyFRUk0
 間もなく、この城に訪問者がやってくる。
 それが破壊と殺戮と蹂躙の果てに勝ち抜いた、たった一人の客人なのか。
 抗いの意志を絆で繋ぎ希望を抱いた、反逆者たちなのか。
 あるいは、皆が皆手を取り合えないまま、入り乱れて雪崩れ込んでくるか。
 
 どのように転ぶか不明な以上、準備が必要だ。
 たった一人の優勝者が現れなかった場合の準備――攻め込んでくる者たちを迎撃する準備が、だ。
 オディオは、ゆっくりと手を振りかざすと、青白い炎が音を立てて灯る。
 闇に揺らめく不気味な輝きに、美しい顔をした女たちが照らされる。
 ただしどれも、異形と呼んで差し障りのない姿だ。
 その数は、四。 

 一つは、四本の腕を持つ桃色の髪をした女。
 二本の腕の先端は人間のものと同じ。されど、残り二本の腕の先には無骨な岩石がぶら下がっている。
 岩石と人間の合成生物――クラウストロフォビア。

 一つは、漆黒の球体から上半身を生やした女。
 背から伸びる一対の翼で宙に浮くその姿は、あらゆる光を呑み込みそうなほどに気味が悪い。
 暗黒の分子で構成された生物――スコトフォビア。
 
 一つは、緑色の翼と尻尾を生やした女。
 上半身は人のものであるが、下半身は爬虫類めいた翼と尻尾で構成されている。
 器より出でし魔法生物――アクロフォビア。
 
 一つは、透き通る液体を纏った女。
 艶めかしい裸身に液体を絡ませるその姿は最も人間に近い。しかし、液体は絶えず女に絡みつき、同一の存在であると主張している。
 液体から作られた合成生物――フェミノフォビア。

 彼女らは、かつて。
 かつてオディオが、『オディオ』でなかった頃に、一人で戦った人形たち。
 その悪趣味な人形に、オディオは今も強く激しい嫌悪感を抱いている。
 こうして見るだけでも吐気を催すほどに、だ。 
 それでもオディオが彼女らを蘇らせたのは、手駒としてはそれなりに使えると踏んだためだ。
 人形は裏切らない。
 そう、決して、裏切らない。
 
「戦力を用意しろ。数と質は――」

 無表情で黙したままの人形たちに、オディオは指示を出す。
 先ほどの呟きを忘れるように、指示を出す――。

775 ◆6XQgLQ9rNg:2010/12/12(日) 22:05:12 ID:IYNoqvTc0
規制に巻き込まれてしまい本スレに書き込めませんので、こちらに第四回放送を投下いたします。
どなたか代理投下をして頂けますと幸いです。

776 ◆6XQgLQ9rNg:2010/12/12(日) 22:06:07 ID:IYNoqvTc0
 地上で繰り広げられた戦闘の終焉を待っていたかのように、分厚く濃厚だった雨雲が晴れていく。
 こびりついて消えない汚れに満ちた大地を押し流すかのような豪雨の気配が、天空には欠片も存在しなくなっていた。
 代わりに空を支配しているのは、青白い満月と数え切れない星の瞬きだ。
 夜天の王と兵の群れが見下ろす世界――たった一つの、箱庭めいた島には、夜に相応しい静けさが落ちている。
 まるで、好き勝手に喚き散らした後に、泣き疲れて寝息を立てる子どものようだった。
 そう、少し前まで。
 ほんの少し前まで、その島には狂乱めいた騒乱で溢れかえっていた。
 無数の感情がせめぎ合い意志がぶつかり合い想いが交錯した。
 その果てに、離別があり喪失があり過ぎた。
 希望や喜びや活力を覆い隠し押し潰してしまいそうなほどに、絶望や悲嘆や辛苦が多すぎた。
 そのせいだろう。
 世界が、疲れ切って眠っているかのように見えるのは。
 世界が、全身に負った傷を癒そうとしているかのように感じられるのは。
 世界が、ささくれ立った気持ちを整理したいと望んでいるかのように思えるのは。
 月が、傷ついた世界を慈しむように、たおやかな光を投げかけている。
 星たちが、疲弊した世界を慰めるように、絶えず瞬きを繰り返している。

 だが。
 この箱庭に人々を集めた王は、そのような平穏は与えない。
 憎しみに塗れた魔王が、そのような慈悲を容認するはずがない。
 まだ騒乱に参加すべき者がいるのだから。 
 
「――時間だ」

 大気が震え、無慈悲な声が響く。 
 
「もはや前口上などいるまい。しかと耳に焼き付けよ」

 粗野でもなく荒々しくもなく高圧的でもなく、乱暴さとはかけ離れた声音だ。
 それでも、その声は苛烈なほどの存在感と、竦み上がる様な威圧感に満ちていた。 
 
「まずは禁止エリアを発表する。
 1:00よりA-04、H-07、
 3:00よりC-08、E-10、 
 5:00よりE-04、I-03、
 以上だ」
 
 まるで声色そのものに力が宿っているようだった。
 それも月明かりを陰らせ星の瞬きを止めてしまいそうなほどの、人智を超えた力が、だ。
 そんな空恐ろしい声は、聴き手に現実を叩きつけるべく、続ける。
 
「では、死者の名を告げよう。
 リンディス
 シャドウ
 ブラッド・エヴァンス
 ロザリー
 トッシュ・ヴァイア・モンジ
 トカ
 ルカ・ブライト
 無法松
 ――以上、八名が朽ち果てた者たちだ」
 
 夜の暗さが一層深く濃密なったような錯覚に陥る。
 響き渡る声以外に、物音は聞こえない。
 その様はもはや穏やかさではなく、生命が滅び死に絶えたが故の静寂めいていた。
 だとしても、声の主は確信している。
 耳を傾けている者はいる、と。
 死体の山の上に佇み血液の河を掻き分ける者たちが確かに生きている、と。

777 ◆6XQgLQ9rNg:2010/12/12(日) 22:07:20 ID:IYNoqvTc0
「たった八名だと落胆するだろうか?
 八名もの数がと戦慄くだろうか?
 どちらにせよ、早いものだ。
 僅か二十四時間で、実に六割強の命が死神に魅入られたのだからな。
 だが、手を下したのは死神などではないのは理解しているだろう。
 諸君らが敵だと断じた者が、諸君らが仲間だと信じた者たちが。
 そして――諸君らこそが。
 命を奪い尽くしたのだ。
 時に大義名分を振りかざし、時に信念を盾として、時に欲望に忠実に。
 他者を蹴落とし踏み躙ったのだ。
 果たして諸君らには、他者を斬り捨ててまで立っている価値があるのか?
 果たして諸君らには、否定しつくした末に生き延びるだけの意味があるのか?
 もしあると言うのならば――」
 
 問いかける。
 答えなど返ってはこないと分かっていながら、それでも、感情のままに声は告げる。
 
「――全てを奪い尽くした上で、私の元に来るがいいッ!」

 ◆◆
 
 本当に早いものだと、オディオは思う。
 豪奢というよりも禍々しい玉座に背を預け、目を閉じる。
 視界を閉ざし想起するのは、二十四時間前から始まった殺戮劇。
 自らが催した殺戮劇は、予想を上回る速度で進行している。
 それはまるで、人間の業の深さや愚かさを体現しているかのように感じられた。
 参加者の中には、人間ではない者も数名混じっている。
 彼らはどう思っているのだろう。 
 そして人間は、彼らをどう思っているのだろう。
 同種族ですら争う人間が、異種族と手を取り合えるとは思えない。
 その証拠と言うように。
 夢にメッセージを込めたエルフの身は、彼女自身が愛する者と信頼する者によって灼かれたのだ。
 
 しかし、その一方で。
 絆を築き希望を抱き、巨悪を打ち破った者もいる。
 人間でありながら――否、人間であるからこそ、人間を強く憎悪した狂皇子も。
 負の感情を糧とし世界を紅に染め上げた災厄も。
 たったひとりの人間が相手では、滅び去りはしなかった。
 それは、人間が持つ力を、否定しきれないケースに他ならなかった。 

「それでも……」

 オディオの奥歯が、強く噛み締められる。
 ルカ・ブライトやロードブレイザーの死滅に口惜しさを覚えているわけではない。
 強い絆と希望の力で貴種守護獣を呼び起こし、再生したアシュレー・ウィンチェスターに忌々しさを覚えているわけではない。
 
「それでも、人間は決して愚かさを捨てられんのだ……ッ!」

 呻くような呟きに混じる、羨望めいた感情を拾う者は、誰一人存在しなかった。
 芽吹いたモノを振り払うように、オディオは瞼を開く。

778第四回放送 ◆6XQgLQ9rNg:2010/12/12(日) 22:10:35 ID:IYNoqvTc0
 間もなく、この城に訪問者がやってくる。
 それが破壊と殺戮と蹂躙の果てに勝ち抜いた、たった一人の客人なのか。
 抗いの意志を絆で繋ぎ希望を抱いた、反逆者たちなのか。
 あるいは、皆が皆手を取り合えないまま、入り乱れて雪崩れ込んでくるか。
 何にせよ、そろそろ頃合いだ。
 万が一のため、駒の配置は完了している。
 用意した駒のうち、思い起こしてしまうのは四つの異形の女たちだった。

 一つは、四本の腕を持つ桃色の髪をした女。
 二本の腕の先端は人間のものと同じ。されど、残り二本の腕の先には無骨な岩石がぶら下がっている。
 岩石と人間の合成生物――クラウストロフォビア。

 一つは、漆黒の球体から上半身を生やした女。
 背から伸びる一対の翼で宙に浮くその姿は、あらゆる光を呑み込みそうなほどに気味が悪い。
 暗黒の分子で構成された生物――スコトフォビア。
 
 一つは、緑色の翼と尻尾を生やした女。
 上半身は人のものであるが、下半身は爬虫類めいた翼と尻尾で構成されている。
 器より出でし魔法生物――アクロフォビア。
 
 一つは、透き通る液体を纏った女。
 艶めかしい裸身に液体を絡ませるその姿は最も人間に近い。しかし、液体は絶えず女に絡みつき、同一の存在であると主張している。
 液体から作られた合成生物――フェミノフォビア。

 彼女らは、かつて。
 かつてオディオが、『オディオ』でなかった頃に、一人で戦った人形たち。
 彼女らを最初に想起してしまうのは、強い信頼を置いているからではない。
 むしろ、真逆だ。
 その悪趣味な人形に、オディオは強く激しい嫌悪感を抱いている。
 他の駒には、一切の興味も感慨も持ち合わせてはいないのに、だ。
 強烈な感情は、その正負に関わらず強く印象付ける。
 そういう意味で、四つの人形は特別だった。
 オディオ自身の手で破壊したはずの彼女らを。
 吐気を催すほどに忌み嫌う彼女らを蘇らせたのは、手駒としてはそれなりに使えると踏んだためだ。 
 人形は、裏切らない。
 そう、決して、裏切らない。
 だから、それ故に。
 オディオは想わずにはいられない。
 
 ――人間は、自らが作りだした人形よりも劣っている、と。
 
 そう想わずには、いられない――。

779 ◆6XQgLQ9rNg:2010/12/12(日) 22:13:20 ID:IYNoqvTc0
以上、投下終了です。
フォビア以外の手駒や策については、後続の書き手諸氏にお任せです。
>>776-777にタイトルをつけるのを忘れてしまいました。すみません。

では、何かありましたらまたご遠慮なくお願いいたします。

780 ◆6XQgLQ9rNg:2010/12/13(月) 22:03:15 ID:q7DAuZmE0
仮投下してくださった方、ありがとうございましたー

781第四回放送・裏  ◆iDqvc5TpTI:2010/12/23(木) 12:43:59 ID:qCCNahKk0
お待たせしました、第四回放送・裏、投下します

782第四回放送・裏  ◆iDqvc5TpTI:2010/12/23(木) 12:45:03 ID:qCCNahKk0
上下の感覚すら掴めない空間を、アシュレーは漂っていた。
そこには何もなかった。
床もなければ壁もなく、空もなければ大地もない。
人造物も自然物も一切存在しない空間を満たすのは、ただ一つの色。
身体を失ったアシュレーが知覚できるただ一つのもの。
白。白い闇。
それを決して光と称さないのは、アシュレーが自分は死んだのだと思っているからだ。
アシュレーの脳裏を、彼が覚えている最後の光景が過る。
ぽっかりと穴の空いた心の臓。
ロードブレイザーと相討ち、地に伏せる自らの姿。
断言できる。自分は確かに死んだのだ。身体がないのもその証拠だろう。
なら、ここは所謂あの世なのかもしれない。

「……ごめん、マリナ。……ごめん、みんな」

アシュレーは戦い抜いた。
戦い、戦い、死に果てた。
その選択に悔いはない。
死をも覚悟して、アシュレーは命を賭けてきた。
自分の居場所に帰るために。帰りたい日常を護るために。その日常をなす大好きな人々と笑い合える世界を取り戻すために。
何度生まれ変わろうとも、何度あの時間をやり直そうとも、アシュレーは同じ道を選ぶと言い切れる。
ただ、それでも。
悔いはなくとも、嘆きはなくとも、寂しさはある。
もう二度と愛した人達に会えない。
もう二度とアシュレーの帰りを待っているであろう人に、ただいまを言ってあげれない。
そのことが堪らなく辛かった。
だから、アシュレーは歩くことにした。
かつて訪れたアナスタシアのいる世界のように、どこかに生者の世界と繋がっている所があるかもしれない。
生き返られるとまでは思っていないが、それでも言葉を届けることくらいはできるかもしれない。
いや、もしもそんな都合のいい場所がなかったとしても。

「マリナ」

その名を心に灯し続けよう。

「アーヴィング。アルテイシア」

もう二度と逢えなくとも。
もう二度と我が子を抱くことがなかろうとも。
アシュレーは、どんな時でも家族と共にあるのだから。

783第四回放送・裏  ◆iDqvc5TpTI:2010/12/23(木) 12:46:06 ID:qCCNahKk0
「…………大切な、誰か」

ふと、誰もいなかったはずの世界に、アシュレー以外の声が響く。
驚き目を凝らし、誰か居るのかと返すアシュレー。
すると、白一面の世界に墨の如く黒い点が滲み出た。
代わり映えのなかった世界に突如生じた異変。
元より、外の世界との接点を探していたアシュレーは、先の声のこともあり、黒点へと駆け寄っていく。
と、黒点との距離が縮まる度に、その正体が明らかになってきた。
それは黒ではなかった。
言うならばそれは緑か。
緑色の髪の少年だ。
点に見えたのは彼が蹲っていたから。
蹲り、一人泣き続けていたからだった。
アシュレーはそのことに気づくと走る速度を上げた。
そう、走る、だ。
少年へと駆け寄ろうとした時には、失ったはずの身体が生じていたのだ。
心なしか透けてはいるが、寸分違わずその身体はアシュレーのものだった。

(霊体だから融通が効くのかな?)

よくよく見れば少年の身体もまた透けていた。
空間より滲みでた点や、現状の自分を鑑みても、もしかすれば泣いている少年も既に死んでいるのかもしれない。
だったら慰めたところで何になる。
そんな考えはアシュレーの心の中には存在しない。
一人ぼっちが寂しいと、泣いている子どものように見えたから。
それだけでアシュレーが手を差し伸べるには十分だった。





当の少年――ユーリルは、誰かと会うことなんか望んではいなかった。
何故だか透明無形な存在になっていたはずが、声を出したら急に色形を得てしまったユーリルは、胡乱げに顔を上げる。
彼の目に映るのは、一人の見知らぬ男の姿。
この地にて一度も邂逅したことのない、どころか、仲間であったクロノ達から聞いた誰とも違う人物。
正しく、名も知らない、縁の全くない他人。
今、ユーリルが、最も目の当たりにしたくなかった存在。
かつて、ユーリルが、『勇者』が、救うべき存在として自らの命を賭けた存在。
『勇者』という幻想の存在意義――だったはずのもの。

(けれど、それは違うと、さっきの男は言った)

『誰の』英雄になりたかったのかと、ユーリルに問うた男がいた。
助けたい人以外は助けなくとも仕方がないと、男は言った。

784第四回放送・裏  ◆iDqvc5TpTI:2010/12/23(木) 12:46:56 ID:qCCNahKk0
(助けたい、誰か……)

そんなことを考え続けていたせいで、ユーリルは来訪者の声に反応してしまった。
マリナ。アーヴィング。アルテイシア。
それが今、ユーリルへと近づいてくる男にとっての戦う理由なのだろう。
男のことを何も知らないユーリルだが、それでも、彼が誰かの名前を呼んだ声に込めた想いは理解できた。
あれは家族を呼ぶ声だった。大切な誰かへと向ける声だった。
それも、もう会えない誰かへの。強い想いを込めた声だった。

(僕も、あんな声を出したことがある。あの日、村が襲われ、僕が『勇者』になったあの日に)

父の、母の、シンシアの名を泣き叫び、彼は勇者になることを誓ったのだ。

(そうさ、悩むまでもなく答えなんて出ていた。
 忘れるわけがない。ずっと、ずっと覚えてた。僕が助けたかったのは、僕が護りたかったのは)

今でこそ、ユーリルは在りし日々が偽りのものだったと悟っている。
家族だと信じていた人達も、好きだと思っていた幼なじみも。
誰も彼もがユーリルを勇者としてしか見ていなくて。
世界を救う見返りとして、形だけの愛情を注ぎこまれていたに過ぎなかった。

だがそれは、あくまでも半日程前に気付いたことだ。
あの日の、勇者になると決意したユーリルにとっては、あの村の人々こそが、本当に助けたかった誰かだったのだ。

(……ああ、あいつの言ったとおりだ。救いたい誰かがいてこそ『英雄』になれる。
 救いたかった誰かがいたからこそ、僕は『勇者』になった)

アナスタシアがそうであったように、ユーリルもまた特別でも何でもなかった。
勇者になる運命こそあれど、少なくとも、あの時まではユーリルはただの少年だったのだ。
世界のことなんて考えもしなかった。
ただ、大好きな人たちとずっと一緒にいたいと、それだけを考えていた。
だけど。
その願いは叶わなかった。
ユーリルは好きな人達と一緒に生きることも、一緒に死ぬことさえも許されなかった。
ただ一人、大好きなみんなの屍に護られて生き残ってしまった。
そして、そのことがユーリルに勇者になる決意をさせてしまった。
好きだった人達の犠牲を無駄なものにしたくはないと。
全てを犠牲に生かされてしまった自分は、彼らの望んだように人の為に生きなければならないと。
強迫観念に似た義務感に飲み込まれてしまった。

『皆を救って……。 あなたは……勇者なんだから……』

シンシアから零れ出た呪詛を思い返す。
何のことはない、そんなものはとっくの昔に、ユーリルの魂を侵していたのだ。
ユーリルはあの日、余すことなく聞いていたのだから。
魔物に殺されゆく両親が、村人が、シンシアが漏らす那由他もの悲鳴と怨嗟を。
いくら使命感で固めていようとも、彼らもまた当時のユーリル同様ただの人間だったのだ。
死を前にして、恐れや恨み言を残す者もいた。
いや、いなかったにしろ、隠れて震えているしかなかったユーリルには、
村人達の断末魔は彼らが死ぬ理由となった自分への憎悪としてしか聞こえなかった。
渇望し、それでも届かなかった生への憧憬と怨恨を。
一人だけ生き延びてしまったユーリルへとぶつけているようにしか聞こえなかったのだ。

785第四回放送・裏  ◆iDqvc5TpTI:2010/12/23(木) 12:47:39 ID:qCCNahKk0

(だけど、だけども。まだあの時の僕は『勇者』になりきれていなかった。だからこそ、そこに『僕』も存在していた)

ユーリルは勇者になるべく生を受けた。
ユーリルは完璧な勇者になった。
しかしながら、何度も述べたようにユーリルにも勇者でない時はあったのだ。
勇者になろうと思えば、誰にでも勇者になれるわけじゃない。
それはユーリルにも当てはまった。
あの日、あの時、あの瞬間。
勇者として旅立つ決意をした少年は、勇者になったばかりであり、勇者としては未熟極まりないものだった。
だからこそ。勇者として未熟だったからこそ。そこにはユーリルという一人の少年が残っていた。
故郷を失い、仲間もいない一人ぼっちの時間だったからこそ、彼を勇者として見る人々の声なき声も、意識しないで済んだのだ。
ならば。
その勇者の中に残されていたユーリルは、何を想い戦っていたのだろうか。
勇者という仮面を被りきれていなかった彼は、心の中で恐怖や悲しみに震え泣いているだけだったのだろうか。

違う、そうじゃない。

(僕は、僕は。確かに自分の意思で、どこかの誰かを助けたいと願っていた)

彼は泣きはすれども、震えるのではなく、その哀しみを闘志に変換して前へと進んだ。
自分が味わった別離の哀しみ。
それをもう他の誰にも味わって欲しくないと、あの日の少年は思ったのだ。
もう誰も殺させてなるものか。無理だ無謀だと言われようとも、世界中の人間ですら助けてみせると、そう誓ったのだ。
それは、自分の意思を殺してでも正しくなければならなかった勇者が抱いた、最後の最後の我侭だった。

(でも……)

今のユーリルには、かつての勇者ではないユーリル自身の誓いですら、他人のもののように思えてならなかった。

剣の聖女の声がリフレインする。
人々は何もしてくれなかったと。たった一人の『英雄』に全てを押し付けて生贄にしただけだと。

炎のサイキッカーの言葉が追随する。
助けたい人だけ助ければよかったのだと。そうすれば『生贄』なんかにはならなかったのだと。

その二つの言葉が、ユーリルに一つの疑問をもたらす。

「価値なんて、あったのか?」

786第四回放送・裏  ◆iDqvc5TpTI:2010/12/23(木) 12:48:16 ID:qCCNahKk0

果たして、価値なんてあったのだろうか。
彼が助けようとした人々は。
自身のように辛い思いをさせたくないと思った人々は。
せめて、大好きな人達の代わりにと贖罪のままに助けた人々は。

ユーリルが失った全てのものに釣り合うだけの、価値があったのだろうか。
助けたいと、思うに値する人達だったのだろうか。

「教えてくれ。教えてくれ、クロノ。君は、どうだったんだよ。誰の英雄だったんだよ。
 その誰かには、君が一度死んでまで護るだけの価値があったのかよ!?」

虚空へと叫ぶも答えは返ってこない。
返ってくいるはずがない。
ユーリルが護りたい誰かになれたはずの少年は既にこの世にいないのだから。
故に。

「価値など、ありはしない」

その声は。

「君が護りたかった人間にも。クロノが救った人間にも」

何かを言おうとした青髪の男よりも先に発されたその声は。

「教えてやろう、ユーリル」

友のものであるはずがなく。

「クロノが本来進むはずだったある一つの未来を」

クロノ自身さえ知りえぬあり得た未来を語ることのできる者は。

「彼は愛した女と結ばれ玉座につく。なにせ相手が一国の……っ王女だったからだ」

時空を支配する力を持つかの魔王以外にありはしない。

「だがその王国は僅か5年で滅ぶことになる」

ただ、ユーリルにはもはや、そんなことはどうでも良かった。

「彼が、クロノがラヴォスより救った人間どもの手でだッ!」

告げられた言葉の意味。
それを理解するや否や、彼の心は大きな衝撃に襲われ、それどころではなかったのだ。

「てめええ、オディオォォォォォっ!」

よって、魔王の名前を呼んだのはユーリルではなかった。
呆然としたままのユーリルを庇って入ったアシュレーのものでもなかった。
それは熱き心のサイキッカーの魂の雄叫びだった。
強く拳を握り締め、オディオへと強烈なパンチを見舞ったアキラのものだった。




787第四回放送・裏  ◆iDqvc5TpTI:2010/12/23(木) 12:48:51 ID:qCCNahKk0


「夢の世界までわざわざご苦労なこった」

アキラは他の人間達と違い、この世界がどういうものなのかを理解していた。
上下のない世界をふわふわと漂うその感覚を、アキラはよく知っていたからだ。
即ち、夢。
精神世界には近いけれども違うもの。
『誰か』の世界ではない、もっと広くて曖昧な世界。
個人の意識ではなく、雑多な人間の無意識からなる集合的無意識の世界。
だからこそ、この世界はミネアや、ユーリルの心に潜った時とは違い、個人が反映されてなく、あやふやなまでに真っ白なのだ。

「なに、君のように気絶している人物があまりにも多くてな。
 少々他の事情も重なって、今回に限り、夢の中でも放送をしてやろうと思ったまでだ」
「そうかよ。親切すぎて反吐が出るぜ」

アキラはオディオに刺さっていた拳を引きぬく。
刺さっていたとは比喩表現ではなく、そのままの意味だ。
所詮、ここは夢の世界。
アキラの身体も、オディオの身体も、虚像に過ぎないのだ。

「反吐がでるのは結構だが、精神世界でならともかく、ここは夢の世界だ。
 どれだけ殴られようとも、私の身も心も傷付きはしない」
「分かってるよ、んなことは。それでも俺は、てめえのことが気に食わねえ。その顔を見たらぶん殴りたくなるくれえになっ!」

アキラは強く拳を握り締め、追撃のパンチを放つ。
彼は心底腹がたっていた。
元よりオディオのことはボコボコに叩きのめすつもりでいた。
その相手が紛いなりにも顔見知りの人間を、絶望の淵に叩き込んだなら尚更だ。
アキラはユーリルへと目を向ける。
余程のことをオディオより告げられたのだろう。
ユーリルはアキラとアナスタシアを前にしても、虚空を見つめ、口を壊れた人形のように動かすだけだった。

「くそっ、くそっ、ちっきっっしょおおおおおお!」

アキラは怒りの炎を燃え上がらせ、際限なく拳を加速させるイメージを紡ぐ。
自分の声ををきっかけに自身を再認識し、偶発的に身体を得たアシュレーやユーリルとは違い、
アキラの身体は確固たる意思でイメージされたものだ。
色が透けていたりせず、外見上は、生身の身体に見劣りしない。
だが無駄だ。避ける素振りを見せないオディオだが、それもそのはずだ。
アキラが看破したように、ここはどこまでいっても夢の世界なのだ。
どれだけ拳を叩きつけようと、現実の肉体には響かない。
夢だろうが現実だろうが心を壊せる言葉に比べて、拳はあまりにも無力だった。

「気が済んだか?」

788第四回放送・裏  ◆iDqvc5TpTI:2010/12/23(木) 12:49:35 ID:qCCNahKk0

済むわけがない。
それでも、アキラはようやく拳を解いた。

「落ち着くんだ。今は、この少年を助けるほうが先だッ!」

冷静になれと、アキラを引き止める声があったからだ。
はっとしてアキラは声の主に顔を向ける。
ユーリルを背に庇いつつ、強い意思の篭った視線を向けてくる人物。
その容姿にアキラは心当たりがあった。

「あんた、まさかアシュレー・ウィンチェスターか?」
「!? どうして僕の名を? いや、そういう君は一体……」

ブラッドからテレポートジェムを貰い受ける前に交わした情報が、思いもかけずに役に立った。

「おっとわり。先に名乗るべきだったな。俺はアキラ。あんたのことはブラッドから聞いた。
 今はマリアベル……とも一緒にいるぜ」

一瞬、アナスタシアのことも告げようかと迷ったが、そこで妙案が思いつき、敢えて省略する。
事情が複雑な以上、たとえ夢の中であろうとも、オディオを前に悠長に会話してはいられない。

「ブラッドとマリアベルがッ!? なら君も」
「ああ、あんたの仲間だ。こいつを、オディオを倒そうとする仲間だ!」

アキラはそう口に出して宣言し、同時に心で語りかける。

『聞こえるか、アシュレー!』

口で話しているひまがないのなら、直接イメージを送ればいい。
ユーリルがオディオになんと言われたかまでは聞き取れはしなかったが、その前段階までの原因なら知っている。
自分が読んだユーリルの記憶や、知っている限りのユーリルとアナスタシアの今。
それをアキラはユーリルへとテレパシーで伝えようとする。
無論、都合よくサイキッカーではないであろう新たな仲間が、情報の洪水に流されないよう、少しずつ区切ってだ。
そこまで考えて、ふと、最悪の可能性に思い至る。

「オディオ、こんなことができるなんて、てめえもまさかサイキッカーなのか?」

それは魔王オディオもサイキッカーである可能性だ。
他人の夢を繋げ侵入する能力。
オディオが成したその力が、人の心に意識を通わせる自身の能力に似ていると思ったからだ。
冗談じゃない。
オディオに心をよまれてたまるか。
反抗が難しくなるとか、そんな理屈以前に、アキラの感情が、オディオに心を読まれることを嫌悪して。
アキラは問わずにはいられなかったのだ。




789第四回放送・裏  ◆iDqvc5TpTI:2010/12/23(木) 12:50:13 ID:qCCNahKk0
問わずにはいられない命題があるのは、オディオもまた同じだった。
本来であれば、彼が待つ城を訪れたものへと投げかけるはずだった問い。
しかし、殺し合いに招いた『勇者』が自らその疑問へと至った以上、予定を繰り越しても問題あるまい。
そう判断してオディオは口を開いた。

「……ちょうどいい。私からも君に問うとしよう。
 君は、一体何のために戦ってきたのだ……?」
「てめっ、質問に質問で返してるんじゃねえ!」
「安心しろ。これは君の先刻の問いの答えにも通ずる質問だ」

嘘は言っていない。
アキラが知りたいのはオディオがサイキッカーなのかどうか。
それはつまるところ、オディオがこうして夢に介入しているのは超能力によるものなのか否かということだ。
そしてそのアキラが知りたがっている手段というのは、この質問の答えと無関係ではない。

「くそっ、しのごの言ってんじゃねー!」
「答えられないようなことなのか? そんなはずはないだろう。
 君は世界を救った英雄だ。世界中の人々を護りたかったんじゃないのか?」
「違う。俺は自分の救いたかったものを救っただけだ」

同じことだ、同じことなのだ。
『誰か』を救おうとしたというのなら、お前も同じだ。
人間はいつか裏切る。人間は弱さを捨てられない。人間は他力本願に生きる。
そんな信用の出来ない他人を救う行為なぞ、『勇者』が世界を救わんとするのと同様、愚かしい行為でしかないのだ!
現に超能力者の少年が救いたいと言っている人物は、少年をずっと欺き続けてきたではないか。

「救いたかった? 理解できんな。無法松はお前の親の仇だろう? 
 しかもそのことを秘密にし、罪悪感から逃れたいが為だけに、お前や子ども達を利用していた」
「っ、それでも、あの背中は本物だ。俺達を護ってくれた松の生き様には嘘偽りなんてなかった」
「それもまた幻想だ。人は裏切る、裏切るのだ」

とりつく間もない突き放すアキラの即答を、オディオは静かなる怒りで両断する。

「君はさっき聞いたな。私はサイキッカーかと。答えは否だ。
 私は夢にメッセージを込めたエルフの女性の魔法に介入して、君達の夢を繋げ、言葉を届けているに過ぎない」

びくりと、ユーリルが痙攣を起こしたかのように一度大きく震える。
かのエルフはユーリルにとって、仲間のように比重の大きい存在でもなければ、アナスタシアやピサロのように憎むべき存在でもない。
先刻まであまりのショックに何の反応も示さなくなっていた少年を震えさせるには、本来なら役不足だ。
それでも彼が反応せざるを得なかったのは、オディオの声にクロノの国が滅ぼされたと話した時と、同じ感情が滲んでいたのを感じたからか。
その通りだ。これからオディオが告げるのは、少年を更に絶望に落としかねない事実なのだから。

「彼女は、ロザリーは死んだ。最愛の人の手にかかってだ……」

信じられないと、ユーリルが目を見開き、瞠目し、今度こそ動かなくなった。

「……っ!」

790第四回放送・裏  ◆iDqvc5TpTI:2010/12/23(木) 12:50:46 ID:qCCNahKk0
動きを止めてしまったのはアキラも同じだ。
あの時、イスラの意見を振り切ってでも、いなくなったロザリーを探しに行っていれば。
アキラは悔しさに一瞬、口をつぐんだ。

「これで分かっただろう。君達が守ろうとしているものに価値なんてない。
 ロザリーやクロノだけではない。
 この殺し合いへと招いた人間の中には、私が干渉するまでもなく、近い将来、人間に裏切られる者達が何人もいたのだ
 それでも君達は誰かを護るというのか?」

勇者と巫女が命懸けで封印した暗黒の支配者を復活させた科学の信徒が。
人間に絶望し、命の恩人であったオスティア王を殺してのけたベルンの王が。
自らを縛る呪いから解放されたいが為に、世界を巻き込み死のうとした真なる風の紋章の継承者が。
オディオの瞳の裏を掠めては消えていく。

「そうじゃないんだ、オディオッ! お前は間違っているッ!
 僕らは誰かに価値を求めて戦ってきたんじゃない……。
 護りたいと思う自分の意思に応えて戦ってきたんだッ!」

響き渡ったアシュレーの言葉に、今度はオディオの動きが止まる番だった。
一瞬で、オディオから表情が消え……きれていない。
僅かに苦虫を噛むような、或いはどこか懐かしいものを見た顔で、オディオは再び口を開く。

「そうだな。君ならばそう答えるだろうな。だがそれは君が勝者だからだ。
 君達二人は戦いに勝って、大切なものを手に入れた……。大切なものを護りきった。
 しかし私はこう思うのだ。それらも、しょせん一方的な欲望ではないのかと。
 自分にとって大切なもの、それを守るためならば 他者を傷つけていいのかと」

それは、意図して感情の起伏を抑えた声でありながら、ひどく心が漏れ出る声だった。
淡々と、とつとつと、オディオは言葉を並べていく。

「それが許されるならば、何故敗者は悪とされてしまうのだ。
 彼らもまた、自分の欲望のままに素直に行動しただけではないか。
 だというのに敗者には明日すらもない。歴史を作るのは勝者だからだ。勝った者こそが正義だからだ!」

つまるところそれは、オディオが開いた殺し合いと一緒だ。
勝者だけが全てを手に入れられる、それこそがこの世の真理なのだ。
アシュレー達はこの殺し合いを打破しようとしているが、それが何になる。
人は果てしなく欲望を抱く。
殺し合いの輪から抜けたとしても、人が人でいる限り、その先にあるのは新たな戦いでしかないのだ。
彼らが勝者なら尚更だ。勝者は生き続ける限り、数多の戦いを繰り広げ、勝ち抜いていく。
それは、勝者の勝利と同数の敗者を生み出すことに他ならない。
だからこそ。

791第四回放送・裏  ◆iDqvc5TpTI:2010/12/23(木) 12:53:10 ID:qCCNahKk0
「己の勝利に酔いしれ、敗者をかえりみないお前達は知らなければならなかったのだ。
 お前達もまた敗者足りえたのだと。お前達が否定した悪そのものだったのだとッ!!」

それが生前のロザリーが仲間と共に訝しみ、あと一歩のところまで迫っていた、この殺し合いにおける人選の謎の答えだった。
何故人間以外の種族が巻き込まれたのか? それは概ねロザリー達の推測通りだ。
足りなかったのは、どうして参加者たちは誰もが平穏とは程遠い戦いを経験していたのかという点だ。
戦力バランスを考えてなどというものではない。
オディオは殺戮劇の参加者を、何らかの戦いを勝ち抜いた者を中心に選んでいたのだ。
この世が勝者と敗者で二分されているというのなら、勝者同士を戦わせればいい。
そうすれば、数多の勝者も敗者となり、数多の正義も悪となる。
偽善は暴かれ、たった一人の、真の勝者だけが残る。
その真の勝者を、魔王オディオは心の底から祝福しよう。
たとえその者の願いが、全ての死者の蘇生であっても喜んで叶えよう。
何故なら、その真の勝者は嫌でも理解せざるをえないからだ。
自分の願いの為に、誰かを殺し、蹴落としたことを。
誰かを護るということも、結局は人を傷付けてでしか成し遂げられない罪に他ならないということを。

「お前にはピンと来ぬかもしれぬがな。
 アシュレー・ウィンチェスター。最たる勝者よ」

嫌味などではなく、羨望さえ感じる声でオディオはアシュレーを評する。
最たる勝者。
彼以上に殺し合いに招いた勝者の中で、この賞賛が似合う人間もいないだろう。
彼はオディオが唾棄した、何もしないで救いを求めるだけだった人々を、自らの意思で立ち上がらせた。
皆の心を一つにして、誰一人欠けさせることなく、未来を勝ち取った。
それは、きっと素晴らしい未来なのだろう。
あくまでも推測なのは、オディオにはファルガイアの未来を知る術はないからだ。
オディオは『憎しみ』という感情の化身である。
故にこそ、強き憎しみの力を持つ者がいれば、その存在を基点とし、時空の壁を越えて干渉できるのだ。
ただ、それは裏返せば、強き憎しみを抱く者がいない世界には干渉できないこととなる。
ファルガイアの未来はまさしくそれだった。
死に際のロードブレイザーを基点とし、オディオが干渉できたのはせいぜいその前後一年。
それ以降の未来、少なくともアシュレーの存命中には、オディオの媒介になる存在は現われはしなかった。

そして、その輝かしい未来を象徴するかのように。
アシュレーはこの殺し合いの最中でも、絆と希望を掲げ、数々の勝利をその手にした。

「フフフ……、ハハハハハ……、ハーッハッハッハッハア……!!
 そうだ、お前に私達、敗者のことが分かるはずもない。
 ロードブレイザーに再び勝ち、どころかルカ・ブライトまでも破ったお前には」

792第四回放送・裏  ◆iDqvc5TpTI:2010/12/23(木) 12:54:35 ID:qCCNahKk0

いつしかオディオはそれまでの静謐さをかなぐり捨て、大声をあげて笑っていた。
何もアシュレーを嘲笑ってのことではない。 
ただ『英雄』を否定した男が、誰よりも『英雄』と呼ぶに相応しいというその皮肉に、笑わざるを得なかったのだ。
かつてオディオが目指し、ユーリルも理想とした『勇者』。
その正解像とも言える人間を前に、泣くことも、怒ることもできないのなら、笑うしかないではないか。

(だが、だからこそ。私はお前を呼んだのだ。最たる勝者であるお前こそが、敗者を顧みねばならないのだ)

勝者に顧みさせようと招いた数人の敗者達は、既に多くは敗れはしたが、それでもまだ三人、残っている。
しかもそのうちの二人はオディオと同じく魔王の名を冠する者だ。
一人は先ほど口にしたピサロ。そしてもう一人こそ――。

「そうは思わないか、魔王ジャキよ」
「――貴様がその名前で私を呼ぶな。魔王たれと私に望んだのは貴様だろう」

人の名を捨て、されど魔の王としての名も持とうとはしない者。
一番呼んで欲しい人に名前を呼ばれない以上、そこに、文字の羅列としての価値しか見いだせない者。
魔王。
オディオの呼びかけに応える様に、魔王もまた夢の世界で虚像を纏った。





敗者だとか、勝者だとか、魔王にはどうとでもよかった。
彼は敗者だ。
一人ではジールにもラヴォスにも勝てず、クロノ達にも敗れた敗者だ。
彼は勝者だ。
宿敵とさえも手を組み、遂にはジールとも決着をつけ、ラヴォスをも倒した勝者だ。

(それがどうした)

魔王は負けた。負けて最愛の姉を奪われた。
魔王は勝った。勝ったところで姉は戻ってこなかった。
であるなら勝敗に意味なんてない。
一番大切なものを失ってしまったのなら、他の全てがどうなろうと意味はないのだ。
その全てには魔王自身も含まれている。
どう足掻いてもサラを取り戻せないというのなら、これからの魔王の生など無価値だ。
逆に言えば、どうにかしてサラを取り戻せるのであれば、魔王はその為に全てを賭けられる。
ならばここは境界線だ。
転がり込んできた最後のチャンス。
それが幻想か、そうでないのか、この機にオディオに確かめなければならない。

「私が聞きたいのはそんな御託ではない。確認させろ。お前は本当にどんな願いでも叶えられるのか?
 時空の彼方に消え去ったサラを、姉上を……。お前は見つけ出し、助けることができるのか?」

オディオに縋るしかない身とはいえ、魔王には彼の願望を成就させることがどれほど難しいか、身に染みて分かっていた。
助けるどころの話ではない。魔王は姉の居場所すら掴めていないのだ。
むしろそれこそが、魔王に立ち塞がっている最大の難関と言っていい。
時を超えることもできる。平行世界へも渡り歩ける。だがそれだけだ。
無限に広がる平行世界の、そのまた無限に綴られている時間軸。
サラが今も時の狭間を漂っているかもしれない以上、その全ての時空を探さねばならない。
それでは見つかるはずがない。
引いても引いても数が減らない無限の二乗個のくじの中から、たった一つの当たりくじを引き当てろと言うようなものだ。

793第四回放送・裏  ◆iDqvc5TpTI:2010/12/23(木) 12:57:10 ID:qCCNahKk0

「可能だ。いや、適任だと言っていい。私なら君の姉を救える」

そんな無理難題をふっかけて、すぐに解けると返されたのなら、人はどう思うだろうか。
喜ぶか。驚くか。違う。まずは疑うものだ。

「……根拠は」
「ある。彼女もまた、『オディオ』だからだ。私なら彼女が背負っているものを肩代わりすることができる」

加えて、その理由が要領を得ないものなら尚更に疑いが増す。

「彼女は今や生きとし生ける者全てを憎悪し、死を望んでいる」

オディオが語るサラが、魔王が知る心優しき姉とかけ離れていたのなら尚更だ。
崩れ行く海底神殿で彼女は魔王に言ったのだ。
彼女を生贄に捧げた母を、国を、恨まないで、と。
その彼女が憎んでいるという。人を、生命を、殺したいほどに憎んでいるという。
到底信じられるものではなかった。
だが魔王にはそれが妄言だと切り捨てることはできなかった。
どんなに優しい人でも、きっかけがあれば豹変してしまうと。
姉よりも先に、母の心をラヴォスに奪われた魔王は知っているからだ。
だから魔王にはオディオに続きを促すことしかできなかった。





「サラは、魔神のペンダントを手に、星を滅ぼす災厄、ラヴォスを止められうる希望の少年たちを逃がした」

それはどこかで聞いた物語だった。

「サラは、希望の少年達を逃がしたことと引換に、一人、時空を彷徨うこととなった」

それは生贄となった少女の物語だった。

「サラの心は、たった一人で悠久の時を過ごすことに耐え切れず、日に日に摩耗していった」

それは一人ぼっちになってしまった少女の物語だった。

「その果てに、サラは、自らの願いどおりに倒されたラヴォスの怨念に取り憑かれた」

それは『憎しみ』と出会ってしまった少女の物語だった。

「そして、サラは。全て消えてしまえばいいと願うようになった」

それは生贄の少女が、人殺しになる物語だった。

794第四回放送・裏  ◆iDqvc5TpTI:2010/12/23(木) 12:58:48 ID:qCCNahKk0
(ジャキくんのお姉さんは私とおんなじなんだ……)

アナスタシアは心の中で、オディオが語る物語にそんな感想を心の中で漏らした。
オディオの説明に納得したのか、魔王と呼ばれた男はこれ以上話すことはないと、虚像を解き、姿を消した。
あくまでもアナスタシアがずっとしていたように、居なくなったのではなく、見えなくなっただけなのだろうが。

(アシュレーくんは変わってないな)

姿を隠したまま、アナスタシアはアシュレーを見つめる。
アシュレーは殺し合いに呑まれることなく、オディオに真っ向から言い返していた。
アナスタシアとは違い、アシュレーは諦めることなく、この一日を戦って来たのだろう。
大好きな人達を守るために。最愛の人達のもとへと笑って帰るために。

(眩しいなあ……)

オディオが語った少女同様に磨耗しきったアナスタシアには、アシュレーはあまりにも眩しかった。

「さて、そろそろ魔法が解ける時間だ。放送を始めよう」

だからそのオディオの言語に、アナスタシアはほっとした。
よかったと、漸く終わるのだと。
姿を消したままであるとはいえ、自分が壊したユーリルと、自分がそうなりたかったアシュレーから、早く離れたかった。
夢の中にすら逃げられないなんて、文字通り、まさに悪夢だ。
オディオが死者の名前や禁止エリアを告げる声に合わせて、夢の世界の連結が解け、消滅していく。
アナスタシア達の意識が浮上し、いずれ目覚めることを意味していた。





彼ら彼女らが目を覚ました時、この夢のなかの出来事について何を想うのか。
今はまだ分からない。

795第四回放送・裏  ◆iDqvc5TpTI:2010/12/23(木) 13:02:37 ID:qCCNahKk0
以上、投下終了です。
ロワの開催理由への付け足しや、ユーリルに与えてしまった影響など、指摘・判断をお願いします。
尚、本作においてクロノ・クロスの内容に少々踏み行っていますが、
あくまでも、クロノトリガーの、PS版追加ムービーや、DS版隠しボスから分かる範囲に抑えたつもりです。

796 ◆iDqvc5TpTI:2011/01/09(日) 23:36:38 ID:UDweb/y.0
それでは、2ch問題につき、こちらに本投下させていただきます

797Re:どんなときでも、ひとりじゃない  ◆iDqvc5TpTI:2011/01/09(日) 23:38:49 ID:UDweb/y.0
本来、深夜の砂漠は昼間とは打って変わって冷え込むものである。
されど、今、ゴゴ達が歩む砂漠は、快適とまではいかなくとも、心地良いと感じられる位には暖かかった。
戦いの余熱が未だ残っているからであろう。
無論その熱は、全てを憎み、破壊する、ルカやロードブレイザーの冷たい炎のものではない。
大切な絆を護りきった、トッシュとアシュレーの熱くも温かい炎の熱だ。
そう、ゴゴは信じている。

「温かい……な」

ああ、温かい。
肌に感じる熱も、心にくすぶる熱も、背負った命も、手を繋いだ少女も、全てがみんな、温かい。

「ゴゴおじさん大丈夫? 重くない?」

手を繋いだちょこが、ゴゴの背を見上げ聞いてくる。
つい先程まで少女に安寧を与えていてくれたその場所には、一人の男が背負われていた。
アシュレー・ウィンチェスターだ。
彼の勝利を信じ、迎えに行ったゴゴ達が目にしたのは、気を失い地に伏していたアシュレーだった。
そこでゴゴは、ちょこの、ちょこはもう大丈夫だからという言葉に甘え、少女を降ろし、男を背負うことにしたのである。

ただ、それからのゴゴの歩みは御世辞にも、順調であったとは言えなかった。
ちょこを背負っていた時でさえ、疲労の極みにあり、ゆっくりとしか歩けなかったゴゴだ。
少女よりもぐっと重い、鍛えた身体を持つ大人の男を運ぶとなると、行き以上に帰りはきつかった。

それでも。
ゴゴはこの重さを辛いとは思わなかった。

「大丈夫だ、ちょこ。命の重みだからな。重くて……当然だ」

生きている。
意識は未だ戻っていないが、背に感じる鼓動が示すように、アシュレーは生きている。
感応石の反応が消えた時には、その死をも覚悟していた友が生きている。
ならば、背の重みを好ましく思いこそすれ、苦行だと嘆くはずがない。

「うん、そうなの。おじさんの言うとおりなの。そこには、ティナおかーさんも、狼さん達もいるの〜!」

そうだったなと、ゴゴは頷く。
彼らがアシュレーを発見した時、アシュレーは意識を失っていさえしたが、傷一つない状態だった。
ロードブレイザーに無傷で勝利した――ということが考えられない訳でもなかったが。
それにしたってルカと対峙する前からあった、フィガロ城戦での傷まで跡形もなくなくなっていたのだから、怪しむなという方が無理だ。
もしかしたら、アシュレーは再びロードブレイザーに取り憑かれてしまったのではないか。
不可思議な全快を果たしていたアシュレーを前に、ロードブレイザーの治癒力を知るゴゴは、そう警戒してしまった。
トッシュが命を賭けて成した人と魔神の分離。
それを無駄にしてたまるかと、自身でも困難だと思える紋次斬りの物真似さえ決意した。
しかし、全てはゴゴの取り越し苦労だった。
人ならざる者達の声を聴くことのできるちょこが教えてくれたのだ。
狼さん達の声がする、と。
ティナおかーさんと、ティナおかーさんのおとーさんと、狼さんと、狼さんのおにーさんが、アシュレーおじさんを助けてくれたの、と。
子どもらしい独自の言葉で説明してくれたちょこの言葉を要約すると、ティナ達の魔力を借りて、
ルシエド達がアシュレーの傷や欠損を埋める形で実体化したとのことだ。
彼らガーディアンの実体化は、幻獣のそれとは違い、生きる者の強い心の力さえあれば実体化し続けることができるらしい。
アシュレー程の心の強さの持ち主なら、まず実体化が解除される心配はないだろう――とのことだ。

798Re:どんなときでも、ひとりじゃない  ◆iDqvc5TpTI:2011/01/09(日) 23:43:36 ID:UDweb/y.0

正直、ちょこが語ったことの半分以上を、ゴゴは理解できていない。
ゴゴにルシエド達の声を伝えてくれたちょこにしたって、難しいことはわかんないと首を傾げていた。
だが。
分からないことだらけでも、分かっていることならあった。
アシュレーは助けられたのだ。
幻獣とガーディアン、二組の家族の力によって。

(家族……か)

家族――それはアシュレーを救った力
家族――それはちょこが失ったもの
家族――それはシャドウに少女を護らせたもの

ふとゴゴは遠き日を想う。
正体不明を売りにはしているが、ゴゴとてれっきとした生命体だ。
生みの親はちゃんといるのだ。
当然、幼き頃には、彼ら、彼女らの中でゴゴも笑っていた。
友達と呼べるような存在だって確かにいた。
されど。
ゴゴはいつしか一人になっていた。
たった一人、物真似の道に生きていた。

何もそれは家族や友人が物真似に魅せられたゴゴに理解を示さなかったから――というわけではない。
ゴゴの物真似は時に人を楽しませ、時に人に笑顔を与えた。
ゴゴのファンになったと言う人々も沢山いた程だ。
それに、ゴゴからすれば物真似は自身の生き様なのであって、別に他人がどう思おうと構いはしなかった。

だからゴゴが一人になってしまったのは、単にその物真似への欲求と、追随する行動力があり過ぎたからに他ならない。
あれも真似したい。これも真似したい。まだ見ぬ何かを真似したい。
その願いがゴゴに一箇所に留まることをよしとさせなかった。
時には鳥や魚や魔列車の物真似をしているうちに、大陸を横断しきってしまったこともあったくらいだ。
そんなゴゴについて来れる存在なんて、ゴゴの故郷にも、旅先にもいなかった。
正しくゴゴは渡り鳥だったのだ。
誰の追随も許さず、心を許した者さえも置き去りにして、ただ高く遠くへと飛んでいく。
一人ぼっちの鳥だったのだ。
一人ぼっちの鳥……だったはずなのだ。
あの時までは。忘れもせぬあの時までは。

(あの時は驚いたものだ。まさか、俺以外にあんな辺鄙な地に来るものがいるなどと、思ってもいなかった)

世界中のありとあらゆる物を真似して行くうちに、地上には、ゴゴが真似したことのないものは少なくなってきていた。
たとえ同じ物や生物でも、一分一秒ごとに変わり続けていることくらい、物真似師であるゴゴは誰よりも知っている。
故に同じ対象を何度も何度も真似たところで、ゴゴが物真似を飽きることはない。
けれども、全く真似したことのないものへと想いを馳せたくなるのもまた、人情というものである。
そこでゴゴは、地上がダメなら、いっそ海中やら地中やらに潜ってみるのはどうだろうかと、思いたったのであった。
結果は、ゴゴにとって大変満足のいくものだった。
海の底や、大地の中には、ゴゴにとって未知の世界が広がっていた。
味を占めたゴゴは、それからもあちこちを旅しては様々な世界へと文字通り、没頭していったのであった。

799Re:どんなときでも、ひとりじゃない  ◆iDqvc5TpTI:2011/01/09(日) 23:47:47 ID:UDweb/y.0

その最果てが、小三角島の洞窟とゴゴが名付けた、とあるモンスターの胃袋の先に広がっていた世界だった。
モンスターに食われたと思ったら、不思議な洞窟に行き着いていたという話を旅路で聞いたゴゴは、
いてもたってもいられず早速食われてみたのであった。
それはもう、躊躇とか恐怖とかそんな言葉は全力で置いてきぼりにしてである。
実際、ゴゴは五体満足で目を覚まし、目的だった洞窟でたっぷりと物真似を満喫できたのだから結果オーライであった。
……結果オーライではあったのだが。
ここで流石のゴゴも予想だにしていなかった事態が発生した。
なんと、ゴゴが長き物真似道の末に辿り着いた人っ子一人来ないであろう洞窟に、ゴゴ以外の来訪者がこぞってやってきたのである。
このところ辺境や魔境にばかり出かけていたゴゴからすれば、それは久しぶり過ぎる他人との邂逅だった。

だからだろう。

ゴゴは問われるまでもなく、口を開いていた。
物真似師といえど人の子だ。
心のどこかでは人恋しさもあったのだろう。
ゴゴは名乗りも早々に、彼ら彼女らを物真似したいと思った。
そして、彼らが今何をしているのかを聞いた時。
ゴゴは彼らについていく決心をした。

『世界を救う』

そんな夢物語のようなことを力強く行ってのける彼らなら、ゴゴにでも置いて行かれはしないと思ったが為に。
こんな辺鄙な地へと故意か偶然かに赴くような彼らなら、ゴゴにもっと新たな世界を見せてくれるだろうと期待したが故に。

ゴゴは物真似をすることにした。
世界を救うという物真似をすることにした。

そうしてゴゴの何年か、十何年か、何十年かぶりの、一人じゃない旅が始まった。
ああ、だけど。

(もしかしたら、それ以前でさえ俺は一人ではなかったのかもしれないな)

どんなときでも、ひとりじゃないと、言い切った男がいた。
どんなときでも、ひとりじゃないと、頷いた自分がいた。

つまりは、そういうことなのだ。
どれだけ空間的な隔たりが横たわっていようと、どれだけ時間の壁が立ち塞がっていようと。
思い合う限り、忘れえぬ限り、人の繋がりは消えはしない。
ゴゴはそのことに気付くのに随分と遠回りをしてしまった。
ゴゴを笑って見送ってくれた故郷の家族や旅先の友達のことを、一方的に記憶の隅に追いやっていた。
もうそんなことはしない。
これからはゴゴも彼ら彼女らと共に生きていく。

(それが、俺のアシュレーの物真似だ)

背負ったアシュレーへと顔を向け、口には出さず、心に誓う。
そんなゴゴを祝福するように、ゴゴの目に目的地だった建物が映り込む。
フィガロ城。
ゴゴの仲間であるフィガロ兄弟の居城にして、トカが起動し、リオウが護ったトッシュが修繕した起動城塞。
死しても尽きぬ絆があると証明せんと、かの城は焔の厄災にも飲み込まれず、ゴゴ達を迎え入れたのであった。





800Re:どんなときでも、ひとりじゃない  ◆iDqvc5TpTI:2011/01/09(日) 23:52:32 ID:UDweb/y.0
「わ〜いの〜! ふかふかのベッドなの〜」

大分元気を取り戻し、ぴょんぴょんと隣のベッドの上で飛び跳ねるちょこを傍らに、ゴゴはアシュレーをベッドへと横たえていた。
勝手知ったる他人の家。
フィガロ城へと辿り着いたゴゴは、大勢が休憩することに向いている客間にちょこを案内。
眠ったままのアシュレーも運んできて、これから皆で休憩に入ろうとしているのである。
セッツァーのことが気になるところではあるが、今のゴゴとちょこはいつ倒れてもおかしくないような状態だ。
アシュレーとて外傷は見られぬものの、長く目を覚まさないところを見るに、疲労が溜まっているのかもしれない。
座礁船で待っていたはずの松という人物が死んでいた件もある。
以上のことより、ここはまず一休みして体勢を整えるべきだと判断してのことだ。
幸い、ゴゴが何度か上空に跳んだ時に見た光景から察するに、城の付近には誰もおらず、全員が休んでいても危険ではない。
ちょこが自然に話しかけた結果でも、もうここら一帯には誰もいないことは確かである。
まあ、ロードブレイザーが行ったような、広域破壊がまたひき起こされる可能性もある以上、油断は禁物ではあるのだが。
その点に関しても、フィガロ城の潜行機能である程度はかわせるだろう。
幸か不幸か、傷ついたフィガロ城は以前程には地中を高速では動けないため、裏をかえせば地中での滞在時間は増している。
身を休める為の拠点としては、これほど以上はない状態だ。

(エドガー達が護っていてくれていると――そう想っていいのだろうな)

アシュレーをベッドに寝かし終え、ゴゴもまた一息つく。
現状三人の中で一番傷を負っているのはゴゴだ。
アシュレーとちょこを気遣い、先に休ませはしたが、本当はゴゴ自身が一番最初に休まなければならなかったのだ。
ゴゴは億劫な動作で自らの服へと手を伸ばす。
ちょこが回復魔法を使えず、ゴゴがその物真似をできない以上、傷の手当は包帯や水といった原始的な手を使うしかない。
ゴゴはトッシュが残してくれた水で傷口を消毒しようと、正体がさらされない程度に、服を緩め始める。
と、その手が何かに触れて動きを止める。

それは首飾りだった。
小さな白い花で幾重にも編まれた首飾りだった。
友達になりたいと、ゴゴに言ってくれた少女からの、大切な贈り物だった。

だけど。

「おはなさんたち、元気ないね」

ちょこの言うとおりだ。
送り手である少女の死を追うように、綺麗な花弁を咲き誇らせていた花々は、すっかりしおれて生気が抜けていた。
ゴゴは慌てて、手にしていた水をかけてやるが、そんなものは雀の涙にしかならない。
花飾りを成す花々はどれも切り花だ。
此処に来るまでも、ゴゴは時より水をやってはいたが、度重なる激戦や、砂漠の暑さに揉まれては、小さな花の生命力など保つはずがない。
ビッキーが死んだ以上、物真似として着けっぱなしにする理由もなかったのだから、しまっておくべきだったか。
後悔すれどももう遅い。
寂しいことだが、この花達ともここでお別れ――

801Re:どんなときでも、ひとりじゃない  ◆iDqvc5TpTI:2011/01/09(日) 23:54:16 ID:UDweb/y.0

(……待て)

寂しさに傾きかけた心を慌てて引き起こす。
ゴゴの中で引っかかる点があったからだ。
さっき、ゴゴは花飾りが元気がないことを当然とした。
あれだけの戦いや、熱砂の中、ずっと身に着けっぱなしだったのだからと。
だがそれは、果たして当然の結果なのだろうか?
シャドウやルカ、ロードブレイザーを相手に立ち回り、多くの死者が出る程の戦いの中、か弱い花々がしおれる止まりで済んだことが当然だと?
そんなわけあるはずがない。
しおれるどころか、ちぎれ、吹き飛んでいてもおかしくない――どころかそうなっていないとおかしいくらいだ。
けれど、そうはならなかった。
小さな小さな白い花は、ずっとずっと、ゴゴの首元で揺れ続けていた。
傷つき、弱まって尚、強く可憐に咲き続けていた。
それはいったいどれだけの幸運が重なればなし得ることなのだろうか。
ゴゴはこれまでも花の真似をしてきた中で、花の強さを理解しているつもりではあったが、それでも驚かずにはいられなかった。

「はは、ははは。奇跡だ。小さな、奇跡だ」

驚きはいつしか笑い声になっていた。
笑うしかないほどに、ゴゴは驚き、その小さな奇跡を喜んだ。
そのゴゴに応えるように、また一つ、小さな奇跡が起こる。

「ゴゴ」

声がした。
少女のものではない声がした。
慌ててゴゴが振り向くとそこには身を起こしたアシュレーがいた。

「アシュレー……? 目が覚めたのか」

アシュレーおとーさん、やったのーっと飛びついてくる少女を受け止め、アシュレーは笑みを浮かべて頷く。

「ありがとう、ゴゴ。君や、トッシュや、ちょこや、ティナや、アティのおかげで僕は帰って来れた」

わしゃりとアシュレーはちょこの頭をなで、ゴゴにも礼を述べる。

「聞きたいことや、伝えたい事はいっぱいあるけど、でも、きっと、なんとなくだけど、僕はまず、君に教えてあげないといけないことがある」

そして彼は続ける、ゴゴの手元の花々を愛おしげに見つめて。
ゴゴと、花に、ティナの魔石から習得したのであろう癒しの光を放ちながら口にする。

「僕達の世界、ファルガイアでは『ちいさなはな』は幸運のお守りだと信じられているんだ。
 荒廃した世界に生きる僕達にとっては、そんな世界にも負けずに咲き誇る『ちいさなはな』は希望の象徴なんだ」

その言葉を聞いて、ゴゴは全てに納得した。
ああ、そうか。そういうことなのかと。
小さな小さな花飾りは、その幸運をもってして、枯れることなく、繋がったままここにある。
しかしながら真に幸運だったのは誰だろうか。
身につけていた首飾りが壊れてしまわないくらいに、致命傷をことごとく避け得ていたのは。

ゴゴだ。
ビッキーにこの首飾りをかけてもらったゴゴ本人だ。
ゴゴはずっと護られていたのだ。
あの一輪の花がもたらしてくれた幸運に。
ゴゴに、友達になるという物真似をさせてくれた始まりの少女に。
ずっとずっとずっと。

802Re:どんなときでも、ひとりじゃない  ◆iDqvc5TpTI:2011/01/09(日) 23:55:02 ID:UDweb/y.0

「アシュレー」

なら、ならば今こそ。
そのことに気付けた今ならば。

「俺達は、どんなときでもひとりじゃないんだな……」

ゴゴは前へと進める。
ビッキーに会えてよかったと心の底から思うことができる。

「当然だ」

幾時間か前にゴゴがしたのとそっくりそのままの返答。
アシュレーなりにゴゴの声を真似したそれを聞いて、ゴゴはニヤリと笑みを浮かべた。

「俺相手に物真似をするには十年早い」
「そうかな? 僕的には渾身のできだったんだけど」
「……まあ悪くはなかったな」

ぷいっとゴゴはそっぽを向きながら、手にした首飾りに力を込める。
ケアルラの光を受けた花は、元気を取り戻してはいたけれど。

「……あ」

ぽろり、ぽろりと、たったそれだけの動作で、繋がり合っていた花々が分かたれていく。
悲しげな声を出したちょこに、これでいいんだとゴゴは告げ、ばらばらになった花を拾う。

「アシュレー。目が覚めて早々に悪いが、この城の書庫から適当に紙や使えそうなものを取ってきてくれないか。
 俺達の、いや、より多くの人数分だ」
「紙を?」
「ああ。この花々を栞にしようと思うんだ。そしてお前やちょこにも、お守りがわりに持っていて欲しい」
「いいのか?」

ご本好きなの〜と、きゃっきゃっと喜ぶちょことは違い、アシュレーは聞き返してくる。

「いいんだ。花も、幸運も。独り占めにするものじゃない」

それに、ゴゴとビッキーの絆は、例え花飾りを解いてしまっても、ずっと、ずっと、繋がったままなのだから。




【G-3 フィガロ城 一日目 深夜】
【ゴゴ@ファイナルファンタジー6】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(中)
[装備]:小さな花の栞@RPGロワ、ジャンプシューズ@WA2
[道具]:基本支給品一式×3、点名牙双@幻想水滸伝Ⅱ、解体された首輪(感応石)、閃光の戦槍@サモンナイト3、
    天罰の杖@DQ4、小さな花の栞×数個@RPGロワ
[思考]
基本:数々の出会いと共にある中で、物真似をし尽くす。
1:ひとまずは休憩しつつ、これからのことを考える
2:フィガロ城でA-6村に行き、座礁船へ?
3:テレパスタワーに類する施設の探索と破壊
4:セッツァーに会い、問い詰める
5:人や物を探索したい
[参戦時期]:本編クリア後
[備考]
※本編クリア後からしばらく、ファルコン号の副船長をしていました。
※基本的には、『その場にいない人物』の真似はしません。
※セッツァーが自分と同じ時間軸から参戦していると思っています。

803Re:どんなときでも、ひとりじゃない  ◆iDqvc5TpTI:2011/01/09(日) 23:56:43 ID:UDweb/y.0


【ちょこ@アークザラッドⅡ】
[状態]:疲労(極)
[装備]:なし
[道具]:海水浴セット、基本支給品一式、小さな花の栞@RPGロワ
[思考]
基本:みんなみんなおうちに帰れるのが一番なの
1:おとーさんになるおにーさん家に帰してあげたい
2:おにーさん、助けてあげたいの
3:『しんこんりょこー』の途中なのー! 色々なところに行きたいの!
[備考]
※参戦時期は本編終了後
※殺し合いのルールを理解しました。トカから名簿、死者、禁止エリアを把握しました。
※アナスタシアに道具を入れ替えられました。生き残るのに適したもの以外です。
 ただ、あくまでも、『一般に役立つもの』を取られたわけでは無いので、一概にハズレばかり掴まされたとは限りません。



【アシュレー・ウィンチェスター@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:健康、気絶  希望の守護獣『ゼファー』、欲望の守護獣『ルシエド』を降霊
[装備]:バヨネット、解体された首輪(感応石)
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品0〜1個(確認済み)、焼け焦げたリルカの首輪、小さな花の栞@RPGロワ
[思考]
基本:主催者の打倒。戦える力のある者とは共に戦い、無い者は守る。
1:オディオや、アキラなど、夢の中のできごとをみんなに話す。自分が何故全快しているのかも聞きたい。
2:フィガロ城でA-6村に行き、座礁船へ?
3:テレパスタワーに類する施設の探索と破壊
4:ブラッドなど、仲間や他参加者の捜索
5:セッツァー、アリーナを殺した者(ケフカ)には警戒
[参戦時期]:本編終了後
[備考]:
※ロードブレイザーが内的宇宙より完全にいなくなりました。
※バヨネット(パラソル+ディフェンダーには魔導アーマーのパーツが流用されており魔導ビームを撃てます)
※心臓部に『希望のかけら』『欲望の顎』のミーディアムを内蔵しています。
※ティナの魔石よりケアルラを習得しました。他にもティナの魔石抜きで覚えれる魔法や、マディンの魔法を習得しているかもしれません。



【小さな花の栞@RPGロワ】
とある少女が物真似師の為に編んだ花飾りを、物真似師が仲間のためのお守りとして、幾つもの栞に作り直したもの。
少女は白い花が好きだった。
少女を見守って死んだ男も、荒野に咲く白い花が好きだった。
少女と友達になった物真似師も、その日、白い花を好きになった。

804Re:どんなときでも、ひとりじゃない  ◆iDqvc5TpTI:2011/01/09(日) 23:57:19 ID:UDweb/y.0
以上で投下終了します

805Re:どんなときでも、ひとりじゃない  ◆iDqvc5TpTI:2011/01/10(月) 00:08:34 ID:l3gneZcU0
と、すみません
アシュレーの状態表に『気絶』が残ったままになっていました
収録時に消しておきます

806ドラゴンクエスト  ◆iDqvc5TpTI:2011/02/17(木) 01:13:32 ID:MPmFsTyc0
規制につき、代理投下お願いします

807ドラゴンクエスト  ◆iDqvc5TpTI:2011/02/17(木) 01:14:47 ID:MPmFsTyc0

つまりは、そういうこと。
無法松と同じく、アナスタシアという少女もまた、生き返ってなどいなかったのだ。

だから、だから。
神は死人が動き回ることを許さない。
今更に、生きることの意味を思い出したところで、もう遅い。

(これは、罰なのかな……)

アナスタシアは呆然と、目の前の輝く竜を見つめていた。
ユーリルが『勇者』であることを捨てた罰が、この竜への変貌だというのなら。
その竜に喰われることこそ、『勇者』を堕落せしめたアナスタシアへの罰。
散々自分のことを『生贄』だと嘆いた少女は、真実、今、神の『竜』へと差し出された『生贄』だった。

「くそっ、何が一体どうなってんだよ!?」
「人を輝く竜へと変える力……。まさか、あの覇王の紋章!?」

破滅の羽音を耳にし、ようやく我を取り戻したイスラとジョウイが、しかし、次の瞬間には吹き飛ばされる。
爪にて切り裂かれたのではない。尾にて薙ぎ払われたのでもない。
文字通り、二人は吹き飛ばされたのだ。白き『竜』の輝く吐息によって。
あまりにも出鱈目だった。
輝く『竜』はなんてことのない動作で、息を吸い、吹きかけただけだった。
それだけで、極低温の吹雪が巻き起こり、イスラとジョウイは近づくことも叶わず、地に伏せた。
せめて一矢報いようと射られた黒き刃も軽く尾にいなされる。

圧倒的だった。
圧倒的過ぎた。
ドラゴン。最強の幻想種。神の使い。
人如きでは、到底適うはずのない、絶対者。

彼を前にして、アナスタシアは震えていた。
恐怖。死への恐怖。
これが例え神罰であろうとも、アナスタシアは潔く受け入れることができなかった。
もう遅いとは分かっていても、因果応報だと理解していても。
アナスタシアの身体は、少しでも長く生きようと、一歩ずつ、一歩ずつ、後ずさった。
迫り来る『竜』がいるのとは逆方向の、神殿へと至る橋を後ずさった。
無駄なのに。
翼無き人の身では、翼ある『竜』からは逃れることなど不可能だというのに。
あっという間に距離が詰められる。
無様に、醜く、足掻いて、足掻いて、ようやく稼いだ数歩が、泡のように溶けて消える。

808ドラゴンクエスト  ◆iDqvc5TpTI:2011/02/17(木) 01:15:56 ID:MPmFsTyc0

「い……嫌、嫌ぁ」

ガタガタと、震えて悲鳴をあげても、アナスタシアを助けてくれる人間はもう誰もいない。
他人を利用してばかりで、他人の背に隠れてばかりで、友の手さえとろうとしなかった彼女は、いつの間にか一人ぼっちになっていた。

カタカタと、カタカタと。
手にした絶望の大鎌が震える。
それは地獄から迎えに来たと、彼女に死神が伝えているようで。
ガツンっと、背中に当たった何か硬い感触に思わず悲鳴を上げた。

何か。
それはなんてことのない壁だった。
アナスタシアの後退を妨げるように立ち塞がる、彼女の子孫の死地たる神殿の壁だった。

「死にたくない、私は、私は、まだ、生きていたいのッ!」

もはや、逃げ場すらない。
巨竜の顎はすぐそこまで迫っていて。
たとえ神殿の中に逃げこもうとしても、湖の中に飛び込もうとしても。
間違いなくアナスタシアが噛み殺される方が速い。

「ひぃっ……い、あ、あああ」

ガバリと、『竜』が大きく口を開いた。
口の中には底知れぬ闇が広がっていた。
アビスを、地獄の底が広がる闇が広がっていた。
その闇がアナスタシアを呑みこんでいく。
アナスタシアは目を瞑った。
闇を直視したくなくて、現実から逃げた。
数瞬後には全身に突き刺さるであろう牙による痛みで、現実に引き戻されることが分かっていても。
そうせざるを得なかったのだ。

だというのに。
一刻、一秒、数十秒。
アナスタシアを現実に引き戻すのに十分な時間が経とうとも、彼女を痛みが襲うことはなかった。
恐る恐る、アナスタシアは目を開ける。
否、正しくは、何がどうなったのかを認識した途端、少女の目は見開いていた。

809ドラゴンクエスト  ◆iDqvc5TpTI:2011/02/17(木) 01:44:52 ID:MPmFsTyc0
なにやらすぐに規制解除されたため、続きは自分で投下させていただきました

810 ◆wqJoVoH16Y:2011/05/15(日) 23:16:25 ID:cqjqO0vY0
規制がかかったためこちらに投下します。代理投下願います。

811アラスムスの邂光現象 ◆wqJoVoH16Y:2011/05/15(日) 23:17:02 ID:cqjqO0vY0
【ニノ@ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:若干持ち直した
[装備]:クレストグラフ(ロザリーと合わせて5枚)@WA2、導きの指輪@FE烈火の剣
[道具]:フォルブレイズ@FE烈火、基本支給品一式
[思考]
基本:全員で生き残る。
1:目覚めたユーリル達に対処する。
2:カエル達を追い南下する。
3:ジャファルと一緒にいたい。
4:サンダウン、ロザリー、シュウ、マリアベルの仲間を捜す。
5:フォルブレイズの理を読み進めたい。
[備考]:
※支援レベル フロリーナC、ジャファルA 、エルクC
※終章後より参戦
※メラを習得しています。
※クレストグラフの魔法はヴォルテック、クイック、ゼーバー、ハイヴォルテックは確定しています。他は不明ですが、ヒール、ハイヒールはありません。
 現在所持しているのはゼーバーとハイヴォルテックが確定しています。
※偵察に出たジョウイについてどう思っているかは不明です

【ユーリル(DQ4男勇者)@ドラゴンクエストIV】
[状態]:気絶、疲労(大)、ダメージ(中)、精神疲労(極大)、アナスタシアへの強い憎悪、押し寄せる深い悲しみ
[装備]:最強バンテージ@LAL、天使の羽@FF6、天空の剣(開放)@DQ4、湿った鯛焼き@LAL
[道具]:基本支給品×2(ランタンはひとつ)
[思考]
基本:アナスタシアが憎い
0:気絶中
1:アナスタシアを殺す。邪魔する人(ピサロ、魔王は優先順位上)も殺す。
2:アキラが気に食わない。
3:クロノならどうする……?
[参戦時期]:六章終了後、エンディングでマーニャと別れ一人村に帰ろうとしていたところ
[備考]:自分とクロノの仲間、要注意人物、世界を把握。
※オディオは何らかの時を超える力を持っている。
 その力と世界樹の葉を組み合わせての死者蘇生が可能。
 以上二つを考えました。
※アナスタシアへの憎悪をきっかけにちょことの戦闘、会話で抑えていた感情や人間らしさが止めどなく溢れています。
 制御する術を忘れて久しい感情に飲み込まれ引っ張りまわされています。
※ルーラは一度行った施設へのみ跳ぶことができます。
 ただし制限で瞬間移動というわけでなくいくらか到着までに時間がかかります。

812エラスムスの邂光現象 ◆wqJoVoH16Y:2011/05/15(日) 23:17:34 ID:cqjqO0vY0
【アナスタシア・ルン・ヴァレリア@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:気絶、疲労(大)、胸部に重度刺傷(傷口は塞がっている)、中度失血、自己嫌悪、キン肉マン
[装備]:絶望の鎌@クロノ・トリガー
[道具]:基本支給品、賢者の石@DQ4
[思考]
基本:生きたい。そのうち殺し合いに乗るつもり。ちょこを『力』として利用する。
0:気絶中
1:……生きるって、何?
2:あらゆる手段を使って今の状況から生き残る。
3:施設を見て回る。
4:ちょこにまた会って守ってもらいたい。
[参戦時期]:ED後
[備考]:名簿を未確認なまま解読不能までに燃やしました。
※ちょこの支給品と自分の支給品から、『負けない、生き残るのに適したもの』を選別しました。
 例えば、防具、回復アイテム、逃走手段などです。
 尚、黄色いリボンについては水着セットが一緒に入っていたため、ただのリボンだと誤解していました。
※アシュレーも参加してるのではないかと疑っています。

【アキラ@LIVE A LIVE】
[状態]:精神力消費(大)、疲労(大)、ダメージ(中)
[装備]:パワーマフラー@クロノ・トリガー、激怒の腕輪@クロノ・トリガー、デーモンスピア@DQ4
[道具]:清酒・龍殺しの空き瓶@サモンナイト3、ドッペル君@クロノ・トリガー、基本支給品×3
[思考]
基本:オディオを倒して元の世界に帰る。
1:気絶中
2:無法松の英雄になる。
3:レイ・クウゴ、アイシャ・ベルナデット(カノン)、ミネアの仇を取る。
4:どうにかして首輪を解除する。
[参戦時期]:最終編(心のダンジョン攻略済み、ストレイボウの顔を知っている。魔王山に挑む前、オディオとの面識無し)
[備考]:超能力の制限に気付きました。テレポートの使用も最後の手段として考えています。
※カノンの名をアイシャ・ベルナデット、リンの名をリンディスだと思っています。
※名簿の内容に疑問を持っています。
※無法松死亡よりも前です。
よって松のメッセージが届くとすれば、この後になります。

813エラスムスの邂光現象 ◆wqJoVoH16Y:2011/05/15(日) 23:18:24 ID:cqjqO0vY0
投下終了です。支援ありがとうございました。

814SAVEDATA No.774:2011/05/15(日) 23:24:31 ID:cqjqO0vY0
IDが残っているうちに。>>811はタイトルミスです。
エラスムスの邂光現象が正となります。すいません。

815SAVEDATA No.774:2011/05/15(日) 23:25:23 ID:NsxdIkW.0
本スレで代理投下しようとしましたが、自分も規制にかかりましたのでどなたか更なる代理投下お願いします
残りは>>812のみですので、一回で終わるはずです

816SAVEDATA No.774:2011/05/28(土) 10:43:12 ID:z5C7Zj2c0
本スレ落ちてしまった?

817 ◆Rd1trDrhhU:2011/06/22(水) 00:48:56 ID:dcBgw7YM0
「すべてッ! 殺してやるッ!」
 その音に負けぬほどの咆哮と共に、首輪を引きちぎる。
 力任せに破壊されたはずの首輪だが、ゴゴの命を奪うどころか爆発すらしなかった。
 今の彼がオディオの力をもある程度再現できているということだ。
 むき出しにされた、ヒトへの憎しみ。
 誰よりも仲間を想い、何よりも人間を愛したはずの魔物が放つ金色の殺意だった。




首輪の件は、以上のように修正します。
ここ以外の変更点はありません。

818SAVEDATA No.774:2011/06/23(木) 22:01:01 ID:KrQIBaYs0
>>817
修正おつです。分かりやすくなったかと思います。

819 ◆wqJoVoH16Y:2011/07/25(月) 22:54:16 ID:4EYPR1QQ0
本スレ518 〜夢に逃げている暇は無い。彼らには成すべきことがあるのだから。から


「魔王」
「撃って出るつもりか」
全てを悟ったかのように、魔王はカエルの言葉を待つまでもなく尋ねた。
カエルから聞いたことの顛末を鑑みれば、それほどの憎悪の具現が暴れたにも拘らずたった一人しか死んでいないということになる。
「この剣と石を通じて、鼓動が聞こえてくる。勇者の力はそれほどのものということだ」
悪い冗談かとも考えたが、勇者の座に近しいカエルの持つ確信はそれを補って余りある信頼があった。
そしてそのカエルが持つキルスレスもまた、深淵に呼応するようにその力を発露し始めていた。
操作とまではいかなくても、感応石と首輪によって構成される共界線に干渉することで生きた首輪の位置を“識る”ことができるようになったのだ。
「総勢9人の軍勢か。お前達が城に来た時よりも多いとはな」
カエルに連続でケアルガをかけてもらいながら、魔王は自身のダメージが消えていくのを確かめていた。
「10人だ。あの光が、真に勇者の輝きなら、な」
陽光に眼を細めるようにして、カエルは自嘲気味に言った。
首輪を持たぬあの憎悪は果たして参加者だったのだろうか。その生死は分からない。
だが、アレもまた“救われた”という確信だけがカエルの胸を打つ。
あの光を直視すれば誰もが認めるだろう。勇者とは“そういうもの”だと。

どくん。
胸の高鳴りを掻き毟る様に抑え、カエルは爬虫類の如く笑んだ。そういうものだからこそ――――目指す意味がある。
「好きにしろ。最早、数など瑣末だ。雑兵とはいえ、ここまで数が開いてしまえばな」
「手傷も多い、直ぐには動かないだろうが……待ち受けていては圧殺される」
大盤振る舞いの回復魔法を連発しても尚、カエルに疲れは見えなかった。
どくり、どくりと強まる鼓動が、体力のみならず魔力をも剣の所有者に勝手に供給している。
これならば、感応石から離れても共界線が繋がっている限りこの状態を維持できるだろう。供給源が何かなど、言うまでもない。
「叩くなら今を置いてない、か。放送を待つという手もあるが……これ以上死者を数える意味もないな」
「逆手に取るぞ。戦力差をひっくり返すならば確実に決める必要がある」
魔王が魔鍵に魔力を込めながら空いた手でカエルに触れ、伝えられた座標へと転移プログラムを構築する。
既に戦況はあの雨戦よりも悪化している。11人を彼ら2人で崩すのであれば、持てる全てを費やさなければならない。
マリアベル達は、全ての首輪と繋がるこの遺跡の本当の意味とそれによって強化されたキルスレスの認識力を知らない。
マリアベル達は、カエル達の快復が想像以上の速度で達成されたことを知らない。
マリアベル達は、カエル達が転移能力を保有していることを知っている。しかし、カエル達が“待つ”と思っている。

その空白の未知を全て用い放送に身構える敵軍勢を狙う―――――――転移電撃戦以外に、この劣勢を覆す術は無い。


以上のように修正します。よろしくお願いします。

820 ◆wqJoVoH16Y:2011/07/26(火) 07:50:47 ID:GkkKGP0Y0
上記の修正に誤りがありました。

誤:既に戦況はあの雨戦よりも悪化している。11人を彼ら2人で崩すのであれば、持てる全てを費やさなければならない。

正:既に戦況はあの雨戦よりも悪化している。C7にいる者達を彼ら2人で崩すのであれば、持てる全てを費やさなければならない。


よろしく願います。

821龍の棲家に酒臭い日記 ◆wqJoVoH16Y:2011/08/18(木) 03:01:18 ID:rH4aOhw20
既に太陽は御身の半分以上を海面から顕わにしていた。
空は僅かな星々が夜の名残をのこすだけで、紺色の空は青に転じようとしている。
雲はいち早く陽光を浴びて白く輝き、流れる風を受けて空を泳いでいた。
今日も暑く、長い日になるだろう。木々と葉に斑と隠れた森から見上げただけでもそう思うに十分な空だ。

そんな風戦ぐ森の中で、セッツァー=ギャッビアーニは寝ていた。
地面に茂った草を床に敷き、朝日の程良い熱を薄衣と自らに掛けて、手頃な厚さの書物を枕にして横になっている。
「随分と余裕だな。この殺し合いの中で他者の前で寝入るとは」
手頃な木々に腰かけたピサロは寝入ったセッツアーを嘲る。
その手に武器を備えている無粋を差し引いても、新緑の光の下で銀の髪を輝かせる男は、それだけで絵画のように世界に調和していた。
「こう見えても健康には気を使う方でね。幾夜を越えてギャンブルに興ずることもあるが、無駄な不養生を自慢する気もないのさ」
くく、と軽い嘲笑が森に木霊する。如何なギャンブラーといえど、自らの意識まで種銭にして眠り入るはずもない。
度胸と無謀の境を知る男は、眠ることなく、しかし限りなく眠りに近い形で休んでいた。
良く見ればその周囲にはパン屑の欠片が散っている。蟻が見れば、これ天恵と巣穴に運ぶだろう。
「私の眼前で眠るのは養生と言えるか?」
「ああ、言えるね。旦那が目を光らせている、これほど安心できる“今”なんてそうそう得られるもんじゃあない」
セッツァーは横になったまま、ガサゴソとデイバックの中を漁り、水と食料をピサロに向かって投げた。
信用の証のつもりだろうか。ピサロは何も言わず、水だけを手にして口に含んだ。
賭けの場では全神経を張り巡らせるが、一度張ればそこに疑いも迷いも見せない。
いつの間にか『旦那』とピサロを称する、この妙な愛嬌もまたセッツァーの処世である。

「腹が減ってはなんとやら。一度戻ったのは正解だったな」
「どうだかな。腹が膨れたところで、人が死ぬわけでもなかろう」

寝返りを打ったセッツァーの眼の先に、天罰の杖の触り心地を確かめていたピサロがいた。

ブリキ大王の上で幼い少女を撃破した彼らが一拍を置いて先ず向かったのは対主催がいるであろう南ではなく西だった。
その目的は、彼らの最大の障害と成り得るアシュレー=ウィンチェスターの必死だ。
ブリキ大王一台を使い潰してまで得たものが『“これならきっと”アシュレーは死んだ“だろう”』では割に合わない。
『アシュレーは死んだ』でなくてはならないのだ。事実は短い方が善い。
故に彼らは西へ赴き、偉大なる死体を探した。
当然、死体でなければ死体にするつもりで。死体であればどれほどの奇跡を以ても蘇らない死体にするつもりで。
結果から言えば、彼らは然程労苦することなく目的を達した。死体を辱める必要もなかった。
そこには、何の抑揚もなく“崩された”人間の部品があっただけだったのだから。
(ハロゲンレーザーを破った金色の光、人間の業とは思えない死体……まさか、な)
セッツァーが与えたダメージと死体に残った痕の帳尻が合わない事実は、容易に理解できた。
それはつまり、アシュレーを“殺し直した”バケモノがいたということだ。
そしてそのバケモノの名前は、簡単な消去法によって自ずと浮かびあがる。
ゴゴ、下の下の物真似野郎。セッツァーの知らない誰か。

セッツァーは瞼を閉じてその時をトレースしていた思考を遮断した。
感情は選択の精度を鈍らせる。直観は信ずるべきだが、思い込みはギャンブラーにとって最大の毒だ。
アシュレーを殺したのがゴゴであると決め打つことに何のメリットもない。とびきり染みた化物の参加者が1人いる。それだけで十分なのだ。

822龍の棲家に酒臭い日記 ◆wqJoVoH16Y:2011/08/18(木) 03:01:57 ID:rH4aOhw20
そう考えればアシュレーの武器と、デイバックを3つを入手できたのは“半分”僥倖と言えた。
武装の拡充、使い捨てできる糧抹の充達は確かに僥倖だ。
「余計なものさえなけりゃ、大満足だったんだがな。クソ」
栞を一枚指でヒラヒラさせるピサロの姿が面白くないのか、セッツァーは再び寝返りを打ってピサロから背を向けた。
確かに、あの花の栞が何枚もあったことは面白くない。
何故面白くないのかが理解できないことが、また面白くない。
面白くないのに捨てる気になれないのが、輪をかけて面白くない。
だが、何より面白くないのは振り向いた先にぽつねんと置かれた捩じれた首輪だった。

死体から回収されたものではない、明らかに首から引き千切られ、尚爆破していない首輪――――――“外された首輪”だ。

(もう外した奴が居やがる。オディオが大掛かりなアクションを起こしてないってことはまだ逃げた奴はいないだろうが……急ぐしかねえ)
1個出てきてしまえば、2個目を疑わぬ莫迦はいない。だが、勝者を目指す彼らは敗者の逃亡を許容できない。
首輪を外せる何某かの術が存在するという確かな光は、断固として摘まねばならないのだ。

「あまり焦りを表に出すな。お前が選んだ休息だろう。唯でさえ矮小な人間が、より小さく映るぞ」
「アンタがそれを言うのかい? あの光を見て、あれほどまでに取り乱した旦那が?」

そう言ってセッツァーがせせり笑おうとしたその瞬間、轟とピサロの手にあった栞が魔炎に包まれ、僅かに残った灰も手で握りつぶされた。
セッツァーは常と変らぬ素振りで鼻を鳴らしたが、その背中でつうと汗が垂れるのを感じた。
僅かなりともこの魔王と行動を共にしたセッツァーは、ピサロの理性と感情の境目を感覚的に理解し始めていた。
その上で、今のは踏み込み過ぎたと反省する。あと半歩踏み込んでいれば、この薄氷の如き盟約も一瞬で瓦解していただろう。

そう、本来ならばここで休息する暇は無かった。
アシュレーを倒し、少女を見逃した彼らは“先んじて遺跡に向かう心算だったのだ”。
それこそが、少女や物真似師を無理して追撃せず、敢えて見逃した理由だった。
ブリキ大王を用いるとはいえ3人を全員を倒そうとすれば何処かしらに無理が生じ、手傷を負う可能性があった。
故に彼らはその束ねた力をアシュレーの必滅に向け、残りには別の役割を与えたのだ。
それが、敢えて残党をヘクトル達の懐に潜り込ませること。
残党を意図的にもう一方のチームに送ることで、セッツァー達3人の存在を示し、ジョウイの計画をズラすことだ。
自分達の存在を知れば、容易にジョウイが目論む南征へと動けまい。後顧の憂いを絶つべくこちらを狙うことも考えるだろう。
ジョウイが獅子身中の虫である疑惑を含め、暫くは喧々諤々の云い合いが続くはずだ。
その隙に右脇を縫って遺跡へと先に入り魔王と同盟交渉を結ぶなり、いっそ遺跡を縦に潰す工作をするなり、優位を確保する。
そのハズだった。あの雷光を見るまでは。


『何故……何の故にだ、勇者よ! お前がそれだけの光を持っていたというなら、何故この光はロザリーに届かない……ッ!!』

823龍の棲家に酒臭い日記 ◆wqJoVoH16Y:2011/08/18(木) 03:02:42 ID:rH4aOhw20
あの時のピサロの慟哭をセッツァーの鼓膜が思いだす。
移動を進めようと先ず東に戻ってきた矢先、黎明に輝く空に見たのは、莫大な雷の塊だった。
セッツァーにとっては賭け先を変え得るに足る脅威として、ジャファルにとっては疎ましき光の極点としてしか映らなかったもの。
だがこの魔王にとっては、その痩躯を怒りに漲らせて尚足りぬ光だったのだろう。
あの眩き光が真の光だとしても、否、真の光だから故に“世界が光に充たされぬことを知ってしまう”。
当り前だ。全てが光に照らされることなど無い。
ここにジャファルという闇がいるように。太陽と空の全てを求めるセッツァーがいるように。光を失ったからこそピサロがここにいるように。
全ての夢が叶うことなど、無い。星の全てを照らすことができぬように、全てが救われることなど無いのだ。

「それを言われちゃあ仕様が無い。とりあえず、ジャファルの調査を待とうぜ。
 あれほどの現象が起きたのなら、場は大荒れのはずだ。出目の張り直しをするしかないさ」

なんしか気を静めたらしいピサロを見ながら、セッツァーは再び寝転がって空を仰ぐ。
あの雷光を見てから表向きは平生を保っているが、それが逆にピサロの中で何かを渦巻かせていると教えていた。
ここで動くのは不味い。そうしてセッツァーは冷静に冷酷に、休息と調査に目を張ったのだ。
この中で一番斥候に長けたジャファルに雷光の着弾点周囲の状況調査を願い、放送まで休息することを選んだのだ。

こうして、彼らは緩やかな夜明けの陽光の中で休息を取っている。これが最後の休息になると思っているかのように。

「そこまで気にするかい、旦那」
「……瑣末だ。勇者という名前にも、魔王という名前にも。この想いの前にはな」
燃え散った花の栞の灰の一抹が風に浚われ切るまでを見届けたピサロは、誰に語るでもなくそう言った。
例え勇者が全てを救うのであっても、対を成す魔王が誰かを救っては成らぬ道理は無い。
否、救いたいと言う願いの前には、勇者と魔王の違いなど瑣末だ。
『ピサロ』が『ロザリー』を願う。その想いの前には、たとえ勇者の光であっても邪魔は許されない。

「――――――――――名前、ねえ。“まさかあの女に感化されたか”旦那?」

強さを増す陽光に僅かに目を細め、セッツァーは不快を顕わに言った。
それを見たピサロが、最早値無しと鼻を鳴らして会話を打ち切る。
木漏れ日と木々のざわめく音だけが残り、セッツァーは再び瞼を閉じた。
その裏に浮かぶ、あの船で最後に起きた出来事を追い払いながら。

824龍の棲家に酒臭い日記 ◆wqJoVoH16Y:2011/08/18(木) 03:03:14 ID:rH4aOhw20
―――――・―――――・―――――

今は昔。セッツァーとジャファルがピサロと仮初の盟約を結び、アシュレー達を討たんとする前の話。
そう、同盟を組んだ彼らが未だアシュレー達かヘクトル達か、どちらを攻めるか決めかねていた時のことだ。

いずれにしても座礁船に居座ることに意味は無く、船を出ることにした彼ら。
発つ前の餞別とばかりに、彼らは何かめぼしいものが無いかと船内を物色していた。
ジャファルが言うにはこの船の造りは彼らの世界の海賊船のそれであり、その船内には武器屋や道具屋もあったという。
流石に死者の落とし物が見つかるとまでは期待できずとも、せめてもう一度調査をせずに出るは惜しい船だった。

「やはり、めぼしいものは無いか」
「流石にそこまでアンフェアでもないか。いや、あのオディオなら当然か」

金銀財宝はあれど、経済の意味が異なるこの場所ではそれは宝とは言えない。
あらかたの調査を終えたジャファルに、セッツァーは首をすくめて手をひらひらと泳がせた。
今までの放送からもあからさまに伝わるオディオの人間に対する憎悪。余りに強い憎悪は、逆に言えばどの人間にも等しい憎悪だった。
聖人であろうが、道化であろうが、魔王であろうが、幼女であろうが、勇者であろうが、人間である限り皆オディオの憎悪すべき対象なのだから。
故に、オディオが特定の誰かに過度に肩入れをするとは思えない。ある意味、オディオは黒一色のルーレットともいえる。
ならば、これ以上を思索と探索に費やしても仕様が無い。早々に調査を終えて、ヘクトル達の動向を抑えるべきか。

上から順に降りてゆき最後に辿り着いた酒蔵で、彼らはそのルーレットに僅かにあった『傷』を見つけた。
無法松があれほどに呑んでいた以上、酒蔵があることは承知だった。重要なのは、無法松が動かしに動かした樽の向こう、その紋章だった。

「紋章、魔力を備えると言うことは、唯の落書きではないな」
「これは……真逆、転移の紋章か?」

眇めるように紋章に流れる魔力を見定めたピサロと、その紋章に驚きを示すジャファル。
魔力と知識によって、唯の落書きは意味ある紋様となった。そして、ギャンブラーが手に取ったカードが、紋を門に変える。
「何か意味のあるサインだと思ったが、秘密の部屋への招待状ってか…?」
「まさか、ここにもあると言うのか。ブラックマーケットが」
紋章の周りの空間が歪み、秘密の店への扉が開く。
ブラックマーケット。選ばれた者だけが持つカードを持った者にのみ、戦場の何処かにある扉を開いて招く闇の市。
場所にもよるが、そこに並ぶ品はこの海賊船の品揃えとは比べ物にならないだろう。

「入るつもりか?」
歩を前に進めたセッツァーに、ピサロは大した感情もなく言い棄てた。危険を案じる要素は微塵もない。
「こんなものを用意してるってことは、何もありませんでしたってオチはないだろう。
 鬼が出るか蛇が出るか、俺達の新たな門出に運試しと行こうじゃないか」
そう言って、彼らは虚空の暖簾を潜る。
そこにいるのがある意味鬼であり、ある意味爬虫類であることも知らぬまま。

825龍の棲家に酒臭い日記 ◆wqJoVoH16Y:2011/08/18(木) 03:03:56 ID:rH4aOhw20
ブラックマーケットと言えば、どんなものを想像するだろうか。
銃火器、薬物、お花、内臓etcetc。それは莫大な金額を積んで買い取るものか、自分のLvを売って得るものか。
いずれにしても、その名の通りブラック―――――闇の黒を想像するだろう。
光射さぬ闇の世界の商い、その最前線。薄暗い路地に、微かな灯りだけを導に商いを行う。そんなところではないのだろうか。

「……俺の知っているブラックマーケットと違う」

ジャファルはニノの関わらぬ状況では珍しく露骨そうに厭な顔を浮かべ、ぼそりとそう洩らした。
そういう意味では、この光溢れる真っ赤な部屋構えは明らかに闇市とは程遠かった。
朱で染め上げられた壁と柱。掛け軸には人体の構造図や巨大な手相を記したものが並んでいる。
四角をグルグルと重ねたような仕切りがあるだけで、部屋はそれほど広くは無く、奥にもう一つ暖簾があるだけだ。
狭い、店というには余りにこじんまりとした店だった。
目ぼしそうなものは、壁に寄せられた木製の薬棚と本棚、店の中心に置かれた四本足の机。そして空いた椅子と―――――

「……あんなところに乳があるな」
「ああ、乳があるな」

机の奥に見えるどんもりと乗ったおっぱいに、セッツァーはチンチロリンで六面全部ピンのサマ賽を振られたような面をしながら吐き捨てた。
一方ピサロは、本気で有象無象の脂肪の塊としか見ていない目で、事実だけを反芻した。

見なかったことにして帰ろうか。決して相容れぬ3人は奇しくもこの時意見を同じくした。
酒蔵の酒精に当てられたのだろう。潮風を浴びて目を覚ませば、元通りになるはずだ。
そう思いたかったが、部屋全体から漂う酒の匂いと、小刻みに震える双丘を見てはここを現と認めるしかなかった。

「あ゛〜〜〜〜〜ひゅへもにょ〜〜〜〜〜? だぁんみゃじにゃひ〜〜〜 にゃは、にゃはははははは」

グイ、と反りかえった背中が弓なりにしなり、漸く乳から上の形が繋がる。
紅い蓮のような、誰が見ても異文化体系の衣装<チャイナドレス>。端正の整った顔にズリ下がった縁なし眼鏡。
ピサロのように細長く尖った異形種の耳。酒に蕩けても蠱惑的な瞳。

「ん〜〜〜、え゛……もひかひてぇ……ぉたおぎゃくざんんん〜〜〜?」

海賊船の酒蔵の中には、酒臭い店。酒臭い店の中には、酔っぱらった女店主。

「――――――えー、コホン。はぁーい。メイメイさんのお店へようこそぉ♪」

今更に取り繕ったような営業スマイルを現わしながら、店主はその屋号を掲げた。
この頭痛を忘れる為に酒を呑むべきか、酒にやられてこの頭痛を生んでいるのか、セッツァーは賭ける気にもならなかった。

826龍の棲家に酒臭い日記 ◆wqJoVoH16Y:2011/08/18(木) 03:05:00 ID:rH4aOhw20
「だーってさぁ、こうもお客が来ないと、これくらいしかすることないじゃない?」
店の主はケラケラと笑い、呑んでたらあぶり肉も欲しくなっちゃうわねぇなどと言いながら盃に充たした酒を呑む。
状況に追従し切れない客達は黙ってその盃が空になるのを待つしかなかった。
少なくとも、会員専用の秘密の店がが万人繁盛だったらそれはもう秘密でも何でもないだろう。
『いつでもどこでも気軽に利用出来ちゃう、それがメイメイさんのお店なのッ!』
とへべれけになって言われても、説得力が無い。どんな看板を掲げても偽り有りと云われるだろう。
「OK。アンタがアルコール中毒なのもここがどんな店なのかもとりあえず後回しだ。アンタ、誰だ?」
「私ぃ〜〜? メイメイさんはぁ、見ての通り、どこにでもいるぅ、普通の、敏腕せ・く・し・ぃ店主Aよぉ?」
やけにその4文字を強調して、店主は腕を上げて脇を見せつつ妙に腰をくねらす。
エドガーほどまでとは言わないが、マリアに扮したセリスを拐したセッツァーも女性の扱いは心得ている方である。
そのセッツァーが思った。いつ以来だろうか、女を本気で殴ってもいいかと思ったのは。
「あ、疑ってるでしょ〜〜〜。いいわ、ここで引いたら女もとい店主が廃るッ!」
その不満MaxHeartな表情を察したのか、店主は足元から何かを取りだそうとする。
3人は戦う気か、と僅かにそれぞれの武器に手を伸ばしたが殺意の無い店主の様子に、それ以上の動きは見せない。
「こうみえても私、占い師なのよ。貴方達が何者かは、店に入ってきたなりマルっとお見通しってなワケ」
「……入ってきたなり、仰向けで爆睡してたと思ったのは気のせいか。で、その証に俺達が誰だか当ててみせようってかい?」
眉間を揉みながら、セッツァーは辛うじて店主の云わんことを掴み取る。
まだ彼らは自分達が何者であるかを口にしていない。その中で賭士、暗殺者、魔王であることを一目見ぬいたということか。
「ふふーん。そういうこと。ここに来たのも何かの縁。お近づきの印にぃ、貴方達に必要なものをあげちゃう。はい、どーぞ!」
そう言ってメイメイは机の上に ド ン 、と何かを置いた。セッツァー達の視線が机に集まる。
それぞれの職種を見抜いたというのならば、出てくるのは武器か、はたまた彼らにしか扱えない道具か。
もし、それ以上のことまでも見抜いた証拠を出してくるならば、始末も厭わないという決意で彼ら3人は机の上の品を見た。

「地図にコンパス。筆記用具に水と食料。名簿でしょ、時計でしょ? 夜の為にランタンも入ってる―――――貴方達には必要なはずよ?」
そう言って、店主は3人分の新しいデイバックを出して酒で焼けた小さな腕を組んだ。
セッツァーが3人分のバックをぐい、と掴みあげる。

827龍の棲家に酒臭い日記 ◆wqJoVoH16Y:2011/08/18(木) 03:06:05 ID:rH4aOhw20
「貴方達も参加者……でしょ?」
天地開闢、森羅万象を眇めたような満面の微笑で店主は彼らを見た。
「有ってるが意味がねえじゃねえか!」
その言葉と共に、店主の頭上を3つのデイバックが覆い、落下する。
「…え? う、うひゃあ〜〜〜!!!!」
抗弁する暇もなく、椅子から転げ落ちた店主はデイバックの下敷きになってしまう。
この島にいるのであれば、54人中54人が参加者だろう。適当に言っても殆ど当たるに決まっている。
ルーレットで赤と黒に同額を賭けるようなもの、下手をすればカジノから追い出される賭け方だ。つまり、賭けにも占いにもなっていない。
「……もしや、特別なアイテムを得られると期待してたのか?」
「……してないな。ああ、してないとも」
ジャファルの問いに、セッツァーは広大な空の果てを見るようにして目を逸らした。
舌打ちをしながら、セッツァーは転げ落ちて「お、想ひ出がりょーくーしんぱんしゅにゅぅぅぅ……」とノびかけた女店主を見下した。
常のセッツァーならば相手が誰であれ、まず相手の価値を見極めているだろう。
あるいは、自分の夢にとって利になるか障害になるか、はたまた“それすらもできないか”を判断しているはずだ。
だが、眼の前の女の価値を彼は未だ見極められずにいる。価値がない訳ではない。ないかどうかさえ分からないのだ。
まるでオペラをブチ壊しにしかけたタコ野郎を思い出すほどに、掴みどころがない。
この店の中に充満する酒のせいか、ギャンブラーを常に救う直観、そのキレが僅かに鈍っているとさえ思う。
(スラムの女衒じゃあるまいに、何でこんな酔い潰れた女1人にここまで……?)
その時、セッツァーの鈍りかけた感覚が遅れて警報を発する。そうだ、この女は何故ここにいる?
セッツァーはピサロに名簿を渡す前にその名前を全て記憶している。そして“その中にメイメイという名前は無い”。
ならば55人目の来訪者? 否。この女はこの場所を自分の店といった。彼女が招かれざる客であるならば、
様々な世界の建造物を寄せ集めた何処の世界にも存在しないオディオの箱庭に、自分の店があるはずが無いのだ。
セッツァーが、床に突っ伏した女の首元をみて―――“そこに首輪が無かった”事実に、今更確信した。

(つまり、こいつは“招かれている”)
「戯れはそこまでにしておけ。私の眼はごまかせんぞ、竜の女よ」

その確信に呼応するようにピサロは口を開き、残る二人がピサロと店主の間で交互に視線を動かす。
「その身に纏う魔力、ドラゴラムによく似ている。竜が人に化けたか、少なくともヒトではあるまい」
ピサロが気付いたのは、セッツァーとは別の要素であった。酒精に紛れた微かなドラゴンの気配である。
だが、その総身をくまなく見渡しても人間そのものである店主を前に、ピサロはむしろその姿を、高位の変化魔法と見た。
そして、これほどの実力を持つ女を首輪も無しにオディオが野放しにしておく道理が無い。

「流石、一度進化の果てを見た御方は違うわねえ。そこのあたりは乙女のヒ・ミ・ツ、ってことで。
 でもぉ、呼ぶなら竜じゃなくて『龍』って言ってくれた方がお姉さん嬉しかったり」

828龍の棲家に酒臭い日記 ◆wqJoVoH16Y:2011/08/18(木) 03:06:42 ID:rH4aOhw20
にゃはは、と笑いながら立ち上がりグイと盃の酒を飲み干す女店主。
その振る舞いを見ても三人は気を抜くことなどできなかった。
「そう! メイメイさんは一見どこにでもいる、普通の、敏腕せ・く・し・ぃ店主A。
 ――――しかしてその実態は……『オルステッドさま』の忠実なるしもべで――――っすッ!」
後光でも発しそうなほどのポーズを決めながらメイメイは高らかにその正体を語るが、
3人は3人とも「誰だ、オルステッドって」という率直な疑問に気を取られた。
(オディオのことか? いや、オディオの配下にオルステッドって奴がいて、その手下って線もあるか)
「ほう、そりゃあ凄い。で、そんなアンタは何をするためにここにいるんだ?」
そこを問い詰めたところで優勝を目指す彼らにはさして意味が無い。
店主の調子に乗せられかけたが、あまり浪費できる時間もない。それよりもこの場所の役割をこそ聞くべきだろう。
漸くこの女の価値をテーブルに載せ始めたセッツァーは当然聞くべきことを聞いた。
特異な場所に配されており、ここに入るための符牒が支給されている以上、
ここを訪れた者に対してするべきことが言い渡されているはずだ。

「ふふふ、よくぞ聞いてくれましたぁ!
 このメイメイさんの使命、それは――――――それは?――――――にゃは、にゃはははは……」

堂々と胸を張ってそれを高らかに言おうとした店主が、途端に語気が弱まり、みるみる内に萎れていく。
「……忘れたのか?」「いや、この欠落の仕方だと最初から何も言われてないのかもな」
「にゃ、にゃにおう! そんなことあるわけにゃいじゃにゃい!」
毛並みを突然触られた猫のように店主はジャファルとピサロを威嚇するが、それは逆効果にしかならない。
「じゃあ、アンタここで今まで何してやがった。何でもいい、言ってみろ」
「何って……お酒飲んでー、お休みして―、お酒飲んで―、ツマミ食べて―、お酒飲んで―、お昼寝して―、それからぁ」
「もういい。呑んで寝るだけの簡単な仕事だってことはよっっく分かった」
自分の問いに指を折って答える店主を、セッツァーは制した。重ねて言うが、セッツァーも女性の扱い方は弁えている。
だから今、手持ちの水をありったけ顔面にブッかけてやろうと思っても、そこをぐっと堪えるのである。
幾らなんでもオディオ達がそのような自宅警備の真似事の為に龍種を置く訳が無い。
だが、真贋を見極めてきたセッツァーでも彼女の言動に嘘を感じることが出来なかった。ならば一体、この女の意味は…?

「ん、何やら莫迦にされた雰囲気。店主的に。それじゃあ、お店らしいことしちゃおっかしら?」

そう言った店主が店の奥から取りだしたのは、巨大なルーレットだった。
外周から半径の直線が引かれ、色の違う扇状のマスが作られている。
「運命の輪って言ってね。ま、軽い運試しのようなものよ。当たり所が良かったらステキな景品もつけちゃう!」
ダーツを1本差し出し、店主は蟲惑的な瞳を浮かべる。
このスチャラカなペースに着いていけずとも――あるいは、着いて行きたくなくとも――店主の云わんとすることは3人にも理解できた。
円の中の配色がそれぞれ異なり、そしてそれぞれの面積も異なる。恐らく面積の小さいものから順に1等から3等。
ダーツを投げて当たった場所に応じた賞品が手に入るのだろう。

「何を付けるつもりだ、龍よ。勿体ぶるからには、相応のものを配するのだろうな?」
およそこの手合いのイベントから最も縁遠かろうピサロが、試す様に店主に問いかけた。
当然、魔族の王たるピサロが賞品が気になって尋ねているなどということは無い。
本気で欲しいのであれば、名簿のように力づくで奪い取るのがピサロだ。
だが、未だ酒精の奥にその実力の底を見せぬこのドラゴン種を相手取るほど愚かではない。
この殺し合いの参加者でも、憎むべきヒトでもなく、ましてやオディオに通ずる存在であるというのならば手をかける理由もない。
ピサロ、そして残る二人も、優勝してオディオの報奨を得ようとしている以上、ここで参加者よりも厄介な存在に労力を割く訳にはいかないのだ。
「そうねぇ。そしたらぁ、上から順にぃ“貴方達にとって役に立つもの”をあげちゃうわ」
そういって店主は蕩けた目付きで指を幾度と振って、セッツァー・ジャファル・ピサロの順に指を射止める。
だからこそピサロはむしろこの龍が何を見て、何を考えているのかにこそ興味を持った。

829龍の棲家に酒臭い日記 ◆wqJoVoH16Y:2011/08/18(木) 03:07:28 ID:rH4aOhw20
「――だそうだが。どうする?」
ピサロはセッツァーの方を向き、その応手を伺う。1本しかないダーツ、そして景品はそれぞれにとって役立つ物。
誰が投げても、ダーツが何処に当たっても不和の要因になるだろう。
利害関係でしか成立していないこの即席チームに於いて、偏った利は害にしかならない。
このチームを呼び掛けたセッツァーの手腕こそが、図らずともこの女店主の手によって試されている。
「……外した場合は?」
「安心なさいな。ハズレでもタワシ位はあげちゃうから」
セッツァーが店主に問いかけ、その答えを聞いた後、指を顎に当てて考え込む。
既に「なんでタワシ?」などと口出しする気配もない。その眼は、魚が海に還ったように常の鋭い眼光を取り戻していた。
「外れて元々の話だ。ジャファル、お前に任せる」
「……待て、俺は……」
「俺もシャドウほど投躑が上手い訳じゃないしな。なら、一番得手そうな奴が投げるべきだろ。
 好きに狙いな。花束の一つくらい、当たるかもしれんぜ―――――、―――――――、―――。
 構わんな、ピサロの“旦那”?」

そう言ってセッツァーはジャファルに近付き、密着するような近さでダーツを手渡し、
ピサロに確認を求める。ピサロはそれが妥当な所か、とその選択を了と認めた。
誰の賞品が当たるにせよ、先ず的に当てられなければ話にならない。
であるならば剣を扱うピサロとギャンブラーであるセッツァーよりも、暗殺者であるジャファルが消極的適任ということか。

「誰が投げるかは決まったかしら? それじゃ、ルーレット・スタート!」
店主が扇子を広げると、ルーレットが独りでに動き出す。
如何な妖術を使ったのか、店主は扇を口元で戦がせるだけだ。
運命の輪が高速で回転する中、ジャファルはダーツを構えることなくだらりと腰に垂らしている。
しかしその眼光は鷹のように獲物を見定め、今にも喰いつかんと鬼気を発していた。
廻す、廻る。運命の輪が回る。弄ぶように輪廻が回向する。
翻弄されるその運命の渦から、たった一つの光を釣り上げる時を待つかのように、輪を見続ける。
「ちょっとぉ〜〜〜、慎重になるのは分かるけど、もう1分経っちゃうわよぉ……ってぇ!」
あまりの動の遅さに痺れを切らした店主が声をかけようとしたその時だった。
音もなく放たれたジャファルの一撃が運命の輪を穿つ。ジャファルの手から矢が離れた後、次第に輪はその回転数を落としていった。
暗殺者が貫いた運命、その色彩は――――――


「外した……だと……?」


ピサロがその結果に驚きを示す。自分のエリア<3等>が当たるとまで望むつもりはないが、真逆ルーレットにあたりもしないとは。
だが、どれだけ目を眇めようが凝らそうが突き刺さった場所は変わること無し。運命の一投は無情にも、光を掴むことはできなかった。
「あちゃー……ま、ま、こう言うこともあるわよ! 運勢なんてコロコロ変わるものだしねッ!
 っていうか、え、ちょ、タワシってウチの店にあったかしら……にゃ、にゃはははは……」
予想外過ぎる展開に、さしもの店主も動揺を隠せないらしい。
確かに、ジャファルは暗殺者とはいえその本分は接近からの瞬殺である。
ましてや今は殺しとは程遠い遊興。実力を発揮できるはずもない。
「ゴメンナサイ……探したけどタワシが無くって……その、ニボシで良かったら……」
店主はそう言って申し訳なそうにジャファルに魚臭い袋を渡す。善い出汁が取れそうな、猫も魚もまっしぐらの良質煮干である。
無言でそれを受け取るジャファルに、店主は乾いた笑いを浮かべながら手を振った。お帰りくださいという意味だろう。

「ちょっと待ちな。もうひと勝負、申し込むぜ」

830龍の棲家に酒臭い日記 ◆wqJoVoH16Y:2011/08/18(木) 03:08:14 ID:rH4aOhw20
だが、その意を分かった上で敢えてセッツァーが店主に話を斬り込んだ。
そのタイミングの良さに店主は面食らったが、直ぐに目を細めて否定を解答する。
「……気持ちは分かるけど、それはちょっと不味いわねえ。試したのはあくまで貴方達の運気。
 もう一回やれば当たるとか、それは純然たる天運とは言えないわ。残念だけど、貴方達はこの一回―――――!?」
「なら、これでどうだい?」
勝負を切り上げようとする店主の言葉を断ち切ったのは、セッツァーが取りだしたもう一つのカードだった。
シルバーカード、メンバーズカードと同様ジャファルの世界の符牒。その意味は商品価格の半額である。
「スプリット。俺達に一回分の権利しかないと言うのなら―――――こいつで、そいつを“半額”にさせてもらおうッ!」
セッツァーが二本の指で投げ飛ばしたカードを店主は中空で掴み取り、マジマジと見つめる。
そして暫く考え込んでから、軽く溜息を付いてもう一本のダーツを取りだした。
「もしかしてぇ……最初から、こうするつもりだったぁ?」
「偶々さ。偶々、ポケットの中にあったもんでね」
そう言って、誰が投げるとかとのやり取りもなく、ダーツを手にしたセッツァーが運命のルーレットの前に立つ。
そう、運命を賭けると言うのならば、ダーツに意思を託すと言うのならば――――――この男以外に有り得ない。

「おっけぇ。ギャンブラーさんの力、何処まで届くか試してあげる。ルーレット、スタートッ!」

誰もそうだと言っていないのにセッツァーをギャンブラーと嘯く龍の店主が扇を開く、運命の輪が軋みを上げて太極を廻す。
本気で廻る世界に、人の意思など徹らぬと謳いあげるように。人はその回転に、ただただ翻弄されるしかないと笑うように。

「でも、それなら最初から貴方がやるべきだったわねえ。唯でさえ回転しているのに、
 ダーツが手元から離れて的に当たるまでの時間が分からないと何処で投げればいいか分からないわよ?」

店主が扇を煽いでギャンブラーの失策を笑う。最初から2回投げるつもりであったのならば2つとも自分で行うべきだった。
そうすれば、ひょっとすれば2人分の景品を得られたかもしれないのに。

「それとも、純粋に運を試すつもりかしら。さてま結果は―――――」
「1ツだけ教えてやる。メチルフォビア<アルコール恐怖症>」

軽口を吐きながら扇を再び戦がせる店主に、氷のように冷たい言の刃が突き刺さる。
まるで自分の喉元にそのダーツが穿たれかと錯覚するほどのギャンブラーの視線が、店主に突き刺さっていた。

「運命<こんなもの>は、ギャンブルとは言わねえんだよ。
 そいつを力でねじ伏せてからが、本当のギャンブルだ。分かったら――――」

セッツァーは運命の輪に見向きもしていない。その眼光は唯店主のその一点を見定めている。
当然だ。最初から何もかもを投げ出して運命などという“まやかし”にその身を委ねる者を女神は愛さない。
頭脳を、力を、己が持つありとあらゆる手管を用いてありとあらゆる運命を撥ね退け、
“その先に立ちはだかるもの”に、己が魂を賭してこそ、女神は漸く微笑む。

「“その特賞に当たったら、3つの景品を全部寄越しな”ッ!」

831龍の棲家に酒臭い日記 ◆wqJoVoH16Y:2011/08/18(木) 03:08:51 ID:rH4aOhw20
店主の扇が“三度戦いだ”刹那、セッツァーの腕が疾った。
美しいフォームだった。ジャファルも、ピサロさえも微かにそう思った。
力みも逸りも気後れもない、自然体の一投。何度投げようとも決して崩れることのないだろうフォーム。
そこに種族も職能の違いもない。どのような目的であれ、研鑽の果てにある結晶は美しい。
一体何百回、否、何万回投げればこれほどのスローが可能になるのか。

「真逆“本当に”最初から――――」
「ああ、ジャファルに言ったとも。外せと、伸ばせるだけルーレットを回させろと」

驚愕に龍眼を見開く店主を前に、セッツァーは不敵に笑う。回転数を下げていく的を、最早見てもいなかった。
一投目は完全なる“見”。そして万一賞品を手にして、有耶無耶に終了させられないように敢えて外した。
そして、セッツァーはたっぷり1分を用いて、魔力で回転するルーレットと扇子の同期に気付いたのだ。

「そっちじゃなくて、特賞の方なんだけどぉ?」
「言わなきゃ気付かねえと思ったか? それこそ、舐めるな」

これこそが、セッツァーの感性が成せた唯一の幸運だった。とっかかりは店主の試すような目つき。
シルバーカードで普通に二回賞品を得ても、誰かの不満を招くこの状況。
もし、それを以て彼らの動きを見極めようとするのであれば抜け道が有ってもおかしくは無い。
抜け道があるという前提でルーレットに目を凝らせば……3等の中に微かに紛れた、4色目。
回転数さえ目算が立てば、廻っていないも同然だ。自分のダーツの技量など、自分が一番信じている。

「生憎と、これでメシを喰ってきた。
 賽の目も、ルーレットも―――運命をねじ伏せられない程度の力で生きていける世界じゃないんでね」
「―――――――――お見事。特賞、大当たり!」

最早言うこと無し、と店主は扇子を閉じて勝者を宣言する。
ピサロが魔族を傅かせ、ジャファルが闇を統べると言うのならば。
セッツァーは、運命を跪かせる者―――――ギャンブラーなのだ。

832龍の棲家に酒臭い日記 ◆wqJoVoH16Y:2011/08/18(木) 03:09:50 ID:rH4aOhw20
「3等賞。先ずは貴方ね、カッコイイ魔王様ぁ?」
「フン。やはり見抜いていたか。その眼、魔眼か?」
ルーレットが片付けられ、テーブルを挟んで魔王と店主が向かい合う。
「ちょーっとばかし魅了の力はあるけど、そんな大したものじゃないわよぅ」
ピサロに魔眼と評された店主は眼鏡越しのその瞳でピサロの痩躯を見渡す。
くすんだ銀の髪、疲労の色を隠すことはできないが、その表情に充実する気力を見とって店主は満足気に頷いた。
「煩悶は乗り越えた、ということかしら。貴方の内に根差す想いが――――貴方の憎悪すべき人間にもあるということに」
「……それがどうした。誰が何を想おうが、この想いは私だけのものだ。そして、誰にも邪魔は出来ん」
それは、邪魔立てすれば貴様だろうと屠るのみという店主に向けての魔王のメッセージだった。
その暗喩に気付いてか気付かずか、店主は盃の酒に唇を湿らせ、そして言った。

「それでも、貴方はその想いを邪魔したわ。貴方と同じように、唯“逢いたい”と願った1人の生徒の想いをね」

店主の眼鏡の奥に1つの光景が映る。
もう逢えないと、さようならと別れた教師と生徒。
生徒は誓った。もう一度逢いに行くと、今度は私が貴女を救いに行くと。
その願いは叶うはずだった。それは歪んだ時の成就であろうとも、生徒の願いを叶えるはずだった。
だが、それは叶わなかった。雷の奥に観た勇者の虚像に怒り狂った、魔王の所業によって。
「勘違いしないでね? 恨み事を言いたい訳じゃないの。
 貴方の想いもまたヒトの夢であり、また誰かの想いによって叶わぬユメと成り得るということよ」
店主はぐいと酒を飲み干し、新しく酒を注ぐ。そして、それを魔王へ向かって伸ばした。
魔王は何も言わずに、それを受け取りワインとは違う透明な酒を眺める。

「【アリーゼ=マルティーニ】。その想いを胸に抱いて進むと言うのなら、貴方が砕いた想いの欠片くらいは抱えておきなさい」

魔族の王は、龍姫の言葉に応ずるでもなく激昂するでもなく、唯酒を呑むことで応じた。
呑み慣れない酒を一気に煽ったその味わいは、魔王にしか分からない。
その呑みっぷりに満足したのか、店主は微かに笑んで誓約の儀式を発動する。

「名は命、性は星。忘れないで。オルステッド様がオルステッド様でない意味を、魔王が真名で呼ばれない意味を。
 ―――――――“貴方がデスピサロでなく、ピサロとして名簿に刻まれた意味を”」

テーブルの上に召喚された宝箱を開いて、魔王は唯それを掴んだ。

833龍の棲家に酒臭い日記 ◆wqJoVoH16Y:2011/08/18(木) 03:10:43 ID:rH4aOhw20
「さて、お次は貴方ね? 暗殺者さん?」
「戯言など無用だ。品だけ渡せ」
拒否は認めぬとばかりに鋭い眼光を発しながらジャファルは店主に吐き捨てるが、
店主は何処吹く風と酒を飲みながらジャファルの身体をじろじろと眺める。
「その刺し傷、随分手酷くやられたのねえ。見てるこっちが痛くなっちゃう、にゃははは」
店主の何気ない笑いに、ジャファルは傷の痛みを錯覚した。
セッツァーのケアルラによって行動には支障ないレベルまで回復しているものの、
まだ一日と経っていない槍傷、この舞台で恐らく初めて喰らった直撃の記憶はジャファルにしっかりと刻まれていた。
「不思議なものね。どれだけ言葉を尽くしても届かないと思っても、たった一撃の槍が簡単に貴方の世界に証を遺す。
 貴方がたった一人以外の全てを望まずとも、彼女以外の全てが貴方に干渉する」
「……何が言いたい?」
無意識に脇腹を擦ろうとする右手を堪え、暗殺者は店主に向けて殺意を放つ。
何も知らぬ者が彼女の名前を口にしようものなら、刎ねてもいいとさえ思いながら。
「世界は広いということよ。このお酒でさえ極めようと思ったら、私でさえ道の途中。況や人の心は、ってね」

極めると言うことは、口にするほど簡単なことではない。ましてや武術など一朝一夕でどうなるものでもない。
それでも、それでも彼女はその事実を受け入れても前に進もうとした。
片腕しか使えずとも、剣でなければ振るえぬ技を、前に突き進むために技を究めようとした。
そこに至る感情を知ることはできずとも眼の前の傷をみれば、確かに刻まれた想いはここにある。

「【秘剣・紫電絶華】。世界は『光』と『闇』だけって訳でもないわ。貴方に刻まれた『雷』の本当の名前を忘れないで」

そう言って店主が渡した盃を、ジャファルは黙って見続けた。
清酒の澄み切った光を見つづけ、やがてジャファルはそれを無言で店主に返した。

「ありゃ、つれない。まあ、それもまた1つの答えよ。だけど気をつけて進みなさいな“若人”。
 お米と水でお酒は出来るけど、お酒から水を、お米を取り除くことはできない。
 例え出来たとしても、それは水でもお米でもお酒でもないものになる。貴方が作ろうとしてるのはそういうものよ」

そう言いながら召喚された宝箱の中身を、やはりジャファルは無言で受け取った。

834龍の棲家に酒臭い日記 ◆wqJoVoH16Y:2011/08/18(木) 03:11:16 ID:rH4aOhw20
そして、ギャンブラーと占い師が対峙する。
「最初は適当にしてたから、油断しちゃったわ。もしかして、カマをかけられちゃってた?」
「いや、最初は本気でアンテナが立ってなかったぜ。アンタが俺にとってどういう存在なのか、見極められなかったからな」
目を合わせずに酒をちびちびと啜る店主に、セッツァーは笑い返した。
「酔っ払いのフリにだまされた? 殺し合いに場違いな空気に乗せられた? この当たりの酒の匂いに狂わされた?
 ――――――違うね。その中に僅かに残った“アンタの敵意”こそが、最後まで分からなかった」
そう、それがセッツァーの感覚を鈍らせていたもの。理由の思いつかない一方通行の憎悪である。
「なあ、俺は一体アンタにとってどれほどの仇なんだい?」
「……安心なさいな。私が『護衛獣』である以上、オルステッド様の意に反することはできないの。
 それに、私には貴方を糾弾する資格はないし、するつもりもないしねぇ?」
にゃは、にゃはは、と酒に焼けた笑いを吐く店主。だが、その飲酒のペースが僅かに速まっていることをセッツァーは見逃さなかった。
「まあ、あんたには礼を言うぜ。ギャンブルの原点に立ち返られた。
 あのルーキーがどんな目論見だろうが、ヘクトル達が何を思おうが関係ない。
 その上で運命を越えてこそ、俺が夢を賭ける大勝負に相応しいってな」
「夢、夢ねえ。風を切って大空を駆ける――――――想像しただけで肴になるわ」
セッツァーの純粋な歓喜に、店主は愛想笑いを浮かべグイと盃の酒を飲み干す。そこには空の杯だけが残った。
「ありゃ、空っぽになっちゃった。これじゃお酒が呑めないじゃない」
空の杯を残念そうに見つめた後、店主は新しい酒瓶を取りだし並々と注いだ。
そこには表面張力限界まで満たされた杯が揺らめいている。
「空の杯には、またお酒を注げばいい。最初から満たされている杯なんてないのよ。
 いいえ。空の器にこそ、どんなお酒を注ごうかという趣がある」
セッツァーはそれを黙って聞いていた。自分が砕いた、2本の空き瓶を思い出しながら。

「―――――【アティ】よ。私がいつか呑もうと楽しみに取っておいたお酒のラベル。呑めなくなっちゃった以上は、仕方ないけどね」

しばしの無言が続く。机の上に置かれた酒をセッツァーは手に取ることもなく、店主は呑むこともなく永遠に似た1秒が連鎖する。
「これからもう一勝負ある。悪いが、酒に酔ってる暇はねえ」
「そ、残念ね。はい、一等賞」
店主は胸に手を入れて、小物をとりだす。それはダイスだった。
ただし、中に細工の施された――――『イカサマのダイス』が。

「貴方達のお酒が最後にどんな味になるか……機会があったら呑ませて頂戴な」
「ああ。機会があったらな」

セッツァーがそれを掴むと、店主は全ての役目を終えたとばかりに手を振った。
もうこの店には用事はない。目指すべきは、ルカ=ブライトを斃せしアシュレーの一党だ。
そうして3人は、入った入口へと進んでいった。

835龍の棲家に酒臭い日記 ◆wqJoVoH16Y:2011/08/18(木) 03:11:55 ID:rH4aOhw20
―――――・―――――・―――――

陽光が緩く照らす朝の森の中、セッツァーは思い出した過去を苦虫を噛み潰す様に堪えた。
そこに茂みを踏む音が鳴り、ピサロ共々立ち上がる。
「来たか、ジャファル。で、首尾は――――」
「既に交戦が始まっている」
戻るや否や、告げられたその一言は彼ら2人といえど震えを呼ぶものだった。ただし、驚愕と歓喜を綯交ぜにしたものとして。
簡潔明瞭なジャファルの斥候結果を具に聞きながら、彼ら3人は状況の大まかなるを把握した。
南の遺跡にいるはずの魔王とカエルが、攻め上がりに来たのだ。
魔王の大規模魔法で戦況が混交し過ぎて、流石のジャファルといえど遠間からではヘクトル達の全人数は把握し切れていなかった。
「奴らが団結して南に下りなくなったから、攻め上がりに来た? いくらなんでも早過ぎるだろう。監視能力でも持っているのか?」
「そんなことは然したる問題でもないだろう。これこそが貴様の望んだ好機とやらではないのか?」
考え込みかけたセッツァーをピサロの一言が引きもどす。重要なのは現状の答え合わせでなく、現状をどう生かすかだ。
セッツァーは持てる感性の全てを動員して、次の一手を弾き出した。

「当然、背後から攻める。ただし、放送が終わってからだ」
「……何故だ」

追いすがるようなジャファルの眼を、その感情ごと理解したような眼でセッツァーは見返した。
「魔王共の攻めたタイミングにもよるが、あのガキが中にいた以上俺達のことは知られていると考えた方がいい。
 恐らく、俺達が来ることも読まれてるだろう。
 かといってこのタイミングを逸して魔王共がやられれば今度は10人近い連中と俺達が正面からぶつかることになる」
拙速に攻めればカウンターを仕掛けられる恐れがあり、巧遅に失すれば唯一の勝機を失う。
突くべきは最適な“今”―――――――即ち敵の人数を全て掌握した直後、オディオによって仕切り直された刹那である。
「僅かな間を持たせて、緩急を縫うか。王道ではないが是非もない――――して、何処から攻める?」
ギャンブラーの采配にとりあえずの及第点を与えた魔王が、いよいよ確信へと切り込む。
彼ら3人が集ったのは、1人では如何ともしがたい彼我の差を埋める為だ。
3人の力を拡散させるのであれば、この盟約は全くの意味を成さない。
一度混戦に入ってしまえば致し方ないが、初撃は戦力を集中するべきである―――――彼らが唯一恐れる、人数の差を潰すために。

「決まっている。ニノだ」
「ッ!!」

その名が告げられた瞬間、ジャファルの身体が猫のように跳ねあがりセッツァーの喉元に刃を向ける。
だが、セッツァーは皮一枚を血に濡らしながらも気にしていないように言葉を紡ぐ。
「言葉が足りなかったな。先ずニノを確保するって意味だ。
 混戦のうちに死なれてるかもって思ったら、アンタも気が気じゃないだろう? だから、周囲を撃滅して気絶なりさせちまう。
 どうせその近くにはヘクトルもいる。不意を付ける最後の機会だ、そろそろアイツが望む黒い俺として出てやろうじゃないか」
そう言ってセッツァーはぐぐもった笑いを浮かべ、その意思に淀みがないことを見取ったジャファルは刃を下げる。
「……感謝する」
「なァに。俺はあんたと共に戦うことに賭けた。それだけだ―――――よく耐えてくれた、もう少しだけ我慢してくれ」
セッツァーはそう言ってジャファルの肩を力強く掴んだ。
そう、魔王の魔法がニノを襲った時、ジャファルは飛び出して魔王に攻め入ろうとさえ思ったのだ。
ニノに牙を向けるのであれば例え相手が誰であれ、立場がどうであれ知ったことではない。
距離があろうが無かろうが、この手で瞬殺してしまいたい―――その衝動を、ジャファルは堪えたのだ。
(まだ、ニノの傍にはオスティア候がいる。まだだ、もう少しだけ、ニノを頼む)
求めるはニノにとっての安らぎ。その為には、ここで衝動に駆られて暴れる訳にはいかない。少なくとも、今は。
だからこそ、セッツァーの指針はジャファルにとって天啓以外の何ものでもなかった。それ以外の選択肢はなかったと言える。

836龍の棲家に酒臭い日記 ◆wqJoVoH16Y:2011/08/18(木) 03:12:45 ID:rH4aOhw20
その意を固め誼を確かめ合う2人を尻目に、ピサロは寒気すら覚えた。
セッツァーにもジャファルにも、一切の淀みはない。アレは互いにとって確かな誓いなのだ。

―――――もし、これからの戦いでニノって奴と戦闘に入ったら、旦那の判断で消してくれないか?

だからこそ、ジャファルが斥候に出ていた時にセッツァーに持ちかけられた話が恐ろしい。
セッツァーは先のように寝転びながら、雲の数を数えるような気楽さでそうハッキリ言ったのだ。

―――――俺はジャファルに賭けた。それは間違いじゃねえ。あいつの夢は純粋で、信じるに足る。
     “だからこそ、ニノって奴が邪魔になる可能性が否定できねえ”。

彼ら3人は共に優勝を目指すと言う観点から利害を一致している。ただ、ジャファルだけはその指向性が僅かに彼らと違うのだ。
ニノはジャファルにとって刃を研ぐ石でもあり、刃を折る鉄でもあり、刃を誤らせる霧にもなるのだ。

―――――ニノって奴が無力な娘ならこうも迷わねえんだがな、いかんせん半端に力があるとなりゃ始末が悪い。
     ジャファルにとっても、俺達にとっても場を荒らすワイルドカードになりかねねえ。

唯でさえ殺し合いに乗る参加者が少ない現状、ニノを守るためにジャファルが他の殺戮者と相喰むことになればそれこそ眼も当てられない。
ならば、いっそ“ジャファルもセッツァー達と同じ形に”なってもらった方がいいのではないか、と。

―――――正直、ニノを殺すべきか生かすべきか読めない。どちらに賭けても、失うものも得られるものもある。
     俺じゃ判断が鈍っちまう。だから“旦那に任せたい”。

だからセッツァーは委ねた。ジャファルとニノの関係に全く興味の無いピサロを公平なダイスと見立てて、
その趨勢を賽に任せようとしたのだ。

(これが、ギャンブラーというものか。成程、人間に相応しい在り方だ)

ピサロは思惑を億尾にも出さず鼻息を鳴らす。
セッツァーの要望があろうがなかろうが、ロザリーへの道程を阻むものがいれば誰であれ屠るのみ。
それはニノという娘でも例外ではない。最も、その公平さこそをセッツァーは信じたのだろうが。

「アンタらも、まだあの店のアイテムを使わずに残してくれたようだしな。
 あのガキが俺達の装備を見誤ってくれてたら、更にラッキーな話だ」
セッツァー達はそう言って森を分けて進む。南へ、南へ。放送は近い。
「全く、あの店主サマサマだったな、まったく」
「……だが、お前はそれでよかったのか? “イカサマのダイスを放棄して”」
「なァに、やっぱりブリキ大王のような戦闘の道具は好まねえ。俺はこれで十分だよ」
ジャファルの問いに、セッツァーはポンポンと枕にしていた本を叩く。
唇を歪めたセッツァーに、ピサロは興味な下げに尋ねた。
「どういう風の吹きまわしだ? あの龍姫に感謝するなどとは」
「俺だって感謝したい時くらいあるさ。尤も―――――――――」

837龍の棲家に酒臭い日記 ◆wqJoVoH16Y:2011/08/18(木) 03:13:25 ID:rH4aOhw20
エキゾチックな異国の店。その中で店主はちびちびと酒を煽っていた。
その向かいには3つの杯が、呑むべき相手を待つかのように置かれている。
だが、その酒が飲み干されることが永遠に無いことを店主は知っていた。
「よりにもよって、二重誓約を仕掛けられるなんてねえ……メイメイさんもしてやられちゃったわ、ホント」
今さら、其れについて猛ろうと思えるほど彼女は若くはなかった。
それが人の選択である以上、避けられぬ離別も逆らえぬ命運もある。彼女は幾度となくそれを見てきたのだ。
「哀れメイメイさん、籠の中の鳥……誓約の鎖に縛られたかわいそうなオ・ン・ナ」
今の彼女の仮主は人の命運さえも捻じ曲げようとしている。それは運命の埒外、彼女としても承服は出来ない。
しかし、この牢獄に繋がれた以上、セッツァー達のように許可証でもない限り入ることも出来ない。
「にしても、あのギャンブラーやっぱり目聡いわね。真逆、アレを持っていくなんて」
彼らが退出しようとしたあの瞬間を、メイメイは眼を閉じて想起した。

――――――――――――――――悪いが、やっぱ要らねえわコレ。

それは、振った賽の目が全て役を成す悪魔のサイコロ。それをセッツァーはカラコロと地面に投げ捨てた。

――――――――――――――――アンタ言ったな? 1等は俺にとって役に立つ物だって。
                だったら……それは俺が選んでこそだと思わないか?

そう言って店主を見つめるセッツァーの眼は、およそ運命と呼ばれるものを生業にする全ての職業を否定する光を放っていた。
その眼光を携えたまま、カツカツと店主の横を通り過ぎて本棚に立つ。

――――――――――――――――俺は、これにする。この店で唯一、明らかにインテリアから浮いているこの本をな。

セッツァーが手に取ったものを見て、店主は驚愕した。その、錠前のついた本に。

「アレは私の店のものじゃない。アレがあることを私は知らなかった。
 ということは、オル様がここに置いてたってことだから―――――出したら不味いんじゃないの?」
ここは鳥籠、扉が開かぬ限り入れぬ封印。ならばそこにある書物もまた、封印されてしかるべきものなのだだろう。
だが、しばし考えてメイメイはまあ、良いかと酒を飲み直すことにした。
「これでオル様の企みが崩れるならそれまでだしぃ? ひょっとしたら持ってかれること計算済みかもだしぃ?
 メイメイさん、悪くありませ―ん。無実無罪でーす。にゃははははは」
少なくとも今はまだ鳥籠の中で待つしかない。来ないかもしれない時を待つために。
それがあの闇の中で輝く者達の導としてか、憎悪の闇の尖兵としてかは分からないが。

838龍の棲家に酒臭い日記 ◆wqJoVoH16Y:2011/08/18(木) 03:14:00 ID:rH4aOhw20
だが、世の中は酔夢ほど緩やかではない。
店主の後ろの本棚にある本の一冊が光り輝く。
その光に気付き、メイメイは気だるそうに本を手に取って開く。そしてその眠たげな眼を全開にした。
「夜族、高貴なる血……賢帝の破片にクラウスヴァイン、感応石……これって、首輪の?」
猛烈な勢いで書き変わる文章、そこに書き込まれていくのは首輪のことやこの世界に関する推察であった。
「にゃ、にゃにぃぃ〜〜〜!! 嘘、何でこんな場所に? よりにもよって? オル様の差し金? っていうか、不味い!」
店主は椅子を蹴飛ばしてセッツァー達が出て行った紋章へ手を伸ばす。
ここにコレがあった所で、あの島で戦う者達の役に立つことはない。何としても彼らの世界へ送り届けねばならない。

「何とか本だけでも送り届けないと…! 四界天輪、陰陽対極、龍命祈願、自在解門ッ!!
 心の巡りよ……希いを望む者たちに、導きの書を送り届けたまえ! 魔成る王命に於いて、疾く、為したまえ!」

剣指を刻み、呪文を唱えて店主は紋章に向けて力を送る。
だが、紋章はうんともすんとも言わず、本はいつまでも店の中にあった。
「え、なんで。幾らなんでもそれくらいのことは―――――――あ」
店主がその正解に気付いた時、酒で紅いはずの顔が真っ青になった。

―――――――ああ、機会が“あったら”な。

「ま、まさか……」

その脳裏に浮かんだのは、あのギャンブラーの最後の笑みだった。

「にゃ、にゃんとォォォォォォォォ―――――――――――ッ!!」


A−7の海岸。いち早く日の光を燦然と浴びて輝く海に、どこかの店主の慟哭が響いた気がした。
だが、それを聞くものなど誰もおらず。ただ“かつて船だった板”と既に薄い煙となった灰が残るだけ。

最早、座礁船と呼ばれたものは何処にもなかった。

839龍の棲家に酒臭い日記 ◆wqJoVoH16Y:2011/08/18(木) 03:14:34 ID:rH4aOhw20
「―――――――――尤も、もう逢うこともないだろうがな」

そう言って、座礁船を焼き海の藻屑へと還した張本人が獰猛な笑みを浮かべた。
彼らはあの店を出た後、即座に紋章の周囲を重点的に破壊し、更に酒蔵の残った酒を全て船に撒き、火術で焼き払ったのだ。
正確に言えば、火を付けた時点で彼らは対アシュレー戦に向けて行動を開始した。
燃え尽きるまで待っている理由も無かった。彼らの目的は、あの入口を完膚なきまでに破壊し尽くすことだったのだから。
「万が一、あのカード以外に入る術があって、俺達のようにアイテム渡されたら堪ったもんじゃねえしな」
入口をなくせばいい。
セッツァーが取った方法は至極明快だった。それに、この方法ならばあの店主を閉じ込める効果もあるだろう。
あの店主がオディオに忠誠を誓っているか、はたまた虎視眈々と裏切りの機会を待っているか。
どちらに転んでもセッツァーに利する要素は何もない。ならば、永遠に客の来ない店番をして貰うのが最良だ。
「そう言えば、何故お前はあの龍を毛嫌いする? 特に拘るようにも見えぬが」
「そりゃぁ、決まってる」
横を歩くピサロの何気ない問いに、セッツァーはさも当然のように答えた。

「自分で歩く路を決める俺<ギャンブラー>と、ここを進めと言うだけ言って自分で歩かない占い屋――――――――――相入れる訳がないのさ」

そう言い終わったセッツァー達の眼の前から木々が無くなる。
そこに広がるのはだだっ広いクレーターだった。そしてその遥か遠くで、魔法の煌めく光が陽光を超えて目に刺さる。

肌を刺す光、雨上がりにぬかるんだ熱。今日も暑くなると告げている。
セッツァーの口が歪む。魔王達の思わぬ奇襲によって、ジョウイがセッツァー達に伝えた計画は破綻したとみていい。
ここからは、恐らく最後になるだろうこの乱戦をどれだけ活かせるかが勝敗を握ることになる。

「さあ、俺達もカードを伏せるぜ。降りる奴なんていやしねえ。最高の、最高の賭けになりそうだ」

だからこそ、最後の作法だけは弁えよう。
汗にぬかるんだ掌を握り締める。慌ててカードを落とすなんて莫迦だけはゴメンだ。
そう言い聞かせるように、セッツァーは枕にしていた本をしっかりと握りしめた。
それは日記のようなものだった。古臭くはなく、かといって新しいものではなく。長年使ってきた日記という印象を受ける。
だが、それよりも眼を引くのが、巨大な錠前だった。
ピサロの魔力でも、物理的な解錠でも開かぬ錠前がこの日記のような本の中身を守り続けている。

唯分かるのは、表紙に書かれた、恐らくこの本の執筆者であろう名前――――――『Irving Vold Valeria』。

永遠に開かれること無い日記を手に掲げながら、セッツァーは高らかに謳う。ギャンブラーとして、1人の男として。
ああ、これだ。胸の動悸を確かめ、セッツァーは漸く自分の興奮を自覚する。
ありとあらゆる準備を整え、考え得る可能性を絞り出し、そして舞台に上る。
その時こそ、今こそ―――――――――最高のギャンブルとなるのだ。




「さあ、宣言しなオディオ! 『No more Bet―――――――――――It's a showdown』ッ!!」





日の出と共に、王の宣言と共に――――――――――これより、最後のゲームが幕を開ける。


今日も暑く、長い日になるだろう。

840龍の棲家に酒臭い日記 ◆wqJoVoH16Y:2011/08/18(木) 03:16:58 ID:rH4aOhw20
【C-7クレーター北端 二日目 早朝】

【ジャファル@ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:健康
[装備]:影縫い@FFVI、アサシンダガー@FFVI、黒装束@アークザラッドⅡ、バイオレットレーサー@アーク・ザ・ラッドⅡ
[道具]:聖なるナイフ@ドラゴンクエストIV、毒蛾のナイフ@ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち、潜水ヘルメット@ファイナルファンタジー6
    マーニ・カティ@ファイアーエムブレム 烈火の剣、基本支給品一式×1 メイメイさんの支給品(仮名)×1 ニボシ@サモンナイト3
[思考]
基本:殺し合いに乗り、ニノを優勝させる。
1:ニノを生かす。
2:放送後にヘクトル達に奇襲を仕掛ける。ただしニノの生存が最優先。
3:セッツァー・ピサロと仲間として組む。ジョウイの提案を吟味する?
4:参加者を見つけ次第殺す。深追いをするつもりはない。
5:知り合いに対して躊躇しない。
[備考]
※ニノ支援A時点から参戦
※セッツァーと情報交換をしました
※ジョウイからマリアベル達の現在の状況を知りました。その他の情報については不明です。

 【メイメイさんの支給品(仮名)×1】
  メイメイさんのルーレットダーツ2等賞。メイメイさんが見つくろった『ジャファルにとって役に立つ物』。
  あくまでもメイメイさんのチョイスであるため、それがジャファルが役に立つと思う物とは限らない。

【セッツァー=ギャッビアーニ@ファイナルファンタジー6】
[状態]:好調、魔力消費(中)
[装備]:デスイリュージョン@アークザラッドⅡ、つらぬきのやり@FE 烈火の剣、シロウのチンチロリンセット(サイコロ破損)@幻想水滸伝2
[道具]:基本支給品一式×2 拡声器(現実) 回転のこぎり@FF6 フレイムトライデント@アーク・ザ・ラッドⅡ ゴゴの首輪
    天使ロティエル@サモンナイト3、壊れた蛮勇の武具@サモンナイト3 、小さな花の栞@RPGロワ 日記のようなもの@???
[思考]
基本:夢を取り戻す為にゲームに乗る
1:放送後にヘクトル・ニノをメインに奇襲を仕掛ける。
2:ジャファル・ピサロと仲間として行動。ジョウイの提案を吟味する?
3:ゴゴに警戒。
4:手段を問わず、参加者を減らしたい
※参戦時期は魔大陸崩壊後〜セリス達と合流する前です
※ヘクトル、トッシュ、アシュレー、ジャファルと情報交換をしました。
※ジョウイからマリアベル達の現在の状況を知りました。その他の情報については不明です。

 【日記のようなもの@???】
  メイメイさんのルーレットダーツ1等賞のイカサマのダイスを放棄してセッツァ―が手にした『俺にとって役に立つ物』。
  メイメイさんの店にあった、場違いな書物。装丁から日記と思われる。
  専用の『鍵』がないと開かないらしい。著者名は『Irving Vold Valeria』。

841龍の棲家に酒臭い日記 ◆wqJoVoH16Y:2011/08/18(木) 03:17:33 ID:rH4aOhw20
【ピサロ@ドラゴンクエストIV】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(中)、心を落ち着かせたため魔力微回復、ミナデインの光に激しい怒り
    ロザリーへの愛(人間に対する憎悪、自身に対する激しい苛立ち、絶望感は消えたわけではありません)
[装備]:ヨシユキ@LIVE A LIVE、ヴァイオレイター@WA2、クレストグラフ(ニノと合わせて5枚。おまかせ)@WA2
[道具]:基本支給品×2、データタブレット@WA2、双眼鏡@現実  点名牙双@幻想水滸伝Ⅱ、解体された首輪(感応石)、
    天罰の杖@DQ4、小さな花の栞×数個@RPGロワ メイメイさんの支給品(仮名)×1 
[思考]
基本:ロザリーを想う。優勝し、魔王オディオと接触。世界樹の花、あるいはそれに準ずる力でロザリーを蘇らせる
1:放送後にゴゴ・ヘクトル達をメインに奇襲を仕掛ける。
2:セッツァー・ジャファルと一時的に協力する。
3:ニノという人間の排除は、状況により判断する
[参戦時期]:5章最終決戦直後
[備考]:確定しているクレストグラフの魔法は、下記の4種です。
 ヴォルテック、クイック、ゼーバー(ニノ所持)、ハイ・ヴォルテック(同左)。

 【メイメイさんの支給品(仮名)×1】
  メイメイさんのルーレットダーツ3等賞。メイメイさんが見つくろった『ピサロにとって役に立つ物』。
  あくまでもメイメイさんのチョイスであるため、それがピサロが役に立つと思う物にとは限らない。


*座礁船の秘密の扉の先に、メイメイさんの店@サモンナイト3がありました。
 中にメイメイさんがいましたが、店共々どのような役目を持っているのかは不明。
 メイメイさんの目的は不明ですが、魔王オディオの『護衛獣』であるらしくオディオに逆らうことはできないようです。
 その中に、マリアベルの知識が書き込まれた1冊の本があります。

*座礁船が燃え尽きました。紋章も燃える前に完全に破壊されており、そこからメイメイさんの店に出入りすることは不可能です。

842龍の棲家に酒臭い日記 ◆wqJoVoH16Y:2011/08/18(木) 03:19:39 ID:rH4aOhw20
仮投下終了です。

議題とこちらが考えるのは
・メイメイさん登場の是非
・アーヴィングの日記(と思われるもの)の是非

ですが、他にもありましたらそれも含めて審議願います。

843SAVEDATA No.774:2011/08/18(木) 04:56:01 ID:JGbs5nQY0
仮投下乙です。
個人的には問題はないと思います。
感想は本投下時に。

844SAVEDATA No.774:2011/08/18(木) 05:10:35 ID:dFHZwuDQ0
投下乙〜
感想は本投下時として、氏が気にしている点について、意見を述べさせて頂きます

・まず一つ目ですが……
え、メイメイさんって召喚獣だったの!?
俺は今ひどいネタバレを食らった

というのはともかくとして
メイメイさんが出てくるということ自体はよろしいかと
お店といえばメイメイさんなのには納得ですし
ただ、メイメイさんの正体が龍族云々というのはサモナイ3内では触れられていませんでしたよね?
1か2か4の話でしょうか?
これは後々、他の書き手がメイメイさんを把握するために、ほかシリーズのサモナイやらねばならないということにはならないですよね?
いえ、そこらへんは書き手諸氏が上手くやってくれると思いたいのですが
ただ、私のようにサモナイの3に疎い読み手をほったらかしにする危機もあるのでは
ちょうど最後にお店の出入りを封じられたこともあり、また、オディオが他人を信用しない以上、
護衛獣といえど、最後の最後まで召喚しないといった形で、これより先に本編に大きく絡ませないこともできますが

この一つ目の件に関しまして、メイメイさんの正体について知っている方の意見もお聞かせください
サモナイ3以外未把握の書き手や読み手が、うまいことはぐらかしたり、簡単な説明でついていける程度のものなのでしょうか?
今回の話の内容的に、メイメイさんの正体だという龍関係の要素を削ってもらっても成り立つ以上、そこら辺をぼかす形で修正してもらったほうが良いのでしょうか?



・次に二つ目の方ですが
こちらについては問題ないと思います
アーヴィングの日記はWA2ではどうやっても見れないものでしたが、今回の話の流れからして、その中身が見れないことこそに意味があるとも捉えれます
解錠されたとしても、内容をまっとうなアーヴィングの日記としてでっち上げることもできますし、オディオが置いていたことも考慮し中身が別ものであったとしても、不思議ではないかと
書き手の判断次第でこちらはどうとでもなると思われます

845SAVEDATA No.774:2011/08/18(木) 23:09:16 ID:QhBUSqVs0
お疲れ様でした。
他の方と同じく、感想については本投稿された際に。
それにしてもこの◆wqJoVoH16Y、ノリノリであるw

(1)メイメイさんについては、今後の書き手さんがどう扱うか次第だと思いますし
ロワのルールにも違反していないので特に問題ないと思います。

(2)日記の出典が???となっていますが、
アーヴィングの名が入っている以上、WA2と明記していいんじゃないでしょうか。
ロワの世界に来てから作成・改造したもの以外で
原作に存在しないアイテムが登場するのは初めてだと思うので、
WA2以外の世界の本にアーヴィングの名前が入っているというクロスオーバーは
ロワ的にアリなのか、という点が気になりました。

(3)FF6のセッツァーにとってWA2のアーヴィングの本は
ちょっと変わっているだけのただの本のはずで、
何故それを役に立つものだと思ったのかの説明が欲しいと思います。
一言ギャンブラーの勘という一文があるだけでも説得力が増すのではないでしょうか。

(4)セッツァーが不確実さを排除する一面がかなり強く押し出されているので
ギャンブラーというより策略家みたいな印象を受けました。
「賭ける」と言っているけど、完全に全てが計算されているような感じがして、
いまいち賭けている感じがしません…。
ダーツにしろ、ジャファルとの会話にしろ、どの辺りに不確実さを感じているのか見えにくいと思います。

(5)セッツァーのことばかりになりますが、
ニノの対応を完全にピサロ任せにするのはちょっとらしくないかなと思いました。
どっちに転んでもいいなら、皆殺しを狙うピサロにわざわざ依頼する意味はありませんし、
ニノが死んでくれた方が都合がいいなら、
ここはキッパリとニノが殺されるようにお膳立てしていくのがこのロワのセッツァーだと思います。

(6)最後に、護衛獣と二重誓約については用語の説明があると親切だと思います。
特に、二重誓約については、どの行動やセリフが二重誓約にあたるのか、
サモンナイトの召喚に関係がある用語ならば、
それを知らないはずの3人が何故二重誓約をしかけることができたのか、等の説明があると
一層理解しやすくなると思います。

846 ◆wqJoVoH16Y:2011/08/19(金) 19:45:40 ID:URkjOJ9U0
皆さんご意見ありがとうございます。

>>844さん

>龍であるという情報ソース
確かにその通り、SN4になります。さほど重要な要素ではないと考え設定を使用しましが、脇が甘かったのも事実です。
念のため本投下の際にぼかすことにし、ある程度の情報をキャラクター紹介スレに乗せようとおもいます。

>>845さん

>(2)について
>>844さんが述べたような可能性を残すため、???で行きたいと思います。ご了承ください。

>(3)について
本文中、以下の文章にて説明したと考えます。

  >俺は、これにする。この店で唯一、明らかにインテリアから浮いているこの本をな。


>(4)について
 本文中にも書きましたが、セッツァーとしてはこの程度のミニゲームは乱数に委ねるレベルではないと考えてます。
 当たる確率が40%のものを、事前の準備で60%、80%と詰めていき、それでも残る不確定要素こそにこそ自分を賭けるのもギャンブラーかと。

>(5)について
 私の描写不足でした。申し訳ありません。
 死んでも生きてもどちらに転んでも良いとも、死んでくれた方が都合がいいとも記述したつもりはありませんでした。
 セッツァーがジャファルと共闘を組む上でニノの生死、またそのタイミングは非常に大きな要素であり、本文中の通りどちらを選ぼうともリスクもリターンも付きまといます。
 ですがこれは重要な要素であり、乱戦に突入する以上「どこかで転ばす覚悟」はしなければなりません。
 今後の展開次第でその天秤が動く可能性がありますが、現時点ではピサロという乱数に委ねた次第です。
 同盟を組んでいる以上、ともすればピサロが配慮する可能性もあるため、口にした、ということでした。

 セッツァーが語るニノの描写が他人事のように薄かったのが原因かもしれませんので、そこを修正したいと思います。

>(6)について
本文中で入り込んだ説明をすることが、逆に他の書き手の方に迷惑になるかもしれないのであっさりと流しました。
小ネタに類する箇所ですので、分からなくても触れずに行ける場所かと。

ただ、護衛獣はともかく二重契約はSN3の範囲外になることも事実です。
なのでメイメイさんのキャラクター紹介を書くときに部分で一行、用語説明を追加したいと思います。


以上で現状の質疑に対する回答を終えます。
見る限り、こちらが懸念していた二点に関してはおおむね問題ないとの意見と見受けますので、
土曜0時以降に一部修正後、本投下しようと考えます。
それまでも質疑は可能な限り受け付けますので、忌憚なく意見を願います。

以上です。

847845:2011/08/19(金) 20:59:49 ID:axrJO1Z20
>>846
長々と意見してしまったにも関わらず、
丁寧に対応していただきありがとうございます。

(2) から (6) までのご回答について、理解できました。
ご回答ありがとうございました。

848 ◆wqJoVoH16Y:2011/12/24(土) 08:06:36 ID:1Jk99KIo0
私がわたしを歩む時−I'm not saint−の修正をwikiにて行いました。

849 ◆wqJoVoH16Y:2012/01/29(日) 11:57:43 ID:BAf7eGEg0
本スレの指摘を受けて以下の2点について修正を行います。
この修正はwiki収録時に反映させたいと思います。

1.>>376 盾と刃が交わる時−The X trigger− 5

その世界に全ての悲しみがなくなれば、そこに救われぬ者はなく、
それを救う英雄はなく、英雄を欲する者たちもいない。
勝者と敗者のいない世界――――――それは即ち、争いのない世界。
即ち、真の理想の国に、英雄は“いない”のだ。

を削除します。(次の6番と重複するため)


2.アキラとピサロの状態表を以下のように修正します

【アキラ@LIVE A LIVE】
[状態]:精神力消費(極)疲労(極)肩口に傷 怨念に触れて精神ダメージ(中)
[装備]:パワーマフラー@クロノ・トリガー、激怒の腕輪@クロノ・トリガー、デーモンスピア@DQ4
[道具]:清酒・龍殺しの空き瓶@サモンナイト3、毒蛾のナイフ@DQ4 基本支給品×3
[思考]
基本:オディオを倒して元の世界に帰る。
1:何とかして、立ち上がる
2:レイ・クウゴ、アイシャ・ベルナデット(カノン)、ミネアの仇を取る。
3:首輪解除の力になりたいが、俺にこれを読めるのか……?
4:ジョウイに対処する
[参戦時期]:最終編(心のダンジョン攻略済み、ストレイボウの顔を知っている。魔王山に挑む前、オディオとの面識無し)
[備考]:超能力の制限に気付きました。テレポートの使用も最後の手段として考えています。
※カノンの名をアイシャ・ベルナデット、リンの名をリンディスだと思っています。
※松のメッセージ未受信です。
※毒蛾のナイフ@DQ4が肩口に刺さっています


【ピサロ@ドラゴンクエストIV】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(中)ミナデインの光に激しい怒り ニノへの感謝
    ロザリーへの愛(人間に対する憎悪、自身に対する激しい苛立ち、絶望感は消えたわけではありません)
[装備]:ヨシユキ@LIVE A LIVE、ヴァイオレイター@WA2、クレストグラフ(5枚)@WA2
[道具]:基本支給品×2、データタブレット@WA2、双眼鏡@現実  点名牙双@幻想水滸伝Ⅱ、解体された首輪(感応石)
    バヨネット、天罰の杖@DQ4、小さな花の栞×数個@RPGロワ メイメイさんの支給品(仮名)×1 
[思考]
基本:ロザリーを想う。優勝し、魔王オディオと接触。世界樹の花、あるいはそれに準ずる力でロザリーを蘇らせる
1:ヘクトル(?)を利用し、セッツァーと連携して参加者を殲滅する
2:セッツァーはとりあえず後回し
3:ジョウイは永く保たないはずなので、放置する
[参戦時期]:5章最終決戦直後
[備考]:*確定しているクレストグラフの魔法は、下記の4種です。
     ヴォルテック、クイック、ゼーバー、ハイ・ヴォルテック 
    *バヨネットはパラソル+ディフェンダーには魔導アーマーのパーツが流用されており魔導ビームを撃てます

 【メイメイさんの支給品(仮名)×1】
  メイメイさんのルーレットダーツ3等賞。メイメイさんが見つくろった『ピサロにとって役に立つ物』。
  あくまでもメイメイさんのチョイスであるため、それがピサロが役に立つと思う物とは限らない。

850 ◆wqJoVoH16Y:2012/01/29(日) 16:24:18 ID:BAf7eGEg0
指摘ありがとうございます。
また、セッツァーが回収したアナスタシアの所持品についてもミスがありましたので
それらについて以下のように修正します。

3.ストレイボウとゴゴ、アナスタシア、セッツァーの状態表を以下のように修正します

【ストレイボウ@LIVE A LIVE】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(極)、心労(中)勇気(大)ルッカの知識・技術を継承
[装備]:
[道具]:勇者バッジ@クロノトリガー、基本支給品一式×2
[思考]
基本:魔王オディオを倒してオルステッドを救い、ガルディア王国を護る。  
1:この場を切り抜ける
2:ジョウイ、お前は必ず止めてみせる…!
参戦時期:最終編
※アキラの名前と顔を知っています。 アキラ以外の最終編参加キャラも顔は知っています(名前は知りません)
※記憶石によってルッカの知識・技術を得ました。完全再現ができるかは不明。

※首輪に使われている封印の魔剣@サモナイ3の中に 源罪の種子@サモサイ3 により
 集められた 闇黒の支配者@アーク2 の力の残滓が封じられています
 闇黒の支配者本体が封じられているわけではないので、精神干渉してきたり、実体化したりはしません
 基本、首輪の火力を上げるギミックと思っていただければ大丈夫です

※首輪を構成する魔剣の破片と感応石の間にネットワーク(=共界線)が形成されていることを確認しました。
 闇黒の支配者の残滓や原罪によって汚染されたか、そもそも最初から汚染しているかは不明。
 憎悪の精神などが感応石に集められ、感応石から遥か地下へ伸びる共界線に送信されているようです。

【ゴゴ@FFⅥ】
[状態]:気絶 疲労(大)瀕死 首輪解除 右腕損傷(大)気絶 出血多量 物真似に対する矜持
[装備]:ブライオン@ LIVE A LIVE 、ジャンプシューズ@WA2
[道具]:基本支給品一式×2(ランタンはひとつ)
    魔鍵ランドルフ(機能停止中)@WILD ARMS 2nd IGNITION 、サラのお守り@クロノ・トリガー
[思考]
基本:物真似師として、ただ物真似師として
1:そろそろ、目覚めないとな……
2:セッツァー…俺の声を、届かせてみせる!
3:“救われぬ”者を“救う”物真似、やり通す”
[参戦時期]:本編クリア後
[備考]
※本編クリア後からしばらく、ファルコン号の副船長をしていました。
※基本的には『その場にいない人物』の真似はしません。
※セッツァーが自分と別の時間軸から来た可能性を知りました。
※内的宇宙のイミテーションオディオが紅の暴君に封印されたため、いなくなりました。
 再度オディオを物真似しない限り、オディオは発生しません。

851 ◆wqJoVoH16Y:2012/01/29(日) 16:27:00 ID:BAf7eGEg0
【アナスタシア・ルン・ヴァレリア@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:ダメージ(極)、疲労(極)、胸部に重度刺傷(傷口は塞がっている)、重度失血 左肩に銃創(弾は排出済み)
[装備]:アガートラーム@WA2
[道具]:感応石×3@WA2、ゲートホルダー@クロノトリガー、にじ@クロノトリガー
    基本支給品一式×2、
[思考]
基本::“自分らしく”生き抜き、“剣の聖女”を超えていく。
1:この場を切り抜ける
2:ゴゴを護り、ゴゴを助ける。
3:ジョウイへの対処を考える。
今までのことをみんなに話す
[参戦時期]:ED後
[備考]:
※名簿を未確認なまま解読不能までに燃やしました。
※アナスタシアの身にルシエドが宿り、聖剣ルシエドを習得しました。
 他、ルシエドがどのように顕現し力となるかは、後続の書き手氏にお任せします。

【セッツァー=ギャッビアーニ@FFⅥ】
[状態]:魔力消費(中) ファルコンを穢されたことに対する怒り
[装備]:デスイリュージョン@アークザラッドⅡ、つらぬきのやり@FE烈火の剣、
    シロウのチンチロリンセット(サイコロ破損)@幻想水滸伝2 バイオレットレーサー@アーク2
[道具]:基本支給品一式×2 拡声器(現実) フレイムトライデント@アーク・ザ・ラッドⅡ ゴゴの首輪
    天使ロティエル@サモンナイト3、壊れた蛮勇の武具@サモンナイト3
    小さな花の栞@RPGロワ 日記のようなもの@??? ウィンチェスターの心臓@RPGロワ
    昭和ヒヨコッコ砲@LIVE A LIVE、44マグナム&弾薬(残段数不明)@LIVE A LIVE、
    アリシアのナイフ@LIVE A LIVE、ソウルセイバー@FFIV、ルッカのカバン@クロノトリガー、
[思考]
基本:夢を取り戻す為にゲームに乗る
1:ヘクトル(?)を利用し、ピサロと連携して参加者を殲滅する
2:ジョウイに関してはもうゲームからの脱落者として考慮しない
3:手段を問わず、参加者を減らしたい
※参戦時期は魔大陸崩壊後〜セリス達と合流する前です
※ヘクトル、トッシュ、アシュレー、ジャファルと情報交換をしました。
※ジョウイからマリアベル達の現在の状況を知りました。その他の情報については不明です。
※ルッカのカバンには工具以外にルッカの技用の道具がいくらか入っています

852 ◆wqJoVoH16Y:2012/01/29(日) 21:56:58 ID:BAf7eGEg0
いえ、指摘ありがとうございます。
むしろ見落としてしまい申し訳ありません。
それと>>415さんも凄いイラストありがとうございます。
まさかこんな早くイラスト化されるとは考えもしてなくてうれしかったです。


それではセッツァー及びゴーストロードの状態表を以下のように修正します。

【セッツァー=ギャッビアーニ@FFⅥ】
[状態]:魔力消費(中) ファルコンを穢されたことに対する怒り
[装備]:デスイリュージョン@アークザラッドⅡ
    シロウのチンチロリンセット(サイコロ破損)@幻想水滸伝2 バイオレットレーサー@アーク2
[道具]:基本支給品一式×2 拡声器(現実) フレイムトライデント@アーク・ザ・ラッドⅡ ゴゴの首輪
    天使ロティエル@サモンナイト3、壊れた蛮勇の武具@サモンナイト3 にじ@クロノトリガー、
    小さな花の栞@RPGロワ 日記のようなもの@??? ウィンチェスターの心臓@RPGロワ
    昭和ヒヨコッコ砲@LIVE A LIVE、44マグナム&弾薬(残段数不明)@LIVE A LIVE、
    アリシアのナイフ@LIVE A LIVE、ソウルセイバー@FFIV、ルッカのカバン@クロノトリガー、
[思考]
基本:夢を取り戻す為にゲームに乗る
1:ヘクトル(?)を利用し、ピサロと連携して参加者を殲滅する
2:ジョウイに関してはもうゲームからの脱落者として考慮しない
3:手段を問わず、参加者を減らしたい
※参戦時期は魔大陸崩壊後〜セリス達と合流する前です
※ヘクトル、トッシュ、アシュレー、ジャファルと情報交換をしました。
※ジョウイからマリアベル達の現在の状況を知りました。その他の情報については不明です。
※ルッカのカバンには工具以外にルッカの技用の道具がいくらか入っています


【天雷の亡将@???】
[状態]:クラス『ゴーストロード』 左目消失 戦意高揚 胸に穴 アルマーズ憑依暴走 闘気 亡霊体 HP0%
[装備]:アルマーズ@FE烈火の剣(耐久度減。いずれにせよ2時間で崩壊) ラグナロク@FF6 勇者の左腕
[道具]:聖なるナイフ@DQ4、影縫い@FFVI、アサシンダガー@FFVI マーニ・カティ@FE烈火の剣
[思考]
基本:オワレナイ……ダ、カラ……レ、ヲ……戦ワセロ……ッ!
1:戦う
2:肉を裂き、骨を砕き、生命を断つ
3:力の譲渡者(ジョウイ)には手を出さない

[備考]:
【ゴーストロード】
 亡霊君主。スキル『亡霊体』によって物理攻撃ダメージを半減し、
 近づくものをその怨念で射竦めるスキル『闘気』によって周囲の相手の移動を制限する最悪の前衛ユニット。
 ミスティックを通じて不滅なる始まりの紋章の力を注がれたアルマーズの無念が死体さえ動かす。
 過負荷によって既にアルマーズは崩壊を始めており、どうしたところでその存在は2時間も保たない。
 それでも、それでも理想を願うことは止められない。たとえ絶対に叶わない泡沫の影だとしても。

 *天雷の亡将の周囲に石細工の土台が暴走召喚によって大量召喚されています。
 *ビー玉は暴走召喚の触媒として壊れました
 *つらぬきのやり@FE烈火の剣は死体が最初に倒れていた場所(C7)に突き刺さったままです

853 ◆wqJoVoH16Y:2012/04/08(日) 15:37:27 ID:qP6X3Mpc0
前話拙作におきまして、
セッツァーの所持品にミスがありましたので修正しました。

・にじ@クロノトリガー を削除(アナスタシアと重複)
・マタンゴ@LAL   を追加(本文中で入手)

ならびに誤字も少々修正しました。

854 ◆wqJoVoH16Y:2012/08/25(土) 23:18:53 ID:qS4PCLgQ0
本スレ>>502

ご指摘ありがとうございます。ご指摘の点すべてこちらのミスでありますので、
wikiに掲載され次第修正いたします。

また、こちらでもアキラの所持品に清酒・龍殺しの空き瓶が、
セッツァーの所持品に壊れた蛮勇の武具がまだ残っていたのを確認しましたので、
これも合わせて修正したいと思います。

855 ◆6XQgLQ9rNg:2012/10/20(土) 07:27:11 ID:Vgu7eLC60
拙作、『Phalaenopsis -愛しいきみへ、愛するあなたへ-』にて、
状態表に場所と時間表記が漏れておりました。
以下、状態表に追記です。

【C-7とD-7の境界(C-7側) 二日目 昼】

856 ◆wqJoVoH16Y:2012/12/16(日) 05:05:24 ID:jT4OIwKQ0
『魔王様、ちょっと働いて!』及び『リプレイ・エンピレオ』をwiki収録しました。
その際一部修正をしました。
ストーリーに支障ある部分ではないため、事後承諾ですがここに報告させていただきます。

857SAVEDATA No.774:2012/12/17(月) 05:47:58 ID:tp3JTUUE0
>>856
収録お疲れ様でした
一部修正も問題ないかと

858SAVEDATA No.774:2013/02/09(土) 21:59:28 ID:OCcwtd/c0
少し気が早いですがwikiに時系列順と投下順の目次を増設しました。
メニューとトップにはリンクを載せましたが他まで見ていないので、
何か気づいた方は適時対応願います。

859SAVEDATA No.774:2013/04/02(火) 00:01:16 ID:Zj6MYQ4I0
規制くらったのでこちらに続きを投下します

860刃の行方、剣の在り処19:2013/04/02(火) 00:02:04 ID:Zj6MYQ4I0
「龍には、無垢なる、たま、しひ……を……」

ずるりとその血塗れの左手から、狂気山脈が遂に手放された。
夥しい血液を胸から流しながら、カイエンが、幾人もの命を喰らい尽くした殺人剣が地に伏せる。
血の河と思えるほどの大量の血液は、まさに彼が歩み抜いた途そのものだった。
その血の向かうは竜の門。その扉の先にこそ、あの列車の終着駅があるのだと信じるかのように。

「諦めな、サムライ。その刀が血に飢えることは、もうない」

あと少しで血が門に触れようとしたとき、に大地に突き刺さった雷鳴剣がその血の流れを、断絶する。
狂気山脈を胸に深々と穿たれながら、フリックはその殺人剣に吐き捨てた。
愛し、喪ったものを取り戻したい。己を狂わせてでも成し得たいその願いは、痛いほどに理解できる。
だがそれでも、フリックにはそれを認めることはできなかった。
理由は分からない。
ただ1つわかることは、たとえ己が命を引き換えにしてでも、
その在り方を肯定する訳にはいかなかったということだけだ。
(ここ、まで、か……)
血の気と共に、フリックの身体が落ちていく。
寸断される意識では、その答えを掴むことなどできなかった。

「しっかりなさい! それでもわたくしの騎士なのッ!?」
だから、答えがその手を掴んだ。
剣ダコで厚くなったその手を、やわらかな両手が包み込む。
もう亡くなったと思った、守れなかったと思ってた命のあたたかさだった。
「ベ……ル……フラウ……」
返り血に塗れた顔を少女の涙が拭う。しな垂れた髪の香りが、血臭の中でも鼻腔を擽る。
何度も睨んできた瞳は、紅く輝いていた。
何度もくしゃくしゃと撫でてきた髪は、金髪ではなく銀髪になっていた。
右手に輝く月の紋章は、彼女がノーライフキングの一席であることを示していた。
「シエラ、おねえさまが、こどもは……生きろって、
 みんな……子供扱いして……っ、そのくせ、自分たちばっかり……勝手なんだから……!」
こぼれる涙を止めることなく、少女はキッと死の淵に瀕する己が騎士を見据えた。
たとえそれがものの弾みから出た約束であったとしても、稚拙で一方通行な契約であったとしても、
それだけが、人の道から零れ落ちた彼女をここまで運んできたのだ。
「死なせない。このまま終わらせたりなんかするものですか……!」
月の紋章が輝く。それが意味するのは、紋章の眷属への変生。
無論、ベルフラウにフリックを支配するつもりなど毛頭ない。ただ生きてほしいと、それだけを願った祈りだった。

「なあ、頼む。このまま……終わらせてくれないか」

861刃の行方、剣の在り処20:2013/04/02(火) 00:02:34 ID:Zj6MYQ4I0
牙をみせて怒鳴るベルフラウに、苦笑したようにフリックが首を振る。
その静かな瞳に、少女は否応にも騎士の決意の固さを悟るしかなかった。
「いや……いやよ……カイルも、スバルも、ミスミさまもいなくなって……
 サニアさんも、シエラお姉さまも……死んで……ルーシアも、その上、貴方までいなくなるなんて……」
それでも、少女はその手を強く握る。零れ落ちるものを溢すまいと包むように。
「ねえ、生きてよ。お願いだから、あの人を想い続けてもいいから……
 私の騎士じゃ、なくても、いいから……わたしを、ひとりに、しないで」
ただ一つのわがままで、少女は願った。
そのわがままを、フリックは震える腕を持ち上げて、指で拭う。

「……違うさ。お前には帰るべき場所が、あるだろう。俺は、それを守れたんだ。だから、違うのさ」

あの時、炎の家のなかで、全て燃え尽きたと思っていた。
あの兇刃と撃ち合ったことに意味などないのだと思っていた。
そうではない。そうではなかったのだ。
守れたのだ。かつて愛した過去<かのじょ>ではない、確かにここに在る現在を守れたのだ。
彼女がこうして泣ける今を、守り通せたのだ。

「だから、俺をこのまま、お前の騎士のまま終わらせてほしい」

この胸に充つる想いのまま、どうか。
ベルフラウは何も言わず、そっと手を離す。


「―――――――ありがとう。ベル」
「―――――――バカ。何度言っても、そう呼んでくれなかったくせに」


青き雷は、二人の主を剣に刻んで、門の向こうへと消えた。

【カイエン@FF6 死亡確認】

【フリック@幻想水滸伝2 死亡確認】

【竜の門前 二日目 昼】
【ベルフラウ@サモンナイト3】
[状態]:ダメージ(中)疲労(中)吸血鬼化
[装備]:ドリストンガン
[道具]:月の紋章
[思考]
基本:主催者を打倒し、島へと帰る
1:フリックを弔う
2:ロボ・マールという参加者と合流する
[参戦時期]:ED後
[備考]:シエラより月の紋章を継承しました。具体的な効果はお任せします。

862SAVEDATA No.774:2013/04/02(火) 00:04:24 ID:Zj6MYQ4I0
あ、間に合わんかった。
すんません。エイプリルフールネタのつもりでした。
その、上2レスは無かったことに。

863SAVEDATA No.774:2013/04/02(火) 00:43:07 ID:fO6OfWlA0
投下乙!
内容的に投票時のでっち上げテンプレ世界の続きだよね
カイエンは魔剣開眼でやばいことなってたけどそれを止めたのはフリックだったか
愛する人をなくしてるフリックだからこそだよなあ
竜の門の先に行こうとして狂ったのはネルガルをも重ねちまうぜ
フリックはようやく守れたんだね、お疲れ様
ベルは失いに失って、それでもこれから永遠を生きてくのか……
存在に触れられただけだったけどシエラ様もかっこよかったです

864SAVEDATA No.774:2013/04/02(火) 00:43:43 ID:fO6OfWlA0
上げ

865<ワタナベ>:<ワタナベ>
<ワタナベ>

866<ワタナベ>:<ワタナベ>
<ワタナベ>

867<ワタナベ>:<ワタナベ>
<ワタナベ>

868 ◆wqJoVoH16Y:2013/10/05(土) 19:13:06 ID:0pRzyx4.0
拙作 No.00「帝国軍諜報部式特別訓練」にてリザーブ支給品に
イスラ装備済みのドーリーショット@アーク2が残っていたので
wiki上にて削除しました。

申し訳ありませんが、以降のSSにも反映願います。

869 ◆6XQgLQ9rNg:2013/10/05(土) 21:13:47 ID:aMPfrITA0
>>868
修正お疲れ様です。
こちらの方でも気付ければよかったですね、すみません。

「罪なる其の手に口づけを」のリザーブ支給品の修正を、あわせて行いました。

870 ◆6XQgLQ9rNg:2014/02/22(土) 22:31:58 ID:x/m2xucc0
拙作『其の敵の名は――』『響き渡れ希望の鼓動』をwiki収録しました
それに伴い、誤字等の誤りを修正いたしました

871 ◆6XQgLQ9rNg:2014/02/23(日) 22:58:39 ID:6Uh1MaSE0
拙作『其の敵の名は――』にて、部隊編成の枠の一部が漏れておりましたので、修正いたしました

872 ◆FRuIDX92ew:2014/10/13(月) 19:09:57 ID:dwcwVCk60
「一万メートルの景色」
批評を受けまして、誤字脱字修正、一部文脈がおかしかった箇所を修正しました

873SAVEDATA No.774:2014/11/05(水) 00:49:36 ID:ZL1fkChQ0
了解です

874SAVEDATA No.774:2016/04/01(金) 16:11:28 ID:nwge4aXk0
空に浮かぶ“魔法王国ジール”。




                                /ヽ
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                /∨ \/ `'-、 !.!  .|、│ ゙'‐ `  .ヽ !  ゙ン'⌒゛ /   `  ./  ..l゙''"゛ \,..ー、         メ\
                / ./  .i  \  ゙ニ=- ゙xX彡爻爻爻ミミ¬--爻炎ミ--xX爻ーui_爻X-.._ ,-゙ヽ、_`';;、___/ |.、 \
           //,/ / .l : -;;'"彡爻爻ミ璽目旧[]璽旧「幵幵冊龠彡爻爻ミXxレ! rv-'/ .,! .<゙ヽ_,゙ヽ_ `゙゙'ー龠爻ミXニ
   _心≧=─-'゙二‐┴-←''二=-‐、,,. ⌒`ー、璽幵「璽冊[]目高龠璽幵xx__xX爻ミミil!爻l/./ .ll,  .l  .`''-ミr ゙̄TTi冖 ̄ | /
  .l|_龠爻ミ‐x彡爻‐≠ニ'"゛/ | \.`゙''ー---..__xX「高[]龠爻ミミ''‐爻.-=―--二=ィ⊇_____爻爻炎二==-,,..ニi ! 八  /
  .ヽ i  ゝ__ `===ミ彡爻ミ/   !  `';;v-八´  `'-、爻iii,i...、二=爻(= ‐ 二 ≡= 三 =ニ ),龠龠爻ミミtr'"、.l iゞ'"  V
    ヽl ,i"´ =ヽ 一‐璽 ̄´彡爻炎ミー'l―xX彡爻爻爻ミミヽ二_ `゙゙'|‐===广==|:i:l''T゙゙゙゙゙| .i二___┬|l | l.,i"゙'ー、
     ∨ `-≠、彡傘ミr─-'" ̄´.! ゙''ーt- _x彡爻龠爻ミミ___ヽi,,ヽ  |  |    ,!:i:i .}  ! . /  l  .,!〃,,!,,/゛ ___/
          \ `゙─冖    i  l 八  ヽ l  .~ ̄´.i `゙゙TT´  ‐===二==- _ !:i:i  l l .l゙/  ,i.l  ./ l'゙/ ゙̄「 /
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                 マ  ,!     ヽ__ `''、 !  l  ..|八    |  `i !.、.l,  ! / .!,!゙-!:i:i ´ `.! .! ! /
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                          ∨ヽ,, ヽ .,゙ . '、.l,   .!  ゙U ., /      i:i:i
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875SAVEDATA No.774:2016/04/01(金) 16:12:00 ID:nwge4aXk0
偉大なる女王の元、魔導の力にて栄えた文明は――


           jl|
                                  (ェ)
                                  ()H()
                                  ,r:lll`,
                                 _ _ ,r'∩lll:.`,
                         〃´ .:.:.::::.:r'′.:.:;;;;;;;;;;`,
                        〃  }.::;′   .:.:.:;;;;;;;;;;;`,
                          ,'    ∩    .:.:.:;;;;;∩.;;`,                __ _
                   。    ,'    .: ..Ll:l_ __ _ ノ ノ.:;;;;;`、          , 戔戒.:.::::::::::::.`ヽ
                  (j)   j       l:|"´ ̄ ̄.:.::;:;;;;;;;;;;;;;;ヽ         く.:.:.:::::::::::::::<>::::::::::::`,
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         ェ‐‐─r王ュ"´.:.:.:.::::.:.:::.:.:::.:.::.:.:,ゞ-''"´¨く´``゙゙''´ヽ;;r'"´ 戉戔;:;、      `1'''¨````´゙゙`'.:.::::!
           ̄`了{:::.::::.:戔戔戉::::.::く´       ``ヾ.:.:.:::::::::::.:.rュ.:戔戔戔      `1     .:::::,r′
             ゙, ```'''ヾ:.:.:..:::.:'`',:'':'`:.:::.:.:. .:. :::::::.:.:::::::::::::::::::::::.::.:.:.:::::戔戉       `1    .::::r'′
            。    `1    ヾ::::.:.:,r'", -─‐--..、、`゙゙""´,r'.:.::::::.:.:.:.:.:.:.:::::.:レ          `1  .::r'′
       (ェ) {}      `1    `"´1'"´``ヾ.:.::::.:.::::.:`ヽ `1.:.:.::::::::.:.:.:.: r'"´r'′         ヽ,r'′
       ,r王H{}、、      `1   .:l:|     ``ヾ.:::.:::.:,r' 1レ''゙゙゙.:;;``゙゙´.:::;r'′
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. `1 ``゙゙''''''ー'---'‐'゙.::j !       レ'" |:|⌒ヽ        .::::|:|r'´``´゙´          _ノ.:.:.:::::::::::::::}
  `1        .:::j !           |:|   `1、     .::::::;r'|:|             ノ.:.:.::::::::::::::::r'′
   `1    .   .:::r'′        |:|      `1、.:::::::,;r'′|:|         ,.. -rュ .:.:.:::::.::戔戔戒
    `1     .:,r'′         |:|        `V'´   |:|      ,  .:´.::::::::.:.:.:.:::ojjjH::戔戒
     `ヾ   .:r'′           |:|             |:|     {.:.:.:.:.:.:.::::::::.:.:.:.::..:.:::::::::::::::ノ
       `''''゙′             |:|             |:|      ',¨```'''"´``ヽ.:.::::,r'",r'′

876SAVEDATA No.774:2016/04/01(金) 16:12:36 ID:nwge4aXk0
僅か一日で崩壊した。



                                              _
                                             /   `ー‐ 、
                                              |        }
                                             |   ◎????
                                                 \     /
                                                  `Y  /
                                   √i          ` ー'
                                    /  |         _
                                       /   \__      _ノ \
                                  \      ̄ヽ- '´  /
                                   \         /
                                     i  ◎広場   \
                                        ヽ          ̄}
                                      ヽ  ◎残された村
                                       ` <__/



     /`ー─z__
    {    ◎小さな洞窟
    ヘ       \
.      \_r─t_   /
            ̄

877SAVEDATA No.774:2016/04/01(金) 16:13:09 ID:nwge4aXk0
全ての始まりはある遺跡の探索中に発見された“門”にこそあった。
“竜の門”……。
こことは異なる世界、“ドラゴン次元”と繋がるとされていた伝説の門。
魔法の力に魅せられていた女王ジールは門の先にあるドラゴン次元をも侵略し、更なる力を手に入れようと目論んだ。

878SAVEDATA No.774:2016/04/01(金) 16:15:03 ID:nwge4aXk0
      ト、   , /|
                      V\/レ  レi
             ⌒ヾ ̄`丶∨  / / ̄ ̄\
.              / ̄ ̄\   Ⅵ/ /  _∠ ̄`丶
             ∠=,  ̄〕iト 、 _,. --  .,_  __\
.             厶イ /__「       Y__{ `丶
                  />' ≫==----==≪ ヽ\
                / / /  /く}/  Ⅵ‘, ∨∧.‘ ,
            / / /  弋_t、  ィッ_フ, ∨∧ ゚,
              / / / , 'iト、',  、 :i ,  _∧‘ , ‘, ゚,
.            ,' / ,:/i:γヽト .  ̄ .r:'厂Y゚ , ', .i  ',
          | i> 冖ト、Lノ_{iト 二 へ __ノ,. ==- _ |
.          ,. <      Y---==--- /     〕iト ,
.         ∠_____/==' ̄ ̄ ̄ゝ= 'ト _        \
       {/     ノ /   弋ー フ.   | { {_ ̄ ̄ ̄ ̄弋
.      γ´ ̄〕iト-- ' /!    `´::..  ..:}ト、\    _, - 二Y
      {'⌒ー- __,/:::::::ヽ   ,.:::::::.::::::::, ':::::::iト _ー _, ─‐┐|
       |:,   ` >=ミ_:::::::::::|       {::::::::::::::::::>'´   , i .|
       ||::〕iト .,//.//\:::::::ト .,__,.  !::::::::r<ハ  ,. =彡7 ,'|
       ||:::::::::八__,{ ト、/ ヽへ _{{ O }}_ 个Y´ ∨z=<::::::::::::i i !
       |.!::::::::::::::::::::::::} i ハ  |     |  | |{ i´:::::::::::::::::::::: l ,' |
.     |.|::::::::::::::::::::::/ ,:! {| | {    ,'  .| | } |}:::::::::::::::::::::::::| !|
.      | |:::::::::::::::::::: ヽ{.レ | |       ,'.   | | ト、!:::::::::::::::::::::::,' |.|
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...    || |:::::::::::::::::::::::|   | | ∨.:l    ,' ,'   |::::::::: : | | |
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      | |  |::::::::::::|.    | |        | |        | |   |
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      | ゚,  ∨::::|.    | |           | |.     | |   |
      |  ゚,  V: !    | |            | |     | |   |
      |   ゚,  ∨    | |         | |       | |   |
.     八  ∧  ∨   .| |             | |    ∧ ∨  ∧
.   __ノ\ ‘,  ‘,   | |          ||    ∧ ∨  ∧
.  /     :} .‘,  ‘,.  | |             | |.     ∧ ∨  ∧
  {    ̄   ,'  /  | |             | |      ∧ ∨  }
.    ̄〕iト . /   /ー-- | |             | | _ ,. 斗≦ ̄ ̄ ̄
         \_/     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

879SAVEDATA No.774:2016/04/01(金) 16:15:35 ID:nwge4aXk0
門の守護者レックナートはこれを阻もうとするも、門の封印に力を割いたままでは強大な魔法を駆使する女王を相手取るには叶わず、
開門を許してしまう。


       _,,,,--‐;;;;;;;;;;;;;;;;;;;‐---,,,_
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       ,/   .:::::::::::::::::::;/ || ::`!;;:::::::::::::::i、
       .i:::::::::::::::::::::::::::;;/   |;| :::`!;:::::::::::::::|.
       .!;::::::::::::::::::::;;/__    ||   ::`!;:::::::::::|
       !:: ::::::::::::::/:::....`ヽ、  '  ,,/"!;:::::::::|
       |: :::::::::::::|:::::....  `   ´  ...:::|::::::::|
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880SAVEDATA No.774:2016/04/01(金) 16:16:44 ID:nwge4aXk0

開かれし竜の門――

:::::::::|_ ィト,、_     |  |      |    ,イ  /|        | ヾ ヽ..|     ....|     |    _,,,,,!,,_,、_  |:::::::::::
:::ヾト炎イ ィ   ̄..ー-..|_|____.|.__{  〈.!_イ ̄ ̄ ̄ト,,_,ノ.  }_|____.__|..___..|-'''"´    |   .|:::::::::::
:::::::Y Y イ      |    |     ,,, イ ヽ   `.|      !   ..ノ`ヽ、   |       |     イ . 炎トィ}|:::::::::::
:::::::{ イ Yィ―┬--  .|    |   ./  、  ヘ` '''ー.{ ト、  ,イ }ー'7'" / ../ `ヽ  |       |_,,,,,,-ー`ヾ メY 〈|::::::::::
::::::∨―,、イ  .|   .`| ̄'' | ̄'''フ  ヽ  ヘ  ヘ '-ヽ` ! !´,イ‐.、 . /  /  /  \ ̄ ̄| ̄''''|  |    )ト爻 ∨|::::::::::
イ ̄ ̄ ̄ `ヽ .|    |   | イ  ヽ  ヽ  ン''"´ヘ   |.{  }.|   /` ヽ,、  /  /  \ |   |  |  / ̄ ̄ ̄ ̄ヽ:::::
!       ノ ―ー- .|― ./  ヽ  ヽ ,イ  ヽ ,,,ゝ―ヾ_ソ―く 、 /  ヾ  イ  イ  ヾ――|―'―‐!、       ノ:::::
..`ヽ   ,イ     ..|  /  ヽ  ` /  ヽ ,,イ|:::::::| |::::::| |:::::::| |::::: `ヽ /  ヽ イ  イ ヽ.. .|     |ヽ    イ´::::::
:::::ノ   ト、__    ..|ー/ 、  ` /  ヽ ,,イ ー| |= =| |=ニ| |= =| |= =| |= \/ ヽイ  __ ',ー |   __ | ノ    ト、::::::::
ィ       ヘ ̄''‐-| |  ` ヽ へ、 ./| |:::::::| |:::::::| |::::::| |:::::::| |:::::::| |:::::::| |' ,../', '"´  .', |'''" ̄|ィ ̄     ヘ::::::
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だが、女王が門をくぐるよりも早く、彼方より来訪者は来たれり。
それは伝承に残りし半生命半機械の生命体“ドラゴン”でもなければ、竜人“マムクート”ですらなかった。
見難く、見窄らしい容姿をした人のようで人で無きもの。
女王はこれを侮り殺そうとし、門の守護者はこれを訝しみ元の世界へと返そうとし――これに敗れた。
二人の強大なる魔法使いだけではない。
魔法文明そのものが異界より来たりし侵略者に成すすべなく敗北した。

881SAVEDATA No.774:2016/04/01(金) 16:17:24 ID:nwge4aXk0




           /                 ヽ
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    ヽ,。-亠、 // 奉 .ヽ ヽ ヽ___;;;;;;       ,;;    t
     ヽ:::::::::l`'ー-----t'~ ̄ .,'\;;      ,;;      t
      .ヽ::::::t.  ,.' .i  ヽ `'ー‐' ./\.    ,;;      ;;t
       .ヽ,:::ヽ;'  i    ヽ   /  .\.  ,;;      .;;: ヽ
        .l::::i__.。-.'"      ヽ  .(入 ,;;      ;;:   l
       .ノ:::::::::l.、,     ,,;;;'’ i  ヽ , / .j      .;;:  ..l
      ./:::::::::::::.t .゙"゙"゙"゙"   i .   /  ,:'      .;;:   l
    /l:::::::::::::::::::::l.         i ./ ,。'   .,        l
   ./ . j:::::::::::::::::::::::l       ,イ~ /   ,,;;      .,,;:;:;:;:;;l
   .j  .j ::::::::::::::::::::::└-----ー'´ .l /    ,,;;     .,,;;'''  ,;;;;;t
   .l  ヽ:::::::::::::::::,。'´| ;:;:   ,.。'´    ,,;;    ,,;;'''   ,;;;;;  .~l_
   ヽ  .\ 。.'´  l :;: .,。'´ ,, ,, ,, ,,,;;:;:;:;:;:;:;:;''':::::::::....,;;;      \
  .,.。'"´\  |.!,、   `l~ ̄,, :.;          .            i


魔封じの者……。
いつしかそう呼ばれるようになった彼の前にはありとあらゆる魔法が無力だった。
魔法を封じられた人間たちは、魔封じの者が率いる“魔族”に蹂躙されるより他はなかった。

882SAVEDATA No.774:2016/04/01(金) 16:17:57 ID:nwge4aXk0



                              ,,-‐''''''コ‐
                             /    f′
         ィ‐-..、       ..、 , ..       |     ヽ、
         ヽ  ヽ、  |\│`┘ `‐"1     ゙l     丶、
 ..、      /  │   l、  _..‐'''''゙''''''''ー〜-''''′      \
 '((ゞュ..,,   /′   fヒ ,ィ"''┬'" ン‐一‐  ,'            '、
  ^<ノ´゙'Y=x1     下'"゙゙|广'' ゙ゝ,,,,ノ   │       __  v'广'ヽ、
   `ゝ../  ソ''+ 、_  '∟ 丿 ___-r=!tナt│ヽ     ,/‐'ヷY` ..  1、
    ゙'∟ ,,r'´  ,,广'┐ 〕゙彡(个- .. ''ィニnニ 、 '、    :,'|/´ /’ ,,n〉  |}
     ゙<′  /′ ,ト ゙゙{ぅトK {ユ=冖゙゙ ニ 冖' ゝ、_....ノ┘ ヽ―′ _丿
      ゙ヽ_../  _/゙'''+丈ノ'"  ..‐    `゙''′ `/ ゙゙\__  ニ_ 〈'、
       ゙''n,,-r冖-..、  ゙lトッァ∟....-'''"⌒ ̄ ニ"′  _.. ` ゙爻_│ ヽ、
              `ゝ `' │ 1っ''-----  フ'.. 、....┴'' ̄ ̄′  |
               ゙ー.. ∟ 'ゝ;<‐ ..ム_..r'´ .. ̄   .. ......、_..../
                _....几'、 フt-‐'''´´ '´  ''''..;jtミニて ̄´
              ____..r冖"心xコ=コ'、      _.. ´|lー 、`‐'、
        _ '、 ´ '´ _jfサl{つ 丿 `゙`ー:ョ-ー‐"   ||!  ゙'、 '、
        '、      :〔亅 `亡     ,'"エコ′  ノl′  ゙、│
        `ュ、    |テ〈`っ’ `''ー 、  ゝニソ   儿rっ--l..|l 、
        /     '⊥ jL,,_  ..∟___,,......jァア"⌒゙'<''ミ
.         丶_、   T〈ー卜 "''1  ´   _..ャ‐"      1 ミ
               ゛'っ__⊥ ゙l'、  ''‐  ..<ソ′        ` ゙l
                 ゙'xヽ、   .."/′           │
                   ゙''ー--l │            ヽ_
                       `∟             ゙゙ゝ
                        `ヽ          v-‐'''''
                         \      _,,_   ||
                          `''''\  '´  `―′
                             `''′


鋼を肉とし、水銀を血とした魔族たちは一夜にしてジール王国を滅ぼし、浮遊大陸を落下させることで多くの人命を奪った。
魔法を失くし、友を失くし、家族を失くし、国を失くした人間たちは――しかし希望を失ってはいなかった。
目には目を、機械には機械を。
三賢者の指導のもと、機械生命体ドラゴンの化石より魔法に代わりし力“ARM”を建造。
また、ジール王国の後を継ぎ新たに興った“ガストラ帝国”では魔法と機械を掛けあわせた魔導アーマーが開発された。

883SAVEDATA No.774:2016/04/01(金) 16:18:30 ID:nwge4aXk0


   /||  /~i          /~|
  /  ||  |  .|        ,."~~'ヽ.i
   ̄ ̄|| _|   |_,,,-───-[]-,,,,.,」|
     ┼|i ,」ー└ ヾ  ,--<'~`ゞ_ソ,.ト,
     |i,|i     _,-',_i__ノ\_∠)ニヽ_
     /||  -,-┴--, ム--i,_ソーソ__ノ |i  `ヽ、
    (  ゝ、_>=-,, ヾ;,=-) |゚  ゚i=<_」ー=-、ヾ;,.
     フ`,__ノi o |i ヾ  `inok[ニ>'"     ヽ, i
   /__   フ ヾ-"-'|_,,,/=-       __ | /
   ヾ'" `v--,/[;]>'ノノソ~'ー-ヽ、  ,,-=~~~~i;ソ
    \  |iー++-=<==-<)  )`ー‘ー#'_ノ ノ ノ-,_,-ー-,_
     |i__o    rー-<;::|i=<ヾ, ゝ `-=='"~  /    t-ヾ-,
      `iト  /ヾ   ヽL_ノ `ヾ, \r=' ̄ ̄\L_  /」--=ソ_
       Lノヾ  ヾ__] |   \_,,-#"~ゝ-'L_i |i ̄~^=-, ~=-,.
        Lノ ry'ヾ,;'''' \     i| ~=-,    ~-' ~`-,.  ~-,.  `i
         \_ソ\ \  \   ノL_;:   ,,,r=-ーi,__,  ~-=,  |i  |
        ノ”──ヽ  ヽ  ヽ  /_)  ヾ,  /; |i~^~^`=-`.=--,ヾ/ヾソ
       /,,.r======ヾ  i;、 |   ̄ ̄~  ̄~~"ー───'
       L/ `\___|i i ヾ ,i
       `--,_|i__|i_/ノ ヽi


人々はARMを手にし、魔導アーマーに乗り込み、魔族へと立ち向かう。

884エイプリルフール:2016/04/01(金) 16:19:15 ID:nwge4aXk0
今を生きる人間たちだけではない。



       Π
      へへ      巛
   ___/    \   ((口
  [/      \  ∠_ヽ
 []|'――,_________ヽ  ||/ 
  |  ゜ ゜ ゜ ゜ ゜.| O) ))
  ト、   (-)  (-)|//
 ∩)):)    (⌒ヽ|)
 ∪ノ.:|____入二二へヽ
 (| | ゜  ゜ ゜ ゜ ゜。个`
 O) ))__四_____________ノ
 |__|_|_/___/ヽ_____ヽ
 ヽ _/ /  ヽヽ、
  匚]⌒ヽ 冖γ > へ、
  >>>⌒|  ⌒---'―___\
    ∨

蘇った太古の機神ヂークベックが。


                    > ' ´ ̄`ヽ
                 ィニ/   >-ヽ、-\______
                   7// ',__/     ヽ. \//////////∧
          _, -< ヘ     {:r= 、   x....ヽ    ', >'////////7/ |
       人 Y iィ:ハ.ィ' ̄弋.ノ.ヘ__,ィ⌒Y _,. -チ'´>-=-、/l|//i|
      j_Y::V::j::斗 イ\ヽハミ----ゝ '彡ィ´ィ   /./    ヽ/iiリ
      ト、::彡'-:ノj´  >- 、ヘ=i キ==={(:::::ヘ  i .i {      ∨
      |>--- イi }  .! i::Y } >ty< ヽ::∧_ '., i l o  _ >∨
       乂   .イ..> ':| |::7 '   l:l:l   〃 i:::ハヽ ヽV> ´. -‐'´
          ̄     i|..' /  ol:l:l o  .k  ー ' ノ  `ヘ_ ,...V
                  | V  γ/./>x   >-<   /、_   ヘ
               /ヽ、゚ ゚ {-{|ニニ= \_,。...゚-‐/->'´ ヽヽ   7
           x<::::::::::Ⅹ、.', ', ニニチ 7√i:::::{:::{__,.ィ ハ', /
         イz__;::::<::| \V', == ィ/  V:弋i__,.ィ 7 ,′
        T´ー--t    _|::| |:::::>-<:::::| 〃>ヽム--イ イ
          i     j-≦   ヽ |:::::::::::::::::::::::l {{    ム:::___L_
         j、  /   V   .ヘ::::::::::::::::::::リ ̄`` t={゚     i
       7    ,ィ=x !     \:::::::::::/    | ',    イ
      ,.ィ`ヽ\i r- Vハ     ヽ イ    /ヽ ヽ、_ イ ト、
     /    ヽ V__ / _j               {  i   ___ i: }
   Y       /ー <            弋_ jイ,.:ニニニ=Yj
     ̄ ̄ ̄ ̄                  乂V     i
                               l       l
                                l     l
                               > 、_.ノ

遙かなる未来より送り込まれたロボが。

滅びゆく世界に生まれた小さな希望を護るため人類と肩を並べる。

885エイプリルフール:2016/04/01(金) 16:19:45 ID:nwge4aXk0
過去―現在―未来。
本来交わり得なかった3つの時間軸が一つとなる時、Zの合体機構と風魔手裏剣を装備した奇跡のからくり丸は顕現する。


     <='^'=ゝ         
      |◎o◎|       
   .l二[ ・ ・ ・ ]二l     
   || ./_|__|__|_ヽ ||  
  [l l]l____l[l l]  
   [] ヘ l |ll| l / .[]  
     └ |||| ┘     
       ゙゙゙       

果たして人類は明日をつかむことができるのか。

                    ∧                ∧
         /|          | ,|                 | ,|       |\
        / /|          |  \  ____,-,.=..=、-、____  ノ  |        |ヽ ヽ
       | / |           \_  ̄/ ,--、T,--、 |、 ̄ _ノ           |  ヽヽ
       | |  L             ̄`L.,. `ヘ_,※_,,ノ´ 、,..l´ ̄          _|   | |
      | |   /            /ノ__,-v'''^''v‐、__ゝゝ           ヽ    | |
      | |   |    ,-‐‐‐‐‐‐‐-(  ゝ.__ヾ'^=^//__ノ  )-‐‐‐‐‐‐‐、   |    | |
      | |   |    ヽ ̄~‐‐ 、  `',‐- ノ、 ̄ ̄,´ゝ-‐~´   ,.-‐~ ̄ノ  |   | |
       | |   |     ヽ  (ソヽ/""  ~~^ ^~~  ゙゙゙ヽヽ/ヾ| /    |    | |
       | |   |      / ,--、|         |       | ,‐‐、 〈     ,|    | |
        | |   |    _/ /===))ゝ____,...-‐↑‐-、.._____ノ)(===ヽ `‐;;、  l   | |
        | |  _|  ∠ヽ  |=l/ .|二=/´_..|__丶:=二|  ゝ=ノ /==ヽ |_  | |
         |__|__| ∠=:::::) /´|    |==|~  |  ̄|:==|   | ゝ ゝ===ヽ |__|__|
        /二二>==´ ノ 丿    ゝ=:|~ ̄l| ̄~~|::::=ノ    ゝ `‐`==<二二::ヽ
       ( /{ミ三∀__/ (____,.......-‐|_/ゝ__..|....._ノ\_|‐-........____) `ゝ∀三彡} | )
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           ~∨~´       ,..-‐'´ヽ_/  ,⊥  \___/ `‐、_         `~∨~
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                ┌⌒ヽ /====),<   _  >、====ヽ  /⌒ヽ
                 ,ゝ-'´ヽ|二=‐'´' ヽ二‐二/  ゞ二==|__人__ノ
                |   /Τ ̄    ゝ二ノ      Τヽ   `l
                |   |二_|               |二_|   |
                ,ヽ_____|二|                |二|_____/
            ∠lllll匚ノ   ̄ \             ノ    □lllllゝ
              ,〃)))\,、-'‐-<lllll\       ∠llllll>-‐-、/(((ヘ
              |/ ̄                         ̄\|


眠りより覚めし地獄の帝王が明かす魔族の悍ましき真実とは?

886エイプリルフール:2016/04/01(金) 16:20:16 ID:nwge4aXk0



            , - ュィ< ア≧ 、_
            ,{ / , 、 ヽ   ,--ヘ
          / ヾ ' ノ ≦-'≧=ミ ≦\__ ≧o 。_          r ミ  ―ミヽ
          ヽァ´、_{ ヽア>、_}    7 ̄マヽ ≧ 、      }マト  ― 、 ヽ
           {∨{XXXX =マ ヽ \≧o'      \  ヽ_ _ィ≧、     Y
              V r  ̄ ヽ  ノア ̄ 7 ヽ≧o。  ノ > ´  7   アミ     ヽ
           ィ ヘ ヽ ヽ ノ´  /   \ 、 ア´  /    j   / /        l
               Lヽ  /          V   .j     i / ./      {
             ` =={           {    |    ./}≦=- '     , ミ  .}
              r 、{ ヽ-- >‐ ミ ャ ´ /    ∨   Y       ./ ミ、 ≧
             , /|   } >― 、 ヽイ      ∨  }       {   \.|
           / ̄i .ト /{  \_  `L     /´≦i  i -=  ̄ ̄ .{    _|
           /  i j  /ヽ/   ` { | \  / ̄ ̄\ ヽ      ∨ ̄ マヽ
             j  i .l   { / ヽ ア ヽ{├ \ /      Vヽ     _ヘ  /_
          / -= i ./  .iY ヽイl    }\  }≧――― 、}  ヽ-==    ∨/
        //    l   r |  / \_/ \/ ̄ヽ    /_/、      \
     / ̄ >i  __j ̄ヽ ハィ 、 /  }  {\   \ イ     \      ア´
   /    i }´   ヽ{  ヘ| k  ヾ   ノ\ ヽ ヽ <  ̄ <     >― /
  /      |リム    ヽ  } lヽ r  ┤  \r ミ       l   /   / ̄ ̄ ̄
 /       マム--==≦ Y 7、{  \ ノ   /  ∨     |イ    /
./ _      マム      1        /     ヽ     |l   /
| /  > 、    マヽ  } ` =- ミ―― ミ /         ∨ ≧ ュ  { ∧
ゝ┼― ´ .l> ´   7    ./     ./         ∨   マi .iヽ∧
 ./  __j        <   ./     ヽ        /    ト .i \\
 l  /   リ    /    ヽヽr  ̄ ̄ ヽ       ム    | ヽi \\

ドラゴンロードの語る兵器として生まれし者が望んで欲し、渇いても、その身には得られなかったモノの答えとは?


そして謎に包まれた魔封じの者の正体は――?

887エイプリルフール:2016/04/01(金) 16:20:48 ID:nwge4aXk0


                    ____
                 x.:´: : : : : : : : : : :`: .、
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  .  i  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄'\/ : : /.:.:. : : : : : :./|          | l ̄ ̄ ̄.ヽ | |
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   γ´|_|__|ヽ  l: : : : : : : : : : : : : : : : :|           |(У)       i/ ̄ ̄ ̄\
    i  | | | |  i ヽ: : : : : : : : : : : : : :.:.: |______/ (У)     /      ◎  i


   私 ハ 誰 ダ ?

 オ 前 ハ 誰 だ ? ?


             
                     ―コギト・エルゴ・スム―

888エイプリルフール:2016/04/01(金) 16:22:07 ID:nwge4aXk0


                        ニンゲンヨ



                    ,イ                      r.7
       ____,.. ィ く ノ                     乂>‐,、____
        f´ラ'>、ゞv,ハ_)/       _,..  <> 、.,_       \! f' / ∨ヾ ヽ
      { { >'、/ヾラ >=- .,_,.. <' 7‐- ∧-‐ヾ >、.,__,. < >,. <\ >' } }
        ゞリイ \'  7-= ∠´/ 〉/ 7ー-f'.人',-‐ヾ´ 〉\`ヽ、_,. ヘ ヽr'' }} リ'
      /\ }}ー{`〕'ー-/_/f'ゝ./ `ー!‐-||..人_i!,. -|!¨´ i!/ヘ く ゝ_,.ヽ¨ル 7 /ヘ
      '-'''´ `¨ー、}!ー{  /','、 i!-..,j!   !!   ||   |!_,.ヘ'  〉-i!´ },.ィ!コ-‐'' `ヽ}
                \リー|-|!ゝ、|  |`¨ー|!,.ヘ |!-‐ |!  |!/ |!」|ー/-/
            ト、_>ナ/ !  |!ー-i|..,__i!   i!_,..|!-―|! ノ!ノー!' ,.ィ
            }レ' / 〉' ゝ'ー-ノ   |!∨|!   乂-‐ゝ'' ヘ´ \ヘ!
      、- .,_,.r''ヘ ラヽ!、 ゝ_イ `゙ー<__.>‐''  /_/ ri:}-‐' / ゝ、_,.ィー,
         ヽ >イ、 / >≧=イ r‐==、、   ,. ,.z==ミ、 ヾイリィヘ/、, ヘ' ィ´
        },イ /\ > /}!| |!  ◎ }|!ト   イi|! ◎  }| | !、 ∨/\ }トゝ
          {! /、ヽ /ー〈_.|,.ト、ゝ  _,.ノ|リ _ {i|!ゝ、  ' ノィ| ノ-‐{! r'' >、 }
          / 、 /-, -、 ゝ\!ーtr―=7//=\ヘー―,/=7!ノ'/,. -|}=-ゝ' /!
          |!/ `Y!  ヽi!' /ー|!-'ー/、i!ノ{¨}、iL}!ノーtr=7f, ィ!´  iY´ \J|
        ´   | レ=、ノト-.,,ノ|リ >イヽ 人.v.人∧ノ〈|!ゝ_,.>|!/¨ヽ|!
            |レーィ'` ー}-〉、j! ,イ 人 .リ  |!_ノ、| >''´ }|_,.ィー||、
           ,.ィ |L,.ィ|| ー《 {' r¨ゝ| `¨  ¨ |,.ィ¨, イ 》ー .||-.,_ノ! >{ヽ
         , < 〉- |L..イ| ,.イ》ー、>ー-:.,   ,.: -Yr_r-《 〉、 |L__|.|ィ'  >ノ\
         /  >< /ゝ 」! ー、</{ r/rY ::.  .:: fr,<〉}、/r一 Y|〃∨>'、  ヽ
         ` <  /` 、ヾ!\\〉∧ヘ しr,ーv―r,し/イ{ {´\ レ',.イ\,.ィ >''´
          `<  / >イ { レ'r、\ヽ __,、_ ィーイー,ー }  \ \ > ´
           `ー.,_ィ〈 | i  ゝ、_ュ ,、_,ィ rク_,.ノ¨´\  _,.> ¨´
                  `¨゙ <___/`ーニニィ、__\>''´


             ツクラレシ モノタチ ノ ニクシミ ト カナシミ ヲ シレ

889 Robot Panzer Grand  Royale:2016/04/01(金) 16:22:37 ID:nwge4aXk0
 Robot Panzer Grand  Royale 


参戦作品

【LIVE A LIVE】

【ファイナルファンタジーVI】

【ドラゴンクエストIV 導かれし者たち】

【WILD ARMS 2nd IGNITION】

【幻想水滸伝II】

【ファイアーエムブレム 烈火の剣】

【アークザラッドⅡ】

【クロノ・トリガー】

【サモンナイト3】


2016年4月1日 発売 未定!

890 Robot Panzer Grand  Royale:2016/04/01(金) 16:23:16 ID:nwge4aXk0
>>874-889
以上エイプリルフールネタでした

891SAVEDATA No.774:2016/04/02(土) 04:00:10 ID:Ip8EB9n.0
エイプリル乙。こじつけRPG、こういうの嫌いじゃないぜww


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