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仮投下スレ

84 ◆7WJp/yel/Y:2008/09/08(月) 19:01:30 ID:znK7sTeE0

「我威亜党はそのために動いていたんだよ。
 帝都に地震を起こして、多くの人間を殺し、ある禍々しい姿の化物を召喚するためにね」

目を瞑ればあの姿が鮮明に思い出せる。
この世のものとは思えない造形、恐竜をも超える力、いくら攻撃しても倒れない圧倒的な耐久。
あれを支配すれば確かに世界征服などたやすいだろう。
結局は飼い慣らす事など出来ずに文字通り潰されたが。

「でも、安心したよ。
 『未来がある』ってことはあの化物は倒されたってことだろ?」
「聞いたこともないですね、情報工作か何かされたんでしょう」

確かに無駄に恐怖を煽っても仕方がない。
ただの地震とした方が都合が良いのだろう。
そのことからも我威亜党が未来に伝わっていないのも納得がいった。

「それで、俺と仲間はその召喚された化物に殺された……はずだった」
「だけど気がつけばここにいた、ってことでやんすか?」
「ああ、傷も綺麗に塞がっている。こいつも未来の技術って奴かな」

身体に痺れなども感じないし後遺症はない……ように思える。
不思議なものだと開いたり閉じたりしている手を見る。

「ああ、我威亜党についてだけど幹部は俺の知ってる限り五人いる。
 亀田皇帝、チバヤシ公爵、秋穂侯爵、あやか伯爵、寺岡子爵、チキン男爵。
 どいつも癖のある連中ばかりだよ」

恐らくこの首輪は寺岡子爵の特製だろう。
嬉々として殺しをするような人物ではないが、嬉々として兵器を作るような人物だ。
大方、気がついたら作っていたとかそんな理由だろう。

「……これも何かの儀式かもしれないな。
 帝都の大地震もあの化物を呼び出すためのものだったから、可能性は高いと思う」
「規模が違うぜ、息子よ」
「そうだな、あの時は万単位、こっちは数十人だ」

もちろん、数の問題ではないが。
しかし、儀式や生贄などでは大きなポイントとなるのも事実だろう。

「今のところ我威亜党が殺し合いを始めた目的はわからない。
 だけど、世界征服という大きな目標に繋がるものは確実なはずだ」

あの化物を支配できなかった以上我威亜党にも多大な被害が出たはずだ。
ならば遊んでいる暇はない、これにも何かしらの意味がある。

85続き ◆7WJp/yel/Y:2008/09/08(月) 19:02:11 ID:znK7sTeE0

「仲間も大勢居たんだけど、こっちに連れてこられたかはわからないな」
「その人たちの名前を教えてもらってもいいかな?」
「ああ、今メモに書くよ。そっちの知り合いもよければが書いてくれるか?」
「了解でやんす!」

九条と凡田も筆記用具を取り出してデイバックに入っていたメモ帳に名前をつらつらと書いている。

「こっちで知り合ったのは……?」
「……親父だけだ」
「ハハハ、そんなにへこむな息子よ。良いことだってきっとあるさ」
「俺は四路 智美って人に会いました」
「四路 智美? 智美もいるのか!?」

七原の頭に浮かぶのは元スパイの頼りがいのある女の姿だ。
銃の腕前もたいしたものだし、何よりしたたかだ。

「多分人違いだよ、凡田くんの知り合いだから」
「……同姓同名か」
「俺と凡田くんの名前を出したら警戒は解いてくれるはずだ」

カリカリと音を立ててメモに名前を書き込んでいく。
七原は書き終わると顔を上げてメモを渡す。

「信用は出来るやつらだよ、少し我の強いのが多いけど」
「オイラも出来たでやんす!」
「……一応信用は出来ますよ、少なくとも殺し合いに乗るような奴らじゃない」
「了解……って倉刈さんまで。同姓同名多いんだな」

多くある名前ではないが珍しいというほどではない。
同姓同名がいるぐらいおかしくはないだろう。

「散々話してもらって申し訳ないけど、こっちには重要な情報がないんだ。
 これから仲間を探そうとしたところでね」
「仲間、か」
「三回目の放送でホテルに集合でやんす」

86時間移動か洗脳か ◆7WJp/yel/Y:2008/09/08(月) 19:03:19 ID:znK7sTeE0
第三放送ということは大体十数時間後。
時間がないわけではない、しかし遊んでいる時間はない。

「じゃあ早速動こうか」
「あ、その前にスコップはないでやんすか?」
「スコップ?
 知らないな、親父は……っておい、なにやってんだ」
「ん〜? いや、面倒くさい話してるからよ〜、ちょっとパンを食ってただけだよ」
「……スコップは?」
「見てないな〜、包丁とかそういうのもないから武器になりそうなのは取り上げられてると思うぜ?」

布具里は相変わらず呑気だ。
三人は軽くため息をつき、話を続ける。

「一旦別れるか。山にも施設があるから見て回りたい。
 二人と二人ならちょうどいいだろ」
「じゃあ俺と凡田くんで」
「え、一緒に行かないんでやんすか?」

凡田が疑問の声を上げる。
確かに四人もいれば頼りになるだろう。
しかし、ここは冒険に出なければいけない。

「俺たちは先に街に向かっておく、こう見えても冒険家だからな荒事は専門さ。
 そっちは先にホテルに行って綺麗にしておいてくれよ」

七原は修羅場に慣れた自分と布具里が仲間集めをする場面だと判断した。
道中で襲われる可能性や話しかけた相手が殺し合いに乗っている可能性だって高い。
危険冒すのはプロがやるべきだ。

「そうか……でも、俺たちも一応仲間を探しておく」
「死ぬなよー、命あっての物種だからな」
「『依頼』は完遂させるさ。
 こう見えても達成率は100%、期待しといてくれよ」

布具里が手を振って海の家を出て行く。
これで方針は立った。
ホテルの見張りは九条たちに任せて七原たちは仲間を見つけて保護する。

「さて、親父。さっさと仕事終わらせて続きをやるか!」

まだ殺し合いを破壊する依頼は始まったばかりだ。

87時間移動か洗脳か ◆7WJp/yel/Y:2008/09/08(月) 19:03:49 ID:znK7sTeE0
【B−5/海の家/一日目/早朝】
【九条英雄@パワプロクンポケット9】
[状態]:健康、正義の味方としての決意
[装備]:ギター
[参戦時期]:維織GOOD後からアルバムまでの間
[道具]:支給品一式、ロケット弾、スタングレネード、野球人形、大正編の仲間の名前が書かれたメモ
[思考・状況]
基本:参加者全員を助け出し、亀田を倒す
1:ホテルに向かいながら仲間を集める。
2:彼女(森友子)を埋葬したい。
[備考]
※七原と軽い情報交換をしました。

【凡田大介@パワプロクンポケット2】
[状態]:顔面に打撲
[装備]:無し
[参戦時期]:本編終了後
[装備]:お守り
[道具]:支給品一式、鍵
[思考・状況]
基本:ガンダーロボを救出したい
1:ホテルに向かいながら仲間を集める。
2:基本人殺しはしたくない。
3:九条を信頼。
4:チームメイトにH亀田がいる
[備考]
※七原と情報交換をしました。

88時間移動か洗脳か ◆7WJp/yel/Y:2008/09/08(月) 19:04:52 ID:znK7sTeE0
【七原 正大@パワプロクンポケット7裏】
[状態]:健康
[参戦時期]:ほるひす戦敗北直後
[装備]:地味な色のベスト、ニューナンブM60(6/6)
[道具]:支給品一式、Pカード、九条と凡田の知り合いの名前の書かれたメモ、予備弾(12/12)
[思考]
基本:亀田を倒す。
1:仲間を集めるために動き回る。
2:ほるひすに警戒心。
3:第三放送前にホテルPAWAへと向かう。
[備考]
※大正編のどの人物とどの程度面識があるか、メモに誰の名前が書かれたかは後の書き手に任せます。
※布具里から拳銃、ニューナンブM60を巻き上げました

【布具里@パワプロクンポケット7裏】
[状態]:健康
[参戦時期]:不明
[装備]:特になし
[道具]:支給品一式、ランダム支給品残り0〜1個(本人確認済み)、亀田幻妖斎の服(仮面付き)
[思考]
基本:正大に寄生して生きる。
1:仲間を集める。
2:第三放送前にホテルPAWAへと向かう。
[備考]
※確認済みの支給品の中に、衣服になるものは入っていません。

89 ◆7WJp/yel/Y:2008/09/08(月) 19:05:25 ID:znK7sTeE0
投下終了です
問題点がありましたら指摘をお願いします

90ニンゲン ノ テイギ ◆7WJp/yel/Y:2008/09/21(日) 21:17:02 ID:uh6vC3cQ0
さるさん喰らいました……ここからは仮投下スレで

91ニンゲン ノ テイギ ◆7WJp/yel/Y:2008/09/21(日) 21:17:40 ID:uh6vC3cQ0


   ◇   ◆   ◇   ◆



智美は手元の探知機に目を落としながら工場の中を移動していた。
理由は単純、青野柴夫なる男が一人っきりなったからだ。
今までメカ亀田、プロペラ団が作った失敗作だ、と共に行動していたので声をかけなかった。
だが、一人だけならば話は別。
智美に恨みを抱いていることは間違いないメカ亀田と鉢合わせたくはなかったのだ。

「あ……ああ……」

しかし、目の前にいるのは重傷を負った体付きのいい男が一人。
メカ亀田に捨てられたのは間違いない。
問題はメカ亀田が直接やったのか、捨て駒にされたのか、だ。

「ねえ」
「あん……た……!」

目を見開いてかすれた言葉を出す青野。
その様子を見て智美は確信する、この男は邪魔だと。
この死にも至るであろう傷を負った男をホテルまで連れて行くにはリスクが大きすぎる。
何よりもこの死に体が脱出に役立つとは思えない。

「誰がやったの?」
「機……か……械……」
「機械? メカ亀田のこと?」
「……あ、ああ……!」

92ニンゲン ノ テイギ ◆7WJp/yel/Y:2008/09/21(日) 21:18:37 ID:uh6vC3cQ0
知ってるのか? とでも言いたげに視線を向けてくる。
智美はそれを無視して出来るだけ情報を搾り取ろうとする。

「あんたの知り合いは? もちろんここで知り合った人間のことよ」
「……サング……ラス……八……」
「はい? 何て言ったの?」

サングラスはかろうじて聞こえたものの、その後がさっぱり聞き取れない。

「サングラス……や……はち……」
(……ここまで、ね)

智美は懐から拳銃を取り出してトリガーに指をかける。
その動作に青野は再び目を見開き、ニヤりと笑った。

「何? 怖すぎて笑えてきたの?」
「お前……も……殺さ……勝てっこ……」
「お前も殺される、誰々には勝てっこない、ってところかしら。
 ……お生憎様、私、優勝する気なんてサラサラないの」

彼女にあるのは三橋一郎を生かすという目的だけ。
覚悟はここに飛ばされてから今までの間に済ませた。
後は三橋にとってプラスになるような行動を取るだけだ。

「安心しなさい。
 天国に行くのなら私とは二度と会わないし、地獄に行くのなら私の苦しむ様が間近で見れるわ」

93ニンゲン ノ テイギ ◆7WJp/yel/Y:2008/09/21(日) 21:19:11 ID:uh6vC3cQ0
その言葉が言い終わると智美は銃を『仕舞い直す』。
その内に出血多量で死ぬだろう、銃は最後の最後で情報を搾り出すため。
『殺される』となると必死に何かを喋るかもしれないと思ったからだ。

「……死んだ?」
「……」

ピクリともしない、間違いなく死んだのだろう。
罪悪感なんてない、人を殺した事だってあるのだから。

「……メカ亀田は危険、どいつがサングラスかもわからないし、危険人物も絞り込めてない。
 お手上げね、見つからないうちにどこかに行くのがベストね」

言い終わると智美はチラリと青野の死体を見て。

「……」

何も言わずに工場を出て行った。


【青野 柴夫@パワプロクンポケット6  死亡】

【B−7/工場周辺/一日目/早朝】
【四路智美@パワプロクンポケット3】
[状態]:健康
[装備]:拳銃(ジュニア・コルト)、探知機
[参戦時期] 3智美ルートで主人公の正体が1主人公だと発覚後。
[道具]:支給品一式、ダイナマイト5本 
[思考・状況]
基本:二度と三橋くんを死なさない。
1:しばらく情報集め。
2:人を集めたい。
3:第三放送までにはホテルPAWAに集まる人をどうするか方針を決めたい。
4:亀田の変貌に疑問?
備考
※メカ亀田を危険人物を判断しました。

94ニンゲン ノ テイギ ◆7WJp/yel/Y:2008/09/21(日) 21:20:16 ID:uh6vC3cQ0


   ◇    ◆    ◇    ◆


メカ亀田は工場の中を見渡していた。
先ほどの緑色の髪の少女が来るか、それともあの二人と一体が来るかはわからない。
あの触手のようなものを出した女は恐らくサイボーグかアンドロイドかロボットだろう。
メカ亀田はここを動く気はない、襲われたら迎え撃つ気だ。
工場の内部は元々調べるつもりだったのだ。
それにあの程度の連中なら軽くいなせる自信がメカ亀田にはあった。

「ん?」

そんな考えをしながらメカ亀田が進んでいると、一つの物体を見つける。
少し不審に思いながら警戒をしながら進んでいく。

「青野、でやんすか」

それは倒れこんでいた青野の体だった。
ピクリともしない、死んでいるのだろう。

「やれやれ、お前も運がないでやんすね」

軽くため息をついてマントの下から爪を取り出す。
それを青野の首筋に当てる。
そして、首輪と青野の首をゆっくりと切り離していく。

「意外と早く首輪を手に入れれたでやんすが……」

ここからが問題だ。
今すぐに工具を見つけて解体することは簡単だが。
この首輪は遠隔操作できるということがわかっている。
つまり、首輪を解体している最中に、ボン、という可能性が非常に高いのだ。

(とりあえずはジャミング出来る機械が必要、でやんすか)

ここにあるかどうかもわからない、前途はまだまだ多難だ。
首輪が手に入り工具もあるであろう工場に着いた。
残る必要なものはジャミングを可能とする機械だけ。

(好調、でやんすねえ、面白いぐらい)

そんな都合のいい展開に逆に不安に思いながら、メカ亀田は工場の中を歩き回った。
逃亡生活のお陰で工場には縁がある。
それゆえにあの緑色の女が隠れていた荷物の山が隠れるためのものだと気付いたのだから。
メカ亀田は目的を果たすために工場を探索する。

95ニンゲン ノ テイギ ◆7WJp/yel/Y:2008/09/21(日) 21:20:49 ID:uh6vC3cQ0


   ◇    ◆    ◇    ◆


メカ亀田は工場の中を見渡していた。
先ほどの緑色の髪の少女が来るか、それともあの二人と一体が来るかはわからない。
あの触手のようなものを出した女は恐らくサイボーグかアンドロイドかロボットだろう。
メカ亀田はここを動く気はない、襲われたら迎え撃つ気だ。
工場の内部は元々調べるつもりだったのだ。
それにあの程度の連中なら軽くいなせる自信がメカ亀田にはあった。

「ん?」

そんな考えをしながらメカ亀田が進んでいると、一つの物体を見つける。
少し不審に思いながら警戒をしながら進んでいく。

「青野、でやんすか」

それは倒れこんでいた青野の体だった。
ピクリともしない、死んでいるのだろう。

「やれやれ、お前も運がないでやんすね」

軽くため息をついてマントの下から爪を取り出す。
それを青野の首筋に当てる。
そして、首輪と青野の首をゆっくりと切り離していく。

「意外と早く首輪を手に入れれたでやんすが……」

ここからが問題だ。
今すぐに工具を見つけて解体することは簡単だが。
この首輪は遠隔操作できるということがわかっている。
つまり、首輪を解体している最中に、ボン、という可能性が非常に高いのだ。

(とりあえずはジャミング出来る機械が必要、でやんすか)

ここにあるかどうかもわからない、前途はまだまだ多難だ。
首輪が手に入り工具もあるであろう工場に着いた。
残る必要なものはジャミングを可能とする機械だけ。

(好調、でやんすねえ、面白いぐらい)

そんな都合のいい展開に逆に不安に思いながら、メカ亀田は工場の中を歩き回った。
逃亡生活のお陰で工場には縁がある。
それゆえにあの緑色の女が隠れていた荷物の山が隠れるためのものだと気付いたのだから。
メカ亀田は目的を果たすために工場を探索する。

96ニンゲン ノ テイギ ◆7WJp/yel/Y:2008/09/21(日) 21:21:32 ID:uh6vC3cQ0
【B−7/工場周辺/一日目/早朝】
【メカ亀田@パワプロクンポケット6裏】
[状態]:損傷なし
[装備]:特になし
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜3個、青野の首輪
[思考]
基本:『殺し合い』を失敗させた後に亀田を殺す
1:工具とジャミング用の機会を見つける。
2:脱出のために役立ちそうな人間を優先して仲間にする
4:サングラスの男(灰原)に激しい殺意と敵意
[備考]
※参加時期は不明
※メカ亀田は灰原の名前は知りません
※自動追尾ミサイルとバリアーは没収されています
※青野の情報は全部嘘だと思っています。
※十波典明、タケミ、たかゆき、高坂茜の名前を知りません

97ニンゲン ノ テイギ ◆7WJp/yel/Y:2008/09/21(日) 21:22:05 ID:uh6vC3cQ0


   ◇   ◆   ◇   ◆


彼は緑色の草原をデイバックを背負って駆けていた。
気がつくとここに居たが彼には対して関係のない話だ。
いつものように人間をからかった、大きな身体をした人間が慌てふためく姿は酷く滑稽だった。
そしてまた一匹、人間を見つけた。
こいつもからかってやろうと思い、ゆっくりと近づいていく。
あの身体つきならばこのぐらいの距離を空けていれば十分に逃げられる。
さあ、そろそろ鳴き声を上げようと思うと。

「うきぃ!?」
「……はははは、やっと見つけたですよお猿さん」

先ほどの歩くスピードとは一転素早い動きをされて彼は捕まえられてしまう。
必死に抵抗するが上手く力が入らない。

「何でお猿さんがデイバックを持ってるのかは知らないですが……もらっておきましょう。
 そのためにあの二人を見逃したんですから」
「うきぃい!」
「……うるさいです」

人間は手に持っていたよくわからないものを持ち上げ。

ズガガガン!

という音が聞こえると同時に、彼は意識を手放した。

【猿@パワプロクンポケット4 死亡】


【B−7/工場周辺/一日目/早朝】
【高坂 茜@パワプロクンポケット8】
[状態]:幸せ、早く殺したい
[装備]:機関銃
[道具]:支給品一式、アップテンポ電波、予備弾セット(各種弾薬百発ずつ)、不明支給品2〜3
[思考・状況]
基本:みんな殺して幸せな家庭を取り戻す。
1:人を殺すために人の居るところへと向かう
備考
※メカ亀田とタケミを危険人物を認識しました

【残り 46人】

98ニンゲン ノ テイギ ◆7WJp/yel/Y:2008/09/21(日) 21:23:13 ID:uh6vC3cQ0
投下終了です
指摘を、お願いします

99ニンゲン ノ テイギ ◆7WJp/yel/Y:2008/09/21(日) 21:24:50 ID:uh6vC3cQ0
投下終了です
指摘を、お願いします

100ニンゲン ノ テイギ ◆7WJp/yel/Y:2008/09/21(日) 21:53:06 ID:uh6vC3cQ0
代理投下、ありがとうございます

101ニンゲン ノ テイギ ◆7WJp/yel/Y:2008/09/21(日) 23:11:10 ID:uh6vC3cQ0
うわああああああ! 一番大事なところが抜けてるorz
>>91の前に次のが入ります

102ニンゲン ノ テイギ ◆7WJp/yel/Y:2008/09/21(日) 23:11:46 ID:uh6vC3cQ0

「タケミ……自分のコトを人間だト思ウ奴が、人間ナんダ。
 ……アンマ、リ、深ク、考、エンジャ、ネ……」

それっきり、たかゆきは動かなくなった。
タケミは目を伏せたまま動かない。

「そう言えば……どこに行ったけ、あの二人」

野球帽の男と緑色の髪の少女の向かった方向を覚えていない。
それどころか頭がふらふらとして思考が落ち着かない。
工場には危険人物がいて、どこに向かったかもわからない危険人物も二人。
とりあえず工場には時間を置いてから入るのがいいだろう。

「……自分を人間だと思ったら人間、か」

タケミにとって考えた事も無かった論理。
自分が化物だ、という前提から離れる事の出来なかったタケミには、出来なかった。

「……そんなこと言われても、わかんないよ。たかゆき」


【たかゆき@パワプロクンポケット3  死亡】


【B−7/工場周辺/一日目/早朝】
【タケミ@パワプロクンポケット10裏】
[状態]:疲労(大)
[装備]:作業着、コンパス、時計
[道具]:支給品一式、爆弾セット(残り5個)
[思考]
基本:殺し合いには乗らない、首輪を外すために行動する
1:……人間、か。
2:今すぐに軍服の男(メカ亀田)がいる工場に入ることはしない
3:出来るだけ戦いたくないが、どうしようも無ければ戦う
[備考]
※モンスターとしての力は短時間、疲労大の条件の下、発動可
※十波典明、高坂茜、メカ亀田の名前を知りません

103名無しのバットが火を噴くぜ! :2008/09/22(月) 03:30:43 ID:ONhw9m4E0
乙です
って、ええええええええええええ!
たかゆき死んでたのかああああああ

104起承転々 ◆NXWWzEezZM:2008/09/28(日) 21:56:29 ID:cXFqx4Pw0


   ◆  ◆  ◆


「ハア……ハア……」

結局、俺は病院を目指すことにした。
止血をしたといっても完全なものではないので、ゆっくりと、しかし着実と血が引いていくような感覚に襲われる。
さらには身体のあちこちが痛むし、長時間歩く気力も無い。
こんな状態で比較的距離がある診療所まで行くのは辛い。
そう考えて俺は一刻も早く病院に辿り着こうとしている。
しかし、病院まで歩くのも辛くなってきた。
このまま一眠りしたいくらいだが、もしも敵に遭遇したら今度こそ命は無いだろう。
だから気合だけでも俺は歩き続ける。
どんどん息が荒くなっていくが、それくらいは我慢するしかない。
それまでに殺し合いに乗った参加者に会わないように願いながら、歯をくいしばって歩いていく。
足も踏ん張りが利かなくなってきて何回も転び、そして跪きながらも懸命に進んでいく。
丁度7回転んだ頃だろうか、俺はそれまでと同じように顔を上げようとして、気付いた。
目の前に居た、黒い『ヒーロー』の存在に。

105起承転々 ◆NXWWzEezZM:2008/09/28(日) 21:57:07 ID:cXFqx4Pw0


【G-5/G-6との境目付近/一日目/早朝】
【萩原新六@パワプロクンポケット6】
[状態]:左腕欠損、腹部に軽度の切り傷、貧血(中)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式 、野球用具一式(バット8本、ボール7球、グローブ8つ)@現実、野球超人伝@パワプロクンポケットシリーズ、パワビタD@パワプロクンポケットシリーズ、自身の左腕
[思考・状況]
1:敵か? 味方か……?
2:病院でしっかり手当をしたい。出来れば仲間も見つけたい。
3:野球超人伝を後でじっくりと読みたい。
4:元の世界に戻って犯人を捕まえる。


【芹沢真央@パワプロクンポケット7】
[状態]:特に異常なし
[装備]:私服
[道具]:支給品一式、ランダムアイテム1〜3個
[思考]
基本:弱きを守り悪を挫く『正義の味方』を貫く
1:目の前の重傷者が『悪』であるなら成敗する。そうでないのなら助ける。
2:人を守る。
[備考]
※参加時期は黒打くんにアメコミのヒーローについて教えてもらった後
※八神、大江と情報交換をしました。

106名無しのバットが火を噴くぜ! :2008/09/28(日) 21:58:07 ID:cXFqx4Pw0
投下終了です
ただでさえ長いから余計な部分を端折ったらもう何がなんだか
誤字とか矛盾があったら指摘してください

107名無しのバットが火を噴くぜ! :2008/12/27(土) 21:49:58 ID:ByhKGjAo0
また規制されてたので、こっちに投下します

108 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 21:52:08 ID:ByhKGjAo0
「なあ、ほるひす。本当にこっちにお前の仲間がいるんだな?」
「うん」

平山はほるひすと共に消防署へと歩を進めていた。
理由は簡単、ほるひすが仲間とそこで待ち合わせをしていると聞いたからである。
平山にとってそれは吉報であった。
野球部に所属し甲子園優勝まで果たした彼は仲間の大切さを重々承知していたからだ。

この糞ったれなゲームで志を共に出来る存在がいる。

このことはゲームが始まって以来碌に人に会ってない平山にとっては大きな励みとなった。

「あ、いたよ」
ほるひすはそう言うと、消防署の前に立っている二人組--レッドと東に向かって駆け出す。
平山もそれにつられて駆け出し、すぐにそこに立っているのが先ほど物騒な会話をしていた二人だということに気づいた。
(おいおい、ほるひすの仲間ってこいつらのことかよ……。まさか罠ってことはないだろーな?)
一抹の不安を胸に秘め、いつでも逃げ出せるよう用心しながら平山は彼らに近づいた。

109 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 21:56:28 ID:ByhKGjAo0
「おっ、ほるひす。無事だったか」
ほるひすに気付いたレッドが声をかける。
次いで東が口を開いた。
「無事で何よりだよ。それで、後の彼は誰かな?」
「ひらやまだよ」
「……つまり新しい仲間ってことでいいのかい?」
ほるひすからは明瞭な答えが期待できないと悟った東は平山の方に尋ねた。
この態度から平山は罠ではないことを察し、正直に答える。
「そうなるな。俺は平山紀之。ほるひすとはさっき会ったばかりだ。
 それで仲間と待ち合わせをしているって聞いたからお供さしてもらったんだ。
 なあ、あんた達もあの亀田って奴を倒したいんだろ?」
レッドと東の二人は首を縦に振り、肯定の意を示す。
「勿論俺もそうだ。目的が一緒なんだから、良ければ俺も仲間にいれてくれないか?」
「もちろんじゃないか、歓迎するよ平山君」
この提案に対し東は笑顔と共に快諾し平山に手を差し伸べ、平山もまた笑顔と共にその手を握り返した。
その後、平山はレッドとも軽い挨拶を交わし、三人と共に危険人物の説得に当たっているというもう一人の仲間--甲子園児のことを待った。

甲子を待つ間、四人は情報交換を行っていた。
だが、平山の方には碌な情報はなく、レッド達もまた芳槻さらが危険人物程度しか有益な情報が無かったので、
話しは自然に世間話へとシフトしていく。

110 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 21:59:33 ID:ByhKGjAo0
「平山君も野球部だったなんて奇遇だね。それにしても甲子園優勝なんて凄いなぁ」
「いやいや、俺なんて全然。所詮二番手ピッチャーだったし、チームメイトに恵まれたんだよ」
「それでも甲子園優勝校の二番手だろ。充分凄いじゃないか」
「ハハハ、そうかな」
そんなことを話している折りだった、今まであまり会話に参加していなかったレッドがおもむろに口を開く。

「少しいいか、平山」
「何だ、レッド?」
「少し気になることがあってな。お前のチームメイトだったという亀田という男についてだ」
レッドが言うには平山が亀田について語った際、何か引っ掛かるものを感じたという。
名前のこともあり、それが何なのか気になったというわけだ。
平山は即座にそれはカメダのせいだと理解し、正直に話し始める。
「亀田と俺はバッテリーを組んでたんだ。親友だった。
 あいつがあの時野球部に誘ってくれたから今の俺があるんだ……。
 けど、あいつは死んじまったんだよ……。よりにもよって甲子園決勝の前にな!!
 だから、あいつにそっくりな上に亀田を名乗ってるあの糞ったれが許せないんだよ!
 おそらく亀田の話をした時、無意識にあいつに対する怒りが出ちまったんだろうな」
「なるほど、そういう訳か」
レッドは納得がいったのかそれ以上問いつめることはなかった。

111 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 22:00:41 ID:ByhKGjAo0
静寂が辺りを包み込む。

「……5時半か」
時計を見ながらそう呟いたのは東だった。
その言葉が意味することはその場にいる全員が何となく理解していた。
芳槻さらを説得するために残った甲子と別れてもう2時間近く経っている。
なのに一向に甲子が来る気配はない。
それだけで充分だった。みんな分かっているからこそ誰も口を開こうとしない。
そのことを口にすると甲子の死を認めてしまう、そんな気がしたから……。

だが、その静寂は思いもしない者によって破壊された。
「お〜い、東さ〜ん!レッド〜!」
それはレッドでも東でもほるひすでも平山でも、もちろん甲子の声でもない。
声の主は全くの第三者--野丸太郎のものであった。

「その声は野丸君か!?」
東が声がする方に体を向ける。
そして、少し距離があってわかりづらいが、そこにいたのは紛れもない野丸太郎その人だった。
「野丸君、君も連れた来られていたのか!」
東が野丸に向かって駆け出す。
そして、二人の距離が50メートル程になったぐらいであろうか、突如として野丸の様子が一変した。

112 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 22:02:19 ID:ByhKGjAo0
「東!待て!」
慌ててレッドが東を呼び止めようとしたが、時既に遅し。
レッドの目に映ったのはマシンガンの引き金を躊躇無く引く野丸と、左腕を血まみれにする東の姿だった。

「うあああああああ!!!!」
東は左肩腕を押さえながら崩れ落ちる。
「野丸君、どうしてこんなことを!?」
左腕を押さえながらも東は気力を振り絞り、当然の疑問を野丸に尋ねる。
「なんでって、生き残るためですよ。
 帰れるのが一人だけなら、その一人を目指すのは普通のことじゃないですか」
野丸はさも当然のことの様に答え、東はその様に答える野丸を信じられないといった顔で眺めた。
「それじゃ、これでお別れですね、東さん」

野丸がそう囁き、東が死を受け入れようとした正にその時、突如として周囲が煙に包まれる。
「これは……!」
東はすぐにこの煙の正体に気づく。それは先ほどの情報交換の折り平山がバックから取り出したもの。
そう、すなわち煙幕によるものだ。

その効果のほどは凄まじく、数秒も経たない内に一寸先も見えない状況とかす。
「東さん、こっちだ!」
近くで平山の声が聞こえる。東は歯を食いしばりながらも声のする方へと向かった。
だが、その声は東にだけ届いた訳ではなく、しっかりと野丸にも聞こえていた。
野丸がウージーを声の方に向け、引き金を引こうとしたその刹那、レッドの強烈なボディブローが炸裂し、野丸を後方へと吹っ飛ばす

「うぼぇっ!?」

レッドは尚も野丸に追撃をかけようとするが、野丸は飛ばされながらもマシンガンを乱射する。
そのため、この煙の中その弾幕を抜けるのは危険だと判断したレッドは平山の後を追った。

113 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 22:03:44 ID:ByhKGjAo0
そして数分後、煙が晴れた時、野丸一人がその場に残された。
「逃がしちゃったか……」
ウージーを片手に野丸はそう嘆く。
だが、その言葉とは裏腹に彼は心中に今まで感じたことのない何かが込み上がってくるのを感じていた。

野丸にとって東は尊敬する先輩であった。
成績優秀であり野球の腕も抜群。さらには誰に対しても人当たりがいい、自分とは天と地ほど違う人種だと思っていた。
だが、その東の左腕を自分がズタボロにした。
一一そう、あの東さんを平々凡々だったこの僕が!!
そう考えると言葉では言い表せない快感が身体を駆けめぐり、思わず滲み出そうになる。
「うへへへへ……。東さん、今度あったら、僕は……!」

邪悪な笑みを浮かべながら、野丸はその場を後にした。

114 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 22:05:23 ID:ByhKGjAo0


何とか野丸から逃げおおせた4人は商店街近くの民家に身を潜めていた。
「くそっ、何も無えじゃねぇか!」
平山は悪態をつく。東の傷を治療するために家中を探したが、包帯はおろか絆創膏の一つもでてこなかったからだ。
仕方がないので何とか見つけたスポーツタオルを東に宛う。
「すまない、平山君……」
東の顔は明らかに生気を失っていた。
腕のこともあるだろうが、それ以上にチームメイトであった野丸に撃たれたことの方がショックだったのだろう。

平山が東のことで四苦八苦する一方で、レッドは一人新たな決意を固めていた。
「平山、東のことは頼んだぞ」
「えっ、どういうことだよ?」
「俺は野丸を倒してくる」
「倒すって、も、もちろん殺したりはしないよな!?」
平山はレッドをすがるにように見つめるが、レッドの首は無情にも横に振られた。

「どうしてだよ!あいつはお前らのチームメイトなんだろ?
 だったら何で殺すなんて言えるんだよ!!」
平山の怒声が飛ぶ。
だが、そんな叫びを余所にレッドは極めて冷淡に答えた。
「今のあいつはチームメイトではない。人に害を為す悪だ。そして、その悪を始末することこそがヒーローである俺の使命だ」
「っこの野郎!!」
思わず平山は手を振り上げる。
が、東の右腕に阻まれ振り下ろされることはなかった。
「東さん!?何で邪魔すんだよ!!」
「すまない、平山君。……レッド、行ってくれ」
東は平山の腕を握りながら、レッドのことを促す。
「悪いな、東。それとだ、東のこともあるからお前達は病院に行っていてくれ。
 俺も問題が片づいたらすぐに駆けつける」
そう言い残し、レッドは民家から出ていった。

115 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 22:06:44 ID:ByhKGjAo0


「……何でレッドを行かせたんだ?チームメイトが死んでもいいのかよ!?
 仲間ってのはな、死んじまったらもう二度と会えないんだぞ!!」
亀田のことを思い出しながら平山が叫ぶ。
「俺だって野丸君には死んで欲しくないさ!!だけど、仕方がないんだよ……!
 彼をほっといたら俺以上の悲劇が生まれる。それを止めるにはこれしかないんだ!」
東のもまた思いの丈をぶつけた。

嵐のような激情が過ぎ去り、虚脱が二人を襲う。
そして、平山がポツリと囁いた。
「……大声出してすいませんでした。傷、痛むでしょ?早く病院に向かいましょう」
「……そうだね。俺の方こそ平山君の気持ちを考えずにレッドを行かせちゃって悪かった」
そして、そのまま3人は民家を後にした。

民家を出てすぐの事だ、それにまず気づいたのはほるひすだった。
東の方を向きながらほるひすは立ち止まる
「どうした、ほるひす?」
不審に思った平山もまた耳を澄ませながらほるひすの目線を追う。
そして、平山の目に飛び込んできたのは紛れもなく車のシルエットであった。
そのことを頭が感知した瞬間、無意識の内に彼の体は車道へと飛び出していた。

116 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 22:07:41 ID:ByhKGjAo0


ひょんなことから行動を共にすることとなった島岡武雄と神条紫杏の二人は車で商店街へと向かっていた。
映画館での話し合いの結果、まずは情報を集めるのが先決だという神条の意見を採用したためである。

商店街への道すがら、二人は軽く自己紹介も兼ねた情報交換を行った。
だが、互いに警戒し合ってか出てくる情報は毒にも薬にもならないことばかりである。
二人にとって有益だったのは、どちらも人を殺す気がないということだけであった。
……それもどこまで信用していいのか分からないものであるが。
そのため、車内は不穏とまではいかないが、何か張りつめた雰囲気に包まれていた。

映画館を出発して幾ばくか、日は殆ど昇り朝の訪れを感じさせる。
間もなく商店街に到着しそうだ。
そんな時であった、突然横道から人影が飛び出し、島岡は車を急停止することを余儀なくされる。

117 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 22:10:09 ID:ByhKGjAo0

「バッキャロー!!死にてぇのか!?」
島岡は窓を開き、その人影一一平山に向かって怒声を飛ばす。
神条もまた用心してかデイパックからコルトガバメントを取り出していた。
そんな二人を余所に、平山は運転席まで近づくとおもむろ腕を伸ばし、開いた窓から島岡の胸ぐらを掴み、叫んだ。
「頼む!仲間がピンチなんだ、病院まで連れて行ってくれ!」
「す、少し待て。ま……まずは首から手を、離……せ」
「あ、悪ぃ」
慌てて平山は手を引っ込める。
呼吸を整えてるため会話ができない島岡に代わって、神条が話を続けた。
「病院ということは、君の仲間が何らかの戦闘に巻き込まれて負傷したということか?」
変な口調の女だ、と思いながらも平山は首を縦に振る。
「だが、いきなり病院といってもこちらの都合も有る。まずは本人の容態を見ないことには何とも言えん」
「少し待ってくれ……。ああ、ちょうど追いついたみたいだ」
そう言って平山の指さした先にはほるひすに背負われた東の姿があった。
「あいつか、なるほど重傷だな。………………分かった、病院まで送ろうじゃないか。島岡さん、頼めますか?」
神条はようやく呼吸を整え終わった島岡に同意を求める。
「いや、ま、あんたがいいってんならかまわないけどさ」
意外、といった顔で島岡が答える。
「おい、聞こえただろ?そいつを早くを車に乗せろ」
平山の顔が喜色で一杯になった。
「東さん、病院まで連れてってくれるってさ!」
平山はほっと胸をなで下ろし、東とほるひすまで近づいていく。
だがその時、背後から聞き覚えのある声が響いてきた。

「東さん見ぃ〜つけた」
そこには東を負傷させた張本人、野丸が立っていた。
野丸はウージーの引き金に指を掛け、今にも引こうとしている。
だが、弾は放たれることはなく、代わりに周囲が紅い閃光に包まれた。

118 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 22:11:39 ID:ByhKGjAo0

カレー屋、漢方薬屋、古本屋etc……。
「さっきも気になったけど、やっぱりここってあそことそっくりよね」
そう白瀬は一人ごちた。
あそこ、とは彼女の職場のほど近くにあるブギウギ商店街のことである。
そして、彼女はおもむろに雑居ビルに入るとそのまま屋上まで登った。
屋上まで通じるドアの先からは人の気配が感じたが白瀬は躊躇わず扉を開ける。
その先には彼女の同盟相手一一愛の姿があった。

白瀬は手分けして偵察に当たっていたパートナーに成果の程を尋ねる。
「鉄砲みたいなのを持った若い男が一人で誰かを捜してた。
 あと、最初に殺された奴がいたじゃない?
 それの色違いの奴も見つけたわ。こっちの方は結構手強そうだったけどね。そっちは?」
「個人的に気になることはあったけど、特にめぼしいことはなんも無かったわ」

情報の整理が済むと早速作戦会議に移った。無論それは効率よく人数を減らすためのものである。
二手に分かれての偵察もそれの一環であった。
白瀬の差し当たっての行動方針は強敵は後回しにしての戦力増強である。
そのためには、一人でいる弱者を狙うのが一番効率がいい。
そのターゲットを見つけるための偵察だ。

119 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 22:12:29 ID:ByhKGjAo0
話し合いの結果、まずは若い男の方を狙うこととなった。
赤尽くめの方を今襲うのは危険と判断したためである。
もし赤い男が茶色と同程度の力を持っていたら、いらぬ損害を得ると考えたからだ。

作戦を立て終えた白瀬はなんと無しに下界を見下ろし、そして、それに気付いた。
そこからの行動は早かった。すぐにデイパックからパンツァーファウストを取り出し、構える。
「何をする気?」
「ん〜、ちょっとね〜」
口調はおどけているが、目は完全にハンターの目だ。
(風は無くて、晴天か。コンディションとしては上々ね)
良く狙いを定め一呼吸を置き、引き金を引く。

数秒後、辺りに爆発音が轟いた。

弾頭の顛末を見終えると白瀬は一仕事終えた様な顔で愛に声を掛ける。
「じゃ、戦利品を回収しに行きましょうか」

120 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 22:18:15 ID:ByhKGjAo0

「ぐっ、今のは……?」
周囲の煙が立ちこめる中、神条は目を覚ました。
突如として起こった謎の爆発。その衝撃により、彼女はほんの一時的にだが気を失っていたのだ。

彼女はそれを敵の襲撃と結論付け、同行者の安否を確認しようとする。
だが、彼女の目に入ったのは空っぽの運転席に開いたままのドアであった。
それと同時に神条は自分のデイパックが無くなっていることにも気付く。
(くそっ、抜け目ない奴め……!)
だが、幸いにもコルトガバメントの方は足下に転がっていた。
衝撃が来たときに思わず手を離したためであろう。

島岡がいなくなっていたことから車が動かない状態にあると判断し、神条は銃を片手に車の外に出た。
そして、彼女の視界に映ったのは、表面が多少焦げてるほるひす、さしたる傷を見受けられない東、そして……

彼を庇ったがために背中が焼きただれ、片足の無くなっていた平山の姿であった。

「あ、ああ……」
「東さん……、無事なようだな」
「平山君!何でこんなことを!?」
「か……らだが勝手に、う、動いてたんだよ……。俺のことはいいから、は……早く逃げて……くれ……」
「そんな!君を置いて行けるわけないだろ!?」
だが、平山の願いとは裏腹に東はなかなかその場を離れようとしない。

そんな状況を見かねてか、横から見ていた神条の檄が飛んだ。
「くどい!見ればわかるだろう、この男は手遅れだ!いつまた襲われるか分からんのだぞ!?
 今の我々に出来るのはこの場を離れることだけだ!おい、そこのお前、こいつをとっととどこかへ連れて行け!」
「わかったよ」
「やめろ、ほるひす!平山君!平山君!!!!」
そう言うとほるひすはひょいと東のことを抱きかかえ、森の中へと消えていった。

「感謝……するぜ」
「奴を病院に連れて行くと言ってしまったしな。約束を果たそうとしたまでだ」
「……あんた、名前は」
「神条紫杏。……最期に、何かあるか?」
「へへ、……優しいな、あんた。じゃ、じゃあ、妹に……伝えて……くれ。
 もう、守……れ……なく……てゴメ……ンって。
 あと……あ、あいつら……に絶対生きて……帰」
それが平山の最期の言葉だった。

「その言葉、確かに伝えよう……」
平山の最期を看取った後、神条もまた森の中へと消えていった。

【平山 紀之@パワプロクンポケット1 死亡】
【残り45名】

121 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 22:19:03 ID:ByhKGjAo0
【E-3/一日目/早朝/放送直前】
【東優@パワプロクンポケット7表】
[状態]頬に小さな傷、甲子がやや心配、左腕重傷、傷心
[装備なし]
[道具]詳細名簿、支給品一式
[思考]
1:平山の死を悲しむ
2:病院へ向かい、その後レッドと合流
3:野丸をどうにかしたい
4:甲子君……

【ほるひす@パワプロクンポケット6表】
[状態]表面が焦げてる
[装備なし]
[道具]支給品一式、不明支給品0〜2
[思考]
1:ひらやま……
2:びょーいんへむかう
3:こうしはどーしよう

【神条紫杏@パワプロクンポケット10】
[状態]健康
[装備]コルトガバメント(7/7)
[道具]なし
[思考]
1:平山の言葉を伝える
2:東を病院まで連れて行く
3:出来ることならカズと朱里、十波には死んでほしくない。が、必要とあらば……
4:島岡から荷物を取り返したい
[備考]
1:この殺し合いをジャジメントによる自分に対する訓練か何かだと勘違いしています

122 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 22:20:53 ID:ByhKGjAo0
平山が逝ってからまもなく、白瀬と愛はこの地に辿り着いた。
「ロケットランチャー使って2人か〜。車の強度を見誤ったわ。少しもったいなかったかな」
そう愚痴をこぼしながらも白瀬は平山のデイパックを回収する。
そして、野丸のものも回収しようとした時、そこに正義のヒーローが姿を現した。
「爆発音が聞こえたから来てみれば……。お前達、さっきの会話はどういうことだ!?」

だが、白瀬からの返答がない。代わりとばかりに4発の弾がレッドに襲いかかる。
だが、その悉くをレッドは紙一重で避け、一気に間合いを詰めようとする。
が、その突進は横合いから投げられたフライパンによって阻まれた。
急停止したレッドにすかさず銃弾が飛ぶが、今度は大きく後方に跳躍することで回避、再び間合いが大きく開く。

レッドと白瀬、愛は睨み合い、二度目の攻防が始まろうとする正にその時だった、レッドは予想外の方向からの攻撃を受ける。
何とかそれを回避したレッドの視線の先には、死んだと思われた野丸が立っていた。

レッドの注意が一瞬野丸に向けられる。
その隙を白瀬は逃さない。
「愛!撤退するわよ!」
「承知!」
白瀬と愛はレッドに背中を見せ、逃走を開始する。
「待て!」
慌てて、レッドも後を追おうとするが、再び野丸の攻撃によって阻まれた。
そうしている内に2人の影はどんどん小さくなっていき、遂には見えなくなった。

「野丸!!貴様はあいつらの仲間だったのか!」
「仲間〜?そんなの僕にはいませんよ。けど、流石だね、レッド。あの攻撃を全部避けちゃうなんて。
 これじゃ勝てそうにないなぁ。そういうわけで僕も退かせてもらうよ」
「待て!せめて貴様だけでも……!」
そう言い、レッドは野丸に飛びかかろうとするが、それより早く、野丸はデイパックから幾つもの手榴弾を辺りにぶちまける。

レッドの目の前で再び爆発が起こり、煙が晴れた時、そこに野丸の姿は無かった。

「くそっ、くそおぉぉぉぉぉぉ!!!!俺は、俺は…………!!」

123 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 22:21:52 ID:ByhKGjAo0
【E-2/一日目/早朝/放送直前】
【白瀬芙喜子@パワプロクンポケット8表】
[状態]健康
[装備]ベレッタM92(8/15)
[道具]支給品一式×3(不明支給品0〜2)、予備弾倉×5、さおりちゃん人形@パワポケ6裏、ケチャップ(残り1/4程度)、煙幕@パワポケ5裏×2
[思考]
基本:優勝する
1:レッドから離れる
2:戦力増強のため弱者から倒す、強者は後回し
3:愛と共に行動する
4:もし八神が参加していれば最優先で殺す

【愛@パワプロクンポケット5裏】
[状態]右脇腹に傷(応急処置済み)
[装備]なし
[道具]支給品一式
[思考]
1:レッドから離れる
2:自分が生き残ることが第一
3:そのためなら白瀬や他の人間を殺すのもやむ終えない
4:一先ずは白瀬と共に行動する

【野丸太郎@パワプロクンポケット7】
[状態]全身に軽度の火傷
[装備]ウージー
[道具]支給品一式(不明支給品0〜1)、予備弾倉×2、手榴弾@パワポケ10裏×5
[思考]
基本:普通に過ごす
1:レッドから離れる
2:生き残るために人を殺す
3:東を自分の手で殺したい

【レッド@パワプロクンポケット7表】
[状態]ヒーローとしての苦悩、殺人者に対する激しい怒り
[装備]なし
[道具]支給品一式、ナオのリボン、超人ライダーボトルキャップ、ゴーカート
[思考]
1:野丸or2人組(白瀬、愛)を追う
2:1の後病院に向かう
3:レッドとして反省し、ブラウンの分も悪を倒す
4:甲子、東、ほるひすと協力する……必要はあるのか?
5:甲子のことはどうしよう?

124 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 22:23:02 ID:ByhKGjAo0
島岡は一人、もと来た道を引き返していた。
(畜生、何なんだ!?あんなのテロと一緒じゃねえか!)
必死に足を動かし、爆心地から離れていく。

ここまでくれば安心か……。
島岡がそう胸を撫で下ろした刹那、銃声と共に自身の右足に猛烈な痛みが走った。
「うがああああ!?」
再び銃声、今度は正確に左膝から血が噴き出す。
バランスを崩した島岡はそのまま倒れ伏した。
そして聞こえる三つ目の銃声。今度は右肩に激痛が走る。

「ど、どうか命だけは助けてくれ!」
島岡は見えない敵に向かっての命乞いをするしかなかった。それが功を奏したのか4発目の銃声は聞こえてこない。
「まずは質問に答えてもらうわ。あなたは何かから逃げてきたみたいだけど、何が起こったのか簡潔に答えて」
代わりに女性の声が島岡の耳に届く。

命が懸かってるのだ、島岡は必死に先ほど自分の身に降りかかった厄災を事細かに説明する。
「じゃあ、襲撃者の顔は見てないのね?」
「あ、ああ。急に車が爆発したんだ。周りには誰もいなかった」
「あと、神条紫杏、高校生の2人、そして着ぐるみはゲームに乗ってないってのも確か?」
「それも本当だ!ここまで話したんだ。なあ、いい加減助けてくれよ」
「……ゴメンね。私はどうしても茜を助けなくちゃいけないの」

女一一リンはそう呟くと、今度こそ4発目の銃声が空に響いた。

【島岡 武雄@パワプロクンポケット6 死亡】
【残り44名】

125 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 22:23:45 ID:ByhKGjAo0
【F-3/一日目/早朝/放送直前】
【リン@パワプロクンポケット8】
[状態]健康
[装備]グロッグ19(8/15)
[道具]支給品一式×3、劣化版探知機、ヒヨリンセット(化粧品中消費)、支給品一覧表
[思考]
基本:一先ずノルマの三人殺しはクリアしておく
1:情報を集める
2:八神と茜は何としてでも生き残らせる
3:探知機が存在するのなら入手しておきたい
4:第五回放送の前に役場へと向かう

126 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 22:25:16 ID:ByhKGjAo0
投下終了です
タイトルは、華麗なるかな二流、です
誤字、矛盾等があったらお願いします

127代理投下:2008/12/28(日) 01:32:19 ID:Hjf/dawM0
代理投下していた者ですがさるさん規制くらいました…
誰か残りの投下をお願い…します…

128紅に染まった、この俺を ◆7WJp/yel/Y:2008/12/31(水) 23:59:50 ID:5UQ9rgI60
さるさんに引っかかったのでこちらに

129紅に染まった、この俺を ◆7WJp/yel/Y:2009/01/01(木) 00:00:29 ID:qrQ05/Vo0


   ◆   ◆   ◆   ◆


曽根村は苛立ちながら明日香の手を引いた状態で走っていた。
思わず舌打ちを漏らしてしまうほど苛立っている。
先ほどまでは上手く行っていたはずだった。
あの男が来ても何とか撒けるはずだ、こちらには拳銃があるのだから。

それがどうだ。
結果は大事な剣でもあり盾でもある鋼を失い、残ったのは足手まといとしか言えない明日香だけだ。
まだ明日香を殺すつもりはない、明日香にはかろうじて利用価値が残っている。
殺し合いに消極的な人間達とコンタクトを取りやすくなるという利用価値が。
殺し合いに消極的ならばこちらが向こうへ害をなさない限り協力的な対応を取るはずだ。
だが、それだけでもこちらを信用するかどうかはわからない。
しかし、明日香が居ることで曽根村は『怪しいオジサン』から『か弱い女子高生を守る優しい中年』
という評価に変わる。

逆に言えば、明日香にはそれだけの価値しか残っていないと言うことになるが。

「進藤さん、少し物陰で休みましょうか」
「いやぁ……なんでぇ……? こんなの……いやぁ……」

思わず舌打ちをしそうになるが何とかこらえる。
明日香を無理やり引っ張り物陰に隠れ、地べたに腰を落とす。
曽根村も若くない、体力の切れが早くなっている。

(元々、私はデスクワークが専門なんですから……)

所詮はただの副社長である曽根村ではどこぞのタイムパトロールや特命ハンターのように
動き回りながら頭をフル回転させるなんて器用な真似が出来るわけがない。
だが、その専門の頭脳ならば殺し合いに呼ばれた中でもトップクラスに入るのは間違いない。

(目下の目的としては鋼に変わる人間が欲しいですねぇ)

それが手に入れば明日香は要らない、茫然自失な状態では足を引っ張るだけだ。
他に同行者が出来ればさっさと『処分』してしまった方が良いだろう。

(黒いヒーロー、高科奈桜、真っ赤な手を持つ進藤の知り合い……
 こんな危険な場所でうろつきたくないんですがねえ)

襲われた場合に頼れるのは自分だけだ。
と言っても、明日香を盾にする方法も残されている。

(先は長いですねぇ……何人死んだかはわかりませんが、さっさと終わらせたいものです)

昇ってくる太陽をぼんやりと眺めながら、曽根村は生き残るために頭を必死に働かせていた。

130紅に染まった、この俺を ◆7WJp/yel/Y:2009/01/01(木) 00:01:31 ID:qrQ05/Vo0
……あれ? 出来た
すみません、お騒がせしましたorz

131くだらねえこと言ってる暇があるんなら俺のパンツでも洗ってろ!:くだらねえこと言ってる暇があるんなら俺のパンツでも洗ってろ!
くだらねえこと言ってる暇があるんなら俺のパンツでも洗ってろ!

132名無しのバットが火を噴くぜ! :2009/01/07(水) 17:12:08 ID:n2/1qyQM0
申し訳ない、少しテストを

133管理人★:2009/01/07(水) 17:20:15 ID:???0
あ、あれ?

134第一回放送とその舞台裏 ◆7WJp/yel/Y:2009/01/07(水) 19:25:20 ID:n2/1qyQM0

〜〜〜〜〜〜〜♪

おはよう、諸君!
東の空を見るである! 美しい朝焼けが見えてきたであろう!
殺し合いという愉快なショーの最初に迎える朝としては素晴らしい朝焼けだとは思わないかね?
おっと、紹介が遅れたであるな。
我輩の名前はチバヤシ、チバヤシ公爵であ〜る!
勘のいいものは気づいたかも知れんが、そう、『公爵』である!
分かるであるか? 『公侯伯子男』、これの『公』に当たる公爵である!
そう! 我威亜党の幹部には爵位がつくのであるよ!
つまり、我輩は皇帝陛下の次に偉いということになるである。
ふふふ……悔しいであるか? 我輩が憎いであるか?
くぅー! これだから管理職はやめらない!
愚民共が地べたに這いずり回ってると思うとおかしくてたまらない!

……ん? なんであるか、チキン男爵?
ああ、わかってるである、発表であろう?

えー、ごほん。
少し脇道に逸れてしまったであるな。
では、まずは禁止エリアの発表である。
覚えてるであるか? 禁止エリアというのはその名の通りそこに入ってはいけない場所のことであるよ。
A−1と言えば地図のアルファベットのAと数字の1が重なっているエリアが禁止エリアになる。
わかったであるな? では、心して聞くが良い。
禁止エリアに踏み込んで首輪が、ボン、と爆破してあのガキのような無様な死に方をしないようにな。


以上、上から順番に禁止エリアとなっていくである。
今すぐには禁止エリアにならないであるから
では次に……お待ちかねの死亡者の発表である!
メモは持ったであるか? 特別に一分だけ待ってあげようではないか。

……もういいであるか? では発表である!


以上!
……うむ! 最初の二人は陛下の手にかかったから引いたとしても○○人であるか!
四分の一以上も人間がわずか六時間の内に誰かの手にかかってしまうとは……
人間とは恐ろしいものであるなぁ〜♪

あ、そうそう。
デイバックの中にこの殺し合いに参加した人間の名簿を入れておいたである。
まあ、早めに目を通したほうがいいであろうなぁ〜
ではまた次の放送で会おう!
何人残っているか楽しみにしておこうではないか♪

135第一回放送とその舞台裏 ◆7WJp/yel/Y:2009/01/07(水) 19:26:29 ID:n2/1qyQM0
薄暗い部屋の中、二人の男が立っていた。
一人は服装は平凡なものだがトサカのような個性的な髪型をしている我威亜党幹部の一人、チキン男爵。
もう一人は奇妙な形の被り物と、マントが特徴的な我威亜党幹部、チバヤシ公爵だ。
この二人は主に現場進行を担当している。

「おいおい、公爵閣下よぉ。あんまり遊んでると陛下のお叱りがくるかもしれねえぜ」
「ふん、このような面白いものを目の当たりにして黙っていられるわけがないであろうが」

どうやら、チキン男爵がチバヤシ公爵に先ほどの放送について咎めているらしい。
確かに禁止エリアと死者の発表だけでいいところを無駄口を叩いて長引かせたのだからチキン男爵の発言はもっともだろう。
しかし、チバヤシ公爵は聞く耳を持たずにソファにもたれかかる。

「前にも言ったと思うが、我輩は管理職として色々と溜まっているのだろう。
 このような場で晴らさずに何時それを晴らせばいいのであるか?」
「まあ、言いたいことはわかるけどよ」

チキン男爵もため息をつきながら椅子に座る。
どちらかと言えば変人揃いの我威亜党の中で割と常識を持ってる彼が一番ストレスが溜まっているのだ。

「そう言えば秋穂公爵はどこであるか?」
「さあ、何か陛下に仕事でも言われてるんじゃないのか?」
「全く……寺岡子爵は寺岡子爵で篭りっぱなしであるし」
「皇帝陛下の持ってきた大量の機械に付きっ切りだったな。
 ……しかしよ、大丈夫なのか?」

眉をひそめてチキン男爵はチバヤシ公爵へと尋ねる。
チバヤシ公爵は何を尋ねているのか分からずに首を捻り、疑問を返す。

「何がであるか?」
「寺岡子爵だよ、あの作戦で完全に我威亜党とは切れたと思ってたんだが。
 裏切るかもしれねえ、いや、ひょっとすると既に裏切ってるかもしれないぜ」

チキン男爵が少し不安そうに語る。
一方のチバヤシ公爵は、なんだそんなことか、と一笑し、水を飲んでから再び口を開いた。

「大丈夫である、確かにあの女は組織に良くない感情は抱いているが……それだけであるよ。
 第一、この御時世にどこがまだ若い女に研究資金を出せる?
 そんな酔狂な組織、我威亜党を除けばまずない。
 しかも、ここには陛下が持ってこられた進みすぎた、そう、文字通り未来の技術がある。
 そんな場を放棄するような科学者はいないであるよ」

現代の技術、いや、人類が宇宙で問題なく生活出来るような技術が目の当たりにある。
それを目の当たりにして何もしない科学者はいないだろう。

136第一回放送とその舞台裏 ◆7WJp/yel/Y:2009/01/07(水) 19:27:29 ID:n2/1qyQM0

「で、そんなことよりも鉄人の様子は?」
「鉄人自体には問題ねえが……如何せん数が少なくてよ。
 あの作戦が失敗しちまったせいで、俺達は色んなものを失っちまったからな」

『あの作戦』――それは帝都を恐怖と混乱で沈めた大震災のことだ。
あれが成功すれば我威亜党は邪神の力を手に入れ、間違いなく世界を手にするはずだった。

「さて、そろそろお前は仕事に戻るである。
 人員が少ない以上、暇を持て余すなどあってはならないからな」
「へえへえ、公爵閣下もお仕事頑張ってくださいな」

こうして舞台裏も動いていく。
参加者以外の様々な人間の思惑も絡み合い、殺し合いと言う最悪の舞台は回っていく。

137 ◆7WJp/yel/Y:2009/01/07(水) 19:28:05 ID:n2/1qyQM0
仮投下終了です

指摘等をよろしくお願いします

138爆ぜる陰謀 ◆IvIoGk3xD6:2009/03/14(土) 23:45:06 ID:1zwcS2jc0
明日香が疑問に思う間もなく、パン、と一発の銃声が響く。
それと同時に明日香は胸の当たりに猛烈な熱を感じ、脚から力が抜け、そして崩れ落ちた。
「ど、どういうことですか……曽根村さん……?」
「どういうことって、決まってるじゃないですか。優勝するためですよ。
 まあ、もっとも今はそれだけじゃないんですがね。
 大江さんの話を聞いて私は心が震えるのを感じました。
 考えてもみてください、時間移動ですよ?使いようによっては神にも悪魔にもなれる。
 そこから見るとドリルコーポレーションのなんと小さなことか。
 だから、ただ優勝するだけではなく、亀田皇帝に気に入られる優勝でなくてはいけないんですよ」

明日香はただ曽根村の言葉を聞くことしかできなかった。
何かをしようにもどうやっても体に力が入らないからだ。
曽根村の言葉はなおも続く。
「ですから進藤さん、あなたのしようとしていたことは非常に鬱陶しい。
 説得に失敗してあなたが死ぬだけなら何でもないのですが、万が一にも三橋が改心してしまってはどうするんですか。
 ゲームを積極的に動かす者が少なくなる展開なんて皇帝は望んでないはず。
 それにね、新たな保護者の目処が立ちましたので、あなたもう用済みなんですよ。
 残念ですね、水族館に行くなんて言い出さなければもう少しは長生きできたのに」
「私は……三橋君を…………」
その言葉を最期に進藤明日香は息を引き取った。

明日香を葬った後、曽根村は返り血を浴びたシーツを元あった民家の中に隠し、次の目的地となる病院へと身体を向ける。
「さてと、病院には大江さんの仲間がいらっしゃるんでしたね。
 大江さんから話しを聞いたと言えば警戒はされないでしょう」
そこにはいつもと変わらない曽根村の姿があった。
鋼や明日香の死など何でもないように。

【進藤 明日香@パワプロクンポケット 死亡】
【残り41名】

139爆ぜる陰謀 ◆IvIoGk3xD6:2009/03/14(土) 23:45:58 ID:1zwcS2jc0
【G-6/一日目/朝】
【大江和那@パワプロクンポケット10表】
[状態]健康、頭にたんこぶ
[装備なし]
[道具]支給品一式(不明支給品1〜3)
[思考]
基本:バトルロワイヤルを止める
1:朱里と出会って説得する
【備考】
※重力操作にかけられた制限の存在に漠然と気付きました

【曽根村@パワプロクンポケット2】
[状態]右手首打撲
[装備なし]ナイフ、ブロウニング拳銃(3/6、予備弾数30発)
[道具]支給品一式
[思考]
基本:漁夫の利で優勝を目指す
1:病院へ向かい、大江和那の仲間と接触する
2:研究所へと向かう

140 ◆IvIoGk3xD6:2009/03/14(土) 23:47:04 ID:1zwcS2jc0
投下終了です
さるさん規制くらったので使わせてもらいました

141 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/02(火) 16:20:54 ID:aLQ0wvNk0
規制中のため仮投下します

142天使のお仕事 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/02(火) 16:21:24 ID:aLQ0wvNk0

             昔、彼女は一人の男と出会った。

           それ以前のことを彼女はよく覚えていない。

 その男が印象に強すぎたことと、どこに行っても似たような反応を取られたことが原因だろう。

 始まりは他愛もないものだったと記憶している、少なくとも彼女には他愛もないものだった。

             それを男はどう思ったのだろうか。

             彼女のことを天使と崇め、敬った。

             戸惑った、この上なく戸惑った。

            彼女は確かに天使と言えないこともない。

         ただ男が頭の中に描いている天使とは程遠い存在だ。

        人が築き上げた文明をリセットするだけのための兵器。

彼女は人に都合のいい『天使』ではなく、黙示録に書かれた審判の日に現われる『天使』に近しい存在だ。

       なのに、男は神を盲信する狂信者に似た瞳でこちらを見つめてくる。

          そんな男は思想家……らしい、あくまで自称だが。

       確かに頭は良かった。頭は良かったが、賢くはなかった。

           子供だった、と言っても良いかもしれない。

        でも、彼女はその日々が楽しかったのを覚えている。



       彼女は人を救いたかった。  彼は彼女が全ての人を救ってくれると信じて疑わなかった。


  彼女は自分の力の限界を知っていた。  彼は理想を見ることをやめようとしなかった。


      彼女はそれだけで良かった。  彼は彼女を守るために有志を募り始めた。


               彼女は。  彼は。

143天使のお仕事 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/02(火) 16:22:31 ID:aLQ0wvNk0


   ◆   ◆   ◆



『遺跡に眠れし三つの宝玉を揃えたとき、願いを叶える天使が現れる』

真相を知っているタケミからすればとんだ笑い話だ。
天使は願いを叶えなどしない、天使は元に戻すだけだ。
元に戻す、それは文字通り人間の居ない世界に戻すことだ。
だと言うのに、誰が天使が願いを叶えるなど言い出したのだろうか?
タケミには思い至る点がある。
それは、宇宙へ新たな母なる星を求めて旅立った天使なるモンスターの親にあたる創造主。
人を殺すのは人、天使はただの兵器にすぎない。
色合いの美しく香り漂う果物をぶら下げ、その実は一瞬で死へと至らす毒物。
それが天使にすぎない。

「で、お話しする気になったでやんすか?」

目を覚ますと、見知った声が聞こえた。
それはここに来る前のメガネをかけた愉快な仲間の声で、悪魔としか思えない邪悪な催しを開いた男の声で。
顔を見ると同じく仲間の、悪魔のような男の顔で。
ただ、雰囲気は違った。
仲間の賑やかな暖かさもなく、男の吐き気すら覚えるほどの邪悪さもない。
ただただ冷たい印象、それはわざと演じているのではない。
単純に、感情の元となる心の底が冷たいのだ。
「殺す気はないでやんすよ、安心するでやんす」とは言ったものの、どうも安心できない。
殺すつもりはないのは分かる。
本当に殺すつもりならさっさと殺しているつもりだ。
目撃者も居ないはずだ、ならさっさと殺してしまえばいいのだから。
だから、不安に感じているのなら命の危険ではなく目の前の男の不気味な印象。
故にタケミは口を開くのを躊躇った。
しかし何時までもそうしているわけにもいかない。

「……分かったよ、話す気分になったから」
「そいつは良い。じゃあ、早速一つ聞いて良いでやんすか?」
「良いよ……」
「早速でやんすが、お前は殺し合いに乗っているんでやんすか?」
「……そうだよ、少なくとも私は人を殺すつもりはない」

144天使のお仕事 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/02(火) 16:23:26 ID:aLQ0wvNk0

体の調子から感じていた。
タケミはもう天使の仕事をまっとうすることは出来ないだろう。
天使、いや、モンスターとしての力が全盛期と比べて大きく劣っている。
そして、それは仲間も同じだとモグラ乗りの仲間と遺跡を潜ったときに感じていた。
まだ力が残っている天使はいるかもしれない。
だが、少なくとも自分は違う。
もうお払い箱だ。だから、モグラ乗りについていこうと思ったのだ。
それがロマンというものなのだろう。
たかゆきの言っていた「自分は人間だ」というものと同じなのだろう。
少し考えてそう結論を出した。
たかゆきの言葉はモグラ乗りが言っていた『傷つけない娯楽人形はロマンだ』という言葉と同質のものだと。
……理解ができたわけではない。
タケミは天使だ、人を滅ぼす天使だ。
この触手も、溶解液も、全てが人を滅ぼすものだ。
人間が銃を使うのとは全く違う。

「そうでやんすか、そいつは都合がいい。
 なら何か秀でたところ、自信のあることはないでやんすか? たとえば、機械弄りとか」
「……機械なら直せるよ。もちろん道具が居るけど」
「ははは! これは都合がいいでやんすね! じゃあこいつを調べてくれないでやんすか?」

男はマントの下からぽいっと何かを投げつけてくる。
慌ててキャッチし手元を眺めた瞬間、タケミは顔から血が引いていく。

「これって……!」
「首輪でやんす。ちょっと死体からちょっぱって来たんでやんすよ」
「ちょっぱったって……!?」
「悪党でやんすよ、人を殺そうとした屑でやんす。何も気に病む必要はないでやんす」

首輪、メカ亀田にも帽子の男にも銃を持った少女にも恐らくタケミの首にも着いているだろう首輪だ。
参加者全てを殺し合いに強要させているもっとも大きな要因。
これがある限り、この島に居る全員は亀田なる男に命を握られていることになる。
それを調べてくれ、とメカ亀田は首から外れた血のついた首輪を渡してきたのだ。

「あんた……!」
「だから、オイラは殺しちゃいないでやんすよ。
 そいつだって最後の最後に人の役に立てて幸せなんじゃないんですか?」
「だからって、こんなこと!」
「……いちいちうるさいでやんすねぇ。
 じゃあ、何でやんすか? お前は一発勝負で自分の首についてるものを外すんでやんすか?
 凄い度胸でやんすね、オイラも見習いたいでやんすがそこまでの度胸はないんで今は無理でやんすね」
「それは……」
「……ま、嫌って言うなら構わないでやんすよ。
 無理やりやらせた腹いせにオイラの首輪を外すのに失敗する、なんてことになったら嫌でやんすからね」
「そんなことやらないよ!」

145天使のお仕事 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/02(火) 16:23:57 ID:aLQ0wvNk0
駄目だ、目の前の男とはひどく合わない。
確かに殺し合いに乗ってはいないようだが、命を軽く見過ぎている。
そこまで考えて、自分も人のことは言えないとタケミは思った。
むしろタケミが生まれた経緯を考えると、タケミ自身が命に対する冒涜だ。

「……そう言えば自己紹介がまだだったでやんすね、オイラはメカ亀田でやんす」
「亀田!?」
「そう、亀田を模して造られたロボットでやんすよ。と言っても、オイラは既に廃棄されたんでやんす」
「廃……棄?」
「そう、廃棄でやんす、処理所行きでやんすね。
 まあ、はい了解しましたとは受け入れないでやんすけどね。見事逃げきってやったんでやんすよ」

メカ亀田は口元はにんまりと歪める。
それを笑みだとタケミは一瞬分からなかった。

「お前は?」
「……タケミ」
「そうでやんすか。タケミ、お前は放送は聞いてないんでやんすよね?」
「うん」

タケミが頷くとメカ亀田はデイパックから地図と一枚の紙を取り出し、乱暴に渡してくる。
少しむっとしながらもタケミはその一枚の紙に目を通す。
愛、青野 柴夫……

「これって……?」
「名簿でやんす、気づけばデイパックの中に入っていたんでやんすよ。
 ……まるで、オイラ達が亀田の前からこの島に居たときとそっくりでやんすよ」
「テレポート、ってわけ?」
「理解が早くて助かるでやんす。
 何か、気がついたことがあったでやんすか?」

気づいたこと、と言われてもタケミには思い到ることがない。
完璧なテレポートなんてまだ無理なはずだ。
少なくとも核も出来ていない今の状態では。

「あれ?」

ということは亀田は自分たちを作った人間の子孫か何か?
それならばテレポートを使いこなしていても不思議でない。
だが、それをメカ亀田に言うべきだろうか?
まだ確定ではない情報、メカ亀田は好きなタイプではないがロボットと言うだけあって論理的思考をする。
タケミとてこんなところさっさと抜け出したい。
その時にメカ亀田は頼りになるだろう。
ならば無駄な情報を教えて混乱させない方がいいだろう。

146天使のお仕事 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/02(火) 16:24:31 ID:aLQ0wvNk0

「どうしたんでやんすか?」
「……ううん、そう言えば……その、あの女の子はどこに行ったのかなって思って」

タケミが話題を変えた先は少女の話題。
メカ亀田は、ああ、と呟いた興味もなさげに呟いた。

「知らないでやんすよ、オイラが周辺を見回ってた時にはもう居なかったでやんすよ」
「そっか……」

つまり、野放しというわけだ。
たかゆきを殺した人間が何処かで人殺しをしている。
それがどうにも気分の悪い話だ。

「……うん、ありがと」
「知り合いは?」
「……知り合いは居たけど、死んじゃったみたい」
「そうでやんすか……まあ、休んでると良いでやんす。
 少ししたら移動するでやんすからね」

メカ亀田はタケミの答えを聞かずに、マントを翻しながらタケミの視界から消えていった。
その姿を眺めて、少ししてから軽い溜息をつく。

「……」

音もしない工場の内部でタケミは考える。
たかゆきの言う『人間』という言葉、これからどうするかということ、メカ亀田が信用に値するかどうか。
そして、ある一人の男のこと。

(……目に見える人を救うだけで、良かったじゃない)


   ◆   ◆   ◆

147天使のお仕事 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/02(火) 16:25:04 ID:aLQ0wvNk0

「……やはりPXタイプでやんすね、それも初期の骨董品でやんす」

工場周辺、粗大ゴミかと思われる凸凹が目立つ機械の前にメカ亀田が立っていた。
タケミと別れたのはこれの確認が目的。

(状況から見て、こいつも参加者でやんすね)

近づいて損傷具合の確認を行う。
見た目はひどいが、データはある程度は無事のようだ。

(天才、唐沢博士が作ったロボット……当の昔に全部消えた骨董品だと思ってたんでやんす。
 ……きちんと整備されてるでやんすね)

今はPXタイプではなくBXタイプが着手されている。
だが、順番や性能ではなく唐沢博士の作ったロボットを亀田が連れてきたということがポイントだ。
亀田は唐沢博士と親交があった。
ひょっとすると、このPXタイプは唐沢博士の特別せいなのではないか?
少ししか喋っているところは見ていないが、高い自我を持っていた。
興味深いし、何よりロボットだ。
部品が自分が傷ついた際の修復に使えるかも知れない。

「備えあれば憂いなし……でやんすよ」

メカ亀田はにやりとほほ笑んだ。

唐沢博士、間違いなく稀代の天才と言える科学者だ。
あの科学者のお陰で数えきれない人間が助かり、あの科学者の所為で数えきれない人間が死んだ。
その科学者が製作したロボットがここに二つ。
一つはPX-001と呼ばれるロボット、たかゆき。
一つは第一世代と呼ばれる死から蘇ったサイボーグ、三橋一郎。

「データも興味深いでやんすねぇ……何か面白いものが入っているといいんでやんすが」

148天使のお仕事 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/02(火) 16:25:58 ID:aLQ0wvNk0

【B−7/工場/一日目/朝】
【タケミ@パワプロクンポケット10裏】
[状態]:疲労(中)
[装備]:作業着、コンパス、時計
[道具]:支給品一式、爆弾セット(残り5個)
[思考]
基本:殺し合いには乗らない、首輪を外すために行動する。
1:……人間、か。
2:今すぐに軍服の男(メカ亀田)がいる工場に入ることはしない。
3:出来るだけ戦いたくないが、どうしようも無ければ戦う。
[備考]
※モンスターとしての力は短時間、疲労大の条件の下、発動可。
※十波典明、高坂茜、メカ亀田の名前を知りません。

【メカ亀田@パワプロクンポケット6裏】
[状態]:損傷なし
[装備]:特になし
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜3個、青野の首輪
[思考]
基本:『殺し合い』を失敗させた後に亀田を殺す
1:工具とジャミング用の機械を見つける。
2:脱出のために役立ちそうな人間を優先して仲間にする
4:サングラスの男(灰原)に激しい殺意と敵意
[備考]
※参加時期は不明
※メカ亀田は灰原の名前は知りません
※自動追尾ミサイルとバリアーは没収されています
※青野の情報は全部嘘だと思っています。
※十波典明、タケミ、たかゆき、高坂茜の名前を知りません。

149天使のお仕事 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/02(火) 16:26:30 ID:aLQ0wvNk0
投下終了です。
金曜の朝に矛盾を気付いて……もう削るところ探して……すみませんでしたorz
削るところに悩んでリアルの事情が入って……orz

150天使のお仕事・修正 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/02(火) 22:07:06 ID:aLQ0wvNk0
失礼、状態票ミスしました
正しくはこちらです


【B−7/工場/一日目/朝】
【タケミ@パワプロクンポケット10裏】
[状態]:疲労(中)
[装備]:作業着、コンパス、時計
[道具]:支給品一式、爆弾セット(残り5個)
[思考]
基本:殺し合いには乗らない、首輪を外すために行動する。
1:……人間、か。
2:出来るだけ戦いたくないが、どうしようも無ければ戦う。
[備考]
※モンスターとしての力は短時間、疲労大の条件の下、発動可。
※十波典明、高坂茜の名前を知りません。

【メカ亀田@パワプロクンポケット6裏】
[状態]:損傷なし
[装備]:特になし
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜3個、青野の首輪、PX-001(たかゆき)
[思考]
基本:『殺し合い』を失敗させた後に亀田を殺す
1:工具とジャミング用の機械を見つける。
2:脱出のために役立ちそうな人間を優先して仲間にする
4:サングラスの男(灰原)に激しい殺意と敵意
[備考]
※参加時期は不明
※メカ亀田は灰原の名前は知りません
※自動追尾ミサイルとバリアーは没収されています
※青野の情報は全部嘘だと思っています。
※十波典明、たかゆき、高坂茜の名前を知りません。

151 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/18(木) 01:20:02 ID:D7vF8T0.0
規制されてるので仮投下をば

152名探偵の呪縛 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/18(木) 01:20:35 ID:D7vF8T0.0

木が覆い茂った森の中を二つの影が蠢いている。
その速さから見るに、影は走っているようではない。
かと言って、歩いているようにも見えない。
二つの影は全力で走るほど速くはなく、歩くほど遅くもないというスピードで森の中を移動していく。

「親父、何か見えたか?」
「いーや、人っ子いないぜー」

その影の正体は、神出鬼没、頭脳明晰、容姿端麗、行動力抜群の名探偵こと七原 正大。
そして、自称世界的考古学者、七原正大の父の布具里である。
探偵と言うよりも冒険者の七原、現在進行形で火事場泥棒のように遺跡を漁っていく布具里。
その二人にとって森の中を素早く通り抜けることなんて目を瞑っていても出来るぐらい慣れたことだ。
何せ獣すら通らない道なき道を行かなければならないことだって数あるのだから。
どのようなスピードが最もエネルギー効率がいいのかも熟知している。

「やっぱり、森の中には居ないよな」
「で、どうするんだ息子よ。発電所やら研究所やらには行かなくてもいいのか?」

山の三合目ほどを横這いに移動してきた二人だが、それよりも上にある二つの施設には行っていなかった。
その理由はいくつかあるが、単純にそこまでの時間がない、というのが最も大きなものだ。
残り十二時間を切り、未だに仲間はおろか注意を促す必要がある危険人物にすら出会っていない。
山へと迂回しながら街を向い、丁寧に整備されているであろう道を使ってホテルに向かう。
それが七原のたてたとりあえずの予定。
だが、それでいいのか?という不安が渦巻いてきた。
その原因は先ほど聞こえてきた放送での死者発表に他ならない。

(青野さんや、鋼……それにタマちゃんまで死んでしまうなんて……!)

呼ばれた名前には冒険を共にした仲間の名前が呼ばれた。
それもどの仲間も一癖も二癖もある猛者。

(しかも、タマちゃんと鋼は死んでたはずだろ……?)

帝都で起こった大地震によって現れた化け物。
あの化け物の前に倒れ、死んでいったであろう七原と二人の仲間。
その二人の仲間も、出会う前に死んでいってしまった。
そして、帝都のその後を詳しく知っている可能性の高い青野さんもまた同様に死んでしまった。
ふと、隣に映る中年の姿を見て疑問が浮かぶ。

「……そう言えば、親父」
「なんだー?」

隣から聞こえてくるのんびりとした声に、少し苛立ちを覚える。
こちらは生き残ろうと必死だと言うのにどうしてもこうもマイペースなのだ、と。
なるべくその苛立ちが前に出てこないように、声を抑えて尋ねる。

153名探偵の呪縛 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/18(木) 01:21:41 ID:D7vF8T0.0

「親父は俺から300円借りに(貸さなかったけど)来たあとは何してたんだ?」
(※注! この時代の1円は今の5000円の価値があります。つまり150万円です。非常識極まりない)

七原はひょっとすると布具里も我威亜党に何かちょっかいを出していたのではないか、という考えが浮かんだのだ。
それに、純粋な興味と言うのもあった。
七原や妻を放っておいてまで何をしていたのか、という興味が。

「んー……いつも通りだな。遺跡に行って、そこで調べたことを大学のお偉いさんに教えて……」
「なんだ、また遺跡漁りか」
「おいおい……ちょっとはお父さんの仕事に興味を持とうと思わないのか、我が息子よ?
 たまには、お父さんすごーい!僕も将来はお父さんみたいになる!、とか言ってた頃を思い出せよ」
「言ってないから! そんなこと言ってないから!」

昔から家族をおざなりにして遺跡を巡っていた父。
そんな駄目父に憧れることはない。
……奇しくも父と同じく冒険者、そして(父の借金が原因とはいえ)膨大な借金を抱えることになったが。

「ったく、親父は相変わらずだな……」
「相変わらずってなんだ、息子」

無駄口をたたき合いながらも足を止めずに前へと進んでいく。
いつかこんな父を尊敬する日が来るだろうか、なんて話を考えて馬鹿らしく笑えてくる。
少なくとも、借金がある限り父を尊敬する日など来ないだろう。

「っと、神社が見えたな」
「普通だねぇ、特に歴史的価値はなさそうだ」
「……無理するなよ親父。息子の前でカッコつけたいのは分かるけど」

無駄口を止めることなく進んでいく。
七原は銃を懐に備え、布具里も何かをしようとするものの息子に銃を巻き上げられて何もない無手で進んでいく。
そしてかなりの距離まで近づき、とりあえず門をくぐって中に入ろうと正面に回った時だった。

「おっと! そこを動くなよ!」
「……そう来るよなぁ、普通は」
「あらら……」

目の前には猟銃を構えた一人のボロを着た男。
七原と布具里が放送の前に出会った九条という男とよく似ている。
こちらをじっくりと観察するかのような眼をして、直ぐに障害物へと体を滑らせれる位置に居る。
猟銃はボルトアクション、つまり再装填に時間がかかるため最初の一撃を避ければ危険度は格段に減る。
だが、七原の目的はあくまで向こうも予想以上に落ち着いている。
焦らなければいい関係が気付ける、と思いたい。

154名探偵の呪縛 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/18(木) 01:22:29 ID:D7vF8T0.0

「よし、手をあげな。変な動きするんじゃねーぞ」
「はいはい……」

銃は懐にしまい、手を上げて向こうの出方をうかがう。
布具里が何かをしないかと七原は内心ひやりとしていたが、幸い手を上げている。

「んじゃあ、単刀直入に聞く。お前らは殺し合いに乗っているのか?」
「乗っていない」

男の台詞に間髪をいれず答える。
敵意はない、それを分からせるのはひどく難しい。
何故なら人は嘘をつけるし、それが常識だから。

「……そうか、だが動くなよ? 悪いが簡単に信じるわけにはいかないんでな」
「分かった。こっちも撃たれちゃ堪らないからな」

そう言いながらも、男は猟銃を放そうとはしない。

「少し話があるんだけど……ここからの話をするってこと良いかな?」
「構わないぜ」
「手を組まないか?」

顔を見ずに猟銃と腕だけを観察する、怪しい動きを見せればすぐに避けれるように。
男に撃つ気配はないとは言え、油断はできない。
考える素振りは見せているのに隙は見せない。
少なくとも修羅場や危険にはなれているようだ。

「……ちょっと待ってろ。仲間を呼ぶ、詳しい話を聞くのはそれからだ」


   ◆   ◆   ◆


「……」
「……」
「……」

155名探偵の呪縛 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/18(木) 01:23:03 ID:D7vF8T0.0

本堂の中に居るのは三人の男女の若者。
その誰もが口を開くことはなく、俯いたまま目を合わせようとしない。
その理由は先ほどの放送だ。
十八人、十八人もの人間が死んだのだから当然とも言えよう。
最初の二人は亀田と言う元凶に殺されたとしても、残りの十六人はこの島に居る人間が殺したのだ。
それが一人なのか、それとも十六人なのか、それとも人を殺した人間も全員死んでしまったのか。
いずれにしろ落ち着かない。
しかも、天本玲泉は知り合いである島岡武雄を失くしているのだ。
穏やかでいれるわけがない。

「……天本さん、春香ちゃん。俺、ちょっと椿さんのところに行ってくるから」
「え……?」
「椿さんばかりに見張りを任せてるのもまずいからね」

そう言うと足早に七味東雅は二人から離れていった。
ここに居づらくなった、と言うよりも居ても立っても居られない、と言った風だ。
だが、残された彼女と倉見春香には沈黙が続いていく。
先ほど出会ったばかりなのだ。
話す共通の話題もないし、話す気力もない。

「先輩……」

春香がぽつりと漏らした一言。
玲泉も少し居心地が悪かったのだろう、その言葉を拾うことにしたようだ。

「倉見さんは七味さんと仲が良いんですね」
「え? え、ええ、そうですよ! 先輩と私は恋人ですからね!」
「恋人……そうですか、道理で倉見さんは七味さんを信頼するわけですね」
「えへへ……あ、でも、先輩が少し変なです」
「変……ですか?」

玲泉が思い出す限り七味に妙なところはなかった。
むしろ何とかして殺し合いから脱出しようと必死になっていることから頼りになるぐらいだ。
それとも日常では情けない、と言うより穏やかな性質なのだろうか。
そこまで思って玲泉の頭に一人の男が思い浮かぶ。
知っている限り、最もあり得ないことを実現させた人間。
そして玲泉のいま最も大切な人間。
島岡が死ぬのにショックを受けたと同時に、彼が居ないことを大きく安堵した。

156名探偵の呪縛 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/18(木) 01:23:33 ID:D7vF8T0.0

「先輩、私のこと知らないって言ったんです」
「え?」
「……私とここに来てから会ったとき、私のことを知らないって言ったんです」
「どういう、ことですか?」

いまいち理解が出来ない、と言う風な表情で問いかける。
倉見も困ったような表情で語り始める。
愚痴を零し始める、と言い換えてもいいかも知れない

「先輩……全部忘れちゃったんです。私とデートしたことも、初めて会った時のことも……」
「……では、これから作っていくというのはどうですか?」
「え?」
「これから、作っていけばいいんですよ。
 忘れたものを思い出すことに時間をかけるよりもよっぽど有意義ですよ」
「これから……」
「ええ、これから楽しいことをして、これからもう一度恋人になればいいんですよ」

積木が崩れれば積み直せばいい。
砂の城が波で壊されたらまた作り直せばいい。
それは簡単なことだ。
何故積木が崩れたか、とか、何故波がここまで届いたか、などを考えるに比べれば、とても簡単なことだ。
出来る筈だと玲泉は漠然と思う。
あの人が自分を忘れてしまう。
それはとても悲しいことだろう。
だけど、そこでめそめそ泣いているようなことはしないだろう。

「泣いていてくるような幸せはいりません。そんな幸せはこちらから願い下げですよ」
「……凄いですね、天本さん」

玲泉の言葉に心の底から感心したように春香は呟く。
その様子をどう思ったのか、玲泉は相変わらず笑みを絶やさずに言葉を紡ぐ。

「そうですか? 私は倉見さんの明るさが凄いと思いますよ。心から笑う、というのは難しいですから」
「それだけが私の取り柄ですから!」
「ふふふ」
「えへへ!」

先ほどまでの沈黙は何処かへと行ってしまった。
二人は笑いながら、ここを脱出しようと心に誓う。

157名探偵の呪縛 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/18(木) 01:24:09 ID:D7vF8T0.0

「東先輩も居ますからね! みんなで脱出してまた先輩と一からスタートします!」
「私も、あの人の居る島に帰りたいですからね……」
「え、あの人って?」
「私の、そう、大事な人ですよ」
「え、そうなん」
「おーい、二人とも―!」

春香の言葉を遮る形で七味の声が聞こえてくる。
その声に春香は嬉しそうな表情を浮かべ、玲泉はそれを見てクスリと笑う。
ひどく和やかな雰囲気だ。
出ていくまでの雰囲気しか知らない七味は少し不思議そうに首をひねる。

「人が来てる。椿さんが言うには殺し合いには乗ってないらしい。
 それでその人たちをどうするかで俺たちの意見が聞きたいってそうだ」
「人が……東先輩じゃ、ないんですよね?」
「ああ、知らない人たちだ。とにかく来てくれ」

その言葉に少し緊張しながら七味の後ろへ着いていく二人。
どんな人間が居るのか、その人は本当に殺し合いに乗っていないのか。
いろんな疑問が頭に渦巻きながら、椿の傍へと来た。

「よう、お嬢ちゃんたち。早速で悪いが、少し話し合いと行くぜ。
 こればっかりは俺が一人で決めるわけにはいかないから」

椿の言葉に何も言わずにただ頷く。
そして横目でその殺し合いに乗っていないらしい二人を見る。
一人はハンチング帽が特徴的な男。
もう一人は真っ白な服とあり得ない顔の骨格が目を引く男。
見ただけではどんな人間かは分からない。

「よし、話し合いだ。言っとくがそこから動くなよ」
「分かってる、そしてこっちは一つだけ聞きたいことがあるんだ。まずはそれから聞いて見ていいかい?」
「……良いぜ、言ってみな」

話は椿とハンチング帽の男が中心で進むようだ。
恐らくその話を聞いて私たちが決めろということなのだろう。
三人は一言も聞き逃さないように沈黙する。

「……今が何年の何月何日か、わかるかい?」
「…………あん?」
「馬鹿らしく聞こえるかもしれないかもしれないが、大事な質問だ。
 もう一度言うぞ、今日が何年の何月何日か、わかるか?」

椿はすばやくこちらに目をやる。
あの椿が戸惑っている、と言うのは少し意外だった。

158名探偵の呪縛 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/18(木) 01:24:57 ID:D7vF8T0.0

「そんなの××年の大晦日、いやもう正月か三が日にはなってるか? とにかくいきなりなんだ」
「え?」
「……椿さん」
「あんだ?」
「……いや、話が早くて助かるよ。そっちも時間が違うのなら、ね」

ハンチング帽の男が少し肩の力を抜いて笑ったように見えた。
玲泉たちは四人は訳が分からない。全員が狐に包まれたかのような顔をしている。

「後ろの三人は不思議に思ってる筈だ。良いかい、俺たちは『違う時間』から集まれたんだ!」
「……あん?」
「…………」
「…………」
「…………」
「息子よ、それはいきなりすぎるぞ」
「こう言うのは最初に核心をついていた方が楽なんだよ。
 そっちで話し合ってみな。間違いなく最後に覚えている日が見事に違うはずだからな。
 誘拐されたから、なんて言葉が不自然に思えるぐらいの違いがね」

男は自信満々に言い放つ。
さすがに疑問を覚えたのか椿はこちらに向き直り、「今日は何日だ」と尋ねてくる。
結果は男が言ったとおり、皆が皆、見事に違った日は言った。

「せ、先輩はもう20歳なんですか」
「そうか……春香ちゃんは俺のいっこ下なんだ」

わずかな誤差。
ひょっとすると七味が春香を忘れているのも何か訳があるのかも、と関係ないことを玲泉は思った。
そんな中、椿は苛立ったような表情のまま二人の男へと体を向ける。

「……おい、話を聞かせろ。どうせまだとっておきが残ってんだろ?」
「俺たちは大正から連れてこられた」
「……はあ?」

椿が何度目かになる間の抜けた声を出す。
それも仕方がないだろう、いきなり大正時代の人間だ、なんて言われたら。
玲泉だって訳が分からなかった。
だが、その言葉以上に、次の言葉が玲泉の胸を捉えた。

「そして、俺は一度死に、そして生き返った……死んでいた仲間も、生き返った。
 恐らく亀田の仕業だ。あいつはこちらの理解の外の技術を持っている」

159名探偵の呪縛 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/18(木) 01:25:37 ID:D7vF8T0.0

「…………………………え?」

天本玲泉はあまりの出来事に呆気を取られてしまった。
『自分は死んだ』と目の前の探偵と名乗った男は語った。
『仲間も死んでしまったがこの殺し合いに巻き込まれて、もう一度死んでしまった』とも言った。
椿や七味に倉見、それどころか連れの男すら信じていないようだが、彼女には思い当たる節があった。
そして、まだ話が続いているようだが一向に耳に入ってこない。

(呪……神隠し……そして、お婆様)

彼女が今行っている思考はあまりにも飛躍した考えなのかもしれない。
実際に彼女の祖母である天本セツが起こした呪いは『人をこの世から、記憶から消す』というもの。
『人を生き返らせる』というものとは見事なまでに逆のベクトルを持った呪いだ。
しかし、しかしだ。

(人を消すことが出来るのなら……蘇らせることだって出来る……?)

願望だ、あまりにも自分にとってだけ都合のいい願望。
そう、祖母のセツを蘇らせることができる、なんて願いは。
だが、祖母一人の命だけで、執念だけで一時的にとは言え人を二人も消したのだ。
そして、恐らく。野球部が甲子園に行けなければ野球部全員を消していただろう。
ならば49人の命を使えば、人を生き返らせることもできるのでは?
彼女の思考はどんどんと一人歩きをしていく。

(私に一度も優しくしてくれなかったお婆様。
 あれだけ思ってくれた優しいお爺様を放って、若いころのロマンスばかり夢を見ていたお婆様。
 いい年をして、あの人に昔の恋人を投影していたお婆様。
 結局、一人で満足して勝手に死んでいったお婆様)

頭によぎる顔は、しかめっ面でも怒気を孕んだ顔でもない。
あの人を初めて見た時の驚きを浮かべた顔と、苦しそうながらも幸せそうな笑みを浮かべている顔だけだ。

(……私は、お婆様なんて嫌いだ)

160名探偵の呪縛 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/18(木) 01:26:29 ID:D7vF8T0.0

良い思い出などない。
どんなに思い出しても彼女の記憶にはセツに優しくされた覚えはない。
母のことを悪く言われたこともあった。
色々とこきを使われたこともあった。
いつも愚痴を言っていた。
悪いことばかりを思い出す。
それはひょっとすると彼女自身のブレーキなのかもしれない。
彼女も悟っているのだ。ここで決意してはいけない、と。
それはしてはいけないこと。
理性をもって、打算のままに行動して、それをすることは人としてしてはいけないことだ。
必死でそう思考が流れないようにする。
そして、まっ先に思い出すのは『あの人』のこと。
彼女を受け止めてくれた『あの人』。
今も彼女と一緒に居てくれる『あの人』。
その人のためにもそれをするわけにはいかないと、必死に『あの人』のことを思い出す。
そして、あの人の動きを、言葉を、全てを思い出す。
白球へと向かって走っていくユニフォーム姿の人。
甲子園まで行き、優勝をしたあの人。
秋の日、私が全てを告白し、それでも受け入れてくれたあの人。
その時の言葉は、今でも――――今、でも―――――




『……天本さんは、結局お婆ちゃんのことが好きだったんだよ』




「あ……」




『本当は、全部お婆ちゃんのためにやったんだろう?』




「あ……ああ…………!」

161名探偵の呪縛 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/18(木) 01:27:16 ID:D7vF8T0.0

その際に思い出した言葉で、もう駄目だった。
口で祖母のことが嫌いと言おうと、頭で祖母の嫌なところを思い出そうとしても。
彼の言葉と、唯一の自分の居場所だったことを思い出してしまったら駄目だった。
想像するのは彼女自身と、あの人と、そして祖母が一緒に並んでいる。

(……私は……)

変わりはない、高校時代にやっていたこと何の変わりはないはずなのだ。
そう、彼女は燃えるゴミの日に燃えるごみを出すぐらいの自然さでそれを行えばいい。
焚き火をするぐらいの気軽さで火をつけた時のように。
自然な動作でお弁当に痺れ薬を混ぜたように。
気まぐれのように祖母の最後を看取った時のように。
そして、祖母を蘇らせてあの人と暮らせばいい。

一緒だ。

あの時と同じように、彼女は結果的に人を殺すように動ければいいだけだ。

彼女の心に静かな、けれども熱い炎のようなものが浮かび始める。
先ほどまで倉見 春香と一緒に話していたころの穏やかな気持ちはない。
真っ赤ですらない、それはガスコンロで作られたかのような安っぽい高温の青い炎。

それに、椿の首輪の外すという言葉だって確実ではない。
願いを叶えるという言葉が嘘だとしても、全員を殺すというのは元に戻る方法の一つでもある。

気づいたときには、七原という男との会話は終わっていた。
どうやら、一先ず行動を共にすることになったようだ。
椿が良いと言った以上、何かしらの策があるのだろう。
要注意人物であるが、頼れる人物でもある。
彼女は今までとは違った目で椿を観察していく。
だが、あまりにもジロジロと見ていると要らぬ疑いを受ける。
彼女は振り返り、二人の男へと声をかけた。

「では、これからよろしくお願いしますね。七原さん、布具里さん」

彼女は自然と、全てを吐露したあの秋の日以来となる類の笑顔を浮かべていた。

162名探偵の呪縛 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/18(木) 01:27:46 ID:D7vF8T0.0

【C−2/神社/1日目/朝】
【倉見春香@パワプロクンポケット7表】
[状態]:健康
[装備]:麻酔銃@現実(一発消費)
[道具]:なし(七味が持っている)
[思考]
1:休んで七味の足手まといにならないようにする。
2:あわよくば七味の記憶を取り戻す。

【七味東雅@パワプロクンポケット7表】
[状態]:健康
[装備]:セイラーマンサーベル、支給品一式×3、ランダム支給品2〜6個
[道具]:なし
[思考]
1:春香ちゃんを守る。
2:ゲームに乗らない人物を守る、そして一緒に協力する。
3:ヒーローがいるなら合流する。
[備考]
※七味東雅の高校時代は彼女とも付き合わずまじめに野球一筋でした。
※七味東雅は記憶喪失ではありません。
 2年前のことなので春香の事を覚えていないだけです。(生徒会くらいのときしか面識がないため)

【椿@パワプロクンポケット9表】
[状態]健康
[装備]鉈、ムラタ銃
[道具]支給品一式×2(不明支給品1〜4)
[思考]
基本:生き残るのに手段は選ばない。
1:とりあえず七味、春香、天本、七原、布具里と行動する。
2:天本を利用してゲームを有利に進める。

【天本玲泉@パワプロクンポケット4表】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式(不明支給品1〜3)
[思考]
基本:日の出島に帰る。
1:人を結果的に殺す。
2:このチームを利用する。

163名探偵の呪縛 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/18(木) 01:28:21 ID:D7vF8T0.0

【七原正大(ななはら まさひろ)@パワプロクンポケット7裏】
[状態]:健康
[装備]:地味な色のベスト、ニューナンブM60(6/6)
[道具]:支給品一式、Pカード、九条と凡田の知り合いの名前の書かれたメモ、予備弾(12/12)
[思考]
基本:亀田を倒す。
1:仲間を集めるために動き回る。
2:ほるひすに警戒心。
3:第三放送前にホテルPAWAへと向かう。
[備考]
※大正編のどの人物とどの程度面識があるか、メモに誰の名前が書かれたかは後の書き手に任せます。

【布具里@パワプロクンポケット7裏】
[状態]:健康
[装備]:亀田幻妖斎の服
[道具]:支給品一式、ランダム支給品残り0〜1個(本人確認済み)、亀田幻妖斎の仮面
[思考]
基本:正大に寄生して生きる。
1:仲間を集める。
2:第三放送前にホテルPAWAへと向かう。
3:死んでたのか……息子よ。
[備考]
※確認済みの支給品の中に、衣服になるものは入っていません。

164 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/18(木) 01:28:55 ID:D7vF8T0.0
投下終了です
御暇な方いらしたら代理投下お願いします

165名無しのバットが火を噴くぜ! :2009/06/18(木) 02:24:13 ID:66YnpO/s0
申し訳ありません、代理投下中に連投規制に引っかかりました。
>>156以降をどなたかお願い仕舞す・・・

166 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/21(日) 20:32:03 ID:SX6UGa1A0
規制中のため投下します

167愛と名付けた囲いの中で ◆7WJp/yel/Y:2009/06/21(日) 20:32:34 ID:SX6UGa1A0

リン、という女が居る。
その名前が本名なのか偽名なのかを知っている人間は居ない。
リンについて知られているのはその確かでない名前と腕の確かな情報屋ということだけだ。

「……」

リンは静かに一人の男、島岡 武雄の死体の前に立っている。
彼女は女豹のようにしなやかな体を屈めて、島岡の左目へと目がけて鉛筆を当てる。
そのHBの鉛筆はゆっくりとわずかな隙間を目へと埋めていく。
削られた箇所が完全に見えなくなった頃、右手を鉛筆と目玉の境目に当て左手で鉛筆を斜めへ倒していく。
テコの原理で島岡の眼球はゆっくりと持ちあがっていく。
遂に眼球が完全に空気に触れることになる。
視神経と網膜血管を包んだ細長い膜だけが人体と繋がれており、グロテスクな薄気味悪さを覚える。
リンは顔色を変えずに顔を島岡の目前まで近づけ、眼球を口に含む。
そして、眼球自身を潰さないように優しく舌で包み、歯は細長く島岡の体へと繋がっている膜を摘む。
歯で膜を摩り下ろして、眼球と身体を完全にちぎる。

それは遠目から見るとひどく妖艶な姿だ。
見目麗しい美女が地面へと膝を落とし、寝そべった人間へと顔を近付けているのだ。
耳を澄ませば僅かにチュク、チュク、と粘ったい水が混じり合う音も聞こえてくる。
想像を膨らませるには十分すぎるシチュエーションだ。

だがしかし、現実はそれほど甘くはない。
リンは顔を離し、デイパックから紙を取り出す。
ティッシュのような上等なものではなく、ごつごつとしたメモ用紙だ。
そのメモ用紙を口元へと当て、頬を動かして何かを吐き出す。
もちろん、その何かとは島岡の眼球だ。
噛みちぎった眼球と人体を繋げていた管がひどくグロテスクだ。

再び鉛筆を持ち、右目にも同じ作業を行う。
口の中に何とも言えない不快感が広がっている。
顔をしかめるが、一人の両目を抉った。
自己申告だけではあの女、黒羽根 あやかが何か屁理屈をこねてくるかもしれない。
証拠を持っていけば恐らく大丈夫だろう。
リン以外に殺された死体から取ったのではないか、と言われればそれまでだ。

168愛と名付けた囲いの中で ◆7WJp/yel/Y:2009/06/21(日) 20:33:07 ID:SX6UGa1A0

だが、そんなことを言い出したらどうやっても自分が殺したとは証明できない。
さて、これからどうするか。
目を切り離す直前に聞こえた放送によると近くに禁止エリアもなくしばらくは安泰。
今は動かない探知機で最後に見えた画面が正しければ、人は南、つまり学校に留まっていた。
ならば、学校に向かうべきだろう。
そこならば電気も通っているだろうから探知機の充電も出来る。
リンは学校へと足を動かす。

(茜も彼も無事……か)

学校へ向かう途中で頭に過ったのは放送で名前が上がらず、そして名簿に名前が載っていた二人のこと。
高坂茜が巻き込まれていたのは知っていたし、八神総八郎が連れてこられている可能性も考えていた。
どちらか一方しか生き残らすことが出来ないなら、自分は茜を選ぶだろう。
ふと、こんな思考をしているとは自分も変わったものだ、と思った。
昔ならたとえ彼が殺し合いの場に居たとしても、こうは思わなかったはずだ。
死なせたくないと思いつつも、消極的に自分の生存を最優先として動いただろう。
それがどうだ、今は自分の生存なんてハナから考えていない。
命を投げ捨てている、人間変われば変わるものだ。

ただ、その変化は不快ではなかった。

169愛と名付けた囲いの中で ◆7WJp/yel/Y:2009/06/21(日) 20:33:38 ID:SX6UGa1A0


   ◆   ◆   ◆


長い痛んだ金髪を片手で軽く髪を梳かしながらヘルガは学校の外へと足を踏み出した。
先ほど流れた放送で呼ばれた埼川珠子という女の名を思い出す。
死んだ、それを確認した。
放送の内容に偽りが交じっているということはないだろう。
それが虚言だとばれた時、目の前に釣った餌である『優勝賞品』の効果が激減してしまう。
これほど大掛かりな舞台を用意できるほどの組織ならば金や地位を用意することぐらい簡単だ。
そして、金に目をくらんだ人間が喜んで殺し合いに乗る可能性だって高いのだ。
こんな普通じゃない状況で普通な思考を持て、というのも酷なもの。
間違っても欲のために他人を殺す人間を庇うつもりはないが、少し同情の念を覚えてしまう。

「……野球のグラウンド、か」

ふと後ろを振り返り、学校を眺める。
そこには一つのボロボロの金網ネットと地面に埋め込まれたホームベースと少し盛り上がったマウンド。
日本の学校ならばどこでも見られるだろう風景。

「野球とひどく縁があるものだな……」

口元を釣りあげて笑い、前へと向かって歩き続ける。
ここに来る前に最も記憶に残った人間は野球をしていた。
ここに来てから最初に出会った人間は野球をしていた。
ここに来てから最初に体を休めた場所は野球場だった。
思い返して改めてここ半年近くの間は野球と深い縁があったのだなと再認識した。

「まあ……だからと言って、どうというわけではない」

ただ、少しだけキャッチボールぐらいならしてもいいかもしれない。
そんなひどく似合わない感傷を抱いていた。
最初に出会った男の影響かもしれないし、名前も覚えていない不思議な男の影響かもしれない。
こうも野球に縁があるとさすがに興味も出てくる。

「……!」

だが、そんな呑気な考えもそこまでだ。
僅かに足で木の枝を折る音が聞こえた。
ヘルガは周囲のものよりも一際大きな木の影に隠れて様子を窺う。
ナイフを懐に忍ばせモデルガンを片手で持つ。
息を殺し、音が聞こえた方向へと視線を移す。

170愛と名付けた囲いの中で ◆7WJp/yel/Y:2009/06/21(日) 20:34:08 ID:SX6UGa1A0

「……」
(少女……歩き方がぎこちないな、怪我をしているのか?)

視界に映った少女は俯き足を引きずるように移動している。
手に持った機関銃がひどく不釣り合いだ。
ヘルガは話しかけるかどうかを僅かに考える。

「おい」
「! だ、誰ですか!?」

体は木から出さない。
少女は慌てて機関銃を構え、眼には怯えと苛立ちと絶望が覗ける。
ヘルガは抑えた声で話しかける。
下手に刺激をするのは危険。
殺し合いに乗っているようには見えないが、かなり混乱して衰弱している。

「落ち着いてくれ、私は話をしたいだけだ」
「……じゃあどうして姿を見せないんですか」
「こちらの方が安心できるだろう? 声の方向から私の場所は察することが出来るだろう」
「……」
「君は殺し合いに――――なっ!?」

ヘルガは投げかけた言葉を自身の驚愕に溢れた声で遮り、木の幹で出来た段差の下へと身体を滑らせる。
彼女の動きから数瞬ほどを置いて、耳をつんざく激しい音が現れた。

爆発、やはりあれは爆弾だったようだ。

ヘルガが話をしている最中に少女が取り出したもの、それは爆弾だ。
銃は銃弾が減ることを嫌ったのか、それとも単純に気分の問題なのか。
とにかく彼女は爆弾を出し、それを使った。
段差の中から外を覗き見る。
少女の姿は消えている、どうやら逃げたようだ。
殺し合いに完全に乗っているわけではない、自暴自棄になっていると言ったところだろう。
ヘルガは少女が完全に近く居ないと把握すると静かに顔を出し足早に立ち去った。

(あの少女……)

僅かに見えた瞳はヘルガの胸を軽く痛めつけた。
どうすれば良いのか分からない迷子のような瞳。
だけど、それを教えてくれる人が居ないと悟っている瞳。
未来への希望が見えない瞳。
誰を憎めばいいかも分らない瞳。
あのような瞳が横行する世界が、来るかもしれない。
それがヘルガが何よりも胸を痛めさせられた。

171愛と名付けた囲いの中で ◆7WJp/yel/Y:2009/06/21(日) 20:34:45 ID:SX6UGa1A0


   ◆   ◆   ◆


「……」

リンは学校の前に立っていた。
人の動く気配はしない。
中で隠れているか、学校には既に誰も居ないかのどちらかだろう。
リンは壁を乗り越えてグラウンドの端を通って校舎へと向かう。
この距離からでは物音一つ聞こえない。
リンは開いた窓から校舎内へと潜入し、奇襲に備えてグロッグ19を構える。
人の気配は、しない。
何かが動く音が聞こえないのだ。

「誰も居ない……」

唇を僅かに動かしてぼそりと呟く。
幾らなんでも静かすぎる。
人が動いていれば物音の一つもするだろう、何より誰も居ないこの古い学校ならば足音は響く。
あるとすれば息を殺して罠が発動するのを待っているか、だ。
その可能性を考えていたからこそ正面から入らなかった。

リンは片手でドアを開け、教室の中へと素早く体を滑り込ませる。
探知機で充電し直せば誰かが隠れているかもわかる。
向こうが待ちの戦法を取っているならこちらが動かない限り危険はない。
もし、誰も居なくてもそれはそれで御の字。
気を取り直して学校を離れればいいだけの話。
探知機を充電し、ゆっくりと椅子に腰をかける。
ノルマを少しクリアしたことによって、時間に余裕は出来た。
充電をして、人を殺す。
ひとまずはその方針で行けばいい。

172愛と名付けた囲いの中で ◆7WJp/yel/Y:2009/06/21(日) 20:35:15 ID:SX6UGa1A0


   ◆   ◆   ◆


芳槻さらは痛みの走る体に鞭を打ちながら学校へと向かっていた。
全身が軋むような痛みに苛まれながらも、必死に足を前へと動かす。
休むことはできなかった。
先ほどの恐らく高さから考えて女性だろう声の人間が迫って来ているだろうと想像すると、一刻も早くこんなところから立ち去りたかった。

「はぁ……はぁ……」

信じられなかった。
あの声の言うことが信じられなかった。

(多分……それはきっとこちらを疑っていたからかな)

さらはそんな風に考えて、ゆっくりと頭を振った。
そうじゃない、と。
自分でも理解している、何か理由をつけているだけだ。

(私は、多分誰も信じれないんだろうな)

だから、爆弾を投げつけた。
話を聞かずに、いつの間にか傷つけられることを恐れて。
危ないと思ったという理由だけで。怪しいと思ったと言う理由だけで。
殺す以外の道を選んだのだ。
銃を引くのも面倒だったから爆弾を選んだ。
その所為で無駄な恐怖を、声の人が怒って襲ってくるかもしれないなんて恐怖を覚える破目になった。

とにかくそんなことを考えていてもしょうがない。
今は学校に行くことだけを考えよう。

足を動かす。
体の節々から来る痛みに耐えながら
きっと、恐らく、信じられるだろう人間との思い出の場所に。

173愛と名付けた囲いの中で ◆7WJp/yel/Y:2009/06/21(日) 20:35:50 ID:SX6UGa1A0
【F-3/学校/一日目/朝】
【リン@パワプロクンポケット8】
[状態]健康
[装備]グロッグ19(8/15)
[道具]支給品一式×3、劣化版探知機、充電器、ヒヨリンセット(化粧品中消費)、支給品一覧表、島岡の両眼
[思考]
基本:一先ずノルマの三人殺しはクリアしておく。
1:学校で待機。
2:八神と茜は何としてでも生き残らせる。
3:劣化版でない探知機が存在するのなら入手してしておきたい。
4:第五回放送の前に役場へと向かう。

【E-3/林/一日目/朝】
【ヘルガ@パワプロクンポケット6裏】
[状態]:健康
[装備]:モデルガン、ナイフ、軍服
[道具]:ラッキョウ一瓶、支給品一式
[思考・状況]
基本:亀田という悪を育てるために亀田に立ち向かう。
1:あまりにも亀田に対抗する戦力が大きくなってきた場合はそれを削る。

【芳槻さら@パワプロクンポケット10】
[状態]:左頬・右目周辺に痣、顔面を中心に激痛、足に痛み(中)、精神的疲労(大)、肉体的疲労(大)、所々に擦り傷
[装備]:機関銃(残弾中程度)
[道具]:支給品一式、スペツナズ・ナイフ
[思考・状況]
1:……疲れた。
2:学校へと向かう。
3:……二人は、どう思うだろうか?
4:十波君のことは信じられる?
[備考]
※第一回放送の内容をどこまで把握しているかは、後続の書き手さんにお任せします。
 ただし、メモなどには記録していないようです。

174愛と名付けた囲いの中で ◆7WJp/yel/Y:2009/06/21(日) 20:36:22 ID:SX6UGa1A0
投下終了です、誤字脱字矛盾の指摘をお願いします
早く規制解除を……!

175 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/23(火) 16:52:31 ID:2UM/1nDU0
あやか伯爵とプレイグ兄ちゃん、投下します

176 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/23(火) 16:53:09 ID:2UM/1nDU0
非自然的なまでに真白な色で床が埋め尽くされ、幅六寸ほどの幅を持った個室が並ぶ、初めて見る部屋。
個室が並んでいる、と言ってもそれほど大そうなものではない。
中に入った人間の背中から太ももを隠す程度の扉と、同じ大きさの小部屋と小部屋を仕切っている壁。
その部屋が暖かな湯気で埋め尽くされている。
ここは野球場内部の簡易シャワールームという場所。
先ほど埼川珠子を殺した私は優雅に水浴びをしていた。
かなりの長寿だと自負しているが、今この瞬間ほどに快適な時間は初めてだった。
この妙な形の栓を捻ると瞬時に気持ちの良い熱湯が出てくる。
絶えることなく、だ。
長く濡れ羽色の艶やかな髪の端から端まで瑞々しい精気を取り込んでいるような気分で心が躍る。
この世界にはこれが溢れているのだとしたら、元の窮屈で汚い世界に帰る気が失せてくる。
大げさな言葉ではない、これにはそう思わせるに十分な魅力を感じる。
目前を見ると石鹸を見つけ、それを体にこすりつける。
……泡が瞬時に立ち花の匂いが漂う。
マズイ、これはマズイ。
少し石鹸を体に擦りつけるのが楽しくなってくる。
いっそのこと、この世界に常駐してしまおうか?
元の世界に置いてきた鷹森には悪いとは思うが、それほどにこの世界は快適だ。
人はこの島の外に溢れているらしいし、幸い自分は血があれば何とか生きていける。
そうだ、この世界で名探偵のように探偵業をしてみるのも悪くないかもしれない。
自分ならばどんな場所にも行けるし、忍びの里で鍛えた尾行術も行かせる。
思ったよりも生きていける確信が得られる。
この世界で生きていくことを視野に入れて考えてもいいかもしれない。

「ふぅ……」

栓を逆方向に捻るだけで、お湯は放水をやめる。
快適だ、何度思ったかも分らないがとにかく快適だ。
入り口で見つけた布を手に取り、体にまとわりついた水滴を拭っていく。
このタオルにも驚かされる。
冗談のような手触りの良さと何処までも沈んでいくような柔らかさを持っている。
これがそこら中に出回っているのだとしたら何とも羨ましい世界だ。
決めた、この殺し合いが終わったらこの世界に住もう。

「鷹森は……私が居なくて清々してるでしょうね」

かなり振り回してきたから、彼は私に良い感情を持っていないだろう。
正直、一人でも十分に生きられるし行きずりの仲だ。
別に遠慮も要らなければ許可を取る必要もない。
完全に水滴を拭った後、先ほどまでの心地よさに少し後ろ髪を引かれながらも服を着ていく。
まずは簡素な形の下着を身に着け、シャツに袖を通し、ズボンに足を通し、最後にマントを羽織る。
少し汚れている為、気持ちの悪さがあるが贅沢は言えない。
壁に立てかけておいた愛刀を手に取り、外へと向かう。
しばらくはここに停滞する必要がある。
便利ではあるが、充電が必須とは面倒な機械だ。

177快適なり現代 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/23(火) 16:54:11 ID:2UM/1nDU0

「あ」

ふと、思いついて立ち止まる。
プレイグの待つ部屋へと向かう前に布を拝借しておこう。
あれほど心地いいものならば何枚あっても足りはしない。


   ◆   ◆   ◆



くるくる。
くるくる、くるくる。
くるくる、くるくる、くるくる。

道化師の格好をしたいかつい顔の男、プレイグは手持無沙汰だと言わんばかりに手元の杖を回していた。
くるくる回っていくファンシーなデザインの杖。
それに似合わないプレイグの空を睨みつけるドギツイ顔。
何度目かになる舌打ちをしながら、プレイグは後方のドアを眺めた。
そのドアを眺めて思い出すのは、同行者の吸血鬼、あやかの『少しだけここで待機する』という言葉。
確かにリンと言う女は殺し合いに乗ったようだから、自分達が無理に動く必要がまだない。
理屈は分かる。プレイグもあやかも体力を温存するに越したことはないので、急ぐ必要はないだろう。
ただ、向こう側に主導権を握られているのがひどく気に入らない。
仕事をする時は常に妹のイルと一緒のため、コンビで動くこと自体には慣れている。
信頼も戦法も向こうに抱く感情も天と地ほどの差があるが。
いつも兄妹ではプレイグ主導で動いているのだが、今回は向こうの都合に振り回されっぱなしだ。
柄じゃない、こんなものはプレイグは柄じゃない。
やはりイルと組むのが一番気分も乗るし戦法もかみ合う。
何よりも今回の相手は幾らなんでも回りくどいやり方を好み過ぎる。
金髪の女も先ほど殺した相手も、殺し合いに積極的にされるには難しい相手だった。
ならば、あやかが誘導しプレイグが奇襲をかけるという正攻法で行くのがベストなはずだ。
だのにあやかはそれをしない。
わざわざ金髪の女を逃がして自らを危険人物として知らせるようにした。

面倒で非効率的なやり方だ。
仕事はさっさと終わらせて次の仕事を探すのが賢い金の稼ぎ方と言うものだ。
もちろん愚痴を言ってもしょうがないことであるし、道具やコンビを組む条件は破格なのも事実だ。
だが、信用は出来ない。
あやかの目的は殺し合いの活性化、つまりはプレイグと共に人を殺すことではない。
あの女は殺し合いが面白くなるのならば、誰が勝ってもいいのだ。
いや、プレイグを殺して殺し合いが活性化するような状況になれば間違いなくプレイグを殺す。
プレイグもそれを承知の上で組んでいるのだ。
そのデメリットに目をつぶられるぐらいにはあやかの戦闘力と探知機は優秀だ。

178快適なり現代 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/23(火) 16:54:42 ID:2UM/1nDU0

「お待たせしました、プレイグさん」

そんなことを考えていると、にこやかな表情で黒羽根あやかその人が近づいてくる。
デイパックと探知機と刀を持っている、準備は万端と言ったところか。
どうやら今にも出発するつもりのようだ。
思ったよりも積極的なのだな、と考えながらプレイグも腰を上げる。
未だにあやかに主導権を奪われているのは癪だったが。
だが、プレイグの予想とは異なりあやかも椅子に腰をかける。

「なんや、まだここに居るんか?」
「ええ、そうですね……後少し、ここでのんびりしていきましょう」
「まあ、あの金髪の姉ちゃんが働いてくれるやろうから構わんが」

自分から動く必要はない。
狭い通路ならば広範囲に攻撃できる呪文『ボーボー』で逃げ道はなくせるため、籠城には持って来いだ。
加えてリンと言う女が殺し合いに乗っているだろうし、放送を聞く限り他にも殺し合いに乗っている人間も居るようなのでわざわざ自分達が動く必要性は全くない。
故に籠城は正しい選択肢の一つでもあるのだが、そんな賢い選択をあやかがしたことが意外だった。

「探知機が少しの間だけ使えなくなりましてね。それが回復するまでの間、ですよ」
「構わへんで、急ぐ理由もないしな」

プレイグは再び椅子へ腰を落とし、杖を回し始める。
相変わらず気持ちの悪い装飾がされた杖だ、ひどくプレイグには合わない。
だが、杖のあるなしで魔法の成功率が多少なりとも違ってくる。
新しい杖が手に入るまでは贅沢を言えない。

「さて……」
「ん、どないしたんや?」

そんなプレイグを幾らかの時間眺めた後、あやかは席を立つ。
何をするのか気になったプレイグは思わず尋ねてしまう。
あやかは相変わらず綺麗に笑顔を作り、静かに言葉を返した。

「ここなら写真があるかと思いまして」
「まだこだわっとったんかこのボケェがぁ!!」

179快適なり現代 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/23(火) 16:55:20 ID:2UM/1nDU0

【G−3/野球場/1日目/朝】
【黒羽根あやか@パワプロクンポケット7裏】
[状態]:歓喜、テンション↑
[装備]:妖刀ムラマサ@パワプロクンポケット7裏、日本刀
[道具]:支給品一式、高性能型探知機、充電器、タオル数個
[思考・状況]
基本:『殺し合い』を円滑に進めるために動く。方法は問わない。
1:休憩、充電が終われば動き出す。
2:ゲームに乗っていない人間は殺す、マーダーに出来そうだったらする。
3:『名探偵』は、今度こそこの手で………
[備考]
1:参加者全員の顔と詳細情報についての知識を持っています。
2:探知機はあやかには反応しません。

【プレイグ@パワプロクンポケット4裏】
[状態]:健康
[装備]:ハヅキの杖@パワプロクンポケット4裏
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜3(杖は無い)
[思考・状況]
基本:『殺し合い』に乗り、優勝を目指す。
1:あやかについては保留。とりあえず今は殺さない。
2:もっとまともな杖が欲しいでホンマ……
[備考]
1:杖がなくとも呪文を唱える事に支障はありません。精神的にほんの少し落ち着かないだけです。

180快適なり現代 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/23(火) 16:55:51 ID:2UM/1nDU0
投下終了です
誤字脱字矛盾等がありましたら指摘お願いいたします

181名無しのバットが火を噴くぜ! :2009/06/24(水) 20:35:54 ID:DyN9QpcM0
あなたはは他のロワに行っても、十分通用…いやトップを狙える書き手だ。
それなのに…どうしてあなたはここで書き続けるのだ?
なにか理由があったら聞かせてほしい。

182 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/24(水) 23:22:11 ID:66N.htYI0
黒野博士の言葉を少し借りるなら、俺にとってパワポケはロマンだからさ!
ロマン。わかるだろ? ルールとか常識とかにとらわれない事さ!
パワポケってそうだろ?
野球ゲームの癖して野球以外の楽しみがあるんだ!
たとえば3の主人公さ、あんな人生を過ごした主人公が真面目で熱い野球をする作品なんて滅多にはないさ!
8の主人公もそう、最初はただの潜入捜査だったのに野球を好きになって正義の味方をやってる。
つまり、俺にとってダッシュ含めての1〜11は神ゲーなんだ。
信者補正も相まってパワポケを超えるゲームは俺の中にはないよ!
そんな連中を、殺し合いっていうどうしようもない窮地に追い込んで、それの動きを書けるんだ!
まあ、ここは俺の趣味が悪いってのもあるんだけどね。
とにかく、俺にとってパワポケは一位なんだよ。
他の作品にも魅力をあふれてるけど、このパワポケが集まって上川とか曽根村とか野丸とかのマイナーキャラまで書けるんだ!
率先して他で書き手をやろうとはあんまり思わないな!
後、俺の趣味ちょっと悪いから、少し見ていて気分が悪くなることもあるかもしれない。
基本好きなキャラほど苛めたい、って思うタイプだし
それでも見てくれると嬉しいし、感想書いてくれたり支援が来たらテンションがマッハでヤバい!
つまり長くなったけどパワポケが好きだから! パワポケロワ自体にもオープニングとか地図とかスレ立てとかもやったから愛着あるし!

正直最近夏が近くてテンションがおかしいから無視していいよ!
それと褒めてくれてありがとう! 超嬉しい!

183181:2009/06/25(木) 00:09:46 ID:WCNwQJuA0
>>182
なんか…ありがとう。
いや…あなたがそこまでこのロワへの思いをもっているなんて知らなかったから…。

これからは一人の読み手としてがんばって応援したいと思うよ。


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