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仮投下スレ

1管理人★:2008/07/02(水) 15:30:41 ID:???
何らかの諸事情の際に仮投下するスレです

2 ◆IvIoGk3xD6:2008/07/09(水) 02:40:01 ID:lVRAMTLg
2chに書き込めないのでこちらに投下しておきますね

3太田ハード ◆IvIoGk3xD6:2008/07/09(水) 02:40:37 ID:lVRAMTLg
「どうすればいいんでしょう……」
今にも消えそうな声で天本令泉はそう嘆いた。

目が覚めたら見知らぬ男と少年が殺され、自身は殺し合いを強要される。
悪夢のような出来事であるが、紛れもない現実なのである。
そして、天本は自分がただの女子高生であることを知っている。
だからこそ何をすればいいのか分からないのだ。
ゆえに膝を抱えて嘆くことしかできない。

何十分そうしていたのだろうか、天本は不意に人の気配を感じた。
後ろを振り向くと、そこには鉈を構えた男が自分に向かって来ている。
咄嗟に立ち上がり走り出したはいいが、男との距離はどんどん縮められていく。
頭がこんがらがったまま走り出した者と、スピードに乗った者のどちらが早いかは明白だ。

3分も経たないで天本は男に押し倒され、後は鉈を振り下ろすだけとなっていた。
天本は恐怖で目を開くことができなかった。
そして、自分が死ぬことを悟った。
だからであろうか、今までの記憶が鮮明に頭の中に映し出されていく。
野球部にしてしまった様々な迷惑、祖母の死、そして大事な人に許してもらったあの時のこと……。

4太田ハード ◆IvIoGk3xD6:2008/07/09(水) 02:41:48 ID:lVRAMTLg
天本は自らの死を覚悟したが、一向にその時はこない。
そのことを疑問に感じた時、自分の上にあった人一人分の重さがいつの間にか消えていることに気付いた。
恐る恐る目を開いてみると、そこには一方的に殴られるあの男の姿があった。

「てめぇ、一体何しようとしてやがったんだ!」
青いマントを羽織った男が叫ぶ。

「ぶっ、……な…………はな……ち」
一方的に殴られる男--ジャジメント・スーパー遠前町支店、支店長太田洋将は言葉も発することさえ出来なかった。

そして、男が渾身の一撃を加えると、太田は吹っ飛ばされ、崖の下の海へと姿を消した。

「お嬢ちゃん大丈夫かい?」
太田を吹っ飛ばしたことに何の感慨も感じる様子もなく、男は天本に尋ねた。
「あっ、ええと大丈夫……です」
大丈夫と答えてはいるが、天本にはいつもの笑顔はなかった。
「その、あの人は……」
男も天本が何を聞きたいのか理解したらしく、正直に答える。
「おそらく生きちゃいないだろ。この高さだからな」
「そうですよね……」
そこで会話は途切れ、静寂が二人を包んだ。

5太田ハード ◆IvIoGk3xD6:2008/07/09(水) 02:43:25 ID:lVRAMTLg

静寂を崩したのは男の方であった。
「で、お嬢ちゃんはどうしたいんだい?」
いきなりの核心を突く質問。先ほどまでの天本だったら答えられなかったであろう。
だが、今の天本は違う。あの死の淵で感じたものは彼女に目的を与えるのに充分だった。
「私はあの人の下に帰りたい。日の出島に帰りたいです!」
これが今の天本に言える全てであった。

「つまり、自分家に帰りたいってわけか。オレと同じじゃねえか。
 どうだい、オレと一緒に来ないか?」
「申し出は嬉しいんですが、私なんかじゃ迷惑じゃないですか?」
「構わねえよ。これでも色々とやってきてるんだ。女の一人どってことない」
「そうですか。じゃあご一緒させてもらいますね。ええと、私は天本令泉です」
天本はここに来て初めての笑顔で答えた。
「俺は椿だ。トラブル解決屋をやってる。よろしくな」
男--椿もまた笑顔で答えた。

こうして天本は第一歩を踏み出した。日の出島に帰るための第一歩を。

【B-1/一日目/深夜】
【天本令泉@パワプロクンポケット4表】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式(不明支給品1〜3)
[思考]
基本:日の出島に帰る
1:人を殺したくない
2:椿についていく

6太田ハード ◆IvIoGk3xD6:2008/07/09(水) 02:45:19 ID:lVRAMTLg
時は小一時間ほど遡る。
太田もまた一人膝を抱えていた。
「ああ、私はどうすればいいんだ……」
自分の人生に復讐を果たす正にその前日だった。
そのため、急にこのような場に連れられても何をすべきなのか分からない。

そんな折りだった、背後に人の気配を感じたのは。
振り返って目に入ったのは自分のよく知る男--ブギウギ商店街潰しの協力者、椿であった。

「何だ、人の気配がすると思ったらアンタか。ちょうどいい、どうだいオレと協力しないか?」
「えっ、いきなりどういうことだ?」
「言った通りの意味さ。他人を殺すにせよ、亀田打倒を目指すにせよ、
このゲームは複数人で組んだ方が色々と有利だ。だからこその同盟さ」
「なるほど、確かに一人より二人のほうが何かと好都合だな。よし、その話しに乗ろうじゃないか」
「へへ、話しが早くて助かるぜ。それじゃ行くとするか」

こうして、二人は同盟を結んだ。
そして、その数分後に一人の少女--天本を見つけることとなる

7太田ハード ◆IvIoGk3xD6:2008/07/09(水) 02:47:14 ID:lVRAMTLg
「なあ、椿、どうする?」
木の陰に隠れながら太田が尋ねた。
「そうだな……。店長、あの嬢ちゃんを襲えるか?」
「襲えないこともないが、……その……」
太田が口を濁らせるが、椿にはその理由が分かっていた。
「殺せるかは分からないってことか。しょうがねえなぁ、止めはオレが刺してやるよ。
 じゃあ、店長、早速やってこい」
椿が太田に襲撃を促すが、その前に太田は一つの疑問を口にした。
「お前が止めを刺すんだったら、私は行く必要ないんじゃないか?」
「普通の状況だったらな。考えてもみろ、死の淵に立たされた人間は何しでかすか分からないんだぞ。
 だからこそ、万全を期すんだよ。いいか、まずアンタが嬢ちゃんを追い立てる。
 そうすれば、嬢ちゃんの反応は二つだ。逃げるか戦うかだ。逃げた時はオレが先周りをしとけばいい。
 戦う時はさらに簡単だ。すぐにオレが飛び出せば2対1だ。負ける訳がねえ。わかったか?」
「なるほど、二段構えの作戦というわけだな。それじゃあ、後は頼むぞ」

太田は力強く天本へと駆けていった。
椿は態度は悪いがその実力は太田もよく知っている。
その椿が自分のバックにいるのだ。気が大きくならないわけがない。

天本を押し倒すのには5分とかからなかった。
そこで太田は自分の仕事を果たしたことに安堵する。
後は椿に任すだけ、そう思った時ちょうど良く椿が姿を現した。
椿は焦る様子もなく太田へと近づいていき、それが太田をさらに安心させた。

そのために気が緩んだのだろう、太田は目を一瞬閉じ、息を吐いた。

8太田ハード ◆IvIoGk3xD6:2008/07/09(水) 02:48:58 ID:lVRAMTLg
正にその時だった。太田の身体が宙に浮き、地面へと投げ出される。
それが椿による攻撃のためだと気付くにはしばらくの時間が必要だった。
犯人が椿だと気付いた時には、既に頼みの綱である鉈も手から落ちていた。

太田には訳が分からなかった。
(どういうことだ!?話しがちがうじゃないか!)
そう叫びたくても、椿の苛烈な攻撃はそれを許さない。

そして、椿の渾身の一撃が繰り出されると、太田の身体は再び空中に投げ出され、
そのまま崖の下の海へと姿を消した。


「俺は椿だ。トラブル解決屋をやってる。よろしくな」
このセリフを言った時、椿は大笑いしたくて堪らなかった。
なにせ、何から何まで自分の計画通りに事が進んだからである。

まず最初の太田との同盟。
これの目的は太田に語ったものである。

では、なぜ太田を裏切り、天本を助けたのか。
理由は簡単である。
太田といるより、『自分が助けた』天本といる方がメリットがあると踏んだからだ。
このような場で他人からの信用は得難い。
だが、この信用というものは得難いからこそ利用価値は大きいのだ。
それに、椿は太田が無能であることをよく理解している。
遅かれ早かれ、太田をどこかで切るつもりでいた。
そこで、椿は太田を悪に仕立て上げることで、天本の信用を得ることにしたのだ。

作戦は見事に的中した。
天本は自分を信用し、さらに彼女が誰かに会った時、『椿に危ないところを助けてもらった』と言ってもらえば他人の信用を得るのに役立つだろう。

「店長、感謝してるぜ。つっても、もう聞こえねえか」
落ちていた鉈を回収しながら椿はつぶやいた。
「何か言いましたか?」
「へへ、いや何も」

楽して手段を選ばず安全に勝つ、それが椿のモットー。

【太田洋将@パワプロクンポケット9表 死亡】

【B-1/一日目/深夜】
【椿@パワプロクンポケット9表】
[状態]健康
[装備]鉈
[道具]支給品一式×2(不明支給品1〜5)
[思考]
基本:生き残るのに手段は選ばない
1:まずは様子見
2:天本を利用してゲームを有利に進める

9 ◆IvIoGk3xD6:2008/07/09(水) 02:50:30 ID:lVRAMTLg
以上で投下終了です。
矛盾点や指摘があったらお願いします

10赤いともだち  ◆orjFHdr7.c:2008/07/11(金) 18:45:16 ID:We43DzbY
「俺なんでここにいるんだっけ・・・?」
普通の野球少年。 甲子 園児(こうし えんじ)は普通に生活していて、授業中あまりにも眠かったので寝た。 その後の記憶が全くない。 気づいたらあの部屋にいたのだ。 茶色いヒーローっぽい人と少年が殺されているのを見た部屋だ。 その後も記憶がない。 気がつくと自分はとある道にいたのだ。 車も人もいない道。 そして今の時間が訪れる。
「とりあえず支給品を確認しよう。 何か入ってるって言ってたし・・・」
甲子がデイパック内に手をのばすとなにやらでかい物が。
「ん? これは何だ?」
甲子がそれを引っ張るとデイパックには入りきれないだろう物が出てきた。 さすがは四次元デイパックといったところか。
「これは・・・ゴーカート・・・?」
説明書を読むと「黒野博士が作ったゴーカートです。 普通より早く走れます。 曲がるときは・・・」
と長ったらしい文章がかかれてあった。
「とりあえず乗ってみるか・・・」
乗ってエンジンを入れる甲子。 するとすごい勢いでその車は走っていった。
「いやちょっと待って〜! 速い! 速いって!」
とにかく速いゴーカート
甲子は別にF1の選手ではないし、車も運転したことがない。
遊園地で何回か乗ったことしかない。 しかも昔。
「やばいカーブじゃん! 曲がらなきゃ!」
大きくそれるその赤いゴーカート。
「誰か・・・助けてくれ〜!」

「ん? 今『助けてー』って聞こえたような・・・」
確かに聞こえた。 だがどこにいるかはわからない。
と、思っていると向こうからさっきの声主である甲子がゴーカートに乗ってやってきた。
「誰か・・・止めて・・・!」
止め方がわからない模様。
「よし! 今助けに行くぞ!」
勢いよく飛び出すレッド
「さあ! ブレーキを踏むんだ!」

11赤いともだち  ◆orjFHdr7.c:2008/07/11(金) 18:45:51 ID:We43DzbY
みなさんはこういう経験はあるだろうか?
目の前にあるとわかっているのにパニック状態の時どこにあるかわからないということが。
甲子は今こんな状況なのだ。

「え? ブレーキ? えっと・・・ブレーキ・・・ブレーキ」
「おい! 速く止めろよ! ぶつかるし! っておい・・・!」
バーン!

案の定、ぶつかってしまった。
そしてレッドも投げ出されてしまった。
「ふ〜 やっと止まったぞ・・・って え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
目の前には赤いヒーローがいた。 ブラウンとレッドの区別がつかないバカ甲子に
「あれ・・・でもこの日と最初に死んだんじゃあ・・・? とりあえず水かけてみよう。」
自分のデイパックから水のボトルを取り出しレッドにかけた。
「あれ・・・? 水があたるよ・・・。 じゃあおばけじゃないのかな・・・?」
「うーん・・・」
「ひえ〜! 生きてるよ〜! どういうこと!? え・・・まさ『座れ!』 あ、はい。」
甲子を座らせるレッド。
「とりあえず・・・ブレーキは最初に確認してくれ。 あと一番言いたいことがある。 それは・・・私は最初に死んだやつの仲間だ。 俺は決してそいつでもないし死んでもいない。」
「え〜 仲間なんですか・・・どおりでちょっと色が少し違うと思ったら・・・」
「彼はブラウンだ。 そして私はレッドだ。 彼と同じくヒーローだ。」
「そうですか・・・ってヒーローって本当にいたんですか! てっきりヒーローはゲームの世界やヒーローショーとかにいるもんだと・・・。」
「まあ、細かいこととは気にするな。 ところで私が持っていたノーマル弾は知らないか?」
「知らない〜」
「そうか・・・さっきので落ちたか・・・? まあ、いいか・・・とりあえず『レッドー!』 何だ・・・?」
後ろを振り向くとそこには見覚えのある東というキャプテンであった人物と・・・アレはふれないでおくか・・・」
「レッド・・・確かお前あの試合で消えたんじゃあ・・・?」
「まあ、あのいろいろあったんだが・・・気にするな。 ところでこいつは一体・・・?」
「ああ、こいつか。 こいつはね・・・」
東が「こいつ」に話題を振ると「こいつ」は・・・
「ほるひすだよ。 ころさないけどひともまもるよ。」
「・・・・・」
なんと言ったらいいかわからない状況で甲子が口を開く。」
「東さん、ほるひすはどのように・・・?」
「なんか普通に歩いてたら『ほるひすだよ。 ころさないけどひともまもるよ』とか言ってついて来たから。 まあ、いいかと思って・・・」
「そう・・・ですか・・・」
また静まり返るこの空気。 そこで東が話題を変える。」
「ところでレッド。 このパーツはいるかい?」
東がさしだしてきたのは2cmX2cmくらいの小さいパーツ。
そのパーツには魚が頭突きをしている絵が描かれている。
「なんかこれは『体当たり』と言ってこれは使うと10分間体当たりがうまくなるらしい。 詳しくはここに書いてあるから見てくれ。」
レッドに説明書を渡す。 ついでに甲子を見る。
「一応もらっておくよ。 後気になったのだがここに書いてある『豪力』と『重い球』は?」
「それは俺が持っている。」
東が答える。
その後いろいろと話・議論が続き、最初的にはこう決まった。
「私達4人はこのゲームの打開をし、主催を倒す。 これでいいな?」
「はい!」 「もちろん!」 「ほるひすだ(ry」
「よし、それじゃあ仲間を探しに・・・人がいそうなこの南にある工場へ行こう。 あと甲子はそのゴーカートしまっとけ。」
「はい〜orz」

12赤いともだち  ◆orjFHdr7.c:2008/07/11(金) 18:46:26 ID:We43DzbY
【C-4/道/一日目/深夜】
【レッド@パワプロクンポケット7表】
[状態]:少々打撲気味?(徐々に回復)、ヒーローとしての絶望
[装備]:特殊能力パーツ(体当たり)@パワプロクンポケットシリーズ
[参戦時期]:学校での主人公が乗るガンダーロボ戦後
[道具]:支給品一式、超人ライダーボトルキャップ@パワプロクンポケット8
[思考・状況]
1 甲子、東、ほるひすと協力、ゲームを打開する。
2 工場へ向かう
3 レッドとして反省する。

【甲子園児@パワポケ甲子園】
[状態]:健康
[装備]:なし
[参戦時期]:後の書き手さんに任せます。
[道具]:支給品一式(水一本消費)、ゴーカート@パワプロクンポケット7表、不明支給品0〜2
[思考・状況]
1 レッド、東、ほるひすと協力、ゲームを打開する。
2 工場へ向かう
3 ゴーカートが・・・orz

【東優@パワプロクンポケット7表】
[状態]:健康
[装備]:特殊能力パーツ(豪力、重い球)@パワプロクンポケットシリーズ
[参戦時期]:ヒーロー戦後
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
1 レッド、甲子、ほるひすと協力、ゲームを打開する。
2 工場へ向かう

【ほるひす@パワプロクンポケット6表】
[状態]:けんこー
[装備]:なし
[参戦時期]:後の書き手さんに任せます。
[道具]:支給品一式、不明支給品1〜3
[思考・状況]
1 さんにんといっしょにきょうりょく、げーむをだかいする。
2 こうじょうへむかう

[備考]
レッドが持っていったノーマル弾はC-4のどこかに落ちています。

【ノーマル弾@パワプロクンポケット8表】
ミニゲーム「くるくるバキューン」の武器です。
強さは後の書き手さんに任せます。

【超人ライダーボトルキャップ@パワプロクンポケット8】
変身ヒーロー「超人ライダー」の初期作品のボトルキャップ。 凡田博物館に展示されています。

【ゴーカート@パワプロクンポケット7表】
ミニゲーム「くるまでパァーン!」のゴーカート。
作ったのは黒野博士。 普通のゴーカートより速く走れる。
大きさやどれくらいの速さで走れるとか他のことは後の書き手さんに任せます。

【特殊能力パーツ@パワプロクンポケットシリーズ】
2cmX2cmくらいの特殊能力の絵が描かれている大きさのパーツ。
ニ●ロワのDMカードみたいな効果。
パーツを持って「○○に特殊能力○○発動!」と言うと10分間だけその特殊能力が発動される。
複数使ってもOK。 一度使用すると24時間経たないと再度使うことができない。
【豪力】
パワーが2段階あがる。
【重い球】
重い球を持っているような感じになる。 パワーが1段階下がる。
【体当たり】
体当たりがうまくなる。
※1段階がどれくらいか後の書き手さんに任せます。

13赤いともだち  ◆orjFHdr7.c:2008/07/11(金) 18:47:13 ID:We43DzbY
以上で投下終了です。
変なところとかあったら教えてください。

あとこれは本スレ投下の続きのものです。

14 ◆wKs3a28q6Q:2008/07/12(土) 07:51:38 ID:RvfoAv7c
案の定さるさんきました\(^o^)/
続きはこちらに投下させて頂きます
どなたか代理投下してくだされば幸いです

15勇気VS意地 ◆wKs3a28q6Q:2008/07/12(土) 07:52:33 ID:RvfoAv7c
……向こう側に。

「あ、あれ?」
当然である。向こう側へと倒れかけた木の下方にばかり向こう側から衝撃を加えれば、支えにしている木から滑り落ちるように木は倒れる。
つまり、こちらにバタンと倒れることなどあり得ないのだ。
やりたいのなら、もっと上部をあちら側から叩かねばならなかったのだ。
結局、ずり落ちた木がピエロの背中を押して転ばせることには成功したが、倒すには至らなかった。
この隙に取り押さえればよかったものの、作戦の思わぬ失敗に体が固まってしまった。
要するに、越後はやはり馬鹿だったということだ。
「ゆ〜るさないぞ〜。球の扱いはボ〜クが1番うまいんだ〜」
そして、これは越後には分からぬ事なのだが、ピエロの中に越後に対する殺意はなかった。
最初に爆弾を投げつけたのも、敵対組織『ホワイトベア』のリーダー・ヘルガの姿があったからであり、越後を殺す理由はない。
ピエロが執拗に越後に迫ったのは、ピエロとしてどちらが上かを決めたかったから。勿論、自分が勝つつもりで。
だがしかし、越後の技術はピエロの予想の斜め上を行っていた。
遠くに飛ばしたはずの石で木を倒す。その十二分にイリュージョンな光景に、ピエロは越後を『倒すべき一流ピエロ』と判断したのだ。
だからピエロはジャグリングを止め、越後に爆弾を仕掛けようと爆弾を手に駆け寄っていく。
それは殺意故ではない。これは単なる嫉妬であり、そしてこれがピエロにとっての“いつもの行動”なのだ。
「く……そおッ!」
最後の抵抗と言わんばかりに越後がコンパスをバットで打つ。
死が傍に迫っている。その実感はあったが、越後は諦めなどしなかった。
ピエロは自分に言ったのだ。『球の扱いは自分の方が上だ』と。
確かにそうかもしれない。あれだけ球の扱いが上手ければいい守備をしてくれるかもしれない。
だけど、自分にも意地があるのだ。親切高校一の守備職人としての意地が。
意地があるから、越後は引かない。己の意地を勇気に変え、渾身の一振りでコンパスを打った。
ピエロの持つ爆弾に怯えて打ち損じることなど、ない!
「さ〜せないよ〜」
ピエロが地面を蹴り上げる。飛びあがるというよりも、宙を舞うと呼ぶにふさわしい跳躍。
ムーンサルト殺法と呼んでも過言ではないその動作により、コンパスの一撃を自分には当たらないようにする。
越後の抵抗を読んでいたピエロの考えた作戦だ。単純だが効果は大きい。アクロバットに避けられるなど、普通の人間は考えないのだから。
そして、ピエロにはそのアクロバティックな動きが出来る。意表を突くことができる。
ピエロには身軽さも必要なのだ。ジャグリングさえやっていなければ、飛来物をよけるくらい比較的造作もない。
ましてや、コンパスは自分に向かって飛んでくると分かっていて、バットを振りかぶるという形で「今から飛ばすよー」との合図が送られてくるのだ。
それで黙って食らってやるほど、ピエロはお人好しではない。
「だ、駄目だぁーっ!! ピエロが止まらねーっ!!」
越後がギュッと目を瞑る。
勝利を確信し、ピエロは爆弾を越後に叩きつけ――
「まあ、止める気なんてなかったんだけどな」
ようとして、自身の頬にめり込んだコンパスにより墜落した。

16勇気VS意地 ◆wKs3a28q6Q:2008/07/12(土) 07:58:56 ID:RvfoAv7c

「FOOLドライブ。やれやれだぜ」
接近戦になると分かり、最後の一撃として放っておいたFOOLドライブ。
以前のFOOLドライブは腕を駆け上り自身の顔面に直撃していたのだが、改良に改良を重ねて顔面をも駆け上り射出できるようになったのだ!
呻き声をあげるピエロに圧し掛かり、自身のデイパックを引っ繰り返す。
確かガムテープが入っていたから、一旦それで拘束してから説得を――
「う〜…………ハッ!」
早くも意識を取り戻したらしく、越後の下で暴れ出すピエロ。
これではガムテープでの拘束も一苦労だなと考えて、拘束は止めさっさと説得に移ることにした。
「やれやれだぜ。殺したりなんかしないから安心しろよ。それより、一緒に野球をやらないか? 戦いなんてやめてさ」
笑顔で越後はピエロを誘う。
自分を襲ってきた相手だが、そんなことは気にしなかった。
酷い目に遭うのは一年の頃に慣れてしまった。今更些細な事でチームメイトを拒絶することはない。
……正確にはまだチームメイトにはなっていないのだが、越後の中ではもはやすっかりチームメイトだった。
「だ〜まされないぞ〜。そうやってピエロの座を奪うつもりだろ〜」
キッと睨みを利かせるピエロ。
ピエロの中で、今や越後はライバルとも呼べる超一流のピエロにまでなっている。
「やれやれだぜ。俺はピエロじゃないって何度言えば……」
「じゃ〜あこのナイフは何だよ〜。お前、ナイフ投げだろ〜」
越後の支給品は、よくとぶバットにガムテープ、そしてナイフが3本だった。
実際に越後の肩とコントロールがあればナイフ投げくらいお手の物と思われる。
「やれやれだぜ。それは配られただけだ。危ないからこっち向けないでくれ」
ナイフをぶんぶん上下に振り、駄々っ子のようにするピエロ。
ピエロに越後を刺す気はなく、故にナイフと越後の間には一定以上の距離がある。
だから越後も慌てて逃げることもなく、比較的冷静に話をすることが出来ているのだ。

ズガン!

「…………え?」
そして、それが仇となった。完全に油断していたのだ。
越後には、いや、ピエロにさえも、何が起きたのか分からなかった。
突然ナイフの刃が飛び出し、越後の喉元に突き刺さった。射出のためのレバーをピエロが押してしまったことなど、二人とも気付かない。
ゆっくりと倒れる越後。自分で攻撃したという自覚のないピエロは頭に疑問符を浮かべ、そして――
「ボ〜ク、ピエロだよ〜」
何を気にするでもなく、その場を立ち去ることにした。
越後の荷物と自分の荷物を拾い上げ、ジャグリングをしながらその場を去る。
越後の共通支給品とガムテープ、そして二本のスペツナズ・ナイフと使用した一本分の柄がジャグリングの輪へと加わる。
よくとぶバットは、越後の手に傍に残されていた。
それは自身が認めた“自分に次ぐ実力のピエロ・越後竜太郎”に対する、ピエロなりの供養なのかもしれない。





【F-04/水中/一日目/深夜】
【ヘルガ@パワプロクンポケット6裏サクセス】
[状態]:水中を流されているため息苦しい
[装備]:モデルガン
[道具]:ラッキョウ一瓶、支給品一式
[思考・状況]
1:自分がこの殺し合いの場でどう動こうか考える
2:越後のせいで『死の運命を大人しく受け入れる』という選択肢を取りづらくなった(取れないわけではない)
3:とりあえず適当な所で水から上がろう


【F-04/森/一日目/深夜】
【ピエロ@パワプロクンポケット10裏サクセス】
[状態]:健康、ほっぺた痛い
[装備]:サイボーグ同盟お手製時限爆弾×2、サッカーボール、火炎ブースター、スペツナズ・ナイフ×2、スペツナズ・ナイフの柄(いずれもジャグリング中)
[道具]:支給品一式(中身は全て出され、ジャグリングに使われている)×2
[思考・状況]
1:みんな(主催含む)を手当たり次第笑わせる〜
2:ピエロはボ〜ク一人でいいんだ〜
3:命令されたし、レッドドラゴン・ホワイトベアの人間は倒しとくよ〜
[備考]
1:10裏で仲間になる無所属キャラと10裏主人公がどこの組織に所属している世界から来たかは次の書き手さんにお任せします
2:戦闘で使ってる愛用のナイフや爆弾は亀田に没収されました

17勇気VS意地 ◆wKs3a28q6Q:2008/07/12(土) 08:00:01 ID:RvfoAv7c
【モデルガン@現実】
その名の通りモデルガン。勿論弾は出ないし殺傷力は0に近い。

【ラッキョウ一瓶@パワポケ7】
レッド達が試合前に食べていたラッキョウが入っている。
小さい瓶に入っているため派手なアクションを行うと容器が割れる恐れがある。

【サイボーグ同盟お手製時限爆弾@パワポケ8】
至近距離で爆発されても命を落とさない、殺傷能力0の爆弾。が、大怪我を負わせることは十分に可能である。
殺傷力が0なため3つで1セット扱いで支給された。

【サッカーボール@パワポケ1】
極々普通のサッカーボール。
強いて普通と違うところを挙げるなら、盗難防止用に『極亜久高校サッカー部』と書かれていることか。

【火炎ブースター@パワポケ10裏サクセス】
炎の武器の威力が上がるブースター。
時限爆弾に組み込めば、時限爆弾が殺傷力を帯びる可能性もある。

【スペツナズ・ナイフ@現実】
パロロワお馴染みのギミックアイテム。
鍔の位置に配置されたレバーを押すことで刀身を前方に10mほど飛ばすことができる便利なナイフ。
ただしスプリングが強力すぎるため再装填はほぼ不可能。
使い捨て遠距離攻撃アイテムとして3本セットで越後に支給された。

【ガムテープ@現実】
拘束にも使える、意外と便利な日用品。

【よくとぶバット】
力の弱い者でもこのバットを扱うときだけは筋力が若干上昇するため振いやすいバット。
本人の意識する以上の力がこもるため、バットの割に殺傷能力が高いが、手加減が行いづらい一面もある。
現在は越後の死体が握っている。

18勇気VS意地 ◆wKs3a28q6Q:2008/07/12(土) 08:02:49 ID:RvfoAv7c





 ☆  ★  ☆  ★  ☆





痛い。ドクドクと血が流れている。
ヒリヒリと痛んでいたはずの喉に、今はもう何の痛みも感じない。
(やれたれだぜ……まさか刃の部分が飛ぶなんてな……)
自分は死ぬ。何となく、その事が理解できていた。
欠陥品だったのか、刃物の部分が飛び出したナイフで、自分はこの世からいなくなるのだ。
「キャ……テン……み…………な…………」
怖くないと言えば嘘になる。むしろ怖い。すっごく怖い。
それにまだ死にたくない。こんな所で惨めに死んでいきたくなどない。
自分には未来がある。自分には夢がある。
ようやく念願の天道打倒を果たして甲子園に行けたというのに。
甲子園で初めての勝利を掴んで、おかしな名前の学校との戦いに挑もうとしていたのに。
「甲、子園……が……ば……れ……」
悔しかった。自分が全国でどこまで通じるのか分からないまま死ぬというのは。
グラウンドの上でなく、どこか分からぬ場所で夢の舞台から降りるというのは。
みんなと一緒に夢を叶えられないのが。みんなが夢を叶える所を見ることすら叶わないのは。
それでも、殺し合いなんてものと無縁で練習しているであろうチームメイトは恨まなかった。
八つ当たりしようなどとは思わなかった。
心の底から、みんなの勝利を願っている。だって――

『何故、あの時ピエロを殴り殺さなかったんだろう』
ふと、今わの際にそんな事を考えた。
FOOLドライブで倒れた際に、追い討ちをかけるようにバットで殴り続けていれば、自分が死ぬことはなかったのに。
殺されそうになったのだから、攻撃してもそれほど悪いことじゃないというのに。
(……やれやれだぜ。そりゃあ、殴れないに決まってるだろ)
自分の頭に浮かんだ言葉を嘲るように目を細める。
我ながら馬鹿馬鹿しい事を考えたものだ。
“バットは、人を殴るための道具じゃない”
そんなこと、小学生でも分かる事だというのに。
そうだ、出来っこないんだ。バットに血を吸わせるなんてことは、絶対に。
こんな状況だろうと、野球の道具をそんな風に使うわけにはいかない。だって――

「バカだなあ、越後」
キャプテンの顔が、瞼の裏に蘇る。何だかんだでチームを纏める才能と野球の才能を併せ持った良いライバルだった。
彼だけじゃない。よく一緒に練習をした田島、ムード−メーカーの荷田、流し打ちを得意とした官取、パワー自慢の岩田……
生意気だった疋田もあまり交流の無かった真薄も、みんなみんないい仲間だった。
そんな彼らが、こっちを見て笑っている。
ある者は呆れ果てたように。ある者は苦笑いといったように。そしてまたある者は冗談めかした嘲笑のように。
みんながみんな、口を揃えて言ってきた。
「ったく、本当にバカだなぁお前は」
ああ、そうだな。折角の大舞台の最中で抜けちまう俺は大バカ野郎だ。
でもさ、みんなだってきっと、殺し合いに巻き込まれたら俺と同じ事をしたと思うぜ。
バットなんて配られた日には、絶対に殺しなんかできないはずだ。
「やれやれだぜ」
だからこれは仕方のない事なのだ。殺し合いに巻き込まれた段階で、遅かれ早かれこうなっていたのだ。
バットで人を殴らなかったことを、俺は微塵も後悔してない。
ヘルガさんを逃がした事だって、後悔なんてしていないぜ。少ししか一緒にいなかったけど、ヘルガさんは俺の仲間だったからな。
ああ、そうさ。後悔なんて何もない。
野球が好きな仲間を守って、野球の道具で人を傷つけないまま死ぬ。素晴らしい事だと心から思うぜ。だって――



――だって俺は、根っからの野球バカなんだからな。



【越後竜太郎@パワプロクンポケット10  死亡】

19勇気VS意地 ◆wKs3a28q6Q:2008/07/12(土) 08:04:38 ID:RvfoAv7c
以上です
「越後がチート」「時限爆弾の数がチート」「ピエロがチート」「スペツナズ・ナイフがt(ry」など、パワーバランスに関するツッコミは大歓迎です
ていうか本スレにいきなり投下しておいてなんですが、バランス的にこの支給品でOKですかね?

20名無しさん:2008/07/12(土) 08:06:37 ID:Zj1OkAA2
GJ! 支給品はいいと思いますよ、いわゆるマーダー補正ってやつもありますし
それに越後については「まあ越後だしwww」で済ませれますしねwww

じゃあ代理投下してきます

21名無しさん:2008/07/12(土) 08:17:48 ID:RvfoAv7c
代理投下ありがとうございます
越後の最期の言葉は「――だって俺は、根っからの野球バカなんだからな。」にしたいんだけどいいですかね?
「」使ってない地の文ですけど
わがままでサーセン

22名無しさん:2008/07/12(土) 08:20:10 ID:RvfoAv7c
あんまこっち俺ばっか使うのあれだけど、最後に一言だけ
むしろ行数に収まらないネタですんませんでした
途中分割は気にしてませんのでご心配なく

23名無しさん:2008/07/12(土) 08:23:03 ID:Zj1OkAA2
了解しました
後、2ちゃんねるの行数って何行かわかりますか?
出来るならしたらばもそれに合わせた方が良いかなーって思ったんですけど

24名無しさん:2008/07/12(土) 15:53:05 ID:Kb7MCRpM
ゲサロは48行
専ブラ使えば分かることだが

25管理人★:2008/07/12(土) 16:15:35 ID:???
>>24
自分で調べると言う事を怠り申し訳ありません……orz
48行にしてみました

26 ◆orjFHdr7.c:2008/07/13(日) 16:12:44 ID:C/0YF9Ng
「先輩大丈夫かな・・・?」
まず一番最初に思った事。 それはやはり彼の安否。
多分彼なら大丈夫だと思ってもやはり心配。
「とりあえず早く行きましょう。 先輩のところへと・・・」
そう決心していると、倉見が何かに気づく。
後ろを振り向く倉見。 しかし誰もいない。
「ハハ・・・さすがに気のせいだよね・・・」
歩き始める倉見。 それでもさっきと同じ感覚が・・・
「絶対にいないよね!」
絶対にいないと信じ無視して前だけを見つめ、歩いていく。
「さっきデイパックの中身を確認しておけばよかったな・・・ 今座るのもめんどくさいし、誰かに追われてるような感覚だし・・・ う〜ん。 どう『む〜〜〜〜〜ん』 ん?」
声が後ろから聞こえる。 あわてて後ろを振り向くと、黄色いフード見たいのを着けている変な男がいた。
「む〜〜〜〜〜ん。 ぜんぜん気がつかないんだな〜。」
「(なにこの人・・・?)」
「む〜〜〜〜〜ん 弟たちがいないと調子狂うんだな〜。」
無視して歩き始める倉見。 それをしつこくついてくる男、荒井金男。
「ちょっとついて来ないで下さい!」
「む〜〜〜〜〜ん 何でなんだな〜?」
「あなたと関わりたくないんです。 だから来ないで下さい!」
「む〜〜〜〜〜ん どうせそう言って遠くから撃つつもりなんだな〜。 だからついてくるんだな〜。」
「そんなこと絶対にしませんよ! だからついて来ないで下さい!」
「む〜〜〜〜〜ん 信用できないんだな〜。」
「誰か・・・助けてよ!」
パーン!
都合よく銃弾の音が聞こえる。 そして、目の前の男が苦しんでいる。
「誰が・・・やったんだな・・・」
その男は倒れる。 それに伴いそれを撃ったであろう人が現れる。

27 ◆orjFHdr7.c:2008/07/13(日) 16:13:19 ID:C/0YF9Ng
「大丈夫だったかい、君?」
倉見は驚いた。 なぜなら・・・
「先輩! 先輩だよね!」
そう。 撃った本人は七味東雅だったのだ。
「先輩! 会いたかったよ!」
いきなり抱きつく倉見。 だがしかし、
「あなた・・・誰ですか・・・?」
「・・・え・・・」
倉見にとって信じられない言葉が出た。
「俺は七味東雅っていうプロ野球選手だよ。 知らないかい?」
どうやら話を聞くと彼は甲子園決勝で優勝し、ドラフトで選ばれてプロ野球選手になったらしい。
彼はプロ二年目。 まだ新人だが外野のレギュラーとして活躍しているらしい。
花丸高校出身らしいが、肝心の春香に関する記憶がないと言うことだ。
「(記憶喪失なのかな・・・?) なら思い出させるまで!)ねえ、あなたのこと「先輩」って呼んでいい?」
「ずいぶんと懐かしいものを・・・。 まあ、構わないが。」
「後・・・そこの男の人は先輩が殺したの?」
「いや・・・殺してはいない。 ただ眠らしただけだ。」
先輩は麻酔銃で撃ったのでそこの男は大丈夫だと言った。
私はその男の人が起きないようにこっそりとデイパックを奪っていった。
「また危ないことに巻き込まれそうだから俺について来い! 何とかしてみせる!」
「はい!」
私は彼についていく事にした。
私は絶対に彼の記憶を取り戻して、このゲームを脱出するんだから!

28 ◆orjFHdr7.c:2008/07/13(日) 16:13:52 ID:C/0YF9Ng
【B-2/森/1日目/深夜】
【倉見春香@パワプロクンポケット7表】
[状態]:健康
[装備]:なし
[参戦時期]:アルバム「午後のひととき」後
[道具]:支給品一式x2、ランダム支給品2〜6個
[思考]
1 先輩(七味)についていく
2 七味の記憶を取り戻す。

【七味東雅@パワプロクンポケット7表】
[状態]:健康
[装備]:麻酔銃@現実(一発消費)
[参戦時期]:ドラフト指名後プロ入団2年目の時期
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0〜2個
[思考]
1 とりあえず倉見を守る。
2 ゲームに乗らない人物を守る。 そして一緒に協力する。

【荒井金男@パワプロクンポケット9裏】
[状態]:睡眠中
[装備]:なし
[参戦時期]:9裏主人公の戦艦に最初に乗り込んできた後
[道具]:なし
[思考]
1 (睡眠中)
2 弟たちを探す。

[備考]
※七味東雅の高校時代は彼女とも付き合わずまじめに野球一筋でした。
※七味東雅は記憶喪失ではありません。 2年前のことなので倉見の事を覚えていないだけです。(生徒会くらいのときしか面識がないため)

29 ◆orjFHdr7.c:2008/07/13(日) 16:17:32 ID:C/0YF9Ng
仮投下してました。
規制リストに追加されたので

なのでトリップかえるかもしれません。

あと矛盾点や変更しろよ!とかあったら言ってください。

PS:延命→運命 に変更です。

30 ◆7DOBbsTUNE:2008/07/13(日) 21:02:18 ID:IxLNgr8g

「お座り!」

「ワン!」

「お手!」

「ワン!
…ってタツヤさん
何をやらせるんだワン!」

「はははごめんごめん」

このお兄さんは上川辰也さん
この殺し合いに乗っていないらしい。
拳銃をつきつけたりしたのはアタシが殺し合いに乗って無いか確認したかったからだと説明してくれた。

「ところでわん子ちゃん支給品の確認をしたかい?」

「まだワン」

「なら確認した方がいいんじゃないか?」

「じゃあ、かくにんするワン」

アタシはデイパックの中を見た中から出て来たのは…
赤、青、黄、黒、ピンク、シルバー、茶色、緑、紫、オレンジ色といった様々の色のヒーローの服だった。

「これはヒーローの…」

「…服だワン」

「他には何か無いか?」

「ほかには食料とコンパスと地図と紙と鉛筆とランタンと…黒い板が入ってるワン」

「そうか」
少しの何か考える様な仕草をしたと思うとタツヤさんはこんな事を言い出した。

「それじゃあ一つ提案が有るんだかそのヒーローのスカーフを仲間の目印として使わないか?」
いい提案だと思ったので素直に従う。

「なかまのめじるし?わかったワン!」

31 ◆7DOBbsTUNE:2008/07/13(日) 21:05:24 ID:IxLNgr8g
そんな訳でアタシとタツヤさんは沢山あるヒーローの服の中からスカーフを全て回収し自分の首に付けたのだった。
余った分のスカーフはアタシとタツヤさんとで半分に分ける。


「じゃあ行こうかわん子ちゃん」
そう言ってタツヤさんは歩き出した。
「どこに行くワン?」
タツヤさんが行こうとしている先には怪しくそびえる建物見えていた。
「あそこに建物が見えるだろう?
まずは何か無いか調べに行くのさ
わん子ちゃんはどうする?」

「アタシは…走太君をさがしに行きたいワン」


「探しに行きたい気持ちは分かるが今はオレについてきて欲しい
後でその走太君を一緒に探してあげるからさ」

「ほんとう?ありがとうワン!」

 ▼ ▼ ▼

32 ◆7DOBbsTUNE:2008/07/13(日) 21:07:35 ID:IxLNgr8g
なんとか丸め込めて辰也は安心していた。
これでわん子と一緒に行動出来る。
わん子と一緒に行動するメリットはいくつかある。

メリットその一
わざわざ足手まといになるであろう子供を連れている事で相手の警戒心を薄れさせる事が出来る。
殺し合いに乗っていないと言う証明にも使えるであろう。

メリットその二
わん子の知り合いを楽に仲間に引き入れる事が出来る。

メリットその三
勝てない相手と戦う時に捨て駒に出来る。

生き残りたいと殺し合いをしている奴も入れば亀田の願いを叶えてやると言う甘言に乗せられて殺し合いをしている奴もいるだろう。
そう言う馬鹿な連中からも身を守らなければならない。

(まあルナストーンの事で騙されて居なければオレも乗っていたかもな。)

かつての自分を思い出す。
ルナストーンを全部集めれば人間にしてくれる。
そんな甘言に乗せられて美空にレッドローズをやらせルナストーンを集めた。
人間なれると喜んでそれを持っていったオレだが…それはCCRの…大神の罠だった。
そしてオレは今この殺し合いに参加させられている。
わざわざルナストーンの時と同じ結末に進んでやる必要は無い。
優勝しても結局主催者に殺されるだけに決まっている。

だからオレは主催者を頼らず、同じく参加させられている者達の力で脱出する事を決意した。
その決意を実現するには例え小さな子供でも利用しなければならないだろう。

だからわん子には付いてきて貰わなければならない。

33 ◆7DOBbsTUNE:2008/07/13(日) 21:09:52 ID:IxLNgr8g

もしついて来ない場合催眠暗示のを使おうと思ったが使う必要が無くなり本当に良かった。

さっき催眠暗示を使って時に妙に疲れを感じた。
何か亀田達にいじられたのだろうか。
まだやるべき事は始まったばかり。
出来るだけ使うのは控えたいところだ。

それとサイボーグ同盟の連中とは合流したいところだ。
大神の研究所を脱走する時にあいつらは役にたった。
喧嘩別れをしたとはいえ、こんな状況だ。
きっと協力してくれるだろう。

亀田め…お前らの思い通りにはならないぞ
絶対に首輪をする方法を見付けて解除してやる。

「それじゃあの建物に行こうか?」

「はいワン!」

二人は歩き出す。
この惨劇から抜け出す為に。

34 ◆7DOBbsTUNE:2008/07/13(日) 21:11:31 ID:IxLNgr8g
【A-3/森の中/1日目/深夜】
【上川 辰也@パワプロクンポケット8】
[状態]:疲労小、走力+5
[装備]: 走力5@パワポケ3、ヒーローのスカーフ@パワポケ7、拳銃(麻酔弾)予備カートリッジ×3@パワポケ8
[参戦時期]美空生存ルート、ルナストーン引き渡し後 
[道具]:支給品一式、レッドローズの衣装@パワポケ8、ヒーローのスカーフ四個@パワポケ7
[思考・状況]
基本:殺し合いからの脱出
1:近くにある建物(研究所)を調査する。
2:仲間を集める。
3:サイボーグ同盟の連中と合流したい。
備考
4:首輪を詳しく調べたい。
黒幕に大神がいると可能性があると考えています。

首輪の考察をしました。
考察した内容は以下の通りです。
1首輪には爆発物が仕掛けられている。
2首輪には位置情報を送信する機能ある。
3移動した位置が禁止エリアなら爆破の為の電波を流され爆発する。
4盗聴機能や小型カメラが首輪に仕掛けてあると予想しました。

現在カメラ対策としてスカーフを首に巻いています。
考察の内容が当たっているかは不明です。

わん子からパワポケダッシュの登場人物に付いての知識を得ました。
わん子の事をオオカミつきだと考えています。

35 ◆7DOBbsTUNE:2008/07/13(日) 21:14:14 ID:IxLNgr8g
ヒゲの神様(野球仙人)の事を記憶を操作する能力を持っている人間だと予想しました。

【芽森 わん子@パワポケダッシュ】
[状態]:健康、仲間が出来て嬉しい。
[装備]:ヒーローのスカーフ@パワポケ7
[参戦時期]:卒業直後
[道具]:支給品一式、ヒーローの衣装セット@パワポケ7、ヒーローのスカーフ四個@パワポケ7
[思考・状況]
基本:殺し合いから脱出する
1:タツヤさんに付いてく。
2:走太君を探したい。

備考
ヒーローの服衣装セットの内容はレッド ブルー イエロー ブラック ピンク シルバー ブラウン グリーン パープル オレンジの衣装です。
スカーフだけ回収され辰也とわん子の二人で半分ずつ所持しています。

36 ◆7DOBbsTUNE:2008/07/13(日) 21:16:46 ID:IxLNgr8g
【ヒーローの衣装セット@パワプロクンポケット7】
パワポケ7でお馴染のヒーロー達の衣装。
着ればヒーロー気分を体験出来るぞ!。
気分だけで強くはならない。
ちなみにレッド ブルー イエロー ブラック ピンク シルバー ブラウン グリーン パープル オレンジの衣装が入っている。
【ヒーローのスカーフ@パワプロクンポケット7】
ヒーローの衣装セットからスカーフだけを取り出した物。

【走力5@パワプロクンポケット3】
サイボーグ専用装備。
走る力がアップするぞ!。
パワプロクンポケット8のサイボーグ達からすれば古いパーツだが使えない事は無い。

【拳銃(麻酔弾)@パワプロクンポケット8】
主人公が本編で使っていた愛用品。
普通の弾や強化弾も使用可能。麻酔弾は二年目のサイボーグ検査の前に使用された。
ちなみに麻酔弾はチームメイトに撃った。

【レッドローズの衣装@パワプロクンポケット8】
小さなお子様と大きなお友達が大好きレッドローズの衣装。
警察には嫌われている。
変装には使えるかもしれない。
満月の夜、美空が装備すると…?

37 ◆7DOBbsTUNE:2008/07/13(日) 21:22:18 ID:IxLNgr8g
【黒い板@???】
第一放送と同時に文字が浮かぶ板。
浮かび上がるのは…?

38 ◆7DOBbsTUNE:2008/07/13(日) 21:23:36 ID:IxLNgr8g
以上です。
誰か代理投稿頼む。

39名無しさん:2008/07/13(日) 21:33:01 ID:Yk7jMMkI
代理投下しておきました

40 ◆7DOBbsTUNE:2008/07/13(日) 22:21:35 ID:IxLNgr8g
代理投稿ありがとうございました!
…一度読み直してわん子の参戦時期にわん子ルートである事を入れるの忘れてたのと、辰也の能力は能力を使う時に制限のせいで疲労する事を書き忘れてたって事をこの場で報告しときます。

それと返信ちょっと遅くなってごめんね

41 ◆IvIoGk3xD6:2008/07/13(日) 22:36:45 ID:4R0W3oVQ
まだ規制が解けないのでこちらに投下します
誰かに代理投下していただけると幸いです

42時間の歪み ◆IvIoGk3xD6:2008/07/13(日) 22:38:13 ID:4R0W3oVQ
秘密組織CCRのエージェントである八神総八郎は一人、遊園地のベンチで佇んでいた。
だが、ただ時間を無為に過ごしている訳ではない。
彼は今までの経験を元に、今回の事件のことを考えているのだ。
亀田とは?我威亜党とは?その目的は?
しかし、今の段階では何一つ分からない。得られた情報があまりにも少ないからだ。
分かったことといえば、彼がとんでもない科学力を持つと同時に、
子供にも平気で手を下すような残忍な人間であるということぐらいである。
だが、そんな中で八神はある言葉が気になった。

『時空の覇者』

亀田が名乗ったこの言葉はどういう意味なのだろうか。
文字通りにとらえるならば、時空、つまり時間と空間の覇者ということになる。
空間というのはおおよその見当がつく。
先ほど自分が経験したワープのことなのだろう。これが能力の総てなのか、
その一端に過ぎないのかまでは分からないが。
では、時間とは何なのだろうか?
そのことを考え始めた時だった、八神の思考は不意に掛けられた声によって中断させられてしまう。

43時間の歪み ◆IvIoGk3xD6:2008/07/13(日) 22:39:50 ID:4R0W3oVQ
「十波やないか!」
それは八神にとって聞き覚えの無い声と名前であった。
そして、声の主はどうやら女性らしい。
「いや〜、まさかこんな所で十波に会うとは思っても無かったわ。
 それにしても、お互いついてないな!」

どうやら彼女は人違いをしているようだ。
考えに没頭する余り、周りに注意を払ってなかったことを反省しながら、
そのことに気付いた八神は即座に彼女の間違いを正す。
「ゴメン、人違い何だ。俺は八神っていって、君の知り合いの十波君じゃないよ」
「まったく、甲子園も迫ってるっちゅうのにアンタも大変やな!って、えぇー!?嘘やろ!?」
そこで初めて自分の間違いに気付いた女性ムム大江和那はマジマジと八神のことを観察しだし、すぐに結論を出した。
「すまん!クラスメイトに似てたもんやからついな。アンタの方が全然大人や。
 いや〜、似てる人っているもんやね。ハハハ」
そう言いながら大江は徐々に八神から遠ざかって行くが……

「待て、どこへ行く気だ?」
すぐに呼び止められた。
「べ、別にどこも行く気なんてあらへんよ?まさか、人違いしていたたまれないし、
 知らん人と一緒におるのも不安やから、ここから離れたいな〜なんて微塵も思ってませんよ?」
「なるほど、そういうことか。けど安心してくれ。
 俺は君に危害を加えるつもりは無いよ。こう見えてもプロ野球選手だしね」
八神は優しく、そして諭すように大江に語りかける。

44時間の歪み ◆IvIoGk3xD6:2008/07/13(日) 22:41:15 ID:4R0W3oVQ
「まあ、アンタが本当の危険人物やったら声かけた瞬間に殺されとるわな」
大江は八神のことを信用したのか、後ずさりするのを止める。
また、それを見ると、八神の方は大江に向かって歩を進め、おもむろに手を差し出した。
「さっきも言ったけど、俺は八神総八郎。ホッパーズで投手をやってる。よろしく」
「八神さんか。さっきはすみませんでした。ウチは大江和那っていいます。こちらこそよろしくな」
大江も一瞬躊躇したが、差し出された手を固く握った。




お互い殺し合いに乗る気は無いと分かったので、現在は二人で病院を目指している。
遊園地から近いということもあったし、うまくいけば医療道具も手に入るかもしれないからだ。

その道中にあって、親交を深めるためか、二人は互いの境遇について話し合っていた。
「それで、八神さんのチームは解散を免れた訳ですね。世間ではそんなことが起こっとった何て知らんかったわ。
 ウチの学校、全寮制で校則が厳しいさかい、外の情報があんまり入って来ないんよ」
「そうみたいだね。結構大きくニュースで取り上げられてはずだから。
 それにしても、まさか日本シリーズの前にこんな事に巻き込まれるなんて……。ついてないよなぁ」
八神はつい愚痴をこぼしてしまったが、それも仕方のないことだろう。
彼はこの半年を日本一になるために懸けてきたのだから。
「まぁ、頑張って生きて帰りましょうよ」
大江も八神の落胆に気を揉んだのか、励ましの声を掛ける。
「そうだな、日本一になるためにも一刻も早く亀田を倒さないとな」
八神は力強く答えた。
「その意気ですよ!微力ながらウチも手伝いますから」
「ありがとう、言葉だけでもうれしいよ」

45時間の歪み ◆IvIoGk3xD6:2008/07/13(日) 22:42:43 ID:4R0W3oVQ
八神の話が一段落したので、今度は大江が話す番となった。
ちなみに、八神はCCRのことを大江には話していない。
公になってないということもあるが、CCRの実態は大神グループの非合法武装組織なのである。
このことを知ってしまうと、大江が危険な目に遇う可能性があるかもしれないと考えたからだ。
「でな、その自治会長やっとるダチがしょーもない規則を大量に作るんよ。例えばな――」
大江の話はいかにも普通の女子高生の話でしかなかった。
そのような者までをもこのような場に巻き込んだ亀田に対して、八神は改めて憤りを感じる。

「そんなとこでウチの話は終いや。何か質問とかあります?」
「う〜ん、今更って気がするかもしれないけど、最初に俺を誰かと間違えたじゃないか、その人のことがちょっと興味があるかな」
それは単純な好奇心だった。だが、これが後の大きな発見に繋がることとなる。
「あ〜、十波のことやね。そいつは、まぁ、何というか、その、ウチの大事な人やねん。
 そいつはプロ野球選手になることを夢みとってな、なんと今年甲子園に出場することになったんや」
「えっ、なった?」
「そう、なったんや。確か来週から始まるはずやったと思うで」
これには八神は疑問を感じずにはいられなかった。
八神にとって、今は日本シリーズの前、つまり十月の下旬であり、まかり間違っても甲子園の季節ではない。
不意に八神は大江と会う前に考えていたことを思い出す。
頭の中で何かがカチリと噛み合った。

46時間の歪み ◆IvIoGk3xD6:2008/07/13(日) 22:44:57 ID:4R0W3oVQ

そのことを確かめるためにも、ある事を大江に尋ねる。
「大江さん、バカバカしいと思うかもしれないけど、今から聞くことに正直に答えて欲しい。
 今日は何年何月の何日だ?」
大江は一瞬呆気にとられたが八神の真剣さに気付き、偽り無く答える。
「今日は確かXX年の8月2日やな」

疑惑が確信に変わった。

八神の視界がグラリと揺れた気がした。
「……まさか年まで違うなんて。大江さん、“俺にとって”今日はYY年の10月21日なんだ」
「えっ、どういうことですか?」
大江が不思議そうな顔で八神を見つめる。
「とりあえず、俺の考えを聞いて欲しい。話しはそれからだ」
そして、八神は自分の考察を話し始めた。

亀田には時間に干渉できる能力、または装置がある。
大まかに言ってしまえばこれが八神の考察の内容だった。

「……、八神さん、冗談きついわ」
「冗談みたいな話しだが、真実だ。俺は嘘は言っていないし、大江さんのことを信じている。
 だけど、一つしかないはずの今日が二つある矛盾。そして、亀田の『時空の覇者』発言。
 これらを考えるとこの結論がでちゃうんだ。まぁ、あくまで可能性の話にしか過ぎないんだけどね」

そう、あくまでこれは考察でしかない。
大江が嘘を言っている可能性が無いわけではないし、
もしかしたら自分が暗示にかかっているのかもしれない。
それに、亀田の時空の覇者発言だってそうだ。あくまで自称に過ぎないのだ。
だが、八神はこれは真実だと思っていた。
亀田が自己顕示欲が強いことは火を見るより明らかであり、そんな男が偽りの自称を用いるであろうか?
何かしらの要素があったからこそ、その自称を用いたのだろう。
だからこそ、八神は亀田の発言に偽りはないと判断したのだ。

47時間の歪み ◆IvIoGk3xD6:2008/07/13(日) 22:45:52 ID:4R0W3oVQ
「タイムマシンか……。そんなもん持っとる奴に勝てるんかな、ウチら?」
大江が不安そうに嘆く。
「勝てるさ!あいつは『時空の覇者』なだけで『全知全能の神』じゃない。
 俺達にも突き崩せる部分があるはずだ!」
八神は自分にも言い聞かせる様に力強く答えた。

ゲーム開始から約2時間、二人のバトルロワイヤルはまだ始まったばかり。

【G-8、遊園地内/一日目/深夜】
【八神総八郎@パワプロクンポケット8表】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式(不明支給品1〜3)
[思考]
基本:バトルロワイヤルを止める
1:大江と共に病院を目指す
2:仲間を集めるor首輪を外す
3:亀田についての情報が欲しい

【大江和那@パワプロクンポケット10表】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式(不明支給品1〜3)
[思考]
基本:バトルロワイヤルを止める
1:八神と共に病院を目指す
2:仲間を集めるor首輪を外す
3:知り合いがいたら助けたい

48 ◆IvIoGk3xD6:2008/07/13(日) 22:48:25 ID:4R0W3oVQ
以上で投下終了です
何か矛盾や誤字があればよろしくです
あと、自分は参加枠の追加は構いません

49名無しさん:2008/07/13(日) 22:49:08 ID:Yk7jMMkI
それでは代理投下行って来ます

50名無しさん:2008/07/13(日) 22:56:29 ID:Yk7jMMkI
代理投下完了しました

51 ◆IvIoGk3xD6:2008/07/13(日) 23:13:29 ID:4R0W3oVQ
代理投下ありがとうございました
毎度ご迷惑をかけてすいません

52 ◆IvIoGk3xD6:2008/07/25(金) 02:28:01 ID:v5p77ebE0
【塚本甚八@パワプロクンポケット5 死亡】

【E-3/一日目/深夜】
【白瀬芙喜子@パワプロクンポケット8表】
[状態]健康
[装備]ベレッタM92(13/15)
[道具]支給品一式(不明支給品0〜2)、予備弾倉×5、さおりちゃん人形@パワポケ6裏、フライパン、ケチャップ(残り1/4程度)
[思考]
基本:優勝する
1:戦力増強のため弱者から倒す、強者は後回し
2:二人の片割れを探す

53 ◆IvIoGk3xD6:2008/07/25(金) 02:29:46 ID:v5p77ebE0
書き込めなくなったのでこちらに投下しておきますね
タイトルは、野丸太郎は『普通』に過ごしたい、です
矛盾、指摘があったらお願いします

54名無しさん:2008/07/25(金) 06:44:02 ID:Q.ndNSgA0
代理投下行ってきます

55野球しようよ ◆wKs3a28q6Q:2008/08/02(土) 13:26:06 ID:0o7VDxxw0
「……さて、どうするかな」
はっきり言って、応急処置をしたとはいえこのままだとそう長くは持たないだろう。
表面を薄く切られただけとはいえ、腹部にだって傷があるのだ。
死因にはならずとも、戦闘にはそれなりに支障が出るだろう。
空気に触れたら普通に痛いし、感染症の恐れもある。
どちらの怪我も、きちんとした治療を施した方がいいだろう。
喪失した腕の復活まで望んでいるわけではないが、最低でも止血と栄養補給をしたい。
診療所か病院ならば正しい止血の仕方の乗った本が置いてあるかもしれない。
上手くいけば、点滴や輸血パックも手に入るかもしれない。
このどちらかを目指す必要があるだろう。

では、どちらを目指そうか?
距離でいうなら病院の方を目指すべきだ。
洋服で縛っただけの簡素な止血では血を完全には止めれていないし、一秒でも早く治療に入るべきである。
だが、病院に向かうと三橋と遭遇する可能性が少なからず存在する。
どちらに行ったかまでは分からないが、恐らく再び橋を超えることはしていないはずだ。
橋を渡ったのだとしたら、腕からしか出血してない自分に気付かないのは不自然。
自分の死体には目もくれず、さっさと目的地に向かったとみていいだろう。
その目的地が病院だった場合は最悪だ。
奴の目的地が病院じゃなかったとしても、病院に行くまでに再び出会ってしまったら今度こそ生き延びれないだろう。
今三橋と遭遇するのは何としても避けるべきだ。

その点、診療所は安心できる。
三橋は診療所がある橋の向こうから、診療所を目指すには遠回りになるこの橋までやってきた。
目的地が診療所である可能性は皆無である。
三橋と遭遇しないというのはかなり大きい。
だが、診療所に行くまでに駄菓子屋や倉庫といった建物の通過を余儀なくされる。
物資のある建物には人が集まりやすいだろうし、誰にも会わないという事はまずないだろう。
仲間は欲しいが、戦闘は避けたい。

どちらもメリット・デメリットがある。
それを承知したうえで、どちらか片方を選ばないといけない。
「よし、決めた。俺が向かうのは――」

56野球しようよ ◆wKs3a28q6Q:2008/08/02(土) 13:27:50 ID:0o7VDxxw0
【G-5/橋の上/一日目/黎明】
【萩原新六@パワプロクンポケット6】
[状態]:左腕欠損、腹部に軽度の切り傷
[装備]:なし
[道具]:支給品一式 、野球用具一式(バット8本、ボール7球、グローブ8つ)@現実、野球超人伝@パワプロクンポケットシリーズ、パワビタD@パワプロクンポケットシリーズ、自身の左腕
[思考・状況]
1:どこかでしっかり手当をしたい。出来れば仲間も見つけたい。
2:野球超人伝を後でじっくりと読みたい。
3:元の世界に戻って犯人を捕まえる。

[備考]
グローブがひとつアルベルトの手についたままです。
折れたバットとボールが各1つずつ橋の東側に落ちています。
アルベルトの暴投したボールがG-05のどこかに落ちています。


【アルベルト・安生・アズナブル@パワプロクンポケット10 死亡】
【残り 50人】

57名無しさん:2008/08/02(土) 13:29:04 ID:0o7VDxxw0
規制がきたのでこちらに投下しました
投下は以上です
ご指摘ありましたらお願いします

58名無しさん:2008/08/02(土) 13:53:50 ID:hOI2m9Z60
代理させていただきます

59名無しさん:2008/08/02(土) 14:20:46 ID:0o7VDxxw0
代理投下ありがとうございました

604人の思いよ ホテルに集結 修正版 ◆orjFHdr7.c:2008/08/03(日) 08:11:26 ID:B1UrKmlE0
もうすでに日本刀が出ていたようなのでサーベルに変更します。

【芹沢真央@パワプロクンポケット7表】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、サーベル@パワプロクンポケット7裏、回復薬×3@パワプロクンポケット7裏、ミラクルスパイス1ビン@パワプロクンポケット10裏
[思考・状況]
基本:弱きを守り悪を挫く『正義の味方』を貫く
1:人を守る
2:病院を目指す

【サーベル@パワプロクンポケット7裏】
攻撃力3、命中率65というパワプロクンポケット7裏のアイテム。
白兵青野が使っている武器。

ちょっといま猿さんが出ているのでかけませんでした。

61 ◆IvIoGk3xD6:2008/08/08(金) 00:37:42 ID:ipDS3X9Y0
さるさん規制に引っ掛かったのでこちらで投下終了宣言しておきます
問題点がありましたらお知らせ下さい
タイトルは鋼パートが、電話が鳴ってすぐにでる〜狂気の鋼毅
浜野パートが、匿名リサーチ
でお願いします

62 ◆7WJp/yel/Y:2008/08/09(土) 13:43:53 ID:bKMeWYlo0
少々問題があると自分でも感じる部分があるので一先ず仮投下させていただきます

63Masquerade  ◆7WJp/yel/Y:2008/08/09(土) 13:44:27 ID:bKMeWYlo0
リンはわずかな凹凸を描く草原の中、身を低くして探知機を眺めていた。
エンジン音は聞こえない、探知機もリンの後方には反応を示さない。
ただし、新しく南東から向かってきている反応が一つ。
人数はわからない、この探知機は一人にしか反応を示さないからだ。
一難去ってまた一難。
車で突っ込んできた下手人から逃げ切ったのはいいが、新たな火種が来たようだ。
気配を殺して辺りを窺う。
隠れる場所は岩によって若干の起伏がある程度。
後は崖が遠くに見えるぐらいだが、さすがにあそこに隠れるところがあるとは思えない。
リンは近くにある凹凸の陰に身を隠して近づいてくる人影を待つ。
穴の中から覗き込むように顔を出すと、そこに近づいてきていたのは幼い少女だった。
緑色の髪とつむじから生えた一本の長い髪の毛。
小柄な身体に見慣れない洋装のぶかぶかの服を着ているがそれは間違いなく――。

「茜!?」

ビクリ、とその小さな体が震える。
茜は恐る恐るといった感じで振り返る。
その表情には戸惑いと焦りが見える。

「……」

間違いなく茜だ。
リンの最悪の予想通り、高坂茜はこの殺し合いに参加させられていたのだ。
見る限り怪我もない、襲われる前に見つけることが出来たのは不幸中の幸いだ。
しかし、ここからが問題だ。
この殺し合いからの脱出は非常に厳しい。
首輪はもちろん現在地も把握されている。
この探知機は亀田側にも持っているはずだ、しかもこれよりも何倍も優れた探知機が。
百歩譲って首輪を外せても脱出手段はおろか隠れる手段すらない以上先にあるのは死だ。
ならばいっその事、殺し合いに乗ってしまうか?
もしも八神が上手くやって、『姉』と『恋人』が居なくても生活できるほど強くなっているとするならば。
その時は八神に死んでもらってでも茜を生還させる。
もちろん、それはあまりにも甘い考えだ。
八神が下手を打っていて以前よりも依存している状態なら、それは最悪の結果となる。
だが、今は茜の保護を最優先するべきだ。
リンは少しだけ頬を緩ませて、茜へと近寄る。

64Masquerade  ◆7WJp/yel/Y:2008/08/09(土) 13:45:03 ID:bKMeWYlo0

「……」
「茜……、っ!?」

近寄ろうとした瞬間、左の草むらから一つの影が飛び出る。
リンは強引な動きで横へと飛んで、その奇襲を回避して懐にある銃で牽制代わりに一発だけ撃つ。
そしてリンは次の瞬間に気付いた、それはとんでもない失敗だと。

「茜!」
「……!」
「動かないでください」

奇襲を仕掛けてきた影の正体は黒いマントを羽織った女だった。
薄い化粧のせいで具体的な年齢は判断しづらい。
若いようにも見えるし、それなりに歳を重ねているようにも見える。
その女は素早い動作で茜の後方を取って、白い首筋に無骨な刀を当てる。
銃弾は肩にわずかに掠ったようだが動くことには何の異常もない。

「お……」
「お静かに」

茜が口を開こうとすると刃を立てて首筋をわずかに斬りつける。
その動作には何の迷いもない。
恐らく茜は交渉のためのものに過ぎない、邪魔になればすぐさま切り捨てるだろう。
最悪の構図、この女は殺すことに何の躊躇いもない。
人質を見捨ててしまえば、目の前の女を殺せるかもしれない。
だがそれは駄目だ、リンの目的は八神と茜の生還なのだから。

「……」
「リン、本名も生年月日も生い立ちも全てが不明の裏の世界に生きる情報屋。
 腕前は確かで依頼に見合う報酬さえ支払えばどんな情報でも掴んでくる。
 ……間違いはありませんね?」
「……ええ、そうよ。どこかでお会いしたかしら?」

リンは目の前の女を見た事もない、こんな威圧感のある女を忘れようもない。
この女の目的が全く読めない。
いずれにせよ、向こうは交渉をするつもりなのだ。
リンがよっぽどのへまをしない限り茜が死ぬことはない。

65Masquerade  ◆7WJp/yel/Y:2008/08/09(土) 13:46:07 ID:bKMeWYlo0
「私は我威亜党の幹部の黒羽根あやか、いえ、あやか伯爵と申します」
「……!?」
「今回のゲームには皇帝陛下のジョーカーとして参加しておりますので、よろしくお願いします」
「ジョーカー……」

殺し合いにおける現場の管理人かと納得する。
この女は我威亜党の中でも荒事の専門なのだろう、先ほどの動きを見ても納得できる。

「私の仕事は殺し合いを円滑にすること、殺し合いに乗ったものには飴を与えて逆らうものには鞭を振るう。
 つまりはそういうことです」
「それで、そのジョーカーが何の用かしら」

ジョーカーと言う事は正確には参加者ではない。
亀田皇帝の見たいものが殺し合いだとするのなら、正式な参加者ではないこの女が直接手を下す可能性は低い。
……絶対に殺さない、というわけではないのが問題なのだが。

「貴女には二つの選択肢があります。
 一つは一日が経つまでに私の前に三つの首を持ってくること。
 一つは先の条件に逆らって妹さんと早々にゲームから脱落すること。
 どちらを選んで頂いても結構ですよ」
「……」

断れるわけがない。
あやかと言う女にとってはどちらでも良いのだ、殺し合いに逆らう人物はいらない。
頷く以外に、生き残る方法はない。

「……いいわ、乗ってあげるわよ」
「それはそれは。こちらとしても大変ありがたいことです。
 それでは五回目の放送が始まる頃に……そうですね、役場にでも来てください。
 別にそれまでに全員殺して妹さんを含めて最後の二人になっていても構いませんよ?」

リンは話をしながらも茜の様子を窺っていた。
恐怖をみせながらも錯乱せずに強がることが出来るのなら、『家族』への依存は脱したように見える。
……リンも八神も居なくても、生きていけるようだろう。
ならば、かろうじて手に入れることが出来た情報の整理だ。

1、『黒羽根あやか』というジョーカーが存在する。
2、我威亜党の幹部には『皇帝』や『伯爵』といった呼び名がある。
3、優勝するためにジョーカーを殺す必要はない。

……得た情報は僅かだが、最後の情報だけは有益。
あの女と共に居れば茜は安全と言うわけではない、だがそれでも一人よりは何倍もマシだろう。

「ああ、言い忘れていました。
 約束の時間に遅れてきた、もしくは三人の首がなかった場合ですが……」

リンがもう少し情報を聞き出すことは出来ないかと口を開こうとすると、あやかの言葉に遮られる。
そして、その言葉が言い終わると同時に大きく、しかし下品ではない程度に口を開いて――。

66Masquerade  ◆7WJp/yel/Y:2008/08/09(土) 13:46:37 ID:bKMeWYlo0

「なっ……!?」

茜の首に『歯』を立てた。
あやかの白い犬歯が茜の同じく白い首筋に食い込む。
喉を動かせば茜の体が若干波打つ。
茜の動作の一つ一つが確かに物語っている、この女は確かに茜の血を吸っていた。

「…ぅ……」

茜が小さく声を漏らす。
あやかが血を吸うと同時にマントの切れ端か見えていた傷が徐々に塞がっていく。
そのあまりにも現実離れしている姿にリンは思わず声をこぼしてしまう。

「化け物……」
「ふふ、そういうことです。いわゆる『吸血鬼』というものですよ。
 安心してください、別に血を吸ったからこの子も吸血鬼やグールになるというわけではないので」

吸血鬼。
ニンニクを嫌い、十字架を嫌い、聖水を嫌い、太陽を嫌い、聖書を嫌い、夜にしか活動が出来ない。
弱点だらけだが、確かな『化け物』だ。
この女は文字通り人間ではなかった。
そして、その女を飼いならす亀田皇帝とは一体何者なのか。

「ノルマをクリアしていない、もしくは遅れてくればこの子の血を一滴残らず平らげさしてもらいますので。
 私の経験から言うと辛そうでしたよ、血を吸い取られていった人たちは。
 ああ、肉は食べません。私も畜生道には堕ちたくないので」
「……約束は守るわ、その代わり茜を」
「守りますよ、下手な嘘は苦手ですので」

それだけを言うと、今度こそリンはそこを立ち去った。

67Masquerade  ◆7WJp/yel/Y:2008/08/09(土) 13:47:09 ID:bKMeWYlo0
【G−3/草原/1日目/早朝】
【リン@パワプロクンポケット8】
[参戦時期]:茜の前から姿を消した数年後、EDよりも前
[状態]:健康
[装備]:グロッグ19(12/15)
[道具]:劣化版探知機、支給品一式
[思考・状況]
基本:一先ずノルマの三人殺しはクリアしておく。
1:とりあえずこの場から逃げる
2:情報を集めたい
3:八神と茜は何としてでも生き残らせる
4:探知機が存在するのなら入手しておきたい
5:第五回放送の前に役場へと向かう

68Masquerade  ◆7WJp/yel/Y:2008/08/09(土) 13:48:03 ID:bKMeWYlo0


    ◆    ◆    ◆    ◆


「……行ったか?」
「ええ、間違いなく行きましたよ」

緑色の髪とアホ毛が特徴的な小柄な少女はふいーっと大きなため息をついて座り込む。
そして見る見るうちにどぎついチンピラ紛いのピエロへと姿を変えていった。

「さすがは悪の魔道士兄弟、プレイグさんですね。見事な演技でしたよ」
「じゃかあしいわ、ダボ……
 マナは集めづらいし、実物は見たことないしで疲れたとか言うレベルやないで……」

制限がかかっているのはあやかだけではない。
プレイグの魔法にも大きく制限がかかっている。
そんな中のぶっつけ本番だと言う事もありプレイグは一杯一杯だった。
あやかはふと視線を落として懐にある『高性能型探知機』を眺める。
彼女のそれほど大きくない手からは少しはみ出すぐらいの大きさだ。
画面には会場全域の地図とその上に置かれてある赤い点。
赤い点は参加者だ、この状態ではどの点がどの参加者かはわからない。
慣れない手つきで機械を弄るとあやかの現在地、G−3をズームにする。
そこには、プレイグ、リン、と二つの名前が書き込まれている。
黒羽根あやか、とは書かれていない。
ジョーカーの特権、万が一これを奪われた際にも有利な展開になるようにしてくれたのだろう。
恐らくこの探知機は首輪に反応しているのだ、つまりあやかの首輪は普通とは違うと言う事だ。
……爆破の機能もない、とは言い切れないのが恐ろしいところだが。

「プレイグさん、少し休みましょうか」
「せやな……休まなやってられへんわ」

69Masquerade  ◆7WJp/yel/Y:2008/08/09(土) 13:49:17 ID:bKMeWYlo0
結局、あやかが選んだ選択はプレイグと同行すると言う事。
やはり戦闘で有利になるというメリットは大きい。
それでいて、プレイグには『天本玲泉』の情報は伝えない。
理由は一つ、『そっちの方が面白そうだから』だ。
この男が天本威流とそっくりの天本玲泉の死体を見ればどのような反応を示すだろうか?
何の感情も見せずに冷徹を気取るのか、怒りに身を任せてあやかを含めた近くの人間を皆殺しにするのか。
はたまた他の行動を取るのか。
彼女はそれが見たくてたまらなかった。
先ほどのリンも同様だ。
彼女の頭には参加者の詳細が入っている。
それはプレイグの情報もリンの情報も高坂茜の情報も例外ではない。
リンは高坂茜の前から去り、高坂茜はそれが原因で精神が壊れたと聞いている。
だが、そのことをリンは知らない。
出来ることならその時をしっかりとこの目で拝んでおきたいものだ。

「んで、次はどないするんや」

プレイグは座り込んだ状態で目つきの悪い顔を向けてくる。
この男もかなりの腕前だが連戦連勝出来るかというと不安な要素の方が大きい。
ヒーロー、裏組織のエージェント、超能力者、忍者、冒険探偵、アンドロイド、サイボーグ、古代のモンスター。
規格外のオンパレードだ。
二対一の状況に持ち込んでも負けてしまう可能性もある。
ならば、如何にして戦わずに勝つがポイントとなるだろう。

70Masquerade  ◆7WJp/yel/Y:2008/08/09(土) 13:49:51 ID:bKMeWYlo0

「兵法の極意は戦わずして勝つことでしたか?」
「そや、自分だけやのうて人を動かして初めて金儲けが出来るんや」

最初にマーダーを増やす事を提案したのはプレイグだった。
自分たちはなるべく動かずに他人に参加者の数を減らせようという提案。
あやかとしては楽しければどちらでも良かったのでとりあえず賛成したのだが、これが予想以上に面白い。
人よりも上に立って自身の描いた絵図通りに動くのは思ったよりも快感だ。
しっぺ返しが来るかもしれないが、それはそれ。
危険を冒さなければ楽しみは得られない。

「それよりもやなあ……」
「どうしました?」

プレイグは首をすりすりと擦りながらあやかを睨みつける。
それで、ああ、とあやかは合点がいきにこりと微笑む。

「ええ、少々傷を負ったので。彼女への脅しにもなりますし」
「妙な感じがして変装が解けそうやったわ、このアホ」

よほど疲れているのか、それとも言ったところで効果がないと悟ったのか。
いつもは張り上げている声に張りがない。
結果的にはそれは正解、プレイグの予想通りにあやかは全く反省していない。
変装が解けてもそれはそれで面白かったかもしれないなんて考えていた。
そして、自身にかかった制限も実感していた。
銃ではあやかには傷を与える事は出来ない、それなのに肩にかすり傷を負った。
傷が塞がった後も痛みを感じる、ただ傷口が塞がっただけで痛みまでなくなったわけではない。
もっと大きな傷ならば大量の血でも回復するかどうかわからない。
どうやら彼女にかかっている『制限』は彼女を死なせるに十分値するようだ。
あやかは艶っぽい唇をその白い指で妖しげになぞり、ポツリとつぶやいた。

「……それにしても、やはりと言うか不味かったですね」
「じゃっかあしいわこんダボが!」

71Masquerade  ◆7WJp/yel/Y:2008/08/09(土) 13:50:57 ID:bKMeWYlo0
【G−3/一日目/早朝】
【黒羽根あやか@パワプロクンポケット7裏】
[参戦時期]:本編終了後
[状態]:健康
[装備]:妖刀ムラマサ@パワプロクンポケット7裏
[道具]:支給品一式、高性能型探知機
[思考・状況]
基本:『殺し合い』を円滑に進めるために動く。方法は問わない。
1:同じような手でマーダーを増やす
2:ゲームに乗っていない人間は殺す、マーダーに出来そうだったらする
3:『名探偵』は、今度こそこの手で………
[備考]
1:参加者全員の顔と詳細情報についての知識を持っています。
2:探知機はあやかに反応しません

【プレイグ@パワプロクンポケット4裏】
[参戦時期]:本編終了後、イルが忍者編の世界へ飛ばされた後
[状態]:疲労、魔力消費
[装備]:ハヅキの杖@パワプロクンポケット4裏
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜3(杖は無い)
[思考・状況]
基本:『殺し合い』に乗り、ゲームを優勝を目指す。
1:あやかについては保留。とりあえず今は殺さない。
2:もっとまともな杖が欲しいでホンマ……
[備考]
1:杖がなくとも呪文を唱える事に支障はありません。精神的にほんの少し落ち着かないだけです。

【高性能型探知機@現実】
高性能な探知機、参加者全員の位置がわかる。
ズームにするとそのエリアにいる参加者の名前がわかる。
ただし、『黒羽根あやか』にのみ反応を示さない。
戦国時代・大正時代の人間のあやかが説明を聞いて使える程度には操作は簡単。

72Masquerade  ◆7WJp/yel/Y:2008/08/09(土) 13:52:20 ID:bKMeWYlo0
投下終了です、仮投下した理由としては
『黒羽根あやかの制限』
『三つ目の探知機』
の二つからです

73Masquerade  ◆7WJp/yel/Y:2008/08/10(日) 15:32:25 ID:8XnFuPKA0
【G−3/一日目/黎明】
【黒羽根あやか@パワプロクンポケット7裏】
[参戦時期]:本編終了後
[状態]:健康
[装備]:妖刀ムラマサ@パワプロクンポケット7裏
[道具]:支給品一式、高性能型探知機
[思考・状況]
基本:『殺し合い』を円滑に進めるために動く。方法は問わない。
1:同じような手でマーダーを増やす
2:ゲームに乗っていない人間は殺す、マーダーに出来そうだったらする
3:『名探偵』は、今度こそこの手で………
[備考]
1:参加者全員の顔と詳細情報についての知識を持っています。
2:探知機はあやかに反応しません

【プレイグ@パワプロクンポケット4裏】
[参戦時期]:本編終了後、イルが忍者編の世界へ飛ばされた後
[状態]:疲労、魔力消費
[装備]:ハヅキの杖@パワプロクンポケット4裏
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜3(杖は無い)
[思考・状況]
基本:『殺し合い』に乗り、ゲームを優勝を目指す。
1:あやかについては保留。とりあえず今は殺さない。
2:もっとまともな杖が欲しいでホンマ……
[備考]
1:杖がなくとも呪文を唱える事に支障はありません。精神的にほんの少し落ち着かないだけです。


【高性能型探知機@現実】
高性能な探知機、参加者全員の位置がわかる。
ズームにするとそのエリアにいる参加者の名前がわかる。
ただし、『黒羽根あやか』にのみ反応を示さない。
戦国時代・大正時代の人間のあやかが説明を聞いて使える程度には操作は簡単。

74Masquerade  ◆7WJp/yel/Y:2008/08/10(日) 15:33:01 ID:8XnFuPKA0
最後にさるさんくらいました……
問題点の指摘お願いします

75 ◆7WJp/yel/Y:2008/08/10(日) 17:55:06 ID:8XnFuPKA0
◆NXWWzEezZM氏、転載ありがとうございます

76 ◆NXWWzEezZM:2008/08/20(水) 23:45:31 ID:iJJk5SI60
ちょっと自分でも気になる点があるので仮投下させていただきます

77 ◆NXWWzEezZM:2008/08/20(水) 23:46:05 ID:iJJk5SI60
倉見春香と七味東雅が去ってからしばらくして、カネオは目を覚ました。
まず初めに彼は周りを見回してみる。
辺りには誰もいない。
自分のデイパックが無くなっている。
空はまだ暗いまま。
ここは木が生い茂る森の中。
これらの情報から、現在の自分の状況を考えてみる。

「む〜〜〜ん、ボクのデイパックがないんだなぁ〜。
 許せないんだなぁ〜、おしおきなんだなぁ〜。
 きっとあの女が盗ってったんだなぁ〜、許せないんだなぁ〜〜〜」
……一度に多くの事を考えるのは無理だったようだ。


その十数分後、少しずつ頭が冴えてきたカネオは、ようやく自分の状況を大まかに把握する。
デイパックが無いことが深刻なことであるという事も理解し、当分の間の行動方針を決めた。

「おなかが減ったから、食べ物がありそうな所に瞬間移動するんだなぁ〜」

刹那、そこにあった人影は跡形も無く消え去った。

78 ◆NXWWzEezZM:2008/08/20(水) 23:46:38 ID:iJJk5SI60


   ◆  ◆  ◆


「む〜ん、ここはどこなんだなぁ〜」

カネオは適当にテレポートした結果、ある建物のとある一室に来ていた。
だが地図もコンパスも何も無い彼は、ここがどこであるかを知ることが出来ない。
しかし自分がどこにいるかはさほど重要でないと考えたのか、間もなく本来の目的である食糧探しに向かうために立ち上がる。
初めにテレポートで辿り着いた部屋は、ベッドが二つ置いてあった。
だが医薬品などは見当たらず、特に収穫となるものは無かった。
食糧になりそうなものも見当たらなかったので、彼はその部屋に見切りをつけ、他の部屋の探索に向かっていった。

「しかし疲れたんだなぁ〜。
 瞬間移動ってこんなに疲れるものだとは思ってなかったんだなぁ〜。
 早く食べ物を探してゆっくりしたいんだなぁ〜」

こんな事を呟きながら、彼はどこかの部屋に入っていく。
しかしそこは更衣室であった。
カネオはロッカーを開けて中を調べるという作業を何回か繰り返したが、食糧になるものは見つけられなかった。
しかし、最後に開けたロッカーで思わぬ発見をする。

「これはきっとデイパックなんだなぁ〜。
 ちょっと拝借していくんだなぁ〜」

自分が取られたデイパック、それと恐らく同じ型のものがそこにあった。
彼が中を確認したところ空っぽではあったが、道具を入れる袋になるものが見つかっただけで収穫である。
早速彼はそれを背負って、用が無くなった更衣室を後にした。


その後もカネオはしばらく建物の探索を続けた。
しかしいくつかの部屋を調べてはみたものの、食糧どころか役立ちそうな武器などのアイテムすら見つけられない。
それでもあくまでマイペースに探索を続けていた結果、長い廊下の突き当たりにある部屋に辿り着いた。

「なんか凄そうな部屋なんだなぁ〜。
 きっとここならいい物が置いてあるんだなぁ〜。
 早速中に入るんだなぁ〜」

それまで見た部屋とは明らかに何かが違う、立派な金属の引き戸がそこにあった。
カネオは迷わずそれを引いて中へ進んでいく。
鍵はかかっていなかった。

79 ◆NXWWzEezZM:2008/08/20(水) 23:47:10 ID:iJJk5SI60


   ◆  ◆  ◆


カネオが入っていったのは冷凍室だった。
彼は電気のスイッチを見つけることが出来なかったので、暗い室内にそのまま足を踏み入れていく。
幸運にも入り口から程遠くない場所にあった『食べ物』を、彼はすぐに発見することが出来た。
彼が手に取ったのは、真空パックの袋に入った鳥の手羽先だった。

「む〜ん、これはおいしそうな食べ物なんだなぁ〜。
 これは拝借しておくんだなぁ〜」

袋の隅に『名古屋コーチン』と記されているそれを、カネオは先程のデイパックに放り込む。
そして他にも何か食べられるものがないかと冷凍室の奥へと進もうとしたが、廊下の灯りが届かなくなった辺りで引き返した。
灯りが届かないと見えないというのもあるが何より彼の進む意思を削いだのは、その寒さだった。

「ここは寒いんだなぁ〜、宇宙みたいに寒いんだなぁ〜〜〜」

こんな独り言を吐き出して、彼は冷凍室から退散した。
何かを呟いても誰も聞いていないというのは、少々寂しいものである。
弟達を探さねばならないか、そんな事を考えてみるものの、食欲に打ち勝つことは出来ないものである。

「まずはこれを料理しに行く事が第一なんだなぁ〜。
 焼くなり煮るなりしないと食べられないんだなぁ〜。
 楽しみなんだなぁ〜」

結局収穫は冷凍されたの手羽先一つだけである。
だが彼一人にはそれでも十分であった。
こうなれば彼の目標は一つ、これを調理して食べることだけ。
調理器具を求めて、彼は再び歩き出した。

80 ◆NXWWzEezZM:2008/08/20(水) 23:47:44 ID:iJJk5SI60


   ◆  ◆  ◆


ここは奇怪な研究所。
そこへ偶然にも侵入してきた宇宙の嫌われ者、スペースコックローチの一人、カネオ。
今まで数多くの宇宙船に侵入して、成果を上げてきた。
果たして今回の侵入でも成功を収められるのか。
カネオの研究所探検はまだ続く。
行き着く先に何があろうとも。

81 ◆NXWWzEezZM:2008/08/20(水) 23:48:32 ID:iJJk5SI60

【A−3/研究所/1日目/黎明】
【カネオ@パワプロクンポケット9裏】
[状態]:疲労(中)、空腹(中)
[装備]:なし
[道具]:手羽先(生)、デイパック
[思考]
1:手羽先を食べられる状態に加工して食べる、食べたらどこがでゆっくり休憩する。
2:弟たちを探す。
3:春香に会ったら、『おしおき』をする。

[備考]
※ 参戦時期は9裏主人公の戦艦に最初に乗り込んできた後です。
※ 春香の名前は知りません。また春香の見た目に関する情報も、暗かったために曖昧です。
※ カネオが拾ったデイパックは、各参加者に支給されたそれと同等の機能を持っています。
※ テレポートをすると疲れが溜まる事を認識しました。
  テレポートの移動距離に関する制限は認識していません、またテレポートの制限の度合いは以降の書き手にお任せします。

82 ◆NXWWzEezZM:2008/08/20(水) 23:51:08 ID:iJJk5SI60
仮投下終了です
大きな問題点になるとすれば、

・勝手にデイパックを出してしまったこと
・テレポートの移動距離の制限(エリアほぼ一つ分くらい?)

この点で何か問題を感じられましたらご意見お願いします。
タイトルは本投下の時に



修正が無ければ金曜日辺りに投下させていただきます

83 ◆NXWWzEezZM:2008/08/20(水) 23:51:38 ID:iJJk5SI60
一応ageておきます

84 ◆7WJp/yel/Y:2008/09/08(月) 19:01:30 ID:znK7sTeE0

「我威亜党はそのために動いていたんだよ。
 帝都に地震を起こして、多くの人間を殺し、ある禍々しい姿の化物を召喚するためにね」

目を瞑ればあの姿が鮮明に思い出せる。
この世のものとは思えない造形、恐竜をも超える力、いくら攻撃しても倒れない圧倒的な耐久。
あれを支配すれば確かに世界征服などたやすいだろう。
結局は飼い慣らす事など出来ずに文字通り潰されたが。

「でも、安心したよ。
 『未来がある』ってことはあの化物は倒されたってことだろ?」
「聞いたこともないですね、情報工作か何かされたんでしょう」

確かに無駄に恐怖を煽っても仕方がない。
ただの地震とした方が都合が良いのだろう。
そのことからも我威亜党が未来に伝わっていないのも納得がいった。

「それで、俺と仲間はその召喚された化物に殺された……はずだった」
「だけど気がつけばここにいた、ってことでやんすか?」
「ああ、傷も綺麗に塞がっている。こいつも未来の技術って奴かな」

身体に痺れなども感じないし後遺症はない……ように思える。
不思議なものだと開いたり閉じたりしている手を見る。

「ああ、我威亜党についてだけど幹部は俺の知ってる限り五人いる。
 亀田皇帝、チバヤシ公爵、秋穂侯爵、あやか伯爵、寺岡子爵、チキン男爵。
 どいつも癖のある連中ばかりだよ」

恐らくこの首輪は寺岡子爵の特製だろう。
嬉々として殺しをするような人物ではないが、嬉々として兵器を作るような人物だ。
大方、気がついたら作っていたとかそんな理由だろう。

「……これも何かの儀式かもしれないな。
 帝都の大地震もあの化物を呼び出すためのものだったから、可能性は高いと思う」
「規模が違うぜ、息子よ」
「そうだな、あの時は万単位、こっちは数十人だ」

もちろん、数の問題ではないが。
しかし、儀式や生贄などでは大きなポイントとなるのも事実だろう。

「今のところ我威亜党が殺し合いを始めた目的はわからない。
 だけど、世界征服という大きな目標に繋がるものは確実なはずだ」

あの化物を支配できなかった以上我威亜党にも多大な被害が出たはずだ。
ならば遊んでいる暇はない、これにも何かしらの意味がある。

85続き ◆7WJp/yel/Y:2008/09/08(月) 19:02:11 ID:znK7sTeE0

「仲間も大勢居たんだけど、こっちに連れてこられたかはわからないな」
「その人たちの名前を教えてもらってもいいかな?」
「ああ、今メモに書くよ。そっちの知り合いもよければが書いてくれるか?」
「了解でやんす!」

九条と凡田も筆記用具を取り出してデイバックに入っていたメモ帳に名前をつらつらと書いている。

「こっちで知り合ったのは……?」
「……親父だけだ」
「ハハハ、そんなにへこむな息子よ。良いことだってきっとあるさ」
「俺は四路 智美って人に会いました」
「四路 智美? 智美もいるのか!?」

七原の頭に浮かぶのは元スパイの頼りがいのある女の姿だ。
銃の腕前もたいしたものだし、何よりしたたかだ。

「多分人違いだよ、凡田くんの知り合いだから」
「……同姓同名か」
「俺と凡田くんの名前を出したら警戒は解いてくれるはずだ」

カリカリと音を立ててメモに名前を書き込んでいく。
七原は書き終わると顔を上げてメモを渡す。

「信用は出来るやつらだよ、少し我の強いのが多いけど」
「オイラも出来たでやんす!」
「……一応信用は出来ますよ、少なくとも殺し合いに乗るような奴らじゃない」
「了解……って倉刈さんまで。同姓同名多いんだな」

多くある名前ではないが珍しいというほどではない。
同姓同名がいるぐらいおかしくはないだろう。

「散々話してもらって申し訳ないけど、こっちには重要な情報がないんだ。
 これから仲間を探そうとしたところでね」
「仲間、か」
「三回目の放送でホテルに集合でやんす」

86時間移動か洗脳か ◆7WJp/yel/Y:2008/09/08(月) 19:03:19 ID:znK7sTeE0
第三放送ということは大体十数時間後。
時間がないわけではない、しかし遊んでいる時間はない。

「じゃあ早速動こうか」
「あ、その前にスコップはないでやんすか?」
「スコップ?
 知らないな、親父は……っておい、なにやってんだ」
「ん〜? いや、面倒くさい話してるからよ〜、ちょっとパンを食ってただけだよ」
「……スコップは?」
「見てないな〜、包丁とかそういうのもないから武器になりそうなのは取り上げられてると思うぜ?」

布具里は相変わらず呑気だ。
三人は軽くため息をつき、話を続ける。

「一旦別れるか。山にも施設があるから見て回りたい。
 二人と二人ならちょうどいいだろ」
「じゃあ俺と凡田くんで」
「え、一緒に行かないんでやんすか?」

凡田が疑問の声を上げる。
確かに四人もいれば頼りになるだろう。
しかし、ここは冒険に出なければいけない。

「俺たちは先に街に向かっておく、こう見えても冒険家だからな荒事は専門さ。
 そっちは先にホテルに行って綺麗にしておいてくれよ」

七原は修羅場に慣れた自分と布具里が仲間集めをする場面だと判断した。
道中で襲われる可能性や話しかけた相手が殺し合いに乗っている可能性だって高い。
危険冒すのはプロがやるべきだ。

「そうか……でも、俺たちも一応仲間を探しておく」
「死ぬなよー、命あっての物種だからな」
「『依頼』は完遂させるさ。
 こう見えても達成率は100%、期待しといてくれよ」

布具里が手を振って海の家を出て行く。
これで方針は立った。
ホテルの見張りは九条たちに任せて七原たちは仲間を見つけて保護する。

「さて、親父。さっさと仕事終わらせて続きをやるか!」

まだ殺し合いを破壊する依頼は始まったばかりだ。

87時間移動か洗脳か ◆7WJp/yel/Y:2008/09/08(月) 19:03:49 ID:znK7sTeE0
【B−5/海の家/一日目/早朝】
【九条英雄@パワプロクンポケット9】
[状態]:健康、正義の味方としての決意
[装備]:ギター
[参戦時期]:維織GOOD後からアルバムまでの間
[道具]:支給品一式、ロケット弾、スタングレネード、野球人形、大正編の仲間の名前が書かれたメモ
[思考・状況]
基本:参加者全員を助け出し、亀田を倒す
1:ホテルに向かいながら仲間を集める。
2:彼女(森友子)を埋葬したい。
[備考]
※七原と軽い情報交換をしました。

【凡田大介@パワプロクンポケット2】
[状態]:顔面に打撲
[装備]:無し
[参戦時期]:本編終了後
[装備]:お守り
[道具]:支給品一式、鍵
[思考・状況]
基本:ガンダーロボを救出したい
1:ホテルに向かいながら仲間を集める。
2:基本人殺しはしたくない。
3:九条を信頼。
4:チームメイトにH亀田がいる
[備考]
※七原と情報交換をしました。

88時間移動か洗脳か ◆7WJp/yel/Y:2008/09/08(月) 19:04:52 ID:znK7sTeE0
【七原 正大@パワプロクンポケット7裏】
[状態]:健康
[参戦時期]:ほるひす戦敗北直後
[装備]:地味な色のベスト、ニューナンブM60(6/6)
[道具]:支給品一式、Pカード、九条と凡田の知り合いの名前の書かれたメモ、予備弾(12/12)
[思考]
基本:亀田を倒す。
1:仲間を集めるために動き回る。
2:ほるひすに警戒心。
3:第三放送前にホテルPAWAへと向かう。
[備考]
※大正編のどの人物とどの程度面識があるか、メモに誰の名前が書かれたかは後の書き手に任せます。
※布具里から拳銃、ニューナンブM60を巻き上げました

【布具里@パワプロクンポケット7裏】
[状態]:健康
[参戦時期]:不明
[装備]:特になし
[道具]:支給品一式、ランダム支給品残り0〜1個(本人確認済み)、亀田幻妖斎の服(仮面付き)
[思考]
基本:正大に寄生して生きる。
1:仲間を集める。
2:第三放送前にホテルPAWAへと向かう。
[備考]
※確認済みの支給品の中に、衣服になるものは入っていません。

89 ◆7WJp/yel/Y:2008/09/08(月) 19:05:25 ID:znK7sTeE0
投下終了です
問題点がありましたら指摘をお願いします

90ニンゲン ノ テイギ ◆7WJp/yel/Y:2008/09/21(日) 21:17:02 ID:uh6vC3cQ0
さるさん喰らいました……ここからは仮投下スレで

91ニンゲン ノ テイギ ◆7WJp/yel/Y:2008/09/21(日) 21:17:40 ID:uh6vC3cQ0


   ◇   ◆   ◇   ◆



智美は手元の探知機に目を落としながら工場の中を移動していた。
理由は単純、青野柴夫なる男が一人っきりなったからだ。
今までメカ亀田、プロペラ団が作った失敗作だ、と共に行動していたので声をかけなかった。
だが、一人だけならば話は別。
智美に恨みを抱いていることは間違いないメカ亀田と鉢合わせたくはなかったのだ。

「あ……ああ……」

しかし、目の前にいるのは重傷を負った体付きのいい男が一人。
メカ亀田に捨てられたのは間違いない。
問題はメカ亀田が直接やったのか、捨て駒にされたのか、だ。

「ねえ」
「あん……た……!」

目を見開いてかすれた言葉を出す青野。
その様子を見て智美は確信する、この男は邪魔だと。
この死にも至るであろう傷を負った男をホテルまで連れて行くにはリスクが大きすぎる。
何よりもこの死に体が脱出に役立つとは思えない。

「誰がやったの?」
「機……か……械……」
「機械? メカ亀田のこと?」
「……あ、ああ……!」

92ニンゲン ノ テイギ ◆7WJp/yel/Y:2008/09/21(日) 21:18:37 ID:uh6vC3cQ0
知ってるのか? とでも言いたげに視線を向けてくる。
智美はそれを無視して出来るだけ情報を搾り取ろうとする。

「あんたの知り合いは? もちろんここで知り合った人間のことよ」
「……サング……ラス……八……」
「はい? 何て言ったの?」

サングラスはかろうじて聞こえたものの、その後がさっぱり聞き取れない。

「サングラス……や……はち……」
(……ここまで、ね)

智美は懐から拳銃を取り出してトリガーに指をかける。
その動作に青野は再び目を見開き、ニヤりと笑った。

「何? 怖すぎて笑えてきたの?」
「お前……も……殺さ……勝てっこ……」
「お前も殺される、誰々には勝てっこない、ってところかしら。
 ……お生憎様、私、優勝する気なんてサラサラないの」

彼女にあるのは三橋一郎を生かすという目的だけ。
覚悟はここに飛ばされてから今までの間に済ませた。
後は三橋にとってプラスになるような行動を取るだけだ。

「安心しなさい。
 天国に行くのなら私とは二度と会わないし、地獄に行くのなら私の苦しむ様が間近で見れるわ」

93ニンゲン ノ テイギ ◆7WJp/yel/Y:2008/09/21(日) 21:19:11 ID:uh6vC3cQ0
その言葉が言い終わると智美は銃を『仕舞い直す』。
その内に出血多量で死ぬだろう、銃は最後の最後で情報を搾り出すため。
『殺される』となると必死に何かを喋るかもしれないと思ったからだ。

「……死んだ?」
「……」

ピクリともしない、間違いなく死んだのだろう。
罪悪感なんてない、人を殺した事だってあるのだから。

「……メカ亀田は危険、どいつがサングラスかもわからないし、危険人物も絞り込めてない。
 お手上げね、見つからないうちにどこかに行くのがベストね」

言い終わると智美はチラリと青野の死体を見て。

「……」

何も言わずに工場を出て行った。


【青野 柴夫@パワプロクンポケット6  死亡】

【B−7/工場周辺/一日目/早朝】
【四路智美@パワプロクンポケット3】
[状態]:健康
[装備]:拳銃(ジュニア・コルト)、探知機
[参戦時期] 3智美ルートで主人公の正体が1主人公だと発覚後。
[道具]:支給品一式、ダイナマイト5本 
[思考・状況]
基本:二度と三橋くんを死なさない。
1:しばらく情報集め。
2:人を集めたい。
3:第三放送までにはホテルPAWAに集まる人をどうするか方針を決めたい。
4:亀田の変貌に疑問?
備考
※メカ亀田を危険人物を判断しました。

94ニンゲン ノ テイギ ◆7WJp/yel/Y:2008/09/21(日) 21:20:16 ID:uh6vC3cQ0


   ◇    ◆    ◇    ◆


メカ亀田は工場の中を見渡していた。
先ほどの緑色の髪の少女が来るか、それともあの二人と一体が来るかはわからない。
あの触手のようなものを出した女は恐らくサイボーグかアンドロイドかロボットだろう。
メカ亀田はここを動く気はない、襲われたら迎え撃つ気だ。
工場の内部は元々調べるつもりだったのだ。
それにあの程度の連中なら軽くいなせる自信がメカ亀田にはあった。

「ん?」

そんな考えをしながらメカ亀田が進んでいると、一つの物体を見つける。
少し不審に思いながら警戒をしながら進んでいく。

「青野、でやんすか」

それは倒れこんでいた青野の体だった。
ピクリともしない、死んでいるのだろう。

「やれやれ、お前も運がないでやんすね」

軽くため息をついてマントの下から爪を取り出す。
それを青野の首筋に当てる。
そして、首輪と青野の首をゆっくりと切り離していく。

「意外と早く首輪を手に入れれたでやんすが……」

ここからが問題だ。
今すぐに工具を見つけて解体することは簡単だが。
この首輪は遠隔操作できるということがわかっている。
つまり、首輪を解体している最中に、ボン、という可能性が非常に高いのだ。

(とりあえずはジャミング出来る機械が必要、でやんすか)

ここにあるかどうかもわからない、前途はまだまだ多難だ。
首輪が手に入り工具もあるであろう工場に着いた。
残る必要なものはジャミングを可能とする機械だけ。

(好調、でやんすねえ、面白いぐらい)

そんな都合のいい展開に逆に不安に思いながら、メカ亀田は工場の中を歩き回った。
逃亡生活のお陰で工場には縁がある。
それゆえにあの緑色の女が隠れていた荷物の山が隠れるためのものだと気付いたのだから。
メカ亀田は目的を果たすために工場を探索する。

95ニンゲン ノ テイギ ◆7WJp/yel/Y:2008/09/21(日) 21:20:49 ID:uh6vC3cQ0


   ◇    ◆    ◇    ◆


メカ亀田は工場の中を見渡していた。
先ほどの緑色の髪の少女が来るか、それともあの二人と一体が来るかはわからない。
あの触手のようなものを出した女は恐らくサイボーグかアンドロイドかロボットだろう。
メカ亀田はここを動く気はない、襲われたら迎え撃つ気だ。
工場の内部は元々調べるつもりだったのだ。
それにあの程度の連中なら軽くいなせる自信がメカ亀田にはあった。

「ん?」

そんな考えをしながらメカ亀田が進んでいると、一つの物体を見つける。
少し不審に思いながら警戒をしながら進んでいく。

「青野、でやんすか」

それは倒れこんでいた青野の体だった。
ピクリともしない、死んでいるのだろう。

「やれやれ、お前も運がないでやんすね」

軽くため息をついてマントの下から爪を取り出す。
それを青野の首筋に当てる。
そして、首輪と青野の首をゆっくりと切り離していく。

「意外と早く首輪を手に入れれたでやんすが……」

ここからが問題だ。
今すぐに工具を見つけて解体することは簡単だが。
この首輪は遠隔操作できるということがわかっている。
つまり、首輪を解体している最中に、ボン、という可能性が非常に高いのだ。

(とりあえずはジャミング出来る機械が必要、でやんすか)

ここにあるかどうかもわからない、前途はまだまだ多難だ。
首輪が手に入り工具もあるであろう工場に着いた。
残る必要なものはジャミングを可能とする機械だけ。

(好調、でやんすねえ、面白いぐらい)

そんな都合のいい展開に逆に不安に思いながら、メカ亀田は工場の中を歩き回った。
逃亡生活のお陰で工場には縁がある。
それゆえにあの緑色の女が隠れていた荷物の山が隠れるためのものだと気付いたのだから。
メカ亀田は目的を果たすために工場を探索する。

96ニンゲン ノ テイギ ◆7WJp/yel/Y:2008/09/21(日) 21:21:32 ID:uh6vC3cQ0
【B−7/工場周辺/一日目/早朝】
【メカ亀田@パワプロクンポケット6裏】
[状態]:損傷なし
[装備]:特になし
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜3個、青野の首輪
[思考]
基本:『殺し合い』を失敗させた後に亀田を殺す
1:工具とジャミング用の機会を見つける。
2:脱出のために役立ちそうな人間を優先して仲間にする
4:サングラスの男(灰原)に激しい殺意と敵意
[備考]
※参加時期は不明
※メカ亀田は灰原の名前は知りません
※自動追尾ミサイルとバリアーは没収されています
※青野の情報は全部嘘だと思っています。
※十波典明、タケミ、たかゆき、高坂茜の名前を知りません

97ニンゲン ノ テイギ ◆7WJp/yel/Y:2008/09/21(日) 21:22:05 ID:uh6vC3cQ0


   ◇   ◆   ◇   ◆


彼は緑色の草原をデイバックを背負って駆けていた。
気がつくとここに居たが彼には対して関係のない話だ。
いつものように人間をからかった、大きな身体をした人間が慌てふためく姿は酷く滑稽だった。
そしてまた一匹、人間を見つけた。
こいつもからかってやろうと思い、ゆっくりと近づいていく。
あの身体つきならばこのぐらいの距離を空けていれば十分に逃げられる。
さあ、そろそろ鳴き声を上げようと思うと。

「うきぃ!?」
「……はははは、やっと見つけたですよお猿さん」

先ほどの歩くスピードとは一転素早い動きをされて彼は捕まえられてしまう。
必死に抵抗するが上手く力が入らない。

「何でお猿さんがデイバックを持ってるのかは知らないですが……もらっておきましょう。
 そのためにあの二人を見逃したんですから」
「うきぃい!」
「……うるさいです」

人間は手に持っていたよくわからないものを持ち上げ。

ズガガガン!

という音が聞こえると同時に、彼は意識を手放した。

【猿@パワプロクンポケット4 死亡】


【B−7/工場周辺/一日目/早朝】
【高坂 茜@パワプロクンポケット8】
[状態]:幸せ、早く殺したい
[装備]:機関銃
[道具]:支給品一式、アップテンポ電波、予備弾セット(各種弾薬百発ずつ)、不明支給品2〜3
[思考・状況]
基本:みんな殺して幸せな家庭を取り戻す。
1:人を殺すために人の居るところへと向かう
備考
※メカ亀田とタケミを危険人物を認識しました

【残り 46人】

98ニンゲン ノ テイギ ◆7WJp/yel/Y:2008/09/21(日) 21:23:13 ID:uh6vC3cQ0
投下終了です
指摘を、お願いします

99ニンゲン ノ テイギ ◆7WJp/yel/Y:2008/09/21(日) 21:24:50 ID:uh6vC3cQ0
投下終了です
指摘を、お願いします

100ニンゲン ノ テイギ ◆7WJp/yel/Y:2008/09/21(日) 21:53:06 ID:uh6vC3cQ0
代理投下、ありがとうございます

101ニンゲン ノ テイギ ◆7WJp/yel/Y:2008/09/21(日) 23:11:10 ID:uh6vC3cQ0
うわああああああ! 一番大事なところが抜けてるorz
>>91の前に次のが入ります

102ニンゲン ノ テイギ ◆7WJp/yel/Y:2008/09/21(日) 23:11:46 ID:uh6vC3cQ0

「タケミ……自分のコトを人間だト思ウ奴が、人間ナんダ。
 ……アンマ、リ、深ク、考、エンジャ、ネ……」

それっきり、たかゆきは動かなくなった。
タケミは目を伏せたまま動かない。

「そう言えば……どこに行ったけ、あの二人」

野球帽の男と緑色の髪の少女の向かった方向を覚えていない。
それどころか頭がふらふらとして思考が落ち着かない。
工場には危険人物がいて、どこに向かったかもわからない危険人物も二人。
とりあえず工場には時間を置いてから入るのがいいだろう。

「……自分を人間だと思ったら人間、か」

タケミにとって考えた事も無かった論理。
自分が化物だ、という前提から離れる事の出来なかったタケミには、出来なかった。

「……そんなこと言われても、わかんないよ。たかゆき」


【たかゆき@パワプロクンポケット3  死亡】


【B−7/工場周辺/一日目/早朝】
【タケミ@パワプロクンポケット10裏】
[状態]:疲労(大)
[装備]:作業着、コンパス、時計
[道具]:支給品一式、爆弾セット(残り5個)
[思考]
基本:殺し合いには乗らない、首輪を外すために行動する
1:……人間、か。
2:今すぐに軍服の男(メカ亀田)がいる工場に入ることはしない
3:出来るだけ戦いたくないが、どうしようも無ければ戦う
[備考]
※モンスターとしての力は短時間、疲労大の条件の下、発動可
※十波典明、高坂茜、メカ亀田の名前を知りません

103名無しのバットが火を噴くぜ! :2008/09/22(月) 03:30:43 ID:ONhw9m4E0
乙です
って、ええええええええええええ!
たかゆき死んでたのかああああああ

104起承転々 ◆NXWWzEezZM:2008/09/28(日) 21:56:29 ID:cXFqx4Pw0


   ◆  ◆  ◆


「ハア……ハア……」

結局、俺は病院を目指すことにした。
止血をしたといっても完全なものではないので、ゆっくりと、しかし着実と血が引いていくような感覚に襲われる。
さらには身体のあちこちが痛むし、長時間歩く気力も無い。
こんな状態で比較的距離がある診療所まで行くのは辛い。
そう考えて俺は一刻も早く病院に辿り着こうとしている。
しかし、病院まで歩くのも辛くなってきた。
このまま一眠りしたいくらいだが、もしも敵に遭遇したら今度こそ命は無いだろう。
だから気合だけでも俺は歩き続ける。
どんどん息が荒くなっていくが、それくらいは我慢するしかない。
それまでに殺し合いに乗った参加者に会わないように願いながら、歯をくいしばって歩いていく。
足も踏ん張りが利かなくなってきて何回も転び、そして跪きながらも懸命に進んでいく。
丁度7回転んだ頃だろうか、俺はそれまでと同じように顔を上げようとして、気付いた。
目の前に居た、黒い『ヒーロー』の存在に。

105起承転々 ◆NXWWzEezZM:2008/09/28(日) 21:57:07 ID:cXFqx4Pw0


【G-5/G-6との境目付近/一日目/早朝】
【萩原新六@パワプロクンポケット6】
[状態]:左腕欠損、腹部に軽度の切り傷、貧血(中)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式 、野球用具一式(バット8本、ボール7球、グローブ8つ)@現実、野球超人伝@パワプロクンポケットシリーズ、パワビタD@パワプロクンポケットシリーズ、自身の左腕
[思考・状況]
1:敵か? 味方か……?
2:病院でしっかり手当をしたい。出来れば仲間も見つけたい。
3:野球超人伝を後でじっくりと読みたい。
4:元の世界に戻って犯人を捕まえる。


【芹沢真央@パワプロクンポケット7】
[状態]:特に異常なし
[装備]:私服
[道具]:支給品一式、ランダムアイテム1〜3個
[思考]
基本:弱きを守り悪を挫く『正義の味方』を貫く
1:目の前の重傷者が『悪』であるなら成敗する。そうでないのなら助ける。
2:人を守る。
[備考]
※参加時期は黒打くんにアメコミのヒーローについて教えてもらった後
※八神、大江と情報交換をしました。

106名無しのバットが火を噴くぜ! :2008/09/28(日) 21:58:07 ID:cXFqx4Pw0
投下終了です
ただでさえ長いから余計な部分を端折ったらもう何がなんだか
誤字とか矛盾があったら指摘してください

107名無しのバットが火を噴くぜ! :2008/12/27(土) 21:49:58 ID:ByhKGjAo0
また規制されてたので、こっちに投下します

108 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 21:52:08 ID:ByhKGjAo0
「なあ、ほるひす。本当にこっちにお前の仲間がいるんだな?」
「うん」

平山はほるひすと共に消防署へと歩を進めていた。
理由は簡単、ほるひすが仲間とそこで待ち合わせをしていると聞いたからである。
平山にとってそれは吉報であった。
野球部に所属し甲子園優勝まで果たした彼は仲間の大切さを重々承知していたからだ。

この糞ったれなゲームで志を共に出来る存在がいる。

このことはゲームが始まって以来碌に人に会ってない平山にとっては大きな励みとなった。

「あ、いたよ」
ほるひすはそう言うと、消防署の前に立っている二人組--レッドと東に向かって駆け出す。
平山もそれにつられて駆け出し、すぐにそこに立っているのが先ほど物騒な会話をしていた二人だということに気づいた。
(おいおい、ほるひすの仲間ってこいつらのことかよ……。まさか罠ってことはないだろーな?)
一抹の不安を胸に秘め、いつでも逃げ出せるよう用心しながら平山は彼らに近づいた。

109 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 21:56:28 ID:ByhKGjAo0
「おっ、ほるひす。無事だったか」
ほるひすに気付いたレッドが声をかける。
次いで東が口を開いた。
「無事で何よりだよ。それで、後の彼は誰かな?」
「ひらやまだよ」
「……つまり新しい仲間ってことでいいのかい?」
ほるひすからは明瞭な答えが期待できないと悟った東は平山の方に尋ねた。
この態度から平山は罠ではないことを察し、正直に答える。
「そうなるな。俺は平山紀之。ほるひすとはさっき会ったばかりだ。
 それで仲間と待ち合わせをしているって聞いたからお供さしてもらったんだ。
 なあ、あんた達もあの亀田って奴を倒したいんだろ?」
レッドと東の二人は首を縦に振り、肯定の意を示す。
「勿論俺もそうだ。目的が一緒なんだから、良ければ俺も仲間にいれてくれないか?」
「もちろんじゃないか、歓迎するよ平山君」
この提案に対し東は笑顔と共に快諾し平山に手を差し伸べ、平山もまた笑顔と共にその手を握り返した。
その後、平山はレッドとも軽い挨拶を交わし、三人と共に危険人物の説得に当たっているというもう一人の仲間--甲子園児のことを待った。

甲子を待つ間、四人は情報交換を行っていた。
だが、平山の方には碌な情報はなく、レッド達もまた芳槻さらが危険人物程度しか有益な情報が無かったので、
話しは自然に世間話へとシフトしていく。

110 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 21:59:33 ID:ByhKGjAo0
「平山君も野球部だったなんて奇遇だね。それにしても甲子園優勝なんて凄いなぁ」
「いやいや、俺なんて全然。所詮二番手ピッチャーだったし、チームメイトに恵まれたんだよ」
「それでも甲子園優勝校の二番手だろ。充分凄いじゃないか」
「ハハハ、そうかな」
そんなことを話している折りだった、今まであまり会話に参加していなかったレッドがおもむろに口を開く。

「少しいいか、平山」
「何だ、レッド?」
「少し気になることがあってな。お前のチームメイトだったという亀田という男についてだ」
レッドが言うには平山が亀田について語った際、何か引っ掛かるものを感じたという。
名前のこともあり、それが何なのか気になったというわけだ。
平山は即座にそれはカメダのせいだと理解し、正直に話し始める。
「亀田と俺はバッテリーを組んでたんだ。親友だった。
 あいつがあの時野球部に誘ってくれたから今の俺があるんだ……。
 けど、あいつは死んじまったんだよ……。よりにもよって甲子園決勝の前にな!!
 だから、あいつにそっくりな上に亀田を名乗ってるあの糞ったれが許せないんだよ!
 おそらく亀田の話をした時、無意識にあいつに対する怒りが出ちまったんだろうな」
「なるほど、そういう訳か」
レッドは納得がいったのかそれ以上問いつめることはなかった。

111 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 22:00:41 ID:ByhKGjAo0
静寂が辺りを包み込む。

「……5時半か」
時計を見ながらそう呟いたのは東だった。
その言葉が意味することはその場にいる全員が何となく理解していた。
芳槻さらを説得するために残った甲子と別れてもう2時間近く経っている。
なのに一向に甲子が来る気配はない。
それだけで充分だった。みんな分かっているからこそ誰も口を開こうとしない。
そのことを口にすると甲子の死を認めてしまう、そんな気がしたから……。

だが、その静寂は思いもしない者によって破壊された。
「お〜い、東さ〜ん!レッド〜!」
それはレッドでも東でもほるひすでも平山でも、もちろん甲子の声でもない。
声の主は全くの第三者--野丸太郎のものであった。

「その声は野丸君か!?」
東が声がする方に体を向ける。
そして、少し距離があってわかりづらいが、そこにいたのは紛れもない野丸太郎その人だった。
「野丸君、君も連れた来られていたのか!」
東が野丸に向かって駆け出す。
そして、二人の距離が50メートル程になったぐらいであろうか、突如として野丸の様子が一変した。

112 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 22:02:19 ID:ByhKGjAo0
「東!待て!」
慌ててレッドが東を呼び止めようとしたが、時既に遅し。
レッドの目に映ったのはマシンガンの引き金を躊躇無く引く野丸と、左腕を血まみれにする東の姿だった。

「うあああああああ!!!!」
東は左肩腕を押さえながら崩れ落ちる。
「野丸君、どうしてこんなことを!?」
左腕を押さえながらも東は気力を振り絞り、当然の疑問を野丸に尋ねる。
「なんでって、生き残るためですよ。
 帰れるのが一人だけなら、その一人を目指すのは普通のことじゃないですか」
野丸はさも当然のことの様に答え、東はその様に答える野丸を信じられないといった顔で眺めた。
「それじゃ、これでお別れですね、東さん」

野丸がそう囁き、東が死を受け入れようとした正にその時、突如として周囲が煙に包まれる。
「これは……!」
東はすぐにこの煙の正体に気づく。それは先ほどの情報交換の折り平山がバックから取り出したもの。
そう、すなわち煙幕によるものだ。

その効果のほどは凄まじく、数秒も経たない内に一寸先も見えない状況とかす。
「東さん、こっちだ!」
近くで平山の声が聞こえる。東は歯を食いしばりながらも声のする方へと向かった。
だが、その声は東にだけ届いた訳ではなく、しっかりと野丸にも聞こえていた。
野丸がウージーを声の方に向け、引き金を引こうとしたその刹那、レッドの強烈なボディブローが炸裂し、野丸を後方へと吹っ飛ばす

「うぼぇっ!?」

レッドは尚も野丸に追撃をかけようとするが、野丸は飛ばされながらもマシンガンを乱射する。
そのため、この煙の中その弾幕を抜けるのは危険だと判断したレッドは平山の後を追った。

113 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 22:03:44 ID:ByhKGjAo0
そして数分後、煙が晴れた時、野丸一人がその場に残された。
「逃がしちゃったか……」
ウージーを片手に野丸はそう嘆く。
だが、その言葉とは裏腹に彼は心中に今まで感じたことのない何かが込み上がってくるのを感じていた。

野丸にとって東は尊敬する先輩であった。
成績優秀であり野球の腕も抜群。さらには誰に対しても人当たりがいい、自分とは天と地ほど違う人種だと思っていた。
だが、その東の左腕を自分がズタボロにした。
一一そう、あの東さんを平々凡々だったこの僕が!!
そう考えると言葉では言い表せない快感が身体を駆けめぐり、思わず滲み出そうになる。
「うへへへへ……。東さん、今度あったら、僕は……!」

邪悪な笑みを浮かべながら、野丸はその場を後にした。

114 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 22:05:23 ID:ByhKGjAo0


何とか野丸から逃げおおせた4人は商店街近くの民家に身を潜めていた。
「くそっ、何も無えじゃねぇか!」
平山は悪態をつく。東の傷を治療するために家中を探したが、包帯はおろか絆創膏の一つもでてこなかったからだ。
仕方がないので何とか見つけたスポーツタオルを東に宛う。
「すまない、平山君……」
東の顔は明らかに生気を失っていた。
腕のこともあるだろうが、それ以上にチームメイトであった野丸に撃たれたことの方がショックだったのだろう。

平山が東のことで四苦八苦する一方で、レッドは一人新たな決意を固めていた。
「平山、東のことは頼んだぞ」
「えっ、どういうことだよ?」
「俺は野丸を倒してくる」
「倒すって、も、もちろん殺したりはしないよな!?」
平山はレッドをすがるにように見つめるが、レッドの首は無情にも横に振られた。

「どうしてだよ!あいつはお前らのチームメイトなんだろ?
 だったら何で殺すなんて言えるんだよ!!」
平山の怒声が飛ぶ。
だが、そんな叫びを余所にレッドは極めて冷淡に答えた。
「今のあいつはチームメイトではない。人に害を為す悪だ。そして、その悪を始末することこそがヒーローである俺の使命だ」
「っこの野郎!!」
思わず平山は手を振り上げる。
が、東の右腕に阻まれ振り下ろされることはなかった。
「東さん!?何で邪魔すんだよ!!」
「すまない、平山君。……レッド、行ってくれ」
東は平山の腕を握りながら、レッドのことを促す。
「悪いな、東。それとだ、東のこともあるからお前達は病院に行っていてくれ。
 俺も問題が片づいたらすぐに駆けつける」
そう言い残し、レッドは民家から出ていった。

115 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 22:06:44 ID:ByhKGjAo0


「……何でレッドを行かせたんだ?チームメイトが死んでもいいのかよ!?
 仲間ってのはな、死んじまったらもう二度と会えないんだぞ!!」
亀田のことを思い出しながら平山が叫ぶ。
「俺だって野丸君には死んで欲しくないさ!!だけど、仕方がないんだよ……!
 彼をほっといたら俺以上の悲劇が生まれる。それを止めるにはこれしかないんだ!」
東のもまた思いの丈をぶつけた。

嵐のような激情が過ぎ去り、虚脱が二人を襲う。
そして、平山がポツリと囁いた。
「……大声出してすいませんでした。傷、痛むでしょ?早く病院に向かいましょう」
「……そうだね。俺の方こそ平山君の気持ちを考えずにレッドを行かせちゃって悪かった」
そして、そのまま3人は民家を後にした。

民家を出てすぐの事だ、それにまず気づいたのはほるひすだった。
東の方を向きながらほるひすは立ち止まる
「どうした、ほるひす?」
不審に思った平山もまた耳を澄ませながらほるひすの目線を追う。
そして、平山の目に飛び込んできたのは紛れもなく車のシルエットであった。
そのことを頭が感知した瞬間、無意識の内に彼の体は車道へと飛び出していた。

116 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 22:07:41 ID:ByhKGjAo0


ひょんなことから行動を共にすることとなった島岡武雄と神条紫杏の二人は車で商店街へと向かっていた。
映画館での話し合いの結果、まずは情報を集めるのが先決だという神条の意見を採用したためである。

商店街への道すがら、二人は軽く自己紹介も兼ねた情報交換を行った。
だが、互いに警戒し合ってか出てくる情報は毒にも薬にもならないことばかりである。
二人にとって有益だったのは、どちらも人を殺す気がないということだけであった。
……それもどこまで信用していいのか分からないものであるが。
そのため、車内は不穏とまではいかないが、何か張りつめた雰囲気に包まれていた。

映画館を出発して幾ばくか、日は殆ど昇り朝の訪れを感じさせる。
間もなく商店街に到着しそうだ。
そんな時であった、突然横道から人影が飛び出し、島岡は車を急停止することを余儀なくされる。

117 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 22:10:09 ID:ByhKGjAo0

「バッキャロー!!死にてぇのか!?」
島岡は窓を開き、その人影一一平山に向かって怒声を飛ばす。
神条もまた用心してかデイパックからコルトガバメントを取り出していた。
そんな二人を余所に、平山は運転席まで近づくとおもむろ腕を伸ばし、開いた窓から島岡の胸ぐらを掴み、叫んだ。
「頼む!仲間がピンチなんだ、病院まで連れて行ってくれ!」
「す、少し待て。ま……まずは首から手を、離……せ」
「あ、悪ぃ」
慌てて平山は手を引っ込める。
呼吸を整えてるため会話ができない島岡に代わって、神条が話を続けた。
「病院ということは、君の仲間が何らかの戦闘に巻き込まれて負傷したということか?」
変な口調の女だ、と思いながらも平山は首を縦に振る。
「だが、いきなり病院といってもこちらの都合も有る。まずは本人の容態を見ないことには何とも言えん」
「少し待ってくれ……。ああ、ちょうど追いついたみたいだ」
そう言って平山の指さした先にはほるひすに背負われた東の姿があった。
「あいつか、なるほど重傷だな。………………分かった、病院まで送ろうじゃないか。島岡さん、頼めますか?」
神条はようやく呼吸を整え終わった島岡に同意を求める。
「いや、ま、あんたがいいってんならかまわないけどさ」
意外、といった顔で島岡が答える。
「おい、聞こえただろ?そいつを早くを車に乗せろ」
平山の顔が喜色で一杯になった。
「東さん、病院まで連れてってくれるってさ!」
平山はほっと胸をなで下ろし、東とほるひすまで近づいていく。
だがその時、背後から聞き覚えのある声が響いてきた。

「東さん見ぃ〜つけた」
そこには東を負傷させた張本人、野丸が立っていた。
野丸はウージーの引き金に指を掛け、今にも引こうとしている。
だが、弾は放たれることはなく、代わりに周囲が紅い閃光に包まれた。

118 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 22:11:39 ID:ByhKGjAo0

カレー屋、漢方薬屋、古本屋etc……。
「さっきも気になったけど、やっぱりここってあそことそっくりよね」
そう白瀬は一人ごちた。
あそこ、とは彼女の職場のほど近くにあるブギウギ商店街のことである。
そして、彼女はおもむろに雑居ビルに入るとそのまま屋上まで登った。
屋上まで通じるドアの先からは人の気配が感じたが白瀬は躊躇わず扉を開ける。
その先には彼女の同盟相手一一愛の姿があった。

白瀬は手分けして偵察に当たっていたパートナーに成果の程を尋ねる。
「鉄砲みたいなのを持った若い男が一人で誰かを捜してた。
 あと、最初に殺された奴がいたじゃない?
 それの色違いの奴も見つけたわ。こっちの方は結構手強そうだったけどね。そっちは?」
「個人的に気になることはあったけど、特にめぼしいことはなんも無かったわ」

情報の整理が済むと早速作戦会議に移った。無論それは効率よく人数を減らすためのものである。
二手に分かれての偵察もそれの一環であった。
白瀬の差し当たっての行動方針は強敵は後回しにしての戦力増強である。
そのためには、一人でいる弱者を狙うのが一番効率がいい。
そのターゲットを見つけるための偵察だ。

119 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 22:12:29 ID:ByhKGjAo0
話し合いの結果、まずは若い男の方を狙うこととなった。
赤尽くめの方を今襲うのは危険と判断したためである。
もし赤い男が茶色と同程度の力を持っていたら、いらぬ損害を得ると考えたからだ。

作戦を立て終えた白瀬はなんと無しに下界を見下ろし、そして、それに気付いた。
そこからの行動は早かった。すぐにデイパックからパンツァーファウストを取り出し、構える。
「何をする気?」
「ん〜、ちょっとね〜」
口調はおどけているが、目は完全にハンターの目だ。
(風は無くて、晴天か。コンディションとしては上々ね)
良く狙いを定め一呼吸を置き、引き金を引く。

数秒後、辺りに爆発音が轟いた。

弾頭の顛末を見終えると白瀬は一仕事終えた様な顔で愛に声を掛ける。
「じゃ、戦利品を回収しに行きましょうか」

120 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 22:18:15 ID:ByhKGjAo0

「ぐっ、今のは……?」
周囲の煙が立ちこめる中、神条は目を覚ました。
突如として起こった謎の爆発。その衝撃により、彼女はほんの一時的にだが気を失っていたのだ。

彼女はそれを敵の襲撃と結論付け、同行者の安否を確認しようとする。
だが、彼女の目に入ったのは空っぽの運転席に開いたままのドアであった。
それと同時に神条は自分のデイパックが無くなっていることにも気付く。
(くそっ、抜け目ない奴め……!)
だが、幸いにもコルトガバメントの方は足下に転がっていた。
衝撃が来たときに思わず手を離したためであろう。

島岡がいなくなっていたことから車が動かない状態にあると判断し、神条は銃を片手に車の外に出た。
そして、彼女の視界に映ったのは、表面が多少焦げてるほるひす、さしたる傷を見受けられない東、そして……

彼を庇ったがために背中が焼きただれ、片足の無くなっていた平山の姿であった。

「あ、ああ……」
「東さん……、無事なようだな」
「平山君!何でこんなことを!?」
「か……らだが勝手に、う、動いてたんだよ……。俺のことはいいから、は……早く逃げて……くれ……」
「そんな!君を置いて行けるわけないだろ!?」
だが、平山の願いとは裏腹に東はなかなかその場を離れようとしない。

そんな状況を見かねてか、横から見ていた神条の檄が飛んだ。
「くどい!見ればわかるだろう、この男は手遅れだ!いつまた襲われるか分からんのだぞ!?
 今の我々に出来るのはこの場を離れることだけだ!おい、そこのお前、こいつをとっととどこかへ連れて行け!」
「わかったよ」
「やめろ、ほるひす!平山君!平山君!!!!」
そう言うとほるひすはひょいと東のことを抱きかかえ、森の中へと消えていった。

「感謝……するぜ」
「奴を病院に連れて行くと言ってしまったしな。約束を果たそうとしたまでだ」
「……あんた、名前は」
「神条紫杏。……最期に、何かあるか?」
「へへ、……優しいな、あんた。じゃ、じゃあ、妹に……伝えて……くれ。
 もう、守……れ……なく……てゴメ……ンって。
 あと……あ、あいつら……に絶対生きて……帰」
それが平山の最期の言葉だった。

「その言葉、確かに伝えよう……」
平山の最期を看取った後、神条もまた森の中へと消えていった。

【平山 紀之@パワプロクンポケット1 死亡】
【残り45名】

121 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 22:19:03 ID:ByhKGjAo0
【E-3/一日目/早朝/放送直前】
【東優@パワプロクンポケット7表】
[状態]頬に小さな傷、甲子がやや心配、左腕重傷、傷心
[装備なし]
[道具]詳細名簿、支給品一式
[思考]
1:平山の死を悲しむ
2:病院へ向かい、その後レッドと合流
3:野丸をどうにかしたい
4:甲子君……

【ほるひす@パワプロクンポケット6表】
[状態]表面が焦げてる
[装備なし]
[道具]支給品一式、不明支給品0〜2
[思考]
1:ひらやま……
2:びょーいんへむかう
3:こうしはどーしよう

【神条紫杏@パワプロクンポケット10】
[状態]健康
[装備]コルトガバメント(7/7)
[道具]なし
[思考]
1:平山の言葉を伝える
2:東を病院まで連れて行く
3:出来ることならカズと朱里、十波には死んでほしくない。が、必要とあらば……
4:島岡から荷物を取り返したい
[備考]
1:この殺し合いをジャジメントによる自分に対する訓練か何かだと勘違いしています

122 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 22:20:53 ID:ByhKGjAo0
平山が逝ってからまもなく、白瀬と愛はこの地に辿り着いた。
「ロケットランチャー使って2人か〜。車の強度を見誤ったわ。少しもったいなかったかな」
そう愚痴をこぼしながらも白瀬は平山のデイパックを回収する。
そして、野丸のものも回収しようとした時、そこに正義のヒーローが姿を現した。
「爆発音が聞こえたから来てみれば……。お前達、さっきの会話はどういうことだ!?」

だが、白瀬からの返答がない。代わりとばかりに4発の弾がレッドに襲いかかる。
だが、その悉くをレッドは紙一重で避け、一気に間合いを詰めようとする。
が、その突進は横合いから投げられたフライパンによって阻まれた。
急停止したレッドにすかさず銃弾が飛ぶが、今度は大きく後方に跳躍することで回避、再び間合いが大きく開く。

レッドと白瀬、愛は睨み合い、二度目の攻防が始まろうとする正にその時だった、レッドは予想外の方向からの攻撃を受ける。
何とかそれを回避したレッドの視線の先には、死んだと思われた野丸が立っていた。

レッドの注意が一瞬野丸に向けられる。
その隙を白瀬は逃さない。
「愛!撤退するわよ!」
「承知!」
白瀬と愛はレッドに背中を見せ、逃走を開始する。
「待て!」
慌てて、レッドも後を追おうとするが、再び野丸の攻撃によって阻まれた。
そうしている内に2人の影はどんどん小さくなっていき、遂には見えなくなった。

「野丸!!貴様はあいつらの仲間だったのか!」
「仲間〜?そんなの僕にはいませんよ。けど、流石だね、レッド。あの攻撃を全部避けちゃうなんて。
 これじゃ勝てそうにないなぁ。そういうわけで僕も退かせてもらうよ」
「待て!せめて貴様だけでも……!」
そう言い、レッドは野丸に飛びかかろうとするが、それより早く、野丸はデイパックから幾つもの手榴弾を辺りにぶちまける。

レッドの目の前で再び爆発が起こり、煙が晴れた時、そこに野丸の姿は無かった。

「くそっ、くそおぉぉぉぉぉぉ!!!!俺は、俺は…………!!」

123 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 22:21:52 ID:ByhKGjAo0
【E-2/一日目/早朝/放送直前】
【白瀬芙喜子@パワプロクンポケット8表】
[状態]健康
[装備]ベレッタM92(8/15)
[道具]支給品一式×3(不明支給品0〜2)、予備弾倉×5、さおりちゃん人形@パワポケ6裏、ケチャップ(残り1/4程度)、煙幕@パワポケ5裏×2
[思考]
基本:優勝する
1:レッドから離れる
2:戦力増強のため弱者から倒す、強者は後回し
3:愛と共に行動する
4:もし八神が参加していれば最優先で殺す

【愛@パワプロクンポケット5裏】
[状態]右脇腹に傷(応急処置済み)
[装備]なし
[道具]支給品一式
[思考]
1:レッドから離れる
2:自分が生き残ることが第一
3:そのためなら白瀬や他の人間を殺すのもやむ終えない
4:一先ずは白瀬と共に行動する

【野丸太郎@パワプロクンポケット7】
[状態]全身に軽度の火傷
[装備]ウージー
[道具]支給品一式(不明支給品0〜1)、予備弾倉×2、手榴弾@パワポケ10裏×5
[思考]
基本:普通に過ごす
1:レッドから離れる
2:生き残るために人を殺す
3:東を自分の手で殺したい

【レッド@パワプロクンポケット7表】
[状態]ヒーローとしての苦悩、殺人者に対する激しい怒り
[装備]なし
[道具]支給品一式、ナオのリボン、超人ライダーボトルキャップ、ゴーカート
[思考]
1:野丸or2人組(白瀬、愛)を追う
2:1の後病院に向かう
3:レッドとして反省し、ブラウンの分も悪を倒す
4:甲子、東、ほるひすと協力する……必要はあるのか?
5:甲子のことはどうしよう?

124 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 22:23:02 ID:ByhKGjAo0
島岡は一人、もと来た道を引き返していた。
(畜生、何なんだ!?あんなのテロと一緒じゃねえか!)
必死に足を動かし、爆心地から離れていく。

ここまでくれば安心か……。
島岡がそう胸を撫で下ろした刹那、銃声と共に自身の右足に猛烈な痛みが走った。
「うがああああ!?」
再び銃声、今度は正確に左膝から血が噴き出す。
バランスを崩した島岡はそのまま倒れ伏した。
そして聞こえる三つ目の銃声。今度は右肩に激痛が走る。

「ど、どうか命だけは助けてくれ!」
島岡は見えない敵に向かっての命乞いをするしかなかった。それが功を奏したのか4発目の銃声は聞こえてこない。
「まずは質問に答えてもらうわ。あなたは何かから逃げてきたみたいだけど、何が起こったのか簡潔に答えて」
代わりに女性の声が島岡の耳に届く。

命が懸かってるのだ、島岡は必死に先ほど自分の身に降りかかった厄災を事細かに説明する。
「じゃあ、襲撃者の顔は見てないのね?」
「あ、ああ。急に車が爆発したんだ。周りには誰もいなかった」
「あと、神条紫杏、高校生の2人、そして着ぐるみはゲームに乗ってないってのも確か?」
「それも本当だ!ここまで話したんだ。なあ、いい加減助けてくれよ」
「……ゴメンね。私はどうしても茜を助けなくちゃいけないの」

女一一リンはそう呟くと、今度こそ4発目の銃声が空に響いた。

【島岡 武雄@パワプロクンポケット6 死亡】
【残り44名】

125 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 22:23:45 ID:ByhKGjAo0
【F-3/一日目/早朝/放送直前】
【リン@パワプロクンポケット8】
[状態]健康
[装備]グロッグ19(8/15)
[道具]支給品一式×3、劣化版探知機、ヒヨリンセット(化粧品中消費)、支給品一覧表
[思考]
基本:一先ずノルマの三人殺しはクリアしておく
1:情報を集める
2:八神と茜は何としてでも生き残らせる
3:探知機が存在するのなら入手しておきたい
4:第五回放送の前に役場へと向かう

126 ◆IvIoGk3xD6:2008/12/27(土) 22:25:16 ID:ByhKGjAo0
投下終了です
タイトルは、華麗なるかな二流、です
誤字、矛盾等があったらお願いします

127代理投下:2008/12/28(日) 01:32:19 ID:Hjf/dawM0
代理投下していた者ですがさるさん規制くらいました…
誰か残りの投下をお願い…します…

128紅に染まった、この俺を ◆7WJp/yel/Y:2008/12/31(水) 23:59:50 ID:5UQ9rgI60
さるさんに引っかかったのでこちらに

129紅に染まった、この俺を ◆7WJp/yel/Y:2009/01/01(木) 00:00:29 ID:qrQ05/Vo0


   ◆   ◆   ◆   ◆


曽根村は苛立ちながら明日香の手を引いた状態で走っていた。
思わず舌打ちを漏らしてしまうほど苛立っている。
先ほどまでは上手く行っていたはずだった。
あの男が来ても何とか撒けるはずだ、こちらには拳銃があるのだから。

それがどうだ。
結果は大事な剣でもあり盾でもある鋼を失い、残ったのは足手まといとしか言えない明日香だけだ。
まだ明日香を殺すつもりはない、明日香にはかろうじて利用価値が残っている。
殺し合いに消極的な人間達とコンタクトを取りやすくなるという利用価値が。
殺し合いに消極的ならばこちらが向こうへ害をなさない限り協力的な対応を取るはずだ。
だが、それだけでもこちらを信用するかどうかはわからない。
しかし、明日香が居ることで曽根村は『怪しいオジサン』から『か弱い女子高生を守る優しい中年』
という評価に変わる。

逆に言えば、明日香にはそれだけの価値しか残っていないと言うことになるが。

「進藤さん、少し物陰で休みましょうか」
「いやぁ……なんでぇ……? こんなの……いやぁ……」

思わず舌打ちをしそうになるが何とかこらえる。
明日香を無理やり引っ張り物陰に隠れ、地べたに腰を落とす。
曽根村も若くない、体力の切れが早くなっている。

(元々、私はデスクワークが専門なんですから……)

所詮はただの副社長である曽根村ではどこぞのタイムパトロールや特命ハンターのように
動き回りながら頭をフル回転させるなんて器用な真似が出来るわけがない。
だが、その専門の頭脳ならば殺し合いに呼ばれた中でもトップクラスに入るのは間違いない。

(目下の目的としては鋼に変わる人間が欲しいですねぇ)

それが手に入れば明日香は要らない、茫然自失な状態では足を引っ張るだけだ。
他に同行者が出来ればさっさと『処分』してしまった方が良いだろう。

(黒いヒーロー、高科奈桜、真っ赤な手を持つ進藤の知り合い……
 こんな危険な場所でうろつきたくないんですがねえ)

襲われた場合に頼れるのは自分だけだ。
と言っても、明日香を盾にする方法も残されている。

(先は長いですねぇ……何人死んだかはわかりませんが、さっさと終わらせたいものです)

昇ってくる太陽をぼんやりと眺めながら、曽根村は生き残るために頭を必死に働かせていた。

130紅に染まった、この俺を ◆7WJp/yel/Y:2009/01/01(木) 00:01:31 ID:qrQ05/Vo0
……あれ? 出来た
すみません、お騒がせしましたorz

131くだらねえこと言ってる暇があるんなら俺のパンツでも洗ってろ!:くだらねえこと言ってる暇があるんなら俺のパンツでも洗ってろ!
くだらねえこと言ってる暇があるんなら俺のパンツでも洗ってろ!

132名無しのバットが火を噴くぜ! :2009/01/07(水) 17:12:08 ID:n2/1qyQM0
申し訳ない、少しテストを

133管理人★:2009/01/07(水) 17:20:15 ID:???0
あ、あれ?

134第一回放送とその舞台裏 ◆7WJp/yel/Y:2009/01/07(水) 19:25:20 ID:n2/1qyQM0

〜〜〜〜〜〜〜♪

おはよう、諸君!
東の空を見るである! 美しい朝焼けが見えてきたであろう!
殺し合いという愉快なショーの最初に迎える朝としては素晴らしい朝焼けだとは思わないかね?
おっと、紹介が遅れたであるな。
我輩の名前はチバヤシ、チバヤシ公爵であ〜る!
勘のいいものは気づいたかも知れんが、そう、『公爵』である!
分かるであるか? 『公侯伯子男』、これの『公』に当たる公爵である!
そう! 我威亜党の幹部には爵位がつくのであるよ!
つまり、我輩は皇帝陛下の次に偉いということになるである。
ふふふ……悔しいであるか? 我輩が憎いであるか?
くぅー! これだから管理職はやめらない!
愚民共が地べたに這いずり回ってると思うとおかしくてたまらない!

……ん? なんであるか、チキン男爵?
ああ、わかってるである、発表であろう?

えー、ごほん。
少し脇道に逸れてしまったであるな。
では、まずは禁止エリアの発表である。
覚えてるであるか? 禁止エリアというのはその名の通りそこに入ってはいけない場所のことであるよ。
A−1と言えば地図のアルファベットのAと数字の1が重なっているエリアが禁止エリアになる。
わかったであるな? では、心して聞くが良い。
禁止エリアに踏み込んで首輪が、ボン、と爆破してあのガキのような無様な死に方をしないようにな。


以上、上から順番に禁止エリアとなっていくである。
今すぐには禁止エリアにならないであるから
では次に……お待ちかねの死亡者の発表である!
メモは持ったであるか? 特別に一分だけ待ってあげようではないか。

……もういいであるか? では発表である!


以上!
……うむ! 最初の二人は陛下の手にかかったから引いたとしても○○人であるか!
四分の一以上も人間がわずか六時間の内に誰かの手にかかってしまうとは……
人間とは恐ろしいものであるなぁ〜♪

あ、そうそう。
デイバックの中にこの殺し合いに参加した人間の名簿を入れておいたである。
まあ、早めに目を通したほうがいいであろうなぁ〜
ではまた次の放送で会おう!
何人残っているか楽しみにしておこうではないか♪

135第一回放送とその舞台裏 ◆7WJp/yel/Y:2009/01/07(水) 19:26:29 ID:n2/1qyQM0
薄暗い部屋の中、二人の男が立っていた。
一人は服装は平凡なものだがトサカのような個性的な髪型をしている我威亜党幹部の一人、チキン男爵。
もう一人は奇妙な形の被り物と、マントが特徴的な我威亜党幹部、チバヤシ公爵だ。
この二人は主に現場進行を担当している。

「おいおい、公爵閣下よぉ。あんまり遊んでると陛下のお叱りがくるかもしれねえぜ」
「ふん、このような面白いものを目の当たりにして黙っていられるわけがないであろうが」

どうやら、チキン男爵がチバヤシ公爵に先ほどの放送について咎めているらしい。
確かに禁止エリアと死者の発表だけでいいところを無駄口を叩いて長引かせたのだからチキン男爵の発言はもっともだろう。
しかし、チバヤシ公爵は聞く耳を持たずにソファにもたれかかる。

「前にも言ったと思うが、我輩は管理職として色々と溜まっているのだろう。
 このような場で晴らさずに何時それを晴らせばいいのであるか?」
「まあ、言いたいことはわかるけどよ」

チキン男爵もため息をつきながら椅子に座る。
どちらかと言えば変人揃いの我威亜党の中で割と常識を持ってる彼が一番ストレスが溜まっているのだ。

「そう言えば秋穂公爵はどこであるか?」
「さあ、何か陛下に仕事でも言われてるんじゃないのか?」
「全く……寺岡子爵は寺岡子爵で篭りっぱなしであるし」
「皇帝陛下の持ってきた大量の機械に付きっ切りだったな。
 ……しかしよ、大丈夫なのか?」

眉をひそめてチキン男爵はチバヤシ公爵へと尋ねる。
チバヤシ公爵は何を尋ねているのか分からずに首を捻り、疑問を返す。

「何がであるか?」
「寺岡子爵だよ、あの作戦で完全に我威亜党とは切れたと思ってたんだが。
 裏切るかもしれねえ、いや、ひょっとすると既に裏切ってるかもしれないぜ」

チキン男爵が少し不安そうに語る。
一方のチバヤシ公爵は、なんだそんなことか、と一笑し、水を飲んでから再び口を開いた。

「大丈夫である、確かにあの女は組織に良くない感情は抱いているが……それだけであるよ。
 第一、この御時世にどこがまだ若い女に研究資金を出せる?
 そんな酔狂な組織、我威亜党を除けばまずない。
 しかも、ここには陛下が持ってこられた進みすぎた、そう、文字通り未来の技術がある。
 そんな場を放棄するような科学者はいないであるよ」

現代の技術、いや、人類が宇宙で問題なく生活出来るような技術が目の当たりにある。
それを目の当たりにして何もしない科学者はいないだろう。

136第一回放送とその舞台裏 ◆7WJp/yel/Y:2009/01/07(水) 19:27:29 ID:n2/1qyQM0

「で、そんなことよりも鉄人の様子は?」
「鉄人自体には問題ねえが……如何せん数が少なくてよ。
 あの作戦が失敗しちまったせいで、俺達は色んなものを失っちまったからな」

『あの作戦』――それは帝都を恐怖と混乱で沈めた大震災のことだ。
あれが成功すれば我威亜党は邪神の力を手に入れ、間違いなく世界を手にするはずだった。

「さて、そろそろお前は仕事に戻るである。
 人員が少ない以上、暇を持て余すなどあってはならないからな」
「へえへえ、公爵閣下もお仕事頑張ってくださいな」

こうして舞台裏も動いていく。
参加者以外の様々な人間の思惑も絡み合い、殺し合いと言う最悪の舞台は回っていく。

137 ◆7WJp/yel/Y:2009/01/07(水) 19:28:05 ID:n2/1qyQM0
仮投下終了です

指摘等をよろしくお願いします

138爆ぜる陰謀 ◆IvIoGk3xD6:2009/03/14(土) 23:45:06 ID:1zwcS2jc0
明日香が疑問に思う間もなく、パン、と一発の銃声が響く。
それと同時に明日香は胸の当たりに猛烈な熱を感じ、脚から力が抜け、そして崩れ落ちた。
「ど、どういうことですか……曽根村さん……?」
「どういうことって、決まってるじゃないですか。優勝するためですよ。
 まあ、もっとも今はそれだけじゃないんですがね。
 大江さんの話を聞いて私は心が震えるのを感じました。
 考えてもみてください、時間移動ですよ?使いようによっては神にも悪魔にもなれる。
 そこから見るとドリルコーポレーションのなんと小さなことか。
 だから、ただ優勝するだけではなく、亀田皇帝に気に入られる優勝でなくてはいけないんですよ」

明日香はただ曽根村の言葉を聞くことしかできなかった。
何かをしようにもどうやっても体に力が入らないからだ。
曽根村の言葉はなおも続く。
「ですから進藤さん、あなたのしようとしていたことは非常に鬱陶しい。
 説得に失敗してあなたが死ぬだけなら何でもないのですが、万が一にも三橋が改心してしまってはどうするんですか。
 ゲームを積極的に動かす者が少なくなる展開なんて皇帝は望んでないはず。
 それにね、新たな保護者の目処が立ちましたので、あなたもう用済みなんですよ。
 残念ですね、水族館に行くなんて言い出さなければもう少しは長生きできたのに」
「私は……三橋君を…………」
その言葉を最期に進藤明日香は息を引き取った。

明日香を葬った後、曽根村は返り血を浴びたシーツを元あった民家の中に隠し、次の目的地となる病院へと身体を向ける。
「さてと、病院には大江さんの仲間がいらっしゃるんでしたね。
 大江さんから話しを聞いたと言えば警戒はされないでしょう」
そこにはいつもと変わらない曽根村の姿があった。
鋼や明日香の死など何でもないように。

【進藤 明日香@パワプロクンポケット 死亡】
【残り41名】

139爆ぜる陰謀 ◆IvIoGk3xD6:2009/03/14(土) 23:45:58 ID:1zwcS2jc0
【G-6/一日目/朝】
【大江和那@パワプロクンポケット10表】
[状態]健康、頭にたんこぶ
[装備なし]
[道具]支給品一式(不明支給品1〜3)
[思考]
基本:バトルロワイヤルを止める
1:朱里と出会って説得する
【備考】
※重力操作にかけられた制限の存在に漠然と気付きました

【曽根村@パワプロクンポケット2】
[状態]右手首打撲
[装備なし]ナイフ、ブロウニング拳銃(3/6、予備弾数30発)
[道具]支給品一式
[思考]
基本:漁夫の利で優勝を目指す
1:病院へ向かい、大江和那の仲間と接触する
2:研究所へと向かう

140 ◆IvIoGk3xD6:2009/03/14(土) 23:47:04 ID:1zwcS2jc0
投下終了です
さるさん規制くらったので使わせてもらいました

141 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/02(火) 16:20:54 ID:aLQ0wvNk0
規制中のため仮投下します

142天使のお仕事 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/02(火) 16:21:24 ID:aLQ0wvNk0

             昔、彼女は一人の男と出会った。

           それ以前のことを彼女はよく覚えていない。

 その男が印象に強すぎたことと、どこに行っても似たような反応を取られたことが原因だろう。

 始まりは他愛もないものだったと記憶している、少なくとも彼女には他愛もないものだった。

             それを男はどう思ったのだろうか。

             彼女のことを天使と崇め、敬った。

             戸惑った、この上なく戸惑った。

            彼女は確かに天使と言えないこともない。

         ただ男が頭の中に描いている天使とは程遠い存在だ。

        人が築き上げた文明をリセットするだけのための兵器。

彼女は人に都合のいい『天使』ではなく、黙示録に書かれた審判の日に現われる『天使』に近しい存在だ。

       なのに、男は神を盲信する狂信者に似た瞳でこちらを見つめてくる。

          そんな男は思想家……らしい、あくまで自称だが。

       確かに頭は良かった。頭は良かったが、賢くはなかった。

           子供だった、と言っても良いかもしれない。

        でも、彼女はその日々が楽しかったのを覚えている。



       彼女は人を救いたかった。  彼は彼女が全ての人を救ってくれると信じて疑わなかった。


  彼女は自分の力の限界を知っていた。  彼は理想を見ることをやめようとしなかった。


      彼女はそれだけで良かった。  彼は彼女を守るために有志を募り始めた。


               彼女は。  彼は。

143天使のお仕事 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/02(火) 16:22:31 ID:aLQ0wvNk0


   ◆   ◆   ◆



『遺跡に眠れし三つの宝玉を揃えたとき、願いを叶える天使が現れる』

真相を知っているタケミからすればとんだ笑い話だ。
天使は願いを叶えなどしない、天使は元に戻すだけだ。
元に戻す、それは文字通り人間の居ない世界に戻すことだ。
だと言うのに、誰が天使が願いを叶えるなど言い出したのだろうか?
タケミには思い至る点がある。
それは、宇宙へ新たな母なる星を求めて旅立った天使なるモンスターの親にあたる創造主。
人を殺すのは人、天使はただの兵器にすぎない。
色合いの美しく香り漂う果物をぶら下げ、その実は一瞬で死へと至らす毒物。
それが天使にすぎない。

「で、お話しする気になったでやんすか?」

目を覚ますと、見知った声が聞こえた。
それはここに来る前のメガネをかけた愉快な仲間の声で、悪魔としか思えない邪悪な催しを開いた男の声で。
顔を見ると同じく仲間の、悪魔のような男の顔で。
ただ、雰囲気は違った。
仲間の賑やかな暖かさもなく、男の吐き気すら覚えるほどの邪悪さもない。
ただただ冷たい印象、それはわざと演じているのではない。
単純に、感情の元となる心の底が冷たいのだ。
「殺す気はないでやんすよ、安心するでやんす」とは言ったものの、どうも安心できない。
殺すつもりはないのは分かる。
本当に殺すつもりならさっさと殺しているつもりだ。
目撃者も居ないはずだ、ならさっさと殺してしまえばいいのだから。
だから、不安に感じているのなら命の危険ではなく目の前の男の不気味な印象。
故にタケミは口を開くのを躊躇った。
しかし何時までもそうしているわけにもいかない。

「……分かったよ、話す気分になったから」
「そいつは良い。じゃあ、早速一つ聞いて良いでやんすか?」
「良いよ……」
「早速でやんすが、お前は殺し合いに乗っているんでやんすか?」
「……そうだよ、少なくとも私は人を殺すつもりはない」

144天使のお仕事 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/02(火) 16:23:26 ID:aLQ0wvNk0

体の調子から感じていた。
タケミはもう天使の仕事をまっとうすることは出来ないだろう。
天使、いや、モンスターとしての力が全盛期と比べて大きく劣っている。
そして、それは仲間も同じだとモグラ乗りの仲間と遺跡を潜ったときに感じていた。
まだ力が残っている天使はいるかもしれない。
だが、少なくとも自分は違う。
もうお払い箱だ。だから、モグラ乗りについていこうと思ったのだ。
それがロマンというものなのだろう。
たかゆきの言っていた「自分は人間だ」というものと同じなのだろう。
少し考えてそう結論を出した。
たかゆきの言葉はモグラ乗りが言っていた『傷つけない娯楽人形はロマンだ』という言葉と同質のものだと。
……理解ができたわけではない。
タケミは天使だ、人を滅ぼす天使だ。
この触手も、溶解液も、全てが人を滅ぼすものだ。
人間が銃を使うのとは全く違う。

「そうでやんすか、そいつは都合がいい。
 なら何か秀でたところ、自信のあることはないでやんすか? たとえば、機械弄りとか」
「……機械なら直せるよ。もちろん道具が居るけど」
「ははは! これは都合がいいでやんすね! じゃあこいつを調べてくれないでやんすか?」

男はマントの下からぽいっと何かを投げつけてくる。
慌ててキャッチし手元を眺めた瞬間、タケミは顔から血が引いていく。

「これって……!」
「首輪でやんす。ちょっと死体からちょっぱって来たんでやんすよ」
「ちょっぱったって……!?」
「悪党でやんすよ、人を殺そうとした屑でやんす。何も気に病む必要はないでやんす」

首輪、メカ亀田にも帽子の男にも銃を持った少女にも恐らくタケミの首にも着いているだろう首輪だ。
参加者全てを殺し合いに強要させているもっとも大きな要因。
これがある限り、この島に居る全員は亀田なる男に命を握られていることになる。
それを調べてくれ、とメカ亀田は首から外れた血のついた首輪を渡してきたのだ。

「あんた……!」
「だから、オイラは殺しちゃいないでやんすよ。
 そいつだって最後の最後に人の役に立てて幸せなんじゃないんですか?」
「だからって、こんなこと!」
「……いちいちうるさいでやんすねぇ。
 じゃあ、何でやんすか? お前は一発勝負で自分の首についてるものを外すんでやんすか?
 凄い度胸でやんすね、オイラも見習いたいでやんすがそこまでの度胸はないんで今は無理でやんすね」
「それは……」
「……ま、嫌って言うなら構わないでやんすよ。
 無理やりやらせた腹いせにオイラの首輪を外すのに失敗する、なんてことになったら嫌でやんすからね」
「そんなことやらないよ!」

145天使のお仕事 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/02(火) 16:23:57 ID:aLQ0wvNk0
駄目だ、目の前の男とはひどく合わない。
確かに殺し合いに乗ってはいないようだが、命を軽く見過ぎている。
そこまで考えて、自分も人のことは言えないとタケミは思った。
むしろタケミが生まれた経緯を考えると、タケミ自身が命に対する冒涜だ。

「……そう言えば自己紹介がまだだったでやんすね、オイラはメカ亀田でやんす」
「亀田!?」
「そう、亀田を模して造られたロボットでやんすよ。と言っても、オイラは既に廃棄されたんでやんす」
「廃……棄?」
「そう、廃棄でやんす、処理所行きでやんすね。
 まあ、はい了解しましたとは受け入れないでやんすけどね。見事逃げきってやったんでやんすよ」

メカ亀田は口元はにんまりと歪める。
それを笑みだとタケミは一瞬分からなかった。

「お前は?」
「……タケミ」
「そうでやんすか。タケミ、お前は放送は聞いてないんでやんすよね?」
「うん」

タケミが頷くとメカ亀田はデイパックから地図と一枚の紙を取り出し、乱暴に渡してくる。
少しむっとしながらもタケミはその一枚の紙に目を通す。
愛、青野 柴夫……

「これって……?」
「名簿でやんす、気づけばデイパックの中に入っていたんでやんすよ。
 ……まるで、オイラ達が亀田の前からこの島に居たときとそっくりでやんすよ」
「テレポート、ってわけ?」
「理解が早くて助かるでやんす。
 何か、気がついたことがあったでやんすか?」

気づいたこと、と言われてもタケミには思い到ることがない。
完璧なテレポートなんてまだ無理なはずだ。
少なくとも核も出来ていない今の状態では。

「あれ?」

ということは亀田は自分たちを作った人間の子孫か何か?
それならばテレポートを使いこなしていても不思議でない。
だが、それをメカ亀田に言うべきだろうか?
まだ確定ではない情報、メカ亀田は好きなタイプではないがロボットと言うだけあって論理的思考をする。
タケミとてこんなところさっさと抜け出したい。
その時にメカ亀田は頼りになるだろう。
ならば無駄な情報を教えて混乱させない方がいいだろう。

146天使のお仕事 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/02(火) 16:24:31 ID:aLQ0wvNk0

「どうしたんでやんすか?」
「……ううん、そう言えば……その、あの女の子はどこに行ったのかなって思って」

タケミが話題を変えた先は少女の話題。
メカ亀田は、ああ、と呟いた興味もなさげに呟いた。

「知らないでやんすよ、オイラが周辺を見回ってた時にはもう居なかったでやんすよ」
「そっか……」

つまり、野放しというわけだ。
たかゆきを殺した人間が何処かで人殺しをしている。
それがどうにも気分の悪い話だ。

「……うん、ありがと」
「知り合いは?」
「……知り合いは居たけど、死んじゃったみたい」
「そうでやんすか……まあ、休んでると良いでやんす。
 少ししたら移動するでやんすからね」

メカ亀田はタケミの答えを聞かずに、マントを翻しながらタケミの視界から消えていった。
その姿を眺めて、少ししてから軽い溜息をつく。

「……」

音もしない工場の内部でタケミは考える。
たかゆきの言う『人間』という言葉、これからどうするかということ、メカ亀田が信用に値するかどうか。
そして、ある一人の男のこと。

(……目に見える人を救うだけで、良かったじゃない)


   ◆   ◆   ◆

147天使のお仕事 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/02(火) 16:25:04 ID:aLQ0wvNk0

「……やはりPXタイプでやんすね、それも初期の骨董品でやんす」

工場周辺、粗大ゴミかと思われる凸凹が目立つ機械の前にメカ亀田が立っていた。
タケミと別れたのはこれの確認が目的。

(状況から見て、こいつも参加者でやんすね)

近づいて損傷具合の確認を行う。
見た目はひどいが、データはある程度は無事のようだ。

(天才、唐沢博士が作ったロボット……当の昔に全部消えた骨董品だと思ってたんでやんす。
 ……きちんと整備されてるでやんすね)

今はPXタイプではなくBXタイプが着手されている。
だが、順番や性能ではなく唐沢博士の作ったロボットを亀田が連れてきたということがポイントだ。
亀田は唐沢博士と親交があった。
ひょっとすると、このPXタイプは唐沢博士の特別せいなのではないか?
少ししか喋っているところは見ていないが、高い自我を持っていた。
興味深いし、何よりロボットだ。
部品が自分が傷ついた際の修復に使えるかも知れない。

「備えあれば憂いなし……でやんすよ」

メカ亀田はにやりとほほ笑んだ。

唐沢博士、間違いなく稀代の天才と言える科学者だ。
あの科学者のお陰で数えきれない人間が助かり、あの科学者の所為で数えきれない人間が死んだ。
その科学者が製作したロボットがここに二つ。
一つはPX-001と呼ばれるロボット、たかゆき。
一つは第一世代と呼ばれる死から蘇ったサイボーグ、三橋一郎。

「データも興味深いでやんすねぇ……何か面白いものが入っているといいんでやんすが」

148天使のお仕事 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/02(火) 16:25:58 ID:aLQ0wvNk0

【B−7/工場/一日目/朝】
【タケミ@パワプロクンポケット10裏】
[状態]:疲労(中)
[装備]:作業着、コンパス、時計
[道具]:支給品一式、爆弾セット(残り5個)
[思考]
基本:殺し合いには乗らない、首輪を外すために行動する。
1:……人間、か。
2:今すぐに軍服の男(メカ亀田)がいる工場に入ることはしない。
3:出来るだけ戦いたくないが、どうしようも無ければ戦う。
[備考]
※モンスターとしての力は短時間、疲労大の条件の下、発動可。
※十波典明、高坂茜、メカ亀田の名前を知りません。

【メカ亀田@パワプロクンポケット6裏】
[状態]:損傷なし
[装備]:特になし
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜3個、青野の首輪
[思考]
基本:『殺し合い』を失敗させた後に亀田を殺す
1:工具とジャミング用の機械を見つける。
2:脱出のために役立ちそうな人間を優先して仲間にする
4:サングラスの男(灰原)に激しい殺意と敵意
[備考]
※参加時期は不明
※メカ亀田は灰原の名前は知りません
※自動追尾ミサイルとバリアーは没収されています
※青野の情報は全部嘘だと思っています。
※十波典明、タケミ、たかゆき、高坂茜の名前を知りません。

149天使のお仕事 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/02(火) 16:26:30 ID:aLQ0wvNk0
投下終了です。
金曜の朝に矛盾を気付いて……もう削るところ探して……すみませんでしたorz
削るところに悩んでリアルの事情が入って……orz

150天使のお仕事・修正 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/02(火) 22:07:06 ID:aLQ0wvNk0
失礼、状態票ミスしました
正しくはこちらです


【B−7/工場/一日目/朝】
【タケミ@パワプロクンポケット10裏】
[状態]:疲労(中)
[装備]:作業着、コンパス、時計
[道具]:支給品一式、爆弾セット(残り5個)
[思考]
基本:殺し合いには乗らない、首輪を外すために行動する。
1:……人間、か。
2:出来るだけ戦いたくないが、どうしようも無ければ戦う。
[備考]
※モンスターとしての力は短時間、疲労大の条件の下、発動可。
※十波典明、高坂茜の名前を知りません。

【メカ亀田@パワプロクンポケット6裏】
[状態]:損傷なし
[装備]:特になし
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜3個、青野の首輪、PX-001(たかゆき)
[思考]
基本:『殺し合い』を失敗させた後に亀田を殺す
1:工具とジャミング用の機械を見つける。
2:脱出のために役立ちそうな人間を優先して仲間にする
4:サングラスの男(灰原)に激しい殺意と敵意
[備考]
※参加時期は不明
※メカ亀田は灰原の名前は知りません
※自動追尾ミサイルとバリアーは没収されています
※青野の情報は全部嘘だと思っています。
※十波典明、たかゆき、高坂茜の名前を知りません。

151 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/18(木) 01:20:02 ID:D7vF8T0.0
規制されてるので仮投下をば

152名探偵の呪縛 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/18(木) 01:20:35 ID:D7vF8T0.0

木が覆い茂った森の中を二つの影が蠢いている。
その速さから見るに、影は走っているようではない。
かと言って、歩いているようにも見えない。
二つの影は全力で走るほど速くはなく、歩くほど遅くもないというスピードで森の中を移動していく。

「親父、何か見えたか?」
「いーや、人っ子いないぜー」

その影の正体は、神出鬼没、頭脳明晰、容姿端麗、行動力抜群の名探偵こと七原 正大。
そして、自称世界的考古学者、七原正大の父の布具里である。
探偵と言うよりも冒険者の七原、現在進行形で火事場泥棒のように遺跡を漁っていく布具里。
その二人にとって森の中を素早く通り抜けることなんて目を瞑っていても出来るぐらい慣れたことだ。
何せ獣すら通らない道なき道を行かなければならないことだって数あるのだから。
どのようなスピードが最もエネルギー効率がいいのかも熟知している。

「やっぱり、森の中には居ないよな」
「で、どうするんだ息子よ。発電所やら研究所やらには行かなくてもいいのか?」

山の三合目ほどを横這いに移動してきた二人だが、それよりも上にある二つの施設には行っていなかった。
その理由はいくつかあるが、単純にそこまでの時間がない、というのが最も大きなものだ。
残り十二時間を切り、未だに仲間はおろか注意を促す必要がある危険人物にすら出会っていない。
山へと迂回しながら街を向い、丁寧に整備されているであろう道を使ってホテルに向かう。
それが七原のたてたとりあえずの予定。
だが、それでいいのか?という不安が渦巻いてきた。
その原因は先ほど聞こえてきた放送での死者発表に他ならない。

(青野さんや、鋼……それにタマちゃんまで死んでしまうなんて……!)

呼ばれた名前には冒険を共にした仲間の名前が呼ばれた。
それもどの仲間も一癖も二癖もある猛者。

(しかも、タマちゃんと鋼は死んでたはずだろ……?)

帝都で起こった大地震によって現れた化け物。
あの化け物の前に倒れ、死んでいったであろう七原と二人の仲間。
その二人の仲間も、出会う前に死んでいってしまった。
そして、帝都のその後を詳しく知っている可能性の高い青野さんもまた同様に死んでしまった。
ふと、隣に映る中年の姿を見て疑問が浮かぶ。

「……そう言えば、親父」
「なんだー?」

隣から聞こえてくるのんびりとした声に、少し苛立ちを覚える。
こちらは生き残ろうと必死だと言うのにどうしてもこうもマイペースなのだ、と。
なるべくその苛立ちが前に出てこないように、声を抑えて尋ねる。

153名探偵の呪縛 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/18(木) 01:21:41 ID:D7vF8T0.0

「親父は俺から300円借りに(貸さなかったけど)来たあとは何してたんだ?」
(※注! この時代の1円は今の5000円の価値があります。つまり150万円です。非常識極まりない)

七原はひょっとすると布具里も我威亜党に何かちょっかいを出していたのではないか、という考えが浮かんだのだ。
それに、純粋な興味と言うのもあった。
七原や妻を放っておいてまで何をしていたのか、という興味が。

「んー……いつも通りだな。遺跡に行って、そこで調べたことを大学のお偉いさんに教えて……」
「なんだ、また遺跡漁りか」
「おいおい……ちょっとはお父さんの仕事に興味を持とうと思わないのか、我が息子よ?
 たまには、お父さんすごーい!僕も将来はお父さんみたいになる!、とか言ってた頃を思い出せよ」
「言ってないから! そんなこと言ってないから!」

昔から家族をおざなりにして遺跡を巡っていた父。
そんな駄目父に憧れることはない。
……奇しくも父と同じく冒険者、そして(父の借金が原因とはいえ)膨大な借金を抱えることになったが。

「ったく、親父は相変わらずだな……」
「相変わらずってなんだ、息子」

無駄口をたたき合いながらも足を止めずに前へと進んでいく。
いつかこんな父を尊敬する日が来るだろうか、なんて話を考えて馬鹿らしく笑えてくる。
少なくとも、借金がある限り父を尊敬する日など来ないだろう。

「っと、神社が見えたな」
「普通だねぇ、特に歴史的価値はなさそうだ」
「……無理するなよ親父。息子の前でカッコつけたいのは分かるけど」

無駄口を止めることなく進んでいく。
七原は銃を懐に備え、布具里も何かをしようとするものの息子に銃を巻き上げられて何もない無手で進んでいく。
そしてかなりの距離まで近づき、とりあえず門をくぐって中に入ろうと正面に回った時だった。

「おっと! そこを動くなよ!」
「……そう来るよなぁ、普通は」
「あらら……」

目の前には猟銃を構えた一人のボロを着た男。
七原と布具里が放送の前に出会った九条という男とよく似ている。
こちらをじっくりと観察するかのような眼をして、直ぐに障害物へと体を滑らせれる位置に居る。
猟銃はボルトアクション、つまり再装填に時間がかかるため最初の一撃を避ければ危険度は格段に減る。
だが、七原の目的はあくまで向こうも予想以上に落ち着いている。
焦らなければいい関係が気付ける、と思いたい。

154名探偵の呪縛 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/18(木) 01:22:29 ID:D7vF8T0.0

「よし、手をあげな。変な動きするんじゃねーぞ」
「はいはい……」

銃は懐にしまい、手を上げて向こうの出方をうかがう。
布具里が何かをしないかと七原は内心ひやりとしていたが、幸い手を上げている。

「んじゃあ、単刀直入に聞く。お前らは殺し合いに乗っているのか?」
「乗っていない」

男の台詞に間髪をいれず答える。
敵意はない、それを分からせるのはひどく難しい。
何故なら人は嘘をつけるし、それが常識だから。

「……そうか、だが動くなよ? 悪いが簡単に信じるわけにはいかないんでな」
「分かった。こっちも撃たれちゃ堪らないからな」

そう言いながらも、男は猟銃を放そうとはしない。

「少し話があるんだけど……ここからの話をするってこと良いかな?」
「構わないぜ」
「手を組まないか?」

顔を見ずに猟銃と腕だけを観察する、怪しい動きを見せればすぐに避けれるように。
男に撃つ気配はないとは言え、油断はできない。
考える素振りは見せているのに隙は見せない。
少なくとも修羅場や危険にはなれているようだ。

「……ちょっと待ってろ。仲間を呼ぶ、詳しい話を聞くのはそれからだ」


   ◆   ◆   ◆


「……」
「……」
「……」

155名探偵の呪縛 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/18(木) 01:23:03 ID:D7vF8T0.0

本堂の中に居るのは三人の男女の若者。
その誰もが口を開くことはなく、俯いたまま目を合わせようとしない。
その理由は先ほどの放送だ。
十八人、十八人もの人間が死んだのだから当然とも言えよう。
最初の二人は亀田と言う元凶に殺されたとしても、残りの十六人はこの島に居る人間が殺したのだ。
それが一人なのか、それとも十六人なのか、それとも人を殺した人間も全員死んでしまったのか。
いずれにしろ落ち着かない。
しかも、天本玲泉は知り合いである島岡武雄を失くしているのだ。
穏やかでいれるわけがない。

「……天本さん、春香ちゃん。俺、ちょっと椿さんのところに行ってくるから」
「え……?」
「椿さんばかりに見張りを任せてるのもまずいからね」

そう言うと足早に七味東雅は二人から離れていった。
ここに居づらくなった、と言うよりも居ても立っても居られない、と言った風だ。
だが、残された彼女と倉見春香には沈黙が続いていく。
先ほど出会ったばかりなのだ。
話す共通の話題もないし、話す気力もない。

「先輩……」

春香がぽつりと漏らした一言。
玲泉も少し居心地が悪かったのだろう、その言葉を拾うことにしたようだ。

「倉見さんは七味さんと仲が良いんですね」
「え? え、ええ、そうですよ! 先輩と私は恋人ですからね!」
「恋人……そうですか、道理で倉見さんは七味さんを信頼するわけですね」
「えへへ……あ、でも、先輩が少し変なです」
「変……ですか?」

玲泉が思い出す限り七味に妙なところはなかった。
むしろ何とかして殺し合いから脱出しようと必死になっていることから頼りになるぐらいだ。
それとも日常では情けない、と言うより穏やかな性質なのだろうか。
そこまで思って玲泉の頭に一人の男が思い浮かぶ。
知っている限り、最もあり得ないことを実現させた人間。
そして玲泉のいま最も大切な人間。
島岡が死ぬのにショックを受けたと同時に、彼が居ないことを大きく安堵した。

156名探偵の呪縛 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/18(木) 01:23:33 ID:D7vF8T0.0

「先輩、私のこと知らないって言ったんです」
「え?」
「……私とここに来てから会ったとき、私のことを知らないって言ったんです」
「どういう、ことですか?」

いまいち理解が出来ない、と言う風な表情で問いかける。
倉見も困ったような表情で語り始める。
愚痴を零し始める、と言い換えてもいいかも知れない

「先輩……全部忘れちゃったんです。私とデートしたことも、初めて会った時のことも……」
「……では、これから作っていくというのはどうですか?」
「え?」
「これから、作っていけばいいんですよ。
 忘れたものを思い出すことに時間をかけるよりもよっぽど有意義ですよ」
「これから……」
「ええ、これから楽しいことをして、これからもう一度恋人になればいいんですよ」

積木が崩れれば積み直せばいい。
砂の城が波で壊されたらまた作り直せばいい。
それは簡単なことだ。
何故積木が崩れたか、とか、何故波がここまで届いたか、などを考えるに比べれば、とても簡単なことだ。
出来る筈だと玲泉は漠然と思う。
あの人が自分を忘れてしまう。
それはとても悲しいことだろう。
だけど、そこでめそめそ泣いているようなことはしないだろう。

「泣いていてくるような幸せはいりません。そんな幸せはこちらから願い下げですよ」
「……凄いですね、天本さん」

玲泉の言葉に心の底から感心したように春香は呟く。
その様子をどう思ったのか、玲泉は相変わらず笑みを絶やさずに言葉を紡ぐ。

「そうですか? 私は倉見さんの明るさが凄いと思いますよ。心から笑う、というのは難しいですから」
「それだけが私の取り柄ですから!」
「ふふふ」
「えへへ!」

先ほどまでの沈黙は何処かへと行ってしまった。
二人は笑いながら、ここを脱出しようと心に誓う。

157名探偵の呪縛 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/18(木) 01:24:09 ID:D7vF8T0.0

「東先輩も居ますからね! みんなで脱出してまた先輩と一からスタートします!」
「私も、あの人の居る島に帰りたいですからね……」
「え、あの人って?」
「私の、そう、大事な人ですよ」
「え、そうなん」
「おーい、二人とも―!」

春香の言葉を遮る形で七味の声が聞こえてくる。
その声に春香は嬉しそうな表情を浮かべ、玲泉はそれを見てクスリと笑う。
ひどく和やかな雰囲気だ。
出ていくまでの雰囲気しか知らない七味は少し不思議そうに首をひねる。

「人が来てる。椿さんが言うには殺し合いには乗ってないらしい。
 それでその人たちをどうするかで俺たちの意見が聞きたいってそうだ」
「人が……東先輩じゃ、ないんですよね?」
「ああ、知らない人たちだ。とにかく来てくれ」

その言葉に少し緊張しながら七味の後ろへ着いていく二人。
どんな人間が居るのか、その人は本当に殺し合いに乗っていないのか。
いろんな疑問が頭に渦巻きながら、椿の傍へと来た。

「よう、お嬢ちゃんたち。早速で悪いが、少し話し合いと行くぜ。
 こればっかりは俺が一人で決めるわけにはいかないから」

椿の言葉に何も言わずにただ頷く。
そして横目でその殺し合いに乗っていないらしい二人を見る。
一人はハンチング帽が特徴的な男。
もう一人は真っ白な服とあり得ない顔の骨格が目を引く男。
見ただけではどんな人間かは分からない。

「よし、話し合いだ。言っとくがそこから動くなよ」
「分かってる、そしてこっちは一つだけ聞きたいことがあるんだ。まずはそれから聞いて見ていいかい?」
「……良いぜ、言ってみな」

話は椿とハンチング帽の男が中心で進むようだ。
恐らくその話を聞いて私たちが決めろということなのだろう。
三人は一言も聞き逃さないように沈黙する。

「……今が何年の何月何日か、わかるかい?」
「…………あん?」
「馬鹿らしく聞こえるかもしれないかもしれないが、大事な質問だ。
 もう一度言うぞ、今日が何年の何月何日か、わかるか?」

椿はすばやくこちらに目をやる。
あの椿が戸惑っている、と言うのは少し意外だった。

158名探偵の呪縛 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/18(木) 01:24:57 ID:D7vF8T0.0

「そんなの××年の大晦日、いやもう正月か三が日にはなってるか? とにかくいきなりなんだ」
「え?」
「……椿さん」
「あんだ?」
「……いや、話が早くて助かるよ。そっちも時間が違うのなら、ね」

ハンチング帽の男が少し肩の力を抜いて笑ったように見えた。
玲泉たちは四人は訳が分からない。全員が狐に包まれたかのような顔をしている。

「後ろの三人は不思議に思ってる筈だ。良いかい、俺たちは『違う時間』から集まれたんだ!」
「……あん?」
「…………」
「…………」
「…………」
「息子よ、それはいきなりすぎるぞ」
「こう言うのは最初に核心をついていた方が楽なんだよ。
 そっちで話し合ってみな。間違いなく最後に覚えている日が見事に違うはずだからな。
 誘拐されたから、なんて言葉が不自然に思えるぐらいの違いがね」

男は自信満々に言い放つ。
さすがに疑問を覚えたのか椿はこちらに向き直り、「今日は何日だ」と尋ねてくる。
結果は男が言ったとおり、皆が皆、見事に違った日は言った。

「せ、先輩はもう20歳なんですか」
「そうか……春香ちゃんは俺のいっこ下なんだ」

わずかな誤差。
ひょっとすると七味が春香を忘れているのも何か訳があるのかも、と関係ないことを玲泉は思った。
そんな中、椿は苛立ったような表情のまま二人の男へと体を向ける。

「……おい、話を聞かせろ。どうせまだとっておきが残ってんだろ?」
「俺たちは大正から連れてこられた」
「……はあ?」

椿が何度目かになる間の抜けた声を出す。
それも仕方がないだろう、いきなり大正時代の人間だ、なんて言われたら。
玲泉だって訳が分からなかった。
だが、その言葉以上に、次の言葉が玲泉の胸を捉えた。

「そして、俺は一度死に、そして生き返った……死んでいた仲間も、生き返った。
 恐らく亀田の仕業だ。あいつはこちらの理解の外の技術を持っている」

159名探偵の呪縛 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/18(木) 01:25:37 ID:D7vF8T0.0

「…………………………え?」

天本玲泉はあまりの出来事に呆気を取られてしまった。
『自分は死んだ』と目の前の探偵と名乗った男は語った。
『仲間も死んでしまったがこの殺し合いに巻き込まれて、もう一度死んでしまった』とも言った。
椿や七味に倉見、それどころか連れの男すら信じていないようだが、彼女には思い当たる節があった。
そして、まだ話が続いているようだが一向に耳に入ってこない。

(呪……神隠し……そして、お婆様)

彼女が今行っている思考はあまりにも飛躍した考えなのかもしれない。
実際に彼女の祖母である天本セツが起こした呪いは『人をこの世から、記憶から消す』というもの。
『人を生き返らせる』というものとは見事なまでに逆のベクトルを持った呪いだ。
しかし、しかしだ。

(人を消すことが出来るのなら……蘇らせることだって出来る……?)

願望だ、あまりにも自分にとってだけ都合のいい願望。
そう、祖母のセツを蘇らせることができる、なんて願いは。
だが、祖母一人の命だけで、執念だけで一時的にとは言え人を二人も消したのだ。
そして、恐らく。野球部が甲子園に行けなければ野球部全員を消していただろう。
ならば49人の命を使えば、人を生き返らせることもできるのでは?
彼女の思考はどんどんと一人歩きをしていく。

(私に一度も優しくしてくれなかったお婆様。
 あれだけ思ってくれた優しいお爺様を放って、若いころのロマンスばかり夢を見ていたお婆様。
 いい年をして、あの人に昔の恋人を投影していたお婆様。
 結局、一人で満足して勝手に死んでいったお婆様)

頭によぎる顔は、しかめっ面でも怒気を孕んだ顔でもない。
あの人を初めて見た時の驚きを浮かべた顔と、苦しそうながらも幸せそうな笑みを浮かべている顔だけだ。

(……私は、お婆様なんて嫌いだ)

160名探偵の呪縛 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/18(木) 01:26:29 ID:D7vF8T0.0

良い思い出などない。
どんなに思い出しても彼女の記憶にはセツに優しくされた覚えはない。
母のことを悪く言われたこともあった。
色々とこきを使われたこともあった。
いつも愚痴を言っていた。
悪いことばかりを思い出す。
それはひょっとすると彼女自身のブレーキなのかもしれない。
彼女も悟っているのだ。ここで決意してはいけない、と。
それはしてはいけないこと。
理性をもって、打算のままに行動して、それをすることは人としてしてはいけないことだ。
必死でそう思考が流れないようにする。
そして、まっ先に思い出すのは『あの人』のこと。
彼女を受け止めてくれた『あの人』。
今も彼女と一緒に居てくれる『あの人』。
その人のためにもそれをするわけにはいかないと、必死に『あの人』のことを思い出す。
そして、あの人の動きを、言葉を、全てを思い出す。
白球へと向かって走っていくユニフォーム姿の人。
甲子園まで行き、優勝をしたあの人。
秋の日、私が全てを告白し、それでも受け入れてくれたあの人。
その時の言葉は、今でも――――今、でも―――――




『……天本さんは、結局お婆ちゃんのことが好きだったんだよ』




「あ……」




『本当は、全部お婆ちゃんのためにやったんだろう?』




「あ……ああ…………!」

161名探偵の呪縛 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/18(木) 01:27:16 ID:D7vF8T0.0

その際に思い出した言葉で、もう駄目だった。
口で祖母のことが嫌いと言おうと、頭で祖母の嫌なところを思い出そうとしても。
彼の言葉と、唯一の自分の居場所だったことを思い出してしまったら駄目だった。
想像するのは彼女自身と、あの人と、そして祖母が一緒に並んでいる。

(……私は……)

変わりはない、高校時代にやっていたこと何の変わりはないはずなのだ。
そう、彼女は燃えるゴミの日に燃えるごみを出すぐらいの自然さでそれを行えばいい。
焚き火をするぐらいの気軽さで火をつけた時のように。
自然な動作でお弁当に痺れ薬を混ぜたように。
気まぐれのように祖母の最後を看取った時のように。
そして、祖母を蘇らせてあの人と暮らせばいい。

一緒だ。

あの時と同じように、彼女は結果的に人を殺すように動ければいいだけだ。

彼女の心に静かな、けれども熱い炎のようなものが浮かび始める。
先ほどまで倉見 春香と一緒に話していたころの穏やかな気持ちはない。
真っ赤ですらない、それはガスコンロで作られたかのような安っぽい高温の青い炎。

それに、椿の首輪の外すという言葉だって確実ではない。
願いを叶えるという言葉が嘘だとしても、全員を殺すというのは元に戻る方法の一つでもある。

気づいたときには、七原という男との会話は終わっていた。
どうやら、一先ず行動を共にすることになったようだ。
椿が良いと言った以上、何かしらの策があるのだろう。
要注意人物であるが、頼れる人物でもある。
彼女は今までとは違った目で椿を観察していく。
だが、あまりにもジロジロと見ていると要らぬ疑いを受ける。
彼女は振り返り、二人の男へと声をかけた。

「では、これからよろしくお願いしますね。七原さん、布具里さん」

彼女は自然と、全てを吐露したあの秋の日以来となる類の笑顔を浮かべていた。

162名探偵の呪縛 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/18(木) 01:27:46 ID:D7vF8T0.0

【C−2/神社/1日目/朝】
【倉見春香@パワプロクンポケット7表】
[状態]:健康
[装備]:麻酔銃@現実(一発消費)
[道具]:なし(七味が持っている)
[思考]
1:休んで七味の足手まといにならないようにする。
2:あわよくば七味の記憶を取り戻す。

【七味東雅@パワプロクンポケット7表】
[状態]:健康
[装備]:セイラーマンサーベル、支給品一式×3、ランダム支給品2〜6個
[道具]:なし
[思考]
1:春香ちゃんを守る。
2:ゲームに乗らない人物を守る、そして一緒に協力する。
3:ヒーローがいるなら合流する。
[備考]
※七味東雅の高校時代は彼女とも付き合わずまじめに野球一筋でした。
※七味東雅は記憶喪失ではありません。
 2年前のことなので春香の事を覚えていないだけです。(生徒会くらいのときしか面識がないため)

【椿@パワプロクンポケット9表】
[状態]健康
[装備]鉈、ムラタ銃
[道具]支給品一式×2(不明支給品1〜4)
[思考]
基本:生き残るのに手段は選ばない。
1:とりあえず七味、春香、天本、七原、布具里と行動する。
2:天本を利用してゲームを有利に進める。

【天本玲泉@パワプロクンポケット4表】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式(不明支給品1〜3)
[思考]
基本:日の出島に帰る。
1:人を結果的に殺す。
2:このチームを利用する。

163名探偵の呪縛 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/18(木) 01:28:21 ID:D7vF8T0.0

【七原正大(ななはら まさひろ)@パワプロクンポケット7裏】
[状態]:健康
[装備]:地味な色のベスト、ニューナンブM60(6/6)
[道具]:支給品一式、Pカード、九条と凡田の知り合いの名前の書かれたメモ、予備弾(12/12)
[思考]
基本:亀田を倒す。
1:仲間を集めるために動き回る。
2:ほるひすに警戒心。
3:第三放送前にホテルPAWAへと向かう。
[備考]
※大正編のどの人物とどの程度面識があるか、メモに誰の名前が書かれたかは後の書き手に任せます。

【布具里@パワプロクンポケット7裏】
[状態]:健康
[装備]:亀田幻妖斎の服
[道具]:支給品一式、ランダム支給品残り0〜1個(本人確認済み)、亀田幻妖斎の仮面
[思考]
基本:正大に寄生して生きる。
1:仲間を集める。
2:第三放送前にホテルPAWAへと向かう。
3:死んでたのか……息子よ。
[備考]
※確認済みの支給品の中に、衣服になるものは入っていません。

164 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/18(木) 01:28:55 ID:D7vF8T0.0
投下終了です
御暇な方いらしたら代理投下お願いします

165名無しのバットが火を噴くぜ! :2009/06/18(木) 02:24:13 ID:66YnpO/s0
申し訳ありません、代理投下中に連投規制に引っかかりました。
>>156以降をどなたかお願い仕舞す・・・

166 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/21(日) 20:32:03 ID:SX6UGa1A0
規制中のため投下します

167愛と名付けた囲いの中で ◆7WJp/yel/Y:2009/06/21(日) 20:32:34 ID:SX6UGa1A0

リン、という女が居る。
その名前が本名なのか偽名なのかを知っている人間は居ない。
リンについて知られているのはその確かでない名前と腕の確かな情報屋ということだけだ。

「……」

リンは静かに一人の男、島岡 武雄の死体の前に立っている。
彼女は女豹のようにしなやかな体を屈めて、島岡の左目へと目がけて鉛筆を当てる。
そのHBの鉛筆はゆっくりとわずかな隙間を目へと埋めていく。
削られた箇所が完全に見えなくなった頃、右手を鉛筆と目玉の境目に当て左手で鉛筆を斜めへ倒していく。
テコの原理で島岡の眼球はゆっくりと持ちあがっていく。
遂に眼球が完全に空気に触れることになる。
視神経と網膜血管を包んだ細長い膜だけが人体と繋がれており、グロテスクな薄気味悪さを覚える。
リンは顔色を変えずに顔を島岡の目前まで近づけ、眼球を口に含む。
そして、眼球自身を潰さないように優しく舌で包み、歯は細長く島岡の体へと繋がっている膜を摘む。
歯で膜を摩り下ろして、眼球と身体を完全にちぎる。

それは遠目から見るとひどく妖艶な姿だ。
見目麗しい美女が地面へと膝を落とし、寝そべった人間へと顔を近付けているのだ。
耳を澄ませば僅かにチュク、チュク、と粘ったい水が混じり合う音も聞こえてくる。
想像を膨らませるには十分すぎるシチュエーションだ。

だがしかし、現実はそれほど甘くはない。
リンは顔を離し、デイパックから紙を取り出す。
ティッシュのような上等なものではなく、ごつごつとしたメモ用紙だ。
そのメモ用紙を口元へと当て、頬を動かして何かを吐き出す。
もちろん、その何かとは島岡の眼球だ。
噛みちぎった眼球と人体を繋げていた管がひどくグロテスクだ。

再び鉛筆を持ち、右目にも同じ作業を行う。
口の中に何とも言えない不快感が広がっている。
顔をしかめるが、一人の両目を抉った。
自己申告だけではあの女、黒羽根 あやかが何か屁理屈をこねてくるかもしれない。
証拠を持っていけば恐らく大丈夫だろう。
リン以外に殺された死体から取ったのではないか、と言われればそれまでだ。

168愛と名付けた囲いの中で ◆7WJp/yel/Y:2009/06/21(日) 20:33:07 ID:SX6UGa1A0

だが、そんなことを言い出したらどうやっても自分が殺したとは証明できない。
さて、これからどうするか。
目を切り離す直前に聞こえた放送によると近くに禁止エリアもなくしばらくは安泰。
今は動かない探知機で最後に見えた画面が正しければ、人は南、つまり学校に留まっていた。
ならば、学校に向かうべきだろう。
そこならば電気も通っているだろうから探知機の充電も出来る。
リンは学校へと足を動かす。

(茜も彼も無事……か)

学校へ向かう途中で頭に過ったのは放送で名前が上がらず、そして名簿に名前が載っていた二人のこと。
高坂茜が巻き込まれていたのは知っていたし、八神総八郎が連れてこられている可能性も考えていた。
どちらか一方しか生き残らすことが出来ないなら、自分は茜を選ぶだろう。
ふと、こんな思考をしているとは自分も変わったものだ、と思った。
昔ならたとえ彼が殺し合いの場に居たとしても、こうは思わなかったはずだ。
死なせたくないと思いつつも、消極的に自分の生存を最優先として動いただろう。
それがどうだ、今は自分の生存なんてハナから考えていない。
命を投げ捨てている、人間変われば変わるものだ。

ただ、その変化は不快ではなかった。

169愛と名付けた囲いの中で ◆7WJp/yel/Y:2009/06/21(日) 20:33:38 ID:SX6UGa1A0


   ◆   ◆   ◆


長い痛んだ金髪を片手で軽く髪を梳かしながらヘルガは学校の外へと足を踏み出した。
先ほど流れた放送で呼ばれた埼川珠子という女の名を思い出す。
死んだ、それを確認した。
放送の内容に偽りが交じっているということはないだろう。
それが虚言だとばれた時、目の前に釣った餌である『優勝賞品』の効果が激減してしまう。
これほど大掛かりな舞台を用意できるほどの組織ならば金や地位を用意することぐらい簡単だ。
そして、金に目をくらんだ人間が喜んで殺し合いに乗る可能性だって高いのだ。
こんな普通じゃない状況で普通な思考を持て、というのも酷なもの。
間違っても欲のために他人を殺す人間を庇うつもりはないが、少し同情の念を覚えてしまう。

「……野球のグラウンド、か」

ふと後ろを振り返り、学校を眺める。
そこには一つのボロボロの金網ネットと地面に埋め込まれたホームベースと少し盛り上がったマウンド。
日本の学校ならばどこでも見られるだろう風景。

「野球とひどく縁があるものだな……」

口元を釣りあげて笑い、前へと向かって歩き続ける。
ここに来る前に最も記憶に残った人間は野球をしていた。
ここに来てから最初に出会った人間は野球をしていた。
ここに来てから最初に体を休めた場所は野球場だった。
思い返して改めてここ半年近くの間は野球と深い縁があったのだなと再認識した。

「まあ……だからと言って、どうというわけではない」

ただ、少しだけキャッチボールぐらいならしてもいいかもしれない。
そんなひどく似合わない感傷を抱いていた。
最初に出会った男の影響かもしれないし、名前も覚えていない不思議な男の影響かもしれない。
こうも野球に縁があるとさすがに興味も出てくる。

「……!」

だが、そんな呑気な考えもそこまでだ。
僅かに足で木の枝を折る音が聞こえた。
ヘルガは周囲のものよりも一際大きな木の影に隠れて様子を窺う。
ナイフを懐に忍ばせモデルガンを片手で持つ。
息を殺し、音が聞こえた方向へと視線を移す。

170愛と名付けた囲いの中で ◆7WJp/yel/Y:2009/06/21(日) 20:34:08 ID:SX6UGa1A0

「……」
(少女……歩き方がぎこちないな、怪我をしているのか?)

視界に映った少女は俯き足を引きずるように移動している。
手に持った機関銃がひどく不釣り合いだ。
ヘルガは話しかけるかどうかを僅かに考える。

「おい」
「! だ、誰ですか!?」

体は木から出さない。
少女は慌てて機関銃を構え、眼には怯えと苛立ちと絶望が覗ける。
ヘルガは抑えた声で話しかける。
下手に刺激をするのは危険。
殺し合いに乗っているようには見えないが、かなり混乱して衰弱している。

「落ち着いてくれ、私は話をしたいだけだ」
「……じゃあどうして姿を見せないんですか」
「こちらの方が安心できるだろう? 声の方向から私の場所は察することが出来るだろう」
「……」
「君は殺し合いに――――なっ!?」

ヘルガは投げかけた言葉を自身の驚愕に溢れた声で遮り、木の幹で出来た段差の下へと身体を滑らせる。
彼女の動きから数瞬ほどを置いて、耳をつんざく激しい音が現れた。

爆発、やはりあれは爆弾だったようだ。

ヘルガが話をしている最中に少女が取り出したもの、それは爆弾だ。
銃は銃弾が減ることを嫌ったのか、それとも単純に気分の問題なのか。
とにかく彼女は爆弾を出し、それを使った。
段差の中から外を覗き見る。
少女の姿は消えている、どうやら逃げたようだ。
殺し合いに完全に乗っているわけではない、自暴自棄になっていると言ったところだろう。
ヘルガは少女が完全に近く居ないと把握すると静かに顔を出し足早に立ち去った。

(あの少女……)

僅かに見えた瞳はヘルガの胸を軽く痛めつけた。
どうすれば良いのか分からない迷子のような瞳。
だけど、それを教えてくれる人が居ないと悟っている瞳。
未来への希望が見えない瞳。
誰を憎めばいいかも分らない瞳。
あのような瞳が横行する世界が、来るかもしれない。
それがヘルガが何よりも胸を痛めさせられた。

171愛と名付けた囲いの中で ◆7WJp/yel/Y:2009/06/21(日) 20:34:45 ID:SX6UGa1A0


   ◆   ◆   ◆


「……」

リンは学校の前に立っていた。
人の動く気配はしない。
中で隠れているか、学校には既に誰も居ないかのどちらかだろう。
リンは壁を乗り越えてグラウンドの端を通って校舎へと向かう。
この距離からでは物音一つ聞こえない。
リンは開いた窓から校舎内へと潜入し、奇襲に備えてグロッグ19を構える。
人の気配は、しない。
何かが動く音が聞こえないのだ。

「誰も居ない……」

唇を僅かに動かしてぼそりと呟く。
幾らなんでも静かすぎる。
人が動いていれば物音の一つもするだろう、何より誰も居ないこの古い学校ならば足音は響く。
あるとすれば息を殺して罠が発動するのを待っているか、だ。
その可能性を考えていたからこそ正面から入らなかった。

リンは片手でドアを開け、教室の中へと素早く体を滑り込ませる。
探知機で充電し直せば誰かが隠れているかもわかる。
向こうが待ちの戦法を取っているならこちらが動かない限り危険はない。
もし、誰も居なくてもそれはそれで御の字。
気を取り直して学校を離れればいいだけの話。
探知機を充電し、ゆっくりと椅子に腰をかける。
ノルマを少しクリアしたことによって、時間に余裕は出来た。
充電をして、人を殺す。
ひとまずはその方針で行けばいい。

172愛と名付けた囲いの中で ◆7WJp/yel/Y:2009/06/21(日) 20:35:15 ID:SX6UGa1A0


   ◆   ◆   ◆


芳槻さらは痛みの走る体に鞭を打ちながら学校へと向かっていた。
全身が軋むような痛みに苛まれながらも、必死に足を前へと動かす。
休むことはできなかった。
先ほどの恐らく高さから考えて女性だろう声の人間が迫って来ているだろうと想像すると、一刻も早くこんなところから立ち去りたかった。

「はぁ……はぁ……」

信じられなかった。
あの声の言うことが信じられなかった。

(多分……それはきっとこちらを疑っていたからかな)

さらはそんな風に考えて、ゆっくりと頭を振った。
そうじゃない、と。
自分でも理解している、何か理由をつけているだけだ。

(私は、多分誰も信じれないんだろうな)

だから、爆弾を投げつけた。
話を聞かずに、いつの間にか傷つけられることを恐れて。
危ないと思ったという理由だけで。怪しいと思ったと言う理由だけで。
殺す以外の道を選んだのだ。
銃を引くのも面倒だったから爆弾を選んだ。
その所為で無駄な恐怖を、声の人が怒って襲ってくるかもしれないなんて恐怖を覚える破目になった。

とにかくそんなことを考えていてもしょうがない。
今は学校に行くことだけを考えよう。

足を動かす。
体の節々から来る痛みに耐えながら
きっと、恐らく、信じられるだろう人間との思い出の場所に。

173愛と名付けた囲いの中で ◆7WJp/yel/Y:2009/06/21(日) 20:35:50 ID:SX6UGa1A0
【F-3/学校/一日目/朝】
【リン@パワプロクンポケット8】
[状態]健康
[装備]グロッグ19(8/15)
[道具]支給品一式×3、劣化版探知機、充電器、ヒヨリンセット(化粧品中消費)、支給品一覧表、島岡の両眼
[思考]
基本:一先ずノルマの三人殺しはクリアしておく。
1:学校で待機。
2:八神と茜は何としてでも生き残らせる。
3:劣化版でない探知機が存在するのなら入手してしておきたい。
4:第五回放送の前に役場へと向かう。

【E-3/林/一日目/朝】
【ヘルガ@パワプロクンポケット6裏】
[状態]:健康
[装備]:モデルガン、ナイフ、軍服
[道具]:ラッキョウ一瓶、支給品一式
[思考・状況]
基本:亀田という悪を育てるために亀田に立ち向かう。
1:あまりにも亀田に対抗する戦力が大きくなってきた場合はそれを削る。

【芳槻さら@パワプロクンポケット10】
[状態]:左頬・右目周辺に痣、顔面を中心に激痛、足に痛み(中)、精神的疲労(大)、肉体的疲労(大)、所々に擦り傷
[装備]:機関銃(残弾中程度)
[道具]:支給品一式、スペツナズ・ナイフ
[思考・状況]
1:……疲れた。
2:学校へと向かう。
3:……二人は、どう思うだろうか?
4:十波君のことは信じられる?
[備考]
※第一回放送の内容をどこまで把握しているかは、後続の書き手さんにお任せします。
 ただし、メモなどには記録していないようです。

174愛と名付けた囲いの中で ◆7WJp/yel/Y:2009/06/21(日) 20:36:22 ID:SX6UGa1A0
投下終了です、誤字脱字矛盾の指摘をお願いします
早く規制解除を……!

175 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/23(火) 16:52:31 ID:2UM/1nDU0
あやか伯爵とプレイグ兄ちゃん、投下します

176 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/23(火) 16:53:09 ID:2UM/1nDU0
非自然的なまでに真白な色で床が埋め尽くされ、幅六寸ほどの幅を持った個室が並ぶ、初めて見る部屋。
個室が並んでいる、と言ってもそれほど大そうなものではない。
中に入った人間の背中から太ももを隠す程度の扉と、同じ大きさの小部屋と小部屋を仕切っている壁。
その部屋が暖かな湯気で埋め尽くされている。
ここは野球場内部の簡易シャワールームという場所。
先ほど埼川珠子を殺した私は優雅に水浴びをしていた。
かなりの長寿だと自負しているが、今この瞬間ほどに快適な時間は初めてだった。
この妙な形の栓を捻ると瞬時に気持ちの良い熱湯が出てくる。
絶えることなく、だ。
長く濡れ羽色の艶やかな髪の端から端まで瑞々しい精気を取り込んでいるような気分で心が躍る。
この世界にはこれが溢れているのだとしたら、元の窮屈で汚い世界に帰る気が失せてくる。
大げさな言葉ではない、これにはそう思わせるに十分な魅力を感じる。
目前を見ると石鹸を見つけ、それを体にこすりつける。
……泡が瞬時に立ち花の匂いが漂う。
マズイ、これはマズイ。
少し石鹸を体に擦りつけるのが楽しくなってくる。
いっそのこと、この世界に常駐してしまおうか?
元の世界に置いてきた鷹森には悪いとは思うが、それほどにこの世界は快適だ。
人はこの島の外に溢れているらしいし、幸い自分は血があれば何とか生きていける。
そうだ、この世界で名探偵のように探偵業をしてみるのも悪くないかもしれない。
自分ならばどんな場所にも行けるし、忍びの里で鍛えた尾行術も行かせる。
思ったよりも生きていける確信が得られる。
この世界で生きていくことを視野に入れて考えてもいいかもしれない。

「ふぅ……」

栓を逆方向に捻るだけで、お湯は放水をやめる。
快適だ、何度思ったかも分らないがとにかく快適だ。
入り口で見つけた布を手に取り、体にまとわりついた水滴を拭っていく。
このタオルにも驚かされる。
冗談のような手触りの良さと何処までも沈んでいくような柔らかさを持っている。
これがそこら中に出回っているのだとしたら何とも羨ましい世界だ。
決めた、この殺し合いが終わったらこの世界に住もう。

「鷹森は……私が居なくて清々してるでしょうね」

かなり振り回してきたから、彼は私に良い感情を持っていないだろう。
正直、一人でも十分に生きられるし行きずりの仲だ。
別に遠慮も要らなければ許可を取る必要もない。
完全に水滴を拭った後、先ほどまでの心地よさに少し後ろ髪を引かれながらも服を着ていく。
まずは簡素な形の下着を身に着け、シャツに袖を通し、ズボンに足を通し、最後にマントを羽織る。
少し汚れている為、気持ちの悪さがあるが贅沢は言えない。
壁に立てかけておいた愛刀を手に取り、外へと向かう。
しばらくはここに停滞する必要がある。
便利ではあるが、充電が必須とは面倒な機械だ。

177快適なり現代 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/23(火) 16:54:11 ID:2UM/1nDU0

「あ」

ふと、思いついて立ち止まる。
プレイグの待つ部屋へと向かう前に布を拝借しておこう。
あれほど心地いいものならば何枚あっても足りはしない。


   ◆   ◆   ◆



くるくる。
くるくる、くるくる。
くるくる、くるくる、くるくる。

道化師の格好をしたいかつい顔の男、プレイグは手持無沙汰だと言わんばかりに手元の杖を回していた。
くるくる回っていくファンシーなデザインの杖。
それに似合わないプレイグの空を睨みつけるドギツイ顔。
何度目かになる舌打ちをしながら、プレイグは後方のドアを眺めた。
そのドアを眺めて思い出すのは、同行者の吸血鬼、あやかの『少しだけここで待機する』という言葉。
確かにリンと言う女は殺し合いに乗ったようだから、自分達が無理に動く必要がまだない。
理屈は分かる。プレイグもあやかも体力を温存するに越したことはないので、急ぐ必要はないだろう。
ただ、向こう側に主導権を握られているのがひどく気に入らない。
仕事をする時は常に妹のイルと一緒のため、コンビで動くこと自体には慣れている。
信頼も戦法も向こうに抱く感情も天と地ほどの差があるが。
いつも兄妹ではプレイグ主導で動いているのだが、今回は向こうの都合に振り回されっぱなしだ。
柄じゃない、こんなものはプレイグは柄じゃない。
やはりイルと組むのが一番気分も乗るし戦法もかみ合う。
何よりも今回の相手は幾らなんでも回りくどいやり方を好み過ぎる。
金髪の女も先ほど殺した相手も、殺し合いに積極的にされるには難しい相手だった。
ならば、あやかが誘導しプレイグが奇襲をかけるという正攻法で行くのがベストなはずだ。
だのにあやかはそれをしない。
わざわざ金髪の女を逃がして自らを危険人物として知らせるようにした。

面倒で非効率的なやり方だ。
仕事はさっさと終わらせて次の仕事を探すのが賢い金の稼ぎ方と言うものだ。
もちろん愚痴を言ってもしょうがないことであるし、道具やコンビを組む条件は破格なのも事実だ。
だが、信用は出来ない。
あやかの目的は殺し合いの活性化、つまりはプレイグと共に人を殺すことではない。
あの女は殺し合いが面白くなるのならば、誰が勝ってもいいのだ。
いや、プレイグを殺して殺し合いが活性化するような状況になれば間違いなくプレイグを殺す。
プレイグもそれを承知の上で組んでいるのだ。
そのデメリットに目をつぶられるぐらいにはあやかの戦闘力と探知機は優秀だ。

178快適なり現代 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/23(火) 16:54:42 ID:2UM/1nDU0

「お待たせしました、プレイグさん」

そんなことを考えていると、にこやかな表情で黒羽根あやかその人が近づいてくる。
デイパックと探知機と刀を持っている、準備は万端と言ったところか。
どうやら今にも出発するつもりのようだ。
思ったよりも積極的なのだな、と考えながらプレイグも腰を上げる。
未だにあやかに主導権を奪われているのは癪だったが。
だが、プレイグの予想とは異なりあやかも椅子に腰をかける。

「なんや、まだここに居るんか?」
「ええ、そうですね……後少し、ここでのんびりしていきましょう」
「まあ、あの金髪の姉ちゃんが働いてくれるやろうから構わんが」

自分から動く必要はない。
狭い通路ならば広範囲に攻撃できる呪文『ボーボー』で逃げ道はなくせるため、籠城には持って来いだ。
加えてリンと言う女が殺し合いに乗っているだろうし、放送を聞く限り他にも殺し合いに乗っている人間も居るようなのでわざわざ自分達が動く必要性は全くない。
故に籠城は正しい選択肢の一つでもあるのだが、そんな賢い選択をあやかがしたことが意外だった。

「探知機が少しの間だけ使えなくなりましてね。それが回復するまでの間、ですよ」
「構わへんで、急ぐ理由もないしな」

プレイグは再び椅子へ腰を落とし、杖を回し始める。
相変わらず気持ちの悪い装飾がされた杖だ、ひどくプレイグには合わない。
だが、杖のあるなしで魔法の成功率が多少なりとも違ってくる。
新しい杖が手に入るまでは贅沢を言えない。

「さて……」
「ん、どないしたんや?」

そんなプレイグを幾らかの時間眺めた後、あやかは席を立つ。
何をするのか気になったプレイグは思わず尋ねてしまう。
あやかは相変わらず綺麗に笑顔を作り、静かに言葉を返した。

「ここなら写真があるかと思いまして」
「まだこだわっとったんかこのボケェがぁ!!」

179快適なり現代 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/23(火) 16:55:20 ID:2UM/1nDU0

【G−3/野球場/1日目/朝】
【黒羽根あやか@パワプロクンポケット7裏】
[状態]:歓喜、テンション↑
[装備]:妖刀ムラマサ@パワプロクンポケット7裏、日本刀
[道具]:支給品一式、高性能型探知機、充電器、タオル数個
[思考・状況]
基本:『殺し合い』を円滑に進めるために動く。方法は問わない。
1:休憩、充電が終われば動き出す。
2:ゲームに乗っていない人間は殺す、マーダーに出来そうだったらする。
3:『名探偵』は、今度こそこの手で………
[備考]
1:参加者全員の顔と詳細情報についての知識を持っています。
2:探知機はあやかには反応しません。

【プレイグ@パワプロクンポケット4裏】
[状態]:健康
[装備]:ハヅキの杖@パワプロクンポケット4裏
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜3(杖は無い)
[思考・状況]
基本:『殺し合い』に乗り、優勝を目指す。
1:あやかについては保留。とりあえず今は殺さない。
2:もっとまともな杖が欲しいでホンマ……
[備考]
1:杖がなくとも呪文を唱える事に支障はありません。精神的にほんの少し落ち着かないだけです。

180快適なり現代 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/23(火) 16:55:51 ID:2UM/1nDU0
投下終了です
誤字脱字矛盾等がありましたら指摘お願いいたします

181名無しのバットが火を噴くぜ! :2009/06/24(水) 20:35:54 ID:DyN9QpcM0
あなたはは他のロワに行っても、十分通用…いやトップを狙える書き手だ。
それなのに…どうしてあなたはここで書き続けるのだ?
なにか理由があったら聞かせてほしい。

182 ◆7WJp/yel/Y:2009/06/24(水) 23:22:11 ID:66N.htYI0
黒野博士の言葉を少し借りるなら、俺にとってパワポケはロマンだからさ!
ロマン。わかるだろ? ルールとか常識とかにとらわれない事さ!
パワポケってそうだろ?
野球ゲームの癖して野球以外の楽しみがあるんだ!
たとえば3の主人公さ、あんな人生を過ごした主人公が真面目で熱い野球をする作品なんて滅多にはないさ!
8の主人公もそう、最初はただの潜入捜査だったのに野球を好きになって正義の味方をやってる。
つまり、俺にとってダッシュ含めての1〜11は神ゲーなんだ。
信者補正も相まってパワポケを超えるゲームは俺の中にはないよ!
そんな連中を、殺し合いっていうどうしようもない窮地に追い込んで、それの動きを書けるんだ!
まあ、ここは俺の趣味が悪いってのもあるんだけどね。
とにかく、俺にとってパワポケは一位なんだよ。
他の作品にも魅力をあふれてるけど、このパワポケが集まって上川とか曽根村とか野丸とかのマイナーキャラまで書けるんだ!
率先して他で書き手をやろうとはあんまり思わないな!
後、俺の趣味ちょっと悪いから、少し見ていて気分が悪くなることもあるかもしれない。
基本好きなキャラほど苛めたい、って思うタイプだし
それでも見てくれると嬉しいし、感想書いてくれたり支援が来たらテンションがマッハでヤバい!
つまり長くなったけどパワポケが好きだから! パワポケロワ自体にもオープニングとか地図とかスレ立てとかもやったから愛着あるし!

正直最近夏が近くてテンションがおかしいから無視していいよ!
それと褒めてくれてありがとう! 超嬉しい!

183181:2009/06/25(木) 00:09:46 ID:WCNwQJuA0
>>182
なんか…ありがとう。
いや…あなたがそこまでこのロワへの思いをもっているなんて知らなかったから…。

これからは一人の読み手としてがんばって応援したいと思うよ。

184くろまく:2009/06/27(土) 19:28:27 ID:ADkxaxbQO
このロワイヤル最高です!
てかなんで最近書き手少ないのですかね?

185 ◆7WJp/yel/Y:2009/07/05(日) 13:56:54 ID:fd5X.Pk20
規制なので仮投下スレに投下させてもらいます

186FALLEN GIRLS ◆7WJp/yel/Y:2009/07/05(日) 13:57:25 ID:fd5X.Pk20

三橋は閉じていた瞳をゆっくりと開き、瞬きを幾度かした後ソファーに下ろしていた腰を持ち上げた。
充電は九割ほど済んだ、全快ではないが十分な量である。
腕を軽く振り体に不調がないかを確かめた後、荷物をまとめていく。
荷物は鋼の支給品は言わずもがな、事務室の中で思ったよりも物を見つけることが出来た。
魔法瓶、ライター、カップ麺、ボールペン、メモ用紙、ハサミ。
他にもノートや穴あけパンチやホッチキス、乾電池などが置かれある。
カップ麺は必要ない、サイボーグは食料を必要としない。
乾電池も必要ない、三橋の規格に合わない。
持っていく必要があるとしたらライターと熱湯ぐらいだろう。
事務室に置かれていた物をしまい込んだ後、鋼の残して行った支給品をデイパックへと放り込んでいく。
ポイポイ、と迷うことなく整理していが、鋼の持っていた『それ』を見て驚愕に固まってしまう。
『それ』は物騒なんて言葉を通り越した物だった。
何故それを使わなかったのか?

この部屋にはライターもあった、使えなかったわけではないし、まさか見落としていたわけもあるまい。

……そんな疑問が浮かぶのも一瞬だけだ。
答えなんて決まっている、鋼は殺す気がなかったからだ。
もちろん、これを使えば明日香とスーツの男も巻き込むことになったという理由もあるだろう。
だが、その二人が立ち去った後、長々と話していた時に隙を見て使うことも出来た筈。
その素振りすら見せなかったことから、やはり鋼は三橋を殺す気などなかったのだ。
それは嬉しくも悲しくもない。
ただ、虚しい。
やはり、三橋にはこういう作業は向いていないのかもしれない。
だが、性格的に向いていないから、という理由で辞めることは出来ない。
それが出来たら三橋はこんな所に居はしない。
そんなことが出来るのならとうの昔に、亀田の命令に逆らってネオプロペラ団から離れている。

「……いつまでも、こうしてるわけにはいかないな」

何度目かになる台詞をつぶやき、前を見つめる。
鋼の持っていた支給品と事務室で必要と判断した物はすべて回収した。
いや、正確に言えば全てではない。
野球の硬式球、それだけは置いてきた。
先ほどの甲子園で人を殺す夢を思い出すし、何よりも幸せだった時期の象徴だ。
拳が鈍ってはいけない。
それは親友への裏切りだ。
しっかりと鬼の手を握りしめ、それを顔の前へと持っていく。
赤い、最初に見たときより幾分か赤い。
三人の血を吸ったのだから当然と言える。
そう、三橋は三人もの人間をこの手で殺したのだ。
かつての恩師を、かつてのライバルを、ユニフォームを着た名も知らぬ青年を。

「……」

187FALLEN GIRLS ◆7WJp/yel/Y:2009/07/05(日) 13:57:59 ID:fd5X.Pk20

だが、後悔しても何処にも進みはしない。
今はとにかく進まないといけない。
友のために殺人を犯したのだ、三橋の気持ちで最初からそれは変わっていない。
殺したことを後悔していても、何も変わらないのだから。
切り捨てることと拾うことが大事だ。
この場合、切り捨てるのはこの島に居る人間の命、拾うのは亀田光男との友情。
そう決めたのだ。
重い腰を起こして、様々な感情を秘めながら水族館を出る。

「……あのー、三橋一郎さん、ですか?」

その瞬間、関西方面特有の訛りを持った声をかけられた。
慌てて身構えながら振り返ると、そこに居たのは一人の少女だった。
少女、とは言ったものの一見すると少女とは思えない。
身長はプロスポーツ選手であった三橋よりもさらに高い。
目測なため確かなことは言えないが、少なくとも185センチは軽く超えているだろう。
声の高さと、童顔と、特注と思われる制服のお陰でなんとか高校生だと分かる。
いや、先に挙げた三つを考えれば普通は簡単に高校生だと分かるだろう。
だから三橋が少女を高校生だと思えなかったのは、目に見える部分以外による要素が大きい。
雰囲気、そう雰囲気だ。
普通の女子高生とは違う剣呑とした雰囲気を持っている。
ただ立っているだけなのに隙もない、笑ってはいるもののこちらの様子を静かに伺っている。
これは喧嘩が強いとかそういうレベルではない。
武道をやっている、それも素手でやる形のものだろう。
人を倒すことだけを重点を置いて、飽きもせずに毎日毎日と体を苛め続ける。
そんな連中に素手と素手の対決で勝てるとは思えない。
しかし、丸っきり不利とは言えない。
なにせこちらには一撃必殺の鬼の手がある。
鋼の鍛えられた腹筋はもちろん、木の幹すら貫けたのだ。
鍛えているとはいえ目の前に居るのは女子高校生。
当たれば殺せる。
そのアドバンテージがあれば殺せる。

188FALLEN GIRLS ◆7WJp/yel/Y:2009/07/05(日) 13:58:41 ID:fd5X.Pk20

「えーっと、三橋 一郎さん……でええんですよね?」
「……ああ、俺は三橋だ……君は?」
「ああ、うちは大江 和那言います。さっきそこで進藤ちゃんと曽根村さんに会いました」
「!?」

その言葉とともに後ろへと素早く下がることで距離を取る。
明日香とスーツの男に会ったと言うことは三橋が殺し合いに乗っているということを知っているはずだ。
だと言うのに話しかけてきたと言うことは、少女も三橋と同じく殺し合いに乗っているということか?
殺し合いに乗っているのなら協力する選択肢も出来る。

「あ、先に言っときますけどうちは殺し合いなんてしませんよ」

だが、三橋の頭によぎった考えは否定される。
ならば何故三橋に話しかける。
これ以上犠牲を増やさないために三橋を殺すのならば話しかけたりはしないはず。
と言うことは、鋼と同じ、ということか。
そう言えば、大江和那と言う名前は先ほど電話で話した浜野朱里の言っていた名前だ。
それでいて殺し合いに乗っていない。
期せずして三橋は朱里に電話越しに放った言葉を実行することになったようだ。

「説得でもするつもりかい?」
「うーん……それはうちの役割やないと思います」
「……?」
「分かってるんでしょ? 進藤ちゃんは三橋さんを止めようとしてる、ってことぐらい」
「ッ!」

図星を衝かれたような気分だ。
そうだ、明日香は三橋を止めに来る。
三橋一郎の知る進藤明日香はそういう人間だ。
だが、そうだと言って簡単に気持ちを変える気はない。

189FALLEN GIRLS ◆7WJp/yel/Y:2009/07/05(日) 13:59:19 ID:fd5X.Pk20

「そうか、それは有難いな」
「……」
「探す手間が省ける」

三橋は亀田にやれと言われた仕事を破棄することはできない。
それは身体を支配する回路を埋め込まれているからではない。
何度も言うことになってしまったが、三橋自身がそれをしたくないからだ。
亀田の願いは叶えてあげたいし、亀田に喜んでほしいし褒美も貰いたい。
今までそうすることによって亀田に付き合ってきたのだ。

「多分、彼がアンタぐらいの年になったらそんな感じなんやろうな」
「なに?」
「ちょっと三橋さんが知り合いと似とってな。嘘をつくのがヘタクソなところとか」
「……」
「ドヘタクソや。気が良すぎて人を不幸にする嘘をつくことが出来ん人間や。
 ……びっくりやで、うちの知り合いとよう似とるで」

目の前の大江という少女の言葉が終ると同時に飛びかかる。
何となく不快だった。
目の前の少女の見透かしたような眼が三橋の癇に障るのだ。
目の前の少女のまるで三橋が善人で、無理をしていると言わんばかりの言葉に苛立ったのだ。
そうだ、鋼もそんな眼をして、そんな言葉を放っていた。
憐れむような、懐かしがるような、まっすぐな眼を。
諭すような、引き留めるような、綺麗な言葉を。
そんな眼は、そんな言葉は今の三橋にとって不快な物でしかない。

「おっと……」

三橋の突進を少女は紙一重で、しかし余裕をもって避ける。
やはり格闘技、それも動き方からして空手に近い物をやっているようだ。
空手、そう高校時代のクラスメートである元空手部の村上海士や他の空手部員の動きと似ている。
何度も空手部に乗りこんだ記憶の中の部員が目の前の少女のように動いていた。
ただ、今の動きにそれだけでは説明のつかない妙な感じを覚えた。
どう妙なのだ、と聞かれるとうまく答えられないが、とにかく妙だった。
とは言え、戦いの最中に思考に大部分を取られるのは危険。
三橋は相手を観察しながら距離を取り直す。

190FALLEN GIRLS ◆7WJp/yel/Y:2009/07/05(日) 14:00:06 ID:fd5X.Pk20

「なっ……!?」
「悪いけど、少し眠ってもらうで」

だが、距離を取ろうとする三橋よりも早く、少女は三橋の眼前に『ノーモーション』で迫ってきた。
訳が分からない、とはこういうことを言うのだろう。
足を動かした様子はなかった。
腕を振った様子はなかった。
肩が動いた様子はなかった。
しかし、少女の身体によって風が切られていく感触は覚えた。
目の前の少女は身体を動かさずに、体を動かしたのだ。
唖然としているところを、素早く突き出された少女の掌底が三橋の顎を捉える。
顎に押されるような感触が続き、そして突き出されるような衝撃が頭に長く響いていく。
ぐらぐらと、世界が横に横にとずれていくような感覚を初めて覚えた。

「こいつは……!?」
「かぁ……!」

接近戦という鬼の手を突き刺すチャンスも忘れて転がるように逃げる。
少女は意外そうな、それでいて複雑な顔をして三橋を眺めている。

「今の感触……サイボーグ?!」

少女の驚愕に歪んだ顔と何処か悲痛な声に対して、三橋は言葉を返さない。
正確に言うならば言葉を返す余裕がない。
立っていることすら危うい状況、気を失わなかったのが最大の幸運。
この状況はマズイ。
先ほどの動きを見るに正面からでは少女が迫ってくるのを悟るのは難しい。

「……くそっ!」

ならばここは引くしかない。
戦うにしても満足に動けない今の状況は危険だ。
殺される可能性はまずないとは言え、気絶すれば鬼の手を奪われる可能性は高い。
鋼から奪った支給品ならば、間違いなく殺すことができる。
きちんと発動して命中すれば人を十回殺しても余り得るほどの強力な武器なのだから。
ただ、回数制限とライターを使うことを抜いても準備に時間がかかること、そして場所を選ぶこと。
この三つの条件から今は使うことが出来ない。
故に現状は鬼の手が唯一の武器と言ってもいいだろう。

「あ、ちょい待ちや!」

191FALLEN GIRLS ◆7WJp/yel/Y:2009/07/05(日) 14:00:42 ID:fd5X.Pk20

水族館の作りは完璧ではないがある程度は把握している。
水族館と言う割には、ここはあまり入り組んだ場所ではない。
出入り口付近の一階ではなく、地下のトンネルや入り組んだ鑑賞水槽の傍を逃げ回るのが得策だろう。
幸いにも、この水族館は出入り口が複数ある施設だ。
逃げ切れる可能性が高い。
その利を生かして何とか逃げ回る、一瞬で考えれる策なんてそれぐらいのものだろう。
だが、三橋は逃げ切れるという確信に近い思いがあった。
三橋の体は走力パーツで強化してある、今の三橋の足は特別速くもないが遅くもない。
だが、そのスピードの基準は下手をすればプロをも凌ぐ超人揃いの裏野球大会が基準。
地の利+単純なスピード差、逃げることに重点を置けばほぼ安泰に近い確率で逃げ切れる。

しかし、少女は三橋のそんな計算を軽く無視し迫ってくる。

「くぅ……!」
「進藤ちゃんと約束したさかいな……とは言え、サイボーグや。悪いけどマジでいくで」

少女は三橋のスピードを簡単に上回り、正面へと立ち塞がる。
やはりおかしい。
確かに股下の長さとしなやかな身体ならばそれ相応のスピードは出るだろう。
だが、幾らなんでも速すぎる。
身体能力が優れている優れていない、鍛えている鍛えていない、とかそんなレベルではない。
何かがある、三橋が見落としている何かが。

「っ!」

だが、少女は三橋の思考に割り込むように蹴りを入れてくる。
鋭く速い、三橋は不様に階段を転げ落ちていった。
身体に鈍い痛みが広がる。
迫ってきている、何度も言うがこのスピードはあまりにも速すぎる。
目を放していたのはわずかな間、階段を駆け降りる音も聞こえなかった。
飛び降りた着地の音も小さい。
まるで高所から飛び降りてきたような、そんなスピードだ。

「!?」

192FALLEN GIRLS ◆7WJp/yel/Y:2009/07/05(日) 14:01:31 ID:fd5X.Pk20

不格好を承知でとにかく適当に鬼の手を振り回す。
当たりはしなかったが、向こうが距離を取るために離れてくれた。
恐らく鬼の手が非常にマズイ物だと悟ったのだろう。
劣勢に追い込まれた三橋がこの隙を逃すわけがなかった。
素早く振り返り、大急ぎで地下を駈けていく。
自分ではあの少女に勝てはない、それを三橋はハッキリと理解した。
戦略的撤退や仕切り直しなんて綺麗なものではない。
はっきりとした逃亡、恥も外聞もない行動。
三橋は体裁もなく懸命に走って行く。
目指すは別出入り口。
その瞬間、デイバックから二つの筒を取り出す。
一つは熱湯に入れ替えたペットボトル、振りまくだけで虚を突くことはできるだろう。
一つは三橋の切り札、鋼の元の支給品、恐らくこの殺し合いの中で最も強力な武器。

(あの子、早めに殺しておきたいな……)

接近戦しか出来ない三橋にとってあの少女はかなり相性が悪い相手だ。
銃器を手に入れればまた別だが、鬼の手を当てることすら出来ない現状はかなりまずい。
故に、三橋は一方の筒を静かに開いた。


   ◆   ◆   ◆


浜野 朱里は水族館に来ていた。
手に持つは六尺棒とデイパックだけ。
いつも肌身離さず持っていた武器は全て奪われた。
そう思うとひどく不安になる。
戦力の低下、という面での不安もあるだろう。
だが、姉妹たちとの繋がりであるものが奪われた、ということが何処となく空虚感を覚えた。

193FALLEN GIRLS ◆7WJp/yel/Y:2009/07/05(日) 14:02:02 ID:fd5X.Pk20

「……」

朱里は無言で、それでいて周囲を警戒しながら水族館の中へと入っていく。
理由は単純、先ほどの電話の主、三橋一郎を殺しに来たのだ。
参加者を減らしてくれる存在だが、紫杏を殺すようなことは断じてあってはならない。
大江和那は……保留だ。あまり考えたくない。
とにかく、紫杏と合流するにもとにかく動く必要がある。
ならば、危険要素も排除しておこうと考えたのだ。
不意打ちならば殺せる、銃を持っていない人間ならば確実に殺せる。
都合のいいことに、先ほどから音が聞こえる。
しかも複数で地を蹴る音と壁にたたきつけられる音。
間違いなく戦闘、ならばやることは一つ。
決着のついたところを横合いから思いきり殴りつける、それで終わりだ。

(下を駆ける音……一方が逃げ出して終わりか。なら、ためらう必要はないわね)

聞こえた音がした場所は階段の踊り場。
大丈夫だ、素手で行ける。
そう判断し素早く駆ける。殺すのに一分もかけない、数秒でケリをつける。

「なっ……!?」

だが、廊下の角を曲ったときに見つけた階下に想像もしなかった姿で身体を固まらせてしまう。
うすい青色を基調としたブレザー、そして190センチを軽く超える身長とそれに似合わない童顔。
その姿を朱里はよく知っている。
神条 紫杏とは別の意味で殺すことを躊躇う人物。
思えば高校時代で共に居ることが多かったかも知れない人物、大江和那だ。

「……お、おー、ようやっと見つけたで朱里」
「カズ……」

和那が少し驚いた表情を浮かべた後、手を上げてカツカツと階段を昇りながら話しかける。
戦闘のためか額から汗が流れている上、言葉にも疲れを感じさせる。
朱里はその様子にはっきりとした言葉を返せない。罪悪感に似た、らじくない感情が胸に渦巻いていく。

「走太くんと真央に聞いたで。アホなことやっとるらしいやないか」
「…………」
「誤解や、とは言わんのか?」
「……言わないわ。どうせアンタ信じないでしょ」
「信じるかもしれへんで?」
「嘘ね。アンタ、そう言うことは無駄に鋭いんだから」

194FALLEN GIRLS ◆7WJp/yel/Y:2009/07/05(日) 14:02:47 ID:fd5X.Pk20

吐き捨てる様に朱里は言葉を投げかける。
和那は相変わらず笑みを浮かべたままだ。
ひどく気分が悪い、まるでお前には私を殺せないと言われているようだ。

「退いてほしいの、カズ。ここに居る男に用があってね」
「三橋さんを殺すんか?」
「知らないのなら教えてあげるわ。その三橋って言う男は」
「殺し合いに乗ってんのやろ? そんなん知っとるで」

なら、と口を開こうとするところを和那の笑みで遮られる。
いつにも増して大江和那という女が余裕を持っている。
こんな状況だと言うのに、その余裕が朱里には不思議だった。

「朱里、うち少し考えたんや」
「……なにをよ?」
「どうにかして、殺し合い以外の方法でここから生きて帰れんかなって」
「はっ!」

その言葉に思わず笑ってしまう。
余裕ぶっている割には言葉は理想もいいところだ。
和那の言葉からは具体的な策を感じることが出来ない。
甘い、とことん甘い。

「アンタ馬鹿? いや、馬鹿だったわね。なら聞いてあげるわカズ。
 首輪はどうするの?どうやってこの島から出るの?我威亜党とか言う頭のイカレた連中はどうするの?
 少なくともこの三つは考えてるんでしょ?」
「そんなん、後で考えればええ」
「はぁ?」

あまりの返答に朱里は思わず、意味が分からない、と言った気持ちを表情に出してしまう。
この三つが解消されるのなら、朱里は喜んで殺し合いを放棄しよう。
最も、襲いかかってくる相手はその限りではないが。

「なあ、朱里。そうやないんや、そんな仕方なしに殺すとかやりたくないんや。
 うちはまだ高校生のガキンチョや。お前や紫杏や彼と一緒に笑い合うような年ごろや。
 それでええし、それだけで構わへん。
 朱里、うちは完全無欠のハッピーエンド以外お断りや。
 死ぬんは畳の上で息子やら娘やら孫やら曾孫やらに囲まれて死ぬって決めとるからな」
「……そんなの、無理に決まってるじゃない」

強く否定したいはずなのに、朱里はかすれた小さな声が漏れるように出ただけだった。
何故かはわからない。
おかしいとは思う。だが、否定することが出来ない。

195FALLEN GIRLS ◆7WJp/yel/Y:2009/07/05(日) 14:03:32 ID:fd5X.Pk20

「アンタは……私たちは、そんな平凡な日常なんて送れないのよ。
 大げさな話じゃ決してないわ。
 死ぬまで戦って、死ぬまで利用されて、死ぬ時は誰にも知られずにひっそりと、よ。
 私たちはね、生きるために死ぬまで戦うなんて馬鹿なことしか出来ない類の生き物なのよ」
「アホなこと言うなや、そんなん抗ってみなぁ分からんやないか」
「無理よ、私とアンタはいつか死んじゃうの。
 もちろん死ぬ場所はアンタの言う畳の上でじゃないわ。
 打ちっぱなしの冷たいコンクリートの上で、誰にも見届けられず惨めに死ぬの。
 ……そういうものなのよ。アンタはどうなるかは知らないけど、私は間違いなくそう死ぬわ」
「そんな、そんな悲しいこと言うなや」

つかつか、と足音を立てながら朱里の目前まで和那が迫る。
人一倍背の高い和那と人一倍背の低い朱里の差は子供と大人以上のもの。
見上げる朱里の険しい目線と見下げる和那の笑っている目がかち合う。
そして沈黙が数瞬だけ続き、再び和那が口を開いた。

「朱里が居らんなったらうちは誰にツッコめばいいんや」
「関係ないわね、何度も言うけど私たちはドライな関係のはずよ。
 アンタが思ってるような幸せな関係じゃないわ」
「朱里がどう言おうと、うちらはダチや。
 うちがボケた時は朱里が突っ込んで、朱里がボケた時はうちが突っ込む。そうやろ?」
「……アンタねぇ」
「言っとくけど、これだけは譲らんで。朱里のやってることはうちにはどうしても許容出来んかってな。
 どうしても進みたい言うんやったらうちの屍を越えて行きぃ!」

カッカッカ、と愉快気に笑いながら立塞がるように朱里の前に出る。
恐らくここをやり過ごしても死ぬまで追いかけてくるだろう。
それに、喧嘩は慣れたものだ。
思えば喧嘩と稽古の違いはあれど、会うたびに殴り合っていたのだ。
やるしかない、とため息を吐きながら身構える。

何故か六尺棒は、使う気になれなかった。
デイパックを地面へと落として和那を見据える。
最初に相対した時よりも威圧感を持っており、何処か余裕も感じさせる。
この一年弱の間で何倍も大きく成長したのだろう。
そう素直に思えると目の前の天才だ。
ふと蘇るのは、朱里と和那の通っている保険医でありジャジメントの一員でもある桧垣という男の言葉。

『貴方の代わりなら幾らでもいる』

この貴方と言うのは朱里だけを指している、決して和那のことを言っているわけではない。
熟練しているとはいえアンドロイドである朱里が、未熟ではあるとはいえ超能力者である和那を。
間違っても壊すような真似をするなと、そう言っているのだ。

196FALLEN GIRLS ◆7WJp/yel/Y:2009/07/05(日) 14:04:26 ID:fd5X.Pk20

そう考えていると、和那が迫ってくる。
身体を動かさずに、不自然な体勢で迫って来ているのは、こちらに向かって『落ちてきている』からだ。
彼女が朱里側へと落ちてきた原因となった超能力。
それは『和那本人にかかる重力の向きを変える』という能力。
単純な、それでいて強力な能力。
一山幾らのアンドロイドに過ぎない朱里とは比べ物にならない貴重な戦力だ。
だが、朱里は簡単に和那の拳を避わし当てるだけのジャブとはいえカウンターを入れた。

「くぅ……!」

この勝負、朱里は負けるとは思っていない。
勝率的に見れば六分四分、低く見積もっても精々割合が逆になるぐらいのものだろう。
何故なら、朱里には和那がいつ落ちてくるかぐらいなら分かるのだ。
落ちると言う動作は思っているよりも恐ろしいものだ。
想像してみればわかる、僅か10メートルとは言えそこから飛び降りるのだ。
幾ら和那が慣れているとはいえ、落ちる瞬間は身を強張らせる。
それは僅かな動きだが、構えが固められている和那が強張らせれば直ぐに見抜くことが出来る。
旧式だとはいえ朱里は戦闘用にカスタムされているサイボーグだ。
手数で言えば互角、単純な速さならば向こうが上。
だが、和那よりも朱里の方が目も良ければ耐久も優れている。
負ける要素が見当たらない、と言うほどではないが朱里が優位に立っているのは間違いない。

「てりゃい!」
「……」

腹にカウンターに入れたと言うのに、和那は体勢を崩したままで上段蹴りを入れる。
無茶な体勢で放った蹴り、だが異常なまでに重い蹴りだ、防いだ腕がビリビリと痺れを覚える。
彼女の能力は移動のためだけでなく攻撃にも転じることが出来る。
恐ろしいことに、能力を応用すれば彼女は真上に向かって体重を乗せた攻撃も出来る。
他にも掴んだだけでも骨を折ることも出来るし、超上空へ持ち上げて落とすことも出来る。
その上、和那自身が優れた武術家でもある。
恐らく槍、もしくはそれに準じた武器があれば間違いなく朱里は簡単に抑え込まれるだろう。
朱里に本来の武装を入れたとしても、難しいところだ。

そこまで考えた思わず笑みが浮かぶ。
最初はそれほどの差はなかった。
たとえ槍を持っていたとしても朱里の方が完全に上回っていた。
それは覚悟の問題とか以前の単純な技能の差が故だ。
変わってしまった。
目の前の少女はあの最低の世界で立派に生きていける程に強くなっているのだ。

197FALLEN GIRLS ◆7WJp/yel/Y:2009/07/05(日) 14:05:07 ID:fd5X.Pk20

蹴りの衝撃をそのままに、痛みを逃がすように後ろへと蹴りの勢いに任せて飛ぶ。
衝撃を逃がすために後ろへと飛ぶ、言葉にすると馬鹿らしいものだ。
しかし、それぐらい出来なくてはあの世界で近接戦闘など出来はしない。
二・三メートルほど飛ばされ、階段を転がり落ちる。
鈍い痛みに襲われながら体を立て直そうとするが、和那は既に目の前に迫ってきていた。
機動力では和那が明らかに上回っていると認めざるを得ない。
そして間髪をおかずに朱里の顔に強い蹴りが叩き込まれる。
容赦はない、もちろん容赦なんてしていたらその隙に反撃している。
階段の踊り場の壁に大きく叩きつけられて、肺の中の空気を全て吐き出す。
だが、それが助かった。
痛みには慣れている、追撃のために目の前に迫っていた和那。
その蹴りに対して、滑るようにしゃがみ込んで躱わす。
完全に避け切れず頭に僅かに蹴りが決まるが、その痛みを無視するように足払いをかける。
和那が強制的に重心を低くするところを狙って攻撃を入れようとするが――――

「……ちっ」

だが、それは決まりはしなかった。
和那の重力を操る能力で朱里とは逆方向に向かって『落ちて』いったからだ。
急な動作だったためか、上手く着地できずに背中を壁に思いきり叩きつけられる。
それでも朱里のワン・ツーをまともに食らうよりは何倍もマシだっただろう。
もし決まっていたら痛みのあまり見せた隙で良いように責められていただろう。
とは言え、結果は同じだ。
朱里もこれで決まるとは思っていなかったし、そこで手を止めるつもりなどさらさらない。
和那には劣るとはいえ素早い動きで迫る。
まずは鳩尾に拳を入れて動きを止め、次に意識を刈り取る顎への一撃。

これで終わりだ。

これで終わらせて、人を殺しに行く。

そこまで考えて、ふと思考に意識をやってしまう。

結局自分はどうしたいのだ、と朱里は考えてしまったのだ。
和那を殺す、という選択肢が浮かばなかった。
おかしい、明らかに自分はおかしい。
これが神条紫杏ならばまだ分かる、神条紫杏は浜野朱里が命を懸けてでも守るべきだと思った対象だ。
だが、何故大江和那を殺すという選択肢が浮かばなかったのだ。

「朱里ぃぃぃぃ!」

その声にはっ、とさせられる。
動きが鈍っている、このままではマズイ。
直ぐに動きに集中させようとするが、もう遅い。

198FALLEN GIRLS ◆7WJp/yel/Y:2009/07/05(日) 14:06:33 ID:fd5X.Pk20





伸ばした朱里の腕が届くよりも速く、和那は懐に潜り込み、全体重をこめた拳を顎へと打ち上げた。



瞬間、この意識を刈り取られそうなほど痛烈な一撃で、抱えていたもやもやの正体を何となく理解した。



それは、今はもう懐かしい記憶と春先に起こった二つの大事な記憶。



そのどちらも痛みに襲われる中の、朱里にとって忘れることのできない記憶だ。



―――――それは、かけがえのない姉妹を失った記憶と、かけがえのない親友が出来た記憶。

199FALLEN GIRLS ◆7WJp/yel/Y:2009/07/05(日) 14:07:05 ID:fd5X.Pk20




どうして偽名を使う際に和那の名前を使わなかったかが分かった。



――――それは不快だからではなく、友達を利用するような真似をしたくなかったから。



どうして三橋に紫杏だけでなく和那も殺すと言われた時に不快な感情が生まれたか分かった。



――――それは和那が朱里にとって、居なくなって欲しくない人物だったから。



どうして和那を殺すと言う選択肢が浮かばなかったかの分かった。



――――それは浜野朱里にとって、大江和那は大切な友人だから。

200FALLEN GIRLS ◆7WJp/yel/Y:2009/07/05(日) 14:08:59 ID:fd5X.Pk20

ふらつく足元。ぐらぐらと揺れる脳髄。力の籠らない身体。

和那は警戒するように朱里を見ている。
それとは対照的に朱里は口元を弛ませる。
おかしくてたまらなかった。
朱里にとって大切なのは自分だけのはずだった。
大切だと思った姉妹はもう死んでしまい、さらにその姉妹は朱里に生きていて欲しいと思ったから。
だと言うのに、今は大切なものが自分以外にも出来てしまっている。

「……カズ」
「なんや」

未だに警戒を解こうとしない。
思ったよりも自分は信用されていないようだと朱里は少しおかしくなる。
まあ、この友人兼弟子とこれから親交を深めるのも悪くない、とも思った。

「とりあえず、お腹空いたから何か食べましょうか」
「――――! ああ、ええで!」

一瞬で警戒を解いて駆け寄ってくる和那。
それがどうにもおかしくて朱里は思わずクスリと口を動かすだけとはいえ笑みが浮かぶ。
一度笑みがこぼれるともう止められない。
クスリと笑うだけでなく大口を開けて笑いが零れる。
和那はその様子を見て一瞬だけキョトンとした顔を見せるが、すぐに釣られるように笑いだす。
朱里と和那自身にも何故笑っているのかよく分からない。
ただ、おかしくて楽しくて、とても嬉しいと言うことだけは分かっている。
笑いを止めようとはしない。
まるで二人は凱歌を歌いながら故郷へと帰る兵士のようだ。
彼女たちの笑いは事務室にたどり着くまで続いた。

「は、ははは……あー、おかし」
「なんやねんいきなり笑いだして」

事務室のソファーに腰かけて二人は僅かに出た涙を裾で拭う。
数十秒ほど笑いをおさめることに時間をかける。
事務室はソファーと作業用の机、そして監視カメラと意外と広い作りになっている。

「……なんやえらい荒れとるなぁ」
「三橋って奴が漁ったんでしょうね」
「そう言えば、朱里。なんで三橋さんのこと知ってるの?」

201FALLEN GIRLS ◆7WJp/yel/Y:2009/07/05(日) 14:09:41 ID:fd5X.Pk20

意外そうな顔と声で和那は朱里を見る。
朱里は眉をひそめ機嫌の悪そうな声で答える。
あまり良い関係とは言えないようだ。

「殺し合いに乗ってるそうよ。……まあ、アンタも知ってるけど」
「あー、まあ朱里が来るまでどつきあったし。って、そう言えばなんで朱里はそれを知ってんの?」
「これでここに連絡した時に、ね」

朱里はデイパックから名刺大の厚みのある機械を隣に座っている和那の膝に放り投げる。
少し慌てた様子で和那は受け取り、それをじっと眺めて確かめるように呟く。

「ケータイ……?」
「その中に入ってた番号の一つがここでね。それで掛けたら三橋で出たってわけ。
 殺し合いに乗らないとアンタや紫杏を殺すーとか言う意味不明な脅しかけられたわ」
「あー、これで進藤ちゃんや曽根村さんに電話したんか」
「……知ってたの?」

少しだけ、朱里の声の調子が沈み和那からも目を逸らす。
殺し合いに乗っていた、と言うことに負い目を感じているのだろう。

「ああ、構わへん構わへん。幸いっていうんかな、死んだ人も怪我した人も居らんし。
 ほら、あれや。大事なんはこれからのことやーってよく言うやろ?」
「べ、別に後悔とかそういうわけじゃ……!」
「照れへんでもええって。それよりはよメシでも食お。お腹ペコペコやねん」

大げさに腹を押さえて、机の上に置かれていたカップ麺を眺める。
しょうゆ、塩、味噌、トンコツと何でも揃っているが和那はとりあえずと言った様子で塩を手に取った。

「朱里は何にするー? 色々あるでー」
「私は……しょうゆでいいわ」
「りょーかい」

その言葉を聞くと魔法瓶に手を伸ばして素早くお湯を注いで行く。
流れるような手慣れた動作だ。
そして、いつの間にか他のカップ麺から抜き取った大量のかやくを入れていく。
和那の突然の行動に驚いたのか朱里が目を大きく見開く。

202FALLEN GIRLS ◆7WJp/yel/Y:2009/07/05(日) 14:11:45 ID:fd5X.Pk20

「な、何やってんの、アンタ?」
「んー、どうにもすきっ腹で……かやく大量に入れて補おうと」
「なら二個食べればいいじゃない」
「阿呆! 乙女がそんなカロリー無視できるかい!」
「……って言うか、それって美味しいの?」
「よう知らんけど、まあ具沢山でお得度高いやん」

無茶苦茶な論理を言いながら和那はソファーに腰掛ける。
朱里としてはそのようなマニュアルから逸脱した冒険をする気にはならない。
朱里は大人しく平均水量平均時間で行くことにする。
未来の可能性の一つにそんなえり好みすら出来なくなることを知らずに。

「お、出来たみたいやで」
「少し早くない?」
「そうか? まあ、少々構わんやろ」
「……よっぽどお腹空いてるのね」
「あー、どうにも疲れやすくてな……なんかいつもより疲れやすいわ、歳かな?」
「言ってなさいよ」

カップ麺と同じ場所に仕舞われていた割り箸を取り出して、蓋を開ける。
その瞬間、湯気が顔に当たり思わず頭を下げる。
いずれにしろ美味しそうなものだと言うことは確かだ。
割り箸を二つに割り、同じタイミングで麺を啜る。

「おお、美味い」
「そうね」
「けど、ちょっとスープが少ないんがなー」
「……かやくを入れ過ぎなのよ」
「んー、まあ美味いから別にええか」
「アンタが構わないって言うのなら別に良いけど……それよりこれからどうするかよ」

まったりとした空気の中で朱里が真剣な顔で切り出す。
和那は麺をすすりながら目だけを動かして朱里の話を聞く。
そんな呑気な和那に特に注意をするわけでもなく、朱里はラーメンを啜りながら話を続ける。

「一先ず紫杏と合流ね。悪いけど他の奴を信用は出来ないわ」
「んー、確かに紫杏は心配やな。あれでも一応ただの女子高生やし」

神条紫杏、朱里がいま最も安否の確認を急ぎたい人物。
朱里が命に代えてでも守ると決めた、ただ一人の人間だ。
紫杏は朱里のことを友達だと思っているようだが、やはり朱里からすると主従の関係だ。
主が紫杏で従者が朱里、やはりそれが一番しっくりと来る。
そして、その紫杏は殺し合いに乗っている可能性が高い。
自身の能力と現状を考えた結果、生き残る可能性が殺し合いに高いから乗った。
神条紫杏と言う女はそれを平然と考え、平然と実行に移せる一面を持っている。

203FALLEN GIRLS ◆7WJp/yel/Y:2009/07/05(日) 14:12:25 ID:fd5X.Pk20

だからこそ朱里が紫杏に入れ込むのだが、やはりそれは少しマズイ。
和那を殺したくない、と朱里ははっきりと認識してしまった。
殺し合いに乗る手伝いは出来ない。
となれば、残された手段は説得しかない。
骨は折れるだろうが、やるしかない。
覚悟をきめて、話を次に進める。

「その後は……とりあえず首輪ね。
 紫杏もさすがに工学系には詳しくないからこれは私が担当するしかないわね」
「おー、頼りになるのー!」
「茶化すんじゃないわよ、大事な話なんだから。
 とりあえず、方針らしい方針なんてこんなものでしょ……あと、アイツも探すの?」
「あったり前や! もちろん十波君だけとちゃうで!  全員で生きて帰るんや!」
「はいはい……でも、正直意外ね。
 私はなんだかんだでアンタはかなりドライな奴だと思ってたんだけど」

朱里の描く和那は、馬鹿ではあるが人の感情の機微には鋭くそれを計算して動くタイプの人間だ。
いわゆる世渡りの上手いタイプ。
夢もあまり見ず、人は汚い部分を持っていることを知っているはず。
なのに、全員で生きて帰る、という言葉を放つのはひどく意外だった。

「……これは全部あのメガネの所為やろ。
 殺し合いに乗った奴を心からなんて恨めんわ、しゃあない部分が大きすぎる。
 もちろん、だからって全部許せるわけやない。
 知り合い殺されたらうちもキレるし、多分思いっきりぶん殴らな気が済まん。
 でも、それだけや。間違ったと認めて立ち直ろうとするんやったら喜んで助けたる。
 それでええと思うんや。憎んだり憎まれたりとか……そんなん、辛いだけや。
 まあ、あのメガネの場合は話は別やけどな。
 警察にぶち込むぐらいはしたるわ。
 悪どいことやって、刑務所から出てきたら死ぬまで思いっきりぶん殴り続けるけどな!」
「ふーん……」

正直、甘い話だなと朱里は思う。
簡単に立ち直れるわけがないし、そんなことをしていたら時間がいくらあっても足りない。
だけど和那の気持ちは分かる。
和那は妥協したくないのだろう。
喧嘩の最中に喋った『ハッピーエンド以外お断り』という言葉。
きっとそれが和那が動く理由の根っこになっているのだろう。
実際はまだ六時間しか経っていないというのに相当数の人間が死んでいるのだ。
たとえ運よく生き残ってもハッピーエンドなんて口が裂けても言えない。
彼女はどんなに辛いことがあっても、和那自身の力が及ぶ限りハッピーエンドを目指すだろう。

204FALLEN GIRLS ◆7WJp/yel/Y:2009/07/05(日) 14:13:23 ID:fd5X.Pk20

「まあ、良いんじゃない。ところでアンタは面白い情報でもないの?」
「あ、あるであるで!」

嬉しそうに声を上げる和那、その様子は人懐っこい大型犬を思わせる。
そんなことを朱里が思っているのを気付いていないようで、嬉々として口を開く。

「なんでもなぁ、あのメガネはタイムマシンをもっとるらしいで!」
「………………………………………………………はあ?」

空いた口がふさがらない、とはこういうことを言うのだろう。
タイムマシン、実にファンタジーだ。
そんなものがあるわけがない、現実にネコ型ロボットは作られる気配すらないのだ。
その代わりと言わんばかりに殺人機械、アンドロイドは大量に作られているが。
と言うか、多分ネコ型ロボットが作られるのはずっと後だろう。
高性能AIを搭載するならメイドロボよりも戦略兵器の方が先に作られる。
それは歴史を振り返れば簡単に分かることだ。

「なにそれ頭湧いてるんじゃない?」
「き、きついなぁ。でもでも、たぶんマジやで? 現にうちが五人も昔の人と会ったんやから」
「馬鹿にされてんじゃないの?」

朱里に取りつく島もない。
端からあり得ないと言う考えで話を進めるのだからそれも仕方ない。
と言うより、よっぽどのことがなければ向こうがからかっていると思うのが普通とも言える。

「いや、でもやで、よー考えてみ。
 あり得んことが続いてるんやから、それぐらいのことがあってもおかしゅうないやろ」
「あり得ないものはあり得ません」
「ほら、超能力かもしれへんで? ジャジメントかて全部知ってるわけやないんやろ?」
「そんなヤバいのがあれば目につくわよ……多分」
「いや、でもタイムマシン的な力があれば未来から来たってことだってあり得るやろ?」
「うっ……!」
「それに皆が皆うちと会ったとき口裏合わせとる様子はなかったで。
 第一、二人に至ってはうちにそのことを教えた人と会ってもおらへんかった」
「……でもねぇ」

確かに和那の言い分も通らないわけではない。
同時に変な理論をでっち上げる人間の言葉を鵜呑みして、辺りの人間からはあまり触れられないようにされている可能性も同じくらいある。
正直な話なら朱里は和那が痛い人間だと思われている可能性の方が高いと思っている。

205FALLEN GIRLS ◆7WJp/yel/Y:2009/07/05(日) 14:14:08 ID:fd5X.Pk20

だが、だからと言って流してもいい話題ではない。
全くあり得ないということ言い切ることが出来ない。
そして、和那はここに来る前に曽根村と言う男と進藤と言う女に出会ったとも言っていた。
つまり二人組が同時に質問されて、タイムマシンの存在を認めたということだ。
鼻で笑うことも出来ない。
出来ないが、やはり信じることは理性が拒む。

「……まあ、考える余地がないわけじゃないわね。今は置いておくけど」
「冷たいなあ……んで、どうするんや?」
「あんたの口ぶりだと仲間が居るのよね」
「居るでー! 八神さんに真央に走太くん!」
「ふぅん……」

真央と言うのは恐らく黒猫のことだろう。
確か和那は『真央と走太くんを襲った』と言っていた。
それに真央、マオ、つまり猫だ。
安直ではあるが黒猫という肩書きに合う。
あの正義の味方を自称する女なら殺し合いになんて乗らないだろう。
信用は出来る、出来るがやはり和那や紫杏ほどではない。
だが、残りの二人はどうか分からない。
一方は子供だから、なんて言い捨てれるわけがない。
子供は簡単に残酷になれる。純粋で我儘な子供はある意味殺し合いに向いてると言えなくもない。
最初に亀田に反抗したような子供の方が少ないのだ。
大人も安全とは言えない、騙すことに慣れているのだから。
ただ、大人は勝手に考えすぎてくれるから楽だ。

「とりあえず、紫杏を探しましょ。それから考えたんで良いでしょ」
「せやな、んじゃさっさとメシ食おうか」

和那の言葉に朱里は頷き、同時に二人はカップを持ち上げて流し込むように具とスープを胃に収めていく。
真面目な話、乙女のやることではない。
花も恥じらうどころかゴミ漁りの鴉もビックリの荒々しさだ。
カップ麺と割り箸、その他のゴミは片付けずに無遠慮に机の上に置いておく。
どうせ亀田の用意した会場だ。
わざわざ綺麗にするのも馬鹿らしい。

「さ、行くわよ。アンタが居れば車なんかよりよっぽど便利だから助かるわ、少し怖いけど」
「悪い、それ出来へん」
「……はぁ?」
「なんや、ひどい疲れるんよ。いつもは歩くよりも楽なぐらいやのに。
 正直、今も三橋さんと朱里との喧嘩で結構動き回ったさかい眠りたいぐらいお疲れやで」
「……ふぅん。しょうがないわね、歩いて行くわよ」

206FALLEN GIRLS ◆7WJp/yel/Y:2009/07/05(日) 14:14:40 ID:fd5X.Pk20

ここで和那が嘘をつくわけもない。
先ほどの食事は情報交換も兼ねていたから問題ない。だが、移動時間を延ばす意味はない。
無駄な時間を惜しいことぐらい和那も分かるだろう。
恐らく本気で疲れを感じているのだ。

「カズ、これ持ってなさい」
「っと……棒か。へえ、結構頑丈なええ奴やん」

六尺棒を手渡すと感触を確かめると、満足そうにほほ笑んだ。
これで戦闘は楽になった。
朱里が危険になったとも言えるが、和那の疲れが酷いと言う言葉が本当ならば体力を抑える必要がある。
ならば、全身自体が凶器の朱里よりも、天才とは言えただの人である和那が武器を持つのは当然だ。

「後は、道具を一つに纏めておきましょう。無駄な荷物は邪魔よ」
「つまり、じゃんけんやな!」
「……なに言ってんの?」
「じゃんけんで荷物持ちを決める、これは常識やろ、常識!」
「……まあ、別にいいけど」
「おっしゃ、いくでー! 最初はグー、じゃんけん、ぽん!」

和那が出した手はグー、朱里が出した手はパー。
結果は朱里の大勝利。
ニコリともせずにデイパックの口を開き、和那のデイパックに物を詰め込んでいく。
支給品一式、携帯電話、塩素系合成洗剤、酸性洗剤、油、ライター。
これですべて。
そのデイパックを見るからにしょげている和那へと押しつけるように投げつける。

「問題は色々あるわ……首輪とか面倒くさいことのこの上ないわね」
「……ま、大丈夫やろ!
 なんてたってうちらは地上最強のコンビ、ファーレンガールズやからな!」

その言葉にピタリと足を止める。
その様子に和那は先ほどはしょげていた顔を、どうした、と言わんばかりに上から眺めてくる。
朱里は額をぴくぴくと痙攣させながら、ゆっくりと口を開いた。
不自然に頬が吊り上っているのがまた不気味だ。

「……ちょっと待ちなさいよアンタ! それ、意味分かって――――――――――――


   ◆   ◆   ◆

207FALLEN GIRLS ◆7WJp/yel/Y:2009/07/05(日) 14:15:15 ID:fd5X.Pk20



 水族館に満たされたのは、爆音。


 水族館に広がったのは、閃光。


 崩れていく。


 魚を鑑賞する、と言う趣をもった娯楽施設は無惨にも崩れていく。


 端目から見れば、何が起こったのか理解できなかっただろう。


 沈んでいくのだ、巨大な水族館が地中へと。


 見るものが見れば『奇跡だ』と呻くだろう。


 見るものが見れば『秘密基地だ!』と喜びを露わにするだろう


 見るものが見れば『爆発か……』と冷静に分析するだろう。


 そう、これは奇跡でも基地の変形でもない。


 人が起こした夢のない破壊行動、爆発。


 それは『トンネルバスター』という兵器が起こした一つの施設と二人の人間を巻き込んだ一つの爆発。

208FALLEN GIRLS ◆7WJp/yel/Y:2009/07/05(日) 14:15:57 ID:fd5X.Pk20


   ◆   ◆   ◆


三橋一郎は大きな窓を鬼の手でぶち破り、そこから外へと出る。
足場は安定している。
西側の窓のため、ここをまっすぐに進めば病院やホテルへとたどり着けるはずだ。
『逃走経路』を確かめて、ようやく準備完了。
そして、壊した窓から階下、つまり地下へと目がけてライターを投げ込み猛ダッシュで離れる。

その瞬間――――爆音が響き、水族館が沈んでいった。

それは支給品、トンネルバスターの仕業。
無色無臭の空気と混じり合うことによって非常に高い爆発性を持つガス。
三橋に勝手は一切分からないが、それが強力な兵器であることは説明書を読むことで理解した。
そして、ライターを用意し、ガスの充満した地下へと放り投げる。
轟音と共に建物を支えていた柱が崩壊し、さらにトンネルバスター自体の威力で地面を壊していく。
綺麗に水族館が地面へと沈みこんでいく。
ある意味壮観だった。
これに巻き込まれたら生きて出ることは不可能だ。
予想以上に強力だ、つくづく自分が手に入れて良かったと思わせる支給品だ。

あの少女から支給品を奪えなかったのは非常に残念ではあるが、贅沢は言ってられない。
わけの分からない動き方をする少女を確実に殺せて良かったとも考えるべきだ。
しかも、音から判断するに少女は直前に誰かと殺し合っていた。
事務室に入っているのが見えたことから和解したようだが、そんなことは関係ない。
トンネルバスターを使って殺す人間が増えただけだ。

「これで……五人目か」

ポツリ、と呟く。
一人目は名も知らぬ青年、二人目はアルベルト、三人目は鋼、四人目と五人目は大江和那と顔も名前も知らない人間。
僅か八時間の間で五人もの人間に手をかけた。
それなのに普通に動けているということが三橋自身にも少しだけ意外だった。
びくびくと怯えることもなく、驚くほど冷静に物を考えて動いている。

「これも、亀田くんの仕業かな……」

209FALLEN GIRLS ◆7WJp/yel/Y:2009/07/05(日) 14:16:35 ID:fd5X.Pk20

頭に浮かんだのは亀田によって体内に埋め込まれた回路のことだ。
これは思考を縛ることはできないが、身体を自由に動かすことが出来ると言う回路。
絶対服従回路とでも言うべきか。
そんなものがあるのなら、思考を誘導する回路があってもおかしくはない。
それを埋め込まれたのではないかと三橋は疑ったのだ。

「……はは、でも、それはないな」

そんな物があるのならとっくに使っているはずだ。
使っているのなら使っているで、人を殺したときに抱く嫌な気持ちを覚える意味も分からない。
だから、これは自分自身の意志で選んだ行動だ。
亀田の思いに応えたいと言う三橋自身の意志で、五人の人間を殺したのだ。

三橋は少しだけ沈んだ水族館を見る。
この惨状は自分の仕業。
沈んだ水族館には三つの死体が埋まっている。
大江和那の死体と、鋼毅の死体と、名も顔も知らぬ人間の死体。
その全てがお魚さんの仲間入りだ。

次に鬼の手に目を移し、自分のやったことを再確認する。
血に染まりさらに禍々しさを増した鬼の手。
武器と言うものは血を吸うことで妖艶な雰囲気を放つのだと三橋は初めて知った。
正しい使用法をしてこそ道具は輝くと言うことなのだろう。

210FALLEN GIRLS ◆7WJp/yel/Y:2009/07/05(日) 14:17:06 ID:fd5X.Pk20

僅かに考え込む。
思えばこの仕事をしてから考えることが多くなった。

(……殺すだけだ、今はとにかくそれだけを考えよう)

眠れば悪夢にうなされるだろう。
だが、しっかりと仕事をこなせば亀田の感謝の言葉で幸せになれる。

三橋は僅かに俯いた後、すぐにそこを立ち去った。


【H-6/水族館付近/一日目/午前】
【三橋一郎@パワプロクンポケット3】
[状態]:打撲 エネルギー70%
[装備]:鬼の手、パワーと走力の+パーツ一式、豪力
[道具]:支給品一式×2、予備バッテリー
[参戦時期]亀田の乗るガンダーロボと対決して敗北。亀田に従わされしばらく経ってから
[思考]
基本:亀田の命令に従いバトルロワイヤルを円滑に進めるために行動する。
1:少しだけ休んでから移動する。
2:参加者を積極的に探して殺す。
3:もしも相手がマーダーならば協力してもいい。
4:亀田に対する恐怖心。
[備考]
※萩原(名前は知らない)は死んだと思っています。
※大江和那と浜野朱里(名前と姿が一致しない)が死んだと思っています。
※大江和那の能力の詳細を一切知りません
※トンネルバスターは一回分です

【トンネルバスター@パワプロクンポケット10(11?)】
浜野朱里の体内に内蔵された高性能の爆破兵器。
無色無臭のガスで人間が察知するのはまず不可能。
威力は強大で廃ビルとは言えその半分を狙って壊すことが出来る。
平地で単純に爆破させるよりも建築物を壊して二次災害を起こす方が強い。
取り扱いも楽で場所を選ぶことを除けば便利な兵器である。
ただし、ガスは朱里の尻から出る。
今回は缶に詰め込み支給した。

211FALLEN GIRLS ◆7WJp/yel/Y:2009/07/05(日) 14:17:49 ID:fd5X.Pk20


   ◆   ◆   ◆


「朱里ぃぃぃ!!」

和那は大声で叫びながら積み重なった瓦礫を紙切れのように吹き飛ばしていく。
これも重力を操る能力の応用。
強く瓦礫も自分自身だと思いこめば、自分が落ちて行く方向に吹き飛ぶ。
これは普通に使うよりも集中しなければいけないため、疲労が大きいが構った事ではない。
六尺棒をテコの原理で上手く使いながら探索を続ける。

あの時、朱里が何か言おうとした瞬間、凄まじい音と同時に地面が沈んでいった。
如何に優れたアンドロイドであろうと、足場が崩れてしまえばなにも出来はしない。
しかし、和那は確かに感じた。
自分の背中に痛いほどに叩きつけられた平手を。
そのおかげで速く反応出来た。
和那は思わず地面が崩れた瞬間に能力を使い、瓦礫の下敷きになることは免れたのだ。
最も直撃を免れただけで、水族館の瓦解に巻き込まれ怪我を負っている。
それでも生きている、和那は生きている。
動けるのなら、朱里を探すしかない。
僅かに涙で潤む目を拭いもせずに瓦礫を退けていく。
大きな瓦礫が少ないのがせめてもの救いだ。

「うっさいわねぇ……」

数分ほど朱里の名前を叫びながら探索を続けていると、何処からか声が聞こえる。
その声を和那が間違えるわけもない。
不機嫌そうな高い声色、ここ一年間毎日聞いていた声だ。
間違えるわけがない。
間違えるほど和那は薄情な人間ではないのだ。

212FALLEN GIRLS ◆7WJp/yel/Y:2009/07/05(日) 14:18:44 ID:fd5X.Pk20

「朱里!」

今まで以上の大声で呼びかけ、声のする方向へと駆ける。
瓦礫が積み重なった影に朱里が倒れていた。
顔をしかめているものの、声を出せることから大事ではないと思いほっと息をつく。

「あんまり大声出さないでよ、うるさいから」
「え、あ、いや、その、すまん」
「……で、なんでアンタはこんな所に居るの?」
「そら、朱里が心配で――――」
「あー、良いから、そう言うの。私は……まあ、もういいから」
「……朱里? ……って、な!?」

和那は朱里の顔から胴体に視線を下げていく。
そこに異様な見覚えのない物体があった。
朱里の身体のちょうど真ん中に一本の短い、しかし確かな鉄筋のようなものが刺さっている。
それに気づいているはずなのに、朱里は何ともないように話をしている。

「多分、下の階に爆弾仕込んだわね。瓦礫に巻き込まれるとはまだまだ甘い」
「……嘘やろ、朱里」
「本当よ、爆発なら何回かやったことあるんだから」
「そっちやないわアホ!」
「……だからうるさいって言ってるでしょ」
「どうなっとるんか分かっとるんか!?」
「分かってるわ、わかってるから、聞きなさい」

端目から見ればひどくおかしな光景だろう。
煤で汚れているとはいえ比較的軽症な和菜がうろたえ、瓦礫にサンドイッチされ鉄筋で貫かれた朱里が落ち着きを払っている。
普通ならばどちらもうろたえるものだろう。
だと言うのに、朱里は相変わらず平然とした口調で和那を諭すように言葉を続ける。

「……多分、下手人は三橋ね。超能力者って可能性はあるけど十中八九支給品でしょ。
 数は……分かんないわね。アンタはさっき言ってた仲間と合流しなさい」
「朱里はどうすんねん!」
「あー、私は……まあ、なんとかするわよ。なんとか」
「なんとかってなんやねん!」
「聞きなさい!」
「……!」

213FALLEN GIRLS ◆7WJp/yel/Y:2009/07/05(日) 14:19:51 ID:fd5X.Pk20

落ち着いた声から一転、大声で和那を諌める。

「……アンタ、言ったわよね。皆で帰る、って。なら、三橋を止めてみなさいよ。
 それさえ出来ないならアンタはただのホラ吹きに過ぎないわよ」
「せ、せやかて朱里が……!」
「私は大丈夫よ、ちょっと最近アンタ私のこと舐めてない?
 言っとくけどね、こんな怪我なんて軽傷よ軽傷。足がなくなって初めて重傷って言うのよ。
 幸いと言うか私は頑丈だから、って言うかこれぐらい喋れてる時点で察しなさい」
「……」
「ほら、早く行きなさいよ。アンタならこの島一周するのですら二十分もかからないでしょ?
 その体力温存するためにも、こんなところでこんなことやってる場合じゃないでしょ」
「……すまん、朱里。パッとやってパッと帰ってくるさかい」
「駄目駄目、手抜きせずにじっくりとやりなさいよ。
 あと、紫杏を探すことも忘れないでよ!」

ここで初めて朱里は笑い、じたばたと手を動かす。
和那は笑いもしなければ、その姿を見もしない。
ただ、俯いた状態で立ち尽くしていた。
それを十数秒ほど続けていたが、和那の体が急に中へと浮いていく。
急スピードだ、どんどんと和那の体が瓦解した水族館から離れていく。

空へと、そう、空へと落ちていく。

高さにして約50メートル、これほどの長距離落下は和那は滅多にしない。
恐怖心は不思議となかった。
きっと、空が綺麗に晴上がっている所為だろう。
本当に晴上がっている。
雲と言う遮るもののない、気を失いそうなほど真っ青な空と、東の空に堂々とまばやく太陽。
どこまでも落ちていけそうだ。

少しだけ、何処までも広がる空を呆ける様に眺めた後、涙が零れた。

何故、涙が流れているのかは理解している。
それは大切な親友を失ってしまったから。
和那だって馬鹿ではない、朱里の言葉がすべて嘘だってことぐらいは分かっている。
だけど朱里は先に行けと言った。

「……行こか」

214FALLEN GIRLS ◆7WJp/yel/Y:2009/07/05(日) 14:20:24 ID:fd5X.Pk20

ぽつりと呟き、手元の六尺棒をぎしりと音が鳴るほどに強く握りしめて重力の方向を変化させる。
先ほどまで顔が圧で痛いほどに猛スピードで落下していところを、一瞬の間もなく逆方向へと落下する。
急な重圧で思わず胃の中のものを吐き出しそうになるが、ぐっと噛みしめて
そして地面から約五メートル、その瞬間に重力の方向の変更を交互に行っていく。
地面に身体を打ちつけないためとはいえ、やはり少し体は辛いところがある。

ゆっくりと立ち上がるが、身体を起き上がるよりも早く膝が抜ける。

「なっ……!?」

頭が痛む。
身体が、ではない。頭が痛むのだ。
こんなことは初めてのことだ。
いや、思い返してみると初めてではないことに和那は気付く。
これはあの夜の時と同じ。
朱里との喧嘩で一矢報いた時と同じ感覚。
頭がぐらぐらと揺らされているような感覚と体に力が全く入らない現状。
気絶する!、とここでようやく気付いた。
疲れだけだからと思って甘く見ていた。
体中に残る痛みとガンガン揺らされる意識。

(せ、せや、せめて携帯で連絡を……!)

朱里が詰め込んだデイパックの中にある携帯電話の存在を思い出し、破くようにデイパックの口を開ける。
ひっくり返すようにして中を漁っていく、出てくるものは食料や水やメモ用紙と言った要らないものばかり。
ようやく見つけた

「電話帳……! 病……い……ん……」

だが、そこまで。
携帯を開いたまま、沈んだ水族館をバックにして。
和那は半強制的に意識を手放してしまった。


【G-6/水族館/一日目/午前】
【大江和那@パワプロクンポケット10】
[状態]:全身打撲、疲労(大)、気絶
[装備]:六尺棒
[道具]:支給品一式×2、不明支給品1〜3、携帯電話、塩素系合成洗剤、酸性洗剤、油、ライター
[思考]
基本:バトルロワイヤルを止める。
1:……………(気絶中)
2:朱里ぃ……
3:病院へと戻る。
【備考】
※重力操作にかけられた制限の存在に漠然と気付きました。

215FALLEN GIRLS ◆7WJp/yel/Y:2009/07/05(日) 14:21:08 ID:fd5X.Pk20


   ○   ○   ○


カズの気配が消える。

どうやら足音がしないことから重力操作で立ち去ったらしい。

馬鹿なカズ、無駄な体力の消費を避けるべきなのに。

しかし、体中からずきずきと鈍い痛みが広がって辛いことこの上ない。

上半身、というか口は簡単に動くのに下半身は既に動かないということは回路のショートだろう。

人間で言うなら脊髄の損傷か。

しかも、なんだか視界がふらふらと揺れているような気がする。

……何度考えても致命的な傷だ、そのうち死んでしまうと言う怪我の典型だ。

ぺらぺらと喋ったのも少し不味かったかも知れない。

ふむ……カズに嘘をついてしまったか。

まあ、嘘も方便と言う奴だ。

悪いことには違いないが、カズもそのうち納得してくれるだろう。

紫杏……どうしているのだろうか?

頭のいい紫杏はきっと悩んでいるだろう。

紫杏をサポートするのもカズに任せてしまったのも申し訳のないことの一つだ。

不思議とさっぱりとした気持ちで満たされていく。

そのことに申し訳がない気持ちも出てくる。

216FALLEN GIRLS ◆7WJp/yel/Y:2009/07/05(日) 14:21:38 ID:fd5X.Pk20

姉妹の亡骸を越えて今まで生きてきたのに、その命を自分勝手な理由で捨ててしまった。

怒っているだろうか?

私としてはやはり姉妹は大事な人たちだ。

その人たちを裏切ったとも取れなくもない行動だ。

駄目だ、ネガティブになり過ぎている。

逆に考えてみよう、私が姉妹の立場だとしたら、どう思う?

……許すな、きっと許す。

喜ぶかどうかは微妙だが、多分許す。

悪いことをしたわけではない。

私は後悔なんてせずに、私がしたいと思ったことをやった。

うん、後悔もない。

後は死ぬだけだ。

死ぬことは怖いが、あのままジャジメントの手駒として生きるのも嫌なものがある。

そう言えば、死んだ後はどうなっているのだろうか?

死後の世界とかいう奴があるのだろうか?

それなら、姉妹に会って謝ろう、死んでしまって御免、って。

その後、胸を張って友達が出来たと言おう。

それとも、天国ではなく来世とかいう奴に直行なのだろうか?

ならば、もし来世なんてものがあって、アンドロイドにもそれがあるのなら。

どうか、次は皆でただの人間に―――――


【浜野朱里@パワプロクンポケット10  死亡】
【残り40人】

※水族館が沈没しました。
※浜野朱里の死体と鋼毅の死体は水族館に埋まっています。

217FALLEN GIRLS ◆7WJp/yel/Y:2009/07/05(日) 14:22:38 ID:fd5X.Pk20
投下終了です……
途中……凄く、誤爆しました……orz
長文誤爆ほど恥ずかしいものはない……orz

誤字脱字、ほか展開についての指摘をお願いします

218本スレPart3の367:2009/10/17(土) 23:03:21 ID:1/egJpbcO
こんばんは。

・初投下であること。
・ゲリラ投下であること。
・本編にほんのちょっとしか関係ないこと。
といった理由により、こちらに投下したいと思います。

219私の背中には羽がある。◇本スレPart3の367:2009/10/17(土) 23:05:41 ID:1/egJpbcO

空高く昇った満月を、とあるビルの一室から見上げていた。

今私のいる部屋は、社長室。
四つの壁のうちの一つがガラス張りの窓になっていて、部屋には、高そうな机や椅子が置かれている。
私はそのガラス張りの窓から見える満月を眺めていた。

『あの人』もこの月を見ているだろうか?と想いながら

私はこの会社の社長。昨年冬に先代の社長であるお父様の跡を継いで、この会社の社長に就任した。
私の会社は、ここ十数年でIT企業として、急成長した会社。
オオガミやジャジメントほどではないが、世界中に支社も持ってる。

ふぅ、と私はため息をついて椅子に座った。
社長就任後は忙しくて、大好きな本もあまり読めていない。かなり不満だ。
それに、時々、私はいつまでたっても自分の羽でカゴの外を、自由な空を飛び回れないんじゃないかと不安になる。逃げたくなる。
だけど、私は決して俯かない。逃げない。
カゴの外には、今の不自由な空の上には、『あの人』がいるから……

220私の背中には羽がある。◇本スレPart3の367:2009/10/17(土) 23:07:05 ID:1/egJpbcO

カゴの中で、物心ついた時から背負わされた鎖に縛られ、羽を広げる事を諦めて、誰かがそれを引きちぎってくれる事を待っていた私に、鎖を引きちぎるのは自分自身だという事、もがく事を教えてくれた『あの人』。

未来の決められていた世界、感情なんか二の次だった世界から私を連れ出して欲しいと言ったら、

「君が望むなら、この世界から連れ出してあげる。」
と約束してくれた。

私の鎖の正体を教えたら、

「そんなの無視すればいい。自分の道を歩けばいいじゃないか。」
と言ってくれた。

羽を広げようとしてもダメで、諦めかけた時、

「羽が動かせないからなんだ?
 前に進む事は、自分の道を進むって事は鎖を引きちぎる事だけじゃない!
 それを引きずりながらでも、人は進む事ができるんだ!
 空を飛べなくたって俺達は地を歩いていける。」
と励ましてくれた。

221私の背中には羽がある。◇本スレPARTpart3の367:2009/10/17(土) 23:08:08 ID:1/egJpbcO

物心ついた時から歩かされていた道で、みんなが同じ方向を指差す中で、
ただ一人、初めて違う方向を指差してくれた。
生きてきて、初めて良かったと思える幸せな時間、毎日が特別な日々をくれた。
彼のその言葉の一つ一つが私の羽を大きくしてくれた。
彼との幸せな日々が私の羽に鎖を背負っても飛び回れる力をくれた。

机の引き出しを開けて、大事に使っている枝折りを手に取る。
私の誕生日に、『あの人』からもらった四つ葉のクローバーの枝折り。
今までで一番温かかった、心のこもったプレゼント。
私の宝物。
この宝物を見て、あの幸せだった日々、あの聖夜を思い出す。
そうすれば、私の羽に力が戻ってくる。
私はまた上を目指して羽を広げられる。
いつか、『あの人』と肩を並べて飛べるように。
私の羽に縛り付けられた鎖は、まだ私には重すぎるけど、
いつか必ず、自由な空へ羽ばたいて『あの人』の元へ……
そう約束したから……

222私の背中には羽がある。◇本スレPARTpart3の367:2009/10/17(土) 23:11:30 ID:1/egJpbcO

◇   ◇   ◇   ◇

ここは、どこだろう?

何もない。本当に何もない草原。
ただ、見上げれば、無限の空が広がっている。

気づけば、私の背中には、羽がある。
でも、その羽には鎖が何重にも縛り付けられていた。
一つのグループ企業の社長という鎖。

試しに、羽を広げようとする。

羽は……広がった。

次に、羽ばたいてみる。

…少し飛べた。

もっと強く羽ばたいてみる。

もっと高く飛べた。

もっと、もっと強く羽ばたいてみる。

もっと、もっと高く飛べた。

でも、ある高さまで来て、急に、一段と羽が重くなった。
私は、そのまま、地に落ちた。
羽が痛む。

「……………さ…。」

けど、大丈夫。
羽が傷つくことは恐れないと決めたから。

223私の背中には羽がある。◇本スレPart3の367:2009/10/17(土) 23:14:20 ID:1/egJpbcO

「……………さん。」
もう一度、羽ばたいてみる。
だけど、またあの高さまで来て、地に落ちた。
私はまだ、不自由な空にいるのだろうか?
「………り…さん。」

そういえば、さっきから誰かが私を呼んでる気がする。

「………お…り…さん。」

上からだ。
誰だろう?と上を見上げる。

そこにいたのは……




「……維織さん。」

「九条……くん?」

九条くんだ。

何でここにいるのか、何で九条くんにも羽があるのかなんて、どうでも良かった。

ただ、九条の飛んでる高さまで行きたくて、痛む羽を羽ばたかせる。


あと少し、もう少しで九条くんの元へ。


幸せだった日々、九条くんの言葉、九条くんへの想い、
それらを力に変えて羽ばたく。


そして、やっと、


「九条くん……」

「維織さん……」

この時をどれだけ待ちわびたか。

224私の背中には羽がある。◇本スレPart3の367:2009/10/17(土) 23:16:36 ID:1/egJpbcO
今私は、九条くんと一緒の高さを飛んでいる。

話したい事がたくさんある。
社長になってからの事。
少し前に読んだ本の事。
料理のレパートリーが増えた事。
最近、少しずつ笑えるようになった事。

私が何を話そうか悩んでいると、九条くんが話し始めた。

「維織さん……俺は、維織さんに謝らないといけないことがあるんだ。」


「え?」

九条くんが私に謝る事ってなんだろう?

「……維織さん……俺は、君が俺の元に来る時まで待ってるって約束したけど……」

そこまで言って、九条くんは俯いた。
こんな九条くんを見るのは初めてだ。

「……その約束を守れそうにないんだ。」

「え?」

何を言ってるんだろう、九条くんは。
九条くんが約束を破る?
そんな事、一度もなかった。
第一、私は九条くんと同じ所にいる。

225私の背中には羽がある。◇本スレPart3の367:2009/10/17(土) 23:18:40 ID:1/egJpbcO
「覚えてる?維織さん。
 俺が鎖を引きちぎるのは自分自身だって言った事。
 でも人はその鎖を背負っても歩いていけるって言った事。」

「覚えてる。忘れるわけないよ。
 そして、今私は自分の鎖をそのまま背負って飛んで、九条くんと同じ所にいる。」

「ありがとう、維織さん。
 君はもう自分の道を歩いていける。君の意志で、君の力で。」

「……うん。」

本当に、九条くんはさっきから何を言ってるんだろう?
これじゃまるで……

「維織さんのカレー…美味しかったなぁ…」

別れのあいさつみたい。


「維織さんのピアノ…上手だったなぁ…」

よく見ると、九条くんの目が充血している。

「維織さんの…満漢全席…食べたかっ…たなぁ…」

九条くんは、涙をこらえているのだろうか?

「会えなくなる前に、維織さんの最高の笑顔…見たかったなぁ…」

「え?」

会えなくなるって、どうゆう事?

226私の背中には羽がある。◇本スレPartの367:2009/10/17(土) 23:22:22 ID:1/egJpbcO
「じゃあね、維織さん。
 もう、会えないけど…俺は、君が無限の空を自由に飛び回る事を心から願っているから…」

そこまで言って、九条くんは、更に高い所に飛んで行こうとした。

「待って!」

九条くんがこっちを向いた。

さっきから何を言ってるの?
もう会えないって何?
どこに行くの?……

ダメだ。聞きたいことが多すぎる。

だから……


私は笑って見せた……九条くんが見たいと言った、私の笑顔を。
今できる、最高の笑顔を。
また、「笑うのが下手だね」って九条くんに言われるだろうか?

「……ありがとう。最高の笑顔だよ………維織………」

そう言って九条くんは飛び去ってしまった。
どこか満ち足りたような、でもなんだか寂しそうな顔をして………

私も、九条くんを追って行こうとしたけど…

また急に羽が重くなって……また、地に落ちた……

227私の背中には羽がある。◇本スレPart3の367:2009/10/17(土) 23:23:27 ID:1/egJpbcO
◇   ◇   ◇   ◇

そこで私は目を覚ました。
どうやら、私は、眠っていたようだ。
さっきのは夢だったらしい。
変な夢だ。
あれは何だったのだろう?

コンコンとドアをノックして、秘書が入ってきた。

「社長、応接室にて雪白家のお嬢様がお待ちです。」

「わかった。今行く。」

九条くんの身に何かあったのだろうか?
もう会えないってどうゆう事だろう?
最後に見せたあの顔は何を意味していたのだろう?

私は、四つ葉のクローバーの枝折りを、机の引き出しにしまい、社長を後にする。

先ほどまで見えていた満月は雲が差して見えなくなっていた……

228本スレPart3の367:2009/10/17(土) 23:24:33 ID:1/egJpbcO
投下終了です。
九条が死亡時に、彼女に対する描写が無かったので書きたくなったんです。
ただ、完全ド素人ということでこのような番外編的なストーリーにしました。

誤字脱字、矛盾など指摘お願いします。
初めてストーリーというものを書いたので、たくさん指摘していただければうれしいです。
辛口採点大歓迎。

229 ◆n7WC63aPRk:2009/10/23(金) 17:49:20 ID:6Oss7pxI0
さるさんくらったので、こちらに投稿します。
本スレ>>463からの続きです。

230ガラスの普通  ◆n7WC63aPRk:2009/10/23(金) 17:50:25 ID:6Oss7pxI0
運よく命中したのか、二人の目の前で爆発が起こると、あたりに煙が立ち込める。
爆発による被害はなかったが、しばらく煙があたりを覆っており、その煙が晴れたときには、
そこに野丸の姿はなく、動かなくなった巨大なクワガタが転がっているだけであった。

「一体なんだったのよ……」
「さあ……。とりあえず仕留めそこなったわね」
「ええ……。でもあいつはもう完全に壊れてたわ。ほっといても勝手に死ぬわよ。
とりあえず……銃を置いていったみたいだから、回収しておいて頂戴。あたしは少し休むから。
……ああ疲れた……」

そういうと、白瀬は左肩を抑えて消防署の中へと入っていく。
愛も野丸の忘れ物を拾うと、後に続いた。


【D-2/消防署/一日目/午前】
【白瀬芙喜子@パワプロクンポケット8表】
[状態]左肩に刺し傷
[装備]ベレッタM92(6/15)
[道具]支給品一式×3(不明支給品0〜2)、予備弾倉×5、さおりちゃん人形@パワポケ6裏、ケチャップ(残り1/4程度)、煙幕@パワポケ5裏×2
[思考]基本:優勝する
1:戦力増強のため弱者から倒す、強者は後回し。
2:八神を最優先で殺す。
3:愛と行動するが、灰原と合流できそうならば愛から灰原に乗り換える。
4:過去の人間が居るってことは……未来の人間も居るってことかしらね?
[備考]
※未来や過去から集められてるのではないかと思っています。
※灰原に関しては作り直したのか、過去から浚ったかのどちらかだと思っています。

【愛@パワプロクンポケット5裏】
[状態]右脇腹に傷(応急処置済み)
[装備]ウージー
[道具]支給品一式
[思考] 基本:自分が生き残ることが第一。
1:未来……ピンと来ないわね。
2:生き残るためなら、他の人間を殺すのもやむ終えない。
3:一先ずは白瀬と共に行動するが、白瀬への警戒を怠らない。
[備考]
※参加者はそれぞれ違う時間から誘拐されたと何となく理解しました。

231ガラスの普通  ◆n7WC63aPRk:2009/10/23(金) 17:52:57 ID:6Oss7pxI0


野丸太郎はひたすら走っていた。
どれくらい時間は経過したかわからない。
右肩とわき腹からはまだ血が流れている。
でももう痛みなど感じない。

さっきのあの女の人の言葉が頭から離れない。

「普通にはなれないのよ」
「あんたは最初から失格ってわけ」
「あんたは普通じゃない」

「ウソだ。ウソだ。ウソだ。ウソだ…………」

何度も声に出してその言葉を否定するのだが、それが頭から消えることはなかった。
だから、ひたすらに走る。
忘れるまで走り続けてやる。

そのうち、草むらに入り、丘を登り、森の中へと入った。
もう30分は走ってきた。それでもあの言葉は野丸の頭の中を侵食し続ける。

「ウソだ……そんなことない……僕は……普通なんだ!!」

野丸が大声で、高らかに叫んだときだった。

232ガラスの普通  ◆n7WC63aPRk:2009/10/23(金) 17:53:34 ID:6Oss7pxI0

『ピー、ピー』
「……え?」

昼間なのに静かな森の中に、電子音が鳴り響く。

『爆発まで、30秒です』
「え……なんで……あ……」

野丸は数時間前まで眺めていた地図を思い出す。
最初にいた商店街から西に歩いてきて、消防署であの女の人に出会った。
そしてつい先ほど、あの人に言われたことを忘れようと思い切って走っていった方角は……商店街の反対側――西だった。
そしてその方角にずっと進んでいくならば―――。


―――禁止エリア




それに気がついた野丸は、ガタガタと足を震わせてその場に崩れ落ちる。
しかし、あきらめきれない野丸は、地面を這い、雑草を掻き分けて、森の外を目指す。
そうしている間にも、25秒、20秒、15秒と、無常にも首輪は時を刻んでいく。

「だ、誰か……出して……ここから出してください! 出して……助けて!」

いくら叫んでもその声は誰にも届くことなく、空しく森の中に響いていく。

「僕は……まだ普通に……普通に……普通にならなくちゃいけないんだ……だから……」

必死に地べたを這いずり回る。先ほど銃撃を受けた傷口に土が入ったり、草が摺れたりするが、そんな痛みはもう感じない。

『残り10秒です。9,8,7……』

「なんで……なんでこんな目に遭わなくちゃならないんだ……」

『残り5秒です。4、3、……』

「僕は……僕は…………普通になりたかっただけなのに…………」


仰向けに倒れた野丸の目からは一筋の涙が流れ出す。
そしてそれがスイッチであったかのように、首輪が小さな音を立てて爆発する。
パタリと倒れ、動かなくなった野丸だったが、その目からは涙が流れ続けていた。


【野丸 太郎@パワプロクンポケット7 死亡】

233ガラスの普通  ◆n7WC63aPRk:2009/10/23(金) 17:55:10 ID:6Oss7pxI0
以上で投下終了です。
久しぶりで長くなってしまいました。
ご意見等あればよろしくお願いします。

234 ◆1WZThYdb3Q:2009/10/25(日) 19:55:02 ID:sOxzgRvM0
初投下であるため、ひとまずこちらの方に仮投下させていただきます。

235人間になりたい犬  ◆1WZThYdb3Q:2009/10/25(日) 19:56:26 ID:sOxzgRvM0

上川は、ぼんやりと一人の男を眺めていた。
その視線の先には、全く緊張感の感じられない顔で床に寝そべっている男が1人。
先ほどから上川やわん子が動こうとしているのに、その男は起き上がる気配すら見せない。

今までに、上川は何度か説得を試みている。
状況を伝え、これからの方針を説明し、なんとか動いてくれないかと頼む。
しかしその度に、カネオからは生返事が返ってくるだけ。

もちろん、無理矢理カネオを引きずって動かす事はできる。
だが、上川の疲労も完全には回復していないのだ。そんな無駄なことで体力を消費したくはない。
あくまでそれは最終手段、できれば説得だけで事態を収拾させたいところだ。

(しかしコイツ、扱いにくい奴だな…)

普通の説得が通用しないとなると、方法を変えるしかない。
上川はそう思い、口を開いた。

「…とにかく、いつまでもこんな山の中にいるわけにもいかないだろ?」
「む〜ん、そうは言っても動けないものはしょうがないんだな〜」

もっともこの返答は、上川も想定済みだ。
そして次に、そばに居たわん子に矛先を向ける。

「…それにほら、わん子ちゃんの友達も探さないといけないしね」
「タツヤさんの言うとおりだワン!早く走太君を探すんだワン!」

上川の予想通り、今まで黙っていたわん子はすぐさま同意した。
色々とカネオに対する恨みもあったのだろう、その語勢はかなり強い。

方法を変える−−つまり、わん子に矛先を向けるのだ。
それによって2対1の状況を作り出し、2人がかりで説得しようという魂胆だ。
まあカネオの性格からして、上川もそう上手くいくとは思っていなかったが。

「む〜ん…しょうがないんだな〜」

しかし上川の予想に反し、カネオがゆっくりと立ち上がる。
それを見届け、上川は安堵した。

(…相変わらずよく分からん奴だな。
 さすがに形勢の悪さを感じたのか、それとも単に腹具合が落ち着いただけか?
 …まあ、今はカネオを動かせただけで良しとするか)

236人間になりたい犬  ◆1WZThYdb3Q:2009/10/25(日) 19:57:41 ID:sOxzgRvM0

だがその一方で、一つ危惧しなければならない点がある。
走太関連の事ばかりでわん子を誘導していると、困った事態に追い込まれるかもしれないのだ。

(もし万が一、走太とあのガキが再会してしまったらどうなる?
 その途端、走太関連の誘導が効果を失うんじゃないか?)

例えば、上川が「走太を探す為に港へ行こう」と提案する。
しかしその道中で走太と再会してしまうと、わん子にとっては港へ行く意味が無くなるのだ。
そうなると、上川は港へ行く新しい理由を探さねばならなくなる。

(だが理由がコロコロ変わっては、いくらガキとはいえ怪しまれるかもしれんな…
 最悪の場合、今まで積み上げてきた信頼関係にヒビが入る恐れもある。
 今までは信頼を得るために話題に出してきたが、これから走太の話題を出すのはできるだけ避けた方が無難だな)

とはいえ、あまり走太の話題を避け続けるのも、それはそれで逆効果だろう。
走太の話題を出しすぎても駄目、出さなくても駄目。
上川自身、ここまで難しい舵取りを迫られるとは思わなかった。
港へ向かう道中、その辺りはよく考えておく必要があるだろう。

(…まあ相手がガキなのを考えると、そこまで心配する必要はないのかもしれんがな。
 とにかく用心しておくに越した事は無いだろう)

そこまで考えをまとめたところで、そばの2人に声をかける。

「じゃあ、そろそろ出発するか」

それを合図に、3人は研究所の外へ出た。
久々に外の明るさを感じ、上川は思わず目を細める。

(ひとまず、この山を下りるのが第一だな)

上川の目的は、あくまでこのゲームからの「脱出」だ。
頼りになる仲間、そして首輪を外せる人間とは出会っておきたい。
そして、山よりも平地の方が、人と会える可能性は高い。
危険人物と鉢合わせしてしまう事も考えられるが、それを怖がっていても仕方がない。
どの道、首輪を外せなければ死んでしまうのだ。多少の危険には目を瞑るべきだろう。

237人間になりたい犬  ◆1WZThYdb3Q:2009/10/25(日) 19:58:48 ID:sOxzgRvM0

「まず、この山を下りようと思う。
 山道は予想以上に体力を消耗するものだし、できるだけ早く平地に行ったほうがいいからね」

そして少し考えた後、上川は付け加える。

「…ああ、それと、3人が別れ別れにならないようにしないといけないな。
 とりあえず、わん子ちゃんはオレのデイパックを掴んでくれるかい?」

そう言うと同時に上川は後ろに手を回し、カネオの黄色いコートを掴む。
これで、3人が1つに繋がった事になる。
もちろんこれは、カネオが勝手に「飛んで」逃げてしまう危険性を防ぐためだ。
研究所の中で試した限りでは、カネオは複数を同時に「飛ばす」ことはできなかった。
片手が塞がってしまうのは痛いが、ここでカネオを逃がすわけには行かない。

(とりあえず、今打てる手はこのくらいだな)

そう判断し、上川は何気なく後ろを振り返った。
見ると、わん子は相変わらず暗い面持ちで歩いている。
よく考えると、さっきから殆ど口を開いている様子がない。

もっとも、ゆっくり考えをまとめたい上川にとって、それは好都合だ。
だが、さすがにわん子の気分が塞ぎすぎるのも困る。
最悪の場合、肝心な時になって上川の言葉に耳を貸さない恐れもある。
時々は会話を交わし、適度に気分を晴らしてやる方がいいだろう。

(…そうなると、できるだけ早く話題を振っておいたほうがいいな。
 危険人物と出会ってから話を始めるのでは遅すぎる) 

そして、話題もできるだけ選んだ方がいい。
なるべくわん子が明るくなりそうな、それでいてあまり話が長引かない話題。

「…わん子ちゃん、ちょっと質問していいかい?」
「もちろんだワン」
「もし1つだけ願いが叶うとしたら、わん子ちゃんはどうする?」

少し考えて、上川はこう聞いた。
わん子を誘導するための、新しい理由を探す目的も兼ねて。

238人間になりたい犬  ◆1WZThYdb3Q:2009/10/25(日) 19:59:40 ID:sOxzgRvM0

 ● ● ●

わん子は考えていた。
上川に聞かれた質問に対する答えは、すでに用意できている。


−−もう1度、あの世界に戻りたい。
−−そしてできることなら、ずっと人間として生きていきたい。

それが、今のわん子の心からの願いだった。
今となっては全てが手遅れだけど、そう思わずにはいられない。
人間として過ごした生活は、とても楽しかったから。


…でもそれを言って、上川は信じてくれるだろうか?
頭が変だと思われて、見捨てられはしないだろうか?
今のわん子にとって、それはたまらなく怖い。

「…それは秘密だワン」

結局、言い出そうとしても声が出なかった。
…いや、言い出す勇気が無かったのかもしれない。

「そうか。
 ゴメンね、いきなり変なことを聞いちゃって」

上川が言う。
それを聞き、わん子は何となく申し訳なく思った。


(…でも、タツヤさんにはいつか言いたいワン)

信じてもらえるかどうかは関係ない。
今の時点では、上川だけが、唯一信頼できる人なのだから。
そして、信頼できる人にいつまでも本当の事を隠し通したくはないから。

幼いが故言葉にはできないけれど、それがわん子の本心だった。

239人間になりたい犬  ◆1WZThYdb3Q:2009/10/25(日) 20:00:54 ID:sOxzgRvM0

 ● ● ●

「む〜ん、ボクは食べ物が欲しいんだな〜」
「…お前、まだ食い足りないのか?」

上川は小さくため息をつく。
この調子では、またカネオが余計な事をしでかすかもしれない。

(やれやれ…いつになったらオレの心配のタネは無くなるんだ?)

上川はもう1度、今度ははっきりとため息をついた。


【B−3/研究所付近/1日目/朝】
【上川 辰也@パワプロクンポケット8】
[状態]:疲労中、走力+5
[装備]: 走力5@パワポケ3、ヒーローのスカーフ@パワポケ7、拳銃(麻酔弾)予備カートリッジ×3@パワポケ8
[参戦時期]美空生存ルート、ルナストーン引き渡し後
[道具]:支給品一式、レッドローズの衣装@パワポケ8、ヒーローのスカーフ三個@パワポケ7、本@パワポケ8裏、『人間の潜在能力の開発』に関する資料@パワプロクンポケット4、黒い板@パワポケロワオリジナル
[思考・状況]
基本:殺し合いからの脱出
1:仲間を集める。
2:首輪を詳しく調べたい。
3:山を下りた後港に向かい、脱出方法が無いかを調べる。
4:頼もしい仲間を集めたらカネオに催眠術をかける。
[備考]
※黒幕に大神がいると可能性があると考えています。
※首輪の考察をしました。
 考察した内容は以下の通りです。
 1:首輪には爆発物が仕掛けられている。
 2:首輪には位置情報を送信する機能ある。
 3:移動した位置が禁止エリアなら爆破の為の電波を流され爆発する。
 4:盗聴機能や小型カメラが首輪に仕掛けてあると予想しました。
※現在カメラ対策としてスカーフを首に巻いています。
※考察の内容が当たっているかは不明です。
※わん子からパワポケダッシュの登場人物に付いての知識を得ました。
 わん子の事をオオカミつきだと考えています。  ヒゲの神様(野球仙人)の事を記憶を操作する能力を持っている人間だと予想しました。
※暗示催眠の能力は制限のせいで使う度に疲労が伴います、使用しすぎると疲れて気絶するかも知れません。
※能力に制限がかかっている事に気付きました。
 情報を引き出す時や緊急時以外は使用を出来るだけ控えるつもりです。
※黒野鉄斎が研究していた『人間の潜在能力の開発』に関する資料を発見しました、機械は反応しません。
 それが我威亜党の目的と関係あるかどうかは『全くの不明』です。
※我威亜党、野球人形、探偵の名前を本で見つけました。
 本については我威亜党の誰かが書いたお遊びだと思っています。
※資料の最後に書かれていた『黒野鉄斎』が主催側の人間だと思っています。
※ここに置かれている全ての資料が『ミスリード』である可能性もあると思っています。
※研究所においてあった本には様々なジャンルの本があります。

240人間になりたい犬  ◆1WZThYdb3Q:2009/10/25(日) 20:01:36 ID:sOxzgRvM0


【芽森 わん子@パワポケダッシュ】
[状態]:疲労小、仲間が出来て嬉しい。
[装備]:ヒーローのスカーフ@パワポケ7、モップ@現実
[参戦時期]:わん子ルート、卒業直後
[道具]:支給品一式(食料はキムチと何か)、ヒーローの衣装セット@パワポケ7、ヒーローのスカーフ四個@パワポケ7
[思考・状況]
基本:殺し合いから脱出する。
1:タツヤさんに付いてく。
2:走太君を探したい。
3:いつか、タツヤさんに自分の正体を打ち明けたい。

【カネオ@パワプロクンポケット9裏】
[状態]:疲労(小)
[装備]:なし
[道具]リュックサック、ヒーローのスカーフ@パワポケ7
[思考]
1:まだまだ食べ足りないんだな〜
2:弟たちを探す。
3:春香に会ったら、『おしおき』をする。
[備考]
※参戦時期は9裏主人公の戦艦に最初に乗り込んできた後です。
※春香の名前は知りません。また春香の見た目に関する情報も、暗かったために曖昧です。
※テレポートをすると疲れが溜まる事を認識しました。
 テレポートの移動距離に関する制限は認識していません、またテレポートの制限の度合いは以降の書き手にお任せします。
※名簿は見ていません。
※現在は他の2人とデイパック経由で繋がっているため、テレポートはできません。

241人間になりたい犬  ◆1WZThYdb3Q:2009/10/25(日) 20:05:57 ID:sOxzgRvM0
以上で投下終了です。
私自身こういった企画に参加するのは初めてなので、
ぜひ辛口の評価をお願いします。

243:2009/11/26(木) 14:18:05 ID:RxgRdSK.0


/_____ \〟 >            |
    |/⌒ヽ ⌒ヽヽ | ヽ > _______  |
    |  / | ヽ  |─|  l   ̄ |/⌒ヽ ⌒ヽ\|  |
   / ー ヘ ー ′ ´^V  _ |  ^| ^   V⌒i
    l \    /  _丿  \ ̄ー ○ ー ′ _丿
.   \ ` ー ´  /     \        /
      >ー── く      / ____ く
    / |/\/ \       ̄/ |/\/ \    同じスレではこのままだけど
    l  l        |  l      l  l        |  l    違うスレにコピペするとスネ夫がドラえもん
    ヽ、|        | ノ      ヽ、|        |      に変わる

244ういういういういうい:2009/11/26(木) 14:19:28 ID:RxgRdSK.0


さっそくおまじないです。                       恋を語らず何を語らず?とゆう世の中ですがこのコピペを必ず5つのレスに書き込んでください。あなたの好きな人に10日以内に告白されます。嘘だと思うんなら無視してください。ちなみにあなたの運勢がよかったら5日以内に告白&告白OKされます

245名無しのバットが火を噴くぜ! :2010/01/01(金) 05:56:54 ID:Q4BALrx.0

そんな仕事あんのか!って思ってて調査してみたら月収100万超えたオレ

http:\/wanpi.tamatamanigittayo .com/5w8z1n9.html

246 ◆jnvLTxNrNA:2010/01/24(日) 18:23:37 ID:ao5EiLQwO
九条英雄と野崎維織の外伝モノを投下したものです。
それでは投下します。
本スレは規制中のようなのでこちらに投下します。
パソコンは苦手なので携帯からの投下になります。
見にくかったらすいません。
本編は初投下のひよっこなので至らない部分があると思いますが、よろしくお願いします。

247偉人の選択 ◆jnvLTxNrNA:2010/01/24(日) 18:26:07 ID:ao5EiLQwO
八神総八郎が病院を出た後、神条紫杏は考えていた。
それは『このグループから離れるか、否か』ということ。
今まで彼女は、その場の選択を他人に任せる様に行動してきた。
しかし、ここにきて彼女は自らの意志で行動を起こそうとしていた。
理由は、その場の選択を他人任せてきたことにより、今まで一度としてグループ内の主導権を握れていないからだ。
これはジャジメントが自分に課した試練なのである。
最後の1人になるにしても、全員を束ねて脱出するにしても、主導権を握れないことには話にならない。
しかし今さらこのグループの主導権を握るのは至難の業だ。

このグループは、今はここにはいないが、病院に人を集めた八神、それと四路智美が主に中心となって動いている。
八神と四路は大人で、落ち着きがあり、ある程度の戦う力も持っているようだった。
対して紫杏は八神より年下…それ以前にこのグループで最年少で、戦う力は皆無。
八神達に比べたら全く頼りない。
そんな紫杏がこのグループで主導権を握るのはかなり無理がある。
確かに、紫杏は一高校の自治会長を勤めた身だ。上に立つ人間のあるべき人格(すがた)も知っている。

248偉人の選択 ◆jnvLTxNrNA:2010/01/24(日) 18:27:22 ID:ao5EiLQwO
しかし、紫杏は自分と同い年か、それより下の人間の上に立ったことはあっても、自分より年長の者の上に立ったことはなかった。

つまり、紫杏には、同世代の上に立つ力はあっても、年長者の上に立つ力はないのである。
そんな紫杏がこの殺し合いの場で主導権を握り、トップに立つにはどうすればいいか?

紫杏はそれを考え、一つの案にたどり着く。

それは、一度このグループを離れ、自分と同世代のグループを作り、後でこのグループと合流したとき、
同世代グループのトップとして八神達以上、最低でも八神達と同等の立場にのし上がるというもの。

しかし、この案には一度1人にならなければならないという問題がある。
今のグループに同世代の人間がいないからだ。
同世代の人間が1人でもいれば、その人間と2人でグループを離れるのだが…

この近くには、パーカーの女の子を始め危険人物が多い。
そんな場所を1人で行動するのは自殺行為だ。
また、同世代のグループが必ず作れるとは限らないし、例え作れたとして必ずトップに立てるとも限らない。

(朱里の力が欲しいな)

自治会で自分と共に働いてくれた、心を許した数少ない親友。
彼女は強化人間だ。彼女がいてくれれば心強いと紫杏は思った。

249偉人の選択 ◆jnvLTxNrNA:2010/01/24(日) 18:29:55 ID:ao5EiLQwO
「曽根村さん」
「何でしょう?」
「カズ…大江和那に会ったと言っていたな?それはいつだ?」
「第1回放送の後、わりとすぐですかね?」

時計を見て今の時刻を確認する。

10時過ぎ。

第1回放送は早朝6時である。

(カズが病院を出てから少なくとも4時間か…未だ朱里を見つけられないでいるのか、それとも…)

「神条さん、どうかしましたか?」
「いえ…少し…同級生ですから…」
「まさかあなたまで病院を出るとか言わないわよね?」

すかさず智美が横やりを入れる。

「…………」
「何よ、その間は」

「すまないな、四路さん。私も1人で行動させてもらうことにする」
「はあ!?」
「な、何言ってるでやんすか!?ちょっと待つでやんす!」
「もう決めたことだ」

紫杏の発言にその場にいた者は例外なく驚いた。
…いや、ただ1人、荒井紀香を除いて…
グループ内で最年少と思われる少女が1人で行動すると言い出したのだから、この反応は当然と言える。

「せめて理由を聞かせてくれないかしら?」
「ふむ…」

250偉人の選択 ◆jnvLTxNrNA:2010/01/24(日) 18:31:01 ID:ao5EiLQwO
理由は簡単だ。このままこのグループにいても、トップには立てないだろう。
たとえこのままこのグループにいて、殺し合いの場から脱出できたとしても、自分がトップでなければジャジメントは自分を見放すだろう。
そればかりか、ジャジメントの裏の顔を知っている人間として処分するだろう。

つまりこのグループと共に行動を続けることは、この殺し合いの場でのみ命をつなぐその場しのぎでしかないのだ。

ここでアクションを起こして、成功しない限り、紫杏に後はない。

もちろんこんな事を他人に言う紫杏ではない。

「カズと朱里の漫才があまりにも長いんでな。止めに行こうと思う」
「それは、あなた1人でやらなきゃいけないこと?」
「私の身勝手で皆さんを危険にさらす訳にはいかないからな」
「あなたにできるの?」
「私は一応、高校で自治会長をやっていたんだ。2人はそのときの側近みたいなものでね。私の指示には従ってくれると思うが」

251偉人の選択 ◆jnvLTxNrNA:2010/01/24(日) 18:33:16 ID:ao5EiLQwO
「1人で行動したとして、2人を見つけるより先に危険人物に出くわしたらどうするの?」
「口は上手い方だと自負している。何とか言いくるめるさ」
「さっきのパーカーの女の子みたいに話が通じない相手なら?」
「それなら私はそこまでの人間だったということだ」
そう、そこまでの人間だったということ。この状況を1人で乗り越えない限りジャジメントに処分されてしまう。

「急に死にたがりにでもなったのかしら?」

「私はこの世にもう未練はない。死を受け入れる心構えはできている」

紫杏ありとあらゆるものを捨ててジャジメントに入ることを決めた。
最高の校風を作るべく奔走した高校も、愛した人でさえも。

「そんなさびしいこと言うなでやんす。生きていれば、きっと幸せなこともあるでやんす」
「あたしはもう幸せになることは諦めたんだ!」

そう、諦めたのだ。十波から離れることを決めたあの時、紫杏は自分が幸せになることを諦めた。


「「「……………」」」

「すまない。少し感情的になってしまった」
「いいわよ。行きなさい」
「オーナー!?」
「頭がかたい人みたいだし、何を言ってもきかないわ。勝手にしなさい」
「すまない、四路さん。必ず後で合流する」
「それなら第3回放送までにホテルPAWAに来なさいな。そこに私が集めた仲間が全員来るはずだから」
「わかった」

「あと、三橋一郎という男に気をつけて下さい。彼は真っ赤で凶悪な右腕をしてるのですぐにわかると思います。」

「曽根村さんもありがとうございます」

そう言って紫杏は荷物をまとめ始めた。

252偉人の選択 ◆jnvLTxNrNA:2010/01/24(日) 18:35:14 ID:ao5EiLQwO
「しあん…」
「ほるひすか、世話になったがしばらくお別れだ。みんなを頼むぞ」
「ほるひすだよ。ころさないけどひともまもるよ」
「うむ。その意気だ」

そして席を立つ。

「銃はいるかしら?」
「いらないな。私は銃に関しては素人だ。弾数も限られているし、『下手な鉄砲数打ちゃ当たる』というわけにもいかないからな。それに先も言ったが、私の身勝手で皆さんを危険にさらす訳にはいかない。」

智美の問いにそう返すと紫杏は病院を後にした。

はっきり言えば怖い。
『死を受け入れる心構えはできている』といったが、それは仮面をかぶった『私』の本心であって、小心者の『あたし』の本心ではない。
『死ぬのは怖いことだ』、『死にたくない』これが小心者の『あたし』の本心。
しかしこのグループにいたんでは、必ず自分は破滅する。
1人で行動したところで破滅を免れた訳ではないが、しかし成功するかもしれない。その確率はまさに『箱の中の猫』である。
そう『あたし』に言い聞かせて、神条紫杏は『私』の道を歩き始めた。

253偉人の選択 ◆jnvLTxNrNA:2010/01/24(日) 18:36:30 ID:ao5EiLQwO
【F-6/病院/一日目/昼】
【神条紫杏@パワプロクンポケット10】
[状態]:健康
[装備]:バット
[道具]:支給品一式、詳細名簿、ノートパソコン(バッテリー消耗小)、駄菓子数個
[思考]まずは朱里と合流したいな…
基本:どのようにも動ける様にする。
1:自分と同世代のグループを作りそのトップに立つ
2:生きて帰って平山の言葉を伝える。
3:出来ることならカズと朱里、十波には死んでほしくない。が、必要とあらば……
[備考]
※この殺し合いをジャジメントによる自分に対する訓練か何かだと勘違いしています
※芳槻さらを危険人物と認識しました。
※島岡の荷物は、島岡を殺害した者に持ち去られただろうと判断しました。
※小波走太一行とは情報交換を行っていません。

【四路智美@パワプロクンポケット3】
[状態]:嫌な汗が背中に伝わっている。
[装備]:拳銃(ジュニア・コルト)、バット
[道具]:支給品一式、ダイナマイト5本
[思考・状況]基本:二度と三橋くんを死なさない。
1:三橋くんが殺し合いに乗った……か。
2:十波典明の言葉を丸っきり信用するわけではないが、一応警戒。
3:亀田の変貌に疑問?
[備考]
※メカ亀田を危険人物を判断しました。
※ピンクのパーカーを着た少女を危険人物と判断、作業着を着た少女を警戒。
※探知機は呪いの人形に壊されました。

【曽根村@パワプロクンポケット2】
[状態]:右手首打撲
[装備]:ナイフ、ブロウニング拳銃(3/6、予備弾数30発)、バット
[道具]:支給品一式×3、魔法の杖@パワプロクンポケット4裏
[思考]
基本:漁夫の利で優勝を目指す
1:一先ず病院で休憩。
[備考]
※タイムマシンの存在を聞かされていません。

254偉人の選択 ◆jnvLTxNrNA:2010/01/24(日) 18:37:26 ID:ao5EiLQwO
【凡田大介@パワプロクンポケット2】
[状態]:全身に打撲
[装備]:お守り、バット
[道具]:支給品一式、鍵
[思考・状況]基本:ガンダーロボを救出したい
1:基本人殺しはしたくない。
2:九条を信頼、そして心配。
[備考]
※七原、真央、走太と軽い情報交換をしました。

【ほるひす@パワプロクンポケット6表】
[状態]:表面が焦げてる、悲しみ?
[装備]:バット
[道具]:支給品一式、不明支給品0〜1
[思考]基本:ころさないし、ひともまもるよ。
1:こうし……ひらやま……しあん……

【荒井紀香@パワプロクンポケット2】
[状態]:全身のところどころに軽い火傷、体力消耗(小)
[装備]:バット
[道具]:支給品一式、野球人形
[思考]基本:二朱くんに会う。
1:二朱君との愛の営みを邪魔するひとは容赦しないです。
2:あの女(夏目准)が二朱君を手にかけていたら仇をとる。
[備考]
※第一回放送に気付いていません。

【萩原新六@パワプロクンポケット6】
[状態]:左腕欠損、腹部に軽度の切り傷、貧血(中)
[装備]:バット
[道具]:支給品一式 、野球用具一式(ボール7球、グローブ8つ)@現実
    野球超人伝@パワプロクンポケットシリーズ、パワビタD@パワプロクンポケットシリーズ、左腕
[思考・状況]
1:???

255 ◆jnvLTxNrNA:2010/01/24(日) 18:40:32 ID:ao5EiLQwO
以上、投下終了です。
感想、誤字脱字、矛盾などの指摘点をお願いします。
できれば本スレでお願いします。

256名無しのバットが火を噴くぜ! :2010/01/25(月) 21:00:37 ID:iMfRvbm.O
乙です
投下してあげたいが俺も携帯wスマン

257 ◆jnvLTxNrNA:2010/01/25(月) 21:46:17 ID:rk1uWRloO
投下してから丸1日コメントがなかったので、怖かったです。
自分が投下したものが良かったのか、悪かったのか、それさえもわからないというのは怖いものです。
自分もこれからは他の人が投下したら、できるだけ早く、必ずコメントしようと思います。

んで実は後もう1話を考案中。
まだ予約できるほどの見通しは立っていませんが、近い内に予約入れて投下しようと思います。

258名無しのバットが火を噴くぜ! :2010/01/26(火) 23:52:26 ID:4dEvectMO
なんという速筆w
wktkしながら待ってます!

259 ◆1WZThYdb3Q:2010/01/27(水) 22:29:30 ID:5FkF/zDU0
規制中でしたので、ひとまずこちらの方に投下させていただきます。

260交錯  ◆1WZThYdb3Q:2010/01/27(水) 22:31:15 ID:5FkF/zDU0

一人の少女が歩いている。
焦ったような、でもどこか楽しそうな表情を浮かべながら。


また別の場所で、一人の男も歩いている。
やはり焦っているが、彼の表情はどことなく暗い。
そこに浮かんでいるのは、不安と、心配と、ほんの少しの恐怖。



――だが、二人は同じ事を考えている。

一方が、もう一方の事を。

ある日突然失踪した、一人の人間の事を。

―そして、信頼していた、「家族」の事を。

261交錯  ◆1WZThYdb3Q:2010/01/27(水) 22:32:06 ID:5FkF/zDU0


 ● ● ●


茜は、先ほど逃げてきた道を引き返していた。
理由は単純、あの多人数の集団を追いかけるためだ。
細かい人数は数えていないものの、最低でも5人は居ただろう。
あいつらを殺せば、また優勝に一歩近づける。
そう考えると、茜の頬が自然と緩む。

では、どうやって追いかけるか。
あの集団と会った所に戻り、それから同じ方向に進めばいい。
方向さえ合っていれば、少なくとも遠ざかる事はないはずだ。

もちろん、危険なのは百も承知だ。
さっきだって、一歩間違えば死んでしまったかもしれない。
東が油断したから、東が怪我をしていたから、あの危機から逃げ出せたのだ。
もう一度あんな状況に陥って、助かる保証はない。


でも、茜が逃げるわけにはいかない。
兄は、茜を信じてこの殺し合いに参加させたのだから。
再び三人で笑って過ごすという夢を、茜に託したのだから。

それを裏切るなど、彼女には到底できない。
だから茜は、あの集団の後を追う。
傍目に見れば、彼女の選択は決して利口ではない。
だが彼女にとって、そんなものは関係無い。
あくまで茜が、茜にとっての最良の決断をしただけのことだ。

262交錯  ◆1WZThYdb3Q:2010/01/27(水) 22:32:55 ID:5FkF/zDU0


 ● ● ●


病院を後にした八神は、凡田たちが来た方向へと歩みを進めていた。
凡田と会った後、茜がどこまで逃げたのかは分からない。
そんなわけで、八神がその方向へと向かったのに理由は無い。
茜の体力ではそんなに遠くまで逃げられないはず、根拠らしい根拠はそれだけだ。

そして彼の心は、相変わらずある事に囚われていた。
茜が殺し合いに乗っている。
それは認めたくない事実だが、目を背けるのは危険だ。

――でも、何故?
確かにあの人形のような茜なら、言われるがままになっている可能性はある。
何も考えられないまま、ただ従っているというわけだ。
それならまだ、説得できる可能性はある。

ただ、はっきり言ってこの線は薄い。
「殺しあえ」と言われてそれに乗る、そんな行動力が今の茜にあるのだろうか。

となると、やはり進んで乗っている可能性が高い。
そう、限りなく高い。

だが、ここで彼の思考はストップする。
これ以上考えることを、彼の心が拒む。
そしてまた、彼の思考は振り出しに戻る。
八神らしくないことではあるが、事実その繰り返しだった。

――しかし今度は、「何か」に思考が遮られた。

(…あれは?)

彼の視線の片隅に、一つの人影。
そちらに視線を向けて、八神はようやく気づいた。
パーカーを来た少女が、狂ったような笑みを浮かべながら、こちらへ向かっていることに。

263交錯  ◆1WZThYdb3Q:2010/01/27(水) 22:33:42 ID:5FkF/zDU0


 ● ● ●


――なんでお兄ちゃんがこんな所に?

茜が八神を見つけた時、最初に思ったのはそれだった。
私を参加させたのはお兄ちゃんなのに、なんでここにいるんだろう?

だが茜は、すぐに思い当たる。

(…そうか、私を励ましに来たんですね。
 やっぱりお兄ちゃんは優しいです!)

もちろん、これは勝手な推測にすぎない。
だが茜にとって、それが事実なのかどうかは関係ない。
自分の信じたいものを信じる、彼女はそれで幸せだから。

「お兄ちゃん!こんな所でどうしたんですか?」

茜は満面の笑みを浮かべて、八神の元へ駆け寄った。

「あ、茜…?」

八神の顔に、驚きの色が浮かぶ。
病院を出て数分しか経っていないのだから、まあ当然だ。
八神自身、こんなに早く見つかるとは思っていなかったのだろう。

見ると、八神が何か喋ろうとしている。
だが茜は、それより前に口を開く。

そして茜は口にする。
きっと、兄が待ち望んでいるであろう言葉を。
きっと、兄が喜んでくれるであろう言葉を。

「大丈夫です、アカネは立派にやってますよ。
 もう、3人も殺しましたから」

264交錯  ◆1WZThYdb3Q:2010/01/27(水) 22:34:14 ID:5FkF/zDU0


 ● ● ●


予想はしていた。
こんな状況で、茜がまともでいられるはずがないと。

それでも、やはり八神の視界はグラリと揺れる。
ニコニコと笑っている茜の表情と、放たれた言葉の内容が一致しない。
だからこそ、妙な真実味がある。
今まで考えまいとしてきた事実が、実感として伝わってくるのが分かる。
思わず、顔が歪む。

だが、茜はお構いなしに話し続ける。

「お兄ちゃん、安心してください。
 絶対、優勝してみせますから!」

その言い方に、少し引っかかる。

安心?
俺が?

(…やっぱり、何か勘違いしてるのかな)

まあ、不思議な話ではない。
無理矢理この殺し合いと俺を結び付けようとしている、そんなところだろう。

だからこそ、どうやって説得すればいいのか分からない。
こんな状態の茜にはどんな言葉も届かないことを、八神は知っている。
でも、それが茜の説得を放棄する理由にはならない。
届かないと分かっていても、言葉を投げかけずにはいられない。

「茜…なんで、こんな殺し合いに乗ったんだ?」

自分でも、ストレートすぎる問いだと思う。
知らず知らずのうちに、動揺していたのかもしれない。

「なんで、って…
 お兄ちゃんとお姉ちゃんと、もう一度楽しく過ごすためですよ」

その言葉で、ようやく合点がいった。
茜は優勝を目指している。
俺とリンと、三人で過ごしていたあの頃に戻るために。

265交錯  ◆1WZThYdb3Q:2010/01/27(水) 22:35:22 ID:5FkF/zDU0

―――無茶だ。
八神の知っている範囲でさえ、白瀬も灰原も参加している。
いくらなんでも、一般人である茜に勝ち目はない。

「…茜…本気で言ってるのか?」
「何言ってるんですか?茜はいつだって本気ですよ」

茜の口調は、いつもと変わらない。
だからこそ、怖い。
交渉の場は何度も経験しているはずなのに、口の中が乾き、言葉に詰まる。

「…自信はあるのか?」
「そんなの関係ないです。
 お兄ちゃんのために、お姉ちゃんのために、私は優勝しなきゃいけないんです」
「…無茶だよ。
 お前はまだ高校生だ。…それにほら、運動は苦手なんだろ?」

何言ってんだ、と自分でも思う。
俺が言いたいのは、そんなことじゃないのに。

「…お兄ちゃん、どうしたんですか?
 そんなに茜のことが心配ですか?」

でも茜が信じようとしている事を否定すれば、またあの時のように壊れてしまいそうで、怖い。
だから、必要以上に遠回しな表現になってしまうのだろう。
曖昧な言葉では、茜には届かないと分かっているのに。

「でも、私は大丈夫ですよ」

無邪気に笑っている茜を見ると、無性に辛い。
目の前にいる少女に、どんな言葉をかけていいのか分からない。

266交錯  ◆1WZThYdb3Q:2010/01/27(水) 22:36:09 ID:5FkF/zDU0

「…じゃ、私はこの辺で行きますね。
 お兄ちゃん、待っててくださいね!」

そう言い残して駆けだした茜を、しばらくの間ぼんやりと眺めていた。
少ししてハッとし、慌てて追いかける。

追いかけても辛いだけだ。
見なかったことにして、ここを立ち去ってしまえばいい。

―でも、俺にはできない。
ただの自惚れかもしれない。
でも、茜を救えるのは、きっと俺だけなんだから。

【F-6/路上/一日目/昼】
【八神総八郎@パワプロクンポケット8表】
[状態]:健康
[装備]:コルトガバメント(6/7)、バット
[道具]:なし
[思考]基本:茜とリンを説得する。
1:茜を追う。
2:バトルロワイヤルを止める。
3:白瀬、灰原が殺し合いに乗ったのでは?と疑っている。
[備考]
※走太と真央から、彼らにこれまでであった話を聞きました。
※荻原との話でタイムマシンの存在を確信。
※茜ルートBAD確定後、日本シリーズ前からの参戦。


【高坂 茜@パワプロクンポケット8】
[状態]:幸せ、早く殺したい、右手首打撲
[装備]:機関銃、冬子のスタンガン@パワプロクンポケット8
[道具]:支給品一式、アップテンポ電波、予備弾セット(各種弾薬百発ずつ)
[思考・状況]基本:みんな殺して幸せな家庭を取り戻す。
1:人を殺すために人の居るところへと向かう。

267交錯  ◆1WZThYdb3Q:2010/01/27(水) 22:36:47 ID:5FkF/zDU0


 ● ● ●


一方、茜を追跡していた灰原も、八神の存在に気づいていた。
この状況では、間違いなく邪魔になるであろう存在。
あの少女が八神に説得されてしまう、それだけは避けたい。

だが、ここで始末するには危険が大きすぎる。
灰原が持っているのは、刀と銃剣だけ。
戦闘慣れしている八神が銃を持っていれば、苦戦は免れないだろう。
いくら灰原が人間離れしたスピードを持っているとはいえ、何らかの怪我を負ってしまうのは間違いない。

そんなことを考えていると、少女が走り出したのが目に入った。
八神が追っているところを見ると、幸いなことに説得されたわけではないようだ。

さて、ここで灰原は決断を迫られる。
このまま茜を追うか、病院へと向かうか。
一瞬だけ考えた後、灰原は後者を選んだ。
八神と合流した以上、最早あの少女には期待できないだろう。
それなら、自分が動くしかない。そう思っての決断だ。

一瞬の選択は、時に失策を招く。
彼のこの選択がどちらに転ぶのか分かるのは、まだ先のお話。

【F-7/一日目/午前】
【灰原@パワプロクンポケット8】
[状態]:健康
[装備]:正宗、銃剣
[道具]:支給品一式、ムチ、とぶやつ(エネルギー切れ)、ボールオヤジ、催涙スプレー@現実
[思考]基本:優勝し、亀田の持つ技術をオオガミグループへと持ち帰る。
1:病院の方向へ向かった集団を追う。
2:見敵必殺、ただし相手が複数いる場合など確実に殺せないと判断した時は見逃す。
3:白瀬に指示を与えたい。
4:喋るボール(ボールオヤジ)を持ち帰る。

268名無しのバットが火を噴くぜ! :2010/01/27(水) 22:38:02 ID:5FkF/zDU0
以上で投下終了です。
お手数おかけしますが、どなたか代理投下していただければ有り難いです。

269名無しのバットが火を噴くぜ!:2010/01/27(水) 22:50:14 ID:GA72Q4DsO
投下乙です。
八神は、果たして茜を止められるのか?
病院組の運命は?
続きがとても気になります。

270 ◆1WZThYdb3Q:2010/01/28(木) 20:40:23 ID:qWWKGGA.0
失礼しました、一つ修正です…
灰原の状態表を、【F-7/一日目/午前】→【F-6/一日目/昼】に変更です。
前回、今回と、ご迷惑おかけして申し訳ありません。

271 ◆jnvLTxNrNA:2010/01/28(木) 23:29:59 ID:Qz2jZ/mwO
さるさんくらいながらも、第2部までは本スレに投下完了できたのですが、再びさるさん…orz
本スレにて途中支援して下さった方ありがとうございました。
第3部はこちらに投下します。
どなたか本スレに代理投下していただけたら幸いです。

272CHERRY BLOSSOM〜戻らない歯車〜 ◆jnvLTxNrNA:2010/01/28(木) 23:32:20 ID:Qz2jZ/mwO


◆ ◆ ◆ ◆


さらが撃たれた。

少し時間がかかったが十波は理解した。

「さ、ら……?」

仰向けに倒れたさらの名を呼ぶ。


既にさらを中心として真っ赤な血の池ができ始めている。


「うわああああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!!!!!
 さら!!!!さらあぁぁ!!!!!」


さらのもとに片膝をついてしゃがみ込み、力の抜けたさらの身体を起こす。
傷口からは鮮血が溢れ続けている。


「と、十波……君……」

「っ!?さら!?」

「ごめん…なさい……十波…君…
 せっか…く……私を…心配…して…来て…くれたのに……
 こんなことに…なって…しまって。」

さらが申し訳無さそうに謝る。
それに対して十波は首を横に振る。

「さら!お前は悪くない。
 俺がもっと、もっと早く来ていれば!
 そうだ、血を、血を止めなくちゃ」

273CHERRY BLOSSOM〜戻らない歯車〜 ◆jnvLTxNrNA:2010/01/28(木) 23:33:52 ID:Qz2jZ/mwO
「残念……ですね…
 やっと…他の…人を信じる…ことが…できると…思った…のに……
 やっと…十波…君に…会え…たのに……
 もう…お別れ…なんて…」

「しっかりしろ!さら!お別れなんて言うな!
 この島を抜け出したら、二人でいろんな所に行って、いろんなものを見て、一緒に笑うんだ!
 お前は俺が助ける!」

十波はユニフォームを脱いでさらの傷口にあてがい、止血を試みる。
しかし貫通した傷口から溢れる血は止まることをしらない。

「何…で……泣い…て…るん…ですか……十波…君…?
 この…青空…の…下…では……笑顔…じゃ…ないと……ダメ…なん…でしょ……?
 こんな…いい…天気…の…日に……こんな…青空…の…下…で……泣いて…る…人は……バカ…ですよ……?」

さらは十波に笑いかける。
顔中痣だらけで腫らしているし、血の気が引いて蒼白になってきているが、
さららしい、可愛らしい、とても穏やかな笑顔。
十波は先ほどから流れる涙を慌てて拭う。

「そ、そうだよな!涙なんか流して俺バカだよな!
 こんなにいい天気なのに…」

十波がさらの手を握る。
祈るように、強く、強く、強く。

274CHERRY BLOSSOM〜戻らない歯車〜 ◆jnvLTxNrNA:2010/01/28(木) 23:34:29 ID:Qz2jZ/mwO
「なぁ、さら…
 俺、プロ野球選手になれたんだ。
 今年から大活躍して新人王とかいっぱいタイトル穫るんだ。
 だから…さら、テレビで、できれば球場に来て、俺の活躍見ててくれよ!」

「…?……十波…君…は…まだ……高校…生…でしょ……?
 気が……早い…です…よ……?
 でも……わかり…まし…た…十波…君…
 私…いっ…ぱい……いっぱい……応援…します…約束…です……
 だか…ら…十波…君…も……頑張…るって…約束…して…下さい…」

「あぁ、約束だ」

2人はお互いの手を強く握り、約束をかわす。
それは、果たされることはない約束。
しかし2人は約束をかわす。
果たされることはないとわかっていても、認めたくないから。


「……十波…君……大……好……き……」

「さら……?さら!!
 さらぁぁぁああああぁぁぁぁ!!!!!」


さらは目を閉じ、永遠の眠りについた。もう二度と目覚めることはない。

最期に紡いだ言葉は遅すぎる告白の返事。
至福の時は、桜の花ようにあっという間に散った。

十波の悲痛な叫びが晴れ渡る空の下、虚しく響き渡った……

【芳槻さら@パワプロクンポケット10  死亡】
【残り34名】

275CHERRY BLOSSOM〜戻らない歯車〜 ◆jnvLTxNrNA:2010/01/28(木) 23:35:24 ID:Qz2jZ/mwO
【F-3/学校/北側校舎屋上/一日目/昼】
【十波典明@パワプロクンポケット10】
[状態]:「人を信じる」という感情の復活?
    さらを失ったことによる大きな喪失感、右上腕に怪我
[装備]:バタフライナイフ、青酸カリ
[道具]:支給品一式
[思考・状況]基本:???????
[備考]
1:さらルート攻略中に他の彼女ルートにも手を出していた可能性があります。
2:たかゆきをタケミの作ったロボットだと思っています。
3:タケミを触手を出す事の出来る生き物で、殺し合いに乗っていると思っています。
4:高坂茜とメカ亀田の名前を知りません。
5:さらが過去から連れてこられた、と思いました。

※北側校舎屋上に十波が蹴飛ばした機関銃(残弾中程度)が落ちています。

※本当に「人を信じる」という感情が復活したかは、後続の書き手さんにお任せします。
 復活しなかった場合、
 1:信頼できる人間とは「何故自分と手を組むのか、その理由を自分が理解できる人物」を指します。
 2:逆に「自分の理解できない理由で手を組もうとする人間には裏がある」と考えてます。

 の記述をお忘れなく。

276CHERRY BLOSSOM〜戻らない歯車〜 ◆jnvLTxNrNA:2010/01/28(木) 23:36:22 ID:Qz2jZ/mwO
◆  ◆  ◆  ◆

「こんのダボ!!あんた自分が何やったかわかってんのか!?」

中庭を挟んで南側の校舎の屋上で和那は紫杏を取り押さえていた。
ライフルは奪い取って中庭に投げ捨てた。

「……………」

「なんとか言えや!紫杏!」

「……………くく」

「?」

「くくく……あはははははははっ」

「な、何笑てんねん!?」

神条紫杏は笑った。笑うしかなかった。
人を殺めるという過ちを犯した自分に。
早くも決心が揺らいでしまった自分に。


屋上の扉を開いた瞬間、彼女の愛した男、十波典明の声がした。

声のする方を見ると確かに十波がそこにいた……芳槻さらと一緒に……

(?)

何かを話しているようだった。
紫杏は自慢ではないが地獄耳だ。
ゆえに十波のこの言葉を拾ってしまった。

『俺はさらが好きだ!』


(!?)

277CHERRY BLOSSOM〜戻らない歯車〜 ◆jnvLTxNrNA:2010/01/28(木) 23:37:07 ID:Qz2jZ/mwO
そこからの行動は彼女自身でも驚くくらいスムーズだった。
ライフルを構え、スコープを覗いて芳槻さらの背中に照準を合わせる。
引き金を引く。一筋の光が芳槻さらを貫いた。
自然と涙が流れたが、手は震えなかった。

何故こんなことをしてしまったんだろう?

何故こんなことができてしまったのだろう?

何故涙が流れたのだろう?

芳槻さらに対する嫉妬の念のせいか?

自分のことを『愛している』と言ってくれた、十波の裏切りに対する怒りのせいか?

まだ心のどこかで幸せを、
十波と共に生きるという幸せを望んでいるのだろうか?

もう後戻りしないと、幸せにはならないと決めたはずなのに…

『同世代のグループを作ってトップに立つ』という本来の目的も見失って、
何故その足を止めてしまったのだろう?


神条紫杏には、わからなかった。

278CHERRY BLOSSOM〜戻らない歯車〜 ◆jnvLTxNrNA:2010/01/28(木) 23:38:10 ID:Qz2jZ/mwO
【F-3/学校/南側校舎屋上/一日目/昼】

【神条紫杏@パワプロクンポケット10】
[状態]:脱力感、両ひじ、背中に軽いうちみ
[装備]:バット(デイパックの中)
[道具]:支給品一式、詳細名簿、ノートパソコン(バッテリー消耗小)、駄菓子数個
[思考]?????
基本:どのようにも動ける様にする。
1:自分と同世代のグループを作りそのトップに立つ?
2:生きて帰って平山の言葉を伝える。
3:出来ることならカズと十波には死んでほしくない。が、必要とあらば……
[備考]
※この殺し合いをジャジメントによる自分に対する訓練か何かだと勘違いしています。
※島岡の荷物は、島岡を殺害した者に持ち去られただろうと判断しました。
※小波走太一行とは情報交換を行っていません。

【大江和那@パワプロクンポケット10】
[状態]:全身打撲、疲労(中)
[装備]:六尺棒
[道具]:支給品一式×2、不明支給品0〜1、携帯電話、塩素系合成洗剤、酸性洗剤、油、ライター
[思考]
基本:バトルロワイヤルを止める。
1:紫杏!?
2:病院へと戻る。
【備考】
※重力操作にかけられた制限の存在に漠然と気付きました。
※桧垣東児特性しあわせ草エキスは一本きりです。

※学校の中庭に和那の投げ捨てたレーザーライフル(残り電力90%)
 が落ちています。

【宇宙連邦特製レーザーライフル@パワプロクンポケット9裏】
風の強い惑星フローラでも長距離射撃ができるように製造されたライフル。
フローラ配属の連邦兵士に支給されている。
連邦兵士(中尉)曰わく、2km先の標的も一発とのことだが、おそらく訓練したらの話。
だが、高性能であることは間違いない。
文字通り実体弾ではなくレーザーが発射される。
本ロワ内では充電式とする。1回発射するごとに10〜25%電力を消費。
消費電力は発射距離によって異なる。
電力を0から100%充電するのにかかる時間、どれくらいの発射距離でどれくらいの電力を消費するか、の裁量は後続の書き手さんにお任せします。

279 ◆jnvLTxNrNA:2010/01/28(木) 23:41:53 ID:Qz2jZ/mwO
以上で投下終了です。
誤字脱字、矛盾などの指摘点をお願いします。

280 ◆7WJp/yel/Y:2010/03/16(火) 11:45:38 ID:KpuqDs3E0
第二回放送案投下します

281第二回放送 ◆7WJp/yel/Y:2010/03/16(火) 11:48:25 ID:KpuqDs3E0

〜〜〜〜〜〜〜♪

諸君、天を見上げたまえ!
お天道様が諸君らの生を称えるかのように燦然と輝いているであろう!
生を実感出来る喜びを存分に噛みしめつつ、二回目の放送である!
まずは定例通り禁止エリアの発表。
引っかかった間抜けな人間も居ないようで吾輩は大変満足である。
それではこれより一時間後、『午後一時』より禁止エリアとなるエリアは。

B-4
F-4
G-1

以上の三つである!
良いであるか、例によって一時間後であるぞ?
くどいように思えるかもしれんが命に関わることであるからな!

おおっと、今回は無駄口を叩きはせんさ。
さて、それでは皆がお待ちかねとなっている死者の発表であるな。
知り合いは死んでおらんと良いなあ、まあ結局殺さなければならないであるがな!
では、いくであるぞ。

東優
九条英雄
黒野鉄斎
進藤明日香
二朱公人
野丸太郎
浜野朱里
芳槻さら

この七人、たったの七人である。
この結果は誠に遺憾であるなぁ、最初の滑り出しと比べて半数にも減っているである。
とは言え、着実に人数が減っているという点は評価できるである。
逆に言えばそこだけしか評価出来ないとも言えるであるがな。

まあ、吾輩から言えるのはたったひとつだけ。
精々最後の一人まで頑張ることである!
それでは第二回目となる放送、これにて終了であーる!
残り34名の皆は頑張るのであるぞ!

282第二回放送 ◆7WJp/yel/Y:2010/03/16(火) 11:50:01 ID:KpuqDs3E0


   ◆   ◆   ◆


「ふぅ……」

チバヤシ公爵は六時間に一度の放送を終えて軽く息をつく。
今の仕事に不満があるわけではない。
本人としては結構ノリノリでこの放送の時間をまだかまだかと待ち遠しく思っているほどだ。
逆に言ってしまえば、今は手持ち無沙汰と言うことになる。
六時間に一度の放送、それだけが我威亜党幹部であるチバヤシ公爵の現在に与えられた仕事らしい仕事である。

「チキン男爵、お茶」
「へいへい……何が悲しくて幹部になってまで茶汲みなんてやらなくちゃいけないんだろうなぁ」

チキン男爵は軽くため息を出しながら、荒っぽくチバヤシ公爵の前へとお茶を差し出す。
チバヤシ公爵は、うむ、と頷きながらお茶を口に含む。
だが、よっぽど渋かったのか大きく表情を歪めてチキン男爵を睨みつける。
そんな視線も何処吹く風、チキン男爵は思い出したように口を開く。

「んで、業務連絡。秋穂侯爵の仕事は完全に終わったってよ」
「ほう! ……で、具体的にあやつは何をやっていたのだ?」
「さあな……新種の生物兵器か? それとも怪しげな黒魔術か?」
「ふむ……」

チバヤシ公爵は亀田皇帝と秋穂侯爵だけが知る秘密の任務。
思えば――――いや、最初から感じていのだが――――亀田皇帝だけが知る秘密というものは多すぎる。
チバヤシ公爵も、秋穂侯爵も、あやか伯爵も、チキン男爵も、全員が体良く利用されているのが現状だ。

「……まぁ、利用価値があるうちは尻馬に乗っかかるに限るであるな」
「あん? なにか言ったか?」
「茶汲みをしているのは情けなくもあの間抜けな探偵に世界各地で負けたのが原因なのだ、と言ったのである」
「ぐっ……!」

聞くんじゃなかった、と顔をしかめながらチキン男爵が下がっていく。
その後ろ姿をニヤニヤと眺めながら、彼が入れた不味い茶を口に含む。

「さてはて……あと何時間で終わるであるかね……」

283 ◆7WJp/yel/Y:2010/03/16(火) 11:51:18 ID:KpuqDs3E0
投下終了です
本スレは、一日待って指摘がなかったら立てようと思います

284名無しのバットが火を噴くぜ! :2010/03/16(火) 19:26:12 ID:xKOfkTUsO
あれ? 禁止エリアに踏み込んだアホっていなかったっけ?

285 ◆7WJp/yel/Y:2010/03/16(火) 20:14:25 ID:KpuqDs3E0
……そうでした、修正しておきますorz
大変失礼しました

286>>281差し替え ◆7WJp/yel/Y:2010/03/18(木) 18:19:30 ID:psZgvb6w0

〜〜〜〜〜〜〜♪

諸君、天を見上げたまえ!
お天道様が諸君らの生を称えるかのように燦然と輝いているであろう!
生を実感出来る喜びを存分に噛みしめつつ、二回目の放送である!
まずは定例通り禁止エリアの発表。
あ〜れほど言ったのに引っかかた間抜けが居たであるの巻。
吾輩、自分の言葉を無視されるのはあまり好きではない性質ではないである。
もちろん、だからどうしろと言うわけではないであるよ?
諸君らも好き好んで禁止エリアに突っ込むわけがないであるし。
我輩たち我威亜党は、禁止エリアを減らす、なんてことをする気はさらさらないである。
故に吾輩に出来ることなんてこうして注意をうながすことだけであるからな。

……それではこれより一時間後、『午後一時』より禁止エリアとなるエリアの発表である。
メモの準備は出来てるであるな? それでは、発表する!

B-4
F-4
G-1

以上の三つである!
良いであるか、例によって一時間後であるぞ?
くどいように思えるかもしれんが命に関わることであるからな!

おおっと、今回は無駄口を叩きはせんさ。
さて、それでは皆がお待ちかねとなっている死者の発表であるな。
知り合いは死んでおらんと良いなあ、まあ結局殺さなければならないであるがな!
では、いくであるぞ。

東優
九条英雄
黒野鉄斎
進藤明日香
二朱公人
野丸太郎
浜野朱里
芳槻さら

この七人、たったの七人である。
この結果は誠に遺憾であるなぁ、最初の滑り出しと比べて半数にも減っているである。
とは言え、着実に人数が減っているという点は評価できるである。
逆に言えばそこだけしか評価出来ないとも言えるであるがな。

まあ、吾輩から言えるのはたったひとつだけ。
精々最後の一人まで頑張ることである!
それでは第二回放送、終了であーる!

287 ◆7WJp/yel/Y:2010/03/18(木) 18:26:45 ID:psZgvb6w0
では、日付が変わる前にはスレを立ててきます

288 ◆7WJp/yel/Y:2010/03/18(木) 23:50:34 ID:psZgvb6w0
立てました

ttp://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/pokechara/1268923277/

289 ◆jnvLTxNrNA:2010/03/24(水) 00:28:17 ID:.7HYPnDgO
本スレに書き込めない(たぶん携帯だから)
のでこちらに投下します。

290迷走ヒーロー ◆jnvLTxNrNA:2010/03/24(水) 00:30:03 ID:.7HYPnDgO
レッドは己の情けなさに腸を煮えくり返らせながら、来た道を引き返して東に向かっていた。
神社にいた者達は皆、野丸太郎も銀髪の女とピンク髪の女の二人組も芳槻さらも見ていないと言っていた。
人に向かってロケットランチャーやマシンガンをぶっ放つような連中が人の集まりそうな施設を避ける理由はない。進んで近づいて行くはずだ。
当初、二人組が商店街の西の出入り口から出て行くのを見たため、二人組は西に向かったと判断したが、
消防署には誰もおらず、七味達も襲われてないとすると、連中は商店街から西ではない別の方角に向かった可能性が高い。
つまり二人組は西の出入り口から出て西に向かったように見せかけて別の方角、
おそらく真逆の東に向かったのだとレッドは考えた。
そう判断して、今ならまだ間に合うと思い、一度東に戻ることにした。

「クソっ!俺はまた判断ミスをっ!
 こうしている間にも連中がまた人殺しをしているかもしれないのに!
 その場合、それは判断を過った俺のせいだ!クソっ!」

誰に言い聞かせるわけでもなくレッドは呟く。
しかし言葉に出してみると、より一層自分が情けなく感じられ、その事により一層腹が立つ。

………レッドは気づいていない。この判断こそが間違いであることに。
レッドの追いかける4人中3人、白瀬芙喜子と愛、野丸太郎はレッドの当初の判断通り商店街から西に向かったことに。
そしてその内の1人、野丸太郎はレッドが神社で情報交換をしている間に神社の北を西に向かって突っ切り、禁止エリアに突っ込んだことに。
更に残る2人、白瀬芙喜子と愛はレッドが神社に行く途中にも、神社から戻る途中にもその前を通った消防署にいたことに。

何故レッドは白瀬達と出会うことができなかったのか?
レッドが白瀬達と出会うチャンスは行きと帰りで2回あった。
白瀬達は何回か消防署を出たり入ったりしていたのだが、レッドが消防署の前を通った時、白瀬達は2回とも消防署の中にいたのだ。
1回目は白瀬達が時間軸について話し終わった時。
その時は白瀬達がうまく気配を消していたため、レッドは気づかなかった。
2回目は白瀬達が野丸太郎及び、巨大殺人クワガタと戦闘した後、これからのことについて消防署の中で話し合っている時。
この時は1回目に消防署には誰もいないと判断したために、特に見向きもせずスルーしてしまった。

291迷走ヒーロー ◆jnvLTxNrNA:2010/03/24(水) 00:31:31 ID:.7HYPnDgO
それに、もっとレッドの目を引きつけるものがあった。
巨大殺人クワガタの死体と戦闘の跡である。
戦闘の跡は状況から見て恐らくクワガタとのものだろう。
問題は何故こんなバケモノがいるのかということと、誰がこのバケモノを倒したのかということだ。
しかし気にはなったものの、何より優先すべきことがあるためその場は後にした。


☆ ☆ ☆ ☆


商店街より東の市街地には、役場、映画館、港がある。市街地を外れれば学校と野球場がある。
レッドは東に戻りながら、商店街より東のどの施設に行くかを考え、結論を出し、その場所にたどり着いた。

そこは学校。

市街地から出たのは、市街地と神社の往復でかなりの時間を潰してしまったため、
あの二人組がまだ市街地にいると考えるのは甘いと考えたからだ。

レッドは早速学校のグラウンドに足を踏み入れる。
レッドには時間がない。
危険分子の抹殺というヒーローとしての使命を一刻も早く完遂させるため、今は一分一秒が惜しいのだ。
学校に何もなければ危険分子が他に害をなす前に別の場所に移動しなくてはならない。
レッドはグラウンドを見渡した。すると部室棟横の木の下に人を2人確認した。

292迷走ヒーロー ◆jnvLTxNrNA:2010/03/24(水) 00:33:37 ID:.7HYPnDgO
☆ ☆ ☆ ☆


「ふぅ〜
 30分あればできると思ったが、なかなか骨が折れる」

ヘルガと夏目准は部室棟横の記念樹の下に二朱公人の墓穴を掘ることにした。
やはり埋葬するからには、それらしい場所にしたい。
しかし成人男性1人が収まる穴を掘るのはかなりの重労働である。軍人で体を鍛えているヘルガをもってしてもだ。
スコップが1本しかなかったため交代で掘っていたが、2人ともそろそろ腕が疲れてきていた。

(そろそろ30分か……)

十波典明が芳槻さらを説得、保護しに校舎に入ってからまもなく30分経つ。
30分経っても十波が戻らないことから何かあった、おそらく芳槻さらと接触できたことは間違いない。
約束ではヘルガたちも十波のところに駆けつけなければならない。
さらを説得する過程で問題が起きた可能性、あるいはまったく別の問題が起きた可能性があるからだ。

「夏目、そろそろ30分だな」
「……そうですね」

二朱の埋葬に固執していた准だが、約束は約束である。
それに学校に来た本来の目的は芳槻さらの保護だ。

(もう少し待ってて下さいね……二朱さん)

准は心の中で二朱にそう伝えると、ヘルガと共に校舎に向かって歩き出そうとした。

しかし

「お前たち、そこで何やってる!?」

2人の前にレッドが立ちはだかった。

293迷走ヒーロー ◆jnvLTxNrNA:2010/03/24(水) 00:34:48 ID:.7HYPnDgO
☆ ☆ ☆ ☆


木の下の2人に近づいていくにつれ、俺は木の下には2人ではなく3人、いや2人と1人だったものがいることに気づいた。
1人だったものは木に背を預け座っている体格のいい男。目と胸から血を流して死んでいるのが一目でわかる。
そしてすぐ側でスコップで穴を掘っている軍服を着た女とその様子を見守るメイド服の女の2人だ。
おそらく2人はあの男を殺し、あげくの果てに埋めてしまう気だ。
俺はグッと奥歯を噛み締めた。

(この島にはどうしてこんなに悪がはびこっているんだ!)

怒りが沸々とこみ上げてくる。

(目の前の人間が悪なら答えはただ一つ、倒すのみ!
 それが正義のヒーローだ!)

2人がこちらを向いた。

「お前たち、そこで何やってる!?」

軍服の女が銃を構えてきた。
きっとあの銃で男を殺したに違いない。

「貴様ぁ!!」

俺は軍服の女との距離を詰めるべく足を踏み込んだ。

294迷走ヒーロー ◆jnvLTxNrNA:2010/03/24(水) 00:35:44 ID:.7HYPnDgO
軍服の女は俺の動きに驚いたようだった。
俺にそんな脅しが通じるとでも思ったのだろうか?
俺は踏み込んだ足で地面を蹴ると軍服の女との距離を一気に詰め、銃を持った手を蹴り上げる。
軍服の女の手から銃がこぼれ落ち、腕が跳ね上げられる。
そして腕が上がったことでがら空きになった左わき腹に右アッパーをいれた。
軍服の女の身体がくの字に曲がる。感触から言って、あばらを1、2本もらった。
女は膝をついてせき込んでいる。しばらくは動けないだろう。
ここで止めをさしてもいい。だが敵は1人ではない。もう1人、メイド服の女がいる。
俺はメイド服の女の方に向き直った。
女は軍服の女が取りこぼした銃を構えていた。自分の頭に向かって。
俺は驚かされた。

(どういうつもりだ!?)

さすがに手が止まる。女のやってることの意味がわからない。
女が引き金を引いた。しかしあるはずの銃声がしない。

「モデルガンよ」
「モデルガン……だと?」

295迷走ヒーロー ◆jnvLTxNrNA:2010/03/24(水) 00:36:42 ID:.7HYPnDgO
☆ ☆ ☆ ☆


ヘルガたちはレッドに事情を説明した。
二朱公人はもともと仲間で、30分ほど前に襲撃されて殺されてしまったこと。
それで、二朱を埋葬しようと穴を掘っていたこと。
反射的にモデルガンを構えたのはこの島の状況では仕方なくて、最初から交戦の意志は無かったことを話した。

「本当にすまない!」
「いや、私たちも誤解されてもおかしくないことをしてたんだ。すまなかったな。
 私はヘルガ。そっちが夏目准だ。殺し合いには乗っていない」
「俺はレッド。正義のヒーローだ。
 もちろん殺し合いには乗っていない」

レッドはヘルガたちから話を聞いて素直に謝った。
誤解とはいえ殺し合いに乗っていないヘルガを負傷させたのだからばつが悪かった。

「本来ならここで情報交換の一つでもしたいのだが、
 私たちには芳槻さらを保護しに行った十波典明のところに駆けつけるという約束があってな。
 時間がないんだ」
「芳槻さら……だと?」

レッドの身体が強ばった。

「あぁ、私たちが学校に来た目的は芳槻さらの保護だ
 今は十波という男が1人で芳槻を探して校舎に入っている。
 30分経っても戻らないから芳槻と接触できたことはたぶん間違いないが、
 何か問題が起きた可能性がある」
「ふざけるな!!お前たちは知らないかもしれないが、
 芳槻さらは俺の仲間だった甲子園児を殺した危険人物なんだぞ!
 そんな奴を保護だと?そんな甘い考えは今すぐ捨てろ!
 奴は倒すべき悪だ!」
「それは違うよ」

2人の会話に准が割って入った。
この島で准はさらを助けるために行動してきた。
レッドは甘い考えと言うが、准にとっては甘い考えではないし、捨てるつもりもない。

「たしかにあの子は私のお腹を刺したり、私の知り合いのピエロさんを殺したり、
 あなたの言う甲子園児って人を殺したかもしれない。
 でもね、私はあの子を悪だとは思わない。
 こんな島にさえ来なければあの子は普通の女子高生だと思う。
 私はあの子をこの島のひどい状況から救ってあげたいの」
「だがしかし、奴は悪となった!もとがどうだったかは関係ない!
 悪は悪だ!そして悪は倒さなければならない!」

296迷走ヒーロー ◆jnvLTxNrNA:2010/03/24(水) 00:38:19 ID:.7HYPnDgO
「あの子は好きで殺しをして悪になったんじゃない。
 殺さなきゃ殺されるっていう状況がそうさせたの。
 誰もがあなたみたいにこんな状況でも自分を見失わないほど強いわけじゃない。
 事実、私も二朱さんに会わなかったら自分がどうなっていたかわからない。
 あの子みたいに殺しをしていたかもしれない。
 でも二朱さんに会ったから私は私でいれたの。
 出会いで人は変われる。それはあの子も例外じゃない」
「変われるだと?その考えが甘いと言うんだ。
 例え変わったところで奴は殺人という罪を犯したんだ!
 その罪は死をもって償わなければならない!」
「死ぬことが罪を償うことだと私は思わない。
 ごめんねって謝ってくれたら私はあの子を許すつもり。だってこの状況じゃ仕方ないから。
 でも死んじゃったら謝ることもできなくなるんだよ?」
「芳槻さらが謝れば貴様は奴を許すかもしれん。
 だが俺は許せない!奴が謝ったところで甲子はどうなる?
 生き返るのか?生き返るわけないだろう!
 奴が犯した罪は謝罪の言葉だけで許せるものじゃないんだ!
 悪いが俺は貴様の考えは理解できない!
 俺は何と言われようと悪を倒すという自分の正義を貫く!」

レッドはそう言い切ると校舎に向かって歩き出した。
しかし准が先回りしてレッドの前に両手を広げて立ちふさがる。

「悪を倒すだけが正義じゃない!
 悪から弱い人を守って、救い出すのも正義だって私は思う!」
「確かにそうだ。だがな、芳槻さらは悪だ!悪に差し伸べる手はない!
 そこをどけ、夏目!」 

レッドの怒号に准はレッドを睨みつけることで返す。
正直、准はレッドが怖い。
レッドがヘルガに繰り出したパンチは素人の准から見ても強烈なものだった。
あのパンチが准にレッドに対する恐怖心を植えつけていた。
しかし、准にとって一番怖いのはこの島で二朱と共にやってきたことが無駄になること。
さらが殺されること。
このままレッドを通せば間違いなくそうなる。そんなのは絶対にイヤだ。
その意地が准の勇気を駆り立てる。
だがレッドにしてみれば准は自分の正義を邪魔する障害物でしかない。

「どうしてもどかないと言うなら……」

レッドは准の鳩尾に拳を叩き込んだ。

「かはっ」

准の腹部には刺し傷がある。幸いにも傷が開いたということはなかったが、
激痛が走り、准の意識を刈り取った。
准は膝をつきそのままうつ伏せに倒れ込んだ。

297迷走ヒーロー ◆jnvLTxNrNA:2010/03/24(水) 00:40:52 ID:.7HYPnDgO
「貴様……」

今まで状況を見守っていたヘルガが声を上げる。ここまでする必要があるのかというのがヘルガの本音だ。

「ヘルガ、俺が芳槻さらを倒しに行っている間、夏目を頼む」
「待て!芳槻さらの保護は死んだ二朱の願いでもあるんだぞ!」
「俺に悪を助ける道理はない。
 強いて言うなら、これ以上悪事を働けないように息の根を止める。
 それが俺なりの慈悲だ」

そう言い残すとレッドは校舎に向かって走って行った。
悪を倒す為に。


【F-3/学校/グラウンド/一日目/昼】
【レッド@パワプロクンポケット7表】
[状態]:殺人者に対する激しい怒り
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ナオのリボン@パワポケ10表、超人ライダーボトルキャップ、ゴーカート@パワポケ7表
[思考・状況]
1:校舎に行き芳槻さらを殺す
2:1のあと野丸or2人組(白瀬、愛)を追い、仲間に害を為す前に殺す
3:2のあと病院に向かう
4:黒野鉄斎の保護
5:レッドとして反省し、ブラウンの分も悪を倒す
6:東やほるひすを守る
7:余裕があれば第3放送前後にホテルに寄る

298迷走ヒーロー ◆jnvLTxNrNA:2010/03/24(水) 00:41:49 ID:.7HYPnDgO

【夏目准@パワプロクンポケット9】
[状態]:気絶中
    腹部に刺傷(立ち上がれる程度には回復)、深い悲しみ
[装備]:スコップ
[道具]:支給品一式×2、スパナ、拡声器、不明支給品0〜4個
[思考・状況]
1:さらを助けてあげたい
2:レッドに対して不信感
3:二朱さん……
4:九条さんに会いたい。
5:十波がさらを救えるか少し不安。


【ヘルガ@パワプロクンポケット6裏】
[状態]:右肩に怪我
    左わき腹の肋骨の1本にひび
   (走ったりなど激しい運動に支障をきたします)
[装備]:モデルガン、ナイフ、軍服
[道具]:ラッキョウ一瓶、支給品一式
[思考・状況]
基本:亀田という悪を育てるために亀田に立ち向かう。
1:あまりにも亀田に対抗する戦力が大きくなってきた場合はそれを削る。
2:レッドに対して不信感
3:十波を少し信頼。

299 ◆jnvLTxNrNA:2010/03/24(水) 00:46:40 ID:.7HYPnDgO
投下終了です。
誤字脱字、矛盾などの指摘をお願いします。
あと、何方か本スレに代理投下していただければ嬉しいです。

300名無しのバットが火を噴くぜ! :2010/03/24(水) 14:01:41 ID:kDycZ6L20
代理投下完了しました

301 ◆jnvLTxNrNA:2010/03/24(水) 23:55:03 ID:.7HYPnDgO
>>300
代理投下+感想ありがとうございます!

そして未だ規制巻き込まれ中……orz

302 ◆1WZThYdb3Q:2010/08/05(木) 22:11:40 ID:maYFPN9E0
規制中なので、こちらに仮投下させて頂きます

303未来の束縛  ◆1WZThYdb3Q:2010/08/05(木) 22:13:17 ID:maYFPN9E0
紫杏が放送を聞いたのは、学校を出た直後の事だった。
放送が嘘を言っていない限り、芳槻さらはやはり死んでしまった事になる。
ひょっとしたらまだ生きているのでは…という淡い期待も、結局は捨てる羽目になってしまった。

眩しいほどに緑が輝く周囲の風景も、今に限っては何だか嘘っぽく感じた。
紫杏に自然を愛でる趣味は無いが、それを空虚などと思ったことは一度も無かったのに。

(…やっぱり、動揺してるのかな)

多分、いや、きっと動揺しているのだろう。
何故だろう。自身の将来を思えば、他人の死の一つや二つで思い悩んでなどいられないはずなのに。
紫杏がまだ、小心者で弱い自分を捨て切れないせいだろうか?
例えジャジメントの指揮官という立場になろうとも、自ら手を下すことはないと高を括っていたせいだろうか?
顔と名前を知っている程度だとは言え、知人をこの手で殺めてしまったせいだろうか?

「…紫杏、これ回収しといたで」

後ろを歩いていたカズが、いきなり口を開いた。
その手に握られているのは、学校の屋上で放たれたレーザーライフル。もちろん、紫杏に手渡す素振りはなかったが。
あのまま十波の傍に放置しておくのは危険だということは、紫杏にも痛いほどよく分かる。
だが、それでも今は一番見たくない物だった。隠しきれない歪んだ表情が紫杏の顔に浮かぶ。

「堪忍してや…いつかは見せなあかんのやから」
「あまり気にしないでくれ、カズ。私は怒っちゃいない」

304未来の束縛  ◆1WZThYdb3Q:2010/08/05(木) 22:14:02 ID:maYFPN9E0

少しの沈黙。カズは話題を変える。

「…あのな、全然関係ない話なんやけど…
 十波、めっちゃ泣いとったやろ?」

紫杏の返答を待っているのか、カズは話を続けない。
仕方なく、ああ、と気の無い返事を返す。

「紫杏…お前は辛ないんか?
 …いや、紫杏だけやない。
 ウチも辛いし、十波も辛いやろうし、一緒におったあの子も辛いはずや」

紫杏は押し黙ったまま答えない。
辛い、と答えてしまうのは簡単だ。憔悴し切ったような表情をそこに添えるのも簡単だ。
紫杏は今まで、ずっとそうして生きてきたのだから。
ただ、安易な「辛い」という言葉に逃げたくはなかった。
それは偽善でも使命感でもない。
そんなことでは、将来に幾度となく訪れるだろう“死”の度に同じ感情を覚える事になってしまう気がしたからだ。
ここであえて苦しい道を選ぶのも悪くない――そう思っていたのだ。

結局、悪いとは思いながらも答えは返さなかった。
会話は途切れ、重苦しい雰囲気が辺りを包む。
ただ、気まずい空気の中で会話を続けるよりはずっと気が楽だった。
カズも恐らくは同じような気持ちを抱いているのだろう。

数分ほど経つと、視界の隅に何かの施設が現れた。
整然とした並びで座席が連なり、その合間を縫うようにして照明器具が見える。
その施設が何なのか、紫杏にはすぐに見当がついた。

(……野球場、か)

とりあえず優先すべきは、混乱した頭にゆっくりと整理をつけることだろう。
湧きあがってくる様々な感情にはひとまず蓋をして、紫杏は入口をくぐった。

305未来の束縛  ◆1WZThYdb3Q:2010/08/05(木) 22:15:14 ID:maYFPN9E0

  ●  ●  ●


「御来客、みたいですよ」

手元の探知機に視線を落としながら、あやかが呟く。

「へーぇ」

杖を弄る手は止めずに、プレイグが返事を返す。

「これはまた分かりやすい返事ですね、プレイグさん」
「いや、あのなぁ。
 どうせまた、何や面倒臭いことせなあかんのやろ?」

二人が寛いでいるこの場所には長椅子もあり、一息入れるには最適の場所だった。
もしも接近している二人組が何らかの休息を目的としている場合、十中八九ここへ訪れる事になる。
それだけに、このまま手をこまねいて待つわけにはいかないはずだ。
どうせ変身だの魔法だの要求されるに決まってんねん――プレイグの質問からは、半ば諦めのようなものも感じられた。

だが、あやかの返答は予想外のものだった。

「いえ、今回ばかりは必要ありません。
 …と言うのもですね、今回の二人は『安全』だからです」
「安全?」
「はい。一人は正義感あふれる自治会長。まあ、かなり疑り深いきらいはありますけどね。
 もう一人も特殊な能力を持ってはいますが、性格からして無抵抗の人間に襲いかかるような事はないでしょう」

楽観的すぎる、ととれないこともない。
プレイグはさすがに危うさを感じ、聞き返す。

306未来の束縛  ◆1WZThYdb3Q:2010/08/05(木) 22:16:02 ID:maYFPN9E0

「いやいや、そんなに上手く行くかいな?
 そんなん言うてて油断して殺されました、じゃ下手なシャレにもならんで」

あやかの顔に微笑が浮かぶ。分かってないですね、という表情が露骨に読み取れた。

「おやおやプレイグさん、何か私を見くびっているようですね。
 私だって、裏付けもなしにこんな事を言ったりしませんよ?」

それに、読みが外れたら外れたで面白いじゃないですか――続けようとした言葉は辛うじて呑みこんだ。
納得しかねたような顔をしたプレイグがまた何か言おうとしたその時。
カチャリ、とドアが開いた。

ほんの数メートルの間を置いて、ドアを開けた張本人・紫杏とあやかの目が合う。

「…失礼、邪魔をしてしまいました」

再びドアを閉めかけた紫杏を、あやかは呼び止めた。

「いえいえ、一向に構いませんよ。
 それより貴女、かなりやつれてますね?
 何なら私達が他へ行きますから、ここで休んではどうです?」
「…お気持ちは有難いですが、結構です」

そう言い残し、紫杏はその場を立ち去ろうとする。
しかしあやかは構わず、紫杏の背中に再度言葉を投げかけた。

「まあ、大方の見当はつきますよ。
 貴女が気に揉んでいるのは、『芳槻さら』の死――ですね?」

紫杏の背中が、ピクリと揺れた。

307未来の束縛  ◆1WZThYdb3Q:2010/08/05(木) 22:16:46 ID:maYFPN9E0


  ●  ●  ●


(…何者なんだ、この女?)

芳槻さら、死、神条紫杏。
目の前に居る女は、この三つをいとも簡単に結びつけて見せた。
放送だけではどう転んでも出来ない芸当だ。
初めて女を見た時に覚えた直感が、より一層強さを増すのが感じられた。

すまない、少し一人で頭を整理したいんだ――野球場に入って間もなく、紫杏はそう言ってカズと別れた。
そして単身入ったサロンのような場所。
女を目にした途端、普通ではない雰囲気を感じた。
だから紫杏は、交渉に持ち込む事もなく部屋を後にしようとしたのだ。

立ち去れ、逃げ出せ。紫杏の理性は今も叫んでいる。
話の運び方からして、女は紫杏を何らかの形で「壊そう」としているのは明白だ。
だが――いや、だからこそ、逃げ出すことに抵抗を感じる。
紫杏が自らに課した「苦しい道を選ぶ」という宿題が、いつしか自分自身を縛ることになっていたのかもしれない。

「おっと、自己紹介が遅れましたね。
 私は黒羽根あやか――いえ、ここはあやか伯爵と名乗っておきましょうか」
「…伯爵、ですか?」

爵位。どこかで聞いたことがある。

「ふふ。お気づきのようですね。
 ご想像の通り、私はこの場でジョーカーという役回りを務めさせてもらってます。
 もっと月並みな言い方をすれば、『スパイ』という所でしょうか」

真偽のほどは分からないが、にわかに興味深い話が舞い込んできた。
下手な相槌を打って話が逸れるくらいなら、喋るだけ喋らせるのが吉だろう。

308未来の束縛  ◆1WZThYdb3Q:2010/08/05(木) 22:18:00 ID:maYFPN9E0

「そういう立場上、私は色々と利点を得ているわけです。
 なかなか優秀な探知機も支給されていますし、参加者の方々についてもある程度は把握済みです」

なるほど探知機があれば、放送と関連付けてさらと紫杏を線で結ぶ事が出来る。
よりによって学校の辺りを見ていたのも、決して偶然とは言い切れない。
学校には比較的人が集まっていたし、位置もここからならかなりの近場だ。
暇つぶしがてら観察しておくにはうってつけの場所だろう。

「と、前置きはこの位にしておきまして…
 芳槻さらを殺したのは誰か、それは私にも解りません」

一呼吸置いて、続ける。

「ただ、貴女に罪の呵責を感じさせる事はできます。
 何故止められなかったのか。
 あるいは、何故殺してしまったのか」

そろそろ、か。
紫杏は唇を噛みしめ、覚悟を決める。

「あまり隠しだてするのは好きではないので、率直に言いましょう。
 私が把握している限りの情報では、芳槻さら、十波典明、この二人は相思相愛と言っても差支えないでしょう」

嘘だとは考えにくい。目の前の女がジョーカーだと言う事も、この情報も。
それだけに、怖い。
何を知っていて何を言いたいのか、それが掴めない。

「それに、一つ興味深い点がありましてね。
 十波という少年は、どういうわけか芳槻さらが『死んでいた』と思っていたらしいのです。
 つまり――」

紫杏の理性は、なおも大音響で叫ぶ。耳が痛いほどに。

「…失礼します」

結局、紫杏は音をあげた。
あやかが言わんとする事は、紫杏にも理解できた。
それを今となってはどうしようもないんだと割り切れるほど、紫杏は強くない。
改めて、自分が捨てきれない、情けないほどの弱さを感じた。

309未来の束縛  ◆1WZThYdb3Q:2010/08/05(木) 22:19:10 ID:maYFPN9E0


十波とさらとの間に横たわる矛盾と、病院で一笑に付したタイムマシンの話。
もし紫杏が平静を保っていれば、この二つを結んで気休め程度でも自分を慰める事もできただろう。

だが、紫杏は余りにも疲れ過ぎていた。
頭の整理をつける間もなく、次々と追い詰められてきたせいで。

今はただ、何も考えまいと必死だった。


【G−3/野球場/1日目/日中】

【神条紫杏@パワプロクンポケット10】
[状態]:脱力感、両ひじ、背中に軽いうちみ
[装備]:バット(デイパックの中)
[道具]:支給品一式、詳細名簿、ノートパソコン(バッテリー消耗小)、駄菓子数個
[思考]?????
基本:どのようにも動ける様にする。
1:どこかで頭を整理したい。
2:生きて帰って平山の言葉を伝える。
3:出来ることならカズと十波には死んでほしくない。が、必要とあらば……
[備考]
※この殺し合いをジャジメントによる自分に対する訓練か何かだと勘違いしています。
※島岡の荷物は、島岡を殺害した者に持ち去られただろうと判断しました。
※小波走太一行とは情報交換を行っていません。


【大江和那@パワプロクンポケット10】
[状態]:全身打撲、疲労(中)
[装備]:六尺棒、レーザーライフル
[道具]:支給品一式×2、不明支給品0〜1、携帯電話、塩素系合成洗剤、酸性洗剤、油、ライター
[思考]
基本:バトルロワイヤルを止める。
1:紫杏!?
2:病院へと戻る。
【備考】
※重力操作にかけられた制限の存在に漠然と気付きました。
※桧垣東児特性しあわせ草エキスは一本きりです。

310未来の束縛  ◆1WZThYdb3Q:2010/08/05(木) 22:20:08 ID:maYFPN9E0

  ●  ●  ●


「…なかなか逃げませんでしたね」

ドアが完全に閉まったのを確認した後、あやかは言った。

「なんや、早う逃げてほしかったんかい?」

プレイグは、解りやすい驚愕の表情を浮かべて問い返す。

「ええ、気分としてはそうでしたね。
 食事も終わって満ち足りた気分でしたから、さすがに面倒になってきまして」
「ほんなら最初っから止めへんかったらええやないか。
 なにもあの姉ちゃんが自分から留まってたわけやないで?」

理解できない、といった面持ちでプレイグはあやかを見つめる。
それを横目で見ながら、あやかはこともなげに言い放つ。

「だって、それじゃあまりにもあんまりでしょう?
 それに、私は何度も逃げる機会は作ってあげましたよ。
 あそこまで聞いたのは、私ではなく彼女の意志です」
「…まったく、ホンマに食えん女やな」

賛美とも軽蔑ともつかない口調。
あやかの考え方には、基本的に今でもついていけない。
ただ、あやかのやり口、獲物のとらえ方、そんな諸々を少し楽しみにしているのも事実だった。
そんな自分に何より驚いたのはプレイグ自身ではあったが。

「…と言うか、最後まで逃げへんかったらどうするつもりやったんや?
 あの姉ちゃんがトラウマ背負ってたから良かったようなものの、よう考えたらあんまり大した事は言うてへんで」

あやかの口元に微笑が浮かぶ。
まだ私という人間を理解していないんですね、とでも言うように。

「それはそれで、面白いと思いませんか?」

311未来の束縛  ◆1WZThYdb3Q:2010/08/05(木) 22:20:47 ID:maYFPN9E0


【G−3/野球場内部サロン/1日目/日中】

【黒羽根あやか@パワプロクンポケット7裏】
[状態]:歓喜、満腹、テンション↑
[装備]:妖刀ムラマサ@パワプロクンポケット7裏、日本刀
[道具]:支給品一式、高性能型探知機、充電器、タオル数個
[思考・状況]
基本:殺し合いを円滑に進めるために動く。方法は問わない。
1:とりあえず今は満足。
2:ゲームに乗っていない人間は殺す、マーダーに出来そうだったらする。
3:名探偵は、今度こそこの手で………
[備考]
1:参加者全員の顔と詳細情報についての知識を持っています。
2:探知機はあやかには反応しません。


【プレイグ@パワプロクンポケット4裏】
[状態]:健康、満腹
[装備]:ハヅキの杖@パワプロクンポケット4裏
[道具]:支給品一式、カレー調理用セット(食材三人前、包丁鍋フライパンスプーン皿、いずれも汚れてる)
[思考・状況]
基本:『殺し合い』に乗り、優勝を目指す。
1:あやかについては保留。とりあえず今は殺さない。
2:もっとまともな杖が欲しいでホンマ……
[備考]
※杖がなくとも呪文を唱える事に支障はありません。精神的にほんの少し落ち着かないだけです。

312名無しのバットが火を噴くぜ! :2010/08/05(木) 22:23:57 ID:maYFPN9E0
以上で投下終了です。
誤字脱字、矛盾点などありましたら指摘お願いします。

問題が無いようでしたら、どなたか代理投下お願いします…

313名無しのバットが火を噴くぜ! :2010/08/06(金) 07:26:35 ID:KkZKrqgQO
久々の投下乙です!

ところで紫杏たちは誰にも会わずに学校から出たのでしょうか?
正門から出たとすれば、ヘルガあたりと出くわしそうなものですが…

314 ◆1WZThYdb3Q:2010/08/06(金) 22:30:18 ID:x/GZQkyM0
>>313
特にこれといった理由を決めていたわけではありませんが、

・紫杏や和那からすればヘルガ達と話している場合ではないですし、
 ヘルガ・准としても、レーザーライフルを持っている和那達にわざわざ声をかけたりはしないのでは?

・ヘルガや准が墓を掘っていた場所によっては、そもそも出会わなかった?

・紫杏が正門からは出なかった?

などといった理由は考えられるかと思います。
展開縛りになる恐れもあり、私としても決めかねたので特に描写はしませんでしたが…いかがでしょうか?

315名無しのバットが火を噴くぜ! :2010/08/06(金) 23:52:01 ID:KkZKrqgQO
なるほどです。
そういうことでしたら問題ないと思います。
今さらですがGJです!

316名無しのバットが火を噴くぜ! :2010/08/07(土) 21:34:54 ID:jekfwCQY0
投下乙ですぜー
代理投下行ってきますー

317 ◆jnvLTxNrNA:2010/08/15(日) 21:15:54 ID:tmBSW2QgO
お待たせしました。
投下します。

318願い事1つだけ ◆jnvLTxNrNA:2010/08/15(日) 21:17:42 ID:tmBSW2QgO


『死は絶対で、安易に打ち消されるようなものであってはならない』

【〜prologue〜】

「ふぅ〜」

部室棟横の記念樹の下で私は完成した二朱公人の墓を見つめて、1人ため息をついた。
墓としてはかなり粗末なものだがそれは仕方ない。目を閉じて二朱に黙祷して冥福を祈ると同時に謝罪をする。
私は二朱の願いを果たすことができなかった。
芳槻さらは死んでしまったのだ。

私はレッドを追わなかった。否、追えなかった。
気絶した夏目准を1人置き去りにするわけにはいかなかったからだ。
仕方なく夏目を記念樹横の部室棟の野球部の部室に寝かせ、墓穴掘りを再開することにした。
そしてレッドが去ってから数分後、放送で芳槻さらの名が呼ばれた。
レッドが殺したのか、それとも十波典明が接触した時点で手遅れだったのかはわからないが、事実として芳槻さらは死んでしまった。
事実として二朱と夏目、それから十波の願いは叶わなかった。
いくら悔やんでも悔やみきれないだろう。
しかし、だからこそ『死は絶対で、安易に打ち消されるようなものであってはならない』というのが私の持論だ。
『死は絶対で、安易に打ち消されるようなものであってはならない』からこそ、死は悔しくて、やるせないのだ。

『殺し合いの優勝に見合う『賞品』として、特別に願いを一つだけ叶えてあげるでやんすよ。
 例え願いの内容が巨万の富でも、巨大な力でも、永遠の命でも、自分自身の国でも、何でも叶えてあげるでやんす』

亀田は死者の蘇生も可能なのかもしれない。
なにしろ亀田は『永遠の命』を叶えられるらしいのだ。死者を蘇らせることなどわけないだろう。
ハッタリの可能性もあるが亀田の持つ技術力を考えるとハッタリに聞こえない。
今考えると、私はあの処刑場で一度死んでいて、蘇生された後この殺し合いの放り込まれたのかもしれない。
まぁ、蘇生した人間を殺し合いに放り込む意味がわからないが……
はっきり言ってこの可能性が本当であるとは考えたくない。
何度でも言う、『死は絶対で、安易に打ち消されるようなものであってはならない』のだ。
安易に打ち消されないから人は死を恐れ、生きようとする。
死は絶望であり、生きることは死に対をなす希望なのだ。

319願い事1つだけ ◆jnvLTxNrNA:2010/08/15(日) 21:19:42 ID:tmBSW2QgO
もし、亀田が死者を蘇らせる力を持っていれば、死は絶望でなくなることになり、同時に生きることが希望でなくなることになる。
そんなことはあってはならない。この世界には希望が必要なのだ。
しかし……
視線を二朱の墓から部室棟に移す。

『殺し合いの優勝に見合う『賞品』として、特別に願いを一つだけ叶えてあげるでやんすよ。
 例え願いの内容が巨万の富でも、巨大な力でも、永遠の命でも、自分自身の国でも、何でも叶えてあげるでやんす』

この言葉に希望を求めるならそれもありなのかもしれない。
希望の形など人それぞれなのだから……



◆ ◆ ◆ ◆



墓を作り終え、空き部室に戻ると夏目が目覚めていた。

「芳槻さんはどうなりましたか?」

私が夏目の身体を心配する前に夏目の方から私に質問を投げかけた。どうやら放送は聞いてないらしい。
私は1枚の紙を夏目に手渡した。

「これは?」
「夏目が気を失っている間に流れた放送のメモだ。第2回放送までに死んだ全ての人間の名と禁止エリアを書いておいた」

夏目はメモを受け取り、目を通し、そして私の予想通り、動揺を顔に表した。
無理もない。
芳槻さらの死は夏目がこの島で二朱と共にやってきたことが無駄になったことを意味するのだから……

「夏目、私は言ったはずだ。
 死は恐ろしいんだ、絶対なんだ。簡単に怯えを失ってはいけない。死は、恐れるものなんだと。
 もう夏目はこれから強くなるしかないんだと。」
「…………」

今回ばかりはダメージが大きいらしい。
夏目はメモを見たまま動けなくなっている。

「……私は校舎から十波が出てこないか見ておく。
 十波が出てくるまでにできるだけ気持ちを整理するんだ」

だから私は夏目に時間を与えることにした。
気休めにしかならないだろうが、気休めでも、それで夏目が立ち直れるならそれでいい。
私は夏目に背を向けて、部室棟から出ようとした。

320願い事1つだけ ◆jnvLTxNrNA:2010/08/15(日) 21:21:59 ID:tmBSW2QgO
◆ ◆ ◆ ◆

【願い事1つだけ〜夏目准の場合〜】

(なんで…?)

准はヘルガの予想通り動揺した。

(なんで…なんで…?)

“ある人物”が死んだからだ。

(なんで…なんで…なんで…?)

しかし“ある人物”が誰であるかまではヘルガの予想通りではなかった。

(なんで…なんで…なんで…なんで…なんで…?)

ヘルガの予想は芳槻さら。
しかし、実際は違う。

(なんで…なんで…なんで…なんで…なんで…なんで…なんで…なんで…なんで…なんで…?)

その“ある人物”の名は……

(なんで、あんたが死んでるのよ!?)

“九条英雄”
メモに書かれたこの名を見た瞬間、准の視界は真っ暗になった。

(九条さんが死んだら維織さんはどうなるのよ!?)

准の大切な親友、野崎維織の大切な人。
維織は九条と出会ってから本当にいろんな顔をするようになったと准は思う。
准の知ってる中であれほどお似合いなカップルはいない。
その大切な親友の大切な人が死んだ。

321願い事1つだけ ◆jnvLTxNrNA:2010/08/15(日) 21:23:05 ID:tmBSW2QgO
そして……

(九条さんが死んだら私はどうなるのよ!?)

准も少なからず想いを寄せた人が死んだ。
(嫌だ……)

もう二度とあの日常には戻れない。
あの喫茶店での日常には、准が九条をからかい、九条がそれにツッコミを入れ、維織がその傍らで本を読むという日常には二度と戻れない。

(こんなの嫌だよ……)

『殺し合いの優勝に見合う『賞品』として、特別に願いを一つだけ叶えてあげるでやんすよ。
 例え願いの内容が巨万の富でも、巨大な力でも、永遠の命でも、自分自身の国でも、何でも叶えてあげるでやんす』

准の脳裏にふと亀田の言葉がよぎる。

(そうだ…!この殺し合いに優勝して九条さんを生き返らせてもらえれば…!)

それは甘い誘惑。

(あの眼鏡に頭を下げるのは癪だけど、あの日常を取り戻せるなら…!)

その誘惑に心が揺れる。
あの日常を取り戻せるなら、あの日常を取り戻せる方法があるならそれにすがりたい。
たとえそれが人殺しという許されざる方法だとしても。
それほどまでに准にとっては愛おしい日常なのだ。



(なんてね。そんなことできるわけないじゃない……)

でも准はわかっていた。そんな方法で九条を生き返らせたとしても、九条も維織も喜んでくれないであろうことを。

(遠前町に帰ったら、まず維織さんに謝ろう。九条さんと一緒に帰ってこれなくてごめんって謝ろう。
 維織さん、絶対悲しむよね……)

だから強くなろうと准は決心する。
九条の死という悲劇からから立ち直れる程に。
大切な親友、維織を悲しみから守れる程に。
そう決心すると真っ暗だった准の視界に光が射した。

322願い事1つだけ ◆jnvLTxNrNA:2010/08/15(日) 21:25:01 ID:tmBSW2QgO



◆ ◆ ◆ ◆

【願い事1つだけ〜十波典明の場合〜】

さらは死んだ。
同じ親切高校の神条紫杏にライフルで撃たれた。
さらを撃った紫杏も許せなかったが、二度もさらを助けることができず、二度もさらを死なせてしまった自分自身が何よりも許せなかった。
できるならいつもの夢だと思いたい。
いつもの夢よりちょっと質が悪いだけだと思いたい。
でも、さっきの放送と握ったさらの手がどんどん冷たくなっていくリアルな感覚が、俺にこれが現実であることを突きつけてくる。

俺は空を見上げた。屋上に出たときと変わらない青空。でもさっきまでの気持ちよさではなく、今はただ虚しさを感じる。

『私は十波君を……信じます』

『……十波…君……大……好……き……』

さらの最期の言葉が頭に響く。
誰も信じられないと言ったあの時と違って、俺を信じると言ってくれた。
俺の告白に大好きだと答えてくれた。
そういう意味では、俺はさらを変えることができたのかもしれない。

でも……救うことはできなかった。
さらにはこれから先、ずっと俺の隣を歩いて欲しかった……

なぁ、さら……
俺がもっと早くさらの所に駆けつけていたらこの結末は違ったのか?
この青空も、この屋上から見える景色も違って見えたのか?
さらがまたいなくなって、俺はまたひとりぼっちだよ……
天道を倒して甲子園に行ったこと、岡田を倒して日本一になったこと、プロ野球選手になったこと、
他にもさらがいなくなってからも嬉しいことや楽しいことはいっぱいあった。
でも、さらが隣にいないとそんな嬉しいことや楽しいことも、どこか虚しいんだ。
嬉しいことや楽しいことはさらと分かちあわないとその喜びは半分になってしまうんだ。
さらを変えるなんてこと言っときながら、変わったのは俺の方がだったのかもしれない。
いや、変わったんだ。俺はさらが好きになったから。
さらしか信じることができなくなったから。
さら以外の全てを信じられなくなったから。

結局この世界で信じられるのはさらだけだったんだ。
こんな世界に、さらのいない世界に、信じるもののない世界に俺の生きる意味はあるか?
俺にはわからないんだ。
なぁ、さら。教えてくれよ。
俺はこれからどうやって生きていけばいい?

323願い事1つだけ ◆jnvLTxNrNA:2010/08/15(日) 21:26:26 ID:tmBSW2QgO
何を理由に生きていけばいい?

『殺し合いの優勝に見合う『賞品』として、特別に願いを一つだけ叶えてあげるでやんすよ。
 例え願いの内容が巨万の富でも、巨大な力でも、永遠の命でも、自分自身の国でも、何でも叶えてあげるでやんす』

突然、俺の頭にあの荷田くんみたいな奴の言葉が響いた。
俺は気づく。そう、そうだよ。この殺し合いに優勝すればいいんだ!
優勝してさらを生き返らせてもらえばいいんだ!
あの荷田くんみたいな奴は願いを1つ、何でも叶えてくれるって言ってたじゃないか!
悪魔の囁きってのはこういうのを言うんだろうな……
でもそれでさらが帰ってくるなら……
あの荷田くんみたいな奴にお願いするのはちょっとムカつくけど、それでさらが帰ってくるなら……
進む道が人殺しという修羅の道でも、それでさらが帰ってくるなら……
俺は鬼にでも、悪魔にでも、何にでもなって………!





なれるわけないよな……さら……
どこか満たされたようなさらの顔を見て俺は先程までのバカな考えを捨てた。
さらは最期の最期で他人を信じることができるようになった。一歩前に進んだ。
なら、彼氏の俺が何時までも過去にすがって立ち止まってちゃいけないよな。
過去を振り返ることは悪いことじゃない。でも、すがっちゃいけないんだ。
過去は過去として受け入れて俺は前に進まないといけないんだ。
殺し合いに優勝してさらを生き返らせようなんて、思いっきり過去に後退する行為だ。
その根源には『あの頃に戻りたい』という念があるからだ。
それに俺はさらと約束したじゃないか。
俺は野球を頑張るって、それでさらは俺のことを応援するって最期に約束したじゃないか。
その約束を果たすためにも、さらに相応しい彼氏であるためにも、俺は前に進む。進み続ける。
まずは他人を信じてみよう。その人達とこの殺し合いをぶっ壊そう。
そんでもってあの荷田くんみたいな奴を倒して、この馬鹿げた島から出る。
もとの生活に帰ったら野球を頑張る。いろんな所に行く。いろんなものを見る。いろんな人に出会う。いろんな話を聞く。
さらが見聞きできなかったことまで俺が見て聞く。
そして俺がおじいちゃんになってあの世に行ったら、あの世でさらと再会する。
さらと再会したらそれまで見聞きしたことを全部さらに話す。

324願い事1つだけ ◆jnvLTxNrNA:2010/08/15(日) 21:28:16 ID:tmBSW2QgO
うん、我ながら見事な将来設計図だ。

「よし、そうと決まれば前に踏み出そうか」

俺は声に出して自分に言い聞かせるとさらのデイパックの中身を自分のデイパックに詰め込み、
さらの頭からリボン解いて、それを自分の左腕に巻きつけた。
まぁ、リボンは形見ってやつかな。過去に戻りたいってわけじゃないけど、でも何時でもさらを傍に感じていたいんだ。
次に傍らに転がっていた機関銃を回収する。
殺しはもうしたくないけど、相手が殺る気なら仕方ない。俺はさらの分も生きないといけないからな。
できればこの引き金を引くことがないようにと祈りながら俺は機関銃の持ち手を握る。
最後にさらを背中に担ぐ。下ではヘルガさんと夏目さんがお墓を掘っているはずだから一緒に埋葬してもらおう。

(ヘルガさんたちに謝らなきゃなぁ……)

そんなことを考えながら俺は前に歩き始めた。



◆ ◆ ◆ ◆



「やっぱり、ダメだった、か……」

光を取り戻した准の視界に飛び込んできたのは、

頭部を原形がわからないほどまで破壊されて、足元に倒れ伏せたヘルガと血まみれのスパナ、
それを握る自分の手、返り血で赤く汚れたメイド服だった。

「はぁ〜、これじゃ維織さんやあいつに会わす顔がないなぁ……でも私が優勝すれば……」

維織と九条の日常は取り戻せる。そこに准の姿はなくても構わない、と准は思った。
維織と九条が喜んでくれなくても構わない。准は維織の悲しむ顔が見たくない、と思った。
こんなことをして維織が悲しまないわけがないことはわかっている。
でもその悲しみの穴は九条が埋めてくれる、と思った。
でも……

「九条さんがいなくなってできた維織さんの悲しみの穴は、大きすぎて私には埋められないよ……
 それに、維織さんの傍に九条さんがいないなんて想像できないよ……」

できるならあの3人の日常に戻りたい。でもそれは叶わぬ願いなのだ。

325願い事1つだけ ◆jnvLTxNrNA:2010/08/15(日) 21:29:14 ID:tmBSW2QgO
だが維織と九条の2人の日常を取り戻す、という叶えられる願いもある。
だから准は強くなろうと決心する。
せめて叶えられる願いだけでも叶えられる程に。
せめてこの殺し合いに優勝できる程に。
准は荷物をまとめて学校を後にした。

(こんなことはきっと間違ってるんだろうなぁ)

維織を悲しませることに戸惑いを感じていないわけじゃない。
このメイド服を血で汚すことがどういうことかもわかっている。

(でもこの足は、もう止まらない……!)


◆ ◆ ◆ ◆



俺がグラウンドに出るとヘルガさんも夏目さんもいなかった。
ただ完成した二朱さんっていう人のお墓だけがあった。

「スコップがないんじゃさらのお墓が作れないじゃないか」

俺はそんなことを愚痴りながらさらを記念樹にもたれかけさせた。
わかってる。俺はヘルガさんたちとの約束を破ったんだ。
下手すると俺のことをさらを殺した殺人鬼と思ってるかもしれない。
殺人鬼から逃げるのは当たり前だ。だからヘルガさんたちはもう学校にいない。
でも俺はそれでいいと思う。事実、俺はさらを救えなかったのだから。
確かに俺は前に進むと決めた。だけど、だからといってさらを救えなかった罪が消えたわけじゃない。
さらは許してくれるだろうけど、俺自身が許せない。
この罪は俺が一生背負っていくことになるものだ。
だけど俺は前に進むと決めた。この消せない罪を全部背負って前に進むと決めた。

326願い事1つだけ ◆jnvLTxNrNA:2010/08/15(日) 21:31:30 ID:tmBSW2QgO
その先にはさらがいるから。

俺はさらと二朱さんっていう人に黙祷した。
さらには、すぐには会えないけどいつか必ず会いに行く。だから待っていてくれという願いを。
二朱さんは生前ヘルガさんや夏目さんとさらを助けようと行動していたらしい。
だから二朱さんには、そのこと対する感謝とさらを救えなかったことに対する謝罪を、それぞれ黙祷で伝えた。

「さぁ、行くか!」

手始めに、この殺し合いをぶっ壊す。



◆ ◆ ◆ ◆



「ふぅ〜」

私は視線を部室棟から再び二朱の墓に移すと二度目となるため息をついた。
完全に油断だった。
夏目があんな暴挙にでる可能性ぐらい容易に予想できたはずなのに、あの時私はその可能性を失念していた。
後ろで夏目が立ち上がる音がしたので、もう立ち直ったのかと思い振り向いた。
しかし私の目に映ったのは立ち直った夏目ではなく、目の前にまで迫ったスパナだった。
もはや回避は不可能だった。私はその痛烈な一撃をまともに受けて、意識を失ってしまった。
そして、次に気がつくと私の足元には私自身の死体があった。

二朱はきっと夏目がこんな暴挙を起こして何も思わないはずはないだろう。きっと止めようとしたはずだろう。
私はもう一度目を閉じて二朱に謝罪する。夏目を止められなくてすまなかった、と。
隣では十波が私と同じように黙祷をしている。
その左腕には芳槻のものと思わしきリボンが巻き付けてある。
この男は本当に芳槻のことを大切に想っていたんだなと思う。

黙祷を終えると十波は学校から出て行った。その顔は希望に輝いてるように見えた。

私はその顔見て、この世界もまだ捨てた物じゃないと思った。
この世界にはまだ希望が残っているとわかったから。

さぁ、そろそろ行こうか、地獄とやらに……


【ヘルガ@パワプロクンポケット6裏  死亡】
【残り33名】

327願い事1つだけ ◆jnvLTxNrNA:2010/08/15(日) 21:32:17 ID:tmBSW2QgO
【夏目准@パワプロクンポケット9】
[状態]:腹部に刺傷(立ち上がれる程度には回復)、深い悲しみ
[装備]:スパナ、モデルガン
[道具]:支給品一式×3、スコップ、拡声器、ナイフ、ラッキョウ一瓶、不明支給品0〜4個
[思考・状況]
1:九条さんを生き返らせる
2:レッドに対して不信感
3:二朱さん……


【十波典明@パワプロクンポケット10】
[状態]:「人を信じる」という感情の復活
    右上腕に怪我
[装備]:機関銃
[道具]:支給品一式×2、バタフライナイフ、青酸カリ、スペツナズ・ナイフ
[思考・状況]基本:この殺し合いをぶっ壊す!
[備考]
1:さらルート攻略中に他の彼女ルートにも手を出していた可能性があります。
2:たかゆきをタケミの作ったロボットだと思っています。
3:タケミを触手を出す事の出来る生き物で、殺し合いに乗っていると思っています。
4:高坂茜とメカ亀田の名前を知りません。
5:ヘルガの死に気づいてません。

328 ◆jnvLTxNrNA:2010/08/15(日) 21:34:30 ID:tmBSW2QgO
投下終了です。
誤字脱字、矛盾などの指摘をお願いします。

329名無しのバットが火を噴くぜ! :2011/03/21(月) 10:05:51 ID:2PoWfJNQ0
あれ?終わり?

330名無しのバットが火を噴くぜ! :2011/07/09(土) 21:11:36 ID:mIeolBig0
流石にもうこないのかな
ずっと見続けてたから残念だな

331名無しのバットが火を噴くぜ! :2011/07/29(金) 18:06:03 ID:iie2GwYA0
あぁ、静かだ・・・・

332名無しのバットが火を噴くぜ! :2011/10/24(月) 17:27:15 ID:AEIoXntY0
続き読みたいな・・・

333名無しのバットが火を噴くぜ! :2011/12/24(土) 21:13:21 ID:hgkGZElY0
つづきがでると信じている

334名無しのバットが火を噴くぜ! :2012/03/09(金) 22:38:35 ID:FRg/LzGE0
こうなっちゃった以上、昔の書き手・読み手集めてチャットとかやってみたいな
人いなさすぎて告知すらできないけど・・・

335名無しのバットが火を噴くぜ! :2012/05/24(木) 20:02:28 ID:lG4ps7060
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/15311/
いつの間にかここでパワポケバトロワリスタートの議論がされているようです

336名無しのバットが火を噴くぜ! :2012/06/24(日) 23:07:53 ID:uu4BclFw0
リスタートは本当ですか?
そうでないなら書き手やってみたいんですけど……

337 ◆YCsZPcr8k2:2012/07/26(木) 00:26:44 ID:ioesAd0o0
投稿します
一度も締め切りを守れずすみません
あとアドバイスをお願いします

338 ◆YCsZPcr8k2:2012/07/26(木) 00:28:02 ID:ioesAd0o0
「三橋君が殺し合いに乗った」
この事実は私が殺し合いに乗る、十分すぎる理由だった。
だから私は殺し合いに乗った。そして今からダイナマイトをこの病院に仕掛ける。
そもそも私は初めから三橋君の都合に良いように活動すると決めていたのだ。
ホテルに人を集めて、それからホテルを爆発させるプランを立ててはいたが、確実に人が集まるという保証はなく神条のように途中で方針を変える人間も出るかもしれない。また、5人という大人数を直接手にかけずに葬り去れるという事実もその思考を加速させた。
全ては三橋君を生かすために。

そうと決まれば早いはずだった。ただ私は何もできなかった。
なぜか。先程、つまり支給品の確認をみんなでしたときデイバックの中には確かにダイナマイトが5本あったはずだった。しかしデイパックからでできたのはガラクタ。もちろん、それだけなら問題ない。森の中で探知機を壊されて、その残骸はまだデイパックの中に入っていたからだ。しかしそのガラクタは探知機を思わせるものではなくダイナマイトを思わせるものだった。
(またなの……)
支給品が壊れたのはこれで二回目。どちらも偶然だと信じたいがどちらにせよ支給品が全てなくなっているのが痛い。しかもデイパックの中から嫌な予感が漂っている。背中に伝う嫌な汗の量も確実に増えている。こんな状況じゃあとても人殺しなんてできそうにない。
それを考えると、作戦を考え直す必要がありそうだ。だからデイパックを持っておもむろに立ち上がった。

339 ◆YCsZPcr8k2:2012/07/26(木) 00:28:39 ID:ioesAd0o0
(またなの……)
支給品が壊れたのはこれで二回目。どちらも偶然だと信じたいがどちらにせよ支給品が全てなくなっているのが痛い。しかもデイパックの中から嫌な予感が漂っている。背中に伝う嫌な汗の量も確実に増えている。こんな状況じゃあとても人殺しなんてできそうにない。
それを考えると、作戦を考え直す必要がありそうだ。だからデイパックを持っておもむろに立ち上がった。

「ちょっとトイレに行ってくるわ」

返答はない。先ほどの神条の事があり空気が重くなったのだろう。私が単独行動をとろうとしたと誰かに釘を刺されると思ったがそれもなかった。

トイレの個室の中の中に入り、デイパックをひっくり返す。
時計、コンパス、地図そしてダイナマイトだったガラクタ……
支給されたどおりの物がででくる。
ふと、時計に目をやると正午五分前。放送のための準備も必要らしい。
そう考えメモを探していると見つけてしまった。
い た ち の 人 形
それを見たとたん、私は人形をトイレの窓から投げつけていた。
そして思わず私はその場所にうずくまっていた。我威亜党の連中がやっていることもありえないことではある。しかし私の目前でおきていることはそれをも凌駕していた。
そしてそんなとき放送がこの会場に鳴り響いた。
これを聞き逃すのは本当にまずい。私は恐怖を抑えてペンを握った。

340 ◆YCsZPcr8k2:2012/07/26(木) 00:29:14 ID:ioesAd0o0

◆ ◆ ◆

「二朱 公人」
九条や黒野の名前が呼ばれるのを聞いて、彼らには悪いことをしたなと思った。恐らくここから出て凡田と顔を合わせれば間違いなく文句を言われるだろう。しかし、これまた彼らには悪いが「二朱」という名前を聞いた途端そんなことはどうでも良くなってしまった。紀香さんがダーリンと称する男性を失った。このことを考えるだけで私の中に快感としかいえないような感覚が湧き上がってくるのを感じた。情けない。紀香さんへの嫉妬がここまでだなんて思わなかった。
しかしこのことで私は理性を取り戻せた。
私は三橋君を生かすと決めたのだ。そのことについて検討しないと。
まず死亡人数だ。三橋君を生かすことを考えればこの人数は明らかにまずいだろう。
ペースの落ちが予想以上だ。
恐らく私たちのように徒党を組んで活動しているのが大半なのだろう。
そして禁止エリアの把握。幸い、ホテルPAWAを含むG−7は禁止エリアになっていなかった。近くで禁止エリアになったところもない。この点に関しては問題なさそうだ。
私は改めて状況の整理をしダイナマイトがない今、どう動くべきかを考えようとした。少なくとも、大量殺害は不可能だろう。
と、そのとき。支給品の中に見慣れないものがあるのに気づいた。

「何よ、これ……」

直っていた。もう使えないと思っていた探知機はいつの間にかそのものが持つ本来の形を取り戻し、その画面にはいくつかの点が示されていた。

341 ◆YCsZPcr8k2:2012/07/26(木) 00:29:57 ID:ioesAd0o0
――まずい。

これらはどう考えてもあのイタチの所為だ。気持ち悪いし、こんな道具は使いたくない。
しかしこれは便利だし、画面のある一点を見たとたん、
そこには「灰原」という文字が躍っていた。私との距離で推測すると、入り口に入ったところだろう。あの八神が危険だといっていた男だ。
徒党を組めるような相手なのだろうか……。

【F-6/病院の女子トイレ/一日目/正午】
【四路智美@パワプロクンポケット3】
[状態]:嫌な汗が背中に伝わっている。
[装備]:拳銃(ジュニア・コルト)、バット
[道具]:支給品一式、探知機(エネルギー100%)、充電器
[思考・状況]基本:二度と三橋くんを死なさない。
1:灰原をどうするべきか。
2:三橋くんのために殺し合いにのり人数を減らす。
3:十波典明の言葉を丸っきり信用するわけではないが、一応警戒。
4:亀田の変貌に疑問?
[備考]
※メカ亀田を危険人物だと判断しました。
※ピンクのパーカーを着た少女を危険人物と判断、作業着を着た少女を警戒。
※ダイナマイト5本は呪いの人形に壊されました。また、探知機が正しく作動しているかは次の書き手さんにお任せします。

342 ◆YCsZPcr8k2:2012/07/26(木) 00:31:51 ID:ioesAd0o0
一応投下終了です
タイトルは「彼女の決意とイタチの気まぐれ」
でお願いします
あと本投下、どうします?

343名無しのバットが火を噴くぜ! :2012/08/06(月) 18:25:47 ID:zh0dx3O.0
応援しかできない自分が情けないです・・・

344 ◆14dLV14i9g:2012/11/06(火) 19:19:48 ID:4PI5RsZ.0
tes

345管理人★:2012/11/06(火) 19:21:33 ID:???0
tes

346管理人★:2012/11/06(火) 19:22:11 ID:???0
遅れてしまい大変申し訳ありません
wikiに収録させていただきました

347名無しのバットが火を噴くぜ! :2012/11/20(火) 00:35:55 ID:jK7hSv0w0
◆YCsZPcr8k2氏の作品『彼女の決意とイタチの気まぐれ』
の「(またなの……)から立ち上がった。」の部分が二回書かれていて
更に「トイレの個室の中の中に」と中が一つ多いです
こちらからだとwikiの編集ができないので修正お願いします

348 ◆YCsZPcr8k2:2012/11/28(水) 00:09:12 ID:aLrR5IgM0
すみません、なんか第二回放送前っぽいSSになっちゃいました……

349見下された女の行動〜調和〜 ◆YCsZPcr8k2:2012/11/29(木) 16:57:06 ID:LB8Y67kE0
ぎりぎりパソコンが復旧しました
今から、投下します

350見下された女の行動〜調和〜 ◆YCsZPcr8k2:2012/11/29(木) 17:04:36 ID:LB8Y67kE0
ことの発端はわん子がトイレに行きたい、
と言い出したことだった。
「タツヤさん、トイレに行ってくるワン」
「それじゃあ私もついていきますね」
「ああ、分かった」
トイレは消防署の二階にある。つまり上川の手元からわん子が離れるということだ。が、催眠術をかけたうえ信頼を勝ち取っている上川はそのことにすら気づいていなかった。椿についても同様だ。
「それで兄ちゃん、あの我威亜党とかいう連中をどう思うよ」
そんな議論を耳にして二人はトイレに向かった。

「まずいですね…」
実をいえば天本は椿の身から離れる気はさらさらなかった。彼からはまだまだ十分搾り取れる。少し距離を置いてこれからの行動方針を考えたいな、程度のことしか考えていなかったのだから。
「天本さんは椿さんのことをどう思っているわん?」
「彼は私を怪しいおじさんから救ってくれたんですよ。だからそれなりに信頼してます」
そんな会話をしつつトイレの中に入った。
「それじゃあ、少し待ってて欲しいワン」
そしてわん子はそのまま個室の中に入った。そして、彼女の欲しかった一人で考える時間ができる。
その時。何気なく半開きになっている窓から様子を見、彼女は取り戻した笑い顔を再び取り崩した。
――白瀬が茂みの中にいた。

351見下された女の行動〜調和〜 ◆YCsZPcr8k2:2012/11/29(木) 17:14:00 ID:LB8Y67kE0
あの女がまだこの場にいる。見たのがわん子だったら危なかった。静かに危機を知らせるどころかアプローチをして私たちを危険にしかねない。死ぬかもしれなかった?もっとも、白瀬がさっきした話は本当かもしれない。しかし、常に最悪を想定しないといけないのは分かっている。
なぜなら天本の最終目的はあくまで優勝。最終的には椿も白瀬も敵なのだ。後ろ盾を失って
だから彼女は念のため持ってきていた二人分の支給品が入ったデイパックからあるものを取り出した。
「わん子さん、ここから温泉に行きません?」
「なんでだワン?タツヤさんがいるワン」
「たくさん動き回って疲れたでしょう?上川さんに迷惑をかけないためにも少し疲れを取りましょう」
「分かったワン」
「それじゃあ、屋上に来てください」
屋上で天本がデイパックから取り出したのはとぶやつ。しかし、青野に支給されたそれとは大きさが違う。説明書には「あのバトルディッカーも運べます」と書いてある。
バトルディッカーなる単語に思い当たりは無かったがそれでもこの場を切り抜けるには十分だ。
「このロケットに乗るんですよ」
「すごく、大きいワン!」
「そうですね、手を離さないでくださいね?」
二人はつわものの巣靴、消防署から抜け出す事に成功する。
そして5分ほどで目的地である温泉のある山頂にたどり着いた。
しかし自分でも強引だったな、とは思う。
何故一人で良かったのにわざわざ芽森わん子も連れ出したのか。言いくるめるのが面倒だったのもあるが、1番は芳槻さらなる女子高生が危険人物だという話を聞いたからだ。自分と同じ女子高生が殺し合いに乗っている。この事実を知った参加者は自分のことを簡単に信じないだろう。だから小学生であるわん子を連れた。

そのわん子は山頂の温泉につくや否や温泉に飛び込んだ。
「気持ちいいワン!」
その言葉を聞きながら天本は考える。
わん子はあまり頭が良くないのは見て分かる。だが、流石にこのままこの場にとどまらせるのは至難の技だ。どうするべきだろう?
だが、やらなきゃいけない。
日の出島に帰るために。

ピンポンパンポン〜♪

352見下された女の行動〜調和〜 ◆YCsZPcr8k2:2012/11/29(木) 17:14:47 ID:LB8Y67kE0
【E-4/温泉/一日目/昼すぎ】
【天本玲泉@パワプロクンポケット4】
[状態]:健康、暖かい
[装備]:なし
[道具] 支給品一式、
[思考・状況]
基本:日の出島に帰る。
1:一応は芽森を利用して協力者を探してみる。
2:人を結果的に殺すが、今は様子見。
3:第3放送前後にホテルに行く?

【とぶやつ@パワプロクンポケット10】
基本的には青野に支給されたものと同じ。
しかしディッカー用であるため人が3人乗った状態で、エリア2個分移動し
かつ往復が可能なエネルギーを有している。
その分サイズも4倍。
エネルギーを注入できれば再利用できるだろう。
説明書には「バト(ry」

【芽森 わん子@パワポケダッシュ】
[状態]:疲労小、暖かい。
[装備]:ヒーローのスカーフ@パワポケ7、モップ@現実
[参戦時期]:わん子ルート、卒業直後
[道具]:支給品一式(食料はキムチと何か)、ヒーローの衣装セット@パワポケ7、ヒーローのスカーフ四個@パワポケ7
[思考・状況]
基本:殺し合いから脱出する。
1:天本さんに付いていって温泉に入る。
2:帰ってきたらタツヤさんと行動。
3:走太君を探したい。
4:いつかタツヤさんに自分の正体を伝えたい。

一方。消防署の中で襲撃のときを待ちかえている愛。彼女にもまた選択の時、そう放送が近づいていた。彼女には選択肢が3つあった。白瀬を殺すか消防署の中の5人を殺しに行くか、それか
…逃げるかだ。なぜ今頃逃げるという選択肢が出てくるのか?愛に予想外が二つあったからだ。一つめは白瀬が予想外に大人数を連れて来たこと。二つめは白瀬が消防署の中に帰ってこなかったところ。どちらも「自分が死ぬ」というリスクが大分高まるものだった。愛の最終目的はあくまで生存だ。その過程である優勝のために無理をして死んでしまっては意味がない。
(白瀬、悪かったわね。裏切らせてもらうわ)
信頼が薄ければ裏切るのも容易い。愛は慎重に消防署の後ろに回り一気に駆け出した。
愛は日頃から風賀の国を走り回っている忍者だ。そのため身を隠すのも移動するのも一人ならお手の物、彼女は一気に神社まで移動した。
ちなみに神社に移動したのは愛が森を得意とする忍者だからである
そして鳥居に飛びのったその時、2回目の放送が鳴り響いた。
次々と死者の名前が告げられていく。
それを一応メモはするが彼女の頭にあったのはこの前、城をせめられたとき逃げ出したことだった。あの時は彼女の父、野々村の活躍で事なきをえたが愛はずっと後悔していた。
「お父さん……」
鳥居から見えたのは月ではなく太陽だった。

353見下された女の行動〜調和〜 ◆YCsZPcr8k2:2012/11/29(木) 17:15:28 ID:LB8Y67kE0
【C-2/神社/一日目/昼】
【愛@パワプロクンポケット5裏】
[状態]右脇腹に傷(応急処置済み)
[装備]ウージー
[道具]支給品一式×3(不明支給品0〜2)、ベレッタM92(6/15)、ベレッタの予備弾倉×5、煙幕×2
[思考] 基本:自分が生き残ることが第一。
1:とりあえず休む。
2:生き残るためなら、他の人間を殺すのもやむをえない。
3:白瀬は死んでくれているとありがたい。
[備考]
※参加者はそれぞれ違う時間から誘拐されたと何となく理解しました。

◆ ◆ ◆

「兄ちゃん、あの二人はどこに行った?」
ちょうどとぶやつを使って天本とわん子が消防署から抜け出して20分。椿は2人がいなくなったことに気づいた。
「トイレ……にしては遅すぎるな。さっきの白瀬って女が潜んでいてやられたのか?」
「いや、ピンク髪の女って奴の方が怪しいな。白瀬も怪しいことには変わらないが、あいつは。どちらにせよ見に行く必要があるだろう。どちらがいく?」
「俺が行こう」
手を挙げたのは椿だった。すぐに猟銃を手にし、上川が何かいう前に消防署の2階に登っていった。
残された上川はデイパックから紙とペンを取り出し放送の準備をした。
正直なところわん子から絶大な信頼を受けてはいたが上川自身、もう椿に乗り換えたほうがいいのではという気もしていた。椿の連れもいないようだしこのまま2人でチームを組んだほうが便利だろう。仲間がいるらしいしそいつらと合流できればもうわん子に用はない。裏切りの可能性もあるがそれはお互い様だ。
……そろそろカネオに催眠術をかけるころかな。
そう思いカネオのほうを見やると食べものを食べて眠くなったのか奥の方で眠っていた。

ピンポンパンポン〜♪

354見下された女の行動〜調和〜 ◆YCsZPcr8k2:2012/11/29(木) 17:16:18 ID:LB8Y67kE0
【D-2/消防署/一日目/昼】
【上川 辰也@パワプロクンポケット8】
[状態]:疲労中、走力+5
[装備]: 走力5@パワポケ3、ヒーローのスカーフ@パワポケ7、拳銃(麻酔弾)予備カートリッジ×3@パワポケ8
[参戦時期]美空生存ルート、ルナストーン引き渡し後
[道具]:支給品一式、レッドローズの衣装@パワポケ8、ヒーローのスカーフ三個@パワポケ7、本@パワポケ8裏、『人間の潜在能力の開発』に関する資料@パワプロクンポケット4、黒い板@パワポケロワオリジナル
[思考・状況]
基本:殺し合いからの脱出
1:とりあえず放送を聴く。椿とチームを組みたい。
2:首輪を詳しく調べたい。
3:放送の後に港へ向かい、脱出方法が無いかを調べる?
4:そろそろカネオに催眠術をかける?

【カネオ@パワプロクンポケット9裏】
[状態]:疲労(小)、睡眠中
[装備]:なし
[道具]リュックサック、ヒーローのスカーフ@パワポケ7
[思考]
1:まだまだ食べ足りないんだな〜
2:弟たちを探す。
3:春香に会ったら、『おしおき』をする。
[備考]
※参戦時期は9裏主人公の戦艦に最初に乗り込んできた後です。
※春香の名前は知りません。また春香の見た目に関する情報も、暗かったために曖昧です。
※テレポートをすると疲れが溜まる事を認識しました。
 テレポートの移動距離に関する制限は認識していません、またテレポートの制限の度合いは以降の書き手にお任せします。
※名簿は見ていません。

◆ ◆ ◆

椿が二階に上がるのと同じタイミングで白瀬もまた行動を開始していた。
彼女は天本に見られたことに気づいていた、当たり前だ。そしてすぐに椿に自分の位置を知らせるだろうと思って、逃げ出す準備をしたとき。流石の彼女でも予想できなかったことが起きる。屋上から天本ともう一人の女が巨大なロケットを使い南のほうに飛んでいったのだ。銃を持っていれば打ち落とすこともできたが無いものねだりはできない。そもそも問題はそこではない。問題は天本が椿たちに自分の存在を伝えたかどうかだ。
もし伝えたなら猟銃を担いでいた椿に殺される可能性が高い。消防署から立ち退かずこの場所に身を潜めていること自体もうおかしいことなのだから。
伝えて無かったならチャンスだ。まさか二回から人間が現れるとは思ってないだろから隙ができる。愛はそれなりにやってくれるだろし、勝てる!

(チャンス到来ね……)


天本の行動は4人の狡猾な人間の運命を大きく狂わせた。
調和の糸はもう存在しない。
運命の放送が――来る。

355見下された女の行動〜調和〜 ◆YCsZPcr8k2:2012/11/29(木) 17:20:49 ID:LB8Y67kE0
【D-2/消防署/一日目/昼】
【椿@パワプロクンポケット9】
[状態]:健康
[装備]:鉈、ムラタ銃
[道具] 支給品一式×2、不明支給品1〜4
[思考・状況]
基本:生き残るのに手段は選ばない。
1:とりあえず二階のトイレを確認。
2:天本とともに行動。
3:一応は協力者or黒野鉄斎を探してみる。
4:天本を利用してゲームを有利に進める。
5:第3放送前後にホテルに行く。

【白瀬芙喜子@パワプロクンポケット8】
[状態]左肩に刺し傷
[装備]ソード@パワプロクンポケット9裏
[道具]支給品一式、さおりちゃん人形@パワポケ6裏、ケチャップ(残り1/4程度)
[思考]基本:優勝する
1:戦力増強のため弱者から倒す、強者は後回し。
2:放送と同時に椿を殺す。
3:八神を最優先で殺す。
4:愛と行動するが、灰原と合流できそうならば愛から灰原に乗り換える。
5:過去の人間が居るってことは……未来の人間も居るってことかしらね?
[備考]
※未来や過去から集められてるのではないかと思っています。
※灰原に関しては作り直したのか、過去から浚ったかのどちらかだと思っています。

356見下された女の行動〜調和〜 ◆YCsZPcr8k2:2012/11/29(木) 17:25:18 ID:LB8Y67kE0
投下完了です
時事列は放送直前でお願いします
死者は出てないんで大丈夫ですかね?

あと、駄文にひどい展開すみません
今回は特にひどくて泣けてくる……

357名無しのバットが火を噴くぜ! :2012/12/09(日) 18:20:29 ID:33p4yFo.0
激しく乙

358名無しのバットが火を噴くぜ! :2013/02/02(土) 21:01:18 ID:mW.vyBXY0
復活したと聞いて。投下乙です!

359 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/04(月) 23:18:43 ID:0N6lyOoY0
お久しぶりです、即投下に近い形になりますが予約していた
カネオ、上川辰也、白瀬芙喜子、椿
を投下します

360The Killing Fields 3 Minutes ◆7WJp/yel/Y:2013/02/04(月) 23:20:09 ID:0N6lyOoY0

殺すと決めてからの行動は速かった、白瀬は放送でチバヤシの言葉が聞こえた瞬間に駆け出す。
音が多少出るのは承知のうえで白瀬は走りつつ、五感の全てをフルに集中させる。
先ほど飛び立った二人を除けば、この場に居るのは三人。
忍び込んでいるはずの愛とともにならば全員を問題なく殺せる。

(とにかく、いかに死なずに殺せるか……そこがポイントよね)

電撃的に襲いかかり一人でも多く殺し、残りはウージーを持った愛が背後から殺す。
猟銃を持った男が気がかりだが、同時にその男を殺せば銃器がまた一つ増えるということだ。
それに、狭い室内ならば銃器もそれほど大きなアドバンテージを持たない。

『B-4
 F-4
 G-1』
(B-4、F-4、G-1……B-4、F-4、G-1……)

疾走する白瀬を無視するように響き渡る放送。
白瀬は脳内で禁止エリアを呟きながら、消防署の中を駆け巡った。

(二階……それともひょっとしてこの場にいな……いやッ?!)

一階ではなく二階に居るのではないかその中から一つ、物音を含めた人の気配を感じた。
迷わずに扉を蹴破り、ソードを起動させる。
光の剣が筒から生まれ、白瀬はソードの刀身から決して低くはない熱を感じ取った。
白瀬が乗り込んだ瞬間もまだ放送は続いている。

「なんだッ……なっ、そんな、お前は……!?」

瞬時に室内の様子を観察すると、男が二人ほど居て、片方は眠っている。
白瀬はソードを翻して最も近くに居た、眠っていた男、カネオへと襲いかかる。

「むー……? むーん!?」

騒がしさから睡眠から目を覚ましたカネオは、無表情で迫る白瀬に驚いてテレポーテーションが発動する。
突然の出来事のあまりに遠くへのテレポートではなく、白瀬の背後へと短くテレポートを行なっていた。

「よし、そのまま拘束しろ!」

上川はカネオが背後に回ったことを確認すると声を張り上げる。
上川は白瀬の正体を気づいていた。
忘れるわけがない、目の前の女、白瀬は上川を殺そうとした張本人なのだから。
対してカネオは、寝起きの頭脳はまともに働かないために上川の言葉を素直に従おうと白瀬へと被りかかる。

361The Killing Fields 3 Minutes ◆7WJp/yel/Y:2013/02/04(月) 23:21:15 ID:0N6lyOoY0

「ありがと、逃げないでくれて」

だが、そのカネオの行動は悪手だった。
テレポーテーションは白瀬にとっても未知の技術であるが、白瀬に焦りはなかった。
上川の言葉と背後から感じた吐息でカネオの位置を把握し、ソードを背後へと突き刺す。

「ム〜ン!?」

カネオは腹部に激しい痛みを覚え、わめき声を上げる。
そして、上空へと向かって思い切り振り上げると、カネオの身体は真っ二つに両断された。
そもそもとして、襲われたその瞬間にまともな武器を持たないカネオは逃げるべきだったのだ。
逃げるという選択肢を取らなかっただけで、カネオは死んだ。

ちょうど白瀬が突入してから一分半が経った時点での出来事であった。



【カネオ@パワプロクンポケット9裏 死亡】



ソードを翻し、次の行動に移ろうと素早く振り返る。
目の前の男を観察しながら、マルチタスクのように白瀬の頭にある考えがよぎる。

(……まさか、あの女)

未だに襲いかからない愛に僅かに動揺し、同時に愛がこの場から離れたことにすぐさま感づく。

(裏切ったのね、ったく想定はしていたけどムカつく……!)

心中で悪態をつき、舌打ちを鳴らすがそれ以上のアクションは取らない。
どうせいつかは殺し合う相手だ、別れるのが早くなっただけだ。
ウージーを手に入れた時点で裏切るタイミングとしては上々だ、次に会えば殺し合いだろう。

(殺すときは脳みそを焼ききってやる!)

白瀬は脳内で愛を惨殺するイメージを描き、つま先にかかったカネオの死体を蹴り飛ばす。

「うおっ!?」

上川は驚愕の声を上げる。
女性のそれとは思えない強烈な蹴りによって、六十キロは超える巨大な肉の塊が宙に舞う。
普通の人間ならば出来ないことだが、特殊な訓練と特殊な肉体を持った白瀬ならば出来るのだ。
そして、瞬時に上川との距離を詰めてソードを一閃させる。

362The Killing Fields 3 Minutes ◆7WJp/yel/Y:2013/02/04(月) 23:22:08 ID:0N6lyOoY0

「!」
「へぇ、これを避けるの……面倒ね、アンタッ!」

上川は横一閃に薙ぎ払われたソードを素早く屈み込んで回避する。
白瀬は褒め称えたが、上川にとっては精一杯の回避行動だった、二度同じことが出来るかと問われればノーだ。
そんな上川の事情も知らず、白瀬は続けざまに攻撃を行おうとする。
だが、白瀬は視界の隅に銃を構えている椿の姿を捉えた。

「ホールドアップだ、姐ちゃんよぉ!」

椿は白瀬へと銃口を向けたまま、睨みつける。
消防署に響く物音に感づき、すぐさま踵を返してきたのだ。
白瀬が椿へと注意を向けたその瞬間、上川は懐から拳銃を取り出す。

「ああ、もう! 私も銃が欲しいっていうのに!」

白瀬の言葉を無視して上川は銃を発砲するが、その銃は麻酔弾であり殺傷性は低い。
しかし、その事実を知らない白瀬は致命傷を防ぐために机を横倒しにして盾とする。

(これはもう撤退ね……!)

白瀬はすぐさまに背中を向けて消防署から逃れようとする。
銃を二つ持った二人組となると、明らかに分が悪い。
どちらかが相手を気遣わずに乱射してくれば、死の可能性はぐっと高まるからだ。

(かかった!)

だが、その逃げようとする白瀬を見て上川はほくそ笑む。
こちらを殺しにかかるつもりがないのならば、上川は催眠に集中できる。
体内に備えた催眠装置を白瀬へと向かってフル稼働させた。

ミュンミュンミュン――――!

「ナッ………アアアアアア!?」

催眠装置は即効性自体は薄い。
わんこのようにこちらを信じたいと思っているのならば催眠は容易だ。
元々の『信じたい』という気持ちに付け込み、後は口で気持ちを誘導していけば良い。

363The Killing Fields 3 Minutes ◆7WJp/yel/Y:2013/02/04(月) 23:23:54 ID:0N6lyOoY0

(だが、今回は別だ……!)

だが、白瀬はこちらを問答無用で殺そうと襲い掛かってくるため、そうした言葉での誘導が出来ない。
また、催眠術では動きを急停止させられるほどの強力な催眠を一発でかけることは出来ない。
なにかしら、急ブレーキを連想させる取っ掛かり、いわゆる『フック』が必要となるのだ。
そこで上川は銃声を『フック』にして、白瀬に銃弾が頭に命中したと勘違いさせたのだ。
白瀬がCCRのエージェントであることを上川はよく知っている、なにせ上川を一度は追い詰めた相手なのだから。
当然、エージェントである白瀬は死線をくぐり抜けてきた実績がある。
つまり、痛みについて熟知しているということであり、それは催眠装置を仕込んだ上川にとってはこれ以上無い幸運であった。
痛みを連想させる『フック』として、銃の発砲音を使ったのだ。

「なんだ……おい、何が起こってんだ?」

上川は白瀬が今までに体験した痛みを一瞬だけでもフラッシュバックさせ、動きを止めさせたのだ。
だが、その事実を知らない椿は不可解に顔を歪め、猟銃の引き金に指をかけようとしない。

「何でもいい、さっさと撃て! アイツはヤバイんだよ!」
「あん?」

白瀬の動きが止まるのも一瞬だけ、すぐに脳が誤解に気づいて白瀬は動き始める。
CCRのエージェントとは戦闘用サイボーグですら刈り取る最高の猟犬である。
その猟犬を逃がすことはあまりにも悪手、次は顔を見ることすらなく暗殺される可能性もある。
そのために上川の心には焦りしかなく、猟銃を持っている椿をはやし立てる。

364The Killing Fields 3 Minutes ◆7WJp/yel/Y:2013/02/04(月) 23:24:38 ID:0N6lyOoY0

「……まあ、いいさ」

椿は僅かに考えこんだが、すぐに猟銃を構え直した。
銃口は頭へと向いており、そこから銃弾が飛び出せば死は免れない。
たとえ吸血鬼であるあやかであろうとも、戦闘用サイボーグである灰原であろうとも。
頭蓋を打ち砕けるほどの威力ならば猟銃は持っていた。

「しかしよ、幾らなんでも油断し過ぎじゃねえか?」
「なに?」

椿の言葉に応えたのは上川だった。
白瀬へと銃口を向けたまま、椿は上川の側へと歩み寄る。

「俺にばかり喋らせてよ、そっちはニヤニヤ笑って……おまけに女が消えちまった。
 ああ、糞、最後はてめえが原因じゃないが、イラつきはするんだよ。
 それになんだ、そいつはよ……お前、こいつに何したんだ?」

椿の顔は、苛立ちに染まっていた。
銃口が、その向きを変える。

「なんというか、手札はホイホイと切るもんじゃねえぜ」
「……………おい?」

椿はライターをつけるような気軽さでトリガーを絞った。
猟銃からは銃弾が発砲され、至近距離からの銃撃は『アンドロイドである上川』の頭を撃ちぬいた。

「ドゥヨアビジネス、損得勘定だけは得意でな」

白瀬が突入して、三分が経とうとしていた。
椿は、上川を裏切った。


【上川辰也@パワプロクンポケット8 死亡】

365The Killing Fields 3 Minutes ◆7WJp/yel/Y:2013/02/04(月) 23:25:32 ID:0N6lyOoY0

椿は銃口から上がる煙に、ふぅ、と息を吹きかける。

なぜ椿が上川を裏切ったのか?
それは一言で言ってしまえば、上川の手に持っていたカードがあまりにも『不気味』だったからだ。
突然、白瀬を苦しめたのは上川以外にあり得ない。
あまりにも不可思議な、椿の常識からすれば魔法とも言ってしまえるほどの御業。
その正体が掴めない。
ならば、椿は切り捨てることが出来るうちに上川を切り捨てておいた方が得策だと考えたのだ。

同時に上川を殺すことによって、様々な要因を配慮した上で、椿は完全に『殺し合いに乗る』ことを決めた。
その決意は天本玲泉の突然の疾走と、あからさまに殺し合いに乗っている白瀬の存在も大きい。

「おい、そこの姐ちゃん!」

催眠術によって引き起こされた頭を撃たれたという偽りの痛みが抜けきった白瀬へと言葉を投げつける。
椿の表情を苛立ちに支配されており、だがそれでも会話を行うという理性的な行動を取る余裕は残っていた。

「……あんた」
「そっちも言いたいことは色々あるんだろうがな、こっちも聞きたいことが山ほどあんだよ。
 まずはその物騒な筒を手放してくれるか?」

椿はポリポリと不潔な頭をかきながら、白瀬へと銃口を向ける。
白瀬は無表情のまま、しかし椿の言葉に従ってソード、椿の言う物騒な筒を地面へと投げ飛ばした。

「まずはクエスチョンワンだ。お前、いったい何者だ?」
「……政府のエージェントよ、戦闘用サイボーグって知ってる?」
「まあな、外国じゃそいつら使ってドンパチやるのが流行ってるそうじゃねえか」
「そいつらは日本じゃ違法だから、そういう奴を捕まえる仕事よ」
「ははぁん、なるほどね」

椿は戦闘用サイボーグについて深い知識はない。
だが、目の前の女が訓練された面倒な相手であることはしっかり理解していた。
そして、椿の表情から苛立ちが僅かに消えた。
知識とはすなわち安心であるため、目の前の白瀬の情報を仕入れることで椿は安心したのだ。

「んじゃあ、クエスチョンツーだ。
 こいつと知り合いなのか? あ、いや、知り合いかどうかなんて別にどうでもいいか。
 俺が聞きたいのは、こいつはお前になにをしたいのか、ってことだからな」
「……恐らく、催眠装置ね。
 人の意識を誘導する装置を内部に仕込んだサイボーグが居るって情報は手に入れていたもの」
「催眠! ケッ、こいつはまた面倒な切り札持ってやがったのかよ」

椿は自身が頭を射抜いて殺した上川の死体を思い切り蹴りつける。
もちろん、椿の力では白瀬がカネオの死体でしたように宙に浮くほどの衝撃はない。
椿は、ふぅ、と息を吐いて肩を撫で下ろし、その鋭い瞳で白瀬を射抜いた。

「なーんか、面倒なことになっちまってな……一度、リセットしようと思ってよ。
 幸い、こいつは今まで誰も会ってなかったみたいだからな」

コツン、と椿はそのつま先で上川の死体を蹴りつける。
苛立ちなどの感情は収まっており、椿は冷えきったその脳で生存への道を描いていた。
そして、導き出した答えは一つ。

「俺と組もうじゃねえか、姐ちゃんよ」
「…………へぇ」

白瀬は取ってつけたような、それほど感情のこもらない声を漏らす。
元々、椿が上川を殺したその時から予想はしていた持ちかけだったからだ。

366The Killing Fields 3 Minutes ◆7WJp/yel/Y:2013/02/04(月) 23:26:08 ID:0N6lyOoY0

「なら、その銃を下ろしてくれない?」
「まあ、待てよ。順序ってもんがあんだろ?」

椿は慎重な男だ。
白瀬という人間を掴めていない以上、警戒を解くわけがない。
椿は銃口を白瀬に向けたまま、椿も軽口を叩き続ける。

「なんつうか、な。そろそろ半分が死んでいてもおかしくねえ状態だろ?
 もういっそ乗っちまおうか……そう思ってよ」
「そう……そういうこと」
「まあ、少なくともアンタと一緒にやったほうが次のアクションは楽みたいだしな」
「次のアクション?」

白瀬はその言葉で椿の言いたいことを理解し始める。
椿はその『次のアクション』を取る相棒を必要としている。
その『次のアクション』までの間だけの期間限定のコンビを組まないか、そう持ちかけているのだ。

「ここで知り合った奴らが居るんだよ、第三回放送辺りでホテルに待ち合わせしている」
「それで?」
「……あんまりそういうのは言わせんなよ」

椿はボロボロの帽子を持ち上げる。

「一緒にぶっ殺そうぜって話だ、わかんだろ?」

その中にある鋭い瞳は、悪意に染まっていた。

「……やらなきゃ殺せちゃうわね」
「よく言うぜ」

肩をすくめながらおどけるように言う白瀬に対して、椿は苦笑する。
椿はそこでようやく銃口を下げ、更に言葉を続けた。

「実はよ、利用するつもりだった女には逃げられたみたいで意外と手詰まりなんだよ。
 ……ったく、予想外だぜ。あの女、なにか企んでとはな。
 逃げ出したそいつの処理も頼みたいんだよ」
「あの屋上から逃げていた二人かしら?」
「あん?」

白瀬の言葉に反応し、椿は疑念の視線を向ける。
白瀬は特に隠す必要もないと考え、放送直前に見た屋上から飛び立つ二人について語る。

「逃げた……そうか、逃げたか」
「あの子も殺し合いに乗ってるんじゃない?」
「……うん、そう来るか」

椿は猟銃を肩にかけ、静かに考えこむ。
そして、一分ほど考え込んだ後に白瀬へと言い放った。

「放っておくか」
「へぇ?」
「減らしてくれるんなら万々歳だろ、弾だって無限にあるわけじゃねえんだ。
 こっちが殺したところも見られてないのなら好都合。追いかける必要もなくなったしな」

椿はそれだけを言うと上川とカネオの死体に近づく。
そして、支給品を拾い直すと机の上に広げた。

「まっ、今はお話をしようじゃねえか。ビジネスの時間だ」

367The Killing Fields 3 Minutes ◆7WJp/yel/Y:2013/02/04(月) 23:26:54 ID:0N6lyOoY0

【D-2/消防署/一日目/昼】
【椿@パワプロクンポケット9】
[状態]:健康
[装備]:鉈、ムラタ銃
[道具] 支給品一式×3、不明支給品1〜4、レッドローズの衣装@パワポケ8、ヒーローのスカーフ三個@パワポケ7、本@パワポケ8裏、『人間の潜在能力の開発』に関する資料@パワプロクンポケット4、黒い板@パワポケロワオリジナル
[思考・状況]
基本:生き残るのに手段は選ばず、殺し合いに乗る。
1:白瀬とともに殺し合いに乗る。
2:天本はひとまず放っておく。
3:第3放送前後にホテルに行き、白瀬とともに全員を殺す。
4:一応は協力者or黒野鉄斎を探してみる。

【白瀬芙喜子@パワプロクンポケット8】
[状態]左肩に刺し傷
[装備]ソード@パワプロクンポケット9裏、拳銃(麻酔弾)予備カートリッジ×3@パワプロクンポケット8
[道具]支給品一式、さおりちゃん人形@パワプロクンポケット6裏、ケチャップ(残り1/4程度)、ヒーローのスカーフ@パワプロクンポケット7
[思考]基本:優勝する
1:戦力増強のため弱者から倒す、強者は後回し。
2:八神を最優先で殺す。
3:椿と協力するが、灰原と合流できそうならば椿から灰原に乗り換える。
4:あとで愛を殺す。
5:過去の人間が居るってことは……未来の人間も居るってことかしらね?
[備考]
※未来や過去から集められてるのではないかと思っています。
※灰原に関しては作り直したのか、過去から浚ったかのどちらかだと思っています。

※走力5@パワポケ3は上川の死体に装備されたままです。

368 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/04(月) 23:28:29 ID:0N6lyOoY0
投下終了です。

369 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/05(火) 23:37:33 ID:QXVhZmyA0
タケミ、メカ亀田を投下します。

370Only My Life ◆7WJp/yel/Y:2013/02/05(火) 23:38:20 ID:QXVhZmyA0

「……そんな」

ちょうど放送が始まった瞬間、タケミはまるで人形のように覇気を失っていた。
こんな殺し合いの場に連れて来られた状況で明るくなど振る舞えるわけがない。
だが、その事情を考慮しても今のタケミは今までのタケミと比べても明らかに気落ちしている。
呆然と立ち尽くすタケミに向かい、メカ亀田は疑問を投げかける。

「……どうしたでやんすか? 知り合いはもう居ないんじゃなかったでやんすか?」

だが、メカ亀田に対して言葉を返す気力も沸かず、タケミは無言で立ち尽くすだけだった。
それでも、どうにか唇を震わせて声を出す。
動揺を隠すことすら出来ない。

「さっきの、放送……」
「ああ、そう言えばお前は前の時には気絶してたでやんすね。
 あれは亀田の手下でやんす、チバヤシ公爵とか言ってたでやんす」

タケミは第一回放送の際に気を失っており、先ほどの第二回放送が初めて耳にする放送であった。
つまり、タケミはチバヤシ公爵の行う放送を始めて聞いたことになるのだ。

「チバヤシ……そう、チバヤシ……」

肉声ではない上に、その姿を見たわけではない。
だが、タケミの記憶にあるものと同一だった。
名前も、声も。
かつて、タケミの側に居た男と同一のものだった。
かつて、タケミと笑ってくれた男と同一のものだった。

――――世界を救える力を持っているのに救わないのは罪ですぞ!

「ッ……」

チバヤシの声が脳内に響く。
この場では機械としか行動を共にしていないが、タケミは人を癒す力を持っている。
触手を操るだけでなく、天使という名のバケモノのタケミにはそのような力もあるのだ。

「ねぇ」
「ん?」

かつて、タケミはチバヤシとともにその力で身近な人を助けていた。
慈善事業のように、無償で人々を救っていた。
気のおけない仲間とともに、身近の人を助けて、ただ笑う。
タケミはそれでいいと思っていたし、穏やかなその生活を気に入っていた。

「力があったら、その力の分だけ頑張らなきゃいけないのかな?」

ただ、側に居たチバヤシはそうじゃなかった。
タケミは今のままで良かったのに、チバヤシはそうじゃなかった。
もっと多くの人を、もっと広い世界を。
タケミの、エンジェル様の力ならば世界を救えると信じていた。

「力の持ち腐れは好きじゃないでやんすね、無意味に遊ばせるのは勿体無いでやんす」
「……そか」

メカ亀田はタケミの問いかけに対して義務的な口調で応える。
ただ、それは一つの組織のリーダーとしての答えだ。
メカ亀田という一個の存在の答えではない。

「ただ、まあ……それはあくまで他人だったらって場合なだけでやんすね」

メカ亀田の声の調子が少しだけ変わったようにタケミは聞こえた。
相変わらず空虚な瞳を宙に向けながら、しかし、どこか感情を匂わせる声でメカ亀田は言葉を続ける。

「所詮は自分だけの人生なら、自分のやりたいことをやるのが一番でやんす。
 世の中、そんなことも出来ない奴のほうがずっと多いんでやんすから」

それは嫉みと妬みに汚された言葉だったが、プログラムの0と1の思考の間に生まれたメカ亀田の本音だった。
ここに居ない相手を傷つける刃物のような、作られた偽物だからこそ生まれるむき出しの言葉だった。

「……そっか」

だからこそ、タケミは少しだけ気持ちが軽くなったように気がした。
タケミも、メカ亀田と同じ造りものなのだから。

371Only My Life ◆7WJp/yel/Y:2013/02/05(火) 23:39:15 ID:QXVhZmyA0

【D−7/一日目/日中】

【タケミ@パワプロクンポケット10裏】
[状態]:疲労(小)、メカ亀田に対する複雑な感情
[装備]:作業着、コンパス、時計、シールド@パワプロクンポケット3
[道具]:支給品一式、爆弾セット(残り5個)、ラブスコープ@パワプロクンポケットシリーズ、工具箱
[思考]基本:殺し合いには乗らない、首輪を外すために行動する。
1:出来るだけ戦いたくないが、どうしようも無ければ戦う。
2:メカ亀田は気に入らない。
[備考]
※モンスターとしての力は短時間、疲労大の条件の下、発動可。
※十波典明、高坂茜の名前を知りません。

【メカ亀田@パワプロクンポケット6裏】
[状態]:損傷なし、上機嫌
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、PX-001(たかゆき)、ドリル
[思考]
基本:『殺し合い』を失敗させた後に亀田を殺す。
1:ジャミング用の機械と実験用の首輪を見つける。
2:サングラスの男を探すために、東へと向かう。
3:脱出のために役立ちそうな人間を優先して仲間にする。
[備考]
※参加時期は不明。
※メカ亀田は灰原の名前は知りません。
※自動追尾ミサイルとバリアーは没収されています。
※青野の情報は全部嘘だと思っています。
※十波典明、高坂茜の名前を知りません。

372Only My Life ◆7WJp/yel/Y:2013/02/05(火) 23:39:50 ID:QXVhZmyA0
投下終了です

373 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/07(木) 07:29:53 ID:5YcxkcWQ0
予約していた愛を投下します

374月光潜伏 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/07(木) 07:30:33 ID:5YcxkcWQ0
 

忍者。

忍者とは戦国の世を影から支えた隠密存在である。

しかし、彼らは一つにまとまることがなく、同じ忍者同士の戦争により疲弊する時を過ごしていた。

そして、その隙に一人の将軍が乱世を収め、やがて歴史から姿を消した。

忍者の存在は忘れされる。

やがて、世界が電子ネットワークが覆い尽くしサイバネ技術が普遍化した未来。

その人々が巻き込まれた質の悪いジョークのような、殺し合いという悪夢。

数百年の時を超えて現れた殺し合いの闇へと招きこまれたのだ。

375月光潜伏 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/07(木) 07:31:24 ID:5YcxkcWQ0


   ◆   ◆   ◆


(……少し、休憩)

愛は放送を聞き終えると、安堵の息を吐きながら目を閉じる。
先ほどの放送ではここは禁止エリアにはならなかった。
六時間は休憩を取れる。

(幸い、食料も水も残っている……その上で武器も十分と恵まれた状況だわ。
 ひとまず、傷が癒えるまでは籠城ね)

愛は神社に引きこもり、籠城を決め込んだ。
十分な武器を手に入れた今、愛が焦る理由はなくなった。
下手に動いて裏切った白瀬と遭遇し、殺し合いになるデメリットのほうが大きい。
それに、白瀬が生き延びていれば他の参加者を減らしてくれる可能性も高い。
ならば今は走り回る時ではない、そう愛は判断した。
長期戦を覚悟して、英気を養う時なのだ。

(お父さん……)

愛の心にあるのは故郷と、家名と、誇りと、名高い父の存在。
人は死んでしまえば、もはや次はない。
生命を奪い合う世界で生きてきたからこそ、愛はそれを悔しいほどに知っている。
それでも愛は人を殺すことを決意した。
全ては家のため、『月光』のため、そして、自らの誇りのため。
力を手に入れるために、すべてを犠牲にする覚悟を持っている。

「ふぅー………!」

腹部に溜まった邪念と力を、長い息とともに吐き出す。
精神統一の準備である。

(…………)

愛は思考を消していき、五感を研ぎ澄ませる。
誰かが『神社』という愛の領域に足を踏み入れた時、素早く反応できるように。
その時、他者を閃光のように殺せるように。


月は、まだ太陽が隠している。



【C-2/神社/一日目/日中】

【愛@パワプロクンポケット5裏】
[状態]右脇腹に傷(応急処置済み)
[装備]ウージー
[道具]支給品一式×3(不明支給品0〜2)、ベレッタM92(6/15)、ベレッタの予備弾倉×5、煙幕×2
[思考] 基本:自分が生き残ることが第一。
1:とりあえず休む。
2:生き残るためなら、他の人間を殺すのもやむをえない。
3:白瀬は死んでくれているとありがたい。
[備考]
※参加者はそれぞれ違う時間から誘拐されたと何となく理解しました。

376月光潜伏 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/07(木) 07:31:38 ID:5YcxkcWQ0
投下終了です

377 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/07(木) 22:34:50 ID:5YcxkcWQ0
天本玲泉、芽森わん子、投下します

378あるいは裏切りという名の犬 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/07(木) 22:36:23 ID:5YcxkcWQ0

温泉に浸かるわん子を置いて、脱衣所で天本はメモを取っていた。
メモの内容は放送で発表された禁止エリアの内訳と死者の名前である。

天本はそのメモを眺めながら考え込んでいた。
付近に禁止エリアは存在しないため、温泉に居られる時間は長い。
死者の発表では知り合いが一人だけ呼ばれた。
同郷の黒野鉄斎という怪しげな研究をしている怪しげな老人だ。

「十六人から八人……」

天本は黒野の死を、どこか遠い出来事のように感じながら呟いた。
決意を鈍らせないためにも、意識的に感傷を覚えないように務めているのだ。
十六人から八人、ペースは明らかに落ちている。
合計で二十四人が死んだということは、残り三十四名。

「……」

天本に提示された選択肢は二つだ。
既定路線通りわん子とともに行動するか、逆にここでわん子を殺してしまうか。
いつ誰が来るかわからない状態での殺人は危険とも言える。

「まだ、早いですね……」

言葉になったかも定かではないほどの小さな声でつぶやく。
先ほどの放送で七原や布具里、七味に春香、そして椿と言った殺し合いの場で知り合った人間の死が述べられ、
さらに、総数が残り十五人を切っているという段階ならば一歩踏み出せたかもしれない。
だが、現実にはまだ残り人数も多く、知り合い、つまり利用できる人間の誰も死んでいない状況。
わん子とともに行動をして、人数が減るのを待つしかない。
となると、一つだけ問題が生まれる。
椿のことだ。

「どう説明しましょうか……」

潜伏していた白瀬を発見し、背筋に嫌な予感が走った。
率直に死の予感と言っても良い。
そこからは本能的に逃げる形でわん子を連れてここまで来たのだ。

そこで問題となることは後々に椿と再開した時だ。
どうして椿たちへ何も言わずに逃げたのか、そこを説明しなければいけない。

「椿さんが乱暴を……駄目ですね、上川さんたちも残っていますし。
 単純に怖くなった、そう押し通すしか……」

頭が痛い。
と言っても、あの場から衝動的に逃げたこと自体は後悔していない。
あのままでは死が近かった。
こちらは確かに猟銃を持った椿が居るが、逆に言えば椿しか満足な武器を持っていない状態だった。
下手をしたら天本の命はなくなっていた可能性はある。

大体、あの場に居ても邪魔になるだけなのだ。
そのため、単純な戦力の低下とはならない。
あるとすれば、二人の少女という肉の盾が減ったということだけ。

379あるいは裏切りという名の犬 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/07(木) 22:37:02 ID:5YcxkcWQ0

「……あら?」
「さっぱりしたワン!」

そんな物騒なことを考えていると、わん子が脱兎の如く浴場から飛び出してくる。
わん子の姿を見て、天本は反射的に笑顔を作る。
笑顔の仮面を作ることは得意だ。
そのため、わん子には天本の張り詰めた表情をしていた事実を見ることが出来なかった。

「もういいって……まだ十分も経っていませんよ?」
「お風呂はもういいワン!」

そもそもとして、犬の転身体であるわん子にとって風呂とは水浴びの延長でしかない。
さっぱりと暖かなお湯に浸かればそれだけで満足なのだ。

「湯船に浸かっただけじゃないですか……駄目ですよ」
「わわっ……!?」
「ちゃんと身体は綺麗にしないと、女の子なんだから」

天本は本心半分、打算半分でわん子を浴場へと押し戻す。
ここで親身になることでわん子の信頼を勝ち取ろうという腹積もりである。
メモを脱衣所に残したまま、浴場へと足を踏み入れる。
そして、桶でお湯を掬ってわん子の背中にゆっくりと流す。

薄い、子供の背中だった。
思えば誰かとともに風呂に入るなど、天本の人生で初めての経験だった。
そう思うと、目の前の少女に妙な愛情を覚え始めた。
もっとも、それはペットへと向ける愛玩の感情に近いが。

「うぅ……!」
「ほら、暴れないで」

わん子は石鹸の泡から逃げるようにじたばたと暴れ始める。
特別鍛えてもいない天本でも簡単に押さえつけられる程度の、どこか遠慮をした弱々しい暴れ方だった。
軽く押さえつけて、優しく髪を撫でる。
僅かに身じろぎした後、やがておとなしくなり天本の手に身を任せる。
天本は意識してわん子の柔らかい体にタオルを滑らせていく。

(震えている……)

石鹸を嫌う無意志的な動きとは別に、わん子の身体が震えていることに気づいた。
それが恐怖によるものだと天本はすぐに感づいた。
自分もまた殺し合いに対して恐怖を覚えているからだ。

380あるいは裏切りという名の犬 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/07(木) 22:38:16 ID:5YcxkcWQ0

「帰りたいですか?」

自分自身に問いかけるように、わん子へと問いかけた。

「……ワン」

天本は情が移りそうになる自身の心をはっきりと自覚する。
わん子の身体を撫でながら、何度も何度も非情になるべきだと言い聞かせる。
出来るはずだ、そう自分を励ましながら天本はわん子と接する。
いざとなったら殺す相手に、親身になって言葉を投げかける。

「本当は消えるはずだったから、そういう心の準備はできてたワン……」
「消える?」
「でも、それでも、帰りたい……」

天本が不思議そうに聞き返す。
だが、わん子は聞こえていないのか、それ以上はなにも口にしない。
天本の心中に単純な好奇心が生まれるが、下手に警戒心を与えてしまうことを嫌って追求はしなかった。
ただ、頭を撫でるようにわん子の髪を梳かしていく。

「くぅん……♪」

嬉しそうに喉を鳴らすわん子はその名の通り犬のようだった。
少女と犬の可愛らしさを併せ持ったわん子の挙動に、天本の胸がズキリと痛む。
髪を梳かし終えると、天本は静かにわん子の首に手をかける。
細い首だった。
華奢な天本の腕力でも殺せそうな、あまりにも弱々しい細い首。
このまま両手に力を込めれば殺せそうな、そんな首筋だった。

瞬間、人を殺すという道徳的な嫌悪感により胃の中で胃液が暴れ始める。
天本はその嫌悪感を呑み込み、わん子に悟らさせないように心がける。
殺そうと考えだけでこんな有様だ、これで本当に人を殺せるのだろうか。
そんな不安が天本へと襲いかかる。

「……帰りたいですね」

それでも同時に胸に過ることは、愛しい人との生活だった。
雲に遮られ続けていた人生の中で唯一光に思えたあの時間を、もう一度体験したい。

「……帰りたいですね」
「ワン……私も、帰りたい……」
「私は、絶対帰ります」



―――貴女を、殺して。


.

381 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/07(木) 22:38:35 ID:5YcxkcWQ0
投下終了です

382 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/07(木) 22:38:58 ID:5YcxkcWQ0
失礼しました、状態表が抜けていました



【E-4/温泉/一日目/日中】

【天本玲泉@パワプロクンポケット4】
[状態]:健康、暖かい
[装備]:なし
[道具] 支給品一式、不明支給品0〜2
[思考・状況]
基本:日の出島に帰る。
1:一応は芽森を利用して協力者を探してみる。
2:人を結果的に殺すが、今は様子見。
3:第3放送前後にホテルに行く?

【芽森 わん子@パワポケダッシュ】
[状態]:疲労小、暖かい。
[装備]:ヒーローのスカーフ@パワポケ7、モップ@現実
[参戦時期]:わん子ルート、卒業直後
[道具]:支給品一式(食料はキムチと何か)、ヒーローの衣装セット@パワポケ7、ヒーローのスカーフ四個@パワポケ7
[思考・状況]
基本:殺し合いから脱出する。
1:天本さんに付いていって温泉に入る。
2:帰ってきたらタツヤさんと行動。
3:走太君を探したい。
4:いつかタツヤさんに自分の正体を伝えたい。

383名無しのバットが火を噴くぜ! :2013/02/15(金) 20:45:23 ID:wBZukylQ0
投下おつです!!面白いです!!

384管理人★:2013/02/20(水) 01:48:55 ID:???0
tes

385管理人★:2013/02/20(水) 01:50:57 ID:???0
大変申し訳ありません
◆jnvLTxNrNA氏が破棄されていたSS、 願い事1つだけ を誤って収録していました
ただちに修正しました

386 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/20(水) 01:58:51 ID:8Mg.tuKY0
パロロワ総合板に新スレ立てました。
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/14759/1361292986/

387名無しのバットが火を噴くぜ! :2013/03/07(木) 19:43:16 ID:zeDbUin60
ロリ画像掲示板

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388watch for this:2013/12/21(土) 12:21:05 ID:m0aRO8Mg0
nkBJpk Great, thanks for sharing this blog post.Really thank you! Fantastic.

389名無しのバットが火を噴くぜ!:2021/09/12(日) 23:55:12 ID:PSAOvF.g0
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