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一時投下スレ3

100男の世界/女の世界   ◆Y0KPA0n3C.:2010/11/23(火) 00:58:12 ID:???
以上で投下終了です。
誤字脱字、矛盾点修正点等、ほか気になる点、ありましたら指摘よろしくお願いします。

101男の世界/女の世界   ◆Y0KPA0n3C.:2010/11/23(火) 00:59:26 ID:???
あ、とりあえずは一時投下です。

102ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/11/23(火) 17:36:27 ID:???
あ、とりあえずは投下乙です
あちこちで「その見間違いは無いw」とか言われてますけど、
腕千切られた直後に意識なんかはっきりしてるはずが無いよね
むしろ音のスタンド使いが助けに来たって事実だけで康一だと思うのは仕方ないと思う

103ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/11/24(水) 19:22:51 ID:???
>>87
地面ゆっくりと着地する→地面に

内容に関しては、花京院と徐倫が何故情報交換をしなかったのか。
この1点が気になります。

花京院は元から穏健派の対主催。加えて「空条」は知り合いの名字です。
承太郎が亡くなっている今、空条の血縁者なら赤の他人より力になってあげたいと考え
積極的に会話をしようとするのでは。
会話をする時間はほどいている間とか、たくさんあったんじゃないかな。
徐倫にアナスイとの関係を尋ねることもなく、アナスイには「どういう関係か?」と問うのも少し疑問です。

対するアナスイは原作でこそ「徐倫は自分を、父親以上に必要とするようになるはず」と思っていましたが、『ヘンゼルとグレーテル』にて見返りを期待しない想い方をすることに心を決めたように思います。
『愛し続けるだけであったこれまでのアナスイには見えなかった道』とありますし。
あの時悟ってしまったように見えますから今更年下になんのかんのいわれてムキになるかな…とも。

主観的な意見で申し訳ありません。
こういう風に考える読み手もいる、と思っていただければありがたいです。

104 ◆Y0KPA0n3C.:2010/11/26(金) 01:25:50 ID:???
>>103
指摘、ありがとうございました。
修正したものを投下するので目を通してくだされば幸いです。

規制されているので、こちらに投下いたします。
代理投下できる方はよろしくお願いします。

105 ◆Y0KPA0n3C.:2010/11/26(金) 01:26:37 ID:RYFTQuXo
<D-4南部の民家:保安官―マウンテン・ティム>


話は至ってシンプルだ。
いたはずの徐倫がいない。席をはずしていた花京院君の姿が見えない。
この状況から予想できるのは、子供だって簡単に思いつく一つの可能性―――。

保安官である俺は察した。
徐倫がここにいないのは、花京院君が関係しているの違いない、と―――。

「離せッ、ティムッ!」
「落ち着け、アナスイッ!」

そして、それはアナスイも同じこと。
俺と同時に結論に達したアナスイはわき目も振らず玄関へと突進する。
俺はそんな彼を必死で止める。

愛する彼女のことになるとこの男は目の色が変わる。
普段の冷静さを失い、感情的に行動してしまう。
自らのスタンドを行使することさえ、判断できないほどに。
ダイバー・ダウンを使えば羽交い絞めにしてる俺の腕など簡単に『分解』できるというのに。

それをしないのはどうしてか?
彼がそれだけ冷静さを失っているのだろうか。それとも俺に気でも使ってるのだろうか。
とにかく、今はアナスイを落ち着けることが第一だ。
俺は必死でもがくアナスイの耳元で怒鳴った。

「いいか、徐倫を連れ去っていったのは間違いなく、花京院君だッ!
 だがそうだとしてもお前はどうする気だッ?! 当てもなくさまようのか?
 今はここで彼を待つのが一番だ! 彼だって何も考えずには徐倫を開放したりするまいッ!」
「徐倫……徐倫ィィーーーーン!」

そのまま取っ組み合うこと、どれぐらいだろうか。
大の男が、それもスタンド使いが取っ組み合いの喧嘩なんて滑稽だ。

アナスイが暴れるのをやめたのを合図に俺は腕の力を緩める。
お互い肩で息をしながら呼吸を整えると、俺はチラリと視線をアナスイに向けた。
膝に手を置き俯いていた彼は体を起こすと、手近な椅子に身を投げる。
なんとも言えない、本当の無表情だ。不安と焦りに染められていた瞳も、今はなにも宿さない。

俺は外の様子を窺うため窓際に立った。

時間にして、10分ぐらいだろうか。
庭に人影が浮かび上がり、コンクリートを踏みしめると音が聞こえてきた。
部屋の中の緊張感が増す。俺は何も言わない。アナスイも黙ったままだ。
来訪者はそのまま立ち止まることなく、玄関の扉を開いた。

106 ◆Y0KPA0n3C.:2010/11/26(金) 01:27:25 ID:???

「……………徐倫はどうした」
「アナスイさん、貴方と彼女は一体どんな関係なんですか……?」

質問に対して質問で返す。
そんな挑発行為とも言える行動に、アナスイの表情が僅かに変化する。
ゆっくりと立ち上がると彼はそのまま玄関へと向かう。
殺気はない。スタンドも出現させていない。

脇を通り抜けようとしたアナスイの前に花京院君が立ちふさがる。
二人はにらみ合ったまま、会話を再開する。

「……徐倫はどこにいる」
「……気持ちが通じ合わせるってことは難しいことです。それが短時間なら尚更です」
「徐倫は無事なのか」
「友情と愛情を比べるなんてことは愚かしいかもしれない。
 まして、僕にはどちらもわからないことですから。
 でもそれが一時の感情かもしれないと疑うのは愚かでしょうか?」
「徐倫をどうした」
「僕は、貴方が理解できない」

瞬間、二人が同時に動く。
ダイバー・ダウンが花京院君の心臓を抉りだそうと右腕を振るった。
民家の窓をたたき割りながら、四方八方より緑の宝石がアナスイに迫る。

そしてまるで自動車に跳ね飛ばされたように、二人は吹き飛ぶ。
アナスイが俺の脇を通り抜け、玄関の反対に壁に叩きつけられた。
花京院君が宙を舞い、玄関前のアスファルトに体を激しく打ち付ける。

お互いの攻撃は五分と五分。
致命傷を負うことなく、だが二人とも軽症とは言えないダメージを負った。

それでも、戦いは始まったばかりだ。不屈の闘志を持って二人は体を起こす。
そして扉が吹き飛んだ玄関を挟んで、再びにらみ合う。

「貴方は徐倫さんが大切なんじゃない……。貴方は感情を押しつけて自分に酔っているだけだ。
 自分を必要として欲しい、自分を肯定してほしい。一種の洗脳を徐倫さんに施そうとしているッ!」

花京院君の叫びが向かいの民家に反響する。
一人の叫び声なのに、まるで何人もが同時にアナスイを批判しているようだった。
ゆっくりと身を起こしたアナスイは玄関を通り、道路に出る。
俺はそのあとについていく。

見上げると、星がよく見えるきれいな夜だった。
1890年、俺が知っている夜空と、今俺が見ている夜空は同じだった。
月が明るく、辺りを照らしだすほどだった。

107 ◆Y0KPA0n3C.:2010/11/26(金) 01:28:04 ID:???

花京院君の叫びは続いた。
アナスイの行為はただの感情の押しつけだ。本当に大切なのは徐倫じゃない。
自己満足だ、欺瞞だ、偽善だ、うそつきのくそったれ野郎だ。
だいたいそんなところだった。アナスイは黙ったまま、静かに耳を傾けていた。

そして花京院君が黙ったのを見て、口を開く。

「一目見た時、その時から俺は徐倫しかいない、そう思えたんだ。
 今だってそうだ……俺の中には徐倫しかいない。でも俺は変わったさ。彼女の中に俺がいなくてもいい、そう思えたんだ」

アナスイの声が叫び声へと変わる。

「俺は、徐倫が俺のことをどう思うともッ! たとえ徐倫の『目』に俺が映らなくともッ!
 彼女だけはッ! 彼女だけは守って見せるッ!
 ああ、そうさッ! これは俺の自己満足だッ! 感情の押しつけだ、俺個人の自分勝手さッ!
 それでもッ! 俺は彼女を守りたいッ!」

そして再び辺りが静寂に包まれる。住宅街と闇と無音。
俺はやはり黙ったままだ。二人も何も言わなかった。

だが三人ともわかっていた。
「正しい」と思ったから二人は「そう」した。
こんな殺し合いなんて腐りきった世界だからこそッ! 彼らは自分の『信じる道』を歩くのだッ!
善でも、悪でも、最後まで貫き通した信念に偽りなどは何一つないッ!
ならば、その信念がぶつかり合った時……もはや言葉は必要ないッ!

カウボーイハットを右手に持つと俺はそいつを空高く放り投げる。
……今の俺に出来ること、それはこの『決闘』を見届けることだ。
この決闘が卑怯者の行為になること、そして二人をゲス以下の『殺人者』になることを防ぐのが俺の役目だ。

風に舞った帽子がゆらりゆらりと流されていく。二人のちょうど真ん中、帽子は気ままに舞っている。

だが、はたして俺にそれが可能なのか? はたしてそれをするのは俺にとって「信じた道」を歩くことになるのか?

二人の視線が帽子へ移る。帽子はもう一度だけ、ふわりと舞うと、地面にゆっくりと着地する。

お互い納得ずくの『決闘』。
意志と意志とのぶつかり合い。
漆黒の『殺意』をもった男たちの神聖なる儀式。
何者にも邪魔されない世界、法や道徳や倫理、それを超えた世界。
人はこんな世界をこう呼ぶのだ。

『男の世界』、と――――――。

108 ◆Y0KPA0n3C.:2010/11/26(金) 01:30:01 ID:???


 





【D-4 南部 /1日目 夜中】
【ナルシソ・アナスイ】
[時間軸]:「水族館」脱獄後
[状態]:身体ダメージ(中)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(食料、水2人分)、点滴、クマちゃん人形、双眼鏡、ラング・ラングラーの首輪、トランシーバー(スイッチOFF)
[思考・状況]
基本行動方針:徐倫を守り抜き、ゲームに乗った参加者の無力化、荒木の打倒
0.花京院をぶちのめし、徐倫の居場所を吐かせる、
1.徐倫の敵は俺の敵。徐倫の障害となるものはすべて排除する
2.徐倫の目的、荒木のもとに彼女(と自分)が辿り着くためなら何でもする
3.殺し合いに乗った奴ら、襲ってくる奴らには容赦しない
[備考]
※マウンテン・ティム、ティッツァーノと情報交換しました。
 ブチャラティ、フーゴ、ジョルノの姿とスタンド能力を把握しました。
※ラバーソールとヴェルサスのスタンド能力と容姿を知りました。
※首輪は『装着者が死亡すれば機能が停止する』ことを知りました。
 ダイバー・ダウンを首輪に潜行させた際確認したのは『機能の停止』のみで、盗聴機能、GPS機能が搭載されていることは知りません。
※ヴェルサスの首筋に星型の痣があることに気が付いていません。
※F・Fが殺し合いに乗っていることを把握しました。
※ポルナレフが得た情報について知りました。
※マウンテン・ティムと改めて情報を交換し、花京院の持っていた情報、ティムが新たに得た情報を聞きました。

【マウンテン・ティム】
[時間軸]:SBR9巻、ブラックモアに銃を突き付けられた瞬間
[状態]:服に血の染み。右足が裸足
    肋骨骨折(戦闘になれば辛いが動けなくはない)、右肩切断(スタンドにより縫合)
    貧血(目眩はしない程度まで回復したが血液そのものが不足しているため行動に支障が出る可能性あり)
[装備]:物干しロープ、トランシーバー(スイッチOFF)
[道具]:支給品一式×2、オレっちのコート、ラング・ラングラーの不明支給品(0〜3。把握済)
[思考・状況]
基本行動方針:ゲームに乗った参加者の無力化、荒木の打倒
0.二人の決闘を見届ける
1.もしアナスイが再び殺人鬼になるようなら止める。生死を問わず
2.アナスイが正直に話してくれて少し嬉しい
[備考]
※第二回放送の内容はティッツァーノから聞きました。
※アナスイ、ティッツァーノと情報交換しました。アナスイの仲間の能力、容姿を把握しました。
 (空条徐倫、エルメェス・コステロ、F.F、ウェザー・リポート、エンポリオ・アルニーニョ
  ブチャラティ、ミスタ、アバッキオ、フーゴ、ジョルノ、チョコラータ)
※自分達が、バラバラの時代から連れてこられた事を知りました。
※花京院と情報を交換しました。お互いの支給品およびラング・ラングラーの支給品を把握しました。
※アナスイと徐倫の事の顛末を聞きました。

109 ◆Y0KPA0n3C.:2010/11/26(金) 01:30:51 ID:???

【花京院典明】
[時間軸]:ゲブ神に目を切られる直前
[状態]:精神消耗(小)、身体ダメージ(中)、右肩・脇腹に銃創(応急処置済)、全身に切り傷
[装備]:なし
[道具]:ジョナサンのハンカチ、ジョジョロワトランプ、支給品一式
[思考・状況]
基本行動方針:打倒荒木!
0.アナスイの無力化
1.自分の得た情報を信頼できる人物に話すため仲間と合流したい
2.仲間と合流したらナチス研究所へ向かう?
3.巻き込まれた参加者の保護
4.荒木の能力を推測する
[備考]
※荒木から直接情報を得ました。
「脅されて多数の人間が協力を強いられているが根幹までに関わっているのは一人(宮本輝之助)だけ」
※フーゴとフェルディナンドと情報交換しました。フーゴと彼のかつての仲間の風貌、スタンド能力をすべて把握しました。
※マウンテン・ティムと情報を交換しました。お互いの支給品を把握しました。
※アナスイの語った内容については半信半疑です。その後アナスイがティムに語った真実は聞いていません。

110 ◆Y0KPA0n3C.:2010/11/26(金) 01:31:33 ID:???

<E-4中央:復讐者―空条徐倫>


机の上にあるペンや地図、紙切れを片づけながら私は視線を目の前の青年に向ける。
難しそうな顔をした彼は踏ん切りがつかなそうに見えた。

……それも当り前のことよね。
いくら友人の娘、と言っても私たちは赤の他人。
それも時代超えた、本当に実在しているのかさえ分からない人物だもの。
信頼されなくても当然のことだし、私もそれを前提で話をした。

花京院は正直に情報交換をしてくれたように思えた。
この環境の中でナーバスになってるようにも見えたけど、話の中で不審な点はなかった。
けど私は全部が全部、そのまま正直に話をしたわけではなかった。

『なにが正しいのか……僕にはわかりません。
 ただ……僕は貴方をそんな風にしたアナスイさんを許すことはできません』
『そう……』

アナスイと私の関係、私はそこをでっちあげた。
DIOの館へ向かった。そこで混戦中に気を失った。
そして気がついたら私はアナスイに分解され、あんな姿になっていた。
アナスイと私は元々の知り合い。
だけどあんな風に『分解』される理由は見当もつかない。
これが私がついた嘘。


『彼を止めに行ってきます。勿論説得できればそれに越したことはありませんが……。
 どうもそう簡単にはいきそうにないですし。徐倫さんはどうしますか?』
『貴方がアナスイを止めたいと思うように私にもやりたいと思うことがある。
 残念だけどここでお別れだわ。助けてくれたことは本当に感謝してる、ありがとう』


少し可哀想だけどこれも私の目的のため。
花京院にはアナスイの足止めをしてもらおう。
私は去り際に言葉を残すと、振り向くことなくその場を後にした。


―――――――――――――――

111 ◆Y0KPA0n3C.:2010/11/26(金) 01:32:31 ID:???




リハビリがてら、夜の街を私は一人歩く。
体は思ったより軽い。怪我も大したことないし、多少の傷はストーン・フリーで縫うことでカバーした。

シーツと一体化していた体は強引に元に戻した。
もとはと言えば、シーツと一体化できたのは私のスタンドが糸のスタンドだから。
花京院に手伝ってもらいながら、重要な器官や関節は守りつつ、余分な糸を引きちぎる。
そうすることで傷は負いながらも、無事こうして自由になれた。

久しぶりの開放感に体を伸ばし、私はゆっくりと歩く。
調子は上々、結果的に良い休憩となったのかもしれない。

けどあまりのんびりもしてられない。
こうしてる間にもアイツは、『荒木』のやつはのうのうと生きてるのだから。

やつを思い出すだけで私の頭は憎しみで一杯になる。
憎しみ、という言葉じゃ表現しきれない。
これほど人を憎めるのかと思うぐらい、私はあいつが憎い。
私から大切な人を奪っていったアイツを、私は許せない。

いなくなってしまった大切な人たちが頭の中に思い浮かんでくる。
母さんも、エルメェスも、エンポリオも、ウェザーも、そして父さんも。
もう誰も私の中に残っていない。

―――今は忘れよう。
悲しいとか、もう会えないとか、苦しむのは全部終わってからでいい。
迷いを消すように頭を振る。靄がかかったような気分が少しだけすっきりする。

それでも、どうしても消えない人がいた。
ナルシソ・アナスイ。
私を『分解』してまで、私を止めようとした人。

「アナスイ……」

彼のことを考えると罪悪感が湧き上がる。
なぜだろう、ほかの人を利用することには躊躇わないと思ってたのに。
私にとって今考えるべきことは、荒木への復讐だけであって、それ以外はどうでもいいと思っていたのに。

『いつまでも絶えることなく、友達でいよう』

それは貴方が私の中の大切な人のうちの一人だから。
彼が私を守ろうとしてくれたから。
傷つけまいと私を庇ってくれたから。

112 ◆Y0KPA0n3C.:2010/11/26(金) 01:33:05 ID:???

『今日の日は――――さようなら』

それでも……それでも、私には成し遂げたい目的がある。
アナスイの気持ちを裏切ってでも成し遂げたい目的が。

だから、ただ見守っていてほしい。
アナスイが私を見てくれてる、そう思うだけで勇気がわいてくる。
貴方が私のことをどう思っていようと、私も貴方を失いたくない。

私も貴方を守りたい。
もう誰もいなくならないでほしい。


「私は私の道を行くわ、アナスイ」


ビュウとひときわ強い風が頬をなでる。
握りこぶしを作り、向かい風の中を私は歩いていく。

心は決まってる。
打倒荒木、それが私のやるべきことだ。
そこに迷いはない。




歩き始めてどれぐらいだろうか、そろそろ調子も戻ってきた。
足であるバイクを失くしたのは痛いけどいまさら言っても仕方ない。
とりあえず目差すべき場所は……そうね、やっぱりDIOの館かしら。
そう考えて私が地図を取り出そうとした時だった。

「!」
「…………!」

少女を腕に抱えたインディアンの男がこちらに猛スピードで迫っていた。
屈強な肉体、人間を超えたスピード、そして腕の中にはぐったりとした少女。
それは即ち―――



「ストーン・フリー!」

このくそったれな殺し合いにのった参加者!

「オラッ!」

113 ◆Y0KPA0n3C.:2010/11/26(金) 01:33:45 ID:???



すれ違いざまに拳をぶつけようとした瞬間、男の姿が消える。
同時に私が影に覆われる。今日は満月、つまりやつは……上!

「オラオラオラッ!」

跳躍し、私を飛び越え逃げようとするインディアンに拳の雨をお見舞いする。
当然のようにスタンドを繰り出し、私の拳をガードするインディアン。
空中で身動きが取れない今が叩くとき。私はさらに拳を振るう。が―――

「?!」

ふわりと舞い降りてきた木の葉に小石。
拳で触れた瞬間、電撃が走ったかのような衝撃を受け、たまらず私の手が止まる。
その隙にインディアンは私を飛び越え、すこし距離をとり、止まった。
そして言う。

「……俺に戦いの意志はない。とりあえず話を聞け。
 俺が今お前にしたことは『正当防衛』であって『攻撃』ではない。
 とにかく話がしたい。それに怪我人の治療もしたい……」

そう言って脇に抱えた少女へ目を向ける。
右腕を失った彼女はぐったりとしていて、動かない。
出血を止めなければならない、極めて危険な状態だと言える。

怪しい。状況的に見たらこの男は疑わしいというのが正直な感想だ。
この男が言ってることをそのまま信じてしまってもいいのだろうか……?
少しの間私は考え込んでいたが、ゆっくりと口を開いた。

「……わかったわ。今回は私が早合点してしまった。
 幸い私のスタンドは治療にも使える。ついでに情報交換、ってのはどうかしら?」
「……いいだろう」

まだ、わからない。果たしてこのインディアンは本当に『善』なのだろうか。
けれども構わないわ。今の私に必要なのは『足』と『情報』。
そしてこの男はその両方を持ってる。
利用できるなら利用させてもらう。駄目だったらその時は……。

114 ◆Y0KPA0n3C.:2010/11/26(金) 01:34:33 ID:???
近くの民家に入ると、まずは少女(と言っても私と同じぐらいの年に見えたけど)の治療に取り掛かる。
怖いぐらいきれいな切り口だった。一体何を使えばこんな綺麗に切れるのかしら。
傷口をストーン・フリーの糸で縫い、心臓より高い位置で固定する。
お粗末かもしれないけど、とりあえずの治療は終わった。

ソファーに彼女を寝かしつけると、私はあらためて男と向かい合う。
男は黙ったままわたしの動きを見ていた。まるで見張るかのように。
腕の断面図を見ても眉一つ動かさず、私のスタンドを見ても動じない。
つかめない男、私は彼のことをそう思った。

「意識は戻りそうにないか?」
「今のところは、ね。こればっかりはわたしもわからないわ」
「そうか」
「それじゃ、情報交換といきましょうか?」

私が口を開くと彼はそれを予期していたようにこう返してきた。

「……構わないがその前に一つだけ条件がある」
「……?」

条件という言葉に身構える。
彼は相変わらず何を考えているかわからない目で私をじっと見つめる。

「俺は情報を提供する。だが今は緊急事態、とてもじゃないがゆっくり話している暇はない」
「どういうことよ?」
「俺は今敵から逃げていた途中だった。
 その敵は俺の足をもってしても、振りきれるかどうかは微妙なところだった。
 だが実際、俺は追い付かれていない。つまり誰かがやつを足止めしてるのだろう……」
「それで?」

嫌な予感がする。立ち上がったインディアンを追うように私も立ち上がる。

「俺は今からそいつの元へ向かう……。
 勝てるようだったら加勢すればいいし、駄目だったら逃げる。
 お荷物もいない俺なら逃げ切れる可能性は高いだろう……」
「でも、あんた情報交換は!?」
「……俺が帰ってきたらその時にしてやる。それに、まずはその女から情報交換すればいい」
「ちょっと!」

引き留めようと出した手をスルリとかわし、インディアンは足早に玄関へと向かう。
あわてた私が外に出るころには、彼は隣の民家の屋根に上っていた。

「しばらく経っても俺が返ってこないようならナチス研究所へ迎え。
 そこに行けば充分な情報も手に入るだろう……」
「ちょっ……!」
「それと、彼女が目を覚ましたら伝えてくれ
 『広瀬康一は打倒荒木のもとに死んだ、その意志はまだ消えていない』と」

115 ◆Y0KPA0n3C.:2010/11/26(金) 01:35:28 ID:???



そして返事を待つこともなく、彼は去っていった。
その場に取り残された私はさぞかし間抜けな顔をしていただろう。
少しすると、悔しさと怒りがわいてきた。
悔し紛れに近くのゴミ箱を蹴りあげてみたけど気分は晴れない。

まったく、やれやれだわ……! 利用しようとした相手に逆に利用されるなんて!
仕方なくリビングに戻ってみたはいいけど、正直一刻も早くここを出ていきたい。

当初の目的地、DIOの館に向かいたい。
さっきの男を追って『敵』とやらをぶちのめすのもいい。
あるいはナチス研究所に向かうのもいいかもしれない。

「……やれやれだわ」

けど、この少女を放っておくってのも心苦しい。
放っておいたらあのインディアンから情報も貰えなくなってしまうし……。
頭が痛い問題だわ……。たまらずため息を吐いた。

「こうなった以上、この子から情報をもらうのがベター」

危険人物の可能性もあるし、まあ故障明けというのもある。
ソファーにどさりと座り、私は無理矢理自分に言い聞かせる。
焦る気持ちもある。荒木に対する憎しみがじわじわと込み上げてくる。

けど、今は仕方ない。
とりあえずはこの子が目を覚ますまでは―――

「……………ん」

言ったそばから、だ。
机を挟んだ向こう側のソファーで彼女が意識を取り戻したみたい。

私は立ち上がると彼女の脇にしゃがみ込む。
焦点の定まらない目でぼんやりと彼女は私を見る。
どうやらまだまだ全快とはいかないようだ。

「気分はどう?」
「康一……君は?」
「え?」
「エコーズ……音の能力……さっき康一君がいたの。
 死んだはずの康一君……。
 でも、やっぱり、彼は生きてるのよ…………」

116 ◆Y0KPA0n3C.:2010/11/26(金) 01:36:24 ID:???
康一君。それはさっきのインディアンが私に伝えた名前だ。
うわ言のように彼女は康一君、と繰り返す。
私は何も言えない。机の上にあったデイバッグから名簿を出すとその名前を探してみた。
広瀬康一、その名前には棒線が引いてあった。

「康一君……私の、私の大切な人。もう会えないと思ってた……。
 死んでしまったと信じ込んでた。でもやっぱり康一君なのよ。
 会いたい、会いたいわ。どこに行ったの……? どうして、いないの?」

彼女は呟き続ける。意識はまだはっきりとしていないのかもしれない。
けど、それだから、彼女は涙を流し、呟いている。

もう会えないと思ってた人に会える嬉しさ。
やはり会えないとわかった悲しさ。
その二つがせめぎ合い、現実と妄想の中で彼女はさまよっている。
私はそんな彼女を見て、何も言えなかった。

この子は、私と一緒だ。
この子は……大切な人をこのくそったれなゲームで失った。
私が父さんを失ったみたいに……母さんを見殺しにしてしまったように……。

失った、失った……。
母親も、父親も……友達も、親友も共に戦ってくれる仲間も、失った。
同じだわ……。
この子と私は、『似てる』……。

次第に意識がはっきりし始めたのか、彼女の眼に光が宿り始める。
同時に彼女の中で悲しみが押し寄せる。
一瞬でも希望を持ってしまった彼女。けど、やっぱり違った。
現実が彼女へと襲いかかってくる。やっぱり彼女の大切な人は、いないんだと。

呟きはすすり泣きへと変わっていく。
涙が頬を伝い、雫となって床へ落ちる。
顔を覆おうにも彼女は今、片腕しかない。
すり抜けた水滴が次から次へと零れ落ち、あふれ出る。

私は何も言えなかった。私はただそんな彼女を見ていることしかできなかった。
ただ私の中で何かが込み上げてきた。
母さんが死んで、イギ―と出会って、アバッキオが隣にいて……。
第一回放送でエルメェスとエンポリオの死を知って、二人が励ましてくれて……。
そして、第二回放送で、友が、父さんが……。

もう話すことができない人たちが現れては消え、浮かんでは沈んでいく。
取りとめのない思い出、大切な記憶。
思いっきり笑ったこと、大声で泣いたこと。
私の頭の中が、たくさんの人たちで埋め尽くされていく。

117 ◆Y0KPA0n3C.:2010/11/26(金) 01:37:34 ID:???


そして――

『君に殺されるのなら本望だ』
『いつまでも絶えることなく、友達でいよう』
『今日の日は――――さようなら』

例え私と闘うことになろうとも、私を止めようとしてくれたアナスイ。
なにがあろうとも、守ると誓ってくれたアナスイ。

『いつだって……想っていた』
『いつだって……愛していた』

危険に巻き込まないよう遠くで私を見守ってくれていた父さん。
いつだって私のことを大切に思っていてくれた父さん。



開け放たれた窓からやわらかい風が吹き込んでくる。
温かく、優しく私を包み込んでくれる風。



私は何も言わなかった。
ただ彼女が泣きやむまで待とう、そう強く心に誓った。

118男の世界/女の世界   ◆Y0KPA0n3C.:2010/11/26(金) 01:38:57 ID:???


【E-4とE-5の境目 /1日目 夜中】

【サンドマン】
【スタンド】:『イン・ア・サイレント・ウェイ』
【時間軸】:ジョニィの鉄球が直撃した瞬間
【状態】:健康、暗殺チーム仮入隊(メッセンジャー)
【装備】:サヴェジ・ガーデン
【道具】:基本支給品×2、不明支給品1〜3(本人確認済み)、紫外線照射装置、音を張り付けた小石や葉っぱ、スーパーエイジャ、荒木に関するメモの複写
【思考・状況】
基本行動方針:元の世界に帰る
0.とりあえずエシディシとリンゴォの元へ向かう。そこでどうするかはついてから考える。
1.出来ればテレンスとの約束の場所へ向かいたい
2.ナチス研究所へ向かい、同盟を組んだ殺人鬼達の情報を伝える
3.初めて遭遇した人物には「ナチス研究所にて、脱出の為の情報を待っている」「モンスターが暴れている」というメッセージも伝える。
4.もう一度会ったなら億泰と行動を共にする。
[備考]
※億泰と情報交換をしました。
※プッチの時代を越えて参加者が集められていると考えを聞きました。
※リゾットと情報交換しました。が、ラバーソールとの約束については、2人だけの密約と決めたので話していません。
※F・F、ブチャラティチーム、ホル・ホース、ミューミューの容姿と能力を知りました(F・Fの能力は、リゾットが勘違いしている能力)。
※ホルマジオの容姿を知りました。
※盗聴の可能性に気付きました。
※DIOの館にて、5人の殺人鬼が同盟を組んだことを知りました。それぞれの名前は把握していますが、能力・容姿は知りません。 。
※リンゴォ・ロードアゲインと情報交換をしました。
 内容は『お互いの名前・目的』『吉良(とその仲間)の居場所』『お互いの知る危険人物』『ナチス研究所について』です。

119男の世界/女の世界   ◆Y0KPA0n3C.:2010/11/26(金) 01:40:11 ID:???

【山岸由花子】
[時間軸]:4部終了後
[状態]:右腕の二の腕から先を欠損(重症:止血済み)、精神不安定(大)、貧血(重症)
[装備]:サイレンサー付き『スタームルガーMkI』(残り7/10)
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜1、承太郎の首輪
[思考・状況]
基本行動方針:優勝して広瀬康一を復活させる。
0.康一君……
1.吉良吉影を利用できるだけ利用する。
2.他にも利用できそうな人がいるなら利用する。
3.正直知り合いにはなるべくあいたくない。
[備考]
※荒木の能力を『死者の復活、ただし死亡直前の記憶はない状態で』と推測しました。
 そのため、自分を含めた全ての参加者は一度荒木に殺された後の参加だと思い込んでます
※空条承太郎が動揺していたことに、少し違和感。
※プッチの時代を越えて参加者が集められていると考えを聞きました。
※ラバーソールのスタンド能力を『顔と姿、声も変える変身スタンド』と思ってます。依然顔・本名は知っていません。 。
※リゾットのメモを見ました。

【空条徐倫】
【時間軸】:「水族館」脱獄後
【状態】:身体ダメージ(小)、体中縫い傷有り
【装備】:なし
【道具】:基本支給品一式
【思考・状況】
基本行動方針:荒木と決着ゥ!をつける
0. この子と私は、『似てる』……。
1.危険人物排除、そして荒木打倒へ。
2.アナスイの愛情をなんとなく理解、けれど自分は自分の道を進む
3.DIOの館に向かい、DIOと決着ゥ!つける
[備考]
※ホルマジオは顔しかわかっていません。名前も知りません。
※最終的な目標はあくまでも荒木の打倒なので、積極的に殺すという考えではありません。
 加害者は問答無用で殺害、足手まといは見殺し、といった感じです。
※アナスイから『アナスイが持っていた情報』と『ポルナレフが持っていた情報』を聞きました。
※花京院から支給品一式を返してもらいました。
※居間で行われていた会話はすべて聞いていません。
※花京院と情報交換しました。

120男の世界/女の世界   ◆Y0KPA0n3C.:2010/11/26(金) 01:40:45 ID:???
以上です。よろしくお願いします。

121キングクリムゾン:キングクリムゾン
キングクリムゾン

122 ◆33DEIZ1cds:2010/12/11(土) 01:20:58 ID:???
さるった……支援していただいてたのにすみません。
代理できる方がもし、おられたらお願いいたします。

【E-3 コロッセオの外部西側/1日目 夜中】

【リンゴォ・ロードアゲイン】
[スタンド]:マンダム
[時間軸]:果樹園の家から出てガウチョに挨拶する直前
[状態]:身体疲労(中)、両足の膝から下の部分を骨折
[装備]:なし
[道具]: 基本支給品 不明支給品0〜2
[思考・状況]
基本行動方針:参加者達と『公正』なる戦いをし、『男の世界』を乗り越える
0.休息する。
1.怪我を治し、DIOの館へorエシディシと再戦を。吉良を許すことはできない。
2.遭遇する参加者と『男の世界』を乗り越える。
[備考]
※ブチャラティのメモの内容を把握しました。
※参加者が時を越えて集められているという話を聞きましたが、自分の目的には関係ないと思っています。


※サウンドマンと情報交換をしました。
 内容は『お互いの名前・目的』『吉良(とその仲間)の居場所』『お互いの知る危険人物』『ナチス研究所について』です。




【サンドマン】
【スタンド】:『イン・ア・サイレント・ウェイ』
【時間軸】:ジョニィの鉄球が直撃した瞬間
【状態】:健康、暗殺チーム仮入隊(メッセンジャー)
【装備】:サヴェジ・ガーデン
【道具】:基本支給品×2、不明支給品1〜3(本人確認済み)、紫外線照射装置、音を張り付けた小石や葉っぱ、荒木に関するメモの複写
【思考・状況】 基本行動方針:元の世界に帰る
0.情報交換
1.徐倫と由花子の下へ行く。
2.ナチス研究所へ向かい、同盟を組んだ殺人鬼達の情報を伝える
3.初めて遭遇した人物には「ナチス研究所にて、脱出の為の情報を待っている」「モンスターが暴れている」というメッセージも伝える。
4.荒木の言葉の信憑性に疑問。
5.名簿にあるツェペリ、ジョースター、ブランドーの名前に僅かながら興味
6.もう一度会ったなら億泰と行動を共にする。
[備考]
※7部のレース参加者の顔は把握しています。
※億泰と情報交換をしました。
※プッチの時代を越えて参加者が集められていると考えを聞きました。
※早人がニセモノだと気づきましたがラバーソールの顔・本名は知っていません。
※リゾットと情報交換しました。が、ラバーソールとの約束については、2人だけの密約と決めたので話していません。
※F・F、ブチャラティチーム、ホル・ホース、ミューミューの容姿と能力を知りました(F・Fの能力は、リゾットが勘違いしている能力)。ホルマジオの容姿を知りました。
※盗聴の可能性に気付きました。
※ティムからはエシディシについては体格しか教わっていません


※DIOの館にて、5人の殺人鬼が同盟を組んだことを知りました。それぞれの名前は把握していますが、能力・容姿は知りません。
※北のエリアをまわってきた際、アイテムや情報は得ていません。
※リンゴォ・ロードアゲインと情報交換をしました。
 内容は『お互いの名前・目的』『吉良(とその仲間)の居場所』『お互いの知る危険人物』『ナチス研究所について』です。

123 ◆33DEIZ1cds:2010/12/11(土) 01:24:03 ID:???

【テレンス・T・ダービー】
[スタンド]:『アトゥム神』
[時間軸]:承太郎に敗北した後
[状態]:健康、覚悟を決めた
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、参加者詳細データ集、『ザ・ワールド』のスタンドDISC
[思考・状況]
0.荒木に対する恐れ…この男には勝てない… しかし、こいつらなら何とかしてくれる か も
1.男の世界に憧れ。しかし恐怖は以前変わりなく。
2.サウンドマンはたぶん信用できる。音石は信用できない気がする
3.エシディシとか殺人鬼集団とか怖いから、対主催に恩を売っておくべき?
4.DISCについての考察はあとまわし
5.F・Fは兄の敵…? 実際会ったときにどうするかは自分でもわからない。


[備考]
※荒木に科せられていた行動制限はすべて解除されました。
※積極的に参加者を殺して回るつもりはありませんが、最終的には優勝するつもりです。
 なぜなら、荒木を倒すことは何人(なんぴと)にも不可能であると考えているからです。
※利用相手の候補は オインゴ>ジョージ>露伴たち>その他 です
※支給品が元々テレンスに勝ったときの景品である、という仮説は概ね当たっているようです。
※参加者詳細データ集には以下のことが書かれています。
 ・名前
 ・顔写真
 ・種族(人間、犬、吸血鬼、屍生人、柱の男など)
  また、波紋使いやスタンド使いであること。
  スタンド使いならスタンド名まで載っていますが、スタンドの能力までは載っていません。
 ・参戦時期(wikiの参戦時期まとめをより一般化したものです。参戦年月日が載っているようです)
 ・初期支給品(wikiの支給品情報>初期支給品一覧と同一の情報です。未だ不明の支給品も全て載っているようです)
 また、情報はすべてゲーム開始前のものです。
 ディオやエシディシがスタンド使いになったことなどは載っていません。
※テレンスはスタンドDISCの使い方を知りません。
 『ザ・ワールド』のスタンドヴィジョンも見たことが無いようで、関連には気づいていません。
 何か秘密があるとは思っているようですが、少なくとも『頭に刺し込む』という発想は今のところありません。
 テレンスに『ザ・ワールド』のスタンドが使いこなせるかどうかは不明です。
※アトゥム神の右足首から先は回収しました。
※ジョージ・シーザーと会話をしました(情報の交換ではありません)
※ダービー兄、ティッツァーノの死体を発見しました。
 生首がティッツァーノの物であることは確認していません。
 また、F・Fがティッツァーノに寄生していることにも気づいていません。
※DIOへの忠誠心は無くなりました。


※サウンドマンとリンゴォ・ロードアゲインの会話を聞いていました。
 両名の名前・目的を把握し、DIOの館に危険人物が集っていること、ナチス研究所に脱出を志す人々が集っていることを気に留めています。



[備考]
※E-4中央部にさまざまな音の張り付いた小石がばらまかれています。(リンゴォは引っかかっていません)
※E-4に放置されていたエルメェスのパンティは誰も発見していません。


サンドマンの不明支給品→三部15巻で、承太郎がテンパランスを焼き殺そうとしたときに使ったライター。普通、高校生はライター持ってない。



以上です。期限オーバーについて、重ね重ね申し訳ありませんでした。
そして投下した瞬間に誤字に気付く……orz

夜遅くに支援してくださった方、ありがとうございました。
矛盾点のご指摘があればお願いします。

124 ◆4eLeLFC2bQ:2010/12/15(水) 23:54:38 ID:mMoGBuHQ
ちょっと早めに…と思っていたら、結局ギリギリになってしまった

ジョルノ・ジョバァーナ、ブローノ・ブチャラティ、ホルマジオ、リゾット・ネエロ、グェス
仮投下します。

125 ◆4eLeLFC2bQ:2010/12/15(水) 23:56:49 ID:???
あの時…ズッケェロというギャングに襲われた時、ナランチャの靴を蝿に変え、ジョルノは言った。

 『蝿』は主人であるナランチャのところに戻ろうとしています

蝿は姿の見えぬナランチャを追い、ぐるぐると飛び回った。
ナランチャが死んでいないから、蝿は彼を捜し、飛び回った。

ならば、この状況は。


「そんな……………」

ホルマジオの報告を受けるや、説明も手短にジョルノはスタンドを出現させ、ジョージの服の一部を取り出した。
ただの布片だったそれはゴールド・エクスペリエンスに触れられ飛び回る蝿となる。

しかし……、蝿はどこへも飛び立とうとはしなかった。
その場でブンブンと旋回し、やがて疲れたのかテーブルの上へ着地した。
足を擦り合わせ、そこからもう動き出すことはない。


「ジョージさんは、死んだ、のか……?」

覇気のない声でブチャラティが呟き、それもやがて湖面に投げ入れられた小石のように静寂へと帰った。

「失敗、だったとか…ないよね……やっぱ……」

「…………………」

ジョルノは呆然とした表情のまま押し黙っている。それは彼の受けた衝撃の大きさを物語っていた。
先ほどまで、再会を微塵も疑わなかった人物の、突然の悲報。
それをあきらかにしたのは自らの能力。

リゾットは特に感慨もなく無表情のまま、ホルマジオは罰が悪そうに眉根を寄せる。
気遣わしげにグェスがジョルノを見つめるが、慰めることなどできはしなかった。
もうジョージは戻らない。それだけは覆せない事実なのだから。

「ジョルノ……」

ブチャラティの脳裏をよぎるのは、コロッセオでのジョルノの様子。
ジョージの言葉に動揺し、珍しく頬を紅潮させていた少年の姿だった。

「僕は……大丈夫です
 ホルマジオさんとグェスさんの話を聞きましょう」

「あ、あぁ、じゃあ、俺から話すが……」


ホルマジオとグェス、両名との情報交換には相応の時間がかかったが、
それを終えても尚ジョルノの表情は固く強張ったままだった。



  *  *  *  *  *

126ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/12/15(水) 23:58:00 ID:???
,   //丿ノヽ   ヽ
( / ノノ_::ノ  ノノ,,  彡
\|ノノ  ::  ___,"r´ヽミ
ミ/ .  ,._//;; ヽ,ノ\ミ
ゝ|、 ,),ヾ;;;  ̄;;;;;; ) ヽ \
  ( ,/,)ヽ;;;ヽ;;;  ,\  )    「フフ……波紋入りの支援は、
   .`´, ;; |,,ゝ 丿  /       黒かろう・・・・」
    \、 /ノ  .|;;;;
      .`ー、ヽ;;/;;;;;;;;;    
         `-´ ̄`----

127 ◆4eLeLFC2bQ:2010/12/15(水) 23:58:01 ID:???



「あたしの知ってる情報はこんなもんかな
 ホルマジオとも結構かぶっちゃってたけど……」

グェスが喋りつかれたのか水をグイとあおる。

「あぁ、ありがとう、グェス」

ホルマジオとグェスの語った情報、意外にも核心に触れるものが多い。
それが聞き手にまわっていた3人の共通した率直な感想であった。
特にグェス。荒木との接触、謎の日記の存在、首輪の解体実験。
小心を絵に描いたような彼女が、結果的にそうなっただけかもしれないが、これほど情報を得ているとは。

どの話題から話し合うべきか、二人のリーダーは思案したが先に口火を切ったのはリゾットだった。

「案外、荒木と接触した人物は多いようだな」

直接対峙した際にも、荒木は手を下そうとしなかった。
その事実からリゾット達は荒木に関して、こうして『会話』によって議論している。
まだ核心に触れることはできていないという事実の裏返しでもあったが。

「最初に舞台で姿を現して以降、
 グェス、花京院、フーゴ、ジョルノ、岸辺、一応シーザー、ジョージ
 加えて、参加者になったというテレンス
 他にもいる可能性があるが、これだけで計8人だな」

同じように思っていたブチャラティも言葉を繋いだ。
ここが舞台であるなら荒木は司会者。
ここが牢獄であるなら荒木は監視者。
それらの認識を覆すほど、奴は積極的に介入をしている。

「この中で気になるのは、支給品から接触に繋がった二組と異なる……」

コツコツと筆記具を打ち、リゾットが名簿を指し示す。
ジョルノ、ブチャラティと同列に並ぶ彼の名を。
どちらに傾くこともできず彷徨っていたところ武器を支給されたという“パンナコッタ・フーゴ”の名を。

ホルマジオとグェスから話を聞いていた時点で苦い顔をしていたブチャラティが自らの部下を名指しにされ、はっきりと当惑の表情を浮かべた。

将来の自分はフーゴを一人残し組織を離反したと、グェスは告げた。
リゾットの肯定もあり、理解した。それは将来の『事実』なのだろう。
組織のあり方、自らの正義に対する疑念は元よりあった。
もしも「きっかけ」となるなにかが起きたなら……、想像することは容易い。
その話が本当だとして、ついてこなかったフーゴを責める気持ちはブチャラティにはない。
むしろ彼に『自分だけがついていけなかった』という禍根を残しただろうことを心苦しくも思う。

だが、大勢の人間を傷つけたこと、それを庇う理由にはならない。

荒木にそそのかされ、二人を撃とうとした。
疑わしきを許せず、料理人を殺害した。
その後も再びグェスが撃たれそうになったという。
今まさに他の誰かが傷を負わされている最中かもしれない。

128 ◆4eLeLFC2bQ:2010/12/15(水) 23:59:29 ID:???
「フーゴに会ったとき、お前はどうするつもりだ?」

リゾットは問うている。
殺してもかまわないのかと。
それは一度は優勝を目指したホルマジオを許したからこその問い。
本来の彼ならば、問おうとすらしなかった。

『裏切り者には死を』

それが彼らの生きてきた世界。自らに、他人に敷く掟。
そこに護衛チーム、暗殺チームという違いはない。
ならば、ブチャラティの答えは……。


「……できれば、対話によって解決したい」


不可能ならば、手にかけることもやむなし。
チームを背負う者が仲間を傷つけるわけにはいかない。
今、仲間はこのゲームからの脱出を共に目指す者達。

「と、いうわけらしい、ホルマジオ」

話をふられた彼はしょうがねぇなーとぼやいたが、自身への後悔もあるのだろう、概ね賛成のようだった。


「“日記”の存在は奴の隙となりうるだろうか」

荒木のフーゴへの接触がイレギュラーだということは疑いようがない。
支給品による『お遊び』とも、所在を見破られたことによる『種明かし』とも違う。
しかしその目的は、日記の奪還か、殺し合いの加速か、あるいはその両方だったのか。

「“日記”とはいっても白紙だったのだろう?」

うんうんとグェスが頷く。

「けれどわざわざ取り返すために動いたということは、荒木にとって大事なものなんでしょう
 まぁ、二度も取られるような馬鹿な真似をするとは思えませんが」
「そうだろうな……」

自分達をただ殺すためにここへ集めたわけではない。
その違和感はここへ来てから誰もがずっと感じている。

殺し合いを強要する首輪の存在・禁止エリア。
ばらばらの時間から集められた参加者達。
圧倒的な力を持ちつつも、『駒がゲームの中で死ぬ』ことを望む荒木。

「荒木の『目的』…か……」

すべての疑問は荒木に通ず、とでもいうべきか。
巨悪の思想は参加者達に状況の断定を許さず、その思考さえも殺させる。

「……僕は、ここで出会った露伴さんが荒木に少し似ていると感じました
 もちろんあの人にはあの人なりの正義やこだわりがあって、荒木なんかとは比較したくないんですが
 すべてに興味を持ち、すべてを愉しむ姿勢というんでしょうか
 許しがたい、吐き気を催す邪悪であると同時に、
 損得を考えない純真さのようなものを奴には感じたんです」

グェスさんはどう思います?
そう尋ねられたグェスは自分への質問を予想していなかったらしく、あたふたと答えた。

「そ、そういわれたらそうかもしれないけど、あたしはほとんど話してないし
 必死だったし、よく覚えてないかも……」

129 ◆4eLeLFC2bQ:2010/12/16(木) 00:01:07 ID:???
予想通りといえば予想通りの反応にリゾットは溜息を漏らした。
あくまでチームの和を乱すことのないよう、ひっそりと。
ブチャラティもジョルノもその様子に気付かなかったが、付き合いの長いホルマジオは
リーダーの思うところを鋭く察知し、グェスに助け舟を出す。

「とりあえず、テレンス・T・ダービーの拉致…っあー保護っつー方がいいか
 それが先決じゃねえか?」

グェスが同じ能力だからとか、女だからとかいう理由で贔屓してやるつもりはない。
だが彼女をここへ連れてきたのは自分。
そうしたからには彼女の発言、彼女の行動に対して自分が責任を持つ。

「賛成です。彼が死んでしまえば『勝負』を挑むことすらできなくなりますからね」


こうして当面の目標が打ち立てられた。

1、テレンス・T・ダービーの保護
2、首輪無力化の情報・技術を持っている者との協力
3、荒木と直接接触した人物との情報交換

そして、組織と関わりがある可能性の高いディアボロとの接触。

「テレンスと面識のある3人に捜索を頼みたい
 入り口を封鎖し合図によって判別するから見張りはいい」
「ジョルノを介して追跡、生死の判別はできるが、次の放送を目安に戻ってきて欲しい」

不測の事態に備え、ジョルノが『探知機』に変えた小石がそれぞれに配され、
さらに保険として各人の衣服の一部がジョルノに集められる。
所持品をすべて失っていたグェスにはペッシのデイパックが手渡された。
黒くシミの残るそれを正視できずに受け取ったグェスだったが
やがて神妙そうな顔でそれを背負い込む。
自分のものと交換してやろうかと準備をしていたブチャラティの好意は無用だったようだ。


「では、次の放送前に、また」



急に人が減り、静かになったナチス研究所で、向かい合う二人。

「協力者はここへ集うと思うか?」

3人の出ていった方向を見つめていたブチャラティはリゾットの深い瞳へ向き直った。
全く別の意志を持っているかのように右手が紙片へ文字を綴る。


『俺のスタンドで首輪の解除を試したい』


「信頼できるやつに情報拡散を頼んだ
 そろそろ効果が出てくる頃とは思うが……」

『了解』と答えるリゾットにとって、どちらも本心には違いない。

「いまは待ちか……」

「だろうな」

その後も荒木について、テレンスについて、それとない会話をしながらも
二人が見据えているものは次なる標的。超えるべき壁。

ほどなくして2人の眼前には、実験用工具と3つの銀環が並んだ。
スージー・Q、ワンチェン、そしてペッシを縛っていた首輪。


…ペッシ、側にいながらお前を死に追いやったのはエシディシという怪物でも荒木でもない、この俺だ。
『責任を取る』などと宣言するつもりはない、すべてが終わった後、報告してやる。
だからそこで心待ちにしているがいい、『俺達』の勝利を……!!



  *  *  *  *  *

130 ◆4eLeLFC2bQ:2010/12/16(木) 00:02:30 ID:???



ナチス研究所を発ち、5分余り。
ジョルノの横には、別の方向へ向かったはずのグェスが並んでいた。

「どうして僕に付いてきたんです?」

「えっ…と、あたしホルマジオみたいに自分のこと小さくしたりとか、できないし
 でもリゾットのいるところであんたに付いていきたいっていったら
 効率が悪いとかなんとかいわれて絶対反対されそうだったから…その……」

黙って後ろをついてきたことをすぐさまジョルノに見破られ、グェスは申し訳なさそうに身を縮める。

「あそこでブチャラティ達と一緒に待機していたほうがいいんじゃないですか?
 先ほど話に出たように、エシディシが今どこにいるかはわからないんです
 奴とはブチャラティと二人がかりでも優勢にはならなかった
 あなたを庇いながら戦って、『絶対』を約束することはできません」

『試合』に勝つ条件を理解しているジョルノにとり、エシディシは障害でこそあれ敵ではない。
だが彼はあえてグェスを突き放すようにいう。余裕がないのは、事実なのだから。

「覚悟はできてる……とは言えないかな……
 やっぱり、死ぬのは怖いし……」

グェスの顔は拭えぬ不安に覆われている。
信じようとしてすべてに裏切られた。その経験は彼女の心に深い影を落としていた、……だが。

「ホルマジオに怒られたんだよね、『“死にたくない”じゃなくて“生きたい”だろう』って
 で、その後、ペッシって人が死んでるのを見つけて、
 あたし思わず考えたんだよね、あの人は“死にたくなかった”のかなって
 そりゃ死にたかったはずないよね。すごく悔しそうな顔してた
 でも自分が死ぬってわかったとき、仲間に、敵だったあんたたちにも言葉を遺した……
 それって“死にたくない”じゃなくて“生きたい”ってことなんじゃないかなって思って」

「………………」

「あー…、いや、何言ってるのかわかんないってのは自分でわかってるんだけど
 ともかくっ、自分が大切だと思う誰かのために頑張ってみるってのが“生きたい”ってことかなって…
 死にたくないだけだったら地図の端っこの方にいれば済む話だし
 最後にはやっぱり、死んじゃうかもしれないけど……
 だから死にたくはないんだけど、なんの役に立てないのも嫌で……」

自分で話していて、落とし所がわからなくなったのだろう、尻切れ蜻蛉になる彼女に
ジョルノは寂しげな微笑で応じた。

「『意志』は届くと、僕も信じていますよ」

『これから知ればいい』と告げた人はもういない。
あの人のことも、これから知っていければいいと、一瞬期待してしまった。
淡い夢は永遠に叶えられぬまま。
やがてこんなふうに思ったことすら風化していくのだろう。

「あなたの願いが叶うよう、僕があなたを守ります」

131 ◆4eLeLFC2bQ:2010/12/16(木) 00:03:59 ID:???
けれどグェスには未来がある。
彼女が気にかける人は生きている。
大切にしたいと思った人を、大切にして生きていける未来がある。
それを切り開こうとする意志を、ジョルノは否定できない。

パァッとグェスの表情が輝いた。

「あたしが、大切にしたいって思うのは、このチームもなんだけどさ」

自分勝手だと思われたくないのか、彼女は口をとがらせながら言う。
それが嘘だとしても、ジョルノには嬉しかった。

「行きましょうか、グェスさん」


並んで歩く女性は、小さな希望にすがりついて恐怖する本心を押さえつけている。
それが、今のジョルノには眩しくさえ見えた。

ジョージ・ジョースターの死を知って以来、胸にできた『しこり』が消えない。

生まれてこのかた、両親からの愛情を覚えた日はなきに等しい。
母親も義父も人の親として、最底辺の人間だった。
名も知らぬギャングに憧れ心を救われてからは『親』のことなど気にもかけなかった。
それなのに、ここへ来てから『ディオの血統』に翻弄され続けている。

ある人は神を愛するかのように全幅の信頼を預けた。
ある人はDIOの息子と協力は出来ないと吐き捨てた。
ある人はディオの息子ならば自分の孫だと慈愛の視線を向けた。

それに……、とジョルノは左肩に意識を集中させる。

この肩にある『星型の痣』はジョースターの血統の証だとプッチ神父は言った。
実の父親を写真でしか見たことのなかった自分の前に、突然現れた大勢の『祖先』達。
『気配』を発したドナテロ・ヴェルサスも、グェスの話した空条徐倫も自分の血族なのだろうか。

結局、プッチ神父はすべてを語らず亡くなった。
なぜ自分の父親である写真の『DIO』に痣があり、現在のディオにはそれがないのか。
ディオはジョースター卿を義父だと言っていた。
ジョースター卿も血の繋がった孫だとは思っていなかった。
その謎について聞いておいたほうがよかったのだろうか。

一方でジョースター卿の死について、自分の中では正常と思えない仮説が出来つつある。

『気配』を一瞬でも感じなかったのは、苦しみを感じる間もなく亡くなったからだろう。
おそらくジョースター卿はその加害者を『敵』だと認識できなかった。
凄まじい能力を持つ殺人鬼が旋風のようにその命を奪っていったのか、
あるいは『信頼する息子達』がほくそ笑みながら手を下したのか…。

考えすぎだ、と頭を振ってもドス黒い疑惑は思考から立ち去ってくれる気配がない。


―お前に夢を見せた『祖父』は愛する息子達に誅殺されたのだ。


そう囁く声がねっとりと心を絞めつける。
荒木を倒すことを第一に考えなければならないこの局面で。


(今は、テレンスを見つけることだけを考えていればいい)


荒木の居場所をも見破った黄金の精神は、――若干15歳の少年の張り詰めた心は――、意外にも、脆い。

132 ◆4eLeLFC2bQ:2010/12/16(木) 00:05:33 ID:???
【F-2 ナチス研究所 研究室/1日目 夜中】

【新生・暗殺護衛チーム(現在メンバー募集中)】

【ブローノ・ブチャラティ】
[スタンド]:『スティッキー・フィンガーズ』
[時間軸]:護衛指令と共にトリッシュを受け取った直後
[状態]:トリッシュの死に後悔と自責、アバッキオ・ミスタ・ジョージの死を悼む気持ち、リゾットの覚悟に敬意
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、シャーロットちゃん、スージーの指輪、スージーの首輪、ワンチェンの首輪
    包帯、冬のナマズみたいにおとなしくさせる注射器、ジョルノの『探知機』となっている小石
[思考・状況]
基本行動方針:打倒主催、ゲーム脱出
0.スティッキー・フィンガーズを用いて首輪の無力化実験。
1.ここで首輪解除・打倒荒木の協力者を待つ。
2.フーゴ……。
3.いずれジョナサンを倒す。(殺害か、無力化かは後の書き手さんにお任せします)
4.ダービー(F・F)はいずれ倒す。
5.ダービー(F・F)はなぜ自分の名前を知っているのか?
6.スージーの敵であるディオ・ブランドーを倒す
[備考]
※パッショーネのボスに対して、複雑な心境を抱いています。
※波紋と吸血鬼、屍生人についての知識を得ました
※ダービー(F・F)の能力の一部(『F・F弾』と『分身』の生成)を把握しました。
※参加者が時を越えて集められたという説を聞きました。納得済みです。
※エシディシの頭部に『何か』があると知りました。
※リゾット・ホルマジオ・グェスと詳細な情報交換をしました。
※ブチャラティが持っている紙には以下のことが書いてあります。
①荒木飛呂彦について
 ・ナランチャのエアロスミスの射程距離内にいる可能性あり
  →西端【B-1】外から見てそれらしき施設無し。東端の海の先にある?(単純に地下施設という可能性も) →G-10の地下と判明
 ・荒木に協力者はいない?(いるなら、最初に見せつけた方が殺し合いは円滑に進む) →協力者あり。ダービー以外にもいることが確実。
②首輪について
 ・繋ぎ目がない→分解を恐れている?=分解できる技術をもった人物がこの参加者の中にいる?
 ・首輪に生死を区別するなんらかのものがある→荒木のスタンド能力?
  →可能性は薄い(監視など、別の手段を用いているかもしれないが首輪そのものに常に作用させるのは難しい)
 ・スティッキィ・フィンガーズの発動は保留 だか時期を見計らって必ず行う。
③参加者について
 ・知り合いが固められている→ある程度関係のある人間を集めている。なぜなら敵対・裏切りなどが発生しやすいから
 ・荒木は“ジョースター”“空条”“ツェペリ”家に恨みを持った人物?→要確認
 ・なんらかの法則で並べられた名前→国別?“なんらか”の法則があるのは間違いない
 ・未知の能力がある→スタンド能力を過信してはならない
 ・参加者はスタンド使いまたは、未知の能力者たち?
 ・空間自体にスタンド能力?→一般人もスタンドが見えることから

【以下はリゾットのメモの写し】

[主催者:荒木飛呂彦について]
荒木のスタンド → 人間ワープ…見せしめの女の空中浮遊、参加者の時間軸の違い(並行世界まで干渉可能)
         → 精密機動性・射程距離 ともに計り知れない
開催目的 → 不明:『参加者の死』が目的ならば首輪は外れない
           『その他』(娯楽?)が目的ならば首輪は外れるかもしれない 
※荒木に協力者がいる可能性有り

133 ◆4eLeLFC2bQ:2010/12/16(木) 00:06:43 ID:???
【リゾット・ネエロ】
[スタンド]:『メタリカ』
[時間軸]:サルディニア上陸前
[状態]:頭巾の玉の一つに傷
[装備]:フーゴのフォーク
[道具]:支給品一式、首輪の設計図(ジョセフが念写したもの)、ダービーズ・チケット、妨害電波発信装置
    ペッシの首輪、重ちーが爆殺された100円玉(一枚)、ジョルノの『探知機』となっている小石
[思考・状況] 基本行動方針:荒木を殺害し自由を手にする  
0.殺し屋として、前を向いて歩く
1.ブチャラティと共に首輪の解除実験
2.首輪を外すor首輪解除に役立ちそうな人物を味方に引き込む。
  カタギ(首輪解除に有益な人材)には素性を伏せてでも接触してみる(バレた後はケースバイケース)。
3.荒木に関する情報を集める。他の施設で使えるもの(者・物)がないか、興味。
[備考]
※盗聴の可能性に気が付いています。
※フーゴの辞書(重量4kg)、ウェッジウッドのティーセット一式が【F-2 ナチス研究所】に放置。
※リゾットの情報把握
承太郎、ジョセフ、花京院、ポルナレフ、イギー、F・Fの知るホワイトスネイク、ケンゾー(ここまでは能力も把握)
F・F(能力は磁力操作と勘違いしている)、徐倫(名前のみ)、サウンドマン、山岸由花子(名前のみ)
※ブチャラティ(ジョルノ)・ホルマジオ・グェスと詳細な情報交換をしました。
※リゾットのメモには以下のことが書かれています。
[主催者:荒木飛呂彦について]
荒木のスタンド → 人間ワープ…見せしめの女の空中浮遊、参加者の時間軸の違い(並行世界まで干渉可能)
         → 精密機動性・射程距離 ともに計り知れない
開催目的 → 不明:『参加者の死』が目的ならば首輪は外れない→この線は薄い
           『その他』(娯楽?)が目的ならば首輪は外れるかもしれない 
※荒木に協力者がいる可能性有り

【以下ブチャラティのメモの写し】

①荒木飛呂彦について
 ・ナランチャのエアロスミスの射程距離内にいる可能性あり
  →西端【B-1】外から見てそれらしき施設無し。東端の海の先にある?(単純に地下施設という可能性も) →G-10の地下と判明
 ・荒木に協力者はいない?(いるなら、最初に見せつけた方が殺し合いは円滑に進む) →協力者あり。ダービーにもいることが確実。
②首輪について
 ・繋ぎ目がない→分解を恐れている?=分解できる技術をもった人物がこの参加者の中にいる?
 ・首輪に生死を区別するなんらかのものがある→荒木のスタンド能力?
  →可能性は薄い(監視など、別の手段を用いているかもしれないが首輪そのものに常に作用させるのは難しい)
 ・スティッキィ・フィンガーズの発動は保留 だか時期を見計らって必ず行う。
③参加者について
 ・知り合いが固められている→ある程度関係のある人間を集めている。なぜなら敵対・裏切りなどが発生しやすいから
 ・荒木は“ジョースター”“空条”“ツェペリ”家に恨みを持った人物?→要確認
 ・なんらかの法則で並べられた名前→国別?“なんらか”の法則があるのは間違いない
 ・未知の能力がある→スタンド能力を過信してはならない
 ・参加者はスタンド使いまたは、未知の能力者たち?
 ・空間自体にスタンド能力?→一般人もスタンドが見えることから

134ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/12/16(木) 00:07:08 ID:???
  ,ノ^ヽ、    _...  -――――- ..__
  r'゙ニ=-`ヽ>rィ´/_〃_∠__/ ,. ‐''"  _´"ニ=- .._
 ,.、_ ̄⌒ Y´ ,. ‐''"´ ̄´~"'''''‐ニ_ー<´   _ - ‐`丶、
 辷-三{}ニ/ _ -‐ ニ..,,_‐-   `,>`'<_ニ,,二,,_―_\
 ` ̄r┴_'゙ _/            /    /´  ´"'' -ニ__\
、__ _厂r‐''" ,.ニ、= ...__     _=     /           `ヽ.ヽ
ー「7''" ̄/   ヽ ̄´´""''''ー、f   _,/               ', j}
_ニ|/'-、/   ー-、 ヽーー---/´   {ー-===._-、       ,.  V
 7穀 ヽ (乙入 ヽ_,..r''′     ヽ._  \ヽ、   /     |
__(/、 一ヘ  く            、⊥エェ_,_ヽ. `く´ ノ    |
ニイ、)ー-、/〉 {/             /´ >,`‐゚‐' Y,`-イ ′    ノ|
  { ミ:ー_人_,/〕ヽ      /    '゙ _^ニ=、′!、  / j
  ∨厂    ,/   }      |    ´"/´´¨   !ヽ,∠ニ=ァ'
  ノ,/    /′   l        |     i{         「ージヌー
/     :!    釗      !       ヾ        ',゙`'/`
       {    釗      |         ,.  ''"  V
      ,l    !      |          /´      >
    /      ト、     {        `ーニ ̄_ ィ´
 、 /          l \        ー=_:::ニニ,二,⌒ン
  \       /!   \      、``ー-ニィ/
   \     〈 ヽ.   \     `ー- 、.ノ   『支援した』
      \    }  `丶、  \         /     なら使ってもいいッ!
        \,,ノ      `>、ヽ、   _/
       ,r''__\_       /ヽ ` ̄ ̄
     //(9}/::ヽ    /::::::ヽ.._... --┐
    /,.イ,ニY〃::::::::〉ーく:::::::::/        {
    / ヒ:シ//ヽ_/::::::::::::::Y´         `、

135 ◆4eLeLFC2bQ:2010/12/16(木) 00:07:41 ID:???
【F-2 ナチス研究所を出たところ/1日目 夜中】

【ジョルノ・ジョバァーナ】
[スタンド]:『ゴールド・エクスペリエンス』
[時間軸]:メローネ戦直後
[状態]:背中にダメージ(小)、精神疲労(大)、トリッシュの死に対し自責の念 、リゾットの覚悟に敬意、ジョージの死に衝撃
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜3、ブチャラティ・リゾット・ホルマジオ・グェスの衣服の一部
[思考・状況]
0.グェスと共にテレンスを見つける。
1.首輪解除・打倒荒木の協力者を捜す。
2.『DIO』は吐き気を催す邪悪で、『祖父』は息子達に殺されたのでは?
3.フーゴ……。
4.トリッシュ……アバッキオ…ミスタ…!
5.ディオが自分の父親、か…→未来のDIOには不信感。
6.他のジョースター一族が気になる。
7.エシディシと吉良と山岸由花子をかなり警戒
[備考]
※ギアッチョ以降の暗殺チーム、トリッシュがスタンド使いであること、ボスの正体、レクイエム等は知りません。
 →リゾットとの情報交換によって暗殺チーム、リゾットの知っている護衛チームの将来を知りました。
※ジョナサンを警戒する必要がある人間と認識しました。
※参加者が時を越えて集められたという説を聞きました
 (他の可能性が考えられない以上、断定してよいと思っています。ただし、ディオが未来の父親であるという実感はありません)
※ラバーソウルの記憶DISCを見、全ての情報を把握しました。
※ダービーズアイランドに荒木がいることを知りました。
※ディオがスタンド使いになった事を知りました(能力は分かっていません)
※エシディシの頭部に『何か』があると知りました。
※リゾット・ホルマジオ・グェスと詳細な情報交換をしました。
※どこへ向かうかは次の書き手さんにおまかせしますが、ホルマジオとは別の方向です。


【グェス】
【時間軸】:脱獄に失敗し徐倫にボコられた後
【状態】:精神消耗(中程度まで回復)、頬の腫れ(引いてきた)
【装備】:なし
【道具】:基本支給品(デイパックにペッシの血のシミ)、ジョルノの『探知機』となっている小石
【思考・状況】基本行動方針:ゲームに乗った? → 生きたい、生きていたい
0.ジョルノと共にテレンスを見つける。
1.首輪解除・打倒荒木の協力者を捜す。
2.花京院・徐倫(会話可能ならフーゴも)に再会したら、関係を築いていく努力をしたい
【備考】
※フーゴが花京院に話した話を一部始終を聞きました。
※ダービーズアイランドを見ましたが、そこに何かがあるとは思ってません。→ダービーズアイランドが遠巻きに見た島だとは分かっていません。
※ホルマジオの持っている情報(チームの存在、行動の目的など)を聞きました。
※リゾット・ブチャラティ(ジョルノ)と詳細な情報交換をしました。
※役に立ちたい、頑張ってみたいと思っていますが、本心では再び裏切られること、死ぬことを恐れています。

136 ◆4eLeLFC2bQ:2010/12/16(木) 00:09:10 ID:???
【ホルマジオ】
[時間軸]:ナランチャ追跡の為車に潜んでいた時。
[状態]:精神的疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、万年筆、ローストビーフサンドイッチ、不明支給品×3(未確認)、ジョルノの『探知機』となっている小石
[思考・状況]
基本行動方針:荒木を『ぶっ殺す』!
0:テレンスを見つける。
1:首輪解除・打倒荒木の協力者を捜す。
2:踊ってやるぜ、荒木。てめえの用意した舞台でな。だが最後は必ず俺らが勝つ。
3:リーダーが決めたんなら、ブチャラテイたちとの決着は荒木を殺した後でいい。ペッシのことも勘違いだったし。
4:ボスの正体を暴く!だがその処置は仲間と協議の上決める。
[備考]
※首輪も小さくなっています。首輪だけ大きくすることは…可能かもしれないけど、ねぇ?
※サーレーは名前だけは知っていますが顔は知りません。
※死者とか時代とかほざくジョセフは頭が少しおかしいと思っています。→時間軸のずれについては納得しました。
※チョコラータの能力をかなり細かい部分まで把握しました。
※グェスの持っている情報(ロワイアルに巻き込まれてから現在までの行動、首輪に関する情報など)を聞き出しました。
※リゾット・ブチャラティ(ジョルノ)と詳細な情報交換をしました。
※どこへ向かうかは次の書き手さんにおまかせしますが、ジョルノ達とは別の方向です。

137ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/12/16(木) 00:10:14 ID:???
支援

138 ◆4eLeLFC2bQ:2010/12/16(木) 00:14:07 ID:???
支援ありがとうございました!爆笑するやら、嬉しくなるやら(*´ェ`*)
以上で投下完了です。

タイトルは、まだ迷っているので本投下までに決めます。

考察が多かったので、矛盾がないか不安だなぁ…
誤字脱字と合わせてご指摘お願いします。

139ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/12/16(木) 00:33:41 ID:???
投下乙です
なんかジョルノに変なフラグが立っちゃってるような……怖いからあまり考えたくないですね
気になった転倒は特にありませんでした。

140ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/12/16(木) 00:51:36 ID:???
投下お疲れ様です
気になった点が一つだけ、リゾットが音石に関してなんにも具体的に言及しなかったことがすこし不思議に思えました
特に自分で首輪実験を起こしながらそれに対してなんもないのはなんか変かなーと
その他は特に問題ないと思いますので、参考にしていただければ幸いです
本投下待ってます

141ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/12/16(木) 02:48:05 ID:???
投下乙です

内容とは直接関係ないのですが、戦闘パートに入ったら荷物を確認する暇もないだろうし
そろそろジョルノ・ホルマジオが不明支給品が何なのか確かめても良いように思いました
個人的にちょっと気になっただけなのでスルーして下さっても結構です
その他気になった点はありませんでした

142ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/12/16(木) 02:58:10 ID:???
確認した描写はあえて書く必要はないですよ
あえて書かないことで、前もって確認して『いた』ということにして、実際に使う段階で始めて登場させるという手法が使える
というか、書き手としてはその方が自由度が上がって嬉しいかも

もちろん、『こんな便利な物持っていたのなら、なぜあの場面で使ってなかったのか?』
みたいな矛盾が発生しないよう、細心の注意が必要だけどね

143ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/12/16(木) 22:26:56 ID:???
投下乙です。

ジョージの服の一部ですが、アバッキオがディアボロのデスマスクを残したとき
石碑のかけらが元の場所に戻った時みたく、ジョージ(の服)に向かわないんですかね?
まあそうだとしてもジョルノは感覚でジョージの死亡を悟るだろうから展開的にはあまり変わりないでしょうけど

144 ◆4eLeLFC2bQ:2010/12/17(金) 13:11:01 ID:???
みなさまご指摘ありがとうございました。

>>140 音石と由花子についてリゾットの考察を加えます。
>>141.142 不明支給品は何かを明かさず、確認済みに訂正します。
>>143
すみません。能力を主に追跡に使ったのはズッケェロ戦だけかと思い込んでいました。
展開をあまり変えない範囲で変更します。

他にも、グェス→フーゴの考察を追加し、
ジョルノの思考は少し突き抜けすぎている気がするので、
ソフトにするか、描写を増やすかしようと思います。

日曜に本投下の予定です。
他にも気になった点がありましたら、ご指摘お願いします。

145 ◆yxYaCUyrzc:2010/12/22(水) 19:56:49 ID:dUrmSfbQ
F・F仮投下開始します。

146 ◆yxYaCUyrzc:2010/12/22(水) 19:58:22 ID:???
突然だが、読者の皆様は『決着をつける』とか『ケジメをつける』とか、そういった事を経験した事はあるだろうか?

延長十二回裏二死三塁での左中間。間違いなく『決着がついた』と言ってよい。
二ヵ月以上音信不通のガールフレンドに電話をかける。これも『ケジメをつける』と言って差し支えないだろう。
つまり、筆者が思うにこれらの『決着』や『ケジメ』とは対人、あるいは対物の場合には日常に起こりうる些細な事柄なのだ。
では、この些細な事がどうしても出来なくなる、そんなことがあるのか?あるとすればどんな時なのか?これは先の考えを逆転させれば容易に答えがわかるだろう。
要するに『対自分』の場合にはこれらの心理的又は肉体的な駆け引きは非常に難しいものになる。
なぜ?なんて質問はここまで来ると愚問に聞こえる。それでも一応答えておくならば、結果を設定できないから困難なのだ。
たとえば上記の二つの例。これは試合の勝敗やガールフレンドとの別れあるいは復縁といった『結果』が明確である。
だが対象を自分に置き換えた時その『結果』、言い換えるならば『勝利の条件』の線引きが曖昧になる。
もちろんこれはその時々の心理状態等々によって変わる場合もあるし、周囲の環境に合わせて随時変化させなければならない場合もあるが、重要であることには変わりない。
まして、このバトル・ロワイアルというゲームにおいては『勝利』とは『生きる事』だと皆に共通する答えが明確である。つまり『如何にして生きたのか』が『条件』となるのだ。
過程や方法などどうでもよい?そんな者は早々にこのゲームを離脱していくだろう……多少の例外を除いては。
もっとも、自分の正義を明確にさえしていれば、この線引きも対人の時となんら変わらないし、それこそ過程や方法を無視しても差し支えないのだが。

さて――前置きが長くなったが、今回はこの『ケジメ』をテーマに話をさせていただこう。
登場人物は……いや、そもそも人物と表現していいのかも曖昧だが……ここでは便宜上『彼女』としよう。
彼女は先の理屈で言えば、自分の正義を見つけられず勝利の条件を曖昧にしたまま周囲を、何よりも自分自身を騙し騙ししながらここまで生きてきた。
結果として生き延びてはいるが、それは決して勝利と呼べるものではなかっただろう。
はたして彼女はこれからのバトル・ロワイアルの中で勝利を掴む事が出来るのか?そんな話――

* * * * *

147 ◆yxYaCUyrzc:2010/12/22(水) 20:00:23 ID:???
彼女は現在、ティッツァーノの頭部に残ったわずかな水分だけを頼りに生きている。
言うまでもないが死亡した人間の記憶やら知性やらは取り込むことが出来ず、彼女は今の宿がどんな戦いを経てこうなったのかを知らない。
まあ、知ったところで今更彼女の何が変わる訳でもないのだが。
そして、テレンス・T・ダービー(彼女は彼の名前どころか顔さえも知らないけれども)をやり過ごして現在に至る。

……と、ここまではまぎれもない事実である。

さて、ここで恐縮だが少々違う話をしよう。
彼女は攻撃の際に自分の指先を銃身の様に変化させられるのはご存じだろうか。物品の収納のために胸を大きくしたこともあるがそちらは今は置いておこう。
かつては指の先端に切込みを入れてそこから己を射出させるだけだったが、後に彼女が成長したためか指先をオートマチック拳銃の様に変化させて戦っていた。
それにより射撃の精度や威力を向上させていると考えられる。もっとも、真相は彼女の弾丸を受けたものにしか証言できないが。

さて、何が言いたいかというと、彼女は自身の能力を向上あるいは補うために肉体の形状を変える事が出来る訳だ……おっと、十中八九は出来る筈である。出来ると断言すべきではないだろう。
とにかく、知性の素晴らしさを友人達に話すような彼女がそれをこの場で応用しない手はない。誰だってそーする、かどうかは分からないが少なくとも筆者はそーする。
もちろん自動車のような複雑なものになる事は不可能だが車輪が四つ、いや三つあれば十分。自分の肉体だから駆動も旋回も自由に行える。

――そんな訳で現在の彼女は長髪の青年の首から小さな車輪を三つ生やした、マンガだかアニメだかのキャラクターの様になっている。

しかし、先に話した彼女の身体ではそんな状態、いや形態と呼ぶべきか――に変化するだけの肉体が、つまり水分がとてもあるとは言えない。では、なぜ?
この問題を解決させるためには、彼女が決して手ぶらで怪人と戦闘を行っていた訳ではない、という事を思い出していただければ良いだろう。
三度目の放送が空から聞こえてきた時、彼女は反射的に目を泳がせていた。視界に入ったのは先程まで自分の肩にかかっていたデイパック。ここまで話せばその後の展開を予想する事は簡単だろう。
ダービーをやり過ごした後(彼がデイパックを奪わなかったのは本当に幸いだった)必死の思いでボトルを開け、かぶりつくように口から、首からありったけの水を飲んだ。
残っていた三本のボトルを空にし、名簿と地図、そして携帯電話だけを体内に収納して『F・Fカー』が完成したのである。
加湿器はあると便利だろうが持っていけない。サイズが大きすぎるし、自分の弱点である電気を使わねば使用不可能と来ている。他のハズレ支給品と共に置いていくことにした。

さてこの『F・Fカー』、見た目は最悪だが移動の速度はそれまでの這う動きより数倍速い。接地する面も少ないから水分が地面に奪われる心配も格段に減った。
身体への負担は未だにあるが以前の比では無い。むしろ問題なのは精神への負担だろう。
思い人の生存(と宿敵の死)は把握できたが安否までは話してくれない。聞いたところでそれを信用できるかと聞かれれば、もちろんNOであるが。
そして重要なのは禁止エリア。D、F、Gという英単語、10、3、6、5という数字こそ聞こえたものの朦朧とした意識とデイパックを見つけた事による動揺では正確ななエリア、及び時間までは把握できなかったのだ。
首輪がない現状も頭をよぎったが荒木が何もしてこない訳がないと一蹴。
多くの人間を一堂に集める事が出来るようなスタンド使いがその生死を把握できない訳がない。エリアを横切れば容赦なく殺されるだろう――多分。
あるいは彼の気まぐれで生かされる?なんてことも考える事は出来るが、それは時間の無駄。今すべきは考察ではなく移動なのだと彼女自身が良くわかっている。

英単語と数字の組み合わせから目的地である湿地帯は無事だと考えて移動を開始するまでにはそう時間をかけなかった。
移動速度が速くなったとはいえ時速にすればせいぜい2キロから3キロ程度。禁止エリア作動の時間を考えればいくら安全といえど急ぐに越したことはない。

* * * * *

148 ◆yxYaCUyrzc:2010/12/22(水) 20:02:46 ID:???
さて、ここまでお話ししたが、聡明な読者諸君なら気付くのではなかろうか。
そう――彼女の『ケジメ』に一切触れていないのだ。これではただの奇天烈な車の誕生秘話でしかない。
だが慌てないでもらいたい。問題はここからである。

彼女が湿地帯に辿り着くまでに何も考えていない、なんてことは有り得ないだろう。と言うよりも彼女に限らず多くの参加者はその胸の内に不安や心配事がある筈である。

誰にも会えないまま何事もなく湿地帯に辿り着いてしまうのではないか?下手をしたらそのまま一人ひっそりとゲームを終えるのではなかろうか?
確かにこんな状況になってからはダービーを除いて生きた参加者と遭遇しなかった。
つまり『ケジメ』に対するきっかけを掴めないままでいたのだ。その事が彼女を不安にする。
他者を殺すこと?友人と話をすること?彼女のケジメのつけ方は彼女自身にしか分からないが、いずれにしても一人では考えがループするばかり。
乾いた大地に身を預けて寂しく命を終えようと考えたことも一度や二度ではない。だがその選択にも納得が出来ぬまま結局生きてきた。

……そんな苦悩が終始彼女を支配していた。それでも湿地帯に行かなければならない。そこに『辿り着くこと』を『ケジメ』だと自分に言い聞かせて必死に走り続けた。

そして――ついに出会った。参加者に。しかも二人。エリア範囲を考えて南西に一直線ではなく迂回するルートを選択した結果である。
しかし、生きた参加者ではなかった。今の宿主の様にこの場に来て死んでいった人間。現在の彼女のような首だけ、という状態ではないがひどい有様だった。
まるで何者かに『食われた』かの様な――あの怪物を連想させる死体だった。
これも何かの因果なのだろうか、などと考えたのはほんの一瞬だった。重要なのはこの二人分の死体をどうするか?である。
彼女ならば二つの『食べ残し』を繋ぎ合わせて一人分の肉体を生み出すことは問題なく行えるだろう。
どうしても足りない部分は仕方がない。本来の肉体が露出されることにはなるが消耗は限りなくゼロに近付く筈であるし、二足歩行というのは移動にせよ戦闘にせよ便利なものである。

ここでも問題となるのは彼女自身の心理面。
車となった現状、このままでも湿地帯に行く事は出来るだろう。
その方が『化け物』らしいし、何よりも最初に考えていたケジメのつけ方に限りなく近い。
その事が彼女に選択を躊躇わせていた。

再び『人間』になって湿地帯を離れて誰かと接触するべきか。
『化け物』として湿地帯にて誰かが来るのを待つべきか。
あるいは『人間として湿地帯に行くべきか』という第三の選択肢もある。
化け物として湿地帯を離れるのは賢い行いではないが、そうせざるを得なくなる可能性も無いとは言えない。

参加者と接触すればケジメをつけるきっかけにもなる。
しかし『湿地帯に行くこと』をケジメとしておきながらその選択は如何なものか。またしても自分に嘘をつくことになるのではなかろうか。
いや、そもそもここでの決断さえも『ケジメ』の一つなのではないか?ここでの選択が後々の人生(今やそんな言葉も信用ならないが)に左右するのではないか。

目の前の死体が巻いている首輪の事もある。自身の能力の制限の事も考えねばならない。彼女の苦悩は増えるばかりである。
しかしのんびりと考え込む時間がある訳でもない。この場には参加者が近付いてくる訳がないなんて断定は出来る訳がないのだ。


路上に落ちる三人分の肉片が再び動き出すのは、はたして何時のことか。

149 ◆yxYaCUyrzc:2010/12/22(水) 20:04:29 ID:???
【F-3北西部、マイク・Oとスカーレットの死体前/1日目 夜】


【F・F】
[スタンド]:『フー・ファイターズ』
[時間軸]:DアンG抹殺後
[状態]:身体ダメージ大(生首状態)、精神状態不安定(極大→大程度まで落ち着く)、F・Fカー状態
[装備]:なし
[道具]:名簿、地図、携帯電話(全て体内に所持)
[思考・状況]:
基本行動方針: 空条徐倫を生存させるために彼女を優勝させる
0.目の前の死体に対しどう行動するか?あと水が(もっと)欲しい
1.湿地帯へ向かい、ケジメをつける
2.ブチャラティチームとプッチの一味は敵と判断
3.ブチャラティ一行を始末できなかった事を後悔
4.余裕が出来たら自分の能力(制限)を把握しておきたい
5. もしも荒木が倒せるならば対主催に益がある方法で死ぬ
6.無力感と虚無感で打ちひしがれている(時間経過により少し和らいだ)
[備考]
※リゾットの能力を物質の透明化だと思いこんでいます。
※リゾットの知るブチャラティチームの情報を聞きましたが、暗殺チームの仲間の話は聞いていません。
※リゾットから聞いたブチャラティチームのスタンド能力についての情報は事実だと確信しました(ジョルノの情報はアレッシーの記憶よりこちらを優先)
※ジョルノに対してはある程度の信頼を寄せるようになりました。出会ったら……?
※ダービーとアレッシーの生前の記憶を見たので三部勢(少なくとも承太郎一派、九栄神、DIO、ヴァニラ、ケニーG)の情報は把握しました。
※エシディシは血液の温度を上昇させることができ、若返らず、太陽光に弱く、スタンドを使えると認識しました。 (太陽光が致命傷になることも把握)
※自分の能力について制限がある事に気がつきましたが詳細は把握していません。
※ディアボロの能力を『瞬間移動』と認識しています。
※参加者の時間のズレを何となく理解しました。
※アナスイが、脱出は不可能だと知ったときに殺し合いに乗りうるという事を把握しました。
※ティッツアーノとダービーのものであった肉片がF-3に散らばっています。
※ダービーの肉体は大半が焼失しました。
※FFが捨てた支給品(デイパック×2、壊れた懐中電灯、加湿器、メローネのマスク、カップラーメン)がF−3南部に落ちています。
※テレンスの顔は見ていません。
※ティッツアーノの生首の中で生存しています。首の付け根から車輪を生成して移動しています。
※第三回放送を聞きましたが、意識が朦朧としているので内容を把握しているかは微妙です。
 徐倫、アナスイの名前が呼ばれていないこと、プッチの名前が呼ばれたことだけは確認しています。
 →禁止エリア及び作動時間を正確に把握できませんでした。
※スカーレット、マイク・Oの死体の前にいます。二人ともほとんどラバーソールに食われた状態ですが二人の身体をくっつけて新たな一人として誕生することが出来そうです。
 また、首輪は二人の死亡により停止していますが首に巻かれたまま存在しています。また、彼らの支給品はラバーソールが持っていったため存在しません。

150 ◆yxYaCUyrzc:2010/12/22(水) 20:05:25 ID:???
以上で投下終了です。
空気化の回避と新しい身体の提供、というだけで内容のない話になってしまったorz
没ネタスレでFFに誰の肉体を与えるか議論していたようだが……意外!それは残飯(ラバソの)!
FFカーは独自の設定ですので議論の余地があると思いますが個人的には彼女はもっといろんな形態に変形しても良いと思うんだ……w
タイトルは例によって募集します。人間が車になる昔話ってあったっけ?w

151ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/12/23(木) 00:17:47 ID:???
FFカー!そんなのもあるのか

152ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/12/23(木) 00:23:04 ID:???
投下乙でした
遭遇・バトル以外にも物語は進んでるんだなぁと思います

人間が車になるって言う昔話は思い出せませんでしたが、妖怪なら「輪入道」(「片輪車」)ってのが居ますね
車輪の中に男(片輪車は女)の顔が付いていて、見た者の魂を取るっていうやつですが
何かばっちりな昔話があるといいですね

153ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/12/24(金) 00:14:30 ID:???
投下乙です。FFって色々変身できる可能性を秘めていたんですね
ミキタカほど自在に変身はできないでしょうけど……今後どんなFFが現れるのか楽しみです

人間が車って聞かれて人間機関車って呼ばれたランナーいたよなーとか思い出しました(調べたらエミール・ザトペックという名前らしいです)
輪入道と同じ妖怪ネタですが「朧車」なんてのもありますね
ビジュアル的には今のFFとクリソツなんですが由来があんまり結びつかないですね(牛車の場所取りに負けた貴族の恨みから生まれた妖怪らしいです)
日本昔ばなしのタイトルでも漁ってみようかな

154 ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/08(土) 01:07:47 ID:???
オインゴ、エシディシ 投下します。

155 ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/08(土) 01:08:50 ID:???
今夜は満月だった。
月はイイ、太陽と違って月は俺たちを受け入れてくれる。
所詮俺たちは闇に生きる生物、そう言う俺たち一族を慰めてくれているようだ。
そんなあいつは今夜も絶好調……いつも以上に美しく、可憐で、そして儚い。

掌の中の赤石をそっと掲げてみる。
光が何重にも反射し、その美しさは際立つ。思わず溜息が出るほどだ。
一族の悲願がこの手の中に、そういう感動もあるが純粋に美しさだけでもこの赤石は素晴らしい。

赤石と一族の野望。
そう、正確には『俺たち』の目的だったはずだ。

俺はカーズに黄金の意志を見た。
克服できない最大の敵、最大の弱点、太陽を超越する。
俺はそんなやつを尊敬していた。誰もが超えることを諦めていた壁に挑むあいつは、誰よりも眩しかった。
だから一緒に出てきた。やつが一族を皆殺しにしようと何も言わなかった。
やつのどでかい夢は、いつのまにか俺の夢にもなっていた。

俺はワムウのやつを気に入っていた。
やつは俺より遥かに若いがそんなのことはどうでもよかった。
やつの戦士としてのストイックさ、自分の肉体を極限まで痛めつけてまで何かを求めるあいつの姿に敬意を表していた。
俺も闘うことは好きだ。だがアイツはその闘いの中で何かを常に掴み取ろうとしていた。
俺にはそれができなかった。だから俺はそんなワムウが好きだった。

「今更何を思い出している……」

思わず口をついて出た言葉に自分自身驚く。
だがこれはまぎれもなく俺の本音だ。
俺は、迷っている。

人間とは……一体何だ?
そして俺たち一族とは……一体何なのだろうか?

人間、人間、人間……ここ数時間そのことばかり考えている。
人間の強さ、人間の存在、人間の素晴らしさ。
会う人間、会う人間皆そうだ。俺に訳知り顔でそんなことばかり言ってくる。

川尻早人、リンゴォ・ロードアゲイン、そしてオインゴ。

俺は視線をチラリと下に向ける。
風が心地いいと俺はコロッセオの外壁を登っていた。
俺を楽しませようとしているのか、それともただ単に話を聞いてほしいのか。
オインゴは必死に俺についてこようと脆くなったコロッセオの壁をよじ登っている。
震える体に鞭をうちながら、だ。

156 ◆vvatO30wn.:2011/01/08(土) 01:09:03 ID:???
支援

157 ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/08(土) 01:09:34 ID:???

俺への恐怖か、はたまたただ単に高所に脅えているだけなのか。
ただ最終的に、こやつが脅えてるもの、それは『死への恐怖』だ。
数時間前にはこの俺を驚かせるほどの啖呵を切った男が、である。

わからない……人間とは、理解できない。
どうしてお前たちはそんなにも脆い? どうしてお前たちはそんなにも弱い?
どうしてお前たちはそんなにも強い? どうしてお前たちは……立ち向かうのだ、抗うのだ?

カーズだったらこんなことで悩まないだろう。
やつは人間は下等生物、と割り切っている。あくまでやつにとって人間は食糧の食料。
それ以下でも以上でもない。
だから闘いにおぼれることはない。どれだけ人間に挑発されようともやつは淡々と、ただ殺すだけだ。

ワムウだったらどうするだろうか。
これも簡単な話だ。やつは嬉々として闘うだろう。柱の男、我々一族の誇りを胸に全力でぶつかっていくだけだ。
強さこそが正義、強さこそが真理。
戦士と勇者は友であり尊敬するもの。ワムウは常々そう言っていた。



だが俺は違う。
俺は……そう簡単に割り切ることはできない。
戦士だとか、闘いだとか、食料だとか、屑だとか。
そんな一方的に決めつけるのは『納得』ができない。

俺は知りたいんだ。
どうして神は俺たちに『スタンド』を授けなかった?
どうして俺たちは太陽の元で暮らせない?
どうして俺たちは闇とともに歩まなければならない?

何故『人間』なのだ? 何故俺達でない? 何故俺たちは……滅ばなければならなかったのか?


『今分かった……貴様は赤ん坊のようなものなのだと。人間を理解できずに苦悶する、哀れな子供なのだと』

リンゴォ、お前はそう言ってたな。
ああ、そうだ。俺は人間が理解できない。
理解できなくて苦しんでいるだろうな。まったくもってお前の言うとおりだ。
俺はお前たちとは違う生物だ。お前たちとは到底分かり合えないのだ。

だってそうだろう?
豚や牛、鶏が口をきき、人間に反乱をおこしたらお前たちはどう思う?
魚がお前たちに反旗を翻したらどうする?
どうだ……? 理解できるわけがないだろう。
お前たちはそれでも変わらず肉を食らい、植物を食べ、そうやって生きていくだろう。

俺たちとお前たちは同じだ。だが立場が違うだけで、こんなにも違う。
俺たちだって感情はある。話もできる、意志もある。
人間を食らい生きていく。それはお前たちが生きているように、俺たちも生きているからだ。
ならば……

158 ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/08(土) 01:10:25 ID:???

神よ、どうして俺たちはこうも違う?
何故……どうして俺たちは滅んだ?!
どうして俺たちが……負けなければならいのだッ!!

俺は……人間にはなれない。
例えそうあるべきであっても、そうなるべき運命であろうとも、いくら生きるためであっても。
……俺は人間を肯定できない。
もしそれを肯定したら、それは即ち『俺たち』の存在を否定してしまう。
俺が俺であることをやめたら……一体何故俺はここにいる?
どうして俺は生きてる? なんのために? そしてなにより……俺たち一族は何のために生まれてきた?

答えは分からない。ひょっとしたら答えなどないのかもしれない。
でも今なら分かる。
どうして俺はあんなにいつも怒り狂っていたのか。
どうして俺は常に泣き叫んでいたのか。

俺は俺自身が気に入らなかったんだ。
闘いを求めるわけでもない、光り輝く夢を追うわけでもない。
からっぽ、からっぽ、からっぽ。
俺はいつもそうだった。

楽しそうだとか、興味深いだとか、何を追うわけでもなく、何を求めるわけでもない。
俺はいつだって『対応者』だったんだ。
与えられるものを前に駄々をこねるか、嫌々受け入れるかしかしない卑しいやつだった。
そう……俺は『受け身の対応者』だった。

カーズは夢を。
ワムウは敬意を。
川尻早人は……人間たちは、運命への、死への反逆を。
必死に生きる、夢中になれるやつらが俺は眩しくて仕方なかったんだ。

「ああ……」

太陽のように。
赤石のように。

そうだ、わかったさ。
だがもう今の俺は違う。
今の俺には『夢』がある。
それは人間が劣った生物だとか、我々が優れているものだとか、そんなものを証明することではない。


俺は……俺自身の『納得』のために闘いたい。

159 ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/08(土) 01:10:56 ID:???
お前たちが人間であることを誇りに思ってるように、俺も自分自身の存在を誇りに思っている。
カーズ、ワムウ、そして死んでしまった一族全員。
俺は自分が人間ではない生物であることを誇りに思っている。

俺は……見せつけてやることしかできない。
いや、『見せつける』ことが今の俺の義務なのかもしれない。
伝えさせる、受け継がせる相手はもう存在しない。
その相手が人間しかいないというならば……人間『しか』いないとしても……俺が取るべき道はもう一つしかない。


「俺は……」


俺は一族全員のために戦いたい。
一族全員がこの地球上に存在していた、そのことを証明したい……残したい!

誰にも知られず、何も残せず消えていく。
それはあまりに寂しすぎるではないだろうか。
永久にも思える間、俺たちは生きてきた。
そこに意味を見いだせないのは、あまりにむなしすぎないだろうか。

『あらゆる闘志に敬意を示せ』

リンゴォ、お前には感謝しよう。
わかりあうことはできないかもしれない。
だが理解した。『魂』で、俺は人間を『理解』することができたのかもしれない。
『男の世界』が柱の”男”と人間との架け橋になった……そういったらお前は笑うだろうがな。

「オインゴ」
「はひぃ!?」

一族のため、俺の納得のため。
俺は生きる。




『柱の一族、そう言われた存在が生きている』ということを示すために!

160 ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/08(土) 01:11:27 ID:6oaE68U6





「死ぬ前に何か言い残したことはないか?」
「…………それって……」

俺は腰掛けていた壁から飛び降りると、後ろに座る人間に話しかける。
振り向くこともなく俺は無造作に言い放った。

やつの顔から血の気が引き、動機が早くなったのが見なくてもわかった。
僅かな温度の違いから、やつの心が移り変わっていくのが手に取るようにわかった。
沈黙、唇を震わせ、再びかみしめる。
そのわずかな間にいくつもの感情がやつの心を、魂を駆け巡ったのだろう。

諦め、諦めきれない。
達観、呆然、覚悟、犠牲、怒り、悲しみ。
不安、焦り、安心、恐怖。

しばらく経った後、オインゴはゆっくりと口を開いた。

「弟に……」
「…………」
「いや、あんたに言っても意味はないかかもしれねェけどよォ……。
 そもそも俺としては……いや、やっぱりいい。
 ……一思いに、殺してくれ」

前まではなにも感じなかった。
心変わりは臆病風に吹かれたからだろうな、と鼻で笑って一蹴していただろう。
それが今はわかるのだ。この男が覚悟を決めた上で決断したのだと。

弟、という存在は俺の一族にかける思いと同じぐらいに大切なものなのだろう。
弟に言葉を残す、それは即ち俺が弟に会うことを意味してる。
俺が約束を守るにしても、言葉を伝えた後に弟の命を保証する約束はしていない。
兄として言葉を残すべきなのか。それを諦めてまで俺と弟を接触さないほうが賢明なのか。

やつは弟の安全を選んだ。
それはなんと苦しいことなのだろうか。
自分を『殺して』でも守りたかった存在なのだろうか。

「……約束しよう」
「あぁ?」
「貴様の弟は殺しはしない、と」

俺はそんな『勇気』に敬意を表そう。
ちっぽけなプライドかもしれない、羽虫の足掻きかもしれない。
それでもそこに敬意を表することに意味はあるのだろう。

161 ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/08(土) 01:12:07 ID:???


またしても沈黙。
そして男は顔をあげると俺に向かって言った。
体はガタガタと気の毒になるほど震えていた。
顔は今にも倒れるんじゃないかと思えるほど真っ青だった。

「お前はやればできる子なんだ。
 最後に決めるのは俺じゃねェ、お前なんだ。
 勇気を持て、一人で歩く勇気を持て。
 お前はもう一人で生きていけ。
 それから……兄ちゃんみたいには絶対なるな、そう伝えてくれ」
「わかった」

それでもやつは言い切った。
俺は静かに、だがはっきりと返事をした。
そしてやつの首に手をかける。

「死にたくねェ……死にたくねェんだよォオ。
 まだ生きてェ……したいこともたくさんある。
 やり残したことだってたくさんある、やりたいことだってたくさん、たくさん……」

情けないと言えるだろうか。
カッコ悪いと馬鹿に出来るだろうか。
必死に生きようとする、無駄だとわかっていても抗う。
その姿は人間そのものだ。
愛おしく思えるほどに、狂わしいと思えるほどに。

俺は最後まで聞かずに、男の首元から俺の血液を流し込んだ。
沸騰した液体が頭部に流れ込み、まるでつぶれたトマトのように頭部がはじけ飛ぶ。
鈍い爆発音とともに、空気中に真っ赤な花が咲いた。

「―――綺麗な花火だ」

人が死ぬ、今までは当たり前だったが今の俺には不思議と違うモノが見えた。
オインゴが死んだ瞬間、なにか目には見えないエネルギーがそこから溢れ出ている様だった。
それは美しく、可憐で……儚かった。

残りカスのような肉体を地面に横たえると、俺はオインゴだったものの右肘辺りを優しく撫でる。
さっきから文字通り『手ぶら』な右腕を元に戻すためだ。
太さはだいぶ違うが……まぁそのうち慣れるだろう。もっといい腕があれば付け替えればいい。

162ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/08(土) 01:12:40 ID:???
しえんだぜえ

163 ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/08(土) 01:12:46 ID:???




……風が吹き始めた。
そろそろコロッセオを後にしようか。
向かう先はDIOの館か、はたまたナチス研究所か。
人の強さはひとまず後に置いておいても構わない。
ディオ・ブランドーが本物の強者ならば必ずや死合うことになるのだから。
ナチス研究所に向かのも悪くない。
そこにいけば何人もの人間に会えるだろう。この俺の、一族の強さを示すには絶好の場だ。

「……よし」

一瞬の考えの後、俺はゆっくりと歩き始めた。
向かう先はどちらだろうと一緒だ。
目的はあくまで変わらない。それの途中に俺の納得がついてこれば。

「全生物の頂点に……!」

カーズの夢をかなえ、ワムウに敬意を表し、俺の納得のために戦う。
悪名だろうが構わない。
俺の、俺たちの存在を伝えよう。


人間たちよ、覚悟はいいか?
―――俺はできてるぞ


その時きっとおれは笑っていただろう。
皮肉でもなく、嘲笑でもなく、俺は心の底から笑っていただろう。

164怪物は消えてしまった   ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/08(土) 01:13:32 ID:???




【オインゴ 死亡確認】
【残り28人】










【E-3 コロッセオ/1日目 夜中】


【エシディシ】
[時間軸]:JC9巻、ジョセフの“糸の結界”を切断した瞬間
[状態]:健康
[装備]:『イエローテンパランス』のスタンドDISC
[道具]:支給品一式×4(食糧をいくらか消費)
    不明支給品0〜2(確認済み)、岸辺露伴のサイン、少年ジャンプ
    『ジョースター家とそのルーツ』リスト、ブラックモアの傘、スーパーエイジャ
    首輪探知機、承太郎が徐倫に送ったロケット、青酸カリ、学ラン、ミキタカの胃腸薬、潜水艦
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに優勝し、全生物の頂点にッ!
0.DIOの館 or ナチス研究所へ向かう。
1.全てのものに敬意を表する。だが最後に生き残るのはこの俺だ……!
2.参加者をすべて殺す
[備考]
※時代を越えて参加者が集められていると考えています。
※スタンドが誰にでも見えると言う制限に気付きました 。彼らはその制限の秘密が首輪か会場そのものにあると推測しています
※『ジョースター家とそのルーツ』リストには顔写真は載ってません。
※『イエローテンパランス』の変装能力で他者の顔を模することができます
※頭部を強打されればDISCが外れるかもしれません。
※イエローテンパランスはまだ完全にコントロールできてません。また具体的な疲労度などは後続の書き手さまにお任せします。

165怪物は消えてしまった   ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/08(土) 01:15:08 ID:???
以上で一時投下完了です。
矛盾点、修正点、気になる点等ありましたら指摘お願いします。
よろしくお願いします。

166ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/08(土) 18:07:57 ID:???
投下乙です
内容は問題ないと思いますが、なぜに【死亡確認】?
ふつうに【死亡】でないのは何か理由があるのですか?

167ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/09(日) 00:39:03 ID:???
投下乙です
>>160の動機は恐らく『動悸』の間違いですね
他は特に思い当たりませんでした

168ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/09(日) 01:06:32 ID:???
投下乙です
160の>接触さない は >接触させない の事でしょうか?
それ以外に指摘はないです

169 ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/10(月) 12:15:53 ID:???
たくさんの指摘ありがとうございました。
誤字、脱字を修正し本投下します。

>>166 単純なミスです。修正し本投下します。

170 ◆33DEIZ1cds:2011/01/16(日) 23:54:41 ID:???
やはり規制されていたので、こちらに。
花京院典明、マウンテン・ティム、ナルシソ・アナスイ、ドナテロ・ヴェルサス投下します。

171存在の堪えがたき軽さ ◆33DEIZ1cds:2011/01/16(日) 23:55:21 ID:???






 われらをあわれみたまえ。





※   ※   ※


 月が黒ビロードの夜空に縫い込まれている。
 花束を解きほぐしたような星空。
 月光と星明りの中に浮かび上がる黒い建物のシルエットの間で、彼らの決闘が始まった。
 
 まるで何もかもを示し合わせたかのようだった。 
 テンガロンハットが地面へ触れると同時に、三つの影は散開する。
 花京院はエメラルドスプラッシュを放ち、アナスイは飛来する緑の礫をスタンドではじき、叩き落とした。
 マウンテン・ティムは全てを見届けるために、二人から距離を取って佇んでいた。

 スタンド、ダイバー・ダウンはいなすように弾雨を弾きながら、少しずつ前進を開始する。
 弾幕のうすい部分を目ざとく見つけ、その合間を縫って花京院へと飛びかかる。迎え撃つハイエロファント・グリーン。
 スタンドヴィジョン同士が激しくぶつかり、彼らはお互いの拳を突き合わせたまま鍔迫り合いを演じ始めた。
 
 精神を極限まで高ぶらせ、ただ一点、相手の双眸だけを凝視する。
 しかし、お互いが見ているのはそれぞれ色の違う瞳ではなく、その中に湛える光でもなく、その奥にたぎらせている精神でもない。 
 
 彼らは自分自身の狂いを、相手の目の中に見ていたのだ。
 アナスイの瞳の向こうに、花京院の思考は展開する。

 ――僕にはずっとずっと、わからなかったんです。

 倫理を軽々と越えてしまうような『情』というものが。
 アナスイ。
 あなたに食って掛かったのは、徐倫さんとの関係に赤の他人の身でありながら口を出したのは、同族嫌悪なのかな。
 僕もまたあなたと同じく、感情の押し付けによって、滑稽に踊っていたから?フーゴやグェスさんに、仲間という感情を自分勝手に振りかざして。
 でもあなたは、あなたの『情』は、たぶん滑稽なんかじゃない。あなたの心には愛がある。どんな形をとっていてもきっと、それは僕の知らない素晴らしいものなのだろう。
 なぜ死んでもいいくらいに人を愛せる?絶対に簡単なことじゃない。
 
 徐倫さんをシーツの中に『監禁』してしまうような無茶苦茶なやり方には腹がたったけど。
 ……もしかしたら、僕は羨ましかったのか?
 ともにエジプトを旅した仲間はほとんど死んでしまって。
 やっと会えたポルナレフには存在自体を信じてもらえず、ここで出会った人たちからは信頼を嘲笑われ、何もなくなった僕。
 
 今はただ悲しい。
 あなたには、たとえ負けても徐倫さんのために闘ったという誇りが残る。
 でも、僕には何も残らない。

172存在の堪えがたき軽さ ◆33DEIZ1cds:2011/01/16(日) 23:56:03 ID:???


 だから――絶対に、絶対に負けたくない。彼を、認めない。


「あなたは間違っているんだッ!」
 
 花京院は自分の腹へと繰り出された敵の生身の足蹴りを、大きなバックステップによって避ける。
 ティムに説明されたダイバー・ダウンの能力は、すこし触れるだけで致命傷を負わされる危険があるもの。
 それを踏まえ、触れずに攻撃をすることができる自分の能力をどう活かすか。
 彼は思考する。エメラルド・スプラッシュによる緑の弾雨の数で押すか、ハイエロファントの触手でからめ捕り締め上げるか。
 
 対するアナスイはただ淡々と歩を進める兵隊のような目で、花京院の心臓を狙っていた。
 徐倫の居場所を聞き出すこともいいだろう。だが、彼はアナスイが断腸の思いで練り上げた計画を無碍にした、部外者の分際で。
 単純に、許すことができなかった。
 
 ――ぶちのめす。

 愛という名の余すところのない熱狂は、彼の不退転の決意を確固たるものにする。
 その心はまるで永遠の中に凝固してしまったかのように、直立にして不動だった。


 ――俺はいつだっていつだって、わかっていたんだ。
 

 徐倫が俺を好きになるはずがないことを。
 あの美しい「集中力」を備えた目で俺を見てくれることなんか永久にないってことを。

 人は二度死ぬという。一つ目は肉体の死、二つ目は他人に忘れ去られたとき。
 そうだとするなら俺に二度目の死は訪れないだろう。
 彼女のために生きていれば、優しいあの子は心の隅っこくらいには俺のためのスペースを置いといてくれるだろうから。
 だから、日常の何気ない行為の隙間に――車のドアを開けるふとした一瞬とか、ソファーでコーヒーを飲むようなときに――俺の存在を、うすぼんやりでも思ってくれればそれでいいんだ。
 そして、あの子が温かいコーヒーを飲んでくつろぎ、何の心配もなく日々を過ごすためなら。 
 

 何を切って捨てても――後悔は無い。


「徐倫の居場所を言えッ!」

 アナスイはスタンドではなく生身のままで、花京院に殴りかかる。
 身軽に避けられ、彼の拳が民家の壁にぶつかった。壁はアナスイの拳の皮膚を削り取り、その血液を吸う。
 花京院は身をひるがえし、アナスイと対峙した。
 
 お互い意地だった。失くしそうなものをつなぎ留めんと、牙をむき出し合って。 
 
「彼女は無事です。でも居場所は教えない」

 元より、知らないのだ。彼女は蝶のごとく、打倒荒木へ向けてこの会場を飛び回っているのだから。

 再びエメラルド・スプラッシュが放たれる。
 アナスイはスタンドで防御しなかった。再び後ろに吹き飛ぶ。しかし来ることがわかっていた攻撃は、彼に致命傷を負わせることはできなかった。
 防御に使った腕は打撲と裂傷ができていたが、彼の昂ぶった神経は、そんなもの意に介さない。

173存在の堪えがたき軽さ ◆33DEIZ1cds:2011/01/16(日) 23:56:36 ID:???
アナスイのスタンドは何をしていたのか。
 ダイバー・ダウンは地面へと潜行し、花京院本体を叩くために接近を開始していた。
 
 地面を追うアナスイの視線に気づき、花京院はその場から駆けだす。
 一瞬の間をおいてスタンドの腕が彼の足をつかみ取らんと、地面より突き出でる。
 
 走る、走る。そのたびに足元からはダイバー・ダウンの腕が迫りくる。
 知らず知らずのうちに、花京院は民家の壁へ追いつめられていた。
 そこに背をつけて、彼は決心する。
 相手は冷静ではない。話で注意を逸らし、ハイエロファントの触手でからめてやろうと。 

「いや……教えない、というよりも、わからないんですよ」

 こめかみを伝う冷や汗を気取られぬように、余裕ぶった笑みを張り付けて。
 アナスイは当てが外れたような顔をした。これで花京院には、情報源としての価値が無くなったことになる。
 彼は本気で腹を立てるだろう。良いことだ。もっと冷静さを失うがいい。 

「聞きたいんです。徐倫さんとあなたはどういう関係なんですか?」 

「彼女のためなら、俺はこの世のどんなクズにも劣る存在になってもかまわない」

 死角から忍び寄らせていたハイエロファントが、アナスイの足をからめ捕ろうとうごめいた。
 もう少し、あと少しで勝てる。
 視線はアナスイへと固定する。気取られぬよう、慎重に、巧妙に這い寄る。

(……彼に勝利を収めて、僕はどうしたいんだろう)

 最初はアナスイの無茶な行動を非難し、反省させるためだったはずだ。
 それだけのために、花京院はこれ程むきになっているのだろうか。
 
「いいかげん、『彼女のため』なんて恩着せがましいセリフはやめてください」  

「黙れッ!徐倫はどこだ!!」   

 花京院は羨望を持ってアナスイを見ていたのだ。
 ここへきてから迷い、疑い、疑われ――揺れ続けた自分と違い、彼は愚かとも取れるほどまっすぐに進んできた。
 たった一人の愛する女性のために。

 それがとても、うらやましかった。
 やはり、だからこそ、負けたくなかった。ここで負けたら、自分はもうどこへも行けなくなってしまう気がしていた。


 ――どんな気分ですか?『迷わない』っていうのは? 
 

「来い。『ハイエロファント――、ッ!」

 奇襲をかけようとしたその時、刹那にも満たない間をおいて、花京院は背中から押し出すような衝撃を受ける。
 予想できない背後からの攻撃に、彼はもんどりうって倒れた。
 
「『ダイバー・ダウン』。衝撃を潜行させ、俺の好きな時に解き放つ能力」

「……ッ!」

 アナスイにも策があった。
 ダイバー・ダウンはいたずらに地面を潜行していたわけではない。
 花京院がアナスイを煽動しようと画策したように、彼もまた策略を持って行動していた。
 スタンドで巧みに花京院を追い立てた先。

 彼が背をつけていた民家の壁は、先刻アナスイが殴りつけた壁。

 雌雄は決した。花京院は反撃に足るだけの隙を、アナスイから見出すことができない。

「俺は残酷だぜ。なにせ殺人鬼だからな」

 沈黙を纏い、傍らに佇んでいたマウンテン・ティムの眉が、わずかにはねた。

174存在の堪えがたき軽さ ◆33DEIZ1cds:2011/01/16(日) 23:57:11 ID:???
 アナスイは冷え切った眼で、口元だけを笑みにして勝ち誇る。
 彼は殺人鬼に戻ってしまった。
 アメリカの新聞をにぎわせた、解体魔の殺人鬼に。

「う、――」

 花京院は起き上がろうとするが、肩を踏みつけられ地面に這いつくばるよりほかなかった。
 うつ伏せに地へと押し付けられたまま、嘲笑う敵をにらみつける。
 がむしゃらに体を暴れさせて一度足を振り払った。半身を起すが、今度は壁へと蹴りつけられ、首元を捩じるように踏まれる。

 認めたくなかった。負けを認めるなんて嫌だった。
 刺々しい声色で、最期の抵抗を試みる。
 これで事態が好転するなどと思っていない。それでも、このまま負けることだけは嫌だった。
 
「月並みですけど、言わせてもらいます。『そんなことが彼女のためになると、本気で思っているのか?』」

「……負け惜しみなんて感心しないぜ」

 アナスイは睫毛一本動かさずに、花京院にかけた足をさらに踏み込む。満身の悪意を込めるかのごとく、執拗に。
 殺し合いゲームという異常事態にも揺るがなかった彼のこころに訴えかけるような言葉は、もはや存在しないのだった。

「どんな風にバラしてほしい?言いなよ、クソ野郎」

「アナスイ!……やめろ」

 見届けるだけだったはずの決闘に、ティムが口をはさむ。
 神聖な決闘は相手を侮辱しない。アナスイは、世界を取り違えた。
 
 事態は最悪な方向へと移っている。
 邪悪のうすら黒い影が、アナスイの精神を侵しているようだ。

 彼はティムの方へ、ちらと視線を投げる。火のような視線。口元に浮かぶ嘲笑。
 そうして無言のまま、何事もないかのように花京院へと目線を戻す。
 
 花京院は状況を打破するため思考をまとめようとするが、もはや何も考えることができなかった。
 悔しかった。耐えられない怒りが心臓で唸る。
 自分の手に何もないまま死んでしまうのかと思うと、気が狂いそうだった。

 歯を食いしばる花京院を見下ろし、アナスイの笑みは彼の顔をより深く穿つ。
 ダイバー・ダウンが花京院の急所へと狙いを定め、その拳が振り下ろされる。
 まっすぐに繰り出された打突は、彼の命をいともたやすく奪うはずだった。



「!!」



 舞い上がる土埃。花京院は迫るアナスイの攻撃とは違う衝撃によって横へと吹っ飛ぶ。
 

「何……」

 一瞬早く事態をのみ込んだアナスイが呆然と呟いて。



 花京院めがけて振るったダイバーダウンの拳は、




 ――マウンテン・ティムの胴を貫いていた。




※   ※   ※

175存在の堪えがたき軽さ ◆33DEIZ1cds:2011/01/16(日) 23:57:44 ID:???



 赤く重い液体が、月光に艶めいている。
 地面に広がる血液の中に身を沈めてなお、マウンテン・ティムは微笑していた。

「花京院くん、逃げろ。そして……こいつを――救ってやってくれ」

 その言葉を最後に、閉じられた彼の瞼が再び開くことはなかった。
 
 
 花京院は震える足で地面に膝をついていた。
 
 ダイバーダウンの攻撃が迫ったとき、ティムが突然走り出てきて彼を突き飛ばしたのだった。
 横滑りに吹き飛び、泥だらけになった服はところどころが破れている。露出した肌には新たに擦り傷ができていた。
 しかし花京院はその痛みも感じることなく、崩れ落ちたマウンテン・ティムから視線を離せずにいる。自分の見ているものが信じられなかった。
 砕け散った思考は、ただいたずらに散漫で。花京院はティムの最後の言葉を咀嚼しきれない。

 不意に、夜風が冷たい、という考えだけがぽっかりと浮かんだ。水面に浮かぶ気泡のように。

「ティム……?」

 アナスイがダイバー・ダウンのヴィジョンを消し、死んでしまった仲間の名を呼ぶ。 
 スタンドを介して伝わってきた、彼の肉体を貫いた時の感覚。
 それを確かめるように、自分の腕をじっと見つめる。 

 やにわに足音が届いた。音の方を見れば、走り去っていく花京院の背中。
 アナスイは無言のままそれを見送り、物言わぬ骸と成り果てた友へと再度視線を落とし。

「逝っちまったのか。……いや、俺が殺したんだな」
 
 そばに落ちていたテンガロンハットを持ち上げて、指先で回す。
 度重なる戦闘でくたびれてしまったフェルトの質感が、ちりちりと指を刺激する。

 一日にも満たない付き合いだったのに、この帽子が彼の誇りある職業の象徴であると理解できた。 
 それを軽々しく指先で回す。 
 やがてそこから外れたテンガロンハットが、空気の抵抗を受けながら再び地面へと落ちた。
 そして。
 
「俺は……あんたとの思い出を断ち切って、――殺人鬼に戻るよ」 

 友の遺品であるはずのそれを、荒々しく踏みしだく。
 泥をこすり付けるように、悪意で思い出を蹂躙するように。何度も捩じり、押しひしぐ。

「今度こそ、本当に。……さようなら」

 彼は光の中で知ったことを、闇の中で否んだ。
 
 踵を返す。
 瞳は一点、闇の中を凝視する。

176存在の堪えがたき軽さ ◆33DEIZ1cds:2011/01/16(日) 23:58:16 ID:???
※   ※   ※


 見上げた空に浮かんだ月は、己を嘲笑っているように見える。光だけがただ白々しく、煌々と降りそそぐ。
 ざらつく街路樹へと押さえつけられ、呻吟しているさまはさぞ憐れだろう。
 地面を見ればすぐ向こうに、つい数時間前に会話したはずのマウンテン・ティムが力なく横たわっている。
 

 首が押しつぶされそうだ。


 ドナテロ・ヴェルサスは考える。
 こんなことが起こるはずではなかった。

「盗み見とは、趣味が悪いな」

 ヴェルサスは悲鳴を上げることも、助けを乞うことも、罵倒すらも許されず、アナスイに首を掴み上げられている。
 アンダー・ワールドはダイバー・ダウンによって、がんじがらめにされていた。

 いたずらに足をばたつかせても何もならなかった。
 生身の体も、スタンドも――抵抗らしいことは何も、できなかった。

 悔やむべきは自分の甘さ。
 スタンドが足元に迫っていることに気付けていなかった。
 自分が潜んで見ていることが気付かれていると、悟れなかった。

 亡羊とした思考で思い返す。
 彼はここ数十分、花京院の後を追い続けていた。

 大事そうに抱えていた真っ白なシーツをいぶかしく思っていたが、そこにはあの宿敵、空条徐倫が絡まるようにして捕えられていたこと。
 てっきり花京院から感じるものだと思ってた痣の感覚は徐倫のものだとわかり、大いに驚愕したこと。
 徐倫と花京院の二人が『話し合った過去』を民家の中へ忍ばせたスタンドで掘り起こし、それらの全ての事態を把握したこと。
 そうして、追っても益のなさそうな徐倫を切り捨て、花京院を追うことにしたこと。

 警戒すべきマウンテン・ティムたちの動向を知るため、犯罪者が犯行現場に戻るような感覚で取った行動だった。
 忍んだまま様子を見て、もう一度DIOの館を目指すつもりだったのだ。

 そのあとのことはあまりの衝撃のせいか、ひどく断片的で。
 過去を掘り起こしながら花京院の後を追い、追いついた矢先に。
 目の前で展開された死闘。花京院を追い詰めたアナスイの笑い。スタンドに腹をぶち抜かれ、動かなくなったマウンテン・ティム。

 その時点で、逃げるべきだった。
 花京院はどこかに走り去って、すでに影すら見えない。
 
 生きて、幸せにならなくてはならないのに。
 こんなところで、不愉快な泥の上で、泥を見ながら、泥のように死ぬことなんて、絶対に受け入れられない。
 
 しかし、現実は暗い鎌首を残忍にもたげて、彼の小さな願いを刈り取るのだ。

177存在の堪えがたき軽さ ◆33DEIZ1cds:2011/01/16(日) 23:58:49 ID:???

「う……ぐ、俺は、死なねぇッつってんだろうがッ!幸せになるまで!絶対に!」

「じゃあそのためにお前は何かしたのか?なんでこんなとこで這いつくばってやがる?他にやる事があるだろーが」

 呆れたような半眼を溜息とともに閉じ、アナスイは街路樹に押し付けていたヴェルサスの体を地面へと投げた。

「クソッ!アンダー・ワール――」

「言われてからやるようでは無意味だ、うぜえ事はよしな」

 いくら掘り返そうとしても、地面に手が届かず、腕はむなしく空を切る。
 それもそのはず、ヴェルサスの腕の関節は――指のそれに至るまで、完全に、すべて、例外なく、逆に折り曲げられていたから。

「無気力な悪ほど吐き気を催すものはないな」

 アナスイはやれやれというように首を振り、肩をすくめる。

 低く、嫌な音が夜の住宅街に響く。
 腕に続いて足首が、膝が、大腿骨が、腰盤が、肋骨が、ダイバー・ダウンによって軽快に組み替えられていく。
 
 ヴェルサスにはわからなかった。
 突然空から落ちてきたスニーカーを拾ってしまったあの日から、何が何だかわからないまま人生を転がり堕ちてきて。
 彼には、自分が不幸な理由が心底わからなかった。
 極めつけは、意味の分からない殺人ゲーム。せっかく出会った相棒のような存在のティッツァーノを見殺しにした、せざるを得なかった状況が恨めしかった。
 
 彼は世の中を呪い、自己憐憫に傾いた濁った眼で周囲をにらみ続けてきた。
 
 世の中が嫌なら、自分を変えればよかった。それが彼には終生分からなかった。

 諦めと後悔が、死にゆく心に去来する。


 (ああ俺、なーんもやってねえなぁ……。幸せって、なんだったんだろうな――ティッツァ?)


 しかし、それもまた、一つの人生。



 最後に一つ鈍い音がして、原形を留めぬほどに組み替えられた彼の死骸が地面に転がされた。

178存在の堪えがたき軽さ ◆33DEIZ1cds:2011/01/16(日) 23:59:22 ID:???

※   ※   ※
 
 
 今わの際。
 冷たいアスファルトに体を横たえながら、思っていた。


 ――アナスイ。生死を問わずにお前を止めるってのは、なにもお前だけの生死のことを言っていたんじゃあないぞ。
 俺の生死も問わずに止めるってことだぜ、知っていたか?
 
 お前が思うより、俺はお前を気に入ってたよ。
 意志を曲げずに、一途で、強いところが特に気に入った。悪く言えば融通の利かない頑固者だな。だがそこがいい。
 俺が見初めたやつなんだから……徐倫のためを思うんなら、お前は下衆な人殺しになるな。

 お前は道を踏み外してる。決闘は、もっと神聖なものだぞ。
 だから、俺はあえて横槍を入れる――俺を殺すのは、お前のような気がしていたさ。
 そして目を覚ませ、俺が死ぬことによって、目を覚ましてくれ。

 体が重い。
 
 ……ルーシーは、きっと俺のことなんか忘れちまうだろう。
 でもそんなことが重要なことか?
 彼女が心底困ったときに、俺に電話をくれたんだ。
 不謹慎を承知でも、それだけで天にも昇るような気持ちになれた。 
 俺が保安官だから、というだけの理由だったとしてもかまわない。
 震える彼女の傍にいさせてもらえただけで……俺はもう十分だった。
 
 彼女がここに来ていなくて、本当に良かった。 

 ルーシー、ありがとう。

 今は、こいつが……アナスイが、正しい道に気付いくれればそれだけで。
 暖かいベッドも、安らかな死もいらない。




 ――俺は、カウボーイだからな。

179存在の堪えがたき軽さ ◆33DEIZ1cds:2011/01/16(日) 23:59:54 ID:???

★   ★   ★



 涙の日、その日は。
 それは灰の中からよみがえる日。
 
 われらをあわれみたまえ。
 われらをあわれみたまえ。
 
 
 私たちを苦い死に引き渡さないで下さい――







【マウンテン・ティム 死亡】

【ドナテロ・ヴェルサス 死亡】


【残り 26名】


【D-4 南部 /1日目 夜中】

【花京院典明】
[時間軸]:ゲブ神に目を切られる直前
[状態]:精神消耗(中)、身体ダメージ(中)、右肩・脇腹に銃創(応急処置済)、全身に切り傷
[装備]:なし
[道具]:ジョナサンのハンカチ、ジョジョロワトランプ、支給品一式
[思考・状況]
基本行動方針:打倒荒木!

0.ティムさんが、死んだ……僕のせい?そして「アナスイを救ってやってくれ」という最期の言葉の意味が分からない……
1.逃げる。どこへでもいいからここではないどこかへ。
2.自分の得た情報を信頼できる人物に話すため仲間と合流したい
3.仲間と合流したらナチス研究所へ向かう?
4.巻き込まれた参加者の保護
5.荒木の能力を推測する
[備考]
※荒木から直接情報を得ました。
「脅されて多数の人間が協力を強いられているが根幹までに関わっているのは一人(宮本輝之助)だけ」
※フーゴとフェルディナンドと情報交換しました。フーゴと彼のかつての仲間の風貌、スタンド能力をすべて把握しました。
※マウンテン・ティムと情報を交換しました。お互いの支給品を把握しました。
※アナスイの語った内容については半信半疑です。その後アナスイがティムに語った真実は聞いていません。

【ナルシソ・アナスイ】
[時間軸]:「水族館」脱獄後
[状態]:身体ダメージ(中)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(食料、水2人分)、点滴、クマちゃん人形、双眼鏡、ラング・ラングラーの首輪、トランシーバー(スイッチOFF)
[思考・状況]
基本行動方針:見敵必殺。徐倫を守り抜く、参加者を殺害する、荒木の打倒

0.殺人鬼に逆戻り。ゲームに完全に乗った。
1.徐倫の敵は俺の敵。徐倫の障害となるものはすべて排除する
2.徐倫の目的、荒木のもとに彼女(と自分)が辿り着くためなら何でもする
3.殺し合いに乗った奴ら、襲ってくる奴らには容赦しない。襲ってこなくても容赦しない。
[備考]
※マウンテン・ティム、ティッツァーノと情報交換しました。
 ブチャラティ、フーゴ、ジョルノの姿とスタンド能力を把握しました。
※ラバーソールとヴェルサスのスタンド能力と容姿を知りました。
※首輪は『装着者が死亡すれば機能が停止する』ことを知りました。
 ダイバー・ダウンを首輪に潜行させた際確認したのは『機能の停止』のみで、盗聴機能、GPS機能が搭載されていることは知りません。
※ヴェルサスの首筋に星型の痣があることに気が付いていません。
※F・Fが殺し合いに乗っていることを把握しました。
※ポルナレフが得た情報について知りました。
※マウンテン・ティムと改めて情報を交換し、花京院の持っていた情報、ティムが新たに得た情報を聞きました。

180 ◆33DEIZ1cds:2011/01/17(月) 00:01:32 ID:???
以上です、投下日が前後してしまい申し訳ありませんでした。

誤字脱字、矛盾点のご指摘をお願いいたします。
修正をしてから本スレに投下いたします。どうぞよろしくお願いします。

181ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/17(月) 00:19:37 ID:???
投下乙です
花京院死に予想だったんですが、外れましたねw
相変わらずいいお話を書きなさるお方だ

指摘は特にございません
本投下お待ちしております

182ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/17(月) 00:27:50 ID:???
誰か死ぬとは思っていたが、やはりフラグか…。ティム、ヴェルサス……。

指摘としては、死んだ二人の所持品についてでしょうか。
それ以外は特にないと思います。

183ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/17(月) 00:33:21 ID:???
投下乙です
全部投下されてから読もうと思ってたのにうっかり死亡者の項目を先に見てしまい
うえっ!?と声を上げてしまいました ていうか自分も花京院が死ぬかと(ry

感想は本投下の際に書きます 指摘は特にありません

184 ◆33DEIZ1cds:2011/01/19(水) 23:31:35 ID:???
指摘ありがとうございました。
少し手直しを加えさせていただきました。
話の筋は何も変わっていませんが、描写が足りないなー、というところに付け足しを行いました。
ほっとんど違いがないのですが、一応投下させていただきたいと思います。レス数を食ってしまい恐縮です。
規制されているので、どなたか代理投下お願いいたします。

185存在の堪えがたき軽さ ◆33DEIZ1cds:2011/01/19(水) 23:32:18 ID:???





 われらをあわれみたまえ。





※   ※   ※


 月が黒ビロードの夜空に縫い込まれている。
 花束を解きほぐしたような星空。
 冴えわたる月光と星明りの中に浮かび上がる黒い建物のシルエットの間で。

 アナスイの長い髪が湿った夜風を含んで揺れている。
 花京院の学生服の布地が月色に映えて鈍く光っている。
 その間を割って、落ちていくテンガロン・ハット。

 彼らの、決闘が始まる。
 
 まるで何もかもを示し合わせたかのように、三人は動いた。
 ハットが地面へ触れ、散開する三つの影。
 
 時を移さずして跳弾する緑の石粒、エメラルドスプラッシュをダイバー・ダウンがはじき、叩き落とした。

 マウンテン・ティムは全てを見届けるために、二人から距離を取って佇んでいた。
 夜のしじまに、月明りが溶け込んでいる。
 出会った場所、境遇が違えば、盃を掲げて共に語らい合えるくらい素晴らしい月夜だった。

 スタンド、ダイバー・ダウンはいなすように弾雨を弾きながら、少しずつ前進を開始する。
 弾幕のうすい部分を目ざとく見つけ、その合間を縫って花京院へと飛びかかる。迎え撃つハイエロファント・グリーン。
 スタンドヴィジョン同士が激しくぶつかり、彼らはお互いの拳を突き合わせたまま鍔迫り合いを演じ始めた。
 
 精神を極限まで高ぶらせ、ただ一点、相手の双眸だけを凝視する。
 しかし、お互いが見ているのはそれぞれ色の違う瞳ではなく、その中に湛える光でもなく、その奥にたぎらせている精神でもない。 
 
 彼らは自分自身の狂いを、相手の目の中に見ていたのだ。
 アナスイの瞳の向こうに、花京院の思考は展開する。

 ――僕にはずっとずっと、わからなかったんです。

 倫理を軽々と越えてしまうような『情』というものが。
 アナスイ。
 あなたに食って掛かったのは、徐倫さんとの関係に赤の他人の身でありながら口を出したのは、同族嫌悪なのかな。
 僕もまたあなたと同じく、感情の押し付けによって、滑稽に踊っていたから?フーゴやグェスさんに、仲間という感情を自分勝手に振りかざして。
 でもあなたは、あなたの『情』は、たぶん滑稽なんかじゃない。あなたの心には愛がある。どんな形をとっていてもきっと、それは僕の知らない素晴らしいものなのだろう。
 なぜ死んでもいいくらいに人を愛せる?絶対に簡単なことじゃない。
 徐倫さんをシーツの中に『監禁』してしまうような無茶苦茶なやり方には腹がたったけど。

 ……もしかしたら、僕は羨ましかったのか?
 ともにエジプトを旅した仲間はほとんど死んでしまって。
 やっと会えたポルナレフには存在自体を信じてもらえず、ここで出会った人たちからは信頼を嘲笑われ、何もなくなった僕。
 
 今はただ悲しい。
 あなたには、たとえ負けても徐倫さんのために闘ったという誇りが残る。
 でも、僕には何も残らない。

186存在の堪えがたき軽さ ◆33DEIZ1cds:2011/01/19(水) 23:33:23 ID:???

 だから――絶対に、絶対に負けたくない。


「あなたは間違っているんだッ!」
 
 花京院は自分の腹へと繰り出された敵の生身の足蹴りを、大きなバックステップによって避ける。
 ティムに説明されたダイバー・ダウンの能力は、すこし触れるだけで致命傷を負わされる危険があるもの。
 それを踏まえ、触れずに攻撃をすることができる自分の能力をどう活かすか。
 彼は思考する。エメラルド・スプラッシュによる緑の弾雨の数で押すか、ハイエロファントの触手でからめ捕り締め上げるか。
 
 対するアナスイはただ淡々と歩を進める兵隊のような目で、花京院の心臓を狙っていた。
 徐倫の居場所を聞き出すこともいいだろう。だが、彼はアナスイが断腸の思いで練り上げた計画を無碍にした、部外者の分際で。
 単純に、許すことができなかった。
 
 ――ぶちのめす。

 愛という名の余すところのない熱狂は、彼の不退転の決意を確固たるものにする。
 その心はまるで永遠の中に凝固してしまったかのように、直立にして不動だった。

 ――俺はいつだっていつだって、わかっていたんだ。 

 徐倫が俺を好きになるはずなんてないことを。
 あの美しい「集中力」を備えた目で俺を見てくれることなんか永久にないってことを。

 人は二度死ぬという。一つ目は肉体の死、二つ目は他人に忘れ去られたとき。
 そうだとするなら俺に二度目の死は訪れないだろう。
 彼女のために生きていれば、優しいあの子は心の隅っこくらいには俺のためのスペースを置いといてくれるだろうから。
 だから、日常の何気ない行為の隙間に――車のドアを開けるふとした一瞬とか、ソファーでコーヒーを飲むようなときに――俺の存在を、うすぼんやりでも思ってくれればそれでいいんだ。
 そして、あの子が温かいコーヒーを飲んでくつろぎ、何の心配もなく日々を過ごすためなら。 
 

 何を切って捨てても――後悔は無い。


「徐倫の居場所を言えッ!」

 アナスイはスタンドではなく生身のままで、花京院に殴りかかった。
 身軽に避けられ、彼の拳が民家の壁にぶつかった。壁はアナスイの拳の皮膚を削り取り、その血液を吸う。
 花京院は身をひるがえし、アナスイと対峙した。二人の間に横たわる荒漠とした空気。
 お互い意地だった。失くしそうなものをつなぎ留めんと、牙をむき出し合って。 
 
 花京院は乾いた唇を舐め、口火を切った。
 
「彼女は無事です。でも居場所は教えない」

 元より、知らないのだ。彼女は蝶のごとく、打倒荒木へ向けてこの会場を飛び回っているのだから。

 再びエメラルド・スプラッシュが放たれる。
 アナスイはスタンドで防御しなかった。後ろに吹き飛ぶ。しかし来ることがわかっていた攻撃は、彼に致命傷を負わせることはできなかった。
 防御に使った腕は打撲と裂傷ができていたが、彼の昂ぶった神経は、そんなもの意に介さない。
 
 アナスイのスタンドは何をしていたのか。
 ダイバー・ダウンは地面へと潜行し、花京院本体を叩くために接近を開始していた。
 
 地面を追うアナスイの視線に気が付き、花京院はその場から駆けだす。
 一瞬の間をおいてスタンドの腕が彼の足をつかみ取らんと、地面より突き出でた。
 
 走る、走る。そのたびに足元からはダイバー・ダウンの腕が迫りくる。
 知らず知らずのうちに、花京院は民家の壁へ追い立てられていた。
 そこへ背をつけて、彼は決心する。
 相手は冷静ではない。話で注意を逸らし、ハイエロファントの触手でからめてやろうと。 

「いや……教えない、というよりも、わからないんですよ」

 こめかみを伝う冷や汗を気取られぬように、余裕ぶった笑みを張り付けて。
 アナスイは当てが外れたような顔をした。これで花京院には、情報源としての価値が無くなったことになる。
 彼は本気で腹を立てるだろう。良いことだ。もっと冷静さを失うがいい。

187存在の堪えがたき軽さ ◆33DEIZ1cds:2011/01/19(水) 23:34:36 ID:???
「聞きたいんです。徐倫さんとあなたはどういう関係なんですか?」 

「彼女のためなら、俺はこの世のどんなクズにも劣る存在になってもかまわない」

 死角から忍び寄らせていたハイエロファントが、アナスイの足をからめ捕ろうとうごめいた。
 もう少し、あと少しで勝てる。
 視線はアナスイへと固定する。気取られぬよう、慎重に、巧妙に這い寄る。

(……彼に勝利を収めて、僕はどうしたいんだろう)

 最初はアナスイの無茶な行動を非難し、反省させるためだったはずだ。
 たったそれだけのために、花京院はこれ程むきになっているのだろうか。
 
「いいかげん、『彼女のため』なんて恩着せがましいセリフはやめてください」  

「黙れッ!徐倫はどこだ!!」   

 花京院は羨望を持ってアナスイを見ていたのだ。
 ここへきてから迷い、疑い、疑われ――揺れ続けた自分と違い、彼は愚かとも取れるほどまっすぐに進んできた。
 たった一人の愛する女性のために。

 それがとても、うらやましかった。
 やはり、だからこそ、負けたくなかった。ここで負けたら、自分はもうどこへも行けなくなってしまう気がしていた。


 ――どんな気分ですか?『迷わない』っていうのは? 
 

「来い。『ハイエロファント――、ッ!」

 奇襲をかけようとしたその時、刹那にも満たない間をおいて、花京院は背中から押し出すような衝撃を受ける。
 予想できない背後からの攻撃に、彼はもんどりうって倒れた。
 硬質な地面が打ち付けた骨に響く。口の中に広がる砂の味、砂利のざらつき。
 
「『ダイバー・ダウン』。衝撃を潜行させ、俺の好きな時に解き放つ能力」

「……ッ!」

 アナスイにも策があった。
 ダイバー・ダウンはいたずらに地面を潜行していたわけではない。
 花京院がアナスイを煽動しようと画策したように、彼もまた策略を持って行動していた。
 スタンドで巧みに花京院を追い立てた先。

 彼が背をつけていた民家の壁は、先刻アナスイが殴りつけた壁。

 雌雄は決した。花京院は反撃に足るだけの隙を、アナスイから見出すことができない。

「俺は残酷だぜ。なにせ殺人鬼だからな」

 沈黙を纏い、傍らに佇んでいたマウンテン・ティムの眉が、わずかにはねた。
 
 アナスイは冷え切った眼で、口元だけを笑みにして勝ち誇る。
 彼は殺人鬼に戻ってしまった。
 アメリカの新聞をにぎわせた、解体魔の殺人鬼に。

188存在の堪えがたき軽さ ◆33DEIZ1cds:2011/01/19(水) 23:35:45 ID:???
「う、――」

 花京院は起き上がろうとするが、肩を踏みつけられ地面に這いつくばるよりほかなかった。
 うつ伏せに地へと押し付けられたまま、嘲笑う敵をにらみつける。
 がむしゃらに体を暴れさせて一度足を振り払った。半身を起すが、今度は壁へと蹴りつけられ、首元を捩じるように踏まれる。

 認めたくなかった。負けを認めるなんて嫌だった。
 刺々しい声色で、最期の抵抗を試みる。
 これで事態が好転するなどと思っていない。それでも、このまま負けることだけは嫌だった。
 
「月並みですけど、言わせてもらいます。『そんなことが彼女のためになると、本気で思っているのか?』」

「……負け惜しみなんて感心しないぜ」

 アナスイは睫毛一本動かさずに、花京院にかけた足をさらに踏み込む。満身の悪意を込めるかのごとく、執拗に。
 殺し合いゲームという異常事態にも揺るがなかった彼のこころに訴えかけるような言葉は、もはや存在しないのだった。

「どんな風にバラしてほしい?言いなよ、クソ野郎」

「アナスイ!……やめろ」

 見届けるだけだったはずの決闘に、ティムが口をはさむ。
 神聖な決闘は相手を侮辱しない。アナスイは、世界を取り違えた。 
 事態は最悪な方向へと移っている。
 邪悪のうすら黒い影が、今まさに、強い愛を謳っていたはずの青年の背後に。

 彼はティムの方へ、ちらと視線を投げる。火のような視線。口元に浮かぶ嘲笑。
 そうして無言のまま、何事もないかのように捕えた敵とへと目線を戻す。
 
 花京院は状況を打破するため思考をまとめようとするが、もはや何も考えることができなかった。
 悔しかった。耐えられない怒りが心臓で唸る。
 自分の手に何もないまま死んでしまうのかと思うと、気が狂いそうだった。
 歯を食いしばる自分を見下ろして、アナスイの笑みが彼の顔をより深く穿つのを見た。

 そうして、ダイバー・ダウンが花京院の急所へと狙いを定め、その拳が振り下ろされて。
 まっすぐに繰り出されたその打突は、彼の命をいともたやすく奪うはずだった。



「!!」



 舞い上がる土埃。花京院は迫るアナスイの攻撃とは違う衝撃によって横へと吹っ飛ぶ。


「何……」


 一瞬早く事態をのみ込んだアナスイが呆然と呟いて。



 花京院めがけて振るったダイバーダウンの拳は、




 ――マウンテン・ティムの胴を貫いていた。

189存在の堪えがたき軽さ ◆33DEIZ1cds:2011/01/19(水) 23:36:26 ID:???
※   ※   ※



 赤く重い液体が、月光に艶めいている。
 地面に広がる自身の血液の中に身を沈めてなお、マウンテン・ティムは微笑していた。

「花京院君、逃げろ。そして……こいつを――救ってやってくれ」

 その言葉を最後に、閉じられた彼の瞼が再び開くことはなかった。
 
 
 花京院は震える足で地面に膝をついていた。
 
 ダイバーダウンの攻撃が迫ったとき、ティムが突然走り出てきて彼を突き飛ばしたのだった。
 横滑りに吹き飛び、泥だらけになった服はところどころが破れている。露出した肌には新たに擦り傷ができていた。
 しかし花京院はその痛みも感じることなく、崩れ落ちたマウンテン・ティムから視線を離せずにいる。自分の見ているものが信じられなかった。
 砕け散った思考は、ただいたずらに散漫で。花京院はティムの最後の言葉を咀嚼しきれない。


 不意に、夜風が冷たい、という考えだけがぽっかりと浮かんだ。


「ティム……?」

 アナスイがダイバー・ダウンのヴィジョンを消し、死んでしまった仲間の名を呼ぶ。 
 スタンドを介して伝わってきた、彼の肉体を貫いた時の感覚。
 それを確かめるように、自分の腕をじっと見つめる。 

 やにわに足音が届いた。音の方を見れば、走り去っていく花京院の背中。
 アナスイは無言のままそれを見送り、物言わぬ骸と成り果てた友へと再度視線を落とし。

「逝っちまったのか。……いや、俺が殺したんだな」
 
 そばに落ちていたテンガロン・ハットを持ち上げて、指先で回す。
 度重なる戦闘でくたびれてしまったフェルトの質感が、ちりちりと指を刺激する。

 一日にも満たない付き合いだったのに、この帽子が彼の誇りある職業の象徴であると理解できた。 
 それを軽々しく指先で回す。 
 やがてそこから外れたテンガロンハットが、空気の抵抗を受けながら再び地面へと落ちた。
 そして。
 
「俺は……あんたとの思い出を断ち切って、――殺人鬼に戻るよ」 

 友の遺品であるはずのそれを、荒々しく踏みしだく。典型的なテンガロンの型を作っていたウールが、硬い革靴の下にあっさりとつぶれた。
 水牛をかたどった飾りが衝撃で外れ、物悲しく転がる。
 それも気に留めず、幾度となく、彼は踏みつける。すでにただの羊毛の塊と化したものを蹂躙するように踏みつける。
 泥をこすり付けるように、悪意で思い出をにじり消すように。
 
 何度も捩じり、押しひしぐ。

 泥と見分けがつかなくなったころに、彼はゆっくりと帽子から足を離して言った。

「今度こそ、本当に。……さようなら」

 彼は光の中で知ったことを、闇の中で否んだのだ。
 
 踵を返して括目する。
 瞳は一点、闇の中のただ一点を見ていた。


※   ※   ※

190存在の堪えがたき軽さ ◆33DEIZ1cds:2011/01/19(水) 23:38:12 ID:???

 見上げた空に浮かんだ月は、己を嘲笑っているように見える。光だけがただ白々しく、煌々と降りそそぐ。
 ざらつく街路樹へと押さえつけられ、呻吟しているさまはさぞ憐れだろう。
 地面を見ればすぐ向こうに、つい数時間前に会話したはずのマウンテン・ティムが力なく横たわっている。
 

 首が押しつぶされそうだ。


 ドナテロ・ヴェルサスは考える。
 こんなことが起こるはずではなかった。

「盗み見とは、趣味が悪いぜ」

 ヴェルサスは悲鳴を上げることも、助けを乞うことも、罵倒すらも許されず、アナスイに首を掴み上げられている。
 アンダー・ワールドはダイバー・ダウンによって、がんじがらめにされていた。

 いたずらに足をばたつかせても何もならなかった。
 生身の体も、スタンドも――抵抗らしいことは何も、できなかった。

 悔やむべきは自分の甘さ。
 スタンドが足元に迫っていることに気付けていなかった。
 自分が潜んで見ていることが気付かれていると、悟れなかった。

 亡羊とした思考で思い返す。
 彼はここ数十分、花京院の後を追い続けていた。

 大事そうに抱えていた真っ白なシーツをいぶかしく思っていたが、そこにはあの宿敵、空条徐倫が絡まるようにして捕えられていたこと。
 てっきり花京院から感じるものだと思ってた痣の感覚は徐倫のものだとわかり、大いに驚愕したこと。
 徐倫と花京院の二人が『話し合った過去』を民家の中へ忍ばせたスタンドで掘り起こし、それらの全ての事態を把握したこと。
 そうして、追っても益のなさそうな徐倫を切り捨て、花京院を追ってきたこと。

 警戒すべきマウンテン・ティムたちの動向を知るため、犯罪者が犯行現場に戻るような感覚で取った行動だった。
 隠れたまま様子を見て、もう一度DIOの館を目指すつもりだったのだ。

 そのあとのことはあまりの衝撃のせいか、ひどく断片的で。
 過去を掘り起こしながら花京院の後を追い、追いついた矢先に。
 目の前で展開された死闘。花京院を追い詰めたアナスイの笑い。スタンドに腹をぶち抜かれ、動かなくなったマウンテン・ティム。

 その時点で、逃げるべきだった。
 花京院はどこかに走り去って、すでに影すら見えない。
 
 生きて、幸せにならなくてはならないのに。
 こんなところで、不愉快な泥の上で、泥を見ながら、泥のように死ぬことなんて、絶対に受け入れられない。
 
 しかし、現実は暗い鎌首を残忍にもたげて、彼の小さな願いを刈り取るのだ。

「う……ぐ、俺は、死なねぇッつってんだろうがッ!幸せになるまで!絶対に!」

「じゃあそのためにお前は何かしたのか?なんでこんなとこで這いつくばってやがる?他にやる事があるだろーが」

 呆れたような半眼を溜息とともに閉じ、アナスイは街路樹に押し付けていたヴェルサスの体を地面へと投げた。

「クソッ!アンダー・ワール――」

「言われてからやるようでは無意味だ、うぜえ事はよしな」

 いくら掘り返そうとしても、地面に手が届かず、腕はむなしく空を切る。
 それもそのはず、ヴェルサスの腕の関節は――指のそれに至るまで、完全に、すべて、例外なく、逆に折り曲げられていたから。

191存在の堪えがたき軽さ ◆33DEIZ1cds:2011/01/19(水) 23:39:25 ID:???
「無気力な悪ほど吐き気を催すものはないな」

 アナスイはやれやれというように首を振り、肩をすくめる。

 低く、嫌な音が夜の住宅街に響く。
 腕に続いて足首が、膝が、大腿骨が、腰盤が、肋骨が、ダイバー・ダウンによって軽快に組み替えられていく。
 
 ヴェルサスにはわからなかった。
 突然空から落ちてきたスニーカーを拾ってしまったあの日から、何が何だかわからないまま人生を転がり堕ちてきて。
 彼には、自分が不幸な理由が心底わからなかった。
 極めつけは、意味の分からない殺人ゲーム。せっかく出会った相棒のような存在のティッツァーノを見殺しにした、せざるを得なかった状況が恨めしかった。
 
 彼は世の中を呪い、自己憐憫に傾いた濁った眼で周囲をにらみ続けてきた。
 
 世の中が嫌なら、自分を変えればよかった。それが彼には終生分からなかった。

 諦めと後悔が、死にゆく心に去来する。


 (ああ俺、なーんもやってねえなぁ……。幸せって、なんだったんだろうな――ティッツァ?)


 しかし、それもまた、一つの人生。



 最後に一つ鈍い音がして、原形を留めぬほどに組み替えられた彼の死骸が地面に転がされた。


※   ※   ※
 
 
 今わの際。
 冷たいアスファルトに体を横たえながら、思っていた。


 ――アナスイ。生死を問わずにお前を止めるってのは、なにもお前だけの生死のことを言っていたんじゃあないぞ。
 俺の生死も問わずに止めるってことだぜ、知っていたか?
 
 お前が思うより、俺はお前を気に入ってたよ。
 意志を曲げずに、一途で、強いところが特に気に入った。悪く言えば融通の利かない頑固者だな。だがそこがいい。
 俺が見初めたやつなんだから……徐倫のためを思うんなら、お前は下衆な人殺しになるな。

 お前は道を踏み外してる。決闘は、もっと神聖なものだぞ。
 だから、俺はあえて横槍を入れる――俺を殺すのは、お前のような気がしていたさ。
 そして目を覚ませ、俺が死ぬことによって、目を覚ましてくれ。

 体が重い。
 
 ……ルーシーは、きっと俺のことなんか忘れちまうだろう。
 でもそんなことが重要なことか?
 彼女が心底困ったときに、俺に電話をくれたんだ。
 不謹慎を承知でも、それだけで天にも昇るような気持ちになれた。 
 俺が保安官だから、というだけの理由だったとしてもかまわない。
 震える彼女の傍にいさせてもらえただけで……俺はもう十分だった。
 
 彼女がここに来ていなくて、本当に良かった。 

 ルーシー、ありがとう。

 今は、こいつが……アナスイが、正しい道に気付いくれればそれだけで。
 暖かいベッドも、安らかな死もいらない。




 ――俺は、カウボーイだからな。

192存在の堪えがたき軽さ ◆33DEIZ1cds:2011/01/19(水) 23:39:58 ID:???

★   ★   ★



 涙の日、その日は。
 それは灰の中からよみがえる日。
 
 われらをあわれみたまえ。
 われらをあわれみたまえ。
 
 
 私たちを苦い死に引き渡さないで下さい――







【マウンテン・ティム 死亡】

【ドナテロ・ヴェルサス 死亡】


【残り 26名】


【D-4 南部 /1日目 夜中】

【花京院典明】
[時間軸]:ゲブ神に目を切られる直前
[状態]:精神消耗(中)、身体ダメージ(中)、右肩・脇腹に銃創(応急処置済)、全身に切り傷
[装備]:なし
[道具]:ジョナサンのハンカチ、ジョジョロワトランプ、支給品一式
[思考・状況]
基本行動方針:打倒荒木!

0.ティムさんが、死んだ……僕のせい?そして「アナスイを救ってやってくれ」という最期の言葉の意味が分からない……
1.逃げる。どこへでもいいからここではないどこかへ。
2.自分の得た情報を信頼できる人物に話すため仲間と合流したい
3.仲間と合流したらナチス研究所へ向かう?
4.巻き込まれた参加者の保護
5.荒木の能力を推測する
[備考]
※荒木から直接情報を得ました。
「脅されて多数の人間が協力を強いられているが根幹までに関わっているのは一人(宮本輝之助)だけ」
※フーゴとフェルディナンドと情報交換しました。フーゴと彼のかつての仲間の風貌、スタンド能力をすべて把握しました。
※マウンテン・ティムと情報を交換しました。お互いの支給品を把握しました。
※アナスイの語った内容については半信半疑です。その後アナスイがティムに語った真実は聞いていません。





【ナルシソ・アナスイ】
[時間軸]:「水族館」脱獄後
[状態]:身体ダメージ(中)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(食料、水2人分)、点滴、クマちゃん人形、双眼鏡、ラング・ラングラーの首輪、トランシーバー(スイッチOFF)
[思考・状況]
基本行動方針:見敵必殺。徐倫を守り抜く、参加者を殺害する、荒木の打倒

0.さようなら、ティム――殺人鬼に逆戻りだ。ゲームに完全に乗った。
1.徐倫の敵は俺の敵。徐倫の障害となるものはすべて排除する
2.徐倫の目的、荒木のもとに彼女(と自分)が辿り着くためなら何でもする
3.殺し合いに乗った奴ら、襲ってくる奴らには容赦しない。襲ってこなくても容赦しない。
[備考]
※マウンテン・ティム、ティッツァーノと情報交換しました。
 ブチャラティ、フーゴ、ジョルノの姿とスタンド能力を把握しました。
※ラバーソールとヴェルサスのスタンド能力と容姿を知りました。
※首輪は『装着者が死亡すれば機能が停止する』ことを知りました。
 ダイバー・ダウンを首輪に潜行させた際確認したのは『機能の停止』のみで、盗聴機能、GPS機能が搭載されていることは知りません。
※ヴェルサスの首筋に星型の痣があることに気が付いていません。
※F・Fが殺し合いに乗っていることを把握しました。
※ポルナレフが得た情報について知りました。
※マウンテン・ティムと改めて情報を交換し、花京院の持っていた情報、ティムが新たに得た情報を聞きました。


※ヴェルサスを殺した時点では仲間を殺した感傷に浸っている……という感じなので、ティム・ヴェルサス二人分の支給品は回収していません。
 この後拾うつもりかどうかは後の書き手さんにお任せします。

193 ◆33DEIZ1cds:2011/01/19(水) 23:43:38 ID:???
以上で終わります。
ティムとヴェルサスの所持品については、本文中にアナスイが拾い集める描写を入れると余韻が消えてしまう……と思ったため状態表に入れました。
何かご指摘があればよろしくお願いいたします。


余談……今の本スレといい、毒になっていないヘイズといい、みんな最高だー!ありがとう!

194 ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 01:24:31 ID:aChlny56
お待たせしました、これより投下いたします。
長丁場になると思いますがよろしくお願いします。

195さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 01:27:20 ID:???
自分の身に何が起きたかわからない。
ゆっくりと近づいてくる地面に顔から叩きつけられても、まるで夢の中のように現実感がない。

寒気がする。震えが止まらない。なのに体が動かない。
倒れ伏した視界の端で、真っ赤な池が広がっていくのを見て初めて理解した。
ああ、あたし、死ぬんだなって。

ぬちょり、ぬちょりと血のりをつけた靴が目の前を横切っていく。
なんか思ったよりあっさりしいてた。
死ぬ時はもっと苦しんだり、足掻いたりするもんだと思ってた。
特にあたしは怖がりだからなぁ……けど意外と大したことないもんだ。
こうやって笑えてくるぐらいだもんな。
ただ、だんだん目を開けとくのがつらくなってきた。
そしてたまらなく、寒い。今頃あたしの顔は真っ青になってるだろうな。
それでも怖くは、ない。なるようになる、なぜだかそう思えてきた。

ああ、とにかく眠い。早く寝てしまいたい。
それにしても……思えばあっという間の人生だった。
色々あったよ、まったく。
けどなんかここで過ごした一日が一番濃い一日だった。

力のこもらない笑いが漏れる。
まぁ、それもそうか。だって殺し合いだぜ。
これで色々考えなかったり、迷ったり、全然ぶれないなんてわけがない。
あたしみたいに元々がちゃらんぽらんな女なんて特に、な。

いきなり目の前でじいさんが消されたり、二回も同じやつに射殺されそうになったり、ゴミ虫みたいな目で見られたり、自暴自棄になってるところを励まされたり……。
首輪いじってたら危うく爆死しそうになったり、トンだスプラッターな死体を見たり、知り合いに本気で殺されかけたり、同じようなスタンド能力にびっくりしたり……。

でも結局ここでおしまいか。
色々足掻いたけど、頑張ったけど、所詮ここまでの女だったってことか。
それも仕方ないよな……今更どうにもできないもんだ。





―――――そう思わないとやってけない。
―――――仕方ない、どうしようもない、諦めた、なんて言わないとやってけない。

196さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 01:28:49 ID:???


笑うことができたのは自分が滑稽だったからだ。
結局生きる、生きる、言ってたあたしは死んだまま生きてただけだ。
あたしはとっくに死んでた。
ただ生きた気になってただけだ。

今から生きる、生きよう。そう思ってた。決心してた『だけ』。
あたしはジョルノみたいに、『夢』をもってない。
ホルマジオみたいに貫き通す『信念』もない。
それを探せたらよかったのに。それを見つけることができたら良かったのに。

でも見つけれなかった。見つけようとしただけで、結局その気になってただけ。

だってなんもしてないもん。
ホルマジオの後にひっついて、ナチスに来たらブチャラティに言われるようにジョルノにくっついいっただけ。
それで? それであたしはなにか見つけれたのか? 
あたしにとって生きる意味は見つかったのか?

死ぬのが怖くないはずだ。
何も失うモノがないもんな。
死んでも何も変わらないもんな。
生きてても何も変えれないもんな。

あたしには死にたくない、そう言う理由と資格がない。
だってそうだろう?

「ははッ」

死ぬ間際になって誰もあたしは思い浮かべることができない。
あたしが死んで悲しんでくれるような人の顔が想像できない。

これがあたしが積み上げてきたものだ。
これが……あたしの生きた証か。
笑えるよ。



笑えよ、グェス。

「ははははッ」





【グェス 死亡】
【残り 25名】








197さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 01:30:12 ID:???



―――時刻は数時間前


「おいおいおいおい、ちょっと待てよ!
 お前まさかこのまま俺たちを残してどっか行こうって魂胆じゃねーよな?!」

情報交換を終え、背中を向けた俺に向けられた叫び声。
振り向くと、指をこちらにつきつけ喚いていたのは音石明だった。
まったく、何をそう叫ぶことがあるというのだろうか。
情報交換を終え、リンゴォ・ロードアゲインも手を貸せば歩ける程度まで回復した。
テレンス・T・ダービーのもたらした情報は確かに膨大なものだが、それもナチス研究所で整理すればいいもの。
なにより目的地へ向かおうと急かしたのは音石明本人だ。

「……情報交換を終えた今、ここに長居する必要はないと思うが」
「そうじゃねぇ! いや、そうだけど!
 ただよ……お前、いまからさっき言ってた女のやつんところにいくつもりじゃねーだろうなァ?」
「そうだ」
「冗談じゃねーぜ!
 怪我人一人と足手まとい一人つれてナチス研究所へ向かうなんて自殺行為じゃねーか!
 そんな状態で誰かに襲われでもしたら目も当てられねぇぜ!」
「奇襲にたいしてはリンゴォのスタンドで対処すればいい。
 なによりお前自身のスタンドで戦えばそれまでの問題だ」
「ふざけるな、あんな怪物相手に戦えるわけないだろォ―――!
 おねがいします、ついてきて下さいィ―――ッ!」

……どうやら思ったよりも使えない男のようだ。
仕方ない、山岸由花子と空条徐倫のことも気になるがナチス研究所へ向かうとしようか。
一度リゾットと情報交換をしておくのも悪くないし、ちょうどいい機会だったということか。

音石に悟られない程度にため息を吐く。
常に無表情なはずのリンゴォがなぜか今だけ、同情的な眼差しを送ってくれているように思えた。
とにかく、決まった以上、善は急げだ。
わかった、と音石に返事をすると俺はリンゴォに手を貸す。
そしていまだ出発の準備にもたもたしている二人を残し、ほとんど抱きかかえるように、リンゴォの体を支え俺は走り始めた。

「なッ!?」
「おい、ちょっ……待てよ!」

確かについていくことには同意した。
敵対する参加者が出てきたら、俺も協力してその敵を排除しよう。
ただし……

「お前たちがついて来ることができたら、だがな」

198さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 01:32:51 ID:???


二人がついてきているかを確認するために振り返る。
音石もダービーも命がかかってるとなると流石に必死だ。
不格好ながらも懸命に体を動かし、俺に少しでも遅れまいと我武者羅に走ってくる。
どうやらこのペースでいけば予想以上にはやくナチス研究所へ到着できそうだな。

「……サンドマン」

思考を切り替え、突然声をかけてきたリンゴォの言葉に耳を澄ます。
同時に、前方に見える人影に気付き足を緩める。
暗い闇に紛れていた人影が段々とはっきりしてくる。
さっきの空条徐倫のように誤解から戦闘が始まってしまうのは馬鹿らしい。
相手がノッた相手でも対処できる距離をとると、俺は足を止めた。

「僕はジョルノ・ジョバーナ、この殺し合いには乗っていません。
 荒木打倒のために情報と協力者を集めているところです」

一歩一歩、慎重に近づいてきた影がはっきりと形をなす。
互いの顔が、遠目にだが確認できる程度で止まった青年が両手をあげ言う。
見た限りでは戦意も感じられない。本当のことを言っているようにも思える。
が、信頼に足りるかどうかは分からない。リンゴォの負傷もある以上あまり無茶はできないが……さてどうする。

「肩を貸してる相手は怪我人でしょうか?
 僕のスタンドは治療も行うことができます。
 貴方が僕を信じられないというならば、先に治療を行うことも構いません」
「ジョルノ……ジョバーナ……」
「……! 貴方は……!」

そのリンゴォが小さい声で彼の名前をつぶやく。
声を聞いて初めてリンゴォだとわかったのか、彼の眼が見開かれる。
知り合いか、そうリンゴォに問いかけると信頼できる相手ではある、とのこと。
どうする、と問うとリンゴォはしばらくの間黙りこむ。
青年も黙ってこちらの返答を待っている。
しばらくの間続く静寂、それを破るように後ろから二人の悪態と足音が迫ってきた。
同時に、ジョルノの後方からも一人の女が近付く。

「サンドマン、てめぇふざけんなよ!」
「元々はお前が無理を言ったからだぞ、音石明。
 くそ、散々な目に会った…………」

音石明とテレンス・T・ダービー。
二人の到着が俺たちの行く先を大きく決定づけた。






199さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 01:35:05 ID:???
ナチス研究所にて男が二人、額をつき合わせ議論を交わす。
時には身振り手振りを加え、納得と正解を求め意見をぶつけ合う。
だがあくまでその言葉は『飾り』。
勿論内容自体は重要なことで、いずれは考えなければならないことだ。
しかし優先順位はそこまで高くないもの、そしてなにより盗聴されたも構わない内容。
二人は荒木を出し抜くため、ダミーの会話を続けながら一切手を止めようとしなかった。



「やはり一番考えられるのはG-10の島。
 ジョルノから俺が直接聞いた情報と禁止エリアから考えても、ここで間違いないだろうな」
(つまり首輪の動力源は俺たち自身のスタンドの力だと?)

「だろな。だがわからないのは荒木の考えだ。
 G-10を禁止エリアにすることで奴は自分の居場所をばらしてきている。
 仮に禁止エリアに特定しなかったのならば、マップの半分近くを占める海の中からやつの居場所を特定するのは骨が折れただろうというのに」
(スタンドの力ではなく、正確には生命力ではないかと思ってる。
 でなければスタンド使いでない参加者の首輪の説明がつかない
 勿論、全てが全て同じ構造でないという可能性も否定はしないが)

「絶対的な自信と、挑発行為じゃないか?
 奴の積極的な介入からみても俺たちを本気で殺し合わせようとしてるとは思えない」
(――どうも俺はそこに違和感を感じる。
 仮に動力源が俺たちだとしたならば電波妨害装置を発動した時、お前が気を失った原因は何だ?)

「事実俺たちがこうやって協力しているぐらいだからな。
 殺し合いを促進させたいならもっと適した時間軸があるはずだ。
 お前が、俺たち暗殺チームに狙われた始めた時なんかがその典型的な例だ。
 だが奴はその時間からお前を呼び出さなかった……それは何故か……。
 ……論点がずれるかもしれないが、ジョルノ・ジョバーナが言っていた荒木は純粋である、これについてどう思う?」
(装置の発動以外に原因となる要素はなかったが……強いて言うなら音石のスタンド能力か。
 装置が発動したことによって俺の生命力を首輪が過剰に変換しすぎた。
 生命力を吸収されたことで俺は気を失った。一応筋は通ってるように思えるが?
 そもそも音石が原因だとしてもあの状況でそうする理由が見当たらない。
 仮に音石が意図的にやったとしてもそこまでするぐらいならば首輪を暴発させたほうが遥かに楽だ)

「俺が直接荒木のやつを見たのは最初の参加者が全員広間に集められていた時ぐらいだから詳しくは分からない。
 ただ俺はジョルノの言葉も一理あると思う。
 こうも色々と不自然な点があるとただ単にやつの気まぐれではないかと疑わしくなってくる」
(そこが不可思議だ。
 電波を受信している首輪。その電波を遮る電波妨害装置。
 この仮定で行くと荒木は電波によってエネルギー変換の調整を行っていることにならないか?
 だが『わざわざ』電波によってエネルギー調整する理由が俺にはわからない。
 首輪はこの殺し合いの根幹をなす重要な要素なのに、だ。
 これほど高性能の首輪を作れる荒木がエネルギーを調整する機械を首輪に入れない理由は何だ?)

200さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 01:37:56 ID:???





「荒木自身についてもっと知る必要があるか……。
 奴の知り合いは今まで集めた情報からするとこの殺し合いに参加させられてないようだな。
 そうなると直接的に奴について知ろうというのはあまりに不確定すぎるな。
 奴の行動パターンから奴の狙いを推測するしかあるまい」
(こいつを見てくれ……。
 これはあるスタンド使いによって首輪の構造を念写したものらしい。
 実際信憑性がなかったが、グェスの話と合わせてみると信頼できるレベルものと思える。
 ここまでの設計図を模写できるスタンド使いを呼び寄せた時点で荒木は首輪を解除される可能性は高いと踏んでいたのだろう。
 だから荒木は『あえて』エネルギー調整機を入れなかったんだ。
 俺が思うに電波で調節しているのはやつがそれを最終手段として利用するためだと思う)

「あくまで推測が限界だな
 奴が一番不可解な行動をとったのはグェスから日記を回収したところだと思うが、お前はどう思う?」
(――――なるほど、いざ首輪を解除しようとしてもその瞬間に電波を遮断し俺たちを気絶させるためか?)

「グェス程度に盗まれてしまった警戒心の薄さの割には自ら回収に出向く辺りがクサイな。
 グェスが盗んだのは支給品のランプを使い、花京院典明と一緒に荒木に呼び出された時か……。
 しかしこれではやはり堂々巡りに入ってしまう。
 果たして荒木は意図的にグェスに『盗ませた』のか? それとも本当に、『盗まれた』のか?」
(そうだ。つまり爆弾は殺し合いを促進させるため、エネルギー調整電波は俺たちが首輪を解除するのを抑止するため。
 首輪は二重の意味で俺たちを拘束している、俺にはそう思える。
 俺は一度気を失ったものの、短時間で立ち上がれるまでには回復した。
 だが発信源を抑えられたら俺は気を失ったままだったかもしれない。
 つまり電波を遮断し続ければ、その間俺の生命力はずっと首輪に吸い取られてるわけだ。
 そこでだ……もしこの変換率を高めることができたら?
 ……もしかしたらこの首輪は爆弾を使うまでもなく俺たちを殺すことが可能なのかもしれない)

「実際いくらでもこじつけができそうだからな。やはり情報が少なすぎるか……」
(首輪を解除しようとするとジレンマに陥ってしまうわけか。
 首輪の『機能を停止する』には電波を止めなければならない。だが電波を止めれば荒木に感づかれてしまう。
 同時に奴は電波をストップ、首輪のエネルギー変換機能が暴走、装着者はそのまま生命力を過剰に吸収される。
 だが電波を止めずに首輪を解除しようとすれば爆弾が爆発、か)

「ただ『殺し合う』のが目的ではない、つまり俺たちの『死』を望んでのこの殺し合いを開催したわけではないな。
 自分の意志で、自らの選択で『殺し合う』、それが奴の望んだものか……?」
(俺に対して電波を遮断しなかったのは『警告』か、はたまた『ご褒美』か。 
 とにかく今後この装置が首輪解除のキーとなるのは間違いない。
 電波妨害装置によって『誰でも電波を妨害できるのか』が分水点だろうな。
 音石にしか使えないようだったら絶望的だが、もし俺たちにでも使えるようであれば上手く立ち回ることで荒木を出しぬける)

「俺たちに意志の選択権がある、というふうに奴が考えてると思うと不愉快だな」
(死んだふりか? それでどこまで奴を騙しきれるか……それを防ぐためにやつは盗聴器を仕込んでるんだぞ
 解除される参加者もだが解除する参加者の演技力も相当なものを要求される……。
 それになによりこの装置は奴自身が支給したものなんだぞ?)

「そうだ……意志とは与えられたものを選び取るためにあるわけではない」
(さっき口頭で言ったはずだ、奴は『俺たちの死』が目的ではないと。
 ならばこいつで首輪を解除できる可能氏は充分ある……、いや仮になくてもとりあえずはこいつで試してみんるしかないだろう。
 それと監視カメラも考えてナチス研究所に関しては俺のスタンド能力であらかた調べた……が、正直確信はない。
 なにより奴は時間を超えて参加者を集める力がある。俺たちが理解できない未来のカメラ、盗聴器の可能性まで考えると……)

201さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 01:39:20 ID:???

「自ら切り開いていくものだ」
(お手上げ、か
 現状電波妨害装置がどこまでやれるのかを実験したいが下手すればそれすら荒木にばれてしまうのはキツイな)

「今の俺たちのようにな」
(だがばれる危険性があるとしても、ここから手をつけるしかない
 装置と首輪の距離によっての遮断率の変化、変換率の個別差による装置の稼働率。
 考えられる可能性は無数だが現状ほかに道はない)

「ああ」
(変換率の個別差から考えると強力なスタンド使いにはそれだけ負荷が大きいのだろう。
 吸血鬼や柱の男と呼ばれる奴らがこの場にいることからもその可能性は高い
 案外スタンドも使えない一般人が一番首輪解除に近い存在なのかもしれないな……)





「リゾット、帰ってきたぜ」

突然の仲間の帰還にリゾットは持ち上げかけたペンを下ろす。
えらいく早い帰還だな、と思いブチャラティに視線を送ると彼も同様に意外そうな表情をしていた。
大声とともに正面の扉が開かれる。その音に紛れて、偽物の可能性は?とブチャラティに問う。
ブチャラティは黙って頷く。席を立ちがるとともに、流れるようにスタンドを呼び出すと扉の死角へと足を向ける。
リゾットもそれに従い席を立つと、扉から少しだけ距離をとった。

廊下をこちらへ向かってくる音。足音は複数、だんだん近づいてくる音に緊張感も高まる。
そして扉の前で足音は止まるとノックの音が部屋に響いた。
最初に素早く二回、少し間をおいて一回、さらに間をおいて三回。
それを確認したリゾットは口を開いた。

「入れ。ただし部屋に入っていいのはホルマジオ、お前一人だ」

一瞬だけ間が空き、扉が開かれる。
両手を頭の上に置き、スタンドを脇に立たせたままホルマジオは部屋に入る。
リゾットの氷のように鋭い視線を受け止め、ホルマジオは口を開いた。

「今帰ってきた」
「合言葉は?」
「『裏切り者には慈悲を、復讐者たちには終わりを』」
「プロシュートとコンビを組んでいた人物のスタンド名は?」
「『ビーチ・ボーイ』」
「ソルベの相方の名前は?」
「ジェラード」
「暗殺チームのリーダー、リゾット・ネェロの年齢は?」
「……は?」

202さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 01:41:56 ID:???

淀みなく答えていたホルマジオの答えが鈍る。
最後の質問に虚を突かれたのか、毒気を抜かれたように間抜けな表情が浮かんだ。
それを見てリゾットは微笑を浮かべ、警戒心を解いた。

「相手の思考を読み取るスタンドという可能性も考えて、お前が知らないはずの質問をしてみただけだ。
 許せ、ホルマジオ」
「おいおい、冗談きついぜ……」
「それで、指令はうまくいったのか?」

坊主頭に伝った冷や汗を拭うと、おどけた顔で肩をすくめる。
それがちょっとしたイレギュラーがあってだな、そう言うとホルマジオはブチャラティを呼び寄せ一旦部屋を出る。
人手が必要だとのことで、その間にリゾットは筆談で散らかった机の上を整理した。

現状筆談でもブチャラティと話した通り、道は暗い。だがそれえでもどうにかするしかないのだ。
それに、とリゾットは皮肉気に思う。
逆境に置かれることには慣れている。いつも通りと言えばいつも通りだ。

裏切り、組織から孤立したチーム。
刺客に追われる恐怖におびえながら、必死で娘の動向を追う。
迫りくる死、一人一人消えていく部下。バツ印をつけた写真と地図だけが増えていく。
絶望と悲しみ、闇に吸いこまれるような孤独感。

過去を思い出し、整理した情報を読み直していたリゾットは窓をたたく音に現実に引き戻される。
窓枠にちょこんと乗っかった一羽の鳥。足には紙がくくりつけられている。

「ジョルノ・ジョバーナ……」

緊急時にには僕のスタンドで連絡を送ります、ナチス研究所を出発する前の彼の言葉が蘇ってくる。
窓を開けると鳥はリゾットの周りをひとっ飛びし、最後に小さく鳴くと元の小石へと戻る。
掌に落ちてきた紙切れを開き、内容に目を落とす。
読み進めるうちに、リゾットの表情が険しいものへと変わっていった。

「……何かあったのか?」

用事を終え、部屋に戻ってきたブチャラティがリゾットに声をかける。
表情をいつもの鉄仮面に戻すと、リゾットは紙切れをブチャラティに渡す。
さきほどのリゾットと同様、ブチャラティも表情を変えていく。

「ジョルノ・ジョバーナからの報告だ。
 無事指令を終え、ナチス研究所へ帰還する……もうすぐそこまで来ているらしい。
 情報の共有はホルマジオと同時にやったほうが良さそうだな」
「……そうか」
「ホルマジオの奴はどこに?」
「……今からくるところだ」

203さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 01:44:09 ID:???


だがジョルノが指令を果たしたならば、ホルマジオはいったいなぜ帰ってきたのか。
リゾットの疑問はまさにちょうどその時ホルマジオが部屋に入ってきたことで解けた。
ホルマジオの後について男が二人、少年が一人。
そして車いすに乗せられ、気絶した人物が一人。

「パンナコッタ・フーゴ」

隣でブチャラティが拳を強く握り締める。
握っていた紙が、くしゃりと乾いた音を立てた。








13もの視線が二人を見つめていた。リゾットは相手の返答を黙って待った。
返ってきたのは言葉でなく、怒りに震える拳が叩きつけられた音だった。
疲れ果てた机がミシミシと悲鳴をあげ、端のほうで身を縮めていた音石がさらに体を小さくする。
その姿を見て億泰のイライラが加速する。席から大きく身を乗り出すと、目の前のリゾットを鋭い視線で睨みつける。
泣く子も黙るという言葉にふさわしい形相、それでもリゾットは動じない。
涼しい顔で視線を受け流すと、ゆっくりと顔の前で手を組みなおす。

「もう一度聞こう。音石はこの殺し合いをひっくり返す可能性を秘めている男だ。
 この先必ずこの男が必要となる時が来る。それでも……それを聞いてもお前の覚悟は変わらないか?」
「ああ、変わらないね」

とりつく暇もなく、億泰は返す。
何か文句があるなら言ってみろよ、そんな挑発的な意が言葉の端からにじみ出ていた。

「お前自身覚悟していた……兄はまっとうに生きれる宿命ではなかったと。
 そう言ったな? ならば億泰、お前はどう思ったんだ?
 音石明が捕えられ、法に裁かれた時どう思ったんだ?」
「…………」
「法に裁いてもらって良かった、そうお前は心の底から納得できたのか?
 これも法治国家の性、仕方がないことだ、そうやって無理矢理自分を押し殺したのか?
 どっちなんだ?」
「納得できたわけないだろうがッ!」

再びバンと机を叩き、勢いよく立ち上がる。
自分の不甲斐なさ、溜めこんでいた怒り、兄を失った悲しみ。
それは億泰にとってブラックボックスとも言える記憶だった。
リゾットの容赦ない質問攻めに億泰の感情は高まる。
胸ぐらをつかんだ拳はブルブルと震え、血ののぼった顔は真っ赤に染まる。

204さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 01:44:50 ID:???


「てめぇに何がわかるってんだッ! 兄貴だぞ……血のつながった家族だッ!
 お袋が死んでッ! 親父はDIOの奴にめちゃくちゃにされてッ!
 たった一人の、頼れる兄貴だったんだッ!
 その兄貴をッ! コイツはッ…………!」

リゾットは何も言わなかった。
胸ぐらをつかまれ今のも殴りかかってきそうな億泰を黙って見つめるだけ。

「お前に俺の気持ちが分かんのかよ!? 
 兄貴が殺されて、その仇を目の前に仲良し子良しなんて俺はごめんだッ!
 時間が違う? 俺の世界では裁かれた? 知るかってんだよッ!
 俺にとってこいつはッ!
 いつまでたっても! どこにいようとも! 兄貴を殺したくそ野郎だッ!」

てめーみてぇな鉄仮面に何言っても無駄かもしんないけどよ、そう最後に言い捨てる。
突き飛ばすように手を離すと、肩で息をする億泰。
席につく全員をじろりと睨みつけると、視線があった音石がヒィ、と小さく悲鳴を漏らした。
誰も口をきけなかった。13人が13人、思うことがあったが億泰の暴力的な圧迫感を前にだれもが口をふさぐしかなかった。

「まったくもって下らないね」

しばらく流れた沈黙を破ったのは岸辺露伴。
ゆっくりと立ち上がった彼に、億泰は即座に食ってかかる。

「露伴、てめぇ!」
「いいか、億泰、いい加減悲劇のヒロイン気取りはやめろよ。
 兄貴が殺されて顔を真っ赤にするのは君の勝手さ。
 けどお前一人だけがそうなんじゃないんだぜ」

露伴は席につく全員を一人一人指さしていく。

「ここに居る全員が人を殺したり、人を死なせたりしてここにいるんだよ。
 なにも君だけが特別ってわけじゃないんだ。
 なのに君ときたらまるで餓鬼みたいに口うるさい……いい加減僕もうんざりさ」

頭から水をかけられたような表情が億泰の顔に浮かぶ。
岸辺露伴は変人で、協調性のない嫌味ったらしい嫌な奴だ。
少なくとも億泰はそう思っていた。今の今まではそう思っていた。
だが今の露伴はどうだ。

「普段の僕ならこんなことは言わないさ、億泰。たださっきも言っただろう?
 僕は勝ちたいんだ。
 あの高慢ちきで気取り屋で人を見下したようなな態度をとる、あの荒木飛呂彦ってやつが気に食わないんだ。
 君だってそうだろう?」

億泰の表情から気づいたのだろう、露伴は皮肉気に言い放つ。
自分でもらしくないとは思ってる。こんなのは自分の役割ではないし、熱く誰かを諭すようなことなんてまっぴらだ。
けど、それ以上に勝ちたい。普段の自分なら絶対やりたくないことをしてでも、勝ちたい。

露伴の中でかつてないほど情熱が燃えたぎる。
仗助との賭け勝負の時と同様に、負けず嫌いの闘志が彼の中で燃えていた。
二人のやり取りを黙ってきいていたリゾットは億泰に再び問いかける。

205さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 01:47:34 ID:???

「虹村億泰……どうだ? それでもまだ納得できないか?
 音石は俺たちの救世主になりうる人物かもしれない。
 もしかしたら音石のスタンドで荒木を出し抜くことができるかもしれない
 それでもお前は、自分の道を選ぶか?」

何度もたたきつけられた拳が開いては閉じ、震える。
噛みしめた唇は言うべき言葉を探すが、何も見つからない。
全員が億泰の言葉を待っていた。
億泰は自分の心が静まるのを待つと、ゆっくりと口を開いた。

「俺が…………俺は出ていくぜ」

リゾットは眉をひそめ、ブチャラティは落胆を浮かべた。
ジョルノは何も言わず顔を伏せ、露伴は思い切り鼻を鳴らした。

「俺がめちゃくちゃなこと言ってるってのはわかった。
 俺一人がわがまま言ってここにいるやつらに迷惑かけてるってのもわかった。
 だけどやっぱり納得できねぇんだ、俺は。本当は……」

ギロリと音石をにらみつける億泰。

「今すぐにでもあいつを殺さないと気が済まないんだ。
 ここにあいつがいるってだけでムカっ腹立っちまってなにかあったら爆発しそうなんだ。
 だから……俺はここを出て行かせて貰うぜ」
「それを許さないと言ったら?」
「それでも出ていかせて貰うぜ。それこそ力づくでもな」
「……ホルマジオ」

億泰の決心は固く、即座に荷物をまとめ始める。
リゾットは小さくホルマジオを呼び寄せると耳元で会話を交わす。
部屋内には困惑と不安、落胆が広がっていた。

―――やはり荒木打倒に向けて力を合わせるのは無理なのか
―――個々が思いを抱いたまま協力することは不可能なのか

沈みかえる部屋、そんな中でホルマジオは立ち上がるとスタンドを傍らに呼び出す。
リゾットに向けいいのか、と小声で確認にするホルマジオ。
頼む、リゾットは一言だけ、そう返した。

「―――かっ切れ」

ホルマジのスタンド、リトル・フィートが動いた。
振り上げられた小指の刃は目にもとまらぬ速度で動き―――リゾットの左耳を切り飛ばした。

「なッ!?」
「ホルマジオ、小指もだ。日本のギャングには『指を詰める』という風習があるらしい」
「アイアイサ―」

206さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 01:49:31 ID:???

既に席を立ち扉へ向いかけていた億泰はその場に凍りつく。
それは億泰だけでなく、部屋中にいる全員。
驚愕に誰もが言葉をなくしていた。

我に返りジョルノがスタンドを呼び出す。それを見たリゾットは、片手をあげ治療の必要がないことを示す。
痛みを表情には出さない。机の上に転がった左耳と小指、まるで道端に落ちている小石を片づけるようにわきにのける、彼は立ち上がり口を開いた。

「ここにいる13人、それぞれ思うことがあるだろう。
 もしかしたら俺が掲げる打倒荒木には納得できない奴もいるかもしれない。ちょうど今の億泰のようにな。
 だがそれでも、一度でもこの席についた……話が通じない相手ではない。
 だからこそ俺は敢えて言いたい。俺はここにいる13人全員に協力してほしい。
 今だけは己を殺し、滾る感情を胸に秘め、この殺し合いから脱出するために協力してほしい。
 ここにいる、俺を含めて『五人』は―――」

ジョルノ、ブチャラティ、ホルマジオ、そしてフーゴの順に視線を向ける。

「ギャングだ。
 毎日人を殺す覚悟、人に殺される覚悟とともに生きてきた。
 当然人に誇れるような仕事ではないが、それでも俺たちは汚れ役を受け入れて、泥水を啜るような思いで生きてきた。
 だがそんな俺たちを! 必死で生きてきた俺たちの誇りをッ!
 ボスの野郎は踏みにじったッ!」

さっきまでの冷静さを捨て、リゾットは今一人の男に戻っていた。
彼のチームが受けた屈辱を思い出すと、腹の底からどす黒い感情が湧いてくる。

「そんなボスから俺は伝言を預かった。内容は協力を申し出るものだった。
 今さらだ……俺たちに死よりもゲスな屈辱を与え、散々力を振りかざした男が協力してくれないか、だと?
 俺は五人もの仲間を失った……ボスのせいでだッ!
 それなのに協力だと……? 俺たちはアイツの犬じゃないッ!」

組織を裏切る時、チームの奴らは誰一人反対しなかった。
ソルベとジェラード、大切な二人が殺された仇が討てるかもしれない。
ボスの娘と言う、あくまで可能性に彼は命を賭けてくれた。
リゾットいうリーダーの決断の元に。

「億泰……だから俺はお前の感情が理解できる。仇を討ちたいという思いもわかる。
 俺とおまえは同じ『復讐者』だからな。
 そのうえで言いたい。それはお前にとっての『勝利』になるのか?
 俺はボスを赦せない。だがこれは俺の個人的な感情だ。死んでいった仲間が何を望んでるか、今になってはわからない。
 ただ奴らは言っていた……自分たちが受けた屈辱を突き付けてやりたいと。
 俺たちが望むことはリーダーである俺と一緒だと」

ここにいるボスを殺すことは奴らの望んだことなのか。
ブチャラティたちと戦った時、自分は過去と折り合いをつけたはずだ。
それでも今、自分の信念が試されている。何が正しく、何が間違いなのか。

207さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 01:50:29 ID:???


「億泰、お前には納得できる道を歩んでほしい。
 俺もボスに会ったときどうなるかはわからない。ただ会ってから考えようと思ってる。
 それはチームが『勝つ』ことを望んでいたからだ。
 なによりも俺たちは勝つことを望んでいた。
 これは……この痛みは、お前に見せる俺の『覚悟』と『誠意』だ。
 仇を前に身も切れる思いだろう。見逃すことはこの上なく不本意だろう。
 その怒りを俺は身に受けよう。お前がどうしても我慢できないならば俺が代わりとなってお前の怒りを背負おう」
「どうしてそこまで……?」
「お前が必要だからだ、億泰。今すぐに、とは言わない……だが俺はお前が協力してくれることを望んでいる」
「…………少し……時間をくれ」

億泰はそう言うと席を立つ。荷物は持たなかった。
頭を冷やしてくる、それだけ言い残し外に出ていった。




 


13人が集まった直後、億泰が音石を見て怒り爆発。情報交換する暇もなく今に至ってしまった。
よって、その後は残りの全員による情報交換とチームとしての役割分担が決められた。

リンゴォはあくまで個人であることにこだわった。
彼はチームの一員として働くつもりはないと先に公言していた。
ナチス研究所によったのも体を休めるためであって、荒木打倒など彼の考えうることではない。
そこでリゾットは交換条件を申し込む。

ジョルノのスタンドによる治療と引き換えに、門番として働いてほしいと提案したのだ。
リンゴォはこれを了承するも二つの条件を出す。
ひとつはエシディシ、吉良吉影に関する情報を優先的に提供するとと同時に、二名がナチスに来るようなことがあればリンゴォが戦闘を行うこと。
またその戦闘には絶対に横やりを入れないこと。
そして門番の期限は真夜中まで、それ以降はリンゴォは拘束されない。
リゾットは条件をのみ、リンゴォに見張りを一任した。

次にサンドマン、情報交換を終えるとリゾットは先ほどブチャラティと交わした筆談の写しをサンドマンに託す。
彼はサンドマンに引き続きメッセンジャーとしての役割を求めた。
より多くの協力者を、より多くの情報を。
筆談に関してはあくまで奥の手、信用できそうな人物のみに見せて欲しいと伝える。
リゾットの話を聞き終えるとサンドマンは文句も言わず頷き、即座に準備に取り掛かる。
荷物は少ないほうがいい、それだけ言うとリゾットの食料、水と自分自身の支給品を交換。
バッグに地図と食料、水のみを入れ、サンドマンは研究所を飛び出した。



「さて、ほかに何か要望がないやつはいないか?」

208さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 01:51:26 ID:???

席に着いた残りを見渡し、リゾットは一人一人に問いかける。
既に最初に居た人数からはだいぶ減ってしまい、部屋の中はいささか寂しげなものになっていた。
と、そこで気づく。いつの間にか岸辺露伴がいなくなっていた。

「岸辺露伴は……?」
「露伴さんは先ほど『ナチス研究所なんてめったに見れるものじゃない! しばらく邪魔しないでくれ』と言って、施設内を取材中です」
「そうか」

ジョルノが代わりに答える。
そのジョルノにリゾットは尋ねる。

「ジョルノ、フーゴの様子はどうだ?」
「怪我自体は大したことありません。
 フーゴが起きた途端、僕たちに襲いかかる可能性も考え最低限の治療に留めておきました。
 動けないこともないですがそれでも彼が暴れることも考え、スタンドで作った蔦で縛り上げました。
 彼が無理にでも蔦を引きちぎろうとすれば、僕のスタンドが攻撃を反射することで動きを封じます」
「今目覚めてないのは?」
「単純に疲労の問題かと。こればっかりはどうしようもありません。
 無理矢理叩き起こせるかもしれませんが、どうしますか?」
「いや、まだ取り掛かるべき問題は多い。とりあえずは後回しにしよう」

ゴールド・エクスペリエンスをすっと脇に呼び出し拳を構える。
手荒に起こそうと思えばできるかもしれないがそれよりリゾット優先すべき問題があると考えていた。
テレンス・T・ダービー。
荒木の刺客として送り込まれた割には彼は驚くほどおとなしく、素直だった。
事を荒立てるわけでもなく彼の知りうる荒木の情報を全て提供する。
彼のこちら側についた、という言葉を信用するならそこまでだが、問題は荒木がそれをどう思ってるのか。
そして荒木自身が言っていた『約束はまだ有効』の発言。
はたしてここでダービーにゲームを挑み、それに勝ったならば荒木はどうするのか。

「僕は彼が必要とは思えない。今ここで殺しておいたほうがいいんじゃないですか?」

だがダービーの問題に移る前に横やりが入る。
今までずっと黙っていた川尻早人が突如口を開きリゾットに言い放つ。
フーゴに関しては自分の預かる知るところでない。
会議の流れをブチャラティに託し、彼は二人の会話を見守ることにした。

「という意見もあるが、ブチャラティ?」
「早人、君の意見は尤もだ。まして君は襲われた立場、フーゴを危険視するのは充分わかる。
 だが、少しだけ話をさせてほしい。フーゴの罪は俺の罪でもある。こいつは俺のチームの一員だからな」
「僕が言いたいのはそんなことじゃない。
 人を殺そうとしたやつが今更こっち側につくとは思えないんです。話なんかで気持ちが変わるなんて信じられない。
 それにそいつは乗った側であって、仮にこっち側に戻ってきたとしてもそれは見せかけだけかもしれない。
 そんな危険な目は潰しておいたほうがいいんじゃないですか?」

209さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 01:53:06 ID:???

最初から普通の子供ではないと思っていた。
だが、早人が事も無げに『殺す』という単語を口にしたことでブチャラティは確信した。
長い間ギャングをしていると、時として早人の年で重要なポストに就く子供もいる。
だがそんな子供が最後にたどる道は同じだ―――早人は長くは生きれない。
ブチャラティは唇をかみしめる。
荒木は命をおもちゃにするだけでなく、子供たちの未来をも取り上げる気なのか。

他人の命を軽んじるものは自分の命も大切にできない。
他人に向けた殺意はいつか跳ね返り、殺意に飲み込まれた者は自ら命を絶つ。
早人は犠牲者なのだ。
こんな殺し合いがなければ彼は正義を信じる素晴らしい人物になっていたことだろう。
それが歪んでしまった。荒木によって捻じ曲げられ、凄惨な経験が彼の黄金の意志をけがしてしまった。

「ナチス研究所は地図にも載ってるし、外から見ても大きな建物なんです。
 乗った参加者からしたら絶好の狩り場、そんなところでいつ爆発するかもわからない爆弾を抱えておくなんてリスクが大きくないですか?
 個人的な感情は抑えるべきだとリゾットさんも言ってましたし」
「爆弾も使いどころ次第では強力な武器になる」
「上げ足を取らないでください、ブチャラティさん。
 パンナコッタ・フーゴは間違いなく乗った側なんだ……彼を殺すのにこれ以上の理由は必要ないです」
「強力な規律は組織を作る上で必要不可欠なのはわかっている。
 だが暴力や死で人は決して動かせない。仮にそれで人を動かしてもそれは恐怖による支配だ。
 フーゴがもし乗った側なら俺もこいつを始末することに躊躇いはない。
 ただ100%……さらにそこから1%の確信が欲しい。
 フーゴはもうこちら側に帰ってこれない、その確信が欲しい」
「じゃあその確信はどうやったらできるんですか?」
「そのために俺はこいつと話してみたい。
 少なくとも早人、俺のほうがこいつとの付き合いは長い。
 一緒に仕事もした仲だ、俺のほうがフーゴを理解できる」
「それじゃ堂々巡りだ……結局ブチャラティさん次第じゃないか!」

二人の議論は長引く。
ブチャラティは粘り強く早人を説得する。フーゴのためだけでなく、今や早人のことも考えブチャラティは言葉を選ぶ。
対して早人も意見を曲げない。燃え盛る漆黒の意志が早人にブチャラティの意見をガンとして受け入れさせない。
早人の言った通り意見の対立は堂々巡りに陥っていた。

その時、部屋の扉がゆっくりと開かれた。
あまりにもゆっくりと開かれ、そのことに気づいたのはジョルノだけだった。
扉をくぐって入ってきた露伴はよろよろと壁に寄りかかる。
怪我でもしたのだろうか、心配に思ったジョルノが彼に駆け寄っていく。

「露伴さん、大丈夫ですか?」
「その声はジョルノ君かい? いやぁ〜まいったよ、取材をしてたら急に停電でも起きたのかなァ?
 暗くってな〜〜〜んにも見えなァ〜〜いんだよォ〜〜?
 なんで明かりを消したんだよォ〜〜?」
「停電……? 停電も何も部屋に電気はついてないし、月の光で充分…………ッ!?」

210さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 01:55:00 ID:???



ジョルノは露伴に手を貸して、そして戦慄する。
露伴の眼がなかった。正確には目の部分が削り取られたようになっている。
スタンド攻撃か、そう思うもその割には露伴が痛がる様子もない。
緊急事態であることは確かだ、そう判断したジョルノは今だ議論が続く部屋中に響く声で叫ぶ。

「リゾット、ブチャラティッ!」
「それにしてもナチスはすごいねェ〜〜〜! 感動してるんだよ僕はァ〜〜!
 なんだかいつになく、清々しい気分なんだよォジョルノ君〜〜〜!」
「ゴールド・エクスペリエンスッ!」

相手がどんなスタンド能力であれ、まずは治療を施さねばならない。
ふらふらと歩き続ける露伴を引き留めつつ、ジョルノは傍らに己の分身を呼び出す。

「がッ―――!?」

露伴の口角がつりあがる。それが狙いだ、そう誰かが呟いたのをジョルノは確かに聞いた。
ゴールド・エクスペリエンスが新たに眼を作り出そうとした隙、それを待っていた。
決して人間では出し得ない力、腹をけり上げられたジョルノは天井付近まで浮きあがる。

「ジョルノッ!」
「くそったれがッ!」
「殺すなよ、露伴は操られてる可能性もあるッ!」

突如起きた襲撃に対応できたのは筋金入りのギャングたちのみ。
近距離型スタンド使いの二人が身を躍らせリゾットが吠えた。
近くにいたホルマジオは露伴に飛びかかり、小指についた刀を振る。
背をそるような形で露伴はそれを避けると、そのの体制のまま蹴りを繰り出す。
崩れた態勢で繰り出されたはずの蹴りはホルマジオの想定を超えた威力で彼のガードを突き破る。

「なッ!?」

凄まじい威力にたたらを踏むホルマジオ。
そんな彼にさらなる追撃が襲いかかる。交差した腕を突き抜けんと全力の拳が叩きつけられた。
その一撃はホルマジオを軽々と吹き飛ばすほど。腕の骨が嫌な音を立てたのを部屋中に居た全員が聞いた。

「スティッキィ・フィンガーズ!」

その隙をつきブチャラティは部屋の机を放り投げる。
会議用に使われた大きな机が露伴に向け迫る。そしてその机の影に隠れ追走するブチャラティ。
右によけるか、左に避けるか。
どちらに出ようとも対処できるようスタンドの拳を構える。

「なッ?!」

211さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 01:55:58 ID:???


だがどちらの手段もとらなかった。露伴は拳を振り上げ、机に叩きつけるッ!
ステンレス制の机はひん曲がり、そして真っ二つに割れた。
虚をつかれたブチャラティだが、逆にチャンス。スタンドのラッシュを露伴目掛け振るう。

「うおおおッ!」

右に左に、俊敏なその姿は本来の露伴のものではない。
同時に気付く。ブチャラティの攻撃をいなす中で拳に触れないように細心の注意を相手は払っている。
ブチャラティはスタンド能力がばれていることを確信する。
拳を餌に、強烈なけりを相手にお見舞いする。その力を利用、即座に距離をとる。
空中で体制を整えると二メーターばかり離れ着地。依然戦闘態勢のまま、二人の仲間の回復のため時間を稼ぐ。

「貴様、一体何者だ……?」

『露伴だった』ものは笑い声を返す。
ゾッとするような声だった。殺意と悪意で塗り固められた声に全身の毛が逆立つ。
ゆっくりと、笑い語が大きくなるとともに露伴の体が膨張し始めた。
そして―――

「なかなか着心地のいい肉体だったが……俺には少しばかり窮屈でな」

バリバリ、と皮膚を引き裂き、まるで昆虫のように脱皮を終えた男は一言。
体全身を伸び縮めさせ、不敵に笑う。
リゾットは舌打ちを隠すことなく盛大に一つ。

「グェス、早人とフーゴを連れて逃げろ!
 ダービーと音石もだ! なるべく固まって逃げろッ!」
「俺がそれをさせるとでも?」

瞬間、エシディシの姿が消える。
否、超スピードで部屋内をかけぬけたのだ。
目標は逃走を指示されたグェスと早人。机さえ容易く切り裂く拳が振り上げられた。

「スティッキィ・フィンガーズッ!」
「ぬぅッ」

それをさせまいとスティッキィ・フィンガーズが背後から襲いかかる。
床につけたジッパーを利用し、弾丸のような速度でエシディシに飛びかかる。
これにはさすがのエシディシも防御せざる得ない。
拳の能力を警戒し、腕を払い、直撃を避ける。カウンターを狙い放った拳がブチャラティの頬をかすめた。

「いまだ、はやく行けッ!」
「あわああああああ…………」
「何してんだ、早く行きやがれッ! てめぇもだよ、ダービーッ!」

212さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 01:57:16 ID:???


部屋の隅に飛ばされていたホルマジオが腰を抜かせた音石を立たせる。
ブチャラティのラッシュがエシディシの進行を防ぐ。
その僅かな隙を縫い早人とグェス、フーゴは窓の外から逃げることができた。

「よそ見とは関心せんなァ」
「ハッ!?」

一瞬のすきを突き、腕を掴まれたスティッキィ・フィンガーズが投げ飛ばされた。
本体にダメージはフィードし、ブチャラティは窓を突き破り、外に放り出される。
すかさずホルマジオが助けに入る。
スタンド能力の発動を狙い、刃を振り回すもエシディシはこれを避ける、避ける。
鼻先をかすめ、纏った布が切れていく。そのギリギリの間合いの取り方にホルマジオはイライラを募らせる。
小指の刀はもはや警戒されている。そう判断した彼は小指を囮に距離をとり、足払いをかける。
だが素早い反応でエシディシは跳んだ。
空中にいるにもかかわらず、ホルマジオが腕を振るうより早く、蹴りの体制をとった。

―――俺のほうが遅い。
直前で何かを感じ取りしゃがみこんだホルマジオ、その頭の上を巨大な鎌が刈り取っていく。
髪の毛が数本舞い、冷や汗とともに恐怖が沸き起こる。体を転がし、その場から緊急回避する。

エシディシはそんなホルマジを踏みつぶそうと筋肉を収縮させ、途中でやめる。
既に部屋に残るのは戦士だけ。死ぬ覚悟も闘う意志ももった猛者たちだけだ。
今更勝負を焦るのは面白くない。それだけの余裕が彼にはあった。

窓から放り出されたブチャラティが返ってくる。逃がすべき仲間たちを逃がしたリゾットも戦闘態勢をとる。
奇襲を受けたジョルノもどうやら無事のようだ。口元を伝う血を拭うと起き上がり、四人はそれぞれのスタンドを構える。

四人と一人が今一度対面する。刹那の緊張感、先に動いたのは人間たち。
左からジョルノが、正面からブチャラティが拳の弾幕とともに接近。
対して怪物は脇に置いてあった机の残骸をジョルノに放り投げ、ブチャラティの攻撃は関節を外し避ける。
唯一戦闘に参加しなかったリゾットのスタンドは近距離には向かないものと判断、ターゲットを変更したエシディシ。

「させねぇよッ」

が、脇から急に飛び出したホルマジオ。
スタンド能力により姿を見えなくしていた男の急襲に、驚きながらも即座に対応。
ジャンプ一番、小指の刃はまたしても彼がまとった布をかするのみ。
紙一重でかわすと宙で一回転、まるで天井に張り付くような姿勢。
天井を蹴ると爆発的な推進力を得てリゾットに迫らんとする。

「消えたッ!?」

213さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 01:57:54 ID:???


が、飛んだ先には誰もいなかった。砂鉄を吸収、本人は壁に紛れその場を離脱。
目標を失い暴走した運動エネルギーは床板を崩壊させる。
床を突き抜け、辺りに木片が舞い、砂埃が立つ。
互いに姿が見えなくなった中、人間たちは影を頼りに今一度肩を寄せ集団で化け物に挑む。

パラパラ、と天井からはがれた塗装が落ちてくる。
戦闘音を聞きつけ駆け付けたガンマンは扉を開け絶句する。
埃が舞い、床板ははがれ机は粉々、椅子はあちらこちらで倒れている。

「これは……」
「これはこれはリンゴォ・ロードアゲイン……しばらくぶりだなァ」
「エシディシ……」
「先ほどのインディアンはもういないのか……少し残念だが、まぁいい。
 いずれは殺すことになる、早いか遅いかの違いだ」

ぬっと現れた芸術作品ともいえる肉体。
姿を隠すことなんぞ弱者が行うこと、逃げも隠れもせずにエシディシはニヤリと笑った。
リンゴォはそんな男を見て、腰しに刺していたナイフを抜く。
ついさっき行った戦闘が頭の中で思い出される。この距離ではマンダムが間に合うか、それすらも危うい。
なにより怪物の瞳には迷いが見えない。
紛れもない殺意。それを前に手だけでなく、体全身の震えがリンゴォを襲っていた。

やがて薄れていく砂埃。完全に収まりきったのを見て人間たちは互いの存在を目で確認する。
エシディシから目を切ることなくじりじりと四人のギャングたちが横一列に並ぶ。
その四人の前に一人の男が立つ。
怪物とギャングたちを遮るように立ち、鋭いナイフが月光を受けキラリと輝いた。

「……ここは俺一人という話のはずだ」
「そういうわけにもいかない。こいつはもはや一人でどうこうという次元じゃ済まない」
「断る。これは俺とあいつの問題だ。」

文字通り怪物に一人で挑むなんぞ自殺行為だ。
拳を交わし、殺意を全身で受けたブチャラティはそれを身をもって知った。
男の腕を掴み、ブチャラティは共闘を申し込む。
が、にべもなく却下される。視線は怪物から離されることなく、ブチャラティは見向きもされなかった。
それでもなんとかしようと再度口を開こうとした彼を遮ったのはリゾットだった。

「ブチャラティ、やらせてやれ」

思わぬ反論に目を見開く。ちょいちょいと指で近づくように合図されたブチャラティは怪物から目を離さぬよう慎重に動く。
リンゴォが向かい合ってると言え、対するは怪物、影すら霞んで見える超スピード。
それをもってすれば誰が襲いかかられてもおかしくない距離で向かいあっているのだ。

214さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 01:59:09 ID:???

「少しでも時間稼ぎができれば上出来だ。
 正直言ってリンゴォは他人を殺すことを非としない、扱いにくい存在。
 荒木に対して反感は持ってるものの、それ以前に俺たちギャングとも歩んでる『世界』が違いすぎる。
 組織の勝利を優先する形で引き留めたが、ここでいなくなっても痛手はそこまでない」
「見殺しにする気か?」
「ブチャラティ、お前も理解してるはずだ。
 俺たちギャングはメンツで成り立ってる世界、面を汚されたら相手にその分の借りは返す。
 やつはそれと同種だ。自分の縄張りに入るものには容赦はしない。
 お前だって一度や二度、手を出してはならないサシの勝負ってのを経験しただろう……」
「それとこれは違う……今を逃したら勝機は、ないッ!」

小声で交わされる二人の会話。
これ以上言っても無駄だとブチャラティはわかるとリゾットの制止を振り切り、自ら先立ちエシディシに飛びかかる。
先手必勝、リンゴォ以外にも4人ものスタンド使いがいるのだ。
ここは引く場面ではない……攻める場面ッ!

「なッ!?」

が、それを黙って見ている男ではない。
気づいたらブチャラティは飛びかかってすらいなかった。リゾットとの会話すら終わっていない。
時を六秒巻き戻す、既に情報交換で知っていたとはいえ体験する新しい世界。
戸惑いを隠せないブチャラティにリンゴォは初めて向かい合う。
その眼には確かな敵意が宿っていた。

「ブローノ・ブチャラティ……これは『神聖なる果たし合い』……お前が入っていい世界ではない。
 もしそれでも邪魔をするというのならば……俺はお前にナイフを向けなければならない」
「―――仕方がない。リンゴォ、貴方の言うとおりにしよう」
「感謝する」

身を引くと、壁に背をつけ腕を組んだ。
ブチャラティはリンゴォの世界を汚してしまった。それは彼が理解できるものではなかったが、敬意を表するべきだとはわかった。
ならば彼ができることはただ見守るのみ。エシディシが襲ってこようともリンゴォがなんとかしてくれる。
そう信頼することで、敬意を表した。
リンゴォはそれをみてゆっくりと振り返る。ニヤニヤ顔の怪物は大きな隙を見せたにも変わらずその場から一歩も動いていなかった。
人間どもの茶番が―――そう馬鹿にしているのだろうか。
いや、とリンゴォは自らの考えを否定する。こいつはさっきまでとはわけが違う。

「迷いが吹っ切れたか……」
「ああ、お前のおかげでな。やはり俺には人間が理解できないな、リンゴォ。
 今お前がブチャラティの助けを拒否したのも俺には不可解におもえるぞ。
 この俺に対して一人で挑もうとは……フフフ」

しまいには拍手すらし始めた男は笑みを隠そうとしない。
余裕と自信に満ちた顔は確かな実力に裏づくもの、それをリンゴォは知っている。
ナイフを握りしめた手が汗ばみ、震えが全身へと移っていく。
しばらくの間、そうしていた化け物は突如顔を真剣なものに変える。
さっきまでの雰囲気を一変させ、男はリンゴォに向かって囁く。

215さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 01:59:39 ID:???


「だが、リンゴォ、そんなお前に敬意を表しよう。
 俺は理解はできないが、その勇気だけは評価に値すると考えている。
 無敵のように思えるものに立ち向かう、それは無謀でもなく諦めでもなくお前たち人間がもちうる最高の能力だからな」
「おもしろい……少しいい眼光になったな。だが……やはりお前は対応者にすぎない。
 男の世界を乗り越えていないお前は所詮その程度なのだ」
「馬鹿にすることはない。激昂するようなこともしない。
 貴様が俺をその程度と思うならば、リンゴォ……ここでお前を殺し、俺が対応者でないことを証明しよう……ッ!」



びりびりと部屋が震えるような圧倒的なプレッシャー。
壁に背をつけた四人のギャングは観客たち。目の前で繰り広げられるのは真夜中の前の最後の決闘。
演じるのはガンマンと名前もない怪物(モンスター)。
フィナーレは号砲とともに、BGMはすでに準備完了だ。照らし出す月光がスポットライト代わり。


「「よろしくお願い申しあげます」」


BETするものは己の命、そして誇り。
人間代表と一人の怪物が今ここに激突する。
一瞬たりとも目が離せない、最高にして最大の遊戯をどうぞご覧ください。







216さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 02:00:57 ID:???

「おい……おい、暴れんなってッ!」

女の周りには誰もいない。デイバッグをたくさん抱え、彼女は一人盛大に悪態をついていた。
ポケットを押さえつけ全速力で駆けていく。飛び込んだ水たまりが足元で大きくしぶきを上げる。
繰り返される独り言、何と闘っているのか、ポケットを抑える力はますます強くなる。

走りつかれたのか、戦い疲れたのか。
足を止めた女は息を整えポケットをまさぐりながら叫ぶ。

「なんだってんだよ……わかったからッ! 今大きくしてやっから待てって!」

マジシャンもびっくりの一芸、ポケットから飛び出た二人はみるみる大きくなる。
幼さを残した表情に不釣り合いな鋭い眼光、少年は地に足をつけた途端周りを見渡し危険がないか目を光らせる。
車いすに乗った青年は今だ意識を取り戻さないのか、ぐらぐらと首を揺らす。
こんな状況でおねんねなんて呑気なもんだぜ、彼を見てグェスが呟いたのを聞き逃さなかった。
早人は舌打ちをする。誰にも聞こえない、自分だけが聞こえる程度の大きさだった。

「まだここじゃ安全とは言えねぇな……。とりあえず川の近くまで行こうぜ。
 最悪敵が来ても川に飛び込めばなんとか振り切れるかもしれねー……ってお前何やってんだッ?」

地図を広げていた彼女は現在位置を確認する。
周りを見渡し、大体の位置を確認した彼女が顔をあげると少年はデイバッグをあさっている真っ最中。
腹でも減ったのか、いやいやさすがにそんなわけはないだろう。
ただならぬその様子に少しだけ遠慮がちに、だが強い口調で呼びかける。
少年は振り返ることなく、背中を向けたまま答えた。

「決まってるでしょ? ナチス研究所へ向かうんですよ」
「気でも狂ったのかッ!? あたしたちは逃げるように言われたんだッ!
 だいたい戻ってどうするッ!? あたしたちにできることなんてなんもねぇんだよ!」
「……僕も億泰さんと一緒に出ていけばよかった」
「あん?」
「ギャングだとか囚人だとかで期待してたけど、あんたたちは甘ちゃんばかりだ。
 こんなんじゃ荒木に勝てるもの勝てなくなってしまう」
「何言ってるんだ……お前」
「僕には絶対果たさなければならない目的がある。そのためには利用できる相手はとことん利用させて貰う。
 今回だってそうだ……ナチス研究所に来たのも誰か僕に協力してくれるような人を探すためだった。
 でも駄目……ッ! 誰も使えそうな人はいなかった。皆結局命に執着する人ばかりだ。
 そういう意味じゃあの怪物……利用するには少し手間取りそうだけど、自信がないわけじゃない」
「おい早人……」
「なにか武器持ってないですか? 流石に丸腰でいくほどの度胸はないので」

217さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 02:02:53 ID:???

無関心に、無愛想に。
グェスのほうを一切振り向くことなく少年は出発の準備を整える。
目当ての武器が見当たらないのか、イライラを隠さず盛大に舌打ちをする。
グェスが無造作に持ってきたデイバッグをひっくり返し、そこらじゅうに物が散らばっていく。
鬼気迫るその様子に、最初は口調を荒げていたグェスも黙りこみそうになる。
だが少年がナチス研究所へ向かい歩き出すのを見ると、慌てて引き留める。

「おい、待ってたらッ! おい、早人ッ!」

だがそれでも少年は振り向かない。
体格的には無理に引き留めようと思えばできるかもしれない。
けど、グェスは直感的に感じる。
なぜかそんなイメージが思い浮かばない。

(これは……今のは……)

だんだんと遠ざかる背中に手が延ばされ、力なく宙をかく。
あまりに急に起きた出来事に呆然としながら、それでも早人に追い付こうという気が起きなかった。
いくつかのデイバッグと、車いすに乗った青年を残し、彼は歩いていく。

(どうやっても……止められない……。
 アタシ程度が言っても今更どうしようもない……。
 なにより……スタンドを使おうとも『なにもされない』という確信がない!)

だが、とグェスは恐怖を覚える。
誰もいない。狂気に走った殺人鬼も、ピンチに駆けつけるヒーローも。
それが一層不安を掻き立てる。誰もいないこと、それが孤独感を煽る。
こんなところにあたし一人残されて、一体どうすればいいんだ―――急に不安に思えてきた彼女は辺りを見回す。
早人が行ってしまったら、もはや自分はどこにも帰れないのではないか?
このままここにいていいのだろうか?

その一方で躊躇いもある。早人の眼が彼女の苦い記憶を思い起こさせていたのだ。
役立たず、どんくさいやつ……様々な負の感情がこもった視線。
そしてそれ以上の、邪魔をするやつには容赦しない、漆黒の意志が早人の眼には宿っていた。

宙ぶらりんになっていた手が何かを掴み取るように動く。
車椅子に乗った青年と少年の背をおろおろと見比べる。
どうすればいいのか、何をすればいいのか、一体自分は何をしているんだ。
口をついて出たのは今まで以上に弱弱しい叫び。
助けを求め、行く先を見失った子ヒツジの哀れな鳴き声。


「お――――――」

218さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 02:03:42 ID:???



そんなグェスの叫びは遂には早人に届くことはなかった。
早人は数歩足を進め、ゆっくりと振り返る。
彼の足を止めたのは彼女の途切れた叫びではない。
彼女の叫びを遮り、響き渡った銃声。まるで最初からわかっていたように早人は振り返り男の眼を見る。

車椅子に座った彼の右手には煙をあげる拳銃。
ぐるぐる巻きに巻かれていた蔦をめちゃくちゃにする彼のスタンド。
そして、ぽっかりと落ちくぼんだ眼。

パンナコッタ・フーゴはゆっくりと車いすから立ち上がると顔をしかめる。
口中に広がった鉄の味に顔をしかめ、ペッと唾を吐く。
真っ赤に染まった唾液が口を伝い流れてくる。

「起きてたんですか?」
「だいぶ前からね……。すぐに動かなかったのは現状がどうなってるか理解するためさ」
「まぁそんなところだと思っていましたよ」

少年のつっけどんな言葉に彼は皮肉気に微笑み、肩をすくめる。
人が一人死んだ、目の前で人が殺された。だというのに彼らはまるでゴミ捨て場で世間話をするように会話を続ける。
転がったグェスをまたぎ、フーゴが早人へ近づいていく。
靴の裏に付着した血液のぬめりとした感覚に一度は歩みをとめたものの、気にすることなく歩いていく。

「ところで……どうして銃を持っていかなかったんだい?
 球は一発しか入ってなかったけど持っていかないより、持っていったほうがましだろう?
 特に君は子供の上にスタンド使いじゃない……電気椅子に座って居眠りするより危険だ」
「一発しか入ってなかったんじゃないですよ。一発『だけ』にしておいたんです」

からになった拳銃を早人に向かって放り投げる。
優しさが微塵も感じられない雑で乱暴なパスを受け取ると、早人は唇の端を歪ませた。
フーゴが眺める先でズボンのポケットをひっくり返す。
出るわ出るわの弾丸の数々。デイバッグからくすねた数十発の弾丸が早人の言葉の証明だ。
ヒューとハズした口笛と拍手の音が虚しく響いた。

「僕がどんな行動をとるか、見計らうためかい?
 だとしたら大した度胸だよ……彼女じゃなく、君を撃つ可能性だってあったんだぜ?」
「それはないと踏んでましたよ……あなたにはそんな度胸もないし、なによりここで僕を殺したら本当に後戻りができなくなる」
「……どういうことか、説明してもらっていいかな?」

219さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 02:05:14 ID:???


薄気味悪い笑顔を張った二人、会話はそれでも続いていく。
殺意に染まり殺意に固められた少年と、裏切られたことで裏切りを重ねる少年。
殺意と裏切り、死の香りが辺りに漂い始める。
事切れた女性が最後に狂気に満ちた笑いをあげた。

「いいですよ……交渉しましょう。
 僕らが逃げた先にたまたまゲームに乗った殺戮者がいた。グェスさんは残念ながら殺されてしまい、僕は絶体絶命。
 そこで目を覚ました貴方が登場、なんとか相手を追い払う。
 貴方はゲームに一度でも乗ったことを懺悔し、僕はそんなあなたを赦す。
 どうでしょうか……これなら貴方があのチームで殺されることはないでしょう?」
「それだけかい? なにもそんなボランティアのためじゃないだだろう? 君が僕に要求することは?」
「僕の手となり足となり働いくことです。当面の仕事は……そうですね、『暗殺』ですね」

両手をあげ、天を仰ぐさまはまるで演劇のよう。
それを見つめニヤつく早人はまさに悪徳非道のギャングそのもの。
選択肢のない弱者をいたぶるように、早人は一歩一歩またフーゴを追いつめる。

「おいおい、やけに足元見てくれるじゃないか」
「それだけの価値はありますし、なにより貴方が何か言える立場ですか?
 これでも僕は譲歩しているんですよ? なんならこのままナチスに向かいましょうか?」
「言ってくれるねェ……」

―――降参だ……僕の負けさ、しばらく経った後そう言ったフーゴの顔には爽やかな笑みが浮かんでいた。
状況が状況ならば清々しい勝負の後に言うべきふさわしい言葉だ。
美徳とフェアプレー、両者を称賛する華々しい幕切れ。
だが闇夜に紛れ、死と血の臭いがむせかえるほどの空間では白々しく、虚しい。
貼り付けられた笑みも作られたもの、その裏に隠しているモノは本人しか知りえない。

さっと差し出された手、早人は満足そうな息を漏らす。
散々走り回ってようやく得た力だった。
それも甘ちゃんが口にするような力ではない……確実に相手を葬る手段。

フーゴがいつまでもおとなしい犬でいるとは思えない。
ギャングたちに受け入れられ、早人が用済みになったならばいつ始末されるかはわからない。
後ろ手で弾丸を込めなおした拳銃を握りなおす。
裏切り者には死を―――鉄のおきてに従い、必要ないと判断すればフーゴを処分する。
業火のように燃え上がる殺意。何もかもをのみ込む覚悟が早人には、ある。

愛好と親愛、両者の発展のために。
そんな意志を一切持たない、互いの利益のため、互いに相手を出し抜くため。
早人はジョーカーを手に入れたのだ。パンナコッタ・フーゴと言う爆弾を。
フーゴは再び分かれ道に立つことができた。ギャングに信頼されれば、今再び、殺戮者か反逆者かの道を選ぶことができる。
早人は差し出された手を握るため、ゆっくりと腕をあげた。



「―――なんて言うとでも思ったのかい?」

220さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 02:06:04 ID:???



そしてフーゴがその手をとることはなかった。


「がハァッ…………!」


紫色の腕が雄叫びを上げ、早人の体を貫いた。
宙に浮かされた早人の手はがくりと力を失い、垂れさがる。握っていた拳銃が乾いた地面に落ち、跳ねまわった。
パンナコッタ・フーゴは実験マウスを見るような眼で、崩れ落ちた早人を観察する。
己の分身がくりぬいた早人の腹の断面図、そこに靴をさし込み蹴りあげた。

「舐められたものだよ、この僕も……。
 だが感謝はしてるよ。体調は万全じゃなかったからね、武器はどうしたって必要だったんだ」

ありがとう、と感謝の言葉を送り落ちた拳銃を拾いグリップに手をなじませる。
川尻早人には知らない事が多すぎた。そして失ったものも多すぎた。
彼はパンナコッタ・フーゴがどんな思いで組織を裏切り、どんな思いで開き直ったのか知らない。
彼がどんな思いで人を殺す決断をし、どんなにその決断をするのに思い悩んだかを知らない。
情報としては知っていただろう。だが理解することはできても、感情をわかろうとは思わなかった。

フーゴはデイバッグからナイフを取り出すと曲芸師のように手の中でもてあそぶ。
興味深いものを発見したのか、しゃがみ込むと少年の体をじっと眺める。
ちぎれた血管、露出した骨、筋肉の断面図。
彼が腕を動かすたびに、鶏が喉を締め付けられたような悲鳴が上がった。

淡々と、感情を交えず、彼はナイフを振るう。
まな板の上に転がされたのは川尻早人。もはや虫の息だというのに、あっさりと逝くことはできなかった。
青年は頭がよかった。スタンドが貫いた場所は致命傷ではあるが、即死はしない個所。
剥き出しになった神経を愛でるようにやさしく、丁寧に。拷問は彼のお得意芸だった。

「僕が君を先に殺さなかった理由はただ一つだ。
 君がスタンド使いじゃないからさ。
 君がただの子供で、僕が殺そうと思えばいつでも殺せるという確信があったからさ」

その囁き声は優しく、やわらかい。
愛しの女性の耳元で言うかのように、思いやりをこめ、感情をこめ、彼は作業を続ける。
口調とはま逆の感情を瞳に込め、彼はマッドサイエンティストが行う解剖実験をやりきった。
それでも少年は逝くことができない。
生物として、最後の最後まで生きようという意志が彼の生命を繋ぎとめていた。
殺意が彼をこの世に引き留めていた。

「殺す……ぶっ殺してやる……」

221さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 02:09:37 ID:???


青年はとびっきりの笑顔を浮かべると、返事代わりに鉛玉をぶち込んだ。
甲高い音が平野にこだまし、少年の体がもんどりうつ。
もう一度、さらにもう一発、駄目押しで一発。

額に穴をあけ、本来ならば眼球があるべき場所に風穴を開けられた少年。
歪んだ表情には殺意しかなかった。
ダイヤモンドの輝きは、真っ赤な血で染まり、もう光を放つことはなかった。

「 Buonanotte・sogni d'oro (素敵な夢を……)」

散らばった荷物を集め、一つのデイバッグに整理するととりあえずは地図を広げた。
別にハイキングに行くようなわくわく感はなかったが、青年の中には確固たる意志が出来上がっていた。
殺意、パンナコッタ・フーゴにはそれが足りなかった。
そして彼は川尻早人の姿からそれ学ぶことができた。

だいたいの位置を確かめ、時計をチラリと確認、青年は目的地に向け出発した。
少年とと女性には目をくれることもなく、ずんずんと進んでいく。

恐怖がないわけではない。ただ、受け入れるしかないと思っていた。
弱い自分、状況に流され動揺しがち。激昂すると周りが見えなくなる。考えすぎてしまい、本質が見えなくなる。
ないものはない、できないことはできない。
開き直りに近いかもしれない。だがとりあえず自分の位置を知ることが大切だ。

殺すのに理由はいらない。ただ拳銃を構え、トリガーを引くだけ。
必要なのは殺意と決断。決断はすでにした。足りなかったのは殺意だけだ。

風が吹き抜けていくと、体の節々がズキンと痛んだ。
体調も万全でない。ならば自分がうまく立ち回るにはどうすればいいのか?
簡単だ、相手に自分の事を悟られなければいい。即ち―――暗殺。

さっそく自分の殺意が試される時。
ありすぎても駄目、なさ過ぎても駄目。悟られてはいけないし、いざという時に躊躇ってもいけない。
これは試練なんだろうなァ……、そうぼそりと呟く。
別に誰に対して言ったわけでもない。ただ自分に言い聞かせるためだ。
新しいパンナコッタ・フーゴ。それへの最初の関門が迫る。

「これは『試練』だ。
 過去に打ち勝てという『試練』と、僕は受けとった。
 人の成長は…………未熟な過去に打ち勝つことだとな……」

222さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 02:11:05 ID:???

―――青年が向かう先はナチス研究所。月光に浮かび上がる施設は青白く、怪しく煌めいている。
―――デイバッグの中で、奇妙な仮面が怪しく眼光を光らせた。




















頭にきてるわけでもねェし、かと言って冷静になってるかといったら、いや、それはNOだ。
足元に転がる小石をけり続け、気づいたらだいぶ研究所から離れた場所まで来ちまった。
ポケットに突っ込んだ手が冷えてきた。通り抜けてった風は俺の体を震えさせる。
とは言ってもいまさらどんな面して帰ればいいのか……俺にはわからなかった。

「俺はどうすればいいんだよ、兄貴……」

自分でも正直なにがしたいのかわからねェ。
音石の野郎は憎いさ……何度ぶっ殺してやりたいと思ったかもわからねェ。
あいつの相手を小馬鹿にした顔、なめ腐った態度。
顔面に一発ぶち込んだだけじゃこの思いは消えねェ……あいつをおれ自身の、この右手で。

目の前が赤く染まり、奥歯をぐっとかみ締める。
ギリギリと歯が音を立て、俺は右の拳を左の手のひらにたたきつける。
でもよ……その一方で『もしかしたら』っていう気持ちもある。

今でも思い出せる。
バイクに潜んでいたレッド・ホット・チリペッパー、走ってくる仗助たち。
ガオンと削ったのは奴じゃなくて地面、逆に俺の腕が切り飛ばされる。
そして……そして……。

あん時俺はあの野郎をぶち殺せなかった。でも、もしかしたらそれは兄貴がそうさせてくれたのかもしんねェ。
兄貴は何人も殺してきた。兄貴は親父のために、何人もの人を踏みにじってきた。
だけど俺にはぜってーさせなかった。体をはって俺をかばい、汚い仕事は一身に背負ってた。
俺の手が汚れないように。

223さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 02:12:19 ID:???


だから今でもあのときの光景をふと思い返すと、思っちまうんだ。
もしかしたらあれは兄貴の最後の願いなのかもしんねぇって。
俺には全うな道を歩んでほしい、兄貴はそう思ってるかもしんねぇ。

だけど……俺はそれでいいのか?
その兄貴を殺したのは誰でもない、あいつなんだぞ?
どのぐらいあいつのことを考えてきた? あいつの顔を思い浮かべ、夢の中で何度あいつを削り取ってきた?

「教えてくれよ……俺は、一体……」

なぁ、兄貴……兄貴は俺に何をしてほしいんだよ……俺は一体どうすればいいんだよ……。

目をつぶって兄貴のことを思い出す。夢の中で会えたようにいつもどおりの表情。
だけど兄貴は何も言わない。ただ黙って俺を見つめるだけだ。
俺は仕方なく目を開けると、また歩き出す。
蹴りだした小石は大きくはね、ころころと転がっていった。

「ん……?」

転がった小石を追いかけ続けるうちに入った住宅街、後ろから足音が聞こえてきた。
反射した音は場所を教えてはくれねーが、近づいてくることはわかった。
俺は黙ってスタンドを構える。
十字路に飛び出てきたのはテレンス・なんとか・ダービーとあの憎き音石の野郎だった。

「おい」
「ヒィッ!」

全力では走ってきたのか、息も絶え絶えの二人に俺は声をかけた。
悲鳴を上げた音石と、それすらできないほど疲れたダービー。
俺だとわかった二人はその場で崩れ落ち、膝を突き、空を仰ぎ息を整えた。
何が起きたかわかんねーが、とにかくなんかとんでもねェことが起きたのは俺にでもわかった。

「なんだよ……びっくりさせるんじゃねーよ」
「どうしたってんだ、研究所で何かあったのか?」

ようやく口を利けるようになった音石が文句を言う。
ピクリ、と俺は自分の頭に青筋が立つのがわかった。が、それを無視して俺はダービーに話す。
なんだかわからねェがいやな予感がした。
取り返しのつかない、何かとんでもないことが起きたんじゃねェか……そんな勘が働いた。

「どうもこうもじゃねーよ! 怪物だ……奴はモンスターだ……」
「岸辺露伴が……殺されました」
「何ッ?!」

224さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 02:13:14 ID:???


露伴が……殺された?
顔面をぶん殴られたようなショック。仗助の野郎の一発なんて目じゃねぇ、俺の頭は一瞬で真っ白になる。

さっきまでぴんぴんしてたあの露伴が……?
嫌味ったらしくて皮肉しかいわない、あの漫画馬鹿が……?
勝ちたい、そう言ってガキみたいに目を輝かせた、あいつが……?

白色があっという間に赤く染まる。なんだかわかんねーなにかが俺の体を通り抜ける。
反射的に体が動いた。地面にうずくまってた音石の襟首をつかむと、無理やり立たせる。
やつのわめき声がどこか遠く聞こえた。つばを撒き散らし、俺から離れようとむちゃくちゃに暴れまわる。
ちげーよ……ちげーよな。
どこかでそう冷静な声がする。俺自身の声が控え目に囁いていたのだ、これは単なる八つ当たりだと。

「嘘なわけねーだろッ! こんな状況で嘘なんてつけるかッ!」
「音石が言っていることは本当です。エシディシ……やつが岸辺露伴のなかに潜んでいたのです。文字通り、体内にね。
 そのあとはよくわかりません……情けない話ですが恐怖で私は頭がおかしくなりそうだった。
 圧倒的暴力とはああいったものをいうんでしょう……超スピードだとか、超能力だとかそんなんではありません。
 奴が露伴の中から『脱皮』してきたときは、もう…………」
「露伴……」

ウソ、じゃなかった。やっぱりな、と思う俺とそれでも信じたくない俺。
ドサリという音と、尻を思いっきりぶった音石の悪態。俺は自分の右手を見つめていた。

「とりあえずもう少し逃げようぜ。あんな奴が相手じゃこんな距離あってないようなもんだ」
「賛成です。彼らが何もできずに死んでしまうなんてことはないでしょうが……。
 できれば無事を祈りたいところです。
 とは言うものの……あんなものを見せられたあとじゃ……」
「ってうおおおおおッ?!」
「落ち着いてください……なんてことはないです、もう死んでますよ……」
 それにしても……むごい死体ですね。げぇ……」
「人っつーか、肉の塊っつーか……一体どうやって殺されたらこんな風になるんだよ……おえぇえ……」

音石たちはエシディシから少しでも距離をとるため歩くのをやめない。俺はまるで夢遊病者のようにそのあとをふらふらとついていった。
二人は今後の予定を話し合っていた。この後どこに行くべきか、何をすべきなのか。
だが俺は一切口を出さなかった。会話に参加することすらできなかった。
無残な死体を発見した時も、今の俺にはまるで現実感がない。。
目の前で起きてることが全部夢みてーに思えてたんだ……。

仗助も、康一も、露伴も、承太郎さんも。
しげちーも、トニオさんも、由花子も。
なんだってんだ、畜生……ッ!
どうしてこんなことになってんだよ……ッ!

225さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 02:15:01 ID:???

「貴方はどうするんですか、虹村億泰?」
「俺……? 俺は…………」
「正直私個人としては貴方についてきてほしい。
 私のスタンド能力は戦闘向きでないし、貴方のスタンドが強力な事は知っています。
 貴方が護衛についてくれればこれ以上ないほど心強い。それに……」

結論が出た二人はいつの間にかまた出発の準備をしていた。
地図をしまおうと荷物の整理で手間取る音石から少しはなれ、ダービーが俺に声をかける。
俺は何も考えられない。
頭ん中でぐるぐる回って回って……何から考えればいいのかわからない。

「正直な話、私は音石のやつが信頼できなくてね……あなたがついてればあいつも悪さはできないはず」

こっそり耳打ちするダービー。
ちょっと前までの俺なら仲間発見、大喜び。
ナチスに向かう当てもなかったし、そのままいってやってもいいぜ、となっていたかもしれない。
だけど今の俺はそんな風に考えれなかった。
テレンスの答えを待つ顔を見ながら、俺の思考は遥かかなたに飛んでいった。

なんでこうも皆いなくなっちまうんだ。
それも俺の手が届かないところで、俺がなにもできないままで。
兄貴が死んだときが壊れたビデオテープみたいに、何度も何度も頭ん中で思い出される。
俺を突き飛ばす兄貴、コンセントから飛び出すスタンド、叫び声、吸い込まれる体。
それに重なるように響く放送。あの荒木の野郎の声だ。
読み上げられるのは皆の名前、杜王町の仲間たちの名前ばかり。

誰に対して向けられたわけでもない怒り。
心臓をわしづかみにされたような悲しみ。
もう二度と戻ってこないという虚無感。

俺は、後何度こんな気持ちにさせられるんだろうか。
泣けばいいのか怒ればいいのかわかんなかった。
思わず漏れたうめき声は返事ならず、ダービーが怪訝な表情を浮かべた。

だけど……俺にはわかった。露伴の野郎が死んじまって……俺はようやく気付いた。
本当は前からわかってたのかもしんねー。親父がDIOの野郎におかしくされた時から俺はずっとそう思ってたのかもしれない。

俺は、音石の野郎が気に食わねェ。これは確かな俺の気持ちだ。
兄貴を殺したことは絶対に許せないし、許してやろうなんて思うことはぜっってーない。
一発だけじゃ勿論殴り足りねェ……気が済むまで俺の手でボコボコにしてやりたい。

でもそれだけじゃねェんだよ。俺は……俺は―――


俺は誰も救えない、俺自身が嫌いだったんだ。

226さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 02:15:55 ID:???

「おい、どうしたんだよ、ダービー」
「ちょっと待って下さい、今行きますよ」

お願いします、ダービーの奴がもう一度俺に頼みこむ。
俺は額をかき口ごもる。俺は決心したんだ。ようやく吹っ切れた今、俺は俺自身のために戦いたいという気持ちが強くなっていた。

「すまねーけど、俺はナチス研究所へ向かわしてもらう。
 本当にお前にはすまねぇと思ってるぜ? これは本当だ」

信じられない、こいつはいったい何を言ってるんだ。頭がイカれてるのか、命が惜しくないとんだトンチキ野郎だ。
ダービーは何も言わなかったが俺は表情から何が言いたいかわかった。
すまないと思ってるのは本当だ。音石の野郎は確かに、なんだか胡散臭ェ。
ここでダービーを置いて行くってのもなんだか気が引けるってのは確かなんだ。

「早くしようぜッ! 億泰のやつも来んのか、来ねーのかはっきりしてくれよ!」
「今行きます! ……あなたがそう言うなら仕方ありません。止めはしませんが充分注意して下さい。
 奴は本物の怪物ですから」

私たちはサンタ・ルチア駅に向かうつもりです、なにかあったらよろしくお願いします。
ダービーのやつは最後にそう付け加えると音石の元に戻り、二人で歩き出した。
悪いな、ダービー。でもやっぱり俺はもうこれ以上、取りこぼしたくないんだよ。

俺の右手は何のためにある?
削る能力しかない能がないスタンドは、戦うためにあるんじゃねーのか?
俺はもうこの右手で誰もつかみ損ねたくない。
もう、後悔したくないんだよ。

道路の曲がり角で俺と二人は別々の道を選ぶ。
別れ際に遠くなってくダービーと音石に向かって大きく手を振った。
音石の野郎はきょとんとした顔で俺を見、何とも言えない表情をする。

決して許したわけじゃない。色々言いたい事もあるし……やっぱりアイツは気に食わないし、ぶっ飛ばしたい。
中途半端に返されたキザな別れのあいさつを見て、俺はそう思った。
ダービーの仰々しい礼をみるとなおさらそう思えてくる。
だがそんなことに気をとられてる時間はない。俺はデイバッグを担ぎなおすと肩を回し、そして走り出した。
目指すはナチス研究所……もう誰も死なせない……ッ!

227さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 02:16:55 ID:???



―――住宅街に奇妙な発射音が響き渡った。




振り返った俺が見たものは、崩れ落ちるダービーの体。
腰を抜かした音石と転がるデイバッグ。
そして、奇妙に蠢き直立したグロテスクな肉の塊。
怪物(モンスター)がそこにいた。












「いよいよだ……いよよいよだよォオ―――ッ! 盛り上がってきたねェエエエエ―――ッ!」
「……もう今更何を言ようと、遅いとわかったよ。もう君の好きにしな…………」
「そうさせて貰うよ!
 大丈夫、テンションあがりすぎて放送を忘れそうになるなんて、流石に二回目はそんなことしないさ!」
「やれやれ……。ところで、要件はそれだけ?」
「いやいやまさか、これからさ」
「ふぅむ、首輪関係かい? それとも鈴美さんに関してかな?」
「いいや、違うよ」
「それじゃあなんだって言うんだい?」
「一人で楽しんだってつまらないじゃないかッ!
 おいでよ、一緒に楽しもうよッ!」
「…………君には呆れたよ」








【岸辺露伴 死亡】
【川尻早人 死亡】
【テレンス・T・ダービー 死亡】
【残り 22名】

228さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 02:17:47 ID:???
【F-2 ナチス研究所 研究室/1日目 真夜中】
【新生・暗殺護衛チーム(現在メンバー募集中)】
【ブローノ・ブチャラティ】
[スタンド]:『スティッキー・フィンガーズ』
[時間軸]:護衛指令と共にトリッシュを受け取った直後
[状態]:トリッシュの死に後悔と自責、アバッキオ・ミスタ・ジョージの死を悼む気持ち、リゾットの覚悟に敬意
    頬にかすり傷、身体ダメージ(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、シャーロットちゃん、スージーの指輪、スージーの首輪、ワンチェンの首輪
    包帯、冬のナマズみたいにおとなしくさせる注射器、ジョルノの『探知機』となっている小石
[思考・状況]
基本行動方針:打倒主催、ゲーム脱出
0.エシディシを殺す。
1.ここで首輪解除・打倒荒木の協力者を待つ。
2.フーゴ……。
3.いずれジョナサンを倒す
4.ダービー(F・F)はいずれ倒す。
5.ダービー(F・F)はなぜ自分の名前を知っているのか?
6.スージーの敵であるディオ・ブランドーを倒す
[備考]
※パッショーネのボスに対して、複雑な心境を抱いています。
※波紋と吸血鬼、屍生人についての知識を得ました
※ダービー(F・F)の能力の一部(『F・F弾』と『分身』の生成)を把握しました。
※参加者が時を越えて集められたという説を聞きました。納得済みです。
※エシディシの頭部に『何か』があると知りました。


※ブチャラティが持っている紙には以下のことが書いてあります。
①荒木飛呂彦について
 ・ナランチャのエアロスミスの射程距離内にいる可能性あり
  →西端【B-1】外から見てそれらしき施設無し。東端の海の先にある?(単純に地下施設という可能性も) →G-10の地下と判明
 ・荒木に協力者はいない?(いるなら、最初に見せつけた方が殺し合いは円滑に進む) →協力者あり。ダービー以外にもいることが確実。
②首輪について
 ・繋ぎ目がない→分解を恐れている?=分解できる技術をもった人物がこの参加者の中にいる?
 ・首輪に生死を区別するなんらかのものがある→荒木のスタンド能力?
  →可能性は薄い(監視など、別の手段を用いているかもしれないが首輪そのものに常に作用させるのは難しい)
 ・スティッキィ・フィンガーズの発動は保留 だか時期を見計らって必ず行う。
③参加者について
 ・知り合いが固められている→ある程度関係のある人間を集めている。なぜなら敵対・裏切りなどが発生しやすいから
 ・荒木は“ジョースター”“空条”“ツェペリ”家に恨みを持った人物?→要確認
 ・なんらかの法則で並べられた名前→国別?“なんらか”の法則があるのは間違いない
 ・未知の能力がある→スタンド能力を過信してはならない
 ・参加者はスタンド使いまたは、未知の能力者たち?
 ・空間自体にスタンド能力?→一般人もスタンドが見えることから

【以下はリゾットのメモの写し】
[主催者:荒木飛呂彦について]
荒木のスタンド → 人間ワープ…見せしめの女の空中浮遊、参加者の時間軸の違い(並行世界まで干渉可能)
        → 精密機動性・射程距離 ともに計り知れない
開催目的 → 不明:『参加者の死』が目的ならば首輪は外れない
          『その他』(娯楽?)が目的ならば首輪は外れるかもしれない 
※荒木に協力者がいる可能性有り

229さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 02:18:31 ID:???
【リゾット・ネエロ】
[スタンド]:『メタリカ』
[時間軸]:サルディニア上陸前
[状態]:頭巾の玉の一つに傷、左耳と左手の小指消失(止血済)
[装備]:フーゴのフォーク
[道具]:支給品一式(水と食料なし)、首輪の設計図(ジョセフが念写したもの)、ダービーズ・チケット、妨害電波発信装置
    ペッシの首輪、重ちーが爆殺された100円玉(一枚)、ジョルノの『探知機』となっている小石
    紫外線照射装置、、承太郎のライター
[思考・状況]
基本行動方針:荒木を殺害し自由を手にする  
0.エシディシを殺す
1.ブチャラティと共に首輪の解除実験
2.首輪を外すor首輪解除に役立ちそうな人物を味方に引き込む。
  カタギ(首輪解除に有益な人材)には素性を伏せてでも接触してみる。
3.荒木に関する情報を集める。他の施設で使えるもの(者・物)がないか、興味。
[備考]
※盗聴の可能性に気が付いています。
※フーゴの辞書(重量4kg)、ウェッジウッドのティーセット一式が【F-2 ナチス研究所】に放置。
※リゾットの情報把握
 承太郎、ジョセフ、花京院、ポルナレフ、イギー、F・Fの知るホワイトスネイク、ケンゾー(ここまでは能力も把握)
 F・F(能力は磁力操作と勘違いしている)、徐倫(名前のみ)、サウンドマン、山岸由花子(名前のみ)


※リゾットのメモには以下のことが書かれています。
[主催者:荒木飛呂彦について]
荒木のスタンド → 人間ワープ…見せしめの女の空中浮遊、参加者の時間軸の違い(並行世界まで干渉可能)
        → 精密機動性・射程距離 ともに計り知れない
開催目的 → 不明:『参加者の死』が目的ならば首輪は外れない→この線は薄い
           『その他』(娯楽?)が目的ならば首輪は外れるかもしれない 
※荒木に協力者がいる可能性有り

【以下ブチャラティのメモの写し】
①荒木飛呂彦について
 ・ナランチャのエアロスミスの射程距離内にいる可能性あり
  →西端【B-1】外から見てそれらしき施設無し。東端の海の先にある?(単純に地下施設という可能性も) →G-10の地下と判明
 ・荒木に協力者はいない?(いるなら、最初に見せつけた方が殺し合いは円滑に進む) →協力者あり。ダービーにもいることが確実。
②首輪について
 ・繋ぎ目がない→分解を恐れている?=分解できる技術をもった人物がこの参加者の中にいる?
 ・首輪に生死を区別するなんらかのものがある→荒木のスタンド能力?
  →可能性は薄い(監視など、別の手段を用いているかもしれないが首輪そのものに常に作用させるのは難しい)
 ・スティッキィ・フィンガーズの発動は保留 だか時期を見計らって必ず行う。
③参加者について
 ・知り合いが固められている→ある程度関係のある人間を集めている。なぜなら敵対・裏切りなどが発生しやすいから
 ・荒木は“ジョースター”“空条”“ツェペリ”家に恨みを持った人物?→要確認
 ・なんらかの法則で並べられた名前→国別?“なんらか”の法則があるのは間違いない
 ・未知の能力がある→スタンド能力を過信してはならない
 ・参加者はスタンド使いまたは、未知の能力者たち?
 ・空間自体にスタンド能力?→一般人もスタンドが見えることから

230さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 02:19:07 ID:???
【ジョルノ・ジョバァーナ】
[スタンド]:『ゴールド・エクスペリエンス』
[時間軸]:メローネ戦直後
[状態]:精神疲労(大)、トリッシュの死に対し自責の念 、リゾットの覚悟に敬意、ジョージの死に衝撃
    内臓へのダメージ(中)、身体ダメージ(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜3(確認済)、ジョージ・ブチャラティ・リゾット・ホルマジオ・グェスの衣服の一部
[思考・状況]
0.エシディシを殺す
1.首輪解除・打倒荒木の協力者を捜す。
2.『DIO』は吐き気を催す邪悪で、『祖父』は『父』に殺されたのでは?
3.フーゴ……。
4.トリッシュ……アバッキオ…ミスタ…!
5.他のジョースター一族が気になる。
6.エシディシと吉良と山岸由花子とジョナサンとF・Fをかなり警戒
[備考]
※リゾットとの情報交換によって暗殺チーム、リゾットの知っている護衛チームの将来を知りました。
※ジョナサンを警戒する必要がある人間と認識しました。
※参加者が時を越えて集められたという説を聞きました
※ラバーソウルの記憶DISCを見、全ての情報を把握しました。
※ダービーズアイランドに荒木がいることを知りました。
※ディオがスタンド使いになった事を知りました(能力は分かっていません)
※エシディシの頭部に『何か』があると知りました。
※リゾット・ホルマジオ・グェスと詳細な情報交換をしました。



【ホルマジオ】
[時間軸]:ナランチャ追跡の為車に潜んでいた時。
[状態]:精神的疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、万年筆、ローストビーフサンドイッチ、不明支給品×3(確認済)、ジョルノの『探知機』となっている小石
[思考・状況]
基本行動方針:荒木を『ぶっ殺す』!
0:エシディシを殺す
1:首輪解除・打倒荒木の協力者を捜す。
2:踊ってやるぜ、荒木。てめえの用意した舞台でな。だが最後は必ず俺らが勝つ。
3:リーダーが決めたんなら、ブチャラテイたちとの決着は荒木を殺した後でいい。ペッシのことも勘違いだったし。
4:ボスの正体を暴く!だがその処置は仲間と協議の上決める。
[備考]
※首輪も小さくなっています。首輪だけ大きくすることは…可能かもしれないけど、ねぇ?
※グェスの持っている情報(ロワイアルに巻き込まれてから現在までの行動、首輪に関する情報など)を聞き出しました。
※リゾット・ブチャラティ(ジョルノ)と詳細な情報交換をしました。

231さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 02:19:45 ID:???
【エシディシ】
[時間軸]:JC9巻、ジョセフの“糸の結界”を切断した瞬間
[状態]:健康
[装備]:『イエローテンパランス』のスタンドDISC
[道具]:支給品一式×4(食糧をいくらか消費)
    不明支給品0〜2(確認済み)、岸辺露伴のサイン、少年ジャンプ
    『ジョースター家とそのルーツ』リスト、ブラックモアの傘、スーパーエイジャ
    首輪探知機、承太郎が徐倫に送ったロケット、青酸カリ、学ラン、ミキタカの胃腸薬、潜水艦
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに優勝し、全生物の頂点にッ!
0.目の前にいるすべての人間に柱の男の証明を。
1.全てのものに敬意を表する。だが最後に生き残るのはこの俺だ……!
2.参加者をすべて殺す
[備考]
※時代を越えて参加者が集められていると考えています。
※スタンドが誰にでも見えると言う制限に気付きました 。彼らはその制限の秘密が首輪か会場そのものにあると推測しています
※『ジョースター家とそのルーツ』リストには顔写真は載ってません。
※『イエローテンパランス』の変装能力で他者の顔を模することができます
※頭部を強打されればDISCが外れるかもしれません。
※イエローテンパランスはまだ完全にコントロールできてません。また具体的な疲労度などは後続の書き手さまにお任せします。


【リンゴォ・ロードアゲイン】
[スタンド]:マンダム
[時間軸]:果樹園の家から出てガウチョに挨拶する直前
[状態]:健康、漆黒の殺意
[装備]:なし
[道具]: 基本支給品 不明支給品0〜2
[思考・状況]
基本行動方針:参加者達と『公正』なる戦いをし、『男の世界』を乗り越える
0.エシディシと再戦を。
1.吉良を許すことはできない。
2.遭遇する参加者と『男の世界』を乗り越える。
[備考]
※ブチャラティのメモの内容を把握しました。
※サウンドマンと情報交換をしました。
 内容は『お互いの名前・目的』『吉良(とその仲間)の居場所』『お互いの知る危険人物』『ナチス研究所について』です。

232さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 02:20:16 ID:???

【F-2 ナチス研究所北/1日目 真夜中】
【サンドマン】
【スタンド】:『イン・ア・サイレント・ウェイ』
【時間軸】:ジョニィの鉄球が直撃した瞬間
【状態】:健康
【装備】:サヴェジ・ガーデン
【道具】:基本支給品×2(+余分な食料・水)、音を張り付けた小石や葉っぱ、荒木に関するメモの複写
【思考・状況】 基本行動方針:元の世界に帰る
1.徐倫と由花子の元へ行く。
2.ナチス研究所へ向かい、同盟を組んだ殺人鬼達の情報を伝える
3.初めて遭遇した人物には「ナチス研究所にて、脱出の為の情報を待っている」「モンスターが暴れている」というメッセージも伝える。
4.荒木の言葉の信憑性に疑問。
5.名簿にあるツェペリ、ジョースター、ブランドーの名前に僅かながら興味
[備考]
※7部のレース参加者の顔は把握しています。
※プッチの時代を越えて参加者が集められていると考えを聞きました。 。
※リゾットと情報交換しました。が、ラバーソールとの約束については、2人だけの密約と決めたので話していません。
※F・F、ブチャラティチーム、ホル・ホース、ミューミューの容姿と能力を知りました。(F・Fの能力は、リゾットが勘違いしている能力)
※盗聴の可能性に気付きました。
※DIOの館にて、5人の殺人鬼が同盟を組んだことを知りました。それぞれの名前は把握していますが、能力・容姿は知りません。
※リンゴォ・ロードアゲインと情報交換をしました。
 内容は『お互いの名前・目的』『吉良(とその仲間)の居場所』『お互いの知る危険人物』『ナチス研究所について』です。

233さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 02:21:00 ID:???


【F-3北西部、マイク・Oとスカーレットの死体前/1日目 真夜中】
【F・F】
[スタンド]:『フー・ファイターズ』
[時間軸]:DアンG抹殺後
[状態]:継ぎ接ぎの肉体
[装備]:なし
[道具]:名簿、地図、携帯電話(全て体内に所持)
[思考・状況]:
基本行動方針: 空条徐倫を生存させるために彼女を優勝させる
1.ふ  っ  き  れ  た
2.他の参加者はジョリーンの敵だから殺す
3.余裕が出来たら自分の能力(制限)を把握しておきたい
4. もしも荒木が倒せるならば対主催に益がある方法で死ぬ
[備考]
※リゾットの能力を物質の透明化だと思いこんでいます。
※リゾットの知るブチャラティチームの情報を聞きましたが、暗殺チームの仲間の話は聞いていません。
※リゾットから聞いたブチャラティチームのスタンド能力についての情報は事実だと確信しました(ジョルノの情報はアレッシーの記憶よりこちらを優先)
※ダービーとアレッシーの生前の記憶を見たので三部勢(少なくとも承太郎一派、九栄神、DIO、ヴァニラ、ケニーG)の情報は把握しました。
※エシディシは血液の温度を上昇させることができ、若返らず、太陽光に弱く、スタンドを使えると認識しました。 (太陽光が致命傷になることも把握)
※自分の能力について制限がある事に気がつきましたが詳細は把握していません。
※ディアボロの能力を『瞬間移動』と認識しています。
※アナスイが、脱出は不可能だと知ったときに殺し合いに乗りうるという事を把握しました。
※FFが捨てた支給品(デイパック×2、壊れた懐中電灯、加湿器、メローネのマスク、カップラーメン)がF−3南部に落ちています。
※第三回放送を聞きました。徐倫とアナスイの名前が呼ばれていないこと、プッチの名前が呼ばれたことだけは確認しています。
 禁止エリア及び作動時間を正確に把握できませんでした。
※復活しましたが、現在は人の形をした肉塊の状況です。まともな外見にしようと思えばできると思いますがするかどうかは次の方にお任せします



【音石明】
[時間軸]:チリ・ペッパーが海に落ちた直後
[スタンド]:レッド・ホット・チリペッパー(黄色)
[状態]:体中に打撲の跡(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×3、不明支給品×1、ノートパソコンの幽霊
    スピットファイヤー(プロペラに欠損あり)、 スピットファイヤーのコントローラ、バッテリー充電器
[思考・状況]
基本行動方針:優勝狙い、逃げ続ける自分に嫌悪感
0.……は?
1.首輪解除なんて出来んのか? リゾットは失敗したし……
2.サンタナ怖いよサンタナ、でもエシディシはもっと怖い
3.電線が所々繋がっていないのに電気が流れているこの町は何なんだッ!? あやしすぎて怖えー!
[備考]
※バトルロワイアルの会場には電気は通っているようです。
 しかし様々な時代の土地が無理やり合体しているために、電線がつながっていなかったりと不思議な状態になっているようです。
 スタンドが電線に潜ったら、どうなるかわかりません。(音石は電線から放電された電気を吸収しただけです)
※音石の情報把握
 ブチャラティチーム、ホル・ホース、ミューミュー(ここまでは能力も把握)、ミセス・ロビンスン(スタンド使いと勘違い)
※盗聴の可能性に気がつきました
※サウンドマンとリゾットの情報交換はすべて聞きました。
※スピットファイヤーはプロペラの欠損により動作に安定感がありません。

234さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 02:21:54 ID:???
【虹村億泰】
[スタンド]:『ザ・ハンド』
[時間軸]:4部終了後
[状態]:左肩に『ザ・ハンド』で抉られた跡。胸の中央に銃痕(波紋で治療済み)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式。(不明支給品残り0〜1)
[思考・状況]
基本行動方針:味方と合流し、荒木、ゲームに乗った人間をブチのめす(特に音石は自分の"手"で仕留めたい)
1.露伴たちと行動を共にする。
2.エシディシも仲間を失ったのか……。暴れたのはそれが原因か。
3.仗助や康一、承太郎の遺志を継ぐ。絶対に犠牲者は増やさん!
4.もう一度会ったならサンドマンと行動を共にする。
5.吉良と協力なんて出来るか
6.フーゴ嫌い、ジョルノも嫌い、だけど今回は露伴に免じて協力しよう
【備考】
※名簿は4部キャラの分の名前のみ確認しました。
※サンドマンと情報交換をしました。 内容は「康一と億泰の関係」「康一たちとサンドマンの関係」
 「ツェペリの(≒康一の、と億泰は解釈した)遺言」「お互いのスタンド能力」「第一回放送の内容」です。
※デイパックを間違えて持っていったことに気が付きました。誰のと間違ったかはわかっていません。
※参加者が時を越えて集められたという説を聞きました。

235さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 02:23:06 ID:???



【G-2 やや南部/1日目 真夜中】

【パンナコッタ・フーゴ】
[時間軸]:ブチャラティチームとの離別後(56巻)
[状態]:身体ダメージ(極大)
[装備]:ナランチャのナイフ、ミスタがパくった銃【オートマチック式】(12/15)
[道具]:基本支給品×4、ダービーズチケット、ディアボロのデスマスク、予備弾薬37発(リボルバー弾3発、オートマチック30発)
    鳩のレターセット、メサイアのDISC、石仮面、ジョルノの『探知機』となっている小石
[思考・状況]
基本行動方針:未熟な過去に打ち勝ち、新しい自分となる
1.ナチス研究所へ向かい、過去に打ち勝つ
2.僕はブチャラティたちに裏切られてしまった
3.デスマスクの男の正体がわかった――
[備考]
※荒木の能力は「空間を操る(作る)」、もしくは「物体コピー」ではないかと考えました(決定打がないので、あくまで憶測)
※空条承太郎、東方仗助、虹村億泰、山岸由花子、岸辺露伴、トニオ・トラサルディー、ジョセフ・ジョースターの能力と容姿に関する大まかな説明を聞きました。
※吉良吉影の能力(爆弾化のみ)を把握しました。しかし、一つしか爆弾化できないことや接触弾、点火弾に関しては聞いていません。
 また、容姿についても髑髏のネクタイ以外には聞いていません
※吉良吉廣のことを鋼田一吉廣だと思い込んでいます。
※花京院とその仲間(ジョセフ・ジョースター、J・P・ポルナレフ、イギー、空条承太郎)の風貌、スタンド能力をすべて把握しました。
※アヴドゥルとフェルディナンドの考察から時代を超えて参加者が集められていることも知りました。
※デスマスクの男の正体がボス=ディアボロであること、その能力などに気づきました。
※グェスが持ってきた岸辺露伴、川尻早人、グェスのデイバッグを回収しました。



【備考】
※ペッシの死体は研究所の一室に横たえられています。
※現在ナチス研究所の地上側入り口、地下鉄側入り口は封鎖されており、
 「用があるなら声をかけるように」との紙が貼られています。
※ナチス研究所、エシディシと暗殺チームの周りには支給品が散乱しています。

※E-4中央部にさまざまな音の張り付いた小石がばらまかれています。(リンゴォは引っかかっていません)
※E-4に放置されていたエルメェスのパンティは誰も発見していません。

236さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 02:26:14 ID:???
以上です。
誤字脱字、矛盾点修正点、おかしな点がありましたらよろしくお願いします。
特に首輪関連です。何か少しでも感じることがありましたら言ってくださると嬉しいです。

237ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/20(木) 02:30:06 ID:???
投下おつ
感想は本スレで  ……何から言えばいいのか分かんないけど

内容に関しちゃ問題ないです
誤字の指摘をすると


>>208
危険の目→危険の芽
預かる知る→あずかり知る?

>>210
そのの体制
今だ

>>212
一瞬のすきを
エシディシはそんなホルマジを
から放り出されたブチャラティが返ってくる

>>213
腰しに刺していた

>>219
働いくことです

>>199
盗聴されたも

>>200
試してみんる

>>201
えらいく早い

>>203
とりつく暇もなく

238さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/20(木) 02:34:01 ID:???
おっと、失礼、言い忘れていました。

本スレ>>存在の堪えがたき軽さ
投下お疲れ様です。
いつもながら氏の書く男たちのカッコ良さには惚れ惚れされます。
アナスイとティム……このロワでは比較的長いコンビだっただけにこの決裂には目頭が熱くなりました。
ティムの優しさが胸を締め付けるほどで……ルーシーへの思い、アナスイへの思い。
このロワ一番のイケメンといっても過言ではないと思ってます。
少なくとも俺にとってはそうでした。

そういうわけでそのティムの遺志を受け継ぐ二人に注目。
さまよう花京院、決意を決めたアナスイ。
これからの二人から目が離せません。
そして今、六部勢が熱いッッッ!

改めて投下乙です。次もイケメンを待ってますw


>>◆4eLeLFC2bQ氏
内容被り、および場所被りはなかったでしょうか?
それだけが気がかりです。とにかく、投下期待して待ってます!

239ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/20(木) 02:37:30 ID:???
投下乙です
色々思ったけど言葉がまとまらない

名前はジョバ『ァ』ーナ、ネ『エ』ロ ではないでしょうか

それ以外は特に気になった所はありません
なんかホントに言葉が出てこない

240239です:2011/01/20(木) 03:10:13 ID:???
一点だけ付け足しです
フーゴの持ち物の石仮面は、早人が持ってたヴァニラの不明支給品×1(確認済み)の事だと思うのですが、
ルールに『参加者に能力を付与してしまう可能性』のあるアイテムは支給不可とあるので、何か別の物の方が良いのではないでしょうか

241 ◆vvatO30wn.:2011/01/20(木) 03:33:05 ID:???
投下乙です!
俺が扱ったキャラは死ぬ(笑)
これは桑島法子ばりの新しいフラグなのか(笑)

感想なんて何書いたらいいがわからんけど、本投下で語りたいです。

すでに書かれている指摘以外では
>>202 緊急時にには

億泰の状態表が前話のまま変わっていません。

フーゴの殺人解禁は、露伴死亡で洗脳が解けたという解釈でよろしいでしょうか?
原作で露伴が死んでないため、死後ヘブンズドアーの効果が残るかは検証不可ですしね。
(ロワ内でプッチ死後も効果が続いている前例がありますが、こまけえことはry

あと、フーゴの使った拳銃ですが、露伴が装備していたもののためデイパックから出てくるのは不自然だと思います
エシディシが被っていた露伴の皮あたりに放置が妥当かと(ちなみに自動拳銃は任意に弾を一発だけ込めることはできませんよ
これまで銃を使うような場面のなかったジョルノの不明支給品あたりにリボルバー拳銃を忍ばせてグェスに渡しとけばどうですか?

あと、肝心の首輪については正直お手上げなので、お任せいたします。

いろいろ口出しすぎかもしれません…すみません。
では、本投下お待ちしています!

242ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/20(木) 03:50:27 ID:???
テレンスの荷物はどこへ?
慌てて逃げ出したから、デイパックは研究所に置きっぱなし…とかだったら、
次にすごい『書いてみたいこと 』があるんだけど…
いや、みなまで言うなwwwww
みんなだってそういう世界だろ?wwwww

243ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/20(木) 04:46:44 ID:???
執筆おつかれさまでした!
これは……もう、もう、すごかった。
文章には味があるし、原作再現や本歌取りのセンスやタイミングも素晴らしい。
展開にも見るべきところがたくさんあって、単品でも次に繋がる話を想像しても楽しい
話なんだけど……あああ、もう、ジョジョが好きだっていうのが最もよく伝わるっていう。
本当、これが読めてよかった。きっちり伝わるジョジョらしさと、書き手さんがジョジョから一歩
進めた考えとが綺麗にかたちをなしている良作でした。
もう言葉にならないくらい興奮してるんだけど、これを執筆できたことに、僕は敬意を表するッ!

以下は、気付いた範囲での誤字脱字、誤変換などになります。

>>200
電波妨害装置によって『誰でも電波を妨害できるのか』が「分水点」だろうな。 → 分水嶺

>>204
てめーみてぇな「鉄仮面」に〜 → 鉄面皮

>>207
「さて、ほかに何か「要望がない」やつはいないか?」 → 要望があるやつは〜

>>212
「よそ見とは「関心」せんなァ」 → 感心

>>217
「おい、「待ってたらッ!」 おい、早人ッ!」 → 待てったらッ!

>>225
思わず漏れたうめき声は「返事ならず、」 → 返事にならず、

244ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/20(木) 13:26:43 ID:???
グェス死亡の後の残り人数は無くてもいいんじゃないですかね
時系列順では先に露伴が死んでるわけですし、ここはあえて人数は書かずに、最後にまとめて22人とかけばいいと思います

245ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/20(木) 18:26:57 ID:???
投下おつかれさまです!
感想は本投下の時に…

誤字についてですが、作品中2回出てきたジェラートの名前が共にジェラードになっています

246ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/20(木) 19:41:44 ID:???
長文投下お疲れ様です。あくまで私にとってですが、わかりづらかった点を指摘します。

・ジョルノの台詞
「(略)スタンドで作った蔦で縛り上げました。
 彼が無理にでも蔦を引きちぎろうとすれば、僕のスタンドが攻撃を反射することで動きを封じます」
→フーゴ
ぐるぐる巻きに巻かれていた蔦をめちゃくちゃにする彼のスタンド。

攻撃反射は……?

・フーゴの台詞
「―――なんて言うとでも思ったのかい?」 という台詞は
直前の「言ってくれるねェ……」にかかっているのでしょうか?

・テレンス、億泰の会話
「賛成です。彼らが何もできずに死んでしまうなんてことはないでしょうが……。
 できれば無事を祈りたいところです。
 とは言うものの……あんなものを見せられたあとじゃ……」
「ってうおおおおおッ?!」
「落ち着いてください……なんてことはないです、もう死んでますよ……」
 それにしても……むごい死体ですね。げぇ……」

この時点ではどこに逃げてきたかわからないので「どんな死体」か
という描写があればよりわかりやすいかと思います。


ここから先は、こういう描写があったら…という個人的な意見です。

・フーゴ→グェス
政府公邸からの因縁をメタ視点でもいいので描写があったら
グェスの突然死にも深みが増すかなぁと思います。

・サンドマン→億泰
億泰の成長を願って一度別れたサンドマン。再会した彼をどのように評価するのか。
すでに目的が大人数での荒木打倒となっているので、今更感があるかもしれませんが。

参考にしていただければ幸いです。

247ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/20(木) 21:18:49 ID:???
投下乙でした
感想は本投下時に

他の人が指摘していない点で

ホルマジオが要所で『ホルマジ』になっていました。

ジョルノが作った小鳥ですが、ジョルノは作中で爬虫類より高等な動物を生み出したことがありません
→GEでは鳥や哺乳類を作ることはできないのでは?
せっかくサンドマンと合流しているので、伝書鳩使ってみてはどうでしょうか?

リンゴォの門番の期限の真夜中というのは0時の放送までということでしょうか?
『伝染』より後の話なのでこの時点ですでに真夜中にはなっているはずなので

248ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/20(木) 22:17:23 ID:???
>>247
ジョルノは作中でモグラを作ってるから、一応哺乳類は作れるんじゃない?
どの程度の生物まで作れるのかはわからないけど。

249 ◆4eLeLFC2bQ:2011/01/20(木) 23:39:38 ID:???
すみません遅くなりました。
J・ガイル、山岸由花子、片桐安十郎(アンジェロ)、空条徐倫投下します。

250ニュクスの娘達 ◆4eLeLFC2bQ:2011/01/20(木) 23:41:05 ID:???
片桐安十郎とJ・ガイルはともに似た嗜好を持つ、犯罪者だった。
決して他人から理解されることのない者同士が出会い、手を組み、彼らは半日ほど共に過ごしてきた。
彼らの関係は比較的良好だったといえる。
J・ガイルがホル・ホースと結託し、片桐安十郎を亡き者にしようと目論むまでは。

DIOの館を後にし、人目を忍びつつ横並びに歩いている現在も好きでそうしているわけではない。
背中を見せれば相手に殺られかねないというひりついた緊張感、
それがため優劣のない横並びに自然となっていたのであった。

片や全身火傷、片や骨折と、歩みを鈍らせる身体的なダメージは互いに熟知している。
だが二人の強さが全くの互角であったかというと、そうではない。
時は夜半。日が沈み、闇は鏡面を包み込む。
夜間においては『ハングドマン』の能力よりも『アクア・ネックレス』に軍配が上がるといえた。
それでもまだ、怒りを抱えた片桐安十郎がJ・ガイルを殺そうとしないのは
『相打ちになったら、他のいい気になってる奴らの得にしかならねぇ』『それは最高にイラつく』
そのギリギリの共通意識が二人の底辺に存在していたからだった。

それはあまりに脆い繋がり、仲間意識とは正反対の感情。
外的な要因があればすぐに壊れてしまうような。
元より『同盟』の規約なぞたかが知れている。提案者の目の届かぬ場所なら尚のこと。
故にJ・ガイルはDIOの館を出立して以降、内心では他の参加者との接触を望んでいなかった。

(実際、俺の有利になるような『何か』が欲しいところだな……)

テレンスがこのゲームに参加したようだが、あの男のことは詳しく知らない。
DIOの名、『同盟』の存在を明かせば味方してくれる可能性はあるが、
能力もわからない以上、あまりアテにはできない。するつもりもない。

(それより、俺が気になってるのは『アレ』のことだ。 チラッと見えた気がするんだよなぁ)


「アンジェロさんよぉ、俺はあんたがよぉ〜っく知ってるように仲間意識の強い優し〜ぃ人間なんだ
 だから中心地に向かう前に俺の野暮用に付き合ってもらえないかねぇ」



* * * * *

251ニュクスの娘達 ◆4eLeLFC2bQ:2011/01/20(木) 23:43:02 ID:???



インディアンが出て行って半刻は経過しただろうか。
すでに目の前の少女の瞳は乾き、意識もはっきりしているように思える。
しかし彼女は徐倫の「誰にその傷を負わされた?」「敵が近くにいるの?」といった質問に対してすべて無表情で返答していた。
意識して無視しているのではなく、興味のない単語がすべて「雑音」でしかないかのような反応。

 あのインディアンについてはとりあえず敵ではないと判断したけれど、彼女が白か黒か決まったわけじゃない。
 彼もこの子の名前を知らないようだったしね……。
 けれどこのままなんの情報も聞きだせずに彼を待つのは時間の無駄としか思えない。

「『広瀬康一は打倒荒木のもとに死んだ、その意志はまだ消えていない』
 あなたをここへ運び込んだ人がそういってたわ」

『広瀬康一』の名が出た途端、彼女がブルリと身を震わせ目を見開いたのがわかった。
やはり、彼女の大切な人なんだろう。

「そう、でしょうね…… 康一君はとっても優しかったから……」

それを機に、長らく止めていた息をゆっくりと吐き出すように、彼女はポツリポツリと『康一君との思い出』を語っていった。


 彼はね、私よりお勉強は出来ないけれど、キラキラした、素敵なものを持ってるのよ。

 康一君は、あんなに酷いことをした私を許して、好きだっていってくれた。

 杜王町では、康一君たちのおかげで吉良が死んで……
 同じ大学に行けたらいいねって、お話したり…、二人で冬服を見に行ったり……。


そのほとんどがここでは有益になりもしない与太話だったが、徐倫は彼女の言葉を遮らずただ聞いていた。

「こんな、こんなところへ連れてこられなければ、康一君は……康一君は……」

胸がしめつけられるような嗚咽が彼女の口から漏れる。
それは計算でも、演技でもない、無防備な嘆き。
だからこそ空条徐倫は彼女を信じた。信用せざるを得なかった。

「私は、空条徐倫 あなたは?」

「…そう、由花子、山岸由花子よ」

名を告げた時、由花子の表情がわずかに揺らいだように思えた。
それはほんのささいな反応でしかなかったが、徐倫の観察眼はそれを見落とさない。

「由花子、もしかしてあなたは父さん、空条承太郎の知り合いなんじゃないかしら?
 広瀬康一という名前も、どこかで聞いたことがあるような気がするし」

父親の記憶ディスクを見たからといって、すべてをわが身に起こったことのように記憶はしていない。
ポルナレフはかろうじて認識できたが、花京院は本人の言がなければ父親の友人だと確信できなかった。
徐倫本人にとって日本人の知り合いは親族以外に存在しない。
だから聞き覚えのある日本人は父親の知り合いの可能性が高い、そう判断するしかなかった。

「『父さん』…………
 そう、あなたが承太郎さんの、娘なのね………」

由花子の顔に微笑が浮かぶ。
どこか諦めたような、何かを悟ったような空虚な笑み。
その意味を徐倫は知らなかった。
まだ、この時は。



* * * * *

252ニュクスの娘達 ◆4eLeLFC2bQ:2011/01/20(木) 23:44:00 ID:???



山岸由花子は絶望していた。
己の失した片腕に。制御不可能な怪物に。広瀬康一はやはり存命ではなかったという現実に。
スタンド使いがどれほど存在しているのか知りようはないが、
この80人余りが閉じ込められた箱庭の中で、同じ能力を持つものに出会うという偶然が起こりうるのだろうか。
いや、現にあったのだ。残酷な偶然が。

愛する『康一君』が死んだ。
その事実は半日前となにも変わらない。
しかし一度抱いた希望は、再び彼を失ったかのごとき衝撃を由花子に与えた。
失血によって朦朧とする頭が『最善策』を選び取ることを拒否してしまったかのように、彼女は哭いた。
見ず知らずの少女に愛する人との思い出を語り、ただただ嘆いた。
そして……


「私は、空条徐倫 あなたは?」


空条徐倫の心中にあったものは、善意だったかもしれない。
だが『つけ』はノートに書き込まれずとも、確実にたまっていたのだ。
最強の戦士を殺害した罪は、その娘によって罰せられるのだろうか。

山岸由花子は笑う。可笑しいほど凄然とした、自らが招いた運命に。
彼女はもう絶望などしていなかった。
強靭な精神力、愛情に見せかけられた狂気に突き動かされ、彼女はこう考えている。


 父親を利用し、彼女も自分の手駒にしてみせる、と。
 失敗すれば破滅に陥るこの状況を、必ず自分のものにする、と。


「承太郎さんは、吉良を倒すときに協力してくれた恩人よ
 娘がいるなんて一言もいってなかったけれど」

253ニュクスの娘達 ◆4eLeLFC2bQ:2011/01/20(木) 23:47:33 ID:???
* * * * *



「改めて見ると、すげぇ威力だな、こりゃ……」

J・ガイルが一崩れの死体を前に呟く。
白塊が覗いて見えるあれは頭部だったものだろうか。巨大なミンチに表情はない。
首から下は繋がってはいたが、不当に肩口が広い。
吹っ飛んでいたのだ、上半部は。
この小さな銀環、首輪の爆発によって。

「こんなのが首に付いてるってーのは、やっぱりぞっとしねぇな」

D-4中央部、J・ガイルの目的地が近くなるにつれて苛立ちを募らせていた片桐安十郎も
首輪の威力に関しては同意せざるを得なかった。

彼らが訪れているのはD-4中央部、何者かに殺されたホル・ホースの死体が横たわる場所だった。

J・ガイルにとって、ここを訪れた目的は2つ。
ひとつは突然殺されたホル・ホースの死因を明らかにすること。
対象を選ばない攻撃ならば自分が死んでいた可能性もあった。
無知無策無謀で難敵に挑むことがどれほど愚かか、嫌というほど思い知らされている。
そしてもうひとつ、いや、こちらがメインだといって差し支えないだろう、
それはホル・ホースに配された支給品の中身を確認することだった。
アンジェロへの牽制となりうるものならば及第点。
『ハングドマン』の弱点を補うようなものならば最上だ。

「お……やっぱり、あったな」

ごそごそと死体を漁るようにしていたJ・ガイルが上体を起こす。
途端に彼の奇怪な顔面がニィッと歓喜の表情を浮かべた。
時刻表の灰を落としながら、黒光りする『それ』を手に握り締める。


――ホル・ホースの奴はさぞ歯がゆく思っただろうなぁ、あいつにとってこれほど無用なものはねぇ


「アンジェロさんよ、こいつは『相棒』の形見なんだ
 俺がもらっていってもかまわないだろう?」

「まぁ、俺のスタンドにその手の攻撃は効かねーしな
 恩を売ってやるぜ、J・ガイルさんよ」

敵意を剥き出しにして、支給品ひとつにぎゃんぎゃん吠えるなどこいつのプライドが許さない。
とんとん拍子に事が進むさまは、空恐ろしいほどだ。

(それにしても、奇妙だな。 これは…繊維……、いや、髪か……?)

ホル・ホースの死体を包み込むきな臭さは、本人から発するものなのだろうか。
夜風に揺らぐその『髪』は、不吉の色をしていた。

254ニュクスの娘達 ◆4eLeLFC2bQ:2011/01/20(木) 23:48:38 ID:???
* * * * *



「私達、似ているかもしれないわね」

あらかたの情報交換が済んだところで、由花子がポツリと呟いた。

「そうかも、しれないわ」

泣き続ける彼女を前にして思った感情をなぞられたようで、言葉を濁しながらも徐倫は内心驚き、強く共感していた。

 失ってしまったその人達のことをどれほど大切に思っていたか。
 ふざけたゲームに巻き込んだ荒木を、立ちはだかる敵を、どれほど憎らしく思ったか。
 安寧なき戦いにどれほど傷ついてきたか。

―――山岸由花子、孤独な少女は、私に似てる……。


「徐倫、あなた傷だらけね」

由花子のか細い指が頬の傷跡にそっと触れた。シーツから引き剥がしたときに残った傷だ。
そういわれてみれば、後頭部はいまだにズキズキするし、頬の様に『糸』を千切った箇所が全身に残っている。
既に応急処置を終えているけれど、脇腹を刺された際に溢れた血は衣類を黒く染め上げていた。

「私は、誓ったのよ、荒木を倒すって
 そのためならどんな傷を負ってもかまわない
 由花子も、そう思っているんでしょう?」

由花子は片腕を失っている。けれども彼女はまだ闘おうとしていた。
それが徐倫には喜ばしい。
『守られる』ことなど必要ない。それが無上の愛情表現だったとしても。

「もちろんよ、徐倫 だから……私と……」

由花子の言葉は最後まで聞き取れなかった。
突然の銃声が、一瞬遅れて窓ガラスの破砕音が、部屋中に響き、
振り返ったとき、彼女の首筋からは鮮血が噴出していたから。



* * * * *

255ニュクスの娘達 ◆4eLeLFC2bQ:2011/01/20(木) 23:49:45 ID:???



「ひぃぃいいいいいいひゃっはっはあああああ これだからやめられないぜぇえええええ」

少女二人が慌てふためく様子を、物陰から男が笑い転げながら観察していた。
その手には黒光りする9mm拳銃が握られている。

銃声に反応した時の驚愕の表情、溢れ出す熱い血液、必死に物陰に隠れるその一挙一同。
すべてが、ゾクゾクするほど完璧だった。
誰を殺しても楽しいものは楽しいが、美人が苦悶に醜く顔を歪ませるのが最も最も最も最も素晴らしいッ!!!!

「アンジェロさんよぉ、てめーのためにあっちの女はとっといてやってるんだぜぇ?」

「うるせー、てめーが『善人面』するから黒髪の女を譲ってやったんだぜ」

二人の殺人鬼に二人の獲物、彼らが少女達を見つけたのは、全くの偶然でしかなかった。

家屋の中で佇む二人、もちろん電灯など付けてはいない。
しかしJ・ガイルの目は引き込まれるようにそれを見つけたのだ。
ホル・ホースの死体に絡み付いていた繊維と同じ、しなやかな黒髪を。

仲間意識などない。それゆえにホル・ホースの敵討ちをしようとは微塵も思わない。
拳銃に怨念でも宿っていたかと疑う偶然に、少し驚いただけだ。

「さっきの女は一瞬で殺っちまったからな
 今回はジワジワいたぶってやるんだよ
 DIOの館で負わせてやったダメージもあるだろうしよ」

見れば、団子頭の少女の頭上から雨漏りでもしたかのように『アクア・ネックレス』が滴っているところだった。

雨?と少女が天井を見上げ、滴りは流れとなり彼女に覆いかぶさった。
『ジワジワいたぶってやる』という言葉の通り、いつものような内部破壊は行わない。
そのかわり『アクア・ネックレス』の爪は、少女の生肌を引っ掻き回すように切り裂いていった。
決して致命傷には至らない切り傷が、徐々に『アクア・ネックレス』を朱に染めていく。
それはまるで群れなす小動物の狩りの様相。

ようやく彼女が『アクア・ネックレス』を振り切ったときには、上着はズタズタ、息も絶え絶え。
その目だけが爛々と敵意を映し出す。

「ふぅ〜〜〜〜〜、たまらないねぇあの顔
 もっともっともぉぉおおおおおっと、悔しげな顔で殺してやりたくなるねぇ!!」

『アクア・ネックレス』が跳躍し、再び少女に襲い掛かる。
強引に口中に侵入しようしたそれを少女がスタンドで殴りつけるが、『アクア・ネックレス』に物理的なダメージは通用しない。
手ごたえのなさに少女は唖然としている。
下卑た笑いが涎と共にアンジェロの口から漏れていた。
楽しくて楽しくて仕方がない。

256ニュクスの娘達 ◆4eLeLFC2bQ:2011/01/20(木) 23:51:03 ID:???
もうそろそろ、内臓をズタズタに裂いてやるか……!!

しかし『アクア・ネックレス』は徐倫の口中に侵入することはできなかった。
侵入すべき口が、『糸』が解けるようにバラバラになってしまったから。

「ちっ、あいつもそういう能力かよ、胸糞悪ーな」

「おっせえええなあ、アンジェロさんよぉ、俺が先に殺っちまうぜぇ?」

アンジェロの思わぬ苦戦もJ・ガイルには可笑しくてたまらなかった。
少女達の恐怖の表情、アンジェロの憎憎しげな表情、これほど楽しい気持ちになるのは久しぶりだ。
ひぃひぃ笑いながら拳銃の引き金を引く。その数、計3回。


1発は壁にめり込み、1発は電灯を粉々に破壊した。


そして最後の1発は、物陰に隠れていた少女の足元に打ち込まれ、



凄まじい音を立てて、『爆発』した。



 * * * * *



銃声、ガラスの割れる音、突然噴出した血、水のような敵、血に濡れる徐倫―――


なにが起こったのか理解する間もなく、次のなにかが起こり、どうしたらいいのかわからない。

心身ともに疲弊しきった少女は、物陰でただ理解できる『端』を見つけようとするのが精一杯だった。

しかし山岸由花子は見たのだ。
一発の銃弾を。

狙いすましたかのように、なにかに導かれるように、それは吸い込まれていった。

開け放たれた窓を抜け、宙を閃き、側に置いてあった、彼女のデイパックに。

確率の問題ではない。これは運命なのだと、山岸由花子は直感する。


――――この中には、空条承太郎の首輪が………!


スローモーションがかかった世界は静寂に包まれ、次の瞬間、白熱した。



* * * * *

257ニュクスの娘達 ◆4eLeLFC2bQ:2011/01/20(木) 23:52:40 ID:???



「J・ガイル、てめーどういうことだッ!!!?」

火花が夜風に舞い散る中、アンジェロは完全にキレていた。
彼にしてみれば、自らが仕掛けられたガス爆発を再現されたようなもの。
感情を抑えきれぬ怒号、憎悪は深い。

糸状になった女に驚きはしたが、優勢は変わらなかった。
嬲り殺す楽しみも、生の死体を処理する楽しみも、奪ったのはこの男J・ガイル。

「俺が知るか
 手榴弾でも所持してたんだろうよ」

しれっと答える様がアンジェロの怒りを加速させた。

「J・ガイル、長くも短くもねぇ付き合いだったが、わりと面白かったぜ」

言うなりナイフを取り出し、J・ガイルへ差し向ける。
スタンドは家屋の中で水蒸気になっていて手元に戻すにはまだ時間がかかる。
窓ガラスから電灯へと移動していたこいつのスタンドも似たようなもんだろう。

「……俺は別にどっちでもよかったんだぜ?
 このまま組んでいようと、てめーを殺しちまおうとよ」

「そんな小さなおはじきで、俺を殺れるっつーなら、殺ってみな」

挑発に挑発が重ねられ、殺気を孕む。

アンジェロは音も立てずにナイフを振りかぶった。
対するJ・ガイルは避けようとも迎え撃とうともしなかった。微動だにしない。

その時点でアンジェロは疑問を持つべきだった。
拳銃にそれほどの信頼を置いているのかと。
冷静に物を見ているのはどちらだろうかと。


煌めくナイフが映した奇怪な化け物に、とうとう気付くことなく、彼は逝った。


J・ガイルは暗闇が己の弱点であることを知っていた。
拳銃を手に入れ鏡面を増やすことができたとしても、アンジェロとの差は埋まるものではない。
味方にこそ最大の警戒を。
自分の嗜好を満たすこともやめ、少女が重症を負った時点でスタンドは手元に戻していた。

ただそれだけのこと。それだけの差。


J・ガイルが笑う。全身をのけぞらし、腹を抱え、死体を蹴り上げて。
家壁に反射したその声は増幅し、いつまでもいつまでも、狂ったように笑い続けていた。



* * * * *

258ニュクスの娘達 ◆4eLeLFC2bQ:2011/01/20(木) 23:53:27 ID:???



突然窓ガラスが割れて…、 由花子が怪我を負って…、
水のような不気味なスタンドに襲われて…、 それで…、 それで……?

口に入ってこようとしたスタンドを咄嗟にかわして、
一瞬目の前が真っ白になって、 あれは爆発……?

それにしても、臭いわね、絹が焼けたような匂い、一体何なの?

大体さっきから重たいのよ、私にのしかかっているのは敵?
さっきの奴?


…………じゃあない、私に覆いかぶさるように倒れている柔らかな肢体

これは、由花子………!!!?



「由花子 あなた、私を庇ったの……?」

爆発の直前に水を被ったせいもあるのだろうか。自分には驚くほどダメージがない。
上半身を起こしつつ、ぐったりとした彼女を横たえてやる。
力なく投げ出された三肢、美しかった黒髪はチリチリに焼け焦げ、無残としかいいようがなかった。
血の気のなくなった頬、目元には黒く浮かんだ隈。
床にはジリジリと赤黒いものが拡がっていこうとしていた。

「由花子………」

酷く気怠げに開かれた瞳は、すでに光を宿していない。
もう、彼女は……。

由花子が身体を起こそうとして叶わず、苦しげに唇を振るわせる。
なにかを伝えようとしていた。

「なにを伝えたいの……?」

徐倫が由花子の口元に耳を寄せる。
わずかな呼吸が漏れ、言葉を繋いだ。



 あ  な  た  の 、 お と う さ  ん   を


    こ  ろ  し た の は 、  わ  た   し



その瞬間、徐倫の中で時が止まった。
きな臭さが消え、爆発の熱気が消え、音が消え、感触が消えた。

ただ、耳の奥の方で、血液が激しい奔流となるのを感じていた。


いま、なんていったの?

ゆかこは、なんて?


だれを、だれを、ころしたと…………?

259ニュクスの娘達 ◆4eLeLFC2bQ:2011/01/20(木) 23:54:04 ID:???
「『似てる』ですって?よくそんなふざけたことがいえたわね この腐ったゲス野郎……ッ」

怒りの余り顔面蒼白となった徐倫。その指が由花子の首をへし折らんばかりに締め上げる。
『似てる』と共感を抱いたのは徐倫。彼女に心許したのは徐倫。己だから、すべてが許せない。


   だから……死ね…… 
            ……死ね……由花子!


彼女の血でぬめった指を、焦げた肌にめり込ませていく。
抵抗する気力もないのだろう、死んだような由花子の瞳は徐倫の嗜虐心を煽り立てた。

しかし一方で徐倫はとてつもなく冷静に、疑問を感じている。


ならどうして私を庇ったの?

  罪滅ぼしのつもりでしょう?

彼女は大切な人を失って泣いていた

  すべて演技だったのよ 仲間と共謀して私をはめるための

どうして父さんを殺したの?

  最初からゲームに乗ったクソビッチ野郎だったのよ、この女は

そうかしら

  『そうかしら』?

彼女にとっては敵だった 私にとって荒木が、DIOが敵であるように

  父さんは殺されるような、人間じゃない

本当に? 彼女の目的が、優勝して愛する人を取り戻すことだったとしても?

  それは正義なんかじゃない、吐き気を催す『邪悪』よ

あなただって、肯定したんでしょう? どんな善人が傷ついたってかまわないと

  私は正しい道を選んだ 彼女の選んだ道は間違ってる


いいえ、私達は『似てる』わ 選んだ道が、傷つけた相手が違っていただけ

260ニュクスの娘達 ◆4eLeLFC2bQ:2011/01/20(木) 23:54:49 ID:???
「うわぁぁあああアアアアアアアアアアアアアア」


臓腑をひっくりかえされたような吐き気を覚え、胸をかきむしる。

死んでいくのは、私? 由花子?

結局抑えきれず、由花子に背を向けて吐いた。
中身がなくなり、胃液が喉を焼き、涙が止まらなかった。


そうして、再び山岸由花子に向き直ったとき、空条徐倫の瞳はどんな輝きも映してはいなかった。

「由花子、『あなた達』の意志は、私が引き継ぐ」

広瀬康一が遺した『打倒荒木』の意志。
山岸由花子が体現した『すべてを利用する』強さ。

アナスイが私を守ろうというのなら、喜んで盾になってもらおうじゃない。

すべては、荒木を屈服させ、何もかも元通りにする、そのために。


「『また』会いましょう、由花子」


立ち上がり、戸口へ向かう。
玄関を半歩出たところで振り返った。

「私が『こうなる』と期待して、私を庇ったの?」


答えは期待していない。
そんなことは、もうどうだっていいのだから。


徐倫の足音が遠ざっていくのを、床の振動が伝える
宙を見つめる少女の目尻から、一筋の雫が零れ落ちた。


「また………、会いましょう………、康一君………、徐倫……………」





【片桐安十郎(アンジェロ) 死亡】
【山岸由花子 死亡】

【残り 20名】

261ニュクスの娘達 ◆4eLeLFC2bQ:2011/01/20(木) 23:55:37 ID:???
【E-4とE-5の境目 /1日目 真夜中】

【空条徐倫】
【時間軸】:「水族館」脱獄後
【状態】:身体ダメージ(大)、体中縫い傷有り、上半身が切り傷でボロボロ、火傷(小)
【装備】:なし
【道具】:基本支給品一式
【思考・状況】
基本行動方針:荒木と決着ゥ!をつける
0. 荒木を屈服させ、すべてを元通りにさせる
1.そのためならばどんなゲスでも利用してみせる。アナスイももちろん利用する。
2.自分達を襲った敵を見つける
3.サンドマンと情報交換
[備考]
※ホルマジオは顔しかわかっていません。名前も知りません。
※最終的な目標はあくまでも荒木の打倒なので、積極的に殺すという考えではありません。
 加害者は問答無用で殺害、足手まといは見殺し、といった感じです。
※アナスイから『アナスイが持っていた情報』と『ポルナレフが持っていた情報』を聞きました。
※花京院から支給品一式を返してもらいました。
※居間で行われていた会話はすべて聞いていません。


【J・ガイル】
[時間軸]:ジョースター一行をホル・ホースと一緒に襲撃する直前
[能力]:『吊られた男』
[状態]:左耳欠損、左側の右手の小指欠損、全身ずぶぬれ、右二の腕・右肩・左手首骨折(治療済み)
[装備]:9mm拳銃
[道具]:支給品一式、チューブ入り傷薬、死の結婚指輪の解毒剤リング
[思考・状況]
基本行動方針:とりあえず殺しを楽しみつつ、自分が死なないよう立ち回る
0.大きな施設を回り、参加者を殺害する。
1.同盟の規約を守る。でもいらなくなったら同盟なんか知るか。
2.ほかの参加者を可能な限り利用し、参加者を減らす。
3.自分だけが助かるための場所と、『戦力』の確保もしておきたい。
[備考]
※『吊られた男』の射程距離などの制限の度合いは不明です。
※ヴァニラアイスの能力、ヴェルサス、ティッツァーノ、アレッシーの容姿を知りました。
※第二放送をアンジェロに話しました。
※由花子と徐倫は爆発で死んだものと思っています。


【備考】
※ホル・ホースの不明支給品は「ミネベア9mm自動拳銃」でした。
※山岸由花子の所持品は首輪の爆発を受けて、大破か消滅しました。

262 ◆4eLeLFC2bQ:2011/01/21(金) 00:00:38 ID:???
以上です。
あああああ、なんかミスあるんじゃないかあああと地面をのたうちたい気分です。

ご指摘お待ちしておりますッ!!

263 ◆4eLeLFC2bQ:2011/01/21(金) 00:17:33 ID:???
投下後に気付いてすみません!!首輪爆発しないですね!!
なんだかもう完全にてんぱっております。
なぜ書いている途中で気付けなかったし……。
すみません、すみません。
もしよろしかったら、試験的な延長分の3日いただけないでしょうか!
修正してきます!うわあああああん

264ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/21(金) 00:30:46 ID:???
投下乙です そんなに慌てなくてもw

おっと、本スレに感想書こうとしてたけど修正するんですか?
首輪には爆薬が仕込んであるので弾丸が当たればドカン!だと思って、違和感なく読んでました
自分はあまり詳しくないんでなんともいえないんですが…

265ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/21(金) 00:33:40 ID:???
爆発しない・・・んだっけ?
よく覚えてない
とにかく修正版楽しみにしています

266ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/21(金) 00:44:16 ID:???
え、爆発するんじゃないですかね。
グェスも実験してた時に爆発してましたし(140話ゲルツェンの首より)

267ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/21(金) 00:46:50 ID:???
あれ、爆発しない?
俺、読みこぼしてたかな……どこでそう思われたんでしょうか、教えてください

268ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/21(金) 00:49:51 ID:???
承太郎のほう?ホルのほう?

269 ◆4eLeLFC2bQ:2011/01/21(金) 00:52:07 ID:???
ゲルツェンの首にて
・プラスチック爆弾単体なら火力・衝撃では爆発しない
・本人が死んだ時点で信管は電気信号は送らなくなる
から電気信号がなければ爆発は絶対に起こらない。と今は考えています。
この認識も間違いかな…?

270ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/21(金) 00:53:35 ID:???
>>269
多分その通りだと思います
つまり死者の首輪は爆発しないって認識で構わないかと

271ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/21(金) 01:38:31 ID:???
ググって見たんだけどこのページ※1やwiki※2を見るかぎりだとプラスチック爆弾の起爆のプロセスは
信号来る→雷管に電気流れる→雷管の爆薬が電流によって生じた熱で爆発→その爆発の衝撃で粘土状のメインの爆薬が炸裂 って流れだと思う
んで記述から判断するに雷管の方に使われてる火薬は(多分)普通の火薬なんだと思うんだよね
だから『雷管の爆薬が電流によって生じた熱で爆発』の過程を『銃弾による衝撃で雷管の爆薬が爆発』に置き換えても本編SSの結果になる……多分!
兵器は詳しくないから詳しい人がいたら頼む

※1ttp://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1148546041
※2ttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%B7%E7%AE%A1


正直な話、由花子には承太郎の首輪の爆発で死んでもらいたいんでw

272ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/21(金) 14:49:56 ID:FJAWU4MQ
品薄のPSP3000が921円で落札
ttp://yue.main.jp/

273 ◆4eLeLFC2bQ:2011/01/21(金) 19:35:06 ID:???
>>271
調査ありがとうございます。自分もあのギミックはどうにか残したいので
必死になって検索中です。(投下前にやれよと……)

点火薬・起爆薬がどんな方法であれ爆発すれば、プラスチック(混合爆薬)部分は爆発するようですね。
金属ワイヤーが蒸発して生じる衝撃波、電流でワイヤーが熱せられることによる点火の他に、
起爆剤自体は175度程度の摩擦熱で爆発するようです。
そうなると、グェスが配線をニッパーで切り落として安心していた描写が少し矛盾してしまうかもしれません。
(あくまでグェス視点なので、矛盾とまではいかないと思いますが)
上記のことは一般的な(wikiで調べられる程度の)プラスチック爆弾の構造の話ですから
荒木特製の首輪の場合、構造は異なっているのかもしれませんし。

首輪の細部の構造を決定付けるのが目的のSSではないので、
首輪の解析に影響を与える展開はできれば避けたいのですが、どう思われますでしょうか?

作者としては、ホル・ホースの遺した銃弾、承太郎の遺した首輪という
嫌らしいコンボをできれば残してあげたいので
通しにしていただけると、ありがたいです。

274ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/21(金) 21:21:21 ID:???
プラスチック爆弾と信管が出てくることは既に前のSSで確定してるんで、この展開で通しても特に首輪の解析には影響が出ないとは思います
グェスが配線を切り落として安心してたのは単に知識不足で説明がつくかと
自分としてはこの展開で通すことに賛成です

275 ◆4eLeLFC2bQ:2011/01/21(金) 22:06:22 ID:???
投下から1日も経っていませんが、
死亡者の首輪も銃撃で爆発しうるという結論で問題なさそうなので
修正投下はしないことにしました。
ひとりでおたおた騒いで申し訳ありませんでした。
問題がありましたら、引き続きご指摘をお願いします。

以下の文章を本スレに投下していただけないでしょうか。

『ニュクスの娘達』書き手より
掲示板にて「承太郎の首輪は爆発するのか」について議論していましたが
問題なさそうなので修正はしないことに致しました。
自分の至らなさを申し訳なく思いますが、現在投下済みの内容で、指摘・感想をいただけると嬉しいです。

276ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/22(土) 18:32:47 ID:???
投下乙です。
まだ本投下されていない>>195-235の指摘を。
>>196
×くっついいっただけ
○くっついただけ

それと、出来れば前半部にグェスが居るという何かしらの描写を追加した方がいいと思います。
登場人物が多いので仕方無いかもしれませんが、>>210になるまで彼女がナチス研究所に
居るのか居ないのか分かりにくく少し混乱しました。
もう一つ、他の方も指摘していましたが露伴の死で命令が解除されたならそう書いた方が
読み手にもフーゴの心境の変化が伝わりやすいと思います。
>>246
「―――降参だ……僕の負けさ」にかかっているのかと。
>>247
原作の設定は曖昧ですがロワ内では一度オウムを作っています。小鳥を作れない事にするとそちらに矛盾が発生してしまいます。

277ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/22(土) 20:35:20 ID:???
>>さようなら、ギャングたち

フーゴの解放について違和感があったので読み返してみたのですが、
ポルナレフの車椅子(ディアボロに縛りつけられ、身動きが取れない)
となっています
フーゴが自力で解放できるような縛り方をディアボロが施したとは考え辛いのですが・・・

278ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/27(木) 21:15:50 ID:???
規制で支援に行けん…

279猿さんくらってしまったのでどなたかお願いいたします:2011/01/27(木) 21:38:42 ID:hIvZ6qbE


「いまだ、はやく行けッ!」
「あわああああああ…………」
「何してんだ、早く行きやがれッ! てめぇもだよ、ダービーッ!」

部屋の隅に飛ばされていたホルマジオが腰を抜かせた音石を立たせる。恐怖に固まっていたダービーがその言葉で我に返った。
ブチャラティのラッシュがエシディシの進行を防ぐ。
その僅かな隙を縫い早人とグェス、フーゴは窓の外から逃げることができた。

「よそ見とは感心せんなァ」
「ハッ!?」

一瞬の隙を突き、腕を掴まれたスティッキィ・フィンガーズが投げ飛ばされた。
本体にダメージはフィードし、ブチャラティは窓を突き破り、外に放り出される。
すかさずホルマジオが助けに入る。
スタンド能力の発動を狙い、刃を振り回すもエシディシはこれを避ける、避ける。
鼻先をかすめ、纏った布が切れていく。そのギリギリの間合いの取り方にホルマジオは焦りを募らせる。
小指の刀はもはや警戒されている。そう判断した彼は小指を囮に距離をとり、足払いをかける。
だが素早い反応でエシディシは跳んだ。
空中にいるにもかかわらず、ホルマジオが腕を振るうより早く、蹴りの体制をとった。

―――俺のほうが遅い。
直前で何かを感じ取りしゃがみこんだホルマジオ。その頭の上を巨大な鎌が刈り取っていく。
髪の毛が数本舞い、冷や汗とともに恐怖が沸き起こる。体を転がし、その場から緊急回避をする。

エシディシはそんなホルマジオを踏みつぶそうと筋肉を収縮させ、途中でやめる。
既に部屋に残るのは戦士だけ。死ぬ覚悟も闘う意志ももった猛者たちだけだ。
今更勝負を焦るのは面白くない。それだけの余裕が彼にはあった。

窓から放り出されたブチャラティが帰ってくる。逃がすべき仲間たちを逃がしたリゾットも戦闘態勢をとる。
奇襲を受けたジョルノもどうやら無事のようだ。口元を伝う血を拭うと起き上がり、四人はそれぞれのスタンドを構えた。

四人と一人が今一度対面する。刹那の緊張感、先に動いたのは人間たち。
左からジョルノが、正面からブチャラティが拳の弾幕とともに接近。
対して怪物は脇に置いてあった机の残骸をジョルノに放り投げ、ブチャラティの攻撃は関節を外し避ける。
唯一戦闘に参加しなかったリゾットのスタンドは近距離には向かないものと判断、ターゲットを変更したエシディシ。

「させねぇよッ」

が、脇から急に飛び出したホルマジオ。
スタンド能力により姿を見えなくしていた男の急襲に、驚きながらも即座に対応。
ジャンプ一番、小指の刃はまたしても彼がまとった布をかするのみ。
紙一重でかわすと宙で一回転、まるで天井に張り付くような姿勢を取る。
天井を蹴ると爆発的な推進力を得てリゾットに迫らんとする。

「消えたッ!?」

が、飛んだ先には誰もいなかった。砂鉄を吸収、本人は壁に紛れその場を離脱。
目標を失い暴走した運動エネルギーは床板を崩壊させる。
床を突き抜け、辺りに木片が舞い、砂埃が立つ。
互いに姿が見えなくなった中、人間たちは影を頼りに今一度肩を寄せ集団で化け物に挑む。

280猿さんくらってしまったのでどなたかお願いいたします:2011/01/27(木) 21:40:15 ID:hIvZ6qbE


パラパラ、と天井からはがれた塗装が落ちてくる。
戦闘音を聞きつけ駆け付けたガンマンは扉を開け絶句した。
埃が舞い、床板ははがれ、机は粉々、椅子はあちらこちらで倒れている。

「これは……」
「これはこれはリンゴォ・ロードアゲイン……しばらくぶりだなァ」
「エシディシ……」
「先ほどのインディアンはもういないのか……少し残念だが、まぁいい。
 いずれは殺すことになる、早いか遅いかの違いだ」

ぬっと現れた芸術作品ともいえる肉体。
姿を隠すことなんぞ弱者が行うこと、逃げも隠れもせずにエシディシはニヤリと笑った。
リンゴォはそんな男を見て、咄嗟に腰に刺していたナイフを抜く。
ついさっき行った戦闘が頭の中で思い出される。この距離ではマンダムが間に合うか、それすらも危うい。
なにより怪物の瞳には迷いが見えない。
紛れもない殺意。それを前に手だけでなく、体全身の震えがリンゴォを襲っていた。

やがて薄れていく砂埃。完全に収まりきったのを見て人間たちは互いの存在を目で確認する。
エシディシから目を切ることなくじりじりと四人のギャングたちが横一列に並ぶ。
その四人の前に一人の男が立つ。
怪物とギャングたちを遮るように立ち、鋭いナイフが月光を受けキラリと輝いた。

「……ここは俺一人という話のはずだ」
「そういうわけにもいかない。こいつはもはや一人でどうこうという次元じゃ済まない」
「断る。これは俺とあいつの問題だ。」

文字通り怪物に一人で挑むなんぞ自殺行為だ。
拳を交わし、殺意を全身で受けたブチャラティはそれを身をもって知った。
男の肩を掴み、ブチャラティは共闘を申し込む。
が、にべもなく却下される。視線は怪物から離されることなく、ブチャラティは見向きもされなかった。
それでもなんとかしようと再度口を開きかけた彼を遮ったのはリゾットだった。

「ブチャラティ、やらせてやれ」

思わぬ反論に目を見開く。ちょいちょいと指で近づくように合図されたブチャラティは怪物から目を離さぬよう慎重に動く。
リンゴォが向かい合っていると言え、対するは怪物、影すら霞んで見える超スピード。
それをもってすれば誰が襲いかかられてもおかしくない距離で向かいあっているのだ。

「少しでも時間稼ぎができれば上出来だ。
 正直言ってリンゴォは他人を殺すことを非としない、扱いにくい存在。
 荒木に対して反感は持っているものの、それ以前に俺たちギャングとも歩んでいる『世界』が違いすぎる。
 組織の勝利を優先する形で引き留めたが、ここでいなくなっても痛手はそこまでない」
「見殺しにする気か?」
「ブチャラティ、お前も理解しているはずだ。
 俺たちギャングはメンツで成り立っている世界、面を汚されたら相手にその分の借りは返す。
 やつはそれと同種だ。自分の縄張りに入るものには容赦はしない。
 お前だって一度や二度、手を出してはならないサシの勝負ってのを経験しただろう……」
「それとこれは違う……今を逃したら勝機は、ないッ!」

281さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/27(木) 21:40:51 ID:???

小声で交わされる二人の会話。
これ以上言っても無駄だとブチャラティはわかるとリゾットの制止を振り切り、自ら先立ちエシディシに飛びかかる。
先手必勝、リンゴォ以外にも4人ものスタンド使いがいるのだ。
ここは引く場面ではない……攻める場面ッ!

「なッ!?」

が、それを黙って見ている男ではない。
気づいたらブチャラティは飛びかかってすらいなかった。リゾットとの会話すら終わっていない。
時を六秒巻き戻す、既に情報交換で知っていたとはいえ体験する新しい世界。
戸惑いを隠せないブチャラティにリンゴォは初めて向かい合う。
その眼には確かな敵意が宿っていた。

「ブローノ・ブチャラティ……これは『神聖なる果たし合い』……お前が入っていい世界ではない。
 もしそれでも邪魔をするというのならば……俺はお前にナイフを向けなければならない」
「……! ……仕方がない。リンゴォ、貴方の言うとおりにしよう」
「感謝する」

手を出してはならないサシの戦い―――リゾットの言った通り、リンゴォとエシディシはもはや勝利や死を超越した世界にいるのだろう。
リンゴォの瞳に宿った狂気を見てブチャラティはそう判断した。身を引くと、壁に背をつけ腕を組んだ。
ブチャラティはリンゴォの世界を汚してしまった。それは彼が理解できるものではなかったが、敬意を表するべきだとはわかった。
ならば彼ができることはただ見守るのみ。エシディシが襲ってこようともリンゴォがなんとかしてくれる。
そう信頼することで、敬意を表した。
リンゴォはそれを見てゆっくりと振り返る。ニヤニヤ顔の怪物は大きな隙を見せたにも変わらずその場から一歩も動いていなかった。
人間どもの茶番が―――そう馬鹿にしているのだろうか。
いや、とリンゴォは自らの考えを否定する。こいつはさっきまでとはわけが違う。

「迷いが吹っ切れたか……」
「ああ、お前のおかげでな。やはり俺には人間が理解できないな、リンゴォ。
 今お前がブチャラティの助けを拒否したのも俺には不可解におもえるぞ。
 この俺に対して一人で挑もうとは……フフフ」

しまいには拍手すらし始めた男は笑みを隠そうとしない。
余裕と自信に満ちた顔は確かな実力に裏づくもの、それをリンゴォは知っている。
ナイフを握りしめた手が汗ばみ、震えが全身へと移っていく。
しばらくの間、そうしていた化け物だが突如顔を真剣なものに変える。
さっきまでの雰囲気を一変させ、男はリンゴォに向かって囁く。

「だが、リンゴォ、そんなお前に敬意を表しよう。
 俺には理解はできないが、その勇気だけは評価に値すると考えている。
 無敵のように思えるものに立ち向かう、それは無謀でもなく諦めでもなくお前たち人間がもちうる最高の能力だからな」
「おもしろい……少しいい眼光になったな。だが……やはりお前は対応者にすぎない。
 男の世界を乗り越えていないお前は所詮その程度なのだ」
「馬鹿にすることはない。激昂するようなこともしない。
 貴様が俺をその程度と思うならば、リンゴォ……ここでお前を殺し、俺が対応者でないことを証明しよう……ッ!」

282さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/27(木) 21:41:52 ID:???



びりびりと部屋が震えるような圧倒的なプレッシャー。
壁に背をつけた四人のギャングは観客たち。目の前で繰り広げられるのは真夜中の前の最後の決闘。
演じるのは銃を持たないガンマンと名前もない怪物(モンスター)。
フィナーレは号砲とともに。BGMはすでに準備完了だ。照らし出す月光がスポットライト代わり。


「「よろしくお願い申しあげます」」


BETするものは己の命、そして誇り。
人間と一人の怪物が今ここに激突する。
一瞬たりとも目が離せない、最高にして最大の遊戯をどうぞご覧ください。










「おい……おい、暴れんなってッ!」

女の周りには誰もいない。デイバッグをたくさん抱え、彼女は一人盛大に悪態をついていた。
ポケットを押さえつけ全速力で駆けていく。飛び込んだ水たまりが足元で大きくしぶきを上げる。
繰り返される独り言、何と闘っているのだろうか、ポケットを抑える力はますます強くなる。

走りつかれたのか、戦い疲れたのか。
足を止めた女は息を整えポケットをまさぐりながら叫ぶ。

「なんだってんだよ……わかったからッ! 今大きくしてやっから待てって!」

マジシャンもびっくりの一芸、ポケットから飛び出た二人はみるみる大きくなる。
幼さを残した表情に不釣り合いな鋭い眼光、少年は地に足をつけた途端周りを見渡し危険がないか目を光らせる。
車いすに乗った青年は今だ意識を取り戻さないのか、ぐらぐらと首を揺らす。
こんな状況でおねんねなんて呑気なもんだぜ、彼を見てグェスが呟いたのを聞き逃さなかった。
早人は舌打ちをする。誰にも聞こえない、自分だけが聞こえる程度の大きさだった。

「まだここじゃ安全とは言えねぇな……。とりあえず川の近くまで行こうぜ。
 最悪敵が来ても川に飛び込めばなんとか振り切れるかもしれねー……ってお前何やってんだッ?」

283さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/27(木) 21:42:26 ID:???

地図を広げていた彼女は現在位置を確認する。
周りを見渡し、大体の位置を確認した彼女が顔をあげると少年はデイバッグをあさっている真っ最中。
腹でも減ったのか、いやいやさすがにそんなわけはないだろう。
ただならぬその様子に少しだけ遠慮がちに、だが強い口調で呼びかける。
少年は振り返ることなく、背中を向けたまま答えた。

「決まってるでしょ? ナチス研究所へ向かうんですよ」
「気でも狂ったのかッ!? あたしたちは逃げるように言われたんだッ!
 だいたい戻ってどうするッ!? あたしたちにできることなんてなんもねぇんだよ!」
「……僕も億泰さんと一緒に出ていけばよかった」
「あん?」
「ギャングだとか囚人だとかで期待してたけど、あんたたちは甘ちゃんばかりだ。
 こんなんじゃ荒木に勝てるもの勝てなくなってしまう」
「何言ってるんだ……お前」
「僕には絶対果たさなければならない目的がある。そのためには利用できる相手はとことん利用させて貰う。
 今回だってそうだ……ナチス研究所に来たのも誰か僕に協力してくれるような人を探すためだった。
 でも駄目……ッ! 誰も使えそうな人はいなかった。皆結局、命に執着する人ばかりだ。
 そういう意味じゃあの怪物……利用するには少し手間取りそうだけど、自信がないわけじゃない」
「おい早人……」
「なにか武器持ってないですか? 流石に丸腰でいくほどの度胸はないので」

無関心に、無愛想に。
グェスのほうを一切振り向くことなく少年は出発の準備を整える。
目当ての武器が見当たらないのか、イライラを隠さず盛大に舌打ちをした。
グェスが無造作に持ってきたデイバッグをひっくり返し、そこらじゅうに物が散らばっていく。
鬼気迫るその様子に、最初は口調を荒げていたグェスも黙りこみそうになる。
だが少年がナチス研究所へ向かい歩き出すのを見ると、慌てて引き留める。

「おい、待てったらッ! おい、早人ッ!」

だがそれでも少年は振り向かない。
体格的には無理に引き留めようと思えばできるかもしれない。なにより彼女にはスタンド能力があるのだ。
けど、グェスは直感的に感じる。
なぜかそんなイメージが思い浮かばない。

(これは……今のは……)

だんだんと遠ざかる背中に手が延ばされ、力なく宙をかく。
あまりに急に起きた出来事に呆然としながら、それでも早人に追い付こうという気が起きなかった。
いくつかのデイバッグと、車いすに乗った青年を残し、彼は歩いていく。

(どうやっても……止められない……。
 アタシ程度が言っても今更どうしようもない……。
 なにより……スタンドを使おうとも『なにもされない』という確信がない!)

284さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/27(木) 21:42:57 ID:???


だが、とグェスは恐怖を覚える。
誰もいない。狂気に走った殺人鬼も、ピンチに駆けつけるヒーローも。
それが一層不安を掻き立てる。誰もいないこと、それが孤独感を煽る。
こんなところにあたし一人残されて、一体どうすればいいんだ―――急に不安に思えてきた彼女は辺りを見回す。
早人が行ってしまったら、もはや自分はどこにも帰れないのではないか?
このままここにいていいのだろうか?

その一方で躊躇いもある。早人の眼が彼女の苦い記憶を思い起こさせていたのだ。
役立たず、どんくさいやつ……様々な負の感情がこもった視線。
そしてそれ以上に、邪魔をするやつには容赦しない、漆黒の意志が早人の眼には宿っていた。

宙ぶらりんになっていた手が何かを掴み取るように動く。
車椅子に乗った青年と少年の背をおろおろと見比べる。
どうすればいいのか、何をすればいいのか、一体自分は何をしているんだ。
口をついて出たのは今まで以上に弱弱しい叫び。
助けを求め、行く先を見失った子ヒツジの哀れな鳴き声。


「お――――――」


そんなグェスの叫びは遂には早人に届くことはなかった。
早人は数歩足を進め、ゆっくりと振り返る。
彼の足を止めたのは彼女の途切れた叫びではない。
彼女の叫びを遮り、響き渡った銃声。まるで最初からわかっていたように早人は振り返り男の眼を見る。

車椅子に座った彼の右手には煙をあげる拳銃。
ぐるぐる巻きに巻かれていた蔦をめちゃくちゃにする彼のスタンド。
そして、ぽっかりと落ちくぼんだ眼。
パンナコッタ・フーゴはゆっくりと車いすから立ち上がると顔をしかめる。
口中に広がった鉄の味に顔をしかめ、ペッと唾を吐いた。
真っ赤に染まった唾液が口を伝い流れてくる。

「起きてたんですか?」
「だいぶ前からね……。すぐに動かなかったのは現状がどうなってるか理解するためさ」
「まぁそんなところだと思っていましたよ」

少年のつっけどんな言葉に彼は皮肉気に微笑み、肩をすくめる。
人が一人死んだ、目の前で人が殺された。だというのに彼らはまるでゴミ捨て場で世間話をするように会話を続ける。
転がったグェスをまたぎ、フーゴが早人へ近づいていく。
靴の裏に付着した血液のぬめりとした感覚に一度は歩みをとめたものの、気にすることなく歩いていく。

「ところで……どうして銃を持っていかなかったんだい?
 弾は一発しか入ってなかったけど持っていかないより、持っていったほうがましだろう?
 特に君は子供の上にスタンド使いじゃない……電気椅子に座って居眠りするより危険だ」
「一発しか入ってなかったんじゃないですよ。一発『だけ』にしておいたんです」

空になった拳銃を早人に向かって放り投げる。
優しさが微塵も感じられない雑で乱暴なパスを受け取ると、早人は唇の端を歪ませた。
フーゴが眺める先でズボンのポケットをひっくり返す。
出るわ出るわの弾丸の数々。デイバッグからくすねた数十発の弾丸が早人の言葉の証明だ。
ヒューとハズした口笛と拍手の音が虚しく響いた。

285さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/27(木) 21:44:45 ID:???


「僕がどんな行動をとるか、見計らうためかい?
 だとしたら大した度胸だよ……彼女じゃなく、君を撃つ可能性だってあったんだぜ?」
「それはないと踏んでましたよ……あなたにはそんな度胸もないし、なによりここで僕を殺したら本当に後戻りができなくなる」
「……どういうことか、説明してもらっていいかな?」

薄気味悪い笑顔を張った二人、会話はそれでも続いていく。
殺意に染まり殺意に固められた少年と、裏切られたことで裏切りを重ねる少年。
殺意と裏切り、死の香りが辺りに漂い始める。
事切れた女性が最後に狂気に満ちた笑いをあげた。

「いいですよ……交渉しましょう。
 僕らが逃げた先にたまたまゲームに乗った殺戮者がいた。グェスさんは残念ながら殺されてしまい、僕は絶体絶命。
 そこで目を覚ました貴方が登場、なんとか相手を追い払う。
 貴方はゲームに一度でも乗ったことを懺悔し、僕はそんなあなたを赦す。
 どうでしょうか……これなら貴方があのチームに殺されることはないんじゃないでしょうか?」
「……それだけかい? なにもそんなボランティアのために僕を助けるわけじゃないだだろう? 君が僕に要求することは?」
「僕の手となり足となり働いてもらいます。当面の仕事は……そうですね、『暗殺』ですね」

両手をあげ、天を仰ぐさまはまるで演劇のよう。
それを見つめニヤつく早人はまさに悪徳非道のギャングそのもの。
選択肢のない弱者をいたぶるように、早人は一歩一歩またフーゴを追いつめる。

「おいおい、やけに足元見てくれるじゃないか」
「それだけの価値はありますし、なにより貴方が何か言える立場ですか?
 これでも僕は譲歩しているんですよ? なんならこのままナチスに向かいましょうか?」
「言ってくれるねェ……」

―――降参だ……僕の負けさ。
しばらくの沈黙の後そう言ったフーゴの顔には、爽やかな笑みが浮かんでいた。

状況が状況ならば清々しい勝負の後に言うべきふさわしい言葉だ。
美徳とフェアプレー、両者を称賛する華々しい幕切れ。
だが闇夜に紛れ、死と血の臭いがむせかえるほどの空間では白々しく、虚しい。
貼り付けられた笑みも作られたもの、その裏に隠しているモノは本人しか知りえない。

さっと差し出された手、早人は満足そうな息を漏らす。
散々走り回ってようやく得た力だった。
それも甘ちゃんが口にするような力ではない……確実に相手を葬る手段。

フーゴがいつまでもおとなしい犬でいるとは思えない。
ギャングたちに受け入れられ、早人が用済みになったならばいつ始末されるかはわからない。
後ろ手で弾丸を込めなおした拳銃を握りなおす。
裏切り者には死を―――鉄のおきてに従い、必要ないと判断すればフーゴを処分する。
業火のように燃え上がる殺意。何もかもをのみ込む覚悟が早人には、ある。

286さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/27(木) 21:45:48 ID:???

愛好と親愛、両者の発展のために。
そんな意志を一切持たない、互いの利益のため、互いに相手を出し抜くため。
早人はジョーカーを手に入れたのだ。パンナコッタ・フーゴと言う爆弾を。
フーゴは再び分かれ道に立つことができた。ギャングに信頼されれば、今再び、殺戮者か反逆者かの道を選ぶことができる。
早人は差し出された手を握るため、ゆっくりと腕をあげた。



「―――なんて言うとでも思ったのかい?」


そしてフーゴがその手をとることはなかった。


「がハァッ…………!」


紫色の腕が雄叫びを上げ、早人の体を貫いた。
宙に浮かされた早人の手はがくりと力を失い、垂れさがる。握っていた拳銃が乾いた地面に落ち、跳ねまわった。
パンナコッタ・フーゴは実験マウスを見るような眼で、崩れ落ちた早人を観察する。
己の分身がくりぬいた早人の腹の断面図、そこに靴をさし込み蹴りあげた。

「舐められたものだよ、この僕も……。
 だが感謝はしてるよ。体調は万全じゃなかったからね、武器はどうしたって必要だったんだ」

ありがとう、と感謝の言葉を送り、落ちた拳銃を拾うとグリップに手をなじませる。
川尻早人には知らない事が多すぎた。そして失ったものも多すぎた。
彼はパンナコッタ・フーゴがどんな思いで組織を裏切り、どんな思いで開き直ったのか知らない。
彼がどんな思いで人を殺す決断をし、どんなにその決断をするのに思い悩んだかを知らない。
情報としては知っていただろう。だが理解することはできても、感情をわかろうとは思わなかった。

フーゴはデイバッグからナイフを取り出すと曲芸師のように手の中でもてあそぶ。
興味深いものを発見したのか、しゃがみ込むと少年の体をじっと眺める。
ちぎれた血管、露出した骨、筋肉の断面図。
彼が腕を動かすたびに、鶏が喉を締め付けられたような悲鳴が上がった。

淡々と、感情を交えず、彼はナイフを振るう。
まな板の上に転がされたのは川尻早人。もはや虫の息だというのに、あっさりと逝くことはできなかった。
青年は頭がよかった。スタンドが貫いた場所は致命傷ではあるが、即死はしない個所。
剥き出しになった神経を愛でるようにやさしく、丁寧に。拷問は彼のお得意芸だった。

「僕が君を先に殺さなかった理由はただ一つだ。
 君がスタンド使いじゃないからさ。
 君がただの子供で、僕が殺そうと思えばいつでも殺せるという確信があったからさ」

287さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/27(木) 21:46:42 ID:???

その囁き声は優しく、やわらかい。
愛しの女性の耳元で言うかのように、思いやりをこめ、感情をこめ、彼は作業を続ける。
口調とはま逆の感情を瞳に込め、彼は解剖実験をやりきった。
それでも少年は逝くことができない。
生物として、最後の最後まで生きようという意志が彼の生命を繋ぎとめていた。
殺意が彼をこの世に引き留めていた。

「殺す……ぶっ殺してやる……」

青年はとびっきりの笑顔を浮かべると、返事代わりに鉛玉をぶち込んだ。
甲高い音が平野にこだまし、少年の体がもんどりうつ。
もう一度、さらにもう一発、駄目押しで一発。

額に穴をあけ、本来ならば眼球があるべき場所に風穴を開けられた少年。
歪んだ表情には殺意しかなかった。
ダイヤモンドの輝きは、真っ赤な血で染まり、もう光を放つことはなかった。

「 Buonanotte・sogni d'oro (素敵な夢を……)」

散らばった荷物を集め、一つのデイバッグに整理すると、とりあえずは地図を広げた。
別にハイキングに行くようなわくわく感はなかったが、青年の中には確固たる意志が出来上がっていた。
殺意、パンナコッタ・フーゴにはそれが足りなかった。
そして彼は川尻早人の姿からそれ学ぶことができた。

だいたいの位置を確かめ、時計をチラリと確認、青年は目的地に向け出発した。
少年とと女性には目をくれることもなく、ずんずんと進んでいく。

恐怖がないわけではない。ただ、受け入れるしかないと思っていた。
弱い自分、状況に流され動揺しがち。激昂すると周りが見えなくなる。考えすぎてしまい、本質が見えなくなる。
ないものはない、できないことはできない。
開き直りに近いかもしれない。だがとりあえず自分の位置を知ることが大切だ。

殺すのに理由はいらない。ただ拳銃を構え、トリガーを引くだけ。
必要なのは殺意と決断。決断はすでにした。足りなかったのは殺意だけだ。

風が吹き抜けていくと、体の節々がズキンと痛んだ。
体調も万全でない。ならば自分がうまく立ち回るにはどうすればいいのか?
簡単だ、相手に自分の事を悟られなければいい。即ち―――暗殺。

288さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/27(木) 21:48:35 ID:???


さっそく自分の殺意が試される時。
ありすぎても駄目、なさ過ぎても駄目。悟られてはいけないし、いざという時に躊躇ってもいけない。
これは試練なんだろうなァ……、そうぼそりと呟く。
別に誰に対して言ったわけでもない。ただ自分に言い聞かせるためだ。
新しいパンナコッタ・フーゴ。それへの最初の関門が迫る。

「これは『試練』だ。
 過去に打ち勝てという『試練』と、僕は受けとった。
 人の成長は…………未熟な過去に打ち勝つことだとな……」


―――青年が向かう先はナチス研究所。月光に浮かび上がる施設は青白く、怪しく煌めいている。
―――デイバッグの中で、奇妙な仮面が怪しく輝いた。





















頭にきてるわけでもねェし、かと言って冷静になってるかといったら、いや、それはNOだ。
足元に転がる小石をけり続け、気づいたらだいぶ研究所から離れた場所まで来ちまった。
ポケットに突っ込んだ手が冷えてきた。通り抜けてった風は俺の体を震えさせる。
とは言ってもいまさらどんな面して帰ればいいのか……俺にはわからなかった。

「俺はどうすればいいんだよ、兄貴……」

自分でも正直なにがしたいのかわからねェ。
音石の野郎は憎いさ……何度ぶっ殺してやりたいと思ったかもわからねェ。
あいつの相手を小馬鹿にした顔、なめ腐った態度。
顔面に一発ぶち込んだだけじゃこの思いは消えねェ……あいつをおれ自身の、この右手で。

289さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/27(木) 21:49:10 ID:???

目の前が赤く染まり、奥歯をぐっとかみ締める。
ギリギリと歯が音を立て、俺は右の拳を左の手のひらにたたきつける。
でもよ……頭の奥の、すみっこで控え目な俺の声が聞こえた。
その一方で『もしかしたら』っていう気持ちも俺の中でないわけじゃない。

今でも思い出せる。
バイクに潜んでいたレッド・ホット・チリペッパー、走ってくる仗助たち。
ガオンと削ったのは奴じゃなくて地面、逆に俺の腕が切り飛ばされる。
そして……そして……。

あん時俺はあの野郎をぶち殺せなかった。でも、もしかしたらそれは兄貴がそうさせてくれたのかもしんねェ。
兄貴は何人も殺してきた。兄貴は親父のために、何人もの人を踏みにじってきた。
だけど俺にはぜってーさせなかった。体をはって俺をかばい、汚い仕事は一身に背負ってた。
俺の手が汚れないように。

だから今でもあのときの光景をふと思い返すと、思っちまうんだ。
もしかしたらあれは兄貴の最後の願いなのかもしんねぇって。
俺には全うな道を歩んでほしい、兄貴はそう思ってるかもしんねぇ。

だけど……俺はそれでいいのか?
その兄貴を殺したのは誰でもない、あいつなんだぞ?
どのぐらいあいつのことを考えてきた? あいつの顔を思い浮かべ、夢の中で何度あいつを削り取ってきた?

「教えてくれよ……俺は、一体……」

なぁ、兄貴……兄貴は俺に何をしてほしいんだよ……俺は一体どうすればいいんだよ……。

目をつぶって兄貴のことを思い出す。夢の中で会えたようにいつもどおりの表情。
だけど兄貴は何も言わない。ただ黙って俺を見つめるだけだ。
俺は仕方なく目を開けると、また歩き出す。
蹴りだした小石は大きくはね、ころころと転がっていった。

「ん……?」

転がった小石を追いかけ続けるうちに入った住宅街、後ろから足音が聞こえてきた。
反射した音は場所を教えてはくれねーが、近づいてくることはわかった。
俺は黙ってスタンドを構える。
十字路に飛び出てきたのはテレンス・なんとか・ダービーとあの憎き音石の野郎だった。

「おい」
「ヒィッ!」

290さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/27(木) 21:51:17 ID:???

全力では走ってきたのか、息も絶え絶えの二人に俺は声をかけた。
悲鳴を上げた音石と、それすらできないほど疲れたダービー。
俺だとわかると二人はその場で崩れ落ち、膝を突き、空を仰ぎ、息を整えた。
何が起きたかわかんねーが、とにかくなんかとんでもねェことが起きたってことは俺にでもわかった。

「なんだよ……びっくりさせるんじゃねーよ」
「どうしたってんだ、研究所で何かあったのか?」

ようやく口を利けるようになった音石が文句を言う。
ピクリ、と俺は自分の頭に青筋が立つのがわかった。が、それを無視して俺はダービーに話す。
なんだかわからねェがいやな予感がした。
取り返しのつかない、何かとんでもないことが起きたんじゃねェか……そんな勘が働いた。

「どうもこうもじゃねーよ! 怪物だ……奴はモンスターだ……」
「岸辺露伴が……殺されました」
「何ッ?!」

露伴が……殺された?
顔面をぶん殴られたようなショック。仗助の野郎の一発なんて目じゃねぇ、俺の頭は一瞬で真っ白になる。

さっきまでぴんぴんしてたあの露伴が……?
嫌味ったらしくて皮肉しかいわない、あの漫画馬鹿が……?
勝ちたい、そう言ってガキみたいに目を輝かせた、あいつが……?

白色があっという間に赤く染まる。なんだかわかんねーなにかが俺の体を通り抜ける。
反射的に体が動いた。地面にうずくまってた音石の襟首をつかむと、無理やり立たせる。
やつのわめき声がどこか遠く聞こえた。つばを撒き散らし、俺から離れようとむちゃくちゃに暴れまわる。
ちげーよ……ちげーよな。
どこかでそう冷静な声がする。俺自身の声が囁いていたのだ、これは単なる八つ当たりだと。

「嘘なわけねーだろッ! こんな状況で嘘なんてつけるかッ!」
「音石が言っていることは本当です。エシディシ……やつが岸辺露伴のなかに潜んでいたのです。文字通り、体内にね。
 そのあとはよくわかりません……情けない話ですが恐怖で私は頭がおかしくなりそうだった。
 圧倒的暴力とはああいったものをいうんでしょう……超スピードだとか、超能力だとかそんなんではありません。
 奴が露伴の中から『脱皮』してきたときは、もう…………」
「露伴……」

ウソ、じゃなかった。
やっぱりな、と思う俺とそれでも信じたくない俺。
ドサリという音と、尻を思いっきりぶった音石の悪態。
俺は自分の右手を見つめていた。

「とりあえずもう少し逃げようぜ。あんな奴が相手じゃこんな距離、あってないようなもんだ」
「賛成です。彼らが何もできずに死んでしまうなんてことはないでしょうが……できれば無事を祈りたいところです。
 とは言うものの……あんなものを見せられたあとじゃ……」
「ってうおおおおおッ?!」
「落ち着いてください……なんてことはないです、もう死んでますよ……」
 それにしても……むごい死体ですね。げぇ……」
「人っつーか、肉の塊っつーか……一体どうやって殺されたらこんな風になるんだよ……おえぇえ……」

291さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/27(木) 21:52:05 ID:???

音石たちはエシディシから少しでも距離をとるため歩くのをやめない。俺はまるで夢遊病者のようにそのあとをふらふらとついていった。
二人は今後の予定を話し合っていた。この後どこに行くべきか、何をすべきなのか。
だが俺は一切口を出さなかった。会話に参加することすらできなかった。
肉の塊のような無残な死体を発見した時も、今の俺にはまるで現実感がない。
目の前で起きてることが全部夢みてーに思えてたんだ……。

仗助も、康一も、露伴も、承太郎さんも……。
しげちーも、トニオさんも、由花子も、早人もッ!
なんだってんだ、畜生……ッ!
どうしてこんなことになってんだよ……ッ!

「貴方はどうするんですか、虹村億泰?」
「俺……? 俺は…………」
「正直私個人としては貴方についてきてほしい。
 私のスタンド能力は戦闘向きでないし、貴方のスタンドが強力な事は知っています。
 貴方が護衛についてくれればこれ以上ないほど心強い。それに……」

結論が出た二人はいつの間にかまた出発の準備をしていた。
地図をしまおうと荷物の整理で手間取る音石から少しはなれ、ダービーが俺に声をかける。
俺は何も考えられない。
頭ん中でぐるぐる回って回って……何から考えればいいのかわからない。

「正直な話、私は音石のやつが信頼できなくてね……あなたがついてればあいつも悪さはできないはずです」

こっそり耳打ちするダービー。
ちょっと前までの俺なら仲間発見、大喜び。
ナチスに向かう当てもなかったし、そのままいってやってもいいぜ、となっていたかもしれない。
だけど今の俺はそんな風に考えれなかった。
テレンスの答えを待つ顔を見ながら、俺の思考は遥かかなたに飛んでいった。

なんでこうも皆いなくなっちまうんだ。
それも俺の手が届かないところで、俺がなにもできないままで。
兄貴が死んだ時が壊れたビデオテープみたいに、何度も何度も頭ん中で思い出される。
俺を突き飛ばす兄貴、コンセントから飛び出すスタンド、叫び声、吸い込まれる体。
それに重なるように響く放送。あの荒木の野郎の声だ。
読み上げられるのは皆の名前、杜王町の仲間たちの名前ばかり。

誰に対して向けられたわけでもない怒り。
心臓をわしづかみにされたような悲しみ。
もう二度と戻ってこないという虚無感。

俺は、後何度こんな気持ちにさせられるんだろうか。
泣けばいいのか怒ればいいのかわかんなかった。
思わず漏れたうめき声は返事にならず、ダービーが怪訝な表情を浮かべた。

292さようなら、ギャングたち  ◆Y0KPA0n3C.:2011/01/27(木) 21:56:11 ID:???

だけど……俺にはわかった。露伴の野郎が死んじまって……俺はようやく気付いた。
本当は前からわかってたのかもしんねー。親父がDIOの野郎におかしくされた時から俺はずっとそう思ってたのかもしれない。

俺は、音石の野郎が気に食わねェ。これは確かな俺の気持ちだ。
兄貴を殺したことは絶対に許せないし、許してやろうなんて思うことはぜっってーない。
一発だけじゃ勿論殴り足りねェ……気が済むまで俺の手でボコボコにしてやりたい。

でもそれだけじゃねェんだよ。俺は……俺は―――


俺は誰も救えない、俺自身が嫌いだったんだ。


親父も、兄貴も。
仗助も康一も承太郎もトニオさんも露伴もしげちーも……!
俺は、あいつらを助けることができなかった俺が嫌いだったんだ。


「おい、どうしたんだよ、ダービー! 早く行こうぜ!」
「ちょっと待って下さい、今行きますよ」

お願いします、ダービーの奴がもう一度俺に頼みこむ。
だが俺は決心していた。ようやく気づいた今、俺は俺自身のために戦いたいという気持ちが強くなっていた。
俺は額をかき口ごもる。
真剣な顔で物事を頼まれると弱いけどよォ……俺は、もう間に合わなかったなんて言いたくねェんだ。

「すまねーけど、俺はナチス研究所へ向かわしてもらう。
 本当にお前にはすまねぇと思ってるぜ? これは本当だ」

信じられない、こいつはいったい何を言ってるんだ。頭がイカれてるのか、命が惜しくないとんだトンチキ野郎だ。
ダービーは何も言わなかったが俺は表情から何が言いたいかわかった。
すまないと思ってるのは本当だ。音石の野郎は確かに、なんだか胡散臭ェ。
ここでダービーを置いて行くってのもなんだか気が引けるってのは確かなんだ。

「早くしようぜッ! 億泰のやつも来んのか、来ねーのかはっきりしてくれよ!」
「今行きますッ! ……あなたがそう言うなら仕方ありません。止めはしませんが充分注意して下さい。
 奴は本物の怪物ですから」

私たちはサンタ・ルチア駅に向かうつもりです、なにかあったらよろしくお願いします。
ダービーのやつは最後にそう付け加えると音石の元に戻り、二人で歩き出した。
悪いな、ダービー。でもやっぱり俺はもうこれ以上、取りこぼしたくないんだよ。

俺の右手は何のためにある?
削る能力しかない能がないスタンドは、戦うためにあるんじゃねーのか?
俺はもうこの右手で誰もつかみ損ねたくない。
もう、後悔したくないんだよ。

293 ◆SF.flmxVNo:2011/01/31(月) 00:19:44 ID:???
お待たせ致しました。
ジョナサン・ジョースター、ディオ・ブランドー、吉良吉影、シーザー・アントニオ・ツェペリ、ディアボロ、空条徐倫
投下します。

294 ◆SF.flmxVNo:2011/01/31(月) 00:20:40 ID:???


不気味なまでの静けさと、辺りを包む冷たい闇。
生き物の存在が一切感じられないその陰鬱さは、
一見何の変哲もないDIOの館に、まるで悪霊が住み着いた廃墟の如き
邪悪なオーラを纏わせ、えも言われぬ近寄り難さを演出していた。

もし手元の時計を覗きこんだならば、88人がこの殺し合いゲームに巻き込まれてから
もうじき丸一日が経過すると分かるだろう。
時計の針が2周する。たったそれだけの間にこの館で4つの命が散った。
彼らの深き怨念が渦巻くこの建物は、これから更に幾人の血を浴びる事になるのだろうか―――。


◇   ◆   ◇


DIOの館に着いたシーザーとディアボロ。
虹村億泰らと別れてから、何の滞りも無く此処に来たまでは良かった。
だがその幸運は長く続かない。

シーザーの波紋で作る探知機を用い慎重に探索するも、館に人の気配はなく。
危険はないと判断し二手に分かれて隅々まで調べるも、目ぼしい物は何一つ見付からなかった。
幾つかの部屋に戦闘があったと思しき家具や壁の破壊、血痕は見られたが、
この殺し合いの場においてそのような光景は、さして珍しい物ではない。

「こっちは駄目だ。お前の方はどうだった?」

落胆の表情を滲ませつつ、ディアボロは傍らの青年に呼びかける。
「俺も大して変わらないさ。だがついさっきまでここに誰か居たのは確かだ。
あそこのテーブルに置いてあったティーカップ、まだ底が乾いていなかった。」

295 ◆SF.flmxVNo:2011/01/31(月) 00:21:43 ID:???

視線で示した先に置かれていたのは、白いティーカップ。
ご丁寧にソーサーとティースプーンまで付いている。
ディアボロはカップを片手で持ち上げ、中身を調べる。
成程確かに、紅茶の香りがするそのカップを傾けると、水滴がゆらりと底を流れる。
飲み終えて一時間もすれば、底に溜まった茶の成分や砂糖が固まり茶色くこびり付くだろうに。

「追うか?そこまで遠くには行っていないと思うが。」
「いや、そいつがゲームに乗ってなければ有難いが、ここまで生き延びてきた連中だ。
安易に接触していきなりズドン。じゃあ笑えないだろう?特定人物と分かっているならともかく、
得体の知れない奴に無暗にコンタクトを取るのは考えものだな。」
「先方がやる気なら、とっくに攻撃を受けてるぜ。案外俺達に警戒して、逃げ隠れた非戦闘員かも
分からないぞ。もしそいつがか弱い女の子だったら、俺はこのまま放っておく気は無いね。」
「やる気のある無しや性別は関係ないだろう。お前だったら男二人に後を追われて、大人しく話に応じるか?
俺含め、ここにいる奴らは皆導火線が短くなっている。逃げた奴を下手に刺激するメリットがどこにある?」
「例えの話さ。俺だって関わり合いを避けているのに深追いするのは気が進まない。
あくまで『選択肢』を提示して意見を聞きたいだけだ。それにしてもあんた慎重過ぎやしないか?」
「……。とにかくこんな所に長居しても仕方がない。一旦ここを出るぞ。」


◇   ◆   ◇


「正直あてが外れたな…。これからどこに行く?」
「ナチス研究所だな。確かに館にいた奴も気にかかるが、運が良ければいずれ会える。億泰達の安否も確認したい。」
「同感」

念のため波紋の探知機はそのままに、二人はナチス研究所へ歩みを進めた。
これをやり続けるのも楽じゃねぇんだけどなーーッ!と愚痴るシーザーをよそに、ディアボロは考えていた。

296 ◆SF.flmxVNo:2011/01/31(月) 00:23:01 ID:???
不自然だ。もし館に居たのが非力で臆病な奴なら、あんなに目立つ建物に、
まして戦闘の爪痕が残るあの場所で少なくとものんびり紅茶を飲むほどくつろげるだろうか。
俺だったら入口にバリケードを築くなり、糸か何かで来客を知らせる仕掛けを作るなり、
脱出経路を確保するなりと、突然の襲撃を防ぐ手立てをするだろう。だがそういった形跡は無い。
それにあのティーカップ。俺達にビビって着の身着のままで逃げたとして、ちょっと前までここにいました。
とこれ見よがしな証拠を残すだろうか?逆に考えるんだ、『俺達を恐れる奴』が尻尾を巻いて逃げた、
のではなく『俺達を狙う奴』におびき寄せられている、と考えるんだ―――。

「おい、待てシーザー」
「おい、待てディアボロ。今あそこの茂みで何かが光ったぞ?」

同時に言葉が飛ぶ。お互いが自分の思考に夢中で、お互いの言わんとする事を深く考えられない。
微かな二つの輝きの正体を調べようと『何か』に近寄るシーザーに、慌ててディアボロが叫ぶ。

「よせシーザーッ!!そいつに近付くんじゃあないッ!!」


『コッチヲ見ロ』
―――カチリ。



◇   ◆   ◇


館を離れ、徐々に南下。そう提案したのは吉良だ。
あれから2〜4時間は経過した筈だ。だのに彼らが依然館周辺に身を置くのは何故か?
歩きながら分配された支給品を確認していた吉良は、一転、DIOの館へ戻ると言い出した。
訝るディオとジョナサンの前に差しだされたのは、黒いプラスチック製の箱数点と配線、それに小さな部品だ。
19世紀を生きる二人には、それが何なのか見当も付かない。いや百年以上先の未来で暮らす吉良ですら、
ここまで高性能な機器をお目にかかった経験は無いかも知れない。一体それは?

297 ◆SF.flmxVNo:2011/01/31(月) 00:33:18 ID:???
「フム…。スタンド使いを始めて見た時、俺はこいつらが本当に人間なのかと疑ったよ。しかしこういった
現実離れした機械を目の当たりにすると、やはり人間には等しく優れた潜在能力が秘められているのだと思い知らされる」
「あぁ。素直に感嘆するね。人は成長すれば、こんな魔法みたいな道具を発明するだなんて!」

板チョコレート大のモニターに映し出されるのは、DIOの館の入口付近のカラー映像。
そう、彼が手に入れたのは、遠く離れた場所の様子を探れる『CCDカメラ』であった。
館に戻った彼らは、ここを訪れる人間が必ず通るであろう地点、すなわち入口にカメラを仕込んだ。
消しゴム程しかないカメラのレンズは観葉植物の植木鉢に隠され、さりげないポイントに設置された。

後はもう分かり切っている。
電波がぎりぎり届く位置の民家に身を潜め、何も知らぬ参加者がのこのこやって来るのを
悠々と監視すればいいだけ。そして『誰もいないじゃないか仕方ない、別を当たろう』と
館を出た所でズガン!だ。入口付近に爆弾化した小石を置くという案もあった、
しかし第1の爆弾は1つしか作れない。万が一何者に襲われた場合を考えると心許ないし、
何よりDIOの館内で爆発を起こせば、カメラが壊れたり、その次の来訪者に怪しまれる危険性がある。
確実さより安全性を重視し、外に出た瞬間にシアーハートアタックを放つ事に決定した。
これならば、もしDIOの館を拠点にしようと居座られても、やはり容易に攻撃出来る利点もあった。

「なに、そう焦って動く事もないさ。せめて第4回放送までは体を休めればいい。ここからは
さらにキツくなるだろう。コンディションを整えながら楽をして参加者を狩れて良い考えだろう?」

誰も異を唱えなかった。殺しに積極的とは言え、やはり今まで受けたダメージは回復させておきたい。
たとえ期待通りに事が運ばずとも、第4回放送までという条件もあるのだから。
そうこうしている内に、吉良の予想は見事的中した。
館に足を踏み入れたのは、イタリア人らしき男2名。金髪の男を目に捉え、ディオはギリっと歯噛みをする。
だがまだ動いてはいけない。彼らが探索を終え建物から出たら、すかさず吉良がスタンドを放つのだ。

298 ◆SF.flmxVNo:2011/01/31(月) 00:34:26 ID:???
「ディオ、こいつらを知っているのかい?」
「フン、黙っていろジョジョ…。確かにヤツには借りがあるが、馬鹿な考えを起こして飛び出しやしないさ。」
「二人ともやる事が無いからと言って無駄口叩くんじゃない。…よし、出たぞ!行け、シアーハートアタックよ!」

三十秒。
一分。
二分。

そして爆発。

「勝った!私の爆弾は熱に反応する。爆発したのなら最低でも一人は始末出来た事になる!」
「案外あっけないな。念のため死体を確認しに行くか?」
「勿論そのつもりだ、片方が生きていたとしても無事では済むまい。シアーハートアタックの回収もしなければ。」


◇   ◆    ◇


「『キング・クリムゾン』!過程は消し飛び、爆発したという結果だけが残る。」

危ない所だった。
もしこのスタンドの正体を知らなければ、恐らく咄嗟に正しい判断など出来ず、
今日のシーザー、爆破され哀れ合挽き肉の仲間入り、となっていたに違いない。
いや、目の前の危機は免れたが、退っ引きならない状況は依然変わりなくッ!だ。
ジョセフを殺したあの忌々しい爆弾スタンドは、キング・クリムゾンの発動により
シーザーを通過して、この非常事態で体温の高くなった俺の方へ真っ直ぐ向かって来たではないか!

「――――ッ!!」
『コッチヲ見ロォ〜〜〜!』

俺の懐に飛び込もうとする爆弾スタンドを、キング・クリムゾンの両手ががっちり受け止める。
押し負けはせずとも、相手は疲れを知らぬ自動操縦スタンド。このままではジリ貧だ。
どうする?また時を飛ばすか?いや、着弾を一度だけ防げても俺という熱源が消滅せぬ限り
すぐさまクルリとUターンして来るだろう。肝心なのはこいつを破壊する事だ。

299 ◆SF.flmxVNo:2011/01/31(月) 00:35:10 ID:???
「ディアボロォ!そいつをこっちに投げろッ!!」
「何だと!?」
「いいから投げるんだ!但し俺にはぶつけるなよ、足元を狙え!」

このままでは埒が明かない。俺は半信半疑ながらも、爆弾スタンドを奴の足元に放り投げた。
スタンドは引っくり返るもすぐに体制を立て直し、再び俺の元へ……来なかった。

「くっつく波紋を地面に流した!これでこいつはもう動けないッ!」
「でかしたぞシーザー!そのまま爆弾スタンドを足止めしろ!本体は俺が倒す!」
「ああ、敵はいずれ来る!こいつを止めている限り、俺もここを動けない。襲撃に備えろ!」

言われずとももうやっていた。『エピタフ』を発動し、数秒後の未来を予知する。
俺の死角を狙い、投擲された円盤状の何かが頭部に刺さる寸前の映像が脳内に浮かぶが、
まだ直撃の瞬間を見た訳ではない。キング・クリムゾンが難なく円盤を掴み取る。

「どうやら、我が能力を過信しすぎたらしい。『シアーハートアタック』が炸裂したと何故分かった?
『ドッゴオ ̄ ̄ ̄Z__ォォンッ!!』と爆発した音を聞いた覚えが無いのに?
実に奇妙だがこれが君らの能力かい?反省せねばなるまい。」

物陰から姿を現したのはスーツ姿の東洋人と、眼光鋭い隻腕の男だった。

「やっと姿ァ見せやがったか!『はじく波紋』!」

シーザーの波紋が爆弾スタンドを敵目がけて弾き返す。俺も持っていた円盤を奴らにブン投げる。
これで連中が自分の放ったスタンドにより自爆してくれれば万々歳だったが、
期待は外れ、現れた2体のスタンドの手が阻みどちらも消失してしまった。

「我が『シアーハートアタック』を封じるとは。貴様の様な厄介な男は、この吉良吉影がじきじきにブチのめす。」
「シーザー・アントニオ・ツェペリだったか?その節は世話になったなァ…。ツケはキッチリ返させて貰うぞ?」

二人の男に因縁を付けられたシーザー。だが当の本人は上等だと啖呵を切る事も、
また会ったなディオ・ブランドー、祖父のカタキだ覚悟しやがれと飛びかかろうともしない。
彼は地面を伝う生命の振動を読む事が出来る、ゆえに気付いていた。

「!?ぐわあッ!」

300 ◆SF.flmxVNo:2011/01/31(月) 00:35:59 ID:???
敵は『三人』居た。いつの間に放ったのか、彼の必殺技シャボンランチャーは、
隙を窺い茂みに潜む襲撃者を見事捕らえ、その姿を白日の元に晒し出した!
その容姿を目の当たりにしたシーザーが受けた衝撃は、如何ほどだっただろうか?
親友JOJOに瓜二つの容貌。殺めた人数を物語る返り血まみれの服。
この2つが意味する事柄は?シーザーは怒りに震え、双眸に冷たい炎が宿る。

「貴様、ジョナサン・ジョースターか……。」

ジョナサンは何も答えない。返事の代わりと言わんばかりにサブマシンガンをカチャリと構え、
弾道上に自身の仲間が立つのもお構いなしに、迷わず引き金を引いた!
ぱらららららっ。とタイプライターを打つような銃声が鳴り響く。
シーザーは低くしゃがみこんで銃弾を避け、ディアボロも時間を吹き飛ばし身を躱す。
割りを食ったのは吉良とディオだ、何しろ彼らに弾が命中するという結果だけが残ったのだから。

頭パープリンなのか?と言いたくなる彼の愚挙にシーザーは怯まない。座ったままの姿勢で大きくジャンプし、
誰かを思い出したか目を丸くするジョナサンに、波紋を込めたパンチをお見舞いする。
負けじとジョナサンも拳を振るう。激しい肉弾戦を繰り広げる二人は、いつしか道の奥へ奥へと消えて行った。
罵詈雑言を浴びせつつ彼らを追おうとする吉良とディオを阻んだのは、ディアボロだ。
言葉を交わさずとも、彼には分かっていた。シーザーには、乗り越えねばならない過去がある。
つけねばならない落とし前がある。ケジメを重んじるギャングの元ボスだからこそ、
彼の『血統』の問題に、無粋な横槍を入れるつもりはなかった。

「行けシーザー、奴と闘うのはお前でなければならない!」


【C-5西部 /1日目 /真夜中 】
【歴代ボス達によるまさかのバトル(カーズはハブ)】
【吉良吉影】
[時間軸]:限界だから押そうとした所
[状態]:左頬が殴られて腫れている、掌に軽度の負傷、軽〜中程度の銃創、爪の伸びが若干早い
[装備]:ティッシュケースに入れた角砂糖(爆弾に変える用・残り4個)、携帯電話、折り畳み傘、クリップ×2 、ディオの左手
[道具]:ハンカチに包んだ角砂糖(食用)×3、ティッシュに包んだ角砂糖(爆弾に変える用)×7、ポケットサイズの手鏡×2
    未確認支給品×0〜1個、支給品一式×2、緑色のスリッパ、マグカップ、紅茶パック(1/4ダース)、ボールペン二本、CCDカメラの小型モニター
[思考・状況]
基本行動方針:植物のような平穏な生活を送るため荒木を含む全員を皆殺し。
0.ジョナサンに対し怒りの感情。ディアボロを倒し二人を追いたい。
1.植物のような平穏な生活を送るため荒木を含む全員を皆殺し。ただし無茶はしない。
2.手を組んだ由花子と協力して億泰、早人を暗殺する。ただし無茶はしない。
3.危険からは極力遠ざかる。
4.利用価値がなくなったと思ったら由花子を殺して手を愛でる。
[備考]
※バイツァ・ダストは制限されていますが、制限が解除されたら使えるようになるかもしれません。
※プッチの時代を越えて参加者が集められていると考えを聞きました。
※シアーハートアタックに何らかの制限がかかっているかは不明です。
※サブマシンガンによりダメージを受けました。どの程度の負傷かは次の書き手さんにお任せします。

301 ◆SF.flmxVNo:2011/01/31(月) 00:36:40 ID:???
【ディオ・ブランドー】
[時間軸]:大学卒業を目前にしたラグビーの試合の終了後(1巻)
[状態]:内臓の痛み、右腕負傷、左腕欠損(波紋と、ジョナサンが持っていた包帯で処置済み)、軽〜中程度の銃創、ジョルノ、シーザー、由花子、吉良(と荒木)への憎しみ
[装備]:『ホワイトスネイク』のスタンドDISC
[道具]:ヘリコの鍵、ウェザーの記憶DISC、基本支給品×2(水全て消費)、ジョージの首輪、不明支給品0〜1(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:なんとしても生き残る。スタンド使いに馬鹿にされたくない。
0.カエルの小便よりも下衆な銃弾なぞをよくもこのおれに!だがまずは貴様(ディアボロ)だ!
1.ジョージ殺しの罪をジョナサンか吉良になすりつける。
2.吉良が憎い憎い。ジョナサンにも殺意。
3.吉良は絶対に殺すが、今は同盟の規約を守る。
4.スタンド使いを『上に立って従わせる』、従わせてみせる。だが信頼などできるか!
5.ジョルノ、由花子に借りを返す
6.ジョナサンには最終的には死んでほしい
7.ジョルノが……俺の息子だと!?
[備考]
※見せしめの際、周囲の人間の顔を見渡し、危険そうな人物と安全(利用でき)そうな人物の顔を覚えています
※ジョルノからスタンドの基本的なこと(「一人能力」「精神エネルギー(のビジョン)であること」など)を教わりました。
 ジョルノの仲間や敵のスタンド能力について聞いたかは不明です。(ジョルノの仲間の名前は聞きました)
※ラバーソールと由花子の企みを知りました。
※『イエローテンパランス』の能力を把握しました。
※『ホワイトスネイク』の全能力使用可能。頭部を強打されればDISCが外れるかもしれません。
※サブマシンガンによりダメージを受けました。どの程度の負傷かは次の書き手さんにお任せします。


※CCDカメラ一式はラバーソールのラス1のランダム支給品でした。
※その他のラバーソールの支給品は吉良とディオが持っていると思われますが、どう分けたかは不明です。
※ヨーロッパ・エクスプレスはDIOの館を離れました。どこに行ったのかは不明です。


【CCDカメラセット】
現実世界からの出典。探偵や盗撮魔が使ってそうな小型の監視カメラで、
送受信機と小型モニターもセットになっている。ワイヤレス式なので、電池が切れれば動かなくなる。(5〜6時間程度)
どんなに性能が良くても100m以上は離せないらしいが、ちゃんと映像は届いたのか?


◇   ◆    ◇


さて、話は少しだけ逸れる。ここでディアボロについての疑問点に触れようと思う。
読者諸君は、彼のスタンド『キング・クリムゾン』にかけられた制限は一体?と想像した事があるだろうか。

ディアボロがシーザーを救うべく時を吹き飛ばした頃、彼は聞きたくもない荒木の言葉を耳にし
人知れず顔をしかめた。荒木は、いや正確には首輪から発せられた音声は、こう言っていた。
『あと4分』と。
初めて能力を発動した時は『あと10分』だった。だが減りに減って今や当初の半分以下である。

にわかには信じ難い。消し去った時の中で自由に動けるのは、帝王たるディアボロだけの筈だった。
だが荒木はその無敵の能力にいともたやすく入門し、あまつさえ彼に警告しやがったのだ!
吹き飛んだ時の中で『4分』というのは妙だが、とにかく荒木はディアボロが都合の悪い未来を
消し去る度に、彼にしか聞こえない世界で不愉快極まりないカウントを一分おきに告げたのである。
驚くべきは彼の底が見えぬ謎に包まれたスタンド能力だが、それについてはまた機会があれば語ろう。

302 ◆SF.flmxVNo:2011/01/31(月) 00:37:16 ID:???
『あと4分』。では『あと0分』となった時ディアボロを待ち受ける運命や如何に?
言わずもがな。その瞬間、我らの帝王は彼らにしか知り得ぬ理由を持って、壮絶な死を遂げるのだ。
ディアボロに逆らう術はない。出来る事といえば、一か八か首輪の解除を試みるか、
これも試練と諦め、制限時間に悩まされつつ粛々と殺し合いに参加する。それだけなのである―――。


【ディアボロ】
[時間軸]:レクイエムジョルノに殺された後
[状態]:全身の各所に僅かなダメージ(全て波紋で治療済み)。強い決意。強い恐怖。
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(水は全消費)、ポルナレフのデイパック(中身は確認済み):空条承太郎の記憶DISC、携帯電話
[思考・状況]
基本行動方針:ジョセフの遺志を継ぎ、恐怖を乗り越え荒木を倒す。
1.ここは俺に任せろ、シーザー。
2.別行動を取った露伴たちが心配。
  無事ジョルノに『伝言』が伝わればいいが……
3.恐怖を自分のものとしたい。
4.『J・ガイルを殺す、花京院に謝る』。2つのポルナレフの遺志を継ぐ。
5.自分の顔と過去の二つを知っている人物は立ち向かってくるだろうから始末する。
6.駅にあるデイパックを回収したい。
[備考]
※音石明の本名とスタンドを知りました。
※参加者が時を越えて集められたという説を聞きました。
※『恐怖を自分のものとして乗り越える』ために生きるのが自分の生きる意味だと確信しました。
※アレッシーとの戦闘により、『エピタフ』への信頼感が下がっています。
※キング・クリムゾンの制限は『吹き飛ばせる時間に限りがある』でした。これを破ると首輪が爆発します。
※サンドマンのメッセージを聞きました。
※ポルナレフのデイバックは、ディアボロが持って行きました。
※露伴たちと情報交換をしました。内容は本文のとおりです。
※ミスタがパくった銃【オートマチック式】は護身用に露伴へ渡しました。
※荒木を倒し全てが終わった後、露伴に『記憶を読ませる』という約束をさせられました。
※ポルナレフのデイパックも確認しました。DISCに描かれている絵が空条承太郎であることは把握しましたが、DISCの用途はわかっていません。


◇   ◆    ◇


「「コオオオオオオオオ!」」

二つの呼気が入り混じり、鋭い蹴りや打撃が交差する。
一進一退を繰り返すシーザーとジョナサンのバトルは、いつしかとある広場にて繰り広げられていた。
住民が集まるその憩いのオアシスは、中央に位置する大木を囲むような丸いベンチに、洒落たデザインの外灯、
水飲み場やモニュメントまで設置されている。散歩しながらちょっと休憩する時にでも、と各所に趣向が
凝らされたその場所で、いやはや喧嘩どころか殺し合いが勃発するとは、きっと設計者も予想だにしなかっただろう。

「ズームパンチ!」
「!」

ジョナサンの得意技、関節を外しリーチを伸ばしたパンチが、シーザーに襲いかかる。
だがシーザーはシャボンランチャーの応用で両手の間に膜を作り、これを防ぐ。
弾け飛んだジョナサンは辛くも着地し、すかさずサブマシンガンの銃撃を放つ。
ぱらららららら。と迫りくる弾幕を、彼は動物を模した像に隠れやり過ごす。
御影石が粉々に砕かれ、土煙が上がる。駄目押しにと像の裏手に回るジョナサンだが、そこに彼の姿はない。
がさっ。という音に頭上を仰ぐも既に遅し。街路樹によじ登り、そして飛び降りる勢いが上乗せされた
シーザーの仙道波蹴は傷付いたジョナサンの右肩にクリーンヒットし、彼を地面に叩きつける。
サブマシンガンが手からこぼれ、彼らの何mか先に飛んでいった。

303 ◆SF.flmxVNo:2011/01/31(月) 00:37:54 ID:???
シーザーとジョナサン、実際の波紋の強さ自体は同じぐらいであった。
しかしこの戦い、シーザー側に軍配が上がっている。
いくらラグビーの名選手とはいえ、実際のところジョナサンは温室育ちのお坊ちゃんである。
その点、荒れた青春を過ごし、ローマの貧民街で大人のチンピラヤクザにさえ恐れられる程の
ワルだったシーザーには、そこで培われた喧嘩のセンスがあった。
相手の思考を読み、確実にダメージを与えられる的確な攻撃を見極める洞察力に長けていた。

「そういや俺の名前をまだ教えてなかったな。俺はシーザー。ツェペリ一族の末裔さ。
あんたも知ってるだろう?誇り高き祖父ウィル・A・ツェペリの名を」
「ふぅん。その波紋、その帽子…道理でね。」

敬愛する師、ウィル・A・ツェペリの子孫だという事実を告げられても、ジョナサンは何の反応も見せない。
その闘い方、正義感溢れる性格。そう、ジョナサンは彼に言われずとも薄々と気付いていた。
だがそれがどうした?ジョナサンの頑なな心に、代々続くジョースターとツェペリの絆など付け入る隙はない。
優勝の為なら、きっと彼は血縁者だろうが恩人だろうが戸惑う事なく殺害するだろう。

それがシーザーには許せない。
この殺し合いで、ジョナサンがどんな辛い経験をしたのかは分からない。
シーザーとて同様だ。共に連れて来られた仲間達は、自分一人を残して早々と死んでしまった。
ゲームに優勝すれば、確かに死んだ者達を帰してくれるかも知れない。それは甘い甘い誘惑だ。
だが何十もの命を踏み台にして与えられた二度目の人生に、JOJOは、リサリサは誇りを持つだろうか?
大切な事は、消えていった魂を取り戻すのではない。彼らの遺した意志を受け継ぐ事だ。

だからこそ、全ての原因を作った荒木に制裁を加えねばならないのだ。
どちらが正義でどちらが悪かは重要でない。
荒木に与し、殺し合いを加速させる歪んだ思想は、彼が打ち砕かねばならない。
その相手が、かつて誇り高き戦士だった親友の祖先だとしても。

「今の蹴りは効いたよ。でも君はもう勝った気でいるんじゃあないかい?違うんだなァ、それが。」

圧倒的不利に立たされたジョナサン。だのに血の滲んだ唇は、不遜な笑みに歪んでいた。
ハッタリじゃない。奴にはこの戦況をひっくり返せるような『凄み』がある…!
だがシーザーは退かない。どんな隠し玉を持っているかは知らないが、要はそれを出させなければいい。
ダメージが抜け切らず地に這いつくばるジョナサンに、止めの波紋疾走を喰らわせてやる!
そして、そのシーザーのプライドの高さと気の強さが、彼らの命運を分ける形となった。

「――――ぐはぁぁぁっ!!」

「『プラネット・ウェイブス』。成程勝つ事への執念と怒りのエネルギーがスタンドを
発動させるキッカケになったとディオは言ったけど、ようやく意味が分かりかけてきたよ。」


―――それは、ジョナサン達が民家に身を潜めていた時の事。

304 ◆SF.flmxVNo:2011/01/31(月) 00:38:29 ID:???
「君も頑固な奴だな、ジョジョ。いい加減支給品を確認したらどうなんだ?」
「必要ない、と言ってるだろ。別にそんな物無くたって困りやしないし。」
「それじゃあ俺達が困るんだ。どれ、俺がやる、貸してみろ…ヌゥ、これは!?」
「ああ、それかい?ちょっと前に殺した参加者から手に入れたんだよ。そんな大げさな。」
「全く君って奴はこいつの価値を分かっていないのか?…そうだ、こいつを額に差してみろ、ジョジョ!」
「……正気かい?ディオ。」
「良く聞け、これは素質ある者に『スタンド』を与えるDISCだ。俺はこれで今の能力を手に入れた。」
「『スタンド』…。君達の持つ不思議な能力の事か。確かにそれは興味あるね。ちょっと怖いけど是非試させてくれ!」

「はじかれない、か。おめでとうジョジョ、これで君は新たな力に目覚めた。」
「特に何も変わらない気がするんだけど、本当に大丈夫かい?」
「流石の俺もそいつにどんな能力が秘められているかは分かりかねる。ただ今は実感出来ずとも、
 しかるべき時が来れば、きっと君の才能は花開くさ。」
「有難うディオ、でもいいのか?こんな重大な事簡単に教えて貰って?」
「なぁに、気にするな。腕を治療してくれたお礼さ。
(フン、いくら波紋とやらが使えても、所詮非スタンド使いのお前は俺達より一段低い存在だ。
弱いお前を見て吉良の気がいつ変わるかも分からない。バランスを保つ必要があった。
それにお前は知らないだろうが、スタンドも記憶もいつだって取り出せる俺が有利な事に変わりはない…。)」


「ハァ、ハァ…。ぐぅっ!?」

隕石をもろに背中に受けたショックで立ちつくすシーザーに、今度はジョナサンの蹴りが炸裂する。
まだスタンド使いになりたてでうまくコントロール出来なかった隕石は、シーザーへ命中する前に
砕けてしまい、彼を襲ったのはごくごく小さな破片群。風穴を空けられた訳でもない。
だがそのダメージは、後ろから機関銃を喰らったかの如く。頭に命中しなかったのは不幸中の幸いである。

「これで形成は逆転だね、シーザー君。」

隕石に抉られた傷口と火傷にのたうち回るシーザーの喉を、ジョナサンは容赦なく踏みにじった。
波紋使いの弱点である喉を押さえられ、彼は波紋を流して抵抗する術を封じられてしまった。
そして再び飛来する隕石。一つ目は大きく外し、左方の外灯をベキッ!とへし折る。
二つ目の隕石はジョナサンの真上に降り注ぎ、能力により当たる寸前で燃え尽きる。
三つ目。シーザーの左腕と肩に掛けられたディパックの間辺りに落下し、その衝撃で腕とディパックを破壊する。

「うわああああああああああッ!!」

中々コントロールが難しい。だが次は絶対に外さない。
人間にとって最も大事な器官、心臓に缶詰でも入りそうな大穴を空けてやろう。
息を吐いて気合いを入れる彼の目が何気なく捉えたのは、先程の衝撃で焼き焦げ首だけになった女の子用の人形。

「(これは、エリナの人形…?どうして、何故ここに!?)」

刹那、ボロボロになった人形にエリナの顔が重なる。
―――ジョナサン。また私を殺したの?一度目はグチャグチャに破裂して、
   今度は首から下を吹っ飛ばしたのね。嗚呼痛い、痛いわどうしてくれるの、この人殺し…!

「(違う、違うんだエリナ。僕はこの男を始末したかっただけ。
そうすれば、殺し合いに優勝すれば、君は生き返る。全部君の為なんだ!!)」

305 ◆SF.flmxVNo:2011/01/31(月) 00:39:55 ID:???
これはただの幻だ、惑わされてはいけない。分かっていながらも、震えは止まらなかった。
スタンドとは即ち精神の力。あと一発、シーザーの急所に隕石を叩き込めば勝ちなのに、
プラネット・ウェイブスは動こうとしない、どうしても動かない…。

銃声と共に、ジョナサンの足に突如激痛が走る。
蹴り飛ばされた時、シーザーは彼のサブマシンガンを抜け目なく拾っていた。
そしてジョナサンの隙を突いて、後ろ手に隠した銃をブッ放してやったのだ。
足の拘束が緩み、シーザーはよろよろと立ち上がる。
銃はもう必要ない。この男を倒すのは、先祖代々受け継がれてきたツェペリ魂の結晶、波紋でなければならない。
コオオッ!と深い呼吸で最大級の波紋を練り上げ、体勢を崩したジョナサンに、渾身の一撃を叩き込む!

「行くぜ!ブッ壊すほど………シュートッ!!!」

ドォーーーーーーーーン!!という凄まじい衝撃音と共に、ジョナサンの巨躯は宙を舞った。
勢いのままに数十m先の大木に激突し、地震の様な振動が起こる。
すぐさま追い討ちをかけるべく駆け寄ったシーザーが見たもの、それは。

「ウッ……ガハッ、ゲホッ!!」

喉を押さえて悶え苦しむジョナサンの姿。両手の隙間から、みるみる血が溢れ出す。
巨木から突き出た太く長い枝は、彼の喉と腹部を貫通し、彼の体を磔にしていた。
ジョナサンのタフな根性はそれでも、シーザーと決着を付けるべく枝を引き抜こうとする。
喉の枝が半分ほど抜けるのを見たシーザーは、再び戦いの構えを取った。
だがそれも杞憂に終わり、あと少しで喉の枝が外れる所で彼の力が急に弱弱しくなり、
やがてびくびくと痙攣を始め、ついにガクっと頭を垂れ動かなくなった。


こうして、ジョースターとツェペリの皮肉な巡り合わせによる殺し合いは、終焉を迎えたのである。


◇   ◆   ◇


「あんたの仇は討ってやったぜ、スピードワゴンさん………。」

ぜえぜえと荒い息を吐きながら、シーザーは誰にともなく言い放った。
俺としてはちょいと残酷趣味だが、これが当然の報いだぜと、血混じりの唾を吐きかける。
実力は五分五分。勝利の女神が味方しなければ、再起不能はシーザーの方だった。
アドレナリンの分泌が収まったか、忘れかけていた痛みと疲労が一気に押し寄せ、強烈な立ち眩みが起こる。

こんなにボロボロになりながら、よくもまぁあんな力が出せたモンだ。
自身が負ったダメージを見遣り、俺は他人事のように驚いた。
左腕はあらぬ方向にネジ曲がっているし、銃で空けられた穴があちこちにある。
最もひどいのは背中だ。あの隕石のおかげで一体何ポンドの肉を失っただろう。燃えるように痛む。

306 ◆SF.flmxVNo:2011/01/31(月) 00:40:41 ID:???
それでもこうして立っていられるのは、波紋エネルギーの恩恵と、自らの鍛え抜いた肉体があってこそか。
なんてったってリサリサ先生や師範代に散々しごかれたからな。この位でへこたれやしないさ。
ま、怪我は波紋の呼吸で治療するとして、連戦続きは流石に体に堪えたな。
背中の負傷を庇いながら、俺は地面にうつ伏せになって寝転んだ。

10分、いや5分でいい。体を休めてからディアボロを助けに行こう。
本当はひと眠りしたい所なんだが、宿敵ディオをまだ仕留めちゃあいない。
それにいくらディアボロといえど、二対一で闘うのはキツイだろう。
本来ならすぐにでも駆け付けてやるべきだろうが、大目に見てくれ。ヒーローは遅れてやって来るものさ。
なぁに、じきに行くよ。これが片付いたら、露伴達の所にも行ってやらねーと。
それに、エシディシの野郎もまだ生きてる。奴を倒せるのは、俺みたいな波紋使いだけだ。

不意に、口内に溜まっていた血液が気管に入り、俺はたまらず咽込んだ。
なかなか収まらぬ咳。やがて迫り上がってきた血反吐が、大量に地面に吐き散らされる。
やべえ、波紋の呼吸が乱れちまう。早く怪我を治さなきゃなんねーのに。
しかも瞼が重くなってきた、不味い。こんな所でノンキこいてオネンネか。と呆れ顔のディアボロが目に浮かぶ。

ディア、ボロ…。すぐそっち、に向かうぜ…。死、ぬなよ。
それ、と首洗って待って、やがれ、ディオ。俺のじいさんの敵、と、らせて…もらう、から…な……。

………………………………。




◇   ◆   ◇


どれくらいの時間が経っただろうか、僕は奇跡的に意識を少しだけ覚醒させた。
ここはどこだろう?なんだかとても気分が悪い。
体中がズキズキ痛むし、頭の中が朦朧とする。
おまけにもの凄く寒い。まるで、ひどい風邪でもこじらせてしまったかのように。

僕は今まで何をしていたんだっけ?
―――思い出せない。

何かにもたれかかり座っている体勢が段々苦しくなってきて、僕は身じろぎをした。
すると、下腹の辺りに耐え難い痛みを感じる。

痛い!僕は叫ぼうとした。だが声が出ない。こんなに痛いのに、呻き声すら出せない。
どうなってしまったんだ、僕は?満足に動かせぬ体に鞭打ち、僕は目線を精一杯下方に向けた。
―――なんだ、こいつは。

身動きが取れない訳だ。僕の首の後ろと腹部には、血に塗れた杭が突き刺さっていた。
その瞬間ジグソーパズルのピースが次々嵌まっていくかの如く、あやふやだった記憶が舞い戻った。

少し離れた所に、人が倒れていた。そうだ、彼の名は確かシーザー……ツェペリ。
ツェペリさんの孫にあたる波紋使いの青年で、僕は彼の一撃をもろに喰らって吹き飛んだ。
そして僕の体を受け止めたこの木には、太い枝が何本も突き出ていて…。
ああ、思い出した。それでこんなモズの餌のような間抜けな格好になったんだった。

307 ◆SF.flmxVNo:2011/01/31(月) 00:41:12 ID:???
「(く………はははっ…。)」

そうさ、僕は何て間抜けな男なんだ。誰一人大切な人を守れず、とうとう参加者を皆殺しにして
全て無かった事にしようなどと血迷った決断をして、落ちに落ちて最期はこのざまだ。
何て無様な、滑稽な。そして、哀れな。
そう思うと、むしょうに笑いがこみ上げてくる。潰れた喉からは笑い声なんて出ないけど。

この世界に来る前に、僕はディオという吸血鬼を倒した。
だがこの姿を見ろ、僕はまるで、胸に杭を打たれて殺される吸血鬼そのものじゃあないか。
どうか笑ってくれ、父さん、ブラフォード、スピードワゴン…。

かちん。

僕のポケットから何かが落ちて、金属特有の音を立てた。
目の前をころころと転がって行くそれは、よく見るとエリナの指輪だった。
ふらふらと蛇行し動きを止めたその指輪を、誰かの白い手が拾い上げた。

―――そんな、そんな馬鹿な。だって君は…ッ!
僕は思わず目を見開いた。

エリナだった。
誰よりも逢いたいと願った愛しい人は、息を飲む程に美しく、そしてどこか悲しげな表情を浮かべていた。

―――おお、待ってくれエリナ。僕を置いていかないでくれ。

僕は最後の力を振り絞り、自身の体に食い込む太い枝から逃れようともがいた。
この世のものとは思えない苦痛に頭が真っ白になりかけるが、なりふり構っていられなかった。

エリナ、聞いてくれ。僕はどうしても君に生き返って欲しかった。
もがく。
ドス黒い悪に染まった僕を見て君がどんなに悲しもうと、拒まれようと
もがく。
二度とこの手に抱き締められなくとも、全世界の人間を敵に回そうとも、
もがく。
―――大切な君が生きてくれさえいれば、それでよかった。

首と腹の傷を一層深くしながらも、僕はついに拘束から抜け出した。
あとほんの少し腕を伸ばせば、彼女に手が届く。
しかし現実は残酷で、全てを使い果たした僕の体は、急速に力を失ってゆく。
前のめりに倒れて嫌と言うほど顔面をぶつけたが、もはや痛みすら感じない。

ここで終わるのか…。死を覚悟した僕の目に映ったのは

―――ああエリナ。僕を赦してくれるのかい。こんな僕を、君はまだ信じてくれるんだね。

僕を献身的に看病してくれたあの時の様に優しい笑顔で、差し伸べられた手を

―――愛しているよ、エリナ。

僕はしっかりと握った。


◇   ◆   ◇

308 ◆SF.flmxVNo:2011/01/31(月) 00:41:49 ID:???
「間に合わなかった、か…。」

闇を引き裂く灼熱の隕石。
その光と燻ぶる煙を頼りにどうにか現場に辿り着いた空条徐倫が見たものは、二人の男の無残な亡骸。

金髪の男の背中は酷く焼け爛れ、大部分が抉られていた。
黒髪の男は血だらけで、首と腹部に大怪我を負っていた。
大方、何らかの理由で二人は戦いましたが、結局相討ちになってしまいました。といった所だろう。

簡単な考察を終えると、あたしは放置された支給品達を確認し、必要な物だけを
自分のディパックに移して、さっさとここから離れることにした。

ここで何があったかなんて、あたしには関係ない。
あの隕石はきっと元はウエストウッド看守のスタンド能力で、どうやったのか黒髪の男がDISCを奪い、
それが金髪の男に致命傷を与えたんだろうなんて事は、心底どうでもよかった。

ここにあるのは、二人の男が死んだという『結末』だけ。
名前や立場など関係ない。人は死ねばただの肉の塊になるだけだ。
あたしは立ち止まってなんかいられない。成し遂げなければならない事があるのだ。

「…?何かしら。」

ふと、黒髪の男の手元に目が止まる。
丸められた掌の中に、何かが握り締められていた。
ところが既に死後硬直の始まったその拳は岩のように固まり、
パワーに自信のあるストーンフリーですら、こじ開けるのは不可能だった。

「やれやれだわ。こんな手、本当は使いたくないけれど。」

呟きながら、あたしは手頃な石を拾い集める。
必要な物は、ちょうど旧石器時代の原人が使うような、鋭利に尖った石だ。
以前のあたしは、こんなグロテスクな真似をするくらいなら、いっそ中身なんて諦めていたでしょうね。

徐倫は自嘲気味に笑い、人差し指と中指の辺りに狙いを定め、一気に石を振り下ろした。
至って冷静に、看護婦が静脈に注射針を刺し込むような気持ちでゆっくりと、ジョナサンの指を切断する。
一度、二度、三度……。そしてようやく露わになった手の中から現れたのは…

309 ◆SF.flmxVNo:2011/01/31(月) 00:42:29 ID:???
「指輪?」

まぁ恐らく誰かのボタンかコインだろうと予想していたが、まさか指輪だったとは。
血糊にまみれ、てらてらと光るそれを右手の薬指にそっとはめると、驚くほどしっくりと指に馴染んだ。
満足げな表情を浮かべると、徐倫はおもむろに立ち上がった。
最期にジョナサンの瞼を閉ざし、ディパックを肩に担ぐ。

―――別に指輪なんて欲しいわけじゃあないわ。この行動に、特に意味なんかない。
   あえて言うなら、貴方の顔が、どことなくあたしの父さんに似ていた。ただそれだけよ。

我ながらクレイジーな事をやってると思う。
だけど、こんな殺戮ゲームに放り込まれて、正常であろうとする方が変じゃない?
キリストじゃあるまいし、未だに倫理とか、正しい人の在り方なんて気にする奴の方がよっぽどクレイジーよ。
二つの遺体を交互に見比べ、踵を返すと足早にこの場を後にする。

―――サヨウナラ。


【C-5南部 /1日目 /真夜中 】
【空条徐倫】
【時間軸】:「水族館」脱獄後
【状態】:身体ダメージ(大)、体中縫い傷有り、上半身が切り傷でボロボロ、火傷(小)
【装備】:エリナの指輪
【道具】:基本支給品一式 、サブマシンガン(残り弾数70%)、不明支給品1〜5(確認済)、メリケンサック、エリナの首輪、ブラフォードの首輪、
【思考・状況】
基本行動方針:荒木と決着ゥ!をつける
0. 荒木を屈服させ、すべてを元通りにさせる。
1.そのためならばどんなゲスでも利用してみせる。アナスイももちろん利用する。
2.自分達を襲った敵を見つける。
3.インディアン(サンドマン)と情報交換。
[備考]
※ホルマジオは顔しかわかっていません。名前も知りません。
※最終的な目標はあくまでも荒木の打倒なので、積極的に殺すという考えではありません。
 加害者は問答無用で殺害、足手まといは見殺し、といった感じです。
※アナスイから『アナスイが持っていた情報』と『ポルナレフが持っていた情報』を聞きました。
※花京院から支給品一式を返してもらいました。
※居間で行われていた会話はすべて聞いていません。


※『プラネット・ウェイブス』のスタンドDISCはジョナサンの死亡と共に消滅しました。
※C-5南部にはディパック、“DARBY'S TICKET”、ダニーについて書かれていた説明書(未開封)、ウィル・A・ツェペリのシルクハット、エリナの人形、中性洗剤、スピードワゴンの帽子が放置されています。


【ジョナサン・ジョースター 死亡】
【シーザー・アントニオ・ツェペリ 死亡】
【残り 20名】

310 ◆SF.flmxVNo:2011/01/31(月) 00:44:55 ID:???
投下は以上です。
まず皆様に謝罪をしなければなりません。
他の書き手さんらを押し退け予約を取りながら、簡単に破棄を宣言しさぞ驚かれた事でしょう。
特に◆vv氏に対しては、自分のとんだ誤解で戸惑いを与える結果となり
重ね重ねお詫びを申し上げます。お恥ずかしい限りです。
冷静になってレスを読み返したら、自分が口を挟むような議論じゃありませんでしたねw

一時はフーゴよろしく錯乱して書きかけのssをゴミ箱にガオンするという
暴挙に走りながらも、こうして完成に漕ぎ付けられたのは、
ひとえに皆様の温かい言葉があったからこそです。本当にありがとうございました。

詫びの印を言葉ではなく行動で示そうと出来る限りの速さでssを書きあげたので、
荒削りな部分もあると思われます。ちなみにディアボロvsディオ吉良の構想もありましたが、
長くなるので思い切ってカットしました。次の書き手さんに期待しています。

私用で本投下は4日以降になりますが、それまでご指摘や意見をお待ちしております。
タイトルもそれまでに考えておきます。

311ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/31(月) 01:57:43 ID:UQdYVoD6
投下乙!
新作投下なのでageときますね。
議論ではいろいろありましたが、こんな神回が到来すると、ジョジョロワ読んでてよかったと素直に嬉しいです。
氏は素晴らしい書き手です。
これからもどうぞ宜しく!
感想は本投下時に!
タイトルも楽しみにしてます!

指摘ですが、
手首から先だけが無い人の事を「隻腕」ってよぶのかな?という日本語的な疑問があります。
かといって、隻手とは言いませんし…う〜ん?

あと、(カーズはハブ)←プッチもいれたげてw

ディアボロの状態表の、
※露伴たちと情報交換をしました。内容は本文のとおりです。 
ここを、「内容は迷える奴隷 参照」としたほうがいいと思います。

それと、こいつは指摘ではなくただの俺の願望なんですがねぇ…
ジョセフのぶっ壊すほどシュートは、ライフルに波紋を込めてぶっ放すワザでした。
今回のフィニッシュも、折角なんで、何か「モノ」に波紋込めた一撃にするのはどうでしょう。
その〜、何だ?
…………鉄球…とかね

312ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/31(月) 02:05:13 ID:???
おっと指摘忘れ一つ…
残り人数は18人ですよ
しかし減りましたね〜w

313ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/31(月) 02:43:36 ID:???
うむ、素晴らしい
感想は本投下時にいいますが、おもしろかったです

そして>>311、お前天才か

314ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/31(月) 03:21:14 ID:???
投下乙です
素晴らしい。これで1stのNOT蘇生組はブチャラティのみか
エリナの人形を絡めてくるなら、直接殺したスピードワゴンの帽子も使える気がします・・・個人的ですか
ツェペリさんは無理かな

315ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/31(月) 11:16:29 ID:???
投下乙!
そういえば過去のジョジョで一度も見ることの無かった波紋VS波紋!
楽しませいただきました!
本投下楽しみにしています
>>314
今際の夢枕にエリナSPWツェペリに説教されるのか
ジョジョカワイソスw

316ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/31(月) 13:30:55 ID:???
投下乙です! 感想は後ほど…

自分も最初【歴代ボス〜】の項目見た時を「プッチハブられwww」と思ったけど
ディオのホワイトスネイクのおかげで間接的に参加してるな、と気付いたw

317ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/31(月) 16:12:03 ID:???
>>314
ジョナサン「エリナ…」
エリナ「ジョナサン…」
SPW「待ちなッ!ジョースターさん!」
ジョナサン「えっ」
エリナ「えっ」
SPW「えっ」

318ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/31(月) 22:14:56 ID:???
投下お疲れ様です。感想は本投下時に。

自分が読み足りないだけかもしれませんが、少し疑問が。
ディアボロは承太郎の容姿を知っていましたっけ?(状態表のDISCについての項)
ジョセフもポルナレフも伝えていないと思うのですが。

同じくディアボロの状態表
5.自分の顔と過去の二つを知っている人物は立ち向かってくるだろうから始末する。
はそろそろ消したほうがいいかもしれません。

最後に徐倫について。
E-4、E-5の民家からは少し距離が離れすぎているので、サンドマンとの情報交換を半ば放棄した形になると思います。
自分達(由花子と徐倫)を襲った敵を捜索する過程でC-5を訪れたのか
敵の捜索も諦めた上でDIOの館の方面を目指したのか、少し説明があればいいかなと思います。

319 ◆vvatO30wn.:2011/01/31(月) 22:43:24 ID:???
一つ目の疑問については私が代わりにお答えします。
※ポルナレフのデイパックも確認しました。DISCに描かれている絵が空条承太郎であることは把握しましたが、DISCの用途はわかっていません。
この一文はディアボロの前話「迷える奴隷 その④」の時点で私が付け加えていたものです。
ポルナレフのバッグの確認はこの時の情報交換の際に行われ、その際露伴が場に居合わせたので、前前話の状態表からこのように書き換えました。
前話では戦闘が長くなりすぎてしまったので、あまり情報交換を長くしてしまうと増長になるような気がして状態表で補完していたのですが、
かえってわかりにくかったかもしれませんね。
一文補足を加えておくべきでした。
申し訳ありませんが、そんな感じでよろしいでしょうか?

320ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/31(月) 22:54:52 ID:???
ぎゃー、やっぱり読み込みが足りなかったか!
説明いただきありがとうございました!

321 ◆vvatO30wn.:2011/02/07(月) 13:47:32 ID:eIEM5NmI
大変お待たせしました。
推敲が終わりましたのでこれより一時投下します。
予約の際は混乱を招いてしまい申し訳ありませんでした。
また長くなってしまいましたが、お付き合いください。
登場人物は『虹村億泰、音石明、F・F、ナルシソ・アナスイ、荒木飛呂彦、杉本鈴美』
SSタイトルは『寄生獣』
よろしくお願い申し上げます。

322寄生獣 ◆vvatO30wn.:2011/02/07(月) 13:48:37 ID:???
目を離したのは一瞬だった。

ダービーの野郎は未だに名残惜しい様子だったが、俺は億泰がついてこないことに安心していた。
億泰は絶対俺に恨みを持っているし、今すぐで無くとも、いつ気が変わってブッ殺されるかわかったもんじゃあねえ……
億泰は強いスタンド使いだが、一緒にいると俺の方が危なくなりかねん。
俺はダービーを急かすように、奴に背中を向けて歩き出そうとした。
さっさと安全な場所に避難したい、その一心で―――

次の瞬間、背後で奇妙な発射音がした。
今日一日で幾度となく聞いてきた拳銃の銃声とまた違う重苦しい音…。
次いで、人間の倒れる音―――背中に感じる不気味な気配――――――
振り返ったそこにいたのは、肉の塊を纏った身の丈2メートルほどの化け物だった。




「なァ――なぁンだァァあいつはァァ!?」

F・F弾の発射音に振り返った億泰は、さっきまで会話していたテレンス・T・ダービーの崩れゆく姿、腰を抜かし呻き声をあげている音石明、そして肉の塊のような奇妙な容貌をした怪物(モンスター)だった。
その怪物…『フー・ファイターズ』はティッツァーノの生首にマイク・O、スカーレット・ヴァレンタインの遺体から使える『部品』を集め、FFの細胞と数時間前の雨によって生まれた水たまりで再生拡大……5歳の幼稚園児が粘土細工で遊ぶかのように練り上げて作った継ぎ接ぎの肉体である。

太さも違う足が2本――黒人男性の右足に女性の左足―――
同じく、サイズが違う腕が3本――黒人男性の両腕と、そのうち左脇から伸びるもう1本の左腕は女性のものであった。
さらに繋ぎ合わせた胴体には内臓器官が剥き出しになっており、またほとんどの細胞がプランクトンによって無理矢理修復されたもの、さらに全部で6つの眼球が確認された。

まさに悪魔の彫刻のような禍々しい姿をした怪物は傍らで腰を抜かす音石明をその6つの瞳でまじまじと見つめる。
音石は腰を抜かしたまま、蛇に睨まれた蛙のように、麻痺したまま動くことができなかった。

323寄生獣 ◆vvatO30wn.:2011/02/07(月) 13:49:36 ID:???
なんだこいつはッ!?
化け物? 誰かのスタンドかッ!?
いや…こんな不気味なかたちのスタンドは見たことがねえッ!!
生身の肉体…? こいつ…生き物なのかッ!?
第一、こいつの肉はさっきそこに散らばっていた死体の肉片じゃあねえのかッ!?
荒木の野郎は、こんな得体の知れない化け物まで殺し合いに参加させていたってのかッ!?

音石の頭を様々な疑問が駆け巡る。
やがてその怪物は3本の腕を銃口を作るように伸ばし、ゆっくりと音石の額に向けて構えた。

―――オイッ!! ちょ…ちょっと待てッ―――!!
こいつ……何する気だ――ッ!?
撃つ……? 撃つ気か………ッ!?
俺はここで死ぬのかッ――――――ッ!?
こんな……こんなところで………こんなわけのわからない奴に――殺されるのかッ!?
いやだ――――ッ!!


「うわあぁぁ来るなあぁぁ!!! やめろおぉぉぉぉぉ!!!!」

音石は動けない。
とっさにラジコン飛行機を掲げ、『レッド・ホット・チリ・ペッパー』で身を守る。
が、しかし―――――

「だめだッ!!『電力』が足りねえッ!!! この小さな飛行機のバッテリーじゃあ、『弾丸』は止めらねえッ―――」

F・F弾が『チリ・ペッパー』を貫通する―――

終わった、死んだ…………






「音石ィィ――――てめぇそんな腰抜け野郎だったかよォ?
俺を殺そうとしやがった時は……こんなもんじゃあなかっただろぉ〜〜?」

――――その直前、音石の体は地面を転がりまわり、億泰の足元で受け止められた。
『ザ・ハンド』によって削り取られた空間に引き寄せられて………

「もうゴチャゴチャ考えるのはやめだッ! どーせ俺は頭悪りぃんだからよぉ〜
てめえが得体の知れねえ化け物で、俺がてめえをぶっ倒す……それで十分なんだぜ?」



虹村億泰、覚悟完了―――ッ!!!

324寄生獣 ◆vvatO30wn.:2011/02/07(月) 13:50:36 ID:???




「に…虹村億泰……ッ!! きさまなぜ俺を助けたッ!? 俺は……きさまの兄貴の…『仇』だろうが………ッ!!?」

「…けッ! 知らねぇよそんなことはよぉッ!! あとで貴様をボコボコにしない自信はねぇがなぁ〜………
今はあいつをぶち殺すのが先だぜ……………?」

事実、億泰はなぜ自分が音石を助けたのか自分でもわかっていなかった。
ただ「音石明が殺される」と思ったとき、億泰の体は無意識に動いていた。
音石明が自分の兄貴の仇だとか、(リゾットが言うには)音石が首輪解除の切り札になるかもしれない事だとか、そんな理屈はどこにもなかった。
これ以上、『目の前で誰かが殺される』―――――――――――――
ただそれだけが許せなかった。

(ざまあねえよなあ…… 誰も殺させない―――そう誓った傍から、今度はダービーまで…………
こんな様じゃあ、仗助や康一に…、露伴に顔向けできねえよな………)

―――これ以上、誰かを守れないのは許せなかった。



億泰たちは怪物と目が合った。
目の前の標的を失った怪物は、視線を動かし複数の目で億泰たちの姿をまじまじと見ている。

「でよォ音石明……あいつは一体なんなんだ?」
「し……知らねえよ……… 急に起き上がってきやがったんだよッ……!!
スタンドじゃあねえ、さっきの死体がだッ!! 気が付いたらダービーがやられちまっていて、俺も………ハッ……!?」

怪物が億泰・音石に向かって猛然と突進してくる。
腕は再び先ほどと同じ銃口を作り、億泰の胴部に狙いを定めた。
動きのノロさを補う正確な射撃が億泰を襲う。

「ヤバいッ! また撃って来やがったッ―――!!! 避けろ億泰ッ!!!」

音石が億泰に警告を促す。
億泰は……いないッ!?
一瞬前まで腰を抜かした音石の背後にいた億泰がいつの間にかどこかへ消えていた。
音石は咄嗟に襲い来るF・F弾の散弾を、身をかがめて回避した。
億泰はどこへ行った―ッッ!?
怪物から弾丸が発射される瞬間、身をかがめて回避をした音石とは対照的に、億泰は空へ飛んでいた。
音石は怪物の頭上に飛び上っている億泰の姿を見た。

325寄生獣 ◆vvatO30wn.:2011/02/07(月) 13:51:47 ID:???

「ノロイぜ……化けモンよぉぉぉ……ッ!! 俺はてめえが『ナニモノ』なのかは知らねえが……てめえがダービーを殺し、これからも殺しを続けるクソッタレだってことはわかってんだッ!! 俺には……、それだけで十分なんだよ……ッ!!」

億泰の『ザ・ハンド』は『弧』を描く掌の動きで空間を削り取る能力である。
現世で音石明に散々言われたとおり、その動きは弾丸を削り取るなど不可能な『スロー』な動きではあるが、削り取られた空間に『引き寄せられるスピード』は、音石の『レッド・ホット・チリ・ペッパー』のスピードをも凌駕する。
特に現在の億泰は先刻のパンナコッタ・フーゴとの戦闘を経験し、対『弾丸』には特別敏感になっていた。
走りくる怪物が銃口(腕)を億泰に構えたときには、既に斜め上空の空間を『ザ・ハンド』で削り取っていた。
そして、削り取られた空間が閉じると同時に、億泰自身が瞬間移動して宙に舞い上がったのだ。

「その体……銃撃だけは速いようだが……、素早い身のこなしや回避行動は『ニガテ』と見たぜぇ〜〜ッ!! そのグチャグチャの肉の塊ならよォォ!!!」

そして空中からの勢いに任せ、怪物の後頭部めがけ、『ザ・ハンド』の―――否、『億泰本体』の生身での蹴りが炸裂した。
地面に叩きつけられる怪物…そしてその脇に億泰が着地し、怪物を睨みつけ見下ろす。

「とらえたぜ――ッ!! 『俺の蹴り』が入るってことは……やはりてめえのその肉は『生身』かッ!!
てめえが誰かの『スタンド』ってんなら『本体の奇襲』を警戒するところだが……どうやらその必要は無くなったようだなぁ〜〜……!!」
「GA……GAAAAAAAAA!!!!!」

手痛い一撃を受け、背後を取られた怪物がうめき声をあげながら、億泰に銃口を向けようとする。
しかし、億泰はそれを許さない。

「だァかァらァ…… ノロイぜダボがァァ!! 確かに俺の右手は、音石の『電気』よりはスローかもしれねえが……それでもてめえみてえな鈍重な化け物をとらえきれねえようなアクビが出るスピードじゃあねえんだぜ……
計ったこたあねーがよォ――…… この距離じゃあ時速300㎞/hは出るぜ……」

『ザ・ハンド』の右腕が怪物から伸びる黒人男性の両腕の手首から先を掴み取り、消滅させるッ!!
さらに連続した動作で左脇から伸びる残る一本の女性の腕を、振り下ろす『ザ・ハンド』の拳で叩きつぶした。

「GU…GURRAAGAAAAAAAAAA!!!!!」
「これで貴様の『妙な銃』は使えなくなったかァ!? だが、こんなもんじゃあ終わらねえぜ化け物ッ!!
今の俺は『とことんまで』やり抜かねえと気が済まねえんだッ!! 中途半端で終わらしちゃあ……貴様が殺したダービーや、露伴たち…守れなかった仲間たちに顔向けできねえんだよッ!!!」

『ザ・ハンド』の掌で怪物の脇腹を掴み取り、消滅させる!
そしてさらにもう一撃、怪物の肩口めがけて渾身の正拳を叩きこんだッ!!
怪物の体は吹き飛ばされ、体中の」傷口から血が噴き出し、住宅地脇の民家のコンクリート塀に叩きつけられた。

326寄生獣 ◆vvatO30wn.:2011/02/07(月) 13:55:08 ID:???
「す……すげえ………ッ!」

数メートル離れた路地から億泰の猛攻を見ていた音石明が感嘆の声を漏らす。
過去に自分と対峙した時に匹敵する……いや、それすらも超えるかもしれない億泰の怒涛の攻撃。
そのパワーの源にあるのは、『兄の仇』よりも大切な億泰の心の奥深くにある『正義の心』……
自分の大切な仲間たちを守ることのできなかった『自分自身への怒り』であった。

「以前…億泰のことを『精神が未熟』などだと言ったが…そいつは間違いだった……
億泰……奴は『優しい』んだ…… 世界一優しいスタンド『クレイジー・ダイヤモンド』よりも『優しい』んだ……
奴は『人を殺そう』だとか…『仇を討とう』だとかじゃあなく……『誰かを守ろう』とした時…… 誰よりも強く戦えるんだ………」



「GU……GUGAAAA………」

醜い肉体から血液が噴き出し、苦しそうに呻き声をあげる怪物に、億泰が距離を詰める。

「てめえに対する慈悲の気持ちは全くねえ…… てめえをカワイソーとは全く思わねえぜ……
てめえが何者なのかは分からずじまいになっちまうが…… このままてめえを全身削り取って消滅させるッ!!!」

億泰が怪物に向かって最後の攻撃を仕掛ける。
しかし、その様子を見ていた音石が奇妙な違和感を覚える。


―――あの化け物……、逃げようとしねえ――――――
「おつむ」が足りないわけじゃあないだろう……
向かってくる億泰に対し、反撃も退避もせず、ただ「待っている」ような……?
億泰が距離を詰めるのを待っている……?
あの化け物は反撃の手段をまだ持っているのか……?

億泰はその時、怪物の折れた女性の左腕の陰に、押しつぶされたようなペットボトル容器を見たッ!!
そして消滅させたはずの黒人男性の両腕の手首は―――ッ!!
億泰は気が付いていないッ!!!
距離約2メートルッ!!!

327寄生獣 ◆vvatO30wn.:2011/02/07(月) 13:57:09 ID:???
「とどめだ!! 削り取ってやるぜッ!!! 化けモ――― 何ィッ!!!!」

億泰の一撃が届くより先に、ジャキンと構えられた怪物の両腕……
削り取ったはずの手首から先は再生し、億泰の額に向けて狙いをつけていた。



――バ……バカなッ!! さっき消滅させたはずッ!! 復活してるだとッ!!!
やべぇッ… 近すぎるぜッ!! 瞬間移動が間に合わねえッ!!!


「『レッド・ホット・チリ・ペッパ――――――』ッ!!!!!」

そのとき、音石がスピットファイヤー(ラジコン飛行機)に『チリ・ペッパー』を乗せ、億泰の救出に向けて飛ばせた。
『チリ・ペッパー』は怪物の銃撃とほぼ同時に億泰の元に辿り着き、億泰をかばうように押しのける。
銃撃をモロに受けたスピットファイヤーは、もともとプロペラが壊れていたこともあり空中で大破し、地面に叩きつけられた。
そして、もちろん『チリ・ペッパー』も同様に銃撃を喰らっていた。


「ッぐ!! ぐァあああぁぁッッ!!!」

『チリ・ペッパー』が腹部に受けたF・F弾の銃痕が、音石明にフィードバックする。
命にかかわる傷ではないが、それでも噴き出した傷に音石はうめき声をあげる。
生身の肉体から発射される銃弾ではスタンドには攻撃できない。
そう思い込んでいた音石明の誤算であった。



チ……クショウ…… ただの化け物だと思っていたらが……
あの弾丸……いや、奴の全身が俺と同じ『一体型スタンド』ッ!!!
億泰の蹴りが当たったにもかかわらず、俺の『チリ・ペッパー』を銃撃できたのはそういう理屈かッ……!!
本体は……遠隔で操っているのか? わからねえ……… いや、今はそんなことより、奴のスタンドの正体…… 奴はッ――!!

328寄生獣 ◆vvatO30wn.:2011/02/07(月) 13:57:57 ID:???
「お……音石明ッ! てめえが俺を助けたのか……? 兄貴の仇であるてめえが…この俺を……ッ!!」
「う……うるせえッ!! さっきの借りを返しただけだッ!! 助けられっぱなしが性に合わねえだけだぜッ――!! てめえがやられたら俺も危ねえしよッ!!!
――そんなことより億泰ッ!! 化け物の正体がわかったぜッ!! 奴は『水と一体化し死肉を操るスタンド』だッ!! そして奴は『水を吸収すること』で肉体を再生・強化することができるスタンドなんだッ!!!」
「な……何だとォ!!?」


怪物の傷口がグジュルグジュルと音を立てて再生していく。
怪物は最初の攻防で億泰に向かってくる前に、散乱した音石のデイパックの中から基本支給品である『水』のペットボトルを拝借し、体内に隠し持っていた。
そしてピンチが訪れたとき容器をぶち壊し、中の水で高速再生回復できる『保険』を作っていたのだ。
億泰が迫ってくるのを待ち、今度は逃げられない距離からF・F弾を叩きこむために、ギリギリのタイミングで手首から先を復活させたのだ。
反撃に失敗した怪物は、いったん体制を立て直すべく、数メートル先にある水たまりに異動するため、体を引きずって移動する。

「まずいッ! 億泰ッ!! 奴を水たまりに近づけるな!! また再生されるぞ!!!」

音石が叫ぶ。
しかし億泰は立ち上がれない。立ち上がろうとはしているが、足に力が入らない。
『チリ・ペッパー』の救援で致命傷は逃れることができたが、散弾の一発を足にくらっていた。

「…ぉぉおおおオオオオオッッ!!!!」

億泰の脚から血が流れ出す。
根性で『ザ・ハンド』を繰り出し、掌で水たまりに向かう怪物を引き寄せようとする。
しかし、足の負傷によるタイムロスで、それも間に合わなかった。
億泰が起き上がる前に怪物は水たまりに辿り着き、腕を突っ込んで水を吸収した。
怪物の体が『ザ・ハンド』に引き寄せられたころには、水たまりの水は干上がり、えぐり取られた脇腹も再生していた。
むしろ、怪物の体は吸収した水分によって前よりもさらに巨大化し、パワーアップしていた。
結果的に億泰は、負傷した自分自身の近くに完全回復した怪物を引き寄せる結果となってしまった。


「GAAAAAAAAAAAA!!!!!」
「うッ!! ヌゥゥうおおおおおおお!!!!!!!!」

こうなってしまった以上、もはや圧倒的優位は怪物である。
いくら怪物の動きが鈍重とはいえ、足を怪我した億泰よりは素早く動ける。
死に物狂いで『ザ・ハンド』の掌を振りかざすが、十分に水分を補給した怪物は、削られても削られてもそこから再生していく。
その姿が、億泰の心をさらに追い詰めていく。


チクショオ…… 化け物め……!!
どれだけ削り取っても削り取っても……いくらでも復活してきやがる……!!
肉粘土みてえなナリに、この再生力…… まるで…まるで……

―――まるで俺の親父とそっくりじゃねえか――――――



自分の命を狙うゲロ以下臭いがする化け物と自分の父親を重ねてしまい、億泰の動きはどんどん鈍っていく。
億泰は地面を転がりながら逃げていくが、追いつめられるのは時間の問題だ。

329寄生獣 ◆vvatO30wn.:2011/02/07(月) 14:01:12 ID:???
「やべえ……億泰がやられちまうッ!! どうすれば……!!!」

一瞬のうちに訪れた形勢逆転を目の前に、音石は腹部の傷を抑えながら打開策を思案する。
音石は本人の気がつかぬうちに、本気で億泰を『助け』ようとしていた。
自分でもわからないうちに、音石の中に大きな心境の変化が起きていた。
しかし、下手な行動はできない。
なぜなら、音石はこのときすでにスタンドが使えなくなっていた。

『レッド・ホット・チリ・ペッパー』は電気が存在するところでしか発現することができないスタンドである。
そのスタンドは電気と一体化しパワーを強めるスタンドで、そのパワーは電流の強さに大きく左右される。
町中の電力を集めて発動させればそのパワーはすさまじいが、電力が0に近づけばスタンドが極限まで弱まり命の危険さえあり得る。
音石は今日の午後以降の時間は見張りのため、ほぼ休みなしに飛行機を飛ばしており、その充電は底を尽きかけていた。
今のスタンドエネルギーがほとんどイタチの最後の屁であり、これ以上スタンドを酷使するとそれだけで音石の命が消えてしまうことだってあり得るのだ。



さっきの『チリ・ペッパー』は温泉に落とした10円玉みてぇに黒ずんで弱っていた……
スピットファイアーの大破したうえ充電も底を尽きているし、再充電する時間もねえ……!!
俺の手持ちにもう電気を帯電したものはねえし、コロッセオに近いこの場所じゃあ、街中の電気も流れていないと来たッ…!!
今の俺には……億泰は助けられねえッ……!!
『チリ・ペッパー』が使えないと、俺には何も出来ねえ……!!



……ほんとにそうか?


『コロッセオ』の近くのこの場所で……?




音石は目線を上げる。
この道はもともと杜王駅の西側広場に通じる路地。
数百メートル先、杜王駅の位置に見えるのは世界遺産ローマの象徴、『コロッセオ』。

音石は背後に目線を送る。
自分たちがエシディシから逃げるため走ってきたこの長い道のり。
数百メートル先、この道を後ろにたどっていった先にあるのは、『ナチス研究所』。

ここは【F-3エリア 北西部】……
ここはこの殺し合いゲームを象徴する2つの巨大施設、『コロッセオ』と『ナチス研究所』のちょうど中心地点……

音石は今日一日の行動を思い起こす………
ロビンスンたちに出会って、変な怪物に襲われ逃げ出して、億泰と承太郎に見つかりそうになって…
ジョセフのジジイと筋肉質の大男の二人と、しばらく行動を共にしたのだ……
そして何者かの襲撃のどさくさに紛れ逃げ出し、リゾットにつかったあとはずっと研究所の見張りをさせられた………

音石はズボンのポケットから二つの道具を取りだす。
一つは基本支給品である懐中時計。
もう一つは、見張りの際にリゾットに手渡された手紙のメモ書き。
現在の時刻は23時30分……
リゾットのメモと見比べる。

330寄生獣 ◆vvatO30wn.:2011/02/07(月) 14:03:26 ID:???
行ける…… こいつは行けるぞッ!!!




「GYAAAAAAAAAAAA!!!!!!」
「クソッタレッ……!! ダメだッ!! 殺されるッッ……!!!!」

とうとう塀際に追いつめられた億泰に、怪物が襲いかかる。
振り上げた拳が億泰めがけて、今にも振り下ろされようとしていた……!


「億泰ッ!! 『下』だッッ!!! 地面を『ハンド』で掘り進めッッ!!!」
「何ッ!?」

音石の突然の大声の呼びかけに、億泰が反応する。
億泰はその言葉の真意は分りかねなかったが、しかし土壇場に聞こえてきたその一声に従い、地面に穴をあけ、その中に逃げ込む。
怪物の拳が体にかすめるが、地面の下に逃げたぶん深くは刺さらず、億泰を延命させる。

「億泰ッ!! もっとだッ!! もっと掘り進めッ!!! 休むなッ!!!」
「チッ…… 何だかわからねえが…… とにかくやるしかねえッ!!!」

億泰はわけもわからず、しかし音石の指示に従いさらに深く穴を掘る。
しかし、穴を掘って逃げるなど、愚策もいいところだ。
穴の中に入った億泰は逆に逃げ場が無くなり、怪物にしてみればまさに袋の鼠……
億泰のスタンドパワーが尽きれば容易に追いつかれ、殺されてしまうのがオチである。
音石の狙いはどこにあるのか?
そうこうしているうちに、億泰は5メートルほど地下に掘り進み、そこで地面に異変が生じた。

「なッ……!!? これは…空洞ッ……!? 地下にトンネルがあったのか!?」

『ザ・ハンド』が掘り進んだその先には、高さ5〜6メートル、そして長さはとてつもなく長い地下トンネルが通じていた。

「音石の野郎……このトンネルの存在を知ってやがったのか……?
この中に逃げ込めって言うのか…? チクショウ、どのみち無理だ…… この足じゃあ、あの化け物からは逃げ切れねえ……」

いや、そうではない。
音石の狙いは億泰をトンネルの中へ逃がすことなんかではなかった。
音石の狙いは、この地下トンネルと地上との間に小さな穴を開ける……ただそれだけだったのだ。
そして、トンネルの中へ逃げ込もうとする億泰を、トンネルの奥から迫る光と轟音、そして猛スピードで疾走する大質量が起こした強風によって抑止した。

「億泰よォ…… 間違ってもトンネルの中に落ちるんじゃあねえぞ…… 『危険ですので白線の内側までお下がりください』……だぜッ!!
でねえと…、そこの化け物みてえに『肉の塊』になっちまうぜぇぇ……!!」

けたたましい轟音はどんどん大きくなり、ついに億泰の掘り進んだ落とし穴の真下を、その巨大の物体が通過した。
そう、その物体の正体は『地下鉄』。
そしてこの地下トンネルの正体は『地下鉄のトンネル』だったのだ。
『コロッセオ』と『ナチス研究所』の間を地下鉄が通っている事はリゾットによって聞かされていた。
そして現在地はその二つの施設のちょうど中心近く…… この真下を地下鉄が通っている事は明確であった。
直前に音石が確認したリゾットのメモには、ナチス研究所に到着する地下鉄の時刻表が記されていた。
リゾットの配下につき見張りをしていた際、彼から渡されたものだった。
ナチス研究所に訪れる者は、何も地上からだけではない。
地下鉄の駅がある以上、そこからの訪問者に備え時刻表を確認しておくのは至極当然のことだ。(もっとも実際に地下鉄の駅を見張っていたのはペッシだったが…)
そしてその時刻表を見れば、研究所のすぐ近くであるこの場所を地下鉄が通る時間もだいたいの見当がついた。
そして運よく、今現在の時刻がその地下鉄の通りすぎる数分前だったのだ。

331寄生獣 ◆vvatO30wn.:2011/02/07(月) 14:04:17 ID:???
「来た、来た、来た、来たァァァァッッ!!!!!! こいつを待ってたんだッ!!!
『レッド・ホット・チリ・ペッパー』……最大出力(フルパワー)だァァァ!!!!!!」

そして、その地下鉄には当然、莫大なエネルギーを携えた電源が備わっている。
地下鉄がその落とし穴の真下を通る一瞬の間に、音石は『レッド・ホット・チリ・ペッパー』を発現させ、そのパワーを最大限まで引き上げた。
現世で億泰と戦ったとき、億泰に地下の電気のケーブルを掘らせた音石だからこそ……
そして、今日の午前中ジョセフたちと行動を共にし、地下鉄を利用した経験のあった音石だからこそ……
リゾットたちの仲間になり、地下鉄の動きを把握していた音石だからこそ、辿り着いた唯一の打開策であった。

つい先程は錆びついたよう鉄クズのように黒ずんでいた『チリ・ペッパー』の体が、黄金の輝きを放ち、復活した。
落とし穴の側面に避難した億泰の傍を通り抜け、地上に出た『チリ・ペッパー』が怪物の上空に舞い上がった。

「GI……GYAAAAAAAAA!!!!」

上空に舞い上がった『チリ・ペッパー』目がけて、こちらもありったけのF・F弾の散弾を乱射する怪物……
しかし、この『チリ・ペッパー』は、さっきまでの『チリ・ペッパー』とはわけが違う。

「俺のスタンドは…… 充電すると強いぜ……!!」

猛烈なスピードで怪物の散弾を全て回避する『チリ・ペッパー』……
その速度は『ザ・ハンド』はおろか、もしかしたら『スター・プラチナ』を超えるかもしれない亜光速の超スピード……ッ!!
ましてや、F・F弾などというチャチな飛び道具をくらうようなアクビが出るスピードでは決してない。
そして――――――


「てめーの正体が『水』だってことはとっくに分かっているんだッ!! そして、俺のスタンドは何だァ…!?
ガキでも知ってるぜ? 特に今年(1999年)に新作が発売予定の『ポケモン』やったことがあるガキならよォ!!!
『水』に『電気』は、『効果はバツグン』なんだぜぇぇぇぇ!!!!!!」

そして猛スピードで怪物に接近する『チリ・ペッパー』のスタンド!!
地下鉄が通り過ぎてしまえばまた電源を失い、『チリ・ペッパー』のエネルギーは小さくなってしまう。
一両編成の地下鉄など、通り過ぎるのは一瞬だ。
だが、その一瞬で事は既に足りた。
『チリ・ペッパー』は一瞬のうちに怪物の体内に侵入し、そして充電したエネルギーを炸裂させた!

332寄生獣 ◆vvatO30wn.:2011/02/07(月) 14:05:03 ID:???
「くたばれッ!! 化け物がァァァァ―――――――ッ!!!!!」





パァァァァァ――――――――z___________ン!!!!!!




怪物の肉の塊が四散し、弾け飛んだ。
復活の気配は感じられない。
残ったのは死肉に戻った肉片たちと、体内に隠し持っていたであろう携帯電話や地図や名簿の残骸のみ……
音石のスタンドが勝ったのだ。


「やったのか……音石の野郎………」

『ザ・ハンド』に引きずられ、足を庇いながら落とし穴から這い出た億泰が、そこらじゅうに飛び散った肉片という結果をみる。
音石のスタンドが強力なのは把握していたが、これほどまでとは思っていなかった。
そして、さらに複雑な気分である。
自分の兄の仇として忌み嫌っていた音石に命を救われ、さらにはその音石の力によって得体の知れない怪物を討伐するに到ったのだ。

「よぉ億泰、無事かよ……! へへ……、あの化け物なら俺が『爆殺』してやったぜ……!!」

腹の傷を押さえながら、音石が億泰の元へゆっくりと歩いてきた。
その音石の姿は、すでに自分の忌み嫌っていた『兄貴の仇』ではなかった。
それはまるで、仗助や康一たちみてぇな、俺の守るべき仲間の姿だった。
これからも俺と共に戦っていく、共通の目的を掲げて共に戦う『仲間』のようだった。


『必死で生きてきた俺たちの誇りをッ! ボスの野郎は踏みにじったッ!』
『そんなボスから俺は伝言を預かった。 内容は協力を申し出るものだった。』
『俺たちはアイツの犬じゃないッ!』

別れ際に言ったリゾットの言葉を思い出す。
露伴や早人の話を聞く限り、組織のボスのディアボロとかいう奴はそんな吐き気を催す邪悪じゃあなかった。
恐らく、ディアボロは変わったのだ。
この殺し合いを通じて、変わったのだ。
そして今の音石も同じように、クソ以下のにおいがするゲスではなく、俺たちの仲間に変わりつつあるのだ。
もちろん、だからといって、俺は音石を許しはしない。
多分、リゾットの奴もそうなのだろう。
だが、今は…… 少なくとも今のこいつは、敵じゃあねえ……
音石は…… こいつは味方だ………!!


「フ……、やれやれだぜ………」

億泰は足を庇いながら、音石が差し出した手を取り、立ち上がろうとした。











ドスッ―――





そして億泰がその手を取ることは、永遠になかった。
億泰の胴体を、背後から忍び寄ったテレンス・T・ダービーの右腕が貫いた。

333寄生獣 ◆vvatO30wn.:2011/02/07(月) 14:09:24 ID:???


「な………んだと……!!!」
「ダ……ダービー………貴様…何故ッ……!!!」

腹から別の腕を生やした億泰は吐血し、その激痛に苦しむ。
何が起こったのか分らない音石をよそに、ダービーは恐るべき怪力で億泰の体を両腕でまっぷたつに引き裂き、億泰は上半身と下半身を分断させられる。
そしてバラバラになった億泰の体は地面に打ち付けられ、ダービーは億泰の血にまみれた両腕を、先ほどの怪物と同じように銃口を作り音石に向けて構える。

「フウ……、やっとまともに会話ができるな…… こいつの記憶によると…貴様の名は音石明…か?
私の名は『フー・ファイターズ』……… いや、既に名前など捨てた只のプランクトンの戦士だ……
さっきの身体……あれは駄目だな…… まるで『知性』が感じられない………
神経伝達が上手くいかずに動きはノロイし、言葉も話せない…… 脳も死んいでたからまともな思考も行えない……」

『チリ・ペッパー』が復活したとき、上空に打ち上げられたF・F弾の散弾……
あれは『チリ・ペッパー』を攻撃するために撃ったものでは無い。
仮初めの怪物の肉体から、『フー・ファイターズ』の『司令塔』を逃がすための撃ち出したもの……
復活した『チリ・ペッパー』が『電気のスタンド』であることを悟り、真っ向勝負で戦っても勝ち目がないと判断したF・Fが、隙をついて反撃するために行ったこと……
『フー・ファイターズ』は何にも寄生していない露出した体でも、30秒から1分ほどなら活動することができる。
それだけの時間があれば辿り着ける……
つい数分前に殺害した、そこいらに転がっているはずのこのテレンス・T・ダービーの死体にまで……


「ま…… 懲罰房でケンゾージジイに電気イスを喰らったっていう『思い出』が活きたってところか……
あれがなけりゃあ、お前のスタンドが『電気』だっていう発想は生まれなかった……
あと一瞬……司令塔の脱出が遅れていたら、私がやられていたよ………」


こんなことをいまさら言っても仕方ないことではあるが、億泰と音石の二人の心には、どうしようもない決定的な油断が存在していたのだ。
それは、目の前の敵は鈍重で愚かな『怪物』であり、得体の知れない『化け物』であるという認識だった。
これまで『フー・ファイターズ』の事を『怪物』と表現し、億泰たちは彼のことを『化け物』と呼称していた。

しかし、事実はそうではない。
彼…… ――『フー・ファイターズ』―― は、殺すためには策を練り、生き延びるためには自分の身体をも捨て、そして守るべきヒトのためには手段を選ばない……
『フー・ファイターズ』は、怪物でも化け物でもない、『知性』を持った一人の『戦士』なのである。

334寄生獣 ◆vvatO30wn.:2011/02/07(月) 14:12:08 ID:???


「ぐわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」



億泰が最後に見たものは、逃がしたはずの音石明が頸動脈から血の雨を降らし倒れる姿だった。
億泰が最期に聞いたものは、助けたはずの音石明の無残な断末魔だった。
億泰が最期に感じたのは、音石明の傍に立つもう一つの別の気配だった。
億泰が最期に理解したことは、自分は結局、音石明の命を助けることもできなかったという現実だった。


別の……敵……か………ッ!!
チクショウ……結局、こういう結末かよ………ッ!!
最期まで……俺は誰も守れなかった……情け……ねえぜ………

兄貴……すまねえ………
音石……露伴………、すまねえ………
…康一…………、仗……助……………、………………


――――奇妙な銃声と共に、億泰の脳髄は破壊され、心臓が鼓動を停止した。

335寄生獣 ◆vvatO30wn.:2011/02/07(月) 14:14:30 ID:???




「ようF・F……だいたい8時間ぶりぐらいか? あんな小物を取り逃がしちまうなんて、らしくないな……
前とずいぶん姿が変わったようだが、そのせいでもあるのか?」

音石明を一瞬で仕留めた男、ナルシソ・アナスイが軽口を叩きながらF・Fに語りかける。
音石は間一髪で自分を逃がした億泰の方に意識が偏り、後方を気にしながら逃走していた。
前方から不意に現れたアナスイにとって、『ダイバー・ダウン』で首筋を切り裂くなど、造作もないことなのだ。

「そいつの力じゃあない、こっちの不良野郎の『諦めの悪さ』にしてやられただけさ……
それに『変わった』……といっても、こいつは前の俺の身体だった奴の弟らしいぜ……
しかも、ついさっきまで荒木の所にいた『途中参加者』だそうだ……
『途中参加者』がいるなんて聞いてなかったが、どちらにしてもこいつに対した情報は『記憶』に無いみたいだけど……」

そして、億泰にとどめを刺したテレンス・T・ダービーの身体を操る者、F・Fも、アナスイに対し軽口で返す。
それぞれ人を一人ずつ殺した後の会話とはとても思えない。
しかし、彼らにとってはごく当たり前の会話だった。
F・Fは徐倫を優勝させるために修羅となり殺人を繰り返しているが、その徐倫自身には敵視されていた。
このアナスイは今のF・Fにとって、唯一等しい目標を持った『仲間』なのだ。
しかし、それにしても、アナスイの様子は以前と変わっていた。

「……『変わった』……と言うならアナスイ、お前もじゃあないのか?
お前は徐倫の為に人を殺すかという問いに「保留だ」と答えていたと思うが……?」

今、音石明への問答無用の一撃を繰り出したアナスイは、明らかに数時間前の彼とは別人であった。
少なくとも以前の彼は、無差別に殺人を行って回るような存在ではなかった。
そう、自分とは違って………

「あー、そのことなんだが、考えが変わったんだよ………
俺だって、まだ「荒木を倒す手段が無い」と決め付けたわけじゃあ無いんだがな……
ただ、『確率』の問題なんだ――――――」

徐倫と拳を交えたことや花京院との一件があって、嫌ってほど思い知ったのだ。
この町にいる『徐倫の敵』は、なにも荒木だけじゃあない!!
本気で優勝を狙っている凶悪な殺人鬼がいくらでも存在する。
荒木を倒すために行動することは間違っちゃあいない。
まかり間違って、荒木を倒す方法が見つかるかもしれない。
何とかして荒木を倒し、正義を志す人間たちが何人も脱出できることができるかもしれない。

―――だが、その時まで徐倫が生き残っているという保証がどこにある?
もし脱出に成功したとしても、その場に徐倫がいなければ、その大団円は何の意味も為さない。
そこに、アナスイたちの『勝利』は存在しない。

花京院との一件や、ティムを殺してしまったことが引き金になったのは確かだ。
だが、遅かれ早かれアナスイは、同じ結論に達していただろう。いや、これでも遅すぎるくらいだ。
つまるところ、徐倫はアナスイの全てであり、徐倫が死んでしまってはアナスイは存在する価値が無い。
徐倫が生き残るには、確率の薄い脱出に懸けるより、徐倫を優勝させる方が最善で確実。
たとえそれが自分の死を意味するとしても、アナスイにはなんの後悔も残りはしない。

そして、多くは語らずとも、F・Fはアナスイの決意を理解する。
F・Fもまた、アナスイと同じことを考えていたからだった。

336寄生獣 ◆vvatO30wn.:2011/02/07(月) 14:15:42 ID:???
「―――それでF・F、お前はこの後どうするつもりだ……?」
「……そうだな………、徐倫には会いたくねえし、エシディシと戦えるくらい強力な身体を探そうかな……?
この身体も、さっきの化け物よりはマシだが、どうもゲームばっかやってた奴らしく肉体が貧弱なんだよ……
『フー・ファーターズ』のパワーを乗せても、せいぜい生身の人間をぶち抜く程度しか………」


「―――俺の身体を使ってみる気は無いか?」


F・Fの漠然とした計画語りをぶった切り、アナスイが予想外の提案を投げかける。
しかしこれは、アナスイがティムを殺害した後、F・Fに再会できたら提案しようと考えていた策であった。
もっとも、こんなに早く実現するとは思っていなかったが……

「どういうことだ? 身体を使う……? お前の身体を乗っ取るってことか?
お前がこの私に命を差し出すってこと……か?」
「違う、そうじゃあ無い。それじゃあ俺である意味が無いだろう…… 主導権はあくまで俺が持つ……
お前は俺を『生きたまま寄生する』んだッ!! 宿主である俺を乗っ取らず、『体内で共存するかのように寄生する』んだッ!!
そうすれば、俺や『ダイバー・ダウン』の力を失う事は無く、さらに力を上乗せした最強の『フー・ファイターズ』になれるはずだッ!!
お前ならそれが『できるはず』だッ!!!」

これがアナスイの考えだった。
もうすぐ殺し合いが始まって丸24時間が経過しようとしている。
途中参加者が一人加わったとしても、既にゲームは佳境……
次の放送にもよるが、以前までのペースが続けば、もう既に残りは20人を切っているかもしれない。
さらに、エシディシやDIOのような巨大な敵がまだ生き残っているはずだった。
もしかしたら、徒党を組んだ対・荒木派の集団との戦闘になるかもしれない。
そうなったとき、これ以上戦力を分散するメリットは少ない。
F・Fと出会えたなら、二人の力を一つに集中させ、強力な一人を戦士となった方が、明らかに効率が良い。

337寄生獣 ◆vvatO30wn.:2011/02/07(月) 14:17:07 ID:???

F・Fは二つ返事で了承する。
申し出を断る理由はどこにもなかった。

ダービーの身体が崩れ落ち、中から剥き出しの『フー・ファイターズ』が姿を現す。
そしてアナスイを殺さぬよう細心の注意を施しながら、ゆっくりと身体に侵入していく。
アナスイの身体に奇妙な感覚が広がっていく。
それは気味が悪くもあり、また心地よくもある不気味な感覚だった。


―――これでついに、俺も人間をやめちまったってことになるのかな……
だが、そんなことは大して問題にならないな………
どうせ俺はあと数時間で死んじまうんだからな……………
そう、徐倫以外の人間はすべて……死ぬ運命なんだからな――――――――――


アナスイとF・Fとの『融合』が完了した。
背格好も、肌の色も、見た目は元のアナスイの何も変わっていなかった。
だが、中身はまるっきり別物……

アナスイが指に力を集中させる―――
すると、指は形を変え、人差し指の先に銃口が生まれる。
2〜3発試射―― コンクリートの塀に穴が開いた――――――
F・F弾、使用可能――――――

花京院から受けた傷口に力を集中させる―――
体内のF・F細胞が働き、傷口は静かに塞がっていく。
肉体の再生、可能――――――

スタンド『ダイバー・ダウン』を発現させ、その拳をコンクリートの地面に向けて振り下ろす。
すると衝撃と同時に地面は形を変え、足元には巨大なクレーターのような跡が残った。
『ダイバー・ダウン』、大幅なパワーアップ――――――
『ダイバー・ダウン』に『フー・ファイターズ』のパワー、上乗せ可能――――――

338寄生獣 ◆vvatO30wn.:2011/02/07(月) 14:18:02 ID:???
(すごい……なんてパワーだ………これならあのエシディシとも対等に戦える……)
(これからどう動くべきか……どちらにしろ徐倫に出会うのはマズイ……)
(花京院を探すことにするか? アナスイが『乗っている』事は、現時点では奴しか知らない……)
(いや、それより後数分で放送が始まる…… 安全な場所で放送を聞く準備をした方がいい…… 徐倫の安否も確かめられる……)
(それがいい、コロッセオなんてどうだろうか…… 中は身を隠すところは多いし、俺がさっき覗いた時は無人だった…… ここからの距離も近い……)

まるで自分の脳内で二つの人格が会話をしている、そんな妙な気分だった。
どっちのセリフがアナスイで、どっちのセリフがF・Fなのかもよくわからない。
アナスイは人間をやめてしまった。
人間の肉体と、プランクトンの知性と、最強のスタンドを携えた寄生獣に変貌していた。


北の空に、隕石が落ちるのが見えた。
ウエストウッド看守は死んだはずだから、あれは誰かが奴からDISCを奪ったということだろうか?
あれを見たら、徐倫は北へ向かうだろうか?
だとしたら北へは行けないな……
これで放送後の目的地も決まった。
ダービーの記憶に見た、ナチス研究所のエシディシと、決着をつける。
恐らく、この殺し合いで一番の危険人物……
徐倫を殺してしまうかもしれない、最も危険なこの世の悪魔だ……

必ず打ち砕いてみせる………
俺の……私の………
『ダイバー・ダウン・フー・ファイターズ』で…………!!



【音石明 死亡】
【虹村億泰 死亡】
【F・F 便宜上死亡?】

【残り 15名】

339寄生獣 ◆vvatO30wn.:2011/02/07(月) 14:18:53 ID:???
【F-3北西部/1日目 真夜中】

【ナルシソ・アナスイ with F・F】
【スタンド】:ダイバー・ダウン・フー・ファイターズ
【時間軸】:アナスイ…「水族館」脱獄後、F・F…DアンG抹殺後
【状態】:健康、全身にF・Fの細胞が寄生し、共存している。
【装備】:なし
【道具】:基本支給品×5、点滴、クマちゃん人形、双眼鏡、ラング・ラングラーの首輪、トランシーバー2つ(スイッチOFF)、ラング・ラングラーの不明支給品(1〜3。把握済)、テイザー銃(予備カートリッジ×2)、杜王町三千分の一地図、牛タンの味噌漬け
※基本支給品はアナスイ、ラングラー、ティム、ヴェルサス、音石の五人分です。
 音石の水はF・Fが回復に利用しました。その他食料、水がどれだけ残っているかは不明です。
【思考・状況】
基本行動方針:空条徐倫を生存させるために彼女を優勝させる。そのために、徐倫いがいの全ての参加者を殺害する。
0.F・Fと融合し、人間をやめた。もう恐れるものは無い、皆殺しにするだけだ。
1.コロッセオに隠れ、第4回放送で徐倫の安否と残り人数を確認する
2.放送後、ナチス研究所に向かい、エシディシと決着をつける。
3.アナスイがゲームに乗っていることを知る花京院を始末する。
  しかし、どこへ行ったかはわからないので後回し。
4.徐倫には会いたくない。
【備考】
融合前のアナスイの情報
※マウンテン・ティム、ティッツァーノと情報交換しました。
 ブチャラティ、フーゴ、ジョルノの姿とスタンド能力を把握しました。
※ラバーソールとヴェルサスのスタンド能力と容姿を知りました。
※首輪は『装着者が死亡すれば機能が停止する』ことを知りました。
 ダイバー・ダウンを首輪に潜行させた際確認したのは『機能の停止』のみで、盗聴機能、GPS機能が搭載されていることは知りません。
※ヴェルサスの首筋に星型の痣があることに気が付いていません。
※F・Fが殺し合いに乗っていることを把握しました。
※ポルナレフが得た情報について知りました。
※マウンテン・ティムと改めて情報を交換し、花京院の持っていた情報、ティムが新たに得た情報を聞きました。
※ティム・ヴェルサス二人分の支給品を回収しました。

融合前のF・Fの情報
※リゾットの能力を物質の透明化だと思いこんでいます。
※リゾットの知るブチャラティチームの情報を聞きましたが、暗殺チームの仲間の話は聞いていません。
※リゾットから聞いたブチャラティチームのスタンド能力についての情報は事実だと確信しました(ジョルノの情報はアレッシーの記憶よりこちらを優先)
※ダービー兄とアレッシーの生前の記憶を見たので三部勢(少なくとも承太郎一派、九栄神、DIO、ヴァニラ、ケニーG)の情報は把握しました。
※ダービー弟の生前の記憶を見たので、ゲーム前半の荒木の動向、ナチス研究所に集まっているリゾットたちやエシディシの情報を把握しました。
※エシディシは血液の温度を上昇させることができ、若返らず、太陽光に弱く、スタンドを使えると認識しました。 (太陽光が致命傷になることも把握)
※自分の能力について制限がある事に気がつきましたが詳細は把握していません。
※ディアボロの能力を『瞬間移動』と認識しています。
※FFが捨てた支給品(デイパック×2、壊れた懐中電灯、加湿器、メローネのマスク、カップラーメン)がF−3南部に落ちています。
※第三回放送を聞きました。徐倫とアナスイの名前が呼ばれていないこと、プッチの名前が呼ばれたことだけは確認しています。

融合後の情報
※アナスイ、F・Fの人格が融合しました。
 基本はアナスイですが、今後どうなっていくかはわかりません。
※F・F弾や肉体再生など、原作でF・Fがエートロの身体を借りてできていたことは大概可能です。
※『ダイバー・ダウン・フー・ファイターズ』は二人の『ダイバー・ダウン』に『フー・ファイターズ』のパワーが上乗せされた物です。
基本的な能力や姿は『ダイバー・ダウン』と同様ですが、パワーやスピードが格段に成長しています。
 普通に『ダイバー・ダウン』と表記してもかまいません。
※その他、アナスイとF・Fがどのようなコンボが可能かは後の作者様にお任せします。
※ジョナサンの『プラネット・ウェイブス』による隕石を北の空に目撃しました。
 徐倫が向かっているかもしれないので、しばらくコロッセオの北には向かうつもりはありません。


※【F-3 住宅地】の地面の一角に『ザ・ハンド』によって開けられた人間一人分が通れる穴が開いています。
 穴は真下を通る地下鉄のトンネルにつながっています。
※億泰、音石、テレンスの遺体のそばに、怪物だったものの肉片とF・Fの携帯電話、地図、名簿の残骸が落ちています。

340寄生獣 ◆vvatO30wn.:2011/02/07(月) 14:23:35 ID:???





「あぁ……億泰さん……音石さん………っ!!」

何の変哲もない杜王町住宅地の一角で、空へ上っていく魂を見つめ、杉本鈴美は涙を流す。
この数時間は、鈴美にとって地獄のような時間だった。
そんな彼女の悲しみを煽るように、背後から語りかけるのは、荒木飛呂彦。

「ふっふっふ…… 鈴美さん、残念だったねえ………
岸辺露伴に川尻早人、片桐安十郎に山岸由花子、そして今回の虹村億泰に音石明……
君のこの町の住人が立て続けに6人も………
これで杜王町の住人は全滅かな? ……いや、まだ一人残っていたかッ!
君の大好きな、吉良吉影くんがねッ!! ハ――ッハッハッハッハッ!!!!!!」

高笑いする荒木飛呂彦を睨みつけたい衝動を堪え、杉本鈴美は視線をそむける。
荒木は、人が苦しんでいる顔を見ることを楽しんでいる。
自分が荒木に怒りをぶつけても、荒木はそれを喜ぶだけなのだ。

露伴ちゃん、由花子さん、早人くん、億泰さん………
みんな死んでしまった。
これで自分のことを、この『場所』を知る者が誰一人いなくなってしまった。
ここはダービーズ・アイランドと同じ、荒木の隠れ家の一つに過ぎない。
しかし、この場所を知っている人がいれば、逆転の一手につながるかもしれなかったのに……

鈴美が館の中へ戻っていく。
元々自分の家があったそこには、趣味の悪い洋館がそびえ立っている。
どうせこの路地から出ていくことはできない。
しかし、このままここで荒木飛呂彦の雑談に付き合うことだけはご免だった。


「あれ?部屋に帰っちゃうのかい? 外の方が、殺しの空気を生で感じられて心地いいのにな……
それにしても、こんな結末を迎えるとは思わなかったなあ……
首輪のないF・Fをいつまで特例で生かしておくか考えていたが、放置しておいて正解だった。
彼らは自分から、運命をより面白い方向へ動かしていく。いやいや、実に面白いよ。
彼ら二人組が生き残ったあかつきには、二人を優勝者として認めてあげよう。
もっとも、彼らは優勝する気なんてさらさらないみたいだけどね……」

荒木飛呂彦はやんちゃな子供のように腰かけていたポストから飛び降りた。
面白いのは何もF・Fやアナスイたちだけではない。
つい今しがた決着のついたジョースター家とツェペリ家の因縁をかけた最期の戦いも見物だったし、エシディシたちやディオ吉良ディアボロ組だって、面白いことになっている。
もうじき6時間ぶりの放送の仕事もあるし、荒木のテンションは上がる一方であった。

「やべっ 踏むとこだった!」


杜王町の忘れられた一角に、子供のような性格をした、悪魔のような男が一人、たたずみ笑っていた。


【F-4 杉本鈴美の幽霊の小道/1日目 真夜中】

※現在、荒木はここから会場全体を観戦しています。
※侵入不可。脱出不可。
 杉本鈴美はゲーム開始時からこの路地に閉じ込められて、自由に出ることができません。(たとえ振り返らなくとも)
※旧杉本邸のかわりに不気味な洋館がそびえ立っています。
※ここはダービーズ・アイランドと同じで荒木のアジトの一つに過ぎません。
 他にいくつのアジトがあるかはわかりません。
 少なくともここに宮本輝之助(エニグマの少年)はここにはいないようです。
※荒木はF・Fを便宜上死亡とし、放送でも名前を呼ぶつもりです。
 しかし、F・Fの『知性』は文字通りまだ滅んでいません。

341 ◆vvatO30wn.:2011/02/07(月) 14:28:52 ID:???
以上です。
投下は>>321から始まっています。
色々思うところはあり、自分でも書き終えた感想を書きたいところですが、本投下まで我慢します。
誤字脱字や、矛盾点、表現がおかしいところやアドバイスなど、なんでも指摘お待ちしています。
特に気になる所は、融合関連、鈴美関連、幽霊の小道関連です。
特に融合は長いパロロワの歴史においても異例の出来事なんじゃないでしょうか?
二人の参加者が一人に融合するなんて……
ですが、私が今回一番書きたかったことがこのシーンですし、今後の展開も見込めると思うのでご容赦いただけたらと思います。
融合は、ドラゴンボールで例えるならネイルや神様を吸収したピッコロみたいな感じだと思ってください。
主人格はあくまでアナスイ、しかしF・Fの面影もある。みたいな……
鈴美や小道関連は私なりの鈴美の処遇についての解釈が入っています。
他の方の意見を聞いて、結論を決めたいの思っています。
(ぶっちゃけ杜王町の住民(善)の全滅を鈴美に嘆かせたかっただけです。
荒木のアナスイF・Fについてのフォローのついでなので、ぶっちゃけなくても話自体に問題はありません)
あと、吉良うんぬんの記述は現在予約中の◆0ZaALZil.A氏の内容次第で加筆、修正を行う可能性があります。

342 ◆vvatO30wn.:2011/02/07(月) 14:59:04 ID:???
うわあああああなんてこった!!!!!!!!
盛り上がるシーンで一レス飛んでるorz
ごめんなさい!!!!!!

>>333 と >>334 の間に次の本文が入ります
こんなミスをするなんて……… 信じられない………
本当に申し訳ないですorz


「う……うわぁぁぁ!!!『チリ・ペッパー』ァァァァ――――――!!!!!」

銃口を向けられた音石がスタンドを発現させ身を守ろうとする。
しかし、『チリ・ペッパー』は現れない…… 当然である。
『チリ・ペッパー』は電源が近くに無ければ発言できないスタンドなのだ。
地下鉄はとっくの昔に通り過ぎてしまい、二台しかない地下鉄がもう一度近くを通るのは、まだまだ先の話である。
当然、他に電気を帯びた物質は存在しない。
音石がこの場所でスタンドが使えたのは、真下を地下鉄が通過する、その一瞬だけだったのだ。


「悪あがきをするな…… いま…『楽』にしてやる……」

ダービーの腕からF・F弾が撃ちだされた。
音石は今度こそ、自分の最期を悟り、目をつぶって覚悟を決めた。



しかし――その弾が音石に命中することは無かった。


「……行けッ!! 逃げるんだ………音石………ッ!
こいつは……俺が……引き受ける………!」

音石が目を開けると、そこにはダービーの体にしがみつき、抑え込もうとしている『ザ・ハンド』の上半身。
そして、その傍らには最期の力を振り絞りスタンドを操っている、腰から下の無い虹村億泰の姿があった。
傷口からは肝臓や小腸……内臓器官がはみ出し、膨大な量の出血をしていた。


「貴様ッ!! まだ生きていたのかッ!!! チクショウ、離れろッ!!!」

必死に億泰を引っぺがそうとするダービー。
その隙をついて、音石が負傷した腹を押さえながら全力で逃げ出した。
億泰の最期の、本当に最期の根性が、ダービーから音石を逃がすことに成功した。
ダービーに掴みかかっても、その体が削り取られることは無かった。
それだけ、億泰のパワーは弱り切っている。
しかし、それでも、たとえ自分が死んでも、一度喰らいついたスタンドは解除しなかった。


「なんて奴だッ…… こいつ、脳天にトドメの一撃をくらわせてやるぜッ……!!!」

ダービーが億泰の額に銃口を向ける。
億泰はここで死ぬ……しかし、億泰は満足していた。
今まで誰一人助けることができなかった……
しかし、最期の最期で億泰は音石明を……、『仲間』を助けることができた。


悔いはねえ…… これでよかったんだ………
俺なんか死んでも変わりはいる…… だが、音石は違う………
音石は『首輪解除』ができるかもしれない俺たちの切り札だ…………
荒木に抗うためには、音石の命は欠かせない……
ここで俺が死んでも、音石がリゾットにさえ再会できれば……みんな助かるかもしれねえ……
俺は音石を……助けられたんだ………


すでに体は動かない。
億泰は、最期の力を振り絞り、鉄のように重たい瞼を持ち上げた。
そして、音石が走り去って行った方へ、視線を向けた。

343ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/02/07(月) 17:47:27 ID:tirRRNmY
投下乙です。上げますね。
指摘というか意見を。F・Fは肉体を失いましたが知性を失った訳ではなく、いわゆるディアボロとドッピオ状態になっている訳ですよね。
1stでは両名の名前が名簿に載せられており、死亡したのもそれぞれ別のタイミングでした。
体は1つですが死亡扱いはどちらかの精神が消滅した時で良いのではないでしょうか。
(F・Fがアナスイを完全に乗っ取る、フー・ファイターズのDISCを抜かれる、等)

344ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/02/07(月) 17:52:14 ID:???
投下乙です 感想は本投下の時に…
一読み手として、最近の展開は荒木じゃないけどテンション上がりまくりです

>融合関連、鈴美関連、幽霊の小道関連
どれも大丈夫だろうなと思ったのですが、書き手の皆様の判断にお任せします
あと、自分もFFは死亡扱いじゃなくてもいいかも、と思いました

以下誤字の指摘です

>>328
>自分の命を狙うゲロ以下臭いが
→自分の命を狙うゲロ以下の臭いが

>>329
>リゾットにつかった
→リゾットに見つかった

>>330
>言葉の真意は分りかねなかったが
→言葉の真意は分りかねたがor言葉の真意は分からなかったが

>>336
>『フー・ファーターズ』
→『フー・ファイターズ』

345ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/02/07(月) 20:19:03 ID:???
投下お疲れ様です。感想は投下時に。

まず誤字・脱字の指摘から
>>325
怪物の体は吹き飛ばされ、体中の」傷口から血が噴き出し、
>>327
チ……クショウ…… ただの化け物だと思っていたらが……

内容について
小道・鈴美・融合どれも問題ないと思います。
F・Fは死亡扱いにしなくていい、に賛成です。

346ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/02/07(月) 21:12:40 ID:???
投下乙です
お茶目なミスなどお気になさらずにw
感想が喉から出掛かっていますが、我慢して堪えます

指摘は他の方がだいたいしていて他には特になかったと思います
FFの死亡扱いについてですが、私はどちらでもいいかな?
人数が減っていることには変わらないんだし、今後また変化があるときはその時考えたらいいんじゃないかと思います。
作者さんの好きにするのがいいのかも?

347ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/02/07(月) 21:19:28 ID:???
投下乙です。
>>329
>音石は今日の午後以降の時間は見張りのため、ほぼ休みなしに飛行機を飛ばしており、その充電は底を尽きかけていた。
187話『Resolution』にて、音石は一度スピットファイヤーを帰還させています。
底を突くほどエネルギーがなくなっているのなら、さすがにそのときに充電していたのでは?

>俺の手持ちにもう電気を帯電したものはねえし、コロッセオに近いこの場所じゃあ、街中の電気も流れていないと来たッ…!!
懐中電灯に電池が、ノートパソコンにバッテリーが搭載されていると思います。どちらも電力はたかが知れているので加筆で十分だと思いますが。

あと気になったのは、アナスイ(FF)の首輪がどうなってるかですね。

ついでにこれは余談ですが
>二人の参加者が一人に融合する
双子の兄弟が合体するロワなら過去にありました

348ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/02/08(火) 01:49:46 ID:???
もう一つ気になったので、指摘を。
ちょっとこの辺には詳しくないのですが、
地下鉄の鉄道は電車単体のエネルギーで動いてた、ってことなんでしょうか?

104話『イエスタディを聴きながら』にて、
>数ある送電線の一本が切断され、カーズがぶちまけた薬品の溜まりに飛び込んで電流を流していた。
とありました。この描写から、おそらく架線(パンタグラフで電力を供給する電線)があるので、
音石はそこから電力吸収すれば、別に電車来るの待たなくていいじゃん、と思ったんですが。

349ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/02/08(火) 18:33:19 ID:???
ご意見ありがとうございました。
脱引きももりしましたw
二度とこんな失敗や恥さらしはしないようにします。

>融合、鈴美、幽霊の小道について
問題がないようなので、このままで以降と思います。

>F・Fの死亡扱いについて
残り人数自体は減る、荒木が「アナスイが生き残った場合優勝扱いにする」、
ディアボロドッピオたち(二つの人格が別々に存在している)とは違い二つの人格が一つに融合しているイメージである、
などの理由で死亡扱いとしたのですが、早計だったでしょうか?
まあ便宜上のことなので結果はどちらでも変わらないと思うのですが……
本投下までに結論は出しておきます。

>誤字脱字
修正いたします。

>>347
スピットファイヤーはF・Fが手首を復活させた直後の銃撃でバッテリーごと大破したというように変更します。
懐中電灯、ノートパソコンは電力が小さすぎてパワーが弱すぎることを補足しています。
アナスイの体に外見的変化はないので、アナスイ自身の首輪がそのまま残っています。
F・F(怪物)には首輪はついていませんでした。(マイクと婦人の首輪は多分その辺に転がってます)

>双子の兄弟が合体するロワ
その時、死亡扱いや残り人数などはどうなっていましたか?

>>348
>地下鉄の鉄道は電車単体のエネルギーで動いてた、ってことなんでしょうか?
まさにそうだと思って書いていました。
完全に読み込みが不足していました。
一応地下鉄の電線でも億泰に穴を掘らせて電力供給の流れは作れるんですが、
一瞬を利用した逆転劇、音石がリゾットと一緒に居た時間の活用、F・F再逆転後の反撃不可、地下鉄登場時のインパクトなど、
やはり地下鉄を絡ませた方が流れ的にうまく収まるんですよね……
なにかいい解決策かアドバイスがあればお願いします。

350>>349 ◆vvatO30wn.:2011/02/08(火) 18:34:09 ID:???
今度は付いてないwwwww

351ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/02/08(火) 19:02:15 ID:???
>>349
地下鉄を絡ませた逆転法と言うと、やはりひき逃げアタック!
どうやってFFを落とすかが課題ですが。

>双子の兄弟が合体するロワ
すまない、第2次スパロワにおけるロボットの合体のことなんだ……。冗談のつもりで言った、今は反省している
あと自分が知る限りでは、参加者の融合は
・漫画ロワのDIOとシェリス(一時的なもの)
・戦隊ロワのナイとメア(名簿では、合体後のバンキュリア一人という扱い。融合とはちょっと違うかもしれませんが)
があったと記憶しています。残り人数はお好きなようにしていただければ。

352ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/02/08(火) 19:22:06 ID:???
論理で流れが崩れかけると、結構直しづらくてきついですよね…。

自分も「ひき逃げ」しかないかなって気がします。
列車が来るというそのインパクトに勝るものなし。
穴を掘らないと電力を吸収できないということには変わりないので
電車に引かせて半身吹っ飛ばして、残ったほうに「10まんボルト」とか…。
億泰を殺さずにF・Fを落とせればいいんですが、
あくまで「引き寄せる能力」だから億泰が地下に下りて引き寄せると、億泰が死んでしまうしw
いい案が浮かばなくて申し訳ない。

353ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/02/08(火) 20:05:42 ID:???
電気補給して超スピードになったレッチリが電線かラジコンの配線を
F・Fの足と電車に結びつけてそのまま引きずられーの擦り下ろされーの
なんてどうだろうか

354351:2011/02/08(火) 20:42:12 ID:???
しまった、融合した参加者の中に、ライダーロワのドラスと麻生さんを入れ忘れてた(融合というより吸収ですが)
このときは、取り込まれた麻生さんは、放送では死亡扱いでした。

355ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/02/08(火) 22:12:51 ID:???
吸収ならロボロワのドラスもそうだぜ! 
ちなみに吸収されたナタクは死亡扱いだった
まーそこら辺は放送書く書き手さんに任せちゃっていいんじゃね?

356ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/02/08(火) 23:25:48 ID:???
ひき逃げアタックだと話の展開が変わりすぎて書き手さんの負担が大きくなりすぎる気がするなあ
俺は単純に荒木ワールドのご都合主義で、「コロッセオ付近の地下鉄には電線が通ってない」でいいと思うけどな
>>322の「コロッセオに近いこの場所じゃあ、街中の電気も流れていないと来たッ…!!」
ていうのも過去の音石の状態表にあった
「電線が所々繋がっていないのに電気が流れているこの町は何なんだッ!? あやしすぎて怖えー! 」
からきてるのでしょうし、地下にもそれを採用したらいいんじゃないか?

あと、F・Fの死亡も別にそのままでいいと思う
あくまで便宜上死亡?と表記してありますし、今後変化があればその時また考えればいいでしょう
そんなに深く考える必要もないと思う

357ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/02/09(水) 13:27:16 ID:???
確かに>>356の修正で十分だな
音石にしてみればわざわざ轢き逃げにする意味もないし
ただでさえ無茶苦茶な地図なんだから、電線が途切れていても不思議じゃない

358 ◆4eLeLFC2bQ:2011/02/09(水) 21:03:44 ID:???
地下鉄関連の議論がまだ残っているようですが、
花京院典明 仮投下します。

359 ◆4eLeLFC2bQ:2011/02/09(水) 21:04:31 ID:???


こうしていて、何時間経ったのだろう。
あるいは数分のことだったのかもしれない。

物音がしたとか、気配を感じたとかそういうことはなかった。
ただ、水面に気泡が浮かぶように『自分はなにをしているんだろう』そんな疑問が頭をもたげて……、
僕はようやく顔を上げた。

ひどく投げやりな気分で辺りを見回す。
『敵が近くにいたなら、僕はとっくに死んでいる』
皮肉っぽく笑うもう一人の自分をどこか頭の隅のほうに押しやって、周囲に誰もいないことを確認する。
人の気配はおろか、鳥の声も虫の音も聞こえない。
自分が死んだんじゃないかと、錯覚してしまうような静けさだった。

夢にありがちな、どこか現実と乖離した不自然さに、そうであって欲しいと願ってしまう。
『血』と『臓物』の匂いに支配されたこの空間が単なる『悪夢』だったなら、どんなに良かっただろう。
あのときのように、誰かが僕を起こして、ひどくうなされていたと言葉をかけてくれたら、どんなに………。



「       」


地面に突っ伏す前に、一度呼んだ名前だ。
反応はない。わかりきっている。

それならばどうしてこんなに喉の奥が痛い。
冷えた夜風に頬が撲たれ、世界はぼんやりと滲む。
僕は風邪でもひいたのか?


「       」


『逃げろ』という声に従って、がむしゃらに走った。
わずかに残った理性と、不安に押しつぶされそうな本心が交錯して、ナチス研究所を目指していたように思う。
禁止エリアに足を踏み込みかけて引き返し、冷静になれと何度も自分に言い聞かせて、
辿り着いたのは目的の場所じゃなかった。


「       」

360 ◆4eLeLFC2bQ:2011/02/09(水) 21:05:05 ID:???
特別な感情を抱いていたわけではなかった。
一緒にいて心がなごむことも、誇らしい気持ちになることもなく、
敵意を持たずに接してくれた一人の女性としか思っていなかった。
それすらも、貴重な存在だったと今は思うけれど。

その『友達』が自分を盾にしたと気付いたときには、心底失望した。

…でも声を聴いたときに心配で、いてもたってもいられなくなったのは事実だった。
誤解を解けばすんだ仲間より彼女を追いかけることを優先したのは僕の意志だ。
その結果また裏切られた形になったけれど、放送でその名が告げられなくて、安堵したのも本心だった。
―守れる可能性のあった人達―、そこに彼女が列せられなくて良かったと確かに思ったんだ。

僕は、小心者の彼女に、自分を重ねていたのかもしれない。
孤独ぶって、他人を信じられず、過ちを犯した自分を。
彼女もそうだと、過ちを犯しても前を向くことができると、信じたかったのかもしれない。
あんなに非力で、不安定な女性に勝手な思い込みを押し付けて、
あてがはずれ彼女に裏切られたなら、それは弱い彼女のせい。僕が罪悪感に苛まれることもない。
そんな都合のいい善意を強要して……、その結果が…………。


「あのときあなたに、命をかけても守るといった……、本当に、そう、思っていたんですよ」


彼女でもいい、誰かに命を奉げて生きていたら、後悔の涙など流さずに死ねただろうか。
こんな風にただ惨めに地面を拳で打ちつけて、その行為に意味などありはしないのに。

彼が、アナスイが羨ましい。悩みも後悔も断ち切った彼が。
それほどに強い意志を持ちえた彼が。


僕はどうだ?


あの時、荒木に喧嘩を売りさえしなければ、
グェスさんは危険な目にあわずに済んだ?
フーゴは涙を見せずに済んだ?

あの時、もっと警戒できていれば、
フェルディナンド博士は謎の死を遂げずに済んだ?
フーゴにトニオさんを殺させずに済んだ?

あの時、ちゃんと立ち回れていれば、
ポルナレフの信頼を失わずに済んだ?

あの時、余計なことをしなければ、
ティムさんは死なずに済んだ?
アナスイは彼を、友を殺さずに済んだ?

自分がもっと、もっと、しっかりしていれば、
アヴドゥルさんも、ジョースターさんも、承太郎も、イギーも、失わずに済んだ?


あの時、信じきることができたなら…………

361 ◆4eLeLFC2bQ:2011/02/09(水) 21:05:56 ID:???
僕にはもう、なにも……、なにも………、残っていない……
友情も、自分が生きたという証も、なにも………


ナチス研究所を目指したのも、フーゴやフェルディナンド博士に演説をぶったのも
誰かに肯定して欲しかったんだ。
あなたは悪くない。正しいことをしたと。
そのおかげで助かったと、言って欲しかったんだ……。

良心に因る行為が、正義に違いないと、
仲間達と共に見た輝く意志は、継いでいくことができると、信じさせて欲しかったんだ。


その結果がこれか。

……なにもできず、誰も傷つけずにいられたなら良かった。

ぜんぶ、僕のせいだ。

僕のせいで死んでしまった人、傷ついた人はもう片手じゃ足りない。
僕の中途半端な行為のせいで二次的な被害を受けた人は、きっと両手でも足りない。


ぜんぶ、ぜんぶ、僕が悪かったんだ………。


何が足りなかったなんて考えたくもない。
すべては遅かった。
起きてしまった事柄はどうあがいても、変えようがない。

笑いがこみあげるほど……、なんて愚かなんだろう。




ヒヤリ、とスタンドの手が首輪の感覚を伝える。




―――これを引き抜こうとしてしまえば、これ以上苦しまずに、誰にも迷惑をかけずにすむ………




そのままスタンドへ命じた。 『力をかけてしまえ』と。

362 ◆4eLeLFC2bQ:2011/02/09(水) 21:06:58 ID:???











しかし、爆発は起こらなかった。

起こせなかった。


「クソッ……」


噛んでいた唇から血が滴り、地面に黒いドットが描かれる。

わかっている。これは逃げだと。
だから、もう一つの我身は力をかけようとしなかった。

一瞬で苦しまないで死ねる、なんて僕に許された選択肢じゃない。

わかってるんだ。傷つけた人達に償いをしなきゃいけないって。
それが終わるまで、僕はもがき続けなきゃいけない。


「『救い』なんてありませんよ」


守られるべき弱者も、守るべき強者も等しく死んでいく。
そこには正義も悪も存在しない。
ただ、強すぎる意志が絡み合い、もつれ合い、失われていくだけだ。

僕はもう自分が正しい行いをしているという自信がない。
一人の女性に無私の愛を奉げる行為を尊くすら思ってしまう。
『正義』や『道徳』、僕が大切だと思っていたものはすべて僕自身のエゴだったのかと疑ってしまう。
ティムさんとの約束がなければ、この厄介な脳はもう身体から離れていただろう。

アナスイの心の闇を晴らすことを『救い』というのなら、僕になんかできるはずがない。
信頼しあっていたティムさんに不可能だったことを、部外者の僕がどうして行える?

かといって、徐倫さんを再び巻き込むつもりはない。
娘を危険な目にあわせたなんて知れたら、承太郎は怒るだろうな。
無神経なように見えて、人一倍優しいから。


「必ず、僕が彼を止めます。 彼の闇がこれ以上誰かを引きずり込まないように」


ティムさんはアナスイがこれ以上人を殺めることを絶対望んでいないから、それだけはやり遂げなければ。
それが一度殺されかけた僕にできるせいいっぱいの行動。
誰もその結末を望んでいないかもしれないけれど。



そして、横たわった二人……。
お互いに傷つけあった末にこうなったとは考えがたく、
確実なのは、どちらかに殺意を向けた人間がいるということ。
どちらが先かはわからないが、相打ちというには少年が甚振られすぎている。
もしも瀕死の少年が彼女を撃ったなら、ここにはその銃がない。

363 ◆4eLeLFC2bQ:2011/02/09(水) 21:08:42 ID:???
彼女がトチ狂って少年を痛めつけ、駆けつけた第三者が彼女を撃ったのかもしれないが、
それは真実ではないと信じたい。

もしも、生きてアナスイを止めることが出来たなら、銃とナイフを所持した『誰か』を捜そうか。


(けれど、『仇』を討つ、それは正しい『償い』なんだろうか……)


『償い』も自分の心を楽にしたいだけなのかもしれない。
取り返しの付かない失敗が誰に許されるわけもないのに、
『償い』だ『救い』だなんだといって、結局僕は自己保身に躍起になっている。


僕が、これ以上ないというほど苦しんで、血反吐を吐きながら死んでいったら、みんな、満足してくれるだろうか。



人目の付かない場所へ、二人の身体を運ぶ。
あまりに惨い状態の少年の身体はハンカチで覆ってやった。
そんなことをしても、彼の傷が癒えたりするはずがないけれど、
それでも自分は人として、気遣いや憐みの感情を捨てはしないと、自分に誓うための行為だった。

人として、生きて、果て、その行為が正しかったと心から思えたならば
正しい方向へ導いてくれた人たちに感謝して、僕はその瞬間にも笑っているだろう。



はるか遠く、死んだ星の光に願った。
ずっと僕を照らしていて欲しい、と。

364 ◆4eLeLFC2bQ:2011/02/09(水) 21:09:33 ID:???
【G-2 やや南部/1日目 真夜中】

【花京院典明】
[時間軸]:ゲブ神に目を切られる直前
[状態]:精神消耗(極大)、身体ダメージ(中)、右肩・脇腹に銃創(応急処置済)、全身に切り傷、激しい自己嫌悪
[装備]:なし
[道具]:ジョジョロワトランプ、支給品一式
[思考・状況]
基本行動方針:打倒荒木
0.自分のせいで傷ついた人達に『償い』をしたい。けれど『償い』とはなに?
1.アナスイを止める。おそらく殺さざるを得ない。
2.ポルナレフとの再会、誤解を解く。
3.ナチス研究所に行き自分の知る情報を伝えたい。でもそれは自分を肯定して欲しいだけかもしれない。
4.打倒荒木、巻き込まれた参加者の保護、が正しい行動だと信じたい。
[備考]
※荒木から直接情報を得ました。
「脅されて多数の人間が協力を強いられているが根幹までに関わっているのは一人(宮本輝之助)だけ」
※フーゴとフェルディナンドと情報交換しました。フーゴと彼のかつての仲間の風貌、スタンド能力をすべて把握しました。
※マウンテン・ティムと情報を交換しました。お互いの支給品を把握しました。
※アナスイの語った内容については半信半疑です。その後アナスイがティムに語った真実は聞いていません。

365 ◆4eLeLFC2bQ:2011/02/09(水) 21:14:47 ID:???
以上です。タイトルは「何もない明日が来る瞬間は」です。

予約入れた段階で展開の予想付いた方が多いんじゃないかと……。
vv氏の作品でアナスイが死なないか不安でしたが、斜め上をいかれました。
あんな化け物(褒め言葉)に勝てる人間がいるんでしょうか?w

366ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/02/09(水) 21:43:14 ID:???
投下乙です! 指摘は特にありません
二人の遺体が誰だか分かった時うわあああああと思いましたが詳しくは本投下時の感想に書きます

367 ◆vvatO30wn.:2011/02/09(水) 22:20:21 ID:???
投下乙です。
感想は本投下時に。
本文読めば分かる事ですが、いちおう状態表に、
「グェスと早人の遺体を発見した」という事を明言しておいた方がいいと思います。

ついでに業務連絡です。
ひき逃げの方も考えてみましたが、とりあえず>>356様の意見を採用して、
コロッセオ付近のため地下鉄も電線が通っていない、で本投下してみようかと思います。
F・Fも『便宜上』死亡扱いのまま通そうかと思います。

未投下の作品もまだ2つ残ってますし、少し早いかもしれませんが、明日の正午ごろに本投下しようかと思います。
お暇な方は支援していただければうれしいです。

368ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/02/10(木) 13:27:40 ID:???
投下乙!
短いSSですし、指摘も特にありません。
これくらいの作品なら仮投下せず直接本投下でもよかったのでは?

369寄生獣 ◆vvatO30wn.:2011/02/10(木) 15:59:40 ID:???
やっぱりモンキー食らったんだよぉジョジョォォォォォ――――ッ!!
どなたか代理お願いします。



けたたましい轟音はどんどん大きくなり、ついに億泰の掘り進んだ落とし穴の真下を、その巨大の物体が通過した。
そう、その物体の正体は『地下鉄』。
そしてこの地下トンネルの正体は『地下鉄のトンネル』だったのだ。
『コロッセオ』と『ナチス研究所』の間を地下鉄が通っている事はリゾットによって聞かされていた。
そして現在地はその二つの施設のちょうど中心近く…… この真下を地下鉄が通っている事は明確であった。
直前に音石が確認したリゾットのメモには、ナチス研究所に到着する地下鉄の時刻表が記されていた。
リゾットの配下につき見張りをしていた際、彼から渡されたものだった。
ナチス研究所に訪れる者は、何も地上からだけではない。
地下鉄の駅がある以上、そこからの訪問者に備え時刻表を確認しておくのは至極当然のことだ。(もっとも実際に地下鉄の駅を見張っていたのはペッシだったが…)
そしてその時刻表を見れば、研究所のすぐ近くであるこの場所を地下鉄が通る時間もだいたいの見当がついた。
そして運よく、今現在の時刻がその地下鉄の通りすぎる数分前だったのだ。

「来た、来た、来た、来たァァァァッッ!!!!!! こいつを待ってたんだッ!!!
『レッド・ホット・チリ・ペッパー』……最大出力(フルパワー)だァァァ!!!!!!」

そして、その地下鉄には当然、莫大なエネルギーを携えた電源が備わっている。
本当は地下トンネルに備わっていたはずの送電ケーブルを使う事ができればよかったのだが、コロッセオ付近の為か、ここには地下ですら電力は通っていなかった。
しかし、日中動きまわっている地下鉄になら、いつ、どこであっても必ず巨大な電源が備わっているはずなのだ。
地下鉄が億泰の開けた穴の真下を通る一瞬の間に、音石は『レッド・ホット・チリ・ペッパー』を発現させ、そのパワーを最大限まで引き上げた。
これは、現世で億泰と戦ったとき、億泰の『ザ・ハンド』に地下の電気のケーブルを掘らせた音石だからこそ……
そして、今日の午前中ジョセフたちと行動を共にし、地下鉄を利用した経験のあった音石だからこそ……
さらに、リゾットたちの仲間になり、地下鉄の動きを把握していた音石だからこそ、辿り着いた唯一の打開策であった。

つい先程は錆びついたよう鉄クズのように黒ずんでいた『チリ・ペッパー』の体が、黄金の輝きを放ち、復活した。
落とし穴の側面に避難した億泰の傍を通り抜け、地上に出た『チリ・ペッパー』が怪物の上空に舞い上がった。

370寄生獣 ◆vvatO30wn.:2011/02/10(木) 16:00:46 ID:???
「GI……GYAAAAAAAAA!!!!」

上空に舞い上がった『チリ・ペッパー』目がけて、こちらもありったけのF・F弾の散弾を乱射する怪物……
しかし、この『チリ・ペッパー』は、さっきまでの『チリ・ペッパー』とはわけが違う。

「俺のスタンドは…… 充電すると強いぜ……!!」

猛烈なスピードで怪物の散弾を全て回避する『チリ・ペッパー』……
その速度は『ザ・ハンド』はおろか、もしかしたら『スター・プラチナ』を超えるかもしれない亜光速の超スピード……ッ!!
ましてや、F・F弾などというチャチな飛び道具をくらうようなアクビが出るスピードでは決してない。
そして――――――


「てめーの正体が『水』だってことはとっくに分かっているんだッ!! そして、俺のスタンドは何だァ…!?
ガキでも知ってるぜ? 特に今年(1999年)に新作が発売予定の『ポケモン』やったことがあるガキならよォ!!!
『水』に『電気』は、『効果はバツグン』なんだぜぇぇぇぇ!!!!!!」

そして猛スピードで怪物に接近する『チリ・ペッパー』のスタンド!!
地下鉄が通り過ぎてしまえばまた電源を失い、『チリ・ペッパー』のエネルギーは小さくなってしまう。
一両編成の地下鉄など、通り過ぎるのは一瞬だ。
だが、その一瞬で事は既に足りた。
『チリ・ペッパー』は一瞬のうちに怪物の体内に侵入し、そして充電したエネルギーを炸裂させた!

「くたばれッ!! 化け物がァァァァ―――――――ッ!!!!!」





パァァァァァ――――――――z___________ン!!!!!!




怪物の肉の塊が四散し、弾け飛んだ。
残ったのは死肉に戻った肉片たちと、体内に隠し持っていたであろう携帯電話や地図や名簿の残骸のみ……
怪物に復活の気配は感じられない。
音石のスタンドが勝ったのだ。

371寄生獣 ◆vvatO30wn.:2011/02/10(木) 16:01:58 ID:???
「やったのか……音石の野郎………」

『ザ・ハンド』に引きずられ、自らが掘った穴から這い出た億泰が、そこらじゅうに飛び散った肉片という結果をみる。
音石のスタンドが強力なのは把握していたが、これほどまでとは思っていなかった。
そして、さらに複雑な気分である。
自分の兄の仇として忌み嫌っていた音石に命を救われ、さらにはその音石の力によって得体の知れない怪物を討伐するに到ったのだ。

「よぉ億泰、無事かよ……! あの化け物なら…、へへ……、不甲斐ねえお前の代わりに…、俺が『爆殺』してやったぜ……!!」

腹の傷を押さえながら、音石が億泰の元へゆっくりと歩いてきた。
その音石の姿は、すでに自分の忌み嫌っていた『兄貴の仇』ではなかった。
それはまるで、仗助や康一たちみてぇな、俺の守るべき仲間の姿だった。
これからも俺と共に戦っていく、共通の目的を掲げて共に戦う『仲間』のようだった。


『必死で生きてきた俺たちの誇りをッ! ボスの野郎は踏みにじったッ!』
『そんなボスから俺は伝言を預かった。 内容は協力を申し出るものだった。』
『俺たちはアイツの犬じゃないッ!』

今更、別れ際のリゾットの言葉を思い返す。
露伴や早人の話を聞く限り、組織のボスのディアボロとかいう奴はそんな吐き気を催す邪悪じゃあなかった。
恐らく、ディアボロは変わったのだ。
この殺し合いを通じて、変わったのだ。
そして今の音石も同じように、クソ以下のにおいがするゲスではなく、俺たちの仲間に変わりつつあるのだ。
もちろん、だからといって、俺は音石を許しはしない。
多分、リゾットの奴もそうなのだろう。
だが、今は…… 少なくとも今のこいつは、敵じゃあねえ……
音石は…… こいつは味方だ………!!


「フ……、やれやれだぜ………」

億泰は足を庇いながら、音石が差し出した手を取り、立ち上がろうとした。





















ドスッ―――





しかし、億泰はその手を受け取ることはできなかった………
億泰の胴体を、背後から忍び寄ったテレンス・T・ダービーの右腕が貫いた。





372寄生獣 ◆vvatO30wn.:2011/02/10(木) 16:03:06 ID:???



「な………んだと……!!!」
「ダ……ダービー………貴様…何故ッ……!!!」

腹から別の腕を生やした億泰は吐血し、その激痛に苦しむ。
何が起こったのか分らない音石をよそに、ダービーは恐るべき怪力で億泰の体を両腕でまっぷたつに引き裂き、億泰は上半身と下半身を分断させられる。
そしてバラバラになった億泰の体は地面に打ち付けられ、ダービーは億泰の血にまみれた両腕を、先ほどの怪物と同じように銃口を作り音石に向けて構える。

「フウ……、やっとまともに会話ができるな…… こいつの記憶によると…貴様の名は音石明…か?
私の名は『フー・ファイターズ』……… いや、既に名前など捨てた只のプランクトンの戦士だ……
さっきの身体……あれは駄目だな…… まるで『知性』が感じられない………
継ぎ接ぎの身体で神経伝達が上手くいかずに動きはノロイし、言葉も話せない…… 脳も死んでいたからまともな思考も行えない……
おかげで、何度も死ぬ思いをした……… いやはや…貴様らは強敵だったよ……」

『チリ・ペッパー』が復活したとき、上空に打ち上げられたF・F弾の散弾……
あれは『チリ・ペッパー』を攻撃するために撃ったものでは無い。
仮初めの怪物の肉体から、『フー・ファイターズ』の『司令塔』を逃がすための撃ち出したもの……
復活した『チリ・ペッパー』が『電気のスタンド』であることを悟り、真っ向勝負で戦っても勝ち目がないと判断したF・Fが、隙をついて反撃するために行ったこと……
『フー・ファイターズ』は何にも寄生していない露出した体でも、30秒から1分ほどなら活動することができる。
それだけの時間があれば辿り着ける……
つい数分前に殺害した、そこいらに転がっているはずの、このテレンス・T・ダービーの死体にまで……


「ま…… 懲罰房でケンゾージジイに電気イスを喰らったっていう『思い出』が活きたってところか……
あれがなけりゃあ、貴様のスタンドが『電気』だっていう発想は生まれなかった……
あと一瞬……司令塔の脱出が遅れていたら、私がやられていたよ………」


こんなことをいまさら言っても仕方ないことではあるが、億泰と音石の二人の心には、どうしようもない決定的な油断が存在していたのだ。
それは、目の前の敵は鈍重で愚かな『怪物』であり、得体の知れない『化け物』であるという認識だった。
これまで『フー・ファイターズ』の事を『怪物』と表現し、億泰たちは彼のことを『化け物』と呼称していた。

しかし、事実はそうではない。
彼…… ――『フー・ファイターズ』―― は、殺すためには策を練り、生き延びるためには自分の身体をも捨て、そして守るべきヒトのためには手段を選ばない……
『フー・ファイターズ』は、怪物でも化け物でもない、『知性』を持った一人の『戦士』なのである。

373寄生獣 ◆vvatO30wn.:2011/02/10(木) 16:04:04 ID:???
「う……うわぁぁぁ!!!『チリ・ペッパー』ァァァァ――――――!!!!!」

銃口を向けられた音石がスタンドを発現させ身を守ろうとする。
しかし、『チリ・ペッパー』は現れない…… 当然である。
『チリ・ペッパー』は強い電源が近くに無ければ発現できないスタンドだ。
地下鉄はとっくの昔に通り過ぎてしまい、二台しかない地下鉄がもう一度近くを通るのは、まだまだ先の話である。
当然、他に強い電気を帯びた物質は存在しない。
音石がこの場所でスタンドが使えたのは、真下を地下鉄が通過する、その一瞬だけだったのだ。


「悪あがきをするな…… いま…『楽』にしてやる……」

ダービーの腕からF・F弾が撃ちだされた。
音石は今度こそ、自分の最期を悟り、目をつぶって覚悟を決めた。




そして、とどめの一発が音石の額に命中――――しない!?


「……行けッ!! 逃げるんだ………音石………ッ!
こいつは……俺が……引き受ける………!」

音石が目を開けると、そこにはダービーの体にしがみつき、抑え込もうとしている『ザ・ハンド』の上半身。
そして、その傍らには最期の力を振り絞りスタンドを操っている、腰から下の無い虹村億泰の姿があった。
傷口からは肝臓や小腸……内臓器官がはみ出し、膨大な量の出血をしていた。


「貴様!! まだ生きていたのかッ!!! チクショウ、離れろッ!!!」

必死に億泰を引っぺがそうとするダービー。
その隙をついて、音石が負傷した腹を押さえながら全力で逃げ出した。
億泰の最期の、本当に最期の根性が、ダービーから音石を逃がすことに成功した。
ダービーに掴みかかっても、その体が削り取られることは無かった。
それだけ、億泰のパワーは弱り切っている。
しかし、それでも、たとえ自分が死んでも、一度喰らいついたスタンドは解除しなかった。


「なんて奴だッ…… こいつ、脳天にトドメの一撃をくらわせてやるぜッ……!!!」

ダービーが億泰の額に銃口を向ける。
億泰はここで死ぬ……しかし、億泰は満足していた。
今まで誰一人助けることができなかった……
しかし、最期の最期で億泰は音石明を……、『仲間』を助けることができた。


悔いはねえ…… これでよかったんだ………
俺なんか死んでも変わりはいる…… だが、音石は違う………
音石は『首輪解除』ができるかもしれない俺たちの切り札だ…………
荒木に抗うためには、音石の命は欠かせない……
ここで俺が死んでも、音石がリゾットにさえ再会できれば……みんな助かるかもしれねえ……
俺は音石を……助けられたんだ………


すでに体は動かない。
億泰は、最期の力を振り絞り、鉄のように重たい瞼を持ち上げた。
そして、音石が走り去って行った方へ、最後の視線を向けた。

374寄生獣 ◆vvatO30wn.:2011/02/10(木) 16:05:27 ID:???
「ぐわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」



億泰が最後に見たものは、逃がしたはずの音石明が頸動脈から血の雨を降らし倒れる姿だった。
億泰が最期に聞いたものは、助けたはずの音石明の無残な断末魔だった。
億泰が最期に感じたのは、音石明の傍に立つもう一つの別の気配だった。
億泰が最期に理解したことは、自分は結局、音石明の命を助けることもできなかったという現実だった。


別の……敵……か………ッ!!
チクショウ……結局、こういう結末かよ………ッ!!
最期まで……俺は誰も守れなかった……情け……ねえぜ………

兄貴……すまねえ………
音石……露伴………、すまねえ………
…康一…………、仗……助……………、………………


――――奇妙な銃声と共に、億泰の脳髄は破壊され、心臓が鼓動を停止した。







375寄生獣 ◆vvatO30wn.:2011/02/10(木) 16:06:41 ID:???



「ようF・F……だいたい8時間ぶりぐらいか? あんな小物を取り逃がしちまうなんて、らしくないな……
前とずいぶん姿が変わったようだが、そのせいでもあるのか?」

音石明を一瞬で仕留めた男、ナルシソ・アナスイが軽口を叩きながらF・Fに語りかける。
音石は間一髪で自分を逃がした億泰の方に意識が偏り、後方を気にしながら逃走していた。
前方不注意の音石明の首筋を『ダイバー・ダウン』で切り裂くなど、正面から不意に現れたアナスイには造作もないことだ。

「そいつの力じゃあない、こっちの不良野郎の『諦めの悪さ』にしてやられただけさ……
それに『変わった』……といっても、こいつは前の俺の身体だった奴の弟らしいぜ……
しかも、ついさっきまで荒木の所にいた『途中参加者』だそうだ……
『途中参加者』がいるなんて聞いてなかったが、どちらにしてもこいつに対した情報は『記憶』に無いみたいだけど……」

そして、億泰にとどめを刺したテレンス・T・ダービーの身体を操る者、F・Fも、アナスイに対し軽口で返す。
それぞれ人を一人ずつ殺した後の会話とはとても思えない。
しかし、彼らにとってはごく当たり前の会話だった。
F・Fは徐倫を優勝させるために修羅となり殺人を繰り返しているが、その徐倫自身には敵視されていた。
このアナスイは今のF・Fにとって、唯一等しい目標を持った『仲間』なのだ。
しかし、それにしても、アナスイの様子は以前と変わっていた。

「……『変わった』……と言うならアナスイ、お前もじゃあないのか?
お前は徐倫の為に人を殺すかという問いに「保留だ」と答えていたと思うが……?」

今、音石明への問答無用の一撃を繰り出したアナスイは、明らかに数時間前の彼とは別人であった。
少なくとも以前の彼は、無差別に殺人を行って回るような存在ではなかった。
そう、自分とは違って………

376寄生獣 ◆vvatO30wn.:2011/02/10(木) 16:07:12 ID:???

「あー、そのことなんだが、考えが変わったんだよ………
俺だって、まだ「荒木を倒す手段が無い」と決め付けたわけじゃあ無いんだがな……
ただ、『確率』の問題なんだ――――――」

徐倫と拳を交えたことや花京院との一件があって、嫌ってほど思い知ったのだ。
この町にいる『徐倫の敵』は、なにも荒木だけじゃあない。
本気で優勝を狙っている凶悪な殺人鬼がいくらでも存在する。
荒木を倒すために行動することは間違っちゃあいない。
まかり間違って、荒木を倒す方法が見つかるかもしれない。
何とかして荒木を倒し、正義を志す人間たちが何人も脱出できることができるかもしれない。

―――だが、その時まで徐倫が生き残っているという保証がどこにある?
もし脱出に成功したとしても、その場に徐倫がいなければ、その大団円は何の意味も為さない。
そこに、アナスイたちの『勝利』は存在しない。

花京院との一件や、ティムを殺してしまったことが引き金になったのは確かだ。
だが、遅かれ早かれアナスイは、同じ結論に達していただろう。
いや、これでも遅すぎるくらいだ。
つまるところ、徐倫はアナスイの全てであり、徐倫が死んでしまってはアナスイは存在する価値が無い。
徐倫が生き残るには、確率の薄い脱出に懸けるより、徐倫を優勝させる方が最善で確実。
たとえそれが自分の死を意味するとしても、アナスイにはなんの後悔も残りはしない。

そして、多くは語らずとも、F・Fはアナスイの決意を理解する。
F・Fもまた、アナスイと同じ考えを持っているからだ。

377寄生獣 ◆vvatO30wn.:2011/02/10(木) 16:10:53 ID:???
「なるほど……。……いいだろう、わかった…………」

F・Fは二つ返事で了承する。
申し出を断る理由はどこにもなかった。

ダービーの身体が力無く倒れ、中から剥き出しの『フー・ファイターズ』が姿を現す。
そしてアナスイを殺さぬよう細心の注意を施しながら、ゆっくりと身体に侵入していく。
アナスイの身体に奇妙な感覚が広がっていく。
それは気味が悪くもあり、また心地よくもある不気味な感覚だった。


―――これでついに、俺も人間をやめちまったってことになるのかな……
だが、そんなことは大して問題にならない………
どうせ俺はあと数時間で死んじまうんだ……………
そう、徐倫以外の人間はすべて……もうすぐ死ぬ運命なんだからな――――――――――


アナスイとF・Fとの『融合』が完了した。
背格好も、肌の色も、見た目は元のアナスイの何も変わっていない。
だが、中身はまるっきり別物……


アナスイは軽く手のひらを何度か握り、首の骨を鳴らしてみる。
さらに軽くダッシュ、ストップ、簡単な動作を繰り返す――――
基本的な動作に問題は無い。
むしろ基本身体能力は飛躍的に向上している。
この身体なら生身でも2メートルの壁を助走なしで飛べそうだ――――


アナスイが指先に力を集中させる―――
すると、指は形を変え、人差し指の先に銃口が生まれる。
2〜3発試射―― コンクリートの塀に穴が開いた――――――
F・F弾、使用可能――――――


水分を補給し、花京院から受けた傷口に力を集中させる―――
体内のF・F細胞が働き、傷口は静かに塞がっていく。
肉体の再生も、可能――――――


スタンド『ダイバー・ダウン』を発現させ、その拳をコンクリートの地面に向けて振り下ろす。
すると衝撃と同時に地面は形を変え、足元には巨大なクレーターのような跡が残った。
『ダイバー・ダウン』、大幅なパワーアップ――――――
『ダイバー・ダウン』に『フー・ファイターズ』のパワー、上乗せ可能――――――

378寄生獣 ◆vvatO30wn.:2011/02/10(木) 16:11:26 ID:???
(すごい……なんてパワーだ………これならあのエシディシとも対等に戦える……)
(これからどう動くべきか……どちらにしろ徐倫に出会うのはマズイ……)
(花京院を探すことにするか? アナスイが『乗っている』事は、現時点では奴しか知らない……)
(いや、それより後数分で放送が始まる…… 安全な場所で放送を聞く準備をした方がいい…… 徐倫の安否も確かめられる……)
(それがいい、コロッセオなんてどうだろうか…… 中は身を隠すところは多いし、俺がさっき覗いた時は無人だった…… ここからの距離も近い……)

まるで自分の脳内で二つの人格が会話をしている、そんな妙な気分だった。
どっちのセリフがアナスイで、どっちのセリフがF・Fなのか、自分でもよくわからない。
アナスイは完全に、人間をやめてしまった。
人間の肉体と、プランクトンの知性と、最強のスタンドを携えた寄生獣に変貌していた。


少し前に、北の空に隕石が落ちるのが見えた。
ウエストウッド看守は死んだはずだから、あれは誰かが奴からDISCを奪ったということだろうか?
あれを見たら、徐倫は北へ向かうだろうか?
向かうだろうな……、彼女はそういう人間だ。
だとしたら、あまり北へは行けないな……
よし、これで放送後の目的地も決まった。
ダービーの記憶に見た、ナチス研究所のエシディシと、決着をつける。
恐らく、この殺し合いで一番の危険人物……
徐倫を殺してしまうかもしれない、最も危険なこの世の悪魔だ……
エシディシさえ始末してしまえば、徐倫が生き残る確率が格段に上昇する。

必ず打ち砕いてみせる………
俺の……私の………
『ダイバー・ダウン・フー・ファイターズ』で…………!!



【音石明 死亡】
【虹村億泰 死亡】
【F・F 便宜上死亡?】

【残り 15名】

379寄生獣 ◆vvatO30wn.:2011/02/10(木) 16:12:18 ID:???
【F-3北西部/1日目 真夜中】

【ナルシソ・アナスイ with F・F】
【スタンド】:ダイバー・ダウン・フー・ファイターズ
【時間軸】:アナスイ…「水族館」脱獄後、F・F…DアンG抹殺後
【状態】:健康、全身にF・Fの細胞が寄生し、共存している。
【装備】:なし
【道具】:基本支給品×5、点滴、クマちゃん人形、双眼鏡、ラング・ラングラーの首輪、トランシーバー2つ(スイッチOFF)、ラング・ラングラーの不明支給品(1〜3。把握済)、テイザー銃(予備カートリッジ×2)、杜王町三千分の一地図、牛タンの味噌漬け、ノートパソコンの幽霊
※基本支給品はアナスイ、ラングラー、ティム、ヴェルサス、音石の五人分です。
 音石の水はF・Fが回復に利用しました。その他食料、水がどれだけ残っているかは不明です。
【思考・状況】
基本行動方針:空条徐倫を生存させるために彼女を優勝させる。そのために、徐倫以外の全ての参加者を殺害する。
0.F・Fと融合し、人間をやめた。もう恐れるものは無い、皆殺しにするだけだ。
1.コロッセオに隠れ、第4回放送で徐倫の安否と残り人数を確認する
2.放送後、ナチス研究所に向かい、エシディシと決着をつける。
3.アナスイがゲームに乗っていることを知る花京院を始末する。
  しかし、どこへ行ったかはわからないので後回し。
4.徐倫には会いたくない。

380寄生獣 ◆vvatO30wn.:2011/02/10(木) 16:12:49 ID:???
【備考】
融合前のアナスイの情報
※マウンテン・ティム、ティッツァーノと情報交換しました。
 ブチャラティ、フーゴ、ジョルノの姿とスタンド能力を把握しました。
※ラバーソールとヴェルサスのスタンド能力と容姿を知りました。
※首輪は『装着者が死亡すれば機能が停止する』ことを知りました。
 ダイバー・ダウンを首輪に潜行させた際確認したのは『機能の停止』のみで、盗聴機能、GPS機能が搭載されていることは知りません。
※ヴェルサスの首筋に星型の痣があることに気が付いていません。
※F・Fが殺し合いに乗っていることを把握しました。
※ポルナレフが得た情報について知りました。
※マウンテン・ティムと改めて情報を交換し、花京院の持っていた情報、ティムが新たに得た情報を聞きました。
※ティム・ヴェルサス二人分の支給品を回収しました。

融合前のF・Fの情報
※リゾットの能力を物質の透明化だと思いこんでいます。
※リゾットの知るブチャラティチームの情報を聞きましたが、暗殺チームの仲間の話は聞いていません。
※リゾットから聞いたブチャラティチームのスタンド能力についての情報は事実だと確信しました(ジョルノの情報はアレッシーの記憶よりこちらを優先)
※ダービー兄とアレッシーの生前の記憶を見たので三部勢(少なくとも承太郎一派、九栄神、DIO、ヴァニラ、ケニーG)の情報は把握しました。
※ダービー弟の生前の記憶を見たので、ゲーム前半の荒木の動向、ナチス研究所に集まっているリゾットたちやエシディシの情報を把握しました。
※エシディシは血液の温度を上昇させることができ、若返らず、太陽光に弱く、スタンドを使えると認識しました。 (太陽光が致命傷になることも把握)
※自分の能力について制限がある事に気がつきましたが詳細は把握していません。
※ディアボロの能力を『瞬間移動』と認識しています。
※FFが捨てた支給品(デイパック×2、壊れた懐中電灯、加湿器、メローネのマスク、カップラーメン)がF−3南部に落ちています。
※第三回放送を聞きました。徐倫とアナスイの名前が呼ばれていないこと、プッチの名前が呼ばれたことだけは確認しています。

融合後の情報
※アナスイ、F・Fの人格が融合しました。
 基本はアナスイですが、今後どうなっていくかはわかりません。
※F・F弾や肉体再生など、原作でF・Fがエートロの身体を借りてできていたことは大概可能です。
※『ダイバー・ダウン・フー・ファイターズ』は二人の『ダイバー・ダウン』に『フー・ファイターズ』のパワーが上乗せされた物です。
基本的な能力や姿は『ダイバー・ダウン』と同様ですが、パワーやスピードが格段に成長しています。
 普通に『ダイバー・ダウン』と表記してもかまいません。
※アナスイ本体自身も、スタンド『フー・ファイターズ』の同等のパワーやスピードを持ちました。
※その他、アナスイとF・Fがどのようなコンボが可能かは後の作者様にお任せします。
※ジョナサンの『プラネット・ウェイブス』による隕石を北の空に目撃しました。
 徐倫が向かっているかもしれないので、しばらくコロッセオの北には向かうつもりはありません。


※【F-3 住宅地】の地面の一角に『ザ・ハンド』によって開けられた人間一人分が通れる穴が開いています。
 穴は真下を通る地下鉄のトンネルにつながっています。
※億泰、音石、テレンスの遺体のそばに、怪物だったものの肉片とF・Fの携帯電話、地図、名簿の残骸が落ちています。



381寄生獣 ◆vvatO30wn.:2011/02/10(木) 16:13:35 ID:???





「あぁ……億泰さん……音石さん………っ!!」

何の変哲もない杜王町住宅地の一角で、空へ上っていく魂を見つめ、杉本鈴美は涙を流す。
この数時間は、鈴美にとって地獄のような時間だった。
そんな彼女の悲しみを煽るように、背後から語りかけるのは、荒木飛呂彦。

「ふっふっふ…… 鈴美さん、残念だったねえ………
岸辺露伴に川尻早人、片桐安十郎に山岸由花子、そして今回の虹村億泰に音石明……
君のこの町の住人が立て続けに6人も………
これで杜王町の住人は全滅かな? ……いや、まだ一人残っていたかッ!
君の大好きな、吉良吉影くんがねッ!! ハ――ッハッハッハッハッ!!!!!!」

高笑いする荒木飛呂彦を睨みつけたい衝動を堪え、杉本鈴美は視線をそむける。
荒木は、人が苦しんでいる顔を見ることを楽しんでいる。
自分が荒木に怒りをぶつけても、荒木はそれを喜ぶだけなのだ。

露伴ちゃん、由花子さん、早人くん、億泰さん………
みんな死んでしまった。
これで自分のことを、この『場所』を知る者が誰一人いなくなってしまった。
ここはダービーズ・アイランドと同じ、荒木の隠れ家の一つに過ぎない。
しかし、この場所を知っている人がいれば、逆転の一手につながるかもしれなかったのに……

鈴美が館の中へ戻っていく。
元々自分の家があったそこには、趣味の悪い洋館がそびえ立っている。
どうせこの路地から出ていくことはできない。
しかし、このままここで荒木飛呂彦の雑談に付き合うことだけはご免だった。


「あれ?部屋に帰っちゃうのかい? 外の方が、殺しの空気を生で感じられて心地いいのにな……
それにしても、こんな結末を迎えるとは思わなかったなあ……
首輪のないF・Fをいつまで特例で生かしておくか考えていたが、放置しておいて正解だった。
彼らは自分から、運命をより面白い方向へ動かしていく。いやいや、実に面白いよ。
彼ら二人組が生き残ったあかつきには、二人を優勝者として認めてあげよう。
もっとも、彼らは優勝する気なんてさらさらないみたいだけどね……」

荒木飛呂彦はやんちゃな子供のように腰かけていたポストから飛び降りた。
面白いのは何もF・Fやアナスイたちだけではない。
つい今しがた決着のついたジョースター家とツェペリ家の因縁をかけた最期の戦いも見物だったし、エシディシたちやディオ吉良ディアボロ組だって、面白いことになっている。
もうじき6時間ぶりの放送の仕事もあるし、荒木のテンションは上がる一方であった。

「やべっ 踏むとこだった!」


杜王町の忘れられた一角に、子供のような性格をした、悪魔のような男が一人、笑っていた。

382寄生獣 ◆vvatO30wn.:2011/02/10(木) 16:14:14 ID:???


【F-4 杉本鈴美の幽霊の小道/1日目 真夜中】

※現在、荒木はここから会場全体を観戦しています。
※侵入不可。脱出不可。
 杉本鈴美はゲーム開始時からこの路地に閉じ込められて、自由に出ることができません。(たとえ振り返らなくとも)
※旧杉本邸のかわりに不気味な洋館がそびえ立っています。
※ここはダービーズ・アイランドと同じで荒木のアジトの一つに過ぎません。
 他にいくつのアジトがあるかはわかりません。
 少なくともここに宮本輝之助(エニグマの少年)はここにはいないようです。
※荒木はF・Fを便宜上死亡とし、放送でも名前を呼ぶつもりです。
 しかし、F・Fの『知性』は文字通りまだ滅んでいません。

383寄生獣 ◆vvatO30wn.:2011/02/10(木) 16:15:13 ID:???
以上、投下終了です。
代理投下の方、ありがとうございます。

384 ◆0ZaALZil.A:2011/02/13(日) 12:38:08 ID:???
投下します

385天の光は全て星 ◆0ZaALZil.A:2011/02/13(日) 12:40:15 ID:x6zpMM.6
(一回10秒――4分なら、16回が限度か。単純に計算すれば)

首輪越しに忠告された、制約。
意味することをおおむね理解し、逆算する。
しかし、6分――同じように概算した場合、36回――も時を飛ばした思えはない。

(『エピタフ』の発動も、含まれているのだろう)

しかし、『時を飛ばす』という原理では、墓碑銘が示す未来予知も同じカテゴリーに当てはまる。
施された呪縛は相当に厳しいものである。
それでも、荒木の囁きはディアボロの心変わりを誘発するものではない。

(だが、それ以前に俺はおそらく――)

懸念は別にあった。

「吉影。お前が前衛、俺は後衛だ」
「偉そうに言うなよ、貴様」
「左手の無い俺を前に出すのか? 正気とは思えんな」

ディオが鼻で笑う。
左手を爆破し、ディオが積極的に出れない原因を作りだしたのは吉影だ。
遠まわしに非難する言い回しなのは明らかだが、吉影は自省などするものかといった含みを持たせてディオを睨み、舌を鳴らす。

「臆病風に吹かれて、途中で逃げるんじゃあないぞ」
「まさか」

激昂して殴りかかりなどすれば、非を認めたことになる。
吉影がディオに強い言葉を投げかけても、どこ吹く風と聞き流す。

奇妙な光景だ。
時代ごとの因縁の発端、その三者が異なる胸の内を秘め、集おうとは。
ディオに継承された、悪意の宿る純白の大蛇を含めれば、四者四様の邪悪の本流が場を同じくすることとなる。
それも奇妙だが、しかし。

それ以上におかしな光景が、ディアボロの目の前にある。
弾丸軌道の『過程』を吹き飛ばして『結果』を残したのだから、死体が二つ出来あがっていてもおかしくないのに。
ジョナサンが掃射した弾丸による傷跡は、いずれも急所を外れ、大した出血もないのだ。

(銃創があると言うのに俄然元気だ。奴らが特別、丈夫だからか? そんなはずはない)

特に痛みに悶えたり、傷口を抑えたりする様子もない。弾丸が当たる『結果』を残したはずなのに。
ディアボロは理解している。

(弾丸が当たるという『結果』は、リゾットの時のように完全に命中した後の『結果』ではなかった。ゆえに、二人に対処する時間が生まれた)

飛ばす時間が、僅かに短かったから。
現前した『結果』は、二人に弾丸が命中する直前だったために、致命傷を与えることはなかった。
無論、ディアボロは能力発動の際、手を抜いていない。

(分かっている。俺には仲間が出来た。早人、露伴、億泰、シーザー、そして、ポルナレフやジョセフ)

従え、意のままに動かす部下と、志を共にし、歩む仲間は違う。
悠久の死罪を迎える以前も最中も、決して得られなかったもの。
永らく孤独と辛苦しか味わえなかった彼の心に、仲間は間違いなく救いをもたらしただろう。

386天の光は全て星 ◆0ZaALZil.A:2011/02/13(日) 12:40:51 ID:???
(かつてとは、変わりすぎた)

だが、その出会いに、ディアボロは影響され過ぎた。
『キング・クリムゾン』は、真に未来へ突き進むことを恐れるディアボロの本分が生み出したもの。
仲間を手に入れ、前を見ることに対して怖れを無くしたディアボロの変化は、絶大なものだった。

(『キング・クリムゾン』が、俺のか弱い精神から生まれたのであれば……俺はいずれ)

スタンド能力を、変容させるほどに。弱体化させるほどに。
荒木が手を施すまでもなく、『キング・クリムゾン』は、王という不相応なメッキがはがれて行くだろう。
『エピタフ』で都合の悪い未来を読み取れれば。『時を吹き飛ばす能力』で都合の悪い未来をかき消すことができれば。
その望みは、能力云々ではなく、単純に未来を長く見据えた場合に関しては、ディアボロ自身によって否定された。
彼は不都合な未来を恐れなくなってしまったから。仲間を心の拠り所とすることが出来るようになったから。

人の成長は、未熟な過去に打ち勝つことだ。
では、未熟な過去から生まれ出づる『力』は、未熟を克服したときどこへ向かう。
解の一部を、ディアボロは証明した。

(時を、飛ばせなくなるだろうな)

拡声器による少女の叫びを聞きつけてから、ポルナレフとの邂逅から逃走を経た際、何度か時を飛ばした。
その後の疲労は、スタンドの変化の予兆だったのだろう。
行きつく先は、おそらくスタンド能力の喪失。
『シアーハートアタック』の爆発から逃れられたのは、ギリギリで対応できたという運の良さがあったから。
そんな幸運、長く続くはずがない。このままでは、苦戦は避けられまい。

ディアボロは、それを良しとするだろうか。
強さに裏付けられた弱さを、受け入れるだろうか。
あるいは、弱さに裏付けられた強さを、肯定するだろうか。


  ★


ラバーソールの支給品は、こと実戦に於いてほとんど役に立たないものばかりだった。
戦術や戦略の構築に貢献するか、という面での評価では、CCDカメラは大いに役立ったと言えるだろう。
しかしあえて、もっと原始的なところに立ち戻ってみる必要もある。

バトル・ロワイアルの最大鉄則として、何より、他人に死傷を与えなければならない。
ラバーソールの支給品にそれが出来るとは、お世辞にも言い難い。

ギャンブルチップ20枚はどうか。小型で、少量なら携帯も余裕。『キラークイーン』の手札に加えることが真っ先に考えられる。
しかし、爆弾にするなら油断を誘えるうえ、ある程度の加工が出来る分、角砂糖の方が利用価値は上だろう。
吉影が所持することになったが、多用することはないだろうと、ほとんどデイパックにしまっている。
アイアンボールボーガンはどうか。当たり所が悪ければ、致命傷は与えられるだろう。
しかし、スタンドを用いなければ反動に悩まされる。ディオに至っては片手で扱わなければならず、取り回しが利かない。
さらに、連射が出来ないというのも痛い。鉄球を爆弾の媒介にするのも、二発限りでは気が引ける。
体格的にはジョナサンに渡すのが最善だったろうが、マシンガンを持っている相手にその提案は通るまい。
吉影に必要性はないと判断し、ボウガン、弾丸ともにディオが所持することに。
剃刀と釘のセットはどうか。刃物と言う面では役に立ちそうではある。
しかし、いかんせんスタンドを超えるメリットがないに等しい。手裏剣のように投げ飛ばすなら、射程距離の面でボウガンに利がある。
ディオが全て所持しているが、この分配はギャンブルチップを総取りした吉良に対する不公平感をなくすための措置でしかない。
二分間睡眠薬はどうか。
もはや論外。吉影の持つ紅茶に混入するのが有効だが、見敵必殺の方針なら呑気にお茶会を開いている場合ではない。
裏切りを警戒してか、吉影が持つことに。

残る武器は。

「ディオ、提案したからには働いてもらうぞ」
「当然だ。武器からしてもそれが順当だからな」

ディオが肩に掛けている、サブマシンガン。
残弾も十分にあり、取り回しは容易。ラバーソールの所有物の中では、間違いなく主力の兵装だ。

387天の光は全て星 ◆0ZaALZil.A:2011/02/13(日) 12:41:27 ID:???
「おそらく奴の能力は物質転移に近い何かだ。下手に当てようとするとこちらに返されるかもしれん。足下を狙え」

『シアーハートアタック』の爆発の一件は、認識がぽっかり抜けたために考察が困難。
ジョナサンの銃撃が通り抜けたことから、能力を考察するしかなくなる。
時間を飛ばす、という解釈に至るには、たった一回の時間跳躍では名探偵でもなければとてもじゃあないが辿り着けない。

だが、弾幕を張るという行動は正解だ。
ディオは片手、どう考えたって精密射撃は無理。ならいっそのこと、撒き散らす。
『キング・クリムゾン』は見た目通り、数ある中でもとびきり近距離型のスタンドなのだから、接近しなければロクな攻撃を行えなくなる。
ただばら撒かれただけで、防戦一方、打つ手なしだ。
石やら枝やら投擲しようにも、絶え間ない鉛の雨を掻い潜っての反撃は至難。

回避に専念できるなら、まだいい。サイドに控える吉影が、ただ命令して棒立ち、などということがあるか。
兆弾音が闇夜に響くなか、ディアボロの回避運動を見計らい、吉影が角砂糖を放る。

「『キング・クリムゾン』!」

掻い潜るのは無理と見るや、出し惜しまずに、時を飛ばす。

瞬く間に、世界は砂糖菓子のように脆く決壊、王宮への扉が開かれた。
墨を溶かしたように黒く染まる世界にて、あらゆる弾道がスローモーションと化す。
難なくかわし、吉影に側立って挙動を注視する。
ただ角砂糖を投げたとは考え難い。能力の媒介であるとの見方が妥当。
観察を続けていると、吉影がシャープペンシルの芯を出すように、親指をグッと人差し指に押し付けた途端、角砂糖が四散した。

(能力は把握した。奴が投げる物に警戒する必要があるな)

この時間跳躍の成果は大きい。後は、残された時間をどう活かすか。
いかに全ての動きに対応できると言っても、流れゆく時間は、二人を相手にしているという事実は変わらない。
一先ず血の眼つぶしをしてしまうか――そう考えているさなかで、崩れ落ちた世界が復元し始める。

(やはり短くなっている!)

時は再始動。
目と鼻の先にいる以上、そのままというわけにもいかず、咄嗟に吉影を殴る。
だが悪手だ。止めを刺すことなく、吹き飛ばしてしまってはまた攻撃が当てづらくなる。
不完全な不意打ちにより、吉影がガードに成功したのも痛い。

撃ち飛ばされた吉影が、その勢いのままディオにぶつかって両者転げる。
吉影は即座に膝立ち、服に付いた土ぼこりを払って臨戦態勢を整える。
しかしながらディオは、うつ伏せてからというものの、その手に握られた短機関銃を見つめたまま。
吉影が怪訝な顔を向けた頃にむくりと起き上がったディオがディアボロに向けた顔は、勝利が約束されていると物語るかのように、得意げだった。

「時間を飛び越える能力、か?」

その一言でディアボロと吉影、両者の視線が集うのと同時に、ディオはサブマシンガンを空砲のように上方に向ける。
トリガーを二度三度引いて見せたが、銃口からは何も出てこない。

「俺が気づく前に、いつの間にか弾切れしていた。物質転移なら、この現象が説明できない」

マシンガン内の弾丸を転移したと言う結論に達するわけがない。
時間の無駄だ。そんな暇があるならとっとと殴ればいい。ならば弾はどこへ消えた。
消えたのではない、『ある』のだ。掃射していた場所に、全て。熱を保ちながら。

「認識をおいてけぼりにして時間だけ経過させる、ということか?」
「おそらくな」

残弾が都合よく切れたという不運もあったが、ヒントを与え過ぎた。
ことスタンドバトルにおいて、能力が割れているのといないのとでは、雲泥の差がある。
ディアボロも吉影の能力をおおよそ把握し、ディオの方もDISCを投げつけたことから推測材料はある。
それでもなお、ハンディは残る。

388天の光は全て星 ◆0ZaALZil.A:2011/02/13(日) 12:42:14 ID:???
「再びその能力を使う気か? 一人倒したところで残った一人にやられるのが関の山だろうに」

戦力差は、どうあがいても埋めることができない。
時に干渉する上、連続で発動できないのは『スター・プラチナ』と一緒であると、吉影は経験則から学んでいる。
このタイプ、タイマンならば圧倒的だが、2対1では能力解除後の隙を狙われやすい。

「私の平穏のため、踏み台になる覚悟は出来たか?」

怯えろ、すくめ、絶望せよ。
騒乱が必然と歴史が証明するのなら、弱者の淘汰も、また。

「覚悟とは、諦めの精神ではない」

されど、吉良吉影は『覚悟』を履き違えた。
今こそ言おう。命を安く見ていた頃の自分には見いだせなかった教訓を。
今こそ言おう。彼の誇り高き精神から学んだことを。

「暗闇の荒野に進むべき道を切り開く、その心こそ覚悟なんだ!」

鎮まることのない魂が彷徨う、死と言う名の無限回廊――抜けた先、暗闇の荒野を切り開いて見せたのは、一人の男の覚悟だった。
絶望の淵に立たされようと、犠牲でも、諦めでもない姿勢を貫いた。
彼から託された志、その意味を、履き違えたりなぞするものか。

「無駄口を叩いたな」

ディアボロの高説に賛辞も嘲笑も挟まず、突如、ディオが口を開く。

茂みより飛びかかる、大男の影。
いや、遠隔操作でディオから広く離れた『ホワイトスネイク』だ。
ディアボロを羽交い絞めにしようと、掴みかかるも。

「抑えられるとでも!」

距離が離れれば離れるほどパワーが弱くなる、と言うのはスタンドを扱う上での大前提だ。
吹き飛ばされたという不運があったとはいえ、いかんせん距離が離れすぎた。
更に、左手首を喪失しているのでは拘束は緩くなる。

「抑えてもらうさ!」

それでも、吉影がその僅かな隙を見過ごすわけでもなく、ディアボロ目掛け角砂糖を弾く。
ディアボロは、自身の能力への対策を即席で組み立てた敵の順能力に歯噛みする。
時を飛ばしたところで、身動きできなければ何の意味もない。
いかに縛りがやわなものでも、振りほどくより先に心臓一直線に迫る凶弾がディアボロに到達するだろう。
来るべき『結果』は、三者誰にでも予想できるもの。

「チィッ!」

ディアボロの右足が、股関節を中心に縦の半円を描く。
爆裂音。
白煙発するは、消し飛んだつま先。噴き出す鮮血が地表に染みわたる。

「足を犠牲に!?」
「犠牲ではない!」

振り上げた勢いのまま、元の軌道を辿り、振り子のように足を振り下ろす。
『ホワイトスネイク』のすねに『キング・クリムゾン』の踵が直撃。
ディオがたまらず呻き声上げるも、近距離は『キング・クリムゾン』の独壇場、ここで終わるわけがない。

「勇気だ!」

距離の条件が互角だったとしても、その敏捷性は他の追随を許さない。
『キング・クリムゾン』が『ホワイトスネイク』の鳩尾に肘打ち、たたらを踏んだところで追撃の裏拳。
『ホワイトスネイク』がもんどり打つのに合わせ、ディオもまた、馬力の違いに地面に背を滑らせる他なかった。

「何をしているッ! この役立たずが!」

盛大に舌を打ち、癇癪を起した吉影。
腹部を抑えてうずくまるディオは、見返すことさえ出来ずに悶え、地べたを這うのが限界だった。
目論見外れたあげく戦力が減ったとなれば、いかに紳士を演じるのに慣れた吉影でも、ささくれだつのは無理もない。
にもかかわらずディアボロは、先の一言に違和感を払拭できず、間合いを詰められずにいた。
確かに、ロクに拘束を行えなかったのは事実だろう。
焦りがあるなら、射程距離の事情など忘れていてもおかしくはない。

では、相方を罵る割に、唇端が僅かに吊り上っているとはどういうことか。

389天の光は全て星 ◆0ZaALZil.A:2011/02/13(日) 12:42:45 ID:???
「ぐッ!」

突如背後から感じた重みに、頭部ががくんと上下に揺れた。ディアボロが膝をつく。
『ホワイトスネイク』の手には、鉄球既に放たれたアイアンボールボウガン。茂みに隠していたもの。
パワー不足で反動をもろに受け、狙いがぶれたため、頭頂部をかすめる程度しか当たらなかったが。

ディアボロは咄嗟に上目遣い、視線の高度を元の位置に戻そうとするも。

(上が……見えないッ!)

ずるりと這い出た弾力ある薄板が、ディアボロの視界を妨げる。

吉影の一言は、フェイク。
頭部からはみ出すスタンドDISCは吉影にも見えており、そこからディオの作戦が見て取れたようだ。
銀板が顔を覗かせていても、パワーでは押しきれず取り出すのはさすがに難儀する。だが、ちょいと衝撃を加えればずり落ちる。
そうなればしめたもの、低い姿勢に持ち込めば帽子のつばを下げたみたいに邪魔になる。
『ホワイトスネイク』はディアボロに触れ続けるため守りの体勢が取れず、ディオは攻撃をもろに食らうことになったが。
アイアンボールボウガンを射るのが精一杯だったが、勝敗は間もなく、決する。

「次の爆弾で終わりにしてやるッ!」

スタンドの脚力を借り、吉影がゆうに5メートルはジャンプする。頭上はディアボロにとって完全な死角。
時間がない。取れる行動は限られる。
時を飛ばしたところで、アクティブに動けないのなら動かないのと同じ。爆弾が放たれ、ディアボロに接触すれば終わりだ。

ディアボロは、瞬時にデイパックに手を伸ばし、目当てのものを引き当てた。

「上に跳んだというのならッ!」

天に放つは、電源をつけ、秘めたる輝きを露わにした懐中電灯。
その光輝、暗闇に慣れた目にはつらいものがあり、自然、吉影は怯み角砂糖の投下位置がずれる。
まさに好機。

「くっ、だがしかし! 目を潰したからって、どうなるわけでもないだろう!」

それでも、文字通り上下の構図が入れ替わるわけではない。
このまま吉影が重力に従い馬乗りにでもなれば、勝敗は決する。
ディアボロは自らに近在する半身を格納。

「懐中電灯は、お前の目を潰すためだけに投げたわけじゃあないッ!」

普通、見たいのに遮蔽物によって前が見えないのなら策を弄してでも見ようとするだろう。
敵が肉薄し、対処しなければならないのなら、なおさら視界を取り戻さなければならない。
しかし、ディアボロが見たのは足下。

「俺の『目』にするためだッ!」

ディアボロが見たのは、懐中電灯を通して移る、吉影の影。互いの距離。
吉良吉影は天から泥を見た。ディアボロは泥から星の光を通して天を見た。
影が自分に重なる瞬間。

(「2……メートル」!)

信頼を置いた、元部下の声がした。
二つの声が重なるように、思考が融合したかのように。

(そうだな、ドッピオ……『友』である、お前もいた)

ディアボロは己の右腕で、空切るように天を突く。
その勢いのまま、スタンドヴィジョンを腕のみ発現し、拳から伸ばした。

「届けェェェェェッ!」

自分の身長に、伸長させた腕2メートルを加えることで、ヴィジョンを出したままの吉影の射程を上回る。
その技、ジョナサン・ジョースターがウィル・A・ツェペリから受け継いだ技のように。
その形、文字通り人類を喰い散らかす、吸血鬼という巨悪を打ち砕くため織り成されてきた技のように。

――ズームパンチのように!

390天の光は全て星 ◆0ZaALZil.A:2011/02/13(日) 12:43:26 ID:???
「グアアァァァッ!」

アッパーカットで不意食らった吉影が、後方にグルンと一回転して地面に叩きつけられる。
歩み寄るディアボロ。しかし、踏み込んだ足下に角砂糖。
策を警戒し、接触型ではなく着弾点火式にしたのが幸いした。
これはチャンスとばかりに、サムズアップするも。

「オラァッ!」

起爆より早く、『キング・クリムゾン』が垂直に拳を振り下ろす。
打突された『キラークイーン』の右手が、脆くなったガラス細工のようにひび割れた。

「うぐぅあっ!」
「スイッチは砕いた……。もう……押させるものか!」

吉影、『キラークイーン』の左手を支えにして起き上がる。
だが、身を起こしたところで地に足は付いた。重力のまま大地に立っているのなら見えている。ディアボロには見えている。

「この……このクソカスがあああああ!」
「『キング・クリムゾン』!」

ディアボロ、再びスタンドの全身像を発現。吉影の胸ぐらをつかんで持ち上げる。
前が見えない? 前には居るのだから、そう深刻に捉える必要はない。
数を撃てば当たるのだ。

「バルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバル」

いざ放たれん、断罪の流星群。
数百、数千、数万と叩きこむ。

「バルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバル」

吉影の右手より溢れる血しぶきがベタリとかかろうとも。
骨が軋み、折れる音が響き渡ろうとも。
タコの吸盤のように、四肢、胴体、顔面各所がボコボコとへこもうとも。
叩いては引き、叩いては引きの連撃はめまぐるしく、途切れることなく。

「ヴァオール・インフェルノ(地獄に行け)」

静かなる宣告。最後の一撃で、吉影は宙へ舞い上がる。
それを見届けるディアボロは、仁王立ち。
まだ、倒れるわけにはいかない。背後に控えているであろうスタンドの対処を行わなければならない。

その必要はなかった。
ディオは『ホワイトスネイク』のヴィジョンを既に戻し、吉影をキャッチさせていたのだから。
残る敵の対処に追われるのはディオとて同じ。

「ここは、退け……!」
「怖気づいたか!」
「策なら、ある……」

『ホワイトスネイク』に引き寄せられ、ディオの耳元で囁いた吉影に対し、偉そうに、と悪態付くディオ。
吉影はまだ生きていた。前が見えなかった分、乱打が半分ほどしか当たらなかったと言う僅かばかりの幸運が働いた。
無論、ディアボロにとっては不幸なのだが。

「……なるほどな」

息巻いていたディオは、しかし、暫時を挟んだのち、ぼそりと低語の声で了承しすぐさま退却する。
すぐさまと言っても、ディオ本人の動きは決して速いものとはいえない。未だ癒えぬ内臓の痛みに腹部を抑えている。
重しにしかならないサブマシンガンは投げ捨てたが、全力疾走とはお世辞にも言えず。

ただちに追走すれば、背を向けていることもあり決着はすぐに付くだろう。
そう思いディアボロが前に駆けようとするも、つま先の激痛により立ち止まるほかなくなる。

「足を潰された以上、追撃はさすがに無理……か」

立ち去る二人の背が小さくなったころ、ディアボロが腰を下ろす。
危ないところだった。傍目には華麗なる逆転劇だったかもしれないが、消耗戦ではこちらが不利だったろう。
シーザーの無事を確かめたいが、激戦を終えた今は休む必要がある。動こうにも、足の処置が急務だ。

391天の光は全て星 ◆0ZaALZil.A:2011/02/13(日) 12:43:58 ID:???
「いや、こっちが先だ」

頭部から伸びた、ゴム板のような何かに触れる。
何かが頭の中で滑るような感触がしたんだが、と呟くものの、主観ではどうなっているか分からない。
抜け落ちるように滑ったのだから、逆方向に入れてやればいいのか? と、単純な考え方で押し込む。
奇妙な事に、それで元通りになった。擦って、継ぎ目一つない、元の額の丸みを確認する。
視界が開け、ふと、封じられていた反動からか上を向く。

「綺麗な星空だ」

溜息をつく。
一つ一つが煌びやかで、作り物のプラネタリウムとは思えないくらいに。
恒久地獄に心身を削られた記憶しかない頃の夜とは、こうも違う。夜闇の中に光を見いだせるのだから。
暗闇の中にある光明は、得てして人を落ち着けるらしい。天の光は全て星。ディアボロは、その片鱗を見た。

だが、まだ見るべき光がある。

川尻早人は、フーゴに人質として捕らわれた際シーザーに『僕に構わずこいつを倒せ』と言った。
だがディアボロは、フーゴに引導を渡すのに抵抗を感じ、とどめを刺せないまま選択をブチャラティたちに譲る。
ディアボロには足りない。早人のように、善悪を超越した意思が。『漆黒の意思』が。
受け身の対応者であり続ければ、おそらく繰り返される。

己の意志以外全てをなげうってでも遂行すべきことがあるのなら、ディアボロは再び時を飛ばせるようになるだろう。
だが、元通りになることが真の強さとは限らない。取り戻した時、再び悪に堕ちないという保証はない。
本当に力を失うことが本望なら、受け入れるほかないだろう。
力尽きるその時まで。


  ★


「この私が……なんて無様なッ!」

なんてスピードだったんだ……! 空条承太郎みたいに速すぎるッ!
パワーのあるスタンドのラッシュなんぞ、そう何度も経験したくはなかったと言うのに!
寝転がって楽な体制を取っても体の節々が痛む……ああ、血も出てるし、涙も流れてきた!
どいつもこいつも邪魔ばかりしやがって! だがあいつは重大なミスを犯したッ!

「しかし、私の勝ちだ! 私の能力をちょっぴり封じ、調子に乗ったようだが、あのクソカスの命運は尽きた!」

触れたものは何であろうと爆弾に変えられる。だが爆弾に出来るのは一度に一つだけ。
だから私は、角砂糖を起爆する前に爆弾化を解除、タコ殴りにされてる間『私の右手から出る血しぶき』を爆弾に変えた!
あの一撃、手加減なんざまるでしなかったんだろうが、出血量が増えてむしろ好都合というもの。
東方仗助……お前は実に厄介な奴だったが、あの時の戦闘で得たものは決して無駄じゃあなかった。
何せ、自分の血液を武器にするという発想はお前譲りのものだからな。
かつてないほどに心の平和を乱した貴様のおかげで、私は勝利する。『命』を『運ぶ』と書いて『運命』とは言ったものだ。
奴の五体が既に爆弾! 接触型だとこちらに被害が出る恐れがあったので、着弾点火式のな!
手首を切断しなかったのがお前の甘さだ! さあ発火してやる。何が起こったのか分からないままあの世に送ってやろう!

「スイッチを……押すんだ。スイッチを……」

せっ……せっ……せっ……押せ……押せ……押せぇっ……!

全神経を集中させても、左手を添えても、かじかんだかのように震えが止まらない……だと?
奴め、手の甲が砕けるぐらいに強く殴りやがってッ! 関節が折れ曲がって、上手く握ることが出来ない!
ただ握りこぶしを作って、親指を人差し指にくっつけるだけで起爆するというのに!
ここまで来て……ここまで来たと……いうのにッ!

「上手く動かないようだな。『右手のスイッチを押せ』と、DISCで命令するか?」

隣に座るディオが提案する。
その声、冗談めかしたり、調子こいて見下したり、嘲る類のもの、いずれでもない。
確かに『参加者を殺して回る、この過程において、我々は絶対に協力し合う』とは言ったが、戦闘前の皮肉と言い、こいつは私を確実に恨んでいる。
いやに協力的なその言葉、信用すべきか?

「貸し借りなど気にするな。邪魔者は減らさなければならないからな。それより、察したあいつがこちらに向かうのは避けたい」
「た、頼む……」

392天の光は全て星 ◆0ZaALZil.A:2011/02/13(日) 12:46:13 ID:???
そうだ。気に食わないが、右手どころか全身こうなってしまった以上、結局は怪我の処置だってこいつに頼らねばならんのだ。
くだらないプライドなんぞ気にしていられるか。平穏を手にする犠牲としては些細なものじゃあないか。
即決。

ぬるりとした感触で、脳に盤が挿入されるのがわかった。

左手が胸元を探る。
無意識下の行動だったが、何をしようとしているか理解した。必要なモノは普段はここに入れているからな。
胸元を離れた左手がズボンのポケットから取り出したのは、角砂糖。無論、甘いのを欲しているわけではない。使うのは、入れ物となっていたハンカチだ。
右手に巻きつけ、左手と口を使って縛る。強引にではあるが、拳の形は出来た。
布が巻かれていなければ直視できないであろうグチャグチャな握り。ハンカチが鮮赤に染まり、溢れ、収まりきらず滴るのがわかる。
DISCなしではきっと悶え苦しんでいただろうが、まるで痛みはない。
来る勝利に向けて鼻歌の一つでも歌ってやりたい気分だ。

「ハハッ……これで、私の平穏は、また一歩、近付く……」

あの日々を、争いの無い日常を取り戻す。
このクソゲーム、深夜からの馬鹿騒ぎで寝つく暇なんぞありゃしなかった。
夜8時には仕事を切り上げ帰宅する、11時には床に就く――平穏どころか、こんな簡単な日々の習慣まで崩されてしまったじゃあないか。
天井を見上げる目が霞む。ああ、日課を語ってしまうほどに、私は眠りを欲している。ここにきて、積もり積もった疲労が一気に圧し掛かってきたのだろう。
睡眠に移るにしてはいつもと違う。何だか体が強張る。そうだった、銃創やらなんやらが痛むのもあるが、寝る前には柔軟体操をするのが日課だったな。
布団で暖まるのも重要だが、人肌に温めたミルクを飲んで、胃を通し内部から体を温めるのも大切な事だ。
しかも、牛乳に含まれるトリプトファンとかいうアミノ酸は、脳内でセロトニンという睡眠物質をつくる材料となるらしい。
そうやって疲労やストレスを残さない安眠を確保していく。日々の細やかな努力が健康を生み出すというのに、何故乱されなければならん。
そうだ、私が何をした? 争いを好まず、あまつさえ健康にも気を配れる、社会人の鏡みたいなもんじゃあないか。
性癖がどうした。秘密の一つや二つ、人間なら持って当たり前だろうに。むしろ、処理の仕方を誤らない私が自制の効かないクズと一緒くたにされてたまるか。
闘争が新たな闘争を生むのは自明なのに、わきまえず、ひたすらに欲を満たそうとしてキリの無い、虚しい行為に身を投じる奴らが私は嫌いだ。
……眠りを欲しているとか何とか言っていたわりに、もうギンギンに目が覚めてしまった。
今現在の就眠を妨げるのはストレス要因だけではない。DISCで命令されても負傷は堪えられないのか、手の震えが止まらない、というのもある。
だが、眠れないのはかえって好都合なのかもしれないな。私はまだ、眠るわけにはいかない。ここでしばらく眠ったってあの朝はやってこない。
頬どころか全身痛むんだ、覚めない以上これは現実、夢じゃあないというのは腹立たしいほど理解している。
……そうは言っても、平和が恋しい。ここで眠って、悪夢が覚めて、昔に帰れればいいのに。
目覚めた先が何一つ変わりないいつも通りの朝なら、朗らかな陽光を浴び心地よくなったところで、しのぶがウェッジウッドのハンディングシーンで朝の紅茶を――

――何故、ここで川尻しのぶが出てくる?

まあ、いいさ。
ここの参加者や、正体を知る早人を始末するのが重要で、川尻家は後から考えればいいし、どうとでもなる。
無事戻ったところで元の世界では騒ぎを起こしてしまったんだし、下手な事は出来ない。川尻しのぶの『手』はしばらく我慢せざるを得ないだろうな。
もう父も母もいない……二人だけ、夫婦揃って仲良く生活、か。

悪くないかもしれない。

こんな掃き溜めみたいな惨めな環境よりは、よっぽどな。

カチリ。


  ★

393天の光は全て星 ◆0ZaALZil.A:2011/02/13(日) 12:47:11 ID:???
ポン、と、誕生日パーティーで鳴らすクラッカーのような破裂音が鳴り響いた。
被害者はきっと、何が起こったか認識することも、反射で認識を超越することも出来ない。痛みは一瞬だ。
命を奪う音にしては静かで、淡白で、それがまた残酷だった。

「俺のように爆発を食らった感想はどんなものなんだろうな?」

ディオは明日の天気を尋ねるぐらいに軽々しく、質問した。
命を奪ったにしては――などとまた続けてしまうと、人の命は重いのかと、哲学的な方面へ持っていくみたいで野暮だ。
ディオにしてみれば命は軽い。ディオの見据える肉塊に、かつて命の重さがあったとしてもだ。

「まあ、聞くだけ無駄か。恨むなよ。規約通り、俺は直接手を下しちゃあいない。それに今のは、参加者を減らすための共同作業だ」

視線の先には、口から赤黒い液体を吐き散らした躯、吉良吉影。

ディオは嘘をついた。DISCに命じたのは『右手のスイッチを押せ』ではない。
下した命令は――『自分の心臓を爆弾に変えて起爆しろ』。

『参加者を殺して回る、この過程において、我々は絶対に協力し合う』――ディオと吉影は、協力して吉影を絶命させた。
『各々、最後まで同盟者には手を出さない』――止めを刺したのは吉影自身。
ディオは、あくまで規約に則り、吉影を不帰の道へと突き落とした。
誰が文句を言えようか。少なくとも、同盟者の誰からも、非難を受けることはない。
吉影が地獄の底から抗議しようと、規約を立てた者自身が規約に殺されたのだと言われたら、返す言葉があるだろうか。

「俺が『参加者を殺して生き残る事を目的としている』、と判断したようだが……ただの思い込みだ。
 ジョージが死に、遺産の継承がほぼ確実となった今、俺から積極的に殺しに行く理由はない。お前が片手を消し飛ばしたこともあるしな。
 なんにせよ、ボロ雑巾のようになったお前なんぞ、数を減らすには一番の邪魔者だ」

吉良吉影は思い出せなかったのか。
止めを刺したのは由花子とはいえ、空条承太郎を殺害する御膳立てをしたのは自分だということを。
敵対する者同士が手を組む、その結果を自身が体現したことに気が付かなかったのか。
吉良吉影はかつて空条承太郎がそうであったように、透き通る薄氷を渡り、踏みぬいた。
前例を知っていながら同じ轍を踏んだのだ、なおさらタチが悪い。

「ジョナサンは離れ、御し難い殺人鬼どもは行方知れず。盾になるものが近くにいなくなった今、同盟のメリットは消え失せる」

意のままに働いてくれる者が必要だった。その点、殺ししか眼中にない彼らはミスマッチ。
自分から探しに行くのは割に合わない。ハイリスク・ローリターンだ。
では、自分の思うままに動くというわがままを聞き届けてくれる慈悲深い人々とはどのような人物か。
ディオは、破裂した吉影の心臓目掛け、支給品の一つ、アイスピックを突き刺す。

「取り入るべきは、荒木に仇為す者どもだ。未来の汚名は懸念されるが、今の俺なら自然に出来る。吉影の死体とジョージの首輪を使えば、な」

394天の光は全て星 ◆0ZaALZil.A:2011/02/13(日) 12:47:57 ID:???
このゲームを脱出しようといきがっている正義のミカタが徒党を組んで襲ってきたらどうすると、吉影は迫ったことがある。
簡単な話だ、最初から敵対しなければいい。
右手を見せしめに脅され、協力せざるを得なかったが、隙を見て心臓を突き刺し、離反したとでも言っておけば争わずに済む。
デイパックにジョージの首輪を入れておけば、なおさら信じ込むだろう。
スタンドを手に入れるまでは襲われる立場だったし、先の戦闘は吉影の同盟のせいにでもしてしまえばいい。
ジョージを除けばディオは、殺しに消極的な者を殺していないのが功を奏した。
唯一であるジョージ殺しさえも、吉影に罪を被せてしまえるのだ。もはや、客観的には未来の罪しか糾弾する要素がない。
しかもディオが知る限り、右手を復元できる能力者はジョルノしかいないのだ。
脱出派である彼の生死が知れない今、殺しに積極的になるのは得策ではない。

「荒木の下に辿り着くには可能性は広げておきたい。いざとなればスタンドで従わせる」

『ホワイトスネイク』の能力は、従える集団がいてこそ威力を発揮する。
最後の一人になろうと野望をぎらつかせる連中より、協力を前提とする者の方が命令は容易。
正義感が邪魔になるのならDISCで上書きすればいいが、優勝狙いは同盟を結んだところで警戒心からそうそう挿入させてはくれないだろう。
能力のアドバンテージを最大限生かすには、闇雲に殺して優勝を狙うのは愚策。
手駒を増やす必要がある。勝負を有利に進めるために。
殺し合いが成立しなくなれば荒木が出向くしかない。いや、集団を形成し、早急に出向かせるのがディオの目的。

「覚悟は諦めではない、とは、実に良い言葉じゃあないか。ああそうだ、ユカコもだが、俺はまだ荒木に何の復讐も果たしちゃあいない!
 俺に不利なルールに流されるまま従って、ただ一人生き残って荒木に許しを請うなどと! 諦めたも同じ!」

荒木の仕打ちは、到底、黙認できそうにない。
参加者のほとんどがスタンド使いの中、貴様はただの人間だと、添え物程度の扱いだと馬鹿にされた。
明らかに不利な状況からのスタート。未来の信望などほとんど頼りにならず、策略に使われることさえあった。
スタンドは何のために受け継がれた? 帝王になるためだ。反目する者どもを根絶やしにし、意のままに従う軍団率いる帝王に。
荒木と決着をつける前にただ一人生き残った、では帝王の名折れ。

「小競り合いはやめだ。俺が上に立つためにも、復讐のためにも、必ずや荒木を引きずりだしてやる!」

しかし、ディオが荒木に勝利しようとする理由は何か。単なる怒りならばいずれは冷めるだろうに。
正義に感化された? 邪悪の化身、百余年に渡る因縁の発端が?
否、否、否。
優勝も脱出も眼中にない。彼の願いは、欲望は、際限なく。



「そしてゆくゆくは……荒木のスタンドを手に入れてみせるッ!」



欲するは、望むは、人が持つには過ぎた力。
ならば問おう。その言葉、人間としての言葉か。人間を止めたものとしての言葉か。



【吉良吉影 死亡】
【残り 13名】

395天の光は全て星 ◆0ZaALZil.A:2011/02/13(日) 12:48:39 ID:???
【C-5 西部/1日目 真夜中】
【ディアボロ】
[時間軸]:レクイエムジョルノに殺された後
[状態]:右つま先に爆発によるダメージ。頭部に軽い打撲。強い決意。恐怖。
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(水は全消費)、ポルナレフのデイパック(中身は確認済み):空条承太郎の記憶DISC、携帯電話
[思考・状況]
基本行動方針:ジョセフの遺志を継ぎ、恐怖を乗り越え荒木を倒す。
1.天の光は、こうも美しいものだったのか。
2.別行動を取った露伴たちが心配。無事ジョルノに『伝言』が伝わればいいが……
3.恐怖を自分のものとしたい。
4.『J・ガイルを殺す、花京院に謝る』。2つのポルナレフの遺志を継ぐ。
5.駅にあるデイパックを回収したい。
[備考]
※音石明の本名とスタンドを知りました。
※参加者が時を越えて集められたという説を聞きました。
※『恐怖を自分のものとして乗り越える』ために生きるのが自分の生きる意味だと確信しました。
※アレッシーとの戦闘により、『エピタフ』への信頼感が下がっています。
※キング・クリムゾンの制限は『吹き飛ばせる時間に限りがある』でした(『エピタフ』含む)。これを破ると首輪が爆発します。
※↑の制限とは関係なく、精神状態の変化から時を飛ばせる時間が少なくなっています。
※サンドマンのメッセージを聞きました。
※露伴たちと情報交換をしました。内容は『迷える奴隷』参照。
※荒木を倒し全てが終わった後、露伴に『記憶を読ませる』という約束をさせられました。
※ポルナレフのデイパックも確認しました。DISCに描かれている絵が空条承太郎であることは把握しましたが、DISCの用途に今回の戦闘で気が付いたかは不明です。



【D-5 北部/1日目 真夜中】
【ディオ・ブランドー】
[時間軸]:大学卒業を目前にしたラグビーの試合の終了後(1巻)
[状態]:内臓の痛み、右腕負傷、左腕欠損(波紋と、ジョナサンが持っていた包帯で処置済み)、軽度の銃創、左足負傷、
    ジョルノ、シーザー、由花子(と荒木)への憎しみ
[装備]:『ホワイトスネイク』のスタンドDISC
[道具]:ヘリコの鍵、ウェザーの記憶DISC、アイアンボールボウガンの鉄球、剃刀&釘セット(約20個)、基本支給品×2(水全て消費)、
    不明支給品0〜1(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:なんとしても生き残って、荒木のスタンドを手に入れる。
0.とりあえず放送まで休む。方針は放送次第で決定。
1.ジョージ殺しの罪を吉良になすりつけることで集団に入りやすくする。
2.吉良を殺せてスッキリ。ジョナサンにも殺意。
3.荒木のスタンドDISC生成の時間稼ぎのために、スタンド使いを『上に立って従わせる』。
4.ジョルノ、由花子に借りを返す
5.ジョナサンには最終的には死んでほしい
6.ジョルノが……俺の息子だと!?
[備考]
※見せしめの際、周囲の人間の顔を見渡し、危険そうな人物と安全(利用でき)そうな人物の顔を覚えています
※ジョルノからスタンドの基本的なこと(「一人能力」「精神エネルギー(のビジョン)であること」など)を教わりました。
 ジョルノの仲間や敵のスタンド能力について聞いたかは不明です。(ジョルノの仲間の名前は聞きました)
※ラバーソールと由花子の企みを知りました。
※『イエローテンパランス』、『キング・クリムゾン』の能力を把握しました。
※『ホワイトスネイク』の全能力使用可能。頭部を強打されればDISCが外れるかもしれません。


※吉良吉影の死体の胸元にアイスピックが突き刺さっています。吉良吉影の最後の支給品でした。
※【C-5西部 民家】吉良吉影の死体の近くに、ティッシュケースに入れた角砂糖(爆弾に変える用・残り4個)、携帯電話、折り畳み傘、
 クリップ×2 、ディオの左手、 ハンカチに包んだ角砂糖(食用)×3、ティッシュに包んだ角砂糖(爆弾に変える用)×5、
 ポケットサイズの手鏡×2、支給品一式×2、緑色のスリッパ、マグカップ、紅茶パック(1/4ダース)、ボールペン二本、
 CCDカメラの小型モニター、ギャンブルチップ20枚、二分間睡眠薬×1 が放置されています。
※【D-4 北部】に支給品一式 ×5(内一食分食料と方位磁石消費)が放置されています。
※【C-5 西部】にサブマシンガン(残弾なし)、巨大なアイアンボールボウガン、ボウガンの鉄球が放置されています。
※ヨーロッパ・エクスプレスはDIOの館を離れました。どこに行ったのかは不明です。

396天の光は全て星 ◆0ZaALZil.A:2011/02/13(日) 12:57:11 ID:???
以上です。
誤字脱字、矛盾点などあれば指摘お願いします。ないようでしたら規制中のため、どなたか代理投下を。

◆vvatO30wn. 氏へ
連絡のとり方が分からず、ここで聞くのも自分から展開ネタバレしてるみたいな気がしたので、SS中、氏に無断でラッシュの掛け声を使ってしまいました。
さすがに決め手があれだけだと見栄えに欠けるので、つい欲が出ました。事後になりますがお詫び申し上げます。
まずいようでしたら修正しますので、その際はご連絡を。

397ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/02/13(日) 15:54:41 ID:???
投下乙です
感想は本スレにて書きたいと思います

指摘としましては、
FFは特殊な数え方をするようなので、
残りは12(13)人ですね

398 ◆SF.flmxVNo:2011/03/22(火) 04:40:16 ID:???
大変長らくお待たせいたしました。
本スレが落ちているので、一先ずこちらに投下いたします。

399君の心に希望はあるか ◆SF.flmxVNo:2011/03/22(火) 04:41:56 ID:???
赤く彩られたナチス研究所を囲む庭園の一角は、まさに絶対零度の空間と形容すべき痛々しい沈黙が支配していた。
いや実際には、この血なまぐさい情景には不釣り合いな程に優雅なクラシックと
荒木の愉快そうな、それでいてどこか間延びした放送が流れていたのだけれど。

誰も言葉を発しない。顔を見合わせもしない。呼吸音すらも聞こえない。
どうしてこうなった?何故報われない?救われやしない?
最善を尽くした筈だ。尊い犠牲も伴った。神はこれ以上何をしろと仰せなのか。
傍から見ればほんの一瞬、それでいて永遠とも思える、独りよがりな押し問答が堂々巡りする。
そして止まった時間は再び動き出し、どうしようもなく非情な現実が訪れる。
結末はいつだって残酷だ。だからこそ甘美で、数多の人間を魅了して止まないのである。


◇   ◆   ◇


思えば、アンラッキーな要素が重なり過ぎていた。
やっとの思いで倒した怪物がまだ死んでいない?このタイミングで放送が始まった?それだけではない。
ブチャラティの性格だ、自らの身に起きた『異変』に気付くや否や、彼は迷わず死を選んだに違いない。
だが彼の身体全体を縛る強い力に阻まれ、それでも彼は仲間にとって最良の策は何であるのかを理解した。
そして自己崩壊の恐怖と諦念を必死に押し殺しながら、リゾットに『助けてくれ』ではなく『殺してくれ』と嘆願したのだ。

ブチャラティの悲しいまでの覚悟は、皮肉にもギャング達を少しばかり躊躇させてしまった。
エシディシの息の根を止めるのに、これ以上のチャンスは無い。むしろ今を逃せば、多大なる犠牲と苦労は全て水泡に帰す。
分かっていた。ブチャラティがそれを真に望んでいる事も。しかし、彼らとて所詮は人間だった。
ほんの眇眇たる感情の揺らぎ、されども新たなる惨劇への引き金としては充分だった。

「殺させやしねーッ!!まずはてめーら全員地獄に叩き落としてやるッ!!グシャシャシャシャアーッ!」

『運命の車輪』は確実に回転していく。悪夢はまだ、終わらない。



我に返ったジョルノが、ゴールド・エクスペリエンスの拳を振り上げた時にはもう手遅れだった。
コキリ、と首を鳴らすブチャラティ。その狂気に囚われた面様にボコボコと血管が浮かび上がる。
声色は最早エシディシのそれであり、すっかり散瞳した目には何も映っていない。
と思う間もなく、ジョルノの顔面に鮮やかなカウンターがヒット。
運悪く背後に立っていたフーゴもろとも、彼の体はまたしても壁面へと殴り飛ばされた。

「なんて執念だ……エシディシ…。」

失神したジョルノを庇いながら、フーゴはブチャラティをぼんやり見つめる。
自分にはどうしようもない何かに押し流されていく感覚に、フーゴはただただ戦慄するのみだった。

「そういうセリフは、終わってから言うもんだぜ。」
「MU?」

リゾットは既に動いていた。
エシディシがジョルノに気を取られている隙に『メタリカ』を発動、ブチャラティの心臓部に鋏を作り出す。
瀕死のエシディシが完全にプッツンしている今の内に手を下さねば、いずれ取り返しのつかない事態に発展する。
手段は選ばない。『メタリカ』で奴の心臓をくり抜き、余分に持っている首輪で粉微塵に爆破する。
いくら究極の生物だろうと、唯一残った貴重なパーツにそんな真似をされれば、今度こそ復活は出来まい。

「てめーの次のセリフは『残念だったな。お前は既に出来上がっている』だ!」
「残念だったな。お前は既に出来上がっている…ハッ!?」

だが、功を焦り冷静さを失っていたのはむしろリゾットの方だった。
初っ端から急所を叩く見え見えの攻撃など愚策も愚策。むしろ逆に武器を与えてしまったも同然。
エシディシは大切な心臓へ乱暴に手を突っ込み、ためらい無く胸部から鋏を引き抜く。
拳によって空けられた大穴は、エシディシの細胞が盛り上がり即座に埋めてしまった。
まるでコイン貫通マジックでも見ている様だ。ほんの数分の間にここまでブチャラティの体を浸食するとは。
やはりブチャラティの意識がある内に心臓を潰せなかったのが致命的だったと、リゾットは痛感した。

「俺の心臓を狙ってんのはバレバレなんだよォ!このチンボコ野郎!」

留め金を壊し二本のメス状にした刃を構えるエシディシ。その片手がピクリと動くのを見たリゾットは、
超人的な反射神経で後ろにのけ反った。彼の鼻先を銀色の光が一閃し、背後で鋭い刺突音が響く。
頭巾と一緒に額を浅く切られただけで済んだが、彼でなければ眉間に深々と刃が喰い込んでいただろう。
無理な動きに体勢を保てず尻餅をついたリゾットを一瞥すると、
エシディシはサボテンや西部劇に出てきそうな植物達が群生する茂みの中へと消えて行った。

400君の心に希望はあるか ◆SF.flmxVNo:2011/03/22(火) 04:42:45 ID:???
何の事は無い。体の大半を失い大幅に弱体化したエシディシが三人のスタンド使いを相手にするなど、土台無理な話だ。
事にリゾットの能力は、人間となった身には尚更相性が悪い。彼の狙いは最初から逃亡だったのだ。
あの殺気立った口ぶりに騙されたリゾットが、完全にエシディシに一本取られてしまった形となる。

「クソ………ッ!!」

悔しそうに顔を歪めるリゾット。不味い事になった、ここでエシディシを見失えば、
最低でも俺達を簡単に蹴散らせる程度に回復するまで、決して姿を現さないだろう。
だが、あのプライドの高い柱の男が無様にも、餌以下の存在である人間に尻尾を巻いて逃げた。
つまり奴はちょっとでも押せば倒れてしまう、相当に追いつめられた状態と言う訳だ。
深追いは禁物などと悠長な事は言ってられない。草の根を分けてでも探し出し、奴をここで始末する!



「ジョルノ、フーゴ!いつまでも寝てんじゃあないッ!!ホルマジオとブチャラティが死を賭して作り出したチャンス、
断じて無駄には出来ん!ここでエシディシを取り逃がせば、俺たちに勝ち目は無い。すぐ追うぞッ!!」

僕達を叱咤激励しつつ、ディパックを担いで駆け出したリゾットを見送りながら、僕は渋々身を起こした。
全く…。簡単に言ってくれますね。あと少しで喉元に喰らい付けるって所で引き下がる訳にいかないってのは
重々承知してますが。こっちは顔面に二発もいいのを貰って脳震盪を起こしかけてるんですよ。
それにブチャラティだって…ああいけない。ちょいと投げ遣りになっていましたね、僕らしくもない。

「ジョルノ、意識はあるか?手を…。」

すっとフーゴが手を差し出す。とにかく感傷に浸っている場合ではありません。
僕はしばらく戦えないかも知れないが、生きている限り能力は有効です。仲間の負傷を手当てし、
ブチャラティの血液を基にしたあの鋏を使ってエシディシを追跡する事も可能だ。
命が尽きるその時まで精一杯、与えられた役割をこなす事がギャングの宿命ですからね。やれやれです…。

一応礼を言おうとフーゴの顔を見上げた僕は、掴みかけていた手をはたと止めた。
僕を無表情に見下ろすその瞳は、マンホールの底に似た空虚で吸い込まれそうな闇を湛えていた。
彼が何を考えているのか全く読めない。一切の喜怒哀楽が取り払われたその顔つきを、僕は能面みたいだなと思った。
唐突に不安に襲われました。仲間であるフーゴに言い知れぬ恐怖を感じたのは、きっとこれが最初で最後だったでしょう。

――――フーゴ、何故そんな顔をしているのですか?…そうか、フーゴ。君は

401君の心に希望はあるか ◆SF.flmxVNo:2011/03/22(火) 04:43:36 ID:???
◇   ◆   ◇


「フゥゥゥゥゥゥゥゥゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!」

灼熱地獄と化したナチス研究所内で蠢く一つの影。
中央には体の半分近くが欠損した、B級ホラー映画の小道具そっくりの死体が寝転がされている。
その屍骸に誰かが指を突き立てていた。と、瞬く間に死人の体がミイラ状にしぼみ、
逆に片膝をついて血を絞り取るその怪物にみるみる血色が戻り、負傷が癒えてゆく。

「切断面が塞がれている…。なかなか気の利いた心遣いじゃあないか、ジョルノ。」

ニタリ、と笑うエシディシ。先程まで力強く拍動していた胸部の肉塊はもう影も形も無い。
禁止エリアに消えた元の体への執着は捨て、ブチャラティの体をベースに失った部分を補う事にした
エシディシは、心臓を細胞レベルにまで分解し、あちこちの組織に付着し代謝機能を支配。
そして癌細胞の如く増殖し、力を取り戻しつつあった。エシディシが単なる柱の男であったのなら、
臓器の一つや二つを人間に乗り移した所で、血液を沸騰させその体もろとも爆散する程度が精々だが、
今の彼は身一つであらゆる生物を創造する究極生物。この位なら造作もなかった。


「とはいえ、これっぽちの屍ではまだまだ足りないか…。もっと新鮮で大量の血を吸う必要がある。」

呟きつつ目を瞑り、精神を集中させる。と、体から黄色のスライムがウジュリと吹き出し、全身が覆い包まれる。
彼の本体は遥か遠くのエリアに流され最早回収の術は無いが、共に水流の藻屑となったホルマジオごと、
その体にイエローテンパランスのDISCが取り込まれている。
司令塔とも言うべき今の体にDISCが差しこまれていない分、自由自在にとはいかないだろうが、
だいぶコントロールに慣れた黄の節制を再び呼び戻し、身に纏わせる事だけは上手くいったようだ。

エシディシには、カーズのような卓越した頭脳も、ワムウのような天才的な戦闘のカンも無い。
しかし、自らの性格を把握し、精神をどん底に追い込まれてもすぐにスイッチを切り替えられる沈着さ、
誇りを捨てても、醜いと罵られてでも生きようとする執念深さは、裏を返せば強い精神力の現れだと言える。

人間も吸血鬼も、柱の男すらぶっちぎりで超越した究極生命体が、ギャング五人ごときに敗北を喫したのは何故か。
エシディシには『覚悟』が足りなかった。手足をもがれても、とびっきりの苦痛を伴った死を目前にしても、
標的を仕留める為なら厭わない究極の自己犠牲の精神を、死の危険と無縁の彼は持ち合わせていない。
エシディシは油断していた。悲願である究極生物化の実現に舞い上がり、図らずもゲームすら念頭から消え、
更に荒木を含めた参加者全員を、クソカス以下と決めつけ調子に乗ってしまったのだ。

「認めよう…。俺は貴様らよりも『劣って』いた。貴様らにあって俺には無い強みとは一体何か。
それは身体能力でもスタンドや流法でもない。あらゆる困難に立ち向かい、打ち勝つ『黄金の意志』!」

スタンドも復活し、不死身さに拍車をかけたかに見えるエシディシだが、実際は心臓一つから全てのパーツを
再生するには膨大なエネルギーが必要となる。バラバラに分裂した手前、この体からはもう脱出不可能であるし、
もしブチャラティの体が死ねば、彼もまた再起不能に陥ってしまう。むしろ不安要素の方が大きかった。

402君の心に希望はあるか ◆SF.flmxVNo:2011/03/22(火) 04:44:21 ID:???

「俺の精神はまだまだ未熟だった。この醜態は、自らの愚かさが招いた罰として受け入れよう。
この屈辱はいずれ晴らす。そして次こそは、真の究極生物として貴様らの前に対峙してみせる!」

エシディシは心身共にズタボロで、人間ごときに死の一歩手前まで追いやられた敗北感に打ちひしがれていた。
だがそれが必ずしもマイナスであるとは言えない。今は単なる妄執だけで命を繋いでいるが、
この闘いによって確実にエシディシは成長し、その心には新たなる強さの片鱗が芽吹いた。
この崖っぷちの危機を見事乗り越えた時こそ、彼は世界を思うままに操る『神』として君臨するに違いない。
しかしながらここは殺し合いの場。その時が来るかどうかは、また別の話であるが。


◇   ◆   ◇


「(奴はまた建物内に戻ったのか?とはいえ、俺が探れる範囲はここまでだ。)」

敢えて奇襲を警戒せず、懐中電灯でエシディシの血痕や踏み折られた草木を辿っていたリゾット。
鉄分を纏って透明化した所で柱の男には無意味であるし、奇襲に怯えてなどいられない、
むしろ深手を負わされようが、刺し違えてでもお前の喉に喰らい付き、ジョルノ達の前に引きずり出して見せる。

ところでジョルノとフーゴは一体何をしているのだろう、やけに遅い。
エシディシの件を抜きにしても、この放送で20人もの死者が告げられ、加えてこの場所が禁止エリアに指定された。
最期の闘いは最早すぐそこだ。のんびり怪我を治療している余裕は無いと言うのに。

背後に人の気配を感じた。
矢庭に振り返ったリゾットの目の前に立っていたのは、血走った目でリゾットの脳天に鋏を振り下ろすエシディシ
…ではなく、幽鬼の如く虚ろに佇むフーゴだった。

「な・・・・フー・・・ゴ・・・?」

フーゴは敵ではない。にも拘らず、リゾットの顔色がさっと青ざめる。
考えたくない事だった。常に頭の片隅で懸念はしていた。だがこの状況、タイミングでまさか
そんな早まった真似はしないだろうと、楽観的に捉えていた部分もあった。

「・・・・予想外、でしたか・・?」

隣に居なければならない筈のジョルノは、どういう訳かフーゴの腕の中にすっぽりと収まっていた。
彼のトレードマークとも言える前髪の三つのカールはフーゴに鷲掴まれ見る影も無く、更に血と脳漿まで滴り落ちていた。
最期の一時は苦悶に満ちていただろうに、どこか安らかな死に顔を見せるジョルノに、首から下の胴体は無かった。


くらくらとする頭を抱えながらも、あの時ジョルノはしっかりと放送を聞いていた。
ペッシ、ジョージ・ジョースター1世、岸辺露伴、グェス、川尻早人、ホルマジオ、リンゴォ・ロードアゲイン…。
彼らの死は聞くまでもなく知っている。悼む気持ちはあったが、今更後悔しても無駄だと半ば割り切っていた。

だがテレンス・T・ダービー、シーザー・アントニオ・ツェペリ、音石明、虹村億泰、吉良吉影…。
次々と連ねられてゆく死者達の名に、ジョルノはひたすら絶句していた。
僕達がやった事に一体何の意味があったのだろう。何がいけなかったのか、良かれと思って取った別行動が
完全に裏目に出てしまった。僕達の仲間はあと何人残っている?そもそもこの人数でどう荒木に対抗する?
勇敢かつ頭の回転が速いジョルノだが、今度ばかりは悲嘆に暮れるよりほかなかった。

フーゴも同様だった。
ナチス研究所には、ここで殺されるかも知れないなと半ば覚悟しつつ足を踏み入れた。
だがブチャラティはそんな彼を目の当たりにして、怒りを見せるどころか共に闘う申し出を受け入れてくれた。
フーゴが犯した罪を知りつつも、いずれ制裁を与えると宣言しつつも、部下である彼を信頼し背中を預けてくれたのだ。
だから再び忠誠を誓った。命を懸けて怪物に立ち向かった。

403君の心に希望はあるか ◆SF.flmxVNo:2011/03/22(火) 04:45:48 ID:???
しかし結果を見てみろ、ああなってしまった以上ブチャラティはもう助からないだろう。彼は心の中で確信していた。
その瞬間、フーゴの中で微かに輝いていた何かが完全に消え失せた。
目の前にいるのは、敵対チームのリーダーと、どんな音楽が好みなのかも知らない浅い付き合いの新人ギャングだけ。
この同盟にもう価値は無い。あの時もフーゴの参入に肯定的だったのはブチャラティだけだった。
こうなってはいつ寝首をかかれたっておかしくないだろう。ならば殺られる前に殺るしかないのだ。

結局のところ、フーゴには残りの参加者と一つしかない椅子を巡り殺し合う運命以外残されていなかった。
フーゴは荒木の恐ろしさを嫌と言うほど知っている、対峙するなぞもっての他だし、
ボスに敵視された以上、パッショーネに戻る事も叶わない。組織を乗っ取るまでは行かなくとも、
ディアボロ含めた全員を殺して優勝しなければ、裏切り者のフーゴが生き抜く術は無いのだ。
たった一人でエシディシやディアボロ、全ての生き残り達を倒す事が出来るのか?やれるかではなくやるしかない。
勝率は限りなくゼロだとしても、フーゴは立ち止まれない。茨の道を死ぬまで歩み続けなければならない。

パープル・ヘイズに首を締められ銃口を向けられても、ジョルノは力なく項垂れるのみだった。
ブチャラティはもういない、元の世界で仲間だったフーゴにすら裏切られた。
フーゴの真意を悟ったジョルノは精神的にすっかり参っていた。立ち直るには如何せん時間が足りない。
ジョルノの心の中にも、フーゴと同じく深い闇が巣食っていた。既にフーゴの狂気を跳ね除ける力は残っていなかった。

…そうか、フーゴ。君は絶望しているんですね。

僕と同じに。


仲間との決別、優勝への殺戮を選んだフーゴ。仲間の解放、荒木への挑戦を選んだリゾット。
二人の道は今、完全に別たれた。彼らの道が再び交わる事はもう無い。


【F-2 ナチス研究所 庭/2日目 深夜】

【リゾット・ネエロ】
[スタンド]:『メタリカ』
[時間軸]:サルディニア上陸前
[状態]:頭巾の玉の一つに傷、左耳と左手の小指消失(止血済)、額に切傷、身体ダメージ(極大)、 身体疲労(極大)
[装備]:フーゴのフォーク、ミスタがパくった銃【オートマチック式】(2/15)
[道具]:デイバッグ&基本支給品(リゾット、ホルマジオ、ブチャラティ、ジョルノ、億泰、テレンスのもの そのうち一食だけ水と食料なし)
    不明支給品残り0〜1(億泰のもの)、参加者詳細データ集、『ザ・ワールド』のスタンドDISC
    首輪の設計図(ジョセフが念写したもの)、ダービーズ・チケット、妨害電波発信装置
    ペッシの首輪、重ちーが爆殺された100円玉(一枚)、ジョルノの『探知機』となっている小石
    紫外線照射装置、、承太郎のライター、シャーロットちゃん、スージーの首輪、ワンチェンの首輪
    包帯、冬のナマズみたいにおとなしくさせる注射器、不明支給品0〜2(確認済:ジョルノのもの)
[思考・状況]
基本行動方針:荒木を殺害し自由を手にする  
0.嘘だろ、フーゴ…!?
1.エシディシの息の根を止め、ブチャラティを呪縛から解放する。
2.首輪を外すor首輪解除に役立ちそうな人物を味方に引き込む。
  カタギ(首輪解除に有益な人材)には素性を伏せてでも接触してみる。
3.荒木に関する情報を集める。他の施設で使えるもの(者・物)がないか、興味。
[備考]
※リゾットの情報把握
 承太郎、ジョセフ、花京院、ポルナレフ、イギー、F・Fの知るホワイトスネイク、ケンゾー(ここまでは能力も把握)
 F・F(能力は磁力操作と勘違いしている)、徐倫(名前のみ)、サウンドマン、山岸由花子(名前のみ)

404君の心に希望はあるか ◆SF.flmxVNo:2011/03/22(火) 04:46:36 ID:???
※リゾットのメモには以下のことが書かれています。
[主催者:荒木飛呂彦について]
荒木のスタンド → 人間ワープ…見せしめの女の空中浮遊、参加者の時間軸の違い(並行世界まで干渉可能)
        → 精密機動性・射程距離 ともに計り知れない
開催目的 → 不明:『参加者の死』が目的ならば首輪は外れない→この線は薄い
           『その他』(娯楽?)が目的ならば首輪は外れるかもしれない 
※荒木に協力者がいる可能性有り

【以下ブチャラティのメモの写し】
①荒木飛呂彦について
 ・ナランチャのエアロスミスの射程距離内にいる可能性あり
  →西端【B-1】外から見てそれらしき施設無し。東端の海の先にある?(単純に地下施設という可能性も) →G-10の地下と判明
 ・荒木に協力者はいない?(いるなら、最初に見せつけた方が殺し合いは円滑に進む) →協力者あり。ダービーにもいることが確実。
②首輪について
 ・繋ぎ目がない→分解を恐れている?=分解できる技術をもった人物がこの参加者の中にいる?
 ・首輪に生死を区別するなんらかのものがある→荒木のスタンド能力?
  →可能性は薄い(監視など、別の手段を用いているかもしれないが首輪そのものに常に作用させるのは難しい)
 ・スティッキィ・フィンガーズの発動は保留 だか時期を見計らって必ず行う。
③参加者について
 ・知り合いが固められている→ある程度関係のある人間を集めている。なぜなら敵対・裏切りなどが発生しやすいから
 ・荒木は“ジョースター”“空条”“ツェペリ”家に恨みを持った人物?→要確認
 ・なんらかの法則で並べられた名前→国別?“なんらか”の法則があるのは間違いない
 ・未知の能力がある→スタンド能力を過信してはならない
 ・参加者はスタンド使いまたは、未知の能力者たち?
 ・空間自体にスタンド能力?→一般人もスタンドが見えることから


【パンナコッタ・フーゴ】
[時間軸]:ブチャラティチームとの離別後(56巻)
[状態]:身体ダメージ(極大)、 身体疲労(極大)
[装備]:ナランチャのナイフ、S&W M19(1/6)
[道具]:基本支給品×4、ダービーズチケット、ディアボロのデスマスク、予備弾薬37発(リボルバー弾7発、オートマチック30発)
    鳩のレターセット、メサイアのDISC、ジョルノの『探知機』となっている小石
    S&W M19の予備弾薬(30/30)
[思考・状況]
基本行動方針:未熟な過去に打ち勝ち、新しい自分となる
1.完全にゲームに乗った、優勝の為ならどんな汚い手も辞さない。
2.単身でディアボロとエシディシに勝てるかは分からないが、立ち向かわなければならない。
3.優勝したら、組織の手が届かない何処か遠い所で新たな人生を歩もう。
[備考]
※荒木の能力は「空間を操る(作る)」、もしくは「物体コピー」ではないかと考えました(決定打がないので、あくまで憶測)
※空条承太郎、東方仗助、虹村億泰、山岸由花子、岸辺露伴、トニオ・トラサルディー、ジョセフ・ジョースターの能力と容姿に関する大まかな説明を聞きました。
※吉良吉影の能力(爆弾化のみ)を把握しました。しかし、一つしか爆弾化できないことや接触弾、点火弾に関しては聞いていません。
 また、容姿についても髑髏のネクタイ以外には聞いていません
※花京院とその仲間(ジョセフ・ジョースター、J・P・ポルナレフ、イギー、空条承太郎)の風貌、スタンド能力をすべて把握しました。
※アヴドゥルとフェルディナンドの考察から時代を超えて参加者が集められていることも知りました。
※デスマスクの男の正体がボス=ディアボロであること、その能力などに気づきました。

405君の心に希望はあるか ◆SF.flmxVNo:2011/03/22(火) 04:47:25 ID:???
◇   ◆   ◇


ほぼ同時刻、ナチス研究所から数百メートル離れた空き地に二人の男が佇んでいた。
放送で告げられた死者の多さに愕然とし、憂いを含んだ表情を浮かべる学生服の少年、花京院典明は
やや離れた所から様子を窺う中性的な顔立ちの男、ナルシソ・アナスイに気付いていない模様だ。

背中がガラ空きだぜ?花京院。
さっきの放送でどれだけショックな内容を言われたのか知らないが、
「ポルナレフ」とか「たったの12人」だのブツブツ言いながら歩き回るザマはどう見てもアブナイ奴だぞ。
生き残りの12人が心配みたいだが、後ろで俺に狙われている事にも気付けないんじゃあ世話ないな。
さっきはティムの野郎が邪魔して仕留め損ねたが、同じ目的地に向かっていたのがお前の運の尽きだぜ。
悪く思うなよ。じゃあな、花京院。

勝利を確信し、口角を上げ余裕たっぷりで指先を花京院の後頭部にポイントする。
『おい!!』と大声を出して花京院の絶望に満ちたツラを拝んでやるのも面白いかもな。などと考えていた矢先、

ドゴォッ!!

花京院の姿をしっかりと捉えていたはずの視界は暗転し、
頭部を熟れたトマトの如く弾けさせるつもりだったF・F弾は虚しく地面を穿つ。
何が起きたのか把握するのに少しだけ時間がかかった。どうやら俺は今地べたに這いつくばっている。
何故なら後ろからタックルをかましやがったクソ野郎に組み伏せられ、腕と頸動脈の辺りを押さえられているからだ。
何て事だ!花京院をブチ殺すのに夢中で、俺自身が狙われてるだなんて夢にも思わなかった!
それだけじゃない…。こいつ、俺の動きを抑えたかったんじゃない。俺の血を・・・吸ってやがる・・・!

「クソッ!!離れやがれこのダボがァ!!」
「…チィッ!」

関節を無理矢理外し、俺に圧し掛かる吸血野郎にF・F弾を放つ。
苦しい姿勢からだが、ダイバー・ダウンのパワーが上乗せされた弾丸なら野郎を突き飛ばすのに充分だった。
すぐさま体勢を立て直し、首筋の傷穴をプランクトンで埋める。横をちらりと見やると、
流石にこちらに気付いたらしい花京院がぽかんと口を開けて俺を見ていた。

「何してやがる!早くここから逃げろ!そのままナチス研究所へ向かえ、俺の仲間がいる!」

人の血を吸うだなんてえげつない真似をしておきながら、至極真っ当な台詞を吐くんだな。
ん?こいつ…。暗がりでよく見えなかったが、ブローノ・ブチャラティじゃないか?
こいつ、吸血鬼だったのか?いや、あのジッパーを操るスタンドが傍らに居ないし、何だか様子がおかしい。
F・F弾に抉られた脇腹の傷がグジュリグジュリと治り、しかも撃ち込んだフー・ファイターズ達が悉く死滅している。

「フン、ちっぽけな人間風情が、大人しく眠っていろ。」

ブチャラティの目の色が急に変わり、声もまるで別人の如く低くなった。
俺の中で警鐘が鳴り響く。この声を、身に纏う絶対的な強者のオーラを、俺は知っている。
突然、体のあちこちに焼け付く痛みを感じた。慌てて自らをよく見渡すと、
吸血してる隙にくっついたのだろう、黄色いスライムが俺の肉をほうぼうで貪り喰らっていた。

「第三ラウンドを始めようじゃあないか。え?それとも最終ラウンドか?フー・ファイターズよ。」

406君の心に希望はあるか ◆SF.flmxVNo:2011/03/22(火) 04:48:13 ID:???
【F-2 やや北東/2日目 深夜】

【花京院典明】
[時間軸]:ゲブ神に目を切られる直前
[状態]:精神消耗(極大)、身体ダメージ(中)、右肩・脇腹に銃創(応急処置済)、全身に切り傷、激しい自己嫌悪
[装備]:なし
[道具]:ジョジョロワトランプ、支給品一式
[思考・状況]
基本行動方針:打倒荒木
1.ブチャラティの指示通りナチス研究所に行くか、それとも此処に留まり戦いに加わるか悩んでいる。
2.結局ポルナレフには会えなかった。僕は無力な人間だ…。
3.本当にナチス研究所に仲間が居るのだろうか?それは僕の味方なのか?
4.打倒荒木、巻き込まれた参加者の保護、をするにはもう遅いのかもしれない。
[備考]
※荒木から直接情報を得ました。
「脅されて多数の人間が協力を強いられているが根幹までに関わっているのは一人(宮本輝之助)だけ」
※フーゴとフェルディナンドと情報交換しました。フーゴと彼のかつての仲間の風貌、スタンド能力をすべて把握しました。
※マウンテン・ティムと情報を交換しました。お互いの支給品を把握しました。
※アナスイの語った内容については半信半疑です。その後アナスイがティムに語った真実は聞いていません。


【ナルシソ・アナスイ with F・F】
【スタンド】:ダイバー・ダウン・フー・ファイターズ
【時間軸】:アナスイ…「水族館」脱獄後、F・F…DアンG抹殺後
【状態】:貧血、首に指先を突き立てられた傷(プランクトンで処置済み)、黄の節制に食われている、全身にF・Fの細胞が寄生し、共存している。
【装備】:なし
【道具】:基本支給品×5、点滴、クマちゃん人形、双眼鏡、ラング・ラングラーの首輪、トランシーバー2つ(スイッチOFF)、ラング・ラングラーの不明支給品(1〜3。把握済)、テイザー銃(予備カートリッジ×2)、杜王町三千分の一地図、牛タンの味噌漬け、ノートパソコンの幽霊
※基本支給品はアナスイ、ラングラー、ティム、ヴェルサス、音石の五人分です。
 音石の水はF・Fが回復に利用しました。その他食料、水がどれだけ残っているかは不明です。
【思考・状況】
基本行動方針:空条徐倫を生存させるために彼女を優勝させる。そのために、徐倫以外の全ての参加者を殺害する。
0.お前、エシディシなのか!?
1.エシディシと決着をつけ、花京院を始末する。
2.ナチス研究所にも参加者がいると確定したので、そちらも始末する。
3.徐倫には会いたくない。

407君の心に希望はあるか ◆SF.flmxVNo:2011/03/22(火) 04:49:29 ID:???

【ブローノ・ブチャラティ with エシディシ】
【ブローノ・ブチャラティ】
[スタンド]:『スティッキー・フィンガーズ』
[時間軸]:護衛指令と共にトリッシュを受け取った直後
[状態]: 瀕死、意識昏迷状態、エシディシに全身を乗っ取られている
[装備]:ジョルノの『探知機』となっている小石、スージーの指輪
[道具]:メタリカの鋏の欠片
[思考・状況]
基本行動方針:打倒主催、ゲーム脱出
0.・・・(気絶中)
1.自分はきっと助からないので、せめてエシディシを巻き込む形で自殺したい。なるべく花京院を遠ざけたい。
[備考]
※代謝機能を持続させる為だけにエシディシに生かされています。今後どうなるかは分かりません。
※基本的に体の主導権をエシディシに握られていますが、ほんの一瞬だけ意識を取り戻す事もあります。
※極端に衰弱しており、もうスティッキー・フィンガーズは使えません。またエシディシの細胞に浸食されているので意識があっても体を満足に動かせません。

【エシディシ】
[スタンド]:『イエロー・テンパランス(仮)』
[時間軸]:JC9巻、ジョセフの“糸の結界”を切断した瞬間
[状態]:ブチャラティと同化、少しずつ能力を取り戻しつつある。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:精神力が人間より劣っていたと認め、リゾット達に再起を誓う。力を取り戻し、究極生物として荒木をも超越する。
1.F・Fと決着をつけ、花京院の血を吸って身体の回復を図る。
2.まだブチャラティの体が馴染んでいないので、もっと人間の血を吸う必要がある。
3.いずれリゾット達にリベンジを果たす。もう慢心はしない。
[備考]
※現在ブチャラティの体の30%程度はエシディシの細胞であり、今なお増殖中です。
※イエロー・テンパランスの能力の一部が使えます。これはDISCよりもエシディシに芽生えたスタンドの才能による部分が大きいです。が、コントロールには疲労を伴います。
※ブチャラティの体を乗っ取っている状態なので、あくまでも人間が出せる限界+αの身体能力しかありません。具体的に言えば吸血鬼と同程度といったところです。

【ジョルノ・ジョバァーナ 死亡】
【残り 11(12)名】

408 ◆SF.flmxVNo:2011/03/22(火) 05:08:30 ID:???
投下は以上です。
三週間近い時間を頂いただけの作品に仕上がっているかどうか自信はありませんが、ご指摘をお待ちしております。

以前も申し上げたとおり、震災の影響で自分の住んでいる地域は多大な損害を被りました。
ラッキーな事に自宅まで津波が押し寄せず損壊を免れ、ガス以外は既に復旧しましたが、
相変わらず物資が不足しており、身近な人を津波で亡くしました。何度か投下を諦めようとも思いました。
そんな大変な状況の中で暢気にssを書いているのは同じ被災者の方々に失礼な事かもしれませんが、
自分の中でジョジョロワは生活の一部に組み込まれており、例え一時でも色んな方々に作品を読んで頂き
感想を貰ったりする事が励みになっていましたし、また他の書き手さんが投下した作品を読むのがこの所の生きがいになっていました。

御託はさておき、どうにか投下に踏み切れて心底ホッとしてます。
今のところ書き手チャットに参加できるかどうかは分かりませんが、今後ともよろしくお願いします。

409ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/03/22(火) 19:33:24 ID:???
投下乙です。ご無事でなによりです。規制されてなければスレ立ててきます
指摘は特にありませんが、イエテンのDISCが外れたのに使えてもいいんだろうか、と少し疑問に思いました

410ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/03/23(水) 02:01:27 ID:???
投下乙です
アナスイがブチャラティ知ってたっけ?って思ったけど、
ダービー弟→F・F→アナスイ ですね
指摘は特にありません(イエテンのDISCについてはちょっと分かりませんが…

感想は本スレが立って本投下されたら書きたいです
書き手チャット楽しみですね

411ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/03/24(木) 23:06:24 ID:???
投下乙です。

原作でエシディシがスージーQを乗っ取った時は心臓ではなく脳が取りついてたはずなんですが……乗っ取れるんですか?
スタンドDISCもエシディシの肉体がパープルヘイズの毒に侵された以上、外れなかったとしても消失しているのでは?

412 ◆SF.flmxVNo:2011/03/24(木) 23:37:03 ID:???
すいません。リアルの状況が変わりネットが使えなくなるかも知れません。
手直し版を投稿するのでどなたか代理投下と出来ればwiki掲載をお願いできないでしょうか。

イエテンの件ですが、プッチ神父がF・Fに挿したDISCが分裂したフー・ファイターズにも能力を与えていたので
プランクトンに出来るなら究極生物にも出来るだろって強引な解釈です。何でも究極生物に不可能はないで片付けるのもどうかと思いますが。
ぶっちゃけガチで闘ったらアナスイF・Fが有利過ぎるのでハンデを付けたかったのですが…駄目でしょうか?

413 ◆SF.flmxVNo:2011/03/24(木) 23:38:12 ID:???
耳鳴りがする。

ナチス研究所を囲む庭園の一角は、絶対零度の空間と形容すべき痛々しい沈黙に支配されていた。
いや実際には、この血なまぐさい情景には不釣り合いな程に優雅なクラシックと
荒木の愉快そうな、それでいてどこか間延びした放送が流れていたのだけれど。

誰も言葉を発しない。顔を見合わせもしない。呼吸音すらも聞こえない。
どうしてこうなった?何故報われない?救われやしない?
最善を尽くした。尊い犠牲も伴った。神はこれ以上何をしろと仰せなのか。
傍から見ればほんの一瞬、それでいて永遠とも思える、独りよがりな押し問答が堂々巡りする。

そして止まった時間は再び動き出し、どうしようもなく非情な現実が訪れる。
結末はいつだって残酷だ。だからこそ甘美で、数多の人間を魅了して止まないのである。


◇   ◆   ◇


思えば、アンラッキーな要素が重なり過ぎていた。
怪物がまだ生きている?放送が始まった?それだけではない。
ブチャラティの性格だ、自らの身に起きた『異変』に気付くや否や、迷わず死を選んだに違いない。
だが彼の身体全体を縛る強い力に阻まれ、それでも彼は仲間にとって最良の策は何であるのかを理解した。
そして自己崩壊の恐怖と諦念を必死に押し殺しながら、リゾットに『助けてくれ』ではなく『殺してくれ』と嘆願したのだ。

エシディシを倒すのにこれ以上のチャンスは無い。むしろ今を逃せば、多大なる犠牲と苦労は全て水泡に帰す。
分かっていた。ブチャラティがそれを真に望んでいる事も。しかし、彼らとて所詮は人間だった。
ブチャラティの悲しい覚悟は、皮肉にもギャング達をほんの少しだけ躊躇させてしまった。

「殺させやしねーッ!!まずはてめーら全員地獄に叩き落としてやるッ!!グシャシャシャシャアーッ!」

『運命の車輪』は確実に回転していく。悪夢はまだ、終わらない。



我に返ったジョルノがゴールド・エクスペリエンスの拳を振り上げるも、既に手遅れだった。
コキリ、と首を鳴らすブチャラティ。その狂気に囚われた面様にボコボコと血管が浮かび上がる。
声色は最早エシディシのそれであり、すっかり散瞳した目には何も映っていない。
と思う間もなく、ジョルノの顔面に鮮やかなカウンターがヒット。
運悪く背後に立っていたフーゴもろとも、彼の体はまたしても壁面へと殴り飛ばされた。

「なんて執念だ……エシディシ…。」

失神したジョルノを庇いながら、フーゴはブチャラティをぼんやり見つめる。
自分にはどうしようもない何かに押し流されていく感覚に、フーゴはただただ戦慄するのみだった。

414 ◆SF.flmxVNo:2011/03/24(木) 23:39:00 ID:???
「そういうセリフは、終わってから言うもんだぜ。」
「MU?」

リゾットは既に動いていた。
瀕死のエシディシが完全にプッツンしている今の内に手を下そうと、直ちに『メタリカ』を発動、
ブチャラティの心臓部に鋏を作り出した。そのまま心臓をくり抜き余分に持っている首輪で消し飛ばせば、
いくら究極の生物とてひとたまりもない筈だ。まさに完璧な作戦である、不可能という点に目を瞑れば。

「てめーの次のセリフは『残念だったな。お前は既に出来上がっている』だ!」
「残念だったな。お前は既に出来上がっている…ハッ!?」

だがむしろ、功を焦り冷静さを失っていたのはリゾットの方だった。
初っ端から急所を叩く見え透いた攻撃など愚策も愚策。それどころか逆に武器を与えてしまったも同然。
エシディシは大切な心臓へ何のためらいもなく手を突っ込むと、いとも簡単に鋏を引き抜いた。
拳が空けた大穴はエシディシの細胞が即座に塞ぎ、さながら世にもグロテスクなコイン貫通マジックといった所か。

「俺の心臓を狙ってんのはバレバレなんだよォ!チンボコ野郎!」

暗殺者の勘が成せる業だろうか、超人的な反射神経で後ろにのけ反ったリゾットの鼻先を、銀色の光が一閃する。
留め金を壊しメス状になった刃が頭巾と額を浅く裂き、背後で鋭い刺突音が響く。
エシディシは無理な体勢に尻餅をついたリゾットを一瞥し、この機を逃さんとばかりに
西部劇に出てきそうな植物達が群生する茂みへとバックステップし、その姿を眩ました。

何の事は無い。体を殆ど失い大幅に弱体化したエシディシが三人のスタンド使いを相手にするなど、土台無理な話だ。
事にリゾットの能力なら、人間の脆い体など簡単に破壊されるだろう。彼の狙いは最初から逃亡だったのだ。

「クソ………ッ!!」

悔しそうに顔を歪めるリゾット。あの殺気立った口ぶりに完全に騙されてしまった訳だ。
ここでエシディシを見失いダメージを回復されれば、次に俺達が勝てる見込みはもう無い。
深追いは禁物などと悠長に言ってられない。奴はちょっとでも押せば倒れる、
草の根を分けてでも探し出し、エシディシをここで始末する!



「ジョルノ、フーゴ!いつまでも寝てんじゃあないッ!!ホルマジオとブチャラティが死を賭して作り出したチャンス、
断じて無駄には出来ん!ここでエシディシを取り逃がせば、俺たちに勝ち目は無いぞッ!!」

僕達を叱咤激励しつつ草むらへ飛び込んだリゾットを見送りながら、僕は渋々身を起こした。
全く…。簡単に言ってくれますね。あと少しで喉元に喰らい付けるって所で引き下がる訳にいかないってのは
重々承知してますが。こっちは顔面に二発もいいのを貰って脳震盪を起こしかけてるんですよ。
それにブチャラティだって…ああいけない。ちょいと投げ遣りになっていましたね、僕らしくもない。

「ジョルノ、意識はあるか?手を…。」

すっとフーゴが手を差し出す。とにかく感傷に浸っている場合ではありません。
僕はしばらく戦えないかも知れないが、生きている限り能力は有効です。仲間の負傷を手当てし、
ブチャラティの血液を基にしたあの鋏を使って、エシディシを追跡する事だって可能だ。
命が尽きるその時まで精一杯、与えられた役割をこなす事がギャングの宿命ですからね。やれやれです…。

一応礼を言おうとフーゴの顔を見上げた僕は、掴みかけていた手をはたと止めた。
僕を無表情に見下ろすその瞳は、マンホールの底に似た空虚で吸い込まれそうな闇を湛えていた。
彼が何を考えているのか分からない。一切の喜怒哀楽が取り払われたその顔つきを、僕は能面みたいだなと思った。
唐突に不安に襲われました。仲間であるフーゴに言い知れぬ恐怖を感じたのは、きっとこれが最初で最後だったでしょう。

――――フーゴ、何故そんな顔をしているのですか?…そうか、フーゴ。君は

415 ◆SF.flmxVNo:2011/03/24(木) 23:39:46 ID:???
◇   ◆   ◇


「フゥゥゥゥゥゥゥゥゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!」

灼熱地獄と化したナチス研究所内で蠢く一つの影。
中央には体の半分近くが欠損した、B級ホラー映画の小道具そっくりな死体が寝転がされている。
その屍骸に誰かが指を突き立てていた。と、瞬く間に死人の体がミイラ状にしぼみ、
逆に片膝をついて血を絞り取るその怪物にみるみる血色が戻り、負傷が癒えてゆく。

「切断面が塞がれている…。なかなか気の利いた心遣いじゃあないか、ジョルノ。」

ニタリ、と笑うエシディシ。彼が単なる柱の男であったのなら、人間に臓器の一つや二つが取り憑いた所で
血液を沸騰させ、その体もろとも爆散する程度が精々だ。しかし今の彼は身一つであらゆる生物を創造する究極生物。
先程まで力強く拍動していた胸部の肉塊を細胞レベルにまで分解し、あちこちの組織に付着して代謝機能を支配。
そしてブチャラティの体内で栄養を摂取し癌細胞の如く増殖、同時に失った部分を再生しつつあった。

「とはいえ、これっぽちの屍ではまだまだ足りないか…。もっと新鮮で大量の血を吸う必要がある。」

呟きつつ目を瞑り、精神を集中させる。と、体から黄色のスライムがウジュリと吹き出し、全身が覆い包まれる。
彼の本体は遥か遠くのエリアに流され最早回収の術は無いが、共に水流の藻屑となったホルマジオごと
取り込まれたDISCが、黄の節制を再び呼び戻した。身に纏う程度ならコントロールも可能らしい。
もっとも司令塔とも言うべき今の体にDISCが差しこまれていない分、自由自在にとはいかないだろうが。

エシディシには、カーズのような卓越した頭脳も、ワムウのような天才的な戦闘のカンも無い。
しかし、自らの性格を把握し、精神をどん底に追い込まれてもすぐにスイッチを切り替えられる沈着さ、
誇りを捨てても、醜いと罵られてでも生きようとする執念深さは、裏を返せば強い精神力の現れだと言える。

人間も吸血鬼も、柱の男すらぶっちぎりで超越した究極生命体が、ギャング五人ごときに敗北を喫したのは何故か。
エシディシには『覚悟』が足りなかった。手足をもがれても、とびっきりの苦痛を伴った死を目前にしても尚、
標的に一矢報いようとする究極の自己犠牲の精神を、死の危険と無縁の彼は持ち合わせていない。
エシディシは油断していた。悲願である究極生物への到達、それで全てが終わりではない。
忘れてはならない、所詮参加者達を奮起させる駒として、いいように荒木に踊らされている事実を。

「認めよう…。俺は貴様らよりも『劣って』いた。貴様らにあって俺には無い強みとは一体何か。
それは身体能力でもスタンドや流法でもない。あらゆる困難に立ち向かい、打ち勝つ『黄金の意志』!」

スタンドも復活し、不死身さに拍車をかけたかに見えるエシディシだが、
ブチャラティの体をあらかた喰らい尽くすまでは、柱の男ならではの身体能力も当然失われたままだ。
この不便な体で再生の為のエネルギーを集めなければならないのは、むしろ不安要素の方が大きかった。

「俺の精神はまだまだ未熟だった。この醜態は、自らの愚かさが招いた罰として受け入れよう。
この屈辱はいずれ晴らす。そして次こそは、真の究極生物として貴様らの前に対峙してみせる!」

416 ◆SF.flmxVNo:2011/03/24(木) 23:40:37 ID:???
エシディシはまだ勝負を捨てていない。
更なる高みへと辿り着き、頂点に返り咲くその時まで決して諦めようとはしない。
誇りなぞ知った事か!俺は雪辱を果たし、最後の一人まで勝ち残って見せる。
せいぜい楽しみにしていろ荒木、次に血祭りにあげるのは貴様の首だ!フハハハハッ!!


◇   ◆   ◇


「(奴はまた建物内に戻ったのか?とはいえ、俺が探れる範囲はここまでだ。)」

リゾットに残された時間はあと僅かだった。
この放送で20人もの死者と、ナチス研究所の禁止エリア指定まで宣告された。
首輪解除に必要な人員と設備は露と消え、このままでは荒木の悪趣味な遊戯をぶち壊すどころの話ではない。
エシディシの件を抜きにしても、最悪のシナリオはもう目の前だ。
一刻も早く決断を下さねばならない。ところでジョルノとフーゴは一体何をしているのだろう、やけに遅い。

背後に人の気配を感じた。
矢庭に振り返ったリゾットの目に映ったのは、血走った目のエシディシが脳天に鋏を振り下ろす瞬間
…ではなく、幽鬼の如く虚ろに佇むフーゴの姿だった。

「な・・・・フー・・・ゴ・・・?」

リゾットの顔色がさっと青ざめた。
考えたくない事だった。常に頭の片隅で懸念はしていた。だがこの状況、タイミングでまさか
そんな早まった真似はしないだろうと、楽観的に捉えていた部分もあった。

「・・・・予想外、でしたか・・?」

隣に居なければならない筈のジョルノは、どういう訳かフーゴの腕の中にすっぽりと収まっていた。
トレードマークとも言える前髪の三つのカールは鷲掴みにされ見る影も無く、
滴り落ちる血と脳漿が金色の髪と見事なコントラストを形成している。
粗雑な切り口から鮮血をぼたぼたと垂らし、首だけになったジョルノはどんよりとリゾットを見つめていた。
動悸が高まる。苦しい、ひどく息苦しい。


くらくらとする頭を抱えながらも、しっかりと放送を聞いていたジョルノ。
ペッシ、ジョージ・ジョースター1世、岸辺露伴、グェス、川尻早人、ホルマジオ、リンゴォ・ロードアゲイン…。
彼らの死は聞くまでもなく知っている。悼む気持ちはあったが、今更後悔しても無駄だと半ば割り切っていた。

だがテレンス・T・ダービー、シーザー・アントニオ・ツェペリ、音石明、虹村億泰、吉良吉影…。
次々と連ねられてゆく死者達の名に、ジョルノはひたすら絶句していた。
僕達の行動に意味はあったのだろうか?別行動を取った仲間達はこれで悉く死んだ。この人数でどう荒木に対抗する?
勇敢かつ頭の回転が速いジョルノだが、今度ばかりは悲嘆に暮れるよりほかなかった。

フーゴの心境も同様だった。
ナチス研究所には、ここで殺されるだろうなと半ば覚悟しつつ足を踏み入れた。
だがブチャラティはそんな彼を目の当たりにして、怒りを見せるどころか共に闘う申し出を受け入れてくれた。
フーゴが犯した罪を知りつつも、いずれ制裁を与えると宣言しつつも、彼を部下として信頼し背中を預けてくれたのだ。
だから再び忠誠を誓った。命を懸けて怪物に立ち向かった。

しかし結果を見てみろ、ああなってしまった以上ブチャラティは助からないだろう。
疑惑が確信に変わった瞬間、フーゴの中で微かに輝いていた何かが完全に消え失せた。
残っているのは敵対チームのリーダーと、どんな音楽が好みなのかも知らない浅い付き合いの新人ギャングだけ。
この同盟にもう価値は無い。あの時もフーゴの参入に肯定的だったのはブチャラティだけだった。
結局僕には、一つしかない椅子を巡って殺し合う運命がお似合いって訳だ。結構な事じゃないか。

417 ◆SF.flmxVNo:2011/03/24(木) 23:41:19 ID:???

フーゴは荒木の恐ろしさを嫌と言うほど知っている、対峙するなぞもっての他だし、
ボスに敵視された以上、パッショーネに戻る事も叶わない。組織を乗っ取るまでは行かなくとも、
ディアボロ含めた全員を殺して優勝しなければ、裏切り者のフーゴが生き延びる術は無いのだ。
勝率は限りなくゼロだとしても、フーゴは立ち止まれない。茨の道を死ぬまで進み続けなければならない。

パープル・ヘイズに羽交い絞めにされ銃口を向けられても、ジョルノは力なく項垂れるのみだった。
ブチャラティはもういない、元の世界で仲間だったフーゴにすら裏切られた。
フーゴの狂気を跳ね除ける力は残っていなかった。心に巣食った底無しの闇の中に、ジョルノは深く堕ちて行った。

…そうか、フーゴ。君は絶望しているんですね。

僕と同じに。


仲間との決別、優勝への殺戮を選んだフーゴ。仲間の解放、荒木への挑戦を選んだリゾット。
二人の道は今、完全に別たれた。彼らの道が再び交わる事はもう無い。


【F-2 ナチス研究所 庭/2日目 深夜】

【リゾット・ネエロ】
[スタンド]:『メタリカ』
[時間軸]:サルディニア上陸前
[状態]:頭巾の玉の一つに傷、左耳と左手の小指消失(止血済)、額に切傷、身体ダメージ(極大)、 身体疲労(極大)
[装備]:フーゴのフォーク、ミスタがパくった銃【オートマチック式】(2/15)
[道具]:デイバッグ&基本支給品(リゾット、ホルマジオ、ブチャラティ、ジョルノ、億泰、テレンスのもの そのうち一食だけ水と食料なし)
    不明支給品残り0〜1(億泰のもの)、参加者詳細データ集、『ザ・ワールド』のスタンドDISC
    首輪の設計図(ジョセフが念写したもの)、ダービーズ・チケット、妨害電波発信装置
    ペッシの首輪、重ちーが爆殺された100円玉(一枚)、ジョルノの『探知機』となっている小石
    紫外線照射装置、、承太郎のライター、シャーロットちゃん、スージーの首輪、ワンチェンの首輪
    包帯、冬のナマズみたいにおとなしくさせる注射器、不明支給品0〜2(確認済:ジョルノのもの)
[思考・状況]
基本行動方針:荒木を殺害し自由を手にする  
0.嘘だろ、フーゴ…!?
1.エシディシの息の根を止め、ブチャラティを呪縛から解放する。
2.首輪を外すor首輪解除に役立ちそうな人物を味方に引き込む。
  カタギ(首輪解除に有益な人材)には素性を伏せてでも接触してみる。
3.荒木に関する情報を集める。他の施設で使えるもの(者・物)がないか、興味。
[備考]
※リゾットの情報把握
 承太郎、ジョセフ、花京院、ポルナレフ、イギー、F・Fの知るホワイトスネイク、ケンゾー(ここまでは能力も把握)
 F・F(能力は磁力操作と勘違いしている)、徐倫(名前のみ)、サウンドマン、山岸由花子(名前のみ)

418 ◆SF.flmxVNo:2011/03/24(木) 23:42:02 ID:???
※リゾットのメモには以下のことが書かれています。
[主催者:荒木飛呂彦について]
荒木のスタンド → 人間ワープ…見せしめの女の空中浮遊、参加者の時間軸の違い(並行世界まで干渉可能)
        → 精密機動性・射程距離 ともに計り知れない
開催目的 → 不明:『参加者の死』が目的ならば首輪は外れない→この線は薄い
           『その他』(娯楽?)が目的ならば首輪は外れるかもしれない 
※荒木に協力者がいる可能性有り

【以下ブチャラティのメモの写し】
①荒木飛呂彦について
 ・ナランチャのエアロスミスの射程距離内にいる可能性あり
  →西端【B-1】外から見てそれらしき施設無し。東端の海の先にある?(単純に地下施設という可能性も) →G-10の地下と判明
 ・荒木に協力者はいない?(いるなら、最初に見せつけた方が殺し合いは円滑に進む) →協力者あり。ダービーにもいることが確実。
②首輪について
 ・繋ぎ目がない→分解を恐れている?=分解できる技術をもった人物がこの参加者の中にいる?
 ・首輪に生死を区別するなんらかのものがある→荒木のスタンド能力?
  →可能性は薄い(監視など、別の手段を用いているかもしれないが首輪そのものに常に作用させるのは難しい)
 ・スティッキィ・フィンガーズの発動は保留 だか時期を見計らって必ず行う。
③参加者について
 ・知り合いが固められている→ある程度関係のある人間を集めている。なぜなら敵対・裏切りなどが発生しやすいから
 ・荒木は“ジョースター”“空条”“ツェペリ”家に恨みを持った人物?→要確認
 ・なんらかの法則で並べられた名前→国別?“なんらか”の法則があるのは間違いない
 ・未知の能力がある→スタンド能力を過信してはならない
 ・参加者はスタンド使いまたは、未知の能力者たち?
 ・空間自体にスタンド能力?→一般人もスタンドが見えることから


【パンナコッタ・フーゴ】
[時間軸]:ブチャラティチームとの離別後(56巻)
[状態]:身体ダメージ(極大)、 身体疲労(極大)
[装備]:ナランチャのナイフ、S&W M19(1/6)
[道具]:基本支給品×4、ダービーズチケット、ディアボロのデスマスク、予備弾薬37発(リボルバー弾7発、オートマチック30発)
    鳩のレターセット、メサイアのDISC、ジョルノの『探知機』となっている小石
    S&W M19の予備弾薬(30/30)
[思考・状況]
基本行動方針:未熟な過去に打ち勝ち、新しい自分となる
1.完全にゲームに乗った、優勝の為ならどんな汚い手も辞さない。
2.単身でディアボロとエシディシに勝てるかは分からないが、やるしかない。
3.優勝したら、組織の手が届かない何処か遠い所で新たな人生を歩もう。
[備考]
※荒木の能力は「空間を操る(作る)」、もしくは「物体コピー」ではないかと考えました(決定打がないので、あくまで憶測)
※空条承太郎、東方仗助、虹村億泰、山岸由花子、岸辺露伴、トニオ・トラサルディー、ジョセフ・ジョースターの能力と容姿に関する大まかな説明を聞きました。
※吉良吉影の能力(爆弾化のみ)を把握しました。しかし、一つしか爆弾化できないことや接触弾、点火弾に関しては聞いていません。
 また、容姿についても髑髏のネクタイ以外には聞いていません
※花京院とその仲間(ジョセフ・ジョースター、J・P・ポルナレフ、イギー、空条承太郎)の風貌、スタンド能力をすべて把握しました。
※アヴドゥルとフェルディナンドの考察から時代を超えて参加者が集められていることも知りました。
※デスマスクの男の正体がボス=ディアボロであること、その能力などに気づきました。

419 ◆SF.flmxVNo:2011/03/24(木) 23:42:50 ID:???
◇   ◆   ◇


ほぼ同時刻、ナチス研究所から数百メートル離れた空き地に二人の男が佇んでいた。
放送で告げられた死者の多さに愕然とし、憂いを含んだ表情を浮かべる学生服の少年、花京院典明は
やや離れた場所から様子を窺う中性的な顔立ちの男、ナルシソ・アナスイの気配に気付いていなかった。

背中がガラ空きだぜ?花京院。
さっきの放送でどれだけショックな内容を言われたのか知らないが、
「ポルナレフ」とか「たったの12人」だのブツブツ言いながら歩き回るザマはどう見てもアブナイ奴だぞ。
生き残りの12人が心配みたいだが、後ろで俺に狙われている事にも気付けないんじゃあ世話ないな。
さっきはティムの野郎が邪魔して仕留め損ねたが、同じ目的地に向かっていたのがお前の運の尽きだぜ。
悪く思うなよ。じゃあな、花京院。

思わず口角が緩む。指先を花京院の後頭部にポイントし、どんな死に様を用意してやろうかと思いを馳せる。
『おい!』と大声を出して花京院の絶望に満ちたツラを拝んでやるのもいいかもな。などと考えていた矢先、

ドゴォッ!!

花京院の姿をしっかりと捉えていたはずの視界は暗転し、
頭部を熟れたトマトの如く弾けさせるつもりだったF・F弾は虚しく地面を穿つ。
状況を把握するのに少しだけ時間がかかった。どうやら俺は地べたに這いつくばっている。
何故なら後ろからタックルをかましやがったクソ野郎に組み伏せられ、腕と頸動脈の辺りを極められているからだ。
何て事だ!花京院をブチ殺すのに夢中で、周囲の警戒を怠っていたとは!
それだけじゃない…。こいつ、俺を押さえつけながら…血を吸ってやがる……!

「クソッ!!離れやがれこのダボがァ!!」
「…チィッ!」

関節を無理矢理外し、凄まじい力で俺に圧し掛かる吸血野郎にF・F弾を放つ。
苦しい姿勢から撃った弾丸はダイバー・ダウンのパワーが上乗せされ、野郎を簡単に吹き飛ばした。
すぐさま体勢を立て直し、首筋の傷穴をプランクトンで埋める。横をちらりと見やると、
流石にこちらに気付いたらしい花京院がぽかんと口を開けて俺を見ていた。

「何してやがる!早くここから逃げろ!そのままナチス研究所へ行くんだ、俺の仲間がいる!」

人の血を吸うだなんてえげつない真似をしておきながら、至極真っ当な台詞を吐くんだな。
ん?こいつ…。暗がりでよく見えなかったが、ブローノ・ブチャラティじゃないか?
こいつ、吸血鬼だったのか?いや、あのジッパーを操るスタンドが傍らに居ないし、何だか様子がおかしい。
F・F弾に抉られた脇腹の傷がグジュリグジュリと治り、しかも撃ち込んだフー・ファイターズ達が悉く死滅している。

「フン、ちっぽけな人間風情が、大人しく眠っていろ。」

ブチャラティの目の色が急に変わり、声もまるで別人の如く低くなった。
俺の中で警鐘が鳴り響いた。この声を、身に纏う絶対的な強者のオーラを、俺は知っている。
突然、体のあちこちに焼け付く痛みを感じた。慌てて自らをよく見渡すと、
吸血してる隙にくっついたのだろう、黄色いスライムが俺の肉をほうぼうで貪り喰らっていた。

「第三ラウンドを始めようじゃあないか。え?それとも最終ラウンドか?フー・ファイターズよ。」

420 ◆SF.flmxVNo:2011/03/24(木) 23:43:38 ID:???
【F-2 やや北東/2日目 深夜】

【花京院典明】
[時間軸]:ゲブ神に目を切られる直前
[状態]:精神消耗(極大)、身体ダメージ(中)、右肩・脇腹に銃創(応急処置済)、全身に切り傷、激しい自己嫌悪
[装備]:なし
[道具]:ジョジョロワトランプ、支給品一式
[思考・状況]
基本行動方針:打倒荒木
1.ブチャラティの指示通りナチス研究所に行くか、それとも此処に留まり戦いに加わるか決めかねている。
2.結局ポルナレフには会えなかった。僕は無力な人間だ…。
3.ナチス研究所に本当に仲間が居るのだろうか?それは僕の味方なのか?
4.打倒荒木、巻き込まれた参加者の保護、をするにはもう遅いのかも知れない。
[備考]
※荒木から直接情報を得ました。
「脅されて多数の人間が協力を強いられているが根幹までに関わっているのは一人(宮本輝之助)だけ」
※フーゴとフェルディナンドと情報交換しました。フーゴと彼のかつての仲間の風貌、スタンド能力をすべて把握しました。
※マウンテン・ティムと情報を交換しました。お互いの支給品を把握しました。
※アナスイの語った内容については半信半疑です。その後アナスイがティムに語った真実は聞いていません。


【ナルシソ・アナスイ with F・F】
【スタンド】:ダイバー・ダウン・フー・ファイターズ
【時間軸】:アナスイ…「水族館」脱獄後、F・F…DアンG抹殺後
【状態】:貧血、首に指先を突き立てられた傷(プランクトンで処置済み)、黄の節制に食われ中、全身にF・Fの細胞が寄生し、共存している。
【装備】:なし
【道具】:基本支給品×5、点滴、クマちゃん人形、双眼鏡、ラング・ラングラーの首輪、トランシーバー2つ(スイッチOFF)、ラング・ラングラーの不明支給品(1〜3。把握済)、テイザー銃(予備カートリッジ×2)、杜王町三千分の一地図、牛タンの味噌漬け、ノートパソコンの幽霊
※基本支給品はアナスイ、ラングラー、ティム、ヴェルサス、音石の五人分です。
 音石の水はF・Fが回復に利用しました。その他食料、水がどれだけ残っているかは不明です。
【思考・状況】
基本行動方針:空条徐倫を生存させるために彼女を優勝させる。そのために、徐倫以外の全ての参加者を殺害する。
0.お前、エシディシなのか!?
1.エシディシと決着をつけ、花京院を始末する。
2.ナチス研究所にも参加者がいると確定したので、そちらも始末する。
3.徐倫には会いたくない。

421 ◆SF.flmxVNo:2011/03/24(木) 23:44:21 ID:???
【ブローノ・ブチャラティ with エシディシ】
【ブローノ・ブチャラティ】
[スタンド]:『スティッキー・フィンガーズ』
[時間軸]:護衛指令と共にトリッシュを受け取った直後
[状態]: 瀕死、意識昏迷状態、エシディシに全身を乗っ取られている
[装備]:ジョルノの『探知機』となっている小石、スージーの指輪
[道具]:メタリカの鋏の欠片
[思考・状況]
基本行動方針:打倒主催、ゲーム脱出
0.・・・(気絶中)
1.自分はきっと助からないので、せめてエシディシを巻き込む形で自殺したい。
[備考]
※代謝機能を持続させる為だけにエシディシに生かされています。今後どうなるかは分かりません。
※基本的に体の主導権をエシディシに握られていますが、ほんの一瞬だけ意識を取り戻す事もあります。
※極端に衰弱しており、もうスティッキー・フィンガーズは使えません。またエシディシの細胞に浸食されているので意識があっても体を満足に動かせません。

【エシディシ】
[スタンド]:『イエロー・テンパランス(仮)』
[時間軸]:JC9巻、ジョセフの“糸の結界”を切断した瞬間
[状態]:ブチャラティと同化、少しずつ能力を取り戻しつつある。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:リゾット達に再起を誓う。力を取り戻し、究極生物として荒木をも超越する。
1.F・Fと決着をつけ、花京院の血を吸って力の回復を図る。
2.ブチャラティの体を馴染ませる為、もっと人間を捕食したい。
3.いずれリゾット達にリベンジを果たす。もう慢心はしない。
[備考]
※現在ブチャラティの体の30%程度はエシディシの細胞であり、今なお増殖中です。
※イエロー・テンパランスの能力の一部が使えます。これはDISCよりもエシディシに芽生えたスタンドの才能による部分が大きいです。が、コントロールには疲労を伴います。
※ブチャラティの体を乗っ取っている状態なので、あくまでも人間が出せる限界+αの身体能力しかありません。具体的に言えば吸血鬼と同程度と言った所です。

【ジョルノ・ジョバァーナ 死亡】
【残り 11(12)名】

422ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/03/26(土) 21:41:29 ID:???
>>412
フー・ファイターズは水分で分裂、増殖するのがそもそもの能力であり、言うならば生物とスタンドの特徴を伏せ持った存在ですので一概には言えないかもしれませんが、
DISCを持つ個体からある程度離れるとまともに活動できなくなります(SO10巻参照)。
このことから、DISCを持っているほうが本体とされ、能力は失われると解釈した方が自然なのではないでしょうか。

423 ◆SF.flmxVNo:2011/03/27(日) 13:32:14 ID:???
>>422
あらゆる生物の遺伝情報を知っていて何にでも変身する究極生物なら、プランクトンと同じ事が出来ても不思議はありません。
離れていると言ってもせいぜい2、3kmと言った所で、ここまで離れたら能力は使えない、という描写がある訳でもありません。
〜が自然というのはあくまで憶測に過ぎません。明確な根拠があり完全な矛盾やミスだと認めざるを得ないならまだしも、
グレーゾーンである以上わざわざ修正するべき箇所ではないと思います。

424ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/03/28(月) 17:50:51 ID:???
F-2で見るとナチス研究所は西寄りに位置するので、花京院が北東にいるのは違和感を感じます。
研究所の火事のせいもあるのでしょうが、なぜ北東方面に向かったか(場合によっては同じく研究所に向かっていたアナスイも)補足的な説明を入れるべきでは。

425 ◆SF.flmxVNo:2011/03/28(月) 23:45:25 ID:???
>>424
そこまでは考えてませんでした…。自分の読み込み不足です。
フーゴの銃も一発撃ったのを直し忘れてました。機を見て修正します。

どなたか『君の心に希望はあるか』の代理投下と出来ればwiki掲載をお願いします。
プライベートな事情で申し訳ありませんが、仕事の関係で家をあけており、携帯で本投下するのはちょっと無理なもので。

426ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/04/02(土) 13:11:37 ID:ZbB1DkB6
修正前の本投下&wiki掲載でいいの?
そろそろ急がないと次話の投下に間に合わないよ

427ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/04/03(日) 12:21:40 ID:???
規制食らってたのでwikiだけやっときました

428 ◆0ZaALZil.A:2011/04/10(日) 21:15:49 ID:???
お待たせいたしました

ttp://www1.axfc.net/uploader/Sc/so/223381
パスはjojorowa2nd

指摘がありましたらロダに。

429 ◆Y0KPA0n3C.:2011/04/10(日) 22:33:20 ID:???
まったく問題ない、行け

と私の中のDIO様が宣言されてます。
本投下を楽しみに待ってます。

尚自分のほうの予約分なのですが、思いのほか執筆が滞ってます。
短い話なのですが、リアルのほうも忙しく、完成させる気ではいますがもしかしたら間に合わないかもしれません。
その時は予約スレにてしっかりと破棄宣言するので、ネタがある方はよろしくお願いします。

430 ◆0ZaALZil.A:2011/04/12(火) 19:57:55 ID:???
特に指摘がないようでしたら、明後日に投下してよろしいでしょうか?
皆さん忙しい時期でしょうし

431ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/04/12(火) 20:23:05 ID:???
よしやっちまえ

432 ◆0ZaALZil.A:2011/04/14(木) 20:44:20 ID:???
【F-1 /2日目 深夜】
【花京院典明】
[時間軸]:ゲブ神に目を切られる直前
[状態]:精神消耗(極大)、身体ダメージ(中)、右肩・脇腹に銃創(応急処置済)、全身に切り傷、激しい自己嫌悪
[装備]:なし
[道具]:ジョジョロワトランプ、支給品一式
[思考・状況]
基本行動方針:打倒荒木
1.一体あの光は?
2.結局ポルナレフには会えなかったし、研究所にも誰もいなかった。僕は無力な人間だ…。
3.打倒荒木、巻き込まれた参加者の保護、をするにはもう遅いのかも知れない。
[備考]
※荒木から直接情報を得ました。
「脅されて多数の人間が協力を強いられているが根幹までに関わっているのは一人(宮本輝之助)だけ」
※フーゴとフェルディナンドと情報交換しました。フーゴと彼のかつての仲間の風貌、スタンド能力をすべて把握しました。
※マウンテン・ティムと情報を交換しました。お互いの支給品を把握しました。
※アナスイの語った内容については半信半疑です。その後アナスイがティムに語った真実は聞いていません。



【D-5 北西部/1日目 深夜】
【王s(オーズ)】
【ディオ・ブランドー】
[時間軸]:大学卒業を目前にしたラグビーの試合の終了後(1巻)
[状態]:首輪解除済み。内臓の痛み、右腕負傷、左腕欠損(波紋と、ジョナサンが持っていた包帯で処置済み)、軽度の銃創、左足負傷、
    ジョルノ(と荒木)への憎しみ
[装備]:『ホワイトスネイク』のスタンドDISC
[道具]:首に巻く布、ヘリコの鍵、ウェザーの記憶DISC、アイアンボールボウガンの鉄球、剃刀&釘セット(約20個)、
    基本支給品×2(水全て消費)、不明支給品0〜1(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:参加者の首輪を解除して、対主催軍団の頂点に。荒木のスタンドを手に入れる。
0.荒木め、一体何を。今は徐倫を追うほかないが。
1.ジョージ殺しの罪を吉良になすりつけることで集団に入りやすくする。
2.荒木のスタンドDISC生成の時間稼ぎのために、スタンド使いを『上に立って従わせる』。
3.ジョルノに借りを返す
4.ジョルノが……俺の息子だと!?
[備考]
※見せしめの際、周囲の人間の顔を見渡し、危険そうな人物と安全(利用でき)そうな人物の顔を覚えています
※ジョルノからスタンドの基本的なこと(「一人能力」「精神エネルギー(のビジョン)であること」など)を教わりました。
 ジョルノの仲間や敵のスタンド能力について聞いたかは不明です。(ジョルノの仲間の名前は聞きました)
※ラバーソールと由花子の企みを知りました。
※『イエローテンパランス』、『キング・クリムゾン』の能力を把握しました。
※『ホワイトスネイク』の全能力使用可能。頭部を強打されればDISCが外れるかもしれません。

433 ◆0ZaALZil.A:2011/04/14(木) 20:44:58 ID:???
【ディアボロ】
[時間軸]:レクイエムジョルノに殺された後
[状態]:首輪解除済み。右つま先に爆発によるダメージ(応急処置済み)。頭部に軽い打撲。強い決意。恐怖。
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(水は全消費)、巨大なアイアンボールボーガン(弦は張ってある。鉄球は1個)、首に巻く布、
    ポルナレフのデイパック(中身は確認済み):空条承太郎の記憶DISC、携帯電話
[思考・状況]
基本行動方針:ジョセフの遺志を継ぎ、恐怖を乗り越え荒木を倒す。
1.ひとまず徐倫を追いかける。
2.だが、ディオ・ブランドー……信用できるのか?
3.無事ジョルノに『伝言』が伝わっていればいいが……
4.恐怖を自分のものとしたい。
5.『J・ガイルを殺す、花京院に謝る』。2つのポルナレフの遺志を継ぐ。
6.駅にあるデイパックを回収したい。
[備考]
※音石明の本名とスタンドを知りました。
※参加者が時を越えて集められたという説を聞きました。
※『恐怖を自分のものとして乗り越える』ために生きるのが自分の生きる意味だと確信しました。
※アレッシーとの戦闘により、『エピタフ』への信頼感が下がっています。
※精神状態の変化から時を飛ばせる時間が少なくなっています。
※サンドマンのメッセージを聞きました。
※露伴たちと情報交換をしました。内容は『迷える奴隷』参照。
※DISCに描かれている絵が空条承太郎であることは把握しました。DISCの用途を知りましたが、記憶DISCか、スタンドDISCかの判別は付かなかったようです。

※ディオとの情報交換は禁止エリア内で行われました。
※道中シーザーとジョナサンの死体を目撃しています。



【C-4 南東/1日目 深夜】
【空条徐倫】
【時間軸】:「水族館」脱獄後
【状態】:身体ダメージ(大)、体中縫い傷有り、上半身が切り傷でボロボロ、火傷(小)
【装備】:エリナの指輪、大型スレッジ・ハンマー
【道具】:基本支給品一式 、サブマシンガン(残り弾数70%)、不明支給品1〜5(確認済)、ジャイロの鉄球、メリケンサック、
     エリナの首輪、ブラフォードの首輪、
【思考・状況】
基本行動方針:荒木と決着ゥ!をつける
0.荒木を屈服させ、すべてを元通りにさせる。そのためにも南下。
1.そのためならばどんなゲスでも利用してみせる。アナスイももちろん利用する。だがディオの誘いに乗るべきか?
2.自分達を襲った敵を見つける。
3.インディアン(サンドマン)と情報交換。
[備考]
※ホルマジオは顔しかわかっていません。名前も知りません。
※最終的な目標はあくまでも荒木の打倒なので、積極的に殺すという考えではありません。
 加害者は問答無用で殺害、足手まといは見殺し、といった感じです。
※アナスイから『アナスイが持っていた情報』と『ポルナレフが持っていた情報』を聞きました。
※花京院から支給品一式を返してもらいました。
※居間で行われていた会話はすべて聞いていません。

434 ◆0ZaALZil.A:2011/04/14(木) 20:46:03 ID:???
※【C-5西部 民家】吉良吉影の死体の近くに、ティッシュケースに入れた角砂糖(爆弾に変える用・残り4個)、携帯電話、折り畳み傘、
 クリップ×2 、ディオの左手、 ハンカチに包んだ角砂糖(食用)×3、ティッシュに包んだ角砂糖(爆弾に変える用)×5、
 ポケットサイズの手鏡×2、支給品一式×2、緑色のスリッパ、マグカップ、紅茶パック(1/4ダース)、ボールペン二本、
 CCDカメラの小型モニター、ギャンブルチップ20枚、二分間睡眠薬×1 が放置されています。
※【D-4 北部】に支給品一式 ×5(内一食分食料と方位磁石消費)が放置されています。
※【C-5 西部】にサブマシンガン(残弾なし)が放置されています。
※ヨーロッパ・エクスプレスはDIOの館を離れました。どこに行ったのかは不明です。



【G-10 ダービーズアイランド/1日目 深夜】
【並行世界の荒木飛呂彦】
[状態]:健康、超絶最高にハイ
[装備]:無し
[道具]:日記
[スタンド]:『メイド・イン・ヘブン』
[思考・状況]
基本行動方針:運命そのものになる=宇宙を一巡させ、他の生物の運命を固定、自分だけ運命から解き放たれる。
0.僕は皆の運命になりたい。そのためにも運命を覆せる世界を手にする!
1.バトルロワイアルは可能な限り続行。生き残りは出来るだけ絞りたい。

※一度『バトルロワイアル』を完結出来ず敗北した世界から、荒木によってこちらに連れてこられたようです。
※DIOの意志が融合し、星型の痣が出来た影響で、ジョースター家の気配を何となくではありますが察知することが出来ます。また、察知もされます。
※荒木飛呂彦死亡後、徐々に会場の崩壊が始まりましたが、現在、会場の維持は何とかできているようです。
 目に見えての変化は今のところありません。
※現在、時は加速させていません。仮に加速させた場合、バトルロワイアルの会場の崩壊も加速します。
 崩壊までの時間、会場の崩壊後どうなるかは不明です。

※『ザ・ワールドのスタンドDISC』は、緑色の赤ちゃんを誕生させたことで消滅しました。

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さるさんにつき、どなたか代理投下をお願いします

435ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/04/14(木) 21:01:58 ID:???
代理投下完了しました。

436 ◆0ZaALZil.A:2011/04/14(木) 21:10:25 ID:???
ありがとうございます。支援の方も感謝いたします

437sallUnsuggene:2013/05/10(金) 11:23:02 ID:???
の三角帆と、――すべてやみがたい哀愁をよび起すこれらの川のながめは、いかに自分の幼い心を、その岸に立つ楊柳(ようりゅう たまにアーティストが彼女の目が充血しているか、彼女は目の下だという真実を隠す必要があります同じキー単語のためにそこにそのランク外に他の多くのサイトは彼の相続人らしコービーブライアントチャンピオン、MVPは、殿堂入りした人を蹴り。 日本は2010登山靴から、秋洞の上級ホワイトファッションブランドによって設立YangJieぜ、からの有名なデザイナーです

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