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【差別か】 獣人の砦 【平等か】

1木野:2011/01/27(木) 22:26:26
ラドリオ王国から北に進んだ砂漠の広がる地。
砂の海と呼ばれるほどに砂漠以外何も無いこの地に
大きな墓標のような砦が建てられていた。
その砦に砂上用輸送車が入ってきた。砂風で砂まみれになった
重く堅い扉が開けられる。

「出ルンダ。ジュージン共!」
脇に大型の銃のようなものを構えた看守が輸送車の中に向かって叫ぶ。
モソモソと獣人達がまばらに輸送車から降りてくる。

『監獄から墓場まで』
そういわれるこの砦に連れてこられた獣人達は脱走しても砂漠でのたれ死ぬしか
ないといわれるこの地で永遠ともいえる刑期を過ごしにきた者たちばかりだ。

「イイカ。オトナシクしてるんだぞ。デナケレバ・・・」
脇の銃器を振りまわし、看守は獣人達を小さな監獄へと閉じ込めていく。

「・・・ッチ。」
そんな獣人達の中にひときわ体格の大きい獣人がいた。

2腐れ飯:2011/04/18(月) 20:24:07

「おい、こいつらだ」
「なんだ、これ…獣人でしょうか?」
「どうかはわからんがな。とりあえず暴れるんで気をつけろよ。」
「人には見えないのですが…」
「だからわからんといっているだろう。だがとにかく危険なんだ。お前初めてか?」
「はい…このフロアは…私ほどの若輩者がその…『A級フロア』なんて…」
「それなりに、認められてるということだ。まぁお前が監視するのはこいつだけで良い。周り見渡してみろ」
乾いた空気が吹き抜けるが、なんとも重く暗い雰囲気が漂っている。中心の砦の地下3階は、危険度A級の獣人が収容される施設で、中心砦やその他別棟の一階にくらべて牢屋も非常に堅牢で、ココに関しては格子は壊される可能性があるので存在せず、かわりに非常に分厚い防ミサイルガラスがある。
そして、危険度A級の集まりなので、看守もそれなりに多い。
「ここにいるのはお前だけじゃない。まぁ、楽な気持ちでいどめ」
「はぁ…」
「そもそも、危険度A級ならまだいいが、SやSSになってくるともっと危険だぞ」
「フロアがどこにあるかも、下のものには教えてもらえないんですよね…」
「そうだ。…ここだけの話。SSのフロアの獣人は、ここの砦と繋がりがあるそうだ…」
「そりゃぁ、鎖には繋がれてるでしょうが…」
「そうじゃない、もっとこう、親密な繋がりらしい…まぁ、噂だがな。じゃぁここはまかせたぞ」
「あ…」
上官はそういい残すと上の階へ上がってしまった。暗いので、少し離れるだけでどんなに目が良くても人が見えなくなってしまう。今は時間的にも夜中なので、看守も獣人も静まり返っている。そもそも、こんな分厚いガラスだと、獣人の声なんて聞こえない。
「獣人…ねぇ」
さて、たった今任された危険度A級獣人…というか、この獣は、つい二日前に収容されたらしいが、腕利きの看守さえ手につけられないほど大暴れしたそうでここに詰め込まれたそうだ。
「…獣というか…」
なにやらじっとうずくまっているようだ。ガラスの向こう、暗い闇にぼんやりとみえる塊…

豚とザリガニの合成獣(のようなもの)

「これ、獣人っていうか獣だよなぁ」
ところで、ついさっきも巨大な獣人が収容されたようだが、大丈夫だろうか?

3木野:2011/04/19(火) 12:33:53
「ジャマだ。ドケ。」
牢屋を覗きこんでいた新米看守を覆う影
振り返るとそこには3メートルもあろう大柄な男
…いや、獣人がいた。
「は、はい、す・・すみみせん!」
あまりの巨体、そして人のそれとは違った顔つきに新米看守はたじろぎ
すぐにドアを開けるのだった。
「…ナンダ?ゴミか?」
牢に入り、足元に落ちている「それ」を拾い上げる。
拾い上げたそれは4つの目をこちらに向ける。
「なんや?初対面でゴミあつかいたぁ、ケンカうっとるんかいな!?」
エビのようなそれはビリビリと電撃を散らしながら叫ぶ。
もっとも、あまりの体格の差に電撃はかゆい程度にしかきかなかったが。
そのエビの下にはブタのような下半身が不自然にくっついていた。
怯えてるのか震えている
「メズラシイ獣人モいたものだ。」
「あんさんらみたいなのと一緒にせんでぇーな!
 ワイらはただ、市場でちぃーとばっかし食べ物いただいて
 ちょーっとだけ売り子に手ぇだしただけで捕まったんやからな!」
「…店数件の食べ物と、そこにいた売り子全員に手を出して…さらに捕まえようとした
警官にケガさせたからA級なんだよ・・・」
牢屋の外から新米看守がつぶやいていたが、レキテルが電撃を飛ばし
追い払うのだった

4木野:2011/04/20(水) 11:23:51
「危険度A級の獣人の収容が完了したか…」
砦の頂上、吹き抜け状の砦内部を一方的に見渡せるように
特殊な鏡を複雑に組み合わせたこの部屋に
一人の女性がいた。
「リデ様、A級・B級共に収容数が限界に近付いております。」
長身の看守が女性に告げる。
「そうか…ならば、また『処刑』を行うとしよう・・・」
そういい、リデはまだ真新しい収容者リストの束から数枚を抜き取った。
「こいつらを今日の正午に『処刑』しろ。」
看守は何も言わずにそれを受け取り、部屋を後にした。

「あいかわらず、機械的に処理するのですね。」
「…あなたほどではないわ。セイジャの塔の案内人、アーサー。」
どこから現れたのか、リデの背後に立つ分厚いフードをかぶった人物。
手に持ったカンテラがリデの顔を照らす。
「アーサー、頼むからラドリオ国内の獣人の数を減らしてくれないかしら。
 いくら処刑しても元を絶たない限り終わらないわ。」
「…その数を減らすための砦です。国内ではまだ多くの獣人を捕まえるだけの組織が準備されていません。引き続き処刑をお願いします。」
そういい、アーサーはまたどこかへと消えていった

「引き続き…か。」

5腐れ飯:2011/04/21(木) 19:11:40

「…………」
レキテルと大柄の獣人はすっかり黙り込んでしまった。
というのも先ほどの騒動で看守が5人も牢屋の前についたからだ。
トン丸は恐怖を通り越して眠ってしまった。レキテルと獣人は、ガラスに背をむけ横並び
に座る。二人ともただ壁をじっと見つめていた。
「お前の所為だゾ」
獣人が口火を切った。
「じゃかぁしぃぼけ。そもそもココなんやねん…見たところお前みたいなのがゴロゴロお
る。獣くさくて叶わん」
「お前だって獣だろウ」
「違う違う、ワシはもっとこう高尚なもんやねん」
再び沈黙が落ちる。レキテルはふと横をみる…やはりでかい。でかすぎるといってもいい。大きな相手には負けたことはないが、ここまで大きいとなるとどれくらいの電圧が必
要なのだろうと計算していると…
「お前の名前ハ…ナンダ?」
「あ?」
「同じ穴のムジナだろう」
その言葉に少々の不快感を覚えたが、すぐさま水に流す。
「レキテル。下にいるのは相棒のトン丸さんや。ワシら、一心同体やねん」
「複雑だナ」
「あんたはシンプルでいいなぁ」
「俺の名前は ラル・スウィード」
ラルは目玉をぎょろりとレキテルにむける。レキテルは少し身震いをした。
レキテルはなんとか笑ってみせて、再び目線を壁にむける。
「っは、ラルって、ラルドか?それ豚脂やんけ。牛なのに、豚」
「…………」
「冗談や」
ふと後ろを向く。あんなことがあったのにもう看守は深い眠りについていた。向かいの牢
屋の看守なんて眠っているどころか居ない。
「アホかこいつら、脱走されても大丈夫って顔してるで」
「大丈夫だからダロ」
「いやいや、あかんやろ」
「ふむ、語弊ガあった。「どうせ脱走できないから大丈夫」なんダ」
「…あぁ?」
ラルはガラスのほうに向き直り、胡坐をかく。
「『監獄から墓場まで』。ここは砂漠の中心に聳える巨大な墓標ダ。獣人たちは罪浅きも
のカラ深きものまでここに入れられル。大半が帰れナイ。脱走できたとしても、外はどち
らが東か西かもわからん砂漠ダ。…そもそも、砂漠に出るマエに殺されルガナ」
「…なんだ、詳しいのう」
「この国じゃ有名な話ダ」
「罪浅いものまで死ぬって、随分獣人がぞんざいに扱われてるやん」
「この国じゃそうだからダ」
「はぁ…でもワシは死なんで、電気イスだったらなおさらや」
小さく笑い声をあげながらガラスの向こうの闇を見つめる。すると、向かいの牢屋の中
で、誰かが何やら手を動かしている。
「…なんかしてへん?あれ、誰かおったかな」
「…女のようだナ」
「え!?女!?」
レキテルは一気にガラス飛びつきへばりつく。トン丸もその衝撃で目を覚ます。
闇の中、よぉく目をこらすと、こちら側になにやら合図を送っているようだった。目線は
まっすぐ、二人に向かっていた。
ツリ目で、黒く長い帽子をかぶっている。少し微笑んでいるようにも見えた。
「なかなかの上玉やんけ」
「何か、伝えているみたいだゾ」
「は、そんなの簡単や。文字を指で書いてんねやろ?暗号にもならへん」
ラルはちょっと不機嫌そうに鼻を鳴らす。
「だったらなんていってるんダ」
「こっち来て私と色々遊ばない?的なことちゃう?監獄の中やから溜まるもんも溜まるや
ろ…え〜っと…」
じっとツリ目の獣人を見つめる。同じ何文字かをずっと書き続けている。
あ…な…た…

た…ち…は…

き…ょ…う…



死ぬ




「は?」
「何ダ?」
伝わったかとおもうと嬉しそうに微笑んだ。しかし目は笑っておらず、憎たらしい冷たさ
を感じた。
「な、なんやねんあの…」

その瞬間。バンと灯りがついた。

目の前には、先ほどの上官らしき看守が立っていた。
どうやら、明かりがついたのはこの牢屋だけらしい。
「なんじゃお前」
看守は二枚ほど紙をとった。どうやらリストのようらしい。
「お前ら二人……

今日の正午、死刑だから」

6木野:2011/04/23(土) 21:33:29
死刑を告げた看守の上官は、あっという間に牢屋の前から姿を消した。
それと同時に、さっきまで向かいの牢屋にいたはずの女性は
姿を消していた・・
「なんや・・・どういうことや?わいら死神にでも惚れられたっちゅーことか!?」
「サアナ…サテ、どうする?」
「決まってるやろ!?正午までにここから逃げるんや!」

「無理だね。君たちみたいな獣人そのものなやつらは見つかった瞬間、看守に囲まれるか
死刑カラスのえさになるだけさ」
向こうのガラスからはさっきの女性ではなく、ヒューマの姿をし、深く帽子を被った男性がにやついていた。
「なんや。あんさんみたいのも獣人やいうんか?それに死刑カラスってなんやー?」
「僕の名は『ギル』。僕は獣人の中でもヒューマ寄りでね。」
そういい、ギルは帽子を脱ぐ。レキテルの下のとん丸がおののいた。
「うっわー・・・えげつな。」
帽子の下は丸刈りされた頭皮と ちぎれた獣耳があった。
「…自分デ、ヤッタノカ?」
「いいや、僕の親が生まれた時に切り落としたらしいね。
もっとも、その努力もむなしくこの塔に捕まってるわけだけど。ハハハ」
ギルの乾いた笑い。一瞬牢屋通路が静寂に包まれた。

「…で、サッキイッテイタ、死神カラストイウノハ・・?」
「あぁ、この砦から逃げだせたとしてもこの周りの砂漠には
巨大なカラスが巡回しているんだよ。この砦の奴らが定期的に「餌の獣人」を
提供しているおかげでね。君みたいな大柄な獣人よりもさらにでかい・・
そして、咥えた金属片で襲ってくるらしいよ。」
「ほんまかいな・・・そうやとしても、このままじゃあどっちにしろカラスの餌やろ?
だったら・・・」
「それで仮に逃げだせたとしてもどうする?辺りは砂漠だらけ、唯一のオアシスである
ラドリオ王国内に入ってもまた捕まるだけ・・・結局この大陸そのものが
巨大な獣人の牢獄なのさ。フフ・・・ハハハハ。」
ギルはまた乾いた笑いをあげる。
ラルは無関心そうに何かを考えるのだった・・・

7腐れ飯:2011/04/28(木) 22:36:09

「あかんあかんあかんあかんあかん!」
レキテルはバンバンとガラスをハサミで叩き続ける。
「いや、ちゃうやん!ワシ獣人ちゃうやん!見逃したって!見逃したってぇや!」
「黙レ化け物」
ラルは特に表情を変えないまま、あぐらをかいてじっと座っている。
ジルは笑ってはいないもののなにかを含んでいる表情をして向こう側からこち
らをみている。
「うっさいわボケ!ってか今何時!?」
「サァ…深夜過ぎテ間もナイのは間違いナイんジャナイカ?」
「っち!このガラス強すぎちゃうか!?いっそのこと雷で吹っ飛ばすか…」
「無理無理」
分厚いガラスから外へと繋がる二つの道、一つは扉。もう一つは食事を入れる
小さな窓。
そこからジルは顔をだしてケタケタと笑う。
「防ミサイルガラスだよ?雷だろうが壊れないよ」
レキテルは、一目で不愉快とわかるほど、口をひん曲げた。
「なんじゃいお前さっきから!関係ないやつぁひっこんどけ!」
「そんなことない。僕だって今日の正午死刑なんだから」
「ほれみぃ関係な…あぁ!?」
ジルは目をほそめ、鷹揚に微笑みながら続ける。
「僕だけじゃない。君たち以外にも、おそらく多くの獣人が死刑だよ。この
Aフロアだけじゃなく、左右の塔の奴らだって、何人死刑になったかわからない。」
「コノ国でハ、『獣人である』というコトガ、罪なんダ」
ラルが、そっと目を閉じる。異様なまでに冷静な態度だった。眠っているとき
のような呼吸数で、腕を組み首をたらしている。
「んな…んじゃいこの国!頭わいてんのちゃうか!?」
「そんなこといっちゃ駄目だよ…僕ら獣人なんだから」
「だからワシは獣人ちゃうって!」
そう叫んだとたん、ラルがゆっくりと目をあけ、首を前にあげた。
まっすぐ伸びる視線は、ジルの目とぶつかった。
「獣人だカラ…ヒューマに文句は言えナイカ…?」
ジルは、眉宇に困惑を多少漂わせたが、表情は崩さなかった。
「もちろんさ…この国では特にね」
「いや…お前ハそう思っテいナイはずダ…」
ジルの表情から、微笑が消える。
「ずっと思い出しテイタ…お前、自分ガ有名ジャナイとでも思ってタノカ?」
レキテルは、「何?お知り合い?」と数回呟きながらジルとラルを交互に見比
べる。ジルが口を開きかけたところで、ラルが立ち上がる。
「まぁ。話ハ後ダ」
「後…って…どうすんねん。待つも死ぬ、逃げるも死ぬやで?」
「ザリガニと豚…」
トン丸は、想像以上に落ち着いていた。レキテルも、その真剣なトーンを聞い
て、目の色が変わった。
「お前ラ…腕っ節に自信はアルカ?」

考えるまでもない。

「あるに決まってるやろ。ここで殺したろか?」
ラルは鼻でふっと笑う。
「俺もだ」

その瞬間。今まで聴いたこともないような衝撃波が鼓膜を貫いた。
叫び声だ。ラル・スウィードがその口から、腹から、獣の雄たけびを吐き出した
のだ。
そして大きな拳をふりあげ、大きく溜めると…



ガッシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!


防ミサイルガラスが粉々に吹き飛んだ。

ジルは、口をあんぐりとあけて目を点にしている。トンレキも同じく目を丸く
したが、ジルの表情も驚きの要因のひとつだった。

「待てど死ヌ…逃げれど死ヌナラ…

潰しテデモ生きル」

ラルはゆっくりと拳をさする。

8木野:2011/04/28(木) 23:29:30
「リデ様!脱走者です。Aフロアの獣人3体が逃げ出しました!!」
「ほぅ・・・あの牢屋を破壊するとはA級以上だったか。」
リデは手元の透明なガラス盤に手をかざす。すると、3つの赤い点が映し出された
「逃げる先は一番近くの出口か。ならば、あの「門番」をぶつけるとするか・・」
ひとつの盤面をなぞる。するとその盤面は砕け散った
「リデ様・・・まさかあいつを・・?」

--------------------------------------------------------------------
「さて、残された時間はおよそ7時間だ。」
「死刑の正午マデカ?関係ナイ。脱走シテルからな。」
「それがそうもいかないよ。死刑の時刻は死神カラスがもっとも活動が盛んになる
時間帯だからね。さすがに君が怪力の持ち主だとしても空を覆いつくすばかりの
数の死神カラスを全部相手にはできないだろ?」
「なんや・・・そんなぎょーさんおるんかい。トン丸の骨すらのこりそーにないやんか!」
「だからこそ、迅速に逃げて・・・捕まらないことだ!」

「いたぞ!」
ラル達の前には大きなゲート。それを遮るように多くの守衛が固まる。
「いくで!とん丸!!」
レキテルの下半身をささえていたとん丸は走った勢いのまま飛び上がり、
クルクルと空中に舞った。
次の瞬間、レキテルの身体から電撃が放たれた――――

9腐れ飯:2011/05/21(土) 23:58:34

随分と五月蝿い。

首輪に振動が伝わる。

阿呆な人間共の騒々しい声が聞こえる。剣呑な叫び、荒っぽい足音。

結局、こう必死になって、最終的には自分に頼るのだ。

「馬鹿らしい」

でもまぁ、自分以外がこの砦で好き勝手してるのはあまり良い気分ではないな

暗い部屋に振動がコダマする。



================

「あかん!どっちや!」
「しまったナ…守衛ヲまいテいたラ変な場所ニきてシマッタ」
「この砦だけでもこのデカさ…さすがとしかいいようがないね」
自分たちが奥に戻っていないことは確かだ。レキテルは自分たちの走ってきた方向を思い
返す。トン丸は少しだが息をきらしている。無駄に放電をしすぎたようだ。
「外に出たところでもっと危険になる…ここは一回休むか…」
「アホかい!止まってたら捕まってまうわ!今度はあぁ簡単に牢屋ぶっこわせんとこにぶち込まれんで!」
「ところで無駄にでかいナ…なんだここハ…」
出たところは牢屋もなにもないホールだった。砦にこんな場所が必要かと考えるとそうは
思えないほど無駄に広い空間だった。天井も高く、ドーム状になっている。道もいくつか
に分かれていた。
「…おい、あれ!」
ギルが指をさす。すると階段の続く穴があり、そこから光が漏れていた。
「出口!」
「結局がむしゃらのつもりガ、間違ってはなかっタということカ。」
「ぼさっとしてるとさっきみたいのがゾロゾロ来るで!はよせな…」
トン丸が跳ねるとたった二歩でホールをよこぎり出口の前にたどり着く。
そのまま通り抜けようと首を少し階段へと突き出した瞬間

悪寒に全身を包まれた。

一瞬のことだ。しりぞく。レキテルは咄嗟の判断をしてトン丸をさすがだと思った。ホー
ルの中心に着地し、そのまま勢いで後方に2〜3歩後ずさりをする。
無意識に体に電流を流す。
「どうした!?」というギルの声に気付いたのも、その後だった。
「あれみてみぃ!!」
ギルは出口に目をやる。
なにやら壁のようなものができている。

「…ギロチンカ…」
ラルが小さく呟く、ギルは息をゴクリと音がするほどハッキリと飲んだ。
「ただじゃ逃がさないということか…」

今度は右斜め前から気配をかんじた。
ズーンズーンと重く大きな音が等間隔に聞こえる。
三人はただその方向をじっと見つめるばかりだ。しかしいつでも闘えるようにと足をじり
じりと地面とこすりあわせていた。

姿を現す。

「うお…お…おおおおおおおおおおお!!」

大きな顔。髪の毛は生えておらず、スキンヘッドだ。眉間にしわが尋常じゃないほどよっ
ており、まぶたも大きく目の半分以上を隠していた。
口もおおきく、唇が厚い。
中年以降の顔…

をした巨大な亀…


…………

「きもちわるっ!!」

レキテルは思わず叫んだ。

10kino:2011/05/23(月) 10:05:52
「クルゾ・・!」
そのまるで人面亀ともいえる獣人は声をあげずに
口だけを大きくあけるとその分厚いうろこのような皮膚でつつまれた
頭を横になぎはらってきた
「ひぃっ・・!?」
突然のことに身動きが取れずにギルが逃げ遅れる
「ふせるんや!」
そのギルの前にとん丸が飛び込み、レキテルが電撃を放つ
低い振動音とともに亀の頭の軌道が逸れ、ギルの帽子だけが吹き飛ばされた

「ナンテ風圧だ。アタッタラひとたまりもナイナ。」
ラルは身をかがめながらのけぞった亀の首にしがみついた。
そのまま巨大な亀の首を渡り、甲羅の上まで走りこむ。
「いいで!そのままやっつけてまえー!!」

---------------------------------------------------------------
「ほぅ・・・なかなかの連携だな。」
ドームの上方の一枚の鏡から、リデはレキテル達の様子をうかがっていた。
「ですがリデ様、所詮A級のやつらがあつまったところで
S級のやつには・・・」
「級分けなど、所詮単体での話にすぎん・・・。
出口に兵を回しておけ。」
「・・・ハッ」

リデは鏡の一つにうつるギルに気付く。
「・・こいつは・・・まさかな。」
よくみようと鏡を覗き込んだ瞬間、ギルの姿は巻き起こる砂埃に隠されるのだった


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