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【正月】失踪ラビット【即席】

1 木野 :2011/01/01(土) 00:44:57
いつもと変わらない朝日が昇る。
…ただ、新年あけての日の出であった。

ここは、人里離れた古い神社。
誰も参拝に来ている様子は無い。
だが、一人の神主があたふたとあわてていた。
「いない・・・私のラビットちゃんが・・・!」
空のウサギ小屋の中を歩き回りながら
『兎月神社』の神主、『凪(なぎ)』は困っているのだった。

2 Ronia :2011/01/01(土) 00:59:56
神主の凪が慌てていたその時、そんな古い神社に小さな兎が参拝にやって来た。
といっても普通の兎ではなく、空色の体に黄色く透き通った小さな羽を背に持ち、二足で立っている。
空色の小さな兎は、凪が慌てているのを見つけ、おもむろに声をかけてみたのだ。

「どうかしたの?」

3 木野 :2011/01/01(土) 01:13:52
凪は長い白色の髪をなびかせながら、振り向いた。
「おおっ・・こんなときに参拝者が・・
すまない、この近くで小さな兎を見なかったか?」
神主服をはためかせながら手振りで兎の大きさを示す。

チロリチロリと、雪が降り始めてきた・・・

4 Ronia :2011/01/01(土) 01:32:03
「あっ、雪。」

空色の兎は空を見上げ、雪が降ってきた事を知った。
その後すぐに声がしたので凪の方へ視線を戻すと、丁度「兎を見なかったか」と言われたところであった。
しかし生憎、空色の兎は手振りで示された兎を見ておらず、困ったような顔をしたが…。

「うーん…知らない。でも、よかったらあたしも探すの手伝おっか?」

と、笑顔で凪に言った。

5 木野 :2011/01/01(土) 19:19:15
凪はためらった、ちゃんと話を聞いていてくれなかったし
何よりも空色の兎の容姿は自分たち人間とは違うものだと感じたからだ。

「ええ、お願いします。」

だが、この広い神社周辺の山々。人では多い方がよかった。
空色の兎にこの周辺の地図を渡すと、凪は一足先に階段を下りて行ったのだった。

6 Ronia :2011/01/01(土) 21:30:36
地図を受け取り階段を降りて探しに行った凪を見送ると、
空色の兎も早速捜索を開始する。
とりあえず先ずは神社の裏を探してみよう、と
ぱたぱた走って行った。

「怖くないよー、出ておいでー。」

と呼び掛けながら…。

7 木野 :2011/01/02(日) 01:11:45
「あれ・・?」
空色兎の呼び掛けにこたえるように茂みから凪は
顔を出した。
「おんなじ所探していても仕方ないですよね・・・すいません。」
どうやら、走り回っているうちにここまで来てしまったようだ。

8 Ronia :2011/01/02(日) 07:24:26
空色の兎側も「あれれ?」と声を漏らしながら凪と顔をあわせた。

そこで空色兎はある事に気付く。

「そういえばあたしの名前…言って無かったよね?」

そう、名乗る事を忘れていたのである。
折角だからこの際ここで伝えてしまおう、と思った空色兎は自分の名を言った。

「あたし、『アテリア』。 …今度は向こうの方を探してくるね。」

9 木野 :2011/01/11(火) 10:35:31
「アテリアさん…か。待ってください、私も一緒に行きます」
凪はそう呟き彼女の後姿を追っていった。

10 木野 :2011/01/21(金) 00:10:41
ふたりは森中を捜しまわったが見つけることは出来なかった。
そして今、大きな穴のあいた洞窟の前に立っている。

「アテリアさん・・・もしかしたらここにいるかもしれません。
でも、正直中は危険なのであなたはここに待っててもらえませんか?」
凪は真剣な趣でアテリアに伝えた

11 Ronia :2011/01/22(土) 20:02:43
「えっ。」

凪に待っててほしいと言われて一瞬きょとんとするが、すぐに怒ったような顔をして、

「あなただけ危険な目にあうって事?そんなのやだ!あたしも一緒に行くよッ」

と、素直に退こうとはしなかった。

12 Ronia :2011/01/22(土) 20:09:20
…とは言え、確かに光を通さないその洞窟の中は、真っ暗で何も見えない。
そうである以上どれだけ危険なのかは…小さなアテリアには正直解らない。

だが、それでも1人で待つ事はしたくなかった。
自分に出来る事があれば、どれだけ危険であろうと成し遂げたいのだ。

「…大丈夫、あなたに何かあったらあたしが何とかするから!」

………根拠は全く無いが、ありのままに今の気持ちを凪に言った。

13 木野 :2011/01/25(火) 16:47:38
凪はアテリアに二枚の札を渡した。
「これはお祭りに使う札で、ちぎると光る特殊な紙で作られてるの。これ一枚で30分持つわ。」
そして同じ札を二枚握りしめる。
「だから一枚を使い切ったらもと来た道を戻るのに使って。決して無理しちゃダメよ。」
そういうとアテリアと自分の札を一枚ずつちぎった。
札の中の粉に空気が触れて穏やかな碧の光がもれだす。
「さ、まだ一本道みたいだから一緒に行きましょう。」
二人は洞窟内に足を踏み入れた…

14 Ronia :2011/01/27(木) 21:47:20
真っ暗な洞窟の中を進み始める2人。
札からもれる粉、そこから発せられる碧の光のおかげでかろうじて互いの姿が認識できる。
けれど、この効果は1枚につき30分しか持たない。
だからその30分の間に、兎を見つけなくてはいけないという事だ。
もし深追いをして2枚目も捜索に費やしてしまえば、
仮に兎を見つける事が出来たとしても、そこから元の道に戻る事はほぼ不可能である。

凪の説明からそこまで理解したアテリアは、しかし…。


…アテリアは、隣に居ると確認できる凪の手を、きゅっと握った。

15 木野 :2011/01/27(木) 22:06:19
握られた手を握り返す。
洞窟内は外異常に寒い。見かけだけのこの札の光ですら温かく見える。

「・・・分かれ道のようね。」
ひとつは道なりの広い道。もうひとつは横穴の小さな道だった。
相手は兎なので自分たちがかがんでやっと通れるこの穴にいる可能性も捨てきれない。
「さて、どっちに進みましょうか・・・」

16 Ronia :2011/01/27(木) 23:26:56
2つの異なる道と、それぞれの異なる体格を見て、アテリアは提案をした。
「この小さな道、あたしならまだ余裕を持って通れると思う。」

「…あなたは広い道を探してみて。あたしはこっちを探すから。」
2人居るなら選ぶ必要は無い。それぞれに別れて、各自捜索するのが得策だ。

しかし、最初の約束を忘れたわけではない。
「もしも何かあったら、精一杯の大声を出して。すぐにそっちに行くから。」
アテリアは凪の方を向き、にっこりと笑いかけた。

17 木野 :2011/01/28(金) 01:05:18
・・・止める間もなくいってしまった。
何気なく、アテリアの入って行った穴を札で照らしてみる。
すぐそこで曲がりくねっている小さな穴の奥のほうにまでは光は届かないようだ。
「・・私もいかないとね。」
札に残された時間はもう半分ほどだろうか。
凪はあわてて広い道の方を駈けて行くのだった。

18 Ronia :2011/02/01(火) 20:18:09
小さな穴の道を通っていく事を選んだアテリア。特に複雑でもなくまっすぐなその道を進んでゆく。
光は先ほどよりも小さく弱く、札に残された時間は少なくとも半分を過ぎたのだとわかる。
それでもアテリアは進んでいく。約束を果たすために。失踪した凪の兎を見つけるために。

「絶対に見つけるからね…。」

そう独りで呟きながら。

19 木野 :2011/02/04(金) 01:29:47
凪が進んだ先の道もだんだんとその幅を狭めていった。
「・・・もう三分の一しか残ってないわ・・・ん・・?これは・・」
足元のとがった岩に布の端切れがついているのをみつける。
「ラビットちゃんの・・・本当にここに入ってしまっていたんだわ・・」
辺りを見渡してみる。姿は見えない。そして、壁には何箇所か小さな穴があいてるのがわかった。
「・・・もしかしたらアテリアちゃんの方に・・いるのかも・・」
不安をぬぐえないまま、凪は奥へと進んでいくのだった・・・

20 Ronia :2011/02/04(金) 20:25:28
弱くなっていく光に比例して、暗闇がアテリアを覆い始める。
それが怖くないのか?といえば…きっと嘘だろう。
…もはや、捜索時間も僅かばかりしか残されていない。

アテリアは怖くなった。

もしこのまま見つからなかったら、と考えるだけで身震いしてしまう。
しかし、凪のためにも弱音を吐くわけにはいかない。

…その時であった。

進みに進み続けた道の前方に、『何か』が居るのが見えたのだ。

「あれって、まさか…―――」


言いかけたその声は、最後の光と共に、


闇の中に消えた。

21 木野 :2011/02/06(日) 20:48:23
「・・・使い切ったか・・」
訪れる事の分かっていた暗闇。急に洞窟内の寒さを感じ、身震いする。
だが、すぐには最後の札を使わないことにした。
最後にみた、照らされた洞窟内はまだ細長い一本道が続いていた。
このまま進む分にはおそらく迷うことはないだろう。
凪は狭い洞窟内の壁に手をあて、手探りで進んでいった・・

22 Ronia :2011/02/10(木) 20:27:44
暗い。

寒い。

怖い。


…だが、それでも確かな事がある。

それは先ほど見つけた『何か』が今自分の傍に居る、という事。

『それ』は暖かくて、ふかふかで、とてもとても小さなものだったけど、
それでも確かに『生物』であるという事が小さなアテリアに元気と希望をくれた。

「…戻らなくちゃ。…『約束』だから。」

アテリアは1人そう呟いて、まだ持っているであろう最後の札を探す事にした。

23 木野 :2011/02/10(木) 22:28:07
「・・・こっちではなかったか・・」
額を抑え、手探りで確かめる。
どこをさわっても小さな穴すらない完璧な行き止まり――

落胆はしたが、同時に希望があった。
それは、アテリアがいてくれたこと。
おそらく探し求めていたものは彼女の方にあるはずだ。

「さて・・・分かれ道まで戻らなくちゃな。」
最後の札を握りしめる。岩を触っていた手が痛むが
まだ私はこれを使うわけにはいかない。

―――彼女の顔をみるまでは・・・

24 Ronia :2011/02/12(土) 22:44:30
「………ど…どうしよう………。」

まずい事になった。

確かに持っていたはずの、戻るための最後の札が無い。
どうやらあの狭い通路を通って来た際に、どこかで落としてきてしまったらしい。
しかも今の辺りは真っ暗なため、どこから通って来たのかも、もう知る由は無い。

状況はまさしく最悪だった。

「これじゃ、戻れないよ……。」
アテリアは寒さのあまりふるふると震えだした。
とはいえ寒さについては今一緒に居る『小さな生物』のおかげで実際は暖かいのだが。
しかし、まさかこんな事になるとは思わなかった。
おとなしく最後まで凪と一緒についていけばよかったかなと少しだが後悔すらする。

「……ふぇ…。」
ここまでくると流石に恐怖に耐えるのも精一杯で、アテリアは泣き出しそうになった。


その時の小さな漏らし声は、しかし不思議と洞窟内で普通に聞こえる程度にまで響いたのであった…。

25 木野 :2011/02/14(月) 00:55:39
「・・・よかった。ここにいたんだ。」

偶然だった。暗く静かな洞窟内をゆっくりと歩いていると
突然アテリアの声が聞こえた。
立ち止まり、周りを調べてみると足元に小さな穴があったのだ。

「・・・だめね。この大きさじゃあそっちにはいけないみたい。」
凪はかがみ、小さな穴に手を入れたが肩のところでもう詰まってしまったのだ。

「それにしても、アテリアちゃん大丈夫?なんだか泣きそうな声だったけど・・」
そういながら凪は自分の手が震えている事に気づくのだった。

26 Ronia :2011/02/18(金) 01:40:44
凪がどうやら自分に気づいたようで、とりあえずは一安心。
だが、以前としてやはり札は落としたままなので暗くてよく見えないのも確か。
「…うん……。…でも、札を落としてきちゃったみたいなの………。」
泣きそうなのを堪えて、あくまで大丈夫だと凪に伝えるアテリア。
彼女と共に居る『小さな生物』も暗闇が怖いのか、やはり震えている。
これでは早く出ないと凍え死にそうだ…。

「凪、今どっちに居るの?」
アテリアは方角を確かめるために凪にそう言った。

27 木野 :2011/02/18(金) 20:28:24
手探りで触れた手を握る。
「・・・これを使って。」
アテリアの手にお札が手渡される。
「・・私は壁伝いで歩いていけそうだから、あなたが使って。」
そのまま手を戻す。
答えをきかないまま凪は壁伝いに進み始めるのであった。

28 Ronia :2011/02/19(土) 16:33:22
お札を手渡された時、同時に凪の手の温もりを感じた。
しかしそれはほんの一瞬で、アテリアがお札をしっかり持った時には既に凪は居なかった。

アテリアは凪からもらったお札を千切り、その効果を引き出した。
行きの時にも照らしてくれた、穏やかで優しい碧の光が再び洞窟を照らし、
そして、今までアテリアの傍に居た『小さな生物』が、

自分達がずっと探していた凪の小さな兎だという事を知れたのだった。

アテリアは涙を拭い、そして、
「帰ろっか。あなたの居るべき場所へ。」
と、にこにこしながら見つけたばかりの兎と共に小さな穴を通る。

少しして、そしてようやく先ほどの広い場所へと移動する事が出来たので、
お札で照らして凪を見つけ、兎をしっかりと抱えて後を追いかけたのだった…。

29 木野 :2011/02/19(土) 21:40:13
「・・・あたたかいわね。」
まだ雪が残る山中だが、温かい日差しが二人と一匹のウサギを迎えてくれた。
その温かさに溶け込むかのようにアテリアの手から最後のお札が消えていった。

「・・ありがとう。」
アテリアからラビットを受け取り、その子の頭をなでる。
おそらく一人ではこの子は助けられなかっただろう。
「・・・さぁて、もうお昼も過ぎちゃったみたいね。おなかすかない?
よかったら、神社にお餅があるからお雑煮でもごちそうするけど…」
くるりと神社の方に向き直る。
震える身体をごまかすようにギュッとラビットを抱きしめて――

30 Ronia :2011/02/21(月) 19:26:04
ちょっぴりまぶしい日差しを浴びて、伸びをする空色の兎。
ようやく外に出られたからなのか、もしかすると気持ちが解れたのかもしれない。
しばらくすると、凪からお昼のお誘いを受けたので…、

「…うんっ!」

アテリアは晴れやかな笑顔で元気よく答え、神社に向かう凪についていく。
凪が震えているのに気づいたかどうかは………   神のみぞ知る。

31 木野 :2011/03/24(木) 00:59:11
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