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68名無しさん@おーぷん:2015/05/12(火) 10:57:18 ID:ORiTd2es
「雪子さん、年、いくつ?」
 話を変えるために、なんでもないこと聞いた。
「26です」
「ええ???!!俺より年下?!!俺、29だよ。まいったなあ」
 圭介は、心底驚いた。和装は、大人びた雰囲気を人に装わせるのか。
 雪子の洋服姿を見ていたら、もっと違う反応なのかもしれない。

「なんで私の方が年上に見えたんですか?」
「着物のせいかなあ。落ち着いている女性に見えるからさ。
 実際、落ち着いている人でしょ?俺なんか落ち着きなくてさ。彼氏さんと全然違うでしょ。」
「・・・・・・彼氏さんなんかいません。・・・・・・そうだ!圭介さんの彼女さんは」
「彼女さんなんかいません。」
「え・・・・・・でも」
「29でもいないもんはいないんです。それを言うならさ」
「26でもいないもんはいないんです」
 雪子は、圭介の口ぶりを真似た。二人は、少し笑いあった。

「でも、なんか、俺、よかった」
「え?」
「俺さ、20の時に両親亡くしてて。親しい人、あんまいなくてさ。」
 圭介は、ぽつりぽつりと話し始める。
「友達も、彼女もいなくって。それで、いや、さっきから考えてたんだよ。
 結局、俺、死ぬじゃん?どう死ぬかなーって。
 喉がカラカラに乾いてて、ジュース飲んで幸せーで死んでもいいかなーって思ってたけど」


「私は、嫌です」
「何が?」
「私は、もうこれ以上、人が死ぬとこ、見たくないです・・・・・・」


「だよね。ごめんね。それは、ほんと、ごめん」

 君に会えて、誰かと話せてから死ねるなんて、よかった。
 君みたいな綺麗な子に出会えてさ、というらしくないセリフは、きっと言えない、
 
 自己満足なセリフを飲み込んだ。

 そうだよな。
 脳裏にさっきの恋人同士の言葉が浮かぶ。
 愛し合っている者同士っていうのは、普段から築き上げてるものが違うのだろう。
 先に逝く覚悟も、看取る覚悟も。
 それらをすべて超えたところで、なお、一緒にいたいと思うものなのかもしれない。


 圭介は、力なく笑った。
 耳に流れ込んでくるのは、哀しみにつぶされそうになっている、
 今出会ったばかりの女性だ。しかも彼女は、人の死に目に合いすぎて、かなり疲労してる。
 自分は、何ができるのか。・・・・・・何がしたいのか、考えてみた。
 圭介は、しゃがみこんでいる足を道路に投げ出す形に、ベタすわりをした。
 足や尻にかけてアスファルトの感覚が、ズボンから伝わってこなくなっている。
 全身のけだるさを感じながら、目を閉じた。雪子との会話に集中するために、目を閉じたのだ。


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