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第一汎用スレ 〜散らばる夢〜

1「鍵を持つ者」:2015/06/04(木) 22:47:01 ID:???
それは際限なく……

32とある世界の冒険者:2015/07/05(日) 00:03:19 ID:A/939gzQ
>>31

「……私の友人は娯楽に飢えていましてね」

ひょい、とアンリを解放してやる。
小さな妖精はこれで仕事は完了、といわんばかりの態度で翅を羽ばたかせ飛んでいった。

「幽霊みたいな学者が……何をしようとしているのか……」

「きっと彼女の歓心を買ってくれるはず、ですね……」

ナーブのことを知っているような口ぶりだ。
アンリが先んじて注文していたコーヒーを口につけ、小さく微笑み。

「それで、お話してくれますか……?」

33とある世界の冒険者:2015/07/05(日) 00:16:51 ID:W8FGZeBA

「…………もちろん。

僕はちょっとした依頼を受けていて、とある防犯システムを開発している。
でも、依頼人の注文が実に特徴的でね。具体的に言えば――――」

【ナーブの言う防犯システムとは実に奇妙なものだった。
一言で言うならば、〝相手の記憶の中にある人物を番人とするシステム〟だ。

そのためにナーブが参考にしたのはほかでもない闘幻鏡である。
そして、他人の記憶を再現するためには幻影魔法が必要だという結論に至った。

しかし、ナーブは残念ながらそちらの方には覚えがなかったため、難航していたのである。
そんな時に猫柳からアンリを紹介してもらい、そしてリトスにまでたどり着いたのだ。】

「――――だから、幻影魔法について専門的に知っているという君の力を借りたい。」

34とある世界の冒険者:2015/07/05(日) 00:26:07 ID:A/939gzQ
>>33

「他人の記憶をのぞき見る……」

「――ばかりか、複写し、限定的ながら外界に出力する」

高度且つ難易度の高い複雑な魔術工程だ。
万人に成功する術というわけでもない。
魔術式は対象毎に異なるものが妥当だと、目の前の魔女はすらすらと分析していく。

「……。この計画の予算はどれぐらいなのですか?」

「ああ、いえ……先に、この件は可能ではある。しかしコストも時間もかかる……と、私は結論します……」

彼女の魔術を取り入れれば、十分に可能。
しかし、装置に彼女の魔術を組み込むという過程においても、課題はありそうだ。

35とある世界の冒険者:2015/07/05(日) 00:38:00 ID:W8FGZeBA

「可能、なんだね。
…………それが完成するのなら、いくらでも。」

【予算を気にするリトスに対する返答は、予想外のものだったかもしれない。
何せ、一介の依頼に対して〝どれだけお金を払っても良い〟と言っているのだ。

それだけ報酬が破格なのか、はたまた単なる物好きなのか。
また、これがリトスを騙そうとしている言動ではないということは
ナーブを知るリトスならば、分かるだろう。

……それだけのものをナーブは一度、手に入れているのだから。】

36とある世界の冒険者:2015/07/05(日) 00:45:48 ID:A/939gzQ
>>35

「……では、魔術式の構築は余暇を使って引き受けましょう」

「それより先……その道具にどう組み込むか、そこは専門外です」

機械に求められる挙動は自分ならばできる。
自分なしでできるかどうかはまた別問題だ。

「魔術を記憶させるエンチャンターと……魔術を発動させる術師の代理を務める装置……メカニックが必要になるでしょう……」

「……エンチャンターは同僚にいますので声をかけてもいいですが……メカニックの知り合いは……いませんね」

何よりかかるのは人件費だ。
やることが複雑に絡み合う装置であるがため、専門家を何人も集めねばならない。

37とある世界の冒険者:2015/07/05(日) 00:54:39 ID:W8FGZeBA

「魔術式さえ、構築してくれればエンチャンターの役割は僕が可能さ。
メカニックの真似事も出来るけど、流石に真似事では済まないレベルだからね。

……うん。メカニックについては僕が探してみるよ。
メカニック……とは厳密に違うのかもしれないけど、ゴーレム技師の知り合いがいる。

もし、それでも難しいようなら、探すさ。」

【明らかに猫柳のことである。とはいえ、メカニックとゴーレム技師とでは若干
役割が異なる気がしないでもない。

だが、自分に掛かる依頼であるため、自分で出来ることは出来るだけ行いたいらしい。】

38とある世界の冒険者:2015/07/05(日) 00:58:26 ID:A/939gzQ
>>37

「それなら……問題なさそうですね」

思った以上に現実味がある。
というより、その三人で取り組めば完成するだろう。
メカニックの技量が現時点で不明ではあるが、機構によるゴーレムを弄れるならば問題は少なそうだ。

「――では、私も仕事があるので」

「……より詳しくは……後日……改めて……」

そっと連絡先の書かれたメモを渡す。
これを携えて薬師組合の寮に行けば会うこともできるとのこと。

(……事前調査が、ある程度必要かしら)

39とある世界の冒険者:2015/07/05(日) 01:07:51 ID:W8FGZeBA

「……忙しいところ、申し訳なかったね。
次に会うときに、メカニックをお願いする人と話をして報告するよ。

……ん、ありがとう。」

【そのメモを受け取ると〝忘れないうちに〟自身の手帳へと挟んだ。
そして、走り書きで寮に行けばよい、ということも。】

「じゃあ、またね。リトスさん。」

【リトスの存在によって、依頼の品は思いのほか、早く出来そう……かもしれない。
どちらにしても、ナーブは猫柳に会う必要が出てきたようである。】

40とある世界の冒険者:2017/01/21(土) 02:29:09 ID:3A2llGww
   ジグザール国立大学 中等部校舎
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「――”燃えよ、炎の壁と成れ”――けほ、けほ。」


こん、と。
声と共に真紅の宝珠が付いた杖で地面が叩かれ、中等部校舎の正門に煌々と燃え盛る紅蓮の壁が生まれる。

高度な炎属性の結界魔術だ。【獣】達はその獣性からか、炎を恐れる。
正門、裏門、及び校舎勝手口と各扉。 そこには魔術によって形成された紅蓮の壁が生まれ害意を阻んでいる。


「薬、切れちゃう前に補強しておかないと。」
「はぁー……もうっ、ガルム達が一緒に居てくれればもう少し手間じゃないのにっ!」

中等部の制服を身に纏い、腕に生徒会書記の腕章を付けた少女は大きなため息と共に愚痴を一つ。
同時に杖を軽く振って、作業のために付けていた校舎内の灯りを消す。

少女の名はメノウ。  メノウ・B・”ガーゴイル"。――一風変わった苗字だが魔族という訳ではない。
王都国立大学附属の中等部に通う、炎魔法と召喚術が得意なだけの普通の少女だ。


騒動が起きた時、彼女は校内に居た。
平時は、彼女を守護する三体の使い魔が共にあるが、なにせ騒動が獣の病だ。

狼、龍、翼獣……彼等に何かあり感染し、万が一キャリアになってはいけない。それぐらいは、少女にも理解できた。

「(アリスちゃん、ユリちゃん、せんにゃちゃんやマリンくんも――大丈夫かな。)」
「(みんなおっちょこちょいだったりあわてんぼうだったりだから、怪我、してなきゃいいけど。)」

だからこうして、今の自分にできることを最大限やっている。
逃げ出す事だけなら、一人で問題なくできるだろうが……。


「(――お父さんなら、私達を守るためにこうしてくれるもの。)」
「(だから、私も頑張らなきゃ。) ――ね、お父さんっ。」

少女はここを守る、と決めた。
少なくとも、誰かが手を差し伸べてくれるまでは。

41とある世界の冒険者:2017/01/30(月) 19:48:23 ID:gAsZrCrs
校舎勝手口

炎属性の結界魔術が張られ、獣達が立ち往生している最中
一匹の白き獣がその獣の足元に潜り込むように入り

一閃

獣の足を自身の持っている炎属性の刃を持ったダガーで切り裂く。
バランスを失い倒れる様に膝を着く獣に今度は首を狙い

一閃

綺麗に首を狩りると同時に次の獣の足元に潜り込む。
獣たちも、斧や剣等の武器でこの獣に狙いを定めるも、それら全てを避け一体ずつ丁寧に
そして慎重に獣を駆除してく

やがて、校舎勝手口にいた獣――少ないとはいえ時とはいえ――6体程をほぼ全てを駆逐した

白い獣は返り血で赤く染まっていた

「すみませーん だれか いますか?」

辺りに誰もいない事を確認して声を大きくして校舎に投げ込む。
その声は恐らく初等部の高学年と思える程である。

42とある世界の冒険者:2017/01/31(火) 19:33:44 ID:KugEwf66

「――――。」



声の後、デルタの視力であれば見える……だろうか?
二階の窓から中等部制服の腕章を身に付けた、金色の髪の少女が顔を出す。


「……っ。」

そうしてすぐに頭を引っ込めた後、一分程して少女がまた顔を出す。
誰かと話していたようにも思えたが……。

「ここにっ、居るよー!」
「でも、こっちも危ないから逃げられるならもっとちゃんとした所に逃げてねーっ!」

顔を出した少女が大きな声でそう返す。
校舎や、校庭には焼け焦げた獣の死体、切り裂かれた獣の死体などがあり、数は非情に少ない。

恐らくは教師、生徒等が協力して対処に辺りある程度を排除、結界を展開し安全を確保――
騎士などの、本格的な助けを待って籠城していた、というところだろうか。

43とある世界の冒険者:2017/01/31(火) 22:08:55 ID:N7RUdWk2
顔を出した時、この白銀の狼亜人の子供は喜んでいた
「わふー!!」
顔を出した少女に向かってぴょんぴょんと跳ねて自身の存在を精一杯表現している。
流石に腕章までは見えなかったようだ

――「ここにっ、居るよー!」
――「でも、こっちも危ないから逃げられるならもっとちゃんとした所に逃げてねーっ!」
その言葉を聞きとると
「わかったー!!」
と大声でにこやかに答える

そして次の瞬間
「……ふぅ――」
唸り声を上げると同時に壁に向かって走りだし、自身の伸びた詰めを壁に差し込んで跳ね上がる様に壁を登った
流石は運動神経の良い亜人種と言ったところだろうか

「今、そっちいくねー!!」
壁の上から人懐っこい笑顔を見せて、校庭に飛び降りた。
手にはダガーと回転式魔導拳銃
背中には大きな赤十字の鞄
そして、獣の血に濡れた荒く書かれた白と黒のストライプの服装

その姿はまるで一端の衛生兵の様に

そのまま、メノウがいる校舎まで走っていく。

44とある世界の冒険者:2017/02/04(土) 21:47:34 ID:Ko/BIOAo

「わ……。」
「え、えと、待ってー!い、今入れるようにするからー!」

そんな声の後、少女の姿が校舎の中に引っ込んでいく。
恐らく誰かが結界を張って校舎内に入れないようにしているのだろう。

近づけば成るほど確かに、つよい魔力と熱量を感じる。

……だがしかし校庭内に獣がいないとはいえ、獣の「気配」事態は途切れること無くしている。

このまま入ってしまっても大丈夫なものだろうか……?

45とある世界の冒険者:2017/02/04(土) 22:44:00 ID:VHSrSDoY
>>44

「……!?まって!!だめ!!開けちゃダメ!!」
静止するでるた
何かが変だ
つよい魔力と熱量。確かにこれなら獣も入って来れない
だが、これが弱まってしまったら……?
自身の失敗を恥じる。静止したがまにあうか?

「……グルるるるる」
牙を剥き出して、ダガーと銃を構える

(気配が凄い……一度、戦って数を減らす? でも何処に?)

入る前に、一度現状の確認の為に校庭を見渡す

//第四汎用も見てね!

46とある世界の冒険者:2017/02/11(土) 23:18:16 ID:SHzw6saw

デルタの言葉の後にふっ、と魔力の結界が消える。
同時に熱量が収まっていく――彼女がデルタを校舎へと招くために結界を解いたのだ。


――直後に、校庭の端にあった倉庫が”物理的に爆ぜて”その中から犇めき合った獣が飛び出す。
数は十、二十、三十――とにかく、大量だ。

それを切穴として校庭の外、校舎を覆う壁と門の外から水を得たり、と獣達が飛び出す。


獣は、火を恐れる。

誰かが張った大火の結界は「餌場」を護る堅牢な護りだったのだ。
しかしそれは今、消えた。

獣たちはこう思うだろう。 ――「狩りの時間」だ、と。
なにせ校舎の中には逃げ込んだ生徒や、教師が多くいるのだから。

47とある世界の冒険者:2017/02/12(日) 00:44:35 ID:ASoKSBu6
>>46

「………っ!?」
なぜ、大火の結界をすべて解いたのか
なぜ、倉庫が物理的に爆ぜてしまったのか
なぜ、そこから大量の獣があふれているのか

疑問は多い

だが、現実は起こってしまった事をとやかく出来ない

急いで校舎に向かい走り始める

その速さは明らかにおかしい。子供の体型なのに大人の亜人以上の速さがある

校舎入口に辿りついた

其処にはでるたを向かえにきた生徒が二人

「今すぐ生存者を集めて最上階か無理ならその場で籠城!出入り口はバリケードでふさいで!!いますぐ!!」

怒声

その声の大きさと恐ろしさに生徒はすぐに頷き
生存者に声を掛けに行くだろう

(一階は安全面を考えれば普通は誰も居ないはず、恐らく生存者の大多数は安全面から三階か四階にいるはず)

でるたは少しだけ感謝した、もし、闘う場所が校舎で無かったら。もし、平原のような巨大な平坦な作りならきっと生きて帰れなかっただろう
しかし、戦う場所が校舎ならば、勝機はある。

(再び詠唱が始まるのに大よそ20分。それまでの間戦うだけだ)

ダガーをそっとなでる様にある機構を動かす。するとダガーの刃の長さは通常の剣と同長さに変形した

そし右の下駄箱がある昇降口に氷魔法の障壁を放ち壁を創る

当分はバリケードとして機能するだろう

「さて」
首を左右に動かし軽く体をほぐし
そして、突出している獣に向けて自ら走っりはじめる

「わふ!!」
突出した獣に拳銃を向けて発砲しながら後方の校舎に誘うように逃げ始める

48とある世界の冒険者:2017/02/14(火) 22:31:03 ID:XAC77g/.

……確かに、結界を解くのであれば一部を解けばいいだけのことだ。
術者に何かあったのだろうか、あるいは、全てを解除しないと解除できないタイプの術式だったのだろうか。

――果たして待っていることで再度展開されるものなのか。

然しそんな思考をする間もなく、怒声に惹かれて獣達がデルタへと群がる。
単純に、単調に。 だが激流のごとき勢いと圧倒的物量を持って。

魔術と物理、二重のバリケードは持って数十秒。
しかしデルタの健脚であれば難なく校舎内に逃げ込む事は可能だったろう。

そうして獣達は本能に突き動かされるまま、デルタを追う。
小さな獲物を集団で千切、喰らうためにだ。


だが何体か、「そうではない」ものがいる。
即ちデルタとは別方向に餌を求め移動するもの、壁をよじ登ろうとするマヌケな個体。

――デルタを追う個体だけで言えば間違いなく誘い、処理できるだろう。
しかし、「デルタを追わない個体」達は……

少なくない生徒を襲う可能性が、大いにある。
生徒たち、あるいは教師たちが防衛する術を持っていればいいが。

49とある世界の冒険者:2017/02/15(水) 00:32:06 ID:oNvTe/cA
>>48
走っている間、でるたは魔法詠唱し始める
此れから行う作戦への下準備として。

激流のごとき勢いと圧倒的物量。これは確かに脅威であり、恐ろしい
無秩序に進み、本能のまま行動する獣相手に、追ってくる個体を普通に処理しては間に合わない。

ではどうするか?

簡単である。強力な一撃で一気に複数を処理してしまえばいいだけである。

校舎に向かって走りつつ鞄から一つの品物を取り出し、自身に追っている集団に投げ込み全力で走ったあと、氷属性の魔法障壁を自身の後方に展開した。

でるたの手よりも大きいそれは、主人の手によって安全装置を外されそして数秒後、正確に装置が発動し集団の足元で爆発する。
火属性の魔法瓶に不良品の手榴弾の部品と複数の様々な鋭い金属片が詰め込まれたそれは、爆発と同時に破片が周辺に飛び交う。
でるたを追っていた個体は勿論、途中で興味を失った個体のいくつかは良くて破片で負傷、爆発に近い獣ほど死に至るであろう。

爆発後でるたは再び魔法を詠唱しつつ、そのまま追わなかった個体群に向かい走る

50とある世界の冒険者:2017/02/15(水) 21:14:13 ID:oNvTe/cA
追記

走りながら、でるたは一発の打ち上げ花火を空高く打ち上げたのだった。

51とある世界の冒険者:2017/03/06(月) 00:38:45 ID:RSvQMrxo

爆発の衝撃、そして飛び散る金属片は統率に欠け一斉に襲いかかるだけの獣達には効果覿面と言えただろう。
大半が吹き飛び、吹き飛ばなかった者達も吹き飛んだ者達とぶつかり、転げ、くもんの悲鳴を上げのたうち回る。

だが獣達も無能なだけではない。
獣はその本能で危機を察知するがゆえに、獣なのだ。

爆発を目敏く――この場合は耳聡く聞きつけた獣達は振り返り、体勢を整え
自分達を襲う「脅威」であると認識したΔ目掛け爪を立て牙を剥き殺到する。


……だが獣達ではなくΔであれば感じるかもしれない。

獣達の背後に、ちりちりと焼きつくように放たれる、大きな赤色の魔力を。

52とある世界の冒険者:2017/03/07(火) 20:43:47 ID:XyyJ/Pvc
>>51

獣達の背後に、ちりちりと焼きつくように放たれる、大きな赤色の魔力を感じ

「――――!!!」
咆哮。今までにない高ぶりからだろうか、亜人種特有の野生の血とでも言うべきだろうか

でるた、その幼い体つきとは裏腹に片手から伸びた鋭い爪は魔力によって保護され、刀剣と同じ強度と威力を持つであろう

そのまま、獲物を食らい尽くすかのように校舎に侵入しようとする獣に襲い掛かる。


その校舎上空にて
「――――こちらB1――いや、ベール1。救難信号を頼りに着てみれば……」

「――――でるちゃん、何だか楽しそう!」

二体の翼人が低空を飛行している

二体とも重装甲で完全武装した翼人

「ばーか! アレは暴走してるの!全く、子供なんだから!」

「そうなの?」

「そうなの!」

はぁっとベール1と呼ばれた方はため息をつき

「とにかくあの校舎にいる人たちを助けるわよ!」

「うん!」


そのまま校舎二階の広めのエントランスに向けて滑空を始める

「ベール1よりベール2コースをC-9-2に変更」
そう言うとベール2と呼ばれた方の人物は違うエントランスに滑空を始める

「コースよしコースよし」

「よーいよーい」

二体の翼人は息を完全に合わせて突入コースに乗り

「降下!降下!降下!」

そのまま突入をするのであった

53うさぎ:2017/11/06(月) 03:23:48 ID:a0l8AeZg
tp://ssks.jp/url/?id=1451

54とある世界の冒険者:2018/02/08(木) 07:13:35 ID:owUxTBK2


55ベタなミスを…… ◆/yjHQy.odQ:2018/02/08(木) 07:51:12 ID:owUxTBK2


 その日のことは、よく覚えている。
 雪の降る、凍えきった朝のことだ。

 地域、場所、国……ふむ、覚えていない。
 知らないというのが正しいだろう。
 自分の意志で来たのであれば、忘れるはずはないと今なら自負出来る。
 とにかく、自分はその時、朽ちて崩れた納屋の成れの果ての中にいた。
 

(ぎゃ……!)
(ぐえ……っ)


 飼い葉の中で、ハチェットを手に、じっとしている。
 聞き慣れた声の、聞いたこともない音程。
 そして、無音。
 それが断末魔であることは察していたと思う。
 だが、感情が揺らぐほど声の主に思い入れなど無かったから。
 次は自分かと覚悟をして、ただ柄を握る指に力を込めていた。


(終わったか〜?)
(これで全部だ、拍子抜けだな)
(あぁ、最悪! こんな田舎の端っこまで来て雑魚処理だけしておしまい?!)
(マリーゴールド嬢、依頼料は変わらんよ)
(そんな心配だぁれがしたのよヒル野郎! この私に見合う仕事じゃなかったことにうんざりしてるっつってんの!!)
(はっはっは、君の追い込みあっての挟撃成功だ、感謝している)
(おい兄者、会話が噛み合ってない気がするのは俺だけか)
(奇遇だな弟者、一刻も早く帰りたい)


 顔見知り、本当に知っているだけの連中。を害した一味の会話が聞こえてくる。
 吹く風が視界を歪ませる。飼い葉が靡いたせいだ。
 恐ろしく近い。おおよそ10m。
 勝ち目はない。
 何せ二十人は間違いなくいた騒音たちが、一分経ったかどうかも怪しい時間で静謐に変わっていたから。
 そのうちの一人とさえまともに戦えぬ自分が、敵う道理は微塵とてないのだと嫌でも分からされていた。

 どうか、このまま通り過ぎますように。
 そうなったところでこの状況を打破など出来るはずもなく、このまま凍えて死ぬだけだと何処かで理解していても。
 その時は、そう願わずにはいられなかった。
 どうか、神よ、と。


「……ねえ?」

「分かっている」

「え、何? 帰る? 帰るんでしょ?」

「兄者……まさか気付いてないのか……?」

「あぁ、そうだな」

「納屋だ。もう一人、いる」


 ――あぁ、神様。


 ――まだ、死にたくない。

56 ◆/yjHQy.odQ:2018/02/08(木) 08:29:56 ID:owUxTBK2

 雪を踏みしめる音。
 一歩、一歩。
 近づくたびに心臓を直接殴打されているような恐怖に襲われる。
 ほんの数秒の接近、いったいどれほど長く感じられただろうか。

 柄を握る指が軋む。
 あかぎれた指に血の色が滲む。
 呼吸の仕方を忘れ、瞬きの概念が消え失せる。
 やるしかない。
 ただそれだけが、はっきりとして。

 覚悟は、出来ていたかどうか。

 だが、伸びてきた掌が飼い葉に陰を落としてきた、その時。




「っっっああああああああぁぁぁぁぁあああ!!!!」



 何もかも真っ白になって、手斧を振り上げ、叩きつけた。
 肉を断ち、骨に食い込む、鈍く柔らかい感触。
 その手応えは、今でもしっかりと思い出せる。


「済まない、驚かせるつもりはなかった」

「だが安心して欲しい。我々は、君の味方だ」



 その後に響くにはあまりにも優しすぎる声色に、はっとした。
 見上げると、ハチェットの刃を掴む右手と、噴き出すように景色を染めるどす黒い血液。
 その奥の短い金の頭が、微笑みとともに此方を見下ろしている。

 
「申し遅れた。私は、リーチマンと呼ばれている。冒険者だ」

「盗賊団の討伐依頼を受け、たった今それを完遂したところだ」

「良ければ、話し合えると幸いだ。我々が戦う必要はない、そうだろう?」


 斧を持った手が、ピクリとも動かない。
 穏やかなのに、圧倒的。
 有無を言わさないのに、決して強制はしてこない。
 自分より強いのに恐怖を与えてこない存在との、生まれて初めての出会いだった。
 
 呆気に取られて、斧を手放す。
 彼、リーチマンは、穏やかな顔のままハチェットを取り上げると、軽く放って納屋の支柱に突き立てた。
 そうしてから、血を拭った右手を差し出して……何と言ったのだったか。
 あぁ、多分……こうだったはずだ。


「さあ、行こう」

「暖かな寝床と、新しい未来が君を待っている」


 



――――


「おい見ろ弟者、ハチェットの傷がもう治ってる。化物かあいつ」

「この空気で言うことじゃないぞ兄者」

「ねえ、あのガキ臭くない? 風呂に入れるまでアタシに近づけないでよね」

「ラウネ、あんたもだよ……!」



――――

57 ◆/yjHQy.odQ:2018/02/08(木) 09:45:09 ID:owUxTBK2


「あんた、正気?」

「私が狂気に囚われたことは今まで一度も無かったと記憶している」

「…………そーいう事言ってんじゃないの。真面目に答えなさいよ、蹴るわよ」

「兄者、もう蹴りを入れてる様に見えるのは俺の目の錯覚か」

「奇遇だな弟者、魔装ハイキック浴びせかけたようにしか見えない。帰ったら眼科に行こう、早期治療は肝心だ」


 暖炉の前で毛布にくるまり、濡れた髪を乾かしながらスープとパンを胃に詰める。
 人生数十回分の至福を受けながら、目の前のやり取りを交互に見つめ、手は止めず。
 ハチェットどころかあの納屋を粉々にしてしまいそうな、桃色の髪の女性の綺麗な上段蹴りと。
 それを腕で受け止め小揺るぎもしないリーチマンとを見返してから、諦めてスープに視線を戻す。


「この、ケチな盗賊団の住み込み奴隷あがりのガキを、【ネスト】に連れて行くって?」

「彼は元々ジグザールの人間ではない。違法滞在の憂き目で追放されたところで身寄りもない、彼の了承も得ている」

「あんたらネスト老人会が連れ込むと碌なことになんないって話をしてるの。また鉄砲玉崩れの弟子もどき量産するつもり?」

「……確かに、ジャック君やソウゴを中心に、若い冒険者が大規模なクエストに巻き込まれる風潮は憂慮している」

「その辺はまだ良いでしょ。同じ目にそのガキが遭ったらどうするつもりなのかって話をしているわけ」

「その、才能も何もない一般奴隷少年サマの面倒を、ただでさえ厄介事招き入れるあんたらが、最後まで見切れるかっつう話よ、わかる?」

「ふ、耳が痛いな。確かに我々がトラブルメーカーであることに異論はない」

「だが彼には自由がある。大きな問題に直面したとして、それに飛び込む義務も使命も無い。それもまた、確かではないかね?」

「そこで自己責任論にすり替えるとこがじじくさいっつってんのよ、あんたもゼオも。反吐が出るわ」

「君は優しいな、ラウネ。彼を善き者と見て、案じている」

「あんたよりはね。強くなりすぎるってのも考えものだわ」


「済まない、少しだけ良いだろうか」

「ん?」

「……どうした、少年?」

58 ◆/yjHQy.odQ:2018/02/08(木) 10:17:45 ID:owUxTBK2
「確かに、リーチマンにネスト加入を提言されたのは事実だ」

「だがそれは、僕自身の生活基盤にする名目もある。この案件で誹りを受けるべき者がいるとすれば、打算からの了承をした僕自身のはずではないだろうか?」

「リーチマンのことも、ネストのことも僕はよく知らない。だが、それを差し引いても、彼は僕の恩人だ。あまり目につく場所で罵倒を重ねられるのは良い気分ではない」

「ラウネ・マリーゴールド。貴女を話のわかる人物と見込んで、此処はどうか僕への言葉のみで抑えてもらいたい」

「暴力にも慣れている、死なない程度でなら、多少は耐えてみせよう。条件を呑んではもらえないだろうか?」



「……あんた、いくつ?」

「? 確か生まれてから12回年が巡ったはずだ」

「11ね。なに? 最近の奴隷ってこういうのばっかなわけ?」

「済まない、同じ奴隷仲間だった者から教わったもので、何かおかしかっただろうか?」

「……あんた、名前は」

「ない。番号ならある」

「……名無し(ネームレス)とはね」

「ふふ、王都では縁起の良い巡り合わせだな」

「黙ってて……」

「…………なにか?」

「……ニクス」

「なに?」

「雪、という意味よ。雪の日に出逢ったから、ニクス」

「ニクス。あんたの名前。番号で呼ぶのは我慢ならないし、今だけでもそう名乗りなさい」


「名前……ニクス……僕の名か」

「気に入らないんなら、後で……」

「いや、気に入った。名前というのは初めての経験だ、良いものだな」

「そう? まあ、いいわ」

591/1:2018/02/28(水) 18:44:18 ID:0//3vHH6
まだ、獣の異変が起こる前の事…


代わり映えのしない王都…つまり平和な日常だ

魔族前線云で騒がれていたのも、今は昔
ほぼ停戦状態となっているそれは、人々の緊張を緩めるのに十分すぎる理由だった
ソルビニア前線やその反乱軍の政治的問題もあるものの 緩みきった緊張を再び引き締めるには、ちと物足りない

そう、王都の人々は、代わり映えしない日常を持て余していた。

暇を持て余した民衆がどこへ向かうといえば、まずゴシップだ
今日も有る事無い事、冒険者たちの間では「黒き英雄」とも言われるドクオ・アーラントの噂、信憑性の怪しい記事
もちろん、その対象にはジャック・テイラーやゼオ一行も例外ではなかった

故意的だろうと、そうでなかろうと、力を持った者…または大きくなりすぎた組織は、それなりの代償と責任を持たされる
これらのゴシップはその内の1つにすぎない…所謂「有名税」

しかし
支払う代償がそれだけならば、それは平穏を意味しているともいえるだろう。


「…よくもまぁ、こんなくだらない事ばかり書けるものですね。」


一通りのゴシップ記事を読み終え、異様に丁寧な所作で新聞を置く…その振る舞いは東洋のそれだ。
ネオベイ人らしい振る舞いと、身なりを調えた獣人の少女
以前は黒髪であったその長髪は、太陽の光を通して乳白色に照らしている

彼女の名は フィー 「組織」より派遣されてきた獣人の少女

「…妙な噂、ご存知ですよね」

ぬるま湯の平穏に浸かる王都に、ある噂が漂い始めたのは、此処数ヶ月の事だ

『人が獣になる―――と』

だれか仕掛けた狂言か、それともジグザールの学生達が起こした、タチの悪いドッキリか…それとも本当に…?
平穏な王都に、黒い噂が立ち込めた所に、彼女は数日前、唐突に現れたのである。
ご丁寧に「組織」の「推薦状」まで持って。

60ジャック・V・テイラー ◆/yjHQy.odQ:2018/03/01(木) 05:22:46 ID:P/rjiYRU
>>59

「下らないことでも誰かが笑えれば金が回る。適当なことであれば気にも留めないさ」

「まずそういったもので暇を潰すような連中は依頼人にはならないからね。ドクオさんも言うだろう?」

「ふー……【どーーーでもいい】ってね」


 王都酒場・バッカス。
 カウンターに腰掛け溜息を落とす獣人の少女へ、声はその頭上から降り注ぐ。
 柱と柱に【根付いた】新緑のハンモックで揺られながら、パイプで紫煙を燻らすフードの男性。
 傍らには身長を優に越す杖を掛け、黒と赤に塗られたローブの裾は燻ぶるように揺らめいて。
 件の人物……ジャック・テイラーは、仰々しく手を広げ、友人の不機嫌なときの声を(ほとんどステレオタイプにだが)真似てみせた。


「悪いね、こんな待ち合わせしちゃって」

「でもまあ、下らないゴシップで付け回す連中も多くなったからさ」

「話し聞く前に決闘申し込まれてましたとか、嫌じゃない?」


 今、二人の姿と声を認知するものは、この酒場にはいない。
 師のゼオをして厄介と言わしめた、自然魔術と精霊置換によって編み出された【回帰魔術】の一種。
 【深淵改基(カスタムアビス)】による自然との融合、いわば認識希釈を引き起こすものを彼女にも適応させたのだ。
 「おや?さっきまでカウンターに女の子がいたと思ったけど?」などという視線を彼女は浴びるだろうが、ジャックが適応させている限りは認識はされることがない。
 探知魔術も「異物を探す」ものであればすり抜ける為、彼は大半のパパラッチをこれでかいくぐり姿をくらませているのだ。

 かつては魔法戦士であった彼だが、今では我流でシャーマニズムに通じ、精霊魔術をより深く学んだ魔術師へと変貌していた。
 もっとも、「口より槍が先に出て、槍より先に脚が出る」性格なのは変わらないままであったが……。

「……一応ね。王都がざわついてるのも知ってる」

「俺が動く前にゼオが慌ただしくしてたから只事じゃないとは思ってたよ。まあ、今となっては何処にいるやらだけど」

「それで、組織が動いているってことはつまり……嫌な予感的中ってところか。俺まで駆り出すんだ、そういうことだろ」


 本来ジャックは組織側からの依頼や案件を受けることが少ない。
 【深淵改基】で居場所が判別しづらいのもあるが、そも組織が彼に頼まねばならないほど人的資源を不足させている事態が少ないのだ。
 能力を買うならゼオに頼めばいいし、そもドクオらを差し置きジャックが出る案件などそうそう無い。
 これはよほどの事態と捉えるべきだ、と、彼は考えていた。

611/1:2018/03/07(水) 23:23:21 ID:f9hXvCiQ
>>60

「ええ―――余程の自体です。」

凛とした瞳を逸らさずに、一拍を置く

「――――組織の中で獣化した者が現れました」

酒場のどんちゃん騒ぎの中で その一言ははっきりと聞きとれた。

「獣化の噂はゴシップやガセネタなんかではありません、れっきとした事実として存在します」

淡々と伝えながら、丁寧な所作は崩さずに
竜骨製のグリップで止められた、古ぼけた書類の束を取り出す、東洋らしい彼女とは違って
こちらは、羊皮紙にインクの王都や帝国で使われる書式…残念ながら筆とネオベイ紙では無い

羊皮紙に描かれた文字にしては無機質なタッチに加え、筆跡も無い…
手に触れた感触からしても、おそらくは筆致模倣の魔術で作られたコピーなのだろう

日付の記録は数十年前、まだ君が師に会ったかどうかも判らない日だ。
人体の解剖スケッチと、細かいメモ書きがずらりと並んでいる。
魔術精度が低く、メモ書きの内容の解読は困難だ。
ページを捲るに連れ、そのスケッチが徐々に、人ならざる禍々しい物へと変わっていく
ただ、それだけならカルト教団の狂言資料として扱っただろう
せいぜい眉が少し跳ねた後、「悪趣味」の一言が飛び出すはずだ

しかし、最後のページを開いた時、ジャックは二の句を失った

描かれていたのは「獣」だった。

正直、言葉では言い表しづらかったが、描かれた異型のスケッチは
それ以外の単語では、なんとも名状しがたい形をしているのだ。

だが、君が驚いたのはその右下、唯一読み取れるメモ書き
それは紛れもなく、君の師である ゼオ・ウッドフィールド の名が刻まれていたのだ…

『王立●●●研究所主任:木原』
『助教授:ゼオ・ウッドフィールド』

よりにもよって
『木原』の名とともに―――――

「貴方の師、ゼオ・ウッドフィールド"助教授"を探してください…なんとしてもです。」
言葉を失った君の意識を、凛とした一声が呼び戻す

「此方の諜報員曰く、彼は王都地下へ向かったとの事でした…その後の行方は判りません。」
話は終わりだと言わんばかりに、息を吐く
10年前と変わらない、幼げの残る顔つきは、どこか憂いを秘めており
そらした目線は、まだ何か言い残した事がある様子だった。

62ジャック・V・テイラー ◆/yjHQy.odQ:2018/03/09(金) 05:00:35 ID:pbFWVy7g
「組織の中で……?」

意外極まる回答。
亜人や獣人の組織の構成員が【獣化】したという事実。
つまり、件の獣は「全く別種の変異を引き起こす何かである」ということだ。
なるほど、ドクオが自分に任せようとするわけだ。
今となっては自分はそっちの専門であるわけだし。

「はいよ、ジン」


彼女の手をそよ風が撫で、資料をさらう。
それを手に、手早く全容を見通す。
書類の内容もここまで直接的な人体実験・解剖結果を示すものはなかなか珍しい。
それもここまで奇妙な変異となれば、ゼオはいざしらず自分は皆無に等しい。
ただ分かることは、まともな自然の範囲での変異ではない。
仮に自分が異質というだけで狂気を魔術に変換したところでこうはなるまいと言う確信はあった。

「俺、専門外じゃんか……」

嘆息。
それっぽいってだけであの人選んだのかな。
……と、そんな疑問も吹っ飛ぶベストな答えが次にありました。

「あのバカ……」

嘆息、セカンド。
厄介なこと引っ張り込む天才だなアイツ、と自分を棚上げして罵倒する。
そして彼女からの本題。
隠れるのは今やこっちの本分だったのに、と。


「……組織から、ジグザールへの警告は出てる?」

「まず、少なくともゼオはシロだ」

「ゼオが本気でやらかすつもりなら諜報員は間違いなく殺されているし、俺なんて事前に消されててもおかしくない」

「組織のやり方なんてゼオ自身が一番理解しているし、ファクトリーをそのままにしているのもおかしい」

「メノウ辺りに聞いてみれば多分ファクトリーの防衛設備の点検とかもうしてるんだろうな……つまり何かが起こると分かった上で、事後対処に回ってる」

「ネストも動いてるだろうか、リーチマンなら何も言われて無くても勘付けると思うけど」

「……悠長には出来ないぞこれ」

「ゼオが、組織にも俺にも、誰にも相談をしてないってことは、【これから起きることは事前に対処できないし、事後対処にも猶予がない】ってことだ」

「つまりはもう手遅れ……下手すればゼオを追ってる連中がいるのかもしれない」

「アイツ、時間制限あるからな……分かってる奴らからはまず逃げる。防衛にファクトリーを使ってないってことはやるべきことが他であるってことだし」

「あぁ、もう……!これだから隠者気取りの生活は良くないんだ、世間に疎くなる!桜に怒られるぞまた……」



途中から独り言オンパレード。
彼女をスルーしてなにやら懸念を吐き散らしている。
ハンモックは枯れてなくなり、降り立ったジャックに気付くものは彼女だけ。
槍を冶金した杖を鳴らして……

「地下、か。最寄りは、この店の下」

「さてどうやって探すかな……追手がいるなら隠れながらだし……」

631/3:2018/03/11(日) 16:20:02 ID:jVA/er8w
「―――と、いうのが上から指示されていた、獣化に関しての話して良い内容です。
 ここからは、わたくしの独り言ですので。」

詰まっていた息を吐き出すように、再び大きなため息
組織内でも情報の統制が行われている…由々しき事態、そして時間の余裕も無いのだろう。

「獣化した現場を見たわけではありません、ただ拠点内で騒ぎがあったことだけです」

「王都によく出入りしていた子みたいです、そこの悪趣味な束の様な姿になったわけでは無さそうですが
 現状は、暗室に隔離…との事です。」

と、ここで注文していた飲み物を一口

「師に向かってバカという一人称を使う方は初めてみました。さて…ゼオの氏の詳しい消息に加えて」

射影機で撮られた、一枚の結晶板を取り出す
魔導結晶を使った射影機において、紙よりも制度が高いのだ。
また、偽装されにくいという利点…つまり信頼できる情報源という事

ゼオが路地裏へ入っていく姿がハッキリと写っている。
しかし、それはジャックにとって見慣れた「ネスト」への裏口の1つだ

「ドクオさんもシロだと思いますよ。
 この資料をもらった後、当然ネストへ顔を出して聞いてみたんです。するとギルド員の方はこういったんですよ」

『ゼオさん?ああ、数日前に来たよ。おかげでネストは大騒ぎ
 今までどこ言ってたんだやら、仕事が溜まってるやら、質問やら、一瞬でもみくちゃさ』

『だけど、人に揉まれながら、あの人はこう言ったよ』

『―――ドクオは来ているかって』

『また大騒ぎだよ、なにせギルド員ですら今ネストに、あの『黒き英雄』が来てるだなんて、まったく聞いてなかったんだからさ』

『その後は知らねぇ、ご隠居さん方が集まってきて奥に連れて行ったよ。』

『後日上に聞いてみても、何が起こっているかまったく判らないってさ。
 けど、相当深刻な顔していたらしいぜ…まるで"笑い男"の時見てェだったって。』

『その翌日、ファクトリーの起動と点検だけさせて、何人か引き連れてネストを去ってったさ。ドクオさんもその中だ。』
『その直後、残ったご隠居達から非常事態宣言、今一生懸命に防衛ライン作って、設備点検してる中…お嬢ちゃんが邪魔しにきたって所だな。』

『んで、いったい何の非常事態なんだ?』

「―――――とのことです。」

よりによって、その日付はジャックがネストに顔をだしていなかった時だった
おそらくは、今ネストではドッタンバッタン大騒ぎしている頃であろう

642/3:2018/03/11(日) 16:21:14 ID:jVA/er8w

再び飲み物を一口

「さて、ご質問にお答えしましょう、その警告がこれなんですよ」

持っていた推薦状が、王都ジグザール騎士団への警告書として提出できる形だ
「組織」と騎士団で取り交わされる、秘密の書式である…今までは。

「ただ、渡せませんでした…なにせ今の騎士団長がヴァラハッドですからね。」

ここ10年で、王都も様変わりしたが、それは内政も例外では無かった
まずは騎士大団長の退任である、前任が高齢であったため、数年前に退任したのは記憶に新しい

皆は当然こう思っていたのだ、次の騎士団長はあのリグレット・フォーマルハウト氏であると

住民からの信頼も厚く、家柄も申し分なし、狙った不届き者は決して逃さない、そしてついに騎士団長の座まで捉えたか、のがしたのは婚期だけ
と、ゴシップにデカデカと特集が組まれていたのを覚えている。この記事を見た本人は相当立腹だったようだが

王都の歴史上、初の女性騎士団長誕生かと騒がれていた中
実際はそうもいかなかった、リグレットは今の座を維持、そして突如任命された男…それが

ヴァラハッド・ヘーゲマン…通称:速剣のヴァラハッド

まったく聞いたことのない男が任命されたとあっては、住民の期待を裏切るのは十分だった
ただ、騎士団の影の実力者であった様で、任命は当然との声が上がったのも事実
任命式の際、本人は一言「実力で示してみせよう」との言葉を残しただけであった。

初見時の悪評から反して、実績は出しており
「まぁアイツでもいいか」程度の評価を得られては居るようだが…ジャック達を始めとする一部では、黒い噂が立ち込めている男でもある。

653/3:2018/03/11(日) 16:24:57 ID:jVA/er8w
何より、その経歴だ。

ヴァラハッドは騎士団学校卒であはあるものの、リグレットのような純血型では無い
生まれは、古い医療系魔術団の出身、そしてリューネルグ大学:旧神学科を経由して、騎士団に入団しているのだ
そう、騎士の家系ではなく、魔術師系の家系なのだ

そして旧神学科…これがまた曲者なのである

リューネルグ大学は、あえて澱みの部分の研究を進める学部と教員を創設してある
神学科もそのうちの1つだが、創設当時は、悪名高い学科として有名だった
選民思想と差別思想の塊、他科とは完全に決別した、冒涜的な独自研究と儀式を行っており、表沙汰にならなかった悪事は星の数ほど…
そして何より"木原"と対立した唯一の学科だったのである

重く見た当時のジグザール王が、いわゆる"換気"を行って現在の形になったのが数十年前
現在は、カルトチックであるものの、変わり者の集まりとして陰鬱ではあるがオープンな雰囲気となっている。

ヴァラハッドは、その換気が行われる前の最後の生徒…しかも主席なのだ。

追い出された創設メンバーとその生徒達は、形を変えて王都から離れた湖畔に学び舎:ウェルミースを建て、今も研究と儀式を続けているという
学び舎…という体を成しているが、実際はただのカルト教団に近い。
元からその素質はあったのだ、リューネルグという鎖を外されれば、当然の結果と言える。

「"火ナキ処ニ煙ハ立タヌ"ネオベイの古い言葉です、根拠がなければ噂なんて立ちませんよ」

今現在でも、ヴァラハッドがそのカルト教団:ウェルミースに頻繁に出入りしているのは周知の事実だ
カルト教団の母体となった、旧神学科の人間が騎士団長になったという情報は、最高のゴシップ記事の筈だ
ジャック達を始めとする組織も、いくつかのタレコミを流したが、今に至るまで記事は作られていない…つまり見られている事を前提に、揉み消しを行っている事

また、騎士団の入団数に不穏な数字がああり、それら全てが彼の直属の私設部隊の数と同一である上
前任団長の時代、「組織」とはある程度のつながりがあった騎士団が…彼になってから「組織」との繋がりが完全にシャットアウトされたのも記憶に新しい

つまり、黒以外の何者でも無いのだ

そんな彼に『組織』の『案内状』をもって現れれば…受け取る、受け取らない以前の問題である
仮に受理したとしても、彼が馬鹿正直に受け入れるだろうか?

「アルスくんとリグレット氏には個別にお伝えしておきました、できる限り対応してみるとの事です」
「ただ彼になってから、騎士団が締め付けられているのは事実みたいですね、規定が異常に厳しくなったとか。」

ジャックのため息の原因が、また1つ

66三日月・オーガス ◆QCg3wp6c4o:2018/04/13(金) 01:37:25 ID:F.cwbkBk
「とりあえずはどうにかなってるってことか……」

王国そのものに腐敗、不穏分子がいるというのは分かっていたが、ここまで大事に出来るのは、やはり既にそういう地盤があったということか。
まあ珍しくもない、と思ってしまった。
いつまでも続く平穏に阿るには、少々世の謎が多すぎるのだ。

「馬鹿やっても解明したいってのは分かるけれど、迷惑かからないところでやってほしいよな、実際」

とにかく、組織がゼオと情報を共有したのであれば自分が下手に動く必要はない。
例えば騎士団の団長を捕縛、暗殺するなどと言った行為だ。
ゼオとつながった組織が、ゼオをまず見つけなくてはならないと踏んでいるのだから、何か目的があって動いているのは分かる。
その補助、支援が最優先となれば、自分が起用されるのは当然ということだ。
……魔術体系だいぶ違うけれど、そもそもあの男自体魔術に決まった流派や学派がない、というデタラメ野郎なのだから。

「最優先はゼオの補助、その他はまあ他の組織に任せておけばいいか」

「桜には伝言しとこう……長くなりそうだし、探しに出られて迷子になられても可愛い……いや、可哀想だ」

状況は大体読めた。
組織と結託して動いたのに行方が知れないとなれば、確かにまずい事態であろう。

「で、店の地下から水路に入ればいいかい?」

「推奨侵入経路とかあるんなら、楽は出来るね」

67ジャック・V・テイラー ◆/yjHQy.odQ:2018/04/13(金) 01:38:14 ID:F.cwbkBk
【名前間違えてるね、ごめん。こっちで宜しく】

68とある世界の冒険者:2018/04/18(水) 00:39:43 ID:itgIJPVc
「綺麗事だけでは王都は支えられませんからね…積もり積もった物事が噴出したまででしょう。」

魔法都市ジグザール王国…一見は華やかだが、ヴァラハッド達を含めた黒い歴史もある。
そもそも、滅びた古代都市の廃墟の上に成り立った王国だ
"死者達"を肥やしにするのならば"死者達"の歴史も背負う必要がある
今回の騒動は、背負いきった負の歴史が『病』として噴出しているに過ぎない。

「ええ、長丁場ですから…血生臭い事は減らして行く方向に…」

"血生臭さ"という単語を口にした時、フィーが何かを思い出した様に口ごもる
正直な所、ジャックとフィーの馴れ初めも少々複雑である

「あの…ジャックさん…その…"ガンナー"と呼ばれていt…」

その複雑さの原因の1つである、ある人物の名をつぶやこうとした時…

「…?待ってください、周りの様子が」

ふと気がつくと、周囲の客が静まり返っているのだ
ジャックの周りに屯していた、酔っぱらい達も全員酒場の出入り口付近に集まっているのだ

『どうしたんだあいつ…?』 『さぁ?なんか急に訳わかんねぇ事叫び始めたみてぇだぜ』
『ヤクでもやってんじゃねぇのか?』 『おい、衛兵呼べよ』『俺が?なんで?』
『マスターいねぇのか?』 『ほぼ留守だろあの人』
『おい…まじでやばくねぇか』 『誰か見てこいよ』

少々怪訝な会話からして、道化の演物ではない。
酔っ払っい達の赤ら顔が、不安という感情で染まり始めているのだ。

「…なんでしょう?外を見てきましょう。」

状況を理解するや否や、外の様子を確認しにいく
落ち着きのある東洋の所作は、少々崩れていた。

【…嫌な予感がするだと?そう思った時にはな、大体の場合手遅れだ】

師の言葉が、ジャックの背中を冷たくなぞった。

69ジャック・V・テイラー ◆/yjHQy.odQ:2018/04/18(水) 03:25:16 ID:cLbz7Mn.
「……待って」

彼女がガンナー、と口にしたとき、その言葉を制する。
すぐに彼女が気付いたからか、説明はなく。
彼のローブが、散りゆく花弁の如く崩れて消え去って、その魔力、気配がはっきり分かるようになると。
手に持った杖もまた逆再生のように枝葉を喪い、突槍の穂先をその中から伺わせた。

「覚えてるよ……あんたの言葉だからな、馬鹿師匠」

心中で皮肉ってきた師匠へ、小さく毒づく。
たしかこの言葉の直後、罠水路に自分だけ押し流されて死にかけたんだったか。
警戒心に響く感覚からして、その時とは比べるべくもなく危険であろう。
ジャックに気付いた酔客、来店者は、フィーと彼の前をそそくさと空けていく。
このバッカスで飲む者なら、ここに現れる冒険者のことは自然と詳しくなるものだ。
……ジャックの顔が、剣呑なものであったことも、状況に十分に寄与したであろうが。

万が一、をこの場で考えるなら、やはり。
槍の穂先に僅かに生える若芽と蔓。
そして、一歩。
彼らの見ていたものを、視界に収めた。

「……あれは……!」

701/2:2018/04/30(月) 03:52:20 ID:cH2tH0j6
>>69
>>69

『おい、あれジャックだ…』
『…いつの間に?』
『ジャックさん、あれどういうことなんスか?』

君の姿を見た者達が、次々と声を掛ける
不安と期待の目線を捌きながら、ジャックの目に飛び込んできたものは…

『ウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!』

広場の中央で叫ぶ男だった

絶叫というよりも、悲鳴…
耳をつんさくその悲鳴は、しかし人の声帯が出しているものだ
だが、人の身で出せる声量を遥かに超えたそれはどこか『獣』を彷彿とさせた

『jないおhらkなおいはk,あこあこあああああう、宇宙は…宇宙は空にあるんだぁぁぁぁぁ!!!!』

それにみたまえ、あののたうち回る姿を
先程の書類に書かれた姿とそっくりではないか

「―――獣化反応ッ!?」

とっさに走り出すフィー
所作は完全に崩れ、あまりの絶叫に頭上の耳が完全に垂れ下がる
なんとなく悪い予感がしたが、すでに彼女は走り出してた

712/2:2018/04/30(月) 03:52:45 ID:cH2tH0j6
「大丈夫ですか!?しっかりなさってください…」
「ジャックさんすぐに隔離しない…と」

フィーが介抱しようとした途端、異変は置きた

『ううtyじゃいおtじゃおいyhなおゆあjあいじゃ…』
『のろいいhなꫣ膄ꃢ肦ꛥ醪蓣膠ૣ膓껨ꆗ꿣节』
『蛣膠臣膠૧ꖞ飣肁ꧣ膑ꛣ膏ꃣ膕蓣肂臣膯ꛦ궻ꯣ膟迣膪』

絶叫していた男の『皮膚』が破れた
男の筋肉がパン生地の様に膨らんでいく…さながら君が植物を膨らます時のように
『ぼきぼき』という骨が砕ける音と共に…男の腕や足が肥大化していく
破れた皮膚の下から…異常な太さの体毛が湧きあがる
不気味に肥大した四肢から、大腿骨よりも太いであろう鉤爪が裂出る
恐怖の表情で覆われていた男の顔が、体毛に覆われていく

眼の前の光景を目にしたジャックは、なぜ『魔術士』としての恐怖心を煽られた
死霊術士が死体で遊ぶような、不気味な感情、不快感
まるで人という生き物が、なにか別の存在に弄ばれているように見えたのだ

『…ジャアアアアアアアアアアアア!』



そう言い表す他なかった
あんな骨格の獣は存在しない、その体躯は確かに人間の物だ
だが、あんな姿を見て誰が『人間だ』と言えよう?

だって見たまえ、さっき見た書類と同じ姿ではないか

「この短時間で…そんなはず、が」

獣化反応を目のあたりにして、呆然と立ち尽くしているフィー
ギラついた獣の瞳と爪がフィーを捉えるまで、瞬きの間すら無いだろう

72ジャック・V・テイラー ◆/yjHQy.odQ:2018/05/14(月) 05:06:01 ID:cz2C01KM
>>71
瞬きの間に爪牙が彼女を捉える。
そう、故に【前もって準備していた】。
ジャックは店の人間たちに返答さえ返さなかった。
最良の手段は取れず、最善に指がかからぬこともある。
こと身に余る事態に巻き込まれがちであったジャックの処世術。
【最悪の徹底回避】に尽きた。

「ッッッ!!」

変態が、いや変身というべきか。
それが終わり、明白な敵意を感じた瞬間、ジャックは【消えた】。
瞬動、と俗に呼ばれる短距離瞬間加速歩法。
今のジャックでもそう多用はできないカードを、他ならぬフィーの為に彼は即座に切ってみせた。

元より突きに特化した槍は、その獣の右脇腹から心臓めがけて突きこむだろう。
そして生死の判別を待たずして、ずっと準備していた魔術を解放する。
【回帰魔術】による植物の異常生育。
木属性魔術を、自然に寄せる魔術を地盤に発現して強度と魔術的密度を飛躍的に高めたそれを。
突き刺した対象にかぶせて絡めるように、槍から発生させたのだ。
ジャックは考えた。
生きたサンプルであるこの個体を殺さずに生け捕るのは最善だ。
しかし万が一、この個体が鋼鉄をも引き裂く膂力か、流動的な肉体変質を可能にする敵ならば。
ここで仕留めるのが、【最悪を回避する】点では優位であろうと。
その最悪は勿論、愛すべきバッカスの酔客たちと、仲間(現状はフィー)の身命の喪失だ。


「発煙弾!」

フィーに叱責が飛ぶのは魔術発動とほぼ同時。
眼の前の獣が動き出す前に絡め取らんとする樹木の生成を前にしながら、見向きもせず小型の発射機を投げ渡す。
空中に発射すれば紫色のついた魔煙が立ち上り、その位置に救援を要請する代物。
風にも飛ばされぬ特殊な道具、【ネスト】所属の冒険者全員が所持携帯を推奨される代物であった。

731/2:2018/11/21(水) 19:11:42 ID:ycWTL1h6
>>72
風のような出来事だった。

突風を追い越す速さで放たれた、『突き』
そして絡めた植物による、対象の『位置固定』
魔術と武術の混在したその一撃は、分厚い皮膚と筋肉と骨、そして心臓を『ぶち抜いた』

ほとばしる鮮血と共に、穂先から伝わってくる手応えは、それが人の物を凌駕していた事を伝えてくれた。
皮の分厚さ、それを覆う体毛
筋肉の繊維の太さ、骨の強度と密度…
到底一般人が膨らませられるシロモノではない

訓練的な意味でも魔術的な意味でも、だ


「はぁ…はぁ…助かりました」
「ですが…次からはもっと汚さないようにやっていただけると…嬉しいですね」

降り注ぐ鮮血によって、いつもの冷静な表情を見せるフィーの顔には、ベッタリと鮮血が張り付いていた

「発煙弾…この様子だと必要なかったかもしれませんね。」

空に炸裂した魔煙、特に問題がなければ、すぐに救援が来るはずだ。
だが眼の前の驚異を取り払った今、せいぜい亡骸を運ぶ人手が増えるぐらいだろう

そう
――――――特に問題がなければの話だが

742/2:2018/11/21(水) 19:12:13 ID:ycWTL1h6
「しかし何故、こんな大通りで…」

事後処理を始めようとした途端、何故か寒気が走った
周囲には人しかいない、我々を狙うドラゴンが目の前にいるわけでもない
魔術的な干渉を受けているわけでもない…

なのに、この世の物とは思えない、這いずり回るような恐怖が突如我々を覆い始めたのだ

寒気と言って良いのだろうか、いかんせん名伏し難い、病的なまでの心理的恐怖
日中のど真ん中、人の多い大広間で感じる感情ではないはずだ

「…え、あ…あ…?」

組織の中でも落ち着きすぎと言われている彼女
そんな彼女が今はどうだ、ガチガチと顎を鳴らし、恐怖が漏れ出している
冷や汗と涙が血染めの顔を撫で、ガクガクとした足元は立つことも危うい

あんな彼女は見たことがない…そう思った直後だ

『ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』
『ウァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』
『ウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
『ウァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

周囲の人々が
一斉に悲鳴をあげ始めたのだ


――――――獣 の よ う な 絶 叫 を

75ジャック・V・テイラー ◆/yjHQy.odQ:2018/11/23(金) 05:13:05 ID:qUxyHoyY
>>73>>74

「それは失敬、次からは気をつけるよ」

ポケットからハンカチを取り出して手渡す。
木を放出した槍は、死骸をその場に残して拘束からゆっくり引き抜かれた。


「……かなり頑丈な変質だ。人間の面影は殆ど残ってない」

「薬物や術式でここまで変えるには、元々の才覚や要素が必須になってくる」

「……さっきの彼にそれがあったとは思えない。随分な厄ネタだな」


死骸に突き刺した感覚から、推測。
言葉とともに死骸の脚や腹、首などを刺して、その手応えを確認する。
今は怪物だが元は人間……そんな【倫理観】は今の彼には無い。
いつもは注意して制しているのだが、目の前のあまりの事態に少しタガが外れていたようだ。


「コレで済めば、だけどね」

不吉なことを言った、と苦笑いしてると、屋根伝いに飛んでくる影一つ。
自分を見つけるや否や、傍らに垂直に降り立ち、その長い桃色の髪を目の前で払う。

若く、美しくも憮然とした表情。ジャックに比してもさして変わらぬ高身長。
手に持つ魔長銃は黒の銃身に銀のエングレーブを施した、折りたたみ式銃剣のある魔砲。
そして何より、現在下半身を覆う、タイツと鎧が合わさったような、魔力で組まれた異様な装備が一番目についた。
フィーも知っているが、まず組織の任務には関わらないタイプの冒険者。
魔装士、ラウネ・マリーゴールド。
どうやら発煙弾に呼ばれたようだった。


「や。速いね、ラウネ」

『たまたま近くにいたのよ、で?』

「見ての通り厄介事。獣になる奇病だってさ」

『それ、話していいやつ?』

「あんまり。手伝ってくれると楽なんだけど」

『そうね、報酬次第……』


二人が話をした瞬間、それは突然襲ってきた。
あまりにも唐突な、発生源もわからない恐怖。
――ジャック以外のその場の人間が警戒か、困惑に表情を彩られるとき。

一斉に、街のあちこちで、発煙弾が発射され始めた。

幾つも。
幾つも。

幾つも。
幾つも。
幾つも。


「ラウネ!」

「分かってるわよ……!」

「フィー、ラウネに付いてろ!」


今の状況で出来ること。
打てる手が多いジャックは、槍を構え一気に魔力を解放する。
ラウネはフィーを気にかけつつ、魔砲【モンスーノ】を構える。


「一斉に奴等が暴走する前に、バッカスへ!!」

「暴徒排除魔術ね!」


そして、見た。
もし……バッカスの中の人々が【変わる】可能性があるなら。
それは、ジャックが狂気を持ってから特にきついことだと言い切れる、予測と決断。

761/2:2018/11/25(日) 01:36:19 ID:DK6kEyaw
>>75
「え、あ…あえ…」

手渡されたハンカチを握りながら、地面に這いつくばることしかできない
ラウネの傍につく…どころか、彼女がフィーを抱えてもらわないとどうしようもなさそうだ

『オォォオォォォォおおおおおおあおおあ』
『ウゴコオオアオオオアオオアオオアオオ』

聞き覚えのない、何かが破れる様な音が周囲に響き渡る
それは、人が獣になる音
老若男女関係なく、人だかりが獣だかりに変貌していく
理由は不明だが、獣化を逃れた人々が悲鳴をあげて逃げ回る


『『『ア"ア"ア"ア"ア"アァァァァァァァァァァァァ!!!』』』


そんなか弱い悲鳴は、獣の咆哮が消し飛ばす
つんざくその悲鳴は、しかし使用者の声帯…つまり人が出しているものだ
人の内に、いったい何者が潜むのだろうか

人と獣の境目とは一体何なのだろうか?

奥の人混みから鮮血が飛んだ
またその奥も、
そのまた奥も、
奥の地平線まで、

代わり映えのしない王都…平和だった日常が、ガラガラと崩れ去る
緩みきった緊張の糸が一瞬で張り詰めて、乱暴にねじ切れた



人々の悲鳴と、獣の絶叫が、王都全体に広がっていく――――――――――――――――――

772/2:2018/11/25(日) 01:36:52 ID:DK6kEyaw
"ズズズズズズズ…"

地響き、地鳴り、あぁ…なんと表現すればよいのだろうか
地底の底から響く唸り声が、我々の空を包み込む

青かった空が、みるみるうちに曇り空に塗り替えられる
灰色の雲が、一瞬で毒魔の様な極彩色に覆われた

極彩色の雲は、軟体動物の触手の様な軌道を描きながら、空に浮かんでいた太陽を覆い尽くす
それがあるべき所には代わりといわんばかりに、融けた瞳が妖しく照らし始めた

ありとあらゆる事象を超越する、余りにも冒涜的な光景
これが悪夢なら、早く覚めてくれ――――――――――――――――――

『『『ジャアアアアアアアア』』』

淡い期待を、目の前の『獣』が引き戻す

そんな獣達は、ラウネのモンスーノとジャックの魔力開放…暴徒排除魔術によって吹き飛んだ
石畳がめくれ上がり、砂煙が巻き上がる

フィーが余波に巻き込まれることはなかったが、完全にへたりこんでいる

『え、ちょっとまって』『は?』『…え?』
『…』『ま、まずいんじゃねぇのこれ』『俺、洗濯物出しっぱなしなんだけど…』

バッカスの飲んだくれ達の赤ら顔が、一瞬で真っ青に染まる
どうやら、変質からは逃れられているらしい。

78ジャック・V・テイラー ◆/yjHQy.odQ:2018/11/26(月) 05:17:16 ID:nU1WACdM
「深淵星架(アビスライト)、属性強化、接続――!」

褐色の火花が散り、槍だったものは見る見るうちに戦鎚へと姿を変える。

ラウネが舌打ちしながらも呆けるフィーを小脇に抱えると、ジャックの真後ろに背中を合わせる。

振り下ろされた戦鎚に魔力が迸り、石畳を強かに叩いた瞬間。

二人を中心に魔力の衝撃波が発生、周囲にいた獣を有無を言わさず薙ぎ払い……

その獣の重さ故に、人にまで被害を加える範囲になれず、消沈した。


「殺せたの?」

「無詠唱を属性強化と魔力ブーストで底上げただけ!ふっ飛ばしただけで骨も多分無事!」

「じゃ、まずは【シェルター】からね……!」


2人はバッカスめがけて【歩き出す】。

ラウネは片手で構えた魔砲から加工した魔弾(バラ)を放ち。

ジャックは槍を脇に構え雷属性の矢を撃ち、それぞれ生存者に襲いかかる獣たちを牽制する。

フィーを片手で抱え込んでいても重そうな素振りさえラウネは見せない。

腕力もまた強化されているらしく、魔砲も全くブレずに秒間一発をしっかり発射していく。

モンスーノの一撃は並の冒険者なら鉄製鎧をへこませ、直撃なら骨にヒビを入れる程度。

あくまでバラの射程と精度を補助する為の支援兵装にすぎず、こと対獣殺傷力はまるで期待できない。

ジャックのそれもまた低級魔術。一定のスタンこそ狙えようが、獣の強靭な筋肉には致命傷足りえない。

では何故そうするか。

バッカスの「交戦開始対象を強制退出させる魔術」を使い、近隣の獣を一挙に排除しようとしたのだ。

……そう、しようとした、のだ。


「「は?」」

バッカスに一定以上近づいた瞬間、それは起きた。

店の長テーブルや丸椅子が、魔力を満たし回路を形成し、【飛び出してきた】のだ。

聞いたこともない現象に目を丸くする2人。

そして、本来転移が発生する距離にいた獣が転移せずに硬化した椅子に突っ込まれ、5mほど吹き飛ばされる。


「転移しないじゃないの?!」

「なんだこれ、エラー……いや、発生しない場合のセーフティ?」

「とにかく中へ!バリケード張って、避難所にする!」

「あぁ、もう!!」


獣が来ればすぐにでも迎撃できるように警戒しつつバッカスの中へ向かう。

蹴りであれば如何な獣とて致命傷を狙えよう。


椅子やテーブルはポルターガイストのように浮遊して入口を守っている。

魔力が満ち非常に堅牢な盾になっているようだ。

明らかに目立つ、避難する人からも、獣からも……


「入り口見張れるか?!」

「だったらこのお荷物どうにかして!邪魔でしょうがないわ!」

791/2:2018/12/03(月) 00:09:04 ID:WYdtJWBA
>>78
「たすげでくれぇぇぇぇええええええ!」「この子だけでもぉおおおおおおお!」「いやああああああああああ!」

住民達が、その目立つバッカスの入り口に殺到する
明らかに目立つ、そうあまりにも目立ちすぎたのだ
恐慌状態に陥った人々が、パニック集団へと変貌した

皮肉にも、周囲の影響を考えてジャックとラウネが非殺傷の手段をとったのも仇となった
体の自由を取り戻した獣達が、殺到した人々に牙を向き始めた

我先にと押し寄せる人々が、獣ごとセーフティーに吹き飛ばされて、石畳に叩きつけられる
獣達は入れ食いのように避難民に襲いかかる
それに怯えた集団が足を止めたせいで、後続がドミノ倒しのように崩れ、人と人で下敷きになる
人々の絶叫と鮮血の合間で、獣の咆哮が響き渡る

騒乱、混乱、阿鼻叫喚、まさに地獄絵図…
手の施しようがなくなりかけた、その時である。

<ちりぃん>

狂乱の中から冴えた鈴の音が響いたのだ。
「お荷物――――――失礼ながら、あなたの大筒よりかは、わたしの方がよっぽど軽いですよ。」

802/2:2018/12/03(月) 00:09:25 ID:WYdtJWBA
冷淡な口調の後に、しゃりんしゃりんと鈴の音が続く

傍にすらりと立っているのは、ラウネに抱えられていたはずのフィー
先程の恐怖に震えていた姿とは一変して、悠然とした表情に戻っていた
その端には僅かな綻びが見えるものの、組織で見る、いつもの彼女の姿だ。

「…」「…」「…」

惨憺たるありさまだった周囲が、しん――と静まり返る。
荒ぶっていた気持ち二人の気持ちが、音色が響く度に、穏やかな水面のように落ち着いていく

<ちりぃん、しゃりん、しゃりん>

「えっと…」
「私達…」
「何を…?」
「グルルル…」

住民達だけではない、獣までもが唸り声をあげつつもその動きを止めたのだ。

「―――――ラウネさん、今のうちに避難民の誘導を…ぼーっとされると"お荷物"です」
「―――――ですが、助かりました。ありがとうございます」

白魚のような手で摘んでいるのは、風鈴みたいな形をした金属製の鐘
それに、いくつもの鈴が垂れ下がっている
青白いマナの発光が、風鈴に刻まれた文様をなぞる

フィーは組織の中でも、ある意味で特別な立場を与えられている
そう…彼女は稀有なる『魔法の音』を扱う事ができるのだ

"しずまりの音"
猛獣ですら手懐けるその音色は、人畜問わず周囲に静寂をもたらした。

「グルルルルルルルル…」
だが、音色によって封じ込められたはずの獣が、こちらを見て唸り続ける
大人しくはしているものの、少しでも気を抜けばすぐに襲ってきそうだ。

「…妙ですね、姿形は獣にも関わらずその実は異なるとでも?」
「あまり長く持たないかもしれません…」

眼の前の異型の獣を見て、彼女の顔が曇る。

81とある世界の冒険者:2019/04/04(木) 21:54:25 ID:qFmy1bdU
http://soku0226.blog.fc2.com/blog-entry-9104.html?sp


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