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大規模イベントスレ

1「鍵を持つ者」:2013/07/06(土) 23:19:04 ID:???
おう、大規模イベントしろよ

730とある世界の冒険者:2017/01/31(火) 00:27:33 ID:N7RUdWk2
>>729
「それは……よかった」
心からの笑顔だった。
如何やら杞憂だったようだ。流石は騎士――いや、フォーマルハウト家といったところだろうか

――トリッシュは今まさに、父と姉が紡いできた縁が、守ってきた命が、彼女の救いとなって還ってきているのだ。
――彼女は一人にはなってしまったが、独りではない。家族の、人々の優しさに包まれている。

心配はいらなかったようだ

「私で良ければ是非にもお使いください」
シャキンは自身が知っている最大限の敬意の言葉を告げた
敬語や尊敬語。上官への言葉でもなく、貴族へ向ける言葉を、単語を。
無学な自分が出せる言葉の限界でもあった

「では、私は此れで……ご無事を祈っております。貴方に幸運を」

そういって、地面に落とした銃を拾い上げ、土ぼこりを払いトリッシュに敬礼
そして元来た道に、フルークガストカンパニーに帰った。
全ての元凶を
この怪異を解決するべく
仲間をもう二度と失わない為にも


その時、もし誰かがシャキンの顔を見たらこういうかもしれない
――「まるで希望を持って死にに行く死兵のようだと」

731うさぎ:2017/11/06(月) 21:47:44 ID:a0l8AeZg
tp://ssks.jp/url/?id=1451

732とある世界の冒険者:2017/12/21(木) 23:52:59 ID:2j/MaYcI
【クラリーノの村 中央広場】
「……よし、これくらいでいいかな」
少女は住民名簿を書き上げ、それを衛兵に渡してから顔を上げた。

「生存者確認、か……それだけ被害が広がってる、ってことなんだろうな
わざわざこの村まで確認に来るくらいだもんね」
「ちょっとユリ、全然内容埋まってないじゃない! 今まであれだけしっかり書いてたのに」
住民名簿を見つめ、少女へと声をかける小さき姿……御伽噺で描かれるような「まさに妖精」といった姿の妖精。

「あはは、ほんとだ……でも、なんかさ……これくらいしか、書けなくって」
「……そうね、そうよね……」
「いやいや、リミルが気を落とす必要ないって」
「でも、あんたの友人だって、何人も……」
『世界が変わって』から、少女の学友達が何人も『居なくなった』ことは確認できている。
……いや、『居なくなった』だけならまだ良い、未だに見つかっていない友人も居るのだ。

「大丈夫大丈夫、こんなのが生きてるくらいだから、ミティも扇奈も……生きてるって」
住民名簿の隅まで確認をしたが、ミティーア・ミストナック、神宮司扇奈の名前は見つからなかった。
それ以外にも、心当たりのある友の名を探したが、見つかったのは数名のみ。

「(……アリス、メノウちゃん……きっと、どこかで元気にしてるよね……)」
いつの間にか出会えなくなってしまった友の顔を思い浮かべ、少女は空を見上げた。


「で、これからどうするのよ」
「誰かが解決してくれるかなー、なんて思ってたけど……どうしても、心が騒いで仕方がないんだ」
少女は『元凶』については一切情報を得ていない。
だが、彼女の心が何かを察知したのだろうか。
……ドクオ、ネームレス、ジャック……三人共、彼女の古い友人であった。

「(これだけの事が起きたら、きっとみんな駆けつけてくるはず……
それなのに噂すら聞かない、となると……)」
「……何考えてるか知らないけど、そろそろミレイユさんが心配だわ、先に家戻ってるわよ」
妖精がふわふわと空を舞い、少女から離れていく。
それを見送った少女は、もう一度空を見上げる……

「……もう一度あの酒場で、みんなで集まれる日は……来るのかな……」
記憶の奥底に眠る、酒場に集い騒ぎあった日々の光景。
思えばあの酒場が無ければ『今の自分』は居なかったのだから……

733とある世界の冒険者:2017/12/22(金) 00:19:23 ID:Vqu8JFjw
【クラリーノの村 入り口】
村の入口に金髪の少年が姿を見せる。
背中には大剣を背負い、体には少し傷も見える。

「……っと、ただいま戻りましたよ僕が」
「あ、ユピルおかえり、どうだった? 森の方とか」
「そもそもあの辺に暮らしてる人なんか居ましたかね……ってくらい、人の姿はなし」
「だよねー……ありがと、お姉ちゃんがご飯作ってくれてるよ」
少年は村の周囲を探索し、生存者を探しているようだが成果はなかったようだ。
少女が少年に声をかけつつ、右手をかざし少年の周りに癒しの風を吹かせる。
小さな傷はスッと回復し、疲れを見せていた少年の表情も少し明るくなる。



「で、ヴァンリー氏やテンペスタス氏は今日もまだヘタったまま、と」
「そうなんだよね、まぁ体調悪い割には趣味に没頭する体力はあるみたいだけど。
最近は供給がないから自家発電するしかないってさ」
少女と少年には共通の友人が居る。世界の力の具現化である存在、『精霊』。
しかし『世界が変わって』から調子を崩しているようであった。
……少女の言うとおり、寝込んでしまうというほどではないようだが。

少女が数枚の紙を取り出し、少年へと見せる。
描かれているのはまさに『幼女』と呼べるほどの幼い姿……
しかし、どこか紙を持つ少女の面影が見え隠れしている。

「……これ、ユリじゃないんすか」
「よく見てみればそうかも……初等部入ったくらいの頃かな」
「ヴァンリー氏が一番好きそうな時期ですね」
「……そうか、もうそんなに前になっちゃうんだね……」

自ら選んで『この姿』になり、二度目の人生を送り始めた。
友と出会い、自らの心の中の力と戦い、大切な人も見つけた。
流れた時間は大切な想い出になり、いつまでも心の中で輝いている。

「……もう一度、時間を巻き戻せれば……あの日に戻ることは出来るのかな」
「ダチに居るじゃないですか時の精霊、頼んでみたらどうっすか」
「いや、禁呪を犯したいってわけじゃないからね?……多分あの人も弱ってるだろうし」
「……それに、仮にユリの時を戻せたとしても、世界は巻き戻ったりは出来ないでしょうしね」
そんな事ができるのは『神』と呼ばれる存在のみであろう。少女もそれは分かっているつもりだった。


「はぁ……そろそろ決めないといけないかな……」
「ん、どうしたんすか、趣味のコスプレもう一回始めるんですか」
「それはしばらく封印、世界が直ったら衣装作成から頑張るよ」
「んじゃ、何か別のことでも決めるんです?」
少年がもう一度首をひねり少女の方を向く。
対して少女は遠くを見つめている……その方角は、王都の中央都市がある方向。


「またお姉ちゃんに心配かけさせちゃうけど、その言い訳を決めようかな、って」

734とある世界の冒険者:2017/12/22(金) 00:41:29 ID:Vqu8JFjw
【クラリーノの村 クレファーナ家】
「ただいまー、お姉ちゃん、ご飯できてる?」
「おかえりなさいユリ、ちょうど出来たところだよ」

少女が扉を開けると、そこには少女の姿をさらに成長させ
立ち振舞をたおやかにしたような女性が料理皿を運んでいた。
……やや、胸元が苦しそうなエプロン姿で。


「いただきまーす」
「ごめんね、あんまり大したものが作れなくて」
「いやいや、ご飯が食べられるだけで幸せなんだよ」
菜食を中心としたメニューではあるが、王都では難民が発生するほどの事態だ。
こうして家があり、落ち着いて食事を摂ることができる。
それだけで恵まれた環境にいるのだと少女はスプーンを口元に運びつつ考える。

「…………それでさ、お姉ちゃん」
「どうしたの?」
「……なんだかね、胸騒ぎが止まらなくてさ……そろそろ、行こうかなって思うんだ」
「……そっか、そろそろそう言うかなって思ってたよ」
「あれ、意外と驚いてない」
静かな食卓で会話を交わす二人。
少女の言葉に対して特に大きな反応もせず、ゆっくりと食事を口元へと運ぶ女性。

「ユリが私とゆっくり話す時、だいたいこんな感じだったよ?で、私が止めても夜に出てくもん」
「あ、あはは、おっしゃる通りで……」
バツが悪そうに苦笑いをする少女。今までも何か騒動があれば首を突っ込み、
そして大怪我をして帰ってくる。そんな破天荒な生活を数年間続けていた。

「……私も、何か感じるの、これをそのままにしたら大変なことになるって……
でも、私じゃ止めることは出来ない……私が行っても、力になれないかな、って
……ユリならきっと力になれる、だから、行っておいで」
「お姉ちゃん……」
「大丈夫、村はみんなで守るから……それにミルちゃんも居るしね」

「……ありがとう、それじゃ、そろそろ行ってくるよ」
「あ、待ってユリ、大切なおまじないっ」
少女の頭へ向けて魔術が放たれる。小さな光が少女の周囲をくるくると周り……

「……ツインテールか、最近してなかったかな」
髪が左右で2つに結われる。光はリボンへと形を変え結った髪を可愛らしく飾る。

「やっぱりユリはその髪型が一番だよ」
「ちょっと子供っぽくない?」
「『いつかのあの日』を取り戻しに行くんでしょ?」
「…………そっか、それもそうだね」
姉と妹の間にそれ以上の言葉は要らなかった。姉はとっくに妹の事を分かっていた。
妹は必要以上に姉の事を心配に思う必要もなかった。

735とある世界の冒険者:2017/12/22(金) 00:56:00 ID:Vqu8JFjw
【クラリーノの村 入り口】
「ん、ちょっと君、外に出るのかい」
憲兵が少女に声をかける。
少女は王都学校の制服を身にまとい、村の外へと出かけようとしていた

「あー、はい、ちょっと王都まで」
「おいおい、こんな状況で学校なんてやってないよ、危ないから帰ったほうが良い」
「いえ、授業を受けに行くわけじゃないんです、大切なものを取り戻しに」
「忘れ物かい?それなら王都の隊に連絡して取ってきてもらうよ」


「いえ、こればかりは自分で取り戻さないとダメなものなんです


……大切な友人との思い出を取り返すために『世界を救いに行く』ので」
両手を天にかざし、少女の周りに強風が吹き始める!
少女の体は風を纏い、空へと浮かび上がっていく!!

「うおぅ!?な、何者なんだ、君は!!」
吹き荒れる風の中、憲兵は少女に問いかけた。




「ボクは、ユリーム・クレファーナ、ユリって呼んでね!」

そのまま振り返らず、ユリは王都の中心部へと加速していく。
今、街がどうなっているのか、誰が生きているのか、何もかもが分からない。
だが、分からないことを分からないまま、逃げることだけは嫌だった。
自らの目で確かめ、自らの手でこの事態を終わらせる為に。

「……頼むよ、クロ、シロ」

両手に闇と光の魔力を握りしめ、ユリは飛ぶ。

先の見えない世界でも、きっと未来は明るくなると信じて。

そして……『いつかのあの日』を取り返すために。

736王都―姫乃―:2020/08/24(月) 00:00:37 ID:ZvCjY3JQ
―王都、とある一画―

連日賑わうこのジグザールの中心地である王都も、昼の顔からそろそろ夜の顔へと準備を始めようかという夕方の刻。
早々に仕事を切り上げ今宵の杯を交わす酒場を話し合う労働者、夕餉を作るべく食材の入った袋を提げた主婦、
今日の事を親に告げるのが楽しみなのか、喜色満面に通りを駆けてゆく子供、様々な人が行きかう大通り。
そんな沈みゆく太陽へ送るような今日最後の喧騒に混じって、独り通りを歩く少女がいた。


「〜……♪」
ハーフアップに纏めた美しいブロンドの髪と、派手さはないものの落ち着いた膝丈の水色のワンピースをひらひらと揺らし、
幾つかの食材が入った小さな手提げ鞄を後ろ手に、小柄な体でステップを踏むように歩く姿はまるでさながら童話の主人公のようで。
何が楽しいのか、鼻歌混じりのその表情は笑顔に溢れていた。
そんな少女が軽快な足取りで向かう先は、すれ違う多くの人々と変わりなく、自らの家であった。


―――

中心街から大通りを抜け、少しだけ剃れて後は真っ直ぐ行けば。彼女の目的地が待っている。
彼女と…そして、彼女が何より大切に思う彼が共に住む家だ。
鼻歌は途切れることなく、手提げかばんの底から鍵を取り出して錠前を開けて中に入る。
静まり返った我が家が彼女を迎える、彼はまだ仕事先から帰ってきてはいない。

「ただいまです」

返事をするものもいないのに尚楽しげにそう告げながら、鞄を一度テーブルに置き明かりを点ける。
出かける前に掃除も、調理具の点検も済ませた。後は夕食を作って彼の帰りを待つだけ。

「ふふっ、お魚をおまけしてもらえるなんてラッキーでした」

そんな独り言までこぼれ出す。
そのまま塩焼きにするのも美味しいけど芸がない、たまには魚のハンバーグにでもしてみようか。
ならば付け合せとスープは…―――。
笑みは絶えることなく、今日の献立が頭の中で組み上がっていく。
まだ料理が出来上がった訳でも、彼が帰ってきたわけでもないのに、楽しくて楽しくて仕方がない。

だってしょうがない。出来上がった料理を、彼と食卓を供にすることを想うだけで、こんなにも幸せなのだから。


少女……ではなく、名を姫乃と言ったその女性は、幸せだった。

737王都―姫乃―:2020/08/24(月) 00:01:27 ID:ZvCjY3JQ
―自宅―

お世話になっていた孤児院を出て、想い合う人と二人。
この家に住み始めて幾つかの季節が過ぎたが、姫乃はただただ幸せだった。
朝、王都の騎士である彼を見送り、家事をこなし、時にはご近所の先達の言葉に触れ。
又時には義兄の孤児院へと足を向けては手伝い、時には自身の鍛錬に付き合って貰ったりもする。
買い物をして、商店の店主とちょっとした世間話に花を咲かせ。
そうして一日を過ごして家に帰り、ご飯を作って旦那様を待つのだ。

ありふれているかもしれない、なんてことのない穏やかな日常なのだろう。
そのなんてことのない日々が、幸せで堪らなかった。
いつだって全てが全て上手くいくわけではないが、それでもよかった。

迎えた彼は「ただいま」といい、そして自分は笑顔で「おかえりなさい」と返す。
湯浴みを済ませて、2人でご飯を食べて、小さな会話を重ねて、そしてともにまた眠る。
この与えられだ今゙は、一体どれほどの奇跡を重ねてこれた結果なのだろうとたまに不思議にさえ思う。
考えれば考えるほど笑みがこぼれて、自然料理に掛かる手にも気持ちが籠った。

花嫁修業も含めれば、料理経験も結構な年数になる彼女の手つきに迷いはない。
主菜、副菜、スープと並行しながら進め、彼が帰ってきたときに冷めていない様にとタイミングも図る。
料理をしながら考えるのはいつだって彼の事で、今日は何を話そうか、彼の一日を聞いて、そして自分の一日を聞いてもらって。
そうしてると更に楽しくなって、更に笑顔が零れる。

「はやく、帰ってきてください…」

幸せを抑えきれないその声は、まだ料理が途中にも関わらず、今か今かと彼の帰りを心待ちにしていたのだった。


―――

738アルス:2020/08/24(月) 10:59:34 ID:BWt11At6

「ただいまぁー……!」

ドアの音と共によく通る声が響く。
待ち人来たり、陽の光で少し茶焦げた髪に腰に下げた幾つかの騎士剣と肩から提げた仕事用の鞄。

家では無用な剣を下ろして玄関の壁に立て掛けて。

「お、いい匂い……姫ちゃーん、今帰ったッスよ〜〜」

職場では立場に合わず威厳が無いから、と直した口癖は家では溢れて、
楽しげに、自身を待つ彼女――妻の名を呼んだ。

739王都―姫乃―:2020/08/25(火) 23:19:37 ID:f5e7zD5g
>>739

「はーい」

少し逸るような幼さの残る声が、アルスの声に呼応して家の中に響く。
パタパタと小走りに満たぬ程の速さの足音がだんだん玄関へと近づき、
彼の帰宅よりほんの数秒程で彼女は姿を見せた。

先ほどまで、独り今にも小躍りしだしそうな程に間の抜けた、そして恋する乙女のように赤らんでいた笑みは。
彼の声を聴くと共に、ほんの少しの朱を残した穏やかに綻びへと変わっていた。

「おかえりなさい、アルスさん」

―――ああ、好きだ。
自分を呼ぶ朗らかな間延びした声が好きだ。少しくたびれた彼の表情が好きだ。
迎えに来る自分を目にとめて、それが綻んでいくのが好きだ。そんな彼にこの言葉を贈るのが好きだ。
これから長い人生で、この気持ちが沸かなくなる時など、果たしてくるのだろうか―――

「お疲れ様でした、ご飯ももうすぐ出来ますよ」

そう言って愛おしむように目を細めた後、彼の手荷物を受け取る。
当初彼は気を遣わなくていいと言ってくれたが、これも彼女がさせてほしいとお願いした我儘。
こんな小さなお世話でも彼女には幸せの象徴の一つで、願うならばずっと続けていきたい日常の一コマだった。
そのまま抱き着く訳でなく、体を預ける程でもなく、ほんの少し小さく身を寄せるだけして、
幸せそうにはにかみながら、残った調理を片付けるべく廊下を先導していく。


まだ未成年だった頃の面影を残しながら、その姿勢、所作は立派な女性へと成長し。
そこにあるのは自他ともに認める、誰も疑うことなき「将来有望の若き騎士アルスの妻」だった。

740アルス:2020/08/29(土) 22:54:58 ID:cDNRg54k

「うん、ただいま姫ちゃん」
少女を迎えるのは穏やかで、どこか間の抜けたほにゃっとした顔の青年。
そこに普段騎士として振る舞うアルス=ストラグルの姿はない。

ただの人の良さそうで、どこか抜けてそうな――
「自分の姫」にだけ見せる姿と表情、彼女が独占してしまえるものだ。

「お、やったぁ!やー、今日はほんっと疲れて……未だに書類仕事苦手っすねー、やっぱ……」

少女が望むから、と自然に荷物を手渡して一緒に廊下を歩く。
いつもの日常。かけがえない光景だった。

741とある世界の冒険者:2020/08/31(月) 19:53:11 ID:dmy6iC.2
>>740

「ふふ、一日お勤めご苦労様なのです。
今日は食後にデザートも作りましたから、
頑張ったおでこさんにしっかり栄養補給ですよ」

今では滅多に見せることのなくなった口癖は、゙善き妻゙であらんとする彼女の最大限の信頼の証。
そう悪戯っぽく返しながらリビングへと戻ると、ポールハンガーへと預かった鞄を丁寧にかける。
そのまま忙しなく一度キッチンに引っ込んだかと思えば、手にカップを持って出てきた。

「座って休んでて下さい。直ぐに仕上げちゃいますからっ」

アイスティーの入ったそれをアルスの席へと置いて袖をまくり、
華奢な腕で気合いを入れたポーズを取りながら自信あり気に微笑む。
だが直ぐに照れたようにはにかんで、またキッチンへと戻っていった。


サラダは出来た、スープも温まっている、ハンバーグも後は数分蒸し焼きにすれば完了。
いつも成功するわけではないが、今日は上手く彼が帰ってくる時間に合わせることが出来たのがまた嬉しい。

(やりましたっ)

テーブルからは見えない様に小さくガッツポーズを決めながら、最後の調理へと取り掛かっていく。
自分が作る料理を彼が心待ちにしてくれる、これもまた彼女が好きな゙何気ない日常゙のだった。

742アルス:2020/09/02(水) 05:47:08 ID:K6Foay92

「おっ、いいっすねー!疲れた時には甘いものっすよ〜」

にへら、と締まりのない笑みを浮かべて椅子につけば、
夏の暑さに火照った身体にはありがたい紅茶が置かれて、
「ありがとっすー」と間延びした声で礼を返す。

「はー、いい匂い……やー……
 帰ってきて奥さんが居て美味しいご飯が出てくるとか
 改めて幸せだなぁーとか思っちゃうっすよ」

「や、っていうのも今日部隊の独り身の皆に絡まれて……
 改めて姫ちゃんのありがたさを実感したというかなんというか……」

カップに口を付けて一口飲めば、そんな事を言って職場での出来事を語りだす。
のんびりと、自分が過ごしてきた時間を彼女と共有することがアルスは好きだ。
忙しいのはわかっているが、話したいことが多くてついつい止まらなくなってしまう。

743とある世界の冒険者:2020/09/03(木) 19:18:42 ID:b1DZ7lnE
>>742

「ん〜?……ンフフフフフフ〜」

アルスの話に返答もないまま、妙な笑い声だけが返ってくる。
手際よく出来上がった料理を皿に盛り付け、配膳するべくキッチンから出てきた彼女は、
……顔を朱に染め、これ以上ない程だらしない笑顔を浮かべていた。

「今日は魚屋さんでおまけしてもらっちゃったので、せっかくだから魚介ハンバークにしてみたのです〜」

「ポテトサラダと卵スープも添えてぇ、バゲットに乗せてみるのもオススメなのですよぉ〜」

仄かな魚介と添えられたソースの香りが食欲を刺激する、それが軽く絡みついたポテトサラダもまた視覚から味を想起させた。
スパイスの香りが引き立つスープも、きっとバゲットを軽く浸して齧れば一際美味しく食べられるだろう。

……それはともかく、献立を説明する蕩けたような声、それに表情を見れば喜んでいるのは一目瞭然だろう。
゙奥さん゙、たったこれだけでも心躍ると言うのに。
彼が自分の手料理を食べてくれるだけでも心が満たされるのに。
こんなに褒められてしまっては、もうどうしようもない。
ふわふわと浮くような幸福感に身を任せるしかないというものだ。

「ありがとうございます〜……ふふっ、でもお互い様なのですよ」

配膳を終えるとエプロンを脱ぎ、自らもアルスの向かいに座る。

「旦那様が私の手料理を心待ちにしてくれる」

「それだけで、なんだか泣きたくなっちゃう位に……幸せですから」

744アルス:2020/09/05(土) 18:33:29 ID:hLxc5DWA

「幸せボケとかしてるつもりはないんすけどね〜
 どうも顔とかオーラに出てるとか言われて……というかあいつらも遊んでないとちゃんとしてればいいのになあ」

「や、姫ちゃんぐらい出来た奥さんが見つかるかどうかはまた別っすけどね〜」

ニコニコ笑顔の姫乃を見て、なんだか自分まで嬉しくなってしまってアルスは笑う。

「お互い幸せで言うこと無しッスね!……ってうおおっ、美味そうっ!」

向かい合って座れば並んだ料理たちに子供のような笑みを浮かべた。
――どこにでもある幸せな夫婦の、そんな日常であった。

745とある世界の冒険者:2020/09/08(火) 19:46:58 ID:AONps9cw
>>744

「ふふっ、今日も腕によりをかけましたから。どうぞ召し上がれ」

柔らかな笑みで彼の言葉に頷きながらも、料理に手を付けるよう促す。
彼の話しも勿論全て聴きたいが、今日も彼を想って作った料理だ。
出来立ての美味しいうちに食べて欲しい。

「私もよく言われちゃいますよ?惚気が滲み出てるーなんて。
気付けばいつも笑っちゃってるみたいです、えへへ……」

そんなことを溢しながら、その言葉通り絶えない笑みで自身も料理に手を付ける。
口に運ぶと同時、表情が更に綻ぶ。今日は制作者自身納得のいく仕上がりになったようだ。

「でも、皆さん悪態をついたりしますけど。祝福されてるってわかりますから。
感謝してもしきれないです……私は、果報者ですね」

噛み締めるよに呟いた後、照れるように大げさに笑って見せる。
元来自分はあまり強い人間じゃない。油断したら、また泣いてしまいそうだった。

―――彼と巡り合えた運命に感謝を。今この身を取り巻く全ての人達に感謝を。
全てが喜びに満ちた人生ではなかったけれど、少なくとも今彼女が生きる日々は。
祝福と感謝に満ちていた。

746アルス:2020/09/17(木) 09:03:17 ID:Vd43BQCM

「うんっ、いっただきまぁーすっ!!」

両手をぱん、と合わせてそう言って一つずつ料理を口に運んでいく
口に運ぶたびに笑みが漏れ、美味い、美味いと声も上がる。

「あはは、仕方ないっすよ、事実幸せっすし
 ……あ、こういうところか」

「まだまだまだまだっ。
これからずっとしあわせになってもらうんすから、果報者じゃすまさないっすよ〜〜」
 はー、美味いっ――おかわり!」

747とある世界の冒険者:2020/09/17(木) 19:46:57 ID:5dC9J0WI
>>746

「今より幸せになんて…ふふっ、どうにかなっちゃうかもです」

冗談めかして答えながら綺麗に平らげられたお皿を受け取り厨房に入っていく。

美味しく食べて貰えたのも然ることながら、一人前を平らげるのが随分早い。
これなら取り置きの分もまだ温かい、書類仕事と言っていたが本当に疲れていたんだろう。
湯浴みを済ましてもらったらマッサージでもしようか、そんなことを考えながらおかわりをよそう。

「でも私も負けないですよ。これ以上は勘弁してって思うぐらいに幸せでいてもらえるよう、
頑張っちゃいますから」

よそったお皿をアルスの前に戻して笑顔一つ。
こんな会話が出来るくらいには、二人は確かに夫婦となっていた。
姫乃が一端の女になったように、アルスは頼もしい男に。
想い合う少年少女から、愛を詠い確かめ合う男女に。

昔はこちらが好意を示せばすぐに真っ赤になっていたというに。
なんだかすっかりかっこよくなってしまった旦那様に、知らず小さな笑いが音になってが込み上げた。

748アルス:2020/09/26(土) 22:40:19 ID:raw1nUbo

「どうにかなるぐらい、幸せにできたらいいんすけどねえ」

なんて、冗談めかして言える程度には立派に成長したかつての少年。
盛り付けられた料理に「ありがとう」と言葉を返してなによりも美味そうに食を進める。

「あー、美味い〜〜……幸せだなー、ほんとー……」
「……あ〜書類仕事やりたくねぇっす〜、このまま風呂入って寝たい……」

……が、根のところはさほど変わってはいなさそうであったとさ。


//忙しくなってきてぽつぽつ返しきれなく鳴ってるのでこの辺でFOで!
久々に楽しかった〜おつ!

749すまん数日見てなかった:2020/10/02(金) 19:43:18 ID:/8OTCleY
>>748

「ふふっ、お背中流してあげますから、もうちょっとがんばりましょー」

愚痴を溢すかっこよくて可愛らしい夫に、そんな言葉と共に変わらず微笑むのだった。

//いやいや、こちらこそ楽しかったよ。ありがとう乙っ


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