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【場】『湖畔』 その4
1
:
ようこそ、『黄金町』へ
:2015/10/29(木) 21:42:56
日本有数の汽水湖、『H湖』に臨むロケーション。
H湖は北側は深く、南は遠浅。
ウナギ、カキ、スッポンの養殖が盛んな他、
マリンスポーツのメッカでもある。
『湖畔』は、『H湖県立自然公園』にも指定されている。
―┘ ┌┘ ◎
―┐ H湖 ┌┘ ┌┐ 住 宅 街
│ ┌┘ .┌ ..│... ∥
┐ │ ┌ ┌┘ ∥←メインストリート
│ │ ┌ │ ∥
┐ │ ┌ ┌.. 黄金原駅
│ └─┘┌― ┏ ━■■━ ━ ━
━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┛ ∥←ネオンストリート
│ └―┐黄金港.. 繁 華 街
└┐ ┌――┘ 倉庫街
─────┘ └――――――――――――
前スレはこちら
【場】『湖畔』 その3
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/netgame/9003/1418487929/
2
:
伊丹 玄『ノー・ブロークン・ハーツ・O・T・F・F』
:2015/11/16(月) 01:56:44
>>1
公園のベンチに一人の男が座っていた。
口には火のついたタバコ、紫煙が空へ上り消えていく。
足元にはファストフードの紙袋。
いらついた様子であった。
ザリザリザリ (クソが。)
ザリザリザリザリ
ザリザリザリザリ
ザリザリザリザリ
(止まらねぇ。) ザリザリザリザリ
「チッ。」
舌打ちをして、口から煙を吐き出す。
「イライラするんだよ……」
3
:
火島 辰也(ドラゴン・ガイ)『ドラゴンランド』
:2015/11/16(月) 19:16:17
「ふー、湖畔の農家さんとの交渉も一段落だ。
今年の秋の収穫はどうなるかと思ったけど、比較的安定しているみたいだな。」
のっしのっしのっし……
身長2m近い大男が、ダンボールを積んだ自転車を引きながら、伊丹に近づいて来た。
>>2
(伊丹)
「隣、座ってもいいかい?」
ベンチに座っている伊丹に声をかける。
4
:
伊丹 玄『ノー・ブロークン・ハーツ・O・T・F・F』
:2015/11/16(月) 22:57:42
>>3
ザリザリザリ ザリザリザリザリザリ
「あぁ?」
ザリザリザリザリザリ
声のしたほうと顔を向ける。 ザリザリザリザリザリ
鋭く目つき。悪い目つきだ。 ザリザリザリザリザリ
飢えた獣のような危険な瞳。
「ダメだっつったらどうする?」
ザリザリザリザリザリ
ザリザリザリザリザリ
ザリザリザリザリザリ
ザリザリザリザリザリ ザリザリザリザリザリ
「デカブツ。」
男はジーパンに革ジャン。半長靴を履いていた。
足を組み、タバコの火を靴底で消すと、足元の紙袋を拾い上げた。
5
:
火島 辰也(ドラゴン・ガイ)『ドラゴンランド』
:2015/11/16(月) 23:22:49
>>4
(伊丹)
のっし
「なにかダメな理由があるのかい?」
男は温和そうな顔つきを崩さぬまま、よっこいしょ……っとベンチの逆端に座った。
ずん……男の体重でベンチが心なしか歪む。
男の格好は白のシャツに黒のズボン。サイズが小さいのかかなりピッチリしている。
手にタッパーを持っている。
6
:
伊丹 玄『ノー・ブロークン・ハーツ・O・T・F・F』
:2015/11/16(月) 23:33:19
>>5
ザリザリザリザリザリ
「チッ……ねぇよ。」
ザリザリザリザリザリ
(イライラさせるんじゃねぇぞ。) ザリザリザリザリザリ
ザリザリザリザリザリ
足が小刻みに動き出す。
貧乏ゆすりのように足が動いているが、構わず紙袋から包み紙を取り出した。
ハンバーガーの入っている包み紙だ。
ザリザリザリザリザリ
ブチッ
男は紙ごとハンバーガーを口に入れ咀嚼し始める。
ザリザリザリザリザリ
ザリザリザリザリザリ
ザリザリザリザリザリ ザリザリザリザリザリ
7
:
火島 辰也(ドラゴン・ガイ)『ドラゴンランド』
:2015/11/16(月) 23:57:44
>>6
(伊丹)
「それはよかった」
男がタッパーを開けると中には…………干し芋が入っていた。
もっしゃもっしゃ……男は干し芋にかじりつく。
「はー、んー、やっぱりうちの店の干し芋はおいしいな……」
もっしゃもっしゃ……味わうようにゆっくり咀嚼する。
「しかし君はずいぶん変わった食べ方をするんだね。おいしいのかい?その包み紙?」
8
:
伊丹 玄『ノー・ブロークン・ハーツ・O・T・F・F』
:2015/11/17(火) 00:22:10
>>7
「そうかよ。」 ザリザリザリザリザリ
(クソッ。デカブツめ。脳の大きさと体のサイズが合ってねぇのか。)
ザリザリザリザリザリ
ザリザリザリザリザリ
ザリザリザリザリザリ ザリザリザリザリザリ
イライラが溜まっていく。
健康によくない。血圧が上がっていくからだ。
「あ?」
「美味くねぇよ。」
ぺっ!っと包み紙を紙袋に吐き出す。
ハンバーガーはチーズバーガーらしい。
「クソが。」
ぼそりと呟いた。
9
:
火島 辰也(ドラゴン・ガイ)『ドラゴンランド』
:2015/11/17(火) 00:35:40
>>8
(伊丹)
「ああ、やっぱり。おいしくないよね包み紙は」
「口直しにミカンでもどうだい?」
伊丹の方へ手を差し出してきた。
大きな手の上にミカンが1つのっている。
10
:
伊丹 玄『ノー・ブロークン・ハーツ・O・T・F・F』
:2015/11/17(火) 00:50:27
>>9
ザリザリザリザリザリ
「ミカンだ?」
ザリザリザリザリザリ
ザリザリザリザリザリ
「一応貰っとくぜ。」 ザリザリザリザリザリ
ザリザリザリザリザリ ミカンを受け取る。が、口はつけない。
ザリザリザリザリザリ 変わりにハンバーガーを食べる。
がつがつと食べすすめる。 ザリザリザリザリザリ
「テメェ、野菜屋かなんかか?」
ザリザリザリザリザリ ザリザリザリザリザリ
ザリザリザリザリザリ
(肉屋みてぇな体形だがな。)
11
:
火島 辰也(ドラゴン・ガイ)『ドラゴンランド』
:2015/11/17(火) 23:13:42
>>10
(伊丹)
「その通り。野菜や果物を売る青果店さ。」
「ここの湖畔はおいしいミカンがとれるからね。うちの大事な取引先さ。」
ミカンを剥いて食べ始める。
ムッシャムッシャ……よく食べる。
12
:
伊丹 玄『ノー・ブロークン・ハーツ・O・T・F・F』
:2015/11/17(火) 23:31:30
>>11
ザリザリザリザリザリ
ザリザリザリザリザリ
「へぇ。」 ザリザリザリザリザリ
ザリザリザリザリザリ ザリザリザリザリザリ
ハンバーガーはすでに無になっていた。
男は紙袋に噛み千切られた包み紙を丸めて放り込むと、紙袋も丸める。
紙球と貸した紙袋を踏みつける。 ザリザリザリザリザリ
「まずかったらぶっ飛ばすぞ。」
ブチッ ザリザリザリザリザリ
皮ごといただく。 ザリザリザリザリザリ
ミカンの皮ごと飲み込んだ。
「なかなかイケるな。」
ザリザリザリザリザリ
ザリザリザリザリザリ ザリザリザリザリザリ
ちょとはイライラが紛れたのだろうか。
言葉の険が少しだけだが取れたような気がする。
「デカブツ。ここになにしに来た。」
13
:
火島 辰也(ドラゴン・ガイ)『ドラゴンランド』
:2015/11/17(火) 23:58:13
>>12
(伊丹)
「ここに何をしに来たか、か。」
「うーん、仕入れの帰りにちょっとお弁当を食べるスペースを探してただけで特に理由はなかったんだけど……」
「どうも君の顔を見てたら気が変わった。」
じぃっと伊丹の顔を見る。
「君は何か悩みを抱えてないかな。何かそういう目をしている。」
「僕はこう見えてお節介でね。そういう目をした人を放っておけない。」
14
:
伊丹 玄『ノー・ブロークン・ハーツ・O・T・F・F』
:2015/11/18(水) 00:15:37
>>13
「あ?」
ザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリ
ザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリ
ザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリ
(なんだ?コイツ。)
「悩みだ?ねぇよ。」
「俺はイライラしてしかたねぇだけだよ。」
痙攣を起こしているかと心配しそうなほどにビクンと首が跳ねる。
にらみ付ける目線は獣のようで、口元は三日月のようにゆがんでいる。
「悩みはねぇ。善人ぶりてぇなら他所でやれ。分かったら帰りな。」
15
:
火島 辰也(ドラゴン・ガイ)『ドラゴンランド』
:2015/11/18(水) 00:29:50
>>14
(伊丹)
「ふむ、そうかい。」
「まぁ、無理にとは言わないさ。」
「そのイライラとれるといいね。」
よっこいしょ……と立ち上がり自転車を引きながら去っていく。
16
:
伊丹 玄『ノー・ブロークン・ハーツ・O・T・F・F』
:2015/11/18(水) 00:36:03
>>15
ザリザリザリザリザリ
ザリザリザリザリザリ
「取れるだろうよ。」
「ウゼぇのが全部消えうせれば多分な。」
ザリザリザリザリザリ ザリザリザリザリザリ
ザリザリザリザリザリ
ザリザリザリザリザリ
引止めはしない。
ただ空を眺めている。 ザリザリザリザリザリ
(あぁ―――) ザリザリザリザリザリ
ザリザリザリザリザリ
(どうするかなぁ。アイツみたいな奴ってのは少ねぇのか?) ザリザリザリザリザリ
ザリザリザリザリザリ
イライラは、まだ消えない。
17
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2015/11/20(金) 23:55:56
「…………」
(探偵、今頃依頼どうなってんのかな……)
妹という存在。
あの日以来頭の片隅に、常に。
ヒュッ
(えひっ……青春ものみてえなことしてやんの……)
湖面に石を投げる。
首には黒い、マフラー。もう、寒い季節だ。
ピッ
ピッ
ポチャン
二回跳ねて、沈んだ。
18
:
鹿沼 紅太『ドレッドノート』
:2015/11/21(土) 23:29:04
>>17
(……あっ)
散歩中に、知っている顔を見つける。
『稗田恋姫』。
黄金町のご当地アイドル……である以上に、去年までは『元』同学年だった(はず)。
「お、オッス……」
物憂げな雰囲気を感じたが、あえて声をかけてみる。
「……何してんの」
……もし恋姫側に覚えがあればの話だが。
『鹿沼紅太』。
この少年の頭髪は、ワックスで立たせた赤ではなく、短髪の黒だったはずだ。
19
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2015/11/21(土) 23:53:11
>>18
「えひっ」
ビクッ!!
「………………お前!」
《オォォォオオオオオ・・・・!》
恋姫の桜色の瞳が/スタンドの烏面の奥の目
が、鹿沼を一瞥する。
知った顔だ。
・・・・だが、すぐに視線は湖面へと戻る。
「……噂されるぞ。嫌だろ……僕と。
一緒にいたなんて事に、なったら……! 嫌なんだろ。」
「……」
ゴォ
ゴォォ
傍らに現れた黒衣有翼のスタンド。
その各部から噴き出す青色の焔。
「……」
「…………DQNに、ジョブチェンジしたのか?」
少し黙ってからそう、付け加えた。
20
:
鹿沼 紅太『ドレッドノート』
:2015/11/22(日) 00:08:02
>>19
「うぉッ!?」
恋姫の反応、そして烏面、青い焔。
思わず後ずさるが……
「……」
続く恋姫の卑屈とも取れる言葉に、足を止める。
「……困るのはそっちじゃねーの」
「アイドルなんだろ? 今は」
恋姫に合わせるように、視線を湖畔へ。
「……あっ、髪のこと? ジョブ?っつーか、イメチェンつーか」
21
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2015/11/22(日) 00:29:52
>>20
「……前からアイドルだよ。中一ん時から……
えひ、情弱だなお前。僕は、みんなの……お姫さまなのに……」
笑み。
陰気で、自嘲的な。
「……そのまま向こういけよ。」
シッシッ
後ずさった動きに、手で払う仕草。
目を少し細める。
・・・・本気で追い払う仕草ではない。
「イメチェンか……えひ。
無課金アバターから、微課金アバターになったって感じ。」
湖面に顔が映る。
恋姫の目つきは、少し変わっていた。
それは課金額の多寡で決まるものではなさそうだった。
「……僕の『ブルー・サンシャイン』」
「見えるんだ。
お前も……イメチェン効果ぁ?」
ゴォォ
青い焔は、その勢いを緩めない。
何を糧にして、この炎は燃えているのだろうか――
22
:
鹿沼 紅太『ドレッドノート』
:2015/11/22(日) 01:00:10
>>21
「あー……ワリぃ。そうだったな」
「あんまし見かけねーから……忘れてた」
間違いを詫びる。
詫びて、そのまま。
立ち去ろうともせず、ポケットに手を突っ込み、隣に突っ立っている。
「……俺のは『生まれつき』。」
ズ ル ゥ ・ ・ ・
・ ・ ・
右肩から生える、もう一本の腕。
機械じみた巨大な『スタンドの腕』が伸び―――、ぽりぽりと鹿沼の頭部を不器用に掻く。
「つっても、ここまでのサイズになったのは最近なんだけどな」
「ここ数年、『スタンド使い』増えてっからさ。感化されたのかも」
そして引っ込み、消えた。
「……、…」
湖面に映る恋姫の目を、じっと見る。
かつて見た目つきとは、どこか違う気がする。
「あー、アイドルってさ。やっぱ疲れんのか?」
「……あ、それとも『スタンド関連』で、嫌なことあったりとか」
23
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2015/11/22(日) 01:23:00
>>22
「・・・・・別にぃ? 気にすんなし。」
ポリ
小さく頭を掻く。髪が揺れる。
小さな手。
そして――
「……でっけえ。」
驚嘆。
「男のロマン……ってやつ……?
……えひ、イカしたデザインしてんじゃん。」
「ゲーム的に考えるなら……
武器の方に課金回したってとこ……かな?」
グイ
否応なしに、見上げる。機械の巨腕。
「……」
メラ
メラ メラ…
感化。呼応。
その言葉が、この焔の昂ぶりをも示すのか――
・・・・そして。
「疲れるけど……嬉しい事もある。学校なんかより、ずっと、いい。」
(鈴野のことは――
人にいうようなことじゃ、ないだろう。)
そう返した。
学校の話など、してもいないのに。
「常識的に考えて……な。」
・・・・心にひっかかり続ける、もの。
24
:
鹿沼 紅太『ドレッドノート』
:2015/11/22(日) 15:47:39
>>23
「そっちこそイカしてるじゃねーか。青い焔とか、黒魔道師っぽくて」
(スタンド関係が原因じゃあなさそうだな……)
「お、おお。じゃあ、アイドルの仕事は充実してんだ」
「……まぁ、学校はダリーよなぁ?」
顔色を伺うように、同調する。
「えーと、授業は眠いし、行事はめんどくせーし……
秋映は校則ゆるい方だけど、うるせー教師もいるし……」
「それに、えーと……」
「……、…」
指を折り、言葉を探して、詰まる。
しばらく会っていなかったが、今の彼女の気分が
目の前の青い焔のように、「揺れている」ことは理解できる。
燻るほど小さな火種ではなく、けれども燃え上がるには何か足りない。
そんな印象だ。
だが、彼女に気付かれないようにその原因を探る術を、鹿沼は持たない。
「フゥーーーッ……やっぱ、変化球は性に合わねーぜ」
ため息一つ。
迂遠な言葉で探るというのは、そもそも向いていない。
土台、頭が悪い。気が利くわけでも、器用でもない。
「―――おい。」
なので湖面に映る像ではなく、恋姫自身に向き直る。
「何があったか知らねーけど、ヘコんでんなよ」
直球勝負だ。逃げ球はなし。
25
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2015/11/22(日) 22:06:06
>>24
「えひ……褒めても何のフラグも立たないぜ……?」
陰気な笑みだが、拒絶はしない。
ヴィジョンは炎を灯し続ける。
それは、恋姫の心なのだろうか――スタンドが精神を映すならば。
「……だるいよ。えひ……死ぬほどな。」
授業、行事、校則、教師。
決してそれらも、嬉しいことではない。
しかし、それより。
「……」
ゴォォオ
オオオ
「もう…………お前には関係ないだろ。
僕に何があろうが……何もなかろうが……関係ない。」
シッ
シッ
「……あっち行け。
これだからDQNは……」
先ほどより、大きな手ぶり。
鹿沼の方を、向きもしない。
(なれなれしいんだよ……いまさら。)
直球勝負は、ボールを撃ち落として無効だ。
26
:
鹿沼 紅太『ドレッドノート』
:2015/11/22(日) 23:08:47
>>25
「……そりゃ、関係ねーけど」
まったくその通りだ。
彼女と『同じ学年』という関係にあったのは、もう過去の話。
その関係ですら、『他人』というには十分すぎる。
「関係は、ねーけどさぁ……」
幾度か話したことがあるだけで、友達だと言い張れるほど熱血でもない。
知った顔がいたから、へこんでいるように見えたから、話しかけた。
たった『それだけ』だ、が。
「……けど、だからってほっとけねーだろ」
「DQNがそう簡単に追い払えると思ったら大間違いだぜ、稗田」
『それだけ』、ではなくなってしまった。
元気がない。いや、それはいつものことだったかもしれないが。
自分が知っている稗田恋姫ではない。それは、なんとなく、いやなのだ。
意地悪そうに、にやりと笑う。
27
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2015/11/22(日) 23:41:13
>>26
「……………いまさら、遅いんだよ。」
やや震えた声で言う。
イラ
「……鹿沼ぁ。」
イライラ
ゴォォ ォ――
「モブキャラだと思ってたら……
急にいいやつぶりやがって……偽善乙。
死亡フラグでも立ててえのかよ……死ぬのか?」
ボ
ボボ
陰気な声。炎に沈むように。
恋姫は笑うのをやめていた。
鹿沼に振り向く。
イラ
その目は明らかに――火を見るより、明らかに。
「イライライライラ……
するんだよ……そういうの。」
・・・・鹿沼を歓迎してはいない。
「……むこう行け! どっか行け! 消えちまえ、お前らなんか……!」
恋姫は――
心を素直には受け取れない。
フイ
・・・・桜色の視線が少し、逸らされた。
28
:
鹿沼 紅太『ドレッドノート』
:2015/11/23(月) 00:17:33
>>27
>「……むこう行け! どっか行け! 消えちまえ、お前らなんか……!」
(ああ……そういう)
うっすらと、理解する。
関係なくなんか、なかった。
気まずさに、頬を掻く。
「…………」
「そりゃ、学校もつまんねーよな」
恋姫に向けてではなく、独りごちる。
原因の中に、自分自身も入っているのだろう。
しかし、何かを謝ったり、言い諭すことで解決する類じゃあない。
「……でも、消えないぜ」
「あのクラスに『モブ』なんていねーよ、一人も」
青く燃え盛る焔に、怯まず一歩、距離を詰める。
撃ち落とされても、自分は直球しか持っていないからだ。
「オメーが俺らをどう思ってたか、しらねーけど」
「俺は稗田のことを……『モブ』だなんて思ったことはなかったし」
「だから」
「消えないぜ」
29
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2015/11/23(月) 00:38:03
>>28
「ああ……死ぬほどつまらない……
あんなところ、もう二度と行かない……そんなフラグ、もう折れた!」
ゴォ
ゴォ ォォ
「モブじゃなきゃなんだ……
敵か? それとも足手まといのNPCか……?
僕にとっては、お前らなんか……みんな……」
「……」
恋姫は鹿沼について多くを知らない。
名前と、顔と、少しくらいだ。
(モブじゃないって思ってたんなら、何で……何で……!
見て見ぬ振りしたのは、僕が悪いって顔したのは、お前らだろ……何、今さら……!)
ジリ
「お前は……
何なんだよ……!」
後ずさる。
気圧されている――?
ゴォォォ ――
恋姫の傍らでは、ヴィジョンがその蒼炎を激しく噴き出す。
30
:
鹿沼 紅太『ドレッドノート』
:2015/11/23(月) 01:32:26
>>29
「……モブでも、敵でも、NPCでもねえよ」
じっと、目を見て答える。
彼女の苛立ちを、正面から見据える。
先程よりも、勢いの強い焔を。
「……良いヤツらばっかりではなかったかも知れねえけど。
すぐキレるし、調子乗るし、うるせーし。俺も人の事言えねーけどさ」
「でも、味方じゃないからって、じゃあ全員敵モブになるのかって言ったら、違うだろ」
「お前は嫌ってるかもしんねーけど……俺らのこと、そんな言葉で一括りにすんなよ」
> 「お前は……
> 何なんだよ……!」
「そんで、俺は……、」
「……味方に『なりたかった』奴だよ。
遠くから見てて、ちょっと、気になってたから」
「……何の言い訳にもならねーけどな、今更」
その二言だけ、目を伏せた。
後ろめたさか、気まずさか。自分でも分からない。
「学校行けよ、なんて言えねーけどさ。
ぶっちゃけ俺も嫌いだしな。勉強とか嫌いだし。
……でも、お前が思ってるほどに、最悪の場所ってこともねーって」
先程の二言をなかったかのように、再び顔を上げ、目を見て続ける。
31
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2015/11/23(月) 23:06:39
>>30
「……」
「……」
ストン
膝を抱えて、座り込む。
鹿沼の顔を見上げる。その目は――
「………………今さら遅いよ……僕はずっと、耐えてたんだ。でも……」
キュ
「……学校は……最悪だぜ。
言ったろ…………『死ぬほど』」
ボ
ボ
炎はその勢いを緩める。
声は少しだけ、震えていた。
「……えひ、不幸自慢乙、だろ。
…………もう僕は、学校なんか関係ないんだ。」
「バッドエンド確定ルートは、願い下げだ……」
グイ
膝の間に、顔をうずめる。
「…………もう、向こう行け。」
≪ オォォォ
オオ
オ ォ ≫
今恋姫を苛むのは、『妹』のこと以上に――
恋姫の中で渦巻き、焦がす泥。
『学校』という物こそ、最大の壁だ。
32
:
鹿沼 紅太『ドレッドノート』
:2015/11/23(月) 23:53:43
>>31
「…………」
それが恋姫の根っこにあるもので、
易々と変えられないものだとは理解できている。
それに、実際学校に来ることを辞め、アイドルになって充実しているらしい。
結果的に、それは選択としてはよかったのだろう。
そこに口を出す権利は、鹿沼にはない。
「……分かった」
「終わったことだしな。今更何言っても変わんねえってのは分かった」
ポケットから、コンビニのレシートを取り出す。
裏に、自分の連絡先を書いて、
「……だから、『次』はちゃんと助けてやる」
ぶっきらぼうに、恋姫に押し付ける。
受け取ってもらえなくとも、服の裾やポケットにねじ込む。
「……なんかあったら、呼べよ」
「なくても連絡くれ。愚痴でも不幸自慢でも、何でもいいから」
「じゃあ」
そう言って、顔を見せないように早歩きで立ち去る。
33
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2015/11/24(火) 00:20:59
>>32
グ
リ
「…………勝手なことすんなよ……困るんだよ、こんなの……」
ポケットにねじ込まれた連絡先。
恋姫は顔を上げない。
震えた声で。
「……さっさと行け。
人来たら、スキャンダルになるぞ。」
立ち去る姿を見る者はいない。
烏面のヴィジョンは恋姫に纏わりつく。
・・・・
・・・・そして。
「これだから、DQNは……
……嫌いなんだ。馬鹿だから……」
「……」
「……バカ。」
クシャ
静寂。
恋姫のアドレス帳が、一つだけ増えた。
・・・・それはまだ、きっと、遅くはない。
恋姫の人生の、エンディングはまだまだだから。
34
:
河津 心平『キャメル・ヘッド』
:2015/11/27(金) 23:13:47
「静かだ」
寒天、冬の只中。
湖畔に佇む、緑色のオーバーオール。
男は、湖面を見つめていた。
「カエルももう眠ったか」
「人は冬でも、眠れない・・・歩き続けなければいけない」
35
:
座木 劉一郎『プロペラヘッド』
:2015/11/29(日) 00:38:06
>>34
ザッ ザッ ザッ
静寂を踏み抜くような足音が、前方から近づいてくる。
皮のジャンパーを着た、長身の男だ。
灰色の前髪の下から、
鋭い視線が河津に向けられているのを感じるだろう。
「チッ……シケた場所だ」
36
:
河津 心平『キャメル・ヘッド』
:2015/11/29(日) 23:33:45
>>35
「・・・・・・ええ」
「この季節は、いきもの達も静かなものです」
刃物のような目を、意識しながら、
オーバーオールの肩紐にかけた、
土塊に汚れた軍手をつける。
「騒がしいのは、人間ばかりだ」
「そう、思いませんか」
37
:
座木 劉一郎『プロペラヘッド』
:2015/11/30(月) 00:57:16
>>36
「……この世は、人間様のものだからな」
皮肉なのか本音なのか。
どちらとも受け取れる自嘲めいた笑みから、
そんな言葉を漏らす。
「じき……騒々しい連中がこの場にやってくる。
……おまえはここで何をしている?
目的もない……散歩程度のことなら、『消えろ』」
男は何も携帯していない・・・・
けれど、銃を手にしたような緊張感が、全身を包んでいる。
38
:
河津 心平『キャメル・ヘッド』
:2015/11/30(月) 01:31:48
>>37
「傲慢ですね」
「でも、それで良いのだと、ぼくは思います」
「この世界に生きるいきものが、この世界を自分のものだと思っていないなら、
そんないきものは、とうに『滅んで』いるでしょう」
皮肉であれ、本音であれ、その発言を肯定する。
生き物とは、そのくらい傲慢であらねば、
生き残れないもののはずだ。
「『消えろ』ねえ」
何も言われなくたって、そのうち立ち去るつもりでいたが。
「・・・ぼくはただ、この静けさの中に立っていただけですが」
「あなたは、違うようだ。
ひどく、剣呑な気配をまとっている」
「どんな世界で生きてきたのか、知る術もなければ」
「到底、知りたくもありませんが」
気が変わった。
この男に背を向けて立ち去るのは、
突き付けられた銃器を無視するに等しい――
ぼくは、そこまで恐れ知らずではない。
相対する。
互いの距離はいかほどか、周囲には何がある?
目を配らなければならないだろう。
39
:
座木 劉一郎『プロペラヘッド』
:2015/11/30(月) 23:28:41
>>38
「クックク……気が合うな。
同情や憐みなど、『自己満足』以上の意味はない。
やりたいようにやる……その為に『力』を求める……
それがこの世の『理』であり……他は『不純物』だ……」
ザッ
──相対する距離、『10m』。
男の目が、改めて河津を認識するのを感じる。
「……おまえの望む『静けさ』が、
今、まさに破られようとしているが……」
ズギュン!
「……クックク。
おまえは……どう立ち向かう?」
男の傍に並び立つ、人型のスタンド。
機械めいたそのボディには、『排気ダクト』がついている。
ゴ ゴ ゴ
ゴ ゴ ゴ ゴ
湖畔の波打ち際に近いこの場所には、
立木が数えるほどと、少し離れた場所に古びた公衆トイレ。
あるのはそれだけだ──
40
:
河津 心平『キャメル・ヘッド』
:2015/11/30(月) 23:59:05
>>39
「・・・ま、そうですね。
生き物の世界の基本単位は――『強さ』です」
頭を、ポリポリと掻く。
髪が、土にまみれる。
視線を、『スタンド』に向ける。
(まずいな)
遮蔽物が、大してない。
「しかし・・・そういえば、
あなたは『騒々しい連中』とおっしゃっていたような
気がしますが・・・」
「あなたの言う、『静けさを破る者』とは、
あなた自身ですか? それともその『連中』?」
「ぼくが立ち向かうべきは、どちらなのか――」
(あるいは、両方か)
『キャメル・ヘッド』を発現する。
といっても、『皮膚下』のスタンドだ。
彼にそれが確認できるかはわからないが。
41
:
座木 劉一郎『プロペラヘッド』
:2015/12/01(火) 01:18:47
>>40
言葉を交わしながら、『キャメルヘッド』を発現する河津。
皮膚下に蠢く『線虫』は、じっくりと見つめれば皮膚越しに確認できるが、
『10m』の距離では、気付ける者はいないだろう。
「……………………」
スン
しかし、男は何かしらの『違和感』を覚えたようだ。
「『両方』──だな。
『ネオンストリート』のヤクザと、
『県外』の暴力団が……じき、ここに現れる。
ヤクの『取引』だ──『黄金町』名産のな」
「『ティアーズ』……聞いたことはないか?
最近『ネオンストリート』を牛耳った女が、
裏ルートで広げているヤクだ」
42
:
河津 心平『キャメル・ヘッド』
:2015/12/01(火) 16:02:37
>>41
「・・・・・・」
かすかに反応を示してのけた彼に瞠目する。
どんな目を……あるいは、どんな勘をしているのか。
「『ティアーズ』・・・・・・いえ」
「そういったものとは、縁のない人生を歩んできました」
「しかし、それをわざわざぼくに教えるのは、
どういう腹積もりなのか・・・」
「少なくともあなたは、そのどちらにも属さないのでしょうし、
その『取引』を『ぶち壊し』にするつもりですか?」
そう、何も教えることはない。
そこにどんな意図があるか……彼の心は推し量れない。
「しかし、ぼくの心は決まりました」
ぼくは『教師』だ。さすがに『薬物』が、
子どもたちに蔓延しているとは考えがたい。
だが、『見過ごせない』のも事実。
「ぼくはその取引を、全力で『ぶち壊し』たいと思います」
43
:
座木 劉一郎『プロペラヘッド』
:2015/12/02(水) 00:04:54
>>42
男の口元が、笑みを形作る。
そして無造作に近づいてくる・・・・
唇の中に、牙のような歯が見えるほどに。
「クックク……『そう言う』と思ったからな。
オレの名は『座木 劉一郎』。
金の為なら何でもやる、ただの『ゴロツキ』だ。
組織の類には一切無縁だが……オレにはスタンドがある。
……おまえも……同じ『匂い』がした」
「スタンドの名は……『プロペラヘッド』。
触れたものに『プロペラ』をつける能力。
おまえのスタンドには、何が出来る?」
「敵は武装した『30人』からの『暴力団』だ。
遮蔽物のないこの場で始末するには、手が足りない。
何より……『ティアーズ』は劇薬同然だ。
揮発した成分だけで、『極楽行き』って話もある……
可能な限り破壊せず、確保する……その手も考えろ」
用心深く、座木は周囲を見回す。
まだ、話の集団は影も形もない。
とはいえ、多くの時間が残されていない様子ではある・・・・
44
:
河津 心平『キャメル・ヘッド』
:2015/12/02(水) 00:41:10
>>43
「・・・・・・まんまと、乗せられたってことですかね」
とはいえ。
さっきの言葉は、紛れもない『本心』から出た言葉だ。
今更、翻すことなどありえない。
……しかし、怖ろしい顔をする人だ。
『生き物』なら、決して争おうとは思うまい。
「ぼくは『河津 心平』。
スタンドは『キャメル・ヘッド』。
できることは・・・ちょっとした『怪力』と」
「『皮膚』の『変化』です。ぼく自身のね。
それと、触れた相手に、それを『移す』こともできます」
「ああ、言い忘れました・・・ぼくのスタンドは、
『皮膚下』にいます。うっすら見えるかと思いますが」
腕を、座木に見せる。
肩紐にかけている『タオル』を、手に持つ。
足元から、大き目の石ころをいくつか探して拾っておきたい。
「『30人』・・・当然、『銃器』の類も警戒すべきですか」
「しかも、『劇薬』を、破壊しないように・・・ふむ」
これは、難題だ。
ぼくのスタンドは、多人数を相手に大立ち回り、
そんな戦いに向いているとは思わない。
彼ならあるいは可能かもしれないが、どちらにせよ、
『2』vs『30』とは、尋常の差ではない。
「あちらとしても、『商談』の『材料』だ、
意図的に『壊す』ことはないでしょうが・・・
なるべく『無抵抗』のまま、『一方的』に制圧する方法を
考えなくては」
「それに『揮発成分』だけで十分な中毒症状――ね。
座木さん、でしたか。あなたのスタンドなら、
『プロペラ』で『風』を起こしたり、空を飛んだりは、可能ですか?」
風向きを、確認する。
30人をまとめて無効化するようなことは、
多分『機関銃』でも持ってこないと不可能だ。
今のぼくたちに、それは用意できない。
だとすれば……『生き物』なら、これは
避けるべき『局面』だ。
だが、生憎、あんな話を聞かされては、ぼくは『退けない』。
そこが『人間』の『人間』たるゆえんだ。
「おっと、そうだ・・・どちらが先に到着するか、
目星は付きますか?
ええと、『ティアーズ』を持っているのは、
『こちら』のヤクザなんですよね」
45
:
座木 劉一郎『プロペラヘッド』
:2015/12/02(水) 00:59:27
>>44
「皮膚の変化……フン。
醜悪なスタンドには、醜悪な能力が宿るな」
腕の中を這い回る『虫』を目の当たりに、
率直すぎる座木の感想だったが──
「だが……『皮膚変化』を何でも起こせるなら、
この場合は十分に使える……問題は『触れる』為の策か」
──『戦力』としては、認めたようだ。
「……オレの『プロペラ』は、変形自在。
飛行も扇風も自在にこなせる。
おまえの『武器』として与えてもやれるが……
使えるのは、常に『一種類』。
防御、移動、攻撃……全てを賄うには、敵が多すぎる」
河津は石を拾い、タオルを手にした。
風向きは潮風──湖から岸辺へと吹いている。
「……『ティアーズ』原液の危険性は、連中も承知だ。
厳重に守っているのは想像に難くないが、
乱戦となれば、何が起こるかわからない。
やけくそで開封する『馬鹿』がいる可能性もある」
「どちらが先か……それはわからんな。
落ち合う先がこの場所……
その『木』の下としかわからん……
相手がどっちのヤクザかは、オレが見れば一目瞭然だが」
座木の示した木は、河津が調べた内の一本だ。
岸辺からやや離れた湖畔に、ぽつんと立っている。
銀杏のようだが、葉は全て落ち、隠れる為には使えそうにない。
「時間はある……
穴を掘る也、隠れることは出来る。
しかし……クックク……」
座木は、おかしそうに付け加えた。
「『楽しそう』じゃあないか……河津。
荒事の経験はないようだが……『向いている』」
46
:
河津 心平『キャメル・ヘッド』
:2015/12/02(水) 01:32:01
>>45
「そうですね・・・さすがに『徒手空拳』で、
はいそうですか、と触らせてくれる相手ではないでしょうし。
『動き』を封じる必要があるかな・・・」
『考える』。
それは人間に与えられた武器だ。
「なるほど・・・とはいえ、十分に『汎用性』は
あるわけですね。だとすれば、問題はどんな局面を作るか、ですか」
タオルの先端に石を入れ、硬く結ぶ。
簡易式の『スリング』を作っておきたい。
「『原液』は、いくつかに『小分け』されてるんでしょうか・・・
それとも、『一まとめ』にされているか、
まとめたほうが『管理』はしやすいですが、
根こそぎ奪われる『リスク』もありますし・・・」
「一応、ここから『街』までは結構な距離が
ありますから、万一原液が漏れても、
大惨事とまではいかないでしょうが、
しかし避けたい事態ですね」
「『木』・・・ふむ」
『イチョウ』に目をやる。木の高さ、太さはどれほどだろう。
「あなたの『プロペラ』で、この木が『倒れる』、
その直前まで『切り込む』として・・・
どのくらい、時間がかかると思いますか?
ぼくの『キャメル・ヘッド』も、力には自信がありますが、
協力してとりかかったとして・・・彼らの到着前に、済むかどうか・・・」
少数で、多勢を制圧するなら、
狙うべきは彼らの『混乱』だ。
『統率』の取れた『軍勢』なら、『2vs30』は絶望的な戦況だが、
『烏合の衆』が相手ならば、『2vs1』を、相手の数だけ繰り返せば『十分』のはずだ。
そのための策を、考えなくては。
「『楽しそう』・・・ですか?」
意外な言葉だった。ぼくは、ただ必死に考えているだけ。
そのつもりだ。
「そんなことは・・・ただ、何かをするなら、
いつも必死に、全力で当たるだけです。
気を抜けば死ぬ。生き物の世界は、そういうものだと思いますから」
47
:
座木 劉一郎『プロペラヘッド』
:2015/12/02(水) 21:37:33
>>46
ズギュ!
スタンドの右手に、
大きな『プロペラ』が発現し、回転を始めた。
「この『プロペラ』は……盾にもなる。
拳銃程度の弾なら弾き返すが、
それも『一方向』まで──囲まれれば、避けようがない」
「だが、囲まれさえしなければ……
『1秒』で『5人』は……片付けられる」
河津は相談しながら、スリングをこしらえる。
遠距離向きの武器だが、
果たして飛び道具を持つ集団に対抗し得るのか。
銀杏の木の高さは『10m』ばかり。
幹は電信柱より太く、堂々とした枝ぶりだ。
「……トランクなり何なりを使っているだろう。
量も不明だ……そこまでの情報は得られていない。
ただだえさえ『ヤク』の単価は高いからな」
座木の入手した情報も、万全ではないようだ。
「切り込む時間……?」
ゾゾ ゾゾゾ
座木が笑うと同時に、回転を上げる『プロペラ』が蠢き、
『丸鋸』状の微細な刃に変化した。
ドシュ! ィイイイイイイイイイ──────ッ!!
パラ パラパラ……
「フン……こんな具合か?」
数秒と待たせず、幹の半ば以上を切断してのけた。
河津の『怪力』を持ってすれば、後は押すだけで倒れる状態だ。
「クックク……そう、それだ。
『死』を直視して、なお諦めない……
それどころか……自ら死地に足を踏み入れる。
それは、『生物』の本能への……反抗だ。
スタンドがあるとは言え、決断する人間は数少ない。
『馬鹿』か……或いは……『英雄』か……」
「おまえは、どちらだ……河津?」
48
:
河津 心平『キャメル・ヘッド』
:2015/12/02(水) 23:40:00
>>47
「『1秒』で『5人』、ですか・・・
『包囲』さえされなければ、『圧倒』できる、という
ことですね」
嘘では、ないのだろう。彼は無意味に
自分の能力を誇張するようには見えない。
「・・・・・・」
余裕があれば、『スリング』の先端を
湖に軽く浸し、濡らしておく。
さすがに正面切って『銃器』の相手は
出来ないだろうが、正面から
当たるつもりも、またない。
> ドシュ! ィイイイイイイイイイ──────ッ!!
>
> パラ パラパラ……
「・・・お見事です」
簡単に『樹木』をカットした座木に、
感嘆の声をあげる。
ただの『怪力』ではこうはいくまい。
『熟練』と、『精密』な動きあっての賜物だろう。
「木の『枝ぶり』もなかなかだ、
流石にただ潰される間抜けはそんなに
いないでしょうが、これなら大方『巻き込める』」
「隠れ場所が、問題ですが・・・」
『キャメル・ヘッド』で、自らの両腕の皮膚に
深い『シワ』を作りだし、同時に少し『日焼け』させる。
老人の『皮膚』には、さながら年輪を重ねた『樹木』
のように、深いシワが刻まれている。
『イチョウ』は樹木の中でも、樹皮の『ひだ』が
目立つ類であることだし、その『茶褐色』の
樹皮に色を似せることで、
そう長い間は誤魔化せなくとも、短時間ならば
『迷彩』のように機能するのではないだろうか。
「・・・どうでしょう、『樹皮』に見えると
良いのですが」
「そうですね。ぼくの行為は、生き物の世界からは
少しばかり逸脱している。
それを『馬鹿』というならば、まさしくその通り。
そしてやり遂げることができたなら」
「その『馬鹿』は『英雄』と呼ばれるでしょう。
ぼくがどちらかは、そのときにハッキリする」
49
:
座木 劉一郎『プロペラヘッド』
:2015/12/03(木) 23:12:32
>>48
「スタンド使いが混じっていない……前提だがな」
呟くように付け加える座木。
「もっとも、その可能性は『低い』……
スタンド使いなら、群れない方が効率がいい。
だからこそ……オレも、この情報を入手出来たわけだ」
チャプ
河津はスリングを水につけ、濡らす。
そして両腕の皮膚を変化させ、『イチョウ』の樹皮に近いものにした。
「フン……樹には見えるが、
腕だけで体は隠せない……全裸でそれをやる気か?
銃弾より先に、風邪で死ねそうだが……?」
「それより、皮膚の硬質化は出来ないのか?
アルマジロのような皮膚なら……銃弾程度は凌げるはずだ」
「『英雄』として……生き残りたければ、
頭を回転させることだ……でなければ、死ぬ。
……『万物の霊長』を名乗りたければ、『頭』を使うしかない」
座木がちらりと浜辺の向うを見やる。
まだ集団が現れる気配はないが、小動物のように気配を感じ取っている。
「そろそろ……来るな。
……他に用意はあるか?」
ズギュ!
座木の左腕に、ドリル状の『プロペラ』が回転を始めた。
今度は、木の傍の地面に切っ先を突き立て、穴を掘り始める。
時間はややかかりそうだが、着実に穴は深く、大きくなっていく──
「水辺のおかげで……
掘り起こした土が目立たないのは……好都合だ。
もっとも、穴に水がたまる問題はあるが……」
ギュババ! バババババババババ
50
:
河津 心平『キャメル・ヘッド』
:2015/12/04(金) 05:56:06
>>49
「確かに、スタンド使いならこんな目立つ『徒党』を
組むよりは、むしろ少人数で動くでしょうね・・・」
「大人数で動く、というのは、個々の戦力に
あまり自信のない証拠でもあるか」
もっとも、『多勢』の中にいることで有用な『スタンド』
というものも存在するかもしれない。
可能性は消さずに、警戒はしておこう。
「はは、幹からはみ出す部分だけ『樹皮』に似せれば
一見しただけでは分からない、と思います」
『穴』ができるなら、必要ないかもしれないが、両腕と顔を『樹皮』に似せておく。
幹に身体側部をつけ、ピタリと密着していれば、
『電信柱』ほどの『樹木』ならそこまで身体ははみ出さないはず。
とはいえ河津は少々『筋肉質』な体格だ、ここは素直に
『穴』に隠れた方が良いかもしれない。
「『アルマジロ』・・・とまで行くかは分かりませんが、
『強皮症』に近い『硬質化』は可能です」
「皮膚の『角質』を異常に増殖、硬化させて『鎧』よろしく纏う。
『サイ』の『角』なんかは、『角質』で作られていますね。
・・・ただ、『関節』が動かしにくくなる可能性もありますが」
「そうですね・・・今必要なのは、心の準備です」
とはいっても……そこまで、緊張や高揚は感じていない。
ぼくは日常の延長のような感覚でここにいる。
「『穴』ですか。お手伝いは必要で?」
尋ねながら、掻き出された土を自然な感じで馴らして、
違和感を減じさせようと試みる。
彼の言うように、ここは『湖畔』だ。土があるのは『普通』。
『盛られて』でもいなければさほど目立たないだろう。
51
:
座木 劉一郎『プロペラヘッド』
:2015/12/06(日) 01:40:48
>>50
ゾゾ ゾゾゾ・・・・
両腕の袖をまくり、腕と顔を樹皮に似せた状態にする。
(本来はソースの提示を求める)
だが、衣服はごまかしようがない。
木の背後に隠れ、ヤクザの目をごまかすより他にない。
ギャンギャンギャン!!
ボッゴォォオオ!!
座木の『ドリル』はみるみる地面に穴を開け、
人一人が隠れられそうな空間をこしらえた。
だが、一人用がせいぜい・・・・二人用となれば、さらに時間がかかりそうだ。
ザッ ザッ ザッ
掘り出された土を馴らしながら、
河津は試しに、皮膚を『角質化』してみる。
ゾゾゾ ゾゾゾゾゾゾ・・・・
関節を除いた全身の『角質化』は、『皮鎧』をまとったような状態だ。
一定の防御力は発揮しそうだが、
銃弾を受けて無事で済むかは、いささか心もとない。
(確実な皮膚のソースがあれば、それを提示することで利用可能)
「…………!
そろそろ……来る頃合いか」
野生動物のように風を見上げ、座木が敵襲を予言する。
『ドリル』を解除し、盾状の『プロペラ』を腕に発現すると、
穴に飛び降り、『プロペラ』で蓋をした。
「……ついでに、その土をかけておけ。
打ち合わせる時間がなくなったが……
後は……『出たとこ勝負』だ。
クックク……『馬鹿』を見るなよ?」
土の下から、揶揄するような笑い。
まだヤクザの影は見えていないが、
座木の感覚が本物なら、時間は多く残されていない・・・・
52
:
河津 心平『キャメル・ヘッド』
:2015/12/06(日) 08:23:54
>>51
「ははは・・・・・・勿論」
オーバーオールに土をかけ、気休めの『カモフラージュ』を施し、
木の裏に張り付き、身を縮める。
おっと、軍手を外しておこう……忘れるところだった。
『スリング』は、足元に置いて土で隠し、
端っこだけを少しだけ露出させておく。
「結局のところ、最後は『出たとこ勝負』ですよ。
『狩り』のプランを立てるなら、まる『一日』はかけないと」
「今はむしろ、あなたの『才覚』に任せた方がいい。
(そして、ぼくの『感覚』も試されるだろう。
・・・・・・ただの『人間』が、どこまで『捕食者』になれるものか)」
息を殺す。
今はただ、待つ。
53
:
河津 心平『キャメル・ヘッド』
:2015/12/06(日) 09:04:34
※皮膚を『樹皮』に似せる際の参考
ttp://bee-gee.blog.so-net.ne.jp/2015-04-14
※『強皮症』ほか、皮膚の硬質化について 強度に関しては不明
ttp://pecodrive.net/?p=2592
54
:
座木 劉一郎『プロペラヘッド』
:2015/12/06(日) 23:29:10
>>52-53
(河津)
河津はオーバーオールに土をかけ、
一応だが迷彩をかけておく。
湖畔側の木の裏に隠れると、
スリングを土に隠し、端だけ露出させた。
座木はといえば、『蓋プロペラ』の端で器用に土をほぐし、
『プロペラ』上に土を落として、完全にカモフラージュさせた。
あの状態では、視界は効かないはずだが・・・・果たしてどうするつもりなのか。
「後は……待つだけだ」
河津も息を殺し、ヤクザを待つ。
さして待つ必要はなかった。
ほどなく、湖畔の果てに集団の姿が現れたからだ。
それも、一度に『2組』──
北西と北東から、ゆっくりと木を目指して歩いてくる。
顔をカモフラージュしたおかげで、
さして抵抗なく、河津は両者を確認できる。
北西側のヤクザAは、典型的なヤクザの外見だ。
派手なジャンパーを着た者から、紫のスーツまで、
あきらかに一般人ではない、筋モノのオーラが漂う。
対して、北東から接近してくる集団、ヤクザBは、
傍目には普通のサラリーマンのようなスーツ姿だ。
一人が金属製のアタッシュケースを持っている以外、
満員電車に揺られている、どこにでもいそうな中年ばかり。
だが・・・・この湖畔に集うには、それが逆に『怪しい』。
ザッ ザッ ザッ
ザッ ザッ ザッ
互いを認識しながら、両者が木に近づいてくる。
距離──現在、『20m』。
河津に気付いた様子は、どちらにもない。
ヤクザA ヤクザB
15 15
(トランク)
穴
木
河
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
湖
55
:
河津 心平『キャメル・ヘッド』
:2015/12/07(月) 00:11:11
>>54
(――――『来た』)
しかも、『同時』に。……恐らく『定刻5分前』なのだろう。
(実に『日本人』ですね・・・はは)
『几帳面』な『アウトロー』に内心苦笑しつつ、その様子を観察する。
『第三者』がいるとも知らず、互いに『相手』を意識してくれているのは有り難い。
(『アタッシュケース』・・・『これ見よがし』ですね。
『クスリ』が入っていると、判断するのは早計でしょうか)
(しかし、もともと『衆目』に付かないここを『取引場所』に選んで
いるわけですから、『クスリ』自体を『隠蔽』する必要はないのかも知れませんが)
まだ『遠い』――引きつけなくてはならないが、
近付け過ぎれば『怪しまれる』リスクは高まる。
彼我の距離が『5m』ほどになるまで、余計な動きを堪えて待つ。
(・・・・・・しかし)
(彼――『座木』、まるで視界が通らないような『隠れ方』ですが・・・
何か『探知』する手段を持っているのか・・・)
(あるいはぼくが『花火』を上げるのを待っているのか)
56
:
座木 劉一郎『プロペラヘッド』
:2015/12/07(月) 00:26:50
>>55
ヤクザの数は15と15、きっちり『30名』。
特に列を作らず、固まってやってくる辺りは、
訓練のない素人さを感じる。
河津はなおも待つ・・・・敵を引き寄せる為だ。
座木が木に入れた切り込みは湖畔から北方向、
どの角度でも倒せるものだ。
河津の立っている側から切った為、北からは切り口も見えない。
ザッ ザッ ザッ
『10秒』ほど後・・・・果たして、
木から『6m』の位置に全員が入り、そこで足を止めた。
ちょうど木から北に引いたラインを挟んで、
AとBは対峙し、お互いを確認する。
緊迫した空気──どちらも笑顔を浮かべていない。
ザッ ザッ
トランクを持った男ともう一人が、B群から離れ、前に出た。
同じく、A群からも二人が前に出る。強面のスーツだ。
「おう」「どうも」
「ブツの確認だ」「どうぞ」
カチャ
Bの代表が、そっとトランクを開ける。
木の反対側の為、中身はよく見えない・・・・
AA BB
AA 代代 BB
AA 穴 BB
AA BB
木
河
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
湖
57
:
河津 心平『キャメル・ヘッド』
:2015/12/07(月) 07:24:09
>>56
(ふむ・・・・・・『無警戒』)
よほど『取引』に神経が行っているのだろうか……
こちらとしては有り難い限りだ。
(さて・・・こちらの『優先事項』は、まず
『取引』を『ぶち壊し』にすることですね)
最終的に倒すべき敵の数は『30』だが、
今、倒すべきなのはあの『代表者』だ。
『代表』を任される以上、彼らの中でも(トップでないとしても)
『信頼』されている――『上』に位置する人間だろう。
(そのために『頭数』を減らし、かつ『戦場』を限定させる・・・・・・
個々の戦力に、そこまで大きい差があるとも見えません。
戦える数が減ることは、それだけで『痛手』でしょう)
身体を横に向けたまま、手と密着させた体に力を込め、
木を、『(こちらから見て)左寄り』に押し倒す。
あわよくば『A』を一気に殲滅し、反応されたとしても
戦場を『区切り』、彼らの戦力を『分断』するのが狙いだ。
『右寄り』に倒さない理由はシンプル――
そちらには『座木』がいるからだ。木の倒れる『震動』は、
恐らく彼にも伝わるだろう。
特に『B』の代表者は、当然自分たちの『群れ』に戻ろうとするだろう。
ちょうど『伏せた』座木の罠に飛び込む格好になるはずだ。
(・・・・・・そして、『取引』を潰されれば
彼らにはもはやここにいる理由がなくなる)
(もっとも、『意地』や『面子』といったつまらないものが)
(彼らの退却を思いとどまらせるかも知れないけど)
木を押しながら、スリングを土中から引き抜き、
木が倒れ始めるのと同時に振るい、回転をつける。
狙いは『中央』――『トランク』を持つ男だ。
あの中身が『クスリ』であれ『金』であれ、彼らにとって
『重要』なものには違いないはず。
木が倒れる瞬間、彼の反応を注視し、
(――まずは『頭』を潰す)
スリングから『石』を放つ。
ただの『投石』と侮るなかれ、『キャメル・ヘッド』の
怪力をもってすれば、その石は十分な『破壊力』を持つはずだ。
58
:
座木 劉一郎『プロペラヘッド』
:2015/12/08(火) 00:04:11
>>57
河津が意外に思うほどに、
ヤクザたちは木の背後を警戒しなかった。
無論、油断もあろうが、理由は他にも考えられる。
この木の後ろには、一切の逃げ場がない。
仮に『鉄砲玉』が奇襲に成功したとて、数人倒そうが、
この人数相手に逃げることは絶対に出来ない。
命を惜しく思う人間ならば、絶対に選ぶはずのない選択肢なのだ──
ベギン!
メギ! ベギギギ
ギギ ギギ ──
木に寄り添い、捻るようにして力を加える河津。
切れ目を入れておいた銀杏は、『棒倒し』のように容易く、
左斜め前へと、その裸の枝ぶりを倒壊させた。
「う」 「あ」
異音に気付いた者はいただろう。
だが、この近距離では理解と同時に避けるには、
相応の反射神経を必要とする──!
ズ ドォォオオオン!!
ベキベキ!
「ウッ ぎゃァああああア────ッ!!」
地響きと同時に湧いた複数の絶叫が、風を掻き乱した。
拓けた視界の中、スリングを構え、素早く状況を確かめる。
木の下敷きになったのは『8人』。
うち数名は枝に打たれただけで、まだ動いている。
残りは完全に下敷きになり気絶、或いは『戦闘不能』だ。
木はA群を南北の二つに引き裂き、
河津から見て手前に『2名』、奥に『3名』を残した。
中央に出た両代表の『4人』は、当然だが無事だ──
まだ状況を掴み切れないその一人、
トランクを持ってきたB代表に向かって、石を投げつけた!
バッ! ボゴォ!
『6m』──外すべくもない距離だが、
一緒に中央に出ていた男が、トランクの男を庇った。
その背に石はめり込み、男は声もなく崩れ落ちる。
「て、『鉄砲玉』だ──」
その背後で、ようやく男が声を出した瞬間、
ゴッパ!
座木が、穴の底から飛び出した!
ブ バババババババババ!!!
『蓋プロペラ』を回転させながら、設置した左腕をスタンドが一閃。
「ぐ!」「うあ!」「目が・・・・!」
被せていた土を、B群に浴びせ、その目を封じる!
「クックク……そっちは任せた。
……存分に『やれ』」
B群に突っ込む座木の背中から、声。
A群の生き残りが、揃って懐に手を伸ばす──
59
:
河津 心平『キャメル・ヘッド』
:2015/12/08(火) 01:06:25
>>58
「・・・そちらは、『お任せします』」
座木に、声をかける。彼なら、まず問題あるまい。
(しかし・・・なるほど、やはり『音』を待ち、
そして『カモフラージュ』の土は同時に『目潰し』。
無駄がない。いい『狩り』です)
『倒木』により『A』の集団の戦力を削ることには成功したが、
いまだ『10』前後の戦力が残っている。
しかしながら、枝に引っ掛かった連中は即座には動けないことから、
現状の戦力は『5』に過ぎない。
「懐に手を・・・『拳銃』ですか。
しかし・・・そんな小さな牙で『致命傷』を負わせるならば、
『接近』しないといけない」
日本の警察が採用しているような、一般的な拳銃ならば、口径は『9mm』。
一撃で殺すのは期待出来ず、また弾丸の射程は『50m』
ではあるが、命中する確率の高い『有効射程』となると
『5〜10m』まで近付く必要がある。
※参考
(ttp://puchorog.blog104.fc2.com/blog-entry-235.html)
故に、まずは『足』を狙う訳だが――今、撃てるのはわずか『5』人。
しかも、命中精度の高い『膝立ち』で撃てるのは、
そのうち木の前にいる『2』人だけ。
しかも『倒木』により、地面には『土煙』が少なからずあるはずだ。
「・・・まして、あの『統率』の取れない動き・・・
彼らの『射撃』は、恐らくまともな『訓練』を経ていないでしょう。
『研鑽』のなさをカバーするような『野性』が、あるものかどうか」
皮膚の『樹皮化』を解除し、念の為に
『首』、『太腿』、『胴体』を
増やした『角質』で『覆う』。
『銃弾』を『弾く』ほどの強度があるかは不明だが、
通常の皮膚より『分厚く』なるのは確かだ。
「体勢を立て直される前に――『頭』を潰します。
彼らは『拳銃』を持ってはいても、『末端』に過ぎない」
関節部分は、行動に支障をきたす可能性を考え、覆わず、
投げ終わった『スリング』を右手に持ち、
中央の『3人』を狩りに走る。
中央へ向かう動きは、『A』から見ると前を『横切る』、
狙いにくい『機動』になる。
そして『B』集団には『座木』が切り込んでいる。
左手から『A』が近付いてくる前に、孤立した中央を突きたい。
60
:
座木 劉一郎『プロペラヘッド』
:2015/12/08(火) 01:38:51
>>59
ドゴォ! バド! ドズ!
座木の返答は、強烈な殴打音だった。
手の届く敵を殴り飛ばし、その背後の敵にぶつけ、
陣を崩した上で、さらに追撃する。
B群からの攻撃を気にする必要はなさそうだ。
ゾゾ ゾゾゾ
皺を解除し、『角質』によって『首』、『太腿』、『胴体』を覆う。
イメージしたのは、『爪』だ。
弾丸を弾ける強度には足りないが、致命傷から守るくらいは出来る。
倒木の土煙は、期待できるほどではない。
湖畔の土は水気があり、砂のように舞い上がらないのだ。
ダ ダッ
混乱のさ中を駆け抜け、一気に中央の三人の前に到達した。
足元には石を受けたBの男が倒れている。
その男同様、A代表の傍に立つヤクザは、明らかに『用心棒』だ。
体格がよく、レスラーだと言っても信じそうな大男だ。
代表Aは強面の中年男で、懐から拳銃を抜きつつ、
『用心棒』の背後に隠れた。思いの外、動揺していない。
そしてトランクの男は──
背後を振り返るも、座木とB群の混戦を知り、
退くに引けない、という顔をしている。武器は取り出していない。
「ナメてんじゃねーぞ? てめ〜〜はよォオ〜〜ッ!!」
ヌゥ ウ
大男が、河津の首に丸太のような腕を伸ばしてくる──
61
:
河津 心平『キャメル・ヘッド』
:2015/12/08(火) 13:59:59
>>60
「『ナメている』?」
ガシィ ッ
『巨漢』の手を、『キャメル・ヘッド』を発現した左手で受ける。
「『どちらが』ですか?」
ギチィ
力を込め――その手を『握り潰す』。『怪力』のシンプルな使い方だ。
そうして隙を作れたら、男の懐に入る。巨漢を『壁』代わりにして、
後ろの男の『銃撃』を封じるのが一つ目の狙い。
「迷わず『首』を狙ったのは『正しい』けど、
君の『膂力』では、ぼくの首には届かない。多分ね」
そのまま、男を『怪力』でもって『押し倒す』。
懐に入れば、倒せるかどうかは単純な『力比べ』の世界。
ただの人間に負ける道理はない。
自然、『巨漢』の背後にいる『強面』も巻き込まれるだろう。
彼は『巨漢』の後ろに隠れている。つまり、こちらの動向は見えていないはず。
『異変』に気付くのは、相応に遅れると考える。
62
:
座木 劉一郎『プロペラヘッド』
:2015/12/09(水) 00:16:56
>>61
ガシィ ッ
「うお!?」
ギチィ
「・・・・・UッGYAァAAAAAAAAA────ッ!!!」
その手を握り潰された大男が、
対岸まで届きそうな絶叫を絞り出す。
ようやくにして、自分が挑んだ相手が
『怪物』であることにようやく気付いたらしい。
完全にパニックに陥った目をしている。
だが、河津は一切の容赦なく、
大男を押し切り、前方へと押し倒す。
それは、河津の予想通りであり、A代表の予想を超えた展開。
ズ ズゥン
「ぐぉおおお!!」
後頭部を打ったのか、大男は白目を剥いて沈黙する。
逃げることも出来ず、強面の代表は大男の下敷きとなった。
「ば・・・・化け物・・・・」
下半身を挟まれ、仰向けで河津を見上げたその顔が、恐怖に歪む。
「・・・・・・・・・・・・『撃て』・・・・
おまえら、何やってる!
さっさと、こいつを撃ち殺せ──ッ!!」
男の声に応じるように、右側に残されたB群の五人が、
懐から銃を抜き、河津に向けた。
銃口の先は、やや下──
足を狙うつもりだ、と反射的に理解する。
おそらく、その理由は・・・・
63
:
河津 心平『キャメル・ヘッド』
:2015/12/09(水) 03:22:27
>>62
「右側の・・・まだ生き残りがいましたか。
多分、こっちに銃口を向けてる場合じゃあないと思いますがね」
『下』に向けられた銃口。『足』を撃つのは基本的な戦略だが、
しかしこの状況ではもう一つ、銃口を『上』に向けられない要因があろう。
「そうですよね・・・万が一にでもあの『トランク』に『流れ弾』が当たったら。
その『リスク』を思えば、とても『狙えない』でしょう」
そう、『B』の代表の男が近くにいるのだ。
彼は、とても『大事な』トランクを所持している。
「そして『射線』を切るのには、『一歩』あればいい」
倒れた巨漢の左脇に屈み、『強面』の上半身を引き起こす。
(まだ彼が『銃』を持っているなら――引き起こす前に手首を強く握り潰し、
『撃てない』ようにしておく)
巨漢の無駄に分厚い『胸板』と、『強面』の上半身が
いい『遮蔽物』になってくれるだろう。
「あなたにも静かになってもらいます。
・・・あまり騒がれると、せっかく眠ってる生き物たちも起きてしまうし、
あなたはやはり『頭』に相当する『パーツ』のようだ。
しっかりと『眠って』いただく」
グッ、と、引き起こした『強面』の首を握り、力を込める。
『怪力』による『頸動脈』の圧迫で脳に血液が行き渡らなくなり、
恐らく瞬く間に『失神』に追い込むことが可能だろう。
殺す必要はない。この『狩り』の最中、目覚めなければそれで十分。
(――『今は』ね)
64
:
座木 劉一郎『プロペラヘッド』
:2015/12/09(水) 03:33:36
>>63
申し訳ない、描写ミス。
『5人』は左側で、A群の生き残り。
B群の状況は、まだ把握しきれていない。
レスの変更をお願いしたい。
65
:
河津 心平『キャメル・ヘッド』
:2015/12/09(水) 16:27:42
>>64
了解しました。
>>62
「おっと・・・しかし、随分と悠長なことで」
ようやく構えられた『銃口』。どうやらこの『強面』は、
連中でも『上位』に位置する人間のようだ。
先ほどの『落ち着き』、そして今の『号令』。
「潰すべきはあなたから。やはり間違ってはいなかったようですね」
そしてその銃口は、『下』に向けられている。
まずは足を撃ち、機動力を削ぐのは基本ながら、
それ以上に『上』を狙えない理由・・・
「ああ、なるほど。
あの『トランク』に、流れ弾が当たるのを恐れて、ですか」
『B』の代表が、射線上にいる。彼は、『トランク』を持っている。
万が一にでも、彼に直撃弾が当たれば、取引がおじゃん
どころの騒ぎではあるまい。
「そういう『リスク』を恐れて・・・ふむ。
やはり『悠長』です。後のことを考えている」
足元を狙う――なら、『射線』を消してやろう。
一っ飛びして、倒れた『巨漢』の右側に屈み込む。
巨漢の『レスラー』の如き分厚い身体を『遮蔽物』として使いながら、
同じく倒れている『強面』の上体を掴んで引き起こす。
もし、彼がまだ『拳銃』を所持しているなら、
接近した段階で、素早く叩き落としておく。
怖いのは至近距離での射撃だが、今の彼は
狙いを定めるにはやや不十分な体勢だ。
しかも彼は、こちらに『恐怖』している。
如何に『銃』に強い殺傷能力があるといっても、使うのは所詮『人間』。
内心の動揺は、射撃にも影響を及ぼすだろう。
「・・・あなたにも静かになってもらいます」
引き起こせたら、『強面』の身体を『A』の連中に対しての
『遮蔽物』にしつつ、首に手をかけ、一息に締め落とす。
頸動脈を圧迫し、意識を落とせれば十分――
『キャメル・ヘッド』の怪力をもってすれば、さほど時間は掛からないはずだ。
66
:
座木 劉一郎『プロペラヘッド』
:2015/12/09(水) 23:33:18
>>65
銃口が下を向いている理由を察する河津。
素早く倒した大男の右横に屈みこみ、
複数の銃口に対する盾とする。
いかに大男といえど、横たわった状態で盾になる高さは望めないが、
代表を下敷きにしている分、二倍の厚みがあることと、
誤射による仲間の被害への恐れが、心理的な『盾』となった。
引き金が引かれぬと見るや、
強面の代表を引きずり出すと、上体を掴んで、引き起こす。
「ヒ!やめろ! 何が目的だ?」
ビシ! メキィ!
男の拳銃を叩き落し、子供を相手にするように、
首に手をかけ、背後から締め落とした。
男の体から力みが消え、気絶したのがわかる──
「て、てめえ」「組長から離れやがれ!」「殺すぞ、コラ!」
威勢のいい脅し文句が飛び出すが、
本気で引き金を引ける表情ではない。
盾にされているのは、彼らの首領なのだ。
パン!パパン!
背後で響く銃声。B群の方向だ。
振り向く余裕は今はないが、
果たして座木の方はうまくやっているのか──
67
:
河津 心平『キャメル・ヘッド』
:2015/12/10(木) 00:03:45
>>66
「・・・『殺す』つもりなら、黙ってしなさい」
静かに、『A』の連中に呼び掛ける。
『数』を頼み、危機への反応は鈍く、追い込まれれば『狼狽』するばかり。
彼らはやはり、『群れ』の中の、替えの利く『末端』に過ぎない。
(『弱い犬ほど良く吠える』とは、よく言ったものです)
『代表』にはトドメを差さず、しばらく『盾』として役に立ってもらう。
『怪力』でもって彼の全身を『巨漢』の下から引きずり出し、
左腕で、背中に『担ぐ』ようにして『A群』との『射線上』に置く。
『足元』の射線は、『巨漢』の肉体で『塞いで』おく。
そうして、改めて『B』の方に目をやる。
次に潰すべきは、『トランク』を持った男だ。素早く、目で探す。
(・・・『銃声』。正面からなら問題はない、と『座木』は言っていましたか。
あの敵の配置、彼の立ち回りから言って、『包囲』や『挟撃』を
受ける可能性も、まずないと言ってしまって良いでしょうし)
出来もしないことを口にする男ではあるまい。
何か問題が起きたとすれば、それこそ――敵の中に、
『スタンド使い』でもいる時だけだろう。
68
:
座木 劉一郎『プロペラヘッド』
:2015/12/10(木) 00:59:22
>>67
河津の言葉に、水を打ったように静まるヤクザたち。
自分たちの前に立つ存在が、
その外見以上に『異質』であることを感じ取ったのだ。
並べられた銃口を知らぬような風情が、
ポーズではなく、『実力差』だと実感した顔だった。
その膂力でもって『代表』を引きずり出し、
全身を覆う盾として使う。
足元は巨漢によって隠される。
これで完全に、銃の射線は塞いだ。
ようやくにして振り向いたB群の方向では──
「クックク……片付いたか?」
立っているのは、座木一人。
宣言通り、すでに終わらせたようだ。
スーツ姿のヤクザ達は、ことごとく地を舐め、
苦悶の声をあげ、もがくのみだ。
銃声はやけくその反撃、それも防御されたらしい。
ダダッ
いや──終わってはいなかった。
トランクを持った男が、脱兎のごとく逃げていく。
振り返ることもせず、男は単身、逃走を図る──
「……おっと」
ジャキ
ガァン!ガ──ン!
拾った拳銃を構え、背中を狙う座木だが、
『10m』近く離れた背中を捉えることが出来ない。
69
:
河津 心平『キャメル・ヘッド』
:2015/12/10(木) 01:41:34
>>68
「『お疲れ様です』と、言うには」
「まだ早いようですね・・・」
『Aの群れ』の『牙』は折られた。そう感じる。
だが、最後の『獲物』、あれを逃しては『画竜点睛を欠く』というもの。
(もっとも――『恐怖』を伝える『メッセンジャー』は必要ですが)
「・・・銃撃では、あれだけ離れてしまえばそうそう当たるものではありませんが・・・
そうですね、少しばかり『拳銃』を『貸して』くれませんか?
足を止めるくらいなら、『考え』があります」
「そのかわり、『後ろ』で固まってる方々を静かにさせておいてください。
もう『心』は折れていると思いますが、一応、ヤケを起こされると厄介ですので」
男はどちらへ逃げている?
恐らく、来た道だろう。開けた湖畔だ。遮蔽物はない。
肝心なのは、命中精度だ。『拳銃』は、どうしても発射の『反動』で
照準がぶれる。
(だから、『固めて』しまえばいい)
座木から拳銃を受け取れたら、膝立ちで構え、男の『背中』に照準を合わせる。
その上で、『強皮症』の症状を『手首』『膝』『足首』に及ぼす。
『皮膚』を硬化させ、進行すれば『関節』を自由に曲げられないほど
になる難病だが、今はそれが『好都合』だ。
「これで『照準』は決して『ブレない』。ぼく自身が、
『固定砲台』になったようなものです」
問題は少しばかり『遠い』ことだが、ヤクザたちのような『立射』
よりは膝立ち射撃の『精度』は高いはず。
狙うのは的の大きい『背中』でもあるし、当たる可能性はあるはずだ。
とにかく、離れるほどに命中の確率は下がる。迅速に行動は進めたい。
※強皮症のソース
ttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%B7%E7%9A%AE%E7%97%87
70
:
河津 心平『キャメル・ヘッド』
:2015/12/10(木) 01:43:10
>>69
以上の準備が完了したなら、
もちろん男の背中めがけて『発砲』する。
そうでなくては、意味がない。
71
:
座木 劉一郎『プロペラヘッド』
:2015/12/10(木) 23:49:30
>>69
「クックク……いい傾向だ……」
意味深な笑みとともに、拳銃が投げてよこされた。
膝をつく河津の背後を通り抜け、
A群に向かう座木。
確認する余裕はなかったが、
銀杏の下敷きになっていた男たちが、
揃って絶叫を奏でるのは聞こえた。
拳銃を両手で構え、
逃げる男の背中に素早く照準を合わせ──『キャメル・ヘッド』。
ゾゾゾ ゾゾゾゾ
──ギチィッ!
『強化症』によって全身を固め、反動による照準のブレをなくす。
逃げるBの男が横に移動すれば台無しの作戦だったが、
先刻の座木の下手な射撃から、最短距離を選んでいる。
銃口は、男の背中に向いたまま──
ガァア──── ン !!
ビス!
『15m』先の男が、地面に崩れ落ちた。
──命中だ。
「……『皮膚変化』を……そう使うか」
座木の方も、『後始末』が済んだようだ。
72
:
河津 心平『キャメル・ヘッド』
:2015/12/11(金) 00:00:07
>>71
「・・・・・・ふう」
命中を確認し、安堵の息を漏らす。
そういえば、銃を撃つのは初めてだな、とふと思った。
もっとも、どんな武器であれ、目的を考えれば
『爪牙』の延長でしかないが。
「咄嗟の『思いつき』ですがね・・・
相手がもう少し『余裕』をもって逃げていたら、恐らくは
当たらなかったでしょう」
『強皮症』を解除してから立ち上がり、
ちらりと『A』集団を確認する。
「さて・・・・・・あとは、あの『トランク』ですね。
改めさせてもらいましょうか」
『A』が沈黙しているのを確認してから、
倒れた男の方へ歩いていく。
『死んだフリ』が出来るほど器用なタマとも思えないが
(もしそうなら、もう少し『逃げ方』を考えるだろうし)、
念のため、『急所』の『角質化防御』は継続しておく。
73
:
座木 劉一郎『プロペラヘッド』
:2015/12/11(金) 00:15:11
>>72
「……咄嗟の機転にしては悪くない。
『向いてる』……かもな……
クックク……」
『強皮症』を解除する。
A群は見事に蹴散らされ、木の下の男たちも這い出す意思が見えない。
命こそ奪われていないが、足腰が立たない者ばかりだ。
救急車を呼ぶなら、何台必要になるものか。
河津は、警戒しながら、倒れた男の元へ近づく。
背中を撃たれた男は、苦悶しながら地面に転がっている。
意識はあり、急所も外れたようだが、
流石に反撃に出れるとは思えない・・・・それでも右手には注意しておく。
トランクは倒れた際、離れた場所に投げ出されていた。
頑丈そうなトランクだが、サイズは小ぶりだ。
『キャメル・ヘッド』のパワーなら、鍵ごとこじ開けられるかもしれない。
74
:
河津 心平『キャメル・ヘッド』
:2015/12/11(金) 00:30:43
>>73
「ご冗談を・・・ぼくは――いえ、そうかも知れませんね」
ぼくはただの『教師』だ、と言いかけて、
これはただの教師がすることだろうか、とふと思う。
まあ、考えるのは後だ。状況は、まだ終わっていない。
「あの距離にくわえて『背中』への直撃弾では、
やはり『致命』とはいきませんね。失礼します」
まだ『動いている』なら、それは『敵』だ。
余計な真似をされる前に、『頚動脈』を締め落としておきたい。
そうしてから、『トランク』を手に取り、鍵に手を掛け、
ゆっくりと力を入れて、慎重に鍵をこじ開ける。
その際、『湖』を背にしておく。もしトランクの中身が『クスリ』なら、
男が倒れ、地面に投げ出された際に破損した怖れもある。
揮発したものを『吸い込む』だけで危険だと聞いているし、
『風上』に自分を置くのが賢明というものだろう。
75
:
座木 劉一郎『プロペラヘッド』
:2015/12/11(金) 00:59:43
>>74
「ハァ、ハァ・・・・待て、待ちなさい、君たち」
絞め落とすべく、倒れた男に向かう河津に対し、
男は両手を上げ、声を振り絞る。
「自分が何をやってるか、わかってるのか?
我々は『ネオンストリート』の代表だ。
『スタンド使い』のようだが・・・・ハァ、ハァ、
たかが二人で・・・・『ヨハネスブルグ』と・・・・敵対するつもりか?」
76
:
河津 心平『キャメル・ヘッド』
:2015/12/11(金) 01:19:39
>>75
「・・・・・・『ヨハネスブルグ』?
ふむ・・・座木さん、あなたは知っていたんですか」
知らない名前だ。座木に、視線を向ける。
知っていたとしたら……なるほど、自分は『テスト』
されていたということか。
先ほどまでの『座木』の発言にも、意味が通る。
「ふむ・・・あなたがたの『バック』にいるのが、
その『ヨハネスブルグ』とやらなのでしょうが」
「『スタンド』についての知識も、彼らから聞いたということですか?
つまり彼らは・・・『スタンド使い』の集団、と」
頸動脈を締めるのをやめ、代わりに両手首を踏み砕く。
四肢を砕いても、舌は回るだろう。
妙な真似は、させない。
77
:
座木 劉一郎『プロペラヘッド』
:2015/12/11(金) 01:39:05
>>76
「ああ……当然にな」
河津の質問に、至極あっさりした回答。
皮肉めいた口調は、この男の悪癖のようだ。
「『ヨハネスブルグ』は、この一年で黄金町を掌握した黒人集団だ。
『ヤング・ダイヤモンド』を名乗る9人が、
『戦国武将』よろしく……町の地域を押さえている。
その内の一人……『ネオンストリート』に塒(ねぐら)を構えた、
『黒人女』がそいつらのボスだ……名は『アイエル』」
「『ティアーズ』を流し、黄金町を『ヤク』の産地にしてるのもコイツだ。
……どんな魔法か知らんが、工場もケシ畑もなく、
こいつらは『麻薬』を量産している。
警察も役場も……すでに掌握済みだ。
いずれ、この町は『アフリカの角』より『無法』になる」
「クックク……まあオレにはそれも『好都合』だが、
気にくわないことが一つある……
黒人どもが……この町の住人を『舐め切ってる』ことだ」
「『ティアーズ』は、今、ガキを中心に回り始めている。
人目に触れない学校なんかを中心にな。
『常習性』はない……だが恐ろしく『悪質』な代物だ」
両手を踏み砕かれ、声も上げられないBの代表の代わりに、
座木が全てを語ってくれた。
この男としては、驚くほどの饒舌だった。
78
:
河津 心平『キャメル・ヘッド』
:2015/12/11(金) 05:51:50
>>77
「ふむ・・・そんな『裏街道』の事情には、
本来興味はありませんが」
ぼくはいち教師だ。本来、関わる必要などない。だが。
「治安の悪化は好ましくはありませんが、それ以上に――
『子供』相手にクスリを売りつけているとすれば・・・
それは到底、『許容』など出来ませんね。『一線』を超えている」
「ちなみに、『ティアーズ』の『悪質性』というのは、
どういった部分なんです?」
座木に、尋ねる。
薬物の最大の問題点は、『常習性』があることだろう。
しかし、『ティアーズ』にはそれがないという。
では、その『悪質さ』はどこから来るのか……
(・・・薬物と言わず、『カフェイン』や『アルコール』でさえ、
一種『依存』させる効果を持っているものです。
それが『無い』というのは――既存の薬物では考えにくい)
(・・・なんらかの『人工物』、そう考えるべきでしょうか。
それも恐らくは、『スタンド』絡みの)
79
:
座木 劉一郎『プロペラヘッド』
:2015/12/11(金) 19:23:11
>>78
「経験者を締め上げて聞きだした話だが……
『ティアーズ』を吸うと、『絶頂期』が訪れるらしい。
自分が『天才』に感じられ……事実、能力は向上する。
『ティアーズ』の種類は複数あるが、
『極上の快楽』や『動きが止まって見える反射神経』、
『超記憶』『カリスマ的決断力』なんてのもある……」
「……一言で言えば、しばらく『天才』になる薬だ。
常習性がなかろうが、手放せる人間などいない。
それがガキなら……なおのことだ」
座木の話は、河津に職場での奇妙な話を思い出させる。
河津の担任クラスではないが、
同僚の受け持つクラスの平均点が、ある時期から異常に向上したと。
特に『100点』を取る者が、
教育学を嘲笑うような率で、増加していると・・・・
『集団カンニング』を疑ったが、証拠がないとも聞いた。
「『神』が作りたもうた『悪魔』の薬……
『アルジャーノン』は死んだが……
クックク……むしろその方が『マシ』だ」
80
:
河津 心平『キャメル・ヘッド』
:2015/12/11(金) 21:17:34
>>79
「『天才』を作り出す薬・・・」
それは、実に冒涜的な話だ。
個人の能力、資質、努力――そういったものを否定して、
おしなべて『完璧』にする。あるいは、『均一』にする。
「生物としての『競争』を否定するような――
あるいは、競争の目的を『薬』を得ることにすり替えるような、
実に『危険』な代物ですね。教師としての職業倫理を超えて、
ぼく個人の感覚として、それは許してはならないものです」
「そしてそんなものを作り出し、あまつさえバラまく者がいる。
それは『ヒト』という種にとっての『癌細胞』です。
速やかに『根絶』しなければ」
断言する。
元より降りるつもりは無かったが、腹は決まった。
それは、滅ぼさねばならないものだ。この世にあったという
『痕跡』すら、残すわけにはいかない。
「ところで、そんな『急激な能力の向上』は
生物としてあまりに『不自然』です。『脳』に何らかの
作用を加えるのでしょうが・・・『反動』がないとは思えない」
だからこそ、生物は地道に『学習』し、少しずつ『成長』するのだ。
一歩ずつ上るべき『階段』を、何者かに無理やり引き上げられれば、
必ず『しっぺ返し』が来るはずだ。
「・・・ああ、それともう一つ」
「この人たちはどうしましょう。まとめて『埋め』るか、『沈め』るか・・・
ま、この寒空の中、ほうほうの体でお帰りいただいても構いませんが」
81
:
座木 劉一郎『プロペラヘッド』
:2015/12/12(土) 23:47:11
>>80
「……オレはおまえほど真面目じゃあないが、
『天才』しかいない町なぞ、住めたモンじゃないことはわかる。
『才能』って奴は……『モラル』と相性が悪い。
『俄か』ともなれば、なおさらだ……」
反社会的な人生を送ってきた座木ですら、
『ティアーズ』の危険性をに認識し、危惧している。
カチャ バギン!
座木がトランクを拾い上げ、鍵を開ける。
高級なクッションに埋まるようにして、
ちっぽけな小瓶が入っているのがわかった。
香水の瓶らしく、スプレー式のようだ。
さして興味があるでもなく、座木はトランクを閉じた。
「こいつらの始末は……オレがやっておく。
『ジャンケン』でもさせるか……
勝ち残ったい奴に『メッセンジャー』をやらせる」
「『アイエル』への宣戦布告を……な」
82
:
河津 心平『キャメル・ヘッド』
:2015/12/13(日) 00:15:17
>>81
「ええ、全く同感です」
住めたもんじゃない――座木の言葉に、短く賛同する。
それに、今回の彼らの動きは、『ティアーズ』を
『拡散』しようとするものだ。放っておけば、じきに問題はこの街だけでは済まなくなる。
「そうですね・・・お任せします。
ぼくには、そういった経験がほとんどありませんし」
始末を申し出た座木。既に、『やり方』は考え済みなのだろう。
物騒なことは言ったが、荒事に関して本来自分は『門外漢』。
『餅は餅屋』という諺もある。 ここは、一任するのが賢明だろう。
「ふむ。では、ぼくは街に戻りましょう。
明日の『授業』の準備をしなくてはなりませんし」
「と、そうだ・・・『連絡手段』は、必要でしょうか」
83
:
座木 劉一郎『プロペラヘッド』
:2015/12/13(日) 00:22:54
>>82
「ああ……教師だったか。
クックク……その手並みなら、
不良の類も問題なく……片づけられるな」
「フン……連絡か」
しばし考えた後、座木は河津と連絡先を交換した。
「おまえの学校で『ティアーズ』が見つかったら、教えろ。
オレは連中と正面から構える気はない……
組織の末端から、少しずつ削っていくだけだ……
『手足』が完全になくなるまで、な」
湖の水平線に視線を投じる座木。
風は肌寒く、殺風景ではあるが、
転がった男たちを除けば、雄大な景色ではある。
84
:
河津 心平『キャメル・ヘッド』
:2015/12/13(日) 01:29:37
>>83
「ふふ・・・なかなかどうして、彼らも手ごわいものですよ」
「お任せください。
急激な『成績』の変化――あるいは突然の生徒の『変貌』。
けして『サイン』を見逃さないよう、気をつけなければ」
連絡先を交換して、湖に背を向ける。
湖面から漂う、清浄な空気を一息吸い込んで、
街の方へと歩き出す。
「ええ、『手足』を削り取れば、
必ずその『牙』は、『頭』に届くはずです。
ぼくも、まずは地道に『足元』から探ることにします」
「・・・それでは、失礼します」
85
:
座木 劉一郎『プロペラヘッド』
:2015/12/13(日) 01:38:33
>>84
「ああ……帰るんだな。
……おまえの場所に」
湖を後にする河津の背中を、
男は目を細めて見つめ──そして『作業』に取り掛かった。
86
:
葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』
:2015/12/13(日) 04:49:28
――湖畔公園。
シャァァーーッ
赤いロードバイクで穂風は風を切る。
近頃、あまり乗れていなかった。
学校に心奪われ過ぎて、他のことをしていなかった。
・・・・だから。
ガコ
「ぁっ……!」
ガシャン ドサ
「うぐぅ……」
ちょっとした石に引っ掛かり、転ぶ。
≪お嬢様……≫
「……大丈夫。
これくらい……平気だよ。」
もっとも、少し体を打っただけで、重い怪我はないが。
運転が少し下手になったな、と穂風は思った。
「いたた……っ」
グイ
(……また、練習しなきゃ。
学校、お休みの日、とかに……!)
立ち上がりながら、そう思う。
学校。今の穂風にはほとんどのことが明るい未来に思えた。
87
:
葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』
:2015/12/13(日) 21:41:45
>>87
(撤退)
シャァァーーー
キキッ
「……ふぅ。」
(こんなもの……かな。
とりあえず、今日はもう、帰ろう……)
・・・・しばらく走ったのちに、家に帰った。
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