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ジョルノ・ジョーベェ&タカ

6名無しさん:2018/01/07(日) 21:03:40
『ある黄金の鉄の塊の話』

1.

 つまりは、プライドの話である。

 ジョルノ・ジョーベェが持つ最も古い記憶は、暗い部屋で泣いている自分の姿だった。
 母親はコーマカンのメイド長をしているサクヤという女性で、自分にはいまだによくわからない事情でさらにあと二人いた。
 わかっているのは3人も母親がいるのに父親はおろか夜中に目を覚ました自分を慰めてくれる存在が家に一人もいなかった事だ。
 母親が就業中に神殿へ預けられていたジョーベェの育ての親にあたるプッチンプリン神父は不器用な男で、ジョーベェに正しい教育を施す事はできても寂しさに押し潰されそうなジョーベェを慰める事が結局いつまで経ってもできなかった。
 親の愛情を知らないジョーベェは孤立し、孤立はイジメを招いた。親が家に金だけは残していったのもかえって災いしたのだろう。
 毎日殴られ、金をとられ、真実を打ち明けられず神父に嘘をついてごまかす毎日は確実にジョーベェの心を捻じ曲げていった。
 ジョーベェが持つこのころの記憶にあるのは、地面を見ながら歩いている景色だけだった。

 ある日、ジョーベェは黄金色に輝くダークエルフが物陰で血を流して倒れているのを見つけた。
 生死はわからなかったが、ジョーベェはその日もイジメっ子に呼び出されていたのでそれどころではなかった記憶がある。
 その直後に怖い顔をした男達が明らかに倒れている男を探しながら現れ、自分に厳しい口調で質問をしてきた時も心のどこかで「あぁ、これで呼び出しに遅れて殴られるんだろうな」とどこか冷めた考えをしていた。
 そしてジョーベェは「あちらに行きました」と見当違いの方向を指し示していた。普段から嘘を吐き慣れていたのが幸いしたのか、男達はそれを信じて去っていった。
 ジョーベェが思ったのは倒れている男が「自分と同じ一人ぼっちで寂しそうだ」と言う事であり、自分が守ってあげないといけないという義務感だけだった。

 その日以来、全てが変わっていった。
 まずジョーベェが助けたダークエルフは『汚い忍者』と言う犯罪者集団と戦っていた聖騎士で、おかげでジョーベェの住んでいる町は回復したダークエルフに無事守ってもらう事ができた。
 ダークエルフの戦士であるブロントは少年の手柄を喧伝し、町の人間は感謝し、イジメっ子は去っていき、神父は全てを知ってジョーベェに謝罪し愛情を注ぐ努力をしてくれた。
 ブロントはその後何年にもわたってジョーベェに助けてもらった恩を語ったが、実のところ助けてもらったのは自分の方であるとジョーベェは思っている。
 少しづつ気持ちが前向きになったジョーベェは母親の職場にも顔を出すようになり、住人に可愛がられ、旅の途中で下宿していた盲目隻腕の格闘家に喧嘩の手ほどきを受けた。
 教わった喧嘩術を生かしてイジメっ子達とのタイマンを経て一目置かれるようになり、つたないながらもその実力と神の声を聞いた事でブロントに一番弟子と認められるようになった。

 つまりは、誇りの話である。

 全てが上手くいっていた。
 大げさでもなんでもなくジョーベェはそこでようやく誇りを取り戻せたのである。
 イジメられて卑屈になって偽物になっていたジョーベェの人生が、ようやく本物になったのだ。
 涙で曇っていた世界が黄金色に輝いていたことを初めて知った。
 黄金色の世界に包まれて、ジョーベェには1つの夢ができた。
 自分がされたように、今度は誰かを守り助ける側に回ろう。
 ブロントさんのやり方とは違うが、マーファの神官らしく愛を説いていこう。
 弱者を暴力から守り、愛の尊さを伝える。それが自分のなすべき事だとジョーベェは強く信じるようになった。

7名無しさん:2018/01/07(日) 21:04:45
2.

 「親に救われたわね」
 意識を失う直前に響いたのはそんな言葉だった。
 ジョーベェがブロントさんの一番弟子と認められアノスで研鑽を積んでいた頃、ある日ブロントさんがラムリアースからきて悪行を繰り返していた貴族を成敗した。
 そして何を考えたのかその悪徳貴族はブロントさんに深く感じ入って弟子の名乗りをあげ、数日後にジョーベェに向かって「すぐにこの国から出ていけ」と言った。
 弱いジョーベェが自分を差し置いて一番弟子と自他共に認められていたのがどうにも許せなかったらしく、命だけは助けてやるという傲慢な態度で指図してきた。

 そこからは、激闘だった。ジョーベェが覚えているだけでもまず「女だから顔は殴らないでおいてやる。だからお前も金的をするな」とルールを作った直後に膝蹴りでアゴを割ってやった。
 膝を蹴り砕いた。転ばせて鼻を踵で踏みつけた。腕の骨を外した。鼻とアゴが砕けて呼吸がし辛そうだったから親切に喉を潰してやった。追いかけっこの末に崖から突き落としてもやった。
 そしてそのことごとく、その女――ヒナナイ・シバシ・テンコは受けて立ち上がってきた。立ち上がり、ジョーベェを痛めつけた。あと一撃で死ぬというところまで。

 そして、従者として連れ添わせていたブランカ193に「こいつを殺して、後始末はできるか」と聞いた。
 「無理です! うちじゃ始末はできません! ジョーベェの母親はコーマカンメイド長のサクヤ・ブランド―です! ジョーベェを殺せばコーマカンは報復に動きます!! ヒナナイ組が潰されてしまいます!!」
 従者の悲痛な叫びを聞きながらテンコは笑い、拳を振りかぶった。

 「許して下さい。殺さないでください。お願いします」

 それは誰の言葉だったか。とぼけようもない、ジョーベェ自身が発した言葉だった。
 命の危険に際し、涙で頬の血を落としながら。ズタズタになった舌で、欠けた歯で、潰れかけた喉で命乞いの言葉を発していた。
 足元には漏らした小便で水たまりができていた。もう指一本動かせない状態でありながら、ガタガタと膝が震えていた。

 暴漢に襲われて道端に倒れているところを保護され、神父の治癒魔法を受けたジョーベェはその夜のうちに姿を消した。

 絶対に言ってはいけない言葉だった。
 言わずに死んでいれば、自分の世界は黄金色のままだったのに。
 黄金色に輝いていたはずのジョーベェの世界(プライド)は、メッキになって剥がれ落ちてしまった。

 つまりは、自尊心の話である。

 このままでは、もうジョーベェは二度と自分で自分を尊敬できなくなる。
 長い年月をかけて取り戻せた本物の人生が、また偽物になってしまう。
 それを避けるためには、もう一度取り戻さなくてはいけない。テンコを殺してでも取り戻さなくてはいけない。
 だからジョーベェは「必ず戻る」と尊敬する恩人にだけ手紙を出して、完治していない身体を引きずって去っていった。

 「今はゴールにいるらしい」と言う話を直前に噂で聞いていた。
 自分に新しい強さを教えてくれそうな、自分が頼れる限り一番強い相手。
 喧嘩のやり方を教えてくれた、強さと言う自信をジョーベェにくれたもう一人の恩人。
 シーマ・ブンキチから得られるものを全て得て、もう一度テンコに挑むのだ。
 絶対に諦めない。自分が自分として生きるために。それだけを、もう絶対に諦めない。

 つまりは、黄金の鉄の塊の話である。

8GM:2018/02/03(土) 21:09:33
なんだこれ

ttp://www.geocities.jp/daikichimaster21/ss1.html


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