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若者よ、恋をしろ!
1
:
大淀
:2004/03/19(金) 12:43
はじめまして。
更新も少しずつになるかもしれませんがよろしくお願いします。
では。
5
:
大淀
:2004/03/19(金) 12:46
改札に定期を通して出口から出ると、同じ電車だったはずのサラリーマンが、遠くを歩いていた。
さっきの若い女の子は私の10m程先を歩いている。
私って、歩くのが遅いのかな。
コツ、コツ、コツ、コツ………
女の子のブーツの音と、私のブーツの音が共鳴して、一定のリズムを刻んでいる。
それはなぜかとても心地よくて。
だだだだだだだだだ!!!!
6
:
大淀
:2004/03/19(金) 12:46
遠くから、ものすごい勢いで駆けてくる足音が聞こえた。
静かな地下通路に、それはとてもよく響いていた。
けれど、姿は見えない。
足音からして、背は高そうだなと思った。
その人物は意外に早く姿を現す。
通路の角を曲がり、マラソン選手さながらのスピードで走っている。
肩より少し短めの髪の、金髪の女の子だった。
肌の色は透き通るように白く、金髪のせいもあって外人のような風貌だ。
―――服装はジャージだけど。
7
:
大淀
:2004/03/19(金) 12:47
10m先を歩く、フリーターの子(勝手に決め付けている)の横を通り過ぎると、
フリーターの子は金髪少女を振り返った。
うん。確かに目を引く子だよね。
あっという間にわたしをも通り過ぎた。
私もつられて金髪少女を振り返る。
「はあっ、はあっ、はあっ……」
規則正しい呼吸も、またマラソン選手を感じさせた。
ジャージなのは、トレーニング中だからかな。
「あれっ」
その声は、金髪少女の声だった。
低めの、アルトな声だけど、私の好きな声だった。
8
:
大淀
:2004/03/19(金) 12:47
「すいませんっ!」
一段と大きな声を発した。
おそらく駅員さんを呼んでいるのだろう。
ざーんねん。終電はもう行ってしまったよ。
トレーニング中でも何でもなく、彼女は電車に乗り遅れてしまったようだ。
「すいませんっ!そこのアナタ!」
―――私?
私はゆっくりと彼女に振り返った。
大きく目を見開いて、真剣に私を見ていた。
9
:
大淀
:2004/03/19(金) 12:48
ドックン。
心臓を鷲掴みにされるというのはこのことを言うのだろうか。
ひどく胸が高鳴った。
「もう言っちゃったんですかっ、終電!」
この人、語尾にいちいち『っ』をつけるのが癖なのかしら。
勢いが良すぎてこっちは萎縮してしまう。
「あ、ハイ。行きましたよ、さっき」
文法がむちゃくちゃで、単語をあるだけ並べたという感じだ。
私はおそらく、緊張、している。
10
:
大淀
:2004/03/19(金) 12:48
「うあ―――」
金髪少女は両手で頭を抱え込み、うずくまってしまった。
ちょっとかわいそうな気がした。
「やっべぇ。帰れないじゃんかよ。っきしょー。」
私があっけにとられて突っ立っているのに気がついて、彼女は顔を上げた。
「あ、スンマセン。いっすよ、もう」
「うん」
私はくるりと背を向けると、再び歩こうとした。
―――歩こうと、した?
歩けなかった。
私はどうしても、彼女のことが気になった。
11
:
大淀
:2004/03/19(金) 12:49
「どうしたんすか?」
一向に歩こうとしない私を不審に思ったのだろう、彼女は声を掛けてくれた。
「ね、ちょっと、どうしたの?」
ぐいと肩を引っ張られ、私は強引に彼女のほうに向けられた。
ご、ごめ、初対面なのに。
「ねぇってば―――」
「うえぇ…」
最悪だ。
12
:
大淀
:2004/03/19(金) 12:50
取り急ぎ、二人の出会いまで。
がんばって、早めに更新したいと思います。
13
:
管理人
:2004/03/19(金) 13:36
大淀さん。はじめまして管理人です。
連載スタート有難うございます^^
これからよろしくお願いします。
14
:
JUNIOR
:2004/03/19(金) 16:43
あぁーーーー!!新作!!
この話すごく面白いです!頑張ってください。
あと某版で「約束の丘」って作品を書いてるヒトですか?
15
:
名無し(0´〜`0)
:2004/03/20(土) 13:20
新作だぁぁぁぁぁぁぁぁ
面白い!!たのしみですぅぅぅぅ
作者さんがんばってください!!!!!
16
:
名無し(0´〜`0)
:2004/03/21(日) 01:35
久しぶりに来たら新作がぁーーー。
しかも大淀さんって大淀さんですよね?もしかして運命!?
某所からしっかり付いて来ちゃいましたよ(笑)
新作スタートマジでうれしいです。頑張ってくださいね!
17
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/03/21(日) 04:25
「大丈夫すか?」
駅近くのコンビニで、介抱されている私。
お酒で失敗したことって、なかったのにな…
コンコンッ。
ドアがノックされて出てきた人物を見て、私は再び驚いた。
「はい、お茶。」
「あ、すんません…」
さっき一緒に下車した、『いかにもフリーター』な女の子だった。
肩まで大きく前が開いたニットに、ミニスカートから覗かせる足はとても綺麗だった。
18
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/03/21(日) 04:26
金髪少女は『いかにもフリーター』な女の子からお茶を受け取り、
ペットボトルのふたを開け、私にお茶を飲ませようとした。
「ちょっとコレ、飲んだほうがいいと思いますよ。」
「ん、自分で飲める…」
金髪少女はとても心配そうに私を見つめてくれている。
その、まっすぐな視線が、余計につらかったりもするけど。
19
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/03/21(日) 04:26
一方。
いかにもフリーターな子は、腕組みをして洗面所の壁にもたれかかってたり。
「………」
その、冷ややかな視線が、もっとつらかったりもするけど。
私は酔い潰れてしまったことをひどく後悔した。
同時にこの場から一刻も早く出たい衝動に駆られて…
「ごっちん。大丈夫そうだね…」
ごっちん?
この二人、知り合いだったのかな。
「あの、ほんとすみません…」
20
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/03/21(日) 04:27
うえぇ。
もう何もでないけど、嘔気がこみ上げる。
「ちょっとアンタ、しっかりしなよ。」
「………」
「ご、ごっちん!動かなくなっちゃったよ!!!」
生きてます、生きてます。
「慌て過ぎ。」
ヒラヒラと手を振って、私は生きていることをアピールした。
うぃーあらいぶ。
21
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/03/21(日) 04:28
金髪少女はずっと背中を擦ってくれている。
優しいなあ…
「もう少し、ここにいたほうがいい。」
そう言って『ごっちん』は出て行った。
ありがとう、見ず知らずの『ごっちん』。
もう駅で見かけても、話しかけたりしないから。
「あ…」
金髪少女はすでに閉まっているドアに向かってつぶやいた。
空を切る、頼りなさげな右手が悲しかった。
22
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/03/21(日) 04:29
「大丈夫。ずっとそばにいるからね。」
私にそう言いにっこり笑うと、私の口元をハンカチでぬぐってくれた。
悲しくなるくらい、優しい彼女。
私もにっこり微笑み返した。
そのとき彼女の顔が一瞬硬直したけど、気のせいだろうか。
それは本当に一瞬で、すぐに元に戻ると、こう言った。
「お酒、飲んだの?」
「え…うん。」
23
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/03/21(日) 04:30
「そっかあ。」
「え?」
「いきなり、『うえぇ…』ってうずくまったから、マジびっくりした。」
「…ごめんなさい。」
「や!いいから!ぜんぜん、ね?」
ぶんぶん首を振って否定する彼女。
何だか、すっごくかわいいんですけど。
24
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/03/21(日) 04:31
「それよりちゃんと、水分摂って。」
ぶっきらぼうにお茶を渡されて、少し戸惑う。
彼女なりの、照れ隠しなんだろう。
それから、違う人がトイレを使おうとしたので、私たちはコンビニから出ることにした。
25
:
大淀
:2004/03/21(日) 04:40
今日はこのあたりで。
>管理人さま
はじめまして。お借りいたしますです。
こちらこそ、よろしくお願いいたします。
>JUNIORさま
そおです。なんか照れますね。
あっちも今がんばってる最中です。
早めに更新できるようにしたいと思っております。
>15さま
ありがとうございます!
もっとおもしろくできるように、がんばります。
うしゃ。
>16さま
すっげうれしい反応(照)
そんなたいそうなもんでもありませんが、もいっちょの方も読んでいただけているのなら、
これほど嬉しいことはございません!
途中から自分でageてますな。
まいっか。
ではでは失礼いたします。
26
:
16
:2004/03/21(日) 15:19
更新お疲れ様です。
某所では12月始めの「読んでます、読んでます」の者です(#^.^#)
自分の感想にセンスがないので本当はROM専なんです。すみません(^_^;)
のっけから引き込まれちゃってるんですけどぉ。ドキドキしちゃったし。
こっちも頑張ってくださいね!
27
:
JUNIOR
:2004/03/21(日) 21:19
更新お疲れ様です。
大淀さんの文章イイですね。
なんか、こう、その場その場の感じが解りやすいです。
某板ではROM専なんですがあの作品、好きです。
もちろんこっちの作品も好きです。頑張ってください。
28
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/03/21(日) 23:26
「大丈夫?出れる?」
それでもちゃんと私の体の心配をしてくれる、優しい彼女。
「んー、これからどうする?」
「体も大丈夫だし、もう帰ります。」
「…ほんとに大丈夫?」
「もう、迷惑かけるわけにはいかないですから。」
「あたしのことなら、平気だよ。 それより、あなたのほうが心配なんだ。」
「私…?」
「あったりまえじゃん」
29
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/03/21(日) 23:26
目を細めて、駅前のバスターミナルを見つめている。
もうすでにバスの姿はなく、迎えに来たのだろうか、乗用車で少し渋滞していた。
「で、やっぱり帰っちゃうの?」
私にどうしろというのですか。
見ず知らずの、しかもたぶん年下の女の子に、ここまで介抱されてしまったのだ。
早く彼女を帰してあげないと。
あ。
「ちょっと待って、あなたは?」
確か猛ダッシュで走ってきて、終電を逃してしまったはずだ。
帰れないようなことも言っていたはず。
彼女は、どうするのだろうか。
30
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/03/21(日) 23:27
「あたしね。終電タッチの差で行っちゃって、今晩帰れそうにもないんだよね。」
ニカッと白い歯を覗かせて、笑っている。
まるでこういうアクシデントを楽しんでいるかのように。
「…どうするの?」
「そおだねぇ。あなたに朝まで付き合ってもらおうかな。」
「なっ…!」
「お互い女同士なんだし、心配ないっしょ?ね?」
なんだか大変なことになってきた。
そりゃあ、この子も大変だと思うけど、ちょっとそれは…
「ね、いーじゃーん。 気持ちワルイのも治ったんでしょ?」
「え、っと…」
31
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/03/21(日) 23:27
「面倒見てあげたじゃん。お礼だと思って、ね?」
なんだこのコ。
さっきと随分雰囲気が違ってきてない?
さっきよりぐんぐん距離を縮めてきて、しっかり腕も掴まれてしまっている。
「何もしないから。お願いっ!」
ヤバイ。押し切られてしまいそう。
「朝まで…?」
「うん。朝になったら、帰るから。 そこでバイバイだよ。」
「でも…」
32
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/03/21(日) 23:28
急に腕の力が強くなる。
顔はもう、ちょっと伸ばせばキスできそうなくらい近づいていて…
「何やってんだよ。」
「ごっちん!」
彼女は声のほうに振り向いて、少し腕の力が抜ける。
私はすかさずすり抜けて、『ごっちん』の後ろに隠れた。
「あっ」
彼女は私が離れてしまったことに声を上げた。
33
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/03/21(日) 23:28
「何やってんだって。」
「別に。」
腕を頭の後ろにやって、彼女はそ知らぬ顔。
何よ。
朝まで一緒にいてって、迫ってきたくせに。
私はちょっと頭にきた。
「ウソ。」
「なっ…!」
私が『ごっちん』の後ろからボソッと呟くと、彼女は少し慌てた。
34
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/03/21(日) 23:29
「アンタも、さっさと帰りなよ。」
『ごっちん』は顎で何かを指した。
見ると、コンビニの前に1台のタクシーが横付けされていた。
きっとそれも、『ごっちん』が用意してくれたものだろう。
「早く。」
私が何ずっと考えていると、早く乗れとばかりに急かした。
「え、あ…」
35
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/03/21(日) 23:29
彼女の方を見ると、面白くないのか、口を尖らせてすねたような表情をしていた。
きゅんっ。
不謹慎、というのか。
私は悪いことをしてるわけでもなく、どちらかといえば迷惑している立場なのに。
彼女をほっておけない気になった。
「何、気使ってんの。」
「そんなんじゃないんだけど…」
「何が気になるの。」
『ごっちん』がだんだんと不機嫌になっていくのが他人の目からでも良くわかった。
私、どうすればいいの。
36
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/03/21(日) 23:30
「彼女、終電なくなったみたいで、ね。」
「タクシーでも、歩きでも、何でもあるじゃん。」
自分がこんなに優柔不断だとは思わなかった。
それに、金髪少女がこんなに気になるのはなぜだろう。
「そうなんだけど…」
「はっきりしないの、嫌いなんだけど。」
「ごめんなさい」
「謝られる筋合いもないと思うけど。」
コワイ。
『ごっちん』はとてもコワイというのが、よーくわかりました。
「勝手にやってよ。あたし、暇じゃないんだからさ。」
「そうだよね。ごめんなさい…」
37
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/03/21(日) 23:30
私は一体さっきから何に謝っているのだろう。
巨大迷路に迷ってしまったような不安に刈られ、視界が歪み始めた。
「ちょ!何泣かしてんだよ!」
つかつかと歩み寄り、彼女は私を庇った。
「そっちが勝手に泣いたんでしょ。」
「……」
「あたしには関係ない。」
「…のやろうっ…!!!」
38
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/03/21(日) 23:32
あっという間に彼女は『ごっちん』に馬乗りになり、殴りかかっていた。
私は「やめて!」としか叫ぶことができず、止めることもできず…
殴られっぱなしの『ごっちん』ではなかった。
上になり、下になり、二人は殴り合う。
何でこんなことになってしまったのだろう。
なんか…アタマ痛い。
確実に二日酔いではないその痛みに、私はため息をついていた。
39
:
大淀
:2004/03/21(日) 23:38
つづく。
>16さま
感想に扇子も何も!
やっぱ、反応があるとだいぶ嬉しいのです。
これからもよろしくです。
>JUNIORさま
ご購読ありがとうございます。
ROM専と言わずにじゃんじゃんカキコお願いしますっ!
解りやすいですか。めさめさ嬉しいっす。
こんなんでいいかな…もっとちゃんとキャラ立ててきたいんですけどね。
では、また。
40
:
名無し(0´〜`0)
:2004/03/22(月) 00:23
大淀さんの書かれる話の雰囲気大好きです。
つづきがすごく楽しみ。がんばって下さい。
41
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/03/23(火) 21:17
―――で、何でボウリングなんですか。
ガコ―――ン!
「うしゃ!」
「……ヘタクソ。」
あれから、警察に通報された私たちは、交番でこってり絞られた。
友達同士の喧嘩ということで、事情聴取を少しした後、すんなり開放された。
「え、いいんすか?」
42
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/03/23(火) 21:18
ポカンとした彼女(吉澤ひとみと名乗った)の表情がやけにおかしかった。
ごっちん(後藤真希)は相変わらずクールだった。我関せずといった感じで。
口元に付いた血がが少し乾いていたので、私は水で濡らしたハンカチでぬぐってあげた。
吉澤さんは素直に拭かせてくれたけど、ごっちんは「いい」ってハンカチを奪い取り、自分でごしごし拭いていた。
こんなところにも、二人の対照的な仕草が出て、とても惹かれてしまう。
43
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/03/23(火) 21:19
「何なんだよ!さっきストライク取ったろ!」
「…マグレ」
「っか!スピードだってお前よか早いんだよ!」
「テクは中学生レベル。」
「うるさい!早く投げろよー!」
「石川さんの番」
「……いちいちムカつくヤローだな!」
「一人でカッカしすぎ。」
「黙れ!それと早く梨華ちゃん投げてっ!」
二人の小学生のような口喧嘩に、思わず噴出してしまう。
44
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/03/23(火) 21:20
「あーっ!梨華ちゃんまで何笑ってんだよっ!」
「ゴメン。つい、おかしくて」
「梨華ちゃん、こうして手首を返して、ふつーに前に出せば真っ直ぐいくよ」
「違う。」
「何っ!」
「手首は少しひねったほうがいい。ちょうど握手するような感じで。」
45
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/03/23(火) 21:20
「真っ直ぐだっつの!」
「ひねるんだよ」
「マッスグ!」
「ヒネル」
「マッスグ!」
「ヒネル」
「マッスグ!!」
「…石川さん、投げていいよ」
「んがー!ムシした!!殴ったろか!」
「勝手に吠えとけ」
「ごっちん!」
「……」
46
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/03/23(火) 21:21
ガコーン。
「ありゃ。ガーターだった」
「「………」」
楽しい夜は続く。
47
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/03/23(火) 21:22
2ゲームやって、結局ごっちんの勝ちだった。
吉澤さんは最後、追い込みがすごかったんだけど。
いいところで力んじゃって点数を稼ぐことができなかった。
「ね、梨華ちゃんて社会人?」
「大学生」
「ふーん。」
ゲーセン前の一角で、テーブルを囲んで話をした。
ごっちんは電話をしに行くとかでさっきからいない。
48
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/03/23(火) 21:23
「吉澤さんは?」
「ひとみって呼んで。」
「ん、じゃあ…ひとみちゃん。」
「えー。ま、いいか」
「あたしは高校生だよ」
ある程度予想はしていた答えだったけど、やっぱりちょっと高校生ということがうらやましく感じられた。
私が講義を受けてバイトをしている間に、彼女は制服を着て、授業を受けているのだ。
「ごっちんは?」
「ごっちんのことは苗字じゃないんだ。」
「えっ?」
「ちょっと、妬ける」
こんな些細なことにさえごっちんにライバル心を持っているひとみちゃんがかわいかった。
49
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/03/23(火) 21:24
「ごっちんのことは、何も知らないよ。今日初めて会ったし。」
「そうなの?」
「そーだよ」
へへ、と上目使いで私を見ながら、メロンソーダの紙コップに口をつけた。
「だから、ごっちん置いて、バックレよ?」
だから、の意味がわかんないんですけど。
このコは、どうしてもごっちんを除け者にしたいらしい。
50
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/03/23(火) 21:24
「ごっちんが心配するからダメ。」
「えー。 梨華ちゃん、ごっちんのほうがスキなの?」
私の手の上にそっと自分のを重ねて、ギュってしてくる。
少し冷たかったお互いの手が、交わり暖かさが増していく。
「どっちも好きだよ。」
「あたしのこと、スキ?」
「好きだよ。」
初対面の、しかも年下の女の子に、素直にこう言える自分に驚いた。
女の子に好きだって言うこと自体、私はあまりしたことがなかった。
51
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/03/23(火) 21:25
「よかったぁー」
ほんとカワイイ。年下の女の子。
「カップル誕生?」
冷ややかな言葉を背後から浴びて、私は驚いた。
振り返ると、ごっちんが私たちを見下ろしていた。
「あたし、明日バイトあるから、ここで帰る」
「どうやって?」
「アンタにも言ったとおり、歩いてでも何でも。」
「危ないよ!」
52
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/03/23(火) 21:26
「いーじゃん、梨華ちゃん。ごっちんがそうするってんだから。」
ひとみちゃんはごっちんを見てニヤニヤしていた。
明らかに、ごっちんの怒りを誘っている。
「…じゃ。」
私が止めるのも聞かず、ごっちんはスタスタと帰ってしまった。
「変なヤツ」
「ごっちん…」
53
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/03/23(火) 21:27
「あー!梨華ちゃん、あたしのことスキって言ってくれたのに、ごっちんの心配してる!」
「普通誰だって心配するでしょ。」
「ごっちんなんて大丈夫だよ」
「ひとみちゃん。」
少し声を低くして凄んだら、ひとみちゃんはシュンとしてしまった。
かわいそうかな、と思って頭を撫でてあげたら、嬉しそうに笑ってくれた。
「じゃ、ごっちん送りにいこ?まだ近くにいると思うから」
「ウン…」
そうして、ひとみちゃんと一緒にボウリング場を後にした。
54
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/03/23(火) 21:27
「どっち行ったかな?」
二人できょろきょろしていると、ひとみちゃんが叫んだ。
「いた!ごっち…ん…」
「どうしたの?」
ひとみちゃんの視線のほうへ目を向けると、ごっちんがいた。
道端に止まっている車の中へ、何やら話しかけている。
「ヒッチハイク?」
「きっとナンパだよ」
「ごっちんから行くわけないじゃない」
「そーかなぁ」
55
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/03/23(火) 21:28
やがて運転席のドアが開き、中から人が出てくる。
―――中年のオジサンだった。
「え?」
「なぁーんだ。オトコいるんじゃん。心配して損したぁ」
ひとみちゃんは諦めて、体を逆方向へ向けた。
オトコ?
果たしてそうだろうか。中年の、下手したら父親くらいの年齢の人に。
ひとみちゃんは背を向けたけど、私はごっちんから目を離せないでいた。
56
:
大淀
:2004/03/23(火) 21:35
つづく。
>40さま
ありがとうございます。嬉しいっす。
ふと外に行ったときにネタが浮かんだり。
何回も書き直すんですけどね。
え、と。
自分とこの場所も作りたくなってしまって。作っちゃいました。
でも、今から仕事行くので、明日から始動したいと思います。
ちょっとばかし寝ます。
57
:
名無し(0´〜`0)
:2004/03/30(火) 06:43
初めて読みました。正直おもしろいです
楽しみが増えました、作者さん有難う御座います。
58
:
名無し(0´〜`0)
:2004/04/10(土) 10:07
更新まだかなぁ・・・。この作品楽しみにしている読者の一人です。
59
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/04/12(月) 23:20
『昨日はありがとう!また遊んでくれるよね? ひとみ』
午後から始まった講義の時間に、私の携帯にメールが届いた。
―――ひとみちゃんからだった。
もうこれっきり、会うことはないと思っていたけど…
「友達になって!」と笑顔で言うひとみちゃんの申し出も断れず…
携帯の番号を交換した。
60
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/04/12(月) 23:21
ごっちんと男の人を見つけて、私たちは声を掛けることもせずに、黙ってごっちんを見送った。
そのあと一緒に朝まで一緒にいた。
何もしないと、ひとみちゃんは言ったけど。
その、キス―――された。
61
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/04/12(月) 23:21
「ね、梨華ちゃん。お腹空かない?」
「うーん…ちょっと、空いたかも。」
時計は午前3時を過ぎていた。
「ほら、あそこに吉野家があるよ!」
「ほんとだ」
「あそこでいい?」
右手でオレンジの看板を指差し、私の顔を覗き込むようにしてひとみちゃんは言う。
吸い込まれそうな瞳。
だから、ひとみ…って言うのかな…
62
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/04/12(月) 23:22
信号が青色の点滅をし始めた。
ここの信号、長いから―――と急いで渡ろうとした。
「危ないよ、そんなに急いだら」
ぐい、と腕を引き寄せられた。
「来てないじゃない。車…」
「まぁまぁ。慌てない、慌てない」
一休さんじゃないんだから。
「ひと休み、ひと休み?」
「そうそう」
カラカラと、上を見上げてひとみちゃんは笑う。
よく、笑う子だな。なんて思った。
63
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/04/12(月) 23:23
「急がなくても、逃げないって。牛丼のない吉野家は。」
「そうだね」
「でも、久しぶりに行くなぁ。牛丼のない吉野家。」
「そうなの?」
「もう牛丼が食べれなくなる、って聞いたら行きたくなるっしょ?
それが、牛丼のない吉野家に行った最後かな。」
「いちいち牛丼のない吉野家、なんて言わなくても」
「モーモー牛さん?」
「なにそ、れ―――」
キスは、突然だった。
牛丼の話から、キス。
64
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/04/12(月) 23:24
私は、固まるしかなかった。
「牛のこと考えてたらさ、梨華ちゃんにキスしたくなった」
ぺろっと唇を舐めて、怪しげに笑う。
信号はまだ、赤のまま。
いつもの何倍も遅い、赤信号。
車は一台も通らない。早く、歩きたかった。
ドキドキしているのは私だけで、ひとみちゃんはこんなのに慣れているのかと思うと、恥ずかしくてしょうがなかった。
「あたし、ウシ年だし。8日遅く生まれてたら、おうし座だし。モーモー。」
65
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/04/12(月) 23:24
そのあと食べた豚丼は、何故か牛肉の味がした。
ぐるぐる回る、白と黒のコントラスト。
私の頭から二本生えた角。
私はいつの間にか、牛の着ぐるみを着ていた。
スペイン風の衣装に身を包んで、私の前に立つひとみちゃん。
オ・レ!
『赤を見るとね、ウワァーってなっちゃうの』
少し興奮気味に、赤い布をはためかせてひとみちゃんは言う。
「私も?」
私は赤い布に突進する。
止まれない。
信号は、赤なのに。
66
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/04/12(月) 23:25
幼稚園のとき、確かに習いました。
青は進め。赤は止まれ。
なのに、私の心は赤でもノンストップ。
赤でも進んで、交通事故にでもあったら…それは間違いなく、モーモー牛さんのせい。
67
:
大淀
:2004/04/12(月) 23:29
更新致しました。
遅くなってしまい…ごめんなさい。
>57さま
こちらこそありがとうございます。
今後とも楽しみ、といっていただけるように頑張りたいと思います。
>58さま
お待たせ致しました。
もっとマメに更新したいと思います。
お時間がありましたら、また読んでやってください。
68
:
JUNIOR
:2004/04/13(火) 23:21
更新お疲れ様です。
いけ、いけ!梨華ちゃん。赤でも突っ走れ〜!!
大淀さんMyペースで頑張ってください。
マターリまってま〜す。
69
:
大淀
:2004/04/14(水) 08:53
>JUNIORさま
マイペース♪マイペース♪
ありがとうございMAX!
レスを頂けて、とってもとっても嬉しいです。
70
:
大淀
:2004/04/14(水) 08:53
「ね、ね、梨華ちゃん。ピクニック行こうピクニック」
真夜中にかかってきた突然の電話。
前の晩に遅くまでレポートを書いていて、私はとにかく眠たかった。
「え…うん。」
「ホントに?!」
力なく耳に当ててる携帯の向こうから、ひとみちゃんのはしゃぐ声を聞いていた。
「天気予報見ないと!」
「…そうだね」
「日にちはまた連絡するから!」
「ハイ…待ってる」
71
:
大淀
:2004/04/14(水) 08:54
気がつくと、朝だった。
もしかして、昨日の電話は夢だった?
顔を洗っている間に、ふと思った。
「っ!!!!!」
勢いよく鼻に水が入ってしまった。
い、痛い。
ツーンと鼻が痛いまま、自分の部屋に戻る。
ベッドの上に置かれたままの携帯をそっと開く。
―――2:28 吉澤ひとみ
電話がかかってきたのは、確からしい。
72
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/04/14(水) 08:54
うーん。どうなのかな。
大学に向かう途中も、電車に揺られながらひとみちゃんのことを考える。
つきあえばつきあうほど、ひとみちゃんは不思議な子だと思う。
思っていることも、突拍子のない行動も、何もつかめない感じ。
追いかけたって追いつけなくて、ぴんと伸ばした腕だけではつかめなかった。
ヴーッ。ヴーッ。ヴーッ。
マナーモードにしていた私の携帯が、鞄の中で震える。
『今度の土曜日、晴れだって!10時に駅の改札で待ってる ひとみ』
ホントだったんだ。
嬉しさよりも、何だかホッとした。
友達に言わせると、その日の私は一日中ボーっとしていたらしい。
73
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/04/14(水) 08:55
駅の近くの大きな書店に立ち寄った。
ピクニックといえば、お弁当だよね。
ひとみちゃん、喜んでくれるかな?
『はじめてのお弁当作り』
『幼稚園に持って行きたいお弁当』
『男の子のお弁当』
『胃・十二指腸潰瘍に効く料理』
『ピーマコ小川のダンシングクッキング』
あらゆる本を次々に手に取る。
どんなのがいいか分からないから、全部買っちゃおう。
『調理師読本』
調理師になる気なんてまったくないけど、これもいるのかな?
手を伸ばすと、もうひとつ手が伸びてきた。
74
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/04/14(水) 08:55
「あっ、すみません」
ピュッと手を引っ込めた。
「別に…どうぞ。」
どこかで聞いた声がした。
見上げると…ごっちんだった。
「―――あんたしかいないよね、こんなアニメ声」
と言ってごっちんは小さく笑った。
75
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/04/14(水) 08:56
「どうぞ」
渡された、一本の缶コーヒー。
「ごっちんは?」
「いい」
ごっちんと一緒に店を出て、近くの公園へやってきていた。
結局私は5冊買った。『調理師読本』はさすがに買わなかったけど。
ぷしゅ。
プルタブを開けて、一口飲んだ。
「お料理の勉強、してるの?」
「別に」
「そっか…」
「あんたは?」
私は、今度の土曜日にひとみちゃんとピクニックに行くことを話した。
76
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/04/14(水) 08:56
「ごっちんも、行こうよ」
「無理。」
「予定があるの?」
「まぁ…そんなとこ」
残念。
ひとみちゃんはごっちんがいると、少し嫌かもしれないけど。
言い合いをしても、本当は気が合うって思ってるんだけどな。
しゅんとなってしまった私を、ごっちんは確かに横目で見た。
77
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/04/14(水) 08:57
「家にいないといけないから。」
「え?」
「弟が、まだ小さくて。面倒みてんの。」
「連れておいでよ!」
「いいよ」
「人数多いほうが楽しいし!」
「………」
「弟くんも家にいるより喜ぶよ!」
「そう、かもね…んじゃ、行く。」
「やったあ!」
ごっちんの手を握って喜んだ。
ぶんぶん振り回す。
78
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/04/14(水) 08:57
「―――っ!」
ばっ、と音がするくらいその手を無理やり解かれてしまった。
「あ、いや。暑いから」
ぴゅうっ。
冷たい風が、ひとつ、吹いた。
79
:
大淀
:2004/04/14(水) 08:58
更新致しました。
タイトルのとこ、間違っちゃった。
あーあ。
80
:
名無し(0´〜`0)
:2004/04/17(土) 13:11
更新お疲れ様です。楽しみにしていました。
続きが、気になります。がんばってください
81
:
大淀
:2004/05/03(月) 11:02
>80さま
遅れてスミマセン。
これからもよろしくです。
82
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/05/03(月) 11:03
よし。
お弁当は持った。
上手くできたか分からないけど、味はまあまあだった。
あの日、3人が始めてであった駅の改札で、ひとみちゃんとごっちんを待つ。
「早く、早く!おねーちゃんっ!」
「はいはい」
賑やかな声が聞こえてきた。
ちっちゃい男の子に手を引かれるようにして、ごっちんはやって来た。
細身のジーパンに黒のキャミソールを着て。白いシャツを無造作にはおっていて、とてもよく似合っていた。
83
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/05/03(月) 11:03
「ごっちん!」
私が呼びかけると、一瞬だけ私を見て、ひょいと男の子を持ち上げた。
男の子はきゃあきゃあ喜んでいた。
「おはよう」
「おはよ」
無愛想だった口元が、少し上がった。
「例の、弟くん?」
「そ。ユウキ。」
84
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/05/03(月) 11:04
ごっちんに抱っこされたユウキ君に近づいた。
ユウキ君は、ごっちんにそっくりな大きな目を真ん丸くして、私を見た。
「ユウキ君、おはよう。」
「お、おはよう・・・」
「私、梨華って言うの。」
ユウキ君は顔を真っ赤にして、うつむいてしまった。
「いくつ?」
「にさい」
「偉いね。自分でお年、言えるんだあ。」
85
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/05/03(月) 11:04
ユウキ君ははっとしたようにごっちんに振り返った。
「おねえちゃん、ぼくおりる。」
「ん、わかった。」
すとんと地上に降り立ったユウキ君。
ほんとにちっちゃいなぁ。
「今日はいっぱい、遊ぼうね。」
「うん。」
シャイなところもごっちんそっくり。
思わず頭をなでなでしてあげたら、ユウキ君はうれしそうに微笑んだ。
86
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/05/03(月) 11:05
「遅いね、ひとみちゃん…」
「うん」
時計はもう待ち合わせを15分を過ぎていた。
「やぁだぁ、よっすぃー…」
「いーじゃんか。今度はちゃんと遊んでよ?」
「遊んでくれないのは、よっすぃーだよぉ」
「んなことないって。」
ひとみちゃん?
誰か知らない女の人と歩いてきた。
私がさっきユウキ君にしてあげたように、とてもきれいな女の人の頭をなでている。
「じゃね、あたし約束があるから。」
「えー?そうなの?」
「そうなの。じゃね」
ひらひらと女の人に手を振って、ひとみちゃんは改札に切符を通した。
87
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/05/03(月) 11:06
ごっちんを見ると、なんだか怖い顔をして唇をかんでいた。
「おー!おはよう、梨華ちゃん。」
「おはよう…」
「…どうしたの?」
「え、っと。それは…」
ぐいとひじの辺りをごっちんにつかまれて、切符売り場へと引っ張られた。
「イコ。」
「うん…」
「おいごっちん!なんなんだよ!」
「…自分に聞け」
ごっちん、怒っちゃってるよ。
ひとみちゃんのせいだと思う。
88
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/05/03(月) 11:06
「おい、待てって!…お?」
「お?」
ひとみちゃんはようやくユウキ君の存在に気がついたみたい。
見る見るうちに無邪気な笑顔になっちゃって。
ホームで電車を待つ間、ひとみちゃんはユウキ君をずっとおんぶしていた。
子供にも、人気あるんだなぁ…
「ユウキ、電車来たよ」
「ほんとー?」
キャッキャとひとみちゃんの背中の上で、はしゃぐユウキ君。
「あ、コラ!暴れるなぁー。」
「でんしゃ!よっすぃー、でんしゃだよ!」
「あーもう分かったって。これに乗ろうな。」
「うん!」
止めろといいつつも、ひとみちゃんは嬉しそう。
89
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/05/03(月) 11:07
ごっちん、ユウキ君、ひとみちゃん、私の順で座ることになった。
私はさっき、ひとみちゃんといた女の人を思い出していた。
ひとみちゃん、モテそうだもんね。
だけど、待ち合わせにまでつれてくることないじゃない。
って、私何怒ってんだろ。
別に、怒る理由なんて何もないのに。
90
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/05/03(月) 11:07
何て流れる窓の景色を見ながら思っていたら、不意に膝の上の手があったかくなった。
ひ、ひとみちゃん?
「あの…」
「いーじゃん。手、繋ごうよ」
ひとみちゃんは右手をぶんぶん振り回す。
そこはユウキ君としっかり繋がっていた。
あ、そうゆうことですか。
私もきゅっと握り返したら、ひとみちゃんは少し顔が赤くなったような気がした。
一本一本指を絡めて、握り直された。
ちょっと…嬉しいかも。
そして、公園に着くまで、ひとみちゃんと手を繋いでいた。
91
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/05/03(月) 11:08
「すっげー。梨華ちゃんが作ったの?」
「うん…おいしいかどうか、分からないけど。」
朝6時に起きて作ったお弁当を広げた。
「あたし、卵焼き好きなんだ。」
「…どう?」
「ん、うまいよ。」
「…ちょっとしょっぱいんじゃない?」
「そうかな?」
「塩はちょっとでいいと思う。」
気を使ってそれでもおいしいといってくれたひとみちゃんに、はっきりと感想を言ってくれたごっちん。
「あたしも、作ってきたんだ。」
ごっちんの作ってきたお弁当はきちんと栄養も考えてあって、すっごくおいしかった。
照れくさそうに笑ったら、今度教えてもらう約束をした。
92
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/05/03(月) 11:08
「あー食った食った。」
ごろんとひとみちゃんはその場に寝そべった。
「おねーちゃん、ぼくトイレに行きたい。」
「はいはい」
軽くユウキ君のお尻を叩きながら、ごっちんはトイレに行ってしまった。
「…すぐ横になったら、牛になるよ?」
「牛、ねぇ…」
ひとみちゃんはニヤリと笑うと、体を起こして私を覗き込んだ。
93
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/05/03(月) 11:09
牛=キス。
私の頭の中はそんな図式が成り立っていた。
「あー梨華ちゃん。キスのこと考えてんなぁ?」
「か、考えてないよ!」
「キス、したいなぁ」
ひとみちゃんは私の頬をなでた。
手つきはホント優しくて…
「梨華ちゃんは?」
「したくない」
ダメなんだから!あんな、女の子連れて歩くなんて、ロクな人じゃないよ!
94
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/05/03(月) 11:10
「ふーん。じゃ、奪っちゃお」
「んん!」
強く、強く口付けられた。
何度も何度も口付けられた。
ダメだって思うのに…気持ちよくて…振りほどけない…
耳のあたりを優しくなでられて、何度も角度を変えてキスされた。
私もいつの間にかひとみちゃんにしがみつくようになってた。
優しく唇が離れたら、後悔が押し寄せる。
好きでもない人と…キスするなんて。
私、どうかしてるよ。
一瞬でも気持ちいいと思った自分が恥ずかしい。
95
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/05/03(月) 11:10
「かわいい。梨華ちゃん、かわいい。」
「何、急に…」
「いつも思ってるよ。」
「やだ…」
「好きだよ」
そう言って口付けられた。
激しさはない、子供のようなキス。
「梨華ちゃん、好きだよ」
その笑顔もまた、子供のようだった。
96
:
大淀
:2004/05/03(月) 11:11
更新いたしました。
やっちゃった。
97
:
JUNIOR
:2004/05/03(月) 14:44
更新お疲れ様っす。
よっすぃ〜やっちゃいましたか。
ユウキが2歳・・・・・。(・∀・)イイ!
頑張れ大淀さん
98
:
名無し(0´〜`0)
:2004/05/07(金) 00:04
なんでだろう・・・
いしよし板なのにいしごま応援したくなってしまつた・・・
99
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/06/12(土) 05:15
「あっちぃ」
「…ホントに」
一通り公園を散歩し終えると、額には汗が噴出していた。
今日は、一段と日差しが強い。
空になったバスケットを持ち直す。
重くはないけどかさばって、持ちにくい。
すると急に軽くなったのを感じた。
そっとバスケットに伸びた手。
100
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/06/12(土) 05:16
「…ごっちん?」
「いいから」
ごっちんの、こーゆう不器用な優しさも、知っていた。
会ったときから、知っていた。
半ば強引に奪われたけど、私は素直にその好意に甘えることにした。
だけど、この少年は…
「すっげー。あの恐竜、カッケー。」
「カッケー!」
大きな恐竜を模った遊具に、目を奪われている。
ユウキ君も同じように、『カッケー!』なんて言っちゃって。
ごっちんよりも、ひとみちゃんの方が兄弟のように感じる。
『お兄ちゃん』って感じだけど。
101
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/06/12(土) 05:16
「こんなところに、喫茶店があるよっ!」
「ホントだ」
ひとみちゃんが指差したのは公園からも見える、小さな店だった。
赤い屋根で、さほど大きくない店構え。
だけど植えてある花だとか、窓から見える雑貨にさえ、こだわりがあるようだった。
「…休憩する?」
「「賛成!」」
102
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/06/12(土) 05:17
カランカラン…
来客を知らせる鐘の音。
いかにも喫茶店、って感じで嬉しかった。
店内に広がるコーヒー豆の香り。
今では懐かしい、レコード台からは聞いたことのない洋楽が流れていた。
「いらっしゃい」
にこやかに招き入れてくれたのは、金髪のお姉さんだった。
ノースリーブから見事に露出した腕は、息を飲むほどに美しく。
きれいにまつげがカールされていて、化粧もとても似合っていた。
103
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/06/12(土) 05:18
「ぅあー、カワイイっ!」
ひとみちゃんが駆け寄ったのは、二匹のチワワだった。
「花とタローって言うねん」
お姉さんは口を開けば、関西弁だった。
肩まで伸びた茶色の髪が、優しく揺れた。
「花って言うのか。よしよし。
…くすぐってぇよ、タロー。」
ひとみちゃんは2匹とじゃれあいながら、床に転げた。
お構いなしに2匹は胸の上を飛び回る。
キャンキャン言う2匹を見ていたら、
『ひとみちゃんて、なんか…子犬みたい』なんて思ってしまった。
104
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/06/12(土) 05:18
「まぁ、座りぃや。」
ひとみちゃんから目線を外して、私とごっちんはカウンターに座った。
ユウキ君は犬が怖いのか、少し離れたところから2匹を見ていた。
「何にする?」
お姉さんは掛かっている布巾を取り出し、丁寧にグラスを拭き始めた。
「…こんにちは。」
私の席のひとつ隣には、女性が座っていた。
お姉さんに負けないくらいの金髪で、背は小柄だが私たちより年上なのは明らかだった。
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